衆議院

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第6号 平成29年5月31日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十九年五月三十一日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 竹本 直一君

   理事 あべ 俊子君 理事 岩屋  毅君

   理事 奥野 信亮君 理事 神田 憲次君

   理事 山下 貴司君 理事 落合 貴之君

   理事 牧  義夫君 理事 佐藤 茂樹君

      秋本 真利君    安藤  裕君

      今枝宗一郎君   うえの賢一郎君

      大野敬太郎君    鬼木  誠君

      加藤 寛治君    門  博文君

      門山 宏哲君    小松  裕君

      國場幸之助君    今野 智博君

      坂本 哲志君    白須賀貴樹君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      寺田  稔君    長尾  敬君

      鳩山 二郎君    平沢 勝栄君

      藤原  崇君    古川  康君

      細田 博之君    牧原 秀樹君

      宮内 秀樹君    宮川 典子君

      務台 俊介君    山田 美樹君

      山本  拓君    和田 義明君

      緒方林太郎君    岡田 克也君

      吉良 州司君    黒岩 宇洋君

      後藤 祐一君    階   猛君

      篠原  孝君    田島 一成君

      馬淵 澄夫君    升田世喜男君

      松田 直久君    國重  徹君

      富田 茂之君    吉田 宣弘君

      穀田 恵二君    塩川 鉄也君

      浦野 靖人君    椎木  保君

    …………………………………

   総務大臣         高市 早苗君

   総務副大臣        原田 憲治君

   総務大臣政務官      冨樫 博之君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   最高裁判所事務総局民事局長

   兼最高裁判所事務総局行政局長           平田  豊君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  安田  充君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           大泉 淳一君

   政府参考人

   (総務省統計局長)    会田 雅人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 武笠 圭志君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           瀧本  寛君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官)    佐藤 安紀君

   衆議院調査局第二特別調査室長           荒川  敦君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     秋本 真利君

  うえの賢一郎君    安藤  裕君

  小松  裕君     藤原  崇君

  白須賀貴樹君     宮川 典子君

  古川  康君     加藤 寛治君

  牧原 秀樹君     細田 博之君

  宮内 秀樹君     鳩山 二郎君

  和田 義明君     山田 美樹君

  岡田 克也君     松田 直久君

  黒岩 宇洋君     升田世喜男君

  篠原  孝君     階   猛君

  田島 一成君     後藤 祐一君

  馬淵 澄夫君     緒方林太郎君

  富田 茂之君     吉田 宣弘君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     今枝宗一郎君

  安藤  裕君     うえの賢一郎君

  加藤 寛治君     門  博文君

  鳩山 二郎君     國場幸之助君

  藤原  崇君     小松  裕君

  細田 博之君     牧原 秀樹君

  宮川 典子君     白須賀貴樹君

  山田 美樹君     和田 義明君

  緒方林太郎君     馬淵 澄夫君

  後藤 祐一君     田島 一成君

  階   猛君     篠原  孝君

  升田世喜男君     黒岩 宇洋君

  松田 直久君     岡田 克也君

  吉田 宣弘君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  門  博文君     古川  康君

  國場幸之助君     大野敬太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     宮内 秀樹君

    ―――――――――――――

五月三十日

 政党助成金の廃止に関する請願(畠山和也君紹介)(第一四五五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六五号)


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     ――――◇―――――

竹本委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局長安田充君、総務省自治行政局選挙部長大泉淳一君、総務省統計局長会田雅人君、法務省大臣官房審議官武笠圭志君、文部科学省大臣官房審議官瀧本寛君、文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官佐藤安紀君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局民事局長兼行政局長平田豊君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。細田博之君。

細田(博)委員 ありがとうございます。

 このたび、〇増十減、定数十減と、それから格差是正、一票の格差是正を基本とする改正案が、具体的に去年の改正法に基づいて、区割りも含めて実現するということで、質問をさせていただきたいと思います。

 そもそも格差の問題は、御存じのように、憲法十四条におきまして、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」当初はこの条文は行政と司法だけを拘束するという説がありましたが、その後、今日は、立法者も拘束する、三権の全ても拘束するということが定説になっているわけでございます。特に定数の不均衡問題は、参政権という民主主義の根幹を支える権利のまさに侵害であるということから、より厳しい判決が下っているわけでございます。

 戦後初めての総選挙は、男女ともに参政権が与えられて初の選挙が昭和二十一年の四月十日に行われました。そのときは、現在は高市大臣初め女性代議士も多いわけでございますが、当初の選挙で三十九人の女性代議士が誕生した。それが初めての選挙で、女性にとって初の投票権、初の被選挙権が設定されたわけでございます。

 ところが、当時の格差でいえば、ほとんど人口的には均等割に近かったわけでございますが、当時の昭和二十年の人口から戦後大変な急増が起こり、そして大都市部はさらに大きくなった、大集中をしたわけですね。

 当時の総人口は七千万人強でございました。戦災とかいろいろなことがあり、疎開をしている人もいる。そういう状況でしたが、東京都の人口は三百四十八万人でした。今何人かというと千三百五十万人ですから、四倍近くなっているわけですね。ずっと一億二千万まで達して、都会化が進み、東京だけではなくて都市部に人口が集中した。

 他方、新潟県などをとってみると、米どころですから、戦後はたくさん人がおりました、農業に従事したり疎開をしたりして。その人口は二百三十九万人でした。先般の平成二十七年人口で何人だったかというと、二百三十万人。昭和二十年より平成二十七年の方が八万人も減っているわけでございます。

 そういう人口が変化をする中で、この選挙区格差の問題は、先輩たちがいろいろ苦労して、格差を是正するためにどういうことが行われてきたかというと、中選挙区制の時代では、四百六十六人であった戦後の定数、奄美復帰、沖縄復帰でふえた面もありますが、むしろ定数増でもって大都会部分は対応してきたわけでございます。そして、最大のときには五百十二人の定数にまで来て、大体四十五人ふやしてきたわけでございます。しかしながら、それでなかなか追いつかずに、中選挙区の格差は、当時判決が出ておりますが、六十三年の判決では、当日の人口で二・九二倍、これを合憲と判断したわけでございます。

 それが、平成八年にかわりまして、五百人、しかし小選挙区が三百ということになったわけで、そうなった経緯は、自民党で金権政治批判、その他政治改革が起こりまして、小選挙区制度が望ましいということで、小選挙区比例代表並立制が導入されたわけでございます。

 しかし、最初は、やはり激変緩和であると。例えば島根県の五区五人は、定数が二になっても大変であるということで、各県一割り振りということが行われて、定数が三になりました。高知県なども同じでございます。その激変緩和の結果、きょうお配りしているこの表がございまして、御参考まででございますが、平成六年の区割りでは二・一三七倍の格差でございました。そして三百選挙区。

 ところが、その後、比例定数が減ったり、これは格差と関係ございませんが、やはり修正を加えなければならない、違憲状態判決が出るということで対応して、平成十四年には二・〇六四倍、平成二十五年には一・九九八倍にしたわけで、国勢調査上二倍を初めて切ったわけでございます。

 二倍を一倍にしろという説はありますが、これは数学的に難しゅうございまして、例えば、鳥取県というのは五十七万人しかいませんから、五十七万人で一議席にすれば、全定数は二百十幾つになるんです、小選挙区の定数は。ところが、鳥取県の定数を二にすると、全定数はその倍の四百四十近くになる。つまり、実際の定数は三百弱ですから、その間でどうしても格差が生ずる。これはアメリカ合衆国下院においても同じでございまして、小さな州、バーモント州と、カリフォルニア州やニューヨーク州の格差は一・八八倍になっているんですね。日本でもこれは、結果として東京と鳥取県の格差は、この都道府県別格差であるように、一・八倍台で今回もなっているわけでございます。

 そして、今回の改正で画期的なことは、今後の五年間の国勢調査の推移も加味しようと。なぜなら、前回の判決で、一・九九八倍にしたにもかかわらず、東北、宮城県で二万人の宮城五区の人口減があった、被災地でございましたからそういうことがあった、しかし形式的には二・一倍強になった。これも違憲状態であるという判決が出ました。私は賛成しかねるわけでございますけれども。それは、ベースとしては国勢調査で考えなきゃいけないじゃないか、そういうことでございますが。

 それはともかくとして、我々国会は、最初に申しました憲法の解釈から見て、違憲状態であると言われること自体は国会の恥でもあるし、それから、全ての立法の根拠について疑いが持たれる。したがって、断固衆議院としては格差を是正していって、最高裁判決の線に沿っていかなければならない。それでまさに前回も二倍未満を達成しているわけでございますが、それでも人口変化がその後あるじゃないかということですので、今回は、人口異動推計を次の国勢調査に対しても行って、それも加味するという法律を昨年通して、それに基づいて区割り変更を行っている。

 このような考え方の推移というのは、次々に、一歩ずつではありますが、進化してきて、そして、これで少なくとも今の違憲判決が指摘する問題については、ようやく四回の改正を経て解決していく。しかし、もちろん小選挙区制度自体の問題点もございますし、今後どういう選挙制度がいいかというのは各党によっても意見が違いますから、我々としてはいろいろ検討を今後していかなきゃならないと思います。

 そこで、論点として、まず一つ、これは選挙部長で結構ですが、質問いたします。

 国勢調査人口、そして住民基本台帳人口とか有権者人口とか、いろいろなことが言われておりますが、日本では政府の公式統計というのは国勢調査ですから、やはり国勢調査に基づいて法のもとの平等を議論するのは国政としては当然の判断ではないかと思います。

 それから、有権者人口という議論もありますけれども、憲法の十四条の根拠というのは子供も含めた権利であるということを考えれば国民人口であって、有権者の数が、例えば地方の方が高齢者の割合が大きいとか、そういうもので格差を考えるべきではなくて、やはり子供を含めた国民の統計によるということを基本とすべきである。これは学説はほとんどそういうふうになっております。

 この点は、選挙部長、総務省にお伺いするけれども、小選挙区の区割りについて国勢調査を用いることとしている理由を簡単に言ってください。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の区割りにつきましては、昨年の衆議院選挙制度改革関連法に基づきまして、衆議院小選挙区の各都道府県の定数配分とそれから区割りの改定案の作成の基準として、最近の、直近の国勢調査の結果による日本国民人口を用いることとしておるところでございます。

 この点、国勢調査でございますが、従来から、衆議院小選挙区の定数配分あるいは区割りの改定につきましては、国勢調査人口は人口の把握そのものを目的として統計法、法令に基づき国が全国一斉に行う実地調査による人口であり、確度が高いということ、それから、衆議院議員の定数配分につきましては、大正十四年の衆議院議員選挙以来一貫して国勢調査人口を基準として行われてきていること、それから、国勢調査は五年に一度なわけでございますが、議員の定数配分についてはある程度の安定性を要することなどの理由により、国勢調査人口が従前からも使われてきていると承知しております。

細田(博)委員 国勢調査にはもう一つの問題がございます。それは、従来、各戸別に配付して各戸別に集めておりますから、日本に住む外国人の人口が含まれておるわけでございます。

 しかし、これは投票権がないわけですから、本来は除外すべきである、投票権がない人を母数に加えて格差というのは全く無意味でありますからという指摘はかねてしておりましたが、調査のときに、一〇〇%日本国民であるか、そうでないかという判断をしていなかったものですから、ただ自由に書き込んでいいということだったものですから、統計局にお願いして、今回の数字を出す前提として、若干ずれましたけれども、日本国民の人口というのを正確に選挙区ごとに出すように依頼を数年前からして、それが実現しておるわけでございます。

 例えば、全国で、外国人で日本で国勢調査に答えている者は、実に、もはや百七十五万人おりまして、有権者というか、人口の一・五%近くなっているわけです。コンビニへ行けばみんな外国人が働いているような時代になっておりますから、これは当然除外すべきである。

 そこで、今回の区割りについては、当然、外国人人口を除いてそれを計算したと思いますが、総務省、どのようにして行ったのか、質問をいたします。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、昨年五月に成立しました衆議院議員選挙制度改革関連法に基づきまして、総人口から日本国民人口を用いるということに改正されたことによるものでございますけれども、これは、国政選挙は主権者たる国民の代表を選ぶものであって、日本国民のみが国政選挙の選挙権を有すること、それから、先ほど細田先生からありましたとおり、近年、外国人の人口が増加して、一票の格差に関しても非常に重要な要素となっているというようなことを踏まえて改正がされたものでございまして、今回の区割り改定法につきましても、この法律に従って、日本国民人口を用いているものでございます。

細田(博)委員 今回は、したがって、日本人人口が確定的に出た、それをもとにまた区割りをやっていますから、東京一区のように非常に外国人人口の多いところは、見かけは非常に、二倍をかなり超えて、相当切らなくちゃいけないような状態でございますが、実質はそれほどではなかった。もちろん切る必要はあったわけでございますが、そういうことですね。

 そこで、私は、統計局にもお願いをしまして、速報値から実際の値が、日本人人口が出るまで今まで八カ月近くもかかって、半年以上かかっておりましたから、最初に発表するときは格差何倍と大きく出て、実際の日本人人口が出ると小さくなる、そういうことをやると誤解も生ずるので、最初から日本人人口を公表しろ、そのための調査をしっかり積み上げろということを要望してきたわけです。

 統計局長、大分御検討を前向きにしていただいたようですが、次の国調についてはどういう体制でございますか。

会田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一五年の平成二十七年国勢調査におきましては、調査実施から四カ月後に総人口と世帯数を速報値として公表しまして、一年後に総人口や、その内訳であります日本人人口などを確報値として公表いたしました。

 衆議院議員選挙区改定案の作成に直近の国勢調査結果に基づく日本国民の人口を用いることとなったことを受けまして、二〇二〇年の国勢調査におきましては、総人口から外国人人口を除きました日本国民の人口を特別集計しまして、二〇一五年のときよりも早期になります、最初の公表である速報の段階で公表することといたしております。

細田(博)委員 統計局もそのような体制を組んでいただいているということで、細かいことのようですが、もう無視できない数字でもありますし、外国人統計もいろいろ有用な使い道がありますから、そのように措置するということは大変大事だと思っております。

 そして、大事なことは、今回の法改正というのは、常に、次の国勢調査に対して、各選挙区ごとの人口趨勢を見て、大都市部は多少ふえるだろう、地方部は相当人口が減る、一番小さな鳥取二区、鳥取一区がどのぐらいになるかということが格差の原点でございますから、それで、鳥取一区なり二区を定数一としたときに、東京が、一番大きいところの格差がどのぐらいになるかということを推計しないと、油断をするとまた憲法違反状態になる、それは避けねばならないということで措置がされている。

 条文上はそういうことでありますから、平成六年に、当時の細川内閣が、いわゆる七党、七会派の政治改革論で小選挙区比例代表並立制ができて、そのときからずっと存在する憲法問題がようやく基本的には解決する。その他の問題まで解決するわけじゃないけれども、肝心の、衆議院議員あるいは衆議院のあり方が憲法違反状態じゃないかと言われることはない状態になっている。

