衆議院

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第3号 令和4年4月18日(月曜日)

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令和四年四月十八日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 原口 一博君

   理事 木原  稔君 理事 鈴木 憲和君

   理事 田中 良生君 理事 武村 展英君

   理事 大河原まさこ君 理事 松原  仁君

   理事 伊東 信久君 理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    江崎 鐵磨君

      小野寺五典君    柿沢 未途君

      工藤 彰三君    小島 敏文君

      田野瀬太道君    高階恵美子君

      高木 宏壽君    土田  慎君

      平沼正二郎君    牧原 秀樹君

      村上誠一郎君    森  英介君

      八木 哲也君    簗  和生君

      山口  晋君   山本ともひろ君

      吉川  赳君    吉野 正芳君

      青柳陽一郎君    篠原  豪君

      手塚 仁雄君    藤岡 隆雄君

      一谷勇一郎君    吉田とも代君

      河西 宏一君    庄子 賢一君

      吉田久美子君    吉良 州司君

      大石あきこ君    たがや 亮君

      三反園 訓君

    …………………………………

   外務大臣         林  芳正君

   財務大臣         鈴木 俊一君

   厚生労働大臣       後藤 茂之君

   農林水産大臣       金子原二郎君

   経済産業大臣       萩生田光一君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   防衛大臣         岸  信夫君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   財務副大臣        岡本 三成君

   外務大臣政務官      上杉謙太郎君

   文部科学大臣政務官    高橋はるみ君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 古谷 一之君

   会計検査院事務総局事務総長官房審議官       山崎  健君

   会計検査院事務総局第一局長            篠原 栄作君

   会計検査院事務総局第二局長            山口  亨君

   会計検査院事務総局第三局長            田中 克生君

   会計検査院事務総局第五局長            宮川 尚博君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松多 秀一君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進室次長)           黒田 昌義君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 池松 英浩君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 股野 元貞君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 實生 泰介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 金井 正彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   海部  篤君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   奥  達雄君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    角田  隆君

   政府参考人

   (国税庁次長)      重藤 哲郎君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            池田 貴城君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            真先 正人君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            吉永 和生君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           山本 麻里君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  土生 栄二君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  浜谷 浩樹君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         安東  隆君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  森   健君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席エネルギー・地域政策統括調整官)         小澤 典明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 山下 隆一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         廣瀬 昌由君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  淡野 博久君

   政府参考人

   (観光庁長官)      和田 浩一君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    石井 昌平君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  増田 和夫君

   政府参考人

   (防衛省整備計画局長)  土本 英樹君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   決算行政監視委員会専門員 花島 克臣君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十八日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     山口  晋君

  小島 敏文君     八木 哲也君

  棚橋 泰文君     土田  慎君

  谷田川 元君     藤岡 隆雄君

  吉田久美子君     河西 宏一君

  山本 太郎君     大石あきこ君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     棚橋 泰文君

  八木 哲也君     小島 敏文君

  山口  晋君     平沼正二郎君

  藤岡 隆雄君     谷田川 元君

  河西 宏一君     吉田久美子君

  大石あきこ君     山本 太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  平沼正二郎君     小倉 將信君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計歳入歳出決算

 平成三十年度特別会計歳入歳出決算

 平成三十年度国税収納金整理資金受払計算書

 平成三十年度政府関係機関決算書

 平成三十年度国有財産増減及び現在額総計算書

 平成三十年度国有財産無償貸付状況総計算書

 令和元年度一般会計歳入歳出決算

 令和元年度特別会計歳入歳出決算

 令和元年度国税収納金整理資金受払計算書

 令和元年度政府関係機関決算書

 令和元年度国有財産増減及び現在額総計算書

 令和元年度国有財産無償貸付状況総計算書


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     ――――◇―――――

原口委員長 これより会議を開きます。

 平成三十年度決算外二件及び令和元年度決算外二件を議題といたします。

 これより総括質疑を行います。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官松多秀一君、内閣府地方創生推進室次長黒田昌義君、外務省大臣官房審議官池松英浩君、外務省大臣官房参事官股野元貞君、外務省大臣官房参事官實生泰介君、外務省大臣官房参事官金井正彰君、外務省大臣官房参事官北川克郎君、外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長海部篤君、財務省主計局次長奥達雄君、財務省理財局長角田隆君、国税庁次長重藤哲郎君、文部科学省研究振興局長池田貴城君、文部科学省研究開発局長真先正人君、厚生労働省医政局長伊原和人君、厚生労働省健康局長佐原康之君、厚生労働省労働基準局長吉永和生君、厚生労働省社会・援護局長山本麻里君、厚生労働省老健局長土生栄二君、厚生労働省保険局長浜谷浩樹君、農林水産省大臣官房総括審議官安東隆君、農林水産省畜産局長森健君、経済産業省大臣官房首席エネルギー・地域政策統括調整官小澤典明君、経済産業省大臣官房審議官蓮井智哉君、資源エネルギー庁次長山下隆一君、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹君、中小企業庁事業環境部長飯田健太君、国土交通省大臣官房技術審議官廣瀬昌由君、国土交通省住宅局長淡野博久君、観光庁長官和田浩一君、海上保安庁次長石井昌平君、防衛省防衛政策局長増田和夫君及び防衛省整備計画局長土本英樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原口委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

原口委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。篠原豪君。

篠原(豪)委員 おはようございます。篠原豪でございます。

 先週月曜日の当委員会に引き続いて、本日も質問の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。

 大臣の皆様方には、月曜日朝早くから、お忙しい中お集まりをいただきまして、質疑に御対応いただきましたことに感謝を申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、コロナに関するワクチンの接種についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 ワクチンの確保に関わる経費の妥当性というのが、この委員会でも、先週金曜日の厚労委員会でも取り沙汰されている今状態でございます。

 この点につきまして、政府が八億八千二百万回分の新型ワクチンを総額二兆四千億円で確保したことの妥当性について検証しなければいけないんじゃないか、そこにおいては、各製薬会社との契約単価を知る必要があるんだろうというふうに議論がなっています。ところが、我が国は秘密保持契約を結んでいるので、これは出せないということを、今まで、るる委員会でも当局から御説明をいただいているというところでございます。

 ただ、海外を見れば、例えば、ファイザーは一接種当たり十二ドルだったとアルゼンチンも公表していますし、アメリカ合衆国に至っては、ファイザー社のホームページで、一回の接種、十九・五ドルだったということがあって、値段もそれぞれまちまち、別々であり、今言った巨額の予備費からワクチンを日本も契約をして、そして今打っているという状態がありますので、やはりこれは財政民主主義上もしっかりと明らかにされなければいけないというのは、これは当たり前の話だというふうに思います。

 二兆四千億円ということは消費税の一%程度になりますし、これもたった一%をどうするかという話でも議論がいっぱいある中で、その規模だということでございますので、是非これはしっかりと民主主義国家として明らかにしていただくということが大事だと思います。これは原則だと思います。

 したがって、まず、秘密保持契約を盾に取って全く何もお話をされないということをおっしゃっているんですが、これは一定の期間の制限があってしかるべきで、国民の皆さんにはやはりちゃんと、皆さんも幾らかなというふうに、この国会でもこれだけ議論になっているわけですから、これは示していただきたいと思いますが、これを同意していただきたいと思います。

 このことについて、少なくとも、そうした方向で努力する決意があるかどうかということについて厚生労働大臣にお伺いをいたします。

後藤国務大臣 新型コロナワクチンを確実に確保することは、国民の命や健康を守る観点から極めて重要でございます。

 新型コロナの流行が始まり、ワクチンの獲得競争が激化していた中、厚生労働省として、ワクチンの確実な確保を最優先に企業との交渉を行う必要がありました。

 交渉中や契約締結後も含め、交渉や契約に関する情報が公になった場合は、企業側が他国と交渉する際に不利益を被るおそれがあり、その結果、我が国とは契約を結ばないという事態になることを避けるために、企業と秘密保持契約を締結しているところでございます。各国とも、この秘密保持契約を当該会社と結んでおります。

 秘密保持契約の内容の詳細についても秘密保持の対象となっておりまして、各企業に対し、秘密保持契約の公表の可否について改めて確認したものの、公表は控えてほしいということでございました。このため、秘密保持契約の期限の有無や期限がある場合の期間について、お答えを差し控えたいと思います。

 一方で、今委員から御指摘のあったように、ワクチンに対する国民の関心は高く、情報公開の重要性も十分認識をいたしております。一定期間経過後に公開できるよう努力すべきという御指摘を受け止めて、将来的にどの範囲の情報を公表することができるかにつきましては、引き続き、企業との間でコミュニケーションを重ね、可能な限りの情報公開に努めてまいりたいと思います。

篠原(豪)委員 我々が求めまして、ワクチンの供給契約の公表等に関する各社の見解ということで、今は、契約書の開示の可否であるとか、ワクチン単価の公表の可否というのは、各社ともできないというふうに返ってきたというふうに御説明いただいています。

 ただ、解約や返還金のルールの公表の可否、これはアストラゼネカ社からは、違約金は発生しないという部分については、そういう分かりやすい、政府の、何というんですかね、これは発生するんだったら多分公開できないと言うのかもしれませんけれども、そうじゃないよというところは公表して、その部分についてはそういうふうになっていますということは会社側も言っているので、だから、それはやはり話合い等、どこまで政府が求めるかということが大きいんだと思いますので、そのことは指摘をさせていただきたいと思います。

 そうはいっても、ワクチンの確保、アメリカにおけるファイザーのワクチンは、ホームページで、単価が二千三百四十円、これは一ドル百二十円相当で計算すると分かるんですよ。

 それを基準に考えると、日本も実は分かるところがあって、ワクチンの確保、令和三年度の予備費で確保したファイザーワクチン一億二千万回分について四千九百七十七億円払っているというのは、これは明らかになっているんです。

 実は、財政審さんの今まで発表しているものの中で、例えば令和二年度九月分の予備費については、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカの総額で、例えば三億になっていますとかとなっているんですが、令和三年八月二十七日の予備費等の二〇二二年度分のファイザーだけで、一か所だけ、そこで立てて金額が出ちゃっているところがあるんです。

 ここから計算すると、単純な計算ですけれども、これは四千九百七十七億円をファイザーワクチン一億二千万回分ということになっていますので、単純計算で四千百四十七円になっていて、これはかなり過大な費用を払ったんじゃないかなということも、財政審からもそういう数字が出ているということであります。

 もちろん、流通経費も含まれていることになるのですが、アメリカと比べると一・七倍なんですよ。一・七倍というのは事実なので、これをやはりどういうふうに思っていらっしゃるのかということと、加えて、回数の問題もありましたので、四回目の接種、これはいつ始めていくのかということ。四回目の接種についての結論というのはいつまで出すのか、その分のワクチンというのはこの八億万回に含まれているのかということを教えていただければと思います。

後藤国務大臣 ワクチンの単価は秘密保持契約の対象となっていることは、御答弁させていただいたとおりでございます。

 ファイザー社に確認したところ、ワクチンを供給する全ての国との間で秘密保持契約を締結しておりまして、企業の合意の下で政府が価格を公表している国はないということでございます。そのため、日本についても、価格の公表を政府が行うことは控えてほしい、そういう御説明でございましたので、御容赦をいただきたいと思います。

 なお、今御指摘のありました、令和三年八月二十七日に予備費の使用を閣議決定した際の予算措置額など四千九百七十七億円につきましては、ファイザー社のワクチンの一億二千万回分のほか、他社のワクチンに関する流通費用も予備費には含まれております。ワクチンの購入のためだけに支払うものではないために、四千九百七十七億円を一億二千万回分で除した金額がそのままファイザー社のワクチンの単価、流通費になるものではないということについて、御理解いただきたいと思います。

 いずれにしても、企業との交渉に際しては、可能な限り我が国にとって有利な条件となるように、価格交渉も含めて努めていることについて、御理解をいただきたいというふうに思います。(篠原(豪)委員「四回目のワクチンはいつですか」と呼ぶ)

 四回目のワクチンでございますけれども、三月二十四日に審議会を開催をいたしました。四回目接種の臨時特例接種としての実施に向けて、三回目接種を受けた全ての住民に接種機会を提供することを想定して、自治体に対しては、準備を開始することについては適当とする意見でまとまりましたけれども、委員からは、有効性、安全性の議論を十分に行うべきである、あるいは、四回目はよりハイリスクの方に対象を限定すべきなのではないかといった意見が多数出されました。

 そのため、四回目接種については、接種を行うか否か、仮に四回目接種を行う場合の対象者や三回目接種からの適切な接種間隔については、ワクチンの有効性、安全性、効果の持続期間等に関する最新の科学的知見を踏まえて引き続き検討することとされております。

 四回目接種を行うか否かについては、引き続き審議会で御審議いただくこととなるものの、四回目接種を実施することになった場合に、円滑に接種が開始できるように、自治体に対して準備を進めるよう依頼をしております。

 引き続き、専門家の御意見も踏まえつつ、最近の科学的知見や諸外国の対応状況を注視しながら検討を進めるとともに、四回目接種を実施することとなった場合には、円滑に接種が行われるよう対応してまいりたいというふうに思っております。

 なお、今回対応しておりますワクチンについても、そうした今後の接種に対応するために購入したものでございます。

篠原(豪)委員 ちょっと済みません、質問通告はしていないですけれども、せっかく財務大臣がいらっしゃいますので。

 今の話を聞いていて、財政審では、これは、今までの議論を受けて、財務省からは、接種回数についても、総人口と接種回数の掛け算を大きく上回る購入となっているというふうに指摘していて、有効期限切れによる廃棄につながらないように求めたというふうになっているんです、財務省からも。

 今の一連の議論を聞いていただいて、やはりしっかりと厚生労働省さんに、どういう対応で、今のこの委員会の議論も踏まえて、ちょっと御所見をいただければというふうに思いますので、よろしくお願いします。

鈴木国務大臣 突然のお尋ねでございますが、財政審の指摘もあるように、効率性、そうしたものをまずしっかり考えていかなくちゃいけないんだと思います。

 そうした予算の使用につきましては、そういうことを念頭に、またそのときの緊要性、必要性、そういうものを考慮しながら、無駄にならないようにきちっとやっていくことが重要だと思います。

篠原(豪)委員 質問通告をしないでちょっとお伺いさせていただきましたけれども、当委員会は、やはり、決算行政そして財政をしっかりと見える化をして、国の無駄遣いをなくす、そのために、財務大臣にも張りつけでおかけいただいて、議論を聞いていただいているということでございます。ですので、今の御指摘もまた是非参考にしていただいて、しっかりと、行政の改革、そして直すべきところは直していただきたいということを申し上げまして、後藤厚生労働大臣におかれましては、こちらのところで結構でございますので、ありがとうございました。御退出いただいて結構でございます。

 次に、林大臣、今日もお忙しい中来ていただいております。欧州と日本を行ったり来たりということで、大変お疲れだと思いますけれども、我が国の先頭に立っていろいろとやっていただいていることに敬意を表し、感謝申し上げた上で、NATOについて、外相会合に御出席されていますので、そのことについて教えていただければと思いますので、よろしくお願いします。

 林大臣は、日本の外務大臣として初めてNATOの外相会合に出席をされました。NATOは、加盟国やパートナーシップの拡大を通じて、民主主義国との関係を強化をし、自由を拡大していく政策を取っています。今回の参加は、ウクライナ危機を背景に開かれたわけですが、このウクライナ危機もNATOの拡大政策とは無縁でないということでございます。

 その意味において、日本政府はNATOの拡大政策をどのように評価しているのか、また、そこに今回林大臣が御出席された意義をどのように考えていらっしゃるのかということをお伺いできればと思いますので、よろしくお願いします。

林国務大臣 おいたわりの言葉をいただきまして、ありがとうございました。

 先般のNATO外相会合のパートナーセッションでございますが、NATOからの招待を受けまして、日本の外務大臣として、今お触れになっていただきましたように、史上初めての出席になりました。

 まずは、現下のウクライナ情勢への対応における連携を確認いたしまして、特に、欧州とアジアの安全保障を切り離して論じることはできない、この点を私から強調させていただきました。そのことについて参加国と認識を共有をすることができたわけでございます。

 また、NATOのアジア太平洋のパートナーとの関係強化への取組、これを歓迎し、日・NATO間における具体的協力の推進、これを確認できたことも大変有意義であったと考えております。

 さらに、全てのG7参加国を含めて、NATOメンバーの三十か国の外相が一堂に会する機会を捉えまして、米国を始めとする各国の外相との間で、ロシアによる侵略と国際社会の対応の様々な側面について、それぞれバイ会談等で有意義な意見交換を実施してきております。

 なお、NATOのいわゆるオープンドアポリシー、門戸開放政策でございますが、自国の安全保障のためにNATOに対する加盟を望む国に対し門戸を閉ざさないということであります。

 ロシアはこれを批判するわけでございますが、NATOの側から拡大していくということではなくて、あくまでNATOの加盟を望む国に対して門戸を閉ざさないというのがこのオープンドアポリシーであるというふうに認識をしておるところでございます。

原口委員長 出席の意義。

篠原(豪)委員 出席の意義をお願いいたします。

林国務大臣 委員長からも御指摘をいただきましたが、出席の意義、先ほど個別具体的に申し上げたわけでございますが、特にアジアと欧州の安全保障、これは切り離して論じることができないということ、特にウクライナで起きていることというのは世界全体の秩序の根幹を揺るがすということで、アジア太平洋や東アジアの安全保障にも影響を及ぼし得る、こういうことをNATOの皆様としっかりと共有する、こういうことで今回行ってまいったところでございまして、先ほど申し上げましたように、この認識が共有できたというふうに考えております。

篠原(豪)委員 日本の首相がNATOの事務総長と初めて会談したのは一九八八年でして、その際、竹下登首相なんですが、軍事同盟の中枢であるNATO本部への訪問は避けています。そして、わざわざ駐ベルギー日本大使館公邸で会談を行ってきたということなんですね。

 なので、それから考えますと、今回の、ブリュッセルにNATOの日本代表部を新設するなどの話、これは関係が大いに進展をしてきているというふうに思いますので、そういった意味で、NATOに対する今現在の立ち位置、そして今回の御訪問については、御説明いただきましたけれども、今後、より一層国民の、我々の側にもなるほどと思えるように、しっかりと説明をしながら進めていっていただければと思っておりますので、よろしくお願いをいたします。

 あと、ちょっと済みません、決算なので、防衛大臣にお伺いをできればと思っておりますのが、F15の改修の見送りについてということでございます。

 防衛省は、昨年、F15を改修して、米国製の対艦攻撃用巡航ミサイル、LRASMを導入するのを見送っています。そして、その理由は、改修に先立って行う初期経費が高騰し、七十機の改修にかかる費用も含めた全体の経費が、当初の見積りの約三千二百四十億円から、二〇二〇年時点で五千五百二十億円まで増加したということでございます。

 LRASM導入の代替策として、防衛省は、国産ミサイルの一二式対艦誘導弾の改良型をF2戦闘機に搭載することを検討しているということですが、一方で、JASSMの搭載は引き続き目指すと報じられています。

 委員長もこれまでも指摘されていますけれども、FMSでありがちなトラブルではあると思うんですけれども、FMSについては様々な指摘がこの決算行政委員会でも行われてきたという意味でございます。

 そもそも、こうした事態がなぜ生じたのか、なぜ回避できなかったのか。そして、その責任はどういうふうになっているのかということを、あと、導入見送りによる違約金があったのかなかったのか、その額があるのであれば幾らになるか教えていただければと思います。

岸国務大臣 着座のまま失礼いたします。

 F15の能力向上事業でございますけれども、これは、日米間で具体的な改修計画の詳細に関する技術的な検討を進める中で、部品枯渇対策等が必要になることが判明いたしました。これにより、経費の増加や改修期間の延長が発生することが明らかになったところであります。中期防において、米国政府や三菱重工から得られた情報に、可能な限り必要な経費を見積もったところであります。

 他方、先般、米国政府等と交渉を行い、経費を算出したところです。経費が増加した要因を整理したところ、当初の見積りの段階において、必ずしも詳細な細部の検討が十分でなかった点があったことも判明をいたしたところであります。

 装備品の導入及び調達は、防衛省全体として決定し進めているところですが、見積りについても、防衛省全体として再発防止に努めてまいっております。

 LRASMの搭載に関しては、契約を行っていないため、本事業に関連して違約金の発生はしておりません。

篠原(豪)委員 そうしますと、F15の改修について、二十機の改修を防衛省は中期防の一九年から二二年に、最終的には七十機を予定していましたけれども、一二式の誘導弾の改良型をF2戦闘機に搭載すれば、F15の改修の費用の必要はなくなるのかどうか。その場合には、一二式対地誘導弾の改良型をF2に搭載する経費というものは、これまで、当初のF15七十機の改修の見積額を大きく上回っていくというふうに考えていらっしゃるのかどうかだけ、最後伺います。

岸国務大臣 現中期防において、太平洋側の広大な空域を含む我が国の周辺の空域における防空能力の総合的な向上を図ることとしており、今後も空対空戦闘能力等の主力を担うF15の近代的改修機を対象に、質的能力の向上を行うことといたしました。

 具体的には、スタンドオフミサイルの搭載、発射能力の付加のほか、機体の生存性を高めるため、自己防御用の電子戦能力の向上のための新たな電子戦装置の搭載、多数目標に同時対処するためのレーダーの更新、AIM120を始めとする中距離空対空ミサイルの搭載数の増加、セントラルコンピューターの能力向上が挙げられるところです。

 したがって、一二式の地対艦誘導弾能力向上型のF2能力向上機への搭載と並行して、F15近代化機の約七十機について能力向上改修を行う方針に変わりはございません。

篠原(豪)委員 電子戦を含めて様々な改修が必要だということで、両方ともやっていくんだというふうに捉えましたので、その使い方についてはしっかりとやはり見ていく必要があると思いますので、そのことをお伝えさせていただきたいと思います。

