衆議院

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第1号 令和6年2月27日(火曜日)

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本分科会は令和六年二月二十二日(木曜日)委員会において、設置することに決した。

二月二十六日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      金田 勝年君    塚田 一郎君

      平沢 勝栄君    牧原 秀樹君

      奥野総一郎君    藤岡 隆雄君

二月二十六日

 牧原秀樹君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和六年二月二十七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 牧原 秀樹君

      上杉謙太郎君  英利アルフィヤ君

      金田 勝年君    斎藤 洋明君

      塚田 一郎君    平沢 勝栄君

      吉田 真次君    奥野総一郎君

      原口 一博君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    森山 浩行君

      谷田川 元君

   兼務 藤井比早之君 兼務 山田 賢司君

   兼務 山岡 達丸君 兼務 阿部 弘樹君

   兼務 住吉 寛紀君 兼務 平林  晃君

   兼務 塩川 鉄也君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   財務大臣         鈴木 俊一君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   内閣府大臣政務官     神田 潤一君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   会計検査院事務総局第五局長            片桐  聡君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  小杉 裕一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  萬浪  学君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 上村  昇君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 瀧澤  謙君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            川崎  暁君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            野崎 英司君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          高橋 宏治君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 濱田 厚史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 林 美都子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北村 俊博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房政策立案参事官)         金子万里子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮本 新吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 欣幸君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    岩本 桂一君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    青木 孝徳君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    江島 一彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    奥  達雄君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           西條 正明君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           奥野  真君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石垣 健彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           泉  潤一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           斎須 朋之君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           西海 重和君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         菊池 雅彦君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局次長)       小笠原憲一君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 岸川 仁和君

   政府参考人

   (海上保安庁総務部長)  高杉 典弘君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 堀上  勝君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            坂本 大祐君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  塚田 一郎君     斎藤 洋明君

  平沢 勝栄君     加藤 竜祥君

  藤岡 隆雄君     森山 浩行君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     英利アルフィヤ君

  斎藤 洋明君     中川 貴元君

  森山 浩行君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  英利アルフィヤ君   吉田 真次君

  中川 貴元君     上杉謙太郎君

  福田 昭夫君     吉川  元君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     塚田 一郎君

  吉田 真次君     平沢 勝栄君

  吉川  元君     原口 一博君

同日

 辞任         補欠選任

  原口 一博君     谷田川 元君

同日

 辞任         補欠選任

  谷田川 元君     藤岡 隆雄君

同日

 第一分科員山田賢司君、阿部弘樹君、第二分科員藤井比早之君、住吉寛紀君、平林晃君、第四分科員山岡達丸君及び第六分科員塩川鉄也君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算

 (外務省及び財務省所管)


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     ――――◇―――――

牧原主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりましたので、何とぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、法務省、外務省及び財務省所管について審査を行うことになっております。

 なお、各省所管事項の説明は、各省審査の冒頭に聴取いたします。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算及び令和六年度政府関係機関予算中財務省所管について、政府から説明を聴取いたします。鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 令和六年度一般会計歳入予算並びに財務省所管の一般会計歳出予算、各特別会計歳入歳出予算及び各政府関係機関収入支出予算について御説明申し上げます。

 まず、一般会計歳入予算額は、百十二兆五千七百十六億円余となっております。

 この内訳について申し上げますと、租税及び印紙収入は六十九兆六千八十億円、その他収入は七兆五千百四十六億円余、公債金は三十五兆四千四百九十億円となっております。

 次に、当省所管の一般会計歳出予算額は、三十兆二千七百七十七億円余となっております。

 このうち主な事項について申し上げますと、国債費は二十七兆九十億円余、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費は一兆円、予備費は一兆円となっております。

 次に、当省所管の各特別会計の歳入歳出予算について申し上げます。

 国債整理基金特別会計におきましては、歳入歳出いずれも二百二十五兆一千三百八十九億円余となっております。

 このほか、地震再保険等の各特別会計の歳入歳出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 最後に、当省関係の各政府関係機関の収入支出予算について申し上げます。

 株式会社日本政策金融公庫国民一般向け業務におきましては、収入二千二百四十二億円余、支出一千三百五十九億円余となっております。

 このほか、同公庫の農林水産業者向け業務等の各業務及び沖縄振興開発金融公庫等の各政府関係機関の収入支出予算につきましては、予算書等を御覧いただきたいと存じます。

 以上、財務省関係の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第でございます。

 なお、時間の関係もございまして、お手元の資料をもちまして詳しい説明に代えさせていただきますので、記録にとどめてくださるようお願いいたします。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

牧原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま鈴木財務大臣から申出がありましたとおり、財務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

牧原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

牧原主査 以上をもちまして財務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

牧原主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。斎藤洋明君。

斎藤(洋)分科員 自由民主党の斎藤洋明です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、感謝を申し上げます。

 早速質問させていただきます。

 まず、令和六年度の賃上げ促進税制についてお尋ねいたします。

 現在、まさに事業者が、自社が対象になるか否か等について税務署に御相談に行っているところかと思っておりますが、働き方改革というものも予定をされております。そういう中で、来年度から勤務時間の上限、超勤時間の上限規制がかかる建設業ですとか運輸関連産業から、基本給をかなり上げるんだけれども、総収入が、総所得が上がらないので、賃上げ促進税制の対象とならないという回答を受けているという声をたくさん伺っています。

 こうした声を財務省は把握しておられますでしょうかということと、少なくとも働き方改革に係る業種に関しましては、他の業種とは異なる配慮が必要なのではないか。働き方改革の話と賃上げ促進はまた別の話でありますので、そういう配慮が必要ではないかと考えますが、政府の見解をお尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えいたします。

 先生おっしゃったように、建設、運輸の業界の方々から、勤務時間の上限規制が働き方改革で出てくることによって給与総額が減ってしまうという話はお聞きするところであります。となりますと、賃上げ税制が対象外になってしまうということはあるんだというふうに思っております。そういった中、建設や物流の分野におきましても、賃上げについて国交省において取組を進めているということは承知しております。

 今回の賃上げ促進税制の見直しにつきましては、中小企業におきましては、一・五%、二・五%という賃上げ要件及び控除率は維持しつつも、赤字の中小企業にも賃上げのインセンティブとなるよう、繰越控除制度を創設したところでもあります。思い切った強化を行うこととしており、御指摘の業種も含め、幅広い業種において本税制を御活用いただきたいと考えております。

 働き方改革が業種を問わず求められている中、本税制におきまして特定の業種のみに緩和された要件を設けることについては、ほかの業種との公平性の観点から慎重に検討する必要があると考えております。

 政府としましては、本税制の強化のほか、労務費の価格転嫁に関する指針の周知徹底や省力化投資の支援など、賃上げしやすい環境づくりを引き続き推進してまいります。

斎藤(洋)分科員 公平というお言葉がありましたけれども、私としては、実質的な公平さという観点から是非見直しをお願いしたいと思っておりますが、この点については要請とさせていただきたいと思います。

 次に、道路インフラの整備の財源確保についてお尋ねいたします。

 私が問題意識を持っておりますのは、電気自動車です。電気自動車はバッテリーが重いので、一般のガソリン車に比べても重たくなる傾向にあるんですけれども、適用される税制が最も軽いガソリン自動車と同じになっております。道路インフラへの負荷が現に大きいということを考えますと、電気自動車への適用される税制をしっかり議論して結論を出すべきだと思っています。この点について、見解を是非お尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 与党税制調査会におきまして、委員御指摘のような点を含めて議論されております。

 その結果、令和六年度税制改正の与党税制改正大綱においても、日本の自動車戦略やインフラ整備の長期展望、カーボンニュートラル目標の実現への貢献、インフラ維持管理、機能強化の必要性等を踏まえつつ、国、地方を通じた財源の安定的な確保を前提に、受益と負担の関係も含め、中長期的な視点に立って検討を行うこととされているものであります。

 その上で、同大綱におきまして、電気自動車等の普及や市場の活性化等の観点から、原因者負担、受益者負担の原則を踏まえ、利用に応じた負担の適正化等に向けた具体的な制度の枠組みについて、次のエコカー減税の期限到来時までに検討を進めるとされているところであります。

 また、先生御指摘がありましたが、電気自動車がガソリン車の最も低い税率と同じになっているというふうに御指摘されておりましたけれども、自動車税につきましては、税負担の公平性を早期に確保するために、その課税趣旨を適切に踏まえた課税の在り方について、イノベーションへの影響等多面的な観点も含め関係者の意見を聴取しつつ検討すると検討事項が盛り込まれたと承知しております。

 こうした与党での議論も踏まえ、政府としても検討を進めてまいりたいと考えております。

斎藤(洋)分科員 是非、引き続き検討をお願いしたいと思います。

 私も税調でしっかり発言していきたいと思いますが、イノベーションとか、もちろんいろいろな御意見も私も承知をしております。ただ、しっかり本則で税率を定めた上で、政策目的でそれを加減するというのはあるかもしれませんけれども、私は、本則では税率をしっかり、特にEVの普及率が低いうちにしっかり定めておいていただきたいというふうに思っていますので、申し上げます。

 同じく社会インフラ関連で、もう一点質問申し上げます。

 建物、道路、河川、海岸、港湾、様々な社会資本インフラの維持更新の負担が大きくなってきています。国や地方公共団体、もちろん管理者は様々なんですけれども、その維持費はもっと可視化をするようにしていただきたいと思っていますし、また、本来であれば、建設時から維持更新費を積み立てていくような管理が理想であると思っています。維持管理費を新規建設分とは別個に予算確保していくという発想が必要ではないかと考えておりますが、政府の見解をお尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 先生御指摘のとおり、道路、河川、港湾などの社会インフラにつきましては、これらの老朽化等を踏まえ、維持管理を適切に図っていくことが重要となっているというふうに考えています。

 これまでも、こうしたインフラ施設の維持管理に必要な経費につきましては、新規のインフラ建設のために必要な予算とは別に、毎年度の予算において適切に計上してきたところであります。例えば、道路関係予算につきましては、維持管理のための予算が年々増額されておりまして、その重点化が図られているところであります。

 今後とも、関係省庁と連携を図りながら、インフラ施設の維持管理に関する予算面での対応を適切に行ってまいります。

斎藤(洋)分科員 是非よろしくお願いします。

 次、ちょっと視点を変えまして、医師養成課程に関連してお尋ねいたします。

 というのは、今、我が新潟県も医師不足県でありまして、医師養成課程のそもそも在り方の議論をしたりですとか、あるいは地域枠を通じて、公費を投入してでも医師を確保しようということで努力を重ねております。

 国公立であっても私立であっても、医師養成課程にはかなり税金が投入されております。一方で、卒業して医師免許を取得した医師のうち少なくない数の方々が、美容整形外科ですとか、そういう保険外診療の分野に就業されている実態もございます。保険外の診療とはいいましても、例えば、子供の歯列矯正であったりとか不妊治療であったりとか、社会的ニーズが強くて医療費控除の対象となっている分野もあります。その一方で、美容整形などで必ずしも税金の投入の正当化が難しいのではないかと考えられる分野もございます、税金投入というのは医師養成に関してですが。

 そこで、とはいえ、現実にニーズがあることもございます。また、何かコンプレックスですとか、その他の理由で美容整形が必要だという方も当然いらっしゃいます。現実にニーズが存在すること、それから医師にも職業選択の自由があること等と医師養成課程に税金投入していることとのバランスを取る上で、保険適用外の診療を行う医療機関への課税をしっかり強化をしていただいて、医師養成に税金が使われていることとのバランスを図るべきではないかと考えておりますが、政府の見解をお尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 先生御指摘のように、医師の偏在の問題、また、行ってほしい診療科になかなか来てくれないという問題、そういった問題があるんだというふうに承知しております。

 そういった中、医療機関のうち、民間病院である医療法人は、基本的に普通法人と同様に課税しておりますけれども、御指摘の保険適用外の診療を行っている割合の水準によりまして、課税上の取扱いに差が設けられております。

 具体的には、保険適用となる社会保険診療に係る収入金額等の合計が、保険適用外の診療を含めた全収入金額に対して八割以上であることなどの要件を満たした医療法人については、法人税の軽減税率が適用されることとなっております。保険適用外の診療を中心として行っている法人に対しましては、こうした政策的な配慮がなされていないところであります。

 医療機関への課税の在り方につきましては、こうした既存の制度趣旨も踏まえて検討する必要があると考えています。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 現に稼いでおられるところからはしっかりいただいて、それを医師養成課程に投入していくような発想を引き続き取っていただきたいというふうに思います。

 次に、法人税の税率に関しましてお伺いいたします。

 法人税の税率は累次引き下げられてまいりました。ただ、今日、社会保障や防衛費増など、様々財政需要が生じております。私も、現在、現に空前の利益を上げておられる大企業を中心に、応分の負担をできればお願いするべきだと考えております。

 また、かといって、我が国だけが法人税率を引き上げるということは、経済活動が今日グローバル化している中で、他国への企業や人材の流出でありますとか、あるいは日本に企業が進出してこないのではないかという御指摘もございます。それも理解いたします。

 そもそも、国際的な法人税率のいわばディスカウント競争になってしまっては、これは誰も得るものがない不毛な競争になると考えておりますが、これに一定の歯止めをかけるための取組があるかと思いますが、政府の今の取組状況をお尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 令和六年度の与党税制改正大綱におきましては、近年の法人実効税率の引下げが必ずしも実質賃金の引上げや前向きな投資につながらなかったという認識の下、我が国企業の賃上げの促進や供給力の強化のための施策が盛り込まれております。そうした中で、全体のめり張りづけの観点から、賃上げや投資に消極的な企業に大胆な改革を促し、減税措置の実効性を高める観点からも、税収中立の観点からも、今後、法人税率の引上げも視野に入れた検討が必要であるとの記載がなされたものと承知しております。

 今後の法人税率の在り方につきましては、今回の与党税制改正大綱で示された考え方や経済情勢の変化、国際的な動向等も踏まえ検討していく必要があると考えています。

 加えて、国際的な法人税率の引上げ競争に歯止めをかけるとともに、企業間の公平な競争条件を確保することも重要であります。我が国は、OECD加盟国やG20諸国と検討を重ねてまいりました。二〇二一年十月には、BEPS包摂的枠組みにおきまして、第二の柱としてグローバルミニマム課税に関する国際合意が取りまとめられたところでありまして、引き続きこうした取組を進めてまいります。

斎藤(洋)分科員 是非、継続的に取組をお願いしたいと思います。

 国際的な観点で見れば、我が国の法人実効税率、必ずしもそれほど低いわけではないことも承知をしています。ただ一方で、行政需要もこれから膨らんでまいりますし、例えば我が国の国債の格付も低くはありませんが、それは必ずしも日本の財政状況が評価されているばかりではなくて、税率の観点からいけば、まだ日本は税率が将来上がっていくこともできるのではないかという評価も含めての評価だと思っていますので。

 我が国が独り負けということになるのは本末転倒なので、是非そこは、国際的な取組の中で、担税力に応じて大企業にも御負担をお願いするような取組を、私も発言していきたいと思いますし、政府においてもお願いいたします。

 同じ国際的な取組の関連で、もう一点お尋ねいたします。

 今般、プラットフォーマーに対する課税措置が盛り込まれておりましたことは高く評価をさせていただきたいと思います。かねて、私も地元を回っておりまして、プラットフォーマーはいわばインフラにただ乗りしているじゃないかと。電気通信もそうでありますし、配達も、個々の家に配達されるわけですが、それは日本の、我が国の税金で整備をされた道路を使って配達をされていて、それが、イコールフッティングという観点で見ますと、例えば地元の中小商店さんから見ますと、建物も維持して、人も雇用して商売をしている中で、プラットフォーマーさんは本当に身軽に商売ができるという観点で、これは全く公平ではないではないかという指摘を受けていました。

 地元で挨拶回りをしていても、今本当にプラットフォーマーを通じた取引というのは普及していまして、一般の御家庭に行っても、プラットフォーマーの配達のシールが貼ってある箱が玄関に結構あったりして、そういう意味では本当にウェートが増えています。コロナの間に特にプラットフォーマーのその取引に占める割合は増えたというふうに認識しています。そこに対する課税措置がしっかり盛り込まれていることは評価をしたいと思います。

 プラットフォーマーに対する課税の取組は引き続きしっかりお願いしたいと思いますし、まあ税金だけではないんですが、プラットフォーマーに対しても一般企業と同様の取締りをしっかりしていただきたいと思いますが、それに加えて、ここでは、オフショア市場ですとかタックスヘイブンに対してもしっかり課税をしていくことが必要と考えますが、これまた国際的な取組のお話だと思いますが、政府の取組状況をお尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 ちょっと一つ、先ほど私の方から国際的な法人税率の引上げ競争と申しましたけれども、引下げ競争の間違いですので、そこを訂正させていただきます。

 続きまして、先ほどの問いにお答えさせていただきます。

 プラットフォーマーの利用者は本当に増えておりまして、そういった中で、彼らに対する課税というのも、国際多国籍企業に対してどうするかというのは非常に重要な問題だというふうに認識しております。

 軽課税国に所在する多国籍企業グループへの課税の取組につきましては、二〇二一年十月に、OECD、G20、BEPS包摂的枠組みにおきまして、第二の柱として、グローバルミニマム課税に関する国際合意が取りまとめられたところであります。

 グローバルミニマム課税は、法人税の引下げ競争に歯止めをかけるとともに、企業間の公平な競争条件を確保する観点から重要と考えております。

 我が国では、令和五年度税制改正におきまして、グローバルミニマム課税のうち、所得合算ルール、IIRに係る法制化を行うとともに、今般の税制改正においても、国際的な議論の内容等を踏まえた制度の明確化等の観点からの見直しを行うこととしております。

 今後とも、グローバルミニマム課税の世界的な実施に向け、国際的な協調を進めるとともに、必要な税制改正を進めてまいりたいと考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 引き続き、国際的な、企業活動の実態が我が国の国内だけでは把握できない経済主体というのは非常に増えていますので、是非しっかり捕捉をしていただいての取組をお願いしたいと思います。

 今度は、随意契約のことでお尋ねをいたします。それは少額随意契約の上限額の問題です。

 公共工事を行う上で行政が機動的な対応ができる少額随意契約の上限額、これは、例えば地方自治体であれば地方自治法で定められています。その上限額が長年変わっていないということで、できることがかつてよりも減っているという実態が問題になっております。

 国ですら、いわゆる予決令で二百五十万円という上限額が定められています。この二百五十万円という金額は、できたときはそれなりの金額だったかもしれませんけれども、今、御案内のとおり、労務費も材料費も上がっている中で、二百五十万円だと、現場に行って鉄板を敷いて機材を持ち込んだら、それで経費がもうそのぐらいまで来ているというぐらいの水準だと思っています。

 災害時のときは特例もあるという御指摘もあるんですけれども、一方で、災害時でもなかなか、では特例でやるのかやらないのかみたいな議論は常につきまとっています。

 そもそも、この二百五十万円という金額が定められてからの経緯を考えますと、少なくとも、物価が上昇している分については二百五十万円という上限額を引き上げるべきではないか。つまり、実質的にできる量が、仕事の量が変わらないわけですから、そのままだと目減りをしてしまっているわけです。

 ですので、この二百五十万円というのを、価格上昇分、物価上昇分上げるべきではないかと考えますが、政府の見解をお尋ねいたします。

瀬戸大臣政務官 お答えさせていただきます。

 先生おっしゃるように、建設現場において、工事の現場において、労務単価が上がったりとか、特に資材価格が相当上がってきているというお話はお聞きするところでもあります。

 そういった中、国の工事の契約につきましては、予算決算及び会計令の第九十九条第二号におきまして、予定価格が二百五十万円を超えないときは随意契約を結ぶことができるものとされております。

 国の契約の締結に当たりましては一般競争入札が原則でありまして、当該金額の見直しについては、契約の公平性や競争性、透明性を確保する観点から、慎重に検討する必要があるものと考えております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 私も、原則は競争入札によることが大原則だと承知をしています。一方で、余り細かい案件まで競争入札にかけていると、かえってコストがかかって本末転倒という実態もございます。特に地方自治体においては、技術系の職員が本当にいなくなっていて、もちろんそれはそれでしっかり対応しなきゃいけない問題なんですが、コストに見合うだけのリターンがあるのかという観点から、この金額については是非見直していただきたいというふうに思っています。

 例えば、地方自治体においてそういう問題があるのであれば、地方自治法等の方で手当てをするという手もあると思います。と思いますが、一方で、国と並びで決めていますという説明もこれまたありということでありまして、是非御検討をお願いしたいなというふうに思っています。

 また、災害時の特例的な取扱いについても、もう少し周知と、あと分かりやすくしていただけますと、つまり、正直、私の地元でも災害がございますけれども、特例を結局使わないこともあるんですね。二百五十万円、一般市町村ですとこの半分ということですけれども、なので、その辺りも含めて、実態をよく把握をしていただければ大変ありがたいと思います。

 次に、関連の質問を、済みません、他省庁からも政府参考人に来ていただいておりますので、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 まず、能登半島地震の対応でございます。

 生活再建支援金三百万円に加えて、能登半島の六市町を中心に、また、家庭の状況を勘案した上で別途最大三百万円給付というお話がございました。

 一方、これについては様々意見があったところであります。私も、もちろん、能登半島の被害が大変であり、能登半島の支援が最優先の課題の一つだということは認識をしていながら、例えば、我が新潟県におきましても、液状化によってかなり大きな被害が出ているわけです。

 加えて、高齢者の方であったり、障害のある方がいらっしゃるというような要件も非常に重要なんですけれども、本当に、抱えておられる困難というのは世の中様々でございまして、また、子育て中の家庭ということにつきましても、本当に様々な事情がありますので、なるたけ広く御支援をすべきではないかということは申し上げてまいりました。

 今回、総理が石川県に入られまして、その範囲をお広げになりましたことは、評価のできることだと思います。今回の措置は能登地域に限定されていると承知をしておりますけれども、新潟県、今日も新潟市長が上京していただきまして、震災の被害への支援につきまして御要望をいただいておりますけれども、今回対象となっていない新潟県などの地域に対しましても、十分な支援が今後行われるものというふうに期待をしたいと思いますが、そのように理解してよろしいでしょうか。これは内閣府にお尋ねいたしたいと思います。

瀧澤政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省において検討されている新たな交付金制度については、石川県とも調整の上で、能登地域六市町を対象としていると承知しております。

 また、新たな交付金制度の対象とならない地域に対しては、被災者生活再建支援金のみならず、災害による住宅、家財等の損失額に係る雑損控除の前年分適用の特例などの税制上の対応、住まいの再建に資する災害復興住宅融資や災害援護資金貸付け、災害救助法に基づく被災住宅の応急修理、生活福祉資金貸付けの特例、応急仮設住宅や災害公営住宅の整備などの重層的な支援が用意されておりますので、これらの活用を通じてしっかり対応してまいりたいと考えます。

斎藤(洋)分科員 是非、新潟県含め、周辺地域への支援もしっかりお願いしたいと思います。

 線引きが必要であるということは私も理解いたします。財政は、無限に財源があるわけではありませんので。ただ、そういう場合に、線引きをどうするかというのは物すごく難しい問題だと思います。公平感とか、それから、例えば、三百万円にマックス三百万円上乗せをすることができなくても、一律同じ額でもよかったのではないかというふうに私は思わないでもないです。やはり線引きすればコストもかかるし、納得感ということもございます。

 一般に言われますように、幸せな家庭は大体似通っているけれども、不幸な家庭の在り方は様々だという格言もあるぐらいで、どういう困難があるかというのは外からは分からないものであります。ですから、形式要件で線引きすると、どうしても実態に合わない部分が出てくると思います。

 ただ、財源とのバランスも私は重要ではあるとは思っていまして、例えば、今後、もし万が一首都直下型地震があったときに、じゃ、同じ対応を取れるのかとか、もちろんそれはいろいろ考えるべきことはたくさんありますが、ちょっと、この線引きの問題については是非重く受け止めていただきたいと思います。

 最後、線引きの関係でもう一点お尋ねいたします。多子世帯の大学無償化です。

 三子が同時に扶養されているか否かが、それこそ今の線引きでございますけれども、これは不公平感が大きいんですよね。ライフステージによって、家庭によって子供の年齢構成は様々なので、線引きするなら、それこそ、全額は無理でも、一律に一定額を多子世帯に給付をした方が納得感が得られたのではないかなと個人的に思っていますが、この点について、ちょっと時間がありませんので、簡潔に答弁いただけますでしょうか。文科省、お願いします。

西條政府参考人 お答えいたします。

 令和七年度以降の多子世帯における大学等の授業料の無償化については、三人以上の子供を持つ家庭にとって、最も経済的に厳しい状況にあるのが三人同時に扶養している期間であることを考慮いたしまして、財源が限られている中でこのような内容に設定したものでございます。

 今般の支援拡充は、子供が三人以上であっても、その家庭の家計全体として見れば少なくとも一人分以上の授業料を国が負担することとなり、子供二人以下の家庭と比べて過度に不公平な支援とならないように配慮したものとなります。

 また、二人目以降につきましても、意欲ある学生等が家庭の経済状況により修学を断念することがないよう、従来より、給付型奨学金等により所得に応じた支援を行ってきているところでございまして、令和六年度からこれらの奨学金制度の更なる拡充を実施しつつ、着実に高等教育の負担軽減を進めてまいります。

斎藤(洋)分科員 以上で終わります。ありがとうございました。

牧原主査 これにて斎藤洋明君の質疑は終了いたしました。

 次に、住吉寛紀君。

住吉分科員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会・教育無償化を実現する会の住吉寛紀でございます。

 本日は、日本酒振興について質問させていただきたいと思います。

 大臣の地元岩手県でも非常に多くの蔵元があり、インターネットで調べてみると、私も、地元で何げなく飲食店で飲んでいるお酒も、これは岩手県のお酒だったんだなというのがありました。非常に多くの銘柄がありました。また、今回質問のときに、いろいろとそういった蔵元のホームページを見ると、東日本大震災のときに非常に壊滅的な被害を受けて、そこから、ゼロから立ち直った蔵元もたくさんあって、その当時は民主党政権でしたが、大臣も非常にこの再建に御尽力されたんだなというふうに思っております。

 私も、地元兵庫県は大手日本酒メーカーが集中し、全国の約三〇%の日本酒を兵庫県が製造しております。また、地元の姫路市にも多くの蔵元が存在し、重要な地場産業の一つとなっております。また、是非大臣も、兵庫県に来た際には日本酒を楽しんでいただきたいなというふうに思います。

 昔、広島県の西条というところで酒まつりに参加した際には、その小さな町に十万人が訪れ、日本酒の可能性はまだまだあるんだなと感じたところでもございます。日本各地に日本酒の蔵元があり、日本酒の振興、これは地方創生にも寄与するものと考えます。

 このような日本酒の振興というと、私も地方議員をしていた際には、所管が農林水産であったり、また、海外への輸出となると産業の分野、そういったところが所管だったと思いますが、国においては国税庁となっております。少しイメージとは違った印象を持っておりますが、まず、この日本酒振興の所管省庁が国税庁であることの意義についてお尋ねいたします。

鈴木国務大臣 財務省設置法第十九条におきまして、国税庁の任務として、内国税の適正かつ公平な賦課及び徴収の実現というものに加えまして、酒類業の健全な発達が掲げられております。そして、これに基づきまして、国税庁において、日本酒を含む酒類業の振興に取り組んでいるところです。

 これは、酒類は高率の酒税が課せられている財政物資でありまして、酒類業の発達が酒税の保全と密接に関連していることによるものと承知をいたしております。

 引き続きまして、関係省庁と連携をしつつ、日本酒を含めた酒類業の振興に向けて必要な施策を実施してまいりたいと考えております。

住吉分科員 ありがとうございます。

 これまでの歴史的経緯であったり、酒税と関連して国税庁が主管省庁であるとのことですが、特に酒税との関連が重要であると思います。

 明治時代には、清酒製造は国の税源として非常に重要な位置を占めるようになり、一八九九年には地租を抜き、酒造税が初めて国の税収の第一位に上り詰めます。以降、昭和初期までは、酒造税というのは所得税らと一位、二位を争う税収となり、かつて酒造りは国の財源を支えていたと言えます。

 このように、日本酒の消費が活発になると国の財政にとって非常にいい効果をもたらすわけですが、国税庁の酒レポートで、日本酒の消費というのは、昭和四十八年度のピーク時から、令和元年度には三割以下まで大幅に減少しております。

 このような状況を打開し、日本酒の消費を拡大させるためには、日本酒の振興、これが重要であるということは言うまでもありませんが、これまでの取組と成果について政府の見解をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 住吉先生御指摘のとおりに、日本酒につきましては、課税数量がピーク時の三分の一以下になるなど、国内市場が縮小をしております。

 そうした状況の中で、商品の高付加価値化や海外需要の取り込み等に取り組む事業者が増加をしております。国税庁は、こうした事業者の積極的な取組に対して補助金等の支援を行っておりまして、例えば、日本酒を含む日本産酒類の輸出額は、昨年までの五年間で、二倍以上の一千三百五十億円に増加をしております。

 引き続きまして、国税庁において関係機関と連携をしながら、国内外の新規の需要開拓への支援など、酒類業の振興に取り組んでまいりたいと思っています。

住吉分科員 ありがとうございます。是非取り組んでいただきたいと思います。

 ちょっとこれ以後の質問は少し細かい点になるので、大臣への質問はここまでになります。委員長のお許し、よろしければ、御退席いただいて結構です。

牧原主査 鈴木財務大臣は御退席いただいても結構です。(鈴木国務大臣「おります」と呼ぶ)

 おりますということです。

住吉分科員 はい、分かりました。

 では、実際の取組の、ユネスコ無形文化遺産への登録についてお伺いしたいと思います。

 伝統的酒造りが、ユネスコ無形文化遺産への登録、これを目指して、本年十二月頃にも結果が出るというふうに聞いております。

 二〇一三年に和食がこのユネスコ無形文化遺産に登録され、日本食レストランが海外にもたくさん進出したり、また、海外の、外国の方が和食を学んで実際に海外にお店をオープンする、そんな事例もたくさん出てまいりました。

 観光庁の二〇二二年訪日外国人消費動向調査によりますと、訪日外国人が訪日前に期待していたことについて、日本を訪れるときに何をしたいですかということについて、日本食を食べることと回答した人が七八・三%と非常に多くなっております。また、日本食と相性のいい日本酒の需要というのは、これはますます高まっていくのではないかと思っております。実際に、訪日外国人の約三人に一人は、日本酒を飲むことが訪日の目的と回答もしております。これがユネスコ無形文化遺産にもし登録されると、より知名度が高まるのではないかと期待しております。

 伝統的酒造りのユネスコ無形文化遺産への登録について、これまでの取組と、期待する効果について政府はどのように認識しているのか、御所見をお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の伝統的酒造りにつきましては、国税庁では、文化庁や、この技術の保持団体であります、日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会と連携をいたしまして、ユネスコ無形文化遺産への登録を目指しており、文化審議会の選定を経まして、政府としてユネスコに現在提案中でございます。当該提案につきましては、ユネスコにおきまして、令和六年十二月に審議、決定見込みと承知をしております。

 そのため、国税庁といたしましては、酒造りの担い手や有識者を交えたシンポジウムの開催等、ユネスコ無形文化遺産への登録に向けた機運醸成の事業を文化庁等と連携して実施しております。

 伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録された場合には、世界の多くの方々が日本の伝統的な酒類に親しみ、日本の食文化等に関心を持っていただく契機になると考えております。さらに、日本の酒文化や技術の継承、発展につながるほか、地域の活性化にも資するものと考えておりまして、登録実現を目指して、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

住吉分科員 ありがとうございます。

 是非登録に向けて御尽力いただきたいと思いますし、和食が登録されてから、かなり和食というのが世界的にも、和食ブームといいますか、日本食ブームが起きたと思っております。そういった意味で、伝統的酒造りが無形文化遺産に登録されるということによって、より海外からのニーズが高まると予想され、ますます日本酒のニーズが高まっていく、それはすなわち輸出なんかも期待されるのではないかなというふうに思っております。

 それに関連して、日本酒の海外輸出の促進についてお伺いしたいと思います。

 日本酒の輸出の歴史は古く、朱印船貿易により、東南アジア各地につくられた日本人町や、その国の王族などへ輸出されておりました。今では、インターネットを通じて気軽に注文もできるようになりました。

 そのような日本酒の輸出ですが、日本酒造組合中央会が二月八日に発表した輸出実績によると、二〇二二年度まではかなりぐっと輸出金額というのが上がっていたわけですが、二〇二三年度は輸出総額が昨年比八七%と低下しております。

 このように堅調だった日本酒の輸出が昨年減少した要因について、政府の御所見をお伺いいたします。

    〔主査退席、金田主査代理着席〕

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 日本酒の輸出金額につきましては、近年堅調に増加しておりましたが、二〇二三年は四百十一億円となりまして、二〇二二年の四百七十五億円から一三・五%の減となっております。こうした輸出の減少は、諸外国における物価高等に伴います嗜好品の買い控えや、米国における長引く在庫調整等の影響などによるものと考えております。

 今後とも、農林水産物、食品の輸出拡大を図る政府全体の方針を踏まえまして、事業者に対する販路拡大支援、日本産酒類の認知度向上に向けた取組等によりまして、輸出先の多角化等の課題にも対応し、日本酒を始めとした日本産酒類の輸出促進に取り組んでまいりたいと考えております。

住吉分科員 アメリカの在庫調整という話もございましたし、ちょっと今手元にあるデータで、輸出金額第一位だった中国というのが、前年比、二〇二二年度比で、昨年は八八%と非常に下がっているというようなことも要因かなと思っております。

 今後の課題として、アメリカや中国以外への販路拡大の必要性というのは私も感じているところであります。

 特に中国は、例を挙げると、二〇一〇年に尖閣諸島近海で密漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりしたときに、海上保安庁が船長を逮捕したその報復として、レアアースの対日輸出を途絶した過去もございます。また、原発処理水を口実に海産物の輸入を拒むなど、ある意味唖然とする対応を取っている。そのような国に依存することというのは、リスクが大きいというのは明白です。

 日本だけでなく、オーストラリアも、武漢の新型コロナウイルスの発生源の調査を求めたことへの報復で、ワインの輸出を事実上禁止されております。

 リスク分散の観点からも、今後、アメリカ、中国以外への販路拡大への必要性があると考えますが、具体的な取組についての御所見をお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二三年のアメリカ及び中国への日本酒の輸出につきましては、景気動向やアメリカにおける長引く在庫調整等の影響によりまして、二〇二二年と比べて一割以上減少しております。

 こうした現状を踏まえまして、既に輸出額が大きい国、地域だけではなく、輸出先の多角化の観点から、今後輸出の増加が見込まれる国、地域を対象にした取組を充実させることが重要と考えております。

 今後とも、事業者に対する販路拡大支援、日本産酒類の認知度向上に向けた取組等によりまして、輸出先の多角化等の課題に的確に対応し、日本産酒類の輸出促進に取り組んでまいりたいと思います。

住吉分科員 リスク分散の観点からも非常に重要だと思っております。

 先日、二月二十四日、読売新聞オンラインにはこんな記事もございました。「人気の日本酒がEUで「禁輸」危機」ということで、EUの方で、二〇三〇年以降、日本酒輸出を禁止する検討を進めているというものです。EUというのは非常に魅力的なマーケットの一つでもあり、そこに輸出できないとなると、今後の大きな懸念点かなというふうに思っております。

 これはなぜそうなっているかというと、御存じだと思いますが、EUが瓶や缶の再利用や再資源化を義務づける規制案を三月にも成立するとの見通しで、現地で瓶を洗って再利用するのが難しい日本酒は禁輸の対象となるというふうに記事で書いておりました。

 この件に関してもいろいろ尽力されていると思いますが、是非、日本酒の振興のためにも、EUは大きな、魅力的なマーケットの一つですので、日本酒の禁輸の除外といいますか、それに向けても全力で尽力していただきたいということを強く要望しておきます。

 また、現地生産についてもお尋ねしたいと思います。

 酒造会社の中には、カリフォルニア等で米を栽培し、現地で日本酒を生産する取組を進めている会社もあります。このような現地生産の取組は、輸送中の商品の鮮度低下が発生しない、また、カリフォルニアの米と水でアメリカ人の好みに合う酒を造れるといったメリットがあるとのことです。私も、そういった地元の酒造会社に行くと、こんな話をされました。

 このような現地生産に関して、現状、何らかの支援等を行っているのか、また、今後の方向性について政府の見解をお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 日本酒の現地生産につきましては、個社において意欲的に取り組まれていることと承知をしております。

 国税庁におきましては、農林水産物、食品の輸出拡大を図る政府全体の方針を踏まえまして、日本産酒類の輸出支援策といたしまして、海外の大規模展示会への出展支援、補助金による海外展開の支援等を行っているところでありまして、令和六年度予算に、酒類業振興関係予算といたしまして十四・六億円を計上しているところでございます。

 今後とも、関係省庁と連携いたしまして、酒類業の振興に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

住吉分科員 日本酒が世界でも認知が増えてくると、日本酒を飲んだり、酒蔵を回りたいという外国人が増えてくると思われます。

 そこで、次に、酒蔵ツーリズムについてお尋ねいたします。

 私も、学生時代に、アイルランドのウイスキー蒸留所やビールの醸造所を回りました。非常に見どころがあり、楽しかった記憶がございます。また、カリフォルニアにナパバレーというところがありますが、ここは多くのワイナリーが建ち並ぶカリフォルニアワインの産地であり、ワイナリー巡り等のワインツーリズムによる観光振興で成功した地域として世界的に有名なところです。

 酒蔵ツーリズムは、酒蔵のみの観光にとどまるのではなく、周辺地域の観光施設を巻き込むことに加え、飲酒の機会提供により地域への宿泊を促すなど、地域にお金が落ちるという意味で地域振興にもつながると考えております。また、訪れた人が再度日本を訪れたり、自国で消費することにもつながる可能性があります。

 二〇二五年は大阪・関西万博も開催され、日本全国の酒蔵を巡るというのは非常に魅力的なコンテンツにもなり得ると思っております。そのような酒蔵ツーリズムの意義について、政府の見解をお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 酒蔵ツーリズムは、国内の酒蔵や観光資源等を巡って楽しむことができる周遊、滞在型観光でありまして、日本産酒類に対するインバウンド需要の取り込みのみならず、海外への日本産酒類の輸出拡大にも資することから、酒類業の振興や地方創生に向けた重要な取組であると認識をしております。

住吉分科員 非常に重要な認識であるということを伺いました。

 これから大きな可能性のある酒蔵ツーリズムですが、政府として酒蔵ツーリズムの活性化のためにどのような支援を行っているのか、お伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきましては、酒類事業者向けの補助金であります日本産酒類海外展開支援事業費補助金によりまして、酒蔵自体の観光化に向けた取組や地域における酒蔵ツーリズムのプランの策定等につきまして支援を行っているところでございます。

住吉分科員 是非酒蔵ツーリズムの振興に向けて引き続き御尽力いただきたいなと思うんですが、この酒蔵ツーリズムは知名度がいまだに低いのが現状です。どんなにすばらしい酒蔵ツーリズムを開催しても、ターゲットの目に留まらなければ、地域活性化につなげられません。

 実際に、令和二年度「酒蔵ツーリズムの現状と課題」調査報告書、これは日本酒蔵ツーリズム推進協議会が出したものですが、ここでも、効果的な情報発信ができていないとの意見があったりします。

 このような現状に鑑みて、国として情報発信にどのように取り組んでいくのか、特に海外に向けてどのように取り組んでいくのか、政府の見解をお伺いいたします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきましては、日本産酒類や酒造りの魅力を世界に広めていくために、小中学校の外国語指導助手、これはALTと言っておりますが、このALTや留学生等を対象とした酒蔵見学会を開催しているところでございます。

 今後とも、こうした取組によりまして、参加者による母国への情報発信等を通じて、日本産酒類や酒造りの魅力を世界に発信し、輸出拡大やインバウンド需要の取り込みに取り組んでまいりたいと考えております。

住吉分科員 ありがとうございます。

 ALTの方々が実際に酒蔵を回ったりして、またそれを写真に載せてSNS等で発信することによって、ほとんどコストもかからずに世界に発信できるというのは非常に有意義な取組だなと思っております。是非、そういった取組を、ALTに限らず、様々な方々にも御協力いただいて、日本酒の魅力というのを世界に発信していただいて、そして日本酒振興に寄与していただく、取り組んでいただけたらなというふうに思っております。是非よろしくお願いいたします。

 そして、日本酒ブームが到来すると、これは到来してほしいという希望ですが、より多くの訪日観光客がこれから期待されます。そこで、最後に、免税店のリファンド型の導入についてお尋ねいたします。

 この件に関しましては、昨年の三月の十日の衆議院財務金融委員会において我が党の岬麻紀議員が質問しております。

 現在、訪日外国人は、免税店で消費税を免税された価格で商品を購入することができます。しかし、このような制度を悪用してといいますか、この制度では不正な転売行為を引き起こす、そういう原因となっております。安価に購入した税金のかかっていない商品が国内で転売されることによって、免税のそもそもの目的がゆがめられております。

 岬議員は、その委員会で、逃げ得を許しかねない現在の免税制度の課題が浮き彫りになっており、消費税を強制的に納付させることが難しい、また、免税店の店頭でこれが免税の対象のお客様かどうかをしっかり確認するのは、免税店の方の負担、マンパワーとしての負担が非常に大きい等の問題点を指摘いたしました。

 そして、海外では一般的に採用されている方法、これは、商品購入時に消費税を払って、出国時に商品を確認した後で税金を返金する仕組みであるリファンド型、これを提案しました。これにより、不正な免税販売を防ぐことが期待されると思います。

 このリファンド型の導入に関する検討状況について、政府の見解をお伺いいたします。

青木政府参考人 お答えします。

 外国人旅行者に対する免税制度につきましては、御指摘をいただきましたように、免税購入品を国外へ持ち出さずに国内で横流しするといった不正が行われている状況が明らかになっております。

 こうした状況を踏まえまして、与党の税制調査会で昨年末御議論をいただきました。出国時に税関において免税購入物品の持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度へ見直す方針が、令和六年度の与党税制改正大綱において示されたところでございます。

 この見直しによりまして、現在行われている不正に厳正に対応していくこととしておりますが、他方で、新制度の検討に当たっては、与党大綱にも示されておりますとおり、外国人旅行者の利便性の向上や免税店の事務負担の軽減にも十分に配慮しながら、空港などでの混雑防止の確保を前提とするということが必要であるというふうにされておりまして、今後、この大綱に沿いまして、関係省庁や関係団体などとも連携を行いながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