 しかし、考えてみると、参議院が、これは参議院で今議論されていると思いますが、鳥取県という五十七万人の県で一名出しますと、今度は、それで二倍未満にしようと思うと、東京都は十人選ばなきゃいけないということになる。

 それで、この間の参議院の選挙は、合区問題ということで、鳥取と島根、高知と徳島は合区をした。しかし、このままほっておくと、二十の選挙区でこれから合区をしなければならないといった大問題が発生するわけです。今までのものを含めて、例えば愛媛と香川とか、石川と福井だとか、和歌山とどこかとか、長崎とどこかとか、全部合区をしなければその二倍問題は解決しない。

 これは、やはり憲法の改正、地方自治と法のもとの平等も含めて、基本的に、せっかく憲法改正議論が行われるわけでございますから、こういったことは我々も検討しなきゃいけません。政党側も検討しなきゃいけませんし、それから最高裁の方も考えてもらわなきゃいけないんですね。

 形式論で、この間までの判決は、合区をしなさい、衆議院も参議院も変わりありません、二倍未満にしなさいと簡単に言っていますけれども、そうすると政治そのものの仕組みがやはり壊れてしまうということで、二十と言っているのはかつての民主党案で、参議院の選挙法改正のときには、二十の県を合区しろという提案がありました。

 しかし、二つやってみると、地方は、今の党じゃありませんが、前の党で、民主党でそういう案がとりあえず出たわけでございますが、やはりよく考えていかなければならない。これは特に質問いたしません。我々国会の問題でございますから。

 それから、もう一つの問題は、今回、安倍総理が、党首討論の結果、国会議員の数はとにかく定数削減するんだ、どうでしょうかと言われて、そうですねと言った、まあいろいろな経緯があって、定数削減を常にすべきだすべきだという議論が長い間行われてきた。

 佐々木調査会では、日本は決して定数は多過ぎない、アメリカ合衆国下院は膨大な人口がありますから例外とすれば、ヨーロッパその他の国から見ると国会議員の数は多過ぎない、しかし、そんなにやりたいんなら十減したらどうだといって十減に今度なるわけで、具体的に県ごとに割り振りするわけですね。その結果として、定数が小選挙区の場合は六減するわけです。

 高市総務大臣の地元の奈良も、何か格差とは余り関係ないのに、アダムズ方式とやらという数式によって、一減もやむを得ないでしょう、のみなさいと。奥野議員もおられますけれども、そういうことになっているわけですが、これから、法律で書いてありますから、見直し条項はありますが、そのとおりやると、さらに九増九減しなきゃいけないんですね。

 今回でも、被災地の青森や岩手や、奈良や三重や熊本、鹿児島も。私は、本当は民主主義の原則からいうと気の毒だなと思っているわけですが、それがさらに宮城、福島、新潟、滋賀、和歌山、広島、山口、愛媛、長崎と九減しなくちゃいけない。

 それは何のためにやるかというと、東京が四増、神奈川二増、埼玉、千葉、愛知を一増するためにやる。東京が大きいことは事実ですが、計算方式によるとそうなっちゃう。地方の国政に対する意見が、五人区が四人になり、四人区が三人になり、和歌山県は三人区が二人区になる。そういう内容が、今、法律的には決められて、みんなでわっしょわっしょと去年決めたわけですが。

 それで、総務大臣も被害者として伺いますけれども、何でこうなっているんだろうか。決めたことだからしようがないというのは一つのあれだけれども、決めたことならしようがないのか。やはり民主主義の基本と憲法十四条の格差の議論というのはバランスがとられなきゃいけない。参議院もこれからそうですね、地方自治との関係と。

 したがって、総務大臣に唯一の質問ですが、その辺の御感想を、実際に定数削減にこれからなる、もうこの法案が通れば一減を現にやらなきゃいけない、そういうお立場と総務大臣としてのお立場の葛藤があるかもしれませんが、ちょっとお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。

 地方の立場というのはもうちょっと大切にしないと。さっき言ったように、東京は人口が戦後これほど増加して、地方はどんどん減っている。それで、また地方の国会議員を減らして代表の意見を減らすということ自体について、思想的にちょっと私は受け入れがたい点があるんですが、どうぞ。

高市国務大臣 地方の小選挙区の定数が削減されることを懸念する意見があるということについては、承知をいたしております。

 総務省としては、やはり地方創生を進めて地方への人の流れをつくり出していくという取り組みも非常に重要だと考えております。

 しかしながら、今回御審議を賜っております法律案でございますが、議員立法によって平成二十八年五月に成立した衆議院選挙制度改革関連法においては、衆議院議員の定数削減や一票の格差を是正することが規定されており、この法律に基づいて作成し、御審議をお願いしているというものでございます。

 各都道府県への小選挙区の定数配分の方法も含めまして、衆議院の選挙制度のあり方については、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でございますので、これは各党各会派で御議論いただくべき事柄だと考えております。

細田(博)委員 参議院の問題が大きな問題を含んでいるということは、先ほど申しました。単純に二倍未満とすることは、七十三議席しかない選挙区選挙においては難しい。だから、合区をするかしないか。すると、都道府県の代表という性格が失われる。それでいいのかどうかということで、今、全国知事会は、むしろ反対である、何とか工夫してほしいということを言っているわけですね。

 また、衆議院の場合も、今後の検討事項が入っておりますけれども、これで十減をして、定数もそこまで削減した。そして、それでももっと、あと何十もやれと言う人はありますし、いつぞやのマニフェストで、本当は八十減らさなきゃいかぬと言った党もあった、今はない党ではございますが。

 しかし、余り減らすことばかり言っていることは、議会が逆に弱体化する原因にもなるので、法律上の見直し論も含めて、特に総務省は地方自治というものを所管しており、知事会、市長会その他からさまざまな要請が出ているわけですから、選挙部長、この点については何か考えがあるかどうか、答弁を願います。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 非常に重たい質問でございますが、衆議院及び参議院の選挙制度のあり方につきましては、いずれも国会における審議や各党各会派における議論の積み重ねの中で現在のような制度となっております。小選挙区比例代表並立制が平成六年に成立しまして、そのとき、同じ年に、参議院の選挙区の定数是正が何増何減という方式を初めて採用したのもまた平成六年でございまして、その後もずっと議論がされているというようなところと承知はしております。

 いずれにいたしましても、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でありますので、各党各会派において御議論いただくべき事柄と考えております。

細田(博)委員 今度の三年後の国調に基づくアダムズ方式による定数増減で、肝は、やはり最も格差の大きな東京都を四増することに結果的になる。人口統計によって、計算値で変わってくるんですが。東京都の選挙区というのは今二十五区あって、実はきれいに分かれているんです、市区町村が。大田区を二つに分けざるを得ないから大田区と品川区、目黒区と世田谷区、練馬区と豊島区、北区と足立区、江戸川区と葛飾区、この五つだけが、人口が圧倒的に多いところですから、二つにまたがって一つの区にするということでおさまっている。港、千代田、新宿もそうだ。

 ところが、今回、格差ということに着目しただけでほとんどの市区町村が、例えば板橋区も切れる、それから杉並区も切れる、それから世田谷区なんかは三つに切れて、そして、渋谷区や新宿区は何かずたずたになっていろいろなところが入ってくる。そういう区割りを強いる。いわば特別区といえども一つの自治を形成しているわけですから、そういうことになって非常に形式的なことになる。これを四増すると、東京都の区割りは全てめちゃくちゃになりますよ。それはもう予想の範囲内なんだ。

 それも含めて、私は、地方自治の実態から見て何がいいのかという観点で、もう一度、自治制度と投票制度、特に衆議院の制度をどう考えるかということについてはよく検討してもらいたいと思いますが、選挙部長から答弁を願います。

大泉政府参考人 先ほど申し上げましたけれども、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でございますので、まず各党各会派において御議論いただくべき事柄と考えております。

細田(博)委員 最後になりましたが、そういった、やってみろということでやってみるわけでございますが、それぞれ制度というのは、それぞれの問題点を包含しているわけですから、我々国会も実態に即して再検討をしていく必要もある。

 小選挙区至上論者もおられますよ。その場合には、格差至上論者、そして、できるだけ都会をふやせと言う人もいるかもしれない。しかし、地方の人の権利もちゃんと保護しなきゃならない。そもそも党によっては、小選挙区制も、ぎりぎりやっても、これはよろしくない、定数も減らし、民意を代表する部分が小さくなり過ぎる、だから反対であると。うなずいておられる党もありますけれども。

 だんだん政党の数が大きくなってくると、少数政党ほど不利になるような制度なんです、これは。時に政権交代が起こるという意味では当初の目的は達成しているけれども、少数政党にとっては明らかに不利な制度でございますから、それをどうするかということも含めて、やはり今後、選挙法というのはよく考えていくべき問題である、憲法だけではない、政治の実態、民意の反映という意味で考えるべきであると思います。

 以上、質問を終わります。

竹本委員長 次に、藤原崇君。

藤原委員 自由民主党の衆議院の藤原であります。

 私の方からも、今回の公職選挙法の改正について質問をさせていただきたいと思っております。

 私としては、この一票の格差の問題、非常に難しい問題があるんだろうと思っております。ただ、法律そのものではなくて、その前提となる最高裁の裁判のあり方、あるいは法務省の裁判の進め方、そういう点を中心にお聞きをしていきたいと思っております。

 まず、前提として、総務省にお伺いをしますが、今回の区割り再編で市区町村の分割はどれくらい生じたか、改定前の数字とあわせて示していただきたい。そして、新たに分割される市区町村について、当該市区町村の首長や議会からどれくらい抗議があったか、そのことをお示しください。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の区割りの改定案では、分割市区町の数が、従来八十八でございましたが、十七増加して百五となるということとなっております。この内訳でございますが、定数が減少する県におきましては、九の市と町の分割が解消された一方で、その他の都道府県においては、都市部を中心に二十六の市区が新たに分割されて十七増加するということとなっております。

 また、市区町村からの、市の区域を分割しないように求める要望書、意見書などにつきましては、分割の可能性のあった市も含めまして、勧告の前後でございますが、全部で十四の団体から提出がございました。そのうち、今回の区割り改定案により新たに分割等をされた二十六のうちにおいては六市から要望書等の提出があったということでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 今回の区割りの改定でさらに分割がふえた、それについては、一部の市区町村からは、そういうことはしないでいただきたい、やはりそういう要望もあったということであります。

 ただ、この区割りをどうするかということは、やはり一票の格差をどう是正するかということが至上命題でありますので、二倍以内にしなければいけないと考えるとどうしても分割は避けられないということになります。

 その点を翻って見ますと、そもそも二倍以内というのが必ずしも正しいのか。最高裁の判決がある以上、正しいということになるんだとは思うんですが、ただ、憲法の解釈として本当にそれが正しい解釈なのかという点が問題になるんだろうと思っております。

 そういう意味で、最高裁にお聞きをします。

 一票の格差訴訟を例にとってみますと、最高裁の二倍以内にという判例の結果、実質的に、市区町村の分割が避けられない状況になっています。これについては、先ほどのとおり、各地域の首長さん方などからネガティブな意見も出されております。

 一般論としてお尋ねをしますけれども、裁判所の判決に従って国の政策が大きく動く、結果的にそれによってある面でマイナスの影響が出てしまった場合、そのことについて裁判所はどうお考えでしょうか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 一般論としましては、判決の中には大きな社会的意義を持つものがあり、このような判決が社会にさまざまな影響を及ぼす可能性があるということは認識しておりますし、個々の裁判体におきましては、判決が社会に及ぼすさまざまな影響につきまして慎重に考慮した上で審理、判断するよう努めているものと考えております。

藤原委員 ありがとうございました。

 そういうのも含めてということでありますが、今回の区割り改定について、各県の知事に意見の聴取を総務省の方でしておると思います。何点か紹介をしたいと思います。

 福島県であります。「関係町村の意見」。「一票の格差の点については、合区や区割り変更の考え方も理解できるが、国会議員が日本国のために活動するための多くのヒントは、日本全国各地の風土や文化などにも多く隠されていると考える。このような観点から、各地域に均等な選挙区配分と一票の格差にとらわれない選挙制度の確立を要望する。」

 別なところです。「地方の声がますます届かなくなることは明白である。近年消滅自治体が象徴的な言葉となっているが、地方と大都市圏の格差は多方面にわたっており、選挙での一票の格差以上に地方は厳しい現実に晒されている。」

 それから、また別の県です。「前回の区割り改定により佐世保市の一部が四区から三区に分断され、住民の混乱が懸念されておりましたが、実際に分断された地区において、分断後初めて行われた平成二十六年の衆議院議員選挙における投票率の低下や無効票の増加という傾向が見受けられました。」

 このように、実際、県の知事さん方の意見の中でもマイナスの影響というのが指摘をされている。

 そのことを踏まえての判決だというお話がありましたけれども、結果的にマイナスの影響が生じた場合、それについて裁判所が責任をとる、あるいは是正をするということは、現行の三権分立の中で想定されているんでしょうか。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 これもやはり一般論ということになりますけれども、確定しました判決の内容につきまして、裁判所が社会に生じた影響によりその結論を変更などするということは、現行の三権分立の中では想定されていないものと承知しております。

藤原委員 二倍以内でなければならないと判決を出したとして、それが間違いかどうかというのは、正解がある話ではないと思いますので、一つの選択肢として二倍以内という判断をしたけれども、それによるメリットもあれば弊害もあるというふうになった場合であっても、それを少なくとも簡単には変えられない。変える方法というのは、恐らく判例変更というやり方しかないんだろうと思っておりますが、なかなか簡単ではないと思います。

 引き続き、ちょっと裁判所の話をお聞きしますけれども、一般論としてまたお尋ねをします。

 裁判所の判決において、国会の裁量権行使の方向性に言及した上で、国会に対して、特定の行動をとることを合理的期間内に果たすべきである、そういうことを判決で述べること、これは司法府の立場として許されるんでしょうか、お聞きをします。

平田最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 裁判所が、具体的な事件を審理、判断する際に、必要な範囲で国会の裁量権行使に関して一定の言及をするということは、三権分立の制度のもとであり得るものと承知しております。

 もっとも、どのような場合にどのような言及をするのがよいかということにつきましては、個々の裁判体の判断にわたる事項でありますため、事務当局としてはお答えする立場にないものと存じております。

藤原委員 私が念頭に置いているのは、ある最高裁の大法廷判決であります。そのうちの、ある裁判官の補足意見で、特定の方向性で国会は行動するべきである、そういうところまで言及をする。

 これは、私は筆が滑っているんだと思うんですね。妥当かどうかという判断をすることは裁判所として許される。だけれども、裁判所が、こういうふうにやるべきである、そういうふうなことまで言うというのは、私は誤りなんだろうと思っております。誰とかいつの判決ということは言いませんけれども、やはりそれは問題なんだろうと思っております。

