衆議院

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第1号 令和5年2月20日(月曜日)

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本分科会は令和五年二月十五日(水曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十七日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      大岡 敏孝君    土屋 品子君

      根本  匠君    牧原 秀樹君

      後藤 祐一君    阿部  司君

二月十七日

 牧原秀樹君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和五年二月二十日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 牧原 秀樹君

      泉田 裕彦君    大岡 敏孝君

      土屋 品子君    根本  匠君

      務台 俊介君    後藤 祐一君

      阿部  司君    池下  卓君

   兼務 勝目  康君 兼務 佐々木 紀君

   兼務 穂坂  泰君 兼務 堤 かなめ君

   兼務 野田 佳彦君 兼務 山田 勝彦君

   兼務 國重  徹君 兼務 中野 洋昌君

   兼務 福重 隆浩君 兼務 西岡 秀子君

   兼務 田村 貴昭君 兼務 福島 伸享君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   文部科学大臣政務官    伊藤 孝江君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            馬渡 直史君

   政府参考人

   (内閣官房こども家庭庁設立準備室次長)

   (厚生労働省子ども家庭局長)           藤原 朋子君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        北波  孝君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 友井 昌宏君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局参事官)            新発田龍史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 松井 信憲君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房危機管理・医務技術総括審議官)            浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  佐々木昌弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 堀井奈津子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           川又 竹男君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大西 証史君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           奈尾 基弘君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 中村 博治君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 岸本 武史君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       安岡 澄人君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         田中 一成君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            小林 浩史君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 奥山 祐矢君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

分科員の異動

二月二十日

 辞任         補欠選任

  土屋 品子君     務台 俊介君

  阿部  司君     堀場 幸子君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     泉田 裕彦君

  堀場 幸子君     池下  卓君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     土屋 品子君

  池下  卓君     一谷勇一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  一谷勇一郎君     阿部  司君

同日

 第一分科員穂坂泰君、第二分科員中野洋昌君、西岡秀子君、第三分科員勝目康君、堤かなめ君、野田佳彦君、田村貴昭君、第四分科員山田勝彦君、國重徹君、福島伸享君、第六分科員佐々木紀君及び第七分科員福重隆浩君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 令和五年度一般会計予算

 令和五年度特別会計予算

 令和五年度政府関係機関予算

 (厚生労働省所管)


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     ――――◇―――――

牧原主査 これより予算委員会第五分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管について審査を行うことになっております。

 令和五年度一般会計予算、令和五年度特別会計予算及び令和五年度政府関係機関予算中厚生労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 令和五年度厚生労働省関係予算案の概要について説明いたします。

 厚生労働省所管一般会計予算案の総額は三十三兆一千六百八十六億円であり、令和五年度からこども家庭庁に移管される経費を除いた令和四年度当初予算額三十二兆六千三百四億円と比較しますと、五千三百八十二億円、一・六%の増加となっています。また、厚生労働省所管特別会計予算案については、労働保険特別会計、年金特別会計及び東日本大震災復興特別会計にそれぞれ所要額を計上しています。

 以下、令和五年度予算案の重点事項について説明いたします。

 第一に、コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健、医療、介護の構築について、新型コロナウイルス感染症対策を着実に実行するとともに、次の感染症危機に備えるための対応能力の強化に取り組みます。あわせて、安心で質の高い医療・介護サービスの提供に向け、医療介護DXを推進するほか、医薬品等の品質、安定供給の確保を図るとともに、科学技術力向上やイノベーションの実現のため、がん、難病の全ゲノム解析や創薬力の強化に取り組みます。また、地域医療構想、医師偏在対策、医療従事者の働き方改革を推進するとともに、健康寿命の延伸に向けた予防、重症化予防、健康づくり、歯科保健医療の推進等に取り組みます。

 第二に、成長と分配の好循環に向けた人への投資について、令和四年十月に策定した「賃上げ・人材活性化・労働市場強化」雇用・労働総合政策パッケージに基づき、労働者の賃上げ支援、人材の育成、活性化、賃金上昇を伴う労働移動の円滑化等に取り組みます。また、多様な人材の活躍を推進するため、女性や高齢者、障害者、外国人、就職氷河期世代等の就労支援に取り組みます。さらに、多様な働き方を支援するため、非正規雇用労働者への支援、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保、働く方の相談支援、働く環境の改善等に取り組みます。

 第三に、安心できる暮らしと包摂社会の実現について、地域共生社会の実現に向けて、対象者の属性を問わず包括的に相談を受け止める重層的支援体制の整備、生活困窮者自立支援、引きこもり支援、自殺対策等を推進します。あわせて、障害者支援、水道の基盤強化、戦没者遺骨収集等の推進、持続可能で安心できる年金制度の確立等に取り組みます。

 なお、委員の皆様のお手元に資料が配付されていますが、一般会計予算案の主要経費別内訳及び特別会計予算案の歳入・歳出予定額については、お許しを得て、説明を省略させていただきます。

 コロナ禍からの経済社会活動の回復を見据え、国民の命、雇用、暮らしを守り、全世代型社会保障の構築を推進するとともに、未来を切り開く新しい資本主義を実現し、国民一人一人が豊かさを実感できる社会を構築するため、厚生労働行政の推進に一層努力してまいりますので、皆様の一層の御理解と御協力をお願いをいたします。

牧原主査 この際、お諮りいたします。

 厚生労働省所管予算の主要経費別概要につきましては、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

牧原主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔予算概要説明は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

牧原主査 以上をもちまして説明は終わりました。

    ―――――――――――――

牧原主査 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑時間はこれを厳守され、議事の進行に御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 なお、政府当局に申し上げます。

 質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。務台俊介君。

務台分科員 ありがとうございます。予算委員会第五分科会のトップバッターを務めさせていただくこととなりました。

 実は、今日の分科会に向けての質問を、二月の十六日にこの分科会へ配属になりまして、その日のうちに質問を通告させていただきました。そして、翌日の十七日には、私、松本にいましたが、リモートで微調整をさせていただいた。働き方改革が叫ばれておりますが、国会議員自らそういう対応をする。できれば、どの議員が、いつ質問通告をして、どういう形で調整をしたか、それも公表していく、こんなことも考えていただければというふうに思います。

 さて、今後の我が国が見舞われる最大の課題は、少子化だと思います。こども家庭庁を創設し、異次元の子供対策を推進することとされています。社会福祉というと高齢者福祉だと思い込んでいた事態は、少子化という局面で大きく変化しつつあるというふうに思います。少子化対策は、この数年で大きく充実していくものと想定しています。その意味では、現在政府が打ち出している少子化対策は、これからより進化していくもの、そんなふうに受け止めております。

 一方で、私の受け止めでは、現在の異次元の少子化対策は、子育て支援がメインだというふうに思っております。出産一時金の増額、児童手当や幼児教育、保育サービスの拡充、育児休業制度の強化、育児期の親の働き方改革といった対策は、子育て世代に大きな恩恵をもたらすもので、大変重要な政策だと思います。

 一方で、そういった政策で若い夫婦がもう一人子供を持とうと思うかは、別問題だと思います。本来は、なぜ少子化が進んだのか、科学的な分析がその前提となるべきだと思っております。

 この点について政府はどんなお考えなのか、伺いたいと思います。

北波政府参考人 お答えいたします。

 少子化の原因といたしましては、未婚化、晩婚化の進行や、夫婦の持つ子供の数の減少等がありますが、その背景には、出会いの機会の減少、若者の経済的な不安定さ、子育てや教育に係る費用負担の重さ、男女の仕事と子育ての両立の難しさなど、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が絡み合っていると考えております。

 そのような中で、夫婦の持つ子供の数というのは、一九七〇年代以降おおむね二人前後で推移していることから、少子化の原因としては、特に未婚化、晩婚化の影響が大きいと言われているものと承知しております。

 このような要因を一つ一つ取り除いていくことが必要であると考えております。

務台分科員 今、夫婦の持つ子供が二人前後だというお話がありました。日本では、結婚さえすれば二人近い子供が生まれてくる、そういう社会的実態があるということだと思います。であれば、おっしゃったように、現在の深刻な少子化は非婚化が原因であることは明らかだと思います。であれば、本来あるべき少子化対策は、結婚の奨励であることは明らかだと思われますが、しかし、これには抵抗感を覚える国民が大変多いと思います。戦前の産めよ増やせよの反省、そして、それを受けての産児制限、生き方を強制することへのためらいがそこにあると思います。自分の子供にさえ、まだ結婚しないのかと家庭で言えない、そんな実態があります。少子化対策としては、育児支援策が前面に出て、結婚支援策が前面に出にくいのは、そういう背景があろうかと思います。

 しかし、間接的な結婚支援策が封じられているということではないというふうに思います。

 厚生労働省所管の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調べでは、二十代後半男性の有配偶者率、結婚しているかどうか、これを見ると、年収が五百万台の男性に関しては、二〇一九年の調査では四三・九、その前の二〇一四年だと五三・三%ということで、半分近い方が結婚している。一方で、年収が百五十万円から二百万円未満の方は、二〇一九年の調査では結婚している人が一一・一%、その五年前の調査だと一四・七%という非常に低い、年収によって四分の一くらいの率に下がってしまう。

 年収の低い男性の多くは、学生などを除けば非正規労働だと想定できます。非正規の男性は結婚しにくい現実があるということではなかろうかと思います。日本では、結婚しないのではなくて、結婚できない、そういう現実も多々あるというふうに思います。

 この二〇一四年と二〇一九年の数字の傾向、年収と結婚率の関係について、厚労省のお考えを伺いたいと思います。

中村政府参考人 ただいま委員から御指摘いただきました点も含めまして、独立行政法人労働政策研究・研修機構が男性の有配偶率について分析した結果によりますと、年齢を問わず一定水準までは年収が高いほど配偶者のいる割合が高い、経年で見ますと、特に三十代前半は二百五十万円以下の層で長期的に減少しているという傾向があるものと承知をしているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、働く人の希望に応じた働き方を実現するとともに、少子化対策の観点からも若者の経済的基盤の強化を図ることが重要であると考えているところでございます。

務台分科員 そういう分析が出ているのであれば、正面から結婚を奨励する対策を講じる代わりに、最低賃金というのを思い切って引き上げ、非正規労働の所得を上げることが少子化対策につながると考えるべきだというふうに思います。

 さらに、少子化は特に東京を始めとして大都市で顕著であるということに注目すべきだと思います。現在は、最低賃金は東京が最も多くて、地方は低い、そんな現状にあります。若者が最低賃金の高い大都市に集中し、そしてそこで結婚できず少子化が加速するという現実は、政府の最低賃金制度がその原因の一つになっているのではないかという指摘すらあるというふうに思っております。この点について、厚生労働省の認識を伺います。

鈴木政府参考人 大都市への若者の移動の背景には、仕事のほか、教育や家族の事情があり、また、少子化の背景には、個々人の結婚や妊娠、出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が絡み合っておりまして、その要因の一つに若者の経済的な不安定さが挙げられると承知してございます。非正規雇用労働者など、経済的な不安定さを理由として結婚や妊娠、出産、子育ての希望を実現できていない方に対しましては、地方も含めまして、最低賃金の引上げが希望の実現に資するものであると認識しております。

務台分科員 ということであれば、最低賃金の引上げかつ都市と地方での最低賃金水準の格差を埋めること、これを少子化対策の一丁目一番地の政策に位置づけていただけないかというふうに思います。

 私は、自民党の中で、衛藤征士郎代議士の下、最低賃金一元化推進議員連盟の事務局長を務めさせていただいております。実は加藤大臣もそのメンバーに入っていただいているということでございますが、政府には累次の提言を提出してまいりました。大きな方向としては、最低賃金が少しずつ引き上げられ、都市と地方の格差も少しずつ埋められつつあるという、そんな現状にありますが、残念ながらそのスピードは緩慢だというふうに思います。

 政府におかれては、官邸主導で最低賃金の大幅引上げ、そして全国一元化の実現を、例えば十年くらいの計画で実現する、そういう議論の場を設定すべきだと思いますが、お考えを伺いたいと思います。

鈴木政府参考人 最低賃金につきましては、今年度は過去最高となります全国加重平均で三十一円の引上げを行ったところでございますが、政府としましては、できる限り早期に全国加重平均千円以上となることを目指しまして引上げに取り組んでいくこととしております。

 また、全国一律という御提言がございましたけれども、最低賃金法では、各地域におけます労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力を考慮して地域別最低賃金を決定することとされておりまして、全国一律の最低賃金ということにつきましては、特に地方におきまして、中小企業を中心に人件費が増加することによりまして経営が圧迫されるというようなこともございますので、慎重に検討する必要があるとは認識しておりますが、地域間格差への配慮は必要とされておりますので、近年は地域間格差に配慮しながら地域別最低賃金の目安額を示してきておりまして、その結果、最高額に対します最低額の比率は八年連続で改善しておるところでございまして、今後とも、そういった地域間格差も配慮しながら最低賃金の引上げを図ってまいりたいと考えてございます。

務台分科員 今の制度の下では全国で格差があるということを当然の前提としているということなんですが、世界を広く見ると格差のある国の方が少ないという現状がありますので、そろそろそういう現実を見て、制度の在り方を抜本的に見直す時期ではないかというふうに思います。

 そして、今御指摘がありましたように、中小企業の給与負担の問題があるという御指摘がありました。

 現在は、生産性向上投資を行った場合に財政支援をする、そういう仕組みがありますが、中小企業の負担増分に対して直接の財政支援をするということも必要ではないかというふうに感じております。この手法について検討すべきこともあえて申し上げますが、いかがでしょうか。

鈴木政府参考人 委員御指摘の最低賃金の引上げ分の直接補填につきましては、企業の生産性や稼ぐ力を向上させない限り企業収益の拡大にはつながらないということで、長期的な賃上げでありますとか事業の継続には結びつかないので、なかなか困難な点があろうかと思っておりますけれども、厚生労働省におきましては、中小企業の生産性の向上の支援としまして業務改善助成金というものを拡充してございまして、引き続き中小企業が賃上げしやすい環境整備に努めてまいりたいと考えてございます。

務台分科員 現行制度の説明を一生懸命していただいていますが、そろそろ抜本的な検討をしていただきたい、これは政治のレベルの話かもしれませんが、よくこういう議論があるということを共有していただきたいと思います。

 そして、最賃法で地域ごとの最低賃金水準を決定する要素のうち、事業の賃金支払い能力の要素があります。これを思い切ってなくすということもあるんじゃないかと思います。外国の法制度では、その要素はあえて入れていない国もございます。これについてのお考えも併せていただきたいと思います。

鈴木政府参考人 最低賃金の制度につきましては、各国、様々な制度がございますけれども、我が国の最低賃金制度につきましては、法的強制力をもちまして労働者の最低限度の水準の賃金を保障するものでございますので、国民経済や各地域の経済力とかけ離れた水準で決定されるべきものではないということから、企業の賃金支払い能力の要素が入っているというふうに認識してございます。

 政府としましては、繰り返しになりますけれども、生産性向上の支援や価格転嫁の実現などによりまして、中小企業が賃上げしやすい環境整備に総合的に取り組んでまいりたいと考えてございます。

務台分科員 この問題は大きな問題になっていると思いますが、少子化対策という観点でちょっと違う次元の議論をする、異次元の少子化対策と政府・与党が言っている以上は、我々もその方向を忘れてはならないというふうに思います。

 所得水準の問題に加えて、結婚の障壁となっている制度的課題について、この際、議論を開始すべきだと思います。

 一人っ子同士の男女が結婚してどちらかの姓に統一することに抵抗感を覚える若者が結構な率で存在するというふうに認識しています。伝統ある名字を自分の代でなくすことを懸念し、結婚を断念するケースを私も知っています。選択的夫婦別姓については自民党内でも議論が分かれていますが、少子化対策の面から検討の俎上にのせる時期なのかもしれないというふうに思っております。そうした考え方こそが、まさに異次元の少子化対策と言えるのではないでしょうか。

 厚生労働省は選択的夫婦別姓の所管ではないかもしれませんが、少子化対策を行っている立場から、あえてお伺いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 少子化の背景には、個々人の結婚や妊娠、出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が絡み合っていると認識しており、特に、委員からの御指摘のとおり、男女が互いの生き方を尊重しつつ、主体的な選択により、希望する時期に結婚でき、かつ、希望するタイミングで希望する数の子供を持てる、そういった社会をつくることは重要な課題であると考えております。

 選択的夫婦別氏制度につきましては、我が国の家族の在り方にも深く関わる事項であり、国民の間に様々な意見がございますので、国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら検討が進められていくものと認識をしてございます。

 いずれにいたしましても、結婚の希望がかない、また、どのような家庭の子供であっても全ての子育て家庭と子供をきめ細かく支援していくことが重要であり、こども政策担当大臣の下で子供政策の充実内容を三月末を目途に具体化していくこととしておりますので、厚生労働省といたしましても必要な連携をしていきたいと考えております。

務台分科員 繰り返しになりますが、少子化対策という観点の要素をちょっと重く見ていっていただきたい、そんなふうに思います。

 次に、産業用大麻の活用について伺いたいと思います。

 産業用大麻については、これまで殊のほか厳しい規制がありました。一九四八年制定の大麻取締法の下で、都道府県知事の許可による栽培制度の下、近年の大麻事犯の増加に伴い、原則禁止栽培としての運用がなされ、国内の栽培農家が激減し、我が国の大麻生産は壊滅状態になっています。

 他方、世界では、覚醒物質の少ない大麻の栽培が広がっております。その有用性について改めて注目が集まっております。

 厚労省でも、二〇二一年頃から規制緩和の動きがあり、大麻取締法の改正に向けての作業の進展が報道されています。その動きを厚労省に伺いたいと思います。

八神政府参考人 大麻取締法をめぐる議論についてお尋ねをいただきました。

 大麻取締法の改正につきましては、その方向性について、厚生科学審議会大麻規制検討小委員会におきまして御議論をいただき、昨年九月には、大麻由来医薬品を利用可能とすること、また、大麻の使用についての罰則を適用すること、さらに、産業用途の栽培免許の対象を有害成分の上限値以下の大麻草に限定するなど、栽培規制の合理化等の方向性が取りまとめられたところでございます。

 こうした議論を基にいたしまして、厚生労働省では、大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の改正を目指した検討を進めているところでございます。

務台分科員 大麻は大変優れた植物で、繊維、薬品、食品、燃料、建材、紙など、多様な用途があるというふうに承知しております。二酸化炭素の吸収源としても非常に優れた機能があり、大きな効果が見込まれています。こうした潜在的需要を見込み、私は、地域活性化と地球温暖化防止の観点から大麻復活に期待を寄せている一人です。

 実は、私の選挙区には、麻にちなんだ名前のある地区があります。麻をつむということで、麻績村という名前があります。美麻村という、美しい麻という地区もあります。昔は、絹と並び、麻が日本を代表する地域の特産物であった時代が長く続いておりました。中山間地の休耕田に大麻が栽培できると、農薬が不要な大麻は中山間地活性化に大きな効果がございます。先週末、地元の有権者の皆様との会合があったときにこの話を出しましたら、昔は麻をたくさん栽培していた、桑に替わる前は麻でこの地域は生きていた、そんなお話もありました。

 現に、若者が、都会から移住して中山間地で大麻栽培にかけてみたいという希望も寄せられています。しかし、残念ながら、地元の一定の理解と協力者の支援を得た上で県庁に栽培許可を申請しても、栽培経験がないから駄目だという県の基準によってはね返される、そんな事態が続いております。

 長野県庁では都会からの移住を奨励しているんですが、中山間地で大麻栽培にかけてみたいという若者の希望が、制度の運用の壁ではね返されるという皮肉な現状にあります。法律を厳格に執行する公務員の立場は分かるんですが、今局長がおっしゃった制度改正を見込み、現行制度の厳格な解釈を押し通す現場の制度の運用について、これを緩和する、これを法律改正を見込んで行うということも必要ではないかと思うんですが、厚労省のお考えを伺いたいと思います。

八神政府参考人 大麻栽培の免許に関する制度運用についてのお尋ねでございました。

 大麻草の栽培免許につきましては、まず、個々の都道府県の事情に応じて都道府県が実施をする自治事務でございますので、個別の運用について厚生労働省からお答えをすることは差し控えさせていただきます。

 その上で、各都道府県では、大麻草の適正な栽培を確保するとともに、その濫用を防止する観点から、必要な栽培免許基準を設けた上で適正に免許事務を行っていただいているもの、このように承知をいたしております。

務台分科員 私も週末に長野県庁のこの問題の担当の部署の方に来ていただいて、制度の運用を伺いました。そうしたら、厚労省の通知があって、制度の緩和の方向はあるんだけれども、その中で、経験者がしっかりいて、最後、どのように使われるかまでしっかり監視することが必要だ、そういう文言があるので、その文言に基づいて厳格に解釈しているという返事がありました。

 自治事務だという話がありましたが、現実は、厚労省の考え方を体してやっている、そんな動きもあるので、是非弾力的な対応を心がけていただきたい、そんなふうに思います。

 私としては、大麻に対する取組の改革の変化に合わせて、過度な規制運用は今から緩和していくことが求められているというふうに思います。

 今お答えいただいたんですが、改めて、この点についての考え方を伺いたいと思います。

八神政府参考人 大麻の免許に関しましての制度運用について、改めてのお尋ねでございました。

 大麻草の栽培免許につきましては、厚生科学審議会大麻規制検討小委員会でも、今御指摘ございました合理的な見直しといった方向性が示されてございます。現行法の範囲内で一定の合理化ができるものにつきましては、厚生労働省から都道府県に対して通知を発出をして、技術的な助言といったことも行っているところでございます。

 引き続き、免許事務が適正かつ合理的に行われるように各都道府県と連携をして対応してまいりたい、このように考えております。

務台分科員 現在、大麻栽培農家は、全国で、何と二十七軒に減ってしまっています。そういう中で、栽培経験がないから駄目だというと、これは、栽培経験をなくしてしまった運用の結果、自分で自分に球を投げているようなことになっていると思います。戦後七十年以上にわたり、大麻栽培の空白をつくり出したということ、これは、いろんな事情があって、いい悪いは言えないと思いますが、その意味で、今準備されている大麻取締法の早期改正を行うべきだというふうに思います。厚労省も、法律がたくさんあって、なかなかその中に入れ込むのは大変かもしれませんが、是非、できれば今国会に提出していただく、そんなことをお願いしたいというふうに思います。

 そして、安全、安心な無毒大麻の開発と、それを支える農業生産基盤の確立、そして、産学官連携の体制をつくり出す一大プロジェクトを推進していく必要があるというふうに思います。私も、院内の勉強会で、三重大学でこの取組をすばらしい形で進めている、そういう情報にも接しております。この考え方について、厚労省、そして農水省も絡む問題だと思うんですが、両省からお話を伺いたいと思います。

八神政府参考人 まず、厚労省からお答えを申し上げます。

 大麻規制の見直しの方向性につきましては、大麻規制検討小委員会の取りまとめを踏まえまして、本年一月に審議会で議論を行い了承されたところでございます。

 現在、これまでの審議会等での議論も踏まえまして、大麻取締法の改正に向けた検討を進めているところでございます。引き続き、法制化に向けて必要な検討作業を進めてまいりたい、このように考えております。

 また、大麻草の適正な栽培を管理する立場として、引き続き農林水産省を始めとした関係省庁とも十分に連携をしてまいりたい、このように考えております。

安岡政府参考人 農林水産省では、これまでも、工芸作物として、大麻などに対して、その生産性の向上であるとか生産体制の強化ということで、例えば、栽培に関する技術の確立だとか、マニュアルの作成、さらには農業機械の改良や導入などの支援を行ってきたところでございます。

 農林水産省としては、厚生労働省における今ほど来の検討の状況を踏まえながら、新たな制度になった場合は、それに対応した大麻の生産の在り方、こういったことをしっかり検討していきたいと考えております。

務台分科員 法律が改正されて、制度を受けての体制を構築するのは当たり前なんですが、そういう法改正が行われる前提で今から準備していただきたいというふうに思います。

 それから、大臣には、是非、大麻取締法を今国会に出すんだという決意を、できればお伺いできればと思います。

加藤国務大臣 今の、それぞれから答弁をさせていただいたように、この大麻規制については、既に小委員会の取りまとめで、医療ニーズに対応していくこと、他方で、薬物乱用へしっかり対応すること、大麻の適切な利用を推進すること、また、適切な栽培及び管理の徹底、こうした方向性は示されており、また、それを踏まえて、現在、私どもの方で関係省庁ともよく御相談をしながら法制化に向けて必要な作業を進めているところでございます。

 いつまでにというのはなかなか難しいわけでありますが、委員御指摘のように、その必要性、そのことは我々しっかり認識して取り組んでいきたいというふうに考えております。

務台分科員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

牧原主査 これにて務台俊介君の質疑は終了いたしました。

 次に、福重隆浩君。

福重分科員 公明党の福重隆浩でございます。

 私、大学を卒業して十八年間、電子部品を製造、販売する会社で営業マンをしておりました。今日はその経験や日頃地元を回る中でお伺いした声を基に質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 衆参の本会議において、山口代表、石井幹事長が賃上げについて質問をさせていただきました。岸田総理は、春の賃上げ交渉に向け、物価上昇を超える賃上げ、その先の構造的賃上げに取り組んでもらうべく、民間だけに任せることなく、政府として、政策を総動員して、環境整備に取り組むと御答弁をされました。私も全く同感でございます。

 日本銀行が開催した我が国の賃金形成メカニズムの資料によりますと、我が国の名目賃金が上がりにくくなっている要因として、以下の四つが指摘されております。

 まず、一点目は、労働者の構成変化や家計の労働供給に関する要因になります。これは、一九九〇年代以降、相対的に賃金水準が低いパートタイマー労働者の比率が継続的に上昇し、労働者全体の平均賃金を抑制する方向に作用したこと。また、二〇一〇年代には、女性や高齢者の労働供給がパートタイム労働者を中心に顕著に増加したこと。二点目は、企業サイドの人件費抑制要因が指摘されております。これについては労働生産性の低迷や厳しい市場競争環境が影響し、労働分配率が高止まりし、人件費を増やしにくくしている。三点目は、一部業種における制度的要因や業種間、企業間の雇用流動性の低さであります。これらにより、平均賃金の上昇が抑えられた可能性を指摘しております。最後、四点目は、労使交渉における賃上げ率の抑制であります。低インフレが人々の間でノルムとして定着する下で、労使交渉での賃上げ率が抑制された可能性を指摘しております。

 この有識者による四つの要因に関して、政府はどのように分析、見解をお持ちでしょうか。御答弁をお願いいたします。

加藤国務大臣 日本で賃金が上がってこなかった背景、様々な要因が考えられるところでありますが、今、御指摘があった点もいずれも賃金が上がらなかった要因として考えられるというふうに思いますし、重要な視点だというふうに受け止めております。

 それぞれ、今、挙げた要因とも共通する部分がありますが、私どもとして、我が国において賃金が伸び悩んだ背景には、バブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国と比べて低い経済成長が続いているわけであります。この間、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安から消費を抑制した結果、需要が低迷しデフレが継続する、こういう悪循環に入っております。そして、企業に賃上げを行う余力も生まれにくくなったということもあろうかと思います。

 また、加えて、この間、雇用者総報酬そのものは増加をしているわけでありますけれども、その内容を見ると、正規雇用労働者数も八年連続で増加しているものの、バブル崩壊以降、女性や高齢者等、パートタイム労働者を中心に、相対的に賃金水準の低い非正規雇用労働者がそれ以上に増加した、こうしたことも全体としての賃金の平均値を押し下げる要因の一つと考えているところでございます。

    〔主査退席、大岡主査代理着席〕

福重分科員 大臣、御説明ありがとうございました。認識は一致しているというふうに思っております。

 その上で、次の質問に入りますが、内閣府の年次経済財政報告によれば、好循環実現のためには、実質賃金が労働生産性の伸びに上回って上昇し、それに物価上昇率を上乗せした伸びで名目賃金がおおむね上昇していくことが求められるとされております。しかし、企業は、賃金決定に当たり、労働力の確保、定着や雇用の維持を重視しており、労働生産性や物価動向を重視していないとの指摘があり、その上で、賃金引上げの社会的雰囲気を醸成していくとともに、経済や物価動向等に関するデータやエビデンスを踏まえ、適正な賃上げの在り方を官民で共有していくことが必要であると指摘しています。

 大企業を中心に、一部の企業においては賃上げを公表しています。政策ももちろん肝腎なことではありますが、賃金引上げの社会的雰囲気の醸成について、政府はどのように考え、取組をされているのですか。御答弁をお願いいたします。

鈴木政府参考人 目下の物価上昇に対しまして、物価上昇に負けない継続的な賃上げを実現することが大変重要な課題と考えてございます。

 このために、総理からも、労使に向けまして、この春の賃金交渉に向け、物価上昇を超える賃金引上げに取り組んでいただきたいとお願いさせていただいているところでございます。

 また、民間だけに任せることなく、政府としても、中小企業におけます生産性向上などへの支援の強化など、政策を総動員して環境整備に取り組んでいるところでございまして、特に厚生労働省としましては、先月より、労働基準監督署におきまして、企業が賃上げを検討する際の参考となります地域の賃金や企業の好取組事例が分かります資料を作成しまして提供することによりまして企業の賃上げへの支援などを行うことや、ウェブサイトやインターネット広告を利用しまして各種の賃上げ施策、支援策、地域の賃金や企業の取組事例などについても周知、広報を行っておりまして、社会全体における賃金引上げに向けた機運の醸成に取り組んでまいりたいと考えてございます。

福重分科員 是非よろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 商工組合中央金庫の昨年十一月から十二月の調査によりますと、二〇二三年の賃上げ率は一・九八%になる見込みとのことでございます。新型コロナウイルス感染拡大で厳しい事業環境であった二〇二一年の実績は一・三一%であります。そして、二〇二二年の実績は一・九五%となっておりますので、二〇二三年の見込みは、ほぼ横ばい状態であると言えると思います。

 この調査では、回答企業の七二・五%が二〇二三年の定例給与、時給を引き上げるとの意向を示しているとのことでございます。企業側としては賃上げの意向はあるものの、賃上げの率が伸び悩む理由として、今後の景気動向が読みづらいことや、やはり価格転嫁が思うように進まないなどの問題があるのではないかと思います。

 私自身が群馬県内の企業を訪問する中で感じたことは、製造系の企業については、サプライチェーンの見直しなど、徐々にではありますが回復の兆しが見えてきております。他方、観光業の旅館やホテルなどは、人手不足が深刻で、人材派遣を依頼しても、人の奪い合いが起きている状況であります。また、公共工事は、契約時より資材の単価が高騰し、加えて資材の納品が遅れ、工期にも苦労をされている現状があります。

 価格転嫁についても、業界ごとで違いが顕在化してきております。中小企業庁の調査によりますと、製品やサービスの価格にどれだけ転嫁ができたかを価格転嫁率として公表しておりますが、その結果、全体の価格転嫁率が四六・九%になっておりますが、トラック運送業は二〇・六%、通信業が二一・三%であります。

 この問題について、昨年末、公正取引委員会が、下請企業との間で原料高によるコスト増を取引価格に転嫁するための協議に応じなかったとして、発注企業十三社・団体の名前を公表いたしました。また、日本商工会議所が行った昨年十一月の調査では、十分な価格転嫁が実現していないと回答した企業の割合が約九割に上っております。立場の弱い下請企業が価格交渉を進めるのは容易ではないという実態が浮き彫りとなりました。

 このため、企業間における適正な価格での取引が行われることを目指し、企業が表明するパートナーシップ構築宣言について、政府、経済界は積極的に普及に取り組んでおります。ただ、ここで問題として指摘しなければならないのは、下請企業の経営者とお話をすると、発注元企業の経営陣については認識をされていても、現場まで浸透していないのが実情であり、加えて、パートナーシップ構築宣言が形骸化しているとの指摘をいただきました。

 この発注元企業の経営陣と購買や契約業務などの担当者との意識の違いについて政府としてどのような認識をお持ちでしょうか。また、この現実についてどのように対応されるのか、御答弁をお願いいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 パートナーシップ構築宣言でうたわれております下請振興基準の遵守については、御指摘のとおり、親事業者の購買や契約などの御担当者まで必ずしも浸透していない企業も残念ながら少なくないものと認識してございます。このため、経営者に重要な経営課題としてこれを認識いただいて、担当者まで浸透するようしっかりと御指示いただくことが重要だと考えてございます。

 このため、パートナーシップ構築宣言につきましては、昨年、宣言の取組状況に関するアンケート調査を実施しておりまして、その結果について、宣言内容を社内の調達担当者にもしっかり認知していただくことが重要という点も含めて、約一万六千五百社の宣言企業に周知させていただいておりますし、一定以上の下請企業から評価の集まった百六十社については、その個社の結果についてのフィードバックも行わせていただいております。

 さらに、パートナーシップ構築宣言に限らない取組といたしましても、毎年九月と三月に価格交渉促進月間というのを実施しておりまして、昨年九月の月間の交渉、転嫁の状況として、今月七日には、多くの取引先を持つ百五十社についての結果を公表させていただいたところでございますし、交渉と転嫁の状況が芳しくない親事業者に対しては、大臣名での指導助言を実施しておりまして、これまで累計で三十数社行いましたけれども、今回、更に加えて約三十社について指導助言を行う予定でございます。

 こうしたサイクルをしっかり回していき、価格交渉の機運というのを浸透させて、実行に移していただけるよう取り組んでいきたいと思います。

福重分科員 ありがとうございました。

 更にちょっとお伺いをいたしますけれども、昨年十一月の中小企業庁が実施したパートナーシップ構築宣言取組状況アンケート結果概要で、取引先への宣言周知について、ホームページで掲載やプレスリリースが多く、宣言文配布やメールにより半数以上の取引先に周知している企業は、約三割程度となっています。まだまだ取引先に対しての周知が不足しているのが現状であります。この状況について、政府は、どのような要因があり、また分析をされているのか、御答弁をお願いいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁いたしました社内への浸透と同様、これも、パートナーシップ構築宣言でうたわれております下請振興基準を守るんだという自社の姿勢について取引先に周知をしておらず、価格交渉に積極的にまだ応じていない企業も残念ながら少なくないということだと認識しておりまして、これについても、やはり、経営者の方に重要な経営課題として認識いただいて、御担当者にしっかり指示をいただいて、取引先に周知がされる、こういうことが重要だと思ってございます。

 したがいまして、これについても、先ほどと重複いたしますが、アンケート調査の結果について、宣言内容を取引先の方にもしっかり認知していただくことが重要であるということも含めて一万六千五百社に周知しておりますし、先ほど申し上げましたように、個社へのフィードバックというのを行ってございます。

 それから、パートナーシップ構築宣言に限らないものとしても、価格交渉促進月間についての取組について先ほど申し述べたとおりでございますけれども、こうした指導助言の対象となった親事業者の中には、改善に取り組むために、経営者がしっかり指導して調達本部長名で下請事業者に対して価格交渉を積極的に申し出てほしい、こういう依頼を行っているような事例も多く出てきているところでございます。

 引き続き、こうした取組を進めてまいりたいと思います。

福重分科員 ありがとうございました。

 このパートナーシップ構築宣言に私は期待を持っておりまして、そして、これがやはり実効たらしめていくということが大事だと思っておりますので、しつこいようですが、更にちょっと質問させていただきますと、前の質問に関連しますけれども、同じアンケートの中に、取引適正化に関する取組についてのことも聞いております。

 宣言文ひな形では、価格協議の申入れがあった場合、協議に応じることとされております。その中で、申込みを受けた都度協議を実施している企業が約七割、申入れがあった場合でも協議を実施していない企業が一部存在しているとのアンケート結果がございました。

 この約七割についても、協議に応じてはいるが、実際、中小企業から価格転嫁ができないとの声が多くあり、協議は行うが価格転嫁には応じられないとのスタンスが、発注元企業、大企業にあるのではないでしょうか。

 この状況を変えていかなければならないと思います。政府を挙げて、中小企業が価格転嫁をできる機運を醸成していくべきだと強く感じております。政府の御見解をお伺いいたします。

 また、アンケートの中で、不要な型の廃棄を促進するとともに、下請事業者に対して型の無償保管要請しないこととされておりますが、無償で型の管理を取引先に依頼しているとする企業が二割程度存在しているというアンケート結果がございます。

 二割というのは数字的に高くないのではありますけれども、この実態とともに、さきの質問の価格転嫁への機運醸成と併せて、政府の現状認識の御答弁をお願いいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、原材料価格またエネルギーコストが高い、それからこういった物価高の中でも中小企業が賃上げを実現する、こういうことのためには価格転嫁の実現というのは不可欠でございまして、まさにこうした機運醸成のために、総理それから西村経産大臣、こういったところから常日頃から御発信いただいておりまして、官邸での会議等も活用して業界団体や企業への発信を行ってきたところでございます。

 それから、そもそも、この価格転嫁というのが非常に大事なんだ、これを経営者の方にしっかり認識していただくんだということについては、今るる御答弁申し上げさせていただいたとおり、価格交渉促進月間でありますとかそれに基づく指導助言、それから下請Gメンというのをしっかり活用して御助言申し上げていく、こういったことで、皆でやっていくんだというところを醸成させていただいているところでございます。

 加えまして、型取引についても御質問ございました。

 これについては、令和元年に型管理についての報告書というのを取りまとめさせていただいて、三類型に取引を整理いたしまして、それぞれに応じたあるべき姿を提示し、業種別のガイドラインや自主行動計画への反映を促すなどの改善に取り組んできたところでございます。

 それでも一定割合、先ほど御指摘いただいたように、パートナーシップ宣言のアンケートの中で、二割程度は無償で型管理を依頼しているというのがあるのは事実でございまして、この型管理も含めて、下請振興基準に照らして問題となるおそれがある、こういう企業百八十八社というのがこのアンケートで浮き彫りになりましたので、また個々の経営者の方に対して、これをしっかりやっていただきたいという旨のフィードバックを実施したところでございます。

 こうした取組をしっかりやっていくことによって、型管理も含め、全体の機運醸成含め、やっていきたいと思います。

福重分科員 ありがとうございました。

 今、下請Gメンとのお話がございましたので、そのことについてお聞きをしたいと思います。

 価格転嫁しやすい環境を整備するため、実態を調査する下請Gメンの予算は、令和四年度二十一億三千万、予算が使われております。令和四年度、今、年度中でございますが、現在までのヒアリング調査の結果や、調査結果による改善された実績などをお示しいただきたいと思います。

 また、令和五年度においては二十四億円を計上いたしました。これだけの予算を計上するのであれば、今年度より更に実効性が上がらなければ意味がありません。下請Gメンが中小企業を訪問し相談を受ける、逆に、中小企業からの相談も当然あると思います。実効性を更に上げるための具体的な方策を御答弁お願いいたします。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきました下請Gメンでございますが、このGメンがヒアリングによって収集した情報を業界別、企業別に整理いたしまして、情報提供者がその親事業者等に特定されないよう細心の注意を払った上で、業界団体や個別の事業者に働きかけを行って、取引適正化を図るという取組をやってございます。

 このヒアリング調査の結果を、るる申し上げております価格交渉促進月間のフォローアップ調査の中で、この一環として機能させて、どこに指導助言をしっかりしていくべきか、こういった有益な材料としてございます。

 それから、所管省庁による二十の業種の業種別ガイドライン、それから五十四団体の自主行動計画、こういったものを策定していただいておりますが、これをどう改善していくかということについて、業種ごとに御指南申し上げるといいますか、これにGメンの結果というのを活用させていただいております。

 今後、この二つの取組、今申し上げた取組について、こういったサイクルをしっかり体系化、強化をして毎年繰り返していくことで、その実効性を高めていこうと考えておりまして、Gメンの人数もこの一月から三百人体制に強化して、令和五年度は年間約一万二千件のヒアリング調査を実施予定でございます。これによって、指導助言についての、少し、調達本部長でいろいろ取引先に依頼をして改善するという効果があるというのも先ほど申し上げたとおりでございます。

 引き続き、こうした取組を粘り強く実施してまいりたいところでございます。

福重分科員 ありがとうございました。

 前の質問にも関連いたしますけれども、下請Gメンの調査で下請代金法上の明確な違法行為が疑われる可能性があった場合は、関係機関と情報を共有し、発注元企業に対する本格的な聴取、裏取りが行われます。そこで裏づけられれば、下請代金法に基づく改善指導に入ることになると思います。

 しかし、中小企業側は、取引先の発注元企業から、下請Gメンに相談したことや、情報を漏らしたなどと言われないか、それにより更なる価格交渉が不利にならないか、最悪の場合、取引停止になってしまうのではないか、不安の声が寄せられております。

 このように弱い立場にある中小企業側の不安解消についてはどのような方策を考えておられるのか、御答弁をお願いいたします。

小林政府参考人 御指摘いただきましたような御懸念の声というのは、一定程度、中小企業の方にあるということを認識しておりまして、細心の注意を払って下請Gメンの運用を行っているところでございます。

 まず、下請側からお話を聞く際の御要望に応じて、例えば、Gメンの服装であるとか、それから御訪問場所、こういったものも柔軟に対応するようにして、中小企業庁が訪問した事実などが知られることのないような工夫をしております。

 その上で、親事業者様との取引や交渉、これは下請事業者様にとっての企業秘密だということであることをしっかり認識の上、ヒアリング情報については、情報提供元の下請事業者が取引先の親事業者の方に特定されることがないようにしておりまして、具体的には、集めたヒアリング情報は、下請事業者の名前を匿名化し、さらに、同種の生声を複数集めた上で、これを初めて親事業者、業界団体に提供するといった工夫をしているところでございます。

 引き続き、御懸念がある、情報提供元の特定ということにならないように、下請Gメンの執行に努めてまいりたいと思います。

福重分科員 是非、秘匿性ということを御努力いただきたいなというふうに思います。

 冒頭申し上げましたけれども、私は、営業マンとしての経験からすると、大手の発注元企業から年に二回の定期的なコストダウン要求があって、幾ら製品の適正価格のことを申し上げてもなかなか応じてもらえず、その相手側は競合他社のことを引き合いに出して強烈に、コストダウンをのまされたという苦い経験があります。

 下請代金法では、そういった買いたたきというものは禁じられているわけでございますけれども、企業規模によって下請法が適用されない場合なんかもございますけれども、是非こういった弱い立場にある下請企業を守って、そして中小企業も価格転嫁ができ、そして賃上げができる環境をつくるということが今大事なことだというふうに思っております。

 今、大手さんが様々賃上げのことをやってくださっておりますけれども、含み資産がある中にあってその原資はあるんですけれども、中小企業の皆様は、本当にこのコロナ禍で大変な状況の中で、今その原資がない。このままいくと、大手に人が、どんどん人材が流れて、中小企業には人が来なくなるというような懸念が今本当に中小企業の皆様にはおありでございますので、是非こういった取組を積極的に行っていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。

 昨年の臨時国会において、岸田総理は、個人のリスキリングの支援に五年で一兆円を投じるとの表明をされました。

 経済産業省では、個人が民間の専門家に相談し、リスキリングから転職までを一気通貫で支援する仕組みである、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業を整備し、令和四年度第二次補正予算で七百五十三億円が盛り込まれました。

 ただ、予算措置はされましたが、内閣府の調査によると、自己啓発の処遇への反映が十分ではない企業は四割強となっております。また、自己啓発を支援する制度がない企業や、制度があっても活用されていない企業が五割に上ります。

 経済産業省の調査によると、企業が高等教育での就学を認めない理由として、本業に支障を来す、教育内容が実践的ではなく現在の業務に生かせないことなどを挙げられております。

 さらに、帝国データバンクの資料によりますと、中小企業の声として、中小企業の多くは目の前にある障害をクリアすることが第一であり、十年後、二十年後を見据えた人材育成は難しい、また、せっかくお金と時間をかけて育成しても、スキルを身につけた後に転職されてしまったらと考えると、二の足を踏んでしまうなどの経営者、企業側の意識もあります。

 政府が掲げる人への投資、労働移動の円滑化、所得の増加が進展するには、大企業だけではなく、中小企業や幅広い業種でのリスキリング推進が欠かせないと思います。私は、まず、企業がリスキリングを含む社員教育を、コストではなく未来への投資と捉える経営陣の意識づけ、変革、醸成が肝要だと思っております。この点について、政府の御見解をお伺いいたします。

