衆議院

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第2号 平成30年2月26日(月曜日)

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平成三十年二月二十六日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 星野 剛士君

      石崎  徹君    大西 英男君

      金田 勝年君    斎藤 洋明君

      野田  毅君    山田 美樹君

      井出 庸生君    山井 和則君

      黒岩 宇洋君

   兼務 宮本  徹君 兼務 森  夏枝君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働大臣政務官    大沼みずほ君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局次長)           嶋田 博子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房少子高齢社会対策等企画調整室長) 嶋田 裕光君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        川又 竹男君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    富山  聡君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    畝本 直美君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         中川 健朗君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  武田 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福田 祐典君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         宮本 真司君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小川  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

   予算委員会専門員     石上  智君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  金田 勝年君     斎藤 洋明君

  野田  毅君     山田 美樹君

  井出 庸生君     山井 和則君

  黒岩 宇洋君     金子 恵美君

同日

 辞任         補欠選任

  斎藤 洋明君     大西 英男君

  山田 美樹君     野田  毅君

  山井 和則君     階   猛君

  金子 恵美君     平野 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     金田 勝年君

  階   猛君     井出 庸生君

  平野 博文君     黒岩 宇洋君

同日

 第六分科員宮本徹君及び第七分科員森夏枝君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成三十年度一般会計予算

 平成三十年度特別会計予算

 平成三十年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

星野主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 平成三十年度一般会計予算、平成三十年度特別会計予算及び平成三十年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。斎藤洋明君。

斎藤(洋)分科員 おはようございます。自由民主党の斎藤洋明です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入ります前に、これは通告しておりませんので質問ではありませんが、労働契約法の改正の結果、有期雇用の五年ルールで、有期雇用五年目を迎える場合は無期雇用に切りかえるという中で、雇いどめがあるのではないかという報道が何件かありますが、きのうも、私の地元でも、地方公共団体から補助金をもらっているような公的団体においてもそういう雇いどめが見られるという指摘がありました。ぜひ実態把握に努めていただきまして対応していただきますように、冒頭、お願いしたいと思います。

 早速、通告に基づきまして質問させていただきたいと思いますが、まず、理学療法士の教育カリキュラムについてでございます。

 理学療法士の養成につきまして、教育内容を充実していただきたいということと、それから、国際的に見ても理学療法士教育を四年以上で行っているところが多い、あるいは大学院教育で行っているという国もあるということを考えますと、我が国におきましても、この理学療法士の教育の四年制化を推進すべきと考えておりますが、厚生労働省の所見をお伺いしたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の理学療法士の養成でございますけれども、昨年、平成二十九年六月に、私ども、理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会という検討会を開催をいたしまして、昨年集中的に議論を行いまして、十二月に、質の高い理学療法士を養成するため、総単位数の見直しや臨床実習の拡充を行うべきなどの報告書が取りまとめられたところでございます。

 ただいま御指摘のありました、修業年限を四年制とすることにつきましては、この報告書におきまして、今回図ることといたしました総単位数の引上げなど、教育などの充実を図ることとしているわけでございますので、この引上げ、充実に係る影響、それから医療職全体のバランス、そして、御指摘もありましたが、リハビリテーションに関する国際的な教育水準、こういったことも踏まえた検討が必要、こういうふうに指摘をされているところでありますので、私どもといたしましても、これらを踏まえた検討が今後必要であるというふうに認識をしております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 私の秘書の一人も理学療法士の国家資格を持っておりますが、彼は四年制の教育を受けて資格を取得しております。彼の話を聞きましても、やはり、三年間ではなく四年間であることで、ほかの、特に医療関連職との連携ということについて広く知見を得ることができて非常に有意義であったという話も私も聞いておりますので、ぜひ前向きな検討をお願いしたいと思います。

 続きまして、C型肝炎の患者のうち、特定C型肝炎の患者の救済措置について質問したいと思います。

 救済法延長措置を議員立法で決めていただきまして、大変感謝をしております。

 ただ、期限を延長されても、依然として、カルテのない特定のC型肝炎患者さんのカルテにかわる訴訟上の証明の手段が非常にハードルが高いということで、お困りであります。私も、毎年非常にいろいろな意見をいただいております。この資料捜索ですとか、あるいは証明手段のあり方について、より積極的に国の支援が必要ではないかと考えておりますが、厚生労働省からまた御意見を伺いたいと思います。

宮本政府参考人 今先生からお尋ねいただきました、C型肝炎特別措置法に基づきます被害者の方の救済に関する御質問についてお答えさせていただきます。

 C型肝炎特別措置法は、感染被害者さんの製剤投与の時期を問わない早期、一律救済を目的として制定されまして、救済を受けるためには製剤投与の事実が司法手続において確認される必要があるというのは、先生御指摘のとおりでございます。

 この製剤投与の事実確認に関しましては、昨年十二月のC型肝炎特別措置法の改正案の審議におきましても、訴訟を通じて得られた事実認定の状況について速やかに情報提供を行うことや、医療機関による診療録等の確認作業を促すことなどが指摘されております。

 こうしたことを踏まえまして、まずは、医療機関における診療録の確認を促すため、確認が進んでいない医療機関に対して、厚生労働省の職員が計画的に訪問し、強く要請することとしておりまして、着手しております。

 また、診療録がない場合については、これまでも、母子健康手帳や、製剤投与にかかわった医師、看護師、薬剤師による証明や証言、患者又はその家族による記録や証言など、製剤投与の事実を確認できる証拠から、裁判所で総合的に判断が行われてきております。

 どういった証拠に基づいて事実認定が行われているのかを整理いたしまして、開示可能な範囲で概要を厚生労働省ホームページに公表させていただいたところでございます。

 今後とも、司法手続において適切に事実関係の確認がなされるよう対応してまいりたいと思っております。

斎藤(洋)分科員 御答弁ありがとうございます。

 なかなか現実には依然としてハードルが高いという事実は、これは否定できないと思います。国賠法上の訴訟を提起して、投与の事実もさることながら、因果関係の証明ということも患者には求められます。その中で、訴訟上の攻撃防御を行う中で、相当程度厳しい証明、高度の蓋然性が実際には求められているんじゃないかというのが私の、実際、患者さんと話をしての実感であります。

 弁護士に話を聞いても、なかなか受けづらいと。なぜかといえば、法の趣旨以上に、訴訟上の、もちろん厳密な証明をする必要はないわけでありますが、裁判官の心証形成に至るまでの立証については非常にハードルが高いということを言われていまして、私もそうなんだと思います。

 ですので、この点につきましては、例えば、現在のかかりつけの医師が、特定の血液製剤を投与されたのではないかという合理的な疑いはありますよねというような、あと、医師の出廷というのも、これもハードルが高いので、書面による医師による証明をよりしやすくしていっていただきたいと思いますし、ぜひ前向きに、さまざまな観点から、より証明しやすい環境を整えていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いします。

 続きまして、これはぜひ大臣に御所見をお伺いしたいと思っておりますのが、歯科診療報酬の件でございます。

 口腔ケアの充実によって国民の健康寿命を延伸しなければならないということは、これは大筋では、与野党問わず、政府も広く認めているところだと思います。

 その中で、歯科の技術料の保険評価の引上げ、それから、医科との初診料、再診料の格差、この是正を、もちろん一気にできることではないので、中長期的に是正をしていくべきではないかと考えますが、これはぜひ大臣にお考えをお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 斎藤委員、冒頭お話しになった無期転換ルールについては、これはしっかり周知をしていく。それから、特に、省庁の関係する団体というお話がありましたけれども、そうした団体に対しても関係省庁を通じて要請をしていく。それから、一般の方からもそうしたいろいろなお話があれば相談対応できることも強化し、そしてさらに、この無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的を持って雇いどめをするような事案を把握した場合には、必要な啓発指導をしっかりとやらせていただきたいというふうに思っております。

 その上で、今、口腔ケアのお話がございました。口というのは物を食べるという意味でいったら大変大事な機能でありますから、身体を保持をしていくという意味においても非常に重要でもありますし、特段、口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症予防になる。高齢者の場合は、よく、誤嚥性肺炎を起こして、そこから体調を崩すということがあるわけでありますから、そういった意味でも口腔ケアは非常に重要だというふうに認識をしております。

 歯科の技術料については、平成三十年度診療報酬改定において、口腔疾患の重症化予防や口腔機能の低下への対応を推進する観点から、新たに咬合圧検査などの新規医療技術を保険導入するとともに、既存技術の評価も引上げをさせていただきました。

 また、歯科の診療報酬、初診、再診の御指摘がございました。これまで、どちらかといえば技術料に多く配分をしてきたということもあって、医科と比べると一定の差が生じているという御指摘もありました。

 平成三十年度診療報酬改定においては、院内感染防止対策を推進する観点から、感染症対策などを要件とした上で、初診、再診料を、これは八年ぶりの引上げということをさせていただきました。

 今後とも、患者の方々が多様化していく、あるいは医療技術の進歩など、歯科医療を取り巻く状況などをしっかり踏まえつつ、国民に対し適切な歯科保健医療が提供していただけるように、関係者の意見もよく聞きながら、適切に、またしっかりと対応していきたいと思っております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 雇いどめの方も御見解をいただきまして、本当にありがとうございます。

 この歯科の例えば初診料、再診料の格差是正にしても、本当に今すぐ格差を是正しようとしたら、やはりこれは何百億円もの財源が必要になる話でありますし、今すぐ全部やってくださいというのはかなり現実的ではない話なので、そうではなくて、しっかり中長期的にこの格差の是正に取り組んでいっていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 同じく歯科につきまして、もう一つ問題意識があります。それは何かと申しますと、高齢化に伴いまして、訪問歯科診療のニーズは非常に高まっているんですけれども、高齢者の単独世帯もふえてきまして、なかなか、居宅において訪問歯科診療を受けるということのハードルが物理的にも心理的にも高まってきています。

 そこで、現場から声が上がっていますのは、通所介護施設、いわゆるデイサービスにおいて訪問歯科診療を受けたいという声が非常に強くあると私は感じておりますが、この通所介護施設における訪問歯科診療の解禁をぜひ御検討いただきたいと思っておりますが、厚生労働省の見解をお伺いしたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお話がありましたように、高齢化の状況に応じた医療の提供におきましては、歯科診療も非常に重要な役割を果たしているということは私どもも認識しているところでございます。

 一方、医療の提供の場所につきましては、医療法で規定をしておりまして、医療法上、医療は、病院等の医療提供施設や医療を受ける者の居宅等で提供されなければならないというふうにされております。

 御指摘のデイサービスでございますけれども、デイサービスを行う場所につきましては、医療提供施設ではなく、また、患者が一時的に滞在するのみであるという性質に鑑みれば、医療の提供が認められている患者の居宅等の療養生活を営むことができる場所となかなか言いがたいところがございまして、デイサービスでの訪問歯科診療を認めることについては慎重な議論が必要ではないかというふうに考えているところでございます。

斎藤(洋)分科員 私も、無制限にどこでも訪問診療していいよということになりますと、実質的に潜りの診療所というのを開設できることになるのと変わらないと思いますので、その意味では、どこでも診療していいということになってはならないと思います。

 しかし、一方で、現実に、居宅、私も高齢者の方の御自宅の状況をたくさん伺ったり、実際に見たりする中で、なかなかこれは厳しいなという状況も多々見られます。通所介護施設ということであれば、私は、しっかり定義づけをして、もうそこだけということは実際にできると思いますので、ぜひ、またいろいろな議論をしていく機会があると思いますので、このデイサービスでの訪問歯科診療ということにつきまして、前向きに御検討いただきたいと思います。

 続きまして、医療、医師の方の世界のことに関しまして、何点かお伺いをしたいと思います。

 まず第一に、医師の偏在の問題であります。

 この医師の偏在ということについて地方で議論しますと、かつては、医局が力を持っていて、研修医の方々に非常に重要な役割を果たしていただいた。しかし、今、若い医師の方々が専門医制度のもとで専門医の資格を取るということを優先される傾向にあるということで、どうしても、専門医制度の趣旨からして、大都市周辺に若い医師が集中する傾向にあるのではないかということが指摘をされています。

 もちろん、新専門医制度のもとでいろいろ御配慮をいただいているということは私も承知しておりますけれども、この新専門医制度の運用を今後改善していく中で、地方と都会との医師の偏在ということを解消する方向でぜひ改善をしていただきたいと考えておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘をいただきました専門医の問題でございます。

 新たな専門医の仕組みにつきましては、日本専門医機構におきまして、平成三十年度の研修開始に向けた準備を今進めているところでございます。

 厚生労働省におきましても、ただいま御指摘がありました医師偏在にどういう影響を及ぼすかということは、地域医療にとっても大きな影響がございますので、地域医療に責任を負うという立場から、今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会を立ち上げまして、日本専門医機構に対して、例えば、研修の中心は大学病院に限られるものではなく、地域の中核病院も含まれることなど、地域医療への配慮を求めてきたところでございます。

 さらに、今般提出を目指している医療法、医師法改正案、今現在検討中でございますけれども、この改正法案におきましては、地域医療に重大な影響を与える場合には、日本専門医機構などがあらかじめ都道府県の意見を聞く仕組みを法定化する内容を盛り込むべく、検討しているところでございます。

 この新専門医制度の開始に伴い、医師の偏在が助長されることのないよう、日本専門医機構及び関係学会とともに議論を尽くした上で、よりよい制度となるよう、丁寧に私どもとしても進めてまいりたいと思っております。

斎藤(洋)分科員 ぜひ、法改正の議論の中で前向きに検討していただきたいと思います。

 新専門医制度のもとで、基幹施設の基準緩和ですとか、あるいは都道府県協議会の機能強化といったことは、もう十分問題意識を皆さんお持ちでおられると思いますが、ぜひ、この偏在というのを是正する方向で改善を図っていただきたいと思います。

 また、あわせて、これは質問ではありませんが、医学部生、医学士を持っている医学部の卒業生が、かつては医学博士を取るということもあって大学院へ進学する数も多かったのが、今は医学系の大学院に進学するのはむしろ他学部の出身者が多い、例えばバイオですとかというような話も聞いていまして、日本における基礎医学研究の発展という観点からも、医学部生の大学院離れということにつきましてはちょっと私も問題意識を持っていますので、ぜひそちらについてもまたウオッチしていただければと思います。

 続きまして、在宅療養支援診療所の問題についてお尋ねをしたいと思います。

 在宅療養支援診療所は、地域包括ケアシステムを具体化していく中で、ますます重要性を増してくると考えております。ただし、個別の要件を見ていきますと、例えば二十四時間訪問看護あるいは往診が可能な体制を維持していなければいけないというようなこともありまして、施設基準の中には、地方で、地方でも都市部とそうでないところとありますが、地方の方では要件としては厳しいのではないかと感じるところもあります。

 また、実際に、長年、訪問診療を、それこそ何十年も地元で続けているような先生にお伺いしても、本当に、二十四時間往診というのは必ずしも必要なのだろうかと。つまり、真夜中に医師を呼び出すような状況であれば、それは救急車を呼ぶべきではないかというような話もあります。私も、そういう面はあると思います。

 この在宅療養支援制度自体は非常に重要なものだと思っておりますので、地方の実情に応じて、要件はもう少し御検討いただいた方がいいのではないかと考えておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の高齢化の進展に伴いまして、在宅医療の需要の増大あるいは多様化が進んでまいりますので、在宅医療の提供体制をしっかり確保していく、これは大変に大事なことだというふうに思っております。

 そうした中で、ただいま御指摘のございました在宅療養支援診療所でございますけれども、これは在宅医療におきますかかりつけ医機能を担う診療所である、こういうことから、在宅療養中の患者さんが急変した場合でも迅速に対応できるように、二十四時間の往診体制の確保を要件とさせていただいているところでございます。

 こうした役割は地方におきましても当然重要でございまして、ただ一方で、地方の実情に即してこうした在宅医療の体制を確保していく、これも大事でございます。

 そこで、一つの医療機関だけで二十四時間の往診体制を確保することが難しい、こういう場合には、他の医療機関と連携して確保することも認めているところでございます。

 また、あわせまして、今般の三十年度の診療報酬改定でございますけれども、外来医療におきまして、より的確で質の高い診療機能を普及する、こういった観点から、在宅療養支援診療所を含めまして、かかりつけ医機能を有する医療機関、この初診料に加算を設けることといたしておりまして、こうした措置も在宅療養支援診療所の充実に資するのではないかというふうに考えているところでございます。

 また、さらに、今般の改定におきましては、患者さんの状態に応じたきめ細やかな在宅医療の提供体制を確保する、こういう観点から、幾つか評価の充実を図ることといたしております。

 具体的には、在宅療養支援診療所ではない診療所が他の医療機関と連携して二十四時間の往診体制を構築した場合の加算、これを新設いたしております。それから、在宅患者訪問診療料の要件を見直しまして、複数の医療機関による訪問診療を可能とする。それから、特に通院の困難な患者さん、あるいは支援が必要な患者さんへの訪問診療につきまして新たな加算を設ける。こういった各種の見直しを行うことといたしております。

