衆議院

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第2号 令和4年2月17日(木曜日)

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令和四年二月十七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 葉梨 康弘君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      神田 潤一君    土屋 品子君

      柳本  顕君    若林 健太君

      大串 博志君    城井  崇君

      福田 昭夫君    宮本  徹君

   兼務 神津たけし君 兼務 階   猛君

   兼務 笠  浩史君 兼務 金村 龍那君

   兼務 中野 洋昌君

    …………………………………

   法務大臣         古川 禎久君

   財務大臣         鈴木 俊一君

   総務副大臣        中西 祐介君

   財務副大臣        岡本 三成君

   農林水産副大臣      中村 裕之君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   法務大臣政務官      加田 裕之君

   最高裁判所事務総局刑事局長            吉崎 佳弥君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  柳樂 晃洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局内閣審議官)         松本 敦司君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 坂田  進君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   岩成 博夫君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局政策立案総括審議官)      井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            石田 晋也君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     北林 大昌君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 古宮 久枝君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          竹内  努君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    金子  修君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    川原 隆司君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  松下 裕子君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 西山 卓爾君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        丸山 秀治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 渡邊  健君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   奥  達雄君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   坂本  基君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      重藤 哲郎君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局農村政策部長)       山口  靖君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         廣瀬 昌由君

   政府参考人

   (国土交通省不動産・建設経済局次長)       吉田  誠君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局次長)            野津 真生君

   法務委員会専門員     藤井 宏治君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

   予算委員会専門員     小池 章子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     若林 健太君

  衛藤征士郎君     長谷川淳二君

  城井  崇君     福田 昭夫君

  宮本  徹君     本村 伸子君

同日

 辞任         補欠選任

  長谷川淳二君     神田 潤一君

  若林 健太君     柳本  顕君

  福田 昭夫君     城井  崇君

  本村 伸子君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     衛藤征士郎君

  柳本  顕君     岩屋  毅君

  田村 貴昭君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  宮本  徹君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  穀田 恵二君     宮本  徹君

同日

 第二分科員階猛君、金村龍那君、第四分科員中野洋昌君、第五分科員神津たけし君及び笠浩史君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和四年度一般会計予算

 令和四年度特別会計予算

 令和四年度政府関係機関予算

 (法務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

葉梨主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 令和四年度一般会計予算、令和四年度特別会計予算及び令和四年度政府関係機関予算中法務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中野洋昌君。

中野(洋)分科員 公明党の中野洋昌でございます。

 質疑の機会を頂戴をいたしまして、ありがとうございます。

 第三分科会ということでありますので、私、主に法務省の所管の案件につきまして御質問をさせていただきたいと思います。その中で、まず、外国人の人権ということで何問かお伺いをしたいというふうに思います。

 昨今、外国人の人権をめぐる様々な課題、これが報道される機会を目にすることが多くなってきたように感じます。例えば、昨年の名古屋入管におけるスリランカの女性の方が亡くなられた事案でございますとか、あるいは、今、外国人、技能実習生という方もいらっしゃいますし、また、特別技能ということで外国人の人材の受入れというのを進めているわけでありますけれども、こうした例えば技能実習においても、非常に不当な取扱いをしているような事案、こういうものも散見されております。

 まさにこれは人権上の大きな課題であるというふうに思っておりまして、やはり日本としてこうした課題をしっかり解決をしていくために取り組んでいく、これが非常に重要であるというふうに考えます。

 先ほど私が触れました、例えば入管の収容施設、あるいは技能実習制度、いろいろな取組はあると思いますけれども、外国人の不当な取扱いへの対応、あるいは状況の改善、こうしたことに向けましてどのように今取り組んでいるのか、入管の話と技能実習、二つまとめて、まずは政府の方にお伺いをしたいというふうに思います。

西山政府参考人 まず、名古屋局において被収容者が亡くなられた事案につきましてですが、入管庁においては、外部有識者に客観的かつ公正な立場から御意見、御指摘をいただきつつ、問題点を広く抽出して検討を行い、その結果として、十二項目の改善策を含む調査報告書を取りまとめ、その着実な実施に取り組んでいるところでございます。

 既に、十二項目の改善策のうち、全職員及び外部有識者の意見を集約して、「出入国在留管理庁職員の使命と心得」の策定を行ったほか、名古屋局における非常勤医師の増員、体調不良の訴えがあった場合や医師による診察を受ける際における通訳の一層の活用、それから、体調不良者等につき、本庁への速報などの上、仮放免を判断する新たな運用指針の策定など、九つの項目について実施したところでございます。

 また、その他の改善策につきましても、外部医療関係者等で構成された会議体での医療体制の強化についての検討などの取組を進めているところでございます。

 続きまして、技能実習生に対する不当な事案、これに対する対応でございますけれども、外国人技能実習機構におきましては、実習実施者や監理団体に対して定期又は臨時に実地検査を行っており、法違反を認知した場合は、改善を指導、勧告するとともに、違反態様等に応じて、主務省庁において、監理団体の監理許可の取消しや実習実施者の技能実習計画の認定の取消しなどを行っております。

 また、技能実習生の保護に向けた対応でございますが、技能実習機構では、八か国語での母国語相談を実施しているほか、実習先変更支援、一時宿泊先の提供など、技能実習生の保護の取組を進めております。

 さらに、令和三年四月からは、暴力や脅迫等の人権侵害行為の相談に対応するため、技能実習SOS・緊急相談専用窓口を設置しており、技能実習生の状況を踏まえた適切な対応に努めているところでございます。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 政府の取組を伺いました。しっかりと今述べられた点を実行するとともに、また、いろいろな、相談窓口の開設のようなお話もございましたので、しっかりと、制度を周知していただいて、活用いただくということが大事であると思います。よろしくお願いいたします。

 そして、外国人の人権というのは、単に、外国人のためということももちろんあるんですけれども、それだけにとどまらず、やはりこれからの日本の社会の在り方、多様性に富んだ社会を実現する、あるいは個人の尊厳や人権を尊重した社会を実現する、こういう社会の在り方という意味でも私は非常に重要な問題ではないのかというふうに考えております。

 そのためにも、外国人との共生社会を実現していく、これが大変に重要であります。これを実現するために、今まさに関係閣僚会議を開催していただいて、そして対応していただいている、そんなことを承知しております。

 大臣にお伺いをしたいんですけれども、こうした中で、人々の意識の変革ということが非常に大事というふうに思っておりまして、そういう意味では、どのようにいろいろな取組を、皆さんに啓発していくのか、こういうメッセージをどう出していくのか、これが非常に大事であります。

 この共生社会に向けた意識の啓発ということで、今後、政府としての取組を是非大臣にお伺いしたいというふうに思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 外国人との共生社会を実現するためには、全ての人が多様性を尊重して共に社会をつくっていくことの意義を理解すること、その理解が広まっていくことが最も重要だ、委員の御指摘のとおりだというふうに思っております。

 政府におきましては、総合的対応策に基づいて、外国人との共生に関する啓発活動にこれまでも鋭意取り組んでまいりました。

 先ほど委員御指摘もいただきましたように、政府の閣僚会議の下に有識者会議が設置されておりますけれども、昨年十一月、そこで示されました意見書におきまして、目指すべき共生社会のビジョン、三つのビジョンを示されたわけですが、その中の一つに、個人の尊厳と人権を尊重した社会というものが挙げられておりまして、その実現に向けて意識醸成の取組が重要である、これを推進すべしという御意見もいただいております。

 政府におきましては、この意見書の内容も踏まえまして、今年の六月頃をめどに中長期的に取り組むべき施策等を示す工程表を策定するなどしまして、この啓発活動を含む共生社会の実現に向けた取組、一層推進してまいりたいというふうに思っております。

 本当に、御指摘のとおり、全ての人がお互いに認め合って、尊厳を尊重し合って、そして差別や偏見なく暮らしていけること、多様性のある社会を実現するために頑張っていきたいと考えております。

中野(洋)分科員 大臣、ありがとうございます。

 身近に外国人の方で働いている方も増えてきたと感じますし、また、そうした方の子弟が学校にいらっしゃったりですとか、ますますいろいろな方と接する機会というのが本当に増えてくるというふうに思っておりまして、そういう意味で、やはり法務省のこうした啓発の取組というのが非常に大事だというふうに思っております。どうかよろしくお願いいたします。

 続きまして、ちょっとテーマを変えるんですけれども、所有者不明土地の問題ということでちょっと何問か質問をしたいと思います。

 土地の登記が進まないまま世代を交代している、所有者不明になってしまう、これは大変に大きな課題だと思っておりまして、自治体にとりましても、公共事業をいざ行おうとしても、用地買収をしようとしたら所有者不明土地だということで、買収ができない、なかなかこれは手がつけられない、こういうことも散見されます。

 私も、かつて国土交通省という役所におったことがございまして、用地買収の部門にもいたことがございますので、所有者不明、名義が共有で、本当に何世代も遡らないと分からない、こういう土地がありますと、それを調べるだけでも大変な時間と手間がかかる、これを非常に痛感したこともございます。

 このため、法務省におきましては、今、長期相続登記等未了土地解消作業、こういう制度を導入をしていただきました。これは、法務局が所有者の探索を進めるための法定相続人を調査をしていっていただいている、こういう状況であります。非常に大事な事業であると思いますし、これがしっかりと円滑に進んでいけば、また自治体にとっても非常に事業の実施というものが早く進むのではないか、私、このように期待をしております。

 様々、現場で状況をお伺いをしますと、この作業も、実施を進めるに当たって、事業をやっていただいているわけでありますけれども、やはり様々な制度の在り方、事業の在り方もしっかりと改善をしながらこれを進めることが大事だというふうに思っております。

 事業でありますので、例えば、その発注において適正な予定価格が設定されているか、こういう観点も非常に大事なことでありまして、こういうことも含めて、事業の改善、実施の改善ということを是非図っていただきたい。

 現在の実施の状況も含めて、併せて政府の御認識を答弁をお願いしたいというふうに思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法務省では、所有者不明土地特措法に基づく長期相続登記等未了土地解消作業としまして、地方公共団体などの求めに応じて、公共の利益となる事業が実施される地域内にある長期間にわたり相続登記がされていない土地について、その登記名義人の法定相続人を探索する事業を全国の法務局で実施しています。

 平成三十年十一月に開始したこの事業の実績としまして、本年一月末までに、二十一万筆を超える土地について法定相続人の探索を完了し、その結果を地方公共団体等に提供してきました。

 そこで、このような実績を踏まえ、本年四月からは、一番目としまして、公共性の高い事業を実施する民間事業者からの要望も新たに受け入れ、作業対象となる事業の範囲を拡大する、二番目としまして、法定相続人探索の要件を緩和し作業対象となる土地の範囲を拡大するなど、より公共の利益となる事業の促進に資するよう運用の見直しを図る予定でございます。

 また、この事業のうち相続人の探索作業の一部は一般競争入札手続により外部委託しておりまして、その多くが、司法書士を構成員とする団体に受託していただいているところでございます。

 法務省としましても、引き続き、受託事業者と十分連携を図り、見直し後の運用に基づいたこの事業をしっかり推進していくとともに、一般競争入札の実施に当たりましては、作業内容等を踏まえた適正な予定価格を設定するなど、法務局が適正価格での契約を確保することができるよう、引き続き努めてまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 何点か事業の改善、先ほどの、私の指摘した予定価格の問題も含めまして、様々な運用改善をこれから図っていくという御答弁もいただきましたので、是非お願いをしたいと思います。

 あわせまして、所有者不明土地の大きな法改正をしていただいたときに、相続登記の義務化というのも大きな改正点の一つであったかというふうに思います。所有者不明土地への対策を進めるために、令和六年度から相続登記を義務化をする、こういう法改正であります。これについてはかなり多くの方に影響がございますので、やはりしっかりと、それが義務化になっているということを知っていただく、周知啓発というのが何よりも大事であるというふうに思います。是非これを進めていただきたいと思います。

 こうした中で、地元でいただいた声としてありましたのが、実は、表題登記については今既に義務化をされているけれども、それについても併せてこれをやっていただかないといけない、これは当然。今義務化であってもやっていただいていない方がいらっしゃるということでございますので、これも併せて広報していくことがやはり重要ではないかという御指摘もいただきまして、まさにそうだなというふうに私も思ったところでございます。

 こうした点も含めまして、この相続登記の義務化についての広報あるいは周知啓発をどのように行っていくのか、これについても御答弁をいただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 令和六年四月から始まる相続登記の申請義務化につきましては、国民の皆様に新たな負担を課すものであるとともに、過料を伴う具体的な義務を設けるものであることから、広く国民一般に対して十分な周知を図ることが重要であると考えております。

 そこで、法務省では、地方公共団体や専門資格者団体等と連携しつつ、ホームページや各種媒体を通じた情報発信を進めているところでございます。

 また、既に現行法においても所有者に申請義務が課されている表題登記等につきましても、不動産の物理的状況を公示するものであり、相続登記を始めとする権利に関する登記の前提となるものでありますことから、建物の新築や増改築の際などには適切にその申請義務が履行され、表題登記等がされることが重要であると考えております。

 法務省としては、このような表題登記の意義や重要性等につきましても広く国民の皆様に理解していただけるよう、地方公共団体や関係団体と連携を図るなどして、必要な周知、広報に取り組んでまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 しっかりこの登記が進んでいくということが、まずは、この所有者不明の土地、最近は建物というのもあろうかと思いますけれども、これの解決について非常に重要であるというふうに思いますので、是非よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 先ほどは、私、長期相続登記等未了土地解消作業ということで取り上げましたけれども、もう一つ、土地の調査という意味では、地籍調査の推進、これは直接法務省というより国土交通省の御担当であろうかと思いますけれども、これについても非常に重要であるというふうに思っております。

 地元で少しお話を伺いましたのが、もちろん、都市部においても地籍調査は実施をしていただいております。都市部は都市部で、関係者が非常に多かったり、かなり権利が、いろいろな形で、関係者との調整が難しかったりですとか、都市部においての課題というのももちろんあるんですけれども、今度は、山林部であるとか林地、こういうところについても、やはり地籍調査というのを進めていくに当たっていろいろな課題があるということもお伺いをいたしました。

 今、ちょうど林野庁の方でも新しい森林経営管理、こういう制度もまさに始まっているところでありますので、やはり山林部のところにおいてもしっかりと、地籍がはっきりしているということは非常に大事であるというふうに思いますので、この地籍調査の推進、これを是非進めていただきたいと思っております。

 他方で、これは、今住まれている場所と比べて、例えば現地で確認をしようにも、非常に遠隔地であったり、いろいろな困難というのもあるというふうにもお伺いをしていて、これもなかなか進まないというふうにも聞いております。政府の方で今後どういう形でこうした地籍調査を進めていかれるのか、これについても是非御答弁をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 国土交通省よりお答え申し上げます。

 地籍調査によりまして山村部におきます土地の境界を明確にしておくということは、適切な森林の経営管理はもとより、災害時におきます迅速な復旧などにも不可欠なものとして極めて重要であると認識しておりまして、令和二年に閣議決定された国土調査事業十か年計画に基づきまして、山村部を含む地籍調査の促進に努めているところでございます。

 一方で、山村部におきます調査につきましては、調査対象地域が広大で、しかも急峻な地形が多いことに加えまして、土地所有者の高齢化が進んでいることも相まって、現地で所有者に境界を確認していただくでありますとか、あるいは測量作業自体にも困難な面がございます。

 このような状況の中で、令和二年に国土調査法等を改正していただきまして、土地所有者の現地確認、現地での立会いだけでなくて、図面の郵送でありますとか集会所等で確認をしていただく手法でありますとか、また、測量につきましても、山の中の現地測量だけでなくて、航空機に搭載したレーザー測量機器などを用いて取得したリモートセンシングデータを活用する調査手法など、効率的に調査又は測量することができる仕組みを整備していただいたところでございます。実際にも、このような地籍調査の現場におきまして、これらの新たな調査手法の活用が進んできているところでございます。

 国土交通省といたしましては、引き続き、地籍調査の計画的な推進に必要な予算の確保に努めますとともに、地方公共団体へこうした新たな調査手法につきましての情報提供をしっかりして、その普及を推進し、地籍調査の一層の円滑化、迅速化に取り組んでまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 新しい手法もまさに始まっているということでありますので、是非周知もしていただきながら、必要な予算の確保というのも大事でありますので、是非これも併せてお願いをしたいと思います。

 最後に何点か、インターネット上の誹謗中傷、これについてもお伺いをしたいというふうに思います。

 こうした様々な誹謗や中傷というものは大変な課題だというふうに思っております。一時期、ヘイトスピーチというのが非常に大きな問題になったことがございます。私の地元でもそうしたことがありまして、これはヘイトスピーチの解消に向けて法律も制定をいたしまして、今かなり件数自体も減っているというふうにも聞いております。

 他方で、今はSNSなどインターネット上の空間における誹謗中傷。今、非常にSNSなどを活用している方というのも増えております。こうした中で、対応もなかなか難しい、あるいは大変痛ましい事案も、ニュースで、発生をしていたり、こういう状況であります。

 私も、今、公明党でも青年委員会という若手の活動もしておりますけれども、若い方からも、日常的にSNSをやはり使われておりますので、こうした誹謗中傷の問題、これを何とか解決をしてほしい、大変に心を痛めている、あるいは実際に自分も悩んでいるといったような、いろいろなお声もいただいているところでありますので、これをまさに防いでいく、どうやっていくのかというのは非常に喫緊の課題、このように考えております。

 今日、総務省の方にも来ていただいておりますので、政府を挙げての取組を是非進めていただきたい、こういうふうに考えておりますけれども、現在、全体的な取組について、どのようにやられているのかというのを御答弁いただきたいと思います。

北林政府参考人 お答えいたします。

 インターネット上における個人の人格や名誉を傷つける誹謗中傷は許されないと考えております。

 総務省におきましては、インターネット上の誹謗中傷対策につきまして、二〇二〇年の九月に取りまとめた政策パッケージに基づき、ICTリテラシー向上のための啓発活動、有識者検討会におけるモニタリングを通じた透明性、アカウンタビリティーの確保やプラットフォーム事業者による取組の促進、相談対応の充実などの取組を推進しています。

 また、誹謗中傷を行った匿名の発信者を特定するための手続等を定めたプロバイダー責任制限法を改正し、裁判の手続の迅速化を図るなどの制度整備も進めているところでございます。

 総務省としましては、引き続き、こうした必要な取組を関係省庁、関係機関との連携の下で行っていきたいと考えております。

中野(洋)分科員 総務省から御答弁をいただいたのは、プロバイダー責任法の改正というのも答弁をしていただきました。実際に司法の手続ということを行っていくに当たって、迅速化をしていく、これは非常に大事であるというふうに思います。

 他方で、今回聞いておりますのが、侮辱罪の法定刑を引き上げるという議論を今まさに行っていただいているというふうにも聞いております。これを厳罰化をしていく、こういうことであろうかというふうに思いますけれども、これについて、現在の議論の状況をお伺いをするとともに、これがインターネット上の誹謗中傷を防いでいくためにどういう効果やあるいは狙いがあるのか、こういうことも含めて、併せて今の状況を答弁いただきたいと思います。

川原政府参考人 お答えをいたします。

 近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契機といたしまして、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、こうした誹謗中傷を抑止すべきとの国民の意識も高まっているところでございます。こうしたことに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示し、これを抑止することが必要であります。

 そこで、令和三年九月、法務大臣から法制審議会に対しまして、拘留又は科料とされている侮辱罪の法定刑を、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に引き上げることについての諮問がなされました。そして、同年十月、法制審議会から、これを相当とする答申がなされたところでございまして、現在、今国会に法案を提出できるよう準備を進めているところでございます。

中野(洋)分科員 現状の、法律を提出準備ということでお話をいただきました。また、こうした誹謗中傷に対する社会的な対応をしていく必要がある、こういう要請がある中で、その抑止力としてこれを引き上げていこう、こういうことも答弁をいただきました。これも是非とも実現をして、そうした抑止が図れるような、これを是非やっていただきたいというふうに思っております。

 最後に、少し各論にはなりますけれども、部落差別の解消ということで一問御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど、プロバイダーの取組ということで、法律を改正をして、これは司法の開示請求などがやりやすくなる、こういうことをもうやっていただいておりますけれども、インターネット上のプロバイダー等に、やはりこうした差別的な投稿についてはしっかりと自主的に削除をしていただくということも非常に大事であるというふうに思っております。こうした取組を是非進めていっていただきたい、こういうふうにも思っているところであります。

 他方で、部落差別について、これがインターネット上で、いろいろな形で誹謗中傷するようなものが上がっているわけでありますけれども、ある意味日本の歴史的ないろいろな経緯もありまして、この部落差別についてやっている例えば動画とかそういうものも私も見たことがありますけれども、これがプロバイダー等に差別であるということがなかなか理解が進まないというか、この動画のどの部分がどう差別なのかみたいなところがなかなか実は御理解がいただけなくて、削除されにくいということがあるというふうなことも実はお伺いをしたこともございます。

 やはり、これが差別である、部落差別の解消というのが非常に大事なことであって、これをしっかり進めていかないといけない、こういう理解を是非醸成をしていかないとというふうにも思っております。

 そういう意味では、こうした理解の醸成に向けての取組というのも非常に大事であるというふうに思っておりまして、国が是非これに取り組んでいっていただきたい、お願いをしたいところでございますけれども、最後に、これにつきまして御答弁をいただきたいというふうに思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務省の人権擁護機関では、特定の地域を同和地区であると指摘する情報につきまして、それ自体が人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものでありまして、原則として削除されるべきものであるという考えに立っております。

 そこで、関係行政機関等から通報などによってこうした情報を認知した場合には、プロバイダー等に対して削除要請を行うなどの対応を取っております。

 しかしながら、委員御指摘のような動画につきましては、必ずしも、御指摘のとおり、削除が進んでいない状況にございまして、その原因につきましても、御指摘のとおりでございます。海外事業者に理解をしていただくことが難しいということがございます。

 そこで、法務省では、総務省とともに、プロバイダー等との意見交換の場として実務者検討会というものを継続的に開催しておりまして、また、個々の事業者とも個別に協議、意見交換を行いまして、部落差別の問題も含めて、削除要請に対する理解を求めているところでございます。

 私どもといたしましては、引き続き、こうした取組を通じて、特定の地域を同和地区であると指摘する情報が部落差別に直結する情報であって、削除されるべきものであるという認識をプロバイダーとの間で共有できるように、粘り強く対話を進めて取り組んでまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

葉梨主査 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、笠浩史君。

笠分科員 立憲民主党の笠でございます。

 今日は、古川大臣と、昨年の国会で改正少年法が成立したことに伴って、いわゆる裁判員制度、この裁判員の対象となる年齢が、二十歳以上から十八歳以上へと年齢が引き下げられた、このことについて、ちょっと幾つか議論をさせていただきたいというふうに思っております。

 まず最初に、今回のこの年齢が引き下げられたということ、これは、実際には、今年の秋に候補者名簿が作成されて、だから今の十七歳、高校二年生あるいは高校三年生もその名簿に記載されて、実際もし選ばれたときに裁判に臨むというのは来年からということになるんだというふうに思っております。

 そういった中で、この十八歳、十九歳の、高校生を含む若者が裁判員として参加をする、その意義をどう考えておられるのか。また、そういった十八歳、十九歳の方、もちろん、受験にひょっとしたら差しかかるかもしれないとか、いろいろな学業に対する事情でこれを断ることもできるんだけれども、できるならば積極的に参加をしてもらいたいというお考えなのか。その点をまず大臣にお伺いしたいと思います。

古川国務大臣 お答えいたします。

 裁判員法におきましては、衆議院議員の選挙権を有する者が裁判員になることができるというふうに定めております。その趣旨は、衆議院議員の選挙権を有する国民に幅広く裁判員として参加していただくことが望ましいということにございます。

 平成二十七年に公職選挙法が改正された際は、十八歳以上の者が選挙権を持つこととなったわけですけれども、裁判員については、少年法について必要な措置を講ずるまでの間の暫定的な措置として、十八歳、十九歳の者に限って裁判員になることができないという特例が設けられておりました。

 その後、先ほど言っていただきましたように、さきの通常国会で成立しました改正少年法、ここで、この暫定的な措置が削除ということになりまして、裁判員法の本来の趣旨のとおり、選挙権を有する十八歳、十九歳の者も裁判員になることができるものとされたところでございます。

 これまでよりも幅広い年齢層の方々が裁判員裁判に参加することができるということは、これは刑事司法に多様な意見を反映するという意味で極めて意義の深いものであるというふうに考えております。

笠分科員 大臣、やはり積極的に参加してもらいたいというお考えですか。(古川国務大臣「はい」と呼ぶ)結構です。

 それで、確かに幅広く、裁判員制度そのものの趣旨、これに沿った形でこの年齢が引き下げられたということ、しかし、一方でいうと、当事者になる高校生たちの意識、私自身も、こういった経験を通じて、様々、いろいろな主権者としての意識を培っていくことができる、本当に社会の構成員としての大事な意味、大きな意義があることだろうというふうに思っております。ただ、残念ながら、本当にこれは今の高校二年生、三年生が自分たちが対象になるということを知っているのかなと。

 大臣自身は、今回、そういった高校生が、自分たちがこの秋にも名簿に記載されて、ひょっとしたら当事者になるかもしれないということを知っているというふうに思われますか。

古川国務大臣 実際、その認知がどこまで徹底して進んでいるかというと、それはなかなか難しい面があるなというふうに正直思っております。だからこそ、法務省としても、積極的な周知広報、これが極めて重要だということで考えておりまして、これまでも鋭意取組をさせていただいております。

