衆議院

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第1号 令和4年2月16日(水曜日)

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本分科会は令和四年二月十日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十五日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      土屋 品子君    葉梨 康弘君

      大串 博志君    城井  崇君

      宮本  徹君

二月十五日

 葉梨康弘君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和四年二月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 葉梨 康弘君

      井出 庸生君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    國場幸之助君

      杉田 水脈君    土屋 品子君

      山口  晋君    吉川  赳君

      大串 博志君    城井  崇君

      中川 正春君    吉田 統彦君

      渡辺  周君    宮本  徹君

   兼務 岬  麻紀君 兼務 山本 剛正君

   兼務 日下 正喜君 兼務 吉田 宣弘君

   兼務 田中  健君 兼務 吉良 州司君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   外務大臣         林  芳正君

   外務大臣政務官      上杉謙太郎君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局民事局長            門田 友昌君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澤田 史朗君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   原  宏彰君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           荻澤  滋君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    佐伯 紀男君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       曽根 健孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 渡邊  健君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 安東 義雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房政策立案参事官)         岡野結城子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    市川 恵一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  植野 篤志君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鯰  博行君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    安藤 俊英君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           道野 英司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         南   亮君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 田中 利則君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 町田 一仁君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

   予算委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     杉田 水脈君

  衛藤征士郎君     國場幸之助君

  城井  崇君     渡辺  周君

  宮本  徹君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     土田  慎君

  杉田 水脈君     古川 直季君

  渡辺  周君     吉田 統彦君

  赤嶺 政賢君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     柳本  顕君

  古川 直季君     山口  晋君

  吉田 統彦君     中川 正春君

  宮本 岳志君     高橋千鶴子君

同日

 辞任         補欠選任

  柳本  顕君     吉川  赳君

  山口  晋君     井出 庸生君

  中川 正春君     城井  崇君

  高橋千鶴子君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     岩屋  毅君

  吉川  赳君     衛藤征士郎君

  笠井  亮君     宮本  徹君

同日

 第一分科員岬麻紀君、山本剛正君、第二分科員日下正喜君、吉良州司君、第四分科員吉田宣弘君及び第六分科員田中健君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和四年度一般会計予算

 令和四年度特別会計予算

 令和四年度政府関係機関予算

 (法務省及び外務省所管)


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     ――――◇―――――

葉梨主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることとなりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和四年度一般会計予算、令和四年度特別会計予算及び令和四年度政府関係機関予算中外務省所管について、政府から説明を聴取いたします。林外務大臣。

林国務大臣 令和四年度外務省所管予算案について、その概要を御説明いたします。

 令和四年度一般会計予算案において、外務省予算は六千九百四億十三万八千円を計上しております。また、そのうち、四千四百二十八億二千百十九万六千円が外務省所管のODA予算となります。なお、そのほか、外務省関連のシステム予算については、デジタル庁所管分として百七十億一千七百十五万二千円が計上されております。

 予算案作成に当たっては、普遍的価値を守り抜く覚悟、日本の平和と安定を守り抜く覚悟、そして人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟、これら三つの覚悟を持って、対応力の高い、低重心の姿勢で日本外交を展開すべく、五本の柱を掲げ、めり張りをつけて、必要な予算を計上いたしました。また、新型コロナワクチンの普及支援などの喫緊の課題には、令和三年度補正予算も活用し、早急に対処していく考えです。

 第一の柱は、「コロナに打ち克ち、感染症対策を主導する」です。世界的な新型コロナ感染症の収束を始め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成を念頭に、多様な感染症対策の強化に向けて支援を実施します。

 第二の柱は、「人間の安全保障を推進し、地球規模課題でリーダーシップを発揮する」です。気候変動を含む地球規模課題への対応や、SDGsの達成に向けた取組を主導していきます。

 第三の柱は、「同盟国・同志国等と連携し、国際社会における普遍的価値を守り抜く」です。ODAの戦略的活用も通じて、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組を一層進めます。また、経済安全保障の推進、人権外交の推進、国際社会における法の支配の拡大の取組なども進めていきます。

 第四の柱は、「あらゆる外交ツールを用い、我が国への理解と信頼を強固にする」です。日本の政策、取組、立場に対する理解と支持を得るための戦略的対外発信の強化や、国際機関における邦人職員増強を始め、国際機関の戦略的活用にも取り組みます。

 第五の柱は、「デジタル化を進め、外交・領事実施体制を一層強化する」です。デジタル化の推進や在外公館の機能強化を含め、外交・領事体制の強化に取り組みます。さらに、在外公館等の新設及び外務省定員の七十四名純増に必要な経費を計上しています。

 以上が、令和四年度外務省所管予算案の概要です。

 葉梨主査を始め、委員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願いを申し上げます。

葉梨主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま林外務大臣から申出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。杉田水脈君。

杉田分科員 おはようございます。自由民主党の杉田水脈です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 初めに、一月三十一日より消息が絶たれていた、航空自衛隊小松基地のF15戦闘機のパイロット、田中公司一等空佐と植田竜生一等空尉が御遺体で発見されました。お二人は、極めて優秀なパイロットとして、皆から慕われ、信頼され、活躍しておられたとお聞きしました。謹んで哀悼の意をささげるとともに、御遺族の皆様に対しまして、心よりお悔やみを申し上げます。

 今日は、久々の外交関係の質疑でございますので、多岐にわたる質問をさせていただきたいと思っておりますが、まずは、現在非常に緊張が高まっておりますウクライナについて質問をいたします。

 外務省は、十一日、ウクライナ全土の危険情報を最も厳しいレベル4の退避勧告に上げ、在留邦人に速やかな退避を求めました。十一日現在の数字で恐縮なんですけれども、ウクライナにはまだ約百五十人の日本人がいらっしゃると承知しております。

 まずお尋ねしたいのは、情勢が緊迫しており、予断を許さない中、退避を呼びかけるだけで本当に全ての在留邦人の安全を守ることができるのかという点でございます。商用機が動いているうちに一刻も早い退避を促す必要があるのではないかと思いますが、現在行われている退避の呼びかけはどのようなものなのか、具体的な手段について教えてください。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、かねてよりウクライナの在留邦人の安全確保を最優先に取り組んできておりまして、一月二十四日にウクライナの危険情報を全土レベル3の渡航中止勧告に引き上げるとともに、在留邦人に対し、商用便を利用して早期に出国するよう呼びかけております。二月十一日には、ウクライナ全土の危険情報をレベル4に引き上げ、在留邦人に直ちに退避するよう勧告しております。

 具体的には、在ウクライナ日本大使館より、これまで累次にわたり領事メールを発出して、在留邦人の方々に避難を強く勧告してきたほか、数度にわたり大使館員総出で個別に電話連絡を行うなど、粘り強く退避を呼びかけてきております。加えまして、領事メールにて、出国先の入国要件等、ウクライナ出国者向けの情報を提供してきたほか、大使館において在留邦人からの個別の電話での相談や問合せにも対応してきております。

 引き続き、政府として、在留邦人の安全確保に最大限取り組んでまいります。

杉田分科員 ありがとうございます。

 全ての在留邦人の安全を確保していただきますよう、引き続きよろしくお願いいたします。

 また、この邦人退避に関しましては、アフガンの事例にも同様のことが言えるように、やはり情報収集、インテリジェンスが肝要かと思っております。退避を促す際には様々な手段を講じていただきたいんですけれども、現地で何が起きているか、何が起きようとしているのか、その情報収集に関しましても、しっかりと頑張っていただきたいとお願い申し上げます。

 また、大使館の退避に伴って、今後は大使館の機能を縮小していくとのことですけれども、この邦人の安全確保といかにこれを両立していくのかということについてお尋ねしたいと思います。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 在ウクライナ日本大使館は、二月十四日以降、不測の事態に備えまして、ごく少数を除き、館員を国外退避させることとしまして、これに伴い、大使館の機能を縮小しているところでございます。

 あわせまして、ウクライナ西部のリビウ市におきまして臨時の連絡事務所を設置いたしまして、この事務所においても一定の邦人保護業務に対応しているところでございます。

 引き続き、現地の情勢も踏まえながら、在留邦人の安全確保に最大限取り組んでまいりたいと思っております。

杉田分科員 ありがとうございます。

 先ほどの御答弁の中に、十三日に在ウクライナ日本大使館が在留邦人にメールで退避を呼びかけたという答弁があったんですけれども、このメール、私も拝見をいたしました。

 そのメールを読みますと、例えば、米国政府はとか、英国、ドイツ、カナダ、オーストラリアなどもとか、多くの大使館がなど、諸外国の対応が挙げられているだけで、このメールの中に日本政府としてどのように状況を判断して、どう対応を行うのかが書かれておらず、どこか他人事のような印象を受けました。

 あくまでも在留邦人に宛てた退避の呼びかけのメールであることは承知しておるんですけれども、このように、細かい部分から、日本は当事者意識を持っていないのではないかという印象が否めません。ロシアを含めた国際社会に、日本は北方領土があるから及び腰であるといった誤った印象を与えることがないよう、強い当事者意識を持って対応に当たるべきだと考えております。

 今回のウクライナ事案は決して他人事ではありません。ウクライナのロシアへの動きやNATO加盟国のスタンスや取組は、国際社会も注視しているだけではなく、台湾情勢を考える上でも非常に重要であります。台湾海峡も緊張が増しておりますが、万が一、近い将来、台湾有事が起こるようなことになれば、日本は尖閣諸島を始めとする沖縄離島などの日本の領土、領海を守らなければいけません。

 今回のウクライナ危機に対する日本の態度は、台湾有事の際の欧州の態度に直結します。邦人退避だけではなくて、あらゆる事案に対して緊張感を持った対応をよろしくお願いいたします。

 また、日本とウクライナは、一九九二年一月二十六日の外交関係樹立から三十周年を迎えました。国際社会と連携して、ウクライナへの支援を継続していただきたいとお願い申し上げます。

 現在、日本全国で新型コロナウイルスのオミクロン株が猛威を振るっております。これは、オミクロン株が非常に強い感染力を持つことが要因でありますが、多くの国民にとって、大臣も私も、今、山口県の県連なんですけれども、山口県の岩国市や沖縄県など、米軍基地の周辺で感染が広がり始めたという印象は否めないところであろうかと思います。

 日米地位協定第九条及びそれに関連する日米合同委員会合意により、米軍関係者は入管を通らず入国することが可能であり、在日米軍施設に国外から直接入ることができます。そして、検疫の責任は米軍が持つこととなっております。

 アメリカは、昨年九月以降、米国内でワクチン接種が進んだことなどを理由に、米軍関係者の出国時のPCR検査を免除し、十月以降、入国時の入場制限期間も、日本側が求める十日に縮小した上で、期間中も基地内を自由に動ける運用を行っていました。

 多くのアメリカ人は、十一月の下旬の感謝祭から始まるホリデーシーズンを大変大切にしております。日本人の感覚でいうお正月のようなもので、家族や親戚が一堂に会して食事やスポーツ観戦を楽しみ、また、感謝祭の翌日に行われるブラックフライデーではクリスマスプレゼントを購入する人でにぎわう、これが毎年恒例の行事であります。特に、外国である日本で暮らす米軍関係者の人にとっては、久々に本国の人たちと会える機会でもありますし、家族や親戚、友人との再会を楽しんだ後で日本に再入国したその米軍関係者の周辺から感染が広まったということは想像に難くありません。

 昨年十二月に大臣がラップ在日米軍司令官に電話で対策強化を要請し、今年の一月六日にはブリンケン米国務長官と電話協議を行い、在日米軍の基地からの外出制限の導入を含めた感染拡大防止に向けた対策の強化を求めたことは承知しております。

 しかし、国民や関係自治体からは、日米地位協定の見直しや改正を求める声も上がっております。ここは誤解しないでいただきたいのですが、私は決して反基地感情の話をしたいわけではありません。防衛力の維持向上は、単に軍事的な力のみならず、防衛施設が立地する地域住民の深い理解なくしては成り立ちません。

 せっかく岩国市などの米軍基地に対して非常に好意的な自治体がある中で、これまで築いてきた地元の自治体と米軍基地との信頼関係を守り続けるためにも、時にはアメリカに対して毅然とした態度を示していくことが必要ではないかと考えているのですが、日米地位協定の改正などについて、外務省の見解をお尋ねしたいと思います。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としましては、日米地位協定の見直しは考えてございません。日米地位協定は大きな法的枠組みでありまして、政府としては、事案に応じて効果的にかつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じ、一つ一つの具体的な問題に対応してきております。

 ただいま委員から御紹介もありましたように、今回の新型コロナ感染状況の対応につきましては、外務大臣から、一月に日米外相会談、あるいは日米2プラス2の機会を含め、米側ハイレベルに対して強く申入れをしてまいりました。また、同じく一月の日米首脳テレビ会談においても、両首脳間で本件に関して日米が緊密に連携することの重要性が確認されたところでございます。

 一月二十八日には、日米双方の保健当局も参加する形で、日米合同委員会の下に検疫・保健分科委員会を設立いたしまして、二月八日にその第一回会合を開催したところでございます。

 政府としましては、この分科委員会も活用しつつ、日米当局間における建設的な協議を通じ、今後の感染状況も注視しながら、本件感染防止対策の徹底及び地元の方々の不安解消に向けて、日米間での連携をより一層強化してまいりたいと思います。

杉田分科員 大臣を始め皆様の御尽力に改めて感謝を申し上げますが、繰り返しになりますが、防衛力と日米関係の維持のためにも、アメリカに対しても言うべきことは言うという姿勢で臨んでいただきたいと思っておりますので、引き続きどうぞよろしくお願いをいたします。

 次に、首脳会談及び閣僚会合についてお尋ねしたいと思います。

 先月行われた日仏外務・防衛閣僚会合及び日豪首脳会談、今月行われました日米豪印外相会合の会合及び会談後に出された共同声明を拝見する限り、日本語、フランス語、英語、いずれにおいても、例えば、東シナ海及び南シナ海の状況について引き続き深刻な懸念を表明したとか、四大臣は、国際秩序を損ない緊張感を高める、力や既成事実化による一方的な現状変更の試み及び威圧に対して強く反対した、香港における最近の状況及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深い懸念を共有したなど、明らかに中国を指していると思われる箇所にも、中国によるという名指しがされていないのですが、これは、会合及び会談中に中国というワード自体がそもそも出なかったのか、それとも、何かしらの配慮をもって共同声明ではこのような書きぶりになっているのか、お尋ねしたいと思います。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれの会談に際して発出された成果文書の内容は、相手国との文言調整を行った結果であります。

 その上で申し上げれば、いずれの会談においても、地域情勢について議論する中で、中国についてもしっかりと議論してきております。

杉田分科員 中国についてもしっかり議論をされているということなんですが、こういう声明の中に中国という主語が出てこないというのは、これは何かの調整によるものなのでしょうか。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれの会談に際して発出された成果文書の内容は、それぞれの会談の相手国との文言調整を行って定めております。

 以上が、成果文書の調整に至る経緯でございます。

杉田分科員 ありがとうございます。

 相手国などとの調整によってそのような文言になっているという御答弁をいただいたんですけれども、これは声明ではないんですけれども、日米の資料を拝見する限りは、中国によると書かれております。はっきりと書かれております。日米間においてはそのような調整が不要であったのかとお察しいたします。

 相手国との調整に基づいているであろうということは、ここは一定理解はいたしますけれども、一方で、隠す意図がないのであれば、一体何を指しているのか、誰による何を懸念しているのか、具体的に書かれる方がより分かりやすく、意味のある声明になるのではないかと思います。

 今後の首脳会談や閣僚会議等の際には、この点につきまして御検討いただき、国際社会に向けた日本のメッセージを明確にするためにも、中国に限らず、はっきりと対象を名指ししていただきたいとお願い申し上げます。

 次に参ります。

 日本政府が世界文化遺産登録を目指して新潟県の佐渡島の金山の推薦書を国連教育科学文化機関に提出をいたしました。

 これらの推薦書をめぐっては、外務省から推薦を懸念する旨の意見があったとの報道がなされたことがあり、国内から外務省に対して、特定の国に配慮しているのかといった疑念があったことも、これも事実です。

 登録の推薦が決まった以上、外務省として前向きに対応されるものかと思いますが、韓国政府が強制労働があったなどと批判していることについてどのように対処されていくのか、お聞かせください。

曽根政府参考人 お答えいたします。

 強制労働があったといった韓国側の主張につきましては、受け入れられないものでありまして、先般行われた日韓外相会談におきましても、林大臣から鄭義溶韓国外交部長官に対して遺憾であると改めて抗議をしたところでございます。

 我が国としましては、今後も、佐渡の金山の文化遺産としてのすばらしい価値がユネスコにおいても評価されるよう、韓国を含む関係国と冷静かつ丁寧な議論を行っていく考えでございます。

杉田分科員 これまでに、韓国は、韓国側の立場に立った、事実に基づかない歴史認識を主張するために、国際社会を巻き込んだ広報や、報道を使っての主張を繰り返してまいりました。自分は日本でひどい目に遭ったという証言をする方のインタビューをテレビで放送する、韓国の側の立場に基づいた歴史認識を教育の場で史実として教える、国際機関に訴えるなど、日本政府もよく分かっている過去の事例を踏まえ、細やかな目配り、そして素早い対応をお願いしたいと思います。

 先ほどの御答弁にもありましたが、今月十二日にホノルルで行われた日韓外相会談において、林大臣が日本の一貫した立場と事実に基づいて韓国側に発言されたと聞いております。事あるごとに機会を捉えて発信を続けていただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 また、この推薦をめぐる報道について、過去の世界の記憶を例に挙げた意見が散見されましたが、日本が主導し実現した世界の記憶の制度改革と世界文化遺産の登録審議過程は全く異なるものであるということを私からも改めて申し上げたいと思います。

 かつて、日本国内でも、記憶遺産と呼ばれていたことがあるので、少々誤解しておられる方も多いようですが、英語でメモリー・オブ・ザ・ワールド、まさに世界の記憶であります。世界文化遺産は登録をされリストへ掲載されるのに対し、世界の記憶は選定をされるなど、同じものではございませんので、このことが正しく周知されるよう、また、この呼び方も、記憶遺産というとどうしても混同してしまうと思うんですね。このように、世界の記憶事業のような形の呼称を用いる方が私は望ましいんじゃないかというふうに思っておりますが、国内に向けても丁寧な説明をしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 次に参ります。

 台湾の行政院は、今月八日、東京電力福島第一原発事故から福島県など五県産の食料輸入を禁止していた措置を解除すると発表し、今月下旬をめどに、十一年ぶりに輸入を解禁することとなりました。

 まずは、この間、粘り強く交渉を続けてくださった外務省を始め関係者の皆様の努力に感謝を申し上げます。

 一方、先月二十七日、五人の元首相が連名で欧州連合の欧州委員会委員長に送った書簡の中に、東京電力福島第一原発事故で多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみなどの表現があったことについて、環境大臣からは、福島の子供たちに放射線による健康被害が生じているといった誤った情報を広め、いわれのない差別や偏見を助長することが懸念されると指摘の上、表現は適切でないとの趣旨の抗議文が五人の元首相に送られたと承知しております。また、国会でも岸田総理はこの表現を適切ではないと答弁し、国内においては風評被害を払拭するための姿勢が示されましたが、本書簡は国外に対して送られたものであります。

 元首相五名の連名というのは国際的にも大きなインパクトがあるものかと思いますが、外務省として、この書簡による国際社会への風評被害払拭のためにどのような対応を行ってこられたのでしょうか、質問したいと思います。

渡邊政府参考人 先月、日本の元首相五名から欧州委員会委員長に対して、多くの子供たちが甲状腺がんに苦しみなどの誤った表現を含む書簡が送付された件に関しましては、外務省といたしましても、書簡が発表された直後に、欧州連合日本政府代表部から欧州委員長官房の補佐官に対しまして、書簡の誤りを指摘するとともに、正しい情報を伝達いたしました。

 また、今月十日には、上杉外務大臣政務官からフロア駐日EU代表部大使に対しまして、科学的なデータを示しつつ、書簡の記述の誤りについて説明をし、フロア大使からは、説明に対して謝意と理解が示されたところでございます。

 さらに、昨十五日には、岸田総理とフォン・デア・ライエン欧州委員長との電話会談の中で、総理から、書簡には科学的事実に基づかない誤った内容が含まれていることを説明いただきました。

 国際社会におけるいわれのない風評被害、差別、偏見を防ぐべく、適切に取り組んでまいります。

杉田分科員 ありがとうございます。

 外務省でも様々な手段を取っていらっしゃるということが分かりましたが、やはりこれは広まってしまってはいけないと思うんですね。やはり結果を出していかなければいけないというふうに思いますので、引き続き、誤った認識が国際社会に流布されることがないよう、報道等への対応も含めて、よろしくお願いを申し上げます。

 先ほど台湾のことに触れましたので、改めて台湾についてお話をさせていただきます。

 私は台湾が大好きで、コロナ禍以前は毎年のように台湾を訪問しており、現地の皆さんと双十節をお祝いすることを楽しみにしておりました。台湾の魅力はたくさんありますが、何より、現地の皆さんが日本を好きでいてくださる気持ちを感じる場面が多々あることを非常にうれしく思っております。

 今年の一月十一日、日本統治下の台湾に日本人として生まれた三名の男性が、戦後に本人の意思に反して日本国籍を剥奪されたことは不当だとし、現在も日本国籍を有していることの確認を求めた裁判で、原告の請求が棄却されました。原告が裁判で求めていたことはただ一つ、日本の国籍を有していることを確認する、それだけなんです。謝罪や賠償を求めるものではありませんでした。

 個別の判決について質疑を行うことはいたしませんが、彼らは、日本人として生まれ、日本語で教育を受け、日本人として戦火を生き抜きました。彼らは、日本人だったゆえに、戦後、辛酸をなめ続けてきました。政治犯の烙印を押され、原告の一人は、二年間監獄で拷問を受け、その後、政治犯収容所に入れられて、約七年半自由を奪われたそうです。それでもなお日本人であることを願い、国籍という人権と尊厳を裁判所に確認せざるを得なかった彼らの思いを想像すると、本当にいたたまれない気持ちになります。

 政治の責任として、彼らが日本の国策に翻弄され、本人の責任ではないところで国籍を変えざるを得なかった、そして、御高齢になった今でも日本人でありたいと願っていることに対して、何らかの配慮があってしかるべきではないかと考えます。日華平和条約に基づいて国籍が喪失されたことについては遡及できないにしても、例えば、改めて日本国籍の取得を希望するならば、日本の国内法において、その他一般の外国人よりもハードルの低い形で帰化を認めることができないのか、お考えをお伺いしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 平和条約により日本国籍を喪失した台湾出身の方が日本国籍を取得するためには、国籍法に定める帰化手続によることとなります。

 国籍法第五条に定める帰化の条件には、住所条件、生計条件等がございますが、日本で生まれた場合等、日本との間に一定の地縁関係がある場合や、日本人の配偶者であるなどの親族関係がある場合には、国籍法第六条以下の規定において、帰化条件が一部緩和又は一部免除されているところでございます。

 なお、ここに言う日本には、平和条約発効前の台湾は含まれないものと理解されております。したがいまして、ここで言う日本との地縁関係や親族関係がない場合には、一般の外国人の方と同様、国籍法第五条に定める条件を定めていただく必要がございます。

杉田分科員 御答弁ありがとうございます。

 ほかの方々と同じ形でなければ帰化ができないということなんですけれども、日本統治下の、確かに日本だった土地に日本人として生をうけながらも、現在の制度では日本で生まれたとみなされないことは、これは非常に残念だというふうに思います。彼らが何か悪いことをして国籍を剥奪されたというわけではないんです。条約や法律、制度の下に、彼らの日本人としてのアイデンティティーや誇りがむげにされているような気がしてなりません。

 決して帰化の条件を緩和するということを求めているわけではありませんが、このような訴訟が起こった背景を御理解いただき、制度の改正などについて御検討をいただきたいということをお願い申し上げまして、時間となりましたので、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

葉梨主査 これにて杉田水脈君の質疑は終了いたしました。

 次に、國場幸之助君。

國場分科員 自由民主党の國場幸之助です。

 質問の機会を本日はありがとうございます。

 まず、在沖米軍基地のコロナの検査体制について質問をしたいと思います。

 今、在沖米軍のオミクロン発生の際に、この検査体制の違いが大きな問題となっております。日本政府は、日本の措置と整合的になるように、抗原定量検査を強く要請しております。しかし、米国の方は、CDCとペンタゴンの方が定量検査より精度が劣る定性検査にこだわっておりますけれども、まず、その理由についてどのように日本政府は把握をしておりますでしょうか。

林国務大臣 在日米軍の新型コロナ感染症対策をめぐる課題は、感染症対策として速やかな対応が求められましたことから、これまで、昨年十二月二十二日の、私からラップ在日米軍司令官に対する申入れ、そして、一月六日の日米外相電話会談、一月七日の日米2プラス2の機会を含めて、アメリカ側に対して、感染防止対策の徹底及び沖縄を含む地元の方々の不安解消に向けた対応を強く申し入れてきたところでございます。

 その結果、在日米軍は、元々実施していた入国後五日目以降の検査に加えて、昨年十二月二十六日からは出国前の七十二時間以内の検査を、十二月三十日からは入国後二十四時間以内の検査をそれぞれ実施しておりまして、現在では計三段階の検査を実施しております。

 在日米軍においてはPCR検査又は抗原検査が実施されていると承知しておりまして、このうち抗原検査の場合については、より一層日本側の措置と整合的となるよう、抗原定量検査を実施するよう、今委員からもお話があったように、米側に説明、申入れを行ってきておるところでございます。

 これに対して在日米軍からは、PCR検査又は抗原検査を採用しているのは米国疾病予防管理センター及び米国防省の指針にのっとったものである、また、いずれの指針においても抗原検査は抗原定性検査のみとなっている、こういう回答があったところでございます。

 こうした回答を踏まえまして、新たに日米合同委員会の下に設置をされました検疫・保健分科委員会におきまして、日米双方の保健当局を交えて更に議論を深めていく考えでございます。

 この同分科委員会の第一回会合でございますが、二月八日に開催をされまして、日本側からは外務省及び厚労省から課長級等が、米側からは在日米軍司令部の医療部門のトップを含む代表者、さらに在京米大使館関係者等が参加して、日米双方が取っている措置の内容を確認しつつ、率直かつ建設的な議論が行われたところでございまして、今後更に議論を深めていく考えでございます。

國場分科員 林大臣、ありがとうございます。

 大臣が抗原定量検査を強く要請をし、その結果、日米合同委員会の場に検疫・保健分科委員会が設置をされたこと、これは前進だと思います。

 私は、ここで思い出すのは、平成二十七年の九月に日米地位協定の環境補足協定というものが締結されております。そのときには、日米そして国際約束の環境基準のうち、より厳しい基準を適用するという内容が合意されたと記憶しているんですけれども、今回のコロナ対策にしましても、これは、両国の国民の健康と命を守るという点に関しては、十分に合意できると思います。

 ですから、感染対応や環境に関しましては、日本のやり方、アメリカのやり方、それぞれ政府の指針というものがあることは理解しておりますが、より厳しい方を適用するというルールを、様々な、この日米合同委員会を含めてこれから協議を深めていくということでありますので、その中で、そういう新しいルールを確立することができないものなんでしょうか。

林国務大臣 在日米軍は、即応性の維持と同時にこの新型コロナウイルス感染症対策に万全を期す観点から、日本入国に当たりまして、先ほど申し上げましたように、三段階の検査を実施することとしたほか、施設・区域内での積極的な検査を実施するとともに、必要不可欠な場合以外は施設・区域からの外出を認めないといった全国一律の厳しい措置を三週間にわたって取るなどして、感染状況改善に努めてきたと認識をしております。

 米軍の組織、施設、運用などの観点から、全く同一の措置を求めることは現実的ではございませんが、今申し上げたような取組を踏まえて、現在、我が国と米側の取組は、大きな方向性においては整合性を保っていると認識をしておるところでございます。

 二月八日に開催された検疫・保健分科委員会の第一回会合では、先ほど申し上げましたように、外務省、厚労省、そして米側からは在日米軍司令部、このそれぞれの関係者が参加して、日米双方が取っている措置の内容を確認をしながら、率直かつ建設的な議論が行われたところでございます。

 我々といたしましては、日米当局間における建設的な協議を通じまして、今後の感染状況も注視しながら、感染拡大の防止や、何よりも地元の方々の不安解消、これに向けまして、日米間での連携をより一層強化してまいりたいと考えております。

國場分科員 検査の回数を増やしたり、そしてまた、行動のいろいろな制限も含めて総合的に感染対応をしている姿勢、また、そこの合意をもたらしたことは私は評価をしたいんですけれども、やはり、今後、感染症というものはこれからも出てきます。その際に、やはり私は、環境とこの感染対応に関しましては、より厳格な基準を求めていくという姿勢だけはしっかりと心に留めていただきたいなと思いますので、強く要請させていただきたいと思います。

 続きまして、那覇軍港におきまして、先週の週末、海兵隊による訓練が行われました。これは、私も沖縄県の那覇の出身でありますけれども、今まで、あの規模の訓練があったことは初めてだと記憶をしております。

 地元からは、復帰のときの五・一五メモ違反ではないのかとか、那覇軍港の施設の使用条件にしっかりと沿っているのか、こういった声もありまして、実際に沖縄県や那覇市の方からは強い抗議が出てきております。

 しかし、しっかりと地元の方に不安がないような安全性の確保と説明責任を果たしていきながら、実際の港湾を活用することで、しっかりとこの非戦闘員の退避を訓練することは、私は必要だと思っております。

 ですから、改めまして、この訓練の内容というものがこの主目的に沿っており、なおかつ、安全性といったものにも配慮しているという点についてのまず答弁をいただきたいと思います。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 本年二月八日から十三日の間に、那覇港湾施設におきまして、人道支援、それから非戦闘員退避等に関する訓練が実施されております。MV22オスプレイ、それからCH53Eなどの航空機、海軍の輸送艦艇、こういったものが使用されているということでございます。

 米軍におきましては、災害救援などにおきまして、人道支援、それから緊急時における外国からの民間人等の退避支援をその役割、任務の一つといたしております。

 一般的に、こうした活動を行う場合には、一時集合場所を指定した上で、車両などで空港、港湾まで移動した上で、航空機や船舶を用いて近隣国の安全が確保された場所に退避をするということでございます。

 このような状況を想定した訓練でございますが、訓練場などでも実施をされておりますけれども、より実際のオペレーションに近い形で空港や港湾を使用して行うということは想定をされております。実際に、日本本土でも、岩国飛行場などにおいて実施をされておるところでございます。

 また、自衛隊においても、定期的にこうした在外邦人等保護のための訓練は実施されているというところでございます。

 こうした訓練の実施に当たりまして、御指摘のように、公共の安全に妥当な配慮を払うということは当然のことでございます。私ども防衛省といたしましても、引き続き、米側に対して働きかけをするなど、地元の皆様に与える影響が最小限になるよう、適切に対応してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

國場分科員 ありがとうございます。

 今の答弁の中では、外国人も含めた退避についても、これは対象であるというふうに私は理解したんですけれども、そういうことだと思います。

 そこで、私は、国民保護について質問をしたいんですけれども、これは、米軍が、人道的支援や非戦闘員の退避といったものが訓練の主目的であるということは理解したんですけれども、それでは、我が日本政府は、この国民保護についてどのように、島嶼に生活をする沖縄県民、日本国民についての責務を果たしているのか、こういう質問に移りたいと思います。

 国民保護の在り方、これは、国民の保護に関する基本方針が閣議決定されたのは二〇〇五年の三月の二十五日です。その際に、唯一、県で明記されたのが、国の特段の配慮が必要であると明記されたのが、沖縄県だけなんです。あれからもう十七年たっておりますけれども、日本政府は、この沖縄県の国民保護について、どのような特段の配慮をしてきたんでしょうか。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、沖縄県における国民保護、とりわけ離島住民の避難につきましては、島外避難となる場合、輸送手段に制約があるという特有の困難さがあるものと認識しておりまして、政府としては、特に、輸送手段の確保の観点から様々な事態を想定し、平素から体制の整備に努めてきているところであります。

 また、有事の際の住民誘導等の主体となります地方公共団体におきまして、平素からの備えとしまして、関係機関や船舶、航空機等の輸送事業者との連携などの要素を盛り込んだ避難実施要領のパターンを策定していただくことが重要であると考えており、政府といたしましては、沖縄県に対し、このパターン作成の支援をきめ細やかに実施しているところでございます。

 さらに、沖縄県の国民保護に関しまして、輸送を始め、避難の適切な実施のための体制づくりに資するよう、輸送手段の確保等につきまして、関係省庁間で連携して必要な検討を実施してきておるところでありますが、今後とも不断にこうした取組を実施してまいりたいと考えております。

國場分科員 我が国は、海洋国家でありまして、四百十六の有人離島を持っている国でもあります。やはり、万が一の際に、大規模な自然災害や緊急事態のときにしっかりと離島に住む国民を守るということは、日本政府の大きな責任でありますので、その対応は強く求めたいと思います。

 そしてまた、国が必要な調整という、この国民の保護に関する基本方針の中に、自衛隊施設や米軍施設等の周辺地域における住民の避難については、これは国が必要な調整を行う、そのように明記をされておりますけれども、具体的にこの十七年間何をしてきたのかということについての答弁もお願いします。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊施設、米軍施設等の周辺地域における住民避難につきましては、国と地方公共団体の間で、平素から綿密に連携を図ることが重要であると認識しております。

 このうち、米軍施設・区域の周辺地域におけます住民避難につきましては、平成十七年の国民保護基本指針の閣議決定後、関係省庁で検討を行うとともに、米側と調整、協議を行い、その結果について、平成十八年九月に都道府県宛て通知を発出しております。これに基づき、例えば沖縄県国民保護計画におきまして、在沖米軍との連携に関する内容が反映されているものと承知をしております。

 また、防衛省・自衛隊につきましては、自衛隊周辺地域における住民の避難が必要となる状況を含め、あらゆる事態を想定の上、各種の訓練等を行うとともに、関係省庁や自治体との連携を平素から強化しているものと承知しております。

 政府といたしましては、引き続き、適時適切な情報提供の実施などを通じ、平素から綿密に連携を図り、地方公共団体が住民の避難に関する措置を円滑に講ずることができるよう対応してまいりたいと存じます。

國場分科員 ありがとうございます。

 沖縄県は、平成二十二年から平成三十一年まで、図上訓練三回、実動訓練二回行っております。その内容というものは、爆発物を持ったテログループによる立てこもり事案と、そして化学剤の爆発散布事案ということになっておりますけれども、しかし、沖縄のような場所に必要な訓練というものは、やはり万が一の上陸等の事案になったときに、離島の住民、日本国民、沖縄県民がいかに安全に退避することができるのか、そういう訓練内容だと思うんですね。

 そういった実践に即した訓練というものを、もちろん自衛隊が中心になるかと思うんですが、同時に、自治体であるとか航空や船舶といった民間の運輸の事業者の方々も当事者意識を持った、そういった環境をつくっていくことが大事だと思いますが、この点はどのような対策をしているでしょうか。

澤田政府参考人 お答えいたします。

 従来、国民保護訓練は、都道府県の訓練の実施状況の開きや訓練内容の固定化等の課題が顕在化しましたので、令和三年度以降の国重点訓練におきましては、全国を六ブロックに分けて輪番制で実施するとともに、これまで取り組めてこなかった、県境をまたぐような広域的な避難等の国民保護措置の訓練を国主導の下で実施するように見直したところでございます。

 そうした中で、九州ブロックの担当となっている令和八年度の訓練につきましては、ブロック内で調整をいただいた結果、沖縄県で実施する予定となっております。この訓練は特定の事態を想定したものではなく、また、沖縄県での訓練の具体の内容については現時点では白紙でございますが、議員御指摘のような、訓練の参加団体をどのようにするのか、避難の形態をどのようにするのかにつきましては、訓練が最大限効果的なものとなるよう、今後、沖縄県ともよく話をしながらしっかり進めてまいりたいと存じます。

國場分科員 ありがとうございます。

 最後に質問したいんですけれども、国民保護について。

 自然災害の避難計画には、自治体は、高齢者や障害を持った方を誰がどのように避難させるのかをあらかじめ把握をして、そして避難行動要支援者の名簿作成が市町村の努力義務になっているかと思います。これは内閣府と消防庁の指針であると理解しているんですけれども、私は、これは防衛省と申しますか、やはり国民保護のときにも有効に生かせる内容だと考えております。