 また、リスキリングについては、そのノウハウの普及も大事であると思います。リスキリングを進めるには、時間や費用、プログラムの作成といった問題などが指摘されています。この点、既にリスキリングに取り組んでいる企業や自治体の例が参考になると思います。ある企業では、プログラミングやIT機器の操作方法、経営管理などを学べる動画を一万以上用意し、社員が無料で視聴できるようにしているとのこと。また、企業と自治体が連携してリスキリングを応援する団体を設立し、デジタル技術の向上につながる二百以上の講座を設けているケースもあります。

 政府は、こうした好事例の周知にも努め、リスキリングを後押ししてもらいたいと思いますが、政府の御見解をお伺いいたします。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、企業における学び、学び直しの機運の醸成や環境整備の促進は、非常に重要なものと考えております。

 このため、厚生労働省におきましては、職場における人材開発の抜本的強化を図り、労働者の自律的、主体的かつ継続的な学び、学び直しを促進するため、労働政策審議会での議論、検討を経まして、学び、学び直しの具体的内容や実践論の全体像を示したものといたしまして、職場における学び・学び直し促進ガイドラインというものを策定いたしました。

 具体的には、まず、基本的な考え方といたしまして、変化の時代における労働者の自律的、主体的かつ継続的な学び、学び直しの重要性等、学び、学び直しにおける労使の協働の必要性等を整理いたしました。その上で、企業、労使の実践に資するよう、御指摘の経営者の役割を含め、取組の考え方、留意点等、推奨される取組例の具体例の提示や、これらに対応する公的な支援策、また、参考となる企業事例等を紹介しております。このガイドラインにつきまして、経済団体を始め関係団体等に積極的な周知を行ってございます。

 さらに、令和五年度予算案におきましては、このガイドラインについてのシンポジウムの開催等を行うための必要な経費等を盛り込んでおりまして、中小企業を始めとした経営者や労働者に広く周知等を行うため、企業の好事例の周知やオンライン配信等も検討しております。

 御指摘の経営者の意識の変革の重要性も踏まえつつ、労使の御協力も得ながら、企業内における学び、学び直しを後押ししてまいりたいと考えております。

福重分科員 是非よろしくお願い申し上げます。

 もう時間の関係で、ちょっと端的にお伺いしたいんですけれども、ヤングケアラーについてお聞きいたします。

 国が令和二年度の全国的に行ったヤングケアラーの実態調査によると、中学二年生の五・七%、高校生の四・一%が、何らかの世話をしている家族がいると回答いたしました。この問題は今本当に深刻で、私の地元の高崎では、ヤングケアラーSOSということで、自治体が全面的な支える支援をしております。

 こういった中にあって、政府として、どういう認識にあり、そして、どうやってこの問題を改善していこうとされているのか、その認識の御答弁をお願いいたします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 ヤングケアラーの方々、家庭内のデリケートな問題など表面化しにくい課題を抱えている場合もございまして、様々な関係者との連携を密にすることで、こうしたヤングケアラーを早期に把握して支援していくことが重要でございます。

 令和四年度からは、ヤングケアラー支援のコーディネーター配置を行う事業に取り組み、学校、地域の支援者団体がヤングケアラーを把握した場合に、自治体の担当部門に情報を寄せられるようにする体制の整備を進めているところでございます。

 この際ですけれども、委員御指摘のとおり、個人情報の保護にも留意が必要だと考えております。この点、本年四月に作成をいたしました多機関・多職種連携のヤングケアラー支援マニュアルにおきまして、個人情報の共有に係る取組や考え方を整理しておりまして、こういった内容についても自治体に詳しく周知をしているところでございます。

 また、個人情報の保護に加えまして、学校や地域の関係者といった関係者がヤングケアラーの問題について更に理解を深めていただくことも必要でございます。このため、自治体において地域の関係機関の職員に対し研修を実施する場合の財政支援を行っているところでございます。

 これらの取組を通じまして、関係機関が一体となってヤングケアラーを支援していくための体制整備、引き続きしっかりと取り組んでまいります。

福重分科員 子供たちに本当に伸び伸びと学校で学び、友達と遊び、そしてすばらしい時代を過ごしていただきたいと思います。大事な取組だと思いますので、是非、政府、力を合わせてこの問題に取り組んでいただきたいと思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

大岡主査代理 これにて福重隆浩君の質疑は終了いたしました。

 次に、山田勝彦君。

山田(勝)分科員 立憲民主党、長崎二区の山田勝彦でございます。

 加藤大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 二〇二一年七月二十九日、広島高等裁判所は、黒い雨訴訟において、原告の主張を全面的に認める判決を下し、八十四人全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳の交付を命じました。そして、救済拡大のために新たな認定基準の運用が始まりました。しかし、厚労省は、その対象を広島に限定し、長崎を対象外としました。もう一つの被爆地である長崎が国による差別を受け、長崎の被爆者が切り捨てられてしまいました。

 これに対し、長崎県は、昨年七月に、厚労省に、一九九九年度の調査を基にした長崎における黒い雨などの記録を客観的記録として、報告書を厚労省に提出し、長崎の被爆者の救済を求めました。しかし、厚労省は、一月十六日に見解を示し、過去の訴訟との整合性などを理由に、被爆体験者を被爆者と認めないことを明らかにしました。

 まず冒頭、同じ被爆地でありながら長崎への差別と、長崎県の黒い雨が降った事実や被爆地外での被曝を示した報告書を認めないとした厚労省に対し、長崎の被爆者や支援者の皆様、そして長崎市や長崎県を代表し、強く抗議いたします。

 その上で、質疑に入ります。

 黒い雨訴訟により、政府は昨年から新たな救済制度を開始し、広島の被爆者の皆様に新たに原爆手帳が支給されるようになりました。昨年十二月末までの申請数が四千二百八十一件中、手帳交付数三千二百件、保留が千八件、否認が七十三件ということです。広島の現状において、手帳の交付が遅れている点や否認者が出ている点など、問題があるようです。

 その中でも本質的な課題があります。厚労省が新たに示した被爆者援護法第一条第三号の審査方針には大きな矛盾があります。国が受け入れた広島高裁の判決内容は、あくまで、雨にたとえ打たれていなくても、被爆者に該当する、放射性微粒子を体内に取り込むことで内部被曝による健康被害を受ける可能性があったというものです。それにもかかわらず、国は、黒い雨に遭った、かつ、十一種類の疾病を条件としています。判決内容と実際の運用が全く異なっています。

 司法の判決を受け入れておきながら、なぜ行政府がこのような恣意的運用を行うのでしょうか。これは明確な三権分立に反しており、憲法違反ではないでしょうか。加藤大臣、お答えください。

加藤国務大臣 いわゆる黒い雨訴訟については、令和三年七月、広島高裁判決が出されたわけでありますが、それに対して総理談話を出させていただいて、まずその中で判決の問題点について立場を明らかにした上で、上告は行わないことにいたしました。

 具体的には、八十四名の原告の皆さんに被爆者健康手帳を速やかに発行するとともに、原告と同じような事情にあった方々については、総理談話を踏まえ、判決の内容を分析した上で救済の基準を策定し、訴訟外においても救済するとしたものであります。

 具体的には、被爆者認定方針をお示しをさせていただき、原告に共通する事情の下に要件を設定いたしました。原告八十四名の全員が広島への原爆投下後の黒い雨に遭ったことと、十一類型の疾病を抱えていたことが確認されていたことから、この要件を被爆者健康手帳の交付要件にしたものであります。

 そのため、国において被爆者要件を不法に狭めたという御指摘は当たらないというふうに考えているところでございます。

山田(勝)分科員 全く答えられておりません。私が聞いているのは、司法、立法、行政の三権分立に対し、政府が、国家権力の濫用を防ぐため、この三権分立、日本国憲法の要です。今回の司法判断を無視した政府による恣意的運用が憲法違反に当たるのかどうなのかということをお聞きしたわけです。全国各地におられる被爆者の皆様にとって、到底納得のいく回答でなかったことは明らかです。

 これ以上は時間がもったいないので、次の質問に入らせていただきます。

 このように、広島高裁の判決と異なり、不法に被爆者要件を狭めている政府の運用は、広島における新たな分断を招いているのではないでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、私どもがこの判決を受け入れた際に総理から談話を発表させていただいているわけであります。その中で、ちょっと詳細を申し上げると時間がかかりますのではしょりますけれども、我々は、やはり受け入れられない部分はこういうことがあります、しかし、判決の結果に関して我々なりに整理すれば、その上で受け入れることができますということで、先ほど二つの要件を申し上げたということでございますので。

 そして、それについては、広島市、県ともよく調整をした上で、現在、それからいただいている、同じような方々に対する、申請を受け付け、そして現在その中身を検討させていただいているというのが今の状況であります。

山田(勝)分科員 ありがとうございます。

 本来の広島高裁の判決どおりに運用していただいていないことによって、新たな悲しみが、広島の中だけではなく、もう一つの被爆地、長崎にも及んでいます。

 被爆者認定の新たな審査方針では、初めから長崎を認定しないという結論ありきで、そのための手段として、黒い雨を要件としているのでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 今申し上げたように、この被爆者認定指針、これは、総理大臣を踏まえて、そして私どもが中で精査をし、広島高裁等の判決による、原告に共通する事情の下に要件を設定したわけであります。その際、原告八十四名の方全員が広島への原爆投下後の黒い雨に遭ったことが確認されたこと、この要件を被爆者健康手帳の交付要件にしたものであり、御指摘のように、長崎を排除するという意図でそうした基準を設定しているわけではないということであります。

山田(勝)分科員 ありがとうございます。長崎を排除する基準ではないという御答弁をいただきました。

 一点、確認させてください。

 ということは、つまり、長崎においても黒い雨が降ったという事実が証明されれば、当然、長崎にも新基準が適用されるという解釈でよろしいですか。

加藤国務大臣 今回、まさにその前提として、現在、広島について議論させていただいたということであります。長崎については、この後、多分御議論があるんだろうと思います。

 長崎から出てきた報告書に対しては、我々は受け入れることはできない。しかし、現在、長崎県における様々な事情等については、今訴訟等もございます、いろいろなことが動いている。そうした中で、長崎県や市もいろいろ御苦労いただきながら認定に当たっていただいている。そうした状況を私どもは十分よく理解をしながら、引き続き、よく長崎県また長崎市と連携を図っていきたいというふうに思っています。

山田(勝)分科員 長崎市、県と連携を図っていきたいというお答えをいただきました。

 それでは、その重要な長崎県の報告書に関する質疑です。

 降雨体験に関する証言に対し、バイアスという指摘が国の反論の中にありました。先入観や偏見が影響して偏った評価がなされていると言われている意味と同じです。戦争被害者が、雨が降っていないのに降ったと証言したと言われるのでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘のバイアスに関する国の回答でありますが、これは、まさに平成三十年の福岡高裁判決で、被爆者、体験者の証言についてバイアスが介在している可能性を否定できないことが判示をされております。これを踏まえて回答させていただいたものであります。

山田(勝)分科員 ありがとうございます。

 確かに、当時は、福岡高裁の判決にそのようにありました。長崎県は、その後、公的な専門家会議を自ら設置し、黒い雨が降ったとする、結論づけた報告書、つまり、当時は被告であった長崎県と長崎市は、現在は被爆者の皆さんを救うために国に報告書を上げました。これはつまり公文書となります。当事者である長崎県、市が直接認めた証拠となっており、当然に事実認定されるべきと考えます。当時とは全く状況が変わっている。長崎の被爆者の皆様と最も近くで向き合い続けた県と市が、黒い雨は長崎にも降ったと結論を出したのに対し、なぜ国がこの公文書を否定されるのでしょうか。

 地方のことは地方で決める。地方自治の基本原則には、地方公共団体は、住民の参画と福祉の増進に努めるべく、住民に身近な公共的事務について処理する固有の権能を有する、この権能は国政において尊重されなければならないと定められています。この長崎県の自治権、全く尊重されていないのではないでしょうか。

 加藤大臣、政府が進める地方分権改革とは一体何でしょうか。長崎県の公文書を無効化した厚労省のこの行為は、地方自治の根幹を揺るがす大変な事態だと考えております。長崎県の報告書を受け入れ、長崎の被爆者も、広島同様に、新たに救済拡大すべきではないでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 長崎からいただいた報告書については、私どもも、誠心誠意、中で検討させていただいて、そして、それについて私も説明を受けて、了とした上で報告をさせていただいたということで、別に地方自治云々というか、地方とのやり取りということでお返しをさせていただいた、こういう性格のものであります。

山田(勝)分科員 それでは、一体なぜ、長崎の被爆者に適用されないのでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 長崎県の調査を基にした報告書について、その精査、分析を行いまして、これまで、長崎の被爆体験者に関する過去の最高裁判決などを踏まえて、いわゆる被爆体験者を被爆者として認定することは困難である旨を回答させていただいたところでございます。

 一つ一つについては、国の報告書に書いておりますので、重複は避けさせていただきたいというふうに思いますけれども、厚労省としては、長崎におけるこれまでの判決によりなされた事実認定にのっとって被爆者行政を執り行う必要がある、こういうふうに考えているところでございます。

山田(勝)分科員 簡潔な御答弁、ありがとうございます。

 それでは、昨年も何度もこのやり取りをさせてもらっておりますので、まず、国が毎回提示される長崎における最高裁判決がその根拠となっておりますが、大前提として、広島と長崎では裁判の中身が異なり、争点が全く違っています。

 長崎は、そもそも広島のような黒い雨訴訟は行っていません。長崎の訴訟は、爆心地から十二キロ以内で原爆であったにもかかわらず、理不尽な行政区分の線引きによりいまだに被爆者と認められていない被爆体験者を、被爆者と認めてほしいと訴えた裁判です。

 その大前提で、健康被害について。厚生労働省は毎回指摘をされています。

 確かに、長崎における最高裁判決の文言に、長崎原爆が投下された際爆心地から約五キロまでの範囲内の地域に存在しなかった者は、その際に一定の場所に存在したことにより直ちに長崎原爆の放射線により健康被害を生ずる可能性がある事情の下にあったということはできない、このような箇所があります。つまり、爆心地から五キロ以上離れた場所では、その場所にいたということだけで、いたという事実だけでは被爆者に認定できないと判断していました。

 これに対し、広島の黒い雨訴訟の原告は、爆心地から十キロから三十キロの範囲にいました。国は、そんなに遠くで被曝する可能性はない、なぜなら初期放射線は二・五キロまでしか届かないからと主張していましたが、広島の原告は、十キロから三十キロ離れた地点にいただけで被曝するとは言っていません。つまり、十キロから三十キロ離れた場所にいて、かつ、黒い雨や灰といった放射性降下物を浴びたと主張していたわけです。

 一方、長崎における最高裁判決は、五キロ以上離れた場所にいただけで被曝する可能性は否定しましたが、五キロ以上離れた場所にいて、かつ、放射性降下物に被曝した可能性は否定していません。つまり、広島の黒い雨訴訟判決のような司法判断は、長崎ではまだ出ていないのです。よって、広島の黒い雨訴訟と同じ扱いを長崎でもするべきだと主張したとき、それを否定する根拠に、厚労省が持ち出す長崎の最高裁判決はなりません。

 以上述べてきたように、長崎における最高裁の判決内容と広島高裁の判決内容は何ら矛盾しないため、加藤大臣、広島同様に長崎の被爆者も救済すべきではないでしょうか。政治決断していただけないでしょうか。

加藤国務大臣 それぞれ、長崎もいろいろな事情があるということは我々もよく承知をしているところであります。

 その上で、るる同じことを申し上げても恐縮でありますけれども、広島は、広島の高裁の判決も踏まえて、私どもなりにそれを受け止めて、そして総理談話を発表し、そしてそれに基づいて指針で今対応させていただいている。

 一方で、長崎については、既に報告書に対する回答でお示ししたように、これまでの福岡高裁判決あるいは最高裁判決等々を踏まえ、現状において、長崎側の報告書、これを受け入れることはなかなか難しいというふうに考えているところでございます。

山田(勝)分科員 難しい点を端的に、具体的に御指摘ください。

加藤国務大臣 もう一つ一つ、それは報告書の中で書かせていただいておりますけれども、バイアスについて反論させていただきましたが、それ以外に、長崎報告書の、高い線量ということについては、平成二十八年の福岡高裁判決では、原爆による大量の放射性降下物を浴びたり、大量の放射性物質を呼吸、飲食物付着などにより体内に取り込んだりしたと推定することはできないことが判示されていることを踏まえて、回答させていただいたところであります。

 また、長崎報告書の、黒い雨が降ったことは認められていることについてでありますけれども、平成三十年の福岡高裁判決では、長崎周辺の地域で、西山地区以外に原爆投下間もなく降雨があったとの客観的な記録は見当たらないことが判示されていることを踏まえて、この点を踏まえて回答をさせていただきました。

 それ以外にも幾つか論点を挙げさせていただいておりますけれども、それぞれについては私どもの回答の中でお示しをさせていただいているというふうに考えています。

山田(勝)分科員 ありがとうございます。

 線量についてなんですが、新たな広島で始まっている救済に向けた審査方針には、そもそも線量は基準にないはずです。高いから、低いから、そういうことではなく、黒い雨に遭ったかどうか、十一種類の疾病を患っているかどうかが基準であって、まず、その点、大変矛盾があると思います。

 次に、黒い雨が降ったという客観的な記録がないという最高裁判決についてですが、この文章を毎回、厚生労働省は都合よく、解釈として、切り取られてお示しされますが、この文章、前文には、放射性降下物は地表に到達するまでの間に上記の風によって拡散したと考えられることという文章があり、また、この後文には、放射性降下物が東側の地域よりも長い時間をかけて徐々に降下したことが確認されるとあります。

 つまり、この判決文全体を読めば、放射性降下物は長崎の空で拡散し、時間をかけながら降下されたとも書いてあるのです。つまり、黒い雨にこだわり続ける根拠が全く理解できません。

 加藤大臣、これは大事な議論なんですけれども、そもそも、黒い雨の正体とは放射性微粒子を含んだ雨のことであり、当然ながら、そこには、灰やすすも含む、放射性降下物の一つにしかすぎません。長崎県の報告書にもあるとおり、マンハッタン調査により、爆心地から十二キロ近辺で放射線量が実測されています。放射性物質が広範囲に降下していたことは科学的に証明されているのです。大臣がおっしゃっている理屈であれば、黒い雨が降ったという記録がないということですが、放射性降下物が降下して、降り注いでいたことは明らかに事実としてあります。

 放射性降下物の一部でしかすぎない黒い雨に本当にこだわるんでしょうか。放射性降下物による被曝は、黒い雨による被曝と同じでよろしいですね。お答えください。

加藤国務大臣 まず、今、マンハッタン調査の御言及がございましたが、過去の長崎の裁判でも争われ、その結果も踏まえて、これも平成三十年福岡高裁判決で、被爆者未指定地域にいた方は、被爆者援護法第一条第三号に規定する、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者に該当しないとの判示がなされており、この判決が判示する事実認定と整合性を欠くような施策を実施することは困難であるということをまず申し上げなければならないというふうに思います。

 それから、あともう一つ、何でしたっけ。ごめんなさい。

山田(勝)分科員 放射性降下物による被曝というのは、そもそも、黒い雨自体が放射性降下物の一部にしかすぎません。大臣に確認したいことは、放射性降下物による被曝というのは、黒い雨による被曝と同じということでよろしいですね。

加藤国務大臣 それに対して、広島高裁の総理談話の中でも、黒い雨に打たれていなくても、空気中に滞留する放射性微粒子を吸引して放射性微粒子を体内に取り込んだ、あるいは地上に到達した放射性微粒子が混入した飲食物を摂取して放射性微粒子を体内に取り込んだ、こうしたことは容認できるものではないということを談話では申し上げているところであります。

山田(勝)分科員 そこが大きな問題です。

 あくまで広島高裁は、内部被曝も含め、その可能性を広く認めるべきだという趣旨の判決。それに対して、今、加藤大臣が言われたように、そこは認められないとおっしゃいます。では、なぜ最高裁に上告しなかったんでしょうか。広島高裁の判決を受け入れた以上は、その内容を忠実に運用していくのが当然ではないでしょうか。法的に捉えても、全く、この運用、長崎の被爆者に適用することに問題ないことが複数の弁護士の証言からも明らかです。

 では、一体なぜここまで被爆者の救済をためらうのか、大変疑問です。財源の問題なのでしょうか。

 長年、被爆体験者として差別され続けてきた方々を被爆者として救済する場合の予算について調べました。

 国会図書館、お示ししている国会図書館の資料にあるとおり、一人当たりの年間予算は約百万円です。現在の長崎の被爆体験者の数は約七千二百人です。被爆体験者を被爆者とした場合の予算は、つまり、約七十二億円程度と試算できます。一方、令和三年度の被爆者対策予算が千百八十三億円に対し、決算余剰金が、医療費で約五十五億円、諸手当で約百五十八億円、その他約六億円、合計二百十九億円発生しております。この余剰金、全額国庫に返納されています。

 財源、十分にあるではないですか。国庫に戻すのではなく、当たり前に被爆者として認める予算に充てられるべきです。まだ戦後は終わっていません。防衛予算を倍増する前に、戦争被害者である被爆者の救済を拡大すべきではないでしょうか。加藤大臣、改めてお答えください。

加藤国務大臣 まず、原子爆弾による健康被害の特殊性に鑑みて国の責任において援護する、これが被爆者援護法の理念でありますので、それにのっとり、また、過去の判決等を踏まえながら我々は運用させていただいているということで、今、委員が御指摘のように、予算があるとかないとか、そういうことでできるできないということを申し上げたことはございません。

山田(勝)分科員 つまり、予算もある、法的にも問題ない。あとは政治決断です。政治決断で長崎の被爆者も同様に救済していくことは可能なのです。

 ここで御紹介いたします。原告のお一人である松尾栄千子さんは、四歳のとき、爆心地から東へ約八キロの海岸で原爆の閃光と爆風を受けた。空から灰や燃えかすが降り、野菜の葉からは黒い滴が垂れていた。加藤大臣、この松尾さんの声をお聞きください。私ががんになったのは、灰や雨などで内部被曝したことが原因だと思う、国は私たちを被爆者と認めるべきだ。

 一九八〇年に、厚生労働大臣が設置した有識者会議による報告書、原爆被爆者対策基本問題懇談会意見報告でも、研究体制の整備充実を図ることにより周到な研究を進め、問題を逐次解明することが、被爆者に対する国の重大な責務であると同時に、世界における唯一の被爆国である我が国が国際社会の平和発展に貢献する道と言えるであろうと指摘されています。

 今年五月、G7広島サミットが開催されます。自国の戦争被害者である被爆者を被爆者と認めず、多くの被爆者を切り捨ててきた日本政府が、国際社会に平和を発信する資格が本当にあるのでしょうか。広島サミットの開催前に、広島高裁の判決どおり、内部被曝も含め広く認める被爆者の救済拡大を行うべきです。

 被爆者の皆様にとって、戦後はまだ終わっていません。一日でも早い被爆者の皆様の救済を心からお願いし、時間が参りましたので、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

大岡主査代理 これにて山田勝彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、堤かなめ君。

堤分科員 おはようございます。立憲民主党の堤かなめでございます。

 本日は、保育士の環境について聞いていきたいと思いますけれども、その前に、日本は、この十年、毎年、合計特殊出生率一・五未満の超少子化となっています。この超少子化については、二月九日の予算委員会でも質疑させていただきました。超少子化を食い止めることは我が国の根幹に関わる問題であり、若い世代が子供を産み育てたいと思えるようになるためにも、子育て、教育環境の充実が最優先の政治課題である、そういう問題意識に基づきまして、保育の質の向上について質問いたします。

 さて、全国的に保育士を辞める人が多く、なり手がいない、保育士不足が問題になっています。

 その原因の一つは、保育士の給与の低さです。保育士の平均月収は全産業平均を下回っており、この改善については、立憲民主党として、これまで何度も何度も何度も国会で改善を求めております。本日は、保育士の処遇改善以外の課題についてお聞きします。

 一点目に、保育士の配置基準の改善についてです。

 私は、昨年五月十一日の内閣委員会でもこの点について質問し、野田大臣より、「御指摘のとおり、職員配置の改善は、教育、保育の質の向上のために重要な課題」と御答弁いただきました。

 資料一、福岡県の子育て支援課が作成した資料です。私、県会議員をしておりましたので、福岡県は、やはり、現場の声を国に要望事項として上げている、その中の一つがこの配置基準の改善でございます。そこにございますように、四、五歳児につきましてはまだ未実施になっているんですけれども、比較的規模の大きな保育所について、チーム保育推進加算の充実を行うというふうに、国はようやく、令和五年、来年度の当初予算案の中に盛り込んでいただきました。

 しかし、小規模な保育園ほど、例えば障害のある子供を一人受け入れただけで手が足りなくなってしまう。やはり、大規模であれば、たくさん保育士さんもいらっしゃいますので、みんなでカバーできますけれども、小規模であればそれが難しい。小規模なほど余裕が欲しいということです。

 小規模の保育園にも加算が必要ではないか。また、一歳児の配置基準の改善、こちらはまだのようですけれども、これはどうなるのでしょうか。よろしくお願いします。

    〔大岡主査代理退席、主査着席〕

加藤国務大臣 今委員からお話がありましたように、令和五年度予算案で、保育所における二十五対一の配置が実現可能となるよう、チーム保育推進加算について、定員百二十一人以上の保育所で加算する保育士を一人から二人とする拡充を行うことを盛り込ませていただいております。定員百二十一人以上の保育所については、四、五歳児の年齢別における現行のチーム保育推進加算による一人の加配保育士を活用してもなお、いずれかのクラスでは一人の保育士で二十五人を超える子供を担当せざるを得ない状況となっていることを踏まえた対応でございます。

 これによって、四、五歳児の二十五対一の職員配置の実現に向けた一歩とは考えておりますけれども、委員御指摘のあった、一歳児の配置改善、あるいは、四、五歳児も含めて、消費税分以外の財源で確保するとされているいわゆる〇・三兆円超の質の向上の事項、これについては大変残念ながら未実施となっております。

 引き続き、安定的な財源の確保と併せて検討が必要と考えておりますし、これらも含めて、現在、小倉こども政策担当大臣の下で議論されております。そうした中でしっかり議論させていただきたいと考えております。

堤分科員 先ほどの山田委員の質問に、加藤大臣は、予算があるとかないとかではないというお答えをされましたよね。必要性があれば、予算ではなく、ちゃんとやるべきだと思います。

 これまで、〇・三兆円超の財源の確保という言葉、答弁、何度も何度も、もう聞き飽きました。二〇一五年から八年間の間、何回同じ答弁をされていますでしょうか。今すぐお答えにはなれないでしょうから、調べていただきたいと思います。大臣、よろしくお願いいたします。

 保育の現場でも、小中学校の現場と同じような負の連鎖、負のスパイラルが起きています。保育士が見つからない、少ない人数で頑張っている保育士の負担が増える、精神的にも肉体的にも疲れ切って病休を取ったり辞めたりする、残っている保育士の更なる負担が増え、保育の仕事が魅力的でなくなり、なり手が見つからず、更に保育士不足に陥る。保育園を増やしても、肝腎の保育士さんがいなければ保育所に預けることができない。この負の連鎖を早く止めなければなりません。

 二点目に、保育士の長時間労働についてです。

 保育所では、サービス残業をして当たり前といった風潮が昔から強く、その風潮がまだ残っているところもあります。会議や打合せなど子供たちが帰った後に行わなければならない業務があったり、運動会などの行事が近づくと、その準備などで残業しなければならないという実態もあるようです。

 国として、保育士の労働実態をどのように把握し、どのように認識しているのか、お聞きします。

加藤国務大臣 委員、その前に、今おっしゃった、先ほどの山田委員に対しては、山田委員が、当該予算が残っておる、そのことを前提にお話をしていたので、私はああいうことを申し上げた。ただ、かつ、この子供施策というのは恒常的に実施していかなきゃなりませんから、当然、何をやるか、これは非常に大事でありますが、あわせて、財源の議論、これはしっかりやっていかないと実現していくことがなかなか難しいというふうに考えております。

 その上で、今委員からお話がございましたけれども、昨年、令和三年五月に、東京都保育士実態調査等でも示されておりますけれども、実際、保育士の皆さん方は、大変仕事が多い、労働時間が長い、こういう話を、こうした資料だけではなくて、私も地元のいろいろ保育園を回らせていただいてそうした声も聞かせていただき、また、それを背景に退職される方がおられるということも承知をしております。

 やはり、保育士を確保していくためには、新しい、若い方々に入っていただくということと同時に、やはり、今働いている方が引き続き、夢を持って入ってきていただいた方が継続して働いていただくということが非常に大事であり、勤務環境の改善を進めることが重要だと考えております。

 保育士の業務負担の軽減のために、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、あるいは、清掃、消毒、園外活動時の見守り等の保育の周辺業務を行う保育支援者の雇い上げに必要な費用、登園管理システムの導入など、ICT化の推進などの補助を行い、保育士の勤務環境の改善も進めているところでございます。

 また、厚労省としては、調査研究などを通じて保育士の皆さん方の実態の把握もこれまでさせていただきました。その中では、行事や研修の企画など保育以外の業務が多く、子供が帰られた後に残業している、おもちゃや装飾の製作等の作業が業務時間内で終わらず、持ち帰りの作業になっている、家に持って帰っている、こういったこともその中から見えてくるところであります。

 また、残業時間そのものについては、賃金構造基本統計調査、こういう全体の調査があって、そこで定量的な把握を行っているところでございます。

 保育士の業務負担の軽減を引き続き図っていくことが重要だと考えております。そのために、どういったことができるのか、また、どういったことを把握をしていくのか、引き続き検討していきたいと考えております。

堤分科員 やはり実態を知ることは改善への第一歩だと思いますので、厚労省として、実態の把握、まずベースライン、今現在でどうなのか、いろいろICT化ですとか業務改善を進めておられたら、それがどのように改善していくのかということもやはり把握しておく必要があるかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 三点目に、保育士の業務削減についてでございます。

 とにかく書類が多過ぎます。例えば、保育指導案として、年間計画、月案、週案、日案の四種類の書類を書いている保育所がほとんどではないかと思います。ところが、保育指針では、長期的な指導計画と短期的な指導計画の二種類しか記されていません。例えば、長期的な年間計画と週単位の短期指導案の二種類などに絞ることが可能であれば、保育士の負担はかなり軽減されると考えますが、いかがでしょうか。

 あわせて、行政や役所への提出書類、監査のための書類などのうち、簡素化や削減できるものはすべきだと思います。この点についてどのように思われますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 保育所における保育の内容に関する事項を定めました保育所保育指針におきましては、委員から御指摘いただきましたとおりなのでございますけれども、具体的な保育が適切に展開されるよう、子供の生活や発達を見通した長期的な指導計画と、それに関連しながら、より具体的な子供の日々の生活に即した短期的な指導計画、これらを策定をするということとなっております。

 また、指針の解説の中では、保育所における指導計画につきまして、年、数か月単位の期や月など長期的な見通しを示す指導計画と、それを基に更に子供の生活に即した週、日などの短期的な予測を示す指導計画、この二種類の計画を作成するようお示しをしております。

 あくまで長期計画と短期計画の二種類の計画を作る上での例示を示したものでございまして、必ずしも年間、月案、週案、日案のような四種類の計画を作成いただく必要はないと考えております。

 このため、指導計画に関して、何が保育所の負担になっているのか、実態を確認したり、聞いたりしながら、どのような周知の工夫ができるかということについては考えてみたいと考えております。

 その上で、保育士が保育に注力できる環境を構築するということは重要でございますので、引き続きのICT化の推進を図っていくとともに、児童票ですとか指導計画に最低限記載することが望ましい項目、こういったものを調査研究を通じまして提案をしておりますので、こういった提示の内容についてもしっかり周知を進め、業務負担の軽減に丁寧に取り組んでいきたいと考えております。

堤分科員 保育士が保育業務に集中できるようにということで、きちんと周知を、通知を出すなりして周知をお願いいたします。

 また、四点目に、保育所でのフッ化物洗口、フッ化物の入った薬剤によるうがいについてお聞きしたいと思います。

 資料二を御覧ください。

 この薬用歯磨き、これは議員会館の地下一階のコンビニでつい最近購入したんですけれども、大臣、御覧になっていただけますでしょうか。この薬用歯磨きには、六歳未満の使用は控え、子供の手の届かないところに保管すると明記されています。これはなぜでしょうか。

八神政府参考人 薬用歯磨き粉の注意書きの根拠についてのお尋ねでございました。

 歯の形成期に高濃度フッ化物を継続的に摂取をすることで、歯に白色や褐色の斑点が表れる歯のフッ素症というものを発症するということが報告をされております。このため、一〇〇〇ppmを超える高濃度のフッ素を配合した薬用歯磨き粉を薬事承認をする際に、歯の形成期にある六歳未満の子供には使用を控え、手の届かないところに保管するという旨を注意喚起をするということが適切と判断をされてきました。そのため、直接、容器等に記載をするということを求めているというものでございます。

堤分科員 保育園や幼稚園でフッ化物洗口を実施しているところがあると聞いています。フッ化物洗口、フッ化物うがいとは、四、五歳児の子供たちが、給食の後とかに、フッ化物が入ったうがい液を含んでぐちゅぐちゅうがいをするというものです。三十秒間ですとか、一分を勧めているところもあるようですが、週五回行っているところもあると聞いています。

 ところが、カナダ政府のホームページには、六歳未満の子供にフッ化物の入ったうがい薬、マウスリンスですとかマウスウォッシュを使ってはならない、与えてはならない、ネバーギブというふうにはっきりと記されています。

 また、米国歯科医師会、ADAは、六歳未満の子供は、歯科医の監視の下でなければうがい液を使ってはならないとしています。その理由は、六歳未満の子供は、嚥下反射が十分に発達しておらず、うがい液を飲み込む可能性があると、明確です。また、幼児は、うがい薬を吐き出すための筋肉が十分に発達していないからという理由もあるようです。

 ところが、日本では、保育所や幼稚園でフッ化物洗口が行われています。安全性に問題があるのではないかと思いますが、どのように認識しておられますでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 虫歯予防のためのフッ化物応用の有効性、安全性につきましては、WHO、世界保健機関やFDI、国際歯科連盟のほか、日本歯科医学会など国内外の多くの関係機関などの見解を踏まえまして、その有効性と安全性を含め、公衆衛生学的に優れた方法であるというふうに認識しているところでございます。

 今委員からアメリカの事例を御紹介いただきましたけれども、CDCにおいて、今委員御紹介いただいたように、六歳未満の子供のフッ化物洗口につきましては、洗口液を繰り返し誤飲するリスクといったことが挙げられているところでございます。また、そのほか、他のフッ化物応用の適用が増加してきていることといった理由もあって、フッ化物洗口の実施に関しては歯科医師などに相談することを推奨しているということは私どもとしても承知しているところでございます。

 一方で、集団フッ化物洗口につきましては、そのフッ化物濃度が毎日法ですと約二二五から四五〇ppm、また週一回法であれば約九〇〇ppmと、フッ化物配合歯磨剤と比較して低い、そして使用頻度や作用時間が異なるものであるということ。また関係学会によりますと、使用するフッ化物洗口液をたとえ一人一回分を全量誤飲した場合でも、直ちに健康被害が発生することはないと考えられていること。また、国の方では、令和四年十二月に、フッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方というものをお示しをしてございますが、集団フッ化物洗口を実施する際には、歯科医師などの指導の下に適切な方法で実施をする。それから、四歳未満では、適切な洗口ができずに誤飲のリスクが多いため、フッ化物洗口の対象としない。それから、フッ化物洗口を開始する際に、適切なうがいができるか確認や練習をした後に洗口を開始をするといったことなどで、フッ化物洗口の安全性を確保する必要性も併せてお示しをしてきているところでございます。

 そういったことから、私どもとしては、安全性は確保されているものというふうに認識しておりまして、ただ、フッ化物応用につきましては様々な方法がありますので、フッ化物濃度のみで一概に比較できないものではございますけれども、地域の状況に応じた適切な方法によるフッ化物応用を行うことが齲蝕予防に重要であるというふうに考えているところでございます。

堤分科員 現在実施しているところでは、保護者への十分な説明を行った上で同意を取っているのでしょうか。また、保護者の同意を得られた子供と同意を得られなかった子供とに分けてうがいを実施しているのでしょうか。お聞きします。

榎本政府参考人 今御指摘ございました保育所などでのフッ化物洗口の実施に際する保護者の同意などの取得、あるいは子供へのフッ化物洗口の実施を保護者の同意等により分けるといったことにつきましては、私どもとしては、先ほど申し上げました通知の中でそういったことをお願いをしているところでございますけれども、最終的には現場の実情に応じて御判断いただくということでございますので、現在、私どもとして、厚生労働省として把握しているところではございません。

 一方で、先ほど御説明申し上げたとおり、フッ化物洗口の実施に際しては、保護者などを対象とした説明会などを開催をして、保護者の意向を確認をすること、そしてまた、フッ化物洗口を希望しない方がおられる場合には、洗口時間帯に水で洗口させるなどの必要な配慮を行うことなどに留意していただきたいということをお示しをしてございます。

 こうした留意事項などを踏まえて、関係者の御理解を得ながら、現場の実情に応じて適切にフッ化物洗口を実施してきていただいているというふうに考えているところでございます。

堤分科員 インフォームド・コンセントは大変重要ですから、厚労省としてもちゃんと守らせていただきたい、実態を把握していただきたい。通知をしただけでは足りないのではないかと思っています。

 また、六歳未満のフッ化物洗口については、なぜカナダでは禁止されているのか。ネバーギブ、ネバーのところが太字になっているんですよね。禁止されている。なぜアメリカでは歯科医の監督の下でとなっているのか。でも、なぜ日本では、保育所や幼稚園で行う必要があるのか。そういう情報も含めてきちんと保護者に提供した上で同意を取るべきだと思います。

 また、現場は、先ほどから言っていますように大変忙しいんです。そんな中で子供たち一人一人を、例えば、この子はうがい薬、この子は水と分けて、安全にうがいをさせるというのは、現実的にどうなんでしょうか。子供たちは動き回るわけですし、相当大変です。でも、こういったことを徹底できる園でなければフッ化物うがいを実施すべきではないということも併せて通知していただきたいと思います。

 また、幼児たちを三十秒間、うがい薬を飲み込まないように見守っておかなければならないということです。誤飲が多いということもおっしゃいましたよね。だからカナダでは禁止になっているわけですね。さらに、感染予防のため、吐き出した水やうがい薬の処理などにも気を遣います。先ほど言ったように、こういう、保育士さんたちに更なる負担、時間と労力を強いることになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたが、海外の事例なども含めて、齲蝕予防のためのフッ化物の運用についてはいろいろな考え方があるということは承知してございますが、WHOや関係学会などからフッ化物洗口の安全性について御報告いただいていること、また、先ほど御紹介した、私どもの令和四年十二月の通知でお示しをしておりますフッ化物洗口の推進に関する基本的な考え方でお示しした内容に沿いまして適切な実施を求めていること、これまでフッ化物洗口による健康被害が発生したといったような報告がございませんことから、直ちに六歳未満の子供に対してフッ化物洗口を取りやめるといったような状況ではないというふうに考えてございます。

 今委員から幾つか御意見を頂戴いたしました。今後とも、私どもとしても、WHOの動向なども踏まえながら、関係学会などの御意見も伺うなど、必要な情報収集は引き続き適宜行ってまいりたいというふうに考えているところでございます。

堤分科員 必要な情報収集を行っていただくということもお答えいただきました。

 厚労大臣、大変恐縮ですけれども、私、ここでエアうがいをしますから、十秒数えていただけませんでしょうか。十秒ですね、十秒がどのくらいの長さなのか。じゃ、自分で数えます。

 十秒ですかね。これが、三十秒、子供たちがぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ、四、五歳児がして、飲み込まないということができるのか。そして、きちっとぺっと吐き出せる筋肉も発達していないんじゃないか。そういうことから考えても、子供たちの安全という点からも、保育士の業務の軽減という点からも、保育所や幼稚園でのフッ化物洗口はもう一度検討いただきたいと思っています。

 また、資料三を御覧いただけませんでしょうか。

 これは、二〇二〇年、三年前の、フッ化物の脳への影響について発表されたレビュー論文でございます。総説です。アブストラクト、要旨のところの下線部にはおおむねこのように記載されています。

 私たちは、歯磨きペーストやジェル、焦げつかないフライパン、かみそりなどの日常的な使用によりフッ化物に暴露されている。フッ化物への暴露は、中枢神経系を含め、私たちの体に様々な毒性の効果を引き起こす。フッ化物が脳の様々な病態と関連があることも発見されてきたというものです。

 フッ化物の適正摂取量や許容量については、まだ明確に科学的に示されていないのではないかと思います。予防原則、簡略に言えば、化学物質の安全性が説明できないものは安全ではないとする予防ルールから、カナダや米国の事例からも、厚労省として、発育の途上にあり、化学物質への感受性が高い幼少期の子供たちの暴露には、慎重な上にも慎重を期すべきです。

 今から七十年前は、確かにヨーロッパや北米で、水道水にフッ化物を入れる方法が先進的だ、画期的な方法だとされてきました。しかし、今は違います。先進国ではやめるところが増えてきています。日本でも以前と違って、自宅でフッ素入り歯磨きを使っていたり、歯科医で塗布を受けているなど、家庭の状況によって様々でございます。アレルギー体質の子供もいます。個別の対応が必要になってきているのではないでしょうか。

 科学は日進月歩です。厚労省として、保育所、幼稚園、学校などで集団的にフッ化物洗口を行うことを推奨するのか、最新の科学的知見、世界の趨勢を踏まえて再検討し、新たな見解を出していただきますよう心よりお願いしておきます。

 最後に、障害児保育に対する補助についてでございます。

 昨年五月十一日の内閣委員会で野田大臣から、平成三十年度、二〇一八年度、五年前の地方交付税措置の拡充の趣旨や内容について自治体に周知するとの御答弁をいただきました。

 しかし、福岡県内六十市町村のうち十一か所、一五%のところでは全く補助ができていないという現状があります。つまり、住んでいる市町村によって、保育サービスの利用ができていない方々がおられるということです。

 全国的にも同様の状況があるのではないかと思いますけれども、どのように認識しておられますでしょうか。

加藤国務大臣 障害のある子供さんも、また障害のない子供さんも同様でありますけれども、保育が受けられる環境をしっかりつくっていくということが必要であります。

 障害のある子供の保育に要する費用については、平成十五年度以降、地方交付税により措置をされております。それに対して、多分、野田大臣から言及があったんだろうと思いますが、さらに、しておりますが、平成三十年度には、保育所等で受け入れる障害児の数の増加も踏まえ、それまで四百億円程度であった交付税措置額を八百八十億円にまで拡充をするとともに、各市町村内の実際の障害児の受入れ状況に応じて算定する方式に改善を図ったところでございます。

 こうした対応もあって、障害児受入れの実施箇所数、受入れ数とも年々伸びてきており、令和二年度では一万九千九百六十五か所、七万九千二百六十人と、平成二十二年度と比べますと、箇所数で約一・四倍、受入れ人数で約一・八倍、こうした状況になっております。

 ただ、引き続き、まだ十分そうした対応が進んでいないという声も私ども承知しているところでございますので、ニーズに応じて適切に保育士が配置され、受入れが進むよう、自治体に対して交付税措置の趣旨をしっかりと周知して、障害児保育の推進、これをしっかり支援をしていきたいというふうに思っております。

堤分科員 ありがとうございます。

 まだまだ、少しずつは増えてきていますけれども、やはりまだ、地元の保育の方からは、障害児を持った保護者の方が来られても、今、現場が忙し過ぎて受け入れる余裕がない、障害児の加算があっても、その加算があるのが年度途中からだったり、年度途中からの受入れがあって加算が間に合わないというようなこともあったり、なかなか現場としては使いづらいということもありますし、また、福岡県は、地方交付税ではなくて、国として障害児に特化した加算をしてほしいというふうにも求めています。

 本当に、受け入れたくても受け入れられないということで、保護者の方も行き場がないし、保育士の人もお断りするのが心苦しいという状況がまだまだあるというふうに聞いております。是非、この点につきまして、もっと充実をしていただきたいと思っています。

 まさに異次元の少子化対策ということになるように、低次元ではなく異次元の少子化対策となるように是非御努力いただきたい。そして、この十年の遅れを挽回していただきますようお願い申し上げまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。

