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第1号 令和2年2月25日(火曜日)

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本分科会は令和二年二月二十日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十一日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      あべ 俊子君    衛藤征士郎君

      村上誠一郎君    山口  壯君

      後藤 祐一君    馬淵 澄夫君

二月二十一日

 あべ俊子君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和二年二月二十五日(火曜日)

    午前八時開議

 出席分科員

   主査 あべ 俊子君

      井林 辰憲君    衛藤征士郎君

      大岡 敏孝君    高村 正大君

      武井 俊輔君    中村 裕之君

      牧島かれん君    村上誠一郎君

      山口  壯君    山下 貴司君

      吉川  赳君    和田 義明君

      小宮山泰子君    後藤 祐一君

      篠原  孝君    中川 正春君

      福田 昭夫君    馬淵 澄夫君

      村上 史好君    山内 康一君

   兼務 濱村  進君 兼務 本村 伸子君

   兼務 井上 英孝君

    …………………………………

   財務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         森 まさこ君

   外務大臣         茂木 敏充君

   外務副大臣        鈴木 馨祐君

   財務副大臣        遠山 清彦君

   法務大臣政務官      宮崎 政久君

   外務大臣政務官      中谷 真一君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   最高裁判所事務総局総務局長            村田 斉志君

   最高裁判所事務総局刑事局長            安東  章君

   最高裁判所事務総局家庭局長            手嶋あさみ君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  安居  徹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       堀江 宏之君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局長)            松尾恵美子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊藤  信君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小柳 誠二君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 太刀川浩一君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    田中 勝也君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 稲岡 伸哉君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           井上  卓君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    小出 邦夫君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    大橋  哲君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  菊池  浩君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 高嶋 智光君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        石岡 邦章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   垂  秀夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           大鷹 正人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       塚田 玉樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 吉田 泰彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 桑原  進君

   政府参考人

   (外務省大臣官房政策立案参事官)         赤松 秀一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化参事官)           大隅  洋君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山中  修君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 田村 政美君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 河津 邦彦君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    水嶋 光一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房政策立案総括審議官)       岡本 直之君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阪田  渉君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    矢野 康治君

   政府参考人

   (国税庁次長)      田島 淳志君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           矢野 和彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           蝦名 喜之君

   政府参考人

   (文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官)  寺門 成真君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岸本 武史君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           堀内丈太郎君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

   財務金融委員会専門員   齋藤 育子君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  衛藤征士郎君     中村 裕之君

  村上誠一郎君     大岡 敏孝君

  後藤 祐一君     福田 昭夫君

  馬淵 澄夫君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     木村 次郎君

  中村 裕之君     井林 辰憲君

  篠原  孝君     村上 史好君

  福田 昭夫君     高井 崇志君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     山下 貴司君

  木村 次郎君     武井 俊輔君

  高井 崇志君     中川 正春君

  村上 史好君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     高村 正大君

  山下 貴司君     牧島かれん君

  小宮山泰子君     山内 康一君

  中川 正春君     篠原  豪君

同日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     吉川  赳君

  牧島かれん君     和田 義明君

  篠原  豪君     後藤 祐一君

  山内 康一君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  吉川  赳君     村上誠一郎君

  和田 義明君     衛藤征士郎君

同日

 第一分科員濱村進君、第二分科員井上英孝君及び第四分科員本村伸子君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和二年度一般会計予算

 令和二年度特別会計予算

 令和二年度政府関係機関予算

 (法務省、外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

あべ主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和二年度一般会計予算、令和二年度特別会計予算及び令和二年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。麻生財務大臣。

麻生国務大臣 令和二年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、百二兆六千五百七十九億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は六十三兆五千百三十億円、その他収入は六兆五千八百八十七億円余、公債金は三十二兆五千五百六十二億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、二十五兆一千五百七十九億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げます。公債費は二十三兆三千五百十五億円余、予備費は五千億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも百九十三兆二百四十一億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入一千七百四十一億円余、支出九百二億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等をごらんいただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳しい説明にかえさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いを申し上げます。

 以上、よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。

 以上です。

あべ主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま麻生財務大臣から申出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

あべ主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中村裕之君。

中村(裕)分科員 おはようございます。自由民主党の中村裕之です。

 本分科会のトップバッターでの質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 麻生財務大臣におかれましては、先週も一週間、第一委員会室に張りついて予算委員会への対応をされた後に、G20財務大臣・中央銀行総裁会合ということでサウジアラビア・リヤドに御出張をされ、本当にお疲れのことと思いますけれども、ぜひ、きょう一日も、長い審議になりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 私も、経済人である麻生大臣と、一度、日本経済について議論してみたいと思っておりました。

 初めに、日本経済の将来見通しについて、少し長いスパンで、これまでとこれからについて認識を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。

 資料一、資料二という二枚の資料を用意させていただいております。

 資料一につきましては、一九九五年から二〇一七年までの世界各国の成長率ランキングでありますが、我が国日本は一番右にあって、成長がほとんどない。一方で、経済成長は、各国ともそれなりに、まあ、それなりにというか、世界標準で見ても、この二十二年間で二・五倍のGDPの伸びというふうになっているわけであります。米国などで見ても、一九九〇年と比べると、GDPは三倍、税収も三倍というふうに伸びている中で、我が国は経済成長をほとんどしていない。

 この間に、ITバブルの崩壊ですとか、リーマン・ショックですとか、災害も多くありました。そういう事情もあるとは思いますけれども、現実に、このことによって、世界経済における日本の経済のシェアはどんどん縮小しているというのが現状だというふうに私は認識をしております。

 一九九七年には日本のGDPシェアは一七・五%ありましたけれども、二〇一八年には五・七%と、約三分の一にシェアが縮まっているわけであります。中国はシェアを一六%まで伸ばしていて、現在の新型コロナショックの影響も、そういう意味では大きな影響がある、SARSのころとは比較できない影響になっているということであろうと思います。

 この傾向が続くと、日本のGDPのシェアは、十年、二十年のスパンで見ると、三%台あるいは二%台まで落ち込んでしまうのではないかというふうに危機感を持っておりますけれども、麻生大臣には同様の危機感はおありでしょうか。そういった認識をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これはもう、一九八九年、平成元年、このときからいろいろなものが大きく変わっていって三十数年がたったことになりますけれども、やはり、バブルがはじけて三万八千九百十五円をつけていた株価が一挙に割れたとか、消費税が入ったとか、あのころ、天安門事件が起きて、天皇陛下の崩御以降、松下幸之助が亡くなって、昭和でいえば、美空ひばり、手塚治虫、皆あの年に亡くなっていますから、いろいろな意味であの年は大きな変わり目だったと思いますけれども。

 あれ以降何が起きたかといえば、もう一個忘れられているのは、やはり冷戦という戦争が、一九八九年十一月、ベルリンの壁崩壊をもってほぼ実質終了ということになったんだと思いますが、あれから以降、やはりアメリカの世界経済に対する考え方も大きく変わって、それがやはり大きな変化の中で、余り日本では語られませんけれども、これが大きなあれで、ウィリアム・クリントン、ジョージ・ブッシュ、それでオバマの、ほぼあれまで、八年掛けるの三回で二十四年間、やはりアメリカの対日姿勢というのが大きく変化したことだけははっきりしておりますので。

 いわゆるバブルがはじけたとかいうようなつまらない話じゃなくて、そういうようなものプラス、やはり冷戦構造が終わったことによってアメリカの対日貿易姿勢が大きく変わって、バッシングとよく言われるような話になって、猛烈な勢いでアメリカの態度が、対ソ関係がなくなったものですから、その分、対中優遇策に変わり、それまで優遇していた日本に対しての態度をごろっと変え、あれ以降、ビッグバンに始まる一連のことによって日本の銀行はばたばた潰れましたし、いろいろな意味で構造改革を余儀なくされ、いろいろな意味で日本のこれまで稼いでいた大きなものは軒並みだめになって、唯一、アメリカに進出してアメリカで物をつくって成功した自動車以外はほとんど、いわゆる半導体にしても何にしても、軒並み、日本でつくっては採算が合わなくなった、円も急激な勢いで上がってというような形になっていった。

 そういったようなのは、この一連の政策によって完全にいかれた結果が今ここにお示しになったこういった形であって、この赤い線の世界の右のところを見ていただくと、これはアメリカも、すぐ隣にアメリカが出てきますし、これから下のところにイギリスが出てき、オランダが出てき、フランスが出てき、ドイツが出てき、みんなこういったような国々が全部になって、左側にありますこちら側のところは新興国ということになっていったというのがこの三十年間ぐらいの歴史でありますから、そういった意味では、御指摘のありましたように、成長率は確かに伸びたことはもう間違いなく大きな影響を受けているとは思いますけれども。

 日本はその中にあって、数少ない、いわゆる経済国としては内容を、第二位を維持しているという事実は大きなあれでありますし、シェアが低くなったとはいえ、自由主義圏では世界第二位の力を持っておるということは事実でありますので、私どもとしては、こうしたものはきちんとよく認識した上で、我々としては、今後も引き続き、人口減少とか高齢化とかいろいろなハンディを抱えることになろうとは思いますけれども、少なくとも、対中に対するアメリカの態度が大きくこの三年ほどで変わってきていますので、そういったものを背景にきちんとしたものがつくり上げられる、そういった形に変えていかないかぬということで、この七年間努力させていただいて、おかげさまで、今、少子高齢化の中にありましても、少なくとも、いろいろな意味での、求人難という話が、求職難から求人難に変わってきていますし、そういった意味では非常に大きな変化が出てきていますし、少なくとも、給料は間違いなく上がってきておりますし、いろいろな形での構造変化をやらせていただきつつありますので、こういったものがこれからの芽を、勢いをほぼつくり上げつつあると思っております。

中村(裕)分科員 ありがとうございます。

 これからの芽をつくり始めているというお話がございましたので、これからの芽を大事にしていきたいと思いますけれども。

 私自身は、安倍政権が掲げる基本方針である経済成長なくして財政健全化なしという方針を全面的に支持をしております。経済成長をやはり重視していくということは非常に重要なことであって、経済が成長してデフレから脱却をしていくということは財政再建に必ずつながっていく、財政再建先にありきではないというふうに思っているところです。

 そういう中で、将来の芽を大事にする意味で、では、日本は将来何で食っていくんだと。今自動車が主たる輸出産業になりますけれども、何で食っていくんだということを考えたときに、やはり技術革新ということになろうと思います。自動運転や量子技術、5Gじゃなくて6G、宇宙等の分野で世界の競争に勝ち抜いていって国際的な地位を確保していくことが非常に重要であって、そういったものがなければ日本経済の成長はなかなかなし得ないんだろうというふうに思っています。

 技術革新に向けての我が国の研究開発投資をいろいろと財務省も理解をしていただいているところですけれども、一方で、産業界もそれから研究分野も影響を受けるであろう国立大学法人について、法人化をされてから運営費交付金が一千四百億円以上減額をされています。徐々にではありますけれども減額をされています。その結果どうなっているかというと、山中教授のiPS細胞の研究室でさえ研究員が有期採用という形で、そういう人が多くなっていると。

 資料は日経新聞の記事をつけておりますけれども、大学の方では博士号を取得する人の数が〇六年をピークに減少していて、研究職を取り巻く不安定な雇用環境が一つの原因になっている、そういうことがあります。博士号取得後に研究を続けるポスドクの七割が任期三年未満の雇用という形態であって、こういう状況ではなかなか研究を落ちついて、特に基礎研究を落ちついて続けていく環境にはないんだろうというふうに思います。また、そういった進路を選ぶ人も少なくなっているのではないかというふうに危惧をしております。

 私は、未来の日本が稼ぐ種である、そうした研究開発投資を怠るべきではないと思っていますけれども、特に運営費交付金の増額を図るなど、大学における研究環境の改善を図っていくべきだと考えますけれども、所見を伺いたいと思います。

遠山副大臣 中村委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 委員がおっしゃった技術革新の重要性、また、私もイギリスで博士号を取得しておりますが、ポスドクの研究者が大変だという御懸念については共有をまずさせていただきたいと思います。

 その上でお答えを申し上げたいと思いますが、政府予算全体の中で、科学技術に対する投資は重要な未来への投資であるということで、重点化をして確保いたしております。

 先生既に御承知だと思いますけれども、令和二年度予算案におきましては、科学技術振興費は対前年度比で一・四%増の一兆三千五百六十五億円、この科学技術振興費に社会保障関係費等の研究開発予算を加えた科学技術関連予算全体で見ると、実はこれは対前年度比で三・三%増、プラスの四兆三千七百八十七億円としているところでございます。

 中でも基礎研究や若手研究者の支援については、財務省としてもこれを推進していくことが重要だと認識をしておりまして、来年度予算案におきましては、研究者の自由な発想に基づく研究を支援する科学技術研究費助成事業について、若手研究者への重点化をしつつ、対前年度二億円増の二千三百七十四億円を計上しております。

 また、国立大学の運営費交付金につきましても、高等教育の修学支援新制度の導入に伴う影響額を除けば、前年、今年度ですね、前年と同水準となる一兆八百七億円を計上しながら、若手研究者の積極登用などの改革に取り組む大学への支援、これを重点化していっているところでございます。

 ちなみに、先生が御提示になった資料の中に国立大学の運営交付金が千四百億円減額されているという記述がありましたが、これは正確には、大学の附属病院が黒字化したことによる病院赤字補填金の解消、退職者の減少に伴う退職手当の減少など、教育研究とは直接関係ないものの特殊要因を除きますと、実質的にはマイナス四百二十億円の減少にとどまっております。一方で、この期間で補助金は九百五十億円増額しているんですね。そうすると、差引きしますと、国立大学に対する教育研究向けの公的支援は実質的には約五百五十億円増加しているということでございますので、もしまた細かい資料等、御必要であれば先生のところにお届けをさせていただきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、若手研究者に対しては、今年度の補正予算におきましても創発的研究支援事業を創設してこれに五百億円計上いたしたりしておりまして、政府としては十分若手研究者の支援に配慮していると考えております。これらの予算を効率的に活用していただいて、日本の研究力の向上、また日本発のイノベーション、これが多く生み出されていくことを私どもも期待をしたいと思っております。

中村(裕)分科員 ありがとうございます。

 遠山副大臣がイギリスで博士号を取得され、その重要性について非常に高い見識をお持ちだということもよくわかりましたし、財務省としては若手研究者に対する支援を手厚くやっているということもよくわかりました。

 その上で、では、なぜこういった雇用形態が多くなっているのかということについてよくよくやはり分析をした上で、改善するところがあれば改善していくということを担当の省庁等も含めて私も研究していきたいと思います。ありがとうございます。

 さて、経済成長についてですけれども、経済成長を図る上では民間投資を喚起する、これは財政政策という意味で安倍政権が使っていますけれども、低金利の状態でもなかなか借り手がいないという状況が続いています。

 日本経済が成長しているときには、地価は上昇するものだと、土地神話というのがあって、土地の値段というのは上がり続けるものだ、そういうお話もあったわけですけれども、バブルが崩壊して地価が下落して、一転、資産デフレの状況になったわけであります。現在も、地方では、地価の下げどまりにはなっていますけれども、地価上昇にはなかなか結びついていないというところが多いんだと思います。

 一九八七年からバブルが発生して、その後、総務省は、通達で固定資産税を上げたんですよね。これはやはり一種の地価抑制策だったと思うんですけれども、現状は、資産デフレが続いている状況でも、固定資産税をもとに戻すような動きが全くないということです。

 今、登記しても土地が上がるなんて保証がないから、登記もしないという人もふえていて、所有者不明土地が問題となるなんという状況も起きているわけで、昔では考えられないなというふうに思っているんですが、地方に住んでいて、私、固定資産税が軽減されると、やはり土地や建物に対する投資が生まれたり、収益率が上がりますので、また、担保力が増したりして、地方銀行も貸しやすくなったりするんだと思うんです。

 こういったことというのは地方の経済の活性化につながるのではないかと思うんですけれども、麻生大臣に固定資産税の話を聞くのかと言われましたけれども、麻生大臣はデフレ脱却担当大臣でもありますので、大臣のこの固定資産税に対する認識、見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 御存じのように、固定資産税というのは、これは総務省の所管でして、財務省の所管じゃないので、ちょっとお答えとしてはなかなか難しいところではあるんですけれども。

 いわゆるアベノミクス等々をやらせていただいて、これまでデフレからの脱却ということでやらせていただいて、一応、デフレではないという状況をつくり出すということになったんですけれども、結果として、わかりやすく言えば、私らの筑豊でも高知でも有効求人倍率が一になっているというんですから、しかもそれが三年以上続いているというのは、多分、高知県始まって以来でしょうし、そういった意味では、明らかにそういった形で出てきますし、地方の、しかも、バブル崩壊後では初めて地価上昇が出てきたという地域も出てきていますし、経済の好循環はそれなりに動きが進んでいることは間違いないと思っております。

 また、個人的な話をさせていただければ、地価の上昇というのは、中村先生のところでいえば、倶知安なんという、小さな市だぜ、あんなところ、俺に言わせれば。俺のところの市より小さいだろう。何かが始まるんだろう、あんなところ。そこでとにかく土地が上がっているものね、あそこはえらい勢いで。

 だから、そういった意味では、地方自治体がどのような創意工夫をして地方を魅力あるものにするかというのは、これは非常に重要なところであって、減税に頼るというだけでいいのかねというのは正直な印象です。

 いずれにしても、デフレ脱却を目指すというよりは、デフレでも好況はありますから、一九〇〇年代前半はそうだったわけで、デフレイコール不況とは限らないというのははっきりしていますが、景気回復という波を全国的に広まっていくようにということで、我々は経済再生と財政再建ということの取組というものをきちんと進めていかねばならぬと思っております。

中村(裕)分科員 倶知安というのは四年連続地価上昇率日本一という、世界の投資が集まっている地域で、大臣にも一度ごらんいただいて、大臣も驚かれたというお話を伺っております。

 確かにそういったところもある一方、やはりまだまだアベノミクスの恩恵を感じないという地方の意見もありますので、そうした中でまた政府として御一考いただければと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、一つ飛ばして法人税について伺いたいと思います。

 資料を用意しておりますけれども、資本金十億円以上の企業の売上げ等のグラフであります。配当金は五七三%という大きな伸びをしていますけれども、利益も上がっています。しかし、従業員給与や設備投資は、この十億円以上の企業で見ると、横ばい又は減少というふうに結果が出ているところであります。

 これも、一九八七年、バブルのころからのデータでありますけれども、こういった傾向というのは非常に強く出ていると思いますが、結果的に内部留保は、二〇一八年、四百六十三兆円まで膨らんでいるということでありますけれども、こうした内部留保ばかりにしていくというのはやはりいかがなものか、もっと人件費や設備投資に回してもらう必要があるんじゃないかと私は思うわけです。

 ですから、大きな利益を上げる大企業に関しては、もうけたところに懲罰的な高い税率をかけるなど、やはり富の再分配という税の機能がしっかり働くようなことをしていかないとならないのではないか。そのことによって、二十代、三十代の若手の皆さんの給料が上がって、希望する子供の数を産める環境というんですか、そういった少子化対策にもつながっていくというふうに思いますが、財務省としての所見を伺いたいと思います。

遠山副大臣 お答えをいたしたいと思います。

 先生御指摘のとおり、企業の内部留保、いわゆる利益剰余金は、平成三十年度におきまして四百六十三・一兆円となりまして、大変増加をしております。

 一方で、平成二十八年度から二十九年度にかけての内部留保というのは約四十兆円増加をし、その際に手持ち現金も約十一兆円増加をしておりましたが、麻生副総理も先頭に立って政府としてこの取組を強く求めてきたところ、平成二十九年度から三十年度にかけては、内部留保が約十七兆増加する中で、手持ち現金の増加は〇・五兆円にとどまっております。ですから、前の年度は手持ち現金が十一兆円、一年度で増加したわけですが、その次の年度は〇・五兆にとどまっているということは、より投資などに回るようになってきているというデータが出ております。

 引き続き、企業収益が高水準で推移する中、果断な経営判断を促して、企業が設備投資や賃金引上げ等に積極的に取り組むことは重要であると考えております。

 こうした中で、政府といたしましては、平成三十年度税制改正において、賃金の引上げや設備投資に積極的な企業の税負担を引き下げる、他方、収益が拡大しているにもかかわらず投資に消極的な企業には、研究開発税制などの適用を停止するなど、高水準の企業収益をしっかりと循環させていく取組を進めてきております。

 あわせて、令和二年度、来年度の税制改正におきましても、こうした取組を更に推し進めていくために、今申し上げた税制の要件の厳格化を行うこととしているところでございまして、まさにこうした対応は中村委員の問題意識にも沿うものであると考えておりますが、いずれにいたしましても、これらの改正等も通じまして、企業の経営者の攻めの経営に向けた意識改革、これがしっかりなされて経済の好循環が実現されることを強く期待しているところでございます。

 以上です。

中村(裕)分科員 今の税制をしっかり進めながら、ウオッチしながら、さらなる対策が必要になれば迅速に打っていくということが必要だろうと思います。

 最後に、経済再生なくして財政健全化なしということでありますけれども、非常に個人消費も低迷をする。消費税の影響もあるかもしれません。暖冬の影響があったり災害の影響もあったと思います。個人消費が少しブレーキがかかって設備投資もブレーキがかかっているという状況の中で、GDPというのは、国内でいうと個人消費と企業の設備投資と政府支出の総和になるわけでありますから、そういう意味では、政府の財政支出というのは重要な経済政策になろうと思います。需要をちゃんとつくり上げて、デフレギャップを埋めて、経済成長に導くのは政府の大切な役割と思いますけれども、そういったことに関して大臣の所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、GDPの中に占める三大要素は、個人消費、設備投資、そして政府支出、そのほかに純輸出とかいろいろありますけれども、基本的にはその三つだと思いますが、その三つが、やはり一九九〇年代後半から、半ばごろから急激にそれが落ちております。それが、結果的には、いわゆるバブルがはじけたとか、デフレになったとか言いますけれども、いわゆる個人消費が減り、それにあわせて設備投資も減っておりますので、GDPは必然的に縮小。

 となれば、それを補うときには財政というものが機動的に動かない限りは、これはその三大要素が全部潰れることになりますので、金だけはどんどんたまって、それを使う人がいないということになっていくんだと思いますので、政府支出というのは、いかにそれをうまく組み合わせてやるかというのは大変大事なところで、安倍内閣になってから財政投融資等々使わせていただいて、確実にそういったものを、意識の改革をやらせていただいて、少しずつ前に進んでいると思っておりますけれども。

 いずれにしても、これをどの程度にやるかということが、さじかげんが最も難しいところだと思いますので、そういったものを考えながら、経済というものをきちんと再生させていきながら、財政再建という形をつくらせていただければと思っております。

中村(裕)分科員 時間になりましたので、終わります。

 経済再生なくして財政再建なしであります。なかなか、経済再生というのは、金融緩和がそうであるように、異次元のとか思い切ったものが必要になると思いますので、これからも財務省の皆さんと議論をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

あべ主査 これにて中村裕之君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬淵澄夫君。

馬淵分科員 立国社の馬淵でございます。

 分科会での質疑をさせていただきます。

 まず、十七日、二十日と二回、予算委員会の質疑で、安倍総理と西村経済財政担当大臣に、現下の日本の経済情勢、これについて質疑をさせていただきました。これは、御案内のように、十七日にQE発表ということで、それも含めての情勢の認識をお尋ねしたわけであります。

 麻生大臣には、本当に最後に一問だけということで、来年度予算のことで、税収見通し六十三・五兆円、これにつきましてお尋ねをしたところ、大臣からは、六十三兆五千億という見積りは今の段階で達成できるものだ、このように御答弁いただきました。

 内閣府から発表の十七日のQE、このGDPの速報値は、対前期比マイナス一・六、年換算で六・三%でありました。

 改めて、大臣にお尋ねいたします。この数字を見て、どのように現下の情勢、率直な御感想をお聞かせいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、先ほど言われましたように、成長率というものを見ました場合ですけれども、公共事業がプラスに寄与したことは確かですけれども、消費税等々影響があって個人消費が減少した。台風、暖冬、いろいろありますけれども、とにかく前期比で二・九%下がった。それから、設備投資につきましても、結構高い水準にはありますけれども、前期比マイナス三・七になったことなどによって、いわゆる五四半期ぶりのマイナス成長になったということは承知しております。

 ただ、日本経済につきましては、いろいろ厳しい条件、また世界経済の減速、いろいろあろうとは思いますけれども、雇用とか所得の環境というのはかなり改善してきておりますし、企業の収益は今のところ高水準ということになっておりますので、内需自体を包めるファンダメンタルというようなものは間違いなくしっかりしていると思っているので、緩やかな回復をしているという認識は変わっていない。

 ただ、先ほど言われましたように、コロナウイルスの話等々、いろいろな話が出てきておるのは間違いない。これがどういった影響に出てくるか、どれぐらい長引くかというのは不透明なところがありますので、そういったものは我々よく注意をしながら、経済財政運営に引き続き注意をしてまいりたいと思っております。

馬淵分科員 二月十八日の記者会見でもそのように述べられていますね。まだコロナウイルスの話を私はしていませんので、御答弁書に書いてあるんでしょうけれども、恐縮です。

 大臣は、雇用、所得そして企業収益、ファンダメンタルズ、内需は、これはそこそこだ、このように会見でも述べられておりますし、今の答弁書にもそう書いてあるんですね。一方で、暖冬だとか台風だとかさまざまな影響で個人消費が減少した、マイナスになったということも含めて認識はお持ちだということでありますが。

 西村大臣は二十日の私の質疑で、想定していた数字よりも大きなもの、このように述べられておりますが、麻生大臣はいかがですか。改めてお尋ねです。(麻生国務大臣「何について、あれがですか」と呼ぶ)西村大臣は、想定していたものと比べると、マイナス、これは大きいものだ、想定していた数字よりも大きなものだ、このように述べられましたが、麻生大臣の御感想はいかがですか。

麻生国務大臣 この十―十二の分のデータが民間予測より大きかったとか、そういったことに関して私がどう思っているかということだと思います。

 これは、私どもとしては、この種の話の予想やら何やらというのに関してうかつなことはなかなか言わぬことになっておりますので。

 私どもとしては、こういったマイナスというものが上回るようになったことは、これは事実でありますから、そういった民間予測の平均が、あれは四・一だったかな、だと思っていましたので、それに比べれば大きかったというのは事実でありますので、それは率直に受けとめないかぬところだと思っております。

馬淵分科員 なかなか、マーケットへの影響も考えて、お答えしにくい部分であるかもしれません。確かに、事実として大きな数字だったことは間違いないですね。西村大臣もそのように、これは個人的感想だと後ほど述べられておりましたけれども、でも、政府としてやはりそういった受けとめが私はあって当然だと思うわけであります。

 お手元には、資料一でお配りをしていますように、今回はマイナス一・六%。もちろん、前回から比較すると、マイナス一・九からですから、若干影響は少ないというふうに、安倍総理も西村大臣もそのように述べられましたが、ただし、前回は三%の引上げ幅でありました。そして、今回は二%。二%の引上げ幅であるにもかかわらず、三%幅にも迫る勢いで落ち込んでいるという大変厳しい状況です。

 さらに、かてて加えて申し上げれば、消費税の税収一%分に相当するだけの、二・三兆円にも及ぶいわゆる増税影響緩和策まで講じているんですね。それを考えると、これは前回より少ないんだという楽観論で見るわけにはいかないというふうに思います。

 私は、前回も、二十日の日にも申し上げましたが、そもそも経済の見通しについて余りにも甘過ぎるのではないかということを申し上げました。

 一月二十日の閣議決定では、「内需を中心に緩やかに回復している。」このように決定をされました。そして、二月の月例経済報告、これは二月の二十日でありますが、これも、GDPの速報値を受けてでありますが、「緩やかに回復している。」月例経済報告、二月二十日の段階でもそのように記されております。

 また、さらには、この基調判断の中には、個人消費は持ち直している、設備投資は緩やかな増加傾向だということでありますが、先ほど大臣もおっしゃったように、公共投資、この部分はプラスですけれども、個人消費、先ほど見せたように二・九%マイナス、設備投資もマイナス三・七、輸出も〇・一マイナスということでありまして、これはどう考えても景気が緩やかに回復している現状とは到底思えない状況であります。つまりは、内需総崩れ、あるいは民需総崩れの状態が現下に起きている、このことをまずは認識しなければならないと思います。

 改めて、麻生大臣、私は、前回の二十日の質疑、あるいは十七日の安倍総理の御答弁も含めまして、閣議決定と年央試算含めて、これは大きく現状の認識が乖離しているのではないか、更に申し上げると、この月例経済報告、二月二十日です、直近においても余りにもこれは認識が乖離しているのではないかということを強く感じております。

 明確な根拠、私から見ると、およそないと思うんですが、麻生大臣、この月例経済報告も含めて、このような状況について大臣はどのようにお考えかということを改めて確認させてください。

麻生国務大臣 二〇一九年の第三・四半期の話につきましては、今御指摘がありましたように、この数字が大きく民間予想を上回ったというのは事実でありますので、私どもとしては、そういった一つの、現象面では起きていることは間違いありませんけれども、少なくとも、いろいろな形でこういうのは中長期的に見ていかないかぬものだとも思っております。

 雇用とか所得の改善というのは間違いなく続いていますので、そういった中で、私どもとしては、先般取りまとめさせていただいた、事業規模でいきますと二十六兆円ぐらいになります総合経済対策等々の効果もありますので、これを今後期待をせないかぬところだと思いますが、緩やかな回復が続いていくことを私どもは期待をいたしております。

 一方で、先行きにつきましては、今言われましたように、コロナの問題とかいろいろな話が出てくることは確かですし、これがどの程度で収束するのかはよく見えませんので、私どもとしては、これはきめ細かく対応しておかなきゃいかぬと思いますけれども、いろいろな面、どういったものが出てくるかというのは、これは常に配慮をしておかないかぬところでしょうけれども、アジア経済の中においてコロナの話がどれぐらい出てくるかというのが、私どもにとりましては、目先で見えるところでは一番大きい。

 アメリカ等々、決して悪い方向ではありませんとは思っておりますが、そのアメリカだってきょう株価が千ドル下がっているじゃないかとか、いろいろな、現象面を見れば幾つかの問題もあろうとは思いますけれども、そういったものも見ながらも、私どもとしては、きちんとした、方向性としては決して間違っておらぬと思っております。

馬淵分科員 大臣、いつも雇用をおっしゃるんですけれども、失業率も、これは裏表でありますから。

 御案内のように、これは遅行性が高いんですね。経済政策を実際に実施した後、いろいろ学説ありますけれども、一年近くかかる、もっとかかる場合もあるかもしれません、いわゆる遅行性の傾向がある。そう考えますと、私申し上げたように、現下、足元の状況なんですよ。これについて、本当にそのような楽観的な話を政府として発信し続けていいのかということを私はずっと申し上げているわけです。

 なぜこのようなことを申し上げるか。大変恐縮ですけれども、大臣も長くされていますから、私、五年前にも同じことを指摘してきたんですよ。御記憶ありますか。五年前の、二〇一四年です、二〇一四年のあの四月の消費増税のときの財務省の見解について、私は当時、ちょうど一五年の二月の予算委員会で質疑をさせていただきました。

 麻生大臣は、四月の消費増税後、何度も会見をされています。私の質疑のときにもこのように述べられているんですね。「経済成長率の見込みは民間の予想をさらに下回るほど下に出ましたので、あの時代の消費の伸び率の見方は、かなり、我々から見ても間違えましたけれども、皆、間違えられたんだと思っておりますが。」と。これは、あのときも私は申し上げましたが、皆間違えたから政府が間違えていいという話じゃないんですよ。これはもうよく御理解いただいていると思います。

 これはちょっと通告していませんが、お答えできないことも承知の上で、改めてちょっとだけ聞かせていただきます。

 二〇一四年の四月の消費増税時以降、これは当時質問しているんですが、大臣は、この消費増税の影響について財務大臣として会見をされていますが、その予算委員会までの間に、私、二〇一五年二月の予算委員会で二十七日に質問していますが、九カ月間ほどの間で、十カ月ですか、何回実はこの消費増税についての影響について御答弁されたかというのは、これは通告していませんから御存じないかもしれませんが、どれぐらいだと思いますか。御記憶ありますか。

麻生国務大臣 なるべく言ったことは忘れるようにしていますので。

馬淵分科員 茶飲み話じゃないので、申しわけありませんが。まあ、通告していませんのでお答えできないのは承知していますが、私、前回にも質問しています。

 九カ月間で十七回発言されているんですね、麻生大臣。その間もほぼほぼ、私からすれば、同じことをずっとおっしゃっているわけですよ。

 当時、民間の予測よりは少ないんだというようなことをおっしゃっておられました。そして、悪化はしているということに対しても、大臣そのものが、かなりの部分は駆け込みといった予測がなされていますということで、いや、もうこれはしようがない、駆け込みによって上がって反動減だというようなことをおっしゃっておられたり、あるいは、四月に増税後、五月の減り方がどんと下がって悪化している、しかしこれも想定の範囲内だとおっしゃったり、さらには、七月に及ぶと、景気は緩やかな回復基調が続いていて影響を最小限に食いとめているんだとか、また、反動というのも和らぎつつあって、基本的に考え方は変わっていない、緩やかな回復だとか、とにかく十七回にわたってずっと、緩やかな回復が続いているとおっしゃっていたんですよね。

 この間に、雨が多かった、七月ですね。雨が多かった、これで消費が若干、悪天候の影響があった。今も同じことを言っていますね、暖冬だとか台風だとか。そして、天候の影響があるけれども回復基調は続いているとずっとおっしゃい続け、景気認識は全く変化がないと九月にもおっしゃい、そして、基調は変わらず我々の予想の範疇だと、ずっとこれは十二月まで。

 当時、このような答弁を繰り返しながら何が起きたか。二〇一四年の七月の年央試算、これを、結果、一月の経済見通しで大きく見直さざるを得なくなったんですよ。それで、大臣は何とおっしゃったかというと、いや、民間もみんな間違えているんだとおっしゃった。これは、みんな民間が間違えているから政府が間違えていい話じゃないですよ。私が持っている問題意識は、このようなことを再び繰り返すことになりはしないかということなんです。

 このように、大臣は同じような答弁を繰り返されている。私から見ると、本当にこうした答弁を政府発信し続けていいんでしょうかということですよ。

 民間の試算では、みずほやニッセイや第一生命といったところでも、これは軒並み民間十二社の予測はマイナス一%近傍でありました。これを大幅に超えるマイナス一・六なんですね、今回のGDPの速報値は。

 いいですか、もう一回言いますよ。前回と同じ言いわけを続けているんです。しかも、前回は九カ月間変わらず同じことを言い続けて修正しました。今、このタイミングの中で、十月だからわからないという話じゃないですよ、消費税を引き上げた責任は今の内閣にあるわけですから。その所管の大臣として、景気が回復基調にある、雇用やあるいは設備投資も含めてなどと言っている場合ではないでしょう。

 改めて私はお尋ねしますが、このような甘い見通しを続けるんじゃなくて、厳しい予測をするという決意、認識をお持ちになるべきじゃないでしょうか。いかがですか。

麻生国務大臣 御指摘になりました点はいずれも正しいんだと思いますが、二〇一四年のいわゆる実質経済成長率が政府経済見通しを下回った、これは事実だと思いますが、今回の消費税率に当たりまして、いわゆる先ほどの反省の上に立って、少なくとも今回の二%の増税をさせていただいた部分に関して、今、いわゆる消費等々で、一番金を稼ぐ、実際金も使うという現役、そこらのところが一番よく子育て世代とか言われますけれども、そういった世代に対して、我々としては、いわゆる教育費の無償化とか、また、いろいろ御意見ありますけれども、少なくとも、ジニ係数の高い低所得者向けの軽減税率とか、また、ポイント還元だ、プレミアム商品券だ、自動車だ、住宅だといったような大胆な減税など、それなりの対策はさせてきていただいておりますので。

 前回のときとはこういったことは変えてきたというように、反省の上に立ってやらせていただいているんだと思っておりますので、現時点では駆け込み需要その後の落ち込みは前回ほどではない。三から二でもこんなじゃないかと言われるけれども、それじゃなかったらもっと減っていたのかもしれぬということなのかもしれませんが。

 いずれにしても、そういったものに加えて、今回は下方リスクとして海外からの問題があるということは大変大事なところだと思いますので、私どもとしては、安心と成長ということで先取りをしておかないかぬ、押さえておかないかぬということで、十三兆円規模のいわゆる財政支出を行わせていただいて、対応を考えておるということであります。

 私どもとしては、各種の施策とか経済対策とか、そういったものをやって、持続的な経済成長の実現につなげていく対策というものをそれなりにさせていただいていると思いますので、そういった御見識があるということを知らないわけではありませんけれども、私どもとしては、今の段階ではこういったことを申し上げさせていただいております。

馬淵分科員 大分無理があると思いますよ。教育の無償化も含めて、これは去年の十月じゃないですか。もうスタートしているわけですよ。しかも、二・三兆円、一%分ですよ。そこまでの措置もしているんです。二〇一四年はしていませんからね。だから、二〇一九年の今回は、それこそ政府鳴り物入りで構えてやっているにもかかわらず、個人消費でマイナス二・九、マイナス一・六のGDPの低減ですよ。

 回復基調というのは上向きという意味ですよ。下がっているのを回復基調とは言いませんよ。大臣、なぜそれを回復基調と言うんですか。将来的な見通しを見て語っていると言うのであれば、少なくとも、前回もそうでしたが、もう政府の見通しの変更なんかあっちゃならぬですよ。

 でも、今は目の前にコロナウイルスがあるから、またそれは違う理由としておっしゃるかもしれませんが、私は今、現下と申し上げた。足元、十―十二の状況を見た今現状の中でいうと、この見通しを見直すべきではないかということを繰り返し申し上げているわけです。

 そこで、コロナウイルスについての影響について若干触れますが、G20に行かれまして、大変御苦労さまでした。そのG20における共同声明は、ここは世界経済でありますから、来年にかけて緩やかに上向くと。これはアメリカの景気も含めてという世界経済の中での話です。ただ、下振れリスクは根強い、このように言われています。

 大臣は先ほど来、もう回復だ、回復だとずっと言い続けていますね。これは五年間変わらず言っておられるわけでありますが、コロナウイルスに関しては何とおっしゃっているかというと、大臣は、このG20の会議の後の会見で、どのくらいの影響になるのか見えていない、中国の言っている話はあるが、あの国は数字はよくわからないところなので、どれくらい本当なのかよくわからないのが正直なところだ、このように述べられています。つまり、大臣の御認識は、コロナウイルスの影響というのは未知数だ、わからない、この会見の発言ではそう見えますよ。そういうことでしょうか。いかがですか。

麻生国務大臣 コロナウイルスについては、これは各国いろいろなことを言われますけれども、このコロナウイルスに関するいろいろな各国の発表というのが、隠しておられる面もあってようわからぬ。例えば北朝鮮はゼロですから。そんなことがあるかと誰でも思いますわな。でもゼロです、公式は。韓国も、ついこの間までやたらなかったのに、急にこのところふえてきて、いきなり四百だ、五百だ、六百だと、ようわからぬのですよ。おまけに、中国は一月二十日まではほぼゼロですから。一月二十日からいきなり、一千人台亡くなりましたと。

 こういったような公式発表に関して極端な差異があるところの話をもとにして、我々各国の財務大臣が集まって、この種の極めて安定性を欠いたような情報をもとにして将来を予想するのは時間の無駄、こういったようなことは、みんな、もう少し情報がきちんとしたものが出てからしようやと。

 少なくとも、こういった問題に関して、各国に影響があるということに関して、今の段階では最大限努力するということでしか言いようがないのでという話で、コロナウイルスに関しては、長期的によく監視をしていこうということで話がつく方向に持っていったということだと思っております。

馬淵分科員 未知数であることは私も否定はしません。確かに、各国におかれては、数値を未公表あるいは隠しているのかもしれません。それは、でも日本も同じように見られているわけですよ。その上で、未知数だから全く予測がつかないということでは、財務大臣としていかがなものかと私は申さざるを得ない。

 民間のシンクタンクなどは、二〇〇三年の深刻化したSARSと同程度の影響が出た場合でも、実質GDPで〇・二%程度、金額ベースで一兆円余りが押し下げられるという試算を発表されておられます。

 また、二十一日に大和総研が、経済の予測、試算を発表されておられます。

 この大和総研、これはお手元の資料を配りましたが、これは、本予測の想定、リスクシナリオと二種類ありまして、ここでは、これはかなり足元の具体的な数字のことをおっしゃっているわけでありますが、三カ月程度この新型肺炎の流行期間があるとすれば、日本向けの中国人の旅客数、これも既に団体は渡航制限がかかっています、それ以外にも個人の方々もいらっしゃる、これが減ずると見て、百五十万人。中国人以外の訪日客数百五十万人で、およそ三百万人の方々が少なくともインバウンド旅客数として減るわけですね。そしてさらには、一年程度になれば、六百万、六百万の一千二百万人という数字。二〇一九年の訪日客が三千百八十八万人。三カ月であっても約一割。また、一年程度になれば四割。これは目の前でもう起きているわけですよ。

 大臣、これは遠い将来の予測じゃないんですね。目の前で起きているんです。もうもはや未知数などと言っていられない状況であります。

 このような状況で、コロナウイルスの影響が目の前に起きるという中で、経済の見通しの見直し、これを私はするべきだと思っているんですが、大臣、そこでまず、これは通告外のお尋ねですが、過去にこのような政府の経済の見通しの見直しをしたことがあるかということについて、これは端的にお答えいただけますか。通告外なので。

麻生国務大臣 何回ぐらいしたことが、ちょっと今正確なことを申し上げられませんので、今、二、三回あるかと言われれば、おまえ、二、三回と言ったじゃないかと言われ続けるのが大体この世界ですので、この種のことにはひっかからないように努力していますので。

 今、IMFの成長率というのを見直したという点で言わせていただくと、今回は、〇・一下げて、三・三だったのを三・二に引き下げ、そして、中国に関しては、中国の経済成長率は六・〇と予想していましたけれども、五・六、〇・四中国に関して引き下げておるというのが今のIMFが出したということだと思って、日本に関して幾つかやった記憶には、今の段階ではわかりません。

馬淵分科員 ひっかけなんかしませんから、御安心くださいよ。

 私は、このような政府の見通しについて、かたくなに守られていこうとされているその意思はわかります。いろいろなことを勘案してということでしょうけれども。でも、過去にはあるんですね。

 二〇一一年六月十五日、お手元に資料をお配りしましたが、東日本大震災、あの三・一一を受けて、三カ月後に、政府の経済見通し、同じように年初に発表しますが、それを、六月十五日、見直しをかけて、その会議で表明されています。当時、与謝野経済財政担当大臣です。

 大幅な下方修正は避けられないという見通しを示して、年央試算で、そこで大きく変えていくんだということを、この資料にありますように、震災前はプラスの一・五%程度だったのをゼロ%近傍まで実質GDPの成長率を、これは下方修正をかけられたわけです。

 年始の、この一月二十日の閣議決定で見通しを発表されました。今殊さらにすぐはできないというお考えかもしれませんが、過去においてもこのように、東日本大震災のような大きな影響があった場合には見直しをかけられています。

 改めて、大臣、七月の年央試算では遅いですよ。もう今すぐにでも私は新たな対策が必要だと思っています。

 二点お尋ねしますが、改めて、過去においても政府はこのように見直しをしています、経済見通しの見直しをすべきだと思いますが、それはいかがか。そして、二点目として、今の総合経済対策では、これは生ぬるい。申しわけありませんが、二十六兆円といっても実質これは十三兆円、そのうちの国費は七・六兆円。しかも、それが消費に届くような部分ではないですよ、大半が。このような経済対策では生ぬるい。私は、直接消費に届くような二次補正を含めた根本的な対策が必要だと思います。

 これについて、この二点、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 今の見通しにつきましては、私どもの今の段階では、先ほど申し上げた答弁のとおりです。さらに、このコロナウイルスが長期に残って、かつ拡大していったことによって日本経済に与える影響、またアジア諸国においての影響等々によって日本がこうむる下押しリスク等々については、今の段階で考えているわけではありませんけれども、そういったときには柔軟に対応する、当然のことだと思います。

 また、今の対策については、二次補正等々というお話があっておりましたけれども、今の段階で二次補正を考えているわけではありませんが、私どもとしては、いずれにしても、いざそういったときになりましたら、きちんと果敢に対応してまいります。

馬淵分科員 これはもう本当に喫緊ですよ。本当に。これは、緩やかに回復どころか、もう真っ逆さまですよ。この状況で真水で数兆円程度の補正を組んで、しかも、今の総合経済対策などを見れば、これは長期にわたるものばかりじゃないですか。こんなある意味生ぬるいことじゃだめですよ。災害の復旧復興とか、これは全部長いスパンのものばかり。とにかく、直接家計に届くような数兆円規模の真水の第二次補正を早急に組まなければならないと思います。

 改めてそのことを申し上げますが、大臣、それについての真摯な取組をお願いしますが、最後の答弁をいただけますようお願いします。

麻生国務大臣 先ほど申し上げましたように、緊急事態等々いろいろな、見解は分かれておりますけれども、そういった事態になりましたときには、我々は対策を打つということにちゅうちょすることなく対応してまいりたいと考えております。

馬淵分科員 ありがとうございました。

 早急に取組をいただくことを申し上げて、私の質疑を終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて馬淵澄夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、大岡敏孝君。

大岡分科員 ありがとうございます。滋賀県の大岡でございます。

 きょうは、分科会ということですので、現場目線から幾つかの質問をさせていただきたいと思います。

 この質問に先立ちまして、財務省、国税庁そして総務省が来ていただいていると思います。昨今の新型コロナウイルス対策、各省挙げて対応していただいていることに感謝を申し上げますし、また、現場で対応に当たっていただいている皆様には、感謝と、そしてねぎらいを申し上げたいと思います。

 それでは最初に、BEPS、移転価格税制から質問をさせていただきます。

 昨年末の自民党税調の税制改正大綱に、初めてBEPSという言葉が盛り込まれました。これは甘利税調会長主導で書き込まれたものと思っておりますが、この世界的な課題となっております国際課税について我が国としての方針がしっかりと示されたというのは、私は大きく評価をしたいと思います。

 一方で、このBEPSが現場で一体どういったことを起こしているかということにつきまして、今回は質問をさせていただきたいと思います。その中でも、特に過大支払い利子税制と言われるBEPSの一部がございますが、今回はそれを取り上げさせていただきたいと思います。

 外国企業が日本に進出してきたときに、大きな利益を得ながら、一方で外国の本国の親会社から貸付けがあったとして、大きな利子をどんどんどんどん外国に仮に流していたとすると、これはやはり日本としては課税逃れとして、認められないということになります。

 一方で、では、日本企業が海外展開したときはどうなるのか。これは当然、現在、政府としては、日本の中小企業が海外展開をしていくことを熱心に支援をしております。更に言うと、我が国の低金利を最大限生かして海外展開していただくように後押しをしています。

 その一つのツールになっているのが親子ローンと言われるやり方でございまして、日本の金融機関が日本にある親会社に、又貸しをすることを前提に貸し付けて、その親会社から外国の子会社に貸付けを行うという、この親子ローンというやり方で展開をし、そして、これがまさに外国につくった子会社の信用を補完するとともに、日本の低金利を生かして海外展開をする重要なツールになっております。

 一方で、では、これがBEPSの視点からどういったことを起こすかにつきまして、今回は質問させていただきます。

 現在、国税庁がこうした支払い利子についてどのような扱いをしているかといいますと、まず第一優先としては、外国子会社の現地調達金利を適用しなさいと言っているんですね。つまり、例えば東南アジアに進出した場合は、金利でいうと七パーとか八パーとか、これを本国に送ってこいというのが第一優先。第二優先は、日本での調達金利を適用しなさい、つまり、一%を切る極めて低い低利の利率を適用しなさい。第三優先は、その通貨の国債運用をしたときの金利を適用しなさい。つまり、日本の円建ての場合は、場合によってはマイナス金利になります。

 実は、国税庁が本国にある日本企業に課税をするときの目安が、東南アジア進出の場合は八パーを使え、次は一%を使え、その次はマイナス金利を使え、このぐらい物すごい格差、物すごいばらつきがある状態を適用している状態でございまして、これは極めて安定性に欠けているというのが今の実態なんですね。

 更に申し上げますと、仮に東南アジアのある国に進出をしましたというときに、この第一優先の八%を送ってこいということになりますと、当然、せっかくこの日本の低金利を生かして海外進出しようとしているのに、現地子会社のメリットというのは全くなくなってしまう。さらに、現地の国の課税当局からすると、いやいや、もともと日本で一%で調達したものを八%も送るというのは、現地国から見ると過大支払い利子じゃないかということで、この送金そのものを否認されてしまう、あるいは送金をストップされてしまうことがあります。

 こうしたことが幾つかの国でもう既に発生をしておりまして、これが起きてしまうと、当然二重課税になります。二重課税になる上、我が国の、日本の企業からすると、現地から送られてこないキャッシュも収入認定されてしまって、課税をされてしまう。

 つまり、せっかく、最初に申し上げたとおり、日本の低金利を生かして、また親子ローンという形で信用補完しながら、日本企業が海外展開するのを後押ししようとしているやさきに、一方で、我が国の国税庁の対応からすると、二重課税を容認し、さらには送られてこないキャッシュに対して課税をしてしまっているという実態があるのが事実なんですね。

 今回、税制改正大綱の中にどう書かれたかといいますと、このBEPSにつきましては、主導的立場から国際合意を得やすいように進めていくということが明らかに書かれています。もちろん、我が国は当然先進国でありますから、途上国との向き合い方も含めて、主導的立場で、しっかりと丁寧に、日本企業がこれから進出していこうとする東南アジアあるいはアフリカの国々に対しても、国際合意を得やすい形で主導的な対応をしていくべきだと思いますが、この実態について、運用のルールを皆さんどのようにとられているか、あるいは、これから運用のルールを見直す考えがあるのかないのか、こうしたことについてお答えをいただきたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘ありましたとおり、いわゆる親子ローンにつきましても、独立企業間価格というものとの比較で課税所得の計算が行われることになります。

 この独立企業間価格の算定でございますが、いわゆる簡便法という形で、先ほど御指摘ありました三つの方法がございまして、特に一つ目、資金の借り手である海外の子会社が現地の銀行等から同様の条件で借り入れた場合の金利、これが第一優先で比較されるというものでございます。

 この考え方でございますけれども、独立の第三者間における金利の決定に当たっては借り手の信用力が主な要素になるということを踏まえたものでございまして、この考え方はOECDの移転価格ガイドラインでも示されているところでございます。

 こうした点も含めまして、この税務上の取扱いにつきましては、具体的な事例も示すなど明確化を図っているところでございますけれども、ビジネスの実態というのは日進月歩でございますので、引き続き、そうした動きを的確に把握しながら、経済実態を踏まえた運用方針の明確化や執行に努めてまいりたいと考えてございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 次長から非常にわかりやすい御答弁をいただきましたので、ぜひ、そうした形で、絶え間なく、まさに経済が進む速度と合わせて、見直しも連動して進めていただければありがたいと思います。

 そうした中、日本公庫、日本政策金融公庫が、タイあるいはベトナム向けにクロスボーダーローン、つまり、直接現地子会社に貸付けを始めるということを発表されました。私、これはもう大変な英断だと思っておりまして、田中総裁始め公庫の皆様の御努力の成果だというふうに思っております。ぜひこうしたことを頑張ってやっていただきたいと思っております。

 ただ、これは、同じく税制から見た場合には、当然、仮にドル建てで貸すとすると、タイやベトナム、現地調達すると極めて高い金利を支払わないといけないところに低利でドル資金を供給するということができるようになるわけですね。このことを国税庁として今後の見直しに反映させる考えがあるのかないのか。

 更に申し上げると、例えばタイ向け、ベトナム向けがスタートしますと、親子ローンでやった場合の国税庁の税の取扱いと、クロスボーダーで直接公庫から借りたときの税の取扱い、これは変わる可能性があるわけですね。でも、これを変えてしまうと、同じ金融機関、親子ローンもそうだし、公庫の直接のクロスボーダーローンもそうだし、金融機関によって税の対応に差をつけてしまうということにつながりかねない。私は、やはりこれは共通の取扱いをするべきだというふうに考えておりますが、このクロスボーダーローン、始まりましたら国税庁としてどのように取り組まれるのか、教えていただきたいと思います。

田島政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から新たなローンの例を御指摘いただきました。まさに、先ほど申し上げたとおり、日進月歩の取引実態の一つの例だと考えております。こうしたさまざまな経済実態を踏まえた運用方針を明確化するに当たり一つの材料とさせていただきたいと思いますし、今御指摘いただいたような共通なルールというものも念頭に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

大岡分科員 ありがとうございました。

 そうした姿勢でぜひ進めていただきたいと思います。

 次に、ちょうど確定申告が始まりまして一週間となります。確定申告絡みで幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、各税務署の職員そして税理士の先生方におきましては、正しい納税のために御努力をいただいていることに深く感謝を申し上げます。

 その上で、まずは、ふるさと納税についてお尋ねをしたいと思います。

 このふるさと納税、賛否さまざま意見がありますが、その賛否につきましてはきょうは議論をいたしませんが、ふるさと納税をすると決まって受け取れるのが返礼品でございます。というか、私としては、返礼品でもってふるさと納税を釣るというのは、本来の寄附の形と違うのは余りよろしくないと思っておりますが、実態として、ふるさと納税をすると返礼品が必ず受け取れる。

 では、この返礼品、一体、税の扱い上はどういったものになるのか。個人の収入になるのか、その場合はどういった収入の種類になるのか、教えていただきたいと思います。

稲岡政府参考人 お答え申し上げます。

 ふるさと納税を行った方が地方団体から返礼品を受領した場合の経済的利益につきましては、所得税法上の一時所得に該当するものでございます。

大岡分科員 ありがとうございます。

 そのとおりですね、一時所得になる。

 私、早速、総務省のふるさと納税の資料を見ました。確定申告記入例、さまざま書かれておりますが、ふるさと納税の寄附金額についての、まあ、税金が安くなりますよという書きぶりはたくさんあるんですけれども、この肝心の返礼品を計上するということが一言も書かれていないのが実態でございます。これで本当によいのでしょうか。