 今後とも、在宅医療の提供体制の確保をしっかり取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

斎藤(洋)分科員 御答弁ありがとうございます。

 この在宅療養支援診療所の導入後、地元の医療関係者の方々と意見交換する中で一番出ましたのが、訪問診療で昔から地元で有名な先生という方が何人かおられるんですが、そういう先生に限って、過疎地、つまり、なかなか実際に病院に通院することが困難な方々を診ている方というのは大体僻地の方に多くて、そうしますと、やはりチームワークで医療というわけにはいかなくて、お一人で診療所を経営されている方が多くて、そういたしますと、在宅療養支援診療所の定義から外れてしまうということが多々見られます。

 ですので、実態に応じて、もちろんこれも、全部いいですよというふうにやってしまったら、これは何にも意味がなくなってしまいますので、当然、要件は慎重に検討するものだと思うんですけれども、特に、いわば医師確保が非常に困難な中で、二十四時間、連携すればという話もありましたが、なかなか連携先というのも僻地だと厳しい現状がありますので、ぜひ、特に二十四時間往診可能な体制づくりというところでもう少し緩和ができないものか、御検討をお願いしたいと思います。

 次に、保育士のことにつきましてお尋ねをしたいと思います。

 保育士の処遇改善ということは非常に大きなテーマになってきていますけれども、技能、経験に応じた保育士の処遇改善ということも実際に行っていただいております。

 処遇改善についての評価は非常に現場でも高いんですけれども、実際、現場の方々と意見交換してきますと、経営者の方も含めてでありますし、また、実際、保育現場で働いている保育士の方々の意見も同じでありますが、若手、中堅、ベテランということで、実際にはチーム保育という言葉がよく使われますが、みんなで保育をやっている中で、若手の処遇、待遇改善ということをやはり最優先してほしいということを言われます。

 やはり、話を伺うと、若手は仕事がきつい、肉体的にも大変ですし、精神的にもかなり厳しい仕事をやっていただいている中で、どうしても待遇もベテランほどの待遇はなかなかできない。ただ、やはり、チーム保育でやっているので、ベテランだけでは保育の現場は回せませんので、若手の人たちには残ってほしいんだけれども、離職率も非常に高いということで、ベテランへの加算あるいは技能加算というのもありがたいんだけれども、むしろ、単純に、フラットな評価の中で加算をしていただきたいと。

 つまり、若手に手厚い処遇改善をお願いできないかということを私も考えておりますが、これにつきまして御見解をお伺いしたいと思います。

川又政府参考人 保育士の処遇改善につきましては、これまでも取組を進めており、平成二十五年度以降、月額三万円相当、約一〇%の処遇改善を実現をしております。

 これに加えまして、今年度から実施しております技能、経験に応じた処遇改善につきましては、各施設におけるキャリアアップの仕組みの構築を支援するため、経験年数おおむね七年以上の中堅保育士については月額四万円、これに加えまして、経験年数おおむね三年以上の若手の保育士等にも月額五千円の処遇改善を行うものでありまして、若手にも一定程度配慮したものとしております。

 また、平成二十九年度補正予算及び平成三十年度予算案におきまして、平成二十九年人事院勧告に準じた賃金の引上げ、一・一%分でございます、を実施することとしておりまして、さらに、新しい経済政策パッケージにおきましても、二〇一九年四月から更に一%、月額三千円相当の賃金引上げを行うこととしております。

 これらの取組を通じまして、若手も含めた保育士等の処遇改善を進めてまいります。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、若手により配慮した、若手に手厚い待遇改善をお願いしたいと思います。

 今ほど申しましたように、ベテランの方々も、若手に残ってもらわないと自分らもしんどいということは全く私もおっしゃるとおりだと思いますし、ぜひ御検討をお願いしたいと思います。

 あわせて、これは質問ではありませんが、処遇も、地域によってまたこれも格差がありまして、せっかく地元で保育士の資格を取得しても、より待遇のよい都会に流れるという現象もやはり地方ではありまして、都会では待機児童の解消ということが大きいと思いますけれども、地方におきましては、今度また質的な問題というのもあります。

 というのは、例えば今、アレルギー対応食の問題なんかもありまして、昔は三歳児で一斉に均質的な子供たちが入って均質的に卒業していくということがありましたが、今、例えばゼロ歳児から三歳児まで、非常に多様な子供たちが入ってきますので、離乳食対応とかアレルギー食の対応とか、そういった給食調理、提供の業務もかつてより難しくなっていますので、要は、現場の人手不足というのは非常に深刻でありますので、ぜひ、若手の待遇の改善ということも含めて御検討いただきたいと思います。

 最後に、医療と介護の現場の労働環境の改善についてお尋ねをしたいと思います。

 私の学生時代の仲間も、例えば放射線技師ですとか看護師ですとか、いろいろな医療関連職についていますけれども、やはり一様に、労働環境については非常に厳しいと。もちろん、理想は理想としてしっかり取り組むけれども、現実にはなかなか厳しいという声は多く聞いております。看護師の長時間夜勤ですとか、あるいは介護施設での一人夜勤ですとか、そういった極めて厳しい介護とか医療の現場の実態があるという声を伺っております。

 さらに、夜勤というのも、非常にこれは避けがたい世界ですけれども、夜勤におきましても、夜勤明けに例えば看護師の方が患者さんの入院手続をしなければいけない。非常にかつてと違って書類仕事がたくさんある。かつ、例えば認知症の症状がある方の入院手続ということになりますと、これはもう半日仕事になってしまうということで、本来であれば、夜勤明け、休息する、あるいは家庭のことをやるというはずのこの時間、勤務場所から離れられないという実態があるということを伺っております。

 インターバル規制など、まあ、議論もあるようですけれども、より実質的な労働環境の改善に取り組むべきではないかと考えておりますが、御見解をお伺いしたいと思います。

武田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、医療、介護の現場におきましては、長時間夜勤や一人夜勤によって従事者に一定の御負担をかけている実態もあると承知をしておりますので、実情について、私どももよく把握に努めながら、その実態を踏まえ、勤務環境を改善をしていく必要があるというふうに考えております。

 例えば、今、看護師につきまして、インターバルの御指摘がございましたけれども、看護師につきまして、日本看護協会による看護職の夜勤・交代制ガイドラインによりますと、勤務間インターバルにつきましては、十一時間以上とする勤務編成を推奨しているところでございます。

 平成二十六年に日本看護協会が実施した調査によりますと、病院における十一時間以上のインターバルの実施率は、三交代制の場合は約四割、二交代制の場合は約九割となっておりまして、いずれの場合も前年度の調査よりは増加をしておりますけれども、なかなか現実、確保ができていないという実態もあるようでございます。

 私ども、こういう御負担のある夜勤というものが、心身面の負担、医療安全上の懸念の要因となっていることを踏まえれば、引き続き、看護師や看護職員の勤務環境の改善を図り、夜勤負担の軽減につながるよう、さまざまなきめ細かな支援が重要である、こういうことから、例えば、地域医療介護総合確保基金による短時間正規雇用など多様な勤務形態を導入するための経費、また、仮眠室、休憩スペースなど夜勤負担の軽減につながる施設整備といったことに対する支援を行うことでありますとか、平成三十年度診療報酬改定の中で、夜間に看護職員及び看護補助者を手厚く配置した場合の評価の充実を図ることとしていることですとか、又は、介護の方では、一定以上の規模である介護保険施設における二人以上夜勤職員の配置、こういった義務づけであるとか、夜勤職員配置加算による報酬上の評価を行うでありますとか、こういった多様な取組を行っているところでございます。

 御指摘の点もよく踏まえ、私どもとしても、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

斎藤(洋)分科員 ありがとうございました。

 時間が来ておりますので、終わります。よろしくお願いします。

星野主査 これにて斎藤洋明君の質疑は終了いたしました。

 次に、山井和則君。

山井分科員 三十分、質問をさせていただきます。

 今回の裁量労働制の虚偽データ問題、私たちが非常に怒っておりますのは、これは命がかかわる問題なんです。きょうも、過労死の家族会の方々、傍聴にお越しをくださっておりますけれども、裁量労働制によって過労死が続出し、体調を壊して会社をやめざるを得ない方々が続出し、おまけに過労死をしても裁量労働制だからといって労災すら受けられない。真面目に、会社のために、家族のために働いた人が、一言で言えば人間扱いされないおそれがあるというのが、この裁量労働制の恐ろしさであります。

 昨日も、エキタスという団体の方々がこの裁量労働制拡大反対でデモをされて、約千人が参加したと言われております。

 私、この若者の方々の声を聞いて当然だなと思ったのは、きょうの配付資料にもその記事を入れておりますけれども、主張は極めて当然なんですよね。要は、働いた分の給料は払ってほしい、残業をさせるならば残業代を払ってほしいと。これは何か法外な要求をしているんでしょうか。当たり前じゃないですか。

 さらに、裁量労働制というけれども裁量があるってうそじゃないのか、そういうことも皆さんおっしゃっておられます。さらに、定額働かせ放題、一歩間違えば裁量奴隷制度じゃないか、そんな批判すら出てきております。

 きょうは若い方も傍聴に来てくださっておりますけれども、先ほど聞きましたら、その方は若者で、きのうちょっと裁量労働制について話合いをしたそうです。どういう声だったか。やはり、これは働く側じゃなくて働かせる側が有利なんじゃないか、みなし労働時間にしてそれ以上残業代を払わないってやはりおかしいよね、みなし労働時間は百歩譲っていいけれども、もし晩まで長時間残業させられたらプラスアルファで残業代を払うのは当たり前じゃないのと。私は、至極この若者の方々の意見というのは真っ当だと思います。

 安倍総理や加藤大臣は、何か七十年ぶりの労働基準法の大改革だとかおっしゃっていますが、私たちに言わせれば、七十年ぶりの大改悪に、この裁量労働制や高度プロフェッショナルを削除しなかったら、なってしまうと思います。

 おまけに、共同通信の記事によりますと、担当監督官が証言、時間とれずずさん調査に。内規で決められた約一時間半の間には、移動や報告書の作成の時間も含まれ、調査には一社数十分しか割けなかった、まともに調べられなかった、こういう監督官の証言も出てきております。

 そういう中で、金曜日、野党有志で厚生労働省に行かせていただきまして、厚生労働省の方々の御配慮がありまして、三十二箱、この段ボールの中に記録票の原票が入っている、これを見せていただきました。これはスキャンダルな問題ではなくて、この記録票の原票は、労働者の命のかかった原票なんですよ。これによって、政府は、裁量労働制の拡大を方向づけたのが、この三十二箱の段ボールです。

 しかし、この段ボール箱の中身、あえて言いますが、私は、監督官の方々が問題があったとはあえて言いません。やはり、この監督官の方々の証言でも、限られた時間で一日に五社回って、一カ所数十分しか実際のヒアリングができなくて限界があったとおっしゃっているように、監督官の問題じゃないんです。やはり、この調査は、そういう設計上も無理があったために、さまざまな虚偽や間違いのデータも出てきたのではないかと思います。

 そんな中で、金曜日の私の質疑からの宿題を加藤大臣にお聞きします。

 これですね。裁量労働制は九時間十六分で、平均一日の労働時間が、一般の労働者の九時間三十七分より短いんだと。比較しても比較しなくても、とにかく裁量労働制の一日の労働時間が九時間十六分なんだと。実際より私は短いと思いますよ。そのことのもとになったデータを私の事務所の吉沢秘書が確認したところ、一日の平均一時間以下が二十五件あった。幾らその裁量が一部の方にあるといっても、平均一時間以下って、やはりちょっとおかしいんじゃないですか。

 それで、大臣も調べるとおっしゃいました。きょうの朝九時までに、どういう原票で一時間となっていて、どういう業種でどういう方なのか、この分科会で答弁いただきたいというふうにお願いをして、加藤大臣からも前向きな答弁をいただきました。しかし、締切りの朝九時になっても、まだ一時間以下の二十五件のデータは全く来ておりません。二十五件、一時間以下、どういう方だったんですか。大臣、お答えください。

加藤国務大臣 まず、一部新聞記事を踏まえながら、一件、時間が一時間云々というお話がありましたけれども、これは、基本的には、一件、大体一日ぐらいで対応している。これは監督指導でございますから、基本的にそれにのっとってやっていくということが前提に行われている調査であるということをまず申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、今の御指摘の点でありますけれども、あそこでのやりとりは、まず理事会ベースということでお話をさせていただいたところでございまして、まだ理事会でそういう協議が調っていないということを承知しているので、私どもとしては、理事会から御指示をいただければ、それに対して最大限お応えするということで、これまでも対応させていただいておりますが、引き続きそういったことで対応させていただきたい、こういうふうに思っております。

山井分科員 いや、理事会というより、私が質問の中でお願いしたじゃないですか。続きの質問を、私、今やっているんですよ。理事会は十二時とか、昼じゃないですか。出してくださいよ。何でそんな引き延ばしをするんですか。

 ということは、私のこの三十分の質問のときには出せないけれども、昼の理事会では、耳をそろえて二十五件の一時間以下の記録票、会社名は伏せていいですよ、出すということでいいですか。

加藤国務大臣 ですから、あそこでの議論のベースは理事会での議論ということでございますから、そこでそういう結論になれば、我々はそれに対して対応させていただきたいというふうに思います。

山井分科員 隠蔽もいいかげんにしてください。

 出さない理由、出せない理由は何なんですか。私は国政調査権をもとに国会質問しているんですよ。出さない理由、出せない理由、何なんですか。

加藤国務大臣 もともと、原票の取扱いについては理事会で協議をされておられたわけであります。先日の山井議員との議論も、理事会での合意ということを前提にお話をさせていただいておりまして、私どもはそれに従って対応させていただくということでございまして、別に当省として隠しているわけではなく、全体としてのこの原票の取扱いとも係る話でありますから、これは理事会の協議をお持ちをしている、こういうことであります。

山井分科員 これ、もう数年前の調査ですよ。

 大体、ペーパーはいいですよ。では、大臣の認識を聞かせてください。ペーパーは理事会に任せますよ。

 この一時間以下の人は、どういう方だったんですか。パートだったんですか、ヒアリングミスだったんですか、打ち間違いだったんですか。大臣の認識を教えてください。

加藤国務大臣 山井議員の先日の御質問の際にも私の方から、みなしの労働時間が七時間とか八時間ということであれば、一時間未満というのは違和感を持つところであるということは申し上げたところでございます。

 ただ、具体的に今それがどうなっているかについては、それぞれ原票に当たったり、それから、専門制の場合には原票がありませんから、これはそれぞれ当たってみながら確認をしてみないと最終的なことは申し上げられないということで、精査をさせていただいているところでございます。

山井分科員 だから、金曜日に精査をしてくれと言ったんでしょう、土日を挟んで。その結果はどうだったんですか。

 命のかかっている問題を議論しているんですから、余りにもふざけた答弁、いいかげんにやめてくださいよ。これは小さなクローズドの空間じゃなくて、日本じゅうの方々が、裁量労働制が拡大されたら、先ほどの若者のように、結局、晩までただ働きさせられるんじゃないか、あるいは体調悪化したり過労死しちゃうんじゃないか、みんな心配しているんですよ。その裁量制拡大をやりたいと言っているのは厚生労働省と政府ですからね。そのデータのもとが、二十五人も裁量労働制は平均一日労働時間が一時間以下だったといったら、国民もどうなっているんだと疑問に思うのは当たり前じゃないですか。そんな難しい質問、私、していませんよ。

 ということは、大臣、これ、もともと野党ヒアリングで指摘したのは木曜日ですよ、先週の。それからもう四、五日たっているけれども、いまだに、一時間以下のこの労働者がパートなのか、打ち間違いなのか、ヒアリングミスなのかもまだわからないということですか。

加藤国務大臣 そのときにも御説明させていただきましたように、企画型の場合には半年ごとの届出もございますので、まずそれとどう違っているのかをチェックをさせていただく、そして、専門型はそういう届出はございませんから、それぞれに直接当たってみないとなかなかわかりませんので、今それぞれの企業に当たらせていただいているということでございます。

山井分科員 今それぞれの企業に当たっているということですが、いつその結果を言ってもらえるんですか、いつ回答をもらえるんですか。

加藤国務大臣 これは電話で確認するというわけにはまいりませんから、それぞれ労働基準監督署の監督指導官が先方に、しかもこれは臨時的な検査でもございませんから、アポをとって、そして先方に出向いて、そして話を聞くということでありますから、一定の時間はかかると思いますが、そんなに長くかけるつもりはありません。

山井分科員 予算委員会の今最中です。いつまでということを明確に言ってください。そんなに長くかけるつもりはありませんとおっしゃいますが、安倍総理が裁量労働制が短くなるといううその答弁をしたのは一月三十一日ですよ。もうきょうは二月二十六日じゃないですか。

 あしたまでに出してもらえるんですか。明確に言ってください。そう遠くない時期というのはいつですか。

加藤国務大臣 本件については先方がありますから、私は今の段階でいつまでということは言えませんけれども、当然一定の期限の中で答えを出していかなければならない問題だ、こういうふうに認識をしております。