牧原主査 これにて堤かなめ君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木紀君。

佐々木分科員 自由民主党の佐々木紀です。

 本日、政府参考人の皆さんに答弁をお願いしておりますので、大臣、もしよろしければ御退室いただいても結構でございますから、どうぞ。

 今日は環境省にもお越しをいただいておりますので、先に環境省に質問をさせていただければと思います。

 一般廃棄物の処理施設についてお伺いします。

 一般廃棄物の処理施設の入札について、新規参入を阻むような入札要件を改めるべきだと思います。今の一般廃棄物処理施設建設の入札については、新規参入ができないような入札要件になっているという指摘がございました。

 環境省は、入札要件は各自治体で決めることだという立場だと思いますけれども、自治体の皆さんに聞くと、いや、環境省のホームページで掲載されている廃棄物処理施設建設工事等の入札・契約研修会資料が紹介されていて、その中の事例を参考にしているから全国で同様の入札資格が採用されているということで、即刻私は改めるべきだと考えておりますけれども、いかがですか。

奥山政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘の研修会資料、こちらの事例につきましては、環境省のホームページに掲載をしていたところでございますけれども、資料をまとめたのが平成十九年三月と十年以上も前のものでございますし、かつ、御指摘のとおり、実績に関する画一的な入札要件、この設定を誘発するようなおそれもございますので、先日、この研修会の資料全体につきまして、環境省のホームページから削除させていただきました。

 この同じホームページには、廃棄物処理施設建設工事等の入札・契約の手引きというものも掲載しております。こちらの手引の方につきましては、当該工事の実施可能性を考慮しつつ、新規参入を促進するためにも、実績に関する入札参加要件を検討し、過度な実績主義を見直すことが重要であるというふうに書いてございます。御指摘のような誤解を招かないようなものとなってございます。

 いずれにしましても、環境省といたしましては、廃棄物処理施設建設工事等の入札、契約に関しまして、適正な執行がなされ、一般廃棄物の処理が市町村の責任の下で継続的かつ安定的に実施されますように、引き続き、この手引の方向に沿って、市町村に対して技術的な助言をしっかりとしてまいりたいと思います。

佐々木分科員 ありがとうございます。

 皆さん誤解をされていたということだと思います。確かに環境省の作った文章では、廃棄物の処理施設建設工事の入札・契約の手引き、今ほど御紹介のあったところには、次の文言がございます。入札参加資格を決定する際の要件として多く用いられている納入実績等は補足的な要件として考えられる、過度な実績主義を見直すことが重要であるというふうに記載をされておりますので、是非そのような取扱いを今後していただくようにお願いをしたいと思います。

 それでは、環境省の皆さんは結構でございます。ありがとうございました。

 それでは、これからは厚労省にお伺いしたいと思います。

 まず、経口中絶薬についてお伺いしたいと思います。

 現在、経口中絶薬が薬事承認に向けた手続に入っていると承知しておりますけれども、検討状況はいかがでしょうか。

八神政府参考人 経口中絶薬の承認に向けた検討状況ということでございます。

 御指摘の経口中絶薬、ミフェプリストン及びミソプロストールといいます。これにつきましては、令和三年十二月にラインファーマ社から薬事申請がなされております。先般、一月の末に開催をされました薬食審医薬品第一部会、ここにおきまして、医薬品の有効性、安全性の観点に加えまして、本剤承認後の管理体制の面も含めて審議をされているところです。

 本剤につきましては、医薬品第一部会としては承認が了承されておりますが、社会的関心が極めて高いということから、パブリックコメントの手続を行った後、この医薬品第一部会の上位組織であります薬事分科会におきまして再度慎重に審議をされるという予定となってございます。

佐々木分科員 ありがとうございます。

 現在パブリックコメントにかかっているということでございますので、慎重に審議をしているということでございます。

 この経口中絶薬の使用ですけれども、母体保護法上の中絶とは言えないのではないかと考えています。

 そもそも刑法には堕胎罪というものが規定されておりまして、妊娠中の女子が薬物を用いる方法又はその他の方法により堕胎する犯罪のことです。しかし、母体保護法により、一定の要件下で人工妊娠中絶として指定医が行う場合に限り、違法性が阻却されているというものです。経口中絶薬で人工妊娠中絶を行う場合もこの母体保護法に基づく人工妊娠中絶と言えるのか、私はこれは少し疑問なのではないかなと考えています。

 同法の第二条の二項では、この法律で人工妊娠中絶とは、胎児が母体外において生命を保持することができない時期に、人工的に胎児及びその附属物を母体外に排出することと規定をされています。つまり、人工妊娠中絶というのは生きている胎児を人工的に排出することでありますけれども、この薬は、一錠目を飲むと胎児の命が奪われて、二錠目の薬で亡くなった胎児を体外に排出するというものでございますから、人工妊娠中絶の定義と反しているではないかと私は考えるんですけれども、厚労省の見解をお聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 母体保護法上、母体の生命健康を保護することを目的といたしまして、十四条でございますけれども、一定の要件を満たす場合、具体的には、十四条におきまして、妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるものなどを想定しておりますけれども、一定の要件を満たす場合には指定医師が人工妊娠中絶を行うことができるというふうに規定をされておりまして、これが医学上適切な方法で行われる場合には法に基づく人工妊娠中絶であると解されるものと考えております。

 本経口中絶薬につきましては、投与することで薬理作用により胎児等を母体外に排出させるものでございまして、指定医師が経口中絶薬を用いて行う人工妊娠中絶は母体保護法に基づく人工妊娠中絶の定義に当てはまるものというふうに考えております。

    〔主査退席、大岡主査代理着席〕

佐々木分科員 確かに処方はお医者さんがして、飲むのは自分で飲んで、次、二錠目を飲むまでは自宅に帰っていいですよ、もしこういうような取扱いをされるのであれば、むしろ堕胎罪の規定の方に私は近いのではないかなと思います。

 本来、刑法の例外規定を規定しているのがこの母体保護法でありますので、その解釈というのは厳格でなければいけないと思っておりますので、柔軟解釈や拡大解釈は私はしてはならないと思っておりますので、そういった意味で考えると、この中絶薬の承認をする場合は、是非法改正を検討されたらいいのではないかなと思います。やはり、時代に合わせて、状況に合わせて法改正はきちっとやって、その下でしっかり承認をしていくということが私は必要なんだろうと思っております。

 また一方で、この経口中絶薬の承認は、改めて胎児の命の大切さとか母体保護の必要性という大変重大な問題を国民に問いかけるものであります。したがって、安易な使用につながらないように是非お願いをしたいということです。

 もう一つは、やはり母体の保護という、安全性という観点からも十分な配慮が必要だと考えています。大量出血やけいれん、感染症のおそれもあるということでもございますし、米国では死亡例もあるということでもございます。承認された場合でも、薬の管理は厳格にして、指定医がいる医療機関で使用して、中絶が完了するまで体調管理、できれば入院管理をする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

八神政府参考人 経口中絶薬の取扱いについてのお尋ねでございます。

 承認後の取扱いにつきましても、審議会で御議論をいただいているところでございます。御指摘の点に関しましては、製造販売後の管理方法として、一つには、本剤の流通は、妊娠中期における治療的流産に適応を持つプレグランディン膣坐剤と同等の厳格さを持って管理をすること、二つには、ミフェプリストン経口投与及びミソプロストールの口腔内への静置、これは母体保護法指定医師による確認の下で行うこと、三つには、本剤の使用状況は、プレグランディン膣坐剤と同等の厳格さを持って記録、管理をすること等の厳格な管理を求める予定としております。

 また、本剤による人工妊娠中絶は、緊急時に適切な対応が取れる体制、これを構築をしている医療機関で行う必要があるということから、日本産婦人科医会との協議におきましても、本剤発売当初は国内での経口中絶薬の使用経験が乏しいことを考慮し、十分な使用経験が蓄積され、適切な使用体制が整うまでの間、有床施設において、外来や入院で使用されるものというふうにされております。

 いずれにしましても、本剤の承認後の取扱いも含めて現在パブリックコメントを実施をしております。今後、提出された御意見も参考に、薬事分科会において慎重に審議をされるもの、このように考えております。

佐々木分科員 ありがとうございます。

 薬は指定医しか手に入らないようになっているということでもございますし、ただ、これは二錠目を飲むと、排出されるまでの時間というのはかかるんですよね。やはり四時間から七時間かかる。人によっては二日かかるという人もいるようなので、飲んで、では自宅に帰ってくださいよと、もし何かそこで、出血とかいろいろ起こる可能性もあるわけでありますから、何か緊急時に対応できる体制と言うものの、やはりそこは施設の中で、医療機関の中で最後までしっかり処置をするということが私は当然必要なのではないかというふうに思います。

 そうしないと、二錠目を飲んだ後、自宅に仮に帰してしまったときに万が一そこで何かあったとき、あるいはその時点でやはり医師の手を離れているわけでありますから、先ほど申し上げたように、母体保護法上の要件、医師の処置によるものということからすると、やはり柔軟に解釈、拡大解釈につながっていくと私は思いますので、そういった意味でも、しっかりと入院管理をした中で行うということを是非お願いしたいと思います。

 いずれにしましても、承認は慎重にしていただいて、是非これは、与党に、まず部会に諮ってください。多くの皆さんの意見を聞くということを是非やっていただきたいなというふうに思います。

 それでは、次の問いに行きたいと思います。

 ビルメンテナンスのことについてお伺いしたいと思います。

 実は私、ビルメンテナンス議員連盟の事務局次長を拝命しておりまして、業界の支援をさせていただいております。しかし、これは単にビルメンテナンス業だけのことではなくて、ビルメンテナンス業というのは、やはり労働集約型産業の代表格みたいなところがあるんですよね。いわゆる人件費比率が高い業務で、人件費単価の低い仕事のことなんですよね。いわゆる最低賃金近傍業種とも言われておるわけでありますけれども。

 こういったところの、ビルメンテナンス業の支援をすることによって、仮にこのビルメンの賃金が上がれば、私は社会全体の賃上げにつながるというふうにも思っております。また、シニアとかパート、障害者などの雇用の受皿でもあるわけでありまして、そういった社会的弱者のような方の雇用の支援にもつながる、そういう思いでビルメンテナンス業を支援をしているわけであります。

 清掃業というのは、ビルメンテナンス業の代表格でありますけれども、清掃業というのはエッセンシャルワーカー、エッセンシャルサービスですよね。コロナ禍において感染リスクにさらされながらも、消毒の業務をしたりということです。これから感染症社会にあって必要不可欠な仕事なんだけれども、賃金が低いということで、慢性的な人手不足といったこともございます。その中で、最低賃金の改定というのは、この人方、働いている方々の賃上げというか、処遇の改善に大変大きく寄与するんです。

 ですから、最低賃金を上げるということは、従業員の皆さんにとっては大変ありがたいことなんですけれども、請け負う会社にすると大変なんです。というのも、なかなか請負料金というか代金が上がっていかないんだけれども、最低賃金は上がっていくということで。もちろん業者の皆さんは、人手不足だから、賃金を上げてでも、少しでも処遇の改善をして、清掃員の方に気持ちよく働いていただく努力はしているんです。しかし、最低賃金というのは、改定が十月です。大概、官公需の契約というのは四月から始まります。そうなると、年度途中に賃金を上げざるを得ない状況が、されるんですね。そうなると、やはり、請負料金も、本来、年度途中であっても上げてあげないと、矛盾が生じるのではないかと思うんですよ。

 やはり、最低賃金は国が決めているんです。しかし、官公需においては四月から契約しているんですよね。年度途中の十月に最低賃金が上がると、本来上げた分は払ってあげないと、おかしいことになりますよね。でも、実際は、なかなかこれが行われていないのが現状なんです。その点についてどのように考えていらっしゃいますか。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 まず、契約金額を上げるべきではないかということについてお答えいたします。

 ビルメンテナンス業につきましては、今御指摘いただいたとおり、労働集約型の業種であります。それで、全体的に賃金水準が低くなっております。

 このため、ビルメンテナンス業者が改定後の最低賃金以上の賃金を支払えるよう、必要な場合は、年度途中でもビルメンテナンス業者との契約金額を変更することが重要であると考えております。

 まずは、国や自治体が公共調達から改善していくよう、厚生労働省が策定しております、ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドライン、このガイドラインの中で、年度途中に最低賃金の改定があった場合は、適切な価格で単価の見直しを行い、代金の額の変更を検討することとしております。

 今年度につきましては、最低賃金の三%程度の引上げがございました。このため、昨年十一月三十日に、厚生労働省から、各省庁や自治体に対し、最低賃金の引上げや物価上昇等を踏まえた契約金額の変更を検討するよう依頼する通知を発出したところでございます。

佐々木分科員 どうもありがとうございます。

 本当に、最近、最低賃金はもう毎年のように上がっているわけなんです。現下では物価高騰も追い打ちをかけているということで、今ほど、十一月三十日に、厚労省の方から、「ビルメンテナンス業務に関する契約(公共調達)の最低賃金引上げ、エネルギー価格・物価高騰等に伴う契約金額の変更について(緊急依頼)」というものを発出していただいているわけなんです。

 実際、毎年の業務なんですけれども、毎回入札のたびに、仕様書に基づいて値段を決めているわけなんですよね。しかし、実際、毎年のことだから、予定価格を上げたとしても、落札する会社は前の年の値段を参考に入札しますから、でも、なかなか値段が上がっていかないですよ、実際問題として。年度途中に幾ら上げてあげたとしても、でも、結果的には、次の年の入札では、また値段が下がっていくんです。実態は、極端な言い方をすると、前の年の落札金額が次の年の予定価格になっているのと、実際、同じなんです。

 だから、本当は、最低制限価格をつくるとか、何か手当てをしていかないと、いつまでたっても、値段が上がらない。特に、最賃も上がっている、物価が上がっている、こんな局面で値段を上げようと思うと、なかなか工夫が要るんですよ。大変なんですよ、これは。

 そこで、今回も十一月三十日に緊急依頼というものを発出していただいた。本当によくやっていただいているとは思ってはいるんですが、では、その結果、どれくらいの自治体が年度途中の契約変更に応じたか、そして、厚労省、やはり隗より始めよで、厚労省の発注業務で契約変更した実績はあるのかということについて少し調べていただければ、教えてください。

佐々木政府参考人 お答えいたします。委員御指摘の昨年十一月に発出した通知において、契約金額の変更の検討等を依頼しているところでございます。

 これを実現するために、全国ビルメンテナンス協会とも連携して、厚生労働省としては、ビルメンテナンス業者からも発注者に契約金額の変更を申し入れるよう取り組んでいるところでございます。

 その契約金額の変更の実績は、各自治体等につきましては現時点で把握しておりませんが、全国ビルメンテナンス協会からは、現在、各自治体で交渉しているところと聞いております。

 引き続き、同協会と連携して、厚生労働省としては、最新の労務単価を反映した適切な契約金額の確保に取り組んでまいりたいと考えております。

 次に、厚生労働省の方ですけれども、現在、厚生労働省が管理しております中央合同庁舎第五号館に係るビルメンテナンスの請負契約につきましては、昨年十一月の通知を踏まえて、十二月に契約事業者と協議を行いました。その結果、事業者から契約金額の変更の要望自体はなかったこともあって、結果的に、協議の結果として、契約変更を見送ってはおります。

 一方で、来年度、令和五年度以降の契約につきましては、契約で求める役務の量を減らしつつ、契約額について、現状、三年間で約二十三・三億円であるところを次の三年間では約二十四・二億円へと増額となる見込みでございます。

 引き続き適切な契約に努めてまいりたいと考えております。

佐々木分科員 ありがとうございます。

 協議をしていただいたということで、結果、変更はしなかったということなんですけれども。

 そんなことを言い始めると、もう世の中、値段、上がっていかないんですよ。その下請の会社が、今、いや、もう資材費が上がって、燃料費が上がって大変なんやと言って元請の会社に、何とかちょっと値段を上げてくださいとお願いに行ったと。そうしたら、元請の会社は、いやいやいや、そう言うけれども、あんた、できるやろうと言っているのと一緒なんですよ。たたいているんですよ、これは。業者たたきをやっているのと一緒なので。これは官公需でそういうことが行われているという自覚を是非持っていただきたいと思うんです。

 是非そこは、協議せずに、もう自動的に一律、人件費相当額、最低賃金が上がった分はしっかりと自動的に上げてやるというくらいのことをやらないと、社会全体で物価高騰の転嫁がなかなかやはり進んでいかないということだということなので、是非お願いをしたいと思います。

 それでは、次の質問に行きます。

 障害者雇用の促進についてということで、清掃業に代表されるビルメンテナンス業は障害者雇用にも貢献をしています。障害者雇用促進策というのは幾つもあります。就労継続支援のA型、B型とか、法定雇用率を設けるとか、様々あるわけなんですけれども、いずれも、もう直接雇用してくださいという、こういう促進策なんですよね。しかし、直接雇用したくても、業種によっては、向き不向きもあるし、適不適もやはりあるわけなんですよ。

 そこで、私の提案ですけれども、既に障害者を雇用している会社の商品やサービスを購入することも障害者雇用をしたとみなすような制度があると、私は社会全体で障害者雇用が進むと思っています。

 例えば清掃業においても、障害者を多く雇用している会社に発注をして、実際に障害を持っている方がその現場に派遣をされることによって、その業務を発注した会社も障害者雇用率を持っているわけでありますが、法定雇用率を持っているわけでありますけれども、それを満たすような仕組みがあると本当にいいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、そういった組合を使った仕組みもあるというふうにも聞いておりますけれども、いかがでしょうか。

堀井政府参考人 お答えをいたします。

 今、佐々木委員から御指摘がございましたように、協同組合を使った仕組みというのがございます。これは、個々の中小企業の取組だけでは障害者雇用を進めることが困難な場合に、共同で雇用機会を確保し、障害者雇用の促進につなげていくことが大変重要でございますので、仕組みとして、障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度におきましては、厚生労働大臣の認定を受けた事業協同組合等及びその組合員である中小企業の実雇用率を通算できる特例制度が設けられております。現在、認定をされている件数は七件となっております。

 この事業協同組合等算定特例につきましては、平成二十九年以降、国家戦略特区制度によりまして、当該特区内においてのみ、有限責任事業組合、これはLLPということで略して申し上げたりしておりますが、このLLPについても事業協同組合等とみなして対象とされてきたところでございます。

 この特区制度に基づいて特例認定を受けたLLPにおきましては、組合員の事業への参画や業務の発注を通じて、障害者の雇用の創出が図られ、障害者の雇用者数が増加するなどの一定の成果が見られたところでございまして、これを踏まえて、昨年の臨時国会で成立をした改正障害者雇用促進法によりまして、本年の四月から、全国において、LLPも算定特例の対象とすることとされたところでございます。

 このLLPにつきましては、異業種の企業の参画がより期待をできる、行政の許認可等が不要で設立手続が簡便であるといった特徴がございます。これを生かした新たな障害者の雇用機会の創出や、組合員の間で障害者雇用のノウハウを提供し合うことを通じた、個別の中小企業における障害者雇用の促進が期待をされるところでございます。

 引き続き、事業協同組合等算定特例や全国展開をされるLLPの利用促進等を通じて、中小企業における障害者雇用の促進を積極的に支援をしてまいります。

    〔大岡主査代理退席、主査着席〕

佐々木分科員 ありがとうございます。

 大変な私は進歩だと思っています。法定雇用率を満たしたくても、なかなか障害者の方に働いていただく仕事がないような会社においては、今ほど御説明いただいたように、組合をつくって、そこの例えば障害者雇用している清掃をやっている会社に自社の清掃を委託すれば、障害者を派遣していただければ、それも自社の、自分の法定雇用率に算定されるということでありますから、これはなかなかいい仕組みだと私は思いますので、是非、この四月からということですので、使い勝手のいい制度にして、障害者雇用がどんどん進むように是非お取り組みをいただきたいなというふうに思います。

 あと二分ほどあるんですけれども、せっかく大臣もお越しですので、私、今、ビルメンテナンス業の支援について少しお話をしていたんです。

 実は、ビルメンテナンス業というような毎年行われる業務というのは、なかなか値段が上がっていかないんですね。積算はきちっとやって、例えば、今でも最低賃金が上がったりとか物価が上がったりとかして、今年の清掃業の値段を毎年決めているんです。予定価格は上がったとしても、仕事を取りに来る業者は、どうしても前の年の落札金額を参考に入札しますから、仕事を欲しいと思うと、必ずその前の年の値段よりも安い金額を入れてくるんですよね。そうすると、予定価格が幾ら上がっていても、落札金額は常に毎年下がっていくということが起こっているんです。現状、今、これだけ人件費も上がっている、物価が上がっている状況ですけれども、なかなかこの毎年の業務の入札というのは値段が上がらない仕組み。

 公共事業は毎年上がっています、これはそういう仕組みなんです。しかし、業務の入札は本当に上がらないので、是非、これは厚労省が今担当していただいておりますので、大臣からも見聞きをいただければというふうに思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて佐々木紀君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)分科員 日本共産党の田村貴昭です。

 マイナンバーカードと健康保険証の一体化について質問します。

 先週十七日、デジタル庁、総務省、厚労省の三省庁による検討会による中間取りまとめが公表されました。この中の、「健康保険証廃止後の資格確認の取扱いについて」では、「マイナンバーカードによりオンライン資格確認を受けることができない状況にある方については、氏名・生年月日、被保険者等記号・番号、保険者情報等が記載された資格確認書(基本は紙)により被保険者資格を確認することとする。」と記載されています。

 厚生労働省にお伺いします。

 この資格確認証というのは無償で発行されるのか。「有効期間は、一年を限度として」と書いてありますけれども、更新はできるのでしょうか。そして、その更新は、自動更新なのか、申告に基づくものなのか、お答えいただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生からお話がありましたように、先週、マイナンバーと保険証の一体化に関しての検討会の中間報告をまとめさせていただきました。

 その中で、新たに資格確認書というものを発行していく、こういうことになっておりますけれども、その取りまとめにありますように、現行の保険証と同様に無償で発行していくということにしております。

 それから、有効期限でございますけれども、一年を限度として設定していく。当然、その対象となる方としては、紛失した方とかいらっしゃいますので、また、事情があるという方もいらっしゃいますので、更新もあり得る、このように考えてございます。

 あともう一つ……(田村(貴)分科員「自動更新」と呼ぶ)自動更新というか、この仕組みは、御本人の申請に基づいて行われる、このように考えてございます。

田村(貴)分科員 マイナンバーカードの取得は、国会でも論議されてきていますけれども、これは任意であります。申請に応じて交付されるというふうに答弁もあっています。

 ここで、マイナ保険証を持たない事例というのが書かれていますけれども、例えば、要介護者であるとか、子供であるとか、紛失したとかいうのもあるんだけれども、マイナカードの交付を希望しない人、そして、マイナカードの交付は受けても健康保険証の利用登録をしない人、これも対象に入るんじゃないんでしょうか。

伊原政府参考人 繰り返し大臣以下答弁させていただいておりますけれども、当然、医療保険、医療を受けるということは非常に大事なことでございまして、保険料を納めていただいている方がしっかりとマイナンバーカードと保険証の一体化後も医療を受けられるようにするということから、必要な方に資格確認書を発行する、このようにさせていただいております。

 その対象となる方につきましては、今、マイナンバーカードを紛失した方とか、それから、あるいは御家族に同行して、受診をするときに必要な方、それ以外に、現在マイナンバーカードを取得されていない方も対象となると考えております。

 また、マイナンバーカードを取得しておりますけれどもまだ保険証登録をされていない方がどうしても必要という場合には、当然、資格確認書の発行の対象になる、このように考えております。

田村(貴)分科員 大臣、保険証と同じ機能を持つ資格確認証が交付されるということになりました。だったら、紙の保険証も発行し続けるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まさに国会でこれまでも議論させていただきましたけれども、マイナンバーカードと健康保険証を一体化することで、マイナンバーカード一枚で医療機関を受診することが可能となる。そして、その際には、本人の保健医療に関する多くのデータ、それを見ながら治療を受ける、あるいは、医師側からすれば診療を行う、こういった大変なメリットもあるということで、私どももここをしっかりとPRをしながら進めていきたい。

 また、こうしたメリットを踏まえると、カードと健康保険証の一体化を加速して、来年秋に、全ての被保険者を対象に発行してきた健康保険証は、この機会に廃止を目指したいと考えておりますが、ただ、その際に、今委員からも御指摘がありますように、マイナンバーカードを取得されない方、あるいは一体化されない方等々、いろいろな事情の中でおられますので、そうした方が保険料をお払いになっていれば保険診療を受けられる、これは当然のことでありますので、それに必要な措置は確保していきたいと考えています。

田村(貴)分科員 医療機関におけるオンライン資格確認義務化について質問します。

 カードリーダーでマイナ保険証が読み取れない、回線が切れて画面を見ることができない等のトラブルがこれまで相次いでいます。

 初診の患者さんで、マイナ保険証を持って医療機関を訪れた際、受付でこういうトラブルが生じたら、どうやって資格確認を行うんでしょうか。この患者さんはここで診てもらえるんでしょうか。

伊原政府参考人 今御指摘のように、マイナンバーカードを御持参いただいて、それで、医療機関で、もし仮に、動作がうまく、稼働しないとかいう場合につきましては、一つは、当然マイナンバーカードで御本人と本人確認、目視はカードでできます。さらに、そうしたトラブルがもし生じた場合には、医療機関等は、オンライン資格確認等コールセンターというのがございまして、ここに御連絡いただいて、オンライン資格確認等システム障害時モード、これを利用して、医療機関の側から患者の氏名等を基に検索することによって資格確認ができる、こういう仕組みがございます。

 こうした仕組みを活用していただくことなどによって医療を受けるということは可能と考えております。

田村(貴)分科員 手間がかかりますね。だったら紙の保険証と併用すればいいじゃないですか。

 再び大臣にお尋ねします。

 来年秋に保険証を廃止するといいます。しかし、マイナ保険証では、経過措置にある医療機関では受診できません。

 例えば、マイナ保険証を所持したとします。光回線がない離島で仕事、あるいは旅行などで行ったときに、けがや病気で受診したいときに、ここではマイナ保険証が使えないわけですね。本人確認ができません。これは、保険証の廃止前から起こり得る問題なんですよ。患者の命と健康に関わることです。コールセンターが通じなかったらどうしますか。患者の受診権の侵害に当たるのではありませんか。保険証の提示が、最も確実な資格確認の方法は、やはり紙の保険証であります。

 先ほど、大臣は明確にお答えがなかったんですけれども、紙の保険証をやはり交付し続けないと、こうした問題に対応できないのではないですか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、オンライン資格確認につきましては、昨年夏に、今年の四月から原則義務化という形で保険医療機関にお願いしているところでございます。

 ただ、システム改修が間に合わないとか、先ほど先生のお話から例示として挙げられましたように、その地域で光回線のネットワーク環境が整備されていない、こういうような場合につきましては、なかなかやむを得ない事情で、四月までには難しいと考えております。それで、経過措置というのを導入いたしまして、本年九月とか、あるいはそうした事情が解決するまでの間は経過措置を容認させていただいております。

 来年の秋に、何とか健康保険証とマイナンバーカードの一体化を進めてまいりたいと思いますけれども、それまでの間に、あわせまして、そうした問題、課題についても解決していきたいと考えておりますし、さらには、光回線のネットワーク以外の選択肢でやれるような、在宅医療とかの簡易型、これらの開発も現在進めておりまして、ちゃんとしっかりと保険医療が受けられるような環境整備に努めていきたい、このように考えております。

田村(貴)分科員 光ファイバーの普及だって、総務省は、この先、やはり五年先でやっと九九%と、あくまでも目標ですけれどもね。それまで結局使えないじゃないですか、使えない地域にとっては、マイナカードが。だから、こうした対処をするためには、紙の保険証がないと駄目だと言っているんです。紙の保険証は廃止しないでいただきたいと思います。

 原則義務化の経過措置、五にあります廃止、休止に関する計画を定めている保険医療機関、薬局について伺います。

 この廃止、休止は、遅くても令和六年秋までとされています。しかし、閉院というのは、大臣、すぐに決断できるものではありません。また、すぐに実行に移せません。

 高齢となって閉院を考えている沖縄県のある歯科医院のお話です。矯正治療などの時間がかかる治療もあるので、患者さんの迷惑にならないよう、二、三年以内の閉院を念頭に置きながら調整をしてきた。このような状況で、高額な費用をかけて新しいシステムを入れなければならないというのは非常に厳しいとおっしゃっています。

 大臣にお伺いします。

 二〇二四年秋以降は、一切、保険診療は、こうしたお医者さんは認められないんでしょうか。そんなことをしたら、地域医療が崩れてしまいます。オンライン資格確認の義務化、この決断を迫られている医療機関にとっては、今、大きな困惑の中にあります。

 このオンライン資格義務化が引き金となって閉院することがあってはならないと考えますが、大臣、いかがですか。医療機関個別の事情に配慮した対応が必要ではないでしょうか。

 これは大臣がお答えできますよね。お願いします。

加藤国務大臣 詳細のところは、もし必要だったら事務局からお話をさせていただきますけれども、例えば、来年秋以降に廃止を検討している場合であっても、常勤の医師等が六十五歳から六十九歳、レセプト件数が月平均五十件を若干超え、かつ、令和七年以内に閉院を予定している等複数の事情を抱えている場合、そうした場合には、特に困難な事情がある場合として、個々の事情に応じて経過措置が認められることもあるということで、まさに、一つ一つの事情をよく聞かせていただきながら対応させていただきたいと思います。

田村(貴)分科員 次に、最低賃金について質問します。

 昨年十二月の消費者物価指数は、前年同月比で四・〇%上昇。四十一年ぶりの上昇率となりました。国民から悲鳴の声が上がる中、賃金が物価高騰に全く追いついていません。

 資料をお配りしています。資料二です。

 今年度、今の最低賃金を決めた昨年の中央最低賃金審議会が参考にした、持家の帰属家賃を除く物価指数についてお尋ねします。

 この最低賃金審査会で参考にした指数というのは、何月のもので、その指数は幾らだったのか、教えてください。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の中央最低賃金審議会で参考にされました指標につきましては、令和四年四月から六月の、委員御指摘の、持家の帰属家賃を除く総合の物価指数でございます。

 これにつきましては、四月が三・〇、五月が二・九、六月が二・八となってございます。

田村(貴)分科員 その指標から、最低賃金は、十月に三・三%上げられたんです。

 しかし、先ほどお答えにあった、六月までを参考にした。では、七月以降どうなっているか。資料にもありますように、七月は三・一、八月三・五、九月三・五、十月は四・四、十一月は四・五、十二月は四・八と毎月跳ね上がり、物価高騰が最低賃金を上回っている状況であります。

 最低賃金が実質マイナスになっているわけです。最低賃金の再改定がやはり必要ではないでしょうか。

鈴木政府参考人 最低賃金の決定に当たりましては、消費者物価指数のみならず、労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力のデータを総合的に勘案することとされております。今後の最低賃金の決定に向けまして、引き続き、物価動向や今後の春闘の状況も含めた各種指標を注視してまいりたいと考えております。

 また、物価高に対しましては、政府として、総合経済対策の迅速かつ着実な実行を図っておりまして、その状況も注視する必要があると考えておるところでございます。

田村(貴)分科員 最低賃金ですからね、これはもう、まさに生活苦に直面しているわけなんですよ。食べるお金がない、家賃が支払えない、路頭に迷う、こうした事例が今全国各地で起こっているじゃないですか。

 そして、いろいろ言われました。だけれども、結果として、今政府の立場というのは、注視しているだけなんです。厚労省は、また厚労大臣は、この危機的な状況を手をこまねいて見ているだけなんですか。このギャップに対して何か打たれている手があったら教えてください。

加藤国務大臣 物価高に対しては、政府としても様々な対策を取らせていただいているわけでありまして、別に手をこまねいて見ているわけではありません。一つ一つの施策を、もう詳細は申し上げませんけれども、させていただき、まさにその状況も含めて見ていく。

 それから、最賃については、委員御指摘のように物価も大事な要素でありますけれども、それ以外の、賃金とかあるいは企業側の状況、こういったことも勘案しながら判断していかなきゃいけない。そういった意味において、今、春闘がこれから行われるわけでありますが、そうしたものもしっかりと見ていきながら、必要な対応を取っていかなければならないと考えています。

田村(貴)分科員 大臣、中小企業や中小業者は賃金を上げろと言っても難しいから、私、昨年の十一月、予算委員会で提案しました。社会保険料の減額であるとか、あるいは諸外国がやっている事業所に対する直接支援とか、方法は幾らでもあるじゃないかと。その他の指標を見て、ずっと注視しておったら、いつまでたっても上がらないんですよ。それは申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、大臣、岸田総理の、去年十月二十八日の総合経済対策を打ち出したときの会見です。最優先すべきは物価上昇に合わせた賃上げです、物価上昇をしっかり組み込む形で最低賃金を引き上げてまいります、岸田総理はそのようにおっしゃった。これは加藤大臣も同じ考え方でよろしいんでしょうか。

加藤国務大臣 十月二十八日の記者会見で、春闘において物価上昇に負けない賃上げが行われるよう、労使の機運醸成に全力を挙げる旨を述べられた上で、政府としても賃上げ実施企業に対する補助金や公共調達の優遇を行うとともに、物価上昇をしっかり組み込む形で最低賃金を引き上げていくと総理がおっしゃられたわけであります。私もその思いで取り組ませていただいているところであります。

田村(貴)分科員 物価上昇をしっかり組み込む形で最低賃金を引き上げてまいります、総理大臣も厚労大臣も同じ考え方だというのであれば、もうスピードが求められるわけですよ。最低賃金審議会を開くべきではないでしょうか。

 そして、この最賃は審議会が決めないと上がりません。それで、この審議会のお話を今からさせていただきますが、昨年の中央最低賃金審議会の公益委員は、消費者物価等の経済情勢に関する状況認識に大きな変化が生じたときは、必要に応じて対応を検討することが適当と述べている。

 お伺いしますけれども、消費者物価等の経済情勢に関する情勢認識に大きな変化が生じたとき、まさに急上昇しています、これは、この状況認識に大きな変化が生じているんじゃないですか。今がまさにそのときじゃないんでしょうか。解釈はいかがですか。

鈴木政府参考人 御指摘の公益見解の変化の内容や程度につきましては、あらかじめこの文書の中でも定めているものではございません。また、その際の対応につきましても、その状況に応じて検討すべきものであり、あらかじめ具体的に想定しているものではないと認識してございます。

 このため、先ほどの繰り返しになりますけれども、政府といたしましては、物価の動向でございますとか、労働者の生計費、賃金、企業の賃金支払い能力のデータなどを総合的に勘案しまして、現在この指標を注視しているところでございます。

田村(貴)分科員 いつまで注視するんですか。

鈴木政府参考人 ただいま春闘が始まっておりまして、これから春闘の賃上げなども労使で話し合って決定していくかと思います。まずはこの春闘の動向なども見定めたいと考えてございます。

田村(貴)分科員 大企業で働いている方は最低賃金とは違うんですよね、ここで言うところは。春闘以外で、非正規雇用労働者とか派遣、請負とか、こういった方たちの給料の問題が最低賃金に関わってくるんですよ。だから、その注視しているというのは、春闘の状況とかいうのはあるかも分からないけれども、それが全てじゃないじゃないですか。やはり、今の状況についてまずは見極める会合を持つべきではないでしょうか。

 過去の審議会を見たら、六月に諮問する、そして七月、八月に答申をする、このパターンなんです。それ以外の時期に中央最低審議会を開いてはいけないんでしょうか。審議会というのは六月までに開かないということなんでしょうか。

鈴木政府参考人 最低賃金法の関係でございますと、まず、法令の定めとしては、特に六月に開催という規定はございません。

 しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、最低賃金の決定に当たりましては、生計費、賃金、企業の賃金支払い能力のデータというものを見ながら総合的に勘案することになってございまして、まず、先ほど春闘を見たいと申し上げましたけれども、春闘の状況を見た上で、その後、中小企業も含めてどの程度賃金が実質上上がっているのかというようなことを私ども調べまして、それを統計を取りまして、六月から七月にかけまして集計して審議会にかけてございます。

 こういったものを全て総合的に勘案しながら審議を進めていきたいと考えてございます。

田村(貴)分科員 これはレクチャーでもお伺いしましたけれども、厚生労働大臣の方から、最低賃金審議会を開くことを呼びかけることもできると聞きました。だったら、やはりこれだけの物価急高騰で、そして国民から悲鳴が上がっている、賃金が追いついていない、何か、ずっと注視をしているということではなくて、やはりこの状況だけは早く審議して、そして国民的にこの審議が伝わるようにしないと、これはいつまでたっても賃金は上がっていきません。

 公益委員の見解をしっかり踏まえて、まずは審査会を開くこと、このことを強く求めたいと思います。そして、最低賃金を一日も早く引き上げることを要望しておきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 アスベスト肺の労災認定について質問します。

 石綿による疾病の労災認定については、疾病ごとに石綿暴露作業従事期間が何年以上と定められており、原則、中皮腫は一年以上、びまん性胸膜肥厚は三年以上、肺がんは十年以上となっています。これは医学的根拠をもって定められていますが、石綿肺については、最低暴露期間が何年以上という定めはありません。

 一方で、石綿肺については、各県労働局で、じん肺管理区分決定で労災療養相当とされた場合、労働基準監督署に労災請求しますが、請求者が労働者期間と特別加入期間以外に事業者期間がある場合、一九八六年に出された基発第五一号通達、「粉じんばく露歴に労働者性の認められない期間を含む者に発生したじん肺症等の取扱いについて」という通知及び事務連絡第七三号で可否が決められます。

 資料をお配りしています。この通達では、労働者として従事した粉じん作業期間が事業主としての期間よりも三年長ければ労災が認められるとなっていますけれども、これでは矛盾が生じます。既に多くの問題が生じてきています。

 例えば、大臣、聞いていただきたい。三十年間粉じん作業をしてきて、労働者期間が二十年あった、事業者期間が十年あった、これは認定されるんですよ。だけれども、同じ労働者期間二十年あったとしても、事業者期間が十七年を上回れば、業務外として労災が適用されないんです。この矛盾をどのように厚労省は考えていますか。こうした矛盾を生み出す通達、事務連絡はどのような医学的根拠があるんでしょうか。

鈴木政府参考人 ただいまの通達の三年以上という部分につきましては、これが三年より下回る場合には認定しないということではございませんで、これにつきましては、建設労働者などの場合におきましては、いわゆる雇用労働者として雇われている場合、それから、労災の特別加入の労働者として、一人親方ですけれども、働いている場合、若しくは、自分が親方としてやっている場合、事業者性がある場合というようなことで、いろいろな形態で働いている場合がございまして、それのどの期間が一番長かったかということを比較するという目的で発したものでございます。

 具体的に申し上げますと、労災保険の適用のある労働者等として粉じん作業に従事した期間と、それから、労災保険の適用のない事業主等として粉じん作業に従事した期間の双方の職歴のある方の石綿肺を含みますじん肺症又は合併症につきまして業務起因性があると判断されるために、労働者等として従事した粉じん作業が相対的に有力な原因であると認められるということが必要になりますけれども、その場合に、労働者等としての粉じん作業従事期間が事業主等としての粉じん作業期間よりも明らかに長いという場合には、この業務起因性を長いということのみで認めるという指摘をしたのがこの通達でございます。

 そうなりますと、三年未満の場合はどうかということですが、これは直ちに業務外とするわけではございませんで、相対的に長くなくても、地方じん肺診査医等の意見聴取などを行った上で総合的に業務起因性の判断を行うこととしておりまして、これが三年以下であったという場合につきましても、業務外と直ちに判断されるわけではないということでございます。これにつきましてはこの通達の中にも書いてございまして、周知もしておるところでございます。

田村(貴)分科員 いろいろいろいろ言われましたけれども、かえってややこしくなりましたね。

 だって、通知はこう書いておるんですよ、事務連絡で。労働者期間とそして事業主期間、このことについて、長いと認められることとは、三年以上の差を有する場合をいうこととすると明確に読み取れるじゃないですか。事業主期間が三年以上、あったらこれは駄目じゃないですか。そういうふうに地方労働局は判断するんですよ。これで労災が受けられなかった方がおられるんです。そして、これはやり直してくれと言って、十年粉じん作業に当たっていたということで認められた人もいるわけですよ。

 初めに判断の事務連絡としてこういう規定があるんだったら、やはりここは優先されるんじゃないですか。この三年以上の差を有するという場合、これは削除すべきじゃないですか。そして、医学的根拠はあるんですか。もう一回答えてください。

鈴木政府参考人 繰り返しになりますけれども、この三年という期間につきましては、通常、労災の場合ですと、医学的な根拠がない場合には、まずお医者さん、医師の意見聴取などを行った上で、いろいろな作業時間等の状況を総合的に勘案して業務起因性の判断を行うというのが原則でございますけれども、この石綿肺につきましては、これは単純に、労働者等として従事した期間が事業主等より三年多かった場合にはもうそこで自動的に認めようという、ある意味要件緩和の通知でございます。

 したがいまして、これを廃止することによりまして、どちらかといえば、労働者から見ますと簡易迅速な労災認定が失われるという形になりますので、これは残しました上で、もしこれが何か誤解を招いておるようでしたら、それにつきましては、本来こういうものでも、三年に達しなくても認定できるんだということをしっかりと周知してまいりたいと考えてございます。

田村(貴)分科員 誤解を招いているからこの三年規定というのは削除した方がいいと言っているんです。これは速やかにした方がいいですよ。その方が分かりやすい。強く要請しておきたいと思います。

 二〇二一年の産業衛生学会で発表されたある調査では、二〇一七年からの三年間のじん肺健診で、新たに建設労働者三十五人がじん肺相当と認められました。この通達の基準で、労災の加入期間が少し足りないために、半数の一人親方が労災申請できていません。建設労働者の勤務期間は全て四十年以上でありました。一人親方になったとしても、独立しても、現場に入って粉じん暴露に遭っている実態は変わりありません。

 二〇〇六年には、厚生労働省と環境省が合同で、石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方という報告書を出しているじゃありませんか。石綿肺の所見は一般に暴露開始後おおむね十年以上経過して現れるとしている。暴露後おおむね十年以上経過して現れる、そんなふうに報告されているじゃないですか。だったらこういう基準で労災認定を認めるべきじゃないですか。

 建設労働で粉じん作業の従事期間が、労働者期間に特別加入期間を加えて十年あれば、管理区分に認定し、労災認定すべきではありませんか。お答えいただきたいと思います。

 もう一つ、石綿肺の最低暴露期間について、医学的に検討して、そして新たな通知を出すよう見直すべきではありませんか。

鈴木政府参考人 石綿肺につきましては、平成十七年に検討会を開いておりまして、粉じん作業従事期間と石綿肺の関係に関する医学的知見はその場でも得られなかったというふうに承知してございます。

 したがいまして、今委員おっしゃったような基準を設けることは困難と考えておりますし、また新たな医学的知見が発見されましたら、また通知等も考える必要があろうかと思いますけれども、現時点のところ、そういった医学的知見については得られていないというふうに聞いてございますので、まだ今のところは現行の基準で進めていきたいと思っております。

田村(貴)分科員 このままではアスベスト被害の労働者を救うことができません。改善を求めて、質問を終わります。

牧原主査 これにて田村貴昭君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

牧原主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。穂坂泰君。

穂坂分科員 自由民主党衆議院議員の穂坂泰です。

 本日は、質問の機会をありがとうございます。

 本日、大臣には通告を出しておりませんので、もしよろしかったら退出いただければと思います。

 それでは、質問させていただきます。

 まず一問目なんですが、子供たちの自殺対策、この点について少し御質問をしたいというふうに思います。

 子供の自殺者数が今増えているところでございます。大人の責任でもありますし、幼い子が自ら命を絶とうとするその気持ちを考えただけで、本当につらい気持ちになってまいります。そんな社会にしてはいけないし、そんな国にもしてはいけない、そのように考えております。自殺まで追い込まれるような社会、根本的な問題は様々あると思いますが、今できること、やらなければいけないことを少し質問させていただければと思います。

 まずなんですけれども、現状、子供たちの自殺対策について。現在の人数、そしてまた増加している原因など、どう捉えているのか教えていただければと思います。

川又政府参考人 令和四年の暫定値でございますけれども、小中高校生の自殺の状況について申し上げますと、総数では五百十二人。前年から三十九人の増加で、過去最多となっております。内訳としては、小学生が十七人、中学生百四十三人、高校生三百五十二人で、特に高校生の増加が大きくなっております。