住吉分科員 是非進めていただきたいと思います。

 懸念点、観光客の利便性の向上であったり、免税店の事務負担などが挙げられましたが、実際に海外ではこのやり方で運用されていることですので、大きな問題はないのかなというふうに考えております。それよりも、かなりの額が不正で徴収できていないという方が私は大きいのかなと思っております。それを防ぐ手だてがほかにあるのであればそっちでもいいんですが、現時点ではこのリファンド型というのが最適かなというふうに思っておりますので、是非検討を加速させていただきたい、このように要望して、少し早いですが、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

金田主査代理 これにて住吉寛紀君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)分科員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の阿部弘樹でございます。

 今日は、主に資金運用あるいは金融教育のことについてお尋ねしたいと思っております。

 日本の株式市場あるいは米国の株式市場は、近年まれに見る好況を来しております。史上最高値という呼び声もあるわけでございます。

 まず最初に、私は、今の好景気が未来永劫続いていくとは考えておりません。有名な投資家のウォーレン・バフェット氏、バークシャー・ハサウェイを率いるウォーレン・バフェット氏は、昨日このようにコメントしてあります。今、手元の現金水準は過去最高を更新している、つまり、アメリカの国民は既に、この好景気がずっと続くのではなく、値下がりすることを含めて、現金に換えて、そして現金を持って様子を眺めるということであるというふうに、今朝の日経新聞の番組でもお話があっておりました。

 また一方で、ウォーレン・バフェット氏は、いろいろな思惑があって発言してあると思いますが、目を見張るような業績を達成できるような有意義な案件はない、もう既に買い尽くされているというような発言もしてあるわけでございまして、それが、投資家でございますから、その発言で市場が何らかの影響を受けることも想定しながら発言してあると思いますから、一〇〇%うのみにはできない、そのように思うわけでございます。

 しかし、私は思います、ははあと。アメリカの国民は預貯金をするよりも消費を優先する、そして、何よりも、投資というものに国民全てが非常に造詣が深いんだなということをいろいろな番組やネットの情報で知ることとなったわけでございます。ですから、後に、金融教育、学校現場での金融教育や、NISAが始まりますから、国民に対する金融教育、そのことについてのお尋ねもいたします。

 いつもいつも相場がいいわけではありません。相場はいいときも悪いときもある。ですが、知識があることが、その相場で損益を来さないこと。通常の相場では、九割の投資家が損をするというふうに言われております。では、一割の方々がどうやって相場で得をするか、利益を上げていくか。それは、ある意味では、何年もかけて情報を得ていること、知識があること、そして情報があることが、その投資家の利益につながっていっているのではないかと私なりには解釈するわけでございます。

 財務大臣がいらっしゃいますので、余り財務大臣の前で、釈迦に説法であるというのは申し訳ないことでございますから、財務大臣に余り質問しませんので、どうぞ御安心ください。

 まず、私は厚生労働省にお聞きしたいと思っております。

 GPIF、本当に現在の相場で非常に多くの利益を得て、そして一時期、国民がGPIFに預けていたのに損をして、我々の年金がもらえるのだろうかと。若者の年金加入率も非常に下がってきたことを報道などで知りまして、みんなが不安に感じていたのが、最近は、この好景気、相場が非常にいいものですから、GPIFの第三・四半期の運用結果は五・七兆円、累積でも百三十二兆四千億円ですかね。これは本当に国民にとって、つまり年金を受給される方々にとっては非常にありがたいことだというふうに承っておりますが、このところを御説明いただけますでしょうか。

    〔金田主査代理退席、主査着席〕

泉政府参考人 お答えいたします。

 GPIFにおきます年金積立金の運用実績につきましては、ただいま委員御案内のとおり、足下、二〇二三年度の第三・四半期におきましては、収益額プラス五・七兆円、収益率はプラス二・六二%となっております。二〇〇一年度の自主運用開始から二〇二三年度第三・四半期までの累積では、収益額はプラス約百三十二・四兆円、収益率はプラス三・九九%となっており、長期的にも運用収益を着実に積み重ねているところでございます。

 年金積立金の運用は、市場の一時的な変動に過度にとらわれることなく、長期的な観点から行うことが重要であり、引き続き、GPIFにおいて、長期的な観点から安全かつ効率的に運用を行っていくことが重要であると考えております。

阿部(弘)分科員 もう少し答弁いただいても構わなかったんですが。

 三・九九%というのは、市場原理からすると相当の高い値でございます。株の加重平均、利益率を考えましても、四%というのが非常に、最高値でございます。それに近づく三・九九%を運用してあるというのは、過去、二〇〇一年、二年、まだ基本的ポートフォリオを作っていらっしゃらなかった、国内株を重視されてあったときの運用方法では、運用が五十兆のときに三兆円ですか、非常に損失を上げた。そのときには、国民世論から、国民から非常な、あるいはマスコミからも批判を浴びたわけでございますが、基本的なポートフォリオをどのように変更していかれたのか、お聞きしたいと思いますので、お答えいただけますでしょうか。

泉政府参考人 恐縮でございます。

 ポートフォリオにつきましては、現在のポートフォリオの構成でございますけれども、国内債券二五%、外国債券二五%、外国株式二五%、国内株式二五%と、四資産区分につきまして、それぞれ二五%ずつの配分となっております。これにつきましては、過去、いろいろ経緯がございまして、変動があったわけでございますが、今、現状においてはそのような配分となっております。

 今後も適切なポートフォリオを通じまして、安定した運用に努めてまいりたいと思っております。

阿部(弘)分科員 年金のお役人の方に余りポートフォリオのことを聞くのもお気の毒だとは思いますが、やはり外国債券、アメリカ株を中心とする債券と、このところの円安が、インカムゲインの累積につながってきたのではないかというふうに考えておるわけでございます。

 そういう分析については、日常の業務の中でいろいろ報告などがありますか。

泉政府参考人 運用の詳細につきましてはGPIFの方で担当しておりまして、所管官庁といたしまして詳細な説明は控えさせていただきたいと存じますが、一方で、直近の足下の第三・四半期の運用実績につきましては、国内外の株価上昇及び金利の低下に伴う債券価格の上昇によるものだと承知しております。

阿部(弘)分科員 そうなんですよ。

 泉審議官は、様々な業務、例えば国会対応も様々ありますから、このGPIF、例えばリファレンスポートフォリオの質問をいろいろすると、専門用語については分からないことがあるやに思いますので私も質問はしませんが、様々な用語、あるいは、短く、頭文字を取っただけの用語もございますが、そういったことについてのレクチャーは審議官にもありますか。

泉政府参考人 恐縮でございます。

 所管の官庁又はGPIFを担当する職員として、日頃研さんに努めさせていただいておるところでございますけれども、こうした場での皆様方への御説明では、なかなか至らないところも多いかと存じます。しかし、努力はしてまいりたいと存じております。

阿部(弘)分科員 いや、責めているんじゃないですよ、責めているんじゃないんです。ほかの業務を、お役人、官僚ですから、いろいろな業務を回られて、そして今は年金担当の審議官だから、速やかにそのことを学ばなきゃいけないというところで、深く、こういう運用などについては、GPIFの運用については専門家に任せながら、そして四半期ごと、あるいは折を見て説明を受けるというのが現状だと思います。

 では、このように好景気になってきたら、マクロ経済スライドという言葉がありますが、それを早期に開催されますか。

泉政府参考人 お答えいたします。

 賦課方式で運営いたします我が国の年金制度におきまして、積立金は、より少子高齢化が進んだ将来の年金給付に充てるために必要な原資でございます。現行の年金制度は、持続可能性の観点から、現役世代の負担に上限を設けた上で、積立金を活用しつつ、マクロ経済スライドなどにより長期的に給付と負担がバランスする仕組みを採用しております。このため、積立金運用による運用収益の増加は、マクロ経済スライドによる調整期間の短縮を通じまして、将来の受給者の給付水準の改善に資するものとなっております。

阿部(弘)分科員 分科会の趣旨からすると厚労省ばかりであれですけれども、国民は非常に期待しております。期待しておるというのは、マクロ経済スライドによって年金額が上がるかな、あるいは不安が払拭されるかなと。年金の加入率についても、より若者が年金に加入しようという気持ちになってくるかなというふうに思いますので、是非ともその辺をよろしくお願いしたいと思いますが、上がりそうですか、年金。まあ、それは審議官はお答えできないですね。

 このポートフォリオについては、その時々でもう少し考えれば、もっと利益が上がったのかなというふうに思いますが、次の質問に入っていきたいと思います。

 では、金融庁にお尋ねいたします。

 こういう金融商品については、様々なハイリスク・ハイリターンなものがあります。そして、伝統的な、オルタナティブな債券もあるわけでございます。

 今回、私は、仕組み債やあるいはヘッジファンドについてお伺いしていきたいと思いますが、その仕組み債なりヘッジファンドについて分かりやすく解説ができますでしょうか。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 仕組み債は、通常の債券とは異なり、株価指数、為替などを参照指標とし、それらの状況によって償還金額が変化する仕組みを有する投資商品でございます。通常の債券よりも利回りが高い反面、参照指標の状況によっては償還金額が元本割れとなるリスクがございます。また、一般的に、仕組み債は、購入する際に金融機関に対して支払う手数料が他の金融商品と比べて高い傾向がございます。

 あと、為替のヘッジの関係でございますけれども、ヘッジファンド等も含めて為替のヘッジ等を活用して運用しておりますが、海外の債券に投資する際に、外貨建てで運用を行われるために、為替相場の動向次第で、円換算した際の資産価値が変動することになります。

 したがいまして、外貨建ての資産を運用する際に為替ヘッジを行うケースというのがございますが、メリットとしては、一般的に、将来取引する為替レートをあらかじめ予約しておくこと等によって、為替変動リスクを低減することができます。

 一方で、為替ヘッジを行った場合、例えば円の金利が対象通貨の金利よりも低い場合は、金利差相当分のヘッジコストが手数料として加算されるであるとか、円安時の為替差益を享受できないといったデメリットがございます。

阿部(弘)分科員 この議論というのは国民が知るところになりますので、ヘッジという言葉は日本語で訳すとどういうふうになりますか。

野崎政府参考人 いろいろな用語があると思いますけれども、リスクヘッジという場合には、リスクを回避する行動というふうに認識しております。

阿部(弘)分科員 何でも証券の用語を日本語に直すというのは慣れない作業でしょうけれども、回避ですね。回避あり、回避なしということで、通常は、私ども、ヘッジありにしますか、なしにしますかとお問合せがあった場合には、大体、証券会社の方々はなしというふうに。

 なかなか、日米金利差が今五%もありますから、四%から五%、そして、円安も、百五十円後半から、更に百五十三円まで上がるのではないかという評論家の意見もあるわけでございますから、こういう日米金利差、十年物債券でも、日銀も様々なアナウンスをしているのは承知しております。当座預金も、金利も三つの金利がございますから、その中の一番安い、〇・一%をどのように変えていくのかというのを非常に私も興味深くうかがっておるわけでございます。

 ちょっと、先物取引は、金融庁、通告ないですけれども、お答えできますか。デリバティブ。

牧原主査 定義ということですか。

阿部(弘)分科員 ええ、用語の説明。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、株や為替の先物という場合に、一定程度先の、現時点のレートではなくて、先のレートというものを予測して、それについて売買を行う取引を先物取引というふうに申します。

阿部(弘)分科員 デリバティブ、オプション取引というのもございますね。オプション取引というのを、用語をちょっと説明いただけないでしょうか。

野崎政府参考人 お答え申し上げます。

 オプションと申し上げますのは、一定の権利ということでございまして、例えば、一定期間たった三か月後とかにその価格で買う権利というものを売買するものでございまして、それを行使して実際に買うこともあれば、それを行使せずに、手数料だけ支払って行うというような取引もございます。

阿部(弘)分科員 このように、デリバティブの先物取引やオプション取引、お金がないときには、手元資金がないときにはそういうものを使うということで、将来を見通せなく、非常にリスクの高いものだというふうに私は感じております。

 自己資本がない、自己資本比率が非常に低い団体が大きな株取引を行おうとするときには、こういうデリバティブな先物取引やオプション取引を行っていく、また、ハイリターンを願うために、ヘッジありの商品に手を出していく。年金機構は、年金という原資がありますので、多くの自己資本があるわけでございます。

 では、次、質問いたします。大学ファンドについてお伺いいたします。

 大学ファンドは、政府からの基金、支払い金と、多くは財政投融資からの借入れでございますから、自己資本が非常に低いファンドであります。

 二二年の運用実績を見ますと、千二百億円余りの損益を出してある。千二百億円ですよ。この景気がいいときに、活況を来しているときに千二百億円も赤字を出して、本来の、大学の研究強化とか大学を支援していくような、アメリカのハーバードやスタンフォード大学などの大学のファンドをモデルにされたと思いますが、大学を指定して応援する前に、お金が枯渇してしまうんじゃないですか。何でそのような千二百億円余の損益を出したのかをお伺いいたします。

奥野政府参考人 お答え申し上げます。

 大学ファンドの運用結果につきまして、委員御指摘の点でございます令和四年度につきまして、令和四年度末時点の保有資産の時価評価に係る評価差額につきまして、マイナス千二百五十九億円が計上されているとおりでございます。

 お尋ねのこの要因といたしましては、大学ファンドが運用の立ち上げ期であることに加えて、御指摘のとおり、価格変動の激しい市場環境下におきまして、JSTにおきましては、運用立ち上げ期に取得いたしました債券等の安定資産から慎重に運用を行ったため、債券の金利上昇等の影響を受けて、保有資産についてこのような運用結果となったものと承知しております。

 また、委員御指摘のとおり、大学ファンドの第一の責務は、大学に対する助成財源を確保することでございます。

 この点につきましては、大学への助成につきましては、毎年度のいわゆる損益計算におきまして、その損益計算で確定した利益剰余、いわゆる債券の金利でございますとか株式の配当若しくは売買益等から充てる仕組みとなってございます。

 こちらにつきましては、令和四年度末時点において、助成可能額としては通算で六百八十一億円、これは利子等の実現益が確保されておるからだと思います、こちらを確保しているところです。

 引き続き、収益率につきましては、JSTにおきまして、令和十三年度までに、運用目標でございます三%プラス長期物価上昇率を達成することを求めてございますので、そのための資産構成の構築を目指して取り組んでいただきたいと考えておるところでございます。

阿部(弘)分科員 一生懸命取り組んでありますので、そして、まだ基本的ポートフォリオができていないところで、このような大きな損益を出している。でも、僕は、いろいろなものを、公開してありますから見ておりますよ。そうすると、こういう運用委員会、資金を運用する委員会にそういう専門家がいないというのが問題なんじゃないですか。市場の経済評論家などは、素人集団みたいにおっしゃってあります。

 千二百億円といったら、今話題になっている裏金をはるかにしのぐお金でございますよ。大いに反省というか、会社でいえば、これは刑事罰に相当するぐらいの損益でございますから、猛省を促したいというふうに思っておるわけでございます。

 でも、確かにこのことが難しいのはよく私自身も分かっておりますが、ただただ、日本総研の方なんというのは、基本的ポートフォリオの期間、三%なり四%なりを目指すというのは、さっきお話ししましたでしょう、GPIFでさえ三%ぐらいですから、なかなか難しいんですよ。高い数値を目標数値にしてあるところから見ても、資金運用については非常に問題だ、素人だというふうな世間の批判を浴びている。

 そして、先行した大学が、一つの大学しかまだありませんけれども、この理事を見ていたら、理事の中の出身大学、二人も入ってありますけれども、そういったところがないのかなと思いながらも、東大、京大が何でないのかなと。僕は、東大、京大でも何でもないですよ、地方の田舎の大学を出ておりますけれども、そういうことも思ったりするものですから、是非とも頑張ってほしいと思います。

 金融教育についてお伺いします。

 このような好景気でありながら、ウォーレン・バフェットさんは、今投資することについてのいろいろな意見を言ってあります。そういうことを含めて、アメリカの国民性は、先ほども言いましたように、貯蓄よりも投資だというふうに番組では申してありました。

 では、まず、学生への投資教育、金融教育というものはどうあるべきだというふうに思われますか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、児童生徒がその発達段階に応じて金融に関する基本的な仕組みや考え方を身につけられるようにすることが重要だと考えております。このため、金融に関する内容につきましては、学習指導要領に基づきまして、小中高等学校において必要な内容を指導するとともに、専門的な観点から金融機関の担当者や大学教授等を学校に招き、必要に応じて実践的な教育を行っております。

 また、これまで、指導を担う教員への支援も行っておりまして、金融庁が作成しました指導者向けの金融教育に関する教材等、こちらを各教育委員会等に対して紹介、周知を図ってきております。また、金融庁と連携しまして、金融教育の推進を行うため、解説動画や情報発信を実施しているところでございます。

阿部(弘)分科員 NISAも始まりましたし、NISAも二種類あって、非常に国民も投資に対する関心が高まっておるところでございます。

 私は、今の番組の受け売りでございますが、中国株、中国からのお金が流入していく、あるいは円安で割安感があるから、日本の好景気、株式の上場を来しているんだというような言い方もあります。

 最初にお話ししましたように、九割の方が投資で損をすると言われている。そういう中で、国民に対する金融教育というのはどのようにお考えでございましょうか。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、新しいNISAの開始などを契機にしまして、新たに投資を始められる方あるいは投資を増やされる方も多くいらっしゃるものと承知をいたしております。

 国民一人一人が生涯にわたって豊かな人生を送るためには、老後や人生の様々なステージに必要となる資金を確保するために安定的な資産形成の取組をしていくことが重要であると考えております。

 他方、まさに委員御指摘のとおり、投資はリスクを伴うことなどを踏まえますれば、金融経済教育を充実させることによりまして、金融商品におけるリスクとリターンの関係性などを始めとしまして、国民の皆様に金融経済教育を通じてお伝えをし、御理解をいただくということが大事になっていくんだろうと思っております。また、あわせて、利用者が安心して金融商品を購入できる環境を整えるというためには、金融機関における顧客本位の業務運営の確保を進めていくということも重要であろうと考えてございます。

 金融庁といたしましては、こうした金融経済教育を始めとします取組を進めることによりまして、国民の皆様が安心して資産形成に取り組める環境を整備してまいりたいと考えてございます。

阿部(弘)分科員 質問時間が一分プラスされるのかと思ったらプラスされていませんので、最後に質問をさせていただきます。

 会計検査院は、このような外郭団体なりの、こういうハイリスクの投資による損失がないかということをチェックしていただきたいというふうな御質問を用意していたんですが、時間の関係上、ありませんので、是非とも今後ともよろしくお願いします。

 それでは、大臣にお伺いいたします。

 今回は、大学ファンドという、財政投融資を元に投資を行ったところ、大きな損失を来した。予算編成においては、様々な基金あるいは外郭団体への予算支出、予算編成があると思いますが、今後とも、そういった視点でも是非とも目配りをいただきたいと思いますが、大臣の所感で結構ですので、お願いいたします。

牧原主査 では、答弁は簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 大学ファンドにおけます資金運用につきましては、一義的には、所管官庁であります文部科学省において適切に監督されるべきものだと考えておりますが、財政当局としても注視をしていく必要があると認識をいたします。

 こうした観点から、昨年六月に、財務省に設置をされました財政制度等審議会財政投融資分科会におきまして、文科省及び科学技術振興機構より大学ファンドの現状を聴取するとともに、委員の方々からも御意見を頂戴したところです。

 財政当局といたしましても、今後とも、特段の注意を払って、大学ファンドの運用状況を注視してまいりたいと思っております。

阿部(弘)分科員 ありがとうございました。

 また、今後とも、国民が豊かになる一つの方策だと思いますし、GAFAなど、いろいろな企業がアメリカで発展したのも大学ファンドのおかげだというふうに思っておりますので、是非とも、関係官庁の大臣の皆様、よろしくお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて阿部弘樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川分科員 日本共産党の塩川鉄也です。

 今日は、能登半島地震の液状化対策について質問をいたします。

 能登半島地震では、広域で地盤の液状化被害が生じました。

 国交省にお尋ねしますが、住家の液状化被害の状況はどうなっているか、東日本大震災や熊本地震など、過去の液状化被害との共通点、また相違点はどうなっているのか、この点についてお答えください。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 令和六年能登半島地震により、石川県、富山県、新潟県の広い範囲で、液状化により、一万件を超えると見込まれる甚大な宅地被害が発生したものと承知しております。

 今回の液状化被害においては、過去の災害と同様に面的な液状化被害が発生しておりますが、特に内灘町などの砂丘の麓の傾斜の緩い土地などで、液状化に伴い、地表面が横方向に移動する現象である側方流動に伴い、甚大な被害が生じたことが特徴であると認識しております。

 以上でございます。

塩川分科員 石川、富山、新潟、実際には、福井のあわら市などでも液状化被害があるとされています。大変広域で液状化被害が発生をしている。そういう下で一万件を超える、奥能登の方ではまだ現状も把握し切れていないということもありますので、被害の甚大さというのが更に広がるという懸念を持つところであります。

 砂丘の麓における側方流動と言われるような被害というのも特徴として挙げられているときであります。こういった液状化被害による住家被害に対する支援が求められているところであります。

 石川県の内灘町では、十二メートルもずれるような側方流動があったということなども把握をされているところであります。町として、再建には大規模な地盤の整備が必要となるとして、一時的な集団移転を検討しているということなども報道もされております。従来にない特別な支援が必要となっております。

 液状化被害でも、被害の態様は地域で様々であります。そういうときに、国は、被災者の要望、被災自治体のニーズを受け止めて、柔軟に対応する支援策づくりに力を尽くすべきではないかと考えますが、お答えください。

上村政府参考人 お答えいたします。

 被災者生活再建支援制度についてお答えいたします。

 被災者生活再建支援法によりまして、自然災害でその生活基盤に著しい被害を受けた方に対しましては、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援によりまして、最大三百万円の支援金を支給することとしております。

 こうした被災者生活再建支援金の制度がある中、更に国による支援制度を創設することにつきましては、熊本地震、東日本大震災といった過去の震災ですとか、秋田県や福岡県など、令和五年梅雨前線などによる大雨災害の被災地において現在も支給が継続されていることとの公平性の確保という課題もあることから、慎重に検討すべきものと考えております。

 内閣府としては、被災者生活再建支援金については迅速に支給することとした上で、災害復興住宅融資の活用や、石川県の状況を踏まえた木造仮設住宅の建設などの支援策と併せ、被災者の住まいを確保してまいりたいと考えています。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省におきましては、被害や地域の実情を踏まえた液状化対策を支援するため、被災した地方公共団体の職員を対象とした会議を実施し、対策工法や過去の災害における取組事例について情報提供をしています。

 また、先般決定した被災者の生活となりわい支援のためのパッケージにおいて、宅地などの復旧に引き続き、地方公共団体が行う公共施設と隣地宅地などの一体的な液状化対策を支援することとしており、エリア一体的に対策を講ずる支援措置の強化についても検討を進めているところです。

 国土交通省においては、被災した地方公共団体への情報提供を引き続き行うとともに、液状化被害の再発防止に向けた検討、調査や対策工事などへの支援を行っていくこととしております。

 以上でございます。

塩川分科員 要するに、現行の支援制度の延長線上ではなくて、被害の実態に見合った、被災者の要望、被災自治体のニーズに応えるような支援策を是非具体的にしてほしいということが地元の強い要望でもあるということを受け止めていただきたいと思っております。

 その上で、まずは被害認定ですけれども、被災者生活再建支援金を始めとして被災者支援制度の土台となる、これに直結する被害認定ですけれども、傾斜による判定基準と住家の潜り込みによる判定基準の妥当性が液状化の場合では問われております。

 百分の一の傾きで半壊としている。傾きによる健康被害への考慮が不十分なのではないのかというのを現場に行ってお聞きしました。百分の一以下でも、疲労感やふらふら感などの健康障害が出るとあります。住家の損壊だけでなく、健康被害にも着目した被害認定へと改善すべきではないでしょうか。

上村政府参考人 今委員おっしゃいましたように、液状化被害を受けた住家につきましては、基礎の破壊状況ですとか外壁ですとか柱の傾き、潜り込みなどの外観のみでまずは判定できるように簡素化を図っているところであります。

 また、その外観で判定された結果について再度調査依頼があった際には、内観調査により、床や基礎に生じる液状化特有の被害に関し、適切に算定できる基準としてございます。

 こうした基準を、取扱いを被災自治体に対して周知徹底することによりまして、被害認定調査が適切に行われるよう、国として積極的に助言を行って支援をしてまいりたいと考えております。

塩川分科員 私がお尋ねしているのは、東日本大震災で大規模で液状化被害がありました。そのときに傾きという基準での被害認定はなかったわけですよ。そこで新たに入れたわけです。

 当時の内閣府の副大臣、私とのやり取りも含めて、この問題については、液状化によって種々健康被害も出てくる可能性もある、お医者さんの知見も入れた上で見直しをしたと述べていますけれども、それはそういうことですよね。

上村政府参考人 申し訳ございません。ちょっとその経緯は存じ上げておりません。

塩川分科員 そもそもの話ですから、こういった被害認定に当たって、健康障害の観点というのは盛り込まれているというのが液状化に関する被害認定なんですよ。ですから、百分の一というのが、医療関係者のヒアリングも行って、居住者が苦痛を感じるとされているという値であるわけです。

 こういった健康障害の発生確率のデータなども見ても、百分の一以下でも三割の方々が健康障害が発生するとされております。こういった健康被害によって居住困難となる実態に着目した被害認定の見直しを求めたいと思っております。

 先日、液状化被害戸数が一万三千戸に及ぶ新潟市の被災地を訪問いたしました。大野郷屋地域では、砂丘の内陸側に数キロにわたって液状化被害が生じておりました。また、黒埼地域では、噴砂の跡が残り、道路にも亀裂があり、また、ブロック塀が壊れたり傾いたりしていたところです。

 被災者のお話を伺うと、大規模半壊と言われた、部屋にいると目まいがする、四枚の扉のうち三枚が開かない、また、今は直ったが、水道が断水になり、下水管も壊れた、ドアは自動で開いてしまうので突っ張り棒で止めている、目まいがするし、椅子から立ち上がるときは体がかしいでしまう、工事をするにも費用が幾らかかるか分からない、公的支援がどうなるのかも分からないので心配だと、健康被害と切実な要望が寄せられたところであります。

 そこで、お尋ねしますけれども、こういった健康被害に着目をして、一時的にでも避難をする、そういった二次避難所の利用ですとかみなし仮設の利用というのを、こういった健康被害も生じるような液状化対策として認めるべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

上村政府参考人 政府としましては、被災した自治体に対して、設置した指定避難所の数では不足する場合などには、旅館、ホテルなどの借り上げ等による避難所の確保を促しているところであります。

 避難所の開設については一義的には被災自治体において判断されるものでありまして、現時点においては、石川県以外の被災自治体からは、旅館、ホテルなどを活用した二次避難所の開設の意向は示されていないものと承知してございます。

 委員御指摘の、液状化による住宅被害を受けて日常生活に支障が生じている場合には、旅館、ホテルのほか、公営住宅ですとか国家公務員宿舎等を一時的な避難先として利用することが可能となっております。

 引き続き、被災自治体と連携しながら、被災者の意向にできる限り寄り添った形で生活再建が図られるよう、適切に取り組んでいきます。

塩川分科員 是非、みなし仮設も利用できるような対応をしていただきたいと思うんですが。

上村政府参考人 失礼しました。

 みなし仮設につきましても、新潟県が国と個別に協議の上、必要性があると判断しますと、半壊以下又は応急修理期間が一か月未満の場合でありましても、入居いただくことが可能と考えております。

塩川分科員 是非、住宅応急修理をする期間が長いというときに、一時的な避難としてのみなし仮設というのはあるわけですけれども、応急修理に着手するかどうか、いろいろ迷っているような人も含めて、現状の健康被害に対して対応するといった点でみなし仮設も利用できる、そういうことは自治体の判断でできるということでよろしいですか。

上村政府参考人 自治体が国、私ども内閣府と協議の上、必要と判断しました場合には、それが可能ということであります。

塩川分科員 是非、実態に見合った対応を進めていただきたいと思っています。

 次に、傾いた家、傾斜住宅の補修についてですけれども、家が傾いたり地盤が沈下をした宅地復旧の支援、地盤の復旧ですとか住宅の基礎の補正が必要になります。建物の傾きを直すジャッキアップ、土台上げの工事をしたくても、五百万から一千万円かかると言われて、なかなか踏み切れないという声もあります。

 住宅応急修理制度について、新潟県や新潟市は、住宅応急修理制度の対象範囲の拡大、駐車場やカーポートや外構の修理などにも充てられるようにできないか、また、それに応じた限度額の引上げを図ることを要望しております。是非、応えていただきたいんですが。

上村政府参考人 災害救助法に基づく住宅の応急修理制度は、災害のため住家が準半壊以上の被害を受け、そのままでは居住できない場合に、応急的な対応として、居室、炊事場、便所など日常生活に必要な最低限度の修理を行うことで、引き続き元の住家で日常生活を営むことができるようにするものであります。

 このため、住宅には該当しない駐車場等を修理対象とすることは、制度の趣旨、目的を踏まえると困難であると考えますが、例えば、壊れた住家の基礎を修理することは可能であります。

 その上で、本制度については、日常生活に必要な修理を応急的に行うものであり、災害により被った損害全てを補填する性格のものではないこと、先ほど申しましたが、秋田県、福岡県など、直近の令和五年梅雨前線等による災害との公平性を確保する必要があることなどの課題もありまして、その限度額の引上げについては慎重な検討が必要であると考えております。

塩川分科員 この間、台風災害などで被害が大きかった千葉県なども想定した、準半壊のような、拡大なども行ってきているわけですね。災害の実態に即してやはり制度を改善をしていく、こういう対応というのは是非求めていきたいと思っております。今回の能登半島地震でも、新たな支援制度をつくる、なければ新たな制度をつくる、こういう立場で臨んでもらいたいというのを重ねて申し上げておきます。

 次に、住宅応急修理制度についての救助期間、利用できる期間の話なんですけれども、これは一般基準で三か月となっていて、今回の場合には国の災害対策本部会議が設置されたということなので六か月以内ということになっているそうなんですけれども、先日お会いをした被災者の方は、この住宅応急修理の手続の終了が三月末と聞いていて、それに間に合うように今準備がとてもできない、どうしたらいいんだろうかということを訴えておられました。ですから、その場でも、六か月ですよという話はしたんですけれども、被災者の方に伝わっていないというのが一つあります。

 加えて、そもそも、この一般基準の三か月というのが、住宅応急修理を完了するには余りにも実態に合わない、短い期間じゃないのかということが問われていると思います。

 お尋ねしたいのは、近年の災害で、住宅応急修理が三か月で完了した割合というのはどのぐらいなんでしょうか。

上村政府参考人 国に災害対策本部が設置されました近年の主な大きな災害における応急修理の完了時期を見ますと、発災後三か月以内に完了した割合は、おおむね三割程度でございます。

塩川分科員 六か月はどのぐらいですか。

上村政府参考人 六か月以内に完了した割合は、先ほどの三か月を含めまして、全体でおおむね六割程度でございます。

塩川分科員 ですから、大規模災害の話を例示してお話しされていましたけれども、三か月で三割、六か月で六割ですから、いずれにしても、一般基準で三か月、国が本部を設置をしたような場合については六か月、でも、終わっていないわけですよ。だとすると、この一般基準そのものが現状に合っていない。この機会に、やはり、実績、実態に見合って、こういった救助期間の見直しを行う必要があるんじゃないか。いかがですか。

上村政府参考人 今おっしゃいました救助期間では救助を適切に実施することが困難な場合には、都道府県からの協議により期間の延長も可能としておりまして、今後発生する災害においても、災害の規模や被災者の実情等を踏まえ、柔軟に対応していく考えであります。

 今回の能登半島地震におきましても、その被害の甚大さに鑑み、石川県、新潟県、富山県、福井県の各県からの協議に基づき、既に、応急修理の救助期間については本年十二月三十一日まで延長しているところであります。

 その上で、一般基準を見直すか否かについては、まず、今の見直しによる効果を適切に見極めつつ、できる限り速やかに住宅の再建を図っていただく観点も踏まえまして、研究してまいりたいと考えております。

塩川分科員 速やかに改修したいというのは当然のことであります。その際に、速やかな対応が可能なような、事業者に対しての様々なサポートも含めた、何よりも被災者の暮らし、なりわいの再建につながるような支援制度にしていくという点で、この救助期間についても誤解が生じるようなことがないような、周知を含めて対応方を求めたいと思います。

 その上で、住宅応急修理が利用できても、上限は、現状は七十万六千円です。傾斜住宅の補修の費用としては極めて不十分です。

 熊本地震の際には、国が復興基金を造成したことにより、被災自治体が宅地復旧への支援を行い、その中で、被災宅地復旧支援事業として、液状化再度災害防止のための地盤改良工事を補助対象としました。

 このような熊本地震と同様に、能登半島地震災害で復興基金を是非実施をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。

濱田政府参考人 お答えいたします。

 現在、この液状化への対応につきましては、道路など公共施設とその隣接住宅地を含めて、エリア一体的に対策を講ずる支援措置の強化について、総理からの指示を受け、国土交通省において検討されているものと承知しております。

 復興基金は、個別の国庫補助を補い、国の制度の隙間の事業について対応するものであるため、まずは各省庁の支援策がスピード感を持って実施されることが重要であると認識をしており、その実施状況等を踏まえ、復興基金の必要性について適切に判断してまいります。

 いずれにいたしましても、被災自治体の財政運営につきましては、全体として支障が生じないよう、引き続き丁寧に実情を把握し、地方交付税や地方債による地方財政措置をしっかりと講じてまいります。

 以上でございます。

塩川分科員 後でもちょっと議論しますけれども、順番が違うんですよ。元々国交省などで行っている面的な液状化対策事業というのは、まさに面的に行うものですから、再度災害防止という形で行う。その前に、個々の住宅における傾きを直すという工事があるわけですよね。まずは傾きを直して当面住めるようにする、再度災害防止のために国交省が言っている制度を使うという二段階あるわけです。そのまさにジャッキアップを行うような傾きの補修を行うところに、住宅応急修理なども使うわけですけれども、復興基金を活用することによって住民の皆さんの暮らしを支える。この制度が先に来ないといけないんです。

 今の説明というのは、国交省の制度があるから、その後、その隙間を埋めるものとして復興基金という位置づけなんですけれども、それじゃ間に合わない。逆なんですよ。復興基金を先に入れることによって、ジャッキアップなどの当座の傾きを直す、健康障害を取り除く、こういう対策が必要なんだ。この位置づけで復興基金を行うべきじゃないのか。

 もう一回答えてください。

濱田政府参考人 先ほども御答弁させていただきましたけれども、復興基金の性格といたしまして、個別国庫補助を補い、国の制度の隙間の事業について対応するというものでございます。

 各省の施策の実施状況等を踏まえまして復興基金の必要性について判断をしてまいりたい、このように考えております。

塩川分科員 半年かけて補正というのでは間尺に合わないんですよ。今やるべきだ、熊本地震と同様な復興基金などの措置を行うべきだ。

 傾いた家の修繕というのは、健康障害を考慮すれば直ちに行う必要があるわけで、個人負担を軽減をし、住宅再建を支援をする予算措置を行うべきだということを強く求めるものであります。

 その上で、国交省にお尋ねします。

 面的な液状化被害再発防止対策として、国の交付金を活用した液状化対策事業があります。これまで、地下水位低下工法及び格子状地中壁工法を実施してまいりました。

 過去の事例の検証をしたいと思います。東日本大震災関連の液状化対策事業の実績についてですけれども、事業検討地区は幾つで、工事着手及び工事完成地区というのは幾つかを御説明ください。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災に関連して液状化対策の実施を検討した地区は、およそ九十地区程度存在したとの調査結果がございます。このうち、最終的には十地区において事業が実施されたものと認識しております。

塩川分科員 九十地区が検討したけれども十地区しか実際には実施ができなかったというのは、非常に大きな開きがあるわけです。

 このように、事業を検討しながら、工事着手、完成に至らなかった地区が多数を占める理由は何でしょうか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 多くの地区においては、液状化による被害の有無や程度が個々の宅地によって異なっていたなどの理由により、地域の住民の方々の意向がまとまらなかったため事業化には至らなかったものと認識しております。

 以上でございます。

塩川分科員 液状化による被害が個々の住宅で違うという話ですけれども、それだけなのかということが問われるわけであります。

 もう一つ、熊本地震の宅地液状化防止事業の実績ですけれども、事業検討地区は幾つか、工事着手及び工事完成地区は幾つか、お答えください。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 熊本地震による宅地被害を受け、当初熊本市において液状化被害が推定された十地区を事業候補地として選定し、最終的に工事着手に至ったのは二地区。このうち、工事完成地区は一地区、残りの一地区が事業中と承知しております。

 以上でございます。

塩川分科員 熊本市以外はありませんか。

菊池政府参考人 済みません。熊本市の状況のみ把握してございまして、ちょっと今、その他の状況は把握してございません。申し訳ありません。

塩川分科員 甲佐町とか、幾つかほかのところもあると思うんですけれども、ちょっと答弁が熊本県内の熊本市に限ってということですけれども。

 熊本市の場合でも十地区中二地区しか実際には工事着手、完成に至っていない、そういう点でも非常に少ないわけです。なぜこんなに少ないのか、理由について説明いただけますか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 この十地区について、熊本市が地域住民の意向を確認したところ、八地区については、やはり液状化による被害の有無や、その程度が個々の宅地によって異なっていたなどの理由によりまして、地域住民の方々の意向がまとまらなかったことなどから事業化に至らなかったものと認識してございます。

 以上でございます。

塩川分科員 私は、その背景として液状化の有無云々というのはありますけれども、やはり費用負担の問題が一つ、それと、やはり工事期間が長くなっているという見通しの問題、この二つの点が問われているんじゃないかというのが、なかなか実際に実施に至ったところが少ないという背景にあると考えています。

 被災者の負担軽減は欠かせません。東日本大震災や熊本地震では、地盤改良工事の住民負担なしで実施をいたしました。浦安については、一戸当たり二百万円ということは承知はしておるわけですけれども。

 このように、住民負担なしの仕組みというのはどのような形で行ったのか。是非、能登半島地震の液状化対策でも同様に、住民負担なしの仕組みをつくってもらいたいと思いますが、その点を含めてお答えください。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災や熊本地震により宅地の液状化被害が発生した地域においては、宅地液状化防止事業を活用し、液状化による被害が再び生じないようにするための対策を講じてきたところでございます。これらの地域においては、浦安市の地区を除き、地域住民の方への負担を求めない形で実施されたものと承知しております。

 今回の能登半島地震により宅地の液状化被害が発生した地域についても、この宅地液状化防止事業が活用できるものと考えており、地方公共団体が事業主体となる場合の地域の方々の負担の在り方については、地方公共団体において判断される仕組みとなってございます。

 以上でございます。

塩川分科員 東日本大震災のときには、国としての復興交付金も行い、同時に自治体の裏負担、地元負担については復興特別交付税という形で、国が元々用意した特別交付税措置を行うことで、補助裏についてもきちっと手当てをするということが行われてきたわけです。熊本地震については事業債という格好で裏負担分を手当てするということですけれども。

 いずれにせよ、住民負担、被災者の負担をなくしていく、それによって、面的な整備を行うことで液状化の再発を防止をする、こういう取組が必要だと思うんですが、是非、今回もそういう制度をつくるというところまで求めたいと思いますが、改めてお答えいただけますか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 この宅地液状化防止事業につきましては、地方公共団体が事業主体となる場合、地域の住民の方々の負担の在り方については、地方公共団体において判断される仕組みとなっております。

 国土交通省といたしましては、過去の地震における取組事例の共有も含め、この液状化対策の支援にしっかり取り組んでまいります。

 以上でございます。

塩川分科員 自治体の方でそういう取組を促すような制度設計、支援というのをお願いしたいと思います。

 東日本大震災の場合に、液状化の面的な工事の完了まで早くて六年、遅いと十年もかかっております。地盤改良の工事着手に時間がかかり過ぎると、地盤改良を待ち切れずに再建した家も出てまいります。住宅再建に温度差が生じて、液状化防止事業に対する住民の合意が困難になる。資力のある方々は先に対応する、そうすると、面的な整備におつき合いするという条件がなくなるという、その点での液状化の被害の有無云々というところの合意の難しさというところが出てくる。となれば、そもそもジャッキアップをするような工事を行う段階で、将来の見通しがしっかり見えるということが必要だ。

 そういう点でも、まず、ジャッキアップなどの当面の傾きを直す工事の部分と、面的に再発防止をする液状化対策と一体に行う、こういうことが見えるような支援策を早期に打ち出す必要があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

菊池政府参考人 お答えいたします。

 面的な地盤改良などの液状化対策の実施に当たっては、対策工法の実効性の検証や、地域住民の合意形成などに丁寧な対応が必要になると考えており、これには一定の時間を要するものと考えております。

 一方で、被災された住民の方々には早期に住宅宅地の復旧を行うニーズがあるものと承知しており、できる限り早く、地域における面的な液状化対策の方針をお示しすることが望ましいと考えております。

 国土交通省といたしましては、被災自治体における面的な液状化対策に向けた検討が円滑に行われるよう、しっかりと支援してまいります。

 以上です。

塩川分科員 そういう点でも、復興基金を早期につくることによって、一体的な取組が行えるような支援メニューをパッケージで示すということが求められていると思います。

 被災者の方は、今後の生活設計と復旧費用との兼ね合いに悩んでおられます。この家に何年住むのかなというのも考えながら工事を検討する、そういったときに、事業の見通しと個人負担の軽減策をパッケージで示して、将来への希望が見える対策を打ち出すことが必要だと思います。

 最後に、大臣にお尋ねいたします。

 このような、被災者や被災自治体の要望やニーズに応えた支援制度の実施のために、必要な財政措置を是非とも行っていただきたい。国としての支援制度を行うと同時に、自治体が本当にニーズに合うような支援が行えるような、自治体独自の支援制度の財源保障を含めた取組を国として是非行ってもらいたいと思いますが、お答えください。

鈴木国務大臣 まず、被災地の復旧復興に当たりましては、各段階に合わせて必要となる施策を着実に実施していくことができるよう、機動的、弾力的に財政上の対応を講じていくこととしておりますということをまず申し上げたいと思います。

 そして、塩川先生からるる御指摘がございました液状化の問題につきましても、被災地の広範囲で面的な被害が生じていると承知をしておりまして、今月十六日に開催をされました復旧・復興支援本部におきまして、総理から、隣接住宅地を含めて、エリア一体的に液状化対策を講ずる支援措置の強化を速やかに具体化するよう指示があったところでございます。