 実際に、宮古島市の国民保護計画の七十九ページには、退避行動要支援者の支援班というものを設置をして、一人一人の支援プランというものを作ると文章は書かれておりますけれども、大切なことは実際になされているかという部分だと思います。

 沖縄県は、いろんな歴史的な中で、国民保護ということに対しても非常にセンシティブな地域であります。ですから、自治体の避難実施要領の計画というものは、沖縄市、豊見城市、石垣市、宮古島市と四市にしか作られておりません。これは全国で、残念ながら今一番低い回数になっておりますけれども、しかし、私、沖縄だからこそ必要なことだと思っております。

 ですから、これは政府も、やはり十七年前のしっかりとした内閣の指針がありますので、丁寧に、様々な情報を開示していきながら、その環境づくりに貢献していただきたいと思いますけれども、名簿の共有というものが今どのようになされているのか、この点についての答弁をお願いします。

荻澤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたとおり、国民保護事案においても、避難行動要支援者に配慮した住民避難、大変重要であるというふうに考えておるところでございます。

 消防庁では、市町村において、市町村国民保護計画作成、変更、また、平時から、いざというときに備えた避難実施要領パターンの作成を行っていただいておりますけれども、その参考になるように各種資料をお示ししているところでございます。

 その中で、国民保護事案の発生時に、市町村が住民の避難誘導を行っていただくわけでございますけれども、こうした配慮を要する方々について、しっかり所在を把握するというためにも、避難行動要支援者名簿を活用することが重要であるということをお示しし、自治体向けの研修会でございますとか、都道府県の担当課長会議で周知をしているところでございます。

 今後とも、避難行動要支援者名簿の活用、また避難の実効性確保も含めて、しっかりと支援をしてまいりたいというふうに考えております。

國場分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。

 続きまして、ウクライナ情勢についての、邦人保護について何点か質問をしたいと思います。

 十四日のNSCの場におきまして、日本人の保護について遺漏のない対応をしてほしい、そういう総理の指示があったと報道で見ております。

 今も現地にいる日本人が残っておりますが、今週にも航空便の運航停止が行われる可能性もあり、陸路による避難の可能性というものも模索していかなければならない時期に入ってきていると思います。

 隣国のポーランドとの連携も含めて、そして過去、日本もイラクやアルジェリアやバングラデシュや南スーダンや、また昨年のアフガニスタンも含めて、いろいろな邦人保護の様々な経験や教訓というものを学んできていると思います。

 それらを踏まえて、今回のウクライナの邦人保護について、どのように今取り組んでいるんでしょうか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、かねてよりウクライナの在留邦人の安全確保を最優先に取り組んできてまいりました。

 一月二十四日に、ウクライナの危険情報を全土レベル3の渡航中止勧告に引き上げるとともに、在留邦人に対し、商用便を利用して早期に出国するよう呼びかけております。

 二月十一日には、ウクライナ全土の危険情報をレベル4に引き上げ、在留邦人に直ちに退避するよう勧告したところでございます。

 具体的には、在ウクライナ日本大使館より、これまで累次にわたり領事メールを発出して、在留邦人の方々に退避を強く勧告してきたほか、数度にわたり大使館員総出で個別に電話連絡を行うなど、粘り強く退避の呼びかけを行ってきております。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は外務省にとって最も重要な責務の一つでございまして、委員御指摘のとおり、外務省といたしましては、アフガニスタンからの邦人退避と過去の退避事例も踏まえ、あらゆる事態に適切に対応できるよう、様々な方策を検討しているところでございます。

 引き続き、政府として、在留邦人の安全確保、最大限取り組んでまいりたいと思っております。

國場分科員 今は、在留邦人の商用便を活用した早期の避難というのが大きな方向になっているかと思いますけれども、やはり、商用便がいつ止まるのか、これも分からない状態だと思います。その際に、商用便を活用しなくても退避できるような状況というものは具体的にどのようにシミュレーションされているのか。そして、アフガニスタンのときにも、現地スタッフをいかに退避させていくのかということが大きな課題となっておりました。この点への配慮。

 そして、今、ポーランド国境付近のリビウに臨時の連絡事務所をつくって、キエフの方から移るという報道もありましたけれども、その際に、陸路でどうやって邦人の方々が移動することができるのか、こういったところにもしっかりとした配慮がなされているのかという点についてのコメントをお願いします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員から御質問のございました、大使館が雇用しております現地職員についてでございますけれども、個々の職員の意向、それから個別の事情も踏まえながら、雇用主として現地館員の安全確保に最大限努めていく考えでございます。

 委員から御指摘がございましたとおり、キエフ及びリビウ、それぞれに拠点を設けて取り組んでいるところでございますけれども、安全上の理由から、事柄の性質上、詳細についてはお答え申し上げることを差し控えたいと存じますけれども、現地の状況を踏まえて適切に対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

國場分科員 なかなか、内容を話をするのはセンシティブだということは理解をするんですが、今回のウクライナ、また昨年のアフガニスタン、そして日本にとりましては台湾海峡と朝鮮半島の有事の際にどうやって邦人を守っていくのか、このことも大事な議論であると私は考えております。

 過去の国会の議事録を調べてみますと、在韓の邦人に関しましては、二〇一七年の十二月五日に当時の安倍総理の答弁で、検討を行っているが、その具体的な内容はお答えを差し控えたいという答弁がありました。

 台湾海峡に関しては、有事の際の日本国民をどのように退避させていくのかということは、国会図書館で検索の協力をいただいたんですけれども、探すことはできませんでした。

 橋本龍太郎総理の回顧録の中には、若干そのことを検討したというふうには、中身は詳しく書いていなかったんですが、そういったことは文章はあったんですけれども、やはり私は、日本国として海外にいる同胞をいかに守っていくのか、このことは真剣にこの国会で議論していく時期に来ていると思いますけれども、朝鮮半島や台湾海峡についての邦人保護について、どのように今取組がなされているのか、その点についてのコメントをお願いします。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 海外に渡航、滞在する邦人の保護は外務省の最も重要な責務の一つでございまして、平素から、在外邦人の保護や退避が必要となる様々な状況を想定し、必要な準備、検討を行っており、邦人保護の強化を図っているところでございます。

 その上で、一般論として申しますと、邦人の退避が必要となる事態が発生する場合には、まず極力、商用定期便が利用可能なうちに、在外邦人の出国、出境又は安全な場所への移動の確保に努めることとなります。

 有事における我が国の個々の対応や計画につきまして、個別具体的な国、地域名を挙げてつまびらかにすることは、事柄の性質上、差し控えさせていただきますが、いずれにしましても、邦人の安全確保に万全を期するべく、政府として全力を尽くしてまいる所存でございます。

國場分科員 尖閣諸島についてお尋ねしたいと思います。

 私は沖縄県ですので、尖閣諸島に関しては、第十一管区、海上保安庁の方々、そして自衛隊の方々が、大変日々の厳しい任務を一生懸命に務めていただいていること、このことには感謝をしております。

 その上で、政治が何ができるのかということを考えたときに、私は二つのことが大切だと思っております。

 二〇一四年に、尖閣諸島は日米安保第五条の対象であると。このことの外交努力は大変な努力だったと思います。このことは敬意を表したいんですけれども、やはり尖閣諸島の領有権というものを国際社会に、特にアメリカに認めてもらう、そのための努力をしていく。これは、中華民国、台湾との歴史的な経緯もあったかもしれませんが、いろいろな課題をクリアしながら、私は目指すことが大事だと思っております。

 そして、もう一つは、原統括官には何度も質問して申し訳ないんですけれども、尖閣諸島は、一八九五年の一月の十四日の閣議決定はあるんですが、法的な根拠がないんです。やはりこれは、沖縄振興特別措置法の中に、有人離島三十七、無人離島十七の指定がありますけれども、そこに尖閣も加えるべきである。中国は、領海法によって尖閣を自国の領土として、法的な措置があるんですね。法治国家の日本として、何で尖閣には法的な根拠がないのか。

 私は、この二つは政治の責任としてやらなければいけないと思うんですが、それぞれ答弁をお願いします。

岩本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず私の方からは、冒頭ございました、尖閣諸島とアメリカとの関係についてお答えさせていただきます。

 我が国固有の領土である尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題は、そもそも存在していないというのが我が国の立場でございます。

 その上で、米国政府は、尖閣諸島に関する日本の立場を十分理解し、尖閣諸島をめぐる情勢について、我が国の側に立って緊密に連携していくとの立場であると理解しております。

 このことは……

葉梨主査 簡潔にお願いいたします。

岩本政府参考人 先月実施されました日米首脳テレビ会談においても、日米安保条約第五条の尖閣諸島への適用を含む、日本の防衛に対する揺るぎないコミットメントが表明されていることからも明らかであると考えております。

 また、本年一月七日に行われました日米2プラス2……

葉梨主査 簡潔にお願いをいたします。質疑時間、終了しております。

岩本政府参考人 分かりました。

 においても、日米安保条約五条の尖閣諸島への適用等が再確認されております。

 したがいまして、日本としましては、アメリカと固く結束しておりまして、引き続き連携していく旨が確認されております。

葉梨主査 内閣府原統括官、極めて簡潔にお願いします。

原政府参考人 お答えいたします。

 先生とはるるこの話をさせていただいておりますけれども、現状におきまして、指定離島に尖閣を指定するということにつきましては、様々な経緯、制度等々から、慎重な検討が必要だと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上でございます。

國場分科員 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて國場幸之助君の質疑は終了いたしました。

 次に、渡辺周君。

渡辺(周)分科員 立憲民主党の渡辺でございます。

 まず、もう既に質疑されていると思いますが、最初に、ウクライナ情勢につきまして伺いたいと思います。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、二日前、十四日に、ロシアによる侵攻は十六日に行われているとの情報を得ている、我々はこの日を連帯の日とするとして、国外に退避している政府の要人や経済界の要人に帰国を促して、そしてそこで国家として連帯をするというような声明を発表しています。

 十六日、ウクライナと日本の間にはマイナス七時間ですから、今ちょうど午前三時、ウクライナは未明と思いますが、今現状はどうなっているのか、そのような緊張した兆候は、状況は今どのように続いているのか、その点について最新の状況を教えていただけますでしょうか。

林国務大臣 バイデン、アメリカの大統領とロシアのプーチン大統領が、共に、外交的な取組を継続する用意がある旨、表明をされております。ロシア国防省がウクライナ国境周辺地域の部隊の一部撤収を発表するといった動きがある一方で、バイデン大統領は、引き続きロシア軍によるウクライナ侵攻の可能性が明確に残っている、こういうふうにも述べられております。

 我々といたしましては、引き続き予断を許さない状況が続いていると認識しておりまして、高い警戒感を有し、懸念を持って注視をしております。

 また、我々として、日本としては、ウクライナの主権及び領土の一体性を一貫して支持しております。昨十五日でございますが、岸田総理がゼレンスキー・ウクライナ大統領との間で首脳電話会談を行って、そのような日本側の立場を伝達したところでございます。

 引き続き、G7を始めとする国際社会と連携し、適切に対応してまいりたいと思っております。

渡辺(周)分科員 確かに、ロシア軍が一部、演習を終えて撤収を開始したと。実際、動画では、タンクが、戦車が、車両、貨物に載せられて撤退する様子などが、わざわざ公開しているわけなんですけれども。

 実際、今大臣おっしゃったように、ロシア軍が一部撤収したということが、いわゆる緊張緩和の一部として捉えるのか、それとも、今バイデン大統領の言葉を言及されましたけれども、引き続き予断を許さないということであるのか。

 日本独自として今どう判断しているか、その点については、大臣、再度御答弁いただけますでしょうか。

林国務大臣 我々といたしましても、先ほど申し上げましたように、引き続きやはり予断を許さない状況が続いている、こういう認識を持っておりまして、高い警戒感を有して、懸念を持ってこの状況を注視しているというのが現在の状況でございます。

渡辺(周)分科員 ロシアによる侵攻は十六日に行われているとの情報を得ている、もう今日の話なんですよ。そうすると、今のところは際立った、今日中に何か起きるというような切迫した危機は、日本としては今どう把握しているかということを私は伺いたいんですけれども、そこはどうですか。

 アメリカのオースティン国防長官が、十五日から、ベルギー、ポーランドとリトアニアを訪問する。ドイツの首相も、プーチン大統領と会い、ロシアに行って、そしてウクライナに行く。そうした中で、様々な、ロシアのラブロフ外相も、対話の継続を提言しているということをあえて国民に公開するような形で、まあ、対話の継続を提言しているわけなんですが、国際社会ができるだけ和平に向けて緊張緩和のために取り組む中で、しかし、あのロシアのことですから、正直言って分からない。何よりも、ロシア政府も、一部の大使館職員をキエフから退避させている。こういうものを見ると、どういう可能性があってもおかしくない、そう思わざるを得ないんですけれども。

 今日中に何かが起きるということについては、どうなんでしょうか。ゼレンスキー大統領の、発信をした二日前に比べて今の状況はどうなっているか、その点についてはいかがですか。

林国務大臣 渡辺先生おっしゃったように、今、現地時間の朝三時ということでございます。ゼレンスキー大統領がおっしゃったことは、十六日ということですから、まだ十六日は三時間しかたっていない、こういう状況でもございますので、まさに、そういった意味でも、引き続きやはり予断を許さない状況がまだ続いているという認識をしておるわけでございます。

渡辺(周)分科員 今も、國場先生の質問、質疑の中でありましたけれども、外務省が、十一日に、ウクライナ全土の危険情報をレベル4に引き上げた、邦人百五十人に退避勧告を促したということです。

 私が外務省のホームページ等で見たところ、昨年十二月の時点で、在ウクライナの邦人企業が五十七社、およそ二百五十人が滞在していた。今、直近の、先般の記者会見、官房長官でしたでしょうか、では、邦人百三十人ぐらいが今とどまっていると。百五十人に退避勧告したうちの、現在、十四日時点で確認されている在留邦人は百三十人。昨年十二月から比べれば半分になっていますが、実はゼロというわけではない。いわゆるレベル4として日本が退避を促したときから実は二十人ぐらいしか減っていないんですね。

 今現在、ウクライナにいる在留邦人は一体何名なのか。つまりは、そして、何人が国外に退避したか。アメリカや日本がキエフから連絡事務所を移したポーランドの国境に近い西部のリビウとは違って、国外に退避した邦人は今どれぐらいいるのか。その辺については、そういう数字はどうなっていますでしょうか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 何人が退避したかというのは、ちょっとその計測する時点の問題もございますが、一月時点から比べると約百名以上が退避をした状況で、現時点、二月十四日時点で確認されている在留邦人数約百三十名となってございます。

渡辺(周)分科員 その退避しないという理由は何か把握していますか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 残留する在留邦人の方々は、ウクライナ人の配偶者でいらっしゃったりですとか、現地の生活基盤がある方、現地に生活が根差している方々も多々おられると承知しております。

渡辺(周)分科員 それは、先ほどの國場委員とのやり取りの中でも、詳細についてはお答えを控えるということでしたけれども、ポーランドに近いリビウ市というところに、アメリカもそうですけれども、日本も領事部と臨時連絡事務所を開設して邦人保護に当たるということなんですが、退避しない、いろいろな事情で残る人に対して、この保護の体制というのは万全だということでよろしいでしょうか。五百キロ、キエフから離れている、約五百キロ離れている、東京と大阪ぐらいの距離ですけれども、そこに行って、首都から移転したことで、邦人保護の把握というのは、邦人保護ということの体制については万全な体制を取れているかどうか、そこはどうなっていますか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、在ウクライナ日本大使館でございますが、二月十四日以降、不測の事態に備えて、少数を除き館員を国外退避させることとしておりますが、機能は縮小しておりますけれども、引き続きウクライナ・キエフに大使館がございます。

 また、ウクライナ西部のリビウ市に臨時の連絡事務所も開設しておりまして、この事務所においても一定の邦人保護業務に対応しているところでございます。

 いずれにしても、万全の体制で臨めるよう取り組んでいるところでございます。

渡辺(周)分科員 それで、先ほどもちょっと言及されていましたけれども、商用機が飛んでいる間にできるだけ退避してくれということです。

 もう既に十二日の日に、KLM航空、オランダ航空、フランス系、今フランスと合併したらしいんですが、KLM航空がウクライナ便の運航を当面停止するということを発表しました。

 商用機が今後、周辺国、ヨーロッパからの便あるいはアジアからの便が同様の措置を取る可能性も当然考えられるわけなんですけれども、こうした航空会社が、万が一の場合に対して、かつてイラン・イラク戦争のときだったでしょうか、たしか日本の商社マン等が取り残されたときに、トルコ航空機に、トルコが明治時代の恩返しだということで、有名な話ですけれども、自国民を説得して、自国民は陸路で、トルコ国民は退避をさせて、日本人をトルコ航空機に乗せたという話がございました。これは和歌山県のエルトゥールル号の恩返しだとよく言われますけれども。

 例えば、他国に対して、万が一の場合、商用機に日本国民を何とか乗せてくれるかどうかというような確認でありますけれども、そういうふうなことは今、水面下ででも結構です、詳細は言わなくて結構ですが、万が一の場合は、邦人が脱出するときに何らかの既に検討は行っているということで理解してよろしいでしょうか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 個別具体的な国、地域名を挙げてつまびらかにすることは事柄の性質上差し控えさせていただきますが、いずれにしましても、邦人の安全確保に万全を期するべく、政府として全力で取り組んでいるところでございます。

渡辺(周)分科員 その場合、邦人保護、邦人救出のために政府専用機を派遣するということは検討されていますか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナにおきましては、今、一部の航空会社が運航停止をしておりますが、民間商用便がまだ運航されておりまして、在留邦人に対しては、民間商用便を含む最も安全な手段で直ちにウクライナから退避することを勧告している状況でございます。

 いずれにしましても、政府としましては、あらゆる事態に適切に対応できるよう、様々な方策を検討しているところでございます。

渡辺(周)分科員 ですので、別に、政府専用機を持っているわけですから、邦人救出だとか邦人輸送についてはこれまでも累次いろいろな形で議論をされてきた。そのために今度は防衛省の方から法案が出て、我々も説明を受けていますけれども、いわゆる日本人以外の方も輸送できるというように法改正をするということも我々は説明を受けているんですが。

 今、だから、邦人救出に対して、政府専用機による救出もこれは可能性としてあるということで理解してよろしいですか。そこら辺は別にはっきり言って構わないんじゃないですか。いかがですか。

股野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点も踏まえまして、政府としまして、あらゆる事態に適切に対応できるよう、様々な方策を検討しているところでございます。

林国務大臣 先ほど政府参考人から答えましたように、あらゆる事態に適切できるよう、様々な方策を検討しているということでございますので、今委員がおっしゃったようなことも踏まえて様々な方策を検討をしている、こういうことでございます。

渡辺(周)分科員 あり得るということで判断して、少し安心しました。

 それで、かつて、二〇一三年だったでしょうか、アルジェリアで日揮という、日本が進出している企業の方々がテロに遭って、大変たくさんの命を落とすというような事案がございました。そのときに政府専用機が事後派遣されたんですけれども、そのときに、私は防衛省でその前の年まで副大臣をしておりましたので、防衛省の人間が来て説明をしてくれました。どうしてアルジェリアのアルジェ空港に飛ばすことができたかというと、行ったことはないんだけれども、シミュレーターがあったんだと。つまり、行ったことはないけれども、離着陸の要はシミュレーションができていたということだったんですね。だから行くことができたと。

 ここで伺いたいのは、これはちゃんと通告していますので、その場合に、ウクライナ全土の空港に、キエフの空港とは言いません、ウクライナの国内にある、例えば国内の、例えば政府専用機が離発着可能な空港が幾つあって、そこで離発着に必要な、対応できるシミュレーションは、シミュレーターはあるのかどうか、そこはどうですか。これはちゃんと通告していますからね、私。

町田政府参考人 お答えさせていただきます。

 防衛省といたしましては、平素から、陸海空自衛隊は、在外邦人輸送に係る派遣命令、これが発出された場合には、速やかに部隊を派遣できるように、所要の部隊、アセット、これは政府専用機も含めまして、待機の態勢を取っているところでございます。

 今御指摘のございました自衛隊が運用している政府専用機のシミュレーターでございますけれども、これは各国の主要な空港について網羅しておるところでございます。さらに、必要に応じて対応する空港を追加するといったアップデートも適宜行っているところでございます。

渡辺(周)分科員 急速にウクライナ情勢は悪化する可能性がある、これはもう世界中口をそろえて、我が国もそういう危機感を持っているわけですから、万々が一の場合、いわゆる商用機が即座に運航を休止する、中止するとなった場合に、そうはいっても今百数十名の方々が残っている、いろいろな事情があって残っているけれども、やはり邦人保護の観点からして政府専用機が派遣される場合に、スムーズに対応できるように、外交的な根回しといいましょうか、当然、ウクライナに対する万が一の場合というところもそうでしょうけれども。

 それは実際、物理的に果たして航空機が、飛行機が離発着できるかどうかというようなことについて、非常に、日本としてはなかなかなじみのない、元々ウクライナに直行便が、日本の航空機が飛んでいないとか、かつて日本の政治家も行き来はしておりますけれども、そういう意味では商用機を使って行っている、であるならば、ウクライナのキエフ以外の空港に万々が一集合して、脱出できなくなった邦人が救出されるということについては、万全を是非期していただきたいというふうに思います。

 もう一つ、ベラルーシについての危機意識を伺いたいと思います。

 もう既にアメリカは、アメリカ国務省が十四日にベラルーシ在住のアメリカ人に対して直ちに出国するように求めたということなんです。

 日本政府の在ベラルーシ日本大使館のホームページを見ますと、こう書いてあります。二月十日から二月二十日まで軍事演習が行われるということで、注意喚起。五つの軍事演習場、四つの飛行場で合同軍事演習が行われるので、近づかないようにするとともに、期間中の不要不急の外出は控えるよう、注意喚起。

 ベラルーシに関しては、日本は注意喚起をしているけれども、アメリカはもう二日前に直ちに出国するように求めているんですが、日本政府の、今合同演習を行っている、大変多くのロシア軍部隊が展開をしているベラルーシに対してはどのような危機意識を持っているか、また、あわせて、邦人保護についてはどうお考えか、伺います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 二月の十日から二十日にかけての予定で、ベラルーシとロシアの合同演習がベラルーシ各地において実施されております。

 委員御指摘のとおり、国境周辺地域においては予断の許さない状況が続いている。関係国による外交努力がございますけれども、非常に予断の許さない状況が続いているということでございます。

 そのため、先ほど委員からもお話ございましたけれども、在ベラルーシの邦人に対しましては、トラブルに巻き込まれないためにも、軍事関連施設、ウクライナ国境付近に近づかないようにするとともに、軍事演習の期間中、不要不急の外出を控える、その旨の領事メールを在ベラルーシ大使館から発出したところでございます。

渡辺(周)分科員 いや、ですので、アメリカは国民に対して退避を勧告しているんだけれども、日本は注意喚起ですが、日本はどうしますか。

 たしか、ホームページによれば、五十数名の方が、在留邦人の方がベラルーシにいらっしゃるんですが、そこについては今検討していますか。

徳田政府参考人 一月二十七日にウクライナとロシアの間及びウクライナとベラルーシの間の国境周辺地域におきまして、ロシア軍の増強等により緊張が高まっていることから、これらの国境付近に近づかないよう、在留邦人に対していわゆる広域情報を発出したところでございます。

 危険情報につきましては、邦人一般の安全確保の観点から、現地の治安状況等を総合的かつ客観的に分析して発出しているところでございます。

 引き続き、その時々の情勢に応じまして、適時適切に情報提供、注意喚起を行い、邦人の安全確保に万全を期してまいりたいと考えます。

渡辺(周)分科員 いや、ですから、アメリカは退避勧告を出したけれども、日本は別に退避はする必要はないということで今判断しているということでよろしいですか。それだけです、そこだけ聞いている。

葉梨主査 徳田審議官、簡潔に。

徳田政府参考人 繰り返しになりますけれども、情勢に応じて適切に対応しております。

渡辺(周)分科員 大臣、どうですか。アメリカはベラルーシにいるアメリカ人に対しては退避せよと言っているのに、何で日本はそこまでの危機意識を持っていないんですか。大臣、いかがですか。

林国務大臣 今、政府参考人から答弁したような状況でございますが、一方で、先ほども答弁したように、予断を許さない状況は続いているわけでございます。

 アメリカの状況も承知をしておりますし、またヨーロッパ各国の状況等も注視をしていかなければならない、こういうふうに思っておりますので、在留邦人に対しては、先ほど申し上げた広域情報を出しておるところでございますが、適時適切に情報提供、注意喚起を行いながら、その時々の情勢に応じて臨機応変に対応してまいらなければならないと思っております。

渡辺(周)分科員 ちょっともう時間がないので、何か緩いやり取りをしていてもいかがかと思うんですが、やはり国民に対して、万全を期すから万が一の場合はすぐ退避するようにと、何かやはりもうちょっと、ワンランク危機感が切迫した情報提供をするべきなんじゃないかと思いますが。検討してください。

 それで、この質問の最後に大臣に伺いますが、G7財務大臣会合で十四日に共同声明を発表しています。ロシア経済に、侵攻した場合には、甚大かつ即時の結果をもたらす制裁を共同で科す用意があるということです。

 ただ、大臣がレシェトニコフ経済協力大臣等、ロシアと会談したときには、自民党内からも何か違和感が出ているような報道が今朝ありました。こんなときに経済協力の話なんかできるのかということなんですが。

 とにかく、前回、二〇一四年のクリミア併合の際には、査証の発給要件の緩和の協議停止だとかクリミア産品の輸入制限だとか、実害がなかったのではないかというような指摘もありました。

 既にガルージン駐日大使は、対ロ制裁は前向きの雰囲気醸成に逆効果だよということをあえて言っています。領土交渉を抱えている我が国にとって、この経済制裁、もしするとなれば、相当な覚悟を持ってなすべきだと思いますが、大臣、そこはいかがですか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、まずは、現時点では、我が国として、外交交渉による解決を強く求めておるところでございます。

 仮にロシアによる侵攻が発生した場合には、我が国としては、制裁を科すことも含めて、これは実際に起こった状況に応じて、G7を始めとする国際社会と連携して適切に対応していくことになるというふうに思っております。

 北方領土交渉への影響というお話も少しお触れになりましたけれども、これは仮定の話でございますのでお答えすることは差し控えたいと思いますが、領土問題を解決して平和条約を締結するというのは基本方針でございますので、引き続き粘り強く交渉してまいらなければならないと思っております。

渡辺(周)分科員 ですので、領土交渉があるから、二〇一四年のときの制裁はロシアに実害のない形で行われた、つまり、緩い制裁であったのじゃないかというような指摘もあります。

 反面で、今、国際協調、やはり力による現状変更は認めないという、西側がそろえて言う中で、日本だけが、それはもうドイツもそうです、天然ガスをロシアに依存しているから、そこは将来、全面対決は避けたいと。いろいろな国の思惑がありますけれども、相当実効性ある、ここにあるような、そこはやはり甚大で実効性のある何らかの制裁、西側とやはり足並みをそろえるべきだと思いますので、今後の、またこの点について議論をしたいというふうに思っています。これはもう要望です。

 最後に、台湾の問題、ちょっと時間がないのでたくさん聞けなくなりましたが、二月八日に台湾は、福島など五県産の食品について輸入規制緩和するというような発表をしました。静岡県のお茶は、ここから、要は、緩和の対象にならなかったわけですね。放射性物質検査報告書が必要だったのは東京、静岡、愛知、大阪だった、ところが、今回の緩和で、静岡以外は不必要になったけれども、静岡だけが必要とされたんです。

 私も、日本のモニタリングのデータだとか、あるいは台湾の厚生省に当たる衛生福利部食品薬物管理署というところのホームページを外務省から資料でいただいて見ても、基準値未満。台湾に対して科学的な説明を求めなければいけないんですが、なぜ静岡県だけ外されたのかということについて、まずこのことを伺いたいと思いますし、また、静岡県と岩手、宮城、山梨のキノコ類が新たにまた放射性物質の検査報告書が必要とされたんですが、この何か合理的な理由を聞いていますでしょうか、日本政府は。

岩本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘の、今回台湾側が公表した緩和案でございますが、台湾側が消費者、関係団体の意見なども踏まえて総合的に判断した結果という説明を受けております。

 一方で、御指摘の品目を含めて、日本産食品の安全性は科学的に証明されておりまして、今回のこの輸入規制措置緩和を含めて、科学的見地に基づいて全て早期に撤廃すべきというのが我が国の立場でございます。

 日本政府としましては、あらゆる機会を捉えて、残された規制の早期撤廃に向けて、より一層働きかけを強めてまいりたいと考えております。

渡辺(周)分科員 我が国の緑茶の輸出というのは今大変好調でございまして、一位がアメリカで、二位が台湾なんです。静岡県は、御存じのとおり県の代表する作物でありまして、県の作物別でもお茶は一二・六%なんです、生産が、県の作物の中で。鹿児島県に令和元年に初めて産出額で抜かれましたけれども、それまでは日本で一位だった。

 やはり、このコロナで大変厳しい消費動向にある中で、非常に輸出に期待するところが大きいんですが、確かに、台湾の今の世論調査を見ても、一月二十五日、輸入解禁が五四・六%反対、賛成派は三八・八%。TPPに加盟をするということの後押しをしたいということで、政治的な思惑もあって台湾はここまで緩和をしたんですが、しかし、日本を代表するお茶どころの静岡のお茶だけがいまだに放射性の報告書が必要だということなので、大変ショックを受けています。それは、親日国の台湾ですらそうなのだから、よっぽど日本は、まだ何か放射性の物質が残っているんじゃないか、そういうような風評被害になりかねない。

 もう一回聞きます。

 もうあと最後、大臣に伺いますけれども、これは私、政務三役の例えば派遣も含めて、何らかの形で、政治レベルでやはりちゃんと交渉していただきたいんです。科学的な根拠というのはもうこちらも示しているけれども、多分、まあ、消費者団体だとかそういう世論の中でまだ根強い反対があるという中で、正直、政治的判断が、総合的判断では政治的判断かと思いますので、その点についてどうですか。静岡のお茶に限らずですけれども、この輸入緩和を、撤廃するということについて、政府の取組を是非、最後に伺いたいと思います。

林国務大臣 この件につきましては、実は、私、農水大臣の時代からずっと取り組んできたところでございます。

 静岡のお茶についても、アニメのキャラクター等とも連携しながらいろいろな取組をされておられるということも承知をしておりまして、まさに、今までも、台湾交流協会等を通じて、規制の早期緩和や撤廃に向けた各種の働きかけを行ってきて、日本産食品の魅力と安全性を伝えるためのイベント、広報活動を行ってきたところでございますので、こうした活動を、我々も含めて、何ができるか、しっかり更に考えていきたいと思っております。

渡辺(周)分科員 是非、農水大臣も経験された外務大臣、四十年前に共に九段宿舎で青春を過ごした古い間柄でございます。個人的にまた陳情に行くこともあるかもしれません。是非、善処をよろしくお願いいたします。

 終わります。

葉梨主査 これにて渡辺周君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉良州司君。

吉良分科員 有志の会の吉良州司でございます。

 林大臣、まずは、メルボルンでのクアッド外相会合、そしてハワイでの日米韓外相会合、お疲れさまでした。

 私自身は、総理大臣だとか外務大臣を国会に張りつけておくということについては物すごい問題意識を持っていますので、本当はこういう形で時間をいただくのも気が引けるんですけれども、有志の会になって、質問時間が八分だったり十二分だったりということもあって、この三十分という時間をもらえたということで、ちょっと飛びつかせてもらいました。その辺は御容赦いただきたいと思います。

 そうはいっても、実は、質問通告をさせてもらいまして、昨日、事務方の皆さんと質問レクをさせてもらった際に、私が掲げた質問というのはほぼ全部アウト。アウトという意味は、とても正面から答えられない質問ばかりを並べていたということで、いろいろと事務方の人とも話し合った中で、政府として答えられないかもしれないけれども、私の方の問題意識として、議事録にも残し、そして外務省の皆さんにもきちっと聞いていただく、そういう思いで、多少、多少というよりもかなりの部分、私の独り語りの時間になるかもしれませんけれども、その辺は御容赦いただきたいと思っています。

 まず最初に、実は先日、二月三日の予算委員会において、北方領土というテーマを取り上げたんですけれども、実は、北方領土といいながら、前半の、貴重な八分の四分ぐらいを使って、ウクライナ問題の問題意識を披露させていただきました。

 ちょっと念のためにもう一回、その議事録が今ありますので読ませていただきますと、北方領土問題を取り上げようとしたきっかけは、実は、ウクライナ問題、ウクライナ決議案です、これを契機にあれこれ考えましたと。

 ロシアの真意は一体どこにあるのか。クリミアや東ウクライナは、歴史的に見れば、語弊があるかもしれないけれども、ロシアの領土であってもおかしくないのではないか。けれども、当時は、ソ連内共和国、国内共和国であったがゆえに、つまり、将来的にその国内共和国が独立しようなどとは想定していなかったがために、ソ連崩壊後、いろいろな問題が出てきている。

 議事録じゃなくて、私、補足させてもらうと、もし将来独立することがあり得るというソ連内共和国であったならば、私は、今の東ウクライナとクリミアの位置づけは元々違っていたんだろうという問題意識を持っています。

 もう一回議事録に戻りますと、さらには、NATOは、元々、ソ連とワルシャワ条約機構の軍事的脅威に対して欧州の平和と安全を守るためにつくられた同盟であるにもかかわらず、今次、ウクライナ問題では、ロシアとの、場合によっては軍事衝突もあり得るかもしれない、にもかかわらず、更に東方拡大を目指すゆえんは一体何なのか。

 それから、ウクライナ問題がロシアの東アジア戦略にどう影響を及ぼしてくるのか。結果的に我が国にどう影響を及ぼしてくるのか。さらには、中国が、このウクライナ問題を契機として、どのような国益を追求してくるのか。さらには、中国は、もしかしたら、米国が中間選挙を前に、対中国、対ロシア、二正面作戦を実行する余裕はとてもない、そういう足下を見て、一挙に台湾を狙ってくるのではないか。ただ、待てよ、よく考えたら、今年、中国共産党大会もあり、習近平氏も三期目を狙う。とてもじゃないけれども、また、準備も整っていないので、それはないだろうか。あれやこれや、商社マン時代の習性で、風が吹けばおけ屋じゃないですけれども、誰がもうかるのかと、あれこれ考えた次第です。

 もうちょっと聞いてください。

 我が国としては、中国とどう向き合っていくかというのが外交上最大の課題だ、そういう認識を持っていますが、その中で、ウクライナ問題の対応いかんによって、ロシアと決定的な関係悪化を招いてはいけない、また、これを契機にする中ロの更なる接近についても備えなければいけない、このような思いから北方領土を取り上げましたというふうに問題提起をさせていただきました。

 これに対して、実は、林大臣の答弁の冒頭、こういう発言がありました。先生の元商社マンらしい思い巡らせを、私も元商社マンとして今お聞かせいただいたところでございますと。それから答弁いただいたんですね。

 実は、先ほど読みました、時間が何と八分しかなかったので、はしょった質問があったんですね。どういう質問かといいますと、林大臣も元商社マンなので、外交交渉はもちろん、国際ビジネスの交渉において一〇〇対ゼロなんてあり得ないですよねと。

 交渉においては、譲らないものは絶対に断固として譲らないという覚悟を持って、けれども、かち取るべきものをかち取るために何かを譲るという腹は決めて、そこで、ある事項を譲りながら、かち取るべきものは必ずかち取る、これが外交交渉でもあり、私たちが経験した国際ビジネス交渉でもあり、一〇〇対ゼロというのはないというふうに思っています。

 これは質問通告はしていないんですけれども、前回聞こうと思った幻の質問として、大臣に、一〇〇対ゼロはないということを、御自身の御経験も踏まえて、また、今はもう外交の最前線に立っておられますので、そのことについて大臣の見解をいただければと思います。

林国務大臣 大変奥の深い御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 委員におかれましては、日商岩井時代にニューヨークに御勤務して、世界中の情報が集まってくるところで最前線におられた。私の場合は、たばこの原料を扱っておりましたので、比較的そういう農産物の、田舎と言うと恐縮ですが、中南米ですとかトルコ、ブルガリアあたりを行ったり来たりしておりましたが。