山井分科員 これは非常に重要な問題で、ここにありますように、このデータをもとに労政審では裁量労働制の平均労働時間は九時間十六分と出した。でも、例えば四時間以下の異常に短い数値を除くと、裁量労働制の平均労働時間は九時間四十八分になる。全く違ってくるんですね、これは。

 このデータが狂ってきたとなれば、当然全て、労政審も実態調査も当然やり直しになります。今も声が出ておりましたけれども、こういう今回の労政審の裁量労働制の労働時間という一番根幹的なデータが正しいか正しくないかは精査中、わからないという以上は、そのデータが出るまでは、当然この予算委員会、採決できないということになりますが、それでよろしいですね。

加藤国務大臣 委員御承知のとおりでありますけれども、委員会の審議のあり方については、政府からコメントするのは控えたいと思います。

山井分科員 何を言っているんですか。この予算委員会の、国民も含めて一番大きな関心が、この裁量労働制の実態はどうなっているんだということですよ。それを、精査、精査って、今やった調査ですか。平成二十五年度の調査ですよ。

 大体、その時点で私たちが見たら、どう考えたってすぐおかしいとわかるんですよ。裁量労働制で平均労働時間、一日一時間、一時間、一時間半、一時間、二時間、一時間。おかしいと思いませんか、これ。こんなデータで、裁量労働制で労働時間が短くなっている裁量労働制を拡大するなんて、とんでもないですよ。人の命を何だと思っているんですか。

 採決は委員会が決めることじゃないですよ。それまでにしっかりと厚生労働大臣として早急に結果を出すと約束してください。そうしないと、予算委員会は何なんですか。

 まだ安倍総理は、答弁は撤回したけれども、データは撤回しておられません。今のように、一時間以下の方がどういう実態かがわからなかったら、その答えは出ないじゃないですか。一時間以下の方々のデータが間違いであったり、パートの人が入っていたら、これは当然データも撤回しないとだめですよ。そのことを白黒はっきりつけないと、当然採決なんかできるはずがないじゃないですか。

 大臣、早急に調査結果を出してください。さもなくば、私たちはそれが出てくるまで採決、当然待ちますよ。当たり前じゃないですか。

 国民の命がかかった議論を私たちはやっているんですよ。残念ながら、被害者は既に出ているんです。それを、どうやってこれから過労死をゼロにするのか、体を壊す若者を減らすのか、その議論をしているときに、いつその結果が出るかわからない。それで国会の責任、国民に対して、加藤大臣、果たせると思いますか。早急に調査結果を出してください。

加藤国務大臣 今、山井委員からお話ありましたけれども、私どもは今回の法案の中で、前回もお話をさせていただきました、現在の裁量労働制に対してはさまざまな問題点がある、そして、それに対して、ある意味では規制強化という形で取り組まなきゃいけない、こういう中身も今議論をさせていただいているということでありますので、逆に、今のままではなくて、それをしっかり強化していこうということも含んでいるということを、ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 それから、委員会の審議等云々については、私ども、先ほど申し上げたように、直接言及するのは控えさせていただきたいと思いますけれども、こうした精査、できるだけ早くに進めていきたいと思いますが、ただ、先ほど申し上げたようなやり方をとっておりますので、いついつまでにということはなかなか申し上げられませんけれども、一定のところで結論を出していかなきゃならない、山井委員の御指摘はそのとおりだと思います。

山井分科員 きょうの配付資料の中に、最近の世論調査の結果が出ております。日本経済新聞の世論調査でも、裁量労働制データ再調査を、七五%。さらに、裁量労働制の拡大は、結局、賛成が三〇パー、それで反対が四二%、反対が上回っております。そして、裁量労働制の部分を法案から除くというのが三八%で、一番多いわけです。さらに、毎日新聞の世論調査では、反対五七%、裁量労働制の拡大賛成一八%。さらに、先日の朝日新聞の世論調査では、裁量労働制拡大反対五八%、賛成一七%。朝日と毎日の調査では、反対が賛成の三倍以上になっております。

 十年前、過労死の御家族の方々や私たちも大反対をしましたが、その結果、安倍総理は、当時のホワイトカラーエグゼンプション、今は高度プロフェッショナルという名前になっておりますけれども、この裁量労働制と同じような残業代ゼロの制度に関して、安倍総理は十年前、第一次安倍政権で撤回をしました。そのときには、こういうコメントを安倍総理は出されたんですね。国民の理解がないと運用できないし、現段階では理解を得られていない。まさに、今のこの状況そのものじゃないですか。

 人の命を奪うような法律を、国民の大反対を押し切って、若者が、長時間残業やめてくれ、過労死させないでくれ、そうやってデモまでしている中で押し切るというのはおかしいです。

 ぜひとも立ちどまって、再調査、そして労政審やり直し、とにかく今回の法案から一旦削除する。金曜日の日にも、過労死の御家族の方々から要望はあったと思います。ぜひとも、国民の命を守るためにも、加藤大臣、決断をお願いします。

加藤国務大臣 委員からの御指摘もありまして、先週の金曜日、少し時間が遅くなってしまったんですけれども、過労死で御家族を亡くされた方、また、あるいは過労によって体調を大きく崩された方、それぞれからお話を聞かせていただきました。

 本当に悲痛なる思い、それぞれの亡くなられた方々は本当に真面目に仕事に取り組んできた、そういう中での結果である、また、それを家族としても今でもなかなか受け入れがたい、また、いろいろなところからまたいろいろなことを言われたというお話が更に心に傷をつけている、そうしたお話。また、今まさに過労の結果としてのそうした疾病等で大変まだ苦しんでいるんだ、中には、目に障害を受けた方もいらっしゃいました。

 本当に、そのお話を聞く中で、我々も、過労死は撲滅をしていかなきゃならない、そういう思いで、今回も罰則つきの上限規制を入れる等々の施策も組み込ませていただいているということ。そして、本件においても、裁量労働制の現行の運用が、必ずしも、もちろんメリットを感じている方もいらっしゃるけれども、他方で、まさに適正な運営がなされていない、やはりそれに対してどういう形で規制をしていくのか、そういったこともしっかり盛り込んでいる法案であるということもお話をさせていただきました。

 我々は、現行の裁量労働制が全くうまくいっているという思いは持っておりませんし、労政審の審議でも、そういうことではなくて、むしろ長時間労働の懸念等々が指摘をされているわけでありまして、その上に立って必要な規制をやり、そしてその規制の中において自律的に、創造的に仕事をできる部分を拡大していくというのが今回の内容でございます。

 いずれにしても、法案については、労政審の建議を踏まえた法案要綱、おおむね妥当といただきました。それをもって今法案作業を進めさせていただいておりますけれども、並行して、こうした中身についても国民の皆さんにしっかりと説明をすべく、また、データについてはいろいろ御指摘をいただいておりますので、しっかり精査をした上で御説明をすべく、努力をしていきたいと思っております。

山井分科員 今、加藤大臣、重要な答弁をされました。

 わかっておられるじゃないですか。裁量労働制が大きな問題を含んでいることはわかっている、長時間労働の懸念が出ていることもわかっている。それだったら、まずやるのは規制強化じゃないですか。規制強化をして、実効性があるのかどうか、その後で拡大するかどうかを議論するのが当たり前じゃないですか。今、死屍累々、人が亡くなり、人が体を壊し、家族も地獄の苦しみを負っている。その話を直接聞きながら、よくもまあ拡大するなんて言えましたね。

 厚生労働大臣というのは、労働者の命と健康を守る責任者じゃないですか。これだけ問題があると大臣も認識されていて、申しわけありません、申しわけありません、早急に改善します、規制強化します、それが当たり前でしょう。それを何ですか、拡大するって。盗人たけだけしいにもほどがあるんじゃないですか。人の命を奪う現状を放置しておいて、さらにその……(発言する者あり)

 まあ、盗人たけだけしいという発言が悪かったら撤回します。申しわけありません。

星野主査 ちょっと速記とめて。

    〔速記中止〕

星野主査 起こして。

 山井君。

山井分科員 申しわけありません、ちょっと言い過ぎたかもしれません。

 ただ、これは人の命が奪われているんです。人が死んで、御遺族が苦しんで、その声を知りながら裁量労働制の拡大をする。私には考えられません、その神経が。

 大臣、ということは、現時点では、この裁量労働制の労働時間一時間とか、こういう方々にはパートの方も含まれているかもしれない、そういう認識でよろしいですか。

加藤国務大臣 今そこは精査をさせていただいているということでございます。

山井分科員 ということは、現時点ではパートの人が含まれている可能性もあるということでよろしいですか。

加藤国務大臣 ですから、そこは精査をさせていただいているということでございまして、あらゆる可能性を考えながら、実態がどうなっているのかということを、しっかり精査させていただきたいと思います。

山井分科員 そういういいかげんな状態で、どうしてこれは採決ができるんですか。パートが含まれていたら、全くこんな九時間十六分なんてデータにならないじゃないですか。

 段ボール箱三十二箱、先ほども言ったように、監督官の方が十分な調査ができなかったと。監督官を責める気は全くありません。一日五社を回らないとだめで、一カ所一時間半で、更にいろいろな移動時間とかそういうのを差し引くと、一カ所数十分しか対応できなかったと。それで、一カ月の残業時間の方が一日の残業時間より短いとか、異常なデータがいっぱい出てきておりまして、それで裁量労働制の方も間違ったデータが出てきております。

 今、加藤大臣に問われているのは、この間違ったデータも多数含まれていると言われている段ボール箱のその中身を今までのように信用するのか、それか、過労死の御遺族の方々の本当に切実な苦しみの声を受け入れるのか、その選択だと思いますよ。もうこれは、数年たってもまだ精査が必要だという段階で、このデータはやはり今回の法案の審査の根拠にはなり得ないと思います。

 過労死の御家族の方々は、大臣に切々と訴えられ、またいろいろな方々にも切々と訴えられ、それは何か得になるからじゃないんですよ。本当は、御遺族の話や御自分の体験を話されるのは、私はつらいと思いますよ。私だったら、そんな話はできない。つらいし思い出したくもないというふうに思うんじゃないでしょうか。でも、こうやって声を上げておられるのは、自分のような地獄の苦しみを味わう人を何とかこれからなくしたい、真面目で家族思いの人、そういう人が逆に亡くなってしまう今の日本の社会を変えたい、そういう思いで声を上げてくださっているんですよ。

 大臣、今いろいろな間違いが指摘されているこの段ボール箱のデータと、血のにじむような思いで切々と訴えられている過労死の御家族の方々の思いと、どちらをより信用されるんですか。

加藤国務大臣 今、そのデータについては、調査をするということで調査をして、そしてその結果を労政審にお示しをさせていただいた。しかし、そのデータの中には、委員からも御指摘をいただいたように、いろいろな意味で問題があるということで、今それについてはしっかり精査をさせていただいているところでございます。

 その上で、委員からもお話がありましたけれども、過労死の家族の皆さん方、その思いは、私も受けとめは全く一緒でございます。いろいろな思い、先ほど申し上げた、まだまだ十分に受け取れていない。しかし、その中で、そしてこの運動をすれば亡くなった人が帰ってくるかということは、そんなことはないんです。にもかかわらず先頭に立っていろいろな形で活動していただいている、私はそのことに対して、お会いしたときにも、本当に頭が下がる思いですということは申し上げさせていただきました。

 したがって、私どもは、先ほど申し上げているように、過労死をなくしていく、こういう思いは同じでありますし、それに向かってしっかりと努力をしていきたいと思っております。

山井分科員 言っていることとやっていることが逆じゃないですか、過労死の御家族の思いがわかると言いながら。わかるんだったら、どうして拡大という話になるんですか。これはどんどんどんどん裁量労働制を拡大したら、必ず過労死する人はふえます、死者が出ます。これは何人ふえたら、拡大にブレーキをかけるんですか。何人、御遺族の話を聞いたら、加藤大臣もわかってくださるんですか。人の命を守るのが厚生労働大臣じゃないんですか。

 もうこういう、御遺族の方々が必死に訴えないと政策が変わらないというような、そんな政治はやめましょうよ。一回話を聞いたらわかるでしょう、大臣も。そして、このデータの、この状況を見たらわかるでしょう。数年前にやった調査が、いまだに及んでも正しいか正しくないかわからない。そんないいかげんなデータで、人の命を左右する法案をつくらないでください。

 少なくとも予算委員会の採決までには、ちゃんと白黒はっきり、このデータが正しいのか正しくないのか、先ほどの二十五件も含めて、ちゃんと国民に説明をしてください。答弁をお願いします。

星野主査 質問時間、もう残りがありませんので、端的にお願いいたします。

加藤国務大臣 まず、冒頭に申し上げた、予算委員会との関係については、私ども、直接コメントは避けたいと思いますが、ただ、精査についていろいろ御指摘をいただいておりますから、それに対しては誠心誠意、そしてスピード感を持って取組をさせていただきたい、こういうふうに思います。

星野主査 山井君、時間が過ぎております。

山井分科員 国会というのは、国民のためにあるんです。これだけ国民に対してうその情報を流し、虚偽のデータを発表し、そうした以上はきっちりと、予算委員会で明らかになった問題は予算委員会で結論を出すのが当然です。

 森友問題も、昨年の二月に野党が要求した資料が、一年たってこの二月に来ました。そういう隠蔽はやめてください。

 ぜひとも国民の命を守る、守る、そのために私たちは戦ってまいります。

 以上で終わります。

星野主査 これにて山井和則君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田美樹君。

山田(美)分科員 自由民主党の山田美樹でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、患者価値に基づく医療、介護の報酬体系と、地域における医療・介護提供体制の将来像について、議論を進めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 去年のこの時期、私は、衆議院の財務金融委員会での所得拡大促進税制の議論の中で、大企業も中小企業も賃上げするのですから、医療関係者も処遇を改善すべきであると訴えました。今回の診療報酬、介護報酬改定では、人件費は辛うじて〇・五五%、〇・五四%のプラス改定となりましたが、処遇改善としては十分と言うにはほど遠い水準であろうかと思います。一方で、現在の医療費四十二兆円は、二〇二五年には五十八兆円近くにも上ると予想され、このままでは国民皆保険が維持できなくなるばかりか、医療システムや財政そのものが破綻するとも言われています。

 これまでの診療報酬改定では、医療費全体の二割を占めるにすぎない薬剤費、医療材料のコスト削減が中心でありました。これ以上の薬価削減、特に現在検討が進んでいる薬価制度の抜本改革は、やり方を間違えると、将来、日本では革新的な新薬を生み出せなくなるおそれすらあるかと思っています。

 むしろ、医療費全体の八割を占める診療報酬本体部分について、現在のように、医療行為をすればするほど、出来高払いで報酬額が決定されるのではなく、患者にとっての価値、つまり、治療の結果とコストのバランス、費用対効果を加味した報酬体系に移行させていくべきではないか。その結果、医療プロセスの無理や無駄がなくなり、医療従事者の方々が治療効果のあるプロセスに集中して仕事ができるようになり、負担の改善につながる、そういう議論がございます。

 現在の診療報酬体系のままではいずれ行き詰まることが明らかな日本の医療システムにとって、こうした患者価値の最大化、バリューベースヘルスケアの考え方こそが解決策となるのではないか、今こそパラダイムシフトが必要だという声が高まっているところでございます。

 そこで、きょう最初の質問は、今回の診療報酬、介護報酬の改定の中でも、アウトカムに基づく評価の導入や医療の標準化の取組が進んでおりますので、それを今後どのように進めていくのか、お伺いをいたします。

 一言でアウトカム評価や医療の標準化と言っても、さまざまな類型がございます。まず、医療技術評価のような、文字どおりの費用対効果。現在、医薬品、医療機器十三品目について試行段階にあります。次に、DPCの包括払いの入院料のように、一定以上は医療行為を何回行っても報酬は頭打ちというもの。急性期病棟から回復期リハビリ病棟や療養病棟にも適用が広がりつつあると伺っております。また、介護報酬上の事業所評価加算や社会参加支援加算のように、一つ一つの介護行為そのものの効果を評価するのではなく、施設や事業所を評価するものもあります。

 現行の診療報酬、介護報酬の体系の中で、こうしたさまざまな手法を今後更にどのように広げていくのかお伺いいたします。

    〔主査退席、石崎主査代理着席〕

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、今般の三十年度の診療報酬改定でございますけれども、ただいま御指摘ございましたように、費用対効果評価、これを試行実施するということで、十三品目の医薬品、医療機器につきまして、評価の結果を加味した価格調整を行うということにいたしております。今後、この費用対効果評価の本格実施に向けまして、三十年度中に検討して結論を得ることといたしております。

 またさらに、医療の標準化でございますけれども、今御指摘ございましたDPC制度がございます。御案内のように、DPC制度は、診断群分類ごとの平均的な診療内容を踏まえた一日当たりの定額報酬を設定する、これによりまして医療の効率化、標準化を進める、これを目指して導入したところでございます。今般の改定では、医療のさらなる効率化、標準化に資するように、このDPC制度におきまして、一点目といたしまして、最新の診療実績データなどを用いた診断群分類の精緻化、これを行います。二点目といたしまして、救急医療の提供などの個々の医療機関の機能がより適切に反映されるような係数の見直し、こういったことに取り組むことといたしております。