 先ほど、NATOに林大臣が御出席をされたということで、今ちょっとやはり気になるのが、核使用の危機が高まっているんじゃないかということでございまして、一番最初に質問を予定しているところでございますけれども、第二次世界大戦で広島と長崎の経験を日本は経ています。そして、もう絶対に核兵器は駄目だということでやってきている唯一の戦争被爆国であります。

 そういった中で、核は戦争を抑止する役割以外で使うべきではないという暗黙の合意が世界でも成立していたというふうに多くの方が実は思っていたんじゃないかと思っていましたが、しかし、今回ウクライナの危機は、かつてのキューバ危機を除くと、最も核の使用危険が高まっている状況であるのではないかと、もうこうなってきますと考えられなければいけないんだというふうになっております。

 まず、この点に対する政府の認識を防衛大臣にお伺いいたします。

岸国務大臣 ロシアによりますウクライナの東部や南部における攻撃を強化しておるところですが、戦況は予断を許さない状況が継続しております。

 お尋ねのありました核兵器の使用の危険の高まりについてですが、確たることを申し上げることは差し控えたいと思いますが、その上で、ロシアは、各国による対ロ制裁措置や、あるいはNATOのロシアに対する発信などに言及する文脈において、核戦力、核態勢に関する発信を累次にわたって行ってきております。こうした一連の行動は、情勢の更なる不安定化につながりかねない危険なものとなっていると認識をしておるところです。

 いずれにせよ、ロシアによる違法なウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、事態の進展次第では、世界も我が国も戦後最大の危機に陥る可能性があるものと考えています。

 防衛省としても、一層の緊張感を持って、関連動向の情報収集、分析に努めてまいります。

篠原(豪)委員 このロシアによる核威嚇の意図というのは、今ちょっと考えられることを申し上げれば、今回、プーチンがウクライナの侵攻を決断するに当たっては、通常戦力でロシアを圧倒するNATO、とりわけアメリカの軍事介入を阻止することが前提条件だったんだろうというふうに思います。

 プーチンが、ウクライナ侵攻直前の二月十九日に、毎年秋に実施している核の運用部隊を動員した核戦略抑止演習を実施をして、二月二十四日の開戦時に核兵器の使用を示唆して、ウクライナへの侵攻三日後の三月二十七日には、核戦略の運用部隊を特別態勢に敷いて、翌二十八日には戦闘態勢に入るように指示をしているということは、まさに核威嚇によって、通常戦力で勝るアメリカやNATOの軍事介入を阻止することが主眼だったんだろうというふうに考えます。

 そのため、アメリカは、早くから同盟国でないウクライナへの軍事介入の可能性を否定し、ウクライナから度々要請のあった飛行禁止空域の設定にも応じていないというのは、この核威嚇があるからだというふうに思います。その意味で、プーチンが核威嚇を用いた手法は、プーチンの方からしてみるとこれは成功しているかどうかということでございますが。

 他方、これは外務大臣に最後にお伺いさせていただきたいと思っておるんですが、アメリカのバイデン政権が概要を発表した二〇二二年版の核態勢の見直し、NPR、これが、核兵器唯一の目的は核攻撃の抑止と報復だと宣言するのを断念をして、現在の指針、米国や同盟国、パートナーの死活的利益を守るため、極限の状態においてのみ核兵器使用を検討するというのを踏襲するとともに、敵が核兵器を使わない限り核兵器を使わないという先制不使用、この宣言もしないということになったということについて、どのような評価をしているかということをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

林国務大臣 アメリカの国防省は、三月の二十九日、これは米東部時間でございますが、新たな核態勢の見直しに係るファクトシートを発出をいたしております。

 この見直しの詳細については、今後発出するとしております公表版を待つ必要があるわけでございますが、今回発出されましたファクトシートにおきましては、安全、安心かつ効果的な核抑止力及び力強く信頼性のある拡大抑止コミットメントの確保を米国の最優先事項として明示をしておりまして、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中で、同盟国としての米国の姿勢を強く支持をいたします。

 また、このファクトシートに示されている核兵器の役割低減及び軍備管理におけるリーダーシップ回復に向けた米国のコミットメントは、我が国としても、核兵器のない世界に向けた現実的な軍縮・不拡散の取組を進めていく上で重要であると考えておりまして、これを高く評価をしておるところでございます。

篠原(豪)委員 今日は時間ですので終わらせていただきますが、日本と非核三原則、そしてこの核共有などに関する議論は、また関連する次回の委員会でしっかりと議論させていただきたいと思っていますので、引き続き御指導いただきますよう、よろしくお願いします。

 今日は朝早くからありがとうございました。

原口委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳(陽)委員 おはようございます。立憲民主党の青柳陽一郎でございます。

 月曜日の朝から、鈴木大臣、萩生田大臣、ありがとうございます。質問させていただきたいと思います。

 財務大臣は明日からG20の会合に御出張されますけれども、まず、ロシア、中国、これは参加されるのかどうか、確認させてください。

鈴木国務大臣 事実関係でございますが、ロシアと中国が参加するかということでございますが、各国の参加の有無につきましては、各国政府からG20の議長国でありますインドネシアに対して登録がなされるものでありまして、他国のそれぞれの参加見込みについて日本政府としてお答えするという立場ではないということを御理解いただきたいと思います。

青柳(陽)委員 出張理由書に、各国が参加する重要な会議なので、国会開会中でも出張を認めてくれ、これが出張理由書に書いてあるわけですよ。ところが、ロシアも中国も参加するか分からないという答弁は、私はちょっと残念だと思いますよ。

 じゃ、あしたから国会開会中に行かれるわけですけれども、何を主張し、どういう成果を得てくるんですか。日本のスタンスを主張すると出張理由書には書いてありますけれども、参加国が分からないのに、何を主張してくるんですか。

 そして、仮に、米国の、ワシントンで開かれるわけですけれども、イエレン財務長官は、ロシアが参加する会議には参加しないと下院で主張されているわけですけれども、鈴木財務大臣は、参加するかどうか分からぬということですが、もしロシアの財務大臣がいたら、対話をするんですか、今の状況について。加えて言うなら、中国、この財務大臣が来た場合に、国際連携、しっかり入ってくれと、対話をやる予定になっているんですか。

 そういう準備状況、何を主張し、どういう成果を得てくるのか、対ロシア、対中国に対してどういうスタンスで臨むのかについてお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、参加国でございますが、G20の議長国のインドネシアからは、各国に対して、全ての国に対して招待状は出しているということは聞いてございます。そして、それに対してそれぞれの国がどのように対応するのか。これは情報でありますけれども、例えば、ロシアの財務大臣はオンラインで参加するのではないかという話も情報の一つとして聞いているところでございます。しかし、それは、詳細はインドネシアが取りまとめる、こういうことでございます。

 そして、やはりいろいろ議題があると思います。

 その一つは、やはりロシアのウクライナの侵攻にあるわけでありまして、今、日本は、G7を始めとする国際社会と協調しながら経済制裁をしているところでございます。これはやはり、一部の国が制裁をしても抜け穴が出るわけでありますから、多くの国が制裁に参加してもらいたい、抜け穴にならないようにしてもらいたいというのが、日本も含めG7の立場であるわけでございまして、先生も御承知のように、G20の中には、国連の様々な決議におきましても、棄権をしたり反対に回ったり、そういう国もあるわけでございますので、そういう国々に対するいわば働きかけをこの際しっかりやるということが重要だと思います。

 また、更に言えば、コロナ感染症の拡大がございます。特に、そうしたG20の参加国あるいはそれ以外の最貧国もこれからワクチン接種を進めなくちゃいけない、そういうことについての協調性についても議論になるのではないかと思います。

 それから、債務問題、これも重要な課題でありまして、G20で決められております枠組みがあるわけでございますが、これをしっかりと、今止まっているような状況でございますので、そういうことをしっかり動かしていくというようなことで、できる限り、バイ会談も含めまして、多くの国々と協議をして、しっかりやってまいりたいと思っています。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 大変重要な局面での出張になります。成果を期待しておりますので、どうぞ御活躍を祈念申し上げたいと思います。

 今、為替について言及がありませんでしたが、ちょっと為替について伺いたいと思います。

 急激な円安、これは鈴木大臣ももう発言されておりますけれども、悪い円安という発言をされています。この悪い円安は、さらに、悪い物価上昇を招くリスクがあります。ここまで来ると、輸出企業への追い風よりも、中小企業や家計への負担増というデメリットの方が大きくなるという指摘が経済界からも出ています。政府として、為替介入など対策を打つべき局面かどうか、大臣の認識を伺いたいと思います。

 そして加えて、黒田日銀総裁は十三日に、強力な金融緩和を粘り強く続けると発言し、その直後に更に円が急落した。総裁発言が円安を招いた可能性が指摘されているわけでございますが、同日に大臣は、これは注視するということを発言されていまして、政府と日銀のスタンスが合っていないのではないかというふうに思います。

 政府と日銀の共同声明、これは二〇一三年に出されて、それが引き継がれているということでございますが、この共同声明についても見直す局面に来ているんじゃないか、上書きする局面に来ているんじゃないかと思いますが、こうした認識について財務大臣の見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、為替の相場につきましては、私の不用意な発言が何か影響を与えたりしてはいけませんので、言及はいたさないところでございます。それはもちろん、介入をどうするかとかそういう話も含めてコメントは控えなければならないことだ、そういうふうに思っているところでございます。

 それで、G20との、参加をいたしますけれども、為替政策につきましては、これまで、G20等での合意というものもございます。例えば、二〇二一年四月七日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議でありますが、我々、G20ですが、我々は、為替レートの過度な変動や無秩序な動きが、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得ることを認識するという、そういったようなこれまでの合意がございますので、そういうものをしっかり踏まえまして、あるいは、米国等との通貨当局と密接な意思疎通を図ることが重要であると思いますので、その考え方に沿ってG20においても適切に対応させていただきたい、そのように考えているところでございます。

 そして、最近の円安の進行を含めまして、常に申し上げておりますことは、為替の安定、これは何といっても重要でありますし、特にも急速な変動は望ましくないということでございますので、今後とも、政府といたしましても、最近の円安の進行を含めまして、為替市場の動向、日本経済への影響、これをしっかりと緊張感を持って対応していきたいと思ってございます。

 それから、日銀総裁の話について私がコメントするのは適当ではないとは思いますが、金融政策、これは日銀の独立性があって、その日銀の政策にしっかりやっていただけるものと期待をしていきたいと思います。

 それから、共同声明についてでありますけれども、岸田内閣が発足して、昨年の段階でありましたけれども、日銀と山際大臣と私の間で、あの共同声明を引き続き、延長するということを合意したわけでありまして、今はそれを変更するという気持ちはございません。

青柳(陽)委員 そろそろ、その最後の部分ですけれども、共同声明が、この急激な円安、物価高に合っていないんじゃないのかということは、再度、最後指摘させていただきたいと思います。

 次に、緊急経済対策と物価高対策について伺いますが、今まだ国会開会中ですね。国会開会中に経済対策をやるのであれば、当然、補正予算を組んで経済対策をやっていくべきだと思いますけれども、政府・与党はこれを予備費で行うということでございます。

 この予備費で、予備費の使途を拡大して何でもかんでもコロナという枕言葉をつけてやってしまうのは、これは財政民主主義の根幹を揺るがす私は大きな問題だと思いますし、我が党もそういう見解で、今、政府の対応を問いただしているわけでございます。この予備費を使途拡大していくことについては、財務大臣こそ私は警鐘を鳴らしていくべきだというふうに思いますが、まず、本当にこの予備費で経済対策をやっていくのかどうか、この是非について財務大臣の御所見を伺いたい。

 加えて、一部報道では、地方創生臨時交付金も拡充して、足らない分はそこからやるという報道も出ていますが、ゆめゆめそういうことは私はないというふうに信じたいと思いますが、財務大臣の答弁を求めたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、現下の原油を始めとする物価高への対応でございますが、三月二十九日に岸田総理から指示がなされましたこの総合緊急対策につきましては、直面する危機に機動的に対応するために、既存の、成立をいたしました令和三年度補正予算、令和四年度予算を前倒し的に執行するとともに、必要なものについては、まずは予備費を活用した迅速な対応を優先していくとの方針が示されているところでございます。

 そして、この財源の話でありますけれども、この総合緊急対策に盛り込まれる具体的な施策につきましては、現在、関係省庁において検討中、現在進行中であるために、その財源についてお答えすることは困難でありますが、御指摘を受けましたコロナ予備費の使用につきましては、各省庁から、今申し上げましたような趣旨に該当して、これを使用したい、そういう要求があれば、その要求の個別具体の内容に基づいて使用を認めるか認めないかを判断することになる、こういうふうに考えているところでございます。

 また、今回の総合緊急対策に盛り込まれる具体的な政策については、御指摘の臨時交付金の活用も含めまして今検討中でございますので、現時点については、そのことをお答えすることは困難であると思っています。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 予備費を、ここ数年、通常は五千億から八千億ですけれども、コロナ予備費の名の下に五兆円、十兆円と積んで、しかもそれを経済対策に使っていく。この是非はしっかり国会で審議できないわけですから。経済対策、大型のをやるんでしたら、当然、私は補正予算を組んでやってほしいと思いますし、今、大臣の最後のところ、地方創生の臨時交付金は検討するとおっしゃいましたけれども、検討すべきでないと思いますよ。何でも使途拡大して使っていけることになってしまうのは、本当に財政民主主義の根幹を揺るがす大きな問題だと思います。これは、我々野党だけじゃなくて、与野党を問わず、国会としての大きな問題だと思いますので、重ねて指摘をさせていただきます。

 問題なのは、令和三年の予備費のところですね。これは本当に疑問符がつきますよ。年度末に、緊急性が認められない予備費、これを令和三年度の予備費、多額に支出しているんですよ。令和三年度の予備費、三月下旬ですね、特に三月二十五日の年度末に一兆四千五百億円、一気に支出しているんですよ。しかも、この予備費はワクチンや治療薬の確保ですね。ワクチンや治療薬を確保することは必要だと思いますよ。でも、三月二十五日にわざわざ大量に契約だけして、支払いは今年の下期なんですよ。

 契約だけして下期に支払う、こういう予備費の使い方、本当に私は疑問に思いますよ。繰り越せないから、その間、基金で積んで後で支払う。これじゃ、予備費の本来の趣旨と私は大幅にずれていると思います。このやり方を財務大臣は容認しているんですか。答弁を求めたい。

 さらに、時系列で見れば、そもそもこの予備費が、一兆五千億ぐらい年度末に未使用分があった。その未使用分を使って、当初は政府・与党で、高齢者、年金生活者に五千円支給しちゃおう、こういう案が検討されていた。これは事実だと思いますよ。この案が頓挫したわけです。この案がなくなったら、一気に一兆四千五百億、ワクチン、治療薬、買っているわけでしょう。

 これは本当に国会が問われる事態だと思いますが、本当に財務大臣はこういうやり方についてどう思うか。これは財政民主主義の根幹を揺るがすやり方だと、くどいようですが、申し上げたい。民主主義への挑戦だと私は思いますよ。

 是非、こうした点について大臣からしっかり御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 令和四年三月二十五日に使用を決定したコロナ予備費一兆四千五百億円について、その妥当性があるのかどうかという点でのお話があったわけでございますが、ワクチンの確保につきましては、今、世界各国で獲得競争が激化する中におきまして、世界から後れを取らずに十分なワクチンを確保していくためには、コロナ予備費を使用し必要な予算を適時に確保した上で早急に契約を締結する等の必要があったことから、予備費の使用によらなければ時間的に対処し難い緊急性があり、措置することが適切であった、そのように考えたところでございます。

 また、治療薬の確保につきましては、現在承認されている治療薬は、世界的に総供給量が限られておりまして、日本への流通量も限られたものとなっているところであって、企業との間で早急に治療薬の確保を確実なものとする等の必要がありましたことから、予備費の使用によらなければ時間的な対処し難い緊急性があり、措置することが適切であったと考えたところでございます。

青柳(陽)委員 財政審でも、こうした問題は問題がある、この予備費の使い方は問題だという指摘もあります。しっかり見ていただきたいと思います。コロナという枕言葉をつければ何でも今使えちゃう状態になってしまっているんですよ。私は、やはりしっかり、使うものは補正を組む、経済対策であれば補正を組む。もし本当に必要だったら、予備費を、年度末に契約だけして、下期に支払うというのが本当に妥当なことなのか、私は問題提起をしたいというふうに思います。

 次に、物価高について伺いたいと思いますが、今日は経済産業大臣にお越しいただいております。

 今の物価の上昇について、資源、エネルギー、原料、これが跳ね上がっていますが、国際状況あるいは国内の状況を見て、今後どのようにこの物価高、更に上がっていくんじゃないかという懸念が多いんですが、萩生田大臣はどのような見通しを持っておられるか。

 さらに、ちょっと所管の外になりますが、今の為替、円安の状況や、今の予備費の使い方について、大臣の個人的な所見や所感があれば御答弁いただきたいと思います。

萩生田国務大臣 エネルギー価格の上昇等を背景に、企業物価指数は、本年三月時点で前年比プラス九・五%と約四十一年ぶりの水準を示しました。消費者物価指数は、本年二月時点で前年比プラス〇・六%と六か月連続で上昇しております。原油価格の上昇が長期化すれば、企業収益や家計を圧迫する懸念がございます。

 総理からは、国民生活や経済活動への影響に機動的に対応していくための緊急対策を四月中に取りまとめるよう御指示をいただいているところです。

 経済産業省としては、原油価格が更に高騰し続けた場合への対応について、現在講じている激変緩和措置の効果も見極めつつ、検討を続けてまいります。

 また、エネルギー、原材料等の安定供給に支障が生じることがないよう、調達先の多様化も進めてまいります。

 さらに、物価の高騰に対しては、価格転嫁を進めつつ、賃上げを実現していくとともに、中小企業への資金繰り支援を確保、強化してまいります。国民生活や経済活動への影響を最小化するよう、具体的な検討をしっかりと進めてまいりたいと思います。

 後段の御質問につきましては、今、財務大臣がお答えをしたとおりでございまして、所管外なので、個人的な意見というのは控えさせていただきます。

青柳(陽)委員 緊急経済対策でも物価高対策は入っていると思うんですけれども、例えば、ヨーロッパ、欧州では、物価高になると電力やガスなどを、付加価値税、日本でいえば消費税に当たるようなものを大幅に引き下げる対策を打っている国が幾つもあります。我が国も、今、トリガーについて検討されているというふうに聞いておりますけれども、これは油だけですから、例えば、電力やガス、原材料などを、物価高対策として、例えば軽減税率の対象として減税するとか、こうした政策を打ち出してはいかがかと思うんですけれども、経産大臣の御所見を伺いたい。

 そしてさらに、電力には一定程度かかっている電促税というのが電気料金には入っているわけですけれども、これは国税ですから、この電促税を一時凍結するなどの措置を検討して電力の高騰対策に充てるというのはいかがか、御所見を伺いたいと思います。

萩生田国務大臣 まず、後段の電源開発促進税は特定財源でありまして、特別会計法に基づき、その税収はエネルギー対策特別会計の電源開発促進勘定に繰り入れられています。具体的には、電源立地地域に対する交付金や原子力の安全性向上に向けた研究開発など、電力の安定供給やカーボンニュートラルの実現に必要な予算に充てられております。加えて、福島の復興再生のために必要な予算も充てられております。

 こうしたことを踏まえますと、いずれも必要な予算の財源に充てられており、税率を直ちに引き下げるということはこの税目の中では考えておりませんが、この高騰がいつまで続くのかというのはしっかり見極めていかなきゃいけないので、今の時点であらゆる選択肢を排除しないということを申し上げていますから、そういう意味では、先生の御提案は一つの提案として受け止めさせていただきたいと思うんですけれども。

 我々もいろいろな研究をしていまして、確かに、EUの場合は、電気料金に係る税、百キロワットアワー当たり二百九十二・五円という、ちょっとびっくりするような金額を日頃から課税しているんですね。これを下げるということなんですけれども、日本の場合は、例えば、東京電力、首都圏でいいますと電促税というのは百五十円なので、全く負担感が違うというのもありますから、いろいろ各国の状況も研究は続けていきたいと思います。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。今後、物価高が続くようであれば、あらゆる選択肢を排除しないというのが今の大臣の御答弁だったと思います。補助金だけでなくて税制も検討して、国民生活を守っていただきたいというふうに思います。

 次に、中小企業の価格転嫁の状況と対策について、先ほども経産大臣が少しお述べになりましたけれども、具体的にお伺いしてまいりたいと思います。

 日本商工会議所の昨年十一月の調査では、八割強の中小企業が、現状、価格転嫁できていないというアンケート調査がございます。実際に、私の地元の中小企業でも、とても厳しい、悲痛な声を直接聞いております。社員の給料を上げたくても、物価が上がり、仕入価格が上がって、価格に転嫁できない、取引先との関係で。ですから、結局、下請、孫請、中小企業が、我々が泣くしかないんだという声を聞いています。赤字覚悟で仕事を受けているという状況です。これでは、当然、社員の給料も上げられないという状況になっているわけです。これが現実に起こっていることです。

 是非、行政としても、国としても、監視を強化していただいて、可能な限り中小企業の価格転嫁を実現して、そして、経済全体の底上げを図っていただきたいと思いますけれども、御見解とそして具体的な対策について御説明いただきたいと思います。

古谷政府特別補佐人 私の方からお答えをさせていただきます。

 中小企業が労務費、原材料費、エネルギーコストの上昇分を適切に価格転嫁をして賃上げが可能となる取引環境を整備するために、政府では、昨年末に転嫁円滑化施策パッケージというのを取りまとめております。

 公正取引委員会は、このパッケージに沿いまして、関係省庁と緊密に連携しつつ、独占禁止法と下請法の執行を強化する取組を進めております。

 具体的に申し上げますと、独占禁止法の執行強化に関する取組としまして、先月、転嫁拒否が疑われる事案が発生していると見込まれる二十二の業種に対して、独占禁止法上の優越的地位の濫用に関する緊急調査を行うことを公表いたしました。

 今後、速やかに、十万件程度になろうかと思いますが、書面調査を開始をいたしまして、その結果を踏まえて、転嫁拒否が疑われる事案について個別に立入調査を実施するとともに、関係事業者に対して具体的な懸案事項を明示した文書を送付することとしております。

