衆議院

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第5号 平成29年6月13日(火曜日)

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平成二十九年六月十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 克昌君

   理事 伊東 良孝君 理事 國場幸之助君

   理事 武部  新君 理事 堀井  学君

   理事 渡辺 孝一君 理事 佐々木隆博君

   理事 松木けんこう君 理事 稲津  久君

      尾身 朝子君    佐田玄一郎君

      櫻田 義孝君    鈴木 貴子君

      鈴木 隼人君    高木 宏壽君

      宮腰 光寛君    宮崎 政久君

      武藤 容治君    山口 泰明君

      和田 義明君    石関 貴史君

      近藤 昭一君    吉田 宣弘君

      畠山 和也君    椎木  保君

    …………………………………

   参考人

   (公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟理事長)   脇 紀美夫君

   参考人

   (筑波大学教授)     中村 逸郎君

   参考人

   (根室水産協会会長理事) 高岡 義久君

   衆議院調査局第一特別調査室長           大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十三日

 辞任         補欠選任

  赤嶺 政賢君     畠山 和也君

  下地 幹郎君     椎木  保君

同日

 辞任         補欠選任

  畠山 和也君     赤嶺 政賢君

  椎木  保君     下地 幹郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北方問題に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 北方問題に関する件について調査を進めます。

 本日は、本件調査のため、参考人として、公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟理事長脇紀美夫君、筑波大学教授中村逸郎君及び根室水産協会会長理事高岡義久君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、北方問題につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、脇参考人、中村参考人、高岡参考人の順に、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず脇参考人にお願いいたします。

脇参考人 皆さん、おはようございます。ただいま御紹介をいただきました、公益社団法人千島歯舞諸島居住者連盟の理事長を仰せつかっております脇でございます。

 個人的には、北方四島の一つ、国後島の生まれでありまして、私が生まれた年に第二次世界大戦が始まりました。四歳のときに戦争が終わりまして、その後三年間島にとどまって、最後の引き揚げで本土に渡ってまいりました。以後、それ以来、今住んでいる羅臼町に住まいさせていただいております。

 本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日は、鈴木委員長を初め委員皆様の御高配によりまして、北方領土の元居住者を代表して意見を申し上げる機会をいただき、厚く感謝を申し上げます。

 また、日ごろより、私ども元島民や後継者に対する支援措置を初め、当連盟に対しまして格別なる御理解と御支援を賜っていることにつきましても、この際、御礼を申し上げたいと思います。

 本日は、当連盟の設立の経過や活動の内容については、時間の関係もございますので詳しくは申し上げませんが、既に皆様御承知のことと存じます。当連盟の主な課題に関して、意見や要望などを申し上げてまいりますので、よろしくお願い申し上げます。

 当連盟は、御案内のとおり、昭和三十三年、社団法人として設立しております。当時、幾つか存在していた北方領土返還要求を目的とするいろいろな団体が統合する形で発足し、これまで六十年余りが経過いたしました。

 当連盟では、北方領土返還要求運動に関する取り組みを初め、領土問題に関する理解を深めてもらえるよう、各種の啓発事業や、元島民とその後継者による語り部の活動を進めています。

 また、元島民への援護対策の一環として、財産権を行使できなかったことや、土地など残置財産に関する問題などについて検討するほか、元島民やその家族がふるさとの島を訪問する、いわゆる自由訪問や墓参に関する活動を進めているところでもございます。

 このほか、今後の活動を担う二世など後継者のリーダー育成や活動しやすい環境づくりに取り組んでおります。

 それでは、千島連盟の主な意見、要望について順次申し上げます。

 お手元には、当連盟の組織と事業というタイトルの冊子のほかに、宣言と決議と要望書を配付させていただいております。

 このうち、宣言と決議は、先月、五月二十九日に開催されました当連盟の本年度の総会において決定、採択されたものでありまして、宣言は、領土問題や返還要求運動に関するものであります。また、決議は、領土問題に関することを含め、外務省や内閣府など関係する省庁や機関への要望、要請に関する事項を掲げており、要望書には、これらの要望項目に関して、その背景や具体的な要望内容を記載しているところであります。

 まず、領土問題に関してですが、宣言をごらんください。

 当連盟では、これまで一貫して、北方四島の早期一括返還をスローガンに掲げ、活動を進めております。当時一万七千人余りであった元島民は、既に多くの方が亡くなり、この三月には六千百人余りとなり、その平均年齢は八十二歳を超えています。長い年月が経過しましたが、領土問題の解決、四島の返還に至る道筋は、いまだに明確になっておりません。

 昨年十二月、ロシアの大統領が来日して行われた首脳会談には、私どもとしても、何らかの具体的な進展があるのではないかという期待を寄せていたところでありますが、領土問題の解決に向けた具体的な道筋あるいは成果といったものは示されず、大変残念な結果となりました。

 政府においては、これまでの発想にとらわれない新しいアプローチという考えのもと、ロシアとの交渉を進め、四島の帰属の問題を解決し平和条約の締結を目指していくこととしております。

 安倍総理は、平和条約の締結や領土問題の解決に関して、これまで幾度となく強い意欲と決意を表明されていますので、早期に四島返還の具体的な道筋が明らかになるよう期待するとともに、私どもとしても、外交交渉の後押しとなるよう、引き続き、返還運動などに取り組んでいくことが重要と考えております。

 政府の方針である新しいアプローチの一環として、今後、北方四島において共同経済活動が進められることになりますが、この活動は、あくまでも領土返還に向けた環境づくりとして行われるものでなければならないものと考えております。

 いつの間にか、経済活動そのものが目的となってしまい、領土問題が置き去りにされることがあってはならないと考えています。また、日ロ両国の企業による合弁事業など具体的なプロジェクトが進められる場合には、我々元島民の土地などの権利が侵害されることがないよう、必要な措置等を求めていくことが必要と考えております。

 次に、墓参や自由訪問事業に関してであります。

 昨年十二月の首脳会談後の共同記者会見では、安倍総理は、自由に墓参りをし、かつてのふるさとを訪問したいという元島民の願いをかなえるための検討を進めることを合意した旨の発言がありました。これに加えて、ロシアのプーチン大統領からも、これまで閉じられていた地域への最大限自由なアクセスを保障するという、私どもにとって大変喜ばしい発言がありました。

 こうした両首脳の発言や、これまでの事業の結果などを踏まえ、墓参や自由訪問事業に関して幅広く要望してまいりたいと考えております。

 要望書の一ページから二ページ目の「北方領土墓参・自由訪問事業等の充実と円滑な実施」をごらん願います。

 (1)の墓参の関係では、これまで立ち入りが制限されている墓地も含め、希望する地域での実施や、墓地の現地調査、荒れた墓地の修復、保全、環境整備などが重要なことと考えております。

 次に、(2)の自由訪問の関係では、元島民の子の配偶者や孫などが訪問の対象者として参加できるよう要望しております。

 また、(3)の墓参と自由訪問に共通する事項についてでありますが、今月十八日には、政府が実施する形で、飛行機を利用して国後島と択捉島での墓参を急遽実施していただくこととなり、大変感謝申し上げる次第でもございます。今後とも、可能な限り、自由訪問や墓参での飛行機の利用が可能となるよう配慮いただきたいと考えております。

 また、国後島と択捉島であっても空港から遠い地域や、色丹島や歯舞群島のように空港がない地域では、飛行機が使えませんので、ヘリコプターの利用といったことも御検討いただくようお願い申し上げます。

 このほか、先ほど墓参に関して申し述べたところでございますが、墓地や元居住地など希望する地域では、制限を受けることなく立ち入りができ、自由な行動を可能としていただきたいと思います。

 手続の改善に関しては、この八月末に実施予定の勇留島と志発島の墓参の際には、国後島の古釜布以外の場所に入域、出域の手続を行うポイントが設けられる見込みとなっていますが、これまでのところ、自由訪問では同様の措置が見込まれておらず、残念な状況にあります。

 また、何よりも残念なことは、今年度の第一回目の自由訪問として、五月十五日から四日間の日程で国後島を訪れた際の対応についてであります。

 訪問予定の三地域のうち二つの地域では、これまで以上に厳しい立ち入り制限がされることとなり、また、従来何の制限もなかった地域でも、全く立ち入りが認められないという事態が生じました。

 訪問を待ち望んで参加した皆さんのお気持ちを思うと、極めて遺憾な問題であると受けとめております。

 五月二十四日には、外務省と内閣府に対し、今後実施される自由訪問や墓参において、希望する地域において、円滑に、また確実に実施できるよう急遽要請、申し入れを行ったところであり、今後こうしたことが生じないよう、関係の皆様のお力添えをぜひお願いいたします。

 次に、要望書の三ページの「元居住者の権益の保護等」についてであります。先ほども申し上げましたが、財産権に関する問題であります。

 連盟においては、これまでも、土地などの残置財産の問題とともに、財産権を長年にわたり行使することができなかった損失に関して、必要な措置を行うよう国に求めてきているところであります。

 共同経済活動といったことが議論されていくこの時期、このタイミングで、ぜひ要望書に掲げているこれらの問題が解決、実現されるよう、政府を初め委員皆様の御尽力をお願いしたいと考えております。

 最後の項目、要望書の四ページの「後継者の育成、活動への支援」についてであります。

 返還要求運動を初め、連盟の活動については、今後さらに二世、三世といった後継者の皆さんに大きな役割を担っていただかざるを得ない状況にあります。

 当連盟としては、後継者活動の中核となるリーダーの育成を初め、後継者に関する事業の充実に努めていくとともに、(3)に記載のとおり、北対協融資については、より多くの後継者の方がその対象となるよう、制度の改正、充実されることが極めて大事なことと考えており、委員皆様の御理解と御支援をお願いいたします。

 終わりになりますが、私ども元島民は高齢となり、残された時間は本当に少なくなっていますが、一日も早く北方領土の返還が実現するよう、多くの後継者を初め、全国各地で返還要求運動に御尽力いただいている関係団体の皆さんと協力し、連携しながら、外交交渉の後押しとなるよう力を尽くしてまいることをここにお誓い申し上げ、私の陳述といたします。

 本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 次に、中村参考人にお願いいたします。

中村参考人 おはようございます。御紹介いただきました筑波大学の中村逸郎でございます。

 我が国の固有の領土であります北方領土について発言できる機会をいただき、心からお礼を申し上げます。

 本日は、二つに焦点を絞ってお話しいたします。一つは、北方領土の現状について御紹介し、もう一つは、領土問題の解決に向けた全く新しい一つの案を参考意見として申し上げたいと思っております。