 それから、介護報酬改定でございますけれども、これも、介護予防通所介護等に加えまして、介護予防訪問リハビリテーションにも事業評価加算を新設いたします。また、通所介護において、ADL維持等加算を新設することといたしておりまして、こうしたことで事業所単位のアウトカム評価、これを進めたいというふうに思っております。

 こうしたさまざまな改定の取組の影響もよく踏まえながら、今後とも、診療実績データあるいはアウトカムに基づく評価の導入、これを適切に推進してまいりたい、かように考えているところでございます。

山田(美)分科員 御答弁ありがとうございます。

 やはり一番難しいのが、医療行為や介護行為とアウトカムの因果関係を検証して、有用性のある行為に高い報酬点数をつけていく仕組みをどのようにつくっていくかという問題かと思います。現状でも、DPCデータですとかナショナル・クリニカル・データなどの取組が進んでいて、また、近々、次世代医療基盤法の施行も予定されていると伺っておりますけれども、これらのデータの収集、データベースの構築と利活用を国はどのように支援をしていくのでしょうか。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の三十年度の診療報酬改定では、診療データの利活用を推進する、こういった観点から、医療機関から提出される診療実績データ、ただいまございましたいわゆるDPCデータでございます、これの項目につきまして、一つは、対象になる患者さんの範囲を拡大いたします。二点目といたしまして、ナショナル・クリニカル・データベース、いわゆるNCDでございますけれども、これにおいて用いることといたしております関係学会が提供する臨床に即した手術コード、これを診療実績データに追加する、こういったような充実を行うことといたしております。

 こうした取組によりまして、一点目は、急性期の入院医療だけではなくて、ただいま御指摘ございましたように、急性期後の回復期あるいは慢性期の入院医療データが蓄積して、分析が進むようになるだろうと考えております。このほか、二点目といたしまして、臨床に即したコードが普及する、こういうことによりまして、より詳細な診療内容の分析ができるようになる、こういった効果もあるというふうに考えております。

 御指摘もございましたように、医療の標準化、それからアウトカム評価の推進に資するように、診療データの内容の充実や利活用を適切に推進してまいりたい、かように考えているところでございます。

山田(美)分科員 着実に少しずつ対応がなされているように思います。

 今申し上げている患者価値に基づく報酬体系という考え方は、実は既に、厚生労働省が平成二十七年に公表をされた保健医療二〇三五に掲げたリーンヘルスケアのビジョンの中に位置づけられているのではと思います。二〇二〇年までに医療技術評価を制度化、施行し、二〇三五年までに医療提供者の技術や医療用品の効能などを患者価値に基づいて評価をし、診療報酬体系に反映するというふうに目標と期限が掲げられております。

 具体的には、その目標の中身ですけれども、患者の総合的な価値に関する指標を定め、主な医療サービスのパフォーマンスの評価を体系に行うことができる体制を整える、さらに、医療・介護サービスの一貫性を担保するために、その報酬設定の基本的な考え方の整合を図るとしています。同時に、医療現場主導で、ベンチマーキングにより治療成績の改善を行って、医療サービスの過少、過剰部分を定め、無理、無駄を省いて、各地域又は複数地域間の連携と機能分化を進めるというグランドデザインを示していらっしゃるかと思います。

 ビジョンには大変共感をしているのでございますが、今の現状からこのような理想の姿にどうやって到達するのか、そこに至るまでの道筋やステップがなかなか見えてきませんで、ここをもう少し明確にしていただければと思っております。

 そもそも、二〇三五年に目指すべき理想像をどのように設定をしているのか。どこまでのアウトカム評価を導入するのか。今の現状からスタートして目標に至るまでのプロセスを考えますと、恐らく、現状からインクリメンタルに、漸進的に積み上げていったのでは到底目標には届かないんだろうと思っております。逆に、目標を明確にした上で、そこからバックワードに逆算して計画を策定していく必要があるのではないかと思います。

 二〇三五年に至るまでに、データの整備ですとか、評価指標の策定、基本的な考え方の意見集約など、さまざまなステップがあるでしょうけれども、これから十七年、それらをどのように一つ一つクリアしていくのか、タイムスケジュールをどのように描いていらっしゃるのか、厚生労働省内や中医協などの場では二〇三五年まで見据えた検討を継続的に行っているのかどうか、そのあたりをお伺いいたします。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきました保健医療二〇三五でございますけれども、これは、いわゆる団塊ジュニアの方々が六十五歳に到達をし始め、そして高齢化がさらなる進展をする、そして人口減少が予想される、そういった二〇三五年に向けまして、保健医療の目指すべき姿を整理したものでございます。したがいまして、今先生がおっしゃったように、これを効果的、効率的に進めていく上では、目指すべき姿というものをしっかり頭に置く、これが大事だと思っております。いわゆる一つの理想像ということにもつながると思います。その中では、その姿といたしまして、最善の質そして適切な量の保健医療が必要とする全ての人に最適なタイミングかつ適切な価格、多様なアプローチで提供される、これを目指すべき姿というふうに頭に置いているところでございます。

 このために、保健医療サービスの評価を、先ほど来御指摘ございますように、資源の投入量による評価から、患者さんにとっての価値の評価、これに改めまして、サービスの質の向上を目指す、こういった段取りで思い描いているところでございます。

 こうした方向を踏まえまして、診療報酬における取組の一つといたしまして、先ほど来お話の出ております費用対効果評価の導入を図る、これをまずしっかりやってまいりたいというふうに考えております。具体的には、平成二十八年度から、十三品目の医薬品、医療機器について試行的に着手をいたしました。そして、今般の改定におきまして、その結果を加味した価格調整を実際に行う、こういった段階に至っているわけでございます。

 同時に、この試行的導入の過程におきまして、さまざまな技術的課題が明らかになってきております。具体的には、例えば、治療の対象集団や比較対照など、分析の前提条件をどういうふうに設定をするのか、それから、分析に用いるデータをどのように選ぶのか、こういった基礎的な点につきましても更に技術的に検討していく必要があるだろうということが明らかになってまいりました。したがいまして、まずはこうした技術的課題への対応策を整理するということと同時に、本格実施に向けまして、評価の対象品目の範囲、その基準、そして結果に基づく実際の価格を調整する方法、これにつきまして三十年度中に検討いたしまして、結論を得ることにしたいと考えております。

 まずはこれを第一ステップといたしまして、その後、これを更に拡充、発展させていくような方向で、理想の姿に向けて着実に歩んでまいりたい、現時点ではかように考えているところでございます。

山田(美)分科員 二〇三五年に向けての、まずは最初のステップというところかと思います。

 このリーンヘルスケアの実施体制については、外部からの人材も含めて、厚生労働省内に継続的に主導できる部門を設置するというふうにありますけれども、現在はどのような体制でPDCAを行っているのでしょうか。

 保健医療二〇三五が発表された当初は、推進本部のもとに省内検討チームが置かれ、平成二十七年九月時点で、その時点でその実行プランの進捗レビューが行われた旨を伺っております。

 さまざまな論点が含まれておりますけれども、リーンヘルスケアの中の、特に、患者の価値やアウトカムを考慮した診療報酬体系、インセンティブの設定という部分に関しましては、六年に一度の医療、介護のダブル改定が終わった現時点でまずこの進捗を確認し、最低でも二〇二〇年までの残り三カ年のアクションプランについて、いま一度見直すことが不可欠であろうと考えております。

 また、今後も、例えば、第三期医療費適正化計画ですとか、第二期データヘルス計画ですとか、こうした節目節目に、二〇二五年、二〇三〇年、二〇三五年に向かって中長期の実行プランをアップデートしていくべきではないかと考えますが、今後、どのようなタイミングでレビューや計画見直しを予定されているのでしょうか。

藤澤政府参考人 お答え申し上げます。

 保健医療二〇三五についてのお尋ねでございますけれども、保健医療二〇三五提言書が策定された後に示されました将来ビジョンを踏まえ、具体的な取組を推進していくための省内体制を整えるために、御指摘ございましたように、平成二十七年八月に保健医療二〇三五推進本部を設置いたしまして、その下に、テーマごとの五つの検討チームを設けているところでございます。

 御指摘のリーンヘルスケアも含めまして、平成二十七年の保健医療二〇三五提言書の取りまとめ以降、毎年、今申し上げました五つの各検討チームのテーマごとにフォローアップを行っておりまして、最近では、昨年六月にフォローアップの作業を行っているところでございます。

 また、保健医療二〇三五は、来る二〇三五年に向けまして、保健医療分野のグランドデザインを描いたものでありまして、これらを踏まえた具体的な取組を更に加速させるために、個別のテーマごとに更に詳細な検討が省内で進められているところでございます。例えば、厚生労働省に、データヘルス改革推進本部、国際保健に関する懇談会、保健医療分野におけるICT活用推進懇談会、保健医療分野におけるAI活用推進懇談会などの検討体制や有識者会議を設けまして、取組を進めております。

 議員御指摘のリーンヘルスケアにつきましても、この保健医療二〇三五の提言書を受けまして、医薬品や医療機器の費用対効果評価について、平成二十八年度から試行的導入に着手をし、平成三十年度診療報酬改定において、その結果を加味した価格調整を行うこととしております。また、平成二十八年度中に、病床の機能分化、連携の推進に向けまして、二〇二五年に必要となる病床数の必要量の推計を盛り込んだ地域医療構想を全都道府県で策定をするといったような取組を進めているところでございます。

山田(美)分科員 御答弁ありがとうございます。

 何分、長きにわたる、十年を超える長期のビジョンといいますかプロジェクトでございますし、御承知のとおり一年ごと、二年ごとに人事異動が行われる中で、ぜひともそのモメンタムを失わずに省内でも検討を進めていっていただければと思いますし、また、政治の立場としても、こうした国会の審議などの場面を通じて議論の進捗、検討を促していくということを心がけてまいりたいと思います。どうぞ、引き続きよろしくお願いいたします。

 そこで、これまでの質問は、診療報酬や介護報酬の中にアウトカム評価をどのように盛り込むかという議論をしてまいりましたが、次に、地域内で、あるいは地域間での医療機関の連携と機能分化を進めていく中で、医療機関のアウトカムデータをいかに活用するかという問題についてお伺いをいたします。

 これまで述べてきたようなアウトカム評価が進み、医療機関のベンチマークが進みますと、それぞれの医療機関の得意分野が明らかになって、適材適所で機能分化や協力関係が進んでいくと考えます。

 医療機関のアウトカムの可視化については、これまでも既に、DPCの対象拡大ですとか、医療の質の評価、公表などの推進事業、あるいは民間では病院機能評価などの取組が進んでおりますけれども、これらのデータは、現状では、どのようなデータがどのような形で公表され、誰がどのような場面で活用をしているのでしょうか。

 公表の仕組みとしては、現在、医療機関情報提供制度、いわゆる医療情報ネットで、全ての病院を対象に都道府県への報告義務を設けて、都道府県が情報提供を行っていますが、例えば、こうした情報提供の仕組みを更に充実させることも考えられるかと思います。今後、公表の仕組みや範囲をどのように広げ、活用を促していくのか、基本的な考え方についてお伺いいたします。

武田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま、アウトカムデータの可視化についての現在の公表の状況及び今後の方向ということで御質問ございました。

 まず、現状でございます。

 厚生労働省といたしましては、これまで、まず、DPCデータを提出している病院につきましては、病院ごとの、例えば平均在院日数でございますとか手術件数など、病院の診療実績に関するデータを厚生労働省のホームページで公表しております。

 また、医療の質の評価、公表に取り組む病院団体に対する支援を通じた病院団体ホームページでの、満足度でありますとか、早期リハビリテーション、退院調整などの情報提供も行われているところでございまして、これは、私どもの医療の質の評価・公表等推進事業というのがございますが、これを活用いただいて、病院団体などで取り組んでいただいているものでございます。

 また、医療機能情報提供制度につきましては、それぞれの医療機関のさまざまな機能が公表されておりますが、その中で、例えば日本医療機能評価機構などによる第三者評価の認定の有無などにつきましても情報提供されておりまして、こちらについては都道府県による情報提供ということになってございます。

 こういう状況ではございますけれども、私どもとしてさらなる充実を図っておりまして、例えば、平成三十年度の診療報酬改定におきましても、診療実績データの提出を求める病棟の対象を、回復期リハビリテーション病棟とか療養病床等に一層拡大をすることとしておりますし、今後、医療機関の医療の質にかかわるデータの公表を更に進めていきたいと思っております。

 現状、先ほど申しましたように、例えば、医療の質公表制度におきましては、それぞれの病院団体で公表が行われているということで、必ずしも、病院間の比較、今御指摘がございましたように、そろっていないとこれが比較ができない。また、それぞれの病院におきましても、ベンチマークをもちまして自分がどの辺の位置にあるのかということがわかることが、病院の立場といっても役に立つ情報になるんだという御指摘がございます。

 例えば、今、国立病院機構の中では、統一の指標を使いまして急性期病院を中心に公表しておりますので、国立病院機構の中ではベンチマーク的に使えるわけでございますけれども、それが病院全部がそうなっているかというと、必ずしもそうではないという実態もございます。ということもありますので、指標を算出する際に医療機関の間での差異が生じないようにするための指標の共通化、標準化、さらに、これをごらんになる患者さんの方でも、患者が誤解しないような、わかりやすい公表方法の検討、こういったことの課題があるものと承知をしておりまして、現在、厚生労働科学研究費補助金によりましてこういった点を研究を行っているところでありますので、この研究成果を踏まえ、医療の質に関するデータが、医療機関における医療の質の向上、医療機関の機能分担、役割分担に活用されるように検討してまいりたいと思っております。

山田(美)分科員 御答弁ありがとうございます。

 病院団体によって、それぞれのグループによって違う指標を合わせていくというところがまさに重要かと思いますし、こうした見える化、公表が進みますと、地域医療構想の中で地域内の医療機関の連携と機能分化を進めていく上で非常に役立つんだろうと思っております。

 平成二十七年に地域医療連携推進法人制度が創設をされましたけれども、制度が発足した去年の四月以降、実際の設立事例が四件にとどまっていると伺っております。これをまた、どのように制度活用を図っていくのかについて、お伺いをしたいと思います。

 まずは、これまでの連携推進法人の事業を評価して活用することが重要だと思いますし、もっと言えば、今おっしゃられたような医療機関のアウトカム評価の公表や活用が進めば、個々の医療機関の得意分野を生かした分化、連携の後押しにつながると思いますが、いかがでしょうか。

武田政府参考人 お答えをいたします。

 地域医療連携推進法人制度でございますけれども、この制度につきましては、地域医療構想を達成するための一つの選択肢として、地域における医療機関同士が協調し、診療科の再編、医師などの共同研修等を実施することを目的として、昨年四月より施行されております。

 施行後すぐに、離島、中山間地域、都市部など、さまざまな地域で四つの地域医療連携推進法人が認定を受けて、事業に取り組んでいる状況でございまして、その結果得られた効果として私ども把握しておりますのは、参加法人間で患者の紹介が円滑に行われるようになったことで、さまざまな状態の患者に対する診療の機会がふえて、医療の質の向上につながったでありますとか、参加法人のノウハウを共有することで専門的な研修制度が充実し、職員のスキルアップにつながった、こういう医療の質の向上につながるような効果も出ているというふうに承知をしております。

 私どもといたしましては、この認定された四つの地域医療連携推進法人の地域における取組について引き続き情報収集、そして周知も図ってまいりたいと思っておりますが、さらに、各地で地域医療連携推進法人制度に関する説明会を開催し、地域の医療関係者等に対して、この制度の周知を引き続き図り、活用をお願いしていきたいというふうに思います。

 また、成果の評価、又はこれを共有するという点につきましては、地域医療連携推進法人では法人ごとに地域医療連携推進評議会というものを設置することになっておりまして、これに地域の医師会や住民代表の方も入ることになっております。この評議会が業務の実施状況を評価することになっておりますので、結果は医療機関、医療関係者などに広く周知できる仕組みとなっているというふうに考えておりまして、こういったことも通じて、地域における質が高い、また効率的な医療提供体制の確保にこの制度は貢献できるものというふうに考えております。

山田(美)分科員 御答弁ありがとうございます。

 恐らく、バリューベースという欧米でのもともとの考え方では、医療機関に、ちょっと言葉はよくないですけれども点数をつけて、競争をさせて、切磋琢磨させて、だめな医療機関は淘汰されていくというような、そういう発想というのはなかなか日本にはなじまないんだろうなと思いまして、今おっしゃられていたような、競争よりも協働をというところが、まさに、ともに働くですね、日本の環境になじみやすいんだろうと思っております。ぜひ、根気強く進めていただければと思います。

 最後の質問になりますが、地域医療連携推進法人を認定するのは都道府県知事ですけれども、医療の質の向上と持続的な医療費制度を同時に実現するためには、さまざまな意味で都道府県が果たすべき役割が非常に大きいと思っています。都道府県が、医療計画ですとか介護保険事業計画ですとか医療費適正化計画などの策定主体であって、保険者協議会と協議するのはもちろん、ことしからは国民健康保険の運営主体が都道府県に移管されることが決まっておりますので、医療費を有効に活用する責任を都道府県に負わせるのが政府の方針であると言っても過言ではないように思います。