 さらに、下請法に関しましても、業種別の法律の遵守状況等についての報告書を六月までに公表することとしておりまして、これに基づいて、問題の多い業種に対して、法遵守状況の自主点検の要請ですとか、重点的な立入調査を実施する予定にしております。

 公正取引委員会としましては、このように適正な価格転嫁を可能とする取引環境を整備するために、取引の実情を把握する体制も強化しながら、従来より踏み込んだ取組を行わせていただいて、買いたたきなど価格転嫁に伴う中小企業への不当なしわ寄せの防止に向けて、実効性が上がるように取り組んでいきたいと思っております。

 よろしくお願いをいたします。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 過去に例のないぐらいの、今、円滑化施策パッケージというのをやってくれているということで、その点は評価したいというふうに思います。

 ただ、実効性を高める取組がどこまでいくかということですし、今の、立入調査をして最後は行政指導ということになると思うんですけれども、その行政指導の前に、一つは、こうした取組をやっているということがまだ中小企業の現場では余り知られていませんので、引き続き、政府にはこの周知徹底を図っていただきたい。これは、元請、下請両方に徹底を図っていただきたいということと、それから、こうしたことをやっているメリットについては、価格転嫁を容認する企業については、補助金等、国の施策に、加点するということをやっているということでしたけれども、私は、それだけにとどまらず、逆に価格転嫁を認めないところについては、大手が多いですから、租特を少しペナルティーを加えるなど、こうした提案をして更に実効性を高めていただきたいと思いますが、こうした点について、これは財務大臣か経産大臣にお答えいただけますでしょうか。

萩生田国務大臣 今先生の御指摘のあった、中小企業の皆さんに対して適正な価格転嫁を、取引の適正化をさせるというのは大事なことでありまして、こうした観点から取引適正化を進め、下請企業に適切な利益が分配される環境を整えることで成長と分配の好循環を実現してまいります。

 お題目を言うのは簡単なんですけれども、これはかなり踏み込んで、業界の皆さんにも、国も本気なんだぞ、これは本当に一緒になってやってくれないんだったら覚悟がありますよということを、私、機会あるごとに伝えております、余り品のいい大臣じゃないものですから。そういう効果はあるんじゃないかと思っておりまして、下請事業者約二十万社に対する調査を実施し、下請代金法違反のおそれがある事案については厳正に対処します。

 また、全国百二十名の下請Gメンを倍増し、体制を強化することで年間一万件以上の中小企業の現場の声を聴取しておりますが、これも本当にきめ細かく今やっています。聞き方とかも含めて、Gメンの皆さんともいろいろな相談をしています。

 加えて、三月の価格交渉促進月間のフォローアップとして、二千社に対するヒアリングや十五万社の下請中小企業への調査を実施し、下請振興法に基づく指導助言を実施しております。

 こうした法執行強化によって取組の実効性を高めてまいります。

 そのほか、サプライチェーン全体の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言を推進するとともに、業種別のガイドラインの策定など、業界の自主的な取組を促進し、課題解決につなげていきたいと思います。

 例えば、公共事業なども、大きなものについては契約段階から執行までの間に一年とか二年後になる。部材なんかは、鉄とか生コンとかというのは出番は後なわけですよね。そうしますと、契約、入札段階とはもう事情が変わっているんだけれども、公共事業こそやはりこういう価格を見直していかないと、民間の皆さんに言えないと思っていますので、これは国全体でしっかりやっていこうと思っています。

 今、公取委員長からもお話ありましたけれども、公取が実施をする独禁法の緊急調査についても、全国約千五百の事業団、団体を通じて、中小企業も含む事業者に対して周知を行うなど、各種取組を関係省庁と連携して実施していくことで、取引の適正化に全力で取り組んでまいりたいと思います。

青柳(陽)委員 今、私の、特に地元の中小企業、この質疑を見てくれていると思うんですけれども、今の大臣の取組に期待してまいりたいというふうに思います。

 経産大臣はここまでで結構でございます。ありがとうございました。

 最後、残された時間で、在宅勤務、テレワークについて伺いたいと思います。

 コロナ禍で、政府が各企業に要請して進めてきた在宅勤務七割、テレワークについて、政府として、コロナが終わっても、今後この取組を進めていくのかどうか、コロナ後も、この在宅勤務、テレワークというのは定着して、更に普及していくのか、そうした見通しについて、済みません、財務大臣に見解をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 今、政府を挙げてデジタル社会を実現していこう、こういうことでございまして、いろいろな切り口があると思いますが、御指摘のテレワークもまさにデジタル社会の中で進めていくべき課題だと思っています。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 であれば、このテレワーク、在宅勤務に関する手当を、税制を使いやすくしていくということが必要だと思いますし、今そういう税制があるんですけれども、これは知っている人が特に中小企業では少ない、あるいは個人事業主では少ないと思いますので、現在実施している在宅勤務手当に関する税制の優遇措置について、これは政参人で結構ですが、ちょっと時間も限られているので簡単に説明していただけますか。

鈴木国務大臣 参考人がいないようですので、私の方からお答えさせていただきますが。

 先生御指摘のテレワークの通信費等の諸経費に当たる手当につきましては、従業員が実際に支出した業務のための費用につきまして、実費を弁済するものとして支給されるものであれば、これは所得税の課税は生じないということになっているところでございます。

 また、テレワークに関する社会的な関心の高まり等を踏まえまして、制度を使いやすくする観点から、令和三年一月、国税庁におきまして、テレワーク実施日数分の通信使用料の二分の一、半分を支給する場合には、給与として課税しないという取組を明確化したところであります。

 青柳先生御指摘のように、実際に支出した費用にかかわらず、一律に定額支給されたテレワーク手当を非課税とするということにつきましては、個々の従業員においてテレワークに要する費用というものは一律ではないということ、そして、勤務内容やテレワークの環境により様々であるということを踏まえますと、課税の公平性の観点から、一律に定額支給されたテレワーク手当を非課税にするということにつきましては、慎重な検討が必要であると考えております。

青柳(陽)委員 ありがとうございます。

 そうだと思いますけれども、これから更に在宅勤務、テレワークが普及します、そういう働き方も普及してきていると思います。

 今のは従業員というか勤務者に対する在宅勤務の措置だったと思いますが、私は、フリーランスにも思い切ってこうしたやり方、小規模個人事業主、フリーランスに対しても、在宅勤務の非課税枠をつくっていくというのを分かりやすく制度化していくというのも必要ではないかと。これは、可処分所得を上げていく政策になりますから、賃金が実質的に上がる、所得が増えるわけで、岸田内閣の方針にも私は合うんだろうと思いますが、最後に大臣に御答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。

鈴木国務大臣 個人事業主の所得につきましては、事業収入から実際にかかった必要経費を引くこととされておりまして、テレワークのためにかかる費用につきましても、必要経費に該当すれば収入から差し引くことができているわけでございます。

 その上で、事業主の所得計算の簡素化の観点から、テレワークにかかる費用を定額で控除するような制度を設けることにつきましては、テレワークに要する費用は事業内容やテレワーク環境により様々で一律ではないこと、他の必要経費についても実費で計算することとされていることとのバランス等を踏まえますと、課税の公平性の観点からも問題があり、簡単ではない、そういうふうに考えております。

青柳(陽)委員 今日は、時間が来ましたので、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

原口委員長 次に、藤岡隆雄君。

藤岡委員 立憲民主党、栃木県第四区の藤岡隆雄でございます。

 今日は、決算行政監視委員会にて初めて質問に立たせていただきます。

 まずは栃木県の地元の皆様に心から感謝を申し上げ、そして、質問の機会を与えてくださった先輩各位に感謝を申し上げて、質疑に入らせていただきたいと思います。

 今日は、財務大臣、よろしくお願いいたします。黒田総裁、今日は朝からありがとうございます。また、岡本副大臣、よろしくお願いいたします。

 さて、円安の問題でございます。

 四月十五日金曜日、鈴木財務大臣、記者会見におきまして、悪い円安がどういう状態を指すかについて説明をされたと思います。

 まず黒田総裁にお聞きをしたいのですが、悪い円安とはどのような状態を指すのでしょうか。同じような認識ということでよろしいでしょうか。

黒田参考人 まず、為替相場について、中央銀行の立場から具体的にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、日本銀行としても、為替相場は、経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと考えております。したがいまして、為替相場が短期間に過度に変動すれば、先行きの不確実性を高めて、企業の事業計画の策定等が難しくなる面もございます。

 私どもとしても、為替相場の変動が経済、物価に与える影響には十分注意して見てまいりたいというふうに思っております。

藤岡委員 ありがとうございます。

 本日の朝も百二十六円台の後半まで、先ほど確認したら来ておるようでございます。

 鈴木財務大臣、金曜日に御説明された内容、改めてもう一回この場で説明していただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 私の立場からも、為替の水準等につきましては、私の不用意な発言が影響を与えてはいけませんので、コメントはいたしませんけれども、一般論で申し上げますと、為替の円安方向への動きによりまして、輸出や海外展開している企業の収益は改善をする、その一方で、輸入価格の上昇を通じまして企業や消費者に負担増となり得ると承知をしておりまして、全体と見て、円安がよいとか悪いとかは一概には言えるものではない、そういうふうに思っております。

 その上で、私が十五日に申し上げましたのは、経済というのは動きがございますから、円高に振れる局面もあれば、円安に振れる局面もあるわけでございますが、例えば、今みたいな状況において、原油を始めとする原材料が上昇している、それを価格に十分に転嫁をできる、その上で、そうすると物価が上がりますから、それを補うだけの賃金が上昇しているという状況にあれば、円安の影響というものはそんなに大きくないんだと思います。

 しかし、今の状況は、先生も御存じのとおり、価格転嫁の面におきましても、十分な賃上げという面においても、まだそこに至っていないわけですから、そういう経済状況においては、今の円安というものは、好ましい、いい円安とは言えない、どちらかといえば悪い円安ではないか、そういうことを記者会見で申し上げたところでございます。

藤岡委員 ありがとうございます。

 今、財務大臣、大事なことをおっしゃっていただいたと思います。

 例えば、企業物価指数の需要段階別の指数を見ましても、価格転嫁というものが企業でもなかなか進んでいないという側面もあるのかな、そういうところも本当にあると思います。また、日銀の短観を見ましても、様々な指標の中でも転嫁というところがどうなっているのかなというところを私も本当に懸念を持っております。

 その中で、今、円安について、やはり全体的に、一概的にいいとは言えないという話をおっしゃっていただきました。従来、円安は日本経済にとってプラスだというふうに言われてきたと思いますが、今財務大臣にお示しをいただいた見解、これは、プラスとは言い切れない、一概にいいとは言えない、どちらか分からないという認識でよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 そのような御認識でいいと思います。

藤岡委員 それでは、黒田総裁の方にお聞きをしたいと思います。

 総裁、悪い円安について、円安の水準についてのコメントはなかなか難しい、そのものについてというのは私もよく承知をいたします。では、悪い円安がどういう状態を指すのかということについて、御見解を、財務大臣と同じなのかどうか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

黒田参考人 御指摘の点について、現在の為替レートについて云々ではなくて、理屈、理論として為替円安の経済効果がどうかということであれば、グローバル企業の輸出採算とか海外子会社からの配当などにはプラスに作用する一方で、輸入物価の上昇などを通じて家計の実質所得や内需への依存度の高い企業の収益にはマイナスに作用するということでありまして、為替円安の影響というのは、業種や企業規模、経済主体によって不均一であるということには留意が必要だというふうに考えております。

 それから、先ほど申し上げたように、基本的に、為替相場は、経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと考えておりますので、為替相場が短期的に過度に変動しますと、どうしても、先行きの不確実性を高めて、企業の事業計画の策定等が難しくなる面もあるということにも留意する必要があるというふうに考えております。

藤岡委員 事業計画の策定が難しい、いろいろるる話がございました。少し、財務大臣とやや見解が一緒ではないのかな、価格転嫁の話や輸入物価の話等、というふうに今私はちょっと受け止めさせていただきましたけれども。

 日銀総裁、黒田総裁にお聞きしたいのですが、円安が、それでは、日本経済にとってプラスなのでしょうか。先日来、プラスということをある意味言い切られているように伝わっているように思いますけれども、円安は日本経済にとってプラスなんでしょうか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、為替円安の経済への影響については、業種や企業規模、経済主体によって不均一であるということには留意が必要であるというふうに考えておりますが、全体としてプラスという評価を変えたわけではありませんが、やはり、過度に急激な変動というのは、不確実性の高まりを通じてマイナスに作用するということも考慮する必要があるというふうに考えております。

藤岡委員 ありがとうございます。

 いろいろと配慮をしながらの答弁をされていただいたと思うんですけれども、全体としてプラスという評価を変えたわけではないというふうに今はっきりとおっしゃいました。その根拠というのはどういう根拠なんでしょうか。

黒田参考人 これは先ほど来申し上げておりますとおり、かつては、円安になると、海外での現地価格を下げるということによって輸出数量を増やして、直接的にGDPが増える、企業の売上げも増えるということが多かったわけですけれども、御承知のように、最近では多くの企業が海外でも生産しておりますので、円安になったときに現地価格を変えないわけですね。ということは、輸出する円建ての価格については引き上げるわけです。すなわち輸出採算がよくなる。

 これは、輸出している企業も、そこに納入している企業も含めて輸出採算が改善するということと、それから、多くの製造業が海外でも生産しておりますので、海外の所得を本社に合算するときのレートも円安になっていますので収益が拡大するということで、かつてのような輸出の数量が増えてプラスだということは非常に薄くなっているんですけれども、他方で、輸出採算とか海外子会社からの所得などを含めた全体としてのプラスというのはむしろ大きくなっている可能性がある。

 ただ、先ほど来申し上げているとおり、輸入価格が上がれば、それが消費者物価に転嫁されていく場合には、当然ですけれども、家計の負担が増える。それから、逆に、中小企業等で輸入価格の上昇を転嫁できないということになりますと、中小企業の収益が減少するということになりますので、そういったマイナスがあるということも事実であります。

 非常に大きな円安とか急速な円安の場合にはマイナスが大きくなると思いますけれども、基本的な考え方として、全体としてプラスという評価、これは様々なシミュレーション分析で出てきた結果でございまして、その限りでは、それは基本的なところは変わっていないと思いますけれども、先ほど来申し上げているように、最近の急速な円安は、百十五、六円から今の百二十五、六円というところに、十円ぐらい一か月ほどで……(藤岡委員「一か月半で一〇%です」と呼ぶ)ええ。ということで、かなり急速な為替の変動ですので、これは企業の事業計画の策定に困難を来すおそれがある。そういう意味では、そういうマイナスも考慮しなければならないということでございます。

藤岡委員 今、いろいろプラス面の話もおっしゃいましたし、マイナス面の話もおっしゃいました。そういう中からしますと、私は、円安は今の日本経済の構造に照らして本当にプラスなのかなというところがよく分からないなと今お話を聞いていても感じました。

 計量モデルのデータというのは、大体いつのデータなんでしょう。二〇一〇年から一九年のデータなんではないんでしょうか。

黒田参考人 御承知のように、展望レポートでそういう分析をしておりまして、もちろん、常にそうなんですけれども、為替レートとか成長率とか、そういうものについては、どういう期間を取るかによっていろいろ違いが出てまいります。ただ、今申し上げたような点は展望レポートでも示されておりまして、それ自体としてはかなり、経済分析としてはいわゆるロバストというかしっかりしたものというふうに思っております。

 ただ、先ほど来申し上げているように、最近の急速な円安は企業の事業計画にも影響を与えるおそれがありますので、単に経済全体としてでなくて、セクターごとにマイナスもあるという話だけでなく、より注意して見ていく必要があるというふうには思っております。

藤岡委員 私は、今、計量モデルも、前のデータが今の経済構造に当てはまっているのかなというところは、正直私は疑問に思います。インバウンドが今非常に低迷をする、あるいは半導体不足によって輸出がなかなか伸びにくくなる、いろいろな経済構造を、直近の経済構造を取り入れていらっしゃるのかなというところは大いに本当に疑問に思いますので、これはもう少し直近の構造を捉えた分析で語っていただきたいなということは申し上げたいと思います。

 先ほど来、急速な円安ということをお認めになられております。一か月半で約一〇%を若干超えているでしょうかね、程度の円安でございます。日米の金利差などによって円安が加速して輸入物価に与える影響が拡大する、こういうことも当然今後ございます。現在の金融政策を堅持されるんでしょうか。例えば、長期金利〇・二五%に迫る、あるいは上回れば、無制限の指し値オペ、これを継続されるという認識でしょうか。

黒田参考人 まず、我が国経済は、基調としては持ち直しておりますけれども、依然として感染症からの回復途上にあります。消費者物価の前年比は、携帯電話通信料下落の影響が剥落する四月以降は二%程度になる可能性もありますが、物価上昇の主因はエネルギー価格の上昇であります。このエネルギー価格の上昇も、ドル建て価格の上昇の影響が大半でして、為替円安の影響は小幅にとどまっております。

 いずれにいたしましても、物価上昇の主因はエネルギー価格の上昇でありまして、コストプッシュ型の物価上昇というのは、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて、我が国経済に下押しの圧力を、影響を与えます。

 我が国はエネルギー等はほとんど輸入していますので、米国とかカナダなどはむしろ輸出国ですから、エネルギー価格が上昇することによって交易条件がよくなり、GDPにプラスですけれども、我が国はエネルギーを全てと言っていいほど輸入していますので、交易条件が悪化し、国際商品市況の上昇というものはマイナスの効果のみがあるというところが円安と違うところでありまして、こういったエネルギー価格の上昇によるコストプッシュ型の物価上昇というのは、やはり家計の実質所得の減少、企業収益の悪化を通じて、我が国経済に下押しの影響を与えます。

 したがいまして、こうした経済、物価情勢を踏まえますと、日本銀行としては、二%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現を目指して金融緩和を続けていくことが適当であるというふうに考えております。

 具体的には、長短金利操作のイールドカーブコントロールという下で、十年物国債金利がゼロ%プラスマイナス〇・二五%程度のレンジで推移するよう、金融市場調節を行っております。

 したがいまして、指し値オペも含めて、国債買入れのオペレーションは、こうした長期金利の操作目標を実現するための手段として実施しているものでありまして、全体として、我が国経済の状況、現状、それから先行きを考えますと、金融緩和を続けていくことが適当であるというふうに考えております。

藤岡委員 今お話がありました、堅持をされるというふうに理解していいのでしょうかねというふうに思いましたけれども、今本当に経済界からも円安に対する懸念、あるいは、総裁が先ほど答弁でおっしゃっていただきましたように、中小企業に与える影響、非常に厳しくなってくる。あるいは、今までまだ輸入物価の上昇が少ししか寄与していないということかもしれませんが、今後、日米の金利差によってまた更に輸入物価の上昇に与えるという影響があるようにも懸念がされるところでございます。また、そういう面からしますと、今、円安は本当にプラスなのか、さらに、有事の今、円買いが本来であれば起こっていた、起こるような、今環境の、経済の強さもないような状況にも思えるところでもございます。

 利上げをすると、例えば、日銀の財務内容に影響を与える、あるいは経済をまさに冷やしてしまう、今おっしゃっていますけれども、そういういろいろなもろもろのことを考えますと、今までとは異なる新たな局面に今入っている可能性があるなということを私は懸念します。

 そういう意味で、金融政策を、これまで二%の目標、二年でということが積み上げてきて、例えばETFなどももう三十五兆円程度も購入をされていて、じゃ、例えば利上げをしようとしたときの日銀の財務に与える影響とかも、相当これは出てくる話だと思います。したがって、利上げをしようにもできないといいますか、もちろん、いろいろな経済を冷やすということもありますから、円安の、プラスではない、また、利上げをすると経済も冷やす、日銀の財務内容に与える、むしろこれまで積み上げてきた金融経済の失政のジレンマに今陥ってしまっているのではないかなというふうな、私は本当に懸念をいたします。

 実際、何か柔軟な対応を考えようとしたときに、これはできるんでしょうか。

黒田参考人 いわゆる出口戦略云々につきましては、二%の物価安定目標が達成されるような状況になれば、当然のことながら出口ということを具体的に政策委員会で議論をする、その際には、拡大したバランスシートをどのように縮小していくかということと、政策金利をどのように引き上げていくかということになると思います。

 ただ、それらはいずれにせよ二%の物価安定目標が実現されるような状況になった際の話でありまして、現状、そういう状況にありませんので、やはり金融政策は現在の緩和的なものを続けていく必要がある。必要があれば、先ほど申し上げたように、バランスシートの縮小であれ政策金利の引上げであれ可能ですけれども、それはあくまでも二%の物価安定目標というものが安定的、持続的に達成されるような状況になった場合であって、そうでない場合に金融の引締めを行うという必要はないし、適切でない、必要なときにそういった転換ができるかといえば、それは十分可能であるというふうに考えております。

藤岡委員 今、金融経済の失政のジレンマということもあえて申し上げさせていただきましたが、それに対して特に今ございませんでした。大分、随分悩まれていらっしゃってくださっているのかなというふうにも思いますけれども、これは本当に、例えば今後いろいろな軌道修正なりを考えたときにできるのか、そういう面で、事前にいろいろなことをちょっと検証させていただかないといけないと思うんですが、日銀にもし損失が出た場合、繰延資産とかで計上、日銀法上これは可能なんでしょうか。

岡本副大臣 お答えいたします。

 日銀法第五十三条第一項では、損益計算上剰余金を生じたときは、その五%に相当する金額を準備金として積み立てることを定めまして、同条第三項におきまして、当該準備金は、損失の補填等に充てるために取り崩すことができる旨を規定しております。

 一方で、日銀法には損失の繰延べを認める規定はございませんで、日銀が尊重すべき企業会計基準におきましても、損失を繰り延べるために繰延資産を計上することは認められていないと承知をしております。