 まずは、一つ目の北方領土の現状から御紹介いたします。

 ビザなし交流で国後島を訪問した日本人が、昨年、二〇一六年八月のことです、国後島を多くの外国人が平然と歩いていて驚いた、特に目立ったのは中国人で、なぜ彼らがここにいるのかという疑問の声を私に上げました。もしこの話が本当であるならば、領土問題は複雑化することが予想されます。日ロの領土交渉中に突然、当事者でない国が交渉に横やりを入れ、自国の利益を主張する可能性があります。

 この情報提供をきっかけに、私は、ロシアのマスメディアの報道を調べ、花咲港に来ていたロシア人船員たちに話を聞いてみました。そして、以下のような実態が浮き彫りになりました。

 どうやら、北方領土に他国が本格的に進出するようになったのは、二〇一〇年十一月ごろだったようです。当時のメドベージェフ大統領が、最高指導者として初めて国後島を視察しました。当時の菅総理は、北方四島は我が国固有の領土であるという姿勢は一貫している、それだけに今回の訪問は大変遺憾に思っていると抗議されました。メドベージェフ氏は、日本政府の抗議に反発し、二〇一二年七月に、国後島を再び訪問しました。これによって領土交渉は停滞期を迎え、ロシア国内では、ロシア愛国主義が台頭してきます。

 二〇一一年三月には、サハリン州政府の代表団が中国や韓国を訪問し、経済フォーラムを開催しました。北方領土周辺のクルーズ観光やナマコの養殖施設の建設などの二十項目ほどの投資案件を提示しました。まるで、北方領土の争奪戦が中国と韓国の間で始まったかのような話が伝わってきました。

 もはや民間ビジネスではなく、サハリン州政府が絡むプロジェクトとなっている可能性があります。二〇一二年には、国後島にある二つの水産加工工場に、中国の資本が、漁業や養殖のために五千万ドル、約五十二億円を投資したという情報が入ってきました。その一つの工場は、魚介類を缶詰に加工し、バルト三国やドイツ、ポーランドや中国、北朝鮮などに輸出しているようです。

 外国企業による資本投下は、択捉島、国後島、色丹島への外国人労働者の急増をもたらしています。これらの島では建設ブームが巻き起こっており、季節労働者が流入しています。彼らの総数は流動的なようですが、地元行政当局は人数を公表しておりません。

 他方で、私が二〇一六年十一月末、花咲港を訪問したときのことです。北方領土から来たロシア漁船が停泊しており、船員は私にこう語りました。

 月に二、三回の頻度で根室に来ています。夏にはもう少し回数がふえます。二十人の船員が乗務しており、択捉、国後、色丹を回って水産工場から魚を買い付けて、根室に運びます。これら三つの島と根室の間をぐるぐる回る生活を送っています。根室で日本の水産漁業会社が魚介類を買い付け、船員一人当たりの月収は最大で十万ルーブル、約二十二万円です。漁船はサハリンの会社が所有しており、船員二十人には住むアパートは支給されておらず、漁船内の二つのコンパートメントに住んでいます。一人当たりの居住面積は犬小屋よりも狭いのが実情です。私たち船員は出稼ぎ労働者です。私は沿海地方の村が出身地で、給料を家族に仕送りしています。ロシア極東には、中国人労働者の大量流入で、ロシア人のつける仕事は激減しています。

 この船員の話によれば、花咲港に寄港した日の夕方に択捉島に出航するまでの時間、バスまたは徒歩で根室市内のスーパーに向かい、食料品や日用品を買い込んでいるようです。私が根室市の印象を尋ねると、船員は困惑の表情で答えてくれました。

 町並みがひっそりしており、高齢者が多い印象です。択捉、国後は色彩豊かなアパートがどんどん建設されており、町並みは活気にあふれています。昔は逆で、根室の方が栄えていたと聞いたことがあります。

 この船員の話によりますと、五、六年前と比べると、根室に魚介類を運ぶ回数は激減しているようです。北方領土周辺水域でとれた魚介類は、中国を初めとして、日本以外の国々に運ばれているのが原因のようです。根室市民に話を伺っても、この数年、ロシア人の姿が少なくなったと私に語ってくれました。

 北方領土の経済活動を振り返れば、日本は中国、韓国よりも先行していました。一九九四年の北海道東方沖地震では、大規模な損害をこうむった北方領土の復興を担ったのは日本でした。モスクワからいわば見捨てられてしまった北方領土を支援した日本のことを、ロシア人の知人は、困ったときに本当に助けてくれたのは日本人でしたと日本への好印象を語ってくれました。

 いずれにしても、ソ連邦の崩壊後の北方領土を支えたのは日本であり、領土交渉では、このような経緯をロシア側に何度もきちんと伝えていく必要があると思っています。

 ソ連時代の地方都市や町の多くは、国営企業が君臨する企業城下町でした。ソ連邦の崩壊後に国営企業は民営化されましたが、現在でも町を支える企業もあります。

 北方領土にもソ連時代からの国営企業の流れをくむ株式会社ギドロストロイが操業しており、本社はサハリン州ユジノサハリンスクにあります。水産業を営む一方で、択捉島を中心にアパート建設や空港を初めとした公共施設の整備、道路建設も請け負っており、ロシア政府が推進するクリル諸島社会経済発展計画の推進主体となっています。

 この会社の最高経営者はアレクサンドル・ベルホフスキー氏であり、クリルの主人の異名を誇っております。日本としては、北方領土の実態、中国とか韓国の資本が入っているようですけれども、その実態を解明するために、ベルホフスキー氏と情報交換することが今後非常に重要になってくると思っております。

 今日まで、領土返還に向けてさまざまな交渉や試みが行われてきましたが、中でも一九九二年に始まったビザなし交流や各種支援事業、さらに青少年に対する啓発事業等は、独立行政法人北方領土問題対策協会が担ってきました。協会の職員の皆様方の懸命な御努力に、この場をかりまして改めて敬意を表したいと思います。

 ビザなし交流では北方領土に住むロシア人との触れ合いが深まり、この成果を北方領土問題の解決に結びつける提案を参考意見として提示させていただきたいと思います。それは、二〇一三年四月に日ロ首脳が双方に受け入れ可能な解決策への交渉加速で合意、二〇一六年五月に新しいアプローチで合意した、その趣旨に沿うものと考えます。

 そこで、一つのモデルとして、ノルウェー領スバールバル諸島の取り扱いに関する多国間の条約、スバールバル条約が参考になります。

 スバールバル諸島は、二十世紀初頭まで、ノルウェーだけではなく、ロシアを含むヨーロッパ各国やアメリカが領有権を主張し、帰属をめぐって国際的な係争地となりました。

 こうした歴史的経緯から、スバールバル条約は、第一条でノルウェーの領有権を認める一方で、スバールバル諸島の地位を独自に定めています。諸島はこの条約によって統治され、この条約に基づいて諸島内の居住区は独自の法律を制定しています。ノルウェーの法律の適用は大きく制限され、条約の第二条で、全ての加盟国はひとしくこの島と海域で漁業と狩猟などの経済活動、居住する権利、土地の所有権を有すると規定されています。

 条約加盟国の国民は、ノルウェーの入国管理や税関の審査を受けず、ビザなしで島に入ることができ、域内で徴収された税金は諸島内だけに用いられ、ノルウェー本土への流用は禁じられています。さらに、スバールバル諸島では一切の軍事活動が禁じられており、結果的に、諸島の領有権がどこの国に帰属するのか、余り意味を持たなくなっております。

 実は、この条約は、一九二〇年のパリ会議で署名され、当初、日本を初めとする十四カ国が加盟し、現在では、一九二四年に加盟したソ連を含む四十四カ国が参加しています。昨年、二〇一六年には、不思議なことに、北朝鮮も加盟しております。

 スバールバル諸島の一つ、スピッツベルゲン島には、現在約二千六百人が暮らしており、ノルウェー人が全体の六九・九%、ロシア人、ウクライナ人、ポーランド人、ドイツ人等々、さまざまな人々が居住しております。

 さきに言及しましたビザなし交流事業は、日本とロシアの両国民が領土問題についての認識を高め、現実的な問題解決を図ろうとする企画です。これまでの交流の成果を日ロ首脳間で合意した双方に受け入れ可能な解決策と新しいアプローチに結びつけるために、スバールバル条約を参考にして、日ロで合意できる北方領土の独自の地位に関する条約を構想してみるのもよいかもしれません。その条約名を、えとぴりか条約と名づけてはいかがでしょうか。北方四島交流使用船舶名であり、根室半島と北方領土を自由に行き来する海鳥に由来するものです。北海道は、北方領土の支援拠点としての地位を築くことになります。

 私の意見は、ロシアとの間で平和条約を締結し、四島一括返還または二島返還などを見据える領土交渉の進め方を否定するものではありません。私の基本的な立場は四島一括返還を望むものですが、これまでの交流事業の実績を日ロ首脳の合意に結びつけると、その先に日本とロシアが共存できる姿が見えてくるのではないかと思います。

 プーチン政権は、領土問題をこれまで約十件解決してきておりますので、北方領土問題を解決することは可能だと思います。北方領土がロシア化するどころか、今では中国化するかもしれないという危機感を議員の皆様と共有し、問題解決に向けて、できるだけ早く手を打つ必要性を痛感しております。

 御参考にしていただければ幸いです。

 どうも御清聴ありがとうございました。きょうはよろしくお願いいたします。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 次に、高岡参考人にお願いいたします。

高岡参考人 ただいま御紹介いただきました、北海道根室市の水産加工業者で組織する根室水産協会の会長を務めさせていただいております高岡でございます。

 本日は、衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会の御高配を賜り、意見陳述の機会をいただきましたことに対しまして、心より御礼を申し上げます。

 また、日ごろより北方領土返還要求運動原点の地である根室市を初めとした北方領土隣接地域に絶大なる御理解と御支援を賜っておりますことに対し、改めて感謝とお礼を申し上げる次第であります。

 それでは、時間の関係もありますので、早々に、北方領土問題に対する現地根室水産界の実情等につきまして、意見を述べさせていただきます。

 根室市を初めとする北方領土隣接地域は、戦前から、漁業、水産業を中心に、北方領土と一体となった社会経済圏、生活圏を形成し、緊密なつながりを持って発展を続けてきた地域であり、特に根室市は、北方領土の物流及び人的交流の拠点、玄関口として、その役割を担っておりました。