笠分科員 実は私も知らなかったんですよ、去年の秋まで。恐らく国会でもほとんど議論されていないし。実際、実は私の知り合いの弁護士の方から、こういう問題があるんだ、これは大変じゃないですかというようなことで、えっというような、非常に驚きまして、そして、実際、私も知っている高校生の方やあるいは大学生に何人か聞いてみたら、ほとんど知らないんです。正直言うと、私の周り何人かに聞いて、知っている人はいませんでした。ましてや、今日は裁判員制度のことだけれども、検察審査会の審査員にも選ばれる対象になるというようなことですから、これは本当に実は大変なことなんですよね。今大臣おっしゃったけれども、やはり多くの高校生が今まだ知らないというのが現状だと思います。

 ちょうど五年半ぐらいになりますか、選挙権が十八歳以上に引き下げられたときというのは、かなりメディアも含めて扱ってくれたし、あるいは、あのときにはたしかすぐ直後に参議院選挙も控えていたと思うんですね、その対象となる。ですから、かなり学校教育の現場でも、これが始まる前から、法改正、それが施行される前から、私は、実際、高校などでの模擬選挙であったり、いろいろなことが積極的に、この制度の見直しへ向けて事前にいろいろと取組をされていたというようなことを思い出します。

 ですから、本当にそういったことを、大臣が今おっしゃったように、やはりこの周知を本当に私は急がないと、もう迫っているんですね。本当だったら早くからそういう意識を持ってやっておかなきゃならなかったんだけれども、確かに、パンフレットを配ったりとか、いろいろ見ましたけれども、ちょっとこれじゃ心もとない。

 それで、大臣自身が高校生などに裁判員制度の意義、先ほどの裁判員制度自体の狙いだとか趣旨はもちろんだけれども、高校生たちがこれから自分たちが実際にそういうような形で主体的に関わっていくことによって、何のために関わっていく必要があるのか、やはり自らの言葉で丁寧に分かりやすく説明をしていただきたいんです。

 パンフレットを配るとかそういうことだけじゃなくて、例えば、四月の高校入学だとかあるいは進級時に、大臣、あるいは、今日最高裁もおられますけれども、最高裁の長官とか、そういったトップの直接のメッセージを是非出すようなことも含めて取り組んでいただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

古川国務大臣 お答えいたします。

 周知につきましては、これまでも、おっしゃいましたけれども、パンフレットとかポスターとか、いろいろな機会を通じて、SNSを使ったりして、様々努力をしてきているところでありますけれども、やはり直接語りかける姿勢というのが大事ではないかという御指摘でございました。おっしゃるとおりだと思います。

 私も就任後、いわゆる車座対話という場で、ある高校にお邪魔をいたしまして、そこで、高校二年生をそのときは対象にしましたけれども、成年年齢引下げをテーマにしていろいろな意見交換をしました。そこでは、裁判員の対象になるということのみならず、やはり成年を迎えるということは様々な社会人としての自覚、責任が求められるわけでして、そういう考え方などに関して率直な意見交換などをさせていただいてまいりました。

 そのような直接触れ合う機会をこれからも、機会を捉えて、機会を重ねていきたいというふうに思っておりますし、今委員の御指摘を受けて考えますに、やはりもっと直接語りかける姿勢というものが大事だなということを改めて感じたところであります。

笠分科員 もちろん、じかに話すといっても、でも、大臣も忙しいわけですから、何校行けるかという話ですよ。私、一人一人と会うことは難しくても、本当に、入学式の時期とか、これは高校一年生、二年生、三年生、別に、今年迎える、あるいは今年十八歳を迎える子たちだけじゃなく、もう間近に迫ってくるわけですから、そういう機会に、文科省とも協力をしながら、そういうメッセージを是非出していただきたい。

 できれば、今日ちょっとこれは長官にもお伝えいただきたいんだけれども、最高裁の長官も、やはりトップとして、何かそろってのメッセージみたいなものを、これから三年間ぐらいはそういった節目に出し続ける、そういったことを是非お願いをしておきたいというふうに思います。

 そういった周知の徹底と、同時に、やはり、今、現状というものがどういうふうになっているのかということを併せて把握をしていくことが非常に大事だというふうに思っております。そのためには、いろいろな、最高裁中心に調査等々をやっていただいているんだけれども、高校などの協力を一部得ながら、高校生なんかを対象に、今申し上げた、十八歳以上に引き下げられたということを、制度自体を知っているのかというその周知もそうだけれども、今、じゃ、自分がもし選ばれたときに、果たして裁判員になりたいのかな、あるいは、いやいや、いろいろな事情がどうこうじゃなく、ちょっとそれはなりたくないな、そういったようなところの意識調査を少し高校生なんかに絞って私は行うべきではないかと、今の現状を把握するという意味で。その点を大臣に是非お答えをいただきたいと思います。

古川国務大臣 高校生の意識調査ということでございますけれども、これは若者であるかどうかは別として、裁判員に選ばれることについては、それぞれお一人お一人お考えがあるものだということだと思います。若いからというのではなくて、それぞれのお考えがあるだろう。

 しかし、若者を対象とした調査もございますけれども、そこでは、裁判員裁判に参加することについて消極意見を持っている若者、これが少なからずいるという結果が出たということは承知をいたしております。

笠分科員 今大臣おっしゃったのは、多分、二〇一七年に行われた、民間の一般社団法人の裁判員ネットが、若者ということで、高校生じゃないんだけれども、東京都内の、十八歳から二十五歳を対象にして、大学生が多かったと思うんですけれども。その中でも、裁判員になりたいかと言われれば、積極的な回答というのは二五%で、できればなりたくない、あるいは絶対になりたくない、合わせると消極的な回答が七五%、裁判員は二十歳以上のままがいいんじゃないかという方が、今のと連動するんだけれども、七五%ぐらいということで、例えば、二十歳以上のままがいいというような人は、義務教育での裁判員制度についての学習が乏しい、未成年には荷が重い、高校生にとっては負担が過重、高校生は社会経験が少ないし、大変なんじゃないか、そういった不安、心配があるわけですよね。

 そういうことを、これはもう民間任せじゃなくて、今日最高裁も、これはどちらがいいのか分からないんだけれども、是非、最高裁でもそういう若者に特化した調査をやっていただけませんかね。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁では、今も御紹介いただきましたとおり、これまでも毎年、裁判員制度の運用に関する意識調査を実施してきてございます。

 この調査では、今年の分からは調査対象に十八歳、十九歳の方も加えることとさせていただきましたが、今の委員の御指摘も踏まえまして、若年層を含む国民の意識をより一層把握するために必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

笠分科員 ありがとうございます。

 今、本当に前向きな答弁、やはりこれからの主権者教育にも、本当に、法教育並びに主権者教育の大事な一環となっていくので、これから、ちょっと後ほど幾つか伺いますけれども、学校現場も含めて、こういった法教育を充実をさせていかなければならない。そのときの一つのいろいろな課題もそういった調査から私は浮き彫りになってくるんじゃないかというふうなことを考えておりますので、大臣も、そういった意向を踏まえた上で、リーダーシップを発揮していただくという意味でも、いま一度、そういった調査、最高裁と協力して是非やっていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

古川国務大臣 ただいま委員から主権者教育というお言葉がございましたけれども、まさにそこは非常に重要な部分だと思っております。

 十八歳、十九歳が、要するに、国政選挙、地方選挙もそうですけれども、選挙権を得るということ、つまり、立法に関わってその責任を自覚できる機会であります。と同時に、裁判員制度における裁判員になるということは、司法というものに対して関わりを持ち、また、そこに対する責任を醸成するということにもなるわけですから、そのような意味で、これはひとしく主権者教育というものに関わってくる部分だと思います。

 そういう観点を持ちながら、現状、では若者がどういう意識を持っているかというのは不断にやはり把握する努力をし、そして、それがよりよい主権者教育につながっていくような施策を考えるなり、前向きな展開を図っていくべきだというふうに思っております。

笠分科員 今大臣も、これからの主権者教育、法教育というような役割が非常に重要だというようなこと、お考えをいただきましたけれども、裁判員制度の仕組みに触れるということだけではなくて、やはり高校生、若い人たちが当事者感覚というものをしっかりと身につけていくために、今まで以上に、どういう教育が、この充実をさせていくために求められるというふうにお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。

古川国務大臣 冒頭委員がお触れになったと思いますけれども、法教育とおっしゃいましたけれども、まさにこの法教育というものが重要さを増してくるということだと私は思っておりまして、これは言わずもがなですけれども、法教育というのは、自由、基本的人権の尊重、法の支配といった、法や司法制度の基礎となっている価値を理解して法的な思考を身につけるためのものであります。いわば、主権者教育、民主主義教育の一翼を担うものとして私は位置づけられると思っております。

 その狙いとしては、やはり、それぞれが自らの考えをしっかり持ちながらも他者を尊重する、そのような他者との関係性を通じて社会の一員として共に生きていく、世の中と自分との折り合い方といいますか、そういう生きる力を身につけていくということにつながっていくわけでして、その意味でも法教育というのは極めて重要だというふうに思っておりますから、これまでの取組も幾つかありますけれども、今後も、例えば文部科学省とも連携をしながら、その実効が上がっていくように努力をしていきたいと思っております。

笠分科員 よろしくお願いしたいと思います。

 それで、今大臣もありましたように、文科省と協力をしながら、学校現場での、教育の場というものはやはりそこで行っていくことになりますので、少し、現在、高等学校段階で、いわゆる今おっしゃったような法教育、そういったものについてどういうような形で、ちょうど二〇二二年の、今年の四月から、高等学校の公民分野の新科目である公共、恐らくこの中で指導していくことになると思いますけれども、具体的には今文科省とどういう協議を行っているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法教育の推進につきましては、学校現場との連携が非常に重要になってまいります。

 法務省では、平成十五年に司法制度改革の一環として法教育の検討に着手した当初から文部科学省と連携してまいりまして、平成十七年には法教育推進協議会という協議会を発足させて、文部科学省の担当者を任命させていただき、以後、法教育の推進方法、普及方法等につきまして意見交換を行ってきております。

 また、本年四月からは、委員御指摘のとおり、高等学校において、裁判員制度も扱うこととされております新設科目公共が開始されることや、裁判員に選任される年齢が十八歳以上とされることを踏まえまして、学校現場において模擬裁判を行っていただくための教材ですとか、あるいはその企画をすることを目的といたしまして、部会を昨年の十二月に立ち上げたところでございます。そして、この委員には、現役の教員、先生ですとか、文部科学省の担当者にも加わっていただいているところでございます。

 法務省といたしましては、文部科学省との連携を更に深めまして、学校現場における法教育がより一層充実したものとなるよう、必要な取組を進めてまいりたいと考えております。

笠分科員 今、昨年の十二月に立ち上げたということなんだけれども、私、やはり少し遅いと思っているんですね。

 先ほど御指摘申し上げた、高校生など若い人たちにターゲットを絞った意識動向調査みたいなものも、もちろん少年法の改正ということを踏まえてだけれども、いずれは、これが改正されたときには本当に裁判員の対象になったり、あるいは検察審査会の審査員の対象になるということは分かっていたわけだから、やはりそういう調査はもっと早くに本当はやっておいて、そして、少なくともこの四月から、学習指導要領も改訂されているわけですから、充実した高校でのそういった法教育が行われる。今から話し合うという話では本来はないと思うんですよね。

 だから、その辺はしっかりとやはり取り組んでいただき、少し急いで、これは私、文科省にも一度またきちっと申し上げたいと思いますけれども、連携をしながら対応していただきたいというふうに思っております。

 特に、この学習指導要領の中で、公共の中で、特に法教育の充実に向けては、専門家や関係諸機関などとの連携、協働を積極的に図るということが書き込まれておるわけでして、これは非常に重要なことで、ちょうど法務省が平成二十七年二月に公表した、これは平成二十五年度の法教育の実践状況だと思うんですけれども、そういった中で、これも今度やるようですけれども、来年度、久しぶりに、もう十年ぶり以上になるんですかね。法律家や関係機関と連携した教育を行ったかについて、連携していないという回答がその時点でも最も多いわけですよね。連携先でも、一番多いのはやはり身近な警察。法曹三者では、裁判所五%、検察庁二・一%、弁護士会六・八%。それぞれ裁判官、検察官、弁護士も含まれるわけですけれども、現実には、この調査を見ても、法教育において法曹関係との連携がなかなか根づいていない。私は、今そういう現状があるんだと思います。地方によっては積極的な取組をしているところもあるかもしれませんけれども。

 あと、法曹三者が各々いろいろな形で実施をしているわけですけれども、教育の現場からすれば、教育側の現場も、やはりなかなか教員が多忙であったり、あるいは授業時間を確保することが難しいといった学校現場のサイドの問題も私はあるんだと思うけれども、窓口が複数であったり、そういった連携というものを、個々の学校単位とかあるいは教育委員会を通じてと言われても、なかなかそこ辺りが難しい状況があるんだというふうに思います。

 一つ御提案でございますけれども、やはり教育現場と法曹三者の連携というものが非常に極めて重要になりますので、例えば、裁判員裁判が行われている全国六十の地方裁判所、支部の管轄地域を単位として、法曹関係者と公共の授業を担当する教員など法教育に関わる教員との連携、そして協働の場をつくっていくということを是非推進をすべきではないかと思いますけれども、それぞれ、法務省、最高裁からお答えをいただきたいと思います。

竹内政府参考人 学校現場と法律専門家との連携の重要性について御指摘をいただきました。誠にそのとおりだというふうに思います。

 法務省では、これまで、法律専門家である職員、検事等ですが、これを学校等に派遣して、出前授業などを実施してきたところではあります。

 ただ、御指摘のとおり、これまでの取組を更に推し進めまして、全国各地で充実した法教育を実施していくために、それぞれの地域において、その実情を踏まえつつ、法律専門家と教育関係者が連携をすることができる体制を構築していくことが重要だと考えております。

 文部科学省あるいは最高裁判所等関係機関等とより一層緊密な連携を図りながら、必要な検討を進めてまいりたいと考えております。

吉崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 ただいま法務当局からも答弁がございましたけれども、最高裁としましても、若年層に対する法教育あるいは制度広報に当たりましては、裁判所を含む法曹関係者と教育関係者が連携することが重要と考えておりますので、法務省や文部科学省とも連携しながら、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

笠分科員 その辺を、今個々おっしゃったように、出前授業であったり出張してのいろいろな取組を、点、点ではやっていただいていることは分かっているんです。ただ、先ほど言ったように、やはりなかなかそれがまだ根づいていない、広く根づいていない。やはり遠いんですよ、存在が。

 ですから、やはりもうちょっと上のレベルで、協働してしっかりとやりますよと。もちろんこれは文科省も一緒になってということになるんですけれども、少しそういった大方針をやはりきちんとまず現場の皆さん方で、もっと、それぞれの、例えば検察庁だとか裁判所という単位だけではなくて、もちろん弁護士の皆さん方も巻き込んで、法曹界が一体となってこの充実に当たっていく、そしてそういう一つのプラットフォームをつくっていくんだというようなメッセージをきちっと出していただきたいと思いますけれども、その辺の検討というのは今されているんでしょうか。どちらでもいいんだけれども、具体的に。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 主な検討の場と申しますのは、先ほどちょっと申し上げました法教育推進協議会を平成十七年から開催しておりますので、そこに関係各機関お入りいただいて協議を続けているところでございます。

笠分科員 これは今事務方の方でも鋭意検討を続けておるということですけれども、最後に、私、ここはやはり、大臣、本当にこの四月から、そして今年中には裁判員の名簿にひょっとしたら無作為抽出の中で選ばれるかもしれない、記載されるかもしれない。考えないといけないですよね。そのときに自分はどうすればいいんだろうか、そしてまた、来年、実際に裁判員としてひょっとしたらそういう経験をするかもしれない、そういった子供たちの不安や、あるいは子供たちの意識というものを、しっかりと前向きな意識というものを持ってもらうためにも、やはり学校現場、この法教育の充実が必要でございますので。

 特にやはり私は最後強調したいのは、今も議論させていただきましたけれども、学校と法曹関係者がとにかく連携していく、そして法教育を充実させていく、あるいは制度の理解のみにとどまらずやっていくんだということを法務大臣と文科大臣と直接話していただいて、現場のいろいろなことは事務方で詰めればいいですよ、一度そういった確認を是非していただいて、そういったメッセージを是非両大臣で出していただきたい、全国に届くように、高校生たちにも。そのことをお願いをしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

古川国務大臣 裁判員制度に十八歳、十九歳が新たに対象となり得るというこの機会に合わせまして、これまでその周知に努めてまいりました、取組もしてまいりましたけれども、さらに、直接語りかけるというようなことも含めて、周知徹底に努めるとともに、やはりその肝は、まさにおっしゃった主権者教育、あるいは民主主義教育、こういうものに関わってくる非常に大事な部分だと思いますから、そこはそのようなことをしっかり腹に置きながら周知する、あるいは啓発活動に力を注ぐということだと思います。

 そしてさらに、文部科学省との連携でございます。それは法曹関係者との連携、あるいは学校現場における連携、これが非常に大事だというふうに思います。こういうあらゆる努力を通じて、法教育の実が上がっていくように努力をいたします。

笠分科員 大臣のリーダーシップ、また、本当に時間がないんだ、急がないといけないという意識を持って、是非、大方針を示していただき、リーダーシップを発揮されることを御期待申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

葉梨主査 これにて笠浩史君の質疑は終了いたしました。

 次に、金村龍那君。

金村分科員 改めまして、おはようございます。日本維新の会の金村と申します。

 予算委員会分科会の質問、そして、所属委員会も異なる法務省所管ということでいささか緊張しておりますが、しっかりと問題点を、課題をしっかりと浮き彫りにして、今後に生かしていただきたいと思います。

 それでは、まず初めに、予算委員会の中でも我が党の岩谷議員から御指摘をいただきました、インターネット上の誹謗中傷に対する問題です。

 今、テクノロジーの発展も非常に進んでおりますので、ネット上の中でいじめやそしてリンチ、誹謗中傷というものが非常に広がっています。とりわけ私が問題意識があるのは、やはり学校現場ですね。子供たちの中で、携帯電話やスマホを通してグループ化して、その中で誹謗中傷が繰り返されているという実態もございますので。

 子供たちだけではないんですけれども、いわゆるネット上の人権啓発といいますか、啓蒙といいますか、未然に防いでいくことにどれだけ力を注いでおられるのか、またその実態を大臣の方からお教えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

古川国務大臣 インターネット上での誹謗中傷やいじめ、これはもう絶対あってはならないものだというふうに考えております。

 法務省の人権擁護機関では、これらを未然に防ぐために、人権啓発活動における強調事項の一つとして、「子どもの人権を守ろう」、「インターネットによる人権侵害をなくそう」を掲げまして、他人への思いやりの心、多様性を認めて互いを尊重し合うことの大切さというものを伝えるために、様々な手段を通じた人権啓発活動に取り組んできております。

 例えば、学校や企業に人権擁護委員や法務局職員を派遣して行う人権教室、あるいはシンポジウム、総務省及びSNS事業者団体と連携し、ノー・ハート・ノー・SNSをスローガンとしたSNS利用に関する人権啓発サイトの開設、それから、インターネットやSNSを利用した啓発広告などを実施をして取り組んでおります。令和二年度に開催した人権教室には、延べ約四十三万人の参加を得ております。

 また、この様々な人権啓発活動に対しましては、みんなが優しく思いやりのある心を持つとよいと思った、いじめを見ていることが多かったがこれからは助けたいと思ったなどといった感想が寄せられているところです。

 法務省としては、今後とも、このような啓発活動を通じまして、インターネット上での誹謗中傷やいじめの防止にしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

金村分科員 大臣、ありがとうございます。

 やはり、多様性、共生社会とか、非常に重要なキーワードであるのは事実なんですが、ただ、そこに逃げ込まず、しっかりと啓蒙活動を通して未然に防いでいく。

 とりわけ、私も今、子育て中なので本当に思うんですが、このインターネットに対して、接し方ですね、私、四十二歳ですが、やはり我々世代よりも今の若い子供たちの方が当たり前のようにそれと接していますので、それが一つのツールに当たり前のように暮らしの中でなっていますので、そういった意味では、我々が想像もつかないような誹謗中傷につながりやすいので、小学校一年生や、それこそ年長さんぐらいからそういった啓蒙活動を繰り返していくことによって未然に防いでいくのと、発達上も私は必要だと思いますので、是非力を入れて取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、今日は入管法についてしっかりと伺いたいと思います。

 私は、昨年の衆議院選挙で初当選をいたしましたので、実際、昨年の通常国会はほとんど実は政治活動しかしておりませんでした。他方、社会の中に存在する課題を、政府が法案を提出して、法律を通してしっかりと解決していく、そこに私は魅力を感じて政治家を目指したわけですから、やはり昨年成案しなかった法案に対しても、しっかりと、課題がどうなっているのかということを問いかけていくことによって、再びその法案が日の目を浴びるというか、そういった機会を得ていくのも必要なんじゃないかという認識を私自身は持っています。

 そんな中、今、日本に来る外国人の方が三千万人、そしていわゆる働くことを目的とした方が三百万人程度いると言われている今の日本の中で、やはり我々日本人としては、外国人の方が来てもらい、共生社会を実現するという理解に努めていくことをまず前提とした中で、当然、外国人の方にも我が国のルールや文化、そういったものをしっかりと、相互理解していくことによって真の共生社会が実現すると私自身は考えています。

 そんな中、平成二十六年から不法残留といいますかそういった方が増えている実態も数字として明らかになっていると思います。法務省の方からいただいたお話によると、平成二十六年から今にかけると約三万人ぐらい増えているという実態もございます。

 そんな中、昨年の通常国会の中で入管法改正案が提出され、そして成立をしなかったという事実がございます。そもそも、この法案が出てきたということは、入管行政の中で問題がある、課題があるという認識があったと思うんですね。では、その法案が成立しなかったんですが、今その課題が実際どうなっているのか、その実態を受けた上で今後どうやってその課題を解決していくのか、その辺りを大臣御自身の言葉でしっかりとお伝えいただくことで、より日本に真の共生社会をつくっていきたいと願っておりますので、是非とも御答弁をお願いいたします。

古川国務大臣 お答えいたします。

 委員が今おっしゃいました外国人との共生社会、これをつくっていくためには、やはりルールにのっとって外国人を受け入れて、そして適切な支援を行う、ルールに違反する方々にはやはりお帰りいただく、こういう出入国在留管理というものを厳正に、適正に実施していくこと、これが極めて重要なことでございます。

 その責任を全うするべく、現在の入管行政における課題となっておりますものを解決する、そのために入管法を昨年の通常国会に提出をさせていただきましたが、残念ながら、その後廃案になったという経緯がございました。

 その入管法の内容というものを簡単に申し上げますと、送還忌避、つまり、退去強制令書が発付されたにもかかわらず退去を拒む者というのがおりまして、そういう方々がいらっしゃるということがいわゆる長期収容問題というものの原因になっているわけですから、ですから、この送還忌避問題というものが解決すべき喫緊の課題だというふうに考えているわけですね。

 しかしながら、今申し上げましたように、今回の入管法は廃案になってしまっておりましたので、この課題は依然として解決をしていないというのが現状でございます。

 私どもとしては、やはり、申し上げたように、本来の出入国在留管理における私どもの責任を全うするためには、何としてもこの送還忌避、あるいは長期収容問題と言われているものを解決をしなければなりません。その思いは変わらずに強く持っております。

 したがいまして、様々な方々の意見をお聞きしながら、その上でしっかりとした法整備を実現していきたいというふうに考えています。

金村分科員 ありがとうございます。

 やはり、真の共生社会を実現するためにもルールを徹底する。そのルールに不備があると、結局疲弊するのは現場ですよね。送還忌避の問題もそう、長期収容の問題もそう、いろいろな観点はあると思うんですね。強制送還を適用される外国籍の方にとっても、様々な事情がおありなのもよく分かる。でも、多くの外国人の方は、日本でルールを守って我々とともに生きていく、まさに共生社会の実現のために各々のお立場で共有や相互理解を繰り返している中で、やはり特例や異例を認め続けることというのは、適正に処理していかなきゃいけない。

 そのために昨年出た法案が、様々な、私はよく政治案件とか言うんですけれども、政治の中にまみれてしまって、本来必要な手だてが実現しなかった。これは早急に改善をしていくべきだと、改めて、大臣の答弁を聞いて私も納得したなと思っております。

 そういった意味では、是非、理想的にはこの通常国会、そして早い段階で法案が成立することを望みますが、まずは、もう一度課題点を浮き彫りにしていきたいと思いますので、お答えいただきたいと思います。

 今大臣の答弁にもありました送還忌避者のところですね、これ、何で送還できないんですかね。多分、様々な事情はあると思うんですけれども、幾つか分類分けをして説明いただけるとより分かりやすくなると思いますので、御答弁いただきたいと思います。

西山政府参考人 送還忌避者を送還できない原因として、次のものが挙げられると考えております。

 まず、現行入管法上、難民認定申請中は理由や回数にかかわらず一律に送還が停止されることとされており、難民認定申請や審査請求が退けられても、送還忌避者が申請を繰り返している限り送還されないということとなっております。

 次に、送還忌避者を送還しようとしても、その者の受入れを拒否する国が一部に存在しておりまして、そのような国の国籍を有する者が送還を忌避する場合、送還が著しく困難となっております。

 さらに、送還を行おうとする場合に、送還忌避者が民間航空機の中で大声を出したり暴れるなどして送還妨害行為に及んだ結果、機長の判断で搭乗を拒否され、送還できない場合がございます。

 現行入管法上、これらに対応するための適切な手段は存在しておりませんで、運用の改善のみでは解決できない制度自体の問題となっており、その解決のため早期の法改正が必要であると私どもとしては考えております。

金村分科員 やはり一番大きなウェートは難民認定申請のところだと私は認識しています。累計も三千人を超えると言われておりますので、これは早急に解決していかなければならないと認識しています。

