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第1号 令和5年4月24日(月曜日)

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本分科会は令和五年四月十日(月曜日)委員会において、設置することに決した。

四月二十一日

 本分科員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      小野寺五典君    加藤 鮎子君

      下村 博文君    武部  新君

      棚橋 泰文君   大河原まさこ君

      柚木 道義君    市村浩一郎君

      福重 隆浩君    たがや 亮君

四月二十一日

 福重隆浩君が委員長の指名で、主査に選任された。

令和五年四月二十四日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 福重 隆浩君

      小野寺五典君    加藤 鮎子君

      下村 博文君    武部  新君

      土田  慎君   大河原まさこ君

      岡本あき子君    神谷  裕君

      柚木 道義君    市村浩一郎君

      漆間 譲司君    岬  麻紀君

      たがや 亮君

   兼務 奥野総一郎君 兼務 神津たけし君

   兼務 金城 泰邦君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   経済産業大臣       西村 康稔君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   農林水産副大臣      野中  厚君

   内閣府大臣政務官     自見はなこ君

   外務大臣政務官      吉川ゆうみ君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       中尾 英樹君

   会計検査院事務総局第二局長            佐々木規人君

   会計検査院事務総局第四局長            片桐  聡君

   会計検査院事務総局第五局長            宮川 尚博君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   内山 博之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 三橋 一彦君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁審議官)            福原 道雄君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       宮本 直樹君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         村山  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  大西 証史君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  橋本 泰宏君

   政府参考人

   (厚生労働省人材開発統括官)           奈尾 基弘君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 中村 博治君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         高橋 孝雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房危機管理・政策立案総括審議官)            前島 明成君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         菅家 秀人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            青山 豊久君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

   決算行政監視委員会専門員 花島 克臣君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  棚橋 泰文君     土田  慎君

  柚木 道義君     岡本あき子君

  市村浩一郎君     高橋 英明君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     棚橋 泰文君

  岡本あき子君     井坂 信彦君

  高橋 英明君     漆間 譲司君

同日

 辞任         補欠選任

  井坂 信彦君     神谷  裕君

  漆間 譲司君     堀場 幸子君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  裕君     青山 大人君

  堀場 幸子君     岬  麻紀君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 大人君     柚木 道義君

  岬  麻紀君     遠藤 良太君

同日

 辞任         補欠選任

  遠藤 良太君     市村浩一郎君

同日

 第一分科員奥野総一郎君、神津たけし君及び第四分科員金城泰邦君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成三十年度一般会計歳入歳出決算

 平成三十年度特別会計歳入歳出決算

 平成三十年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成三十年度政府関係機関決算書

 平成三十年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成三十年度国有財産無償貸付状況総計算書

 令和元年度一般会計歳入歳出決算

 令和元年度特別会計歳入歳出決算

 令和元年度国税収納金整理資金受払計算書

 令和元年度政府関係機関決算書

 令和元年度国有財産増減及び現在額総計算書

 令和元年度国有財産無償貸付状況総計算書

 (厚生労働省、農林水産省及び経済産業省所管)


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     ――――◇―――――

福重主査 これより決算行政監視委員会第三分科会を開会いたします。

 私が本分科会の主査を務めることになりました福重隆浩でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本分科会は、厚生労働省所管、農林水産省所管及び経済産業省所管についての審査を行うことになっております。

 なお、各省庁の審査に当たっては、その冒頭に決算概要説明、会計検査院の検査概要説明及び会計検査院の指摘に基づき講じた措置についての説明を聴取することといたします。

 平成三十年度決算外二件及び令和元年度決算外二件中、厚生労働省所管、農林水産省所管及び経済産業省所管について審査を行います。

 これより厚生労働省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 平成三十年度及び令和元年度厚生労働省所管一般会計及び特別会計の決算の概要につきまして御説明申し上げます。

 まず、平成三十年度の決算について申し上げます。

 一般会計につきましては、歳出予算現額三十一兆四千七百六億円余に対し、支出済歳出額三十兆七千五百六十二億円余、翌年度繰越額二千七百四十九億円余、不用額四千三百九十四億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。

 第一に、労働保険特別会計につきましては、労災、雇用及び徴収の三勘定を合わせて申し上げます。収納済歳入額六兆七百三十二億円余、支出済歳出額五兆七千三百五十四億円余、翌年度繰越額二十一億円余、未経過保険料に相当する額二百三十九億円余、支払備金に相当する額一千七百二十四億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差引き一千三百八十五億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどして、決算をいたしました。

 第二に、年金特別会計につきましては、基礎年金勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額九十一兆六千九百九十六億円余、支出済歳出額八十九兆四千六百四十三億円余、翌年度繰越額五百十三億円余であり、差引き二兆一千八百三十九億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどして、決算をいたしました。

 最後に、東日本大震災復興特別会計につきましては、歳出予算現額四百七十二億円余に対し、支出済歳出額三百二十九億円余、翌年度繰越額百九億円余、不用額三十三億円余で決算をいたしました。

 次に、令和元年度の決算について申し上げます。

 一般会計につきましては、歳出予算現額三十二兆五千八百七十八億円余に対して、支出済歳出額三十一兆五千三百十六億円余、翌年度繰越額三千四百五十八億円余、不用額七千百二億円余で決算をいたしました。

 次に、特別会計の決算につきまして御説明申し上げます。

 第一に、労働保険特別会計につきましては、労災、雇用及び徴収の三勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額六兆三千七百十億円余、支出済歳出額五兆九千二百七十六億円余、翌年度繰越額二十七億円余、未経過保険料に相当する額二百三十五億円余、支払備金に相当する額一千七百四十九億円余であり、一般会計からの超過受入額を調整し、差引き二千四百十三億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどして、決算をいたしました。

 第二に、年金特別会計につきましては、基礎年金勘定等の六勘定を合わせて申し上げますと、収納済歳入額九十三兆二千九十一億円余、支出済歳出額九十兆九千百八十九億円余、翌年度繰越額三十八億円余であり、差引き二兆二千八百六十四億円余をこの会計の積立金として積み立てるなどして、決算をいたしました。

 最後に、東日本大震災復興特別会計につきましては、歳出予算現額三百八十六億円余に対し、支出済歳出額二百六十四億円余、翌年度繰越額七十億円余、不用額五十一億円余で決算をいたしました。

 以上をもちまして、厚生労働省所管に属する一般会計及び特別会計の決算の説明を終わります。

 何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。

福重主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院佐々木第二局長。

佐々木会計検査院当局者 平成三十年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項八十一件、意見を表示し又は処置を要求した事項六件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項四件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号五七号及び五八号は、保険料の徴収が適正でなかったもの、同五九号から六四号までの六件は、保険の給付が適正でなかったもの、同六五号及び六六号は、医療費の支払いが過大となっていたもの、同六七号から一三四号までの六十八件は、補助事業の実施及び経理が不当なもの、同一三五号から一三七号までの三件は、介護給付費等の支払いが過大となっていたものであります。

 次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、障害者に係る就労移行支援事業に関して、適宜の処置を要求し、及び是正改善の処置を求めたもの、その二は、医療介護提供体制改革推進交付金等により造成した基金を活用して実施する事業に関して、適宜の処置を要求し、是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求したもの、その三は、都道府県労働局における統計調査の実施に関して、是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求したもの、その四は、国保総合システムに関して、意見を表示したもの、その五は、二次健康診断等給付に関して、改善の処置を要求したもの、その六は、認定こども園等の施設整備事業の実施に関して、適宜の処置を要求し、是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、有床診療所等スプリンクラー等施設整備事業の実施に関するもの、その二は、介護給付費負担金の審査支払手数料に係る交付額に関するもの、その三は、受動喫煙防止対策助成事業に関するもの、その四は、認定職業訓練実施付加奨励金の支給に関するものであり、これら四件について指摘したところ、それぞれ改善の処置が取られたものであります。

 続きまして、令和元年度厚生労働省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項八十二件、意見を表示し又は処置を要求した事項二件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号四二号及び四三号は、保険料の徴収が適正でなかったもの、四四号から四八号までの五件は、保険の給付が適正でなかったもの、四九号及び五〇号は、医療費の支払いが過大となっていたもの、五一号から一二〇号までの七十件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの、一二一号から一二三号までの三件は、介護給付費等の支払いが過大となっていたものであります。

 次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、事務処理誤りによる過払い年金の返還請求に係る事務処理に関して、是正改善の処置を求めたもの、その二は、国民健康保険特定健康診査・保健指導国庫負担金の交付額に関して、是正改善の処置を求め、及び意見を表示したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、国民健康保険団体連合会等補助金の交付額の算定に関するもの、その二は、訓練終了者に対して支給される終了後手当に関するものであり、これら二件について指摘したところ、それぞれ改善の処置が取られたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

 以上でございます。

福重主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置のうち、こども家庭庁所管を除く部分について説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 平成三十年度及び令和元年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりであり、誠に遺憾であります。

 御指摘を受けた事項につきましては、その是正措置を講じているところでありますが、今後このような御指摘を受けることのないよう、指導監督の強化を図り、より一層予算の適正な執行に努めてまいる所存であります。

福重主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福重主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔決算概要説明等は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

福重主査 以上をもちまして厚生労働省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

福重主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。加藤鮎子君。

加藤(鮎)分科員 おはようございます。自由民主党山形三区選出の衆議院議員加藤鮎子でございます。

 本日、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 今日、まず冒頭の方で、出産費用にまつわる質問をさせていただきたいと思っております。

 岸田総理が異次元の少子化対策と銘打ち、今旗を振っておられる中、政府は今、こども未来戦略会議やこども政策推進会議などを開催をし、少子化対策及び子供、子育て政策の具体策や財源について議論を進めていただいていると承知しております。子育て世代の方々からの期待が大きいのはもちろんのこと、人口減少という我が国の静かなる有事に対して歯止めをかけるラストチャンスと位置づけ本腰を入れた施策推進の姿勢を高く評価をさせていただきます。

 これら今具体化を進めております施策の実現に一歩先んじて、この四月、出産育児一時金が五十万円に引き上げられました。岸田総理は、首相就任よりも前から、出産費用の負担軽減を求める議員連盟の代表でおられたこともありまして、岸田総理にとって、この出産育児一時金の引上げは、少子化対策、子供、子育て政策の中の、一丁目一番地とまでは言えずとも、一打席目の初走塁であったのではないかなと個人的に思っております。

 そこで、出産費用の負担軽減についての質問なんですけれども、私は、出産費用は、最終的には保険適用として、さらに、産婦の自己負担分は公的に給付し、出産費用の負担を実質的にゼロとするということが望ましいと考えている立場でございます。

 しかし、保険適用の導入に際しましては慎重なプロセスが必要だということも考えております。そもそも、出産育児一時金の引上げは妊産婦の方々の経済的負担を軽減する目的のものですが、ともすれば、それは便乗値上げを誘発しかねない、イタチごっこになるだけといったことも指摘をされております。

 こういったイタチごっこを防ぐためには、出産のサービスと費用の見える化が必要になってくると考えます。というのも、現時点では、どのような処置、あるいはサービスにどのくらいかかっているのかといった内訳が妊婦サイドからは見えにくいものになっているからでございます。

 この見える化は、妊産婦にとって、便乗値上げの乱発を抑制するという意味がございますし、また、見える化による適切な費用の分析は、過酷で負担の大きい産科医療現場の実際的なコストを社会としてしっかり把握をし、将来、仮に保険適用を導入するという方向になった際には、持続可能な産科医療体制に資する適切な点数設定にも生きてくるものと私としては考えております。

 そこで、政府に伺いたいと思いますが、産科費用の見える化を今後どのように具体的に進めていかれるのか、お伺いしたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 妊婦の方々が費用やサービスを踏まえて適切に医療機関等を選択できる環境を整備することは重要でございまして、出産育児一時金の大幅な増額と併せて、出産費用の見える化を抜本的に強化していくこととしております。

 具体的には、医療機関などの機能や、出産に係る運営体制や、分娩費用、室料差額、あるいは無痛分娩の取扱いなど、サービスの内容や費用の公表方法、これらなどにつきまして、医療機関などに報告を求めて、平均入院日数や出産費用の平均値に係る情報、これと併せまして、来年四月を目途に厚生労働省が新たに設ける見える化のためのホームページで医療機関等ごとに公表したい、このように考えてございます。

 この取組を進めるために、本年夏までに有識者による検討において公表項目などの整理を行いまして、その後、医療機関などの協力を得て必要な情報の収集やホームページの立ち上げを行うなど一定の作業期間を要することから、この新たな制度の本格稼働は来年四月を予定してございます。

 一方、公表項目がこの夏に取りまとまった段階で、各医療機関等に対してその内容をお知らせしまして、自院のホームページ等において先んじて公表いただく、こうしたことも促していきたいと考えてございます。

 また、見える化の効果等の検証を行った上で、次の段階の取組として、出産費用の保険適用の導入を含め、出産に関する支援等の在り方について検討を行いたい、このように考えてございます。

加藤(鮎)分科員 見える化についての具体的なプロセスをいただきまして、ありがとうございます。

 是非、産科医、医療界の方々の御協力も仰ぎつつ、また、公表するプロセスになりましたときには、その公表されているということ自体が妊産婦あるいはその周りの方々に周知されるような周知の活動の方もお願いをさせていただきたいと思います。

 また、保険適用につきましても、検討を進めていただくという前向きな御答弁をいただきまして感謝を申し上げますとともに、是非、私の方も後押しの方を頑張っていきたいというふうに思っております。

 次の質問でございますが、今、無痛分娩についても御答弁の中で触れていただきました。出産費用の負担軽減の中の一つの論点として、無痛分娩について質問させていただきます。

 海外では、無痛分娩で出産する割合が我が国と比べてとても高くて、例えば、アメリカでは六割、フランスでは八割、パリの都市部の方では九割以上、無痛分娩で出産をされている。そして、イギリスやフランス、スウェーデンなどは、無痛分娩を含む出産費用が公的にカバーをされています。先進国では低めなドイツであっても二割、御近所のアジアでも二、三割。そんな中で、日本は、今急速に増えているとはいえ、僅か八から九%と、一割に満たない状況でございます。

 私がかつてアメリカに留学をしていたときに、スイス人の友人に日本の無痛分娩の普及の低さを話しましたところ、先進国である日本の医療の考え方がそんなに遅れているとはと非常に驚かれました。十五年前の話でございます。

 時代とともに、出産の痛みに対する価値観や痛みを取り除く必要性も変化をして、無痛分娩のニーズは今後も増えていくと予想しております。そのニーズに応えていくためには、様々な環境を整備することも重要であります。麻酔科医の方々の確保ですとか産院の機能強化等も議論の対象になってくるのではないでしょうか。

 そこで、伺わせていただきたいんですけれども、現状の麻酔科医の方々の数はどのような推移になっておりますでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 麻酔科を主たる診療科とする医師につきましては、平成六年から令和二年までの二十六年間で、全国で約四千七百人から約一万三百人へと二倍以上増加してきているという状況でございます。

加藤(鮎)分科員 過去を振り返ると増えているというところは伺ってございまして、それはすばらしいことだなと思っております。

 その今現在の現状、あるいは、今後はどんなふうに、麻酔科医の方々の数、増やしていく計画ですとか増えていくといった見通し、どんなふうにお持ちでおられますでしょうか。

榎本政府参考人 お答え申し上げます。

 麻酔科を主たる診療科とする医師につきましては、平成六年から令和二年まで、先ほど申し上げましたように、二倍以上増加してきているところでございますが、一方で、各地域において医師の偏在を是正する取組も重要という状況でございます。

 このため、例えば、特定の地域や、麻酔科を含めた特定の診療科での勤務を条件とした地域枠を医学部定員に設定することに加えまして、短期的に効果が得られる施策として、麻酔科医を含めて医師が不足する医療機関に医師を派遣できますように、地域医療介護総合確保基金による大学病院等への寄附講座の設置でありますとか、非常勤医師の確保経費への補填などの取組を支援しているといったことに取り組んでいるところでございます。

 またさらに、安全な周産期医療提供体制の整備という観点から、麻酔科医を含む周産期医療従事者に対して、産科における麻酔を実施するための知識や技術などの研修を都道府県が主体となって実施しておりまして、補助金や地域医療介護総合確保基金によって支援を行ってきているという状況でございます。

加藤(鮎)分科員 ありがとうございます。

 麻酔科医の方々の偏在の是正にも取り組んでおられるということ、また、産科に携わる医師の方々に麻酔ができるような研修もされているということで、是非とも、それは環境整備において非常に重要なことだと思いますので、進めていただきたいと思っております。

 先ほども申し上げましたけれども、無痛分娩で出産したいという考えの方はますます増えていくと思っております。痛みに耐えてこそ立派な母になれるということは、かつて言われていたということもあったのかどうかも怪しいぐらいなんですが、そういう考えを持っているという方に直接私は聞いたことはないぐらい、昔は言われていたよねという話は聞いたことがあるぐらいではありますけれども、およそ科学的なものでもなく、今の二十代、三十代の女性の間ではかなり古臭い考え方という感覚であるというのが実際のところだと思います。

 しかも、分娩後の体力の回復というのも、無痛分娩とそうでない出産では非常に大きく違いまして、共働き比率が高まる中、産後の早期の復帰を望む妊婦にとって、体力の回復の早さも全く違うものになってきます。

 そういったときに、今のところ、まだまだ費用負担はとても大きいですし、サービスのアクセスも十分に確保はできていないという環境で、望んでいるけれども選択ができていないという妊婦も少なくないと考えます。

 麻酔科医あるいは麻酔の処置、いわゆる無痛分娩の処置ができる環境が増えていくということがまずやはり必要ではあるんですが、そういったニーズが、実際に費用負担してそれをやるんだというふうにできるようにしていくためにも、是非、費用の面での支援ということもやっていただきたいというふうに考えております。

 経済的な費用の負担ということも選択できるようにするためには、先ほど、無痛分娩のところも含めてというところ、見える化のところもやっていただいているということでありますけれども、是非とも、そちらも将来的には保険適用の検討の一部にしっかり入れていただくことを検討いただきたい、こんなふうに考えているところでございます。

 引き続き費用負担軽減それから環境の確保に是非努めていただくことをお願いをさせていただきたいと思います。

 次に、出産の質問から今度がらっと変わりまして、いわゆる収入の壁の解消についての質問に入らせていただきたいと思います。

 かねてから、第三号被保険者は、年収百三十万円を超えると、扶養から外れて社会保険への加入の位置づけとなりまして、給付に変化がないにもかかわらず保険料負担だけが発生することから、百三十万円をぎりぎり超えない形での就労を希望する、いわゆる働き控えが生じているという問題が指摘をされてきました。

 ここに対して、従業員規模百人超の事業所については、年収百六万円を超えた方々に厚生年金保険や健康保険に加入をしていただくこととして、保険料負担も生じるけれども、将来的にはしっかり給付もセットでついてくるという道ができて、一定以上の収入増の壁、いわゆる壁というのが単なるデメリットだけではないよということにまではなっているというふうに理解をしてございます。

 しかし、それでも、やはりまだ働き手にとっての収入の壁というものが存在をし、一定の収入の範囲内に就労を収めておこうという就業調整は依然として多く存在していると感じてございます。

 厚生労働省の方では、政府の方では、この就業調整の存在について、今のところ、現状をどのように認識をされておられますでしょうか。

橋本政府参考人 いわゆる年収の壁につきましては、働いて収入が増加すると、社会保険料が発生したり企業の配偶者手当の収入要件が適用されたりすることによって手取りがかえって減少するということを避けるために、就業調整が行われ、希望どおり働くことを阻害しているというふうな指摘があり、私どもとしてもそのように認識しております。

 このうち、いわゆる百三十万円の壁ということにつきましては、これを意識せず働くことが可能となるように、その解消に向けて、短時間労働者への被用者保険の適用拡大を進めてきているところでございます。

 また、いわゆる百六万円の壁につきましても、最低賃金の引上げによって解消されていくものというふうに見込まれております。

 なお、この百六万円の壁につきましては、月額賃金が八・八万円以上であるということを被用者保険適用の要件の一つとしていることに起因して生じているものでございますけれども、この要件につきましては、雇用契約を結んだ時点における所定内賃金の月額で判断しておりまして、雇用契約後の残業代等は適用要件の判断に際して考慮されないところでございますので、この考え方につきましては、パンフレット等の中で周知を行ってきているというところでございます。

加藤(鮎)分科員 ありがとうございます。

 最低賃金が上がっていく、賃金の方が上がっていくということや、また、企業の方で人手確保のために様々な非正規雇用の方々に対して手だてを講じている部分の方が進んでいくということももちろん期待をされるところではございますけれども、一方で、まだやはり心理的にもなかなかそこに壁を感じている、あるいは、これは各家庭の考え方というところにもなり得るかもしれませんが、女性が、我が国ではやはり、旦那さんに一応確認を取ってからでないとなかなか収入の一定の壁以上のところはオーケーが出ないから今のところ控えておくんだという意識が働いている地域なんかもありまして、是非とも、そういった壁を意識しないで就業ができる体制をつくっていく、また、それができているということを周知していくということを引き続きお願いをしたいと思います。

 現役世代の、特に、女性や若者が就労意欲にブレーキをかけていくというのは、この人手不足の中で非常にもったいない話だと思っておりまして、労働市場にしっかり参画できるようにすることが、国の経済の成長のためにも、また一人一人の働く意欲、就労意欲の発揮というんですか、生きがいある人生のためにも、また少子化対策の視点からもとても必要なことになってくると思っております。

 最後にですけれども、今後に向けて、曖昧な聞き方になるかもしれませんけれども、そういった今も残る収入の壁、心理的なものも含めてですが、今後どのように解消していく取組をしていくか、あるいは今後に向けた政府の意気込みについて一言お聞かせをいただければと思いますが、よろしくお願いします。

橋本政府参考人 今後に向けましては、今委員から御指摘いただきましたような、被用者保険の適用ということを受けることが、保険料の負担を生じさせるのみならず、しっかりと給付というものを充実させるんだということを、被保険者の皆様方にも、また事業主の皆様方にも丁寧な説明を行っていくということが、まず一義的には必要なんだろうというふうに思っております。

 その上ででございますけれども、いわゆる年収の壁ということを意識して労働時間を調整する方がいるというふうな御指摘を踏まえまして、先般、総理の方で、被用者が新たに百六万円の壁を超えても手取りの逆転を生じさせない取組の支援などをまず導入し、さらに、制度の見直しに取り組むというふうに表明されたところでございますので、総理の御発言を踏まえまして、年収の壁を意識せずに働くことが可能となるよう、具体策の検討を早急に進めてまいりたいというふうに考えております。

加藤(鮎)分科員 ありがとうございます。

 これは歳入の増加にもつながる話にもなりますので、ただ単に、政府が新たな手だてを打ったことで歳出が増えるばかりのことでもない、いいこともいっぱいあるということもありますので、是非前向きに、具体策の方、今党の方とかでもいろいろ検討されている部分はありますので、そういったところを進めていただければということで申し添えまして、この分野の私の質問は終えさせていただきたいと思います。

 残り十分ほどございますので、次に、外国人人材の活用についての質問に移らせていただきたいと思います。

 私の地元の選挙区は、山形県の中でも、より県都から遠く離れた庄内地域と、中山間農地が多く散在する新庄最上地域から成るんですけれども、本当に人手不足の波が今急激に来ているということを、地域の方々との意見交換の中から強く感じております。ただでさえ後継者不足が叫ばれてきました農業地帯なわけですけれども、建設業、製造業、流通、医療、介護、サービス、あらゆる分野で人が足りていないという状況であります。

 そんな地方で、とても力強く生産の現場を支えてくれているのが外国人労働者の方々であります。実際に現場で様々な経験を積んで技能を身につけて、今現在、立派に活躍されているという方々が大勢おられます。

 我が国の大いなる課題は、まずは生産性の向上であるということは間違いないとはいいながら、それでありますので、DX始めあらゆる手を尽くして生産性を向上していくということ、賃金を上げていくということ、これは必要になっていますが、そこを進めつつ、むしろそこを進めていくためにも、現場で高い技能を身につけてこられた外国人の方々には、五年間だけではなく十年、十年間だけでなくもっとと、長く滞在していただいて、身につけた技術でもって現場で活躍をしていただきたい、そういうふうな体制にしていくべきではないかと考えております。

 人手不足が加速をしている今こそ、外国人労働者の方々は日本の経済を支える労働力の重要な担い手なのだと明確な方向性を持って、制度設計を改めて考えていくべきだというふうに思っております。

 その意味で、今現在、建設業と造船業、船舶業のみにしか道が開かれていない特定技能二号の対象範囲をより多くの分野へと広げることを是非御検討いただきたいと思っております。

 具体的には、特に農業分野に関して、是非、特定技能二号への道を開いていただきたいと思います。今の農業生産現場の主力は七十から七十五歳であります。もうあと一年だけかな、来年の作付はどうしようかな、そう考えながらコンバインに乗っておられる方々も多い。若い営農者や先進的な農業法人がスマート農業等をしっかり進めていくに当たっても、様々な場面でまだまだ、現場で頑張っている人手の確保をしていかなければならないという状況がございます。

 一定期間滞在してくれた外国人労働者の方々に引き続き現場を一緒に支えてもらいたいというこの切実なニーズ、特定技能二号への道、農業分野、これについて、政府のお考えはいかがでございましょうか。

福原政府参考人 お答えいたします。

 特定技能制度におきましては、対象分野を追加する場合には、特定技能一号、特定技能二号のいずれの場合におきましても、政府基本方針に基づき、まずは、分野を所管する省庁において、現場の意向や経済団体等の意見を踏まえて検討を行い、その結果を受け、法務省において、厚生労働省等の制度を所管する省庁とともに、追加の要否について検討を行うことになります。その上で、対象分野として追加することが適当であると認められる場合には、追加する分野の運用方針を変更する閣議決定を求めることとなります。

 法務省といたしましては、対象分野の追加については、分野を所管する省庁から申入れがあれば、制度を所管する省庁とともに、対象分野として追加することが適当であるか適切に検討を行うこととしたいと考えております。

加藤(鮎)分科員 ありがとうございます。

 さらに、縫製分野もなかなか大変でございまして、地元の縫製工場で操業されている方々は、社長さんに言わせると、今や、日本人と同じかそれ以上にお給料も払っているし、むしろ、今後更にお給料を引き上げてでもずっと定着して働いてもらいたい、真面目で技能もしっかり身につけて頑張ってくれている彼らのおかげで成り立っているんだということも言われております。

 アパレル関係、縫製関係の現場におきまして、特定技能一号へは、ここは一号への道すらも開かれていないのですが、せめて一号までは開いていただきたい。ここに関しての御見解、手短で結構ですので、お願いいたします。

福原政府参考人 お答えいたします。

 特定技能一号、二号、その追加のプロセスについては、先ほど申し上げさせていただいたとおりのものでございます。委員御指摘の声も含めて、また法務省としても、適切に対処していきたいと考えております。

加藤(鮎)分科員 ありがとうございます。是非前向きに御検討の方、よろしくお願いいたします。

 続きまして、今度は保育士の配置基準や人材確保についての質問に移らせていただきたいと思います。

 先日政府が提示をいたしました少子化対策のたたき台には、保育士の配置基準の見直しが明記をされました。一歳児につき六人のところを五人、四、五歳児は三十人のところを二十五人と見直すと聞いておりまして、是非この方向でしっかりと進めていただきたいと強く要望をいたします。

 しかし、これを受けまして、社会全体として、保育士の数をより一層多く確保するという必要性が出てくると思います。これまでも、保育士の確保には、処遇の改善なども含めて本当に様々手を打ってこられたと思いますが、ここで配置基準の改善、これを実効性あるものにしていくために、当然、人手の確保のための打ち手、こちらの方も更に強化をしていかなければならないのではないかと受け止めております。

 より一層の手だてとして、政府は、この保育士の人手の確保、どのような方策を検討しておられますでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、こども・子育て政策の強化に関する試案におきましては、職員配置の基準につきまして改善をすることとしておりますけれども、こうした取組と併せまして、これも委員御指摘のとおり、保育士の人材確保が非常に重要な課題であると考えております。

 そのため、保育士の保育業務の補助を行う保育補助者の配置、保育所内の清掃や消毒、園外活動時の見守り等の保育の周辺業務を行う保育支援者の配置、登園管理システムの導入などICT化の推進など、業務負担の軽減を通じた保育士の就業継続のための環境づくりに取り組むとともに、養成校に通う学生への修学資金の貸付けなど、資格の取得促進、保育士・保育所支援センターによるマッチングの支援などに取り組むことといたしております。

 引き続き、保育現場の負担軽減と職業の魅力向上を図りつつ、人材確保策に総合的に取り組んでまいります。

加藤(鮎)分科員 ありがとうございます。

 本当に、私も今二人の男の子を育てている母親として、今ここで質疑に立たせていただけているのも、今保育士さんが子供を預かって、まさに安心して預けていることができるからこそで、本当にありがたいことであります。

 見ていて、業務の大変さは多岐にわたりまして、本当に大変だなというふうに思うわけでありますけれども、今、御答弁の中に次のお願いしたいところも含まれておりましたので、私からは、是非引き続きお願いしますということに尽きるんですけれども、補助的な業務に対して補助者の方をつけること、これをしっかり進めていただくということを本当にお願いをしたいと思います。

 補助的な業務から入って、そして、OJTの形で身につけながら保育士の資格をも取っていくという、一つのそういったパスでもございますので、今後、保育士確保のためにも、そして現場の離職や辞めてしまうということを防ぐためにも、保育士さん一人一人の負担軽減に資する補助者の確保やDX、これをしっかり御支援をいただきたくお願いをいたしまして、ちょっと時間を残すかもしれませんが、私の質疑とさせていただきます。