 自殺の原因、動機、これは様々かつ複合的な場合が多く、一概には申し上げられませんけれども、原因、動機別というデータを見ますと、小中高校生では学校問題というのが一番多くなっておりまして、その中でも、学業不振、進路に関する悩みというものが多くなっております。

 今後、関係省庁とともに更に分析を進めてまいりたいと考えております。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 本当に、増えている状況、これを何とか食い止めなければいけないというふうに思いますが、やはり、今の子供たちはSNS中心だと思います。ホームページ等を見ますと、電話番号も書いてあったり、SNSももちろんあるんですけれども、やはり今はもう前提としてSNS、全てSNSに私はシフトしてもいいぐらいだなというふうに思います。実際、私も子供が三人おりますけれども、もはや電話番号でかけてくる子供たちはおらず、SNSの通信機能でかけてくる状況になっています。

 今、厚生労働省の自殺対策でのSNSの窓口、これはどのようになっているのか、お聞かせいただければと思います。

    〔主査退席、大岡主査代理着席〕

川又政府参考人 厚生労働省では、地方自治体あるいは民間団体と連携をいたしまして、電話相談に加えて、特に若者の利用が多いSNSを活用した相談事業を実施をしております。

 昨年十月に閣議決定された新たな自殺総合対策大綱におきましても、電話相談窓口の支援のほか、多様な相談ニーズに対応するため、SNS等のコミュニケーションツールを活用した相談事業に対する支援の拡充などを盛り込んでいるところです。

 SNSによる相談事業につきましては、平成三十年三月から実施をしておりますけれども、相談件数が年々増加をしてきております。令和三年度の実績を見ますと、民間団体五団体でSNSの相談対応件数が合計二十六万件に達しております。

 こうしたSNSの相談を実施している民間団体の中には、二十四時間三百六十五日、誰でも無料、匿名で利用できる相談窓口もあります。LINEを経由して行われるもののほか、独自のウェブチャットシステムを採用しているものなど、様々工夫をしていただいております。

 今後とも、こうしたNPO法人等と連携しながら、SNS相談を活用した体制の拡充に努めてまいりたいと考えております。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 私も実際、ホームページ等を見させていただいて、私はたどり着いたんですけれども、いろいろな人に、ちょっとやってみてというふうにお願いしたところ、何人かはやはりたどり着かないという、分かりづらいという声もありましたので、是非とも、SNSを前面に押し出していいと思いますので、子供たちに関しては。是非そういった対応をお願いしたいなというふうに思います。家では電話をかけようと思っても親に聞かれたくないとか、そういった声がたくさんあるかと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 そんな中で、今、文部科学省が進めました一人一台のタブレット、これの活用というのは本当に大切だというふうに思っています。文部科学省の所管になってくるかと思いますが、タブレットを使った自殺対策、これを進めるべきだろうというふうに思います。

 せっかく一人一台のタブレットが今、子供たちの手に渡っています。でも、このタブレットがなかなか活用されていない状況、これがあるというふうに考えています。家に持ち帰ってはいけないとか、SNSも駄目だとか、外部に接触も駄目、フィルターをかけられたりと、フル活用されていないのが今の現状であります。

 タブレットを導入した意義というのは、やはり、社会人になって、私も当たり前のようにタブレットを使って仕事の管理、スケジュール管理、外部との接触、全部やっています。こういった社会人になるための準備としても、私は必要な期間であるというふうに思いますが、それが大人と同じような使い方ができないとなると、やはりこれはもっともっと活用すべきことなのかなというふうに思います。

 やはり、親の目があるうちに、まあいろいろなリスクがあると思うんですけれども、なぜオープンにしないのか、それがボトルネックとなっているのは何なのか、使い方をもっともっと広げていく必要もあるのではないか、そう考えておりますが、いかがでしょうか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 GIGAスクール構想に基づき整備された一人一台の端末につきまして、特定の教科等の学習にのみ活用するのではなく、家庭への持ち帰りも含め、日常的に学習に活用することは重要であると考えております。

 今年度の全国学力・学習状況調査の結果におきましても、全国の八割以上の学校で、週三回以上、授業で端末の活用がなされている一方で、都道府県ごとに分析しますと、例えば、ほぼ毎日端末を活用していると回答した学校の割合、最も高い県で八割、最も低い県で二割ということで、地域間、学校間でばらつきが見られるということでございます。また、端末の家庭への持ち帰りにつきまして、毎日持ち帰ると回答した学校の割合というのは全国で約二割にとどまること、こういったことが明らかになりました。

 また、学校現場の声として、セキュリティー対策等の理由で閲覧できないサイトが多いということも、声が寄せられているところでございます。

 こうした状況の背景は様々であるとは考えておりますが、特に持ち帰りに関して申し上げますと、例えば端末の破損等の不安がある、また、通信環境が整っていない家庭への対応、また、家庭での活用場面が十分イメージできていない等、課題として考えられております。

 文部科学省としましては、これまでも、特設サイト等におきまして、端末の家庭学習での活用方法とか留意点、こういったものを周知してまいりました。また、家庭学習のためのモバイルルーターの整備支援、こういったことも行ってきたところでございますが、今後は、例えば家庭での活用方法等、セキュリティーの考え方、こういったものにつきまして、更に教育委員会等に対しまして具体的な指導助言を行って、端末活用の日常化に向けた取組を加速させてまいりたいと思っております。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 私はもうフルオープンでいいと思います。大人と同じような使い方を子供たちにもさせて、そして、親の目もあって、そして先生の目もありますから、そのときにやはり、リスクは何なのかとか、危険な操作はどんなことなのかということをしっかり学ばせた上で、私はもっともっと導入を進めるべきだというふうに思いますので、そちらもよろしくお願いいたします。オープンを前提とした上での対策、かけていただきたいと思います。

 これは先ほどの自殺対策にも大きくつながってくると思います。みんながこれを一人一台持っていて、家でも通信環境があれば、誰でも、先ほど言った匿名性の高いウェブチャット、そしてまたLINEも使えることができますので、こういう環境を今、文部科学省がせっかくつくっていただいた。これは、命に関わること、これを防ぐことができると思いますので、是非とももっともっと活用をしていただきたい、そう思っております。

 これは本当に画期的なことだなというふうに私は思っていて、この一人一台のタブレットの中に、これはナショナルサービスとして、自殺、そしてまた悩み相談、こういったものを、私、入れておくべきだと思うんです。

 毎日、今どんなことに悩んでいるんだ、若しくは、そのレベルはどれぐらいなんだ、こういったものをどんどんどんどん記入していただいて、ある程度のアラートが積み重なったときにはしっかりと専門家が対応するとか、やはりそういったものを、これはインフラとして私は入れるべきではないか、そのように考えておりますが、是非とも御検討、また御答弁いただきたいと思います。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 一人一台端末、家庭学習の充実に資するということはもちろんでございますけれども、感染症拡大などの緊急時にも、学びの保障ということで非常に基盤的なツールとなっております。

 また、先ほどお答えしたとおり、家庭への持ち帰りを進めるということ、その活用方法についても更に具体的に周知してまいりたいと思います。

 御指摘のありましたICTを活用した相談体制についての充実がとても大事だ、重要だと考えております。

 SNS等を活用した相談体制の整備の推進等によりまして、様々な悩みを抱える児童生徒の早期発見等に向けた取組を今も行っているところでございます。

 また、現在、永岡文部科学大臣の指示の下で、今後、一人一台端末を活用し、悩みや不安を持つ児童生徒の小さな声を可視化して、心の不安、また生活リズムの乱れに教職員が確実に気づくということがとても大事でございますので、そういったことができるようなことを目指して、有識者の御知見も伺いながら施策の検討を進めているところでございます。

 こうした取組を通じまして、文部科学省としても、御指摘のありました児童生徒の効果的な自殺防止対策、これの推進に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 是非ともこれは早急に進めていただきたいというふうに思います。先ほど電話の対応ということもありましたが、電話にかけるお金ももっともっとこのSNSに入れて、そしてまた、一人一台タブレット、これは命綱だというふうに思いますから、是非とも積極的な活用の上、自殺者が一人でもなくなるように御努力いただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 続いて、一人親への支援について御質問させていただきます。

 離婚をしようとしている人、調停中、訴訟中など法的に婚姻関係が継続している場合、この時期が一番苦しいんだという、私のところにも、座談会等をやったときにいろいろな話を伺うことができました。そういった背景から、まだ訴訟中、調停中、まだ離婚していないという状況の中でも、二〇二二年三月に、児童扶養手当における遺棄の要件、これを変えていただいたかというふうに思います。

 これはすばらしい対応だなというふうには思っておりますが、児童扶養手当は、児童が父又は母に一年以上遺棄されている場合、従来だとアルコール依存症、ギャンブル依存症、DV等から避難している場合などに限っていたけれども、これが広がって、離婚調停中や離婚訴訟中など婚姻関係が継続している場合であっても、配偶者からの定期的な仕送りや連絡がないなど、実態として養育放棄している状態であれば遺棄とするということを都道府県に通知をしたということであります。

 この遺棄の解釈、先ほども、評価しているところでありますが、これがどれぐらい浸透しているのか、実際、市町村がどれぐらい対応をされているのか、こちらについて、分かる範囲で教えていただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から御紹介いただきました児童扶養手当の支給対象となり得る遺棄の認定基準でございますけれども、令和三年の地方からの提案に基づきまして、離婚調停中などであっても父又は母による現実の扶養を期待することができないと考えられる児童であると認められる場合には手当の支給対象となることを、通知において明確化したところでございます。

 この通知の自治体における取扱いということでございました。

 必ずしも全国網羅的に、私どもも各自治体における取扱いを把握しているわけではございませんけれども、例えば、しおりですとかホームページなどにこの遺棄の支給要件を明記をしていただくとか、その上で相談に応じていただくなど、適切に運用いただいているものと承知をしております。

 しかしながら、厚生労働省におきまして、この手当の認定事務を担う自治体に対して周知をすることは非常に重要でございますので、全国の自治体への説明会の場などを通じまして更に周知を行うなど、今後とも適切な制度の運用がされるように働きかけてまいりたいと思っております。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 離婚経験者の方によく言われます。なかなか離婚してくれない、そういった状況のときが一番つらいんだというのを離婚経験者の方がよく言われるんですね。まだこの遺棄の通知が変わっていない時期の方々だというふうに思うんですけれども。そういった人たちはそのつらさを理解していて、理解をしているから、これから離婚しようとする人たちがその人たちに相談をするんですよね。相談をしたときに、いや、実際に離婚をしないとこれはもらえないんだよということを伝えてしまうケースがよくあるんです。いろいろ発信をして通知をしているという御努力は非常に分かるんですけれども、やはり離婚を経験した人たちにも、こういった変わったんだということを理解してもらうことが、私は非常に浸透をさせる上では必要なことかなというふうに思いますので、そんなことも発信をしていただければというふうに思います。

 そして、やはり、こういった時期、児童扶養手当もそうですが、引っ越しをしたりとか、子供に対する養育費であったりとか、非常にお金が苦しい時期ということも聞いています。やはり婚姻をしている状況だと様々なサービスが受けられない、そんな話もよく聞くところでありますけれども、今回、緊急小口資金とか総合支援資金、これがコロナ時に非常に有効なものであって、本当に助かったという声もたくさん聞いております。これも、よく見ると、やはり世帯収入というのが出てくるんですよね。世帯収入が基準としてあって、そうすると、こういった離婚調停中の方でも世帯収入というものが合算されて出てきてしまう、だからお金が借りられないんだ、こういう声も実は入ってまいりました。

 質問なんですけれども、離婚調停中、訴訟中で、こうした社会福祉協議会が窓口になっている、社協で借りられるこういったサービス、こういったものに関してはどのような対応になっているのか、お聞かせいただければと思います。

川又政府参考人 社会福祉協議会が実施をしております緊急小口資金等の生活福祉資金貸付制度は、低所得者世帯等を対象に、経済的自立に向けて、相談者の状況に応じた貸付けを実施するものでございます。

 この貸付けは、基本的には世帯単位ということを原則としておりますけれども、お尋ねの離婚調停中あるいは訴訟中など、やむを得ない事情がある場合には、必ずしも住民票上の世帯単位ではなくて、生活実態に即して柔軟に貸付けを行うことができる制度となっております。例えば、児童扶養手当等の支給開始までに生活費が必要な場合、あるいは自立するために住居を移転する必要があるような場合などに貸付けの利用が可能となっております。

 そのほか、一人親の方への支援としては、母子父子寡婦福祉資金貸付金による生活資金等の貸付け、あるいは生活困窮者自立支援制度におきます住居確保給付金の支給などの支援がございます。

 引き続き、一人親の方へのセーフティーネットの充実に向けて努めてまいりたいと考えております。

穂坂分科員 ありがとうございます。柔軟に対応されているということも、非常によく話が分かりました。

 しかし、社協のホームページ等を見ていますと、これで借受けができないように見受けられるんですよね。やはり世帯というものがどんと来ていますので、ああ、じゃ、結局駄目なんだというふうに思われるというふうに思います。今、セーフティーネットの充実を図っていただくという御答弁もいただきましたが、困ったら何でも相談しろ、そういった体制、そういった表現の仕方もやはり必要だなというふうに思います。是非とも、そういった対応をお願いしたいと思います。

 続いて、こうした行政サービス、自治体によって非常に異なっているというふうに思います。

 一人親家庭への支援のサービス、例えば東京と隣接している私たち埼玉県の市でも、やはり隣を見れば充実したサービスで、うちにはないということ、すごくあります。また、給料水準も、例えば、これは別な話ですけれども、保育士さんの給料とか、地域間格差が物すごい出ていて、そんな違いも非常に多くあります。保育士さんが取られて、全部東京にいるという状況、本当に私もいろいろな陳情を受けるんですけれども。そういった状況でありますから、サービスも当然、私たちの市よりも隣の二十三区の方が充実しているし、非常にいろいろなクレームも受けるところなんですけれども。

 今、政府の政策でいけば、東京の一極集中、人口がそちらに流れるよりもやはり地方に地方にということを取っていると思いますが、やはり、サービスレベルが全然違いますと、東京の方に行った方が得だ、東京に行けばこういうサービスが受けられるとなると、みんな移ってしまうんですね。特に一人親家庭なんていうのはサービスが充実したところに行きたいと思いますので。特に私どもの市なんていうのは、隣の隣の駅がもう東京でありますから、やはりみんな引っ越してしまう、そんな一人親の声も聞かせていただきました。

 そう考えていくと、やはり、市町村に標準的に備えなければいけないサービス、例えば子供のショートステイ事業、自分が疾病にかかったときに子供たちをどうするのか、預けられるのか、この質問をよく私は受けます。こういったサービスが私の市にはないけれども東京にはある、もう東京に行かなきゃいけないのかな、そんな不安の中で働いているお父さん、お母さんたちがたくさんいらっしゃいました。

 やりたくても市町村には予算がない、こういった状況も理解しているところでありますが、そうなってくると、やはり国の方が、ある程度の、一定のサービス水準、これを保ってあげることも必要なのかなというふうに思います。せめて一時預かり事業、病児・病後児保育事業、そしてまた子供のショートステイ、これも国の関与で前に進めていただきたいな、そう思っておりますが、いかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 一人親家庭を含めまして、一時預かり、それから病児・病後児保育事業、ショートステイ、こういった支援を必要とする子育て家庭にとって、必要なときに円滑に支援を受けられるということは非常に重要なことだと考えております。

 一時預かり事業などにつきましては、子ども・子育て支援法による市町村事業という位置づけでございます。子ども・子育て支援法に基づき、市町村が、子育て家庭の利用ニーズを踏まえて、事業量の見込みや実施しようとする事業の提供体制の確保に関する事業計画を定めた上で事業を実施していただく、そういう仕組みになってございます。

 国といたしましては、こういった事業計画の作成に関しまして基本的な指針を提示するとともに、市町村が当該計画に基づいてそれぞれの事業の提供体制を適切に整えられるように、市町村への補助を通じて引き続きしっかりと必要な支援を行ってまいりたいと考えております。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 本当に、一人親家庭の皆さんは不安がすごい募っています。是非とも、こういった方々が働きやすい環境づくり、そしてまた、子供を安心して育てられる環境づくり、お願いができればというふうに思います。

 最後の質問をさせていただきます。重度訪問介護について御質問させていただきます。

 私の周りでもこういった方々、いらっしゃるんですけれども、重度訪問介護利用、介護の利用では、通勤、通学、職場、学校では介助、介護ヘルパーを使うことができないということになっています。これは、利用者の社会への参画、就労の機会などが非常に抑えられているのではないか、そのように私も感じています。同利用者の就労、就学に介助、介護ヘルパーを使えるようにしてほしいという声がたくさんあります。

 ALSにしても、こういった神経難病、体は動かなくてもやはり脳は正常でありますので、就労、就学、こういった能力的には健常者と本当に遜色がない状況であります。是非とも、この重度訪問介護事業について、やはり通勤、通学、職場、学校での介助を認めていただきたい、そう思いまして質問させていただきます。

辺見政府参考人 重度の障害者に対する就労中の介助等の支援につきましては、障害者雇用を促進する観点から事業主に対する助成措置を講じてきており、障害者雇用促進法に基づく事業主による合理的配慮との関係に加えまして、重度訪問介護において、個人の経済活動に関する支援を公費で負担すべきかなどといった課題があると認識をしているところでございます。

 そうした中、重度の障害者に対する支援に意欲的に取り組もうとする企業や自治体に対し、障害者雇用納付金制度に基づく助成金と障害者総合支援法に基づく地域生活支援事業が連携した事業によりまして、通勤、職場での支援を実施しているところでございます。

 また、重度障害者に対する教育の場における支援につきましては、障害者差別解消法に基づく教育機関等による合理的配慮との関係や、これまでの教育と福祉の役割分担の関係から、福祉と教育の連携により支援をしているところでございます。

 厚生労働省においては、こうした考えの下、大学等が必要な支援体制を構築できるまでの間を対象といたしまして、重度訪問介護利用者の大学修学支援事業により大学等での支援を実施しているところでございます。

 障害者の日常生活及び社会生活の支援につきましては、障害福祉分野による支援だけではなく、雇用主や教育機関等の役割を踏まえながら取り組むことが必要でございます。

 国といたしましても、自治体がこれらの事業を円滑に実施できるよう努めるとともに、関係機関の連携による重度障害者に対する就労、就学の支援を推進してまいります。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 是非とも、こういった方々が普通に生活できるように、しっかりと後押し、お願いをしたいと思います。

 また、この重度の障害者の生活施設、これは本当にこれからすごく重要になってくるなというふうに思います。グループホーム等もつくっていかなければならない。親御さんの御意見で、自分たちが生きているうちはいいけれども、自分がいなくなった後、子供たちが心配だという声がたくさん聞かれています。軽度の障害のグループホームは大分進んでいるのかなというふうに思っておりますが、やはり、重度になりますとなかなか進んでいないのかなと私は思っています。

 この重度障害者のための生活支援施設、グループホームの設置数の推移、また、この施設の定員の基準、こういったものを教えていただければと思います。

辺見政府参考人 グループホームを含みます障害福祉サービスにつきましては、各市町村が地域の障害福祉ニーズを把握し、障害福祉計画を策定して、計画的な整備を推進しているところでございます。

 グループホームの数は、年間約一割ずつ増加しているところでございまして、令和三年度には一万一千か所となるなど、必要な整備を進めてきたところでございます。

 また、グループホームにおける共同生活住居の入居定員でございますけれども、原則として二人以上十人以下とされているところでございます。

穂坂分科員 済みません、ありがとうございます。今言われたグループホーム、これは重度障害者とそれ以外となるとどういう数字になりますか。

辺見政府参考人 恐れ入ります。

 今申し上げました数字でございますけれども、一万一千か所は、重度の方を含みますグループホーム全体の数字でございます。

 重度訪問の方と限定をしているということではございませんけれども、重度訪問の方を中心として受け入れる、まあそのほかのグループホームにも重度の方は入っておられますけれども、日中サービス支援型というグループホームにつきましては、令和四年十月の時点で六百九十七事業所となっているところでございます。

穂坂分科員 ありがとうございます。

 是非、重度のグループホーム、これはまたちょっと別枠でいろいろ考えていただきたいなというふうに思います。非常に、重度になりますと対応も難しくなって、とても、定員基準、今、二人以上十人以下とありましたけれども、十人以下じゃ絶対に経営は回らないです。もっともっと人数を増やして、ちょっとボリューム感を出していかないと経営ができませんので、是非ともこれは御検討いただきたいというふうに思います。

 グループホームの理念も当然分かっているつもりです。地域で、少人数で、その地域の中で生活をしていくということは分かりますけれども、やはり、こういった運営上では、経営も考えていかなければいけない、採算も考えていかなければいけない。単価を上げるというのはやはり役所としてはきついものがあると思いますので、定員を増やせば経営は成り立つということもいろいろ意見をいただいております。是非とも、この定員の緩和について、もしも御意見をいただけたら、お願いいたします。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 グループホームでございますけれども、共同生活を行う住居でございますところ、入居定員は原則十人以下としており、これは家庭的な雰囲気の下でのサービスを提供するという趣旨でございます。

 御指摘のように、重度障害者の生活の場として重度障害者向けのグループホームの整備は重要と考えており、これまでの報酬改定において、重度障害者に対して常時の支援体制を確保する日中サービス支援型のグループホームですとか、医療的ケアが必要な方、強度行動障害を有する方に対する支援を行う場合の加算、こういったようなことに努めてきたところでございます。

 現在、令和六年度からの自治体における障害福祉計画の見直しですとか、次期報酬改定の議論を進めているところでございますが、グループホームにおける重度者への支援の在り方や地域における重度障害者向けの整備について検討を進めてまいりたいと考えております。

    〔大岡主査代理退席、主査着席〕

穂坂分科員 ありがとうございました。

 以上で質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

牧原主査 これにて穂坂泰君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田佳彦君。

野田(佳)分科員 立憲民主党の野田佳彦でございます。

 私は、二〇二〇年三月二十八日に、千葉県の北総育成園という障害者の入所支援施設で新型コロナウイルスの集団感染が発生をして、スタッフと入所者の皆さん、百二十人を超える規模で、多くの方が感染をされました。全国初の障害者施設のクラスター発生でしたので、場所は千葉県の東庄という地域にあるんですが、船橋市も運営に関わっていましたので、私の地元にも関わるので、とても心配をして、当時、予算ではなくて決算の分科会で質問をさせていただきました。その折には、ちょうど加藤大臣でございまして、大臣からも大変誠意ある御答弁をいただいたし、厚労省の皆様にも緊張感を持って適切な対応をしていただいたことに、改めて、まず冒頭、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 今日は、児童相談所の開設をめぐる諸問題、特にマンパワーの確保の問題を中心に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、大ぐくりな話からいきたいというふうに思いますけれども、平成二年に統計を取り始めて以来、ずっと一貫して十八歳未満の子供への児童虐待は増え続けてきているということでございますし、令和に入っても、令和二年度にはとうとうその相談件数が二十万件を超えて、令和三年度には二十万七千六百五十九件という、どんどん増え続けているんですね。

 私の地元の千葉県も、千葉県とそして政令市の千葉市を合わせると一万一千八百七十件ということで、全国四番目なんです。とても危機感を持っているんですね。激増していますね、件数が。コロナ禍でも増え続けている。そういう中で、一方で、児童福祉の現場の職員の確保が十分できずに、職員一人当たりの負担は非常に増えてきている。

 いろんな弊害が出てきていると思いますが、この現状をどのように御認識をいただいているか、そしてどのように変えていこうとされているのかを、まずはお尋ねをしたいというふうに思います。

加藤国務大臣 今、野田委員からお話がありましたように、虐待相談件数、年々増加をしております。そうした中で、児相を中心に、そうした虐待相談、あるいは虐待に適切な対応を図っていく、体制を強化していく、まさに急務であるというふうに考えております。

 ちょうど三十年の十二月に、児童虐待防止対策体制総合強化プランというのを決定をいたしました。それに基づいて、まずは児童福祉司を増員するということで、今年度までの五年間で約二千五百人増員する体制整備を逐年進めてまいりました。

 さらに、五年度以降についても継続的に児童相談所の体制を強化する必要があると考え、昨年十二月に策定いたしました新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランに沿って、令和五年、令和六年度で児童福祉司を約千百人増員する等の対応を進めるところでございます。

 こうした人材確保を、あるいは人材の体制を強化すると同時に、それでも大変業務負担が上がってきておりますので、その負担軽減を行っていくために、一時保護の緊急性の判断に資するAIを活用したツールの開発、また、児童相談所におけるタブレット等の購入等に要する経費に対する補助を行い、こうしたIT機器を十分に使っていただく。こうしたことによって負担を軽減し、児童相談所の対応力そのものの向上を図っていきたいというふうに考えております。

野田(佳)分科員 まさにスタッフの増員を図る方針という御説明をいただきました。後でもう少し、この問題については詳しくお尋ねしたいと思いますけれども。

 大変興味深い数字があるんですけれども、これは令和二年度の千葉県の数字なんですけれども、精神疾患によって一か月以上長期療養を取得した県職員の数、平均で二・七%。児童相談所のいわゆる心理職に就いている人たちの、県職員ですね、一か月以上長期療養をした人は一〇・三%なんですね。県平均が二・七、児童福祉司一〇・三%、指導員が八・四%。やはりそれだけ精神的にかなり現場は追い込まれていると思いますし、私の住んでいる船橋は、市川の相談所管内なんですけれども、市川は常に、例えば一時保護の場合だと定員の二〇〇%ぐらい預からざるを得ない。ここの、例えば児童指導員の一か月以上の長期療養というのは一六・七パーなんですよ。

 というように、負担の大きいところほど精神的に追い込まれていますので、今の方向性は是非迅速に対応していただきたいというふうに思います。

 その上で、千葉県も、今申し上げたように危機的な状況でございますので、県として新たに印西市と松戸市に新たに児童相談所を設置しようとしていますし、私の地元は船橋市ですが中核市です。この船橋市ともう一つ、柏市という中核市が独自に児童相談所を設置しよう、こういう動きをしているんですけれども、そういう動きがあるので、市の方から県の児相に職員を派遣をするということで経験を積むような試みもやっているんですけれども。

 いろいろやっていますけれども、お聞きしたいのは、令和二年四月二十日付で、児童相談所一時保護施設における受入体制強化を図るための整備の特例的な取扱いについてというものが出されました。これがいつまで続くかというのは分からないんです、特例的って。今申し上げたように、県で二つ新しくつくろう、中核市で二つつくろうとしているんですけれども、途中でこの特例が切れたら困るわけで。もう準備を始めましたので、建設予定地も確保して、建設しよう、スタッフを確保しようというところですので。これは少なくとも、私の船橋市は令和八年四月開設なんですが、しっかりとこの特例はまだ続けるということを是非お話しいただければ、多少安心するんです。よろしくお願いします。

加藤国務大臣 令和二年度から、定員増のための自治体による施設整備に対する国庫補助、これを交付基準額の合計額を二倍にして交付額を算出する特例を設けて毎年度予算要求し、そして毎年度それが実現できているということでございます。今申し上げたように、したがって、五年度については、今回、こうした措置を今、予算案の中に盛り込ませていただいておりますが、六年度以降はどうなるかということでもございます。

 ただ、私どもの認識として、これまでやってきた対応の状況、対応すべきであるということの状況認識、これは全く変わっておりませんので、引き続きそうした対応を取っていかなければならないと思っておりますが、ただ、御承知のように、財政当局とのいろいろなやり取りもありますので、こうだということの確実なことは申し上げられませんが、そうした意気込みで取り組んでいきたいと考えています。

野田(佳)分科員 大臣の意気込みはしっかりと受け止めさせていただきたいと思いますし、引き続きよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 少し先ほど触れさせていただきましたけれども、市から県の児童相談所に職員を派遣をするということを往々にしてよくやっているんですけれども、その際になんですけれども、国からの補助金というのが非常勤換算になっているという現状なんです。

 中核市の柏市からは、柏の児童相談所、県の児童相談所に十三人、職員派遣をしています。船橋市からも、県の児童相談所である市川相談所に複数職員を派遣をしていますが、会計年度任用職員を充てているんですよね。非常勤で職員を派遣をしていると、市の部署である家庭児童相談室などに経験としてノウハウが蓄積されるということが極めて困難になっていることなどもありますので、是非これは常勤換算にできないかという要望が自治体からは強くございます。

 この点についてのお考えをお聞かせをいただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 児童相談所の設置を目指す中核市等が、設置後に児童福祉司として任用するため、他の自治体の児童相談所に職員を派遣する場合において、その間の業務を行う代替職員の配置ということで補助を行っているところでございます。

 この補助は非常勤職員の雇用経費を対象としておりますけれども、これは職員を他の自治体に派遣する期間において活用するものであるためであり、派遣期間終了後に当該職員が戻ってこられるということを勘案いたしまして、非常勤職員としての補助金ということで支援をさせていただいているところでございます。

 一方で、児童相談所設置後におきましては、児童福祉法に基づく児童福祉司等の配置標準を満たすための人件費といたしまして、地方交付税により措置をされることとなります。

 今後とも、様々な取組を通じて児童相談所の設置を検討しておられる自治体の職員の確保を支援していく必要があると考えておりまして、ただいま例に挙げられた市から県への派遣に加えまして、都道府県のスーパーバイザーなどの方を市の方に派遣をしてくださる場合の代替職員の配置の補助ですとか、児童相談所設置準備に係る補助職員の配置の補助ですとか、それから、人材確保のための自治体が行う採用活動に関する費用の補助、こういったことについても全体としてしっかり取組を行い、児童相談所の設置を検討している自治体の皆様について支援をしていきたいと考えております。

野田(佳)分科員 今おっしゃったように、いろいろなケースがあるかと思いますが、なるべく、やはり自治体が安心して職員が派遣できるような環境整備に引き続きお努めをいただきたいというふうに思います。

 先ほど、大臣から、これからますますスタッフの増員の方針を冒頭に御説明をいただきました。これまでも五年間やってきたし、これからも五年間そういう取組でやっていくという具体的な御説明があったんですが。

 ただ、とても、今ちょっと足下の状況を心配しているんですけれども、例えば、地元の千葉県の話ばかりで恐縮なんですけれども、令和四年度の児童相談所関連職種の採用見込み状況というのがだんだん明らかになってきているんです。それを見ますと、大変驚くんですが、児童生徒の相談を受ける児童福祉司、採用予定が五十五人なんですけれども、現時点で見込み八名なんですよ、不足が四十七名、決定的にこれは不足しています。それから、子供の心理ケアを担当する心理職種、採用予定五十一名のところ、見込みが二十六です、不足二十五、約半分ということですね。一時保護の児童生徒らへの指導を行う児童指導員、採用予定が七十三人ですが、見込みが二十一人なんです、不足五十二人、決定的に足りないですよね。保育士、採用予定二十人、見込み十人、不足は十、これも半分。

 ということで、現状を見ると、かなり苦闘しています、現場は。相当に実効性のある確保策と養成策をしていかないといけないのではないかと思うんですが、その人員確保の見通しを改めてお伺いをしたいというふうに思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月に関係府省庁連絡会議におきまして策定をいたしました、新たな児童虐待防止対策体制総合強化プランにおきましては、今後、本プランに沿って、各自治体において体制整備を図っていただくこととなります。令和五年度中に児童相談所に実際に配置される人数については、今後、全国の自治体に対して調査を実施することとしております。毎年四月一日現在での配置者数については、例年、四月以降に調査を実施しているところでございます。

 ただいま、非常に厳しい状況が現場現場で起きているということをしっかり受け止めて対策を講じていかなければいけないと感じております。

 一方、過去の配置の整備の状況を申し上げると、今年度までの前身のプランに沿った体制整備につきましては、当初の目標である二千二十人増を一年前倒しで達成をいただいたということですとか、最終年である今年度、当初目標に五百五人上乗せをした目標もほぼ達成できる見込みでございます。このように、自治体におきまして非常に努力をいただいて、計画的に配置を進めていただいていると承知をしております。

 新年度からの本プラン、新しいプランに沿った体制整備につきましても、このような自治体の取組を継続的に後押しすることが重要であると考えておりまして、地方交付税措置だけではなく、先ほど申し上げました採用活動に対する経費の補助ですとか、あるいは児童福祉司の任用資格取得のための講習の受講料の補助、こういったことにも引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

野田(佳)分科員 是非、足下の状況もよく踏まえて、把握をされた上で、しっかりと人員の確保をしていただくように改めて要請をしたいというふうに思います。

 さっき、千葉県の直近の数字を申し上げましたけれども、内定していて辞退をするケースも多いようなんですよね。採用予定と見込みで随分ギャップが出てきているんですけれども、最初は内定者がもうちょっとあったんです、それぞれの分野で。でも、辞退をしているということは、想像するに、ほかの県との人材の取り合いが生じていて、千葉県に一回内定したけれどもほかのところを選択するようなケースも出てきているのではないかと思います。

 加えて、私の地元の船橋市は中核市で、中核市で新しく児相をつくるというわけで、そのスタッフ確保、これは大変なんですよね。柏市も同じなんです。中核市で児相をつくったというのは今まで余りないじゃないですか。できる規定はあるけれども、多分、鎌倉とか金沢とか、限られた中核市ですね。是非これは、中核市がこれに挑んだときの成功事例にしたいんですけれども、そうすると、県から職員を派遣してもらうというスタートを切っていかないとやっていけないんですけれども、県の方のスタッフ確保が困難になってきているがゆえに、どうも県の方から余りいい答えが返ってきていないようで、結局、船橋とか柏とかという同じ県内でも人材確保争いにならざるを得なくなってきているという状況が出ているということを是非御認識をいただきたいと思うんですけれども、その辺はいかがですか、把握をされていますか。

藤原政府参考人 プランに基づいて児童福祉司の人数を確保していくという際に、実際には現場現場では様々な御苦労をいただいているというふうに承知をしております。

 実際に、体制強化のためのプランを策定していただくのはもちろんありがたいんだけれども、児童福祉司が非常に多忙であるということで、募集をかけてもなかなか応募者が十分な人数が集まらないとか、あるいは、現在既に市町村の児童福祉部門ですとか児童養護施設に勤務する方が応募してこられたりというふうなことで、まさに同じ分野の中での奪い合いみたいなことが起きているのではないかですとか、あるいは、地域間格差といいますか、関東圏で見ると、東京の二十三区の児童相談所の方に転職する方が出てきてしまうとか、現場現場からは様々な具体的な御苦労をお聞かせいただいております。

 そういった中で、福祉分野での勤務を希望する学生さんですとか、他の分野で既に現に勤務されている方などが児童相談所の業務に関心を持っていただいて、少しでも職業の選択肢に加えていただけるような取組を進めていくことも重要であろうというふうに思っております。

 そのため、先ほど来から答弁申し上げていることと重複して恐縮ですが、採用活動に対する補助ですとか、あるいはこのほかにも、児童福祉司の特殊勤務手当を月額二万円に増額するといった処遇改善ですとか、あるいは児童福祉司の研修に係る費用の補助、こういったことについても取り組んでいるところでございます。

 また、費用面の支援だけではなく、児童福祉司の仕事の内容ですとか魅力を周知するための動画の作成ですとか、あるいは採用活動に活用できるポスター、パンフレットの作成、こういったことについても発信をしているところでございます。人材確保は、費用面の支援だけではなく、こうしたソフト面での対応も含め地道な取組が重要であると考えております。

 平成三十年度の児童虐待防止対策体制総合強化プランに基づく体制整備計画につきましては、先ほど御答弁申し上げましたように、それぞれの自治体で御苦労いただきながらも何とか計画的に取り組んでいただいているということでございますので、新たなプランに基づく人材確保についても、引き続き国として支援をしながら取組を進めていきたいというふうに考えております。

 厚生労働省として、様々な支援策を通じまして、各自治体による児童福祉司等の確保、確保した人材の定着、この両面から丁寧に取り組んでいきたいと考えております。

野田(佳)分科員 船橋の場合は、百五十人規模のスタッフでスタートしようと。そのうち九十人が専門職、その三分の一ぐらいは県から助けてもらえるとありがたいな、スタートの段階は、という考えがあるんですけれども、今のところ回答は一桁ぐらいらしいんです。とても厳しい状況ですね。

 市川児童相談所、県の児童相談所管内で所掌している人口というのは百四十万人です。もういっぱいいっぱい。だから中核市が手を挙げたんですけれども、手を挙げてもスタッフが確保できなければ、それを見ているほかの自治体も多分ひるんでしまうと思いますので、自治体間のいろいろな調整というか、特に手を挙げた中核市には、少し国としても、県に指導して、配慮してやれよと言っていただければありがたいなと思いますので、これは回答はいいですけれども、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 次の質問でございますけれども、こういう人手不足の状況が特に首都圏の場合には深刻でございますけれども、その際に、児童相談所に教員免許取得者を配属するという方法はあったし、これまでも異動でやってきたケースがあると思うんですが、それをどう考えるかなんです。

 教員免許を大学で取得するときには、これは、児童指導員、児童福祉司の任用資格ということが与えられますので、法的には問題はないと思うんですよね。法的には問題ないけれども、児童福祉を専ら専門的に勉強してきたわけではないので、果たして現場でしっかり通用するかどうかというと、これはちょっとまた別の問題なので、それをどう捉えるかなんですが、お考えがあれば、お聞かせをいただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 児童福祉司の任用要件でございますが、先ほど委員から御紹介いただきましたとおりでございまして、社会福祉士、精神保健福祉士の資格を持っている方などのほかに、教員免許取得者で、一定の実務経験を積んだ方も含まれている。これは児童福祉法の施行規則に規定がございます。

 実際、令和四年の四月時点での児童福祉司、五千七百八十三人中、人数は少ないんですけれども、この要件で配置をされている方が三十四人おられます。

 また、教員免許を持った方々は、様々なところで、児童福祉の分野で活躍をいただいておりまして、児童福祉司そのもの以外にも、現役の教員の方が人事交流で児童福祉司の仕事をしていただいたり、あるいは、教員のOBの方が学習指導員ということで一時保護所で勤務していただいたり、一定程度、教員免許取得者の方が何らかの形で児童相談所あるいは一時保護所で活躍いただいているという例を承知してございます。

 恐らく、ちょっと、所管外なので確定的に申し上げられないんですけれども、学校現場でも教員の確保が重要な課題だというふうに私どもも伺っておりますので、その部分とのバランスをどういうふうに考慮する必要があるかという問題はあるかもしれませんけれども、少なくとも児童相談所での勤務を希望される方の希望がかなうように、自治体での採用活動への補助などについて、引き続き取り組んでいきたいと考えております。

野田(佳)分科員 今局長がおっしゃったとおり、教員の確保も結構大変ですよね。小学校あたりだと、今、採用倍率が二倍を切るような自治体もいっぱい出てきていますし、大変教育現場も苦闘をしていますね。

 その中で、やはり、特に児童相談所のスタッフを確保という意味では、足りないならば、やはり王道は、少し時間がかかるかもしれませんけれども、大学などで専門的なコースをしっかりとつくって、そして、専門的な知識を持った、その使命感を持った、志を持った人たちを養成して、そのボリュームを使って現場に回していくということがあるべき姿、望ましい姿だと思うんですが、その辺はいかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 現状は、児童相談所の児童福祉司また児童心理司の任用対象は、社会福祉士や精神保健福祉士といった専門資格を有する者、都道府県の指定する養成校を卒業した者、大学等を卒業後に一定期間、相談援助実務に従事した者とされているところであります。

 こうした養成校に通われている方も含めて、児童相談所の業務に関心を持っていただき、働く場として選択いただけるよう、先ほど局長からも答弁させていただきました、そういう努力を引き続き取り組んでいくとともに、大学等での専門的な養成コースの設置という御提案をいただきましたが、昨年の児童福祉法改正により、令和六年四月から、子供家庭分野の実務者の専門性の向上を図るための資格を創設することとしております。

 この資格については、社会福祉士、精神保健福祉士の資格を有している方や、児童相談所等の現場で勤務する方を対象としてスタートするものではありますけれども、改正法の附則において、学生を対象とした課程を創設することについても今後検討するとされているところであります。

 この検討に当たっては、今委員からも御指摘をいただきました、児童相談所の職員の確保が大変厳しい、こういった状況も視野に入れながら、子供家庭福祉分野全体の現場力、対応力向上にいかにして資していくのか、そうした観点から検討を進めていきたいと考えております。

野田(佳)分科員 スタッフ不足に即して、比較的これまで量的な問題について御質問してまいりましたが、最後に、質に関わることになると思いますけれども、児童相談所の相談業務の中で、例えば令和三年度の場合は、相談業務の一番多かったのが、虐待などの養護相談が二十八・三万件。次に多いのが障害相談で二十・三万件。

 かつては障害相談の方が、平成二十七、八年までは多かったと思うんですね。今もなお、やはり障害相談というのは多いということが改めてよく分かるんですが。そうすると、これは特に、障害相談の中でも、発達障害をお子さんが抱えていたり、あるいは親が抱えていたりというケースがあるんですよね。発達障害というのは、見た目では分からない分、それこそ、そこを見抜いてきちっと対応するには、やはり障害についての理解を持っている人が対応しないと、なかなか対応が困難だと思うんです。

 その障害理解を促進するためにどうしたらいいのか。スタッフ自体が足りない上に、過度にいろいろなことを要求するのは難しいのかもしれませんが、ただ、実務的には障害理解の促進というのは必ず必要だと思うんですが、その辺はどう捉えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年度におきまして、全国の児童相談所が対応した相談の内容について見ますと、委員御指摘のとおりでございまして、最多が虐待相談を含む養護相談二十八万三千二百二件でございました。次いで、障害相談二十万三千三百十二件ということで、児童相談所における障害に関する理解の促進は非常に重要になってきていると思っております。

 御指摘いただいたとおり、児童虐待の背景にも、お子さんの障害が入っている可能性もございます。複雑な要因が絡んでいるということがあると思います。

 児童相談所の児童福祉司につきまして、社会福祉主事から任用する場合には、任用前の講習会の受講が義務づけられておりまして、そのカリキュラムにおいては、障害種別と障害支援区分、あるいは障害に関する法令と制度について学ぶこととされておりまして、任用後の研修と同様の到達目標を設定しております。

 また、児童福祉司の任用後については、その全てに研修が義務づけられているわけですが、その中では、障害に関する基礎的な知識、制度について述べることができること、障害支援区分認定等により利用できるサービス体系を理解をし、説明することができることといった研修の到達目標を設定をしているところでございます。

 こういったことを通じまして、児童福祉司に対する障害に関する理解の促進、非常に重要でございますので、努めていきたいと思っております。

野田(佳)分科員 どうもありがとうございます。

 最後の最後にですけれども、四月一日から、こども家庭庁が設置をされることになります。今日お聞きしたようなことというのは厚労省からこども家庭庁に円滑にしっかりと引き継いでいただきたいと思いますけれども、改めて大臣の御決意をお伺いをして、質問を終わりたいと思います。

加藤国務大臣 今お話しいただきました児童虐待防止対策については、るる今議論させていただきましたように、児童相談所の体制強化に関するプランに基づく児童福祉司等の人員増、また、令和四年六月に成立した改正児童福祉法の施行などが重要であります。

 現在、この三月までは、私ども厚労省がしっかり責任を持って取組をさせていただきます。また、本年四月以降は、委員御指摘のとおり、これらの業務はこども家庭庁の支援部門に移管されることとなります。それに向けて円滑な引継ぎを行っていくべく、こども家庭庁設立準備室と緊密に連携をしながら、現在も業務を行っているところであります。

 また、移行後においても、医療、福祉、労働政策を私ども引き続き所管をしてまいりますので、子供政策に関する政府全体の総合調整を担うこども家庭庁としっかりと連携を取って、この児童虐待防止対策を始め様々な課題に当たっていきたいというふうに思っております。