 私としては、やはり、総務省あるいは国税庁も含めて対応されているものであるだけに、ふるさと納税はふるさと納税で寄附扱い、一方で、もらう返礼品、目安が寄附金額の三〇%であれば、これもしっかりとガイドラインには載せて、国民に正しい知識、正しい情報を提供するべきだと思いますが、どのように考えておられますでしょうか。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 一時所得の金額につきましては、最大五十万円の特別控除額を控除した金額とされておりまして、また、現行のふるさと納税指定制度におきましては、返礼品の返礼割合は三割以下とされているところでございます。

 そのような中で、返礼品のみによって一時所得を確定申告しなければならないケースは、極めて多額のふるさと納税を行った場合に限定されているものと考えております。

 私ども、ホームページに確定申告の記入例をつけておりますけれども、このような限定されたケースでございますので記載例ではお示しをしていないところでございますが、返礼品を受け取った場合の経済的利益が一時所得に該当するものであることにつきましては、二十九年四月の総務大臣通知あるいは昨年四月の課長通知によって、全国の地方団体に対して、返礼品の提供の際などに寄附者に対して周知をすることを求めております。これを受けて、地方団体やポータルサイトにおいて、ホームページにおいてその旨を掲載するなど、寄附者に対する周知を行っていただいたものと承知しております。

 また、総務省それから国税庁ホームページのQアンドAにおいても同様の注意喚起を掲載しております。

 各納税義務者におかれましては、実態に応じ、適切に申告、納税を行っていただくよう、引き続き周知に努めてまいりたいと考えているところでございます。

大岡分科員 ありがとうございます。

 だとすると、これ、確定申告書Aというのをホームページでも載せておられるんですね。ここにも一時所得というのは全く空欄になっているんですけれども、ここの一時所得欄もしっかりと反映させるような書きぶりに変えるという理解でよろしいんでしょうか。

稲岡政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたが、現行の記載例は一時所得について記載するような形になっておりませんが、それは、先ほど申し上げましたとおり、極めて多額のふるさと納税を行った場合に限定されているケースということでございますので、今これをちょっと変えようということは考えておりませんが、いずれにいたしましても、一時所得に該当するということについてはきちんと周知をしていきたいと考えております。

大岡分科員 いやいや、そうじゃなくて。

 では、国税庁に聞きますけれども、一時所得がありながら一時所得を一円も記載しないというのは、税法上大丈夫なんでしょうか。これはだめだと思うんだけれども、本来。

 例えば、十万円の寄附をして三万円の返礼品を受け取った。だとすると、この収入欄には一時所得としてしっかり記載しないと、確定申告上おかしくなってしまうと思うんですね。例えば、百万円寄附したら、約三〇%、三十万の返礼品が返ってくるわけですね。だったら、この一時所得の収入金額等には少なくとも三十万と書いて、そして、所得金額のところは、先ほどまさにおっしゃったように基礎控除があるので、基礎控除で五十万の控除があるのでゼロになりますけれども、書くのは書かないと、これは所得税法上おかしくなるんじゃないかと思いますが、どうでしょうか。

田島政府参考人 済みません、通告にございませんので、記憶で申し上げますと、五十万の所得控除がございますので、一カ所、一つの場合であれば記載不要でございますが、幾つか一時所得がある場合には、これは記載が必要となるというふうに承知してございます。

大岡分科員 これは多分違反になると思います。一時所得というのは、ほかにも生命保険の戻りとかもありますから、全部合算してみないと五十を超えるかどうかわからないわけですね。ふるさと納税で例えば三十の一時所得があった、でも、生命保険の戻りがあと三十あった、これは、そうすると課税なんですよ。

 にもかかわらず、ふるさと納税、一円も、収入と所得というのがありまして、収入には少なくとも書かないといけない、収入には書いた上で所得がゼロになるんだったら、これはわかる。でも、やはりここは、ふるさと納税、これだけ注目されているわけですから、正しく指導をするということも頭に入れておいていただきたいと思います。ちょっと時間の関係で、これ以上は詰めませんが。

 あわせて、ワンストップ特例につきましても、完全にこの一時所得というのを無視してしまっているんですね。本当にその扱いでいいのかどうか、もう一度よく、私たちも議論をしていきますけれども、やはりワンストップ特例であっても、一時所得は一時所得としてしっかり認識する、これが税金のルールでございますので、そこは今後も周知をしっかりとしていただきたいと思います。

 次に、この時期、非常に多いのが、株式の配当の扱いでございます。

 特に目立つというか案件が多いのが、年金生活をしながら株式配当を受けておられる方。これは、現在のルールでは、分離課税、それから年金なども合算しての総合課税、そして申告不要、この三つを選べることになっております。

 これをやってしまうと一体どうなるかといいますと、所得税上は、配当も含めて総合課税を選択して、低い税率を選択する。その上で、地方税、地方の住民税の扱いについては、これを合算せずに申告不要とする。そうしないと各種保険料とかにはね返るということで。この確定申告の時期に、国と地方でばらばらの対応をしてしまっている、まあ、ばらばらの対応ができるようになってしまっているというのが現状です。

 あわせて、当然、ばらばらの対応をすればどうなるかというと、地方の収入は減ります。地方の収入は、申告不要扱いにして、小さく見せるということができるようになってしまいます。

 したがいまして、年金生活をしながら株式の配当を受けておられる方というのは、国から見た場合のこの方の収入と、地方から見た場合のこの方の収入というのは、全然違う数字が出てきてしまっているというのが現状です。

 現在、マイナンバーを含めて導入をして、国民共通の基準でもって、本来、国から見ても地方から見ても所得は所得として把握をする。その上で、どう課税するか、どう賦課するかというのは当然地方の裁量が私はあってもいいと思いますけれども、少なくとも国民の所得に関しては、国から見ようと地方から見ようと同じ数字でもって把握をして、その上で、国がどう賦課するか、地方がどう賦課するか、それはそれぞれの自主性でもって進めていくべきだと思います。

 したがいまして、この時期、当然、各税務署、それから税理士さんを悩ませる選択制でございますが、将来的には、この二重化ではなくて一本化、二重化というか三重化ではなくて一本化を目指していくべきだと思いますが、総務省の考えを教えていただきたいと思います。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 上場株式等の配当につきましては、所得税、個人住民税ともに、納税義務者により、総合課税、それから申告不要、申告分離課税が選択可能な仕組みとなっております。

 こうした仕組みですが、個人投資家の市場参加を促す観点から段階的に導入されたものでございますが、いずれの改正時におきましても、納税義務者が所得税と個人住民税でそれぞれ異なる課税方式を選択することを法令上許容してきたところでございます。

 このように、課税方式の選択については従来から許容されておりましたが、二十九年度改正でこのことを法令上明確化したこともありまして、御指摘のとおり、所得税は配当を含めて総合課税、それから住民税は申告不要とする方法を選ぶケースがあるということは認識しております。

 個人住民税の課税の基礎となるべき所得金額につきましては、所得税における所得金額を基準とすることとしております。したがって、基本的には、所得税の所得と個人住民税の所得は一致することになるわけでございますが、現行制度上、御指摘のような場合において、所得税と個人住民税の所得が異なることとなります。これは、従来から異なる課税方式を選択できることとしている結果であるということで御理解を賜りたいと思います。

 所得について一本化すべきとの御提案につきましては、配当所得に係る個人住民税の基本的なあり方にかかわる問題でございます。制度導入の経緯等を踏まえつつ、慎重に検討する必要があると考えております。

大岡分科員 ありがとうございます。

 これはもちろん、国から見た所得と地方から見た所得がずれているというのはいろいろなことにそごが出てきてしまう可能性があるのと、それ以上に地方の税収が減ってしまうということもございますので、今後、私もしっかりと取組をしていきますので、制度見直しにつきましても御検討いただければありがたいと思います。

 次に、スマホによる確定申告についてお尋ねをします。

 昨年から、スマホによる確定申告が始まりました。一方で、利用者に聞いてみると、途中で保存ができないとか、住宅ローンがあると全く活用できないなどの意見があるやに聞いております。スマホですのでカメラ機能がございますので、本来は、さまざまな証書関係も、住宅ローンであったり源泉徴収であったり、それもカメラで撮影することによって対応できるはずだと思いますが、現在の活用状況、そして並びに、今後、アプリ化、現在はスマホを使ったウエブページでやることになっているんですけれども、アプリ化も含めて検討するべきだと思いますが、国税庁としての今後の対応方針について教えていただきたいと思います。

田島政府参考人 スマートフォンを用いた確定申告、いわゆるスマホ申告でございます。

 これは二十六年度から実は利用可能でございましたが、専用画面がなかったということで大変使いづらい状態でございました。そのため、国税庁におきましては、平成三十一年一月からスマホ専用画面を設けまして、順次その対象を拡大しておるところでございます。件数につきましては、平成三十年度分の確定申告で三十六万六千人となってございまして、今年度はまたこれよりも多い御利用をいただけるのではないかと考えているところでございます。

 もう一点、いろいろ利用の利便性のお話がございました。

 実は利用者アンケートをスマホ申告については実施してございまして、先ほど二点ございましたが、まず保存については、実はシステム上はこれは可能でございますが、なかなか使い方がわかりづらい、あと、簡便ではない、こういう御意見がございます。

 また、住宅ローン控除につきましても、これも可能ではございますが、スマホの専用画面がないということですので、パソコン用の画面を用いてスマホでデータ入力しなければならない、非常に使い勝手が悪いという御指摘をいただいているところでございます。

 こういった御意見も踏まえながら、やはり実際、スマホ申告のシステムやソフトの操作性向上、使い勝手の改善に取り組んでいきたいと思いますし、先ほどございました、今後の取組としては、源泉徴収票等をスマホのカメラで撮影して、これを確定申告書の作成システムに自動入力できる機能、こういったものがあれば非常に便利だと思いますので、こういったものを、技術的な課題も含めて検討を今進めているところでございます。さらなる利便性の向上に努めてまいりたいと考えてございます。

大岡分科員 ありがとうございます。

 特に若い方が、スマホになじんでいる世代がこれからどんどん成人していきますので、ぜひこうした対応を進めていただきたいと思います。

 最後に、国税庁の定数の増員の効果と課題についてお尋ねをしたいと思います。

 国税庁、御存じのとおり、政府の税収を預かっていただきまして、税収がなければ、私たち、政府そのものを運営できないわけでございますので、本当に貴重な仕事をしていただいていると思います。民間企業におきましては、基本的に稼いでくるところが大きな顔をしているわけでございまして、国税庁の場合は稼ぐというわけではないかもしれませんが、収入してくるところが大きな顔を一般的にはしているんですが、残念ながら財務省の中では使う方が大きな顔をしているということで、もう一段奮起していただきたいというふうに思っております。

 そうした中、国税庁の定員は、平成二十四年から一貫して減少傾向にありましたが、二十九年を境に増加に転じまして、令和二年では五十人の増員が認められることになりました。当然、増員が認められたということは、歳入面で正しく納税をいただく効果があったのではないかと思いますが、これまでの増員に伴う歳入増というのはどの程度あったのか、また、この定員の増加に対する取組を国税庁としてどのように自己評価しているのかを教えていただきたいと思います。

遠山副大臣 大岡委員におかれましては、日ごろから税務行政に対しまして多大な御理解を、そして御支援を賜っておりますこと、この場をおかりして、まず感謝を申し上げたいと思います。

 その上で、この税務行政を取り巻く環境が厳しさを増す中で、引き続き適正、公平な課税、徴収を実現していくために、もう先生既に御指摘ありましたとおり、平成二十九年から増員に転じております。平成二十九年度におきましてはプラス一の純増、平成三十年度においてはプラス七の純増、令和元年度においてはプラス九、そして、先生御指摘のとおり、令和二年度予算案においてはプラス五十の純増ということで、四年連続の純増となっております。

 先生の御質問は、こうした国税庁の調査体制の整備強化の上で結果が出ているかということでございますが、税収がどの程度ふえているかについて申し上げれば、例えば、国際的な租税回避については、平成三十年七月からの一年間で、海外取引を行っている個人、法人に対して約二万件の調査を実施いたしまして、追徴税額は約一千百三十億円となるなど、一定の成果が得られているものと考えております。

 いずれにいたしましても、引き続き、業務の効率化を図りながら、必要な定員・機構を確保して、税務執行体制の強化を図ってまいりたいと思っております。

 以上です。

大岡分科員 ぜひ、これからも大きな成果を出していただきたいと思います。

 それでは、最後の質問とさせていただきますが、この国税庁、IT、AIなどの最新のデジタル手法、あるいはシニア人材、OBなどを使って、新しい技術と伝統的な技術、それを両方使って、今後さらなる調査研究の増加、あるいは調査の合理化を進めていくべきだと思いますが、今後の取組についてどのように考えておられるか、教えていただきたいと思います。

田島政府参考人 ただいま委員御指摘のとおり、ICTやAIなどの最新技術と、これまで職員が培ってきたこうしたノウハウを組み合わせることが重要ということで、いろいろな取組を行っているところでございますが、この中で、例えばICTなどの最新技術の活用の観点では、これまでの申告内容ですとか職員の調査実績などを統計学や機械学習等の技術を用いてデータ分析を行う、いわゆるBAツールといった高度なツールを用いて分析し、調査対象者の選定等の効率化、高度化などに取り組んでいるところでございます。

 引き続き、職員のノウハウの蓄積や調査能力の向上に努めながら、こうした取組を進め、調査の効率化、高度化を進めてまいります。

大岡分科員 ありがとうございました。

 財務省、国税庁、そして総務省、皆さん頑張ってください。

 終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて大岡敏孝君の質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

あべ主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。森法務大臣。

森国務大臣 令和二年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じて、国民の皆様の安全、安心な生活を守るとともに、国民生活を取り巻く状況の変化に応じた新たな政策課題に取り組むため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省の一般会計予算額の総額は八千二百八十七億五千五百万円で、所管別に区分いたしますと、法務省所管分は八千二百五億七千一百万円、国土交通省所管として計上されている法務省関係の国際観光旅客税財源充当事業の予算額は八十一億八千四百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計の予算額は、五十一億一千二百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元にお配りしております印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

あべ主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま森法務大臣から申出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

あべ主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井林辰憲君。

井林分科員 ありがとうございます。自由民主党の井林でございます。きょう、予算委員会第三分科会で法務省及び関連の質問をさせていただく時間をいただきまして、御礼を申し上げたいと思います。

 通告に従って質問させていただきたいと思います。

 まず、家庭裁判所でございますけれども、事前に資料をいただいているんですけれども、家庭裁判所の機能を読みますと、裁判所法三十一条三第一項に規定されている裁判所でありまして、家庭の平和を維持し、少年の健全な育成を図るという理念のもとに、昭和二十四年一月に新たに設けられた裁判所でありまして、夫婦関係や親子関係の紛争などの家事事件について調停や裁判、あるいは非行のある少年の事件について審判を行っている非常に重要な裁判所でございます。

 分科会でございますので私の地元の話をさせていただきますけれども、私の地元には静岡家庭裁判所島田出張所というものがございますけれども、この島田出張所の扱う調停、審理件数、それぞれ新受件数の推移、あと填補回数の推移を教えてください。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 島田出張所で扱う調停事件の推移でございますけれども、平成二十九年は五百二十一件、平成三十年は四百六十四件、令和元年は四百五十二件でございました。

 あわせて、家事審判事件でございますけれども、平成二十九年は三千三百四十三件、平成三十年は三千五百四十八件、令和元年は三千五百六十七件という推移でございます。

 あわせて、裁判官の填補回数についてもお尋ねがあったかと思います。これにつきましては、平成二十七年以降、平日の週五日のうち四日、裁判官が静岡家裁本庁から出張して、事件処理を行ってございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 いろいろ増減はありますけれども、私も大体見させてもらいますと、全国的な推移と同等だということでございます。ただ、その中で特に、平成三十年以降、調停事件と審判事件を合わせて四千件を超えているということで、非常に大きな数字になっているんだろう。令和元年度も、更に数字がふえているということでございます。これは非常に私は多いなというふうに思っているんですが、まず、家庭裁判所の出張所というのが全国に幾つあるのか、そして、静岡家庭裁判所島田出張所の新受件数の総数は全国の中で何番目なのか、教えてください。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 現在、家庭裁判所の出張所は、全国で七十七庁ございます。このうち、令和元年に島田出張所に申し立てられました調停事件、審判事件の総数は、今申し上げた全国の七十七の家庭裁判所出張所の中で、千葉の市川出張所に次ぎまして、二番目に多くなっております。

井林分科員 ありがとうございます。

 二番目に非常に多いということで、私も多いなとは個人的に感じていたんですけれども、ここまで多いとはというのが率直な感想でございます。

 家庭裁判所が扱う事案を考えると、この件数の多さを考えると、填補回数、裁判官が来ていただいてさまざま調停をしていただく日が週五日間のうち週四日しかないというのではなくて、やはり、五日間、ウイークデーはきちっと見ていただくという体制が必要だと思っておりますし、また、本来であれば、これだけ人が多ければ、出張所ではなくて、支所として機能を拡充するというのが私はあるべき姿だというふうに思っております。

 これは、もちろん組織とか定員とかの話はありますけれども、しかし、家庭裁判所が扱うものの重要性、事案の重要性、家庭でのさまざまな紛争、最近でもニュースをにぎわしていて、心が痛む事案が非常に数多くあります。そういうことを鑑みれば、普通に考えれば、支所にする、最低でも週五日の填補回数をやるというのが考えられることだと思うんですが、裁判所のお考えをお聞かせください。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所の場合に、出張所以外でとなりますと支部という形での配置ということになろうかと思いますけれども、支部の配置につきまして御指摘がございましたが、これを含む裁判所の配置は、裁判所への国民の皆様方のアクセス、あるいは裁判所が提供する司法サービスの質等を総合した国民の利便性を確保するという観点から、人口動態、交通事情、事件数の動向等を考慮して、最近ですとIT技術の進展等も考慮に入れながら、総合的な利便性の向上の見地から検討する必要があるというふうに考えているところでございます。

 島田出張所につきましては、委員御指摘のとおり、相応の事件数があるというふうに我々も認識をしておるところではございますけれども、今申し上げた諸事情をいろいろ勘案いたしますと、直ちに支部を設置するというところまでの状況にはないというふうに考えているところでございます。

 他方、裁判官の填補回数、出張の回数につきましても御指摘をいただきました。

 これは、各裁判所で、事件動向等に応じて柔軟に見直しを図っているところでございます。また、仮に、裁判官の出張が予定されていない日であったとしても、緊急を要する事件、典型的なものはDV事件等でございますけれども、その次の填補日を待たずして裁判官が臨時に対応するといった体制もとってございますので、こういった形で、出張所におきましても、地域の住民の方々に適切な司法サービスを提供するよう努めているところでございます。

 島田出張所につきましては、先ほど申し上げたとおり、平成二十七年に、事件動向を踏まえまして、週三日から週四日という今の形に変え、填補回数をふやすという形で内容の見直しを行いましたが、その後、調停事件の未済件数は落ちついた状況にございます。また、平均審理期間も全国と遜色のない形になっておりますので、これらの動向等によりますと、平成二十七年に填補回数をふやしたという効果があって、現時点では、調停事件、審判事件とも、事件処理に支障のない体制になっているのではないかと考えておるところではございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、島田出張所における事件動向をしっかりと注視して、適正迅速な事件処理に支障を来すことのないように努めてまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 これは、答弁していただいて、実は、国会、この分科会で取り上げるのも四年連続になっておりまして、それだけ地元から強い要請があるということでございますので、御理解をいただきたいんですが。

 この中で、先日、通告のときにやりとりをしてもらって、資料をもらったら、裁判官の填補を回数をふやすと、本所、静岡家裁での審理について人が手薄になるかもしれないので、そことのバランスもよく考えながら相談させてもらいたい、そういうようなことも言っていて、それはそうかなと。私の地元だけがよければそれでいいというわけではなくて、子供の人権というものは、それはあまねく、そしてまた家庭のDVなども当然守られていかなきゃいけないと私は思っているんですが。

 ただ、その中で、裁判官、静岡家庭裁判所は何人いますかというふうに聞いたら、六十五人、今在籍していらっしゃるという資料をいただいたんですよね。前の年の数字を見たら六十七人なんです。二名減なんですよね。それで今の答弁で四年連続というのは、ちょっと私、いささか腑に落ちないなというふうに思いますので、当局、もう一回、填補回数についてふやす余地がないのかあるのか、しっかりと答弁をお願いします。

村田最高裁判所長官代理者 前提といたしまして、委員から、静岡地家裁の裁判官数等の動向について御指摘がございました。裁判所職員、裁判官を含めて人的体制の整備につきましては、事件動向、事件処理状況を踏まえて必要な整備を行っておりまして、その結果として、全国で見ますと、職員数がふえる裁判所もあれば減らさないといけない裁判所もあるというところでございまして、これは静岡地家裁管内も同様でございます。結果として、委員御指摘のとおり、平成二十九年と比べますと減っているというところがございます。

 ただ、いずれにしましても、適正迅速な事件処理というのが裁判所の使命でございますので、事件動向をつぶさに踏まえつつでございますけれども、その使命を果たすに当たって支障のないように、全国的な見地から、必要な体制の整備に今後ともしっかりと努めてまいりたいというふうに考えております。

井林分科員 ありがとうございます。

 全国的な見地からということでよく理解はしているつもりでございますけれども、それだけ事件の多い出張所を抱えている裁判所だということをよく認識してこれからも対応に当たってもらいたいというふうに思いますし、やはり、地元の皆さんが週四日しか裁判を受ける権利が保障されていないということは本当にいいのかどうかということはよくよくお考えの上で、これからも裁判所の運営に当たっていただきたいと思います。

 それでは、続きまして、新型コロナウイルス問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 少し時間がたってしまいましたので、静岡県にございます富士山静岡空港におけます外国人入国者数と、この中で中国本土からの入国者数の方々の推移をまずは教えてください。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 富士山静岡空港における外国人入国者数は、平成二十七年は十六万九千九百二人、そのうち中国人は十三万九千四百十三人。平成二十八年は、全体が十万七千八百八十人、うち中国人は七万九千九百七十六人。平成二十九年は、十万八千五百四十二人、うち中国人が六万四千六百九十五人。平成三十年は、十万八千八百四十人、うち中国人が六万九千七百三人。令和元年は、速報値でありますが、十一万六千四百二十八人中、中国人が九万百七十五人という数字になっております。

 いずれにしましても、中国人入国者数が相当数を占めているということでございます。

 以上でございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 富士山静岡空港は大変多くの外国人入国者数をお迎えしていて、その主力が中国便だということでございますので、それだけ結びつきの強い地域ということでございますので、今回の問題、しっかりとした対応、水際対策をやっていただいたかということが非常に大きな問題だと思います。

 この新型コロナウイルス、今、入国者数はお伺いをしましたけれども、実際に何便ぐらい飛んでいるのかということでございますけれども、富士山静岡空港における中国便の本数、これは、このコロナウイルス問題がクローズアップされる前から、そしてその後の推移ということで、一週間置きに何かデータがあるということでございますので、その便数を教えていただきたいということです。よろしくお願いします。

堀内政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症がクローズアップされる以前の一月上旬の富士山静岡空港における中国便の本数は、上海等の合計八路線、週約三十便となっておりました。新型コロナウイルス感染症がクローズアップされた後は、予約のキャンセルなどにより旅客の需要が見込めなくなったことを踏まえた航空会社の判断により減便、欠航が相次ぎ、二月十一日からは、中国便は全便欠航となっております。

井林分科員 ありがとうございます。

 今、多分時間が厳しいので概略なんですけれども、徐々に減ってきていて、今はゼロだということでございます。

 富士山静岡空港におけます新型ウイルス感染症の水際対策の取組状況、これは時間とともにやはり推移してきていると思うんですけれども、その推移と今の現状、そして、最後、PCR検査まで行くかどうかということなんですが、富士山静岡空港におけるPCR検査の対象者の有無について答弁をお願いします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 静岡空港出張所と申しますが、こちらの方で、今、サーモグラフィー等により発熱状況を日ごろから観察しているところに加えまして、令和二年の一月七日以降、中国湖北省武漢市からの帰国者等でせきや発熱等の症状がある者に対しまして、検疫官に自己申告するようポスター等で呼びかけを行っておりました。

 また、一月二十三日以降は、中国全土からの航空便について、健康カードを配付し、また自己申告を促す機内アナウンスの実施を行っております。

 さらに、二月一日以降、中国からの航空便の乗客の方に対しまして、質問票の記載をお願いし、検疫ブースで湖北省の滞在歴を確認しております。湖北省の滞在歴がある方につきましては、健康相談室の方で医師による問診などを行い、せき、発熱の症状がある者等に対しましてはPCR検査を実施し、陽性ならば感染症指定医療機関の方に入院ということになります。それ以外の方々につきましては、入国後も健康フォローアップセンターが健康状態を継続して確認することとしております。

 また、入国審査では湖北省の滞在歴の再確認をしていただきまして、滞在歴の確認がとれた場合は検疫に差し戻すこととしておりまして、検疫と入国審査の連携による二重のチェックにより水際対策の強化を図っております。

 なお、令和二年二月十三日からは滞在歴確認地域に浙江省を加え、滞在歴の確認を強化しております。

 PCR検査の名古屋検疫所静岡空港出張所における実績でございますが、二月一日以降、実績はございません。

井林分科員 ありがとうございます。

 ゼロだということでございますので、これまでの水際対策、富士山静岡空港では功を奏したんだろうというふうに思っておりますし、静岡県内では感染者が出ていないということと便数の推移を見れば、富士山静岡空港での水際対策というのは一定の効果というか成果があったんだろうというふうに思っております。当局に心から感謝を申し上げたいと思います。

 今そこで出ました検疫体制、名古屋検疫所の静岡空港出張所の検疫体制ですが、やはりここが非常に重要でございます。特に、ことしはコロナウイルス問題を克服した後には東京オリンピック・パラリンピックの開催が控えていて、多くの外国のお客さんがお見えになることだろうというふうに思っております。コロナウイルス問題以外にも検疫体制というのはしっかりやっていかなければいけないと思うんですが、この富士山静岡空港での検疫を担当する名古屋検疫所静岡空港出張所の検疫体制の推移と現状について、答弁をお願いします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 観光立国推進基本計画に基づきまして、CIQに係る必要な物的、人的体制の計画的な整備を進めるとの方針のもとに、可能な限り前倒しをして、検疫官の必要な人員の措置をしているところでございます。

 名古屋検疫所静岡空港出張所につきましては、平成二十九年度は五名、平成三十年度は六名という人員でございましたけれども、今年度は三名の増員を図り、九名ということで体制を強化したところでございます。

 今後も、国際便や業務量の状況を踏まえながら、必要な検疫体制の確保に努めてまいります。

井林分科員 ありがとうございます。

 ここ二年間の間で五名の検疫所が計四名増員をしていただいて、非常に体制を強化していただいたということで、これは心から感謝を申し上げたいというふうに思っておりますし、そうしたことで今回の問題に対しても十分な体制をとることができたんじゃないかなというふうに思っております。備えあれば憂いなしということで、感謝を申し上げたいと思います。

 この富士山静岡空港の入出国でございますけれども、もう一つ問題がありまして、入国審査官の問題でございます。検疫と入国審査官の二つでしっかりと対応していただくということでございますが、富士山静岡空港の、先ほど入国者数はお伺いをいたしましたけれども、入国審査の待ち時間とか、また、あと、富士山静岡空港を見ていただいている入国審査官は、静岡出張所ということで、静岡県内全部を見ていただいているというふうに聞いてございます。富士山静岡空港における入国審査の待ち時間とか、静岡県内の在留外国人の推移などを教えてください。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 まず、待ち時間でございますが、平成二十七年は平均約三十五分、二十八年が二十八分、二十九年が二十二分、三十年が二十二分、令和元年は二十三分でございました。

 それから、入国審査官の数でございますが、この静岡出張所というのは、出入国管理のみならず、在留管理、それから昨年度からは在留支援関係の仕事もしているところでございますが、平成二十六年度は十七人、二十七年度から三十年度まではいずれも二十二人、それから令和元年度は二十四人と、二人の増員になっております。さらに、令和二年度予算案におきまして、静岡出張所に更に三人の入国審査官の増員を計上しているところでございます。

井林分科員 ありがとうございます。

 入国審査官も逐次ふやしていただいているということでございますので、やはり、これからも富士山静岡空港は多くの外国人のお客様が訪れることだろうというふうに思っております。こうした体制整備をしっかり進めていただきたいというふうに思っております。

 特に富士山静岡空港については国際線ターミナルも完成をいたしまして、今まで一時間に一便だったのが一時間に三便ということで、そうすると本当は三倍の人がピーク時で必要なんですけれども、そこはうまくやりくりをしていただくということでございます。また、ムスリム対応も男女別で部屋が整備されているということで、多くの国の方々に御利用いただけるんではないかなというふうに思っております。

 このお話を聞いて調べさせていただいたら、入国審査官を二十四名から二十七名にしていただくということで、お伺いすると、これまで全国で五番目の大きな出張所だというふうに聞いておりますが、更に大きくなっていくんではないかなというふうに思っております。来年度増員していただく中で何番目に大きな出張所になるのかということと、今後もやはり、富士山静岡空港を所管する名古屋入国管理局の静岡出張所の人員増強についてしっかりとした体制を組んでいただきたいというふうに思いますが、最後に大臣に、決意も含めてお願い申し上げたいと思います。

    〔主査退席、山口(壯)主査代理着席〕

森国務大臣 名古屋出入国在留管理局静岡出張所の職員数でございますけれども、先ほど冒頭の予算の御説明でも申し上げましたが、厳しい財政状況の中ではございますが、必要な予算を確保すべく、今般の令和二年度予算案について入国審査官三名の増員を計上したところでございます。そうなりますと、同出張所の入国審査官の数は合計で二十七人となります。令和二年度予算が成立後、静岡出張所の規模は、全国六十一の出張所のうち、新千歳空港、福岡空港及び那覇空港といった主要空港を管轄する出張所に次いで全国四番目に多い出張所となる予定でございます。

 井林委員の御指摘を踏まえて、今後も、富士山静岡空港における今後の訪日外国人旅行者数の推移等を踏まえつつ、必要な人的体制の整備を適切に図ってまいります。

井林分科員 ありがとうございます。

 大臣からも大変ありがたい御答弁をいただきました。もちろん大きければいいという問題ではありませんけれども、しかし、必要なところにはしっかりと定員をつけていただいて、外国の方がスムーズに移動できる、そういう環境を整えていただきたいというふうに思っております。

 私の質問は実は三分おくれで始まりましたけれども、入国審査同様、後ろの方の審査をおくらせるわけにはいきませんので、時間どおりに終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

山口(壯)主査代理 これにて井林辰憲君の質疑は終了いたしました。

 次に、篠原孝君。

篠原(孝)分科員 国民民主党の篠原孝でございます。

 井林さんの配慮に感謝いたしまして、少々長く質問をさせていただきたいと思います。

 二点に絞ります。新型コロナウイルスの関係です。

 この件でいろいろやっておられること、私は否定しません。言ってみれば超法規的措置だと思います。入国管理難民法の第五条に上陸拒否、一般的には入国拒否ですけれども、その条文がある。多分政府は悩んだんだろうと思います。どうやって危険な外国人、日本人の場合は感染症法と検疫法でいろいろできますけれども、外国人はそういうふうな形になっていない。どうするか。

 これは法務省の事務方はわかっておられると思いますし、参議院の予算委員会で徳永エリ参議院議員が質問されていると思います、法務大臣に。五条第一項の十四号の非常に一般的な規定がある、その規定でもって入国を拒否する。これは、私はそれをだめだとは言っていません。とりあえずはそれで仕方がないと思いますけれども、いつまでそれで済ますんですかね。そういう状態を放置しているのが私はよくないと思います。いろいろわかってきたんです。

 したがって、法的根拠をきちんとすべきじゃないかと思いますけれども、法務大臣、いかがでしょうか。

森国務大臣 入管法第五条一項十四号についての御質問でございますけれども、こちらに「日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」というふうに記載されておりますが、こちらに該当するというふうに今般解釈をしたわけでございます。

 この新型コロナウイルスですけれども、感染について、無症状であっても感染をしていることが確認されたものであり、大変深刻な状況でございますが、そのような感染が深刻な地域における滞在歴がある外国人等について、患者であることが確認できない場合であっても、既に感染している可能性が否定できないときに、そのような外国人が上陸すれば、在留活動はもとより、日常生活を送る上でのさまざまな行為により感染の拡大を招く可能性がございますので、そのことが先ほどの条項に該当するというふうに解釈をしたわけでございます。

 そこで、二月一日から、上陸の申請前十四日、そして、湖北省に滞在歴がある又はその中国旅券を所持するという外国人、御存じのように、特段の事情がない限り入国を拒否するということにし、またさらに、十三日からは浙江省を追加したわけでございます。

 まさに、現行入管法の規定によって、感染が深刻な地域における滞在歴がある外国人等の上陸を拒否し得るというふうに考えております。

 委員の御指摘でございますけれども、私は、現在は、その解釈をもとにしっかりと水際対策をとっていく時期だというふうに考えておりますが、今般のこの感染拡大をしっかり食いとめて、その後、将来的には、必要な措置をさまざまな観点から総合的に検討を行っていくことを否定するものではございません。

篠原(孝)分科員 後半の答えが大事なんですよ。前半は、私はよくないなんて言っていません。後で質問をするものはよくないんですけれども、この件はちゃんとやらなくちゃいけないです。ですけれども、これをいつまで放置しておくかということなんです。

 いい例を申し上げたいと思います。

 家畜伝染病予防法の法律改正、議員立法で、補正予算の審議とほぼ同時に通過させたんですね。あれは、御存じかなと思いますが、同じなんです、ウイルスが入ってくる。あっちは動物の、豚のウイルスですけれども、それが入ってくる。そして、野生イノシシが予防的殺処分の対象になっていない。これは重大な権限の変更になりますから、やはり法的にきちんとしなくちゃいけないということで、我々野党も当然賛成しました。だから、一刻も早くということで法律改正しているんですよ。

 今そういう状況じゃないでしょうかということなんです。このまま放置しておいて、香港から来たウエステルダム号について、閣議了解で書いてありました。しかし、これからもいろいろなことが起こり得る。それをこの十四号の、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがある者と。政府の発表によれば、これはテロリストたちを念頭に置いたんだと。物すごく漠然とした規定ですね。このままやるのはよくないんじゃないかと思うんです。

 ですから、私は、この際ですけれども、この前に我々は法案を提出してあるんですね。

 資料を見ていただきたいんです、横長の資料を。これは八号に、この八号の二というのは場所が不明確だったんですけれども、どうやってやったらいいかわからないので。

 皆さん、これを見ると、銃砲刀剣と肉製品が一緒じゃないか、すぐそういうことを言う人がいるんですが、これはもう既に前通常国会に、我々、議員提案で提出してあるんです。非常に似ているんですよ。わかりますか。両方とも、両方ともというか、感染症のおそれがある人たちの方が悪意はないんです。しかし、大半の人は、肉製品を持っていっちゃいけないんだけれども、このぐらいはいいかといって持ってくるんです。

 しかし、結果は恐ろしいんです。アフリカ豚熱も豚熱も物すごい勢いで拡散していきますし、この新型コロナウイルスも同じように拡散していく。これは絶対とめなくちゃいけないというので、この法律はなかなかよくできているんです。この十四号の、十四号は一般的な規定ですから、一号から十三号まで具体的にやっていって、いろいろなもの、みんな入っているわけです。だけれども、一番最初に感染症があるんです。それから麻薬、銃剣とかですね。それから人身売買とか、それから途中で入ったものでフーリガン、これの侵入を抑えるためにつけ加えたりしているんです。柔軟に対応してきているんです。それを今すべきだと思う。

 よく見てください。第一号は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に定める一類感染症、二類感染症」。今、二類感染症にしているんです、新型肺炎を。それで問題は、この「指定感染症の患者又は新感染症の所見がある者」。所見がなくても、湖北省にいただけ、湖北省のパスポートを持った人も上陸を拒否している。だから、この二に、一号の二に加えれば簡単に済むことなんです、類例があるから。

 もちろん、肉製品の方がもっと問題で、みんなぴんとこなかったはずなんです。しかし、今回これでわかったと思います。私はもう条文を用意してあるんですけれどもね。大臣の鶴の一声でやっていただきたいんです、検討しているというので。

 感染症の予防及び感染症、これ、ずっと同じです、現に流行し、これは湖北省や浙江省のことです、又は流行するおそれのある地域に本邦への上陸の申請前に滞在していた者その他の本邦への上陸により特定感染症の病原体が国内に侵入するおそれがあると認められる者として政令で定める者を上陸拒否する、こういう法律改正をすぐやっていただきたいと思います。我々野党、ごちゃごちゃ言う人がいるかもしれませんけれども、私は少なくとも大賛成でやります。

 大臣の決意をお伺いしたいんです。これこそ大臣が速やかにやられるべきことだと思いますけれども、いかがでしょうか。

森国務大臣 先ほどお答えをしたとおりでございますけれども、今の新型コロナウイルスの感染拡大、時々刻々と変化をしている中でございますので、今は、現下の状況に応じて現行法を規定をし、しっかりと水際対策をとっていくべき時期だと思っております。

 その上で、委員も御指摘でございますので、この上陸拒否事由については、実は、これまでもさまざまな社会情勢の変化に応じて改正を重ねてきたところでもございますので、今後も、どのようにしていくのが最も適切かという観点から、必要に応じて総合的に検討を行ってまいりたいと思います。

篠原(孝)分科員 事務方に聞きましたら、外国がどのような法的根拠でもって上陸拒否しているかというのを、きちんとしたことはわからないと。これもまた怠慢だと思います。既に日本も二カ国が上陸拒否というのを言われていますね。アメリカはもう、あとオーストラリアは、中国からの入国を全面的にストップしている。やはり、こういうのは大変なんですよ。

 私もそんな歴史をきちんと見ているわけじゃありませんけれども、はるかかなたの昔は、外敵の侵入よりも、こういった感染症、これでもって人口が三分の一に減ったとかいうので、それで国が滅びたりしたことがあるわけで、ですから、各国とも必死でこれをとめようとしているんですね。ですから、これはやはり法治国家としてきちんとすべきであって、これからやるべきことを速やかにやっていただきたいと思うんです。

 ついでにですけれども、ここは新型コロナウイルスのことばかりやっていますけれども、やはりアフリカ豚熱も同じなんです。どういうことかというと、豚熱はワクチンがあるんです。アフリカ豚熱はないんです。同じように、ウイルスで、伝染力がひどい、すぐ豚が死んでしまうということで、非常に似ているんです。

 ところが、皆さん、いや、銃剣を持ってくるのと肉製品を持ってくるのは、両方あるけれども、おかしいけれども、それは同じに扱うのは問題じゃないかと。ところが、この表の中で見ていただければわかりますけれども、二月六日時点で十六万四千頭の豚が処分されているんです。殺されているんです。自分がかかっていなくても、もう蔓延するといけないからと予防的に殺されているんですね。今、右側の、人になると急にあって、人のことだけ考えるんですけれども、やはり両方同じなんです。だから、これもぜひ一緒にやっていただきたいと思います。これは、農林水産委員会で私が幾ら言っても、最後は法務省なんです。

 私は、フーリガンのときのを言いますと、これは物すごく効果があったんですよ、調べられておられるかどうか知りませんけれども。これは、日本で、日韓共催の大会でもって、外国からフーリガンが来て大騒ぎされたら困る、日本人にはそんな悪いことをする人はいないということで、この規定を入れたんです。アナウンス効果というか、予防的効果は絶大でした。

 これは、新型コロナウイルスのところにはそんなにワークしないと思いますけれども、肉製品の方で言わせていただきますと、これをやると、肉製品を持っていったら上陸拒否されるよと言ったら、旅行会社が、もうそれは持っていっちゃいけないぞといって、中国を出発するときに、みんな置いていかせるんです。それによって、アフリカ豚熱のウイルスが日本に来るのを阻止できるんです。

 だから、一緒にぜひやっていただきたいと思う、この際。皆さん、新型コロナウイルスの方にばっかり頭が行っていて、そっちにばっかり行っていますけれども、全く同じなんです。だから、絶好の機会なので、私は、ぜひこれは一緒にやっていただきたいと思います。

 次。今、相当ごたごたしている問題です。黒川東京高検検事長の任期延長の件です。裏側の資料も見ていただきたいんです。

 私は、農林水産省に三十年勤めました。国際関係の仕事をそんなにしたわけではありませんけれども、それなりにしたんです。ガット・ウルグアイ・ラウンドというのがありました。そのときに、塩飽二郎さんという立派な方が私の上司で、農林水産省の審議官です。ウルグアイ・ラウンドが長く続きました。一九九〇年にブリュッセルで終わる予定だったんですけれども、とても終わらず、それから三年かかって、一九九三年の十二月に決着したんです。

 そこでどうなったか。私は、塩飽審議官に仕えまして、一年間に十一回海外出張をしています。要するに、かばん持ちです。かばん持ちで、塩飽さんの後をくっついてあちこち行きました。会議に出席するのはガット室長というのがいたんですが、それ以外で、アメリカだ、カナダだ、オランダだと、根回しですよ。そのときに、旅費も足りないですから、私が、直接関係ないんですけれども、審議官からすると便利だったんでしょうね。私を連れていくんです。それで、電報を書かされて、なかなか大変でした。

 私は、心配していました。あれ、まあ、いいや、決着するから、これで大団円で塩飽さんがやめられる花道でちょうどいいと思っていたら、延びちゃったんです。ところが、塩飽さんというのは立派な方なんですが、若いころ、学生時代に結核を患われて、三年ほど療養生活を送っておられて、卒業がおくれているんです。ですけれども、役所というのは、全て入省年次で人事をやります。法務省の検事も検察官も同じだろうと思います。それで、困ったというので、僕はそんなの知らなかったんですが、国家公務員法上に定年延長の規定があるんです。それをやると言うので、へえ、なかなか日本の制度というのは柔軟だ、それで救われると。

 なぜかというと、国内は、ボトムアップですね。下でやったものが上に上がっていってというので大体決まっていくんですよ、国内の制度とか対応というのは。ところが、外交交渉というのは、ヘッド・オブ・デリゲーションがいかに交渉して、その人たちがやって、その人たち、あいつが言ったから信用しよう、長年やっていると。日本と比べて、外国は長いんですよね。日本はくるくるかわる。それでも長くやっているんですけれども。

 例えば、事務次官は一年でかわっても、審議官や、財務省でいったら財務官は、二年か三年やります。ところが、我が省は、塩飽さんは、もう顔役になっていたんです。日本の米問題、農業問題の顔ですから、余人をもってかえがたしというので、こういう措置を講じたんだ。僕は本当にびっくりしました。これで我が国の農産物が、ガット・ウルグアイ・ラウンドの交渉もうまくいくのではないか、いい制度だと感心したんです。

 そして、今回、これと同じことを東京高検検事長でやられるというんですね。やっておられる。これは、理由として、重大かつ複雑困難な事件の捜査、公判に対応するためという形式的なことを言っておられますけれども、私は、一般国民に問うたらわかると思う。ウルグアイ・ラウンドが継続している、山口さんは外務省におられたからわかると思いますが、外交というのはそういう案件があるんですよ。継続していて、あと、そっちに置いて、かわるわけにいかない。

 しかし、日本の国内の組織に、今検察で重大案件があるんでしょうか。東京高検にそれがあるんでしょうか。私は、はっきり断言しますけれども、ないと思いますよ。いかがですか。

森国務大臣 お尋ねについてでございますけれども、今般の黒川東京高検検事長の勤務延長でございますけれども、検察庁の業務遂行上の必要性に基づき、引き続き勤務をさせることを決定したものでございます。

 今委員がお引きになった塩飽審議官の勤務延長でございますが、人事院の規則の方に延長できる場合というのが三つございますが、そのうちのどれに当たっているかという説明は恐らくなされていないと思います。

 というのは、個別の人事については、その詳細というのはなかなかお答えを差し控えざるを得ないところでございますが、今般、私どもの、この黒川高検検事長の延長についてでは、黒川検事長の検察官としての豊富な経験、知識に基づく管内部下職員に対する指揮監督が必要不可欠であり、当分の間、引き続き東京高検検事長の勤務を遂行させる必要があるということで御説明を申し上げているところでございますが、それ以上の詳細については、個別の人事に関するものでございますので、その捜査機関の活動内容やその体制にかかわってきてしまう事柄であることから、お答えを差し控えさせていただきます。

篠原(孝)分科員 まあ、答えを差し控えるというのは、それはそれでそういう理屈はあるかもしれませんが、頭を真っ白にして考えてください。国民は、ウルグアイ・ラウンドが決着するまで同じ人にやってもらわなくちゃいけないと、関係者でなくてもわかるんじゃないですかね。ですけれども、検察の仕事は延々と続いていく、裁判の仕事もそうです、司法の仕事というのはずっときちんと厳正に続いていきますよ。

 そして、塩飽さんのと比べるわけですけれども、余人をもってかえがたしなんです。残念ながら、農林水産省は、その当時の年次だと、国際関係はそんなに大事じゃなかったもので、余り人材を育成してきていないんですよ、集中的に。それで、突出してそういうところにたけておられた方が塩飽二郎さんだったんです。それでそういうふうにした。

 しかし、日本の一般的な組織の中で、そんなに、絶対、国内の問題で、そして技術的な知識が必要だ。例えば、今、アフリカ豚熱でいいです、新型コロナウイルスでもいいです、技官と称される方です、専門的な知識があって、研究所にいる、動物衛生関係の専門家、感染症の専門家、この人にやめられては困るというのは僕は絶対あると思います。今佳境の新型コロナウイルスの担当の人、この人たちにやめてもらわれると困るわけです。それは立派な理由で、誰でも納得します。しかし、一般的な役所で、この事務次官がもう半年どうしても必要だという案件はそんなにないんじゃないか。

 どうしてかというと、私は今、政界に身を置きます。三十年間官界に身を置きました。政界でいろいろ、例えば、俗な話ですけれども、長野一区で私の後継を探すのに手間かかりますよ。なかなか人材がいない。いてもなかなか出てくれない。

 しかし、霞が関には幾らでも人がいますよ。こんなこと言ってはなんですが、偶然の何かいろんな関係で、局長になり、長官になり、次官になったりする。検察の場合は、高検検事長になり、検事総長になる。その人たちは大したことないというわけじゃないですが、ほかにもいっぱい、なれる素質のある人がいる。だけれども、その方がなった。そういうことじゃないかと思います。

 国内問題において、そんな抽象的なものでもって余人をもってかえがたしというのは、私はあり得ないと思います。また外交問題は特別ですけれどもね。例えば、その言語で、どこかの国と、中国との関係が非常にささくれ立っている。では、中国大使を長くやってもらわなくちゃいけない。局長も長くやってもらわなくちゃいけない。そういうのは僕は絶対あると思いますよ。だけれども、検察の問題で、例えば政府とガチンコ勝負をしていて大捜査をやっているとかいうのがあるんだったらいいですけれども、まあ、そういうときは絶対そういう人たちに手をつけないと思います。そういう問題はないはずです。ないんです。

 はっきり言って、私は法務省の怠慢だと思います。もしこういうことをやるんだったら、私が担当者だったら、今ごろのこのことやっているんじゃなくて、半年前、一年前にやっていますよ、もう。きちんとやって、そのときにできなかったかもしれませんけれども、もっと前にやっていますよ。

 こんな間際になってちょろちょろやるというのは、どう考えても私はおかしいと思います。説明できないと思います。これは国民が納得すると思いますか、こんないいかげんな説明で。

森国務大臣 まず、委員がお示しの、後任を容易に得ることができないとき、委員は余人をもってかえがたい場合というふうに御説明なさっていますが、それは、勤務延長できる場合を規定した人事院規則一一―八の中の一号に当たるものであるというふうに思われますが、今回私どもは、一号ではなく三号で勤務延長を判断したものでございます。

 これは、これまでの国会審議でも御説明を申し上げておりますけれども、国家公務員法八十一の三に勤務延長できる場合というのが書いてありまして、それを受けた、今お示しした人事院規則一一―八、こちらの第三号には、「業務の性質上、その職員の退職による担当者の交替が当該業務の継続的遂行に重大な障害を生ずるとき。」というふうに記載をされておりまして、先ほどの一号ではなく、こちらの三号に該当するものとして勤務延長させることとしたものでございます。

 また、二点目の、こんな間際になって勤務延長をできると解釈したという御指摘でございますが、これまでも国会審議の中で御説明申し上げておりますとおり、今般改正を予定してある内閣全体の国家公務員法の定年の年齢の引上げ、これが昨年からずっと検討されてきておりますが、その検討の過程で、国家公務員法の定年の年齢引上げの中で、検察庁法を所管する法務省においても検察官の定年制について検討すべしという内閣の指示を受けて、法務省の中でずっと検討してきたわけでございまして、その経過の中で、このような勤務延長について適用できるという結論に至ったわけでございまして、決して間際になってしたものではないということを改めて繰り返し御説明をさせていただきます。

篠原(孝)分科員 法律界に身を置く者としてそういう答弁は、ほかの人たちもやっているでしょうけれども、僕は許しがたいですね。

 今検討している、六十三歳に延ばす、だからそれを先取りしてやった、検討していたと。それはないと思いますよ。それだったら、皆さんも聞いていますけれども、先のことは言えませんけれども、黒川さんを検事総長にしない。数カ月やるだけで、それできっぱりとやめるんだったら、それはそれで潔いと思いますよ。

 しかし、ほかの党のことですけれども、自民党総裁の任期、二期六年というのは、なかなか理屈に合っていると思います。それを三期九年にしたんですね。そのときは、安倍総裁を続投するという思惑があってやっているんです。大体そうですよ。しかし、自民党の方が立派ですよ。ちゃんと先にやっているんですよ。

 それを、今回、後づけで、後から法律解釈したと。そんなの、ありますか。法律改正していないのに、今検討しているから先取りしてやるなんて。両方とんでもないルール違反だと思いますよ。それを、法律など勉強したことのない、法曹界に身を置いたことのない国会議員が、あるいは大臣が言われるんだったらわかりますけれども、森法務大臣はプロじゃないですか。それを恥ずかしいと私は思っていただきたいと思いますよ。

 アメリカでも似たようなことがあった。トランプ大統領が司法介入しています。バー司法長官が、えんきょく的に、ツイッターで大統領がいろいろ言うのはやめてくれと言っています。そして、ロジャー・ストーン被告のロシア疑惑に関するにせ証言ですよ。それで、それに対していろいろ突っかかってきたので、骨のある検事四人は抗議してやめていますよ。

 私は、法曹界に生きる人たちの矜持として、そういうことをしてもいいんじゃないかと思いますよ。そういうことをアメリカではしている。日本とアメリカで同じようなことが起きているんですよ。私は、自民党の方が、柔軟にやっていいと思いますけれども、きちんとやっている。それを、政府が平気でインチキをしている。私はこれはとんでもないことだと思いますよ。

 そして、国家公務員法と一般法、はるかかなた昔に私も法学部で学びましたよ。特別法の方が一般法より優先するんです。ここで言う特別法は検察庁法で、一般法は国家公務員法です。それを後から解釈を変更して、公務員法が適用される。だけれども、これは一九八〇年の十月の総理府人事局の想定問答集にも適用されぬと書いてあると思います。それで、一九八一年、国会答弁で、適用されぬと書いてあると。それを後から解釈を変更したなんて、とんでもないと思いますよ。

 どう思われますか、この点について。

森国務大臣 まず、後づけであるとかインチキであるということを決めつけて、それを前提に御質問なさっていますが、全くそんなことはないということを、まずきっぱりと否定をさせていただきたいと思います。

 先ほども一回御説明をしましたけれども、後づけではなく、昨年から法案の検討をしてきたものの中の検討の一環として解釈をしてきたということで、適正なプロセスをとっているということを申し上げたいと思います。それは、適正なプロセスについて、法制局の日付ありの文書もあることから明らかであると思います。

 また、国会答弁についてお示しになりましたが、その国会答弁の中には、私もこれまでずっと御指摘させていただきましたが、定年制というふうに言っておりまして、その定年制の定義が何かという、今回はこの議論であるというふうに思っております。ただ、今お示しになりました人事局の手引ですか、これについては……(篠原(孝)分科員「想定問答」と呼ぶ)想定問答ですね、こちらについては勤務延長について適用されないと書いてありますので、私どもも当初はそのように理解されていたということを理解した上で、今般は勤務延長が適用されるというふうに解釈をしたわけでございます。

 委員も御指摘なさったように、特別法と一般法の関係にある中の、その特別法で特別に規定されたものが何かという議論を、昨年来からの議論の一環として重ねてきた結果、これまで国会答弁で申し上げましたとおり、定年の年齢とそれから退職時期のこの二点が特別な規定であるというふうに理解をしました。そして、勤務延長については、条文上それを除外するという規定がないということ、また、その勤務延長制度一般の趣旨、それから社会情勢の変化ということを勘案して、今回解釈をさせていただいたということでございます。

篠原(孝)分科員 私は説明になっていないと思いますよ。マージャンじゃないんです。後づけはよくないんです。もう絶対おかしいと思いますよ。

 それから、検察なので、ほかのところと違うんですよ。起訴権があるんですよ。公平性、中立性を非常に重んじなくちゃいけないんですよ。それをよく考えてください。

 二〇一三年に特定秘密保護法の担当大臣のとき、私は質問したと思います。もっと本当は質問をしたかったんですが、繰り返すのはやめておきますけれども、そのときに大臣はどうお答えになったかというと、想定のことについてはお答えできないと言われたんですよ。まあ初々しかったし、女性を余りいじめるのは僕は嫌だったので、それ以上質問しませんでしたけれども、本当は用意していたんですけれども。しかし、今回、七年たってなかなか成長されて、図太くなられたと思いますよ。しかし、よくないと思いますよ。

 それから、もう一つ大事なこと。福島の書道展に行かれて、私はけしからぬと思いますよ。何をしているのか。いいですか、三人の閣僚のうち一番関係があるのは、一番、二番とつけませんけれども、先ほど説明した入国拒否の担当大臣として、森法務大臣が一番関係が深いですよ。私はこの一事をもっても辞任すべきだと思いますよ。