 現在、厚生労働省が進めておられる医療・介護提供体制の改革では、まずは、急性期、回復期の病床機能の分化、連携について、個別の病院名ですとか転換する病床数などの具体的な対応方針を速やかに策定するとして、二年間程度で集中的に検討するとし、地域医療構想調整会議において、公立病院、公的病院から議論を進めていくというふうにされていらっしゃいます。この問題には短期集中で道筋をつけるものとして、更にその先の将来、慢性期も含めて患者ニーズに合わせて適切に病床転換を促し、常に過不足なく医療・介護サービスが提供できるような自律的なシステムを確立していくためには、医療機関や介護施設のアウトカム評価がますます必要になってくるのではないかと考えております。

 各都道府県が二〇二五年以降に向けて医療・介護提供体制を最適化していく上で、さまざまなPDCAを進めていく必要がありますが、その中でも重要な指標の一つとなる医療、介護における患者価値の評価について、どのように進化させ、都道府県の計画策定に反映させていくのか、加藤大臣にお伺いいたします。

加藤国務大臣 都道府県においては、医療、介護、まさに現場、もちろん市町村がありますけれども、その間に入って、地域の状況、これはまちまちでありますから、それぞれの状況に応じた医療や介護、あるいは連携、こういったものをしっかり進めていただきたいと思いますし、我々もそれをしっかり支援をしていきたいと思っております。その上で、アウトカムであり、PDCAサイクル、これをしっかり回していくということがより求められていくことでありまして、限られた財源の中でより効率的に、そして本当に必要なサービスが必要な人に、そして将来を見据えながらその体制をつくっていく、これは重要だと思っております。

 ちょうどことしの四月から、医療計画、介護保険事業支援計画、医療費適正化計画が同時にスタートする年でもあります。御承知のように診療報酬等々もあわせて改定されるわけでありますが、それぞれの計画の整合性を確保しながら、PDCAに基づく評価を実施し、医療、介護それぞれの分野、またその施策を一体的に進めていく必要があると思っております。

 具体的には、医療計画については、医療計画の策定に関する厚生労働省のガイドラインにおいて、五疾病五事業や在宅医療の体制構築に必要な施策を明示した上で、毎年度、評価を実施し、そして必要な対策を進めていくということ。

 また、介護保険事業支援計画においては、昨年の介護保険法の改正において、その策定に当たって、介護給付費などの介護保険事業の実施状況に関するデータ分析をすること、これは努力義務としているわけでありますけれども、これをしっかりと進めていただくということと、また、厚生労働省のガイドラインにおいて、毎年度、計画の達成状況を点検し、その結果に基づいて対策を講じること。

 さらに、医療費適正計画においては、住民の健康保持や医療の効率的な提供に関する取組目標を定めております。計画の進捗管理のため、これもまた毎年度、その進捗状況を公表することにしております。

 厚労省としても、今申し上げたように、それぞれの計画の進捗状況をしっかりと把握しつつ、医療、介護の施策がそれぞれの都道府県で一体的に取り組んでいけるように、適切な助言等に努めていきたいと思っております。

山田(美)分科員 御答弁ありがとうございます。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

石崎主査代理 これにて山田美樹君の質疑は終了いたしました。

 次に、大西英男君。

大西(英)分科員 このたび、質問の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。

 私は、東京第十六選挙区、江戸川を中心とした地域から選ばれている自由民主党の大西でございます。

 今、私ども、地域におりまして、切実な危機感というのを感じている人たちがふえています。それは、本当に危機的な少子化の傾向がますます進んでいるということです。国も、一九九〇年代、急激に落ち込んできた少子化に対応して、さまざまな施策を二十年余、今日までやってきましたけれども、全く成果が上がっていないんですよ。数的には変わっていない、あのころと、二十余年前と。これはやはり、今、思い切って、施策のあり方について再検討する必要があるんじゃないかと思うんですね。

 例えば、一九九六年、エンゼルプランがスタートしました。その後、どれだけの少子化対策というのが行われてきたか。しかし、それはかけ声だけで、具体的に予算もついていない、あるいは施策について、充実した展開が行われていない、まさにそう言っても言い過ぎではないと思うんですね。

 二〇一五年には、こうした経過を踏まえて、新たな少子化対策大綱の策定と推進、こういったことが唱えられましたけれども、その後、どんな予算的な措置が講じられ、これは、例えば、児童手当が一万円から一万五千円になったとか、大局の中で、小さな改革はあったかもしれませんけれども、抜本的な改革は何にもなされていないわけです。

 そんな中で、今、日本の危機的状況はどんどん進んでいます。今の人口統計でいって、出生率がこのまま推移をした場合には、二〇六〇年には八千万人台の人口になってしまう、そして二一〇〇年代には、何と五千万人台の人口になってしまうという統計が出てきているんですね。

 これは、そういった時代、日本がどういう状況にあるかということを考えたときに、本当に恐ろしい思いに駆られます。都知事候補にもなりましたけれども、増田先生あたりが、二〇四〇年に、今千七百ある自治体が八百近く減ってしまう、そういった衝撃的なレポートを出したのも三年ほど前でしょうか。

 そうした中で、我々はあらゆる英知を結集して、この少子化対策に取り組んでいかなければならない。そうしたときに、全世代型の社会保障制度の中で、教育の無償化、あるいは保育の無償化も一歩足を踏み出そうとしていることは、これは高く評価するわけですけれども、日本にとってこれはラストチャンスだと思うんですね、少子化対策の。

 高齢者対策、これも、超高齢化社会がこれから訪れますけれども、やはり、少子化対策をしっかりと進めていく中で、こうした危機も十分乗り越えていくことができるわけです。

 こういった状況の中で、どのような基本的な今日までの少子化対策に対する総括と、そして展望をお持ちなのかを、まず初めにお聞かせをいただきたいと思います。

嶋田(裕)政府参考人 お答えいたします。

 少子化の実態と人口への影響につきまして、別の統計ではございますけれども、昨年末に公表されました人口動態統計の年間推計なんかで見ますと、平成二十九年出生数、これが百万人を割りまして九十四万一千人と、過去最少となっております。また、出生数から死亡数を引きました自然増減数につきましても、マイナス四十万三千人と、これも過去最大ということで、人口減少が進んでいるという状況でございます。

 こうした少子化のトレンドに歯どめをかけることというのは、先生おっしゃるとおり、喫緊の課題というふうに認識しているところでございます。

 少子化の背景ということでございますけれども、若者の経済的な不安定さとか長時間労働、あるいは仕事と子育ての両立の難しさとか、あるいは子育て中の親の孤立感とかあるいは負担感、それから教育費負担の重さなど、結婚や出産、子育ての希望の実現を阻むさまざまな要因が絡み合っているというふうに認識しておりまして、これら一つ一つを丁寧に取り除いていくということが重要だというふうに考えているところでございます。

 このため、政府といたしましては、子育て安心プランの前倒しということで、二〇二〇年までに三十二万人分の保育の受皿を整備するでありますとか、あるいは昨年策定されました新しい経済政策パッケージに基づきまして、幼児保育の無償化、それから真に必要な子供に限った高等教育の無償化とか、あるいは家庭と仕事の両立、安定的な経済的基盤の確立を実現できるような働き方改革の推進といったような、これは多くの省庁にまたがる施策でございますので、これを内閣府といたしましても、関係省庁としっかり連携をして取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

大西(英)分科員 そのような取組も、かけ声だけは今まであったんですよ、二十年余。数字が全く伸びていないじゃないですか。これは厳しく反省する必要があると思うんです、私たちを含めて。

 そうした中で、私は大変希望を持ちました。あるいは、明るい未来に対する勇気を与えてもらったのが、今回の平昌オリンピックでの日本選手の活躍ですよね。何と、十三個メダルをとったうち、八個が女性によって実現されたという、やはり女性の活躍社会にぴったりの活躍をオリンピックの場でもしてくれたわけですけれども。

 その中で、カーリングの、北見の創設者でもある本橋キャプテン、あれは、結婚して一児の母なんですね。それで、オリンピックで三位の成果を上げて、さまざまなマスコミからインタビューを受けていました。その中で、私はすごくうれしかったのは、藤沢選手という、中心になってカーリングを率いていた人ですけれども、将来、夢は何ですかといったら、結婚して家庭を持つことです、こうおっしゃっていたんですね。これは本当に心強いことだと思うんです。

 今、未婚化が進んでいる、あるいは晩婚化が進んでいる。そして、さまざまな若者世代、若い世代に対する否定的な記事や分析等がなされていますけれども、世論調査によっても、若い世代のうち、四〇%近くが結婚したい、家庭を持ちたい、そう答えているんですよね。こういう人たちにやはり応えられるような国の強力な施策の展開というのが必要ではないかと思うんですね。

 そうした中で、日本が少子化対策に取り組み始めたころ、ヨーロッパのフランスでも、同じような危機感を感じて少子化対策に取り組んだんですね。これは、もう出生率二を実現するぐらいの勢いで進んでいるんですね。

 では、日本の施策とフランスの施策とどこが違うか。それは、現物給付を思い切って大胆にフランスは行っているということなんですね。

 フランスの現物給付、これは驚くばかりなんですね。日本経済研究センターが調査した、これは二〇一四年、古い資料ですけれども、それによりますと、フランスでは、二十歳になるまでの国からの支援総額、これは減税や何かを含めて六百万円程度になるというんですね。さらに、二人では一千万円、三人だと三千九百万円程度の公的な資金が助成金として注ぎ込まれているんですね。

 それに対して、我が国はどうだというと、一人だろうと三人だろうと十人だろうと変わりません。それは、一人当たり四百万円という調査結果が出ているんですね。ここは、思い切って、いよいよやはり現物給付を考える時代に到達しているのではないか、そのぐらいの危機的な今状況にあるんじゃないかと思うんですね。

 そうした中で、今、加藤厚生大臣、大変御苦労なさって働き方改革を進めておられます。こうしたことも大きな取組の一つだと思うんですけれども、その中で、働く人たち、やはり正規、非正規あります。そして、正規の人たちについても、仮にお子さんを産むと、さまざまなハンディキャップがある。しかし、それに対して、もちろん男性の育休を含めて育休制度を充実していく。今、一年間ですね。そして、厚労省の統計によると、ほぼ、現役として勤めているときと同じだけの給与が一年間は保障されると聞いています。しかし、それを、二年ぐらいに思い切って拡大したらどうですか。そして、休業補償についても八〇%ぐらいに上げていったらどうですか。これはある意味では働き方改革にもつながっていくことではないかと思うんですね。

 まず最初に、具体策としては、育児休業制度、これはゼロ―二歳まででもいいと思うんですね、これを更に充実するようなお考えがあるかどうかをお尋ねをしたいと思います。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 現行の給付割合につきましては、男性の育児、家事参加を進める観点から、平成二十六年の雇用保険法改正により、休業開始後六カ月に限って六七%に引き上げたものでございます。

 この給付割合を八割程度まで引き上げることにつきましては、育児休業給付は非課税であるため、休業前の手取り賃金を超えてしまうおそれがあることや、また、失業者に対する給付である基本手当、これは離職前賃金の五〇%から八〇%でございますけれども、とのバランスを失することから、慎重な検討が必要だと考えております。

 雇用保険法の育児休業給付は、育児・介護休業法による育児休業を取得する場合に支給されるものでございます。この育児・介護休業法の育児休業期間につきましては、原則、子供が一歳に達するまでとされておりますけれども、平成十六年や二十九年の法改正により、子が保育所に入れない等の場合には、最長で二歳に達するまで延長可能とされたところでございます。

 育児休業期間を二歳以降まで延長することにつきましては、女性のみに育児の負担が更に偏り、女性のキャリア形成が阻害されることで女性活躍の流れに逆行すること等の懸念もあり、慎重な検討が必要だと考えております。

大西(英)分科員 私は今の御答弁を聞いてがっかりしましたけれども、この子育て支援についてはいろいろな意見があることは承知していますよ。例えば、私の失敗を反省をすれば、若い女性議員に、委員会の最中に、少子化を語るというから、早く結婚して子供を産みなさいと優しく言葉をかけたら、それがセクハラだというんですよね。そして、マスコミから徹底的にたたかれたのが、私の問題発言第一号でした。

 だけれども、もっと広く、そうしたいろいろな意見の中で、やはり、子育てをしていく、そして、子供は家庭の宝であるし、国の未来だという、そんな大きな流れをみんなで守っていく、みんなで育てていく、そういう機運が今一番必要じゃないかと思うんですね。

 私なんかはおせっかいですから、区議会に出て以来、いろいろな女性や男性に、結婚しているの、いい人いるの、そんな質問をしますね。かつては、地方議員の時代は許されていましたよ。しかし、今、国会に来て、そんなことを若い女性に、あるいは男性に言ったらセクハラですよ、徹底的にたたかれますけれども。

 かつて、日本があのベビーブーム、団塊の世代が今厳しい年齢に向かっていますけれども、しかし、あの時代は、おせっかいなおじちゃん、おばちゃん、父ちゃん、母ちゃんがたくさんいたんですよ。みんなで声をかけ合って、若い人たちに、いい人いるよ、ちょっと会ってみないとか、さまざまな角度からありました。

 私なんかも、社会に出てから、将来政治家になりたいなんという夢を持っていたにもかかわらず、いろいろな方々からお見合い写真を、こんなにはないけれども、十センチぐらいは来ましたよ。しかし、今、そういう風潮がどんどん廃れている。

 これは、私たちは、もう少ししっかりと、勇気を持って、日本の将来にとって、結婚をし、子育てを進められるような環境をつくっていくということは大事な大事な政策であり、我々一人一人がそういった考え方を持って日常生活の中で取り組んでいかなければならないわけで、何も私は、生まれたときからお子さんができない方もいらっしゃることは事実です。あるいは、さまざまな考え方を持っている人は、事実です。しかし、そういう生き方は生き方としてもいいじゃないですか。しかし、結婚をして、家庭を持って、子育てをしたいという人たちに対しては、やはり社会は全面的な支援をしていくべきだと思うんですね。

 例えば、きのう実は質問準備をしようと思って我が家で机に向かっておりましたら、孫たちが邪魔しに来るんですね。邪魔しに来るんじゃないな、孫たちはおじいちゃんと、ふだんいないから遊びたい、そんな思いで来るんですね。そのときに、うちの長女がすぐ近くに住んでおりますから、長女がとことこっと来て、だめよ、おじいちゃん、あした国会で質問するんだから、後で遊ぼうねと連れて帰ろうとしたときに一言言ったのは、今、不妊治療に取り組んでいる人たちも切実な思いで努力をしているというんですね。だから、お父さん、子供がいないからといって、いつも言うような乱暴なことを言っちゃだめよと。

 多くの人たちがやはり子供を産み育てたいという思いをしながら、必死の努力をしながら頑張っている。例えば不妊治療だって、厳しい所得制限があるでしょう。それで、年齢制限がある。血も涙もない。ある一定年齢になると補助が打ち切られてしまう。そうした中でも、共稼ぎをし、必死に働きながら、赤ちゃんを欲しいといって頑張っている若いお母さんたちもたくさんいらっしゃるわけですね。だから、そうした人たちに、もっと血の通った行政を積極的にしていくべきだと思うんです。

 そこで、乳児養育手当という言葉は、これは私ども江戸川区で、私が昭和五十年に区議会に出たときに使っていた言葉です。それは、保育園に預けないで、自分たちの努力で子供を育てようというときに、画期的でした、自治体としては。そのとき、乳児養育手当を一万円、それを更に一万五千円と増額をしていきましたけれども、こういった制度もありました。そして、保育ママ制度も、全国に先駆けて我が江戸川区はこれを導入して、家庭で育てられるような環境でかけがえのない子供たちを育てたいというので、保育ママ制度を行っていたわけです。そして、これらにかかる費用というのは、公立保育園でゼロ歳児を預ける費用に比べて五分の一にもならなかったんですね。

 今、御承知だと思いますけれども、ゼロ―二歳児までを保育園に預けるとすると、財務省の試算もありますけれども、これは大分低く抑えていますが、例えば、この質問の前に我が江戸川区の実態を伺うと、公的補助が四十万円ぐらいかかっているんですね、月ですよ。そして、それは施設費や何かは含まれていないんですよ。こういった、ゼロ歳は四十万、そして一歳児になるとそれが三十万円ぐらい、それで二歳児になるとそれが十万円台というような数字になっていきます。

 それであるならば、これは国費だけじゃありません、地方自治体負担もあります。ですから、これらをしっかりと、例えば、家庭でお子さんを育てよう、そして休業補償制度を使って育てようというときに、十万円やったっていいじゃないですか、二十万円出したっていいじゃないですか。それは、ある意味では、ゼロ歳児保育を保育園でやるために公的な経費が四十万円かかるのであれば、その半分でもいい、その四分の一でも、十万円を補助として出せる、そういう数字が出ているわけでして。