 誠にありがとうございました。

福重主査 これにて加藤鮎子君の質疑は終了いたしました。

 次に、大河原まさこ君。

大河原分科員 おはようございます。立憲民主党・無所属の大河原まさこです。

 本日は、介護保険制度における主に在宅サービスについて伺ってまいります。

 着座にて失礼いたします。

 さて、二十三年前にスタートした介護保険制度は、措置から契約へ、分権の試金石とも言われ、家族介護から介護の社会化を高らかにうたい、大きな期待を集めました。しかし、改定を重ねるたびに、社会情勢の変化も相まって、期待していたとおりの制度ではなくなってしまったとの失望の声も聞かれ、コロナ禍では、介護保険は崩壊寸前とさえ言われています。

 訪問介護サービスは、ケアサービスを提供する女性たちの知恵と経験と時間を使って成り立ってきました。女性たちの低賃金で支えてきたとも言えます。私は、地域で、ケアサービスを提供する女性たちの声や、介護の崩壊をさせない実行委員会を始め、小規模な事業所でサービス提供をする方々の要望や政策提案を厚生労働省につなげてまいりました。

 私は、介護保険の検証が不十分であり、今後の制度改正の前には、介護する人、介護される人、介護保険の検証、調査を十分に行う必要があると考えておりまして、本日も幾つか質問させていただきます。

 まず、令和三年度の決算報告書、介護保険制度運営推進費について伺います。

 令和三年度の決算報告書の介護保険制度運営推進費においては、三千億円超えの不用額が出ており、地方公共団体からの交付申請額が予定よりも少なかったとの説明があります。

 そこで、伺います。地方自治体からの交付申請額が少なかった理由は何でしょうか。

加藤国務大臣 令和三年度の介護保険制度運営維持費のうち、主に介護給付費等負担金と介護給付費財政調整交付金に不用が生じているところでございます。総額三千十六億円ということでありますが、これらは介護給付費の一部を国が負担するものであり、予算の積算上、直近の実績の伸び率等を用いて介護給付費を推計していましたが、実際に必要な支出が当初の見込みより少なくなり、市町村からの交付申請額が予想より下回り、不用額が生じたということであります。

 御質問の支出額が当初の見込みよりも少なくなった要因でありますが、新型コロナによる影響もあるのではないかと考えますが、そこには様々な要因も考えられるところで、一概に申し上げることはなかなか難しいと思いますけれども、ここを、コロナ前からの傾向を見たときに、年齢階級別に分析をいたしますと、特に八十歳以上の要介護認定率が近年低下傾向にある、こういったことが要因になっているというふうにも考えております。

大河原分科員 一概には言えないと思いますけれども、私は、コロナ禍の利用控えもあると思います。コロナ禍で介護保険の利用控えが起きたことによって介護保険受給者にどのような影響があったと厚生労働省は考えているのでしょうか。また一方で、介護事業者にとってはどうだったのでしょうか。

加藤国務大臣 コロナ禍における介護サービスの利用者の影響については、令和二年度に実施した調査研究において、自主的に利用を控えた利用者がいると回答した通所介護事業所、これは事業所ベースでありますが、八一・七%ということで、新型コロナへの感染を不安に感じていた方が一定数おられたものというふうに考えます。

 コロナ禍においても、必要とする方に対して、安定的に介護サービスが提供されることが必要であります。そのために、通所サービス事業者が休業となった場合には、代替として訪問サービスを提供するなど、柔軟な取扱いを行い、利用者への支援を継続的に実施をしてまいりました。

 今後とも、必要とする方に必要な介護サービスが提供されるよう、令和六年度介護報酬改定に向けて、必要な議論を社会保障審議会介護給付費分科会等において進めていきたいと考えております。

 また、介護事業者への影響については、令和四年度の介護事業経営概況調査において、新型コロナの影響でサービス利用者が減少したと回答した事業所の割合は、通所介護で六三・九%、通所リハビリテーションで六七・三%、新型コロナによる介護事業所の経営への影響が一定程度あったものと考えております。

 こうした中、介護サービス事業所によるサービスが安定的、継続的に提供されるよう、感染者が発生した場合に、緊急的な人材確保や、施設の消毒、清掃に関する費用の補助、介護報酬における、一時的に人員や運営の基準を満たすことができない場合にも減額しないなど、柔軟な取扱い、通所介護事業所について、利用者が減った月の実績が前年度の平均延べ利用者数等から一定以上減少している場合、基本報酬に一定の加算を行うといった取組も実施をしてきたところでございます。

 さらに、電気・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金、これについても、介護事業所等に対して活用していただけるよう、我々の方からも各地方公共団体にお願いをさせていただいたところでございます。

 本件も含めて、先ほど申し上げましたように、令和六年度介護報酬改定に向けて、必要な対応を検討していきたいと考えております。

大河原分科員 介護を崩壊させない実行委員会が、ちょうどこの年にコロナ禍のケア状況アンケート調査を行っております。PCR検査や抗体検査など、ケアを行うための検査体制があれば仕事を続けられたと回答しています。

 利用控えと同時に、介護者側に対する配慮や支援が不十分だったと言えないでしょうか。大臣、お答えお願いします。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、それぞれの介護サービス事業者のサービスが安定的に行えるよう、様々な対応をさせていただいたところでございます。

 そういった中で、やはり、委員も御指摘のように、介護の感染ということに対する懸念といったことから、一定程度、利用を控えた方もいらっしゃる、そうした影響がどういった形でそれぞれの方の体調に表れているのか、そういったことも我々しっかり把握しながら今後も対応していかなきゃならないと思いますし、また、あわせて、介護事業所におけるサービス提供が継続的に実施されるということが地域の介護サービスを必要とする方にとっても大事でございます。

 その辺も含めて、先ほどから申し上げておりますけれども、令和六年度介護報酬改定に向けて、必要な対応そして検討をしていきたいと考えております。

大河原分科員 大臣、回答ありがとうございます。

 安定的なサービス提供に向けて様々な対応をしたという御回答でございましたけれども、地域から本当に悲鳴が上がっていることもしっかりと受け止めていただき、おっしゃったとおり、次の改定に向けての十分な状況把握をお願いをしたいと思います。

 コロナ禍の影響については、昨年の決算の状況も踏まえていく必要がありますが、今後、介護保険の負担額が増えていけば、より一層、利用控えが進み、家族がケアを担っていく方向に向かっていくのではないかと懸念しています。

 次に、介護離職ゼロと両立支援制度について質問します。

 介護離職ゼロは、三人の総理が目標に掲げてきました。最近、ヤングケアラーが注目され、支援が必要だとの認識が強まったことは本当によかったと思います。しかし、働きながら家族をケアしているビジネスケアラーも増加しています。家族の介護は一部外部化されたものの、家族介護依存を前提にしか成り立っていない現状が改めて浮き彫りになっているのではないでしょうか。

 次に、介護離職ゼロ政策の実施状況について伺います。

 介護離職者は実際に減っているのでしょうか。また、離職に至る場合、どのような理由が挙げられているのでしょうか。お答えください。

加藤国務大臣 仕事と介護を両立できる環境の整備、これは大変大事な課題であります。

 介護離職ゼロを、これまでの政権、岸田政権においてもそうでありますが、掲げ、それを達成するため、介護の受皿の整備、処遇改善等による介護人材確保対策など、様々な取組を実施をしてまいりました。

 介護離職者数でありますが、五年ごとに総務省が実施する就業構造基本調査がございます。それによりますと、直近の統計によりますと、平成二十四年から平成二十九年までの五年間で、介護をしながら就業する方の数が五十五万人増加している一方で、介護等を理由とする離職者の数は二千人減少しているところでありますので、こうした数字を見ると、これまでの取組にも一定の効果があったというふうに受け止めているところでございます。

 また、家族の介護を理由とした離職者において、その離職した理由でございますが、介護サービスを利用できずやむを得ず離職するという方以外に、勤務先の支援体制に問題があった方、介護保険制度の利用方法が分からなかった方、御自身や御家族の希望で離職された方などもございます。

大河原分科員 介護期の両立支援制度は整えられてきているわけですが、支援制度の理念は一体何でしょうか。そしてまた、この制度をどれくらいの働く人、労働者が利用しているのか、伺いたいと思います。

加藤国務大臣 仕事と介護の両立支援制度でありますけれども、家族の介護を行う労働者が仕事と介護を両立できるよう、育児・介護休業法では、介護を要する家族を支える体制を構築するために、一定期間休業できる介護休業のほか、日常的な介護ニーズに柔軟に対応できるよう、介護休暇、所定外労働の免除、短時間勤務制度やフレックスタイム制度の中から選択した仕組みを事業主が設ける義務などの制度が設けられているところでございます。

 平成二十九年の就業構造基本調査によりますと、介護をしている利用者のうち、今申し上げた制度、介護休業については一・二%、介護休暇が二・七%、残業免除が〇・九%、短時間勤務が二・一%、それぞれ利用されているところでございます。

 こうした仕事と介護の両立支援制度は、家族の介護を行う労働者が必要なときに制度を利用できるよう積極的に周知を図っていく必要があると考えており、厚労省においては、様々な、特設のサイトを設け、制度を解説したリーフレットや動画の掲載、また、都道府県労働局、自治体等を通じたリーフレットの配布、インターネット広告を通じた周知広報などを図っているところでございます。

 また、企業に対しては、人事担当者や管理者が、個々の労働者に対して、法定の両立支援制度や会社独自の制度の利用希望を確認した上で、職場における支援の内容を整理した介護支援プランの策定を促しております。プラン策定マニュアルの周知を図るとともに、仕事と介護の両立支援のノウハウを持つ仕事と家庭の両立支援プランナーの派遣によるプラン策定支援なども行っているところでございます。

 こうした施策をしっかりと進めることによって、また周知を徹底することによって、必要とする方が仕事と介護の両立を図っていただけるように取り組んでいきたいと考えております。

大河原分科員 介護休業や介護休暇、介護期の両立支援制度は整えられていますけれども、実際この制度があることを知ってこそ使えるわけでございまして、その組合せをいかに自分のライフスタイル、自分の状況とマッチさせて使いこなすかということが鍵だと思います。

 この制度が、やはり、まだまだ十分に知られていないのではないか、自分にも両立支援プランを作ることができるという、そうした働き手の思いが、まだまだ自分の権利として働き手に伝わっていないんじゃないかという不安も私は一抹持っております。

 子育てと違って、介護には終わりが見えません。仕事と介護のバランスを取り続けていくのは、働きながら大変な困難が予想されます。介護に直面した働く人が離職に至らないために、こうした制度の利用を積極的に促進をしていかなければなりませんが、介護保険制度とこうした両立支援制度などがあることを知るために、私は特別の窓口が必要ではないかと考えています。

 介護保険の相談窓口として、自治体に介護のワンストップセンターがあったらいいと思いますが、いかがお考えでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘のように、介護保険制度は一定程度知っているんだけれども、いざ自分の家族に介護が必要になったときに、当該住んでおられる地域において、どう活用して、誰に言ったらいいか分からなかった、こういう声は私も聞くところでございます。そのように、家族の介護を理由とした離職者には、先ほど申し上げました、介護サービスを利用できずやむを得ず離職するだけではなくて、利用方法そのものが分からなかったという方はアンケート調査でも出てきているわけで、委員御指摘のように、地域における家族介護者への相談支援を強化することは大変大事なポイントだと思っています。

 現在、市町村が設置する地域包括支援センターにおいて、家族介護者に対する総合的な支援を行っているほか、就労している家族介護者の仕事と介護の両立を支援するため、関係団体とも連携し、研修会、相談会などの取組も進めているところでございます。

 また、介護離職者ゼロに向けては、介護サービスがしっかり受けられるようにしていくということと同時に、家族介護をされる方々をしっかり支援することが必要であります。ケアマネジャーなど家族介護者を支援する方が仕事と介護の両立について学習できる、仕事と介護の両立に関する研修カリキュラム、これを策定し、全国的な展開も図らせていただいているところでございます。

 こうした取組をしっかり進めて、介護等を必要とする高齢者のみならず、家族の介護者を含めて、しっかりと支えていく、また、そのためにも、そうした様々な支援措置があることの周知を図り、利用していただける環境をつくっていきたいと考えております。

大河原分科員 大臣からうれしい答弁をいただきました。家族を介護する介護者への支援が必要だという御認識をしっかり承りましたので、次に、ケアラーと呼ばせていただきますが、ケアラー支援制度の充実について伺いたいと思います。

 ケアラーは、ケアの必要な家族などを無償でケアする人を称して言っております。ケアに直面すれば、本当にケアをしっかりとこなしたいという思いが強く強く出てくるのがやはり家族でございます。

 介護保険制度はケアを受ける人の法整備になりましたけれども、介護保険制度自体にはケアラー支援の視点がありませんでした。ケアを必要としている人へのサービス提供は、家族の負担を軽減はしますが、ケアする人の支援にはなりません。ケア支援の強化は在宅における家族介護への回帰を懸念するところですけれども、実際に介護を担うケアラー支援の必要性は否定できません。

 各自治体では先行してケアラー支援の条例が制定されています。国ではこうした自治体のケアラー支援条例の制定状況や内容についてどのように把握しておられるのか、伺いたいと思います。

加藤国務大臣 家族介護者支援に関する条例の制定状況でありますが、網羅的な調査は行っておりませんが、一般財団法人地方自治研究機構のホームページにいろいろと事例が掲載をされております。

 それによりますと、ケアラー支援に関する条例が六県十二市町村において制定されると承知をしております。具体的に申し上げますと、埼玉県においては、高齢、身体上又は精神上の障害などにより援助を必要とする身近な方に対して無償で介護等を提供する方を対象とした、埼玉県ケアラー支援条例が制定されているなど、地域の実情に応じ、それぞれ取組が進められていると承知をしております。

大河原分科員 網羅的な調査はしていないというお話ですが、介護保険制度が導入されたときに、これは自治体、分権の試金石とも言われました。自治体が地域の状況を把握し、そして地域のニーズをしっかりと受け止めているからこそ、既に国に先んじてこうしたケアラー支援条例を作って、この超高齢社会を乗り越えようとしていると評価を私はしております。

 国は、ケアラー支援の必要性を認め、全国どこでもケアラー支援が行われるために、国こそがケアラー支援基本法のような法律を制定する必要があると考えられないでしょうか。

加藤国務大臣 まず、先ほどのように、また、委員御指摘のように、介護保険サービスあるいは介護等については、まさに地方分権の下でそれぞれの地方公共団体が主体的に取り組んでいただき、また、その一つの姿として、本件については、条例などを定め、また、様々な手段を通じて家族介護者支援も含めて取り組んでいただいているというふうに認識をしております。

 厚労省においては、介護保険法に基づき、介護、介護者への支援が可能と考え、例えば、訪問介護や通所介護、ショートステイ、小規模多機能型居宅介護などを要介護者に利用していただくことで家族の負担軽減につながるという側面があります。そうした意味での在宅サービス等の充実も図っているところであります。

 また、家族介護者本人に着目した支援という意味においては、介護保険法上の任意事業として、家族介護者を対象とした介護の知識や技術の研修、介護者同士の交流会の開催、市町村が設置する地域包括支援センターにおける家族介護者に対する総合相談支援など、自治体の取組を支援をさせていただいております。

 さらに、令和五年三月には、こうした自治体の取組を更に推進するため、地域包括支援センターの職員などを対象とした家族介護者支援に関する研修カリキュラム、また、市町村が家族介護者の集いの場を立ち上げるためのマニュアルの作成に取り組み、今年度はそれらの周知を図っていきたいと考えております。

 今後とも、今申し上げた介護保険制度の充実を図りつつ、介護を必要とする高齢者、家族介護者に対して社会全体で支えていける、こういった仕組みづくりに取り組んでいきたいと考えております。

大河原分科員 残り時間が少なくなりましたので、最後の質問をさせていただきます。

 最後は、小規模事業所の状況について伺いたいと思います。

 小規模事業所の倒産が増えております。コロナ禍だけが原因ではありません。介護保険制定当時の介護の社会化の理念は本当に重要であり、それを実現するために地域の介護力の維持が不可欠です。介護を必要とする状況になっても地域において一人で自立して生きられる環境が重要なわけでございます。住み慣れた地域で自分らしく暮らしたいというニーズに応えてきたのは小規模事業所だったのではないでしょうか。地域密着の小規模事業所、大臣の今ほどの御答弁でも、地域の介護力を維持し強化する、そうしたことが重要であることは、御答弁からも、介護保険の理念に沿って、今後更に重要な課題になってまいります。

 大事であることは分かっていながらも、小規模事業所の倒産が増えているのはなぜでしょうか。その点、大臣、一つ、まずお答えをお願いします。

加藤国務大臣 東京商工リサーチの調べでは、昨年の介護事業者の倒産件数が百四十三件、そのうち、従業員十人未満の事業所が約八〇%という結果が公表されております。原因としては、コロナ禍また物価高の影響などが指摘をされているところであります。

 地域密着型サービスなどの小規模な事業所は、市町村内の支援サービスに応じたサービス提供を行うほか、地域住民やボランティア団体とのつながりもあります。事業を展開しつつ、がございます。要介護者が住み慣れた地域で生活を支えるためにも、大変重要な役割を果たしているものと考えています。

 新型コロナの感染が拡大する中で、こうした事業所も含めて、介護サービス事業者の利用者に対して必要なサービスが安定的、継続的に提供されるよう、先ほど申し上げたような様々な支援を実施をしてきたところでございます。また、先ほど申し上げましたが、電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金も積み増しを含めた追加策を実施したところでございます。

 今後とも、こうした施策をしっかり進めながら、必要な介護サービスが提供されるよう、また次期の介護報酬改定に向けて議論をしっかりと進めていきたいというふうに思っているところでございます。

大河原分科員 私は、地域で自分らしく暮らし、働き、ケアも地域の中で受けたいと事業所を開設した方々の要望も毎年、厚生労働省につなげてきました。こうした地域の介護力は本当に重要であり、小規模ならではのきめ細かなサービスをなくしてはならないと考えています。

 今後も不可欠な事業所である小規模事業所を政府はどのように認識しているのでしょうか。是非、地域の介護力維持強化に国のしっかりとした方向性を大臣から御答弁いただき、地域の事業所の励ましにもしていただきたいと思います。お願いします。

加藤国務大臣 今、私ども、経営の大規模化、協働化も進めさせていただいております。こうした取組は、介護人材の確保が喫緊の課題とされる中で、介護サービスの質を確保し、人材や資源を有効に活用する手段の一つと考えているわけですが、これを進めているからといって、小規模な事業所、その存在を否定するものではなく、むしろ経営の協働化を図ることによって、小規模な事業所のままでも継続し、サービスを提供していただける、こういったことにもつながるというふうに考えているところでございます。

 小規模介護事業者の役割の重要性は、先ほど申し上げましたように、まさに地域に密着した形でサービスを提供されているわけでありますから、そうした地域密着型の、あるいは小規模介護事業者がそれぞれの利用者に対して、引き続き継続的に、安定的に、地域にまさに密着した形でサービスを提供していただく、このことは重要であり、また、そうしたサービスが引き続き提供されるように、先ほどからも申し上げておりますが、次期介護報酬改定においてしっかりと議論させていただきたいというふうに考えております。

大河原分科員 小規模事業所の重要性、大切さということは加藤大臣にも御認識があるというふうに私は今の御答弁から受け止めさせていただきます。

 そして、大規模化ということについては、実際には小規模事業所が継続できるように協働化をするという御答弁なわけですけれども、受け止め方は、やはり大規模事業所に国の方針が、軸足があって、小規模事業所には、どんどん大規模事業所に潰されていく、そういう圧力を実際には地域からは感じるというお声が強いわけなんです。

 ですから、是非、今後、地域の介護力強化、そして支援強化を、厚生労働省として、しっかりと現場の声を聞いて御対応いただきたい。私もそのために、今後とも、介護を崩壊させない実行委員会の皆様や地域の小規模事業所の方々とともに更に厚生労働省との対話を続けさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、時間がなくなりましたので、これで質問を終わらせていただきます。

 大臣、ありがとうございました。

福重主査 これにて大河原まさこ君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)分科員 立憲民主党・無所属の岡本あき子でございます。

 今日は、質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 私からは、まずはマイナ保険証について伺いますが、今日、デジタル庁にもお越しいただいておりますので、まず、マイナンバーカードと一体化の点で、何回も確認をして、御答弁、いろいろな場面でしていただいていると思いますが、マイナンバー法において、マイナンバーカードの取得はあくまでも申請主義であって、決して義務ではない、この点を確認させてください。

内山政府参考人 お答えいたします。

 マイナンバーカードは国民の申請に基づき交付されるものでありまして、マイナンバーカードの取得を義務づけるものではございません。

岡本(あ)分科員 もう一点、確認します。

 私、マイナンバーカードを普及すること、あるいはマイナンバーの活用、可能なところを活用していく、これは基本的にはとても賛同しております。

 ただ、これは、メリットを感じる方に利用していただくのはもちろん重要なんですが、総務委員会でも指摘をしましたが、例えばDV被害者にとって、マイナンバーカードやマイナ保険証にした場合、避難した先が加害者に知られてしまうというリスクも実はありまして、いろいろな自治体で、手続を取ってください、危険がありますよということもお伝えをされています。

 必要な手続を被害者側が取らないと、メリットどころかリスクを感じるという場合がございます。こういうリスクを感じるという方にまでカードを強制するものではないということ、改めて求めたいと思います。お答えください。

内山政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、御指摘のように、DV被害者など、様々な御事情をお持ちの方がいらっしゃると思いますけれども、マイナンバーカードの取得については、そうしたケースも含めまして、個々の事情にかかわらず、本人の意思で申請するものでございまして、国民の皆様に取得義務は課されておらず、取得を強制するものではございません。

 また、御指摘がありましたように、マイナンバーカードの様々なメリットやその安全性については、分かりやすく国民に周知広報をすることによって、カードの取得の促進を図ってまいりたいと考えてございます。

岡本(あ)分科員 強制ではないということで、ただ一方で、紙を廃止をしていくということで、今の流れとすると、もう極力マイナ保険証にしてほしいという流れがあるのではないかと思います。

 資料一で、今、現行の健康保険法の規則の第四十七条では、「被保険者証を被保険者に交付しなければならない。」となっております。これから先、この規則は、この部分は削除になってしまうのか、それから、申請がなければ交付しなくてもいいということまで決断をするということなのか、この点、お聞かせください。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 まず、保険証につきましては、今回、マイナンバーカードとの一体化ということでございますので、来年の秋に廃止することを考えております。従来、被保険者全員に発行してきた仕組みについては廃止していく方向で考えてございます。

 それから、マイナンバーカードで受診していただくということなんですけれども、マイナンバーカードでは、まだ取得していないとか、別の事情で資格確認が難しいという方に関しましては、御本人の申請に基づきまして資格確認書を交付する、このように考えてございます。

岡本(あ)分科員 申請がなければ交付しなくてもいいという決断に至るということでしょうか。

伊原政府参考人 資格確認書が必要となる事情は様々なケースがございますので、基本的に本人からの申請に基づいて交付する、こういう仕組みを考えてございます。

 一方、資格確認書の申請手続の失念等によって保険診療を受けることができないという事態、これは防がなければいけないと考えてございますので、当然、来年の秋の健康保険証の廃止に向けて、マイナンバーカードの保険証利用の登録をしていない方には資格確認書の申請を促す案内をお届けしていきたいと考えてございます。また、御本人からの申請ができない方につきましては、御家族あるいは施設職員や支援団体等の代理申請を促していくということを考えてございます。

 それでもなお資格確認書の申請が期待できないと判断された場合には、本人からの申請によらず資格確認書を交付することを可能とする、こうした対応も考えているところでございます。

岡本(あ)分科員 私は、この規則、この第四十七条は削除するべきではないと思います。ちゃんと保険料を払っていて、でも、先ほど申し上げましたDV被害者とか、あるいは、パスワード、先ほど代理申請とおっしゃいましたけれども、自分の、個人を証明するパスワードを、代理だったら誰でもいいのかみたいな形で、他人がパスワードを知った状態でカードを使うということも、私からすると非常に疑問を感じざるを得ません。

 改めて、やはり、マイナ保険証を持ちたい方は是非持っていただきたいし、一〇〇%近く持っていただくことも理解はしますし、是非それは、メリットを感じる方はやっていただきたいと思います。ただ一方で、持ちたくない、あるいはパスワードを他人に託してまで、あるいは自分でパスワードというのを覚えられない方もいらっしゃる、こういう中でまで、マイナンバーカードにマイナ保険証を載せる、申請されなければその次の手だて、その次の手だてということは、私とすると賛同できません。

 是非、ほかの法律もありますけれども、健康保険の、この規則第四十七条、「被保険者証を被保険者に交付しなければならない。」これは残すべきだと思います。これは健康保険法なので、大臣、お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 今委員御指摘の点でありますけれども、先ほど局長からも答弁いたしました。こうしてマイナンバーカードを一体化して、よりよい医療を受けていただきたい、そういったことから、今回、保険証の交付を廃止するという法案を出させていただいているところでございます。

 あわせて、これは二つのシステムということになるわけですね、委員のおっしゃることは。そうすると、既存の制度を乗せると、まさにコストの問題もございます。

 かなりの方は一体化を進めていただいておりますから、基本的にそれによって現在の発行コストが一定程度軽減されるというメリットもある中で、しかし他方で、マイナンバーカードをお持ちにならない、あるいは持たない、こういう方がいらっしゃるわけでありますから、それに対する対応は、先ほど局長から申し上げたように、幾重の対策を講じながら、全ての方が健康保険制度の中で、特に保険料を納付されている方は当然それにのっとったサービスが提供される、それを確保していくのは私たちの使命だというふうに考えてはいます。

岡本(あ)分科員 もう一度、大臣、お答えいただきたいんですが、私は、申請をして交付をしてもらうではなくて、交付しなければならない立場に、健康保険組合、あるいは協会けんぽさんも含めてですけれども、保険者の方が被保険者に被保険者証を交付するべきだと思っております。

 この点、もう一度お答えいただければと思います。

加藤国務大臣 これは制度の組み方でありますので、もう健康保険証は廃止するということ。そしてその中で、それに代替する手段として、今回の資格確認書という仕組みを創設をさせていただき、それに対しては、先ほど局長から申し上げたように、保険診療を受けることができない、こういった事態がないように幾つものケースを置いている。その前提として、資格確認を受けることができない状況には様々な事情がありますので、それを考えますと、御本人からの申請をしていただくという仕組みということとさせていただいているところでございます。

岡本(あ)分科員 重ねて一考をお願いしたいと思います。

 逆に、作業やコストも考えると、マイナ保険証にされた方はどんどん保険組合の方で、この方は送る対象外といって、別に管理をしていただければよくて、それに残った方々は一律発送できることになるんですね。申請主義だと、ずっと待っていなきゃいけない。逆に、申請にもいらっしゃらない方の事情をこちらからアプローチしなきゃいけない。かえってコストがかかるのではないかと思いますので、是非御一考いただきたいということを指摘させていただきます。

 それから、私も昨日、介護施設の方から御要望いただきました。マイナ保険証になってしまうと、マイナンバーカードとして、入居系の介護施設、今まで紙の保険証を預かっておりましたけれども、マイナンバーカードはとても責任が重たくて預かれない、何とか紙を残してくれという要望をいただいております。

 安全に管理できる方法をこれから考えるという答弁がほかの委員会でありましたけれども、まだ決まっていない状態の中で、マイナンバーカードに、マイナ保険証に、介護の入居者の方々も一律求めていく、こういうように受け止められる状況、これを一歩とどまっていただきたいと思いますが、この点は、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 現時点において、高齢者施設等において、施設入所者の健康保険証を職員の方等が預かって、そして入所者が医療サービスを受けておられる事例があることは承知をしております。

 患者の方が、先ほどから申し上げておりますように、マイナンバーカードを利用して医療機関を受けていただく場合には、様々なデータに基づいて、よりよい医療を受けることが可能であります。まさに本人にとってメリットもありますので、そのメリットは、高齢者施設に入っておられる入所者の方においても同じように享受していただきたいというふうに思っております。

 他方、今お話があったような様々な実態もございますので、マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会において、認知症当事者の方、その御家族、介護施設の関係者を含む関係団体からもいろいろお話を伺い、二月には中間取りまとめをさせていただきました。

 そこにおいては、暗証番号の設定に困難を抱える申請者がおられる現実を踏まえ、今後、暗証番号の取扱いについて検討する、また、施設入所者のマイナンバーカードの管理の在り方などについて、取扱いの留意点を整理した上で周知、安心して管理することができる環境を推進するとしておりますので、引き続き、そうした関係者等々のお話もしっかりとお伺いしながら、やはり、介護施設におられる入所者の方々も、先ほど申し上げたように、マイナンバーカードを利用した形でよりよい医療を受けていただく、そのように、暗証番号の問題、第三者によるカードの取扱いの問題、課題等ございますので、そういった課題に対する対応を我々の方でしっかり検討し、また丁寧にお示しをさせていただきたいと考えております。

岡本(あ)分科員 ずっと、よりよい医療という答弁、いろいろな場面でお聞きをしているんですが、具体的にどういうというところがまだ見えていないんですね。なので、施設の方も、入居者の方も、不安の方が大きい、カードを預ける不安の方が大きいというのが今の状態なんだと思います。是非、この点も、紙のままでいいよという選択肢もしっかり残していただきたいと思います。