 まあ、嫌みを最後に言わせていただきます。書道展に行って、きれいな字を見て、立派な手書きで辞表を書かれることを望みまして、私の質問を終わらせていただきます。

山口(壯)主査代理 これにて篠原孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、本村伸子君。

本村分科員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 きょうは、性暴力、性犯罪の問題で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、内閣府にお伺いをいたします。

 四十七都道府県の性暴力被害者ワンストップ支援センターへの相談件数はどうなっているのか、そして、今年度予算で四十七都道府県のワンストップ支援センターで実態調査を国として初めてやっているということで、その中で、内閣府の職員の方も大変驚いて私にお話しいただいたんですけれども、子供たちへの性的虐待が多くあったというふうに聞いておりますけれども、その実態、どうだったか、お示しをいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターにおける相談件数につきましては、平成二十九年度の約二万七千件から、平成三十年度、昨年度ですけれども、約三万六千件というふうに増加をしてございます。

 御質問がありました子供の性被害の状況につきましては、本年度、ワンストップ支援センターにおける支援の状況につきまして、初めて実態調査を行いました。

 ただ、現在、精査を行っているところでございまして、具体的な数値について回答できる状況にまだございません。ただ、子供の被害も一定数あるというふうには承知をしているところでございます。

本村分科員 子供たちへの性的虐待というのは大変深刻な現状がございます。性暴力、性的虐待をなくしていくことに国が挙げて真剣に取り組まなければいけないというふうに痛感をしております。このことに対して、国からのメッセージ、真剣味が見えてこないというのが大問題でございます。そして、被害に遭ったときに一刻も早く発見、救済、支援ができるということが何よりも必要だというふうに思います。

 岐阜県の例をお示しをしたいんですけれども、岐阜県のぎふ性暴力被害者支援センターの相談件数なんですけれども、二〇一六年度三百八十三件、二〇一七年度六百四十二件、二〇一八年度千四十七件というふうに、電話、面接、メールの相談がどんどんふえております。

 私もお話を伺いに行ったことがあるんですけれども、なぜこうやって相談件数が伸びているのかということをお尋ねをいたしますと、岐阜県では毎年度、県内の全中学校、高等学校の生徒さん、職員の皆さんにこのぎふ性暴力被害者支援センターのリーフレットを配布しているということでございました。県内のコンビニエンスストアのトイレの個室内にステッカーを張るなども依頼をして、ファミリーマートでは県内約三百三十店舗、ローソンでは約百八十店舗協力をしてくださっているそうですけれども、被害当事者、とりわけ若年層の方々にワンストップ支援センターを知らせるように努力をして、そういう中で相談件数が伸びたというふうにおっしゃっておりました。

 三重県も、一時期、電車にステッカーを張ったそうなんですけれども、そうしましたら相談件数が伸びたというふうにおっしゃっておりました。

 ほかの県のワンストップ支援センターも伺いましたけれども、本当は電車の広告とかも打ちたいんだけれども、お金がなくてできないんだというふうなお話を伺ったこともございます。

 被害を受けた方々が早期に発見をされて、そして早期に救援、支援できるように、こうした広報というのは物すごく重要だというふうに思います。

 早期発見、早期救済、支援ということになれば、証拠の採取というところでも高まってくるというふうに思いますし、加害者が処罰されるということにもつながってまいります。

 国家公安委員会の委員長も本会議で、「性犯罪を犯した者は、再び類似の事件を起こす傾向が強い」というふうにおっしゃっておりましたけれども、加害者が野放しにされていては、また被害者が次々に出てしまうということになってまいります。

 内閣府と文部科学省に御提案をしたいというふうに思うんですけれども、小学校、中学校、高校、専門学校、短期大学、そして大学など、全ての子供さん、学生さんに性暴力被害者ワンストップ支援センターを知らせることをぜひやるべきだというふうに思います。

 わかりやすい、そして被害者の方々に寄り添っているということがわかるようなリーフ、カードなどをつくり配布をするという予算をしっかりととっていくということ、そして、学校で全ての教職員、子供さん、学生さんにワンストップ支援センターという相談場所があるんだということを知らせるべきだというふうに思いますけれども、内閣府、文科省、お答えをいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えいたします。

 ワンストップ支援センターの周知を行うことにつきましては、性犯罪、性暴力の被害に遭われた方が支援につながる上で非常に重要であるというふうに考えてございます。

 このため、内閣府におきましては、性犯罪、性暴力被害者のための交付金によりまして、各都道府県が行うワンストップ支援センターに関する広報の経費につきましても二分の一補助ということで行っているところでございます。来年度につきましては、予算の増額をさせていただいているところでございます。

 引き続き、被害に遭われた方がワンストップ支援センターにつながりやすくするように、広報の充実にも努めてまいりたいというふうに考えてございます。

寺門政府参考人 お答え申し上げます。

 性犯罪、性暴力対策につきましては、被害に遭わないよう啓発するとともに、万が一被害に遭われた場合に相談できる窓口等の情報を適切に提供することが重要だというふうに認識してございます。

 このため、文部科学省におきましては、ワンストップ支援センターについても紹介された警察庁作成の啓発リーフレットを各都道府県教育委員会等に紹介し、周知を図る等の取組を行ってございます。

 御指摘のワンストップ支援センターの周知につきましては、引き続き、センターを所管されます内閣府での検討状況を踏まえながら、十分連携して必要な検討を行ってまいりたいと存じます。

本村分科員 早期発見、早期救済、支援につながるように、本当に広報を徹底をしていただきたいというふうに思います。

 被害直後から総合的サポートを受けた場合には人生への負の影響を少なくすることができるのではないかと、実際に支援をされているワンストップ支援センターの方がおっしゃっております。また、治療を担当された精神科の方も、被害直後から治療に入ると回復がうまくいくし、とりわけ子供たちの回復のスピードは速いというふうにも言われております。ぜひ、早期の救済、支援につながるように、早急に全ての児童、子供たち、そして学生さんに伝わるようにしていただきたいというふうに思います。

 性暴力被害者ワンストップ支援センターの実態調査、今やられているんですけれども、中間報告の中でも、センターの約七割が人材の確保に悩みを抱えているというふうに言われております。無給とか交通費程度でやってみえる支援員の方々もいらっしゃいまして、それではやはり人材確保というのは難しいのは当然のことだというふうに思います。

 先ほども内閣府から予算を増額したというお話がありましたけれども、来年度、性暴力被害者支援交付金、来年度の予算額は全国で二億四千七百万円ということで、物すごく低いわけです。四十七都道府県でならしてみますと一県当たり五百万円程度ということになりまして、そうしますと、人件費一人か二人の分しか出ないという、本当にお粗末な状況だというふうに思います。

 やはり、こういう予算額を抜本的に引き上げて、国は、人員の配置など基準を定めて、処遇もしっかりと改善をして、責任を持って手厚い財政措置をとるべきだというふうに思います。

 私ども野党は性暴力被害者支援法案も出させていただいておりますので、法的根拠もしっかりとつくって支援をするべきだというふうに思います。

 被害を未然に防ぐ啓発、教育も重要だというふうに認識をしております。

 北米で子供への性暴力を防止するバイブルのように読まれていたという「It's MY Body」の翻訳、「わたしのからだよ!」という冊子が手元にございますけれども、早い時期に、私の体と心は私のもので他人に勝手にさせない、嫌なさわられ方をしたら嫌だと感じるのが当然で、嫌だと感じてよく、嫌だとはっきり言ってもいいということ、嫌だと思ったことをためらわずに信頼できる大人に話すということなどもしっかりと伝えていくことが早い段階から必要だというふうに思っております。

 そして、さまざまなメディアから情報が氾濫する中で、子供たちに、性や人権、個人の尊厳、不可侵性、性的同意の問題などを含めて、科学的な情報がちゃんと伝わるということが必要だというふうに思います。

 国連の教育科学文化機関、ユネスコでは、二〇〇九年、各国の研究成果を踏まえて、WHOですとか国連合同エイズ計画、国連人口基金、そしてユニセフと協力して、性教育の指針、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを発表しております。五歳から十八歳を四段階に分けて学習内容を提示をしております。その中で、性的な接触にはお互いの同意が必ず要るということの理解が重要ということも書かれております。性は恥ずかしいものや汚いものではなく、生きる上で大切な要素なんだということも内容として盛り込まれております。

 日本の性教育というのは本当に不十分だと痛感をしております。その背景にありますのが、例えば中学の学習指導要領、保健体育のところで「妊娠の経過は取り扱わないものとする。」というような規定がございまして、正確な情報を教えることが難しいという状況になっております。

 子供たちに正しい情報を教えるということが慎重な行動につながっていくと国際的にも言われております。子供たちの心身を守り、性感染症も防いでいくということになってまいります。

 文部科学省が諸外国の性教育のあり方を調査研究していないというふうに伺って、私は本当に衝撃を受けました。愕然といたしました。これだけ性被害、性暴力があるわけですから、やはり、子供たちを被害者にも加害者にもさせないためにも、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを国として研究をして日本の性教育の構想に取り入れること、そして、専門家などの委員会を立ち上げて、日本の性教育について真剣な検討を行うべきだというふうに思います。

 文部科学省、お答えをいただきたいと思います。

矢野(和)政府参考人 お答え申し上げます。

 国際セクシュアリティ教育ガイダンスについては承知しているところでございます。

 児童生徒が学校における性に関する指導を通じて性に関し正しく理解し、適切な行動がとれるようにすることは非常に重要であるというふうに考えております。

 このため、学校においては、体育、保健体育、特別活動を始めとして、学校教育活動全体を通じて、発達段階に応じて性に関する指導を行うことといたしております。

 児童生徒が知識や判断力が十分でないため性被害に遭うということのないように、文部科学省においても引き続き学校における性に関する指導の充実に努めてまいります。

本村分科員 ぜひ、国際的な到達に学んで、性教育をしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 被害を受けた方々というのは、加害者を処罰してほしいと求めても高いハードルがある。警察、検察、そして裁判、高いハードルがあるわけでございます。

 まず、警察庁にお伺いをしたいというふうに思います。

 性暴力救援センター・東京、SARC東京の皆様方が被害当事者の方々と同行して支援を行っておりますけれども、警察に行った際に被害届を出すことも拒否されるケースが少なくないという声が届いております。二五%不受理というお話も伺っておりますけれども。法務省のワーキンググループ、実態調査ワーキングでも、暴行、脅迫の構成要件に当てはまらないという理由で事件化できないという説明がされることが多くなった気がしますとSARC東京の方がおっしゃっております。

 私の事務所に警察庁の方に来ていただいたときに、大変驚きました。暴行、脅迫がなければ強制性交の被害届を受け取れないという趣旨の発言を私にも警察庁の方がいたしました。

 法務大臣は、前の法務大臣の方もそうなんですけれども、私たちが暴行、脅迫要件の緩和、撤廃ということを申し上げますと、実務上、具体的事案に応じて、被害者の年齢そして精神状態、行為の場所、時間など、さまざまな事情を考慮して暴行、脅迫の要件が認められており、暴行、脅迫要件のみが障害となって処罰されないという状況にあるということについては、これは一概に言いがたいというような答弁をされております。

 しかし、警察庁の職員の方が、暴行、脅迫がなければ被害届を受け付けないというふうに言われ、SARC東京の方が現場でも同じように言われている実態がございます。私、警察庁の本庁の方が平気でこういうふうなことを言う状態であったら、地方の現場ではやはりこういう状況が横行しているんじゃないかということは本当に想像にかたくないというふうに思うわけでございます。

 警察庁は、暴行、脅迫がなければ被害届を受け付けないというようなことを全国でやっているのか、その点について御答弁いただきたいと思います。

太刀川政府参考人 強制性交等罪の構成要件として「暴行又は脅迫を用いて」と規定されておりますが、構成要件に該当するか否かは捜査を尽くさなければ判明しないことから、申告の段階でこれに当たらないことが明らかである場合などを除き、被害の届出に対しては、即時受理し、適切に捜査を行うよう都道府県警察を指導しているところでございます。

 また、警察庁においては、御紹介のありましたSARC東京を始めワンストップ支援センター等の支援員の方々から、被害届の受理に関するものも含め、警察の対応に関し被害者から寄せられた意見があればそれを伺い、必要に応じ都道府県警察の指導を行うなどしているところでございます。

 警察庁といたしましては、引き続きこうした取組等を推進し、被害者の心情に配意した適切な対応が徹底されるよう、都道府県警察を指導してまいります。

本村分科員 警察庁の方が、暴行、脅迫要件によって被害届を受け取らないという発言をしたわけでございます。やはり、法務大臣の答弁と違う実態があるわけです。そこを直視をして、実際においても、やはりしっかりと被害者が救済されるように、暴行、脅迫要件を緩和、撤廃するべきだというふうに思います。

 次に、法務省に伺いたいと思いますけれども、強制性交等罪の起訴、不起訴はどうなっているのか、二〇〇〇年の数字と最新の数字、お示しをいただきたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 検察統計におきましては、起訴率については、一年間の起訴人員数をその年の起訴人員数と不起訴人員数の合計数で割る方法によって算出しているところでございますが、これによりますと、二〇〇〇年、平成十二年の強姦の起訴率は六八・四%でございます。また、平成三十年、二〇一八年の強制性交等の起訴率は三九・三%でございます。

本村分科員 表にもきょう出させていただきましたけれども、二〇〇〇年、起訴率は六八・四%あったんですけれども、二〇一八年は起訴率三九・三%になってしまっております。六割以上の被害を訴えられた方が不起訴で、刑事裁判にもかけてもらえず、門前払いということになっております。

 伊藤詩織さんも、刑事事件としては不起訴となって裁判にもかけてもらえず、民事裁判で、一審では被害を受けたことが認められ、被告が有罪ということになっております。

 なぜこんなに不起訴がふえているのかということを疑問を持つわけですけれども、きょうは時間がないので先に進みたいというふうに思います。

 法務大臣にお伺いをいたしますけれども、警察では、暴行、脅迫がないからと強制性交等の被害届も受けとってもらえない。検察では、起訴率が落ちて不起訴が六割以上になっている。

 裁判でいえば、例えば、私の地元でございます名古屋地裁の岡崎支部の判決。

 ここでは、中学校二年生から実の父親に性的虐待を受けていた娘さん、Aさんの事件では、性交されそうになったときに抵抗して、父親からこめかみのあたりを数回拳で殴られ、太ももやふくらはぎを蹴られた上、背中の中心付近を足の裏で二、三回踏みつけにされた、大きなあざもできたということが事実認定されております。そして、性的行為が意に反するものであったこと、継続的な性的虐待を通じて精神的支配下に置かれていたこと、学費や生活費で経済的負い目があり、支配状況は従前より強まっていたということが認められております。

 しかし、判決では、本件各性交当時におけるAの心理状況は、例えば、性交に応じなければ生命、身体等に重大な危害を与えられるおそれがあるという恐怖心から抵抗することができなかったような場合や、相手方の言葉を全面的に信じこれに盲従する状況にあったことから性交に応じるほかには選択肢が一切ないと思い込まされていたような場合など、心理的抗拒不能の場合とは異なり、抗拒不能の状態にまで至っていたと断定するには、なお合理的な疑いが残ると言うべきであるというふうになりまして、無罪判決、無罪の結論が出されました。

 被害者の方々を支援しておられる伊藤和子弁護士が、こういうふうに言われております。つまり、女性が被告人に対して抵抗しがたい心理状況にあったとしても、それだけでは十分ではなく、生命、身体などに重大な危害を加えられるおそれがあった、性交に応じるほかに選択肢が一切ないと思い込まされていたという極めて高いハードルを課して、これをクリアしない限り、いかに性虐待があっても、親から無理やり性交されても、レイプにはならない、父親は何ら刑事責任も問われないというのがこの判決の結論だ、こう評価されております。

 ずっとお話を聞いていただいたんですけれども、刑法に暴行、脅迫要件があるために警察では被害届も受け付けてくれない、そして、今の刑法の条文によってこのような判決が可能だというのであれば、やはり法律は変えなければいけないというふうに思います。

 余りにも被害者にハードルが高過ぎるというふうに思いますけれども、法務大臣、お答えいただきたいと思います。

森国務大臣 本村委員の御質問、大変重要な御指摘であるというふうに思います。私も、被害者団体の方に昨年大臣室に来ていただきまして、早速、大臣直轄の勉強会に被害者団体の皆様に入っていただいて、これを今週立ち上げるところでございます。

 私も弁護士時代に性犯罪の事件を担当したこともあり、今御指摘になったさまざまな事柄、暴行、脅迫要件も含めて、現在、法務省の中の実態調査ワーキンググループにおいて実態把握を進めておりますが、これをしっかり、法の不備、法のすき間がないように、そして被害者の方が泣き寝入りしないように、私も、先日検察の実務の集まりで、大臣訓示で特出しして、この性犯罪被害については被害者の人生を一生傷つけるものであるというふうに言わせていただいたところでございますので、しっかり検討を迅速に進めてまいりたいと思います。

本村分科員 今、法のすき間のこともおっしゃっていただいたんですけれども、具体的な事例なんですけれども、十三歳の女子中学生が、離婚した父親と七年ぶりの面会交流で強制わいせつをされたという事件がございます。でも、この事件は二〇一八年の事件で、二〇一九年、養育費を支払っていないので監護者に該当しないとされまして、監護者わいせつ罪に該当しなかった。娘さんは父親の行動に動揺していたそうですけれども、暴行、脅迫もなかったから不起訴になってしまったそうです。当然、同意もない、性虐待でございます。にもかかわらず、起訴もされない。

 先ほども、すき間があるというようなお話がありましたけれども、こういう法の運用とか法のすき間があるということは大臣も認識されているということでよろしいでしょうか。

森国務大臣 個別事件については、済みません、大臣としてなかなかお答えを差し控えざるを得ませんが、一般論としてお答えをいたしますと、監護者については、精神的、経済的に依存しているということを、さまざまな、同居の有無や生活費の支出、総合的に判断されることになっております。また、監護者に当たらない場合であっても、児童福祉法や都道府県の青少年保護育成条例違反に該当する場合であれば、それらの法令違反の罪も成立します。

 しかし、個別事案についてはなかなか言及をできませんが、法の不備、法のすき間があるかどうかも含めて、今、先ほどお示しした法務省における実態調査ワーキンググループにおいて、被害者団体の皆様等から現状をしっかりとヒアリングをさせていただいているところでございますので、その中で具体的な検討対象を決めていき、その先の議論に迅速に移ってまいりたいと考えているところでございます。

本村分科員 十三歳で性的自己決定ができるからと暴行、脅迫要件で問われるわけでございます。子供への保護が余りにも欠ける実態があるというふうに思います。

 スウェーデンの件もお伺いをしたいんですけれども、スウェーデンでは、積極的同意を要件とした刑法の改正を行いました。法務省もヒアリングに参加をしているというふうに思いますけれども。

 ちょっと時間がないのであれなんですけれども、スウェーデンの方々がおっしゃっておりました。性的行為は強制されるべきではない、法改正の意義として、性的行為には同意が必要であるとの規範をメッセージできたこと、社会全体の考え方を変える、そういうメッセージを国が発することができたということ、そして、今までの法律は被害者の保護が不十分であった、それを改善する意義があったというふうにお話をされておりました。

 先ほど来お話をしておりますように、被害者の保護は全く不十分でございます。やはり日本としても刑法を改正して、性的行為には同意が必要であるという規範をメッセージとして出すべきだという点をお伺いしたいのと、あと、先ほどもワーキングの話がございました。昨年の十月二十八日から議事録が出ていないんですね。やはりこの重要なワーキングの中身をこうした予算審議を含めて生かすべきで、人をふやして、予算審議にも生かせるように議事録をすぐに出していただきたいと思いますけれども、大臣、この二点、お願いしたいと思います。

森国務大臣 スウェーデンについての御指摘がございました。

 スウェーデンにおいても、長い議論の末に、国会、政府、社会内において大きな議論を経て、啓発活動や国民に対する教育もなされているというふうに伺っております。

 我が国でも、現在、性犯罪の実態を適切に把握するワーキンググループをしておりますが、さまざまな立場の方の声をお聞きし、多くの方々の理解が得られるように丁寧な議論を尽くしていき、そして、御指摘のように、啓蒙活動等も積極的に、関係省庁と連携して適切に進めていきたいと思います。

 また、ワーキンググループの議事録について御指摘がございました。

 おっしゃるとおりでございまして、皆様の国会審議に参考になるように、議事録をできるだけ速やかに公開したいと考えておりますので、なおまた事務方に対して指示をしてまいりたいと思います。

    〔山口(壯)主査代理退席、主査着席〕

本村分科員 ありがとうございます。

 それで、先ほども大臣からお話がありましたように、被害当事者団体スプリングの皆さんは、本当に必死に声を上げて、何度も何度も国会に来ていただいて、与党も野党も、議員に対してさまざま働きかけをされております。

 その御要望は、大臣も聞かれているというふうに思いますけれども、附則第九条に基づき、刑法性犯罪の再改正に向けた見直し検討会及び審議会を早急に実施すること、見直し検討会及び法制審議会に、性被害当事者や支援団体の代表、さらに、被害者の実態を熟知した研究者、専門家を委員に半数以上入れること。そして、刑法改正市民プロジェクトの皆様が刑法性犯罪規定改正案を出されております、こういったものも検討の議題として、ぜひするべきだというふうに思います。大臣、最後にお答えをいただきたいと思います。

森国務大臣 スプリングの皆様にも大臣室に昨年十二月に来ていただきまして、御要望等を受けとめさせていただいたところでございます。また、このメンバーの皆様にも私の直轄の勉強会に入っていただく予定になっております。

 附則九条に基づく具体的な施策の検討については、現在ワーキンググループをしておりまして、この春に取りまとめをし、その結果を見た上で検討会というふうになってまいりますが、検討の対象となる事項については、被害者や被害者支援団体から寄せられた御要望も踏まえつつ、しっかりと検討していきたいということ。

 それから、メンバーについても御指摘がございましたが、当然、被害者の立場の方、また被害者支援にかかわる研究者、専門家等の御意見を幅広く聞くことができるような体制で議論を進めてまいりたいと思っております。

本村分科員 刑法を改正して、性的行為は強制されるべきものではない、性的行為には同意が必要であるという規範を日本も国としてメッセージを出すべきだということを申し述べて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

あべ主査 これにて本村伸子君の質疑は終了いたしました。

 次に、山下貴司君。

山下分科員 自由民主党の山下貴司でございます。

 本日は、予算委員会第三分科会ということで、法務省所管のことについて幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、私自身が先年まで法務大臣をやっていた中において、私がやり残したこと、あるいは、そういったときに法務大臣として何を考えていたかということもございます。現在、森大臣は、そういった思いもしっかりと受けとめていただきながら、しっかりと職務を果たしていただいている、私はそういうふうに考えており、深く敬意を表している次第でございます。

 そのことを申し上げた上で、まずは、私が法務大臣在任中にかかわらせていただいたこと、それについて宮崎大臣政務官に伺いたいのですが、それは、ハンセン病の言われなき偏見、差別、これを解消するということでございます。

 ハンセン病元患者の皆様、私の地元にもハンセン病元患者の皆様の療養施設がございます。そうした中において、我々は、その偏見、差別をしっかりと払拭していかなければならない。これは、元患者の皆様だけではなくて、家族の方にも及んでいた。そこにおいて、司法判断が一定なされた。その司法判断の論理構成自体は全く承服できるものではなかったけれども、私は、その賠償訴訟を所管する法務大臣として、一日も早い、その家族に対する偏見、差別、これを解消したい、あるいは、元患者さんに対する偏見、差別をなくしたいという考えのもとで、これは総理の御意向もあり、控訴を断念するという決断をしたわけであります。

 それはやはり、その後、法務省、あるいは文科省も厚生労働省もございます、関係省庁が、政府が一丸となってこの偏見、差別を解消していくということをしていただくという思いであったからでございますが、現在、法務省において、そういったハンセン病元患者、あるいは御家族も含めて、そういった偏見あるいは差別の解消に向けてどのようなことをされておられるのか。これは、弁護士として従前から、ハンセン病元患者あるいは御家族の皆様への偏見の解消について御尽力をされてきた宮崎政務官にしっかりとお答えいただきたいと考えております。

宮崎大臣政務官 今、山下委員からも御指摘がございましたとおり、昨年の七月の総理大臣談話にありますところ、ハンセン病対策につきましては、かつての入所政策のもとで、患者、元患者のみならず、家族の方々に対して、社会においても厳しい偏見、差別が存在した。そして、現在もこれが存在していることは事実でございまして、この筆舌に尽くしがたい経験をされたハンセン病の元患者の皆様、御家族の皆様の御労苦に思いをいたさなければいけないわけであります。

 そして、山下委員は、従前から、御地元にある岡山の愛生園をお訪ねいただいておるということを関係者の方から聞いております。そしてまた、法務大臣在任中の九月には、家族訴訟の原告の皆様、また、患者、元患者の皆様と長い時間をとって面談をしていただいて、その中でも、御自分の御家族にも触れられて、皆さんに愛すべき家族がある、かけがえのない時間だ、そして、患者の御家族の皆さんから聞いた言葉を受けて、限りない思いを皆さんが御家族に対して持っていたということを重く受けとめるということを、大臣としても御発言をいただいており、このことは、現在、法務省において行われておるハンセン病に関連する啓発活動においてもしっかりと受け継がれた上で、今、社会事業を行わせていただいているところでございます。

 私も、担当の大臣政務官として、家族訴訟の原告団、弁護団の皆様と、関係省庁である厚生労働省、文部科学省と一緒になって協議の場に立ち会わせていただくとともに、私自身が社会啓発を担当する法務省の担当者として、やはり、まず自分が行動しなければいけないんじゃないかと思っています。

 啓発が実を結ぶために何が必要かと考えたら、やはり、人として交流をすること、そして心から共感をすること、これが不可欠なんですね。私は、政務官という公的な立場をいただいておりますので、沖縄愛楽園、宮古南静園、そして熊本県の菊池恵楓園、鹿児島県の星塚敬愛園を訪れまして、自治会や関係者の方々から、ハンセン病問題をめぐるさまざまなこれまでのお話、そして現在の状況についてもお聞きをしております。

 菊池恵楓園では、自治会長と副会長の方の御自宅も訪問させていただいて、さまざま、本当に膝を突き合わせて、よもやま話もさせていただきました。また、星塚敬愛園では、園内放送を使わせていただいて、全入所者、関係者の皆様に対して、心からのおわびと、私なりの言葉で、寄り添うという思いを伝えました。

 私がこういう思いでいる一番大きなきっかけは、地元で、親御さんがハンセン病である方の御家族の方から聞いた言葉なんです。今、薬もきちっと行き渡っていますから、これは、親御さんが元患者という立場でありますけれども、家に帰ることはもはやできない、そうすると、病気が治っても一緒に暮らすことができない、ずっと一緒に暮らすことができなかったけれども、亡くなるまで一緒に暮らすことができないんだ、だから、お父さんが亡くなって、そして自分も死んだら、その後、お骨を分骨して、骨を一緒にして、あの世に行って、お父さんと一緒にいる時間を取り戻したいんだ、こんなことを聞かされました。

 こういった思いの中で、どうしたら今を生きている私たちがこの不当な偏見や不当な差別を少しでも解消できるんだろうか、そんな思いの中から、今、担当者として取組をさせていただいております。

 これからも、全国の療養所を必ず訪問をして、ハンセン病に関する偏見、差別の解消に対して、何ができるのかの正解はないけれども、何ができるんだろうかということを常に頭の中で思いながら、偏見、差別の解消に向けて、法務省を挙げて不断の努力をしてまいりたい、そういう決意でございます。

山下分科員 ありがとうございます。

 私の地元には、瀬戸内の長島というところに愛生園がございます。そして、邑久光明園というのもございます。二つの療養所があるわけでございますけれども、やはり、これは地元のみならず全国として、本当に悲しい、施策に翻弄された日本人の物語であり、そしてその家族の悲しい物語である。これを、国民を挙げての問題としてしっかりと取り組んでいく。それは、国民が偏見を絶対に持ってはならない、それをしっかりと解消するために全力を挙げる。それはやはり、弁護士でもあり、そして熱い思いを持っておられる宮崎政務官、そして森法務大臣、もちろん義家副大臣始め法務省の皆様に委ね、しっかりやっていただいていることを伺って、大変安心した次第でございます。

 私がちょっと伺いたいのが、やり残した仕事という部分と言えるのかもしれません、人事の問題であります。これにつきまして、今、検察官に勤務延長制度が適用されるというふうな解釈をめぐって、いろいろ国会で問題になっております。

 私も法律家の端くれであり、そして法務大臣経験者であります。私なりに整理させていただきますと、この問題に適用される法令は国家公務員法と検察庁法なんです。

 そして、一般職の公務員である検察官については、一般に国家公務員法が適用されますが、これは五十六年改正法の附則十三条にも明記してありますが、職務と責任の特殊性に基づいて、特例を要する場合においては法律又は人事院規則や政令で規定することができるということであります。

 そして、定年制度に関しましては、国家公務員法八十一条の二で、表題部として、法令による表題部ですが、「定年による退職」が定められ、同条一項においてこれは「法律に別段の定めのある場合を除き、」とされておりますので、特例においては検察庁法に委ねられると解釈されるところであります。

 では、その法律において、何が一般法で特例なのか、そして、それがどのような範囲で適用されるのかについては誰が解釈するのかということでございますが、これは、特別法においては、一般の法理論において、特別法の所管官庁であります。その特別法がどの範囲で適用されるのかということに関して判断するのも、その特別法を所管する官庁であります。

 もとより、一般法、特別法の境界がどこであるのかについては、一般法を所管する省庁との合い議は必要であります。しかしながら、その法令、特例がどこまで適用され、どの範囲で適用されるのかについて、これは、一般論として、特例法を所管する省庁の長、あるいは、最終的には行政権は内閣に属するわけですから、内閣が責任を持って解釈するというのが最終的なものであります。

 そして、その解釈はどのように表明されるのかということにおいては、例えば公式見解として公表される場合になるんだろう。その公式見解として表明される場合の中には、例えばこの検察庁法であれば、所管は法務省であります。法務大臣が国会で答弁をするであるとか、あるいは、最終的には行政府の長である、あるいは行政権が属する内閣において閣議決定などの形で表明される、これが解釈なんだろうというふうに考えております。

 私は、行政府においては内閣がこうした最終的な解釈権限を持つというのが、これはなぜかというと、国民主権に基づいて、そして議院内閣制があって、そしてそれが内閣に属しているということであります。こうしたことで解釈が確定されるのだろうというふうに考えております。

 こうした理解のもとに説明するわけですが、私の理解が誤っているのであれば御指摘もいただきたいんですけれども、今般、検察官に勤務延長制度が適用されるとの解釈をとるに至った経緯について、大臣から丁寧に御説明いただきたいと思います。

 野党の質問は、ともすれば細切れになってしまうんです。国民にはわからない。ぜひ国民の皆様にわかりやすいようにお願いいたします。

森国務大臣 今御質問いただいた勤務延長制度が適用されると解釈をとるに至った経緯でございますが、委員御指摘のとおり、国家公務員法と検察庁法の適用関係について、検察官も一般職の国家公務員でありますから、検察庁法に定められている特例以外については、一般法たる国家公務員法が適用される。では、その特例というのが何であるか、その特例の解釈については、検察庁法を所管する、所管省庁である法務省について整理をされるべきものでございます。

 それでは、具体的にどのように検討をしたか、その経緯を申し上げますと、一昨年末又は昨年来、国家公務員一般の定年の引上げに関する検討というのが始まりました。その検討の一環として、検察官についても検討を進めてくださいということが、内閣から指示がございました。そこで、法務省においては、検察庁法を所管する省庁として、検察官の定年について検討をしてきたところでございます。

 その検討の中の一環として、検察官の定年の退職の特例は何かということを検討した結果、その特例は定年年齢と退職時期の二点である、年齢と時期、この二点であるということ。そして、特定の職員に定年後も引き続きその職務を担当させることが公務遂行上必要な場合に、定年制度の趣旨を損なわない範囲で、定年を超えて勤務の延長を認めるとの勤務延長制度の趣旨、これが検察官にもひとしく及ぶというべきであること。このことから、一般職の国家公務員である検察官の勤務延長については、一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈することとしたものでございます。

 その上で、委員御質問の中でも触れていただきました関係省庁との協議がいつ行われたかということでございますが、決して後づけ等ではございませんで、適正なプロセスを踏んでおります。

 法務省において、勤務延長制度の検察官への適用についての考え方をまとめた文書を作成して関係省庁に示し、具体的には、内閣法制局との間では本年一月十七日から同月二十一日にかけて、内閣人事局との間では本年一月二十三日、人事院との間では本年一月二十二日から同月二十四日にかけて協議を行い、異論はない旨の回答を得て、最終的に結論を得たものでございます。

山下分科員 ありがとうございます。

 今の解釈でございますけれども、私も法務大臣在任当時、同じ解釈をしておりました。

 その上で問題になっているのは、今、昭和五十六年当時の国会において、人事院の、人事院は一般法である国家公務員の所管ということであるんですが、その局長ですかね、斧政府委員の答弁が問題点になっています。

 これ、マスコミの皆さん、野党の皆さん、正確に引用してもらいたいんですけれども、今から正確に引用します。

 いわく、「検察官と大学教官につきましては、現在すでに定年が定められております。今回の法案では、別に法律で定められておる者を除き、こういうことになっておりますので、今回の定年制は適用されないことになっております。」。

 この斧局長の答弁は法律家的に、私も森大臣も、あるいは宮崎政務官も法律家でございますが、法律家的に厳密に言えば致命的な誤りを犯しています。引用を間違えているんです。正確に言えば、「別に法律で定められておる者を除き、」、「者を除き、」と言っている部分は誤りなんです。これは「者」、つまり、属人的に検察官にこの部分が適用が排除されるわけではなくて、正しくは、八十一条の二では「法律に別段の定めのある場合を除き、」と規定してあるんです。だから、「者」、検察官だから属人的に排除されるという解釈は、これはおかしい。

 まさか斧さんがそういうふうな前提で言ったとは思いませんけれども、少なくとも、どのような場合に特例が発動され、どのような場合に特例が発動されずに一般法の適用になるのかというのは、これはまず検察庁法の所管省庁である法務省、解釈の最終責任者は法務大臣であります。そして、さらには内閣、これが解釈に責任を持つというわけであります。

 その範囲についてそういうふうに解釈をしたということでありますけれども、今回、私、解釈変更というのは、先ほど言ったように、私もそういう解釈をしていたので、森大臣になって解釈変更されたというのは非常に私は違和感があるんですよね。

 ただ、こういう解釈を確定したということですが、人事院の斧局長と異なる解釈を、斧さんの答弁自体が、「者を除き、」という自体が間違っているんですよ。ではあるんですが、それらを含めて、斧さんとの、答弁が違うじゃないかというふうに指摘されているんですが、そうしたことについて、先ほど大臣がおっしゃった答弁との整合関係あるいは整理について御説明いただければと思います。

森国務大臣 これは、令和二年二月十日の予算委員会で山尾委員が御指摘した議事録でございますね。この議事録は、昭和五十六年の四月二十八日の議事録でございます。こちらで斧委員が答弁しているんですが、答弁は質問があっての答弁でございますので、質問を見ますと、年齢についての質問なんです。ですので、私は、斧委員の答弁も年齢について特例であるというふうな、私の先ほどの解釈と矛盾しないというふうには考えております。

 そういう意味で、山尾委員が、実は四月二十八日のこちらの議事録とは別の日の昭和五十六年四月二十三日という五日前の議事録をお示しになり、そこに書いてある大臣の趣旨説明、提案理由、これが改正の第一から第六まであるんですが、それを全て御指摘なさった上で、この全ての改正点をもってして五日後の二十八日に斧委員が定年制というものをパッケージとして検察官、その者に適用されないと言ったんだというふうに読み込んでおられたわけでございますが、私は、そのとき議事録そのものの紙は手元に持っておりませんでしたので、詳細を承知しておりませんというふうに述べたわけでございます。

 こちらの定年制のパッケージ論というのは理論的に成り立たないというふうに思っています。というのは、この定年制の趣旨説明の中の第一から第六の中の第六についてはもともと検察官に適用されるものでございますので、全てが適用されない、全てがパッケージで適用されないということを五日後の議事録で読み込むということにはなかなか無理があるのかなというふうに思っておりますので、この議事録そのものをもってしては当時の解釈が明確にされないというふうに答弁を申し上げてきておりました。

 ただ、当時の解釈がやはり勤務延長には適用されるということが議事録には載っておりません。国会には、答弁には載っておりませんけれども、さまざまな部分で解釈として示されているところもございましたので、今回、一月二十四日に人事院の方で政府統一見解をつくったときに、当初は勤務延長については適用されないと理解されていたものの、今回は勤務延長に適用される、それは先ほど述べたるるの理由から適用されるというふうに解釈したというところでございます。

山下分科員 先ほど申し上げたように、要するに特例法と一般法の関係、そして、特例法がどのような場面で適用があって、どのような場合に特例として動くのかということについては、その特例の所管省庁である、この検察庁法であれば法務省で確定するということになります。

 そして、その法務省の解釈が、私は法務省に勤務していましたけれども、いろいろな解釈が飛び交います。過去の答弁も結局、問い、更問い、あるいは、これは他省庁の局長が答えちまったよという、そういった答弁があるんです。だから、それをしっかりと確定させる手続というのが必要になってくるというわけであります。

 これは別に、国会の審議をないがしろにしているわけではありません。質疑というのが、例えば質問通告が十分なされずに突然なされるものであるという性質も考えると、そうしたことが間々あるということでございまして、その解釈の確定においては、その特例法を所管する、今回の場合でいえば法務省、そして、最終的な解釈権限は法務大臣、更に言えば内閣が持つというわけであります。

 先ほど申し上げたように、斧局長の答弁は、引用自体、間違っております。者と場合を混同するということは普通はあり得ないわけでございまして、そういった意味において、どこまで適用なのか、特例なのかということが、国会答弁上は、実は、責任ある立場である法務大臣あるいは法務省の局長等からは答弁されていない状態にあります。

 そういったところで、解釈を確定するという作業が必要になった。そこで、一般法の所管である人事院と、関係省庁もございます、合い議をしたという手続をとったということでございます。

 だから、先ほど言ったように、私が法務大臣当時、実は、国家公務員法が提出されるんじゃないかという話がございました。ですから、法律家でもあり法務大臣でもある私は、森大臣がおっしゃったと同じ解釈を個人的にはしておりました。それが法務省の、あるいは法務大臣としてきちっとした見解になるためには、当然、関係省庁の合い議も経なければならないというところであります。

 ですから、私は、解釈の変更だというマスコミ報道に対しては強い違和感があります。私が当時、そういうふうな解釈をしていたわけですから。ですから、今回行われたのは解釈の確定というふうに私は考えておりますが、ただ、それをどう表現するかというのは言葉ぶりの問題であります。問題は、その手続が適式になされたかどうかというところであります。

 今回、その解釈について合い議がありますね。その合い議について、決裁をとったかどうかというふうなことが問題になりました。そして、口頭の決裁であることを問題視する向きもございますが、この点について、大臣の見解を伺いたいと思います。

森国務大臣 けさ、閣議後の記者会見でも申し上げたところなんですけれども、決裁というのは行政機関の意思決定でございまして、部下が、決裁権者、責任者に、さまざまな行政行為について、その採否について意思決定を求め、それに答えるという行為でございます。それには口頭の決裁もございますし、書面の決裁もございます。私も毎日、さまざまな行政行為について、口頭や書面で決裁をとっているわけでございます。

 法務省では、法律案に関しては、その最終的な成果物たる成案を確定する際に、法務省行政文書取扱規則に定められた方法による書面による決裁を経ることとしておりますが、この法律案策定の確定に至る前の、その過程において検討している段階においては、この書面の決裁を逐一経ることは要しないものと理解をしておりまして、そのような運用がなされてきたところでございます。

 もちろん、この書面の決裁というのは、システム決裁、電子決裁等もあるところでございますが、御指摘の今回の勤務延長に関する解釈については、先ほどお示しをいたしました、検察官の定年引上げ、国家公務員一般の定年引上げの中の検察官の定年引上げ等に関する法律案の策定の過程において、その検討の前提として現行の検察庁法の解釈について整理をしたものでございますから、書面による決裁は要しない扱いとしたものでございます。

 もっとも、これは書面による決裁をしないとはいえ、口頭の決裁はとったということです。つまり、内閣法制局等と協議するに当たり、事務次官まで、内閣法制局に提出する文書を確認して、その旨の了解を口頭で決裁を受けたということでございます。

山下分科員 まさにそうなんですよ。要するに、解釈確定に至るその検討段階において、一々書面はつくらない。

 私、民主党政権時代にも法務省に勤めておりました。山ほど口頭で了解をとっています、こういったものについては、各省合い議については。当たり前です。じゃないと回らないんです。ただ、かっちりしたところにおいて、やるときにはやります。それは決裁をやりますけれども、これは、私、民主党政権でも、あるいはその前の自民党政権でもやっていましたから。だから、それを異とするのは、私は本当に、民主党政権の方が今問題とする理由がよくわからない。実際、当時、やっていましたから、私は。

 最後に、あと残り二分になりましたけれども、今回は、その人事権の行使として、黒川弘務検事長に適用したということが問題視されています。

 整理します。

 これは、延長が許されるのかどうかという問題については、国家公務員法と検察庁法の適用の問題であり、今回、検察庁法の適用のない部分について国家公務員法の適用があるのだということについては、法務省、人事院、そして内閣法制局、いずれも了解がとれているということであります。適式な手続はとっている。

 その上で、誰を人事として任命するかでございますが、その任命権は、これは当然、認証官であるので内閣。そして、その内閣に閣議を請議するのは法務大臣であります。所属庁の長である法務大臣が選ぶということになります。

 ここで、黒川さんに対していろいろなことが言われています。黒川法務事務次官を東京高検検事長に推挙したのは、私であります、法務大臣当時の。なぜか。それは、黒川さんは私、特捜部時代に御一緒していまして、捜査能力も極めて高い、そしてまた、司法制度改革や刑事司法改革もしっかりやっておられた。そうした両方の経験を持つというような、なかなか希有な人材であったわけであります。だから、通常は、事務次官からワンクッション、ほかの検事長を置くのでありますけれども、東京高検検事長にお願いしたというわけであります。

 そして、その時々の法務大臣が、その所管する庁の者にどうするのかということについては、法務大臣が任命責任は負いますよ、その責任を持って任命、あるいは内閣に請議する。これが国民主権のもとの行政権のあり方であります。特定の官僚が後任を指示する権限を持っているわけではないというわけです。

あべ主査 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

山下分科員 以上を申し上げて、私の質疑といたします。ありがとうございました。

あべ主査 これにて山下貴司君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)分科員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの後藤祐一でございます。

 まず、これはちょっと通告できなかったんですが、二月の二十一日、私の通告のときには御説明いただかなかったんですけれども、逃走を防ぐための新たな保釈制度について法制審議会に諮問したということでございますが、これは、昨年六月、神奈川県の愛川町、私の地元でございますが、ここで、保釈中に実刑判決を受けた男が収容時に逃走、そして、その後、秋にも、大阪でも逃走事案がありました。この愛川町では、地元の小中学校、数日間学校が閉鎖されて、私の子供も学校を休んでいます。

 この事件後、法務省は、私に対して、最高検察庁でチームをつくって検証するという御説明をされておられましたが、結局これがどうなっていたのかよくわからないまま、年末にカルロス・ゴーンが保釈中に海外逃亡をしたということが起きてしまいました。この諮問、遅過ぎたんじゃないんですか、大臣。

森国務大臣 委員のお示しの事案も含めて、さまざまな保釈中の逃亡事案等がございました。それを受けて、今回、諮問をしたということでございます。

 諮問はできるだけ迅速にするように私も法務省内に指示をしてきておりましたし、全般的に必要な論点を検討するように指示をしておりますので、適切な諮問をしたというふうに思っております。

後藤(祐)分科員 諮問の後、答申までに時間がかかるということであれば、それは専門家の検討ですとかいろいろな角度から多少わからなくはないですが、諮問が八カ月もたってからというのは、これは遅過ぎだと思いますよ。

 最高裁にお越しいただいておりますけれども、最高裁、まあ裁判所全体としてでしょうが、裁判所でも、こういう保釈の条件ですとか逃亡のおそれについていろいろな形で検討されているというふうに伺っておりますが、その検討状況はどうなっているんでしょうか。結局、ゴーン事件が起きてしまって、遅過ぎではないでしょうか。また、ゴーンが逃亡したことについて、裁判所としてどのように受けとめているんでしょうか。あわせてお答えください。

安東最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘ありましたカルロス・ゴーン被告人の保釈中の逃亡事件についてでございますけれども、個別裁判の当否についての言及は差し控えますが、保釈中の被告人が不正に出国して刑事裁判が開けなくなるというのは本来あってはならない事態と事務当局としても考えておりまして、今回の件については重く受けとめておるところでございます。

 それから、裁判所での取組でございます。

 先ほど委員からも御指摘ありました、昨年夏ごろから保釈中の被告人の逃走事案が相次いで発生しておりまして、一部の地方裁判所におきましては、保釈が取り消された実例を素材として、保釈の運用に関する議論がされていたところです。

 これを受けまして、昨年秋に開催された司法研修所の刑事事件を担当する裁判官の研究会におきまして、事務当局の方からその地裁の議論状況を紹介したところでございます。その後、その内容は各庁に還元され、各庁で議論が行われたものと承知しております。

 また、こうした各庁での議論を踏まえまして、先月から高裁単位で刑事事件担当の裁判官の協議会を開いておりまして、そちらでも、保釈保証金を含む保釈条件のあり方、それからその設定に必要な情報を当事者から把握するための審査手続のあり方などについて、更に議論がなされたところでございます。

 このように裁判官の間での議論を積み重ねていくことによりまして、個々の事案に応じた適切な保釈の運用が行われていく、そのように考えているところでございます。

後藤(祐)分科員 ゴーンが逃げてから、一月になってからそういう検討をするのは、やはり遅かったと思いますよ。

 ぜひ、法務省においては、控訴審判決時の出廷、これを保釈中の被告に義務づけるべきだと思いますし、あるいは逃走罪を設けるということも積極的に検討すべきだと思います。また、裁判所におかれましては、保釈条件というのがやはり甘かったのではないか、保釈金の金額も含めて、これは実務の方も含めて、厳しくなるよう、両者、検討いただけるようお願い申し上げたいと思います。

 それでは、裁判所は御退席いただいて結構です。

あべ主査 どうぞ、安東刑事局長、御退席をして構いません。

後藤(祐)分科員 続きまして、定年延長問題に行きたいと思いますが、昭和五十六年に国家公務員法改正案の内閣法制局の審査が、失礼しました、審査は五十五年に行われていると思うんですけれども、その審査の結果を踏まえた想定問答、これが、きのうですかね、小西参議院議員が国立公文書館で発見をされました。私も、金曜日の段階で法制局の事務方から、そういったものが公文書館にあるというふうに伺っておりました。

 配付資料の一枚目、これが法制局から小西議員が入手したもので、ちょっと見にくいので別の形のものが、これは小西議員がカメラで撮ったものですが、ここにあります。ここに、「定年、特例定年、勤務の延長及び再任用の制度の適用は除外されることとなる」という答えになっています。その質問は、検察庁、大学の教員については、年齢についてのみ特例を認めたのか、それとも全く今回の定年制度から外したのかという質問に対しての答えでございます。つまり、検察官については、この想定問答では、勤務延長は制度の適用は除外されると、明確にこの想定問答で決められているわけでございます。

 まず、法制局長官、お越しになっていただいていますけれども、ことしに入って一月二十一日に内閣法制局が法務省に対して、意見なしという回答をする前に、この想定問答を法制局長官はごらんになっていますでしょうか。

近藤政府特別補佐人 今回の国家公務員法の改正に関する法案の検討の過程で、従来適用のなかった検察庁法とそれから教育公務員の特例法というのは、昔、適用がない形で始まっておりますけれども、それについての過去の内容というのは参事官のところで洗っておりまして、当時の想定問答ですとか、あるいは国会での議事録なども含めて全部、当然把握した上で審査を開始しております。

後藤(祐)分科員 見ているという答弁でございましたが、この勤務延長は検察官に適用されないというのが昭和五十五年当時の立法者の意思であって、政府統一見解だと理解してよろしいですか、法制局長官。

近藤政府特別補佐人 当時、政府部内ではそういうふうに解釈されていたというふうに理解しております。

後藤(祐)分科員 先ほど山下前大臣がやっていたやりとりは一体何だったんですかね。政府統一見解として、勤務延長は検察官に適用されない。明確な内閣法制局長官の答弁がありました。内閣の統一見解なんですよ。

 森大臣、この想定問答、あるいは森大臣の部下かもしれません、法務省としてごらんになっていますか、一月二十一日までに。

森国務大臣 御指摘の資料については、事務方から、その内容も踏まえて、今回の解釈における前提として検討を行ったものと報告を受けております。私自身としても、閣議請議前の時点で、勤務延長制度の導入当時の解釈を含め必要な説明を受けていたものでございますが、なお、御指摘の資料の内容は、勤務延長制度が導入された当時、検察官については国家公務員法の勤務延長制度は検察庁法により適用除外されていると理解されていたとのこれまでの説明と何ら矛盾するものではございません。

後藤(祐)分科員 この想定問答を、法務大臣及び法務大臣の部下としての法務省の方が、担当の方々が見ていたかどうかを聞いています、一月二十一日までに。見ていたかどうか、お答えください。

森国務大臣 はい。私は、事務方からその内容も踏まえて必要な説明を受けましたので、事務方は見ていたものと理解をしております。

後藤(祐)分科員 つまり、この想定問答を見た上で、その内容を法務大臣も知った上で、内閣の統一見解がこうである、この想定問答のとおりであるということを理解した上で一月のやりとりをしたということですね。

 さて、森大臣、この想定問答は、立法者の意思はダイレクトに明らかじゃないですか。二月二十日、予算委員会で私に対する森大臣の答弁、このように述べています。法の解釈論だと思います、当時は立法者の意思が議事録等では必ずしもダイレクトにつまびらかではないのでございますとの答弁を、撤回していただけますでしょうか。

あべ主査 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

あべ主査 速記を起こしてください。

 森法務大臣。

森国務大臣 今、議事録を確認いたしました。私の答弁は、当時は立法者の意思が議事録等では必ずしもダイレクトにつまびらかではないというふうに答弁をしておりまして、議事録では、はっきりと言っているところがございませんし、また、その理由や経緯についてもつまびらかでないのでございまして、私はこの答弁をしたものでございます。

後藤(祐)分科員 先ほど大臣は、一月十九日よりも前の時点で、この想定問答が存在し、そしてその想定問答の趣旨を部下から説明を受けて知っていたと答弁されました。そして、これは内閣統一見解であるという内閣法制局長官の答弁もございました。つまり、議事録ではないかもしれませんが、二月二十日の森大臣の答弁は議事録等と書いてある、等と言っていますが、ダイレクトにつまびらかな文書じゃないですか。しかも、大臣がその内容を事前に説明を受けているわけでしょう。知らなかったじゃなくて、事前に説明を受けているわけじゃないですか。

 答弁、撤回していただけますか。

森国務大臣 答弁の撤回はいたしません。

 と申しますのは、こちらの方で私が、法の解釈論の問題だと思いますというふうに御答弁を申し上げ、法律の解釈というのは現在ある条文に書いてあることをどう解釈するかという問題であるというふうに存じますというのに続けて、先ほどのような御答弁をいたしました。

 議事録等から見たところ、先ほどお示しになった想定問答集には、勤務延長制度が適用除外というふうに記載されておりますものの、そのように解釈した過程や理由等については必ずしもつまびらかではない。つまり、詳細な過程や理由が明らかにされておりません。そのような中で、検察庁法を所管する法務省として、検察官について、その勤務延長を認めないということが、その特例が定められていないことや、それから勤務延長制度そのものの趣旨、これが本当にどのような場合にも全く勤務延長しないという趣旨なのかどうかということ、また社会情勢の変化、さまざまなことを検討いたしました。

 また、検察庁法が制定されたのが二十二年でございまして、それから約三十年後に国家公務員法ができたわけでございますが、そのときから更にまた三十年以上がたっております。そのような社会情勢の変化等も勘案をして検討した結果、検察庁法で定められている検察官の定年による退職の特例は年齢と退職時期の二点であるというふうに解釈をし、勤務延長については一般法である国家公務員法の規定が適用されると解釈をできるというふうに理解をしたところでございます。

後藤(祐)分科員 先ほど法制局長官は、この想定問答は内閣統一見解だとおっしゃいました。

 法務大臣は、これは内閣統一見解ではなかったと言うわけですか。

森国務大臣 いえいえ。私が今説明をしているのは、当時はそのように政府で理解をされていたと思います。法制局長官の御答弁のとおりだと思います。しかし、そのように解釈をした検討の過程や理由等については必ずしもつまびらかではない。必ずしも詳細に記載されているものがございません。その上で、社会情勢の変化等に鑑み、また、今回、国家公務員法の定年を全般的に引き上げるという法案を検討する過程で検討した結果でございます。

後藤(祐)分科員 過程は結構です。これは結果ですから。昭和五十五年の法制局の審査のときの、この法案の立法者の意思としてこの想定問答で示されている、勤務延長は検察官には適用されないというのは結果ですから。これは政府統一見解ですから。この政府統一見解を、過程ではなく結果として、森大臣、お認めになりますか。

森国務大臣 今ほど御説明したとおり、当時はそのように解釈をされていた。しかし、今般、先ほどお示しした理由によって……(後藤(祐)分科員「当時のことを聞いています」と呼ぶ)当時と今般について今御答弁をしております。(後藤(祐)分科員「じゃ、お認めになるということですね」と呼ぶ)当時はそのように解釈をされていたと理解をしておりますが、今般はまた先ほど御説明したとおりに解釈をしたということでございます。

後藤(祐)分科員 当時は、法務省としても、内閣統一見解として、検察官には勤務延長は適用されないというふうに解釈していたことを今、法務大臣、認めました。二十日の私の質問に対する答弁は、当時は立法者の意思が議事録等では必ずしもダイレクトにつまびらかではないのでございます。明らかな矛盾じゃないですか。