野田(佳)分科員 どうも、御丁寧な答弁、ありがとうございました。終わります。

牧原主査 これにて野田佳彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、福島伸享君。

福島分科員 有志の会の福島伸享でございます。

 今日は、大臣、一日分科会、大変お疲れさまでございます。

 今日は、脳脊髄液減少症と遺骨収集の二点について質問したいと思っております。

 まず前者の、第一点目の脳脊髄液減少症についてでございますけれども、昨年、私、国交委員会に所属しているんですけれども、そこで自賠責法の改正案を審議をいたしまして、賦課金を引き上げるというものだったんですが、なぜ賦課金を引き上げなければならないかという理由の一つが、長期間リハビリをしなければならない後遺症に悩んでいる方がいらっしゃって、そうした対応のために必要だと。そのときに、交通事故で脳脊髄液減少症というのになって長期間にわたって不自由な生活を強いられるという事例を知って、そこからこの問題に関心を持ちました。

 地元にも、お子さんが不幸にして事故に遭われて重い脳脊髄症を患った方もいらっしゃったり、私自身も、息子がずっと、小学校、中学校の頃、頭痛が激しくて学校に行けないという状況で、あちこちの病院に行って、高度な小児医療のところなども行ったんですけれども、とうとう原因が分からなくて、今、知っていれば、もしかしたらこの脳脊髄液減少症だったのかもしれないなとも思うんですけれども、多くの方が原因が分からないまま病院をたらい回しになったり、あるいは、そもそも病気だと認識されないで、単にだるいだけじゃないかと言われたり、不適切な診療を受けている例も多いと伺っております。

 そうした中、今、例えばブラッドパッチ療法などによって回復される方もいて、逆に、回復すれば、ああ、これは脳脊髄症だったんだと分かるような事例もあるんですが、今のところ、的確な診断ができるような医療機関が、私のそばにも少ないでありますし、交通事故などで被害に遭った場合に、この脳脊髄液症がそもそも被害と認められずに保険金の対象にならなかったり、まだまだ未知の部分も大きい部分があると思っております。

 その一つの要因が、そもそも脳脊髄液減少症が病気としてきちんと認知されていないことにあるんじゃないかというふうに思っております。

 そこで、難病法では、難病を、発症の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない、そして希少な疾患であって、長期の療養を必要とする疾病と定義しているんですけれども、まさにこの脳髄液減少症というのはそれに当てはまるんじゃないかと思うんですが、指定難病として追加に向けて現在どのような検討の状況にあるか、厚生労働省の方から御答弁をお願いします。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 まず、難病法に基づく医療費助成の対象となります指定難病につきましては、御指摘のとおり、発病の機構が明らかでないこと、また治療方法が確立していないこと、それから客観的な診断基準等が確立していることなどの要件を満たす場合に、これは厚生科学審議会の意見を聞いて、厚生労働大臣が指定することとされております。

 脳脊髄液減少症につきましては、病態やその発病の機構等を明らかにするために、平成十九年度から、厚生労働科学研究や日本医療研究開発機構、AMEDにおきまして研究を実施しているところでありますが、これまでの研究では客観的な診断基準等が確立するには至っておらず、現時点で指定難病とすることは困難と考えております。

 令和五年度においても引き続き厚生労働科学研究におきまして診断基準等に関する研究を行う予定でありまして、その結果を踏まえて、指定難病の要件を満たすかどうかについては検討してまいりたいと考えております。

福島分科員 ありがとうございます。

 客観的な診断基準が確立していないからということでありますけれども、しかし、していないからこそ難病でもあるわけでありまして、どのぐらいが、客観的な診断基準というのは、ある意味、当然科学的な知見に基づく必要もあると思うんですけれども、政策的な判断も必要だと思うんですね。

 全国で多くの患者さんがこの難病指定を待ち望んでおりますので、大臣に一つお伺いしたいんですけれども、しっかりと研究を、今年度、来年度も続けるということですけれども、研究を促進して、やらないためじゃなくて、やるために研究を行って、一刻も早く診断基準を確立して指定難病として追加していただきたいと思うんですけれども、大臣の御見解をお願いいたします。

加藤国務大臣 脳脊髄液減少症の話、委員が取り組まれてこられ、また、他の委員からもこうした課題をいろいろ聞かせていただいたところでございます。

 今局長からもお話がありましたが、令和五年度においては、厚生労働科学研究費において、引き続き、脳脊髄液減少症の診断基準等に関する研究を行う予定としております。

 大事なことは、その結果を踏まえながら、何のために研究しているのかというのは、まさに指定難病の要件というものにどうやったら該当するのか、こういう視点も含まれているわけでありますので、そうした観点に立って、議論を、また検討を深めていきたいと考えております。

福島分科員 研究をしっかり進められることを期待いたしますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、二点目の戦没者の遺骨収集についてなんですけれども、私、四年間、ちょっと国会をお休みしておりまして、その間に、平成三十一年の三月に、ちょうどコロナの前だったんですけれども、パラオ共和国のペリリュー島に政府の遺骨収集団の一員として参加してまいりました。

 というのは、このペリリュー島は、第二次世界大戦のときに壮絶な戦場になりまして、そこを守備していたのが水戸歩兵第二連隊です。

 お手元に資料でペリリュー島遺骨収集報告という、一枚、表、裏紙をお配りをしているんですけれども、それは後で暇なときでも読んでいただければと思うんですけれども、本当にちっちゃな島です。周囲が二、三キロ、ちっちゃな島ですが、そこに太平洋一の飛行場があった関係で、米軍がフィリピンに上陸する拠点として占領しようとして、昭和十九年の九月十五日から十一月二十七日まで、当初は一週間で全滅できると言ったのを、水戸歩兵第二連隊が死守をして、玉砕をしないでずっと戦闘を長引かせて、本土への空襲を防いで、天皇陛下も何度も何度も気になさって電報を送ったという伝説の島です。

 一万一千名の日本兵のうち、生存できたのは僅か三十四人です。おととし、永井敬司さんという最後の生存者の方が九十八歳で、私の地元なんですけれども、亡くなられました。

 戦後七十五年たっても、今なお数千柱の御遺骨が残されております。私も行ってきたんですけれども、もう道から一歩ジャングルに入ると、まだ薬きょうとかいろんなのがあって、七十八年たっても戦場の跡がそのまま残っているような状況で、私が行ったときは十三柱の御遺骨を収容しました。

 大体、一柱、かけらが出てきて、それから地道に掘り進めていくんですけれども、半日で一柱ぐらい収容できます。一柱一柱、どういう状況で亡くなったかというのは、一緒に行った自衛隊のOBの方に聞くと、ざんごうの中で黒焦げになったのは、火炎放射器で焼かれてそのまま亡くなったものとか。池があって、そこに水をくみに行く、パラオは水がないので水が飲みたくて行くと、そこを狙撃兵が狙っています。リヤカーがあって、タンクがあって、水をくみに来たんですね。その下にあった御遺骨は、恐らく射撃されて崖から池の端まで落ちたものであろうとか。上陸地点だと、上半身と下半身が二メートルぐらい離れたところで出てくるのは、大きな迫撃砲みたいなもので体が真っ二つになったものだろうと。全部それは、どうやって亡くなった状況かというのが分かる状況で出てきます。

 一柱を白い布に包んで宿舎まで持って帰るんですけれども、十キロもないような重さですけれども、本当に温かい思いがするんですね。全員ほぼ茨城県の関係者ですから、まだ御親族が必ずいるはずなんです。ただ、若くして亡くなった方は子供がいませんから、私のちょうど大おじ、大おばの世代に当たる方ですから、恐らく、今戻しても、なかなか御遺族が名のり出ることはないと思うんですね。宿舎に地元の地酒を持って、ちょっとかけて、お帰りなさいとやるんですけれども、ただ、七十八年こうした状況で置いたのは申し訳ないな、そういう思いになるんですね。

 アメリカは、物すごい執念を持ってやっています。一つ大きな大腿骨が見つかったんですけれども、その情報を聞きつけると、すぐ米軍に連絡が行って、それはアメリカ軍のものじゃないか、ちょっと見せろと言って、物すごい執念で、遺骨を一かけらたりとも残さず本土に持って帰ろうとアメリカは努力するのに、日本はこれまで何やっていたんだろうなという思いを正直持ちました。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、そもそも私たちは何のために遺骨収集を行うのか、そのことについての大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今のお話の中で、令和二年の一月、ちょうどコロナが出る前に、私、ハワイのDPAAへ行きまして、やはりそこでいろいろ話をしたり、また、そこで展示されているものを見たときに、まさに今、福島委員がおっしゃったアメリカの遺骨収集に対する強い思い、それはなぜかというと、国のために、ある意味では、国が命じて出かけていった。残念ながら戦地で亡くなられた。しかし、その御遺骨は国に戻し、そして、家族に戻していくんだ、これは国の責務だ、こういう強い思いを私も改めて感じさせていただきました。

 日本においては、残念ながらさきの大戦で、今、ペリリュー島のお話ありましたが、三百十万人の方々が亡くなり、海外で戦没された方々も二百四十万に及ぶわけでありますが、そのうち約百十二万柱もの御遺骨、これはいまだ御帰還ができていない。そして、今お話しのようにもう戦後七十年を超える年月がたってきているわけであります。

 しかし、どれだけ年月がたとうと、それからそれぞれの方がいらっしゃらなく、なかなか直接の方はおられないかもしれないけれども、しかし、そこで、まだかの地で眠っておられる御遺骨をこの日本の地に戻していく、これは私たちが最後の一柱まで取り組んでいかなきゃいけない、そういった義務を私たちの世代は負っているというふうに考えております。

福島分科員 心のこもった答弁をありがとうございます。

 私も実は、身近な親族に戦没者がいないんですね。大臣の選挙区の矢掛町というところからうちの祖父が満州に行きましたけれども、無事帰ってきまして、戦争の話を聞いても、何か楽しかったという話しかしてくれなくて、分からないんですけれども、改めてあれだけの多くの御遺骨を見ると、やはり何とかしなきゃならないという決意を私も新たにいたしました。

 そうした中、平成二十八年に、戦没者の遺骨収集の推進に関する法律が議員立法によって制定されまして、令和六年までを集中期間として基本計画を策定し、基本計画に基づいて厚労省が毎年実施指針というのを策定して、一般社団法人日本戦没者遺骨収集推進協会が事業計画を策定をして、毎年、事業を行っております。

 ちょうど今日、パラオの収集団が出発する日なんですね。今、ちょうど成田から出発するんじゃないかと思いますけれども。

 この法律ができて、これまでどう評価されますか。うまくいっていると思うのか。いや、まだまだだと思うか。その法律の制定で、令和六年ですから来年までなんですけれども、これまでの事業の推進状況をどう評価するか、その点について御答弁をお願いします。

加藤国務大臣 戦没者の遺骨収集の推進に関する法律で、平成二十八年から令和六年までを遺骨収集の推進施策の集中的な実施期間としております。

 平成二十八年から令和元年度まで、これはおおむね計画どおり事業を実施をしてきたところでありますが、令和二年、三年度は、新型コロナの影響により、海外における事業はほぼ実施できておりません。令和四年度、今お話しありましたことも含めて、徐々に事業を再開し始めたところであります。

 厚労省としては、まず、令和六年度までの集中実施期間に一柱でも多くの御遺骨を収容し、御遺族に返還できるよう、相手国政府との連携、また、遺骨収集団にも参加していただいたということでありますが、それぞれ現地に赴き、一柱でも多くの御遺骨の収集に当たっていきたいと思っております。

 また、集中実施期間終了後においても、戦没者の遺骨収集は、先ほど申し上げた、国の責務であります。関係行政機関と連携協力して、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。

 また、先ほどちょっとDPAAへ行ったというお話を申し上げましたけれども、やはりかの地と、米国と比べて、余りにも分析の方も力不足ということを、遺骨が帰ってきているんだけれども遺族になかなか通じていかない、こういう課題もありました。

 そうした中で、やはりそうした対応を強力に推進すべきだということで、いろいろな施策を打ち込み、昨年九月には、DNA鑑定を厚生労働省自らが実施する分析施設なども立ち上げたところでございますので、遺骨収集と同時に、日本に帰ってこられた遺骨をまさに遺族の元にしっかりと帰していけるように努力したいと思います。

福島分科員 今日は、恐らく役所が書くと、これまで、コロナまでは計画どおりいっていたというふうに言うと思うんですね。でも、私は、その計画そのものが果たしてどうだったかということをやらないと、計画どおりやることが目的になっているんじゃないかと思うんですね。

 先ほど大臣もおっしゃいましたように、我々がやらなければならないのは、もう七十八年、八十年になろうとしている中で、一日も早く、一日も早く連れ戻すことが我々がやらなきゃならないことであって、計画どおりを過ごすことではないし、集中期間がそもそも果たして妥当だったかどうかということを、実際にやってみて検証しなければならないというふうに思うんです。

 私なりに感じたことを幾つか言うと、例えば、現地へ行っても、骨がどこにあるか、僕らでは絶対分かりません。石灰質のところにあるところは、石灰岩のような色に骨がなっているんです。コケのあるところはコケむして、コケと一緒にあるんです。日本人には分からないんですけれども、現地の、ヤシガニを捕っている現地人がいまして、その人がびいっと懐中電灯で照らすと、その色の違いで分かって、あっ、ここにあると言うんですよ。これは日本人では絶対分かりません。いきなり行って、ここ掘れワンワンと言ったって、広いところ、見つからないわけで、そうした情報収集が大事なんですね。

 ペリリュー島は今どうやっているかというと、長年この地で遺骨収集をやってきた影山さんという、水戸歩兵二連隊のペリリュー島慰霊会事務局長をやっている影山さんという方がいらして、もう体が悪くなって現地に行けないんですよ、今。私も顧問みたいなのをさせていただいて、手伝わせていただいているんですけれども。

 この人は何をやっているかというと、政府の遺骨団の収集前に、ポケットマネーから千ドル、十万円を現地の人に渡して、あらかじめ探しておいてもらって、赤いリボンをつけて、それでやっているんですよ。何で影山さんが出すのと言ったら、予算の制度の制約で、そういうお金が出しづらい、いろいろ難しい問題があって出せないから、ポケットマネーで千ドル、毎回毎回ですよ、現地の人に払って、それで、あらかじめやっているところに我々が行って掘るというのが実態なんですね。

 それは、恐らく予算制度が硬直的、もっと現地の人に、探すことにお金を使えるようにすればいいと思うんです。でも、これは、ペリリュー島はそうであっても、フィリピンやマリアナでそうかといったら、また現地は違うと思うんです。ペリリューは、影山さんが長年現地の人と信頼関係を保っているから、これができるんですね。でも、効果的にお金を使えば、もっと効率的にやることができるんです。年に四回、五回行って、それを基に掘っても、なかなか出てきません。

 そうした予算制度の柔軟化というのも是非取り組んでいただきたいんですけれども、その点はどうでしょうか。事務方でいいです。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、遺骨収集事業の予算につきましては、予算要求の際には、その遺骨収集事業の対象になる地域におけます予算要求時の情勢を最大限考慮いたしまして、可能な限り戦略的に予算を地域ごとに配分しております。

 予算成立後につきましては、地域情勢の変化には即応して、遺骨収集事業全体の予算の範囲内で弾力的に派遣が行えるよう、柔軟に対応してきているところでございます。

 また、現地での遺骨収集に当たりましては、日本から派遣をした派遣団以外にも、その現地の作業員の方を手配して、御遺骨の収容に取り組んでいるところでございます。

 また、今後も、必要な人員、予算の確保ができるように努めてまいりたいと考えております。

福島分科員 だから、それがお役所の答弁なんですね。

 私も行きますけれども、確かに現地の人も雇っています。遺族会とかで行くのはもう高齢の方だから、行くのがようやくであって、なかなか掘るのは大変なんですね。比較的若い人は誰かといったら、私だけ断然若いんですけれども、あとは、もう一つは、学生たちの遺骨を収集する団体の皆さん、それと、あと推進協会の職員の人なんです、一番できるのは。

 本来、職員の方は、コーディネート役であり、管理役であるんだけれども、最前線で職員の方がやらざるを得なくて、もう年に何度も現地に行って、戻ってきたら、今度は予算要求の資料とかを作ったり、報告書を作ったりという事務作業をやらなきゃならなかったりして、アジア全体とパラオで部長も含めて七人しかいないんです。太平洋諸島とミャンマーでは部長も含めて八人、その人たちが、年に何度も現地に行って、予算要求の仕事もやらざるを得なくて。

 やはりもっと、今、外の力もかりると言っていますけれども、例えば、集団埋葬地の木を切るのを、みんな、素人がぎこぎこ木を切ってやって、重機が入らないから。それもやはり予算の使い方が柔軟じゃないからだと思うんですね。

 それぞれの地点でいろいろな事情があると思うのを、もうちょっと柔軟に予算を使えるようにする工夫を是非してほしいんですよ。その点、どうですか、審議官。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、遺骨収集を行う前に現地に調査団を派遣いたしまして、その際に、現地の遺骨の状況、また、どういう収集方法が適切かなどを調べております。実際に遺骨収集に行く際には、その調査を基に派遣団を編成し、可能であり必要な場合には重機なども手配をしているところでございます。

 御指摘も踏まえまして、今後、更に効率的な遺骨収集ができるように勉強していきたいと思います。

福島分科員 それは紙上の話でありましてね、そんな現地に年に数回行くだけじゃ、調査なんてできないし、遺骨収集の現場というのは日々新しい課題やトラブルが発生するんですね。

 では、なぜ私はこれを言っているか。集中期間でできましたかと聞いているのもそこでありまして、どうしても、厚生労働省の、お役所的な仕事と言ったら失礼でありますけれども、現場を見ない仕事を、もうちょっと現場に柔軟にできるようなやり方にしていただきたいと思うんです。

 そもそも、担当の方も、これは我々も役所にいたからあれですけれども、通例で二年に一回とか替わると、せっかくいろいろな人間関係とかを覚えても、その途端に替わっちゃうわけですよ。いろいろなトラブルがあって、それぞれの経緯があるんだけれども、担当が替わると、また一から説明しなきゃならない。厚生労働省の職員の方も現地に行っていただいて、本当にその様子を見られた方がいて、せっかくそれで覚えても、次、全然違うポストに行っちゃったら意味がないわけでありまして、そうした人事配置の面でも、アメリカは、遺骨収集の専門家というのは、軍隊の中にも含めて膨大な数の人がいるわけです。

 厚生労働省は遺骨収集の一番の元締めなわけですから、そうした人事の面でもしっかりした対応をしていただきたいと思います。その点についてどうでしょうか。

本多政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、遺骨収集事業に携わっているのが、今、厚生労働省の職員で八十六名。また、先ほど議員からお話のありました日本戦没者……(福島分科員「八十六人」と呼ぶ)はい。厚生労働省職員で遺骨収集事業に携わっているのが八十六名でございます。一般社団法人日本戦没者遺骨収集推進協会、こちらに職員三十五名。また、このほかに、骨の状況を見る形質人類学の専門家八名が遺骨収集事業に携わっております。

 厚生労働省職員八十六名の多くの者は、援護行政の中でずっと長年経験を積んできておりまして、また、そういった職員の資質の向上も含めまして取り組んでいきたいと考えております。

福島分科員 だって、協会が三十五人なんですよ、現場に一番近い。さらに、その現場に来たのは三十五名と同数ぐらいしかいないんですよ。八十六名、厚労省の職員って、こんな頭でっかちな組織はないし、余りにも形式的だと思うんですね。十人でもいいから専門家が厚生労働省にいれば、こんな予算の硬直した使い方もないと思いますので。今の答弁自体が、この集中期間の事業が柔軟に行われない証拠ではないかなと私は思います。

 DNA鑑定のことについては先ほど加藤大臣からもお話がありましたけれども、やはり、ほかの国では現地の人の骨を持って帰ったりとか様々なトラブルがありますので、検体のDNA鑑定を行って日本人であることを確認するという作業は必要だと思いますし、その他にも、昨年センターをオープンしたりして、いろいろな努力を続けていらっしゃるんだと思います。ただ、その前に、掘った骨を現地では人類学者の方が鑑定するんですね。これに非常に時間がかかる。

 今、パラオでは、アンガウル島というところに集団墓地が見つかりまして、ここを掘っているんですけれども、ここに眠る御遺骨は大体三百五十八柱で、今行って一回で鑑定できるのが八柱ぐらいなんですよ。年に六回行くと、大体十年近くこれはかかっちゃうんですよ、骨がそこにあるにもかかわらず。そしてさらに、ペリリュー島の本島の、アンガウルというのは南のちっちゃな島なんです、離れ島なんですけれども、本島の方にも、いろいろな資料を見て、集団埋葬地が見つかって、千八十七柱見つかって、これも八柱ずつのペースでいったら、物すごい、百年近くかかってしまう。

 私は、こうした状況を見て、集団埋葬地が見ればそこに重点的に予算を投じるといった、戦略的な計画を作る必要があると思うんですね。それが集中期間でできなかったことだと思うんです。

 もう一点は、今回のパラオでも大変外務省の方にはお世話になりました。パラオの大使館には柄沢さんという農水省出身の私の仲のいい方が大使で行っていて、荻野さんという一等書記官の方が非常によく現地の人たちと調整をしてくれました。恐らくはパラオはそういうところなんですね。フィリピンなどは現地とトラブルになって続けられていない。事務的には文書を出しているんですけれども、私は、それぞれの外務省の公館に専属の遺骨情報収集担当を置いて、現地の人、日本人が行っていない間も動いてくれるのをマネジメントしたり、様々な調整に当たらせたりすることも必要だと思いますし、もう一点は外交と絡めることが必要だと思うんですね。

 昨年は、パラオの大統領が日本にいらっしゃって、恐らくそのときは遺骨収集の話をされたと思いますけれども、つい先日はフィリピンの大統領が日本に来て、そのときに遺骨収集の話をしたかどうかというのは聞いてはおりませんけれども、今止まっているのだとすれば、常に外交のチャンネルの中で遺骨収集の話をするという頭が必要で、これは事務的に協力をお願いしますというのじゃなくて、国家戦略として、私たち政治家が、私の話を聞いていただいて本当に必要だと思うんだったら、常駐で、常に外務省の職員、その周りにはJICAの人でも何でもいいですよ、置いて、ずっと遺骨の収集のことをそれ専属でやるというのを置くぐらいのことと外交戦略を絡める必要があると思うんですけれども、外務政務官、その点について、御認識はいかがでしょうか。

吉川大臣政務官 お答えを申し上げます。

 委員におかれましては、かつてペリリュー島における戦没者の御遺骨調査及び収容活動に御参加をいただいたということでございまして、誠にありがとうございます。

 外務省といたしましては、厚生労働省を始めとする関係省庁及び在外公館等と連携をしながら、遺骨収集に関する我が国とそして外国の関係当局間の覚書の作成に当たり、外交的な観点から関係当局の取組を支援するなど、遺骨収集帰還事業を実施するための必要な取組を実施してきたところでございます。

 また、累次の首脳会談、外相会談等の機会、こういったことを活用しながら、関係国に対し、遺骨収集帰還事業への協力要請などを適切に行ってきておるところでございまして、今後とも、先ほど委員、様々な御意見を頂戴いたしました、関係国等の理解と協力を得るべく、あらゆる機会をしっかりと捉えながら最大限努力をしていきたいというふうに考えております。

福島分科員 ありがとうございます。

 私が言いたいのは、やはりこの話というのは政治が取り組むべき話だと思うんです。法律も議員立法で作りました。外務省にも副大臣、政務官の方がいらっしゃいますので、できれば是非現地を見ていただいて、単に紙のやり取りで事務連絡をするのではなくて、我々政治家の責務だと思うんです。八十年たっても百万柱以上の御遺骨がまだ残されているというのは、国としてこれは絶対にいけないことだと思うんですね。そうした目で、是非一丸となって取り組んでいただきたいと思います。

 そして、来年期限を迎える遺骨収集集中期間が終わった後、単純に延長しちゃ駄目だと思うんです。これは計画どおり進みました、コロナで中断しましただけじゃなくて、何がこれまでのやり方で問題であったかというのをきっちり見直して、それを事務方ベースだけじゃなくて、私も当然、議連とか議員立法の機会を通じてやってまいりますけれども、政府にいる政治家たちが心を込めてこれから後のやり方を、これは延長じゃ駄目なんですよ、今までまだ戻っていないこと自体が、我々政治家にとっても、国にとっても恥なわけですから、より加速するため、私は予算を十倍に増やしたっていいと思うんですね。やり方を根本的に変えて、きっちりと、我々の故郷に我々のために命を散らせた人を戻すということをやっていかなきゃならないと思うんですけれども、加藤大臣、その取り組む決意のほどをお答えください。

加藤国務大臣 この法律は議法で成立をさせていただいたということでございますので、またよく国会とも御相談をしながら、この間の集中取組期間、どういう成果があって、またどういうところが足りないのか、そして、やはり一日も早く全ての遺骨をこの日本に帰国をしていただく、そして御遺族に戻していく、これに立ってしっかり我々も更に深めていきたいと思っておりますが、まずは、四年度そして五年度、集中期間、ございますから、この間においても更にこれまでの分も取り戻して努力をさせていただきたいと考えています。

福島分科員 これまでの延長では、永遠に遺骨収集は百年まで続けなきゃならなくなってしまいますので、何としても御遺骨を全て祖国に戻すという決意で、みんなで取り組んでいっていただきたい、私もそれに尽力させていただきますことをお誓い申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて福島伸享君の質疑は終了いたしました。

 次に、阿部司君。

阿部(司)分科員 日本維新の会、阿部司です。

 初めに、未就学児童の入院に際しての付添いの問題について質問させていただきたいと思います。

 早速ですが、厚労大臣にお伺いいたします。

 未就学児童が入院を要する場合に、二十四時間保護者が付き添うことに同意をしないと入院を認めないという事例が多々あると耳にしております。こうした状況は実際にあるのか、確認をさせていただきたいと思います。また、未就学児童の入院付添いの現状に対する課題認識についても御見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 まず、患者の負担による付添看護は、入院患者の負担軽減や看護の質の確保の観点から、療養担当規則というのがございますが、それによって、行われてはならないということとしております。

 ただ他方で、患者の病状によっては、又は治療に対する理解が困難な患者等の場合は、医師の許可を得て家族等が付き添うことは差し支えないとしておりますが、そのような場合でも、医療機関の看護要員による看護を代替し、又は補充する、こうしたことは認めておりません。

 令和三年度に、入院患者への家族等による付添いの実態について調査をいたしました。この調査を通じ、患者の精神的な不安が強い場合など、入院患者の症状により、病院からの依頼により付添いを行った事例があることは承知をしております。

 今委員からお話がありましたが、保護者が付き添うことに同意しなければ入院を認めないことは、療養担当規則にのっとったものとは言えません。家族等の付添いに関するルールが現場で適切に運用されることが重要であると考えておりますし、また、不適切な運用が行われる、疑われる場合には、地方厚生局において、現場の運用を確認し、必要に応じ指導等を行うこととなっております。

 また、先ほど申し上げた実態調査においては、入院患者への家族等による付添いの状況、患者や付添い家族等への説明の状況などについて、病院そして患者家族等への全国的な調査を行ったところであります。また、この結果については、昨年八月に中医協において概要を報告し、御議論いただきました。

 厚労省としては、そうした議論も踏まえ、調査結果や付添いを認める際の留意事項について、関係団体を通じて周知を図ったところであります。

 未就学児童を含む患者やその家族が安心して入院することができるように、先般の実態調査の結果、また、患者家族、関係団体等の御意見も踏まえながら、その体制の在り方、また環境の整備について必要な対応を図っていきたいと考えています。

阿部(司)分科員 この入院付添いの問題について御認識をされていて、指導も行っていかなければならないというお考えということだと理解をいたしました。

 二〇一九年に、未就学児の患者家族を支援するNPO、キープ・ママ・スマイリングが実施したウェブアンケートには全国千五十四人の保護者が回答を寄せまして、乳幼児らお子さんが入院したときに、八割以上の保護者が一緒に病院に泊まり込む付添入院をしていたとの結果でありました。

 親の付添い、こちら任意だと思うんですけれども、実際には病院側が求めることも多いと。問題は、付き添う環境が未整備の病院が大半であることです。その結果、付き添う保護者の方が体調不良になってしまうケースも多く見られると言われております。

 配付資料の一を御覧いただきたいんですけれども、「付き添い中の食事・睡眠・体調の状態」ということですけれども、こちら、先ほど申し上げましたキープ・ママ・スマイリングさんが実施したアンケートですけれども、この付添入院の結果、五割以上が体調不良になりまして、九割以上は睡眠不足に悩んで、更に、九割以上の保護者の方は食事のバランスが崩れてしまっているといった結果が出ております。

 そして、就労している保護者の皆さんの多くは、就労状況も変えざるを得ない状況に追い込まれているといった事実もございます。配付資料の二になるんですけれども、こちらの円グラフですかね、「付き添い者への就業の影響」ということですけれども、N九百三十六名ということで、それなりの数値かと思うんですけれども、このアンケートから、付添入院した保護者の四五%を占める就業者のうち、退職、休職をせざるを得ない状況、又は介護休暇取得などをしながら何とか付添いをしている実態が分かるかと思います。

 こんなことにならないよう、大臣、しっかり国として対策をしていただきたいと強く思っておる次第でございます。

 先ほどの御答弁で、入院付添問題があるといった認識をしているといった御趣旨で、アンケートも取っていらっしゃるということでしたけれども、この状況は、病院の規模ですとか、経営の形態、あるいは都道府県で大きく異なってくるかと思います。また、なぜ病院は環境整備をしないのか、できないのか、こうしたことも把握をしていく必要があると思います。

 この課題を認知して、それで、認識をしましたら、しっかりと実態、様相を把握することなしに対策を講じていくことはできないと思います。先ほど、アンケートを取られて中医協でも審議をされたということなんですけれども、実態として、二十四時間の保護者の付添いが求められる病院の状況について、病院規模、経営形態による傾向など、どの程度実態把握をされているのか、大臣にお伺いをいたします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からも、こうした付添いについては、しっかり、同意なくやることについて対応するとともに、また、未就学児童を含む患者やその家族が安心して入院することができるということが非常に重要な課題だと認識しておりまして、この前行いました実態調査の結果もございますが、それ以外に、患者御家族の御意見、あるいは関係団体からも、この小児医療機関についてはいろいろ意見が寄せられております。こうしたことを踏まえながら、環境整備の在り方、それから体制についても検討していきたいと考えております。

 いろいろ御意見も寄せられておりますので、そうしたものを把握しながら対応していきたい、このように思います。

阿部(司)分科員 今、やはり具体的なことは全然出てこなかったなという印象を持っていまして、しっかり把握できていないんじゃないかと思うんですね。

 この発生状況を、都道府県ごとですとか、経営形態別ですとか、実態の把握について、調査に乗り出したことは一定の評価をさせていただきたいと思いますけれども、この調査も、患者家族からの回答率一・三七%、たった四十一件といった数値になっております。専門家の方からは、家族の意見をもっと十分に反映させるような再調査が望ましいと指摘をされております。

 大臣、これは通告にないんですけれども、まず、実態把握をするために包括的な調査、実態把握、もう一度やっていただけないでしょうか。お願いします。

加藤国務大臣 実態把握、先般させていただきました。私も、何でこんな回答率低いのかなと思って、この結果は見させていただきました。

 したがって、同じことを繰り返したって同じことになってしまいますので、その辺も含めて、どうやったら実態をしっかり、今委員御指摘のように、把握できるのか。病院形態ごとにというか、個々の病院ごとの対応だと思いますから、余り形態ごとにつかまえることはどうかなという気はしておりますが。

 ただ、いずれにしても、どういう状況になっているのか。そして、病院側としてどういう対応を取っているのか。それから、実際そこを使っている、特に御家族の方々から見たときに、その辺が自分たちからのいわば申出的なものなのかどうなのかということを含めて、アンケートが出てきております、その辺の実態をどうやったらつかめていけるのか。先ほど局長からもありましたけれども、まずは患者家族等の御意見もしっかり踏まえながら、どういう議論を進めればいいのか考えていきたいというふうに思います。

阿部(司)分科員 今回この質問をさせていただくきっかけになったのが、白血病になったお子さんを持っていらっしゃるお母さんからのお話だったんですね。本当に、この白血病のお子さんのために夜通し一緒に付添いをして、御自身も体調を崩されてしまうぐらい大変だったといったお話でした。また、結局はお子さんも亡くなられてしまったんですけれども、そうした中で、たくさん同じような境遇で困っていらっしゃるママ、パパの皆さんがいらっしゃるということで、そうしたことで御相談をいただきました。

 この問題、先ほど、形態別、なかなかどういった形で問うのかというのは難しいかもしれないという話がありましたが、都道府県、ある程度の、しっかりと回答してもらえるような形のアンケートを設計していただいて、是非具体的な、また次のアクションにつなげていただきたいと思います。

 今、この付添い入院、保護者の方には食事が提供されない。寝場所も、簡易ベッドか子供の病床での添い寝というのが中心だというふうに聞いております。ですので、さきのNPOの調査がありましたけれども、こちらのNPOからは、実態に合わせてしっかり環境整備をしていくことが大事なんじゃないかといった指摘がありまして、例えば保育士の方の配置ですとか、そうしたことも視野に入れていく必要もあるのかなと思っております。

 今般、岸田総理の方で異次元の少子化対策といった政策を打ち出しておりますけれども、お子さんの療養の付添い、こうしたことも少子化対策の一環、子育て支援の一環にもなってくるかなと思いますので、そうした意味で是非力を入れて対策を行っていただきたいと思います。

 改めてお伺いしますが、厚労省として全国に一定のルールなりガイドラインというものを示していくですとか、そうした形で、この入院付添い問題について統一的な対応を国が行っていくべきではないのかなと思うんですが、こちら、大臣の御見解をお伺いいたします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 先生の方から、ガイドラインをつくったらどうかというお話でございます。御指摘のとおり、子供ということへの療養生活を鑑みたときに、子供特有のニーズというのがあると思います。そういった意味で、現在も、診療報酬で保育士の配置みたいなことの加算制度を設けたりしております。

 そういう環境を整えていくときに、一つは、先生のお話のあったようなガイドラインを決めて、そういうふうに取り組んでくださいというやり方もあると思いますし、あるいは診療報酬制度でそうした裏打ちをしていく方法、様々あると思いますので、先ほど大臣からも答弁させていただきましたけれども、まず実態をきちんと把握し、それから関係団体からも、患者家族の方々からもいろいろ要望が寄せられておりますので、どういう形であるべき小児の入院の環境を整備すべきか、この辺については考えていきたい、このように思います。

阿部(司)分科員 是非お願いいたします。

 次に、病気療養児の教育機会の確保について質問をさせていただきます。

 病気やけがで長期にわたり入院中のお子さんたち、いわゆる病気療養児の教育機会の確保について、文科省に基本的な姿勢、御見解をお伺いいたします。

伊藤大臣政務官 お答えいたします。

 日本国憲法や教育基本法において、全ての国民に対する教育の機会均等が掲げられております。文部科学省としましては、長期入院中の子供に対する教育機会の確保は極めて重要と認識をしております。

 現在、長期入院中の子供を含む病弱の子供に対しては、学校教育法等に基づき、特別支援学校、特別支援学級、訪問教育といった様々な形で、一人一人の病状等に応じたきめ細やかな教育が行われているところです。

 引き続き、こうした学びの場の確保に努めてまいります。

阿部(司)分科員 学校教育法にのっとって、しっかりと、どのような形でも、子供に向けて教育の機会を提供していく姿勢であるといったことだと理解をいたしました。

 では、そのような姿勢に基づきまして、文科省では実際に病気療養児の教育支援をどのような形で行っているのか、お伺いいたします。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 病気療養中の児童生徒に対しましては、特別支援学校や特別支援学級、病院内に設置された学級、病院内に学級が設置されていない場合におけるベッドサイドへの訪問、また、ICTの活用などによる教育が行われているところでございます。

 特にICT活用の推進は重要と考えておりまして、文部科学省としまして、入院児童生徒等への教育保障体制整備事業、これは平成二十八年から三十年度の事業でございます、また、引き続きまして、高等学校における入院生徒に対する教育保障体制整備事業、これは令和元年から二年度の事業、こういった事業を通しまして、長期入院中の児童生徒の支援体制の整備を進めてきているところでございます。

 こうした事業の成果も踏まえまして、平成三十年度でございますが、小中学校の病気療養児への同時双方向型の授業、これは出席扱いとすることを可能としたところでございます。

 また、さらに、病気療養中の高校生、これはなかなか治療中で時間が、同時双方向できない場合もありますので、オンデマンドで授業が可能となるような制度改正に取り組んでおりまして、現在、パブリックコメント等を募集中でございます。

 また引き続き、長期入院中の児童生徒に対する教育機会の確保に努めてまいりたいと思います。

阿部(司)分科員 ICTを活用して様々なサポートをしているといったことでした。

 文科省では、通知なども通じて、市町村教育委員会に対しても適切な教育措置を確保するよう周知をされていることと思いますが、現実には、自治体の教育委員会ですとか学校の対応、病気療養児への対応は、学校、あと教育委員会によってかなり変わってくるのかな、地域の差があるのかなと思っております。

 また、ICT環境の確保、院内の教室の確保などは厚労省、より具体的には病院がこうした環境整備をしていかなければならないと思います。

 このように、病気療養児の教育支援に当たりましては、文科、厚労両省の連携はもとより、現場レベルでは、市町村の教育委員会、学校、病院の連携が特に重要となってくると思いますが、こうした連携に文科省がよりコミットすることで、病気療養児の学習機会の地域差をなくしていくことができるのではないかと思いますけれども、御見解をお伺いいたします。

伊藤大臣政務官 お答えをいたします。

 入院中の児童生徒の教育機会の確保に向けて、学校や教育委員会と医療機関との連携は大変重要であるということをまず考えております。

 このため、文部科学省では、早期発見と早期からの教育的対応のための病院との連携の必要性を教育委員会等に対して周知するとともに、高等学校段階の病気療養中等の生徒につきましては、教育機関と医療機関等の連携による病院内の学習環境の整備など、教育支援体制の構築に関する調査研究の実施や、遠隔教育実施に向けた病院との相談方法などを含む各自治体や学校向けのQアンドAの周知等に取組をしております。

 引き続き、厚労省とも連携を図りつつ、病気療養児への教育支援を充実させてまいります。

阿部(司)分科員 しっかり連携してやっていただけるとの御答弁、ありがとうございます。

 この病気療養児の教育機会の確保に関しまして、特に、学校と院内学校をつなぐコーディネーター、こうした存在を、しっかりと設置して、しかも増やしていくといった取組ですとか、あと、病気のお子さん、そして病気のお子さんを持つ親御さんへの理解を深める教員への研修制度、こちらの充実ですとか、こうしたものが必要だと専門家の方からは指摘がなされております。特に高校段階、こちらが不十分だという声もお伺いをしております。

 ですので、日本においてはどのような環境におきましても教育を受けることができるよと、その理念を体現できるよう、関係者の連携を深めていただけますよう、切にお願いを申し上げます。

 続いて、成年後見制度についてお伺いをしてまいりますが、文科関連の政務官、御退席いただいても。

牧原主査 では、伊藤政務官、どうぞ御退席ください。

阿部(司)分科員 配付資料の三を御覧いただきたいんですけれども、こちらは認知症の高齢者数の推計なんですけれども、二〇一二年時点での認知症の高齢者四百六十万人ということで、二〇二五年には七百万人、六十五歳以上の五人に一人が認知症になるといった数値となっております。

 御案内のとおり、認知症になると判断能力が失われまして、その結果、契約行為、金銭管理等を自分でできなくなります。認知症の方が持つ家計金融資産は、二〇一七年度末で百四十三兆円、二〇三〇年度には二百十五兆円に達する見込みと言われております。昨今の特殊詐欺事件、多発しておりますけれども、これを見るまでもなく、判断能力をなくした方の権利擁護のためにも、成年後見制度、ますますその重要性が増してくると考えております。

 政府も成年後見制度利用促進計画を策定されていまして、利用促進に努めておられると思いますけれども、制度への需要がますます増えていると思われる状況の中で、利用状況はどのようになっているのか。厚労省に過去五年間の成年後見制度の利用実態をお伺いをしたいと思います。また、利用状況に関する評価もあわせてお伺いをしたいと思います。

川又政府参考人 最高裁判所の方から公表しております成年後見関係事件の概況によりますと、成年後見制度の利用者数は、平成二十九年に二十一万二百九十人でありましたが、五年後の令和三年には二十三万九千九百三十三人となっておりまして、過去五年間で約三万人の増加となっております。

 この利用者数は近年増加傾向にあるものの、団塊の世代が後期高齢者となる二〇二五年には、お示しいただいたように認知症高齢者が約七百万人と推計されていることを踏まえると、現時点では十分とは言えず、今後、更に安心して成年後見制度を利用できる環境の整備を進めていくことが必要であるというふうに考えております。

阿部(司)分科員 今御答弁いただきましたが、配付資料四を御覧いただきたいんですが、こちらは厚労省の資料で、二〇一六年から五年間で三万六千人ほど利用者が増えたということです。これは、二〇二一年の高齢者人口に対する利用率は非常に少ないものとなっておりまして、利用も全く伸びていないといった状況です。非常に、認知症の高齢者が増えて、ニーズも増しているのに使われていないというのは、使い勝手が極めて悪いと言わざるを得ないと思います。

 私は、ある地域の認知症の家族の会では、成年後見制度は使い勝手が悪い上に資産が目減りをするので利用しないように会員に勧めているといったお声も頂戴しました。いただいた陳情でも、成年後見人として選任された弁護士の方に年間七十万円を払っているけれども、選任後、後見人が本人に会ったのは一回だけで、金銭管理以外、何の相談にも乗ってもらえなかったということでした。

 制度に関しまして、後見人の報酬根拠が不透明かつ高額であり、専門職の後見人は生活面での支援もほとんどしないという声も聞くわけですけれども、こうしたことに関する課題認識についてお伺いをいたします。

馬渡最高裁判所長官代理者 専門職後見人が本人に余り面会しない場合があるとか、あと、専門職後見人に対する報酬が利用者の大きな負担になっている場合がある、また、報酬額に対する予測可能性の確保という問題、そういった課題があるというふうに承知しております。

阿部(司)分科員 課題を最高裁としても認識していると理解をした次第でございますけれども、障害となっている後見人の報酬額、利用者の予見可能性を高める観点から、国が一定の基準を示していくこと、これが利用促進につながると思うんですけれども、こうした基準の設定が困難な理由は何か、根拠をお答えいただけますでしょうか。

馬渡最高裁判所長官代理者 民法八百六十二条におきまして、「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。」と定めておりまして、後見人等の報酬額は、裁判官が個別の事案ごとにその事案における諸事情を総合的に考慮して判断すべき事項とされております。

 各裁判官はこのような判断を独立して行うものでございまして、最高裁判所として、裁判官の判断を拘束するような画一的な基準を示すということはできないというところでございます。

阿部(司)分科員 個別事案ごとに家裁が決するといったことだったと思うんですけれども、この御答弁をお伺いしまして、もう法律を改正して制度の組立てを変えていかない限り、利用者に分かりやすい報酬体系にすることはできないのではないかなと感じました。

 今の成年後見制度には、利用者サイドから見て障壁とも呼び得る様々な使い勝手の悪さがあります。そこで、報酬そして事務の在り方、後見の期間や範囲の限定等について、現行制度を再構築して、より利用しやすい柔軟な制度にしていくべきと考えますが、制度設計をつかさどる法務省の御見解をお伺いいたします。

高見大臣政務官 お答えをいたします。

 昨年の三月に、委員からも御紹介がありました第二期の成年後見制度利用促進基本計画が閣議決定をされております。この計画では、本人にとって適切な時機に必要な範囲、期間で制度を利用できるようにすべきといった、委員からもございましたような御指摘を踏まえまして、成年後見制度の見直しに向けた検討を行うものとされております。

 このような中、昨年の六月に、成年後見制度の見直しについて検討する研究会が立ち上げられておりまして、法務省からもこの研究会に担当者を参加をさせております。

 法務省といたしましては、まずはこの研究会における議論に積極的に参加をして制度の見直しに向けた検討を深めてまいりたい、このように考えております。

阿部(司)分科員 今まさしく進めていただいているということでしたけれども、ちょっと時間がかかり過ぎかなということで、もっとスピードアップをしていただきたいと思うんですね。もう待ったなしだと思うんですね。

 この大幅見直しに当たっては、国民、あとは関係者の皆様にしっかりと議論の経過も周知をしながら、また、いつまでにどの程度進めていくのかといったKPIなんかも設定してこの制度改善を図っていくべきと考えておりますけれども、こちら、また、さらに、厚労省ですとか法務省ですとか最高裁ですとか、様々なところで連携をしていかなければなりませんから、その連携も含めて、この制度改善に関する御見解を加藤大臣にお伺いいたします。