 こういった状況を踏まえますと、現行法令上は御指摘のような会計処理を行うことはできないと解されております。

藤岡委員 日銀が債務超過になるということは日銀法上許容されるんでしょうか。財務大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 現行法令上、日本銀行が債務超過、すなわち負債の総額が資産の総額を上回る状態を禁止する、そういう規定はございません。

藤岡委員 それでは、一般論として、日銀が、中央銀行が債務超過になるということは財務省としてどのように評価されますでしょうか。財務大臣、お願いします。

鈴木国務大臣 将来の日本銀行の財務状況につきましては、その時々の金融政策でありますとか、それから金利、為替の動向などに左右されるものでありまして、政府として、日本銀行の債務の悪化を前提とする仮定の御質問にお答えすること、これは控えなければならないんだと思います。

 その上で申し上げれば、財務の健全性の確保については、日本銀行法の趣旨に鑑み、まずは日本銀行において検討されるべきもの、そのように考えております。

藤岡委員 時間も押し迫っておりますが、最後の質問にさせていただきたいと思います。

 少しちょっと戻らせていただきますが、現在の金融政策を堅持をされる、円安、引き続きプラスということを変更したわけではない、ただし、いろいろなマイナスの要因もあるというふうな話を受け止めさせていただきましたが、私は、この円安、本当に経済にとってプラスかというのをよく検証を、直近の経済構造で検証していただきたいということは申し上げたいなと思いますし、中小企業にマイナスの影響、あるいは消費者にとってマイナスの影響、輸入物価、そうしますと、金融政策を堅持をされたときに、中小企業や消費者、庶民の暮らしに与える、日本銀行としてこれは放置されるということでいいんでしょうか。

黒田参考人 円安が中小企業にどのような影響を及ぼすか、為替相場の影響というものは、業種や企業規模、経済主体によって不均一であると考えておりまして、中小企業の中でも、輸出関連企業に対しては、円安は輸出採算の改善などを通じて収益の押し上げ要因として作用いたします。他方、内需型の中小企業に対しては、原材料コストの上昇を通じて収益の下押し圧力として作用いたします。

 いずれにいたしましても、為替相場の変動が経済に与える影響については、それがセクター間で不均一であるという点も含めて、十分注意していかなければならないというふうに考えております。

藤岡委員 ありがとうございました。

 今日の答弁を聞きましても、これからやはり、この金融政策、この経済政策、よく議論していかなければいけないなと改めて思いました。

 ありがとうございました。

原口委員長 次に、一谷勇一郎君。

一谷委員 日本維新の会の一谷勇一郎です。

 本日は、小児がんについて質疑をさせていただきます。

 後藤厚生労働大臣、御出席ありがとうございます。なるべく私は日頃大臣に負担をかけないようにというふうに考えておるんですが、今日は是非小児がんのことを聞いていただきたいと思って質疑をさせていただきます。

 二〇一八年の厚生労働省のデータによりますと、十五歳未満の小児がんが発生した件数は二千九十四人ということで、決して多くない方々ですのでなかなか目が届きにくいのではないかと思っております。しかし、家族の方や患者さんにとっては切実な問題ですので、どうか本日の質疑をよろしくお願いをいたします。

 百九十六回の国会、内閣の講じた措置の中に、小児がんの拠点病院というお話があります。まずは、この拠点病院の進み具合をお聞きしたいと思います。お願いします。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省においては、小児がん患者とその家族が安心して適切な医療や支援を受けられるよう、平成三十年の七月に小児がん拠点病院等の整備に関する指針というものを策定しております。小児がん患者の数が限られている中、質の高い医療や支援を提供するために、一定程度の医療資源の集約化が必要であることから、地域のバランスも考慮しまして、当面の間、全国に十か所程度の小児がん拠点病院を整備するものと定め、取組を進めてまいりました。

 こうした指針の下、現在、全国に十五か所の小児がん拠点病院と、それから、これらの拠点病院を牽引しまして全国の小児がん医療の質を向上させる役割を担う、より中核的な二か所の小児がん中央機関を整備しているところでございます。

一谷委員 ありがとうございます。

 私は、やはり、小児がんの方の、専門の病院のドクターも少ない中、集約していくということは大変いいことだと思いますし、また、小児がんの中で多くを占める白血病のお子さんに関しては、治療の方法が確立しているので、百四十四か所ある連携病院と連携ができているというふうにお聞きしております。ただしかし、全国十五か所になりますと、例えば、九州ですと一か所しかなく、四国にはないという状況です。

 やはり、移動や宿泊というところで、親御さんの負担がかなり多くのしかかってくると現場からお聞きしておりますが、その辺りの対策についてお聞きをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 小児がん患者やその御家族に対しては、一般的な経済的な負担に限らず、御指摘のような通院や宿泊をする際の負担等について、総合的な支援が必要であると認識しております。

 厚生労働省の小児がん拠点病院等の整備に関する指針に基づきまして、患者の発育及び教育等に関して必要な環境整備として、御家族等が利用できる長期滞在施設又はこれに準じる施設が全ての小児がん拠点病院に整備されているところでございます。

 また、厚労省の小児がん拠点病院整備事業では、小児がん拠点病院等に対して、宿泊施設等に係る工事費の補助をしているところでございます。

 さらに、小児がん等の疾病を抱える児童等につきましては、児童の通院の付添いやそれから兄弟の預かり等、介護を行う御家族の身体的、精神的負担の軽減に資する支援、こういったものも小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を通じて実施をしているところでございます。

 さらに、厚生労働省では、がんとの共生のあり方に関する検討会などを開催しておりまして、引き続き、小児がん患者とその御家族の生活の質の更なる向上に向けて検討してまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 今お聞きしますと、非常に充実した支援を取っていただいているようにお聞きするんですが、実際の親御さんからお聞きしますと、やはり移動であるとか、兄弟を家に残してきた負担、そういったものはまだまだ負担が大きい、国の方で何とか対策を取っていただけないかということもお聞きしていますので、もう一度実態を調べていただいて、よりよい対策を取っていただけたらと思っております。

 また、宿泊施設なんですけれども、生活環境の問題で、これは全てではないと思うんですが、例えば、シャワーの時間が非常に短くて、週一回か二回しか入れないということもあるとお聞きしております、これは親御さんがですね。また、コロナ禍で面会できる人数に制限があり、今まで二人でしていたところを、一人しか面会できないので、一人でお子さんのケアをしているということもお聞きしておりますが、こういった生活面での負担の軽減、施設の中の軽減、こういったところをもう少し詳しくお聞かせいただけたらなと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 入院中の小児がん患者の御家族の付添い環境につきましては、小児がん拠点病院等の整備に関する指針におきまして、家族等の希望により、二十四時間面会又は患者の付添いができる体制を構築していることと定められております。

 ただ、御指摘のように、新型コロナの流行が発生してから、地域の感染拡大状況に応じて、感染拡大防止の観点から、面会や付添い、あるいは医療機関内の各種のサービスに対しまして、一定の制限を設けている例があると承知しております。そのような場合においても、各医療機関では、感染拡大に留意しつつ、安心して療養環境を確保できるよう様々な工夫をされているものと考えておりますが、厚生労働省としても、更にどのようなことができるか、関係者の御意見を伺ってまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 是非いろいろなヒアリングをしていただけたらと思うんですが、提案なんですけれども、いろいろな家族の方のケアをしていただける共通のヘルパーさんの配置であったりとか、いろいろと考えることはできると思いますので、お願いしたいなと思いますのと、あと、私がこの問題をいろいろ調べている中で、実は、宿泊施設を利用したくないとおっしゃる方もいらっしゃる。しかも、それが、地域に偏りがあるみたいなんですね。自らのお子さんが小児がんであるということを余り知られたくない、隠したいというような気持ちになる親御さんの地域というのもあります。これはここでは申しませんが、そういったところも調べていただいて適切な対応をしていただけたらと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 そうしたら、次は、チャイルド・ライフ・スペシャリストというお名前を皆様は余り聞いたことがないと思うんですが、この件についてお話をさせていただきたいと思います。

 先ほどの百九十六回の内閣の講じた措置の中で、「小児がん拠点病院におけるチャイルド・ライフ・スペシャリストや保育士の配置については、患者・家族の心のケアも含めた療養環境を支援する専門的人材として、小児がん拠点病院機能強化事業を活用した雇用を促しており、引き続き必要な支援を行ってまいる所存である。」と書かれております。

 この中で、では、チャイルド・ライフ・スペシャリストは一体どういったことをする方々なのかといいますと、医療環境にある子供や家族に心理社会的支援を提供する専門職です。子供や家族が抱え得る精神的負担を軽減し、主体的に医療体験に臨めるようサポートする。一九五〇年代から主に北米で発展してきたもので、現在は、米国に本部を置くアソシエーション・チャイルド・ライフ・プロフェッショナルが認定を行っております。

 現在、日本におけるチャイルド・ライフ・スペシャリストの協会に問合せをしてみますと、六十一名の方がこの資格を持っておる、現在仕事をしていただいている方は四十九名、産休の方であったり海外で働いていらっしゃる方もいるというふうに聞いております。十五か所ある拠点病院の中で、九か所の配置にとどまっております。また、先ほど申しました連携病院が百四十四か所あり、その連携病院にも勤務をしていただいている状態。日本では、残念ながら、この資格を修得することはできない状況です。

 ここで、大臣にお聞きをしたいと思います。

 私が小児科のドクターに聞きますと、やはり子供の小児がんというのは、子供の発育とともに病気を一緒に治していかないといけない、遊びも必要だし勉強も必要、そういったところにチャイルド・ライフ・スペシャリストの方がいると、大変心強く、子供の成長、そして病気に挑む気持ちが強くなるとお聞きしております。

 なかなか日本で資格を修得をすることが難しい、資格を修得するならばアメリカまで行かなければならないという状況について、大臣のお考えをお聞かせいただけたらと思います。

後藤国務大臣 今委員から御指摘のありましたチャイルド・ライフ・スペシャリスト、これは、今御説明もあったとおりでございまして、医療環境にある子供や家族に心理社会的支援を提供する専門家でありまして、その資格については、米国の非営利団体が認定する資格でございまして、我が国では公的に位置づけられているものではありません。

 厚生労働省としては、ただ、小児がん拠点病院の指定要件で、小児がん患者の治療を支援する職種として、社会福祉士や公認心理師、それから保育士、チャイルド・ライフ・スペシャリストのような、療養を支援する担当者の配置が望ましいというふうに局長通知の中でも書いておりまして、令和二年度時点で、全国十五か所の小児がん拠点病院で百九十五名の専門的な知識等を有する者が勤務しております。このうち、チャイルド・ライフ・スペシャリストにつきましては、令和二年度時点で、小児がん拠点病院で十八名が勤務していると報告を受けております。

 厚生労働省としては、チャイルド・ライフ・スペシャリストに限らず、小児がん患者の療養を支援する者の充実に努めるため、相談員の専門研修等を行うことにより、患者やその家族が安心して医療や心理的支援を受けられる環境、こうしたものをしっかりと整備してまいりたいというふうに考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 今、大臣の答弁で、社会福祉士や保育士というお話も出ました。私も、長らくこの福祉の世界で仕事をしておりますけれども、やはり専門職は専門職だと思います。社会福祉士の方は社会福祉士なりの広い視野で福祉を担っていただく。また、先ほどの中に保育士というのがありましたけれども、私は、このスペシャリストの方の補助として保育士さんがいてくださったらいいのではないかというふうに思っております。

 なかなか、人件費の負担というのも病院の負担になりますし、このスペシャリストの方が少ないということもありますが、どうか、未来の子供たちのために、いい環境をできたら整えていただきたいと思いますし、全てのお子さんが助からないというふうに思っております。しかし、やはり生まれてきてよかったなと思ってもらえるような環境をつくるのが我々政治家の役目だと思っておりますので、是非お願いをいたします。

 また、日本のチャイルド・ライフ・スペシャリスト協会の大橋恵会長にいろいろお話を伺ったところ、やはり育成をしていくならば日本で、中途半端ではなく、北米のレベルに達するような教育をしていただきたいという意見を聞いております。

 本日質疑で通達を出していない問題も多々ありますので、また厚労委員会で質問のチャンスをいただけたらと思います。

 小児がんについては、これで質疑を終わらせていただきたいと思います。厚生労働大臣、ありがとうございます。

 では、続きまして、介護分野のICT化について質問をさせていただきたいと思います。

 今回、医療情報システムの安全管理に関するガイドライン五・二というのが出ました。この中で、私も厚労委員会で何度もお願いをさせていただいた個人端末の業務利用、これが実質解禁になりました。これは、解禁していただいたことによって介護現場のICT化はかなり進んでいくのではないかと私の経験からも思いますし、そのように現場からも声をいただいております。

 そこで、御質問なんですが、この新しくなったガイドラインなんですが、約百ページ以上あります。別紙も八十七ページと膨大な量になります。なかなか、これを介護現場のスタッフが読み込んで、個人端末に対する理解を深めるというのは難しいと思いますので、この新しくなったガイドラインの解説書みたいなようなもの、そういったものを作っていただけないかと思うんですが、御答弁をよろしくお願いをいたします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 先ほど先生から御紹介いただきましたように、今回のガイドラインの見直しによりまして、BYODと呼ばれるような端末も含めて、医療現場で医療情報の安全管理に配慮しながら御利用いただく、こういう仕組みが可能になったと考えております。

 こうした中で、現場への周知でございますけれども、先月三十一日に実施しましたガイドラインの改定では、ちょっと分量が多いというお話がございましたけれども、まず、システムを専門としない方でも理解できるような平易な記載を行って、併せて技術的な内容は別冊にする、こういう工夫を行いました。

 ただ、やはり介護現場においては、まだまだ、もっと平易な言葉で展開していく必要がある、こういう御指摘もございまして、特に介護事業所、施設を対象としましては、現在、居宅サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引きというのがございますので、これを改定していきたいと考えております。その中で、BYODの取扱いを含め、ガイドラインで求められているセキュリティー対策等につきまして、より分かりやすく解説していきたい、このように思っております。

 今後とも、介護事業所、施設等に対して、こうした情報の利用に関する周知を図ってまいりたいと思っております。

一谷委員 ありがとうございます。

 そういった冊子がゴールデンウィーク明けには出てくるというふうにお聞きをしております。そこは間違いなく出てくるようにしていただけるとありがたいなと思います。

 では、時間も迫ってまいっておりますので、次の二つの質問を一気にさせていただきます。

 できましたら、個人端末を使うということになりますと、やはり運営規程を変えたりとか、利用される方への重要事項説明書や個人情報の同意書を書き換えなければならなくなります。私もこの解説を百ページ読みましたけれども、どういったことを書けばいいのかというのはなかなか文章が難しいので、できれば厚労省が主体になって、ひな形を作っていただけないかと考えております。

 また、この何年と、介護現場のICTを導入するということでかなりの税金を使ってきていただいたんですけれども、なかなか定着しない。これはやはりICTの研修というものも必須にしていくことが必要ではないかと思うんですが、併せてこの二つの質問に対して御回答いただけたらと思います。

伊原政府参考人 まず、ちょっとひな形の方から御答弁させていただきますと、今回、運用管理規程につきましては、ガイドラインの別添資料で文章例をお示しさせていただいております。

 その上で何らかの文書を作るということですけれども、国として一律のものはちょっと考えられないと思っていますが、むしろ、こうした文書につきましては、個々の介護現場等の実情を踏まえつつ、事業所において作っていかれると思います。そうしたものを実は収集しまして、そうした事例を全国に御紹介していきたい、このように考えております。

土生政府参考人 研修につきましては、私の方から御説明させていただきます。

 先ほど答弁がありましたけれども、介護事業所における介護ソフト等のICTの導入を促進するため、ICT機器・ソフトウェア導入に関する手引きを作成して公表しているところでございます。

 御指摘の研修につきましても、この手引の中で、介護事業所の職員に対する研修の進め方、あるいは標準的な説明内容を示すとともに、介護ソフトベンダーの協力などを含め、効果的な研修の好事例なども紹介させていただいているところでございます。

 また、基金を活用しましたICT導入支援事業、これを対象とする場合には、この手引を活用していただきまして計画的にICTを導入し、研修も行っていただくよう働きかけているところでございます。

 介護事業所における職員の体制あるいはICTの導入状況に応じまして、事業所ごとに実情を踏まえて適切に研修も含めて実施していただくことが望ましいと考えておりまして、今後とも効果的な研修が行われるよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

一谷委員 ありがとうございます。

 人手不足で、二〇二五年、二〇四〇年問題も言われますが、二〇四〇年問題に向けてまず二〇二五年を超えないといけないと思っております。もちろん、これは安全面も非常に重要なんですが、規制の緩和をしていただき、現場がよし、やるぞと言っていくような改革をしていただけたらと思います。

 本日の質疑、終わらせていただきます。どうも皆さんありがとうございました。

原口委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 私、大阪の第十九区という、関西空港近くの泉州からやってまいりました。そういった地元で私自身が体験したこと、そして私、ウイルス学の医学博士を含めまして、臨床医でございます。先進医療をやっているんですけれども、昨今は、今の情勢を鑑みまして、救急医や、またまた在宅の訪問診療医もやっておりますので、そういった現場で体験したことを踏まえまして御質問させていただきます。

 令和二年に新型コロナウイルスの日本国内での感染拡大、また、本年の二月二十四日に発生したロシアによるウクライナ侵攻により、世界情勢の昨今の状態は大分変わっておりまして、対応するために国の予算というのは増大して、今後も抑制していくことはなかなか難しいだろうと考えられます。それで、速やかに過去年度の決算の中身の審議を始め、改める部分があれば未来に生かして議論するべきとやはり考えておりまして、そういったことを踏まえて質問させていただきます。

 コロナウイルスの話をしましたけれども、後ほど新型コロナウイルスの話をしますけれども、言いましても、感染症、ウイルス感染というのは、コロナだけではなくて、インフルエンザに関してもやはりしっかりと対応していかなければいけない。

 実は、三月三十日の外務委員会におきまして、医薬の経済安全保障の観点から、医薬サプライチェーンの現状認識に対しての質疑を行いました。

 といいますのは、インフルエンザというのは、指定感染症の、鳥インフルエンザ、一部の鳥インフルエンザは二類で、残りは五類なんですけれども、ほぼ大半のインフルエンザを五類にできるところの一つの根拠としましては、経口の治療薬がある。

 その中の、タミフルという薬もあるんですけれども、タミフルというのは全てが日本で作られているわけで、原薬が輸入されてきます、シキミ酸という。そこからタミフルを作るわけなんですけれども。シキミ酸は、ほぼインドから精製され運ばれてきますけれども、それ以前は植物なんですね、出発物質と言いますけれども、トウシキミという。八角という言葉も使われています。

 ところが、中国自体がロックダウンすると、その出発物質であるトウシキミ、八角がインドに運べなくなってしまうわけなんですね。インド自体もトウシキミを栽培しておりますので、何とか日本でのタミフルの確保は大丈夫だったみたいですし、はたまた、コロナの感染対策として、いわゆる飛沫感染を防ぐためのマスクとかいろいろなことが功を奏して、インフルエンザの感染者数が減少したのも、功を奏したようなんですけれども。

 原薬のサプライチェーンに関して、厚生労働省では、医薬品の安定供給に向け、令和二年度第一次の補正予算、医薬品安定供給支援事業で実施していると承知していますけれども、平成三十年度、令和元年度決算ではどのような施策を講じていったか、まず厚生労働省にお聞きします。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 医薬品の安定供給の確保のために、サプライチェーンの把握の必要性につきましては、かねてから認識しておりました。

 そうした中で、特に後発医薬品につきまして、新薬と比べ供給量が多く、その供給が途絶することで多くの国民に影響を与えるおそれがあるという問題意識から、平成二十五年四月に定めました後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップにおきまして、後発医薬品メーカーに対しまして原薬の供給元を複数確保するよう要請するとともに、それ以降、定期的に原薬の供給元の確保状況について調査を行っております。

 それから、先ほど先生御紹介いただきましたけれども、二〇一九年に発生しました抗菌薬のセファゾリン注射薬の欠品、これを契機としまして、医療上特に安定確保が求められる医薬品を選定した上で、これらの医薬品につきまして、対象疾患の重篤性や代替薬の有無などの要素を勘案し、令和二年度以降、優先度の高い医薬品から順次、製造拠点や原薬の供給元などサプライチェーンに関する調査を行っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 セファゾリンの話をしていただきましたけれども、抗生物質ですよね。菌に関して、バクテリアに関しては、感染症に関しては、耐性菌が出ることも考慮しながらも、やはり抗生物質が効くということで対処ができるということなんですけれども。実際、抗ウイルス薬というのは、今まで、私の承知しているところでは、インフルエンザと、あとヘルペスぐらいしかなくて、なかなかそういった意味で、そもそも、ウイルスの治療薬という歴史自体が、考えるに当たり難しいのではないかと思います。

 でも、そんな中で、やはり新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけに関して、二類から五類相当となると、総理も大臣も述べられていますように、経口治療薬、この開発がということにはなるんですけれども、今現在、二類相当から五類指定への見直しというのは、ちょっと報道ベースも踏まえましてお聞きしたいと思います。大臣、お願いします。

後藤国務大臣 感染症法上、各感染症は、感染力及び罹患した場合の重篤性等を総合的に勘案しまして、講ずべき措置を踏まえてその位置づけが定められておりまして、今般の新型コロナウイルス感染症については、感染症法上、新型インフルエンザ等感染症に位置づけられております。

 新型コロナを五類感染症に位置づけるべきという議論があるわけでございますけれども、オミクロン株であっても致死率や重症化率が季節性インフルエンザよりも高く、更なる変異の脅威の可能性もありまして、健康状態の報告、把握や外出自粛等の要請、入院措置が行える現行の新型インフルエンザ等感染症から他の分類への見直しには、現状においては慎重な検討が必要だというふうに考えております。

 なお、社会経済活動の維持や、保健所や病院の負担軽減という観点で、科学的根拠に基づきまして、感染者の隔離期間の短縮や濃厚接触者の待機の在り方の見直し、積極的疫学調査の重点化、発生届の入力項目の重点化、健康観察の重点化など、医療機関や保健所の業務負担の軽減に取り組むとともに、感染拡大を防止しながら、社会経済活動を維持するための取組は併せて実施してきたところでございますし、今後とも科学的知見に基づいて進めていく必要があると思っております。