 もうこれ以上やっても明らかな矛盾を撤回しない姿勢をこれから先もさらすんでしょうから、次に行きたいと思います。

 森大臣、国家公務員法の八十一条の二で定義されている定年の退職時期については、検察官には適用されないということでよろしいですね。まず、基本的なことの確認です。

森国務大臣 はい。適用されないと理解しております。

後藤(祐)分科員 人事院にお越しいただいておりますけれども、人事院にお聞きします。

 検察官にとっての退職時期は検察庁法二十二条で規定されていますので、国家公務員法八十一条の二で定義されている定年退職日という概念は、検察官に対しては適用されないと考えてよろしいですか。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 検察庁法で定められている特例についての解釈につきましては、法務省の方で御判断されるべきものだというふうに考えております。

後藤(祐)分科員 つまり、八十一条の二の定年退職日は、ほかの、検察官以外のいろいろな一般職の公務員について規定しているわけですけれども、検察庁法二十二条で検察官については別の定めをしていますから、それは特例になっているので、八十一条の二で定義されている定年退職日は検察官には適用されないということでよろしいですか。これは議論の前提を聞いているだけなんですけれども。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 国公法で定める定年退職日については適用されないということでございます。

後藤(祐)分科員 もう一問です。人事院に聞きますが、この八十一条の二において、定年退職日は、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日と定義されていますが、各府省、平成六年以降この指定をしていないと伺っています。したがって、現行では八十一条の二に定義する定年退職日は三月三十一日ですか、全て。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘のとおりでございます。

後藤(祐)分科員 森大臣に伺います。

 定年延長を定める国家公務員法八十一条の三は、定年退職日の翌日から起算することとされています。そして、例外は規定されていません。一方で、八十一条の二で定義される定年退職日というのは、検察官にはその概念も適用されないという答弁がありました。そして、この八十一条の二の定年退職日は全て三月三十一日として今運用されているという答弁もございました。

 そうしますと、森大臣、検察官には定年退職日という概念が適用されないわけですから、八十一条の三の勤務延長の起算日は特定できないんじゃありませんか。

森国務大臣 職員が定年に達したときに退職するとの意味での規範は国家公務員法八十一条の二第一項が適用され、定年年齢と退職時期については、検察庁法二十二条が、この八十一条の二第一項に書いてある「法律に別段の定めのある場合」として適用されるものと解しております。

後藤(祐)分科員 検察官に定年退職日はあるんですか。国家公務員法八十一条の二及び八十一条の三に規定されている定年退職日は検察官にあるんですか。

森国務大臣 今ほど御答弁申し上げましたとおり、定年に達したときは退職するという意味での定年制の規範そのものは検察官に適用されるというふうに解しておりますので、定年に達した日、つまり定年退職日というものがあるというふうに理解をしております。

後藤(祐)分科員 先ほど人事院給与局長は、国家公務員法に定める定年退職日は全て三月三十一日だと答弁しました。検察官についても三月三十一日なんですか。違いますでしょう。八十一条の二及び八十一条の三の定年退職日は、その定年退職日は全部三月三十一日で運用されているんですよ。でも、黒川さんは二月七日が定年退職日だったんですよ。つまり、黒川さんの二月七日というのは、定年退職日ではなくて、退官すると検察庁法二十二条で決められた日にすぎないんじゃないんですか。

 定年退職日の定義は、国家公務員法八十一条の二でなされているんですよ。それは検察官に適用されないと先ほど松尾さんは言ったんですよ。検察官には、定年退職日、少なくとも国家公務員法八十一条の二、八十一条の三の定年退職日はないんじゃないですか。

 でも、多分同じことを答えるでしょうから、時間稼ぎされるので、ここは、先ほどの松尾局長の答弁、そして八十一条の二、八十一条の三、三月三十一日になっているということ、それと検察庁法の関係を整理して文書で提出いただきますよう、委員長、取り計らいいただきます。

あべ主査 ただいまの資料請求につきましては、主査から予算委員長に報告をしておきます。

後藤(祐)分科員 つまり、定年延長の起算日は定年退職日の翌日と八十一条の三に書いてあるんですけれども、ほかの国家公務員は定年延長の起算日は四月一日なんですけれども、黒川さんの場合だけ二月八日にできるということじゃないですか。法律に、定年退職日の翌日と明確に書いてあって、例外はないんですよ。この法律の解釈を一体どこで変えたんですか。

 そこで問題となるのは決裁文書の話になるんですが、この決裁文書、先ほど、文書では決裁はとっていないという発言がございましたが、森大臣、これは決裁が完了した行政文書ですか。

森国務大臣 はい。私は口頭で決裁をしておりますので、決裁が完了した行政文書でございます。

後藤(祐)分科員 配付資料の中に、法務省行政文書取扱規則、先ほど大臣も引用されましたが、配付しておりますが、その後ろから二枚目、十七条というのがあって、この法務省行政文書取扱規則第十七条は、「決裁を完了した行政文書の文書番号は、文書管理システムにより登録する。」と書いてあります。

 文書番号はとっていますか。

あべ主査 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

あべ主査 速記を起こしてください。

 森法務大臣。

森国務大臣 委員お示しの配付資料は法務省行政文書取扱規則でございますけれども、取扱規則上の文書ではございませんので、規則上の決裁を得る文書ということではございませんので、番号はとっておりません。

後藤(祐)分科員 この十七条は、文書とか口頭とか書いてないんですよ。「決裁を完了した行政文書の文書番号は、」と書いてあるんですよ。

 だから、事ほどさように、決裁に口頭なんかないんですよ。十七条の決裁を完了した行政文書にこの文書は当たらないというんですか。じゃ、決裁じゃないじゃないですか。決裁一般について書いてあるんですよ。

 この十七条との関係について、理事会でお取り計らいください、委員長。

あべ主査 ただいまの資料要求につきましては、主査から予算委員長に報告をしておきます。

後藤(祐)分科員 そうしますと、国家公務員法八十一条の三の勤務延長の起算日、これは法律で定められています。四月一日です。そして例外はありません。この勤務延長の起算日を何らか法的効力のあるもので修正したはずなんですね。その文書は何ですか、森大臣。

森国務大臣 まず、先ほどの退職時期についての御質問でございますが、これまで国会で答弁してきておりましたとおり、特例が年齢と退職時期の二点でございますので、退職時期についても特例であるというふうに理解をしております。

 また、委員お示しの法務省行政文書取扱規則に定められた方法による書面による決裁を、それは該当しない、この取扱規則に該当しないということで書面の決裁はとっておりません。そして口頭の決裁をとったということでございます。

後藤(祐)分科員 十七条違反じゃないですか。

 そして、質問に答えていないですよ。八十一条の三の勤務延長の起算日を修正する法的効力のある文書は何ですか。お答えください。

森国務大臣 先ほども述べたとおり、定年年齢と退職時期の二点については、検察庁法二十二条により定年年齢と退職時期について修正をされておりまして、国家公務員法八十一条の二第一項の特例であるというふうに理解をしております。

後藤(祐)分科員 どの文書ですかと聞いています。答えていないです。法律を修正する文書ですよ、法律の効果。

森国務大臣 法律の規定という御質問でございましょうか、文書というのは。(後藤(祐)分科員「八十一条の三で。質問を聞いておいてください」と呼ぶ)はい。

 それでは、もう一度御答弁申し上げますけれども、検察官の定年による退職の特例は、定年年齢と退職時期の二点でございまして、国家公務員が定年により退職するという規範そのものは、検察官であっても一般法たる国家公務員法によっているというべきでございますので、結局、検察官の定年による退職は、検察庁法二十二条により定年年齢と退職時期につき修正された国家公務員法八十一条の二第一項に基づくものと解されます。したがって、前条第一項の規定により退職した場合に適用される同法八十一条の三の規定は検察官にも適用されるものと解しております。

後藤(祐)分科員 八十一条の三の勤務延長の起算日は定年退職日の翌日と書いてあるんです。その解釈を、法律効果のある別の法律なり政令なりで変えなきゃ実現しないじゃないですか。

 実際、法務省が人事院に示した例の文書、修正すると書いてありますよ。配付資料の中にありますでしょう。どこの文書で修正したんですか。

 この配付資料の三ページ目から四ページ目にかけて、「勤務延長制度の検察官への適用について」という紙、この注の一というところで、国公法八十一条の三第一項、第二項のうち、その職員に係る定年退職日とあるものは、その職員が定年に達した日と修正されて適用されることになると。

 法律効果のある国家公務員法で定めている勤務延長の起算日を一体いかなる文書で修正したんですか、法律効果を。法律効果を修正する以上、何らか法律なり政令なりが必要じゃないですか。この紙ですか。どの文書で修正したか、もう一度お答えください。

森国務大臣 今まで御説明しておりますとおり、検察庁法二十二条によって修正されておると解釈しております。

後藤(祐)分科員 二十二条は、だって、起算日は書いてないじゃないですか。勤務延長の起算日について二十二条は書いてないですよ。しかも、定年退職日については全部三月三十一日だと言っているんですよ、人事院は。

 文書は、そうすると、どの文書なんですか。この三ページから四ページにかけての文書が法律効果を修正する文書ですか。まず、どの文書なのかお答えください。さっきから答えていない。

森国務大臣 二十二条によって修正をされたというふうに解釈をしております。年齢と退職時期の二点が特例として検察庁法二十二条に定められていると理解しているわけでございます。

後藤(祐)分科員 国家公務員法には、定年退職日の翌日と書いてあるんですよ。検察庁法二十二条には定年退職日とは書いてないし、定義されていないんですよ。

 実際、国家公務員、その他の方々、一般職の方々は、三月三十一日が定年退職日なんですよ。黒川さんの場合は二月七日じゃないですか、予定されていたのは。日にちも違うんですよ。ほかの方は三月三十一日なのに、黒川さんの場合だけ二月七日にするという。何か、そうするんだったら、法律改正するなり政令決定するなりしなきゃいけないはずじゃないですか。この紙でそれを決めたんですか。あるいは紙が全くないという意味ですか。

 もう一度、答弁。

森国務大臣 検察庁法二十二条に、退職時期について、定年に達したときというふうに検察庁法二十二条に規定をされておりますので、この定年に達したときというのが、誕生日を起点にして、誕生日の前日が定年に達した日というふうに理解をしております。

後藤(祐)分科員 人事院に聞きます。

 ほかの一般職の公務員については、定年退職日は定年に達したときですか。定年に達したときの一番すぐ来る三月三十一日というふうに定義しているんじゃないですか、人事院。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 法律の規定でいいますと、「職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日に退職する。」というふうになっております。

あべ主査 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

後藤(祐)分科員 人事院の言ったとおりなんですよ。定年に達した日じゃないんですよ。その直後の三月三十一日なんですよ。勤務延長の起算日はその翌日だということなんですよ。それ以外の適用はないんですよ、大臣。

 ここを整理して、この国家公務員法八十一条の二及び三、この勤務延長の起算日についての今の人事院の答弁を踏まえ、なぜ黒川さんの場合は二月八日が勤務延長の起算日とできたのかということについて、いかなる文書をもってそれを決めたのか、どういう整理になっているのかについて整理した文書を提出いただけるよう、委員会でお取り計らいください。

あべ主査 ただいまの資料要求につきましては、主査から予算委員長に報告をしておきます。

後藤(祐)分科員 終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて後藤祐一君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

あべ主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 財務省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、これを許します。福田昭夫君。

福田(昭)分科員 立国社の福田昭夫でございます。

 本日は、予算委員会、総務委員会に続いて、我が国の消費税が抱える根本的な問題点と、税制の抜本的な改革が必要だ、そういう論点から財務大臣の考え方をただしてまいりたいと思いますので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。

 内閣府が二月十七日に発表した二〇一九年の、去年の十月から十二月期の実質GDPは、前期比の年率で六・三%減と大きく落ち込みました。十月の消費税率の引上げや台風や暖冬などの天候不順も重なり、五四半期ぶりのマイナス成長となりました。ことしの一月から三月期も更に悪化することが心配をされております。

 二月二十日に公表した月例経済報告では、景気動向指数が五カ月連続で悪化しているにもかかわらず、緩やかに回復しているとの判断を維持したようでありますが、そろそろ消費税制を創設したことが大失敗だということに気づくべきだと考えております。

 そこで、質問に入ります。

 まず一つ目の、我が国の消費税が抱える根本的な問題点についてであります。

 一つ目は、国、地方公共団体の一般会計、本来業務が多額の消費税を負担していることについてであります。

 第一点、EU加盟国又は国連加盟国で、税金で付加価値税、消費税を負担している国はありますか。ぜひ具体的に国の名前を挙げてください。お願いいたします。

矢野(康)政府参考人 お答えを申し上げます。

 付加価値税におきましては、国及び地方公共団体に対するものを含めまして、事業者が行う課税資産の譲渡等を広く課税対象としていると承知しております。

 したがいまして、例えばイギリスもドイツもフランスもそうでございますけれども、付加価値税を有する欧州諸国におきまして、国及び地方公共団体が物品・サービスの購入等を行います場合には、付加価値税を含む価格を支払うことになると承知しております。

福田(昭)分科員 矢野主税局長、そういうふうにはぐらかしちゃだめ。

 後の質問で聞こうと思っていたけれども、本来業務って一体何ですか。物品・サービスを買うことが本来業務ですか。答えてください。

矢野(康)政府参考人 国及び地方公共団体の何が本来業務で、何が本来業務でない付随業務かという定義はございません。

 本来業務を行う場合に消費税がかからない規定になっているという御指摘を先生従来からしておられるわけですけれども、そこで言っておりますことは、国がもろもろの行政サービスを財・サービスの提供という形でした場合に、これは自治体もそうですけれども、広い意味での対価として、税ですとか保険料ですとか手数料ですとか、もろもろのものをいただく場合がある、場合があるといいますか、税を含めれば全てそうなっているといえばなっているわけですけれども、それについて付加価値税が上乗せされることはない。

 常識的に考えてもそうですけれども、税をいただくときに税の金額に付加価値税率が乗っかってくるとか、保険料をいただくときに保険料の額にということはあり得ない、それがEC指令で書いていることです。

福田(昭)分科員 じゃ、矢野主税局長、資料の二の一、欧州の付加価値税における公共部門の取扱い、「原則」「例外」、全部読んでみてください。

矢野(康)政府参考人 委員が配付されました資料を、事前に頂戴いたしましたので、熟読させていただきました。これは衆議院の調査局さんで調べられたということでございますけれども、大事なところはこの「したがって、」以下だと存じますけれども……(福田(昭)分科員「全部読みなさい」と呼ぶ)はい。

 EUでは、付加価値税の課税対象を経済的活動に限定していることから、本来の政府活動は課税対象外となる。したがって、公共部門は非課税法人として、その物品やサービスの提供を行っても課税対象とならず、また、物品やサービスを購入しても、税額控除の権利は認められない。(公共サービスの供給を行う政府を納税義務者から除外)

 例外。納税義務者からの除外が経済競争面で重大なひずみをもたらす場合等には、例外として納税義務者とみなす。例えば、旅客や貨物の運送、水、ガス、電気等の供給などである。

福田(昭)分科員 今読んで、「原則」のところにある「本来の政府活動」というのは何ですか。これが大事。本来の政府活動を答えられなくて、この消費税問題は解決しないですよ。本来の政府活動って何ですか。

矢野(康)政府参考人 それは、さまざまな行政サービスの提供ということになります。

福田(昭)分科員 私に言わせれば簡単ですよ。各省庁の所管の事務事業じゃないですか、本来業務って。違いますか。どうですか。

矢野(康)政府参考人 そのように言っても正しいと存じます。

福田(昭)分科員 そうしたら、例えばだけれども、国土交通省が国道をつくる、ダムをつくる、国営の飛行場をつくる、港をつくる、これは本来業務じゃないですか。違いますか。

矢野(康)政府参考人 本来業務と存じます。

福田(昭)分科員 そうしたら、そのときに消費税を上乗せして払っているじゃないですか。財務省は、納税はしていません、負担していますと言いますけれども、言葉遣いは別としても、消費税を上乗せして、そんな本来業務に対しても払っているじゃないですか。どうですか。

矢野(康)政府参考人 各省庁は、各行政分野において、物品を購入する、あるいは大きな資材を購入する等々、小大ございますけれども、基本的にそこに消費税が乗っている、それは御指摘のとおりです。

福田(昭)分科員 そういうふうにごまかしちゃだめだよ。さっき読んでもらったでしょう。原則は、本来の政府活動は課税対象外なの。

 問題は、物品やサービスの供給ですよ。これに対しては、それを提供しても課税対象とならない、またあるいは購入しても税額控除の権利は認められないということ。つまり、物品やサービスに対しては仕入れ税額控除方式がその対象外だよ、こう言っているんだよ、これは。本来業務は課税対象外なんだ。そこを日本の消費税はごまかしている。どうやってごまかしているか。これから行きますけれどもね。

 それでは、次、質問第四点に行きますけれども、先ほど話があったイギリスとかそういうところを調べてみますからね、私。回答を、きょうは調べられないけれども、これからちゃんと質問状を出して答えをもらいますからね。

 それから、第四点です。二月十日の麻生大臣、政府参考人の虚偽答弁の撤回について。

 私が指摘したのは、政府の本来活動で、一般会計のうち、本来活動で何で税で消費税を負担しているんだという話をいたしましたけれども、しかし、そこの答弁も、矢野主税局長の答弁も、物品・サービスにすりかえちゃって答弁しているんですよ。

 いいですか。今話をしてきたように、本来業務ではEUでは付加価値税を払っていない。ところが、日本では本来業務でも払わせている。それはどこにそういうことが書いてあるか、矢野主税局長、教えてください。

矢野(康)政府参考人 政府、広い意味での政府、国、地方公共団体が物を買った場合に、その物の本源的な対価に加えて、当該国の付加価値税率、日本でいえば消費税率、これを上乗せしていることは世界共通でございます。そのことは、今、先ほど読めと御指示をいただきました書きぶり、これは院内の部局が書いたものですけれども、何ら矛盾をしてございません。

 なぜならば、大事なことですから申し上げますけれども、資料二の一の「したがって、」三行目にあります「税額控除の権利は認められない。」というところですけれども、この「税額控除の権利は認められない。」というのをあえて敷衍して申しますと、その購入代金に含まれている付加価値税相当額について税額控除の権利は認められていないということでありまして、付加価値税は入っているんです、入っているけれども税額控除はできませんよということが書いてあるんです。それはEC指令について御説明してあるこの紙で書かれているとおりですし、日本もそうです。もっと申しますと……(福田(昭)分科員「わかったよ」と呼ぶ)はい。

福田(昭)分科員 そういうふうにすりかえちゃだめだと言っているでしょう。本来業務と物品・サービスの購入やあれは違うんだよ。まさに、そういうふうにすりかえるという答弁はだめ。

 いいですか。我が国では、消費税法第六十条、これの第一項で、一般会計又は特別会計ごとに一つの法人が行う事業とみなして消費税を負担させているわけでしょう。このみなす規定が問題なんですよ。だって、国や地方自治体の本来業務は売上げもない、仕入れもないんです。道路をつくって売上げがありますか、国道をつくって仕入れがありますか、矢野局長。

矢野(康)政府参考人 委員、今消費税法六十条一項を御指摘されましたけれども、この六十条の一項というのは、国が事業者などに対して貸付けその他もろもろの行政サービスをした場合に、対価、代金ですとか保険料率ですとかいったものをいただくときのことを書いてございます。

 先ほどECのことがございましたけれども、本源的な行政サービスをした場合に、税や保険料や手数料に対して付加価値税が上乗せして徴求されるなどということは常識的に考えがたいと申しましたけれども、それがEC指令について、本来業務について書いているわけですけれども、そのEC指令で書いているところの範疇、対象ですけれども、国、地方が物品を購入することについての規定ではございません。そこに勘違いがございます。

 国や地方が、物品その他、コンクリートでもいいんですけれども、を購入する場合についての規定はEC指令にはございません。したがって、ここに書いてあるという御指摘自体が誤解に基づくものでございます。これはECに確認していただければわかりますけれども、そのような規定があるかといえば、ないという回答が来るはずです。

福田(昭)分科員 日本の消費税法を読んでいるんだよ。このみなす規定が、これがおかしいんだ。だって、基本的に、本来業務をやったときに売上げがありますか、仕入れがありますかと聞いたんだ。どうなんですか。

 国道をつくったときに売上げってありますか、あるいは仕入れがありますか、国が。ないんじゃないですか。どうですか。

矢野(康)政府参考人 繰り返しになりますけれども、消費税法六十条一項の規定もEC指令の規定も同じですけれども、何のごまかしもしておりませんけれども、六十条一項の規定は、国が事業者などに対して貸付け等々何がしかの行政サービスを提供した場合に、その対価に消費税をいただくということが書いてあるわけですけれども、その話は、非課税となる六条一項の規定とは違って、一般の行政行為についてはそこに消費税が乗ってくるということを書いているのであって、EC指令のたてつけと全く同じです。

福田(昭)分科員 何を言っているんですか。国や地方自治体などは、この六十条に基づいて消費税を負担しているんじゃないですか。(矢野(康)政府参考人「違います」と呼ぶ)何に基づいて負担しているんですか。

矢野(康)政府参考人 この点は極めて大事ですので繰り返し申し上げますけれども、今先生が御指摘の、あるいは従来から御指摘の、国や地方公共団体が物を買ったときに、消費税が乗っかる……(福田(昭)分科員「物を買ったと言っているんじゃないの。本来業務と言っているでしょう」と呼ぶ)いやいや、本来業務として。本来業務の一環としてでも結構です。本来業務の一環として物を仕入れたようなときに……(福田(昭)分科員「何を仕入れるの」と呼ぶ)それは、鉛筆から、コンクリートから、いろいろです。(福田(昭)分科員「だから、それは違うと言っているでしょう。それは、ここにあるように……」と呼ぶ)

あべ主査 委員に申し上げます。こちらの指名で発言をよろしくお願いいたします。

矢野(康)政府参考人 国が行政サービスを提供する上で物品等々を購入するということが当然にございますけれども、その購入をした上でいろいろな行政サービスを提供するわけですが、その購入したものに対する代金に消費税が乗っかる乗っからないということは、法律には書いてございません。それはEC指令も同じです。そこの規定がないんです。規定がないのに、こう書いてあるという御指摘はあり得ないんです。それはECに確認していただければ、確かにないという答えが返ってまいります。

福田(昭)分科員 そういうでたらめな答弁しちゃだめだよ。

 あなた、森友学園であれだけうそにうそをついて局長になったんじゃないか。引き続いてうそをつくのか。本来業務って、全然違うじゃないの、全く。おかしな話ですよ。

 それでは、次に行きますけれども、五点目ですけれども、国、地方公共団体の一般会計、本来業務が負担している消費税の廃止についてということでいきます。

 まず一つ目、国と地方公共団体は幾らぐらい負担していると思いますかということでありますけれども、国だけ。

 国は、財務省では決算統計をとっていないので、幾ら負担しているんだかわからないという話ですが、先ごろ、令和元年度の予算ベースで国がどれぐらい負担しているのか調査をしてもらいました。その総額と、庁費、施設費、委託費の内訳を教えてください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、総額をお答えさせてください。

 令和元年度当初の一般会計歳出予算において資産の譲渡などにより国が事業者に支払う庁費、施設費及び委託費として計上されている額のうち、各府省が見込んでいる消費税額に相当する額は五千八百七億円でございます。

福田(昭)分科員 質問されたことにちゃんと答えてよ。庁費と施設費と委託費はそれぞれ幾らですかと聞いている。

阪田政府参考人 失礼しました。もう一度お答えさせてください。

 今、総額五千八百億円程度と申し上げました。そのうち、庁費が二千四百億円程度、施設費が三千二百億円程度、委託費が三百億円程度となります。

福田(昭)分科員 ありがとうございました。そういうふうに最初から答えてくれればいいわけですよね。

 私は、これだけあったらもっと有効に、生きたお金として使えるのではないかと思っておりますので、廃止をした方がいい、こういうふうに思っております。

 時間の関係で、先に質問を進めます。

 次に、輸出免税還付金が世界の公平公正な自由貿易を阻害していることについてであります。

 一つ目は、米国ファーストのトランプ大統領が、中国やEUに対してなぜ追加関税二五%を課していると思いますか。麻生大臣の個人的な見解をお伺いいたします。

麻生国務大臣 貿易制限措置というものの応酬というのは、これはどの国の利益にもならぬという話は前から申し上げているとおりですが、いかなる貿易上の措置もWTOとの協定と整合的であるべきだと考えていますので、私どもとしては、自由貿易の推進というものを考えたときには、やはり、日本を含みます世界経済への影響を考えて、事態の進展を引き続き見守っていくというのが今の立場であります。

福田(昭)分科員 私は、このトランプ大統領の追加関税二五%、これを真剣に考えて対応策を考えておかないと大変なことになると思っていますよ。

 時間の関係でここは指摘だけしておきますけれども、ウルグアイ・ラウンドの大原則、貿易量を増加させる補助金も減税も禁止、これが現在も存在しております。先日、予算委員会で茂木大臣が、小さな声で生きていますと答えてくれました。

 しかしながら、WTOとOECDは、このウルグアイ・ラウンドの大原則を覆しております。

 WTOの附属書で、それぞれの国の付加価値税、消費税率の範囲内であれば輸出免税還付金はよろしい、このように大原則を否定しております。そして、OECDのガイドラインでは、それを理屈づけするために仕向け地主義というのを一生懸命訴えております。

 しかし、この仕向け地主義も、よく読んでみると、全く実は公平公正じゃないんですよね。それは、消費者の判断を誤らせないように、仕向け地主義を実現することによって国の内外の企業を公平に扱うんだ、こういうふうに書いてあります。

 しかし、世界じゅうの国々が全て付加価値税や消費税があればそれは成り立つんですよ、実は。でも、残念ながら、世界一の経済大国アメリカにないんですよね、これが。ですから、それを知っているトランプは、まさにそういう意味で、産業補助金をいっぱい出しているんじゃないかと言われる中国に追加関税二五%、そして今度はEUに二五%、そういうことを私は対抗措置としてやっているんだと思いますよ。

 そこで、次の質問ですけれども、EUの輸出免税還付金の考え方についてであります。これも時間の関係で指摘だけしておきたいと思います。

 資料の三の一と三の二をごらんください。EUでは、製品等がEU域内を出れば付加価値税は免除され、還付されるということであります。つまり、今申し上げたように、EUの域内を出ちゃえば、付加価値税や消費税のないアメリカへ行ったって、アメリカへ輸出した分の付加価値税は還付されるということですよ。これがなぜ公平なんですか。公平じゃないじゃないですか。

 日本の消費税も同じです。アメリカへ輸出すれば還付される。これが私は世界のまさに公正公平な貿易を阻害していると思いますよ。それがトランプ大統領のような、私、全面的に評価しているわけじゃありませんが、彼のようなそれこそ企業人が大統領になったら、それを知っていてこれを突きつけてきたんじゃないですか。大変だと思いますよ。

 そういう危機感を感じて、トヨタ自動車とかマツダ自動車はアメリカに工場をつくっている、今一生懸命。既に日産とかあるいはホンダなんかはアメリカに工場をいっぱいつくっていると思いますけれども、どんどんどんどん付加価値税や消費税のこれがブーメランのように実は日本に返ってくるということが十分予測されます。

 ですから、今後、まさに日米貿易交渉がまた再び行われるわけでありますけれども、そうした中で、これから、もしですよ、米軍の駐留経費、もっと値上げしろとトランプ大統領に言われておりますけれども、もしこの交渉が、七月か八月ごろから始まるという話ですが、そうなったときには、まさにこの問題が再び私は持ち出されると思っていますよ。

 ですから、トランプ大統領は、この輸出免税還付金は輸出奨励補助金だということで、アメリカは反対をずっとしております。そういうことも踏まえて対応する必要があると思っていますが、六つ目の質問の方に入りたいと思います。

 二〇二〇年度予算で、還付金五兆三千百十億円のうち輸出免税還付金は幾らぐらいと見込んでいるのか、ぜひ教えてください。

矢野(康)政府参考人 お答えいたします。

 税収の見積りにおきましては、前年度の実績をもとに見積りを行っておりまして、消費税の還付見込み税額についても、同様に前年度の還付実績をもとに見積りを行っております。

 一方、消費税の還付税額につきましては、事業者の方に消費税の申告書において国内仕入れに係る消費税額など各事項の全体の金額を記載していただくこととなっておりまして、還付が発生する原因ごとに区分して記載することとはされておりませんので、輸出免税に係る還付税額というものの実績については把握することができておりません。

 したがいまして、消費税の還付見込み税額のうち、輸出免税に係る還付を切り分けて見込むことはできないところでございます。

福田(昭)分科員 おかしいじゃないですか。じゃ、どうやって見積もるんですか。今まで、輸出免税還付金、ずっと歳出してきたんでしょう、還付してきたんでしょう。そうしたら、どうやって見積もるんですか、予算をつくるときに。

矢野(康)政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたように、輸出免税還付金というものそのものを見積もってはございません。還付金というものを見積もっているわけでございます。

福田(昭)分科員 では、ちょっと聞きますけれども、国の分厚い予算書、決算書、どこを見ても輸出免税還付金の記載がありません。これはどうしてですか。

矢野(康)政府参考人 これまでも御指摘をいただいておりますけれども、輸出免税還付金を切り出して計算するということになりますと、各事業者さんにそれぞれ、国内向けか、輸出向けかというものに応じた仕入れを区分けしていただくということですとか、共通の経費については案分して区分けをしていただくとかいったことが必要になってまいります。

 更に言えば、輸出還付が結果的には生じないような事業者さんにとっても、輸出を少しでも行っておられれば、その仕分を全部していただくことになりますので、これは、大企業、中小企業、あるいは結果的に還付がない事業者さんも含めて、壮大な仕分作業をしていただくことになりますので、現実的には困難だと思っております。

福田(昭)分科員 それは違うんじゃないですか。備付け帳簿にちゃんと全てつけさせているんじゃないですか。それをちゃんと整理すれば幾らでも出てくるんじゃないですか。そういううその答弁はだめだと思いますよ。

 それで、私が財務省の人たちに聞いてみたら、消費税については、いただいた消費税から還付したものを全部引いて、残った分だけ予算書、決算書に載せればいいことになっていますと言うんです。その根拠は何ですか。

岡本政府参考人 お答えいたします。

 国税収納金等につきましては、国税収納金整理資金に関する法律というのがございます。これらに基づきまして、一旦、国税収納金整理資金で受け入れ、過誤納金の還付金等を支払いました上で、その支払った金額を除いた額を、国税収入、その他の収入として一般会計の歳入等に組み入れているところでございます。

福田(昭)分科員 岡本総括審議官、私もここへ持ってきました。国の国税収納金整理資金受払計算書。でも、これを見ると、わからないんですよ。還付金を見てください、還付金、消費税の。消費税の還付金、これを見るとびっくりしちゃう。

 消費税及び地方消費税の還付金というのが出てまいります。しかし、これは実は本来還付金じゃないものまで含まれている。これは平成二十九年度分の受払簿ですけれども、これを見ると、支払い額が十兆八千四百五十九億円何がしになっています。しかし、これは全て還付金じゃありません。地方分まで入っちゃっている。地方の取り分までここへ入っている。こんなでたらめな受払簿、ないじゃないですか。よろしいですか。

 さらに、後ろの方を見ていただくと、一番後ろのページ、何が書いてあるか。交付税及び譲与税配付金特別会計組入金というのがあります。消費税から交付税特会に入れるやつはちゃんと出てくるんですよ。

 だから、本来ならば地方の配分金もここへ書かなくちゃまずいんじゃないですか。還付金じゃないでしょう、地方の分は。法律でちゃんと配分の割合が決まっていて。ですから、地方消費税をつくったときに、この受払簿に関する法律を直していないということですよ。

 ですから、この際ちゃんと、輸出免税還付金みたいに多額になるものについては国民に情報を開示するということが大事だと思いますが、いかがですか。

岡本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘を受けましたこの受払計算書でございますけれども、先ほど言いました国税収納金整理資金に関する法律というのがありまして、その下に政令、施行令と規則、こういうたてつけでこういう様式をつくっておるわけでございます。したがいまして、説明としては、そういう政令、規則に基づいて現在こういう事務を行っているというところでございます。

福田(昭)分科員 だから、それが、法律に基づいて、施行令に基づいてやっているかもしれないけれども、正確な区分けじゃないじゃないですか。ですから、これは、やはり消費税の申告書及び国税収納金の整理資金に関する法律なども改正をして、もっと明確にする必要があると思いますよ。だって、消費税率を上げれば上げるほど輸出免税還付金はふえるんじゃないですか、主税局長。いかがですか。

矢野(康)政府参考人 輸出免税還付金につきましては、もし仮に輸出総額が一定であるとすれば、税率を上げればその分ふえるというのは、必然的にそうなると思います。

 ただ、先生が先ほど御指摘になられましたように、ちゃんと仕分ができているものを載せればいいだけであるという御指摘がございましたけれども、それは完全な間違いでございまして、恐れながら、そのような仕分を事業者に、あるいは申告もさせてはございませんので、新たにそのような数字を載せるとすれば、輸出企業、輸出していない企業も含めてすべからく仕分をさせなきゃいけなくなりますということが一つ。

 もう一つは、そもそも輸出免税というのは国際的に共通したルールでございますので、免税及び免税はしたけれども仕入れに係る税額は控除する、その結果還付が起こるというだけのことでございますので、何か得をさせているわけではございません。それがゆえにWTOでも違反になっていないんです。それを、何か悪いことをしているんだから表に出せということであるとすれば、それは完全な間違いです。

福田(昭)分科員 時間が来ましたので指摘だけしておきますが、私は、悪いことをしていると言っているんじゃないんだよ。このルールが公正公平な貿易を阻害している、だから今ブーメランのように返ってくるよ、トランプ大統領のような人が出てきてと。そうなってきたときに誰が責任とるの。日本の国益を侵すことになりますよ。そのことを指摘しておきたいと思います。

 時間が来たので、ここでやめておきます。ありがとうございました。

あべ主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

あべ主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。茂木外務大臣。

茂木国務大臣 令和二年度外務省所管予算案について、その概要を説明いたします。

 令和二年度一般会計予算案において、外務省は七千百二十億七百三十八万一千円を計上しています。これを前年度と比較してみますと、約三%の減額となっていますが、これは特殊要因として、前年度はG20、TICAD、即位の礼などの経費が三百二十億九千八百六十二万六千円含まれていましたが、令和二年度では東京オリンピック・パラリンピック競技大会要人接遇関係経費の四十三億四千七十五万五千円のみとなったためであり、これらの経費を除くと約一%の増額となります。

 また、このうち外務省所管のODA予算は、四千四百二十九億百十四万四千円となっております。

 令和二年度予算案の作成に当たっては、六本の柱を掲げ、包容力と力強さを兼ね備えた外交を展開すべく、めり張りをつけた上で必要な予算を計上しました。

 第一の柱は、「国際秩序をさまざまな挑戦から守り続ける」です。自由で開かれたインド太平洋の実現のため、新たなルール、スタンダードづくりとその実現を主導していくとともに、法の支配に基づく国際秩序を強化すべく、国際裁判への対応や、宇宙、サイバーなど新分野、新領域での取組を強化します。

 第二の柱は、「積極的な経済外交を推進する」です。自由で開かれた経済秩序を維持強化すべく、WTO改革の主導など自由貿易の推進に向けた取組に力を入れていきます。また、本年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会や二〇二五年大阪・関西万博に向けた取組などを進めます。

 第三の柱は、「戦略的対外発信を強化し、親日派、知日派を拡大する」です。国際社会における日本の存在感、理解度、好感度を一層向上させるべく日本の政策、取組の戦略的な対外発信を強化します。

 第四の柱は、「地球規模課題の解決に積極的に貢献する」です。SDGsの達成に向け、グローバルな課題への対応を日本がリードするとともに、国連、国際機関の戦略的活用や国際人材の育成を進めます。

 第五の柱は、「人的交流新時代を第一線で支える」です。拡大しているインバウンド、アウトバウンドを更に推進すべく領事体制を強化するとともに、テロ対策、感染症対策を含め、在外邦人の安全確保に万全を期します。

 第六の柱は、「外交実施体制を抜本的に強化する」です。激動する国際情勢を受けて、増大かつ多様化する外交課題に機動的に対応するための経費に加え、二つの在外公館の新設及び外務省定員の七十名純増に必要な経費を計上しています。

 以上が、令和二年度外務省所管予算案の概要です。

 あべ主査を始め、委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

あべ主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま茂木外務大臣から申出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

あべ主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。

武井分科員 自民党の武井俊輔でございます。

 きょうは、大変貴重な機会をいただきました。そしてまた、コロナウイルス対策、大変御多忙な中で、茂木大臣始め各役所の皆さんにお運びいただきました。感謝を申し上げます。

 今、連日、このコロナウイルスのお話で一色と言ってもいいような状況にあるわけでありますけれども、非常にさまざまな現場の皆さんともお話をしても、大変な努力をなさっているということは十分承知をしているんですけれども、一方で、やはり、いろいろと最近になって海外の報道なども見ますと非常に厳しいものがありまして、我々からしますと、これだけ努力をしているのに、何でこんな言われ方をしなければいけないんだろうかというような思いに駆られることも多いわけでありますけれども、これはこれで現実として受けとめていかなければいけないわけでありまして。

 特に中南米とか遠くの国からすると、日中韓というのは本当に一つの固まりのように今見えてしまっているといったようなことも残念ながら事実だということで、それぞれがどう役割を果たしていくかということがまた求められるわけであります。

 今、日本記者クラブ等さまざまな形で発信をなさっているということは十分承知をしておりますが、今後、こういった海外の各メディアないしはそれぞれの国に対して報道等の対策をどのようになさっていくか、また、いこうとされているか、まずお聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 各国の報道はそれぞれ違っておりまして、今、アメリカは予備選の話題で持ち切りでありますし、ヨーロッパもそれぞれの国の関心事項に対する報道というのが中心でありまして、コロナウイルス感染症についてどこまで報道されているか、各国によって事情は違っておりますが、新型コロナウイルスについて、クルーズ船への対応も含めて、我が国の状況や取組に関する正確な情報を国内外に適時適切に発信していくことは極めて重要であると、委員御指摘のとおりだと思っております。

 そのため、具体的には、厚生労働省等と協力をして、これまで在京外交団へのブリーフを計三回、海外プレスへのブリーフを計六回実施しているほか、日本の国外、海外においても、在外公館を通じて適時適切な説明、発信を実施してきております。

 また、二十一日からは、感染症の専門家の方々によります英語での会見であったり説明などを動画にして、これまでに三本の動画をSNS等を通じて発信をしてきております。

 特に、最近、SNS等でのさまざまな発信というのが極めて国際的に伝播をするということで、こういったことも今後重視していく必要があると思っておりますが、引き続き、正確かつタイムリーな対外発信にしっかりと取り組んでいきたいと思っております。

武井分科員 ありがとうございます。

 国立国会図書館に、最近の報道の情勢というのを取り寄せますと、本当に数日分でもかなりいろいろと出てまいりまして、この中には、なかなか厳しくて、これはおかしいなと思うものもあるわけでありまして、どう発信をしていくかということは非常に課題でございまして、今大臣からもございましたが、SNS等が今非常に大きな力を持っていまして、そういう意味では、大臣ないしはまた総理から直接SNSに動画の発信をしていただくとか、いろいろな形も考えていただきながら、しっかりと情報を伝えていくということをしていかなければいけない。

 特に、この週末、三連休だったんですが、いろいろないわゆるチェーンメールみたいな、これをやったらいいとか、あれをやったらいいとか、多分、皆さんのところにも届いたんじゃないかと思うんですけれども、かなり科学的にも怪しいようなものも出ている。そういったようなことも含めて、厚労省等とも連携をして、適宜御対応いただきたいというふうに思っております。

 やはり、日本の名誉、また、特にオリンピックも現実に控えているわけですので、非常に今、こういった広報においてもまさに正念場だというふうに思うところでございますので、ぜひともお願いしたいと思いますし、また、我々も、議連などそれぞれ議員も持っておりまして、それぞれいろいろ役員をしたりということもしていますので、またぜひとも外務省からも、そういった議連等の活用も含めて、一緒に連携をして取り組ませていただければと思っているところでございます。

 続きまして、先ほど大臣からの御説明でもありましたが、招聘事業や、また対外発信の強化ということで、私も外務省で政務もさせていただいたんですが、さまざまな招聘事業がございます。日系人の若い方を呼んだりとか、アジアの、まあ私もいろいろと応対をさせていただきますが、カンボジアなどのまだまだ民主主義が非常に課題のある国の若い政治家を呼んで意見交換をしたりとか、本当に、目に見えるもの、見えないもの含めて、対日感情の醸成も含めて、非常にいろいろな努力がされているわけでありまして、そういう意味で、いろいろなミッションで外務省が招聘をすることもある。

 また、外務省の政務、もちろん大臣も含めてですが、副大臣、政務官を含め、さまざまな多くの出張もあるわけであります。

 現実にこういったような形でさまざまな対策を国内でも図っているという中で、外務省としての、こういったような、呼ぶ、また外務省が行くといったようなことについてのコロナウイルスの対策というものはどのようにされているか、お伺いしたいと思います。

垂政府参考人 お答えいたします。

 外交を効果的に実施していくためには、委員御指摘の、外国要人の日本への招聘や政務レベルの外国出張など、さまざまな要人往来の機会、これらを活用することが不可欠であると考えます。

 同時に、この時期であるので、新型コロナウイルスの感染をめぐる状況を踏まえ、個々の往来あるいは関連行事の対応、こちらには注意深く検討し、実施していくことも必要であります。

 引き続き、感染拡大の防止に取り組みつつ、外交活動が萎縮することのないよう、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

武井分科員 ぜひ、極力できるものはもちろんしていかなければいけないというふうに思いますけれども、やはり、感染の原因というものにくれぐれもなってはいけないわけでありまして、よくよく対策はしていただきたいというふうに思いますし、昨今、日本への渡航でありますとか日本から来ることに対する注意喚起なども出るような国も出ておりまして、これもこういった外交活動にも影響を及ぼしかねないということでもございますから、先ほどの広報の話と重複するんですけれども、改めて、そういったような意味でもしっかりと対策を進めていただきたいというふうに思います。

 続きまして、本当に大臣始め外務省のリーダーシップで武漢からのチャーター便が、今五便ですか、来ているわけでありますが、これもANA始め多くの皆さんの御努力の中で実現をしているわけでありますけれども、この中で、外務省も当然、武漢に職員を派遣して、その武漢の職員が最終的にそういったオペレーションをしたり、なかなか取り上げられませんけれども、そういったようなことも取り組んでいるわけでありまして、やはり、その方にも当然家族もいるわけで、いろいろな不安の中でそういった対応をしていただいている。心から敬意と感謝の思いでいっぱいであるわけであります。

 現状の、武漢を含みます湖北省並びに浙江省に外務省の職員というのは今現在で何人いるのか、そしてまた、そういった職員の感染防護の対策はどのようになっているか、お伺いしたいと思います。

河津政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省においては、茂木大臣の指揮のもと、省を挙げて、邦人の安全確保及び帰国に向け、関係省庁とも緊密に連携するとともに、在中国日本国大使館では、横井大使をヘッドとする対策本部が対応に当たってきたところでございます。

 武漢には大使館職員十人が陸路で派遣されたほか、本省職員ら合計十二人が順次チャーター機で武漢に入り、大使館職員と合流や交代をしながら、湖北省の邦人支援やチャーター機の搭乗支援に全力で従事したところでございます。

 現在、湖北省に外務省職員は滞在しておりませんけれども、御自身の意思で湖北省に残る邦人の方々に対しては、在中国日本国大使館等を通じて迅速な情報提供を行いつつ、必要に応じ個別の相談等に応じるなど、邦人保護の観点から、地元政府とも協力し、引き続きできる限りの支援を行っているところでございます。

 また、浙江省についても、外務省職員は滞在しておりませんが、同省を管轄する在上海総領事館を通じて、在留邦人及び渡航者に対して、感染状況や移動制限に係る情報を海外安全ホームページや領事メールを通じて適時適切に発信してきております。

 武漢で帰国支援に従事した職員に関しましては、チャーター機で帰国の後、PCR検査を含む健康チェックを行った上で健康観察を受ける等、適切に対応してきているところでございます。

 外務省としては、今後とも、邦人保護の観点から、感染症スポット情報、危険情報の発出等を通じて、情報提供、注意喚起に努めてまいります。

武井分科員 やはり、こうして最前線、なかなか大変な中で、今なお中国でそういった在留邦人の皆さんのために取り組んでおられる方、たくさんいらっしゃるわけでありまして、そういったような方、職員の、そしてまたその職員の御家族のサポート、そしてまたメンタル的なところも含めて、しっかりフォローしていただきたいというふうに思っております。

 続きまして、ちょっと船のお話を少ししていきたいと思うんですけれども、今、ダイヤモンド・プリンセス号、英国の船籍であって、またアメリカの船会社であって、そういったようなことがいろいろと議論になるわけでありまして、SNSなどで、これはイギリスの責任じゃないか、何でイギリスは全く感謝の意もあらわさなければ、何か他人事のようなんだみたいなような話というものも非常に多く起こっているわけであります。気持ちはよくわかりますし、やはり私たちも、確かにもうちょっと自覚を持ってもらってもいいなと思うところはあるんですけれども、しかし、大事なことは、国際海洋法条約も含めて法規がどういうふうになっているかということをまずやはり我々はよく認識をした上でこれは話を、単に感情的なものではいけないわけであります。

 そういう意味で、非常に古い法律で、非常に古いルールなんかもあったりもしますので、少しこの辺を確認してまいりたいと思うんですが、まず、船籍国というものの義務ということはどういうことか、そしてまた、今回のことについてイギリスが、英国が果たすべき役割は、我が国としてどのようなものがあると考えているか、お伺いしたいと思います。

岡野政府参考人 大型観光船の衛生面を含む安全確保につきましては、第一に、まず、船舶の運航者が責任を負うべきものだと考えております。

 旗国の責務につきましては、国連海洋法条約上、次のような規定がございます。「いずれの国も、自国を旗国とする船舶に対し、行政上、技術上及び社会上の事項について有効に管轄権を行使し及び有効に規制を行う。」というものでございます。

 国際法上、船舶における感染症の拡大の防止のための措置については、旗国、運航者の所在国、寄港国等の関係国のいずれかが一義的な義務を負うというルールが確立されているわけではございません。

 今回のクルーズ船への対応は、日本の内水であり、日本の主権が及ぶ横浜港において、防疫上の必要性から、船舶の関係者や関係国と密接に協力しながら、国内法に基づいて行っているものであります。その上で、外交的な観点からは、当該船舶の旗国である英国に対しては、適時適切に事実関係を説明しております。

 もう一点つけ加えさせていただければ、一般的に、国家は、外国にいる自国民の利益を保護し、援助する立場にございます。実際に、各国の大使館は、自国民の安全に対する政府の責務を果たす観点から、チャーター機を手配するなどして、クルーズ船に乗船している自国民の帰国を支援してきております。日本政府としては、これを踏まえ、チャーター機を派遣して自国民の帰国に努めている各国、地域とも緊密に連携し、協力してきております。

 今回の事案に対して、沿岸国である日本のみが対処する義務を負っているということでは全くございません。沿岸国たる日本が、自国国内への感染を防止し、さらには国際社会への応分の貢献を果たすという観点から、船舶の関係者や米国、英国を始めとする関係国と緊密に協力しつつも、みずから率先して対応に当たってきているということでございます。

 今回の感染症拡大は国際的な緊急事態であり、関係国が協力して対応に当たっていくことが必要であると考えておるところです。

武井分科員 おっしゃることはわかるんですけれども、ただ、我が国、沿岸国として責任を持ってということなんですけれども、しかし、実際に、この辺というのは、今お話を聞いてもルールがなかなかわかりにくいわけですね。やはり、この辺ちゃんと国際的にしていかないと、今後、例えば領海に入るなみたいな、場合によっては軍艦を出してでも領海に入れないみたいなようなことも起こりかねないわけでありまして。

 例えば、我が国も飛鳥2みたいな豪華客船を持っていまして、今後もまたクルーズに出すような話が報道でもありましたけれども、やはり、そうなると、日本は今回こういうことで人道的にやったということだけは済まない。今後は、このルール化に、ルールの制定にやはり積極的に役割を我が国は果たして、これを教訓にしていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 その中で、日本国船籍、海外船籍のお話もありましたけれども、いろいろな説があるのでちょっとお伺いしておきたいんです。例えば航空機だったらどうなのかとか、船だったらどうなのかとか、やはりその辺が、いろいろな方がいろいろなことをおっしゃって、よくわからないところがあるんですけれども、例えばこういったような場合に日本の船籍であった場合、また今お話があった海外の船籍であった場合、若しくは航空機であった場合、日本の飛行機であれば日本なんでしょうけれども、海外の航空機であった場合、こういったようなときというのは法的な位置づけの差異がどのようになっているか、お伺いしたいと思います。

岡野政府参考人 航空機と船の場合の取扱いの違いでございますが、どこにいるかによってもちろん変わってくるわけでございます。領海、内水においては沿岸国の主権が及んでおりますので、船に関して言えば、日本籍船舶、外国籍船舶いずれについても日本の法令が適用されるわけでございます。

 航空機については、領域及びその上空について各国の主権が及んでおります。ですので、基本的に、個別の条約に別の規定がない限り、日本籍及び外国籍のいずれの航空機についても、例えば日本の国内の空港にいる場合には日本の主権が及ぶというものでございます。また、国際法上、外国の民間航空機が航空業務を行うためには、着陸国の法令を遵守する必要がございます。

 今、私は、別途の条約の規定がない限りというのを申し上げました。例えば、一九六九年に航空機内の犯罪防止条約というのが結ばれております。東京条約と呼ばれるもので、百八十六カ国が締約しておりますけれども、航空機内で行われた犯罪について、基本的に登録国の管轄権が行使できることとか、機長の取締りの権限があることなどが規定されておりまして、この場合、日本の例えば空港にあったとしても、飛行中のものとされているものであれば基本的に登録国が管轄権を行使する。詳細な例外、規定はここでは省きますけれども、原則的にはそのような枠組みもございます。

武井分科員 このあたりも含めて、ちょっと一回よく整理をして、やはり、こういったようなときにどういうふうに対処するかということは、改めて日本として役割を果たしていかなければいけないんだろうなと。

 ただでさえ、やはり船というのは、便宜置籍船、例えばホンジュラス船籍とかパナマ船籍とかああいったようなもので、私の地元宮崎県でも砂浜とかに打ち上がって、ああいった船は誰も解体とか役割を果たさずに、結局、県が四億だか五億だかの県費を単費で上げて処分をした。今でも日本の国内には二十数隻、そういった船が沈んでいるんですね。私の地元にも一隻沈んでいますけれども。

 やはり、こういったような、なかなかほかのルールと比べると、ある意味、大航海時代の名残みたいなものもあるのかわかりませんが、非常に変わったルールだなというところがありまして、結果として、近くにいた人がばばを引いて何かいろいろなことで役割を果たして、果たした上に文句を言われなきゃいけないというのは、これはやはりなかなかかなわぬことですので、やはりこういったようなことについてもしっかりと役割をまた我が国も果たしていかなければいけないんだろうというふうに思っているところでございます。

 それに関連してなんですけれども、昨今、船の中の船員、インドネシアの人たちのようですけれども、SNSに、自分たちはここから出られなくて、帰してほしいみたいなような動画を上げて、非常にそれが今拡散をしているわけですね。結局、今この船は横浜にいるわけでして、どうも何か、この船のいろいろな課題というのは日本の課題みたいに置きかえられて報道されたり、実際にニュースでもそういうふうな切り取られ方をしていたりするところがあるんですけれども、非常にこれが流れるだけでも何か本当にイメージダウンだなと思うんですけれども。

 そもそもこの船は、今お客さんはおりたわけですよね、いつまで横浜にいるのかとか、また今後こういった船員の人たちの取扱いというのはどのようになっていく、あるべきなのかということについて、御見解をお伺いしたいと思います。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 船内に残っている乗員につきましては、スタッフの行動で注意すべきことの周知によりまして、感染防止策に取り組んでいるところでございます。船員、乗員の方々の下船につきましては、基本的には乗客と同様の取扱いと認識しております。

 なお、乗員の取扱いにつきましては、船主側がどう考えているのか、船主側の意向というのが重要ですので、船主側とよく相談をして対応を進めてまいります。

武井分科員 横浜にあの船がいて、さまざまな動画が流れるということ自体が我が国としてまことにやはり不本意な話でありまして、それはぜひ早急に、もうお客さんはおりたわけですから、この船の、そしてまた乗員の皆さんの、特にその人道的な取扱いも含めて、やはり日本としても役割を果たして、残念ながら、我が国が果たさないと多分、イギリスとかもそういう状況なわけですから、もうここまでなった以上は、しっかりとこの船についてそういった責任を持った対応というものを、横浜を離岸するまで役割を果たしていかなければいけないと、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 あと一点、ちょっと厚労省に来ていただいているんですが、観光の関係、私もいろいろと業界のお仕事もさせていただいているんですが、お伺いしたいと思うんですが、非常に観光業界が厳しく今なっております。

 雇用調整助成金の関係でさまざまな特例を設けていただいているところなんですけれども、実際に、これは今、中国関係の取引が一割減らないとこの特例が受けられないということになっているんですけれども、実際に、ホテルというのは、その地域で中国人が来なくなれば、そこがダンピングをすれば、当然そこにお客さんが流れたりとかして、全体が打撃を受けるわけであって、別に、中国人が直接、そのホテルにお客さんが来るとか来ないというのはかなり副次的な話なんですけれども、言ってみれば、今の段階ですと直撃された人しか条件に当てはまらないということになっています。

 これは非常になかなか苦しいところで、きょうも今、新型肺炎を理由に破産を申請した旅館なども現実に出ているわけでありまして、本当にこのままだと業界はもたないといったような大変悲鳴が聞こえてくるわけですけれども、こういった雇用調整助成金の対応、そしてまた休業分の助成等も含めて、これはどうしても対応が必要だというふうに考えますが、見解を求めます。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 雇用調整助成金につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により日中間の人の往来が急減したことに伴い、観光産業を中心に事業活動が急激に縮小し、雇用に悪影響を及ぼす事業所が多数生じることが見込まれたため、観光産業を中心に一定の要件を満たす事業主を対象に、二月十四日付で支給要件の緩和等を行ったところでございますが、先生御指摘のとおり、観光産業を中心に多くの御相談をいただく中で、中国人観光客だけでなく日本人観光客の減少も見られるといった御相談もいただいております。さまざまな形で雇用への影響が懸念されているというふうに考えておりますので、先生のいただいた御指摘もしっかり受けとめ、こうした雇用への影響を十分注視をいたしまして、特例措置の対象となる事業主の範囲について弾力的に検討してまいりたいと考えております。