 実際、ある新聞の中で、ある憲法学者さんの言葉で、「判決が投票価値の平等を実現する方法として、合区しか示していないのには違和感があります。論理的には、合区以外にも、人口の多い大都市部の定数を増やす方法もあるからです。」というように、判決は合区をしろ、合区をしろと、ほかにも立法府としてはいろいろな選択肢がある中で、なぜ合区だけを裁判所は言うのか、果たしてそれがいいことなのかということを私としては思います。

 さはさりとて、裁判所というのは当事者の訴訟活動に基づいて判決をするということで、一方当事者である法務省さんにお話を移したいと思っております。

 一票の格差訴訟に関する審理回数、これは第一審においては平均でどれくらいでしょうか。さらに、提訴から判決まで百日を超えている事例はどれくらいありますか。

武笠政府参考人 お答え申し上げます。

 一番近くに行われました平成二十八年七月十日の参議院議員の通常選挙について提起されました一票の格差をめぐる選挙無効訴訟は、全国で十九件ございます。

 このうち、弁論終結までの口頭弁論期日の回数が一回のものが十八件、二回のものが一件でございまして、平均いたしますと約一・〇五回でございます。また、これらの訴訟について、提訴から判決までに百日を超えているものは十件でございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 ほとんどが即日結審ということになります。これは、そういうわけではないんですけれども、法務省、国として本当に一票の格差の問題について必死で裁判に取り組んでいるのかということが問われるんだろうと思います。

 一票の格差訴訟で、今の区割りが二倍以内であるから最高裁判例に照らして問題がない、そういう主張をすることは当然大事でありますが、単に二倍以内とか合理的期間内であるというだけではなくて、二倍を超える格差も許容される場合があるのである、そういうような主張をするということは意味があると思うんですね。

 原告団の方は一倍にとにかく近づけるんだという主張をずっとしてきて、それによってだんだんだんだん、格差は三倍じゃだめ、二・五倍じゃだめ、二倍じゃなければいけないということで下がってきたという経緯があります。

 そうであれば、二倍を超えても許される場合もあるんだ、そういうことについて証人尋問等も含めて立証すべきと考えますが、法務省さん、いかがでしょうか。

井野大臣政務官 藤原先生にお答えいたします。

 以前にも先生から法務委員会等ではこの問題については御質疑をいただいているところでございまして、まず、認識でございますけれども、一票の格差訴訟においては、これまでの最高裁大法廷判決が示してきた判断枠組みに沿って我々としては主張、立証を行ってきたものというふうに考えております。

 平成二十六年に施行されました衆議院議員総選挙に係る一票の格差訴訟では、最高裁において、二倍を超える最大格差をもって投票価値の平等の要求に反する状態にある、そういった判断がされていることから、仮に最大格差が二倍を超えた場合、その合理性については十分な主張、立証をする必要があるというふうに考えております。

 先ほどの先生からの御指摘等も踏まえて、こういった国会での議論を踏まえた形での主張、立証を今後我々法務省としてもやっていかなければならないというふうに思っているところでございますので、ぜひ、これからもそういったさまざまな面で御指摘、御指導いただければというふうに思っております。

藤原委員 ありがとうございます。

 区割りが新しくなった改定案の面積の一覧が私の手元にあるんですが、一番大きい選挙区は北海道の十二区、一万五千三百十六平方キロということで、ちょっとよくわからないんですけれども、少なくとも、東京の大きさ、東京都が二千百平方キロということで、東京都七個分ぐらいということになるんでしょうか。逆に、面積が最小の選挙区というのは東京十四区、二十七平方キロということで、ちょっと何倍あるのかもわからないんですが、果たして、一万五千平方キロと、その一方で二十七平方キロ、こういうようなことを、幾ら二倍以内にするためだといっても、やはりそれは単純にどうかなという問題はあると思うんですね。やはりそういうところをしっかり裁判でも問題提起をしていただければと思います。

 時間の都合上、七番は飛ばさせていただいて、一票の格差訴訟において、例えば、当事者になる合区の地域の知事さん、こういう方に裁判所に行ってもらって、それがマイナスがあるとかプラスがあるとか、そういうことをお話しすることは非常に意義があると思うんですが、その点についての法務省のお考えをお聞きしたいと思います。

武笠政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十年以降に実施されました国政選挙に係るいわゆる一票の格差をめぐる訴訟におきまして証人尋問を実施した例は、これは原告、被告双方でございますけれども、実施した例はございません。

藤原委員 実施した例がないということですので、ぜひそういうこともすれば、裁判官はわからないわけですよ、ずっと法廷で判決を書いていると。地方の実情に必ずしも明るくない方もいらっしゃるかもしれないというときに、やはり、実際どうなんだと、そういう生の声を聞くというのは非常に大事なことだろうと思っています。

 今回の、今係属中の一票の格差訴訟では、原告団は証人尋問の申請をしていると理解をしております。それは恐らく採用されなかったのでありますけれども、前参議院議員の脇先生を証人尋問申請しているというふうに理解をしております。やはりそういうふうに、勝つためには何でもやらなきゃいけない。それは原告も被告もそうですよ。訟務局が、裁判で負ければ国の政策も大きく変わってしまう、そういうことを考えれば、何としても勝つ、やはりそういうような腹を決めて裁判をやってほしいなというふうに思います。

 こういうふうに、国の行方を大きく左右する裁判、いろいろあります。こういうのは、重要な局面では、法務省の訟務局の、役所の方だけではなくて、特にこういう一票の格差訴訟なんて、議会制民主主義の根幹にかかわると先ほどから言っています。それは、訟務局の役人の方だけではなくて、政務の方に出ていっていただいてしっかりやる。それこそこういう一票の格差訴訟みたいな裁判において非常に重要な意味があるんじゃないか。

 今、最高裁の大法廷弁論もたしか訟務局長だと思っておりますが、本来であれば、法務大臣が行ったっていいでしょうし、政務官が行ったっていいでしょうし、やはり政治家が行って弁論をして、重要な、もし和解があるようなときにも、役所の方だけではなくて政務が行く、これはインパクトもあるし、やはり大事なことと思いますが、法務省の御見解をお聞きします。

井野大臣政務官 先生御指摘のとおり、国の政策、施策を左右する重要な訴訟については、確かにふえている、沖縄の裁判等を含めてふえているということは認識をしております。

 こうした訴訟には、多角的に検討すべき重要な課題があるというふうに認識しております。そのため、大臣、副大臣、政務官、こういった我々政務にも、これまで以上に、職員から適時適切な指揮ないし指導を求められる機会がふえているところでございます。

 こういった訴訟に参加するかどうかは別にして、こういった機会に、先生の御指摘等を踏まえた形で、我々政務としての知識経験を、より職員に対して指導しながら、適切な訴訟遂行に反映していければというふうに思っております。

藤原委員 ありがとうございました。

 やはり、しっかりとやっていただいている中でも、議員が行くということ、そのことの意味というのは大きいんだろうと思うんですよね。どんな問題でも、うまくいかないとき、政務の方が行って問題の担当者としっかりお話をしていく、そのこと自体に意味があるんだろうと思っておりますので、ぜひ検討していただければと思っております。

 その次に、今度は、今回の法律に絡んだお話として幾つか聞いていきたいと思います。

 時間の都合上、十番の最初の青森の件はちょっと飛ばさせていただいて、区割りについて幾つかお聞きをします。

 まずは岩手県の区割り。

 法務省さんと最高裁さんは、もう質問はありませんので、もしあれであれば御退席をいただければと思っております。

 岩手県の場合は、岩手二区が非常に大きくなって、人口の割合からしても、ちょっといびつな形になっています。こういう区割りになったことは、しっかり総務省さんの方からこういう経緯でというのは御説明をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 区割り審の事務局をやっておりましたという点から、審議について御説明を申し上げたいと思います。

 岩手県でございますが、昨年の十二月に、区割り審議会の方において、区割りの改定案の作成方針というものを決定し、公表したところでございますが、定数減少県の改定案の作成の作業手順について、当該選挙区の区域内にある選挙区のうち、その人口が最も少ないものを手がかりとし、区割り基準に適合するように改定案を作成するものとするというふうに決めております。したがいまして、人口最少区は岩手県の場合三区でございましたので、それを手がかりとして考えを始めたところでございます。

 この考えていく過程で、例えば県の広域振興圏などを単位とすること、あるいは、一部の市町村などを現行の一区の方に編入してはどうかというような話も議論はされたのでございますが、人口のバランスなどを考えまして、最終的には、三区に属する市町を二区及び四区にそれぞれ分割して編入するのが適当であろうということ、それから、一区、二区に分割されている盛岡市、合併した盛岡市の分割につきましては、一区として分割を解消することとして、さらに、地勢、交通その他自然的社会的条件を総合的に考慮した結果、今回の区割りの改定案とされたものと承知しております。

 この区割り案により新二区の区域が広大になる点については、定数が一減になるということを踏まえまして、当該地域が東日本大震災の被災地であること、あるいは、経済圏等を考慮すれば沿岸部が一体にまとまった方が合理的ではないかというようなことでございます。それから、内陸部については、新幹線等でつながりがあるため、その点でまとまりがあるものというような考えから、改定案になったものでございます。

藤原委員 ありがとうございます。

 ちなみに、岩手二区の面積は約九千六百平方キロメートルということで、都府県の中では一番大きい選挙区になったということであります。

 それからもう一点は、ちょっと私の地元とは関係がないんですが、神奈川県。この神奈川県の区割りは、知事意見とは異なった形で市区町村の分割が行われております。知事意見を反映させなかった理由はどういうことであるかということを、ちょっと時間の都合もあるので、簡潔にお願いしたいと思います。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 神奈川県の知事意見では、分割でなく、入れかえの改定案の提示がございました。

 しかしながら、審議会におきましては、人口規模の大きな市区を異動した場合、選挙区の安定性を損ない、多くの住民に影響を及ぼすことから、今回の区割りの改定案の作成方針において、入れかえによっては相当数の人口が異動することとなる場合には、入れかえではなく分割するというふうにされたところでございまして、異動人口が大きい入れかえ案は神奈川県においては採用されず、分割による改定が行われるというようなことになったわけでございます。

藤原委員 二倍という命題を維持するためには、もうパズルのようにせざるを得ないわけなんですね。そこまでしてということ。一票の格差は大事です、憲法十四条は大事です。だけれども、そういうこと、あるいは、それで区割りが変わる有権者の方々、そういう方々のことも踏まえて本当に憲法解釈をして判決をしているのかということなんだろうと思っております。そういうところはぜひ、なかなかここで個別の裁判でどうこうとは言えないので、個人的な話として、それくらいにしておきます。

 それからもう一点。幾つかの県知事の意見には、区割りの具体案を決定する前に案を示して、利害関係市町村等から意見を聴取されたい、そういうようなものもありましたが、これに対して今回どのような対応をとったかということ、これも簡潔にお願いをしたいと思います。

大泉政府参考人 区割り案の作成に当たりましては、都道府県の行政、地勢、交通等全般に通じているという意味から、都道府県知事に対して意見照会を行って、その際に、関係市町村への意見照会をするなど、地域の実情を踏まえて意見を提出するようにお願いしておるところでございまして、この提出された地方の声、知事意見につきまして、区割り審の中で審議し、検討し、改定案の作成方針等に照らしまして合理性があると認められるものにつきましては、区割りの改定案に反映されているというようなことでございます。

 お尋ねのように、仮に、新たな区割り案を最終決定する前に関係自治体に示して意見を聴取するという方法をとった場合、全ての団体の意見が一致するような案を作成することは事実上極めて困難だと思います。団体間の意見の不一致などにより、改定案の審議や区割りの作業に支障を来すおそれがあるというようなことを考えております関係で、そのようなことは行っていないわけでございます。

藤原委員 十一番は飛ばして、最後に一問だけお聞きをしますが、今、お話を何度も聞いているように、どうしても、調整をかけてしまうと、利害関係を集約というのは不可能だということなんだろうと思っております。それだけのことを最高裁の判決は強いているんだ、そういうことは現実として直視をしていただいて、それはやはりしっかり考えていただかなければいけないんだろうと思っています。

 単に理屈とか歴史的な経緯で二倍以内というだけであれば、何も外部経験は要らないわけですよ、裁判所の裁判官は。本だけ読んでいればいい。でも、そうではないわけですよね。外部経験をしてしっかりと、ちょっとにらんでいるみたいなあれで怖いなと思うんですけれども、外部経験をしてというのは、やはりいろいろな意見がある、そこをしっかりということでありますし、法務省さんにも、それをしっかり裁判官に届ける、そういう点で頑張っていただきたいと思います。

 最後の質問になります。

 この一票の格差訴訟、今のところ、合憲あるいは違憲状態ということで、違憲で無効という判決は出ておりません。しかし、幾つか反対意見の中では、無効である、そういうのも徐々に出ております。

 もし違憲判決が出た場合、これはその判決内容次第ですけれども、緊急に対応する必要があると考えますが、その点についての考え方をお聞きしたいと思っております。

冨樫大臣政務官 お答えいたします。

 これまで、一票の格差訴訟において、最高裁で無効判決が出されたことはありません。

 今後、具体の訴訟が提起された場合にどのような判決を出すかは司法において判断されることであり、仮定の話についてはお答えできかねるところであります。

 その上で、一般論として申し上げると、訴訟が提起された選挙区について選挙が無効とされた場合には、当該選挙区から選出された議員は将来に向かって身分を失うこととなります。

 以上です。

藤原委員 ありがとうございます。

 いろいろ難しい問題もあるんですが、ぜひ万全な対応をしていただくようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

竹本委員長 次に、山田美樹君。

山田(美)委員 自由民主党、東京一区選出の山田美樹でございます。

 質問の機会をいただき、感謝申し上げますとともに、このたびの改正案を作成されました関係者の方々の多大なる御尽力に深く敬意を申し上げます。

 まず冒頭に、先日亡くなられました与謝野馨先生の御生前の多大なる御功績に深く敬意を表しますとともに、心から御冥福をお祈り申し上げます。

 与謝野先生が中選挙区時代から四十年近く御活躍された東京一区は、平成六年に現在の小選挙区比例代表並立制に移行して以来、同じ地域のまま変わらずに今日まで来ましたが、今回の改正案では、港区と新宿区の一部が隣接区に移行するとの案になっております。

 この地域にとっては初めて経験する区割り変更ということになりますが、私が直接お会いした該当地域の方々の中には、ニュースでは聞いていたけれども、まさか自分の家が区割り変更の対象になったとは知らず、言葉を失ってしまう方も数多くいらっしゃいました。一般の方がみずからネットで区割り変更の詳細を調べるということはまれでしょうし、勧告を見ただけではよくわからないという声も多数ありました。実際には、選挙の告示後にポスター、掲示板を見て初めて気づくという方も多いのではないかと思います。