 そもそも、強制送還に至るということは、前提として、ほとんどの方が罪を犯した前提にあると思うんですね。場合によっては刑期を終えられて出てきた人たち。そういった方々が、むしろ難民認定申請を出すことによって国内にとどまれるような、あえて言葉を使うと、誤用のようなことがひょっとしたら生まれているんじゃないかなと私は認識しております。そんな中、この難民認定を繰り返すというところなんですけれども、これはかなり問題だと思うんですね。

 これについて、提出した入管法改正について言えば、この繰り返し難民認定申請ができる課題に対してどのようなクリアにしていく法案だったのかというのを少し御説明いただきたいと思います。

西山政府参考人 廃案となりました改正法案におきましては、難民認定申請中は法律上一律に送還が停止される、いわゆる送還停止効の例外を設けまして、送還忌避者の送還を可能にすることとしていたところでございます。

 具体的には、例えば三回目以降の難民認定申請者、それから外国人テロリスト、あるいは懲役又は禁錮三年以上の実刑判決を受けた刑罰法令違反者などをこの送還停止効の例外として規定することとしていたところでございます。

金村分科員 いわゆる難民認定申請を出して実際に難民認定を受けるのかそれとも受けないのかというところまでの期間は、件数が増えていると承知しておりますので、当然、時間も以前と比較するとかかるようになっていると思うんですね、そもそもその難民認定申請一回一回当たりが。加えて、何度も繰り返すことが事実上可能となってしまうと、もはや日本にとどまるためだけに難民認定申請を出し続けるというテクニカルな話も僕は存在してしまうんじゃないかと危惧しております。

 その上で、とはいえ、その人たち自身、外国人の人たち自身の難民認定申請中、若しくは繰り返しそういった行為をしている中でも、いわゆるその人たちの人権の問題、やはり、その人たちがいろいろな事情のある中で国内の中でしっかりと暮らしができる、不当な人権侵害がないようにしていかなければならないというのも、一方で守っていかなければいけないと思うんですね。

 そういった意味では、この難民認定申請を繰り返す、繰り返してしまっている人たちの人権侵害のところというのはどのようにお考えなのかをお聞きしたいと思います。

西山政府参考人 委員の問題意識としては、三回以降は送還停止になるということによって、難民申請者の人権が侵害されるのではないか、そういった御指摘だと理解した上でお答えを申し上げますと、まず、我が国では、申請者ごとにその申請内容を審査をした上で、難民条約の定義に基づいて、難民と認定すべき者は適切に認定しているところではございます。

 その前提で、この審査で難民と認定されなかった場合でも、その判断については申請者が不服申立てを行うことができ、その手続においては、外部有識者から成ります難民審査参与員により審査され、その御意見をいただいて結論を確定させているところです。

 これらの重層的な行政手続において、難民の該当性について慎重な判断を行って、難民認定手続の適正性を十分に担保していると考えております。

 その上で、以上のような重層的な手続によって難民不認定と確定した者であっても、再度の難民認定申請を行うことは可能でございまして、その場合でも、先ほど申し上げたような、いわば一次審査、それから難民審査参与員の審理等の手続は保障されております。

 このような慎重な手続の下で二度も難民の不認定処分が行政的に確定した者については、既にもう難民の該当性に関する審査は十分に尽くされているというふうに言えると考えております。

 また、三回目以降の申請においても、難民の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合には送還を停止することとしていたところでございます。

 このように、三回目以降の難民認定申請者を例外としたとしても、その難民認定手続は慎重に行われるから、難民認定申請者の人権が不当に侵害されることはないというふうに考えております。

金村分科員 私、個人的には、三回目以降というのは妥当なんじゃないかなと思っております。

 それは、やはり、本来あるべき姿は、難民認定申請者のうち、難民認定を受けられる要件を得ていれば、既に難民認定されていると思うんですね。つまり、適切な処理を既に入管法に基づいて実際にはしている。ですけれども、そうではない、言うなれば、難民認定申請に該当しない人たちの難民認定申請の数が増えていることによる弊害が起きているんじゃないかというのが私の問題の認識なんですね。

 その上で、きちんと例えばコミュニケーションがうまく取れなかったことによって難民認定が得られなかった人たちも中にはいるかもしれないという最大の、仕組み上でですね、仕組み上配慮をしながら、何度も何度も細心の注意を払いながらやった上で、二回まではできるというのが改正案だと思うので、そこは私は適当じゃないかなと思っています。

 その上で、難民認定申請者については回数の上限を設ける、例外もありますよというのがまず一つ。

 加えて、先ほど、累計三千人以上に至ってしまったいわゆる送還忌避者の中で、特定の国が、いわゆる強制送還を受取を拒否している国や、あとは飛行機で、搭乗する際に妨害行為とか、そういったものが本国に帰れない理由の一つに挙がっていたと思うんですね。

 この二つというのは、どのように入管法改正案を通して課題解決しようとしていたのか、そこについてお伺いさせていただいてよろしいですか。

西山政府参考人 廃案になりました改正法案におきましては、送還忌避者のうち、自国民の受取を拒否する国を送還先とする者、それから送還妨害歴があって再び同様の行為に及ぶおそれがある者については、退去させる最終的な手段として、これらの者に本邦からの退去を命じ、その命令に違反した場合に罰則を科す規定を創設することとしていたところでございます。

金村分科員 ありがとうございました。

 少なくとも、やはり適切な処理をして、本国に帰っていただくことの弊害を少しでも少なくしていく、何もなく母国に帰ってくださいと我々は言っているわけではないので、何度も言いますが、真の共生社会をつくるためにルールを相互で理解して、共につくり上げていくことを前提としておりますので、そのルールを逸脱してしまった場合に速やかに本国に帰れるような適切な処理を引き続き求めてまいりたいと思います。

 そして、私がこの送還忌避者の中で問題認識をするに至った割と大きなウェートの一つが、やはりその送還忌避者の中で罪を犯した人たちを前提としているということと、その罪も、非常に重い罪を犯してしまった人たちもいると聞き及んでいます。

 実際、どのような犯罪が行われているのか、どのような集計というか結果があるのか、いま一度お聞きさせてください。

西山政府参考人 令和二年十二月末時点の速報値ではございますが、三千百三人の送還忌避者のうち我が国で有罪判決を受けた者が九百九十四人存在いたします。有罪判決を受けた者の中には、殺人、これは七件、強制性交等の性犯罪、これが三十四件、それから強盗五十八件などの重大犯罪を行った者が存在しているところです。

 また、刑期で見ますと、懲役七年以上が八十八人、懲役五年以上七年未満が八十七人存在し、最も刑期が長い者は懲役十五年となってございます。

金村分科員 やはり、当然、日本国であるわけですから、日本人と外国人が共生している前提に立つと、重大な犯罪を犯した方が母国に帰る、そういう適切な処理を行うというのは至って当たり前のことだと私は認識しているんですね。他方、特別な事情があったりするところに対する配慮をする。そしてそれを、余りにも、今のままであると、現場の疲弊、それから再犯、そういったものの観点から、まさに入管法の改正が必要だと認識をしております。

 また、一番初めに大臣もおっしゃっていただきましたこの送還忌避者の問題、そして長期収容の問題、やはりここにも着目していかなければならないと認識しています。

 ただ、長期収容の問題、改めて考えると、罪を償った後の話ですから、どちらかというと、規則で収容施設の中で縛りつけることは他方で困難であるとは理解しておりますが、この長期収容の問題をどのように解決していくのか。また、私の中では、長期収容もそうなんですが、仮放免の方も非常に増えているのが実態だと思うんですね。実際、三千百人と言われる送還忌避者の中で最も多いのが仮放免中の者と言われる人だと思うんですね。

 そういった意味では、まずは、長期収容の問題をどう解決していくのか、お答えをいただきたいと思います。

西山政府参考人 これにつきましても、さきに廃案となりました改正法案におきましては、先ほど委員から御指摘いただいたような送還停止効の例外ということで、そもそも、送還忌避問題を解決する、これが長期収容の問題の解決につながるものということでそのような制度を導入しようとしたところでございますが、それに加えまして、監理人による監理に付することで逃亡などを防止しつつ、相当期間にわたり収容することなく社会内で生活させる監理措置という制度を創設することで、長期収容問題を抜本的に解決することを目指していたところでございます。

金村分科員 やはり必要ですよね。送還忌避者が減ることによって長期収容の問題を解決していくというのが抜本的なところだと思います。

 その上で、逃亡や再犯のおそれを防ぐための監護人という者をつけるというところまでケアされていたということが今明らかとなりましたので、根本的には送還忌避者の数をしっかりと減らしていくための手だてがやはり仕組みとして必要だ。今の入管法のままでは、私は実際に事業もしてきて、事業というか、障害児支援の事業をしてきた中で、現場が疲弊すると適切な判断もできなくなるというのをよく見てきたんですね。だから、いたずらに現場の職員の皆さんが疲弊をして、いつもの判断基準が鈍ってしまうようなことが起こってしまうと本末転倒なんですね。だからこそ、未然に、しっかりと仕組み化することによって、より現場の疲弊を抑えていただきたいなと思います。

 その上で、最後の質問となりますが、入管収容施設、いわゆる収容施設において、食文化も、それから人間性みたいなものも、やはり育ちが違えば、お国柄も違えば若干差が生まれてくるようなところで、食料の問題、それから医療費の問題、この医療体制というところが少しおざなりになっているんじゃないかなというのを耳にいたしましたので、収容施設における医療体制についてどのように改善されていくおつもりなのか、お答えいただきたいと思います。

西山政府参考人 まず、改正法案においてですけれども、入管収容施設における被収容者に対する医療体制を充実するべく、入管収容施設において常勤医師を継続的かつ安定的に確保するために常勤医師の兼業の要件を緩和すること、それから、被収容者による拒食に適切に対応するために、治療拒否者に対し必要な医療上の措置を取ることを可能にする規定を整備することなどを含めていたところでございます。

 また、入管庁では、昨年三月の名古屋入管における被収容者死亡事件を受けまして、外部有識者に御意見、御指摘をいただきつつ、調査報告書を取りまとめ、現在、その調査報告書で指摘された改善策の一つとして、外部医療関係者等により構成された会議体において医療体制の強化について御議論をいただいているところでございます。

 会議では、収容施設の実情や調査報告書で示された改善すべき点を十分に踏まえ、専門的見地から幅広く御議論いただき、現在、提言の取りまとめに向けた調整が進められているところでございまして、提言をいただいたならば、法改正も含め必要な対応を早急に実現してまいりたいと考えております。

金村分科員 質問時間が来ましたので終わりにいたしますが、やはり入管法改正は必ず必要だと認識しております。

 私の選挙区川崎も、日本人と外国人の方が共生したまちづくりというものの、ある面でいうと都市としてはトップランナーだと思っております。だからこそ、ルールをしっかりと作り直すことで、そこに住む人たちが、暮らす人たちがしっかりと共生できる町、そして何よりも現場の人たちが疲弊しない、そういった入管行政をつくり上げていただきたいと思います。

 私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

葉梨主査 これにて金村龍那君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 次に、財務省所管について政府から説明を聴取いたします。鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 令和四年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、百七兆五千九百六十四億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は六十五兆二千三百五十億円、その他収入は五兆四千三百五十四億円余、公債金は三十六兆九千二百六十億円となっております。

 次に、当省所管一般会計歳出予算額は、三十一兆一千六百八十八億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十四兆三千三百九十二億円余、新型コロナウイルス感染症対策予備費は五兆円、予備費は五千億円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも二百四十五兆七千九百十四億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入二千九百五十五億円余、支出一千五百四億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元に配付しております印刷物をもちまして詳しい説明に代えさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。

葉梨主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま鈴木財務大臣から申出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

葉梨主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

葉梨主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。若林健太君。

若林分科員 自由民主党の若林健太でございます。

 五年ぶりの質疑に立たせていただいております。先輩の諸氏の皆さん方の御配慮をいただいて、こうして発言の機会をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。

 まず、小泉改革以来の新自由主義に基づく政策から、成長と分配、新たな資本主義へと大きく経済政策の軸足を変えていこう、こういう中で、財政運営については、積極財政を進めるのか、あるいは財政再建を重視するのか、論争が我が自由民主党内でも大変激しくなってきているところです。

 岸田総理は、経済あっての財政であり、現在のようにコロナ禍にあるときは、まずは財政出動によって経済を立て直し、その後に財政再建についての取組をするべきである、その順番を変えてはならない、こういうふうにおっしゃっておられ、私自身もその意見に賛同しているところです。

 経済の立て直しをしっかり行った上で財政の再建に向かっていくわけでありますが、現代貨幣理論、いわゆるMMTを掲げる、この理論を掲げる人たちの間では、自国通貨建ての国債を発行する政府ではデフォルトは起きない、したがって、政府債務や赤字を気にせずにばんばんと政府支出をしよう、こういった御意見もございます。

 ちょっと行き過ぎているのかな、どうなのかなと思うところがありますが、このいわゆるMMT理論について財務大臣の御評価をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 財政につきましては様々な御議論があることを承知をしておりますが、例えば、御指摘のございました現代貨幣理論、いわゆるMMTは、自国通貨建ての国債を発行する国の政府は、過度なインフレが起きない限り、幾らでも国債を発行して支出することができるという考え方として知られている、そのように承知をいたしております。

 政府といたしましては、そのような考え方に基づく政策を取ることは全く考えておりません。重要なことは、経済成長か財政健全化という二項対立ではなくて、経済成長と財政健全化を併せてしっかり前に進めていくことである、そのように考えております。

 二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化等の達成に向けて、経済再生と財政健全化の両立にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

若林分科員 私も、このMMT理論というのは少し行き過ぎなのかな、こういうふうに思いますが、しかし、日本の、今、政府債務残高はGDP比に対して二一〇%内外と、非常に先進国の中でも突出をしているわけであります。一方で、民間の金融資産は二千兆円を超える水準にありまして、発行している国債が国内の市場で消化されている限りにおいては、日本のデフォルトというのは現実的ではないというふうに思っております。

 しかし、だからといって、MMTのように、いつまでも際限なくばんばんと政府支出をしていっていいんだというのはやはり行き過ぎであり、政府、民間合わせて純債務超過になったとき、財政リスクを考えると、やはり今大臣のおっしゃったように、プライマリーバランスをどこかで黒字化していかなければいけない。

 まさに二〇二五年を目標にプライマリーバランスを黒字化していく。いわゆる団塊の世代が高齢化していく中で、後期高齢者になるこの二〇二五年というのを一つの目安にしてプライマリーバランスを黒字化しなければいけないというのは、一つの目安なんだというふうに思います。

 さて、そのプライマリーバランスの黒字化ですが、総理は、経済財政諮問会議で、二〇二五年の黒字化を堅持するというふうにおっしゃられました。内閣府が示した中長期財政試算を根拠としているわけでありますが、前提条件が余りにも楽観過ぎるんじゃないかという批判がされています。

 名目三%、実質二%の経済成長率を前提としているということでありますが、名目三%の経済成長率を実現できたのは、過去、この二十年間で二〇一五年の一回だけ、実質三%を超えたのも三回というような状況であります。IMFの予測による二〇二一年の経済成長率は一・六。そうやって並べていくと、目標は目標なんだけれども現実にどうなんだ、こういう意見があります。

 この点について、内閣府、見通しについて、楽観的過ぎるという批判についてどうお答えになるか、お聞きしたいと思います。

宗清大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今、若林先生御指摘の中長期試算の成長実現ケースにおける成長率といいますのは、デフレ脱却、経済再生に向け、過去の実績も踏まえたペースで成長戦略などの政策効果が発現していく、政府として目指すべき経済の姿をお示しをさせていただいているものでございます。

 政府といたしましては、こうした姿を実現するべく、新しい資本主義の下で、科学技術・イノベーション、デジタル、気候変動、経済安全保障などの社会課題の解決を図るとともに、これまで日本の弱みとされてきた分野に官民の投資を集めて、成長のエンジンへと転換する成長戦略を実行してまいりたいというふうに考えています。

若林分科員 数字の議論というのは、やはりなるべく客観的に、説得力を持って議論するべきではないかな、政府が目標を持ってそれを前提にと、意気込みと気合は分かるんだけれども、こんなふうに思うところであります。

 さて、令和二年、令和三年度の予算、これは今年度についてもそうですけれども、百年に一度のパンデミック、コロナ禍の中にあって、大変大きな補正予算を組むこととなりました。

 しかし、令和元年、その前の年度をずっとひもといていっても、当初予算とは別に、毎年度、実は三兆円規模の補正予算というのが組まれているわけで、この補正予算というのが実は非常に常態化してきてしまっているのではないか、本来当初予算に組むべきものが当然のように補正で組まれている、こういう実態があるのではないかという指摘があります。

 この点について、補正予算の評価、どのようにお考えになっているか、伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 若林先生から、補正予算が第二の予算に常態化しているのではないか、そういう御質問であったわけでございますが、補正予算は、財政法によりまして、当初予算編成後に生じた事由に基づき緊要性の高い経費の支出を行う場合や、義務的な経費の不足を補う場合に編成できるとされているところでございます。

 新型コロナの感染拡大を受けた令和二年度、令和三年度だけでなく、これまでの補正予算におきましても、その時々の経済社会情勢等を踏まえまして、緊要性の高い政策課題に対応するために必要な経費等を措置してきたと考えているところであります。

若林分科員 補正予算について、建前は、当初予算の予測できなかった事態に対し、緊要性の高い事柄について予算を立てた、こういうことになるわけですが、じゃ、実態はどうなのか。

 例えば、農業農村整備事業、いわゆる土地改良予算なんかを見てみますと、民主党政権ができる前、大体年間で六千億程度の予算が組まれていたところでありました。民主党政権が成立をして、無駄な公共事業の象徴と扱われてしまいまして、一旦、二千億まで予算を削られたんですね。あのときは、まさに通常の用水路の維持管理に関わる経費まで、とてもじゃないが出せないということで、大変危機的な状況になりました。

 自民党が政権復帰して、この点を是正をして、今は当初予算で大体四千四百億ぐらい毎年計上することになっていますが、補正で一・六千億ぐらい、だから、当初で四千四百億、補正で一千六百億、大体毎年計上しているんですね。四千四百億と一千六百億、要は六千億なんです。要は、民主党政権の前の予算規模にほぼ匹敵する金額が当初と補正で組まれるようになった。ここのところ、そうして安定して事業が執行されている、こういうことであります。

 実態の、現場のそれぞれの土地改良組合でどうなっているかというと、あのときの、民主党政権時代の大変な状況から脱して、ようやく先々の事業の見通しが立てられるようになった、通常の活動ができる、要は、当初予算の四千四百億を前提とせずに、六千億規模を前提として全体が動いているという実態があるんですね。

 私は、ここで、補正が必要ないと言っているつもりはありません。しかし、当初では想定できない事案によって、緊要性が高い、それで補正を組んだというのではなくて、もうそれが常態化して、現場では当然のように当初と、予算を前提として動き始めているということであって、本来これは、建前と本音で、当初と補正を分けるんじゃなくて、当初でしっかりとその部分、必要な部分を予算を組まなきゃいけないんだということなんじゃないのか、こう思うところであります。

 当初予算を小さく見せるため、そのことによって、そのひずみが補正が常態化するということになっている、この点を指摘をしたいと思いますが、こうした実態についてどう見ておられるか、お考えをお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 若林先生御指摘のとおりに、農業農村整備事業につきましては、このところ、毎年度約四千億円台半ばの予算を当初予算において安定的に確保してきておるところでございます。

 その上で、補正予算におきましては、先ほど答弁いたしましたとおり、緊要性が高い事業を推進するための予算を措置しております。

 例えば、令和三年度補正予算におきましては、防災・減災、国土強靱化対策のための農業水利施設の老朽化対策でありますとか、TPP11等の国際環境の変化に対応し、農業の成長産業化を図るための農地の大区画化などを推進することといたしております。

 こうした形で農業農村整備事業の所要額を確保してきておりますが、補正予算では緊要性の高い事業を推進するための予算を計上しているという違いは御理解をいただきたいと思っております。

若林分科員 補正予算の事業、それが必要ないと言っているわけじゃないんです。年間の事業量が実は六千億を前提に動いているという実態を是非御理解をいただいて、当初でしっかり勝負をするべきだということを申し上げているわけで、そのことを改めてお話をしたいと思います。

 さて、こうした当初予算と補正予算の実態があります。このことを加味していくと、改めてプライマリーバランスというのを見ていくと、実は、補正を前提としないで、二〇二五年にプライマリーバランス黒字化、なりますよといっても、そこへ更に補正の三兆円なるものが加わってくると、とても実は二五年にバランスしないんじゃないのかということがあります。

 前提となる経済成長率も非常に高い水準で設定をし、そしてまた、一般会計と補正という意味での建前と本音の部分があって、実は政府の数字は建前で組み立てられている中で、二五年の目標と言っているけれども、非常にこの信用性が薄くなってきているのではないか、こういうふうに感じるんです。

 確かに、二五年というのは団塊の世代が後期高齢者になる大変節目の年ではあるけれども、しかし、もっと現実に沿った数字にしっかり組み立て直して、例えば、後年度になったとしても、それを実現する見通しが立つんだよと説得力のある数字をしっかりと示すことが大事なのではないか、こう思いますが、内閣府、そういった意見についてどうお考えになるか、お聞きしたいと思います。

宗清大臣政務官 お答えさせていただきます。

 若林先生御指摘の中長期試算の成長実現ケースにおける成長率というのは、デフレ脱却、経済再生に向け、成長戦略などの政策効果が過去の実績も踏まえたペースで発現していく、政府としての目指すべき経済の姿をお示しをさせていただいているものでございます。

 新型コロナ危機を乗り越えた上で、新しい資本主義の下、成長と分配の好循環を生み出し、社会課題を解決しながら、持続可能な経済成長を目指してまいります。

 なお、プライマリーバランスの黒字化目標につきましては、経済財政諮問会議において、現時点で財政健全化の目標年度二〇二五年の変更が求められる状況ではないことが確認をされております。

 まずは、足下の新型コロナ対策に万全を期して、経済を一日も早く回復軌道に乗せる、その上で、デフレ脱却、経済再生が実現できるように全力で取り組むとともに、中長期的な財政健全化に取り組んでまいります。この順番を間違ってはならないというように考えておりまして、財政健全化を目指す観点からも、まずはしっかりと経済の立て直しに全力を挙げていきたいというふうに考えております。

 若林先生の御指摘もしっかり受け止めて、頑張ってまいります。

若林分科員 さて、ちょっと話の内容を変えてまいりますが、私は、一期六年参議院議員を務め、落選をして、五年間、国政復帰を目指して活動してまいりました。昨年の十月に何とか国政復帰をし、今こうしてこの場に立たせていただくことになりました。

 この五年間、選挙区となる長野一区、北信地域をずっと歩いてまいりました。善光寺平を囲む山々にある様々な山村の集落、その過疎と高齢化、一軒一軒歩きながら様々な方にお会いをし、いろいろなことを学ぶ中で、過疎と高齢化の進む現状というのを肌で感じてきたところです。何とかしなくちゃいけない、お力になってまいりたい、それが国政復帰をしようという自分自身の決意の原点、源流にもなってきたところでありました。

 この山村の集落、実は、あるときにあることに気づいたんですね。かつては七十世帯もあったような集落が十世帯近くに陥って、本当にこの集落機能がままならなくなっていく。その過程の中では、かつて集落営農組織をつくって、国の中山間地直接支払交付金などを受けながら何とかこの集落を頑張っていたんだけれども、その集落機能が落ちて、国の支援を受けることができない、手を挙げる力がなくなってしまった集落。そして、国から支援がなくなると、一気にまた過疎が進んでいってしまっている。そういう集落が随分多いなというのを感じたんです。

 国政復帰してみて、改めて数字を見てまいりますと、この交付金制度、二十年経過をする中で、第一期目、受皿となった協定は三万三千件あった。しかし、今、第五期に入って、現状のこの協定数というのは二万三千。実に一万件も協定数が減っているんですね。ああ、やはり国の支援が届いていない、中山間地を国が責任を持って応援していかなきゃいけないといいながら、実は届いていないのではないかといった自分の問題意識というのを非常に感じたんです。

 農林水産省として、こうした現状を踏まえ、中山間地直接支払交付金が届いていない、その原因はどういうところにあるのか、分析をされているのか、教えていただきたいと思います。

中村副大臣 若林委員におかれましては、現地を訪れ、現地の様子をつぶさに御覧になって、その上で、地域を振興したいという思いのこもった質問だと敬意を表します。

 中山間地域等直接支払制度は、農業生産条件が不利な地域における農業生産活動の継続を支援することにより、多面的機能の発揮を目的として、平成十二年度の制度創設以来、五年間を一つの対策期間として実施をしております。

 地域で農用地を維持するための活動を行う集落協定数については、委員御指摘のとおり減っておりまして、第五期対策の初年度となる令和二年度では、前年度より二千協定減少して、御指摘のとおり二万三千協定となりました。

 集落協定の減少の要因につきましては、近隣集落協定との統合により広域化する協定も多い一方で、高齢化によって五年間続ける自信がないという意見や、集落のリーダーを確保できないなどという理由で廃止せざるを得ない協定が多い、そのような原因によるものと認識をしております。

若林分科員 広域化の中で統合しているものもあるけれども、やはり、担い手がいなくなっていく、高齢化する中で、申請書類なんかも非常に多いというんですね。面倒くさくてやっていかれないんだ、こういう声が現実にあるわけでありまして、こういったことを何とか払拭をして、やはり行き届かないところが出てくるというのを是正していかなきゃいけないというふうに思うんです。

 その点について、今、RMOだとか新しい組織、あるいは広域化に向けた支援、こういうことがあると思いますが、政府としてどう対応しているか、伺いたいと思います。

中村副大臣 中山間地域における人口減少や高齢化による集落機能の弱体化、担い手不足等に対応するために、令和二年度から、中山間地域等直接支払交付金の第五期対策では、集落協定の広域化を支援する加算の拡充、人材の確保や集落機能の強化に向けた活動を支援する加算の新設、こういったことを行ってきております。