加藤国務大臣 今お話ありましたように、成年後見制度の見直し、また運用改善について、成年後見制度利用促進専門家会議、ここで議論をしていただいております。議事の内容は全て公開をしておりますので、そういった意味で、是非御参考にいただければと思っておりますし、ここには、最高裁また法務省ほか、学識経験者、専門職団体、あるいは障害や認知症の関係団体に幅広く参加をいただいております。

 この会議での意見集約を経て、昨年三月に第二期成年後見制度利用促進基本計画を策定をいたしました。令和六年度末までに、地域連携ネットワークに関わる関係者間の調整を行う中核機関を全市町村で設置をする、権利擁護支援の行政計画を全市町村で策定する、これなどについて、KPIを掲げて取組を進めることとしています。

 また、各般の取組について、令和八年度末までの五か年の工程表も策定をし、適切な報酬算定などの運用改善の検討も含めてワーキンググループを設置をしております。そして、定期的に検討状況を検証するということにしているところでございます。

 現在もワーキンググループで精力的な議論を行っていただいており、令和六年には、中間検証として、施策の進捗状況を含めた課題の整理等を行う予定としております。

 引き続き、関係機関と連携を深めながら、委員御指摘のように、これから更に高齢化が進み、高齢化した方、特に認知症等の方々が安心して生活できる、そうした環境の整備に向けて具体的な取組を進めていきたいと考えています。

阿部(司)分科員 是非、国民が使いたいと思える成年後見制度をつくっていただきますようお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて阿部司君の質疑は終了いたしました。

 次に、中野洋昌君。

中野(洋)分科員 公明党の中野洋昌でございます。

 本日は、予算委員会の分科会ということで、厚生労働省を担当する第五分科会で質問させていただきます。どうかよろしくお願い申し上げます。

 まず冒頭、大臣の方に、物価高の問題ということで一問質問をさせていただきます。

 これは、厚生労働分野のみならず、物価高というのが昨今大変大きな課題でありまして、特に電気代ですとかガス代の値上がりというのが非常に大きい。政府としても、もちろん、二月の料金、一月度の検針料金からは政府としてしっかり支援をするということではありますけれども、やはり非常に値上がりをしているということであります。

 昨年も、様々な福祉分野の諸団体と意見交換をしたときに、やはり、光熱費が非常に上がっているというのが吸収できないということ。介護であれ、あるいは障害者の福祉施設であれ、公的に報酬である程度運営する、収入が決まっているというところもございます。病院も含めて、こうした様々な分野のところで、光熱費の物価高の問題が本当に大変だということを言われてまいりました。

 政府でも今いろいろな取組をしていただいているというふうに思うんですけれども、ここから更に電気代については値上げの申請も、まあ各電力会社の状況によってありますけれども、ここから更に値上げの申請も出てきているということで、本当に不安の声も出ているわけであります。

 こうした福祉関係の分野において光熱費の対策というのをしっかりしていくために、やはり、状況をよく把握をしていただきながら、今やっている対策に加えて、今後もし必要な状況であるということであれば機動的にいろいろな対応はしていくべきだ、こういうふうに思いますけれども、この点について大臣から答弁いただきたいと思います。

加藤国務大臣 介護、障害福祉などの福祉施設に対しては、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金、これを活用して、都道府県あるいは市町村において支援を行っていただいております。令和四年九月に予算額六千億で設置をされたところでございます。

 厚労省としても、先行して支援を進めた自治体の事例を共有するなど、積極的な活用をお願いをしてきたところであります。その結果、多くの自治体で、光熱費の増加に対応する給付などの支援を実施し、又は実施に向けて前向きな検討いただいているものと承知をしております。

 引き続き、こうした交付金の活用によって、地域の実情に応じたきめ細かい支援、まずこれが行き渡るようにしていく、また、そのためにも自治体の後押しをして、介護の動向、また介護現場等での収支の状況、これを注視していきたいというふうに考えております。

 これから先のことの御質問だと思います。まさにこれまでも、そうした状況状況を見ながら適切に対処させていただきました。今後のことについて確定的なことを申し上げることは今できませんけれども、引き続き、そうした姿勢で取り組んでいきたいというふうに考えております。

中野(洋)分科員 大臣、ありがとうございます。

 今後の状況を注視しながら、地方の交付金の方で対応する部分も今まであったかと思います。現場の自治体ともしっかり我々も連携を取りまして、こうした現場が困らないようしっかり対応していきたいということで、また状況を注視してまいりますので、是非、また必要があれば、大臣の方にもこうした取組の後押しをお願いできればと思っております。よろしくお願いいたします。

 大臣、私、冒頭のこの一問だけでございますので、もしあれでしたら、残りの時間、御退席いただいても結構でございますので、よろしくお願いいたします。

牧原主査 じゃ、大臣、御退出ください。

中野(洋)分科員 続きまして、保育の関係で質問をさせていただきます。

 保育の人材確保というのが非常に重要だということはいろいろなところで指摘をされております。そして、今まさに子育て支援と、次元の異なる、今までとは違う少子化対策をやっていこう、こういうことでありますので、保育の質の向上、これも非常に重要だ、こういう御指摘もあるわけでございます。

 しかし、現実的には、やはり、保育士の皆様にお話を伺いますと、仕事が非常に大変だというお声もございますし、我々は、保育の質の確保ということで、今まで処遇の改善というのもずっとやってまいりました。そういう意味ではかなり処遇の改善も進んできていることもあろうかとは思いますけれども、それでもなかなか人材確保というのが大変だというお声は多いわけであります。

 それに加えて、例えば、養成をしていく教育機関、こういうところにもお話を伺うんですけれども、教育や保育の関係、定員の充足率が年々下がってきている、こういうことも言われておりまして、養成機関側としては、やはり、充足率がどんどん下がってくると、どんどん縮小していこうか、こういう、地域で養成機関が縮小したり、最悪、撤退していったり、こういうことがあっては人材確保をしようと思っても本当にままならなくなってくる、こういうふうな危機感も大変持っております。

 こうした状況を踏まえて、更なる保育の人材確保の取組でありますとか、あるいは処遇の改善も含めて、しっかりとこれから更に力を入れないといけない、こういうことを強く感じております。これについて、厚生労働省、今後の取組をお伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 少子化が進み、保育士の人材確保についてどのように取り組むのかというふうなお尋ねでございました。

 保育人材の確保につきましては、資格の取得促進、就業継続のための環境づくり、離職者の再就職の促進といった支援に加えまして、保育の現場と職業の魅力向上に総合的に取り組んでいくことが必要だと考えております。

 このため、指定保育士養成施設に通う学生に対し、修学資金の一部を貸し付け、卒業後五年間の実務従事により返還を免除するなど、新規の資格取得支援等を実施しているところであり、引き続き保育人材の確保にしっかり取り組んでまいります。

 また、保育士等の処遇改善でございますけれども、これまで保育士の処遇改善については、平成二十五年度以降、合計一八%程度の引上げを実施をし、また、平成二十九年度からは、技能、経験に応じた月額最大四万円の処遇改善も併せて実施をして、またさらに、昨年の経済対策に基づきまして、給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置など、これまで累次の処遇改善を講じてきたところでございます。

 今後は、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえ、見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や業務の効率化、負担軽減を検討していく必要があると考えております。

 いずれにいたしましても、小倉こども政策担当大臣の下で、子供、子育て政策として充実する内容を三月末までを目途に具体化をし、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠を提示することとなっておりますので、厚生労働省といたしましても必要な連携協力を共に行ってまいりたいと考えております。

    〔主査退席、大岡主査代理着席〕

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 保育の、ここの分野の質、あるいはしっかりとしたサービスの向上というのもやはり少子化対策の非常に大事なところであると思いますので、我が党としてもこうした充実というのもしっかりまた訴えてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 少し違うテーマになりますけれども、鍼灸マッサージ、いわゆるはり、きゅう、あんまであるとか、こうしたところの点について、一つ御質問をさせていただきたいと思います。

 こうした施術については、今まで、療養費を受領委任をする形にしたいという御要望を以前からいただいておりまして、平成三十一年から受領委任制度が実現をした、こういう状況であります。

 他方で、これは非常によかったんですけれども、この受領委任を行う場合に、新たな、施術管理者を置く、こういう仕組みを導入をされたところであります。実際の施術管理者の要件が、研修をする、そして実務経験をするというこの二つが要件となっております。

 他方で、いわゆるこの制度をしっかり管理をするという趣旨だというふうに承知はしているんですけれども、どうしても、こうした鍼灸マッサージの関係でいいますと、非常に零細の、個人事業主に近い、そうした事業者も大変多いということでもございまして、そうしますと、現場でお伺いをするのは、なかなか人を雇うというふうな余裕がないところも多いのではないか、そうしますと、実務経験を積んで施術管理者の資格を得るというところがなかなか実は難しい事業者も多いのではないかというふうなお声もいただいております。

 こうした制度、なかなか、この制度をしっかり、施術管理者の資格を取るということが非常に難しいので何とかしてほしい、こういうふうなお声であろうかというふうに思いますけれども、この仕組みについて、例えば、もっと資格が取りやすくなるように、その要件の見直しであるとか、そうしたところも含めて何か検討できないのか、こういうふうに考えております。この点について、厚生労働省の御意見を伺いたいというふうに思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 あんまマッサージ指圧、はり、きゅう療養費の料金やルールにつきましては、社会保障審議会の医療保険部会の下に設置されました専門委員会におきまして、議論を行いまして、決めております。

 先生御指摘の受領委任を取り扱う施術所の管理者につきましては、令和三年一月から、一年間の実務経験と二日間の研修受講を要件とさせていただいております。この要件は、療養費の受領委任事務の適切な実施、それから質の高い施術の提供、こういう観点から、議論の末、設定されたものでありまして、こうした要件は引き続き必要なものと考えております。

 一方、この要件に関しましては、現場の実態に配慮しまして、特に新しく国家試験を経て卒業した方々への配慮が必要だということで、令和三年度から令和七年度までの特例というのを設けております。具体的に申し上げますと、国家試験で施術者の資格を取得した後、その年の五月末日までに地方厚生局へ確約書を提出した場合には、一年間の実務経験に代えまして、七日間、四十九時間の施術所における実務研修により、施術管理者としての登録を認めているところでございます。

 今後、こうした特例によりまして、現場の円滑な運用が確保できるよう、更なる施術の質の向上に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 今、特例を設けたということでお話もいただきました。引き続き、しっかり現場の状況も見ていただきながらこうした在り方も考えていただければということで、改めてお願いを申し上げます。

 続きまして、医療の関係で何問か質問をさせていただきます。

 一つは、介護職員の点であります。

 介護職員の処遇改善というのは年々進んでおりまして、それは非常に重要なことであると思っております。

 他方で、介護職員が、介護施設で働いているだけではなくて、他の分野でも働かれているケースもございます。例えば医療機関の医療療養病床でありますと、補助をする人というのが二十対一ということで配置をしないといけないというふうな仕組みもございまして、こうした療養の関係ですので、介護職の方を採用して、働かれているというケースも現場では多いかというふうに思います。

 こうした医療機関のところだけであればいいんですけれども、介護の施設もどちらもされているような、そういうケースもあろうかと思います。介護の方の仕組みであれば介護職員の処遇改善加算があるということでありまして、他方で、医療の方ではこうした仕組みはないということで、同じ仕事、同じ職種ということであっても処遇差が生じてきていて、医療の方ではこうした介護職員を雇用するのが年々難しくなってきている、こういうお声もいただいております。

 確かに、実際に処遇差が生じていることで現場で課題になっているということでございますので、医療施設においての処遇が改善をしていけないのか、こういうことが非常に大事だというふうに思って、改善を進めるべきだというふうに思っておりますけれども、これについて、厚生労働省、答弁いただければと思います。

伊原政府参考人 医療機関におきましては、介護職員を含め、様々な職種の方が看護補助者という形で勤務されておりまして、診療報酬制度におきましては、この看護補助者を多く配置した場合に加算措置を講じる、こういう配慮を行っております。

 先ほど先生から御指摘いただいたような問題意識、我々、持っておりまして、特に令和四年度の診療報酬改定におきましては、看護補助者の更なる活用を図るという観点から、療養病棟における看護職員と看護補助者の夜間配置を評価する加算、夜間看護加算、この点数の引上げを行うなど、配慮をしております。

 また、令和三年に閣議決定されました経済対策、さらに公的価格評価検討委員会の中間整理に基づきまして、昨年十月に、看護職員処遇改善評価料、これを創設させていただきました。これは、看護職員の方も直接の対象にしておりますけれども、運用に当たりましては、看護職員以外の看護補助者等のコメディカルの賃金改善に充てるということも可能としております。

 今後も、この公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえまして、費用の使途の見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善、さらに業務の効率化、負担軽減、これを進めてまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 しっかりこの取組は引き続き続けていただければと思います。

 もう一つ、医療の関係でいいますと、医師の働き方改革も非常に現場ではいろいろな御懸念の声もいただくところであります。

 二〇二四年の働き方改革法案の施行でありますけれども、元々、大変多忙な働き方をしている医師の方が多くて、そうした方々の御尽力で、今までのいろいろな地域の医療が現実的にはそういう形で維持できてきたということも一つの現実であろうかというふうに思いますけれども、しかし、働き方改革をしっかりやっていかないといけないということもあります。こうした中で、本当にこれからの地域の医療が支えられるのかですとか、あるいは、大学病院など研究も行っている機関もありまして、こうしたところも含めて本当にこれができていくんだろうかということでありますとか、非常にいろいろな声をいただいているところでございます。

 こうした、いよいよ二〇二四年ということで迫ってまいりましたけれども、今、現状、こうした働き方改革がどういうふうに進んでいるのかというのをちゃんと厚生労働省として、どう把握をしているのか。そして、法律の施行に向けてこれから更にどんなところをしっかり進めていかないといけない、そういう認識と、また今後の取組ということで厚労省に答弁を求めたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、我が国の医療は医師の自己犠牲的な長時間労働によって支えられてきた側面がございます。そういった中で、医師の健康を守り、また良質な医療を確保していくためには、医師の働き方改革が不可欠というふうに考えておりまして、今御指摘ございましたように、令和三年五月に、時間外労働時間の上限規制の適用に向けて労働時間管理や健康確保措置の整備などを盛り込みました改正医療法が成立したところでございます。

 このため、令和六年四月の改正法の施行に向けて着実に準備を進めていく必要があるところでございますが、その際、地域医療が引き続き確保されるということが重要でございます。

 このため、各都道府県やあるいは大学病院なども含むいろいろな病院などを対象として、施行に向けた準備状況やあるいは地域医療への影響に関する実態把握を行いながら、その結果を踏まえて必要な対応を進めていくということで取り組ませていただいているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、そういった中で、地域医療介護総合確保基金による支援でありますとか、あるいは診療報酬の地域医療体制確保加算などによる評価などの取組を実施してきているところでございます。

 さらに、今後、施行に向けては、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターにより医療機関への個別の伴走型支援を実施をしているところでございまして、それによって訪問支援の件数が増加をして、医療機関における勤務環境の改善に向けた取組が進捗しつつあるかなというふうに考えております。

 また、時間外の、休日労働時間の上限規制の特例水準の指定に当たっては、医療機関勤務環境評価センターの評価受審が必要になってまいりますので、それの申請の受付につきましても昨年の十月から開始をしてきておりまして、医療機関においても申請に向けた取組を現在進めてきていただいているというところでございます。

 引き続き、私どもとしては、都道府県や医療機関などの御意見を丁寧にお伺いしながら、また緊密によく連携を図りながら、令和六年四月の施行に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

中野(洋)分科員 いろいろな分野で働き方改革、現実どこまで対応できるのかというふうないろいろなお声もいただくことも多いんですけれども、特に医療のところは、地域の医療が本当に維持、ちゃんとそれでできるのかというのは非常に大事な課題でありますので、ここはやはりよくよく現場を見ていただく必要があると思っております。よろしくお願いいたします。

 もう一つ、医療の関係でいいますと、今国会、医療法の改正も議論がされますけれども、と聞いておりますけれども、かかりつけ医の議論がずっと続いておりまして、いわゆるイギリスのホームドクターのような、患者をそこに登録をして、そこから大きな病院にというふうな制度の御主張の方もいらっしゃるんですけれども、私は、今の日本の医療はフリーアクセスということで進んでまいりましたので、お子さんであれば小児科に行かれたりですとか、この病気であればここの耳鼻科に行こうとか、現実的にはやはりこうした同様の仕組みをやるというのはちょっとそぐわないなというふうにいつも感じておりました。

 そういう中で、今回の新しいかかりつけ医のいろいろな議論では、そういう形ではないというふうなことは承知はしておるんですけれども、今回の法律改正におきまして、かかりつけ医というものをどういう考え方の下で、そして今後どういう方向性を目指して位置づけていくことになるのかということについて説明をいただきたいと思います。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、複数の慢性疾患、あるいは医療と介護の複合ニーズを有することが多い高齢者の方々が更に増加をしてくることが見込まれております。一方で、生産年齢人口の急減といったことが見込まれます中、地域によって人口構造の変化というのが大きく異なってくるわけでございますけれども、そういったことに対応して、治す医療から治し支える医療を実現していくということで、かかりつけ医機能が発揮される制度整備を進めていくことがこれから重要になってくるというふうに考えているところでございます。

 このため、一つは、国民、患者の皆様が医療機関を選びながらということで今お話が委員の方からございましたけれども、そういった、それぞれの皆さんのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるように情報提供を強化をするということが一つ。それからもう一つは、医療機関に対してその機能の報告を求めて、都道府県がその体制を有することを確認、公表して、これらを踏まえて地域の関係者との協議の場において必要な機能を確保していく具体的な方策を検討していただき、その結果を公表していくといったようなことを内容としております医療法の改正法案を今国会に提出させていただいたところでございます。

 今後、こうした制度整備を着実に進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

中野(洋)分科員 このかかりつけ医の議論も、やはり、どんな制度になるのかということで、非常に現場ではいろいろな心配のお声であるとか、どういう状況になるのかというふうなお声もございました。しっかりこうした現場の不安にも応えていただけるような、あるいは、地域の実情に即して、実態に即したそういう仕組みになるように、やはり丁寧な説明、今後の制度設計ということを是非お願いをしたいとお願いを申し上げます。

 ちょっと、今、医療の関係で何点かお伺いしましたけれども、薬局ですとか薬剤の関係でも少し御質問をさせていただきたいと思います。

 ジェネリックの薬剤がいまだに流通が不安定だというお声は引き続きいただいておりまして、元々、ジェネリックのメーカーの薬機法違反というところがあったということは十分承知はしておりまして、ここ最近、数年続いている状況でございます。政府もいろいろな情報発信をしていただいたり、取組はしていただいているということもいただいておるんですけれども、また、現実的に、いろいろな現場でお伺いしますと、いまだにやはり不安定であるというふうなお声もいただくものでございまして。

 私も、当初、ある程度情報が、しっかり発信をしていけば、医療現場も流通の状況というのをしっかり把握をして、余り多く買うような、その結果、更に逼迫するようなことは緩和されていくかなというふうに思っておったんですけれども、場合によっては、薬剤によってはかなり常態化をしつつある、ずっと足りないねというふうなものも、そういうところも出てきているのかなというふうに思いまして、少し丁寧に見ていただいて対応していただく必要がまだあるかなというふうに強く感じているところでもあります。

 こうした現状の認識と今後の対策ということで、取組を是非答弁いただければと思います。

    〔大岡主査代理退席、主査着席〕

城政府参考人 ジェネリックの安定供給についての御質問をいただきました。

 こうした後発医薬品メーカーの薬機法違反を契機とした供給量の低下でありますとか、新型コロナウイルス感染拡大によります需要の増加によりまして、メーカーの限定出荷による供給不足のほか、薬局や医療機関が正確な供給状況を把握することが困難であるために先々の医薬品確保に不安を感じて過大な注文を行う、こうしたことによって更に需給が逼迫するという事態が生じているというふうに承知をいたしております。

 このため、業界団体を通じまして、後発品を含む全ての医薬品について、欠品が生じたものやその代替品につきまして供給状況を把握をした上で、供給量が十分な製品については製薬企業に対しまして限定出荷の解除を求めるといったこと、それから、医療関係者に対しましては、これらの製品の供給状況を取りまとめて公表いたしまして、医薬品の安定供給に取り組んでいるところでございます。

 さらに、来年度からになりますが、毎月、供給状況の調査及び公表を行いまして、より迅速に各医薬品の供給状況等を医療現場等に対しまして提供するということをしたいと考えております。

 また、医薬品の安定供給の確保につきましては、現在、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会を開催しております。これにおきまして、ジェネリック医薬品の産業構造の在り方も含めて検討を進めているところでございます。

 本検討会における議論の内容も踏まえまして、必要な対策を講じてまいりたいと考えております。

中野(洋)分科員 ありがとうございます。

 確かに、大きくは、ジェネリックのメーカーを取り巻くいろいろな環境というところもあろうかと思いますし、そもそも薬剤の報酬の在り方がどうなのかというところも含めて、いろいろな課題はあるかというふうに思いますけれども、今答弁いただいた取組をしっかり進めていただければと思います。

 済みません、ちょっと時間が迫っておりますので、あと一問。

 今、地域において薬局が、やはり予防や健康、こういうサポートをしよう、健康サポート機能をしっかり果たしていこう、こういうことで、健康サポート薬局というのを制度化していただいております。他方で、この健康サポートという取組は、特に何か報酬上に評価があるとかそういうわけでもなくて、こういうサポート機能は確かに求められているというのは分かるんだけれども、それを、じゃ具体的にどう後押しをするのかという、この取組が進まないではないか、あるいは、やっていてもちょっと大変でなかなか難しいなというふうな、現場ではいろいろなお声もいただいております。

 この予防に関するサポート機能をしっかり後押しをできるように、こういうことの今後の取組や考え方を是非答弁いただきたいと思います。

八神政府参考人 健康サポート薬局の取組の推進についてお尋ねをいただきました。

 健康サポート薬局、これは、かかりつけの薬剤師、薬局の機能に加えまして、住民への健康相談の対応ですとか、受診勧奨の実施など、病気になる前の、医薬品の使用をまず必要としない段階のサービスも含めた健康サポート機能を持った薬局でございます。

 この薬局の基準を満たしますと、都道府県知事に届出を行えば健康サポート薬局と表示をすることが可能となり、健康相談などのサービス提供を受けたい地域住民の方が選べるということになります。

 ただ、なかなか認知がされていない、認知度が低いということで、この認知度をまず向上させるために、薬と健康の週間といった機会を捉えて、自治体に、関係団体と連携しつつ周知を行うことを促すなどしております。

 さらに、認知度を向上するためには、やはり地域の住民の方が健康サポート機能による効果が実感できるような、こういうことが重要だと思っております。

 このため、厚生労働省では、令和五年度におきまして、健康サポート薬局が自治体等と連携をして行う、例えば検査値を活用した糖尿病等の予防の啓発、あるいは認知症の疑いのある方への受診勧奨、禁煙支援等の相談対応、こういった健康づくりの取組などを支援をし、また、その取組が住民の方に与える影響の評価、検証といったことを行うとともに、効果的な取組を継続的に実施をするための課題解決策といったことを検討する事業実施のための予算を計上をしておるところでございます。

 こうしたことにより、健康サポート薬局を始めとする薬局による地域住民の方の主体的な健康維持増進、この取組を推進してまいりたい、このように考えております。

中野(洋)分科員 認知度を上げる取組だけで本当に十分なのかというところは、私もちょっと感じているところではございますが、また引き続き、いろいろな自治体との連携した取組も含めてしっかり強化をしていただければというところでお願いを申し上げまして、以上で質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて中野洋昌君の質疑は終了いたしました。

 次に、西岡秀子君。

西岡分科員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、加藤厚生労働大臣に初めて質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、私の地元、長崎市、長崎県にとって大変重要な問題でございます被爆者問題、特に被爆体験者の救済について質問をさせていただきます。

 まず冒頭、広島、長崎に原爆が投下をされましてから、今年で七十八年目を迎えようとしております。昭和二十年八月六日の広島に続きまして、九日十一時二分、長崎に投下されました一発の原子爆弾によりまして、人類史上、未曽有の大惨禍によって多くの尊い命が失われました。生きるはずの未来が、そして子供たちの希望に満ちた未来が一瞬にして奪われ、改めて、お亡くなりになった皆様のみたまに哀悼の誠をささげ、御冥福をお祈り申し上げます。

 被爆者となった多くの方々、また遺家族の皆様も、長年、今日まで筆舌に尽くし難い苦難の人生を歩まれてくることとなりました。七十八年がたとうとしている今日にあっても、被爆者の皆様は、医学的な後遺症はもとより、社会的、精神的な苦しみと闘い続けておられます。

 これまで、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の施行など、総合的な援護施策が講じられてまいりましたけれども、被爆者の平均年齢は八十五歳になろうとしております。高齢化する被爆者の皆様に対する援護の施策の充実、これが大変急務であると思っております。

 施策の充実については、高齢化に伴いまして、介護や入院加療というものが必要な方がほとんどになってきております。これまでも大臣の方にも要望させていただいております、訪問介護等利用被爆者助成事業に係る所得制限撤廃や補助率の引上げ、介護保険等利用被爆者助成事業に係る助成対象サービスの拡大と補助率の引上げ、医療特別手当等の収入認定の適用除外、被爆者健康診断内容の充実など、改めてこの場で大臣に要望をさせていただきたいと思います。

 今日、中心的に議論させていただきます被爆体験者の救済について質問させていただきます。

 被爆者援護施策は、被爆者援護法に基づきまして、被爆者に対する健康診断、医療給付、健康管理手当の支給が行われておりますけれども、その対象区域は、長崎市の場合、大変南北に細長い、旧長崎市の特殊な地形に基づいた行政区域を基本として認定されているために、爆心地から遠点十二・四キロ、近点八キロという極めていびつな形となっています。

 その是正が図られたわけですけれども、東西の隣接地域についてはその対象から除外をされました。この地域で被爆した方々が県や市に是正を求め続けて、その結果、国においても、心的外傷性ストレス障害、PTSDのみが認められまして、健康診断特別地域の被爆体験者ということで認定をされ、今なお被爆者として認められないまま今日に至っております。被爆体験者の皆様は、被爆者と認定されるまでの一定期間における被爆体験者事業との認識でいたために、今、大きな失望の下におられます。

 病身の体を奮い立たせて、長年、裁判を闘われた原告団も、お亡くなりになる方等で、大変、今、数は少なくなっておりますけれども、今なお裁判で闘いを続けておられます。

 裁判では、高度な蓋然性が必要であったり、原告にいまだ科学的な知見に基づいた立証責任というものを負わせている現状がございますけれども、ただ、二〇二一年七月に、広島の黒い雨被爆者訴訟におきまして、広島高裁は原告の主張を全面的に認める判決を下し、八十四名の原告はもちろん、同様の事情にあった者として、新しい認定基準を昨年から運用されておられます。

 広島高裁の判決のポイントは、黒い雨のみならず、空気中に滞留する放射性微粒子や、地上に到達した放射性微粒子が混入した飲食物を摂取して放射性微粒子を体内に取り込んだ、いわゆる体内被曝の健康被害を広く認めた点にございます。また、被爆者援護法の一条第三号に記載されている、原子爆弾が投下された際、また、その後において、体に原子爆弾の影響を受けるような事情にあった者に該当すると認められるためには、原爆の放射線により健康被害を生じることを否定することができないものであったことを立証することで足りるとされた点でございます。それによって、健康被害を否定できないものについては、国が線引きをした援護区域の妥当性というものが否定をされ、救済の道を開くものであるということが、この裁判の大きなポイントとなっております。

 この裁判に対して、当時の菅総理大臣が上告をされなかったということは、政府としてこの判決内容を認められたという理解でいいのかどうか、このことについて加藤厚労大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 今御質問の令和三年七月の広島最高裁の判決について、基本的考え方は、総理談話、七月に発出した、その中で明らかとさせていただいているところであります。

 黒い雨や飲食物の摂取による内部被曝の健康影響を科学的な線量推計によらず広く認めるべきとした点については、従来の被爆者援護制度の考え方と相入れないものであり、政府として容認できるものではないということ。それを明らかにした上で、一審、二審を通じた事実認定を踏まえれば、一定の合理的根拠に基づいて被爆者と認定することは可能と考え、上告を行わないこととしたところであります。

 いわゆる黒い雨訴訟の原告と同じような事情にあった方の救済について、総理大臣と、一審、二審の事実認定の結果を踏まえ、対応する。すなわち、広島への原爆投下後の黒い雨に遭ったこと、また十一類型の疾病を抱えていたこと、こうしたことを踏まえて対応することとしたところであります。

西岡分科員 後で総理談話については改めて質問をさせていただくところではございますけれども、上告断念を受けまして、救済拡大のために適用されている新認定基準は、広島と同様に、長崎にも適用されるべきであると考えますけれども、適用されない理由について、厚労大臣の方から御説明をお願いいたします。

加藤国務大臣 済みません、先ほど、令和三年七月の広島最高裁と言ったが、広島高裁の間違いでございますので、訂正させていただきます。

 その上で、被爆者認定指針を出させていただきましたが、これは、令和三年七月に、広島で黒い雨に遭った方が原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとして、被爆者健康手帳の交付を認める判決が出たことを踏まえたものであります。

 その上で、長崎については、過去に最高裁まで争われ、被爆地域として指定されていない地域においては、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとは言えず、また、原子爆弾投下後間もなく雨が降ったとする客観的な記録はないとした平成二十九年の最高裁判決、また平成三十年の福岡高裁判決が確定をしているところであります。

 したがって、広島と長崎では状況が異なるため、それぞれの判決を踏まえて対応しているところであります。

西岡分科員 今大臣から御説明があったわけでございますけれども、同じ被爆者援護法の下で、結果として、現在、広島の被爆者と長崎の被爆者が異なる認定基準を適用されている事実について、先ほど申されました過去の裁判との整合性、最高裁で敗訴したことを、再三、国は主張しておられるわけでございますけれども、黒い雨訴訟の上告断念を受けた新しい認定基準の下で、しかし、被爆者援護法という法律の下にあって、広島、長崎が違う基準で被爆者認定が行われているというこの事実は大変大きな問題があると考えておりますけれども、このことについて、法の下に平等であると言えるのかどうか、加藤厚労大臣の御見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 先ほどと答弁が重なってしまって恐縮なんですけれども、長崎では、最高裁まで争われた、被爆地域として指定されていない地域においては、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあったとは言えないこと、また、原子爆弾投下後間もなく雨が降ったとする客観的な記録はないとした判決が確定をしているわけでありますので、そういった意味で、広島と長崎では状況が異なっております。

 そして、それぞれの判決、その異なる判決を踏まえて対応しているものであり、憲法における法の下の平等に反するものではないと考えております。

西岡分科員 今るる御説明があっております、政府が認めない理由として挙げた、過去の被爆者訴訟との整合性、また被爆地域以外での黒い雨、降雨があったという客観的事実がないということに対しまして、先般、長崎市は、専門家会議による報告書を国に提出をさせていただきました。

 結果として、精査をした結果、厚労省としては、従来からの主張を繰り返し述べ、報告書に対しては認められないとの結論を先般出したということでございますけれども、この報告書はどのような形で厚労省の中で検討されたのでしょうか。また、大臣自らはこの報告書を御覧になって御検討いただいたのかどうか。このことについて、加藤厚労大臣にお伺いをいたします。

加藤国務大臣 長崎からの報告書は、昨年七月に厚生労働省が長崎県、長崎から要望を受けた際に受け取ったものであります。私も、当時は厚労大臣でありませんでしたので、厚労大臣になった後に、この報告書の内容についても説明を受けたところであります。

 報告書の内容については、省内で様々な視点に立って精査、分析を行い、先月の一月十六日に、今、委員お話しになられたような内容の回答を厚労省から長崎県に対して行ったところでございます。

西岡分科員 この報告書に対する厚労省の御見解に対しまして、去る二月十四日でございますけれども、長崎の全国被爆体験者協議会の皆様が厚生労働省に対しまして、長崎県の専門家会議の報告書に対する厚労省の見解に強く抗議をするとともに、広島と長崎に対する差別的な取扱い、このことにも強く抗議をされ、被爆地域の見直しを含めて、被爆者援護の抜本的な見直しを求められました。

 長崎県の専門家会議の報告書にあるように、黒い雨訴訟を踏まえた審査の認定基準において、長崎で黒い雨に遭った者を被爆者として認定することは、過去の訴訟判決と何ら矛盾しないこと、また、平成十一年度に行われました証言調査によって、灰などの降下物が千八百七十四件、また、黒い雨又は雨が降ったという証言が百二十九件、また、内部被曝に関する証言が三十一件存在をいたしております。長崎にも黒い雨、放射性物質を帯びた雨や灰が降ったことは明らかな事実であると判断できると結論づけております。

 そもそも、長崎の被爆未指定地域においても、米マンハッタン管区原爆調査団によって高い放射線量も記録をされているという事実もございます。

 被爆者として認定すべきものであると考えますけれども、改めてまた厚労大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 報告書の内容については、先ほど申し上げました精査、分析を行いまして、過去の長崎の被爆体験者に関する最高裁判決等を踏まえて、議論、検討させていただいて、いわゆる被爆体験者を被爆者として認定することは困難であるという判断に至ったところでございます。

 一つ一つについては、私どもの報告書に対する厚労省から回答をさせていただいておりますので、省略をさせていただきますが、御指摘のあったマンハッタン調査についても過去の長崎の裁判において争われ、その結果も踏まえた上で、平成三十年福岡高裁判決においては、被爆未指定地域におられた方は、被爆者援護法第一条第三号に規定する、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者には該当しないとの判示が行われているところであります。

 判決が判示する事実認定と整合性を欠く施策を実施するというのはなかなか難しいということは是非御理解いただきたいと思います。

西岡分科員 先ほど大臣の方からも、当時の菅総理大臣の談話について御紹介がございました。この談話をよく読んでみますと、前段と後段とありまして、今回の訴訟における原告皆様については、原子爆弾による健康被害の特殊性に鑑み、国の責任において援護するとの被爆者援護法の理念に立ち返って、その救済を図るべきであるとの考えに至り、上告を行わないこととしたという前段の談話がございます。

 私は、上告断念の当時の菅総理の英断は大変敬意を表し、評価すべきものだというふうに思います。

 ただ、後段には、先ほど大臣からもございましたように、今回の判決は、原子爆弾の健康被害に関する過去の裁判例と整合しない点があるなど、重大な法律上の問題があり、政府としては本来であれば受け入れ難いものです、とりわけ、黒い雨や飲食物の摂取による内部被曝の健康被害を科学的な線量推計によらず広く認めるべきとした点については、これまでの被爆者援護制度の考え方と相入れないものであり、政府としては容認できるものではありませんという記述がございます。

 この談話を通して読みますと、私は、この上告断念については、確実に一部、一部なのか全部なのか、これは当時の菅総理大臣にお聞きをしてみないと分かりませんけれども、確実に政治判断があったというふうに私は考えますけれども、その理解でよろしいかどうか、加藤厚労大臣の御見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 広島におけるいわゆる黒い雨訴訟に関する令和三年七月の内閣総理大臣談話、これは、まさに総理の判断を踏まえて、政府の見解としてまとめられたものであります。

西岡分科員 今、加藤大臣からは、いわゆる政治判断であるという認識を示されたものだと私も理解をいたしますし、総理が上告断念をされるに当たっては、確実にそこで総理の政治決断があったと思っております。

 逆に、本来、評価すべき政治判断によりまして、その後、総理の意向に沿う形で、裁判の趣旨とは異なる新たな指針が作られたことによって、本来、被爆者援護法に基づいてひとしく被爆者認定が行われるべき広島と長崎に対する認定基準がダブルスタンダードとなったのではないかと私は考えております。政治判断によって被爆者行政が分断されたという状況にあるのではないかと考えております。

 私自身は、かねてから、これだけ長い時間、今年で七十八年目でございますけれども、これだけの時間が経過した中で、科学的な知見に基づく立証責任ですとか蓋然性の証明を高齢化して病身の被爆された皆様に課して、これ以上、裁判で被爆された皆様を苦しめていくということについては、大変その状況は過酷なものでありますし、被爆された皆様にそれを求め続けることは非現実的なことでありますので、私は、政治決断というものはやっていかなければいけないのではないかと思っておりますし、同じ被爆地出身の岸田総理に是非政治決断をしていただくことを常々期待をしているものでございます。

 実際に、当時の菅総理の政治決断によって、広島の黒い雨訴訟の原告団、同様の事情にあった者として被爆者としての認定がされたのであれば、長崎に対しても、黒い雨が降った客観的な証拠がない、最高裁で敗訴しているという従来の答弁を繰り返すのではなく、広島と同じ基準に基づく政治判断をして被爆者と認めるべきではないかと私は考えますけれども、加藤厚労大臣の御見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 総理談話は、広島地裁、広島高裁を通じた事実認定を踏まえると、一定の合理的根拠に基づいて被爆者健康手帳を交付することは可能であると判断して、示したところでございます。この談話を踏まえて、原告と同じような事情にあった方々については、訴訟外でも救済することにしたわけであります。

 長崎については、先ほど申し上げましたけれども過去の判決で確定をしているところでございますので、広島、長崎とで状況が異なっている、したがって、ダブルスタンダードとはなっていないと考えておりますが、長崎については、過去の裁判例との整合性や、黒い雨が降った地域の存在を示す客観的な資料の有無等を整理する必要があると考えており、引き続き、長崎県、長崎市と対話を続けながら、必要な対応は行っていきたいと考えております。

西岡分科員 改めて、やはり私は、長崎にも同様の政治決断をしていただくべきだというふうに思いますけれども、今大臣から、引き続き、長崎市、長崎県と対話をしていくというお話がございました。

 最高裁の敗訴ということをおっしゃるのであれば、例えば、新しい知見ということをよく言われておりますけれども、この新しい知見が果たして何を指すのかどうかということについては、改めて長崎についての調査をしていただくことも含めて、救済をするという前提に立った前向きなお取組を是非お願いをしたいと思いますし、今の、広島と長崎が違う基準で認定されているということについては、大変問題があるというふうに思っておりますので、引き続き要請をさせていただきたいと思います。

 また、同じ被爆地出身の岸田総理に、是非、政治決断をしていただくことを心から求めさせていただきたいと思います。

 続きまして、被爆体験者事業についてお尋ねをさせていただきます。

 これまでも国として被爆体験者の皆様に対する施策の充実に努めていただいてきたことは、承知をしているところでございます。

 被爆体験者の高齢化も進み、有病率、病気を持っている確率が八九%と、合併症も含めて様々な病気で苦しんでおられます。そういう実情がございます。

 この度、PTSDと因果関係が明確ながんの一部が被爆体験者の医療費支給対象に追加されることとなったことは、被爆体験者にとっても大変朗報でありますし、ありがたいものであり、感謝を申し上げたいと思います。

 一方で、放射能の影響による白血病ですとか甲状腺のがんについてはその対象とならない、大変不条理な事態となっているということも事実でございます。

 また、被爆体験者の皆様が不安に思っておられるのは、この対象拡大によって、被爆地域の拡大や自分たちが被爆者として認めてもらうことができなくなるのではないかという不安を持っておられるということも事実ではないかと拝察をするところでございます。

 そもそも、被爆体験者救済の施策充実をこれから図る上で、PTSDに起因する制度そのもののたてつけ自体に既に無理がある事態になっているということが、私は明白となってきていると考えております。現制度の中で見直すことには限界があるのではないかと考えますけれども、加藤厚労大臣の御見解をお伺いをさせていただきます。

加藤国務大臣 本年四月から、委員もお話がありましたように、被爆体験者精神影響等調査研究事業の対象を拡充し、これらの精神疾患やその合併症と発がんとの関連性について調査研究に協力することに対し、がんの医療費を支給する方向で今準備を進めているところでございます。

 医療費の支給対象となるがんの種類については、精神的要因に関する疾病の合併症と発がんとの関連性について一定のエビデンスが認められるがんから調査研究の対象とし、現在、胃がんなど七種のがんを対象として医療費を支給することを想定をしております。

 長崎の第二種健康診断特例区域においては、原子爆弾の放射線による健康影響は認められないが、被爆体験が精神上の健康に悪影響を与えることが報告をされております。こうしたことから、厚生労働省としては、被爆体験者精神影響等調査研究事業を実施しているところであります。

 こうした仕組み、これは、今申し上げた認識を前提として、何らかの対応をという声に応えていくという意味においても、維持すべきものと考えております。

西岡分科員 今回のがんの対象を拡大していただいたことは大変ありがたいことだと思っておりますけれども、やはりPTSDに起因する因果関係が明確ながんというものが今回指定をされたがんということで、今後も、長崎大学等、委託をする中で、今後また追加することについても検討されることというふうになっておりますけれども、今、今回のがんの対象拡大を受けて、PTSDを基としているこの制度自体が、大変、考えていく場合に限界があるのではないかということを痛切に感じておりますので、改めて、長崎の被爆体験者の救済というものを、しっかり、再度長崎のことについても精査をしていただいて、被爆者として認めてほしいという切なる被爆体験者の皆様の声を聞き届けていただき、救済するためにはどうしたらよいかという視点で様々なこれからの施策を考えていただきたいと思っております。

 新しい知見ということでございましたら、新しい調査をする等の新しい試みについても、引き続き、市、県としっかり国と話をしていただいて進めていただくことを切に希望し、要請をさせていただきます。

 続きまして、子供医療費助成制度の創設についてお尋ねをさせていただきます。

 これまでも全国各地から要望が出されているところであると承知をいたしておりますけれども、子供の医療費の助成制度については、各自治体、助成対象年齢ですとか助成額にばらつきがあるという今の現状でございます。この現状を是正していくということは喫緊の課題であると認識をいたしております。

 子供たちの健康、命、健やかな成長を支える医療費助成制度が、居住地、住んでいるところによって格差があるという状況をいつまでも放置しているということについては、国として許されないことだと考えております。

 岸田内閣においては、しっかり、子育て政策については異次元の取組をされるということを打ち出しをしておられます。どこに住んでいても全国一律に子供たちが安心して医療を受けられる国の制度を是非創設していただきたいという、強い、地方自治体、地方からの声がございます。その必要性、そして今後の方向性について加藤厚労大臣にお尋ねをさせていただきます。

加藤国務大臣 子供の医療費助成については、国として、医療保険制度において、就学前の子供の医療費の自己負担を三割から二割に軽減をしているところであります。

 これに加えて、自治体が独自に助成制度を設けられ、自己負担の更なる軽減が図られているところであります。このような子供の医療費助成制度全てを国の制度として実施することは、現状でも各都道府県ごとに取組が異なっているということ、また、自己負担の軽減により受診行動が変化するということが考えられること、また、医療保険財政が大変厳しい状況にあるといったこと、こういったことを勘案すると、課題が大変多いものと考えておるところでございます。

 他方で、子供、子育て施策については、小倉こども政策担当大臣の下、三月末を目途にその内容を具体化し、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠を提示するものと承知をしております。

 厚労省としても、そうした議論にしっかりと協力をしていきたいと思っております。

西岡分科員 また、その六月に議論される中に、この医療費の助成制度の国の創設ということについても、是非盛り込まれることを要望をさせていただきたいと思います。

 それでは、時間となっております。これで私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

牧原主査 これにて西岡秀子君の質疑は終了いたしました。

 次に、池下卓君。

池下分科員 日本維新の会の池下卓です。どうぞよろしくお願いします。

 まず冒頭、先日、トルコ周辺で大地震がありまして、多くの皆様がお亡くなりになられました。日本からもまた世界からも支援の手が差し伸べられているかと思いますけれども、改めて、早期の復興、そして、亡くなられた皆様の御冥福をお祈りをさせていただきたいという具合に思っております。

 それでは、順次質問の方をさせていただきたいと思いますけれども、まずは、海外での臓器移植についてお伺いをさせていただきたいという具合に思います。

 昨年の十二月、日本移植学会など関係五学会から、海外での不透明な臓器移植の根絶を目指す共同声明というものが発表されました。これは、途上国などで臓器移植などが疑われる移植を受ける患者さんというのが後を絶たないということから、国際的な規範でありますいわゆるイスタンブール宣言、これを受けて、承認したものと言えると考えております。イスタンブール宣言は、脳死や心停止といったような御遺体のドナーを用いた移植の普及、生体ドナーの保護、保障、臓器提供及び移植の自国実施等を原則と呼びかける内容であると承知をしております。