 財務省としても、そうした指示を踏まえ、関係省庁と連携をしながら適切に対応していきたいと思います。

塩川分科員 エリア一帯は、これはこれでしっかりやる必要があるんですが、数年間かかるんです。まずは、でも、傾きを直すという工事が必要なんです。二段階ある。この一段階目の支援はしっかり行って、二段階を含めてパッケージの、将来が見える支援策を是非具体化をしていただきたい。そのことを求めて、質問を終わります。

牧原主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、森山浩行君。

森山(浩)分科員 立憲民主党の森山浩行でございます。

 今日は、財政の中長期展望から議論をしてまいりたいというふうに思います。

 先月の経済財政諮問会議で示された中長期の経済財政試算を見ますと、足下のゼロ%台半ばの低成長が続く想定のベースラインケースでは、プライマリーバランス黒字化は中長期にわたって達成できないという試算になっています。また、中長期的に三%程度の成長率で推移する想定の成長実現ケースでは、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化、これが視野に入るとされています。

 前提としては、補正予算の、現時点で具体的に想定されない支出が含まれないなどの問題はありますけれども、仮にシナリオどおりの成長が実現をしたとしても、二〇三三年度の国、地方の財政収支対GDP比が〇・二%の赤という姿となっています。

 こうした非常に厳しい試算があるという中において、岸田総理が施政方針演説において述べられた、経済を立て直し、そして財政健全化を着実に進めるということ、この実現可能性については、大臣、どのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 財政といいますものは、国の信頼の礎であります。財政健全化に取り組むことで中長期的な財政の持続可能性への信認を確保していくこと、これは大変重要な課題であると、私自身、強く認識をしております。

 森山先生が御指摘なされましたけれども、中長期試算では、高い成長率と、それから歳出効率化努力を前提とすれば、二〇二五年度に国、地方のプライマリーバランスが黒字化するという姿が示されました。

 御指摘のとおりに、この目標の達成には、成長実現ケース、高い経済成長と歳出効率化の努力継続、これの両立が必要でありまして、決して容易ではないということは認識をしておりますが、政府として、デフレからの完全脱却を果たし経済を立て直すことと併せまして、緊急時の財政支出を長期化、恒常化させないよう歳出構造の平時化を進めるとともに、行政事業レビュー等を活用することでより一層予算の効率化そして無駄の削減に取り組むなど、歳出歳入両面で改革努力を着実に推進することにより達成してまいりたいと考えているところです。

森山(浩)分科員 大変努力が必要だけれども、高い目標であるけれども頑張りたいというようなお話だったのかなと思います。

 ちょっとここで、財政の基本認識、大臣の基本認識をお伺いをしたいんですけれども、そもそも、自国通貨の発行権がある、だからどんどんお札を刷ればいいじゃないかというような議論もあるわけですけれども、そういった議論についてはどのようにお考えですか。

鈴木国務大臣 そうした議論があることは承知をいたしておりますが、しかしながら、現状、我が国の財政事情、これはもう世界最悪の水準と言っていいわけでございます。

 加えまして、足下で、コロナ対応等の補正予算が、かなり大きなものが作られた、これは必要性があって作ったわけでありますが、そういうこともありまして、ますます財政状況が悪化をしております。

 そうした議論は議論としてあることは承知をしております、自国通貨の問題。ありますが、我々としては、先ほど申し上げたような地道な取組をしっかりやってまいりたいと考えています。

森山(浩)分科員 通貨を発行し続けるとどんと円が暴落するんじゃないかというようなリスクがあるんじゃないかという議論もあるわけなんですけれども、まだ国債を発行をする余力はあるとお考えですか。

鈴木国務大臣 後年度影響試算というものも国会に出させていただきました。今のところ、足下、金利の上昇があって、金利のある世界ということに踏み込みつつあるわけでございますが、そういう中においても、しっかりとした利払い費を確保するということ、そういうことで国債の安定発行というものは担保していきたいと思っております。

森山(浩)分科員 今、楽観的な試算と、そして、悲観的なというか、現状を基にした試算との間のどこかにというようなことになるんだと思いますけれども。

 じゃ、今のままの国債発行額であれば通貨が暴落をすることはないというようなお考えですよね。

鈴木国務大臣 現状、そのように考えております。

森山(浩)分科員 それで、二〇二五年なんです。

 二〇二五年で黒字化をできたらいいなという答弁に聞こえました。二〇二五年にプライマリーバランス黒字化、これは、するということなのか、すると言い続けることが大事なのだというお話なのか、ここはいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 具体的な目標を掲げております。高い成長率を目指す、それと徹底した歳出削減等を行うということで、そうした方針に向けて、それを目指して頑張っていくということだと思っております。

森山(浩)分科員 目指すんだけれども、できなかったら二〇二六年でもいいかな、二〇二七年でもいいかなというぐらいの余裕はあるんだというお話でしょうか。

鈴木国務大臣 二〇二五年の目標までしか決まっておりません。まず二〇二五年の目標に向けて、高い成長率、それと徹底した無駄の削減、こうしたものに全力で取り組むということであります。

森山(浩)分科員 ありがとうございます。

 こういう状況の中なんですが、先ほどちょっと触れましたけれども、補正予算というのがこの中に含まれていない計算で二〇二五年の目標が立てられています。

 数年前、コロナ禍以前でありましたら、数兆円というレベル、あるいは兆を切るというようなレベルのときもありましたけれども、そういうような状況と、数十兆円、いわゆる本予算の数十%にもなるような補正予算、これが組み込まれていないというのでは、試算としては問題があるのではないかと思いますけれども、これはどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 後年度影響試算におきましては、補正予算の編成を試算に盛り込んでいないというのは、先生御指摘のとおりでございます。

 政府としては、後年度影響試算を国会に提出する時点において見込まれる具体的な財政需要は全て当初予算に織り込んでおりますので、補正予算の編成は前提としていないこと、そして、近年、実態として、大規模な補正予算の編成が続いていることは否定できませんが、これらは、新型コロナ対策や物価高騰への対応など、当初予算編成時において見込めなかった財政需要に対応するものであり、政府として、現時点であらかじめ特定の規模を想定すること、これは困難であること等によるものであります。

 ただし、補正予算を含めた予算全体での財政規律が重要であるとの点につきましては、これはもう御指摘のとおりであります。

 政府としては、補正予算の編成に際しましては、引き続き、緊要性等の要件をしっかりと検討するとともに、歳出構造の更なる平時化を進めるなど、財政健全化に向けて責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。

森山(浩)分科員 今の御答弁の中に、事前には見込めないという話がありました。

 私は災害の担当をしておりますので、災害等において見込めないというのはよく分かります。

 ただ、国土強靱化という予算があります。五か年計画で進んでいます。でも、毎年これは補正予算で上がっているんですね。だから、五か年計画を作っていて今年の予算というのが見込めないということはあり得ないのではないかと思いますが、補正予算の編成という中に国土強靱化などが入っている理由についてお伝えください。

鈴木国務大臣 実態として、最近、年度末に補正予算が組まれるという例が多いわけでありまして、その中で、防災・減災、国土強靱化の予算もそこで組まれているということもそのとおりでありますが、これはむしろ、前倒しできるものは前倒しをして予算措置をしたい、そういう思いでそうなっているわけであります。

 ただし、当初予算を今提出させていただいているわけでありますけれども、当初予算提出時におきましては、考え得る財政需要といいますものは全てその中に織り込まれているということであります。

森山(浩)分科員 実態として、現場がその方がいいんだという話はよく分かります。

 ただ、財務大臣として、財政の規律、必要ないんだという立場もあるんだと思います。でも、必要あるんだとおっしゃって、そして日々職務をされているわけなんですけれども、そういった意味でいうと、これだけのお金が要るのだということ、そして、こういう絵姿に、二〇二五年といったら、もうあと一か月しか今年度はありませんから、あと十三か月後にはその年度に突入をするわけなんですけれども、そういった状況というのを考えたときに、この数字を基に議論をして、そして国民に説明をするというのでは、何かごまかしているんじゃないのかというふうな印象を持たれる、また、財務省の言っていることは信用できないというような形にも取られかねないと思いますけれども、これは、しっかり、補正予算額なども入れて計算し直して、国民に説明できるような形で、だから財政再建できるんだ、あるいは必要なんだというような議論の方に戻していくような資料作り、できませんか。

鈴木国務大臣 我々としては、必要な財政需要というものは当初予算に盛り込んでいるという判断であります。

 補正予算というのは、最近も、コロナもありましたし、物価高対策もありましたし、様々ありましたものですから、何かもう当たり前のものになっておりますけれども、よくよく考えてみますと、やはりこれは、当初予想できなかったものについて、特に緊要なものについて、必要なときに補正予算を組むということでありますから、非常に、ある意味、抑制的でなければならないんだと思います。本当に緊要性のあるものに、そういうような判断をしっかりやっていくということ。

 そういうことも含めて、財政健全化の思いというものをしっかりと全体としても守っていきたいと思っております。

森山(浩)分科員 済みません、さらに、ちょっと細かい話なんですが、金利のところで、政府は、二〇二四年度の予算案で、国債の利払い費の想定金利を一・九%という形で十七年ぶりに引上げをされています。また、財務省が先日公表した後年度影響試算では、想定金利は二四年度の一・九%から二七年度に二・四%に上がるという試算になっています。

 一方、日銀の植田総裁は、先日の予算委員会で、マイナス金利解除後の金融政策について、緩和的な金融環境が当面続く可能性が高いと認識を示しておられます。また、内田副総裁も、今月の講演で、どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくいと、同様の見解を表明をしておられます。政府の向こう三年の想定金利との間でずれが出ているのではないでしょうか。

 財政も、先ほど大臣がおっしゃった、金利のある世界に戻るということであるならば、政府として慎重な備えをしていくことは重要なんですけれども、想定する金利のパス、これが日銀との間で意思疎通が図れていないんじゃないですか。

鈴木国務大臣 後年度影響試算、今国会に出させていただきましたけれども、これは極めて機械的な計算でございます。

 一方、また、日銀の総裁始め関係者の皆様方が御発言されていることは、むしろ、日銀がこれから自らの責任の中で行おうとする金融政策の中の一つの考えであると思います。

 したがいまして、財務省が提出いたしました後年度影響試算、これはあくまで機械的に計算したものであって、そうした様々な動向というものは捨象されているものだ、そういうふうにお考えいただいていいんだと思います。

森山(浩)分科員 機械的なものであれ、いろいろな数字が出てくるということになりますと、やはり財政は分かりにくい、あるいは、ごまかされているんじゃないかというような形にならないようにしていただかないとなりません。

 そういった意味で、税と社会保障の一体改革というのを、もう十二年前ですか、税と社会保障は一体的に考え改革していく必要があるというようなことで、消費税、五%から一〇%に上げます、その代わり、そのうちの一%程度は社会保障の充実、四%程度は社会保障の安定化、いわゆる安定財源として使うんだということで決まってスタートをしたことだと思います。これは、その後はどうなっていますか。

鈴木国務大臣 消費税につきましては、社会保障制度を支える重要な財源として、年金、医療、介護、少子化対策の社会保障四経費に充てることとされております。

 このうち、五%から一〇%への消費税率引上げに伴う増収分につきましては、令和六年度予算におきましては、そのうち四兆円程度を社会保障の充実に充て、残りの十兆円強を社会保障に係る安定財源として活用しています。

 今後とも、社会保障を持続可能なものとするために、関係省庁とも連携をして、負担能力に応じて全ての世代で公平に支え合うための全世代型社会保障制度の構築に努めて、進めてまいりたいと思っております。

森山(浩)分科員 今年の予算というところでいうと、税収が上がったという部分がそこに入っていますよね。いわゆる一%が社会保障、そして四%が安定財源ということではないですね。

鈴木国務大臣 そうではないわけであります。

 過去、五%から一〇%に上がってまいりましたけれども、当初は、おっしゃるとおり、五分の四を、これは安定的な経費、それから五分の一を社会保障の充実ということに使う、そういうことでスタートしたわけでありますけれども、八%から一〇%に上げたときに、その中の一・七兆円程度を、当時の議論の中で、高等教育の無償化とか幼児教育の無償化、保育の受皿の前倒し整備などに使うということで、社会保障の充実という方に今、増えているわけであります。そして、安定財源と充実というものの割合が、当初四対一だったものが、今はおおむね一対一になっているということであります。

森山(浩)分科員 一対一ということで、だから、プライマリーバランスについては諦めたんじゃないのかというようなことにつながってきた、その議論自体がつながってきたんじゃないかと思いますが。

鈴木国務大臣 先ほど、先ほどといいますか、内閣府で出しました中長期試算でありますが、それにつきましては、先ほど私が申し上げた消費税の今の状況、それも織り込んだ中での数字であるということです。

森山(浩)分科員 足下、やっていく中でどんどん変わってきている、それについて説明はその都度しているのだ、でも、その間ずっとあった議論の中でいうと、消費税は上がるけれども、その代わり安定財源になりますよといった部分については、これは見送った部分があるのだということ、こういう説明をしていくと。

 これは、もうちょっと真っ正面から、財政、まず、再建が必要なのかどうか、そして、今どういう状況にあって、どういう目標を持って、そして、それは実現できるのか、若しくはどこかで実現できたらいいななのか、こういった部分がなかなか国民に伝わらないし、今お話を聞いていても、やはり、一個一個の議論はできているんだけれども、全体としての見通しというのがなかなか納得のできるものではないのではないかなというふうに感じています。

 ですので、税金を上げるというような話がまた出てきているわけですけれども、増税をする、そのときにはいろいろないいことを言うけれども、結果、違うことに使うんじゃないのかというような、増税に対する不信感にもつながっていくかと思います。

 国債の在り方、また税金の在り方等についても、しっかりと国民に説明できるように、また、シンプルな課題であると思いますね、シンプルに説明していけるようにまずはお願いをしておきたいと思います。

 さて、金融についてです。

 先日、日経平均の株価が三十四年ぶりの高値となったことが報道されました。年初から新NISAがスタートしたこともあって、今後更に家計の投資の裾野が広がっていくものと考えられます。

 こうした中、昨年末に政府が取りまとめた資産運用立国実現プランを見ると、家計の安定的な資産形成を支援する取組の一つとして、金融経済教育の充実を引き続き推進するという方針が示されています。

 金融経済教育の一層の充実に向け、日本証券業協会が事務局を務める金融経済教育を推進する研究会、これが公表した海外における金融経済教育の実態調査の報告書で、その指摘がヒントになると思われます。ほとんど、カリキュラムマネジメント、これが十分に行われているとは言い難いとの課題があるのではないでしょうか。

 日本でも、各教科等でどのように連携を図れるかの検討を行い、体系的、継続的な金融経済教育を行うことが重要であると考えますが、いかがでしょうか。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 先生まさに御指摘のとおり、金融経済教育の重要性に鑑みまして、金融庁といたしましては、幅広く金融経済教育を推進するために、今般、金融経済教育推進機構を設立いたしまして、官民一体となって、国全体として中立的な立場から金融経済教育を推進することを考えてございます。

 この機構におきましては、全国の学校や公民館等への講師派遣、それから、各種イベント、セミナーの開催といったものを行いつつ、さらに、これまでともすれば十分に行ってこられなかった職域での従業員向け教育に力を入れるなどの取組を強化をしてまいりたいと思います。

 それから、その内容につきましても、学生、社会人、高齢者等の幅広い層に対しまして、ニーズや金融リテラシーの程度を踏まえた上で、単に金融商品の知識、投資についてお伝えするのではなくて、家計管理や生活設計のほか、消費者生活の基礎や社会保障、税制度、さらには金融トラブルに関する内容も含めて、幅広い分野で金融経済教育に取り組んでまいる所存でございます。

森山(浩)分科員 それは、学校の時間数にすると何時間ぐらいかかりますか。

川崎政府参考人 学校のところにつきましては、文部科学省さんの方で検討いただいているわけでございますけれども、一昨年に学習指導要領の方を改訂していただき、高校などで教育をしていただくとともに、金融庁といたしましても、教員の方々が使えるような教材を準備させていただくという取組を進めているところでございます。

森山(浩)分科員 先日、これは投資の神様と言われるウォーレン・バフェットさんですけれども、市場はカジノ的な振る舞いを見せる、あるいは、収益機会があるとすれば危機の再来だと見るというようなことで、現在の株式市場というものが大変な乱高下をする状況にあるのだというようなことをおっしゃっています。これは、いわゆる、銀行に預けますよ、貯蓄をするということであれば、元本は基本的には保証されるわけですけれども、投資をするとなると、元本自体が毀損をするというようなことも当然リスクとして考えられるわけです。

 国民の皆さんが、金融トラブルを防止をしながら、個々人のリスク観、それから将来設計、あるいはライフステージにふさわしい金融資産を形成していくためには、トラブル防止のいわゆる守り、それから資産形成という攻めのバランスを取った金融経済教育が重要と思われます。

 しかし、先ほどの報告書にもありました、約五割の教員が、教える側の専門知識が不足をしていることによる難しさを感じています。

 そうした金融経済教育を推進する上での課題、これについてどのようにお考えでしょうか。

川崎政府参考人 お答え申し上げます。

 委員まさに御指摘のとおりでありますけれども、広く国全体で金融経済教育の機会を提供するためには、学校も含めて担い手の確保というのが非常に重要なのであろうというふうに考えてございます。

 今度新設いたします金融経済教育推進機構における教育の担い手としましては、現在活動していただいています金融広報中央委員会、あるいは、日本証券業界等の金融業界等が実施しています講師派遣事業等に講師として参画していただいている方々に引き続き御貢献をいただくということに加えまして、多数の講師を輩出しているファイナンシャルプランナーの団体である日本FP協会等の連携、あるいは、機構によってその方々に対する研修の実施をするということで、担い手の確保や質の向上に取り組んでまいりたいと思います。

 それから、学校現場につきましても、学校向けの講師派遣を抜本的に拡充するとともに、教員の方々が参照できる、先ほど申し上げました教材の作成、それから教員向けのセミナー等を行って、学校現場や教員に対する支援を強化してまいりたいというふうに考えてございます。

森山(浩)分科員 ありがとうございます。

 学校の先生、投資は得意だという人ばかりでは当然ないわけで、むしろ、そういったお金の話なんというのは、特に以前の学校では、金の話なんかするんじゃないというような価値観でもって、学校の中にはお金の話とか性の話とか政治の話とか持ち込むなというような空気さえあったわけでございます。

 そういった意味でいうと、先ほど財務大臣のお話もありました、日本の財政がどうなっているのか、あるいは我々の年金がどうなるのか、そういった公的な部分についてもきちんと教えておくというか、知識を共有をしておくということが大事だと思いますけれども、いかがでしょうか。

川崎政府参考人 おっしゃるとおり、金融商品の知識だけではなくて、そもそも、子供さんあるいは学生さんに、お金の使い方、家計の設計の仕方、それから、要は将来設計の話も含めてですけれども、更に言えば、金融トラブルに対する対応の方法、そういった様々な幅広い知識を皆様に御理解をいただくべく、様々な方々の参加をいただきながら金融経済教育に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

森山(浩)分科員 私は前の大阪万博の次の年に生まれておりまして、私たちの世代、第二次ベビーブームの頭なんです。私たちの世代、同窓会で集まったりすると、今の状況というのは、つまり死ぬまで働けということだなというような話題も軽口で出てくるような状況にあります。

 社会保障をきちんとする、こういうマクロの部分、これについてはどうやってやるのか、分かりやすい形でシンプルにお伝えくださいと財務大臣にもお願いをいたしましたけれども、それを受けて、金融教育というのも、ミクロだけではなくて、マクロとミクロ両面から国民の知識レベルを追いついていくようにしていくということ、お金のことなんか知らぬでもいけるわという状況ではなくなってきているんだということも含めてお願いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて森山浩行君の質疑は終了いたしました。

 次に、英利アルフィヤさん。

英利分科員 ありがとうございます。千葉県第五区、市川市、浦安市選出の自由民主党の英利アルフィヤです。

 まず冒頭に、元日に発災しました能登半島での地震において、多くの方々が亡くなられたこと、そして、今もなお被災地で苦しんでいらっしゃる方々が多くいらっしゃること、心からお見舞い、お悔やみ申し上げ、質疑を始めさせていただきたいと思います。

 私は去年の衆議院議員補欠選挙で当選したばかりでございまして、四月の末に当選して、もう少しで一年がたちます。この一年間、地元を回る中でお伺いしてきた声を中心に、本日は質疑をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭に、今回の能登地震を機に、改めて震災のリスクが国民に広く共有されていると思います。我が国は、地震に加え、気候変動による豪雨や大雪などの自然災害のリスクに直面している国であります。地域の安全、安心の確保、暮らしと経済を支えるインフラ整備は政治家や国の重要な責務であり、私の地元、市川、浦安も非常に震災のリスクが高い地域でございまして、選挙でもずっと防災、減災の重要性を訴えてまいりました。

 その中で、私の地元、市川市では、政府からは、河川事業については、江戸川下流部において、計画規模を上回る洪水に対して決壊しない堤防である高規格堤防の整備、竣工後約八十年が経過し、老朽化が進み、ゲート操作に支障となる不具合が多発している江戸川水閘門の改築。道路事業については、国道三百五十七号線、東京湾岸道路において、慢性的な渋滞を緩和するために、主要交差点部の立体化の整備、走行車両により損傷した江戸川左岸高架橋の床版の架け替え、交通事故が多発している二俣交差点の改良。海岸事業については、護岸の老朽化により一部区間で陥没が発生している浦安海岸でのメンテナンス事業など、様々な事業を進めていただいております。改めて感謝申し上げます。

 加えて、慢性的な交通渋滞が発生している千葉県湾岸地域、私の地元もそうですけれども、こちらにおきましては、新たな湾岸道路の計画の具体化に向け検討が進められており、私も一生懸命後押しをさせていただいております。

 防災、減災、そして渋滞緩和の観点からも、非常に重要な取組でございます。新たな湾岸道路の計画の具体化に向けた検討の進捗状況を教えていただきたいと存じます。お願いいたします。

岸川政府参考人 お答えいたします。

 千葉県の湾岸地域では、国道三百五十七号の慢性的な渋滞などの交通課題や、高潮時には広域にわたり五メートル以上の浸水が想定されるなど、交通面や防災面で課題があると認識しております。

 このような状況を踏まえ、令和三年六月に千葉県が策定した千葉県広域道路交通計画において、外環高谷ジャンクション周辺から蘇我インターチェンジ周辺まで及び市原インターチェンジ周辺までの湾岸部の区間が高規格道路として位置づけられました。この道路の整備により、湾岸地域の交通混雑の緩和による主要産業の生産性向上や、災害時のネットワークの代替性確保などの効果が期待されます。

 現在、国土交通省におきまして、千葉県を始めとする関係機関と連携し、令和五年六月に新湾岸道路検討準備会を設置し、概略計画の検討に向けた体制や地域からの意見聴取方法などのプロセスの在り方について検討を進めているところであります。新たな湾岸道路の計画の具体化に向けて、今後更なる検討を進めてまいります。

英利分科員 ありがとうございます。引き続き、何とぞよろしくお願いいたします。

 また、今回、改めて津波や液状化、こちらのリスクも国民に広く共有されていると思います。私の地元、千葉県市川市、浦安市でも、液状化のリスクは非常に高く、そんな中、護岸の整備が進んでいないという現状もあります。

 国土強靱化五か年計画が進められておりますけれども、私の地元のように沿岸に住宅が密集している地域、こちらの護岸の整備は特に優先的に進めるべきだと思います。国交省の見解をお伺いいたします。

小笠原政府参考人 お答えいたします。

 気候変動などによる自然災害の激甚化、頻発化や逼迫する首都直下型地震などに備えるため、堤防の老朽化対策や耐震対策など、喫緊の課題であるというふうに認識しております。

 背後地で住宅が密集している浦安市の浦安海岸では、議員御指摘のとおり、管理用通路で陥没が発見されているため、海岸管理者であります千葉県が損傷の著しい区間から順次老朽化対策を進めております。また、ゼロメートル地帯を抱えます市川市を流れる旧江戸川におきましては、河川管理者であります千葉県が河川堤防の耐震化を進めております。

 国土交通省といたしましては、これらの事業につきまして、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策予算も含め、個別補助事業として重点的に支援しており、引き続き、施設の健全度、背後地の利用状況、管理する自治体の意向などを踏まえ、老朽化対策や耐震対策を促進してまいります。

 以上でございます。

英利分科員 ありがとうございます。

 市川、浦安は、本当に東京に通勤している方々も多く、ここにいらっしゃる多くの方々も住んでいらっしゃる地域でございます。日本全国もそうですけれども、本当に人が多く住んでいるところですから、引き続き、取組をお願いいたします。ありがとうございます。

 また、こうした防災対策、インフラ整備、少子高齢化対策にはまだまだお金がかかることと存じます。一方で、我が国の借金の一部である普通国債残高が既に一千兆円を超えていて、諸外国と比べても突出して多い状況があります。さらに、今後金利が上昇した場合、返済しなければならない普通国債残高が増加することが予想されます。

 こうした財政ニーズと借金のマネジメントをどう両立されるつもりであるか、財務大臣にもお伺いしたく存じます。お願いいたします。

鈴木国務大臣 委員御指摘のとおり、日本の財政でありますけれども、債務残高対GDP比が世界最悪の水準にある中、これまで、新型コロナウイルス感染症や物価高騰対策等への対応による累次の補正予算の編成等によりまして、より一層厳しさを増しているところであります。また、今後も、金利が上昇して利払い費が増加すれば、財政状況が悪化をし、政策的経費が圧迫されるおそれがあると認識しております。

 そうした中で、政府といたしましては、財政の持続可能性を確保するためには、累積する債務残高を中長期的に減少させていくことが重要と考えており、経済あっての財政という方針の下、まずは国、地方のプライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、これにより債務残高対GDP比を安定的に引き下げること、これを財政健全化の目標として掲げているところであります。

 この目標の達成のためにも、重要政策課題についての安定財源はしっかりと確保するなど、歳出歳入両面の改革に着実に取り組んでいくことによりまして、国民生活を支えるために必要なインフラ整備のための予算をしっかりと措置することも含めまして、各種の財政需要には的確に対応しつつ、責任ある財政運営に努めてまいりたいと考えております。

英利分科員 ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いいたします。

 また、少子化対策は今国会の重要なテーマでございます。私の地元でも現役世代、子育て世代が多く住んでおり、教育にかかる、また、児童の育児にかかるコストについては本当に関心も高いです。そして、私と同じように、三十代でまだ結婚していない、子供を持っていない働いている世代も多く、多くの方々が、なぜ子供を持たないのか、ないしは子供を持つことに不安を持つのかということを考えると、まだまだ子育ての経済的負担、こちらが少子化の主な要因として挙げられることが多いです。

 これらに対するこども家庭庁としての取組や見解をお知らせいただきたいと存じます。お願いいたします。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 少子化対策といたしまして昨年末に閣議決定されました、こども未来戦略の中のいわゆる加速化プランにおきまして、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てできる社会を目指すという観点から、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援する、この三つの理念の実現を掲げておるというところでございます。

 二〇三〇年代に入るまでが少子化対策のラストチャンスと言われておりまして、できるところから取組を実施していかなければならないと考えておるところでございます。

 このような考え方の下、本年は、児童手当の抜本的拡充、高等教育の負担軽減、保育所の七十六年ぶりの配置改善、子供の貧困や虐待防止といった多様な支援ニーズへの対応など、いよいよ政策が本格実施されるステージに入ってまいりますので、今国会にも必要な法案を提出するなど、スピード感を持って実行に移してまいりたいというふうに思っておるところでございます。

英利分科員 ありがとうございます。

 続きまして、少子高齢化と言われるように、少子化と高齢化は同時並行で進んでおります。特に、これから高齢者自体が高齢化して、八十代の方々が増えると、要介護者が爆発的に増えることが予想されます。

 介護ニーズが増加し、介護が人手不足となるとともに、そこにつけ込む悪質な職業紹介業者もいると地元からも多くの声をお伺いしております。既に厚生労働省が対応しているとお伺いしますが、更なる規制強化を検討すべきではないかと存じます。御見解をお願いいたします。

石垣政府参考人 お答え申し上げます。

 介護業界等で人材確保が切実な問題となっており、それに伴い、職業紹介事業者を利用して人材を採用する場合の紹介手数料への負担感や様々な御指摘があることは十分認識しております。

 このような状況に鑑みまして、厚生労働省では、一つには、法令を遵守し、丁寧なマッチングを行う事業者を認定する適正事業者認定制度を推進しておりますほか、二つ目には、手数料額に関する情報開示や、いわゆる就職お祝い金を使った転職勧奨の禁止など法令等の遵守を徹底させるため、現在、全都道府県労働局で、医療、介護、保育分野の職業紹介事業者に対する集中的指導監督を精力的に行うなどの取組を進めているところでございます。

 また、ハローワークの機能強化による人材確保、定着支援と併せまして、医療、介護等分野の人材確保を図ってまいっているところでございます。

 委員御指摘の取組の強化についてでございますが、早期離職の際に紹介手数料の一部が返還されることは、利用者の安心と納得に資すると考えております。

 このため、職業安定法に基づく指針によりまして返戻金制度を設けることが望ましいこととしていることに加えまして、適正事業者認定制度の認定基準を強化しまして、六か月までの離職に対する返戻金制度を有することというものを新たに認定基準に追加する方向で検討を進めておりまして、年度内に結論を得ることとしております。

 今後の更なる取組につきましては、現在行っております、先ほど申し上げた集中的指導監督等の取組の実施結果と課題等を踏まえまして検討してまいりたいと思います。

 以上でございます。

英利分科員 御丁寧にありがとうございます。

 おっしゃるとおり、現状の紹介手数料などの透明化、そして上限を設けるかどうかの議論の継続、そしてまた指導の継続、見直し、必要であれば強化、引き続き続けていただきたく存じます。お願いいたします。

 また、介護や福祉従事者の人手不足が懸念される中、市川市、浦安市では、川向こうである東京と比べて生活費がほぼ変わらない一方で、従事者の方々の地域加算区分、こちらが比較的低く設定されており、地元人材の東京への流出が大きな懸念であります。

 そんな中、介護保険の地域区分について、地元からの声も多数あった中、政府の中での議論の結果、浦安市の級地につきましても、令和六年四月に引き上がることとなりました。改めて感謝申し上げます。本当にありがとうございます。

 優秀な地元の方々が地元で仕事に見合う収入を得ながら活躍できるよう、区分の見直しを引き続きお願いしたく存じます。見解をお願いいたします。

斎須政府参考人 お答え申し上げます。

 介護や障害福祉におきます地域区分につきましては、人件費の地域差を介護報酬等に反映するための仕組みでございまして、公平性、客観性の観点から、民間の賃金水準を反映して設定されております公務員の地域手当の区分に準拠することを原則としております。

 他方で、隣接地域とのバランス等を考慮いたしまして、なお公平性を確保すべき場合には、隣接地域の状況に応じた地域区分の設定を可能とする特例を設けているところでございます。この特例につきましては、今先生御指摘ございました令和六年度介護報酬改定の中で見直しを行ったところでございます。

 令和七年度には公務員の地域手当について見直しが予定されていると聞いてございます。こうした状況でありますとか、それから、地域区分の変更をいたしますと、当該自治体の介護保険料への影響等も生じる可能性がございますので、そういったことも踏まえまして、必要に応じて、地域区分の在り方について検討してまいりたいと考えております。

英利分科員 ありがとうございます。

 地元からもお声が多く、今回の引上げについても本当に感謝の声を多く聞いておりますので、引き続き、御検討のほどよろしくお願いいたします。

 また、先日、市川市で猫の保護を行っている皆様の保護施設と、その方々の取組を視察させていただきました。その経験に基づいて、環境省の動物の愛護及び管理事業についてもお伺いさせていただきたく存じます。

 私も、視察に行って初めて知ったことで、本当に恥ずかしくて、非常に印象強かったんですけれども、まず、配付資料がありますけれども、こちらは環境省の動物愛護管理基本指針のものでございまして、犬と猫の殺処分については年々減少しているけれども、令和四年度ではまだ約一・二万頭、犬〇・二万頭、猫〇・九万頭が殺処分されているということが示されております。

 また、この中で、内訳なんですけれども、譲渡先の確保や適切な飼養管理が困難ではない、本来であれば殺処分が必要ない犬と猫の処分数もかなりありまして、犬二百八十一匹、猫二千六百八十九匹と、まだまだ必要のない殺処分が続いているということが見て取れます。譲渡適性のある個体の殺処分が今も行われていること、こちらは先進国としても恥ずかしいのではないかと思います。更なる削減をお願いしたく存じます。

 また、動物収容施設におきましても、収容された犬や猫を適切に飼養する環境が十分でないというお声をお伺いしました。こちらは、本事業の施設整備の補助金を拡充し、適切な飼養ができる施設整備を進める必要があるのではないかと存じます。

 また、市川では、市民社会の皆様、そして団体の皆様の御尽力によりまして、市川市への働きかけにより、不妊手術費等助成金の予算規模の拡大が実現しました。こちらは猫の不妊手術ですね。こうした取組を全国的に広げるべきではないかというお声もお伺いしております。環境省の方の御見解をお願いいたします。

堀上政府参考人 お答えいたします。

 まず、殺処分の削減についてでありますが、環境省が定めた動物愛護管理基本指針におきましては、治癒の見込みがない病気や攻撃性を有するなど、犬猫を譲渡することが適切ではない場合を除いて、飼い主への返還や新たな飼い主への適正な譲渡を積極的に進めることとしております。

 犬猫の殺処分数については、議員御指摘のとおりで、平成二十四年度から令和四年度までで約十四分の一まで減少しておりまして、自治体においてその取組は進んできているというふうに認識をしております。

 また、自治体の動物愛護管理センター等の動物飼養施設につきましては、動物愛護管理法に基づいて自治体がその業務を担う中で、特に必要性や緊急性の高いものにつきまして、平成二十一年度から動物収容・譲渡対策施設整備費補助という補助金を交付しております。各自治体の動物愛護管理センター等が譲渡促進を含めた機能をしっかり発揮できるように、引き続き支援を進めてまいります。

 また、不妊、去勢を実施する民間団体への支援につきましては、自治体、民間団体、地域住民等における役割分担など、実情を踏まえて地域で十分に検討されていくものと考えておりますけれども、引き続き、犬猫の殺処分数の更なる削減に向けて取組を推進してまいります。

英利分科員 ありがとうございます。

 本当に地元の方々も心を痛めていらっしゃる方々が多く、もちろん、我が国ではいろいろな課題が山積する中、なぜ犬と猫なのかという質問をもらうことも多いとお伺いしました。

 その中で、私も人権のお仕事を長くしている中で、本当に、人権侵害もそうですけれども、動物への侵害もそうですが、これは全て人間の問題であり、動物や人間を痛めるには、人間自身の非人間化ということが起こります。要は、人間自身、傷をつけている相手も心の痛みを持つことになる、また、自分の心を殺すことになるという現象がありますので、先進国としても、しっかりと動物の愛護、そして動物の権利についても進めていく必要があると思っております。引き続き、予算の拡充も含め、取組を後押ししていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今回、地元の声を基にたくさん質疑をさせていただきました。本当にありがとうございました。

 やはり、この中で、私の地元で最も高い関心事項の一つが、命に関わる防災、減災でございます。

 副大臣にお伺いしたいんですけれども、スピード感を持って道路や護岸の整備や耐震化、こちらを計画的に推進するためには、インフラ整備のための財源の確保、ひいてはG7各国同様に、予算の裏づけのある中長期的な計画の策定が大事だと考えております。インフラ整備のための安定的な財源の確保、予算の裏づけのある中長期的な計画の必要性に関する見解を問います。お願いいたします。

赤澤副大臣 防災、減災に向けたインフラ整備等については、これまでも、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策に基づいて、計画的、安定的に必要な予算措置を講じてきたところでございます。

 また、昨年改正された国土強靱化基本法により、五か年加速化対策後も中期的な計画を策定することがまさに法定化されたところでありまして、今後とも、激甚化、頻発化する災害や、あるいは老朽化施設への対応も含めて、国民の安全、安心を確保するために必要となるインフラ整備について、着実に進めてまいりたいと思います。

英利分科員 ありがとうございます。

 本日は、本当に御丁寧な答弁、ありがとうございました。副大臣もありがとうございました。

 今回の質疑をまとめるに当たって、本当に多くの霞が関の方々からも御尽力をいただきまして、本当に夜遅くまで働いていらっしゃるんだなということ、そして、しっかりと我々議員をサポートしてくださっているんだということを本当に肌で感じました。改めて感謝申し上げるとともに、霞が関の皆様の処遇改善にも努めてまいりたいと思いますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

 本日は、ありがとうございました。終わります。

牧原主査 これにて英利アルフィヤさんの質疑は終了いたしました。

 午後一時に本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

牧原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。福田昭夫君。

福田(昭)分科員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 大臣始め財務省の皆さん、お昼を食べる時間も余りなかったそうですが、恐縮ですが、仕事ですからさせていただきます。

 今日の私のタイトルは、消費税という巨大権益は本当だった、大改革が必要だというタイトルで質問をさせていただきます。

 最初に一言申し上げたいと思いますけれども、多額のお金が政治をゆがめてきた象徴的なもの、それが私は二つ大きなものがあると思って、一つは、巨大な権益を生み出してきた消費税の創設、もう一つが、やはり非正規雇用を四割弱にもしてしまった労働者派遣法の創設、この二つが日本を駄目にしてきた、このように思っております。

 そんな中で、二〇〇〇年、平成十二年から二〇二二年、令和四年までの二十三年間、国民政治協会から自由民主党への寄附金、何と六百一億円を超えております。企業・団体献金は絶対禁止すべきであります。政治の立て直しがまず急務だと思っております。

 そんな中で、まず、我が国の財政は危機的状況にあるのかから御質問をいたします。

 一つ目は、我が国の財政は、IMFの示す財政破綻状態、一つは債務返済の不履行、二つ目がIMF等からの例外的な大規模な公的財政支援を受けている、三番目が市場からの信認喪失などによる資金調達の困難化といった事態が発生している場合、これをIMFがそのように指摘しておりますけれども、我が国はそんな状況には全くないのではないかと思っておりますが、大臣からお答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 現状、我が国は、IMFが示す財政破綻状態、今、三つ先生がお示しになりましたが、そのような財政危機の状況に陥っているとは考えておりません。ただし、今後もこれまでと同様の環境が継続するといった保証はない中で、公的債務がGDPの二倍を超えるまで積み上がるなど、我が国の財政は諸外国と比べても極めて厳しい状況にあることを考えれば、将来にわたって楽観できる状況ではないと認識しておりますが、現状では財政危機の状況に陥っているとは考えておりません。

福田(昭)分科員 それでは、二番目ですけれども、これを聞くとまた長くなっちゃっても困っちゃうんですが、我が国の国債のCDS、クレジット・デフォルト・スワップの保証率は、現在、世界各国と比べて低い方か高い方か、どの程度なのかなどをちょっと教えてください。

鈴木国務大臣 日本のCDSスプレッドの直近の値は〇・二%となっております。これはG7各国の中で、ドイツに続いて、下から二番目にあると認識しております。

福田(昭)分科員 世界の国々も本当に日本の財政の状況というのをだんだん認識し出してきたのかなと私は思っております。

 三つ目でありますけれども、現在、我が国は千二百兆円超の公的債務を抱えておりますけれども、九千五百兆円超の巨大な金融資産を保有しており、簡単に財政破綻しないのではないかと考えております。

 資料の一をつけましたけれども、先日、二月の二十日に総務委員会で日銀と財務省から、我が国が保有している資金を教えていただきました。その一覧を是非御覧いただきたいと思っていますが、日銀と財務省からお答えをいただいた数字をそのまま一覧表にしてみたわけであります。あと、米印で私のコメントと、更にその下のコメントでは、これから行うべき大改革は、しっかり消費税を下げて、これまで大幅に引き下げてきた大企業と富裕層の法人税、金融所得課税などを含む所得税、担税力に応じてこうしたところに負担を求める改革が必要だ、そのように思っております。

 それでは、そんな中で大臣に、財政破綻をする可能性というのはどの程度あると考えているのか、ちょっと教えていただければと思います。

鈴木国務大臣 現状、我が国の家計の金融資産や経常収支の黒字等を背景にして、大量の国債の大部分を国内で低金利かつ安定的に消化してきているところでありますが、我が国の財政の現実、これは決して楽観できる状況ではないと思っております。一たび財政の持続可能性への信頼が失われることになれば、金利の上昇などを通じまして利払い費が大きく増加することや、自国通貨建ての国債であっても市場からの資金調達が困難となる可能性があるなど、財政面においても重大な影響が及ぶと考えられます。

 財政が国の信頼の礎であるということを考えますと、引き続き、歳出歳入両面の改革を続けていくことが重要であると考えております。

福田(昭)分科員 大臣、そういうことをおっしゃるなら、四つ目ですけれども、今我が国がやるべきことは、国会はもちろん国民に真実や事実を公表して、国民の皆さんに納得してもらえるような公平、簡素、納得の税制に大改革することが必要じゃないでしょうかね。消費税のように、大臣が言っているように経済成長を阻害するような税目に頼らずに、消費税を創設して以来優遇され続けてきた大企業と富裕層に担税力に応じて負担してもらうこと、これが、今後、それこそ年々必要となる子育て、年金、医療、介護、障害福祉等の費用を負担してもらう賢い税財源の集め方だと私は思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 福田先生からは、大企業それから富裕層優遇の不公平な税制がある、それを見直すことで経済成長を阻害しない税制を構築するべきだとの御指摘であったとお聞きをいたしました。

 まず、これまで累次にわたりまして法人税率を引き下げてきたことは事実でありますが、ただし、これは、我が国の競争力強化等の観点から、租税特別措置を見直して課税ベースを拡大する中で対応してきたものでありまして、大企業を優遇するものではありません。

 また、所得税につきましては、令和五年度税制改正で極めて高い水準の所得への対応を行うなど、一定の対応を図ってきたものと認識しております。

 他方、消費税につきましては、全世代型社会保障制度を支える財源として大変重要であると考えておりまして、減税を行うことは適当ではないと考えております。

 その上で、税制の構築に当たって納得を基本原則の一つに加えるべきとの御意見につきましては、福田先生御指摘のとおり、税制については国民の皆さんの十分な御理解と御納得をいただくことが不可欠であり、財務省としても引き続き努力をしてまいりたいと考えます。