 そもそもなんですが、保険証がなくても、医療の受診と自己負担というのは担保されるべきだと思います。先ほど御答弁で、ちゃんと保険料を払っている方はとお答えいただいております。

 オンラインの資格確認システムが始まっていますけれども、逆に、マイナ保険証じゃなくて、御本人が保険証の番号があって、分かって、住所、氏名、生年月日、そして間違いなくその人が本人だというのがカードじゃなくても確認できれば、実は、システム上、技術的には資格確認できるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 医療保険を適切に運営していくためにも、医療機関等の受診におきまして、適切に本人確認を行って、例えば成り済ましを防止する、あるいは、もう既に保険が失効しているという方への受診をその場で明らかにする、こういう必要がございます。

 このため、今回、オンライン資格確認システムで確認する、あるいは、健康保険証の提示によって被保険者であることの確認をするということを現在やっているわけでございますけれども、このオンライン資格確認のシステムにおきましては、例えば、顔認証つきカードリーダーや資格確認端末の不具合、あるいはシステム障害等が理由で資格確認システムが使えないという場合におきまして、システム障害時モードという対応が可能になっています。そうした場合には、患者のマイナンバーカードの券面情報を控えておく、あるいはその後に、通信が復旧後に、オンライン資格確認等システムでシステム障害時モードを立ち上げて事後的に確認する、こういうことを可能にするシステムはございます。

 ただ、そういうシステムを使ってやるのは、あくまでも特例的でございます。あるいは、今の被保険者証の場合でも、やはり成り済ましの問題というのはございます。そういう意味でいいますと、成り済まし等を完全に防止するというふうな観点、あるいは医療機関に、券面情報を控えたり、給付率などの資格確認を事後的にやっていただくという事務負担をなくしていくという意味からしても、やはり、今のオンライン資格確認システムを使った確認システムが有効ではないか、このように考えてございます。

岡本(あ)分科員 私は、みんなにそれを使えとは言っておりません。多少手間暇がかかるのも分かります。ただ、技術的にはできることなんです。なので、先ほど特例とおっしゃいましたが、マイナ保険証を持てない、持ちたくない、そういう方にはこの特例を使うということも是非御検討いただきたいと思いますし、これは厚労省としても考えていただきたいと思います。

 みんながみんなではないんですよ。多分かなり少数にはなると思いますけれども、やはりいろいろな事情で持てない、あるいは持つ手続が取れない、そういう方もいらっしゃいます。こういう方には保険証の番号が、それは御本人が元々控えていていただくことにはなるかもしれませんが、個人確認が取れることで医療が受けられる、それから自己負担の割合も適正に受けられる、このことは考えていただきたいと思います。

 ちょっと時間の関係で、先に次の項目に移ってから、時間があればまた戻りたいと思いますが、続きまして、旧優生保護法における被害者救済について伺います。

 旧優生保護法は、優生思想、優生政策上の見地から、不良な子孫の出生を防止することや、母体保護の理由で強制不妊手術等を強いた法律です。一九四八年、議員立法で、国会の、衆議院の全会一致で成立させたものです。九六年まで、実に五十年近くにわたって、障害者の人権を侵害する行為が行われていました。私も立法府の一員として、議員立法で作られたという歴史、この点は本当に心からおわびを申し上げたいと思います。

 さて、救済一時金の制度をつくりましたけれども、なかなか認定の状況は進んでいないと思っております。二万五千件ぐらい手術した対象があるんじゃないかと言われておりますけれども、今、三月時点で千四十七件という状況です。更なる周知の努力、適用していただく、必要な方にお届けをする努力が必要ではないかと思いますが、これはこども家庭庁にお答えいただきたいと思います。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の旧優生保護法一時金の支給対象となる方々には確実に請求いただけるようにするためには、様々な機会、ルートを活用して、積極的に周知広報を行うことが重要であるというふうに考えてございます。

 これまで、ホームページ、SNSなどを活用した周知でございますとか、障害者関係団体と連携しての周知広報、あるいは、新聞広告、インターネット広告、ラジオ広告などによって周知に取り組んできたところでございまして、直近ですと、本年三月に複数の全国紙に数回にわたって一時金制度についての広告を掲載をしたところでございます。

 これらに加えまして、障害特性を踏まえた対応ということで、手話、字幕つきの動画をユーチューブにアップする、点字版リーフレットなどを作成、配布するなどの取組も併せて行っているところでございます。

 昨年度、令和四年度には、都道府県、さらには障害関係団体に対しまして、改めて積極的な周知広報への御協力をお願いするとともに、都道府県に対しましては、各都道府県における周知と広報への取組状況でございますとか、あるいは情報入手先のアンケートをした結果、こちらについても共有のために周知をしたところでございます。

 この一時金を着実に支給いたしますために、引き続き、障害者関係団体などにも御協力いただきながら、積極的な周知広報に努めてまいりたいと考えてございます。

岡本(あ)分科員 更なる御努力をお願いしたいと思います。

 一方で、資料三を御覧いただきたいんですが、訴訟になっている中で、国に損害賠償を命ずる判例が、これはマーカーをつけた部分ですけれども、続いております。これは、こども家庭庁としてはどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。

自見大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 旧優生保護法に基づきまして、あるいはこの法律の存在を背景といたしまして、多くの方が、特定の疾病や障害を理由に、生殖を不能にする手術等を受けることを強いられ、心身に多大な苦痛を受けてこられたことについて、政府として、真摯に反省し、心から深くおわびを申し上げる次第です。

 その上で、係属中の個別の訴訟につきましては、それぞれの具体的な事情も異なることから、法律の解釈、適用を含めて個々に検討し、事案の内容に応じて一つ一つ丁寧に対応しているところでありまして、そのような観点から内容を精査いたしましたところ、除斥期間の法律上の解釈、適用に関しまして、いずれも旧優生保護法に係る本件事案にとどまらない法律上の重大な事案を含んでいることなどから、上告せざるを得ないとの判断に至ったものであります。

 一方、こうした方々に対しまして、平成三十一年に、超党派の議員連盟におきまして法律案が取りまとめられ、国会において、全会一致により、一時金を支給するための法律が定められました。

 そうした中で、昨年二月の大阪高裁判決、三月の東京高裁判決以降の判決におきまして、一時金の金額を超える認容額が示されたことを重く受け止め、一時金支給法が全会一致で制定された経緯を踏まえ、今後の対応の在り方につきましては、国会に御相談をしているところであります。

 政府といたしましては、引き続き、国会での御議論の進展に向けて最大限の努力をさせていただくとともに、御議論の結果を踏まえて対応をしっかりと進めて検討してまいります。

岡本(あ)分科員 資料三でマーカーをつけたところは、裁判の、国に賠償を求めた判例です。左側に、ちょっと網がかかっているところ、五名の方が訴訟途上でもう既に亡くなっております。認定された方も、三割がもう八十歳以上、七十歳以上だともう六割を占めている状況で、余り時間をかけられないということも現実だと思います。

 今、国会とという御答弁ありましたけれども、国会としてもあらゆる知恵を絞っていく努力をするべきだと、私もその一員として力になればと思いますし、是非、政府としても一緒に連携をして、被害者を救済していきたいと思いますが、再びお答えいただきたいと思います。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 旧優生保護法に基づきまして、あるいはこの法律の存在を背景として、特定の疾病や障害を理由に、生殖を不能にする手術等を受けることを強いられた方々に対しては、平成三十年当時、超党派の優生保護法下における強制不妊手術について考える議連が立ち上がり、既に御高齢であること等を十分に踏まえつつ法律案が取りまとめられ、国会において、全会一致により、一時金を支給するための法律が定められました。政府といたしましては、立法府の総意による法律に基づき、引き続き、一時金を円滑かつ確実に支給することで、その責務を果たしてまいります。

 また、政府といたしましては、一時金の支給法が全会一致で制定された経緯も踏まえ、今後の対応の在り方につきましては、昨年六月、超党派議連に検討をお願いしたところであり、引き続き、御議論の進展に向けて最大限協力させていただくとともに、御議論の結果を踏まえて対応をしっかりと検討してまいります。

岡本(あ)分科員 被害者に本当に救済の手が届くように、お互いに協力をさせていただければと思います。

 続きまして、出産、子供に関する医療費について伺います。

 子供医療費助成に係る国保減額調整、これは、未就学は平成三十年から減額をやめていただいているんですが、政府の試案の中に国保の減額調整の廃止という記載があるんですが、是非、速やかに適用していただきたいと思うんですが、できれば、遡って四年度から適用していただきたいと思うんですが、この点いかがお考えかという点。

 まとめてもう一つ、そもそも、子供の医療費を無償化することは、国として行うべきことではないかと思います。少子化の中でも、もう既に小学校でも九割の自治体が無償化に踏み切っていますし、中学生でも八割を超える自治体が無償化に取り組んでいます。この点を考えると、ベースとして国が子供医療費を無償化する努力をするべきだと思います。

 この点、大臣、お答えください。

加藤国務大臣 まず、小倉大臣の下で取りまとめましたいわゆるたたき台において、地方自治体の取組を支援する観点から、おおむね全ての地方自治体において実施されている子供医療費助成について、国民健康保険の減額調整措置を廃止するということ、ただ、あわせて、適正な抗菌薬使用を含め、子供にとってよりよい医療の在り方について、今後、国と地方の協議の場などにおいて検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずること、これも盛り込まれているところでございます。このたたき台を踏まえて、こども未来戦略会議において、必要な政策強化の内容、予算、財源、実施時期について議論を深めていくこととなります。

 また、国保の減額調整措置の廃止については、社会保障審議会医療保険部会においての検討も進める必要がございます。

 そうした点を踏まえながら、まずはこども未来戦略会議における議論を踏まえながら、そうした審議会における議論、そういったものに対する対応も図っていきたいと考えております。

 また、医療費の無料化でありますが、これを、窓口での負担を求めず無償化することは、自己負担の軽減による受診行動の変化、さらには、不適切な抗生物質の利用などの増加が懸念されるなど、様々な課題が実証研究において指摘もされているわけでございます。さらに、財政事情ということもございます。

 こうした研究の指摘、あるいはこれからの議論、これをしっかり踏まえながら、ポイントは、子供にとってよりよい医療の在り方、これはどうあるべきなのかということだと思いますので、こういった点についてはしっかり我々も検討を進めていきたいと考えております。

岡本(あ)分科員 是非お願いしたいと思います。

 財政負担の話が出ましたけれども、医療費の推移を見ますと、残念ながら、子供が減ってきている関係上、小児科の医療に関わる支出というのは、残念ながら、総額とすると減っているんですね。なので、財政上、例えば無料にすると増えるとか、国がやると増えるとか、そういうことは、もし増えたら、もう本当にうれしい悲鳴になると思いますが、その点は指摘させていただきます。

 そして、もう一個飛ばさせていただいて、障害児への行政サービスの所得制限、ここも伺わせてください。

 障害児の通所支援、それから補装具支給、特別児童扶養手当、障害児福祉手当、これは、所得制限があったり、あるいは負担割合が、例えば通所支援だと、年収八百九十万以上だと三万七千二百円、未満だと四千六百円と、余りにも差がある状況です。障害を持ったお子さん御本人、資料二では、「大きくなってごめんね」という記事が載っています。障害があるお子さんが成長することをしっかり支える意味でも、この所得制限ですとか余りの格差、これは是正するべきだと思います。

 この点、自見政務官、お答えください。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 今回の試案、特にその中核となります加速化プランは、二〇三〇年までの六から七年間で少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスであることを踏まえ、まずは、今後三年間を集中取組期間として、優先的に取り組むものを整理したものであります。

 加速化プランでは、国際比較におきまして相対的に割合が低い現金給付を強化することとしていますが、その際、まず、全ての子供の育ちを支える経済的支援の基盤を強化することとし、具体的には、児童手当の所得制限の撤廃、高校卒業までの延長、多子世帯の経済的負担を踏まえた手当額の拡充を行うほか、高等教育費の負担軽減、住宅支援の強化などを行うこととしております。これは、障害児の家庭の経済的負担の軽減にも大きく資するものであると考えております。

 一方、お尋ねの、障害児支援に関します福祉サービスの利用に関しましては、一割の自己負担を原則としつつ、それが過剰な負担とならないよう、自己負担額の上限額を所得に応じて設定する仕組みとなっているものであります。また、同一の世帯にサービスを利用する者が複数いる場合に、世帯の負担軽減の観点から、利用者負担を合算した額のうち基準額を超える部分を償還すること、また、令和元年十月以降、三歳から五歳の障害児に係るサービスの利用者負担を所得にかかわらず無償化することなど、きめ細かい配慮をしているところでもあります。

 この利用者負担につきましては、制度の持続可能性や公平性等も踏まえて設定しているものであり、御指摘の一律無償化については慎重な議論が必要であると考えておりますが、それぞれの御家庭に様々な御事情があり、きめ細かい支援をしていくことが極めて重要であると考えております。

岡本(あ)分科員 障害があるお子さん御自身がやはり伸び伸びと育つことができるように、それから、障害があるお子さんを持っている御家族が安心して子育てできる環境、これを整えていただくことを望みたいと思います。

 出産一時金のお話ができなかったので残念ですが、出産一時金、これは、保険適用を進めていくという報道等もございました、三割負担も、負担をさせない方向で。それから、助産院ですとか、保険適用で出産をした結果、今の五十万、上げていただくのはありがたいんですが、結果として持ち出しが増えるなんてことは絶対ないように望んで、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

福重主査 これにて岡本あき子君の質疑は終了いたしました。

 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)分科員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。大臣、よろしくお願いいたします。

 私は、まず、コロナの後遺症について伺いたいんですけれども、罹患後の症状を持たれている方というのは何%ぐらいか。いろいろな数字があって、三分の一だとか四分の一だとかいろいろな数字があるんですが、政府として把握している後遺症、罹患後の症状を示されている方というのは大体何%ぐらい、どのぐらいいらっしゃるんでしょうか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナの罹患後症状、いわゆる後遺症につきましては、様々な症状が知られておりまして、その病態は十分に明らかにはなっておりません。このため、罹患後症状に悩む方の数については、どのような症状等を呈する方を患者として定義して把握をするのか、また、罹患後症状を呈する方の多くは経時的に症状が改善することが知られている中で、患者数の把握をどの時点でどのように行うかなどの課題があるため、全体の総数について把握することは現時点では困難でございます。

 ただ、これらの罹患後症状の実態を明らかにするために、令和二年、三年度の調査研究におきまして、コロナと診断され入院歴のある方を対象として、呼吸器症状、味覚、嗅覚症状等、様々な症状について実態調査を行いました。それらの研究から、多くの症状は経時的に頻度が低下する一方で、例えば、中等症以上で入院した方をフォローした調査では、十二か月後に何らかの罹患後症状がある方が約一四%の方で残存していたといったようなデータもありまして、一定程度こういった方々が存在するという結果が得られているところでございます。

奥野(総)分科員 一四%という数字なんですが、今の答弁だと味覚障害とか呼吸器系の話だという答弁ですが、全体として、例えば神経系の症状ですね、神経の不調というようなものがこの数字に含まれているのかとか、それから、いわゆるWHOのロングCOVIDの定義というのがあると思うんですが、それに従ってきちんと把握しようとしているのか。もう少し詳しく、実態の把握の努力について伺いたいんですけれども。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 今申し上げました、例えば入院された方につきましての調査で見ますと、十二か月後に残存していた症状として、例えば神経系のものでありますと、筋力低下、こういったものは八%の方に見られている、あるいは記憶障害、こういったものにつきましては七%程度の方に見られているというような調査結果が出ております。

 また、御質問ありましたWHOの定義に沿った実態把握ということでありますけれども、こちらにつきましては、コロナ罹患後症状については、その病態についていまだ不明な点が多いわけですが、WHOにおいてはその症状の定義を示しておりまして、昨年度の厚生労働科学研究では、WHOが示す定義にのっとりまして調査を実施しているところでございます。

 このWHOの定義といいますのは、コロナウイルスに罹患した方に見られ、少なくとも二か月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないものがコロナの発症から三か月たった時点にも見られるというものでございます。

 冒頭で説明させていただきました令和二年度と三年度の調査研究、これは入院患者さんについてのものでありますけれども、これに加えまして、令和四年度からは、複数の自治体の協力を得まして、入院だけじゃなくて軽症の患者さんも含めて、住民を対象とした調査研究も実施しているところでございます。

 具体的には、入院患者が退院した後の追跡調査に加えまして、八尾市、これは大阪府でありますが、あるいは品川区などの協力によりまして、感染したことがある方と感染したことがない方の両方を対象として、症状の有無や社会生活への影響等を把握する数万人規模の調査研究を実施しておりまして、こちらにつきましては、御指摘のWHOの定義も踏まえて調査研究を今実施しているところでございます。

奥野(総)分科員 コロナが始まったのが恐らく二〇二〇年の初頭だったと思うんですけれども、もう三年、丸三年たっていますね。その間、もちろん大変だった、まず患者さんの治療、隔離といったところが大変だったのは分かるんですが、少しテンポが遅いような気もするんですよ、今ようやく数万人の調査をされているということなんですけれども。

 この地域も、二か所ということですけれども、もっと大規模に全体的に把握をできないのか。素人考えですけれども、例えばレセプトのデータを使って拾えないのかとか、もっと全国的に大規模に調査をできないんでしょうか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げました大規模実態調査につきましては、八尾市、品川区に加えまして、先ほど二か所のみを申し上げましたけれども、札幌市も含めまして実施をしているところでございます。こういった市町村におきましては、数万人規模で一年間以上のフォローアップということで実施をしているところでございます。

 レセプト等を使った調査につきましては、これは今のところ予定はしておりませんけれども、そういった研究もあり得るのではないかと考えております。

奥野(総)分科員 まだ、今ようやく実態把握をしているということですね。諸外国も、アメリカなんかは退役軍人中心に大規模な調査、退役軍人が全米国民を代表しているかどうかという問題はありますが、大規模な調査も行われたようですし、日本でもきちんと現状把握に努めるべきだと思うんですが、現状把握はそうなんですが、さらに、その上で、原因を究明して治療法を考えなきゃいけないんですよね。

 今問題になってきているのは、神経の不調、ブレーンフォグとか、極度の疲労、後から伺いますけれども、慢性疲労症候群と似たような症状、あるいは慢性疲労症候群なのかもしれませんけれども、そういった症状も出てきているということなんですが、こういった罹患後症状のメカニズムですよね。それぞれあると思うんですが、とりわけ一番問題になりそうな、神経の不調による、神経系の後遺症について、原因は特定されているのか、されていないとすれば、今、そういう実態調査、研究になると思うんですが、医学的な研究は行われているのかということを伺いたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 コロナの罹患後症状の病態解明でありますとか治療薬に関する研究ということにつきましては、日本医療研究開発機構、AMEDを通じまして、罹患後症状に関します発症機序でありますとか病態解明、診断法、バイオマーカーの研究開発、それから治療法の開発等の支援を現在しているところでございます。

奥野(総)分科員 要するに、だから、まだ具体的な治療法、原因がきっちり、機序というらしいですけれども、具体的な因果関係が明確でないから、治療法もなかなか明確じゃないということをおっしゃっているんだと思うんですね。しかし、随分苦しんでいる方も増えているということだと思います。

 少し話が枝に入ってきますけれども、慢性疲労症候群と似た症状、あるいは慢性疲労症候群そのものがコロナ禍で増えているんじゃないか、こういう報道がなされているわけですよ。その辺の現状ですよね。慢性疲労症候群自体は随分古くから症例が報告されていて、治療法もなかなか見つからないということで、それと同じような症状の方が増えているという報道がなされていますが、それはそういうことなんでしょうか、その現状認識。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 御質問のME、CFSと言われます、いわゆる慢性疲労症候群につきましては、これまで二十年以上、厚生労働科学研究、あるいはAMEDの研究費の補助金を使いまして研究を行ってきたわけですが、なかなか病態の解明、あるいは診断基準の確立には至っていないというのが現状であります。そういうような状況でございまして、これは引き続き様々な研究を続けていく必要があるというふうに考えております。

奥野(総)分科員 要は、これは分からないんですよね、そういうふうに言われているというだけで。確かに、さっきの調査の中で、そういう極度の疲労を示されるような方は数としてカウントされているんだとは思うんですが、それが、今言ったように、どういう原因であるのかもはっきりしない。従来から報告されているME、CFS、慢性疲労症候群との関係も明らかじゃないということだと思います。

 しかし、随分苦しんでおられる方もいらっしゃるんですね。私の周りでも、なぜ今日こういう質問をしようかと思ったかというと、二方いらっしゃるわけですよ、身近なところで二方もいらっしゃるんですね。ちょっと動くとすぐ疲れてしまって動けなくなる、仕事もできなくなると苦しんでいる方が私の身近にもいらっしゃるんですよ。ということは、結構たくさんいらっしゃるんじゃないかなと思うんですね。その割には研究が進んでいない。

 例えば、これがきちんと研究されていれば、逆に、今回のコロナの罹患後症状についても応用できるかもしれないわけですよ。症状が同じだから、そこの治療ができれば、同じ治療をすればいい、そういう専門家の意見もあるわけですから、この話を伺っているんですけれども。

 じゃ、慢性疲労の研究の進捗というのは、随分、もう二、三十年ですかね、やっていると思うんですが、進んでいるんですか。例えば診断法だって今、明確に確立していないと思うんですが、そこの研究もされているようですが、どうなんですか。診断法の確立と、それから研究ですね。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 慢性疲労症候群につきましては、これまでも病態の解明あるいは診断基準の確立を目的とした複数の研究が行われてきておりますけれども、残念ながら、現時点において、この発症のメカニズムも含めて、あるいはその診断基準ということも含めて、確立するには至っていないというところでございます。

 ただ、研究自体は我々としてもしっかり続けていかなければいけないというふうに考えておりまして、令和四年度からは、これは厚生労働科学研究におきまして、新たに三か年の研究として、ME、CFS、慢性疲労症候群の客観的診断法の確立に関する研究が進められているところでございます。具体的には、国内外の文献の精査やバイオマーカーの研究等が行われておりまして、これは引き続き、神経免疫学の専門家等の御意見も伺いつつ、病態解明に向けた研究を進めていく必要があるというふうに考えております。

奥野(総)分科員 さっきちょっと聞きそびれたんですが、コロナの罹患後症状ということではなく、慢性疲労症候群と診断されている方というのは、大体どのぐらいいらっしゃるんですか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 慢性疲労症候群につきましては、疾患の概念でありますとか客観的な診断基準が確立されていない中で、その人数について正確にお示しをすることはなかなか難しいものと考えております。

 しかしながら、例えば、平成二十四年になりますけれども、厚生労働科学研究で行われた愛知県での二千人の調査で行われたものでありますと、患者さんは全体の人口のうちの〇・一%から〇・二%程度の方がいらっしゃるという結果が出ております。

奥野(総)分科員 全人口の〇・二%から〇・三%というと、二十数万人、三十万人、結構な数なんですよね。私の周りにもいらっしゃるんですけれども、これだけの数の方が、今の話だと、診断ができないということは、よく分からない、何か大変だよねと、よく分からないままで治療も受けられず、治療法も確立せず、ずっとそのままになっているということですよ。外形的な、客観的な四要件でしたかで客観的に見て当てはまって、ほかに原因が分からなければ一応そういうふうな名称で呼ぶということになっているだけで、そういう病気があるということすら実はきちんと定義されていないということですね、これは。非常に残念なんですね。本当に苦しまれている方がたくさんいらっしゃるので残念なんですが。

 その上で、じゃ、これだけ問題になっているんですが、今、令和四年度からやっていると言いましたけれども、今年度で予算は幾らついているんですか。まず、どういう研究があって、治療法の確立というのがまず大事なんでしょうけれども、あるいは診断法の確立、それから治療法について、幾らぐらい予算がついているんでしょうか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 まず、コロナの罹患後症状の病態解明あるいは治療薬の開発ということにつきましては、令和四年度の研究費になりますけれども、約四・九億円がございます。

 また、ME、CFSの関係の研究につきましては、令和四年度におきまして、厚生労働科学研究補助金によりまして約六百万円の補助を行っているところでございます。

奥野(総)分科員 今申し上げたんですけれども、二十万人、三十万人の方がそういう症状を呈しておられる。昨日、今日の話じゃなくて、調査も二〇一二年、その前は一九九九年にやられているんですかね、こういう実態調査。ということは、二十年、三十年来の課題なわけですよ。その予算が六百万円って、多分、人件費とか、人を一人、二人雇って終わりの数字ですよね。少なくないですか。

 それから、併せて聞いちゃいますけれども、コロナの罹患後症状の研究も、治療法ですか、四・九億円というんですけれども、これはなかなか民間じゃやりづらい研究だと思うんです、どっちも。こういうところこそ、やはり厚生労働省がしっかり予算をつけてやっていかなきゃいけないと思うんですが、大臣、いかがですか。

 結構、本当に、罹患後症状はこれからもどんどん問題になってくるでしょうし、慢性疲労症候群がきちんと治療法ができてくれば、コロナの罹患後症状にも応用が利くはずなんです。だから、両方の話として、二つの予算をきちんと増やしていただきたいんですが、どういう認識でしょうか。

加藤国務大臣 新型コロナの罹患後症状は、国会でも、厚生労働委員会を含めていろいろと御議論もいただいているところでございます。

 また、いわゆるME、CFSについても、社会的な関心も多く、そして、それに悩んでおられる方もおられるということで、御本人また御家族のためにも実態を調査し、そして治療薬等の研究開発を進めていくことが重要だと考えています。

 先ほど局長から答弁したように、現状においては、厚労省において、またAMEDなどを通じて、こうした調査研究に対する支援を行ってきたところであります。今委員からも応援をいただいているということだと思いますが、しっかりと調査研究を進めていきたいと思っております。

奥野(総)分科員 やはり国会答弁を見ていますと、罹患後症状について言えば、手引を配っていますからという答弁が多いんですが、手引を配っても、例えば神経系の症状を呈されている方を、開業医の皆さんがきちんと診断できるかというとなかなか難しいと思うんですね。

 だから、当初応急的にこういう話をするのはやむを得ないとしても、もう大分たっているわけですから、きちんと取り組んでいただきたいんですね。調査自体もようやく本格的な罹患後症状の調査が行われつつあるということですけれども、そこから先はやはりきちんと治療していかなきゃいけないわけですし、これから一年、二年たって、神経症状が残っておられる方というのはたくさんおられると思うんです。

 だから、是非、大臣、これは真剣に取り組んでいただきたいと思います。まあ、いろいろ役所のカラーがあると思うんですけれども、厚労省は割と慎重でして、なかなか、予算も堅め堅めでやられるので、是非前向きにやっていただきたいと思います。

 もう一点、慢性疲労症候群の話をしますけれども、これはロングCOVIDの話も絡みますけれども、障害年金ですね。働けなくなったときにやはり収入の道が断たれてしまうんですね。障害年金制度というのがきちんとあって、動けなくなればそれは支払われるはずなんですが、ME、CFSの方の障害年金、支給されている方がいらっしゃるのは訴訟が起こっているので分かるんですが、どのぐらい支給されているか、数は分かりますか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 障害年金においては、個別の傷病名ごとに受給者数を統計的に把握しているものではないため、慢性疲労症候群についての障害年金の受給をされている方の人数をお答えすることは困難でございますけれども、障害年金業務統計においては、慢性疲労症候群における受給者を含む形で、血液・造血器・その他の種類により、新規裁定された方の件数を分類しているというか示しておりまして、令和三年度の件数は四千二百三十三件ということになっておりまして、慢性疲労症候群の件数はその内数ということになります。

奥野(総)分科員 私が聞くのは、なかなか支給が難しいという話もよく聞くんですよ。それは、診断は確立していないわけですから、バイオマーカーもないし、外形的に見てということですから、これは慢性疲労症候群によるものだと、要するに、原因が分からないわけですよね。なぜ疲労が激しくて動けないかという方は、原因が分からないわけですから、ともすると障害認定されないということになりがちだと思うんですよ。

 ですから、そこを是非、多くの方が苦しんでおられるので、外形的な四要件できちんと診断された場合は優先的に障害認定をして年金が下りるようにきちんと配慮いただきたいんですけれども、大臣、その辺り、いかがですか。なかなか難しいと思うんですけれども。

加藤国務大臣 障害年金の障害等級の認定等、今、御指摘含めていろいろと難しさはあるわけでありますが、ただ、傷病名、名前がこうだからということではなく、障害の程度について、日常生活の能力、また、稼得能力、これによって個別具体的に判断をしているところでございます。

 慢性疲労症候群の方においても、その障害の状態によって、日常生活が著しい制限を受けるのか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものなどと認められる場合には障害年金の等級表に定める障害の状態に該当し、それにのっとって年金が支給される、こういう仕組みになっておりますので、この仕組みにのっとって適切な判断をしていきたいと考えています。

奥野(総)分科員 かつて、全然これとは別の話で、精神障害者の方の障害年金の基準がふぞろいだったので統一したということがあって、そのときに、結構これまでもらっていた方がもらえなくなったりとかあったんですよ。私も、それを主意書とかでやらせていただいたことがあるんですけれども。なかなか年金財政も厳しいということがあって、財政的な観点からすると厳しめ厳しめという話になりがちだと思うんですけれども、だから、そういうことなく、やはり、本当に広く、苦しんでいる方に渡るように広く解釈してやっていただきたい、これは私からのお願いであります。