 そういう意味で、今お話を聞いておりまして、まず、一〇〇対ゼロの話の前に、過去どうであったか、そのことも私、実は、この間、非常に感銘を受けたわけでございますが、ロシアがかつてソ連であったときの思いというものを引かれながらこのお話をされたということで、やはり、我々、交渉を商社のときにしておりましたときも、今でもそうでなくてはならないと思いますが、自分が相手の立場であれば一体どういうことを考えて、本音で言うとどの辺りが譲れないものなのかということ、相手であったらどう考えるのか、これを知っておくことというのは大変大事な視点だろうということ。

 もう一つは、釈迦に説法ですが、昔の言葉で、愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶということですから、相手の立場を考えるときに、歴史的にどうであったかということを知っておくということはとても大事なことだ、こういうふうに思わせていただいたところでございます。

 そうした観点からすると、私の方が一〇〇で相手がゼロということは、相手の立場に立って考えれば、それはあり得ないだろうということに当然なるわけでございますので、そういう立場も考えながら、その上で、商社の時代と違うとすれば、なかなか金額で幾らというふうに決められないものがあるんだろうと。お互い、譲れない国益というものもあって、それを懸けて交渉するというところは少し違うところもあるのかな、そういうふうに考えております。

吉良分科員 ありがとうございます。非常に得心のいく答弁、見解をいただきました。

 癖として、常に、自分が相手だったらと。これはもう癖になっていて、本当に、相手だったらこう出てくるから、こっちはこう出てやろう、これが癖になっていますので、私なんかは、外交上も、今最前線に立ってはいませんけれども、そういう思いであれこれ考えるところでございます。

 そういう中で、私が一点指摘したいのは、多くの国会議員も、そして実は多くの国民も、事相手が中国だ、ロシアだとなると、これは、価値観というか、価値の違う、価値観外交でいえば、違った価値観を持っているとか、それからまた、強権又は独裁国家だとなると、そういう強権国家が主張する外交的主張、要望というのは全て悪だ、だから、こんなもの一歩も譲るな、一〇〇対ゼロでいいから、一〇〇主張し続けて全部取れ、こういう強硬論が横行するということに対して、私は非常に大きな実は危機感を持っています。

 強権国家であっても、冷静に考えたときに、その主張には、こちらがそれを受け入れるかどうかは別として、今大臣がまさにおっしゃったように、相手の立場に立ったときに、それはあり得るなという聞く耳が私は必要だというふうに思っているんです。

 一方、私自身も、日本外交のまさにコーナーストーンである日米同盟、日米関係、これはもう最重要だとは思っていますけれども、私自身の問題意識としては、トランプ大統領を誕生させてしまったアメリカ、そしてアメリカ・ファーストを掲げて以降のアメリカ、これは、正直言って、一〇〇%信用していいのかと。日本が自分たちの国益を守っていくために、常にアメリカについていく、これは危険であるとすら思っています。特に、イランの核合意からの離脱も含めて、明らかに国内向けのパフォーマンスで外交を展開している、そして、この中間選挙が終わるまでは民主党政権もトランプの幻影と戦い続けなければいけない、こういう状況にあるアメリカというものと完全に歩調を合わせていいのか、その結果、日本の国益を損なうようなことがあってはいけない、このような問題意識を持っています。

 ですから、そういう問題意識を持った上で、非常に漠としていますが、本来、ざあっと質問をしたかったものを独り語りするという中で、一つ、今、林大臣が、また日本の外交としてこのウクライナ情勢をどう見ておられるのか、その見解について簡潔にお聞きしたいと思います。

林国務大臣 ウクライナ情勢の現状認識ということでございます。

 バイデン大統領とプーチン大統領が、外交的な取組を継続する用意があるという旨を共に表明をされておられます。ロシア国防省はウクライナ国境周辺地域の部隊の一部撤収を発表する、こういう動きもあるわけでございますが、その一方で、バイデン大統領は、引き続き、ロシア軍によるウクライナ侵攻の可能性、これは明確に残っている、こうも述べられているわけでございます。

 我々としては、やはり引き続き、予断を許さない状況、これが続いているというふうに認識をしておりまして、高い警戒感を有して、懸念を持って注視をしているところでございます。

 当然、我々日本としては、ウクライナの主権、そして領土の一体性、これを一貫して支持してきておりまして、昨日の十五日でございますが、岸田総理が、ゼレンスキー・ウクライナ大統領との間で首脳電話会談を行われまして、こうした日本側の立場をお伝えしたところでございます。

 引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、適切に対応してまいりたいと思っております。

吉良分科員 ありがとうございます。

 今答弁いただいたことについては、反論しようがないというか、納得するところでありますけれども、私が先ほど言った、相手の言い分にも一理あるということについて、少し歴史的に振り返ってみたいと思うんです。

 歴史の専門家ではありませんが、ロシアは、古くはモンゴル、キプチャクハン国の支配を受け続けていた時期がある。タタールのくびきという言葉が残っているように、そのときの支配を受けたことについてのトラウマは残っていると思っています。

 さらに、これは多くの方が意識していないんですけれども、第二次世界大戦で一番多くの犠牲を出した国はどこか。これは実は、私は驚いたんですけれども、国会議員の中で安全保障に詳しいと言われている方に聞いたときに、日本でしょうという答えが返ってきて、私はもう本当に椅子から転げ落ちそうになりました。

 これはもう、ここにいらっしゃる方は全員御承知のとおり、独ソ戦で、当時のソ連、少なくとも二千万人以上、その後どんどん数字が膨れ上がっていますけれども、一応共有されているのは二千万人と言われています。ウクライナでいえば、当時のソ連ですから、今のロシアもウクライナもベラルーシも含んだ地域で二千万ですので、今のロシアだけというわけではありませんけれども、ロシアからしてみると、独ソ不可侵条約を破って攻め込まれてきて二千万の軍民の命が失われた、これは大きなトラウマだろうと思っているんです。

 それがゆえに、東欧諸国、ワルシャワ条約機構で、ある種、緩衝地帯としたように、ロシアからしてみると、さっき言ったモンゴルの支配、それから独ソ戦、それを考えたときに、やはり緩衝地帯がないと不安で不安でしようがない。逆に、窮鼠猫をはむじゃないけれども、敵対関係にある国境が接してしまうと、その方がリスクが高くなる。

 ちょうど東アジアにおいては、中国が何であれだけ乱暴を働く北朝鮮に肩入れするのか。それは、米韓同盟がある中で、米国と事実上国境を接したくないから緩衝地帯として北朝鮮を生かしているわけで、それを考えたときに、ロシアのやはり緩衝地帯が必要だということについては、ある程度の僕は理解が必要だと思っています。

 先ほどおっしゃったウクライナ領土、主権の一体性を守る、これは重要なことだと思っています。けれども、かといって、武力紛争が起こり、結果的にウクライナの人たちが犠牲になる、そして、その軍事紛争の影響が、ヨーロッパのみならず世界的な経済的混乱を招く、経済で苦しむ人たちが出てくる、そこまでして、ロシアからしてみると、緩衝地帯にしてほしいという思いで、今、ある意味では演習という名の下に威嚇をしているんだと思いますけれども、私がロシアの立場だったら、そこは一理あると私は思っているんです。

 繰り返しますけれども、ロシアの肩を持つとかそういうことではない。最終的には日本の国益を守らなければいけない。だけれども、同時に、ウクライナ、そこで軍事紛争が起こったときに、傷つくのは、命を落とすのはウクライナの人です。

 私は、アフガニスタンにしてもイラクにしても、ここ最近起こっている戦争というのは、ある意味、米国が正義を掲げて戦争をしかけ、そして、その国において多大な犠牲が出て、そして、イラクでいえば、フセイン政権を崩壊させ、バース党を駆逐したことによって、バース党がISに入っていき、ISがあの中東地域に多大な混乱をもたらし、犠牲を強い、多くのイラク人、それからシリア人を犠牲にし、かつ難民に追いやっている。

 このことを考えたときには、私は、絶対に軍事紛争を起こさない、そのためには、今言った、相手の立場に立って一理ある、そこを踏まえた対応が必要である、このように思っていますけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。

林国務大臣 ほかの国の状況や過去の状況等、比較対照にお使いになられながら、今の情勢の、客観的な情勢に加えて、相手がどういう意図といいますかポジションを持っているのかということを分析するということで、大変傾聴に値する御見解を披露いただいたというふうに思っております。

 我々、一般論になって恐縮でございますが、外交を行うときにはそういうことも頭の中に入れながらやっていくということでございますし、古典で孫子の兵法というのがございましたけれども、己を知り相手を知れば百戦危うからずという言葉があるわけでございまして、そうしたことで交渉をやっていかなければいけませんし、ある意味、私もそうですし、ブリンケン長官やほかのG7の外務大臣の皆さんともいろいろなお話をしますけれども、同じようなお考えなんだろうというふうに思っております。

 商社時代に最後の落としどころというような言葉をよく使っておりましたけれども、それをどこに見据えるのかというのは、今委員がおっしゃったような、いろいろなことに思いを巡らせて出てくるものではないかなというふうに思っております。

吉良分科員 日本の国益を考えながらのウクライナ対応、今回、日本にとっては、これだけ寒い冬、貴重なLNGをヨーロッパに融通するというようなこともしながら、ある意味、米国との同盟を重視し、そして、同盟国の同盟国、そういう友好国とのきずなを大事にし、ある意味では連帯を示すためにLNGを差し出していったんだというふうに思います。恐らく、これは、ヨーロッパが必要としているLNGの量から比べたら、正直言って量的には意味を成さない。けれども、連帯の意を示すということでは意味があるんだろうと思っています。

 サマワに自衛隊を派遣したとき、私はどう言っていたかというと、野党議員としては反対をすると。これは野党だから常に反対ということではなく、当時の、一国のリーダーとしての責任がない立場であれば反対をする、ただ、自分が総理であれば、やはり派遣を決定するだろうということを言っていました。その際に、私が自衛隊の皆さんに訓示をするのは、灼熱の地イラク・サマワで、日本海、東シナ海、南西諸島の防衛に当たってくれ、サマワで今言ったところの防衛に当たってくれということを訓示したと思っています。

 それだけ、今言った米国との関係、そして同盟国の同盟国との関係を重視してのLNGの供給だというふうに思っておりますし、それ自体は私は国益にもとることではないと、これは信じておりますけれども、ただ、私は、なぜここまで米国も、また米国をリーダーとするNATOも、ウクライナのNATO加盟の余地を残すというか、余地は私、残していいと思っているんです、今現在入る可能性が高いということを取り下げずに、武力紛争もやむなし、この考え方が分からないんですね。

 私が、今度はNATOの立場であれば、未来永劫、ウクライナをNATOに入れません、こういうコミットは、これはまたできないですよね。けれども、今の緊張状態を和らげる、しかも、コロナの時期で、世界経済がずっと傷んで、そのためにいろいろなところが傷んでいる、それを考えたら、少なくとも暫定的にこの場を収めるための妥協案を、私は米国なりNATO側から出してもいいと思っているんですね。

 一つは、中立国というのを促すという手もないわけではないと思いますけれども、私は、今言ったように、NATO、米国に対して、さっき言った一〇〇対ゼロではなくて、三〇か四〇は譲るという方策はないものか、それを日本政府から提案してはどうなのかと。水面下では、もしかしたらやっているかもしれません。

 というのも、冒頭に二月三日の問題意識として披露しましたけれども、日本にとってみれば、北方領土の解決があり、そして、化石燃料は今、目の敵にはされていますけれども、しばらくの間は化石燃料が必要、そういう中にあって、サハリンあり、ヤマルあり、このロシアとの関係を絶対に悪化させてはいけない。

 かえって、これをチャンスとして、ロシアから多くのものを国益として得る、このような戦略が必要だと私は思っているんですけれども、その妥協案の提示について、又はそれを踏まえた日本の国益について、これは最後の質問になると思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、バイデン大統領とプーチン大統領の間で、外交的な取組を継続する用意がある旨を表明をされております。クアッドで日米外相会談を行いましたが、やはりその場においても、米国は外交努力というのは最後まで継続していくというようなことの表明があったところでございます。

 そうした中で、我々として緊密に連携を取るというところまでは、私、ここで申し上げられることができるわけですが、具体的なことは差し控えさせていただかなければならないと思っております。

 その上で、先ほどLNGのお話がありましたけれども、このLNGというのは、もちろん、先ほど委員からお話ししていただいたように、欧州との連帯を示すという観点で行うわけでございますが、もう一つ、資源の上流開発投資を含めて、エネルギー安全保障確保の重要性、これを改めて想起をさせる契機になるものとも同時に考えておるわけでございますので、そういった意味でも、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して、適切に対応していきたいと考えております。

吉良分科員 ロシアとの決定的な亀裂を避けたいという思いと、天然ガスまた石油等をロシアに依存している、日本は依存し切っているわけではありませんけれども、そういう意味ではドイツとある意味では近い状況にあるというふうに思っておりますので、当然もうやっておられるとは思いますけれども、ドイツと密に連携しながら、この問題を必ず平和裏に終わらせて、ウクライナの人たちを誰一人犠牲にすることなく、国際経済に悪影響を及ぼすことのない解決策を日本政府としても積極的に発信していくということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて吉良州司君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田統彦君。

吉田(統)分科員 立憲民主党の吉田統彦でございます。

 大臣、今日は御多忙の中、ありがとうございます。有意義な質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 早速始めさせていただきます。

 まず、大臣、よく聞く言葉ですが、日本固有の領土とよく表現をされますが、この日本固有の領土という言葉に関して簡潔に御説明をいただけますか。

林国務大臣 固有の領土という言葉でございます、表現でございますが、政府としては、一般的には、一度もほかの国の領土になったことがない、こういう意味で用いておるところでございます。

吉田(統)分科員 大臣、日本列島は日本固有の領土でしょうか。

林国務大臣 日本列島という言葉の定義にもよりますが、日本列島と聞いて通常思い浮かべる、我々が今おるところという意味であれば、私の知り得る限り、歴史上ほかの国の領土になったことはないというふうに考えております。

吉田(統)分科員 先ほどおっしゃっていただいたこととしっかり整合性が取れた発言だと思います。

 日本列島の範囲というのは、やはり、大臣おっしゃったとおりで、地形を基準にするのか、文化圏を基準にするのかで解釈が変わります。狭義、広義、二つの捉え方があると思います。狭義の日本列島の範囲というのは、一般的に北海道、本州、四国、九州の四島とそれらに付随する島々、属島と言われるものですね。広義の日本列島の範囲は、それに加えて千島列島、南西諸島、そして、地体構造という表現をよくしますが、そういった意味では、時として樺太島、台湾島、伊豆諸島、小笠原島が加わる場合もあるそうであります。

 それでは、質問を更に続けてまいりますが、千島列島に関して大臣と議論をさせていただきたいと思います。

 日本政府はヤルタ会談について、日本は参加していないためこれに拘束されない、ヤルタの秘密協定は主権侵害であり国際法違反だとしていますね。これは、大臣、間違いないですね。

林国務大臣 ヤルタ協定ですが、当時の連合国の首脳の間で戦争処理の方針を定めたにすぎないものでございまして、関係連合国間において領土問題の最終的処理について決定したものではないということでございます。

 また、同協定は一九四六年の二月まで秘密にされておりましたので、そもそも我が国は参加していないわけでございますから、我が国はいかなる意味でもこれに拘束されることはないということでございます。

吉田(統)分科員 大臣、ありがとうございます。

 この会談の中で、大臣、第二次世界大戦にソ連が参戦するための条件として、ソ連がクリル諸島、千島列島のことですね、を領有することを米英首脳が合意したわけであります。であれば、我が国が一八七五年、明治八年ですね、樺太千島交換条約を根拠に領有した全千島列島が日本固有の領土になるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

徳田政府参考人 大臣がお答えになりましたとおり、固有の領土につきましては、政府としては、一般的に、一度も他の国の領土になったことがないという意味で用いております。

 委員お尋ねの千島列島でございますけれども、得撫以北の千島列島につきましては、サンフランシスコ平和条約で日本は放棄している、こういうことでございます。

吉田(統)分科員 昨日、レクで、この辺のことをしっかり聞きますからとはお伝えしたんですけれども。なので、大臣に答えていただけるところはしっかりお答えいただきたいんですが、無理なところは事務方からで結構です。

 さっきのヤルタ協定の話ですが、大臣も御承知のとおり、一九五六年だったと思いますが、共和党のアイゼンハワー政権下で、米国の国務省は、ヤルタ協定はルーズベルト個人の文書である、アメリカ合衆国連邦政府の公式文書ではなく無効であるという公式声明も発出していると思います。

 また、これが大事なんですが、内閣府のホームページを拝見すると、一九四三年のカイロ宣言では、日本について、第一次世界大戦により得た太平洋の諸島、満州、台湾及び澎湖島、朝鮮、それに暴力及び貪欲により日本国が略取した他の全ての地域から追い出さなければならないと宣言していますね。ごめんなさい、宣言しましたと。これは、ごめんなさい、引用ですので。

 南樺太、千島列島についてははっきり述べていませんが、千島列島は、樺太千島交換条約によって平和裏に我が国が譲り受けたものであり、暴力及び貪欲により略取された地域ではありません、ましてや、日本固有の領土である歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島が、カイロ宣言に述べられた日本国の略取したる地域に当たらないことは言うまでもないことですという書き方が、これは内閣府のホームページですよ、されているんです。

 趣旨として、そうすると、南樺太と千島列島、特に千島列島は、全千島に関してロシアに実効支配、不法占拠されている、本来なら日本固有の領土という認識のように受け取れますよね、この文章は。

 ですので、ここは大臣、ちょっとこれは内閣府の文章を私はそのまま引用したので、非常に分かりにくいと思います、これでは国民が。正確におっしゃっていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。大臣、難しいですか。大臣、お答えいただければ、是非お答えいただきたいんですが。じゃ、どうぞ。

徳田政府参考人 カイロ宣言の内容につきましては、委員御指摘のとおりでございます。

 他方で、繰り返しになりますけれども……(吉田(統)分科員「繰り返しは要らない。内閣府がこうやって言っていることに関してちゃんと言ってください。政府のことなので」と呼ぶ)はい。

 得撫島以北の千島列島及び南樺太につきましては、サンフランシスコ平和条約により、我が国は全ての権利、権原、請求権を放棄しております。

吉田(統)分科員 だから、そんなことは聞いていないんだって。これは、だから、じゃ、どうしてこういう書き方を内閣府がするんですか。内閣府のホームページですよ。内閣府のホームページのこの書き方は、是非ちょっと読んでいただきたいんですけれども、平和裏に我が国が譲り受けたもので、暴力及び貪欲により略取した地域ではないと書いているんです。つまり、これは、領有権を、明らかに、暗にあるということをこの文章を読んだ人間は感じますよ。

 だから、そこは、大臣も是非これは見ていただいて、もしこの表現がよくないのであれば、大臣がやはりそれはしっかりと、違うと言っていただかなきゃいけないし、これは私、そのまま引用しただけですからね、先ほどの文章。これはちょっと認識が違うんじゃないでしょうかね。

 じゃ、さらに、ちょっと続けていきます。

 大臣、私の説明でお答えいただければ、できるだけお答えください。こういった話を聞きますねと、割と私、文章を読んで言っていますので。ちょっと大臣とのレクがどうなっているか、私は分からないのであれですが……

葉梨主査 吉田君に申し上げますが、内閣府のホームページなので、そういう場合は是非内閣府も呼んでいただくようにお願いをいたします。

吉田(統)分科員 そうですね。ごめんなさい。ただ、これは、政府がそんな縦割りでは困っちゃいますから。委員長、それはやはりおかしいですよ。それは縦割りじゃなくて、ちゃんと外務省と内閣府がしっかりと横で連携してもらうのは当たり前ですから。

 じゃ、大臣、一言。

林国務大臣 今、内閣府のホームページについて御言及がありましたので、政府一体でございますから、内閣府のページも再度確認をいたしまして、また必要な調整があればしっかり行いたいと思います。

吉田(統)分科員 だから、領有を主張するんだったら、この後また話を進めていきますが、そこはしっかりと大臣としてお示しいただきたい。

 では、続けていきます。

 北方四島以外の千島列島をロシアが実効支配していることについて、二〇〇五年、平成十七年ですね、小泉純一郎総理が質問主意書に対して、それらの島は既に日本が領有権を放棄し、また、ロシア以外のいかなる国の政府も領有権の主張を行っていないことから、日本政府は異議を唱える立場にはないと答弁しています。これは私も確認しました。

 しかし、政府が答弁を変遷させている過去というのが実際あります。サンフランシスコ平和条約によって日本は千島列島を放棄しました。さっきおっしゃっていますね、外務省の方が。そのために、もし北方四島が千島列島に含まれる場合には、日本は北方四島の領有権を放棄したことになる一方で、含まれない場合には、日本は領有権を放棄していないことになりますよね。

 その千島列島を放棄する旨の文言について、日本国政府は、一九五一年当時、千島列島の範囲には国後島、択捉島が含まれると説明している一方で、色丹島及び歯舞諸島は北海道の一部を構成する属島と解釈していましたが、この説明は、大臣、一九五六年二月に撤回されています。日本国政府は、サンフランシスコ平和条約に言う千島列島の中にも国後島と択捉島の両島は含まれないと述べて以降、二〇二一年現在まで、日本国政府は、北方四島は千島列島には含まれず、日本は放棄していないと主張しています。

 つまり、この点に関しては、日本政府は考えを変えたと理解してよいでしょうか、大臣。

林国務大臣 得撫島以北の諸島である千島列島、また南樺太については、サンフランシスコ平和条約により、我が国は全ての権利、権原及び請求権を放棄しておるところでございます。

 なお、千島列島や南樺太が最終的にどこに帰属するかということは何も決めておらず、その最終的な帰属先は未定であるというのが我が国の立場でございます。

吉田(統)分科員 大臣、ありがとうございます。それは後で聞こうと思っていた答弁なんですけれども。

 私が確認したいのは、さっき私が申し上げたように、一九五一年当時に、はっきりとこれ、国会での答弁があるんですよね。五六年二月に撤回をされているんです。これは、政府として考え方を変えたのかどうかということを確認したいんです。大臣が難しければ、事務方からどうぞ。変えたんですか。

徳田政府参考人 日本政府の立場といたしましては、サンフランシスコ平和条約において放棄した千島列島の中に四島は含まれないというのが一貫した立場でございます。

吉田(統)分科員 それは違いますよ。だから、言っていることを国は変えているんです。今説明したでしょう。一九五一年当時の話と五六年の二月以降で、国は変えているんです、言っていることを。発言、文言を変えているんです。ここは考え方を変えたのかどうかということを確認したいので、イエスかノーかで答えてください。イエスかノーかで。

鯰政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、一九五六年に政府が見解を表明しておりますけれども、これは、当時、政府の考え方を整理をして表明したものでございます。

吉田(統)分科員 変えたということですね、変えたということですよね。整理をして、結果、変えたんですよね。いいんです。それなら変えたと言ってほしいんです。変えたんですよね。

 じゃ、何で変えたんですか。整理したというのは何を整理したんですか。

徳田政府参考人 当時の国会で答弁されているところでございますけれども、まさにどこの島々を指すかという話が問題になったときに、誤解を解くためにはっきりと政府の立場を声明したということでございます。

吉田(統)分科員 誤解じゃないでしょう。だって、言っているんですもの、政府が。変えたんですよ。

 何で変えたかを正直におっしゃればいいんですよ。領有権に対する考え方を変えたんでしょう。領有権がどこまであるか、日本固有の領土がどこからどこまでかということを、考え方を整理して変えたのが事実じゃないですか。だから、そういう前提でいいんですよ。

 では、次に行きます。

 一八五五年に、日露和親条約と当時は言われていました、今は別の名前で呼ばれることが多いようですが、日露和親条約が締結されて、ここに、樺太島に至りては日本国とロシア国との間において境を分かたず、これまでしきたりのとおりたるべしと、ある種の雑居地になって、国境は決定できませんでしたね。しかし、それまで樺太にロシア人はほとんど居住していなかったようですよね。しかしながら、これ以降、樺太北部からロシア人が入植開始をしてくることとなったわけであります。

 一八七五年、先ほど述べたように、樺太千島交換条約でロシア領になりましたが、日露戦争後に一九〇五年のポーツマス条約が調印されて、北緯五十度以南の南樺太は日本領に復帰をしたわけであります。

 一九四五年の八月九日、ソビエト連邦が日ソ中立条約を一方的に破棄し、対日参戦をしています。同年二月に、先ほど述べたように、米英両首脳がソ連に対して、ナチス・ドイツ降伏二、三か月後に対日参戦することを条件に南樺太と千島列島を引き渡すという密約を与えた前述のヤルタ協定に基づいて行われているわけであります。

 一九五一年の九月八日、日本政府は南樺太、千島などの権利、権原及び請求権の放棄が明記されたサンフランシスコ講和条約を締結しましたが、さっき大臣がおっしゃったように、引渡先は未記載でありました。そして、ソビエト連邦がサンフランシスコ講和条約への調印、批准を拒否していますね。同条約の当事国ではそもそもない。そうすると、条約の内容は当然、ソ連、後継のロシア連邦には適用されないわけですよね。

 また、千島列島及び南樺太の領有権の帰属先は、国際法上、未定のままとなっていますね。間違いないですよね、大臣。さっき述べていただいたのに間違いはない。

 では、なぜ南樺太は、現在、日本固有の領土という主張はしないのか、そして、そうでないとお考えになる合理的な理由は何なのか、また、じゃ、先ほど、領有権に関して考え方を変えているのであれば、領有権を主張しない理由、現時点で、あれば教えていただきたい。

 そして、もう一点、なぜサンフランシスコ講和条約の際に領有権を放棄したのかという理由もお聞かせ願えますでしょうか。

 大臣、お分かりになる範囲でお答えいただいて、その後、事務方からで結構です。

林国務大臣 まず、サンフランシスコ平和条約への署名をソ連が拒否したというくだりでございますが、ソ連及びこれを承継したロシアはサンフランシスコ平和条約の締約国ではないということでございます。また、同条約の規定によりますと、ソ連及びこれを承継したロシアは同条約上の連合国に当たらないということでございますので、いかなる権利、権原又は利益も与えられない、こういうことになるわけでございます。

 また、我が国はこのサンフランシスコ平和条約に基づきまして南樺太に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しておりますので、南樺太は我が国の領土ではなく、その帰属についての見解を述べる立場にないということでございますので、我が国がロシアと行っている領土交渉の対象、これは北方四島の帰属の問題であり、南樺太はその対象ではない、そういうふうに思っております。

吉田(統)分科員 なぜ、サンフランシスコ講和条約で領有権を放棄したのかということに関しては、大臣、お答えになっていませんので、そこを御説明ください。

 お答えになれませんか。答えられないなら答えられないと言ってください。

 時間、止めてください。委員長、時計を止めてください。

葉梨主査 なぜか、答えられないんだったら答えられない、それは交渉の結果があったら交渉の結果ですだけでいいですから、どうぞ答えてください。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 なぜということについて、今ここでお答えはできませんけれども、事実関係として申し上げているのは、今申し上げたとおりでございます。

吉田(統)分科員 じゃ、是非、委員長、委員会にまた御報告を、分かれば、調べていただいて、お願いします。

 それでは、続きを行きます。

 冷戦下の一九五二年三月二十日に、サンフランシスコ平和条約の当事国であるアメリカ合衆国の上院は、同年四月二十八日発効するサンフランシスコ平和条約では、ソビエト連邦への南樺太、千島列島等の領土、権利、権益の引渡しを決めたものではないとする決議を行っていますが、これは我が国も同様の考え方かどうか、政府のお考えをお聞かせください。

林国務大臣 先ほど述べましたように、サンフランシスコ平和条約によって我が国は千島列島及び南樺太に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄しておるわけでございます。

 この点につきまして、アメリカの国務省は、一九五六年の九月七日付の覚書におきまして、サンフランシスコ平和条約は日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、この問題は同条約とは別個の国際的解決手段に付されるべきものとして残されているという旨の見解を明らかにしておるところでございます。

吉田(統)分科員 では、大臣、十分お答えいただきましたので、ちょっと、事務方にもう一度確認ですが、私の表現でいう、政府もさっきの上院の決議と同様の考え方を持っているのか、それとも異なった考え方を持っているのかだけ、お答えいただけますか。イエスかノーかでお願いします。

徳田政府参考人 イエスかノーかでなくて恐縮でございますけれども、アメリカ国務省は、今大臣から申し上げたとおり、日本によって放棄された領土の主権帰属を決定していない、この問題は同条約とは別個の国際的解決手段に付されるべきものとして残されている、そういう見解を明らかにしているということでございます。

吉田(統)分科員 なかなか、もうそれ以上、答え、難しいと思いますので。

 ただ、これは結構大事な問題だと思いますよ、本当に。しっかりとここはお考えを整理していただきたいし、また聞きますので、どこかのタイミングで。

 では、ちょっとまた続きを聞いていきますが、領有権をなぜ主張しないかと聞いても、先ほどと同じ答えが出るだけなので、そこはもうやめますね。

 外務省は、ホームページ上で、平成十五年の五月、北方領土問題に関するQアンドAの中で、南樺太イコール北緯五十度以南及び千島列島イコール得撫島以北の島々について、その領域主権を有していた日本はと、はっきり書いていますね。一九五一年のサンフランシスコ平和条約により、全ての権利、権原及び請求権を放棄しましたと。これはそのまま読んでいるだけなんですが。サンフランシスコ平和条約上、南樺太及び千島列島の最終的な帰属は将来の国際的解決手段に委ねられることとなっており、これは大臣がおっしゃったところですね。それまでは、南樺太及び千島列島の最終的な帰属は未定であるというのが従来からの日本の一貫した立場ですとはっきり述べていますね。これはもう大臣の先ほどの御答弁と完全に一貫した内容でありますが。

 先ほどの、ずっと、大分時間がたっちゃいましたが、前に問うた問いともつながる問いなんですが、今後、では、国際法上の空白地である南樺太と全千島列島に関しても、前述した、四島の帰属の考えを変えていますよね。整理して変えたという事実、さっきおっしゃいましたよね、外務省。整理して変えたと言った。前述した四島の帰属に関する考え方を変えたように今後変更して、領有権を主張する可能性はあるのでしょうか。大臣、お答えいただけますか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、千島列島及び南樺太に対する全ての権利、権原及び請求権を放棄していると申し上げました。

 その上で、国務省の方のお話もしております。別個の国際的解決手段に付されるべきものとして残されている、こういうことでございますので、現在、我々として、この立場から、何らかの変更を考えるということにはないというふうに考えております。

吉田(統)分科員 大臣、考えが変わっていないということは、未定というお立場ですよね、つまり。今後の国際的な解決を待つという、大臣、お立場ですよね。そうすると、今の大臣の言葉だと、今後、お考えを変えて、国際的な中の解決策として、領有が好ましいということになった場合は領有をするというようにも聞こえるんですが、そこは、大臣、いかがですか。

林国務大臣 今の立場、先ほど申し上げましたように、我が国の領土ではなく、帰属についての見解を述べる立場にはないということ、それから、国務省の見解は先ほど御紹介したとおりでございまして、今のこの立場を今時点で変えるという考えは持っておらないところでございます。

吉田(統)分科員 大臣、そうとしかお答えになれませんよね、お立場上。

 ただ、まあ、大臣、もう本当に聡明な方で、私も心から尊敬しておりますが、お分かりのように、私もアメリカに住んで、今話題のジョンズ・ホプキンスでノーベル賞学者と一緒に研究して、論文を書いたりもしていたんですが、やはり、日本国内の考え方と海外からの見方は、随分ここは異なっている部分がありますよね、大臣。

 ここからは大臣にお答えをいただくのはちょっと酷な部分があるのであれですが、海外の地図なんかを見ると、明確に色が違っていますよね、領域の色割りなんかを見ると。まあ、余り細かいことをもう言いませんけれども。ですから、ここに関しては、やはり、国際上の認識、我が国の認識、そういったものはいろいろな立場、いろいろな状況で、あるんだと思います。

 やはり、日本国政府としては、我が国国民のため、国益に資するため、そして国土を守る、固有の領土を守る、そういったお考えで本当に大臣がリーダーシップを取っていただいていると思いますので、そこはやはり、今までの外務省のお考えには立脚せざるを得ないと思いますが、せっかくすばらしい大臣を今回お迎えして、日本国政府、外務省、やっていらっしゃるわけですから、私は期待をする部分が大いにありますし、大臣がやはり、ここの整理、リーダーシップを取ってある一定程度していく。先ほどの御表現を聞くと、日本語は難しいですが、今後、領有を考えないでもないというように取れることもこれはあります。

 委員長、そう勝手に首を振らないでください。委員長の考えは聞いていない。委員長の考えは聞いていないから。委員長はニュートラルじゃなきゃ駄目なんだから。委員長、そんなところで首を振っていちゃ、委員長は務まらないですよ。考えを今開陳して、大臣と議論しているわけですから。

葉梨主査 いや、こっちを向きたいから左向いて、こっち向きたいから右へ向いただけですから。

吉田(統)分科員 ああ、そうですか。委員長、そんな発言をするの、恥ずかしいですよ、ここで。まあいいです。

 では、次、続きをやっていきたいと思います。ちょっとよくないですね。

 日米地位協定に関して、大臣、もう残された時間は少しですが、やってまいりたいと思います。

 諸外国に比べて、米軍に対して圧倒的に主権の及ぶ範囲が狭くなっているとこれは言わざるを得ないんですが、現在の日米地位協定を政府は見直すつもりというのはあるんでしょうか。どうでしょう。

林国務大臣 政府として、日米地位協定の見直しは考えておらないところでございます。

 日米地位協定は大きな法的枠組みでございまして、政府としては、事案に応じて、効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じて、一つ一つの具体的な問題に対処してきているところでございます。

吉田(統)分科員 問題提起ですので、一個一個ちょっと聞いていきます。またここはゆっくり議論をさせていただきたいと思います。

 ドイツとかイタリアでは、米軍機の事故をきっかけにして、国民の思い、世論の高まりを背景に交渉に臨んでいます。そして、改定や新たな協定の締結を実現しているのはもう大臣御承知のとおりだと思います。

 こういった事実が諸外国の状況であり、日本を除いたほとんどの国はそういった状況になっているんですが、その事実に関して、大臣は御所感ありますか。

林国務大臣 我が国として、アメリカと第三国の間の地位協定に基づく制度について有権的に述べる立場にはないわけでございますが、一般論として申し上げますと、一般に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等は受入れ国の法令を尊重する義務を負いますが、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入れ国の法令や執行や裁判権等から免除されると考えております。

吉田(統)分科員 ありがとうございます。

 ベルギーとかイギリスでも、駐留軍に対する国内法の適用に必要な法整備をしていますね。我が国では、駐留軍に対する、駐留軍というか米軍ですね、米軍に対する国内法の適用に関して、そういった法整備をする必要は、大臣は感じませんか。

林国務大臣 詳細に全ての条項について、網羅的に今思い浮かべているわけではございませんけれども、幾つかの法令において、適用を認めているものもあるというふうに承知をしております。

吉田(統)分科員 大臣、ありがとうございます、貴重な時間をいただきまして。

 こういった取組をして、やはり、今るる述べた、端的に述べましたが、自国の法律や規則を、今回のコロナにおける反省も含めて、米軍にも適用させることで、我が国の主権を確立、米軍の活動を一定程度やはりコントロールする必要があるとは思うんです。ここに関してはまた、地位協定に関してはまた議論する場があればいいと思っておりますので。

 今日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。これで終わらせていただきます。ありがとうございます。

葉梨主査 これにて吉田統彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、田中健君。

田中(健)分科員 国民民主党の田中健です。

 今日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 早速でありますが、まず、外交の方針についてをお聞きをしたいと思っています。

 岸田総理は施政方針演説の中で、日本の外交のしたたかさが示される一年だ、また、現実を直視し、新時代のリアリズム外交、これを展開していきますと語りました。

 林大臣は、この新時代のリアリズム外交、この宣言をどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。また、どのようなものと考えればよろしいでしょうか。伺います。