福田(昭)分科員 鈴木大臣が昨年答えていただいた話なんですけれども、国民が納得してもらうということが大切だと、そのために四点ほど挙げたんです。

 一つ目の、公平、中立、簡素という租税原則だと。この中立というのはまやかしなんですよ。水平的な公平だとか垂直的な公平で、中立みたいな。しかし、消費税を最初につくったときは、増減税同額と言ったんですよ。ところが、実際やってみたら同額じゃなかった。減税の方が大き過ぎたんですね。それで赤字国債でやってきたというのが日本の財政です。

 二番目の、経済社会の構造的変化を踏まえつつ。経済社会の構造的変化といったら、これは何といったって少子化、人口減少じゃないですか。少子化、高齢化、人口減少。これを踏まえたら、将来、法人に税金を負担してもらわなかったらどうするんですか。どんどんどんどん働き手がいなくなっちゃう中でですよ。

 だから、そうした、踏まえつつ、所得税、法人税、消費税を適切に組み合わせながらと。全く適切じゃなくなっていますから。後で申し上げますけれどもね。

 それから、四番目が、経済成長を阻害しない安定的な税制基盤を築いていく、こう言っているんですが、まさに消費税は、税率を上げれば必ず物価を引き上げて経済を停滞させてきました。それが資料の二で、前にも御提示しましたけれども、信金中央金庫の研究所が作った日銀短観を組み合わせたものに、消費税率をつくってから、いかに消費税が、世界の経済的な変化がいっぱいあった中で、決定的な打撃を与えているのは消費税ですからね。ですから、そういうことをやはりしっかりと踏まえた上で安定的な税収基盤をつくるということが私は大事だと思っております。

 そんな中で、さらに、ちょっと先に申し上げたいと思いますが、先ほど申し上げましたけれども、広く税収をいただく基盤を広げた、こういう話をしましたが、税目ごとに申し上げますけれども、平成元年、所得税は二十一・四兆円ありました。現在は、令和六年度予算では十七・九兆円。令和六年度予算における割合は何と二五・七二%です。法人税は、平成元年は十九兆円ありました。現在、予算は十七兆円、二四・四三%です。法人税も、最近景気がよくなってきていますから伸びています。法人税、一番少なかったときは、平成二十一年、二〇〇九年ですけれども、六・四兆円しかありませんでした。これは相当な経済的な打撃があった年です。さらに、消費税は、つくった年は三・三兆円。これが、今度の予算では二十三・八兆円を見込んでおりまして、何と三四・二〇%。消費税が断トツの一位なんですよ。

 ですから、これは全くバランスなんか取れていないじゃないですか。適切な組合せでバランスよく、調和よくいただいているなんというのは別でして、全く消費税に偏った税制になっちゃっているということを是非御認識いただきたいと思っております。

 そんなことを踏まえて、どうでしょう、私の言う賢い税財源の集め方を考えてみませんか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 日本は基幹税目があって、それで今財政を回しているわけだと思いますが、やはり法人税等、あるいは所得税もそうかもしれませんが、景気の動向に左右される部分もあると思います。

 私は、そういうことで、税収はぶれがあるわけでございます、直近では上振れに振れたわけでありますけれども、いずれ、今の基幹四税の税目の構成というものは、今直ちにいじる必要はないのではないかと考えております。

福田(昭)分科員 大臣、実は、消費税がなぜ安定的な財源かと言っている話でありますが、これは、消費税は、実は国民は二重負担しているんですよ。それは、国も地方公共団体も消費税を納めているんですよ。ですから、幾ら景気が悪くたって、国や地方公共団体は消費税を納めなくちゃならない。ですから、行政負担もかかっている。だからある程度安定しているんですよ。だからアメリカは付加価値税を導入しない。レーガン大統領の頃から検討して、行政経費がかかり過ぎるといって、いまだに入れていないんですよ。

 ですから、そういった点も踏まえてしっかり、特に国の経済財政運営というのはいろいろなことができるじゃないですか。強力な権限を持っていて、それこそ、太平洋戦争に負けたときのような大きなことができるわけですよね。あのときに大変なことをやりましたよ。預貯金封鎖をして下ろせなくしちゃって、新円切替えをやって、さらには財産税をつくって、太平洋戦争に負けた後の財政を立て直してきて今があるわけですよ。

 ですから、そういうこともちゃんと踏まえながら、やはりまた同じ失敗をしないようにやるのが、私は、日本の国の経済財政運営のやり方だ、そのように思っております。

 次に、財務大臣、財務省の答弁はうそばかりだということを指摘している人たちがいるものですから、そのことについてこれから時間の中で話をしていきたいと思っております。

 一つ目は、昨年六月九日、財務金融委員会における、消費税という巨大権益は本当かという私の質問が、現在、ユーチューブで六つのチャンネルで流されていて、二〇二四年、今年の二月二十五日時点で何と四十八万三千五百四回再生されておりまして、コメントも千七百五十二件。その一位は、財務省を解体しろ、こういう話なんですよ。

 ちなみに、この本は、皆さんのお手元に、表紙だけ印刷してお渡しをしてありますが、実は、私の質問をきっかけに増刷されたんですよ。ですから、それほど衝撃的な話だったということなんですが。そして、財務省は解体しろというのが、何とそこに、いいねが千四百九十三件もついていました。

 ですから、こんなことをやっていれば、国民の怒りは、今回のパーティー券による裏金づくりに課税しろどころじゃなくなりますよ。ですから、しっかり財務省の皆さんには、いい頭を使って、ちゃんと日本の経済を立て直す、日本を立て直す、そういう考えに基づいて、いびつな税制を改めてほしいな、こう思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 御指摘のコメント、私自身は確認はしておりませんが、財務省の組織の在り方を含めまして、SNSなどを通じて様々な御意見をいただいていること、これは承知をいたしております。こうした御意見は、政府が打ち出す財政や税制などの政策について納得されていない方々がいらっしゃることの表れであると受け止めます。

 いずれにしても、財務省としては、国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐという組織理念がありますので、その組織理念の下、国民の方々はもちろん将来世代の視点も踏まえて、適切な政策を提案し、国民の皆さんに分かりやすく丁寧に説明していくことが重要である、そのように考えます。

福田(昭)分科員 大臣、是非ここは、私は考えを改めていただいた方がいいなと思っています。

 二つ目から五つ目は、時間の関係がありますので、私の方から指摘をするだけ指摘をさせていただいて、あと六と七の方でお尋ねをしたいと思っています。

 二つ目は、消費税は、創設以来、国民が広く受益する社会保障の費用をあらゆる世代が分かち合うという考えで創設されたのは本当かという話でありますが、前主税局長がこのように答えたわけでありますが、そうじゃないんですよね。当初は、直間比率の見直しということで、増減税同額ということで消費税は創設されたんですよね。ところが、減税幅が大きくて赤字国債を増発してきたというのが事実じゃないでしょうか。

 それから、三つ目ですけれども、消費税は社会保障給付という形で家計に還元されているので、負担の面だけに着目して経済への影響を論じるのは適切ではないということですが、これは本当かということ。これはどういうことかという話の方がいいかもしれないんですが、この話を聞くと、消費税は一律一〇%、八%、赤ちゃんから寝たきりのお年寄りも高額所得者も負担している、家計には社会保障給付という形で還元されているから問題ないと言っているように聞こえます。しかし、所得の再分配というのは政府にしかできないんですよね。民間企業には残念ながらできません。ですから、それがやはり、三十年間も民間企業の給料が上がってこなかった、そういう大きな原因だと思っております。

 四つ目でありますが、四つ目は、消費税、付加価値税を福祉目的税にしている国は、ヨーロッパも含めて日本以外ないのではないか。ない話なんです、これは。しっかり国会図書館にも調べていただきましたが、全くそういう国はありません。消費税率をヨーロッパ並みの二〇%に引き上げるために、子育て、年金、医療、介護に充てると法律に明記したのではないでしょうか。

 先ほども申し上げましたが、平成元年につくったときは直間比率の見直し、平成十一年に、予算総則に初めて四経費に充てると明記されました。その後、平成二十四年八月の法改正で、初めて法律に四経費に充てると明記したのではないんでしょうか。その目的は、何といっても、消費税率をヨーロッパ並みに二〇%まで上げたい、そういう財務省の考え方で上げたのではないでしょうか。国民をだましては駄目だということであります。

 五つ目でありますが、五つ目は、昨年の十月から消費税にインボイス制度が導入されましたが、財務大臣は複数税率、軽減税率制度の中でしっかり納税していただくために必要な制度だと言いますけれども、それは何のためなんでしょうか。消費税法の、売上げが一千万以下の多くの免税事業者を廃業に追い込んでまで、子育て予算に入れるためですか。インボイス制度はまさに小規模事業者に対する大増税と同じですよということを申し上げておきたいと思います。ですから、これはやはりいち早く中止をすべきだということを申し上げておきたいと思っております。

 それでは、残りの時間で六と七といきたいと思っていますが、六つ目でありますが、消費税の還付金には、輸出だけでなく設備投資も還付されるとのことでありますが、それは輸出免税還付金を含めて仕入れ税額控除額全部を指すのかというのが一つです。そしてさらに、輸出取引で消費税が還付される場合は、輸出の証明書を出さなければ実は還付されないということなんですけれども、その輸出証明書を集計すれば輸出免税還付金は出せると思うんですけれども、これが出せないというのはどうしてなんですかね。教えていただきたいと思います。

青木政府参考人 お答えいたします。

 消費税の還付につきましては、輸出の取引を行っているのか、それから国内で事業を行っているのかにはかかわらず、売上時に受け取った消費税額から仕入れ時に支払った消費税額を差し引いた結果がマイナスとなれば還付が生ずることとなっております。

 こうした消費税の仕組み上、還付となるのは、輸出取引を行った場合だけではなく、多額の設備投資を行ったなどの理由から仕入れ時に支払った消費税額が多額となり、売上時に受け取った消費税額から差し引いた結果がマイナスとなるため還付が生じていることもあります。これらを区分して集計することは困難であるということでございます。

 また、輸出証明書を集計すれば還付額が出せるのではないかというお話でございますが、輸出取引に起因する還付額を集計するためには、事業者が輸出分に対応する仕入れとそれからそれ以外に対応する仕入れを切り分けることが必要になりますが、それはなかなか難しい、困難でございます。

 したがいまして、法令上、輸出を原因とする還付を切り出して計算し申告することは求めておりません。また、そのような仕組みとすることは困難でございます。

福田(昭)分科員 主税局長、この大村君も言っていますよ。ちゃんと、輸出証明書をしっかり集計すれば出せるはずだと。もし出せないのであれば、財務省はそれこそ税務を担当する資格がない、ここまで言っていますよ。そう言われても出せないんでしょうかね。

 ここでちょっと主査にお願いしたいと思います。

 財務省は必ず出せるはずですから、平成元年度から現在まで、この輸出免税還付金をしっかり出すように、予算委員会の委員長に、理事会で議論するように是非提案してください。お願いします。

牧原主査 ただいまの資料につきましては政府において。では、財務省青木主税局長。(福田(昭)分科員「いや、いいですよ、いいですよ、答えられないんだったらいいんですよ。いいんです」と呼ぶ)

 では、今、資料要求がありましたので、しかるべく措置をお願いしたいというふうに思います。(青木政府参考人「今の点に関しまして御説明……」と呼ぶ)

福田(昭)分科員 いいんです、いいんです、時間がなくなっちゃうから、いいですよ。だって、答えられないと言っているんですから、答えさせてもしようがないじゃないですか。

 では、残りが少なくなってきましたから、七番目です。

 令和六年度予算における国、地方を合わせた消費税総額は四十一兆九千四百四十三億円、それから、還付金は十一兆六千九百九億円、還付率は実に二七・八九%となっています。これが消費税の巨大権益の一部だと思うがいかがかという話であります。

 このほか、実は、消費税をつくったために、法人三税、所得税、住民税、金融所得課税、相続税などを大幅に引き下げてきましたので、消費税の還付金だけではなく、巨大な権益を、消費税をつくったときに生み出してきた、こういうことなんです。

 このことについてどう思っているのか、財務大臣のお答えをいただきたいと思います。短めにお願いします。

鈴木国務大臣 先ほど主税局長からもお話がございましたが、消費税は、売上時に受け取った消費税額から仕入れ時に支払った消費税額を差し引いた額がプラスとなっている場合にはその分を納税していただき、その額がマイナスとなっている場合にはその分が還付される仕組みであります。

 そのような、納税のみならず還付にもなり得る仕組みは、我が国の消費税に相当する仕組みを有する諸外国においても共通して導入されている仕組みでありまして、何か問題のあるものとは考えておりません。

福田(昭)分科員 大臣、私はそういうことを聞いていないので、巨大な権益の一部になっていないかということを聞いているのであってね。

 ちなみに、では、法人企業の内部留保資金は、先ほど資料の一で申し上げましたけれども、これは何と、平成元年、百十六・二兆円だったものが、令和四年度には六百二十七・五兆円と、五・四倍になっております。それから、家計、個人の金融資産は、平成元年、九百八十二・三兆円だったものが、令和五年九月末には何と二千百二十一兆円と、約二・二倍となっております。

 一方、国と地方の公的債務残高は、先ほど申し上げたように、平成元年、二百八兆円でありましたけれども、令和五年度末には何と千二百八十五兆円と、六・二倍となるような見込みであります。働く人の賃金も、一九九七年、平成九年から約三十年間、先進国では日本だけが唯一賃金が下がり続けた国であります。

 こんなことを考えると、まさに、消費税をつくってからの税制がいかにいびつな、日本を駄目にしてきた税制かというのがよくお分かりになるかと思っております。これがまさに消費税がつくってきた巨大権益だということであります。ですから、これをやはり終わりにするということが大事だというふうに思っております。

 私は、是非、そういった意味では、政府、財務省が財政健全化が必要だ必要だというのであったら、今すぐ、今行うべき大改革はまず消費税率を引き下げることです。五%に下げても、それこそ、今まで利益を得てきた人たち、これまで巨大な富を築いてきた大企業と富裕層が、働く人の賃金を上げる、それから国民に、さらに、こうした税制をつくってきた国に対してもやはり恩返しをする。

 ですから、私も、たくさんため込んだ金に課税しろとは言いません。でも、彼らは毎年毎年稼ぐんですから、株主・金融資本主義になっているから、毎年毎年稼ぐんだから、これから稼ぐお金に対しては、ちゃんと担税力に応じて負担してもらう、そして日本の財政の健全化をしていく。財政の健全化をすることによって、経済もよくなるし、あるいは働く人の賃金も必ずよくなっていきますから、そうした法人税、所得税、金融所得課税などを担税力に応じて負担する、負担してもらう、そういう改革、それが大改革じゃないでしょうかね。

 やはり、この国を立て直すためには、政治と金の問題もありますけれども、それこそ、非正規雇用が四割弱にもなってしまった、この派遣労働者の法律の改正も必要だし、それから、余りにも不公平な税制で巨額な富をためた人がおりますけれども、その人たちが内部にため込んでいたのでは日本の経済はよくなりません。

 それこそ、昔から、お金は天下の回りものと言われている。ですから、ため込まないで、やはりちゃんと税金を納める人は税金を納めて、お金を使うといったって、高額所得者だって限りがありますから、そんな使いようがないんですよ。だって、人間一人食べる分は大体同じですから、ちょっと高いだけの話であって、それほど実は使うわけじゃありません。

 私も、金持ちの人のうちに行ったことがありますけれども、大体もういろいろな調度品がそろっています。あれ、これは中国かな、どこからかなと言うんですから、まさに、そういった意味では、これから高額な買物なんて多分ほとんどしないと思いますから、ですから、そういう意味で、大胆な改革は、日本を立て直すために福田昭夫の提案を是非聞いてやっていただくということが大事だということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて福田昭夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、山岡達丸君。

山岡分科員 山岡達丸です。

 本日は、予算委員会分科会の質疑の時間をいただきました。鈴木財務大臣と、そしてまた、金融部門担当大臣政務官として神田政務官にもお越しいただいております。よろしくお願いいたします。

 分科会ということで、地域の課題として、しかし大変深刻な状況にもなっているということで、ここで取り上げさせていただいて、とにかく解決に向けた道筋をつけたいという思いで質疑をさせていただきたいと思います。

 北海道の苫小牧市、私も政治活動をさせていただいているエリアでありますけれども、苫小牧市の苫小牧港という港湾、ここの税関検査をめぐって、特に港湾労働者の方々の負担が限界を迎えているということをまずお伝えをさせていただきたいと思います。

 苫小牧港は、日本有数の貿易量を誇る北海道の南側の玄関口になるんですけれども、国内はもちろん、国際コンテナも取り扱っています。物流の要でもあって、近年では、苫小牧市の一つ北側に千歳市という町がありますが、国家プロジェクトとして、ラピダス、国産で最先端の半導体を作っていこうとプロジェクトも動いておりまして、ラピダスもそうですし、関連産業もこれから集積してくる。様々な状況の中で、まさに成功に向けて港湾としても全力で取り組んでいかなきゃいけないですし、期待も大きく高まっているような、そんな場所でもあります。

 この苫小牧港は東と西に分かれているという状況であります。国際コンテナが東港にありますので、国外のコンテナは全て東港から入ってくるという状況なんですけれども、税関の検査は西港にある。エックス線の検査場を通じないと国際コンテナを入れられないんですけれども、そういう状況にある。

 今回お許しいただいて、この地図、これをちょっと掲示をさせていただきますが、資料はまた財務省等を通じてお届けさせていただきたいと思いますが、町を挟んで東と西にあるというのが苫小牧の港湾の状況でありまして、赤い線を引かせていただいておるのは、この道を使って東から西に様々検査のために運んでいるという状況があるということをお伝えさせていただきたいと思います。

 そして、これは、今地図にさせていただいておりますが、ちょっとの距離ではないということであります。済みません、今お手元に地図が届きましたね。往復でおよそ五十キロになる。毎日一時間半、これが五回から十回検査のために往復をするという状況でございまして、これでスムーズに済めば一時間半なんですけれども、エックス線検査で何か見つかれば、当然中身をきちんと見ていかなければならないということになりますので、その中身の検査が終わるまでドライバーは立ち会いますので、非常に大きな時間がかかるんです。

 このトラックドライバーというのは、荷主の方が御用意される、御用意という言い方もよくないですが、荷主の方が雇うわけではなくて、港湾のそこにいる事業者たちの労働者たちが、働き手が限られた人数でそれをこなしているという状況であります。

 今回国交省さんにも来ていただいておりますので、まず伺いますけれども、東港で揚がるコンテナを検査のために西港まで持っていって陸路で往復するという状況を、港湾労働者の方々から、大変大きな負担として何とか改善してほしいと私の元にも届いていますけれども、国交省はまさに港湾の働き手の皆様と直接向き合っておられますけれども、こうした働き手の皆様の声、国交省としてどのように把握されていますでしょうか。

西海政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の苫小牧港につきましては、私ども国土交通省では、以前から、港湾労働者の方々あるいは港湾労組の方々と意見交換、情報交換する場を設けております。

 その中で、苫小牧港の関係者の方から、同港のコンテナ検査センターの大型エックス線検査装置を現在国際コンテナのターミナルのある東港の方に移設していただきたい、そうしないと、先生の御指摘のように、往復五十キロありますので、労働時間規制もある中でかなり厳しい状況であるということは伺っておりまして、私ども、この情報に触れまして、施設を所管していらっしゃる財務省関税局とも情報共有を図ったところでございます。

山岡分科員 御答弁ありがとうございます。

 国交省としてそういう把握をされておられるということなんですが、今最後に触れていただきましたけれども、税関の検査ですから、所管は財務省関税局ということになるわけであります。関税局のお立場からすれば、税関の検査ですから、港湾の働き手の皆様のことが中心のお仕事の業務ではないわけでありますけれども、この状況をとにかく解決をしてほしいという声が上がっているというお話であります。

 エックス線検査場は二〇〇四年、二十年前に設置されています。苫小牧港の国際コンテナの水揚げを東港に集約することを決めたのは、実はこの二〇〇四年の後の二〇〇六年、そして、実際にそうなったのは二〇〇八年ということになりますので、もう十年以上にわたって、非常に長い道を往復しているという状況が続いているわけであります。

 働き手の皆様もこの検査が必要だということは十分に分かっていますので、これを何か減らしてほしいということではないんですけれども、ただ、本当に距離が遠いということで、西港から東港に検査場も移設してほしいという話は、苫小牧の港を管理する管理組合の皆様などから財務省サイドにも毎年要望としては上がっていたと思うんですが、しかし、実現はしてきていないんです。

 財務省にまず伺いますけれども、この状況が、どんな事情があって移設の要望を受け入れることが難しかったのか、御説明いただければと思います。

江島政府参考人 お答えします。

 苫小牧港におけます税関のコンテナ検査センターでございますけれども、平成十六年、二〇〇四年三月に西港区へ設置したものでございます。設置に当たっては、あらかじめ地元関係業界等から丁寧に意見を聴取し、地元との間で十分に調整を行ったものと承知をしております。

牧原主査 いやいや、多分質問は、聞いているかということですね。(山岡分科員「どんな背景があって受け入れられていないのかということを」と呼ぶ)

江島政府参考人 平成十六年には、地元との間で十分に調整を行った上で西港区に設置したと承知しております。その後、平成二十年、二〇〇八年の八月に国際コンテナターミナル機能が西港区から東港区に移転をしたものと承知しております。

 コンテナ検査センターでございますけれども、これは建屋が設置されておりまして、当該建屋の残存耐用年数がいまだ残っておりますこと、また新規の建屋の建築には多額の費用も要しますことから、厳しい行財政事情を踏まえまして、直ちに移転を行うことは難しいというふうに判断してきております。

山岡分科員 今お話がありましたけれども、国会の答弁ですから、今こういう形でいただいているわけでありますけれども、一言で言えば、西港に決めたのは地元の意向でそこに設置したんだ、そして、その後に東港に移転していますし。

 今お話がありましたけれども、私も関税局の皆様にお計らいいただいて現場を視察してきましたが、エックス線検査なので、私も簡単に考えていたんですけれども、ただの移設ではなくて、検査場の施設も設備も一体型で、当然壁もエックス線を出さないようにかなり頑丈な造りにもしなければならないという現場を見させていただいて、多額の予算もということでしたけれども、聞くところによると数十億単位じゃないかという話もあるわけであります。その設備投資を当時、地域で決めた西港であるというお話として今御答弁いただいたものということを思います。

 ですから、陳情もそうそう簡単な話じゃないよということは、よくこのことは十分に受け止めなければいけないと思いますし、このこともよく検証して、プロセスも検証して、真摯に受け止めて、地域としても反省すべきことは反省しなければならないということはこの場でも申し上げさせていただかなきゃいけないし、私も今地域を代表させていただいている一人でありますので、このことを、プロセスとしては、私の立場からもおわびは申し上げさせていただきたいということを思うわけでありますが、大臣に、それを押してでも、今回、何とかこの問題の解決に向けての道筋をお願いをさせていただきたいということで、質疑として取り上げさせていただいております。

 お話にも、国交省さんからもお話がありましたけれども、二〇二四年度にはトラックドライバーの皆様の労働規制が強化されるということで、これは全国的な問題になっていますけれども、働き手の皆様が大変きゅうきゅうするという状況が出てくるということと、そしてまた、苫小牧港の、最初にも触れましたけれども、次世代半導体の国産化に向けた国家プロジェクトも全力で向き合うぞという体制があるわけでありますし、税関検査も必要なことはよく分かっていながらなんですけれども。

 これは、管理組合でもないですし、財務省、国交省さんのそれぞれお立場があると思いますけれども、そこを何とか、地方都市でやりくりしている港湾労働者の皆様が、厳しい人手不足が極限を迎えて、更にそのやりくりも厳しくて、物理的に離れている税関の問題を何とか解決してほしいと。

 設置から二十年というきっかけの中で、西から東への移設を何とか道筋をつけていただきたいということを、この場でも大臣に強くお願いを申し上げさせていただきたいんですが、大臣から御答弁いただけませんでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど関税局長からお話がございましたけれども、苫小牧港のコンテナ検査センターの設置場所につきましては、地元関係者の皆さん、苫小牧港湾管理組合等の皆さんとの事前調整等を経て設置されたものと承知をしておりますが、その後の港湾事情の変化により、港湾労働者でいらっしゃるトラックドライバーの皆さんに大変負担が生じているということ、これは山岡先生の今の熱意ある御発言で承知をしたところでございます。

 それでは、このコンテナ検査センターを移転するかどうか、こういうことでありますが、財務省といたしましては、こうした港湾労働者の皆さんの御負担を含めた港湾事情でありますとか社会情勢の変化も見極めなければならないと思っております。そして、その設置には多額の費用を要する。つまりは、新規施設の設置、それから既存施設の撤去、それぞれにかなりの額が必要であると想定されているわけでございまして、厳しい財政事情も踏まえる必要がある、そのように考えます。

 いずれ、こうした地元の御要請があるということは承知をいたしましたが、慎重に検討していきたいと思っております。

山岡分科員 今大臣から御発言がありました。撤去に関しても費用がかかるんだというお話もありましたけれども、他方で、労働者が厳しい思いをされているという状況については受け止めていただいているということも、今御答弁をいただきました。

 令和三年六月に総合物流大綱ということをおまとめいただいて、これは閣議決定されていますので、財務省の皆様もここに参加されている決定ではありますけれども、ここに、総合物流大綱で真っ先に出てくるのが、この二〇二四年トラックドライバー問題が労働力不足の課題として挙がってきています。

 この中身の三十五ページにまとめがあるんですけれども、ここの中に、この課題の解決のために、関係省庁のみならず、荷主、物流事業者等の民間の主体はもちろん、各省庁の地方支局、分局、部局のそうした皆様も含めて、公的主体も一体となって、責任と覚悟を持って物流施策を推進していくんだということを皆様でお決めいただいているのが令和三年であり、二〇二四年の労働規制強化も目前にまで来てしまいました。

 大臣も岩手県が御地元でありますので、航路でいえば、苫小牧港ともつながりのある港もたくさんありますし、最近まで、宮古市では、私の、北海道の室蘭というお隣の港なんですけれども、一時期フェリーも交流があったりとか、私以上に港湾の現状は造詣がお深いものということは思いますし、働き手の皆様も十分状況は、この質問も通じてですけれども、御理解いただいているものと思いますけれども、この状況のままでずっと働き続けるのかというのが、先も見えないという状況を、何とか大臣のお言葉から少し希望が持てるような状況にさせていただきたいという思いで。

 設備も、もちろん大型の施設の設備ではあるんですけれども、様々、部分的には更新の機会もたくさんあると思いますし、遠からず設備更新も、いろいろな機会があると思うんですけれども、何とか、この瞬間じゃなくても、道筋をつけるという意味で、大臣から何か言葉を発していただけないでしょうか。お願いいたします。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げたとおりでございます。事情につきましては、今先生からよくお話を伺ったところでございます。

 これを東港区へ設置し直すということにつきましては、やはり財政状況ということを踏まえる必要があるんだと思います。新規に造る、また既存施設を撤去するということにかなりの財政支出が必要になるということでございますので、そうした実情をお話しいただきましたが、そうしたことと財政の状況ということも併せて慎重に検討していく課題であると受け止めたところであります。

山岡分科員 この話は、ここで、恐らく国会で初めて問題提起もさせていただいていますが、本当に現場では非常に深刻な状況であります。

 どうか、またこれから様々声も上がってきますけれども、是非、この状況の改善に向けた、本当にこれが大きな話であることをよく理解した上でもありますけれども、重ねてお願いをさせていただくということで、申し上げさせていただければと思います。

 今日残りの時間で、またちょっと別のテーマで質疑をさせていただきたいと思うんですが、小額硬貨、具体的に言えば一円玉の両替の手数料についてもここで取り上げさせていただきたいと思います。

 この手数料が近年非常に上がり続けているという状況でもあります。一円玉は、私たちの地域でも、千枚を両替するのに手数料として千百円がかかる、そんな状況にもなっています。

 私の活動しているエリアに室蘭市という場所がありますが、そこに本社のある牛乳屋さんは、この四月、ついに周りの金融機関全てが同じ水準まで値上げするということになってしまって、消費者の方、いわゆる販売先の皆様から持ち込まれる小額硬貨について、そこが手数料を全て負担して両替という手続をしなければならないという状況が生まれてしまっています。

 金融機関にしても、一つが上げれば、ほかの金融機関にそれが集中するわけですから、どんどん追随して両替手数料を上げていくという状況になるんだろうと思います。すごく雑な言い方をすれば、一円玉というのが、両替が負担になって、その押しつけ合いという状況が特に地方都市で顕著に表れているんじゃないかということを思うわけであります。

 当然、金融機関は千百円にして、事実上、持ってきた方が手数料がかかるよと言えるわけですけれども、個人商店はそれができないわけであります。このお店は、月に三千枚ずつ一円玉がたまっていくという状況でありますけれども、財務省として、この状況はどう把握されていますでしょうか。まず一言お願いいたします。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、近年、多くの金融機関におきまして硬貨の取扱手数料というものを導入されておられまして、金融機関の窓口におきまして、硬貨の入金あるいは両替を行う際に手数料の支払いが必要とされているというふうに承知をいたしているところでございます。

山岡分科員 今、財務省としても状況を把握しているというお話がありました。

 ちなみに、そこのお店は、キャッシュレスの導入にも最大限努力してきたところでもあります。五千件宅配等でやっているそうですが、先日、政府もキャッシュレスの推進を図りましたけれども、そのときにも様々な御家庭にそれを推奨し、また、銀行振り込みであったりとか、あるいはコンビニ支払いであったりとか、二千五百件、半分ぐらいはキャッシュレスなんだということでありますけれども、しかし、残りはやはり現金取引。これがなぜそうなるかというのは、いらっしゃる委員の皆様も含めて、それはよく理解できることだと思います。

 この方は本当に嘆いて、このようにおっしゃいました。一円玉を金融機関に持っていって、千枚が千百円かかるのであれば、これは本当に、捨てるか埋めるか川に流した方がいいのかと。これは本当に一事が万事だと思うんですけれども、最近の報道でも、おさい銭箱に一円玉をたくさん持ってこないでくださいというようなことが伝えられたりとか、これは非常に大きな問題だと思うんですよ。

 そして、今日、金融担当の大臣政務官、神田政務官にお越しいただいています。

 よく一般に、金融機関は、ある種、お金が血だとしたら血管だとして、社会全体に血を巡らせるための役割だということで、中小企業とかにもちゃんと適正な融資をしなさいということを言われるわけでありますけれども、これが動脈だとしたら、静脈もあるわけであります。ちゃんとお金を回収、吸収して、そしてまた更に循環させるという機能があるわけであります。

 一番の小額硬貨がこういうような状況になっていて、負担が押しつけられているというこの負担のシェアの問題で考えますと、金融機関も、ある種、地域で独占的に金融の業務をやっているという面でいえば、公共的な役割を持っているわけであります。コストがかかるのはよく理解しますけれども、これが行き過ぎた形で転嫁しているこの状況はいかがなものかと思いますし、一円玉を土に埋めたいと嘆く、こんな状況は異常ではないか、是正すべきじゃないかと思いますが、御答弁願います。

神田大臣政務官 山岡委員の御質問にお答えいたします。

 それぞれの金融サービスに対しましてどのような手数料を設定するかにつきましては、御指摘の硬貨取扱いに係る手数料も含めまして、各金融機関において、自らのビジネスモデルを踏まえて、経営判断に基づいて決定されるものと承知しております。

 このうち、御指摘の硬貨手数料、取扱手数料につきましては、各金融機関において、利用者の利便性の観点に加えて、低金利や人口減少などの金融機関の経営環境や、硬貨の回収、補充、運搬に伴う人件費、あるいはサービス維持にかかるコストなどを総合的に勘案して設定しているものと承知しております。

 実際に、各金融機関の経営判断の結果といたしまして、硬貨の取扱手数料につきましては、ATMでの取引を一定枚数まで無料とする銀行もありますし、また、有料となる枚数あるいは手数料の額につきましても、各金融機関で様々なものとなっていると認識しております。

 山岡委員御指摘のとおり、金融機関の業務には公共性が求められるというところも我々認識しておりますが、一方で、その業務運営につきましては、自主的な判断や経営努力を尊重する必要もあると考えております。

 金融庁といたしましては、このような観点を踏まえて、各金融機関において、手数料を含めた様々な顧客ニーズを踏まえ、金融サービスの利便性向上に向けた取組がより一層進められることを期待いたしております。

山岡分科員 今御答弁の中で社会的責任も有しているというお話をいただきました。これは非常に大きな御答弁だと思います。

 経営判断はあると思います。特に、地方の地銀は元々経営環境は厳しいです。しかし、更にそこの個人商店の皆様は、そこしか取引する場所がない。しかも、一か所がやれば、どんどん追随して手数料を値上げしていって、もう持ってくるなというようなレベルの金額にまで来ているわけであります。

 両替というのは、例えば、ほかの方に振り込みする手数料は、まだ自分の金融機関をよく使ってほしいからということで競争にはなりますが、しかし、千円のものを千円に両替するということに利益は発生しないわけでありますから、両替そのものはコストでしかない。

 コストの転嫁というのが、この近年、これまでは社会的な役割を果たして様々やってきたことが、もうこれは千百円にもするぞという状況になっているというのは、これは政治の場で、政府サイドで、金融機関とは違う立場から目を光らせていかないと、この状況はますます進んでいくと思いますので、これは是非、政務官としても、強い注目を察していただきながら取り組んでいただきたいということを重ねて申し上げさせていただければと思います。

 御答弁があれば、どうぞ、今。

神田大臣政務官 委員御指摘のとおり、金融機関には一定の公共性があるものと考えております。一方で、金融機関の経営判断で手数料を徴収するかどうか、あるいはどういった水準にするかどうかといった判断もあるということも御理解いただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、金融庁としては、しっかりと顧客ニーズを踏まえて、金融サービスの利便性向上に向けた取組を推進していくよう進めてまいりたいと思います。

山岡分科員 このテーマもまた取り上げさせていただきますが、是非よろしくお願いいたします。

 最後、お酒の話について、大臣に改めてまた伺いたいと思います。

 室蘭という町も先ほど出させていただきましたが、私の、室蘭の政治活動しているエリアの地元新聞社に室蘭民報というところ、新聞社さんなんですけれども、むろみんマルシェと銘打って、地域の様々なものをネットで販売して応援していくという取組も始めておられるところでありまして、室蘭の地酒、蘭の舞というお酒があるわけでありますけれども、こうしたネット販売の取組を進めているという状況がございます。

 日本各地で、独自の発酵技術の中で、日本の文化の象徴たる地酒が、このグローバルな社会の中で、本当にローカルな地域から様々なツールを通じて世界に売り出していくということは、非常に大きな可能性があるということを感じております。室蘭という町は港湾都市で、歴史的には物づくりなので工業都市でもあるんですけれども、地酒だって世界に売り出すことがあっていいんだということを強く思うわけであります。

 こうした地域の様々な地酒を世界に向けて売り出していくという取組は、お酒を所管しているのは財務省でもありますので、大臣から、この取組、推進に向けた思いを是非お伝えいただけないかということを思いますが、御答弁願います。

鈴木国務大臣 中小の酒類販売業者の方々は、専門知識でありますとか経験、それから地域でのネットワークなどを生かしまして、例えば、希少な地酒等の個性ある品ぞろえですとか、食事に合った酒類の紹介といったきめ細やかなサービスの提供を通じて、酒類の高付加価値化や販路の拡大に重要な役割を果たしているものと承知をしておりまして、酒類販売業者の存在というのは大変重要であると考えております。

 日本産酒類の振興に当たっては、引き続き、国税庁におきまして、関係機関と連携をしながら、御指摘の中小酒類販売業者の取組への支援につきましてもしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

山岡分科員 ありがとうございます。大臣から支援というお話もありました。

 是非、中小事業者は、本当に限られたソース、人的ソースもそうですし、いろいろな環境の中で、何とか世界に向けてもいろいろ発信していきたい、お酒も売り出していこうとしていますので、またそうした支援の具体的な対応もお願いをさせていただきたいと思います。

 先ほど蘭の舞という室蘭の地酒をお話しさせていただきましたが、私の地域だけでも、美苫、甘露法水、あびら川、あつま川、男山、鵡川、日高彗星、静内彗星、涼燗、大本命・五冠神讃、本当にこれだけでは言い切れないほど各地域に多くの地酒というものが存在しているわけでありまして、これは世界に向けての大きな財産でもあるということを強く申し上げさせていただきたいと思います。

 こうした中で、つい昨日あたりの報道で非常に気になる報道が出てきているところでもあります。

 日本とEUの間に、二〇一八年には経済連携協定も締結されて、そこからお酒の販売、EUからいえばワインが中心になりますけれども、こちら側は日本酒をEUに出していくというような、いい方向で話が進んでいるわけであります。しかし、報道によれば、EU側は、締結後にいわゆる非関税障壁的なものを設けて、日本酒が禁輸に事実上なるような動きがあるということが、具体的に動いているんだということが伝えられています。

 この状況は、もちろん、我々はワインを中心に輸入しているだけじゃなくて、チーズその他、関係するいろいろな農作物も私たち日本に受け入れて、そして、日本から日本酒を出しているという状況でありますので、全体に影を落とすような、この議論は、これからの両国の発展に水を差すような、そうした動きなんじゃないかなということを強く感じるわけであります。

 今後もお互いの国々でそれぞれのお酒が盛んに流通する環境というのが非常に望ましいということを思うわけでありますけれども、財務省に伺いますけれども、この報道の事実関係を御答弁いただければと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の報道は承知をしております。

 報道のありましたEUの包装廃棄物に関する規制案につきましては、現在、EU理事会、欧州議会及び欧州委員会の三者間で議論が行われているところと承知をしております。

 政府の対応につきましては、海外の当局等との信頼関係に影響を及ぼすおそれがありますことから、その詳細は差し控えさせていただきますが、国税庁といたしましては、日本酒等の瓶は当該規制の対象とならないことが望ましいと考えておりまして、EUの関係当局に対して働きかけを続けているところでございます。

 今後とも、国税庁といたしましては、関係機関と連携をいたしまして、EUを含む海外への日本産酒類の輸出拡大に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

山岡分科員 日本酒がきちんとEUに届く環境が望ましいという御発言もいただきました。是非、その環境づくりに向けてまた鋭意取り組んでいただきたいということも申し上げさせていただいて、質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて山岡達丸君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして財務省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

牧原主査 次に、外務省所管について政府から説明を聴取いたします。上川外務大臣。

上川国務大臣 令和六年度外務省所管予算案につきまして、その概要を説明いたします。

 令和六年度一般会計予算案において、外務省予算は七千二百五十七億一千五百五十九万三千円を計上しております。また、そのうち、四千三百八十二億六千四百二十一万円が外務省所管のODA予算となります。なお、そのほか、外務省関連のシステム予算については、デジタル庁所管分として一百五十九億六千四百九十三万四千円が計上されています。

 現在、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序は重大な挑戦にさらされています。

 引き続き、日本の国益をしっかりと守る、日本の存在感を高めていく、国民の皆様からの声に耳を傾け、国民に理解され、支持される外交を展開するという三点を基本方針として日本外交を展開していきます。

 予算案作成に当たっては、五本の柱を掲げ、めり張りをつけて、必要な予算を計上しました。また、対ウクライナ支援や中東情勢への対応などの喫緊の課題には、令和五年度補正予算も活用し、早急に対処しているところです。

 第一の柱は、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、「人間の尊厳」の確保」です。自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた取組、厳しい安全保障、経済環境への対応を強化します。また、女性・平和・安全保障、WPSも力強く推進します。

 第二の柱は、「情報力の抜本的強化」です。情報セキュリティー基盤の構築、強化に取り組むとともに、偽情報を含む外国からの情報操作への対応を含めた情報戦をしっかりと戦っていきます。

 第三の柱は、「国際経済秩序の維持・強化、日本の経済成長の促進」です。ルールに基づく自由で公正な国際経済秩序の維持拡大に取り組みます。また、日本の強みを生かしたオファー型協力等のODAを通じて、途上国の質の高い成長を実現するとともに、我が国の成長にもつなげていきます。

 第四の柱は、「人間の安全保障の推進、地球規模課題への取組の強化」です。気候変動、環境を含む地球規模課題への対応やSDGsの達成に向けた取組を主導します。

 第五の柱は、「外交・領事実施体制の抜本的強化」です。在外公館の強靱化を進めるとともに、勤務環境整備を含め、機動的、積極的な外交実施体制を推進します。また、在外公館の新設や外務省定員の七十名純増に必要な経費も計上しています。

 以上が、令和六年度外務省所管予算案の概要です。

 牧原主査を始め、委員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

 なお、時間の関係もございますので、主査におかれましては、お手元に配付してあります印刷物を会議録に掲載されますようお願い申し上げます。

牧原主査 この際、お諮りいたします。

 ただいま上川外務大臣から申出がありましたとおり、外務省所管関係予算の概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

牧原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

牧原主査 以上をもちまして外務省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

牧原主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。英利アルフィヤさん。

英利分科員 ありがとうございます。皆様、お疲れさまです。千葉五区選出の英利アルフィヤです。

 私の選挙区、市川市、浦安市では、非常に国際関係そして人道支援に関しての関心も高く、日々、国際関係に関して我が国としてどのような立ち位置を取っているのか、地元の方々からも御質問をいただきます。

 そのような中、もちろん国際秩序が今乱れる中、そして人権のスペースもどんどん脅かされている中、日々の外務省の皆様の御尽力に改めて感謝申し上げます。国としての取組、そして、今、この状況で我が国に求められるリーダーシップがあると思います。それにつき、本日は、お伺いさせていただきたく存じます。

 まず、イスラエル・ガザ情勢についてです。

 今般の情勢悪化から、はや四か月がたちました。特に、ガザでの人道危機についての一連の報道に、地元でも心を痛める声が多くあります。現在、ガザでの死者数は二万九千人を超えており、うち一万二千三百人が子供、八千四百人が女性であります。ガザの人口の半分は子供です。

 その中、国連によりますと、ガザの住宅の半分を超える三十六万軒の住宅が破壊されており、二月十六日時点で九十九人の、ほとんどがパレスチナ出身のジャーナリストが今回の危機により死去しています。

 このような情勢悪化を受けた日本国政府による人道支援の実績を、いま一度お伺いさせていただきたく存じます。

 また、国際連合パレスチナ難民救済事業機関、UNRWAは、一九四九年から、ガザへの人道支援において重要な役割を担っています。日本国政府がこの度UNRWAへの支援拠出金の停止を決定した経緯、もう一度御説明いただきたく存じます。お願いいたします。