 次の話題に行きますが、これはまた私の地元の千葉県の精神障害者の会長さんとかと話しているんですけれども、希望がないとおっしゃるんですよね。お子さんが重度の精神障害の方で、症状が悪化してくると、それこそ警察が来てみたいな話になるらしいんですよ。そういうことを繰り返していて、本当に希望がないんだ、治る見込みもないし、治るという研究成果というのもないんだ、希望がないんだということをおっしゃっています。ですから、もっと精神障害の治療法とかそういうところに光を当ててやっていただきたいんです。

 まず、精神疾患がもたらす社会的なコスト、よく、がん対策基本法とかそういうのがあって、社会的にコストを見ながらきちんと治療していこうという議論がなされることがあるんですけれども、精神疾患がもたらす社会的コストというのはどのぐらいなんでしょうか。ヨーロッパでは、私が見たペーパーだと八十兆円との試算があるとされていますが、日本ではそういう研究があるんでしょうか。

辺見政府参考人 お尋ねの、我が国における精神疾患の社会的コストにつきましては、試算対象とする疾患や、何をコストと捉えるかなど、その前提によって試算額が変わることから、国として一概にお示しすることは困難であると考えておりますけれども、平成二十二年度調査研究におきまして、治療に要する費用に加えて、必要となる福祉サービスに係る費用、また、働けないことによる損失などの精神疾患に関する社会的コストについて、一定の前提を置いて、年間十一兆円と推定した研究があると承知しているところでございます。

奥野(総)分科員 結構な額ですよね、十一兆円というのは。ですから、もっと力を入れて治療法、研究に予算をつけても私はいいと思うんです。

 そこで伺いたいんですが、こういった精神疾患といっても、うつ病から統合失調症からいろいろなものがあるんですが、それらの治療法の確立、克服に向けてどういう研究がなされているのか、あるいは、その予算規模はどのぐらいなんでしょうか。

辺見政府参考人 精神疾患の克服と申しますと、治療ですとか再発の予防、医療と社会的支援の連携など様々な側面があると存じますが、精神疾患に関する研究は、疫学的研究や病因、病態の解明、治療薬を含めた治療法の開発など様々な分野にわたり、研究の実施機関も、研究開発法人ですとか大学、民間企業など多岐にわたる状況がございます。

 そうした中で、厚生労働省におきましては、厚生労働科学研究のうち、障害者政策総合研究事業に対しまして、令和五年度は約六億円を予算として計上しているところでございます。この中で、精神疾患の医療提供体制や治療方法、支援方法等に関する研究を実施をしているところでございます。

 また、日本医療研究開発機構、いわゆるAMEDにおきましては、精神、神経領域に関連した研究開発の予算として、令和五年度は約六十五億円が計上されております。このうち、厚生労働省関係で、精神疾患の病因、病態の解明や、根本的治療法の開発とその研究基盤の整備を行います障害者対策総合研究開発事業につきましては、約四億円が計上されているところでございます。

奥野(総)分科員 もう一回確認しますが、最初のが六億円の内数で、次のやつは六十五億円のAMEDの研究の中の内数の四億円ということですかね。そうすると、年間、足しても十億いかないという規模ですか、全体として。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省として関係をしております厚生労働科学研究や、AMEDの事業として計上されている金額がその金額でございます。そのほか、他省庁関係の、例えば教育関係の機関における科研等もあろうかと思いますが、厚生労働省関係の予算として申し上げたところでございます。

奥野(総)分科員 国立大学法人とか、そういうところの関係、文科省関係とかも恐らくあるんでしょうけれども、でも、せいぜい何十億オーダーの話ですよね。社会的コストはいろいろあるとおっしゃいますが、十一兆円。もっと大きいかもしれないということに対して、やはり、取組として薄いんじゃないですかね。だから、例えば、もう治らないものだ、こういう決めつけがあるような気もするんですね。なかなか完治しづらいということは言われていますし、私の知ってる方も、もう治らないものだと思っていて、苦しんでおられるんですよ。彼が言うには、だけれども、せめて、きちんとこういう研究をしていて、いずれ治るようになるんだ、あるいはこういう進捗があったということをきちんと患者の御家族にも分かるようにしてほしい、こういう要望なんですよ。

 まずは、当然予算も増やしていただきたいし、あと、患者さんの皆さんへのフィードバックですよね。今こういう研究がなされていて、これができれば、例えば少しでも統合失調症がよくなるとか。あるいは、これだけ時代が進んで、脳科学が進んでいる時代ですから、もっともっと、従前と違って進展があると思うんですよ。

 大臣、だから、その辺、やはり患者の皆さんにきちんとお話をして、意思疎通を図っていただきたいんですが、最後、いかがですか。

福重主査 加藤大臣、申合せの時間が超過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

加藤国務大臣 はい。

 精神疾患に大変悩んでおられる皆さん方あるいは御家族の皆さんにおいて、まさに治療法があれば、あるいはこの状況を少しでも改善してくれるものがあればという思いを持っておられることは私どももよく共有をさせていただいているところでございます。

 今申し上げたもの以外にも、国立精神・神経医療研究センターにおける研究開発等も別途進めさせていただいております。

 そうした内容については、逐次一般的に公表はさせていただいておりますけれども、委員の御指摘も踏まえて、どういう形で、せっかくの研究成果でありますから、それをどういうふうに皆さんに共有していただくか、考えていきたいと思います。

奥野(総)分科員 ありがとうございました。

 全体的に、もっとこういうところにこそ予算をしっかりつけていただきたい。頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

福重主査 これにて奥野総一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、漆間譲司君。

漆間分科員 日本維新の会の漆間と申します。

 まずは、オンラインに関わるギャンブル等依存症対策についてお伺いいたします。

 インターネットが普及したことで、例えば、スマホのガチャだったり、あと、インターネットを通じた競馬だったりモーターボートレースだったり競輪だったりというところで、皆さん、そういったオンラインを通じたギャンブル依存症みたいなことにたくさんなっているんじゃないかという声を、国民の方から最近本当にたくさんたくさんお声を聞いているところです。こういったオンラインを通じたギャンブル依存症になりやすい環境、アクセス規制もなかなかできない中で、このような状況を、厚生労働省は実態をどのように把握していて、その上での認識や課題、対策などやっているのかということをまずお伺いしたいと思います。

 これはなかなか把握するのが難しいのかなと思っております。例えば、消費者相談窓口の相談件数だったり、多分、オンラインの各依存症ごとの相談窓口があると思うんですけれども、そういった件数だとか、そういったところからしか無理なのかなとは思うんですけれども、厚生労働省の認識をお伺いいたします。

辺見政府参考人 オンラインギャンブルの利用に関しましては、関係する省庁からの情報として、公営競技におけるインターネット投票の利用が増加していること、また、売上げに占めるインターネット投票の割合も上昇している、こういったような状況があるということについてはお聞きをしているところでございます。

 こうした中、厚生労働省におきましては、オンラインギャンブルに限らず、ギャンブル等依存症全般について、相談、治療及び回復支援に係る対策を実施をしておりまして、依存症に対する正しい理解を深めるための普及啓発、相談拠点等の整備、地域における依存症対策を実施してもらうための補助などについて取り組んでいるところでございます。

漆間分科員 先ほどの回答ですと、最近、私は本当に国民の方から声が増えていると認識しているんですけれども、厚生労働省は実際にそういうオンラインによるギャンブル等依存症のような状態が増えているかどうか認識しているのかを、もう一回、ちょっと再質問なんですが、お伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 ギャンブル等依存症の数自体についてお答えできる数字があるところではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、オンラインの活用といったようなことが実態として増えているという情報もありますことから、オンラインギャンブルの利用に着目をしつつ、対策を進めているところでございます。

漆間分科員 増えているという情報もあるところですがというところで、増えているところは何となく認識しているんだなという感触で今理解しましたけれども、これは本当に国民の方からたくさんお声をいただいていて、コロナもあって、皆さん、本当に、スマホとか、すぐに、いつでもどこでも、こっそりできるような状態の中で増えていると思っているんですけれども、これはしっかり厚労省も認識する必要があると思いますので、しっかり調べていただきたいと思います。

 これは、何度も申し上げておりますけれども、こっそりできるというところで、アクセス規制だとか、そういったことの対策がなかなか取りにくいものだと思っております。そういった中で、個々が自衛をすること、依存症になりにくいような自衛をすることが非常に大切なのではないかなと思っております。地元の報告会でも、国民の皆さんからそういう意見を聞いたときに、やはり自衛の方法が必要なのかなという結論になっておるんですけれども、そういった中で、依存症の科学的な仕組みを知ることで、それが自衛につながるのかどうかということをお伺いしたいんですけれども。

 例えば、よく言われておるのが、マウスの実験で、ボタンを押すと餌がもらえる実験装置があって、ボタンを押すたびに餌をもらえるマウスよりも、ボタンを押して、たまに出てこないときがあって、たまにぽっと出てきたときに、マウスが物すごい快感を感じて、脳の違うところから液体がぶわっと出てきて、それが忘れられなくなって、どんどんどんどんどんどんボタンを押してしまうといったような状況、こういった依存症の仕組みを事前に知っておくことが依存症になりにくくなることにつながるのかどうかということが科学的に証明されているかどうか。

 知っておく方がなりにくいんちゃうかと、地元の方で国民の皆さんからそういう意見もいただいたので、もしかしたら、厚労省はそれを知っていて、それを事前に皆さんに知ってもらうことで対策を既にしているのかどうかも含めて、お伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の、依存症の仕組みを知っている場合と知らない場合とで依存症のなりやすさについて違いがあるかということについて、必ずしも統計的なデータはないところでございますが、これまでの臨床や相談の現場におきまして積み上げられました知見から申し上げますと、依存症の原因となる物質の身体への影響や脳への働きについての理解を高めて、主体的、意欲的に治療などに取り組むということは重要であるということが言われているというふうに認識をしております。

 一方で、こうした知識を当事者御自身として深めるだけではなくて、周囲の方も含めて早めに相談をするということが効果があるということも知られているところでございまして、当事者だけではなくて家族や、知識も含めて、依存症に対する知識の普及啓発を図るために、こうしたことをリーフレットの中で私どもとしても周知を進めているところでございます。

漆間分科員 治療法としてはあるということで、それ以上に、早めの認識と家族への相談、これが重要だということで、これをたくさん国民の皆さんに知らせることが重要だということで回答、認識させていただきました。

 そこで、もう一点お伺いしたいんですけれども、例えば、いろいろなギャンブルがありますけれども、そのギャンブルごとに還元率だったり利益率、例えば、パチンコだったら大体投入した分の八〇%が戻ってくる、でも、宝くじとかだったら四五%ぐらいしか戻ってこない、なかなか当たらない、そういった還元率だったり利益率が実際に依存症のなりやすさに関係するかどうかというところを、ちょっと外れますけれども、知識としてお伺いできますでしょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、特定の要因を切り分けて、こうしたことが依存症になりやすいかどうかということについての統計データというのは必ずしも、ちょっと手元にもないところでございまして、御指摘のような利益率や還元率が低い場合ということを切り分けて分析をしたような調査結果については存じ上げておりません。

漆間分科員 ちょっと補足で聞かせていただきました。

 といいますのも、先ほどのマウスの話からすると、ずっと出続けるよりも、たまに出続けた方が脳から液体がぶわっと出て喜びになるということであるのであれば、利益率が低い、高いですかね、還元率が低いやつの方が依存症になりやすいのかなと、一般的にもそのように言われておりますので、それを科学的に、厚労省は、そうだと、もし思っているのであれば、なりにくくするために、全てのギャンブルだったりそういったものに利益率だとか還元率を表示させるというのも一つの手かなと思って聞かせていただきましたが、そういうお答えであるんだったら違うのかなというところで、ちょっと話が外れましたが、またここで元に戻させていただきます。

 ギャンブルを防ぐためには、事前の相談だったり、あと、脳の仕組みがどうなっているかを知っておくことは有効だというお答えをいただいたところで、じゃ、それを知ってもらうために、教育の方で、次、文科省の方にお伺いしたいんですけれども、実際、今、文科省の方に、これを教育でやれということなんですけれども、お調べさせていただいたところ、実際、既に高等学校の資料に、脳の仕組みがこうこうこうなるからギャンブル依存症になるんですよといったような資料がありますけれども、これは、まさに厚労省のそういった根拠に基づいて書かれているものなのかどうかというのをお伺いさせていただきたいと思います。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 学校教育におきまして、平成三十年に改訂しました高等学校学習指導要領に基づきまして、高等学校の保健において、精神疾患の予防と回復について学習する際に、アルコール、薬物などの物質への依存症に加え、ギャンブル等への過剰な参加は習慣化すると嗜癖行動になる危険性があり、日常生活にも悪影響を及ぼすことなどが学ばれております。

 文部科学省では、これらの学習の参考になるよう、令和元年度に高校生向けの啓発資料を作成しているところでございます。こちらの記述についてでございますが、本資料は、行動嗜癖の予防、治療、研究の専門家や薬学の専門家、また小児科医、また教育関係者などで構成された作成委員会において作成されたものでございます。

 本資料を活用し、生徒たちが行動嗜癖について理解を深め、自らの生活を振り返り、特定の行動にのめり込むことにより日常生活に悪影響を及ぼしていないかを考えることができるよう、引き続き、教育委員会等を通じて活用を促してまいりたいと思っております。

漆間分科員 文科省の方にもう一回、ちょっと再質問したいんですけれども、脳の仕組みについての記述が高等学校の資料の方にあるんですけれども、これは、やはり、どうやったら依存症になるかという仕組みを知ることが依存症を予防する上で重要だということをしっかりと認識して、それが効果的、予防につながるということが分かっているからここに載せているということでよろしいのかどうかというのを、確認でちょっとお伺いさせていただきます。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省としては、先ほどの学習の参考になるよう資料を作成しているところでございますけれども、この資料の中では、ギャンブル等にのめり込んでしまうのは、行動をコントロールしている脳がうまく機能しなくなるからであること、また、自分では脳の変化に気づくことができず、ギャンブル等をやめたいと思ってもいつの間にか自分の意思ではやめることができなくなってしまうこと、こういった記述がございます。

 こういったことについて、専門家の方々に御意見等を伺いながら作成したものでございます。

漆間分科員 先ほどのお答えですと、知るということが依存症の対策にもつながるというふうに文科省も認識しているということでよろしいでしょうか。ちょっとしつこいですけれども、それをもう認識しているということでいいんですね。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 こういったことをしっかりと知ることによって、自分事として捉えて、自分の行動をするという意味では非常に意義のあることだと思っております。

漆間分科員 お答えもいただきまして、ありがとうございます。

 そういうことであるのであれば、厚労省が言っていたように、科学的な仕組みに加えて、皆さんに相談をしたりだとか、事前にする体制もしっかり整えておく、この二点を、今のところ、私が調べた限りでは高等学校の教材資料にしか書いていないんですけれども、先ほど、一番初めのところで厚労省からのお答えでは、これがどんどんどんどん広がっていて今大変だという、私も国民の皆さんからたくさん声を聞いている中で、教育を、高等学校だけじゃなくて義務教育だったり、もっと小さい頃から教えることが必要なのかと思うんです。

 例えばスマホのガチャなんか、子供が親の携帯をいじってスマホのガチャをやって、知らない間に親のクレジットカードから何十万円もやっていたとかいう話は、恐らく、ここにおられる皆さんも、お知り合いの方で、ああ、そんなことを聞いたことがあるみたいなのがあると思うんですけれども、もっと小さい頃から教える必要が、この脳の仕組みも含めてあるんじゃないかと思うんですけれども、特にマウスの実験の動画とかを見せればすごい効果的なのかなと思うんですが、文科省さん、いかがでしょうか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 学校教育におきまして、心の健康について、学習指導要領に基づきまして、発達段階に応じた内容を系統性を持って指導することとしております。

 具体的に申しますと、小学校におきましては、心の発達及び不安や悩みへの対処について理解するとともに、簡単な対処をすること、また、中学校段階におきましては、心身の機能の発達と心の健康について理解を深めるとともに、ストレスへの対処をすること、また、高等学校におきましては、依存症を含む精神疾患の予防と回復には、運動、食事、休養及び睡眠の調和の取れた生活を実践するとともに、心身の不調に気づくことが重要であることなどについて指導することにしております。

 このため、現在、ギャンブル等依存症に関する啓発資料につきましては、高校生を対象に作成、周知しているところでございます。

 また、学校においては、学級担任や養護教諭などが、日常的な健康観察によりまして、ギャンブル等依存症を含め健康課題を抱える児童生徒を把握しまして、健康相談や保健指導により生活習慣の改善に取り組ませたり、また、医療機関への受診を促したりするなど、様々な支援を行っているところでございます。

 文部科学省としましては、各学校においてこうした取組がしっかりと行われるよう、引き続き努めてまいりたいと考えております。

漆間分科員 先ほどの文科省の御回答ですと、恐らく、厚生労働省の言った対策のうちの、早くから自分の状態を知って、周りの人に相談できるような体制をしようというところに関しては近いのかなと思うんですけれども、後者の、もう一点の脳の仕組みを知ることですね。例えば、マウスの動画、ボタンを押せば餌が出てくる、でも、たまに出てこないと、すごい、たまに出てきたときに喜んでしまって、もうマウスが通常じゃない喜びになってしまう、その動画を見せること自体が依存症対策につながるということで厚労省から御回答いただいているんですが、これを小さいときからも教えることは重要かなと思うんですが、いかがでしょうか。文科省の方、よろしくお願いいたします。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 発達段階に応じて、正しい情報をどう捉えるか、こういったことは情報活用能力という形でも学習指導要領の中で育むこととしておりまして、やはり正しい情報を的確につかんで自分の行動を選択するということは大事だと思います。

 今回の、個別のところでどういった教材を使っていくかというのは、それぞれの学校又は教育委員会等で判断されるものではございますけれども、非常に有益なものがあれば、先ほどの啓発資料、こういったものは必要に応じて改定していきますので、そういったときに、そういった新しい知見に基づいて、参考にさせていただくというのはあり得るかと思っております。

漆間分科員 是非、新しい知見、新しい知見かどうかはちょっと分からないですけれども、こういったことも教育に取り入れていただきますようにお願いいたします。これはちょっと、地元の報告会で国民の方からそういう御意見をいただいたものですから、私からもお願いさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 次は、ちょっとこれもまた質問が外れるんですけれども、IRにおけるギャンブル等依存症対策。

 IR関連法においては、ギャンブル依存症対策、かなり厳しいアクセス規制がなされております。週三回しか行けない、入場料は五千円以上取る、身分証等をしっかり出さないといけない、マイナンバーですかね、出さないといけないみたいな、かなり厳しいアクセス規制がありますが、このアクセス規制を、法を整備するに当たって厚生労働省も協力したのかどうかということをまず一点お伺いしたいのと、あと、この依存症対策はこういったギャンブル等依存症を防ぐ上で最も効果的だと厚生労働省は認識しているのかどうかをお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 委員御指摘の利用制限など、IR区域整備法に基づきカジノ事業者が実施をいたします依存症防止対策につきましては、カジノ管理委員会が所管するところでございますが、IRにおけるギャンブル依存症対策の検討に当たりましては、厚生労働省としても、都道府県における相談、治療体制の整備等といった観点から、依存症防止対策の関係行政機関として必要な協議への参画などを行っているところでございます。

 御指摘のようなギャンブルの利用制限につきましては、一般論といたしまして依存症対策にとって一定の効果があると考えられていると承知しているところでございますが、その上で具体的にどのような制限を行うかについては、それぞれのギャンブルの特性や実情に応じて所管省庁や事業者等において検討されるべきものと考えているところでございます。

 厚生労働省におきましては、ギャンブル等依存対策推進計画に沿って、依存症の相談支援、治療支援及び回復支援といった施策を実施しているところであり、引き続き、関係省庁と連携して必要な対策に取り組んでまいりたいと考えております。

漆間分科員 ちょっと再質問なんですけれども、再質問といいますか、一般論としては効果的だというお答えを得たところで、やはりこのアクセス規制を、オンラインカジノだったり、まあ、オンラインカジノは恐らく海外でやられているものなので難しいと思うんですけれども、スマホのガチャでも厳しい身分確認だったり、あとアクセス規制だったり、そういったものをすることは効果的だと思うんですけれども、質問としまして、このIRでなされている依存症対策、この厳しいアクセス規制を、ほかの公営賭博だったり、様々なギャンブル依存症になりやすいあらゆるギャンブルだったりに適用することも効果的だと思われるかどうかということについて、最後、お伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 先ほど申し上げましたように、一般論といたしましては、ギャンブル利用制限、依存症対策にとって一定の効果があるものと考えているところでございますが、IR以外の公営賭博等についてということでございますが、具体的にどのような制限を行うかにつきましては、それぞれのギャンブルの特性や実情に応じて考えることも必要でございまして、所管省庁や事業者等において検討されるべきものと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、公営競技における依存症対策については、ギャンブル等依存症推進計画において、それぞれの特性に応じてアクセス制限の強化などの取組が盛り込まれ、実施されているところと承知しているところでございまして、厚生労働省は、同計画に基づいて、ギャンブルの種類を問わず、全ての都道府県や政令指定都市への相談拠点や治療拠点の整備、依存症からの回復に向けた自助グループを始めとする民間団体の活動支援といったようなことに取り組んでいるところでございます。

 ギャンブル等支援対策につきましては、政府全体でこうした対策を総合的に講じていくことが重要と考えておりまして、厚生労働省としても必要な取組を進めていきたいと考えております。

漆間分科員 それぞれのギャンブルの特性に応じていろいろな対策を取っていく、そういった計画みたいなのもあって、その計画に沿って実施していくということでお答えいただきましたけれども、ここで一番初めに戻らせていただくんですけれども、ちょっと再質問なんですけれども、その中でオンラインですね、総合的に何か今、依存症対策の計画があって取り組んでおられるのであれば、オンラインによる依存症対策、どんどんどんどん増えている中で、そこの総合的な計画の中にオンラインについての対策というのは、ちょっとこれは更問い、更問いといいますか再質問なんですけれども、しっかりやっているんでしょうかというところをお伺いしたいと思います。

辺見政府参考人 現在認識しておりますところ、推進計画上は、オンラインという言葉は必ずしも置かれていないというふうに認識をしておりますけれども、最初申し上げましたように、公営ギャンブル等においての利用方法としての変化が見られることを踏まえて、関係省庁と協力をして取り組んでいく必要があろうかと考えております。

漆間分科員 踏まえてということで、やっていただけると思いますけれども、やはり、オンラインは、今どんどんどんどんやり方が変わってきて、アクセス規制も厳しいという状態でありますので、是非、このオンラインというものも体系的に取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 じゃ、次に、少子化についてお伺いさせていただきます。

 今、国の方でも、異次元の少子化対策をやるんだということでやっておりますけれども、少子化対策は、これもよく言われていることですが、子育て支援にとどまるのではなく、ゼロを一にする取組が重要だと言われております。ゼロを一にする取組として、今日は二点の観点からお伺いさせていただきたいと思います。

 一点目が婚姻制度の緩和。

 結婚制度を緩和することで出生率が上がったと。ヨーロッパのいろいろな国では、同じような財政的な子育て支援をしているにもかかわらず、結果が、効果の出ている国と出ていない国がある。出ている国を見てみると、その要因が家族制度であったり、結婚制度の緩和にあったりするというところはよく議論されているところであります。そういったところから、結婚制度の緩和について。

 これは、過去にも野田聖子議員が、これは絶対にやらなあかんと、かなり積極的な提案もいただいているところなんですけれども、二〇一二年にそういう議事録があるのをちょっと拝見させていただいたんですけれども、そのときの議論は、国民のコンセンサスも必要だね、これから議論の場はたくさん必要だねというところで、政府の答弁、大臣の答弁は終わっておったんです。

 現在、厚生労働省が認識する、もし結婚制度を緩和するとこんな問題がありますよだとか、国民のコンセンサスの状況、二〇一二年から十一年たちましたけれども、結婚制度の緩和に対しての認識を是非お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 厚生労働省は、婚姻制度を所管しておらず、制度そのものの在り方についてお答えする立場にはございませんけれども、その上で、婚姻制度は、国民生活の基本に関わるものでございまして、国民一人一人の家族観と密接に関わるものであるため、国民各層の意見や国会での議論を注視しながらの議論が行われていくものと承知をしているところでございます。

 厚生労働省の観点からとのお尋ねでございますけれども、例えば社会保障制度におきましては、婚姻状態に着目した給付や適用の仕組みも存在いたしますので、仮に婚姻制度の見直しが議論となる場合には、こうした仕組みへの影響等、慎重に検討していく必要が生じるものと考えているところでございます。

漆間分科員 ちょっと時間ももうなくなってまいりましたので、もう一点、若者の賃金上昇についてお伺いしたいと思います。

 若者がこれから家庭や子供を持とうと思っても、なかなか自分の生活が、先、豊かになるかどうか分からない、その中で、そんな、結婚なんかできるわけないじゃないかというお声もたくさんいただいているところです。

 厚生労働省にまず一点、ちょっと質問を一個飛ばすんですけれども、お伺いしたいことは、今は今後の賃金上昇の見込みがある社会と言えるのかどうか、そういったところをお伺いしたいと思います。

中村政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国は、バブル崩壊以降、長引くデフレ等を背景に、他国と比べて低い経済成長が続いてまいりました。この間、企業は賃金を抑制し、消費者も、将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷し、デフレが継続する悪循環となったものと承知してございます。結果的に、企業に賃上げを行う余力が生まれにくくなり、賃金が伸び悩み、他国よりも低い賃金水準となったと考えているところでございます。

 ただ、近年では、雇用者全体が、二〇一三年から二〇二二年で約四百七十万人増加する中にあって、総雇用者所得は名目、実質共に増加し、正規雇用者数も八年連続で増加している状況でございます。

 また、二十五歳から三十四歳の若者のうち、一般労働者の所定内賃金について見ますと、二〇〇八年から二〇一三年までは減少傾向で推移していたものが、二〇一三年以降、増加傾向に転じ、二〇一三年から二〇二二年にかけて、二十五歳から二十九歳では月額約二十三万円から二十五万円に、三十歳から三十四歳では月額約二十六万円から二十八万円に、それぞれ増加をしてございます。

 また、雇用についても、二〇一三年から二二年にかけまして、正規雇用労働者数は十六万人増加し、正規雇用労働者比率は七二・六%から七七・八%まで上昇しております。

 また、失業率も、五・三%から三・六%に低下しております。

 このように、若者を含め、雇用を取り巻く状況には改善が見られますが、若者が将来にわたる展望を描けるよう、持続的に賃金が上がる構造をつくり上げていくことが重要でございまして、関係省庁と連携しながら、必要な改革を、働く人の立場に立って加速させてまいりたいと考えているところでございます。

漆間分科員 ここからちょっと問いたかったことがあるんですが、もう時間となりましたので。これから、賃金上昇の見込みがある場合はいいんですけれども、そういう場合がないときに子育て支援したら、それが本当に有効なのかどうかということをちょっとお伺いしたかったんですが、もう時間となりましたので、またの機会にさせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

福重主査 これにて漆間譲司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして厚生労働省所管についての質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

福重主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これより農林水産省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。野村農林水産大臣。

野村国務大臣 平成三十年度、令和元年度の農林水産省の決算の概要を御説明いたします。

 第一に、平成三十年度の決算の概要を御説明いたします。

 まず、一般会計についてであります。

 歳入は、歳入予算額四千四百八十六億円余に対し、収納済歳入額は四千九百十一億円余であります。

 歳出は、歳出予算現額三兆四千八百六十四億円余に対し、支出済歳出額は二兆六千八百二十八億円余、翌年度繰越額は七千二十八億円余、不用額は千七億円余であります。

 次に、特別会計についてであります。

 食料安定供給特別会計については、収納済歳入額九千六百九十九億円余に対し、支出済歳出額は八千百三十七億円余であり、その差額千五百六十一億円余のうち、翌年度の歳入への繰入額は千四百九十八億円余であります。

 また、国有林野事業債務管理特別会計については、収納済歳入額及び支出済歳出額が共に三千四百八十九億円余であり、その差額はありません。

 第二に、令和元年度の決算の概要を御説明いたします。

 まず、一般会計についてであります。

 歳入は、歳入予算額四千五百十五億円余に対し、収納済歳入額は四千九百六十七億円余であります。

 歳出は、歳出予算現額三兆七千三百十三億円余に対し、支出済歳出額は二兆八千二百五十五億円余、翌年度繰越額は八千九十二億円余、不用額は九百六十六億円余であります。

 次に、特別会計についてであります。

 食料安定供給特別会計については、収納済歳入額九千六百七十七億円余に対し、支出済歳出額は八千五百六億円余であります。その差額千百七十億円余のうち、翌年度の歳入への繰入額は千百億円余であります。

 また、国有林野事業債務管理特別会計については、収納済歳入額及び支出済歳出額が共に三千五百六十三億円余であり、その差額はありません。

 以上をもちまして、平成三十年度及び令和元年度の農林水産省の決算の概要の説明を終わります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

福重主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院片桐第四局長。

片桐会計検査院当局者 平成三十年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項三十九件、意見を表示し又は処置を要求した事項四件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一三八号は、設計が適切でなかったもの、同一三九号は、施工が適切でなかったもの、同一四〇号から一七六号までの三十七件は、補助事業の実施及び経理が不当なものであります。

 次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、多面的機能支払交付金事業に関して、適宜の処置を要求し、及び是正改善の処置を求めたもの、その二は、ため池の防災減災事業の実施に関して、改善の処置を要求したもの、その三は、ダム及び頭首工の管理施設に必要とされる耐震性能に関して、改善の処置を要求したもの、その四は、独立行政法人農林漁業信用基金が行う漁業信用基金協会に対する貸付業務に関して、改善の処置を要求したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、農林水産統計システムに関するもの、その二は、水産多面的機能発揮対策事業に関するものであり、これら二件について指摘したところ、それぞれ改善の処置が取られたものであります。