林国務大臣 総理が述べられたとおり、我が国を取り巻く安全保障環境、大変変化のスピードが速くなってきております。また、米中関係が緊張しておるわけでございまして、厳しさと複雑さを増す国際情勢の中で、岸田内閣として、未来への理想の旗をしっかりと掲げながら、一方で、したたかで、徹底的に現実主義を貫く外交を展開する、そういった新時代リアリズム外交を掲げておるところでございます。

 私も岸田内閣の外務大臣として、やはり日米同盟を基軸にして、世界の日本への信頼、これはずっと諸先輩が外交等をやる中で築き上げられてきたものだ、こういうふうに理解しておりますが、それとともに、三つの強い覚悟、すなわち、普遍的価値を守り抜く覚悟、我が国の平和と安定を守り抜く覚悟、地球規模の課題に向き合い国際社会を主導する覚悟、この三つの覚悟を持って、対応力の高い、低重心の姿勢で、日本外交の新しいフロンティアを切り開いてまいりたいと考えております。

田中(健)分科員 普遍的価値は当然のことであり、よくそれは分かります。これに異論はないんですが、例えば、安倍政権で掲げられた自由で開かれたインド太平洋、大変この言葉は世界にも認められております。それと比べると、リアリズム、現実主義というのは分かるんですが、どうリアリズムなのかというのがまだよく分かりません。

 例えば、今言いました自由で開かれたインド太平洋という構想、これを包含するものなのか、ないしは、これを引き継いだような形での外交政策を展開していくのか、それをもう一度大臣にお聞きします。

林国務大臣 当然、先輩方が築き上げられてきた信頼という意味で、先ほど申し上げましたが、FOIP、自由で開かれたインド太平洋も重要なものだというふうに思っておりまして、これをしっかり引き継いでやってまいるというのは当然のことだというふうに思っております。

田中(健)分科員 ありがとうございます。

 それでは、早速、各論に入ってまいります。

 ウクライナの問題です。大変緊迫度を増しています。

 昨夜、岸田総理とウクライナの大統領との電話会談がありました。同じく昨夜遅い時間でありますが、林大臣も、ロシアの経済発展相との協議があったということをお聞きしていますが、その内容についてお聞きをします。

林国務大臣 まず、ウクライナの大統領との電話会談でございますが、大統領と総理の間でウクライナ情勢について意見交換を行いまして、岸田総理から、ウクライナの主権と領土の一体性について一貫して支持をしているということを改めて表明するとともに、両首脳は、外交努力を粘り強く行い、緊張緩和につなげていくということで一致したところでございます。

 また、岸田総理からは、ウクライナ側の要望を踏まえて、我が国として少なくとも一億ドル規模の借款による支援を緊急に用意する用意がある、その旨を伝達して、これに対し、ゼレンスキー大統領から深い謝意が表明をされたところでございます。

 また、私とレシェトニコフ経済発展大臣との間での共同議長間会合でございますが、貿易経済に関する日ロ政府間委員会共同議長間会合ということで、テレビ会議形式で行いました。

 私から、冒頭でございますが、現下のウクライナ情勢について重大な懸念を持って注視をしております、これについては後ほど申し上げたい、そうした中であるが、貿易経済に関する日ロ政府間委員会の共同議長として、経済分野での協力が平和条約締結問題を含め幅広い分野で日ロ関係全体を発展させるものとなるようにレシェトニコフ大臣と対話を続けていけることを望む、こういう旨を述べたところでございます。レシェトニコフ大臣からは、新型コロナ禍の下でも日ロ経済関係は進展しており、更に協力を進めたい旨述べられたところでございます。

 両大臣の間で、経済関係や交流に係る日ロ協力の現状について議論を行いました。

 また、私の方から、ロシアにおいて依然として残されている六都県の日本産食品の放射性物質検査証明書の添付義務の早期撤廃、これも求めたところでございます。

 ウクライナをめぐる情勢についてですが、私から、重大な懸念を持って情勢を注視しております、主権、領土の一体性の原則の下で、緊張を緩和して、外交的解決を追求するように求める、こうした我が国の立場を伝えたところでございます。

田中(健)分科員 毎日状況が刻々と変わる中で、やはりあらゆる手段を使って、今大臣からもありました外交的解決というのを是非実現をしてほしいと思っています。

 先ほど渡辺委員からも質問がありましたが、今必要なのは、ウクライナに残っている、今、百五十人から百三十人とも言われていますけれども、邦人の安全確保であります。アメリカにおいては、四十八時間以内に全職員を国外に退避させるというような報道もありました。欧米メディアでは、十六日、まさに本日に、ロシアの侵攻可能性を報じているところもあります。また、今日の朝、バイデン大統領は、ロシアの一部撤収は確認できない、侵攻は十分あり得るとの会見もありました。

 日本においての退避勧告というのはどのようにして行われ、実際、退去が進められているのか、伺います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナ国境周辺地域におきましては、ロシア軍の増強等によって緊張が高まっております。予断を許さない状況が続いているところでございます。関係国による外交努力の動きがある一方で、事態が急速に悪化する可能性が高まっております。政府といたしましては、こうした動きを重大な懸念を持って注視しており、高い警戒感を有しているところでございます。

 こうした事態を踏まえまして、二月十一日、首都キエフを含めウクライナ全土の危険情報をレベル4に引き上げ、在留邦人に直ちにウクライナから退避することを勧告するとともに、同日、外務省において対策室を設置いたしました。

 政府といたしましては、かねてより在留邦人の安全確保に最大限取り組んでおり、直ちに出国を呼びかける領事メールを累次にわたって発出するとともに、個別に電話連絡を行うなど、粘り強く退避の呼びかけを行ってきております。

 引き続き、政府といたしましては、現地の情勢も踏まえながら在留邦人の安全確保に最大限取り組んでまいりたい、このように考えております。

田中(健)分科員 現場の状況は、先ほどもありました、刻一刻と変化しています。また、退避勧告を出したといっても、まだなかなか全員が退避できていないということもお聞きしています。現在は民間機が飛んでいて、随時帰国できるということもお聞きしていますが、侵攻が始まればそうはいきません。

 アフガニスタンのことを考えると、避難計画をそれぞれシミュレーションもされているかとは思うんですけれども、是非情報収集を徹底していただきまして、日本人を送還するための特別機の、特別便の手配、これも先ほど議論がありましたけれども、あらゆる可能性というものを考えていただきたいと思っています。

 また、二〇一四年にロシアがウクライナの南部クリミア半島を併合した際には、日本政府はG7と歩調を合わせて対ロの制裁を行っています。クリミア併合の際には、クリミア産品の輸入制限など、ロシアに実害がない内容でありました。

 アメリカ政府はウクライナ侵攻に対して、金融制裁や、また輸出規制を柱とした対抗策を検討しているという報道もあります。侵攻が始まり、仮にロシアへの制裁となった場合、日本の制裁についてもるる調整が進んでいるともお聞きしていますが、その内容について伺います。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナをめぐる情勢につきましては、現時点で、我が国としては外交交渉による解決を強く求めているところでございます。

 しかしながら、仮にロシアによる侵攻が発生した場合には、我が国として、制裁を科すことも含め、実際に起こった状況に応じまして、G7を始めとする国際社会と連携し適切に対応していくことになる、このように考えております。

田中(健)分科員 なかなか仮の質問に答えられないのは当然かとは思うんですけれども、是非、制裁が行われるという段階になりましたら、日本の毅然とした態度を示していただき、実効性のあるものに、また適切に対応をいただきたいと思います。

 北朝鮮問題に移りたいと思います。

 先週、クアッドと呼ばれるアメリカ、オーストラリア、インドとの四か国の外相会談、そして日米韓三国の外相会談が終わったところです。林大臣、お疲れさまでありました。その中で、この北朝鮮の拉致問題、どう取り上げて共同声明につなげていったのかをまず伺いたいと思います。

林国務大臣 この十一日に日米豪印外相会合、また、十二日には日米韓外相会合が行われたわけでございます。いずれにおいても、私から拉致問題の解決に向けた各国の理解と協力を求めまして、それぞれ各国から支持を得たところでございます。

 引き続き、米国等とも緊密に連携して国際世論を味方につけながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国、これを実現するべく全力を尽くしてまいりたいと考えております。

田中(健)分科員 当初、韓国というのは北朝鮮に融和的な姿勢で対話を進めたいということで、対北朝鮮の政策において足並みがそろうんだろうかという懸念もあったようですが、そこは、今大臣あったように、また共同宣言を拝見しましたが、まとめることができたというのは一つの外交成果であったと思っています。

 が、残念なのはマスコミの報道であります。各種見ますと、安全保障の協力の成果というものは報道として取り上げられているんですけれども、拉致についての言及というのが少ないです。成果や、ないしは共同歩調を取り上げていないところもあります。これでは、国民に、また世界にアピールするためにも足りないと思っています。是非、マスコミを使ってしっかり伝えてもらうことが大事であり、またそういったことを、政府からも情報発信が必要だと思っていますので、お願いをしたいと思っています。

 そんな中、北朝鮮は今年に入り七回もミサイルを発射しています。また、金正日氏の生誕八十周年で、今日誕生日のようで祝賀ムードだそうです。報道では、四月には、金日成氏の生誕百十年と金正恩氏の朝鮮労働党トップ就任十年を併せて、大きなイベントをして国威発揚を図るとも言われています。拉致問題はもう解決済みだとの姿勢を続け、世界に威嚇を続ける北朝鮮を決して許してはならないと思っています。

 ここで、もう一度これまでの経緯を振り返り、拉致問題解決に向けての前向きな質疑をしていきたいと思っています。

 拉致問題といえば、二〇〇二年、小泉総理と金正日氏による日朝首脳会議と被害者帰国が実現し、また、二〇〇四年に家族が日本へ帰国したのを最後に、残念ながら拉致被害者、いまだ帰ってきておりません。

 この間の日朝の関係、また交渉というのはどうなっているのか。まず伺います。

林国務大臣 まずは、先ほど委員から、日米豪印や日米韓について、この部分について、更に発信をするというお言葉をいただきました。全く私の思うところと一致をさせていただいておりますし、概要として、両方、紙は出しておりますけれども、なかなか、ほかのこととの兼ね合いで報道がああいう状況なのかなとも思いますが、ここでこうやって委員から取り上げていただくこと自体も含めて、我々も発信を更に強化をしていければと思っております。

 その上で、ストックホルム合意以降、日朝交渉の状況ということですが、日朝の平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して、国交正常化を目指すというのが政府の基本方針でございます。特に、拉致被害者の御家族が御高齢となる中、拉致問題の解決には一刻の猶予もないと考えております。

 やり取りにつきまして、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるために明らかにすることは差し控えたいと思いますが、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するために、あらゆるチャンスを逃すことなく、全力で行動してまいりたいと思っております。

田中(健)分科員 この間、大きく動きがあったのは、やはり二〇一四年のストックホルムの合意かと思っています。

 北朝鮮当局による拉致被害者と特定失踪者の再調査の約束と日本側の制裁解除を行うことがこのストックホルムで日朝協議により合意をされまして、同年七月に北朝鮮当局による再調査が行われました。しかし、翌年以降も被害者帰国はおろか再調査の結果報告すらなく、また、二〇一六年二月には、北朝鮮による核実験と弾道ミサイルの発射で、日本政府が再び独自の制裁を決定すると、北朝鮮は調査の中止と、また特別調査委員会の解体を一方的に発表をしています。

 この合意については、破棄すべきだという声がある一方、先ほども少し触れていただきましたが、政府はこの合意を基に拉致問題解決につなげていくということであります。

 六年以上、目立ったというか目に見える動きがない中、今、この合意をどのように考えているんでしょうか。六年の歩みと、今後この合意をどのように進めていくのか、伺います。

林国務大臣 ストックホルム合意までのお話も今委員からいただいたところでございますが、二〇一四年の五月にいわゆるストックホルム合意というものがなされた後も、そのすぐ後の七月には日朝政府間協議、これは中国の北京でございました。そして、二〇一五年八月には、当時の岸田外務大臣とリ・スヨン外相との会談が行われたところでございますが、今お話があったように、二〇一六年の二月に、人工衛星と称する弾道ミサイルの発射があって、一方的に解体を宣言した、こういうふうに至ったところでございます。

 その後、二〇一七年の八月には、河野外務大臣と李容浩外相がフィリピン・マニラで接触をしております。また、二〇一八年二月には、安倍総理と金永南、これは北朝鮮最高人民会議常任委員長でございますが、韓国で立ち話をしております。また、河野外務大臣と李容浩外相、シンガポールで二〇一八年の八月、それから二〇一八年の九月にはニューヨークにおいて外相会談を行ってきているところでございますが、先ほど申し上げましたように、日朝平壌宣言に基づいて、この一刻の猶予もない中で全力で行動してまいらなければならない、そういう覚悟でもってやってまいりたいと思っております。

田中(健)分科員 その合意と、もう一つが、やはり大事なのは、二〇〇三年にスタートした六者会合であります。

 拉致問題が大きなテーマとなりまして、二〇〇五年の九月の共同声明においては、この拉致問題を含めた諸課題を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置を取るのが最大の目標の一つと位置づけられました。そして、この六者会議も、二〇〇七年二月の成果文書を最後に、十五年間進展がないままになっています。

 日本においては、二〇一七年、日ロ首脳会談においてプーチン大統領が六者会合の再開を提唱しましたが、安倍総理はこの時点では直ちに再開することに否定的な見解を示した、これが最後の話題になっています。

 拉致問題を含む日朝間の懸案事項に取り組んでいく上で、また北東アジアの将来の平和と安全を確保していく上でもこの六者会合というのは有意義であったと思いますが、いかんせん、この十五年間止まってしまっている現状を見ると、何かしら手が打てないものだろうかと考えるのは当然かと思います。

 先ほど、クアッド又は日米韓での共同声明の話がありましたが、北朝鮮と国交のある国は百六十四か国にも及び、また北朝鮮国内にも大使館を置いている国、皆さんが知っているイギリスやフランス、そういった国を始め、数多くあると聞いています。この六者会合を動かしていくのか。更に多くの国と連携や拉致問題に向けての協力、こういうものに取り組んでいく必要があると思いますが、どのように進めていくのか、伺います。

林国務大臣 まさに拉致問題の解決のためには、まずは我が国が取り組むわけですが、米国等との、各国との緊密な連携というのも重要であると考えております。

 私も、就任の挨拶を兼ねた各国外相との電話会談で多くの国の外相にはこの問題への協力を求めてきているところでございますが、その中でもやはり米国との関係というものが大事ではないかと思っておりまして、先月の二十一日に日米首脳テレビ会談を行いましたけれども、岸田総理から拉致問題の解決に向けて理解と協力を求めて、バイデン大統領からは力強い支持を得たところでございます。また、日米豪印や日米韓外相にも、先ほどやり取りさせていただいたようなことがあったわけでございます。

 韓国や中国との関係では、文在寅韓国大統領や習近平中国国家主席、それぞれが金正恩委員長に対して拉致問題に関する我が国の立場を直接伝えてきている、こういうふうに承知をしております。

 政府として、引き続き、米国等の各国とも緊密に連携しながら、全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するべく全力を尽くしてまいりたいと考えております。

田中(健)分科員 ありがとうございます。

 一方で、制裁の件についても伺います。

 二〇〇四年、日本では特定船舶入港禁止法また改正外為法など、いわゆる北朝鮮経済制裁二法が成立をして、その後、二〇〇五年には国連の北朝鮮の非難決議案も採決をされました。このように制裁の件が進んでおるわけでありますが、現在の北朝鮮に対する国連の制裁、さらに、我が国の制裁状況、そしてその効果についてを伺います。

林国務大臣 我が国としては、国連安保理決議に基づく特定品目の輸出入禁止措置や資金移転防止措置等に加えて、我が国自身の措置として、北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置を取っておりまして、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきております。こうした対北朝鮮措置の効果、これは一概に申し上げることは困難ではございますけれども、北朝鮮の厳しい経済状況と併せて考えた場合、一定の効果を上げているというふうに考えております。

 引き続き、関連安保理決議の実効性、これを確保するとともに、我が国として取っている措置の実施を徹底していきたいと考えております。

田中(健)分科員 制裁については、当時、二〇〇二年の日朝平壌宣言の頃までは、日本の経済協力が北朝鮮にとっても大変有効なものであり、北朝鮮のレバレッジであるとも言われていました。が、それ以降、先ほどもありました、北朝鮮との、まあ貿易停止等もありましたが、そもそも万景峰号もなく貿易自体が減る中、この制裁の効果というのが疑問視されているのも確かであります。私はこの制裁の在り方をいま一度検討されるべきであると考えておりますが、大臣、どのようにお考えでしょうか。

林国務大臣 先ほど申し上げましたように、人、物、金の流れ、全ての品目の輸出入禁止等の措置ということで、一定の効果を上げているということでございます。

 また、この実施を徹底していくという意味で、瀬取りというのが行われておるわけでございますので、この瀬取りについては各国にも協力をいただいて、しっかりとこの措置が完全に実施されるように、各国との協力も仰ぎながらやってきておるわけでございますので、そういったことで、実効性を確保していくとともに、措置の実施を徹底していくということを考えております。

田中(健)分科員 国際情勢を見ながら、何が有効なのかというのを、是非、不断の検証というものを続けていただきたいと思っています。

 これまで拉致問題の取組を聞いてきましたが、二〇〇一年以降、拉致被害者の救出が実現しておりません。首脳会談、外相会談で常に拉致問題への協力を求め、また、国連人権状況決議にも拉致問題が含まれるよう働きかけをしているということも聞いてきましたが、やはりそれ以外というのがなかなか国民に見えてきません。家族会代表も、横田さん、また飯塚さんと立て続けに亡くなり、本当に拉致が過去のものになってしまうんじゃないかという、国民全体が大きな心配をしているところであります。

 拉致問題を風化させてはいけない、これは皆が同じ思いではあるかと思うんですが、また同時に、様々な啓発もこれまで行ってきているとは承知していますが、外務省としての取組というものを伺いたいと思います。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省といたしましては、拉致問題につきまして様々な国際場裏の場で取り上げてきておりまして、例えば国連人権理事会におきましては、定期的な会合が年三回ジュネーブで開催されておりますが、それらの会合において、テーマ別あるいは国別の人権問題を議論する際に北朝鮮問題を取り上げてきております。また、その中で、北朝鮮の人権状況に関するステートメントも毎回行ってきているところでございます。

 さらに、北朝鮮人権状況決議を毎年採択し、直近の決議でも、北朝鮮に対して全ての拉致被害者の即時帰国を強く要求する旨を始め、拉致問題に関する記述がしっかりと記載されるように各国に働きかけを行ってきているところでございます。

田中(健)分科員 そのような答弁がずっと続いているかとは思うんですが、是非、取り戻すんだというその強い思いを皆で共有して、前に進んでいきたいと思っています。

 最後に、今、啓発ということを話しましたけれども、北朝鮮においては、「めぐみ」という映画、アニメがあります。総理に以前誰かが聞いたところ、まだ見ていないと。もう見られていただいておるかとは思うんですけれども、林大臣、御覧になっていますでしょうか。最後に、拉致問題の最後の質問として、今までの質疑を踏まえ、決意と併せてお聞きをしたいと思います。

林国務大臣 映画についてはまだ見る機会に恵まれておりませんが、その前に、たしかピーター・ポール・アンド・マリーという、我々の世代にとっては大変なスターである皆さんが歌を作っていただいたということは、鑑賞したことがございます。

 いずれにいたしましても、先ほど申し上げたように、被害者の家族の皆様が大変高齢化されて、亡くなる方もおられるという状況の中でございますから、一日も早い解決に向けて全力を尽くしてまいりたいと思っております。

田中(健)分科員 やはり拉致問題、総理の主導というのが大きいわけでありますけれども、是非、林外務大臣も先頭に立っていただいて、国民を引っ張っていき、そして解決に向けてつなげていただきたいということを要望したいと思います。

 次は、ウイグルの問題です。

 先日、国会で、新疆ウイグル、チベット、南モンゴル、香港等における深刻な人権状況への懸念が示されて、ほぼ全ての賛成でこの決議が通ったところであります。

 この人権侵害に関しては、人権侵害制裁法、日本版のマグニツキー法ですね、この議論が超党派で進んでおります。岸田総理は、総裁選においては賛成を表明し、前向きな姿勢を示しています。これについて、林大臣はどのようにお考えになっていますでしょうか、伺います。

林国務大臣 日本として、人権が普遍的な価値であり、人権擁護は全ての国の基本的な責務だと考えておるところでございます。

 これまでも、人権侵害に対してはしっかり声を上げる一方で、対話と協力を基本として、民主化や人権擁護に向けた努力を行っている国との間では、二国間対話や協力を積み重ねて、自主的な取組を促してきておるところでございます。

 今お話のあった、人権侵害を認定して制裁を科すような制度を日本も導入すべきかにつきましては、これまでの日本の人権外交も踏まえて、全体を見ながら引き続き検討してまいりたいと考えております。

田中(健)分科員 人権侵害の制裁については、人権デューデリジェンス法とセットで考えていく必要があるかと思っています。G7では日本だけがまだ制定されておりません。総理は人権問題の担当官ポストまで新設し、意気込みを感じますので、是非この取組を前に進めていただきたいと思っています。

 最後になりますが、ちょっとがらっと話は変わりますが、平成元年の会計検査院の報告の中で、中国などの植林事業のために、平成二十八年、五十七億六千万円を公益財団法人の日中友好会館に拠出をしながら、四年以上事業が実施されていないという指摘がありました。これを外務省は受けまして、不用な拠出金を国庫に返納させることを決めたとのことであります。

 私、この報道ないし発表を見て、事業が行われずに国庫に返納されたのかなというふうに思いましたが、昨年実施をされ、今年も、ちょうど先月末にこの事業団体というのが決定したとのことであります。

 私、最初に感じたのは、これは中国への形を変えたODAではないかということであります。そもそも森林事業というのは、多くの民間団体でも行われておりますし、その意義というのも理解しておるつもりでありますが、なかなか、昨今の厳しい財政状況や、また中国へのいろいろな外交の問題を含めますと、すぐにすんなりとこの事業がいいというふうに私は思えなかったわけであります。

 さらに、昨年の事業で、コロナで日本人が現地に行くことができず、恐らく今回の事業でも日本人が行くことはできません。当初の目的と、どのようにして実効性を保つのかというのは難しいかと思っています。是非、この事業、私は見直しが必要かとも思っていますが、最後にお聞きをしたいと思います。

葉梨主査 林外務大臣、簡潔にお願いいたします。

林国務大臣 本事業は、環境分野における日中の交流等を通じて対日理解を一層促進して、防災意識の啓発を目指すことが目的であって、民間交流の促進のために民間団体等へ支援をしておりますので、対中ODAというわけではございません。

 なお、令和元年度のですね、会計検査院の決算報告についてお話がございましたが、令和二年九月に、本事業実施のためのガイドライン改定による事業内容の見直し等を行った結果、令和三年度は、引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響があるものの、中国における植林事業や第三国での植林・植樹事業を実施できており、また、青少年交流事業もオンライン交流を実施しておるところでございます。

 将来、仮に使用する見込みのない資金が生じるような場合には、その資金の返還も含めて適切に対応してまいりたいと考えております。

田中(健)分科員 本日はありがとうございました。

葉梨主査 これにて田中健君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

葉梨主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。山口晋君。

山口(晋)分科員 本日は、林大臣御出席の下、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。自民党衆議院議員の山口晋です。

 昨年十月の総選挙で初当選をさせていただき、本日このような質問の場に立てることは、地元有権者の方々の御支援、先輩議員のおかげであり、心から感謝を申し上げます。

 本日の質問は、私の経験を基に、選挙期間中も一貫して訴えさせていただいた、世界に誇れる国日本をどのように取り戻していくのか、その観点から質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 現在、ウクライナをめぐるロシアと西側諸国との対峙による緊張が高まっておりますが、アジアにおいても、北朝鮮によるミサイルの発射が相次ぐなど、日本を取り巻く国際環境は厳しさを増しております。日本外交は、こうした目の前の課題に適切に対処していくことが求められているわけでありますが、一方で、二十一世紀の日本外交にとって最も重要かつ困難な課題は何かといえば、台頭する中国との関係において、日本はこの地域の中でどう行動していくかではないかと考えております。

 私は、こうした我が国を取り巻く環境において、中国の周りから見て南の方角に連なる台湾とASEAN、東南アジア諸国連合諸国との関係強化がとりわけ日本にとっての喫緊の課題であり、同時に、中長期的にますます重要性を増していくものと考えております。

 現在、私は、党の青年局で国際局次長を拝命をしております。青年局の役割は台湾との関係構築であり、これまで何十年も継続してきたという経緯がございます。また、東日本大震災においても、多くの国々に支えていただいておりますが、特に我が国に対して、迅速に、そして温かい支援をしていただいた、友好国である台湾、この古くからの友人を大切にしていく必要があると私は強く考えております。

 台湾と我が国とは、自由、民主主義、市場経済、法の支配といった基本的な価値観を共有をしています。私は、こうした台湾との関係をより強く、より深くしていくことが日本にとって重要であると考えており、私自身、今後とも末永く、より一層台湾との連携を強めていけるよう、国会議員としてしっかり取り組んでいく考えであります。

 また、ASEAN諸国についても、地理的に中国と接している国もある一方で、自由で開かれたインド太平洋、通称FOIP、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序を保つ上で非常に重要な国々だと思います。また、これらの国は、今や日本の経済活動を支えるサプライチェーンの一角を成しております。同時に、各国の著しい経済成長を取り込んでいくことも、日本自身の経済成長にとって極めて重要だと考えております。

 私自身、シンガポールの大学院に留学をし、そして社会人として改めてシンガポールに駐在をし、ASEAN各国を仕事で回った経験があります。そこで強く感じたことは、ASEAN諸国の人々との経済的、人的な交流に日本はもっと質的にも量的にも貪欲に取り組んでいくことが必要ではないかと考えております。近年の日本外交におけるASEAN諸国の重要性は、第二次安倍政権、そして菅政権発足後に初めて総理が外遊をされたのがASEAN諸国であったことにも表れているのではないかと私は考えております。

 そこで、林大臣にお伺いをいたします。

 今後の日本外交を考えていく上で、中国とどのように向き合うかが大事なわけでありますが、その中で、台湾、ASEAN諸国との関係を強化していくことの意義について、大臣のお考えを伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

林国務大臣 山口委員におかれましては、今御自身から御紹介がありましたように、東京ガスまたリー・クアンユー・スクールといったところで研さんを積まれた、その経験を基にしての御質問であったというふうに承知をしております。

 実は、私も、議員になって間もない頃でございますが、やはりASEANとの協力を強めなければいけないという思いで、日本とASEANの間の政治家同士の交流の枠組みをつくって、何年かそれをやっていた記憶もあるわけでございます。

 また、台湾は日本にとって、基本的価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人でございます。先ほど私自身の経験も申し上げましたように、東南アジア諸国は日本にとって伝統的なパートナーであり、各国との良好な関係、これは日本の平和、繁栄に不可欠でございます。

 また、人口六・七億人ということでございますから、また六・七億人のASEANが世界の成長センターであるということでございますし、インド太平洋の中心という地政学的要衝に位置しておりまして、自由で開かれたインド太平洋、これの実現に向けた要でもあるわけでございます。

 日本としては、こうした点を踏まえまして、台湾に関する我が国の基本的立場を踏まえながら、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていくとともに、東南アジア諸国との関係強化に更に努めてまいりたいと考えております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。

 台湾、ASEAN諸国との関係強化に向けて、大臣とともに、私も議員外交として取り組んでいきたいと考えております。

 次に、経済インフラの輸出の必要性について御質問をさせていただきます。

 今大臣からもお話がありましたとおり、私、サラリーマン時代に六年半、インフラビジネスに携わってまいりました。その中で、東南アジアにおいては、想像以上に、日本の質の高いインフラに対する大きな期待を肌で感じました。インフラのような国の経済の基盤となるような分野では、やはり日本の高い技術や、約束したものは必ず実行するという日本のビジネス慣習は引き続き高く評価されていると思います。ASEAN諸国にも中国企業の進出が速いスピードで進んでいることも事実でありますが、大事なインフラについては日本との協力で整備を進めていきたいとの意見は多く聞かれますし、現地でもそのような感覚を私は感じました。

 そこで、大臣にお伺いをいたします。

 インフラ輸出については、安倍政権、菅政権で積極的に国が主導する形で、二か国会談においても総理や外務大臣、また関係大臣からトップセールスを行ったり、経済ミッションを派遣して相手国政府に対する直接的な働きかけを行っておりましたが、岸田内閣においても、これまでと同様、国としてインフラ輸出を積極的に支援していくという考え方に変わりはないという認識でよろしいでしょうか。

 あわせて、岸田政権のインフラ輸出に対する基本的な考え方、とりわけASEAN諸国に対するインフラ輸出についてどのような考え方で臨んでいくのか、お考えをお聞かせください。

林国務大臣 企業の海外展開を支援して最先端のインフラシステムの海外展開を後押しする、こうしたことは、海外の成長を日本に取り込んでいくという観点からも非常に重要だと考えております。

 そして、インフラの海外展開には、今委員からもお話がありましたように、ハイレベルからの積極的なトップセールス、これが重要であると認識をしておりまして、一昨年に決定いたしましたインフラシステム海外展開戦略二〇二五の下で官民一体となって取組を推進してきております。自由で開かれたインド太平洋の実現のためにも、地域の連結性を向上させる質の高いインフラ整備が今後ますます重要になってまいります。インフラシステム海外展開の推進は、岸田政権下においても引き続き重要な役割を担うものと認識をしておるところでございます。

 特に東南アジア諸国は、委員御存じのように、一万二千社に上る日系企業が進出している大変重要な市場でもあるわけでございます。そのため、我が国としては、東南アジア各国の経済発展の状況、またニーズ、それぞれ踏まえながら、幅広い分野におけるインフラの海外展開の拡大に取り組んでまいりたいと思っております。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。

 インフラ輸出の支援、とりわけASEAN諸国に対するインフラ輸出については、引き続き積極的に取り組んでいくものと理解をいたしました。

 さて、今まさに、インフラ輸出を考える上でも切り離すことができないのは、気候変動問題です。政府としては、経協インフラ戦略会議でインフラシステム海外展開戦略二〇二五が決定をされ、日本として、世界の脱炭素化をリードしていくため、相手国のニーズを深く理解した上で、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢の提案や、パリ協定の目標達成に向けた長期戦略など脱炭素化に向けた政策の策定支援を行い、途上国の実効的な脱炭素化を促していくといった基本方針としていることを承知をしております。

 この基本方針にあるとおり、インフラ輸出をしていく上でも、脱炭素化を促していくアプローチは、まさに日本の強みを生かしていこうとするものであり、大変重要だと考えております。一方で、そのような取組を推し進めていく上で、相手国のニーズを深く理解することも、これまた基本方針にあるとおり、重要ではないかと思います。

 そこで、経済産業省にお伺いをいたします。

 既に御省として、アジア・エネルギー・トランジション・イニシアチブを出されていることは承知をしております。政府全体のインフラシステム海外展開戦略二〇二五にも、相手国のニーズを深く理解との記述でありますが、脱炭素の文脈において、あえて深くと記載されたところにどのような意味が込められているのか、お聞かせいただけないでしょうか。

南政府参考人 お答え申し上げます。

 世界の脱炭素化を進めるということですが、脱炭素化社会という目指すべき頂点は世界各国で共通しております。ただ、その登り方には違いがございまして、やはり各国の事情を踏まえた現実的な脱炭素の取組を進めるということが重要でありまして、国ごとのニーズを踏まえた幅広いエネルギー源や技術を活用していくことが不可欠だと思っております。

 加えまして、いかなる取組が相手国の脱炭素化に向けて効果的かということですが、これはなかなか容易に決められることではございませんで、その国のエネルギー需給構造、産業構造、さらには経済社会状況などを丁寧に把握した上で相手国への支援を行っていく必要がある、そのように考えております。

 御指摘のインフラ海外展開戦略二〇二五の深く理解の記載は、こうした考え方を踏まえたものであります。我が国としましても、相手国にしっかりと寄り添いつつ、再エネルギー、省エネルギーはもちろんのこと、燃料アンモニアや水素、さらにはCCSによるゼロエミ火力など、我が国の優れた技術を活用しまして、各国の現実的かつ多様なエネルギートランジションを支援していきたい、そういった考えを持っております。

 以上でございます。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。

 是非、日本の脱炭素技術、私、世界に誇れるものがあると思いますので、しっかりと推し進めていただければと思います。

 インフラ輸出については、先ほどお話ありましたとおり、脱炭素化を目指すとしても、やはりASEAN諸国の事情を鑑みれば、なかなか一足飛びにカーボンニュートラル実現ということには容易にはいかないんだと私も思っております。

 したがって、先ほど委員お話あったとおり、脱炭素化に向けた、トランジションに向けた各国の取組についても、やはり、省庁の垣根を越えて、日本一丸となって、インフラ輸出を通じて支援していくことが必要になってくると考えておりますが、この点について外務省の御見解をお願いをいたします。

上杉大臣政務官 お答えいたします。

 東南アジア諸国のエネルギー需要構造、また産業構造、そして経済社会状況等は、各国それぞれで異なっているところであります。こうした事情も踏まえまして、日本の高い技術、制度、ノウハウを生かしながら、現実的な脱炭素化の取組を、先生御指摘のとおり、過渡期も含めて支援していくことは重要であると考えております。

 日本としては、COP26世界リーダーズ・サミットで岸田総理も提唱されたアジア・エネルギー・トランジション・イニシアチブを通じて、再生可能エネルギー、エネルギーマネジメント、さらにはアンモニア、水素、そしてCCUS等のインフラ輸出も活用しつつ、東南アジア各国の脱炭素化に貢献していくところでございます。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。

 私自身も、本当に、東京ガスのときに、様々な国を回って、まさに石炭から新しいエネルギーへというところにおいて、一足飛びではやはりカーボンニュートラル実現は難しいところにおいて、やはりクリーンなエネルギーにしていくことの重要性を非常に感じました。是非、官民が一体となって、そして産業と金融がタッグを組んでしっかりと推進をしていただければと思います。私としても、今後の政府の様々な取組をフォローし、相手国政府や民間の関係者の方々への働きかけについて、議員外交の立場から積極的な支援をさせていただきたいと思います。

 これでインフラ輸出についての御質問を終了させていただきますので、経産省から御出席をいただいた政府参考人におかれましては御退出をいただければと思います。ありがとうございました。

葉梨主査 どうぞ退出してください。

山口(晋)分科員 最後の項目について移らせていただきます。

 最後は人的交流についてであります。人的交流における親日派、知日派拡大への施策についてお伺いをさせていただきます。

 先ほど大臣からも、過分にもシンガポール大学の出身ということを触れていただきましたけれども、私も、大学院に留学をしたときに、やはりシンガポールは戦略的な関係を構築したい国々からの留学生を積極的に招聘をしているという印象を受け、私の仲間は、東南アジアのみならず、世界各国から国家官僚やまた企業人などが来て、知己を得ることができました。よく言われることでありますが、やはり同じ釜の飯を食べた仲間というのは非常にありがたい関係であり、そういった友人関係は今でも続いており、私の大切な財産となっております。

 ここで、外務省に御質問をさせていただきます。

 外務省において、相手国政府の関係者や将来を担う学生などを招き、親日派、知日派の育成に取り組んでいることは承知をしておりますが、外務省で行っている具体的な施策、そのための予算がどのくらいあるのか、とりわけASEAN諸国の関係者にどのくらいの実績があるのか、御教示をいただければと思います。お願いをいたします。

岩本政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省の招聘事業には、アジア大洋州地域を対象とします対日理解促進交流プログラム、通称JENESYSと呼んでおりますが、これがございます。そして、このプログラムを通じて、日本とアジア大洋州の各国、地域との間で、これら国、地域との関係の発展、そして対外発信において、将来大きな役割を果たすであろう青少年との交流を推進し、対日理解の促進を図っております。また、このことによって、将来の親日派、知日派を発掘、育成してきております。

 このプログラムの下では、ASEANとの関係では、近年、年間千人規模の招聘、派遣を実施しております。一昨年来、新型コロナウイルスの流行により、招聘事業の実施が困難な状況はありますが、二〇二〇年度から二〇二一年度にかけてはオンライン交流を実施しておりまして、これまでに約五千人が参加しております。