武井分科員 これはもう時間がないんですよね。かなり切迫した状況にありますので、ぜひお願いしたい。また、私どもも、議連等も含めて一緒にやっていきたいというふうに思います。

 もう時間も来ておりますが、最後、パスポートの件をいろいろと御質問をしておりましたが、ちょっと時間がもう厳しいので、一問だけ御質問をさせていただきたいと思います。

 我が国は、なかなかパスポートの取得率が低いんですね。これを上げていかなければいけない。この辺は外務省とも問題意識を共有はしていただいているというふうに思います。さまざまな施策も含めてパスポートの取得率の向上等も、これは、値段も私は高いなというふうに思いますし、また、地方ですとなかなか取得の箇所が少ないなということもございますので、こういったようなことを取り組みたい。また、できれば若年層をしっかりと、できれば、国際観光旅客税もできたわけですから、十代には十八歳でパスポートを配布するぐらいのことをしていただきたいなと思うんですが。

 最後、一点、河野前大臣のときに、旧姓の関係、いわゆる結婚前の姓を併記する、これがいろいろわかりにくいんじゃないかといったようなことで変更する等の課題、問題意識があったかというふうに思いますが、現状どのように対応がされているのか、お伺いしたいと思います。

河津政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、旅券には旧姓を別名併記することが可能であるものの、その取得のためには、外国において旧姓による論文の発表、職場における旧姓使用の実績をお示しいただくこと、こういったことを要件としてきたところでございます。

 この要件に関しましては、現在、女性活躍加速のための重点方針に従って、例えば、戸籍謄本による旧姓の確認のみで旧姓併記が可能となるよう検討しているところでございます。

 なお、現在は旧姓を括弧書きで併記するという方法をとっておりますところ、これは日本独自の記載方法であり、これにふなれな渡航先国当局から旅券の所持人が説明を求められる場合がある等、円滑な渡航に支障が生じる例も発生しているところでございます。このため、要件の緩和につきましては、券面上の旧姓の記載をわかりやすくする措置とあわせて行う、こういう方法が望ましいと考えているところでございます。

 このように、記載方法を変更するまでの間におきましては、旅券の所持人の円滑な渡航を図るため、渡航先当局に別名併記制度を説明するためのリーフレットを配布すること、また、外務省ホームページへの説明の掲載、こういったことを行っているところでございます。

武井分科員 ありがとうございます。

 しかし、なかなかわかりにくい。これは非常に、結構旅行したとき困っているという方はかなりたくさんいらっしゃるようですので、なかなか世界のスタンダードと比べてもこれは難しいんだなということは思うわけでありまして、我々政治も含めて、どうあるかということを考えていかなければいけないんだろうというふうに思います。

 また、コロナ対応、非常に厳しい局面が続きますけれども、大臣を先頭にお取り組みいただきますこと、また微力ですが応援してまいりたいと存じます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて武井俊輔君の質疑は終了いたしました。

 次に、牧島かれん君。

牧島分科員 自民党の牧島かれんです。

 本日は、質問の機会をいただき、ありがとうございます。大臣、副大臣、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、日本が国際社会にどのような貢献ができるのか、日本のプレゼンスをいかに高めていくのか、そして、日本の強みを生かしたアプローチはどういうところにあるのかということを考えながら、質問をさせていただきたいと思います。

 目下、政府を挙げて取り組んでいただいております新型コロナウイルスについては、刻一刻と変化する中、感染の拡大を防ぐなど、手当てをしていただいているというふうに理解をしております。既に外務省の皆様にも御尽力いただいておりますが、この局面、さらなる強化が必要なのではないかと思います。

 特に、日本の状況を国際社会の皆様が正確に理解をしていただいているのかどうかという点、多くの御指摘が私のところにも届いてきております。日本語だけではなくて、英語や中国語といった多言語で、日本の状況や、日本の政府がしっかりと対応しているという事実を多くの方に御理解をいただくようにしていただく。政府広報も重要だと思いますし、在外公館を通じた広報というものもこれからのアプローチの中で強化をしていただきたい、強く求めてまいりたいと思います。

 また、長い目で見ますと、この感染症対策、グローバルヘルスという点は、本来は日本がもっと、力を入れて取り組んできた、日本の得意分野として国際貢献をしていかなければならない点だというふうにも思います。日本の役割が期待されている分野であるとも思います。

 私自身、TICAD5のフォローアップで西アフリカのリベリアを訪問したことがあります。その後にエボラ出血熱が発生いたしまして、現地の状況をヒアリングいたしました。また、二〇一八年夏には、エボラ後のシエラレオネにも参りました。そのときには、エボラのアウトブレークのときに日本の支援で救急車を送っていますが、その救急車が活用されている病院にも訪問をしております。

 こうした中、日本の国民の皆様が外交に対してどのような意識を持っているのかという世論調査があります。内閣府による外交に関する世論調査というのを見ますと、開発途上国に対して日本が行う協力について、特に優先すべき項目は何か、それは、教育、保健衛生などのよりよい社会の実現のための支援を優先すべきだと答えた日本の方が六一%、選択肢の中では一番高い割合となっています。さらに、日本の開発協力で優先すべき項目はという問いに対しても、人材育成、防災、そして保健衛生となっています。いずれも重要でありますので順位をつけられるものではありませんが、この世論調査からも、国民の高い関心は保健衛生にあるというところが見てとれるかと思います。

 なので、きょうはその点をフォーカスして質問していきたいと思いますし、まず一問目として、この保健分野、日本がコミットメントを強めるべきだという国民の皆様の意識そして指摘についての御所見をお聞かせください。

塚田政府参考人 保健分野につきましては、個人を保護し、その能力を開花させるといういわゆる人間の安全保障の具現化におきまして、極めて重要な分野だというふうに私どもとしては考えております。

 このような認識のもとで、日本政府としましては、二〇一六年の伊勢志摩サミットや昨年のG20大阪サミット、さらにはTICAD7等におきまして保健分野を主要議題として取り上げるなど、その議論を国際的に主導してきたところでございます。

 引き続き、日本政府としましては、保健分野へのコミットメント強化をして、国際社会において日本のリーダーシップをしっかり発揮していく所存でございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 保健分野、強化していくというお言葉がありました。もちろん、全ての国の保健状況を改善していきたいというふうに願ってはおりますが、一方で、よりニーズの高い国はどこなのか、脆弱性の高い地域はどこなのかといった指標も持っておいてよいかと思います。

 そういう点でいえば、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジのモニタリングスコアが低い国といったところも一つの指標として考えられると思うのですが、日本がより深くコミットメントすべき国を抽出するときの指標になるようなものがあれば、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

塚田政府参考人 お答えします。

 我が国は、各国の乳幼児死亡率、死産率、保健サービスや病院へのアクセス、こういった基本的な保健指標を参考としつつ、また、二〇一五年九月に定められました平和と健康のための基本方針の地域別の重点方針に基づきまして、感染症対策、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進、母子保健等、各国からのニーズに応える形で保健分野における支援を実施してきました。

 各国の保健状況の改善に関しましては、このようにさまざまな指標があると思いますけれども、議員御指摘のとおり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに関するインデックスも非常に重要なものでございまして、これらの各種指標を考慮しつつ、各国への支援を行っていく考えでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 今御指摘ありましたように、乳幼児死亡率ですとか病院へのアクセス、感染症の対策の状況、母子保健、いずれも重要なテーマだと思います。

 そして、G7伊勢志摩サミットについてもコメントしていただいておりますが、二〇一六年に国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョンが示されたことが一つの契機になっていると思います。

 翌年の二〇一七年には、安倍総理、麻生財務大臣、そして加藤厚生労働大臣出席のもとで、UHCフォーラムがここ日本で開催をされました。そのときには、開発途上国の元首、閣僚、世界銀行、WHOなど、国際機関の長も参加をされています。二〇一九年のG20財務大臣・中央銀行総裁会議においては、途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解という共同声明も出されています。

 これから、このUHC達成においては特に財務当局との連携が必要であるというメッセージを日本は出してきておりますし、このことを多くの国に御理解をいただきたいと思っていますが、そのために日本がもっと努力をしなければならないことがあるのではないか。この点、副大臣からの御答弁をお願いしたいと思います。

鈴木副大臣 どうもありがとうございます。

 私も、昨年、ある意味担当している財務副大臣でしたので、そういった観点からの御質問もあろうかと思います。

 保健分野への投資ということ、これはやはり、社会の安定であったりあるいは経済成長の本当に基盤ですから、極めて大事なことですし、その観点から、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、この達成に向けて、まさに御指摘のように、財務当局と保健当局がしっかりと連携をしていくこと、これは極めて大事であろうと思います。

 やはり、インパクトを最大化する、その一方で、持続可能性を考えれば、コストをどうしっかりと最小化をして、そのために効率を最大化するのか、まさにこうしたことが非常に大事な観点であろうと思いますし、その観点からいくと、やはり、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成のためには、そうした持続可能な保健システムをそれぞれの途上国の方においてもきちんと確立をしていくことが必要であろうと思います。

 そして、その一方で、やはり今、先進国の事例を見れば、例えば、これからそうした保健システムをつくっていく途上国においては、どこまでをそのカバーの対象にするべきなのか、これは疾病においてもそういったことがあろうと思います。当然、短期的な疾病対策というのは極めて大事ですけれども、そうしたシステムをどうつくっていくかという観点において、財政当局との連携というもの、これは極めて大事であろうと思います。

 昨年の大阪サミットの機会においても、保健大臣と財政担当大臣と、その合同のセッションというものを我が国も主導的に開催をしてきたところでございまして、これからもしっかりと我が国としてそうした努力を続けてまいりたいと思います。

牧島分科員 ありがとうございます。

 大変心強いメッセージを私たちは受け取ったと思っております。保健システムの構築という日本の知見を多くの国々と分かち合ってまいりたいと思います。

 次に、教育について、日本の役割を考えていきたいと思います。

 この一月、TICAD7のフォローアップで、エジプトを訪問させていただきました。このときに、日本式の学校、EJS、エジプト日本学校も訪問いたしました。小学校一年生、二年生、小さな学年のお子さんたちが、日本式の学校ということで、広々とした校庭の中で体を動かすこともでき、また音楽や図工といった情操教育にも力を入れている、かわいらしいお子さんたちの伸び伸びとした姿にも触れることができました。と同時に、大変印象的だったのは、インクルーシブ教育も含めて、先生方が熱心にお子さんと向き合っている姿でもありました。

 この学校では、子供さんの背の高さに合わせた、大変低い、子供がアプローチしやすいところにある洗面台が用意されておりまして、そこでしっかりと手を洗うといったような衛生教育も行われております。教育やキャパシティービルディングという分野も日本の得意分野として国際貢献をしていきたい、グローバル社会に訴えていきたいと思っております。

 アフリカには、ユネスコIICBAという組織がございます。ここでは、教員の、先生のキャパシティービルディングや平和構築教育といったプログラムを行っています。ここのディレクターが、横関祐見子さんという、現在日本人であるということもありまして、ユネスコIICBAの平和構築のプログラムで日本に来られるときには、デリゲーションの皆様にも、私、毎年お会いをして、ディスカッションをするようにしております。

 学校教育の基本とも言える教員のキャパシティービルディングについて、日本の考え方をお示しいただきたいと思います。

塚田政府参考人 教育は、持続可能な開発目標、SDGsのゴール4ということで掲げられている、非常に重要な課題の一つであるというふうに認識しております。

 委員御指摘の教員のキャパシティービルディングにつきましても、国際協力などを通じて、資格を持つ教員の数を大幅に増加させるとSDGsに明記されておりまして、その重要性は国際社会共通の認識になっているというふうに思います。

 日本も、人間の安全保障の観点から、日本のSDGsモデルの三本柱の一つでございます、次世代、女性のエンパワーメントの一環としまして、国際教育協力に積極的に取り組んできておりまして、昨年のG20大阪サミットの機会に、約九百万人の子供、若者たちへの教育支援を表明したところでございます。

 その中で、セネガル、ザンビアなどアフリカにおける理数科教員のプロジェクトですとか、あるいはミャンマーにおける初等教育カリキュラム及び教科書作成への支援など、教員のキャパシティービルディングにも取り組んできているところでございます。

 さらに、委員御指摘の横関氏が所長を務めるユネスコIICBAによるアフリカの教員に対する平和教育研修に対しまして、二〇一七年度以降、毎年支援を実施してきておりまして、総額約二百五十万ドルを拠出するなど、国際機関を通じた支援も実施してきているところでございます。

 日本としましては、引き続き、持続可能な社会のつくり手を育成して、SDGsの全ての目標の達成の基盤づくりに貢献する国際教育協力を積極的に進めていく考えでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 教員や、また教科書の策定に当たっても、日本がしっかりと貢献をしているという御説明がございました。また、子供、若者、女性のエンパワーメント、SDGsの達成に向けて、日本のコミットメントも行っていただいているところだと思いますので、子供たち、若い女性たちの支援という側面から少し考えてみたいと思います。

 依然として、それでも、古くからの慣習が残っていることによって女性たちが苦しい気持ちを持ちながら生活をしているという実態があります。

 二月六日はFGM、女性器切除根絶の国際デー、ゼロトレランスデーでした。FGMは今も世界三十カ国で行われていると言われ、少なくとも二億人の女の子たち、女性がFGMの影響を受けながら暮らしています。これは、感染症、不妊、死のリスクを伴いながら生きているということを意味しています。

 さらには、現代社会でも、ネパールで、いわゆる生理小屋というところに隔離された女性が亡くなったということがありました。このチャウパディと呼ばれる伝統的な慣習は既に二〇〇五年に違法とされてはいますが、それでも、慣習、伝統を理由に日常的に行われていることがある、そうした地域が残っているということも報じられています。

 こうした慣習と呼ばれるものに対して正しい認識が広がるように、女性の健康、女性の尊厳が守られるように、日本にコミットメントを深めていただきたいと期待しておりますが、その点、お考えをお聞かせください。

塚田政府参考人 委員御指摘の点は、まさにSDGsのターゲット五・四にもございますとおり、女性器切除などあらゆる有害な慣行を撤廃するという形で明記されております。国際社会が対処すべき課題として共通認識が得られているということだと思います。

 日本としましても、例えばユニセフ、あるいは国連人口基金、UNFPA及び国際家族計画連盟、IPPFなどの国際機関、あるいは国際NGOに対する拠出を通じまして、中央アフリカあるいはシエラレオネ、こういった国に対して、女性器切除、FGMを始めとしたジェンダーに基づく暴力や悪習を廃止して、女性の健康と尊厳を守るための活動を支援しているところでございます。

 誰一人取り残さない持続可能で包摂性と多様性のある社会の実現に向けまして、日本としましても、引き続き、女性の健康と尊厳を守るための取組を含め、国際社会が抱える今日的課題につきましての議論をリードしていくとともに、国内外における女性のエンパワーメントの取組を推進していく考えでございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 ユニセフ、UNFPA、IPPFなど、さまざまな機関との連携がやはり不可欠なのではないかというふうに受けとめています。

 また、学校は、学びの場であると同時に、給食によって子供たちが栄養を摂取することができる、栄養状態や健康状態を改善できる場でもあります。

 五歳以下乳幼児の死因の四五%が栄養不良、そして、人口の九人に一人が飢餓状態、さらに、世界的には肥満と栄養不良の二重負荷が進んでいる中、世界経済全体に推定三兆五千億USドルの損失があるというふうにも言われています。

 二〇二五年までの栄養に関する国際目標がWHOグローバル・ニュートリション・ターゲッツ二〇二五として設定されていますので、少しそこを御紹介したいと思いますが、五歳未満児の発育阻害を割合で四〇%削減させること、生殖可能年齢の女性の貧血を五〇%削減させること、出生時の低体重を三〇%削減、体重過多の子供をふやさない、生後六カ月の完全母乳育児を五〇%以上にする、消耗症の割合を五%以下に減少、維持といったターゲッツが示されています。

 コートジボワールに参りましたときに、一九九六年に日本が無償資金協力によって整備、改修した四百五十床の病院、ココディ大学病院を訪問しました。そのときの話では、生まれてくる赤ちゃんの四人に一人は未熟児であるというお話でした。妊産婦さんの栄養状況を改善しなければならない、健康状態をチェックしなければならないということも課題であり、同時に、新生児のケアも重要な課題となっています。

 胎児のころから数えて二歳の誕生日までの、人生最初の千日の保健衛生が重要であるという考え方がありますが、日本がこの点、どのような取組を進めているのか、お聞かせいただきたいと思います。

塚田政府参考人 委員御指摘の点は、SDGsのターゲット二・二の栄養状態の改善の達成目標ということだと思いますけれども、ここには、五歳未満の子供の発育阻害あるいは消耗症について国際的に合意されたターゲットを二〇二五年までに達成する、あるいは、妊婦、授乳婦への栄養ニーズへの対処を行うということが明記されております。

 こういう形で、国際社会が対処すべき課題の一つということでしっかり共通認識ができているところだと思いますけれども、特に人生最初の千日においては、妊産婦と新生児に対する保健サービス及び貧血や発育阻害等の栄養不良を改善する栄養サービスの両面が重要だというふうに認識しております。

 日本は、例えばユニセフに対する拠出等を通じまして、ナミビアやマダガスカル等で人生最初の千日に焦点を当てた妊産婦や乳幼児の保健及び栄養改善の取組を支援しております。

 また、途上国に進出している日系企業の中には、職場給食等を通じて従業員の栄養改善に取り組んでいる企業もございます。例えば、カンボジアでは、妊婦適齢期の女性の栄養状況の改善が確認されております。

 ことし十二月に開催予定の東京栄養サミット二〇二〇におきましても、テーマの一つとして栄養のユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの統合という形で取り上げることとしております。

 このような中で、母子の栄養改善を含め、保健サービスにおける栄養の主流化、こういった問題、あるいは栄養サービスの質と量を高めること、これらを議論する予定にしておりまして、国際社会における取組を日本としてもしっかり推進していく所存でございます。

牧島分科員 ありがとうございます。

 今カンボジアの職場給食の事例、御紹介いただきました。インドネシアでも同じように、若年女性が働いている工場で貧血状態になっているというところを改善しなければならない、栄養強化米などを食べることによって欠勤率を下げていく、生産性を向上していくという取組が日本の民間企業の皆様との協力の中でも進められてきたと思います。

 日本発のイニシアチブも進んできたと思いますが、食事バランスガイドといったような、それぞれの国の食文化に根ざしたプロジェクトも今後期待をしていきたいと思います。

 そこで、大臣に御答弁をお願い申し上げたいのは、本年十二月中旬に、いよいよここ日本で栄養サミットが開催されることが既に決定をしています。この栄養サミットの意義、そして日本としての意気込みをぜひお聞かせください。

茂木国務大臣 栄養、ニュートリション、語源はラテン語のニュートリーレですから、ニュートリーレ、つまり、養う、育てるという意味でありまして、あべ主査もそうですが、ナース、これも同じ語源からきている、非常に幅広い概念でありまして、恐らく栄養、地球上の生命体で唯一人類だけが関心を示したテーマでありまして、時の皇帝が幾らお金をかけても不老不死の食材を求めたりもしたわけであります。

 現在におきましても、栄養、人の健康に直結するのみならず、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHC、この達成にも重要でありまして、さらには農業であったりとか気候変動といった多くの持続可能な開発目標、SDGsとの関連性、これが注目をされるようになってきているわけであります。

 そこで、議員から御指摘いただきました、本年十二月中旬に我が国で主催をいたします栄養サミットにおきましては、各国政府、国際機関、学術、市民社会、民間セクターなど、国内外の関係者とこういった栄養をめぐる極めて幅広いテーマを取り上げて、各国における栄養改善に向けた取組を集約したい、こんなふうに考えております。

 ことしは東京オリンピック・パラリンピック競技大会もあって、まさに日本が注目を集める年でありまして、この機会に日本のこれまでの栄養分野における取組についても積極的に発信をしたいと思っております。

牧島分科員 大臣、ありがとうございます。ぜひ大臣のリーダーシップのもと、日本から栄養への思い、各国の皆様と共有していきたいというふうに思っておりますし、私も努力をしていきたいと思います。

 これまでも日本発のイニシアチブは積み上げられてきたんだというふうに思います。ただ、いま一歩、世界から日本のコミットメントが評価されていない部分があるのだとするならば、それはなぜなのか、それはどういう部分なのかと考えますと、やはり資金コミットメントのところかなというふうに思います。

 ロンドン栄養サミットのときに、一部報道で、日本はノー・ファイナンシャル・プレッジ、資金拠出のコミットメントをしていないのではないかといったような指摘がなされました。なぜコミットメントがゼロだというような指摘を受ける部分があったのか、その背景や理由をお聞かせいただきたいと思います。

塚田政府参考人 御指摘の日本のコミットメント、ロンドンにおける栄養サミットにおけるコミットメントはどうだったのかということでございますが、実は、栄養分野の国際協力として我が国は、このロンドン・サミットの直前に開催したTICAD5で五億ドルの保健分野支援というものを発表しております。ただ、保健分野の支援という形で表明したということから、実は当時、我が国としては栄養を独立した協力分野としては位置づけていなかったということがございまして、一部機関による報告書などにはプレッジなし、ノー・フィナンシャル・プレッジとして登録されているようでございます。

 ただ、栄養支援というのは食料、農業、保健、教育等のさまざまな開発支援の中に組み入れられておりまして、そのため、栄養支援の分のみを抽出するという形で公表はしていなかったという事情があったというのはございます。

 しかし、実際には栄養分野に対してしっかりと支援してきているという事実はございまして、七年経過した今、栄養という切り口で、新たに保健あるいは農業、さらには女性、気候変動、こういった他の開発目標を捉え直すということに対する国際的な関心が高まっている、こういう文脈を踏まえまして、東京栄養サミットの主催国として栄養という点に着目して相応の役割を果たしていきたいというふうに考えております。

牧島分科員 ありがとうございます。

 コミットメントはしているんですが、保健分野の中に栄養が入っていたということによって、しっかりと日本のプレゼンスを十分に国際社会の皆様に理解していただけなかったところがあったのではないかという御指摘もあるかと思います。モニタリングとかリポーティングというところもこれからお願いをしていきたいと思いますが、それでも栄養への拠出の額というのは足りていないのかもしれません。

 国際栄養に関する拠出額、日本は栄養に特化した介入で三十万ドル、栄養に配慮した介入で二千三百万ドルと、G7の中では最下位であるということは数字の上で示されてしまっています。二〇二〇年までに国際栄養改善に必要な世界全体の拠出額のうち、日本が示している割合は一二・七%であるという分析も出ています。

 ことしは栄養サミットを日本で主催する。主催国の政府としてEU並み、イギリス並み、十億ドル、一千億円規模といった大きな野心的な資金コミットメントをプレッジできればというふうに期待しておりまして、ここで世界に向けて日本のリーダーシップを示していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

塚田政府参考人 ありがとうございます。

 我が国は栄養サミットの主催国としまして、各国のドナーあるいは民間を含む世界の幅広い関係者に対しまして、資金的なコミットメントの発表をしてもらうよう、いろいろな機会を活用して、今積極的に呼びかけているところでございます。今後もその努力を継続していく考えでございます。

 また、世界の栄養課題を解決するためには、資金のみならず、政策も重要だというふうに考えておりまして、そのためには、我が国は、世界の有識者の協力を得まして、栄養改善に向けての鍵となる政策あるいは取組を議論して、コミットメント作成ガイドというのをまとめたところでございます。今後は、途上国政府や企業など幅広い関係者に対しまして、このガイドを活用しつつ、コミットメントを働きかけていく考えでございます。

 そうした中で、我が国としましては、もちろん主催国としてリーダーシップを発揮するという考えでございますし、国内の関係者とも協力して、国際的な栄養課題の解決に向けた貢献というものをしっかりと検討していきたいというふうに考えております。

    〔主査退席、山口(壯)主査代理着席〕

茂木国務大臣 ことしは我が国が栄養サミットを主催するわけでありまして、資金的なコミットメントを他国に呼びかけていくからには、主催国がそれなりのことをしなければいけない。額について今申し上げられませんが、できる限りのことをしたいと思います。

牧島分科員 ありがとうございます。

 大臣から、できる限りのことをする、主催国政府としての熱い思いを私たちに届けていただいた。とても心強く思っております。資金と、そして政策と諸外国への働きかけ、また、民間企業を含めた、そして市民社会の方たちとの協働、私たちも取り組んでいきたいというふうに思います。

 先ほど大臣からお話ありましたとおり、オリパライヤーということでございます。女性のアスリートの健康という観点からも、健康やグローバルヘルス、栄養ということが多く議論される一年になろうかと思います。日本が世界に貢献できるテーマでもありますので、ぜひ皆で知恵を出し合いながら、日本の貢献を多くの方に正確に御理解をいただけるように、私自身も一人の国会議員として日本のプレゼンスを高めるため努力することをお誓い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山口(壯)主査代理 これにて牧島かれん君の質疑は終了いたしました。

 次に、高村正大君。

高村分科員 自由民主党の高村正大です。

 きょうは、貴重な質問の機会を本当にありがとうございます。

 一応、今、私の質問予定者としては、中谷政務官に政務としてはお願いしていますので、茂木外務大臣、もしお仕事等あったら、ぜひ控室の方でしていただいてと思います。

 それでは、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 今国民の間で一番関心を持たれていること、これが新型コロナウイルスに対する対応だと思っております。そして、なかなか今、日本の政府の対応というのが、国内的にも対外的にも余りうまく伝わっていないのかな。非常にいい対応をされているんだと思いますが、それが伝わっていない。このことが、非常に悲しい思いをしているところであります。

 そこで、新型ウイルスの拡大に際し、中国にいる邦人保護のため、外務省としてどのような対応を行っているのかについて、これは過去も含めてで教えていただければと思います。お願いいたします。

水嶋政府参考人 外務省では、中国の在留邦人に対しまして、感染防止を含みます安全確保の観点から、広く適時適切な情報提供及び注意喚起に努めてきております。

 中国におきましては、現地状況に鑑みまして、湖北省及び浙江省の温州市に感染症危険情報レベル3、渡航中止勧告になりますけれども、それから、その他中国全土にはレベル2、不要不急の渡航はやめてくださいを発出しております。

 さらに、在中国日本国大使館及び総領事館におきましても、各公館のホームページ、また領事メールの形で、現地の感染状況、また各種の交通制限等に関する情報発信を累次行ってきております。これらの情報は外務省本省のホームページからもアクセスできるようになっております。

 また、チャーター機、計五便運航いたしましたけれども、湖北省に在留いたしまして帰国を希望されていた全ての邦人の方々に日本に戻っていただくことができたと考えております。

 現在も、湖北省を含め、中国国内に残られています邦人の方々、いらっしゃると承知しておりますけれども、このような方々については、在中国日本国大使館等を通じて迅速な情報提供を行いつつ、邦人保護の観点から、引き続きできる限りの支援を行ってまいりたいと考えております。

高村分科員 ありがとうございます。

 本当に、外務省としても日本政府としても、しっかりとした対応をしていただいているんだと思います。ただ、なかなかそれがしっかりと、マスメディアを含めて、通じていないところがあって、あら探しのような報道ばかりされていること、本当に残念だと思います。

 続きまして、新型コロナウイルス感染症への日本政府の対応について、外務省としてどのような形で効果的に対外発信しているかについて教えてください。

大鷹政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルスにつきましては、クルーズ船への対応も含めまして、我が国の状況ですとか取組に関する正確な情報を、透明性を持って国内外に適時適切に発信していくことが重要と考えております。外務省においても、関係省庁と緊密に協力してそれに取り組んでいるところでございます。

 例えば、厚生労働省等と協力しまして、東京におきまして、これまで、在京外交団へのブリーフを計三回、海外プレスへのブリーフィングを計六回実施などしておりますほか、在外公館を通じまして適時適切に説明、発信を実施するようにしているところでございます。

 また、二十一日からは、感染症の専門家等による英語での会見ですとか説明を動画にいたしまして、これまでに三本の動画をSNS等を通じて発信もしているところでございます。

 引き続き、正確かつタイムリーな対外発信にしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

高村分科員 ありがとうございます。

 本当に、きめ細かな発信もしていただいているんだと思いますが、一方で、日本への渡航を抑制、又は日本からの渡航者の入国を制限する国が幾つか出てきているような報道も聞いております。そのような国に対して、日本政府として今後どのように対応していかれるのか、このことについて教えてください。

水嶋政府参考人 中国を始めとします各国、地域におけます新型コロナウイルス感染症の確認を受けて、一部の国、地域の関係当局は、我が国を含みます感染者が所在する国、地域への渡航禁止あるいは渡航延期勧告などの呼びかけ、また注意喚起、そして、感染者が所在する国、地域からの渡航者の入国の制限などを行っていると承知をしております。

 政府としましては、これまでも、外務省、厚労省、国交省など関係省庁が連携をしまして、在京の外交団向けブリーフィングなどを行いまして、我が国におけます感染防止対策などを情報発信してきているところでありますが、こうした国、地域に対しては、現地の大使館等も通じまして、個別にこれを丁寧に説明してまいっております。

 今後とも、こうした国、地域に対しましては、我が国の状況、取組について正確かつタイムリーに説明していくとともに、引き続き、国内外に対して、透明性を持って適時適切に情報発信、説明をしてまいりたいと思っております。

高村分科員 ありがとうございます。

 太平洋島嶼国とか、本当に限られたところで、一個でも入ってきたら感染が拡大しちゃうような、そういう国に関してはある程度しようがないのかなと思いますが、本当に日本の現状を誤解しているような国に対しては、日本はそんなに危なくないんだ、こういう発信をしっかりとしていただければと思います。

 そこで、二月の十二日に外務省から、「中国における新型コロナウイルスに関する注意喚起(その10)」早期の一時帰国や中国への渡航延期を至急検討くださいとのスポット情報が出ていますが、実際、いろいろな企業さんからお話を聞くと、この内容が曖昧で対応に困っている、こういった情報をお聞きすることがあります。

 あるメーカーで、上海赴任予定の社員の方が、当初二月の頭に日本を出発する予定だったのが、二月の十三日に変わり、三月の一日に変わり、そして三月の十五日まで渡航を延期されているということがあるそうです。

 また、別のメーカーでは、中国国内の工場から若い社員は帰国させましたが、年配の管理職のみが残る、こういった対応をしているところもあるそうです。本来、年配の方や持病を持っている方の方が危険度が高い、こういった病気だと言われている中、本当にこのような対応が正しいのか疑問が残ります。

 企業の皆さんや国民が対応しやすいよう、もう一歩踏み込んだ注意喚起はできないのでしょうか。その辺について教えていただければと思います。

水嶋政府参考人 外務省といたしましては、中国国内におけます状況を注視しながら、邦人の安全確保の観点から、一月六日以降、外務省の海外安全ホームページやメールを通じまして、感染症の関連情報を随時発出してきております。それを通じて、現地の在留邦人及び海外渡航者に対して注意喚起を行ってきているところであります。

 中国への感染症危険情報、先ほどお答えしましたように、湖北省それから浙江省の温州市はレベル3、それ以外はレベル2でございます。さらに、二月十二日、委員今御指摘ございました、日本への早期一時帰国あるいは中国への渡航延期を至急検討くださいというスポット情報を出しました。

 その上で、現地の進出企業関係者始め在留邦人の方々に対しては、在中国大使館及び総領事館から在留邦人向けの説明会を含めてきめ細かに情報発信を行ってきているほか、本邦におきましても、経済産業省と緊密に連携しながら、ビジネス界の方々とも意思疎通を図ってきてございます。

 今後も、より一層の情報発信及び意思疎通に意を用いてまいりたいというふうに考えております。

高村分科員 どうもありがとうございます。

 現地の状況も刻一刻と変わるものだと思いますので、その状況に即した、企業や国民がわかりやすい、こういった情報発信を引き続きお願いしたいと思います。

 そして、今回多くの感染者が出た、横浜に停泊中のダイヤモンド・プリンセス号、この船はイギリス船籍で、アメリカの会社が運航しているクルーズ船です。本来日本には責任がないとの話もありますが、今後、このような国際的なクルーズ船の取扱いに関する、感染症が起きたときですね、ルールをつくっていく、国際的なルールをつくっていく必要があると考えますが、今回の日本の経験をもとに、今後、日本が主導して新たな国際的なルール作成に取り組んでいく意思が日本政府にあるかどうか、この辺について教えていただければと思います。

茂木国務大臣 大きなクルーズ船での重大事態といいますと、タイタニック号の事故、これが印象的だと思いますが、今回のダイヤモンド・プリンセス号のような事態への対処は国際的にも初めての経験であると思っておりまして、まず、国際法上、船舶におけます感染症の拡大防止のための措置について、旗国、そしてまたクルーズ船の運航の所在国、さらには寄港国等の関係国のいずれかが一義的な義務を負うというルールは確立はされていないわけであります。

 今回の事案に関しましても、沿岸国であります我が国の法令が及ぶというのと、沿岸国である我が国が対処する義務を負うというのは全く違う話でありまして、沿岸国である我が国のみが対処する義務を負っているわけではありませんが、我が国として、自国国内への感染防止、これを行うためにも、みずから率先して対応に当たってきた、これが実態であります。

 国際的な緊急事態ということもありましてそういう対応をとってきたわけでありますが、今後、今回のような事例においては、旗国、そして運航者の所在国、寄港国、さらには乗客の国籍国等が、何らかのルール、そして役割分担、枠組みのもとで協力して感染の拡大を防ぐということは望ましいことだと思っておりまして、今回の経験も生かしながら、今後、いかなる対応ができるか、しっかりと検討していきたいと思っています。

高村分科員 大臣、ありがとうございます。こういった国際的なルールがないことによって乗客の皆さんが本当に不利益をこうむることがないように、ぜひ、日本が率先して国際的なルールをつくっていく、こういった提言をしていただければと思います。

 続きまして、アフリカに関することをちょっと伺いたいと思います。

 私自身、日本・AU議連の一員として、TICAD7のフォローアップの目的で、一月の十日から十九日に南アフリカ、エスワティニ、レソト、ガボン、サントメプリンシペの五カ国を訪問してまいりました。このような議員外交を通じ、ふだん外務省の政務による訪問が難しいような国々と直接コンタクトをとり、政府としての取組を後押しすることは非常に有意義であると考えますが、政府としての受けとめについて教えてください。

赤松政府参考人 まず、高村委員始め日・AU議連の先生方が、TICAD7フォローアップの一環として本年一月よりアフリカ各国を歴訪されたことに、外務省としても感謝申し上げたいと思います。

 特に、対アフリカ外交の重要性が増す中、高村委員を始めとする先生方が、海外の訪問先において、議員としてのお立場からさまざまな形で意見交換や交流に従事されることは、我が国の外交にとって重要であると考えております。

 政府としても、こうした状況を踏まえて、外交は政府が最終的に責任を持つべき点を前提としつつ、戦略的な議員外交を展開しようとする国会議員の皆様の御努力との連携を一層強化してまいりたいと存じます。

高村分科員 どうもありがとうございます。

 アフリカは、急速な人口増加を背景に、潜在力の高い未来の成長大陸と考えられており、アフリカ諸国とのビジネス関係の拡大は、日本の今後の成長の大きな鍵になると考えています。こうした考えのもと、二〇一九年八月のTICAD7において、安倍総理が対アフリカ民間投資の拡大について表明しました。これを実現するための外務省の取組について教えてください。

中谷大臣政務官 先生、御質問ありがとうございます。

 先生がおっしゃるとおり、アフリカは、世界の四分の一を占める五十四カ国を擁する、二十一世紀最大のフロンティアであります。我が国は、アフリカとの関係強化、アフリカ自身が主導する発展を力強く後押しをしていく考えであります。

 特に、アフリカとの関係強化には、先生おっしゃるとおり、ビジネスの結びつきが非常に重要であります。こうした考えに基づき、昨年八月のTICAD7では、安倍総理から、今後三年間で民間投資を二百億ドル規模以上へと拡大することを表明したところであります。

 これを実現するための取組の一つといたしまして、私自身、先週、二月の十六日から二十一日までの間、官民合同ミッションを率いて、モロッコ、セネガルを訪問してまいりました。アフリカの大きな潜在力を改めて感じたところであります。モロッコではエル・オトマニ首相、またセネガルでは、マッキー・サル大統領始め、相手国の政府要人に直接ビジネス環境の改善を働きかけたところであります。

 また、同行した日本企業三十社と現地企業、また関係省庁とのネットワーク構築を支援させていただいたところであります。

 外務省といたしましては、ODAも戦略的に活用しながら、引き続き、さまざまな取組を通じ、アフリカにおけるビジネス環境改善に貢献してまいりたいというふうに考えております。

 このことを更に進めて、アフリカへの民間投資を促進していきたいというふうに考えております。

高村分科員 これから本当に日本の人口がどんどん減っていくと言われている中で、やはりアフリカに対する投資というのは非常に大切だと思います。情けは人のためならず、しっかりと今アフリカに投資することが将来日本に返ってくる、こういった思いで、ぜひ、我々だけがいいんじゃなくて、アフリカの皆さんとともに、世界が豊かになっていく、こういったことをしっかりと進めていただければと思います。

 次に、二〇一三年に開催されたTICAD5で発表された、職業教育や高等教育を通じて雇用に直結する人材を生み出す教育と日本とアフリカの人的交流を促進することの重要性を踏まえ、アフリカから日本へ学びに来る若者のための大学院での教育に加え、日本企業でのインターンシップの機会を同時に提供するABEイニシアチブを通じて、アフリカの国から多くの若者が日本に来日しております。

 一方で、アフリカの国々と日本の若者の交流はまだまだ足りていない、もっともっと多くの若者の行き来が必要だと考えております。

 今回私が伺った、アフリカ訪問の際に南アフリカでお会いした、海外青年協力隊の一員として数学教育の支援をしている山下慎司さんが、クラウドファンディングで現地のアフリカの中高生を日本に招こうという活動を今現在されております。

 このような民間での活動に関する評価と、そして、国として、例えばお金じゃなくて何か後援をするとか、何らかのバックアップができないか、そういうことについて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

赤松政府参考人 ただいま御指摘のありました人材育成、最も重要な柱の一つだと存じます。

 我々、高村委員御指摘のとおり、ABEイニシアチブを始めとするさまざまな人材育成策を現在進めておるところでございまして、いろいろなニーズに応じた人材育成というものをますます強化していきたい、このように考えております。

高村分科員 直接のお答えがなかったんですが、ぜひ、現地に行った、現地を見ている日本の方がやろうとしているこういった活動に関しても外務省の皆さんも興味を持っていただければ、このように思います。

 続きまして、TICAD7では、民間企業のアフリカへの投資促進が大きなテーマの一つでありました。本年一月、サブサハラ地域では、TICAD7後、初めてコートジボワールとの間で投資協定が署名されました。同協定の意義について教えてください。

赤松政府参考人 ただいま高村委員御指摘のとおり、日・コートジボワール投資協定は、本年一月十三日、コートジボワールのアビジャンにおいて署名が行われました。

 コートジボワールは、人口約二千五百万人、一人当たりGDP千七百十五ドルという水準ですが、近年は年間約八%の経済成長率を維持しており、域内物流の拠点として西アフリカの経済を牽引しております。

 コートジボワールには現在、商社を中心に十五社の日系企業が進出しております。約三・五億人の人口を擁する西アフリカ市場への進出の拠点として日系企業のコートジボワールへの関心は高まっており、今後さらなる投資が見込まれております。

 このような中、本協定により日系企業による投資を保護、促進し、良好な投資環境を整備する意義は大きいものと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、我が国にとって本協定の締結は、昨年八月に開催された第七回アフリカ開発会議のフォローアップとしても重要であります。

 加えて、本協定を通じ、西アフリカにおける重要国の一つであるコートジボワールとの関係を更に強固なものとすることは、我が国にとって戦略的な重要性を有するものと認識しております。

高村分科員 ありがとうございます。

 ここからは、日本とアフリカだけの関係じゃなくて、人道支援に係るODAに関してちょっと伺いたいと思います。

 我が国は、二〇二二年に実施される国連安全保障理事会の非常任理事国選挙を視野に入れつつ、国際社会が直面する紛争、難民問題、気候変動や栄養改善などの課題に積極的に取り組み、持続可能な開発目標の実現に向けての具体的な貢献を示し、今後とも積極的かつ十分な指導力を発揮するための素地をつくる必要があると考えます。

 二〇一九年版の「世界の食料安全保障と栄養の現状」では、二〇一八年に八億二千百六十万人、実に九人に一人が飢えに苦しんでいると報告されています。世界で頻発する紛争や暴力、気候変動や極端な気象現象が飢餓人口の増加の主因となっている一方、食料不安に伴う人口の移動や社会不安定化が世界の平和と安全保障をもたらす上での妨げになるとも考えられます。

 食料安全保障が平和と安全保障に不可欠であるとの意識のもと、米国は、二〇一九年実績で約三十四億ドル、日本円で三千七百四十億円の資金を、飢餓撲滅をその使命とする国際機関である国連WFPへ拠出しております。これは三年前と比較して約七〇%の拡大となっております。また、イギリスの拠出額は五〇%増、お隣の韓国の拠出額は九〇%増など、主要国や近隣諸国もそれに追随して国連WFPへの拠出を増強しております。

 これに対して我が国は、人道、テロ対策、社会安定化支援に係る補正予算を、平成二十九年度の七百七十七億円から令和元年度の五百四十三億円へと、約三〇%減少させています。例えば、さきに述べた国連WFPにおいては、ドナー国としての順位を過去数年平均の五位から十位まで低下させています。かかる状況下、国際社会における我が国の相対的な影響力の低下に深刻な懸念を感じざるを得ないと思います。

 もちろん、財政的に厳しい中での精いっぱいの決定であることは理解しますが、このことに対する外務省の認識、そして今後の戦略や取組について教えてください。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、WFPにおける日本のドナー国としての順位は、二〇一三年に五位であったところ、二〇一九年には十位へと低下していますが、WFPを含む人道支援国際機関は、我が国が世界の人道危機に対してリーダーシップをとっていく上で不可欠なパートナーであり、今後も引き続き緊密に連携していく考えであります。

 人道問題を含むグローバルな課題への貢献やODAの戦略的活用のため国際機関との連携強化は重要であり、今後も努力してまいります。

高村分科員 ありがとうございます。

 本当に、先ほども申し上げましたが、こういった支援というのは、情けは人のためならずです。どうぞどうぞしっかりと取り組んでいただくことをお願いしたいと思います。

 続きまして、日本の経済外交を推進する上で、国際経済秩序を安定させ、日本企業の海外展開を支援する大前提となる人道支援については、安全確保等の理由から、二国間での援助を効率的に実施することはなかなか難しいケースもあります。機動力に富む国連WFPなど、国際機関を通じた多国間ODAの積極的な活用が重要な戦略となると考えます。

 さらには、日本の長期的な経済活性化及び競争力確保を見据えた、人道から開発、平和への連携を通じた革新的な官民協力を推進することが大切だと考えます。

 この点に関する政府の認識及び意気込みについてお願いいたします。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 人道問題等のグローバルな重要課題に積極的に貢献するためには、国際機関と連携して多国間の協力を推進していくことが重要であります。特に、さまざまな分野で効果的な支援を実施していく観点から、専門性や幅広いネットワークを有する国際機関の知見や経験を十分に活用していくことは有益と考えています。

 また、人道危機は、その発生の初期段階から緊急に必要とされる人道支援とともに、中長期的な視点のもとに自立を後押しする開発協力や平和構築、紛争予防支援を連携させて実施し、平時からの国づくり、社会安定化支援といった危機の根本原因への対処を強化することが重要であり、これらを実施するに当たっても、二国間のみならず、人道支援及び開発協力の知見を有する国際機関との連携が不可欠であります。

 また、日本企業の持つすぐれた技術やノウハウ、アイデアは途上国においても期待されており、人道支援及び開発協力を進める上で官民連携の推進は有益であります。

 一例として、バングラデシュにおいては、日本はWFPと連携し、日本の農業技術を用いたリョクトウ栽培事業を実施しているユーグレナ社による技術移転を行っています。

 日本政府は、こうした民間企業との連携も通じ、引き続き効率的かつ効果的な開発効果の発現を目指す考えであります。

高村分科員 どうもありがとうございます。

 まだまだ質問を考えてきたんですが、ちょっと、時間がぼちぼち近づいてきましたので、次の質問を最後としたいと思います。

 中国との関係であります。

 中国との関係の安定化は、日本の国益上、不可欠であると考えます。お隣の国でありますし、引っ越すこともできません。

 習近平国家主席を日本に招き、首脳間で信頼関係を構築し、中国が地域、世界の平和と繁栄に対して責任を果たすようになり、同時に両国間の懸案の解決を目指すのは、一つの外交戦略でもあります。習近平主席の国賓訪日をいかに成功させるかに知恵を絞っていくべきだと考えます。そのことが結果的に日本の国益にもつながることだと考えますが、政府の方針について教えてください。

中谷大臣政務官 先生御指摘のとおり、さまざまな問題がございますが、日中関係を良好にするということは極めて重要であります。

 日本と中国は隣国であり、アジアにおいて大きな位置を占めております。同時に、アジアを始めとする地域や世界の平和と繁栄に大きな責任を有しております。日中両国がこうした責任を果たしていくことが、現在のアジアの状況において、そして国際社会からも強く求められているところであります。

 そのためには、日中が協力することが必要であります。その体制を構築すべく、習近平国家主席を国賓として迎え、日中両国が協力して地域や世界の平和と繁栄への責任をしっかり果たすとの意思を内外に明確に示していく機会としたいと考えております。

 二月の十五日、ミュンヘンで行った日中外相会談でも、習近平国家主席の国賓訪日に向けて、引き続き日中両国で連携して準備を進めていくことで一致をしているところであります。

 各分野での成果が上がるよう、日中双方で準備を加速していきたいというふうに考えております。

高村分科員 どうもありがとうございました。

 引き続きしっかりと、お隣の国で、本当に仲よくしなきゃいけないと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。

山口(壯)主査代理 これにて高村正大君の質疑は終了いたしました。

 次に、和田義明君。

和田分科員 自由民主党の和田義明でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。理事、委員各位の皆様方に心から感謝を申し上げます。

 また、本日は、公務御多忙の中、茂木大臣にもお越しいただきました。本当にありがとうございます。また、政府参考人の方々も、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、早速質疑に入りたいと思います。

 まず、新型のコロナウイルスに関する質疑でございます。

 まずは、国内でも、この新型コロナウイルス、少しずつ広がっており、大変厳しい状況にありますけれども、とにもかくにも、まずは患者さんの一日も早い御回復、そして事態の早期収束を心から祈念を申し上げます。また、責任与党の一員として、政府との結束をしっかりと守り、この解決に尽力してまいりたいと思います。

 そして、政府関係者の皆様方におかれては、日夜分かたず本当に本件につきまして御尽力をいただいておりますことに重ねて敬意と感謝を表する次第でございまして、特に、外務省の方々におかれましては、武漢からの日本人の引揚げ等々について多大なる御尽力をいただきました。

 チャーター便が全部で五便、これまで日本に来たというようなことであるというふうに理解をしておりますけれども、邦人の在留者をまずは一人残らず、駐在員の方々、学生の方々、個人旅行の方々含めてしっかりと捕捉して、こういった方々に周知をし、そして、閉鎖をされている武漢の道路や交通機関、こういったところをあけてもらい、そしてまた、閉じられていた武漢の空港をあけてもらい、そしてチャーター便を飛ばして邦人を日本に戻していただいたというふうなことで、大変な御苦労があったと思います。

 このチャーター便のオペレーションにつきまして、簡単にその御苦労の一端を御披露いただければと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

水嶋政府参考人 外務省といたしましては、茂木大臣の指揮のもとで、省を挙げまして、湖北省に在留されていて帰国を希望する方々全員が早急に帰国できるように、各方面との調整を進めてまいりました。

 在中国日本大使館におきましては、横井大使をヘッドとする対策本部が対応に当たりましたが、一月二十七日からは、医務官や中国語を話せる館員を含む大使館職員十名が、千二百キロ離れている武漢に向けて、十七時間かけて武漢市に入りました。また、外務本省職員も十二名が現地入りをいたしまして、邦人の状況の把握に努めますとともに、帰国オペレーションの準備に当たりました。

 こうした努力の上に、中国政府の支援も得ながら、自力で移動できない方については現地にて手配した車両を使用して武漢空港まで移送するなどして、計五回のチャーター機を運航いたしまして、武漢市外に居住されている方を含めまして、湖北省に在留し、帰国を希望されていた全ての邦人に搭乗いただいたという次第でございます。

 同時に、政府といたしましては、新型コロナウイルスに関します最新情報の発信、注意喚起を繰り返し行いながら、在留届及びたびレジに登録されています邦人に対しまして、チャーター機による帰国オペレーションなどについても広く周知をして、可能な限り多くの邦人滞在者と連絡をとり、御意向を把握するように最大限努力をしてまいりました。

 このような帰国オペレーションの実施に当たりましては、中国自身も感染拡大の防止に向けて懸命に努力している中、多大な協力をいただいたということで評価をいたしております。

 現地の邦人コミュニティー、また、チャーター機を運航した航空会社に加えまして、邦人の帰国後にその対応に万全を尽くしていただきました多くの国内関係者の御尽力があってこそのオペレーションだったと思います。円滑な帰国が実現できたということで、改めて感謝を申し上げたいと思います。

和田分科員 御説明、まことにありがとうございました。

 二十四名の外務省の職員の方が、まさに体を張って邦人の帰国に御尽力をいただいたというようなことで、重ねて心から敬意を表する次第でございます。

 なお、現在まだ現地に残っておられる外務省の方がいらっしゃるというようなことだと理解しておりますけれども、何人残っておられるのでしょうか。

水嶋政府参考人 具体的な人数を申し上げるのは控えたいと思いますけれども、例えば企業の関係者、あるいは御自身で現地に生活の基盤を持たれている方など、自分の意思で残られている方がまだいらっしゃるというふうに承知をしております。そのような方々には、中国大使館等から直接連絡をとって、さまざまな支援、できることをさせていただいておる、そういう次第でございます。

和田分科員 外務省の職員の方で武漢に残っておられる方をお願いします。

水嶋政府参考人 失礼いたしました。

 大使館から武漢に入りました大使館職員は、あるいは東京から行った職員は全員、第五便のチャーター便までで帰国をしております。今現在、現地にはおりません。

和田分科員 御説明、まことにありがとうございました。本当に御苦労さまでございます。

 続きまして、日中関係の質疑に移りたいと思います。

 まず、一点目の質問でございますけれども、尖閣諸島を中心に、中国の日本に対する領海侵犯、領空侵犯等々が今日も続いている次第でございます。これの、その侵犯の件数の推移について御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 東シナ海では、日本固有の領土である尖閣諸島周辺海域における中国公船による領海侵入等が継続しており、今月に入って二回の領海侵入が発生しております。東シナ海の安定なくして日中関係の真の改善はございません。

 航空自衛隊の中国機に対する緊急発進回数でございますが、令和元年度、三・四半期までで五百二十三回と、高い水準で推移しております。

 今後とも、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くとの決意のもと、冷静かつ毅然と対処しつつ、東シナ海を平和、協力、友好の海とすべく、中国側と意思疎通を図っていく所存でございます。

和田分科員 今、現時点での状況のお話をいただきましたけれども、これまでの推移を見ましても、極めて高いレベルで推移をしているということは間違いがないと思いますし、とりわけ、スクランブルにおいては過去最高レベルであるというようなことは、これは疑いの余地がないと思っております。

 それでは、次の質問に移りますけれども、東シナ海のガス田周辺の活動についてお伺いをしたいと思っております。

 日中両国が主張をしております排他的経済水域、これの中間線付近に位置をしますガス田、これが八つあるというふうに了解をしております。そしてまた、排他的経済水域の、何といいますか、どちらの水域を主張するかというような問題もあるわけでございますけれども、そのさなかで、その問題を一定程度棚上げする形でこのガス田の共同開発ということを中国と合意したと理解しておりますが、その後に、一方的に中国の方からこれを取り下げ、そして中国が独自にガス田開発を行っているというふうに承知をしております。とりわけ、この中間線に近い位置に属します白樺というガス田、それから樫というガス田、この二つにおきまして中国が採掘を開始している、また試験操業を開始しているというふうに理解をしております。

 現在のこの中国とのガス田に関する外交対話の状況、交渉の状況についてお伺いをいたします。また同時に、あわせまして、日本はこれらのガス田開発に着手をしないのかという点についてもお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 中国側は、東シナ海の境界未画定海域において一方的な開発やその既成事実化の試みを進めているというのは、議員御指摘のとおりでございます。

 中国側による関連の動向を把握するたびに、外交ルートを通じて、中国側に対して抗議するとともに、中止するよう強く求めてきており、今後ともそれを続けていく所存でございます。

 また、二〇〇八年合意につきましては、首脳間で、資源開発に関する二〇〇八年合意を推進し、東シナ海を平和、協力、友好の海とすることの目標を実現することで一致しております。中国側に対しては、この合意に基づく交渉を早期に再開し、この合意を早期に実施するよう、引き続き強く求めていく所存でございます。

和田分科員 御答弁ありがとうございました。

 中国側に対して強く申し入れるというふうなところは了解したわけではありますけれども、そこで結果に変化はないというふうなことだというふうに考えております。

 そういった中、やはり日本の主権というものをしっかりと主張するべきだと思いますし、それは行動にあらわすべきだと考えます。協力、友好の海というふうなことは結構なんですけれども、やはり、これは日本としても明確なスタンスをもっと行動で示す必要があると思っております。

 なぜこの開発に着手をしないのかというところについて、いろいろと外交上難しい点はあるかと思いますけれども、お答えいただける範囲でお答えをいただきたいと思います。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、我々としましては、首脳間で、資源開発に関する二〇〇八年合意を推進、実施する、東シナ海を平和、協力、友好の海とするという目標を実現することで一致しておりますので、まずは、それを推進するべく、中国側に対し強く求めていくということでございます。