 続きまして、令和元年度農林水産省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十五件、意見を表示し又は処置を要求した事項三件及び本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項三件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一二四号は、事業の目的を達していなかったもの、一二五号から一三八号までの十四件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。

 次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、保育間伐のうち活用型の実施に当たり、災害リスク等がある箇所に該当しない伐区に関して、意見を表示したもの、その二は、国有林林道の林道施設に係る長寿命化対策に関して、改善の処置を要求し、及び意見を表示したもの、その三は、経営体育成支援事業等に関して、改善の処置を要求したものであります。

 次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について御説明いたします。

 その一は、果樹経営支援対策事業における改植の実施に関するもの、その二は、畜産・酪農収益力強化総合対策基金等事業等における費用対効果分析の実施に関するもの、その三は、環境保全型農業直接支払交付金事業に関するものであり、これら三件について指摘したところ、それぞれ改善の処置が取られたものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

福重主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。野村農林水産大臣。

野村国務大臣 会計検査院から報告のあった平成三十年度及び令和元年度決算検査報告に対し、農林水産省が講じた措置を説明いたします。

 予算の執行に当たっては、常に効率的かつ厳正な処理に努力してまいりましたが、不当事項等として指摘を受けるような事態が生じたことは、誠に遺憾であります。

 指摘を受けた事項に当たっては、不当事項について、指摘に基づき直ちに是正や改善措置、補助金の返還、手直し工事を実施するとともに、それ以外の処置要求事項等についても、指摘に基づき是正や再発防止のための改善措置を講じているところです。

 今後、このような事例の発生を未然に防止するため、指導監督の強化を図り、事務事業の厳正かつ効率的な実施に万全を期すとともに、予算の適正な執行をより一層徹底してまいる所存でございます。

福重主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福重主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔決算概要説明等は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

福重主査 以上をもちまして農林水産省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

福重主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。神谷裕君。

神谷分科員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日は、決算委員会、お時間をいただきましたことを感謝を申し上げたいと思います。

 農水省所管分についての質疑をさせていただきたいと思います。大臣につきましては、本当におつき合いのほどよろしくお願いを申し上げます。

 まず、水田活用直接支払い交付金について伺いたいと思っております。

 御案内のとおり、一昨年来、水田活用直接支払い交付金の議論について、この間、政府は、農水省は、農業者や、あるいは団体などから様々問題、課題を聴取してこられました。一定の方向での改善策を打ち出していただいて、今般、令和五年度の形になったものと承知をいたしております。

 御案内のとおり、一昨年の十二月からでございますね、打ち出されて以降、疑問というか懸念というか、様々な思いが寄せられたと思います。そういった思いを農村の皆さん方に聞いた上で、今回、改善したものを提案されたと思いますけれども、この形で農村の皆さん方、農業者の皆さん方の懸念は払拭されたと考えられるのか、これをまず率直に大臣にお伺いをしたいと思います。

野村国務大臣 水田活用の直接支払交付金につきましては、水稲の作付が困難な農地は交付金の対象外との現行ルールを再徹底した上で、令和三年十二月に、現場の課題を検証しつつ、今後五年間に水稲の作付が行われない水田を交付の対象としない方針を決定したところでございます。

 このことについては、私どももいろいろな方々から御意見をいただきました。この方針を周知徹底するため、一昨年から、全都道府県の関係者五百名以上が参加する全国会議を令和四年産においては七回、令和五年産におきましては五回開催して趣旨の説明をしたところでございます。産地ごとの意見交換を行うキャラバンを本省、農政局、支局合わせて令和四年度においては四千回以上、令和五年産においては現時点で三千回以上行ってきたところでございます。

 これらの意見や現場の課題の検証を踏まえ、水田機能を維持しながら麦、大豆等の畑作物を生産する水田については、水稲とのブロックローテーションを促すとともに、畑作が連続して作付されている水田については、畑作地を促すため、麦、大豆、そば等の産地化に向けて、一定期間の継続支援や整備基盤への支援を行うこととしたところでございまして、現在、その旨を周知しておるところでございます。

 今回の見直しに関する現場の不安や懸念につきましては、これまでも丁寧に説明を行うとともに、ルールの具体化や予算措置等を講ずることにより、関係者の皆様に理解を得るように努めてきたところでございまして、引き続き、あらゆる機会を通じて説明をしてまいりたいと思っております。

 委員おっしゃいますように、私どものところにも直接お電話をいただいたり、お話が参ってきておりますけれども、農家の方一戸一戸までになかなか徹底してきていないということも反省をいたしておりまして、今、それぞれでまた説明を、あるいは県の方からも説明をしていただくように促しているところでございます。

神谷分科員 大臣、ありがとうございます。

 率直に申し上げまして、本当に役所の皆さん方、地域に入っていただいて、いろいろな意見交換、多くの機会をやっていただいたということ、これについては本当に評価をしたいと思っています。

 ただ、聞きっ放しでは当然いけないわけでございまして、問題なのは、そこから様々な懸念、あるいは大丈夫なのかという声が上がったと思います。そういった声に対してしっかりと、あっ、そういうことを考えていただいているのか、これだったら大丈夫だ、これだったら来年以降もしっかりできるんだという思いを農村自体が、農家の皆さんが持っていただかなきゃいけないことだと私は思っています。

 ですので、丁寧に聞いていただいて、説明もそうなんですけれども、説明以上に聞いていただくことが大事だと思っていまして、聞いていただいた上で、今回、そういう形で改善策を出されたと思うんです。この改善策で農家の皆さんは納得されたのか、そういうふうに受け止められたのか。それとも、まだ多少の懸念はあるけれども、懸念はあるけれどもできるんだと大方の方が思っていただいているのか、この辺の感覚はいかがでございましょう。よかったらもう一度。

野村国務大臣 今お話がありましたように、なかなか、農家の皆さん方、個々のところまでこういった説明がきちっと通じているか、あるいは御理解していただいているのかというのは、私どもも一抹のやはり不安を覚えますが、今回の見直しに関するそうした現場の不安や懸念につきましても、先ほど申し上げましたように、あらゆる手を尽くしながら丁寧に説明を行っているというふうに思っておりますが、ルールの具体化や予算措置を講ずることによりまして、関係者の皆様の理解を得るように努めてきたところです。

 今後も引き続き、あらゆる機会を通じて丁寧に説明をしてまいりますが、先ほど申し上げましたように、農水省から直接あるいは農政局の方からも説明しておるんですけれども、やはり身近なところである県だとか、あるいは市町村の皆さん方にも一緒になって説明をしていただければ、農家の皆さん方の御理解あるいは納得は得やすいということで、そういうことも工夫してみてくれ、こういうことを申し上げているところでございます。

神谷分科員 大臣、ありがとうございます。

 率直に、私も地域を回っていまして、まだまだ水田活用交付金については意外と、まだいろんな思いを持っているというか、懸念というか不安、様々なものを持っておられる方、たくさんいらっしゃいました。去年の予算措置でございますから、予算が概算決定の段階で、ある程度の形になったものと。恐らく、私自身、農水省の皆さん方の雰囲気というのは、これである程度の方向性が出せたからこれで大丈夫なんじゃないかという空気になっていたと思うんですけれども、私もそうなのかなと思っていたんですが、実際に地域を回ってみますと、まだまだこれでは心配だという懸念の声がたくさん出てまいりました、意外なほどに。

 ですので、是非、引き続き丁寧に、農家、農業者の皆さんの声、思いを聞いていただいた上で、まだ懸念があるとするならば那辺にあるのか、それをまた具体的に解決するためにはどうするべきなのか、この辺のところは、引き続き、継続して是非お願いをしたいと思っているんですけれども、大臣、いかがでございましょう。

野村国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、農水省では一生懸命やっておるんですけれども、やはりこれは農水省だけの話ではないわけでありますので、県やあるいは市町村におきましても同じように皆さんにも説明しておりますので、是非そのことは、県の皆さんやあるいは市町村の皆さんの担当者の方々、みんな分かっているはずでありますから、そういう方々から直接やはり説明もしていただきたいな、こんなふうに思っておりまして、まだまだ足らないところは私どもも、引き続き、あらゆる機会を通じて丁寧に御説明をしてまいりたいというふうに思っておりますので、そのことも委員にもどうか御理解をいただきたいと思います。

神谷分科員 ありがとうございます。

 説明だけでなく、是非話を聞いてあげてください。そして、その上で、もしも改善する必要があるということであれば、そこは虚心坦懐に考えていただきたい、そういう思いでございますので、恐らくそれはもう大臣もお分かりだと思いますので、これ以上は聞きません。よろしくお願いをいたしたいと思います。

 その上で、水田活用交付金、今回、昨年の十二月、形を決めていただいたわけですけれども、改めて、水田活用交付金の政策目的と政策効果を確認をさせていただきたいと思います。その上で、今回の検証と改善を経て、農水省が考えていた、政府が考えていた本来の本措置の政策目的あるいは制度の適正運用について、課題は払拭されたのか、そして、いわば財政審や会計検査院の指摘に耐え得るものになったのか、この辺のところをお伺いをできたらと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 水田活用の直接支払交付金につきましては、需要の減少している主食用米から国産需要のある麦、大豆、ソバ等への作付転換を支援するためのものでございまして、交付対象は、水を張る機能を持った水田であることが前提になっております。

 このような中で、水田機能を維持しながら麦、大豆等の畑作物を生産する水田については、水稲とのブロックローテーションを促していく。一方、畑作物が連続して作付されている水田については、畑地化を促すために、麦、大豆、ソバ等の産地化に向けて一定期間の継続的な支援や基盤整備への支援を行う、そういう方針を今回打ち出したところでございます。

 現在、産地において、水田機能を維持して産地化をするのか、又は畑地として産地化するのか検討していただいているところでございまして、農林水産省としては、いずれの産地の取組も後押しをしていく考えです。

 当省の交付金の交付に当たりましては、公平性、透明性等の観点から、政策目的に沿って、ルールの不断の見直し、それから遵守状況の確認等を行っております。

 検査当局等からの指摘に対しても、しっかり今後とも対応していくことが重要であるというふうに認識しております。

神谷分科員 御案内のとおり、この委員会は決算委員会でございますので、農水委員会ではないものですから、そういう形の質問となりました。

 局長はもう御案内のとおりだと思いますが、あくまで政策目的としては、やはりしっかり農地を使っていただかなきゃいけない、水田もそうですけれども、畑地化した後も支援していただけるというようなことで言っていただきましたが、要は、これで変えたけれども、また何らか指摘をされるようでは困るものですから。これで、今回改善をしていただいたことによって、例えば財政審であるとか、あるいは会計検査院の方から、この使い方は問題があるんじゃないかというような指摘をいただいては、何のために変えるのか、そこが分からなくなってしまうものですから、ここら辺のところは大丈夫だという認識でよろしいですよね。

平形政府参考人 先ほど申しましたが、我々は、不断の見直しをしながら政策をつくり上げているものでございます。

 令和五年の事業、これからスタートすることでございます。それに対して、財政審ないし会計検査院の方からは、執行状況を見ながら、指摘すべきことがあるかどうかということを、そういう観点で見ていただけると思いますが、我々としてみれば、しっかりした政策を今後ともつくっていく、そういうつもりでございます。

神谷分科員 ありがとうございます。しっかりとした政策をつくったということで、それを私は信じたい、このように思います。

 その上で、畑地化についてなんですけれども、予算の想定を超えて多くの手が挙がっているというふうに聞いております。現在どれくらいの希望があるか、農業者数や面積など、分かっている範囲でお聞かせをいただきたいと思います。

 また、あわせて、畑地化を希望する農業者については、中山間地や条件不利地、あるいは高齢者、担い手の有無など、傾向の有無が分かりましたら教えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 畑地化促進事業につきましては、現在、各都道府県において、要望の確認、すなわち、要件を満たしているかどうかなどについて確認を行っていただいているところでございます。現時点でどの程度が確認されているかについて、お答えできる状況にはございません。

神谷分科員 確かに、今まとめているという最中だと思いますが、結構多くの手が挙がっているというふうに聞いております。私の足下だけの話かもしれませんが、かなり多くの方が手が挙がっているんだというのを聞いておりまして、そこの辺のところ、どういう傾向があるのか、そういうところもまだつかんでおられないということでよろしいですか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、各地域から、要望額としてこのぐらいという話は伺っておりますが、それぞれ要件を満たしているかどうか自体の確認ができていないものでございますので、これについてここでお答えすることは控えたいというふうに思っております。

神谷分科員 また、今、後段の方にも申し上げたんですけれども、例えば中山間地であるとか、条件不利地であるとか、高齢者であるとか、担い手であるとか、地域的な特性であるとか、そういった傾向というのを今後つかむ、あるいは、手が挙がったところでそういうことを分析する、そういうような予定はありますでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 現在、都道府県において取りまとめをお願いしているところでございまして、都道府県の中に、平場の地帯であったり、中山間地域であったりということになっておりますので、我々の手元にまだそこまでのところは上がってきておりません。

神谷分科員 なぜこれを聞きますかというと、ある一定の傾向が出るんじゃないかな。要は、一番懸念をしているのは、畑地化をして、その後に、短時日の間にやめてしまうみたいなことが出られても困る、そんなことも思っていまして、どういうところが畑地化をしたいのか、あるいはしようとしているのか、あるいは、もう既に畑地化しか道がないのかみたいなことは、将来的な施策の種になると思っています。

 ですので、ここはしっかり見ていただいた上で、分析していただいた上で、だとするならば、どういうところに畑地化が集中していて、あるいは、そういったところにどういった支援が必要なのか、今度の、この次の施策のためのいわば種になると思っていますので、是非ここは分析をやっていただきたいと思うんですけれども、集まってからということになるかもしれませんが、この辺についてやっていただくということにはなりませんでしょうか。

平形政府参考人 申し上げますけれども、いずれにせよ、どの地域、どういう方々がということが集まってきてから我々の方もそれを分析し、それで、その次の政策につなげていくという行為はこれからもやっていこうというふうに思っております。

神谷分科員 是非やってください。ひょっとすると、これでやめてしまうみたいなところが出ないとも限らないかなと思っていまして、そういった傾向がある地域に集中されても困るものですから、できることであれば早い方がいいのかなというふうに思っています。そういったところも含めて、是非しっかりと分析をしていただけたらと思います。

 その上で、ちょっと、そういった質問の中で大変恐縮なんですが、畑地化の支援について、聞いている範疇では、北海道単体でも予算額を超える大変な希望があったというふうに聞いています。仮の話なんですけれども、仮の話に答えられないと言われてしまうかもしれませんが、多くの農業者の皆さんから言われているのが、予算額を超えて手が挙がったときに、果たして対応してもらえるのかどうかというような率直なところでございました。それについてお言葉をいただきたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 畑地化促進事業につきましては、令和四年度第二次補正予算として二百五十億円を措置しているところですが、これに加えまして、令和五年度当初予算においても、水田活用の直接支払交付金等の一部として二十二億円を計上しているところでございます。

 現在、各都道府県において要望の確認を行っていただいているところでございますが、これらの予算を最大限活用しつつ、今後の産地からの要望、それから執行状況等を踏まえ、畑地化に取り組む生産者をしっかりと支援していく考えです。

神谷分科員 今の話ですと、予算内でということになるわけでありましょうか。それとも、仮に超えたときであっても、農家との約束みたいなものでございますから、希望者に対してはしっかりと手当てをしていくという考えでしょうか。ここをもう一度明確にお願いします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 畑地化の促進事業につきましては、令和五年度当初予算では水田活用の直接支払交付金等の一部として両方と一体的に運用していくというふうに考えておりますので、それぞれがどのような要望になるのかということを踏まえながら、いずれにせよ、各産地の取組には対応していきたいというふうに考えております。

神谷分科員 しっかりと対応していただけるという答弁だったというように今理解をいたしました。是非その方向でお願いをしたいと思います。何しろ、やはり農家としては、一種苦渋の決断の方もいらっしゃると思うし、これはもうこれしか道がないと思って畑地化に手を挙げられる方もいらっしゃると思います。そういった方に、その希望にしっかり沿っていただくということは、一種お約束みたいなものでございますから、是非しっかりとお願いをしたい、このように思います。

 次に、今回、水田機能の証明として、例外措置としてですが、一か月の湛水ということも特例としてお決めをいただいております。これは、一年を通じて適切な時期にということだと思うんですけれども、水の供給という意味では、土地改良区の協力も不可欠だろうと思っているところでございます。その辺について、土地改良区についても何らか協力の依頼等をなさったのか、これについて伺いたいと思います。また、これは確認なんですけれども、この特例的な措置なんですが、これはいわゆる五年に一回という、一度という理解でもいいのか、この辺の確認をお願いをしたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 水田活用の直接支払交付金の見直しにつきましては、これまでも全都道府県の関係者が参加する全国会議ですとか、産地ごとの意見交換、キャラバンを通じて、都道府県、それから地域農業再生協議会等の周知に努めてきたところでございますが、委員御指摘の土地改良区につきましては、多くの協議会の構成員として参画をしていただいておりまして、土地改良区への周知にも努めてきたところでございます。また、各地で将来の作付を話し合っていただく際には、土地改良区にも参加していただき検討していただく、これもとても大事な点だと思っております。

 また、委員御指摘がございましたけれども、令和八年度までに五年に一度の水張りの確認方法ということで、水稲作付を基本としながら、湛水管理を一か月以上行い、連作障害による収量低下が発生しないことが確認されるときは、水を張る機能を有しているものとみなすということなんですけれども、これも五年に一度ということに考えております。

神谷分科員 局長、確認ありがとうございました。

 今おっしゃっていただいたように、土地改良区さんも入っていただいているのは、それは承知はしているんですけれども、この事業というかこのメニューに関しては、やはり土地改良区の協力というか、当事者の一人だと思いますので、そういった意識で持っていただきたいんですけれども、やはり水ということになりますと、どうしても土地改良区さんの協力が不可欠だなと思いますので、改めてその辺の確認をさせていただきました。

 次なんですが、交付対象水田から外れることについて、今回、要は畑地化ということについて、耕作者の任意で手を挙げていただいているような形になっていると思います。ただ、一方で言いますと、政府は農地を担い手へと集約するべく努力をしていただいています。

 今後、例えば高齢で担い手のいない農地をどうしていくのかということを、本格的に今政府でも向き合っていただいて、取り組んでいただいていると思いますけれども、そういうときに、一種、農地をどうするかというときに、地域の合意というのか、調整や合意、こういったことを経ないで、任意で手を挙げていただくということになりますと、個人の判断としての農地化を進めることと地域の合意形成、ここがマッチしていればいいんですけれども、必ずしもマッチしていないときなんかには、やはり今後、担い手に集約をしていく、あるいは団地化などをしていくというときにマイナスにならないとも限らないなと思っております。

 この辺の整理についてはどうなっているのか、伺いたいと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 畑作物の作付が連続して行われる水田につきましては、畑地化の促進事業により畑地化を促すこととしておりますが、委員御指摘のとおり、その際、虫食い状態のようにばらばらに畑地化を行われるということは、効率的かつ作物に応じた合理的な農地利用の観点から望ましくはないというふうに考えております。

 このため、農林水産省としては、各産地において畑地化を進める際には、農地利用を含む今後の産地形成の在り方についてしっかり検討を行って、地域の関係者間で同意を得ていただくことが重要だというふうに考えておりまして、このような考え方をお伝えし、通知もしてきております。

 具体的には、こうしたブロックローテーションですとか畑地化の体制構築に取り組む地域再生協議会に対しまして、農地の利用調整に向けた話合いですとか、現地確認に係る費用への支援を措置をしているほか、畑地化促進事業の要望調査の内容確認、精査においても、水田の畑地化によって地域における効率的な農地利用等に支障が生じないよう、関係機関、具体的には土地改良区ですとか農業委員会などの合意を得ていることを必要とする通知を発出しているところでございます。

神谷分科員 農業委員会の方に聞いていると、意外なほどにすごく心配をされています。もうそこは局長も聞いていると思うんですけれども、やはりばらばらになってしまうことが一番怖い。特に水田の真ん中だけ畑地化しているなんということがあっては大変困るし、あるいはその後、面的な整備をやるときにも問題が出てくるみたいなこともあるんだよとか、様々、農業委員会の皆さんからも話を聞いているところです。

 そういった意味で、今ちゃんと通知を発出しているんだよというようなことでお話はいただいたんですけれども、これは、手続として、いわばその地域の合意みたいなのが必要だという認識なのか、それとも、あくまでそういうようなことで進めてくださいということで求めている程度、程度というのも変ですけれども、なのか、その辺のところはどうなんでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 この事業を申請することに関して、こういった手続を経てくださいということを通知に書いております。

神谷分科員 必ずしも必要とするということなんですか、それとも、手続を経てくださいということは、一回は手続としてそれを経ればいいということなんでしょうか。この辺はいかがですか。

平形政府参考人 通知をそのまま読み上げます。

 水田の畑地化によって地域における効率的な農地利用に支障が生じないよう、関係機関、土地改良区、農業委員会などの合意を得ていることが必要ですというふうに申し上げております。

神谷分科員 ありがとうございます。了解いたしました。

 次なんですが、一旦、交付対象水田から外れた場合、再度、交付対象水田に戻すということはできないというふうに伺っております。

 しかし、農村では、現在の所有者や耕作者が離農した場合の後にまでついて縛られるということになってしまうと、なかなか次の引受手の確保が難しくなって、結果として耕作放棄地につながるのではないかという懸念があるというふうに伺っています。

 実際に農家の声を聞きますと、畑地化した後の農地を引き受けることは難しいという方の声も聞いているんですけれども、実際に、どういう方向があるのか、あるいは、それに相当する分の畑地化を別の場所でやればいいのかなど、様々方法はあるんじゃないかなとも思うんですが、先ほどの、誰にどこを任すかという話のもう一方で、離農した後にまで縛られるということになると厳しいんだという声がある、これについてのお答えをいただけたらと思います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 今回の畑地化促進事業でございますが、主食用米の需要が連続して減少している中で、国による支援を受けて畑地化した農地を再び水田活用の交付対象水田に戻すことは認めておりません。

 そのため、現在、産地において、水田機能を維持して産地化をするのか、又は畑地として産地化するのかということを検討していただいているところでございまして、また、先ほど申し上げたとおり、地域の中で合意が取れた形で、ばらばらという形じゃなくて、まとまった形で考えていただくという方針でおりますので、こういった話合いを通じて耕作放棄地の発生を防止することが重要というふうに考えておりまして、農林水産省としては、産地が、水田機能を維持するのか、あるいはまとまって畑地化するのか、そういったいずれの取組についても後押しをしていく考えでございます。

神谷分科員 現実論として、個人の方が、これで畑地化する、その後、離農するなんというケースがないとは言えないかなというふうに思っています。そういったときに、現場で、残った方が困ってしまうということでは困るので、是非、頭の体操ぐらいはやっておいていただいた方がありがたいのかなというふうに思います。是非お考えをいただけたらと思います。

 その上で、農地の引受手がなかなか現れないとなれば、この場合、交付対象水田から外れた場合なんですけれども、農地の価格が下落するおそれはないのでしょうか。事実上、水田としては売り渡せない以上、価格は畑としての評価に近くなるのではないかというふうに思われるんですけれども、農地価格の下落について、実際に起こるかどうかということも含めてですけれども、伺いたいと思います。

 また、その結果として、農地の評価が落ちると与信面での問題、担保割れとか副次的な問題も起こってくるんじゃないかと思いますが、この辺についての考え方をお聞かせをいただきたいと思います。

村井政府参考人 お答えいたします。

 今後、高齢化、人口減少が本格化し、地域の農地が適切に利用されなくなることが懸念をされております。そういった中で、地域内外から受け手候補を広く探すことが重要であるというふうに考えています。

 本年四月に施行いたしました改正農業経営基盤強化促進法におきましては、人・農地プランを地域計画として法定化し、将来の農地利用の姿を目標地図として明確化し、地図に位置づけられた受け手に対して農地バンクの活用により、農地の集積、集約化を進めていくこととしております。

 農地の受け手が見つからない場合には、多面的機能支払交付金や中山間地域等直接支払交付金の活動組織、あるいはJA等のサービス事業体などによる農作業受託を活用するといった取組により、農地の受け手をしっかりと確保し、農地価格に影響がないように進めてまいりたいと考えております。

 なお、農地価格でございますけれども、全国農業会議所の方で、毎年、田畑売買価格に関する調査をやっております。令和四年田畑売買価格に関する調査結果によれば、農地の買手の減少や買い控え、米価など農産物価格の低迷、後継者不足等の要因により、下落傾向で推移をしているという結果が出ておると承知しておりますけれども、こういった結果はもうここしばらく続いておりますので、そういった複合的な要因によって農地価格に影響が出ているということは考えられるのではないかなというふうに考えております。

 また、与信の関係でございますけれども、一般論として与信の関係は融資案件ごとに金融機関がどう対応するか判断をしていくということでございますけれども、一般論といたしまして、融資の可否につきましては、担保物件のみによることなく、経営能力等から見た返済の確実性等を考慮して判断されるものと承知しております。担保価格の下落のみをもって融資が困難になるというわけではないというふうに考えております。

神谷分科員 時間になりましたので、この後、酪農の質問も用意していたんですが、これについてはまた別の機会とさせていただきます。

 また、村井局長、是非、農地の価格については、引き続きしっかり見ていただいて、分析もしていただけたらと思います。

 お時間、ありがとうございました。

福重主査 これにて神谷裕君の質疑は終了いたしました。

 次に、神津たけし君。

神津分科員 本日は、分科会で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、冒頭なんですが、質問通告五と七については後でやらせていただきたいと思います。六については、政務官がいらっしゃったので、少し早めにやらせていただきたいと思っております。

 まず、一番の食料安全保障についてなんですが、私、ここ最近の物価上昇によって、食料自給率に対する国民の関心が高まっているというふうに感じております。特に、今、これから世界の人口が更に増加していって、二〇五〇年頃には百億人近くまで行くのではないかと言われております。

 そんな中で、日本の食料自給率三八%のままでいってしまうと、将来的に日本が食料危機に遭ったときに、日本が輸入できるものがなくなってしまう、そういう危機感の下、今日は、ちょっとまず冒頭お伺いしたいんですが、食料安全保障対策強化大綱の内容、これは国会でも既に議論が行われていますので、ほかの委員会で、農水委員会で行われておりますのでお伺いしたいんですが、この大綱を実現するに当たって、大臣の御決意をお願いしたいと思います。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思いますが、その前に、実は、二十一日から昨日まで、ゆうべ私は帰ってきたんですが、G7の農業大臣会合が宮崎で開かれました。

 私の方からは、議長国でございましたので、今委員おっしゃいましたような、やはり、食料の安全保障の問題を取り上げて、みんなで議論しようじゃないかということを申し上げながら三日間議論をしてまいりました。

 日本だけではなくて、これは、ヨーロッパのEUの中でも、ドイツだとかイタリアだとか、こういったところも自給率一〇〇%じゃなくて、G7の中でも一〇〇%を超えているのはカナダとアメリカ、この二国でありまして、俺たちのところも実は問題なんだということを皆さん口々におっしゃっておられまして、特に、ウクライナの戦争が始まりましてから、やはり、ウクライナからの小麦の輸出が途絶えてしまったというようなことから、皆さん、これはもう何とかしなけりゃいけないということで、私どもも共同声明で出しましたけれども、これからは、やはり、農業生産を拡大しようじゃないか、あるいは、もう少し環境に負荷がかからない農業を、気候変動に基づく、そういった問題も取り上げようじゃないかということで議論をさせていただきました。

 いずれの国も、やはり、今回のウクライナの問題だけではなくて、気候変動等によりまして、大変、輸出国でさえ、自分の国の食料は国民に安定して供給できるかというところは、皆さん心配されておりました。これは、私ども日本は一番自給率は、今おっしゃいましたように、低いわけでありますから、このことを強く訴えたんですが、ほかの国も、それは日本だけの問題じゃないぞ、俺たちの問題でもあるんだというお話をされておりましたので、これはほかの国も日本と同じようなやはり課題として抱えているんだな、こんなふうにも思いました。

 それと同時に、食料安全保障というのは、生産者だけの問題ではなくて、一方では消費者の問題でもある、このように思っておりまして、消費者を含めた国民一人一人に関わる重要な課題だというふうに私は思っておりまして、この会議でも、いよいよ、今までは生産性の向上なんという言葉はほとんど国際会議では使えませんでした。なぜかというと、輸出国からすると、そういった我々日本みたいなところが生産性を向上させると輸出がいわば減ってしまうという、そういったおそれがあったものですから、禁句みたいなものでありましたが、今回は正々堂々と、生産性向上、そしてまた自国でできるものは自国で賄おうじゃないか、こういったことも申し上げてきたところでございます。

 そういった意味で、昨年末に我々は食料安全保障強化政策大綱を策定しておるところでございまして、なお、六月には、食料・農業・農村基本法、二十年たちましたので、この法律の改定を皆さん方にお願いして、改定させていただいて、何とか政策の新たな方向、展開を取りまとめてみたい、こういうふうに考えておるところでございます。

 私は、大臣に就任して以来、役所の皆さん方にも、今日は幹部の皆さん来ておりますが、去年の八月に就任しましたので、今年は農業政策のターニングポイントだぞ、日本の農業を変えていかなきゃならないということを口を酸っぱくして申し上げたし、そしてまた、新入生、新採用の職員も入ってきましたので、その挨拶の中でも同様に、ターニングポイントの一年目だ、初年度だということも申し上げてきて、これから自給率を上げていこう、こういうふうに思っておるところでございます。