 また、このプログラム、ASEANの対象の予算としましては、二〇二一年度は五億円余りを計上させていただいているところでございます。

山口(晋)分科員 ありがとうございます。

 是非、今新型コロナウイルス感染症が本当に蔓延している中でありますが、フェース・ツー・フェースの関係、これがやはり重要だと思いますので、しっかりと、予算が厳しい中だと思いますけれども、多くつけていただいて、本当に将来の日本を考えてくれる方を更に呼んでいただければと思います。

 先ほどからもお話しさせていただいておりますけれども、予算を是非有効に使っていただいて、やはり真の理解者、真の日本の理解者の育成に努めていただきたいと思います。こうした予算が機動的に使えるのか、役所の垣根を越えてしっかりと連携協力できるのかという点でも重要だと思います。

 より実効性のある、充実したプログラムの形にしていくことが大切だと思いますが、大臣の御意見、また、これに関する大臣の意気込みも含めてお伺いをさせていただければと思います。

林国務大臣 先ほど委員からは、シンガポール時代、留学時代の仲間にそうそうたるメンバーがおられたというお話がございました。やはり戦略的にリー・クアンユー・スクールでもそういうことをやられておられるのかなというふうに思いましたし、少し古い記憶になりますが、私がケネディ・スクールに留学しておったときも、そういうプログラムをつくって、開発途上国から、大変な優遇措置、経済的にですね、取って、各国の将来のリーダーを招請するプログラムというのをやっておったことを記憶をしております。

 そういった意味で、官だけではなくて、官や民、大学等連携してこういうことをやっていく必要性というのはそのときも痛感したところでございまして、そして、先ほど同じ釜の飯を食った、こういうふうにおっしゃっていただきましたが、そういった意味で、よく理解していただいて、いいところも悪いところもしっかりと分かった上で日本とつき合っていっていただける、こうした親日派や知日派の育成というのは、我々に対する好感度や理解度、これを向上させて、ひいてはこういう方々が国際社会における日本の応援団になってもらう、こういうことでございますから、大変に日本の外交への支持、協力を獲得していくためにも重要なことであるというふうに考えております。

 先ほど事務方から説明いたしましたように、ASEAN諸国の例で御説明いたしましたが、各国、地域において対外発信力を有して将来を担う人材というのを積極的に招聘し、さらに、オンライン交流も、こういう御時世もございますので、通じて、各国、地域における親日派、知日派の育成に努めておるところでございます。

 今後とも、関係省庁等々とも連携して、親日派、知日派の育成に取り組んでいきたいと考えております。

山口(晋)分科員 ありがとうございました。是非積極的な御支援をお願いをいたします。

 外交を築き上げていくには、やはり長期的かつ複合的なアプローチが非常に重要になると思います。すぐには効果が出ないものもありますが、是非、長期的な視点で、林大臣を始め外務省の皆さんを筆頭に、関係省庁の皆様と協力をしていただきながら、経済インフラ輸出の着実な進捗や人的交流の促進、とりわけ、地域については、台湾、ASEAN諸国との連携強化に向けてお願いをしたいと思います。

 本日は貴重な機会をいただきまして、時間前でありますが、質問を閉じさせていただきます。本当にありがとうございました。

葉梨主査 これにて山口晋君の質疑は終了いたしました。

 次に、山本剛正君。

山本(剛)分科員 日本維新の会の山本剛正でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 今日、この分科会は外務部門ということでございますので、林大臣を始め関係各位の皆様方、是非建設的な議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 質問に入る前に、私、外務省さんとは浅からぬ御縁が実はございまして、ちょっと皆様に御案内をさせていただいてもよろしいでしょうか。

 外務省に入りますと、右側に大きな陸奥宗光さんの銅像があられるのを御覧になった方もいらっしゃるかと思いますけれども、実はあの作品、私の祖父の作品でございます。私の祖父は山本豊市という名前で彫刻家だったんですけれども、フランスの彫刻家のアリスティド・マイヨールに師事をいたしまして、東京芸術大学の名誉教授、そして文化功労者でございました。私からは文化の薫りは、全く芸術の薫りはしないんですけれども、実はそういうことがありまして、是非大切にしていただきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いをします。

 私、パリで、実はマイヨールの美術館、マイヨールはヨーロッパの近代美術の巨匠でございますので、パリに美術館があるんですけれども、そこに私もパリに行ったときに二度ほど行ったんですが、二度とも閉館でございましたので、是非フランスの大使を始め皆さんには行っていただけるように、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 では、質問に入らせていただきますけれども、まず本日は、我が国の自治体と各国の地域間交流への国の支援について、ちょっとお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 私は福岡なんですけれども、福岡ではよくアジアの玄関口という言葉を使います。私は、地方の都市が玄関口という言葉を使うことにちょっと違和感というか、それは余りにもちょっと荷が重いのではないかなと。玄関口といいますと、やはりいろいろな人が来ますので、じゃ、国の機能もそこに移転してくるのかというと、なかなか難しいことがありまして、せっかく日本は、「サザエさん」とかでもあるように、勝手口というのがあるじゃないですか。玄関口と勝手口というのがあって、その勝手口とかで十分なんじゃないのかなと。

 それで、その勝手口というのは何かとちょっと僕も調べてみたんですけれども、勝手口というのは、よく台所の横についていることがほとんどなんですが、この台所のことをお勝手といいますよね。その語源は、実は弓道からきているそうで、弓道では、弓を引く右手を勝手といって、弓を支える左手を押し手というそうでございます。私は弓道をやっていたわけじゃないんですけれども、押し手は弓を支えるので自由が利かないんですけれども、勝手は、右手は自由が利くというところからきているそうなんですが、その昔、女性が余り自由がなかった時代、唯一女性が自由にできるところが台所、つまりお勝手、そこにあるから勝手口というような由来があるそうでございます。まあ、諸説いろいろあるそうなんですけれども。

 やはり勝手口というのは、玄関と違いまして、子供たちが出入りしたりとか、あと、近所のものを受け取ったりするようなところ、近所の品物とかを配達してもらって受け取るようなところだったり、そこはまさに近所の情報の集積地で、向こう三軒両隣の人たちは、勝手を知っているので、そこからいろいろ入ってきたり、情報交換したり、井戸端会議をしたりみたいなことがあったと思うんですけれども、私は、そういった勝手口という日本の文化があるのであれば、福岡を是非アジアの勝手口としてこれから開放していきたいなという思いがありまして、選挙でもいつもそれを訴えるんですけれども、余り皆さんには聞いていただけないような感じでございます。

 是非、福岡をそういったもので、地域の特性を生かして発揮できるような地域にしていきたい、そういったものを支える国の制度というのがあればいいなという思いを込めて、ちょっとお尋ねをするんですけれども、地域間交流を支える国の制度というのがどういうものがあるのか、ちょっと御案内していただければというふうに思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに地方は、我々としても、我が国の外交上の重要なプレーヤーであるというふうに考えていまして、外務省としましても、オール・ジャパンで、総合的外交力を強化するために、在外公館を活用するなど、日本の地方の魅力を海外に広く発信する事業を、支援を行ってきているところでございます。

 在外公館を活用した地方の魅力発信事業、例えばでございますけれども、昨年一月には、ベトナムのホーチミンの総領事館におきまして、福島県、山梨県、大分県の魅力を紹介するPR事業を実施いたしまして、各自治体の協力も得て日本酒などの食材を提供して参加者から好評を得ましたほか、地元メディアにも取り上げられた。あるいはまた、最近では、令和三年十二月、昨年十二月から、外務本省及び在中国大使館が、地方自治体などと連携しまして、中国の消費者が中国にいながらにしてSNSを通じて日本の地域の魅力を体感できる動画の配信等の情報発信を行ってきているということでございます。

山本(剛)分科員 ありがとうございます。

 私は、アフターコロナで、地方が今本当に苦しい状況の中で、その特性を今度、海外に売り出していこうとするときに、もっと在外公館を積極的に使っていくことがいいのではないかなというふうに思っております。

 大使館さんと自治体さんが一体となって、国やその地方の特性を、魅力をどんどん売り出していって理解を深めていくということは、私は非常に重要なことだというふうに思います。それがひいてはその地方のインバウンドを増やしていく、そしてまた貿易や人的交流にもつながっていくというふうに考えております。

 今までもいろいろな取組をやっていただいていることは承知はしておりますけれども、コロナ後はもっと積極的に活用すべきと考えておりますし、それがある意味、アフターコロナの地方、地域の起爆剤になったらいいなというふうに考えております。

 そこで、お尋ねをさせていただきます。

 地域のそういった理解を深める役割の一端を今まで以上に在外公館が積極的に担っていく準備を、これから、今、コロナのこの厳しい中でされていってはどうかなと。また、予算を例えば大幅に確保して、在外公館の積極活用に取り組んでいただくのはいかがかなというふうに思っているんですが、いかがでございましょうか。

林国務大臣 ありがとうございます。

 まず、山本委員におかれては、おじい様が陸奥宗光の像を作っていただいたということで、やはり芸術の薫りがするなと思って見ておったわけでございますが、外務省に入りますと、まさにあそこにあって、私、改めて入ったときに思いましたのは、陸奥は、実は山口県下関市も御縁がありまして、日清講和条約を結んだときの伊藤全権での外相を務めていたということで、私の下関の実家から歩いて行けるところに春帆楼というのがございますので、そういった意味でも、何かしらの御縁を感じたところでございます。

 今、委員からおっしゃっていただいたように、日本の地方の魅力を世界に発信していくということは大変重要な課題であると考えております。

 外務大臣になる前ですが、シンク・グローバリー、アクト・ローカリーという言葉に接したことがございまして、グローバルに物を考えるけれども、行動を起こすときは地域からやっていくんだ、こういう言葉で、私もいい言葉だなと思っておりますが、そういった意味でも、外務省としても、各地方自治体等の関係者と連携しながら、可能な限りの支援を行ってきておりますし、これからもやっていきたいと思っております。

 先ほど委員からお話があったように、今、コロナでございますので、なかなか事業を展開できていない面もあるわけでございますけれども、オンラインですとかを活用し、また、収束状況を見つつ、これはずっとこういう状況が続くというわけじゃございませんから、この後のことも頭に入れて今のうちに準備をしておくというような形で、引き続き支援を行っていきたい、こういうふうに思っております。

 こうした観点から、インバウンドの促進、地方産品の海外展開、そういった地方のニーズを十分考慮した上で、在外公館も活用して、地方の取組、一層強く支援してまいりたいと考えております。

山本(剛)分科員 大臣、ありがとうございます。かみそり大臣と言われた陸奥宗光さんは、本当に大きな功績をもってあそこに銅像が飾られているんだろうというふうに思います。是非、その隣には林大臣の銅像が立つように頑張っていただきたいなというふうに思います。

 コロナで本当に傷ついた地方に夢を与える施策をということを、私、予算委員会の中で総理にも実は二回とも言っております。それを是非外務省さんでも実施をしていただいて、とにかく日本全体でその地域を盛り上げていくために外務省がその旗振り役になるというのは、どちらかというと、地方分権とか地方創生とかを外務省さんが旗を振るというのはちょっと痛快な思いもいたしますけれども、是非取り組んでいっていただきたいなというふうに思いますし、私、先ほど福岡と申し上げましたけれども、例えば福岡であったら、中国や韓国や、いろいろ近いところがあるんですが、もちろん、当然台湾も、しっかりと力を入れて、様々な交流を台湾と一緒にやっていきたいなというふうに私は個人的には思っております。

 次に、中国との貿易の在り方について、ちょっとお尋ねをさせていただきます。

 まず冒頭に、現時点でのTPPにおける中国の状況をちょっと御説明をいただくのと、あわせて、今月十一日にアメリカのバイデン大統領が打ち出したインド太平洋戦略、我が国が打ち出している自由で開かれたインド太平洋について、ちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。

渡邊政府参考人 初めに、私からは、TPPに関してお答えを申し上げさせていただきます。

 TPP11協定の加入手続におきましては、TPP11への加入を希望する国、地域が寄託者であるニュージーランドに加入申請を提出した後、TPP委員会において、当該国、地域の加入手続の開始の可否をコンセンサスにより決定することとされております。

 中国は、昨年九月十六日に、TPP11への加入申請を寄託者であるニュージーランドに対して提出しておりますが、現時点でTPP委員会において中国との加入手続の開始の可否について特段意思決定はされておらず、中国の加入手続に関する今後のプロセスの詳細は何ら決まっておりません。

 現在、英国について加入手続が進められているところであり、こちらがまずは先行していくことになります。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国主導の自由で開かれたインド太平洋と、先日、米国が新たに発表いたしましたインド太平洋戦略につきまして、簡潔に御説明させていただきます。

 日本が最初に提唱いたしました自由で開かれたインド太平洋は、インド太平洋地域において、法の支配を始めとする共通の価値や原則に基づく自由で開かれた秩序を実現することにより、地域全体、ひいては世界の平和と繁栄を確保していくという考え方に基づく構想でございます。

 日本政府として、この構想について、特定の国を念頭に置いたものではなく、考え方を共有する幅広い国々と協力していく包摂的かつ開かれたビジョンであることを一貫して説明してきているところでございます。

 これまで、米国はもとより、ASEAN諸国、豪州、インド、欧州など、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた広範なパートナーとの連携が生まれているところでございます。

 米国のインド太平洋戦略、先日発表されたインド太平洋戦略についてでございますが、その内容の一々についてコメントすることは差し控えさせていただきますけれども、同戦略は、インド太平洋地域への米国のコミットメントを改めて明確に示し、日米が共有する自由で開かれたインド太平洋のビジョンの実現を目指すものであると認識しております。

山本(剛)分科員 自由で開かれたインド太平洋戦略というものは、我が国が提唱して、多くの賛同をいただいているというところでございましょう。そこにアメリカがかぶせてきたのか、それとも全く別の次元で話をしようとしているのかというのは、僕もちょっと余りよく理解はしていないんですけれども、やはり、様々な意味でインド太平洋に注目が集まっていくということは私はいいことだというふうに思っておりますので、我が国としてはしっかりと、今までと変わることなく、自由で開かれたインド太平洋というものをアピールをしていっていただきたいというふうに思います。

 自由で開かれたインド太平洋も、インド太平洋戦略も、中国を意識したものと捉えておられる方も結構周りでは多いというふうに思います。私は、TPPにおいて、中国の加盟についてはハイスタンダードなルールを堅持することがとても重要だなというふうに考えています。中国の加盟にはやはり様々な高いハードルがあることはもう皆様にも御案内のとおりでございますけれども、中国が考えていることとして想定できるのは、例えばベトナムも入っているんだからうちも入れるだろうぐらいの感覚でいるのかなというのも、なきにしもあらずなのかななどということも考えています。

 岸田総理も施政方針で、TPPの確実な実施、高いレベルを維持しながらの拡大に取り組むと述べられておられます。林大臣も外交演説で、ルールに基づく多角的貿易体制の維持強化に取り組んできた、引き続き、TPP11協定のハイスタンダードの維持やRCEP協定の完全な履行の確保に取り組むと述べられております。

 中国の加盟のために、このハイスタンダードなルールの例外を認めるようなことがもしあったとするならば、これはもう全加盟国から同意を得るのはまず難しいということは間違いないことだというふうに思います。ここでやはり重要だなと思うのは、個人的には、中国に隙を与えないことだというふうに私は考えています。

 ただ一方で、例えばアメリカとのTPPの交渉において、自動車の関税撤廃は取れなかったんですけれども、当初、実は部品の関税撤廃は取れていたんですよね。しかしながら、日米貿易協定では、実はこの部品も取ることができなかったということがございました。

 こうしたことが例えば向こうから見てダブルスタンダードのように取られてしまっては、これはよろしくないというふうに思いますし、そういうことがないよう、やはり私はあらかじめ交渉にルールを設定しておく必要があるのではないかなというふうに考えております。

 そこで、お伺いをさせていただきます。

 まず、中国との貿易の在り方を今後どのようにしていくのかということ、それからまた、日米貿易協定をこのまま、そういったふうに見られているような節がもしあったとするならば、それを放っておいていいのかということをちょっとお尋ねしたいというふうに思います。

林国務大臣 まず、中国との貿易においてということでございますが、中国は現在、我が国にとって最大の貿易相手国になっているわけでございます。中国にとっても日本は米国に次ぐ二番目の貿易相手国であり、この日中両国の貿易関係は極めて大きなものがあるわけでございます。

 一方で、今ちょっとお触れいただいたように、中国の貿易慣行に関して様々な意見がある、こう理解しておりまして、中国が、世界第二位の経済大国にふさわしい、国際社会のルールにのっとって、その責任を果たして国際社会の期待に応えていく、このことが重要であると考えております。

 こうした観点から、昨年十一月に開催をされました日中経済パートナーシップ協議においては、中国側に対して、日本企業の正当なビジネス活動を守って、また公平な競争条件を確保すること、これを求めたところでございます。我が国としては、ハイレベルの機会も活用しながら、中国に対し、責任ある行動を引き続き求めていきたいと思っております。

 そして、日米貿易協定でございますが、二〇一九年の九月の日米貿易協定合意の際の共同声明において、今後の交渉については、どの分野を交渉するのか、まずその対象を日米間で協議するということにしております。

 先ほど触れていただきました自動車・自動車部品については、日米貿易協定において、単なる交渉の継続ではなくて、更なる交渉による関税撤廃、これを明記しておりまして、関税撤廃がなされることを前提に具体的な撤廃時期等について交渉が行われることになり、日米間では引き続き、この日米共同声明に沿って、通常の外交ルート等を通じて協議を行っていくことになると考えております。

 バイデン政権は、国内の競争力を強化するまでは新たな貿易協定は結ばないという方針であると理解はしておりますけれども、米国と引き続き通商を含む様々な分野での協力についてしっかりと意思疎通を図って、日米通商関係の今後の進め方についてもしっかりと検討してまいりたいと考えております。

山本(剛)分科員 ありがとうございます。

 自由貿易については、やはりハイスタンダードなルールというものを堅持をしていく、そこをやはり崩さないということが私は大事であろうというふうに考えております。

 これは国益にも当然つながる話でございますから、例えば、マルチだったらそれは維持できるけれども、バイだとなかなか難しいなんということは、やはり私は余りあってはいけないのかなというふうに思っておりますし、もし例えばそういったことがあったとして、そこを、中国に限らず、どこの国でもそうなんですけれども、日本はそういうダブルスタンダードみたいなことをやっているじゃないかともし思われるようなことがあったら、例えば我が国が、いや、おたくも何かおかしいことをやっているじゃないかと指摘をしたときに、あんただって同じことをやっているだろうと言われかねないような話になってしまわないかなという懸念がございます。

 ですから、ここは、やはり日本の姿勢というものをしっかりと対外に示していくということはやらなければならないし、林大臣だったら私はできるというふうに思っておりますので、是非そこに御期待を申し上げたいというふうに思います。

 最後に、日韓関係について、ちょっとお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 先日、ホノルルで日韓外相会談をやられてこられたかと思うんですが、その内容をちょっと御説明をいただきたいなというふうに思います。

林国務大臣 ホノルル時間でございますが、二月十二日、鄭義溶韓国外交部長官と日韓外相会談を実施したところでございます。

 会談におきまして、鄭長官との間で、北朝鮮への対応を始めとして、地域の安定にとって、日韓そして日米韓協力、これは日米韓外相会議ということでやっておりましたので、日米韓協力が重要である、こういうことを改めて確認した上で、両国間の懸案を含む二国間関係について率直な意見交換を実施したところでございます。

 今回、鄭長官との間で対面で会談を行ったので、改めて私から、旧朝鮮半島出身労働者問題や慰安婦問題に関する韓国の国内の動きにより、日韓関係は引き続き非常に厳しい状況にあるという旨を述べました。その上で、私から、両国間の問題に関する日本の一貫した立場に基づき、韓国側が責任を持って対応する必要があるとして、韓国側に適切な対応を求めたところでございます。

 さらに、佐渡の金山のユネスコへの推薦についてもやり取りを行ったところでございます。私からは、括弧つきですが、強制労働があったかのような韓国側の主張は受け入れられず遺憾であると、改めて抗議をしたところでございます。その上で、我が国としては、佐渡の金山の文化遺産としてのすばらしい価値、これがユネスコにおいて評価をされるように冷静かつ丁寧な議論を行っていく考えであり、韓国側とも誠実に議論を行っていく旨、改めて伝達をしたところでございます。

 また、両国間の人的往来についても意見交換を行ったところでございます。

 鄭長官とは、今後とも、日韓関係を健全な関係に戻すべく、外国当局間の協議や意思疎通を加速していくことでも一致したところでございます。

山本(剛)分科員 ありがとうございます。

 相当、お互いの主張というものがうまくかみ合わない中での会談は、本当に大変な御労力だっただろうなと拝察をいたします。

 韓国もそうですけれども、中国もそうですけれども、国同士のレベルでは関係は相当こじれているのは皆さんももう御案内のとおりでございますけれども、一方で、韓国に目を向けてみますと、いわゆる民間の交流というものは、国同士の関係なんかお構いなしに、自由に活発に行われていることは皆さんももう御承知のことと思います。

 私の知る地元の韓国の方々は、日本に非常に大きな好感を持ち、日本への理解も相当深いものがございます。また、私、今は福岡市内なんですけれども、以前は筑豊で、実は地元で選挙をやっておりまして、筑豊も、様々な炭鉱がありまして、るるいろいろ言われるわけでございますけれども、そこにおられる在日の方々は、やはり日本を理解をすることもされておられますし、私が親しくさせていただいた方の中には、いわゆる無縁仏を、それを集めて、それを国に送り返すというようなことをやられておられた方もいらっしゃいます。私は、その作業を見ていたら、本当に頭の下がる思いでございました。

 やはり、人と人との心、そしてまた人的なそういった様々な交流というものは、国の関係を超越したところで分かり合えるものが私はあるのだろうなというふうに思いますし、皆様方もそういった思いは持たれておられるんだろうなというふうには思います。

 一方で、やはり国としての関係というものは毅然とした態度で臨まなきゃいけないということも私は理解をしておりますので、そういったところで、ただ、これがいつまでもずっと続いていくことが本当にいいことなのかどうなのかということは、これは真剣にやはり一方で考えなければならない問題だというふうに私は思っております。

 これだけ民間交流が活発で、特に若い世代の方たちは、双方に大きな嫌悪感は、人間同士の嫌悪感は多分ないと思うんです。でも、なぜ国だけがこのような状況を打開できないのかということは、もしかしたら若い世代の方たちは理解をできていないのかもしれないんですね、やはり。

 例えば今、韓流ブームだとか何だとかというので、もう身近にいけば何でも韓国で、コスメの、何というんですか、私の口からコスメとか言っても何か余り説得力はないかもしれませんが、そういう美容みたいなものについても、やはり日本の若い方の韓国への関心というのは非常に高いというふうに思います。

 私、冒頭で福岡をアジアの勝手口にということを申し上げましたけれども、これこそ福岡、勝手口の出番なのではないかなというふうにも思っております。

 無論、先ほど大臣がおっしゃられた、徴用工問題そしてまた慰安婦問題を始めとした国家間に横たわる問題は、決して譲歩する必要は私はないというふうに思いますし、ここは、先ほども申し上げましたとおり、毅然とした態度で対応していただきたいというふうに考えております。ただ、私生活、一般生活の中でも、御近所さんが、隣同士が不和だということは、ちょっと生活の中では結構大きなストレスを感じる部分も多分ございますよね。ですから、やはりどこかで何かの解決をしていかなければならないんだ、そういった思いの中で、未来を担う若い世代、これからの世代の方たちにそういった負の遺産を背負わせることを、私は一方でよしとしない立場でもございます。

 ですから、できることなら若い世代だけでもこの民間交流の中から二国間の希望の光を見出してほしいなというふうに思いますし、隣人が手を取り合って支え合い、助け合う関係がもし築けたとするならば、私は、それは本当に両国間にとってこれからプラスになっていくんだろうなというふうに考えております。

 そこで、最後の質問をさせていただきたいというふうに思います。

 これだけ民間交流が進む日韓関係に対して、国として、外務省としてやっておられることはあるんでしょうか。もしあるなら、それを例えば拡大をしていく、どういう内容なのかはあれですけれども、どんどんどんどんそれを拡大していって、そういった将来に対して理解を深めていくようなことをされているのかというのをちょっとお尋ねしたいというふうに思います。

岩本政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘のとおり、日韓関係が非常に厳しい状況にございますが、両国の国民間の交流は重要だと考えております。

 外務省としましては、韓国との間で、青少年交流を含む人的交流事業である対日理解促進交流プログラム、通称JENESYSと呼んでおりますが、これを通じまして、一九八九年度以降、累計四万名を超える人材交流を行ってきております。現在、コロナのために対面での交流が減少はしておりますが、オンライン形式での交流を最大限活用しているところでございます。

 また、委員御指摘のとおり、今後は、アフターコロナ、コロナの後の対面での交流、これも視野に入れて、こういった青少年交流を引き続きしっかりと推進していきたいと考えております。

山本(剛)分科員 ありがとうございます。

 若い世代の方たちにそういったことをやっていって、今コロナでオンラインということでいえば、オンラインだとなかなか難しいので、やはり心と心が触れ合って、心の通うようなことをやるのがいいのかなというふうに思いますが、コロナでなかなかそれが上手にできないというのはじくじたる思いがあられるかなというふうに思います。

 ただ、今の規模感でいうと、結構長い間、一九八九年からということでございますから長い間やられていて、計四万人ということでしたが、もっともっとそれをやっていったらいいのかなというふうにも思います。

 アフターコロナで、コロナが明けて、今はオンラインでやられているとおっしゃられておられましたけれども、アフターコロナでもし交流が盛んになるようになったら、それを例えばこれから拡大していこうとか、そういう計画はあられますか。

岩本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたとおり、コロナが収まりましたら、対面の交流、これを視野に入れて、そういった人数も増やしていきたい、このように考えております。

山本(剛)分科員 ありがとうございます。

 時間も参りましたので、本当にこういった問題というのは難しいことをはらんでいることは私も承知をしております。しかしながら、本当に一ミリずつでも前に進むような状況をつくっていただけることを心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて山本剛正君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川正春君。

中川(正)分科員 立憲民主党の中川正春です。

 質問の機会をこうして与えていただいたこと、感謝をまず申し上げたいというふうに思います。

 私は、長いこと、ミャンマーの民主化を推進する議員連盟で活動してきました。そちらの衛藤先生も顧問で入っておっていただき、前の大島議長も同じような立場で一緒にやらせてもらってきました。それを背景にしながら、特に人道支援ということについて様々に工夫をしていかなきゃいけないところがあるんじゃないかな、そういう観点からちょっと質問をしていきたいというふうに思います。

 まず、基本的な部分なんですけれども、二国間の人道支援というのはなかなか日本は伸びていないんですよね。どちらかというと、国際機関へ向いて資金を出していくというところで日本の人道支援の説明がなされているんですけれども、どうしてバイの支援が伸びないのかということ。

 例えば、これは紛争地域ではなくて災害の場合だったんですけれども、先月のトンガの火山で、プッシュ式で日本というのはすとんとバイで支援を下ろしました。これで非常に存在感が出ているんです。実はトンガの議連の会長も私やっているんですが。

 そういう意味で、バイというのは日本の存在感と将来に対する外交のちょっとしたきっかけをつくっていくのに非常に大事な要素だというふうに思っているんです。

 なかなか、そういう意味でバイが進まないということ、これをまずどう大臣に認識をしておっていただくかということから質問していきたいと思います。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からは、日本の人道支援について、どうしても国際機関経由のいわゆるマルチでの支援が中心であって、バイの支援はなかなか伸びていないんじゃないかという御指摘ございましたけれども、我が国の人道支援には、形式として、人的な協力、それから物的な協力、そして資金協力という三つの方法がございます。

 人的協力というのは、国際緊急援助隊の派遣に関する法律に基づいて、被災国の政府等の要請を踏まえて国際緊急援助隊の派遣を行うというものでありまして、先般のトンガの、自衛隊による物資の輸送というのもこの一環でございます。

 それから、物的協力というのは、JICAが海外に備蓄しているテントや毛布などの援助物資を速やかに被災地に供与するということで、これも、先日のトンガの支援は、送られた物はこの物的協力の一環としてやっている。

 最後に、資金的協力ですけれども、これは自然災害のみならず紛争やクーデターに起因する人道危機の場合でも対応可能で、先生御指摘のように、主として国際機関が発出する緊急アピールなどに基づいて、当該国際機関を通じて緊急無償資金協力を実施している。

 他方、資金協力の中にも、国際機関を経由するものだけではなくて、日本のNGOが人道支援活動をしている場合には、日本NGO連携無償資金協力、あるいはジャパン・プラットフォームを通じた協力というのもやっておりますし、現地のNGOとか、あるいは現地の地方公共団体が活動している場合には、草の根・人間の安全保障無償資金協力というのもやっています。

 どうしても、出す資金の額が、例えばJICAを通じて物的にテントとか水を送った場合よりも出すお金が大きいので資金協力が中心かというふうに映るかもしれませんけれども、私どもとしましては、緊急援助隊の派遣ですとか物資の供与も相当たくさんやってきておりまして、金額にはなかなか反映できないかもしれませんけれども、日本として決して、バイの形での人道支援を軽視しているとか、これが他国に比べて見劣りしているということはないのではないかというふうに考えております。

中川(正)分科員 ちょっと具体的なところで、構造的にというか、あるいは戦略的に工夫をしていかなければならないということを例示しながら議論を進めていきたいというふうに思います。

 さっき申し上げたとおり、これはミャンマーの例なんです。ミャンマーというのはクーデターが起こって一年たつんですけれども、その前の状況から振り返っていきたいというふうに思うんです。

 クーデターの前というのは、NLD政権になって、しかし、まだ少数民族との和平というのは課題として大きく残っていた。あるいは、民主化も中途半端で、軍の影響力の中でNLDの運営があったわけでありますが、そういう意味では、山間部各地で少数民族との戦闘が続いていたという状況がありました。

 実質は軍の支配が強くて、日本のODAだとかあるいは人道支援、これも入っていたわけでありますが、入っていたというよりも、最大の供与国というか、そういう形の中であったわけでありますが、軍の支配下の国内支援ルートに乗せていかざるを得なかったということ。あるいは、そういう意味では軍の支配地域のみで人道支援も有効であったということ。

 実は私は、そうした意味では、少数民族とのパイプというのがそれぞれありまして、その状況というのをつぶさに把握している中で感じたのは、本当に支援が必要なのは軍の支配の外であって、そこに、いわゆる難民キャンプへの支援であるとか、あるいは薬であるとか食料であるとか、様々なものを届けるということ、これが必須のことであったということなんですが、日本の今の枠組みの中では、どうしても軍の許可といいますか、軍の支配の下に、この地域に対してどういう向こうの受皿のNGOを使ってやるか、そこを前提にしか動かすことができないということ、ここをもって限界があるなということを感じながら、私もずっとこれに、何とかそれを超えて、実際に必要なところへ向いて持っていきたいという努力をしてきたということなんです。

 そんな中で、日本政府としては、本来は、いわゆる少数民族と中央政府との間の仲介をしていく、そういう意味での存在感というものが本当は必要な部分であったんだろうと思うんです。それを日本財団の笹川さんが努力をしておっていただいたということは、これは私も一緒にそういう意味では協力しながらやってきたので分かったんですけれども、ただ、やはり笹川さんは軍に対してのパイプは強い、それで、その立場で真ん中に入るものですから、例えば国ではなくて民間のレベルで人道支援しようということで持っていっても、やはり少数民族としてはそれは軍のかいらいだという見解でしかなくて、思うようにそれを受け止めてもらう、あるいは信頼感を醸成するということができないままに流れてきていたということなんですね。

 それがクーデター前の状況なんですが、これはやはり中立的な、少数民族に対しても信頼感をつくっていくようなもう一つのパイプというのが必要で、その中で、例えば中国がそれを強烈にやっているように、仲裁に入っていって、その国の、今の話じゃなくて、これからの将来の国の立て方として平和裏に民主化を進めていくような、そういう対応をしていくような戦略というのが日本の中になければならなかった。

 ところが、残念なことに、ここの少数民族の部分については、外務省は笹川さんに丸投げしていたんですよ。私が両方それぞれお話を聞いていると、お互いの連携も取れていなかったという形の中でこれが続けられてきたということ。それが実は、クーデターが起こってからの日本の存在感に結びついているわけです、そのパイプに結びついているわけです。そういう状況があったということ。

 これは、どうですか、外務省としても、少数民族に対して笹川さんにいわゆる丸投げをしたということについては、やはり私は違っていたというふうに思うんだけれども、そこの部分の見解というのはどのように考えられますか。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 ミャンマーの少数民族問題に対する日本政府あるいは外務省としての取組というのは、恐縮ながら、私の所掌範囲を超えますので、そこの詳細について申し上げるのは控えたいと思うんですけれども、今委員がおっしゃった、日本のODAがそういう問題についてどういう役割を果たせるかということに関しては、これは、ミャンマーに限らず、あるいはクーデターの前であるか後であるかにかかわらず、日本のODAというのは、被援助国の領土の中、あるいは領海も含めた領域の中で行われるものですから、相手国の主権を全く無視してというか、相手国がその領域内でどういう統治をしているかということを全く考慮しないで実施するということは、実際問題としてなかなか難しいところがございます。

 したがって、クーデター前、あるいはクーデター後であっても、現にミャンマーを支配というか統治している当局との間で一定の了解がない状態で支援を行うということは、原理的にも難しいですし、それから、もっと大事なことは、支援を行うことによって、支援に携わっている人たちの安全が脅かされるようなことがあってはならない。今委員もおっしゃいましたけれども、ミャンマーの少数民族地域での治安というのは非常に危険なものがございまして、この支援を行うことによって援助要員の安全が脅かされるかもしれないというときには、どうしても私どもとしては、そういう支援に踏み切るということにはちゅうちょがある。

 そういう意味において限界があるんじゃないかということであれば、それはそうなんですけれども、これは必ずしも我が国だけということではなくて、ほかのドナーも基本的には同じような立場であろうと認識しております。

中川(正)分科員 国だけの外交を考えていったらそういうことなんですが、ほかの国というのはもっと戦略的なんですよ。

 さっき言ったように、中国は、国の、いわゆる面と向かったというか、国が国として対応していく立場と、それから、それ以外の、例えば現地の華僑のコミュニティーであるとか、あるいはビジネス上の連携であるとかNGOであるとかというような、そういう類いのものを使いながら、その後ろにいわゆる政府がチャネルをつくっていくという形の中で、両方に関係を持っていっているんですよね。これはヨーロッパでもそうなんですよ。

 私は、向こうのNGOに支援が入っているものだから、これはどういう形で入っているんだという話をしたんですが、やはり民間のいわゆるアメリカ系あるいはヨーロッパ系のNGOに政府から金を落として、間接的にそこからやっている。だから、軍事政権が、例えば日本に対してそれはおかしいじゃないかという話があったときに、いや、それは民間でやっていることだから、国というのはまた違いますよという言い訳ができるような形でチャネルづくりをしているということ。こういう展開というのが日本はできないんですよね。

 ましてや、JICAという形になると、政府よりももっと遠慮しながら、軍事政権の背景の中でしか事業を入れていないという現実があるということ、このことがよく分かりました、実際に現地に入ったり、あるいは事業を展開をしたいという気持ちの中で。

 そういうことに対して、大臣、一工夫まずはしていく必要があるというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。

林国務大臣 大変、先生はずっと前からこの問題に携わっておられての、現場を踏まえてのお話、今拝聴させていただいておりまして、もうこれは古典的な課題でございますが、内政干渉と人道支援というのは、どこがどうなのか、引っ張り合いというのは昔から議論をしていたところでございまして、そういったことを、今まさにこのケースでいえば、人道危機が発生しているそういう地域に、真に必要な支援を真に必要としている人に届けるということと、当該国の主権、またその反射的効果としての援助関係者の安全というバランスがある、こういうことだろうと思っております。

 諸外国の例も引かれまして、現地事情と人道上の必要性、緊急性、NGO等と連携するというお話もあったわけでございますが、我々も、専門性や幅広いネットワークを有して現地で活動している国際機関やNGOとも連携しながら支援を実施してきているところでございますので、先ほどの難しいバランスの中でありますが、今後も、ケースに応じてどういうことが可能なのかというのは不断の検討を続けていきたいと考えております。