 では、移植を望む患者さんが、なぜわざわざ海外へ臓器移植を求めて行くのか。やはりこれは、国内では平成九年に臓器移植法が作られましたけれども、現状の課題というのは大きく二つあると考えております。一つは国内での臓器移植ができるというケースが非常に少ないということ、もう一つは日本人が海外で行う臓器移植について、これについて挙げられると考えております。

 そこで、まずは五学会からの声明に対する政府の受け止め方につきまして、見解を大臣にお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 一部の国において人身取引による臓器売買が行われていたことを背景に、国際移植学会を中心として、平成三十年に、移植が必要な患者の命は自国で救う努力をすることという趣旨のイスタンブール宣言が採択をされました。この宣言は、現在、臓器移植に関する国際的な原則となっており、昨年十二月には、これを支持する国内五学会が共同声明を発表したところであります。

 イスタンブール宣言の趣旨は大変重要であります。国内における臓器移植を推進するため、今後とも、共同声明を発表された関係学会とも連携をして、普及啓発を通じて、国民の皆さんの臓器移植に対する更なる理解を促進をすること、また、医療施設間の連携強化などを通じて、臓器提供、移植体制の充実、こうした点に取り組んでいきたいと考えております。

池下分科員 大臣、まさに私も、国内移植の普及啓発というものと医療提供体制の整備というのは、本当に必要不可欠な、国内で推進していくには必要不可欠なものであると思います。その点につきましては、今後、厚生労働委員会がありますので、そちらの方でちょっとまた議論をさせていただきたいところだと思っておるんですけれども。

 ちょっと今回、臓器移植法の法の不備な点について、いろいろ御見解を聞かせていただきたいなという具合に思うんですが。

 まず、条文の一条を読みますと、臓器の移植術に使用されるための臓器を死体から摘出すること、そして臓器売買等を禁止すること等が規定されています。そして、第十二条の方に、業として行う臓器のあっせんの許可についての条文があります。

 生体移植を無許可のあっせん禁止の対象としていない理由につきまして、参考人の方にお伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 生体からの臓器移植は健全な提供者に侵襲を及ぼすことから、医療機関において、やむを得ない場合に限り、例外的に親族間で実施されるものであるため、法律上、生体移植をあっせん禁止の対象としていないものと認識しております。

 しかしながら、実際に移植を実施する場合においては、臓器の移植に関する法律の運用に関する指針、ガイドラインや、関係学会が定めた倫理指針に基づきまして、移植実施の可否が適切に判断されているものと考えております。

池下分科員 まさにお答えのとおりでありまして、生体間移植といいますのは親族間というのが原則という具合にお話を伺いました。

 この法律の制定時には、生体間移植というものが想定されていなかったのか、若しくはあえて外したのか、ちょっとそこら辺というのは、私、当時存じ上げませんので分からないんですけれども、ちょっとここで、通告しておりませんけれども、関連で、大臣の方にお伺いをしたいと思うんですが。

 このあっせんの規制対象、これは脳死を含む死体からの移植だけで、生体移植が対象外になっているというのは今ありましたけれども、この点につきましては、識者の方からも、法の不備じゃないかということで指摘がされているところでありますけれども、大臣のちょっと御見解をお伺いしたいと思うんですが、お願いいたします。

加藤国務大臣 私の記憶で、あやふやだったらちょっとあれなんですが、当時、やはり脳死に係る移植をどうするかというところで、かんかんがくがく議論をして、当時、自民党としても党議拘束を外しまして、それぞれの議員がどう考えるか、私もいろいろ悩みながらこの採決に参加したことを覚えておりまして、したがって、当時、やはりそこに焦点があった、そしてそれで作られてきた、そうした背景があったのではないかと当時を振り返ると思うところでございます。

 今後の対応について、やはり基本的にこの法案自体が議法で作られてきておる、こういう経緯もございます。他方で、今回、いわゆるNPO法人が無許可で行ったとして、当該NPO法人の理事が逮捕される、こういう事案もあって、無許可で行ったことが事実とすれば、これは大変遺憾な事態だというふうに考えておりまして、まず私どもとしては、同様の事案の有無について関係学会と連携しつつ情報収集を行うとともに、本件についても今警察当局が入っておられますけれども、様々な情報を発信し、併せて臓器提供に関する正確な情報を発信していくなど、国内における臓器移植が適切に行われるよう努めていきたいというふうに考えているところでございます。

池下分科員 大臣、突然でしたけれども非常に丁寧な御答弁をいただきました。ありがとうございます。

 前回の臓器移植、作られたときはまさに脳死について焦点が当てられていたということは、私もこの間ちょっと勉強させていただきまして、拝見をさせていただきました。まさに、ちょっと、議員立法ということは理解を当然させていただいているところなんですけれども、また後でも申し上げようかなと思っていたんですが、やはり超党派で改正に向けた動きもしっかりとこれからしていかないといけないのかなと思っているところであります。

 今いみじくも大臣がおっしゃられたように、先日、NPO法人の代表ですか、理事者が逮捕されました。これまでにも何度も問題のある臓器移植というものは疑惑が浮上して、そして、忘れ去られてきたわけではないと思うんですけれども、なかなか前に進まなかったという過去があります。

 私、生体間移植があっせんの対象になっていないことが立件を困難にする要因ではないかと考えるが、いかがでしょうか。また、臓器移植法施行以来、捜査に乗り出したが立件を見送ってきたケースというのがどれだけあるのか、参考人の方にお伺いをしたいと思います。

友井政府参考人 お答えいたします。

 検挙を困難にする要因に関するお尋ねにつきましては、捜査の具体的な手法に関わることになり、今後の捜査に支障を来すおそれがありますので、お答えすることは差し控えさせていただきます。

 次にお尋ねの検挙を見送ったという事案につきましては、警察庁としてその有無を把握はしておりませんが、臓器移植法を始めとする刑罰法令に触れる行為が認められる場合には、関係機関とも連携しつつ、法と証拠に基づき適切に対処することとしております。

池下分科員 これまで立件できなかったことを考えますと、今回、NPO法人の理事長さんが逮捕されたということに関しましては、一定、ちょっと前進があるのかなという具合に考えているところです。ただ、議法であります臓器移植法というものが、やはり、ちょっと現在の法律の範疇の中ではどうしても防ぎ切れないというのが原因ではないかなという具合に考えているところなんですけれども。

 原因として考えられるのが、一つは、あっせん、このあっせんというものの定義がちょっと不透明なのではないかという点です。また、無許可のあっせんを禁じる本法の第十二条というものがありますけれども、ここに、やはり先ほど申し上げた生体間移植についての規定、これがどうしても設けられていないということ。またさらに、海外移植が行われた場合に、どうしても事実の証明というものが難しいという点、この辺が、ほかにもあるとは思うんですけれども、挙げられるんじゃないかなという具合に私は思っております。

 また、先日も、違法性が疑われる移植を海外で受けてきた患者が来院した、こういう情報が複数の医療機関から寄せられているという報道がありました。臓器移植法は、厚生労働省の管轄下にあるのは許可を得た団体のみでありまして、逆に無許可の団体に対しましては、厚生労働省の監督の権限は及ばない点というものがありまして、これが法律の抜け穴になっているんじゃないかなという具合に思うんですけれども、これも突然で申し訳ないんですけれども、今私申し上げた点に関しまして、ちょっと、大臣の感想でも結構ですので、お聞かせ願えたらと思うんですが、お願いいたします。

加藤国務大臣 まさに今、我々は法律に基づいて執行させていただいておりますので、今の時点で許可をしたところは対象になりますけれども、それ以外に対しては、いわゆる一般的な行政的な関与は当然あろうかと思いますが、それを超えたものというのはないというのが今の実態でございます。

 ここは、先ほど申し上げたように、この法律そのものが議員立法で作られてきた、こういう経緯もございますから、そういった中で、これからどういう対応ができていくのか、国会等ともよく御相談をしていかなきゃいけないだろうというふうに考えています。

池下分科員 大臣、今回、二回も通告していない部分につきましてお答えいただきまして、ありがとうございます。

 本当に大臣がおっしゃるとおりで、この議法の中で何ができるのか、そういう中で行政の皆さんはやっていただいているのは当然承知をさせていただいているところでありますので、しっかりと、大臣が言われたように、国会での議論というのを、私も国会議員の一人として、当然、超党派の皆さんがいてこそなんだとは思うんですけれども、議員としての議論を進めさせていただきたいなと思います。

 そして、これはまた次の審議のときにお話をしたいと思うんですけれども、やはり、国内での臓器移植というものがどうしても進まないといいますのは、ドナーの不足というものがどうしても挙げられるかと思っております。腎臓でも、平均的に移植を受けるまでに十年待たなければいけないとかという患者さんもいらっしゃるという具合に思いますと、本当に心が苦しくなってくるところでありますので、しっかりと今後の議論につなげていきたいという具合に思っております。

 それでは、ちょっと趣向を変えまして、次の問題につきましてお伺いをしていきたいと思います。

 次は、非正規雇用者の就業調整についてお伺いしたいと思います。

 今国会の方でも、様々、予算委員会等でも議論があったかという具合に思っておりますけれども、社会保険料、年収百三十万円、いわゆる年収の壁というものについてお伺いしたいと思うんですが、やはり、この年収の壁を上回らないようにするために就業調整される方々というのは、私、個人的にもパートの皆さんとかたくさん存じ上げていますので、たくさんいらっしゃるんじゃないかなという具合に思っております。

 また、これは女性の活躍支援の面からも問題があると思いますし、一方、やはり、育児であったりとか、介護であったり、家庭の事情でどうしてもお仕事ができないという方々がいらっしゃるということも十二分に私は承知をさせていただいております。

 ただ、やはり、労働者不足という観点から、せっかく岸田総理の方が賃金を上げていこうということで言われていても、実質的に、調整することによって労働時間が減ってしまう、また、労働者の側からすれば、働きたくても働けないといった、双方の側面から影響が出ているという具合に思っております。

 そこで、パート主婦等にとって社会保険の被扶養認定基準は就労意思の決定において鍵となる数字、金額であると思っておりますけれども、どれくらいの働く方々が影響を受けているのか、これをしっかりと把握するということもまた労働政策を進めていく上で非常に大事になってくるかと思いますけれども、就労調整されている人の割合といいますのはどの程度存在するのか調査されているのか、参考人の方にお伺いをしたいと思います。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省がパートタイム労働者及び有期雇用労働者を対象に令和三年十月に実施をいたしました、令和三年パートタイム・有期雇用労働者総合実態調査の結果によりますと、パートタイム労働者及び有期雇用労働者の方が就業調整をしているという割合は一三・四%となっております。

 また、就業調整をした理由を複数回答で調査をいたしました結果、就業調整をしているパートタイム労働者及び有期雇用労働者の割合を一〇〇といたしますと、一定額を超えると配偶者の健康保険、厚生年金保険の被扶養者から外れ、自分で加入しなければならなくなるからという理由を挙げていらっしゃる方が四二・八%となっております。

池下分科員 御答弁ありがとうございます。

 今お答えいただいた数字が、果たしてこれが多いのか少ないのか、そこら辺というのが、私も、ちょっと微妙な数字なので分かりかねるところはあるかと思うんですけれども、ただ、やはり、いろいろな業種がある中で、これもいろいろ勉強させていただいた中で、製造業であったりとか、特に小売業であったりとか、あと医療関係の方ですと、やはりパートの方が多いという具合に聞いておりますので、そういう業種間でも非常に大きな影響があるかと思っております。

 そこで、ちょっとお伺いをしていきたいなと思うんですけれども、この被扶養認定基準といいますのが、一九七〇年には七十万円だったと聞いております。一九九三年に、今、現行の百三十万円に、随時、これは引き上げられているということで伺っておるんですけれども、どういうような状況、条件の下であれば、この基準というのが上げられたりするのかということにつきまして、お伺いをしたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、健康保険、厚生年金におきましては、被保険者と生計維持関係にある者を被扶養者と判断しておりまして、この生計維持関係の具体的指標につきましては、先生先ほど言及いただきましたけれども、昭和五十二年に年収七十万円としました。その後、所得税の控除との関係、それから所得水準の伸び等の要素を勘案して、数次にわたり見直しを行っておりまして、平成五年、現在の年収百三十万円としております。この被扶養者の収入基準につきましては、この一九九三年から、過去三十年間にわたりまして、一人当たり名目賃金がおおむね横ばいとなっておりまして、現在、百三十万円が維持されております。

 ここにつきまして、引上げのお話、考えた場合というお話がございますけれども、ここにつきましては、現在、被用者保険では、被用者による支え合いという仕組みですので、これを仮に引き上げた場合には、保険料を納付せず給付を受ける方が増加するということで、より少ない収入で保険料を負担する者との間で不公平感が生ずる可能性があるという点。それからもう一つは、生産年齢人口が減少しております。こうした中で、女性の就業促進が重要な課題であるということから、年金制度におきましては、第三号被保険者を将来的に縮小していく方向性が指摘されております。

 こうしたことを踏まえますと、この基準の見直しなどにつきましては、いろいろ、様々なこと、慎重な検討が必要である、このように考えております。

池下分科員 ありがとうございます。

 最後は平成五年ということであったかと思うんですけれども、数十年間変更していないというのが、今の御答弁だと、賃金がおおむね横ばいだったということでありまして、それも、海外から比べたら非常に問題がある点なのかなというのは、改めて認識させていただきます。

 また、不公平感であったりとか、生産年齢が少なくなっているとかですよね。第三号被保険者が縮小されるということになってくるかと思うんですけれども、ある一定、この第三号被保険者の、どうしてもお体が調子悪いとか、様々な理由で働けないよという方がいらっしゃるということもありますので、全くゼロにするということは当然なかなか難しいということは理解はさせていただいているんですけれども、やはり、これから、今まで随時変えてきたということで、毎回毎回、この議論に関しましては、昔は、配偶者控除であったりとか、税制の面からの問題ということも指摘されてきたわけですけれども、毎度議論されてくる点になってくるかと思います。

 そこで、賃金水準の変動に合わせた改定ルールが存在しないであったりとか、そういう中で、物価高騰が今すごい、物すごくしてきています。賃金も上げようかということで言われていますけれども、賃金上昇を目指されているけれども、この被扶養認定基準の変更について、私はもうちょっとルール化を、先ほど言われた理由というのは十二分に理解はさせていただいておるんですけれども、ルール化をしていくべきではないかなという具合に思っておりますけれども、御見解の方をお伺いしたいと思います。

伊原政府参考人 先ほど御答弁させていただきましたけれども、元々七十万円で設定されてから、百三十万円、一九九三年にされるまでの間、やはり一番中心的な見直しの要素はこの所得水準の伸びでございました。そして、現在、百三十万円が維持されてきた背景には、一人当たり名目賃金がおおむね横ばいだという現実もございますので、今まではこういう考え方で来ております。

 今後の所得がどうなっていくかとか、様々な要因はあると思いますけれども、それはそういう経済情勢を見極めていくということは大事だと思いますが、他方、先ほど申し上げましたように、今日的な課題としまして、やはり生産年齢人口が減っていく中で、先ほど申し上げましたが、三号被保険者を将来的に縮小していくという方向性との兼ね合いをどう考えるか。それから、もう一つ、これは現実問題として、現在、この被扶養者の就業調整の問題の議論の中でも課題となると思われますが、もしこの被扶養者の収入基準を引き上げた場合には、保険料を納付せず給付を受ける者が増えるということが現実に起こります。この辺りをどう考えるかという辺りについても検討が必要だ、このように考えます。

池下分科員 ありがとうございます。

 先ほどの御答弁と同じで、三号を減らしていって二号の方に移していくということで、それで長時間就労してもらうということも理解はしておるんですけれども、ちょっと一方、これは私も地元の方で様々な中小企業の経営者の皆さんとお話しすることは多々あるんですけれども、やはり中小零細企業としましては、社会保険料のいわゆる会社の折半分、これを負担をしていかないといけないということになりますと、非常に負担が大きいというお声もたくさん、これは矛盾するかとは思うんですけれども、そういう声もかなりの数を聞いております。

 今のような、これから改革というのをやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、物価上昇の中、パート就労者の生活というのは、今、本当に厳しくなる一方だと思っております。生活を守るためには、厚生労働省さんもしっかりと御検討いただければありがたいなという具合に思うんですが、岸田総理も、衆院の予算委員会で、パートや非正規雇用の労働者が希望に応じて収入を増やせることが重要である、また、幅広く対応策を検討していくという具合に述べられております。

 そこで、具体的に、こういう年収の壁というものを気にせずに労働者にしっかりと働いてもらう対策につきまして、大臣の方にお伺いをしたいと思います。よろしくお願いいたします。

加藤国務大臣 社会保険におけるいわゆる百三十万の壁、これを意識せずに働くことが可能になるように、その解消に向けては、まずは短時間労働者への被用者保険の適用拡大を進めていくということが非常に大事で、今まで議論をさせていただいたところであります。

 これを進めるに当たっては、新たな保険料負担が生じることになるわけでありますけれども、そうした場合、事業主の皆さん、また短時間労働者の皆さんには、被用者保険の適用に関する正確な情報、また基礎年金に加えて厚生年金による報酬比例部分が上乗せされるなどのメリット、これを分かりやすく説明し、理解を得ながら進めることが非常に重要であると考えております。

 令和二年の年金制度改正法による被用者保険の適用拡大の実施に当たっても、制度の周知や企業への専門家の派遣等の支援、また中小企業事業主への助成などを通じた環境整備も行ってきたところであります。昨年十二月の全世代型社会保障構築会議の報告書を踏まえながら、引き続き、更なる適用拡大に向けて取り組むことで、まずは働き方に中立的な制度の構築を図っていきたいと思っております。

 しかし他方で、いわゆる百三十万円の壁を意識して労働時間を調整する方がおられる、こういった課題がございます。そして、特に、今、労働不足ということも指摘をされております。こうしたことについて、これは社会保障制度でありますから公平性ということも非常に大事でありますから、そうした点も踏まえながら、どういった対応ができるのか、総理からも御指示をいただいておりますので、更に私どもとして検討していきたいと考えております。

池下分科員 丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 今、総理の方から御指示いただいているということですので、その時期が、いつまでにできるのかということもやはり国民の皆さんは非常に注目をされているところだと思いますので、しっかり早期な対策というものをお願いしたいなという具合に思います。

 一方、ちょっと時間もなくなってきましたが、あと一問だけ質問をさせていただきたいという具合に思いますけれども、我々日本維新の会、これは我々の主張というところになってきますけれども、日本維新の会といいますのも、労働市場の改革が成長戦略の柱の一つということで認識しております。固定化した労働市場を流動化させることによりまして、労働市場の改革、これを行う、そして労働不足を解消すべきと考えています。

 我が党は、給付つきの税額控除、またベーシックインカム、これを使ったりとか、また求職者の支援制度といったセーフティーネットを一方しっかりと準備しておきながら、解雇規制の改革、緩和をしたい。若しくは、労働者が新たな業種に挑戦できるような仕組みづくり、企業としても新たな労働力を得ていくなどを考えているところでありますけれども、我が党の提案につきまして、大臣の御見解をちょっとお伺いをしたいと思います。

加藤国務大臣 これから更に高齢化が進む、あるいは生産年齢人口が減少していく、また働き方も様々、多様な働き方が求められていく、そうした中で、社会保障制度というのは常に見直しをしていくことが必要だということは、私もそのとおりだと思っております。

 ただ、一方で、我が国の社会保障制度は、病気等の人生における様々なリスクに対しては、本人と事業主が保険料を拠出するという社会保険方式を基本とするなど、既存の制度というのもあるわけでありますので、そうしたものと、今御指摘のあった、例えば、求職者支援制度というのは今私どももやらせていただいておりますけれども、ベーシックインカムとか給付つき税額控除、こういったものを具体的にどう組み込んでいくのか。そうした意味において、例えばベーシックインカムについては、国が全ての個人に対して最低限の所得保障を無条件に与えるということでありますけれども、その場合、今の年金等、あるいは生活保護などの既存制度とどう組み合わせていくのかなど、いろいろと課題があるのではないかというふうに考えており、今直ちにと言われれば、慎重な検討を要するというふうに考えております。

 私どもとしては、社会保険方式というこれまでの基本は維持をしながら、先ほど申し上げた社会保障の給付と負担の在り方も含めて不断の見直しを図って、社会保障制度を支える人を増やし、また能力を通じて皆が支え合える全世代型社会保障を構築することによって、まさに社会保障制度を持続可能なものにしていくべく、更に努力をしていきたいと考えています。

池下分科員 まさに時代に即した変革、改革というのも常にやっていかなければいけないと思っておりますので、ちょっと今日はもう時間がなくなりましたので、これで終了させていただきますけれども、引き続き議論をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて池下卓君の質疑は終了いたしました。

 次に、國重徹君。

國重分科員 公明党の國重徹です。

 加藤大臣、また担当の皆様、今日は長時間の分科会、大変にお疲れさまです。

 今日は難聴をテーマにして質疑をさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 我が国におきましては、聴力レベル七十デシベル以上から身体障害者手帳の交付を受けることができます。現在、この聴覚障害者は約四十四万人いらっしゃいます。

 しかし、この障害認定の基準は世界的に見てハードルが高い。WHOの基準では四十一デシベルから補聴器を使うことが推奨をされております。これは耳元で大きな声で話さないと聞こえないレベルになります。

 身体障害の認定は受けていないものの、聴覚の低下によって日常生活の不便を抱えていらっしゃる方は、実際はかなり多くいらっしゃいまして、医学的介入が必要な難聴者は約九百万人いるとも言われております。

 そこで、こういった難聴、障害に至らない難聴も含めての難聴でありますけれども、これになるとどのような悪影響が生じると考えられるのか、まずはこの点についての認識を確認させていただきたいと思います。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の方から、特に高齢者の生活への悪影響につきまして触れてほしいという御下問だと認識をしております。そういうことを中心にお答えをお届けしたいと思います。

 御案内のように、難聴でございますけれども、加齢ですとか騒音、また生活習慣など、様々な原因で起こるものでございます。例えば、必要な音が聞こえず、社会生活ですとかコミュニケーションに支障を来すということですとか、様々な危険の察知能力が低下するといった影響をもたらすものと承知をしております。

 特に、難聴が高齢者の方々の生活にもたらします影響につきましては、過去の調査研究事業によりますと、例えばコミュニケーションに関する問題が持続した場合に、社会的孤立ですとか、うつ、また認知機能の低下などの悪影響が危惧されるといったことが報告をされているところでございます。

國重分科員 ありがとうございます。コミュニケーションにも大きな支障が生じるというような答弁もいただきました。

 耳が聞こえづらくなって、何度も、えっ、何と言ったのというふうに繰り返し聞きますと、相手にもうんざりされる。また、挨拶をしたり話しかけてくれている人がいて、その人に対して、耳が遠くて、話をされたこと自体気づかなかったり、また、話の内容をきちんと認識できずに、適切な応対ができない。そういったことで、あの人と話すのは面倒くさいなとか、あの人に無視されたとか、そういうことで人間関係が悪くなる。みんなとの会話になかなか入れないので、外に出るのもおっくうになっていく。孤立したり、引きこもりがちになってしまう。いらいらしたり、精神的に不安定になる。また、頭痛や目まい、先ほどもありましたとおり、うつなどへの影響もある。

 地域を回りましても、そういった方たちはいらっしゃいます。また、こういったことは普通に想像しても容易に分かることです。

 さらに、認知症における最大の予防可能なリスク要因が難聴である、このことにつきまして、イギリスの医学誌ランセットの国際委員会が、二〇一七年、また二〇二〇年の二度にわたり指摘をしております。

 この認知症と難聴との関係につきましては、これまでもこの分科会におきまして、私、研究を進めてほしいということをお願いしてまいりました。昨年の質疑の際には、令和二年度以降も、引き続き、国立長寿医療研究センターにおいて、インハウス研究として、難聴者を二群に分けた補聴器の装着の有無による認知症の発症率の差に関する研究が継続されている、令和四年度を目途に研究結果が取りまとめられ、その後、公表される予定となっている、この旨の答弁がありました。

 もうすぐ令和四年度も終わるわけでありますが、この研究の進捗、今どういう状況なのかについてお伺いいたします。

大西政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御紹介いただきましたけれども、認知機能の低下と難聴との関係について研究するため、今お話しいただいたものに先立つところから、平成三十年度から令和元年度にかけまして、まず、日本医療研究開発機構、AMEDの認知症研究開発事業によりまして、聴覚障害の補正によります認知機能低下の予防効果を検証するための研究、これが同じ国立長寿医療研究センターにおいて実施をされまして、この研究の結果、認知機能の低下と難聴につきまして一定の相関関係が確認されるところまではいっておるわけでございます。

 しかしながら、難聴になった結果として認知症になるのかといった因果関係についてまでは、当該事業期間中には結果を得るには至らなかったというところでございます。

 先生今御紹介いただきましたように、令和二年度から、国立長寿医療研究センターにおきまして、難聴の方を一定期間観察をしまして、補聴器の装着の有無によります認知機能への影響に関する研究が継続されているところでございます。これも御紹介いただきましたように、令和四年度を目途にということでございますが、現時点では、当該研究の結果、まだ取りまとめるところまでいっていないということで承知をしているところでございます。

國重分科員 まだ結果の取りまとめは出ていないということでしたので、その結果について今後注視をしていきたいと思います。

 認知機能の低下の危険因子の一つに難聴があるということは、厚生労働省の認知症施策推進総合戦略にも明記をされております。難聴によって認知機能が低下しやすい、あるいはうつにつながりやすい、こういったデータが国内外で報告をされております。高齢者の難聴には早い段階で社会が介入する必要がある、このことをしっかりと認識することが大切になります。

 その上で、高齢化が進むに伴いまして、加齢性難聴も増えていきます。

 また、近年、いわゆるイヤホン難聴、スマホ難聴も増えております。WHOは、多くの若者が携帯型音楽プレーヤーやスマホなどによる音響性難聴のリスクにさらされているとして警鐘を鳴らしております。ヘッドホン、またイヤホンを使って大きな音量で音楽などを聞き続けることによって、音を伝える役割をしている有毛細胞が徐々に壊れて起こる難聴であります。少しずつ進行していくために初期には自覚しにくい、こういった傾向がありますけれども、一度この有毛細胞が壊れますと戻りません。失った聴覚は戻らないということになります。

 このように難聴者が増加することの懸念が指摘されているわけでありますが、これを厚労省としてどのように受け止めているのか、見解を伺います。

辺見政府参考人 難聴につきましては、ヘッドホンなどで大きな音を聞き続けることに伴う若年層のヘッドホン難聴ですとか、高齢者人口の増加に伴う難聴のある高齢者の増加といったことが想定されるところでございますが、ライフサイクルに応じまして、難聴に関する様々な支援を包括的に行っていく必要があると認識しているところでございます。

國重分科員 人生百年時代、人生の大先輩の皆様にいかに元気で生きがいを持って生き生きと人生を送っていただくか、そのための環境をどうつくっていくのか、真剣に考えていかなければなりません。健康で生き生きとした人生を送る、そのための土台となるのがコミュニケーションであります。難聴になれば、先ほども述べましたとおり、生活、健康への様々な悪影響が生じます。

 そこで、加藤厚生労働大臣にお伺いいたします。

 人生百年時代、難聴予防やその対策に力を入れていくというのは、私は極めて大事なことだと思っております。そういったことで、私は初当選以来、この分科会で繰り返しこのテーマを取り上げてまいりました。大臣はこのことについてどのように認識をされているのか、難聴の予防、対策を講じることの重要性について、大臣の認識をお伺いいたします。

加藤国務大臣 今、難聴の予防というお話がありましたが、その前に、難聴に対する認識の問題があるというのを私は議員になってからずっと感じておりました。

 視覚については、日本人はみんな、眼鏡をしたり、かなりいろいろと対応する。一方で、聞きづらさというのはなかなか分かりにくいという、さっきお話がありましたが、だんだん、目もだんだん悪くなるんですけれども、固定して見ていますから分かるんだけれども、同じ音をずっと聞いているわけじゃないということもあるんだろうと思うんですけれども、非常にそれに対する対応が、視覚に比べるとちょっと低いのかなというのを前から認識をしており、例えば、眼鏡を着けるように補聴器を着ける人の割合がどうなのかと見ると、割と日本の補聴器を着ける人の割合が低いとか、まずそういった問題があるんじゃないかなと。

 その辺もしっかりPRしながら、今委員御指摘のあったように、難聴というものがコミュニケーションに関する問題をいろいろ引き起こし、それが結果的に、社会的な孤立とか、うつとか、あるいは認知機能の低下、こういったことを引き起こしていく。

 そしてさらに、難聴の原因が高齢化にとどまるものではありません。生まれながらそうした難聴という障害を持っている方もおられます。あるいは、先ほど委員がお話があった、若い方々がヘッドホン等で非常に大きな音で聞いていると、やはりそれが難聴を引き起こす。

 様々な要因があるわけでありますので、厚労省としては、新生児への聴覚検査による乳児期からの支援、また、職域における定期健診などを通じた成人期から高齢期における早期の発見、突発性難聴の早期受診、あるいはヘッドホン難聴の予防に関する普及啓発などなど、各年齢層やそれぞれの要因等に応じた対策、支援、これを包括的に行っていくことが重要だと考えておりますので、関係各部局ともよく連携を取りながら、難聴対策に取り組んでいきたいと考えております。

國重分科員 大臣御自身の言葉で今るる述べていただきまして、本当にありがとうございます。こういった難聴に対しての意識を強く持っていただいていることを心強く思います。

 本人のためにも、家族のためにも、社会のためにも、この難聴対策というのは重要であります。WHOの公表資料によりますと、聴覚ケアに医療費を投入すると十年間で十六倍に還元される、こういった趣旨の報告、指摘もされております。

 適切な対策を講じるためには、その前提として正確な実態把握が必要であります。しかし、そもそも難聴の人がどの程度いるのか、このことでさえ国はきちんと把握できていない、調査ができていない状況がかつて続いておりました。

 そこで、この実態把握の必要性について私も繰り返し訴えてまいりました。その結果、ほかにもいろいろありますけれども、例えば、平成二十八年十二月実施の生活のしづらさなどに関する調査におきまして、新たに細分化した設問を追加していただきました。この点については一歩前進と評価をしております。ただ、これにつきましても、調査対象者が限られている、こういったことなどの課題があります。

 そこで、昨年のこの分科会の質疑におきまして具体的な改善を要望させていただきましたところ、令和四年度の同調査におきまして、聞こえづらさのある方の割合が適切に推計できるよう、専門家の意見を聞きながら調査方法の改善を検討していく、こういった答弁をいただきました。

 これについて、検討の結果、どのような調査方法の改善がなされたのか、また、その調査結果の取りまとめに向けた今後のスケジュール感についてお伺いいたします。

辺見政府参考人 平成二十八年度の生活のしづらさに関する調査におきましては、調査対象者の中で、「おおむねこの六ケ月の間に、身体的又は精神的に具合が悪いところはありましたか。」という設問に対して「はい」と答えた方に対して調査を行っていたところでございますが、昨年度の御指摘を踏まえまして、今般の令和四年十二月に実施をいたしました令和四年度の生活のしづらさに関する調査では、調査対象に占める聞こえづらさのある方の割合が適切に推計できるように、全ての調査対象の方に対しまして聞こえの状況を調査するように設問を改善したところでございます。

 調査結果の取りまとめの時期については、令和五年度にデータの集計作業を行いまして、その後、令和六年度の早い時期に公表できるように進めてまいりたいと考えております。

國重分科員 今後調査の取りまとめがされていくわけでありますが、その結果、実態を踏まえてどう取り組んでいくのか、これが大切になります。その際、最新の調査研究を基にした専門的見地からの適切な対策が重要になってまいります。

 この点、アメリカやフランス、特にフランスでは二十世紀から疫学調査を開始して、今なお継続がされております。また、アメリカには、NIH、アメリカ国立衛生研究所の一部門として、NIDCD、難聴とコミュニケーション障害の米国立研究所、これがあります。難聴、嗅覚、味覚、また目まいを網羅して、研究費を分配する機能があります。ほかにもアメリカ国内には多数の聴覚研究所があります。イギリスやフランスにも、国立大学、また世界的に有名な研究所にある難聴研究所で研究が進められております。

 そこで、厚労省に確認をいたします。耳を含む感覚器に関する国立の研究センターは、我が国にはあるんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の耳を含む感覚器のみを取り扱っている国立高度専門医療研究センターは存在しておりません。

國重分科員 存在しないということでありました。

 では、これまで国立の研究センターはどのような設置基準の下で整備されてきたのか、お伺いいたします。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 国立高度専門医療研究センターにつきましては、がん、心臓病、脳卒中など国民の死亡原因の上位を占める疾病に対する医療等について機能の充実を図る観点や、神経・精神疾患や小児の難治性疾患など高度専門的医療や研究に取り組む必要がある疾病等に対し中核的機関を整備する観点から設置したものでございまして、国民の健康に重大な影響のある特定の疾病などに関して医療や研究開発等を行うために、全国に六つのセンターを設置しているところでございます。

國重分科員 ありがとうございます。今、設置基準についてお話をいただきました。

 その上で、我が国における、高齢化が進む日本において、難聴対策の重要性、これまで述べたとおりであります。しかし、今、厚生労働省が注力をしているはずの国立長寿センターの耳鼻咽喉科には常勤の医師がおりません。

 また、こういったこともございました。耳の穴から薬剤を注入して難聴を治療する方法について、世界で最初に、日本における埼玉医大の教授が報告をしました。しかし、その後、諸外国ではしきりに検証がされる一方で、日本では保険が通っておらず、薬液も適応外使用となっておりまして、そこで止まっている。これを実証する研究も一千万円はかかるということで、日本耳科学会は高額な研究費のためにこの検証を進めずにおります。当初日本がリードしておりましたが、今や後進国となっております。

 私は、この耳、感覚器の分野につきましても、国立の研究センターをつくって、そこがリードをしてしっかりと進めていく、そして新たな治療法、新たな医療機器の開発を更に後押しをしていく、また、こうした取組の基礎となる全国の難聴者数の把握、また自治体の健診システムを促進をしていく、こういったことが重要になってくると考えております。

 そういう観点から、これからの人生百年時代を見据えて、耳や感覚器に関する国立の研究センターを設置する、そしてこの分野の研究に力を入れていくべきと考えますが、加藤大臣の見解をお伺いいたします。

加藤国務大臣 先ほど、国立高度専門医療研究センターについての、どういう形で、それで今の六つのセンターが設置しているかというのは、事務局の方から答弁をさせていただきました。

 耳を含む感覚器の障害、これは様々な要因や病態があるため、現状では、国立長寿医療研究センターにおいては加齢に伴う感覚障害に対する医療の提供が行われ、また、国立成育医療研究センターにおいては小児の先天性の感覚障害に関する先駆的な医療の提供が行われるなど、それぞれ今あるセンターが、その専門性を生かして、医療の提供が適切に行われているものと考えております。

 今後どうしていくのか。今委員からも御提案がございましたけれども、まずはそれぞれのセンターの特性を生かした医療や研究開発を、しかも連携を図りながら進めていくということが必要ではないかというふうに考えております。

國重分科員 私がここで、分科会でこの難聴の課題を取り上げましたら、私の方からではなくて、いろいろな耳の専門家の方から御連絡をいただくようになりまして、実際の現状を聞きますと、かなり脆弱な状況もあると感じております。すぐには難しいのかもしれませんけれども、私はこれは非常に大事なことだと思っておりますので、是非検討をお願いしたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 私は、六年前、平成二十九年の分科会におきまして、難聴、とりわけ障害に至らない難聴につきまして、お互いがばらばらに対応しているので、こぼれ落ちている難聴対策の課題があること、これらを包括的に扱って、責任感を持って取り組むための役所内の体制整備を是非ともしていただきたい、そのように訴えました。

 これを受けて、縦割りのはざまに落ち込まないよう、課長クラスを構成員とする難聴への対応に関する省内連絡会議が、その年、平成二十九年の七月に設置をされました。同年九月には第一回の会議が行われ、関係部局で現状や課題、円滑な意思疎通を図っていく旨の申合せもなされました。

 まずはこの会議の取組状況についてお伺いいたします。

辺見政府参考人 難聴への対応につきましては、障害福祉施策、母子保健施策、高齢者施策など、様々な側面からの対応が必要とされているところでございます。難聴の方の支援については、省内関係部局で情報共有を行い施策に反映していくことにより難聴への対応を包括的に行える体制を整えることを目的として、平成二十九年に関係課長による連絡会議を設置させていただいたところでございます。

 これまでに構成員を集めました会議は計五回開催し、難聴に関する関係部局の間の円滑な意思疎通を図るとともに、取組等の進捗状況の確認を行ったところでございますが、会議開催の機会に限らず、構成員となっている部局間では、施策を進めるべく連携を図っているところでございます。

 なお、第六回の連絡会議につきましては、令和五年三月中旬の開催を予定しているところでございます。

    〔主査退席、大岡主査代理着席〕

國重分科員 昨年の分科会で、この省内連絡会議について、私は次のような指摘をしました。省内の連絡会議ができて毎年会議は開催しているんだけれども、全体をリードして責任を持って対応できているところがない、関係部局の取組状況が書面で列挙はされていても、単に列挙されているだけで、部局の垣根を越えて、連携をして課題に取り組む姿勢、こういうものが薄いように感じる、単にそれぞれの取組を確認するんじゃなくて、省内の連絡会議を真の意味で垣根を越えて難聴全般の課題や対応策を議論、検討する場にしていく、この省内連絡会議の実効性の向上を図る取組をしていただきたい、このように訴えました。

 これを受けまして、当時の厚生労働大臣であった後藤大臣から、「この会議等も含めて、もっともっとしっかりと実効性の高い政策を推進していくべきだという強い御指摘を受けたわけでございまして、本日の議員の御指摘も踏まえて、しっかりとした取組ができるよう、引き続き、省内で必要な検討も進めながら、この対策を推進してまいりたいと思っております。」こういう答弁をいただきました。

 では、この省内連絡会議において、障害に至らない難聴、これが私はエアポケットになっているんじゃないかということで繰り返し言ってきましたけれども、この障害に至らない難聴全般の課題整理、これはされているんでしょうか。

辺見政府参考人 昨年の分科会におきまして議員からいただきました御指摘を踏まえて、昨年三月に開催をいたしました第五回の省内連絡会議におきまして、省内各部局における障害に至らない難聴に関する取組につきまして、ライフステージなどの軸に応じて整理することによって相互関係を可視化し、その上で課題を共有し、議論を行わせていただいたところでございます。

 引き続き、省内関係部局間で連携して、障害に至らない難聴に関する取組を進めてまいりたいと考えております。

國重分科員 これは大事なことなので、更に確認させていただきたいと思います。済みません、これは通告していませんが、事実確認になりますので。

 聴覚障害では障害担当、また子供の難聴は子供、高齢者は高齢者、それぞれの部局でこれまでは完結していたということであります。その射程から抜け落ちている人たちがいるんだけれども、そこを把握する目、必要性、これが失われていたわけであります。だから、そういった人たちをしっかりと把握をして、また課題をつかんで対策を講じていっていただきたいということで訴えたところ、この省内連絡会議ができたということであります。

 今、課題を共有して議論したということでありますけれども、障害に至らない難聴全般の課題ということ、これは間違いないですか。つまり、子供などに限定したものじゃなくて、障害に至らない難聴を含めた難聴全般の課題について、その検討が抜け落ちることがないように意思疎通を図って議論をしている、これで間違いないかどうか、お伺いします。

辺見政府参考人 省内における連絡会議の設置の趣旨におきまして、難聴への対応を包括的に行える体制を整えることを目的として設置するとしているところでございます。この目的の下、先ほど申し上げましたように、ライフステージに応じた課題の整理等を行っているところでございます。

國重分科員 私、事前のレク、やり取りの中で、この課題整理について文書でまとめているという話を聞きましたけれども、それは間違いないですか。

辺見政府参考人 ライフステージに応じた課題について議論をするために、ライフステージに応じた軸、また、施策の種類、早期発見や予防、実態把握といった施策の軸、こうした軸に応じてマトリックスとして整理をさせていただいているところでございます。その上で、課題の共有、議論を行わせていただいているところでございます。(國重分科員「文書でまとめたのかどうかと」と呼ぶ)会議における資料として作成をしているところでございます。

國重分科員 ありがとうございます。是非またそれを見せていただきたいというふうに思います。私も、変に詰めるとかというつもりは全くないんです。しっかりと進めたいという思いで言っておりますので、またそれも貴重なペーパーになりますので、是非公開もしていただきたいですし、私も見せていただきたいと思います。

 私、加藤厚生労働大臣は、非常に見識の高い、また力のある大臣だというふうに思っております。

 今説明のありました難聴全般の課題の整理、これが私の今指摘したようなとおりにきちんとなされているのか、それとも、やはり部局部局の縦割りの弊害によって穴のあるものなのか、難聴全般の対策、取組がしっかりと進められる予定になっているのか、是非御確認をしていただきたいというふうに思います。

 その上で、仮に足らざるところがあれば、省内連絡会議に対して大臣から的確な指示をしていただく、あるいは、やはりその会議のレベルでは難聴全般に対応できない、それぞれの部局が手いっぱいになってなかなかそこまでできていないというのであれば、障害に至らない難聴について所管する部署を新たに設ける、責任者をつける、こういったことも含めた真摯な御検討、これをしていただきたいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 委員からいろいろと叱咤激励をいただきながら、省内においても、障害に至らない難聴を含めた難聴対策をいろいろ進めさせていただいていることに改めて感謝を申し上げたいと思います。

 今、省内で、各部局ののりを越えて、それぞれが集まって対策を協議していくということでございますので、私の方も、先ほど申し上げた問題意識を従前から持っておりましたので、しっかりチェックをさせていただいて、前回後藤大臣も言われた、より実効性の高いものを、しかも具体的に実施していけるように努力をしていきたいと思っています。

國重分科員 大臣、是非よろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

大岡主査代理 これにて國重徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉田裕彦君。

泉田分科員 自由民主党の泉田裕彦です。

 加藤大臣、本日は、長時間の審議、お疲れさまです。あと二人となりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、まず、日本の未来を支える産業、これをどう守っていくのかという観点で質問を始めさせていただきたいと思います。

 日本は、御存じのとおり、資源もエネルギーもない国です。それにもかかわらず、経済大国として世界で重要な地位を占めてまいりました。これはやはり、科学技術立国として、原材料、これを輸入して、市場が求める製品を供給してきたということ、これが原動力であったと理解をいたしております。

 しかしながら、歴史をたどってみますと、繊維が競争力を失い、家電が国外生産を進め、国内は空洞化してしまいました。また、半導体はその生産シェアを急落をさせ、さらに、太陽電池生産も、事実上、新興国へ移転をしてしまったという状況であります。貿易で日本が稼げる産業というのは、事実上、自動車一本になっちゃっているんじゃないかなという状況だと思います。それも、各国の利害関係が絡んで、EV化を進めるという中で、日本の自動車産業は不安定な状況になりかねないということだと思います。

 そこで、日本の創薬力、これを見てみますと、やはり世界有数でありました。かつて、日本の創薬力は世界第二位ということも言われたわけですが、近年、この創薬力が大きく低下をしてきていると危機感を持っております。

 世界の医薬品市場、二〇二一年は一兆四千二百四十億ドル、為替で計算して約二百兆円という規模です。この市場を取っていかなければ日本の次の世代はどうやって食っていくんだろうという問題意識を持っております。

 ところが、トレンドを見てみますと、この五年間で世界の市場は一・三倍、年平均で約五・一%の成長をしました。ところが、日本市場の成長率、この間、年マイナス〇・五%ということになっています。

 この結果、日本から創薬研究が海外へ抜けていく、日本からの創薬研究の撤退が続いております。さらに、全米製薬工業会の会長が何と武田薬品になってしまうという事態が生じているわけです。日本の創薬の空洞化が進展しているということを言わざるを得ません。典型的に、象徴となっているのが、やはり新型コロナワクチンの開発ができなかったということにあるのではないかなと思います。