北村政府参考人 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ガザ地区の危機的な人道状況を受けまして、我が国はこれまでにパレスチナに対する総額約七千五百万ドルの人道支援を決定し、実施に移してきているところでございます。

 他方で、御指摘のUNRWAにつきましては、我が国は、昨年十月七日のテロ攻撃にUNRWAの職員が関与したとの疑惑を受けまして、国連及びUNRWAが当該職員の契約を直ちに解除し、調査を開始したところ、そしてまた、テロ攻撃に関与したという疑惑の事態の重大性に鑑みまして、国連による調査が行われ、対応策が検討される当面の間、UNRWAに対する令和五年度補正予算からの拠出、約三千五百万ドルになりますけれども、これを一時停止せざるを得ないとの判断に至ったところでございます。

 同時に、委員御指摘のとおり、深刻化の一途をたどるガザの人道支援、この状況を改善するためには、我が国として様々な方策を検討しているところでございます。その一環としまして、本日、新たに、ほかの、UNRWA以外の国際機関を通じました三千二百万ドルの緊急無償資金協力を決定をしまして、先ほど上川大臣の方から発表いただいたところでございます。

英利分科員 ありがとうございます。

 私も元国連職員なんですけれども、もちろん、国際機関、ガザ、パレスチナで活動している機関が多い中で、UNRWAが本当にパレスチナのライフラインと今までなってきたこと、そして、今もそうであることは間違いないかと思います。

 UNRWAはガザの初等教育百八十三校を運営していて、今まで三十万人の子供が通っていた学校があります。そして、二十二の診療所で、パレスチナ百二十万人に保健、医療を提供していました。二百万人のガザの方々がUNRWAの支援に頼っているという状況です。

 先ほど申し上げましたとおり、非常に心苦しい人道状況が、人道危機が続く中、パレスチナの方々のライフラインであるのもUNRWAであります。もちろん、テロへの関与、テロ行為というものは許されるべきことではありません。こちらにつきましても地元でも多くの声をいただいておりまして、日本がテロに関してしっかりと強いスタンスを取っていること、それに対して感謝の気持ちもある一方で、引き続き、パレスチナでの人道支援についてはリーダーシップを取ってほしいという声も多く伺います。

 その上で、日本こそ、G7諸国の中で唯一、欧米諸国ではない国であり、キリスト教ルーツではない国でもあり、そして、かねてよりイスラエルともパレスチナとも友好関係を築いてきた国である日本こそ、この状況において取れるリーダーシップがあると感じています。

 このパレスチナ、イスラエル双方との友好的な関係を基軸として、今後、日本国政府は、人道的停戦の実現も含め、ガザでの紛争解決に向けてどのようにリーダーシップを発揮していくのか、外務大臣にお伺いしたく存じます。お願いいたします。

上川国務大臣 御指摘いただきました、日本はこれまで、イスラエル、パレスチナ含めまして、中東各国と良好な関係を築いてきておりまして、こうした外交資産の土台の上に、今般のガザ情勢に際しましても、私自身、関係国の外相等との間で緊密な意思疎通を行い、ガザの人道状況の改善や事態の早期鎮静化に向けました積極的かつ粘り強い外交努力を重ねてきてまいりました。

 例えば、私自身、昨年十一月には、G7外相会合を開催する前に議長として現地を訪問をいたしまして、イスラエル、パレスチナとの意見交換も踏まえまして、G7の外相声明の発出に議長国として尽力をいたしたところであります。

 また、安保理の一員として、安保理がその責任を果たせるよう、ガザ地区の児童の保護に焦点を当てました安保理決議第二千七百十二号、そしてガザ地区における人道支援の拡大と監視に関する安保理決議二千七百二十号の採択に向けまして、精力的な働きかけをしてきたところでもございます。

 さらに、現地の人道状況が悪化する中にありまして、日本として、人道支援活動が可能な環境を確保し、また人質の解放につながるような人道的停戦、ヒューマニタリアンシーズファイアが速やかに実現し、そして持続可能な停戦、サステーナブルシーズファイアが実現することを期待し、当事者に対しまして、直ちに人道的観点から行動することを求めてまいりました。このような考えに基づきまして、我が国としては、日本時間の二十一日に採決に付されました安保理決議案に賛成票を投じたところであります。

 本日から辻外務副大臣がイスラエル、パレスチナを訪問しております。この機会も通じまして、引き続き、全ての当事者に対しまして、国際人道法を含みます国際法に従った対応、そして人道状況の改善及び人道支援活動が可能な環境の確保等に向けまして、更なる働きかけを続けてまいりたいと考えております。

英利分科員 心強い答弁、本当にありがとうございます。また、安保理決議案への賛成票も本当にありがとうございます。

 心から、私も元国連職員として、UNRWAで働いていた同僚も多くおりますし、パレスチナで一生懸命ガザの方々に寄り添った活動をしている同僚が今もおります。その方々のことを考えながら、そして、いま一度、ガザの人口の半分以上が子供であるということを考えながら、しっかりと、日本だからこそ取れるリーダーシップ、是非、外務大臣にお願いしたく存じます。お願い申し上げます。

 また、人権外交議連において今役員を仰せつかっているんですけれども、こちらでも、パレスチナだけではなくて、ウクライナやウイグルなどの人権の状況を議論させていただいております。

 この人権外交の分野におきましても、日本だからこそ発揮できるリーダーシップがあると国連時代も感じておりましたし、今も感じています。特に、ミャンマー、イラン、中国などにおいて、欧米諸国が持たないような対話のルートを持っている国が日本であり、国際社会でもより中立的な立場から、上から物を言うのではなく、対話の姿勢を見せながら外交を行っているという印象を持たれているのが日本であります。

 こちらにつきましても、日々、外務省の皆様の御尽力があってのことだと思いますので、改めて感謝申し上げるとともに、今現在、世界であらゆるところで人権スペースが脅かされている中、日本としてどのように人権外交を進めていく方針か、改めて大臣の考えをお伺いさせていただければと思います。お願いいたします。

上川国務大臣 まさに委員御指摘のとおり、我が国におきましては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化、そして人間の尊厳の確保を重視しております。人権は普遍的な価値でありまして、人権擁護は全ての国の基本的な責務であると考えております。

 このような考え方から、我が国はこれまで、深刻な人権侵害に対しましてはしっかりと声を上げるとともに、対話とそして協力を基本とし、民主化や、また人権擁護に向けた努力を行っている国との間におきましては、二国間の対話また協力を積み重ねて自主的な取組を促していく、そうした外交を続けてまいりました。

 こうした日本独自の貢献の積み重ねを生かしつつ、引き続き、我が国らしい人権外交を進めてまいりたいと考えております。

英利分科員 ありがとうございます。

 また、この人権外交の取組で、人権外交議連、そして対中列国議連で共に活動させていただいている菅野志桜里前議員が、今回、香港側によって、香港の民主活動家ジミー・ライ氏と共謀したとされましたが、こちらは事実無根だと本人はおっしゃっております。

 菅野前議員が今後中国や中国と犯罪人引渡し条約を結ぶ国や香港に行く場合には、身の危険も考えられます。菅野前議員を始め、日本のような言論スペースが守られる国における議員やジャーナリストが行っている活動に対する脅し、制裁のようなことに対して、日本人を守るため外務省として何ができるのか、何をしているのか、お伺いしたく存じます。お願いいたします。

岩本政府参考人 御指摘の事案を含めまして、香港がこれまで享受してきました民主的、安定的な発展の基礎となる言論の自由、そして結社、集会の自由にもたらす影響等について、我が国としても重大な懸念を有しております。こうした我が国の懸念につきましては、これまでも様々な機会に中国側にも直接提起をしてきているところでございます。

 香港におきましては、二〇二〇年六月に国家安全維持法が制定をされました。その直後に、外務省としましては、この法律の運用等に十分注視していただくということにつきまして、香港における日本人の方々に対しても注意喚起を行ったところでございます。

 我が国としましては、引き続き国際社会とも緊密に連携をしまして、中国そして香港当局に対して、香港基本法に規定されている言論及び報道の自由が保護されるよう強く働きかけていきたいと考えております。

 また、日本人の方々にも適時適切な形で情報提供を行い、香港にまた渡航そして滞在される日本人の方の安全確保に向けて万全を期してまいりたい、このように考えております。

英利分科員 ありがとうございます。

 我が国で言論スペースが脅かされるということを非常に、我が国の民主主義への脅威だとも思っておりますので、この国のすばらしさ、特に民主主義があること、言論の自由があること、人権が保たれていること、このような活動を恐れずにできること、我が国の中でも守っていただきたいと思いますので、引き続き、相手諸国とも対話を続けながら御尽力いただければと思います。ありがとうございます。

 続きまして、同じ類いですけれども、民主主義、人権の状況などが本当に世界中で脅かされている中、我が国の普遍的価値観、そして価値観を共有する国々とのパートナーシップを強めるためにも、そしてこのような価値観を守るためにも、国際機関における日本のプレゼンス向上も引き続き重要だと思います。

 ほかの国々が行っていることとしましては、例えば国連ですとかほかの国際機関への拠出金の効果的な拠出、戦略的な拠出、また職員の増強、日本の場合は邦人職員の増強ですけれども、このようなことを行いながら、戦略的に国際機関を使うということをやっている国々が多くありますけれども、日本でも同じように、日本の国益にかなうところに拠出金を増やす、予算の割り振りを考える。

 そして、あらゆるレベルで、今、JPOなどもありますけれども、JPOはエントリーレベルのP2レベルで国連職員になれるプログラムで、私も恩恵を受けておりまして、本当にありがとうございます。P2レベルだけではなくて、中堅、上級のレベルでも、日本から支援をしながら、邦人職員を増やしていくこともできるかと思いますけれども、大臣の見解をお伺いしたく存じます。お願いいたします。

上川国務大臣 まず、国際機関でありますけれども、これにつきましては、我が国が重視しております外交、国家安全保障上の目標、この実現を図るとともに、国際社会の共存共栄のために協力をしていく、そうした機関として極めて重要であると認識をしております。

 今委員から御指摘ありました拠出金についてでありますが、我が国にとりまして重要な分野について適切な拠出を行っていくということが、国際機関におきましての発言力、この維持強化のためにも重要であると考えております。同時に、その意義、重要性について国民の皆様の十分な御理解を得ながら、国際機関における責任を果たし、また各機関の効果的な活用を図っていく、そうした考え方で進めているところであります。

 邦人職員の増強の話もございました。日本と国際機関との連携を強化する上でも、日本人の職員は大変重要な役割を果たしておられます。日本人職員の更なる増加を目指しまして、内閣官房と外務省、これが共同議長として関係省庁の連絡会議を開催するなど、中長期的な視野に立って、政府全体として戦略的に取り組んでいるところでございます。

 その他、外務省といたしましては、国際機関に若手の人材を派遣するジュニア・プロフェッショナル・オフィサー、JPO制度でありますとか、候補者の競争力向上のための研修等につきましても実施をしているところであります。

 こうした取組によりまして、国連の関連機関における日本人の職員数、二〇〇〇年の四百七十九名に対しまして、二〇二三年末で九百六十一名と着実に増加をしているところであります。

 こうした取組を引き続き続けるとともに、国際機関の戦略的活用と我が国のプレゼンスの強化を図ってまいりたいと思っております。

英利分科員 ありがとうございます。

 国連職員時代も、ほかの国々の動きを見ていますと、例えば国連総会の予算委員会であります第五委員会などにおきまして、人権担当の職員を切るですとか、政務担当の職員を切っていくですとか、このような国連の予算の割り振りに戦略的に関わることによって、自身の国の国益にかなうように国連を使っているということがかいま見えました。もちろん我が国のスタンスとは反対のスタンスなので、これに倣うことはできませんけれども、同じような戦略的な国際機関の使い方があるのではないかと感じています。

 私も、国連を辞めて議員の立場になるに当たって、そして選挙に立候補するに当たって、今国連は機能していないのではないか、国連への拠出金をやめた方がいいのではないか、そのような御質問を多くいただいたり、そのような議論をいただくことも多くありました。その中でいつも申し上げていたのが、国連というものは、私たちがつくり上げていくものだということをまず忘れてはいけないということだと思います。

 日本も拠出金を多く出している国ですから、それこそ国連をうまく日本のために活用していく、そして日本の普遍的価値観が世界に広まるように活用していく、このようなやり方もあると思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。ありがとうございます。

 変わりまして、私の地元ではいろいろな産業があり、中小企業もありますけれども、よく地元から御相談をいただくのが、海外に事業を展開したいということであります。特に、少子化などにより日本の市場が残念ながら縮小していく中、日本の農業事業者や中小企業は積極的に海外展開を進めるべきであると考えております。

 こうした日本の事業者の海外展開を、政府横断的な視点も踏まえ、外交政策としてサポートしていただきたく存じますが、外務大臣の御見解をお伺いできればと思います。お願いいたします。

上川国務大臣 まず、グローバルサウスと呼ばれる途上国、新興国、こうした国々の大きな成長力、こうしたことがこれからの日本経済の発展にも資する可能性が大変満ちているなということを実感するところであります。

 外務省といたしましても、そうした可能性に積極的に挑戦する日本企業を応援をしたいと考えておりまして、スタートアップ企業を含みます日本企業の海外展開でありますとか、あるいは、農産品の輸出拡大につきましては積極的に後押ししております。

 まず、全ての在外公館に日本企業の支援窓口を設置いたしまして、個別企業からの御相談や大使公邸を活用したイベントの開催などに積極的に対応しているところでございます。また、農林水産物の輸出拡大に向けましては、六十一の在外公館に食産業を担当する日本企業支援担当官を設置いたしまして、現地情報の収集や、またトラブル事例に関する相談への対応も行っているところであります。

 引き続き、こうした日本企業、在留邦人にとりまして相談しやすい在外公館を目指し、まさにオール・ジャパンで日本企業の海外展開を支援してまいりたいと考えております。

英利分科員 ありがとうございます。

 特に私の地元では梨が有名でして、市川の梨は日本でも誇れるものなんですけれども、十年間、ドバイに出荷していて、ドバイを通じてまたいろいろなところに出荷できればいいなということで、一緒に取組を進めさせていただいております。

 ドバイに、私もJAいちかわさんと、去年の秋に一緒に梨を売り込みに行かせていただいたんですけれども、やはり全体的に和食の人気が高いということ、そして高級な日本の農産物だけではなく海産物、いろいろな日本の、そしてお食事だけではなくてサービスに対するアプリシエーションもすごく高いということが感じ取れました。

 引き続きオール・ジャパンで推していただければと思いますし、日本のソフトパワーは、日本のお食事ですとかカルチャーですとか、本当に世界に誇るべき日本のいろいろな産品だと思います。このようなものを後押ししていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 変わりまして、上川大臣が推進するWPS、ウーマン・ピース・アンド・セキュリティーにおいて非常に重要な取組だと思っておりまして、国連でも全てのピラーにおいて今軸にしているものでございますけれども、今後、日本は特にWPSのどの分野でリーダーシップを発揮されるのか、お伺いさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

上川国務大臣 御質問ありがとうございます。

 国際社会がまさに対立と分断の進む中におきましては、世界の平和と安定、繁栄に資するために、先ほど申し上げた人間の安全保障などを人間中心の外交という形で進めているところであります。

 紛争下におきましては、特に影響を受けるのは、女性や子供たちなど脆弱な立場にある人々であります。こうした国際情勢が不透明さを増す中にありまして、WPSの考え方、この重要性はますます高まっているというふうに認識をしております。

 私は、新年最初の訪問先としてウクライナを訪問をいたしまして、そして、引き続きウクライナを強力に支援していく旨を、ゼレンスキー大統領や、またシュミハリ首相、クレーバ外相に対しまして直接お伝えをいたしたところであります。ウクライナ、ポーランドにおきましては、紛争の中で苦しむ女性や子供たちの大きな不安の声を直接聞かせていただきまして、ウクライナ国民の再統合が重要であるということを確信したところであります。

 こうしたことを踏まえまして、今月十九日に日・ウクライナ経済復興推進会議が開催された際には、ウクライナの復旧復興にWPSの視点をいかに組み込んでいくべきかということを考えるWPSセッションを設けまして、WPSの視点を踏まえて、ウクライナ国民の再統合につながる同国の復旧復興、こうしたことを支援していく旨、表明をしたところでございます。

 こうした取組が実際に展開していくためには、女性の参画が何よりも重要であるというふうに考えておりまして、女性の参画、リーダーシップを促すとともに、教育を通じました未来のリーダーへの投資も行ってまいりたいと考えております。

 また、中東、アフリカにおきましての平和構築の推進に向けましても、短期的な支援のみならず、中長期的なフェーズを視野に入れながら、日本の災害復興の知見、また先進的な技術及びノウハウ、こうしたことを活用して支援を実施してまいりたいというふうに考えております。

 先週はパナマを訪問をいたしたところでありますが、海洋とジェンダーに焦点を当てまして、法の支配に基づく海洋秩序に支えられた、自由で開かれた海洋の維持発展のための連携でありますとか、WPSを含みますジェンダー平等の重要性につきましては、パナマが非常に進んで、女性省も設けながら展開しているということでございまして、確認をしたところでございます。

 あらゆる施策に女性の視点、WPSの視点を取り入れて行うということが、まさに人間中心の外交の具体化を実践する上で重要と考えておりますので、そのことを通じて日本の信頼も高めてまいりたいと考えております。

英利分科員 ありがとうございます。

 また、WPSを進めていく中で、国連総会や国際会議の中で、私自身、国連にいる間、非常に印象的だったのが、日本から来るデリゲーションの全員が男性であることが多いということ、そして、今の時代、このような国は本当に少なくて、かなり悪目立ちしてしまうということがありました。日本の外交イメージとして、ジェンダー平等が進んでいないというような印象を与えてしまっているのではないかと懸念もあります。

 もう時間となってしまいましたので、最後に、よろしければ外務大臣に、国連総会や国際会議などへの派遣団へのジェンダーパリティーも推進するためどのような方針があるのか、お考えをお伺いさせていただければと思います。お願いいたします。

牧原主査 上川外務大臣、簡略にお願いします。

上川国務大臣 現在、公使及び参事官以上は女性七・四%でございます。また、特命全権大使及び総領事は五・三%となっておりまして、引き続き目標達成に向けて取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 御質問いただきました国連総会、国際会議等への派遣団におきましてのジェンダーパリティーにつきましては、特段の方針は定めておりませんけれども、過去二年の国連総会、この派遣団に占める女性の割合を調べてみますと、三百四十五人中九十四人と、約二七%となっているところであります。

 私といたしましては、本年の国連総会では、この女性比率を三割増加させることを目指して取り組んでまいりたいと考えております。

英利分科員 ありがとうございます。

 日本のイメージに直結することですし、大臣のように活躍されていらっしゃる日本人の女性は多くいらっしゃいますので、世界に広めていくことができればと思います。

 本日は、本当にありがとうございました。終わります。ありがとうございます。

牧原主査 これにて英利アルフィヤさんの質疑は終了いたしました。

 次に、藤井比早之君。

藤井分科員 自民党の藤井比早之でございます。

 私は大臣には通告しておりませんので、上川大臣、もしよろしければ御退席いただいても結構でございます。

牧原主査 上川大臣、御退席をいただいて結構です。

藤井分科員 G20とか国会で本当にお忙しい中、外交力の強化、ありがとうございます。

 二月二十四日、ロシアによるウクライナ侵攻から二年が経過をいたしました。戦線が膠着している中で、国民に信頼が厚いと言われているウクライナ軍ザルジュニー総司令官が交代しました。欧米等の支援疲れが指摘されております。国内よりも海外が先かという、ばらまき批判もあります。米国大統領選を控えている重要な局面でもあります。

 ここで改めて、日本がウクライナ支援を行う意義についてお伺いいたします。あわせて、欧米等によるこれまでの支援がどれほどの規模になるのか、日本の支援はどのようなものか。先日、二月十九日に開催されたウクライナ経済復興推進会議の成果についてお伺いいたします。

池上政府参考人 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナ侵略、これは二年前のまさに二月二十四日に開始されたわけでございますけれども、これは、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙と評価しております。欧州、大西洋、それからインド太平洋の安全保障は不可分でありまして、また、このような力による一方的な現状変更の試みは世界のどこでも起こり得る、そういう認識の下で、我が国といたしましては、国際社会の平和と安全のために、自らの問題としてこの問題に取り組んできた次第でございます。

 このような考え方に基づきまして、ロシアによるウクライナ侵略開始以来、我が国は、G7を始めとする同志国と連携をいたしまして、ロシアの侵略を止め、一日も早く公正かつ永続的な平和をウクライナに実現するために、対ロ制裁とウクライナ支援、この双方を強力に推進していくとの方針で一貫して対応してまいりました。

 こうした取組の一環といたしまして、我が国は、先般、十九日になりますけれども、シュミハリ・ウクライナ首相の出席を得まして、日・ウクライナ経済復興推進会議を開催いたしました。

 ウクライナの復興には、政府の力のみならず、民間の関与が不可欠であります。また、ウクライナ側からも、かねてより、日本の知見それから技術を生かした官民一体の取組の強い期待が示されてきていた、こういうことを受けまして、この会議におきましては、官民双方によりまして、合計五十六本の協力文書等を成果として打ち出すことができました。

 侵略が長期化する現下の情勢の中にあって、ウクライナ支援に係る国際的機運を更に盛り上げる機会になったものと考えております。

 それから、各国の対応でございますけれども、各国の支援の先行きについていろいろな報道が出ているのは事実でございますけれども、例えば、EUについて申し上げますれば、つい先日、二月一日になりますけれども、特別欧州理事会というものが開催されまして、今後四年間で五百億ユーロという大規模な支援を行うということで合意したところでございますし、また、イギリス、ドイツ、フランスなどの国々も、昨年末から本年初めにかけまして、新たなウクライナ支援を表明してきているというふうに承知しております。

 我が国といたしましても、引き続き、G7それからグローバルサウスと呼ばれる諸国を含む各国と連携しつつ、自らの問題としてこの問題に取り組み、ウクライナに寄り添った対応を行っていく考えでございます。

藤井分科員 力による一方的な現状変更の試みは決して許されません。現在のウクライナは明日の東アジアかもしれない。日本は、ウクライナと同じくロシアの隣国でございます。他人事ではない。我が国の安全保障に直結する問題である。

 なぜウクライナ支援が必要か。我が国の国益にどう直結するのか。日本は軍事支援はできないけれども、アメリカはこれだけやっていますよと、もっとはっきりとこれだけの規模なんだというのをちゃんと言っていただいて、そして、国民の皆さんにどう説明して理解していただくかというのが大事だと思いますので、その点、是非ともよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、ガザ地区をめぐる情勢についてお伺いします。

 昨年十月七日に、ハマス等によるイスラエルに対する残虐なテロ攻撃が発生いたしました。以来、今もなお、人質となった多数の人々の解放が実現しておらず、一方で、戦闘が長引く中で、連日、多数の子供さん、女性、高齢者を含む死傷者が発生するなど、厳しい人道状況が続いております。

 現在の状況と停戦に向けた国連の動き、アメリカなど各国の対応と日本の対応についてお伺いいたします。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、ガザ地区における危機的な人道状況を引き続き深く懸念しているところでございます。今もまさに、人質の解放と戦闘の休止をめぐって関係国の仲介によるぎりぎりの調整が行われておりまして、我が国といたしましても、このような動きが実現するよう、関係国と緊密に連携しつつ、二国間での働きかけ、安保理やG7の一員としての外交努力等を通じまして、環境整備に取り組んでいるところでございます。

 また、日本時間二月二十一日未明、国連安保理におきまして、ガザ情勢に関し、御指摘の決議案が採決に付されまして、米国の拒否権により否決されました。

 停戦をめぐりましては、安保理理事国間でも様々な立場があるというふうに承知しておりますけれども、我が国といたしましては、人道支援活動が可能な環境を確保し、また、人質の解放につながるような人道的停戦、これが速やかに実現し、そして持続可能な停戦が実現することを期待しており、こうした考え方から、当事者に対して直ちに人道的な観点から行動することを求めております。

 我が国といたしましては、これらを総合的に判断して、今般の決議案に賛成票を投じたところでございます。

 我が国といたしましては、米国等が人質の即時解放や現場の人道状況改善等のために精力的な外交努力を行っていることを高く評価しておりまして、状況改善のために何が現実的なアプローチかといった観点から、米国始め関係国と緊密に意思疎通しつつ、関係国への働きかけ等の外交努力を積極的に粘り強く行ってまいりたいと考えております。

藤井分科員 二十一日の国連安保理の米国の拒否権発動という話もございましたが、ラファハへの軍事攻撃の動きがある中で、一方で、二月の二十三日に、アメリカ、イスラエル、カタール、エジプトの四か国が戦闘を約六週間休止する案に同意したとの報道もございます。四か国、米国等が人質の即時解放や現場の人道状況改善のために精力的な外交努力を行っていることは高く評価すべきであると考えます。

 パレスチナ自治政府のシュタイエ首相が、二十六日、辞意を表明したとの報道もございます。

 人道支援活動が可能な環境を確保し、人質の解放につながるような人道的停戦の速やかな実現、持続可能な停戦の実現に向けて、外交努力を粘り強く積極的に継続することを求めます。

 人道状況は本当に深刻でございます。多数の子供さん、女性、高齢者など、無辜の民間人がこれ以上犠牲になることを何としても防がねばなりません。

 ガザ地区への人道支援の状況についてお伺いします。

北村政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、ガザ地区での戦闘が長期化する中で、連日、多数の子供、女性、高齢者を含む死傷者が発生するなど、現地の人道状況は看過し得ない状況になっているというふうに政府としても認識をしております。

 こうした状況下におきまして、できる限り多くの女性、そして子供、その一人一人に人道支援を届け、ガザ地区の人道状況を改善するため、これまで政府としては様々な支援を行ってきたところでございますが、本日、新しくまた、UNRWA以外のほかの国際機関を通じた三千二百万ドルの緊急無償資金協力の実施、これを決定いたしまして、先ほど上川大臣の方から発表いただいたところでございます。

 我が国としましては、引き続き、ガザを含む地域、パレスチナ人に対する人道支援、これを積極的に実施していく考えでございます。

藤井分科員 ありがとうございます。

 新たな人道支援の発表があったということでございますけれども、全ての当事者に対し、国際人道法を含む国際法を遵守し、直ちに人道的観点から行動するよう求めます。全ての当事者に対し、ガザ地区における人道状況の改善や事態の早期鎮静化等に向けた外交努力を粘り強く積極的に続けていただくよう求めるところでございます。

 現在のような悲劇を繰り返さないため、国際社会が支持してきた二国家解決の実現に向け、関係国と連携しながら、積極的に貢献していくことを求めるところでございます。

 国際協力については、SNSで、先ほどウクライナのところでも申し上げたんですけれども、国内よりも海外かという、ばらまき批判が存在するところです。

 改めて、国際協力の必要性と課題、ばらまき批判に対する政府の答弁を求めます。

北村政府参考人 お答えいたします。

 今ここで御質問いただきました中東情勢、そしてロシアによるウクライナ侵略、それに加えまして、気候変動、あるいは保健、感染症といいましたグローバルな課題への対応など、世界は非常に複合的な危機に直面しているというふうに認識をしているところでございます。

 このような一か国では解決できない課題に対しまして、我が国としましては、国際社会の責任ある主要国として、その役割を果たしていくことが我が国自身の平和と繁栄につながるというふうに考えているところでございます。

 また、多くの資源を外国から輸入し、多くの企業が海外の経済活動に関与している我が国の状況を踏まえますと、地域の安定化やグローバルな課題へのODAを通じた貢献、こうした貢献は、日本企業等の活動を支えるための不可欠の貢献であるというふうに考えているところでございます。

 国際社会における資源の安定供給や各国の持続可能な成長を確保していくことは、我が国の経済成長あるいは安定という国益に直結しているというふうに認識をしているところでございます。

 委員御指摘のとおり、ODAが、税金あるいは投融資といった公的資金、これを原資としている以上、効果的、効率的に支援を行うことは当然でございます。また、その意義につきましては、取組の中身を含めまして、分かりやすく丁寧に発信をしまして、国内の幅広い国民の理解と支持を得ることは必要であると考えているところでございます。

 今年は、国際協力を日本が始めてから七十周年という節目の年に当たることもございます。国民の皆様に、より分かりやすく、丁寧に発信を進めていきたいと考えているところでございます。

藤井分科員 令和六年能登半島地震に対しては、百七十二の国、地域及び四十三の国際機関からお見舞いメッセージが寄せられたと伺っております。日頃からの日本の国際協力に対する感謝が、このお見舞いメッセージに込められているのではないか。親日国は本当に世界で数が多い。

 一方で、中国が経済支援で国際的な地位を高めていることは紛れもない事実でございます。

 先ほどの答弁にありましたとおり、我が国は、食料、エネルギー資源を海外に依存しております。一国で存立はし得ない。自由貿易体制の堅持、自由で開かれたインド太平洋。サプライチェーンを考えても、国際社会で良好な関係を築くことは、我が国の存立のために不可欠です。我が国にとって望ましい安全保障環境の創出、我が国の経済成長に貢献するために、一層効果的、戦略的に活用されることを要望いたします。

 昨年十一月十六日の日中首脳会談において、岸田総理は習近平国家主席に、日本のEEZに設置されたブイの即時撤去を求めました。また、ALPS処理水の海洋放出について、科学的根拠に基づく冷静な対応を改めて強く求めるとともに、日本産食品輸入規制の即時撤廃を改めて求めました。

 現在、日本のEEZに設置されたブイの撤去、ALPS処理水への対応はどうなっているのか。

 ブイについて、国際法上の取扱いはどうなのか。中国の設置についての国際法上の整理、日本が撤去することの国際法上の整理についてお伺いします。また、日本が撤去することに対する世界各国への理解の推進、ALPS処理水の海洋放出についての世界各国への理解の推進についてお伺いいたします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 中国が設置したブイの件、そしてALPS処理水について御質問いただきました。

 まずブイの件についてでございますけれども、先ほども委員御指摘がありました、一方的な現状変更の試みということでいいますと、この中国による当該ブイの設置はまさに一方的な現状変更の試みであり、全く受け入れられず、日本側から直ちに抗議するとともに、御指摘のとおり、昨年十一月の日中首脳会談そして日中外相会談で、直接ブイの即時撤去を求めました。それにもかかわらず、現時点で現場海域の状況が改善していないことは極めて遺憾であります。

 国際法上の観点についても、評価についても御質問いただきました。

 ブイが設置された海域というのは、日中間の海洋境界が未画定であるという場所でございます。日中双方は、国連海洋法条約第七十四条三に従い、最終的な合意への到達を危うくし又は妨げないためのあらゆる努力を払う等の義務がございます。この点、中国が中間線東側の海域に一方的に気象観測機器と見られるものを搭載したブイを設置したことは、この海域における海洋調査活動の相互事前通報の枠組みの存在を踏まえれば、境界未画定海域における関係国の義務との関係で問題のある行為でございます。

 一方、そのような義務に反する形でブイを設置したことに対して関係国がどこまで物理的な措置を取ることが国際法上許容されるかについては、国連海洋法条約に明確な規定はございませんで、国家実行の蓄積も見られておりません。

 したがいまして、我が国の対応については、国際法上の基準が不明確な中で、政策の観点等も踏まえた総合的な判断が求められるということでございます。

 我が国といたしましては、引き続き、あらゆる機会を捉えて中国側に対してブイの即時撤去を強く求めていくとともに、現場海域における必要な警戒監視及び状況の把握、そして様々な角度からの調査、分析を行っていきます。

 その上で、我が国としては、ブイの撤去や移動、我が国によるブイの設置を含む様々な対応について、当該海域における関係国が有する権利義務、また、我が国国内法令、当該ブイが船舶交通や我が国漁業活動に与える影響なども踏まえ、関係省庁間で緊密に連携して検討の上、可能かつ有効な対応を適切に実施していく考えでございます。

 また、委員御指摘のありました国際社会との関係でございますけれども、中国による当該ブイの設置を含め、東シナ海における中国における一方的な現状変更の試みについては、これまでも同盟国、同志国との間で緊密に連携してきております。東シナ海情勢への深刻な懸念、そして力による一方的な現状変更の試みに対して強く反対することを各国共通の立場として明確に発信してきておりまして、引き続きこうした外交努力を続けてまいりたいと考えております。

 また、ALPS処理水の関係でございますけれども、ALPS処理水の海洋放出について、我が国は、科学的根拠に基づき、高い透明性を持って国際社会に対して日本の立場を丁寧に説明してきております。例えば、先般の太平洋・島サミット中間閣僚会合では、IAEAを原子力安全の権威として認識し、また、科学的根拠に基づく対応、この重要性で一致したところでございます。

 こうした取組を通して、太平洋島嶼国を含む国際社会の理解が着実に進んでいるというふうに受け止めております。

 中国との関係では、昨年十一月の日中首脳会談及び外相会談において、日本産水産物を含む日本産食品に対する輸入規制の即時撤廃を改めて求めるとともに、ALPS処理水をめぐる問題について、建設的な態度をもって協議と対話を通じて解決する方法を見出すことで一致してきました。

 政府としましては、引き続き、我が国の取組やモニタリングの結果について、中国を含む国際社会に丁寧かつ透明性を持って説明していく、また、中国側に対しては、今後とも日本産食品に対する輸入規制の即時撤廃を強く求めていく考えでございます。

 以上、長くなりました。

藤井分科員 中国によるブイ設置は国際法上の義務との関係で問題がある、ブイの撤去については国際法上明確な規定がないということであると理解をいたしました。

 であるならば、日本としてはルールを守った、礼を尽くしたというところを徹底してまいり、ルールを破っているのは向こうだ、幾ら言っても聞かないんだということであれば撤去するしかない。それは仕方がないな、日本がやっていることは間違っていないと世界各国に認識していただく、理解していただくということが大事だと思っておりますので、その点を是非お願いします。その上で、どうしようもなかったら撤去する、それも理解してもらうということが大事だと思います。

 ALPS処理水の取扱いについても、おかしいのは向こうだ、日本が言っていることは正しいと世界各国に理解してもらう外交努力を尽くす。今、中国との建設的ということもありましたけれども、そちらはしっかり進めていただいて、あわせて、日本産水産物の販路を世界各国に広げる。したたかな成果を求めるところでございます。

 次に、台湾有事への備えと課題について伺います。

 現在、自民党外交部会は、台湾政策検討プロジェクトチームを設けております。台湾封鎖や台湾有事におけるシーレーン確保はどうすべきか、食料、エネルギー確保、通信インフラの確保はどうすべきか、南西諸島からの住民の避難はどうするのか、台湾からの在留邦人の帰還オペレーションはどうするのか。

 政治こそ、常に有事に備えるべきであります。我が日本国は台湾有事の破滅的な状況に備えているのか、台湾有事と課題についてお伺いします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 台湾有事という仮定の御質問についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保するため、政府として、いかなる事態に対しても対応できるよう、平素から体制の整備を含め万全を期していくことは当然であると考えております。

藤井分科員 手のうちを見せるわけにはいかないですし、政府として答えられないということは重々承知の上でございますが、やはり、考えるだけで本当にもう真っ暗になるというか、本当に恐ろしい事態であるということは言えるかと思います。

 日本国の平和と日本国民の命と暮らしを守るために、台湾有事に備えなければならない。まさに戦争を抑止するためにちゃんと備えているぞと、あらゆる事態を想定して備える。戦争を起こさせないために、外交力、防衛力の全てを尽くす。これは実務者による具体的な備えこそが必要です。これは政治の責任だというふうに考えております。そういう点では、全ての想定について、是非ともお願いを申し上げたいと思うところでございます。

 そもそも、戦争を抑止するためにはどうすればいいのか。同盟国、同志国との連携強化が欠かせません。この点では、昨年八月のキャンプ・デービッド日米韓首脳会談は歴史的な会談であったと認識しております。今日に至るまでの日米韓の安全保障協力の進展についてお伺いいたします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米韓安全保障協力の強化はかつてなく重要でございます。

 昨年八月のキャンプ・デービッドでの日米韓首脳会合において、三か国の首脳は、日米同盟及び米韓同盟の戦略的連携を強化し、日米韓の安全保障協力を新たな高みへと引き上げることで一致しました。その後、日米韓三か国は、地域の抑止力、対処力の強化を含め、緊密に連携することを累次にわたって確認しております。

 今後とも、自由で開かれた国際秩序の維持強化のため、三か国の連携を一層強化していく考えであります。

藤井分科員 この連携強化は本当に重要なんだと思います。

 これは、対中国というだけじゃなくて対北朝鮮、日米韓の連携強化は、北朝鮮の反応にも表れているのではないかと考えます。

 最近の北朝鮮のシグナル、能登半島地震に関する岸田総理宛てのメッセージ、日本国総理岸田文雄閣下という、閣下という文言、日朝関係の岸田総理答弁に対する金与正党副部長談話に対する分析をお聞かせいただきたい。

 北朝鮮の核開発、ミサイル開発の現状についてお答えいただいた上で、拉致、核、ミサイルの包括的な解決の必要性、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現するための取組についてお伺いいたします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮の核・ミサイル開発は、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できません。今後とも、米国、韓国を始めとする国際社会とも協力しながら、関連安保理決議の完全な履行を進め、核・弾道ミサイル計画の完全な廃棄を求めていく考えでございます。

 政府としては、北朝鮮側の様々な言動に関する意図や狙いについて述べる立場にはなく、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、その上で申し上げれば、岸田総理はこれまでも、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向け、金正恩委員長との間での首脳会談を実現すべく、総理直轄のハイレベルでの協議を進めていきたいと述べてきております。

 そのために様々なルートを通じて働きかけを絶えず行ってきておりますけれども、これ以上の詳細については、今後の交渉に影響を及ぼすおそれがあるため、明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

藤井分科員 ここで答えていただく必要はございませんので、しっかりと分析をして、しっかり対応することが必要だということを申し述べたいと思います。

 特に、揺さぶられることなく、惑わされず、振り回されずということが大事かと思いますので、今こそ、日米、日米韓の緊密な連携、これが必要でございます。米国を始めとする関係国と緊密に連携し、政権の最重要課題として、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現する。ただ、外交というのは相手がありますので、相手次第という部分もありますので、チャンスがあれば、チャンスは逃さず、大胆に現状を変えていくことを要望するところでございます。

 昨年十一月三日、フィリピンとの間で、制度創設後初の政府安全保障能力強化支援、OSAに関する書簡の署名、交換が行われました。

 OSAは、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、我が国との安全保障協力関係の強化、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出及び国際的な平和と安全の維持強化に寄与することを目的とするものです。このOSAの戦略的な推進及び強化についてお伺いいたします。

 また、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出のために、日本の平和のために、なぜ防衛装備品の海外への移転が必要なのか、国民に分かりやすく説明を求めます。

河邉政府参考人 OSAの質問につきましてお答え申し上げます。

 令和五年度につきましては二十億円の予算が計上されまして、昨年十二月までに、フィリピンに対し沿岸監視レーダーシステムの供与、マレーシアに対し救難艇等の供与、バングラデシュに対し警備艇等の供与、フィジーに対し警備艇等の供与をそれぞれ内容とする書簡の署名、交換を完了いたしたところであります。

 令和六年度案件につきましては、OSAの目的に照らした支援実施の意義や、日本として把握している各国のニーズ、各国の経済社会状況等を総合的に勘案して、現在検討しているところであります。

 厳しさを増す国際情勢の中でOSAの重要性はますます増しており、外務省といたしましては、OSAを更に戦略的に強化していく考えでございます。

小杉政府参考人 装備移転のお尋ねについてお答えいたします。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、我が国の主権と独立の維持、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、力による一方的な現状変更の抑止など、望ましい安全保障環境の創出に向けて取り組むことが必要と考えてございます。

 その上で、防衛装備品の海外への移転につきましては、国家安全保障戦略及び防衛装備移転三原則におきまして、特にインド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や、国際法に違反する侵略を受けている国への支援などのための重要な政策的な手段であり、地域における抑止力の向上に資するものとして位置づけてございます。

 例えば、昨年、フィリピンに移転しました警戒管制レーダーは、防空能力の向上を通じまして、地域における抑止力の強化に大いに貢献しているものと考えてございます。

 政府といたしましては、防衛装備品の海外への移転を通じまして、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や抑止力の強化に取り組んでまいりたいと考えてございます。

藤井分科員 最初にウクライナの質問をさせていただいて、次に中東でということなんですけれども、世界で三正面あるとすれば、ヨーロッパとかウクライナと中東と東アジアだったら、日本にとっては、当然のことながら、最大の正面は東アジアなんですよね。そこの望ましい安全保障環境をつくるというのは何よりも大事で、OSAは、ある意味では、日本は軍事的なということはできないとしても、安全保障環境の創出ということで非常に極めて意義が高いものでございますので、そういう点で戦略的な活用をお願いしたい。

 先ほど、もう時間になりましたからあれなんですけれども、防衛装備品の海外への移転は、そういう言葉ではちょっと国民に分かりにくいんですよ。例えば、結局、防衛力で、全部海外の防衛装備品に頼っているということ自体が防衛力じゃないだろうとか、やはり、国産化とかそういうことを考えたときに、価格を低廉化するためには市場をということもあるしとか、そもそも防衛装備品の海外移転自体が同盟国、同志国との協力連携のために重要な政策手段だとか、もう少し国民に分かりやすい説明をしていただくということが何よりも大事だと思いますので、その点をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それでは、終わらせていただきます。ありがとうございました。

牧原主査 これにて藤井比早之君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口分科員 立憲民主党の原口でございます。

 今日は、外交基本政策について外務大臣と議論を交わしたいと思います。

 ちょっと順番を変えて、それから、基本的なことを聞きますので政府委員は結構です。

 三番目のいわゆるパンデミック合意、そしてIHRについて伺いたいと思います。

 今ここにおられる平沢勝栄さんと私は、WCH、仮称ですけれども、議員連盟というのをつくって、ワンワールド・ワンヘルスではなくて、ザ・ベター・ウェーということで活動しています。というのは、失敗をしたWHOが更に大きな権限を持って間違いに間違いを重ねることはあってはならないという基本的な認識を持っています。

 そこで、上川外務大臣にお聞きしたいと思いますが、憲法七十三条三号の大平三原則、これは何ですか。

上川国務大臣 御指摘の大平三原則でございますが、これは、昭和四十九年、一九七四年二月に、大平外務大臣の答弁に基づきまして、三点、まず一点目としては、いわゆる法律事項を含む国際約束、二点目として、いわゆる財政事項を含む国際約束、三点目として、我が国と相手国との間あるいは国家間一般の基本的関係を法的に規定するという意味におきまして政治的に重要な国際約束であって、それゆえに、発効のために批准が要件とされているものについては国会の承認が必要とされていると認識をしております。