和田分科員 合意事項を中国側が履行していない場合はしっかりと対抗措置についても御検討いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 三点目の質問でありますけれども、現在、十名の邦人が中国当局に不当に拘束をされているというふうに承知をしております。少し前まで十五名が拘束をされておりましたが、今はこれが十名になったというふうに理解をしております。

 凶暴犯、粗暴犯、窃盗犯などの罪状が明確でないまま拘束が続いているというふうに理解しておりますけれども、この事案についての説明をお願いしたいと思います。

水嶋政府参考人 政府といたしましては、一連の邦人拘束事案といたしまして、委員御指摘のとおり、十五名の邦人が中国側に拘束されたことを確認いたしております。そのうちの五名は帰国済みでありまして、十名が帰国に至っていないという状況でございます。これら邦人拘束事案につきましては、政府として、日中間の首脳会談や外相会談など、これまでさまざまなレベル、機会で、早期解放に向け中国側に働きかけを行ってきており、例えば、昨年九月に北京市で北海道大学教授が拘束された事例につきましても、こうした働きかけを行いまして、十一月に解放に至った次第であります。

 今後も引き続き、さまざまなレベル、機会を捉えまして、中国側に対して前向きな対応を求めていく考えであります。

和田分科員 事由が明確でないまま拘束を受けるということは、これはまさに拉致事件と何ら変わりはないというふうに考えております。これを北朝鮮の拉致事件と対比しまして、どのように外務省として位置づけておられるのでしょうか。答弁をお願いします。

水嶋政府参考人 我々が承知しておりますのは、中国側が、今、十名、帰国に至っていない方々に対しましては、中国の安全を危うくする罪というようなことで身柄を拘束され、あるいは裁判にかけられているというふうに承知をしております。

 我々としても、どのような行動がその罪に当たるのかということも明らかではありませんので、それも繰り返し中国側に対して明らかにするように求めておりますけれども、引き続きそのような努力を続けてまいりたいというふうに思っております。

和田分科員 今国会で、複数の国と受刑者の移送協定を締結する予定であるというふうに伺っておりますけれども、ぜひとも、中国ともこういった協定を結んで、そしてこういった事案を少しでもなくしていくというふうな形で御尽力をいただきたいと思います。また、改めまして、この十名の方々が一日も早い帰国ができますように、在外邦人の生命と財産を守り抜くというふうな覚悟で、引き続き中国当局との折衝をお願いしたいと思います。

 さて、四つ目の質問でありますけれども、日本の国家の機密情報、また企業の先端技術などの機微な情報が、サイバー攻撃又は産業スパイ等々によって詐取をされているというふうな事案が多発をしております。そして、事中国に関しましては、米中貿易戦争の最大の理由はこの知的財産の問題であるというふうに認識をしております。

 先般、三菱電機、NEC、神戸製鋼所、パスコなどに対してサイバー攻撃が行われ、そして機密情報に当たるものが狙われたといった事案がございました。報道によりますと、中国当局の管理下にあると言われているティック、別名ブロンズバトラーという機関がこのサイバー攻撃に関与したというような話もございますし、また、国内の複数の専門家も中国の関与を確信しているというふうな発言をされております。

 そういった中、外務省の事実認識はどのようになっておりますでしょうか。また、これに対する政府の対応についてもお聞かせいただきたいと思います。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 サイバー攻撃につきましては、政府といたしましても重大な関心を持って平素から情報収集、分析に努めております。他方で、個々の具体的な情報の内容、分析につきましては、事柄の性質上、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、我が国としては、サイバー攻撃への対応は、国家の安全保障、危機管理上の重要な課題と認識しており、国際社会とも連携しつつ、引き続き緊張感を持って取り組んでいく所存でございます。

和田分科員 今のお話ですけれども、中国を特定しているのかしていないのか、その点についてお答えください。

山中政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますけれども、個々の具体的な情報の内容や分析について明らかにすることによって我が国の能力を明らかにしてしまう危険性があるため、個々の事情について、詳細についてはコメントを差し控えさせていただきたいと思います。

和田分科員 公表するしないは別として、ちゃんとどこからの攻撃だということが明確になった場合は、きちっとした対抗措置をお願いしたいと思いますし、また、これまた公表する必要もないのかもしれませんけれども、しっかりと外交ルートを通じて、またしっかりとトップ・ツー・トップで、このところの話というのはしていただきたいと思っております。

 特に、習近平主席をこれから国賓待遇で日本に招く招かないというような話になっておりますけれども、これは大変重要なポイントであると思っておりますので、その点はよろしくお願いいたします。

 五番目の質問でございますけれども、これまた米中貿易戦争の二つ目の重要なポイントというふうになっております、産業補助金の件でございます。

 米中貿易戦争の重要論点としてこれは捉えられているわけですけれども、中国政府が、主に国営企業、また国として重要な企業であると位置づけているところに対して補助金を拠出して、不当に価格競争力をつけて、そして国際競争の中で優位に戦っているという現状がございます。そして、これは明確なWTO違反であるというふうにも言われております。

 この点につきまして、政府の事実認識と、そして対策について、お答えをいただきたいと思います。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 中国が抱える産業補助金、知的財産、技術移転、データの取扱い等に係る構造上の問題は、米国を含む国際社会共通の懸念となっており、中国政府がこうした問題に積極的に取り組み、国際社会や日本の民間企業も納得できる形で結果を生み出していくことが必要であると考えております。

 我が国としましても、中国側に対しては、首脳レベル、外相レベルを含めさまざまな機会に、こうした問題について、日本側の懸念、問題意識をしっかりと伝達していっているところでございます。引き続き、状況の改善を中国側に働きかけていく考えでございます。

和田分科員 外交の場でもしっかりと話し合っていただいているというふうなことでありますけれども、まずは、これはしっかりとした事実認定が必要だと思いますし、現に、中国のこうした行動によって、日本の企業等々におきましても経済的損失が生じているということが言えると思います。目に見える形で、もっと国民にわかりやすい形で、ぜひとも中国に対する強い抗議をしていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 これらの日本の領土、領海、領空への中国からの挑戦、また東シナ海における天然資源に関する合意のほご、さらには邦人十名の不当拘束、サイバー攻撃や産業スパイによる情報の詐取、また産業補助金等々の課題に加えまして、さらには、人権問題として、香港の民主化運動弾圧、またウイグル自治区における強制収容所事案、またチベット族の弾圧等々、国際社会で批判が高まる人権問題も中国は抱えております。

 言わずもがなではありますけれども、中国は日本にとっても大切な隣国であり、友好を深めること、これはもう絶対に大切であることは論をまちません。しかし、この時期に習近平主席を国賓待遇することは、これは中国のみならず国際社会に対して、これらの多くの課題を日本が容認するという誤ったメッセージにならないかというのを大変懸念をしております。

 常々、これまでの歴史を振り返っても、中国と日本の間におきましては政治的なリスクがあります。また、今日、新型コロナウイルス等々がありますとおり、以前SARSもありましたとおり、パンデミックのリスクというのも一定の周期であります。また、経済的には、サプライチェーンの混乱、またインバウンドの激減による経済的な混乱等々もございます。

 むしろ、今この時期に、この機会を得て、中国への過剰な依存を是正して、日本の外交力、経済力のバーゲニングパワー、これを強化する時期にあるのではないかというふうに考える次第でございます。

 正直、個人的に、習近平主席の国賓待遇の招致につきましては理解に苦しむところがございます。

 茂木大臣にお伺いをいたしますけれども、これを国賓として招致する場合、日本として、じゃ、こういった譲歩をするからには何をかち取っていくのか、日本としてどれだけ大きなものを得ることができるのか、外交交渉の手のうちを明かさないのは原則ではありますけれども、国民の皆様にもわかりやすい形で御説明をいただけたらと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

茂木国務大臣 和田委員、商社マンとしても海外経験もありまして、国際情勢にも大変詳しいわけでありますし、御岳父の町村信孝先生、外務大臣として私の大先輩でもありまして、先ほど、知財の問題そしてサイバーテロの問題、お聞きをいたしておりまして、町村先生、この問題に誰よりも熱心に取り組んでいらしたな、こういったことを思い出すところであります。

 日本と中国、地域や世界の平和と繁栄にともに大きな責任を有しているわけであります。日中両国がこうした責任を果たしていくことが、現在のアジアの状況において、そして国際社会からも強く求められている、期待をされている。習近平国家主席の国賓訪日を、その責任をしっかり果たす、こういった意思を内外に明確に示す、そういう機会にしていきたいと思います。

 同時に、中国の間では、委員の方からもるる御指摘をいただきましたが、直近の新型コロナウイルス感染症だけにとどまらず、東シナ海の問題もありますし、御指摘ありませんでしたが、食品輸入規制の問題もあります。さまざまな懸案が存在しているわけでありまして、こうした懸案があるからこそ会談を行う。

 二〇一八年以来、これまで、累次の首脳会談また外相会談におきまして、安倍総理や私の方から、中国側に対して直接さまざまなことを提起いたしております。邦人の拘束事案につきましても、北海道の先生につきましても、しっかりと提起をさせていただき、働きかけ、そして解放ということに至ったわけでありますが、引き続き、主張すべきはしっかりと主張して、中国側の前向きな対応、これを強く求めていきたいと思っています。

    〔山口(壯)主査代理退席、主査着席〕

和田分科員 大臣、ありがとうございました。

 茂木大臣におかれましては、日米の貿易協定において大変力強い交渉を行っていただき、手腕を発揮していただきまして、日本の国益をかち取っていただきました。心から敬意を表する次第でございます。ぜひとも、引き続き、力強い、凜とした外交を続けていただき、日本の国益をお守りいただきたいと思います。

 そして、とりわけ、中国に対しましても、これらの多くの難問が多々山積しておりますけれども、なかなか一足飛びにはいかないと思いますが、一つ一つ解決に向けて御尽力を賜りますよう、重ね重ねお願いを申し上げたいと思います。御答弁、まことにありがとうございました。

 続きまして、国連等国際機関の幹部ポストの件についてお伺いをいたします。

 まず、国連についての言及でございますけれども、昨今、国連の機能といいますか、国際社会において果たせる機能というものがなかなか難しい状況にあるというふうに認識をされております。まず、安保理の常任理事国のエゴというものがむき出しになり、そして、これが国際紛争等々にも影を落とし、国連全体としての問題解決能力、これが大幅に落ちているのではないかというような懸念がございます。

 振り返りますと、中東におきまして、シリアの問題でございますね、国連としてどういった機能を果たせたか、紛争をとめることができたかといいますと、かなり厳しい批評をしなければいけないと思っております。

 また、今、広がりを見せております新型コロナウイルスにおきましても、WHO、世界保健機関の事務局長の対応を見ておりましても、かなり中国に必要以上の配慮をして、そして、本来もっと早く手を打つべきであったというところの反省というのは、これは絶対に大きくあると考えております。

 また、WTOにおきましても、東北の水産品を韓国に輸出する事案につきまして、日本の思いが通らず、科学的な根拠を示しても、結局は日本として国益をかち取ることができなかったといった問題がありまして、国際機関における日本の影響力、こういったものをもっともっと強くしていかなければいけない、こういった喫緊の課題があると考えております。

 そこで、最初の質問でございますけれども、国連における日本人の職員数及び幹部職員数の推移並びに今後の方向性について、御答弁をいただきたいと思います。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一八年十二月時点での数字でございますけれども、八百八十二名の日本人職員が国連関係機関で勤務をしております。そのうちの幹部職員、これは、国連の用語でD1以上、およそ部次長級以上というふうに御理解いただければと思いますけれども、ここの数字が八十八名で、この数字は二〇一九年九月時点のものでございます。

 日本人職員の数は増加傾向にございまして、二〇一〇年一月と比べて百四十六名増加しております。幹部職員数も過去最高水準となっておりまして、二〇一〇年一月から比べて二十一名増加をしているところです。

 一方で、他のG7各国の職員数と比べますと、G7各国は千名を超えておりまして、いまだ日本の数字は十分でないと認識しております。このため、政府として、二〇二五年までに国連関係機関の日本人職員数を千名とすることを目標としております。

 外務省といたしましては、長期的な視点に立ちまして、国際機関における日本人の採用や昇進への支援を若手、中堅の時代から継続的に実施しております。また、外務省として職員を国際機関に派遣し、勤務経験を積ませることなども実施しております。

 さらに、外務省では、日本全国のみならず、海外においても、国際機関で働く魅力や就職方法等について、国際機関就職説明会等を通じてお伝えしています。

 今後は、ホームページやSNSを通じた広報や若年層に対する広報を含め、国際機関を目指す日本人の裾野拡大に一層戦略的に取り組んでまいる所存でございます。

和田分科員 御答弁、まことにありがとうございました。

 過去約二十年の国連における日本人職員、また幹部の数を見ておりますと、約一・五倍から二倍というようなことで、確実にふえておりまして、多少の途中のアップダウンはあるものの、この力強い傾向というのが堅持されております。

 外務省さんの御尽力に関しまして心から敬意を表しますとともに、今御説明のありました二〇二五年までに千名の達成ということをぜひとも実現をしていただきたいと思います。

 その上ででありますけれども、冒頭申し上げました、国連の機能不全と機能低下といったことに関して我が国としてどのように対処をしていくべきかというようなことについて、外務省さんの御見識そして御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 国連は、最も普遍性を有する国際機関として、平和と安全、人権及び開発を含む幅広いグローバルな課題の解決に向けて取り組む場であると考えております。

 我が国といたしましては、国連の持つ普遍性と専門性に支えられた正統性を最大限に活用し、国際的なルールづくりを含め、我が国だけでは実現できないことを国連の場を通じて実現すべく努めているところでございます。

 この一例として申し上げれば、北朝鮮の全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な廃棄に向けて、前例のないレベルの制裁措置を規定した安保理決議が採択されるなど、国連は引き続き重要な役割を果たしてきております。

 他方で、国連が二十一世紀の現実を反映しておらず、適切かつ十分に機能するための改革が必要であるとの声が根強いのは事実でございます。我が国は、二十一世紀の国際社会の現実を踏まえた形で、国際の平和及び安全の維持に主要な責任を負う安保理の改革を含む国連改革の速やかな実現に向けて、具体的取組を引き続き進めていく考えでございます。

和田分科員 御説明ありがとうございました。ぜひとも御尽力のほど、お願いをしたいと思います。

 最後の質問に移りたいと思います。

 日本の国際貢献という意味におきまして、PKOの位置づけについてお話をさせていただきたいと思います。

 これまで日本は累次PKOで活躍をしてきたわけでありますけれども、一方で、先般、南スーダンにおける活動におきましては、いろいろな議論がございました。

 そういった中、これからの日本のとりわけ安全保障における国際協力という意味におきましては、できるだけ安全を確保する、また、高付加価値で、少人数で対処する、こういったことが大事になってくると考えております。やはり、派遣される自衛隊の隊員の安全のことを考えましても、この点は絶対に妥協するべきでないと思っております。

 そういった中、先般、北海道に駐屯しております第三使節団のメンバーの人たちがウガンダに派遣をされまして、そして、そこでウガンダの軍の関係者の人に対しまして重機のオペレーションの事業を行い、そして、現地の軍の方々にも大変喜ばれたといった事案がありました。こうした国際貢献のあり方というのもこれからどんどん進めていただきたいと思っております。

 そういった中、国連のみならず、こういった自衛隊のUNMISS並びに安全保障関係の国連のポスト、幹部ポストの取得といったことも大事になってくるというふうに考えますけれども、この点について、茂木大臣の意気込みをお聞かせいただければ幸いでございます。よろしくお願いします。

茂木国務大臣 和田委員おっしゃるとおりだと思っておりまして、まず、PKOに限らず、国際社会での活動に関して、先ほども御質問いただきましたが、我が国は、その貢献度、そして国としての能力に比べて、国際機関での幹部ポスト、ふえてきておりますが、まだまだ少ない、こんなふうに思っているところであります。

 PKOにつきましては、平成四年のPKO法の制定以来、二十八件の国際平和協力業務を実施して、延べ一万二千五百名の要員を国連PKOに派遣をしております。現在も、UNMISSそしてMFO司令部要員をそれぞれ四名、二名と派遣をしているわけでありますが、政府としては、今後とも、国際協調主義に基づきます積極的平和主義のもと、国際社会において、これまでの国際連合平和維持活動等への協力の実績の上に立って、我が国の強みを生かしながら、能力構築支援の強化、部隊及び幹部ポストを含みます個人派遣の可能性も含めて、一層積極的に貢献をしていきたいと思っております。

 外務省としても全力で取り組みますし、恐らく、こういった要員のポストをとっていくためには、政府一丸、さらにはオール・ジャパンで、もっと早い段階からの取組というのが必要だ。こういったことも含めて進めていきたいと思っております。

和田分科員 大臣、ありがとうございました。

 先般、ウガンダに派遣されました自衛隊の隊員の方々のお話を個別に伺うことができました。もう一度行きたい、もう二度でも行きたい、そういうふうなお話でございました。

 やはり、現地の方々に喜んでいただける、この喜びをかみしめて、隊員の方も大きくモチベーションを上げたというようなことでしたので、この高官ポスト並びに平和貢献のポスト、ぜひともよろしくお願いします。

 このPKOのオペレーションにおきましては、いろいろなノウハウの蓄積、またインテリジェンスの蓄積にも大きく寄与するものと思いますので、ぜひともよろしくお願い申し上げます。

 これにて質疑を終えさせていただきます。ありがとうございました。

あべ主査 これにて和田義明君の質疑は終了いたしました。

 次に、村上史好君。

村上(史)分科員 立国社無所属フォーラムの村上史好でございます。

 きょうは最後の質問者となります。どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 きょうは、新型コロナウイルス対策並びに日朝外交、また日ロ外交についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 それでは、まず確認から入らせていただきたいと思います。

 現在、在外邦人、およそ百三十九万人いらっしゃいます。また、中国には十二万人の邦人がいらっしゃいます。その邦人の安全の確保というものは外務省の重要な任務だと思います。とりわけ、今、新型コロナウイルスの発生国だとも言われております中国の邦人そしてまた外務省の職員の皆さんの健康の管理、安全の保持をどのようにされているのか、まず確認をさせていただきたいと思います。

水嶋政府参考人 お答えを申し上げます。

 外務省といたしましては、中国に滞在しております在留邦人、また渡航者の方々の安全確保、これが最大の任務の一つだと考えております。

 その関係では、外務省からは、感染症危険情報、こういったものも発出いたしておりますし、また、タイムリーな形で、スポット情報、あるいは大使館、総領事館から領事メール等を発出して、それぞれの場所での感染状況、あるいは交通状況、制限の状況、そういったような情報をきめ細かく発出をして、在留邦人の方々の安全確保に資するように努めておるところでございます。

 引き続き、きめ細かな情報発信をしていきたいと思っております。

村上(史)分科員 こういう対策というのは、後手を踏まないように進めていただきたいなと思います。

 といいますのは、現実は日々刻々と変化をしてまいります。急に感染が拡大をするとか、例えば、韓国では大邱市を中心に急速に感染が拡大をいたしましたし、イタリアにおいても、ミラノを中心に日本人学校も休校になるほど感染が急激に拡大をいたしました。まさにフェーズが変わったと思っております。とりわけ韓国は隣国でございます。人の往来も多い両国でございます。やはり、邦人の保護、水際対策として対応を変える必要があると考えますが、外務省の対応の変化はあるのか、お尋ねをしたいと思います。

水嶋政府参考人 新型コロナウイルス感染症につきましては、中国のほかに、これまで、韓国、イタリア、シンガポール、香港、イラン、米国、タイ、台湾、マレーシア、豪州、ベトナム、ドイツ、イギリス、ア首連、フランス、マカオ、カナダなどの各国、地域において感染者が確認されていると承知をしております。

 海外の感染状況につきまして、WHOは、中国における感染者数の増加に鈍化の傾向が見られるものの、今後については慎重な判断が必要というふうにしております。実際に、中国においても幾つかの省の刑務所などで集団感染が発生しているという情報もあり、引き続き注視が必要でございます。

 今委員御指摘の韓国でございますが、大邱広域市、そして慶尚北道で感染症例が急増したことを受けまして、外務省では二十二日に、最新情報の収集と感染予防を呼びかける感染症スポット情報を発出いたしました。そして、本日、感染の拡大状況を含め、さまざまな状況を総合的に勘案をして、大邱広域市及び慶尚北道の清道郡に対しまして、感染症危険情報、これのレベル2、不要不急の渡航をやめてください、これを発出したところでございます。あわせて、現地の状況を注視しながら、在韓国大使館、それから釜山日本総領事館から、累次、領事メールを発出してきております。

 外務省としては、こういう韓国を含みます各国、地域において、在留邦人や海外渡航者の安全確保の観点から、引き続き、適切な情報発信を行っていきたいと考えております。

村上(史)分科員 まさに、きのうときょうは違うというフェーズになっている。これからもそういうことが十分予想されるわけですので、十分な注意を払っていただき、また対応を速やかにしていただきたい。そのことが在外の邦人の安全の確保に直結するということでございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 こういう中で、各国は、対中国に対してさまざまな規制を設けているところがございます。対中国の人の往来を規制する動きが確かにございます。各国、とりわけアメリカ、EUではどのような取組、対応をしているのか、教えていただきたいと思います。

水嶋政府参考人 我が国におきましては、二月一日から湖北省の滞在者などを対象に、また二月十三日からはこれに加えまして浙江省の滞在者等を対象に、特段の事情がない限り、出入国管理及び難民認定法に基づきまして上陸拒否の措置が講じられております。

 一方、米国におきましては、入国前十四日間以内に香港、マカオを除く中国に滞在歴のある外国人の入国禁止措置、これを講じておると承知しております。

 また、一方で、G7各国の対応を見てみますと、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア及びカナダでは入国制限措置を特に課していないというふうに承知をしております。

 引き続き、政府といたしましては、変化する事態に対応しまして、我が国への感染症の流入を食いとめるために、関係省庁と一体となって、入国制限を含む包括的かつ機動的な水際対策を講じてまいりたいと思っております。

村上(史)分科員 今、各国によって取組に違いがあるということはわかるんですけれども、日本の場合は、今御答弁がありましたように、湖北省、浙江省からの入国に関しては拒否をしているというところですけれども、ただ、感染状況はこの二省だけではないと思うんですね。中国全土に感染が広がっているということは、やはり現実を認識する必要があると思います。そういう面で、なぜこの二省だけが入国拒否としているのか、その判断基準はどこにあるのか、お尋ねをしたいと思います。

茂木国務大臣 二つの視点がありまして、一つは、在外邦人であったりとか海外渡航者の安全を確保するために、先ほどもありましたような、感染症の危険情報を出す、またスポット情報を出す、適時適切にそういった情報提供、注意喚起を呼びかける。もう一方で、我が国の水際対策として、海外の方をある意味において入国制限をかけていくというところでありまして、先ほど答弁させていただいたように、二月一日から湖北省の滞在者等、ここの中には、湖北省に十四日以内に行った人、こういった人も含まれるわけでありますが、こういった湖北省の滞在者等、さらには、二月十三日からこれに加えて浙江省滞在者等を対象に、入国管理、入国制限、こういったことをしているわけであります。

 これは、例えば、どれくらい多い数の感染者が出ているか、また、一万人当たりの感染者がどれくらいの比率があるか、さらには、武漢を始めそれぞれの地域でどういった移動制限の措置を現地の政府がとっているか、さらには、現地の医療施設、そういった状況がどうなっているか、感染がどう進んでいるか、そういったことも総合的に勘案しながら、まずは水際対策をしっかりとする。

 同時に、さまざまな形で日本と中国、サプライチェーン等でつながっているわけでありまして、適切な形の管理を行うということも必要だと思っておりまして、そういった総合的な観点から判断をさせていただいております。

村上(史)分科員 やみくもに制限を加えるということは、決していいことではないと思います。やはり、冷静な判断のもとで、必要があれば規制をしていく、そういうめり張りのきいた対応というのが今後も必要だと思いますので、その点についても情報は速やかに発出をしていただく、それをまた我々が判断をしていく、そういうことにしていかなければいけないと思います。

 そういう状況の中で、昨日、中国政府は、感染が拡大をし続ける中、中国で最も重要な会議とも言われております、三月五日開催予定でございました全国人民代表大会、いわゆる全人代の延期を正式に発表をいたしました。SARSのときでも延期をしなかった全人代ですから、今現在、中国国内での逼迫している状況が推察することができると思います。そして、今回の決定は、当然、習近平主席の訪日にも影響があると考えるのが妥当と思いますけれども、予定どおり行われるのか、変更はないのか、その点について見解を伺いたいと思います。

茂木国務大臣 昨日、全人代につきまして延期が正式に決定されたと承知をしております。

 中国の内政一つ一つについて日本政府としてコメントは差し控えたいと思いますが、まず、中国政府としても、現在、新型コロナウイルス感染症の拡大防止であったりとか事態の鎮静化に向けて、国を挙げて取り組んでいるところでありまして、日本としてもできる限りの協力をしていきたい、そんなふうには思っているところであります。

 新型コロナウイルス感染症について、連日、中国等で感染の拡大、これが報道される。日本でも、新たな感染者の確認、こういったものが報道されておりまして、委員御指摘のような懸念が出ているということも十分承知をしております。

 その上で、ことしを考えてみますと、夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を始め、重要な行事、イベントが予定をされておりまして、それに向けた準備というのもしっかりホスト国として進めていかなければいけないと考えております。

 そんな中で、習近平国家主席の訪日については、先日、ミュンヘンで行いました日中外相会談、二週間前になるわけでありますけれども、そこでも、引き続き日中両国で連携して準備を進めていくことで一致をいたしております。現時点におきましては、習主席の訪日は予定どおりでありまして、それに向けた準備を粛々と進めていきたいと思っております。

村上(史)分科員 また後ほど、今の御答弁に対してちょっと質問させていただきますけれども、その前に、きょう、あす予定をされておりました日中経済パートナーシップ協議も延期をされております。そして、今月の二十八日、二十九日には、中国の外交のトップでございますヨウケツチ政治局員が訪日をされます。これはもちろん、習近平主席の訪日に関連してでの予定の行動であるかもしれませんけれども、このヨウケツチ政治局員との会談、どのような見通しをお持ちでしょうか。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 ヨウケツチ政治局委員の訪日につきましては、現在、日程等を調整中でございますが、現時点で具体的に決まっていることはございませんので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、習近平国家主席の訪日、これにつきましては予定どおりであり、それに向けた準備は粛々と進めていきたいと考えております。

茂木国務大臣 ヨウケツチ政治局委員につきましては、日程を今調整している段階であります。ただ、具体的な日程は今決まっていないということを答弁したかったんだと思います。

村上(史)分科員 二十八、二十九ではないということでよろしいんでしょうか。

茂木国務大臣 そういうことではありません。今、具体的な日程を調整中だということでありまして、確定をしていないということを申し上げております。

村上(史)分科員 いずれにしましても、外交日程を決めるというのは、直前に決めるわけにもいかないですし、それを中止をするのか、延期をするのか、予定どおりやるのか、それも直前というわけにはとてもまいりません。そういう面では、タイムリミットも当然あると思います。その点についての先ほど大臣の御答弁では、現時点ではというただし書きのようなものをつけておられます。現時点ではということは、変わり得る可能性があるというふうな理解をしていいでしょうか。

茂木国務大臣 習近平国家主席は国賓として来日をするという予定でありますから、国賓として来日ということになりますと、当然、閣議決定が必要であります。過去の例からしましても、大体どの程度のタイミングで閣議決定をしている、こういったこともありますし、それに向けた準備というのもあるわけでありまして、そういったスケジュールもにらんでいるということであります。

 一方で、ヨウケツチ政治局委員始めさまざまな外国要人との会談等につきましては、私も何度も経験しておりますが、直前までさまざまな日程をお互いに調整するということもありますので、それについては、日程が、例えば今週来る、来週来るという日程でも、流動的だということは十分あり得ると思っております。

村上(史)分科員 せっかくの訪日でございます。国賓として中国の国家主席をお招きするという以上は、やはり実りあるものにしていかなければなりませんし、日中両国の友好を促進、増進をするということも大変重要なことであります。そのためには国民と親しく接していただく機会も十分持つべきだと思うんですけれども、残念ながら、今のいわゆる感染状況ではそういうことも恐らくできないだろうと思います。単なる首脳同士の会談だけで終わってしまうということでは、せっかくの国賓としての来日が、思った以上の成果が生まれないのではないか。

 そのことを考えるならば、やはり今は、両国にとって新コロナウイルス対策が最優先の課題でございますから、これを延期したとしても、それほど大きな問題が生じるということはないと思いますので、やはりここは、外交上、またさまざまな視点から、両国が、双方が合意を持って、次のいいタイミングに訪日をしていただくという選択も、これはあっていいのではないか、そのことをお伝えして、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 日朝外交についてお尋ねをいたします。

 二〇一二年末、安倍第二次政権がスタートをして八年、足かけ九年を経過いたしました。総理は、拉致問題は政権の最重要課題とか、総理自身、私にしか解決できないとまで言われましたけれども、拉致問題解決への糸口は全く見えてまいりません。先日には、有本恵子さんのお母様、有本嘉代子さんが九十四歳で亡くなられました。無念の死だったと思います。もう時間はありません。

 総理が、あらゆるチャンスを捉えてとか、条件をつけずとか発言をされてまいりましたけれども、その後何らかの進展があったのか、具体的にお示しください。

茂木国務大臣 拉致問題、安倍政権の最重要課題であります。

 そして、拉致被害者の有本恵子さんのお母様の有本嘉代子さんが御逝去されたことについて、改めて心よりお悔やみを申し上げ、御冥福をお祈りしたいと思います。嘉代子さんの存命中に御令嬢の恵子さんを帰国させることができなかった。痛恨のきわみであります。

 委員御指摘のように、拉致被害者の御家族も御高齢となる中で、拉致問題を一日も早く解決することが必要でありまして、安倍総理自身も、条件をつけずに金正恩委員長と直接向き合う、こういった決意を述べておるところであります。

 私も首脳会談等々同席をさせてもらっておりますが、トランプ大統領と会っても、習近平国家主席と会っても、安倍総理は必ずこのことを最優先でトランプ大統領や習主席におっしゃる。そして、トランプ大統領、習近平国家主席、文在寅大統領からもそれぞれ、金正恩委員長に対して我が国の考え方を伝えてもらっております。

 そして、他国からやってもらうだけではなくて、我が国自身も北朝鮮に対してさまざまなレベルで働きかけを実際に行ってきております。ただ、これはまさに一番、外交の中核をなす部分でありまして、どういうレベルでどういう働きかけを行って、相手の反応がどうであった、これがまさに今後の問題解決、事態の進展にも大きな影響を及ぼすということで、この点については、恐縮ですが、控えさせていただきたいと思いますが、引き続き、米国等とも緊密に連携をしながら、あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動していきたいと思います。

村上(史)分科員 外交交渉でございますから、言えること、言えないこと、これはあると思います。しかし、現実に事態が進展しているという実感を得ることは、残念ながらできない状況でございます。

 そういう中で、昨年来、共同通信が報道いたしました拉致被害者の田中実さんと金田龍光さんのお二人の生存情報が、安倍総理の了承のもとに、これは非公表とされたという記事がございました。これは事実でしょうか。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮による拉致被害者や拉致の可能性が排除できない方につきましては、平素から情報収集に努めておりますが、今後の対応に支障を来すおそれがあることから、その具体的内容につきましては、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。また、報道の一つ一つにつきましても、お答えすることを差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、政府としましては、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために、引き続き全力を尽くす考えでございます。

村上(史)分科員 先ほど来申し上げています在外の邦人の安全の確保、保護、これは別に感染症だけのことではなくて、海外にいらっしゃる可能性があるという状況を確認するのが外務省の仕事でもあると思います。さまざまな外交交渉の中での制約はある、これは承知はしておりますけれども、しかし、外務省として生存の確認、存在の確認、これは当然すべきではないか、そのことを強く申し上げた上で、次の質問に移りたいと思います。

 トランプ大統領は、十一月までは北朝鮮との会談はないと公言をしております。先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、トランプ大統領あるいは習近平国家主席との会談の中でもそのことを繰り返し安倍総理がおっしゃった、そして、外交交渉をトランプさんに委ねたりということをされてきたわけですけれども、トランプ大統領自身がもう交渉を行わないと言っているわけです。進展がないと見るのが当然だと思います。そういう中で、やはりこういう状況だからこそ、日本独自の外交というものをもっと積極的に進めていく必要があるのではないか。もちろん、できること、できないことはあります。しかし、そういう姿勢を日本自身が見せない限り、この拉致問題の解決につながっていかないというふうに私は思っております。

 そういう面で、独自外交、議員外交というものもあると思います。議員外交というのは独自外交の一つだと思っています。特に、外交関係のない国同士がパイプをつなぐ方法としては、議員外交も有効だと考えております。

 記憶にあると思いますけれども、三十年前、第十八富士山丸事件があって、紅粉船長と栗浦機関長がスパイ容疑で北朝鮮に逮捕されました。およそ七年をかけて何とかそのお二人を日本に帰国させることができました。そのときに動いたのは、自民党の当時の金丸先生であり、今も活躍をされています小沢一郎先生、そして社会党の当時の土井たか子委員長、そして朝鮮総連を巻き込んだ形で成果を得た、議員外交として一つの答えを出した例だと思っています。

 このような議員外交の有効性、また必要性について大臣はどのようにお考えでしょうか。お尋ねします。

茂木国務大臣 議員外交という言葉を使うかどうかは別にいたしまして、国会議員の皆さんが、議員としての立場から外国政府等に対して、我が国の事情であったりとか国民の声を直接説明し、訴えかけることは重要であると考えておりまして、自民党の金丸信議員であったり社会党の田辺誠議員はそういった御尽力をされた、このように理解をいたしております。

 他方で、北朝鮮と交渉を進める際には、なかなか難しいところがあります。やはりメッセージがきちんと伝わるということが重要でありまして、二元外交とならないよう留意しつつ、過去の交渉経過等も踏まえた上で、政府一丸となって対応していきたいと思います。

村上(史)分科員 もちろん、議員外交、表現は別にして、勝手にやっているわけじゃないんですね。やはりそのときの政府の意向を受けて、政府では交渉しない、できない、しにくい部分を議員外交に託すというやり方で、三十年前、それが成功した。全て議員外交が成功するとは言えませんけれども、少なくとも、あらゆる機会、あらゆるチャンスを生かしたいと総理がおっしゃっている以上は、こちらがだめならこちらというような多元的な取組というものがやはり求められるのではないかというふうに思います。

 それと同時に、よく言われるんですけれども、下手に交渉すると北朝鮮の餌食になっちゃう、思うようにされるんだ、だから接触は控えてほしい、一方そういう意見もございます。しかし、ことわざでもありますけれども、虎穴に入らずんば虎子を得ず、やはり勇気を出して、また信念を持ってそういう外交を展開すべきだ、そのことを強くお願いしておきたいと思っております。

 それでは最後に、日ロ外交についてお尋ねをしたいと思います。

 報道ベースでございますけれども、ロシアでは領土の割譲を認めない旨の憲法改正を進めていて、そのことはプーチン大統領も了解をしているという報道がございました。これを単純に受けとめると、歯舞、色丹、国後、択捉、日本の北方領土は返しませんという意思表示にも受け取ることができます。

 日本政府また外務大臣としてこのことは承知をされているのか。そして、これに対するお考えをお示しください。

茂木国務大臣 ロシアの内政や対外政策を含みます動向につきましては、日ごろから関心を持って注視をしております。

 そして、私も外務大臣に就任をして五カ月余りがたつところでありますが、ラブロフ外務大臣とは既に四回会談をやっておりまして、先日、二月十五日のミュンヘンでの日ロ外相会談、これが四回目になるわけですが、ここにおきましては、ロシアでの今御指摘いただきましたような憲法改正の動きについてさまざまな報道がなされていることも踏まえて、ラブロフ外相との間で平和条約交渉の議論を行ったところでありまして、政府として、領土問題を解決して平和条約を締結する、こういった基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉していく、この方針に変わりはございません。

あべ主査 申合せの時間が経過しておりますので、御協力いただきます。

村上(史)分科員 はい。時間が参りましたので質問を終わらせていただきたいと思いますけれども、何回首脳と会ったからということではなくて、まさに、発揮をして、国益を得るために今後も外交努力を重ねていただきたい、そのことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

あべ主査 これにて村上史好君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

あべ主査 次に、法務省所管について審査を進めます。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。濱村進君。

濱村分科員 公明党の濱村進でございます。きょうは、森法務大臣、よろしくお願いいたします。

 きょうは、不正指令電磁的記録に関する罪ということで、刑法百六十八条の二及び三、いわゆるコンピューターウイルスについての罪が法定されているわけでございますけれども、この件についてお伺いをしていきたいと思います。

 まず、二〇一七年六月二十日に、ウィザードバイブルという情報セキュリティーやハッキング等に関する技術情報が掲載されましたウエブサイトに投稿していた少年が不正アクセス禁止法違反で逮捕されて、七月十一日には処分保留となった上で、同日付で不正指令電磁的記録作成の疑いで再逮捕されたという事案があります。

 このサイトの管理者は二〇一八年三月に不正指令電磁的記録提供罪で略式起訴を受けたわけでございますが、この事案について御存じだと思います。きょうはもう答弁は大丈夫です。

 もう一つ、アラートループ事件というものがございまして、二〇一九年三月にインターネット掲示板に不正プログラムへのリンクを書き込んだ不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで女子中学生を家宅捜索の後に補導し、かつ、男性二人を家宅捜索、書類送検しました。

 あわせて、取材の過程でこれはわかったことでございますけれども、二〇一八年に男子中学生と男子大学生も摘発されていることが明らかになりました。

 二〇一九年の五月二十九日に、男性二人については起訴猶予を理由として不起訴処分となったということでございます。

 こうした事件があった後に、平成三十一年三月二十七日、横浜地裁で無罪となり、令和二年二月七日に東京高裁で有罪判決が下ったコインハイブ事件というものがございます。これは、いつ、どのような罪で処分が適用されたのか、事件の概要について伺いたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの事件の公訴事実の概要は、インターネット上のウエブサイトを運営する者が、同サイト閲覧者が使用する電子計算機の中央処理装置にその同意を得ることなく仮想通貨の取引履歴の承認作業等の演算を行わせて、その演算機能を提供したことによる報酬を取得しようと考え、正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、平成二十九年十月三十日から同年十一月八日までの間、同サイト閲覧者が使用する電子計算機の中央処理装置に今申し上げたような演算を行わせるプログラムコードが蔵置されたサーバーコンピューターに同閲覧者の同意を得ることなく同電子計算機をアクセスさせ同プログラムコードを取得させて、同電子計算機に今申し上げたような演算を行わせる不正指令電磁的記録であるプログラムコードを、サーバーコンピューター上の同サイトを構成するファイル内に蔵置して保管したというものでございます。

 この事件につきましては、平成三十一年三月二十七日、第一審であります横浜地方裁判所において無罪判決が言い渡され、令和二年二月七日、控訴審である東京高等裁判所におきまして、原判決を破棄し、被告人を罰金十万円に処する旨の判決が言い渡されたものと承知しております。

濱村分科員 これは、一審では無罪で、控訴審では有罪ということで、恐らく上告されて最高裁で争われるということになろうかと思っておりますが、一つは、今、刑事局長からお話しいただいた中で、この事案、マイニングをしているわけで、仮想通貨のマイニング、暗号資産のマイニングをしているわけですけれども、報酬を得ようとしていたと。この対価性の観点からいうと、実は八百円ぐらいしか稼ぐことができなかったということでいえば、当初の目的を果たせていないのかなというふうに思ったりしているところもございます。

 今申し上げたような上記三件について、この二、三年に起きている事案でございますけれども、不正指令電磁的記録に関する罪に関しては、二〇一一年に法施行されております。特段、近年になってふえているというわけではないと思うんですけれども、検察統計年報で公表されている数値を合わせて、平成二十七年以降の直近までの、公判請求されたもの、あるいは被疑者同意のもと罰金刑を科した略式起訴、さらには不起訴となった件数、それぞれどの程度発生したのか確認をしたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの不正指令電磁的記録に関する罪につきまして、平成二十七年から平成三十年までの年別に、公判請求、略式命令請求、不起訴の順で件数を申し上げますと、平成二十七年が六件、三件、十五件、平成二十八年が四件、五件、四十一件、平成二十九年が十二件、三件、二十七件、平成三十年が十五件、十五件、三十五件でございます。

濱村分科員 ありがとうございます。

 全部合わせれば、平成二十七年から二十四件、二十八年が五十件、二十九年が四十二件、三十年が六十五件というような数字でございます。飛び抜けてふえたというわけでは決してないというふうに私は思っております。

 その上で、この不正指令電磁的記録に関する罪の保護法益というものはどのように定義されておるのか、確認いたします。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 不正指令電磁的記録に関する罪の保護法益は、電子計算機のプログラムが、電子計算機に対してその使用者の意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与えるものではないという、電子計算機のプログラムに対する社会一般の者の信頼という社会法益であるというふうに認識しております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 御指摘のとおりでございまして、この保護法益に照らし合わせて今まで運用されてこられたということでございますが、森法務大臣にお伺いしたいと思います。

 今まで、社会一般の者の信頼を保護しようとするということも含めて、非常に重要な保護法益があろうかと思っておりますが、これを適用するには私は謙抑的であるべきだということは思っておりますが、森法務大臣の御所見をお伺いいたします。

森国務大臣 個別事件における検察当局の事件処理ないし裁判所の判断にかかわる事柄について法務大臣として所見を述べることは差し控えさせていただきますが、その上で、あくまで一般論として申し上げますと、刑事事件の処分を行うに当たっては、御指摘の不正指令電磁的記録に関する罪も含めて、それぞれの罪の保護法益の侵害の程度等も含め、さまざまな事情を総合的に考慮する必要があるものと考えており、検察当局においてもそのように対処しているものと考えております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 あくまで一般論としてということでございましたけれども、では、実際の捜査においてはどのようなものなのかということに話を移したいと思いますけれども、きょうは警察庁にも来ていただいております。ありがとうございます。

 都道府県の警察が実際の捜査については担当しているわけでございますけれども、不正指令電磁的記録に関する罪については、地方も含めて、どのような理解を促進してきたのか、警察庁の取組をお伺いいたします。

小柳政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁では、都道府県警察に対し、不正指令電磁的記録に関する罪の取締りに当たっての留意事項等を指導する中で、不正指令電磁的記録の該当性、人の電子計算機における実行の用に供する目的等の構成要件を適切に判断するよう指導しておりますほか、参議院法務委員会の情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議も周知をいたしまして、適切な捜査が行われるよう指導を行ってきたところでございます。

 今後とも、不正指令電磁的記録に関する罪につきまして、あらゆる機会を通じて、適切な捜査が行われるよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

濱村分科員 検察はどうでしょうか。最終的な処分については検察が行っていくわけでございますので、検察においてはどのような理解を促進してきたのか、検察庁での取組を伺いたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの点につきましては、一定の年次の検事全員を対象とした研修におきまして、不正指令電磁的記録に関する罪等、サイバー犯罪の基礎について講義を実施しております。

 また、専門的な研修として、コンピューターネットワーク等の仕組み、各種サイバー犯罪で利用される技術的手口、サイバー犯罪の捜査、公判における法的問題点等を理解させ、この種事犯の捜査、公判に必要な能力を向上させるための研修を毎年実施しているところでございます。

 この研修におきましては、警察庁の専門家から講義をいただいたり、各検察庁から提出された事例を検討するなどして、知見の共有等を図っているところでございます。

濱村分科員 専門的研修も行って、非常に高度なことをやっておられるのかなという印象を受けました。しっかりこれも、検察の皆さんにも、レベルが引き上がっていくように、今後も取組をお願いしたいと思っております。

 続いて、不正指令電磁的記録に関する罪自体がどういう刑法における立ち位置であるのかというところについてちょっと確認をしたいと思います。

 先ほども少しございましたけれども、アラートループやウィザードバイブルの話も紹介させていただきましたが、ウィザードバイブルのところは、最初は不正アクセス禁止法で逮捕されたんですね。その後、不正指令電磁的記録作成の疑いということでございましたが、この不正アクセス禁止法というものは、どちらかというと法定犯として解されると考えておりますけれども、不正指令電磁的記録に関する罪は自然犯として解しているところでございます。

 これは、森法務大臣の見解を伺いたいと思います。

森国務大臣 お尋ねのいわゆる自然犯、法定犯については、講学上の概念であり、その区別をすることが必ずしも明確なものではございませんで、不正指令電磁的記録に関する罪が自然犯か法定犯かについて、一概にお答えすることは困難でございます。

 いずれにしても、本罪の性質については、電子計算機のプログラムに対する社会一般の者の信頼という社会的法益を保護するものでございます。

濱村分科員 なかなか難しいと私も思っております。ただ、どう解されるべきか、あるいは、今後の議論を深めるに当たってどう整理していくべきかという観点では非常に重要なポイントになってくるんじゃないかとも思っておりますので、少し付言をさせていただきました。

 では、その上でお尋ねいたします。

 警察庁が、これまでも摘発あるいは取締りにおいてレベルを引き上げていこうということで、いろいろな取組をしてきていただいているわけでございますけれども、平成三十一年二月十五日に、「不正指令電磁的記録に関する罪の取締りの推進及び取締りに当たっての留意事項について」として指示が発出されていると認識しております。目的と、その内容について確認いたします。

小柳政府参考人 御指摘の通達でございますが、近年、インターネットバンキングに係る不正送金、仮想通貨の不正送信、クレジットカード情報の不正流出等、不正指令電磁的記録によりサイバー空間の安全が脅かされている事案が多発し、大きな社会問題となっていることを踏まえ、都道府県警察に対し、不正指令電磁的記録に関する罪の取締りに当たっての留意事項等を指示したものでございます。

 具体的には、同罪の取締りに当たり、不正指令電磁的記録の該当性、人の電子計算機における実行の用に供する目的等の構成要件を適切に判断するよう指導しているところでございます。

 今後とも、不正指令電磁的記録に関する罪について、あらゆる機会を通じまして、適切な捜査が行われるよう都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

濱村分科員 平成三十年六月十四日には、「仮想通貨を採掘するツール(マイニングツール)に関する注意喚起」として、ウエブサイト上であったりツイッター上で注意喚起を行っておられます。これの目的と、その内容について確認いたします。

小柳政府参考人 お答えをいたします。

 警察におきましては、サイバー犯罪に巻き込まれないための対策につきまして平素より注意喚起を行っているところでございます。

 御指摘の注意喚起につきましては、仮想通貨を不正に採掘させるプログラムを利用した不正指令電磁的記録事件の発生状況を踏まえまして、インターネット利用者の被害防止等を目的といたしまして、仮想通貨を採掘するツールに関し一般的に想定され得る事象を例示しつつ、注意喚起を行ったものでございます。

濱村分科員 今、もともとの平成三十一年、先に聞いた方は、構成要件を明示するというようなことで、どちらかというと内部に関して留意事項として出されたわけでございますけれども、一方の、二つ目に挙げた、ウエブサイト上に注意喚起を行ったものについては、利用者の被害防止を主な目的として出されているというふうに認識しておりますが、実は、このウエブサイト上に出されている注意喚起がなかなか、どう解するべきかということが私も判然としないなと思っております。

 ちょっとこの点についてお伺いを一つ一つしていきたいと思いますけれども、まず、このウエブサイト上にこのような記載があります。「マイニングツールを設置していることを閲覧者に対して明示せずにマイニングツールを設置した場合、犯罪になる可能性があります。」との記載がございます。これは、逆に言うと、明示していれば犯罪とならないのかどうか、この点、確認したいと思います。

小柳政府参考人 お答えいたします。

 特定の行為が特定の犯罪に該当するかどうかにつきましては、個別具体的な事案に即して、法と証拠に基づき判断されるべきものでございまして、一概にお答えすることは困難でございます。

濱村分科員 想定よりあっさりしていたのでちょっとあれですが。

 まあまあ、おっしゃるとおり、一概には言えないと私も思っております。もっとちゃんと言えば、明示していれば犯罪とならないかというと、そういうわけでは決してないと思っております。明示していても、そのあり方、明示の仕方のレベルにもよりますから、そういう明示しているよということだけでは犯罪とならないかというと、一概にはそうは言えないと思っております。

 一方で、このようなことも書いてあるんですね。「パソコンの動作が遅くなる」と記載があるんです。この動作が遅くなるというのは確認はされたのでしょうか。

小柳政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の記載でございますけれども、警察庁におきましてさまざまな情報を総合的に勘案をいたしまして、仮想通貨を採掘するツールが設置されたウエブサイトをインターネット利用者が閲覧した際に一般的に想定され得る事象を例示したものでございます。

濱村分科員 一般的に想定され得るかどうかでいうと、やはりこういうものは試してみないとわからないぞということは一言申し上げておきたいと思いますが、一般的にもそういうことはまずあり得ません。なので、これはちゃんと技術的観点、見地に立って御判断いただきたいなと私は思います。これはかえって、何でパソコンの動作が遅くなっているのかというのをわからないまま見ている人は、マイニングツールかもしれないなどと思ってしまう可能性もありますので、非常に誤解を招く記載なのではないかと私は思っております。

 続いて、更にこういうことも書いてあります。「CPUの利用率が高くなるなどの事象が発生した場合には、ブラウザを閉じることで事象が収まる」との記載がありますけれども、これはサイトを離れればいいだけの話なのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。

小柳政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘の記載でございますけれども、仮想通貨を採掘するツールが設置されたウエブサイトをインターネット利用者が閲覧した際に、意図しない状況で急激にCPUの利用率が高くなるなどの事象が発生した場合におきまして想定されます対処法を例示したものでございまして、わかりやすい注意喚起を行う観点から、このような表現とさせていただいたものでございます。

濱村分科員 おっしゃりたいことはできる限り理解をしていきたいと思いますが、はっきり言うと、ウエブサイトに訪問すると、当初は、そのウエブサイトを表示するために瞬間的にはCPUの利用率は高くなるというのは常識でございますので、これも、こう書かれたとしても、判断はつかないということも私は思います。

 その上で、もう一個、何かいろいろ聞いて申しわけないんですが、次に、「ウイルス対策ソフトがマイニングツールを検知した場合には、再度当該ウェブサイトにはアクセスしないでください。」と記載がありますが、これはなぜなのか、確認いたします。

小柳政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の記載でございますけれども、ウエブサイトを閲覧した際に、仮想通貨の採掘を意図していないにもかかわらず、ウイルス対策ソフトが仮想通貨を採掘するツールを検知した場合におきまして想定される対処法を例示したものでございまして、わかりやすい注意喚起を行う観点から、このような表現としたものでございます。

濱村分科員 これも、CPUが動くだけなので、余り意味がないと思っております。

 次はちょっとちゃんと聞きたいんですが、「パソコンの処理能力が意図せずに使用され、パソコンの動作が遅くなるなどの事象が発生する可能性があります。意図しない状況で」とか、「仮想通貨の採掘を意図していないにもかかわらず、」とか、「閲覧者が意図せずこのタイプのツールをダウンロード」との記載がございますけれども、閲覧者が意図すればこれはいいんでしょうか。つまり、閲覧者に同意をとれば違法性がなくなるように見えてしまうんですけれども、これ、認識は正しいですか。

小柳政府参考人 お答え申し上げます。

 特定の行為が特定の犯罪に該当するかどうかにつきましては、個別具体的な事案に即して、法と証拠に基づき判断されるべきものでありまして、一概にお答えすることは困難でございます。

濱村分科員 私、これは、同意があれば違法性がなくなるわけではないと思っております。非常に重要なのは、同意があろうがなかろうが、違法性についてはそこの観点では判断されていないということだと思っております。

 捜査する警察の側でも、何を利用者に対して言えば明確な線引きになるかということがなかなか判然としていないんじゃないかと私は思っております。その上で申し上げれば、警察、捜査する側の方々も対処し切れていないというふうに思っています。

 一方で、このなかなか難しい線引き、明確じゃないような状況がある中で、開発する側の方々も、非常に難しい、どう理解をすればいいのかというところで線引きが難しくなってきているんじゃないかと思っております。

 この点、法務大臣にお伺いしたいと思いますけれども、こうした状況をそのままにしておきますと、捜査する側も開発する側も萎縮してしまうのではないかと危惧するわけでございますけれども、大臣の所見を伺います。

森国務大臣 不正指令電磁的記録に関する罪の構成要件は、通常の判断能力を有する一般人において、その意義を十分に理解し得るものであって、明確性の点で問題はなく、罪刑法定主義に反するものではないと考えております。

 いずれにせよ、我が国にとって科学技術の健全な発展が大切であることは言うまでもございませんので、一般論として申し上げますと、いわゆるサイバー犯罪の捜査については、情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案における、参議院法務委員会における附帯決議において「捜査等に当たっては、憲法の保障する表現の自由を踏まえ、ソフトウエアの開発や流通等に対して影響が生じることのないよう、適切な運用に努めること。」とされた趣旨や、集積された裁判例の内容も踏まえつつ、事案に応じて、法と証拠に基づき適切に行う必要があると考えており、検察当局においては、今後も引き続き適切に対処するものと思っております。

濱村分科員 なかなかここも難しいなと思っておりますが、技術の進歩がこうした犯罪を無効化するということもよくある話だと思っています。

 例えば、ブラウザー上で悪さをするようなプログラムであったとしても、例えば、あるブラウザーであればそうしたものはブロックするであったりとか、あるいは、ほかのブラウザーではCPUの、一〇%以上高くなった場合には表示を制御するというような、技術的な解決がよい効果をもたらすこともあるというふうに認識をしております。

 こうしたところも相まって、うまくこの辺を調和させていかないといけないことなんだろうと私は思っております。

 もう一点、先ほど構成要件について森大臣には触れていただいておりますけれども、もう一つ、人の意図に反する動作をさせるべきものといった点であったり、不正な指令、あるいは、不正指令電磁的記録に当たることを認識、認容しつつこれを実行する目的というような点が挙げられるわけですけれども、閲覧者の同意の有無によって判断が変わるかどうかという点、この点について伺いたいんですが、つまり、機能に対して同意があるかないかについては構成要件に影響しないと考えておりますけれども、いかがでございましょうか。