 これらに加えて、令和四年度予算案では、新たに、中山間地域等において複数の集落機能を補完する農村型地域運営組織、いわゆる農村RMO形成推進事業を創設いたしました。複数の集落を範囲とする村づくり協議会等が行う農用地保全等の計画作成、実証等の取組や、農村RMOを目指す地域を支援する中間支援組織等の育成を通じた都道府県単位の伴走支援体制の構築等に対する支援を実施することにしております。

 これらの支援を通じて、複数の集落が広域的に支え合い、農村に人が住み続けられる村づくりをしっかり推進をしてまいりたいと思います。

若林分科員 新たな農村RMOあるいは広域化という取組を支援をしていくということで、是非頑張ってもらいたい。

 集落機能が落ちてきている、その集落を見捨てちゃいけないと思うんですね。そういった集落も含めてしっかりとした応援の枠組みをつくって、そして、その山村、中山間地ですけれども、確かに過疎と高齢化が進んでいるんです。だけれども、私、実際に歩いていくと、今、岸田内閣で目指しているデジタル田園都市構想、この先取りをして、本当に都会からIターンで若い人たちが来て、いろいろなリモートワークをしながら自然環境の中で子育てをしたい、こういう若者もたくさん来ていて、活力のある中山間地もあるんです。新たな担い手も随分出てきているんですね。

 だから、そうした新しい芽と、そして一方、衰退をしてしまっているこの現状を何とか生かしながら中山間地の活力を取り戻していく、こういった政策が必要になってくるというふうに思っておりまして、農村RMO、新しいこの取組に是非期待をしたいというふうに思ってございます。

 そのことを申し上げて、私の本日の質問を終わりたいというふうに思います。ありがとうございました。

葉梨主査 これにて若林健太君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)分科員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、インボイスの問題についてお伺いしたいと思います。

 インボイス導入を決めた際の法の附則百七十一条の二には、消費税の軽減税率制度の導入三年以内をめどに、適格請求書等保存方式の導入に係る事業所の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証し、必要があると認めるときは、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとする、こうあります。

 大臣は、事業者取引への影響の可能性がどの程度悪影響だったら法制上の措置を取るお考えですか。

鈴木国務大臣 先生御指摘の法律の附則の規定に基づく検証では、免税事業者の行う取引のうち約六割についてはBツーC取引であり、取引の相手方が課税事業者であっても、その約三分の一は簡易課税を適用している事業者であって、このような取引はインボイス制度導入による影響がない点を改めて確認するとともに、免税事業者と見られる事業者と取引のある事業者にアンケート調査を実施いたしました。

 この結果に基づいて、優越的地位を利用し、不当な取扱いについては、独占禁止法や下請法等の取扱いをQアンドA等により明確化し、各事業者団体への法令遵守要請などを行うなど、免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備に関係省庁で連携して取り組んでいくこととしております。

 また、令和四年度税制改正におきまして、年や事業年度の途中からインボイス発行事業者となることのできる特例を延長することとしておりまして、これにより、免税事業者の方々が柔軟なタイミングでインボイス発行事業者になるかの御判断をいただけるような法制上の措置を講ずることといたしております。

 こうした取組を行いながら、今後とも、事業者の状況を踏まえ、インボイスの円滑な移行に努めてまいりたいと思っております。

宮本(徹)分科員 お答えがないわけですけれども、先ほどの御紹介があった政府のアンケート結果でも、免税事業者との取引をやめるが二%、取引価格の変更を検討する者、課税事業者になることを提案する者、それぞれ二割程度という結果になっているわけですよね。かなり大きな事業者取引への影響があると思われます。

 この政府の結果については、許容できない大きさの影響と見ているのか、許容の範囲だと考えているのか、イエスかノーかでお答えください。

鈴木国務大臣 イエスかノーかというふうに簡単に答えられませんので、ちょっと申し訳ありません。

 先ほど申し上げましたアンケート調査の結果では、約半数の事業者が条件を変えずに取引を継続すると回答しておりまして、こうした事業者と取引を行っている免税事業者の取引には影響がないこと、これが確認したところでございます。

 他方で、残りの約半数の、関係法令を踏まえて取引価格を変更できないか検討するとか課税事業者になるように提案すると回答した事業者と取引を行う免税事業者には、不当な取扱いを受けないように、先ほど申し上げました、独占禁止法や下請法等の関係法令に基づき対処することといたしております。

 具体的には、免税事業者との取引について発注者側が関係法令上で留意すべき点をQアンドA形式で明らかにし、各事業者団体へ送付をして法令遵守要請を行う、また、下請かけこみ寺や駆け込みホットラインでの相談対応を行う、下請Gメンや書面調査による状況把握や発注者側への牽制を行うといった取組をしてまいります。

 今後とも、このような取組を関係省庁と連携して行うことによりまして、免税事業者への影響を軽減できるように、免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備により一層取り組んでいきたいと考えております。

宮本(徹)分科員 許容範囲だとはおっしゃることができないわけですよね。

 免税業者への影響を軽減したいということを言うわけですけれども、現状は大変大きな影響が出るということを裏返しでは認めているということですよ。だったら、法の措置、百七十一条の二の条項を発動して、これは止めるべきだと私は思いますよ。

 先ほど来、QアンドAを出したということをおっしゃられます。その中では、取引価格の引下げに応じない場合の解約について、優越的な地位の濫用など、独禁法が適用される可能性には言及されております。しかし、今でもしばしば行われている理由を示さない解約や更新拒絶、あるいはインボイス以外の理由を挙げての解約や更新拒絶、これについては何らの規制もないわけですね。これらの規制がない現行法の下でインボイスを導入すると、立場の弱いフリーランス、免税事業者が守られず、取引から排除されるという指摘が当事者からなされているわけです。大臣はこの指摘にどう応えますか。

鈴木国務大臣 事業者が取引先の免税事業者に対しましてインボイス発行事業者になるよう要請すること自体は独占禁止法で直ちに問題となるものではございませんけれども、そこにとどまらずに、課税事業者にならなければ取引価格を引き下げろとか、それにも応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に通告するといった行為、これは独占禁止法上又は下請法上問題となるおそれがある、そのように承知をしております。

 関係省庁においては、事業者からの相談にも広く応じてきております。加えて、具体的な事案に対しては積極的に対処していくことと承知をしております。具体的には、書面調査等の機会を利用して、情報源が明らかとならないような、そういう配慮をしっかり行った形で端緒を収集し、対処していくことと承知しています。

 今後とも、関係省庁とも連携しながら、制度の周知、広報を始め、こうした取組をしているんだということも丁寧に説明し、進めていきたいと思っております。

宮本(徹)分科員 私は、それでは駄目だという声を紹介したわけですよね。取引価格を下げなきゃ応じない、だったら、そんなところにはもう取引を続けませんよ、解約だと言ったら、それは、明言したら当然独禁法の対象で、優越的な地位の濫用になるでしょう。しかし、そう明言せずに解約を、違う理由だとかを並べ立ててやるケースというのは、今までもいろいろなことで起きているわけですよ。それが今の現状なわけですよね。そうしたままでインボイスを導入したら、本当にどんどんどんどん、取引価格の引下げに応じない方々は排除されていくということになるわけですよね。そこをどう止めるのかというのがないわけですよ。ないままインボイス導入というのは、本当に私はあり得ないと思いますよ。

 その上で、免税事業者が課税事業者になることを選択した場合に、新たに支払う消費税分を報酬に上乗せしてもらわなければ、実質、収入減となります。

 これまで政府からは、消費税が円滑に転嫁できるよう環境整備を進めるという答弁が繰り返されてきました。しかし、残念ながら、これまで消費税は、三十年たっても、事業者間取引において一〇〇%の転嫁はできておりません。この二年間は転嫁の状況も横ばいであります。

 あと一年半で事業者間取引について消費税が一〇〇%転嫁できるようになる、こんなことは到底無理だと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 消費税は、御存じのとおり、価格への転嫁を通じて最終的には消費者に御負担をいただくことが予定されている税でありまして、事業者の方々が消費税を価格に転嫁できること、これは重要な点であると考えております。

 そして、宮本先生御指摘の、中小企業庁の転嫁モニタリング調査におきまして、免税事業者も含まれると見られる従業員一人から五人の小規模事業者では、消費税の引上げ分について、価格に全て転嫁することができたと回答した割合は、調査開始の平成二十六年四月の七七・六%から、最新は令和三年十月の調査でありますけれども、八九・三%と改善をしております。

 また、この調査におきましては、全て転嫁できたと回答している事業者のうち、本体価格と消費税額を分けることにより交渉しやすくなったとの回答が、最新の調査で一九・二%となっております。

 この点について、インボイス制度では、インボイス発行事業者が交付する請求書等には消費税額が必ず記載されることになり、受け取った消費税相当額と本体価格が明らかになることから、インボイス制度は消費税の円滑な転嫁に資するものでもある、そのように考えております。

 インボイス制度の導入に当たっては、関係省庁で連携して、このような、転嫁も含めた、免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備に取り組んでいきたいと思っております。

宮本(徹)分科員 現状で八九%なわけですよ。残りは転嫁できていないわけですよ。このままインボイスを導入したら、転嫁できない方々はどうなるんですか。免税事業者の方々は、全部その分、自分でかぶらなきゃいけないわけですよ。財務省の調査でも、利益が百数十万しか残らない方々が平均十五万円の増税だ、こう説明してきたわけですよね。とんでもない話になりますよ。

 一方、小さな体力のない発注者はどうなるのか。

 中小出版社でつくる日本出版者協議会が、インボイス制度について声明を出しております。

 出版社としては、これまで仕入れ額として控除できた分の消費税を新たに負担することは困難であり、著者や、製作に関わる上記のフリーランス等が免税事業者であっても適格請求書の発行をお願いせざるを得ない、税務署としては、これまで免除されてきた消費税を、業者間で押しつけ合いをさせた上で確実に取り立てる制度と言える、こういうことも言われております。

 つまり、今回、インボイス制度で二千四百八十億円、政府は増収を見込んでいるわけですけれども、この二千四百八十億円の増税分の消費税を体力のない業者間で押しつけ合う、これが今回のインボイス制度がもたらすものだという認識はあるんでしょうか。

 そして、今、岸田政権は賃上げということを掲げているわけですけれども、率直に言って、このインボイス制度の導入というのは、フリーランスの皆さんの収入減をもたらすということを考えれば、この賃上げ政策とも矛盾するんじゃないですか。

鈴木国務大臣 まず、宮本先生が御指摘になられました二千四百八十億円の試算についてでありますが、これは、インボイス制度への移行に当たりまして、全てのBツーB取引を行う免税事業者が課税転換をするという前提で機械的に試算したものであるということを申し上げておきたいと思います。

 現時点での免税事業者が実際に課税事業者になって納税するかどうかにつきましては、取引先が簡易課税制度を適用しているか、経過措置の適用があるのか、個々の取引当事者の関係がどうであるかなどといった様々な要素により影響を受けることとなります。

 実際に、関係省庁と財務省が連携して実施いたしましたアンケート調査の結果では、約半数の事業者から、条件を変えずに取引を継続するとの回答がありました。したがって、こうした回答を行った事業者と取引のある事業者については、引き続き、免税事業者であったとしても、インボイス制度の影響を受けることはありませんので、御指摘のような、負担を押しつけられるといったことはないのではないかと思います。

 また、残りの半数の他の事業者との取引についても、先ほど申し上げましたような様々な取組を進めて、対応してまいりたいと思っております。

宮本(徹)分科員 半数は免税事業者のままで仮にいられた、そうなるとは私は思えないですけれども、仮にいられたということになっても、その残り半数は消費税増税分を押しつけ合うということには変わりないわけじゃないですか。今のは何の説明にもなっていないですよ。

 更に言えば、私は賃上げ政策と矛盾するんじゃないのかということを申し上げましたけれども、この点については回答がないじゃないですか。フリーランスの収入が実質減らないなんという保証はできないわけでしょう。こういう問題を私は岸田さんとちゃんと相談すべきだと思いますよ。インボイス制度を導入したら、岸田政権が掲げている収入を皆さん増やしていこうということとは逆のことが起きるんだ、それはインボイス制度を所管している財務大臣の責任ですよ。そのことを厳しく申し上げておきたいと思います。

 この間、政府は、インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を行うために不可欠なものと答弁されてきました。消費税率が始まって三年目ですけれども、インボイスがなくても世の中は回っております。複数税率を原因として具体的にどのような不適正が起きているのか、詳細を述べられたいと思います。

鈴木国務大臣 例えばでございますけれども、料飲食業において、軽減された税率である八%であります食料品と一〇%である酒類の仕入れについて、全額を標準税率一〇%で税額控除しているような事例など、取引先への確認を含めた税務調査等で不適正の事例を把握しているものと承知しております。

宮本(徹)分科員 そうした事例はどれぐらい起きているんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 国税当局における税務調査等におきましては、消費税に関しまして、課税取引、非課税取引など、課否判定に誤りがないか、また、売上げや仕入れの金額に間違いがないかなど、様々な観点から検討を行い、また非違を指摘していると承知をしております。

 委員御指摘の売手が軽減税率で申告し、その一方で買手は標準税率で仕入れ税額控除をするという事例、すなわち適用税率の誤りもそうした非違の一類型であり、そうした事例だけを抜き出した集計は現時点では行っていないというふうに聞いております。

宮本(徹)分科員 そうした事例がどれだけ起きているかも分からないと。しかも、そうした事例も、税務調査すれば把握できているわけですよね。インボイスを導入する必要性なんてどこにもないじゃないですか。

 大体、そんな、売手が軽減税率で申告して、その一方で買手が標準税率で仕入れ税額控除をするというのはミスですよね、ミス。それはちゃんと今までどおり正せばいいだけの話であります。インボイスを導入する理由には全くなっていない、誰が考えてもそうなるというふうに思うんですよね。

 本当に、インボイスを導入しなきゃ正せない不適正なんてどこにもないんじゃないですか。複数税率が導入されたことによってインボイスがなきゃいけない理由というのはどこにあるんですか。

住澤政府参考人 インボイスがなくても誤りが税務調査等で確認できているのではないかという御指摘でございますが、現行の区分記載請求書等保存方式におきましては、売手側に対して請求書等の交付義務やその写しの保存義務もないというのが実情でございます。また、買手側におきましては、少額の仕入れの場合、三万円未満の取引である場合や、請求書等の交付を受けなかったことについてやむを得ない事情がある場合などについては、請求書等の証憑類の保存がなくとも控除が可能な仕組みと現状ではなっております。

 そのために、仮に売手の側が軽減税率で申告しているものについて買手が標準税率で仕入れ税額控除を行っていたとしても、適用税率や税額を明らかにする証憑類が保存されていない場合も多々ございまして、事後的に確認することが非常に難しい仕組みとなっております。反面調査に行ってかなり詳しく調べない限り分からない仕組みになっているということでございます。

 言い換えますと、仮に不正や誤りがあったとしても証憑類から把握することが難しいということで、こうしたことから、インボイス制度は、適正な課税を確保していく観点から必要な制度であるというふうに考えております。

宮本(徹)分科員 先ほどお話ありましたけれども、まず、不適正な事例がどれだけ起きているかという数も把握していない、そして、反面調査が大変だという話をされますけれども、実際は税務調査をやって、皆さん、つかんでいるじゃないですか。税務署の仕事をちょっとだけ負担を軽くしたい、そのために大変なしわ寄せを免税事業者の皆さんに寄せるんですか。これは本当に大問題だと思いますよ。税務署の負担をほんの少し軽くする、それも、どれぐらい軽くなるか分からないじゃないですか。

 大体、どれだけそういう不適正な事例があるのかという把握もしていない、数も出てこない。これは、そもそもインボイスを導入する立法事実があるとはおよそ言えない事態だと私は思いますよ。私、少なくとも、そういう事例が幾つ起きているのかというのをしっかりと示していただきたいと思いますので、それは資料要求をしたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってまいりましたので、先に進みます。

 今日、防衛省にも来ていただいております。中期防衛力整備計画では、五年間の防衛関連予算は、平成三十年度価格で二十五兆五千億円、契約額は十七兆一千七百億円としております。

 お伺いしますけれども、二〇一九年度から二〇二二年度予算案までで、各年度及び四年間の合計の予算と契約額について、平成三十年度価格では幾らになりますか。そして、残り一年ですけれども、残額は幾らということになるでしょうか。

鬼木副大臣 現行の中期防の下で実施される各年度の予算編成に伴う防衛関係費の総額の平成三十年度価格について、人件費や為替等の影響を考慮した仮の試算額は、令和元年度から令和四年度までの四年間で二十一兆七千六百六十九億円となります。

 また、その内訳となる各年度の仮の試算額は、令和元年度は五兆三千九百七十二億円、令和二年度は五兆三千九百七億円、令和三年度は五兆七千八百九十億円、令和四年度は五兆一千九百億円となります。

 その上で、仮に現行の中期防の下で実施される各年度の予算の編成に伴う防衛関係費の総額である二十五兆五千億円から仮の試算額を機械的に差し引いた残額は、三兆七千三百三十一億円となります。

 次に、現行の中期防を実施するために新たに必要となる事業に係る契約額の総額の平成三十年度価格について、為替等の影響を考慮した仮の試算額は、令和元年度から令和四年度までの四年間で十四兆二百二億円となります。

 また、その内訳ですが、各年度の仮の試算額は、令和元年度は三兆四千二百八十三億円、令和二年度は三兆四千百八十億円、令和三年度は三兆七千五十二億円、令和四年度は三兆四千六百八十七億円となります。

 その上で、仮に現行の中期防を実施するために新たに必要となる事業に係る契約額の総額である十七兆一千七百億円から仮の試算額を機械的に差し引いた総額は、三兆一千四百九十八億円となります。

 中期防は、防衛大綱に定められ……(宮本(徹)分科員「いいです、いいです、そこまででいいです。ちょっと時間がないので」と呼ぶ)いいですか、はい。

宮本(徹)分科員 今数字を出していただきましたけれども、五年間で二十五兆五千億ということを決めてきたわけですけれども、これまでの四年の支出を引いたら、残っているのは三兆七千三百三十一億ということなんですよね。

 毎年、防衛省は、人件費と食料費で二兆一千億円かかっております。さらに、これまで様々契約してきたものに基づく二〇二三年度分の後年度負担額は二兆七千八十二億円あるんですね。この二つだけでも四兆八千億になるんですよ。

 残っている三兆七千三百三十一億円なら、そもそも二〇二三年度は防衛省の予算が組めないという額しか残っていないわけですよね。そういう下で、今の中期防を四年でチャラにして、新たな中期防を作って、また新たな枠をつくっていく、こういうことを皆さんはやろうとしているわけですね。全く財政規律がないじゃないですか。

鈴木国務大臣 令和四年度を含む各年度の当初予算における防衛費は、現行の中期防に基づきまして、骨太の方針で示された歳出改革の取組を堅持しつつ、所要額を計上しております。

 他方、現行の中期防期間内において、厳しさを増す安全保障環境等に機動的に対応するため、補正予算により、特に緊要となった経費を追加的に計上してきました。

 また、総理の所信表明演説において、中期防を国家安全保障戦略や防衛大綱と併せて新たに策定する方針が示されておりますが、こうした方針が示されたのは、我が国の安全保障環境が急速に変化する中、政府一丸となって国民の生命と財産を守り抜くためである、そのように承知をいたしております。

 今後、新たな中期防等を策定するに当たっては、財政規律の観点も含めまして、国民的な議論を丁寧に積み重ねていくことが重要である、そのように思っています。

宮本(徹)分科員 財政のキャップを中期防で決めているというのは、やはり歴史的経過があってやってきているわけですよね。その財政のキャップを全く無視するやり方を、この間、安倍政権以来続けてきているというのは、本当に、極めて重大な問題だということを指摘をしておきたいと思います。

 残り時間が少ないですので、次のテーマに行きます。

 ゆうちょ銀行が、一月十七日から硬貨でATMに入金する際などに手数料を取るなど、新たな手数料を導入いたしました。

 ある視覚障害者の方は、こう言っております。買物のときに端数のお金を一つずつ確認して数えるのに時間がかかるから、お札を出してお釣りをもらう。たまった硬貨は時々ゆうちょの口座に入れてきた。日常生活で普通にやっていることに一々手数料がかかり困る。

 あるいは、都内のある就労継続支援B型事業所。利用者さんの工賃を、毎月、工房の口座から金種別に下ろして利用者ごとに封筒に入れて手渡している。工賃は二百円の人もいる。多くて二万円程度。交通費も併せて支払うので、ICカード運賃だと一円単位になる。利用者さんの口座振り込みにすると手数料で足が出てしまうぐらい工賃が少ない人もいるので、現金で手渡している。これを金種別に引き出そうとしたら手数料がかかる事態になってしまった。

 あるいは、ある障害者団体。集めたカンパを活動資金にしているが、集めた募金を自分の口座に入れるだけで目減りしてしまう。こういう声がたくさん寄せられているわけでございます。

 駄菓子屋さんからも、あるいは宗教法人からも、困っているという声をたくさん伺うわけでございますが、ゆうちょ銀行にはどういう苦情が寄せられているのか。そして、あわせて、二〇〇五年、郵政民営化法案を可決した際に、参院の附帯決議ではこう書いてあったんですね。現行水準が維持され、万が一にも国民の利便に支障が生じないように万全を期すること、こう書いてありました。この国会の附帯決議違反ではないのか。この二点について総務副大臣に御答弁を求めたいと思います。

中西副大臣 まず、お尋ねの事実関係のみ御紹介をしたいと思いますが、ゆうちょ銀行によれば、硬貨手数料の新設を行った本年一月の一か月間において約二千七百件の苦情、要望が寄せられており、主な内容としては、料金改定に賛同できない、ATMでの硬貨の手数料について、ATM画面上の案内が分かりにくいといった声があると伺っております。

 その上で、御指摘の附帯決議におきましては、郵便局ネットワークの維持、郵便局における郵便、貯金、保険サービスの確実な提供、現行水準の維持、国民の利便に支障が生じないことなどを求められているというふうに承知をしております。これらは、郵便局のユニバーサルサービスの維持を図るということが趣旨でございまして、個々の商品の利率とか、あるいは、御指摘の手数料について水準の維持を求めるものではないというふうに我々は承知をしております。

 今回の硬貨の手数料の設定は附帯決議に反するものではないというふうに考えておりまして、なお、今回の硬貨の手数料につきましては、総務省の許認可の対象ではなく、ゆうちょ銀行の経営判断で行ったものでありまして、ゆうちょ銀行において利用者の皆さんに丁寧に説明されるべきものと考えております。

宮本(徹)分科員 もう時間が最後になりますので、最後に一問だけお伺いしますけれども、財務大臣、こういう事態は、やはりどんどん広がるというのはまずいと思いますよ、私は。国民に対して金融機関がこうなっていくのは。一言、最後、政治家として、この問題をどうお考えなのか、お伺いしたいと思います。

葉梨主査 鈴木財務大臣、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 今の中身につきまして、総務副大臣からお話があったとおりでございますが、こうした硬貨取扱手数料をめぐる動きにつきましては、昨今の各種手数料の設定の動きの中の一つとして、顧客からサービスの対価としてどのような手数料を徴収するかということであって、これは各金融機関における経営判断に基づいて行われるものと承知をいたしておりまして、通貨制度を所管する財務省の立場から評価を申し上げるのは差し控えたいと思います。

葉梨主査 もう終了しております。終えてください。

宮本(徹)分科員 終わりますので。

 ゆうちょ銀行は、株主は、大半持っているのは国ですからね。

 終わります。

葉梨主査 これにて宮本徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、神津たけし君。

神津分科員 立憲民主党新人の神津たけしと申します。本日、初めての質問となります。

 野党による政権監視という役割を精いっぱい担わせていただく関係上、厳しい指摘をさせていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、岸田政権肝煎りの賃上げ優遇税制そして賃上げ企業優遇調達制度について重点的に質問させていただきます。

 この三十年間、日本は賃金が上がらない状況が続いています。一九九〇年以降、この三十年間で、先進国を見回しても、日本だけが平均賃金が伸びておらず、OECD三十五か国中の中でも二十二位に低迷しています。私は、この三十年間続けてきたように経済政策において失敗を続けてしまえば、日本が衰退の道をたどってしまう、そういう危機感を持っております。

 岸田総理は、経済を守るためにも賃上げに向け全力で取り組む、民間企業の賃上げを支援する税制を抜本的に強化する、企業の税額控除率を大幅に引き上げる考えを示されました。

 まず、財務大臣に伺います。

 第二次安倍政権以降、賃上げ税制を導入しても効果が限定的だったとメディア上でも指摘されております。野党だけでなく、与党自民党や財務省内でも本税制の効果に懐疑的な意見があるとも報道されております。

 まず、賃上げ税制に対する大臣の御所見を伺います。

鈴木国務大臣 今、経済の三十年を振り返っての御指摘がございました。

 我が国では、一九九〇年代のバブルの崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによりまして、企業は投資や賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制し、その結果として需要が低迷をし、デフレが加速をするという悪循環が生じたことで、日本の経済は低成長が続いていたと承知をしております。

 こうした中で、政権交代以降、デフレではない状況をつくり出し、足下、弱含みではございますけれども、二%程度の賃上げを実現してきており、経済財政政策が失敗であった、そういう御指摘、それは必ずしも当たらないのではないかと思っております。

 岸田内閣におきましては、賃上げに向けましてあらゆる施策を総動員することとしております。先生御指摘の賃上げ税制の拡充はもちろんでありますが、それのみならず、看護、介護、保育等の公的価格の引上げ、あるいは中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備、そして最低賃金の見直し、こうしたような施策を通じまして、国民の皆様の所得引上げや格差の是正に岸田内閣として取り組んでまいりたいと思っております。