原口分科員 大臣、それは今も生きていますか。

上川国務大臣 今もその原則の下で行っているところでございます。

原口分科員 資料の五を御覧ください、大臣。

 今まで議連を四回、今朝もやったんですけれども、WHOが、自分たちで定めたIHR、規則も無視して今進めているんですね。その中心となっているのがバイデン政権と岸田政権であります。

 この真ん中を御覧になってください。

 これは、二〇二二年の九月から十二月の間に、「法的拘束力を持つ文書を策定することを決定。」と。これはもう決定しているわけですね。ということは、パンデミック合意、皆さんはパンデミック条約とおっしゃっていますけれども、これは今の大平三原則の中にあるものと考えてよろしいでしょうか。

上川国務大臣 ただいま御指摘がございましたパンデミック条約についてでございますが、今後の見通しということでございますけれども、現在、交渉参加国の間におきまして、その内容、また文書の具体的な形式、これを含めて議論が行われている状況でございます。その意味でいきますと、これから、最終的なところの着地まで、プロセスの中で検討されるものと考えております。

原口分科員 大臣、私が聞いたのは、もうこれは決定されて、これは皆さんが僕らに配った文書ですよ、「法的拘束力を持つ文書を策定することを決定。」と。もう決定しているんです。

 今大臣がおっしゃったのは、いろいろな提案事項を持ち寄って議論しているんですよ。それは知っている。これも、今年の一月二十七日まで、つまり、決定の四か月前までに出さなきゃいけない事務局長案が出てきていないわけです。そこは聞いていないんですよ。

 要は、決まったこと、法的拘束力を持つ文書を策定することを決定したと。これは外務省の文書ですからね。だとすると、今、冒頭申し上げた大平三原則からすると、これは国会の批准、国会の承認が必要ですねと、当たり前の原則を言っているんですが、違いますか。

上川国務大臣 まず、WHOの憲章についてということでございますが、これは、昭和二十六年に国会に提出をして、その締結について御承認をいただいているところであります。

 この憲章におきましては、疾病の国際的蔓延を防止するために、できる限り多くの加盟国が採択された規制を同時に実施することが望ましい、こうした考えの下で、加盟国から構成される保健総会により採択された規則は全加盟国に対して効力を有するとされているところであります。その意味で、国際保健規則、IHR、これもそのような規則の一つであると認識をしております。

 今、手続が採用していることも含めまして、WHO憲章の締結につきましては国会の御承認を得てきているところでございます。このため、個々の規則、また採択やその改正につきましては、逐一国会の承認を求めることとしておらず、我が国としてこれらを締結するという行為を取らずに、その拘束力を受け入れることになるところであります。

 先ほどの大平三原則でございますが、WHO憲章の定める手続に基づきまして規則の採択や改正が実際に行われた場合におきましては、効力発生までの間に、政府としてしかるべく政省令の整備等の措置を取っているところであります。また、必要に応じて、法改正を国会にお願いする等の対応を取っているところでございます。

原口分科員 委員長、大臣に整理をして答弁するように御指導ください。

 これは、大臣、これまでのパンデミック条約というのはレコメンデーションなんです。こうした方がいいんじゃないですかと。わざわざここに法的拘束力と言っていることは、オブリゲーションになるわけです。義務。間違ったことをやったWHOが、また間違ったことをみんなに押しつけてきてはならないと思っているわけです。だから、アメリカでもどこでも、これを批准手続にせよとか、もう脱退するんだとか、そういう議論があるということを是非踏まえていただきたいんですね。

 じゃ、国会に諮らぬということですね。

 パンデミックの定義は何ですか。

上川国務大臣 パンデミックの定義でございますが、一般的に、感染症の世界的な大流行のことを指すものと考えております。

原口分科員 一般的な定義じゃなくて、ここに言う、皆さんがおっしゃっている、今、法的文書を詰めようとしているわけですね、そこにおける定義なんです。

 定義はないんですよ。それはもう何回も聞いて、ないという答えを聞いているんです。一般的な問いを聞いているんじゃないんです。いわゆるパンデミックアグリーメントのパンデミックという定義は何ですかと聞いているんです。

上川国務大臣 今委員の方から御指摘がございました、パンデミック条約上のパンデミックの定義につきましては、まさに現在、交渉参加国の間で議論が行われている状況であると認識をしているところでございます。

原口分科員 お聞きになりましたか。定義のないものを議論することほど危ういことはないんですよ。自分らでこれはパンデミックだと宣言すれば、パンデミックになるかも分からないじゃないですか。

 WHOは新型コロナパンデミックへの対応に失敗した組織で、今、日本にどれぐらい超過死亡があると思われていますか。四十万人です。

 そして、皆さんは、世界で一番治験のしやすい国にするということで、今回、レプリコンワクチンまでもう予算化されているんですよ。今日、専門家の方々から、猿が足らぬと。実験用の猿。

 大臣、是非認識を共有したいのは、イミューンシステムというのは物すごく複雑なんですよ、免疫システムというのは。DNAもそうです。簡単に触れちゃいけないんですよ。

 今回、レプリコンをやるということで、世界の中でこれをやったところはありません。治験をしたところはありません。そして、普通は、ラットから霊長類で治験をして、それから人間に行くのを、真っすぐ人間にやっちゃ駄目ですよ。これはどんなことになるか分からない。

 レプリコンといっても、多くの方はお分かりにならない方もおありになると思う。忍者みたいなワクチンなんですよ。それは、分身する、自分を複製する、それがレプリコンという意味なんです。そして、自分自身が変化する、まさに忍者なんです。そして、長い間、体の中にそれが影響する。

 私たちは、日本国民をモルモットにしちゃいかぬと思っているんです。だから今日ここで質問しているわけです。そのことを是非分かっていただきたいと思います。

 外務大臣は、これまで何回、新型コロナワクチンを接種なさいましたか。

上川国務大臣 私は、四回しております。

原口分科員 自分のことを申しますと、私は三回やりました。APPFというもので国会から派遣されたんですよ。中曽根さんが始められた会議、アジア・太平洋議員フォーラム。自民党の方と公明党の方と一緒に行きました。外に行くためにはワクチンが必要だといって、三回打ったんですね。そのうちの二回が僕の免疫システムに障害を起こしていました。

 ちょうど去年は悪性リンパ腫というものと闘っていました。自分のがん細胞を調べてみたら、ワクチン由来の免疫不全ということを、アメリカの医師と、日本の医師と、イギリスの医師から言われました。多分間違いないと思います。三人で。

 今、多くの人たちが苦しんでいるわけです。今回またWHOが同じようなことをやってしまうと日本国民の命が守れないと思って言っているわけです。

 もう一つ、IHRというところで聞きたいと思うんです。

 このIHRには、四か月までに事務局長案を出せということが出ているんです。皆さんのお手元のこの資料にも、事務局長に暫定的な改正案のパッケージを提出すると。何でかというと、四か月なければ、いきなり出されて、はい、これはどうですかと聞かれたって答えられないじゃないですか。だから四か月前なんです。IHRにそう決まっているんです。

 四か月前ということは、今年の一月二十七日です。どんなものが出るだろうと思って待っていましたけれども、出ていないんです。

 大臣、是非ここは、日本とバイデン政権、岸田政権とバイデン政権が最も前のめりです。ほかの国々は、ちょっと待てよと。イランや、あるいはニュージーランドや、ほかの国々がどう言っているかも見てみてください。余りにも前のめり過ぎている。

 WHOのステークホルダーはどんな人たちか御存じですか。四割はどんな人たちか。製薬メーカーですよ。そして、ステークホルダーといって、特定の財団なんですよ。

 これは健康を守る条約じゃないです。僕も何回も、大臣、英文で読みましたよ。これはTPPによく似ている。健康やなんかを守るというんじゃなくて、投資契約なんですよ。あなたはここを契約してください、あなたはここをやってくださいと。

 WHOがこんなところに出てきちゃ駄目だと思うんですけれども、大臣、このIHR、一月二十七日に出てこなかった理由を教えてください。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、このIHRの改正案につきましては、一月に提出されるべきであったということについては承知をしているところでございます。

 この改正案のパッケージについては、全てのIHRの参加国が、二〇二二年の十月四日に、事務局長から、加盟国からの修正提案、これを受領して、それを基に七十七WHO総会、これに向けまして交渉を行っているという状況にあるというふうに承知をしております。

原口分科員 お聞きになったとおりです。

 交渉中ということは、まとまっていないんです。まとまっていないということは、今度の五月の総会で決めちゃ駄目なんです。

 さっき大平三原則を出したのは、私たちの主権、我が国の国会、憲法にも触るようなことをやっちゃいかぬということを申し上げて、時間が限られていますので、頭の方の質問。

 ガザ地区の人道状況、これは極めて深刻ですね。昨日、アメリカの二十五歳の軍人さんがイスラエル大使館の前で自分で自分に火を放って亡くなりました。彼の最後の言葉をここに持ってきています。それはもうあえて読みませんが。

 大臣、今のイスラエルがやっていることはジェノサイドですか。

上川国務大臣 まず、我が国の立場ということで申し上げた上でということでありますが……(原口分科員「イエスかノーかだけ聞いているんです」と呼ぶ)イスラエルの行動がジェノサイドに当たるかどうかということについては、これは先般、南アフリカがイスラエルに対する提訴を、国際司法裁判所、ICJで提訴いたしたところでありますが、まさに今後審理をされる事柄でありまして、我が国としても引き続き注視をしてまいりたいと考えております。

原口分科員 それは南アフリカのことでしょう。ICCのことでしょう。私はそれを聞いているんじゃないんですよ。

 私が大臣のときに、日伯方式、ISDB―T、日・ブラジル方式というのをつくり上げて、それを世界に、あれはヨーロッパ方式とアメリカ方式と日本方式と三つあるわけですね。

 ブラジルは我が国にとってとても大事な国です。そして、彼らは、もうこれはジェノサイドだと言っているわけです。あるいは、今おっしゃった南アフリカもそうですね。もっと言うと、さっき、中東が大事だという話ですけれども、サウジアラビアは、イスラエルに対する支援国に対して、あれは去年の暮れでしたね、五十七か国、湾岸諸国を集めて、そして、このジェノサイドを支援する国に対しては、そこで提案がありました。幸いそれはそこでは決まらなかったけれども、支援する国に対する原油の輸出を止めようということでありました。

 さっき台湾有事どうのこうのと言っていましたけれども、もっと手前の話です。九七%を湾岸諸国に負う我が国は死活問題なんです。我が国はこれをどう思うのか。

 大臣、資料の一ページ目を御覧になってください。

 これも、私たちが予算委員会で中東に派遣されたときに私が撮った写真です。パレスチナ最大のバカアという難民キャンプにある小学校に、大きく、日本に感謝をするといって掲げられていた陶版画です。御覧下さい。パレスチナの子供たちと日本の子供が手を結んでいます、桜の木の下で。

 そこで小学校の先生は僕にこうおっしゃいました。私たちは、ふるさとを追われてもう半世紀以上たつ、毎日が絶望だ、でも、日本が希望をくれた、その希望は教育という希望なんですと。日本のお金でガザ地区の学校もできていますね。このジョルダンの学校もそうでした。あなた方は私たちの希望ですと。

 日本こそがパレスチナに一番寄り添ってきた国じゃないですか。ジェノサイドは教科書に書いてある。教科書どおりのジェノサイドじゃないんですか。違いますか。

上川国務大臣 先ほど申し上げたところでありますが、ジェノサイドに当たるかどうかということについては、まさにICJで審理されている事柄でございまして、我が国としても、これに対して注視をしているところであります。

 今のガザ情勢につきましては、大変厳しい人道的な危機にあるということについては、委員と全く同じ思いでございます。私も、パレスチナのガザの子供たちが、まさに教育の現場の中で希望を持って、将来に希望を託して勉強に励んでいる、その子供たちも受け入れさせていただきましたけれども、今のような大変厳しい状況の中で、それでも前に向かって進みたいという気持ちを語っておりました。こうしたことが夢をそぐことがないようにしていく、何としてもこの状況を打破していかなければならないと私自身も考えているところであります。

原口分科員 ある国がやったときには、それは虐殺だと言い、別の国がやったときには、それは虐殺でない、これをダブルスタンダードというわけです。

 僕はアメリカで安全保障の勉強をしました。しかし、彼らが、今回、停戦せよという国連決議に拒否権を発動したことを心から残念に思います。私たちが学んだアメリカはもうないんじゃないかとさえ思ったわけです。

 限られた時間なので、もう一つ聞いておきます。

 私は、若い頃から、ファシズム、実は遠縁になる者が二・二六事件に関わっています。絶対に、ファシスト、ファシズム、これを許してはならぬということで国会議員になりました。

 そこで、今日は法務副大臣にも来ていただいていますが、公安調査庁、アゾフについて記述が、皆さんのお手元の三ページ、ちょっと字が小さいですけれども、これは極右組織でありネオナチであるということを、二〇二二年の二月二十四日、ロシアの軍事侵攻が起きるまでは載せていました。しかし、これはもう今は載っていません。

 法務副大臣、テロ組織あるいは極右組織、この間、残念なことに、自民党さんの、私も昔、自民党で宏池会にいましたから余り言いたくないけれども、しかし、スパイが入っていたと、秘書に。そういう中から食い破られたんじゃ、日本の安全は保てませんよね。

 テロ組織あるいはナチス、ネオナチ、こういうのを認定する機能というのは公安調査庁にはないんですか。

門山副大臣 公安調査庁というのは、近い組織なんですけれども、公安調査庁におきましては、破壊活動防止法及び無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に基づく調査、処分の請求及び規制措置を行い、もって、公共の安全の確保を図ることを業務としているところでございますが、いわゆるテロ組織やネオナチ組織を認定、指定するという事務は公安調査庁の業務には属さず、かかる事務は行っておらぬところでございます。

原口分科員 ということは、外務大臣、政府のどこがそれをやっていますか、テロ組織の認定。

 私たちは、テロに不断の努力で立ち向かわなきゃいけません。私も総務大臣でしたから、アメリカと、大臣、四本のサイバーアタックに対するタスクフォースを立ち上げました。相手はサイバーテロをしかけてくるからです。しかけてくる相手のテロリスト認定ができなければ、どうやって守るんですか。

 それで、もう一つ。一ページ目の、今の陶版画の横にある資料。

 これは、二〇一五年にアメリカの議会で、アゾフ、こういうネオナチ組織に対して支援をしてはならないという法案が通ったところの、アメリカ議会の資料です。アメリカはちゃんとネオナチという認定をしているわけですね。日本はそういうのをしなくていいんですか。どこがするんですか。

 今日はわざわざ、法務副大臣、来ていただいてありがとうございます。

 法務省が認定しないとすると、どこが認定するんですか。外務大臣、国務大臣として教えてください。

上川国務大臣 我が国におきましては、テロ組織を法的に認定する制度はございません。

 テロリスト等に対しましての例えば資産凍結等の措置、こうしたときに、その対象として当該個人について指定をする、こういうことになるわけでありますが、その際には安保理決議第一千三百七十三号ということに基づきまして指定をするものと考えております。

原口分科員 そういう答えになると思うんですよ。それで本当にいいんですか。

 片方で、大量のフォーリン・ミリタリー・セールス、それを防衛だといって、あれは防衛じゃないと思いますよ。安倍内閣でも、僕らのときもお願いしていました、アメリカから、フォーリン・ミリタリー・セールス。それから、僕らの前の麻生内閣、その前の安倍内閣でも御購入になっていました。大体年間五百億とか六百億です。僕らのときもそれぐらいだった。ところが、安倍内閣になって一千億になり、二千億になって、安倍さんの最後の政権のときは七千億です。

 ところが、今、皆さん、岸田内閣は、倍という言葉がお好きなのか分からぬけれども、一兆四千億に一気に広げられたんです。これは日本の防衛にならぬですよ。オスプレイはもう飛んでいないでしょう。昨日、AH64D、またアメリカで墜落しましたね。こういうことをやっていたら日本の防衛の中からすかすかになるんだということを申し上げたいと思います。

 それでは、ウクライナの支援、さっきはどんどんやるべきだと。今まで総額幾ら御支援なさいましたですか。

上川国務大臣 ウクライナの支援でございますが、約一兆八千億ということでございます。

原口分科員 さっきの質問の方のように、台湾有事は日本有事であると。でも、今回、台湾総統選がありましたけれども、誰一人そんなことは言っていませんよ。あの方々は、そんなことは絶対ないとおっしゃっていますよ。何で台湾有事が日本有事なんですか。

 しかも、ウクライナは、もう皆さん御存じのとおり、前の外務大臣、学校の同級生でしたけれども、彼と話して、ウクライナはたしか中国と核協定を結んでいますね。中国のあの船、一番最初の空母は、あれはどこの船ですか。日本に対する脅威だと言っている人もいますね、中国を。じゃ、あの船はウクライナから来たんじゃないですか、遼寧というのは。

 さっき北朝鮮の話があった。北朝鮮の、これも平沢先生らと一緒に拉致議連というのを立ち上げました。当時の会長は中川さんでした。アメリカにもちゃんと言うべきことを言う人でした。僕は、彼が酩酊会見をしたというけれども、絶対にそんなことはないと思う。そんな人じゃなかった。大臣で、酩酊して会見するような方じゃなかった。だけれども、彼は、アメリカにもちゃんと言うべきことを言いました。

 少なくとも、中国の線に日本は下がるべきじゃないですか。だって、中国と核協定を結んでいる国に、なぜ我が国が我が国のようにやらなきゃいけないんですか。バイデンさんの発言を見ると、岸田さんにヨーロッパの戦争に加わってもらったという意味のことをおっしゃっているし、昨日か、ヌーランドさんは、ウクライナに支援しているものの九割はアメリカに返ってくるんだ、アメリカの軍需産業に返ってくるんだと。ミアシャイマーさんや、もう亡くなったキッシンジャー先生がおっしゃったラインまで下がるべきじゃないですか。

 ランド研究所の論文は、大臣、御覧になっているでしょう。去年の一月、もうこれ以上やれば、アメリカにも世界にも、こちらの方が不利になるんだ。

 ロシアを打ち負かすことは無理ですよ。あれは二〇二二年に始まった戦争じゃないじゃないですか。二〇一四年から始まっていたじゃないですか。それは安倍さんとも議論しましたよ。あれは二〇二二年に始まった戦争ですか。その認識だけ教えてください。

上川国務大臣 二〇一四年と二〇二二年ということでの御質問でございますが、二〇一四年の状況と二〇二二年以降の状況ということにつきましては、基本的に異なるものであると認識をしているところでございます。

 二〇一四年の状況でございますが、ロシアによるクリミアの併合に対しては、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害するものであるということでございまして、これは、分離派の武装勢力によります東部情勢の不安定化が続いていたことを踏まえ、我が国を含む国際社会につきましては、ロシアやウクライナ両国に対して様々な働きかけを行い、協力を行うことによって緊張緩和に努める、こうした状況の分析をした上で行ってきたところであります。

 今回の二〇二二年でございますが、これは、一方的なウクライナ領への武力を用いた全面侵攻でありまして、まさにウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法に違反するものであります。その意味で、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であるとして、今般は、対ロ外交、こうしたものを大きく転回したところでございます。

原口分科員 もう時間が来ましたから終わりますが、僕はミンスク合意のことを言っているんです。クリミア侵攻のことを言っているんじゃありません。ミンスク1、2で合意をしたこと、それを破った、ロシアをだましたんだと言った、そこの当事者の方の発言、あるじゃないですか。メルケル元首相の話は御存じでしょう。その間にロシアを弱らせる。そして、ドンバス地方を中心とした方々が一万四千人亡くなっている。これは事実ですからね。

 我が国は、善隣友好の基本に立ち戻るべきだ、日本ファーストでやるべきだということを申し上げて、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて原口一博君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田賢司君。

山田(賢)分科員 自由民主党の山田賢司でございます。

 上川大臣、G20の御出席を含め、海外歴訪、お疲れさまでございます。

 本日は、まず、我が国の最重要課題である拉致問題についてお尋ねしたいと思います。

 二月九日の予算委員会における私の質疑に対する岸田総理の御答弁を受けて、北朝鮮の金与正党中央委員会副部長が反応して、十五日に談話を発表いたしました。日本での国会の議論を見ているんだなということが分かり、改めて、様々な場で拉致被害者を返せと発信していくことが重要だと感じました。

 ただ、金与正氏は、既に解決した拉致問題という表現を用い、これを障害物としなければ首相訪朝もあり得ると発言をしています。何を言っているんだと思いますが、上川大臣から改めて、拉致問題の解決なしに北朝鮮は何も得ることはないということを明確に発信していただけますでしょうか。

上川国務大臣 まず、北朝鮮側の発表の一つ一つにコメントすることについては差し控えたいというふうに思いますが、拉致問題が既に解決されたとの主張は、全く受け入れることはできません。

 我が国といたしましては、日朝平壌宣言に基づきまして、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するとの方針に変わりはございません。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 もう一歩踏み込んで、いや、拉致問題がないと解決しない、何も進まないぞと言わないと、何かいろいろな交渉だけ、交渉しますといって進んでいく、これは避けなければならないので、是非明確にしていただきたいと思います。

 一方で、北朝鮮が異例の談話を発表した背景には、多分、日本と接触を図りたいという事情があるものと推察いたします。

 我が国は、北朝鮮に対し、国連安保理決議に基づく制裁に加え、様々な独自の制裁を科しております。これは、核、ミサイルに加え、我が国は拉致という独自の問題を抱えているからであり、北朝鮮が全ての拉致被害者を一括で返せば、我が国が科している独自制裁の一部を解除することはあり得るのか、この点についてもお聞かせ願えますでしょうか。

上川国務大臣 ただいま、我が国がどう対応するかということでの御質問も含まれていたところでありますが、対応につきまして予断を持ってお答えすることについては差し控えさせていただきますが、北朝鮮への対応につきましては、まさに先ほど申し上げた拉致、核、ミサイルといった諸懸案、この包括的な解決に向けまして何が最も効果的かという観点から、不断に検討を行っていく考えでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 これは従来からの答弁ラインだとは思うんですけれども、やはりメッセージをはっきりと、北朝鮮がこっちに接触したいなと思っているときだからこそ、はっきりとメッセージを出すことは重要だと考えております。

 拉致問題の解決なしに北朝鮮が得られるものは何もない。しかし、拉致被害者全員を一括で直ちに返すなら、そこから北朝鮮が未来を描くことができる。時間の制約がある話であって、北朝鮮の指導者には、手遅れにならないうちに速やかに決断することを求めたいと思います。

 続きまして、中東問題についてお伺いをさせていただきます。

 国連パレスチナ難民救済事業機関、UNRWAにハマスの構成員が多数紛れ込んでいるとイスラエルが情報発信したことを受けて、日本政府もUNRWAに対する資金拠出を停止いたしました。

 この件に関して、イスラエル側から日本政府に対して、事実関係のエビデンス等、情報提供はあったのか、お聞かせ願えますでしょうか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 イスラエルへのテロ攻撃にUNRWAの職員が関与したとの疑惑、これにつきましては、現在、国連による調査や、あるいは第三者による検証が行われているところでございます。同調査が迅速かつ完全な形で行われるためには、イスラエル側の全面的な協力が不可欠と認識をしているところでございます。

 このため、我が国からイスラエル側に対しましては、その旨を働きかけながら様々なやり取りを行っているところでございますけれども、恐縮ではございますが、その詳細につきましては、事柄の性質上、御指摘の点も含めて、お答えは差し控えたいと考えております。

 いずれにせよ、我が国としましては、引き続き、国連やUNRWA、あるいは関係国と緊密にコミュニケーションを取りながら、国連による調査あるいは第三者による検証、これに積極的に関与していく考えでございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 これは先般の予算委員会でも申し上げましたけれども、我が国の支援がテロ組織に流れることは絶対あってはならないことなんですが、他方で、UNRWAというのは、パレスチナ、あるいはガザ地区においての医療、健康、教育、保健サービス、様々な行政サービスの支援をしております。生活の支援を行っているところであります。これを止めることが、ガザのパレスチナ難民の命に関わることであり、しっかりとした情報があって判断をするということは重要ですので、この事実解明、様々な形で、詳細はお答えできないでしょうけれども、しっかりそれを踏まえた対応を検討していただきたいと思います。

 続いて、日本政府は、国際法と国際人道法の遵守を呼びかけております。何が国際法違反、国際人道法違反に当たるのか、明らかにされておりません。女性や子供を含む多数の民間人が密集している場所に無差別爆撃をすることは国際人道法に反しないのか、お考えを聞かせていただけますでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国といたしましては、イスラエルが、ハマスの攻撃を受け、国際法に基づいて自国及び自国民を守る権利を有すると認識しております。同時に、全ての行動は国際法に基づいて行わなければならず、いかなる場合においても国際人道法の基本的な規範は守られなければならないと考えており、いずれにいたしましても、均衡性の要件を満たさなければならないと考えております。

 例えば、子供を含む無辜の民間人を無用に巻き込む攻撃については、これは国際人道法の基本的な原則に反するものであり、正当化できないというふうに考えてございます。

 一方で、事実関係について十分に把握することが困難である中、イスラエル軍の行動について確定的な法的評価をすることは適当でなく、法的評価をすることは差し控えておりますけれども、これは我が国として、イスラエルの行動が国際法と完全に整合的であるという法的評価を行っているわけではございません。

 我が国といたしましては、これまで人質の即時解放、一刻も早い現地の人道状況の改善、そして、人道支援活動が可能な環境の確保のため、関連する安保理決議に基づき、誠実に行動することを繰り返し強く求めてきたところであります。そして、日本としては、人道支援活動が可能な環境を確保し、また、人質の解放につながるような人道的停戦を速やかに実現し、そして持続可能な停戦が実現することを期待し、当事者に対して、直ちに人道的観点から行動することを求めてまいりたいと考えております。

山田(賢)分科員 ハマスが、例えばミサイル攻撃をしている。これに対して報復するのに、これが均衡性があるかないかという話であれば、これは外から見ていて、証拠もなく、判断はできないということはある程度分かると思うんですね。

 他方で、明らかに人口密集地に、女性や子供を含む無辜の民間人が密集しているところに無差別爆撃を行うこと、これが国際人道法に反するとまで言えないのかどうか。ここをもう一度、ちょっとお答えいただけますでしょうか。

安藤政府参考人 先ほど述べたとおり、事実関係を十分把握することが困難である中、イスラエル軍の行動について確定的な法的評価をすることは適当でなく、法的評価をすることは差し控えておりますけれども、その上で申し上げますと、民間人の犠牲者数がますます増加している、こういう中にあって、軍事行動が全体として国際法上正当化されるかどうかにつきましては、当事者による一層の説明が求められるような状況となってきているというふうに考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 事実関係について分からないのでコメントできないと言っていると、どんな紛争であっても、はたから見ていて、その国に入っていない以上分からない、そういうことは誰も批判できないということになってしまいます。

 なぜこのことをお伺いしているかというと、我が国は一生懸命、拉致被害者を救出するために、国際社会に対して、理解してくれと求めている。だけれども、よその国、第三国からしてみたら、北朝鮮の中に入ったことがないから事実関係が分からないと言われたら、これは協力してくれと言ってもコメントできないと言われたときにどう思うかということを考えないといけないと思っています。

 我が国は、何もイスラエルの攻撃が全て駄目だと言っているわけではなくて、人質を取り返すというのは当然の権利だと思うし、また、ハマスがミサイル攻撃を行ってくる、これに対して自国及び自国民を守る、この権利は当然認められるべきだというふうに思っております。これは日本政府も支持されていることだと思っています。少なくとも、人質救出と、ミサイル攻撃を行うハマスの掃討については異論を唱えていません。また、国際社会も、この点について国際法違反だと指摘する方々はいらっしゃらないと思っております。

 だとすると、これは翻って、日本政府が拉致被害者を解放するために実力行使をする、このことは国際法には反しないと理解してよろしいでしょうか。

門脇政府参考人 お答えいたします。

 海外におられる邦人の命をどのように守るべきかということは、国家にとって重要な課題であります。

 あくまで一般論として申し上げますけれども、平和安全法制により、海外の邦人を守るための制度の充実を図ったところでございますが、一方で、在外自国民の保護、救出は、一般的には領域国の同意又は要請を得て行われるものであります。また、こうした国際法上の観点に加え、我が国憲法上の制約があり、自衛隊の活用には限界があるということが事実であるということを、これまで答弁申し上げているとおりでございます。

 いずれにしても、今後とも、全ての拉致被害者の一日も早い帰国の実現のために何ができるかについて、不断の検討を継続してまいりたいと思います。

山田(賢)分科員 拉致被害者の救出、これは北朝鮮との対話を進めようというところですから、いきなり実力行使をしろと言っているわけではないんですけれども、法律の整理として、今まで、憲法上の問題と国際法上の問題があるというふうに理解をしているんですけれども、憲法上の問題は、我が国の国内の問題。これも、我が国の国民の命を守るということは最重要の、最優先のことだというふうに考えております。

 片や、国際法的に許されるかということが問題になるんだと思うんですが、今、イスラエルがガザのパレスチナ難民、無辜の民に対して爆撃を行うことが人道法違反かどうかすら批判はできない。ましてや、人質の救出を行うことについて、国際社会は容認している。

 だとするならば、我が国が、交渉しても解決済みだと言っている北朝鮮相手に、返せといって実力行使をすること、これは国際的にも許される話、若しくはこれを批判されるいわれはないというふうに考えるべきだというふうに考えております。御答弁は結構でございます。

 続きまして、偽情報対策を含めた情報発信についてお伺いいたします。

 ウクライナ、あるいはイスラエルの例を見るに、有事においては、偽情報の流布があったり、あるいは時宜を得た効果的な情報発信を行うこと、これは戦況を一変させるような重要な役割を担っております。いろいろな兵器や戦力を備えることよりも、情報発信によって国際社会を味方にする、国際社会を敵に回す、このことによって戦局が一変すると考えております。

 平時における偽情報対策や情報発信、こういったものについては従来から取り組んでおられると承知いたしますが、有事に備えた情報発信能力の向上についての政府の取組をお聞かせいただけますでしょうか。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、地政学的な競争が激化し、偽情報の拡散を含む情報操作が恒常的に生起する中で、二〇二二年十二月に閣議決定された国家安全保障戦略には、偽情報対策の強化が明記されました。

 我が国としましても、情報戦に効果的に対応するために、委員御指摘のとおり、有事の対応も想定しつつ、情報空間における各国の動向やその意図、帰結を的確に分析し、その結果を踏まえた効果的な戦略的発信を適時適切に行っていくことが極めて重要だと考えております。

 このような背景の中、外務省としましては、関係省庁との協力も踏まえまして、政策、情報、広報部門が連携して、偽情報の拡散を含めた情報操作への対応能力を強化しており、必要な状況において必要な対応が取れるよう、情報収集、分析、発信能力の強化に着実に取り組んでまいりたいと考えております。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 答弁としてはそうなるんですけれども、スピードと質というか、いいものをつくって、えっちらおっちらやっていてもしようがなくて、出さないといけないときに速やかに出すということ、そして、世界の共感が得られる、世界を味方につけられる、そういった効果的な発信を是非ふだんから考えていただいて、何かあったときには速やかに出す、このことを取り組んでいただきたいと思っております。

 続きまして、台湾有事を含めた国民保護についてお伺いしたいと思っております。

 台湾有事が発生した場合に、在台湾の邦人を救出、保護する、このことに関して、自衛隊法八十四条の三に基づいて国民の保護措置を行う場合、要件となっております当該外国の同意という、この当該外国はどこに当たるのか。中華人民共和国政府なのか、台湾の中華民国政府なのか。政府という言い方は外務省としては認められないんでしょうけれども、台湾当局なのか。この点についてお聞かせください。

岩本政府参考人 有事におきます我が国の個々の対応については、個別具体的な国や地域名を挙げてつまびらかにすることは、事柄の性質上、差し控えるべきだと考えておりますけれども、ただ、その上で、一般論として申し上げれば、有事における邦人保護につきましては、その時々の状況に応じて、邦人の安全確保に万全を期すべく、御質問の点も含めて適切に対応していきたい、このように考えております。

山田(賢)分科員 個別の国を挙げると答えにくいというのは分かりましたけれども、もうちょっと踏み込んで言えないのかな。例えば、どこの国とは言わなくてもいいけれども、国家承認をしていない地域であれば、そこを有効に支配している当局に対する同意でも構わないのか。この点について教えてください。

岩本政府参考人 あくまで一般論として申し上げたいと思います。

 自衛隊法第八十四条の三に規定されている在外邦人等の保護措置、これは海外に広く滞在する邦人等の保護を目的としております。

 したがいまして、ここで言う当該外国ということにつきましては、我が国が国家承認をしている国家に限定されるものではないという具合に考えております。

    〔主査退席、金田主査代理着席〕

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 続きまして、国民保護法に関してお伺いをいたします。

 国民保護法に基づく措置を発動するのは、武力攻撃事態、武力攻撃予測事態とされております。この事態を認定するということは、相手国を敵国と認定するに等しい。武力攻撃を受けている、若しくは受けるおそれがあるということを認定するということですので、外交的にも大変ハードルが高いと考えております。

 一方で、避難指示や物資の確保、運送、通信等の手配など、国民の保護措置はもっと早い段階で進める必要があると考えております。事態認定と切り離して、国民の安全を確保するために必要と認められるときといったような類型を設けて、もっと早い段階で国民保護措置を取れるようにすべきではないかと考えますが、お聞かせいただけますでしょうか。

萬浪政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、台湾有事という御指摘でございましたけれども、仮定の御質問にお答えすることは、恐縮ですが、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、一般論として申し上げれば、事態認定を適宜適切に行い、我が国の安全を確保し、国民の生命身体を守り抜くことは政府としての責務であると考えてございまして、また、その際に、住民の避難等、御指摘いただきました国民保護措置が必要となる状況、これは少なくとも我が国に対する武力攻撃が予測される事態と評価される状況であると考えてございます。

 このような状況でございますと、速やかに武力攻撃予測事態の認定を行うとともに、国民保護法を適用いたしまして、国、地方公共団体、指定公共団体等が連携して国民保護措置を実施するということになるということでございます。

 いずれにしましても、万一の際に住民の避難等をできるだけ早く実現するためには、平素から関係機関が連携して必要な訓練、検討を進めることが重要であり、政府としても、地方公共団体等の連携の推進、改善策の検討にしっかりと取り組んでまいりたいと考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 引き続きまして、新しい経済圏構想、インド太平洋経済枠組み、いわゆるIPEFについてお伺いしたいと思います。

 IPEFの四つの柱のうちの一つ、サプライチェーン協定が今月二十四日に発効いたしました。このことを踏まえて、サプライチェーン協定を含むこのIPEFの意義について、外務省の認識を、政府の認識をお聞かせいただけますでしょうか。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 インド太平洋経済枠組み、いわゆるIPEFでございますが、昨年十一月に、米国のサンフランシスコにおきましてIPEFの首脳会合及び閣僚級の会合が開催されました。そこでクリーン経済協定及び公正な経済協定等の実質妥結というものが発表されてございます。

 また、サンフランシスコで署名が行われましたIPEFサプライチェーン協定は、本年二月二十四日に発効いたしました。この協定は、二〇二二年五月に立ち上げられたIPEFにおきまして交渉が開始された協定のうち、初めて発効した協定となります。

 我が国といたしましては、米国によるインド太平洋地域の経済秩序への関与という戦略的な観点からIPEFを重視しておりまして、インド太平洋地域における持続可能で包摂的な経済成長を実現するべく、地域の経済秩序の構築と繁栄の確保に向けまして、引き続き、米国とともに地域のパートナー国と緊密に協力してまいりたいと考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 サプライチェーン協定ということで、半導体や重要鉱物などの供給を補完し合う、このことの意義は重要ですが、それに加えて、今お話がありました、米国をこの経済圏に関与させる、このことが大変重要だと考えております。

 他方で、米国のTPP復帰、これを是非実現したいと思いますけれども、米国のTPP復帰に向けた政府の考え方についてお聞かせください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国といたしましては、先ほど申し上げたことの繰り返しで恐縮ですが、インド太平洋地域の国際秩序への米国の関与、これを確保するという戦略的な観点から、米国のTPP復帰が望ましいと考えてございまして、こうした立場を累次米国に伝えてきております。

 具体的には、個別の会談等の機会を活用いたしまして、岸田総理からバイデン大統領に対して、また、上川外務大臣からもブリンケン国務長官やレモンド商務長官、タイ通商代表に対しまして、直接の働きかけを行ってきてございます。さらには、米国の上下両院議員、また有識者との面会などの機会も活用するなど、取組を続けてまいっております。

 我が国といたしまして、米国のTPP復帰が望ましいとの立場に変更はございませんので、米国に対しましては、引き続き様々なレベルで粘り強く働きかけていくとともに、しっかり意思疎通を図ってまいりたいと考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 もう一つ、TPPにつきましては、英国の署名が昨年行われましたけれども、台湾や中国を含め、複数の国が参加に名のりを上げております。

 今後、どの国と交渉を進めていくか、これは個別の国名というのは挙げられないでしょうけれども、優先順位を含めた基本的な考え方についてお聞かせください。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPは、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルール、これを、その持続可能性を維持しつつ世界に広めていくという意義を有しております。

 TPPがそうしたハイスタンダードなルールを持続可能な形で履行するための枠組みであり続けるためにも、新規加入に当たりましては、加入要請エコノミーがそのような意義を共に実現できるパートナーとしてふさわしいかどうか、こうした点が重要になると考えてございます。

 したがいまして、CPTPPにおける加入プロセスに関する意思決定は、CPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、加入後の履行においても満たし続けていくという意図及び能力があるかどうかを見極めるという観点から、加入要請エコノミーがCPTPPのハイスタンダードを満たすことを大前提とした上で、加入要請エコノミーの貿易・投資等に関する実績、コミットメントの遵守状況を考慮し、参加国のコンセンサスにより行われるということになってございます。そのため、加入要請を提出したエコノミーの扱いにつきましては、ほかの参加国ともよく相談する必要がございます。

 現時点で今後の詳細について決まってございませんが、我が国といたしましては、加入要請を提出したエコノミーがCPTPPの高いレベルを完全に満たすことができ、加入後の履行においても満たし続けていくという意思と能力があるかどうか、これにつきましてまずはしっかりと見極める必要があると考えており、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら対応してまいりたいと考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 個別の国ということではなくて、やはりハイスタンダードを満たすこと、間違っても、経済的威圧であったり不透明な経済慣行、これが許されるような枠組みであってはならないというふうに考えております。

 続きまして、インドについてお伺いをしたいと思います。

 インドは、言うまでもなく、FOIPやクアッドなど、大変我が国とは安全保障上も経済上も連携が強い国であり、また、共通の価値観を有している国でもあります。こうした中、インドと安全保障上の連携を高めるということは我が国にとっても大変有意義であると考えております。

 実は、インドの方からは、経済的な結びつきのみならず、防衛装備についても日本と連携協力したいという意向があると伺っております。

 我が国の安全保障能力の向上や防衛生産基盤強化にも資するものであると考えますが、インドへの装備品移転を含めた連携強化についてどのようにお考えになられるか、防衛省、お聞かせください。

坂本政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国は、インドとの間で特別戦略的グローバルパートナーシップを構築しておりまして、国家防衛戦略に記載のとおり、戦略的な連携を強化する観点から、防衛装備、技術協力を始め、各種協力を推進することとしているところでございます。

 その上で、国家安全保障戦略や防衛装備移転三原則に記載されておりますとおり、防衛装備品の海外への移転は、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出などのための重要な政策的な手段であり、いわば防衛力そのものと位置づけられる我が国の防衛生産、技術基盤の維持強化、ひいては我が国の防衛力の向上にも資するもの、このように考えているところでございます。

 防衛省といたしましては、ただいま申し上げたような観点から、インドを含めた諸外国との防衛装備、技術協力につきまして、官民一体となって強力に推進してまいりたい、かように考えてございます。

山田(賢)分科員 ありがとうございます。

 時間をキャッチアップさせるためにこれで質問を終わらせていただきたいと思いますが、最後に、改めて、上川大臣、政府の最重要課題である拉致問題、この解決に向けて是非御尽力いただけるようにお願い申し上げます。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

金田主査代理 これにて山田賢司君の質疑は終了いたしました。

 次に、吉田真次君。

吉田(真)分科員 自由民主党の吉田真次でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速ですけれども、岸田内閣の最重要課題と位置づけられている拉致問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今ほど山田先生もそうですし、本日は我が党の先生方も御質問されている内容でございますけれども、私もこの予算委員会の分科会で初めての質疑でございますので、そうした観点からも、重複することがあっても御容赦をいただければな、そのように思っております。

 拉致問題は、拉致被害者の家族にとりましても、これは時間的制約もあって、まさに命に関わる問題であるというふうに思っております。何の罪もない我が国の国民を拉致をして、その方々がいまだに祖国の地を踏むことができていないという状況が長年にわたって続いております。

 横田滋さんは、娘さんのめぐみさんにお会いすることができないままお亡くなりになってしまいました。また、田口八重子さんは、二歳だった娘さんとそれから当時一歳だった耕一郎さんを残して拉致をされてしまいました。当時一歳だった耕一郎さんはきっとお母さんという言葉を発することができなかったんだろうというふうに思います。当然のことながら、お母様の八重子さんも一度も息子からお母さんと呼んでもらえなかったんだろうというふうに思います。

 こうしたことが親子にとってどれほどつらくて悲しいことかというのは、私も実際に娘を二人育てる親ですけれども、そういう立場からしても、本当に計り知れない悲しさ、つらさがあるものだというふうに考えているところでございます。

 政府認定の方々だけではなくて、警察庁による、拉致の可能性を排除できない事案に係る八百七十一名の行方不明者の方々もおられます。その中には、私の地元下関市豊浦町というところに、勤務を終えて退社後に行方不明になった当時二十三歳の河田君江さんという方もおられます。八十歳を超えたお母様の奈津江さんは、夢に見るのはあの子がただいまと帰ってくることばかりであります、焦りと寂しさが襲いかかってくるというふうに語っておられました。いつも財布に入れておられる君江さんの二十歳の頃の、これはもう擦り切れてテープで継ぎ合わされた写真を見ながら、娘さんの帰りを待ち続けておられるという状況でございます。

 数百人の自国民が拉致をされて、それが数十年にわたって祖国に帰ることができていない、この状況が、私は本当に、果たして主権国家としてのあるべき姿なんだろうかということは非常に疑問に思うところでもございます。