 私は、そろそろ我が国は、こうしたフランスの成功、フランスをまねしろというわけではありませんけれども、あらゆる公的なサービスを、これは努力を続けていく、そういったものとともに、現物給付に思い切ってかじを切って、そして、働くお母さん、子供を産み育てたいというお母さんやお父さんたちにやってやったらどうでしょうか。

 私は今、地域でいろいろな青少年の団体の顧問や会長を仰せつかっています。一番大きいのは少年野球チームで、これは今九十チームぐらいあるんですよ、我が江戸川区。そして、そのお母さんたちとたまにミーティングするんですね。そうすると、こんな話をするんですよ。ねえ、仮に国が十万円、補助金を育児手当として出してくれたら、みんなパートどうする。そうしたら、やめちゃうわよ、そして子育てに専念したいわよと。

 だから、それを、一人十万円、二人で二十万になるでしょう、三人で三十万、仮に月三十万円の乳児養育手当がしっかりと出るようになれば、ゼロ―二歳の待機児童はなくなりますよ、今のお母さんたちの意見を聞いていると。やはり、待機児童の大半、お母さんたちは非正規です、パートです。もちろん、正規でキャリアとして活躍しておられる方もたくさんいるけれども。

 私は、そういう意味では、ここでそろそろ、国が本気で少子化対策に取り組んでいくんだ、この危機的な対応を乗り越えていくんだ、その象徴的な施策として、乳児養育手当になりますか、児童手当が今一万五千円という答弁もあるでしょうけれども、一万五千円じゃ、これは国の安心代にすぎませんよ。私は、もっと思い切って児童手当をふやす、児童手当でもいいです、名称は。しかし、乳児養育手当をふやしていく、こうした施策をとるべきだと考えておりますけれども、いかがでしょうか。

川又政府参考人 内閣府でございます。お答え申し上げます。

 働くことを希望する人が仕事と子育てを両立できるように、保育所の受皿整備などの環境整備に取り組むこととともに、先生御指摘のように、御自宅で子育てをされている方々への支援というものもあわせて実施していくことが重要であるというふうに考えております。

 そのような観点から、今御指摘もございましたけれども、児童手当につきましては、ゼロ歳から二歳までの児童について五千円加算し、月額一万五千円の支給としているところでございますが、また、自宅で子育てをされている方々への現物サービスといたしまして、一時預かり事業の実施、あるいは、親子の交流、子育てに関する不安、悩み等を相談できる場としての地域子育て支援拠点の整備、それから、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターの整備など、そうしたサービス面の充実も図っているところでございます。

 このように、現金給付と現物サービスとのバランスというものも踏まえつつ、全体として子育て世代への充実した支援が行われるように取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

大西(英)分科員 大変、伺っていると、もっともそうなお言葉が出てきますけれども、そんな今までやっていたような施策でこの危機を乗り越えられるんですか。二十年以上やってきたんじゃないですか。しかし、一向に改善されていないじゃないですか。そういう危機感をぜひ感じていただきたいと思います。

 そして、もう時間もないようでございますから、まだまだお話ししたいことはありますけれども、もう一つ、どうしても大事なことは、若い世代に、特に中学生や高校生、こうした人たちに、どんなに結婚というのがすばらしいことか、あるいは、家庭を持ち、子供たちとの生活を持つ、それがどんなに人間にとって生きる勇気と安らぎと、そして希望を与えていくかというようなことを、これは教育でやれといったって難しいんですよね。難しいんですけれども、その辺もぜひ知恵を出してほしいなと思います。

 大沼厚生労働政務官、一児の母でいらっしゃって、前はNHKの記者だったんですか。そして、国会議員という激務をこなしておられて、子育て体験、それをまさに実践をしてこられていると思うんですね。そういった中で、教育にこだわりません、政務官が、これこそ少子化対策の決め手だ、この危機を乗り越える決め手だ、何かあったら教えてください。

大沼大臣政務官 お答えいたします。

 委員御指摘のように、私も多くの大学生などと交流をいたしますと、結婚をして子供は二人以上欲しいなという学生さんが男女問わず大変多いことに気づきます。しかし、社会に出ますと、それがなかなか達成できない環境が、今、働き方改革であったり、また、先生御指摘のこのマッチング、そういったさまざまな要因が、その希望を達成できない状況になっているんだと思います。

 そうした意味で、結婚を望む、また、子供が欲しいと望んでおられる方々に対して、政府として一丸となってサポートしていく体制を整えていくことが非常に大事だと思います。

 また、今、少子化の中で、小さなお子さんと触れ合う機会が、昔のように兄弟が多いと、六年生ぐらいになっても小さな弟、妹がおるというような家庭もあったわけですが、現在、小さな乳幼児と触れ合う機会が小学校、中学校になってくるとだんだん減ってくるという現状がございます。

 平成二十七年に閣議決定された少子化社会対策大綱におきましても、学校において、男女が協力して家庭を築くことの重要性、また、保育体験や乳幼児との触れ合い体験を含め、子育てに対する理解を広めていく旨記載されており、子供を産み育てていく幸せについて、喜び、感じる機会を設けられるものと承知しております。

 また、中学校、高等学校の学習指導要綱においても、乳幼児と触れ合うなどの活動を通じて子供への関心を深めることが盛り込まれております。

 厚生労働省といたしましては、学校における乳幼児の触れ合い体験が推進されるよう、昨年一月に、内閣府、文科省と連名で、保育所、幼稚園、認定こども園を始めとし、また、主にゼロ歳から二歳児と親が集う地域子育て支援拠点や児童館等において、乳幼児触れ合い体験の実施について、都道府県や市町村に協力依頼を行っているところでございます。

 子供たちが子育てに関する理解を深められるように、引き続き、内閣府や文科省と連携して取り組んでまいりたいと思います。

 委員の御指摘のとおり、この少子化対策、待ったなしの重要課題であるという強い思いのもと、しっかり頑張ってまいりたいと思います。

大西(英)分科員 ありがとうございました。

 我が日本の将来を背負う加藤大臣もお見えでございます。この問題、みんなで力を合わせて克服していこうじゃありませんか。日本の未来はまさに少子化対策にかかっているとお話をいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

石崎主査代理 これにて大西英男君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮本徹君。

宮本(徹)分科員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、地元の問題について、何点か御質問させていただきます。

 東村山には多磨全生園があります。先日、自治会の皆さんにお会いしてお話も伺ってまいりました。大臣に伝えてほしい一番の話は、挙げられたことは、職員を減らさないでほしいというお話でした。

 今、多磨全生園は、入所者百七十一名、そのうち認知症の方が七十一名となっております。入所者の平均年齢は八十五・五歳。園の入所者自体は減っておりますけれども、丁寧なサポートが必要な認知症の方は、一年前に比べてもふえているというのが実情です。どんどんどんどん高齢化が進む中で、介護力だとか看護力は増大が求められているというのが今の園の実情だというふうに思います。

 入所者の皆さんは、国の誤った隔離政策で、家族もふるさともない。そういう中で、職員の皆さんは、入所者の皆さんに家族のように寄り添って介助されておられます。しかし、現状の職員の人数でも入所者の皆さんの要望には応え切れていないというのが、実情としてあると思います。

 こういう話を聞きました。終末期医療のお話を伺ってきました。

 これまでは、仲間が、入所者の方が亡くなるときは付き添ってみとりをやっていた、こういうこともできたけれども、入所者自身がみんなが高齢化する中でそういうこともできなくなってしまった、自分たちには家もないんだ、家族もいないんだ、そういう中で、最期に誰かにみとっていただけるとしたら、やはりそれは職員なんだというお話でした。だけれども、今の職員の体制では、夜勤になれば、昼間はたくさんの方がいらっしゃいますけれども夜勤は大変少ないですから、そういう最期のみとりということも職員にやってもらえない、付き添ってもらえない、なかなか、そういう事態であるというお話も聞きました。

 加藤大臣にお伺いしたいんですけれども、国との合意書では、二〇一八年度までは職員は減らさない、こういう合意でやってきたわけですけれども、二〇一九年度以降は、入所者一人当たりの定員は維持するということになっていますが、職員の定削が始まるということになっているわけですね。ただ、実際は、高齢化が進んでいる、より介護も看護もいよいよ求められてきている、そういう実情を踏まえて、職員の定数は減らさずに、しっかり確保していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔石崎主査代理退席、主査着席〕

加藤国務大臣 私も岡山県の選出をさせていただいている議員でございまして、地元岡山県、直接私の選挙区ではありませんけれども、岡山ということで、長島愛生園や邑久光明園がございますし、また、その関係者ともいろいろお話もさせていただいているところでございます。

 その上で、本当に、いろいろなこれまでの思い、そして現状についてもお話をいただき、そして今委員御指摘の中で、平成二十六年の八月に、いろいろ議論のある中で合意書が結ばれたということでございまして、それに基づいて、平成二十七年度から三十年度までの間は定員を毎年度一名ずつ、それにのっとって増員をしてきた。

 委員は、そこから先、三十一年度以降どうなのかということでありますが、この合意書には、定員の絶対数を継続的に減少させていくことになるがとして、しかし、その際には、介護等の支援を必要とする入所者一人当たりの介護員、看護師数を一・五人とする、入所者一人当たりの定員は、平成三十年度時点の水準を下回らないということでございます。

 また一方で、入所されている皆さんが安心して、そして豊かな生活を営めるよう、良好な療養環境を確保していくことは重要な課題でございますので、そういった視点を踏まえながら、平成三十一年度以降、必要な人員の確保に向けて努力をしていきたいと思います。

宮本(徹)分科員 岡山の療養所のお話も伺っているというお話でしたが、であればなおさら、今、本当に高齢化が進む中での大変な実情も大臣も御存じだというふうに思いますが、ぜひ東京にも、多磨全生園、東村山にありますけれども、お伺いしていただいて、ぜひ介護の現場を見ていただけないかというふうに思っています。入所者の自治会の皆さんも、ぜひ大臣には来ていただいて、高齢化が進む中での現状というのをしっかり見ていただいて、なぜ人の確保が必要なのかというのをしっかり知っていただきたいんだというお話がございましたので、お忙しいかとは思いますが、ぜひ来ていただきたいと。

 そして、入所者の皆さんが言っていたのは、ぜひ、病棟だとか、大変な介護の現場の実情のところ、現場のところを見てほしいとおっしゃっていましたので、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 私自身、多磨全生園はお伺いしたこともございませんし、また、他方で、東村山の市長からもいろいろなお話も聞かせていただいて、まずは一回見に来てほしいということも承っているところではございますので、しっかり機会を見つけて、ぜひ訪問させていただきたい、こう思っております。

宮本(徹)分科員 これまで来られたいろいろな方の中で、入所者の自治会の方が、こういうことをちょっと懸念されていたのは、ぐるっと全生園内を車で回り、納骨堂に献花して帰るのではなく、しっかりと介護の現場を見てほしい、これも入所者の自治会の方から伝えられたことですので、しっかり、やすらぎ病棟だとか、いろいろな介護の現場を見ていただきたいというふうに思います。

 それからもう一点、療養所の医師の確保についてもお伺いしたいと思います。

 これは、昨年も塩崎大臣に質問させていただきました。昨年取り上げたときは、多磨全生園、内科の常勤医が四人いたのが二人に減って、しかもそれが血液と透析の専門の方だというお話をさせていただきました。今は更に減って、内科の常勤医は一人。あとは非常勤なんですね、内科の先生でいえば。そういう形になっております。それで、園長先生にもお話を伺いましたが、内科の医師はやはりふやしたいんだ、常勤をふやしたいというお話もありました。

 ただ、ネックになっているのが、やはり職員確保をする上でのネックが給与なんですよね。独立行政法人の、国立病院の機構に比べても医師の給与の水準が低い、民間と比べても低い、これがネックになってきております。

 きょうは、人事院にも来ていただきました。厚労省からは、療養所の医師確保のために給与改善の要望が出ていると思いますが、人事院は、この療養所の医師確保のために、ハンセン病問題基本法の立場に立った対応をすべきだと思うんですが、その点はどう考えているんですか。

嶋田(博)政府参考人 お答えいたします。

 人事院といたしましても、全国各地のハンセン病療養所におきまして、医師を含めた職員の方々が入所者の皆様に寄り添って、日々心を砕いておられることは承知をしております。

 国の医師の給与につきましては、医療職俸給表(一)が適用された上で、勤務地域にかかわらず一六%の地域手当が特例的に保障されるほか、人材確保の観点から、初任給調整手当が支給されております。さらに、ハンセン病療養所の医師につきましては、職務の特殊性を評価して、俸給の調整額が支給されております。

 御指摘のとおり、厚生労働省からは、「厚生労働行政の業務に従事する職員の給与改善等について」の中で、ハンセン病療養所の医師の処遇改善等に関しましても、人事院に御要望いただいております。

 このような御要望を踏まえまして、医師の給与につきましては、人材確保の観点から、平成二十一年四月、初任給調整手当の特別改善により、年間給与の水準を平均約一一%引き上げるなどの配慮を行ってきております。

 また、今年度におきましても、こうした御要望等を踏まえまして、昨年八月、国会及び内閣に対し、医師の処遇を確保する観点から、初任給調整手当の支給月額の限度の引上げを勧告したところでございます。

 昨年の十二月には、人事院勧告どおりの給与法の改正が行われまして、平成二十九年四月にさかのぼって初任給調整手当の引上げが行われております。

 人事院といたしましては、こうした近年の給与改定の内容を踏まえつつ、厚生労働省のお考えを改めてしっかりと伺いながら、国立ハンセン病療養所の医師の給与につきまして、必要となる検討を進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)分科員 厚労省から、もっとたくさん要望が出ているんじゃないですか。ハンセン病療養所の医師の確保のためには、もっとたくさん細やかに要望が出されているというふうに思うんですね。

 本当に園長先生は一生懸命、医師確保のために走り回っています。ただ、なかなか最後、話がまとまらないのは、前の園長先生のときからも課題になっているのが、やはり給与の話なんですよね。

 とりわけ多磨全生園は、周りが大変病院が多い地域でもあるんですよね。お隣の清瀬市も病院がたくさんありますし、近くにも病院もあります。ですから、そういう中で、やはり周りの病院に比べて給与水準が低いと、一生懸命医師確保に当たっても医師は確保できない。

 結局、定員で医師が、多磨全生園で一人、療養所全体でこの一年でふえたというのは、厚労省が責任をとって技官の方を配置していただいた。ただ、それは、現場で医師として働いているというわけじゃないですからね。それだけなんですよね。本当に苦労しても、なかなか確保できないという状況があります。

 やはり、ハンセン病の問題に当たっては、基本法の立場に立ってしっかりと、もっと給与を保障して、医師が確保できるようなところまで人事院も考えなきゃいけないと思うんですが、その点はどうですか。

嶋田(博)政府参考人 御指摘の点に関しましては、所管省である厚生労働省の医師の人材確保に向けたお考えを、実情等を、改めてしっかりと伺いながら検討を進めてまいりたいと思います。

宮本(徹)分科員 ぜひ、療養所の医師確保の取組なんかもじかに聞いていただいて、厚労省の意見もよく反映させて、給与の引上げに当たっていただきたいというふうに思います。

 それと、あともう一点、その医師確保の上で、同じように法務省の矯正医官も大変苦労していたわけですけれども、いろいろなことをやっています。

 法務省の矯正医官については、有償兼業が認められるということになりました。園長先生に聞きましたら、療養所でも有償兼業が認められたら医師をリクルートしやすくなるということもおっしゃっていました。これは法務省で始まっているんですから、ぜひ、療養所についても早急に有償兼業を認めるべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 済みません、ちょっと個別のところがよくわからないところがあるんですが、基本的な考え方をまず述べさせていただきたいと思います。

 国立ハンセン病療養所が立地する地域の医療機関などからの要請に基づき、入所者に対する診療に影響のないことを前提として時間外の診療行為に従事することは、医師の技能維持向上や地域医療への貢献という観点からも意味があるというふうに考えております。

 職員の兼業許可については、国家公務員法に基づき、職員からの申請に対し、兼業による心身の疲労のため、職務遂行上その能率に悪影響を与えることがないかどうか、兼業することが国家公務員としての信用を傷つけ、又は官職全体の不名誉となるおそれがないかどうか。この二点目は、普通の診療であればこんなことはないと思いますが、を審査の上、兼業を認めるということにしております。

 国家公務員の一員である国立ハンセン病療養所の医師が外部機関において診療行為に従事する場合については、まず、当該診療所においてしっかり入所者に対する診療に当たっていたことが前提ではありますけれども、先ほどの兼業許可基準を踏まえて、医師の特殊性を考慮しながら、私は、ある程度前向きに考えていってもいいのではないかというふうに考えております。

 ただ、今聞きますと、今まで認めた例はないということでございますので、またそうした申出があれば、しっかり承って対応させていただきたいと思います。

宮本(徹)分科員 無償では、いろいろなところに診療所の先生も今出かけるということもやっていますけれども、有償かどうか、やはりそこが医師確保のところでは大変大事になりますので、ちゃんと制度として確立していただきたい。先ほど前向きな答弁もいただきましたので、制度として、しっかりと大臣のイニシアチブで確立していただきたいと思いますが、いかがでしょう。