 引き続き、今後の感染の状況に最大限の警戒を保ちつつ、必要な科学的な知見を引き続き収集いたしまして、今後の感染状況等も踏まえながら、厚生労働省の審議会等において専門家の意見を伺いながら議論してまいりたいと思います。

伊東(信)委員 大臣、ありがとうございます。

 実は、衆議院の本会議におきまして、我が党の吉田とも代議員が総理に対して同じような質問をしまして、同じような御答弁をいただきました。

 ただ、今の大臣の御答弁の中に、やはり社会経済的なところを鑑みて科学的知見にと。これは非常に大事なところで、やはり、私自身がウイルス学を二十七年前かな、二十年ぐらい前かな、研究していたときに、ウイルスの突然変異をずっと見ていたんですけれども、単なる記号にしかすぎなくて、それでいろいろな区別というのは、現場のところからまた上がってきて初めて対照して分かるということで、なかなか簡単なことではなかったんですよ。

 元々、インフルエンザの議論になるけれども、インフルエンザと比べること自体、私、実は無意味なことではないかなと。どうしても、インフルエンザ相当じゃないですか、だから五類にとなると、じゃ、そうでないような症例が出てくると、どうしても二類、五類等の議論というのは難しくなってくるんじゃないかと。

 そもそも現場では、厚生労働省さん若しくは保健所さんで、まあ、保健所さんは違うと思うんですね、厚生労働省さんも含めて、二類、五類の概念が当初からだんだんと厳格ではなくなってきているのではないかな、そういう認識もあります。これは決して悪いということではなくて、現場に即してくれているという柔軟な対応だと思うんですね。

 実際に、私の地元で、ある施設で、まずは透析の病院からコロナが発生して、次に住宅型老人ホームで三十名ほどのクラスターが出た。私、訪問診療医だから、現場から連絡があって、それで、これはその保健所の対応がよくないとかそういう話ではなくて、混乱しているということが言いたくて。

 土日だったので、予防薬として薬を使いますかという質問があって、予防薬という話で、予防薬っていいのかな、治療薬ちゃうのという疑問があったんですけれども、まあいいやと思いまして、じゃ、どんな薬があるのということで、十一項目、薬の一覧をファクスとメールでいただきました。その中には、レムデシビルを始めといたしまして、今までの薬だったんですね。だから、ああ、治療薬のことかと。

 じゃ、感染しているということを、陽性者を感染者、つまり軽症とみなして治療薬として使うに当たり、以前、重症者をレムデシビル及び三つの治療薬を使って治療したことがあるので、じゃ、レムデシビルはという話を聞きますと、一バイアル六万円、六バイアル使うので三十六万円、三十人だったら一千二百万円ぐらいかかって、それはちょっとうちの施設では無理ですと言われて、それはそうだろうと思いまして、じゃ、アビガンはと。アビガンは政府の備蓄であるので流通していません。じゃ、イベルメクチンは。これもいろいろ議論に出ていましたけれども、疥癬の薬なので自費診療になりますよと。じゃ、何で話が来たのと。

 これは、そこの現場の保健所が悪い、その施設が悪いとかという話じゃなくて、やはりなかなかウイルスというのは、ウイルスをやって臨床をやっている医者というのはなかなかいなくて、私自身が、たまたま私が対応したから、じゃ、仕方がないねということで、重症者に対しての隔離も含めての対応をさせていただいて、対症療法をしたんです。

 ただ、現場はやはりまだ混乱しています。特に、オミクロンの特徴、これは大臣、一番苦労されておりますけれども、社会経済を、そして社会を円滑に進めるための科学的な知見に立った施策及び法律、これをこれから建設的に考えていきましょうということで、ここに関しての、ちょっと治療薬の現状だけ最後にお聞きしたいんですけれども。

 経口治療薬でやるラゲブリオ、厚労大臣の記者会見で、二月十日までに三十四万人が納入される予定となっていますけれども、今現在、どれだけ発注して、どれだけ投与をされていて、どれだけ在庫があり、今後どの程度追加していくかの計画をお教えいただいてよろしいでしょうか。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 まず、経口薬でありますモルヌピラビル、ラゲブリオにつきましては、百六十万人分を確保してきております。三月末までに八十万人分が国内に納入されておりまして、既に全国の二万三千六百か所の医療機関、薬局に合計で二十二万人分以上をお届けをしております。また、これまでに十四万人以上の方々に実際に投与されているという状況になっております。

 また、ファイザー社のパキロビッドパックにつきましては、これは二百万人分を確保しておりまして、三月末までに三十五万人分が納入されてきております。これまでに千九百の医療機関、薬局に対しまして一万一千人分以上をお届けし、実際には四千人の方に投与されているという形になっております。

 いずれの経口薬につきましても、投与が必要な重症化リスクを有する方がいる場合に、医療機関や薬局から製造販売業者に対して、患者数に応じて上限なく発注が可能としておりまして、発注があれば原則翌日にお届けする仕組みというふうになっております。

 また、モルヌピラビル、ラゲブリオにつきましては、高齢者を始め、必要な方により迅速に届けることができるよう、高齢者施設のクラスターへの対応に備えるなど、地域において重点的な配分が必要と考えられる薬局における在庫数、これは最大十人分に引き上げていたところでございますけれども、本日以降、更に最大五十人分に引き上げるということとしております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。よく分かりました。

 厚生労働省からは、リスクの高い方、重症者に関してという重点的なことをおっしゃっていましたけれども、やはり、オミクロン株そしてBA・2とかのことも踏まえて、その後の変異を踏まえて、昨日も、大阪におきまして、泉南市で吉村府知事が演説していましたけれども、やはり、今後の対応としては、重症者若しくは高リスクの方にシフトしていく、そういう施策、そして、社会的活動が早く正常な状態に戻るような、そういった方策を考えていただければと思います。もう二類から五類とかよりも、本当に一旦ゼロベースで考えるのも一つの考え方じゃないかなと私は思います。

 それでは、先ほどちょっと地元の話をさせていただきますと申し上げましたけれども、まあ、今も地元の話をしましたけれども、大阪十九区に熊取町というところがありまして、そこに京都大学の総合原子力科学研究所というのがございます。この間も原子力問題調査特別委員会で聞かせていただいたところの続きになるんですけれども、原子力の平和利用に関してお聞きしたいと思います。

 平成三十年度、令和元年度決算において、平成三十年度は、核燃料サイクル研究開発の中核として位置づけられた高速増殖原子炉の「もんじゅ」が平成二十八年の政府の廃止措置の決定を受けて廃止措置を開始した年なんですけれども、日本原子力研究開発機構の計画では、三十年から廃止措置を実施することになっていて、今年度末までに燃料体の取り出し作業を完了することになっています。

 まずは、その進捗状況、若しくは廃炉措置に関する各省庁の係る予算額及びその執行状況についてお聞きしたいと思います。実際、これはちょっと問取りでは詳しくやっていないので、今の状態でお聞きできるところでよろしいです。

真先政府参考人 お答えいたします。

 我が国における原子力利用は、原子力基本法におきまして、平和の目的に限り行うことが基本方針とされてございます。この基本方針にのっとりまして、文部科学省といたしましては、原子力に係る研究開発や人材育成等に取り組んでいるところでございます。

 例えば、原子力の基礎基盤研究とそれを支える人材育成でございますとか、また、福島第一原子力発電所の廃止措置等の研究開発の加速プランでございますとか、また、先ほど言及ございました「もんじゅ」の廃止措置等に係る取組でございますとか、また、核燃サイクル及び高レベル放射性廃棄物の処理処分の研究開発といったような取組、これらのことに予算措置をしているところでございます。

 決算状況ということでございますので、これらの取組に関する支出済みの歳出額、平成三十年度、令和元年度でございますけれども、いずれも千五百四十一億円というふうになっているところでございます。

伊東(信)委員 その中で、京都大学複合原子力科学研究所の原子炉、KURに関しましても、二〇二六年に廃炉にして、そして、二〇二九年までに、その使用済みの核燃料はアメリカが引き取ってくれるというお話になっていると思います。

 このKURで今まで研究してきたところ、今後、「もんじゅ」の施設内に新しい試験研究炉ができまして、その研究を続ける方針とされていますけれども、具体的にどのような研究が移されて、また、どのような研究が中断されていますか。お教えください。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 京都大学研究用原子炉、KURは、我が国の原子力分野の研究開発や人材育成の基盤として、特に生成される中性子を利用した先進的ながん治療法の一種であるホウ素中性子捕捉療法に関する研究成果を生み出すなど、学術研究から医療応用に至るまで、幅広い貢献を果たしてきていると承知しております。

 このKURは、今御指摘いただきましたように、運転開始から約六十年がたち、施設の高経年化等の理由から、令和八年五月に運転を停止することが先般大学において決定されております。

 このため、京都大学におきましては、KURの運転停止に当たり、中性子を利用した教育研究に係る継続性の確保に向けて、代替する中性子源の新たな整備も含めて、今後、学内において検討していくものと大学から伺っております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 ホウ素中性子捕捉療法、BNCTと略称しておられますけれども、これは国においての取組をしていただきまして、大阪医科大学で、グリオブラストーマといいまして、脳神経外科領域で南東北におきまして頭頸部がんの保険収載で治療が開始されているんですけれども。

 ただ、固形がんというのはまだまだたくさんありますし、BNCTにかかわらず、こういった廃炉の話もありますし、昨今の原子力の情勢を考えますと、次の世代の研究者を育てていくためにも、こういった本研究所の継続というのは、もちろん、老朽化していますし、なかなか難しいことだと思いますし、人材というのは必要だと思うんですけれども、こういったところの継続の必要があると思うんですけれども、その辺りの政府の取組というのはどのようにお考えでしょうか。

高橋大臣政務官 お答えを申し上げます。

 議員御指摘のとおり、原子力分野は、医療分野におけるがんの診断、治療や、また二〇五〇年カーボンニュートラルの実現への貢献など、様々な社会課題に対応するために欠かせない重要分野と認識をするものであります。

 他方で、残念ながら、近年、我が国においては、ただいま御指摘のKURのような研究用の原子炉の減少に加えまして、大学における原子力関係の学科、専攻数の減少などの傾向も見られるところであります。

 こうした中にあっても、中長期的な観点からは、原子力分野の研究開発と人材育成を最大限効果的に進めていく必要があると考えます。そのため、文部科学省におきましては、大学や高等専門学校が所有する限られた人材育成のリソースを有効活用するため、産学官が連携した横断的な教育研究機能を有する拠点を構築をいたしまして、当該拠点において人材育成取組の充実を図っているところであります。

 また、研究開発及び人材育成を支える基盤を中長期的に維持していく観点から、議員先ほどお触れになられました、「もんじゅ」のサイトに設置する新たな試験研究炉についての検討も進めているところであります。

 こうした取組を通じまして、引き続き、原子力分野の研究開発と人材育成をしっかりと推進をしてまいります。

 以上でございます。

伊東(信)委員 高橋政務官、ありがとうございます。産官学を含めまして、継続していくことを考えていくとおっしゃっていただきました。

 ちょっと細かいことですけれども、BNCTの中性子も原子炉で核分裂によって使用するんですけれども、大阪医大とかで使っているやつは加速器を使っているんですね、中性子の。だから、原子炉を必要としないコンパクトな加速器を使って、それが今の熊取町のKURの施設のところにもあるわけなんですけれども。

 こういった加速器を使って、世界にこういった技術を発信していこうという試みも京都大学は考えられているようなんですけれども、その中で、IAEAにおけるBNCTの関連活動を、我が国でもIAEAと協力して産官学の取組が進められると聞いているんですけれども、政府として、またIAEAにおいて現時点でどのような活動がされているか、お教えいただければと思います。

池松政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国のBNCT技術及び知見を海外展開していく上でIAEAのBNCT関連活動を活用していくことは、外務省としても重要であると認識しております。

 これまで、BNCTの国際的な指針作りに関するIAEAの会合へ、我が国からも専門家が参加してきております。また、IAEAのウェブサイトや刊行物においても、我が国の取組について紹介がなされております。

 外務省としては、他国から関心が示される場合も含めまして、IAEAのBNCT関連活動を我が国のBNCT技術及び知見の海外展開に資する形で活用できるよう、関係省庁や国内の専門家とも連携の上、関係者間の円滑な意思疎通に努めるなど、引き続き役割を果たしていきたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 時間もあと二分となりましたので、せっかく資料をお配りしたので、ちょっと尖閣諸島をめぐる情勢に関してお聞きしたいと思います。

 尖閣諸島における中国の行動に関しては、注意を今後も言うまでもなく払っていかなければいけないんですけれども、上げられている予算措置というのは他の項目を含めたものとなって、ちょっと分かりづらくなっています。

 各省庁のレクで聞いていたんですけれども、なかなか答えづらいところもあって、ただ、防衛省及び海上保安庁については回答可能なものもあると聞いていますので、平成三十年度、令和元年度決算における計上はどのような規模になっているのか。令和元年度以降についても、回答できるものは回答いただければ幸いです。

土本政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛省の関係でございますが、防衛省といたしましては、尖閣諸島に係る対応のみを目的として計上した経費はないため、委員御指摘の決算額について切り出してお示しすることは困難でございますが、我が国周辺の厳しい安全保障環境を踏まえれば、南西地域の防衛体制の強化は喫緊の課題であると考えており、南西地域の防衛体制の強化に必要な経費というものを確保しているところでございます。

 平成三十年度及び令和元年度の決算における主な経費として、まず、具体的には、機動展開能力の向上のために、C2輸送機の取得経費として、平成三十年度に九億円、令和元年度に六十三億円、新多用途ヘリコプターUHX、当時でございます、現在のUH2でございますが、この取得経費といたしまして、令和元年度に五億円、輸送ヘリコプターCH47JAの取得経費として、令和元年度に約二十一億円をそれぞれ計上しております。

 また、南西地域への陸上自衛隊の警備部隊等の配置に伴う施設整備の関係でございます。これは具体的には、奄美、石垣、宮古島、与那国の四地域でございますが、この経費といたしまして、平成三十年度に四百三十六億円、令和元年度に約二百十一億円を決算計上しております。

 以上でございます。

原口委員長 海上保安庁石井次長、質疑時間が経過していますので、簡潔にお願いします。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの尖閣諸島関連予算、海上保安庁分でございますが、それにつきましては、平成二十八年十二月に決定された海上保安体制強化に関する方針の中の、尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生に対応できる体制の整備として、必要な巡視船の整備、岸壁の整備のため措置しており、この決算額を申し上げますと、平成三十年度は二百三十四億円、令和元年度は四百八十億円となっております。

 尖閣諸島周辺海域における情勢は依然として予断を許さない厳しい状況にありますが、今後とも、海上保安体制の強化を段階的かつ着実に推し進め、我が国の領土、領海を断固として守り抜くとの方針の下、我が国周辺海域の領海警備、国民の安全、安心の確保に万全を期してまいります。

伊東(信)委員 済みません、時間になりましたので、上杉外務大臣政務官、申し訳ないです、冷静かつ毅然と対処をすると最後に述べていただいて締めようと思ったんですけれども、済みませんでした。

 これで終わります。

    〔委員長退席、松原委員長代理着席〕

松原委員長代理 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会の吉良州司です。

 今日は、エネルギーの安全保障、特に電力の安定供給ということについて、萩生田経産大臣に質問させてもらいたいと思っています。

 三月十六日の地震によって東北地方の火力発電設備がやられ、三月二十二日に需給逼迫が起こって、電力需給逼迫警報というものまで出されました。

 ともすれば、今ウクライナ危機があって電力需給逼迫が起こっているとちょっと勘違いしがちなんですけれども、実はこの電力需給逼迫というのはウクライナ紛争前から起こっていることでありまして、今日はまず、この電力需給逼迫の背景、理由について、その問題解決について萩生田大臣と意見交換させてもらいたいと思っています。

 私自身が了解といいますか認識している電力需給逼迫の理由というのは、実は、言葉がちょっと極端ですけれども、四つのいじめと楽観的過ぎた電力システム改革が問題ではないかと思っています。

 四つのいじめの第一は、化石燃料に対するいじめ。

 私自身も、地球環境対応が必要であること、それから、日本も掲げている、また世界も掲げているカーボンニュートラル、この必要性については十分認識しているつもりでおります。しかし、その目的のカーボンニュートラル、例えば二〇五〇年に向かうにしても、その間には当然ながら移行期というのがあります。新しいシステムと、それから古いシステムが共存する、併存する、併存期間というのがあります。

 しかし、世界も日本も余りにも、もう今日明日にでも化石燃料由来の発電所をやめろとか、もう今後は化石燃料を使うなというようなことが強調され過ぎて、今言った、旧システムをしばらくの間使わなければいけないのに、新規投資はもちろん更新投資までも、また設備の維持の投資までも行われなくなってしまう。この結果、火力発電の原料である化石燃料自体の需給逼迫が起こっている。

 今、ウクライナ紛争を受けて、原油、天然ガス等の消費国が慌ててアラブに出向いて、そして増産を要求していますけれども、産油国からしてみたら、さんざん石油始め化石燃料を悪者扱いしておいて、今頃になって、顔を洗って出直してこい、多分こういう思いでありましょう。

 二つ目のいじめというのは、一番目と関連しますけれども、化石燃料を使う火力発電、特に石炭火力。

 日本の場合は、超超臨界という非常に効率のいい、比較論で言えば地球環境に優しい新技術も持っているわけですけれども、やはりここに対して、ある意味では敵対視されて、早く退出を要求し過ぎた結果だと認識しています。

 それから三番目は、原子力。

 福島事故の教訓というのは、これは誰しもが肝に銘じているところではありますけれども、やはり原子力に対しての過度な、いろいろな意味での、何というんですかね、罪悪視、これ自体が今の電力逼迫に結びついているという認識を私はしています。

 それから四番目は、電力会社、特に東京電力を中心とした電力会社に対するいじめともいうべき、ある意味では批判的な世論。

 システム改革の後、新電力はよし、しかし、旧電力、旧一般電気事業者については、かつては地域独占が認められ、総括原価が認められ、そういう中でさんざんおいしい思いをしてきたじゃないかと。今は、今言いましたように、新電力はよしだけれども、電力会社は罪悪視されてしまう。

 こういう四つのいじめ。それから、もう一つは、楽観的過ぎた電力システム改革。私は、この問題意識を持っています。

 電力のシステム改革は、元々、電力の安定供給の確保、それから電気料金上昇の抑制、そして、需要家の選択肢の拡大と事業者へのビジネスチャンスの創出、これが目的で創出されました。

 何も異常事態が起こらなければ、この目的はよしだと私も思っています。しかし、この目的が今達成されているかといえば、電力の安定供給という一番基本も達成できていません。そして、電力料金の抑制ができているか、これもできていません。確かに、ビジネスチャンスは生まれたかもしれません。けれども、新電力に至っては、この化石燃料の需給逼迫、燃料費の高騰によって、相次いで無責任に退出するところが続出しています。新ビジネスはできたはいいけれども、無責任な対応になってしまっている。

 私は、さっき、楽観的過ぎた電力システム改革と申し上げましたけれども、この日本においての電力の安定供給システムづくり、認識しておくべきことのまず第一は、隔絶した島国で、電力系統はつながっておらず、しかも化石燃料を産出しない国であるということです。

 電力系統については、よく、電力安定供給システムのことについてヨーロッパを例に出しますけれども、ヨーロッパはもう電力システムが、というか電力系統がつながっている。日本の場合、仮に電力系統をつなげようと思っても、中国、ロシア、これはリスクが拡大するだけです。そういう意味で、隔絶した島国で、化石燃料を産出しない国である、これは重要だと思っています。

 そして二点目は、地震、台風含めて、世界でナンバーワンの災害大国だということです。幾ら頑丈に造った設備でも、自然の猛威の前に、やはり壊れることがある。

 それから三番目は、今のウクライナで多くの皆さんが認識していることでありますけれども、世界は常に平穏ではない。どこかで紛争があり、非常事態になってくる。そうすると、資源の存しない日本が、安定的に資源を輸入するという道が閉ざされてしまう。

 こういう、まあ、いじめという言葉が適切かどうか分かりませんけれども、化石燃料、火力発電、原子力、電力会社に対する、私に言わせれば批判的な世論、そして、楽観的過ぎた電力システム改革、これが今うまくいっていないと了解しておりますけれども、萩生田経産大臣の認識を問います。

萩生田国務大臣 今先生るる御解説いただいた冷静な分析というのは、私もほぼ同意するところでございます。

 まず、この度の需給逼迫の緊急宣言を出さざるを得なくなったのは、御指摘のように、ウクライナ情勢のことではなくて、まさしく福島沖で地震が起きて火力発電所が停止をしている中で、三月二十二日、これは予想もしない寒い日でした。全く太陽が出ませんから、太陽光発電はゼロに近い、こういう状況が続きまして、前日から揚水発電なども準備していたんですけれども、しかし、それすらも間に合わないという状況になりましたので、あのような発令をさせていただいた次第でございます。

 火力発電所の出力増加、自家発のたき増し、ほかのエリアからの電力融通に加えて、節電要請などを行った結果、国民の皆様の御協力により、大規模な停電は避けることができたと思っております。

 今回の電力需給逼迫を受けて、現在、資源エネルギー庁の審議会において、安定供給確保に向けた方策も含め検証をしております。

 その上で、御指摘のあった電力システムの改革でございますけれども、全てバラ色だったかといえば、やはり足を止めて考えなきゃならない点もたくさんございます。

 改革の結果として、地域間の連系線の増強などによる需給逼迫時の地域間での電力融通の円滑化というものは進んできたと思います。しかし、今お話があったように、全ての、北海道から九州、もっと言えば、沖縄までをつなぐとすれば、これはかなり膨大な投資と時間がかかります。それから、事業者にとって新たなビジネスチャンスが生まれたことに伴い、再エネに特化したサービスメニューなどが出現し、需要家の選択肢も拡大するなど、一定の成果、これはあったと思います。