神津分科員 ありがとうございました。

 私、今回の今の質問では、全体的な話じゃなく、今は賃上げ税制のみにちょっと絞って質問をさせていただきたいと思っております。この政策によって本当に大多数の国民の給与所得が向上するのか、本日はこの疑問を是非とも晴らしていただきたいと思っております。

 財務省にお伺いします。

 岸田政権における賃上げ税制の変更点について、端的に御説明をお願いいたします。

住澤政府参考人 お時間の関係もございますので、ポイントだけ申し上げます。

 今般の税制改正におきましては、成長と分配の好循環の実現に向けて、積極的な賃上げを促すとともに、株主だけでなく従業員、取引先などの多様なステークホルダーへの還元を後押しする観点から、抜本的に賃上げに係る税制措置を強化することとしております。

 具体的には、企業の税額控除率を、大企業の場合最大三〇%に、中小企業の場合最大四〇%に大幅に引き上げるとともに、一定規模以上の大企業につきましては、持続的な賃上げなど、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを税制措置の適用要件とするなどの改正をすることにいたしております。

神津分科員 ありがとうございます。

 今回の税制ですが、誰の賃上げを果たすのか、どのくらいの規模の賃上げを達成できるかによって、私たち国民が歓迎すべき税制であるのか判断すべきと私は思っております。

 このコロナ禍の中で本制度を利用する企業は減少しておりますので、コロナ禍前のこの制度を最も多く利用した年度、平成三十年度、この年度には約十三万社がこの制度を利用されました。税額控除額は約三千五百二十五億円と伺っております。黒字企業の約一割が利用したという考え方もあると伺っておりますが、私は、この財務状況がよい黒字企業のみの中で比較するだけでは、日本経済全体の立ち位置を見失ってしまうと考えております。十三万社は、企業数として非常に大きな数字ではありますが、日本にある三百八十万社のうち、僅か三%です。裏を返せば、九七%の企業がこの制度を利用できないという状態になっております。

 財務大臣にお伺いします。

 賃上げ税制の恩恵を受けられるのは一部の限られた黒字企業のみであり、九七%の企業が活用できる制度にはなっていません。特に中小企業は六割が赤字であり、賃上げ税制の恩恵を受けられない、税制がかえって格差を助長することになってしまうと私は思っております。

 岸田政権においては優遇税制を強化することになっておりますが、これまでの優遇税制を強化したところで、この九七%の大多数の企業が活用できる制度になるのでしょうか。大臣の御所見をお願いします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の賃上げ税制の見直しに当たりましては、企業の税額控除率を大幅に引き上げるだけではなく、一定規模以上の大企業につきましては、従業員、また取引先など多様なステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを適用要件としておりまして、これによって、こうした大企業と取引する中小企業の従業員への還元、こういったことも後押しする仕組みといたしております。

 また、御指摘のように、税制上の措置のメリットを受けられない赤字の多くの中小企業に対しましては、限界があるということは事実でございますので、この税制措置と併せまして、賃上げを行う中小企業への補助金の補助率の引上げなど、予算面での取組も行っているところでございます。

 これらに加えまして、下請対策の強化、公共調達における、賃上げを積極的に行う企業に対する加点措置など、様々な取組を講ずることを通じて、賃上げに向けた環境整備を推進してまいりたいと考えております。

神津分科員 ありがとうございます。

 下請に対する、マルチステークホルダーへの配慮、これは非常に重要だと私も思っております。ただ、今回、大多数の国民が裨益する制度にはなっていないという点においては、大多数の国民が是非とも裨益するような制度に変えていただきたいと思っております。

 今回、この税制が、これまで、平成二十五年からやってきているに当たって、本税制が有効であったのか、効果を定量的に測るべきということで、立憲民主党が衆議院財務金融調査室に調べてもらいました。本税制の二〇一四年から二〇二〇年の所得拡大効果は、年間約一・一兆円分の所得拡大効果ということでした。国民給与総額二百十一兆円のうち、約一・一兆円のみです。

 更に指摘するべきは、この一・一兆円の賃上げを生み出すために、例えば平成三十年度では三千五百億円の税金が控除され、法人税も失っています。そして、この期間の春闘においては、先ほど財務大臣からもありましたが、約二%の賃上げを行うことが既に合意されていました。そして実際になされました。この政策によって賃上げが果たされた金額というものは、実際のところ、一・一兆円ではなく、限りなくゼロに近いのではないでしょうか。

 元々賃上げを行う力がある企業の賃上げを税金を使って行い、格差を広げる。この税制を続ける意義が私には理解できないのですが、財務大臣の御所見はいかがでしょうか。財務大臣に伺っているんですけれども。

鈴木国務大臣 賃上げにつきましては、これは、税制、今までやってまいりました賃上げ税制だけではなしに、例えば雇用の状況でありますとか企業の業績のことでありますとか、様々な要因がございますから、この賃上げ税制によってどれぐらい賃上げができたかという、そこだけを取り出して定量的にこれを評価するというのは、これは難しいということをまず御理解いただきたいと思います。

 その上で、今までのこうした賃上げに係る税制に、今回更に、先ほど説明ございましたけれども、更に上乗せをする、強化をする、より効果が上がるようにする、そういうようなことをしまして、併せて、税制だけで賃上げを実現することはなかなか難しいということでございますので、予算面の様々な措置等を総合的にやって実現していきたい、こう思っております。

神津分科員 財務大臣、御所見ありがとうございました。

 定量的に今回のこの税制の効果を測るのは難しいということなんですが、税額控除額、ここから逆算すると、そうすると幾ら分の賃上げがこの制度によって達成されたのかということが見えてくると思います。二%の賃上げは全体で達成されていたという話はあると思うんですが、それは全体での話であって、この税制のみに絞って考えたときには、税額控除が幾ら行われたかによって、この賃上げが幾ら分達成されたのかというところが見えるところだと思います。その計算の結果が先ほど申し上げた約一・一兆円というところだったのです。というところでは、もう少しやはりこの制度というものを変えていく必要があるのではないかと思っております。

 財務大臣に少し視点を変えて質問させていただきます。

 持続可能な賃上げを果たすためには一時金では継続性が乏しいと考えますが、今般の賃上げ税制においては一時金を含めた給与総額が判定基準となっております。例えばの話でありますが、この総額を上げるために、残業や休日出勤をさせることで賃上げを行ったかのように見せることも可能です。野党だけではなくて、自民党の税制調査会や財務省内でも、当初は基本給増額分に限るという議論があったと報道されております。

 持続的な賃上げのためには、判定基準を基本給増額分に限るべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。大臣の御所見を伺います。

住澤政府参考人 今般の賃上げ税制につきましては、各企業の給与体系が現状では多様になっており、様々な支給方法に対応する必要があること、また、企業の実務面を踏まえまして、煩雑ではない制度設計とする必要があることなどに加えまして、重要な課題である賃上げをより多くの企業に行っていただくという政策判断もあって、一時金を含めた給与総額を税制措置の適用要件としたところでございます。

 また、一時金の取扱いについては、与党の税制調査会でも様々な御議論があったものと承知をしておりますが、その上で、今般の改正においては、大企業に対する控除率の上乗せ措置については、一時金に加えまして、ベースアップなどにより基本給部分も一定程度底上げしなければ達成が難しい水準にするという観点も踏まえまして、継続雇用者の給与総額を前年度比四%以上の増加にしなければ上乗せを受けられないというような設定にしていることですとか、先ほど申し上げました、一定規模以上の大企業については、持続的な賃上げ等、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを要件とするなどの取組を通じて、持続的な賃上げにつながるような工夫をしたところでございます。

神津分科員 御返答ありがとうございます。

 今の御質問に対してなんですが、令和四年度、この優遇税制を強化することによって、どれだけの企業が本制度の適用を受けて、どのくらいの規模の税額控除を見込んでいるのか、確認させてください。

住澤政府参考人 今回の改正後の適用件数の見込みでございますが、アンケート調査の結果などを基にいたしまして、黒字である利益計上法人の一割程度が利用することがまず見込まれまして、さらに、今般の措置による政策効果による増加もあるものと考えております。

 また、税額控除額の見込みでございますが、すなわち減税規模ということになりますが、改正増減収も含めた足下の制度との合計額全体の規模で二千七百八十億円を見込んでおります。

神津分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃられた、黒字法人のうち一割強、それからプラス増加分と伺いました。ただ、税額控除額は二千七百八十億円を想定しているということで、この数字だと、平成三十年度の税額控除額より少なくなるというところでは、結局、今回の、この制度を強化したところで、余り企業は利用してもらえないということを実は財務省はもう分かっているのではないでしょうか。

 こういう意味においては、是非ともやはり制度を変えていく必要があるのではないかということを申し上げて、次の質問に移らせていただきます。

 次に、賃金を上げた企業に対する優遇調達制度について質問させていただきます。

 昨年、岸田総理は、二〇二二年四月から、政府調達において、一定の賃上げを約束した企業を優遇する、具体的には、総合評価方式の調達において、価格外の評価点を五%から一〇%引き上げると発表されました。

 財務大臣に伺います。

 この賃上げ企業優遇調達制度が導入されると、これまで賃上げに努力してきた労働分配率の高い企業の落札が難しくなります。他方で、これまで内部留保金をため込み、賃上げに一生懸命取り組んでこなかった企業ほど賃上げを行いやすく、今回の制度では評価がされにくくなる。本来であれば公平公正であるべき公共調達が不平等な制度になってしまうと考えますが、いかがでしょうか。

    〔主査退席、土屋主査代理着席〕

鈴木国務大臣 まず、これまで大変厳しい経済状況の中で従業員の賃上げに継続的に取り組んでこられました企業の御努力、これには敬意を表したい、こういうふうに思います。

 その上で、更なる賃上げに取り組んでいくことが、持続可能な経済、成長と分配の好循環による新しい資本主義を実現するために重要である、そのように考えております。

 このため、民間企業の賃上げを支援するための環境整備に全力で取り組んでまいりたいと思っております。先ほど申し上げました賃上げ税制の抜本拡充のほか、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員してまいりたいと思っております。

 そういった賃上げを進めていく施策の中で、今回の加点措置でありますけれども、これは令和四年度以降の賃上げを促進する観点から導入をするものでございまして、令和四年度以降に賃上げを表明を行う企業に対して加点措置を行うものでございます。

 この措置によりまして、これまで賃上げを行ってきた企業にとっては更なる賃上げを、そして、これまで賃上げを行ってこなかった企業にとっても賃上げを行うインセンティブになることを期待をしているところでございます。

神津分科員 これまで賃上げを頑張った企業については更なる賃上げをという話なんですが、私の下には、もう既に労働分配率が高くなってしまっていて、ぎりぎりの経営でやっているという方の声も多く届いております。

 今回の制度についてなんですが、私が伺っている限りにおいては、政府は価格転嫁を行い、最低価格や予定価格を積算し直すべきといった声や、四月一日から急に開始されるのでは準備が追いつかないですとか、それから、やはり、先ほども言いましたが、これまで一生懸命賃上げに取り組んできたために余剰金がなくなってしまって、このままでは来年から政府調達の受注ができなくなってしまうといった声が日々届いています。今回の制度ですが、こうした企業が不利にならないような措置を是非とも御考慮いただきたいと思っております。

 次に、財務大臣、それか財務省の方でも構いません、財務大臣にお伺いします。

 通常の政府調達においては、会計法令に定められている経済性の原則が要請され、行政目的を達成するための追加事項を契約制度に含めると、会計法で定められている公正性の原則や経済性の原則を確保できなくなってしまうと理解しております。このため、特定の政策の目的を追加する際には、法律を追加して整合性を高める努力がこれまでなされてきていると理解しております。

 例えば、中小企業、障害者、母子・父子福祉団体からの優先調達の制度、これについてはそれぞれ法律が立てられています。環境関連保護に資する物資の調達、これについても別段で法律が立てられております。そして、中期的技術力確保、女性活躍企業などへの総合評価方式の評価項目追加、これについても、いずれについても法律を追加して整合性を高め、経済性の原則を保っていると理解しております。

 今回の制度については、大きな変更であり、大きな追加点であり、会計法で定めた経済性の原則が保てないと私は思っております。この調達制度においても、この追加点を付する制度においても、法律をきちんと作って、経済性の原則との整合性を保つべきではないでしょうか。財務省あるいは財務大臣の御所見をお伺いします。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、会計法におきましては、経済性の原則ということ、これに基づいて政府調達を行うという精神にのっとって制度は定められておるものでございますが、ただ、政府調達を行う際には、価格のみに基づくのが適切、それは大原則ではありますが、価格のみに基づいて調達を行うのではなく、例えば技術性であるとかあるいは品質、そういったような要素も勘案をいたして調達を行うということが実際の公益に資するというような考え方もございます。

 そのような考え方を反映した制度といたしましては、総合評価入札制度というものが設けられているところであり、それに基づいて公共工事等の入札も実際に行われているところでございます。

 今回、政府全体といたしまして、民間も含めましての、民間企業、経済全体での賃上げというものを促進をするという考え方に基づきまして、そういったような観点からも、この総合評価入札制度におきまして、賃上げの要素というものを考慮に入れる、すなわち、具体的には加点を設けるといったようなことを制度として盛り込んでいるところでございます。

神津分科員 財務大臣の御所見もお伺いできますか。

 今おっしゃられた点、私も理解するんですが、これまでは、追加評価項目を足すときには法律をきちんと作っていた。ただ、今回はなぜか作っていない。この違いはなぜなんでしょうか。

 今私が申し上げた、中小企業と障害者、母子・父子団体からの優先調達、環境関連保護に資する物品の調達、それから総合評価の中の評価項目を変えるに当たっても、追加するに当たっても、例えば長期的技術力確保や女性活躍企業、ここに配慮するに当たって、これまできちんと一本一本法律が追加されて作られてきた。今回は賃上げに対する追加点ということで、これについても別段法律を作らなくちゃいけないんじゃないでしょうか。何で今回は作られないのか、その点、御教示いただければと思います。

    〔土屋主査代理退席、主査着席〕

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、これまでの取扱いというものにつきましては、目的と措置を明確化をするために法制化が行われているものというふうに理解をいたしておりますが、今回の賃上げの加点措置というものは、これは会計法に基づきます総合評価の枠の中で行えることでございますので、特別の法律が必要であるというふうには必ずしも考えていないところでございます。

神津分科員 財務大臣も同じ御所見でしょうか。はい、ありがとうございます。私は違う視点を持っております。この点、また別の委員会において、是非ともちょっと追求させていただきたいと思っております。

 今回、岸田総理は、四月一日から契約を行う案件にこの賃上げ優遇調達制度が適用されると発表されています。財務大臣に念のため確認させていただきます。

 賃上げを行った企業を優遇するということは、賃上げに係る人件費増額分を再積算して、各プロジェクトの最低価格や予定価格にはきちんと反映し、予算を充当していますか。

奥政府参考人 予算編成上の取扱いについてのお尋ねでございます。

 公共事業費が、この総合評価落札制度、実際に適用される多くを占めると思いますけれども……(神津分科員「短く」と呼ぶ)失礼しました。はい。

 公共事業費を始めとする予算の編成に当たりましては、これまでの取扱いでも、年末の時点で予算編成をするわけでありますけれども、翌年度の賃上げ、あるいは資材の価格の増減といったもの、様々な不確定要素がございます。その見通しが不透明な中で、年末時点での総合的な要素、いろいろ総合的に勘案をいたしまして所要額を計上する、これが毎年度の予算編成でございまして、令和四年度の予算につきましても、例年の予算編成のプロセスの中で編成をしたものでございます。

神津分科員 ありがとうございます。

 前年度の価格を参考にするということを理解しました。

 ただ、今回の場合には、政策の措置として加点措置を行うということで、もうあらかじめ三%の賃上げを行われるということが大体分かっていることだと思います。

 発注者側の政府は、賃上げを評価するが賃上げ分の代金は支払わない、あなたのポケットから出してくださいと受注者側にしわ寄せを求めていることと同じだと私は思っております。結局、受注者側や下請にツケが行くことになってしまう、そういう制度だと思っております。

 岸田総理の今回の国会の施政方針演説においては、賃上げ税制の拡充、公的価格の引上げ、中小企業が原材料費の高騰で苦しむ中、適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めますと演説されました。冒頭でも、財務大臣、中小企業が適正な価格転嫁を行えるよう、環境整備を進めますとおっしゃられました。

 このまま最低価格や予定価格の見直しを行わず、受注者側に責任を、負担を押しつけるのであれば、岸田総理は施政方針演説でおっしゃられた内容を撤回すべきと思いますが、財務大臣の御所見はいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 ストレートに、先生がおっしゃったように、今回の加点措置がそうした企業に対して何かその分の負担につながっていく、そうとはストレートには結びつかないと思っております。

 私どもとしては、あらゆる施策を総動員をして、そういう中で賃上げを達成していこうという中で、この加点措置も一つのツールであるわけでございまして、これを是非多くの企業が、入札に当たって、これが評価されれば非常にプラスになるわけでございますので、こうした活用がされるように、十分、制度として前に進めていきたいと思っています。

神津分科員 時間がなくなってまいりましたので、最後に一問だけ質問させていただきます。

 本当はもっとたくさん質問を準備していたので、済みません、次回また質問させていただきます。

 今回の賃上げ調達制度は、まさに下請への賃上げのツケを回さない観点から……

葉梨主査 簡潔に。一問いいですから、簡潔に。

神津分科員 分かりました。

 マルチステークホルダー宣言が必要だと私は考えております。このマルチステークホルダー宣言がないと、下請に賃上げに係るコストのしわ寄せが行くことになってしまう。なぜ、賃上げ税制ではマルチステークホルダー宣言を求めているのに、今回の賃上げ調達に係る制度においてはマルチステークホルダー宣言が必要とされないのか。最も必要とされるところだと思うんですが、なぜ採用されていないのか、御所見を伺います。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の政府調達における加点措置につきましては、幅広い企業において賃上げが実施されることを促すための一助としてこの制度が設けられた、加点措置が設けられたものでございます。したがいまして、できる限り多くの企業に門戸を開くという観点から、政府調達の加点措置の方におきましてはマルチステークホルダー宣言を採用してはいないところであります。

 他方で、政府としては、今回の措置が下請へのしわ寄せとなることがないように、事業者においては適切な取引をお願いしたいというふうに考えておりまして、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化の取組について」といったような閣議了解がございます。これにおきまして、中小企業等が賃上げの原資を確保できるように、取引事業者全体のパートナーシップにより、労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に転嫁できる環境を整備することといたしているところでございます。

神津分科員 是非ともマルチステークホルダー宣言、認めていただけるようお願いしたいと思います。

 今日お集まりいただきました公正取引委員会、法務省、外務省、国土交通省、中小企業庁、皆様本当に、お集まりいただいたのに質問できず、申し訳ございませんでした。また次回質問させていただきますので、是非よろしくお願いします。

 本日はどうもありがとうございました。

葉梨主査 これにて神津たけし君の質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

葉梨主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。柳本顕君。

柳本分科員 自由民主党、大阪の柳本顕でございます。

 予算委員会第三分科会におきましても質問の機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私の地元でもあります大阪府におきましては、昨日、二月二十日までとなっております蔓延防止等重点措置、この延長の要請が決まりました。今日、明日にも、政府におきましても、その対応ということで、全国的な中での対応、大阪におきましては延長ということで決まる予定ということでございますけれども、二〇二〇年から二年間にわたりましてのこの感染拡大状況は、国民生活、あるいは日本における、あるいは世界的な経済活動に大きな影響を与えております。

 まずもっては国民の皆様方の生活の安全、安心、そして健康と命を守っていかなければならないことは言うまでもないことではありますけれども、その一方で、経済面におきましても注視をしていかなければなりません。

 長引く自粛要請、そういった動向の中で、感染者数の増加の波に左右される形で飲食店も大きな影響を受けておりますし、飲食店のみならず、その納入事業者の方々についても非常に厳しい経営環境がある、そういうことが事実としてあるわけでございます。そういった中で、納入事業者の中でも酒類販売を営む方々からは、悲痛な叫びの声がこの間ずっと聞こえておりまして、もう今やその声はかすれ声になっているような、そんな状況を私自身は感じております。

 そういった観点から、本日は、冒頭、お酒、酒類販売、そして、日本産の酒類ということで質問をさせていただきたいと思っております。

 新型コロナウイルス感染症に伴う影響が酒類の消費動向にどのように出ていると捉えておられるのか、国税庁のお考えをお聞かせいただきます。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 総務省の家計調査によりますと、新型コロナウイルス感染症の影響が出始めました令和二年の前半から現時点まで、いわゆる家飲み需要によります家庭における酒類消費の増加、それ以上に、飲食店における酒類の消費が大幅に減少していることが見て取れるところでございます。

 こうしたことから、新型コロナウイルス感染症の影響によります外食産業の落ち込みに伴い、酒類の需要が減退し、酒類業界が厳しい状況にあるというふうに承知しております。

 国税庁としても、酒類業界の状況の把握に努めていきたいと思っております。

柳本分科員 そうなんですね。一般的に言われていることではありますけれども、家飲みが増えている一方で、やはり飲食店舗、自粛要請、時短ということで大幅に減っておりまして、とりわけ業務用の酒類販売を主とする店舗については、そういう業態を取られているところについては、本当に厳しい状況で、令和二年度と令和三年度を比較したところで、令和二年度、落ち込んでいるとはいえ、更にそこからも五割以上落ち込んでいる、そういったところまであるわけであります。

 そして、その状況にあって、今年に入ってからの第六波。この状況でございますので、この第六波の感染者数の急増に伴いましてとりわけ大きな影響を受けている酒販業界に対してどのような支援策を講じているのか、また、現状の酒販業界の悲痛な声に対して対応する支援策となっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

柳樂政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症の再拡大によりまして酒類業界に大きな影響が生じていることは承知をいたしております。

 酒類販売事業者に対する支援策についてのお尋ねでございますが、現在、政府といたしましては、新型コロナ感染症対策等の影響を受けて売上げが減少した事業者に対しまして、地域、業種を問わず、固定費負担に対して支援をするという内容で、最大二百五十万円を一括支給する事業復活支援金制度を措置をいたしております。

 これは、昨年十一月から本年三月の間の任意の一月の売上げ減少が要件に該当いたしますれば五か月分の支給を行うというものでございまして、これまでの持続化給付金などと比べましても非常に手厚い支給になっております。

 酒類販売事業者におかれましても、まずはこの制度を積極的に御活用いただきたい、このように考えてございます。

柳本分科員 事業復活支援金、ありがたいんです。三〇%以上の売上げ減に対しても対応するということでありがたい、また、全業種対応ということでこれまたありがたいことでありまして、一月末から申請も始まって、多くの事業者の方々が今そこを頼っているところもあろうかと思います。

 それはそれでありがたいんですけれども、昨年の十月までは、各自治体で独自で取り組んでいただいていたところもありますけれども、酒販店に対して特段の対応をしていただいていたところもあったのに、それがなくなってしまっている今の現状に対して、現実に対して、酒販業界の方々からは本当に声が上がっているという現実を是非とも政府としても捉えていただきたいというふうに思うわけであります。

 多くの皆様方も外に出てみられたときに分かるかというふうに思うんですけれども、蔓延防止等重点措置がそもそも取られる前からも、感染者数が増えた状況の中で、それぞれの判断の中で、もう町中で飲食をやめようとか、あるいはお酒を飲むのを控えておこうかというような環境になりつつあったわけです。一月の初旬からも、新年会シーズンでそういう動向があったわけです。そして、昨年の末も、歳末夜警などで地域でのいろいろな集う場があったというか慣例的にある状況においても、時間を短縮して、忘年会的な形にすることは避けようというような状況があって、そこに来て蔓延防止等重点措置です。

 そして、今回の蔓延防止等重点措置に関しても、実は、酒類禁止の場合は二十時まで、八時までの時短要請ということで、売上高に応じて一日三万円から十万円、そして、酒類販売をされる場合においては、これは認証店の場合ということになろうかと思いますけれども、二十一時までの時短要請なんですけれども、二・五万円から七・五万円、一日当たりというふうになっておりまして、これは実質的に、政府から、もうお酒を売るのを控えておいてくださいなと言わんばかりの状況になっている。そうではなかったとしても、そういうふうに見えている状況があることから、小売酒販店の方々は、もう何とか対応していただきたいという声が上がっているということなんです。

 これは、この間もずっと言われてきたことでありますけれども、アルコールそのものが、お酒というものが感染拡大に起因するというか感染拡大の原因になっているという明確な証明があるのであれば、これは致し方ないことかもしれませんけれども、例えば、お酒を飲むことによって、飲食の場で声が大きくなるとか、あるいはどうしても飲食の時間が長くなってしまうとか、そういう抽象的な判断によってこの酒類販売を抑止するような状況があるから、なおさら、酒販事業者の方々からすれば、もやもやというか、いても立ってもいられないような状況があるという実情なんですね。

 そういった思いを、実は、昨日十六日には、酒販業界の方々の思いを抱えて、同志の方々で山際大臣宛てにも要望を出させていただいているところでもありますので、是非とも、政府においても、その思いを受け止めて対応していただくように求めておきたいというふうに思います。

 その上で、コロナで大変だという状況を今お伝えさせていただきましたけれども、酒販業界においては、コロナに関係なく、この間ずっと困っているというか頭を悩ませていることがあるんですね。それは何かといいますと、公正な取引ということなんですけれども、これは簡単に言いますと、酒類販売の許可基準が緩和される中で、あちらこちらの量販店などでかなり安い値段でビールなどの酒類が売られている状況があるということなんです。

 酒類の公正な取引について、国税当局は取り組んでいただいているということなんですけれども、しっかりどのような形で取り組んでいただいているのか、お聞かせいただきたいと思います。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 国税庁では、平成二十九年六月に施行されました酒類の公正な取引に関する基準につきまして、その遵守状況を確認するため、取引状況等実態調査を行い、その基準に則していない取引を行っている者に対しては改善指導等を行っているところでございます。