 過去の区割り変更では、対象地域の有権者への周知はどのように行われてきたでしょうか。今回の改正では、百五市区町にも上る選挙区で区割りに変更があり、有権者に対してより一層丁寧な周知が必要です。

 前回改正時に比べてスマホの普及率が格段に上がったことで、みずから積極的に情報を入手できる有権者とITリテラシーの低い有権者との格差の問題もさらに深刻になりました。ネットを使わない御高齢者の方々が政治に参加する権利が制約されないように、ネット以外での周知も拡充する必要があろうかと思いますが、今回は具体的にどのような周知方法をとられるのでしょうか。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省としては、これまで改定時、何度かございましたけれども、各改定ごとに、同じではございませんけれども、新しい区割りの地図や制度改正チラシなどを作成し、総務省ホームページ及び総務省の広報誌などに掲載するなどして、周知啓発を行ってきたところでございます。

 そのほか、関係の自治体においては、市民便り等の住民向けの広報誌などによる周知、あるいは町内会、自治会へのチラシの配布など、周知啓発に取り組んできたというふうに伺っております。

 むしろ、紙媒体というのがこれまでは多かったというようなところだと思います。今回においては、御指摘がございましたとおり、電子媒体などによりまして広報に力を入れていきたいと考えております。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 単に周知が必要な範囲が広がるというだけではなくて、より幅広く、多様な方法で、過去の前例にとらわれずに、最大限の周知を行っていただきたいと思います。

 続きまして、同じ自治体で選挙区が分かれる、いわゆる分割区の問題についてお伺いいたします。

 お手元の配付資料の一枚目から三枚目まで、それぞれ平成十三年、二十五年、二十九年の区割り勧告における分割市区町の一覧でございます。

 平成十三年勧告では分割区は十六市区であったのが、平成二十五年には平成の大合併で八十八市区町に拡大し、今回、過去最多の百五市区町に上っております。東京都内では、このような分割区が五区から十七市区にふえました。

 区割り案の作成方針には、「選挙区の改定に当たっては、市区町村の区域は、分割しないことを原則とする。」とありますが、例外であるはずの分割区は、人口割合で見ますと、全国レベルで二二%、東京都では五七%、東京二十三区では七四%に上ります。全国では五人に一人、東京二十三区内では実に四人に三人が行政区と異なる選挙区で投票することになります。

 行政サービスの多くは行政区に基づいて区割りがなされております。例えば保健医療圏ですが、東京都では、一次医療圏を区市町村単位に設定し、二次医療圏は複数の区市町村を単位とする十三の圏域に設定しておられます。また、東京消防庁の各消防方面本部も、基礎自治体に沿って編成をされているなどの例がございます。

 行政サービスは、教育、福祉、治安、防災、都市計画など多岐にわたりますが、こうした行政サービスを提供する際の地域的単位で、行政区に基づかない区分けをしている例はありますでしょうか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 一般的に、市区町村が提供する行政サービスにつきましては、市区町村の区域ごとにそれぞれ提供されているものと考えておりますが、条例で必要な地に支所や出張所を設けて事務を分掌させる例や、合併前の旧市町村の区域に事務を処理させるための合併特例区を設ける例があるものと承知をいたしております。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 合併特例区などは別として、行政サービスのほぼ全てが行政区に基づいた地域的単位で実施されているということではないかと思います。

 だとしますと、衆議院議員の任期というのはおおよそ二年半と言われておりますが、分割区の有権者の方々は、三百六十五日行政区に基づいた生活をしていて、約九百日に一日だけ訪れる衆議院選挙の投票日だけ、ふだんの生活とは異なる地域で投票するということになるのかと思います。

 続いて、行政区よりもさらに住民にとって身近である町内会、自治会、さらに、そのまとまりである町会連合会や出張所管内についてお伺いをいたします。

 お配りした資料の四枚目は、今回、区割りの分割区市町の中でも、特に出張所管内をまたいで分割された市区町の一覧です。百五区市町のうち二十九区市町が該当いたします。

 先般のこの委員会におきまして、竹本委員長の御質問に対する久保参考人の御答弁の中で、市区町村の分割に当たっては、市区町村が三つ以上の選挙区にまたがることを避け、適切な隣接選挙区を選ぶように努めたこと、そして、原則として投票区を手がかりとし、支所、出張所の状況、町内会、自治会などの地域的なつながり、道路や河川の状況など、それぞれの地域の状況を考慮して、必要最小限となるような案を作成したとの御答弁がありました。有権者にとって投票所が変わらないということを最優先にし、その結果、やむを得ず、支所、出張所、町内会、自治会が分割されるケースが生じたということかと思います。

 町内会、自治会は、法律には定めのない、法的には国や地方自治体とは無関係の自治組織ですけれども、現実には、地域の安全の確保ですとか、行政が町内会、自治会に期待している面も多く、町内会、自治会が行政機関への要望を行うという例もございます。

 行政は、町内会、自治会をどのように位置づけているのでしょうか。特に、過疎地においては人口の減少から、都市部においては集合住宅の増加から、また高齢化の進展によって町内会、自治会の存続が極めて難しい状況にありますが、国や地方自治体はどのような支援策を行っているのでしょうか。

安田政府参考人 お答えいたします。

 自治会、町内会等は、住民に身近な存在として、住民相互の連絡や防災、防犯など、さまざまな地域的な共同活動を行っております。市町村は、地域のさまざまな課題にきめ細やかな対応を行うため、自治会、町内会等を重要なパートナーと位置づけ、連携協力しながら、地域の課題に対応していくことも行われているものと承知しております。

 例えば、市町村におきましては、自治会、町内会等に対しまして委託や助成等を行い、公共的施設の運営、子供の見守り、防犯、防災、高齢者のサポートなどを実施している、こういう例も見られるところと承知しているところでございます。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 お話しいただきましたように、まさに行政のパートナーとして、地域のコミュニティーにおいて大きな役割を果たしている町内会、自治会ですけれども、実は、今回のこの改正案の中で、港区内において、一つの町内会が二つの選挙区に分割されているという例が二つございます。

 その一つである芝浦三・四丁目町会は、港区の芝浦地区、JRの山手線、京浜東北線の田町駅の海側で、古くからの町にタワーマンション群が立ち並ぶようになり、過去十五年で人口が三倍にふえた地域です。今後も人口増加が見込まれるため、新たに小学校が新設される予定とも伺っております。また、この地区の隣では、二〇二〇年の開業に向けてJR品川新駅が着工したところであり、今も再開発が続く地域です。

 都心の町内会はどこも、古くからの住民とそれからマンション住民の方々との共生が課題でございますけれども、まさにこの町会も、長年の御努力の結果、青パトや清掃、夏の芝浦まつりなど、マンション住民も含めた地域コミュニティーを築き上げてこられました。

 今回、町会が二つの選挙区にまたがることになり、大変困惑しているというお声を伺っています。また、もし仮に、三年後、四年後に区割りを見直すとしても、変化のスピードが速いために、四年後には町の状況が全く変わっているかもしれないという御懸念の声をいただいているところです。

 このように、分割区は、有権者の立場からさまざまな問題を抱えているのと同時に、分割区から選出される衆議院議員も多くの悩みを抱えることになります。今回の改定では、東京七区が五つの行政区から成り、そのうち渋谷区を除く四つの行政区は分割されて、ほかの選挙区にも含まれておりますし、また、東京二十一区も六つの行政区にまたがるという状況です。

 国政への要望は、行政区によって異なり、それが対立することもあり、一人の国会議員に委ねるのは不可能な場合も考えられます。例えば首都圏空港の機能強化の問題では、発着枠の拡大に伴う飛行経路の変更については自治体によって利害が異なりますし、これは鉄道や道路についても同じことが言えるかと思います。

 行政区の分割に対しては、自治体の長からも見直しを求める声が上がっており、首都圏の知事とそれから政令指定都市の市長らが発表した意見書の中では、衆議院議員は地域の声を国政に届けるという住民の代表としての性格もあることから、自治体の一体性が損なわれた区割りは望ましいものではないとしております。

 また、さまざまな行政課題を国、都道府県、市区町村の縦のつながりの中で解決していく中で、現行の衆議院の選挙制度のもとでは衆議院議員と都道府県議会議員と市区町村会議員のそれぞれの守備範囲の整合性がとれない選挙区が出てくるということは、かねてから指摘をされておりました。

 恐らく、戦後、日本の地方自治の仕組みができたときに、これほどまでに都市と地方の格差が広がってしまうということは想定できなかったのではないかと思います。衆議院議員に課された役割は何なのかということを今改めて考えさせられております。

 憲法上は、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と定められており、平成二十三年の最高裁判決においても、衆議院について、「この選挙制度によって選出される議員は、いずれの地域の選挙区から選出されたかを問わず、全国民を代表して国政に関与することが要請されている」とあります。

 北は北海道から南は沖縄まで、どこから選出されていようと全国民の代表として国政のあらゆる問題に取り組む責務がありますが、その一方で、衆議院議員には、選出された地元の地域の事情をよく理解し、地域の発展に尽くす役割を果たすという側面もあります。現に、地域の声を国政に届けてほしいというさまざまな要望があり、また、地域と国とのパイプ役であるということは紛れもない事実であります。

 区割りの見直しによって行政区と選挙区の乖離が広がっていく中で、衆議院議員の地域代表的な性格をどのように捉えるべきか、御意見をお伺いいたします。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 九都県市首脳会議が今月十六日に閣議決定をされました区割り改定法案について市区町村の分割への懸念を示した意見表明文を公表したことは、承知をいたしております。

 区割り改定案を作成する際の区割り基準などを定めた区割り改定案の作成方針では、「選挙区の改定に当たっては、市区町村の区域は、分割しないことを原則とする。」とする一方で、分割基準に該当する場合には分割するものとされております。

 なお、先ほど委員がお示しのように、衆議院及び参議院の両議院の議員について、日本国憲法第四十三条においては、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」とされておりまして、平成二十三年の最高裁大法廷判決においては、この選挙制度によって選出される議員は、いずれの選挙区から選出されたかを問わず、全国民を代表して国政に関与することが要請されている旨が判示されておると承知をいたしております。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 まさにこの衆議院議員の地域代表としての位置づけをどう捉えるかという問題が都市部において特に深刻だと思いますのは、近い将来、ほぼ確実に今回以上の大幅な区割り見直しが予定をされているからです。

 今回の改定は、緊急是正的な措置として、各都道府県の選挙区の数は変更されておりませんが、次回の平成三十二年大規模国勢調査に基づく区割り改定では、アダムズ方式を適用すると東京都の小選挙区は四増する、四つふえると言われております。

 東京の住民にとっては、今回分割区がふえて選挙区がわかりづらくなったという声もさることながら、五年後の改正でもう一度、今度はもっと大幅に選挙区が変更されることに対して不安を抱いている方が少なくありません。今回の新区割りの策定に当たっては、三十二年改正時に選挙区の数がふえることを見越した検討はなされているのでしょうか。

 もちろん、区割り審はあくまで現状の人口に即して区割りを検討するわけで、将来の見込みの議論をすることは困難かとは思いますが、一方で、区割り改正の対象地域の有権者の方々からすれば、今回の区割り変更は暫定的なもので、次回はまたガラガラポンになってしまうのかという御心配の声も聞かれますし、次の選挙では応援する人が変わるけれども、その先また別の人を応援することになるのかといった御質問もいただきます。

 対象地域の有権者の方々に新しい区割りをどのように御納得いただくのかという問題は、一票の格差是正という制度改正の目的や方法論とは別の次元の問題として、説明を重ね、御理解をいただく努力を続けていかなければなりません。

 今回の改正と次回の改正をあわせて、有権者の方々にどのように説明をしていくべきだとお考えでしょうか。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 昨年十二月二十二日に衆議院議員選挙区画定審議会において決定された区割り改定案の作成方針においては、お尋ねのような、平成三十二年国勢調査の結果に基づく定数配分の見直しに係る基準は設けられていないと承知をいたしております。

 五年後に再び区割りが変わることにつきましては、衆議院選挙制度改革関連法本則では、平成三十二年の国勢調査の結果に基づく区割り改定において、各都道府県への定数配分が変わることとなりましたが、同時に、同法附則では、次回の見直しまでの五年間を通じ、人口の格差が二倍未満となるよう求めておりまして、今般の区割り改定案の作成に当たっては、平成二十七年国勢調査人口から推計した平成三十二年見込み人口においても格差が二倍未満になるよう区割り改定を行うこととされておると承知をいたしております。

 したがって、今回の区割りの改定後、衆議院選挙制度改革関連法の本則に基づき、平成三十二年国勢調査の結果によりまして改めて区割りの改定が予定をされておりますが、これは、同法において一定の格差是正を実現していくためのプロセスであると理解をしております。

 いずれにせよ、人口動態に応じ、投票価値の平等を実現するための見直しは今後も続くことになると見込まれますが、この点については、あわせて説明を尽くしてまいりたいと思います。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 この後、最後の質問となりますけれども、これまで、主に都市部である東京の立場から、一票の格差是正と地域性の問題について論じてまいりました。

 特に、今後も人口がふえ続ける都心部では、住民の生活権を守ることが死活問題であり、過疎地とはまた別の意味で、選挙制度が地域のコミュニティーに与える影響は少なくありません。一票の格差是正を追求していくと、過疎地の議席数が減って地方の声が国政に反映されにくくなるというふうに一般的には言われておりますけれども、現実には、地方だけではなく都市部においても、定数増によってさらに選挙区が細分化され、複雑化し、地域の声が分断されて国政に反映されにくくなるというのが実態であろうかと思います。

 私は、俺の一票の価値が低過ぎるといって文句を言う人に一度も出会ったことがありません。東京にお住まいの方の中には、地方から上京してきた方や、父母の代、祖父母の代に東京に出てきた方々も大勢いらっしゃいます。むしろ、地方が人口減で定数減となり、地方の声がどんどん小さくなっていくことを心配する声がほとんどです。東京の議員の数をふやせという御意見は聞かれません。

 一票の格差是正のために、先輩方の多大なる御尽力をいただいて、長年にわたって累次の改正を重ねておりますけれども、その結果が、都市部の住民、地方の住民、それぞれの利益にかなっているかどうか、有権者は何を求めているのか、改めて考える時期が来ているのではないかと思います。投票価値の平等の実現と同時に、日本人が、この国の人口動態がたとえ将来どのように変わっても、どこに住んでいても、一人一人の声が確実に国に届くということも国民の権利であります。

 地方行政と選挙制度を預かる総務大臣のお立場から、有権者の権利と法のもとの平等について御意見をいただければと思います。

高市国務大臣 きょうは山田委員の御質問を通しまして、一票の格差是正というものを最優先に取り組んでいった場合に、地方だけではなくて都市部でも有権者の声が届きにくくなる、そういった問題があるということを伺いました。