加藤国務大臣 今は、もちろん有償を前提にお話をさせていただきました。

 ただ、先ほど申し上げた、当該診療所において入所者に対する診療等がしっかり確保されていくということと、それと、結果的に外で働くことが長時間の労働になっては、また働き方改革との問題もありますけれども、その辺をよく見ながら、ただ、委員御指摘のような点はあると思いますので、我々もしっかり、そうした御要請を踏まえて、あるいは御要請がないからといって検討しないということではなくて、少しこの辺は中で議論させていただきたいと思います。

宮本(徹)分科員 ぜひよろしくお願いいたします。

 それからあと、二点目に、介護報酬の地域区分についてお伺いしたいと思います。

 資料もお配りをさせていただいておりますが、介護報酬は、人件費の地域差を調整するために、地域ごとの割増しがあります。一級で二〇%、六級で三%ということになっております。私の地元でいいますと、東久留米は五級地で一〇%。この地図を見てもらえばわかりますけれども、周辺を見ると、西東京一五%、小平一五%、東村山一二%、清瀬一二%で、東久留米だけが低いという状況になっています。あるいは武蔵村山で見ますと、武蔵村山は六級地で六%ですけれども、隣接している立川は一二%、東大和は一二%。同じ医療圏を構成している中で六%も低いということになっています。

 基本的に、同じ経済圏、同じ生活圏の中でも介護報酬の地域区分が大変細やかに、細かく設定されておりますので、こうなると、介護報酬が低い自治体では何が起こるかといいますと、事業所が人材を確保するのに大変な苦労が生じます。職員の給与が周りより低ければ確保できない、なかなか確保できない。逆に、職員の給与を周りに合わせようとすると、経営が大変な事態になるということです。

 ですから、この介護報酬の地域区分、これはこのままじゃまずいというふうに思うんですが、今の現状の地域区分が介護事業所の経営と人材確保に困難をもたらしている、こういう認識は政府はお持ちなんでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 介護保険制度の創設時から、人件費の地域差を介護報酬に反映させるための仕組みといたしまして地域区分を導入してきたところでございますけれども、これにつきましては、公平性、客観性の観点から、民間の賃金水準を反映して設定されております公務員の地域手当に準拠することを原則としてきたところでございます。

 その後、地域区分につきましては、必要に応じまして順次見直しを行ってまいりましたけれども、介護給付費分科会におきまして、各自治体の意見を聴取した上で課題や論点等を整理すべきとの指摘があったことを踏まえまして、平成二十七年度に自治体から意見を聴取したところでございます。

 その結果につきまして、平成二十八年度に取りまとめたところでございますけれども、主な意見といたしましては、区分を上げたい意向の自治体では、御指摘のとおり、人材確保等を懸念する内容が多かった一方で、区分を下げたい意向の自治体では、保険料等の増額を懸念する内容が多かったところでございます。また、区分の上げ下げの意向にかかわらず、近隣とのバランスに問題意識を持った意見が多かったところでございます。

宮本(徹)分科員 介護の待機者ゼロだとか、そういうことをやろうと思ったら、当然施設の整備を進めていかなきゃいけないわけですが、そういうことをやる上でも、この地域区分が実態に見合っていないということになれば、介護事業所が出てくるのも思いとどまってしまうわけですよね。ですから、ここは本当に改善が求められている分野だというふうに思います。

 私、配った資料の裏面に、介護保険の地域区分と、それに対して市民一人当たりの市民税の所得割額を並べたのを載せました。例えば東久留米は五級地になっていますが、市民税の一人当たりの所得割は六万一千九円です。二十三区は全部一級地、二〇%になっていますけれども、足立区は区民の所得割は五万八千五百六十五円。級地で見れば、東久留米の方が五級地ということで上乗せ割合が大変低くなっているわけですけれども、市民の実際の収入水準ということを見れば、逆転している自治体というのはたくさんあるというのが実情なんですよね。

 こういう中で、本当に細かに格差をつけられる。私は、人事院の決めている公務員の地域手当の決め方がそもそも問題だと思っているんですけれども、それに準拠して、全部、介護報酬も含めてやっていくということになると、本当に介護事業所の皆さんが苦労されるということになります。

 ですから、次回に向けて、こういう地域区分の決め方によって苦労している自治体、事業所が生まれないように是正を図るべきだと思いますが、これはいかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほども御答弁申し上げましたけれども、これまでも、必要に応じて順次見直しを行ってきたところでございますけれども、平成三十年度の介護報酬改定におきましては、地域区分の高い地域に囲まれている場合に、一定程度引き上げることなどの見直しを行ったところでございます。

 また、この報酬改定の議論の中におきまして、地域区分のあり方につきまして、審議会におきましては、より広域的な範囲での設定とするなど根本的な見直しを含めて、今後も引き続き検討すべきとの意見もありましたので、こうした意見も踏まえつつ、次期介護報酬に向けまして、必要な検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

宮本(徹)分科員 確かに、今回、囲まれルールで改善された自治体はあります。例えば東京では、三鷹市なんかは改善された面はありますけれども、例えば東久留米は、囲まれルールでいくと、埼玉県に接していますから、埼玉県の新座市との関係で囲まれルールが適用されないとなるわけですよね。だけれども、人の流れは都心に流れているわけでして、そういう今回の囲まれルールだけでは、やはり矛盾は解消されなかったわけですよね。

 ですから、ぜひ、とりわけ周りよりも上乗せの介護報酬が低くて苦労している自治体について、実情をよく、更に聞き取っていただいて、どういう対応が必要なのかというような突っ込んだ検討をしていただきたいと思うんですが、いかがですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 自治体の意見はよくお聞きして対応したいと思います。

 ただ、先ほど申し上げましたけれども、自治体によりましては、人材確保等を懸念する内容が多かった一方で、保険料等の増額への懸念をする内容もございます。そういう意味では、両方の意見もございますので、よくよく自治体の意見を聞きながら検討してまいりたいというふうに考えております。

    〔主査退席、石崎主査代理着席〕

宮本(徹)分科員 次回に向けて必ず改善されるように、大臣の方でもイニシアチブをとっていただきたいというふうに思います。

 それから、最後に、社会事業大学の問題についてお伺いします。

 厚労省は、日本社会事業大学に対して委託費を交付して教育研究を進めております。

 まず大臣にお伺いしたいのは、厚労省における社会事業大学の位置づけ、これはどうなっているんでしょうか。

加藤国務大臣 学校法人日本社会事業大学、昭和三十三年に創立し、日本で初めての社会福祉の専門教育機関であり、創立当初から、厚生労働省から社会福祉のリーダーの養成を委託している大学でございます。

 また、日本社会事業大学に勤務する教職員の人件費や大学の運営に係る費用から、入学金や授業料などの収入を差し引いた額を委託費として交付もしているところでございます。

宮本(徹)分科員 つまり、厚労省の大学と言ってもいいような大学が社会事業大学ということだと思います。

 この厚労省のお膝元の大学で、有期雇用の無期雇用転換ルールが今どうなっているのかというのをちょっときょうは取り上げたいと思いますが、社会事業大学で、現時点での契約職員の人数、無期転換ルール適用に該当する人数、一度契約打切りになって再雇用された人数というのは、それぞれどうなっていますか。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 日本社会事業大学に確認いたしましたところ、日本社会事業大学における契約職員の人数は、平成三十年二月一日現在において二十三人とのことでございます。

 また、有期で雇用されている職員で、雇用契約を更新して通算五年を超える労働者につきましてでございますが、平成三十年三月三十一日に通算五年となる方が一人いらっしゃるということでございますが、この方について再雇用の予定はないと伺っているところでございます。

宮本(徹)分科員 なぜ再雇用の予定がないのかということなんですけれども、学校法人日本社会事業大学有期雇用職員就業規則、平成二十七年四月というのを私、見ました。こう書いてあるんですね、第五条の二で、「雇用契約が締結されていない期間が連続して六月以上ある場合を除き、契約期間が通算して五年を超えることはない。」典型的な無期雇用逃れのためのルールをつくっているわけですよ。

 今、大臣は、省を挙げて、有期雇用の皆さんが五年を超えて契約更新になれば無期転換できるようにする、このルールの定着を日本社会で図っているというふうに思いますが、厚労省のお膝元の大学で、この五年ルールを、無期雇用転換ルールを無視するような就業規則をつくっているわけですよね。これは撤廃させるべきだ、是正させるべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 まず、お膝元といっても、先ほど申し上げた委託という関係でございますし、この大学はあくまでも学校法人ということになりますから、そういった意味での管理監督というのは別でありますし、また、もちろん私ども、労働行政を担っているわけでありますから、そういった意味では当然対象になることは委員御指摘のとおりであります。

 その上で、今の規則、済みません、個々のこれについて、一つ一つちょっとコメントするのは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、例えば、六カ月を超えた先においてまた雇用するよというようなことであれば、これはこの無期転換ルールを意図的に逸脱しようとしているということで、これまでもそうしたケースにおいては必要な監督指導を行っているところでございます。

宮本(徹)分科員 組合の団交のニュースも私も見せてもらいましたけれども、これまで、五年で一旦首を切られて、また半年たって、一定期間たって戻ってこられた方も三人いらっしゃるという話なんですよね。ですから、明白な、これは無期転換ルール逃れだと言っていいというふうに思います。

 団交のこの記録を見てみましたら、組合の側から是正すべきじゃないかということを求められても、これは次年度以降に考えるという話しか理事者側はしていないわけですよね。先ほど話したとおり、三月三十一日に一人の方は雇いどめになるということになっていくわけですよね。

 これは、お金を出して、しかも専務理事もずっと厚労省から天下っているところなんですよね。それは、厚労省自身が一生懸命やっている政策については、ちゃんと指導を貫徹するということが必要なんじゃないですか。

加藤国務大臣 その天下っているというのは、いわゆる公務員の、何法でしたっけ、退職した後の手続にのっとってやっているんだろうというふうに思いますけれども、いずれにしても、ちょっと個別について私はここでコメントするのは差し控えたいと思いますけれども、もちろん、それがこの無期転換ルールを逸脱しようとする意図のもとで行われている、これは一般論でありますけれども、という場合についてはしっかりと対応していきたいと思います。

宮本(徹)分科員 これは、まさに社会事業大学の場合はそれに当てはまるというふうに思いますので、厚労省として、しっかりと社会事業大学のこの雇用の問題について実情を把握していただきたいと思いますが、いかがですか。

定塚政府参考人 先ほども大臣から御答弁申し上げたとおり、委託事業を行っていただいているという観点からの確認指導というものは日本社会事業大学に行ってきているところでございますが、その観点から、教職員の雇用契約や就業規則等について個々に監督指導するという立場には立たないと考えております。

 したがいまして、日本社会事業大学が、その規定や関係法令にのっとって適切に対応していただくべき課題かと考えております。

加藤国務大臣 済みません。先ほど監督指導と申し上げましたけれども、労働契約法ということでございますので、啓発指導ということでやらせていただいていることを訂正させていただきます。

宮本(徹)分科員 以前、我が会派で、厚労副大臣のところに、この問題での要請にも行かせていただきました。そのときに、一つ一つ、問題があったら労働局を通じて、場合によっては本省でも指導するからというお話があったんですよ。ところが、今は指導をしないかのような局長の答弁があったわけですけれども、そこはしっかりと、一つ一つ、こういう問題があるじゃないかと言われたことについては啓発指導されるということでいいわけですね。加藤大臣、最後に確認させていただきます。加藤大臣です。

加藤国務大臣 多分、局長もそういう趣旨で言われたのではないかなというふうに思いますけれども、いずれにしても、無期転換ルールというものがしっかりと実行されていくように、我々も引き続き、周知あるいは相談体制、そして今委員御指摘のように、そこにそれを逸脱しようとするようなものがあれば、そうしたものに対しては啓発指導に取り組んでいきたいと思います。

石崎主査代理 宮本徹君、申合せの時間が既に経過しております。

宮本(徹)分科員 啓発指導をしっかりしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

石崎主査代理 これにて宮本徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、森夏枝君。

森(夏)分科員 日本維新の会の森夏枝です。

 本日は、主に認知症対策について質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、旧オレンジプランと新オレンジプランの違いについて質問をさせていただきます。

 我が国における認知症者数は、二〇一二年で約四百六十二万人、六十五歳以上の高齢者の約七人に一人と推計されています。その数は今後更に増加が見込まれており、二〇二五年には約七百万人、六十五歳以上の高齢者の約五人に一人になるとも言われております。認知症は、今や誰もがかかわる可能性のある身近な病気であり、認知症施策の推進は我が国の最重要課題の一つとなっております。

 認知症高齢者の増加を受け、平成二十四年九月、認知症施策推進五カ年計画、いわゆるオレンジプランが策定されました。また、平成二十七年一月には、安倍総理からの認知症施策を加速化させるための新たな戦略の策定指示を受けて、認知症施策推進総合戦略、いわゆる新オレンジプランが策定されました。

 そこで、まずお伺いいたします。

 平成二十四年に策定された旧オレンジプランと平成二十七年に策定された新オレンジプランとでは何が大きく変わったのでしょうか。また、新オレンジプランの基本的な考え方や主な施策についても、あわせて御説明をよろしくお願いいたします。

大沼大臣政務官 お答えいたします。

 平成二十四年に策定したオレンジプランは、厚生労働省が医療、介護等の基盤整備を中心に進めてまいりました。平成二十七年に策定いたしました新オレンジプランは、医療、介護のみならず認知症の方の生活全体を支えるための国家戦略といたしまして、警察庁、法務省といった他省庁、厚生労働省も入りまして十二省庁合わせて、政府一丸となって取組を総合的に進めているところでございます。

 新オレンジプランの基本的な考え方でございますが、認知症の方の意思が尊重され、できる限り住みなれた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指すことであります。

 柱は七本になっておりまして、普及啓発、また適時適切な医療、介護の提供、若年性認知症施策の強化、認知症の方の介護者への支援、そして高齢者にやさしい地域づくりの推進、研究開発、認知症の方々やその家族の視点の重視といった柱に沿って、総合的に推進しているところでございます。

 この中で、ほかの六つの柱に共通するプラン全体の理念として、認知症の方やその家族の視点というのを重視して、新オレンジプランから新たに盛り込んでいるところでございます。

森(夏)分科員 新オレンジプランは、認知症やその家族を含め、さまざまな関係者から幅広く意見を聞いた上で、厚生労働省を中心とする関係十二省庁が共同で策定したものと御説明がありました。

 認知症の方々が住みなれた地域で自分らしく暮らし続けることができる社会を実現していくためには、こうした関係省庁の連携はもとより、地域における行政、民間、地域住民など関係者間の連携協力が欠かすことができません。特に、認知症への対応は、認知症本人に対する医療、介護の提供等の支援のみならず、虐待、消費者トラブル、行方不明や徘回による鉄道事故、自動車運転による交通事故など、安全の確保に関する問題への対応も必要とされます。そのほか、負担が大きい家族への対応、若年性認知症者への支援も必要です。

 新オレンジプランはこうした幅広い支援を実施していくものであると理解をしておりますが、私が少し懸念をしているのは、これまでも、方針が変わるたびに現場の方々が戸惑われているということです。戸惑いながらも、方針どおり進むように現場の皆さんは努力をされておられます。新オレンジプランによって、デイサービスのスタッフ、介護福祉士やケアマネジャーの方々の仕事がふえてしまい、これまでできていた必要な支援ができなくなってしまうということは避けなければなりません。支援の幅が広がる分、関係者間の連携がきちんととれるのか、情報共有はされるのか、そして現場の混乱が生じるようなことはないのかという懸念がございます。

 新オレンジプランの施策を進めるに当たって、現場で混乱が生じることがないよう関係者間の連携、情報共有を図っていく必要があると考えますが、政府の御所見と御対応策についてお伺いいたします。

    〔石崎主査代理退席、主査着席〕

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、新オレンジプランに掲げた施策を着実に推進するためには、例えば、認知症疾患医療センター等の専門医療機関、それから介護サービス事業者、地域包括支援センターなどの関係者間の連携を密に図ることが重要であるというふうに考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、医療や介護等の関係者間のネットワーク構築のための調整役といたしまして、認知症地域支援推進員を平成三十年四月までに全ての市町村に配置することを目指しておりまして、昨年十二月末現在では千四百六十二市町村に配置されております。

 この認知症地域支援推進員でございますけれども、地域におきまして、認知症の方や家族等への相談支援の実施、それから、関係機関等と連携いたしまして、認知症カフェ等の開催のための企画、調整などの業務を担っております。

 厚生労働省といたしましては、こうした認知症地域支援推進員の設置等を通じまして、地域における関係者間の連携を強化してまいりたいというふうに考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 認知症推進員の普及に努めてくださっているということで、ありがとうございます。