 その結果、基準の施行から四年間の間で、基準に基づく指示を行ったものが二十六件、それから、直ちに指示には至らないものの、今後も同様の行為が行われると基準に違反するおそれがあるものとして六十三件の厳重指導を行ったところでございます。

 国税庁としましては、引き続き、深度ある取引状況等実態調査を実施し、酒類の公正な取引に関する基準に即していない取引が認められた場合には厳正に対処してまいりたいと考えております。

柳本分科員 取り組んでいただいているということは非常にありがたい。指示あるいは厳重指導ということで対応していただいているところ、件数を挙げていただきました。あるのは事実なんですけれども、ただ、現実の世界の中では、もっともっとその指導を徹底していただかなければならないような状況があるのではないかというふうに感じるわけです。

 連日、新聞の折り込みに入っているチラシなどを見てみますと、小売酒販店では考えられないような値段がついていたりするわけですよ。そんな状況を見ますと、不当廉売ではないかという声が上がってきております。

 そういった意味で、酒類の公正な取引に関する基準が定められてからも、なかなか現状の改善が見られないという話も聞くわけなんですが、酒類の取引価格の動向はどうなっているのでしょうか。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 酒類の小売価格につきましては、ただいま申し上げました基準を施行しました平成二十九年六月以降、ビール類を中心に、各地で価格が上昇基調にございます。実施後四年が経過した現在においては、基準施行日以前に比べて、おおむね高い水準になっているところでございます。

柳本分科員 高い水準とはいえと言いたいところですね。

 国税庁では、先ほどの答弁にもございましたけれども、平成二十九年に酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第八十六条の三第一項の規定に基づき、公正な取引の基準を定めているわけですね。その公正な取引基準については、おおむね五年ごとに見直しを行うこととされていますが、国税庁はどのように検討しているんでしょうか。

重藤政府参考人 今、委員からもお話ございましたが、基準の施行後四年間の実態調査等を通じて把握した課題あるいは問題点等を踏まえまして、現在、国税庁におきましては、公正な取引の基準の見直し案を作成し、昨年末まで業界の方々とも意見交換をしながら検討を進めてまいりました。そして、現在、今年三月の改正に向けて手続を進めているところでございます。

 その見直しの具体的な内容でございますが、大きく二つございます。

 まず一つ目は、リベートに関するものでございますが、酒類メーカーから卸売業者に酒類を納入する際にはリベートが支払われることが一般的によく見られるところでございますが、その際、どのようなリベートであれば卸売業者の仕入価格の算出上値引きの対象として認められるのかというのを明確化するというのが一点目でございます。

 それから二点目は、酒類事業とそれ以外の事業に共通する販売管理費がある場合に、その販売管理費の中から酒類販売のための費用としてカウントすべき金額、それの計算方法を明確化するというのが二点目でございます。

 一点目のリベートに関しましては、現在は値引きの対象となるリベートの要件は三つ、すなわち、リベートに関する基準が明確に定められていること、それから、当該基準が取引の相手方に事前に示されていること、それから、当該酒類の仕入れと密接に関連するリベートであることという三つの要件がございますが、次回の改正では、更に四つ目の要件として、販売価格の算出上、控除した値引きの額である旨が書面等によりリベートの支払い者から伝達されている場合に限るといった旨の規定を置くことを考えてございます。

 それから、販売管理費の配賦方法につきましては、現在は酒類業者が選択した合理的な配賦方法に従って配賦することとされておりますが、事業者が選択した配賦方法が合理的と認められない場合や、その根拠が示されない場合に適用すべき販売原価の計算方法というのは示されておりません。そこで、次回の改正では、事業者が選択した配賦方法が合理的と認められない場合等におきましては、売上高比で販売原価を計算するように見直してはどうかと考えているところでございます。

柳本分科員 リベートと販売管理費についてより明確化していただくということでありますので、そのことによって、より実効性ある公正な取引が導かれるように期待をしたいと思います。

 ただ、その一方で、公正な取引基準が定められたそのときからも、もっともっと、期待の声があったにもかかわらず、冒頭の答弁にもございましたように、平成二十九年からの四年間でも全国で指示が合計で二十六件ということなんですね。これは僅か二十六件とあえて言わせていただきたいんです。

 そこは、やはりその指示、指導する体制がちょっと脆弱なのではないかというふうに思ったりするところでもありまして、やはり、この公正な取引を実効性あるものへと導いていくためには、その指導監督する体制、いろいろな申出があったときにチェックしていくような、そんな体制を充実していく必要があると考えるのですけれども、いかがお考えでしょうか。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 今般の基準の見直しにおいて、リベートの取扱いや販売管理費の配賦方法の明確化を行うことは、酒類事業者の基準に対する理解が深まって、誤った理解による処理の発生を防ぐことが期待されるほか、公正取引基準に基づく取引実態調査をより効果的、効率的に実施していくことにもつながるものと考えております。

 今後とも、業務の効率化を図りつつ、公正な取引環境の整備を含む酒類業の健全な発達のため、国税庁といたしましても、必要な人員を確保して、国税庁の執行体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

柳本分科員 ありがとうございます。しっかりと進めていただきたいと思います。

 それでは、少し視点を変えて、ちょっと明るく盛り上げていく話題に転換していきたいと考えます。

 平成二十五年、二〇一三年に和食がユネスコの無形文化遺産に指定をされました。食文化というものを広く、この日本において、あるいは内外で、海外に向けても広めていくことは非常に重要だというふうに思うんですね。

 日本食というものも、健康的であるとか、いろいろな面で海外に受け入れられている状況もあるかというふうに思うんですけれども、やはり、和食と併せて、日本産のお酒、日本酒なども含めて、こういったものももっともっと内外に知っていただくような機会をつくっていくことが必要であるというふうに思います。そのことによって、食文化全体として、健康力、あるいは、コロナ禍の中で、より免疫力を高めていくような状況にもなるのではないかという広い視野に立ってアピールしていくようなことが求められていくというふうに思うんですね。

 そういった意味では、国税庁としても、広く国民の皆さんに、適正に、正しく酒類、アルコールを楽しんでもらうように、あるいは、日本酒を中心とした日本の酒文化を広めていくために応援していくようなことがあってもいいかというふうに思うんですけれども、どのような支援を行っているんでしょうか。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 日本産酒類を後押しをするため、国税庁におきましては、まず、令和三年度補正予算におきまして、新市場開拓支援事業費補助金、いわゆるフロンティア補助金と呼んでおりますが、これを八億円計上いたしまして、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によって顕在化した課題への対応についてもその補助金の対象としているほか、日本産酒類の販路拡大や消費喚起に向けた各種イベントや情報発信に係るモデル事例の構築のための費用として五・五億円を計上しております。また、令和四年度予算におきましても酒類業振興関係予算として十四・二億円の予算を確保しているところであり、補正予算と合わせて酒類の消費喚起や輸出促進等に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、このほか、昨年の七月から国税庁及び各国税局に相談窓口を設置しまして、酒類事業者からの相談、御意見等を丁寧にお聞きしており、新型コロナウイルス感染症拡大による酒類事業者への影響なども注視しながら、こうした事業者の声を聞きながら、引き続き丁寧に対応してまいりたいと考えております。

柳本分科員 今おっしゃっていただいたような事業を通じまして、お酒というものに対するイメージを向上させていく、いいイメージを広めていくということが重要なんだというふうに考えるわけです。

 その上で、日本産酒類ということに関して言いますと、よりブランド化するというか、付加価値を向上させていくことが重要であるというふうに考えておりまして、今農水省の取組として地理的表示保護制度というのがあって、これはGIというそうなんですけれども、この取組も連動させながら、守り、そしてブランド力を高めていく、付加価値を向上させていくということが必要だと考えておりますが、国税庁としてどのような取組を行っているのでしょうか、お聞かせください。

重藤政府参考人 地理的表示制度は、酒類や農産品において、ある特定の産地に特徴的な原料や製法などによってつくられた商品だけが、その産地名、地域ブランドを独占的に名のることができる制度でありまして、地域ブランドによる他の製品との差別化や消費者の信頼性の向上などの効果が図られるものと考えております。この地理的表示の新規指定に向けた関係国税局による積極的かつ有効な支援を行いました結果、令和三年以降十件を新規に指定し、合計二十二件となっているところでございます。

 国税庁としましては、酒類業者等が地理的表示を活用し日本産酒類のブランド価値の向上等を図っていくことが有効であると考えており、地理的表示の新規指定や、既に指定した地理的表示について見直しを希望する地域へ積極的な支援を実施するほか、指定した地理的表示につきましては、パンフレットの作成や配布、各地におけるシンポジウムや説明会の開催などにより、その認知度の向上に努めているところでございます。

 さらに、こうした取組に加えまして、経済連携協定等に関する国際交渉におきましても、輸出先国でも我が国の酒類の地理的表示が適切に保護されるよう働きかけを行っているところでございます。

柳本分科員 非常に大切な取組です。

 日本における公正取引について、初め、前段、質問もさせていただきましたけれども、最近、日本酒は海外でも非常にいい値段で販売されて、好評だというふうにも聞いております。そのような状況において、類似品であるとか、あるいは商標登録の面などでいろいろ課題も出てくるのではないかというふうに思われますので、そのGIなども活用しながら、先手を打ちながら対処をしていただきたいというふうに思います。

 そして、ビールなどは多少価格重視、価格競争になるところはやむを得ないかもしれませんけれども、日本酒とか焼酎などとかGIに指定されるようなものなどは、しっかりと適正な価格で販売されるように、海外も含めてですけれども、国税庁としても、可能な限り、可能な範囲内でハンドリングをしていただきたいというふうに思うんです。

 今国会でも、賃上げであるとか、あるいは新しい資本主義ということが議論されていますけれども、その根本としては、やはり、手間暇かけていいものをつくって、そのいいものを付加価値をつけて販売して、そうしたしっかりと利幅を取った上での価格帯で売ることによって、地域にも、あるいはつくり手にも、売手にも、その利益、対価が還元されるような状況をつくっていくことによって、本来もらうべき賃金というものが確保できるような状況にもなってくるのかなというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 それでは、この件での最後に、ユネスコの無形文化遺産登録に向けての取組についてお伺いしたいというふうに思いますが、日本酒等の酒造りの技術が令和三年十二月に登録無形文化財に登録されました。書道と並び、登録無形文化財としては初めての登録とのことでありました。

 そして、今年一月十七日の岸田総理からの施政方針演説でも、日本酒、焼酎、泡盛など文化資源のユネスコへの登録を目指すなど、日本の魅力を世界に発信していきたいと言っていただいているわけでございますけれども、どのように取り組むのか、お聞かせください。

岡本副大臣 柳本先生には、この日本産酒類の産業に対しまして力強い御支援をいただいておりまして、心から感謝申し上げます。

 国税庁では、日本酒、焼酎、泡盛等につきまして、文化庁や日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会等と連携をいたしまして、ユネスコ無形文化遺産登録に向けた機運醸成等に現在取り組んでおります。

 ユネスコ無形文化遺産への登録は、日本の伝統的な酒造り技術の保存につながるとともに、世界中のより多くの方々が、日本酒や焼酎、泡盛等に親しみ、日本に更なる関心を持っていただく大きなきっかけになるというふうに考えています。その前提といたしまして、昨年十二月には、日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造りの技術が伝統的酒造りとして、文化財保護法に基づく登録無形文化財に登録されております。

 今後とも文化庁や保存会等と連携をいたしまして、伝統的酒造りの継承、発展を目的といたしましたシンポジウムの開催やPR動画の作成、全国での広報活動を行いまして、ユネスコ無形文化遺産への登録に向けて全力で尽力をしてまいります。

柳本分科員 岡本副大臣、ありがとうございました。

 それでは、いただいた残りの時間を活用して、私、大阪市会議員を務めさせていただいているときからずっと地元でも感じておりました所有者不明土地問題について、時間が許す限り質問をさせていただきたいと思います。

 平成三十年に所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が成立いたしました。長年にわたり、課題の第一歩を踏み出したと考えますが、更に法整備をしていき、具体的な対処へとつなげていく必要があると考えます。

 その後、令和三年四月には、民法等の一部を改正する法律、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が成立しております。所有者不明土地の発生予防という観点と、既に発生してしまっている所有者不明土地の利用の円滑化の両面から民事基本法の見直しが行われた形であるというふうに考えるわけです。

 法施行日は、令和五年、六年とそれぞれ違うわけですけれども、これらの法が制定されたことを受けて、施行期日に向けてどのような取組を行っているのか、お聞かせください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月に御指摘の二つの法律が成立いたしましたが、これらは所有者不明土地問題の抜本的な解決に資するものと認識しておりまして、今、段階的な施行に向けた準備を進めているところです。

 具体的には、この両法律に盛り込まれた各種の新制度の適切な実施、運用のために、新制度の趣旨、内容について広く国民の皆様の十分な理解を得る必要があることから、地方公共団体や専門資格者団体等とも連携して、分かりやすさを重視した丁寧な周知を積極的に行うなど準備を進めているところでございます。

 また、この両法律の施行に向けては、政省令や通達、マニュアル等を整備することに加え、法務省、法務局において新たな業務を担うことになる施策も数多く含まれることから、計画的に必要な体制を整備する必要があるものと認識しております。

 今後も積極的な周知、広報に取り組むとともに、施行に向けた準備を着実に進めてまいりたいと考えております。

柳本分科員 法施行に当たっては、地域住民などから期待する声がある一方で、理解が深まっている状況ではないのが現状であります。

 今御説明いただいたように、これからいろいろな形で周知徹底も図っていただくということなんですけれども、例えば、地元大阪の、私、西成区というところに住んでおるんですけれども、そこでも、誰が持っているか分からへん土地があるから地権者の了解が得られなくて私道舗装が進まないんですという声をたくさん聞いてきました。

 ところが、その誰が持っているか分からへんという土地が、そもそも所有者不明土地であるかどうかも分かりませんし、仮にそうであったとしても、その私道舗装の問題が解決するのかしないのかということが、しっかりと地域の方や、あるいはその地域の方々に窓口としてお伝えする自治体、関係者の方々が知っておかなければ、的確にその状況をお伝えすることができないというふうに思うんです。

 そういった観点から、しっかりとこういった辺りについて、今おっしゃっていただいたようなことも含めて、自治体や市民に広報していく必要があると考えますが、この点、いかがお考えでしょうか。

金子政府参考人 御指摘の共有私道につきましては、共有者の所在を把握することが困難な場合には、私道の整備工事等の実施に支障が生じているとの指摘があることを踏まえまして、平成三十年一月に、法務省に設置した研究会におきまして、改正前の民法の下でのガイドラインを取りまとめていたところでございます。

 今般の民法改正におきましては、共有物に物理的な変更を加える行為であっても、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものは管理行為と同視し、各共有者の持分の価格の過半数で決することができるとするなど、共有私道における工事の円滑化につながる規律も多数導入されたところでございます。

 そこで、改正民法の内容をガイドラインに反映すべく研究会を再開して、ガイドラインの改正作業を行っているところでございます。

 先生御指摘のとおり、このような取組については、関係省庁や関係団体とも連携して、地方公共団体や事業者にガイドラインを広く周知するなどして、改正法の効果的な周知、広報に努めてまいりたいと思います。

柳本分科員 所有者不明土地については、表題部所有者不明土地というものもあるということもこの度お聞かせをいただきまして、この点についても解消を進めていただく必要があると考えておりますので、この点も併せ持ってよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

葉梨主査 これにて柳本顕君の質疑は終了いたしました。

 次に、神田潤一君。

神田(潤)分科員 青森二区で、昨年十月の衆議院総選挙で初当選いたしました神田潤一と申します。

 元々日本銀行に新卒で就職しまして、二十年ほど勤めました。その間、金融庁の方にも出向いたしましたし、その後は四年ほどIT企業の役員として勤めてきております。

 私の選挙区の青森二区は、青森県の県南、八戸市を中心とする地域ですけれども、本日おいでいただいております鈴木財務大臣には、県境を挟みましてお隣の選挙区ということで、前任の大島理森前議長は東日本大震災のときなど鈴木財務大臣と一緒に復興に努めてきた、そうした御縁というふうに伺っております。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日最初の質問としては、成長と分配に関しての質問ということでさせていただきます。

 岸田首相は、所信表明演説や施政方針演説などで、新自由主義的な政策によって生まれた深刻な分断を是正するというふうに表明して、新しい資本主義という考え方の下で、特に格差の是正などを目的としまして、成長と分配、この好循環を実現していくということを表明しております。私は、この方針に全面的に賛成をするものでございます。

 その上で、このうち成長につきましては、これまで政府が進めてきました貯蓄から投資へ、あるいは貯蓄から資産形成へといったような方針も関連してくるものと理解をしております。この貯蓄から投資へ、あるいは貯蓄から資産形成へという考え方の背景、あるいは、この方針が現在推進を引き続きされているのかどうか、こうした点について伺えればと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 昨今では、人生百年時代と言われますように、急速な高齢化の進展ですとか、働き方を含む人生の多様化など、社会環境の変化が生じてございます。こうした中で各個人が生涯にわたって豊かな人生を送るためには、老後や人生の様々なステージで必要となる資金を確保するため、安定的な資産形成に取り組むことが重要だというふうに考えてございます。こうした背景から、貯蓄から資産形成へという方針を掲げ、各種施策に取り組んでいるところでございます。

 こうした背景は今後も変わらないというふうに考えてございまして、引き続き、貯蓄から資産形成へという方針の下、家計の安定的な資産形成を後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。

神田(潤)分科員 ありがとうございます。

 貯蓄から資産形成への考え方については、個人の資産形成を後押ししていくということを御答弁いただきました。逆に言いますと、今回、個人の貯蓄などに滞留している資産をきちんとリスクマネーとして、成長資金として経済の成長分野に供給していく、そうした重要な役割もあるものというふうに理解をいたしました。

 その上で、一方で、成長と分配のうちの分配戦略ということで、今回、金融所得課税を強化する方向ということが議論をされたりしております。

 金融所得課税につきましては、成長と分配を高所得者から中間層あるいは低所得者へと進めていくという非常に重要な機能を担う可能性があるというふうに理解をしておりますが、一方で、上手に制度デザインをしていかなければ、株式や投資信託など金融資産への投資、あるいはそれによって資産形成を進めていこうという国民のインセンティブ、そういった意欲を低下させかねない面もあるというふうに私は理解しておりますが、この金融所得課税につきまして財務大臣はどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。また、今金融庁から御説明いただいたような、貯蓄から資産形成へといったような考え方の関係をどのように考えればいいのかについても併せて伺えればと思います。

鈴木国務大臣 これまでも、貯蓄から投資への政策的要請を受けまして、一般投資家が投資しやすい税制、NISAでありますとか、そうしたものを構築してきたところでございます。

 今後の金融所得に対する課税の在り方につきましては、令和四年度の与党税制改正大綱において、高所得者層において所得税負担率が低下する状況を是正し、税負担の公平性を確保する観点から検討する必要がある、そしてもう一つ、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行うとされております。

 このように、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分配慮しつつ、総合的な検討を行うこととされておりまして、こうした大綱の視点といいますものは私も共有をしているところでございます。

 今後、こうした大綱の規定に沿って与党の税制調査会等の場で議論が行われていくと考えておりますが、財務省といたしましても、その議論に基づき適切に対応していきたいと考えております。

神田(潤)分科員 御答弁ありがとうございます。

 金融所得課税につきましては、一般の投資家、国民の投資意欲に十分に配慮するというお答えをいただきました。是非そのように進めていただきたいというふうに思います。

 ここで、お手元にお配りしている資料を御覧いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 配付資料の一を御覧いただきたいと思います。こちらは、左側に年収という階層に分けておりまして、その年収別に見まして、どういった金融商品を保有しているのかということをグラフにしたものということになります。

 このグラフを見ますと、上の四角囲みで書いてありますように、株式に対する保有の割合ということでいきますと、年収五百万円以上の世帯収入の方から保有率が高くなっていくという傾向が見て取れます。また、投資信託につきましては、同じく世帯収入一千万円以上で保有率が高くなっているというふうにこの資料からは見て取れるかと思います。

 私が手元で株式の日経平均の推移を確認しましたところ、第二次安倍政権が成立いたしました二〇一二年の十二月頃は、株価は八千円台から九千円台に上がったぐらいでした。それが、九年後の昨年末、十二月末のところでは二万八千円を超えてきておりますので、この九年間の間に三倍以上に日経二二五については上昇したという形になっております。

 このように、安倍政権あるいは菅政権の九年間で株価が大きく伸びてきた、ある意味、株価が象徴する日本の経済がそれだけ成長してきたという中で、その成長の果実は、この資料の一を見ますと、主に、株式や投資信託に多く投資している、こうした高所得者を中心に分配されてきた。逆に言いますと、中間層や低所得者に対しては余り分配されなかったと見ることができると思います。

 もし仮に、こうした世帯収入が中間あるいは低い世帯、中間層あるいは低所得者の方々がもう少し株式や投資信託といった金融資産への投資を進めていれば、日本経済あるいは株式の上昇の果実というのがもっと中間層やあるいは低所得者へと、トリクルダウンというような表現もされていますけれども、こうした果実がもっと中間層、低所得者へと回っていた可能性があるのではないかというふうに考えております。

 私は、こうした分析も見た上で、やはり、金融所得課税という考え方、これによって分配を進めていくという考え方も一つではありますが、これまで進めてきた貯蓄から投資へ、あるいは貯蓄から資産形成へといったような形で、中間層や低所得者層がもっと株式や投資信託などの金融資産に投資を進めていき、経済の成長、株価の成長をもっとその果実として受け取れるような形での政策を推進していくことも大事なのではないかというふうに考えています。

 そこで、金融庁に伺いたいと思いますが、このように、国民の皆さんに対して、広く株式や投資信託などの金融資産に投資を進めていく、そうした政策について今どのように進めていらっしゃるのか、これについて教えていただければと思います。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、中低所得者層を含めた全ての方が資産形成に取り組みやすい環境整備を行っていくことは極めて重要だというふうに考えてございます。

 こうした観点から、金融庁では、例えばつみたてNISA制度を設けてございます。この制度では、具体的には、少額からでも投資が行え、また、元本割れのリスクを抑えられるよう、長期、積立て、分散投資に適した商品につきまして、一定額までの投資に対して配当金や売買益を非課税とすることで、まとまった資金がない方ですとか投資初心者の方でも安定的な資産形成に取り組みやすい環境整備に取り組んでいるところでございます。

 引き続き、幅広い国民が資産形成に取り組めるよう、こうした制度の普及促進に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

神田(潤)分科員 ありがとうございます。

 つみたてNISAなどで少しずつ着実に資産形成を進めていく、そうした政策を推進されているということがよく分かりました。

 これまで、株式をめぐる政策につきましては、例えば自社株買いですとかあるいは四半期の開示といったような形で株価をできるだけ高く保っていく、それによって投資を促進させていく、あるいは、高い株価をレバレッジとして、MアンドA、あるいは新しい事業に進出しやすい、そうした環境を整えていくといったような政策が取られてきたと理解をしております。

 このように、まずは個人の金融、眠っている預金、貯金などを成長分野へとしっかりと配分をしていくこと、また、それを受け取った企業が、さらに、それをしっかりと使って、日本経済、日本社会全体の成長を促していくこと、こうした観点から、金融所得課税、あるいは貯蓄から資産形成へといった全体観を持った形で政策を検討あるいは推進していっていただければというふうに改めてお願いをしたいと思います。

 それでは、二つ目のテーマに移りたいと思います。二つ目は、新型コロナ禍における企業の資金繰り支援についてでございます。

 現在、新型コロナの感染症が日本でも拡大をし始めてから二年以上という形になります。この間、人流の抑制ですとかあるいは消費の自粛などという形で、人々の生活にも大きな影響が及んできています。

 中でも、緊急事態宣言、あるいは現在も発令されております蔓延防止措置などの適用によって、特に、飲食店の営業時間の短縮、あるいはお酒の提供を制限するといったような形、また観光客の減少などによって、観光業、宿泊業あるいは飲食業の業種につきましては特に大きな影響が及んでいるというふうに聞いています。

 また、こうした業種で、売上げが減った中でも雇用を維持しようということで従業員を減らさないという中では、やはり毎月毎月赤字が拡大していく、何とかそこをこらえながら雇用を維持しているという話も私の地元からも伺っております。

 こうした厳しい状況にある、飲食や宿泊を始めとする新型コロナ禍で業況が厳しい事業者に対しまして、その資金繰りにつきまして金融庁ではどのような対応を取られているのか、これについて御説明いただければと思います。

石田政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、金融庁では、金融機関に対しまして、飲食、宿泊業等を始め、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者の資金繰り支援等に全力を挙げていただくよう、累次にわたって要請を行ってきているところでございます。

 こうした要請等もございまして、例えば、実質無利子無担保融資の実行は官民合計で約四十兆円、中小企業に対する返済猶予等の条件変更の実行率は九九%となっており、これまで、金融機関は、資金繰り支援に積極的に取り組み、厳しい状況に置かれる多くの事業者を支えてきたものと考えているところでございます。

 しかしながら、足下でもいまだ数多くの事業者が感染症の影響を受けており、金融庁といたしましては、引き続き資金繰り支援に万全を期すよう、金融機関の取組を引き続きしっかりと促していきたいというふうに考えております。

神田(潤)分科員 御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 金融庁では、累次にわたって金融機関に対して、こうした厳しい事業者への資金繰りの支援などをきめ細かく通知あるいは指導されているというお答えでした。まさにピンポイントできめ細かい対応をしている、また、それを受けて金融機関がしっかりと支えているという中で、企業の倒産が非常に低い水準に抑えられているということは、こうした政策の効果がしっかりと継続しているというふうに理解をしております。こうした対応をしている金融庁あるいは金融機関の皆様には敬意を表させていただきます。