 しかし、昭和二十年八月の終戦直後、北方領土が旧ソ連によって一方的に占領され、以来、隣接地域と北方領土との間には中間ラインと呼ばれる境界が設定され、このつながりは強制的に断絶されたことに伴い、元島民のふるさとである領土はもちろん、私たちの生活の基盤と言える海域までも奪われたのであります。

 この北方領土問題について、私の個人的な見解を述べさせていただきます。

 北方領土は、日本固有の領土であり、終戦後に不当に占拠された史実に相違なく、返還を求めるのは至極当然であると考えます。

 しかしながら、まことに残念ではありますが、返還においては余りにも長い時節を費やしてしまい、現在四島に生活されているロシア人にしてみれば、それはもうふるさとであり、生活の場であることも理解しなければなりません。

 また、元島民においても、もう待ったなしの時間であると思います。私の祖父母も父も元島民であり、祖父母も多くの親戚も、島での当時の生活を語っておりましたが、既に他界しております。

 私にしてみれば、島民二世と言われてもぴんとこないのが本音でありますが、現状を鑑みると、一日でも早い北方領土問題の解決を望んでやみません。

 それぞれの主義主張があるので、最善の策はこれだとは言えませんが、せめてフィリピンにおける戦没者の慰霊が現地でできるのと同じように、両国が歩み寄る交渉を早期にしていただきたいと思います。

 次に、水産協会会長として申し述べさせていただきます。

 まずは、戦後、日本の漁業は、北方海域の豊かな水産資源に依存し、北方漁業の開拓とともに発展してまいりました。

 この漁業とともに根室経済の一翼を担ってきた水産加工業にとりまして、排他的経済水域における国連海洋法の制定時に海域を追われ、相次ぐ国際漁業規制の強化による沖合漁業の縮小、そしてロシア水域におけるサケ・マス流し網漁業禁止により、大変な危機的環境下にあるのが現状であります。

 根室市民にとりましては、三たび島を追われたというのであります。日本固有の領土であるとともに、この海域の豊かな海洋資源は、日本国民にとりましても多大な損失であると思います。

 戦後七十三年を迎えようとしている現在でもなお、この目に見えない厚い壁によって漁業水域は大幅に狭められており、狭隘な漁場における水産資源の枯渇によって、基幹産業である漁業、水産業は衰退の一途をたどり、それに起因する関連産業の縮減、これが人口減少、さらには担い手不足につながるといった急激な悪循環が近年ますます加速しております。

 このように、根室市は、さまざまな日ロ関係により直接的に影響を受ける地域であり、全国的にも類を見ない、地元の力だけでは太刀打ちできない複雑な問題を抱えている地域であります。

 これらの課題を克服し、隣接地域が将来にわたって持続的な発展を遂げていくためには、北方領土問題の解決しかないと考えるわけであります。

 このような状況の中、昨年十二月、日ロ首脳会談におきましては、両首脳が、平和条約を解決する真摯な決意を表明し、さらに、平和条約の締結に向けた重要な一歩として北方四島における共同経済活動の実施について合意されたことは、北方領土問題の解決に向けた重要な第一歩として、大きな期待を寄せるところであります。

 この合意に対し、本年三月、隣接地域として取りまとめました北方四島における共同経済活動実現に向けた要望書には、十分野にわたり、取り組むべき施策の例を記載してございますが、その中で、我々が直接的なかかわりを持つ水産加工業分野におきましては、一つ目に、隣接地域と四島との企業間連携及び発展支援、二つ目に、北方四島から原料となる漁獲物の受け入れ、三つ目に、水産物、水産加工品の輸出及び移出拡大、四つ目に、これらに必要となる環境整備を求めております。

 特に、サケ・マス流し網漁業禁止元年となりました昨年、根室市における総漁獲量は、七万トンを下回り、昭和三十年以来、実に六十一年ぶりの低水準に落ち込んだところであります。こうした漁獲量の落ち込みは、我々、水産加工業を初めとしたあらゆる関連産業に甚大な影響を及ぼし、そのなりわいが崩れてきているというまさに危機的な状況となっております。

 こうしたことから、国策における原魚確保に向けた取り組みが求められており、北方四島からの原料となる漁獲物の受け入れを何としても実現していただきたいと切にお願いするものであります。

 一方で、水産加工技術に関しましては、隣接地域の有する高度な加工技術を北方四島側に伝授してしまうことに抵抗感や懸念を抱いている地元事業者が多数いることも事実であり、慎重な対応が求められます。

 いずれにしても、北方四島における共同経済活動が日ロ両国にとってお互いに経済的な恩恵を享受できるよう、その仕組みの構築が何より重要と捉えております。

 これからさまざまな形で北方四島との経済交流が行われると思いますが、これは、地域エゴかもしれませんが、根室の基幹産業、ひいては隣接地域の経済安定のために、ロシアの方々とともに有効な活動を展開していけるようにきちんとしたルールづくりをしていただきたいと思います。

 決して、地元の声を無視することなく、机上の空論で終わらないように、現地の声に耳を傾けていただきたいと思います。さまざまな見解があるので、何が正解ということはないと思います。しかしながら、根室を、我々水産協会会員の頭上を水産資源が飛んで通過してしまわないようお願いいたします。

 また、根室市を挙げて陳情しているロシア二百海里内サケ・マス流し網漁業禁止対策の要望が早期にかないますようお願い申し上げます。できますれば、北方四島との経済交流を先駆けとしての日ロ関係、北方四島、ひいては根室市の将来を政府がどのように描いておられるのか、お教えいただければ、私どももその実現に向け、共働できるのではないかと思う次第であります。

 根室で主に漁獲され、取り扱いされている魚は、春のサケ・マス、サンマ、アキサケ、マダラ、スケトウダラ、カニ、昆布などであります。その大半が北方四島海域に深くかかわっているものであります。四島海域における漁獲枠の拡大に御助力いただきたいとお願い申し上げます。

 とりわけ、水揚げ日本一を誇るサンマにおきましては、温暖化の影響なのか、公海による外国船の操業の影響なのかは定かではありませんが、ここ数年、極端な水揚げの減少となっております。

 サケ・マス流し網禁止による代替漁業においては、漁業者の、国産サンマの魚価に影響する、そういう懸念の声が多く、冷凍品で海外輸出が水揚げの条件となっており、これでは工場稼働という観点からは文字どおりゼロであります。我々水産加工業はもとより、製缶、運輸などの業界においても何の一助にもなっていないのが実情であります。

 日本漁船の公海での冷凍サンマ漁業で海外限定というのはいかなるものかと思うところであります。大衆魚と広く認識されている日本国民財産でもあると言っていいほどのサンマの国内流通の実現に向けて、そのことにおいても委員の皆様の特段の御理解と御支援をお願い申し上げるところであります。

 我々根室市民は、北方領土問題の解決なくして戦後はなく、経済的にも社会的にも北方領土問題が解決して初めて正常になる、まさに北方領土問題の今後によって町の将来が大きく左右されるという宿命を背負っております。

 我々は、北方領土問題の早期解決を願いながら、政府の外交交渉を後押しする立場で、いかなる困難に遭おうとも、北方領土返還要求運動原点の地の責務として、今後も全国の先頭に立って返還要求運動に邁進してまいる所存でありますので、委員の皆様におかれましては、北方領土問題の解決、さらには、そのための第一歩としての取り組みである北方四島における共同経済活動の実現、さらには隣接地域の振興、発展につきまして、絶大なる御支援を賜りますようお願い申し上げますとともに、政府におかれましては、これまで以上に具体的かつ積極的な政治対話を推進していただきますよう強く要望させていただいて、参考人としての私の意見陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

鈴木委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 皆さん、おはようございます。

 特に、きょうは本委員会に大変お忙しい中、脇理事長、中村先生、高岡会長理事、三名の参考人の皆さんには、わざわざ貴重な御意見を賜る機会を逆につくっていただいたことに、心から感謝を申し上げたいと思います。

 私は北海道選出の議員でございますが、きょうのこの委員会の中には、同じ理事の仲間として、釧路市選出の伊東代議士、そして北見中心の選出の武部代議士もいらっしゃいまして、その二人にはかないませんけれども、私も、北海道人の一人として、この北方領土にそれなりにかかわってきた経験をもとに、皆さんにぜひ御意見を伺いたいというふうに思います。

 十五分の質問時間しかございませんので、早速皆さんの意見を多く聞きたいと思いますので、ぜひ、委員長も言っておりましたとおり、忌憚のない御意見をよろしくお願いしたいと思います。

 さて、昨年の十二月十五日のことですが、日ロの首脳会談、その後の報道では、かなり期待度が大きかったものですから、非常に残念な結果だというふうな方もいらっしゃいますし、あるいは新たな第一歩としてこれを評価する、いろいろな声があったやに私も記憶をしております。私自身も、どちらかというと期待が大きかったものですから、非常に、ううんという気持ちでいることは事実でございます。

 そこで、まず一点目。お三方にそれぞれ、この日ロの首脳会談、百点満点で採点した場合、何点だろうということをぜひ遠慮しないでお答えいただき、その理由を簡単に述べていただくことをまずお願いしたいと思います。

脇参考人 ただいまの御質問にお答えしたいと思いますけれども、点数というのはなかなかつけづらい部分がございます。私の連盟では、会員がかなりいる中でいろいろな意見を持つ人もおりますし、私自身は、マスコミを含めて随分期待があった分だけ、結果がなかなかその道筋が見えなかった。少なくても、今までの経過からいって、二島は何とかそういう道筋が見えるのかなと思っていましたが、それもなかなか成らなかった。

 しかし、七十年動かなかったこの北方領土問題、安倍総理が熱意を持ってこれに取り組もうとしているということについては、私自身、それなりに評価したいというふうに思っております。それを点数にしてどうこうということには決してならないと思いますけれども、そういう感じを持っております。

 それともう一つ、今まで七十年間、全国民の問題、国の問題、領土の問題、主権の問題として、この北方領土問題にいろいろ取り組んできたわけでありますけれども、全国民的に、世論として、この領土問題が国民的に理解されていたかというと、必ずしもそうでなかった部分があるのではないのかなと。

 そういう面では、今回の十二月十五日の両首脳会談のときにこれだけマスコミが大きく取り上げたということによって、全国民的に、この領土問題ということがクローズアップされて、理解が深まったんじゃないのかなという部分を考えたときに、啓発という面では、非常に今後の領土問題の解決運動に寄与したのではないかなというふうに私は受けとめております。