 しかしながら、一票の格差訴訟において最高裁から違憲状態と判示された、こういうことから、議員立法によって平成二十八年五月に成立した衆議院選挙制度改革関連法においては、衆議院議員の定数削減や一票の格差を是正することが規定されていて、その法律に基づいて今回法律案を提出させていただいております。

 また、その衆議院選挙制度改革関連法におきましては、選挙制度のあり方については、不断の見直しが行われるものとする旨の検討条項を置くということが附則にございますので、議会政治の根幹にかかわる重要な問題を各党各会派で御議論をいただくことを期待申し上げます。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 以上で質問を終わります。

竹本委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、この倫選特で公明党を代表して質問させていただく機会をいただきまして、大変にありがとうございます。

 まず、今回のいわゆる区割り改定等法案につきましての我が党の立場というものを申し述べた上で、質疑をさせていただきたいと思います。

 今回のいわゆる区割り改定等法案というのは、以下のような経緯で提出されてきました。

 昨年の通常国会におきまして、五月二十日に成立し、五月二十七日に公布された衆議院選挙制度改革関連法に基づきまして、衆議院議員選挙区画定審議会、いわゆる区画審が、平成二十七年簡易国勢調査に基づく区割り改定作業を行いまして、審議を重ねられ、本年四月十九日に安倍内閣総理大臣に対して、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告を提出されました。政府は、その勧告に基づきまして、比例代表選出議員のブロック別の定数規定をあわせた本法律案、いわゆる区割り改定等法案を五月十六日に閣議決定の上、国会に提出されたわけでございます。

 このように経緯を見ますと、昨年、自民党、公明党で提出し、可決、成立した衆議院選挙制度改革関連法に基づいて、第三者機関である、いわゆる区画審に区割りの改定作業をお任せした趣旨と経緯からして、私ども公明党としては、勧告を尊重し、その勧告に基づいた今回の区割り改定等法案には賛成でありまして、御審議の上、速やかに成立をさせなければならない、そのように考えているところでございます。

 その上で、これからの政府の対応も含め、何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、一票の格差の是正という観点で総務省の見解をお伺いしたいと思うんですが、平成二十一年八月三十日施行の第四十五回衆議院総選挙、平成二十四年十二月十六日施行の第四十六回衆議院議員総選挙、平成二十六年十二月十四日施行の第四十七回衆議院議員総選挙という直近三回の衆議院議員総選挙に対する一票の格差訴訟に関して、最高裁判所は違憲状態とする判決を出しております。ですから、一票の格差の是正をいかに図るかというのが選挙制度改革においても最大の焦点でございます。

 本法案に基づきますと、平成二十七年簡易国勢調査の日本国民の人口で最大人口格差が現行で二・一七六倍なのが、さらに平成三十二年見込み人口での推計でも二・五五二倍となっているのが、今回の改定案で一・九五六倍、さらに平成三十二年見込み人口の推計で一・九九九倍になるわけでございます。

 これは、先ほど冒頭で資料を提出された細田先生の資料にもわかりやすく今までの経緯を書いておりますけれども、さらに、人口最少選挙区との格差が二倍以上となる選挙区の数が、現行制度のままであれば、平成二十七年日本国民の人口で三十二選挙区、平成三十二年見込み人口に基づくと七十一選挙区となるのが、今回の改定案ではそれぞれゼロ選挙区となって、格差二倍以上の選挙区は解消されるということになっております。

 また、過去の改定時等の状況を比べても、最大格差が平成六年画定時の二・一三七倍、平成十三年改定時の二・〇六四倍、平成二十五年改定時の一・九九八倍を、今回の改定案ではさらに縮め、一・九五六倍と過去の改定時の中で一番小さい格差となっているわけでございます。

 このように、今回の改定案は、昨年成立、施行されました衆議院選挙制度改革関連法の附則第二条三項一号で規定されました二つの基準があります。一つは、「平成二十七年国勢調査人口の二倍未満であること。」またもう一つは、「平成三十二年見込人口の二倍未満であることを基本とすること。」という基準を満たすものであると私どもは考えますけれども、総務省としてどう評価されているのか。

 あわせて、仮に今回の区割り改定等法案に基づいて次回衆議院議員総選挙を行った場合、直近三回の総選挙で違憲状態と判決した司法のこれまでの判断に耐え得ると私どもは考えておりますけれども、総務省として考えておられるのかどうか、総務大臣の見解を伺いたいと思います。

高市国務大臣 今、佐藤委員が御質疑の中で紹介をしていただきました二つの基準でございます。これは、衆議院選挙制度改革関連法の中で求められたものでございますが、この規定に基づいて衆議院議員選挙区画定審議会において区割り改定案について議論が行われ、その結果、平成二十七年国勢調査による日本国民の人口において最大格差が一・九五六倍に縮小されました。

 この数値については、これまでの区割り改定時などの最大格差と比較して最も格差が縮小されており、最高裁判決の要求する一票の格差の是正に資するものであると考えております。

佐藤(茂)委員 ありがとうございます。

 それで、先ほどから議論になっておりますけれども、今回の区割り改定法によりますと、区割りが変更される選挙区の数が十九都道府県九十七選挙区となります。幸い私の選挙区というのはそういう対象にはならなかったんですが、九十七選挙区ですから、それぞれ当事者である各議員の先生方にとっても悲喜こもごもだと思うんです。

 具体的に言うと、特に分割される市区の数では、分割が解消される市町の数が九市町で、新たに分割される市区の数が東京都を中心に二十六市区、また分割の区域が変更される市区の数が十市区となり、差し引き十七市区の増となって、分割市区の数が、先ほどの細田先生の一覧表にもありますが、八十八から百五とふえるわけでございます。

 これは、我々選ばれる議員の方にとっても大変な問題であると同時に、もっと何よりも心配なのは、有権者の混乱という点でしっかりとした対応をしなければいけないだろう、そのように考えます。具体的に言うと、目の前の道路を挟んで、道路の向こうは違う選挙区だという方がふえる可能性があるわけであります。

 今回は、特に九十七選挙区と対象が非常に多い点を考慮しまして、影響と混乱を最小限に抑えるために、やはり政府も今まで以上に区割りについての広報を重点的に行うなどの、自分の選挙区が有権者にとってどうなるのかという、有権者の立場に立ったわかりやすい十分な周知徹底を図っていただきたい、そのように思いますけれども、政府として具体的にどのような周知徹底の方策を考えておられるのか、伺いたいと思います。

高市国務大臣 今回の区割り改定におきまして、佐藤委員が御指摘くださいましたように、選挙区定数が減少して、選挙区番号が変更となる団体、それから、新たに分割または分割の区域が変更となる団体がございますので、有権者の方々に混乱が生じないように、それぞれの見直し内容を丁寧に周知することが絶対に必要だと考えております。

 この区割り改定法案を成立させていただきました暁には、直ちに、総務省ホームページや広報誌などを活用した広報活動、これはもう当然のことでございますが、まずそれらを進め、それから、関係都道府県及び市区町村の選挙管理委員会に新区割り地図のデータですとかポスターを提供しまして、地元の自治体の御協力を得て、広報誌、例えば市民便りなどでございますが、こういった自治体の広報への掲載、それから公共施設へのポスターの掲示などを通して、効果的に周知をしてまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 そこで、そういう広報活動をぜひ徹底的に、今まで以上に努力していただきたいと思うんですが、一点やはり気になるのが、本法案の附則第一条で、施行期日として、「公布の日から起算して一月を経過した日から施行する。」そういうふうになっているんですね。

 確かに、過去の改定では法成立から施行まで一カ月余りでしたけれども、今回は、区割りが変更される選挙区の数が十九都道府県九十七選挙区と対象が多い点を考慮して、十分な周知期間が必要だ、私はそのように考えるんですが、この一カ月の周知期間は本当に十分だ、そのように考えておられるのか、総務省の見解を伺いたいと思います。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 今回の区割りの改定法案につきましては、平成六年の区割りの改定法、あるいは十四年と二十五年の区割りの改定法におきましても、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行するというふうにされていたこと、また、画定審議会による勧告が四月十九日にございまして、その時点から各種報道などによりまして、変わるということは、施行までの周知期間一カ月以上になるというようなことからも考えまして、施行期日は、区割り法の施行の公布の日から起算して一カ月を経過した日という従来のとおりの定め方にしているところでございます。

 有権者に混乱が生じること等がないよう、区割りの見直しにつきまして十分な周知啓発を図ってまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 そこで、要望も含めた質問ですけれども、ですから、本法案は公布から一カ月後に施行となるんですけれども、施行されてからも、衆議院の解散・総選挙、これは総理の専権事項ですから、いつされるかわかりませんけれども、衆議院の解散・総選挙が実施されるまで、やはり有権者が自分の選挙区がどうなるのかわかるように、広報も含めたきめ細かい周知徹底をぜひ継続して政府の方でも行っていただいて、有権者の混乱を最小限に抑えていただきたいと要望しておきたいと思いますけれども、総務省のお考えを伺いたいと思います。

大泉政府参考人 法案の周知期間にかかわりますので、その後におきましても、関係都道府県及び市区町村とも連携しながら、有権者の方々に対してきめ細かい周知を行っていこうと考えております。

 具体的には、最初に行いますホームページの内容、これをまた充実していったり、各種イベント、研修会、あるいは町内会などへの周知なども考えまして、あらゆる機会を通じて周知啓発を行っていくという努力を怠らないようにしてまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 もう一つ、この法案に関連して要望も含めて申し上げたいのが、今回の区割り改定案で新たに分割される市区の数は二十六市区ありまして、総数が百五となるわけですね。市区町村が別々の選挙区に分割された自治体というのは、選挙事務の増加や人員の確保など、選挙を管理、執行する負担が増すことが懸念をされるわけであります。

 例えば、選挙区が分割された自治体の選管というのは、期日前投票や開票所の設営、選挙公報の発行などを別々に行う必要が出てきたり、また、開票では職員の体制を二手に分けるなどの、自治体の負担がふえることも予想されるわけであります。

 これは私が言っているだけではなくて、先日、竹本委員長が質問されたのに答えて、五月十日の本委員会で区画審の久保信保会長代理も、勧告に基づく区割り改定法成立の暁には、政府におかれましては、各市区町村の選挙管理委員会が新区割りでの選挙を円滑に管理、執行できるよう、投開票事務の工夫に努めていただきたいと切に希望しております、このように述べられているわけでございます。

 分割される市区町村の選挙の円滑な管理、執行ができるように政府としてどのような施策を考えておられるのか、総務大臣に伺っておきたいと思います。

冨樫大臣政務官 お答えいたします。

 今回の法案が成立しますと、都道府県の議員定数が減少し、選挙区が変更となる団体や、新たに分割または分割の区域が変更となる団体が生ずることになります。

 特に、分割市区においては、投開票所などの増設や変更、増設した場合の事務従事者の確保、関係地域住民への適切な周知などの事務の発生が予想されるとともに、選挙公報の配布誤りなどがないよう注意する必要があります。

 こうした投開票所の増設などに伴う経費については、執行経費基準法に基づき措置されるものであり、総務省としても、必要な予算確保に努めてまいりたいと考えております。

 また、今回の法案では、同一選挙区内で数市町村の区域の全部または一部を合わせて開票区を設けるなど、柔軟な対応を可能とすることとしているところであり、管理、執行に関する関係団体からの相談にきめ細かく応じるなど、引き続き必要な支援をしてまいりたいと考えております。

 以上です。

佐藤(茂)委員 分割される市区町村からもそういう懸念の声も具体的に上がってきておりますので、ぜひ、政府として柔軟な対応をお願いしたいと思うわけでございます。

 きょうは、残り時間を使って、投票環境の向上方策について質問をさせていただきたいと思います。

 近年、国政選挙、地方選挙を通じて投票率が低下傾向にある中、有権者が投票しやすい環境を一層整備し、投票率の向上を図っていくことは重要な課題だと考えております。投票環境における制約から有権者に有効な投票機会を提供できていない側面があるのであれば、そのような制約についてはできるだけ解消、改善して、有権者一人一人に光を当てた、さらなる投票機会の創出や利便性の向上に努めていくべきであると考えます。

 そういう観点から見たときに、総務省が、平成二十六年度から投票環境の向上方策に関する研究会を設置されて、昨年の通常国会、臨時国会で公職選挙法令の改正により制度化が図られて、投票環境の向上が進んでいることというのは、私どもも評価をいたしたいと思うわけであります。

 ただ、その上で、我々も地域の現場で声を聞き、重要な課題だと認識しておりますのが、高齢者の投票機会の確保及び投票環境の向上というのが残っているわけでございます。高齢者の中には、歩行が困難なために投票に行くことができないという方や、同居家族等の支援がなくては投票所に行けない、投票に行きたくても行けないという高齢者自身の声をよく耳にするわけでございます。

 現行制度で、例えば、高齢者の投票機会の確保について、投票所等へのアクセス支援が各地域の実情に合わせて取り組まれているという例もございます。さらには、都道府県選管が指定する病院等の施設に入院中の者については、当該施設内で不在者投票ができる制度が設けられているわけでございます。

 きょう、さらにお聞きしたいのは、選挙人で身体に重度の障害を持つ者に対して、自宅などの現在する場所において投票を可能とする郵便等による不在者投票、いわゆる郵便等投票が認められているわけでございますが、この郵便等投票というのは、投票所に行きたくても行くことが困難な高齢者や障害者にとって、投票の機会を確保する有効な手段の一つであるわけでございますけれども、この制度の歴史的経緯と現行制度の対象者について、総務省の説明をまず求めたいと思います。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 郵便等による不在者投票は、疾病等のために歩行が著しく困難な者の投票機会を確保するというために設けられておりましたけれども、かつて不正が横行したということもございまして、昭和二十七年に一旦廃止されたという経緯を持っております。

 その後、昭和四十九年に至りまして、身体障害者手帳における一定の重度障害者等に限定して再度創設されました。

 さらに、介護保険導入後、平成十五年に議員立法により、投票所まで行くことができない者と判断される実態にある介護保険の要介護五の者につきまして対象に加える旨の改正がなされまして、現在に至っているということでございます。

佐藤(茂)委員 それで、平成十五年の議員立法によりまして、今ありましたように、郵便等投票については要介護五となっているわけでございますが、我々がそれぞれ各地で聞くのは、やはり、要介護五としている対象者の範囲については、現在対象外となっている要介護者でも、投票に行くことが現実的に困難な方も多くいらっしゃると。さらには、対象が狭いのではないか、対象を拡大してほしいという要望というものも多く聞くわけでございます。

 一つは、ちょっときょう御紹介したいのは、国際社会の郵便投票の動向というのがどうなっているのかということをまず日本と比較しますと、そもそも日本の郵便等投票というのは、諸外国に比べると対象者が極めて限定され過ぎているという実態が見えてきます。諸外国においては、郵便投票の要件が我が国よりも緩やかな国が多くて、理由を問わずに郵便投票を認めている国がどんどん出てきているわけであります。