 一方で、その上で、新型コロナのこの厳しい状況、もう二年以上が経過するという中で、資金繰り、日々の、あるいは毎月の赤字を何とか資金でつないでいくというだけではなくて、こうした赤字がだんだん積み上がっていく中で、さらに、企業の本業がどうなっていくのか、あるいは、ここで企業が廃業してしまう、あるいは倒産してしまうといったリスクが高まっている状況というふうに理解をしております。

 特に、こうした事業者は、毎月赤字が更にかさんでいくという中で、追加の融資を金融機関に申し込むようなケースも出てきている。金融機関としては、資金繰りというだけではなくて、本業をどう支えていくのか、あるいは、ポストコロナにおいてどのような形でそうした企業が回復をしていくのか、こうした非常に厳しい、非常に難しい判断を迫られる状況も出てきていると思います。

 私は、日本銀行で考査の仕事をしておりました。金融庁でいえば金融機関の検査ということになると思いますが、やはり、資金繰りというだけではなくて、更に赤字が広がっていったときに金融機関が企業をどのように支えていくのか、また、この新型コロナが回復していく中では、一番厳しい飲食や宿泊、観光といった事業者がどのように回復していくのかというのが非常に大きなポイントになってくるというふうに考えます。

 そうしたことを踏まえまして、企業の資金繰り支援にとどまらない、本業を支えるという観点で金融庁はどのような対応を取られているのか、教えていただければと思います。

宗清大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 先生御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響は長期化をしておりまして、事業者の皆様にとって大変厳しい環境が続いております。足下の返済負担の軽減だけでなく、事業の再構築、転換等を図ることで収益力を回復、改善し、将来に向けて伸ばしていくこと、本業支援が重要であるというふうに考えています。

 こうした観点から、金融庁といたしましては、事業者の資金繰り支援に加えまして、民間金融機関に対しまして、REVIC等が組成したファンドの活用、各地域の中小企業再生支援協議会や信用保証協会等の関係機関との密な連携、また事業再構築補助金等の各種施策の活用を促すことによって本業支援に取り組んでいるところでございます。

 加えまして、過剰債務状態にあります事業者の経営改善に向けた環境整備を図るために、政府として、中小企業の実態を踏まえた本業再生のための私的整理等ガイドラインを年度内に策定をする方針を掲げてきたところでございます。

 現在、全国銀行協会を中心に、ガイドラインの具体的な内容を策定中でございます。来年度から、こうしたガイドラインの活用も促すことで、事業者の支援にもしっかりと取り組み、経済の力強い回復を後押ししてまいりたいと考えております。

神田(潤)分科員 宗清大臣政務官、御答弁ありがとうございます。

 今の御答弁にもありましたように、金融庁としては、REVICのファンドを使ったり、あるいは事業再生補助金などを使ったり、あるいは、きめ細かい事業者との対話によって状況を把握した上で、それによってどのような対応を取っていくのか、丁寧に御対応いただくということで政策を進めているという御答弁をいただきました。

 この新型コロナの状況がどのぐらい続くのか、これが見通せない中で、やはり事業者は非常に不安に感じていると思います。また、支える金融機関の方も、どのぐらい支援すれば回復していくのかというのが見通せない中で、なかなかきれいな計画が作れない、そういった声も聞かれています。

 一方で、やはりこの新型コロナがある程度落ち着いてきた中では、景気回復を図っていくために、例えばGoToトラベルですとかGoToイートという形で、これまで最も厳しい状況にあった飲食、宿泊、観光といった事業者がV字で回復をしていく、それが地域の経済や社会を牽引して日本全体の景気を回復させていく、こうした回復の姿をしっかりと描けるような状況が重要だというふうに考えています。

 そうした観点にとりますと、やはりこの厳しい状況を、何とか事業者の努力、また、金融機関、金融庁一体となってまた能動的に支えていく、そうした中で何とかこの一番苦しい状況を乗り切って次の回復につなげていく、こうした観点をもう一度皆さんで共有して進めていっていただければと思います。

 夜明け前が一番暗いという言葉があります。もしかしたら、今が一番厳しい状況なのかもしれませんけれども、この先に夜明けが来るということをしっかりと共有しながら、私も地元の皆さんに呼びかけながら進めてまいりたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、次の質問に参りたいと思います。三つ目のテーマとしましては、インフレ率と賃上げについてということでございます。

 お手元にあります資料の二番目の、配付資料二というものを御覧いただければと思います。これは、最近十年間にわたります名目賃金と実質賃金との対前年比の動きということになります。黒い実線が名目賃金であり、点線のところが実質賃金ということになります。

 名目賃金は、ゼロ近傍に、マイナス一・〇からあるいはプラスの一・五ぐらいまでの幅で動いておりますが、それを点線に直した実質賃金で見ますと、例えば平成二十六年でいえばマイナス三%に近い振れ幅になっている、あるいは、平成三十年では実質賃金と名目賃金の間が一・五%ぐらい、一%以上開いている、こうした年もあります。

 この名目賃金と実質賃金との差というのはインフレ率ということになるかと思います。まさに、インフレが上がった年に実質賃金と名目賃金との差が開いてしまうというのがこのグラフで見て取れるかと思います。

 続きまして、次の配付資料三を御覧いただければと思います。この配付資料三につきましては、左側の消費者物価というグラフを見ていただければと思いますけれども、これは、各月における消費者物価の動きを要因別に見たものということになります。

 足下につきましては、新型コロナにおいてマイナスに入った物価がだんだん上がってきているという状況が見て取れるかと思いますけれども、このインフレ率の動きについて、上昇してきている背景と先行きの見通しについて伺えればと思います。

 特に、先行きの見通しにつきましては、この下側に出ております携帯電話の通話料金がこの春から剥落するというふうにも伺っておりますので、こうした部分の影響も含めて伺えればと思います。よろしくお願いします。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 物価の動向について、消費者物価指数の総合を見てみますと、二〇二一年は、携帯電話通信料の引下げ等により前年比マイナス〇・二%となっております。一方で、直近の昨年の十二月の前年同月比は、ガソリンなどのエネルギー価格や食料品価格等の上昇により〇・八%の上昇と、四か月連続で前年同月を上回っております。

 先行きにつきましては、政府経済見通しにおいて、二〇二二年度の消費者物価上昇率は、昨年春の携帯電話通信料の引下げの影響が剥落する中で、エネルギー等の原材料価格の転嫁が緩やかに進むことや、経済の回復によって需給が引き締まっていくことなどにより、前年度比で〇・九%程度と見込んでいるところでございます。

神田(潤)分科員 御説明ありがとうございます。

 今御説明がありましたように、足下は、携帯電話の通信料が去年引き下げられたこと、この影響で、これがマイナス一%以上の影響がございますので、逆に、これが剥落しますと、CPI全体として一%に近くなっていく、あるいは一%を超えていく局面が出てきそうだというような見通しになるかと思います。

 一方で、先ほどの配付資料の二と併せて見ていただきますと、例えば、令和四年の名目賃金が、昨年と同じ、令和三年と同じような、ゼロ%を少し上回るといったような推移にもし仮になりますと、CPIが一%あるいはそれを超えていくような局面ということになると、実質賃金の方は逆にマイナス一%といったような水準になってしまう。こうしたインフレ率が上がっていく局面においては、まさに賃上げが、インフレ率を上回って賃上げが実現されていくということが非常に大事だということが分かるかと思います。

 ここで質問させていただきたいんですが、今回、岸田内閣が掲げる分配戦略のうち、賃上げ税制が非常に大事だということになると思いますが、今回の賃上げ税制のこれまでとの違い、実効性をどういうふうに高めていくというふうにお考えなのか、また、税制そのものと、税制に併せたその他の政策で取っていく部分というのもあると思いますので、その部分も併せて教えていただければと思います。

住澤政府参考人 今般の税制改正におきましては、積極的な賃上げを促すとの観点から、企業の税額控除率を、大企業の場合最大三〇%、中小企業の場合最大四〇%に大幅に引き上げるとともに、一定規模以上の大企業については、持続的な賃上げ等に関するマルチステークホルダー宣言を実施することを適用要件とするなどの見直しを行ったところでございます。

 また、税制の恩恵を受けられない赤字企業もございますので、税制以外の措置といたしまして、賃上げを行う中小企業への補助金の補助率の引上げ、下請対策の強化、賃上げを積極的に行う企業に対する公共調達における加点措置など、様々な取組を講ずることを通じ、企業の賃上げに向けた環境整備を推進していくこととしております。

神田(潤)分科員 住澤局長、ありがとうございます。住澤局長は私の高校の先輩でもございます。御答弁いただいて、ありがとうございます。

 今、賃上げ税制を、大胆な税率で設定するだけではなく、マルチステークホルダー宣言あるいは下請対策の強化など、非常に幅広い政策も動員しながら賃上げを実現していく、実効性を高めていくという御説明をいただきました。しっかりと、これについては成長と分配の好循環を実現するためにも推進していっていただきたいと思います。

 その上で、国民は、今回の賃上げが一時的なものあるいは一過性のものというふうに考えてしまうと、この賃上げを貯蓄に回すといったような形で、なかなか成長の方に回っていかないという部分が出てくるかと思います。まさに、今年だけではなく来年以降もこうした賃上げが継続する、そうした期待を形成することも非常に重要な観点というふうに考えます。

 最後の質問になりますけれども、政府として、来年以降も継続していく、あるいは国民の賃上げに対する期待を更に高めていくためにどのような情報発信あるいは政策をお考えになっているのか、お聞かせいただければと思います。

葉梨主査 時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 岸田内閣におきまして、賃上げは、成長と分配の好循環により持続可能な経済を実現するための重要な課題の一つでございます。

 そのため、今般の賃上げ税制は、二年間にわたり企業の税額控除率を大幅に引き上げ、そのほかにも、一定規模以上の大企業については、従業員への持続的な還元など、マルチステークホルダーに配慮した経営の取組を宣言することを税制措置の適用条件とすることとしたところであります。税制においては、こうした要件を求めることによりまして、従業員への持続的な賃上げが促されることを期待しております。

 今後とも、賃上げを促していくために、今申し上げました賃上げ税制の拡充に加えまして、看護、介護、保育等の公的価格の引上げ、適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員することによりまして、今後とも企業が持続的な賃上げをしていく機運を醸成していきたいと考えております。

神田(潤)分科員 今後ともこの期待を形成していくと……

葉梨主査 終わっていますから。終わってください。

神田(潤)分科員 失礼いたしました。

 ということで、しっかりと賃上げ税制の実効性を高めていっていただきたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

葉梨主査 これにて神田潤一君の質疑は終了いたしました。

 次に、福田昭夫君。

福田(昭)分科員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 先日は、予算委員会、ありがとうございました。

 本日は、封建時代の人頭税と同じ、同質の消費税では全世代型社会保障の切り札にはならない、ましてや財政再建などできないという観点から鈴木大臣と議論したいと思いますので、是非御指導のほどよろしくお願いいたします。

 なお、答弁は月曜日よりもっと簡潔にお願いしたいと思います。

 それではまず、国税収納金整理資金制度を使って輸出免税還付金を隠蔽していることについてであります。

 一つ目は、令和二年度の消費税及び地方消費税還付金、十三兆四百三十四億円余りの内訳を教えてほしいと思います。これは事務方で結構ですけれども、過誤納金と消費税及び地方消費税、及び地方消費税の支払い分について、簡潔にお答えください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 令和二年度における国税収納金整理資金受払計算書の消費税及び地方消費税還付金の内訳でございますが、納税者への還付金等が約七兆四千六百九十三億円、都道府県に対する地方消費税の払込金、これが約五兆五千七百四十一億円となっております。

福田(昭)分科員 前の前の通常国会でしたか、そのときに、政府が出しております、財務省が出している国税収納整理資金の受払計算書、これの作り方がまずいから直すようにと言ったんですが、残念ながら、令和二年度の受払計算書を見ても直っておりません。

 資料の一を見てください。これは、その六ページですね。ここに消費税及び地方消費税還付金、今話がありましたように、十三兆四百三十四億円。そのうち、今、消費税の還付金が七兆四千億を上回る、地方分が五千五百を上回る、こういう話がありました。こういう内訳をちゃんと款項目を別にして明らかにすべきだと思うんですね。

 還付金というのは、これは国税庁の人に教えてもらいましたけれども、還付金については過誤納金、過納金と誤納金、これが還付金じゃないですか。輸出免税還付金は還付金じゃないじゃないですか。それから、地方分も、これも還付金じゃないですか。どうですか。来年度の決算から、令和三年度の決算からこれを直す気持ち、考えはありますか。

岡本副大臣 お答えいたします。

 御指摘の国税収納金整理資金受払計算書の支払いでは、都道府県へ払い込む地方消費税と一般の納税者に還付する還付金等を合算した数字を記載してまいりましたけれども、地方消費税の税収が、消費税率の引上げ等を経て、当初より大きなものとなってきましたことから、より充実した情報開示を行う必要性を認識しております。

 こうした観点から、国会に参考資料として提出している決算の説明では、福田議員の御指摘も踏まえまして、令和元年度決算から、都道府県へ払い込む地方消費税の額を明示的に記載しております。

 さらに、昨年四月に福田議員から国会でいただいた御指摘を踏まえまして検討いたし、この度、国税収納金整理資金受払計算書におきまして、都道府県に対する地方消費税の払込金を独立して区分することができるように、新たに地方消費税払込金という科目を設けることとしておりまして、令和三年度決算から適用することとしております。

福田(昭)分科員 私が指摘したのは、去年じゃないですよ、おととしですよ。ですから、そういう言い訳はしないように。

 本当は、これは令和二年度の決算書で、昨年の十二月に出された決算書で出すべきだった、それだけ指摘しておきます。これから直すというんじゃ、それでいいでしょう。

 二つ目ですけれども、二つ目の、これは、今、大体言ってもらったからそれでいいか。二つ目は省略します。

 三つ目ですけれども、輸出免税還付金は、還付するに当たって総額で判断しているということだったんです、当時の答えはね。そうすると、今、主税局長から、七兆四千億余りというふうにありましたから、それで結構ということにいたしましょう。

 四つ目ですね。政府は、消費税を創設した平成元年度から、この輸出免税還付金を今まで公表していないということになりますけれども、法律に基づくものとはいえ、税率ゼロということですから、法律に基づくものとはいえ、多額の税金を還付して、その総額も公表しないという会計処理は許されるはずがありません。

 岡本先生はきっとそっちのプロだからよく分かると思いますが、そういう意味では、今後、先ほど予算書に書いたという話もありましたけれども、しっかり公表することが大事だと思っていますが、いかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税は、御承知のとおり、売上げに係る税額から仕入れに係る税額を控除して、納税額又は還付額を計算する仕組みでございます。

 こういった中で、売上げに係る税額よりも仕入れに係る税額の方が上回れば還付が生じ、輸出する場合には売上げに係る税額が発生しないことから、これが還付の原因の一つになり得るということでございます。

 しかし、還付の原因の中には輸出以外の原因もある中で、事業者のサイドにおきまして、輸出分に係る仕入れをそれ以外の仕入れと切り分けることは現実的には困難でございまして、事業者に対して輸出を原因とする還付を切り出して申告することは求めておりません。

 したがいまして、輸出を原因とした還付の額を把握し、公表することはできないことを御理解いただきたいと思います。

福田(昭)分科員 それはちょっといいかげん過ぎじゃないの。

 これは、法律上はゼロにすると言っているけれども、こんな多額な税金ですよ。例えば、令和二年度でいえば三十四兆円もの実は消費税をいただいているんだよね。そこから七兆四千億も還付しているんだよ。こんな多額の税金を法律に基づいて取っておきながら、それを還付して、このことを公表しなかったら、全く国の情報公開はでたらめだということになるよ。日本が今まで貿易立国でやってきたから、輸出産業を応援するんだよ、応援してもいいんだよと国民が納得するんならいいよ。でも、隠していたんじゃ納得しないよ。

 大体、輸出が税金ゼロだなんということを、消費税、知っている国民はほとんどいないよ。ほとんどいないよ。これで本当に、日本は民主主義国家として成り立つの。どうなんですか。

住澤政府参考人 輸出に係る仕入れ分を切り分けることができないということを申し上げましたけれども、例えば、工場を建設した場合などにつきましては、工場の建設に多額の消費税がかかりますので、仕入れ税額が売上税額を上回り、還付が発生するということになるわけでございますが、その工場で生産するものが将来にわたって輸出をされるのか、あるいは国内で売上げになるのかということについてあらかじめ把握するということはできませんので、その工場の建設に係る仕入れが輸出に対応するものなのか、国内売上げに対応するものなのかということをトレースしていって、切り分けて申告するといったような実務はなかなか難しいということを申し上げているわけでございます。

福田(昭)分科員 前の主税局長は何と答えたかというと、同じようなことを言ったんだけれども、例えば電気代はまとめて払うので、どれだけが国内販売分だか輸出販売分だか分からないんです、こういう説明があった。

 全く変。だって、毎日毎日、備付け簿に誰さんと取引して幾ら払ったか、幾らもらったか、毎日つけているんですよ。違うんですか。例えばだけれども、自動車を百五十万台生産した、そのうち五十万台国内販売で、百万台輸出したといったら、按分すれば出てくるじゃないの。だって、そうじゃないと輸出免税還付金をどうやって還付していいか分からないじゃないかと言ったら、総額で判断しています、総額でと、前の主税局長はだよ。どれだけ本当にかかったんだか、輸出にかかったんだか、分からないじゃないの。

 じゃ、どうやって還付するの。

住澤政府参考人 総額で判断するという答弁があったのは、恐らく、還付をいたします際に売上げに係る税金の総額と仕入れに係る税金の総額、この年度において生じたそれぞれの総額の差額に基づいて還付を行うということを申し上げたのだと考えております。

 先ほど御説明申し上げましたのは、電気代などの場合とはまた異なりまして、工場の建設のように、将来長い期間にわたって売上げにつながっていくような仕入れというものもございますので、その場合、将来輸出につながるものなのか、国内売上げにつながるものなのかということをあらかじめ把握することは難しいということでございまして、それを何らかの前提を置いて計算するという考え方もなくはないとは思いますが、ただ、それはかなり複雑な仮定を置いた計算を強いるということになりますので、事業者に対してそういった事務を強いるということは税制上はなかなかできないのではないかというふうに考えているわけでございます。

福田(昭)分科員 要するに、発表したくないということね、基本的にね。それは分かりました。政府の姿勢として、幾ら輸出免税還付金を払っているんだか分からないと。しかし、大体、おおよそ七兆円は払っているということだと思う、多分。ですから、こんなことが許されるのかということですよね。

 それでは次に、時間がありますからちょっと前へ行きますけれども、消費税は国民に二重の負担を求める悪税だということについてであります。

 一つ目は、政府と地方公共団体は、誰の負担で、なぜ消費税を負担するのかです。

 政府と地方公共団体は、時には消費者として一般会計で、時には事業者として特別会計で消費税を負担しております。私が納税していると言ったら、納税していません、負担していますと言った。納税と負担の違いは言葉だけであって、実際には消費税分を払っているということであります。それは国民が納める税金で負担するということです。国民が納める税金で、しかも消費税だけにかかわらず、所得税や法人税やいろんな税金で消費税を負担しているということなんです。これはまさに国民に消費税を二重に負担させるということです。こうしたことが許されるのかどうか。

 もちろん、ヨーロッパの付加価値税も同じです。付加価値税も悪税です、私から言わせればですよ。ですから、アメリカがレーガン大統領のときから付加価値税を入れるか入れないか検討して、とうとうアメリカは導入していません。それはこうした、まさに政府や地方自治体、行政が負担する付加価値税、消費税が余りにも多額だから、アメリカは導入しないんですよ。私はアメリカは賢明だと思いますよ。

 これが財務省は世界標準だと言いますけれども、世界標準じゃありません。アメリカは世界一の経済大国です。その経済大国が導入しないというのは、私は非常に合理的だと思います。ですから、そういう意味で、私は、二重負担をさせている、それだけ重い税金になっているということをやはり認識すべきだと思いますが、いかがですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、国あるいは地方公共団体が物品の購入等を行う際には、その対価の一部として消費税を負担することとなっておりますが、これは御指摘のとおり、付加価値税を有する欧州諸国などにおいても同様でございます。

 この国又は地方公共団体が負担した消費税については歳出の一部として計上されることになりますが、国や地方公共団体にその物品を販売した事業者は当該売上げに係るこの消費税額を納税することになりますので、それが国や地方公共団体の歳入として入ってくることになります。したがいまして、歳入歳出の両面を通じて見れば、国及び地方公共団体が消費税の存在により負担を負うということにはならないということになっておりまして、したがいまして、国及び地方公共団体が国民一般が負担している所得税、法人税その他の税金で消費税の負担を行っているということにはならないということを御理解いただきたいと思います。

福田(昭)分科員 そんなでたらめを言うんじゃないよ。格好悪いぞ。誰だって分かるでしょう。消費税を納める財源が一般財源だもの、消費税に限らないでしょう、お金に色ついていないもの。全くそういう、主税局長がうそを言っちゃ駄目だよ。

 次に、時間がありますから、三番目の方へ行きます。封建時代の人頭税と同質の消費税は全世代型社会保障の切り札ではないについてであります。

 まず一つ目ですけれども、元大蔵官僚が挙げる消費税の長所、短所は本当かということであります。長所として七点、短所として二点挙げておりますけれども、時間の関係で、私の方から先にコメントしてしまいます。

 長所の一点目、同等の消費水準には同等の税負担を求める水平的公平性に優れるというんだよね。とんでもない話。これがまさに人頭税だと言っていることじゃないですか。全く所得のない赤ちゃんから寝たきりのお年寄りまで、一〇%、八%、まさに、強制的に徴収する消費税が水平的公平性に優れるというのは、どういう感覚をしているんですかね。税は、応能負担の原則に基づき、累進的公平性をもって、担税力に応じて納めていただくものじゃないですか。とんでもない話です。

 特別措置が少なく、簡素な税制。簡素な税制じゃないじゃないですか。さっき主税局長が言ったように、輸出免税還付金、区分けできないんだから。こんなの簡素な税じゃないじゃないですか。税理士だって困っているよ、顧問先の仕分がなかなかできなくて。

 それから、安定した税収が得られる。それはそうだ。人頭税だもの。一人頭幾らよこせというんだもの。こんな投網で魚を捕るような税金だもの、安定した税金が得られますよ。

 税負担が勤労世帯に偏らない。これもうそっぱちですよ。勤労世帯ほど、家庭を持っていれば、赤ちゃんから大学生まで、あるいは介護が必要なお年寄りまで、扶養家族の分も一〇%、八%払っているんですよ。勤労世帯ほど負担が重いじゃないですか。これもうそっぱち。

 それから、輸出時に還付されるので国際競争力を弱めない。これは本当かもしれない。輸出時に還付されるんだから。輸出産業にとってはこんなうれしいことはない。

 そして、六番、貯蓄に課税しないので資本蓄積に有利だ。これもそうだよね。それこそ、留保分について課税しませんから、物とサービスの消費に課税するわけだから、そういう意味では資本蓄積に本当に有利です。五、六は本当ですね。

 七、消費という欲望の充足時に課税するので、哲学的に受け入れやすい。この方は哲学が本当に分かっているのかな。先ほど申し上げたように、赤ちゃんから寝たきりのお年寄りまで、日常生活に必要なもの、この物とサービスの購入に税金を払うんですよ。これが欲望を満たすというんですかね。人間として食べることは当然のことじゃないですか。水を飲んだり、食べなくちゃ生きていけない。こういう、この人は本当に哲学があるのかなと私は疑っちゃいますけれども。こんなふうなことを財務省も考えているんですかね。まあ答えは要りませんけれども。

 それから、短所ですけれども、逆進性。低所得者ほど所得に占める税負担が重い。これはそのとおりかもしれません。加えて、今私が申し上げたように、子育て、介護など、扶養家族を持っている勤労世帯ほど消費税は負担をしています。これを忘れちゃいけません。ですから、働く人に偏らない税金だなんてうそっぱちです。

 そして、次が、益税ですね。事業者の手元に残る。これについては、一千万以下は免税となっていますから、今のところ残っています。

 しかし、実は、この一千万以下の仕事をしている人たちがおります。一人親方たち、全建総連。この人たちに私、投げかけてみました。いよいよ二〇二三年からインボイス制度が入る、これが入ると取引できなくなっちゃう人がいるということで、どうするの、あんたたち、ちゃんと税金を納めると言うかといったら、彼らは税金を納めますと言いました。今使っている適格者納税の仕組み、様式で、これでちょっと改善すれば幾らでも、それでも通用すると彼らは言っています。

 ですから、そうした一人親方の人たちやフリーランスの人たち、一千万以下の人たちは、残念ながら、仕事を失う可能性が非常に高い。ましてや、このコロナで大変厳しい状況だ。だから、少なくとも、インボイス制度は延期をするか、あるいは見直しをするか、それが必要だと思います。

 実際、これを正式に決めるまでの間は、日本商工会議所も商工会も税理士会も、それこそ全建総連もそうですが、こうしたいろいろな団体がインボイス制度に反対していました。しかし、政府が無理やり決めちゃったものだから、今は税制改正要望に出てきませんけれども、まさに、こういうふうにとんでもない税金が実は消費税だということであります。

 さて、それではもう少し先に行きますね、時間がなくなりますから。

 二つ目は、消費税率を上げれば上げるほど、恩恵を受ける人は誰ですか。一方、苦しくなる人は誰ですか。

 じゃ、主税局長、どうぞ答えてください。

住澤政府参考人 消費税は社会保障目的税というふうに位置づけられておりまして、その税収は社会保障のために用いられているということになってございますので、歳出面も含めて考える必要がございまして、消費税率の高い低いをもって個々の方々の負担について論ずることは適当ではないというふうに考えております。