中川(正)分科員 具体的に二つほど提案をしたいと思うんですが、一つは、隣国のタイのチェンマイの領事館があるんですよね。少数民族の人たちというのは、このチェンマイへ集まってくるんです、それぞれのリーダーが。連携をするときには、そこで一つの協議体を構成しながらやっていく。私もそれに呼ばれたことがありまして、ちょうど我々の政権時代だったんですが、そこへ向いて参加をして、少数民族サイドの話というのを聞いて、そのチャネルをつくるということをしました。

 そういう意味では、チェンマイの領事館に専門員もいますし、それから、そこへ向いていわば入り込んでいけるような館員というのをつくりながら、チャネルを直接つくるというようなことがこれから可能なのではないかということ、これが一つです。

 それからもう一つは、実は、こういう紛争国というのは既に何回もクーデターを起こしていて、その都度、世界中に優秀な人たちが散らばっているんですよね。難民として逃げている。ちょうど八八年のクーデターで、あのところは学生が立ち上がったやつですから、非常に優秀な人たちなんです、みんな。それが日本にもやはり逃げてきていて、一つのコミュニティーを形成していて、今、民主化運動に、この日本に住んでいるミャンマー人のコミュニティーのリードをしているのはそういう人たちなんですね。ここはみんな、もう一つの民主化の勢力と情報的にも人間的にもしっかり結びついていまして、一つの一族でもあるんですね、この人たちは。それで、海外から応援しているんですよ。そういうようなチャネルもある、活用しようと思ったら。

 ただ、何とか日本の政府は中途半端にして対応していないではっきりしてくれ、民主化勢力を応援してくれといって、それこそデモンストレーションなりなんなり、アピールするものだから、外務省としてはもう腰が引けていて、その人たちの話をしっかり聞こうともしないし、それに対してコミットもしようともしない、こういう姿勢で映っているということなんですが、実は、実際のところは、地域の反対側の勢力の一つのチャネルとしては非常に有効なものでもあるということ。これなんかをもっと丁寧に見ながら、どうそれを活用していくかというのは、やはり幅広くというか、腹を太くして考えていく必要がありますねということ。

 その二つをまず指摘をしておきたいというふうに思います。

林国務大臣 ありがとうございます。腹が太いという意味では、私は体型的には太いのでございますが。

 チェンマイのお話は、かつて商社マン時代に行ったときに、やはり、当時はまだ八〇年代中盤でございましたから、ビルマと呼んでおったと思いますが、結構その皆さんがいらっしゃったということで、近接しているんだなという認識は持っておりましたけれども。

 そういった意味で、ミャンマーから越境してきた人々に対する人道支援活動がタイの国内で実施されるということであれば、一応、タイの関係当局の許可というのは当然必要になると思いますけれども、我が国としても各種スキームを活用して支援を検討することは可能でございますので、これまでも、日本やタイのNGOから、日本NGO連携無償資金協力とか草の根・人間の安全保障無償資金協力の申請があった案件につき、個別に可否を検討の上、実施してきたところでございます。

 二つ目は、少しハードルが高い。先ほどのバランス、二つのものの引っ張り合いというものがどうしても入ってこざるを得ないということであろう、こういうふうに思いますが、腹を太く持って工夫をしろという御指摘でございますので、先ほど申し上げましたように、何ができるか、不断の検討を続けていきたいと思っております。

中川(正)分科員 そして、もう一つの視点なんですが、これはさっき、人道支援でこれだけのことをしていますよという形で、それこそ草の根やN連も含めて様々なスキームはあるというふうに説明がありましたけれども、問題なのは、緊急ということなんですよね。

 これは私も、具体的に要請、あるいは、実は向こうの民主化勢力、NUGというんですが、いわゆる暫定政権をつくっているNLDのリーダーたちと今私たちの議連は直接Zoomで結んで会話をやっているんですが、そんなところから出てきたニーズに基づいて、何とか緊急的な人道支援というのが入らないかというのを模索をしていきました。

 その中で分かったのは、一つは、緊急という枠組みで出していく人道支援のスキームがないんですよ、実は。これはみんな、レッドテープというか、様々な手続を経なければならない。使った金については精密に一つ一つ報告をしなければならない、それの審査というのは一年に一回であったりというような形で日本の支援制度というのが動いているということなんです。

 現地に問い合わせて、それで、欲しいと言うものだから、これをこういう形でといって具体的にやってもらったら、結局のところ、そんな面倒くさいこと今やっていられないんだと、地元の、現地のいわゆるチームというのは。それよりも何よりも、ほかの国から、ほかの国からというのは具体的にはヨーロッパからということなんで、ヨーロッパからこれだけのものを送ってきてもらったのでそれでしのいでいるんだというふうなことで、なかなかかみ合わないんです、話が。担当レベルとしては、幾ら緊急といっても、そのスキームがない限りは通常どおりの手続でしか物が進まないという現実があるんですよ。

 ここのところを緊急という枠組みの中で、ちょうどトンガにどおんと自衛隊が行ったように、こうした紛争地域であっても、そのときの判断で、政治的な判断で、すとんと入るというふうなスキームの改革というか、そういうことが必要だということ、これを一つ提案をしたいと思うんですが、どうですか。

植野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の、本当に緊急に人道支援が必要なのに手続に時間がかかってタイムリーに支援が決定できないという御批判に対しては、これを真摯に受け止めたいと思います。

 ただ、私どもも、一つには、仮に草の根・人間の安全保障無償資金協力のように一件当たりの額が小さくても、元は国民の皆様からお預かりしている貴重な税金ですから、やはりその税金の適正使用という観点からきちんとその使い道であるとか案件の実施可能性をチェックさせていただかなきゃいけないというのは、これは是非御理解をいただければと思いますけれども、決して、一年に一回しか審査しないとか、緊急な必要性があるのにビジネス・アズ・ユージュアルで時間をかけてやっているということではございませんで、できるだけ迅速に支援を実現できるように、私どもも、改善できるところがあれば改善に努めてまいりたいと思いますし、また、トンガのケースのように、あれは人的協力、物的協力だったから早くできたということもあるんですけれども、例えば、国際機関からアピールを出してもらって、その国際機関に対して迅速に緊急無償資金協力を出したときに、その国際機関と一緒に現地のNGOとか日本のNGOに活動してもらうというような形で時間を短縮するということはあり得ると思いますので、どういうことが一番いいのかというのは引き続きよく考えさせていただければと思います。

中川(正)分科員 一言だけ言っておきます。今あるものをベースにしてやっても駄目ですよ、新しくその枠をつくらないと、ということを指摘をしておきたいと思います。

 あと、継承日本語について、来ていただいておると思うんですが、日本語教育を進めていくという法律を推進法として作ったんです。これは議員立法でやったんですが、その中に、海外へ出ていって、そこで子供を育てて、いわばその子供たちというのは将来に対しては日本の宝になる、いわゆる国際人材として非常に大きな存在になっているんだけれども、これが是非母国語を習得できるような機会というのをつくってもらいたい。それと同時に、日本がそれを戦略的につかんでいくということの中で、どう展開していったらいいかという、その戦略を作ってほしいという要望が海外からネットワークを使ってだあっと入ってきまして、それを一条、その推進法の中に入れたんです。

 それに基づいて、今、担当課ではいろいろ構想を練っておっていただくと思うんですが、なかなか予算がつかないで困っているというか、調査費まではねられちゃったというようなことらしいので、そこのところをちょっと聞かせていただけますか。

林国務大臣 御質問を正確に把握しているかどうかあれでございますが、日本人学校の役割、機能を現状よりもう少し広げる、こういう御質問ということで伺っておったわけでございます。

 日本人学校というのは、現地の日本人会等が主体となって設立して、日系企業や保護者の代表者で構成される運営委員会が運営する。在留邦人子女のためにということで目的としておりますので、ある意味、既に一部の日本人学校では、自主的に、外国人生徒の受入れや合同授業、在外公館と連携した日本文化紹介や日本語関連の事業を実施していると承知をしておりますので、文科省と連携しながら、日本人学校が国際化に向けて選ばれる在外教育施設となるように、各学校の特色を伸ばすような支援の実施に努めていきたいと思っております。

中川(正)分科員 聞き取りに来ていただいた皆さんとこの日本人学校のところにこだわりを持って話したものだから、そこだけが答弁で出てしまったんだと思うんですが、いずれにしても、継承日本語というのをもう一回振り返っていただいて、トータルで政策を広げていただきたいということ。

 それからもう一つ、さっきの日本語学校の私の意図というのは、せっかく、あれは海外の商工会議所が経営して、文科省は先生だけを送って、外務省は建物だけ建てている。それで、そのまま自立してやっているんですが、あれだけのものがあるのでもったいないという私の感覚なんですよ。

 あそこを中心にして、さっきのような、いわゆる日本にルーツを持っている人たち、あるいは日本に興味を持っている人たち、日本人が、子供たちが日本に戻ってくるための教育をするということだけじゃなくて、外に開いて、いわゆる文化拠点も含めて活用していく手があるんじゃないか。それは、恐らく、中国の孔子学院みたいな形で持っていくものに対して、日本の、いわゆる文化波及というか、そういうようなものの戦略を作るとしたら、日本人学校というのは非常に大きな拠点になっていく可能性があるんじゃないか。中には、日本人でない人たちが日本人学校で学びたいんだと言ってくる国も国によってはあるというふうに聞いてもいるので、そこのところに振り返ってくださいよ、戦略を作ってみたらどうですかという、これは私の提案なんですが、それを言いたかったということです。

 大臣、ちょっと答えてください。

林国務大臣 ありがとうございます。

 一部重なるところもございましたが、今改めてお聞きをして、まさに、ほかの国の人でもわざわざ日本人学校で学びたいんだと。例えば中東の例ですと、掃除をしたり、給食を、自分たちが、生徒が運ぶ、こういったことは向こうの社会で余り通常なされていないことだそうでございますが、そういったことも含めて学びたいと。それに加えて、今お話がありましたように、ここを中心に我々が戦略的な発信をするという意味で活用してはどうかという御提案だと受け止めましたので、大変大事なポイントだ、こういうふうに思っておりますし、ジャパン・ハウスですか、こういうものも使ってやってきておるところでございますので、さらに、こことの連携が可能かどうか、しっかり考えたいと思います。

中川(正)分科員 林大臣、頑張ってください。

 以上です。ありがとうございました。

葉梨主査 これにて中川正春君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 次に、法務省所管について政府から説明を聴取いたします。古川法務大臣。

古川国務大臣 令和四年度法務省所管等予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 法務省は、法秩序の維持、国民の権利擁護などの任務の遂行を通じて、共生社会の実現、困難を抱える方々への取組の推進、時代に即した法務、司法制度の実現、さらには国際化、国際貢献の推進といった視点の下で法務行政の諸課題に取り組んでいくため、現下の厳しい財政事情の下ではありますが、所要の予算の確保に努めております。

 法務省の一般会計予算額の総額は八千六十七億八千三百万円であり、所管別に区別いたしますと、法務省所管分は七千四百三十七億八千五百万円、デジタル庁所管として計上されている法務省関係の政府情報システム経費の予算額は六百億九千三百万円、国土交通省所管として計上されている法務省関係の国際観光旅客税財源充当事業の予算額は二十九億五百万円となっております。

 また、復興庁所管として計上されている法務省関係の東日本大震災復興特別会計の予算額は、一億七千二百万円となっております。

 何とぞ、よろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元にお配りしております印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

葉梨主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま古川法務大臣から申出がありましたとおり、法務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井出庸生君。

井出分科員 よろしくお願いをいたします。

 大臣にはなかなか申し上げる機会がこれまでございませんでしたが、御就任のお祝いと今後の御活躍を御期待申し上げたいと思います。

 特に、御説明ありました法務省予算、大変少ないなと私も法務委員会に長くおりまして思っておりますので、予算の充実に関して、また私も頑張ってまいりたいと思います。

 今日は、裁判の公開というものについて、特に刑事裁判、法廷の公開そのものの状況と、それから刑事裁判の記録の閲覧、これが国民に対して適切に開かれたものになっているかというところを聞いてまいりたいと思います。

 用意した資料の一枚目の冒頭に、裁判の公開の原則、憲法の八十二条と三十七条を紹介してあります。

 まず、最高裁に伺います。

 新型コロナウイルスの感染対策として、長期にわたって裁判の法廷の傍聴席の利用を制限をしていると。昨日伺ったところ、令和二年の十二月からは傍聴席の使用を一席ずつ間隔を空ける半数の利用が続いている、それ以前は、専門家と相談をして、二メートル間隔を空けるということを感染対策としてやってきたと伺いました。

 これらの感染対策というものが、まず、最高裁の事務総局の意向、判断で行われたのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所におきましては、公衆衛生学等の専門的知見を得ながら、裁判所の新型コロナウイルス感染症の感染防止対策について考え方を整理しておるところでございます。最高裁の方から、その旨の連絡を発しているところでございます。

井出分科員 専門家の意見を聞かなければ感染対策はなりませんが、一方で、傍聴、裁判の公開というものがきちっとなされているかという傍聴者側の視点というものは、検討に当たって何か考慮されたのかどうか、伺います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 先ほど申し上げました考え方の整理の中では、傍聴席の利用につきまして、いわゆる三つの密の回避の観点から、当面は一席空けとすることを相当とし、全国の各裁判所におきましても、このような考え方に基づいて、当該庁の具体的な実情に即した必要な措置が取られているものと承知しております。

 このように、一般の傍聴席部分につきましては、通常時に比べて席数が制限されているところではございますが、具体的な事件に鑑みまして、傍聴希望者が多いと見込まれる場合には、各裁判体の判断におきまして、広い法廷を準備するなどの工夫がされているというふうに承知しております。

 また、先ほど御説明いたしました考え方の整理におきましては、報道機関や一定の事件関係者につきましては、ふだんからこれらの方々の間での接触が一定程度ありますし、これらの方々の連絡先を把握できることなどから、間隔を空ける必要性は高くないというふうに考えておりまして、各裁判体において柔軟な対応がされているというふうに承知しております。

 以上のような取組によりまして、感染防止対策を取りながら、一般の傍聴席の確保にも努めているところでございます。

井出分科員 一般の傍聴者、実際に来るか来ないか分からないんですけれども、開けてみなければ。ただ、傍聴者が来なくてもスペースを空けておかなければいけないというのが裁判の公開の原則だろうと思います。

 今いろいろお話がありまして、個別の裁判体で事件や希望者に応じた配慮はされているというような話がありましたが、今まで話を聞いてきて、例えば行政においても、緊急事態宣言が出る地域とそうでない地域、今は広く蔓延防止措置が適用されておりますが、この二年以上の合間で、そうした措置が全くないところと、それから非常に感染の地域、高いところと、そうした状況もあったかと思うんですね。

 そうした状況も踏まえて、感染対策が重要であるということは言うまでもない、しかし、その中で、できるだけ裁判の公開を確保するということは、そこは決してないがしろにしてはいけない。そういうところまで個別具体的な検討が果たしてなされたのか。最高裁事務総局の方で御判断が少し、全国一律ということに偏ってしまったというようなことは、振り返ってみて反省すべき点があるかどうか、伺いたいと思います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今議員の方から御指摘をいただきましたけれども、最高裁の方から事務連絡等を発出してはおりますけれども、考え方の整理ということでありまして、その中では、各庁の実情に応じて裁判体の方で検討するということになってございます。各地域の感染状況等を踏まえまして、各庁、各裁判体において適切に判断がされているものと承知しております。

井出分科員 今後のことで少し申し上げます。

 これから感染状況がどうなるか分かりません。今までも、落ち着いて、また感染が拡大してということの繰り返しがございました。

 そうした中で、裁判の公開をできるだけ担保をするということで、昨日も申し上げましたが、一つとしては、例えば、同じ裁判所の施設内で、空いている法廷にモニターを置いて、そこでの傍聴を利用可能にするというやり方が一つあろうかと思います。それは、これから民事それから刑事裁判のIT化が進んでいく中で、一つ検討されてもいいのかなとも考えておりますが、モニターで別室で傍聴するという形式が一つ。

 それから、もう一つは、椅子を一つ空けておくということが重要であれば、法廷の中にもいろいろな大きさがございます。十、二十のものもあれば、百席あるようなところもあるでしょう。そして、期日の直前になって希望者が出てくるとか、いろいろなこともあろうかと思いますが、そうしたときは、例えば、椅子は少ないけれどもスペースが広いような法廷であれば、椅子を増やして一席間隔にするというようなことで、少なくとも裁判の当事者に関係する方が傍聴されますよね、想定としては。それから、物によってはメディアも傍聴する。しかし、それでもなお、その上で、一般人の方が、姿形、顔の見えない方が傍聴に来るというスペースをしっかり確保するために、その二つのことを今後の改善策として提案をしたいと思いますが、見解を伺います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 今委員の方から御指摘のございました、まず、別室のお話でございますけれども、実際の審理を担当する裁判体におきまして、法廷の審理に集中しながら別室における傍聴者に対しても法廷警察権等を及ぼすということはなかなか困難でございます。例えば、傍聴人による別室での録音、録画などを防ぐことができないなどの結果が生じ得るところでございます。

 したがいまして、議員御指摘の方法の採否については、慎重な検討が必要かというふうに考えております。

 また、席の関係につきましては、これは、先ほど申し上げましたように、狭い法廷ではなくて、状況に応じて広い法廷を使うというような工夫をしているということは先ほど御説明させていただいたとおりでございます。そこに更に椅子を入れられるかどうかというのは、これも状況によるということになりますので、なかなか難しいところはあろうかと思います。

 いずれにしましても、一般の傍聴者の実質的な傍聴の確保をするという観点で何ができるか努めていきたいというふうに思っております。

井出分科員 法廷の別室にモニターを置くという話は、これは、裁判のIT化の中で、裁判の公開をオンラインで認めるかみたいな議論があったときに、完全オンラインはちょっとさすがに収拾がつかなくなるんじゃないか、しかし、別室にモニターを置いてそこに来てもらうぐらいの公開だったら、それをIT化と呼ぶかどうかは、笑われてしまうのかもしれませんけれども、そういう話が一つ、これまでの議論でもあったかと思って御提案を申し上げました。

 法廷警察権というのが裁判長にありまして、ただ、実際、法廷の秩序が守れなくなれば、裁判長のいる法廷であっても、退廷とか連れ出したりするのは裁判所の職員さんがやるわけですね。だから、別室に職員さんがきちっといて、録音、録画を外形的に見える範囲で禁止するということはできますし、そもそも裁判長のいる法廷でも、今、携帯電話の持込み自体も禁止をされていないから、録音を一〇〇%防げるかというと、そういう状況では現にないし、現にユーチューブ等で音声等が流出してしまっている事案も多少ある。そういうことを考えると、モニターの件に関する、今、できない理由、お話ありました件は、できない理由としても少し弱いんじゃないのかなと。

 いずれにしても、今日の質問を機に裁判の公開というものを、まあ、新型コロナの感染対策は大事ですけれども、そこに少し重きを置いて、せめて、質問があったぞぐらいのことは全国の地裁に言っていただければと思います。

 この件を取り上げたのは、平成の二十八年の四月に最高裁の事務総局が、ハンセン病を理由とする方々の裁判の開廷場所について、大きな反省と、患者の皆さんに対して深くおわびをしなければいけないという報告書を出されています。その中でも裁判の公開の在り方というものが論点になりました。

 ハンセン病患者や御家族の方が、当時、最高裁に対してどのような検証、それから見解を表明することを当時求めたのか。御存じの範囲で、そのポイントだけを御説明いただければと思います。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁判所は、全国ハンセン病療養所入所者協議会、らい予防法違憲国賠訴訟全国原告団協議会及び国立療養所菊池恵楓園入所者自治会から、平成二十五年十一月六日付で、事件当事者がハンセン病に罹患していることを理由とする開廷場所指定の相当性について、速やかに第三者機関を設置した上で検討し、その成果を公表することを要請する旨の要請書の提出を受けたところでございます。

 その中では、最高裁判所は、ハンセン病に罹患していると疑われている当事者の裁判につき、裁判所法六十九条二項を根拠として、例外なく、裁判所外の場所を開廷場所として指定してきた、開廷場所として指定された場所は、隔離施設であるハンセン病療養所内に仮設された法廷などに設けられたものである、そのような場所を指定する行為が、裁判の公開を定める憲法三十七条、八十二条一項に違反するなどの指摘を受けたところでございます。

井出分科員 このとき問われたのは、ハンセン病の患者、関係者の裁判を当時の差別意識で一律隔離された場所でやることの是非、そして、そのことによって、そうした療養所、それからまたそういう人たちのいる刑務所、そうしたところで法廷をやることが裁判の公開にかなうかどうかということが問われました。

 もう一つ、患者さんたちの団体は、厚生労働省やそれから国会がこうしたハンセン病患者の皆さんに対する謝罪、そうしたものを示したのについて、最高裁は十年間この件を何もしてこなかったということもそのとき言われております。

 裁判の公開というものについては、裁判所の方も、療養所であっても刑務所であっても、今日ここで裁判をやっていますという表示を出したから、憲法の意向を多少酌んでいて、患者さんたちの要請する裁判の公開原則に反していたということは、言えないとは言っていない、特定ができなかった、結論を変えるには至らなかったと。で、重く受け止めなければいけないと言っているんですけれども、ここで一番やはり問題なのは、当時の社会情勢や考え方によって、そして、最高裁が、事務総局が、そのときも専決で一律にこうした形式をしてしまったと。

 今回のコロナにおいても、ふだん口酸っぱく、いつも皆さんの方から、裁判はそれぞれの裁判体でというふうなこともあろうかと思いますので、是非、今日申し上げたこと、少し裁判の公開に重きを置いた運用というものがこのコロナ下においてもなされるような、そういうきっかけにしていただきたいと思います。

 次に、今日、刑事局長にも、お久しぶりです、来ていただいており、刑事裁判の公開で、今ちょっと少し法廷の話はしました、それと、その法廷の公開の拡充となる文書の公開について伺います。

 文書の公開は、刑事訴訟法の五十三条で、ただし書はありますが、何人でも閲覧できるとされていて、それから、裁判記録が確定したものについては、確定記録の法律によって具体的な要件が定められている。

 ただ、何人も見れるとはいえ、実際、こういうものは見れないというものが幾つか例示をされている。それが資料の一枚目の真ん中から下、保管記録の閲覧の第四条というところの2、その下の一、二、三、四、五、六と続いていくんですが、その一、二、三、四、五、六の中で、特に二番、保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過すると、特に確定記録を広く閲覧させる必要性がなくなってくるので閲覧をさせなくてもよい、そういうことになっている。三年を経過すると閲覧する必要がない。

 これはずっと何回も、それを見たいという人が減ってくるからですよという説明を受けているんですけれども、これはどうして三年なのか。一年とか五年とか十年とか、その中でなぜ三年が選ばれているのか、ちょっと教えてください。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 確定記録の閲覧の関係でございます。

 今委員御指摘のとおり、刑事確定訴訟記録法においては、何人も訴訟記録を閲覧することができるということを前提とした上で、同法四条二項二号で、被告事件が終結した後三年を経過したときはこの限りではないということにしております。

 ただ、まず最初にお断り、今後の御説明の関係で御説明申し上げますと、このような場合であっても、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があった場合はこれを閲覧させることができるとしておりますので、三年の経過によって閲覧することができないのは、今申し上げましたような訴訟関係人や閲覧につき正当な理由があると認められる者以外でございます。

 その上で、なぜ三年にしたかということでございます。

 まず、一定の期間の経過後は閲覧に制限を設けた趣旨は、事件の終結後、時間の経過に伴い、一般公開の要請に比して犯人の改善更生や訴訟関係人の名誉等の利益の保護の要請がこれに優越するに至るからであると解されているところでございます。

 じゃ、その一定の期間をなぜ具体的な三年としたかということでございます。その理由でございますが、刑事確定訴訟記録法の立法当時、この法律は昭和六十二年に制定されておりますが、立法当時、訴訟記録を閲覧した者のうち九八%以上の者が事件終結後三年以内に閲覧していたという実情を踏まえたものと認識をしているところでございます。

 以上でございます。

井出分科員 この確定記録法の四条の2の一から六にある条項の中で、例えば、三の閲覧によって公の秩序、善良の風俗を害するとか、重要だと思いますけれども、四の犯人の改善及び更生を妨げる、これは刑が確定して社会復帰している被告、受刑者、元受刑者がいるのに、みだりにそういうものをまた宣伝しちゃいけないということだろうと思いますし、五の関係人の名誉というものも非常に大事だと思うんです。ただ、正当な理由があれば閲覧はできる。改善更生の妨げにならないかな、関係者の名誉を害さないかなと個別に判断をして、正当であれば見せますと。

 ただ、しかし、この三年規定だけは、ここに三年とはっきり書いてあるものですから、三年たっているかどうかということが、一つ、閲覧を認めるか認めないかの大きな境目になって、現場でその実務が行われているのではないか。

 三年たとうがたつまいが犯人の更生の妨げがあるかもしれない、関係者の名誉を傷つけてはいけないのは三年の境は関係ないと思いますし、もっと言えば、この法律の六条には、見る人は、そういう犯人の更生の邪魔をしたり、関係人の名誉を傷つけちゃいけないよということが書かれています。

 今、インターネットとか様々なもので犯人の逮捕報道がばあっと半永久的に残る、そういう状況が続いている。この法律は、そういうことは当然したくない、だから記録の原本というものはしっかりと管理するという趣旨はあろうかと思います。そして、見る人にも責任を付与している。

 しかし、この記録を見に来る人の中には、そういうよこしまな人はこの規定で排除することができる、正当な理由はないと個別に御判断できる。しかし、中には、ある事件を検証報道したい、当事者から話を聞いたけれども、本当にそっちの話だけなのか、裁判の記録で相手方の話も確認する必要があるとか、事件から何十年たってその記録を正確に見る必要があるとか、そういう目的のために見に来る人がいたときに、この三年規定というものがそれを害することになって、片や一方で、インターネットは興味本位、赴くままに、今の状況がある。

 であれば、この三年規定というものは、私は、三年たとうがたつまいが犯人の更生を妨げちゃいけない、関係者に迷惑をかけちゃいけないということは一緒だと思いますので、三年というものを置いておく正当な理由というものは、立法時はそうだったのかもしれないんですが、もはや正当な理由というものは失われていると個人的には強く思うんですね。思うに至って、今日ここに来たんですが、ちょっとその見解を。

川原政府参考人 お答えいたします。

 まず、この制度を考える大前提として、委員御指摘のとおり、記録を閲覧する必要性と、一方で、犯人の改善更生であるとか関係者の名誉、プライバシーをどのように守っていくのか、まさにこのシステムを考えるときにその二つにどう配慮するかというものでございます。

 委員が御指摘になりました確定記録法四条二項の二号は三年経過したとき、そして三号は公の秩序、善良の風俗を害する云々、四号が犯人の改善更生でございまして、二号というのは、時の経過とともに、時の経過とともに関係者の名誉やプライバシーあるいは犯人の改善更生といったことが、時の経過とともに優越してくるということを考えて、一定の期間経過をもって制限としております。

 それで、さらに、御指摘のありました四号、五号は、まさに委員御指摘の中にもありましたが、三年たとうがたつまいが、時の経過を待たずして具体的状況の下でそういうような弊害があるときには、これは制限できるとしているものでございます。

 したがいまして、三年たとうがたつまいがというのはまさにおっしゃるとおりでございますが、三年たつと、一般的に、改善更生であるとか名誉、プライバシーの保護が優越するというふうに考えて、こうしたものでございます。

 ただ、今申し上げましたのは、一般的にということでございますから、先ほども御答弁申し上げましたように、正当な理由があるもの等、一定の場合については、この規定に該当する場合であってもまた閲覧をするということで、更に、閲覧する利益が優越する場合を定めているところでございます。

井出分科員 一般的に、公開の裁判で行われている公の文書というものは、時がたてば、まあ、ほかの公文書もそうですけれども、時がたてば国立公文書館とかでも昔のものは出てくるようになってくる、いろいろな情報は。もうプライバシーとかもだんだん薄まってくるだろうという考え方が一つあります。

 もう一つ今日聞きたかったのは、公文書館への移管、これは上川法務大臣のときに、確定記録が、保管年限が決まっていて、それが保管期限が来ました、それでも重要なものは刑事参考記録として取っておきますと。刑事参考記録というものは年限の定めなく取っておくんですけれども、その中で検察庁が持っておく必要性がなくなるというものは国立公文書館に移管することも、そのことについては、これまで各大臣から少し前向きな答弁をいただいてきたので、もっと進めていただきたいですし、今回、改めて答弁をひっくり返してみたら、確定した記録を保管年限が過ぎたときに廃棄するかしないか、刑事参考記録にするかの段階でも公文書館への移管を検討するみたいな答弁が見つかったんですけれども、そういう実績はあるのか、ちょっと教えてください。

川原政府参考人 お答えいたします。

 今の委員のお尋ねは、刑事参考記録になる前に、確定記録法に基づいていて保管していた、いわゆる保管記録についての保管の実績ということであろうと思います。

 これにつきまして、保管記録につきましては、刑事確定訴訟記録法等に基づいて適切に管理されて、保管期間の満了後も、必要があるものについては、刑事参考記録に指定して保存を継続しているところでございます。

 また、保管記録としての保管期間が満了し、かつ、刑事参考記録として保存する必要がないと判断されるもののうち、歴史資料として重要な公文書等である歴史公文書等に該当すると判断されるものについては、公文書等の管理に関する法律四章の規定によって、国立公文書館への移管がなされるものと考えているところでございます。

 ただ、これまでに、保管記録の保管期間が経過し、刑事参考記録として保存されることなく国立公文書館へ移管したものはないものと認識をしております。

井出分科員 裁判記録というものは国にとって非常に大事なものでございますので、今後もまた質問を重ねてまいりたいと思います。大臣の方にも、今日の質疑を少し心に留めておいていただければと思います。

 どうもありがとうございました。

葉梨主査 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)分科員 公明党の吉田宣弘でございます。

 本日は、予算委員会第三分科会で質疑の機会をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。また、本日は、古川大臣、初めて私が質疑をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、昨年の二月になるわけですけれども、私自身、耳を疑うような報道に触れました。新聞各紙には、見出しだけで恐縮ですが、知らぬ間に敗訴、裁判所だました、大分地裁、被害者の賠償請求認める、制度悪用、著しい不正義。朝日新聞、知らぬ間に敗訴、預金差押え。これは資料で一枚添付をさせていただいております。日経新聞では、うその住所を書かれ訴状届かず敗訴、差押え違法、大分地裁。読売新聞では、知らぬ間に訴訟は不正。西日本新聞、これは資料を配付させていただいておりますが、知らぬ間に敗訴、差し押さえられ、再審で判決取消しというふうに。

 事案については、どのような事案なんだろうかというふうに私は非常に興味を持ちまして読ませていただいたんですけれども、少し事案の概略を申し上げたいと思います。

 大分でこれは起きた事案なんですけれども、飲食店を経営している大分市の女性と、その飲食店の元従業員の男性がこの当事者でございます。

 その男性は、三十日以上の予告なしに解雇されたとして、二〇一九年六月に解雇予告手当金などを求めた訴訟を熊本簡易裁判所に起こした。そして、熊本簡易裁判所は、その男性が申告した飲食店経営者の女性の住所へ訴状を送ったが戻ってきた。しかし、その住所は、女性の住む場所と全く異なる、関係のない場所であった。訴状が戻ってきたので熊本簡易裁判所がその男性に確認を取ると、男性は、夜には電気がついている、水道メーターも動いているなどと、送達先の住所に女性が住んでいると思わせる虚偽の報告書を提出した。また、住民票記載の住所や職場である飲食店についても、男性側が、住民票の住所に女性は住んでいない、店は閉店し、もう働いていないなどと虚偽の報告をした。そして、熊本簡裁は、付郵便送達という方法で、男性の示した住所に訴状を送った。

 ちなみに、後ほど説明はいただきますが、この付郵便送達という方法は、訴状を送達した時点で、届かなくても送達した効果が生じる送達方法のようでございます。

 結果、被告となった女性は、その事実を知らないままに、自分が訴えられたことも知らないままに訴訟が進み、二〇一九年の八月に女性側の敗訴判決が下された。女性は判決文すら受け取ることなく判決が確定してしまった。その後、男性は、判決に基づき、所轄の、今度は場所がちょっと大分地裁に変わりますが、大分地裁に債権差押えの申立てをした。その際も、虚偽の女性の住所で申告しているので、大分地裁も差押命令をその住所に送っております。結果、女性は、知らない間に敗訴判決を下されたにとどまらず、銀行の口座を差し押さえられて、強制執行により、その女性の口座から約三十万円が引き出されたとのことでございます。

 この事案について、私はこれから事件と呼んでまいりますが、この事件は、民事訴訟法が保障している攻撃防御の機会を奪われるという重大な問題をはらんでいると思います。のみならず、憲法が保障をする裁判を受ける権利の保障を没却させるような問題まではらんでいると思います。自分が訴えられたことを全然知りませんから、一方当事者の虚偽の証拠と虚偽の主張で真実を前提としない判決が生み出され、既判力と債務名義を得てしまう。民事訴訟制度の、民事司法制度の根幹に関わる私は重大な事件であると感じております。

 加えて、これから議論をさせていただく民事手続、これを悪用することによって、国民の誰もが被害者になり得るという恐ろしい性質の事件であると私は思っております。

 さらに、確定判決の内容が、虚偽を前提とした真実と異なる内容で存在する、すなわち、裁判所が発付する全くでたらめの判決文がこの世に存在するという事態があるということになれば、裁判所への国民の信頼はどのようになるでしょうか。

 法律上の争訟を終局的に解決し、また人権の最後のとりでとなる裁判所を国民が信頼できないという事態は、とても恐ろしいことだと私は思っております。国家の統治機構の根幹を揺るがすことにもなりかねないのではないかという気さえいたします。いささか大げさなように申し上げているような気もいたしますが、突き詰めて考えると、そのような問題にも行き着くと私は思っております。私は、小さな事件と軽く見てはいけないというふうに思っております。

 また、昨年の三月十六日付の西日本新聞によると、これは資料で配付させていただいている分です、同様の事件が福岡県の久留米簡易裁判所でも起こされております。それも、一つや二つでなくて、新聞の調査ですからそのことはお断り申し上げますが、西日本新聞社の取材では約十件を確認されているということもつけ加えておきたいと思います。

 さて、この事件にはらむ問題は、訴状が相手方当事者に届いていなかったことから始まっています。普通ならば、訴状は、相手方の住んでいる住所、通常であれば住民票上の住所、そこに送達すれば、特段の事情がない限り到達するであろうと思います。しかし、今申し上げた事件では付郵便送達という方法で行われております。

 そこで、この余り国民の皆様が聞き慣れない付郵便送達、これはどういう手続なのか、その必要性と法的効果も含めて、国民の皆様に分かりやすく御説明いただきたく存じます。

金子政府参考人 お答えいたします。

 民事訴訟では、訴状等の書類の送達は、その書類の内容を相手方に知らせるのに最も確実な方法として、特別の定めがある場合を除いては、直接その書類を相手方に交付してするものとされております。

 もっとも、送達の相手方が現実にその書類を受領しない限り送達の効力が生じないとしますと、当事者の一方は、他方の当事者がその書類の受領を拒絶するなどした場合に、裁判手続を進めることができなくなるという問題もございます。

 そこで、民事訴訟法では、例外的な送達方法の一つとして、御指摘の付郵便送達という制度を設けております。例えば、送達の相手方の住所が判明し、その住所において送達を実施しようとしても、相手方が書類を受領しようとせず送達をすることができないような場合には、付郵便送達を実施することができるものとされております。

 具体的には、裁判所書記官が相手方の住所に宛てて書留郵便を発送する方法により送達を実施するものであり、この方法による場合は、相手方が現実にその書類を受領しなくても送達の効力が生ずることとされております。

吉田(宣)分科員 御説明ありがとうございます。

 ポイントは、相手方が受け取らなくても送達の効力が生じるというところがポイントでございます。したがって、その点からすると、前提として、相手方が受領していませんので、受領していないけれども到達の効果が生じる。相手方が現にこの世に存在していても、まあ、特別な、様々な事情があると思いますが、受け取らなくても送達の効果があるというところがポイントだと思っています。これは必要性があるということは、私自身、思っておりますし、この制度そのものに異論があるわけではございません。