 そこで、厚生労働省にお伺いをしたいと思います。

 高齢化の進展、そしてまた医療の高度化、こういったこともありまして、諸外国では医薬品市場が拡大を続けております。我が国においても高齢化、それから医療の高度化は進んでいるんですけれども、我が国だけが、諸国の中で我が国だけが医薬品市場が縮小をしているという状況になっています。その原因についての認識をお伺いしたいと思います。

城政府参考人 委員御指摘のように、調査会社による将来予測におきましては、諸外国の市場成長率が約五%前後の増加であるのに対しまして、我が国はマイナス二%から一%増の範囲にとどまるという推計がございます。

 この推計の前提を承知していないために、我が国の成長率が諸外国と異なる原因について一概にお答えすることは困難ではありますが、一般に、この差につきましては、各国の人口の増減を含む人口動態、使用される薬剤のトレンド、また薬価を含む医療保険制度など、様々な要因により生ずるものと考えてございます。

 我々といたしましては、このような将来予測もあるということをしっかりと受け止めて、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会の議論も踏まえまして、必要な取組を検討してまいりたいと考えております。

泉田分科員 ありがとうございました。

 様々な要因があるという中で、そのとおりだと思います。そして、薬価改定についても言及をいただきました。

 企業経営の中でどういうことが言われているかというと、成長が期待できない市場で、マザーファクトリー、一番世界で中心となる工場を造れるのかというと、やはり生産したマザー工場で採算が取れなければ投資ができないというようなことが言われております。

 そしてまた、日本市場は度々薬価改定が行われておりまして、経営予測ができないと。諸外国でいえば、特許期間中は薬価を下げないということができるのに、日本は売れると価格が下げられるということで、江戸時代でいうと、百姓生かさず殺さず政策に近いんじゃないかと。利益が出れば利益を取る、でも潰れそうになると少し上げてあげるというような市場に経営者は投資をしたくなるかどうかということなんだと思います。企業経営の観点からは、そういうことを言われてもしようがないなと思っているわけです。

 そこで、加藤大臣にお伺いをしたいんですけれども、現在の日本の医薬品市場は諸外国と比較して製薬企業にとって魅力を感じる市場なのか。魅力を感じる市場にするためには一体何をすればいいのか。これが創薬力を回復をする力になると思うんですが、創薬力を回復をするために何が必要と感じておられるか、お伺いしたいと思います。

 あわせて、産業政策を担当する経済産業省の認識も伺いたいと思います。

加藤国務大臣 やはり今、我が国の医薬品を取り巻く環境、いわゆるドラッグラグ、さらにはドラッグロス、これがかなり広がってきているということも指摘をされているわけであります。

 やはり、よりよい医療品をより早く国民に届けていくということ、また、あわせて、今委員から指摘がありましたように、我が国の成長を図っていくという意味においても、今、医薬品は輸入超でありますから、しっかりとした創薬力は少なくともあると私は確信しておりますから、それを活用して輸出を広げ、そしてさらには成長を促す、このことが非常に大事だというふうに考えております。

 今お話がありました薬価制度については、今、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会議でも議論をいただいておりますけれども、例えば、革新的医薬品の国内への迅速な導入を促進するため、企業における予見性の向上を図る観点から、今、新薬創出等加算が設けられております。あるいは、市場拡大再算定という制度もあります。そうした制度の在り方、また運用そのものについても御議論いただいているところであります。

 また、創薬力を強化していくという意味においては、一昨年に策定した医薬品産業ビジョン二〇二一において、革新的創薬を一つの柱として位置づけました。創薬ベンチャー企業に対する研究開発から実用化までの総合的な支援を行っていくこと、また、臨床研究中核病院などの治験環境の整備等により、製薬業界とも緊密に連携をしつつ、取組を強力に進めていくということもさせていただいているところでございます。

 こうした薬価におけるその在り方の議論、他方で創薬力を強化していく、こうした方面にわたって、厚労省だけではなくて、この後、経産省からも御答弁させていただきますけれども、政府、よく連携して、冒頭に申し上げた目的に向かって努力をしていきたいと考えております。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 経済産業省におきましては、ワクチン開発・生産体制強化戦略、これに基づきまして、我が国の創薬力の強化に向けた必要な取組を進めております。具体的には、製造拠点の整備、ベンチャー支援でございます。

 製造拠点の整備につきましては、平時にはバイオ医薬品を製造し、感染症有事には政府の要請でワクチンの製造を行うために必要な製造拠点などの整備、ベンチャー支援につきましては、国が認定したベンチャーキャピタルが出資する創薬ベンチャー、これを対象とした実用化開発支援などに取り組んでおります。

 経済産業省としまして、我が国創薬力の強化に向けて、厚生労働省とも連携しながら、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

泉田分科員 大臣、ありがとうございました。

 是非とも、次の世代が安心できるような日本をつくるためにお力を発揮していただければと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 今お話しいただきましたとおり、薬価の在り方も含めて検討していただけるというふうに受け止めました。海外と競争していくために、マザーファクトリー、基幹となる工場、これを持ってくるために、研究開発拠点を持ってくるために、市場が成長しなければ他国に行きますよと言っているということを是非念頭に置いて政策を進めていただけますよう、何とぞお願いを申し上げたいと思います。

 それで、薬価が何で下がるのというところなんですけれども、薬価基準について少しお伺いをしたいと思います。

 薬価基準とは何かといえば、御承知のとおり、医療保険が医療機関や薬局に支払う保険薬の価格です。別な言葉で言えば、要は、患者さんにお売りする、患者さんが払う自己負担分と保険金を合わせて薬価ということです。つまり小売価格なんですよね、この薬価というのは。ところが、今の薬価調査、何を調べているかというと、薬局に納入する価格、医療機関に納入する価格を調べている。これは何なのか。別な言葉で言うと、卸売価格を調べている。今の薬価の引下げ、薬価差というのは、小売価格と卸売価格を調べて、卸売価格が低いじゃないの、だから薬価を下げましょうということになっているわけです。

 でも、薬局にしても医療機関にしても、薬を受け取ったら、それを管理する薬剤師さんを雇い、そして場所を取って調剤をするという作業、ここに費用が発生してくるわけです。ここの部分を考慮をしないで、それで薬価を引下げすれば、しわ寄せは製薬企業に行く、それから製薬の卸、それから薬剤師さんに行く、こういうことになっているわけです。

 したがって、日本がちゃんとした創薬力、競争力を取り戻すためには今のままでいいのかと、これは極めて疑問であります。

 無論、薬価改定を進めるに当たって、一定の基準に応じて管理費用を保険から給付しているということは承知していますが、これは実態に合っていない。だから、その部分を薬価差で取って、病院経営とそれから薬局経営をしなければいけないという構図になっているんじゃないか。薬価調査の在り方というのも見直すべきではないかなというふうに思っています。

 薬価の引下げを行うと何が起きるのか。無論、在庫を保有している医療機関、薬局、薬品卸は評価損を被るということになります。この評価損はどうやってペイオフされているのかといえば、製薬企業からのリベートで穴埋めをされるという構図になっています。

 かつて、通産省でこういった似たような例というのがありました。例えば石油業界がそうだったんですけれども、激しい小売競争の中で、スタンドが先に値下げをして、そして、経営がやっていけないからといって、系列のスタンドを守るために石油元売が補填をする、それで赤字体質という、そういう時期もあったわけであります。

 似たような構図が製薬の流通の過程で発生しているのではないか。よって、薬品流通の現場から悲鳴のような声が聞こえてくるということだと思っています。

 私は地方で災害対策本部長を何度も経験をしました。その中で、薬品流通というのは極めて重要。患者さんの命を守るために、災害であろうと何であろうと医薬品を届けなければいけない。ここを、システムを壊してしまうということはあってはならぬということだと思っています。

 是非とも、薬品流通も含めて守るような薬価制度、それから薬価調査はどうあるべきなのかというところにも踏み込んで調査を進めていただきたいと思います。

 そこで、厚労省にお伺いしたいんですが、薬価改定が抱える問題というのは放置できないレベルまで来ているというふうに認識をいたしておりますが、薬価制度について、政府の設置した有識者会議で現在どのような議論が行われているのか、お伺いをしたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省で開催しております医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会でございますが、これまで、革新的な医薬品の迅速な導入に向けた薬価制度、環境整備の課題、また、先発企業のビジネスモデル上の課題等についての御議論をいただいてきたところでございます。

 議員御指摘いただきました、いわゆる薬価差の問題等につきましては、今後の検討会におきまして、薬価差が生ずる構造を踏まえ、医薬品の取引条件や取引形態の違いや医薬品流通及び医療機関等の経営への影響を考慮しつつ、薬価改定の在り方についてどのように考えるか等の論点について御議論いただく予定といたしております。

泉田分科員 ありがとうございました。

 これまでの積み重ねで、大変精緻な議論をしていただいているというふうに思っております。

 一方で、こんな声もあるんです。

 新薬創出加算等々、制度をつくってもらいました。そこは上がるんだけれども、上げると別なところが削られる。結果としてゼロサムになって、企業経営には全然プラスになっていない。

 それはそうですよね。医薬品の市場というのがマイナス〇・五%ということになっている以上、いろいろな中身ではいじっていてでも、総体、全体で見ると経営のプラスにならない。果たしてそんなところに投資をしてもらえるのかという観点があると思います。

 是非とも、企業経営がどうなっているのかというところ、諸外国と比べて日本に投資をする気持ちになれるのかどうかという観点での議論もしていただけるよう、お願いを申し上げたいと思います。

 新薬創出加算、これは大臣からも言及をいただきましたが、無論、それ自体は一つの対策ということだと思うんですけれども、諸外国を見ると極めてシンプルです。特許期間中は薬価が下がらない、原則下がらないということです。日本は、先ほども申し上げましたけれども、予定数量よりも数が売れると特許期間中でも値段を下げる。これはやはり投資はしにくいんじゃないかなと。諸外国は、合理的で、国民の健康維持を担うための新薬創出、こういったところにも制度的に寄与しているんじゃないかなというふうに思います。是非とも、有用な医薬品が日本でも研究開発してもらえるような仕組みをつくっていただきたいと思います。

 そこで、本田政務官に来ていただきました。製薬メーカーの経営者、これは、薬価が安定して収益を見込める市場と、薬価が定期的に、それから時々予測不可能な形で引き下げられ収益見通しが立てにくい市場があったら、どちらを重視すると考えられるか、厚生労働省としての認識をお伺いしたいと思います。

本田大臣政務官 泉田委員にお答え申し上げます。

 製薬企業にとっては、イノベーションが評価をされ、革新的新薬の開発に向けた投資回収の見込みが立つなど、予見可能性の高い市場を望む声があると承知をしております。

 しかしながら、常に議論となりますところですけれども、国民皆保険の理念の下、医療保険制度の持続可能性の確保も大変重要な課題でございます。

 今後、薬価の制度につきましては、こうした認識に基づき、イノベーションの推進と国民皆保険の持続性を両立していくことができるよう、関係者の皆様の意見も十分に聞きながら、その在り方を検討していくことが重要であると考えております。

泉田分科員 答弁ありがとうございました。

 いろいろお感じになる部分はあると思いますけれども、答弁は答弁として受け止めさせていただきたいと思います。

 今現在どうするかという課題と、十年後、二十年後、本当に日本の国民は安心して薬品の供給を受けていることができるんだろうかという観点も必要だと思いますので、省内に戻ったら是非、積極的な議論を展開していただけますよう、お願いを申し上げたいと思います。

 次に、ドラッグラグについてお伺いしたいと思います。

 ここ数年来、国内未承認薬が増加を続けております。別な言葉で言うと、海外に行けば処方してもらえる薬が日本で処方してもらえないという状況が出てきているわけです。

 これは、厚生労働省が審査が厳しいので時間がかかっているから遅れているんです、そういうドラッグラグではなくて、やはり今、大部分は、申請する方がためらう、すなわち、日本市場に薬品を投入をするためには手続を取らないといけない、開発ラグと言われていますけれども、こちらの方の問題が多い。すなわち、日本市場に手間をかけて参入してもリターンが得られる魅力がないから日本の薬事当局には申請しないという状況になっている。これは相当危機的な状況ではないかなというふうに思っています。

 申請したんだけれども認可が遅れているというのであれば、厚労省、頑張ってくださいで終わるんですが、そうじゃなくて、そもそも薬品を作っている方が申請したいと思わないという状況になっている開発ラグ、これはやはり何とかしないといかぬのではないかなと。このような状況が続くのであれば、日本国民は有用な薬の処方を受けられないということになりかねない。

 私、かつて貿易局にいた頃に、基準・認証等改善対策室にも所属していたんですが、相互認証制度というのがあるんです。特定の国と相互認証を結んで、例えば、アメリカでオーケー、ヨーロッパでオーケーになったら日本の当局も自動的に認める。それは、遺伝子とか違いがあるのでそのままストレートにできないという言い分も当然あるんですけれども、余りにもドラッグラグが大きくなり過ぎるのであれば相互認証も入れないといけないのではないかなと。

 若しくは、日本市場が魅力が出るような形で、まあ持続可能な国民皆保険制度も大事ですけれども、将来の日本人が最先端の医療が受けられるような形で、製薬、薬品の部分とそれ以外の保険というのは分離をするという辺りまで踏み込んで考える必要があるんじゃないかなということも感じております。

 いずれにせよ、新薬の承認申請をしてもらえるような環境整備を進めていかなければいけないのではないかというふうに思っています。

 そこで、厚労省にお伺いします。

 ドラッグラグは解消すべきだと思っていますけれども、今後の対応についてお聞かせください。

八神政府参考人 ドラッグラグにつきましてお尋ねをいただきました。

 ドラッグラグにつきましては、今委員御指摘のように、審査ラグと開発ラグがございます。

 審査ラグにつきましては、これまで、審査ラグゼロを実現をするために、規制の国際調和ですとか、PMDAの体制強化等に取り組んできたところでございます。現在では、ほぼ解消しております。

 一方、もう一つの開発ラグでございます。

 先ほど委員御指摘ございましたように、近年、欧米では承認をされているが国内では未承認の医薬品が増加傾向でございます。そのうち一定数は国内での開発情報がないといった指摘があるということを承知しております。

 国内で未承認薬となっている革新的医薬品の迅速な導入ということにつきましては、先ほど来出ておりますが、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会、この論点としても提示をして議論を行っているところでございます。

 この検討会におきましては、薬価制度の問題に加えて、そういった課題に加えまして、例えば、希少疾病用医薬品における日本人症例の必要性であったり、承認申請における言語、日本語の問題といったこと、薬事制度に関する課題についても御指摘をいただいております。

 取りまとめに向けて引き続き議論してまいりたい、このように考えております。

泉田分科員 ありがとうございました。

 是非とも、このドラッグラグを解消するために全力を挙げていただきたいと思います。

 今御説明いただいた範囲だと、五年たってどうなっているかなと若干心配なところもあります。本当に、国内での承認とか、それから魅力ある市場がつくれないのであれば、いや、つくってほしいんですけれども、相互承認も考えていただきたいなと。多分、今議論を、そういうのはされていないと思いますので、日本国内で日本国民が最先端の医療を受けられるような形を考えていただきたい。

 例えば、日本人が海外に行く、アメリカに住んでいる、私の娘もアメリカにいますけれども、そこで病気になったら、アメリカで承認した薬はオーケーなわけです。なぜ日本で駄目なのと言われたときに、答えられないんじゃないかなと思いますので、是非とも幅広い視野で検討を進めていただくよう、お願いを申し上げます。

 次に、経済安全保障との関係についてお伺いをしたいと思います。薬の、薬品の有効成分である原薬、これについて伺いたいと思います。

 以前は日本国内で製造していたわけですが、薬価の引下げが続くということで、価格競争に陥って、原薬の製造を新興国、コストの安い新興国に移してしまった。日本が教えたわけですよ、どういうふうに作ればいいかと。ところが、ボリュームゾーンが、はるかに新興国の方が大きい。今となっては、日本に持ち帰るとコスト的に合わないというような状況になっているわけです。人口の多い新興国で生産すれば安くできるものを、かといって、いざというときに備えて日本国内で作らないわけにいかない、日本国内に持ってきましょうということをやっていますが、コストアップになるわけです、必ず、人口比がありますから。とすると、国民の生命、健康に関わる薬品の原液、国内製造できるのかということになるわけです。

 そこで、厚労省にお伺いしたいんですが、経済保障の確保、これも重要な課題だと思っています。原薬生産を国内で進めた場合、割高になりますけれども、その場合の薬品の薬価をどのように考えていくのか、見通しがあったらお知らせいただきたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 経済安全保障上、早急に安定供給確保のための措置を講ずる必要がある抗菌薬の原薬が国産化された場合、これらの原薬には国内での製造コストが上乗せされて、海外産の原薬よりも高額になるということは想定されるところでございます。

 このために、厚生労働省では、国産化に当たって、事業者負担の大きい設備投資等に対しまして、令和二年度から、海外依存度が高い抗菌薬の国産化の取組について技術検討の段階から支援するとともに、令和四年度第二次補正予算におきましても、商用生産段階に必要な費用を盛り込んだところでございます。こうした製造コストは一定程度軽減するというふうに見込んでおります。

 その上で、現時点で、この抗菌薬を国産化した場合の支援措置をどうするか、どのように講じていくかについて一概にお答えすることは困難ではございますが、御懸念の点も踏まえまして、こうした課題の解決に向けて更に検討を進めてまいりたいと考えております。

泉田分科員 ありがとうございます。

 今に生きる我々が、是非、次の世代に財産を残せるように頑張ってください。

 最後の質問とさせていただきたいと思います。

 今、医療の世界は様変わり、世界から、残念ながら、ゲノム医療、個別化医療といいますが、一人一人に合った医療を提供する体制というのができるようになってきたという中で、残念ながら、欧米さらには中国に我が国は後れを取っているんではないかという懸念を持っております。

 全ゲノム解析を含めて、ゲノム医療を促進をさせていくということは喫緊の課題ではないかなというふうに考えています。それにもかかわらず周回遅れになった原因の一つ、これは何なのかというと、一つは、やはり研究開発環境の違いということではないかなというふうに思います。

 我が国では、やはり個人情報保護というところに相当重きがある。結果として、医療機関、患者さんに説明して同意を取るというところに物すごくエネルギーを割いているという状況になっています。さらには、研究開発をするのに、検体に製薬メーカーがたどり着けないというような形で、がちがちに縛っている。

 欧米はどうしているかといいますと、基本的には、本人同意を取るという形でやっています。代わりに、日本は情報が出ないように匿名加工をする、仮名加工するという方向に進んでいるんですけれども、世の中は基本的に善人であること、使える人を限定をして、そして本人の同意を取って、検体にもアクセスをできて、医療をできるようにする、その代わりに、差別に使っちゃいけませんよという禁止法を持っているわけです。

 この国会において、包括同意を取った上で検体にもアクセスできるように本当はしてほしいんですけれども、今国会で提出される予定の基盤法の改正、残念ながら、仮名加工ということで、情報が出ないようにするという発想でやっているわけです。出ないようにするのが前提だけれども、万が一に出たらそれを禁止するというところも必要ではないかなと。

 無論必要です、基盤法の改正も。必要なんだけれども、それプラスアルファにして、先に進んでいる先進国に追いつかなければいけないということだと思いますので、是非ともこの差別禁止法も必要ではないかと考えますが、認識をお伺いをしたいと思います。

城政府参考人 御指摘いただきましたように、次世代医療基盤法につきましては、患者等の医療情報を、本人通知の上で、個人を識別できないように匿名加工して、医療分野の研究開発に利活用するという仕組みでございます。

 個人を識別できないように加工することが前提でございますので、個人情報保護法で個人識別符号とされておりますゲノム情報を利活用することはなかなか難しいというところでございます。

 一方で、電子カルテデータ、CTの画像など、ゲノム情報以外の医療情報の更なる利活用の促進に対する期待も大きいと理解しておりますので、しっかりと必要な見直しを行ってまいりたいと考えております。

 また、ゲノム医療を国民に還元するという観点からは、AMED、日本医療研究開発機構におきまして、データの民間企業による利用も可能とする共通的な同意事項について、今、整理を進めていると承知をいたしております。

 さらに、ゲノム情報の取扱いや御指摘の不当な差別が行われることのないようにすること等に係る法整備につきましては、現在、超党派での御議論が進んでいると承知をいたしております。こうした議論を踏まえまして、必要な対応を検討していきたいと考えております。

泉田分科員 加藤大臣の下で頑張っていただけることをお願いして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

大岡主査代理 これにて泉田裕彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、勝目康君。

勝目分科員 自由民主党、京都一区の勝目康でございます。

 本日は、予算委員会第五分科会で質問の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。

 本日のラストバッターでございます。加藤大臣始め、皆様お疲れのところと思いますけれども、あと一こま、是非、前向きな御答弁を賜れるようによろしくお願いを申し上げたいと思います。

 それでは、早速質問に入りたいと思います。

 まず、かかりつけ医機能の制度化についてお伺いをしたいというふうに思います。

 去る二月十日に、全世代型社会保障改革法案が閣議決定をされました。非常に多岐にわたる内容でありますけれども、この中に、かかりつけ医機能の制度化といったものが盛り込まれたところであります。

 かかりつけ医制度につきましては、昨年五月の財政審の建議におきまして、かかりつけ医の認定とか、あるいは患者の事前登録とか、こういったことがうたわれまして、現場に非常に大変な不安が広がったというところであります。

 今回の法案において、かかりつけ医機能の制度化がされたわけですけれども、これが春の建議の内容とどういった点が異なるのか。これはまさに、かかりつけ医の制度化なのか、かかりつけ医機能の制度化なのか、そういうことなんだろうと思いますけれども、この辺り、ここを教えていただきたいと思います。そしてまた、かかりつけ医機能そのものは、今後の地域医療におきまして強化すべき機能であるというふうに考えますけれども、どういう方向性というものを志向していくのか、大臣、是非そこを教えていただきたいと思います。

加藤国務大臣 今、勝目委員よりお話がありました、昨年五月、財政制度審議会の建議では、かかりつけ医機能の要件を法制化、明確化し、こうした要件を備えた医療機関をかかりつけ医として認定する制度を設けること、また、患者、国民に対して受診を希望するかかりつけ医の事前登録を促す仕組みを導入することなどについて言及をされているところであります。

 政府においては、国民、患者目線に立って、必要なときに迅速に必要な医療を受けられるフリーアクセス、この考え方の下で、地域のそれぞれの医療機関が、地域の実情に応じて、その機能や専門性に応じて連携しつつ、かかりつけ医機能を発揮するよう促すことが重要だというふうに考えております。

 こうした観点から、国民そして患者がそのニーズに応じてかかりつけ医機能を有する医療機関を適切に選択できるよう情報提供を強化すること、また、医療機関に対してその機能の報告を求め、都道府県がその体制を有することを確認、公表し、これらを踏まえて地域の関係者との協議の場で必要な機能を確保する具体的な方策を検討し、またその内容を公表すること、こうした内容の医療法の改正案を今国会に提出したところでございます。

 したがって、今申し上げたように、今回の法案には、かかりつけ医として認定する制度や、かかりつけ医の事前登録、こういったものは盛り込まれておりません。

 今後、国会で御審議をいただき、法案が成立すれば、今申し上げた考え方にのっとって制度整備を着実に進めていきたいと考えております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 詳細は、今ほど大臣がおっしゃったように、法案審議の中で詰めた議論をやっていくということであると思いますけれども、まさに今ほど大臣がおっしゃった確認といったものの法的性質、これは事実上、認定と同じじゃないか、こういう不安もいっときあったわけでありますけれども、そこはそうじゃないんだというようなこともあったかと思います。この辺り含めて、詰めた議論を法案審議でやっていきたいというふうに思います。

 これからの高齢社会にあって、質の高い地域医療を低廉でそして安定的かつ持続的に提供していくということ、これはみんなの願いであると思いますので、医療現場が引き続き高いモチベーションを持って取り組めるように、是非、制度の設計と運用、よろしくお願いしたいというふうに思います。

 それでは、続きまして、マイナンバーカードの保険証利用についてお伺いをしたいと思います。

 先週の金曜日に、検討会の中間取りまとめが示されたところであります。現行の保険証を廃止するということが先に、前面に出過ぎたために、大変な懸念と不安といったものを呼んでしまったということがありましたけれども、このマイナンバーカードの利用というのは非常にメリットも大きいという中で、御理解をしっかりいただくというのは本当に大事なことであると思います。

 この検討会中間取りまとめの中で、マイナンバーカードを保有していない方に対しては、資格確認書を交付するということが盛り込まれました。しかも無償でということであります。これは適切な判断だと思います。大臣、どうも交渉お疲れさまでした。ありがとうございました。

 そして、他方で、医療機関の側につきましては、オンラインによる資格確認を行う、この体制を取ることがこの四月に義務化をされているということであります。高齢のお医者さんの中には、それやったらもう続けられへんなというようなことをおっしゃる方もおられるわけでありますけれども、こうしたことが起こらないようにするために、どのような策を講じられるのか、お聞かせください。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 オンライン資格確認につきましては、今先生から御紹介いただきましたように、昨年八月の中医協の答申に基づきまして、本年四月から全国の保険医療機関、薬局での導入を原則義務化といたしました。

 こうした中で、高齢のお医者さんとかがすぐに導入が困難ではないか、こういう御指摘もありまして、昨年十二月の中医協におきましては、地域医療に支障が生じるなどやむを得ない場合の必要な対応として、高齢の医師等がレセプト取扱件数が少ない場合なども含めましてやむを得ない事情がある場合につきましては、導入義務の経過措置を設けるとともに、導入支援のための財政措置の期限も延長いたしました。こうした配慮措置を行っております。

 それから、療養担当規則、これは四月以降しっかりと義務化されておるわけですけれども、ここについても御議論がございますが、この違反につきましては保険医療機関等の指定の取消しとなり得るわけですけれども、違反している場合におきましても、直ちに保険医療機関等の指定取消しとなるものではなく、まずは地方厚生局による懇切丁寧な指導などが行われることとなり、具体的には個別事案ごとに適宜判断していく、こういう対応を考えております。

 いずれにしましても、医療DXの基盤となるオンライン資格確認の様々なメリットを患者、国民の皆様に少しでも早く実感していただけるよう、医療現場の皆様や、さらに、そこに入ってシステム改修を行う事業者の皆さんに御理解いただきまして、円滑な導入に努めてまいりたいと考えております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 柔軟な対応をしていただけるということであります。何せこのマイナンバーカードの保険証利用の今おっしゃったような大きなメリットをしっかりと円滑に実装していくためにも、無用にハードランディングをして反発を招くということがないように御配慮をお願いしたいというふうに思います。

 それから、保険証にいわば隣接するものとして、各自治体が行っております子供の医療費助成であるとか、あるいは国の場合は難病の公費助成、国、自治体共に公費による医療費の助成があるわけであります。これらは現在は紙による受給者証で管理をしているわけでありますけれども、患者目線としては、こういうのも含めてマイナンバーカード一枚で完結したらより利便性が増すという面もあるんじゃないかなというふうに思いますけれども、対応方針をお聞かせください。

岸本政府参考人 お答えいたします。

 公費負担医療の受給者証とマイナンバーカードの一体化を求める当事者などからの御意見を承知をしておりまして、それにより国民や医療現場にとってのメリットの実感が大きくなるものであるというふうに考えております。

 また、二月十七日に公表されましたマイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会における中間取りまとめにおきましても、マイナンバーカードにおけるオンライン資格確認は、今後の医療DXの基盤となる仕組みであり、将来的には、診察券や公費負担医療の受給者証もマイナンバーカードと一体化していくことにより、ますます国民や医療現場にとってのメリットの実感が大きくなると考えられるといったことが指摘をされているところでございます。

 デジタル庁とも連携をいたしまして、医療DXの取組の中で、公費負担医療の受給者証とマイナンバーカードの一体化の実現を図ってまいりたいと考えております。

 また、他方で、小児医療証など、地方自治体が単独で実施をされております医療給付事業の医療証等につきましては、自治体それぞれ実施をされているものでございますので、直ちに一体化することは難しい側面もございますが、まずはどのような課題があるかを整理をしてまいりたいと考えております。

勝目分科員 どうもありがとうございます。

 診察券についても、その検討の対象に入っておるということであります。

 子供医療費助成に関しては確かに自治体の独自事務であるんですけれども、ただ、ほとんどの市町村がもう実施をしているという、事実上、共通的な事務にもなっている、もちろん、内容が全然違いますけれども。そうした中で、まさに子育て環境を整えていくという観点からも是非検討していただければというふうに思います。これは医療DXでの御検討ということですので、党の方でもしっかりもんでいきたいというふうに思っております。

 続きまして、医薬品の関係を御質問させていただきたいと思います。

 今ほど泉田委員の方からこれ一本勝負で三十分聞かれたことを一問だけ総括的にお伺いをするような形になりますけれども、現在、日本の医薬品というのは、コロナへの対応というのが要因としては大きいんだろうと思いますけれども、四・六兆円の輸入超過ということ、いわば貿易赤字になっている、こういう話であります。ちなみに、デジタル分野についても四・七兆円の赤字だというふうに伺っておりまして、まさに、これからの成長分野二つで国富がどんどん流出している、十兆円近く流出している、こういう状況でありまして、ここを何とかしないといけないという危機感を持っております。

 この間、創薬力の低下とともに、日本の医薬品市場としての魅力が下がってきている、そして、上市される医薬品の内外の格差、いわゆるドラッグラグといったものも拡大が指摘をされてきているというふうに承知をしています。また、薬価の毎年改定ということもあって、まさに医薬品業界がデフレ産業化しているんじゃないか、ジェネリック医薬品の供給も滞りつつあるんじゃないか、こういうことであります。供給を担う卸であるとかあるいは地域の薬剤師、まさに医薬品産業のエコシステム全体に負荷が今かかっている状況だと思いますし、また、原薬の特定国への依存といったところも課題であるというふうに思います。

 これらの課題に対して、厚労省さんとしてどういう問題意識を持って、どう対応していこうとされているのか、教えてください。

    〔大岡主査代理退席、主査着席〕

城政府参考人 お答え申し上げます。

 創薬力の強化、また医薬品の安定供給という観点での御質問をいただいたと認識しております。

 まず、創薬力の強化でございますが、創薬技術が高度化していく中におきまして、革新的創薬については、世界的にも特定領域に特化した技術を有するベンチャー企業の存在感が増しているところでございます。我が国においても、創薬力の強化のためには、ベンチャー企業の支援といったものが重要だと考えております。

 このために、政府としては、スタートアップを対象とした相談窓口、MEDISOを設置して研究開発から実用化に至るまでの総合的な支援を提供すること、また、経済産業省の創薬ベンチャーエコシステム強化事業におきまして創薬ベンチャーに対する資金援助を行うこと等により、成功事例の創出に向けた支援を行っているところでございます。

 また、医薬品の安定供給につきましては、大きく分けまして、重要な医薬品のサプライチェーンの強靱化を図ります経済安全保障上の問題、それから、後発医薬品メーカーの薬機法違反を契機とした供給量の低下、新型コロナウイルス感染拡大による需要の増加による供給不足の問題、こういったものがあると認識をいたしております。

 経済安全保障の観点からは、経済安全保障推進法の枠組みにおきまして、抗菌性物質製剤を特定重要物資に指定をいたしまして、安定供給に向けた取組を進めております。また、このほか、外部依存性が高くなっている医薬品に係る備蓄などの取組についても、支援をしているところでございます。

 また、後発医薬品を中心とした供給不足につきましては、医薬品卸売の事業者様方や薬局の皆様方の通常業務にも支障が及んでいる状況であると認識をいたしております。

 業界団体を通じまして、後発品を含む全ての医薬品につきまして、欠品が生じたものやその代替品について供給状況を把握をした上で、供給量が十分な製品については製薬企業に対しまして限定出荷の解除を求めるといったことを行いますとともに、医療関係者に対しましては、これらの製品の供給状況を取りまとめて公表して、安定供給に取り組んできたところでございます。

 こうした創薬力の強化、それから医薬品の安定供給につきまして、現在、医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会において御議論をいただいているところでございます。この取りまとめを踏まえて検討を進めてまいりたいと考えております。

勝目分科員 どうもありがとうございます。

 非常に包括的な問いでありますので、お答えいただきましてありがとうございます。

 まさに、研究開発の体制から、それをいかに産業化につないでいくか、薬事の規制の問題、薬価の水準の問題、市場としての魅力の問題、そして経済安全保障の問題。私は、この医薬品の話は、医療安全保障と一つの分野として打ち立てて、それほどの危機感で取り組んでいかないといけないと思っておりますけれども、そういう総合的な、そしてまた縦串を刺すような戦略的な取組が必要だというふうに思っております。有識者の検討会と並行して、党の方でもいろいろ、PTであるとか議連であるとか、また議論を積み重ねていきたいというふうに思っておりますので、共に取り組みたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

 続きまして、同じ薬機法の観点でありますけれども、プログラム医療機器についてお伺いをしたいというふうに思います。

 デジタル技術の発展に合わせまして、プログラム医療機器の開発導入、こういったものを適切に促していって、そして、医療の効率化あるいは高度化といったものに資する仕組みの構築というのが求められているというふうに考えております。

 この間、厚生労働省さんとしても、事業者の皆さんの声を聞かれながら、例えばソフトウェアのアップデートに係る事前届出制度であるとか、そういう様々な見直しに取り組んでこられたものと承知をしております。

 このプログラム医療機器に関して、さらに、その導入促進といったものに向けて、薬機法上の手続、あるいは診療報酬上の取扱いも含めまして、どのように対応していかれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 特に、安全性の面が必ずしも高くはない、低いわけでありますし、また逆に、治療効果に必ずしもつながらなくても、診断支援といった形で効率化に資する、そういう特性もあると思います。そういった辺りを踏まえてお聞かせいただければと思います。

八神政府参考人 プログラム医療機器の導入、早期実装に関してお尋ねをいただきました。

 まず、プログラム医療機器の薬事承認制度についてですけれども、業界団体からお話を伺っておりますと、一定の性能や有効性が確保されていることをもって第一段階目の承認、これを行い、社会に実装しながら臨床的な有用性を確立した後に第二段階目の承認を行うというような、段階的な薬事承認の仕組みというものが活用できないかというような御要望があるというふうに承知をしております。

 厚生労働省としましては、どのような段階的承認の仕組みが可能かということで、プログラム医療機器の特性を踏まえた薬事承認制度の運用改善検討事業、これを立ち上げまして、具体的な事例に基づいて検討しておるところでございます。

 また、プログラム医療機器の診療報酬上の対応ということにつきましては、令和四年度の診療報酬改定におきまして、プログラム医療機器を使用した場合の評価の位置づけを明確化をしたところでございます。

 柔軟な保険収載等を求める業界の要望もございます。こうした中で、今般新たに、中央社会保険医療協議会の下に、プログラム医療機器等の評価の在り方等に係る検討を行うためのワーキンググループ、これを設置をすることといたしました。今後、プログラム医療機器の特性に応じた評価の在り方につきまして、令和六年度改定に向けて、業界団体の意見も伺いながら検討することといたしております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 令和六年改定は、医師の働き方改革も踏まえ、また薬価の方も随分議論があります。そうした中で、このプログラム医療機器につきましても、今ほどおっしゃったワーキンググループ、こちらの議論もしっかり深めていただいて、実装がより進んでいくように、そして、これも先ほどの医薬品と同じく、成長分野、産業政策としても重要だというふうに考えておりますので、一層の取組をお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いをいたします。

 続きまして、子供予算の関係でございます。

 子供政策につきましては、さきの通常国会でこども基本法が成立をいたしました。加藤大臣の御指導の下で、私も提案者の一人に加えていただきまして、本当にその節はありがとうございました。

 岸田総理が小倉大臣に指示をされた、いわゆる三本柱、経済的支援の強化と、そして幼児教育、保育の質、量の強化そして家庭に対する支援の充実、三点目が働き方改革ということでありますけれども、これは三つそろって初めて効果が出てくる、お金だけでは解決しない問題だということだというふうに思います。

 特に、二点目の保育の質、量の充実、そして家庭への、まさに対人サービスの強化ということだと思いますけれども、こうしたことについては、例えばさきの通常国会で児童福祉法が改正をされましたけれども、これなんかでも、人材を育成をして確保をして配置をして拠点をつくって、そして現場の質を高めていく、これはもうなかなか一朝一夕にはいかない、そういう重い課題であるというふうに思っております。

 保育の充実に関しても、四歳児の配置の話というのは長く言われておるところでありますけれども、七十年変わっていない。これを、今の保育ニーズに全く合っていないじゃないか、何とかしてほしい、保育園側も親の側も、切実なる声がこの間ずっと聞こえているわけであります。

 そしてまた、病児保育、これはもう予算事業でやっているということもあって、体制の面あるいは処遇の面、こちらも課題があるというふうに認識をしているところであります。

 この二点について、まさに次元の異なる少子化対策という中で、どのように取り組まれるのか、方針をお聞かせください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 子育て世帯の支援に当たりましては、現金給付のみならず、保育の充実や子育て家庭への支援サービスを総合的に進めることが重要であると考えております。

 例えば、御指摘いただきましたけれども、令和六年度に施行される改正児童福祉法におきましては、虐待の発生を未然に予防するための支援の強化といたしまして、全ての妊産婦、子育て家庭、子供へ一体的に相談支援を行うこども家庭センターの設置や、訪問家事支援の創設などによる子育て家庭への支援の充実などを盛り込んでおり、改正法の施行に向けまして、今年度は調査研究等を通じて地方自治体や有識者の方々から御意見を伺いながら具体的な検討を行っているところであり、引き続き、令和六年度の施行に向けて、必要な予算の確保にも努めてまいりたいと考えております。

 また、二点目、御指摘いただきました保育士の配置改善、質の改善でございます。これもまた重要な課題でございます。これまでも累次の改善を行ってはきましたけれども、いわゆる〇・三兆円超の質の向上事項に含まれる、一歳児、四、五歳児に対する職員の配置改善は未実施となっており、引き続き安定的な財源の確保と併せて検討が必要だと考えております。

 また、病児保育につきましては、これは確かに事業ということでやっておりますので、利用児童数の変動が大きいことから、安定的な運営を確保することが課題となっております。令和五年度の予算案におきましては、当日キャンセルに対する受入れ体制を維持していることを一定程度評価をするための加算を試行的に実施をすることとしております。

 いずれにいたしましても、小倉こども政策担当大臣の下、子供、子育て政策として充実する内容を三月末までを目途に具体化をし、六月の骨太方針までに将来的な子供、子育て予算倍増に向けた大枠を提示するものと承知をしており、厚生労働省の立場からも、必要な連携、協力を行ってまいりたいと考えております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 配置の関係は、まさに〇・三兆円問題、これをしっかり解決しないことにはなかなか進まないということであります。病児保育は一定の前進があろうかと思いますが、これもやはり体制を組んで初めて利用ができるわけであって、その利用実績に応じてという状況であるとなかなか現場としては難しい、こういうことだろうと思います。

 いずれにしても、こういう保育であるとか対人サービス、これは地方で行われることになります。まさにこの予算倍増の議論の中で、地方が動かないと現実は変わらないということになってきます。その意味で、国としてきっちり地方費についてもその財源を保障していく、国の責任で対応していく、こういうことが必要だと思いますが、子供予算倍増の中の地方費の取扱いについてお考えをお伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 子供施策の具体的な実施を中心的に担っているのは地方自治体でございます。国が地方自治体の取組状況を把握をし、取組を促進するための必要な支援を行うとともに、現場のニーズを踏まえた地方自治体の先進的な取組を横展開をしまして、必要に応じて制度化をしていく、こういったことは非常に重要であると考えております。

 子供施策に関しましては、地方自治体との連携を強化するため、四月に発足するこども家庭庁において、国と地方との定期的な協議の場を設けることとしておりますが、これに先立ちまして、先日、一月二十四日でございましたけれども、準備会合を開催をし、地方三団体の幹部の皆様方と意見交換をさせていただいております。

 小倉こども政策担当大臣の下で幅広く議論を進め、地方団体の皆さんも含めて様々な意見を聞きながら、子供、子育て政策の充実の内容を具体化していきたいというふうに考えております。

勝目分科員 ありがとうございます。

 三団体の意見をよく聞いていただいて、今ほどちょっと財源の話は出ませんでしたけれども、これも必ず議論、俎上に上る課題だと、テーマだと思っておりますので、併せてしっかり御検討いただきたいというふうに思います。

 そして、最後の、結びの質問にしていきたいと思いますけれども、生活衛生営業の関係でございます。

 三年に及ぶコロナ禍、そして昨今はエネルギーコストの高騰ということもありまして、非常に厳しい経営環境の下で、飲食、旅館、ホテル、そしてまた理容、美容、クリーニング、こういう生活衛生営業は、ある意味、営業の自粛を余儀なくされ、逆にエッセンシャルワーカーとして非常に気を遣いながら、細心の注意を払いながら営業を継続してきた、いずれにしても甚大な影響を被ってきたということであると思います。

 そうした中で、コロナ禍対応のためのゼロゼロ融資、この返済というものも到来をしてくるわけでありますけれども、この厳しい状況にあって、まず、生衛業を業として所管される厚労省さんとしてどのように生衛業を支援していくのか、それはすなわち国民生活を守っていくということにほかなりませんので、その方針についてお伺いをしたいと思います。

 そしてまた、生衛業のような中小零細企業からの金融機関での窓口、この返済の相談には柔軟に対応するようにということで、行政からは金融機関に何度も要請をしていただいていると思いますけれども、現場では、なかなか融資態度が厳しいなといったような話も仄聞するところであります。

 この点につきまして、政府としての対応を併せてお聞かせいただければと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 生活衛生関係営業者、今委員御指摘いただいたように様々な職種がございます。そうした中で、国民生活に密接に関わるサービスを提供し、さらには、地域経済、雇用の基盤となっていただいております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症や物価高騰等により厳しい経営状況にあるものと認識しております。

 このため、厚生労働省としましては、経営状況の改善が図られるよう、まず、日本政策金融公庫による低利融資を行うとともに、同公庫に対して、返済期間や据置期間の延長等を含め、事業者の実情に応じた柔軟な対応を行うよう要請しております。

 また、継続的な集客等につながるイベントやキャンペーン等への支援のほか、補助金や税制措置の活用等に関する専門家による相談支援、さらにはデジタル化の推進等にも取り組んでいるところでございます。今委員御指摘のあった民間ゼロゼロ融資の返済本格化に向けて、政府全体として対応を強化しております。

 引き続き、厚生労働省としましても、関係省庁や関係団体と連携し、生活衛生関係営業者の振興や集客力、収益力の向上等を支援してまいりたいと考えております。

新発田政府参考人 お答え申し上げます。

 宿泊ですとか飲食といった事業者の方々が大変な状況にいらっしゃるということについては、私どもも認識を一にしてございます。

 こうした中、政府としては、民間のゼロゼロ融資の返済が本格化してまいりますので、先般、一月十日から、借換え需要に加えて新たな資金需要にも対応する新しい保証制度の運用を開始しているところでございます。

 また、金融庁におきましては、民間の金融機関に対して、既往の債務の条件変更ですとか、借換え対応を含めて、引き続き事業者の立場に立った最大限柔軟な資金繰り支援を行うこと、さらに、御指摘の飲食業、宿泊業等の新型コロナの影響を特に受けている事業者の方々に対しましては、より一層のきめ細やかな資金繰り支援を徹底することを累次にわたり要請してまいったところでございますし、これからも要請してまいりたいというふうに考えてございます。

 金融庁としては、引き続き、資金繰り支援に万全を期すように金融機関に要請してまいるとともに、その取組状況をしっかりと確認をして、事業者に寄り添った丁寧かつきめ細かな支援を促してまいりたいというふうに考えてございます。

勝目分科員 ありがとうございます。

 累次にわたって金融機関にそういう御指導をいただいている、私も、何度もそういう報告を承っております。ありがとうございます。

 現場の声をこれからもきめ細かく受け止めていただいて、必要な対応を引き続き取っていただければというふうに思います。

 本日は、これまでの間、党の方でも、私として取り組んできたテーマをちょっと包括的にお伺いをしてまいりましたけれども、これからしっかり一つ一つ詰めていって、現実を動かしていく、具体化を進めていきたいというふうに思っております。

 引き続き、加藤大臣を始め、厚労省の皆さんの御指導、御支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げまして、質問を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

牧原主査 これにて勝目康君の質疑は終了いたしました。

 次回は、明二十一日火曜日午前九時より本分科会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時五分散会


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