神津分科員 ありがとうございます。

 全世界的な、G7の中での食料安全保障を考えていくというところでは、是非とも、途上国全体を含めて食料の安全保障というものを考えていっていただきたいなと思います。

 私自身も、実はアフリカに十七年、衆議員になる前は住んでおりまして、私は、まさに身近で、食料が足りていない、不足しているような状況を見てきているので、食料が不足してしまうと国家もやはり安定しないというところで、食料を是非とも日本で、食料自給率をもうちょっと高めた上で、世界での議論というものに努めていただきたいというふうに思っております。

 次に、吉川政務官がいらっしゃっているので、先に六番の質問通告、行わせていただきたいと思います。

 今、私、地元を歩いていて、多くの酪農家の方々から、このままでは経営を続けられない、廃業せざるを得ない、とても息子さんに後継者になってくださいと言えないというふうによく言われるんですね。

 今、コロナ禍で需要が減少してしまって、飼料の価格も高騰している状況の中で、生乳を減産したり廃棄処分せざるを得ないような状況にあると思っています。

 酪農家の方々の経営の状況というものを見て、国は持続可能だとして見ているのか、まず大臣から伺えますでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 酪農経営の生産コストや収益性は、経営管理能力ですとか、その有する自給飼料基盤の規模、それから輸入飼料への依存度その他の条件により異なると理解をしてございます。

 厳しい経営環境の下で、離農される経営体も少なからずおられますけれども、自給飼料を活用するなど効率的な生産を行うことで、乳代で生産コストが賄われている経営体もあるというふうに承知をしてございます。

 我が省といたしましては、多くの酪農経営が、自らの営農計画に基づいて、これらの条件を改善をして、経営の健全化を図って、生産を継続していただきたいと強く考えてございます。

 持続可能な酪農のためには、良好な条件で生産を行う経営体を育成、維持することが重要でありまして、このための諸対策を講じてまいりましたし、これからも講じていきたいというふうに考えてございます。

神津分科員 ありがとうございます。

 農水省がその時々に応じて適切な政策を行ってきていらっしゃると思うんですが、人によっては、この政策について、行き当たりばったりというふうにおっしゃられる方もいらっしゃいます。

 例えば、二〇一四年のバター不足が起きたときには、政府は、生乳の生産量を増やすために、設備投資に補助金を出して後押ししてきた。そして、これに対して多くの農家が生乳の増産に踏み切ったという経緯があったかと思います。その数年後、今、国は、生産を抑制するために、この三月以降、乳牛を処分すれば一頭当たり十五万円の助成金を出すような政策を行っているというふうなところでは、これは国民が税金を払って、需給調整の失敗を国民が結局税金で負担しているような状況になってしまっていると思っています。

 そして、これに一番やはり大きな影響を受けているのが私は農家だと思っておりまして、国の政策を信じてきた農家の皆さんが精神的に参ってしまっている。この結果、経営難の長期化によって離農者の増加も起こっているというような状況があると思います。その結果、生乳の受託乳量が四年ぶりに前年割れしているという状況があると思っております。足下の需給調整の失敗によってこのような事態が起きていることも、私は農水省にも認識していただきたいと思っております。

 これ以上離農者が増えないように、真摯に反省をしていただいて、酪農家の努力を無駄にしないように、酪農家が安定して生産できる環境づくり、政策をお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、飼料価格の高騰、あるいは生乳需給の緩和によりまして、酪農経営の収益性は悪化をしてございまして、例年と比べまして離農が進んでいる状況であると認識をしてございます。

 このため、先月決定をいたしました畜産・酪農緊急対策パッケージの中で、酪農経営について、配合飼料の高騰対策に加えて、購入粗飼料等のコスト上昇に対する補填金ですとか、償還猶予への対応を要請するなどの金融支援の継続など、諸対策を実施することとしたところでございます。

 持続的な酪農経営のためには、生産コストの上昇は販売価格に適切に反映していくことが重要であると考えてございまして、消費の拡大、あるいは在庫の削減のための対策など、環境整備をしてきたところでございます。

 このような中、生産者団体と乳業メーカーの交渉で、飲用牛乳向けの乳価ですけれども、昨年十一月から十円、さらに、今度は八月から十円引き上げられるということが決まってございますし、また、昨年夏以降下落が続いてきましたぬれ子価格も回復基調になるなど、収益性の改善が進む兆しも出てきているというふうに認識をしてございます。

 引き続き、酪農経営をしっかり支えてまいりたいと考えてございます。

野村国務大臣 神津委員の方から、私にも、名前を挙げていただきましたので若干添えたいと思いますが、確かに、酪農経営が、餌高によりまして、畜産の全ての方々が大変な状況にあったことはもう御承知のとおりでありますが、中でもやはり酪農が一番厳しかったというふうに思っております。

 それはなぜかといいますと、先ほど局長の方からもお答えしましたが、いろいろな対策を畜産には打ってあります。これはもう総理から、この時期を乗り越えろということの指示がございましてやっておりますが、特に酪農の場合には、粗飼料、いわゆる乾燥牧草を輸入して、これで規模拡大を図られた農家もあるというふうに聞いておりましたので、ただ、オーストラリアだとかアメリカの乾燥牧草を購入する、これがもう二倍、三倍の価格に跳ね上がっておりまして、濃厚飼料よりもむしろ粗飼料の方が高くなっているような感じも出てきておりました。

 したがいまして、今回、粗飼料対策もまた対策としてやらせていただいておりますけれども、ただ、本当に日本の酪農が外国から餌までも全て輸入していいのかというのは、これは大変な疑問でございますので、できるだけ自分のところで草も作ってください、北海道のように、やはり粗飼料は自分のところで賄おうというぐらいの気持ちで酪農を経営してほしいということを、私は地元の酪農家の皆さん方にもそういったことを勧めているところでございます。

神津分科員 国産の粗飼料を使った場合、恐らく、取れる生乳量というものが少なくなってくるというところで今輸入のものを使っていらっしゃる方が多いと思いますので、そうした意味においては、粗飼料に対する補助金とかをもう少し手厚くしていただきたいと思っております。

 次に、ちょっと吉川さんに伺いたいと思っております。

 私の方から伺いたいのは、今、途上国の多くでは、コールドチェーンというものが発達していない、国によっては、今回の農水委員会、様々、予算委員会でも脱脂粉乳というものはよく取り上げられていたんですが、ロングライフミルクについては、需要があるにもかかわらず、多分、余り日本で飲まれていないからだと思うんですが、国会で取り上げられていないと私は認識しております。

 そうした意味においては、輸出促進の施策として、このロングライフミルクの輸出拡大を更に図っていく、それから、ODAによって、難民の方々やミルクが購入できずに困っているような方々、こうした方々に寄贈していくようなこと、こうしたことを検討されているのか、まず伺わせてください。

吉川大臣政務官 ありがとうございます。お答え申し上げます。

 まず、我が国の国際協力は、開発途上国の社会経済開発を目的に、被援助国からの要請に基づいて実施されるというものが基本原則でございます。

 しかしながら、今委員御質問いただきました脱脂粉乳等につきましては、国会でのこれまでの議論を踏まえ、日本のNGO及び在外公館を通じて、外務省より、海外のNGOなどに対して、日本にある脱脂粉乳などを活用したいという意思が、向こうに、途上国の方にあるのかどうかという意思とニーズをまず確認しているところでございます。

 また、現在、我が国の脱脂粉乳への具体的な要請があるという情報にはまだ残念ながら接していないところではございますけれども、仮にこのニーズに基づく要請がございましたら、輸送にかかるコスト、あるいは支援の実施体制なども踏まえながら、外務省といたしましても、日本の酪農家が置かれているこの現状、これに対する観点からも、個別具体的に、しっかりと前向きに取り組んでいきたいというふうに考えております。

神津分科員 私も、衆議院選挙に出馬表明する一日前までは、JICAのルワンダ事務所というところに所属しておりまして、JICA関係の仕事とか、あとはアフリカ開発銀行で私は仕事をさせていただいていたんですが、その中で、要請主義というふうに先ほどおっしゃられたと思うんですが、要請主義というのは、実は結構、形はあるんですが、私たちの方から、まずはこういうものがありますよと言った上で、向こうの方から要請をしてもらうというような、そういうことをやって案件形成というものを図られているという場合が多いというふうに私は感じております。

 そうした意味においては、今、NGOと、それから在外公館を通じて、脱脂粉乳の要請について、多分、公電か何かで諮られたと思うんですが、私が思うには、途上国の方々の一番近くにいらっしゃるのは、やはりJICAの方々だと思うんですね。JICAにも、是非、外務省の方から、脱脂粉乳それからロングライフミルクの要望があるかということを、各国政府に対して需要を伺っていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

吉川大臣政務官 ありがとうございます。

 まさに要請に基づいてというところではございますが、委員おっしゃったとおり、実際には、まさに酪農家の現状に鑑みて、こちらの方から、外務省の方から、NGO、在外公館に対して照会をしているという状況でございます。

 その中には、委員おっしゃいましたJICAを含めた国際機関に、案件形成の可能性については、このJICAにつきましても広く照会をしているところでございます。

 しかし、現地の衛生状況等を踏まえると、実は、支援物資の質を維持できないかもしれないという判断もあるということでございまして、現在、具体的な案件形成の可能性に対する更なる情報、これをいただきたいというふうに思っておるんですけれども、そのニーズというのには今のところは接していないという状況でございます。

 しかし、いずれにいたしましても、広く照会した上で、仮にニーズに基づく要請というものがございましたら、輸送にかかるコストや支援体制ということもございますけれども、外務省といたしましては、しっかりと前向きに、個別具体的に対応していきたいというふうに考えておるところでございます。

神津分科員 ありがとうございます。

 公電をもう一度出していただいたりとか、JICA側にもう一度、要望があるかということを伺っていただいたりだとかしながら、是非進めていただきたいと思います。

 これで政務官は退席いただいて構いません。ありがとうございました。

福重主査 じゃ、政務官は退席いただいて結構でございます。御苦労さまでございました。

神津分科員 ありがとうございました。

 次の、二番目の、農業者の減少対策についてお伺いしたいと思います。

 私、地元を歩いていると、人口減少はもちろんのこと、農業従事者の減少、高齢化、それから耕作地面積の減少というのも深刻な問題だと思っております。

 特に、全国の基幹的農業従事者、二〇一五年の百七十六万人から二〇二〇年の百三十六万人と、たった五年間で農業の基幹従事者が四十万人も減少している。実は、私の地元の長野県ではもっと急激に減少していて、四割も基幹的農業従事者が、たった五年間で減少しているという現状があります。

 それから、今、農業就農者の高齢化、それから後継者不足というものが深刻化しておりまして、六十歳以上の基幹的農業従事者は全体の八四%と、次の持続可能な農業という意味では、若年層の農業従事者がすごく減ってしまっているというような状況にあります。

 こうした中で、私、冒頭、食料安全保障について話をさせていただきましたが、日本の農業をこれから守っていけるのか、それから、将来にわたって日本が食料危機に陥らないような施策というものが必要だというふうに思っております。

 これまで、農水省については、様々な施策を行って、農業従事者の減少分を賄えるような施策を打ち出してきてはいると思うんですが、残念ながら、今はまだまだ、農業従事者減少分を補えていないという状況があると思います。これからどんな追加の政策を行っていくのか、伺えればと思います。お願いします。

村井政府参考人 お答えいたします。

 農業者の減少、高齢化が進行する中、将来にわたって食料を安定的に供給するためには、御指摘いただきましたように、農業生産を支える担い手をしっかりと育成、確保していく必要があると考えております。

 このため、令和五年度予算におきましては、委員からも言及いただきましたが、資金面での支援を引き続き行うことに加えまして、幅広い世代の農業人材を地域に呼び込むための社会人向け農業研修等の取組につきまして新たに支援をすることとしております。これらの総合的な取組によって、農業を担う人材の育成、確保を一層推進してまいりたいと考えております。

 現在、食料・農業・農村基本法の見直しに向けた検証作業を進めておりますが、本年六月の新たな政策の展開方向の取りまとめに向けましても、しっかりと議論をしていきたいと考えております。

神津分科員 私は、若者が農業に従事したくない、しないという理由の一つには、多くは、収入が安定しないというところにあるのではないかというふうに思っております。今、地球温暖化、それから局所的な豪雨とかが起きていて、これまでその土地で作れていたものが作れなくなってしまっているというような状況があるかと思っております。

 私は、こうした状況を避けていくには、農業で安定して食べていけるんだという状況をつくっていくには、農業の戸別所得補償制度、これを復活するべきではないかと。以前は米だけに限った農業の戸別所得補償制度ですけれども、これを野菜とか果物にも拡大していくことによって食料の安全保障というものが守っていけるのかなと思っております。

 農業者戸別所得補償制度を復活していただくというところはどうなのか、この点、難しいのかというところを伺えればと思います。

前島政府参考人 お答えいたします。

 農業者の方々の所得向上を図るため、農地の集積、集約化や、収益力向上のための機械、施設整備の支援、スマート農業による生産性向上等により生産基盤の強化を図るとともに、年々拡大していく世界の食市場を獲得するために、農林水産物・食品の輸出を促進するなどの政策を推進しているところでございます。

 その上で、農業者の方々が安心して生産を継続できるよう、麦、大豆等の生産者に対する畑作物の直接支払交付金、主食用米から他作物への作付転換を支援する水田活用の直接支払交付金、中山間地域等直接支払いなどの日本型直接支払いといった農業者に対する直接支払いを行っているところでございます。

 また、農業収入が減少した場合には、セーフティーネット対策として、ナラシ対策や、品目横断での収入保険という収入補填の制度も設けておるところでございます。

 今後とも、こうした制度を着実に実施していくことによりまして、国内農業の担い手をしっかりと支えてまいりたいと考えております。

神津分科員 農業者戸別所得補償制度を復活できないということであれば、先ほどおっしゃられたようなセーフティーネットの中で、何かあったときには安定した収入が得られるという制度を更に拡充していただきたいと思います。

 まず、配付資料を少し御覧ください。これは川上村のレタス農家の件なんですが、実は、川上村では、農業については、基幹的農業従事者が急激に減少しているという中においては、農業人口の減少を補うために外国人労働者に頼っているというところがあります。

 今、日本に来ている技能実習生は三十二万人、それから特定技能は十三万人というふうに言われております。この制度について、今、現状維持、見直し、廃止など、有識者の間で議論が交わされているというふうに伺っておりますが、新しい制度になろうが、現状維持、見直しになろうが、今、技能実習生として来ていらっしゃる方々は自動的に新しい制度に適用になる、それから、新しく日本に来られる方が減らないような制度設計をお願いしたいというふうに思っておりますが、農水省の制度設計への関わりについて教えていただけますでしょうか。簡単にお願いします。

村井政府参考人 お答えいたします。

 我が国の農業者の高齢化等が進む中で、技能実習制度や特定技能を活用した外国人材が農業分野でも約四万人従事をしておるところでございます。

 こうした中、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議が開催されているところであり、現在、中間報告書の取りまとめに向けて議論が行われていると承知をしております。

 有識者会議には全国農業会議所の担当者も委員として入っており、農業現場の実態を踏まえて議論されることを期待しておりますが、今後、農林水産省といたしましても必要な協力を行ってまいりたいと考えております。

神津分科員 技能実習生、それから特定技能の方々が、日本にまだまだ来やすい、それから、人数が減らないというところをしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 ちょっと飛ばしまして、質問通告九番に移らせていただきます。

 配付資料二枚目になります。今、トラクターの事故で多くの方々が亡くなられておりますが、実はその大半というものは、シートベルトを着用していなかったというところに起因しております。地元の長野県でも、昨年、十五名の方が貴い命をなくされました。そして、全国でも、毎年大体三百名の方々がこうしたトラクターの事故とか農業関係の事故で亡くなっているという現状があります。

 これから農業従事者を増やしていこうという中においては、今既に従事している方々、こうした方々の貴い命を失わないというところも重要だと私は考えておりまして、これから予定されている食料・農業・農村基本法の改正の際には、是非とも、こうした安全に係る取組についても重視していただきたい。

 それから、しっかりと予算措置。今、実は全く、ここに係る予算措置がついていなくて、地元の皆様は自分たちのお金を手持ちで出して安全の研修というものを行ったりしているんですね。そういうところについても是非、安全に係るお金というのを国の方から出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農作業事故による死亡者数、減少傾向にありますけれども、他産業と比較すると依然として高い水準にありまして、農作業安全対策の強化は喫緊の課題というふうに認識をしております。

 農林水産省では、農作業安全対策の強化策を取りまとめまして、研修等を通じた農業者の安全意識の向上等を図っているところでございまして、指導者の育成ということで、農業機械士を始め、全国で指導者の育成を進めているところでございますが、予算的な話ということでございまして、農作業安全総合対策推進事業というのがございまして、この中で、指導者の育成研修の開催ですとか研修資料の作成、それから県段階の推進協議会の活動経費の支援等も行っているところでございまして、これらのことを活用していただきながら、県段階でもしっかりやっていただけるように進めていきたいというふうに考えております。

神津分科員 質疑の時間が終了してしまいました。

 来年には食料・農業・農村基本法の改正も視野に入れていると伺っております。農家の皆様に寄り添って、安定した収入を農家の皆様が確保できるように農政を進めていただくこと、それから食料自給率を上げて食料の安全保障を守っていくこと、それから予算の適正な執行をお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

福重主査 これにて神津たけし君の質疑は終了いたしました。

 次に、岬麻紀君。

岬分科員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。

 昨日、おととい、二十二、二十三日には、生産額ベース総合食料自給率全国一位である宮崎県の宮崎市におきましてG7農相会合が開かれ、野村大臣始め皆様方は大変御多用なことと存じます。

 本日は、質疑のお時間をいただきまして、誠にありがとうございます。

 今回は、前回の二月二十日の予算委員会分科会の最後に触れました農業振興地域について、更に質疑をしていきたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本年二月の予算委員会第六分科会におきまして、鳥インフルエンザや荒廃農地の対策に関して、農地バンク、また農業委員会の取組について質疑をさせていただきました。

 その際、私の選挙区でもございます愛知県名古屋市中川区におきまして、農業振興地域の農用地では農地転用が原則禁止をされているために農地がそのまま放置されている状況など、活用したくてもなかなか活用ができない、このような農地をどうしていくかというお話をさせていただきました。

 それに対しまして、そのときの農林水産省からの御答弁は、地域の状況に応じて農地をめぐる問題が発生していることを承知している一方、食料安全保障が課題となる中で優良農地をいかに確保していくかという視点も極めて重要であるというものでした。

 一方、農林水産大臣は、令和二年十二月に策定をしました農用地等の確保等に関する基本指針におきまして、令和十二年時点で確保すべき農用地区域内の農地面積の目標を三百九十七万ヘクタールと設定をしています。当時、令和元年現在の農用地区域内の農地面積は四百・二万ヘクタールで、それまでの趨勢が継続した場合には令和十二年時点で三百八十五万ヘクタールまで減少してしまうというものを、施策効果によりまして三百九十七万ヘクタールにとどめるという目標だということで承知をしております。

 そこで、質問です。

 まず、この数値目標につきまして、これまでの趨勢を踏まえて、農用地区域への編入促進の効果及び各種施策による荒廃農地の発生防止、また解消の効果を織り込んで、農用地区域内の農地面積の目標を設定するとしてはいますが、各種の施策の効果、またこれによります農地面積の増加はどのような根拠を基に算定をされているのか、まずはお聞かせください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農用地等の確保等に関する基本指針は、優良農地の確保を図るために国の基本的な考えを示したものでございまして、令和二年に公表した基本指針において、令和元年現在の農用地区域内の農地面積四百・二万ヘクタールを基準としまして、これまでの農用地区域からの除外、荒廃農地の発生の趨勢を踏まえつつ、荒廃農地の発生防止や解消に係る施策の効果を織り込んで、令和十二年の面積目標を三百九十七万ヘクタールとしたところでございます。

 具体的には、趨勢としまして、令和十二年までに、農用地区域からの除外として七万ヘクタール、農用地区域内における荒廃農地の発生として八・三万ヘクタールがそれぞれ減少すると推計しております。

 これに対しまして、政策効果として、令和十二年までに、現在農用地区域に編入されていない集団的な農地などを新たに農用地区域へ編入するものとして五・七万ヘクタール、農地中間管理機構を通じて担い手への農地利用の集積、集約化により荒廃農地の発生防止を図るものとして一・二万ヘクタール、中山間地域等直接支払制度など、日本型直接支払制度による共同活動の支援、農業生産基盤整備等の各種施策により荒廃農地の解消が見込まれるものとして四・八万ヘクタールがそれぞれ増加すると見込んで算出したものでございます。

岬分科員 ありがとうございます。

 その後、二月末に農林水産省は、令和三年の農用地区域内の農地面積についてをプレスリリースされています。それによりますと、令和三年の全国の農用地区域内の農地面積は、前年から〇・六万ヘクタール減の三百九十九万ヘクタールとなっております。今後、単純にこの減少が続くというように想定をしますと、あと三、四年で早々に目標を割り込んでしまう状況かと思われます。

 そこで、質問です。

 この令和三年の実績を農水省はどのように受け止めていらっしゃいますでしょうか。また、この実績を踏まえまして、今後どのような対策を進めていこうとされているのか、野村大臣、御見解をお聞かせください。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思いますが、今御質問にありましたように、確かに、令和三年の農用地区域内の農地面積は三百九十九万ヘクタールでございまして、前年から六千ヘクタール減っていることはもう御指摘のとおりでございます。

 これは、先ほど局長が申し上げましたけれども、当初想定していた年間の減少面積は三千ヘクタールでありましたが、これを上回る倍の六千ヘクタールになったところでありますけれども、その主な要因としては、荒廃農地の発生面積が想定よりもはるかに多かった、倍ぐらいになっているということでございます。

 農水省としては、このために、農業生産性の向上に資する生産基盤の整備を行うというのが一つあります。それから二つ目は、農地中間管理機構を活用した農地の集約化、こういうことも進めていこうと。それからもう一つは、日本型直接支払制度によりまして、荒廃農地の発生防止やあるいはまた解消を図っていくということを今進めているところでございます。

 現在進められております、地域計画というのを今作ってもらっておりますが、この話合いの中で、ここの地域の農地をどうするかということは、これはもう本当に真剣な話でございますので、委員御指摘のように、農地が面積が減ってくれば、それだけ作物は作れないということになってきますので、ここの集落の農地をどうするかということを真剣に議論していただきたいということで、最近そのことの話合いが行われておりまして。じゃ、ここの農地は水田として残そう、中山間地のおらのところは、これはなかなか耕作も無理だから、ここはもう放牧場にしようというような形で、いろいろな農地の使い方があるわけで、そのままほったらかしますと、まさしく耕作放棄地の荒廃農地になってしまうものですから。そういった、優良農地といいますか、今現在ある農地をどう確保して、どういう活用、利用をして、そして残すかということは、我々が幾ら指示してもできませんので、そこの集落の話合いの中でやってくださいということで、人・農地プランというのを今作らせているところでございます。

岬分科員 ありがとうございます。

 今のお話ですと、荒廃農地が非常に増えているということを踏まえてお話しさせていただきますが、農用地面積の目標設定の在り方にも見直しが必要ではないかと感じております。農用地区域内の農地面積の目標達成が厳しいというこの状況が背景にございます。目標設定の際に、地域の実情が十分に把握また反映されていないのではないでしょうか。

 私の地元から聞こえてくるお話ですと、優良農地が大切だということは十分に承知をしつつも、やはり、世代交代であるとか時代の流れであるとか、農地を受けてくれる方がいないというような地域の本音といった部分ですね、ほかの用途で使っていきたいけれども使えないというこの状況は、ほかの地域にもあるのではないかと考えるんです。

 そのような地域の声、地域の実情が届かずに、国として優良農地の重要性のみが優先されていて、数値ありきの目標設定をされているということはないでしょうか。その国の目標を受けて、そうなると、都道府県や市町村、地方自治体というのが数値目標ありきのまま従わざるを得ないのではないかと考えているのです。

 この目標などの土台になる農業振興地域制度において、対象となる地域について、自然的、経済的、社会的諸条件を考慮して総合的に農業の振興を図ることが必要であると認められる地域とされていますが、これは、考え方によりますと、そのような諸条件を総合的に、本当に地域の実情を踏まえて考慮した結果、農業よりも、もしかしたらほかの用途で利用していく方が、地域の振興であったり農村振興につながるというケースもあるのではないかと思います。

 そこで、質問です。

 農用地区域内の農地面積の目標設定に際して、地域レベル、国レベルそれぞれにおいての、地域の現場、また実情、要望はどのように実際は反映されているのでしょうか。

野中副大臣 国の基本指針を定めるときには、農振法上、法律で、食料・農業・農村政策審議会、これらの意見を聞くとともに、その指針のうち、確保すべき農用地等の面積の目標、そして、都道府県が定める確保すべき農用地等の面積の目標の設定基準、これらにつきましては都道府県知事の意見を聞くこととなっております。

 また、知事は、意見を述べようとするときには、その前に市町村の意見を聞くこととなっておりまして、これらの手続を踏むことで、しっかりと地域の実情を把握した上で設定をしていくということを取っております。

岬分科員 ありがとうございます。それでも、今お話ししたようなやはり乖離があるように感じておりますので、更に更にきめ細かく地域の実情を聞いていただくことを切にお願い申し上げます。

 では、次に、前回もお話を少しさせていただきましたが、デジタル化の推進による現況の把握についても伺います。

 農用地等の確保等に関する基本指針におきまして、そのほか農業振興地域の整備に際し配慮すべき重要事項の部分に、(二)農用地等の面積や土地利用に関する現況の適切な把握とあります。農用地利用計画に係る平面図の作成にデジタル地図を用いるなどデジタル化の積極的な推進等によりまして、農用地等の面積や土地利用に関する現況を適切に把握するということです。

 また、令和五年一月の、優良農地の確保に向けた取組について、こちらの資料にございますけれども、十ページでございます。農用地区域内の農地面積の増減のそのほかの増減の主な要因として、求積手法の精度向上になるもの、また、求積手法の精度向上については、現在の基本方針にデジタル地図を位置づけるなど、早期改善に向け、取組を加速しているところとあります。

 そこで、質問です。

 このような様々なデジタル化の推進によりまして、面積の数字の精度は向上していると認識をしております。農用地の増減につながっているとも理解をしておりますが、農用地の現状把握とこの増減について、デジタル化の推進による影響をどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。現状、どうでしょう。

青山政府参考人 お答えいたします。

 農業生産の基盤であります農地につきましては、できる限り正確に現況を把握していく必要があると考えております。

 このため、令和二年に策定した国の基本指針におきまして、農用地区域内の農地面積や土地利用状況の確認につきまして、デジタル地図を用いる等デジタル化の積極的な推進を図ることなどを位置づけたところでございます。

 また、国の基本指針を踏まえまして、都道府県の基本指針においても同様に位置づけていただいておりまして、既に一部の自治体におきましては、農用地区域の設定状況等についてデジタル地図での管理に取り組まれているところでございます。

 今後とも、農林水産省としては、デジタル地図の利活用に向けましたマニュアルの提供等を通じまして、農振制度におけますデジタル化の推進を図っていきたいと考えているところでございます。

岬分科員 ありがとうございます。

 ここで、せっかくデジタル化の話をしましたので、今話題となっておりますチャットGPTについても伺いたく存じます。

 四月十八日に、野村大臣は、記者会見また各種報道におきまして、農水省がチャットGPTを活用するとされました。具体的に検討されているのは、農水省の共通申請サービス、eMAFF、今お話にも出ましたけれども、マニュアルの改定作業であるとか、補助金の申請など同省の五千件以上の行政手続をホームページ上でできるサービス、文章作成などの作業にこのチャットGPTを使うということですね。

 大臣、このチャットGPT、実際にもう使われましたでしょうか。若しくは、使ってみたいと思われましたでしょうか。もし、既に使われているということであれば、このチャットGPTの有用性であるとか今後の可能性を、どのようにお感じになられましたでしょうか。

野村国務大臣 御質問にありました最後の方から答えますけれども、担当者から操作画面は見せてもらったことはありますけれども、自分自身で操作したこともありませんし、操作もできません、申し訳ございませんが。今後は、ちょっと試してみたいなというふうには思っております。

 私が記者会見で申し上げましたのは、要は、農水省のいろいろな事業があります、補助事業、まあ一言で言えば補助事業なんですが、なかなか、農家の皆さんや、あるいは担当者の皆さんから言わせますと、もう面倒くさい、農水省は書類をいっぱい作らせるじゃないかという、こんなこともございました。ちゃんと手引書もあるんですけれども、それを読みこなすだけの、難しい文章になっている。私も役所の皆さんからの文書を見ますと、本当に硬いな、こんなふうに率直に思います。

 ですから、今やっているチャットGPTは、こういった申請書類を、私はよく言うんですよ、日本語に直して、農家の皆さん方あるいは担当者の皆さんが読みこなせるような、そういう文章に変えてしまう、こういうのを今使っておりまして、もうそれは既に各市町村なりで使っていただいていると思うんですが、そういうのをまず一番最初に担当者が作りました。

 ですから、非常にそういう意味では、農水省はこのチャットGPTを、一番最初とは言いませんけれども、先陣を切ったのではないかなと思いますが、今後も、そういったようなサービスは、農水省としてはどんどん開発を進めていきたいと思っております。