 以上であります。

中村参考人 得点ですけれども、率直に申し上げまして、私は四十九点だと思っています。つまり、五十点、半分にいかなかったと思っています。

 その最大の理由は、十二月にあった日ロ首脳会談で、大きな枠として八項目、これから官民合わせて約三千億円の投資という案件が提示されましたけれども、果たして、私の見方からしますと、それだけの経済交流をしたところで、その先に領土はどうやって返ってくるのか、そこがなかなか見えてこない。逆に言いますと、経済交流はどんどん進むけれども、どんどん島が遠くなってしまうのではないのかという非常に私は危惧をしております。そういう意味で五十点はつけられなかったなと思っています。

 以上です。

高岡参考人 私は六十点だと思っています。

 というのは、大学でいうと、進級ができる、とりあえず可、そういった点数だと思います。とりあえず先に一歩進めたという実感は覚えております。

 ただ、我々にしてみれば、北方領土の実態、インフラ、水道、電気、ガス、こういったものを含めまして、我々が経済交流をする上で一体何ができるのか、全く白紙の状態であります。これからいろいろと調査団が行ったり、我々が出向く機会もあればぜひともお伺いしたいとは思いますが、まず、水産加工業といたしましては、向こうに工場を建てて共同でやるということも可能かもしれませんが、その中におきまして、必ず、電気、ガス、水道、労働力という問題があります。

 今、根室は人口不足によって労働力が非常にタイトになっておりまして、それぞれの水揚げ、加工を維持するのに大変な思いをしておりますが、四島において果たして働いてくれる方がいるのか。もし四島で労働力が確保できないのであれば、一次加工、二次加工、いろいろなさまざまな形で根室に原魚を持ってきて根室で加工する、こういったような経済交流の仕方もあると思います。

 強いて言えば、日本漁船が向こうに、建物がないので、母船加工という形で係留して、ロシアの方々がキャッチャーとして魚をとっていただいて持ってくるというような方法もありかなと。

 ただし、北方領土はあくまでも日本の領土であり海域であるということから、国産という形の販売を認めていただければ、非常に魚としての付加価値もつくということで、経済にとって大いにプラスになると思います。

 以上です。

渡辺(孝)委員 どうもありがとうございます。大変厳しくも、また温かく、いろいろ御答弁いただいたのかというふうに思います。

 それでは第二問目の質問ですが、これはそれぞれに御質問したいんですが、いろいろ各団体、地域、また中村先生においては、北方四島の今の現状ということで非常にショックな話も聞かせていただきました。

 まず、脇理事長に、羅臼の町長の御経験もあろうかと思います。その中で、この経済交流をいわゆる道東地域の経済の活性化につなげるには、政府に対してこの経済活動にどのようなアドバイスがあるか、ぜひ御示唆をいただきたいと思います。

 また、中村先生には、恐らく先生も両首脳の会談の議事録みたいなものを見ていらっしゃるかと思いますけれども、私、スタートですから、それぞれが国益をしょっての会談ですから、ちょっとかみ合わない部分もあったような気がするんですが、ロシア、いわゆるプーチン大統領の本気度、できましたら、この北方四島の返還についての本気度はどのぐらいうかがえたかというのをお聞きしたいと思います。

 また、高岡会長理事には、先ほど漁業問題等々について詳しく聞かせていただきました。ぜひ、政府にまだこのことだけは言いたいというようなことがございましたら、一言お願い申し上げたいと思います。

脇参考人 共同経済活動のことであります。

 今いろいろと、経済活動を進めるということの中で具体的に検討が進められているようでありますし、調査団もこの後派遣するというふうなことも伺っているところであります。

 特に根室管内は、水産と酪農の町という、第一次産業であります。

 したがって、今、現実には、ロシアと日本の間でもって、安全操業という形の、領土問題を棚上げした形で、特殊なそういう漁業の経済活動が行われているわけでありますけれども、それらを参考にしたことも経済活動の一環かなと思いますし、あるいは、特にロシアのトロール船があそこで操業しているというような現状の中で、お互いに共同の、資源の調査と資源の管理ということも必要でないのかなというふうに思っています。

 そういう中にあって、一市四町、北隣協と言われているその地域の経済活動でありますけれども、特に、経済活動を行う中心がその四町の中で行われるべきであって、それが、北海道あるいは日本全体の中における大きな企業がどんと入っていっているようなことでなくて、地域に密着した形のそういう経済活動であってほしいなというふうに思っているところであります。

 そのほかにもいろいろと、この後、専門家によっていろいろな方法論があるんでしょうけれども、私はとにかく、今、四島がどんどん開発されていって、管内一市四町が逆に逆転するようなそういう地域振興というか、地域のそういう実態というのを何とかそれをまた逆にしていってほしいなと思っているところであります。

中村参考人 プーチン大統領の本気度についてですけれども、私はかなり高いと思っております。

 その最大の理由は、先ほど申し上げましたように、プーチン政権になって隣国との領土問題を約十件解決してきて、かなり前向きに取り組んできています。そうした中で北方領土問題がなぜ進展しないかというのは、最大の理由は、ロシア側にもありますけれども、私たち日本人にとっても、やはりプーチン政権に対してもっともっといろいろな提案をすべきではないかと思っています。

 交渉の主導権を日本が握って、そして北方領土の現状について抗議すべき問題はきちんと抗議する。そして、日本がこれまで北方領土に果たしてきた役割というものも強調した上で、先ほど申し上げました、例えばですけれども、スバールバル条約という、ソ連、今のロシア、そして日本も参加した領土問題の解決の国際的な条約もあるわけですので、そうした問題をどんどんプーチン政権側に突きつけていく、主導権をとっていくというやり方を今後すべきではないかと思います。

 御存じのように、今、極東情勢は非常に緊迫しています。北朝鮮問題、中国問題、そしてフィリピン等のいろいろな問題が出てきています。プーチン大統領は、そうした中でやはり中国に対して非常に警戒感を強くしておりますので、そこに、北方四島に中国が入ってきている現状を考えると、極東におけるパートナーとしての日本という役割もかなり期待も大きくなってきていますので、これからですけれども、私たちが積極的にプーチン政権に働きかけていけば、プーチンさん、もともと大統領は領土問題を解決したいという潜在的な意欲を持っている方なので、私たちもそれにどんどん働きかけていくというような姿勢で臨めば、必ず領土問題は解決できると思っています。

 以上です。

高岡参考人 この件に関しまして、私、個人的に思うのは、もし仮に北方四島が日本に返還されたというときに、非常に、日本の今の漁労技術では資源の枯渇に直につながってしまうのではないかという懸念もありますし、今、日本の漁労技術をロシア側に提供するということになりますと、またこれも資源の枯渇につながる可能性が十二分にあるという中で、漁獲資源保護の観点からきちっと調査をしていただいて、未来永劫この資源がサイクル的にずっととれる、漁獲できるというような形で資源量調査をして、その上での漁獲量決定による安定操業にしていただきたい。

 着底トロールのような、海底をも変えてしまうような根こそぎ漁法であれば必ず資源は枯渇する。公海におけるサンマ漁もそうですが、実際の水揚げトン数がわからないのに、ABCだのTACだのと言っていても、実際に魚がどんどん減っていっているわけです。この現実を直視しながら、どのような取り決めをして、孫子の代までの水産加工業、強いて言えば、日本の国民財産である魚というものがなくならないように、ひとつお願いいたしたいと思います。

渡辺(孝)委員 質問時間が終わったみたいでございますので、我々国会議員も、ただ単に皆さんの話を聞いて、感銘を受けたとか参考になったというようなことだけで済ませては、大変皆さんにも失礼かと思います。

 総理も、互いの正義を主張し合っても、この問題については解決は不可能だろう、さらには、次世代にどうつなげていくかということも言っております。

 我々も、きょう、参考人の皆さんのお話を自分なりに解釈しつつも、大所高所に立った中で、これから議員活動の中で、ぜひ、この北方領土返還の夢を実現させるために頑張りますので、これからも御指導をよろしくお願い申し上げまして、私の皆さんに対しての質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 おはようございます。

 きょうは、参考人の皆さん方には、それぞれやりくりをしていただいて、貴重な御意見をいただきました。かなり新しい視点での提案的な発言もいただきまして、大変参考になりました。お礼を申し上げたいというふうに思います。

 参考人の皆さん方の十五分も短いかもしれませんが、私の質問も十五分でございますので、非常に限られた時間でありますので、ポイントだけお伺いをしたいというふうに思います。

 お三人とも、今回の共同経済活動についての評価あるいは懸念というものをそれぞれ吐露されたところであります。その中で、評価と懸念をそれぞれお伺いしたいのでありますが、まず、脇参考人に。

 要するに、脇参考人は、領土の返還の道筋が示されなかったことは非常に残念だということを時々御発言をされているわけでありますけれども、その中で、今回の会談の成果として、返還の道筋というものについてどう読み取っておられるのかということと、それから、五月十五日の交流が残念だったという話を先ほどされましたが、私も非常に残念だったというふうに思います。そこの、何か、脇さん自身がこういうふうにすればというような御提案があれば、ぜひそこもお聞かせいただきたいなというふうに思っているんですが、よろしくお願いをいたします。

脇参考人 今回の首脳会談の結果において、安倍総理が今まで動かなかった北方領土問題を動かそうという熱い熱意は感じている中で、結果として、共同経済活動を進めることになった。経済活動を進めるというその延長線というか、その最後のゴールには、北方領土問題を解決するんだ、そこにつなげるんだということがあるということで、私どもはそこを期待したいと思いますし、そうなってほしいと思っています。

 ただ、もう一つそこで懸念されるのは、先ほど申し上げましたけれども、経済活動そのものがどんどんどんどん先へ進んで、領土問題が置き去りにならないのか、このことと、含めて、これも先ほど申し上げましたけれども、元島民の財産権の問題。既にもうあの島には、ロシアの建物が建ったり構築物があったりということになっているわけです。したがって、今度、経済活動を進めるとなれば、さらにそれが加速されるだろうというふうなことも思うわけです。

 今まで、私どもは、政府に対して、この財産権の問題を随分言ってまいりました。しかし、政府の方では、国の方では、平和条約が解決した時点でということでありましたので、当連盟としても、余り積極的にというか、具体的にそういう要望は強力にしていなかったということであります。したがって、今度は、これを契機に、その要望運動も強く進めてまいりたいというふうに思っています。

 政府は、このことに関して、経済活動を進める中で、領土の我々の財産の問題をどう基本的に考えているのか、と同時に、我々としても、元島民としてどうやって国にやってほしいのかということもまとめたいというふうに思っています。