 では、今度は実務運用についてです。この付郵便送達は、今御説明ありましたが、一方の当事者の申出に従うだけで、裁判所として何がしかの調査を行うことなく実施されてしまうものなのか。例えば、付郵便送達の前に住民票上の住所にちょっと送達してみたり、さきの飲食店の例で申し上げれば、訴状の内容に記載があるであろう飲食店の住所などをインターネットで調べて、若しくは、電話番号も載っていれば、そういった電話番号にちょっと電話をかけてみるとか、そういった確認というものを裁判所が主体的に行うことはないのでしょうか。教えていただければと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 民事訴訟において、被告の住所等の特定は当事者である原告の責任において行うこととされておりまして、裁判所が付郵便送達の要件を認定する際には、原告に対し当該宛先の居住状況に関する調査等を求め、裁判所が当該調査の結果を審査した上で、被告が宛先とされる住所に現に居住していることなどを認定できると判断した場合には付郵便送達を行うということになります。

 当事者主義や当事者の公平等という観点もございますので、裁判所が職権的に情報を収集して被告の住所や居住実態等を調査するといったことはしておりませんけれども、付郵便送達を実施する際には、原告による調査結果が不十分であると考えた場合には、原告に対し、追加の調査を指示することもございます。

 なお、住民票上の住所に居住していない方も一定数存在しておられますので、必ず住民票上の住所への送達を試みる扱いとはしておらないところでございます。

吉田(宣)分科員 職権主義で主体的に調査することはない、それはそれで理屈としても分かりますが、結果論から申し上げれば、今回、裁判所はだまされているんですね。だまされるきっかけをつくったのは、この付郵便送達なんですよ。その点は重く受け止めなければいけないんだろうと私は思っております。運用のレベルで申し上げてちょっと恐縮なんですけれども。

 ちょっと進みます。申し訳ありません。

 資料を配付させていただいた、西日本新聞で報じられた久留米の事件について、一昨年、私は被害者にお会いしました。被害の回復についての御相談でした。そのとき私は福岡の県議会議員を務めておりましたが、そのときには、再審や、それに続く損害賠償の提起をアドバイスしたり、警察に相談することを勧めるしかできませんでした。

 新たな民事手続を提起したりするには、訴訟技術上、私も多少法律を勉強しておったこともありますので、訴訟技術上、どうしても弁護士に頼らざるを得ないだろうし、そのための費用や、そのことに費やす時間や、そのための労力が相当かかることを考えれば、とても心苦しく感じました。

 また、警察に相談しても、その段階では、強制執行に気づいて間もない、すぐの頃でございましたから、警察の積極的な取組を引き出すことは難しかろうと予想されましたので、寄り添い切れない思いをいたしました。つらい気持ちになりました。

 ところで、福岡県久留米市の事件では、再審で被害者の敗訴判決が取り消されました。しかし、再審だけで被害は回復をしないというふうに承知をしております。被害の回復を実現するためには、その後、改めて損害賠償請求訴訟を提起しなければならないと承知しております。大分の事件の場合は、損害賠償訴訟を新たに提起し、勝訴判決を得ております。

 ここで、資料とは別の新聞記事によると、ちょっと、お手元に用意しておりませんから、非常に申し訳ありません。この勝訴判決の中で裁判官は、虚偽の事実を主張して裁判所をだまし、本来あり得べからざる内容の確定判決を取得した、また、著しく正義に反し、確定判決の既判力による法的安定性を考慮しても容認できないような特別な事情があると、痛烈に加害者を批判をしております。

 裁判所をだまし、また既判力の法的安定性を考慮しても容認できないという言葉は、とても重いと私は思っております。すなわち、あってはならない事件であるというふうに感じます。恐らく、いささか推測で恐縮ですが、大分の事件では、損害の回復まではたどり着いてはいないのではないかなというふうに推察をしております。

 このように、たとえ虚偽の内容を前提とした真実に基づかない判決であっても、確定してしまっては、判決の存在を被害者は知らないわけですから、判決は容易に確定してしまうわけですけれども、既判力が生じ、まず、この損害の回復については再審から始めなければならない。さらに、再審で判決を得て、更に損害賠償請求訴訟を提起して勝訴判決を得なければならない。そして、これが確定して初めて債務名義を取得でき、強制執行手続の後にようやく損害が回復される。とても長い道のりというか、大変な道のりだと思います。

 いわゆる訴訟手続を利用した損害の回復というのは私の理解で正しいのかどうかについて、確認をしておきたいと思います。よろしくお願いします。

金子政府参考人 お答えいたします。

 不正に取得された確定判決に基づいて強制執行が実施された場合には、その相手方は、強制執行の申立てをした者に対して、不当な強制執行により生じた損害の賠償を請求することができるわけです。もっとも、委員御指摘のとおり、このような損害賠償請求をするためには、原則として、再審の訴えを提起して、不正に取得された確定判決を取り消す必要があるものとされています。

 ただ、これにも判例上例外が認められておりまして、当事者の一方が、相手方の権利を害する意図の下に、作為又は不作為によって相手方が訴訟手続に関与することを妨げ、あるいは虚偽の事実を主張して裁判所を欺罔するなどの不正な行為を行い、その結果、本来あり得べからざる内容の確定判決を取得し、かつ、これを執行したといった特別の事情が認められる場合には、再審の訴えを提起することなく直ちに損害賠償請求をすることができることとされているものと承知しております。

吉田(宣)分科員 御説明ありがとうございます。大分の事案については今御説明があった内容なのかなというふうに思っております。ここに書いてある、済みません、私が先ほど読んだ文なんですけれども、既判力の法的安定性を考慮しても容認できないというふうな判決文はその意味をしているのかなというふうなことで、私自身は理解しているところでございます。

 ところで、何の非もない被害者が、原則論でいくと、これほど大変な法的手続を経なければならないということから考えれば、私はやはり、繰り返しですが、こんなことはあってはいけないんだというふうに思うわけです。二度と同様の事件が生じないような対策を私は是非講じていただきたいと思います。

 昨年の、もうちょっと言うと一昨年に起きている話でございますけれども、新聞報道等で恐らく裁判所もこの情報については御存じだというふうに思っておりますけれども、裁判所として、こういうふうな事案が起きたことに対してどのような対策を講じたのか、また、これから講じようとしているのかについて、何かございましたら御答弁願いたいと思います。

門田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 送達事務をつかさどる裁判所書記官に対しては、これまでも、研修やいわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングなど、様々な機会を通じて、送達の要件認定には十分に留意するよう指導してきたところでございます。

 委員御指摘のとおり、裁判所を欺く不正な行為により手続が悪用される可能性があるということを踏まえまして、今後も、適切な事務が行われるよう指導を徹底してまいりたいと考えております。

吉田(宣)分科員 是非、研修等はやっていただけるということでございますけれども、送達の要件認定というふうな御答弁もございました。厳格にやっていただかなければいけないんだと思うんですね。

 私、これも推測で物を言うのは非常に無責任かもしれませんが、この大分の事案と久留米の事案、恐らく、送達の要件認定、今の御説明のあった認定の要件からすれば、かなり甘かったと言わざるを得ないんじゃないかという気もしております。すなわち、徹底していただかないといけないということですね。それは、もう是非お願いしたい。もう二度と起こしてはいけないというふうな観点から、くどいようですけれども、申し上げておきたいと思います。

 では、次に法務大臣にお聞きをいたしますが、今までのお話をちょっと聞いていただいたと思いますけれども、今度は、民事訴訟法などの司法手続を所管するという意味合いでお答えをいただきたいと思います。

 今申し上げたような、こんなでたらめな判決が生じるような事案というのは二度と起こしてはいけないと思うわけです。そういった観点から、この民事手続を所管する法務大臣として、私は、対策を考えていかなければいけないのではないかというふうに思いますが、大臣の御所見をお聞かせいただければと思います。

古川国務大臣 委員が大変御懸念をしておられるように、司法に対する国民の信頼というものは、これはもう何にも増して重要なものでありまして、この国民の信頼を得るという重要性、これは全く私も委員とその問題意識を共有いたしております。このような観点からは、御本人に反論の機会も与えられないままに実態に反する判決がだまし取られるというような事態、つまり、送達に関する制度が悪用されるような事態、これはあってはならないことであります。

 対策ということなのですけれども、先ほど最高裁判所がお答えをしましたように、裁判所において、送達に関する事務が適切に行われ、制度が悪用されることがないよう、裁判所書記官に対する指導を徹底するなどの対策、これらが講じられているというものと承知をいたしております。

 民事訴訟法を所管する法務省としましても、このような実務における取組の状況をよく注視しながら、その上で、必要に応じて適切な対応をしていきたい、このように考えております。

吉田(宣)分科員 是非よろしくお願いいたします。研修の際は、この案件が存在したということは、是非、書記官の皆様、実務を担当されておられる方々には広く周知していただいて、やはり、起こしてはならないということを徹底していただければというふうに思います。

 さて、このような事件では、先ほど述べたとおり、被害回復には被害者に大変な負担が生じます。加えて、さきの大分地裁の判決文に、繰り返しですけれども、虚偽の事実を主張して裁判所をだまし、本来あり得べからざる内容の確定判決を取得したと痛烈に批判されていることを、私は重く受け止めなければいけないと思っております。

 そして、私、この判決文、何度も読んだのですけれども、この判決文の響きが、人を欺いて錯誤を生ぜしめ、その錯誤に基づいて財物の交付、その他の財産的処分行為をなさしめて財物を取得し又は財産上の不法の利益を得ることによって成立する詐欺罪の構成要件に、私はこの判決文は似ているというふうに思っております。全く非のない被害者から、裁判所を欺き、経済的損害を生じせしめる行為は、もはや、民事レベルを超えて、私は刑事レベルで対応しなければいけないんじゃないかと考えます。

 ここからは、少し個別案件を離れて、一般論としてちょっと申し上げたいと思いますが、刑法各論の概説書には、詐欺の項目には訴訟詐欺という論点が解説されているものもございます。ある刑法学者の概説書によると、訴訟詐欺とは、広義では、裁判所を欺罔して相手方から財物又は財産上の利益を騙取する行為をいい、狭義では、そのうち、行為者が、被害者を被告として裁判所に虚偽の申立てを行い、裁判所の判断を誤らせて勝訴判決を得、被害者の財産に強制執行を行わせるものをいうと定義をされておりました。

 ただ、この論点につきましては肯定説と否定説の両方が存在するようでございます。すなわち、構成要件上は解釈に委ねられているという状況のようでございます。

 しかし、重ねてではございますが、このような訴訟詐欺は、救済のハードルが高い民事レベルで解決すべき問題では私はないと思うんです。刑事レベルで対応することにより、抑止力をもって法益を守るべきだと私は考えます。ただ、刑法の条文が持つ構成要件を明確にすること、これは、刑法の自由保障機能上、併せて行われていかなければいけない課題ではございますが。その点については、やはり大切に私も考えておりますけれども。

 さらに、加えて、この訴訟詐欺は、裁判所が行為者に利用されて虚偽の事実に基づく判決文を生み出してしまうことから、裁判所への国民の信頼を大きく失墜させる危険もはらんでいると私は思っております。しかし、この点、詐欺罪は、財産的法益に対する罪であって、直接、国家的法益を保護する犯罪ではございません。

 そこで、国家的法益も保護する。もちろん、財産的法益を保護するという意味合いからすれば、今の刑法典では、詐欺罪は財産的法益のところに規定がありますので、国家的法益から離れております。そういった意味から、私は、訴訟詐欺を詐欺罪から少し独立した犯罪として、刑法の改正を行ってはいかがかなというふうに思っております。

 もちろん、私が一人で言ったからといって、これが実現するなんていうことはゆめゆめ思っておりません。ただ、今申し上げたことには、今、国家的法益と個人的法益、財産的法益というふうなものを加味して守るという意味合いでも、訴訟詐欺に対する規定の新設といいますか、改正というものを提案しているわけでございますけれども。

 そこで、まずは法制審議会でこの点を議論してみてはいかがかなと存じますけれども、古川法務大臣の御所見をお聞きしたく存じます。

古川国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、いわゆる訴訟詐欺というものは、一般に、裁判所を欺いて勝訴判決を得て、そして強制執行により敗訴者から物を取得するというような場合をいうというふうにされております。このいわゆる訴訟詐欺につきましては、判例上、詐欺罪の成立が肯定されているというふうに承知をいたしております。

 そこで、委員の御質問、この訴訟詐欺を詐欺罪とは別の独立した犯罪として規定するべきではないかという御意見でございますけれども、これについては様々な観点から検討すべき論点があるというふうに考えております。

 例えば、詐欺罪の構成要件とは別に、訴訟詐欺として処罰すべき要件を明確かつ限定的に規定することができるかどうか、あるいは、国の機関、いろいろありますけれども、その中でも司法機関を欺く訴訟詐欺のみを詐欺罪とは異なる類型として処罰する、その理論的根拠をどのように考えるかということ、あるいは、訴訟詐欺に該当する行為のみを処罰する新たな罰則を創設すべき状況にあるのかどうか、こういう様々な観点から慎重に検討する必要があるのではないかというふうに思われるところであります。

 いずれにしても、訴訟詐欺というものは、先ほど来委員が非常に懸念を表明しておられますけれども、事案の内容に応じて、詐欺罪等の犯罪に該当する悪質な事案に対して、厳正に処罰する必要があるものと考えております。

 検察当局においては、法と証拠に基づいて、刑事事件として取り上げるべきものがあれば、適切に対処していくことになるというふうに承知をいたしております。

吉田(宣)分科員 詐欺罪での立件も可能であるという過去の判例もあり、そのことがしっかり実務に伝わって、このようなことを起こすような心を持つ者が現れないような取扱いというものも是非お願いしたく存じます。

 本日は、議論させていただきまして、誠にありがとうございました。終わります。

葉梨主査 これにて吉田宣弘君の質疑は終了いたしました。

 次に、日下正喜君。

日下分科員 昨年の選挙で初当選させていただきました公明党の日下正喜でございます。

 本日は、外国人材の受入れ並びに共生社会に向けた取組について質問させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 日本は、少子高齢化によって労働人口が減少し、建設や農業、漁業、自動車産業、そして介護など、日本の若者就業者も減り続け、どこも人材不足の切迫した状態が続いております。

 例えば介護の分野では、介護人材の確保、定着に先進的に取り組んでいる愛知県労働局でも、県内の新規求人倍率が約二倍なのに対し介護職だと六から九倍で、まだまだ厳しい状況にあると、先日視察した同僚議員が報告されておりました。政府も介護職員の処遇改善などに取り組んでいただいておりますが、実態はまだまだ厳しいのが現状です。

 我が国における外国人労働者数は令和二年時点で百七十二万人程度となっており、日本の労働人口約六千八百万人に占める在留外国人の割合は二・五%、四十人に一人が外国人ということになります。

 また、特定技能でいいますと、このコロナ禍で帰国できなかったこともあり、技能実習から引き続き五年間働ける特定技能一号に移行した実習生が令和三年九月末現在で約三万人と、その他、試験ルートや既に特定技能一号になっていた人を合わせると、十一月の数値では約四万六千人でございます。

 本来、国が考えていた特定技能の受入れ枠三十四万人までまだまだ追いついていない、制度が始まってまだ日がたっていないのもありますけれども、そういう状況でございます。すなわち、日本の各産業分野の労働者需要に大きな穴が空いた状態だと言えます。

 現在の技能実習制度については、当初の理念、目的と現実の乖離なども顕著になってきており、問題化している部分もありますので、この点をまずお聞きしたいと思います。

 当初、外国人技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国等の外国人を我が国で最長五年間受け入れ、OJT、実務を通した研修を通じて技能を移転する制度として平成五年に創設されました。また、技能実習の対象技能等は、実習生の本国において習得することが困難であり、帰国後、習得した技能等を生かすことが予定されているものであって、かつ、同一の作業の反復によって習得できるものではないものとされてきました。

 しかし、その後、見直しもされ、現制度になって十年が経過しましたが、実質的には低賃金労働者の確保に利用されたり、一部、人権侵害行為が発生しているとの問題も指摘されております。

 現在、全国に三十数万人の技能実習生、そして、技能実習は終えたものの、コロナ禍の影響で帰国困難となり、特定活動という在留資格で元の実習先で働いている外国人が約四万人、合計約四十万人の方が在留しておりますが、中には、出稼ぎ感覚で来日し、帰国した後は稼いだお金で屋台を営みたいなど、技能の習得というより、何か商売を始めるなど、元手をためるために来日する実習生も少なくないと聞いております。

 十把一からげに申し上げるのもどうかと思いますが、このように、当初の、国際貢献や技能の移転、また、帰国後は習得した技能を生かすことが予定されているものといった理念、目的は形骸化し、受け入れる事業者は足りない労働力の確保、実習生はまとまった金を稼ぎたいという、現実的な互いの利害をかなえるものとして、この制度を利用しているようにも見受けられます。

 こうした技能実習制度の当初の理念、目的と現実との乖離について、どういう御認識をお持ちか、法務大臣にお尋ねいたします。

古川国務大臣 お答えいたします。

 技能実習制度は、技能等の移転を通じた国際貢献を推進することを当初の理念として創設をされた制度でありまして、実際、これまでにも多くの技能実習生が実習を全うして、母国で活躍しておられるものというふうに承知をしております。

 一方、現実に起きている問題として、一部の受入れ企業等において、この制度趣旨を必ずしも十分理解せず、あるいはこの制度を悪用するなどして、労働関係法令違反のみならず、人権侵害行為にまで及んでいる、そういう問題が生じていることは事実であります。さらに、技能実習生の失踪などの問題もかねてより生じているところであります。

 こうした当初の理念と現実の乖離ともいうべき事態が起きている原因としまして、技能実習制度には本音と建前、つまり、労働力不足を補いたいという本音と国際貢献という建前との間のいびつな使い分けがあるのではないか、こういう御意見があることは私もよく承知をいたしております。

 他方、この技能実習制度には、そうした御意見を含め、様々な立場から多様な御意見、御指摘もある、このように承知をいたしております。

 法務省としては、制度の適正化、そして技能実習生保護の取組を徹底しつつ、制度のよいところだけではなくて、御指摘を受けているような悪いところがあるのであれば、それを率直に認めて、そして改めるべきは改める、そういう誠実さを旨としまして、厚生労働省などとも連携をして、制度の在り方について検討を進めていきたい、このように考えています。

日下分科員 ありがとうございます。

 私は、今回の理念と現実との乖離、これは、あったはあったとしても、受入れ事業者も人材不足を補い、実習生もそれぞれの目的を達成して無事に帰国するのであれば、許容できる範囲なのかなというふうにも思うんですけれども、不当に低い賃金であったり、言葉の暴力も含めた暴力行為、パワハラなど、人権侵害行為が一部見られるという状況は看過できないと思います。

 これは、主務大臣によって認可された監理団体の責任と、低賃金やパワハラ、暴力事案などを起こした当の実習実施者の責任ということになりますが、監理団体は、数十から百を超える実習実施者を監理し、また五百人とか千人とかという実習生の状況を見ていくという結構大変な業務になっております。また、実習生を見ていくのは実習実施者と監理団体という二重構造になっておりますので、そうしたパワハラ事案というか、そういったことが発生した際に見えにくくなっているのではないのかなというふうに感じております。

 ここ二年間はコロナ禍によって頭打ちになっておりますが、この十年の傾向を見ると、来日する実習生はウナギ登りに増加しております。コロナ後、ますます増加すると思われる技能実習生の受入れについて、現制度のたてつけ等について不備はないか、隙間はないか、まず、法務省はどのように認識されているのか、お伺いいたします。

西山政府参考人 委員御指摘のような技能実習生に対する人権侵害事案、これを防止し、あるいは、そのような事案が生じた場合に適切、迅速に救済や是正等を行うための仕組みでございますけれども、まず、監理団体は、技能実習生からの相談に適切に応じるとともに、実習実施者等に対して適切に指導等を行う義務がございます。

 その上で、実習実施者及び監理団体に対しては、外国人技能実習機構が定期又は臨時に実地検査を行っており、人権侵害を含め法令違反が認められたり、監理団体がその監理事業を適正に実施していないことが確認された場合には、改善を指導、勧告するとともに、主務省庁において、その様態に応じて行政処分等を行うこととなっております。

 依然として、一部の実習実施者等において不適正な事案が生じていることについては、私どもも課題と認識しておりまして、入管庁としましては、制度が適正に運用されているか不断に検証を重ね、制度を共管する厚生労働省、そして外国人技能実習機構と連携し、引き続き、制度の適正化に努めてまいりたいと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。

 先ほど、定期的に実習実施者また監理団体の実地検査というか、それを行っていかれているというふうにお伺いしましたが、その期間が結構長くて、日々見ていけるような状況ではない。学校のいじめでもそうですけれども、本当に近いところで見ていないと分からないという。実習で受け入れられた外国人複数、三名とか五名とか、その中の何人かが加害者になってしまうと、全く外には出てこない話になってしまうんですね。

 だから、非常にこれは難しい問題だと思いますので、また丁寧な検査というか、私が聞いた監理団体では、SNSを使って、実習生とその監理団体が直接つながって、日々いろいろなことを吸い上げられるようにしている、そういう工夫、どこもしているのかもしれませんけれども、そういったこともしていると聞いておりますので、いろいろな形で実習生を守っていけるようにしていただければというふうに思います。

 次に、技能実習生の失踪について質問したいと思います。

 平成二十五年以降のデータですが、毎年数千人規模の実習生の失踪が報告されております。なぜ失踪しなければいけないのか。

 各国によって、送り出す際の実習生が負担する手数料の違いもありますが、手続の仲立ちをする送出機関に悪質なブローカーまがいのものもあるかに聞いております。来日するための通常の手数料は三十万円から五十万円程度であるのに対し、そういうブローカーを介すると法外な手数料を払うことになり、家族や親族からもお金をかき集め、大きな借金を背負ったまま日本に来ることになります。実習生として三年間働いたとしても、得られる金額が借金に届かないとなれば、働き続ける意味がなくなってしまいます。

 日本国内にも、失踪を手引きする仲間なのかブローカーなのかがいて、稼ぎのいい別の場所で働き、ある程度金をためた上で、不法滞在を名のり出て、本国に強制送還される。だから、今、数万人にもう膨れ上がっているはずなんですけれども、現在、失踪で分からないというのは六千人とかというふうに聞きましたので、やはり帰還しているんですね。ということは、やはり、名のり出て、強制送還されているんじゃないのかなというふうに思っております。

 法務省は失踪の原因をどのように把握、認識されているのか、伺いたいと思います。

西山政府参考人 技能実習生の失踪者数につきましては、令和三年上半期において三千三百三十二人となってございまして、依然として多くの失踪者が発生していることにつきましては重く受け止めているところでございます。

 お尋ねの失踪原因について、これを明確に特定することには困難な面もございますけれども、一部の実習実施者の不適切な取扱い、あるいは、当初見込んでいた入国後の収入額等が実際と異なり、入国前に支払った費用を返済するため新たな就労先を求めるなどの技能実習生側の経済的な事情などがあり得るものと考えております。

日下分科員 あわせまして、フィリピンからの実習生の失踪が極めて少ないと聞いておりますけれども、送り出す国、フィリピン政府の取組等について、他の国との違いがございましたら教えていただきたいと思います。

西山政府参考人 御指摘のフィリピン国籍の技能実習生の失踪状況につきましては、令和二年における失踪者数が四十八人でございまして、失踪率は、全体の失踪率一・二%と比べると、〇・一%というふうにフィリピンでは低水準となっていること、先生御指摘のとおりでございます。

 お尋ねのフィリピン政府の取組についてですが、フィリピン人を雇用する日本の受入れ機関は、労働条件等に関して事前にフィリピン政府の審査を受ける必要があり、この政府の認証を受けた上で受入れ機関として登録される、そういう仕組みであるということ、それから、技能実習生を含め、海外に働きに出るフィリピン人から送り出し機関による送り出しに係る手数料の徴収が禁止されているといったことなどを承知しているところでございます。

 フィリピンの政府の取組と先ほどの失踪の低水準ということの因果関係につきましては、明確にお示しすることは困難ではございますが、不当に高額な手数料の徴収により借金を背負って来日する事例などを防止することにつながっているのではないかと考えているところでございます。

 いずれにしましても、入管庁としては、引き続き、適切に現状把握に努めるとともに、制度を共管する厚生労働省、外国人技能実習機構などと協力しながら、制度の適正化に努めてまいりたいと考えております。

日下分科員 こうした実習生を受け入れている国は日本だけではなく、韓国やヨーロッパ、シンガポールなど、多くの国で実施されております。実習生の賃金、月収については、韓国は日本の一・五倍となっており、我が国で働く外国人の賃金はヨーロッパ、韓国より少なく、希望先としても日本の人気が下降していると聞いております。

 例えば、韓国では、雇用許可制を導入し、非専門的、技術的分野の外国人労働者の受入れに踏み切ったとも聞いておりますが、我が国でも、一定枠、非専門的、技術的分野、飲食店のホール係とか食品工場のラインで働く、そういうふうな仕事になりますけれども、における受入れも検討してはどうかと思いますが、法務省の見解をお尋ねします。

西山政府参考人 御指摘の韓国の雇用許可制度でございますけれども、二〇〇四年に導入された非熟練外国人労働者を受け入れる制度であり、韓国国内の労働力不足に対応するため、受け入れる業種、人数、受入れ機関の事業規模などを限定し、送り出し国との間では二国間協定を作成し、両国政府が送り出しから受入れまでの手続に関与する仕組みであるというふうに承知しております。

 一方、我が国の外国人労働者の受入れに関する政府の基本方針としては、専門的、技術的分野の外国人については、我が国の経済社会の活性化に資することから、積極的に受け入れることを推進することとしております。

 他方、そうでない分野の外国人労働者の受入れにつきましては、ニーズの把握や経済的効果の検証のほか、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コストなど、幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ、政府全体で検討していく必要があるものと考えております。

日下分科員 ありがとうございます。

 今後、他の国、先ほど申しましたヨーロッパ、シンガポール、ドイツとか、他国の例、例えば賃金、待遇、ステップアップの状況とか、そういう受入れの状況を日本として押さえていくということは、これからよい人材に来ていただく、獲得するための重要な資料というかデータになると思いますので、しっかり調査を、各国の、世界の動向というか、それも押さえていっていただきますようによろしくお願いしたいというふうに思います。

 これは実習実施者から伺った話ですが、技能実習生の受入れ期間は基本的に三年ないし五年と短いため、建設業や物づくりを営む職人の皆さんから見れば、本当の意味での技能を教えるにしても、習得の道半ばで帰国してしまい、技術を伝えられない、なかなか、伝えていこうという意欲がそがれる、そういう声も聞きます。もっと長期でいてくれるなら、技術も伝えられるし、戦力としても大切に育てられるという声をよく耳にします。今、技術を持った日本の職人さんたちも高齢化し、それを引き継ぐ若手人材不足は深刻なレベルになっております。

 一方、はるばる日本まで来られる外国人の皆さんの立場に立って考えますと、三年で帰る、また、特定技能一号の枠は十四分野ありますけれども、二号になると二分野になってしまう等、将来設計とか見通しがとても立てづらいのではないかと容易に想像できます。その結果、日本ではなく別の国に行って働こうということになりはしないかと危惧するところでございます。

 私は、それらを解決するには、技能実習から特定技能一号、二号へともっと連動性を持たせ、特定産業の対象十四分野についても再度見直しを図るとともに、その分野は一号、二号でなるべく共通のものにすることが必要と考えます。そうしなければ、外国人材の専門性や技術性も持続して高まっていかないと思うからでございます。

 また、これはもう少し細かい話になりますけれども、介護の分野で申しますと、施設サービスのグループホーム、デイサービス、特定施設、特別養護老人ホームだけに限定されている外国人の特定技能及び技能実習生について、住宅型有料老人ホームやサービス付高齢者向け住宅において、施設職員や訪問看護職員としてそれらの外国人材が働けるよう制度を見直してはどうかと思います。こうした施設においても、グループホームなどと変わらない職員が二十四時間体制で働かれ、その需要は高まっております。

 こうした例は、他の産業分野でも数多く存在すると思います。もう一度、国内産業における中長期的な労働力需要を精査し、外国人材の受入れ拡大についても検討を加える必要があると思います。

 ここまでるる述べてまいりましたが、私は、技能実習制度を抜本的に見直し、これを特定技能へのファーストステップ、入口として位置づけ、本格的な外国人材の確保に向けた、日本語学習も含めた研修、試用期間、帰りたい人は帰ってもらっていい、合わないなと思ったら本国に帰ってもらったらいい、そういうふうな試用期間としてはどうかと提案したいと思います。

 その際、現在の監理団体は、これまでのノウハウを生かし、送出機関と受入れ企業との調整や実習生のサポートを行うなど、制度全体が軟着陸できるような配慮も必要だと考えます。

 大臣にお尋ねします。

 技能実習生の受入れ期間は三年程度が妥当だとお考えでしょうか。技能実習制度と特定技能制度に、より連動性を持たせてはどうかと思うのですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

古川国務大臣 技能実習制度と特定技能制度の両制度の連動性についてお尋ねがございました。

 委員御存じのとおり、技能実習生は、技能実習一号として一年間、技能実習二号として二年間、技能実習三号としての二年間、最大で五年間の在留が可能となっております。その上で、この技能実習を修了した外国人本人が希望された場合には、技能実習二号を良好に修了するなどの要件を満たせば、一号特定技能外国人として上限五年間の就労が可能となるということになっております。

 それから、特定技能二号は、熟練した技能を要する業務に従事する外国人を受け入れる在留資格であり、既存の就労資格と同様、受入れ企業との雇用契約を前提にして、一定の期間ごとに更新を認めるもの、そのような仕組みになっております。現在、十四の特定産業分野のうち、建設及び造船・舶用工業分野の二分野で受入れが可能となっております。

 このように、両制度、連動する仕組みができております。

 委員が先ほど来御懸念を示しておられるとおり、今後ということなんですけれども、今、特定技能二号の対象分野の追加の問題につきましては、それぞれの分野を所管する省庁において検討が行われているものと承知しております。

 入管庁としては、随時、その各省庁の検討結果を受けて、厚生労働省など制度を所管する省庁とともに検討を進めていきたい、このように考えております。

日下分科員 最後に、我が国の科学技術力や細やかな工夫を凝らした物づくり、そして心の行き届いたサービスなどは、日本人が得意としてきた分野です。日本の若者たちにもこうした分野に進みやすい環境を整えるとともに、これから改めて、外国人が日本社会を共につくる一員として処遇され、全ての人が安全に安心して暮らすことができる社会を築いていかなければならないと思います。

 そのためには、労働環境に加え、教育、医療、介護、福祉など、地域社会におけるサポート体制の一層の充実や、行政のデジタル化に向けたマイナンバー制度の活用等も重要な課題に挙げられると思います。

 また、国際化が勢いを増して進む中で、一定期間であっても一たび日本で暮らし帰国する外国人は、今後、知日派、親日派として日本と本国とを結ぶ友好の懸け橋となる存在でございます。

 こうした点を踏まえ、外国人材との共生に向けた環境づくりに対し、法務大臣の御所見をお伺いいたします。

古川国務大臣 社会経済のボーダーレス化が進む現代において、外国人との共生社会の実現、これは、我が国に限らず、世界における趨勢だというふうに考えております。

 我が国政府におきましては、平成三十年十二月に、外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策を策定しまして、医療、保健、教育など、生活の様々な分野における具体的な施策を取りまとめております。

 それから、新型コロナの拡大など、様々な状況の変化がございます。それらにも対応しながら、必要な施策を追加するなどして、共生社会の実現に向けて取組をこれまでも推進してきたところであります。

 さらに、昨年十一月には外国人との共生社会の実現のための有識者会議から意見書が提出されましたことを受けて、今年の六月頃をめどに、中長期的に取り組むべき施策等を示す工程表を策定して、取組の一層の推進を図っていくということとしております。

 御指摘のように、外国人との共生は、国民一人一人の生活とも密接に関係する身近な課題であります。また、日本国が世界の中で生きていくためにも大事な課題だというふうに考えております。今後とも、広く国民の皆様の声に耳を傾けながら、施策を充実して進めていけるように努力をしてまいります。

日下分科員 大変ありがとうございます。

 時間の関係で大臣の御決意をお聞きする時間がなくなってしまったんですけれども、大臣、抱負でも述べられていますように、今回のこういう見直しの時期、これをチャンスとして捉えて思いっ切りバットを振っていきたいというふうに発言されておりますけれども、私も膝を打つ思いがいたしました。しっかり共に進めてまいりたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

葉梨主査 これにて日下正喜君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉川赳君。

吉川(赳)分科員 自民党の吉川でございます。

 お時間をいただいて、この分科会で質疑をさせていただきたく存じますが、一応大臣には通告を出していないかと思いますので、どうぞゆっくりしていただいて。余り言うと怒られるわけでありますけれども。

 ちょっと順番が前後しますが、まず、検察庁、お越しいただいているかと思いますが、お聞きしたいんですけれども、端的に、検察、これは、検察官は行政官、そして検察庁も行政庁という認識で間違いないでしょうか。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 検察庁は内閣の下にございますので、そういう意味で、行政であることは間違いございません。

吉川(赳)分科員 ありがとうございます。

 余り強く聞くつもりはありません。怖いですからね、検察。なので、やんわりとでいいんですけれども。

 しかし、一方で、これは検察庁のホームページに書かれているんですが、検察官及び検察庁は、行政と司法の両性質を持つ機関であるためということが書かれているんですね。検察制度の特色ということの部分のホームページにこれが明記をされているわけであります。

 その中で三つ主な理由が挙げられていまして、このうちの三つ、これは、行政としての動きである捜査ですとか、さらには起訴に関わるちょっと司法寄りの動き、こういったことが併せて行われるので、この両性質を持つ機関であるということが書かれているページがあります。

 ちょっとこれに関してなんですけれども、行政庁で、また行政官の組織でありながら、司法との両性質を持つということを自らホームページでうたっているわけですが、まず、何に基づいてこれが明記されているのか。学説なのか、それとも何らかの判例が、まあ、ちょっとあるとは考えづらいんですけれども、判例があるのか、それとも、学説なのか、独自の考えなのか、ちょっとそれを述べていただきたいと思います。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点でございます。

 先ほど、私、御答弁申し上げましたように、検察権は行政権の一作用でございますが、一方で、今御指摘もありましたけれども、検察官は刑事訴訟法により唯一の公訴提起機関として規定されておりまして、検察官が起訴していない事件を裁判所は審判することができないなど、その職務執行の公正は直接刑事裁判の結果に重大な影響を及ぼすものでございます。

 このように、検察権は司法権と密接な関係にあり、それゆえに、検察官については、一般行政官と異なり、裁判官に準ずる身分の保障も与えられているところでございます。

 委員御指摘の、検察官及び検察庁は、行政と司法との両性質を持つ機関であるという記載は、今申し上げました検察官及び検察庁の性質を述べたものでございまして、まさに検察の性質を端的に表す表現として、これまでも国会答弁や質問主意書に対する政府答弁書等で繰り返し述べられてまいりました政府の一般的理解に沿ったものであると承知をしております。

吉川(赳)分科員 これは政府の理解ということなので、そこを余り強く申し上げるのもいかがかなと私は思うんですけれども、この表現は、今御答弁いただいたように、深い関連性があるとか、そういう書きぶりでもいいのではないかと思うんですね。

 少し前に、検察官の皆さんの定年延長の議論、国会での審議等も含めた中で、野党さんを中心に、司法への介入ではないか、こういった指摘もあったわけなんですよね。ただ、一方で、先ほど答弁いただいたように、立場としては行政官であるわけですから、これはしっかり内閣、政府の方で定年延長を国会に提出をして可決を目指したというような経緯になっているわけでありますが、かといって、一方で、司法との両性質を持つと自ら検察がうたっていることが、やはり、そういったことを行うときに、少しこれはネックにもなってくると思います。

 それに関連してなんですけれども、また同時に、学校教育においても、多分、三権分立、中学校ぐらいで習うと思うんですけれども、基本的には、立法は国会で、そして行政は行政で、司法というのは裁判所というふうに学校では習うと思うんですよね。まず、学校教育の中で、一部、検察が司法に含まれる、行政官でありながら司法的な性質を持つだとか、そういったことというのは、これは余り、多分中学校ぐらいだと教えていない、大学の法学部なんかではこれは触れるのかもしれませんけれども。