 例えば、イギリスでは、投票所での投票が困難な選挙人は郵便投票を行うことができます。郵便投票は、かつては一定の要件を満たす選挙人のみに認められていましたけれども、二〇〇〇年国民代表法により、理由を問わずに郵便投票が認められることとなりました。

 また、アメリカでは、選挙の執行方法自体は原則として連邦法ではなくて州法に委ねられているんですけれども、投票方法は州によって異なるものの、全ての州で郵便投票が認められています。

 また、ドイツでは、以前は、身体の障害などにより投票所で投票できないというような理由がある者に限り郵便投票を行うことができたそうですけれども、連邦選挙法の二〇〇八年改正によりまして、理由を問わずに郵便投票が認められることとなりました。

 このように、日本以外の諸外国の例でも、郵便投票の要件が我が国よりも緩やかな国がどんどん出てきているというのが事実でございます。

 日本は、先ほど選挙部長から御説明がありましたように、過去の経緯から、選挙の公正確保に努めながらも、少なくとも、要介護五としている郵便等投票の対象者の拡大に、私は、諸外国の流れから見ても、もう少し緩めることは考えてもいいのではないかというように思います。

 もう一つは、厚生労働の分野をやってきた立場からしましても、要介護五というのは確かに介護保険制度での客観的な基準なんですが、実態面で見たときに、要介護五という方々だけが寝たきりではない、要介護四以下の方々にも寝たきりの方というのはいらっしゃるわけでありまして、その辺の実態面もどう見ていくかということもやはり大事ではないかと思います。

 高市大臣も、平成二十八年、当委員会、倫選特で、これは落合先生の質問に対して答弁されたと思うんですが、次のように言われておりました。

 今また新たに私が強く問題意識を持っておりますのは、足が悪くて在宅で介護を受けておられるような方で、郵便投票の対象ではない方々もおられます、要介護五の方は郵便投票の対象であったり、また、身障者手帳で一定の要件を満たす方は郵便投票の対象ではありますけれども、実際には、ほとんど歩行が困難で在宅で介護を受けている場合はなかなか投票の機会を得られないといったものもありますので、あらゆる世代で投票率を上げていくのは、やはり投票環境の改善をさらに検討していかなきゃいけないなと思いますと答弁されております。

 二日後の記者会見でも、在宅で介護を受ける方がふえていることを考えると、今検討して早過ぎることはない、そのように述べられて、選挙部長に指示をいたしました、そう記者会見で言われているわけでございます。

 その十月の時点からもう七カ月以上経過して、検討も進んでいると思うんですけれども、この郵便等投票の対象者の拡大について、現在の総務大臣の見解を伺いたいと思います。

高市国務大臣 佐藤委員から大変貴重な御指摘をいただきました。

 私自身の答弁も、また記者会見での発言も、私が経験したことで気づかせていただいたものでございます。

 佐藤委員がたくさん歩いて多くの方々の切実な声を聞いておられるのと同じように、私の親も、昨年の参議院選挙のときに、選挙公報を隅から隅まで読んで、どうしても投票に行きたいという希望を示していたのですが、リハビリで要介護五だったのが三まで回復していましたが、やはり家の中は車椅子、つえで何とかよろよろ伝い歩きができるぐらいの状況でございました。結局、投票権を行使するといって、車に乗せてもらって行ったんですが、投票所の中で転倒して、けがをして帰ってきたという経験がありました。

 やはり高齢化が進んでおります中で、これまで若い方々の投票率を上げるということで一生懸命取り組んでまいりましたが、多くの同じような状況の御高齢の方がいらっしゃるんだろうと思いまして、それで検討を指示したということでございます。

 平成二十八年十二月から、投票環境の向上方策等に関する研究会で、福祉に関する実務経験者や専門家の方々にも新たに御参加をいただいて、選挙の公正を保ちながら郵便等投票の制度が拡充できないかどうか、御議論をいただいています。

 まだ結論は出ておりません。さまざまな御意見があるようでございますが、早期に報告としておまとめいただいて、その御知見を踏まえて、具体的な対応策を検討してまいります。

佐藤(茂)委員 それで、この郵便等投票制度の活用状況について総務省からお聞きしたいんですけれども、極めて有効な手段の一つなんですけれども、高齢者や障害者の選挙人初め介護福祉関係者に十分に選挙制度が知られていないために、活用されていないのではないか、そういう声もございます。

 総務省に伺います。

 現在、郵便等投票の対象となる障害の程度等を有している方は、それぞれ何人おられて、合計何人おられるのか。その上で、直近の国政選挙での郵便等投票証明書の交付状況の件数及び郵便等投票による投票実績の人数をそれぞれお示しいただきたいと思います。

大泉政府参考人 郵便等投票の対象者であります身体障害者及び戦傷病者は、平成二十七年の三月末時点で百六十四万七千三百五十九人でございます。要介護五の者につきましては、これはちょっと時点が違いまして、平成二十八年六月末時点でございますが、六十万六千二百五十七人でありまして、合わせますと二百二十五万三千六百十六人となります。

 このうち、郵便等投票の前提となります郵便等投票証明書をあらかじめ発行を受けている者につきましては、平成二十六年の衆議院選挙では三万三千九百八十件、平成二十八年の参議院選挙では三万三千七百三十五件ということとなっております。

 さらに、郵便等投票者数、郵便等で投票した人でございますが、選挙区選挙で、平成二十六年小選挙区選挙でございますと二万二千九百七人、平成二十八年の参議院選挙では二万三千八百十七人というようになっております。

佐藤(茂)委員 今、簡単に紹介していただきましたけれども、時点がちょっと後先あるので、ただ、合わせたときに二百二十五万人ぐらいの対象者がおられるのに、現実に郵便等投票証明書を発行していただいている方というのは三万四千人以下、そういう数字でありますし、また、現実にそれを活用して投票に行かれた方というのは二万四千人以下という。要するに、何を言っているかというと、二%以下なんですね。

 必ずしも、この郵便等投票を対象者の方が活用されるかどうか。みずから相当困難を乗り越えて投票に行かれている方も相当いらっしゃると思うんですけれども、しかし、こういう有効な手段があるにもかかわらず、なかなか活用されていないという点から考えると、制度の対象となる高齢者や障害者を初め、介護福祉関係者に十分にこの制度が知られていないということも要因の一つではないかと思うんですね。

 ですから、私が考えるのは、やはりこういう方々の投票機会の確保が図られるように、もう一度啓発、広報に努めていただくとともに、特に高齢者や障害者の御家族の方と介護福祉関係者に選挙制度のルールや仕組みもあわせてしっかりと周知を図っていく必要があるんじゃないかと思いますけれども、具体的にどういう方策を考えておられるのか、総務省の見解を伺っておきたいと思います。

冨樫大臣政務官 選挙制度は民主主義の根幹をなすものであり、選挙の公正を確保しつつ、選挙権を持つ全ての方々が投票できる環境を整えることが重要と認識をしております。

 総務省としては、国政選挙や統一地方選挙の都度、郵便等投票に当たっては、あらかじめ郵便等投票証明書の交付を受ける必要がある、早目の投票用紙の請求と投票を促すことなど、管理、執行に万全を期すよう各選挙管理委員会に対し要請をしております。

 各選挙管理委員会では、市町村が作成する障害向け手引に制度内容を掲載し配布することや、制度改正の周知チラシを福祉関係部局に設置するなどの取り組みが行われているものと承知をしております。

 なお、総務省で開催している研究会においても、選挙人本人のみならず、その家族やケアマネジャーなどの福祉関係者も対象とした周知啓発を欠かすことはできないところであり、選挙管理委員会が介護福祉部局や関係機関とも連携しながら積極的に行う必要があるとの議論がありました。

 これらの議論なども踏まえ、各選挙管理委員会の取り組み内容を紹介するなど、引き続き、対象となる選挙人やその関係者などに対する周知を徹底してまいりたいと考えております。

 以上です。

佐藤(茂)委員 時間が参りました。冒頭申し上げましたように、今回の区割り改定等法案については、経緯と趣旨からいって、私ども公明党、しっかりと審議した上で速やかに成立を図っていくことをお誓い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

竹本委員長 次に、後藤祐一君。

後藤(祐)委員 民進党の後藤祐一でございます。

 今回の区割り改定後、平成二十七年ベースの人口で全国最大の人口数の選挙区となります、神奈川十六区でございます。

 冒頭にちょっと、この法案とは別の話なんですが、総務大臣に伺いたいと思います。

 本日、新聞各紙に、国連人権理事会への特別報告者デビッド・ケイ氏による報告書案というものが報道されております。これによりますと、放送法四条違反が放送免許停止の理由になり得るという政府見解はメディアを規制するおどしと受けとめられるとした上で、放送法四条の撤廃を勧告するというような案になっているというふうに伺っております。

 これに対しては、日本政府からの反論ですとか、こういったものもなされているというふうに伺いますが、まさにこの電波の停止に関して、高市大臣は以前、これは二十八年二月八日の衆議院予算委員会で、「その可能性が全くないとは言えません。」という答弁をなされた大臣でもございます。

 この報告書案についての総務大臣の御見解をいただけますでしょうか。

高市国務大臣 報告書案につきましては、外務省を通じてデビッド・ケイさんに対してしっかりと、誤解に基づく記述にならないようにということで説明もし、反論もしていると承知をいたしております。

 民主党政権のときの答弁でも同じでございましたけれども、放送法四条、放送法に違反をした場合に電波法が適用される、電波停止と、私が停止するという言葉は使っていないんですが、その運用停止ということ、この条文が適用されるということにつきましては、民主党政権時代の答弁でも同じでございます。行政の継続性の観点から、この法律の解釈ということについてお答えをしたまででございます。

 あくまでも日本の国内法でございますので、これに対して正確に御理解をいただくようにという働きかけをさせていただいたということでございます。

後藤(祐)委員 停波の話はできるだけ触れないようお気をつけいただきたいなというふうに思います。

 それでは、この法案の話に参りたいと思いますが、まず、周知期間一カ月というふうになっております。

 これは大臣に伺いたいと思いますが、この周知期間中に解散することはできるんでしょうか。この場合は、一票の格差是正の法案が、あとちょっと待てば是正が成立するのに、周知期間中に解散した場合には、場合によっては間に合わない、今の体制でやるという可能性もあると思うんですけれども、憲法違反の疑いということも含めて、これについての御見解をいただきたいと思います。

高市国務大臣 内閣が衆議院の解散を決定するということについて、憲法上これを制約する規定はないと承知をいたしております。

後藤(祐)委員 菅官房長官も、ふだん、解散について聞くと、解散権は総理の専権事項です、あるいは、解散権に縛られることはないという答弁が多いんですが、この区割りの話が出た直後の記者会見では、解散できるんですかという質問に対して、そこまで私が答えることは難しいと、ちょっと言い方を変えているんですね。

 やはり周知期間中の解散というのは幾ら何でも憲法違反の疑いが濃いと思うんですが、そこは全く変わらないですか、そうでない平時の場合と、この周知期間中と。全く変わらないという御理解ですか。

高市国務大臣 先ほど来、周知期間が一カ月では不十分ではないかといった御趣旨の質問も出ておりますけれども、最高裁から、違憲状態である、違憲ではないけれども違憲状態であるという判示がされておりますので、それによって、議員立法によって衆議院選挙制度の改正関連法が昨年成立をし、そしてまた、それに従って今回の区割り案を提出させていただいている。そして、周知期間一カ月というのが短いかもと言われますけれども、各種報道もなされている。そして、できるだけ早く違憲状態と言われることを解消したい、こういった思いがあってのことでもございます。そういう意味で、今回の法律案を提出させていただきました。

 あくまでも、やはり最高裁の判示というものが一つの大きなきっかけであったと思います。そういう意味では、私どもは、日本国憲法を遵守し、そして日本国憲法に忠実に行政を執行していくということを考えますと、日本国憲法第七条、これは、「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」という中で、衆議院を解散するということがございます。

 ただ、衆議院を解散しないことを規定した条文はないわけでございますので、今の委員のお答えに対しては、解散を否定するという条文はないという先ほどのお答えと同じになります。

後藤(祐)委員 これは最高裁判決を踏まえてでき上がっている法案だということと、あと少し待てばという状況にあるということは、ぜひよく踏まえていただきたいと思います。

 今、周知期間の話がございましたし、先ほども佐藤先生の質疑の中で、区割りの周知は絶対に必要という力強い御答弁も大臣からありましたけれども、それぞれの市町村が周知をするのはもちろんやっていただきたいと思いますが、これに対する国、総務省の支援ということはどうなっているんでしょうか。

 特に、衆議院選挙が例えば今年度行われた場合には、何らかのこの衆議院選挙に関する予算がそれぞれの地方公共団体に交付される中で、こういった周知といったものの予算繰りというのはいろいろなやり方があり得ると事務方からも伺っております。例えば、来年度衆議院選挙になった場合には、今年度については、この周知のための予算というものはとりたてて確保されておらず、本来周知期間があるわけですから、この周知期間に各市町村なりは、県もあるのかもしれませんが、周知活動をされるべきだと思うんですけれども、この予算というのは、総務省から各地方公共団体には何らかの予算措置というのはなされないんでしょうか。

高市国務大臣 総務省としましては、今回の区割り改定に伴う周知啓発として、新区画割り地図のデータやポスターの作成などを行って、関係の都道府県や市区町村の選挙管理委員会に提供することにしておりますが、これに係る経費はもちろん国費において措置をいたします。

 そのほか、関係自治体において、これまでも、市民便りなどの住民向け広報誌による周知ですとか、また町内会、自治会へのチラシの配布などの周知啓発の取り組みを自主財源で実施していただいておりますが、これも地方交付税措置ということで地財措置をさせていただいております。

 それから、今後のことでございますが、地方公共団体が衆議院議員総選挙のときに実施をされる臨時啓発の費用ということについては、総務省として予算措置を行う予定でございます。予算に計上されていないという分については、予備費の活用も含めて要求をさせていただきたいと思います。

後藤(祐)委員 ぜひ、周知期間に各地方公共団体が行う周知活動については、何らかの応援を総務省としても差し上げていただきたいということを改めて御要望しておきたいと思います。

 続きまして、今回の区割り法の中にもありますが、従来からそうなんですが、別表の中で、具体的な選挙区の、この住所が何区でありますよという膨大な別表がついているわけでございますが、これは非常にわかりにくいんですね。

 例えば、私は神奈川十六区というところでございますが、神奈川十四区に含まれない相模原市南区、神奈川第十三区に含まれない座間市というような書き方になっているわけです、○○区に含まれない区域と。十六区は番号が後ろなものですから、その他というような書き方になってしまっているんですが、これは大変わかりにくいんです。