 もう一つは、経済活動をすることによって領土問題の解決につながるんだということでありますので、そうなってほしいと思いますし、我々として、それに対して、元島民の立場で、方法論なり、どういう方法があるのかということはなかなか一概に、今案を持っているわけではありませんけれども、何とか、この経済活動を先頭にして、さらにそのほかにいろいろありますけれども、墓参の問題であるとか自由訪問の問題であるとかありますけれども、まずは経済活動をてこ入れとして、領土問題に結びつけていってほしいということを強く願っているところであります。

佐々木(隆)委員 時間が限られておりますので、本当は、こうした課題、実は北海道にとってはアイヌの課題も同じでありますが、最終的には財産権の問題、特に北方領土に関しては漁業権と財産権と両方あるわけで、そこを同時に進めていかないと最終的な決着にはならないんだろうというふうに思いますが、まだその前段階でありますので、脇会長の御指摘はしっかり踏まえてまいりたいというふうに思ってございます。

 中村先生に大変新しい視点でお話をいただいたというふうに思っております。特に、先生のレポートにもありますけれども、外国人が大変ふえているという、きょうもそのお話をいただいて、ある意味、我々にとっては大変新しい視点でありまして、ある意味ショックでもあるわけでありますが、これと今回の共同経済活動というものがどういうふうにリンクをしていくのかということと、もう一つ、これは先生の今ここで言える範囲で結構でございますが、プーチン大統領が、米軍基地が四島に来るのではないかというような懸念を表明しておられますが、その辺についても、先生の何かお考えがあれば、お願いします。

中村参考人 大変重要な御指摘をいただきました。

 まず、外国人がたくさん入っているということで、私も非常に憤りを感じております。これを解決するにはどうしたらいいか、これと日ロの共同経済活動をどうリンクさせていったらいいのかということですけれども、先ほど、何度も申し上げまして大変恐縮なんですけれども、スバールバル条約を結んで、これは日ロ間で経済活動をどうやるのかという、両国間でまず条約を結ぶわけです。この条約を、まず日ロ間で結んだとします。そうすると、第三国が北方領土に入って経済活動をすることを排除すればいいわけですね。ですから、日ロ間でまずスバールバル条約のようなものを結んで、そこで経済活動をする。

 その場合に、非常に大きな問題になるのは、どこの国の法律のもとにおいて経済活動をするかということが非常に大きな問題になるわけですけれども、それを突破する方法として、今言いましたスバールバル条約のような日ロ間で合意できる定めというものをつくれば、私は、そこはまずクリアできるんじゃないかと思っています。

 次に、もう一つ重要な御指摘をいただきました。北方四島で軍事化が進んでいるんじゃないかという御指摘です。三年前からそういう話は出てきております。

 私は、プーチン大統領の本音として、推測になってしまいますけれども、領土問題に対するハードルを高くしてやろうというところが本音かなと思っています。なぜかといいますと、今、北方領土をめぐる軍事的な緊張が特に高まったというふうに私は認識していませんので、これはあくまでも、北方四島に対するハードルを高くしているんじゃないかというふうに思っています。ただ、私の推測です。

 今、一つ御指摘したいのは、日ロ外相・防衛閣僚会議というものがこの三月に再開されました。二〇一三年十一月に日ロ外相・防衛閣僚会議というものが開催されまして、日本の外相そして防衛大臣、そして、ロシア側の外相そして国防大臣、この四者が集まった、協議する機会が二〇一三年十一月にできたんです。御存じのように、その後、クリミアをロシアが半ば強行に併合したということで頓挫してしまったんですけれども、ことし三月二十日にまた再開されましたので、ロシアが、北方領土の軍事化について、本音はどこにあるのか、何を狙っているのか、こういった2プラス2の場で、今後そういう問題については明らかにしていただきたいと思っております。

 以上です。

佐々木(隆)委員 高岡参考人にお伺いをいたします。

 水産加工といいますか、水産協会という協会を束ねていただいているわけでありますが、その視点で申し上げれば、今回の共同経済活動に対する期待もかなりあるのではないか、先ほど六十点というお話もありましたけれども。

 その中で、ロシアとの漁業のやりとりの中でやはり一番ネックになるのは、あそこに境界があって、結局はロシアの漁獲になってしまう。加えて、いろいろな交渉がありますけれども、サケ・マスが締め出された。私も、あの直後、根室にお伺いをいたしました。本当にすばらしいサケが並んでいるのに、これが来年から並ばなくなるんだという本当に生のお話を聞かせていただいたんです。

 その場合に、先ほど、原料を受け入れて、そして日本で加工するというような主張というふうに伺ったんですが、そうするためにも、結構ハードルが高い話だというふうに思うんですけれども、その辺のことについて、高岡さんはどのようにそのハードルをクリアされようとしているのかということについてお伺いしたいと思います。

高岡参考人 確かにハードルは非常に高いと思います。

 まず、ロシア側でどれだけの漁労技術があるか、それを日本側がいかに指導していくかということによりまして、国産としての魚の価値というか、現在の日本の漁船が行っている、製品に付加価値をつける漁労努力、技術がきちっと伝わっているかによって、魚で頭、尾っぽがついていれば何でも売り物になるというものではございませんので、その辺のところのハードルがまず一つあるのと、あとは、ロシアの法律で縛られていくということになりますと、労働条件、ロシアの労働法の問題にかかわってきてしまうのではないかなと思っています。

 労働条件が非常に厳しい。日本みたいに、残業してでも、揚がったものは、安全、安心の食品をつくるという観点の中からその日のうちに処理してしまわなきゃいけないというところが抜けてしまったときに、日本に持ってきたときに不良品が入ってきたりなんかするということを水際で防がなきゃいけないということもありますので、そういった観点からは、労働の環境をどのように、ここはやはり、双方の国の主張の中で新たな法制度というものが必要になってくるんじゃないかなと思っています。

 原料的には、魚はあるので、そういった問題はないと思うんですが、あとは、日本側がどれくらいの漁獲量を主張して、それが適正であるかどうかというのを見きわめていく必要があると思います。

 以上です。

佐々木(隆)委員 今、高岡さんからも、先ほど脇会長からもお話あったんですが、あそこが豊かな漁場であることはもう誰もがわかっている話でありますけれども、要するに、資源管理というもの、これは漁業全般で日本が世界じゅうでもリードしていかなきゃいけない話なんですが、資源管理、調査がその前にあるわけですよね、調査して管理して、それを双方が納得できるような形にしていくということのリーダーシップが、必ずしも、私は日本がとれていないというふうに感じているんです。

 時間がなくなってまいりましたので、本当は両方から聞きたいんですけれども、脇さんとは今回で何度目かのお話し合いになりますけれども、ぜひ、その辺を含めて、漁業の資源管理あるいは資源調査というものについて御提言があればいただきたいと思うんです。

脇参考人 特に、資源調査と資源管理、これは、先ほど申し上げましたように、あの狭い根室海峡でロシアのトロール船が操業しているという実態の中で、あえて乱獲とは申しませんけれども、どれだけの量でとっているのかということが定かでない。したがって、それをお互いにどれだけの量をとっているんだということをきちっと公開して、そしてその上でどうするべきかということを検討すべきでないのかなということも、以前から北隣協あたりも提言は、国に対して要望もしているところであります。

 したがって、そういうことも含めると、調査した上で管理をしていくということ、これは今後当然必要になってまいります。特に経済活動を進めていく中で、この問題は重要になってくるんだろうというふうに思います。

 モデルということではありませんけれども、今、実際、ロシアは安全操業ということをやっていますので、安全操業ということを一つのモデルにしながら、その延長線上の中でこの漁業の問題も経済活動の一環として捉えていく必要があるのではないかというふうに思っています。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、大変貴重な御意見、同時に現場の声、あるいはまた、そこにかかわってこられた方々ばかりでありましたので、しっかり参考にさせていただいて、これから取り組んでまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津と申します。

 きょうは、三名の参考人の皆さんにお越しをいただきまして、大変重要な視点のお話を幾つかいただきました。その上で、私の方からも質問させていただいて、今後の私どもの北方領土返還の取り組みにしっかり生かしていきたい、こう思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 それでは、私の方から、特に共同経済活動について、具体的にお伺いをしたいというふうに思っております。

 昨年の十二月の日ロ首脳会談、その折に、もう既に御案内のとおり、日本とロシアの双方の立場を害さない特別な制度のもとで共同経済活動を進めていこうと。これは総理もおっしゃっていますけれども、このことが平和条約締結に向けた重要な第一歩になるだろう。私もこれは同感でございまして、戦後七十年間、いろいろな機会、チャンスもあったんですけれども、今日まで北方領土返還ということが現実のものになっていないということを踏まえたときには、こうしたことの取り組みというのは、まさしく成功する中で大事なその一歩になっていくだろうというふうに思っております。

 私ども公明党も、四月四日に公明党の北方領土問題特別委員会というのをつくっておりまして、私が委員長を務めさせていただいておりますけれども、そのもとで、菅官房長官に公明党としての提言、申し入れをさせていただきました。

 簡潔に申し上げますと、例えば、先ほど高岡参考人からもお話のありました漁業資源等の調査については、やはり、日ロ共同で四島周辺の漁業の資源調査、これをしっかりやって、沿岸から沖合までの水産資源の持続的な利用を図ること。

 それから、これはいろいろな御議論もあるとは思うんですけれども、しかしながら、共同経済活動を進めていく、また墓参と自由訪問を進めていくという立場に立てば、今の北方四島のインフラがあの状況でいいのかということもありまして、島の道路や港湾等の社会基盤の整備、それから自由訪問の対象の拡大、これは、元島民の子の配偶者、孫、孫の配偶者、そしてひ孫の同行、こうしたことも提言させていただいています。

 それから、国後島の古釜布に加えての出入域手続の箇所をふやすということ、それから、墓参等の航空機の利用、これはもちろんヘリコプターも含めての話でございますけれども。

 それと、今後、共同経済活動を持続的に進めていくとなれば、あるいは墓参、自由訪問を拡充、拡大していくとなれば、今の「えとぴりか」の船舶だけで済むのかということもありまして、その船舶の増便についても提言をさせていただきました。

 政府におかれましては、その後、五月三十一日、官民の調査団がサハリンに派遣をされまして、五時間に及ぶサハリン州関係者との議論があったというふうに承知をしております。特に、漁業、観光、医療、その他の幅広い分野で専門家を含めた関係者の御意見があった、特にロシア側からの提案によるプロジェクトというものの説明があったというふうに聞いていますが、詳細については、これは外交上の制約の中で詳しくは発表されておりませんが、こうしたことを踏まえて、共同経済活動についてお三方にお伺いしたいと思っています。