森国務大臣 お尋ねは、不正指令電磁的記録に関する罪の構成要件である、電磁的記録が、意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるものであることについての判断のあり方に関するものであるかと思われますが、この要件については、電子計算機のプログラムに対する社会一般の信頼を害するものであるか否かという観点から規範的に判断されるべきものであると考えられますので、したがって、個別具体的な、使用者の実際の認識を基準として判断するものではないと考えられます。

濱村分科員 ありがとうございます。

 やはり、規範的に判断されるべきという点では私も非常に大きく同意をしたいと思っておりまして、コインハイブ事件でいえば、一審においては、人の意図に反する動作をさせるべきものという点については肯定されているわけですが、不正な指令という点については否定をされております。さらに、これは傍論ではございますが、不正指令電磁的記録に当たることを認識、認容しつつこれを実行する目的、目的ですね、これについては否定をしたのが一審です。

 一方で、高裁においては、この一番最初に申し上げた、意図に反する動作、これを規範的に判断できていないんじゃないかというふうに考えております。高裁の判決では、動作については何も言及がなくて、機能について規範的に判断しようとされておられるように見受けられます。

 しかし、規範的に問題とすべき点は動作でありまして、機能ではないというふうに私は解しております。これも最高裁で整理されることを期待しておりますけれども、こうした状況の中で、うまく法解釈をしながら、しっかりこの罪について運用していくということが極めて重要であると思っております。

 最後にもう一点だけ、この取締りの体制についてお伺いをしたいと思いますが、今、現状でいえば、四十七都道府県で、サイバー犯罪取締り体制はそれぞれ、体制を整えても違うレベルを持っていると思っております。地元のサイバー以外の捜査の手段として、サイバーによる手がかりは重要なので、そのサイバー以外の捜査の手段としてもレベル向上していかなければいけないわけですけれども、それについては、一通りレベルが引き上がってきたんじゃないか、ある一定のレベルには達してきているんじゃないかと思っております。

 一方で、全国的にあり得るサイバー犯罪というものについては、語学とITができるような人間を都道府県警それぞれに置くのではなくて、一つの組織に集約してサイバー犯罪の取締りに取りかかるべきというふうに考えておりますが、警察庁の意見を伺います。

小柳政府参考人 お答えを申し上げます。

 サイバー犯罪への対処に係る人的基盤の強化は、警察といたしましても重要な課題であると認識をしております。

 このため、都道府県警察における研修等に加えまして、警察庁におきましても、各都道府県警察の捜査員等を対象といたしまして、サイバー空間の脅威への対処に関する知識、技能を競うサイバーセキュリティーコンテストの開催、警察庁の附属機関である警察大学校に設置されたサイバーセキュリティ対策研究・研修センター等におけます専科教養の実施、サイバー犯罪等対処能力検定制度の構築及び効果的な推進等に取り組み、捜査に従事する職員の対処能力の底上げを図っているところでございます。

 警察といたしましては、引き続きサイバー犯罪への対処能力の向上に努めてまいりたいと考えております。

濱村分科員 引き続き適正に運用されることを願って、質問を終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて濱村進君の質疑は終了いたしました。

 次に、小宮山泰子君。

小宮山分科員 立国社、小宮山泰子でございます。質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 さて、本年は、現在のところと言うしかないんですけれども、東京オリンピック・パラリンピックが予定されております。スポーツを通じて差別のない社会の実現を掲げるオリンピック憲章の中に、IOCは、二〇一四年に憲章を改定して、同性愛者への差別も許さない方針も打ち出しております。

 また、既に日本にはさまざまな形でLGBTQの方々もいらっしゃれば、もちろんビジネスやさまざまな形で訪日されている方も大勢いらっしゃいます。

 しかし、日本の現状としては、まだまだ性的マイノリティーやLGBTの方々に対しての理解や、また法制度が整っているとは言い切れない現状にあるかと思っております。

 まず最初にですけれども、平成三十年に議員立法で、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律、いわゆるユニバーサル社会推進法では、性的マイノリティー、少数者とされるLGBTQについても社会の構成員であることを明確に示させていただきました。答弁でそんなことは答えさせていただいておりますが、法務省としても同じ認識を持っているのか、まずお答えいただければと思います。

森国務大臣 小宮山委員にお答えいたします。

 ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律案の審議において、同法案の発議者のお一人である小宮山委員が、「ユニバーサル社会においては、LGBTの方々も当然その構成員である」と答弁されたことは承知しております。

 同法については、内閣府の所管であるため、法務大臣としてその法解釈をお答えする立場にはございませんが、もっとも、法務省としては、性的マイノリティーの方々も含め、多様性を認め合う社会、すなわち、全ての人がお互いの人権や尊厳を大切にし、生き生きとした人生を享受する共生社会の実現を目指しており、そのためにさまざまな人権擁護活動に取り組んでいるところでございますので、認識を共有しているというふうに考えております。

小宮山分科員 何か小泉環境大臣の、そのとおり、おっしゃるとおりみたいな答弁だったんですけれども。

 法務省も、一般の人たちがいつも安全で安心して暮らせるように日常生活における基本的ルールを定めたりする、法律というのは、重要な仕事であるということに、ホームページ等いろいろなところで書かれておりますけれども、当然、今のお話ですと、改めて、人権侵害や、また人権擁護局、そういったところを所管されていらっしゃるので、全ての方々が社会の構成員であるという認識でよろしいんでしょうか。また、その方々に対してどのような、社会の構成員であるということで、認識をお持ちになっているのか、どのような啓蒙活動や対応をされているのか、この点についてお聞かせいただければと思います。

森国務大臣 もちろん、この国にいる全ての方が社会の構成員でございます。そして、法務省の人権擁護機関においては、人権啓発の充実、適切な相談対応、人権侵害の疑いのある事案の迅速な救済等に取り組んでいるところでございますが、この人権の意味でございますけれども、人権啓発に当たる強調事項として十七の人権課題を掲げているその中に、性的指向や性自認を理由とする偏見や差別をなくすことも含んでいるところでございます。

 引き続き、性的少数者の方々も含め、多様性が尊重される社会の実現に向け、しっかりと取り組んでまいります。

小宮山分科員 ありがとうございます。

 性的指向や性自認の方々、少数派と言われておりますけれども、こういった方々は、やはり社会の構成員であります。どなたも差別を受けることなく、そして、みずからありたい自分でいられるような、そんな豊かな社会づくりのために、ぜひ制度また法改正等につなげていただければと思っております。

 そこでなんですけれども、意識はしているし、社会の構成員だと思っているにもかかわらず、意外なところでそこから外れてしまうという事例が出てきたのではないかと思います。それは、二〇二〇年の国勢調査の、LGBTの調査への反映ということであります。

 二〇二〇年国勢調査有識者会議企画ワーキンググループ、これは平成三十一年に第一回目が開催されておりますけれども、その中で、二〇二〇年の国勢調査では、同性パートナーの数を把握することは、当該データに関する正確性の確保が困難なため難しいと考える、今後、時間をかけて検討していく事項であるというふうになっております。

 現状では、現実に同性パートナーの方と同居をしていても、婚姻関係がある男女の、異性間でのパートナーの場合又は事実婚の方に関しては夫婦としてしっかり認められているけれども、同性パートナーの場合ではシステム上からは数に入らないような形に調査票がとられるというふうに聞いております。そうすると、結局、せっかくしっかりと答えたにもかかわらず、存在をしないという状況が生じているのではないでしょうか。

 これは、図らずも、社会の構成員であるとみんなが認めているし、法務省ももちろん認めていらっしゃる、大臣ももちろん認めている、法律的にも認めているにもかかわらず、国勢調査という国の実態をあらわすところからは調査をされない、若しくは調査があってもはじかれるという意味では、構成員として認めていないととられかねません。これは一種の偏見や差別というものにもつながる根底になっていくのではないかと危惧をするところであります。

 国勢調査はことし百年目となりますし、国勢調査は、この百年間、日本の国と地域の人口、その構造、世帯の実態を明らかにし、さまざまな統計データを社会に提供してきたというふうにホームページにも書いてありますけれども、難しいからと実態把握を諦めてはいけないんだと思います。実態把握をしてこそ、現実の人権擁護や、現実に即した法改正や制度改正になるんだと思います。このLGBTを排除した状況のまま国勢調査をとるべきではないと思いますし、早急に改善されるべき項目かと思います。

 ぜひ、百年も続いた国勢調査だからこそ、同性パートナーとの同居なども調査結果に反映できるように修正すべきだと考えますが、政府の対応をお聞かせください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 国勢調査に関する国連の勧告におきましては、結婚について、個々の国の法律や慣習を踏まえて設定することが重要であるというふうにされているところでございます。

 こうしたことを踏まえまして、イギリスとかカナダなど主要国の国勢調査を見てみましても、いずれも法令面の制度が整備された後に同性婚あるいは同性パートナーに関する調査項目が設けられているというのが実情でございます。

 同性婚や同性パートナーに関する我が国の法制度がいまだ整備されていないという現状におきましては、国勢調査でこれらの調査項目を設けることは、申しわけございませんが、時期尚早ではないかと考えているところでございます。

小宮山分科員 法制度ができなければと言うけれども、いつできるんですかというふうにも言いたくなりますし、G7の中で同性婚を全く認めていないのはもう日本だけとなりました。明らかに諸外国から見ればおくれてしまっている。アジアでも、台湾では既に認めているところでもあります。

 入管のカードの中には、男性、女性、そのほかという項目まで既にできている国が多くなってきているにもかかわらず、調査もしないで実態も把握しないというのは、明らかに、私はこれは国勢調査としてはやはり精度が低くなっているんだと思います。実態があるからこそ、それをしっかりと制度に反映させるというのも一つの考え方だと思います。

 この点を改めるという、そんな議論というのはないんでしょうか。法律ができなかったら何もやらない。ですが、事実婚は法律がなくたって実際にとっているじゃないですか。言っていることが矛盾しているんですよ。いかがですか。

井上政府参考人 ただいま御質問にございました、まず事実婚の関係でございますが、確かに事実婚は何たるかという法令はないのかもしれませんが、各般の法令におきまして、婚姻関係を構成する中に事実婚という関係を有する方も含まれるという規定がたくさんの法律で置かれているものというふうに理解をしているところでございます。

小宮山分科員 じゃ、事実婚はいつから国勢調査で調べているんですか。

井上政府参考人 事実婚は、そもそも我が国は、こうした法制度の話、私、全部所管しているわけではないのですが、基本的に、我が国の結婚制度の中で、事実婚というものが、これまでも国民の中で広く共有認識として、含まれるという御認識があったという理解のもとに、国勢調査、第一回の調査から事実婚を含めて婚姻関係を把握しているところでございます。

小宮山分科員 そうなんですよ。事実婚は法に書いていなくても認めていたりするんです。ある意味、本当に、二枚舌と言ってしまっては、おかしな答弁を今されているということをぜひ認識をしていただきたいと思います。

 大臣、やはり実態がしっかりあって、その中で、自殺率だったりさまざまな不幸を生んでいるというのも事実です。御存じだと思います。やはり、この同性パートナーというものをこういったところからしっかりと認めていただきたい。

 多分、百年前だと、恐らく家族制度とか、何かそんな制度があった中にあっても事実婚をやっていた、調べていたということを考えれば、法制度の理由ではないんだと思います。ぜひ、しっかり調べることによって、諸外国から、先進国からおくれをとったこの分野に関してもしっかりと対応していただきたいと思います。

 特に、同性パートナーが日本に入る、次の質問の在留資格の件に関しては、以前、委員会において、外務大臣から法務大臣の方に対応を依頼されるということ。同じ内閣でありますので、当然その点に関しては、法務大臣の方から内閣府の方なりにしっかりとまた提言をしていただければと思います。

 何か思いがあれば一言。

森国務大臣 入管法上、配偶者としての地位を前提とする在留資格をもって在留が認められるためには、それぞれの国籍国において法的に夫婦関係にあり、かつ我が国においても法律上配偶者として扱われるような者であることが必要であるため、したがって、同性パートナーは、現在、入管法上の配偶者の定義には該当しません。

 しかしながら、外国人双方の本国で有効に婚姻が成立している場合には、本国と同様に我が国においても安定的に生活できるよう、特定活動の在留資格をもって入国、在留を認めているところではございますが、今後の在留資格のあり方について、今委員が御指摘いただいたように、外務省からの問題提起をいただいているところでございますので、しっかりと前向きに検討してまいりたいと思っております。

小宮山分科員 今大臣がおっしゃっていただきましたとおり、同性婚を認めている両国に存在する配偶者には、特定活動として在留資格を出しております、日本は。しかし、男女間のような配偶者としての在留資格は出していないのが現実であります。

 これによって、パートナーが入国で婚姻関係があるというのが認められないがために在留ができないということも実際に起きています。若しくは、優秀なビジネスマン同士であった場合には日本を選ばない、それは赴任先だけではなく、働く場所としても日本を選べないということが多々起きております。こういった日本に対しての国益を損ないかねないような事態が起きているのも、この在留資格の問題であります。

 外務省から法務省へ問題提起があって、政府で前向きな検討をと河野当時の外務大臣はおっしゃっているんですが、ちなみに、この前向きな検討というのは何か法務省で行われたのでしょうか。ちょっとお願いします。

高嶋政府参考人 今大臣の方から答弁がございました前向きの検討でございますが、その両当事者、男性同士あるいは女性同士ということでありますが、両当事者の国籍国において同性婚が認められている場合につきましては、今大臣の方から答弁ございましたように、我が国でも特定活動という形で在留を認めております。

 問題は、片方の国では認められているけれども、もう一方の国籍国では認められていない、こういう場合、あるいは両方の国籍国で同性婚が認められていない、こういう場合でございます。そういう場合につきましてはどうなのかということについて、まさに今、法務省内、特に入管庁内でもいろいろ議論しているところでございます。

 これにつきましては、御指摘のとおり、さまざまな問題がございまして、また、我が国の同性婚のあり方というところにもかかわるものですから、さまざまな方の御意見も踏まえながら、まさに実際、検討しているというところでございます。

小宮山分科員 どんな問題があるのかはよくわからない部分が多々あります。せっかく一緒になろうと思ったのに、それが法律の壁でできないということ自体は避けるべきであろうし、それによって不利益をこうむっている方々が多々いる。そして、カップルがいて、ほかの人には別に何の影響もない部分もあります。社会には悪影響があっても、隣の人は、必ずしもそれに影響するわけではないと思います。

 早くにこの制度を認めるべきだと思いますし、日本の場合、先ほど、制度によって、人によって違ってくるということが語られておりますが、そうやって考えると、例えば、名前の方の夫婦別姓、これも選択制であるべきだと思いますが、選択で選べれば問題はないことは多々あると思います。そして、いまだにこれも進んでいない。

 また、これによって何かあるかといえば、実際には、外国人と婚姻した方であれば、現実的にはほぼ別姓と同じような扱いを受けている。なぜ日本人同士ができないのか。

 また、日本人と外国の籍の方との婚姻が正式に海外で認められたとしても、日本では認められない。夫婦のときに、重大な病気をしたときには、婚姻がなかったために、結局のところ、病室にも入らせてもらえない。そういった非常に不利益をこうむっているカップル、パートナーがたくさんいるのも事実であります。

 制度によってこのような方々が不利益をこうむるのではなく、やはり多くの方々、海外ではこの同性婚の次にもう子供を持つことまで進んでいます、今私自身も地元で育児院の後援会の理事などをさせていただいておりますけれども、多くの方々が新しい形の家族を持てる、それによっての人生を豊かに暮らせる、そんな社会制度、法制度というものを早期につくるべきだと思っております。

 その一つは、やはり同性婚を認めること、また夫婦別姓ももちろん認めていくべきこと。そういう意味では、法務省の管轄のものというのは大変大きな意味があり、そして、これからの時代において、ぜひ森大臣におきましては、この問題、真摯に取り扱って、向き合っていただいて、進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

森国務大臣 LGBTの団体の方が昨年私の大臣室に来ていただいて、小宮山委員の御指摘と同様の要望をいただいたところでございます。

 その上で、今の入管の問題についても前向きに検討するように事務方に指示をしたところでございまして、また二回目のLGBTの団体の皆様のヒアリングを近々に予定しているところでございますので、小宮山委員の御指摘も踏まえて、何ができるかということを速やかに検討してまいりたいと思います。

小宮山分科員 ありがとうございます。

 さて、次ですけれども、性犯罪の厳罰化を目指したはずの前回刑法の後も、昨年三月にも四つの無罪判決が出ているなど、さまざまな不信感というものが、不条理な判決がおりるに至っております。

 二〇一七年七月の刑法改正の附則九条に基づき、刑法検討会を開催して、見直し決定後、法制審議会に刑事法(性犯罪関係)部会を設置し、刑法改正について早急に審議を進めていくことが必要ではないかという点、また、性暴力被害者と性暴力加害者の実態調査結果による両者の精神及び心理医学的知見の観点を重視した上で、被害当事者や支援団体の代表、さらに、被害者の実態を熟知した研究者や専門家を委員に一定の割合で入れることが必要だと考えております。

 あわせて、性犯罪の罰則に関する検討会及び法制審議会においてさまざまな個人、団体へのヒアリングが二〇一四年に行われましたが、性暴力被害も多様であるため、さまざまな現場の被害実態が明らかになるようなヒアリングを改めて行うべきではないかと考えます。

 また、これに関しては、議論の過程を速やかに公表することはもちろんのこと、傍聴やパブリックコメントなど幅広い方法で、全国の被害当事者や支援者、関心を持つ市民の声を反映させることが必要かと考えております。

 この三点について、法務省の御見解をお聞かせください。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 法務省では、現在、平成二十九年の刑法一部改正法の附則九条に基づく検討に資するよう、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを設置して、性犯罪の実態把握や無罪判決等の収集、分析、外国法制の調査等を進めているところでございまして、本年春ごろを目途にその結果を取りまとめる予定でございます。

 今後、今申し上げた取りまとめ結果等を踏まえた上で、どのような場で検討していくかを判断したいと考えているところでございます。

 現段階では、どのようなスケジュールで検討を行うかや、どのような検討の場を設けるかについて、確たることを申し上げる段階ではございませんが、いずれにしても、取りまとめ後、速やかに、被害者や被害者支援団体等から寄せられた御要望も踏まえつつ、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

 また、このような検討を行っていく過程におきまして、被害当事者や支援者、被害の実態等をよく知る研究者、専門家の方々の御意見を含めて、御意見を幅広く聞くことができるような体制で議論を進めたいと考えているところでございます。

 そして、御指摘の中で、被害当事者や支援者、実態をよく知る方々等ということで、幅広い意見をということでございましたけれども、申し上げましたように、幅広く意見を聞く機会を設けるということでやってまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

小宮山分科員 ありがとうございます。

 また、性被害者の中には、知的障害者など、障害者への犯罪も多く見受けられるところであります。昨年もそういう人を狙ったという犯人が捕まっておりますが、抵抗できない者、反論や証言をしづらい者への犯罪というのは、ひきょうな犯行であります。

 これに対しては、諸外国では、刑法では、より重い刑罰へと処するように、即刻同じように改めるべきだと考えますが、この点に関しまして御見解をお聞かせください。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 障害者に対する性犯罪につきましては、被害者が障害のために心神喪失又は抗拒不能の状態にあるときは、準強制性交等罪等による処罰が可能でございます。

 諸外国の中には、性犯罪について、被害者が障害者であることを要件とする加重規定を設けている国があることは承知しております。

 性犯罪に関し、障害者が被害者である場合に法定刑を重くすることについては、例えば、種類や程度がさまざまである障害について、どのような理由で特別の規定を設けるのか、また、その範囲を明確かつ限定的に規定できるか、法定刑を重くすべき理由をどのように考えるかといった点が課題になるように思われます。

 いずれにいたしましても、現在、実態調査ワーキンググループにおいて性犯罪の実態調査等を進めているところでございまして、この調査結果につきましては、先ほど申し上げましたように、本年春ごろを目途に取りまとめる予定でございます。

 それらの調査研究の結果のほか、被害当事者団体等から寄せられましたさまざまな御指摘を踏まえまして具体的な検討対象を決めていくこととなりますので、現時点におきましては具体的な検討の方向性をお示しする段階にはございませんが、被害当事者など、さまざまな方々の声を聞きながら充実した検討を行うことができるよう、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

小宮山分科員 今の話ですと、現段階はまだ調査等が済んでいないということなんでしょうか。

 例えば、国として、障害者における性犯罪の実情についてどのように認識若しくは把握をしているんでしょうか。

田中政府参考人 性犯罪につきましては、被害者の心身に極めて大きな被害を与えるものでありまして、決して許されるものではなく、厳正に対処すべきものと認識をいたしております。

 警察におきましては、性犯罪について、障害をお持ちの方が被害者となるものも含め、被疑者の検挙に向けた捜査を推進しているところでありますが、障害を有しているか否かにつきましてはプライバシー性の高い情報であり、警察といたしましても、捜査上必要な場合に限り把握するものでありまして、例えば、警察で認知した事件のうち被害者が障害をお持ちの方である者の割合がどうなっているかなどといったことにつきましては、把握をしていないところであります。

 いずれにいたしましても、警察といたしましては、引き続き、性犯罪の根絶に向けて、捜査や被害者支援を適切に実施してまいりたい、このように考えております。

小宮山分科員 そうなんですよね。実際には、性犯罪があっても、それをしっかり把握ができない、若しくは、立件までというか、起訴までもいかないというような状況であります。

 というのも、当然、性犯罪の証拠集め等がきちんとできないというのが、フリーズとか、危険なときになると思考を停止する若しくは忘れようとするという行為によって、犯罪に遭ったときの衣服とか、体とかもどんどんごしごし洗ってしまったりして、証拠をなくしてしまうことがよくあると聞いております。

 このやり方というのもしっかりと学んでいればいいんですが、大抵はそういうことはありませんので、そのためにも、過去にも聞いたことがあります、レイプキット、警察署への配備状況というものが、済みません、ちょっと先に行かせていただきます、ありますが、犯罪被害者基本法の中で、緊急避妊、人工中絶、初診料、診断書料や性感染症等の検査費用なども公費負担になる可能性があります。

 やはり、被害者が自分の意思を伝えられる、また証拠が押さえられるという意味においては、このレイプキット、ネット上だと、警察署にはなくて救急外来にのみ準備されているといった記述も散見されます。現状どうなっているのか、少々簡潔にお聞かせください。

    〔主査退席、山口(壯)主査代理着席〕

田中政府参考人 性犯罪捜査におきましては、被害に遭った後、早い段階で被害者の身体、衣服等から証拠資料を採取することが重要となりますことから、警察庁におきまして、性犯罪証拠採取セットを整備するための予算を措置しております。各都道府県警察におきましては、全ての警察署にこの性犯罪証拠採取セットを整備しているところであります。

小宮山分科員 全署にあるけれども、過去に質問したときには、どれだけ使っているのか、活用されているのかということは教えていただけませんでした。あるのであれば、どんどんそれを使って調べられるということ。又は、救急の場にも置いてある、それは、警察署が必ずしも近くにない場所で被害に遭ったときのためだというふうにおっしゃっていました。

 こういったことをもっと法務省の方でもやはりしっかりと告知をしていただきたいと思いますし、先ほどから、やはり同意のないセックスはレイプである、そういった常識に立たなければならない時代になっていると思います。

 イギリスでは、テムズバレー警察署が制作した動画で、これは二〇一五年につくられましたが、相手が紅茶を要りませんと答えるなら紅茶を入れるのをやめてくださいと、紅茶に例えてセックスの同意というものをわかりやすく説明しております。こういった、今までですと、泣き寝入りに終わることなく、自分の身と心を守ってもらう、それこそ、人権侵害センターなど関係先においてもさまざまな周知に取り組むべき、法務省の役割だと思っております。

 また、ドラッグレイプや昏酔強盗など、東京オリパラ前に即刻対応すべき課題が多々あるかと思います。現在のままでは、証拠が不十分となり、また裁判に時間がかかることから、泣き寝入りとなりかねません。

 この点、二点について法務大臣からお聞かせください。

森国務大臣 委員御指摘の英国の動画、紅茶とセックスのお話、動画自体を私も見せていただきましたけれども、本当に大変わかりやすい動画ですね。こういった周知方法を法務省も工夫していかなければならないなと思った次第でございます。

 これからの性犯罪、被害者を少しでもなくすために、性犯罪の罰則の内容等に関する周知についても法務省で工夫をしてまいりたいと思います。

小宮山分科員 済みません、二問一遍にいきましたので、ドラッグレイプとか昏酔強盗とか、オリパラ前にやはり対応すべきこと、この点についてもお願いします。

森国務大臣 失礼いたしました。

 東京オリンピック・パラリンピック観戦のために来日された多くの外国人の方々が、そういった御指摘のような事案に限らず、犯罪の被害に遭われるということもあってはなりませんし、もちろん日本人もそうでございます。

 御指摘のような性犯罪の被害に遭うなどの事案がないように、検察当局においても、警察と連携しつつ、個々の事案に応じた適切な証拠の収集に努め、また広報等もしっかりとしてまいりたいと思います。

小宮山分科員 警察と連携をしてと言いますが、実際には警察でもセカンドレイプの状況があります。これもやはり直さなければならないと思います。

 特に、最後になりますけれども、強制性交の旧強姦罪が成立するには、被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行や脅迫が加えられることが条件となっております。結局のところ、性同意というこのしっかりとした認識がないがために、基準が日本にはないがために一方的なことになる、その上、しっかりとした証拠をとるということもわからない被害者というのが自分の身も、そして安全も守り切れない、これが今の日本の刑法の問題点だと思っております。

 性同意の法解釈は早急に変更するべきでありますし、刑法改正、この施行を待たずしてできる方法があるならば即刻実行するべきだと思いますが、最後にこの点を聞かせてください。

森国務大臣 セカンドレイプについて御指摘がございました。

 検察当局においては、各種研修において、性犯罪に直面した被害者の心理に精通した臨床心理士や精神科医による講義等を実施するなどして、その理解を深める取組を行うとともに、被害者の心情に十分配慮しながら事情聴取を行うなど、御指摘のような二次被害を与えることのないよう捜査、公判活動を行うべきでございます。

 現在も努めているものと承知をしておりますが、私も先日、検察の実務が集まった場での訓示において、性犯罪について特出しをして同様の指示をしたところでございます。

 委員の御指摘を踏まえて、更にしっかりと取り組んでまいります。

小宮山分科員 ぜひしっかりと刑法改正につながる取組を期待して、終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

山口(壯)主査代理 これにて小宮山泰子君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上英孝君。

井上(英)分科員 日本維新の会の井上英孝です。

 それでは、早速質疑に入らせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きょうは、出入国在留管理庁の高嶋次長にお越しをいただきました。よろしくお願いをいたします。私からは外国人労働者の受入れについてお聞きをしたいと思いますので、少し質問数も多いのでしっかりお答えいただきますように、よろしくお願いをいたします。

 まずは、外国人労働者の受入れを拡大する特定技能という在留資格を創設することなどを内容とする改正出入国管理難民認定法が、昨年四月から施行されました。法務省は、特定技能一号の在留資格が認められ日本で働いている外国人労働者数について、改正法の施行から三カ月となる昨年六月末現在で二十名、それから半年後の昨年十二月、年末時点で千六百二十一人と発表をされました。私個人的には、もっと多いものかというふうに思っておりましたが、ふたをあけてみると、正直伸び悩んでいるという感想を抱いています。

 ちなみに、政府が想定した受入れ見込みの人数は、二〇一九年度に最大約四万七千人、そして、今後の五年間でトータル、最大約三十四万人という見込み数というふうに当初聞いておりましたので、この状況についての現状認識、また、特定技能の在留資格で働く外国人労働者がふえない理由について法務省にお伺いしたいのと、それから、受入れ数をどのようにして伸ばしていくと言ったらおかしいですけれども、その対策についてお伺いしたいと思います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月末現在の特定技能の資格で在留している外国人の数は、今御指摘ありましたように千六百二十一人でございましたが、本年一月末現在の数字、一カ月後でありますが、二千百六十二ということで、約五百人ふえております。

 既に特定技能の許可に係る手続をとられた方が、二月十四日時点、今月の十四日時点の速報値で六千八百八十七でございます。そのうち特定技能の許可を受けた者が三千五百八人であります。これは二月十四日時点の速報値でございます。

 試験につきましては、十四分野のうち十三分野の試験を国内及び海外六カ国で実施を既にしておりまして、年度内、この三月までには全十四分野で実施される予定でございますが、二月十四日時点で七千二百三十四人が合格されているというところでございます。

 年明け以降の数字だけで申し上げますと、年度内に一万人以上が技能試験を受験することが予定されているという状況でございまして、試験実施国の拡大も見込まれていることを踏まえますと、今後、特定技能の許可を受けられていく方は着実に増加していくものというふうに見込んでいるところでございます。

 課題でございますが、特定技能制度のもと、自国民の送り出しを予定している国の中には、なお送り出し手続を準備中のところ、まだ準備中、整備中の国があることがございます。それから、制度が複雑で申請手続がわかりにくいという御批判もございます。

 これは法務省としても承知しておりまして、今後は、分野を所管する関係省庁とともに引き続き試験実施国を拡大していくことを推進する、それから、送り出し国に対する送り出し手続の整備に向けた働きかけ、相手国に対する働きかけ、さらなる説明会の実施、法務省ホームページ内の申請手続案内を始めとします掲載情報の改善それから充実を行い、制度のきめ細やかな周知をしっかり行っていきたいと考えております。

井上(英)分科員 決して見込み人数に足りていないからだめだとかそういう議論ではないので、次長、しっかりと、日本で働くことがしっかりとできるという特定技能を持っておられる方をしっかりと雇用できるような環境というのを整えていただきたいというふうに思います。数ではないということは申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、特定技能の在留資格を得るための試験について聞きたいんですけれども、ちょっとボリュームがあって、五点ほどまとめてお聞きをしますので、お願いしたいと思います。

 外国人が特定技能一号、滞在期間の最長五年の在留資格を得るには、二つの方法がある。一つ目は、一定の要件を満たした技能実習生が試験を受けることなく取得する方法。二つ目は、留学生など日本国内に在留している外国人や海外にいる外国人が、国内外で開催される、先ほど言われました六カ所で開催される日本語や技能の試験に合格して取得する方法だというふうにあります。

 しかしながら、法務省によりますと、昨年十二月末までに試験が実施されたのは、外国人労働者を受入れ可能な十四業種のうち九業種にとどまると聞いています。改善されているとは思うんですけれども、その五業種が年末までに試験が実施されなかった理由をお聞かせいただきたいのが、まず一点。

 そして二点目は、政府は、昨年十二月の外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議において、本年四月からは国内で実施される試験について受験資格を拡大する、先ほど少し述べられた、変わってくると思うので、大勢の人がまた受けるだろうと言われていたんですけれども、過去に中長期在留者として在留した経験がなくても、受験のために短期滞在の在留資格で入国して受験することができるようになるというふうに聞いております。特定技能制度の活用のため、試験を実施できる環境を早急に整備することは重要ですが、取組についてお伺いをしたいというのが二点目。

 そして、その一方で、特定技能を取得するための業種別の技能試験で混乱が起きているという報道があります。外食業や宿泊業で定員に達して応募を締め切った試験で欠席者が多数に上っていることとか、さまざまな課題があるというふうには聞いているんですけれども、こういった混乱を避ける必要があるが、どのような対応をされていこうとお考えなのかというのが三点目。

 そして、この制度を進めるには、国内での試験だけではなく、やはり海外での試験の整備というのが必要だというふうに思います。海外における試験の実施に際して直面している課題とか、それの対策についてお伺いしたい、これが四点目。

 あと一つ、五点聞きたいんですけれども、国内での試験に関し、現行は、退学・除籍留学生、失踪した技能実習生、特定活動等の外国人は受験資格が認められないというふうに明示をされています。今回の受験資格の拡大によって、在留資格を有していれば受験できるという表現に変わりました。これを見ると、極端に言うと、学校にろくに通わずにアルバイトに明け暮れる就労目当ての留学、技能実習生がもっと稼ぎたいとして実習先から失踪すること、就労目的の難民申請を助長するのではないかということを危惧するところであります。もとより、そういう趣旨ではないというふうに信じておりますが、この受験資格が認められない方の明示がなくなった理由をお伺いするとともに、外国人の方に誤解しないよう正しく周知する必要があると考えますが、いかにお考えか。

 五点について、よろしくお願いします。

高嶋政府参考人 多岐にわたる御質問、若干お時間いただきながら御説明したいと思います。

 まず、試験実施の進捗状況でございますが、御指摘のとおり、昨年末の段階では、まだ全部の分野、実施しておりませんでした。これは主な原因は、やはりその分野における試験準備というものができていなかったということが大きな原因でございます。ただ、先ほども御説明しましたとおり、十三分野については既に実施しておりますし、年度内に全十四分野で実施がなされる予定でございます。

 それから二つ目に、運用面の問題でございますが、試験の実施におきまして若干混乱がございましたことは、御指摘のとおりでございます。一部の分野の試験におきましては、試験申込み用サイトが英語のみで表記されていたり、試験申込みが円滑に行われなかったりということがございました。それから、受験定員に達したことをもって試験申込みを締め切ったのですが、実際には多数の欠席者が出たという事例がございました。

 入管庁としましては、特定技能制度の活用、試験の適正な実施という観点から、このような事案については速やかに改善を図る必要があるというふうに考えておりまして、関係省庁と連携しまして、試験申込み用サイトの多言語化、受験を希望する方が可能な限り受験できるよう追加試験の実施等の対応をとっているところでございます。引き続き、受験を希望する方に可能な限り受験してもらえるよう計画的に試験を実施するなど、適正な実施に努めてまいりたいと考えております。

 それから、海外における試験の実施の御質問がございましたが、海外で試験を実施するに当たっては、通常、相手国政府と、試験実施分野、試験実施場所、実施頻度等の調整を行った上で、試験実施について了解をいただく必要があるという取決めになっているところがございます。こういうのが非常に多くございます。その手続には一定程度の準備のための期間を要するものがありますし、相手方が了解するという手続も必要でございます。

 入管庁におきましては、特定技能制度の活用のためには、海外試験を円滑に実施することが非常に大事だというふうに考えておりまして、引き続き、関係省庁と連携し、外国政府と調整を行ってまいりたいというふうに考えております。しかしながら、順次試験は行われているところでございます。

 それから、国内受験資格の拡大でございます。失踪技能実習生等の受験についての御質問がございましたが、一月三十日に受験資格を見直しました。在留資格をもって在留する者については、短期滞在でありましても一律に受験を認めるという取扱いをすることにしました。これにより、失踪技能実習生でありましても、在留資格を有している場合には受験が可能になったというわけでございます。

 失踪技能実習生等につきましては、在留資格を有している場合には、在留カード上、その事実は確認ができますけれども、失踪の事実まで確認できないために、試験実施機関から、確認が困難であるということが前々から指摘されておったところでございます。

 また、失踪技能実習生等が試験に合格し、在留資格変更に及んだ場合に、入管庁において、その申請者が失踪技能実習生に該当するかを実質的に確認しまして許否の判断を行うことから、受験時には、失踪技能実習生かどうかということの確認をすることは必ずしも必要ないのではないか、こういう意見がありまして、受験資格を見直すことにしたものでございます。

 今御説明しましたとおり、受験は、合格したからといって特定技能の在留資格が付与されるということを保証するものではございませんので、この点については、入管庁作成の試験方針にも記載しまして、今後、各技能試験の試験実施要領や受験案内においても周知する予定でございます。

 失踪技能実習生等につきましては、実質的には本来活動を行っておらず、在留資格取消し事由に該当する場合もございますから、基本的には、在留資格変更許可を認めるための相当の理由があると認めることは困難な事例も多々あるかと思いますけれども、中には失踪技能実習生自身には帰責事由がない場合もございますので、そういう点については弾力的に対応してまいりたいというふうに考えております。

井上(英)分科員 冒頭も申し上げたように、勤勉に、そしてまた健全に、やはりしっかりとしてくれる外国人の方々に、そういうチャンスといいますか、与えられるべきだというふうにも思いますし、また、そういった勤勉さとか誠実さとか健全さがない悪意のある方は、やはりちょっと排除していく必要性があると思いますので、その辺はやはり慎重に、しっかりとやっていただきますようによろしくお願いを申し上げます。

 次に、技能実習生から特定技能への移行をふやすことも必要と思われます。しかしながら、日本で働く技能実習生の間では、特定技能制度に対する理解というのがまだ深まっていないように思われます。

 まずは技能実習生に特定技能という制度をしっかりと知ってもらうことが重要であると考えますが、制度の周知のための現在の取組状況、また取組についての検討状況をお伺いしたいというふうに思います。

高嶋政府参考人 出入国在留管理庁におきましては、技能実習から特定技能への移行を円滑に行うことができるよう、技能実習生を受け入れている受入れ機関、監理団体等を対象とした説明会を実施したり、法務省ホームページにおける申請手続案内を始めとする掲載情報の改善充実等を行ってまいりました。また、国内の関係団体に対しまして、直接、受入れ手続の説明資料を送付するなどして、制度の周知を図っているところでございます。

 引き続き、この制度を理解していただけるよう、積極的に広報を行ってまいりたいと考えております。

井上(英)分科員 それと、今度は評価調書についてですけれども。

 試験環境の整備が十分でない現状においては、技能実習生から特定技能に移行する外国人が多数を占めることとなると考えられます。しかし、特定技能に移行した実習生が職場をかわるためには実習状況をまとめた評価調書というのが必要ですが、その作成を実習先が拒んだり、実習先が倒産しているため作成できず、実習生が転職できないケースがあるというふうにもお聞きしています。

 原則として転職できない技能実習生とは異なり、特定技能で働く外国人労働者には転職が認められておりますが、評価調書の存在というのがこれを妨げてはならないと思いますが、どのように対処されるか、お聞かせいただけますでしょうか。

高嶋政府参考人 御指摘の問題につきましては、出入国在留管理庁におきましても昨年秋に把握いたしました。

 そのため、御指摘の事例に対応するために、法務省ホームページで公表しております特定技能外国人受入れに関する運用要領を昨年九月に改定いたしました。評価調書を提出できない場合に柔軟な取扱いを行うことを明確化し、周知しているところでございます。

 具体的には、実習先から評価調書の提出を受けることができない、そのために技能実習から特定技能へ移行が困難であるような場合には、この評価調書を提出することができない理由書あるいはそのかわりとなる資料を提出していただいた上で、出入国在留管理庁において、技能実習二号を良好に修了したか否かを総合的に評価するということにしております。

 今後も、制度の活用が進む中で、運用の改善を不断に図ることは重要であると考えておりまして、さまざまな御意見を踏まえて適正な運用に努めてまいりたいと考えております。

井上(英)分科員 次に、特定技能の二号についてお伺いしたいと思います。

 特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、要件を満たせば家族の帯同も認められる。現在、建設業、造船・舶用工業の二業種しか導入が決まっておりません。

 外国人労働者の受入れ拡大を促すためには、特定技能二号自体の対象業種を拡大するということを考えておられるかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。

高嶋政府参考人 特定技能二号についての御質問でございますが、そもそも、特定技能の制度は、国内人材確保の取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野におきまして、熟練した技能を要する業務に従事する外国人を受け入れるものでございます。現在のところは、建設及び造船・舶用工業の二分野での受入れが可能となっているのみでございます。

 現時点で、新たに特定技能二号の追加を予定している分野の有無や、その前提としての検討状況は、出入国在留管理庁としては実は承知していないところでございますが、特定技能二号の追加に当たっては、まず、その分野を所管する行政機関から、熟練した技能を要する業務の内容、国内人材確保の取組の状況、こういった点などについて示していただく必要があります。それを踏まえて、制度関係機関が当該分野での特定技能二号の追加の適否を当該分野の所管行政機関と協議した上、これを是とする場合には、分野別運用方針や法務省令等の改正を行う、こういう手順になっております。

井上(英)分科員 次に、時間も押してきたので、通告している内容をちょっと変えさせていただいて、悪質ブローカーの対策についてお伺いをしたいと思います。

 悪質ブローカーを排除するための対策については、より徹底的に行うことが大事であると考えます。以前から実施されている技能実習制度の場合、悪質ブローカーによる搾取が大きな問題になっています。

 技能実習生を受け入れる実習先に問題がなくても、技能実習生は母国の送り出し機関や仲介業者に多額の費用を支払うために借金を抱えて来日することから、多くの実習生がその借金を返済する必要があるために、実習先から解雇されることや保証金の支払いを恐れて長時間労働だとか賃金の未払いなどの劣悪な職場から逃げられず、また、パワハラ、セクハラ被害や外国人差別に耐えているというお話も聞きます。さらに、国内でも、技能実習生の受入れを仲介する監理団体が不当に高額な費用を徴収するケースもあると報告されています。

 新しい特定技能制度においても、ブローカーに関する問題は取り残されていると思います。政府は、悪質ブローカーの排除を目的として、人材を送り出す国と特定技能に関する二国間の協力覚書というのを順次締結することとしており、今月四日時点で十二カ国と締結していると聞いています。しかし、技能実習制度においても同様の覚書が締結されているにもかかわらず、失踪や人権侵害などのさまざまな問題が発生していることから、この覚書の効力を問題視する声もあります。

 相手国における覚書の適切な活用の確認を含め、今後、送り出し国や国内の悪質なブローカーの活動を規制する対策を徹底的に行う必要があると思いますが、いかがでしょうか。

高嶋政府参考人 御指摘のような問題は、出入国在留管理庁としても把握しております。

 この悪質なブローカーの排除ということは非常に大事な問題だというふうに考えております。特に、技能実習生のときに問題になりました失踪技能実習生の問題というのは、大きな借金を背負って、それを返済するために更に高い給料を求めて失踪する、こういう背景があるということもわかってきているところでございます。

 これについては、真剣に取り組まなくてはいけないというふうな認識のもと、さまざまな施策を講じているところでございますが、その中の一つはやはり、御指摘のとおり、二国間の取決めでございます。相手国政府との情報共有により、保証金を徴収するなどの悪質なブローカーの排除を求めているなど、適正を図っております。現実に取り消している例もございます。

 それから、入国前の事前審査におきまして、ブローカーによる保証金徴収の有無等について審査、確認を行っておりまして、不明瞭な金銭の支払い等が判明した場合には入国を認めないこととしております。

 加えて、入国後、入った後でございますが、受入先への実地調査等や報告の徴収、相談窓口の設置等によりまして、ブローカーの関与や不正行為を発見し、排除する仕組みを設けております。

 これらの措置を通じて、悪質なブローカーの介在防止を徹底してまいりたいと思っております。

井上(英)分科員 もうその時点で、悪質ブローカーのせいでといいますか、そのおかげで非常に気の毒な労働環境というのを強いられることになりますので、ぜひしっかりと、徹底的に取り組んでいただくようにお願いしたいなというふうに思います。

 次に、在留資格の特定技能を持つ外国人労働者を支援するための支援機関というのが続々と誕生している。昨年八月の新聞報道では、もう既に、当時で千八百超えの機関があると。

 今、現状で幾つの機関が支援機関として登録しているのか。また、多いと単純に感じるんですね。その支援機関の質をどのように保つおつもりなのか、お伺いしたいと思います。

高嶋政府参考人 登録支援機関の登録数につきましては、今月二十一日の速報値で三千八百四十九件という数になっております。

 その質の確保という御質問でございますけれども、入管法十九条の二十六の第一項におきまして、登録支援機関につきましては、次のような登録拒否事由が定められております。一つは、支援業務を適正に遂行するために必要な体制が整備されていないところ、あるいは、出入国又は労働に関する法令の違反により刑事罰を科されたことがある、このほか多数の拒否事由が定められておりますが、出入国在留管理庁では、登録の審査において、これらの登録拒否事由に該当しないことを確認できた機関のみを登録しております。

 その上で、個々の一号特定技能外国人の在留申請、個々人の申請の場面におきましても、登録支援機関等による支援が適正に実施される体制が整備されているか否かを改めて確認しているところでございます。

 登録支援機関は、出入国在留管理庁に対しまして支援の実施状況を定期的に報告しなくてはいけないということになっておりまして、支援の開始後、支援が適切に実施されていないことを把握したり届出がなされなかったりした場合には、出入国在留管理庁が登録支援機関への指導や登録の取消しなどを行うこととなっております。

 また、本人の申出、特定技能外国人の申出等によりまして違法行為の疑義などがある場合には、地方出入国在留管理局が事実の調査等を実施して、必要に応じて必要な処分をするということになります。

井上(英)分科員 ぜひ、支援機関の質をしっかりと保っていただきたいなというふうに思います。

 そしてまた、昨年十一月には、法務省は、失踪技能実習生を減少するための施策というのを取りまとめられております。大量の技能実習生失踪者を出した送出機関、監理団体及び実習実施者に対する措置というのがあります。その中で、問題があると判断されれば、新規の技能実習生の受入れを停止するなどのほか、失踪技能実習生を雇用した企業名の公表を検討するということになっていましたけれども、ちょっとお答えを聞くとあれなので、やはりそういった、厳しく対応して、ぜひしていただけたらというふうに思いますので、今後も検討を続けて、徹底的にやっていただけたらというふうに思いますので、そこはお願いしておきますので、よろしくお願いします。

 大臣にお伺いをしたいんですけれども、インバウンド需要への対応や日本の美容技術を海外に伝える担い手として、外国人美容師の就労を認めるように、おととし、二〇一八年、東京都が内閣府の国家戦略特別区域会議に提案をされたというふうに聞いています。

 理容、美容の業界では、国家試験まであって、それを取っても結果的には日本で現状働くことはできないということになっていますけれども、それについてどのような思いがあるか、大臣、お答えいただけますでしょうか。

森国務大臣 理容師や美容師については、現行法、入管法上の就労が認められている在留資格に該当するものがないために、現時点では受入れが認められておりませんが、一方で、委員御指摘のとおり、国家戦略特別区域制度において、大阪府及び東京都から、クールジャパンやインバウンド対応に資するものとして、理美容の分野で国家資格を有する外国人の受入れの提案がございました。

 国家戦略特別区域制度で提案をしていただいているこの理美容分野における外国人材の受入れについては、現在、国家戦略特別区域ワーキンググループにおいて議論をされており、法務省においても、関係省庁とともに、引き続き検討を進めてまいりたいと思います。

井上(英)分科員 ぜひお願いをしたいなというふうに思います。

 やはり、店舗店舗では結構人材不足だというふうに、日本人のそういう働き手がどんどんどんどんやめていくということもお聞きをしていますので、そういったことも含めて、ぜひ検討していただけたらと思います。

 外国人労働者といっても、さまざまな問題も課題もあります。そういった中で、ぜひ、しっかりとしたそういう外国人労働者を受け入れる環境というのをつくっていただきたいと思いますけれども、法務大臣としての意気込みをお聞かせいただけますでしょうか。

森国務大臣 現在、我が国のみならず、各国で人手不足が生じている中で、我が国が外国人を引きつけ、外国人に選ばれる国となるためには、外国人に我が国で働き、暮らし、学びたいと考えてもらえる、そのための受入れ環境の整備が重要でございます。

 そのため、平成三十年十二月に関係閣僚会議において、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策を取りまとめました。昨年末、その内容を更に充実させる形で改定を行いました。これには、労働環境、医療、教育、住宅など、生活のさまざまな場面に関する百七十二の施策が盛り込まれております。

 法務省としましては、引き続き、外国人材の円滑な受入れの観点から、共生社会の実現に向け、改定された総合的対応策に盛り込まれた施策について、関係省庁とともに着実に実施してまいります。

井上(英)分科員 どうもありがとうございました。

山口(壯)主査代理 これにて井上英孝君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川分科員 立憲民主党の中川正春です。どうかよろしくお願いをします。

 ちょっと、私が通告した質問に入る前に、先ほどの井上議員の議論に誘発をされまして、ぜひひとつ大臣にも御認識というか意識を持っていただきたいという課題についてお話をしたいと思うんです。

 技能実習制度の中で、失踪という話が先ほど出ていました。失踪するということは法律を違反することになって、犯罪者として捕まえられて本国へ送還をされるという制度になっているわけですよね。

 ところが、仮に、彼らが、技能を修得するということ以上に、実際は、日本に働きに来る、働く場として恐らく求めているということが彼らの本音というか実態だと思うんですね。本来、働くということが前提になるのであれば、さまざまな諸権利の中で、いわゆる働くということで保障される諸権利の中で、職業選択の自由というのは、これは基本になることだと思うんですよね。

 ここに一つ、働いている、上司と反りが合わない、だから仕事をかわる、あるいは、ここよりももっといい条件の仕事がある、そこに仕事を選択してかわっていくということは、日本の社会であれば当たり前のことで、権利としては保障されているということなんですよ。ところが、技能実習生に関しては、条件のいいところへ向いてかわろうとすれば、かわれない。だから失踪するという形になる。そうすると、そこで法律を破ったことになって犯罪者になる、送還される。

 ここのところを実は、海外からこの制度を見ていて、どうも働くということに対する諸権利が保障されていない、厳しい言葉で言えば、これは奴隷制度じゃないかといって、一時、批判されたことがあった。私も、ロイターの記者が来まして、日本の奴隷制度に対してどう思われますかと。私、最初、ぴんとこなかった。だけれども、彼らの説明を聞いていったら、ここのところが一つ大きな日本の制度としての欠陥というか権利が保障されない部分なんではないか、そこを取り上げてそのような表現をしたということ、これを改めて認識をして、ここはひとつ克服をしていかなきゃいけないところではないか。いわゆる本音と建前が違うところからこのずれが出てきているんですが、そういう問題があるんですよね。

 これについて法務省の中でどこまで議論がされ、法務省というのは、そういう意味ではそうした権利を保障すべき、あるいは保障するためにその監督もしていくという役所であるはずなんだけれども、当然私は中で議論がされているんだろうということを思っていましたけれども、何となく、さっきの答弁を聞いていると、そういう前提は全くなしに、とにかく逃げる方が悪いんだということの中でしか議論がないということ、これに以前から問題意識を持っています。

 どうですか、大臣。ちょっとそこのところを課題としてこれから議論をぜひしていっていただきたいんですが、ちょっと通告もなしで申しわけないんですが、どう思われますか。

森国務大臣 委員の御指摘を今伺って、私も、実態をしっかり調査をして、これはもともとが技能を実習するという制度ではございますが、その実態や本音や、その双方がそれぞれ抱いている希望というものが食い違っている点もあるのかもしれません。しっかりと実態を調査して、諸外国からそのような誤解を受けることがないようにしてまいりたいと思います。

中川分科員 これは何でこんな矛盾が起きているかというと、基本的に、これまでの政府の姿勢として、単純労働、いわゆる非熟練労働というんですか、単純労働は日本は受け入れないんだ、それを目的にして、ということがまず前提としてあって、しかし、現実は、一番労働の需要のあるところというのはその分野なので、そこへ向いて入れるためにはどうしたらいいかというので、国際貢献で技能を修得するという目的で技能実習という制度が入っている。ここなんですよ。これを克服していかないと、やはり矛盾というのはそのまま、日本に入ってきた人たちに対して大きな負担になっていく、あるいは、こんなはずではなかったというふうなところにつながってくるので、そこの議論を一遍基本に戻ってしようじゃないですか、そういう投げかけでもあるので、ひとつよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 では、通告に従って質問に入っていきたいと思うんですが、昨年、日本語教育推進法が議員立法で成立をさせることができました。私も中心的にその立法過程に加わっていったんですが。ことしは、その法律に基づいて、日本語教育の推進について国の基本計画をつくるということになっています。六月までにつくるということで、法務省の方からもこれに参加をしていただいて、省庁横断的にこの基本計画をつくっていくということで今努力をしていただいておるだろうというふうに思います。

 ありように言って、具体的な目標の一つというのは、日本国内で外国人のさまざまな、いわゆる在留していくそのステータスに応じて、日本語がどこでも誰でも、またいつでも習得できる、そういう環境を日本の国内につくっていくということ、このことに尽きるんだと思うんです。

 一方、それはそれとして、もう一つ問題がありまして、それは、どういった環境をつくるにしても、日本に在留する外国人がみずから日本語を勉強したい、又は、しなければならないという気持ち、いわばインセンティブなんですが、それを持つことがなければ、幾ら環境を整備しても日本語の学習あるいは習得に結びついていかないという、ここがあるんですよね。

 そのことを前提にして、今そういう、インセンティブというのは、みずからが勉強したいという気持ちになってくれれば、それはそれにこしたことはない。そういう志のある人たちもたくさん来ています。それで、その人たちは、今の状況の中でも日本語の習得の努力をしていくんです。しかし、その他大勢、多数、特に、家族の帯同を認めているステータスもありますからその家族であるとか、あるいは職場でも、日本語を勉強しなければいけませんよという法的な仕組みを課していない分野の人たちというのは、やはり、仕事に目いっぱいでそんなの勉強をしている時間はないよとか、あるいは、それだけのいわば資金というかお金を使うということになれば、それよりももっとこちらにというふうなそういうところ、そこの部分が相当あると思うんですが。

 これは一度、非熟練労働者と、それから熟練労働者、それからそれの家族と、あるいは国際結婚というようなこういう大きな分野に分かれて、その中で、例えば技能実習とか土木作業員とか特定技能、FTA、介護あるいは日系というステータスで来ている人たち、あるいは高度人材、それぞれあると思うんですが、この中で一度整理してもらいたいのは、日本にこういう類型の中で入ってきた人たちがどの分野で日本語を学ばなければいけませんよという規定を入管庁あるいは入管として課しているかということなんですね。

 これは、課している部分というのは私も理解しているんですが、もう一つ、話を単純化するために、課していない部分、ここのところが抜けているんだというところ、そこの分野というのを一度説明をしてもらえませんか。

高嶋政府参考人 質問通告でいただいたのは課している部分だったものですから、まず課している部分についてだけお答えさせていただきたいと思います。

 現行制度上、本邦入国時に日本語能力要件を課している在留資格としては、特定技能のほか、技能実習、留学及び特定活動の一部が挙げられます。これらにつきましては、我が国に入った後に円滑に活動ができるよう、また、コミュニケーションができることによってよりよい在留ができるという観点から課しておるところでございます。

 他方、今委員が御指摘になったものの中にも、例えば高度人材等につきましては日本語要件を課しておりません。それはさまざまな理由があるとは思いますが、入っていく場所に応じて、母国語だけしか話すことができなくても、それなりにうまくそのコミュニティーに入ってコミュニケーションができる等のさまざまな理由があるというふうに承知しております。