 例えば、今回の改定で、私のところには座間市の相模が丘一丁目から六丁目というところだけが加わっているんですが、十三区という私より番号が若いところに座間市のその他全ての住所がだあっと膨大に書いてあって、私の十六区のところには十三区に含まれない区域と書いてあって、これはどこのことなんだかわからないんですね、これだけを見ても。

 これは、ぜひ総務省は、各市町村に確認すれば住所は確実なものがわかるわけですから、○区に含まれない区域という書き方はやめて、全ての選挙区に住所をちゃんと書くべきだというふうに思うんですが、もう四月の段階から事務方ともお話をさせていただいておりますけれども、これは調べるのが大変だ以外の理由がどうも見受けられないんです。

 わかりにくいということ自体が大変問題だと思いますし、実際、政官要覧なんかはこのまま書いてあって、自分の選挙区を調べようと思ってもわからないですよ。

 これは、わかりやすさという点で、ぜひ、今回の法案が間に合うかどうかはともかく、次回そうするかということも含めて、やるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

高市国務大臣 条文をできるだけ簡素化するという観点からということのようでございますけれども、この現行の記載ルールというのは、法制的にも事務の合理性からしてもより簡素な規定とすることが適当であるということ、それから、このルールは平成六年の最初の区割り画定法から踏襲されてきているということ、それから、現行の規定方法で特段の支障は生じないということから、合理性を有するものだと考えられています。

 御指摘の点につきましては、やはり有権者の方々がこの区割りの変更に伴って混乱をされることのないように、きめ細かい周知啓発を行わなければならないと思います。

 別表第一では、番号の小さい選挙区では支所や出張所の管轄区域または町字名を列挙して表記して、番号の大きい選挙区は第何区に属しない区域と表記するという形になっていますけれども、今後、その別表第一で第何区に属しない区域と表記している区域についても、町字名などによって表記した上で、異動する区域をわかりやすく地図でお示しするということも考えさせていただきます。

後藤(祐)委員 最後の部分は、次回はやっていただけるという意味だと理解してよろしいんですか。

高市国務大臣 有権者の方々への周知啓発活動の中で、そのようにさせていただきます。

後藤(祐)委員 これはそんなに難しいことじゃないんですよ、大臣。簡素化といったって、条文をつくるときに市町村に確認すればいいだけの話なんですから。これは実際わからないですよ。

 もう一つ言いますと、この別表表示の中で、公民館だとか支所管内だとか何とかセンターとかと書いてあるんですが、自分の住所を知らない有権者の方は少ないと思いますけれども、自分の住所がどこの支所に入っているかとかセンターに入っているかということは、例えば高校三年生の方なんかは結構知らない方は多いと思うんですよ。そうすると、自分の住所が一体どこの選挙区かわからないという方が発生している可能性はやはりあるんですよね。

 ぜひ、先ほどの○○区に含まれない区域というところを全部書き下すということと、今申し上げた住居表示、住所の表示でない支所管内とか公民館とかセンターといった記述はやめて、全ての住所を全ての選挙区について別表では書き記すということを、ちょっと今回は間に合わないかもしれませんが、次回以降の改定においてはそれを御検討いただけないか。大臣、もう一度お願いできませんか。

高市国務大臣 別表についての書きぶりというよりは、むしろ、それに伴って有権者の皆様に対する周知啓発として、より親切な広報を心がけてまいりたいと思っております。

 例えば、今でも投票券の中に、自分の選挙区、自分が有権者である選挙区の市町村名であったり、そしてまた投票所であったり、それを大変詳しく広報していただいている、そういう自治体もございますので、そういった好事例を横展開しながら、丁寧に有権者の方々に御理解いただくように進めてまいりたいと思っております。

後藤(祐)委員 政官要覧はそれじゃ変えられないんですよ。政官要覧はそのまま書いてありますから。やはりいろいろな媒体で、総務省のコントロールできないいろいろなところでこういったものというのは周知されているわけですから、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 それと、もう一つ、今のに近い話なんですが、私の選挙区に新しく加わった部分でもそうなんですけれども、市区町村の中に線を引くということは今回ある程度起きているのはやむを得ないと思うんですが、その中の割り方として、何丁目という単位ならともかく、何丁目何番地から何番地までというのがだあっと並んでいるようなのが、私の選挙区もそうですし、福岡二区とか、これは一体どこなんですかというようなものが発生しています。

 これは従来からそうなんですが、投票区単位で選挙区割りを決めているからそういうことが起きているわけですけれども、自分の投票区なんて、そんなふだん意識していないと思うんですよ。投票区単位で選挙区の区割りの線を考えるというのは、これはどっちかというと役所の都合で、有権者からすると、何丁目という単位でやっていただいた方がわかりやすいと思うんですね。

 実際、私、きょうの朝、地元で街頭活動をしてきたんですが、まさにそこの区割りが変わるところの駅でやってきたんですけれども、座間市相模が丘と相模原市南区の松が枝、相南四丁目の方は今度十六区になります、あと、相南一、二、三丁目の方は番地によって選挙区が変わりますので、これを見て確認してくださいと言うしかないんですよ。

 周知するという意味においても、これは非常に、皆さんの中でもそういうところがあるんじゃないかと思いますけれども、やはり、自治会ですとかそういったことも含めると、住所のせめて丁目単位で、人口もわかっているわけですから、今回はしようがないと思いますが、次回以降の区割りをつくるときに、丁目以下の番地のところで切るというのは極力避けていただいて、何千何番地みたいな旧地番みたいなところはこれはしようがないと思いますけれども、せめて丁目表示になっているところについては投票区単位ではなくて丁目単位で検討するべきだと思いますが、いかがでしょうか。

大泉政府参考人 今回の区割りの改定案の作成のところについて、若干説明させていただきます。

 分割市区におきましては、まず、選挙の管理、執行がきちんとできて、さらに有権者への影響が少なくなるよう、市区町村が三以上の選挙区にまたがることを避けたというようなことと、それから、分割した場合、どこを入れていくかという中で、支所、出張所の状況や町内会などの地域的なつながり、これは公式に決めたものはございませんので、それらも、調査はしながらですけれども、住所とちょっと違ってくることはございます。

 それらも調査して、さらに、投票区というのは選管の告示事項でございますので、ある意味きちっと定まっていて、選挙人名簿もその単位でありますので、管理執行上、あるいは、住民の方でもそういう方が便利だということもあるのかもしれませんけれども、そういう中で、一つの単位として、投票区単位というのは一つきっかけとしてやって、単位としているものでございます。

 また、このほかにも、先ほど申しました、町内会とかそちらの方がいいとかいうような話、あるいは地物としての道路の方がいいとか、そういうものを調査しまして、それぞれ区割りの分割のときには作業や審議を行っているところでございまして、そういう意味では、きちっと住所だけによると、またそれぞれの地域でやはり違ってくるところがございますので、そこら辺はよく調査して区割りをしていったということでございます。

後藤(祐)委員 全て住所でなきゃいけないと言うつもりもありませんし、あるいは、電車だとか線で切れているところを重視すべきだということもあるかもしれませんが、投票区割りというのは、そんなに地元の生活において重要なつながりではないと思いますよ。皆さん、いかがですか。

 せめて丁目単位の方が、まだ原則としてはそっちの方が人のつながりもあると思いますし、何といっても周知するときわかりやすいというのは圧倒的ですから、ぜひ、次のときには、投票区割りを前提とせずに、周知のしやすさ、有権者にとってのわかりやすさ、そして地元での活動のつながりぐあい、こういったものを考えた場合に、原則として住居表示、丁目単位ということを基本とすることを改めて要望しておきたいと思います。

 続きまして、市区町村の中に線を引くといったことが多数発生しているわけでございますが、なぜこういったものがたくさん発生してしまったかということについての総括をしておくべきだと思うんです。

 これについては、今回、〇増六減でありますけれども、東京は物すごく大変な区割りになっちゃっているわけですね。神奈川も細かいところで、私のところも含めて線を引かれました。これは〇増六減だったからなのではないでしょうか。

 つまり、アダムズ方式で純粋に計算をして、二十七年人口、二十二年人口でもいいですが、やった場合、七増十三減になったわけです。七増十三減になっていれば、東京であれば三ふえたんですかね、神奈川は二ふえたんですかね。それであれば、もうちょっと市区町村の中に線を引かない選挙区割りというのが実現可能性があったと思うんです。

 つまり、今回の市区町村の中に線を引くということに対して多くの首長から厳しい声が上がっておりますけれども、これが起きてしまった原因をたどっていくと、アダムズ方式を純粋に適用せずに、七増十三減にせずに〇増六減にしたことが原因だ、それだけだとは言いませんが、それが一つ大きな原因になっているのではないかと私は総括したいと思いますが、これについての大臣の御見解をいただきたいと思います。

高市国務大臣 今回の区割り改定の根拠は、衆議院選挙制度改革関連法でございます。これは、〇増六減ということによるもので、昨年の通常国会において、各党各会派の御議論を経て、議員立法で成立したものでございます。ですから、政府としましては、この衆議院選挙制度改革関連法の規定によって衆議院選挙区画定審議会が取りまとめた改定案の勧告に基づいて、今回の区割り改定法案を提出いたしております。

 市区の分割を伴う具体の区割り作業ということは衆議院選挙区画定審議会において行うものでございますので、私の方からそれについてお答えをするというのは大変難しいということは御理解をいただきたいと存じます。

後藤(祐)委員 ちょっと残念でございますが、東京が〇増だったら、それは大変ですよ。それが三つぐらいふえていれば随分違ったのは、それはもう常識的に考えて皆さん理解いただけると思うんですよね。

 ですから、今後の改定においても、法律が変わらなければアダムズ方式に従ってやるんでしょうから、これは市区町村の中に線を引くことを最小限化するという意味においても大切なことなんだということは御理解いただきたいと思います。

 それと、今回、平成三十二年の見込み人口で二倍を超えるところについても全て調整をしております。ですが、その結果、今回微修正で選挙区が変わり、今度、平成三十二年の国勢調査の結果、その二年後ぐらい、平成三十四年ぐらいに、アダムズ方式で各県ごとの数が変わって大幅にまた変わるというと、私のところなんか多分そうなるんですが、二回連続選挙区が変わるんですね、五年間で。

 選挙区というのは、ある程度の安定性というのも必要なんじゃないでしょうか。

 今回、平成三十二年見込み人口で、私の隣の神奈川十四区なんかは二・〇〇二倍で五、六百人はみ出ちゃうがために選挙区を変えるんです。その結果、二回連続変えることになるんですね。これは、有権者にとって、その〇〇二倍を直すべきだという方もいらっしゃるかもしれませんが、五年で二回変わるようなのはどうなのという有権者の方が私は多いと思うんです。実際、去年の法律でも、見込み人口のところについては二倍以内にすることを基本とすると書いてあって、義務じゃないんですね。

 今後の改定において、選挙区の安定性というもの、もちろん一票の格差が基本なんですが、それを純粋にやっていくと毎回ころころ変えなきゃいけないようなことにならないように、少しはみ出しているようなところについては毎回変えるということがないような工夫をすべきだと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

高市国務大臣 今回御審議いただいております法案につきましては、先ほど申し上げました衆議院選挙制度改革関連法に従って私どもは提案をしているわけでございます。

 今回の区割り改定において、平成三十二年見込み人口の格差が二倍未満であることを基本とする旨というのが規定されております。

 衆議院選挙区画定審議会においては、今回の区割り改定の目的は、次回の見直しまでの五年間を通じて格差を二倍未満とすることであるという認識のもとに、平成三十二年見込み人口の格差について二倍未満であることとする区割り改定案の作成方針を決定、公表されました。この作成方針に基づいて、審議会においては、平成三十二年見込み人口においても選挙区間の人口格差が二倍未満となるように区割り改定案を作成し勧告されたと承知をしております。

 ですから、御指摘のように、平成三十二年見込み人口については、五年後に定数がふえるというような都道府県は見直しをしないというふうにした場合には、すぐにこの選挙区間の人口格差が二倍を超えてしまうという可能性もあるということでございます。

後藤(祐)委員 それはわかっているんですが、これから後、少しその選挙区の安定性という観点も考えていただきたいなと思います。

 時間が来たので、最後に一問。

 地方議員選挙におけるビラについては、与野党の先生方の御努力の中で、町村議を除いて可能にしようという方向で今議論がまとまりつつあるというふうに伺っておりますが、これは大変すばらしいことだと思います。

 これを認めることについての大臣の御見解と、そのまとまった後の話ですが、その先の将来において町村議についてもこういったものを認めていくということも含めて、また、これは公費負担にするかどうかという議論ももちろんあるんですけれども、このあたりについての大臣の御見解を最後に伺って、終わりにしたいと思います。

高市国務大臣 まず、公費負担についてお話がありましたが、選挙運動用ポスターの作成などのいわゆる新公営制度におきましては、供託金没収者については公費負担の対象から除外するという仕組みがとられています。

 町村議会の議員の選挙運動用ビラを解禁するというふうにした場合に、その作成費などについて任意的選挙公営制度の対象とするかどうかということについては、町村議会の議員の選挙については供託金制度が導入されていませんので、他の新公営制度との関係をどう考えるかということを検討すべきであろうと思います。

 供託金制度の導入ですとか任意的選挙公営制度の対象とするかどうかということについては、これはもう選挙制度のあり方にかかわる問題でございますので、各党各会派で御議論をいただくべき事柄と考えております。今、国会において各党各会派で大変御努力をいただいているということ、敬意を表しております。

後藤(祐)委員 終わります。ありがとうございました。

竹本委員長 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 先ほど藤原議員も、同じ岩手の出身ということで、岩手二区の選挙区、ちょっと広過ぎやしないかという問題意識で質問されていました。

 私も、冒頭で、まず岩手県の新たな区割りがこのように決まった理由をお尋ねしたいと思っているんです。

 お手元の資料一枚目をごらんになっていただきたいんですが、広いと言われる岩手二区、本州で一番広いんですが、面積でいうと、都道府県でいいますと、青森県とほぼ同じです。一口で青森県と同じと言いますけれども、青森県自体、四十七都道府県のうち八番目の広さです。すなわち、ほとんどの府県、これは青森よりも狭く、そして岩手二区よりも狭い、こういうことになるわけです。つまり、岩手二区の候補者は、参議院選挙の候補者と同じくらいの活動範囲で選挙運動をしなくてはいけないということであります。

 余りに広過ぎるんだけれども、なぜそうなったのかということについて、藤原さんもさっき質問していました。その答弁、ちょっと私は納得しかねるものでありました。二つぐらい理由があったと思います。

 一つは、復興を進める上で沿岸は全部一体とした方がいいということでしたけれども、新聞等でも取り上げられていましたけれども、地元の陸前高田の戸羽市長さんなどは、かえって、議員が少なくなることによって復興がおくれるのではないかということを危惧されていました。