 まず、これは脇千島歯舞居住者連盟の理事長にお伺いしたいというふうに思っておりますが、その前に、昨年十一月に理事長からも私どもに要請をいただきまして、大変ありがとうございました。それらを踏まえて、四月四日の日に官邸に参って提言をさせていただいた次第でございます。

 今回のこのサハリンでの意見交換では墓参の話は出なかった、このようにも聞いておるところなんですが、しかし、先ほどのお話のとおり、今月十八日にはいよいよ空路での墓参が始まるということで、関係者の方々も大変大きな期待があると思っております。

 それで、今後の墓参のあり方として、まずやはり航空機による入域をふやしていくということ、要するに、今回一回に限らず可能な限りふやしていくということ、それから複数の出入域を、特に色丹とか、それから先ほど私が申し上げました増便の問題、さらに、墓参をもっと加速的に拡充をしていったらどうだろうか。これはロシア側に強く主張してそれの実現を図るということが私は重要だと思っていますが、これらのことを含めて、今後の墓参について理事長としての思い、あるいはそのお考えをお示しいただければと思っております。お願いします。

脇参考人 ただいま御質問いただきました墓参の関係でありますけれども、今先生おっしゃったように、四月四日に官邸の方にも公明党としての御意見として提言していただいたということ、本当に感謝申し上げたいと思います。

 その中にあって、手続の簡素化ということと、それから出入域の複数化ということ、これが今実現しようとしております。出入域の複数化の関係は、この八月に行われるときにどうなるかという部分が実績としてなるかどうかということが一つありますけれども、その方向だというふうに聞いています。

 それから、飛行機については、御案内のとおり十八日に空路で行くということになって、今、島民の参加者もある程度固まりつつあるということでありまして、大変ありがたいと思っております。ただ、今後、これ一回で終わることなく、来年以降も継続してやってほしいというふうに思っています、今回行った結果にもよりますけれども。

 それと同時に、今、四島には五十二カ所の墓地があります。その墓地が、場所が必ずしも定かでない。したがって、その場所をある程度特定するための調査をきちっとやってほしい。さらにまた、その上で、ある程度整理して、この墓地は行くことが可能なのかどうなのかということと、可能であるとすれば、当然そこに行くための交通アクセスというか道路の問題、今はあそこはかなり変化をしておりまして、熊が出るとかということでなかなか墓地まで近づけないというようなこともありますので、そういうことも含めて、そういうことをきちっとやってほしい。

 それから、墓参の回数については、今回、ことしから二回のところを三回にふやしていただきましたので、これについては非常によかったなと思っていますし、これについては、今までの経過の中で、墓参の回数を減らして自由訪問に切りかえたという経緯もありますので、この辺は墓参と自由訪問との整合性ということも今後必要になってくるのかな。

 自由訪問は、自由に自分の住んでいた場所に立ち、そこに身を置くことができるというのが自由訪問であります。墓参は、墓地に行ってきちっと先祖の墓をお参りする。この二つがあるわけでありますので、その辺の整合性をどうとるのかということがありますので、ただ墓参をふやせばいいということでなくて、その前に、きちっとやはり墓地の場所を特定させるということを先にやってほしいなというふうに思っているところであります。

 それから、交通手段の問題。船舶のことも、当然これは、経済活動のことも含めると、このままの、船一そうだけでいいのかということも出てまいりますので、この辺についても十分検討していく必要があるだろうというふうに思っています。

 以上です。

稲津委員 どうもありがとうございました。

 墓参について、今、お墓は五十二あるということで、残念ながら、いまだに全部墓参ができていないということもあって、これも元島民の方々にとっては大変な悩みというか、思いがあると思います。

 そして、その上で、先ほど空路の話がありました。実際には有視界飛行なんですね。ですから、天候が悪いとかそういう条件が重なると、残念ながら、これも取りやめになる可能性もある。それで、ぜひ計器飛行をすべきということで、これはロシア側の方も今そういった準備に入っているというふうには伺っておりますが、そうしたこともしっかり国としてもロシア側の方に主張しながら、体制を強化拡充できるように、私どもも全力で推し進めていきたいというふうに思っております。ありがとうございました。

 次に、中村参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどのスバールバル条約の話は、大変関心を持ってお話を聞いておりました。一つは、やはり、この北方領土問題というのを、私のこれは持論ですけれども、もう少し国際的なところまでテーマとして上げていく必要が、どこかで必ずタイミングとしてあるだろうというふうに強く思っています。そのためには、まず二国間でしっかりとした中身を詰めていかなきゃならないと思っているんですけれども。

 その上で、特に先生には、サハリンでの意見交換の中で、分野別の分科会が開催されまして、例えば、医療、小売、金融、漁業、農業、インフラ、エネルギー、観光分野で意見交換がありました。これがそれぞれ両国間、温度差もあるし、テーマとしてはなかなか難しい問題もあると思うんですが、しかしながら、特に期待できる、あるいはすぐ着手できるものもあるんじゃないかなというふうに私なりに思ってはいるんです。

 特に今回議論の中に上がったのは、観光が上がったというふうに承知をしております。これは恐らく、ロシア側も日本側も関心の高いところだったのかなと思っております。既にサハリンの方での日本の関係者による観光というのも進んできているというふうに承知しております。

 私も、一昨年、国後を訪問してロシア住民の方といろいろな意見交換をしましたが、極めて日本に対して関心が高い。それから、日本の食べ物をよく知っていますね、おすしとか。それで、ぜひ日本に行きたいと言っている。ぜひお越しくださいという話もあったんですが。

 私は、この観光の面なんかも、これは信頼の醸成につながっていくことも期待できるんじゃないだろうかなと思っております。あそこは、温泉、豊かな自然、それから食材もありますけれども、一方では、そのインフラというのはほとんど整備されていない。これも悩ましい問題。インフラをきちっと整備していくと、返還に非常に支障があるんじゃないかという御意見もあったり。

 しかし、先ほどの話に戻りますけれども、この共同経済活動によって北方領土返還の重要な一歩につなげていくという意味では、これもやはり検討していかなきゃいけないかなと思っています。

 そこで、この観光あるいはインフラの整備について、先生の所見についてお伺いしたいと思います。

中村参考人 確かに、北方領土地域というのは、本当に、島もそうですけれども、非常に風光明媚で、温泉があって、観光としての価値も非常に高いと思います。

 私が考えていますのは、北方領土だけではなくて、知床半島と一体となった、自然保護という形の観光ですね。しかも、コストをかけない、乱開発に結びつかないような観光のあり方というのは、日ロ間でそういうやはり協定を結んでいくということは、ぜひ、すぐにでもできるかなと思っています。

 自由な往来というのは今後の日ロ間を考えるときに非常に重要で、その中でも特に観光ですけれども、クルーズ船を使って自由に行き来できるような協定をぜひ日ロ間で進めていただきたいと思っております。

 それと、先ほどからお話が出ている水産資源についても非常に懸念されるところです。それにつきましては、ロシア側の、具体的に申し上げますと、ギドロストロイという漁業の大きな企業がありますので、そこの会社がどういうふうに考えているのか、その実態について、ベルホフスキーさんという方がいらっしゃいますので、その人を窓口に、観光もそうですけれども、水産もそうですけれども、北方領土の帝王と言われている人らしいんですけれども、これはロシアの報道ですけれども、水産も観光も含めて、具体的にその方との、まず実態調査について始めた方がいいのかなと思っております。

 以上です。

稲津委員 ありがとうございました。

 私も、知床の世界自然遺産登録がありましたけれども、この知床半島とそれから北方領土、特に国後、択捉とが、ここが一体的な考え方、捉え方ができるんじゃないだろうか、これは、実は四月四日のときに官邸の方に申し入れした一つの内容だったんですけれども、大変、意を同じくしておりまして、うれしいのと同時に、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 最後に、高岡会長にお伺いしたいと思います。

 漁業においては、安倍総理から、日ロ共同経済活動の中で、具体的にウニなどの養殖ということが提案をされたわけなんですね。一方で、ロシア側はこのことについては不安傾向にあるというような、そういう報道も、報道ベースではあったんですが、日本の水産加工業者の参入でロシア側が後退するのではないか、多分そういう懸念かもしれませんが、その逆も考えられるということもあったりして。

 ウニの養殖、北海道では年間四万トンぐらいということで、特に浜中町でやっておりますけれども、このウニの養殖に関連して、例えば、ホタテはどうなるのかとか、ベニザケ、かつては、これは戦前、択捉島で稚魚放流なんかもしたというふうに承知をしておりますが、こうしたことについてどのようなお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

高岡参考人 ただいまの質問ですが、ウニ養殖ということでありますが、根室では、一番最初に一時代を築いたのがカニの輸入であります。今現在、それにかわって根室の輸出入の中で一番大きなウエートを占めているのがウニの輸入であります。そういった観点から、ロシアからのウニの搬入が非常に多いということもありますので、これを持続的に継続するために、現地で稚苗養殖をして、放流して、資源を管理していくという観点では賛成です。

 また、今、ホタテに関しましては、これは非常に微妙なところであります。今現在、大きな自然災害によって減産されている状態にありますが、これが各資源が復活したときに、果たして許容量として、日本国内の需要、海外輸出需要を踏まえますと、増産イコール北海道の価格下落という観点もありますので、ここは非常に難しいところだと思うので、じっくりと調査検討していただいて取りかかるべきだと思います。稚貝養殖からスタートしなければいけないと思いますので、この辺のところは、水深、環境、それらの問題もあると思います。

 また、ベニザケの養殖でありますが、今、根室市では、おかげさまで、補助金をいただいて、その研究を産学官でやらせていただいています。

 この中で、どうしても養殖だと、紅の色にならない、色上がりが悪いというような結果も返ってきています。そういった研究を引き続きさせていただいて日本で養殖技術を確立するという中で、あと、その環境に合った生けすを入れられる場所がどこにあるのか、そういった現地調査を踏まえた中で復活をするという方法はありだと思います。

 我々は、魚種にとらわれず、水産加工業ですから、原料があればいいという観点からいけば、ベニザケにこだわっているわけではありません、トラウトの養殖でもありだと思っています。海外に依存するのではなく、日本の自給自足という観点からも、そういった資源、漁場調査というのは必要だと思っています。

 以上です。

鈴木委員長 稲津君、申し合わせの時間が来ています。

稲津委員 はい。

 時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。

 しっかり私ども取り組んでまいる次第でございます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、畠山和也君。