岬分科員 ありがとうございます。大臣、大変素直なお言葉をいただきまして、感謝申し上げます。

 政府において、このチャットGPTの活用を検討するチームも設置をされるということですけれども、農水省が、今大臣がまさにおっしゃったように、先陣を切って実際に活用を始めるということ、また、農水省のトップである大臣、今後はどんなふうにまた活用していきたいかというところもお聞きしたいんですけれども、あらゆる面で、やはり今、農水省というのが大変注目をされているなと思っております。G7においても、昨年ドイツで農水相の、ありましたけれども、それまでは五年間なかったですよね。今回は農水相の首脳会談もありまして、大変注目を、やはり食料安全保障という面でも注目をされていて、期待をされている省庁だと思っております。

 このトップとして、これからのどんどんデジタル化になっていくことを踏まえて、どんなふうに思っていらっしゃいますか。

野村国務大臣 これは、国の方針としても、このデジタル化というのは、もう担当大臣までできているわけですから、どんどん進めていこうということは間違いないと思います。ただ、個人情報との関連というのは、やはりこれは気をつけなきゃならないことだというふうに私個人も思います。

 ですから、大臣として、余り公的に、農水省はこうしますというのはまだ固まっていませんので、今手がけたばかりでございますので、ただ、ほかの省に先駆けてこういうデジタル化に進み出したということだけは間違いないことでありますので、今後もできるところからそういうものをやっていこうと思っております。

岬分科員 ありがとうございます。

 まだまだ未知の世界の部分もありますが、可能性をしっかりと追求していければと考えております。

 では、次に、農地法制の在り方に関する研究会が開かれているということですので、そこに着目をしたいと思います。

 昨年の十二月から農地法制の在り方に関する研究会が開催されまして、今後の農地法制の在り方について、具体的な検討を進めるため、農地制度やこれらの問題に精通した有識者等の意見を幅広く聴取することが目的とされています。

 研究会はこれまでに既に三回開かれているということで、二回目は今年の一月に開催をされました。そこでは、農用地等の確保に関する国の関与の在り方及び食料安保の観点に立ったゾーニングの在り方についてが議題となっています。ここの議事概要を見ますと、私の地元からの、農用地区域の除外はとても大変である、また困難であるという話とは、まるで逆の方向であったり逆の見方であるという様子がうかがえました。

 一部、私の要約抜粋になりますが、次のような指摘が示されているということです。

 例えば、農用地区域は町の活性化の観点から開発圧力にさらされている。また、無秩序な開発を避け、食料供給に必要な農地を確保するため、国の関与を検討することが重要である。さらには、農振法で、国が農地を守る責務がある旨を法定化するべきだ。さらには、農用地区域の除外は、市町村、都道府県に任せるのではなく、国の関与が必要だというようなものでございます。

 このように、研究会の議論では、現状の農業振興地域制度では農用地区域の除外が、なかなかできないはずというふうに声は聞いているんですが、容易にできていること自体が問題であるという認識が強かったというような印象なんですね。この状況に対して、農用地区域からの除外要件を厳しくする、国の関与を検討するという方向性が見て取れました。

 ここに関して、私の、議事概要を見て疑問に感じたというのが、このギャップなんですよね。研究会の議論の中では、私が地元で聞いてきた話だと、農用地区域の除外がなかなかできない、若しくは、除外をより柔軟に認めてほしいんだけれども、全くそれができないという観点からの指摘、意見があるんですが、こういうことは研究会の中では意見は出ないものなんでしょうか。また、全体として、農用地区域の除外ということは実際は容易なんでしょうか。それとも、地域で聞いている、私が地元で聞いているように、難しいんでしょうか。

 実際はどうなのか、また、自治体によって難しさが違いがあるのか、その辺りを教えていただけますか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 昨今のウクライナ情勢などによりまして、世界の食料事情が不安定化している中、食料安全保障に対する要請というのは非常に高まっております。国内で生産できるものはできる限り国内で生産していくことが重要でございまして、この点、農振法では、食料生産の基盤である優良な農地を農用地区域に設定いたしまして、適切に確保していくということとしているところでございます。

 農用地区域からの除外につきましては、都道府県知事と協議、同意が必要でございまして、市町村と都道府県において除外要件を満たしているかを確認することとなっておりまして、除外の可否を慎重に判断する仕組みとなっているところでございます。

 このことから、市街地にある小集団の農地の転用と比較しまして、生産性の高い優良農地では、農用地区域から除外して、その後、転用することは非常に難しい仕組みとなっております。

 また、委員の方から御質問がございました、各市町村において違うのかということでございますけれども、個別の事案につきまして、いろいろ、私ども、基準は国、一つとして示しておりまして、個別事案の容易さというのは状況によるというふうに認識をしているところでございます。

岬分科員 ありがとうございます。

 そうすると、個別にも御相談をさせていただけるということなんでしょうか。

 もちろん、優良農地を確保することの重要性は全く否定するつもりではないですし、もちろん、食料を安定的に国内で確保していくためにはとても重要なことだということは十分に認識をしております。

 ただ、名古屋市のような都市部の中で点在をしている小さな農地、これはやはり、世代交代であるとか後継者が不在であるという、地域の実情を踏まえた場合に、何が何でも農地でなくてはいけないという考え方ではなくて、農地以外の用途で利用することが本当の意味で地域のためになる場合もあるということは、是非ともこれから柔軟にお考えいただければと思います。

 また、この研究会で議論をされております農用地区域の除外についても、現行制度があって手続等がなされているとは思いますが、それであれば、その結果、地域の実情に応じた、地域の適正な判断によるということを国はもっと柔軟に受け止めて、今後、活用できるように進めていければと考えております。よろしくお願いいたします。

 さて、このような問題意識を踏まえまして、地域の実情に応じて柔軟にすべきだという立場からも、意見をこれからどんどん幅広く聴取をしていただいて、総合的な議論をしていただく必要があると考えます。農林水産省の見解を伺いまして、あわせて、現状の研究会の議論の方向性、農林水産省としてはどのようにお考えでしょうか、いま一度教えてください。

青山政府参考人 お答えいたします。

 昨年十二月と本年一月に、農用地等の確保につきまして、有識者や自治体関係者等と意見交換を行いました。

 その中で、有識者等からは、農地面積が依然として減少している中で、農地の確保は国の責務であることを法定化すべきだ、それから、農用地区域の除外は国の関与が必要等の意見があったところでございます。

 農林水産省としては、引き続き、この研究会、また食料・農業・農村基本法の検証作業における関係者の御意見を聞きながら、優良農地の確保のための施策につきまして検討していきたいと考えております。

岬分科員 ありがとうございます。

 もちろん、確保していくことも重ねて大事だとは申し上げますけれども、やはり、農業に特化した有数な県があります。そういったところはしっかりと後押しをして、サポートが必要ですけれども、やはり、都市部で点在をしてしまっていて、そこで土地が荒廃していくというのは非常にもったいないなということをいま一度申し上げたく存じます。

 さらに、地域計画策定における協議の場についての問題ですけれども、農林水産省の地域計画策定マニュアルというものがございます。こちらの協議の場における協議事項一というページがございます。そこでは、農業上の利用が困難である農地については、保全等が行われる区域にするなど、地域の現状や将来の見込みも踏まえて、地域の農地をどう利用していくべきかを議論しましょうと記されています。さらに、イラストにおきまして、農業上の利用が行われる区域と保全等を進める区域が色分けをされています。

 この協議の場に、二つしかないわけです。つまり、農業上の利用又は保全等という、どちらかに区分けがされているんですが、そこに、農地以外の用途での利用という選択肢も必要なのではないでしょうか。より具体的に、例えば、商業施設、商業利用であるとか住宅地利用というように示して議論ができればなおよいのではないかと考えます。農林水産省には農村政策もございます。地域の実情に寄り添った農村政策という観点からは、地域の現状や将来の見込みを地域が一体となって議論をする際に、農地を農地以外の用途で利用するという選択肢を含めること、これは非常に重要であるし、また、意義のあることではないかと考えます。

 それでは、最後の質問になりますが、この協議の場で、農地を農地以外の用途で利用すると念頭に置いた選択肢、この議論を行うことは実際可能なんでしょうか。また、それに係る議論を率直に協議の場で行えるような環境はあるのでしょうか。農業上の利用又は保全等に限らず、農地以外の用途変更も選択肢として協議、是非とも必要だと声を上げたいと思いますが、この辺りは、大臣、御見解いかがでしょうか。

野中副大臣 本年四月から施行されております改正基盤強化法、これにおいて地域計画を定めることとなっておりますが、その際、農地は引き続き農業上の利用がなされるように話合いを進めていただきたいとは考えておりますけれども、地域の現状、そしてまた、それぞれの将来の見込みは地域でそれぞれだというふうに思っております。ですので、どのように利用するかというのは、地域の実情に応じて、農地利用、保全だけではなくて、地域づくりとして話合いをすることは可能であります。

 また、そこにいかに地権者始め周知していくかという委員からのお話については、今、地域計画策定の手引には明記しておりますけれども、いよいよそういった議論も含めた改正基盤強化法が四月から、まさに今月から始まったところですので、先生の意見も踏まえ、周知に努めてまいりたいと思います。

岬分科員 ありがとうございます。

 最後の質問、大臣にお聞きしたく存じますので、いま一度お願いいたします。

野村国務大臣 今、野中副大臣の方から答弁をさせていただきましたけれども、要は、これは個人の私有財産でありますけれども、ただ、地域の財産でもある、私はそう理解しております。

 ですから、ここの農地をどういうふうに使おうか、あるいは、ここの農地をどう活用するかというのは、やはり地域の皆さん方で話をしていただく。それが今、先ほど話がありました、今月から始まっておりますから、人・農地プランという、その話合いの中でプランを作っていただこう。そして、今委員から質問がございました、地域の実情に応じて、ここらはもう農地じゃなくて、ほかのものに転用した方がいい、あるいはまたほかのものを何かやった方がいいよと、話合いの結果がそうなれば、虫食い状態にもならないし、そしてきちっと計画的な集落の絵図ができる、私はこんなふうに思います。

 ですから、要は、我々が何をしなさいとか、こういう場合は解除しますよとかじゃなくて、地域でここはこうしようと。そうしませんと、農地は私は絶対守れないというふうに思っておりますので、そういう地域実情を踏まえた皆さん方の話合いの結果を待ちたい、こんなふうに思います。

岬分科員 大臣、最後、御答弁いただきまして誠にありがとうございます。

 是非とも、地域ぐるみで農地を守るところは守る、ほかの用途で使うべきところが地域の活性化になるのであれば、そのような御検討もこれから積極的に進めていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。

福重主査 これにて岬麻紀君の質疑は終了いたしました。

 次に、金城泰邦君。

金城分科員 こんにちは。公明党、金城泰邦でございます。

 本日は、質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 これまで現場で承ってきた声や御要望などを中心に議論させていただきたいと思いますので、御答弁のほど、よろしくお願いいたします。

 初めに、福島県沖へのALPS処理水放流の漁業への影響について伺いたいと思います。

 今後、福島第一原発のALPS処理水が海洋放出されることになっていますが、このことについて国民は不安を感じている方が少なくないように思います。

 そのような中、今年三月四日、公明党の山口代表は、東京電力福島第一原発に赴き、トリチウム以外の六十二種類の放射性物質を取り除くことができる多核種除去設備、ALPSなどの現場を視察しました。

 東電の計画では、処理水を一旦タンクにためてトリチウム濃度を測定し、一リットル当たり千五百ベクレル以下となるよう海水を混ぜ、海底トンネルを通し、約一キロ沖の放水口から流す予定としており、海洋放出する際のトリチウム濃度は、国の基準六万ベクレルの四十分の一、世界保健機構が定める飲料水ガイドラインの一万ベクレルの七分の一であり、試験的に五か月間飼育してきたヒラメやアワビも、生体内の濃縮は確認されなかったとの説明を受けております。

 私自身も、昨年九月に福島を視察し、双葉町の産業交流センターで常磐物のおいしい海鮮丼を食べ、じかに食の安全性をこの目で、この舌で確認してまいりました。

 ALPS処理水は安全だと思いますが、農林水産省としてどのように分析し、どのように対応しようと考えているのか、また、漁業に対する風評被害への対策をどのように行おうと考えているのか、農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。

野村国務大臣 金城委員にお答え申し上げたいと思いますが、ALPS処理水の処分に伴う対策としましては、行動計画というのができ上がっておりまして、これに基づきまして、政府全体で行うこととしております。

 我々農水省に関係がありますのは水産関係の対策になってくるというふうに思っておりますが、これには二つありまして、一つは、風評を生じさせない。いわゆるALPS処理水によって汚染されているとか、そんな風評が出回ってしまいますと、これこそ、今も、福島なり東北のものが輸入規制されているものもあります。ですから、こういったことにならないよう、水産関係対策として、風評被害をさせないということで、特にその中でも、水産物のトリチウム検査を強化していかなきゃならないというのが第一点であります。

 それから二つ目は、被災地の水産物の魅力を発信する取組でありますが、これには、生産、それから加工、流通、消費、それぞれの段階において各支援策を講じてまいりたいということでございます。

 具体的には、トリチウム検査につきましては、ALPS処理水が海洋放出される場合、生産者、消費者の皆さんに早期に情報を提供できるよう、これまでの検査より短時間で結果ができるようにということで、迅速に分析結果を公表してまいりたいというふうに考えております。

 私、二十一日からG7の農水大臣会議が宮崎で開かれて、七か国の皆さん方からも、ALPS処理水についての、質問というよりも、我々は理解しているけれども国民がやはり心配しているというお話もありましたので、先ほど申し上げましたように、生産者なり、消費者なり、また外国の皆さん方にも早期に情報が提供できるようにしていかなきゃいかぬだろうと思っております。

 それから二つ目は、また、被災地の水産物の魅力発信につきましては、量販店等を通じて、被災地水産物の販売の取組なり、三陸あるいは常磐エリアの水産加工品の情報を作り手の思いとともに発信する必要があるだろう、こんなことも思っているところでございまして、今後とも、水産庁だけの問題じゃございませんが、関係機関と連携しながら風評対策に取り組んでまいりたいと思っております。

金城分科員 大臣、しっかり取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 次の質問ですが、沖縄のサトウキビ農家の収入増への取組について伺います。

 「ジャガイモの世界史 歴史を動かした「貧者のパン」」という本がありますが、この本には、ジャガイモは世界四大作物の一つと言われており、痩せた土地でも冷涼な気候でも生育し、栄養価の高いジャガイモは、世界の多くの人々を養い、歴史上の大きな場面で重要な役割を演じてきたとのことです。また、飢饉や戦争など食料不足のときにジャガイモを栽培し、食料危機をしのいだとも書かれています。

 文明の発達した現代日本では食料危機や飢餓といった状態は考えられないと思う方は多いと思います。しかし、国連世界食糧計画は、世界では、紛争、経済ショック、気候危機、そして肥料の価格高騰が重なり、かつてないほどの食料危機を引き起こしています、世界では八億二千八百万人の人々が飢餓に苦しんでいますと説明しています。

 また、日本国内では日常的にジャガイモを使用した料理やお菓子がたくさん作られており、日本人にとってジャガイモは身近な農作物となっています。

 このようなジャガイモを、日常的な消費のためにも、万が一の食料危機のためにも、農林水産省はジャガイモの生産にしっかり取り組む必要があると考えますが、角田大臣政務官の御所見をお伺いいたします。

角田大臣政務官 バレイショについては、青果用、ポテトチップス等の加工用、さらには、でん粉原料用と、様々な使われ方をしており、国民生活に欠くことのできない重要な作物であると認識をしております。また、近年はバレイショの加工食品の輸入量が増えておりまして、こうした需要を踏まえて、国内生産を促進する考えです。

 このため、農林水産省においては、バレイショの増産に必要な種バレイショの生産拡大、機械、施設の整備や、病害抵抗性品種の導入等に対する支援を行っているところです。

 引き続き、こうした支援をしっかりと行い、バレイショの生産振興に取り組んでまいります。

金城分科員 御答弁ありがとうございます。

 私の地元沖縄県について御紹介しますと、ジャガイモの生産量は本土復帰後、拡大し、平成六年には六千八百二十トンで生産量ピークでありましたが、その後、青枯れ病の発生で減産、転作したことや、生産農家の高齢化、労働力不足などにより減少し、令和二年産は七百トンと落ち込んでいます。

 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、通称農研機構が沖縄でのジャガイモ生産について研究をしていると聞いたことがあります。ジャガイモは冬でも栽培できるようです。

 沖縄県の農家の年収は三百十七万です。専業農家の割合が全国平均よりも多いにもかかわらず、年収は全国平均よりも大幅に下回っております。

 そこで、提案したいのですが、サトウキビは十一月に収穫します。収穫後、裏作としてジャガイモを生産すると、食料確保と農家収入増加の両方に貢献できます。農研機構の研究はどのようになっていますでしょうか。農研機構の研究を踏まえ、是非、農林水産省として、沖縄県内におけるジャガイモ生産に支援を行っていただきたいと考えます。角田大臣政務官、御答弁をお願いいたします。

角田大臣政務官 サトウキビ農家の経営安定のためには、土づくり等によりサトウキビの生産性の向上を図るほか、営農の多角化によって収入の増加を図ることも重要な課題と考えています。

 このため、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構で、サトウキビの単一栽培から、枝豆、バレイショなどの高収益作物との新たな輪作体系を確立する研究を行っているところです。

 この研究の中で、バレイショについては、サトウキビの収穫後、次の植付けまでの間に導入する際に必要となる病害抵抗性品種、委員もおっしゃっていましたけれども、この裏作の時期、沖縄では梅雨にわたりますし、青枯れであるとかそうしたことに対する病害抵抗性品種や植付け時期等の安定生産技術を検討するため、現地試験をただいま行っているところです。

金城分科員 ありがとうございます。しっかり継続して取り組んでいただきたいと思います。

 次に、沖縄の漁業者への交付金制度の継続についてでございます。

 沖縄県には三十一の米軍専用施設があり、その総面積は沖縄県の総面積の約八%。人口の九割以上が居住する沖縄本島では、約一五%の面積を占めています。日本の国土面積の〇・六%しかない沖縄県に、全国の米軍専用施設面積の約七〇・六%が集中しています。そして、陸上だけでなく、沖縄県及びその周辺には、水域二十七か所が訓練区域として米軍管理下に置かれ、漁業への制限があります。また、その規模は、水域で約五万四千平方キロメートル、九州の一・三倍と、大変広大な範囲となっています。

 国は、広大な米軍訓練海域や米軍艦船等により影響を受けている漁業者を支援するために、沖縄県漁業者経営安定、漁業者負担軽減対策補助金を出し、公益財団法人沖縄県漁業振興基金が漁業者への支援を行っています。

 周知のとおり、日本を取り巻く環境は、ロシアのウクライナ侵攻、台湾有事、頻発する北朝鮮のミサイル発射等、大変厳しい状況となっています。政府は、防衛三文書を改定し、南西地域の防衛力強化を打ち出しました。これに呼応して、恐らく、日米安全保障条約を締結している米国軍は何らかの対応をするものと想像します。米軍艦船やその訓練等で今後も引き続き沖縄県の漁業者は影響を受けるものと考えます。沖縄漁業安定基金事業は令和五年度で終了することになっていますが、米軍の影響がなくなるわけではありません。

 そこで、提案します。沖縄漁業安定基金事業について、米軍の影響を受ける漁業者への支援事業を継続するべきと考えますが、農林水産大臣の御答弁をいただきたいと思います。

野村国務大臣 沖縄漁業安定基金事業につきましては、いろいろな事業に漁業者の方々がお使いになっている、共済金の掛金であるとか、あるいはまた運転資金の利子助成に使っているとか、いろいろな形でお使いになっていただいていることは承知しておりまして、また、県の水産業の振興等に関する重要な事業でありますので六年度以降も事業を継続してほしいと、また、委員の方からもそういった趣旨のお話だったというふうに思っております。

 したがいまして、農林水産省としましては、今の漁業者が置かれている状況も踏まえ、あるいはまた当該事業の効果や必要性も見極めながら、今後の対応につきましては更に検討をしてまいりたい。今この場で、延ばします、延ばしませんという決定的なお話はなかなか難しいのでありますが、前向きな検討をさせていただきたいと思っております。

金城分科員 大臣、御答弁ありがとうございます。

 沖縄の水産業もこれから厳しい状況でございますので、また努力していただければと思います。

 次に質問を移りますが、離島における農業振興対策についてでございます。

 沖縄県の島の数は六百九十一あります。そのうち有人島は三十七。離島の農業は島での主要産業であることが多く見られ、島の収入に占める割合も高いと考えられます。離島の農業の必須は水です。これまでに農業用水の確保を始めとした農業基盤整備事業が推進されましたが、現時点でもまだ十分な状況ではありません。また、離島特有の輸送費の問題等々、課題、問題が残っています。

 農林水産省は、離島農業について特段の配慮をして、離島農業振興のための予算確保と事業の着実な進捗を行っていただきたいと思います。角田大臣政務官の御答弁をお願いいたします。

角田大臣政務官 金城委員御指摘のとおり、離島、島嶼の生活、産業の上で、やはり水源の確保というのは共通した課題であると思います。

 国としては、沖縄県において、農業の生産性向上や作物の安定的な生産を確保するため、農業農村整備事業により、農業用水を確保するためのかんがい施設の整備などへの支援を行っているところです。

 具体的には、宮古伊良部、石垣島及び多良間の三地区で国営かんがい排水事業の計画作成や事業実施をしているほか、沖縄県等の実施する基盤整備を補助事業により支援しています。

 そして、こうした支援に当たって、多数の離島を抱えることなど、沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑みて、補助率のかさ上げであるとか、事業採択時における面積要件の緩和、こうした措置を講じているところです。

 今後とも、必要な予算を確保しながら、離島など地域の実情に応じた基盤整備が着実に推進できるよう努めてまいります。

金城分科員 御答弁ありがとうございます。

 しっかりとした食料安全保障も大事であります。また、日本の領土、領空、領海、それを守る島々の発展というのは非常に重要でございますので、しっかりとした対策を継続して取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いします。

 質問を移ります。海上船舶のDXの推進について伺います。

 私は、昨年五月に、農林水産委員会におきまして、海上船舶のDXの推進、携帯電話やネットの回線接続について質問させていただきました。

 そのときの御答弁としては、海上ブロードバンド用機器導入補助制度の周知を図り、実績をつくるということと、現在、複数の通信事業者において、新たな海上向け衛星通信サービスの提供に向けた取組が行われているということ、また、農林水産省としても、このような通信事業者の動向を踏まえながら、関係省庁と連携を取り、漁業のニーズに対応したサービスがより低額で提供されるように後押しをしてまいりたい、総務省、農林水産省及び国土交通省の三省庁で連携し、海上通信環境の改善に向けた課題整理や、海運事業者へのアンケートやヒアリングを通じた利用実態の把握及びニーズの掘り起こし、最新の衛星通信サービスに関する海運事業者向けの説明会など、低廉化、高速化、普及しやすい、実用的な衛星通信サービスの提供に向けた取組を行っているとの御答弁がございました。

 洋上、海上における携帯電話、ネット回線接続、DX推進は、漁業関係者を始めとする洋上、海上関係者全ての切なる願いであります。私の質問、提案より一年がたちましたが、洋上、海上における携帯電話、ネット回線接続、DX推進の状況はどのように進展したのでしょうか。農林水産大臣に御説明いただきたいと思います。

角田大臣政務官 昨年御質問いただいてからこの一年間における取組について中心に説明をさせていただきたいと思いますけれども、農林水産省では、総務省、国土交通省とともに、海上ブロードバンド対応関係省庁連絡会議フォローアップ会合を開催してきており、本年二月の会合では、昨年七月から八月にかけて漁業者を対象に実施したアンケート調査結果を関係省庁で共有をいたしました。

 アンケート調査結果では、漁業種類ごとの衛星通信の利用方法が異なることや、通信事業者に求めるニーズとして、例えば、使用料の低減、事業者の信頼性、通信速度の改善等が挙げられています。

 農林水産省としては、こうした漁業者の声を聞きながら、漁業者のニーズに対応したサービスがより低価格で提供されるよう、通信事業者と意見交換を行う等、後押しをしてまいります。

金城分科員 通信事業者としっかりとやっていただきながら、これまでにはできなかった部分も充実していかなければいけないと思います。海上における通信、平たく言うと、スマホがどこでも使えるという環境をいかにつくっていくか、これが大事だというふうに伺っております。漁業者だけではなく、海上保安庁や海上自衛隊など、海をなりわいとされる方々、そういった方々が安心して仕事に従事できる、そういった環境を是非、リードして取り組んでいただきたいと思っておりますので、今後とも努力していただきたいと思います。よろしくお願いします。

 質問を移ります。障害者差別解消法の改正について伺います。

 障害者差別解消法は、令和三年六月に改正法が可決、成立いたしました。この改正法に、事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供の義務化が規定されました。改正される以前は、事業者による社会的障壁、つまり、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事柄、制度、慣行、観念その他一切のものが対象とのことですが、その除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供について努力義務でした。これを事業者に関しても義務へと改めるものであります。

 具体的な例として、段差があり、車椅子使用の障害者が入れないということに対しては、スロープなどで補助する、聴覚障害者の方について、その方の意思確認が難しい場合は、意思伝達のために絵や写真のカードやタブレット端末などを使うなどです。

 これまでは、事業者は、障害のある方に対して、正当な理由なく、障害を理由として差別することを禁止し、障害のある方からバリアを除去するために対応を求められたとき、負担が重過ぎない範囲で対応することが規定されています。

 地元沖縄の方から、スポーツ施設で障害者に対応する担当者がいないとの理由で受付を断られたとの御相談がありました。また、障害者団体からは、このようなサービス受付を断られたケースは後を絶たないとの声があります。

 そこでお伺いいたします。改正法はいつから施行されますでしょうか。また、事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供の義務化の実施体制、また、障害を理由とする差別を解消するための支援措置の強化体制はどのようになっていますでしょうか。障害者の方にバリアなしで生活していただける社会を一日も早く築くことが大事であります。反面、事業者に過度な負担がかからないための対策も必要なことです。内閣府の担当大臣政務官に御答弁をお願いいたします。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 令和三年五月に成立をいたしました改正障害者差別解消法は、令和六年四月一日に施行されることとなっております。

 事業者によります合理的配慮の提供の義務化等を内容とする改正法の円滑な施行のためには、相談体制の充実や、事業者等が適切に対応を判断するための指針、参考にできる事例の収集、提供等が非常に重要であることから、内閣府では、各省庁に対しまして、事業分野ごとのきめ細やかな対応ができるよう、先般改定した基本方針を踏まえた各省庁における対応指針の改定や、事業分野ごとの相談窓口の明確化を働きかけるとともに、内閣府といたしましても、障害者や事業者、地方公共団体等からの相談に対しまして、法令の説明や適切な相談窓口につなぐ役割を担う相談窓口の試行事業の実施、参考となる事案の概要等を分かりやすく整理したデータベースの公表等の取組を進めているところでございます。

 内閣府におきましては、今後も、各省庁や地方公共団体と連携協力し、改正法を円滑に施行できるよう、しっかりと取組を推進してまいります。

金城分科員 こういった差別解消法の対象となるような場面というのは、現場では多岐にわたると思います。一番住民に身近な市役所とかそういったところでよく相談に行くと、あっちに行き、こっちに行きということがよく言われる話でもあります。この法律の改正は、関係する障害者の方々にとって非常に注目されている改正法だと私は思っています。ですので、そういった方々の期待に応え得るような体制整備をしっかりと取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次、質問を移ります。介護事業におけるケアマネジャーの処遇改善について伺います。

 厚生労働省は介護職員の処遇改善を図るため、介護職員処遇改善加算制度をつくり、介護職員の給料アップに取り組みました。しかし、ケアマネジャーはこの介護職員処遇改善加算制度の対象外と聞きました。何ゆえ、ケアマネジャーはこの介護職員処遇改善加算制度の対象外なのでしょうか。

 ケアマネジャーの業務量は年々増加しています。また、ケアマネジャーの資格取得を希望する方が減少しているとも言われています。このような状況を考えますと、ケアマネジャーも介護職員処遇改善加算制度の対象とすることにより、処遇改善を図ることが必要と考えますが、伊佐厚生労働副大臣の御答弁をお願いしたいと思います。

伊佐副大臣 高齢者の増加と生産年齢人口の減少が進む中で、必要な介護サービスを安心して受けられるように、その担い手を確保することは重要な課題というふうに認識をしております。介護職員の給与が他産業に比べて低い状況にあることもございますので、人材確保のためにも処遇改善に取り組むことは重要だというふうに認識をしております。

 これまで累次講じてまいりました介護職員の処遇改善につきまして、基本は、介護職員が基準上配置されているサービスを対象ということにしておりまして、そういう意味で、居宅介護支援事業所が対象外というふうになってございます。

 ただ、その上で、施設内ケアマネを含めまして、ほかの職種にも一定の処遇改善を行うことができるように柔軟な運用を認めることにもしております。

 令和三年十二月に、公的価格評価検討委員会の中間整理におきまして、これまでの措置で対象外となっていた職種も含めて検証を行うべきというふうにされております。令和四年度介護従事者処遇状況調査も今行わせていただいております。今般の処遇改善の措置が現場で働く方々の給与にどのように反映されているか今検証しておりますので、こうした検証も踏まえながら、引き続き、ケアマネジャーの質の確保、また、人材の確保に取り組んでまいりたいというふうに思っております。