 憲法改正を含めて、政府においては、あらゆる手段を講じて、政府認定のいかんを問わず、全ての拉致被害者が帰国をできるように、何としてもこの問題の解決を行っていかなければならないと強く思っているところでございます。

 そこで、現在、拉致問題について具体的に政府が行っている取組はどのようなものがあるのか、そうした事業とか、あるいはそれにどのぐらいの予算がかかっているか、その点についての御答弁をお願いをいたします。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 拉致問題対策本部事務局の令和五年度予算につきましては、対前年度比約一千百万円増額し、約十七億六千九百万円を計上しているところでございます。

 内訳は、内閣官房経費として、国外メディアにおける国際情勢に関する情報収集体制の強化など情報の収集及び分析その他の調査に必要な経費で約十億二千九百万円、拉致問題に関する中学生サミットの開催や全国で開催する国民の集いなどの拉致問題への理解促進や地域における拉致問題等対策などに必要な経費として約三億三千六百万円、内閣府経費として、拉致被害者給付金等の給付や生活相談など帰国拉致被害者等の支援に必要な経費約四億三百万円を計上しているところでございます。

 また、令和六年度予算案につきましては、対前年度比で約一千五百万円増額し、約十七億八千四百万円を計上したところでございます。

 内訳は、内閣官房経費として、北朝鮮衛星テレビのモニタリング強化や人工衛星画像を活用した情報収集、分析体制の強化など情報の収集及び分析その他の調査に必要な経費で約十億三千五百万円、中学生サミットの成果を活用して作成した広告動画の、SNS等の若年層啓発を含む拉致問題への理解促進等に必要な経費として約三億三千二百万円を、さらに、前年同様、内閣府経費として、拉致被害者等の支援に必要な経費として約四億一千六百万円を計上しているところでございます。

吉田(真)分科員 今の御答弁でもございましたけれども、年々増額をしていただいて、そこには、しっかりした取組をしていくんだという思いの表れでもあるんだろうなということを感じているところでございますが、周知啓発活動とか情報の収集、分析、これは非常に大事なので、しっかりと継続をしてやっていかなければいけないところであると思います。

 あと、先ほど少し給付金のお話もございましたけれども、拉致被害者が拉致問題が前進をして帰国がかなうという状況になったときに、やはりその帰国をいかにスムーズにして、そして我が国で失われた年月を取り戻す、取り戻すことはもちろんできないんですけれども、そのために、帰国に備えて支援をしていくというような、あらゆる取組が必要になってくるんだろうというふうに思っておりますので、令和六年度の予算はまだ確定はしておりませんけれども、それについてもしっかりと皆様方の取組を前進をさせていただきたい、そのように考えているところでございます。

 政府はよく、対話と圧力という言葉を使っていらっしゃいます。私の地元の安倍元総理も、金正恩委員長とは条件をつけずに向き合うというふうに、解決に向けての決意を述べておられたことも多くございました。北朝鮮に対して、我が国は交渉の余地があるんだということを示しつつ、ただしかし、同時に、制裁を含めてあらゆる面での圧力をかけていくということが大切なんだろうというふうに私は考えているところでございます。

 そこで、政府が考えている圧力というものは何かということを確認をしたいなというふうに思います。今国会で一部野党が辞書的な意味を問うような、私はあれは全く生産性がないなと思うので、そこには意義を感じないので、辞書的な意味ではなくて、具体的な圧力とは何か、このことについて御答弁をお願いをいたします。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国としては、国連安保理決議に基づく特定品目の輸出入禁止措置そして資金移転防止措置等に加え、我が国自身の措置として、北朝鮮との全ての品目の輸出入禁止等の措置を取っており、北朝鮮への人、物、金の流れを厳しく規制する措置を実施してきております。

 人の流れにつきましては、北朝鮮籍者の入国の原則禁止等により人的往来を厳しく規制するとともに、北朝鮮に寄港した全ての船舶の入港禁止、北朝鮮との間の航空チャーター便の乗り入れ禁止等を通じて船舶、航空機の往来も厳しく規制しております。

 物の流れについては、平成十八年に北朝鮮からの輸入、平成二十一年には北朝鮮への輸出を禁止しております。

 金の流れにつきましては、北朝鮮向けの支払いを原則禁止するとともに、北朝鮮を仕向地とする現金等の携帯輸出の届出下限額を十万円超に引き下げる等の措置を講じております。

 引き続き、関連安保理決議の実効性を確保するとともに、日本として取っている措置の実施を徹底していく考えであります。

吉田(真)分科員 ありがとうございます。

 人、物、金の流れをしっかり断つということ、これは本当に重要なことでございます。ですけれども、現状、今やっていらっしゃる圧力ということについての具体的なお話をいただきましたが、もしこの現状の取組で効果がそこまでないということであるならば、それを強めていくか、あるいは別の方法を考えるかということも必要になってくるのではないかなと思っているところでございますが、先ほど御答弁にあった圧力、これが果たしてどのような効果を生じているのか、その点について政府の認識を求めたいと思います。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 対北朝鮮措置の効果を一概に申し上げることは困難でございますけれども、これまでに我が国が実施している国連安保理決議に基づく措置及び我が国自身の措置は、厳しいとされる北朝鮮の経済状況と併せて考えた場合に、一定の効果を上げているというふうに考えております。

 引き続き、関係国と連携しつつ、関連安保理決議の実効性を確保するとともに、我が国として取っている措置の実施を徹底していく考えでございます。

吉田(真)分科員 今御答弁にありました、これは当然のことながら、やはり米国を始め各国政府と連携をして北朝鮮に対して圧力をかけていく、あるいは強めていくということも、外交努力として必要なんだろうというふうに思いますし、あらゆる方向性を検討して実施をしていっていただきたい、そのように申し上げておきます。

 この問題、最後に今後の方針についてお伺いをしたいというふうに思います。

 家族会と救う会は、親の世代の家族が存命のうちに全ての拉致被害者の一括帰国が実現をするならば、我が国が人道支援を行うことと、我が国がかけている独自の制裁を解除するということに反対をしないという表明を出されました。これは本当に苦渋の決断なんだろうと私は感じ取っているところでございます。現に、これは譲歩ではなくて、実現をしなかった場合には強い怒りを持って独自の制裁強化を求めるということも言われているところでございます。

 拉致被害者救出の思いには、先ほどから繰り返しておりますけれども、必ずやこれは応えていかなければなりません。家族会の方針も含めて、今後、拉致問題に政府としてどのように向き合っていくのか、そのお考えをお示しをいただきたいと思います。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 一昨日、家族会、救う会合同会議が開催され、今後の運動方針が決定されたものと承知しております。拉致問題の解決に向けた御家族、救う会の方々の強い思いの表れと、厳粛な思いで受け止めているところでございます。

 政府としては、我が国自身の措置を含む北朝鮮への対応について、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決に向け、何が最も効果的かという観点から不断に検討してまいります。

 拉致被害者御家族が御高齢となられる中で、時間的制約のある拉致問題はひとときもゆるがせにできない人道問題であります。引き続き、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて全力で取り組んでまいります。

吉田(真)分科員 今、日朝首脳会談の可能性もあるのではないかというふうに言われている中において、仮に訪朝が実現をするならば、政府だけではなくて、家族会や救う会を始め、この問題に取り組んでおられる民間の方々にも是非私は一緒に行っていただくべきではないのかな、こういうふうに考えているんですけれども、この訪朝に際して、民間の方々の同行というのは現時点で考えられることなんでしょうか。どうなんでしょうか。

門脇政府参考人 現時点で、大変恐縮でございますが、今後の対応について御答弁申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

吉田(真)分科員 今申し上げたように、私は、日本国を挙げて取り組む問題ですから、やはりそうした方々の力をかりるという意味でも、訪朝が実現するならば御同行していただくというのは、選択肢の有力な一つとして持っておいていただきたいなということを申し上げておきます。

 そして、北朝鮮内部への働きかけとともに、今もなお北朝鮮で自由を奪われて、寒い中、不自由な生活を送られている拉致被害者の皆様方へ、今、ラジオ等も通じて情報提供も継続をしているということでありますけれども、それもしっかり行っていかなければなりません。

 この問題については、決して妥協することなく、全ての拉致被害者の帰国に向けて、政権の最重要課題として、これは先ほども申し上げたように、日本国を挙げて今後も強い決意での取組を求めたいというふうに思います。

 続きまして、EEZ内でのブイについて御質問をさせていただきます。

 沖縄県の尖閣諸島周辺の日本のEEZ内で中国のブイが発見をされたということがございましたが、これは、昨年の七月に発見されたものと、それから本年一月末に発見されたものと、二つの事案があったと思いますけれども、それぞれの経緯と、どういう対応をしたか、この点についての御答弁をお願いをいたします。

高杉政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年七月、東シナ海の我が国排他的経済水域にブイの存在を確認いたしましたことから、付近を航行する船舶の安全を確保するため、海上保安庁におきまして航行警報を発出しております。

 また、本年一月には、東シナ海の我が国排他的経済水域におきまして、転覆状態のさびついているブイらしき漂流物を確認し、航行警報を発出するとともに、関係省庁で検討の上、当庁により外観調査を行ったところ、上下反転して水没した状態のブイで、機能していないということを確認しております。

 なお、一月に確認された当該ブイに関しましては、二月二日に当庁の航空機により確認したのを最後に、その後は確認できていないことから、荒天の影響もあって既に沈んだものと推定しているところでございます。

 以上でございます。

吉田(真)分科員 今ございましたように、我が国の船舶の航行の安全のために警報を発令をした。それから、これは以前お聞きをしたんですけれども、夜間にも目立つように発光物を取り付けて分かるようにしたということもお聞きをいたしましたけれども、漁業とか船舶の航行に支障が出ていると今認識をされているんでしょうか。どうなんでしょうか。

高杉政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、海上保安庁といたしましては、付近を航行する船舶の安全を確保するため、航行警報を発出しているところでございます。各船舶につきましては、当該航行警報を踏まえつつ航行しているものというふうに承知しているところでございます。

吉田(真)分科員 その警報を聞いて航行しているから恐らく支障は出ていないというふうに認識をされているんだろうというふうには思うんですけれども、そもそも、中国の妨害等によって漁船もその付近では元々の操業というのがやはり行われていないのではないかなと私は思うところではあるんですね。しかも、それを丁寧に、日本が発光物を取り付けて、ここにブイがありますよという警報まで発令をして注意喚起をするという対応は、非常にお人よしが過ぎるのではないかなというふうに思うところでもあります。

 しかも、七月のブイ、沈んでいない方は、おもしをつけて海流によって流されないようにしている、動かないようにしているということでありますから、これは明らかな意図があるというのは明白だというふうに思います。

 このブイの質問も本日先生方からあったとは思うんですけれども、中国のものと分かっているのなら撤去を要請する、それは何回も聞きました、要請していますと。するだけではなくて、それに応じないのなら、やはり我が国で撤去をする、これは当然のことなのではないかな、こういうふうに考えるところでございますが、これがおよそ七か月間放置をされて、現在もそのままの状態になっている、このブイはなぜ撤去をしないんでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国としては、引き続き、あらゆる機会を捉えて中国側に対してブイの即時撤去を強く求めていくとともに、現場海域における必要な警戒監視及び状況の把握、そして様々な角度からの調査、分析を行ってまいります。

 その上で、我が国としては、中国側が当該ブイを放置しているという現状を深刻に受け止めており、ブイの撤去や移動、我が国によるブイの設置を含む様々な対応について、当該海域における関係国の権利義務、我が国国内法令、当該ブイが船舶交通や我が国漁業活動に与える影響等を踏まえ、関係省庁間で連携して検討の上、可能かつ有効な対応を適切に実施していく考えでございます。

    〔金田主査代理退席、主査着席〕

吉田(真)分科員 今いろいろと御答弁があったところではあるんですけれども、結局、七か月は放置をされている、状況は変わっていないわけですよね。いろんな方法は検討しているということでありました。それが撤去を求めるであったり、あるいは状況を把握をする、関係省庁と連携をしながら撤去も含めて検討もしているということであるんですけれども、フィリピンは昨年の九月に、漁民の権利を侵害をしているということで、同じく中国のブイを撤去されたという報道がありました。この権利はハーグの仲裁裁判所の判決で確認済みだということで撤去をしたということでありますけれども、フィリピンと我が国の対応はなぜこのように違うんでしょうかね。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の報道は承知しておりますけれども、スカボロー礁の十二海里以内に設置された障害物をめぐるフィリピンと中国の間の事案を含め、個別具体的な状況が異なるほかの国の事案との比較は困難であると考えております。

 いずれにしても、我が国としては、ブイの撤去、移動、我が国におけるブイの設置を含む様々な対応について、可能かつ有効な対応を適切に実施していく考えでございます。

吉田(真)分科員 今あったように、領海内とそれからEEZ内ということで、そこに違いがあるというのは私も承知はしているところではありますけれども、排他的経済水域においては、施設及び構築物の設置及び利用に関する管轄権が認められていると思うんですけれども、本事案のブイについては、我が国の管轄権はこれには該当しない、及ばないという判断なんでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 このブイが国連海洋法条約にある構築物であるか否かについて明確な定義があるわけではございませんので、個別具体的な状況に基づき判断を行う必要がありますけれども、いずれにせよ、中国が中間線東側の海域に一方的に気象観測機器と見られるものを搭載したブイを設置したことは、この海域における海洋調査活動の相互事前通報の枠組みの存在を踏まえれば、境界未画定海域における関係国の義務との関係で問題のある行為でございます。

 一方、そのような義務に反する形でブイを設置したことに対して関係国がどこまで物理的な措置を取ることが国際法上許容されるか、この点につきましては、国連海洋法条約に明確な規定はございませんで、国家実行の蓄積も見られておりません。

 我が国としては、国際法上の基準が不明確な中で、政策的な観点も踏まえた総合的な判断が求められておるところでございます。

吉田(真)分科員 国連海洋法条約上の規定がない。規定がないから、では撤去してはいけないという理由もないんじゃないかなと私は考えているんです。

 先ほど述べたように、我が国のEEZ内にありながら、そもそも、周辺海域に漁業者がなかなか近づくことができていない状況ということが私はおかしいのではないかなというふうにも思いますし、調査ということを言われましたが、これは目視とかあるいは現場で確認をするだけで、これが本当に我が国の漁業者の権利を侵害をしているのかどうなのかというところまで明言ができないというのは私はどうなのかなというふうに感じているところでございます。

 海洋の安全保障という観点からも、やはりこれは我が国による撤去という当然かつ断固たる措置が私は必要なんだろうというふうに考えています。領海侵入と同じで、こちらの出方とかあるいは対応を見ているというのは明らかではないかなと思います。これは、私が言うまでもなく、認識はされていらっしゃると思うんですけれども。

 ただ、こうした状況の中で、既成事実を積み重ねられるような形で、設置をされた、厳重に抗議をする、撤去を要請する、これだけでは何も変わらなくて、相手が応じなければ、様々な方法は検討されているとはいえども、結局、今でもブイは我が国のEEZ内に存在し続けているということであります。

 外交上の交渉でいろいろ、他国とどういう話をしているかということが明かせないというのは理解はできるところではあるんですけれども、それならば、やはり結果を示すというのが大事なのではないかなと思います。政治的な決断という前に、当然の権利として、このEEZ内のブイの撤去、これは至極当たり前だというふうに思っているところでありますので、この件、私も、外務大臣とかあるいは総理とか、あるいは海上保安庁の長官とか、誰かが撤去しろと言ったらできるものじゃないのかなと簡単に思っていたんですけれども、そんなに簡単なものではないんでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますが、中国のブイの設置は問題のある行為である、一方、そのような義務に反する形でブイを設置したことに対して関係国がどこまで物理的な措置を取ることが国際法上許容されるかについては、海洋法条約に明確な規定はなく、国家実行の蓄積も見られません。

 繰り返しになり恐縮ですけれども、我が国の対応については、国際法上の基準が不明確な中で、政策的な観点等も踏まえた総合的な判断が求められるところではございます。

吉田(真)分科員 私としては、非常に情けないなというところがするわけでございます。問題はあるんだけれども、これも様々な問題があって撤去に踏み切れないというような状況であります。

 ただ、これは、いろいろ検討しながら、先ほど申し上げた、もうおよそ七か月間たっているわけでございますから、沈むのを待つのかみたいな声も上がってきているわけでありますから、やはり我が国が毅然とした対応を示す、断固としてこれは撤去するんだという姿勢を示して実行に移していただきたいということを申し上げて、次の最後の質問に行きたいと思います。

 アメリカ大統領選挙を見据えた外交についてお聞きをしたいと思います。

 一般的に、関係国の首脳とかあるいは大統領の選挙が行われる際には、国によって、その結果で外交方針が大きく変わる可能性があるということは言えると思うんです。そうした際に、我が国の外交として、選挙情勢も踏まえた情報分析をしっかり行って、あらゆる状況にも対応できるような取組を行っていく必要があるというふうに思っているんですけれども、本年十一月にはアメリカで大統領の選挙が行われます。この大統領選挙を見据えて、現在、どのような取組をしていらっしゃるんでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、米国国内の選挙に係る事項についてコメントすることは差し控えさせていただきます。

 ただ、その上で申し上げますと、日米同盟は我が国の外交、安全保障の基軸でございまして、我が国としても大きな関心を持って注視しているところでございます。

 また、御指摘の米国大統領選挙も含めまして、今年は多くの国で重要な選挙が控えております。また、ウクライナ、中東を始め、国際社会は大きな局面を迎えております。

 こうした中、日本外交にとっても正念場となる年と考えておりまして、引き続き、国際社会を分断や対立ではなく協調に導くとの姿勢を堅持し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持強化を強く世界に訴えるとともに、人間の尊厳を中心に据えた外交を積極的に展開していく方針でございます。

 その際、基本的価値を共有する我が国の唯一の同盟国である米国との連携は不可欠でございます。大統領選挙の結果にかかわらず、引き続き、あらゆるレベルで緊密な意思疎通を図り、日米関係の一層の強化に取り組んでまいる考えでございます。

吉田(真)分科員 今、日米同盟は基軸であって、日米関係をより一層強いものにしていくというお話でございました。

 ウクライナ情勢あるいは中東情勢、台湾海峡の緊張ということからしても、やはり我が国が置かれている周辺の安全保障環境の厳しさは皆さんも認識をされていらっしゃるというふうに思います。

 そこで、共和党の指名候補者争い、これは新聞報道でもございましたように、トランプ前大統領の指名獲得が今ほぼ確実となっている状況、これに鑑みると、トランプ前大統領が各所の演説でどういうことを発言をされたかとか、あるいは現在の世界情勢がどうなのか、それを分析をするときに、やはり日米同盟というのは最も重要な同盟でございますから、どうなってもいいようにしっかりと準備をしながら、水面下も含めて外交努力を重ねていっていただきたい、そのことが我が国の国益につながるんだという強い思いで職務に当たっていただきますことをお願い申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わります。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて吉田真次君の質疑は終了いたしました。

 次に、谷田川元君。

谷田川分科員 立憲民主党の谷田川元です。

 今日は、横田空域の問題についてを中心に質問したいと思います。

 上川大臣、よろしくお願いします。

 私は、二年ほど前に、国交委員会で横田空域について質問したんですが、何か二〇〇八年の九月が八回目の返還なんですよね。それからもう何だかんだ言って十四年近くがたっているんですが、オリンピック前に、横田空域の一部を日本の方で一元的に飛行管制するということはあったけれども、しかし、二〇〇八年以降、全然返還されていないんですよね。

 何となく、何かもう政府は横田空域の返還を諦めているんじゃないか、そう思えるような、過去の議事録を見まして、そう思っているんですね。そんなことはないということを是非今日は確認したいという気持ちを持って、上川大臣に質問したいと思います。

 それで、一九五二年に、サンフランシスコ講和条約で日本は占領から解放されて独立国になりました。しかし、横田空域、残念ながら、日本の領空であるにもかかわらず、その航空管制は米軍に任せている。これは私は異常事態だと思いますが、大臣はそう思われませんか。

上川国務大臣 御質問の件でございますが、まさに横田進入管制空域ということで、これは横田空域でございますが、日米地位協定に基づく合意によりまして、米軍が進入管制業務、すなわち飛行場等からの離陸に続く上昇飛行や、また着陸のための降下飛行等を行う航空機に対しまして管制業務を実施する空域であるとされているところであります。

 この同空域でございますが、米軍の排他的使用が認められる空域ではなく、民間航空機につきましては、従来より、必要に応じまして、日本の管制機関が米軍と調整を実施した上で当該空域を通過することが可能となっているところでございます。

 先ほど、過去八回にわたりましてというお話もございましたが、まさに二〇〇八年九月が最終的な今の状況でございます。

谷田川分科員 ちょっと大臣、通告していないんですけれども、もし分かったら答えてください。

 横田空域は一都九県にまたがるんですよ。大臣の御地元は静岡県、私は千葉県なんですよ。静岡、千葉県、それぞれ横田空域に入るか入らないか、お分かりになりますか。

上川国務大臣 入りませんですか。

谷田川分科員 私の千葉県は入らないんですが、静岡が入っているんです。是非認識をしてください。静岡県の北東部、入っているんです。ですから、横田空域について、やはり国民にもう少し関心を持ってもらうことを是非大臣もお願いしたいと思うんですよ。

 それで、大臣はもう就任されて五か月がたちました。アメリカ政府高官とは何度もお会いになって会談されていると思うけれども、一回でもいいから、横田空域について話題にされたことはありますか。

上川国務大臣 外交上のやり取りにつきまして、今のような御質問に対して、それについてどうということについては、ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

谷田川分科員 何で差し控える必要があるんですか。だって、横田空域、問題だという認識をお持ちであるならば、当然、外務大臣におなりになったんだから、政府高官、誰でもいいですよ、横田空域に関して私は関心を持っていますというぐらい言ってもいいじゃないですか。どうなんですか。

上川国務大臣 委員のお言葉ではございますが、そのこと自体を今申し上げるということについては、外交上のやり取りということで、差し控えさせていただきたいと思います。

谷田川分科員 非常に残念ですね。

 じゃ、大臣、横田空域は、日本は敗戦国だからアメリカが管制するのはやむを得ない、そういうことを言う人もいますよ。だけれども、同じ敗戦国のドイツ、イタリアはそういうことをしていないんですよ。原則国内法を適用して、それで、アメリカ軍もドイツ、イタリアの航空法に適用されてやっているんですよね。

 沖縄県が、今から二年ほど前に、世界各国でアメリカの地位協定がどうなっているかというのを調べたんですよね。それで、つまり、国内法適用を原則とするという国がもう日本以外全てなんですよ。ドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス、オーストラリア、フィリピンと。日本だけが国内法原則不適用、そういうことなんですよ。

 私は、是非、敗戦国であっても、イタリアとドイツは国内法適用ということで、航空管制も自国でやっているわけだから、日本もそれを目指すべきだと思うんですが、いかがですか。

上川国務大臣 先ほど御質問が、外交上のやり取りということで、私、明らかにすることについて差し控えさせていただくと申し上げたところでありますが、横田の進入管制空域の返還につきましては、我が国の安全保障、また日米同盟の抑止力の強化という観点を踏まえつつ、我が国空域を一元的に管制する観点から、関係省庁と協力をしながら米軍と調整していきたいと考えております。

谷田川分科員 お手元に私の資料、配られていますね。見ていただきたいんです。

 二〇〇八年の九月が最後の、八回目の横田空域の返還ですね。その直前の政府の答弁、当時は冬柴国土交通大臣の下の鈴木航空局長が次のように言っているんですよ。

 平成二十年度に横田空域全体のあり得べき返還に必要な条件の検討を完了するということとされておりますので、削減後も引き続き全面返還に向けまして関係省庁と協力しながら努力してまいりたいと考えておりますと。極めて明快な、全面返還を目指して、こう言っているんですよ。

 しかし、残念ながら、その後もずっと行くと、国交大臣の石井さん、外務大臣の河野さん、茂木外務大臣も同じような、全面返還を要請するとかそういう言葉は一切使われずに、今大臣もおっしゃったように、関係省庁と協力しながら米軍と調整してまいります、この表現に終始しているんですよ。

 私は、実は、二年前の国交委員会でも、斉藤大臣に、同じ公明党の冬柴大臣が大臣のときに、航空局長が全面返還に向けて頑張りますと言っているんだから、是非、全面返還に向けて私も頑張りますと言ってください、そういう話をしたんだけれども、残念ながら、斉藤大臣は同じ言葉を繰り返すのみ。関係省庁と協議し、米軍と調整してまいりたいと。

 何で全面返還を目指して頑張りますと言えないんですか。是非大臣に言っていただきたいんですが、いかがですか。

上川国務大臣 先ほどドイツ、イタリアの事例をおっしゃいましたけれども、日本につきましては、先ほど申し上げたとおり、日米地位協定と米国が他国と締結している地位協定の比較をするということではなく、日本の状況の中で、今のような在り方の中で動いているということでございます。

 これは、日米安保条約に基づきまして防衛義務を負う米軍の存在と国民生活の調和を図る取組を行うということでございます。その意味で、我が国の安全保障、日米同盟の抑止力強化、こういう観点を踏まえて取り組んでいく必要があると考えておりまして、先ほどの御質問でございますが、横田進入管制空域の返還等につきましては、我が国の空域を一元的に管制する観点ということから、関係省庁と協力しながら、引き続き米軍と調整してまいりたいと考えております。

谷田川分科員 そうすると、大臣、大臣は、私が繰り返し、全面返還を求めてください、全面返還を目指して頑張りますと言ってくださいと言っているにもかかわらずそういう言い方をするということは、横田空域の全面返還は諦めていらっしゃるということですか。

上川国務大臣 今私が申し上げたことをもって全面返還を諦めるという、そういう趣旨ではございません。よく調整してまいりたいと思っております。

谷田川分科員 じゃ、はっきりと、全面返還は諦めていませんと言ってください。

上川国務大臣 よく関係省庁と協議をしながら、米軍と引き続き調整をしてまいりたいと考えております。

谷田川分科員 何回も同じことを言わせないでください。

 全面返還を諦めていませんということを言ってくださいというんだから、言えばいいじゃないですか。それを諦めるということになれば、日本は主権国家を放棄していることになりますよ。おかしいですよ、それは。言ってくださいよ。

上川国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、横田進入管制空域の返還につきましては、まさに日本の安全保障、また日米同盟の抑止力強化、こういったことを踏まえつつ、我が国空域を一元的に管制する観点から、関係省庁と協力しながら、米軍と引き続き調整してまいりたいと考えております。

谷田川分科員 もう一度申し上げますね。いいですか、大臣。

 二〇〇八年の六月の参議院国土交通委員会の答弁、当時の公明党の冬柴大臣の下の航空局長の鈴木さんは、引き続き全面返還に向けて関係省庁と協力しながら努力してまいりたいと、ここまでおっしゃっているんですよ。

 なぜ二〇〇八年に言えたことが今言えないんですか。是非、全面返還を目指しますと言ってください。

上川国務大臣 累次の、今の状況の中におきまして、私が先ほど申し上げたことに尽きるというふうに思っております。引き続き米軍とも調整してまいりたいと考えております。

谷田川分科員 何で全面返還を目指しますと言ってくれないんですか。非常に残念です。

 それで、私、二年前の国交委員会でも、外務省の担当者に来てもらって、悪の元凶というものが一つある、そういう指摘をしたんですよ。

 それが、一九七二年の田中内閣のときに、横浜港のノースピアに向けて、当時はベトナム戦争で、ベトナム戦争で破損した戦車をアメリカ軍の在日米軍基地で修理して、それを横浜埠頭に運んだんですよ。それで、当時の横浜市長は飛鳥田一雄さんといって、社会党の委員長を後にやられた方ですけれども。

 とにかく、あのときは、旧社会党の皆さんは、ベトナム戦争反対だ、日本はベトナム戦争に加担すべきじゃない、だから、何とか戦車をベトナムに送るのを阻止したいということで、道路交通法の制限施行令というのがあって、それは、重量をオーバーした場合には通っちゃいかぬとなっているわけですよ。ところが、あのとき、米軍の戦車は重量オーバーだといって、当時横浜市は、その橋を通っちゃいかぬということで、それで、それに勢いづいて市民団体なんかが詰めかけて、アメリカの進行を阻止したわけです。

 当時、その直後の国会答弁を私は読んだんですよ。当時の外務大臣は大平正芳さん、防衛大臣が、当時は防衛庁長官ですけれども、増原さんという方。当時は、米軍が進むのを阻止されたときに、お二人は国会で、国内法があるんだから、米軍もしっかり国内法を遵守してもらいたい、そう答弁しているんですよ。

 それに対してアメリカは非常に危機感を持って、その年の八月三十一日と九月一日のホノルルにおける日米首脳会談、田中総理のカウンターパートはニクソン大統領、そのときに強く言ったんですよ、とにかくこれを何とかしてくれないと困ると。

 その結果が、その年の十月の十七日に閣議決定された。それは何かというと、それまでは道路交通法では、重量オーバーしても緊急車両は通ってもいいとなっていたんだけれども、しかし、緊急車両プラス、警察だとか消防の訓練だとか、あと米軍の車両もいい、それは法律の適用外にする、そういう閣議決定をしたんですよ。

 これは後に、末浪靖司さんというジャーナリストが、アメリカ国立公文書館から、当時のいろいろな公文書をしっかり調べた結果、アメリカの圧力がこれもこれもかということであって、その結果、日本は基本的に米軍は国内法が適用されないと、当時の大河原北米局長がそういう答弁をしちゃったんですよ。

 その前の答弁は、一九六〇年の安保条約改定をめぐる国会審議の政府答弁で、当時の高橋条約局長はこう言っているんですよね。米軍に対して日本の法令は原則として適用されると。ところが、残念ながら、一九七三年の大河原答弁をいまだに外務省は踏襲しているわけですよ。

 私は二年前の国交委員会で、どうして百八十度変えるようなことをやったんだ、少なくとも高橋答弁と大河原答弁は全く違うことを言っているよと。原則適用されるのが一般国際法の真っ当な考えですよ。それに対して、大河原さんは、規定がなければ、原則何も規定がないところは適用されませんと百八十度違う答弁をしたわけですよ。そのときに外務省はすごいなと思ったのは、私はあのときに、これこそ牽強付会の答弁だ、自分の都合よく解釈する、そう言ったけれども。

 少なくとも一般国民は、当時、どうもアメリカに屈してこういうことをやってしまったんだ、そう思っているわけですよ。それからずっと、あれはもう五十年以上前の話になっちゃうから、みんな忘れているけれども、それからどんどんどんどんそういう意識を持っていって、何かアメリカに従うのが当たり前だと、私は、独立国家としての気概を国民は持たなくなってしまったんじゃないか、それがやはり日米同盟に依存した結果だというふうに思わざるを得ないんだけれども。

 大臣、一つ確認しますけれども、国の法令が適用されないのは軍人や軍属の規律や管理など軍隊の内部事項に関することであって、それ以外のことに関しては、条約や協定に特段の規定がない限り駐留先の国の法令が適用されるというのが一般国際法の原則であるということでよろしいですね。

上川国務大臣 まず、一般に、国家でありますが、国家は、その領域内で主権を有しております。属地的に、その領域内にある者には、外国人を含めまして、その国の法令が適用されるものでございます。

 その上で、一般にでありますが、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等は受入れ国の法令を尊重する義務を負いますが、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務につきましては、受入れ国の法令の執行あるいは裁判権等から免除されると考えられているところであります。

 こうした基本的な考え方につきましては、国際的に広く共有をされていると理解をしております。

谷田川分科員 非常にテクニカルマターの話だったので、一般の方が聞いて分かりにくいと思うんだけれども。

 さっき私、冒頭申し上げたけれども、日本以外の、ドイツ、イタリア、ベルギー、イギリス、オーストラリア、フィリピン、これは沖縄県の独自調査によって、原則国内法が不適用になるというのを言っているのは日本だけなんですよ。ほかの国は、国内法が原則適用されるとはっきりうたっているわけですよ。日本だけ異常なわけですよ。そういう問題意識は大臣はお持ちになりませんか。

上川国務大臣 少し先ほど触れさせていただきましたけれども、日米の地位協定と米国が他国と締結しております地位協定の比較につきましては、今先生御説明されたところでございますが、地位協定そのものの規定ぶりのみならず、各国におきましての米軍駐留の在り方、実際の運用、安全保障環境等の背景等も含めた全体像の中で検討する必要があると認識をしております。

谷田川分科員 大臣にお願いしたい点は、大平正芳さんという政治家、私は尊敬しているんですよ。その大平さんでさえ、やはりアメリカの圧力に屈しざるを得なかった。その背景等を是非研究していただきたい。私は、あれが元凶だと思っているんですよ。

 確かに、日本は今アメリカに守られていますよ。外務省の中には、横田空域のことは別にしても、横田基地があることによって抑止力になっている、日本を攻撃したら、首都圏を攻撃したら、横田基地も関係するから、アメリカの反撃に遭うから、だから守られているんだ、だから、横田基地も必要だし、横田空域も必要だ、そう思っている人が少なからずいる、そう言っている人もいるんですよ。

 実は、「月刊日本」三月号、これを私、拝見したんですけれども、自民党の元衆議院議員で、三ッ矢憲生先生がこの横田空域の問題について語っていらっしゃるんですよ。今のような話もあったんだけれども、インタビュー記事で三ッ矢さんはこうおっしゃっている。「外務官僚たちは総じてアメリカべったりで、横田空域の返還などほとんど考えていません。「この人はアメリカ人になりたいと思っているのではないか」と思うほど、アメリカの代弁をしている人もいました。」中略。「私は外務副大臣を務めていたのでわかりますが、いまの外務省では優秀な人はどこで研修しようがアメリカ派に引っ張り込まれてしまいます。これではアメリカべったりの姿勢から脱却できるはずがありません。」と、とても率直に述べていらっしゃるんですよ。

 私はここに書かれていることは信じたくないから、是非、大臣にもう一度聞きます。横田空域は、全面返還を目指して頑張りますと言ってください。

上川国務大臣 横田進入管制空域の返還ということでございますが、我が国の安全保障、日米同盟の抑止力の強化、こうした点を踏まえつつ、我が国空域を一元的に管制する観点から、関係省庁と協力しながら、米軍と引き続き調整をしてまいりたいと考えております。

谷田川分科員 同じ答弁の繰り返しで、こういうのをのれんに腕押しというんですかね、大臣。

 私、さっきも申し上げたじゃないですか、これね。冬柴大臣のときの航空局長がここまで言えて、何で、十四年経過して、同じことが言えないんですか。言えない理由を言ってください。

上川国務大臣 言えない理由を挙げるというのはなかなか難しいことでありますが、今申し上げた、私が再三にわたりまして申し上げたこのスタンス、これで今、日米の中での協議をしているということでございます。

谷田川分科員 非常に残念なんですけれどもね。

 亡くなられた沖縄県の元知事の翁長さんが次のようなことをおっしゃっているのを大臣は耳にされたことがあると思うんだけれども、日本国憲法の上に日米地位協定があり、国会の上に日米合同委員会があると。残念ながら、今この現実が日本全体を覆っていると言っても過言ではないと思いますよ。

 やはり、国権の最高機関である国会が日米合同委員会に全く関与できない、おかしいと思いませんか、法治国家として。まず、そこはいかがですか。

上川国務大臣 この日米合同委員会、様々な議論が行われているわけでございますが、この議事録につきましては、日米双方の同意がなければ公表されないということになっておりまして、日米間の忌憚のない意見交換また協議を確保するためでありまして、この同意がないまま公表しますと、情報公開法が規定いたします、他国との信頼関係が損なわれるおそれがある、また、他国との交渉上の不利益を被るおそれがある場合があるためということでございます。

 日米地位協定の運用を含みます日米間の様々な外交上のやり取りにつきましては、一般には、一致するに至った合意のうち、公表できるものは公表するということでございますが、丁寧に皆様に説明をしてまいりたいというふうに思っております。

谷田川分科員 大臣、五か月たって、アメリカ政府高官と会って、横田空域について話題にしましたかと。私は、別に要請しろなんて言っていないでしょう。話題にしましたかと言ったのに、それにイエスかノーぐらい答えてくださいよ、情報公開に努めたいとおっしゃるなら。

 さっきの質問をもう一回します。

 この五か月間、アメリカに対して、横田空域のことを話題にされましたか。

上川国務大臣 いろいろなレベルで様々なやり取りがあるということでございますが、私のところでその問題についてという御質問につきましては、外交上のやり取りということでございますので、お答えを控えさせていただきたいと思います。

谷田川分科員 だって、主権国家である日本が当然要求すべきことを、大臣におなりになられて五か月間、それについては話題にしましたということぐらい、何で言えないんですか。私は、全面返還を要求しろなんて言っていませんよ。話題にしましたかと言っているんですよ。話題にしていないのなら、していないと言ってくださいよ、はっきりとイエスかノーかで。いいじゃないですか、それで。

上川国務大臣 繰り返しで大変恐縮でございますが、そのことも含めて外交上のやり取りということで、今先生が大変な熱意を持って取り組んでいられるというテーマも含めますと、機微にわたる部分もございまして、それについては差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

谷田川分科員 国民の代表である国会議員の私が、横田空域について話題にしましたかと、それを言っているんだから、イエスかノーかで答えてくださいよ。私は、何も内容まで言えと言っていませんよ。五か月間、私は今の現状を鑑みれば話題にすべきじゃないと思って話題にしていませんと、何でそう言えないんですか。さっきの話し方を聞いていると、話題にしたくない、そういうニュアンスを感じますよ。だから、話題にしませんでしたと言ってくださいよ。

上川国務大臣 外交上でどういう問題を……(谷田川分科員「外交上の話じゃないよ」と呼ぶ)外交のやり取り上でどういう問題をテーマにしたかそのものも大変重要なことでございます。

 その意味で、いろいろなレベルでやり取りをしているところでございますが、その御質問に対しては控えさせていただきたいと申し上げているところであります。

谷田川分科員 外務省の駐オーストラリア大使を務めた山上信吾さんという方が、最近、「中国「戦狼外交」と闘う」という本を出したんですよ。

 それで、大臣、私、この方は立派だと思うんだけれども、まあ、お会いしたことはないもので、この本とインタビュー記事しか読んでいないんだけれども、この中にこういう記述があるんですよ。「長年にわたって、リスクを負うことを回避し、国益実現のための知識議論を展開すべき時に臆病なほどに尻込みしてしまう性癖が組織全体に染みついていることを痛感した。」と。「組織」は、外務省全体。

 これを見て、日本の外交は本当に大丈夫かと私は思いましたよ。大臣、この御指摘、どう思いますか。

牧原主査 谷田川さんに申し上げますけれども、本来、提示をするときは、事前に委員会に申し上げて、許可を得ていただきたいと思います。(谷田川分科員「はい、大変失礼しました」と呼ぶ)

 と申し上げた上で、上川外務大臣。

上川国務大臣 具体的にこの方がどのような主張をなさったかにつきましては、私が一つずつ意見を申し上げるということについては、それこそ差し控えさせていただきたいというふうに思います。

谷田川分科員 私も外務省の方とやり取りするんだけれども、何か保守的で、何か現状維持でいいじゃないか、新たに日本の国益を追求して頑張ろうという気迫を持つ人が少ないんですよ。非常に残念。大臣、そういうことをお感じになりませんか。

 もう時間がないので、最後に、私ども立憲民主党で田中角栄研究会というのが発足したんですよ。

 田中角栄先生が大蔵大臣になられたときに、幹部の前で訓示して、こういうことを言ったらしいんですよね。とにかく、大臣の部屋は開けておくから、いつでも入ってもらって構わない、遠慮なく言ってくれ、それについては上司の許可は必要ない、やれるものはやる、やれないものはやらない、最終的な責任は全部私が背負うと。

 大臣、私は、最近大臣の評価が高まっているから、期待してあえて言うんだけれども、この本ね、こういうことを、この間まで駐オーストラリア大使をやった人ですよ、こういうふうに書かれているんだから、大臣もそれなりに問題意識を持っていると思うんだけれども、外務省の優秀な役人に、何でもいいから上司の許可なく私に言ってこい、最後は私が責任を取るから、そういうことを是非言ってもらうぐらいの覚悟はありませんか。大臣、いかがですか。

上川国務大臣 私も、九月十三日に外務大臣に就任してから百日目、あるいは今百七十日ということでありますが、まさにドアはオープンしておりまして、特に、多くの若い外交官の皆様またスタッフの皆さんに、いろいろな声を聞きたいということで、ドアをオープンしているところであります。

 そして、今時代が非常に大きく変化しておりますので、その意味では、いろいろなジェネレーションのところで感じること、また、日本外交もこれから、よく国民の皆さんに理解し支持される外交を推進していきたいというふうに思っておりますので、その意味では、極めて前向きに、また組織を挙げての取組に全力を傾注してまいりたいと考えております。

谷田川分科員 大臣は本当に問題意識はかなり持っていると思うんだけれども、大臣の経歴を拝見したら、アメリカの議会で働いていたんですね。私も実はアメリカの議会で働いた経験があるんですよ。アメリカに積極的に要請していかないと何も変わらないですよね。だから、リスクを冒してまでやろうなんて思わない人が大勢いたら前に進まないですよ。そのことを、大臣、よくお分かりだと思うので。

 この横田空域の問題については、今日のお答えは非常に残念だけれども、これからの大臣の御尽力に期待したいと思います。

 終わります。

牧原主査 これにて谷田川元君の質疑は終了いたしました。

 次に、平林晃君。

平林分科員 公明党比例区中国ブロック選出の平林晃と申します。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。上川大臣を始め、御答弁いただく皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 二〇二二年二月二十四日にロシア軍がウクライナ領土内に侵攻してから二年が経過をしてしまっております。この間、ロシア軍とウクライナ軍の合計の死傷者数、はっきりしない部分もありますけれども、約五十万人に上るというようなことも推計をされています。

 また、昨年十月七日、イスラム組織ハマスがロケット弾や戦闘員の侵入によってイスラエルへの大規模な攻撃をしかけ、イスラエルがそれに報復をし、これまでに双方合わせて三万人を超える民間人が亡くなっているとも報道されているところでございます。

 どちらの状況においても余りに悲惨でありまして、理不尽であり、許容し難い現状と考えております。戦闘の即時停止を強く呼びかけるものであります。

 こうした中、国連安全保障理事会が有効な手だてを打つことができていない状況にも、じくじたる思いがいたしております。昨年、二〇二三年においてだけでも、ロシアは三回、アメリカも三回、中国が一回、それぞれ拒否権を発動したということであり、機能不全に陥っている、このような批判が改めて高まっているところでございます。