畠山委員 日本共産党の畠山和也です。

 参考人の三人の皆様には、本当に貴重な御意見をお聞かせいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 時間が短いですので、早速、私からも質問をさせていただきます。

 まず、脇参考人の方に、やはり昨年の首脳会談及び共同経済活動にかかわってのことで伺います。

 今回の首脳会談で大きな目玉となったのが、先ほどから議論となっている共同経済活動の前進ということですが、同時に、先ほどからこれもお話がありましたように、一方で、領土交渉が置き去りにならないのかとの懸念もついて回っています。

 それで、旧ソ連が崩壊して以降でしょうか、同じように共同経済活動が議題に上っていた時代があって、そのときの日本政府は、並行的に、共同経済活動委員会と国境画定委員会、いわばそれを二本立てで協議するということをロシア側とも合意して、担保する形で、島民の皆さんやかかわる皆さんに、心配もさせないようにするし、領土交渉での前進も図るという態度だったと思うんです。

 ですから、そのようなことを承知されている皆さんからすれば、今回の共同経済活動が、一つだけの道筋になるのではないかという不安が出るのも私は当然だろうというふうに思うんですね。ですから、今からでももちろん遅くはないわけで、共同経済活動や領土交渉というものを並行的に進めていく必要は私はあると思っております。

 その上で、脇参考人から、過去のこのような経過も含めて、さらに今の日本政府における交渉のあり方について所見がありましたら、御意見を伺わせていただきたいと思います。

脇参考人 先般の日ロ首脳会談の中で、特に、経済活動ということがクローズアップされてきた、しかも、そのことが最終的には領土問題の解決につながるんだ、つなげるんだという安倍総理の強い思いということは、私なりに感じております。その結果どうなるかは別にして、そういう思いでもって今進んでいるんだというふうには受けとめております。

 ただ、今、私自身、ここに来て最近思うんですけれども、国民的に、一般の国民から見て、経済活動と経済協力ということを一緒に考えている節があるんですね。

 経済協力というのはあくまでもサハリンを中心としたそういう部分であって、経済活動というのは四島を中心とした経済活動。そこをどうも何か一緒に考えている節があって、本当にこのままで理事長、いいのか、どんどんどんどん経済活動だけが進んでいって、ロシアの方にばかりすり寄ったような形になってしまうのではないのかというふうなことも風聞としてありますので、国として、共同経済活動と経済協力ということを、きちっとやはりある程度分けてというか、はっきり説明してほしいなというふうに思っているんですね。我々が説明してもなかなか理解がすとんと落ちないという部分があるものですから。そういう部分で、そういう思いはしております。

 したがって、私も、経済活動が進んでいくこと自体は、期待もしたいし、安倍総理の言っていることを期待しながら希望もしたい、希望をつないでいるわけです。したがって、これがどうなっていくかということ、これはやはり経済活動が今後進んでいく状況を見ながら、我々としてもどう対応するのかということを見定めていかなければならない、その上で、我々元島民の組織としても対策も考えていかなきゃならないということだと思っています。

 くどい話になりますけれども、我々の残置財産の問題等々がそのまま放置されたままで交流がどんどん進んでいくことについてはいかがなものかなと思っていますので、その段階で我々としても、また国に対していろいろな申し入れもしたいというふうに思っているところであります。

畠山委員 二月の予算委員会で、私から安倍総理に、このときの首脳会談について質問をさせていただきました。会談ですから、首相自身も、全てをつまびらかに、明らかにはできないという答弁が繰り返されるんですけれども、その質問をするまでに過去の交渉の経過なども改めて調べると、それでも、過去はもう少しオープンに、元島民、国民の皆さんに現状がどうなっているかということを知らせてきた首脳としての努力もあったかと思うんですね。その点では、私は、もう少し安倍首相に、さらに中身を明らかにできないものかというふうに思うことはあるんです。

 ただ、いずれにしても、このまま領土のことが置き去りにならないようにということは、私も当然受けとめていかなければならないし、私自身も発信しなければいけないと思っています。

 中村参考人に、共同経済活動について伺いたいんですが、共同という前に、認識の共有、科学的事実の共通、一致といいますか、ということが必要だと私は思うんです。例えば、知床も含めた自然環境保護に対する研究的なアプローチとか、先ほどから議論されている水産資源のデータの共有や調査を出発点にすることなど、科学的一致点を共有することから始めるということがさまざまな今回の活動のスタートになるのではないかというふうに思っているんです。

 なかなか、経済といったときには、利害関係や、もちろんこれから法律的な問題なども出てくる中で、何を取っかかりにしていくか、どのようなステップを踏むかということはもちろん必要でありますし、繰り返しになりますが、これは領土問題を脇に、別にして進めるということがあってはならないと思っています。

 それで、そのアプローチ、ステップを踏む上で、科学的な共有ということをロシアとの関係でどのように進めることが考えられるか、御所見を伺いたいと思います。

中村参考人 日ロ間では、決して経済協力とか領土交渉だけに限らず、さまざまな、自然環境とかいろいろな、渡り鳥の調査とか、そういった両国でできるところが実はたくさんあるわけなんですね。ですから、そこからどんどんお互いの認識を深める、一致させる、できるところから進めていくというのは、非常に賢明なやり方だと思っています。ですので、そういった形の研究調査、北海道には、北海道大学スラブ研究センターとか、いろいろ理系の研究施設もありますので、そういうところの支援をいただきながら調査を進めるというのは非常に重要なことだと思っています。

 それと、共同経済活動について、北方領土を対象とする共同経済活動、これまで何度か話が出てきて消えてしまったというような話があるわけですけれども、私はここで、きょういらっしゃる議員の先生方と認識を共有したいと思っていますのは、これがなかなかうまくいかない一つの大きな理由というのは、実は、北方領土内での、いわゆる今ロシア国内で行われている、北方領土で行われている経済活動に非常に腐敗、汚職がはびこっているということですね。これはサハリン州全体もそうです。サハリン州知事が逮捕されたり、あと国後の地区長が逮捕されたりとか、汚職とか、非常にそういうところで、共同経済活動といっても、実際のところ、どんな経済活動があの北方領土で行われているのか。

 そして、昨年だと思いますけれども、プーチン大統領と色丹島の工場で働いている労働者がホットラインでテレビでつながりまして、それが全国に流れたんですけれども、その水産工場で働いている女性の従業員がプーチン大統領に訴えていました。今、この色丹島でとっている魚というのは中国が持ってきていると言ったんですね。そして、給料の未払いが起こっている、三カ月、半年間未払いが起こっている、そういう現状が明らかになったんですね。これは、恐らくプーチン大統領にとっても意外な展開だったと思うんです。

 ですので、共同経済活動とか、それとは別に領土交渉もどんどん進めていかなくてはいけない。そしてエコロジーの問題とか、いろいろな問題を、北方領土を取り巻く環境がどうなっているのか、そのあたりをまず最初に調査研究していくというのは、今でもすぐできる、ロシアとの交渉で開始できる糸口になるかと思っています。

 以上です。

畠山委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

 高岡参考人の方には、根室の経済という点で少し現状をお聞かせいただければと思います。

 先ほどの意見陳述の中にも、製缶業界あるいは流通も含めた根室の経済、かかる産業の実態が大変な状況だということを伺いました。もちろん、領土の問題が解決することは水域が広がることの解決にもつながるわけですが、そこに至るまでさまざまな、もちろん時間的な経過が必要になることは言うまでもありません。

 この間、これも先ほどからあるように、流し網漁がだめになってしまったということなども含めて、当面の水産業界において、やはりつなぎ融資であったり、商工会、金融関係との連携というのは非常に今大事な状況にあるかと思うのですが、この間の協会の皆さんや根室の経済界を含めた地域の現状をさらにもう少し詳しく御発言いただければと思います。

高岡参考人 今、実際に根室の経済は、サケ・マスの流し網漁を失いまして、これは金額的にも漁獲的にも非常に大きな経済の柱であったわけです。これを穴埋めする魚種、工場を稼働する上で穴埋めする魚種というものが、当初、我々が第一回目に期待したのが公海でのサンマ、あと、小型船でのイワシ、サバ、この操業です。その中で、公海のサンマにおいては、我々が手がけることができない、冷凍のまま海外輸出が条件ということで、国内の市況維持のためにそういった措置がとられております。

 我々は、今回、ホタテの増養殖ということで、新たな漁場整備を昨年させていただきました。それに伴いまして、本年度、稚貝の放流をしなきゃいけないということがあるんですが、これが本年と来年度、約二年で六億六千万の稚貝を購入して放流しなきゃいけないということなんですが、いかんせん、新たに、全く白紙の状態で食事の種を借りておるわけですから、原資がありません。その原資の観点から、今、国の方に要望、陳情をしているわけであります。

 この何にもない、魚が全く揚がっていない、通年、普通の企業であれば、二百五十日ないし二百七十日の稼働をしなければ、経済的に、今の日本、国際社会の中でも成り立っていきません、その中で三カ月の稼働空白というのが生まれるということは、ほかの月日に分配しても非常に大変なことなんです。そこの穴埋めをぜひしていただきたいので、今回、根室市を挙げて要望しているわけであります。

 あと、今後やっていく中では、やはり共同活動というのは根室に直接影響してくると思います。魚の動向、観光にしても、人の動向によっていろいろ変わってくると思うんですね。空路という形でも行ける地区というのは国後、択捉だと思うんですね。北方四島というからには歯舞、色丹もありますので、私は極端な発想をする方なので、何を言っているんだと思われるかもしれませんが、橋でつないだらいいんじゃないかなという。これはやはり、「えとぴりか」も入れないような水深の浅さ、宿泊施設がないというような現状を鑑みますと、日帰りで観光ルートをつくる。これは、路面をつないでいくという方法もあると思いますので、そういうこともあるかなと思っております。

 以上です。

畠山委員 ありがとうございました。

 ちょっと時間がないのですが、脇参考人に一言だけ、連盟の皆さんのとりわけ二世、三世がさらに継続して運動を広げていく上で、一つだけ伺いたいことがあります。

 以前伺ったときに、現職で働いている皆さんからすれば、例えば全国キャラバンをするに当たっては、昔だったら中小企業も余裕があって人を送り出したけれども、今はなかなかそうならないんだという経済の実態ですとか、実は手弁当になって、さまざまな手当などが出ない状況が大変なんだというお話も伺いました。