金城分科員 副大臣、御答弁ありがとうございます。

 私自身も、居宅介護のケアマネさんから直接御相談も受けまして、今後の高齢化社会というのを考えますと、ケアプランを作ってしっかりと対応していくケアマネジャーさんも、介護サービスが始まる前も、病院に入院したりするときなど、すると、対象にならない期間もあったりするものですから、そういった困難も抱えているというふうに伺っているところですので、そういったことも含めて、介護に従事する方々全てが安心して日本の高齢化社会を支えていけるような体制をしっかりと検討して、対応していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 質問を移ります。介護施設と福祉施設の併設の設置について伺いたいと思います。

 近年増加傾向にある障害者を抱える家庭では、保護者の将来不安として、障害を抱えた子が安心して入所できる施設の確保がよく話題になります。保護者自身の老後における施設入所の心配もさることながら、子供の将来への不安も抱えて過ごす心境は複雑であり、共に目に見える距離で過ごす環境が整っていれば安心感も増すのではないかと思案いたします。しかし、現実にそのような施設は余り見たことがなくて、障害者と高齢者の複合型入所施設、これが制度上、設置は可能かどうか、厚生労働省の見解を伺いたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の障害者支援施設に特別養護老人ホーム等の高齢者施設を併設することは、制度上可能でございます。令和元年度の調査では、障害者支援施設の九・四%に特別養護老人ホームが併設をしているという状況でございます。

 一方で、障害者の入所施設の利用につきましては、施設から地域へという、地域移行を推進し、障害者が安心して暮らす地域社会を実現していくことが重要であると考えております。このため、厚生労働省といたしましては、地域の実情に応じた地域移行の取組と併せて、地域生活の移行、定着を支援するサービスの充実を図ってきているところでございます。

 障害者が高齢化する中で、御指摘のような親の方々の高齢化、また、親亡き後の将来の不安があるということは承知しております。親子が住み慣れた地域で、また、近くで生活をしたいという御希望も含めまして、障害者やその家族が希望する地域で生活することができるよう、障害福祉サービスなどの計画的な整備を推進してまいりたいと考えております。

金城分科員 御答弁ありがとうございました。

 安心できる社会構築に向けて取り組んでいただきたいと思います。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

福重主査 これにて金城泰邦君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして農林水産省所管についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

福重主査 これより経済産業省所管について審査を行います。

 まず、概要説明を聴取いたします。西村経済産業大臣。

西村(康)国務大臣 平成三十年度、令和元年度における経済産業省の決算の概要を御説明申し上げます。

 まず、平成三十年度における経済産業省の決算の概要を御説明いたします。

 一般会計の歳入につきましては、歳入予算額二百二十八億円余に対して、収納済歳入額は三百二十八億円余であり、差引き九十九億円余の増加となっております。

 歳出につきましては、歳出予算現額一兆六千二百十八億円余に対して、支出済歳出額は一兆三千二百二十三億円余であり、その差額二千九百九十五億円余のうち、翌年度への繰越額は二千三百六十一億円余、不用額は六百三十四億円余となっております。

 次に、エネルギー対策特別会計につきましては、収納済歳入額は十兆六千百三十二億円余、支出済歳出額は十兆一千五百七十五億円余であり、その差額四千五百五十六億円余のうち、翌年度への繰越額は一千六十二億円余、令和元年度予算に歳入計上した剰余金は一千五百二十一億円余、これらを除いた純剰余金は一千九百七十二億円余であります。

 このほか、特許特別会計及び東日本大震災復興特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載したとおりであります。

 続きまして、令和元年度における経済産業省の決算の概要を御説明いたします。

 一般会計の歳入につきましては、歳入予算額五百十六億円余に対して、収納済歳入額は一千十四億円余であり、差引き四百九十八億円余の増加となっております。

 歳出につきましては、歳出予算現額二兆五千二百七十億円余に対して、支出済歳出額は一兆九千九百二十一億円余であり、その差額五千三百四十九億円余のうち、翌年度への繰越額は四千四百六十八億円余、不用額は八百八十億円余となっております。

 次に、エネルギー対策特別会計につきましては、収納済歳入額は十兆八千八百七十億円余、支出済歳出額は十兆三千七百六十六億円余であり、その差額五千百四億円余のうち、翌年度への繰越額は一千百六十一億円余、令和二年度予算に歳入計上した剰余金は一千七百八十三億円余、これらを除いた純剰余金は二千百六十億円余であります。

 このほか、特許特別会計及び東日本大震災復興特別会計がございますが、これら特別会計の決算の概要につきましては、お手元の資料に掲載したとおりであります。

 以上をもちまして、平成三十年度、令和元年度における経済産業省の決算の概要に関する説明を終わります。

 よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

福重主査 次に、会計検査院の検査概要説明を聴取いたします。会計検査院宮川第五局長。

宮川会計検査院当局者 平成三十年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項十五件及び意見を表示し又は処置を要求した事項一件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一七七号から一九一号までの十五件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。

 このうち、工事の設計が適切でなかったものが四件、補助の対象とならないものが四件、補助対象事業費を過大に精算していたものが二件、補助事業により取得した財産を無断で処分していたものが一件、補助の目的外に使用していたものが一件、補助金により造成した基金の使用が適切でなかったものが一件、補助金の交付の必要がなかったものが一件、工事の施工が適切でなかったものが一件であります。

 次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。

 これは、独立行政法人中小企業基盤整備機構の第二種信用基金における政府出資金について、債務保証の事業規模を利用の実態に応じたものに見直すとともに、政府出資金をその事業規模に見合った資産規模とするため、債務保証の利用実績等を考慮するなどして真に必要となる政府出資金の額を検討し、必要額を超えて保有されていると認められる政府出資金に係る資産については、不要財産として速やかに国庫に納付するとともに、今後、同様の事態が生じないように体制を整備するよう意見を表示したものであります。

 なお、以上のほか、平成二十九年度決算検査報告に掲記いたしました再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業の実施状況等について処置を要求した事項につきまして、その結果を掲記いたしました。

 続きまして、令和元年度経済産業省の決算につきまして検査いたしました結果の概要を御説明いたします。

 検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項六件、意見を表示し又は処置を要求した事項二件であります。

 まず、不当事項について御説明いたします。

 検査報告番号一三九号から一四四号までの六件は、補助事業の実施及び経理が不当と認められるものであります。

 このうち、補助の対象とならないなどのものが三件、工事の設計及び管理が適切でなかったものが一件、補助の目的外に使用していたものが一件、工事の施工が適切でなかったものが一件であります。

 次に、意見を表示し又は処置を要求した事項について御説明いたします。

 その一は、省エネルギー投資促進に向けた支援補助金による事業の実施に当たり、省エネルギーの実績量の計算が適切に行われるよう適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに実績量を計算する際に補正を行う場合の取扱いについて定めたり、エネマネ対策として行った運用改善の内容を報告させたりなどして事業の効果が十分発現するよう改善の処置を要求したものであります。

 その二は、石油供給インフラ強靱化事業として実施する耐震化対策等について、耐震性能等の評価を行う際は最も条件の厳しいケースを採用するよう指導することなどにより、大規模地震等に備えて石油を持続的に安定供給し得る体制の整備を図るという事業の目的が十分に達成されるよう意見を表示したものであります。

 以上をもって概要の説明を終わります。

福重主査 ただいまの会計検査院の指摘に基づき講じた措置について説明を聴取いたします。西村経済産業大臣。

西村(康)国務大臣 平成三十年度及び令和元年度の決算検査報告において掲記されております事項につきましては、会計検査院の御指摘のとおりであり、誠に遺憾であります。

 御指摘を受けた事項につきましては、その是正の措置を講じているところでありますが、今後このような御指摘を受けることのないよう、指導監督の強化を図り、より一層予算の適正な執行に努めてまいる所存でございます。

福重主査 この際、お諮りいたします。

 お手元に配付いたしております決算概要説明等のうち、ただいま説明を聴取した部分を除き、詳細な説明は、これを省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

福重主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔決算概要説明等は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

福重主査 以上をもちまして経済産業省所管についての説明は終わりました。

    ―――――――――――――

福重主査 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、これを許します。市村浩一郎君。

市村分科員 日本維新の会、市村でございます。

 三十分いただきまして、質疑を行わせていただきたいと存じます。

 本日は平成三十年及び令和元年度の決算ということなのですが、私は、是非ともこの機会、今、失われた三十年、若しくは失った三十年という表現もありますが、この三十年の極めて重要な観点について少し議論を、大きな議論をしてみたいなと思います。

 是非とも、今日は西村大臣、お見えいただいておりますが、後ほど、再生可能エネルギー等、特に風力発電について西村さんと議論させていただきたいんですが、その前に、まず、一番大きな、日本は経済成長をこの間、三十年してこなかったということなんですが、経済成長するための条件というのは、究極的に言うと、人口が増えるか、若しくは一人当たりの生産性が伸びるか、どっちかしかない、こう言われておりまして、一人当たりの生産性を伸ばすというのは、例えば規制緩和によるイノベーションの推進、革新的なものが必要なんですが、今日は、やはり一番分かりやすいのは、人口が増えるということであります。特に、安易な移民政策等ではなくて、やはり日本人が増えていくということで、恐らく政府もこの三十年、そういう努力をされてきていると思います。

 そういった意味での総括といいますか、この三十年、政府として、少子化といいますか、人口を増やすということに対してどのようなことをしてきて、どれぐらいお金を使ったのか、ちょっと大まかな総括をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 これまで政府におきましては、保育の受皿整備、幼児教育、保育の無償化など、ライフステージに応じて必要とされる支援を進めてきたところであります。

 少子化対策関係の予算額は大きく増加をいたしておりまして、いわゆる保育所待機児童は平成二十九年の約二・六万人から昨年は約三千人まで減少するなど、一定の効果があったと考えております。

 一方で、少子化の背景におきましては、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因があり、いまだに、多くの方の子供を産み育てたいという希望の実現には至っていないと認識をしております。

 このような中、先般、小倉大臣が示しました子供、子育て政策の強化に関する試案には、二〇三〇年までの六年から七年間が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスとの認識の下、今後三年間で加速化して取り組む施策等を取りまとめたものになってございます。

 今後、この試案を踏まえまして、総理を議長としたこども未来戦略会議におきまして、後藤大臣の会議運営の下、必要な政策強化の内容、予算、財源について更に具体的な議論を進めてまいります。

 また、あわせまして、こども基本法に基づきまして設置をされました、総理を長とするこども政策会議を開催いたしまして、こども家庭審議会におきましてこども大綱の案の検討が開始されたところでもあります。

 こども未来戦略会議と併せまして、少子化対策、子育て支援に総合的に取り組んでまいります。

市村分科員 そうですね、是非とも、これはもう党派関係なく、日本の未来のためにもう絶対やらなくちゃいけないということであります。ですので、これまで、仕方ないです、もう終わったことを嘆いても仕方ありませんから、まさに今おっしゃっていただいたように、二〇三〇年までに反転させるということになりますと、迅速にやらなければならないわけであります。

 そこで、私ども日本維新の会がずっと提案しているのは、出産、育児、子育て、教育、様々な段階でやはり物すごいコストがかかるわけですね。そうした費用をできるだけ低減させていくということが、やはり私は、子供をもう一人、もう一人ということで、実際、子供一人のカップルから、子供が、二・一人以上ということは、二・一人なんて人間は産めませんから、つまり三人なんですね。三人以上の子供ができると、産み育てていただきますと、人口増に反転していくということになってまいります。

 ですから、そのようにするために、例えば、二人目、三人目ということで税金が減税されるとか、何か思い切った手当て、とにかく、育児、子育てにかかる費用を、できるだけ負担を減らしていくということが、やはり一番私は即効性があるものではないかなと思います。

 二人目、三人になると税金も、例えば、生涯所得税は払わなくていい、その分、子育てに使ってくださいというようなことで、そうしますと、よし、じゃあという形で考えていただけることになるのではないかなと思います。

 とにかく、反転させていくということが必要であるということで、人口が増えれば、それだけ需要が高まる。そして、経済成長、分かりやすい経済成長路線にまた入っていくと思います。

 何か今の話だと、もう人口はどうせ増えないんだから、人口八千万人ぐらいになることを想定して各種制度をつくればいいじゃないかという議論もあるようなんですが、私はそうではないというふうに思います。

 ですので、子供を増やすということ、日本人を増やすということをまず大きな目標と我が国はすべきだと思います。

 そこで、じゃ、そのために何が必要かというときに、私は、やはり食とエネルギーということが最も我々政治家が考えるべきことだと思いますし、やはり食やエネルギーの供給の安定的な供給、できるだけ安価な供給ということを我々が心がけていくべきだと思います。

 そこで、今度は食なんですね。食というときになると、やはり我が国は何といっても米だと思います。

 その前に、済みません、今日は厚生労働副大臣もお越しなので、せっかくお越しいただいていますので、今の、子供、いわゆる人口増ということに関しての厚生労働省としてのまた御見解をちょっと賜れますでしょうか。

羽生田副大臣 厚生労働省といたしましては、子供、子育て政策については、小倉大臣の下で取りまとめられました試案をベースに、総理を議長とするこども未来戦略会議において、必要な政策強化の内容、予算、財源について議論を深めていくものと承知しております。先日、四月七日でございますけれども、第一回のこの会議が開催されたところでございます。

 こども家庭庁の創設に伴いまして、厚生労働省が所管しておりました保育、あるいは児童虐待防止、母子保健などの子育て支援に関する施策はこども家庭庁に移管されたということでございますけれども、厚生労働省といたしましても、引き続き担うべき医療、福祉、労働政策、これは子供、子育て政策と綿密に関係するということでございますので、こども家庭庁と密接に連携を取りながら、子供、子育て政策の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

市村分科員 ありがとうございます。

 それでまた、今度は、先ほど申し上げましたように、そうなってくるときに大切なのは、何といっても食とエネルギーということで、食、食の中でも特に、我が国は瑞穂の国という表現もありますが、やはり米、米作ということを私たちはしっかりとまた考えていくべきだというふうに思います。

 特に小麦というものが、ウクライナ侵攻等で異常に、我々、小麦の国内生産を一七%と伺っていますが、ほぼ八〇%以上は輸入しているということで、小麦製品、小麦関連製品が価格高騰という状況にある。また、今、輸入に関してはポストハーベストの問題等々あって、やはり食の安全という意味でも、やはり国内、先ほども議論の中で農林水産省の方から、局長の方からも、やはりできる限り国内生産だということで考えているということであります。

 ですから、何とかこの米、米作、例えば今、需要に合わせて供給をということで、だんだん需要が減っていますから供給も減るという悪循環にもなっていますので、やはり米の需要をどう増やすかということを考えて、また、米作をもっと盛り上げていくということが大切だと思います。

 今日は、野中副大臣、いらっしゃっていただいていますが、是非とも、これまでの三十年、この失った、失われたと言われている三十年で、農林水産省も当然米は守るということでやってこられたと思うんですが、残念ながら、先ほどからの議論があるように、耕作面積はどんどん減るということで、需要も減る、需要に合わせて供給も減らしていかざるを得ない、需給調整すると結局水田が減っていくということで、悪循環になっています。

 これをまさに、先ほどの子供を増やすということに関する反転攻勢という話がありましたが、やはり是非ともこの米に関しては反転攻勢をやっていただきたいわけですが、その御決意、これまでの反省と御決意をちょっといただきたいと思います。

野中副大臣 お答えいたします。

 米の消費拡大、非常に重要でありまして、例えば農産品の安定供給という面でも、やはり輸出、これも重要です、計画的な輸出、そして、適切な備蓄を組み合わせながら、やはり自分のところで作れるものは作っていく。その最も重要なのは、やはり自給できる、主食でもある米であるというふうに私は思っております。

 いかにこの米の消費を拡大していくかということでありますけれども、最近では、米飯給食を安定的にやっていく、これも一週間で三・五回ぐらいまで増やすことができました。

 それと、私も以前、先入観と全く違ったのが、やはり御年配の人の方がお米を食べる機会が減っているというところがあります。カロリー摂取過多というふうなイメージかもしれません。ですので、やはり、食と健康、米と健康について、私ども、情報を発信していくというところと、パック御飯の需要拡大。

 そして、米というのはどうしても拡大せず、先生おっしゃったとおり、需要と供給のバランスを取っていくという中で、最も希望的な政策というのは、やはり米粉の需要の拡大だというふうに私は思っております。先ほども出ました、小麦粉の代替というのではなくて、しっかり米粉について消費者に受け入れられる商品を作ることで更に米粉の需要が拡大するということを期待しておりますので、米粉の特徴を生かした新商品の開発、米粉のパン、麺などの製造機械、設備の導入など、非常に大きな予算をつけて今対応に当たっているところでございます。

市村分科員 そうですね、あらゆる手を尽くして米の需要を拡大させると。今副大臣からありましたように、米粉ということは、私は大変期待が持てるかなと思っております。ですので、小麦粉の代替ということではないとおっしゃいましたが、しかし、できる限り、もし米粉で対応できるものであれば、米の方がどう考えても小麦よりおいしいというのが、まあそうだろうと思います。

 ただ、小麦と違って、どうも米は、なかなか膨らますとか何かそういうのが、グルテンフリーということになってくると思います。ですから難しいらしいんですが、それも、やはりイノベーション、先ほど申し上げましたけれども、やはりイノベーションによって、それはいろいろな技術的な問題であれば解決できるだろうということもあると思います。

 ですから、そういうところに、是非とも農林水産省さん、作るだけじゃなくて、販路拡大というところも、この間、みどりの法案も提出、いわゆる出口戦略をどうするかという議論も大分されておられたと思います、ただ作ればいいというものじゃないと。作ったって消費がなければどうにもならないということですから、やはり出口戦略を含めてどうすればいいかということで、是非とも、これも失われた三十年から反転攻勢ということでやっていただきたいと思います。

 みどりの法は、何か目標が二〇五〇年になったんですね。余りにも、私は、ちょっと悠長過ぎるのではないかと思いますので、いま一度、副大臣始め三役の皆様におかれましては、政治家としても、そんな二〇五〇年ではなくて、それこそ少子化対策の二〇三〇年ぐらいを、ある程度の成果を出すんだというぐらいの志で、勢いでやっていただけたらなと思いますし、まさに耕作放棄地についても是非とも、水田、この時期になると、六月ぐらいになると水が張られてとか、そういう瑞穂の国の風景がいま一度またこの国に復活することを心から願うところであります。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 それで、お待たせしました。大臣、本当に、多分、私が御指名しなければ、今日は大臣はお時間を取らなくてよかったのかもしれませんが、こうしてお出ましいただきまして感謝申し上げます。残りの時間を、あ、もしよかったら、お三方、どうぞ。あと大臣とやらせていただきます。済みません。感謝を申し上げます。ありがとうございました、貴重なお時間をいただきまして。

福重主査 御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。

市村分科員 それでは、大臣、これから、まさにエネルギーです。食と並んで、エネルギーをどうするかというのは大変重要な問題であります。

 特に、今、ウクライナ侵攻の結果、いわゆる燃費の価格高騰ということで、それによる電気代の高騰ということ、政府もそれに対して大変対策を取られているということであります。しかし、これは一時的には何とかなりますけれども、これが長続きするといいますか、もっとこれ以上こじれてきますと、そう簡単に燃料費の補填をなかなか政府としても続けていくのは難しかろうと思います。

 となりますと、やはり何といっても、エネルギーを自立していく、エネルギー自給をして高めていく、自給率を高めていくということになってまいります。しかも、その自給率も、一方では脱炭素という流れまでやらなくちゃいけないとなってくると、もうこれは、いわゆるリニューアブルエナジーですね、再生エネルギーを活用せざるを得ないというところで、諸外国ともその流れがあるということでございます。

 そして、日本は、太陽光は有名なんですが、風力発電も頑張ろうと。今までなかなか日本では風力発電は難しかったんですけれども、頑張ろうということで、今話があるということであります。

 そこについて、まず、特に、三・一一の後に福島沖でやられた巨大風力発電の実験についての、ちょっとこれは反省を、大臣じゃなくて政府参考人がいいので、是非とも、ちょっとかいつまんでお願いします。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 福島沖でやられた事業でございますけれども、二〇一一年度から二〇二一年度まで実施、実施期間中の合計予算額は六百六十九億円でございました。幾つか新規に試みたことが多々ございまして、その結果として、幾つかの風車では、技術的トラブル等により、結果として商用水準の設備利用率には至らなかったといったような反省はございます。

 一方で、一つ一つ申し上げませんけれども、幾つかその後につながっていく成果は得られておりまして、第三者の検証委員会でも、その点しっかり政府として踏まえて対応するようにと御指摘いただいておりまして、取り組んでいるところでございます。

市村分科員 あれは復興財源を利用して、三百億円ぐらいつぎ込んで実験をされたということだというふうに聞き及んでおります。もちろん、商用の成果を出せなかった、でも、今、ある程度次につながる技術的な所見が得られたということだと思います。

 じゃ、その所見が今後、今まさに、単体の巨大なまた風力発電システムをこれから日本に導入していこうというお考えなんですが、じゃ、その福島沖の所見がそこにどう生かされるのかということについては、ちょっと具体的に、もう一回、ちょっと済みません、大臣、政府参考人さんの方からお願いします。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 具体的には、福島県沖以外でも活用可能な浮体式洋上風力の導入マニュアルというものを策定いたしまして、それが長崎県五島市沖の商業用の浮体式洋上風力の計画策定に活用されています。

 また、二点目には、日本の複雑な地形の海域における浮体の揺れ、風車への影響の測定方法について知見が得られまして、現在進行中のグリーンイノベーション基金による日本に適した浮体の開発プロジェクトに生かされてございます。

 それから三点目は、日本から、浮体式洋上風力発電の特に浮体部分の設計要件についての国際規格を提案しておりまして、今年度中に発効される見込みでございます。

 それから四点目は、福島県沖の風況や波高、海底地盤等に関するデータが得られまして、現在、同海域で民間事業者による新たな浮体式洋上風力発電の検討が進められている、このような知見が得られてございます。

市村分科員 ありがとうございます。

 私は、一概に、巨大な浮体式の風力発電も、大臣、これは見られたことがあるかもしれませんが、プロペラの羽根の一番てっぺん、三百メートルぐらいですよ、超巨大です、超巨大。これがうまくいけるんだったら私は別に何も意見を差し挟むことはないんですが。

 実は私、大臣御存じのように、九年ほどちょっと浪人していまして、この間、七年ぐらい、九州大学の、風力発電、風工学をやっている先生の下でちょっといろいろ学ばせていただきました。まあ、門前の小僧習わぬ経を読むじゃないんですけれども、いろいろ見聞きしておりまして、なかなか、この巨大な風力発電システムが余りうまくいっているというふうには認識を持っていないんですね、実は。

 この間、ちょっと事前レクで、いや、結構諸外国でうまくいっているというので、そうなのかなと思いつつも、ただしかし、私が今聞いているところによりますと、電力というのは、大きなものをどかんと造って、そこから大量に電気を生み出して、それをいわゆるケーブルで運ぶよりも、やはり地産地消という流れがまず一つある。やはり、エネルギーはなるべく近いところで作って、近いところで消費するのがいいんじゃないかというのが、一つの大きな流れ、潮流としてあるということ。

 あと、一つの大きな、特に、九州大学の大屋先生という方なんですが、提案されているのは、巨大なやつを一個造るよりも、それなりの大きさのやつを幾つか組み合わせる方が集風効果も上がって、特に、輪っかをくっつけるという、集風、風レンズという言い方もしていますけれども、そうしたことで集風効果を上げる。

 しかも、中規模のものを幾つか造っておくと、巨大なやつだと一個壊れるともうおしまいなんですね。おしまいというか、修理に莫大な費用と莫大な時間をまたかけて修理しなくちゃいけない。それで、その間、一個壊れると、そこで期待していた電力が得られないわけですよね。でも、分散しておくと、全部が一緒に壊れるということはそうないんですね。

 そうしたことも実はちゃんと日本の中で提案されていますし、しかも、そこで提案されている、大屋先生が提案されていることは、単位面積当たりにどれだけのエネルギーを生み出せるか。この場合のエネルギーは電気ですけれども、別に電気だけがエネルギーじゃありませんから、電気の形にするという形です。

 そうすると、私が実は十数年前に一か月間だけ海洋本部の政務官をさせていただいたときに、私は、やはり洋上風力といいますか、洋上風力を含めたエネルギーファーム、洋上エネルギーファームというのを提案させていただいているんです、十数年前に。

 ですから、洋上で、例えば、風力発電だけじゃなくて、太陽光パネルも敷く、風力発電装置も置く。また、洋上ですから、波力を使ったり、また、海の流れ、潮力を使ったり。また、海洋温度差発電というのも、これは佐賀大学さんが結構頑張っておられるというふうに聞いていますが、日本でもいろいろすばらしい提案をされているんですね。

 ですから、そういう洋上エネルギーファームというのを私は提案したつもりだったんですが、なぜか巨大な風力発電に話がすり替わったというか、私からすると、どこかですり替わっちゃって、そこで何か話が進んでしまっているということになっているんです。

 これは、でも、所定の、今度、二〇三〇年までに風力で五・七ギガ、一ギガというのは大体原発一基と言われていますから、原発五基分、六基分を風力発電に持ってこようという計画なんでしょうけれども、私は、これは本当にできるのかなというのを、結局、またできないことを努力して、また十年後ぐらいに、それこそ三〇年ですから七、八年後に、やはり難しかったですねじゃ、とにかく、先ほどからの議論、二〇三〇年までに日本はいろいろなことで反転攻勢をしなくちゃいけないわけですね。人口増も含め、食も含め、まさにエネルギーですよ、自給率を高める。だから、これは大丈夫かというのが実は大変不安なところを持っていますが、大臣、ちょっと御見解をいただけませんでしょうか。

西村(康)国務大臣 まず、市村委員におかれては、新エネルギー、風力を始め様々取り組まれて、時々意見交換もさせていただいております。改めて敬意を表したいと思います。

 その上で、再エネ、私ども、三〇年に三六から三八%という目標を実現すべく今取り組んでおりますが、特に風力については、洋上風力、今も四海域、公募しておりますが、大量導入ができる可能性、あるいはコスト低減の可能性、経済波及効果、サプライチェーンもそれなりにある、部品点数も多いというようなことから、カーボンニュートラル実現の切り札であるということで、御指摘のように、二〇三〇年に十ギガワット、二〇四〇年には三十から四十五ギガワットの目標実現、これは原発最大四十五基分ということであります、かなりの数であります、取り組んでいるところであります。

 現状では、御指摘のように、風車の大型化によって、出力を上げたり発電効率の向上をさせる、あるいは発電コストの低減を図っていくというのが世界的な潮流であります。私の地元、淡路島にも十何基か動いておりますし、一基は風で倒れたこともあって、巨大な風車、何度も目にしているところでありますけれども。

 一方、市村委員御指摘の小型の風車を集合させた発電方式、これについても、洋上におけるエネルギー生産の新たな方式として、環境省の事業で技術開発に取り組んでいるというふうに承知をしております。

 その上で、様々な技術がありますけれども、御指摘の洋上風力、太陽光、潮力発電を洋上エネルギーファームとして集積をさせる、そして、そこで発電した電気を蓄電池にためたり水素に変換して運搬するというようなことも、今後の可能性としては大いに考えられるものというふうに思います。まずは、それぞれの技術課題などを解決していくことが重要ではないかというふうに思っております。

 例えば、洋上での太陽光発電、これは波浪、潮流の影響が大きく影響しますので、海水による電気設備への塩害、これも影響がある可能性がありますので、検証、考慮する必要があります。また、洋上風力以外の潮力、潮流ですね、潮流発電についても、海洋エネルギーについては、現状では、世界的にコスト面や安定供給面の課題を克服する必要があるということであります。

 まだ課題はありますけれども、御指摘のように、こうした技術開発は物すごく速いスピードで進んでいますので、技術開発の動向あるいは国際的な動向、こうしたこと、そして、未来の利用可能な技術について、我々はやはりあらゆる可能性を追求していくという方針で臨んでおりますので、低コスト化などの技術開発や実証について、これは経産省としても、環境省でいろいろ取り組んでいますが、経産省としてもしっかり取り組んでいきたい、環境省と連携しながら進めていきたいというふうに考えております。

市村分科員 本当に、是非とも省庁挙げて、政府挙げてやっていただきたいんです。

 是非ともNEDOさんも、私もNEDOさんとも九大時代のところでおつき合いがありましたけれども、非常に細かいんですね。もうちょっとお金、使い勝手がいいような、何かもう、それこそさっき何かありましたが、書類がめちゃくちゃ多いんですね。非常に使い勝手が悪い。かつ、時々やってきては、非常に大変だった。

 もう、一回任せたら、何といいますか、もちろん、不正に使っている人たちがいますから非常に慎重になるのは分かるんですが、是非ともその辺のところも、お金の使い方、また、研究者には、もっと自由にやらせていく、ただ、その代わり、ちゃんと成果を見せろ、成果をと。一年後、二年後、三年後と分けて、その成果が見えなかったら一年でもう切るとかいうような感じで、やはり、一旦お金を渡して、もう後は成果を出してくれればいいという感じの方向にやっていただければありがたいと思います。

 また、あと最後に、太陽光のやつ。さっき、海の場合はなかなかいろいろ厳しいと言われましたけれども、何かタイだったかどこか、海で何か太陽光発電をやっているというのも私は見たことがありますので、是非ともまた、大臣におかれましては、いろいろなところを視察していただいて、その大臣の思いをまた経産省の皆さんにお伝えいただいて、とにかくこの国の再生可能エネルギーがもっと活発になるようにお願いして、私の質問を終わらせていただきます。

 大臣、今日はどうもありがとうございました。感謝いたします。

福重主査 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして経済産業省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶申し上げます。

 分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時五十四分散会


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