 しかし、私も今、誤解を恐れず、記者会見でも申し上げているんですけれども、エネルギー分野に参入するというのはやはり覚悟を持って入ってきてくれないと、片手間でこれはもうかりそうだという会社の皆さんは、やはり持続可能性がないわけですよね。そして、確かに安いメニューを提供できたのはいいことだったと思います。今まで独占していた地域独占を壊して競争が発生したのは大いに結構なんですけれども、しかし、常にマーケットで一番安い値段を買い続けるなんということはあり得ないわけでありますから。

 そういう意味では、我々政府側の制度設計も、あるいは参入してきた民間企業の皆さんも、見通しに誤りがあったのではないかということは冷静に考えなきゃいけないと思っています。

 他方、脱炭素化の流れなどに相まって、火力発電の休廃止の増加など、電力自由化に伴う新たな課題にも直面しています。このため、電力需給の安定に向けて、規制、支援の両面で電源の過度な退出を防ぐことが必要です。

 こうした課題に対応するため、これまで容量市場の創設などを実施し、供給力の確保を行ってまいりました。加えて、御審議いただいている電気事業法等の法案の改正案では、発電所の休廃止の届出について、事後から事前に変更することによって、少し時間的な余裕を持って追加供給力の公募などの必要な対策を講じることができるように、今制度を磨いております。

 電気料金については、事業者間の競争により料金が抑制される一方で、原発停止を受けて火力発電の割合が増加する中で、燃料価格の高騰に加え、再エネ固定価格買取り制度に伴う負担も増加したため、震災前よりも上昇している実態があります。このため、厳格な市場監視等を通じた適正な競争の促進を一層進めるとともに、入札制の活用などを通じた再エネコストの低減や、安全性を最優先した原発の再稼働などに取り組んでまいりたいと思います。

 低廉かつ安定的な電力供給の両立を実現するためのシステム改革は今後とも継続していくことが必要でありまして、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現など、社会の大きな変化に伴い生じる新たな課題に対しても、エネルギーシステムを不断に見直すことによって、安定的かつ持続的な電力供給を実現してまいりたいと思っております。

吉良委員 答弁、一点除けば了解といいますか、システム改革は継続とおっしゃいましたけれども、こういう事態を受けての、当然ながら、よりいい仕組みへの改善、これが前提で継続だというふうに思っています。

 実は、私は、ずっと商社勤めだったこともあり、基本的には物すごい市場原理を重んじる人間なんですね。けれども、ある著名な学者が、医療と教育と電力だけは完全自由化してはならないということを言った著名な学者もいる。私は、さっき言った、隔絶した島国、電力系統も連系していない等々、日本の実情を考えたときに、この市場原理を重んじる私も、電力については、システム改革前の方がよかったと実は思っているんです。

 なぜか。それは、今回の需給逼迫で明らかになったことでありますが、日本で電力の供給量が足りなくなるということは想定していなかったんです、ずっと。電力供給というときには、一方では、絶対量の確保、そして、より安価な電気を事業者に、事業者というか、産業に、そして家庭に供給する、この両方が大事でありますけれども、日本は今、絶対量の確保が重要な状況になってきています。

 だから、そういう意味では、電力安定供給のプロであった、その責任も課されて、社員の末端に至るまで、安定供給こそが自分たちの責任だという電力事業者のやはり安定した経営、これが大事だというふうに思っているんです。

 先ほど言いましたように、将来的にカーボンニュートラルも地球環境に優しい対応もしていかなければいけない。けれども、新旧システムが併存する間は、実は、天然ガス等においては、更新投資はもちろんですけれども、場合によっては新規上流開発の投資も必要になります。

 私は、商社に二十二年いたうちの十数年を、電力のIPP業界、海外ですけれども、独立系電気事業者というんですか、IPPプロジェクトにずっと携わってきました。

 IPPプロジェクトの商品知識というのは、実は、電力設備ではなくて、ファイナンス組成、特にプロジェクトファイナンスの組成というのが一番の商品知識になっていました。

 実は、経産省、資源エネ庁の皆さんはよく御存じのとおり、多額の投資が伴う天然ガスの上流開発、これにファイナンスをつける、このときのキープレーヤーが三つあります。一つ目は、ある一定の性能を保証して、いついつまでに完成するという建設の保証ですね、完工保証といいますけれども、これを自分の単独責任でもっていついつまでに完成させますという建設業者。それが完工したら、今度は、そのプラントをきちっと運転して、計画どおりの産出が、生産ができる、そのオペレーターです。

 実は、更に大事なのは、例えばオーストラリアでもマレーシアでも中東でもいいですけれども、そこでつくったLNGを、例えば長期契約二十年間、決して潰れることなく、必ず長期契約にのっとった形で引き取り続ける、そして支払い続ける、このオフテイカー、この役割が一番重要なんです。

 さっき言いました、システム改革の中で、新電力はよし、旧電力はかつて甘い汁を吸ってきたじゃないかという意識の中で悪者扱いされますけれども、小さな新電力だらけになったときには、実は、日本が上流開発できなくなります、ファイナンスがつかなくなります。そういう意味では、きちっと長期契約にのっとって買い続けることができる、そういう信用力の高い電力会社を維持するということが大事なんです。

 これが、小さな新電力だらけになれば、当然リスクが大きくなりますので、ファイナンスコストが高くなります、リスクフィーが高くなる。そして金利が高くなる。それでも買わなければ日本はやっていけない。それは、プロジェクトコスト、そしてLNGのコストに跳ね返り、それは結果的には電気料金に跳ね返ってきます。

 そうであるならば、国としても、さっきのいじめから脱却して、今言った、国内において絶対量の確保、絶対的な供給、これが大事になってきている今、その安定供給のプロである電力会社、そして今言った、化石燃料の上流開発については信用力の高いオフテイカーとして維持するためにも、私自身は、電力のシステム改革については、私が今申し上げたような観点でもって見直しをしながら進めていかなければいけないと思っています。

 大臣の見解を求めます。

    〔松原委員長代理退席、委員長着席〕

萩生田国務大臣 先生御指摘のとおり、安定供給の確保の観点から、LNGの上流開発プロジェクトを促進することは極めて重要だと思っています。

 大手電力のLNG契約について、現在でも必要量の大宗を事前に長期契約で確保していると承知しています。この長期契約が、これまでLNGの上流開発投資と日本企業の権益の取得につながってきたと認識しておりまして、昨今、電力自由化の中で、調達の合理化を求められていることもあり、今後、新規のLNG長期契約を締結しづらくなる可能性は認識しています。

 そうした中でも、必要に応じて、日本全体で燃料リスクに備えるため、一種の社会的保険としての燃料対策として、需給の厳しい昨年の冬にも実施した、電力会社が燃料を追加調達した際の費用を広く薄く回収するキロワットアワー公募の仕組みの活用を検討しています。さらに、国としては、燃料ガイドラインを策定し、発電事業者らに必要な燃料を確保するように促しています。

 また、他国の国営企業や欧米メジャーと比較して規模が小さい企業しか有していない我が国としては、民間企業だけに任せるのではなく、政府も前面に出て、官民が連携し、LNGの安定供給を確保してまいります。

 例えば、既存のLNGプロジェクトの拡張により、比較的短い準備期間と必要資金を抑えた形でLNGに追加の産出ができる事業を中心に、JOGMECによるリスクマネーの供給などを通じて、上流投資の増加や日本企業のLNG引取り量の拡大を政府として支援していくことを考えております。

 まさにロシアのウクライナ侵略によって、このLNGをめぐる情勢は世界的に変わってきました。それは、ロシアの制裁を強化しようというのはG7共通の考えですけれども、じゃ、直ちに取引を停止してその代替をどこに求めるんだ、増産していないガスをどうやって取りっこするんだということは考えていかなきゃならないわけであります。

 今までの概念ではもう乗り越えられない課題というのが近づいていると私も思っておりますので、ここは先回りして、今御指摘のあったように、去年の暮れぐらいにこんな話をしたら、COPではぼこぼこにやられたんですよ。しかし、やはりこれだけ状況が変わってきて、IEAの会議などでは、日本のように石炭やLNGを確保しながら電力供給しているといういわゆるミックスの在り方というのは、なるほどなと皆さんがうなずくところまで来ましたので、決して再生エネルギーなど、手を抜くつもりは全くありませんけれども、しかし、やはり移行期間、しかも、既存の電力を維持していくということは国民生活や産業を守る上で極めて重要だと私は思っていますので、この基本姿勢はしっかり貫いていきたいなと思っています。

 いずれにしましても、安定的な供給ができるように、これは官民力を合わせて対応を深めてまいりたいと思います。

吉良委員 期待する答弁、ありがとうございました。

 容量市場というか、キロワットに対する私の問題意識も話したかったんですけれども、時間が来ましたので、また次の機会にさせていただきます。

 終わります。ありがとうございました。

原口委員長 次に、たがや亮君。

たがや委員 れいわ新選組、波穏やかな、たがや亮と申します。

 質問の機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。

 本日は、総合支援資金特例についてお伺いをしてまいります。

 この総合支援資金特例は、我が党の高井崇志幹事長が、昨年の九月までに二十一回、熱心に質問をしておりまして、国民が望んでいる制度でもございます。

 さて、総合支援資金には本則と特例がございまして、これは意外と皆さん知らない、理解をされていない方が多くて、本則というのはそもそも貧困対策として制度がありましたが、特例制度については、貧困対策ではなく、コロナ禍の影響で収入が一時的に減った人たちへのつなぎ融資、いわば駆け込み寺的な制度ということです。すなわち、特例貸付けは、貧困対策ではなく、コロナ対策ということを、まず皆様と共有をしたいと思います。

 今回の質問に当たり、インターネットで全国から御意見を頂戴いたしました。ある方からの御意見です。

 昨年六月より、緊急小口資金、総合支援資金、初回、延長の計七か月のお金を借りましたが、再貸付けは十二月で締切りのため申請できなかったとのことです。

 報道では、資料一でお示ししたように、総合支援資金特例は九か月の貸付けが可能とされております。

 そこで、後藤厚労大臣にお伺いをいたします。

 なぜ、延長貸付け、再貸付けの受付が終了し、初回貸付けだけになってしまったのか、その理由についてお伺いをいたします。

後藤国務大臣 新型コロナウイルス感染症の影響が長期にわたる中で、総合支援資金の特例貸付けにつきましては、その時々の状況を踏まえて累次の拡充を行いまして、再貸付けを含めて最長九か月までの貸付けを可能としてまいりました。

 他方で、特例貸付けによる支援につきましては、更なる貸付けを行うことは、債務が過大となることが自立を阻害するといった指摘や、その時々の新型コロナウイルス感染症の影響や、貸付けだけに限らない、生活困窮者自立支援金や他の給付金などの施策の実施状況などを踏まえながら対応を検討してきたところでございます。

 新型コロナウイルス感染症の影響によって生活にお困りの方に対しては、住居確保給付金の特例措置、生活困窮者自立支援金の支給といった、貸付け以外の制度も含めた重層的なセーフティーネットにより必要な支援を届けることが重要であると考えております。

たがや委員 大臣、ありがとうございます。

 冒頭お伝えしましたけれども、この特例の本質はコロナ対策であって、つなぎ融資の性質だということを思い出していただければと思います。自立を阻害するという発想は、要するに、貧困対策と、ちょっと本則の方とごっちゃになっているんじゃないのかなというふうに私は思いますので。そもそも、再貸付けを決定した昨年の三月よりも今の方が、コロナ感染者数も多いし、物価高やウクライナ情勢も加わって、更に先が見えない状況下になっていると私は思います。

 そこで、再度、後藤厚労大臣にお伺いいたします。

 今年の六月末で受付期間が終わる総合支援資金特例ですが、このコロナ禍を乗り切ろうと意欲のある人々の背中をしっかり後押しできる本制度の存続に資する、以下五点、強く要望いたしますが、御検討ください。

 一、特例貸付けの申請期限を令和四年六月から令和五年三月、年度末まで延長する。二番、貸付期間を三か月から本則同様十二か月とする。三番、申請から支給までのスピード感を増す。四番、疲弊している社協や自治体の人的措置、若しくはそれらを補う財政支援と、要件などのガイドラインの全国統一的な平準化。五、返済免除の条件を、住民税非課税世帯から、相対的貧困を基準とした貧困線、すなわち年収百二十四万円程度まで返済免除をするという緩和策。

 後藤厚労大臣、これらを実現していただけないでしょうか。少なくとも一から三、これは最低限やっていただきたいと思いますが、大臣、お答えください。

後藤国務大臣 新型コロナウイルス感染症の影響が長期にわたる中で、緊急小口資金等の特例貸付けについては、申請期限を本年六月まで延長しております。その後の延長等につきましては、今後検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

 また、総合支援資金の特例貸付けにつきまして、今様々な御指摘をいただいたわけでありますけれども、例えば、緊急小口資金等の特例貸付けの償還免除について言えば、免除要件の住民税非課税世帯は、借受人及び世帯主に非課税を限定するほか、返済開始後に借受人及び世帯主が住民税非課税となった場合は残債を一括して免除、死亡や失踪宣告、生活保護の受給、重度障害者の認定、自己破産等の一定の要件を満たす場合には残債の全部又は一部を免除できることなど、きめ細かな措置を講じているところでございます。

 また、よく議論になります生活困窮者自立支援金については、ハローワークに加えて、地方公共団体等が設ける公的な無料職業紹介の窓口の利用も可能としているなど、可能な限り柔軟な対応を図っているところでございます。

 こうしたきめ細かな措置を講じてきておりまして、引き続き、生活再建を適切に支援するために対応してまいりたいというふうに思っております。

たがや委員 大臣、ありがとうございます。

 今、自立支援金というのが出ましたけれども、あれは要件が厳し過ぎて、ほとんど、希望者というか、ハードルが高過ぎて利用できないんですよね。財源的には、まだ予算措置のうち三五%も余っておりますので、しかも、厚労省も認めていますが、貸付期間の延長をもう一度やるには、簡単です、新たな法整備も必要なく、大臣の鶴の一声と各自治体への通知のみだけでできるということですので、是非、最低限、支給までのスピード感や、申請期間と貸付期間を延ばしていただきたいと思います。

 大臣は品がいいから、そんなことは多分おっしゃらないと思いますが、実現するのであれば私は大臣の靴でもなめる、その覚悟でおりますので、それぐらいの気持ちで大臣にお願いしているので、何とか実現、よろしくお願いいたします。

 余談ですけれども、飲食店の協力金の問題、私、取り組みましたが、悲しいことが起こりました。ある小さな居酒屋を経営するおばあちゃんが、何度協力金の申請をしても不備にされてしまい、申請が完了しない、しまいには、諦めて自死してしまった。これは本当に残念なことです。こんな悲しいことを二度と起こさないために、特例貸付けにおいては、気持ちを新たに、申請の簡素化も含めて、制度延長に臨んでいただきたいと思います。これは強く要望をいたします。

 ここで、紹介したい発言があります。岸田総理が、昨年九月五日、総裁選中のインターネット番組の際に、総合支援資金の再貸付け延長について言及をしております。いわゆる九か月から十二か月に延長のことです。このとき、村井総理補佐官が、再貸付けの延長、しっかり実現していきたいと思いますと述べたことに対し、岸田総理は、はいと力強くうなずいておられました。また、岸田総理は、申請期間を小出しにやるのではなく、見通しが立つ期間の設定が必要だと強く述べられております。

 しかしながら、現実は、再貸付けの延長は実現せず、真逆に、初回貸付け以外は受付終了、期間も本年度六月で終わり。当時は総理でなく、総裁候補としての発言は理解しておりますけれども、実際に総理になられた岸田総理のそのときの発言を軽く見るわけにはいきません。恐らく、岸田総理は激務のためお忘れになられているだけと察しますが。

 ここで、松野官房長官にお伺いをいたします。

 政府として、その総理の発言の実現性について見解をお聞かせください。お願いします。

松野国務大臣 たがや先生にお答えをさせていただきます。

 まず、自民党総裁選挙中のやり取りについて、政府としてお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、総合支援資金の更なる貸付けについて御要望があることは承知をしておりますが、先ほど厚労大臣からも答弁がありましたけれども、債務が過大となることが自立を阻害するおそれもあることも踏まえて検討する必要があると考えております。

 そのため、昨年度末に策定した経済対策において、総合支援金の再貸付けに代えて、総合支援資金の初回貸付けを借り終えた一定の困窮世帯にも生活困窮者自立支援金を支給をするとともに、生活困窮者自立支援金の再支給により、初回の支給と併せて最大六十万円の給付を行うこととしたところであります。

 政府としては、貸付け以外の制度も含め、必要な支援を届けることで、お困りの方々の生活を支えてまいりたいと考えております。

たがや委員 言及を避けたいということですけれども、是非、松野官房長官、聞く力のある総理に御進言していただいて、あのときの約束を果たしていただけるようお願いをいたします。

 官房長官と私、実は選挙区が隣でして、市原を通る際によく官房長官のポスターを拝見しておりますけれども、非常に穏やかな人柄がうかがえて、特に、特に笑顔がいい。是非、そのお人柄で総理に説得していただいて、何とかこの実現に向けて御協力をよろしくお願いいたします。

 さて、再貸付けの延長が実現してこなかった理由として、財務省の姿勢がその一つにあると思っております。

 というのも、我が党の高井幹事長が、在職中の昨年の九月二日に、特例貸付けについての要望のために当時の田村厚労大臣と面会をした際に、大臣が次のように話していたことをツイッターで紹介されております。

 田村大臣いわく、総合支援資金の再貸付けだって財務省の説得が大変だったんですよ、高井議員が何度も何度もしつこく質問するから頑張ったけれども、再貸付け延長は財務省が固くてどうしようもない、これ以上厚労委員会で質問されても答えようがないとおっしゃっていました。

 大変失礼ながら、後藤大臣も同じように感じておられるでしょうか。この田村前厚労大臣の財務省が固いという発言について、現在の大臣である後藤厚労大臣のお考えを、総理の総裁選のときの、あのときの発言も加味しながら、お答えをお聞かせください。お願いします。

後藤国務大臣 当時の田村大臣と高井元議員との面会時の御発言に関しては承知していないために、コメントをすることは差し控えたいと思います。

 その上で、先ほど官房長官からも御答弁ありましたけれども、御指摘の再貸付けについては、債務が過大となることが自立を阻害するおそれもあること等を踏まえて、さきの経済対策において給付という形の対応を行っているところでございます。

 私としては、引き続き、厚生労働省として必要と思う施策について、予算当局とも適切に調整をしてまいりたいというふうに思っております。

たがや委員 大臣、ありがとうございます。

 やはり、自立支援金、さっきも給付と言いましたけれども、なかなか、本当にハードルが高いので、それはちょっと考え方を改めて、やはり再貸付け、再々貸付けみたいな形で制度をやった方がいいと思います。

 松野官房長官、お忙しいので、もう質問はございませんから、結構です。ありがとうございました。済みません。

 鈴木財務大臣にお伺いいたしますが、固いと言われた財務省、麻生大臣から鈴木大臣に替わった今でも財務省はかたくなでしょうか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 新型コロナの影響によりまして生活にお困りの方々に対しましては、従来より、雇用、収入、住まいの確保など、様々な課題に応じてきめ細かな施策を講じることが重要であると考えておりまして、重層的な支援を行ってまいりました。

 もう厚労大臣、官房長官から答弁をしておりますとおり、御指摘の総合支援資金の更なる貸付けにつきましては、債務が過大となることが自立を阻害するおそれもあることから、慎重に検討する必要があると考えておりまして、そのため、昨年末、これは麻生大臣から私に替わった後でございますが、策定いたしました経済対策におきまして、総合支援資金の再貸付けに代えまして、生活困窮者自立支援金の給付、再給付を行うなどとしておるところでございます。

 こうした施策、引き続き、それぞれの状況に応じて支援を図ってまいりたいと考えております。

たがや委員 鈴木大臣、ありがとうございます。

 鈴木大臣の御先祖様は岩手県の山田町、そこで網元ということですが、私も千葉十一区で、今日、森英介先生もいらっしゃいますが、広大な九十九里を抱えておりまして、網元の方ともよく接するんですけれども、皆さん、少々気は荒いですけれども、情に厚くて一本気な方々が多いです。是非、その鈴木大臣の血筋で財務省に風穴を開けていただければと思いますので、よろしくお願いします。

 時間が来たので、質問を終わります。ありがとうございました。

原口委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

原口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木憲和君。

鈴木(憲)委員 自由民主党の鈴木憲和です。

 今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は、昨年の決算についてとかということよりも、大きく、政府調達の在り方について、私は幾つか御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 我が国の政府調達ですけれども、基本的には一般競争入札を幅広く適用しているところであります。一般競争入札というのは、公共性、透明性、そして経済性、履行の確実性、この四大要請の原則に基づいて行われているわけですが、現実的には、安価で品質の高い行政サービスの維持には当然貢献をしてきているものだというふうに思いますが、一方で、新たな挑戦を必要とする政策課題、若しくは民間のイノベーションをいかに創出をしていくか、とりわけ、我が国、競争力や戦略的不可欠性の獲得、保持の観点では、まだまだ実は改善の余地が大きいというふうに感じています。

 新たな政策課題でありますが、やはり、経済社会、いかにグリーン化をしていくか、若しくはデジタル化、そして、より高度な国防能力の保持等が挙げられるというふうに思っていますが、仮に、これらの新たな課題に対して政府が戦略的調達に取り組むことができていれば、実は、より迅速な課題解決ができていたりとか、若しくは日本にイノベーションが生み出されていたりとか、若しくは強固な技術、産業基盤を獲得できる可能性があるというふうに私自身は考えております。

 しかしながら、現実はどうかといいますと、コロナのワクチンの開発を見ても、幾人かの委員の皆さんからも議論がありましたが、結果としては、海外からの輸入が続いていて、これは何が起こるかというと、国民負担が増えていくという結論になるわけです。