 そういったことも含めた中で、このホームページの書きぶり、幾ら政府がそういう認識が今までということであっても、司法という言葉を余りにもずばっと書き過ぎているんじゃないかと思うんですけれども、そこについて何か感想があれば。

川原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘は御指摘として理解をさせていただくところでございますが、先ほども御答弁申し上げましたように、検察官につきましては一般の行政官とは異なる立場だということは政府のこれまでの見解でもございまして、ホームページの記載というのは、先ほども申し上げましたように、その理解に沿ったものであると私は考えております。

吉川(赳)分科員 もちろん、これ以上それに関してということはないんですけれども、ただ、余りこの考えが行き過ぎると、私は思うのが、この日本国で生活している誰しもが刑事事件の被疑者、容疑者になる可能性というのは、これは、冤罪であれ、本当に罪を行ったことであれ、起き得ると思うんですね。

 例えば、私に明らかな冤罪がかけられた場合に、普通でいったら、裁判というのは、弁護士さんを立てて、そして検察官と弁護士さんでやり取りをして、司法に適切な判断を下してもらう、こういったことになるわけですけれども、ただ、これが余り行き過ぎると、要は、判決を出すのも司法だし、戦っている方も半分司法だし、それで冤罪を晴らすというのは、見方としても余りこれは健全ではないなと思います。

 確かに、このページに書かれているように、ただ、司法というのは、別に裁判における司法性ではなくて、あくまで起訴に係る司法性ということですから、もちろんそういった理解で私もするわけでありますけれども、ただ、一つ言えることは、余りホームページにこの書き方は、ちょっと私はどうかなというふうに思っております。

 なので、さっき答弁いただいたように、深い関係性があるですとか、是非そういった形での認識を持っていただくことが極めて健全なのではないかな、そのように思いましたので、今回質問をさせていただきました。

 続いて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 他省庁のことになりますけれども、今、内閣府の方で、こども家庭庁の設置というものが一つ今回の国会また岸田内閣における目玉となっているわけであります。

 その中において、十二月二十一日に閣議決定をされた文書、こども政策の新たな推進体制に関する基本方針というものが閣議決定をされているわけであります。この六ページに、「1こどもの視点、子育て当事者の視点」ということで、子供の声に耳を傾けることは、子供を大切にする第一歩である、こういったことが書かれておりますし、最初の、この閣議決定の冒頭にも、こどもまんなか政策ということを政権では言っているわけでありますが、子供を中心にする政策を様々所管しますよというようなことになっているわけであります。子供政策が行われる際は、子供の最善の利益が考慮されなければならないことは言うまでもない、こういったことがるる書かれているわけであります。

 その中で、法務省関連で、私が一昨年の分科会でも取り組まさせていただいたんですけれども、離婚をしたときの親権の在り方についてちょっと質問させていただきたいなと思います。

 民事局長にちょっとお伺いしたいんですけれども、まずは、今の離婚後の親権の在り方に関して、十五歳以上が自分の意思で決められる。十五歳未満に関しましてはどういった基準で大まかに親権が決定をされているのか、お伺いしたいと思います。

金子政府参考人 離婚の場合の親権につきましては、多くの方がされている協議離婚の場合は、まず、離婚される父母が話合いで決めるということになっております。

 父母の間で協議が調わないで裁判所が関与するという場合もございますけれども、この場合は裁判所の方が適切な者を定めるわけですけれども、その場合に、お子さんが十五歳以上の場合は、親権者を定める場合に、お子さんの陳述を聞かなければならないとされております。これを必要的な陳述の聴取と言っています。

 この必要的な陳述聴取以外に、家事事件手続法に別に規定がございまして、子がその結果に影響を受ける家事事件について、つまり、子にとっての親権者を定める、あるいは変更するような事件については、家庭裁判所は、十五歳未満の子を含めて、子の意思の把握に努め、子の年齢及び発達の状況に応じて、その意思を考慮しなければならないとして、子の意思をきちんと把握した上で判断をしてくださいというような規律を持っているということになります。

吉川(赳)分科員 今御答弁いただいたことはよく分かりましたが、これは大体、大手の弁護士事務所さんのホームページなんかで子供の親権ということを検索すると、少しちょっと違ったようなことが出てくるんですね。

 でも、余り子供の親権ということを検索していると、たまに、検索もしていないのに広告で弁護士事務所のバナーが出てきて、何か自分が離婚するみたいでちょっと不安になるんですけれども、それはおいておいて。

 調べると、大体ゼロ歳から十歳の場合、これはやはりどうしても子供の意思というのが、意思はもちろんあるんでしょうけれども、明確にそれを捉えづらいことであったりだとか、あとは意思の在り方、根拠、こういったものがそんなに、十五歳の子に比べると少し弱いなということで、どちらかというと、今までの結婚しているときの育児の時間ですとか、そういったことを考慮するというようなことが多い。

 そして、十歳から十五歳、こうなってくると、もうある程度自分の意思で決めることができるので、比較的、子供の意思がダイレクトに尊重されるようにはなるというような裁判の判例が多いようであります。

 そこを踏まえてなんですけれども、今回、こども家庭庁設置法案の、今のところ、見ると、これは子供に関わる様々なこと、虐待であるとか、さらには子供の貧困に関わること、いろいろ子供のことを、こども家庭庁に様々な省庁から権限を移譲するというようなたてつけになっているわけですけれども、一言も、今回のこども家庭庁に、これは内閣府でまたやりたいなと思っているんですけれども、親権に関することというのが何も触れられていないわけなんですよね。

 そこで、改めてちょっとお伺いをしたいわけでありますけれども、やはり子供を中心に考えると、離婚後もしっかりと子供が自分の権利を主張する、例えば、親権者でない親とも会いたいというときに会えることが重要でありましょうし、また、離婚の協議の際に決定した、しっかりとした養育費等々の支払い、こういったことも最近では問題になっておりますので、そういったこともやっていかなければならない問題に私は関連してくるんじゃないかと思います。

 なので、ちょっと改めてなんですけれども、離婚した子供の養育について、法制審議会で度々議論していただいていると思うんですけれども、これまでの議論をもう一度教えていただけると助かります。

金子政府参考人 父母の離婚後の子の養育の在り方は、子供の生活の安定や心身の成長に直結する問題でありまして、子供の利益の観点から大変な重要な問題であると認識しております。

 法制審議会における議論においても、子供の利益を中心にという議論は常にされているところでございます。

 法制審議会における議論の状況について御説明しますと、令和三年三月から法制審議会家族法制部会において検討が進められておりますが、その中で、親権概念等の子の養育に関する基礎的な概念の整理や、離婚後の子の養育への父母の関与の在り方、それから、養育費の確保や安全、安心な面会交流の在り方など、包括的な検討を行っているほか、未成年養子縁組の在り方や財産分与制度についても検討を行っているところでございます。

 今後は、今年の夏頃に中間試案を取りまとめた上で、パブリックコメントの手続を行うことを目指しておりまして、その結果を踏まえて、さらに最終的な取りまとめに向けた調査審議が行われることになる見込みでございます。

吉川(赳)分科員 そういった一方で、やはり子供の利益を最優先に考えるとなると、様々、実は日本は制度上の不備というものが私は見受けられるのではないかなと常々思っているんですね。例えば、養育費をちゃんと払っていても、様々な諸事情によって面会交流ができない状態が続いているですとか、そういった離婚後の家庭というものが非常に多く見られるわけであります。

 そういった点に関しまして、今後、何か改善をしていくおつもりはあるかないかというのをお聞きしたいんですが。

金子政府参考人 養育費の問題、それから面会交流の問題、これは、法制審議会で今まさに議論されている中心テーマでございます。

 面会が様々な事情で進んでいないというような御家族の例の紹介もいただいております。そのような事情もあるということは十分に認識しながら、さらに、法制審議会の事務局として、充実した審議になるよう努めてまいりたいと考えております。

吉川(赳)分科員 その中で、もう一歩踏み込むと、これは諸外国と比較をしたときに、離婚後の親権の在り方というのを今日改めてお伺いしたわけでありますけれども、やはり共同親権という、離婚後にそういった制度を取っている国、大変多く見受けられるわけでありますが、今、法制審議会の中で、この共同親権に関する議論というのは進んでいるのでしょうか。

金子政府参考人 共同親権という用語自体は使っておりませんけれども、結局、離婚後も父母が共同で決めるべきお子さんに関する事項というものはどういうものであるべきかというようなことについて、一つ一つきめ細かく議論をしております。

吉川(赳)分科員 ちょっと、一つ一つきめ細かくということで、少しざっくりだったんですけれども、主にどういったことなんでしょうか。

金子政府参考人 お子さんのライフステージの中で重要な局面、例えば、病気にかかったときにどういう医療を選択するのかというような場面とか、あるいは学校の選択、そういうところについては、一方の方とお子さんが住んでいても、一緒に住んでおらない他方の方ともきちんと協議をしないといけないというようなことがあるんじゃないかというふうなこと、代表的には、今、医療の問題と進学の問題を挙げましたが、ほかにもどういうものについて共同で協議していくべきかというふうなことを調査して、検討していただいているということでございます。

吉川(赳)分科員 ただ、それは確かにちょっと一歩前進かなという感じはするんですが、あくまで、やはり親権者というものと、それがないということでは、そういったことへの関与というのも、なかなかそれはうまく進まないんじゃないかなと思うんですよね。

 離婚もいろいろだと思うんですけれども、そこで元夫と、元旦那さんが、腹を割ってしっかり話せたら、そんなに離婚もしないのかなとも思いますし、やはりそれなりの理由があるから離婚になってしまうんですよね。ただ、やはり子供を真ん中に置いて、お互いにその子供の発育にはしっかりと携わっていきたい、そういった思いが共同親権を目指すというような一つの考えにも私はなっていると思うんですね。

 なので、そういった意味では少し、ちょっと今、法制審議会で、そういったお考えを聞けたということは、これは一歩前進かなというような感じはしましたので、是非その点に関してしっかりと議論をしていただきたく思いますし、また同時に、なかなかそれは言うがやすしかなというような感触も、感覚も受けますので、我々も、私も、立法府の立場からしっかりと、離婚後の親権の在り方ということ、今後も取り組んでまいりたいなと思います。

 ちょっと、通達を出していないんですけれども、大臣、済みません、よろしいでしょうか。

 今度、新しくこども家庭庁の設置を今目指している中において、離婚後の親権の在り方というのは様々先ほど言ったような課題があるわけでありますが、大臣としては、印象で構わないので、この共同親権ということに関して何か思うところがあれば、一言いただきたいと思いますが。感想で構いません。

古川国務大臣 お尋ねの件については、様々な議論が重ねられているところだと承知しております。それを静かに見守りたいと思っております。

吉川(赳)分科員 突然で済みませんでした。心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、続いて、矯正局、来ていただいていますので、質問をさせていただきたいと思います。

 少年犯罪について、やはりこれは、一定の条件の下で、判決が下されれば少年院に送致されるというようなことになっているわけでありますけれども、その中で、少年院の中でも、特別、入る前に大体、簡単なその子の学力ですとかIQ、こういったものを、これは入ってすぐテストするんですかね。それでいいんですよね。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 少年院入所以前に少年鑑別所に収容されておりますことがほとんどでございますので、少年鑑別所において、その鑑別の中で能力その他のことについて調査をするということでございます。

吉川(赳)分科員 鑑別所で行うということですね。

 ちなみに、今の基準なんですけれども、今これは、知的障害というのは七〇未満ということでよろしいですかね、IQ七〇未満。

佐伯政府参考人 知的障害として扱うかどうかということにつきましては、お医者さん、ドクターが判断をするということになります。

吉川(赳)分科員 じゃ、これは一概に数字で今表しているわけではない、IQという一つの基準で。

佐伯政府参考人 厚生労働省で基準を定められている部分、数字としてはあろうかと思いますが、そういったことも一つの指標としては考慮されるということになろうかと思います。

吉川(赳)分科員 要は、これは一つの指標の中に、先ほど私が言ったように、七〇未満というのが少し知的障害があるということでありまして、多分その上で、先ほどの基準で、専門のドクターの判断があれば、少年院等でも再犯防止や矯正に向けた特殊な教育プログラムというものがあるものとお伺いをしているわけでありますけれども、ただ、この基準なんですけれども、実は、一九七〇年にどうもこれが、厚労省の方ですかね、変わっているということなんですね。

 一九五〇年から七〇年の間は、これは八五未満とすると。IQで見たときに、知的障害と判定されてしまう子がもう少し多かったということになっているようなのでありますが、要は、だから、今の七〇という基準と、その以前の一九七〇年までのIQ八四という基準の子供たち、これは大体、知的分布からすると一四%ぐらいいるというようなことのデータがあるようであります。

 そうなってくると、例えば少年院においても、かつては知的障害という判断がされた子供たちが、今は、普通の子供だねというようなことで、少年院の矯正教育というものも受けていると思うんですよね。そういった中で、そこの部分にかなり、再犯防止であるとか、また矯正教育という点では、私的にはちょっと、またそこもそこで特殊なケアが必要なのではないかなと思われるんですね。

 そこで、まずちょっと聞きたいのが、今、一般的に、少年院の出所後の再犯率というのは大体何%ぐらいになっているんですかね。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 出院後二年以内の再入率ということでの数字でございますが、一〇・一%、これは令和元年の数字でございます。

吉川(赳)分科員 一〇・一%、高いか低いかというのは、少しこれは一概には言えないな、そういった印象を受けるわけでありますけれども。

 そもそも、知的障害というようなことになると、それ自体には治療法というものは存在しないわけでありまして、やはり少年院の本来のあるべき姿としては、知的障害である子もない子も、そしてまた、現代の基準でもちろんこれは対応せざるを得ないとは思うんですけれども、そういった子においても、しっかりと、少年院を出た後に社会に適合して生活をしていただけるようなスキル、能力、考え方を身につけていただくということ、これが私は極めて重要なことだな、このように考えているわけであります。

 特に、最近では、一般的な知的障害だけではなくて、ADHDであるとか、基本的な様々な学習障害というものも、教育の現場等でも新たな認識として捉えられているわけであります。

 なので、是非今後の、ちょっと時間がないのであれなんですけれども、矯正教育の在り方について、やはり再犯率を下げていくということ、これを目標としていると思うんですが、今後、課題として取り組んでいくべきことというのが何かあったらお伺いしたいと思います。

佐伯政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の知的障害あるいは発達障害の少年に対する矯正教育につきましては、それぞれの専門教育課程、これは、支援教育課程あるいは医療措置課程というものを指定して、個々の在院者の障害特性に十分に配慮しながら処遇を行っておるところでございます。

 特に、知的障害のある人に対しては、社会生活に必要となる基本的な生活習慣あるいは生活技術を身につけさせるための指導、発達障害のある人に対しては、社会生活に適応する生活態度、対人関係を身につけさせるための指導、こういったものを重点的に実施しておるところでございます。

 引き続き、個々の在院者の特性に応じた処遇を充実させてまいりたいと考えております。

吉川(赳)分科員 これに関しても、少年院の中の人材の確保、さらには専門性、スキルを高めていくということ、様々な課題があるというようなことをお伺いしております。

 そして、最近では、軽犯罪の低年齢化、こういったものも指摘をされている中において、先ほど、離婚後の親権の話でもこども家庭庁のお話を出させていただきましたが、子供を犯罪に巻き込まないということは、こども家庭庁の中でうたわれているわけであります。今後、内閣府回りとの連携等々も重要になってくるかと思いますので、是非、矯正局の皆様方には奮起、奮闘していただきたいなと思います。

 以上で質問となりますが、今日は、民事局、刑事局、矯正局、御協力いただきまして、ありがとうございました。

 以上で質問を終わります。

葉梨主査 これにて吉川赳君の質疑は終了いたしました。

 次に、岬麻紀君。

岬分科員 日本維新の会、岬麻紀でございます。

 さきの衆議院選挙におきまして初当選をさせていただきました。ありがとうございます。

 本日は、このような質問の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。

 本日は、技能実習制度と特定技能制度を中心にお聞きしたく存じます。よろしくお願い申し上げます。

 さて、私の地元、愛知県でございますが、社会福祉法人西春日井福祉会が運営する介護施設では、技能実習生として、ネパールから実習生を十六人、現在受け入れてございます。私も、催しなどで実際にお会いしてお話をしたり、交流を重ねております。

 皆さん、日本語も大変流暢で、そして明るく介護の現場で仕事に取り組んでいらっしゃる様子を伺っております。一方、介護施設側からも、皆さん、丁寧で、そして優しく真面目である、また、施設を利用される高齢者の皆様からも信頼が厚いとお聞きしております。大変よい関係性と労働環境にある、これはまさに好事例であると、私、うれしく思っている次第でございます。

 しかし、新型コロナウイルスの感染症の影響によりまして、後任となる方々がなかなか入国できない状況にあるということが今の問題でございます。

 二月の十三日の朝日新聞の記事によりますと、厳しい入国規制で二年近く渡航できない状態が続いております。日本への渡航が決まりながらも入国できないまま、技能実習生がベトナムでは約五万人いると記事がございました。ほかの国でも多くの待機者がいると思われます。

 さらに、昨日の二月十五日に、三月一日をめどに緩和の意向を固めたという記事がございました。技能実習生の入国を条件付で認めるという方針、最終調整をしていると報道がされたわけです。

 そこでまず、水際対策について質問をさせていただきます。

 水際対策の重要性はもちろん私も認識をしておりますが、国内外の感染状況を踏まえて、水際対策の在り方、まさに今、考えるべきときに来ていると動きが見られるわけです。

 そこで、新聞紙上などではコロナ鎖国という言葉も躍っているわけですけれども、最終判断はもちろん岸田総理がされますが、法務省としての見解をまず伺いたく存じます。お願いいたします。

古川国務大臣 オミクロン株への対応に当たっては、G7で最も厳しい水際対策を講じて、オミクロン株流入を最小限に抑えつつ、国内感染の増加に備える時間を確保できたというふうに考えています。

 水際対策なんですけれども、内外の感染状況の差が大きかったこと、そしてオミクロン株に関する科学的知見の蓄積が十分ではなかったことなどを勘案して、当面の対応として、二月末まで現在の水際対策の骨格を維持するということとされてきたところであります。

 今後につきましては、基本的な考え方といたしまして、蓄積されてきたオミクロン株の特性についての知見、国内外の感染状況の変化、海外の水際対策のありようなどを総合的に勘案して、コロナウイルス感染症対策全体の流れの中で緩和に向けた検討を進めているところであります。

 御懸念の技能実習生の入国につきましても、政府全体として水際対策に当たっているわけですけれども、この政府全体として当たっている水際対策の枠組みの中で検討されるべきものであるというふうに考えております。

 政府全体として、必要かつ適切な対応をしていきたいと思っています。

岬分科員 大臣、ありがとうございます。

 まさに足止めは人手不足という面でも日本の労働現場に影響がございますので、何とぞ速やかによろしくお願いいたします。

 それでは、具体的な質問でございますが、技能実習制度について伺いたく存じます。

 外国人技能実習制度は、まずは国際貢献のためということで設定されております。開発途上国の外国人、最長で五年間の受入れ、OJTなどを通じまして技能を移転する制度でございますが、平成五年に創設されてから、これで約三十年近くが経過することになっております。

 技能実習制度をめぐっては、これまでにも低賃金ですとか劣悪な労働環境、技能実習生に対する人権侵害といったことが、かねてから様々な問題が指摘されていると思います。

 先日も、岡山市内におきまして働いているベトナム人の技能実習生に対する暴行事案が発覚しました。この事案を受けまして、出入国在留管理庁や、また厚生労働省及び外国人技能実習機構は、全国の全ての実習実施者及び監理団体に対して、「技能実習生に対する人権侵害行為について」という注意喚起が行われたことを私も承知しております。

 また、年間で数千人の失踪があるという、これはゆゆしき問題ではないか、あってはならないことだと私は思うんですけれども、なぜそういうことが起こるかと考えた場合に、やはり、過度な残業が横行していたり、もっといい条件を自ら探し求めてみたり、海外から人権侵害や労働搾取といった批判も根強くあると思われます。

 また、昨年の十月十八日、日経新聞によりますと、アメリカの国務省が毎年まとめている人身売買報告書におきまして、日本の評価、これまで最高ランクだったわけですね。世界から見ても、日本という国は、やはりきちんとしている、信頼が置ける、そして優しい国民性であると多くの国々から見られているわけですけれども、これが二〇二〇年に一段階引き下げられてしまったわけです。また、外国人の実習制度を、外国人労働者の搾取をするために悪用されているのではないか、このような問題視がされていたり、また、実習生の強制労働の報告などに対して、日本政府の対応、これはまだ不十分なんじゃないか、そういった懸念が、こういった一ランク低くされてしまったということだと思うんですね。

 こういうことは、国際社会において、日本の信頼、威厳に関わる大問題であるのではないかと私は思うわけです。

 この辺りの危機感に関しては、大臣、どのように認識をされていらっしゃいますでしょうか。

古川国務大臣 今委員から御指摘いただきましたとおり、技能実習制度は、当初の理念としては、これは技能移転を通じた国際貢献であるということでございます。実際、これまでにも多くの実習生が実習を全うして、今、母国等で活躍しているものと承知しております。

 しかし、一方で、現実に起きている問題として、一部の受入れ企業等において、この制度趣旨を必ずしも十分に理解せず、あるいはこの制度を悪用するなどして、労働関係法令違反のみならず、人権侵害行為にまで及んでいるという問題が生じていることは事実だと認識しています。そして、技能実習生の失踪等の問題もかねてより生じてきております。

 こういった、当初の理念と現実の乖離ともいうべき事態が起きている原因として、この技能実習制度には本音と建前、つまり、労働力不足を補いたいという本音と国際貢献という建前とのいびつな使い分けがあるのではないか、こういう意見が根強く存在しているということは、私もよく承知をいたしております。

 この技能実習制度については、こういった御意見を含めて、様々な立場からいろいろな御意見や御指摘も寄せられているということもよく承知をいたしております。

 法務省としては、やはり、制度の適正化、そして技能実習生保護の取組を徹底する、こういうことを通じまして、制度のよいところだけではなく、御指摘を受けているような悪いところがあるのであれば、それを率直に認めて、改めるべき点は果敢に改める、そういう誠実さ、そういう誠実な態度をもって、厚生労働省などとも連携しながら、制度の在り方について検討を進めていきたいと思っています。

 委員が御指摘になるように、やはりこれは日本の名誉にも関わる重大な課題だというふうに考えております。

岬分科員 大臣、ありがとうございます。

 大臣、今も述べていただきましたけれども、実際に、一月七日の年頭所感においても、技能実習制度には本音と建前のいびつな使い分けがあるとの意見、御指摘にも正面から向き合わなければならないと述べられていらっしゃいます。

 恐らく、建前というのが国際貢献という目的の部分だと思いますし、もう一つの本音の部分が、実習生を安い労働者として扱っている、それも劣悪な環境でというところに問題がいろいろ生じてくるのではないかと思われます。

 そこで、こうした問題点に対応するために、平成二十八年十一月の第百九十二回国会におきまして、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るため、技能実習計画の認定及び監理団体の許可の制度を設けて、これらに関する事務を行う外国人技能実習機構を創設することなどを盛り込みました、外国人技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律、いわゆる技能実習法が成立しています。これは平成二十九年十一月一日から施行されています。

 この外国人技能実習機構は、監理団体及び実習実施者に対して、技能実習の法令にのっとって実施されているかということをチェックする実地検査を行っているわけですよね。

 この実地検査について、昨年の七月十六日に会計検査院が報告を公表しております。それによりますと、行方不明者というものがあるわけですね。行方不明は本来あってはならないと思うんですね。国が責任を持って受入れをして、お預かりをしている大切な外国人の労働者でございます。そして、日本においては、その皆様方が戦力となって、介護の分野や、幅広く活躍をしてくださっているわけです。

 その中でも、さらに、この行方不明の中の約二〇%は、実地検査するといいながらも実施されていなかったということが判明しているわけですね。また、この行方不明事案だけでなく、全体から見たときに、この実地検査はきちんと実施されているのかなと。しているよ、しているよと言っているだけで、しているつもりができていないのではないか、そんな疑問を素朴に持つわけなんです。

 そこで、お聞きしたところ、指導課の中から二百三十三名の方々、そして、サポート体制を含めて現在、調査員の方は五百八十七名いらっしゃるということです。それに対して、監理団体、監理をしなくてはいけない団体というのは約三千四百件、これらを調査、検査をするとなると、かなり大変なんじゃないかなと思うんです。

 そこで、更にそれを調べてみますと、外国人技能実習機構の実地検査及び指導を実際にされたというものを調べてみました。そうしますと、実習実施者というのは三年に一回、そして監理団体というのは毎年、年に一回行われます。さらに、臨時でも検査が行われるというふうに伺ってはおりますが、例えば、平成三十年の実地件数ですと、一万三百七十五件、そのうち監理団体は二千四百八十四件です。これは検査をした全部ということですね。その中で、指導したのは何件かといいますと、四千百六十九件、うち監理団体は千四百十七件となっています。

 では、これ、一年たって、二年目の、令和二年になるとどうなったかというふうに調べてみました。そうしますと、実地件数は二万六百七十一件、さらに、監理団体をその中から見ますと三千三百六十三件。そうしますと、実地件数はほぼ倍に、多くなっているわけですね。ですから、検査を非常に一生懸命に、皆さん、調査員の方々がされているということも私、分かります。ただ、指導件数も見ますと、全体で七千八百四十七件、そのうちの監理団体は千四百二件ということで、これもまた、倍近くなっているんですよね。

 そこで、伺いたいのですが、この技能実習法違反がなかなか減っていかない、改善されていないというのが数字でも表れているわけです。これだけ見ると、ほぼ倍ですから、かなり増えているなという印象になるんですけれども、これを法務省さんはどのように分析をまずはされているのか、どのような認識を今お持ちなんでしょうか。お聞かせいただけますか。お願いします。

西山政府参考人 データにつきましては、今委員御指摘のとおりかと思います。

 外国人技能実習機構におきましても、委員御指摘のように、体制も整えて充実させた上、質、量共に実地検査の実を上げていきたいということで取り組んでいるところでございますが、残念ながらといいますか、検査をしても、それが直接、違反の減少にはつながっていないという現状はあると思います。

 ただ、違反の件数につきましては、重大な違反ももちろん入ってございますけれども、例えば、形式的な、計画にちょっとそごがあった取扱いがあったとか、そういった軽微な違反も含めて件数には数えてございますので、この件数が増えていることをもって、検査の実が上がっていないということもなかなか言えないのではないかとは考えております。

 ただ、委員の御指摘はごもっともなところもございますので、そういった問題意識を持って、引き続き、実地検査を励行して、適正な対応に努めてまいりたいと考えております。

岬分科員 ありがとうございます。

 もちろん、皆さん、非常に多忙な、いろいろな業務のある中で検査をされていく、調査をしていくというのは非常に複雑であり、また大変なことだとも思っております。

 そこで、もう少し踏み込んでお話を聞いてみたいと思うんですけれども、これは単に、実地検査数は増えていますけれども、指導件数も増えたということなのか。今おっしゃったように、検査をする全体が増えれば、指導したり改善を求めていく件数も増えていくとも取れます。それとも、指導は行っているけれども、改善してくださいよと言っても、結局改善されていないまま残ってしまっている件数があるから増えてしまっているとも取れますし、若しくは、この点、指導により改善はされているんだけれども、また新たに、検査数が増えるから、新たに問題点のある団体ですとか企業、施設が見つかってしまっているということなのか。その三つのうちどれなのかなと思うんですが、どのように認識をしていらっしゃいますか。

西山政府参考人 正直申しまして、そこまでの、どういう関係でこの件数が増えているのかにつきまして、明確な分析はまだできていない状況でございます。委員の御指摘も踏まえまして、今後、事案を見ながら、分析に努めてまいりたいというふうに考えております。

岬分科員 ありがとうございます。

 やはり、せっかく労力を使って検査をして、検査は二万件以上という大変多くの検査をされていますので、改善しなくてはいけないものが、大変、軽微なものから重大な問題まで幅広くあると思いますけれども、確実に改善されていくのか、指導を引き続き継続しながらきちんと改善をさせて、また、改善したといっても、また元に戻ってしまう団体や企業もあると思われますので、引き続きの継続的な指導や検査をしていく目というものは非常に大切なのではないかと感じております。是非、有効な検査、調査にしていけるように、引き続きの御努力をお願いしたく存じます。

 とはいえ、国の取組だけではなくて、一般の企業も非常に力を入れております。

 二〇二一年の十月十八日、日経新聞におきましては、ここでは企業名は伏せたく存じますけれども、日本の大手メーカー、そして小売の約二十社が、外国人技能実習制度の運用をめぐりまして、企業の適切な取組を定めた指針を策定したと記事がございました。この指針は、技能実習生・特定技能としての外国人労働者の責任ある雇用ガイドラインということで、外国人技能実習生の適切な受入れや採用、雇用上の注意点など十六項目を定めています。

 是非ともこういった取組を皆様方も前向きに捉えていっていただきたいと思うわけですが、ビジネスと人権というこの問題、企業ですとか日本経済の中でも大変重要な役割を持っております。実習生の雇用状況の調査をする大企業も出てきております。企業のこうした前向きな取組、是非とも、私としては、歓迎して、拡大をしていくべきだと考えております。

 その点、いかが考えていらっしゃるのか。後押しをしていこう、サポートしていこう、まさに波及、拡大していこうというお心なのか、それはそれ、国は国と思っていらっしゃるのか、その辺りの見解を伺います。お願いいたします。

西山政府参考人 入管庁と厚生労働省におきましても、監理団体や実習実施者等において技能実習制度の適正、円滑な運用が図られるように、留意すべき事項をまとめた技能実習制度運用要領といったものを公表しているところではございます。

 その上で、民間のそれぞれの業界におかれまして、業界の実情等を踏まえて技能実習制度の適正な運用に向けて自主的な取組を行っていただくことは、私どもにとりましても非常に有益であるというふうに考えているところでございます。

岬分科員 ありがとうございます。是非とも、連携しながらお願いしたく存じます。

 それでは、続きまして、特定技能制度について伺います。

 この特定技能制度というのは、平成三十一年四月に施行されまして、今年四月で丸三年を迎えます。約四万人の特定技能一号ということで在留資格を持つ外国人が我が国に在留できるのは最長で五年ということですから、制度開始後すぐに取得された方も、もう既に後半に入っているということでございます。

 現在、特定技能一号の外国人は、生産性の向上ですとか国内人材の確保のために取組を行ってもなお人材の確保が困難な状況にあるとされております十四の分野に限り、受入れが可能となっております。

 この業種、分野ですけれども、やはり、時代の流れですとかコロナ禍において、世の中の必要とされているところ、そして人が余ってしまっているところ、日本人であってもそこを削減せざるを得ない状況などに追い込まれているわけですけれども、この辺りを少し聞いてみたいのですが、コロナ前に決定されました特定産業分野について、コロナ禍に置かれている現在の状況ですとか、また人手不足の状況を精査する必要があると私は思っております。

 例えば、航空産業ですとか宿泊産業については、需要の低下、外国人旅行者の減少などがございます。どれだけの人材不足が発生しているのか、どこに余りがあるのか、そういったことをしっかりと精査をしながら、見直しを含めた検討が必要だと考えます。

 また、現在検討されているこの十四分野以外の分野において、人材不足の状況を把握されているのか。必要であれば新たに追加したいと私は考えているわけですが、どのようにお考えでしょうか。

古川国務大臣 先ほど委員もおっしゃいましたように、この特定技能制度は、生産性向上ですとか人材確保の取組を行った上でなお人材確保が困難な状況と認められるこの十四、今十四ありますけれども、特定産業分野において、一定の技能を有する外国人材を受け入れるという制度がこの特定技能制度であります。

 今、コロナで状況が非常に変則的な状況になっておるわけですけれども、現状を点検するべきではないかというようなお尋ねだったと思います。

 この特定技能に、今現在、特定産業分野として十四指定されておるわけですけれども、特定技能二号は、十四の特定産業分野のうち、現在は建設と造船・舶用の二分野のみ受入れが可能となっておりまして、残りの十二の分野はまだスタートしていないということなんです。

 じゃ、どのようなプロセスでこれが新たに指定されるのかというと、これは、政府の基本方針に基づきまして、法務省が、それぞれの産業分野を所管する省庁において現在の産業や雇用の状況というものをしっかり見まして、その上で判断をして、検討をしていく。

 そして、その所管する省庁が、例えば新たな分野を追加するべきではないかという意見を持ってこられた場合には、この特定技能制度というものを所管しております例えば厚生労働省などと一緒にそれを確認、チェックをいたしまして、その上で、その分野を新たに認めるかどうかということを決定する、こういう制度のたてつけになっているところです。

 現在、それぞれの分野において、それを所管する省庁がそれぞれ検討を行っている、このような状況にあると承知しております。

岬分科員 ありがとうございます。

 是非とも、時代と、そしてかゆいところに手が届く、本当に人材不足だと困っているところに、速やかに労働力として、また国際貢献として、外国人の労働者の方も日本の皆様も両方が助けられて、ギブ・アンド・テイクでできるなというところに分野をきちんと持っていっていただけたらなと思っております。

 それでは、二つ聞いてまいりましたけれども、今後、この両制度の見直しについて、最後にお伺いしたく思います。

 平成二十九年十一月に施行されました技能実習法には、施行後五年をめどとして同法の規定について見直しを行うと書いてございます。この五年目に当たるというところで、まさに今ということなんですよね。

 そこで、一月の十四日には、特定技能制度・技能実習制度に係る法務大臣勉強会の設置も表明されていらっしゃいます。両制度の在り方について、先入観にとらわれることなく、意見や指摘、様々な関係者から幅広く伺っていきたいと述べられていらっしゃいますよね。二月の十日にはこの勉強会の初会合が開催されたとも私も聞いております。

 そこで、大臣からおっしゃいました、見直しのチャンスである、そして大胆に、また、先入観にとらわれることなくと発言されていらっしゃいます。見直しに対する大臣の前向きな姿勢を私は感じられるなと思っているわけですが、この見直しに当たって、技能実習制度が国際貢献を名目としながら人手不足を補うだけに使われている実態があること、また、私の地元の北名古屋市にございます株式会社名北という会社で、実際に、今月、技能実習生から特定技能に四名が移行することができたと喜ばしい報告も受けております。そうした、技能実習から特定技能に移行する外国人が増えていることを考慮しますと、両制度の一本化も視野に入れるべきではないか、その方が効果的ではないのかと思うわけです。

 これは、最後に大臣の見解と今後の見通し、そして決意のほどなどを伺いたく存じます。お願いいたします。

古川国務大臣 ありがとうございます。

 今御指摘ありましたように、技能実習制度と特定技能制度の連続性といいますか、それを一体的に見ながら制度を構想していくべきではないかという御意見は、一つの考え方だな、考えるのに値する視点だなというふうに思っております。

 そういうことも含めて、様々な御意見や御指摘をいただいておるこの制度でございますから、今御紹介いただきました勉強会の中において、それこそ、先入観を持たずに、虚心坦懐に様々な意見をお伺いして、そういう課題の一つとして今の御指摘も受け止めさせていただきながら、検討を進めていきたい、取り組んでいきたいというふうに思っております。

岬分科員 ありがとうございます。是非ともよろしくお願いいたします。

 それでは、そろそろお時間でございますが、本日は外国人労働者に視点を向けてお話を伺ってまいりましたけれども、まだまだ、働くことができない日本人の方も多くいらっしゃいますので、そのことを考慮しますと、安易に外国人の労働者に頼るばかりでは問題があるなと思います。一方で、外国人労働者が戦力である、是非とも受け入れたいと多くの方々が願っておりますので、そのバランスも考えながら、是非とも進めていっていただきたい。

 そして、最終的には、日本で働きたい、日本で学びたい、そして、日本の国民性やビジネス、風習ですとか文化も総合的に見習っていきたいと思ってもらいますと、国際的にも重要な位置にする、私ども日本人としても取り組んでいけるのではないか、そして、外国人の方々にもそう思っていただければと私は強く願っております。

 そのためにも、日本の法というものを、しっかりと根差して、しっかりと稼働させて、実のある法整備をしていっていただければ、この制度も本質をきちんと守りながら行っていけるのではないかと期待を込めまして、本日の私からの質問を終了させていただきます。

 本日はありがとうございました。

葉梨主査 これにて岬麻紀君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明十七日木曜日午前九時より開会し、法務省及び財務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十五分散会


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