 先週、ブラジルでG20外相会議が開催をされ、上川大臣はまさに御参加をしておられたということでございますけれども、同国のビエイラ外務大臣が国連安全保障理事会の改革の必要性を強く訴えられたということが報道されております。

 氏は、安保理に関しまして、容認し難い麻痺状態に陥っていると指摘をし、ウクライナ侵攻でロシアが、一方、ガザの侵攻で米国が、常任理事国として決議採択に拒否権を行使していることへの憤りを表した、このように受け止められているところでございます。

 このように、世界的に指摘がされる国連安全保障理事会の機能不全とも言える状況を日本政府はどのように捉えておられ、また、それをどのように変革しようとしておられるのか、外務大臣の御見解を伺います。

上川国務大臣 安保理、これが試練のときにあるということにつきましては、委員と全く問題意識を共有しているところであります。まさに、安保理改革を含みます国連の機能強化、これが重要であると考えております。

 この安保理改革についてでありますが、昨年の国連総会の一般討論演説におきまして、岸田総理から、本年の未来サミット、また、二〇二五年の国連創設八十周年、これを見据えまして、具体的な行動に移っていくべきということを強調したところでございます。

 私自身も、大臣就任以降、様々な二国間会談、そして多国間の会合の機会を捉えまして、安保理改革を含みます国連の機能強化の重要性、これについては一貫して働きかけをしてきているところであります。

 御指摘いただきました、先週、G20の外相会合に出席をいたしましたけれども、この中のセッションの中に、まさに安保理改革の問題がテーマの一つになっているところでありまして、私からも、この改革は急務であるということ、そして、安保理の構成が現在の国際社会の現実、これを反映するために、常任、非常任理事国双方の拡大が必要である、こうした旨を強調したところでございます。

 安保理改革の重要性につきましては、もちろん、議長国ブラジルを始め多くの国からも同様の発言があったところでございます。

 各国の利害もまさに複雑に絡み合っている安保理改革でございまして、決して簡単ではないと認識をしておりますけれども、安保理改革に関する、日本、ドイツ、インド、ブラジル、この四か国の枠組みでありますG4、さらには、アフリカ、米、英、仏等の多くの国々と連携しながら、粘り強く取り組んでいきたいというふうに考えております。

平林分科員 大臣、本当に丁寧に御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 先ほどの方もおっしゃっておられましたけれども、私も大臣に非常に期待をしているところでございます。大臣のリーダーシップの下、創設八十周年の節目の年である明年に向けて、具体的な行動に移していかれることを心から期待をしているところでございますので、よろしくお願い申し上げます。

 大臣と様々議論をさせていただきたいところですけれども、本日は大臣にお伺いするところはここまででございますので、もしよろしかったら御退席いただいても結構でございます。

牧原主査 上川大臣、御退席ください。

平林分科員 続きまして、核兵器禁止条約についてお聞きをさせていただければと存じます。

 核兵器禁止条約は、二〇一六年の国連総会決議で翌二〇一七年から条約交渉を行う旨を、賛成百十三か国、多数によって決定をされ、二〇一七年三月から交渉会議が開催をされている。百を超える国々と市民社会が参加をし、二〇一七年の七月七日の同会議において、賛成百二十二、反対、棄権それぞれ一か国の賛成多数により採択をされているということでございます。そして、二〇一七年九月の二十日には署名開放され、二〇二〇年十月二十四日にホンジュラスが五十番目の国としてこの条約を締結をし、同条約第十五条一項の規定によって、九十日後の二〇二一年一月二十二日に世界的な法規範としての効力を持つに至ったということでございます。

 先月の二十二日はちょうど丸三年目の節目に当たっており、そのタイミングで核兵器廃絶国際キャンペーン、ICANの事務局長メリッサ・パーク氏が来日をされて、広島、長崎を訪問されたことは記憶に新しい出来事でございます。

 この条約は、本年一月末時点で九十三か国・地域が署名をし、七十か国・地域が批准済みという状況にあり、また、締約国会議は、第一回が二〇二二年の六月にウィーンにおいて、第二回は二〇二三年十一月にニューヨークにおいて開催をされているということです。

 こうした流れの中で、我が国の核兵器禁止条約への対応は、公明党の広島県本部に所属し、広島の心を知る一人としては残念なものがあるわけであります。

 まず、二〇一六年の条約交渉開始の決議においては反対票を投じている。また、二〇一七年三月の交渉を開始する会議においては、冒頭セッションで日本の立場と核軍縮政策を説明した上で、その後の会議には参加をしていないとお聞きをしております。また、先ほど申し上げました第一回、第二回の締約国会議へのオブザーバー参加も見送ってきているということであります。

 岸田総理大臣は、日本が唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界の実現に向けてしっかりと取り組んでいくと述べられ、核兵器禁止条約について、核兵器のない世界への出口とも言える重要な条約であるとおっしゃっておられます。であるにもかかわらず、日本政府はこのような後ろ向きな態度を取り続けているということは、どのような立場によるものなのでしょうか。改めて御見解を伺います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 核兵器禁止条約は、核兵器のない世界への出口とも言われる重要な条約であります。ただ、この条約には核兵器国は一か国も参加しておりませんで、いまだその出口に至る道筋は立っていないというのが現状でございます。こうした中で、我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力していかなければならないと考えております。

 このため、第一回、第二回締約国会合に日本政府としてはオブザーバー参加いたしませんでしたけれども、我が国としては、引き続き、核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンを強固なステップ台としながら、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続、強化していきたいというふうに考えております。

 具体的には、核戦力の透明性の向上ですとか包括的核実験禁止条約の早期発効、核兵器用核分裂性物質生産禁止条約の即時交渉開始といった効果的な核軍縮措置に向けての取組を積み重ねていきたいと考えております。

 また、核兵器のない世界に向けた国際賢人会議などの取組を通じまして、核軍縮に向けた国際的な機運を高める取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

平林分科員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたとおり、国際賢人会議の開催でありますとか、後ほど取り上げさせていただきますけれども、ユース非核リーダー基金の研修プログラム、こういったことも提唱、実施しておられるということもありますし、様々取組もしておられるということで、本当にそういった取組に関しましては敬意を表するものであります。

 一方で、核禁条約への対応そのもの、これはまだ検討の余地があるのではないか、そのように考えているところであります。この理由は、核兵器保有国が一か国も参加していない、このことをおっしゃられたというふうに理解をいたしましたけれども、このことが、核禁条約の批准をしないということと、また、締約国会議にオブザーバー参加をしないということの両方について理由づけとしているところに関して、少しお話をさせていただけたらというふうに思います。

 この点については、やはり日米安全保障条約との関係を考慮する必要があるのではないかというふうに思っておりまして、日本は米国の核の傘の下にある、その点と相入れない核兵器禁止条約を批准すること、これはできないという点は慎重に考えていく必要があると思っております。

 その上で、締約国会議へのオブザーバー参加までは排除されないのではないかというふうに思っております。実際、そうであるからこそ、同様に米国と同盟関係にあるオーストラリア、ドイツ、ノルウェーなどがオブザーバー参加を果たしており、会議でそれぞれの主張を述べているというふうに認識をしております。

 この点、確認させていただきますと、我が党は、第一回、第二回、いずれの締約国会議にも国会議員を送り込んでまいりました。このうち第一回に参加をしました当時の公明党核廃絶推進委員会委員長の浜田昌良元参議院議員が、会議参加後の手記にドイツの発言を示しております。すなわち、日本と同様、米国の核抑止力に安全保障を依存するドイツは、二日目の会議で自国の立場を明確にする次のような演説をしたということであります。これから抜粋なんですけれども。

 第一回締約国会議は核軍縮にとって主要な出来事であり、核禁条約を軌道に乗せるとともに、この後開催された核不拡散条約、NPTの運用検討会議の足がかりとなる。我が国を含む数か国は、核禁条約とNPTの摩擦を危惧していたけれども、第一回締約国会議はNPTへ支持を明確にしている、このことを高く評価をしている。一方、核兵器が存在する限り、NATO加盟に反する核禁条約にドイツは加入することはできない。核禁条約の非加盟国である限り、その条項には拘束をされない。ドイツは、建設的な対話と実際的な協力の機会を探ることにコミットする。

 以上のような内容を話したということでありまして、他の米国の同盟国も同様な発言をしたと浜田氏が述べておられます。その上で、これらの発言を聞いた日本からの出席者の声は、同様な発言なら日本政府もできたのではないか、また、してほしかったというものであったということであります。

 核禁条約の署名国にはならない意思を明確にしつつもオブザーバー参加をした国々に対し、当時の議長のオーストリア・クメント大使は、核兵器の人道的影響、リスクに関する深い議論に建設的な形で関与する意思だと述べ、その姿勢を高く評価したということであります。

 以上述べてきたことを考えますと、日本も、ドイツなどと同様に、核兵器禁止条約の署名国には当面すぐすぐにはなれないとしつつも、オブザーバー参加をするという選択はできないことではないのではないか、このように考えるわけであります。

 だからこそ、改めて質問させていただきます。

 日本は、第一回、第二回の締約国会議へのオブザーバー参加を見送る決断をしてきたわけでありますけれども、二〇二五年三月に再びニューヨークでの開催が予定をされています第三回締約国会議にはオブザーバー参加すべきと考えますが、いかがでございましょうか。政府の見解を伺います。

林政府参考人 先ほど答弁させていただいたことの繰り返しになりますけれども、核兵器禁止条約の方には核兵器国が一か国も参加しておらず、その出口に至る道筋が立っていないという現状でございます。我が国の立場としましては、核兵器国を関与させるように努力していかなければならないというふうに考えております。

 繰り返しになりますが、我が国としては、引き続き、広島ビジョン、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことで、現実的で実践的な取組を継続、強化していきたいというふうに考えております。

平林分科員 確かに、核兵器国を関与させるということは大事なことではありますけれども、でも、それはオブザーバー参加をしたってできることではないか、このように考えるところであります。

 この点に関しましては、これからも様々な機会を通して議論させていただければと思いますので、少し質問の角度を変えてお聞きしたいと思います。

 核兵器禁止条約第六条には、核兵器の被害者に対する援助及び環境の修復がうたわれています。

 まず、第一項には、核禁条約締約国は、核兵器の使用又は実験によって影響を受けるものについて、適用可能な国際人道法及び国際人権法に従い、差別なく、年齢及び性別に配慮した援助を適切に提供し、並びにそのような個人が社会的及び経済的に包容されるようにする、このようにあります。この部分、広島の心と強く共鳴するものでありまして、広島の被爆者は、原爆によって自身の健康を奪われただけではなくて、就職や結婚などで差別を受ける壮絶な人生を歩んでこられたわけであります。こうしたことがあってはならないと核禁条約は訴えているわけであります。

 また、第二項では、核兵器によって汚染された地域の環境を修復するため必要かつ適切な措置を取るとあります。この点においても、日本は、東京電力福島第一原発の経験を生かすことができるわけであります。

 このような形で、被爆者援助、環境修復に貢献したいという思いを持った方々は、日本の被爆地の大学やNGOの皆さんなど、多数おられます。また、こうした内容は、NPTにはない、核禁条約ならではの内容であるということも重要であります。

 折しも、核実験の被害者らの援助や、核実験で汚染された環境修復のため、国際信託基金の設立に向けて議論を本格化させることが第二回の締約国会議で決定をされています。この動き、日本は、核禁条約の締約国ではないこと、それはもう重々分かっておりますけれども、積極的に支援すべきではないかと考えております。政府の御見解を伺います。

林政府参考人 核兵器禁止条約の第二回締約国会議において、委員御指摘の国際信託基金設立に向けて本格的に議論を進めていくという決定については承知しております。

 我が国は、従来から、唯一の戦争被爆国として経験、知見を有しております。これらを踏まえまして、カザフスタンにおける旧ソ連時代の核実験地域における医療機材整備ですとか地域医療改善支援など、無償資金協力や技術協力といった我が国の政府開発援助の枠組みなどを活用しながら、核実験被害国における支援を積極的に行ってきています。

 引き続いて、適切な協力の在り方について検討してまいりたいというふうに考えております。

平林分科員 そういう支援はやるけれども、核禁条約の場ではどうなのかということは何も今お話がなかったわけでございまして、なぜそこまで核禁条約は駄目なのかなというのは非常に理解に苦しむところなんですけれども。この点について引き続き議論させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 続いて、話題を変えまして、岸田総理が、第十回核兵器不拡散条約、NPTの運用検討会議において、ヒロシマ・アクション・プランを提唱されたということであります。その一環として展開されているユース非核リーダー基金の研修プログラム、先ほど冒頭でも少し触れさせていただきましたが、これがスタートをして、核兵器保有国、非保有国の合計六十三か国、また、十八歳から二十九歳の百人が一期生として選ばれたということが報道されております。岸田総理の御提案が、国連のプログラムとして具体化をし、有意義な、すばらしい取組に結実をしていっていることに敬意を表するところでございます。

 本件に関連しまして、昨年五月、予算委員会で私は質問をさせていただきましたけれども、このようにして世界から集まる若者と日本の若者との交流は有効ではないかと考えております。これにより平和の世界的連帯を築いていけると考えるからこそ、その取組の推進をお願いしておりました。

 そこで、伺います。これに関して二つ伺いますけれども、まず一つ目になります。

 今回、同プログラムは国連において検討され、広島の国連訓練調査研究所、いわゆるUNITARが現地受入れを担当するとお聞きをしております。国連で選抜され、日本に派遣されてくる若者と日本の若者が交流するプログラム、このような検討はされているのか、外務省として情報をお持ちであるかどうか、認識を伺います。

林政府参考人 御指摘のユース非核リーダー基金は、核兵器国、非核兵器国の双方から未来のリーダーを日本に招きまして、被爆の実相に触れてもらいまして、核廃絶に向けた若い世代のグローバルネットワークづくりを目的としているものでございます。岸田総理が立ち上げを表明いたしまして、我が国として、国連に対して一千万ドルを拠出いたしました。

 昨年十二月には、委員もおっしゃられたように、国連側により選定されたプログラム参加者、第一期生となります百名に対して、オンラインを中心とした研修プログラムが開始されました。この百名は、政府、国際機関、市民社会、アカデミアなど、幅広いバックグラウンドを持った方々であります。この百名の中から、研修実績等を踏まえまして、国連側が選定した参加者が、本年の夏頃に、約一週間、広島及び長崎を訪問いたしまして、研修プログラムに参加する予定ということでございます。

 今回の夏の訪日プログラムの具体的な内容は、現在、研修参加者の意見を踏まえながら、UNITAR広島事務所の協力を得ながら国連軍縮部が検討中でございまして、若者主導の会議の開催も想定されていると承知しています。

 委員の御指摘も踏まえながら、この基金を通じて若い世代への取組の効果を最大限発揮できるよう、引き続き国連側と調整してまいりたいと考えております。

平林分科員 ありがとうございます。

 今ひょっとしたら次の質問の答えもしていただいたのかなと思いながら、次の質問、お聞きしようとしていた内容は、日本に派遣される若者と日本の若者が交流するプログラム、こういったものがあるのであるならば、その両者が事前に主体的に計画に取り組んでいって当日をつくり上げていく、こういったことが非常に望ましいと考えておりまして、この点、実は私、核廃絶に取り組む広島の若者グループ、カクワカの皆さんから、是非こういったことを考えてもらえないかということで強く要望されているところであります。

 今のお話は、国連から選抜された皆さんが事前の計画に取り組んでいくという話だったかもしれません。一方で、日本の若者も計画に取り組んでいくことができるのか。その点に関してお伺いできればと思います。

林政府参考人 今申し上げましたように、基金の方につきましては現在検討中でございますけれども、委員御指摘されましたように、若い世代がミックスできるかどうか、しっかりと取組をしていきたいと思います。

 被爆の実相を世界にしっかり伝えていくということは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点だというふうに考えておりますので、御指摘も踏まえながら、引き続き調整を行っていきたいというふうに考えております。

平林分科員 ありがとうございます。

 今、被爆の実相という言葉も出ました。G7広島サミット以降、広島に来ていただく海外の皆さんも、本当にたくさんいらっしゃっています。原爆資料館に長い列ができて、それによって結局見られなくなるみたいな事態も発生しておりまして、広島市がそれに対応を余儀なくされているというような状況もあったりしておりまして、被爆の実相の共有、それがまた若い世代にされていくということは本当に大事なことだというふうに思っております。それを是非外務省でも進めていただきたいと思いますし、私どももしっかりとその後押しをさせていただきたいというふうに思っておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、最後にお伺いできればというふうに思います。

 本年四月、まだ二か月先の話でございますが、岸田総理が国賓待遇で訪米予定であるということが報道されているということであります。その中では、上下両院合同会議で演説する、こういった計画も報道されております。

 私がこの点に着目させていただいておりますのは、今日の質問の趣旨にも関連しておりまして、核兵器禁止条約の文脈において総理がおっしゃっておられる、唯一の同盟国である米国との信頼関係に努めたい、このように言っておられる意味からも重要な訪米になるのではないかなというふうに考えているということであります。

 この点で、改めてお聞きさせていただければと思います。岸田総理の今回の訪米の意義、政府としてどのように捉えておられるのか、御見解を伺います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 バイデン大統領からの招待を受けまして、米国政府と調整した結果、岸田総理大臣は、諸般の事情が許せば、国賓待遇で米国を公式に訪問いたしまして、四月十日にワシントンDCで同大統領との日米首脳会談を行うとともに、公式晩さん会等に出席する予定でございます。

 米国議会での演説を含め、その他の具体的な行事等の詳細につきましては現在調整を行っているところでございますけれども、国際社会が様々な課題に直面する今こそ、日米の固い結束が重要だと考えております。

 今般の岸田総理の米国への公式訪問は、この日米両国の緊密な連携を一層深めまして、強固な日米同盟を世界に示す上で大変有意義なものになると考えております。

平林分科員 ありがとうございます。

 今、日米間のテーマというのは決して核廃絶のみだけではないわけでありまして、様々なことについて議論をして、また、その結束を深めていくということになろうかと思います。

 その上で、総理のライフワーク、これは核なき世界の実現ということというふうにも認識をしておりますので、そこに向けて重要な一歩を踏み出される、このことを御期待をしているところでございます。私も今、広島に本拠地を置かせていただいておりまして、岸田総理と近しいところにあるわけでございます。その意味におきましても、その目標を目指して私自身もしっかりと行動してまいりたい、このように考えているところでございます。

 やや、ちょっと時間は早いところではございますけれども、以上をもちまして私の質問を終わらせていただければと思います。

 御清聴ありがとうございました。

牧原主査 これにて平林晃君の質疑は終了いたしました。

 次に、上杉謙太郎君。

上杉分科員 自民党の上杉謙太郎でございます。

 質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 上川大臣におかれましては、連日の予算委員会とそしてこの分科会と、大変であるかと思いますけれども、今日、最後の質問ということで、是非おつき合いをいただけたらありがたいというふうに思います。

 大臣始め外務省の職員の皆様、外交官の皆様には、本当に敬意を表しているところであります。一年半前まで私も外務省の中に入らせていただいて、政務官として、皆様とともに一緒になって日本外交に携わらせていただいてきました。本当に外務省の職員の皆さんは優秀ですし、また、真面目で誠意があるという方々であります。外務省の中は、皆様お一人お一人の人間性だったり能力、そういったものがあってこそ、この日本外交を本当に支えているんだなというふうに思っているところであります。本当に感謝いたしております。

 一方で、日本は少子化なわけでありまして、また、公務員を目指す人というのが減っているというところであります。今日はひとつ、その人材ということについて一問、御質問させてもらいたいと思うんです。

 私が大学生ぐらいの時代から見ますと、今の子供たちは多分半分ぐらいになっているわけであります。そうすると、外交官を目指す人というのも自然と半減してしまうということでもあります。また、それ以外にも、公務員を志望する学生というのが減ってきているという状況でありまして、これは、外務省のみならず、霞が関、各省庁みんなそうであるわけであります。

 そういった中で、外務省として、優秀な若手をこれからもっともっと継続的に登用していかなければならない。また、外務省の人員もまだまだ、毎年毎年増えているところではありますけれども、もっともっと増やしていかないといけないわけであります。そういったときに、優秀な学生を採用するに当たって、少し先のことも考えた取組というのが必要なんじゃないかなと思っております。

 というのも、それは、小学生、中学生、高校生、そういう子供たちに対して、外交ってすばらしいんだよとか、外交官って格好いいんだよとか、日本外交に携わるというのはすばらしい仕事なんだということを、どこかの機会を通じてそういう機会を提供していく。そうすることによって、例えば、野球をやっている子供たちはプロ野球選手になりたいと思うわけであります。うちの子はサッカーをやっていますから、サッカー選手になりたいのかはちょっと分かりませんけれども。

 例えば、小学生であれば、今、国会に見学は来ますよね、修学旅行だったりですとか遠足とかで。私も小学校六年生のときに国会を見学した記憶があります。そういった意味では、子供たちに対して、外交、また外務省、場合によっては国連、国際機関、そういったものを若いうちから見せてあげる。そうすることで、僕、私、目指してみたい、そういう人が一人でも増えてくれれば、それはすばらしいことだというふうに思います。

 私も政務官を拝命させていただいていたときに、こども霞が関デー、夏にやりますよね、それを担当させていただきました。参加した小学生、中学生はみんなちゃんと自分で質問を用意してきて、困った質問もあったんですけれども、しっかり勉強して質問してきてくれたんですね。親御さんが外交に興味のある方だったんだとは思いますけれども、例えばそういうこども霞が関デーというようなものを、あれは一日、二日しかありませんでしたから、もっと頻繁にやる。また、冬休み、春休みを使うということもいいと思います。また、外務省さんだけじゃなくて、例えばJICAであれば地球ひろばという施設もあるわけでありますし、また、サイトの方でいえばキッズ外務省というのもやっていますよね、外務省さんでは。

 ネットもそうでありますし、実際の場もそうでありますが、そういった機会を子供たちに提供することによって、未来の外交官をつくっていくためのということでもないですけれども、外務省のPRも兼ねてやるべきだというふうに私は考えておるところであるんですが、大臣に、この点について御所見をお伺いできたらと思います。

上川国務大臣 職業を選ぶというのは、一人の人としての人生の中で大変大きな選択の一つになります。選択をしていくためには、やはりそのための経験、情報、あるいはその空間に触れるというか置かれる、こういったことは非常に重要であるというふうに思っております。これは、外交官だけではなく、他の職業も同じではないかとも思っているところであります。

 外務省におきましては、まさに、次世代を担う小中高生に、外務省の業務や日本外交政策、また国際情勢に関心を持ってもらうために、様々取組を行っているということであります。先ほど、政務官のときに担当されておられました、まさに、こども霞が関見学デー、あるいは外務省独自の取組として、小中高生の外務省訪問、また外務省職員によります高校講座の実施、さらには、お触れいただきましたが、ホームページのキッズ外務省や、また動画によりましての広報等、積極的な広報に努めているところでございます。

 こうした取組を積極的に展開をすることによりまして、若い世代の皆さんが外交に関心を持っていただき、また、仕事として選んでいきたい、こう思う、あるいは志す、こういったことに対して極めて重要な課題であると認識をしております。

上杉分科員 大臣、ありがとうございます。是非、よろしくお願いしたいと思います。

 教育は文科省管轄でありますけれども、文科省だけやっていればいいということではないというふうに思いますので、是非ひとつ、外務省としても進めていっていただきたいと思います。

 特に、もう世界は近くなっておりますし、もう子供たちもスマホを持って世界中につながっているわけであります。そういった意味では、身近に世界とつながる、触れ合うということにもなっているわけでありますから、そういったところから、外務省、外交官を目指したいなという子供たちが一人でも多く出てきてくれたらありがたいというふうに思いますので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 また、外交白書、外交青書等々も、できれば子供向けのものも、これは提案でありますけれども、行く行く作っていただけるようになったら非常にありがたいかなというふうに思っております。

 続いての質問でありますが、人材育成といいますか、外務省の職員の方々のキャリア形成の点なんですけれども、今、例えば、外務省から国連また国際機関、そういったところに出向するということがあると思います。プロパーとして普通に国際機関に就職されている日本人の方もたくさんいらっしゃいますし、例えばそういう方々に対しては、外務省さんも国際機関人事センターというのをお持ちで、そこでいろいろ紹介をしたりですとか、いろいろあるというのがあると思います。

 外務省の外交官、職員の方々も、例えばキャリアの中で、在外公館に勤務してまた本省に戻ってきたりといろいろあると思いますが、国連また各国際機関に出向して、より一層世界の舞台で活躍していただく、それでまた帰ってきていただくというのがいいキャリアコースになると思うんですね。既にやっていらっしゃる方もいると思いますが、その門戸というのはもっともっと広げるべきだというふうに思います。

 今、外務省さんとして、また日本政府として、国際機関における日本のプレゼンスを高めるということでいろいろ施策をやっていらっしゃるわけでありますから、であれば、ポジションを取るというのが結構厳しいというところはあるとは思いますけれども、たくさんのポジションを取って、そういうキャリア、キャリアコースというのをつくっていく必要があるというふうに考えております。

 そこで、まず教えていただきたいんですが、今、外務省さんから何人ぐらい、国連ですとか国際機関に出向されておりますでしょうか。

志水政府参考人 お答え申し上げます。

 国際機関への国家公務員の派遣に関しましては、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律に基づき、現時点で十三名の外務省職員を国際機関に派遣しております。

上杉分科員 ありがとうございます。

 是非とも桁一つぐらい増えるように、我々も頑張っていかなければならないですが、していけたらいいんじゃないかなというふうに思っております。

 国連も各国際機関も、やはりそこの職員に日本人がいるというのは非常に大きいというふうに思うんですね。是非、そういったところ、国際機関、国連への出向者を増やしていくという、重要だというふうに思うんですけれども、大臣の方からも御所見をいただけたらありがたいというふうに思います。

上川国務大臣 国連を始めとする国際機関でありますが、昨今のグローバルな様々な課題を解決する上で、極めて重要な役割を果たしているところであります。そうした国際機関と連携をする形で日本も様々な取組をしているところでございますので、まさに国際機関の中に日本のプレゼンスを強化していく、そのための人材ということについては極めて重要であると認識をしているところであります。

 今、十三名ということでありますけれども、まさに、外務省の組織を離れまして研さんを積む、そして幅広い関係者と人脈を構築していくということにつきましては、外務省職員の育成という観点のみならず、我が国として国際社会に様々な観点から貢献をしていくという、この意味でも大変重要であると考えておりまして、この点につきましては、ますますこれについて力を入れていかなければいけないというふうに考えているところであります。

 国際機関側にも人事に係る状況がございますが、外務省としてのキャリア形成、また日本の国際機関のプレゼンス強化という観点から、派遣に係る取組につきましては積極的に更に推進してまいりたいと考えております。

上杉分科員 ありがとうございます。是非、よろしくお願いしたいと思います。

 外務省の職員の出向者、派遣ということもそうでありますが、もう一つ、ちょっと御提案なんですけれども、国連、国際機関のトップクラスというのは選挙で選ばれているというふうに思うんですけれども、例えば、選挙で選ばれるようなトップクラスに日本人が就任するというのは、これもまた日本のプレゼンスを高めることになるというふうに思います。

 私も、政務官のときに、その選挙で何名かの大使がいらっしゃったときに、選挙活動で、お願いしますというのをやらせてもらったことがあります、パンフレットを渡して。そういうふうに選挙で選ばれる人ということであれば、例えば、我々衆議院議員、参議院議員ですとか、政治家、立法府にいる人間も、外交官の皆様とはまた、外交官の皆様は優秀ですけれども、私たちもまた違った点で日本のために貢献できるというふうに思うんですね。現職で行くのはあれですけれども、例えば、もう引退されたですとか、そういう方々が行くというのは、これまた一つの新しい道になるんじゃないかなと思っております。

 例えば、今の国連事務総長のグテーレス事務総長はポルトガルの首相でしたよね。高等弁務官をやって事務総長になった。ということであれば、そういう選挙で選ばれるようなポストに政治家を充てていくというのも一つのアイデアとしていいんじゃないかなというふうに考えているところであります。

 そこで、一つ教えていただきたいんですが、そういった国際機関で、選挙で選ばれるような国際機関はどれくらいあるのか、教えていただけますでしょうか。

河邉政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと手元に今数字がございませんが、御案内のとおり、国連とか、ユネスコ、UNIDOとか、WHO、ILO、WTOとか、非常に数多く、国際機関のトップを選挙で選ぶ国際機関は本当に多数ございます。

上杉分科員 ありがとうございます。

 そうですね、ほぼほぼトップはもう選挙で選ばれているような形であろうかなというふうに思います。

 そういった意味では、ここに、政治家のみということではなくて、今まではいろいろな方々が日本からもノミネートされていたと思いますけれども、元政治家というのも一つの選択肢になってくるというふうに考えておりますが、この点、大臣の御所見もお伺いできたらと思います。

上川国務大臣 国連、国際機関のトップにつきましては、委員御指摘のとおり、首相や閣僚経験者も多いというふうに私も認識をしております。また、国際機関のハイレベルポストの性質によりまして、技術的、専門的知見がより求められる場合も、また政治的センスが強く求められる場合もあります。いずれの場合におきましても、関連の経験、あるいは語学力、そしてマネジメント力、あらゆる能力が大前提になるというふうに認識をしております。

 政府といたしましても、国連を始めとする国際機関のハイレベルポストの獲得を重視をしておりまして、戦略的に日本社会全体から幅広く人材を見出し、そして、重要なトップポストあるいはハイレベルポストの獲得に向けまして、政府全体として取り組んでまいりたいと考えております。

上杉分科員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだと思います。特に閣僚経験者ですとか、ある程度専門的な知識がある方ですとか、そういった方は世界の方から見ても欲しいというふうに思っていただける方もたくさんいらっしゃるというふうに思います。今まで選択肢の中に政治家というのはいなかったというふうに思うんですけれども、一つ検討の材料として頭に入れておいていただけたらありがたいかなというふうに思います。

 次の質問であります。

 日本の世界におけるプレゼンスの強化という点で、もう一点、違うことをお聞きしたいと思うんですが、国連大学についてであります。

 国連に関係する機関は多々ありますけれども、国連大学の本部はすぐそこにありますよね。青山学院大学の道路を挟んだ斜め向かい側に国連大学の本部があるわけであります。世界中で国連の機関の本部がある国というのは本当に珍しいわけでありまして、そう考えると、国連における日本の存在価値を更に高めるためにも、国連大学ともっと連携をすべきだというふうに思います。外務省さんも予算を出しているわけでありますし、文科省さんも出しているわけであります。

 国連大学というと、大学なんだから、教育なんだから、文科省さんが研究教育とか連携を図ればいいだろうというふうにちょっと思いがちでありますが、教育の部分はそれはそれでやったらいいんだというふうに思います、先端の教育とかですね。ただ、外務省さんの外交の視点から、どのように国連大学と連携強化をして、どういった施策をやっていくのかというのは、更にもっと考えていった方がいいと思うんですね。

 今までの予算、今までのやり方で、これでいいんだろうなという頭でいたんだと思います、今まで。そうでなくて、何か新しい視点で、国連大学と連携して何ができるのか、国連大学を通じて日本の存在価値をどうやって高めていくのかということを是非考えるべきじゃないかなというふうに思っております。

 具体的に何だと言われるとなかなか難しいんですけれども、自分の場合は福島県選出の議員でありますから、東日本大震災というのは世界でもまれな震災だったわけであります。国連大学でも防災の研究をしているわけでありますから、防災関係であれば日本というのは最先端を行っていますよね、技術にしても。

 例えば、福島だったら、F―REIといって、四月から新しく国際研究教育機構というのができましたから、そこと国連大学が連携して研究をして、その研究成果を国連大学を通じて国連加盟国に共有していくということも、これは教育になっちゃいますけれども、できるというふうに思います。いろいろなやり方があると思いますので、是非、外務省の中で知恵を出し合ってやってもらえたらありがたいなというふうに思っているところであります。

 また、去年、国連大学も、マルワラ新学長がいらっしゃいましたし、副学長の白波瀬先生も非常に積極的に政府と連携強化をしていきたいとおっしゃっているところであります。是非、国連大学との更なる連携強化をしていっていただきたいと思いますが、大臣の御見解をお教えいただけたらと思います。

上川国務大臣 国連大学でありますが、国連諸機関全体のシンクタンクとしての地球規模課題の研究に加えまして、教育機関として学位プログラムを開設するなど、人材育成の面でも国際社会に貢献しているところであります。

 日本はこれまで、国連の諸機関の全体への貢献を強化するという点も念頭に、第三位の拠出国であります国連大学に財政的支援を行ってまいりましたけれども、さらに、今おっしゃったような、日本の大学あるいは研究機関との連携を後押しするなどをして、教育研究面での連携強化にも取り組んできておりますし、また、これからも様々な課題にチャレンジしていく必要があろうかというふうに思っております。

 先ほど委員から御指摘がございましたとおり、日本に本部を置く唯一の国連の機関であります。この国連大学との連携強化は日本政府としては非常に重視をしておりまして、私も昨年十一月にマルワラ学長の表敬を受けまして、人間中心の国際協力の推進、またWPSの推進といったグローバルな諸課題への対応を始めとし、国連大学との連携を一層深めていくということで一致をしたところでございます。

 まさに、我が国は国連大学のホスト国でありますので、文科省を含みます関係省庁とも緊密に連携をしながら、委員、先ほど、災害という分野におきましては、世界の中でも日本のこれまでの経験あるいはレッスン、教訓を生かしていきたい、こうした強い要望が数々届いているところでありますので、こうしたことも含めまして、引き続き、大学との関係を深めて活動を支援してまいりたいと考えております。

上杉分科員 ありがとうございます。是非、よろしくお願いいたします。

 また、国連大学は、敷地、施設も人がたくさん通るところでありますけれども、なかなか入りづらいような施設になっております。それは、外務省さん、大臣に言う話ではありませんけれども、国連大学に言うべき話かもしれませんが。

 あそこの施設も土日とかでマルシェとかをやっておりますけれども、もう少しオープンな形で、人が通うような、中に入れるようにしていけば、また、国連大学に興味を持つ人、国連に興味を持つ人も増えていくでしょうし、そういった意味では、あそこの施設を貸しているのは政府、東京都ですかね、なわけでありますから、そういう形で、あそこの施設の活用も是非検討していただけたらありがたいなというふうに思います。

 続いての質問でありますが、日本のプレゼンスの強化の中の地域をちょっと限定してお話を伺いたいと思いますが、太平洋島嶼国における日本のプレゼンスの強化であります。

 太平洋島嶼国は十四か国ありますが、最近の中国の進出ぶりは脅威であります。そういった中で、日本がどうやって十四か国と、今までもすばらしい取組をずっとしてこられて、いい国家関係はできているというふうに思いますけれども、一つ提案を、やはり在外公館の設置は大事だなというふうに思っております。

 去年、おととしであればキリバスができましたけれども、なかなか十四か国全ての国に大使館なり領事館を置くというのは難しいと思いますよ、島の数もたくさんありますし。そういう意味では、一つの公館で幾つかの国を見ないといけないということが出てくるのも致し方ないというふうに思います、今のところは。ただ、全ての地域に設置をすべきだというふうに考えているのが自分の考えであります。

 そこで、まず、今後設置予定の国はあるのかどうか、教えていただけたらと思います。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 現在のところ、我が国が太平洋島嶼国に対して大使館を新設する予定はございません。

上杉分科員 ありがとうございます。なるほど、承知いたしました。

 そうしましたら、逆に、十四か国のうち、この日本に、例えば東京とかに大使館を設置している国、また、していない国というのがあると思います。現在も、東京を始めとして、この日本に大使館を設置してくださっている国というのはどことどこがあるんでしょうか、若しくは幾つあるんでしょうか。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、我が国に大使館を設置している太平洋島嶼国は七か国ございます。サモア、トンガ、パプアニューギニア、パラオ、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、この七か国ございます。

 今後、新たに我が国に設置が確定している太平洋島嶼国の大使館は、今のところございません。

上杉分科員 ありがとうございます。

 そうすると、大体、日本につくってくださっているところというのは日本もつくっているところなわけですね、大体が。そうですね。

門脇政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が大使館を設置している島嶼国は十か国ございまして、その十か国のうちの七か国が我が国の方に大使館を設置している、そういう状況でございます。

上杉分科員 ありがとうございます。

 先方国が日本に、しかも東京につくるというのは、予算の面もあるでしょうし、先方国の御都合というのもあるでしょうから、なかなか難しいかも分かりませんけれども、是非日本につくっていただきたいと思いますし、また、我々日本が向こうに対してつくるというのは、まだ先方がつくるよりはつくりやすいといいますか、つくれると思いますので、現在十か国なのであれば、あと四か国あるわけであります。是非、全ての国、十四か国全てに在外公館を設置していただきたいというふうに思いますけれども、では、大臣の方から御所見をお伺いできたらと思います。

上川国務大臣 在外公館の新設に当たりましては、先方による在京の大使館設置の有無のほか、安全保障や戦略的対外発信、また資源獲得を含みます経済上の利益、また日本企業支援、さらに、テロ対策及び邦人保護、国際社会における我が国への支援獲得等を総合的に勘案をしているところでございます。

 太平洋島嶼国でありますが、地政学上の重要性を増している国々でございまして、まさに我が国自身の安全保障や、法の支配に基づきます自由で開かれたインド太平洋実現の視点からも重要な地域であると考えているところでございます。

 この太平洋島嶼国のうち、我が方大使館の実館が置かれていない、大使館が置かれていない国におきましての新設ということでございますが、予算、人員上の制約がある中でございまして、相手国との二国間関係を始めとする在外公館の新設基準を踏まえて検討を続けてまいりたいと考えております。

 同時に、できなければそれでということにはなりませんで、その国を兼轄している大使館及び本省からの当該国へのハイレベルを含みます出張、さらには、当該国関係者の日本への招聘を含めまして様々な形で二国間関係を深化をさせていく、強化をしていく、こうしたことに努めてまいりたいというふうに思っております。

 私自身も、二月十日に日本の外務大臣として初めてサモアを訪問をいたしましたし、二月十二日にはフィジーにおきまして、太平洋・島サミット第五回の中間閣僚会合の共同議長を務めたところであります。そうした機会は極めて重要であると認識をしておりますし、また、そのきずなを絶やさぬように更なる努力を重ねてまいりたいと考えております。

上杉分科員 大臣、ありがとうございます。是非、よろしくお願いしたいと思います。

 確かに、在外公館を設置するということ以外にも、島サミットもそうでありますし、政務三役、大臣含めて合計六名ですが、大臣と副大臣二名、政務官三名いて、コロナが明けてから積極的に行っていらっしゃるというふうに承知をしております。

 やはり現地に行くということが、向こうも歓迎してくれますし、関係をつくることにもなりますし、そういった意味では、在外公館はもちろん設置していただきたいですけれども、それは鋭意努力していただきながら、また、その関係を頻繁に、何か数年行っていないということがないように、誰かしらが毎年行っているぐらいの形で、六人いますから、そういう形で是非進めていただけたらありがたいなというふうに思います。

 私も政務官のときにソロモンに、ガダルカナルに行かせていただいたんですけれども、それも非常にいい経験になりましたし、やはりあの頃から、中国の進出というのは本当に具体的に脅威になっていったというところでありました。安全保障協定というのがありましたので、向こうも。

 そういった意味では、我々日本として、安全保障上もそうでありますし、経済上も、インド太平洋、太平洋島嶼国は特に、マグロ、カツオを始め水産業、結構いい漁場でありますから、経済交流も盛んな地域でもあります。そういった意味で、是非、引き続き御尽力をしていただけたらありがたいというふうに思います。

 続いて、ちょっとがらっと質問の内容が変わりまして、ソロモン、ガダルカナルには関係をしているんですけれども、戦没者遺骨収集事業についてであります。残り三分になってしまいましたので、簡単に御説明をしたいと思います。

 今、日本を取り巻く安全保障環境は、戦後七十八年を過ぎて、戦後最大の危機を迎えているわけであります。まさに太平洋島嶼国地域もそうであります。我々立法府においても、行政の方でも、外交政策、防衛政策、安全保障政策、議論が活発に行われているところであります。政府としても、その安全保障でまず一番は外交力だというふうにおっしゃっているところであります。

 そういった意味で、我々が外交、防衛、安全保障を議論する上でやはり忘れてはならないのは、戦没者の遺骨についてであります。特に今、これは厚労省側の事業になりますけれども、去年、戦没者遺骨収集の改正法案が衆参全会一致で可決されて、五年延長というふうになっているわけであります。やはり外交、安全保障を語る上では、戦没者遺骨収集事業というのは車の両輪としてしっかりやっていかなければならないというふうに考えております。

 そういったときに、これは厚労省の事業だといって、確かに厚労省が遺骨を収集する、分析をする、返還をするというときに、細かいところ、専門的な部分は厚労省さんが引き続きやるのがいいと思いますが、実はここにはやはり外交が絡むわけであります。実際に、例えばタラワプロジェクトというのがあって、日米が連携してタラワ島において遺骨を収集して、また分析をしてということをやっているわけであります。そこに韓国も加わっているわけであります。

 そういった意味では、これからの遺骨収集事業をしっかり外務省が外交の部分で、そこはやはり、厚労省さんがやるよりも外交のプロは外務省さんでありますから、外務省さんがイニシアチブを取って、フロントに出てしっかりと進めていくべきだというふうに考えております。それが二十一世紀の新しい遺骨収集事業の姿だというふうに考えております。

 そういった意味で、是非、大臣におかれましては、遺骨収集事業についてしっかりと前向きに検討していただきたいというふうに思いますが、御所見をお伺いできればと思います。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、外務省といたしましては、厚生労働省を始めとする関係省庁及び在外公館等と連携をしながら、遺骨収集に関する我が国と外国の関係当局間の覚書作成に当たり、外交的観点から関係当局の取組を支援する等、遺骨収集帰還事業を実施するために必要な取組を実施してきているところでございます。

 また、累次の首脳会談、外相会談等の機会を活用いたしまして、関係国に対しまして、遺骨収集帰還事業への協力要請等を適切に行ってきているところでございます。

 外務省といたしましては、可能な限り多くの御遺骨を収集し、御遺族に早期にお返しすることができるよう、引き続き関係省庁と緊密に連携しつつ、関係国との連携協力に関する御指摘をしっかりと踏まえまして、全力を尽くしてまいりたいと考えております。

上杉分科員 ありがとうございます。

 是非、よろしくお願いいたします。時間が参りましたので、終了いたします。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて上杉謙太郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十八日水曜日午前九時より開会し、法務省所管についての審査を行うこととし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時一分散会


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