 これまでのやり方が、やはり、これまでどおり、必ずしもいいわけではない局面にそろそろ来ているというふうに認識をしています。

 従来の入札に依存する調達というのは、その場限りの基本的には消費ということになりますが、戦略的政府調達という概念に変えれば、未来を見据えた投資ということになっていくというふうに思います。

 こうした問題意識を踏まえまして、三点、今日は政府の皆さんと是非議論させていただければというふうに思います。

 まず、一点目です。

 政府調達については、今申し上げたような、新たな挑戦を必要とする政策課題の解決をより迅速かつ効果的に実現をするために、私は戦略的に活用すべきだというふうに思っています。特に、グリーン、デジタル、安全保障等の分野においては、例えば長期購入契約の発想を取り入れて、我が国の戦略的自律性と戦略的不可欠性を保持、獲得するための産業、技術基盤の充実を同時に進めるものとして取り組んでいく必要があるというふうに思っておりますが、この点について、財務省の見解をお伺いしたいと思います。

岡本副大臣 ありがとうございます。

 鈴木委員おっしゃるように、民間の活力を支援していく意味からも、政府調達を戦略的に行っていく重要性は私どもも共有をしております。

 その上で、政府調達におきましては、価格競争を基本としてはおりますが、例えば、総合評価落札方式を活用し、価格以外の条件である技術力による評価が可能であり、また、契約の目的に応じて複数年度契約を活用し、事業期間全体を通じたコストを比較することが可能となっております。

 このように、現行制度におきましても、調達方法を工夫することにより、優れた技術力を有するスタートアップ企業等が政府調達に参加することが可能となっています。

 財務省といたしましては、重要な政策課題に戦略的に対応していく上での問題点について、よく状況を把握しつつ、どのような工夫ができるか、各省庁とも連携をしながら、引き続き検討していきたいと考えています。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 今の時点ではそういう答弁に当然なられるんだろうというふうには、よく分かりますが、ただ、なかなか、今までの概念そのままでやり続けても我が国と海外との差というのが当然開いていくというのは、私自身、外務政務官をやらせていただいたときに様々な国に出張しまして、それぞれの国がどういうふうにしてスタートアップを育てているか、思い切って投資をしているかということを見れば、私は、そろそろ今の考え方からやはり脱却をして、もっと前に向かって、スタートアップに例えば投資ができるような、そういう制度に変えていただきたいというふうに思っています。

 実は、もう一点は、鈴木財務大臣の御地元も岩手でありまして、私も雪が降る山形なわけです。同じ東北なんですけれども、私自身の地元、大変人口減少が進んでいます。山奥が大変多いわけです。

 地方は今何が起きているかというと、供給力というのがそもそも、サービスを調達しようと思っても、供給力がだんだんだんだん落ちてきていて、今後、政府調達を今までどおり一般競争入札でやり続けるということになれば、私、何を申し上げたいかというと、一般競争入札は、供給する主体がたくさんいるようなマーケットでは、当然一番いい、リーズナブルでコストが一番安いところを取ろう、そして品質は一定程度確保しようということで、うまく機能する、そういうシステムだというふうに認識をしておりますが、一方で、我が国は人口減少社会に入って、供給力そのものが今だんだんなくなりつつあるという現実があるわけです。

 こうしたやはり現実を踏まえますと、例えばですけれども、過疎地とか山間部、うちの地元も大臣の御地元も大変雪が降ると思います。雪が降れば、毎年、毎日のように夜中に除雪をしないと、その集落というのは残念ながら維持ができません。そうしたところで、一般競争入札という概念が果たして本当に私はいいんだろうかということを、つくづく地元を歩いていて、いろいろな皆さんと意見交換をする中で実は感じているところなんです。

 ここは国交省に是非お伺いをしたいというふうに思いますが、毎年の除雪や災害対応、これが、山奥であっても集落がある限り私は可能なように、一定の範囲内で公共事業を担う建設業の皆さんが事業を継続できるような配慮、これを行うべきだというふうに考えていますが、現状、国土交通省の取組をお伺いいたしたいというふうに思います。

廣瀬政府参考人 お答えいたします。

 地域の建設業の方々は、社会資本整備の担い手であると同時に、災害時には最前線で地域社会の安全、安心の確保を担う、地域の守り手として重要な存在と認識しております。

 国土交通省の直轄工事の発注に当たっては、会社の本支店、営業所の所在地などの地理的条件の適切な設定など、地域の建設業の受注機会の確保に取り組んでいます。また、工事の性格等に応じて適切な入札方式を選択することとしておりますが、災害時においては、緊急性に応じて随意契約、指名競争入札等も活用しており、このことは、令和元年に改正されました公共工事の品質確保の促進に関する法律においても明文化されたところです。

 災害時の応急復旧等に対応いただいた実績は、工事成績に反映されるとともに、それ以降の工事の総合評価における加点要素としております。

 加えて、寒冷地において不可欠である除雪については、雪が少ない年であっても、受注者は除雪機械の管理維持等のための経費がかかることから、地域の除雪業者が安定的に収益が得られるよう、こうした固定的経費を積算で計上する試行を令和三年十二月より開始したところです。

 今後とも、建設業の方々が将来にわたって地域の守り手としての役割を担えるよう、引き続き様々な観点から取り組んでまいります。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 もちろん、国土交通省さんの方で、極めて地域の、しかも更に山奥なんかも含めて根差している建設業の皆さん、そこで働く皆さんのことをどう守っていくかという視点が大変あるのは私自身もよくよく存じ上げております。特に災害のときなんかは、そうやって迅速に、入札によらずにどんどん対応していただいているというのも事実だと思いますが、ただ、うちの地元もすごい、この十年間でもう三回も四回も豪雨災害がありまして、特に山奥が、集落があるんだけれども、そこに行く道が崩れてしまう、若しくは冬場であれば雪崩で、要するにそこが孤立をしてしまうみたいな現象が、私自身が生まれてきて、今まで生きてきた中では多分一番多い十年だったのではないかなというふうに思うときに、それぞれの地域ですぐに対応ができる体制というのが私は何よりも大切だと思っています。

 その中で、鈴木大臣にも是非、これは答弁は結構ですが、お願いをしたいのは、もう少し、今まであったやり方ではなくて、人口減少社会にやはり対応ができる入札の在り方、そして、もっとどうした配慮ができるのかという視点を、まだまだ十分だというふうに私自身認識をしておりませんので、これから長い目でしっかり取り組んでいただければなというふうに思います。

 そして、三つ目、副大臣にお伺いをしたいと思います。

 今、世界では、ロシアがウクライナに侵略をしておりますが、実際には残虐な行為が行われている。私自身も、最近、国際情勢を目にするに従って、人権という言葉がすごい多く使われるようになっているというふうに思っています。

 この人権という切り口でいうと、日本は今まで、公共調達の中に、政府調達の中に、人権という言葉、多分余り目にしていない事項なのかなというふうに思いますが、大きい意味でいうと、政府自身も経済主体の一つだというふうに思っています。

 そういう中で、日本政府が、世界を見ても、国内を見ても、公正でフェアな市場をちゃんとつくっていくんだというメッセージを出す、そういう市場の形成に貢献をするんだという意味でも、私自身は、人権侵害を行う事業者、これは国内外を問わずということになります、若しくはその組織、これを政府調達の対象からしっかりとまず排除する仕組みを導入すべきだというふうに考えます。

 さらに、世界中で、人権デューデリジェンスという、しっかりとどこの分野が危ないのかというのを特定をして調査をして改善をしていく仕組みを今後民間企業なんかにも求めていくような流れになっているわけですが、政府自身もこれをしっかりとやっていただきたいというふうに思いますし、また、政府調達において、そういう人権デューデリジェンスみたいなところに取り組む事業者を総合加点方式の中で加点をしていくような方式の導入なんかも進めるべきだというふうに考えていますが、副大臣のお答えをお伺いしたいと思います。

岡本副大臣 鈴木委員御指摘いただいたように、民間の経済活動のみならず、政府調達においても、これまで以上に人権という視点で政府調達の事業者を選定していくことは重要だと考えております。

 企業活動におきまして、この人権の尊重につきまして、現在、政府においては、令和二年に策定されましたビジネスと人権に関する行動計画に基づく取組の実施や企業の取組を促すため、サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドラインの策定などを重要な課題として取り組んでいるというふうに認識しています。

 他方で、委員御指摘の、この措置の導入の具体的な今後に関しましては、政府調達から排除する事業者等を定めるための基準やその認定をどのように客観的に判断するのか、人権デューデリジェンスを取り組んでいる事業者等に対する評価基準や認定をどのように客観的に判断して総合評価落札方式において加点するのかなど、様々な課題がありまして、今後十分に検討する必要があるというふうに考えています。

 いずれにいたしましても、政府といたしまして、企業活動における人権の尊重に係る取組はしっかりと進めていく必要がありますので、その状況についてしっかりと注視をしてまいりたいと考えております。

鈴木(憲)委員 ありがとうございました。

 しっかり検討していただきたいんですが、この人権デューデリジェンスというのは、今まで、日本企業にとってみたら、やっていない企業さんがほとんどで、要するにコストになる可能性もあるわけなので、そこをやはり政府がしっかりと評価をするということによって、ああ、これは取り組むべきなんだなというふうに思っていただく、この意味ですごい大切だというふうに思いますし、私自身は、例えばイギリスなんかは、イギリス政府も人権デューデリジェンスをやります、公共調達の中でそれをしっかりと考えますというようなことを首相自らが方針を出して、ホームページにも載っておりますので、是非日本も、イギリスはやっているのに日本はやっていないじゃないかというふうに言われないように、しっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。

 時間ですので、以上で質問を終わります。ありがとうございます。

原口委員長 次に、武村展英君。

武村委員 自由民主党の武村展英でございます。

 せっかくですので、私は、国の決算制度と決算に関わる財務報告について今日は質疑をさせていただきます。答弁は基本的には政府参考人で、最後に岡本副大臣に意気込みをお聞きをしたいと存じます。

 まず、我が国の財務報告の現状についてお伺いをいたします。

 我が国の会計制度は現金主義を基に予算、決算が作成をされていますが、あわせて、企業会計の発生主義という考え方、複式簿記により作成されるという手法を参考とした国の財務書類も作成、公表をされているところです。国の財務書類について、これまでの取組状況をお伺いいたします。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 国の財務書類は、国の一般会計及び特別会計の資産や負債などのストックの状況、費用や財源などのフローの状況といった財務状況を一覧で分かりやすく開示する観点から、発生主義や複式簿記による企業会計の考え方及び手法を参考といたしまして、平成十五年度決算分より、作成、公表いたしているものでございます。

 なお、国の財務書類の作成に当たりましては、平成二十三年度決算分より、財務書類作成システムを導入いたしまして、作成、公表の早期化も図っているところでございます。

武村委員 ありがとうございます。

 もちろん企業会計と全く同じ手法ではありませんけれども、結果として、発生主義、複式簿記により作成した情報と同等のものを開示されておられると認識をしています。

 配付資料の一ページを御覧ください。一ページの上段にあります日常の支出だとか、あと国税の収納、こうした情報はそれぞれのシステムからADAMS2という公会計のシステムに自動転記をされていますが、それ以外、中段にありますが、公共用財産、これはそもそも金額管理がなされておりませんし、それ以外の国有財産もシステムとはつながらずに手入力で情報を整理して、これをデータ送信をする。こういうところは完全ではないんですが、結果としては、企業会計と同等の情報が開示をされていると認識をしています。

 また、配付資料の二ページにも書かせていただいているんですが、決算の早期化も進めていただいていまして、法定決算は十一月、それから、各種財務諸表は一月に国会に提出、公表していただいています。

 続きまして、世界各国の状況についてお伺いをしたいと思います。

 時々、我が国の公会計というものは他国と比べて取組が進んでいない、大変遅れている、そういうふうに言われることがあるんですけれども、私は決してそうは思わないんですが、諸外国の予算、決算やこれらに対する財務報告等の取組状況、これはどうなっているのかをお伺いいたします。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国における予算、決算の作成状況や財務報告の在り方についてのお尋ねでございますが、まず、我が国では、予算、決算共に基本は現金主義を採用して作成しておりますが、御指摘のように、発生主義に基づく財務報告といたしまして、国の財務書類を作成、公表いたしております。

 アメリカ、フランスにおいても我が国と同じような方式が取られてございまして、予算、決算共に現金主義を採用するとともに、発生主義による財務報告も行われております。

 イギリスでは、予算、決算共に現金主義及び発生主義、両方の考え方に基づき作成されており、それとは別途、発生主義による財務報告も行われていると承知いたしております。

 また、ドイツでは、予算、決算共に現金主義を採用しておりまして、発生主義による財務報告は行われていないと承知いたしております。

武村委員 ありがとうございました。

 配付資料三ページに、今お答えいただいたもの、これは国会図書館にお調べをいただいたんですが、これを記載をさせていただいています。基本的には、各国共に予算の執行管理、これを適切にするために、現金主義での予算、決算システム、これは基本だというふうに思います。加えて、イギリスでは、予算、決算ベースで発生主義、複式簿記的な財務諸表が作成、開示をされておりますが、日本、アメリカ、フランス、これは同程度の決算の開示が行われているというふうに考えます。

 このように、先進諸国と比べても、我が国のこうした財務報告というものは決して遜色のないものがなされていると思います。開示の質は十分になされているけれども、それよりも、せっかく作ったこうした膨大な情報が果たしてどこまで有効に活用されているのか、そのことの方が私は大きな課題だというふうに思います。

 そこで、財務諸表の活用について質問をいたします。

 配付ページ、四ページ、五ページ目を御覧ください。ここでは、一般会計財務書類と特別会計財務書類、これを合算したこうした財務書類があるんですけれども、これを見ながらちょっとお聞きをしたいと思います。

 この合算の貸借対照表を見ると、我が国の資産のうち、有価証券、貸付金、こうした金融資産が百兆円という大きな金額になっています。国の財源として、いわゆる埋蔵金があるのではないかという主張が時々なされます。そこで、例えばこの中で有価証券、これは百十九兆円、貸付金、百二十兆円、それから運用寄託金、これが百十二兆円、こうした大きなものがありますが、これらは換金処分をした上で他の財源に使うことができるような性質のものであるかどうか、これをお伺いいたします。

奥政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの国の資産につきまして、まず、有価証券の場合でありますと、この大宗は外国為替資金特別会計で保有をしている外貨証券でございます。この外貨証券を取得する財源は、主に外国為替資金証券の発行により調達をいたしておりますので、資産である外貨証券を売却した場合の収入は、原則として負債に計上されている外国為替資金証券の償還に充てられることとなります。

 次に、貸付金につきましては、その大部分が財政投融資特別会計の財政融資資金貸付金でございますが、その財源は、財投債の発行により調達した資金や関係機関からの預託金で構成されております。したがいまして、この財政融資資金貸付金の回収金がありました場合でも、原則として負債に計上されている財投債の償還などに充てられることとなります。

 また、資産のうち、運用寄託金でございますが、これは保険料等の積立金でございまして、将来の年金給付財源に充てるために保有をいたしているものでございます。

 したがいまして、仮にこれらの資産を換金処分をした場合であっても、それぞれ見合いの負債があるなどの実情に鑑みますと、他の経費の財源として使用することは困難であると考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 今お答えをいただいた点については、配付資料六ページの方を御覧いただければと思います。

 こうした国の財務諸表のメリット、情報の優位性というのは、私は、会計基準を適切に設定すれば国の資産、負債が網羅的に計上できるという点、この網羅性だというふうに思います。

 そして、例えば有価証券ですと百十九兆円ですが、これの中身を知りたいとなった場合には、明細にブレークダウンをすることができます。ここにも明細を五ページにつけさせていただいていますが、この有価証券、それぞれどこの特別会計に計上されているのかが書いてあります。更にブレークダウンをしようとすれば、ここには添付をしていませんが、それぞれの特別会計の財務書類を見に行けば、明細を見れば、どんな項目がその内訳なのかを把握することができます。

 こうした網羅性があるからこそ、例えば特別会計、これは複雑な会計だというふうに言われますが、ここに何かを意図的に隠そうと思っても、一般会計と特別会計を合算した財務書類を開示すれば丸裸になって、隠すことはできないんですよね。

 例えば、官民ファンドが幾つあるんですか、それ以外にもあるんじゃないですか、こういったことが過去に言われておりましたが、これは、出資金のところをブレークダウンしていって明細を見て、そして、その中には国立大学法人に対する出資金や独立行政法人に対する出資金もありますので、そうしたものを除いていけば、どういった官民ファンドがあるのかというのはおのずと明らかになってくるわけで、こうした網羅性というものが財務書類の優位性ではないかなというふうに思います。

 例えば、公明党の竹谷とし子先生は、国債整理基金特別会計の中に、十兆円を借り入れて、キャッシュが十兆円ある、これは本当に必要なんですかということで、これは非常時の場合に備えて昔はあったんですけれども、非常時の場合には日銀から借り入れれば済む話でしょうということで、この十兆円を三兆円に圧縮をして、結果としてその利息の支払い八百億円を削減された、こうしたお取組がありましたけれども、これは大変すばらしい取組だと思います。

 こうした財務書類を、これは行政というよりは、決算の委員の皆様にも是非活用していただきたく存じます。

 以上、マクロ的な見方について御質問させていただきましたが、ミクロ面からの情報開示についてもお取組をされているというふうに認識をしております。

 配付資料の七ページ、フルコスト情報とは何かという資料を添付させていただきました。

 財務省では、令和元年まで、事業ごとのフルコスト情報の開示を試行的に行っておられます。現在の取組状況についてお伺いをいたします。

奥政府参考人 お答えいたします。

 御質問いただきましたフルコスト情報は、財政の透明性を高める観点から、国の個々の事業について、直接要した事業費のみならず、職員の人件費や物件費、また使用している庁舎の減価償却費や、独立行政法人等が国の事業を実施する際の業務費用、これらも含めた事業全体のコストを明らかにすることを目的といたしまして、平成二十六年度決算分から試行的に開始をいたしました取組です。

 この取組を本格的に進めていくため、令和三年一月の財政制度等審議会におきまして、事業別フルコスト情報の作成基準が取りまとめられました。

 今回の令和二年度決算分においては、令和元年度決算分の約二倍に当たる百五十八事業が担当省庁によって作成、公表されております。

 なお、現在取りまとめております事業別フルコスト情報におきましては、行政サービスの利用者から徴収する手数料などの自己収入と事業のフルコストとの比率である自己収入比率や、補助金等の額とその交付に要した間接コストとの比率である間接コスト率といった指標も算定、開示いたしております。

 今後、事業の担当者がこれらの指標も活用することで、各省庁において事業の更なる効率化や適正化につなげていただきたいと考えてございます。

武村委員 ありがとうございました。

 それでは、具体的なフルコスト情報についてお聞きをしたいと存じます。

 配付資料八ページ、九ページを御覧ください。ここでは、財務省管轄の税理士試験業務、法務省管轄の司法書士試験業務のフルコスト情報を挙げさせていただきました。

 ここでは、フルコストでは、税理士業務は司法書士試験業務と比較すると二倍になっている、また、自己収入比率は五六%、七八%とそれぞれ大きな違いがありますが、なぜこういう違いが生じるのか、お伺いいたします。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 令和二年度の事業別フルコスト情報、司法書士試験業務とそれから税理士試験業務に関しまして、委員御指摘のような状態になっているところでございます。

 税理士試験業務に関しましては、令和元年度におきますフルコストは一・九億円、また同じく自己収入比率は約九三%でありまして、元年度から二年度にかけてフルコストが大きく増加し、それに伴い自己収入比率が大きく低下したということになっております。

 このようにフルコストが大きく増加した要因としては、新型コロナウイルス感染症の拡大防止策のために従前よりも試験会場や試験の部屋を多く確保したこと、それから、従来使用していた大学の施設の多くが借用できなくなって、代わりにイベント施設などを借用したといったことが影響していると考えております。

 大学の施設が余り借用できなかった背景には、新型コロナウイルス感染症の拡大期と会場確保の時期が重なったため、大学が、大人数が集まる施設の提供を忌避した面もあったと考えております。

 それ以外には、司法書士業務と税理士業務の違いは、受験申込者数が税理士試験の方がかなり多いといったこと、あるいは、税理士試験業務は三日連続して会場を借用しなくてはいけないといったことなどがあると思います。

 国税庁としましては、引き続き、他の試験のフルコスト情報も参考としながら、税理士試験業務の効率化に努めてまいりたいと考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 補足情報も併せて開示をすることによって丁寧に説明をしていただきたいと思います。

 それでは、最後になりますが、こうした国の財務書類等について、会計検査院の現在の取組と方向性についてお伺いをいたします。

篠原会計検査院当局者 お答えいたします。

 会計検査院は、国の財務書類等のうち、内閣が国会に提出する特別会計財務書類につきまして、特別会計に関する法律等に基づき検査を実施しております。

 検査に当たりましては、正確性、合規性等の観点から、特別会計財務書類が法令等に従った適切なものとなっているかなどに着眼して検査を実施しており、特別会計財務書類の計上金額の表示が適切とは認められないものが見受けられた場合は、検査の結果を踏まえて所管府省等において所要の訂正が行われているところでございます。

 また、令和二年度決算検査報告において、特定検査対象に関する検査状況として、「特別会計財務書類を適切に作成するための取組について」を掲記しております。

 また、会計検査院が毎年次定めて公表している会計検査の基本方針では、国の財政状況等について決算分析を行うなどの検査を実施する際には、特別会計財務書類等の公会計に関する情報の活用にも留意することとしております。

 会計検査院といたしましては、今後とも、特別会計財務書類の検査を厳正に実施するとともに、国会での御議論等も踏まえて、国の財政状況を説明している国の財務書類等を活用しながら、多角的な観点から検査を実施してまいりたいと考えております。

武村委員 ありがとうございました。

 時間が終わりましたので、一問、御質問できなかったんですが、会計検査院の森田祐司院長は、今の公会計の礎を築いていただいた方であります。今、財務書類の活用という点に触れていただいたのは大きな前進だと思います。引き続きどうぞよろしくお願いをいたします。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