福田(昭)分科員 そういう言い訳も駄目だよ、基本的にね。

 鈴木大臣、じゃ、お聞きしますが、前回の質問で確認いたしましたけれども、消費税を福祉目的税にしている国は、日本以外、世界中にどこにもありませんでしたよね。ですから、そういうことを考えると、日本だって消費税は一般財源なんですよ、福祉目的税じゃない。

 それは、宮沢大蔵大臣がもう平成元年の国会で消費税をつくるときに説明した説明書には、直間比率の見直しをするためと書いてある。その直間比率の見直しは、実は平成九年の消費税五%でもう済んでいます。国民所得比で考えると、一番手所得税、二番手消費税、三番手法人税になっております。ですから、これは、そういう言い訳は通じないということを申し上げておきたいと思います。

 あと、時間の関係で、最後、四つ目に行きますけれども。

 四つ目は、行き過ぎた直間比率の見直し。つまり、消費税は減税、法人税と所得税は応能負担の適正化などで、余りにも行き過ぎた消費税率ですから、少なくとも半分にまず戻す、そして、しっかり三税一体改革をする。そうすれば、経済も財政も賃金もよくなりますよ。

 基本的に、前回の大臣の答弁、月曜日の答弁ですが、これでちょっと申し上げておきますけれども、経済の低迷の要因は先ほど申し上げたことと認識しておりますので、消費税の導入がこの要因になったとは考えておりませんというんですが、私はそう言っていない。消費税をつくったときに、法人三税と所得税と住民税、大幅に同時に減税したからこれだけおかしくなった、失われた原因をつくったということです。

 そこで、大臣、資料の二を御覧ください。前回は私が財務省や総務省の資料を基に作った資料ですが、今日は財務省の資料を持ってきました。財務省が作った資料です。

 これは、一般会計税収と歳出総額及び公債発行額の推移であります。ここに私が、消費税をつくった年を縦線で入れてみました。平成元年に三%つくりました。平成九年、五%。そして、平成二十六年、八%。令和元年の十月から一〇と八としました。

 どうです。よく財務省が宣伝する、この表で説明するときに、ワニの口が広がったと言っています。一般会計の歳出と税収の口が広がっちゃった、これは赤字で大変だ大変だと財務省はいつも宣伝するんですよ。でも、これを見てください。消費税をつくって、これは国税だからだけれども、法人税と所得税を減税したから、どんどんどんどん広がってきたじゃないですか。

 これを見て、大臣、どうです。消費税をつくって、同時に法人税を下げた、所得税を下げたから、口が平成元年からどんどんどんどん広がっていったんですよ。主税局長はいいですよ。大臣。

住澤政府参考人 まず、事実関係の御説明をいたします。

 今のこの税収の推移でございますが、平成二年以降の所得税や法人税が減収してきた要因といたしましては、所得税に関しては……(福田(昭)分科員「主査、その答え、止めて」と呼ぶ)地方に三位一体改革の中で税源移譲を行ったこと、それから、バブル期以降の資産価格の下落等の要因があると考えております……

葉梨主査 住澤さん、もうまとめてください。

住澤政府参考人 はい。

 したがいまして、今御指摘のあったような要因だけではないということを申し上げておきます。

福田(昭)分科員 この表を見てそう思わない、この間、月曜日に私がちゃんと見せたでしょう。消費税をつくる前、つくった後、そして今どうなっているかという、その税率を。あれを見ていないの。見ていないでここへ来ちゃ駄目だよ、あなた。

 実は、元大蔵官僚で一橋大の名誉教授の野口先生、この「消費増税では財政再建できない」という本です。これ、何と、出版したときを見たら、二〇一二年の一月ですよ。三党合意で消費税を五から一〇に上げるというのを決めた年ですよ。これを見ると、いやあ、野口先生は見事な指摘をしていたなと。五%引上げの改善効果が僅か二年で失われる、政府とメディアのごまかしにだまされるなと書いてありますが。

 そこで、実は私、令和元年度と四年度の、元年、二年は決算ですけれども、三年は補正予算の、四年は今の予算ベースで、じゃ、所得税と法人税と消費税がどれだけの弾性値があるかというのを一覧表にしてみました。皆さんのお手元には出していませんけれども。

 そうしたら、やはり一番弾性値が高いのは法人税。その次に所得税。消費税は、税率を一〇と八に上げたとしても、残念ながら大した数字じゃありません。しかも、令和二年と四年を比較すると一・〇二八、令和三年、四年を比較すると一・〇二二。野口先生の指摘が合っているんじゃないか。ですから、消費税を上げた効果は、どんどん、年数がたてばたつほど、多分なくなっていっちゃうんだろうと思うんです。ですから、そういう意味で、野口先生は、消費税を三〇%にしなくちゃ財政再建できないぞ、こんなふうな指摘もしています。

 しかし、それは現実的じゃありません。財務省は、消費税が今一〇%だ、ヨーロッパの付加価値税は二〇%だ、あと一〇%は上げられると思っているかもしれません。しかし、こんなことをやったら、まさに日本の経済は駄目になります。経済も財政も賃金も上がらない。これは改めるべきです。私は、このワニの口がまた広がるだけになっちゃうと思う。ワニの口がですよ。

 鈴木大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先生からずっといろいろなお話を伺いまして、私が今まで考えていたこととまた違う観点からお話を伺ったところでございます。

 先生がお示しになりましたその本も、時間があれば是非また読ませていただきたいと思います。

福田(昭)分科員 そろそろ時間ですか。まだ大丈夫。

 時間が来ましたから、鈴木大臣、是非読んでみてください。これは、野口先生、元大蔵官僚ですから、この先生も。今は一橋大の名誉教授ですけれども。

 ですから、やはり、それこそ景気がよくなったら、税収はどの税金の方が伸びるかということを考えていかないと。消費税は、上げたときはいいですよ。でも、すぐ弾性値が少なくなっていっちゃう。それに比べたら、法人税なんてどんどん伸びますよ。どんどん伸びますよ、景気がよければ。もちろん、山あり谷ありですから、谷になったら税金は減る、山になれば増えるということですから、そういう長期的な考え方に立って財政の健全化をやっていかないと駄目だと思います。

 短期的な視点で、単年度のプライマリーバランスが黒字になればいいなんという、そんな単純な話じゃないですよ、これだけ借金を抱えれば。ですから、長期的な視点で財政の健全化もやっていくということになれば、消費税にこれ以上頼っちゃ私は絶対駄目だ、こう思っています。

 そういうことを申し上げて、私の質問を終わります。以上です。

葉梨主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階分科員 立憲民主党の階猛です。

 昨日に引き続いて、財務大臣には質問させていただきたいと思います。

 さて、昨日の財務金融委員会で、冒頭、私は何を言ったかということなんですが、財務省は、国民に税負担をお願いする以上は、税を使うに当たって適正かつ厳格な手続を取ること、正当性と合理性のある理由が備わっていることが必要だというふうに述べまして、大臣も、そのとおりであるというふうに答えられました。

 これを踏まえた上で、昨日は、赤木夫人からの国賠訴訟において、財務省が請求の認諾と求償権の不行使という対応を取り、国民の税金を約一・一億円使ったことについて、これが適正かつ厳格な手続にのっとったものなのかどうか、このことを議論しました。

 その中で、国家公務員制度改革推進本部決定という政府の決定があるんですが、今日お配りしている資料の六ページの下の方にあるかと思います。求償権の適正かつ厳格な行使という見出しがありまして、各府省において、国家賠償法の求償に係る規定について関係職員に周知するとともに、求償権の存否を判断する体制、手続等を明確にすることが求められているわけです。ところが、昨日の答弁あるいはその前の予算委員会での答弁を見ますと、財務省は全くこれにのっとっていないということが明らかになりました。

 そこで、今度は二ページの下段の方の昨日のやり取りですけれども、私の方から、政府決定を守っていると言えるかというふうに大臣にお尋ねしたところ、大臣からは、お答えすることは困難ですという答弁がありました。

 今日は、国家公務員制度改革担当の政府参考人に来ていただいていると思うので、伺いたいと思います。

 財務省は、今私が申し上げたとおり、求償権の適正かつ厳格な行使を守っていないと思うんですが、この点、どうなのか。それから、他の府省庁におけるこのルールの遵守状況はどうなっているのか。以上二点、お答えください。

松本政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御質問ございました本部決定でございますけれども、これの本部決定の文言以外に、私ども、解釈のための材料を持ち合わせておりません。また、府省によって実情等も異なりますので、どれがこれに適合しているのかとか、なかなかそこのお答えというのは困難でございます。

 また、本部決定の求償権に係る規定につきまして、各府省における遵守状況の調査等は特段行っていないところでございます。

階分科員 わざわざ、この議事録を見て答弁しなさいと言っているわけですよ。言っていますでしょう。周知していないということだったり、文書として形にしたものはないというふうに二ページの下で言っていますでしょう。それを踏まえたら、守っていると言えますかね。どうなんですか。そこを答えてください。

松本政府参考人 お答えいたします。

 私どもとしては、先ほど申し上げましたように、これが合っているとか、これが合っていないとかいうのはなかなか難しいと考えています。

 昨日、財務大臣から御答弁がございましたということを承知してございますけれども、改善点があればということでございましたので、それを尊重したいと考えてございます。

階分科員 あなたたちは何のためにこのルールを作っているんですか。守らせるつもりがないんだったら、こんなルール、必要ないじゃないですか。

 わざわざ、求償権の厳格かつ適正な行使ですか、こんなことを一項設けて定めを置いているわけだから、それが守られているかどうか、ちゃんとチェックすべきでしょう。いいですか。守られているかどうか、財務省だけじゃなくて全府省について調べて、提出してください。

松本政府参考人 お尋ねの、適正かつ厳格な行使ということで、そのためにどういうふうなやり方というか、周知、私どもとしても周知をしてまいりたいと考えています。

 また、形式的な調査になってはいけませんので、ちょっと、どういうやり方がいいか、また各方面と御相談して進めたいと思っております。

階分科員 では、その点について、まず一旦検討して、なるべく速やかに私に報告してください。

 もう一つ伺いたいのが、この六ページ下の項目の最後には、求償権の存否等の判断に当たって、必要がある場合には、法務省の法律意見照会制度、現在でいえば予防司法支援制度、これを活用することが求められています。

 しかし、三ページの下段で、大臣が昨日お答えになったとおり、今回、財務省は、予防司法支援制度は使わず、法務省の専門的知見を活用したというふうにおっしゃっています。

 再び伺いますけれども、このなお書き、本部決定のなお書き、その趣旨はどういうものなのか、お答えいただけますか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 これも先ほど申し上げましたとおり、本部決定以外になかなか解釈のための材料を持ち合わせておらないところでございますけれども……(階分科員「解釈じゃない、趣旨を聞いているんだよ」と呼ぶ)はい。

 国賠法上の求償の要件を満たすかどうかの判断というのがなかなか難しいという場合につきまして、個別の事案に応じまして、法律意見照会制度を活用するということを定めたものと理解してございます。

階分科員 さっき担当の人と議論していた内容と全く違うことを言っていますよね。

 私がさっき議論したのは、求償権の行使というのは、要するに、担当した職員に対して、国賠で払ったお金を求償、まさに、その分、返してくださいと担当の公務員に対して言うわけだから、要するに、身内に対してお金を払わせることなわけですよ。とすると、やはり身内だから、場合によっては、今回みたいに先輩だから、ちゅうちょしてしまいがちだ。だから、適正かつ厳格な行使という観点からすると、第三者で法律の専門家である法務省にちゃんと問い合わせた上でその適否を判断するということで、こういうなお書きが設けられているんだというふうに伺いましたよ。そうじゃないんですか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 御趣旨でございますけれども、やはり事案とかその度合いに応じと思いますので、必要に応じてというのはそういう趣旨であろうと理解しております。

階分科員 じゃ、どういう場合が必要に応じてなんですか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますけれども、国賠法上の求償の要件を満たすかどうかという判断がなかなか難しいという場合であろうと考えてございます。

階分科員 そういうことを、結局、当該役所で判断するわけでしょう。そうすると、さっき言ったように、身内だから、かばおうということで、こういう照会をしないというふうに傾きがちじゃないですか。

 だから、必要がある場合と言っているけれども、原則として必要がある場合というふうに考えるべきではないかと思うんですが、ここはどう考えますか。元々このルールを定めた担当だから聞いているんですよ。このルールの本質を聞いているんです。どうなんですか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 実は、この制度、予防司法支援制度に変わってございますけれども、まず、こういった趣旨とか、そういったことをいろいろと周知するとか、そういった必要もあると考えてございます。これにつきましては、法務省さんとも御相談して進めてまいりたいと考えております。

階分科員 法務省の政府参考人にも来ていただいていると思うんですけれども、いらっしゃいますか。

 それで、予防司法支援制度、これは私も当時質問したというのを今日の資料でも配っていますけれども、今回みたいなケースで、今回は財務省は相談しなかったと言うんですけれども、今回みたいなケースで予防司法支援制度を使う、これは全く問題ないですよね。お答えください。

古宮政府参考人 予防司法支援制度と申しますのは、所管行政庁におきまして、その事務についての法律問題について御相談をしていただくというものでございます。

 一般論として申し上げますと……(階分科員「一般論じゃなくて、さっきの本部決定について聞いているんですよ。求償権の話」と呼ぶ)それも含めてなんですけれども、具体的な案件におきまして、予防司法支援制度を利用して相談をする必要があるかどうかということにつきましては、当該事務を所管する関係府省庁で判断される事柄であるというふうに考えております。

階分科員 公務員制度担当の方に言いますけれども、こんなことだったら誰も照会しないですよ。せっかくルールを作ったんだったら、まさに求償権の適正かつ厳格な行使に資するように、法務省に相談しろということを徹底すべきですよ。じゃないと、地方公務員の場合は住民訴訟という手があるわけですよ。求償権を行使しなければ、住民訴訟で行使しろということで言えるわけなんですけれども、国家公務員にはそれがないんですよ。だから、やり得ですよ、これ。そう思いませんか。

 もっと厳しく、この求償権の適正かつ厳格な行使、せっかくルールを定めたんだったら、皆さんのところで守らせるための手だてを講じるべきだと思いますけれども、どうですか。

松本政府参考人 お答えいたします。

 この公務員制度改革推進本部決定、これをきっちり守るという観点からどういうことができるか、それから、予防司法支援制度、これをどうやって活用するか、そういった点も含めまして検討してまいりたいと思います。

階分科員 では、これも先ほどの件と併せて、なるべく早く報告していただければと思います。

 それでは、政府参考人にはここまでとしまして、大臣の方に伺いたいと思います。

 三ページの上段の方に、これは昨日、金田法務大臣の平成二十九年の答弁をおっしゃっていたので、今日、七ページに該当部分をつけています。この答弁があった平成二十九年三月七日の頃は、理財局で公文書改ざんを必死にやっていた頃です。加えて、国会では、佐川理財局長が、近畿財務局と森友学園側の交渉記録は廃棄したという虚偽答弁を繰り返していた頃です。

 私は、この当時、七ページの三段目に書いていますけれども、訴訟リスクがあるのに、交渉記録などをすぐ廃棄するというのはあり得ないという指摘をしていたわけです。同じことを私は、国会だけではなくて、党内の会議に佐川局長が来たときに直接言ったこともあるんですよ。そうしたら、彼が何と言ったか。にやにやしながら、残念ながらないんですよ、こんな言いぶりでした。でも、実際にはあった。私は本当に今でも憤りを覚えています。

 しかも、ちょうどそれから一年後、同じ三月七日の日には赤木さんが自ら命を絶っているわけですよ。私は、一年前のこのときにもっと厳しく佐川氏を追及していればよかったなというふうに思って、今でもちょっと後悔しています。私がこの問題をこれほどまでに執着しているのは、こういうことがあるからなんです。

 大臣にもこうした思いを共有していただいて、ルールはきちんと守る、不都合な情報があっても記録に残す、求められたら積極的に開示する、この三原則を財務省に徹底していただきたいんです。是非、財務大臣のリーダーシップ、発揮していただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 この森友に関する件につきまして、裁判においては認諾をするという、そういうことになったわけでありまして、このことについて、必要に応じて丁寧に御説明をしていく、また丁寧に対応するという旨を今までも国会で答えておりますので、これからも真摯に対応させていただきたいと思います。

階分科員 財務大臣のことは信頼していますけれども、やはり役所に長年しみついた体質というのは一朝一夕では変わらない、やはり大臣の強いリーダーシップがないとなかなか変わらないんだなというのが、私、この間、この求償権を行使しないということについていろいろな資料の提出を財務省に求めてきましたけれども、役所の対応を見ていると、改めてその感を強くしました。本来記録として残っているべきものが、記録が残されていなかったり、出せと言っても、訴訟の関係だからといって出さなかったりとか、そんなことばかりやっているんですよ。全然体質が改まっていないと思うので、私は財務大臣には強く申し上げたいと思います。

 それから、ここまでは手続のことが問題になってきましたけれども、そもそも実体的な問題ですね、すなわち、求償権の不行使という判断をされたわけですけれども、ここに正当かつ合理的な理由があるのかということについてお尋ねしたいと思います。

 大臣は、常々、このことをお尋ねするたびに、五ページの一番上の段の答弁のようなことをおっしゃっているわけですね。求償権を行使しないという判断の理由について、要すれば、国として安全配慮義務を十分に尽くせなかったとしても、それは軽過失であって重大な過失ではないということをおっしゃっているわけです。

 ただ、大臣の答弁を前提にしますと、佐川氏への求償権は国の方に重過失がないから発生しないということなんですが、国賠法の一条二項を見ますと、職員に故意又は重過失があったときに国は求償権を有するということで、職員の故意又は重過失が問題なわけです。ところが、この大臣の答弁を前提にすると、国に重過失がないからという理由で佐川氏への求償権は発生しないということで、ちょっと条文とは論理の飛躍があるんじゃないかというふうに思います。

 だから、私は、佐川氏に故意又は重過失がないとは言えないのではないかと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 私、確かにこのように、国として安全配慮義務を十分尽くせなかったと答弁したわけでございますが、国としてと申し上げましたが、国の職員ですね、それぞれの立場の職員として安全配慮義務が十分に尽くせなかったということでございます。

 そして、重大な過失と故意のことですけれども、私は重大な過失ということしか述べてございませんが、故意につきましては、例えば、赤木さんが、本当に御不幸なことで申し訳ないことでありますが、公務に起因して精神疾患による自死に至るような結果までもあらかじめ認容して一連の様々な問題行為が行われたとは考え難いということでありまして、個々の職員において、求償要件である故意又は、前にも述べておりますけれども、重過失に当たると言うことは困難ではないかな、そんなふうに考えております。

階分科員 佐川氏個人として故意や重過失はなかったと考える理由を御説明いただけますか。

鈴木国務大臣 財務省の調査報告書にもあるように、佐川さんがその方向性を決めて、そして一連の行為が行われたということでありますが、佐川さんのそうした方向性を決めたということが、その時点で、こうした、結果として自死に至るような結果までも認容して一連の問題行為が行われたとは考え難いのではないか、そういうふうに思っています。

階分科員 これはだんだん法律的な議論になってきますけれども、要するに、結果をどれほど予見できたかどうか、予見可能性の話になってくると思うんですね。

 公文書改ざんの方向性を決めたというのはあくまで報告書の表現であって、その後開示された赤木ファイルですと、改ざんの指示をしたということがメール上明らかになっています。改ざんの指示であれば、そこに、指示については故意があることは明らかなんです。ただ、改ざんの指示と赤木さんの自殺という結果との間に因果関係とか予見可能性があったかどうか、これが問題になってくるということで、今大臣がおっしゃったのは、予見可能性はなかったんじゃないかということだと思うんですね。

 ただ、確かに、予見可能性ということであれば難しいのかもしれませんけれども、因果関係があることは明らかです。因果関係があるということであれば、起因した、元々の行為が故意の行為である以上、そこから生じた結果について、因果関係がある限り、求償権の行使、できるのではないか、こういう議論も成り立ち得ると思うんですよ。予見可能性が必ず、必須なのかどうか、ここは議論の余地があると思うんです。

 そこの点についてはいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、佐川さんが方向性を決めて、一連の、あってはならない問題行為が行われたわけでありますが、その時点で、結果として赤木さんが自死に至るまでの結果までを認容して行われたとは思っていないところでございます。

 そして、今、階先生から、改ざん指示と赤木さんの自死の因果関係についてもお話がございましたが、個別の要因がどのように影響したか正確に特定するのは困難である、こういうふうに思いますが、赤木氏の自死の原因は、当時、森友学園案件に係る情報公開請求など様々な業務に忙殺され、本省からの決算文書改ざん指示への対応を含め厳しい業務状況に置かれる中での心理的、肉体的な負荷が原因である、そのように思っているところでございます。

階分科員 今、認容という話をされたと思うんですね。認容ということだと、結果を認容するということは、予見可能性があるだけじゃなく、故意があるということになっちゃうんですよ。そこまでは必要ないんじゃないか。

 私の議論は、元々の行為、改ざん指示という故意の行為と結果との間に因果関係、相当因果関係があれば、結果を認容していたり予見可能性があったりということまで要求しなくても、これは求償権の要件を満たすんじゃないかというふうに考えているわけですよ。

 だから、今の大臣の答弁は、それはあくまで一つの考え方だとは思いますけれども、それが絶対だとは私は思わないんです。ですから、私も、ちゃんと書面で、法律の専門家である法務省と協議をして、ちゃんと、何とか支援制度というのもあるわけだから、それを活用して、協議をして、しっかりとしたペーパーを作った上で説明していただきたいと思うんですよ。

 指示が一因となって亡くなったということは、たしか、請求認諾の書面にもそういうくだりがありましたよ。だから、指示がどの程度寄与したか、結果に寄与したかはともかく、指示が要因となって亡くなっているということは、財務省自ら認めているわけです。因果関係については認めているわけです。あとは、その因果関係がある結果に対して、どこまでの佐川さんの認識を要求するか。私は、因果関係があれば求償権を認めていいと思っていますけれども、そうではないというのであれば、ちゃんとした根拠を法務省と相談して文書で示していただきたい、それをお願いしたいんです。

鈴木国務大臣 求償権のことを決めるに当たりまして、法務省とは継続的にいろいろ接触をして、そして法務省からの専門的知見、そういうものもいただいて、そしてそれを踏まえて、財務省として、財務省の立場で決定をした、こういうことでございます。

 そして、佐川さんの一連の問題行為が赤木さんの自死に至るまでの結果までも認容していないとさっき申し上げましたけれども、それは程度の問題もあるんだと思いますが、私どもとしては、求償の要件である故意に当たるということまで言うのは困難である、そういうふうに思っております。

階分科員 法務省とちゃんと相談しました、それで自分たちで決めましたと言うんですけれども、やはり手続というのもちゃんと踏んでいただきたいわけですよ。先ほど議論したとおり、公務員制度改革の本部決定ということで、ちゃんと支援制度を活用しましょうということもあるわけで、そこをちゃんと法的に議論した文書を出していただきたいというふうに思います。

 それと、佐川氏が、自分にも不法行為責任があるということを自ら自白していると思いますよ。今日、八ページ目につけていますけれども、これは佐川氏が赤木さんの国賠請求訴訟で出している書面なんです。右側の方に、ちょっと見づらくて恐縮なんですけれども、二行目ですか、国家賠償法一条一項の適用がある以上、公務員個人が責任を負うことはないというのが確立した判例であるということを言って、本件において、だから、被告佐川が対外的個人責任を負うとの主張はそれ自体失当、それ自体失当というのは、言っていることがめちゃくちゃだという大変失礼な物言いなんですけれども、こういう、自ら国家賠償法一条一項の適用があると言っているわけですから、自分にも不法行為の責任があるということを言っているわけですよ。

 そういう人が、結局、国賠法の求償権の行使もされずに、一番責任のある人が、何も、お金も何も払わなくて、のうのうと暮らしている。これで本当に財務省の組織は成り立つんですか。真面目に仕事をしてきた赤木さんのような人が、改ざんの指示をされて、最後亡くなっている。他方で、改ざんの指示をした人は、国会でさんざんうそをついて、最後は偉くなって、辞めた後ものうのうと暮らしている。こんな不正義が通る組織でいいんでしょうか。私は、これはおかしいと思います。こんな書面を出してくること自体、失礼だと思います。

 私は、赤木さんのような職員がこれからも活躍してもらうためにも、ここはしっかりけじめをつける、求償権の行使についてもう一回検討していただきたいと思うんです。

 大臣、繰り返しで恐縮ですけれども、これ、今までるる申し述べてきました。私も、何度も何度も大臣とこういうやり取りをするのは心苦しいんです。でも、大臣しかこの財務省の体質を変えられる方はいないと思っているから何度も言うんです。

 求償権の行使について見直す、まずはプロセスからやり直して、ちゃんと法務省に照会して、ちゃんとした文書でもって、求償権の行使についてはどう考えるか、これを出していただく、この約束をしていただけませんか。

鈴木国務大臣 今回の求償権の、財務省として決定をしたわけでありますが、財務省としては、求償権の存否につきまして、訴訟担当部局を中心に組織をもって判断することが通例でありまして、今般も、組織として必要な検討を行った上で、適切に判断したと考えております。

 したがいまして、今までのやり方に沿ってきちんと検討をされた結果である、そういうふうに思っているところでございますので、今のところ、そうした検討結果から出た結果においてはそれを尊重したい、そう思っています。

葉梨主査 階猛君、申合せの時間が来ております。

階分科員 今までのやり方とおっしゃいますけれども、これは前代未聞の案件ですよ。一億一千万、裁判に負けたんじゃなくて、自ら認諾して払う、そしてそれを当の責任者である佐川さんには求償もしない。前代未聞のやり方だから私もここに執着するわけです。前代未聞のやり方なので、私は、これはちゃんとしたプロセスも踏むべきだということで、まずはプロセスをしっかりやり直す、このことを申し上げまして、質問を終わります。

葉梨主査 これにて階猛君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力により、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時二分散会


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