 これは国のさまざまな支援にかかわるものなんですが、今後のそのような運動にかかって、一言、脇参考人から伺えればと思います。

脇参考人 御案内のとおり、当連盟の元島民は八十二歳を超えている現状の中で、当連盟の活動なり運動がなかなか体力的にもできないというような状況の中で、二世、三世にそのことをお願いせざるを得ないという今の状況です。

 ただ、そこで、今おっしゃられるように、二世、三世はまだ現役世代です。したがって、会社を休んで行くということになるとなかなか大変だ。休ませてくれるのであればまだしも、休んだとしても、行ったときの費用弁償というか、旅費は出るにしても、それ以外の部分については、休んで、会社に迷惑をかけなきゃならないということなので、これが我々当連盟にとっても非常に苦慮しているところであります。

 したがって、ちょっと申し上げますけれども、当連盟の予算規模は約三億です。そのうちの六百万しか会員から会費収入はありません。あとの二億数千万は国と道からの助成金なんですが、その助成金も、事業に伴う助成金であります。したがって、事業をやることによって、職員の十数名の人件費もそこから生まれてくるということでありますので、非常に弾力的な財政運営ができない。要するに、自由に使えるお金が、自由に使えると言うと語弊がありますけれども、そういういろいろな事業展開をするに当たっての費用が捻出できないという苦しみがありますので、何とか皆さん、そういう千島連盟の台所事情もちょっと御理解いただければと思っています。

 以上です。

畠山委員 時間ですので、終わります。

 参考人の皆様、本当にありがとうございました。

鈴木委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保です。

 参考人の皆様に、北方領土に関して、特に共同経済活動の是非についてお尋ねしたいと思います。

 私は、昨年の五月十一日、本委員会による北海道根室市視察に参加させていただきました。その際、海上保安庁の巡視船から初めて北方領土を間近に視察するとともに、地元の首長や元島民の皆様との意見交換会を通じて、北方領土返還に関する切実な声を聞かせていただきました。本日お越しいただいている脇参考人とも懇談をさせていただきました。ありがとうございました。

 戦後七十年以上が経過した今日、いまだに島は返ってきておりません。北方領土四島返還は、全ての日本国民にとっての悲願であると言っても過言でないと思います。

 本日お越しいただいた三人の参考人の皆様におかれましては、それぞれの立場から北方領土問題にかかわってこられたと思います。

 そこでお伺いいたしますが、我が国のスタンスとして、北方領土の帰属問題を解決してロシア連邦との間で平和条約を締結するという基本的方針を堅持しつつ、北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還時期、態様及び条件については柔軟に対応する、これが基本的立場となっております。

 帰属が確定していない中、日ロ間の共同経済活動を先行させるということについてどのような見解をお持ちなのか、三人の参考人の皆様にお伺いいたします。

脇参考人 共同経済活動を進めていった上で、最終的なゴールとして、そこに、北方領土問題の解決につなげるんだということで、今そういう方向で国というか政府は進めているというふうに理解しております。したがって、そのことにあっても、今回の首脳会談の中で、安倍総理が、そういう部分での強い思いの中で、ある意味では今までと違ったアプローチといいますか、そういう方向に切りかえたというふうに私どもは受けとめておりますので、そこがきちっとなってほしいと思っていますし、それを期待しているというのが今の偽らざる状況であります。

 その期待の中にあって、当然、その経過の中で我々としてもそれをきちっと検証しながら今後対応していきたいというふうに思っています。

中村参考人 日ロ経済協力関係について、これが北方領土問題に結びつくのか、そうじゃないのかということですけれども、ここで皆様にぜひお話ししておきたいのは、なぜロシア側が日本との経済協力を必要としているのか。

 私たちは、当然その先に北方領土が返ってくるという願いがあるわけですけれども、ロシア側の本音を少し御紹介しますと、ロシアは二〇一四年の七月から欧米から非常に厳しい経済制裁を受けています。そうした中で、国家予算も縮小しているわけです。

 今、日ロの経済協力で挙がっている項目というのは、エネルギーとか医療とか都市環境とか等々ありますけれども、これは実は、ロシア中央政府がシベリア、極東に支出できるお金が四〇%前年比でだんだん下がってきているわけですね。それを見据えた上での実は日本からの経済投資を期待している。つまり、穴埋めとして日本からの経済協力を引き出そうとしているところがあるように私は思っております。

 したがいまして、この日ロの経済協力プランというのは非常に重要でありますけれども、これが直ちに北方領土問題解決の糸口に、平和条約の方に行くのかというと、私は非常に疑問視しています。

 そうした中で、やはりこれまでの枠を超えたところで、きょう御提案させていただきました、領土問題について、経済問題とか領有権とか永住権とかそういうものをひっくるめた形でスバールバル条約というものが、ロシアも日本も参加した四十カ国を上回る世界の国々が領有権の問題で一九二〇年に締結した条約があるわけですので、ぜひこのスバールバル条約を参考にして日ロの新しい突破口を切り開いていただければと思っています。

 単に、何のための経済協力かわからない、それに対して不信感が漂っている中で、余りロシアに経済協力だけで前のめりになるということについては私は非常に危惧しております。

 以上です。

高岡参考人 御質問の件は非常にデリケートなものだと思います。

 実際、申し上げていいのかどうかわかりませんが、私の個人的な見解といたしましては、北方領土自体が経済発展するということであれば、もし私がロシア人であれば、経済発展した上に自立で成り立つのであれば、返しませんということになってしまうのではないかと。だから、ここは最初に取っかかりを特区として、両国の共有物という形の認識の中で話を進めていかないと、本当に戻ってくる可能性すらなくなってしまうんじゃないかなと思っています。

 以上です。

椎木委員 次に、本年四月二十七日にモスクワで開催された日ロ首脳会談において、共同経済活動に向けて北方四島での現地調査を実施することで合意しました。また、元島民らによる墓参りに際し、航空機の活用についても合意されました。

 これらの合意は日ロ平和条約締結に向けてどのような意味があるとお考えでしょうか。脇参考人と中村参考人にお聞きいたします。

脇参考人 この十八日から行われる飛行機による墓参、元島民の身体的な負担の軽減という観点からそういうふうな形で進めていただいているということでありますし、それから出入域手続も、今まで古釜布一カ所であったものを何とかもう一カ所ふやしていただくということも現実に今やっていただくという状況になっているところでありますし、それから、自由訪問、墓参のそういう手続の簡素化ということも含めて今やっていただいている。

 そういうことも含めて考えますと、これも一つの返還に向けた雰囲気づくりといいますか、お互いの交流の中で信頼関係を醸成していく中で返還運動に結びついていく一つの道かなというふうに考えているところであります。

中村参考人 四月の首脳会談につきまして、現地調査を徹底的にするというお話が出てきました。

 私の感想も含めてお話ししますと、プーチン大統領とかメドベージェフ首相、そしてモスクワで活動している政治家たちは、北方四島の実情について余りよく御存じではないのかなと実は思っております。

 ですので、現地調査をロシア側と徹底的に行い、そして問題点も明らかにしていくというのは、むしろ日本の側からどんどんこういう問題点があると働きかけることによって、プーチン大統領自身が、そういう問題点があるのか、中国がこんなに入ってきているんだ、資源がこんなにとられているんだという実態を、首脳会談のときに日本からどんどん攻めていくという意味で、今後の日ロの首脳会談で日本側からこういった問題点をどんどん出して主導権をとっていく上においても、今回現地調査で合意したというのは、日本が領土問題にどんどん主導権をとっていく一つの大きな手がかりになるかと思っていますので、この現地調査の結果というものを私は非常に期待しております。

 以上です。

椎木委員 次に、日ロ共同経済活動については漁業や観光業等が想定されておりますが、共同経済活動を平和条約の締結と北方領土返還への布石として考えている日本にとって、共同経済活動自体にどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。高岡参考人にお伺いいたします。

高岡参考人 共同経済活動についてのメリットということですが、まず、日本では、隣接地域としては、資源として原魚が入ってくることによって地域の経済の安定につながると思います。また、世界的に温暖化等の影響もありまして漁労資源がいろいろと変化しています。その土地土地でとれるものが変化してきている中で、四島の海域での漁獲物というのは非常に魅力的なものであると考えておりますので、そういった観点の経済活動というのは、日本にとって、非常に日本食の文化維持という観点からいきましても大きなメリットがあるのではないかと思っております。

椎木委員 最後に、中村参考人にお伺いしたいと思います。

 ロシアによる北方領土の軍事化が進行していることについてお聞きしたいと思います。

 本年二月二十二日、ロシアのショイグ国防大臣は、クリル諸島での師団創設を年内に行うと述べられておりました。また、択捉島と国後島に地対艦ミサイルを配備したことも明らかになっております。さらに、北方領土に小型無人機、ドローンを配備するという新聞記事も読ませていただきました。

 ロシアの聖域化が着々と進みつつある北方領土について、返還への道は極めて厳しく、困難な状況にあると思いますが、そのような中で返還に向けて我が国がどのような取り組みを行っていくべきか、ぜひお聞きしたいと思います。

中村参考人 北方四島を取り巻く軍事的な、日本からすれば非常にロシア側の脅威が高まっている、そういうのは実際にあると思います。

 しかし、先ほど申し上げましたように、2プラス2という会談がまたこの三月から再開されましたので、そこでお互いに信頼をまた育んでいくという意味で、一体彼らが、ロシア側が何を狙っているのか、そういうあたりを明らかにしていく必要は大いにあると思います。

 それと、私が、北方四島の軍事化、ロシアによる軍事化を非常に懸念しているのは、北方四島での経済活動はかなり制約されてくるんじゃないかということを実は私は懸念しています。先ほどお話もありましたサケ・マスの底びきですか、それがロシア側から禁止されたという話も出てきましたけれども、それは資源保護のためにというのがロシア側の説明でしたけれども、実はロシア側の方は、こういった北方四島の軍事化ということを前提に経済活動を制限していくという動きもあるのも事実なんですね。

 ですから、そのあたり、片方で共同経済活動をやっていこうという、二つの極端な今話が出てきているわけですけれども、軍事化につきましては、何度も言いましたように、2プラス2の機会を使って、これが途中で終わることなく、首脳会談を開くというのは非常にハードルも高いんですけれども、この2プラス2を例えば三カ月に一回、半年に一回でも開くことによって、北方四島の軍事化の問題についてしっかりと議論していただければと思っております。そういう意味で、この2プラス2をぜひ生かしていただきたいと思っております。

 以上です。

椎木委員 貴重な御意見、ありがとうございました。

 以上で私からの質問を終わらせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

鈴木委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様には、御多用のところ、本委員会に御出席いただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時一分散会


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