 認知症に関する正しい知識と理解を持って、地域や職場で認知症者やその家族の手助けをする認知症サポーターを養成する取組も進められているとお聞きしております。

 この認知症サポーターは、認知症の症状や、本人への接し方、場面に応じた支援の方法について、約九十分程度の無料講座を受講することで認定されるもので、平成二十九年末現在、約九百六十九万人が認定されています。小学生や中学生などの子供たちに認知症サポーターになってもらおうという活動も広がっており、世代を超えたコミュニケーションにつながっていくことも期待されております。特にここ数年で、サポーターの増加には目を見張るものがあり、認知症に対しての知識と理解の面では、幅広く認知をされたと感じております。

 まず、認知症サポーターの養成の状況、認知症サポーターに期待される役割についてお聞かせください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 認知症サポーターでございますけれども、まず役割ですが、認知症に関する正しい知識と理解を持ちまして、地域や職場で認知症の方やその家族を可能な範囲で手助けする役割でございます。平成十七年度から養成を行っておりますけれども、直近の平成二十九年十二月末現在では、約九百八十万人が受講いたしております。

 新オレンジプランにおきましては、二〇二〇年度末までにこの認知症サポーターを千二百万人養成することを目標といたしておりまして、養成された認知症サポーターでございますけれども、例えば地域の見守り体制への参加あるいは認知症カフェの開催など、地域や職域におきまして活躍しているものと承知をいたしております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 認知症サポーターがふえていること自体は大変すばらしいことであると考えております。また、サポーターの中の、地域の見守り体制に参加しているなどの事例があることは、今御説明もいただきました。ただ、多くの認知症サポーターの方は、単にサポーターになったというだけになってしまっているのが現状です。やはり、実際に地域のさまざまな場面において活躍してもらえるようにすることが重要なのではないかと考えております。

 そのためには、現在の養成講座の内容よりも、もう少し専門的な知識と理解を持ってもらうことも必要なのかもしれません。そして、実際の現場を見ていただき、体験していただくことも重要だと思います。そこで、サポーターとして活動したい、力になりたいと感じていただいた方は、大切な補助の一員になっていただけると思います。今後、養成講座を受けていただいた方に真のサポーターになっていただくことができればと思います。

 認知症サポーターのさらなる活用の方法について、そしてその養成のあり方も含め、政府の見解を求めます。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、認知症サポーターにつきまして、実際に、地域の見守り体制への参加とか認知症カフェの開催など、地域において実際に活躍できるような取組を進めていくことが大変重要であるというふうに考えております。

 このため、厚生労働省といたしましては、認知症サポーターの活躍に関しまして、地域の創意工夫による取組を支援し、各地域で展開されますよう、一つは、介護保険法の地域支援事業等における必要な経費の助成を行っております。また、認知症サポーターの実際の活動事例とか先進的な事例を取りまとめまして、全国会議等で周知を進めているところでございます。

 また、先進的な取組を進めている自治体の中には、認知症サポーターに対する研修におきまして、事例検討、あるいは先生御指摘のような実習を取り入れているところもあると承知いたしております。

 社会全体で認知症の方を支える基盤として、今後とも、認知症サポーターの養成と活躍の推進に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。しっかりとサポートしていただきたいと思います。

 それでは、少し観点を変えて認知症問題の質疑を続けたいと思います。最近、新聞、テレビ等で取り上げられている受刑者の認知症の問題です。

 刑務所内での高齢化も進み、認知症の受刑者が増加しております。法務省の推計では、六十歳以上の受刑者のうち認知症傾向にある受刑者は、およそ一四%、全国におよそ一千三百名いるとされています。今後も更に増加することが見込まれております。

 刑務所内の認知症者に対しては、服薬などの医療的ケアや、認知症が進まないようにするための読書や塗り絵、軽い運動などのリハビリが必要なほか、日常生活の世話、認知症による行動症状への対応などが求められ、刑務所職員の負担が重くなっていると伺っております。

 国は、介護スタッフを全国の刑務所に配置するなど、対策に取り組んでいるとも聞いておりますが、まだまだ数が足りないのが現状です。増加する認知症受刑者に対して今後どのように対応していくのか。特に、刑務所職員の負担軽減策については、働き方改革の一環として大変重要な課題だと思います。政府の対応方針を伺います。

 また、一部に民間サービスとの連携も見受けられるようですが、好事例などがあれば、あわせて御紹介ください。

富山政府参考人 委員お尋ねのとおり、刑事施設における高齢受刑者は、近年、一貫して上昇してきております。最近の収容動向を申し上げますと、六十歳以上の受刑者が占める割合は、平成十八年で一二・三%であったものが、平成二十八年には一九・〇%、七十歳以上の者について申し上げますと、平成十八年末には二・七%であったものが、平成二十八年末には六・三%と、それぞれ増加しております。

 高齢の受刑者の処遇を行う上で配慮している事項としては、高血圧、糖尿病など生活習慣病への罹患など身体的な問題を抱えている者も多いため、作業の時間を通常より短くしたり、食事の内容について、やわらかく調理したものを提供するなど、必要に応じた配慮を行っているところでございます。

 また、認知症に罹患している者あるいは認知能力の低下がうかがわれる者に対しましては、認知症の進行をできるだけおくらせるため、可能な限り他の受刑者と集団で作業を行う機会を設けた上で、身体機能の維持のため軽い運動を行わせたり、認知機能の維持のため簡単な計算問題を行わせるといったようなことも行っております。

 また、日常生活に介助が必要であり、作業を実施することが困難な高齢受刑者につきましては、刑事施設の病棟に収容したり、病状に応じて医療刑務所に収容し、医療上の措置を講じるなどもしているところでございます。

 また、民間との連携ということに関してでございますが、高齢受刑者につきましては、その介護体制の充実強化を図るとともに、福祉的な支援が必要な者には、社会復帰に向けた相談や助言を実施することが必要でございます。そのため、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、健康運動指導士など、資格を有する職員の全国的な配置、招聘を進めてきているところでございます。

 また、福祉的な支援が必要と認められる高齢の受刑者等に対して、基本的な生活能力や対人関係スキル、社会福祉制度に関する基礎的な知識を身につけさせ、出所後に、福祉的な支援を受けながら、地域社会の一員として健全な社会生活を送るための動機づけを高めさせることを目的としました、統一的、標準的な改善指導プログラムである社会復帰支援指導プログラムを新たに開発し、本年度から全国の刑事施設においても実施をしております。

 加えまして、平成三十年度予算案におきましては、大規模な刑事施設八庁において、認知症を有する受刑者を早期に発見するための検査、必要に応じて医師による診察を実施するほか、認知症を有する受刑者への適切な処遇を実施するため、認知症サポーター養成研修等の講師を招聘し、刑務官に対して研修を行う、また、介護専門スタッフの増配置、介護用入浴設備の整備などを行うための経費も盛り込んでおります。

 今後とも、専門資格を有する方々、関係機関などと適切に連携し、高齢受刑者の処遇の充実に努めてまいりたいと考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 刑務所職員の負担軽減にさまざまな取組をしていただいているということで、今後もサポートをしっかりお願いしたいと思います。

 続いて、認知症受刑者の出所後の支援について伺います。

 認知症受刑者については、高齢の方が多く、自立が困難で身寄りがなく、みずからの力で社会復帰することが困難な方が多数を占めているものと聞いております。こうした受刑者に対して、釈放後速やかに適切な介護、医療等の福祉サービスを受けることができるようにするための取組として、法務省は、厚生労働省と連携し、特別調整を実施していると承知をしております。しかし、特別調整の同意を本人から得ることが難しいとの指摘のほか、そもそも、刑務所からの出所の際、適切な福祉サービスにつながっていないとの指摘もなされています。

 出所した認知症者を適切な福祉サービスにつなげていくことは、社会復帰の観点だけでなく、再犯防止の観点からも重要であります。認知症者に対する出所支援の充実が必要と考えますが、政府における具体的な取組状況と取組を進める上での課題についてお伺いをいたします。

富山政府参考人 お答えいたします。

 高齢受刑者には、親族との関係が疎遠であるなど、出所後の帰住先がないことが円滑な社会復帰における支障となっている者が多く見られることから、在所中から出所後の帰住先を確保し、出所後速やかに適切な介護、医療、年金等の福祉サービスを受けることができるよう調整を図ることは、本人が人として幸せに生きること、また再犯防止のために重要と認識しております。

 こうした点を踏まえまして、先ほども答弁申し上げましたが、刑事施設には社会福祉士や精神保健福祉士などの資格を有する職員を配置して、社会復帰に向けた相談や助言等を実施しております。また、委員からも御指摘のありましたとおり、更生保護官署や地域生活定着支援センター等の関係機関と連携いたしまして、釈放後速やかに必要な福祉サービスを受けることができるようにするための、特別調整と呼ぶ福祉的な支援も実施しているところでございます。

 一方で、こうした福祉的支援が必要であると認められるにもかかわらず、福祉に対する理解や社会復帰に向けた意欲が不足していることによって、こうした支援をみずから希望しない受刑者が一定の割合いることが、福祉的支援を実施していく上での隘路となっております。この問題につきましては、先ほども答弁いたしましたが、高齢受刑者等に対する改善指導として、社会復帰支援指導プログラムを本年度から全国的に導入するなどして、こうした問題についても積極的に、特別調整を受けるというような気持ちを醸成していく、そういったことにも努めているところでございます。

 今後とも、高齢受刑者の円滑な社会復帰、再犯防止に向け、関係機関と連携をとりながら、しっかりと頑張ってまいりたいというふうに考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 続きまして、認知症者に対する心のケアに関してお伺いいたします。

 皆さん、ソーシャルワーカーとカウンセラーという言葉は御存じだと思います。ソーシャルワーカーは、日常生活を送る上で、困難に対する相談に乗り、助言や指導を行い、問題解決につなげていくものであります。それに対してカウンセラーは、心の問題の相談に乗り、不安や悩みを解決、克服していけるようヒントを与えていくという違いがあると理解をしております。

 認知症者に対する支援を行う上では、このソーシャルワーカーとカウンセラーの果たす役割はどちらも大きいと考えます。しかし、例えば特別養護老人ホームにおいては、ソーシャルワーカーとしての役割を果たす社会福祉士等の資格を持った生活相談員の配置が義務づけられておりますが、カウンセラーの役割を果たす職員の配置は義務づけられていないのが現状です。

 政府は、認知症者に対する支援におけるカウンセラーとソーシャルワーカーの役割の違いや重要性についてどのように認識しているのか、また、当該関係職種が認知症者や支援を行う関係機関にどれぐらい配置されるのかについて、お伺いをいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、認知症の容体は多岐にわたりますので、認知症の方と介護者の支援につきましては、その方の認知症の容体あるいは環境に応じて支援することが重要であるというふうに考えております。

 このため、先生御指摘のとおり、社会福祉の知識を有するいわゆるソーシャルワーカーのような役割、それから、精神的支援に関する知識を有しますいわゆるカウンセラーのような役割など、さまざまな視点に立って、きめ細かな助言、相談支援等を行う必要があるというふうに考えております。

 厚生労働省におきましては、例えば、社会福祉士や保健師等の資格を有します、先ほど申し上げました認知症地域支援推進員の配置を推進いたしますとともに、医師、看護師、社会福祉士等の複数の専門職が訪問して相談支援を行います認知症初期集中支援チームの設置を推進しているところでございます。

 この設置状況でございますけれども、これは、いずれにつきましても平成三十年四月までに全市町村に設置することを目指しておりまして、認知症地域支援推進員につきましては、先ほど申し上げましたとおり、平成二十九年十二月末で千四百六十二市町村、認知症初期集中支援チームにつきましては、千百五市町村に設置されているところでございます。

 こうした推進員あるいはチーム等の設置を通じまして、相談支援等に努めてまいりたいというふうに考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 認知症と診断された方の多くは、私はどうすればいいんだろうか、今後どうなっていくんだろうかという不安感、絶望感を感じながら日々を過ごし、相談もできず、症状がどんどん進行していくといった状況かと思います。

 家族も、症状が出てからでは、毎日の生活に追われる日々です。認知症者への介護による身体的、精神的負担に加え、将来への不安から混乱に陥ってしまいがちです。働き盛りの世代がいきなり介護と向き合うのは困難であり、家族の介護のために離職された方々など、大変な御苦労をされているお話をよく聞きます。

 こうした認知症者やその家族の精神的不安を解消するためにも、支援の場においてカウンセラーをもっと活用する必要があると考えますが、政府の見解を求めます。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、認知症の方や家族の方に対しまして、できる限り早期から支援することが極めて重要であるというふうに考えております。厚生労働省におきましては、認知症と診断された直後から適時適切に切れ目なくサービスを提供できるような体制整備を推進しているところでございます。

 具体的なものでございますけれども、先ほど申し上げました認知症地域支援推進員あるいは認知症初期集中支援チームの設置のほかに、かかりつけ医の認知症対応力の向上研修の実施をいたしております。また、このかかりつけ医に対しまして助言や指導を行う認知症サポート医の養成研修の実施もいたしております。さらに、専門的な観点ということでございますけれども、認知症の方の早期診断と専門的な医療相談を行う認知症疾患医療センターの設置なども行っているところでございます。

 こうした取組を通じまして、早期診断から早期対応まで切れ目のないサービス提供を推進してまいりたいというふうに考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 最後に、健康運動指導士の活用についてお伺いをいたします。

 健康運動指導士とは、保健医療関係者と連携しつつ、安全で効果的な運動を実施するための運動プログラム作成や実践指導計画の調整などを行う役割を担う資格です。余りこの資格を御存じない方も多いかもしれませんが、長時間の講習会受講又は養成学校の養成講座修了を経て、試験に合格する必要がある、取得の難しい資格であります。

 健康運動指導士は、運動生理学、栄養学の知識や医学的な基礎知識を修得しており、個々人の心身の状況に応じた運動指導や生活習慣等の指導サポートをトータルで行うことが可能な資格であり、特に近年は、高齢者向けの健康教室、介護予防教室、転倒予防教室などで活躍をしております。

 今後更に高齢化が進む中、健康長寿社会の実現に向けた取組を加速化させていくためにも、健康運動指導士をもっと医療や介護の現場で活用すべきと考えます。いろいろな役割分担、領域があるのも理解をしておりますが、健康運動指導士の活躍の場を広げ、評価もしていただきたいと考えておりますが、政府の御見解をお願いいたします。

福田政府参考人 お答えいたします。

 健康運動指導士は、公益財団法人健康・体力づくり事業財団が実施をしております民間資格でございまして、先ほど先生お話ありました、保健医療関係者と連携しつつ、安全で効果的な運動を実施するための運動プログラムの作成及び実践指導計画の調整などを行う役割を担っている者であると承知をいたしております。

 認知症の方の健康維持のために運動は大変重要であり、健康運動指導士など、運動、身体活動支援を行う人材への期待が高まっております。

 現行におきまして、厚生労働大臣が認定する健康増進施設におきまして、健康運動指導士の配置を施設認定の要件の一つとしており、その活用を図っているところでございます。

 今後とも、認知症施策などさまざまな場面での健康運動指導士の御活躍の場が広がり、健康づくりの取組が進むことは望ましいものと考えております。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 最後に、健康運動指導士を今後更に活用する観点から、国家資格化の検討を進めるべき、また進めていただきたいと思いますが、御見解をお願いいたします。

福田政府参考人 お答えいたします。

 健康運動指導士は、昭和六十三年から厚生大臣の認定事業により開始され、生涯を通じた国民の健康づくりに寄与する目的で創設されたものでございます。創設以来、生活習慣病を予防し、健康水準を保持増進する観点から貢献してまいりましたが、平成十二年十二月一日に閣議決定されました行政改革大綱の決定に伴い、平成十七年度に国の関与が廃止され、公益財団法人健康・体力づくり事業財団が単独で実施することとなったところでございます。

 このような経緯から、健康運動指導士の資格に再び国が関与していくことにつきましては、国民の理解や社会的な意義についての議論が必要であるということ、さらには、既存の国家資格との整理というものが必要であることなど、慎重に考える必要があると考えてございます。

森(夏)分科員 ありがとうございます。

 現状では国家資格化は難しいようではありますけれども、健康運動指導士の活用をぜひ進めていただきたいと思います。

 認知症対策においても、運動が大変有効であると言われております。認知症や生活習慣病の方に、運動しましょうと言っても、何をすればいいのかわからない方が多いです。どんな運動をどれぐらい、また、どのように動けばよいか、的確に指導できる指導者が必要だと思います。家族の介護疲れの方にも、体を動かしてもらい、心身ともにリフレッシュしてもらうことも必要だと思います。

 健康運動指導士やカウンセラー、ソーシャルワーカー、認知症サポーターの適材適所での活用を進めることで、現場での負担軽減にもなりますし、家庭内で介護をされている方々の負担軽減にもなります。今後、更に老老介護や介護離職もふえるものと予想されますので、ぜひ、国民の皆さんが健康で幸せに暮らせる社会になるよう、サポートをお願いしたいと思います。

 本日は、長時間にわたり政府の御見解をお聞きできたことに、心より感謝をいたしております。身近に起きている認知症について、私たち世代がもっと真剣に取り組み、今後の日本社会を支えていかなくてはと強く感じております。本日はありがとうございました。

 これで質問を終わります。

星野主査 これにて森夏枝君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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