原口委員長 次に、庄子賢一君。

庄子委員 公明党の庄子賢一でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、現在の経済状況の認識についてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 燃油、原油あるいは天然ガス、また、小麦、飼料、肥料など原材料価格の高騰が続いておりまして、そこに国際情勢の影響で、同時多発的に急激な物価高になっているわけであります。加えて、急速な円安という状況であります。

 日銀は、四月十一日に公表いたしました地域経済報告、さくらレポートによりまして、全国九つの地域のうち、八つの地域で景気判断を前回一月から下方修正いたしました。特に個人消費の落ち込みが顕著だということをうたっています。

 また、同じく日銀は、十二日に三月の国内企業物価指数を発表いたしましたが、一一二・〇%、第二次石油危機の影響があった八二年十二月以来三十九年ぶりの高水準ということでございまして、円安状況も約二十年ぶりの今水準になっています。

 こうした現下の経済状況につきましてのまず御認識、そして、今後、国内にどのような影響が懸念されるのか、その見解を伺いたいと思います。

松多政府参考人 お答え申し上げます。

 今般のウクライナ情勢を受けまして、原油や穀物の国際価格が高い水準で不安定に推移をいたしております。こうした中、原油を始めとする原材料価格の高騰等を背景として国内の物価も上昇しており、特に、ガソリンや電気料金、食料品などの価格上昇が家計や企業に与える影響に注意が必要でございます。

 一方、景気は、新型コロナの影響によりまして旅行や外食といったサービス消費などに弱さが見られるものの、企業の生産や収益が改善する中で持ち直しの動きが続いております。

 今後につきましては、経済社会活動が正常化に向かう中で、景気は持ち直しの動きが続いていくことが見込まれますが、ウクライナ情勢等を受けた原材料価格の高騰、世界的な供給制約等による下振れリスクには十分注意する必要があると考えております。

庄子委員 今後の動向を十分に注視をしていかなければいけないというふうに思います。

 以下、物価高騰対策について何点かお尋ねをさせていただきます。

 現在、公明党といたしましてこれまで、この急速な物価高の実情を把握し対策を講じるべく、各種団体からのヒアリング、あるいは地域での懇談会などを開催をしてまいりました。総点検運動と銘打って活動を行ってまいりましたが、国民生活と社会経済活動には大変強い痛みが走っているということを実感をしています。この瞬間、国として機動的に財政的支援を講じなければ、日本経済は極めて厳しい状況に陥る、今その分水嶺に差しかかっているのではないか、そうした問題意識を持つに至りました。

 日銀の黒田総裁は、過去最高水準で進行します物価上昇を踏まえ、消費者物価の上昇率がこの四月以降二%程度になる可能性がある、こうコメントをされておりまして、消費者物価の上昇を示唆しておられます。

 こうしたことに鑑みまして、我々といたしましては、今年度当初予算を土台とし、同時多発する物価高騰に対応して、地方の経済を支え、さらには生活にお困りの方への支援を行うためにも、補正予算を早急に編成し、切れ目なく対応すべきだ、このように政府にも申入れをしているところでございますが、この点についての所見を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 原油価格、物価高騰等への対策につきましては、総理の指示を受けまして、現在、関係省庁において、盛り込む施策等を鋭意検討しているところでございます。

 直面する危機に緊急かつ機動的に対応するため、これまでに成立した令和三年度補正予算あるいは令和四年度予算を迅速かつ着実に執行するとともに、新たな財源措置を伴うものにつきましては、まずは予備費を活用した迅速な対応を優先していくこととしておりまして、現在決まっておりますのはそこまででございます。

 財務省といたしましては、四月末を目途といたしまして、取りまとめに向けて、関係省庁及び与党と十分連携しながら、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

庄子委員 現状、そこまでの御答弁が限界なのかもしれませんけれども、今、コロナの感染状況は、都市部から地方にどんどん移ってきて、新しいフェーズになってきているような気がいたしますし、また、このゴールデンウィークの後、新しい波が起こる懸念が指摘もされています。それにウクライナ情勢の長期化ということでございます。

 こうしたことは、要するに令和四年度の当初予算にはこうした緊急的な物価高ということは想定しておりませんので、是非、補正予算の編成をということを我々としては重ねてお願いを申し上げたい。

 この補正予算をお願いをする、求める理由のもう一つに、地方創生臨時交付金がございます。

 これは、令和二年度は、協力要請推進枠そして地方単独事業分など約五兆百十億円、令和三年度は五兆七千百九十五億円が交付され、地方が様々な対策を取ることができました。

 今、感染症拡大が長期化とそれから急激な物価高騰という前例のない事態となっておりまして、この地方創生臨時交付金は継続的な支援が是非とも必要だというふうに思っております。地域経済を立て直す手だてとして、是非、この臨交金、しっかり対応していただきたい。

 そこで、まず一つは、この地方創生臨時交付金の総額の財源措置を万全に行っていただくということ、もう一つは、地方が地域実情に応じてちゅうちょなく対策を実施できますように、一層の弾力的な運用を認めていただきたい。この二点、お尋ねさせていただきます。

黒田政府参考人 お答えいたします。

 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金につきましては、昨年末に成立をいたしました令和三年度補正予算におきまして、地方単独事業分といたしまして約一・二兆円を確保いたしまして、このうち一兆円分につきまして、自治体に交付限度額を通知をしております。各自治体から提出のありました実施計画について交付決定を行うとともに、交付限度額を通知している地方単独事業分等のうち、令和三年度におきまして各自治体において執行できなかった分、これにつきましては、令和四年度に向けまして約八千億円の繰越しを行っております。また、今後の追加的な対応に備えまして二千億円を留保しておりまして、引き続き、感染状況や各自治体の執行状況を注視してまいりたいと考えております。

 いずれにしましても、今後も、各自治体が感染状況に応じて財政上の不安なく機動的な対応ができるよう、適切に支援してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

庄子委員 今触れさせていただきましたとおり、この新型コロナウイルスの感染状況がなぜか都市部から地方に大きな波になって広がってきております。今お答えをいただきましたように、よく状況を注視をしていただきながら、この臨時交付金、万全の体制をお願いを申し上げたい。これは地方の知事会からも強く働きかけがあるところでございます。

 もう一点は、燃料の激変緩和として今用いられております補助金等の拡充についてでありますが、この燃料油価格の激変緩和事業につきましては、今、元売事業者に補助金を渡しているわけでございますが、この価格基準の引下げ、そして、二十五円となっております上限の引上げ、これを是非求めたいというふうに思っております。

 加えて、現在はガソリン、灯油、重油、軽油という四つの油種に限られていますけれども、これに、例えば舗装用のアスファルト、そして航空機のジェット燃料、こうしたことも是非加えていただいて対策を強化をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

萩生田国務大臣 激変緩和事業の制度の要件につきましては、岸田総理から四月中に取りまとめるよう御指示をいただいている緊急対策の中で、原油価格の高騰がどの程度長期化するのか、また、与党からの提言や三党協議の状況も注視しながら検討を進めているところです。

 委員御指摘の本事業における対象油種については、三党協議が行われている中で予断を与えるようなお答えは差し控えたいと考えますが、本事業は国民生活に広く影響する燃料の価格抑制を目的としているということを踏まえて、しっかり検討を進めたいと思います。

庄子委員 今申し上げましたのは、党としても政府に既に要望を出させていただいておりまして、是非前向きに御検討をいただければというふうに思う次第であります。

 次に、飼料、いわゆる畜産の餌の飼料の価格高騰対策についてですけれども、これも、畜産、養豚、養鶏など、大きなダメージを与えてしまっています。飼料、餌は多くを輸入に依存しております。濃厚飼料などは令和二年度の概算で八八%が輸入に頼っている現状にございまして、自給率を中長期的に高めていく努力が必要なことはもちろんなんですけれども、しかし、今現在の足下の支援をどうするかということが何より喫緊の課題でもございます。

 配合飼料価格安定制度、これで、いわゆる通常と異常と二段階で補填する仕組みがございますけれども、飼料価格が高止まりをしている状況にありましては、この激変緩和というのは十分に機能いたしません。例えば異常補填の発動要件を緩和する、こうした対応が必要だというふうに思います。あわせて、今、補填金の基金残高が二百九十二億円しかなくなっております。早期に積み増しをする必要があるというふうに思いますが、大臣の御所見をお尋ねをいたします。

金子(原)国務大臣 お答えいたします。

 配合飼料価格の上昇に対しては、配合飼料価格安定制度により補填を行い、畜産経営への影響を緩和しております。

 現在の基金残高については、当面の支払いは対応可能な水準でありますが、コロナ禍での価格上昇に加えまして、ウクライナ情勢によりまして穀物の国際相場が不安定な動きをしていることを踏まえまして、本制度の安定的な運用に向けて対応を検討することが必要な状況と考えております。

 現在、三月二十九日の総理の指示を受けた原油価格・物価高騰総合緊急対策の取りまとめに向けまして、農林水産省におきましても、穀物の国際価格が高騰している現状にしっかりと対応すべく必要な対策を検討しているところであります。

 また、飼料価格の高止まりにつきましては、言及がありましたが、そうした事態への対応策といたしましては、畜種ごとの経営安定対策におきまして飼料費等の変動が反映される仕組みとなっており、これらを併せて畜産農家を支援してまいりたいと思います。

庄子委員 是非、足下の支援の強化、これは喫緊の課題でございます。よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 GoToキャンペーンの方に話を移らせていただきたいと思います。

 新型コロナウイルスの拡大によりまして広範囲の産業にダメージが広がっていることは言うまでもありませんけれども、中でも最も強い影響を受けているのは観光関連産業だろうというふうに思います。東北の福島あるいは宮城では、それに加えて先日の地震被害、これが追い打ちをかけておりまして、施設設備の損壊も甚大であります。宿泊のキャンセルも相次ぐなど、厳しい状況にございます。

 そこで、関係者の皆様が期待を寄せているのは新たなGoToキャンペーンです。関連する事業者からは、具体的に、割引率を低く抑えても構わないのでロングランで実施できないかという声を頂戴することが多くございます。私も同感です。

 そこで、次期キャンペーンにつきましては通年で行うことを提案させていただきたい。長期間事業を行うということによって、縦に長い日本は、四季を通じて、より多くの観光地がより多くの需要を取り込むということのチャンスが広がってまいります。また、観光客の土日、連休等への偏重、これを分散するという効果もあろうかと思います。事業者にとりましても、設備投資あるいは人員配置など事業計画が立てやすい。

 二年以上苦しんでまいりました関連事業者を短期間ではなく中長期で支えていく、そうしたキャンペーンにしていただきたいというふうに思いますが、大臣の御所見を伺います。

斉藤国務大臣 新型コロナウイルス感染症の影響が長期化するとともに、委員からも御指摘のありました東北の地震等の影響によって、観光関連事業者の皆様は一層厳しい状況に置かれていると承知しております。

 観光は地方創生の切り札でございまして、地域経済の活性化という観点からも、旅行者と地域の双方の安全、安心を確保しながら、観光需要喚起策を進めていくことが重要です。

 新たなGoToトラベル事業については、感染状況等を踏まえ、注意深く検討し、適切な時期が来たならば迅速に実施できるよう必要な準備を進めてまいりたいと思っております。

 また、事業開始後の実施期間も含め、観光関係事業者が置かれた状況等を十分に伺いつつ、また、委員の先ほどの御意見も参考にしながら、今後の制度設計を検討してまいります。

庄子委員 ありがとうございます。

 そして、もう一点、このコロナ禍にありましても、高価格帯のいわゆる個人旅行向けの宿などは堅調でございまして、宿泊施設は非常に稼働率が高いといいますか、満室状況の宿もございますが、一方で、団体旅行を受け入れてまいりました施設、これは大きな影響を受けております。貸切りバス事業者も同様でございます。

 これはバス協会の団体の方からの御意見も頂戴をしたんですが、新GoToキャンペーン実施に当たっては、貸切りバス利用の団体旅行枠、これをしっかりと確保し、キャンペーンがよりそうした、いわゆる団体旅行向けの事業者につながっていくように検討していただきたい、このように私からもお願いをさせていただきますが、御所見を伺います。

斉藤国務大臣 感染症により特に深刻な影響を受けている団体旅行につきましては、貸切りバス事業者を始め、関連する事業者の皆様をしっかりとお支えすることが重要であると考えております。

 こうした考え方を踏まえ、昨年十一月に公表した今後の新たなGoToトラベル事業の基本的な方針においては、交通つき旅行商品の割引上限額を上乗せするということ、そのほか、都道府県による実施事業において、団体旅行の専用給付枠を設定することを盛り込んでおります。

 この団体旅行の専用給付枠の設定を含め、事業開始時における具体的な制度設計につきましては、団体旅行に関連する事業者の方々にも十分配慮しながら、引き続き検討を進めていきたいと思っております。

庄子委員 大臣、どうぞよろしくお願いをいたします。

 コロナ後遺症の話題に移らせていただきます。

 WHOは、コロナの感染者の十人に一人が後遺症、こういう見解を出しています。国内感染者約七百万人といたしますと、約七十万人が何らかの後遺症を患っているという推察ができます。

 症状としては、倦怠感、気分の落ち込み、思考力の低下、頭痛、不眠など、代表的なものでも二十以上の症状がございまして、それが出たり消えたりを繰り返すというのが後遺症の怖いところでございます。

 国として、こうしたコロナの後遺症によります患者の実態調査、これを行っていただきたい。そして、必要な生活支援策を打ち出すことを求めたいと思います。そして、病態の研究や、治療及びケアのエビデンスを構築するなど、後遺症対策へ万全を期していただきたいというふうに思いますが、見解を伺います。

後藤国務大臣 新型コロナウイルス感染症の罹患後症状、いわゆる後遺症につきましては、いまだ明らかになっていないことも多く、実態や病態を明らかにするため、委員御指摘のように、実態把握や原因究明に関する調査研究を実施しております。

 具体的には、令和二年度には、厚生労働科学研究費において、新型コロナ感染症の入院歴のある患者について、その後どの程度の期間罹患後症状を有しているかを追跡調査しているほか、日本医療研究開発機構、AMEDにおいて、病態解明に係る研究を実施しております。

 また、国内における罹患後症状の定義が現在定まっていないために、その人数の把握は困難でございますけれども、令和三年度の調査研究によると、診断の六か月後の時点で一〇%以上認められた症状として、疲労感、倦怠感、息苦しさ、睡眠障害、思考力・集中力の低下等が挙げられております。

 また、昨年十二月には、罹患後症状に悩む患者に対して適切な医療の提供がなされるように、罹患後症状に関する国内外の知見に基づきまして、かかりつけ医等の医療従事者向けの診療の手引が取りまとめられました。

 診療の手引については、各専門領域の臨床現場の医師等が編集委員会の構成員となっておりまして、取りまとめの中でこうした臨床現場の意見が取り入れられているところでございます。

 業務により新型コロナウイルスに感染し、これによる罹患後症状があり、療養等が必要と認められる場合には、労災保険給付の対象となるほか、業務外の事由による療養のため労務に服することができない場合は、健康保険制度の被保険者は、要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。

 今年度も、罹患後症状の実態の把握や病理解明のための調査研究の予算を確保しておりまして、引き続き、科学的知見を集積していくとともに、臨床現場の意見や新たな知見も踏まえながら診療の手引の改定を行うとともに、政府の取組を周知するなど、罹患後症状に悩む方が必要な医療を的確に受けられるよう努めてまいります。

庄子委員 ありがとうございます。

 大臣、この診療の手引、マネジメント、これは暫定版ですから、今後改定だと思いますけれども、是非、臨床現場の御意見を取り込んでいただいて、お願いを申し上げたいと思いますが、この後遺症の診察というものには、問診、診察、説明など、大変時間がかかります。

 診療体制を今後充実をさせるためにも、診療報酬、保険点数といった、しっかりとしたインセンティブを付与するということが必要ではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 新たな医療技術の保険適用につきましては、その有効性、安全性等を踏まえ、専門家の意見もよくお聞きしながら、必要に応じて、中医協において議論していくこととなります。

 御指摘のコロナ後遺症への治療につきましても、学会等におきまして治療等に関する知見がまとまるなど、有効性、安全性が確認され、医療技術評価提案等が提出された場合には、中医協において議論することとなるものと考えております。

 いずれにせよ、現にこのような症状に悩まれている方々に寄り添うことが重要でありまして、希望される方が必要な医療機関を受診できるよう、体制の確保、相談窓口の周知等に取り組んでまいりたいと考えております。

庄子委員 我が党の厚労部会で、何度か関係の医療従事者の方をお招きして勉強会を行いましたが、あるドクターのお話によると、就労している後遺症患者二千百十人のうち、解雇など職を失った人が百四十九人、休職した人が八百六十七人に及んでいるという御報告もいただいておりまして、体制の整備を、こうした数字が物語っておりますように、急ぐ必要があるということを重ねてお訴えをさせていただきたいというふうに思います。

 最後に、アスベストの対策についてお尋ねをいたします。

 東日本大震災の被災地で、多くの建物の解体作業などを通じて、このアスベストの問題が今後、十年後、二十年後に大きな問題となって顕在化しなければいいなという思いを抱きつつ、友人たちと一緒に一般社団法人などをつくって活動してまいりましたが、このアスベストの対策につきまして、国の最新の人口動態統計によりますと、平成二十七年から令和元年にかけて毎年約千五百人ほどの方々がアスベスト、いわゆる石綿の吸引で発症すると言われる中皮腫で亡くなっておられます。

 今年度から厚労省の事業として、建築物の解体、改修工事を行う施工業者に、解体の場合、八十平米以上、改修工事は請負金額百万円以上となる工事について、アスベスト含有の事前調査結果、これを労基、労働基準監督署に報告することが義務づけられました。

 あわせて、環境省所管の大気汚染防止法に基づいて、自治体への報告も義務化されたということは大きな前進でございます。

 法律の改正の核心は、アスベスト含有の調査結果、使用が明らかになった場合、施工業者が法令遵守の工事ができるように、除去工事等に必要な費用を含め、発注者が施工業者に対し配慮することを義務づけされたということでございます。

 この費用面での配慮義務の履行を、国としてはどのように担保していくお考えか、伺います。

吉永政府参考人 お答え申し上げます。

 建築物の解体、改修工事に従事する労働者の健康障害を防止するために、アスベスト、石綿の暴露防止対策を行っていくことは重要でございます。解体工事前の事前調査で石綿の使用が明らかとなったにもかかわらず、発注者が契約金額等を変更せず、施工業者も必要な対策を講じなかったという事例も見られているところでございます。

 そうしたことから、委員御指摘のとおりでございますけれども、令和二年七月に石綿障害予防規則を改正いたしまして、石綿の使用が明らかな場合に、解体等の作業発注者は、作業の方法、費用につきまして、施工業者が関係法令を遵守して工事ができるように配慮すべきことを義務づけたところでございます。

 こうした中で、厚生労働省といたしましても、改正規則に基づきます配慮義務が適切に遵守されるよう分かりやすいリーフレットを作成し、解体、改修工事に関わります全ての関係者に広く周知徹底を図るとともに、大気汚染防止法等関係法令に基づく対策を実施していただいております都道府県や市町村とともに連携をして、効果的な周知を行うこととしているところでございます。

 改正規則に基づきます配慮義務の履行が徹底されることを通じまして、労働者の健康障害が防止されるよう、引き続き関係者に対する周知、指導に努めてまいりたいと考えてございます。

庄子委員 今、中皮腫で毎年約千五百人というふうに申し上げたんですが、実は、世界疾病負荷という国際研究プロジェクト、GBDというプロジェクトがございまして、そこがまとめた結果によりますと、日本のアスベストによる年間死者数は二万人を超えているという統計が発表されました。これは、中皮腫だけではなくて、肺がんや呼吸器疾患など全部含めて、石綿由来だと疑われる死者数が二万人を超えている。これは、アメリカ、中国に次いで、世界で三番目という報告がございました。

 戦後、高度経済成長期に国策で使ったこのアスベスト、石綿は、今後、建物の更新時期になってまいりますと、解体工事が多くなってまいります。これをしっかり、暴露、吸引しないように対応していきませんと、今後ますますこの石綿被害というのは増えていってしまう、これを懸念をしておりまして、しっかり法改正に基づいて対応を万全にお願いを申し上げたい、こう思います。

 これまでアスベストの調査義務はあったんですが、報告義務というのは今回から初めてなんです。これまでは、国交省の補助制度、これを活用した民間建築物のアスベスト含有調査というものがございました。平成三十年度二百八十六棟、令和元年度四百棟、令和二年度四百六十六棟にとどまっておりまして、人々の健康に直結するという案件である以上、今後、この事業の実績をより高めていく、そうした必要があろうかと思いますけれども、見解を伺いたいと思います。

淡野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、住宅、建築物に使用されている吹きつけアスベストにつきましては、早急に調査を実施した上で、除去等の対策を講じていただく必要があると考えております。

 このため、国土交通省では、住宅・建築物アスベスト改修事業により、住宅、建築物におけます吹きつけ建材中のアスベストの含有調査、吹きつけアスベスト等の除去、封じ込め又は囲い込み工事に要する費用について支援を行ってきたところでございます。

 今般、石綿障害予防規則や大気汚染防止法の改正により、アスベスト対策が強化されたことを契機に、これまで進めてまいりました取組をより積極的に進めてまいりたいと考えております。

 具体的には、民間建築物におけます吹きつけアスベストの含有調査が進むよう、地方公共団体を対象に、ブロックごとの説明会や建築物防災週間における通知等を通じ、公共団体におきまして本制度を積極的に活用していただくことや、地方公共団体から民間建築物の所有者の方々に対しまして本制度の周知や早期の対応を働きかけることなどを促すとともに、関係省庁との連携による本制度の周知についても検討してまいりたいと存じます。

庄子委員 せっかくこうした補助制度があるのですが、十分に使われておりません。自治体の窓口も、あるいは、建物の所有者、オーナーも、設計事務所も、あるいは、ゼネコンさんも、解体事業者も、みんなで共通の理解を持ってこの含有調査をしっかり行っていくということ、国が旗を振って是非取り組んでいただきたいというふうに思います。

 以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

原口委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四分散会


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