中川分科員 まず技能実習ですが、事業者というよりも監理組合ですかね、監理組合に対して、日本語を勉強する機会をつくっていきなさいよということは規定としてはあるんだけれども、実態として、そこまで熱心にそうしたプログラムが組まれているかどうかということ、これは実態を調べてあるかどうか。そのことについて恐らくそんなに、そこまで調査をした形跡は、私が知る限り、余りないように見受けているんですが、そこのところが一つ問題なのと、それからもう一つは、さっき話が出ませんでしたが、定住者、日系と言われる人たちなんです。

 これは確かに、ビザを更新していくときに、これは、矛盾しているのは、このステータスで来る人たちというのはブラジルやペルーの人たちですけれども、入ってくるときに何の条件も要らないんですよ。ただ三世以内ということですよね。入ってきて、日本でどういう働き方もできる。いわゆる職業の選択も自由にある。だから、派遣会社に入って、どんどんどんどん働いていくわけです。そのうち、ちょっとした稼ぎをためたら本国に帰ろうかということから始まるんですが、実態としては、三年ごとにビザを更新していって、結局、最終的には帰化していく人たちなんです。自由にそれができるステータスなんですよ、これは。これは技能実習のあのがりがりの話と比べると、何でここだけすとんと抜けているんだという分野なんですよ。

 これに対して、ビザの更新を三年じゃなくて五年でやろうと思ったら、日本語のレベルをN2相当以上であれば五年でいけますよ、こう規定しているんだけれども、五年に挑戦する人はほとんどいないんです。みんな三年でいくんですが、三年の場合は全く自由なんです。全く何にもないんです、条件は。ということなんですね。

 なものですから、今、十八万人、最近は二十万人超えてきたかな、この人たちが、職場でも、何も日本語に対する規定もない。

 それから、コミュニティーではどうかというと、地方自治体が、何で国はこんなことをするんだと、この制度をつくっておいて、私たちに、この人たちに対する対応というのを考えていきなさいとかいうことで、それぞれ、市役所の中で通訳を置いたり、子供たちを学校へ行かすためのさまざまな工夫をしたり、あるいは、地域のコミュニティーでボランティアを中心に日本語教室というのを開いたり、こういう形ですよね。ふたをあけてみたら、うちの地元なんかそうなんですが、五千人、六千人というコミュニティーの中で日本語教室に来ている人は四十人、五十人、そのレベルなんですよ。

 そのところが全く抜けているということに対して私は非常に危機感を持っていまして、ブラジルのコミュニティーが日本に、いわゆる多文化共生社会と、地方自治体では一生懸命になって進めようとしていますが、その人たちが本当に日本に溶け込んできて、彼らの持っている能力というのを十分に発揮できるようなそういう環境になっているかというと、そこの部分は全く抜けているように思うんです。

 なものだから、改めて大臣、この問題意識を持っていただいて、今度の基本方針の中に、法務省の方から、ここをちょっと工夫しようよ、何らかの形で、勉強していくというインセンティブをここにつくっていこうよと。家族にしてもあるいは本人にしても、本人は職場がありますから職場で事業者がそれをやっていくという制度でもいいし、あるいは、三年ごとに更新をしていくビザの条件があるとすれば、その中で、日本語を勉強しなさいよというようなそういうインセンティブをつくってもいいし、そんなことを、ひとつ、やっていくというような方針というのを工夫をしてもらいたい。そこの問題意識なんですが、大臣、どう思われますか。

森国務大臣 日本語教育の推進について、今委員から、現場の実情を御提起いただいたところでございます。

 外国人に対して日本語教育を受ける機会が最大限に確保されるよう行われなければならないということは、日本語教育推進法にも定められておりますところでございますので、委員の御指摘をしっかり踏まえて、事務方とも相談した上で、どのような対応ができるか慎重に検討してまいりたいと思います。

中川分科員 事務方にも確認しておく方がいいのかな。そういう問題意識はありませんか。

高嶋政府参考人 委員御指摘のとおり、日系三世の問題につきましては、一時、日本語要件を課さないで多くの日系ブラジル人を受け入れ、それが、受け入れたコミュニティーにおいて、日本語が話せないということで生活が非常に、コミュニティーへの溶け込み方が非常に難しかった、こういう問題、かつ、地方自治体にその部分、その方々の支援というものをやってもらった、そういう我々としては非常に苦い経験をしているところでございます。

 日系四世につきましては、そういう反省を踏まえまして日本語要件を課しているところでございますが、現に多くの日系三世の方が、いまだに日本語について困難を感じていらっしゃる方がいらっしゃいますので、やはり、その方々に対しては、今大臣が答弁しましたように、しっかりと日本語の支援をしていくということが非常に大事なんだと思っております。

 また、ほかの資格につきましても、やはり、この反省を踏まえまして、日本語要件というものは非常に大事なものだと思っておりますので、コミュニティーに溶け込むための要件として日本語要件というのを考えていきたいというふうに思っております。

中川分科員 ちょっと知恵を出してください。要件を出したら、必ずそれは誰が金を払うかという話になるので、それは、私は、それを受け入れている企業、ここが負担をすべきものだというふうに思いますよ。だから、そこのところの組合せも含めて仕組みをぜひ考えていただきたいというふうに思います。

 次に、コロナウイルス対策についてお話をしていきたいと思うんですが、これまで、サプライチェーンの分断であるとか、あるいはインバウンドの観光急減への対策というのは議論の俎上にのっているんですけれども、これも深刻で緊急を要する問題ではあると思うんですが、もう一方で、既に日本経済を支える重要な要素となっている外国人労働者や留学生に関連して、その影響と対策というのが私は議論される必要があるんだろうというふうに思うんです。

 現場では、中国からの技能実習生や留学生に対するこれらのビザ発給というのを日本政府としてどのように考えているのか、これから先、ひょっとして、もう中国から来る学生に対してはビザを発給しないとか、あるいはこれは技能実習生でもそうですけれども、ビザを発給しないとかというようなことがあるのであればそのことは早目に、早く現場実態へ向いてしっかりおろしていただいて、その対応が現場でとれるようなそういう政策に持っていってくれないかということ、それが今切実な問題として出てきています。

 日本の政府だけではなくて中国当局が海外渡航に対して制限を加えるということもあるでしょうし、それから、もう一つ言えば、中国だけじゃなくて東南アジアの国々が日本のリスクというかレベルを一つ一つ上げてきて、最終的には、日本に渡航することに対して自粛しろというようなことをそれぞれの国の中で出してくる可能性が十分にあるわけです。これは、今の日本の現場に対しては非常に不安要素となっている。

 日本の政府としての政策だけじゃなくて、海外の今の状況をどう分析して、そして、いつごろそういう形の規制が入ってくるかということ、これは早目に予測をしてそれを出していくということだと思うんですが、それぞれどのような分析あるいは想定をされていますか。

高嶋政府参考人 新型コロナウイルスに関連しての日本への技能実習生等の出入りに関する御質問でございます。

 まず、中国から入ってくるそういう技能実習生等についてのビザの発給の問題でございますけれども、新型コロナウイルスは、御案内のとおり、今、時々刻々と感染状況等が変化しているところでございまして、まだまだ中国それから我が国を含めて東南アジアでの情勢が予断を許さない状況になっております。ビザの発給は、これは外務省の方で所管していることでございますが、現在のところ、新たな発給については一部控えているところもあるというふうに聞いております。新たな発給につきましては、中国からのですね。(中川分科員「今」と呼ぶ)現在です。詳細はちょっと承知しておりませんが、発給を控えているところがあるというふうに承知しております。

 それから、他国が我が国に対してどのような措置をとるかという部分につきましてですが、ここにつきましては、他国の考え方、判断にもよるところでありますので、我々としてはなかなか予測というのは難しいところでございますが、どのようなメッセージが発せられているかということに応じて、我々の入国管理というところもそれに対応してやっていかなくちゃいけないのかなというふうに考えているところでございます。

    〔山口(壯)主査代理退席、主査着席〕

中川分科員 結局のところわからない。わからないではだめなんですよ。これは国内の対応をやはりやっていかないと大変な状況に陥ってくるということ、これは当然、現場でこれに対応しようとしている人たちにとっては緊急の課題なんだと思うので、それに対してちゃんと応えていかないといけないということ、これは指摘をしておきたいと思います。

 外務省。

大隅政府参考人 お答えいたします。

 ビザの件について御質問がありましたので、御説明したいと思います。

 今般の新型コロナウイルス感染症をめぐる状況に鑑み、一月三十一日の湖北省を対象とする閣議了解、二月十二日の閣議了解及び新型コロナウイルス感染症対策本部の発表に基づき、当分の間、本邦への上陸の申請日前十四日以内に中国湖北省又は浙江省における滞在歴がある外国人及びそれらの省において発行された中国旅券を所持する外国人については、特段の事情がない限り、出入国管理及び難民認定法に基づき、上陸拒否の措置が講じられております。

 これら上陸拒否の対象に該当する外国人に対してはビザは発給しないため、各在外公館において、ビザ申請に当たって、本邦への上陸の申請日前十四日以内の湖北省又は浙江省への滞在の有無を確認するための質問票への記入、提出を求める等、より慎重な審査を実施しております。

 これを受けて、在中国の在外公館では、ビザの代理申請を行う現地指定旅行会社等に対して、ビザ審査は通常よりも時間を要する旨周知しております。

 今後とも、状況の推移等を見きわめつつ、適切に対応していく所存でございます。

 もう一点、先ほど諸外国の入国制限等につき御質問がありましたので、外務省の方からもお答えさせていただきますけれども、政府としては、これまで、外務省、厚労省、国交省等関係省庁が連携して、在京外交団向けブリーフィング等を行い、我が国における感染防止対策を情報発信してきているところでありますし、それにあわせ、こうした国、地域に対しては個別にこれを丁寧に説明してきております。

 今後とも、こうした国、地域に対して我が国の状況や取組について正確かつタイムリーに説明していくとともに、引き続き、国内外に対して、透明性を持って適時適切に情報発信あるいは説明をしていきたいと考えております。

 以上でございます。

中川分科員 外務省も同じですよ。今の状況はそうやって説明できるけれども、これから先どうなっていくんだということを日本の国内の皆さんが知りたいということなので、それに対しての説明は何もできていないということですね。

 だから、こうなっていきますということでなくとも、こうした条件が出てきたら、このときは海外から入ってくる人たちに対するビザはこちらがとめますよとか、あるいは、日本がこういう状況になってきて、海外の判断基準として、通例、こういうときには海外から入ってくる人たちもとまりますよとか、そういう条件を前提とした上で将来の予測をするということ、これぐらいのことはしっかり国民に対しても説明をしていかなきゃいけないということだと思います。そのことを指摘しておきたいというふうに思うんです。

 大臣、よろしく頼みます。

森国務大臣 委員の御指摘を踏まえまして、今後、実態を踏まえてどういうことをしたらいいかということを事務方ともしっかり、また関係省庁とも連携して対応してまいりたいと思います。

中川分科員 具体的に国内に対する対策というのも必要になってくるんですよね。

 例えば、技能実習で、実習生の多くは三月をめどに切りかわっていくわけですけれども、新しい実習生が確保できないということ、これは具体的に、ビザがおりてこない、あるいは時間がかかるというふうな話がありましたけれども、そういうことに直面をしているわけです。こういうことに対して、例えば、現在いる実習生に対して、本来なら帰らなきゃいけないけれども、特例措置で、事が落ちつくまではビザを延ばして、そして滞在してもいいよというようなことを考えていくとか、あるいは、それによっていわゆる労働力というのが極端に不足してくる場合には、こういうような原因で企業が困難に陥った場合には、金融政策、あるいはそれ以外でもいいですよ、いろいろな形で支援策というのをこの分野にも入れ込んでいくということ、これが必要なんだというふうに思うんです。

 それから、もう一つは留学生なんですね。この留学生も、中国の学生を相当部分引き受けていた日本語学校なんかは、これで即、経営危機といいますか、大変な状況に陥ってくるということも目に見えているというか、想像できるんだと思うんです。こういうところに対する救済措置というのをやはり考えておかないと、次、正常に戻ったときに日本語学校そのものが十分な機能を果たせない、そんなシステムになってしまってもこれは大変だ、そんな問題意識も持っていただくとすれば、この分野にどういう支援策が入れられるのか。

 恐らく、中小企業支援とかなんとかというので、株式会社を前提にしている学校というのはさまざま工夫はあるんだろうと思うんだけれども、学校法人に対してしっかりその施策が応用できるのかどうかということについては、恐らくそういう仕組みというのはないんだと思うんですよ。それだけに、非常に不安定な状況が生まれてくる。

 それから、日本語学校だけじゃなくて……

あべ主査 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

中川分科員 そうですか。はい。

 日本語学校だけじゃなくて、地方の大学というのは留学生に相当頼っていますから、そこの部分も、変化が起きてきたときには、これも状況として厳しいことが起きてくる。

 こんなことも指摘をさせていただいて、大臣、しっかり一遍目を通していただきながら、施策をつくってください。一言だけ。

あべ主査 答弁は簡潔にお願いします。

森国務大臣 しっかり検討してまいります。

あべ主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉川赳君。

吉川(赳)分科員 よろしくお願いいたします。自民党の吉川でございます。

 まず、通告はしていないんですけれども、大臣にちょっと感想を聞かせていただきたいのが、大臣もいろいろ大変でございます、野党に書籍を机に投げつけられたり。そういった中、本当に汗をかいておられる中でありますけれども。

 私、きょうは、離婚ですとか親権、面会交流、さらには養育費の算定表、こういったことについて質問させていただく旨通告をしているわけでございますが、離婚と一口に言っても、例えば男性側のDVであったり、さらには、夫婦間の不一致、相違、お互いそういったトラブルなく離婚をし、どちらかが親権を持ったり、そしてさらには最近では熟年離婚という、もう子供が手がかからなくなってから離婚をする、こういった形で、まさに離婚も今いろいろなケースがある。もちろんこれは、刑事事件になるような、非常に看過できないようなケースもあれば、何とか二人で離れ離れでも子供を育てていく、こういったケースもあるかと思います。

 まさに離婚も今いろいろだと思うわけでございますけれども、大臣もそういった認識でよろしいでしょうか。

森国務大臣 私、弁護士のとき、離婚事件の受任が多くて、それは成田離婚から熟年離婚まで何百件もやりました。また、お子様がいらっしゃる場合、いらっしゃらない場合、さまざまでございました。委員の御指摘と同じ認識でございます。

吉川(赳)分科員 ありがとうございます。

 ですから、これは、報道等を見ていると、やはりどうしても、目を引くように報道が報じているのか、物すごく悲惨なDV事件だとか、こういったのが何となく離婚だというようなことが象徴されているような気がするんですね。まずしっかりとそれをただしていくという点で、きょう幾つか質問したいと思います。

 まず、最高裁、来ていただいていると思うんですが、昨年の十二月二十三日でございます、親権を持たない側が支払う養育費の基準となります養育費の算定表が改正されたと思うんですが、これに関しまして、改定の時期、こういったものが定期的に行われているのかどうか、行われていないのだとすれば、なぜ昨年改定されたのかを簡潔にお答えいただきたく思います。

手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 今回の標準算定方式、算定表の改定は、平成十五年に発表されました標準算定方式、算定表の提案から既に十五年余りが経過しており、時の経過や社会実態の変化等を理由に、その内容に改良する点がないかを検討する必要が生じているという指摘を受けておりましたところ、その要請に応えるために、最高裁判所司法研修所における平成三十年度の司法研究といたしまして、養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究をテーマに行われたものでございます。

 具体的には、家裁の実務を担当しております裁判官が研究員として研究を行い、令和元年十二月初旬に報告書が完成し、その後、公表に向けた準備を行った上で、最終的に十二月二十三日に公表されたものでございます。

吉川(赳)分科員 クリスマスイブイブという、そういったタイミングだったと思うんですが、じゃ、次回の算定、こういったものは見込みとしてあるのでしょうか。

手嶋最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 先ほどお答え申し上げましたとおり、今回の改定は、時の経過や社会実態の変化等から検討の必要が生じているという指摘を受けて、その要請に応えるために行われたものでございまして、今後も、時の経過や社会実態の変化等を踏まえ、適切なタイミングで検討されることが望ましいというふうに考えております。

 もっとも、現時点で、具体的にいつ、どのような形でというところまでは明確に定まっておりません。

吉川(赳)分科員 私、ちょっとそれはおかしいと思うんですね。

 確かに、十五年間たって、社会的な変化、さまざま、これは物価も違えば平均給与も変わっているでしょう。ただ、例えば二〇一九年には保育が無償化されているわけなんですよね。そしてまた、ことしから、年収五百九十万円以下の家庭の高校無償化、こういったものも始まるわけです。つまり、養育費を受け取る側の、一人親の子の貧困という指摘もある中ではありますけれども、一人親の例えばこういう教育環境、もっと言えば教育に係る資金、これが明らかにこの一九年と二〇年で変わるかもしれないのに、なぜこれは十五年ということだけでそれが適切なのか。

 そして、これで、多分なんですけれども、明らかに、貧困家庭と言われる一人親家庭の教育に関する負担というものは軽減するわけですよ。それはもう始まることが見えているのに、何でこれはそんな十五年という条件でそれが適切だったのか、ちょっと答えていただきたいんですけれども。

手嶋最高裁判所長官代理者 最高裁判所内におきましても、改定の標準算定方式、算定表の作成に当たりましては、各種の統計等につきまして直近五年分の平均値などを用いておりますことから、例えば五年ごとに改定することが考えられるといった指摘もございまして、今後こういった指摘も踏まえて検討されることになるというふうに考えております。

吉川(赳)分科員 本当に、それが正しいと思いますよ。私は、何か十五年というと区切りはいいですけれども、全然、例えば、これは一般の方からしたら、十五年単位というのはわけがわからないですよ。

 先ほど、五年を目安に今考えているということなんですけれども、それですら、どうなんですか。さっき言ったように、本当に、受け取る側の負担軽減、生活における、子育てにおける負担軽減というものはあるわけですよね。そういったことをぜひ踏まえて、今後これは検討いただきたいと思います。

 そして、関連なんですが、ことし五月から、民事執行法が改正されますね。問題となっておりました養育費の未払い、これは私はあってはいけないことだと思っておりますので、この改正、本当に大きな前進だと思っております。

 その中で、未払いの親権を有しない親の財産開示等が可能になるわけであります。強制力ですとか強制取立てですとか賞罰は、さすがにこれは民事でございますからないものの、一歩前進ということは、一歩というかこれは大きく前進ですね。本当に、養育費を受け取れずに困っている親権を持つ親、またその子に関しては非常に大きな改正になると思います。

 これに関して、例えば子供の貧困、一人親の貧困、こういったことにこの法改正によってどのような影響があるのか。つまり、少しでも解消されるというような認識でよろしいんですかね。

小出政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の民事執行法の改正でございますけれども、御指摘のとおり、債務者の財産開示手続の実効性を高めるための規律の見直しとともに、債務者以外の第三者から、債務者の有する不動産、預貯金債権に関する情報のほか、養育費の債権等を有する者であれば債務者の勤務先に関する情報も取得することができる手続を新たに設けました。そういう内容でございまして、一部の例外を除きまして、本年四月から施行されます。

 これによりまして、確定判決や執行証書等の債務名義を有する債権者につきましては、債務者の財産を把握して強制執行することが容易になるということから、この改正法は養育費の支払い確保等にも資するものというふうに考えているところでございます。

吉川(赳)分科員 ということは、またこれは最高裁に戻るんですけれども、これも一つ、この算定表に考慮するべき事情じゃないんですか、今後。

手嶋最高裁判所長官代理者 養育費の算定は裁判官が判断する事項でございますので、最高裁判所として、例えば次回の改定に当たって御指摘のような事情が考慮されるかということについてお答えする立場にはないところではございますが、一般論として申し上げますと、養育費は、当事者の収入等を考慮して支払われるべき額が定められるものでございまして、その性質上、額の算定に当たっては、実際の回収可能性については考慮されないものでございます。

 したがいまして、一般的に申しますと、仮に今般の民事執行法の改正によって養育費の回収率が増加したといたしましても、そのこと自体によって養育費が減額される関係にはないものと考えられるところでございます。

吉川(赳)分科員 ちょっと済みません、今のこの算定表というのは、つまり、養育費をもらう側の、親権を持っている、どちらかというと母親が多いと思うんですけれども、そういった方の世帯収入だとかそういったのがそもそも加味されていないということですか、そういったものの平均だとかそういうのは。つまり、父親側の年収だけでこの算定表を決めているということですか。

手嶋最高裁判所長官代理者 もちろん、同居親と、それから同居していない親のそれぞれの収入を勘案して決めております。

吉川(赳)分科員 受け取る側もですよね、養育費を。(手嶋最高裁判所長官代理者「はい」と呼ぶ)ですよね。

 ということは、だって、今の平均とこの民事執行法改正によって、例えば現状での養育費の支払いがふえることによって、その養育費を受け取る側の平均的な生活レベルというのは向上するわけですよね。することが予想できるからこの改正をしたんでしょう。何の意味があるの、じゃ、これは、それがないんだったら。民事執行法の改正自体、意味がないじゃないですか。

手嶋最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおり、養育費といたしましては、双方の例えば報酬といった、給与等の報酬を勘案しながら、子に対してどの程度割り当てられるべきなのかということを客観的な額を確定するものでございますので、それが執行によって回収されるかどうかとは別問題であるというふうに認識をしております。

吉川(赳)分科員 わかりました。それは一回わかりました。

 答弁を聞いていて思うのが、まずちょっと聞きたいのが、この養育費の算定表、そもそもなんですけれども、これは離婚訴訟における基準値ということになるということですよね。ただ、基準といえど、個別の事案によって支払いの金額というのは、今答弁いただいたように、これはもちろん変わるわけですよ。

 これはどの程度基準として有効なのかというのをちょっとお答えいただきたいんですけれども。

手嶋最高裁判所長官代理者 この算定表でございますけれども、あくまで合理的な目安として、実務に携わる裁判官が研究の上で提案をしたものでございます。

 先ほど十五年というお話もございましたけれども、あの時点では養育費の算定に非常に時間を要していたということで、合理的な目安を、いかに、迅速に算定するためにはどうしたらいいかということで、実務に携わる裁判官の有志が研究成果として公表をしたものでございます。それがやはり迅速性、合理性ということで実務に定着をいたしまして、そこから年月が流れてしまったという経過でございます。

吉川(赳)分科員 実務に定着をしているということは、ある程度一定の基準になっているということなんですね。つまり、この金額によって、養育費を受け取る側も支払う側もかなり、つまり国民生活に直結するわけなんです。

 今、いろいろ、例えば保育の無償化ですとか、そういったことが影響するか否かという答弁をいただきましたが、ただ、我々国会議員も算定に当たってほとんど中身を知ることはないし、一般の国民だったらこれはますますなんですね。ただ、これは本当に離婚という問題を抱える夫婦にとっては生活の根幹にかかわることなんですよ。

 さっきから何か司法研修所の成果としてというようなことを強調されていますけれども、ただ、算定表という一定の基準になるものが、極めて民主的プロセスを得なければならないのかなと思われるものが、完全にこれは最高裁のブラックボックスの中で決められているんじゃないかという印象を私は持つんですけれども。

 もうちょっと実態の、例えば生活ですとかそういったものを勘案するのであれば、ほかの決め方はもっとないんですか。

手嶋最高裁判所長官代理者 先ほど申し上げましたとおりで、もともとの算定表等につきましては、実務のある意味知恵の中から出てきたものでございます。これが、時間が経過して、いろいろ内外からも御指摘をいただいておりましたところを踏まえて今般見直しをしたということになります。

 十五年も経ておりますので、その間、この算定表につきましては、考え方自体につきましては判例雑誌等に公表されておりますし、いろいろな内外からの御指摘もいただいたところでございますので、それも踏まえて、その意見も見ながら、資料を参照しながら裁判官において検討したというふうに聞いております。

吉川(赳)分科員 その内外の御指摘というのはどこなんですか。

手嶋最高裁判所長官代理者 判例雑誌等を踏まえますと、弁護士会等からも何度か御意見をいただいているようにも聞いておりますし、学者の方からもいろいろな御指摘があったように聞いております。

吉川(赳)分科員 内外といっても、それは司法の側の立場にある方たちですよね。これは、さっき言ったように、やはりある程度国民の生活にかかわっていることなんですね。

 例えば、次回の算定に、もうちょっと幅広く意見を聞くだとか、離婚された親御さんたちに話を聞くだとか、生活のレベルをしっかりともうちょっと見てみるとか、ほかの省庁も絡ませて考えるとか、そういった考えは現在最高裁として持っておりますか。

手嶋最高裁判所長官代理者 次回の改定につきましては、改定されることになった場合には、御指摘等も踏まえまして、最高裁判所としても必要な協力をしてまいりたいというふうに思っております。

吉川(赳)分科員 ありがとうございます。

 子供にかかわることでもありますので、文科省ですとかそういうところとしっかりとこれはやはり協議をして、もう少し民主的に算定表を、重要な基準になっていることを先ほど答弁いただいたわけですから、次回の算定に関しては、ぜひそういった点を考慮していただくお願いを申し上げます。今、すばらしい答弁をいただきましたので、この件はここまでにしたいと思います。

 次でございますが、面会交流ということに関して少し法務省の方にお伺いしたいんですけれども、離婚後、親権を有しない親、これが面会交流をめぐって訴訟等に至るケースは現在ありますか。

小出政府参考人 具体的に何件という統計数字は持ち合わせておりませんけれども、そのような争いになる事案はあるものと承知しております。

吉川(赳)分科員 その中に、親権者、ふだん子供と生活をしている親権を持つ親がいて、片方が監護権を持っているというケースもありますか。ですから、わかりやすく言えば、私と嫁さんが離婚して、嫁さんが親権者で私が監護権者だった場合。しかしながら、思うように面会交流ができないというような。

小出政府参考人 具体的な事案として承知しているわけではございませんけれども、親権の所在と監護権の所在が分かれているときに、実際に監護している親に対して親権を持っている親の方が面会交流を求めるという事案はあるものというふうに認識しております。

吉川(赳)分科員 これは後々最後の質問につなげたいんですけれども、まず、この監護権が私は余り、今、現状として機能していないと思うんですね。

 そういった点も踏まえながらなんですが、例えば面会交流に当たって、これはしっかり、親権というものも一つの権利ではあるものの、面会交流というのも親権を有しない親にとっては重要な権利なわけであります。

 もちろんこれは、先ほど冒頭お話をさせていただいたように、DVとかこういう事案の場合はそもそも接触禁止ということになるわけでございますから、しっかりとまずこの監護権であるとか面会交流というものが行使できるように、少し法務省も、そしてまた我々も工夫が必要だと思うんですね。何でこういう訴訟が起きてしまうのかというものをしっかりと根本的に考えていかなければならないと思います。

 というのも、今、一例ではございますが、児童虐待と言われる事件においても、例えば、親権を有しない方の親が頻繁に面会交流を行っていれば防げたのではないかと思われるような事案が私はあるんだと思います。

 というのも、児童虐待も先ほどの離婚の報道と一緒で、実は児童虐待は、御存じのとおり、一番多いのはゼロ歳児ケース、これが五割を占めておりますから、離婚云々ということではないんでしょうけれども、ただ、やはりその中で、では加害者はというと、実母が加害者となっていることが半分ぐらいの事例なんですね。そして、その中に継父であるとか、さらには一人親の同居人ということがこの虐待の加害者になってしまうということが、これは報道等でもよく目につくわけであります。

 例えば、そういった事例に関しても、離婚といういたし方ない理由があって、それで、子供を育てていく自信があるんだということでもちろん親権を母親が得るわけですが、ただ、やはり子育てというものがいろいろある中で、さまざまな精神的な負担であるとかトラブル、こういったことで、こういった虐待が引き起こされてしまうわけです。

 ただ、やはりその防波堤としても、しっかりとこの面会交流というものの権利を保護していくことによって、例えば、ふだん一緒に住んでいないお父さんが月に一回子供の顔を見る、話すことによって、そういったものの発見にも私はつながってくると思います。

 これは、今後、どういう方策があるのか、立法府としても考えていかなければならないことだとは思いますが、現状、今訴訟があるというような答弁をいただいた中で、もう一点なんですが、離婚後の子供の学校行事という点でも幾つか、私、地元の方から、なかなかこれに参加ができないというようなことを伺っているわけです。

 例えばなんですけれども、例えば、親権を有しない方の父親、もちろん、これが子供の学校行事に出たいという場合、一番いいのは、親権を有する例えば元夫婦関係にあった方としっかりと話合いをして、じゃ二人で行こうというような形が最も私は望ましいのかなと思うわけです。

 ただ、やはりどうしても、まあ離婚も、先ほど大臣もいろいろな事例を見てきたということでございますけれども、別れたかみさんとはもう一言も話したくない、ただ、子供とは面会交流の権利があって定期的に会っていて、こういうケースもあるわけなんですよね。

 そうすると、じゃ、お父さんが、単独でと言ったらおかしいんですが、子供の運動会ですとかそういう行事に行った場合に、今、そのお父さんを受け入れるかどうかということは主に教育機関に一任をされているということをよく聞きます。

 言えば、例えば公立の場合はこれは基礎自治体になるんだと思うんですが、これは文科省として、そういった家庭、親権を有しないお父さんが学校行事に参加する場合の何か文科省としての方針的なものは現在あるんですか。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 父母が離婚した後であっても、子供にとっては父母のいずれもが親でございますし、一般論としては、父母の離婚後も父母の双方が適切な形で子供の養育にかかわるということは、子供の利益の観点からも重要なことであろうというふうに考えてございます。

 お尋ねの学校行事への参加につきましては、民法第七百六十六条の定める面会交流、その他の子の監護について必要な事項に該当するものと考えてございますが、同条におきましては、協議離婚の際には、面会交流等の子の監護について必要な事項については父母の協議で定めるということとなっており、学校としては、父母が合意した内容について、対応可能な範囲内においてこれを尊重して取り扱うということが基本であろうというように考えているところでございます。

 他方で、面会交流等に関する合意がない場合でありますとか、あるいは双方で意見が異なる場合、学校は、民法の同条の規定の趣旨を踏まえまして、父母の間での協議又は家庭裁判所の審判等によりその具体的な内容を決めるように求めるといったようなことも考えられるところでございます。

 いずれにしましても、父母の離婚後の子の養育のあり方に関しましては、このような方針で文部科学省としては考えてございますけれども、現在、法務省を中心に議論がなされているものと承知してございます。

 文科省としても、そうした議論も注視しながら、親権のない父母等に係る対応のあり方などについて、関係の教育機関等への周知を含めまして、今後の対応について検討をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。

吉川(赳)分科員 ぜひこれは早急に検討をしていただきたいと思いますが、そのほかにも、例えば別居中であるとか調停中、こういったケースもあるわけなんですよね。

 例えば、私が聞く話では、別居中に子供の運動会等のお知らせが一緒に住んでいる母親の方にしか来ないとか。それで、学校に問い合わせると、一家庭につき一つだというようなわけのわからないことを言われるということも地方の教育現場では今起こっているようなんですね。ぜひそういった点を踏まえていただきたい。

 そして、あともう一点重要なのが、先ほど前段お話をしたように、かといって、純粋に子供を思っている親権のない親、こういった皆さんの権利はしっかりと守るべきです。ただ同時に、やはり学校側も警戒するのは、例えばそれで父親が単独で来て、DVとかを行っていた離婚の事案だったらこれはまずいよねというような、学校側もそういったことの警戒というのはあると思うんですね。

 ついては、例えば離婚訴訟でDVの場合というのは刑事事件になるかと思うんですけれども、その際の接見禁止等の情報というのは教育機関との共有等は行われているんですか、現在。例えば、子供と接見禁止の、だから、片方の親権のない親がいるとしますね。例えば、そういう方が接見禁止なんですよというようなことは教育機関等に共有はされているんですか、学校側に。

小出政府参考人 突然のお尋ねですが、そういった、子供との接見を禁止するというような処分を命じた裁判書が例えば学校の方に送達されるというようなことは、制度上、なっていないのではないかと思います。

吉川(赳)分科員 要は、それをすればいいんですよ。それをすれば、この親子に関しては、学校側も、お父さんが単独で来たら気をつけなければならないとわかるわけじゃないですか。そうじゃない場合は、例えば夫婦の仲は相変わらず悪くたって、でも別に子供の行事には参加したって子供に危害はないな、こういったことの一個の判断基準になるわけですよ。ぜひそういった点も今後しっかりと進展をさせていただきたいなと思います。

 そして、きょう、面会交流の質問を幾つかさせていただきましたが、ちょっとまだ足りないんですけれども、あと五分ということでございますので、これはたびたび国会でも議論をされる議論なんですけれども、ちょっと大臣にいただきたいのが、共同親権でございます。

 これは御指摘のとおりでありますが、先進諸国ではほぼ導入をされていて、現状、今、日本ではされていない。そして、またさらには、二〇一一年の民法改正では、親権は子のための利益にある、こういった条文もつけ加えられたわけでありますが、親権は子供の利益ということを考えたときに、親の離婚ということだけで、単独親権という制度で、本当に私はこれが適切かどうかというのは疑問が残るわけなんですよね。

 確かに、さっき言ったように離婚もさまざまありますが、ただ、離婚調停というものがある程度、先ほど冒頭質問をさせていただいた養育費の金額等も決まって円満に終わった場合は、子供に関してはしっかりと共同親権の中で養育をするという選択肢も私はあっていいと思うんですね。

 もっと言うのならば、共同親権というのを一つの選択にして、もちろん単独親権というのも選択肢として残していいと思いますよ、ただ、やはり一つの選択として、共同親権というものは私は早々に我が国も整えていくべきだと思いますが、それに関して、大臣、感想ですとか今後の意気込みをお聞かせ願えればありがたいです。

森国務大臣 父母が離婚した場合の、この父母の双方がどのような形で子供にかかわるかという問題については、何よりも子供の利益を最優先に考えるべきというのが私の考え方でございます。

 この問題については、現在、家族法研究会で、法務省の担当者も参加して、父母の離婚後の子供の養育のあり方について検討を行っております。その中では、離婚後の面会交流の問題や、離婚後の、今ほど御指摘のあった共同親権か単独親権かというような問題も含めて、幅広く検討を行っているものと承知をしております。

 私から担当者には、家族法研究会の議論には積極的に参加をするように申しつけているところでございますので、法務省としては、引き続きこの問題にしっかりと取り組んでまいります。

吉川(赳)分科員 済みません、大臣の答弁をいただいたんですが、森大臣として、さまざまな、弁護士としても離婚訴訟を担当、また見聞きしてきた中で、共同親権というものはあるべきだと思いますか、それとも共同親権というものは子の養育に関して適していないとお考えですか。

森国務大臣 大変重要な御質問をいただいたと思いますけれども、法務大臣として、今家族法研究会において議論されている事柄について言及することを差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、法務省の担当者を積極的に参加をさせて、しっかりと議論をさせてまいる所存でございます。

吉川(赳)分科員 ありがとうございました。

 きょう通達していた、子の養育費の算定表と共同親権と面会交流ということに関してはこれにてということなんですけれども、もう一問用意していたんですが、もうこれは答弁をいただけないので、ちょっと触れたかったのが、少年犯罪における第三種少年院の位置づけであるとか学習障害ですとか認知機能障害、こういったものの対応に関して少しお伺いをしたいなと思っておりました。

 端的に言ってしまうと、これは、単純犯罪ではなくて、認知機能障害等から少年犯罪が起こり得るケースがあると思うんです。

 これは、こういう医療少年院等で治療を開始する時点では再犯の防止というのは有効なんですけれども、ただ、犯罪自体の防止にはつながっていないなというような感じがするんですね。そこで、この認知機能障害の少年犯罪の事案等を学校教育現場にしっかりと共有ができているのかというような質問をしたかったんですけれども、答えていただけますか。

あべ主査 申合せの時間が来ておりますので、御協力いただき、答弁は簡潔にお願いいたします。

大橋政府参考人 少年院におきましては、障害又はその疑いのある者に対して、在院者の特性に応じた個人別の矯正教育計画を策定して処遇をしているところでございますけれども、関係の外部の専門家あるいは教育機関の協力を得て、その充実を図ってまいりたいというふうに考えております。

吉川(赳)分科員 ありがとうございました。

 予防として学校教育との連携も重要だと思っておりますので、今後御検討ください。よろしくお願いいたします。

 終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて吉川赳君の質疑は終了いたしました。

 次に、山内康一君。

山内分科員 立憲民主党の山内康一です。

 きょうは、主に森法務大臣、そして外務省にもお越しいただいていますが、どれも外務省と法務省がオーバーラップする領域の質問ですので、大臣には恐縮ですが、最後まで聞いていただければと思います。

 まず最初に、日本の難民受入れの認定数について法務省にお聞きしたいと思います。

 日本の難民受入れ数、非常に少ないと言われておりますけれども、日本は現在どれぐらい受け入れているのか、そして、主要な先進国、例えばG7でいうと年間どれぐらい難民を受け入れているのか、法務省に伺います。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 国連難民高等弁務官事務所が令和元年六月に公表したグローバルトレンズ二〇一八によりますと、平成三十年の一次審査における難民認定数は、カナダが約一万六千四百人、フランスが約二万三千人、ドイツが約三万九千六百人、イタリアが約六千五百人、英国が約七千六百人、米国が約二万六百人となっております。

 なお、平成三十年の我が国の難民認定数は四十二名でございます。

山内分科員 森大臣、今お聞きいただいたと思います。よその国はほとんど万単位ですね。日本は四十二人。この状況をどのようにお考えか。

 恐らく、ほかの先進国であれば認められる難民を日本政府は却下しているんじゃないかなと思うんです。同じぐらい困難な状況に置かれている難民申請者も、日本で申請するとだめになって、恐らく、ドイツとかカナダに行くと受け入れられる、そういう状況があるんじゃないかと思います。この状況について、法務大臣の御所見を伺いたいと思います。

森国務大臣 我が国においては、難民、避難民の流入が国際問題化している欧州等の状況とは異なり、シリア、コンゴ民主共和国、アフガニスタンといった大量の難民、避難民を生じさせる国の出身者からの難民認定申請がそもそも少ないという状況にございます。

 また、他の国々において、どのような方がどのような事情を申し立てて申請を行ったのか等が必ずしも明らかではございませんが、難民認定数のみをもって単純に比較することも困難であると考えております。

 このような状況の中で、我が国では、申請内容を個別に審査の上、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を認定しております。また、条約上の難民とは認定できない場合であっても、本国情勢などを踏まえ、人道上の配慮が必要と認められる場合には、我が国の在留、庇護を認めているところでございます。

 法務省としては、引き続き、難民認定制度を適切に運用して、真に庇護を必要とする者を確実に保護してまいりたいと考えております。

山内分科員 シリアの難民とかリビアの難民みたいなそういった国の難民はどうしても旧宗主国とか近くのヨーロッパに行きがちですが、カナダを見ると、遠く離れていてもカナダには相当、難民申請者は行きます。日本に来ないのは、日本が厳しいということぐらいみんな知っているわけで、行っても受け入れられないだろうなと思って行かない部分も大変多いわけですので、こういう状況が国際社会においてどういうふうに見られているか。恐らく、国連難民高等弁務官も日本が余りにも少ないということは指摘しておりますので、ぜひ何らかの改善が必要ではないかと思いますので、御検討いただきたいと思います。

 続きまして、二番目、送還忌避者の実態について法務省にお尋ねします。

 この送還忌避者という言葉の定義と実態、人数等ですね、これについてお伺いします。

高嶋政府参考人 送還忌避者についてのお尋ねでございますが、この送還忌避者という用語は、法令上の用語ではなく、入管実務で用いている用語でございます。入管実務におきまして、護送官つき国費送還を行う必要がある、可能性がある者がどのくらいになるのかということを把握するために実務的に用いている、そういう用語でございます。退去強制令書が発付されたにもかかわらず、さまざまな理由で、みずからの意思に基づき、法律上又は事実上の作為、不作為により日本からの退去を拒んでいる者全般、これを指す用語でございます。

 お尋ねの数値でございますが、速報値ではございますけれども、まず、令和元年、昨年十二月末現在、退去強制令書の発付を受けて収容中の者は九百四十二人でございましたが、そのうち送還忌避者は六百四十九人であります。

山内分科員 法令用語ではない、実務的な用語だということをおっしゃいましたけれども、その中には難民申請中の者は含まれるのでしょうか。

高嶋政府参考人 お答えいたします。

 送還忌避者という実務上の用語の意味は、先ほど申し上げたとおりでございますが、退去強制令書が発付されているにもかかわらず、みずからの意思により退去を拒んでいる者全般を指すものでございます。

 この場合、難民認定手続をとっている者ももちろん含まれておりますが、難民認定手続はとっていても送還を拒否していない場合もございますので、難民認定手続中であるか否かによって用語を使い分けるということはしておりません。

 いずれにしましても、現行法上、難民認定手続中の者につきましては、入管法の規定により送還停止効というのがございまして、送還ができません。また、従来の運用上、難民不認定処分、難民を認定しなかったという処分をめぐって訴訟中の者につきましては、裁判を受ける権利に一定の配慮をしまして、送還を差し控えるなどしているところでございます。

山内分科員 二〇一九年の四月にパブリックコメントを行ったときの送還忌避者の中には、難民申請中の者は含まれていないと理解しています。今の御説明は、基本的には、難民申請をしていたり、あるいは裁判の途中の者は送還忌避者に含まれないということですね。それでいいでしょうか、そういう理解で。

高嶋政府参考人 お答えします。

 前提としての事実関係の整理でございますが、送還を忌避している者の中には、難民認定申請をしている者もおります。難民認定申請をしていない者ももちろんおります。ですから、送還忌避者の中に難民認定申請をしている者が含まれないということではございません。含まれております。

山内分科員 送還忌避者に難民申請者は含まれているということですね。わかりました。

 そうしたら、二〇一九年の四月の段階と解釈がちょっと変わっているということでしょうか。

高嶋政府参考人 申しわけございません。質問の前提としておりますパブコメについては今把握していないものですから、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

山内分科員 平成三十一年四月、出入国管理基本計画案へのパブリックコメントに対する法務省の考え方という回答がありまして、そこに、送還忌避者の中には現状は難民申請者は含まないものと認識しているという回答があったそうなんですね。それは変わっているということなんですかね。

高嶋政府参考人 大変失礼しました。

 御指摘のパブコメにつきましては、難民認定申請者につきましては、法律上、送還できません。これは先ほど御説明したとおりであります。したがって、そのパブコメの中で、文脈の中で言及しているのは、送還できる者の中で送還忌避者がということで説明をしているところでございましたので、送還忌避者には含めていなかったものということでございます。

山内分科員 今、法務省内で専門部会、分科会で検討されている資料の中には、送還の回避を目的とする濫用、誤用的な難民認定申請に対処するための措置という要望がありまして。

 確かに、難民申請を濫用している方が多いのは私も問題だと思います。実際、明らかに難民とは認められない人まで申請して、それで送還を回避しようとする、それは確かに問題なんですけれども、ただ、本当に、難民性というか難民として認められるかどうかの判断というのはかなり微妙というか、審査する側のよほどきちんとした情報に基づかないと、一部というか、仮に半分以上濫用者だとしても、例えば二割、三割、濫用者じゃない人が誤って送還されてしまわないようにしないと、生命と人権にかかわる問題ですから、この濫用者を防ぐための措置を余りぎりぎりやり過ぎると濫用者じゃない人まで一緒に濫用者扱いしてしまうおそれがあるということはあると思いますし、そもそも日本は諸外国に比べると難民申請は非常に厳しいということは明らかですので、そこはぜひ慎重にお願いしたいと思います。

 これについて、森法務大臣、何かコメントというか御所見をいただければと思います、濫用者の問題について。

森国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、難民条約の定義に基づき、難民と認定すべき者を認定しておりますし、人道上の配慮が必要な者は庇護を認めております。

 したがって、もとより、濫用者でない難民等を迫害を受けるおそれのある国に送還するようなことは行っておりませんということを御答弁申し上げたいと思います。

山内分科員 そういう濫用者じゃない人まで送還することが絶対ないように注意していただきたいと思います。

 それで、ひとつ、収容のあり方についてお尋ねしたいと思います。

 日本では収容期間の上限がないということなんですけれども、今、送還忌避者の中の収容者の中で、最長何年ぐらい収容されている方がいるんでしょうか。

高嶋政府参考人 令和元年十二月末の時点の数字でございますが、その段階で収容期間が最長の者の収容期間は七年三カ月間となっております。

山内分科員 七年三カ月収容し続けている。やはり問題があると思います。

 国によっては、上限のない国、ある国がありますが、大体、上限を設けている国は六カ月とか二年とか決めた上で裁判所が判断する、司法が判断するというところなんですけれども、日本の場合は、司法判断が入らず、出入国在留管理庁の判断だけで七年収容し続けているわけですね。これはやはり、どこかで司法的な判断が入らないと、入管行政だけで決めてしまっているというのは非常に問題があるんじゃないかなと思います。

 この点について、森法務大臣、御所見を伺えればと思います。

森国務大臣 退去強制処分は、入国審査官における審査、特別審理官による判定、法務大臣に対する異議の申出など入管法の定める慎重な手続を経て行われておりまして、退去強制令書が発付された者については送還可能なときまで収容することができるとされておりますが、この収容は、被収容者が退去強制令書に従い出国することによりすぐさま終了する性質のものです。

 また、その処分に不服がある場合には、行政訴訟制度を通じて司法の審査を経ることが可能でございます。

 また、被収容者に対しては、健康状態その他の諸般の事情を考慮して相当な場合、仮放免を活用しております。

 このように、入管当局においては、現行制度の定める適正手続に従い、被収容者の人権に配慮した運用に努めているものと承知をしておりまして、私も実際、現場も視察してまいりましたが、それらの点に留意するように重ねて指示したところではございます。

 その上ででございますが、委員御指摘の収容のあり方のさまざまな諸問題が指摘されておりますので、昨年、収容・送還に関する専門部会というものを設置させていただきました。こちらで、有識者の方々に、ただいまのような御指摘をいただいた観点を含むさまざまな観点からの御議論をまさに今いただいているところでございますので、その専門部会における御議論の結果も踏まえて、必要な検討を行ってまいりたいと思います。

山内分科員 検討中なことは承知しておりますが、ぜひ人権に配慮した運用をお願いしたいと思います。

 今、大臣から仮放免のお話がありました。今、収容施設で、一部、拒食事案、ハンガーストライキが広がっていると承知しております。一人、餓死して亡くなった方もいらっしゃると報道されておりますが、背景には、仮放免許可がなかなか出ない、あるいは、出てもわずか二週間ぐらいになってしまっているという事情があると言われております。

 私も別に、凶悪犯まで仮放免しろとは決して言いませんが、ただ、本当に、仮放免を認めてもいいような軽微な理由で収容されている人なんかもいるんじゃないか。あるいは、例えばオーバーステイとかそういうところで必要以上に長期にわたる収容が行われている、そういった事例があるんじゃないかと思います。これについて法務省の御見解を伺いたいと思います。

高嶋政府参考人 退去強制制度といいますのは、法律に定められた退去強制事由が認められる場合におきまして、その外国人を収容した上で早期に、できるだけ早く送還する、こういう手続でございます。

 ただ、早期に送還するといっても、病気等のさまざまな理由によりましてすぐには送還できないようなそういう場合に、仮放免という手続をとって治療を受けさせたりする、いわば例外的な措置を講ずることがございます。

 したがいまして、仮放免というのはあくまでも、退去強制手続をとる、送還手続をとるために、それができない場合の例外的措置という観点から、我々は、出入国在留管理庁としましても運用をしているところでございます。

 餓死した被収容者の御指摘がございましたが、昨年六月にその件が発生して以来、各地の入管収容施設において被収容者が拒食を行う事案が多数発生いたしましたが、現在ではもう一桁まで減少いたしました。しかし、いまだに少数ながら拒食中の者がおります。このような拒食行為につきましては、被収容者本人の生命、健康上の問題がございますので、速やかにこれを中止し、あるいは栄養補給を受けるよう、被収容者に対する指導、説得に努めているところでございます。

 今お話ししましたように、仮放免というのはあくまでも例外的な措置でございます。仮放免を許可するか否か、仮放免の期間の長さ等につきましては、個別の事案ごとに、例えば、被収容者の健康状態、先ほどのハンガーストライキ、拒食行為をしている者等の関係におきましては、そのような者の健康状態、あるいは仮放免した場合の、家族がいるのか、そういったさまざまな事情を総合的に考慮して適切に決定することとしております。

 さらに、仮放免は今お話ししたように例外的な措置でございますので、仮放免の期間が満了した場合、仮放免の理由が消滅したような場合は、仮放免を取り消しまして再収容しております。その際にも、健康状態その他の関係する事情を総合的に判断しているところでございまして、必要に応じ仮放免期間を延長したりするところでございます。

 仮放免のあり方につきましては、先ほど大臣から答弁させていただいたとおり、昨年設置された専門部会において、論点の大事な一つとして議論、検討が進められているところでありまして、今後の議論の状況を踏まえつつ、必要な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

山内分科員 では次に、外務省の方に伺いたいと思います。

 無国籍状態の難民の認定についてお尋ねしたいと思います。

 ことしの一月二十九日に東京高裁で、無国籍の男性の難民不認定の取消しを求めた訴訟で国が敗訴いたしました。無国籍、事情があって国籍がなくなって、この人の場合は、旧ソ連圏のジョージアのアルメニア系の男性のケースですけれども、こういったケースがありました。

 今、日本は、無国籍者の地位に関する条約という条約に加入しておりません。それについて市民団体などからも批判の声があります。この無国籍者の地位に関する条約、加入の予定はないのか。あるいは、もし加入する予定がないとすると、その理由は何なんでしょうか。外務省にお尋ねします。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 無国籍者の地位に関する条約に関しての御質問ですけれども、原則として外国人を含む全ての者を対象としている市民的及び政治的権利に関する国際規約及び経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約と重複する部分が見受けられるところ、本条約、御指摘の条約を新たに締結する意義があるか等を踏まえ、本条約の定める権利の性質等を精査した上で慎重に検討する必要があると考えております。

山内分科員 余りやる気がなさそうなんですけれども、例えば、難民としてよその国に来た人たち、親は母国があるんですけれども、そこで生まれた子供は無国籍になりやすいんですね。難民から生まれた子供さん、よその国で生まれると、どこの国の国籍ももらえない、そういう状態に陥りがちですので、これは難民問題とも関係するんですけれども、人道的見地から加入を御検討いただきたいと思います。

 それで、ちょっと幾つか、時間がないのでスキップしまして、女性差別撤廃条約の選択議定書の批准についてお尋ねします。

 女性差別撤廃条約そのものは日本は既に一九八五年に効力発効済みでありますが、それの選択議定書の批准がまだになっております。

 二〇一五年十二月二十五日閣議決定、第四次男女共同参画基本計画の中で、「女子差別撤廃条約の選択議定書については、早期締結について真剣に検討を進める。」とあります。

 今、政府の中で、もう閣議決定した文書の中で早期締結について真剣に検討すると言っているんですけれども、それからもう四年たちますけれども、どんな検討状況になっているのか外務省にお尋ねします。

山中政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、女子差別撤廃条約選択議定書におきましては、個人通報制度が規定されております。同制度は、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度であると考えております。他方、女子差別撤廃委員会から、例えば、国内の確定判決と異なる内容の見解、通報者に対する損害賠償や補償を要請する見解、法改正を求める見解などが出された場合に、我が国の司法制度や立法制度との関係でどのように対応するか、他国に関する通報事例等も踏まえつつ検討する必要があると考えております。

 他国の事例については調査を続けているところであり、個人通報制度の受入れの是非について各方面から寄せられる意見等も踏まえつつ、引き続き、政府として真剣に検討しているところでございます。

山内分科員 昨年の参議院の法務委員会でも、その質問で、今、他国の事例を研究中ですという答弁だったと思います、外務省の方で。どんな検討状況になっているんでしょうか。具体的にいつまでに報告書を上げるとか、いつまでに提言を出すとか、そういうスケジュール感というのはあるんでしょうか。

山中政府参考人 他国の通報事例の検討につきましては、例えば、委員会がどのような事案を扱い、どのような見解を出しているのかといった情報や、また、国内制度において、通報者に対する損害賠償や補償を行う必要はないとの結論が出た事案に対して、委員会がそれとは異なる見解を示した場合に、各国が何らかの措置を行ったのか、行った場合にはどういった措置だったのかといった情報を収集し、さまざまな検討を行う必要があると考えております。

 個人通報制度につきましては、さまざまな論点、検討課題が存在しますところ、今後の見通しについてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしましても、引き続き、政府として真剣に検討してまいる所存です。

山内分科員 ぜひ真剣に検討すると同時に、いつまでにというか、もう多くの、国際社会からも勧告が出されておりますし、日本の市民団体でも、早く批准をすべきだという意見もあると思います。それから、女性差別撤廃条約の勧告には法的拘束力がないというふうに理解しているんですけれども、そういった件も含めて早目に結論なり事例研究の結果を出していただきたいと思います。

 それと、ちょっと時間がなくなってきたので、最後に森大臣にちょっとお伺いしたいことがありまして。

 内閣府の男女共同参画局のホームページを見ると、女子差別撤廃条約なんですね。女性差別じゃなくて、女子差別撤廃条約。これはもうやはり、女子というよりも女性の方がいいんじゃないかなと個人的には思います。英語で言うと、差別に対する、ディスクリミネーション・アゲインスト・ウイメンですから、別に女の子じゃないんですね、女性ですね。

 普通、女子というと、広辞苑でいうと、最初に出てくる定義は、女の子、娘です。二番目に女性というのが出てくるんですけれども、これはやはり、内閣全体の問題ですけれども、そろそろ、女子差別じゃなくて女性差別に変えた方がいいんじゃないかなと思うんですけれども、法務大臣の御感想を承れればと思います。

森国務大臣 おっしゃるとおり内閣全体の問題であり、一番最初にそのように訳したということがありますけれども、所管外ではございますけれども、機会がありましたら少し議論してみたいと思います。

山内分科員 ぜひ議論していただきたいと思います。

 もう時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

あべ主査 これにて山内康一君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後七時十分散会


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