 また、もう一つの理由として、沿岸は一体とし、内陸は新幹線でつながっているから一体としていいんだという話をしていましたけれども、沿岸が一体となる理由、内陸が一体となる理由については説明がありましたけれども、なぜ内陸部と沿岸部、全部ひっくるめて一体となるのか、このことについて合理的な説明はなかったと思います。

 ちなみに、今回、岩手二区に編入されることになりました旧岩手三区の代議士で、私の仲間である黄川田先生という方がいらっしゃいます。黄川田先生の事務所は陸前高田市、岩手県の沿岸の一番南にあるわけです。仮に、二戸市に住む有権者の方々、二戸市というのは内陸の一番北です、ここは新幹線の駅もあるところです、ここから陸前高田市まで行こうとすると、車や公共交通機関を使っても、優に三時間は超えるということであります。二戸市から新幹線で東京まで行くよりも時間がかかる。ですから、二戸市の人は、お金があるなら新幹線を使って議員会館に来た方が黄川田先生に早く会える、こういう状況になるわけです。

 こういったことも踏まえると、やはり今回の区割りというのは余りに広過ぎるのではないか。有権者にとっても候補者にとっても酷なのではないかと思うんですが、まず、区割りがこのようになった理由について、先ほどの説明は納得できないので、もうちょっと合理的で説得的な説明を参考人からお願いします。

大泉政府参考人 衆議院選挙区画定審議会におきましては、区割りの改定案を作成するに当たりまして、昨年十二月に区割りの改定案の作成方針というものを決定、公表しまして、その作成方針の3の(2)というところでございますが、定数減少県の改定案の作成の作業手順というものを定めまして、これでは、「当該県の区域内にある選挙区のうち、その人口が最も少ないものを手がかりとし、区割り基準に適合するように改定案を作成するものとする。」と決めております。

 これを岩手県に当てはめた場合、人口最少である三区が手がかりとなりまして、これを分割して隣接の選挙区につけるのか、あるいは、三区と隣接の選挙区を合わせる形でさらに全体を異動していくのかというような検討になってまいります。これは原則でございます。ただ、そういう検討の中で、人口最少の三区につきましては、分割して隣接の選挙区につけていくのが適当であるというふうに画定審では決めたということでございます。

 その過程においては、例えば、県の広域振興圏などの単位としてはどうか、あるいは、一部の市町村を現行の一区に編入することによって、そうしますと二区の広さも変わるんでしょうけれども、そういうような議論も行われました。

 ただ、一緒に一区につける団体、東側ですと飛び地になるのでほとんどつけられないというようなことなどから、盛岡市周辺の幾つかの団体について、これを一区にできないかというような検討を行いましたけれども、これは人口のバランスなどから申しましてなかなか難しい。それよりは、現行の一区につきましては、盛岡市の合併による分割を解消することとしまして、あとは、地勢、交通その他の状況によりまして総合的に考慮した結果、今回のように広い二区というふうになっているところでございます。

 この点については、繰り返しになりますが、定数が一減となることを踏まえまして、当該地域が東日本大震災の被災地であることや、経済圏等を考慮すれば沿岸部が一体にまとまった方が合理的であるというふうに考えられたこと、また、内陸部では、まとまりとしては新幹線等でつながっているというようなことで、地域的にもこれがいいのではないかというふうに議論され、決定されたものと承知しております。

階委員 先ほどの答弁の繰り返しで、全く得られるものはないんですけれども。

 ちょっと選挙区の形状を見ていただきたいんですが、よく、党派的に有利になるような選挙区の区割りをすることをゲリマンダーと呼びますよね。このゲリマンダーの由来となった選挙区割り、二ページ目にあります。この怪獣みたいな動物、サラマンダーというんだそうですけれども、サラマンダーに似ているということで、区割りを考えた人がゲリーさんという方だったということで、両方合わせてゲリマンダーと呼ぶようになったということですが、やや、顔の向きとか、あるいは首の太さ等は違うんですけれども、今回の区割りの形状、岩手二区の形状がこのゲリマンダーに似たような形になる。

 別に党派性にどうこうと言うつもりはないんですけれども、かなりいびつな形状で、先ほど言ったように、選挙区の端から端に行くのには大変な時間もかかります。また、交通も不便な地域であります。こうした異常な形状になっていることについて、総務大臣、政治家としてどう思われますか。

高市国務大臣 今、ゲリマンダーの話をされましたけれども、今回、選挙区画定審議会によって、投票価値の平等の要請を達成するということを踏まえて、広大な選挙区を設けることもやむを得ないと判断されたと考えております。

 過去、物すごく昔の議事録でございますが、自民党が野党だったころですか、石井自治大臣のところに同じ党に所属する議員の方が、ちょうどそのころも選挙区が、区割りが変わるというようなことで、相談に行かれたんじゃないかというようなことを自民党の野中広務先生が追及されていたような議事録を見た記憶がございましたので、私自身も、例えば国会議員の方々からそういう相談の申し込みがあったような場合には絶対に受けない、会わないし話も聞かないということを徹底してまいりました。

 一切政治家の恣意的なものが入り込む余地のない中で、選挙区画定審議会の方々が、会長の談話にもありますように、難しい要請の中で最善のものと思われるものを提案したということでございますので、内閣としてはこれを尊重せざるを得ないものだと考えております。

階委員 大臣が党派性は考えずにやったという点は了としますけれども、ただ、その形が余りにも異常な形で、面積的にも広過ぎる。これでは、なかなか有権者にとっては候補者とのアクセスもままならないということになると思います。

 ちなみに、資料の三ページ目、四ページ目、新たな小選挙区、二百八十九あるわけですけれども、これを面積順に上から並べたものであります。

 先ほど来お話ししておりますとおり、岩手二区は本州では最大の面積を有する小選挙区、これは従来からそうだったわけでございますが、九千六百五十二・六九平方キロメートル。これと同じ面積に達するために、面積の小さい方から幾つ並べると、合計するとこれと同じ面積になるんだろうかということで、計算してみました。何と、百八十六番、宮城二区、ここから下を全部足すとようやく岩手二区と同じぐらいの面積になる。百四小選挙区あります。この全体の面積と岩手二区がほぼイコールなわけです。

 これで同じ選挙運動をせよというのもなかなか酷なわけでありまして、面積が広大な小選挙区候補者の選挙運動への制度的な配慮というものも必要ではないかと思うんですが、この点について政府の見解をお伺いいたします。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 衆議院小選挙区選出の議員の選挙においては、公職の候補者などが設置できる選挙運動用事務所の数は各選挙区につきまして原則一カ所とされておるところでございますが、一定以上の面積などの要件を満たす選挙区については設置できる選挙事務所の数をふやすことができることとされておりまして、また、こうした要件を満たす選挙区については選挙運動費用の上限が増額されることとされておるところでございます。

階委員 増額といっても、済みません、どれぐらいの割合というか、率で増額されるんでしょうか。細かいことなので政府参考人でも結構です。

大泉政府参考人 公職選挙法施行令の別表第五というところに書いてございまして、これは改定前の岩手第二区についてもそうなのでございますけれども、法定選挙運動費用は二千百三十万円というふうになっております。

階委員 だから、そこと狭いところとの差はどれぐらいあるのかということです。どれぐらいプラスされているのかというのを知りたいんです。

大泉政府参考人 先ほどはちょっと失礼しました。

 先ほど申しました二千百三十万円というものは法定選挙費用の固定額でございまして、通常の選挙区でございますと千九百十万円であるところが、岩手二区などにつきましては二千百三十万円にふえて、このほか人数割額というものが加えられるというふうになっております。

階委員 聞くと二百万円ぐらいなんですけれども、とてもそれでは十分な活動というのはできないんじゃないかと思っています。つまり、うんと広い選挙区では、制度的な配慮があるといっても、やはり人脈や資力が乏しい候補者、あるいは知名度の乏しい新人、こういった方にとっては大変厳しいと思います。

 最高裁も、昭和四十三年十二月四日の判決の中で、「公職選挙における立候補の自由は、憲法一五条一項の趣旨に照らし、基本的人権の一つとして、憲法の保障する重要な権利である」というふうに判示しております。

 立候補の自由ないし権利を実質的に保障するという観点から、選挙区割りにおいては面積をもっと重視するべきではないかと思いますが、政府の見解をお尋ねします。

原田副大臣 お答えをいたします。

 今回の区割り改定の根拠となった衆議院選挙制度改革関連法におきましては、各選挙区の人口に関して、次回の見直しまでの五年間を通じて人口格差が二倍未満となるよう、平成二十七年国勢調査による日本国民の人口に加え、平成三十二年見込み人口においても格差を二倍未満とすることが求められていたと承知をいたしております。

 衆議院選挙区画定審議会においては、それぞれの都道府県における状況を踏まえ、投票価値の平等の要請を達成するため、広大な選挙区を設けることもやむを得ないと判断されたものと考えております。

 なお、公職選挙法上、選挙運動における選挙事務所の数については、選挙区の面積が一定程度大きい場合などには、先ほども申し上げましたように、特例を設けることといたしております。

階委員 立候補の権利ないし自由との関係で、選挙区が余りに広過ぎるのは、資金のない人、知名度のない人にとって実質的にその権利を制限するものであり、問題ではないかということを申し上げました。

 もう一つ、選挙区が広過ぎることによって問題となるのは、選挙区を候補者がくまなく回るというのは当然ながら困難でありますし、有権者の側もその事務所に行くのは困難になります。先ほど黄川田さんの例も挙げさせていただきましたけれども。

 そういったことから、有権者の側から見た場合に、投票権の適切な行使のためには、一票の価値の平等だけではなくて、候補者にアクセスする機会の平等も考慮して選挙区というのは決めなくてはいけないのではないかと思っております。

 そういった観点からも、選挙区割りにおいて面積をもっと重視するべきではないかというふうに考えますが、総務大臣に御見解をお尋ねします。

高市国務大臣 今回の法律案を提出させていただいているその経緯については、先ほど原田副大臣から答弁がありましたので、その部分は省略をさせていただきますが、御承知のような経緯で提案しているものでございます。

 選挙区の面積が広いという場合の立候補者の御苦労ですとか、また有権者の方がなかなか候補者に会えないといった点については理解はできますけれども、今回は、一票の格差を是正するということ、つまり投票の価値の平等の要請を達成するために、広大な選挙区を設けることもやむを得ないという判断を画定審議会においてされたものでございますので、これは、政府の立場としましては、やむを得ないと判断される場合もあると申し上げるしかございません。

階委員 確かに、現行法上は、五ページ目にありますけれども、これは昨年改正された法律の抜粋ですけれども、選挙区画定審議会設置法の抜粋です。

 第三条を見ていただきますと、後段の方に、「除して得た数が二以上とならないようにすることとし、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。」ということなんですが、二以上とならないということが明確に定められている。だから、ここで投票価値の平等というのが厳格に追求されるようなたてつけになっておりまして、改正前は、下の方にありますけれども、「二以上とならないようにすることを基本とし、」ということで、多少のゆとりというかアローアンスがあったわけです。

 私は、今の法律のたてつけで本当に地方は成り立つのだろうかという問題意識を持っております。

 と申しますのも、総務省も、設置法で、三条ですか、任務が書かれております。その中に、「民主政治の基盤の確立、自立的な地域社会の形成、」というふうに掲げられております。

 ところが、今の状況を言いますと、残念ながら、自然減、社会減で地方の人口減少がどんどん進んで、都市部との格差が広がっています。都市部と地方部で一票の格差が拡大していく状況に歯どめがかからない、今後ますます加速していくような状況であります。

 今の法律のたてつけでは、地方の議席は、一票の格差是正のためにどんどん減らざるを得ない。議席が減るとともに、一選挙区当たりの面積はどんどん拡大していかざるを得ない。

 こういったことになりますと、先ほど来申し上げているとおり、地方に住む有権者が議員にあるいは候補者にアクセスすることは困難となって、その声が伝えにくくなります。声が仮に届いたとしても、議席配分が地方では少なくなってしまうために、多数決原理の国会審議のもとではなかなか国政にその声が反映されにくい。こういうダブルでの地方の声が反映されにくい状況がどんどん強まってくると思います。

 結果的に、よく、シルバー民主主義という言葉があります、人口が多くて投票率が高い高齢者の意見が国政に反映されやすくて若い人の意見が反映されにくいのをシルバー民主主義というふうに言いますけれども、シルバー民主主義と同時に、これからの国政は、都市部の声が地方の声を凌駕するシティー民主主義、こういう状況も危惧せざるを得なくなるのではないか、こういう問題意識を持っています。

 総務省の任務、先ほども申し上げました、「民主政治の基盤の確立、自立的な地域社会の形成、」こういったことも改めて踏まえていただいて、現在の法律の規定を金科玉条、未来永劫このとおりとするのではなくて、小選挙区の面積の格差が過度に広がらないような規定ぶりの見直しについても、総務大臣としてこれから検討していくべきではないかと思いますが、大臣の見解をお願いします。

高市国務大臣 そもそも、今般の見直し案の提示に至りましたのは、累次の最高裁判決ですとか衆議院選挙制度に関する調査会の答申を踏まえて、昨年議員立法で成立した衆議院選挙制度改革関連法によって、選挙区間の格差を厳格に二倍未満とするよう改正がされたということでございます。

 投票価値の平等の観点を考えますと、一票の格差に優先して面積の要素というものを考慮に入れるということは、これまでの最高裁の判決などに照らすとなかなか困難ではないかなと考えております。

 総務省の責務といたしましては、ローカル一万プロジェクトですとかふるさとテレワークですとか、それからまた地域おこし協力隊ですとか、少しでも都市部から地方への人の流れをつくっていく、その取り組みを先生方の御指導も得ながらしっかりと進めていくということでございます。

 憲法上、国民の皆様には自分が住む場所を決める権利がございますので、無理やり移動していただくことはできませんけれども、地域の魅力を高めるためにしっかりと取り組みをしてまいりたいと存じます。

階委員 最高裁の判決を引き合いに出されましたが、最近の、平成二十七年十一月二十五日の大法廷判決、あるいは二十五年十一月二十日の最高裁の大法廷判決の中では、こういうくだりがあるんですね。「具体的な選挙区を定めるに当たっては、都道府県を細分化した市町村その他の行政区画などを基本的な単位として、地域の面積、人口密度、住民構成、交通事情、地理的状況などの諸要素を考慮しつつ、国政遂行のための民意の的確な反映を実現するとともに、投票価値の平等を確保するという要請との調和を図ることが求められている」という中身が書かれております。

 つまり、投票価値の平等というのは絶対的な基準じゃない、面積なども考慮して決めなさいというのが最高裁の考え方でありまして、最高裁の判決が出ているから投票価値の平等は絶対なんだというのは私は間違っていると思います。もしコメントがあればお伺いします。

高市国務大臣 参考意見に記されているところだと思います。

 ただ、この最高裁判決は一票の格差訴訟に係るものでございまして、違憲状態だという判示がされておりますので、その状態を一刻も早く解消するためにというところがスタートになって、昨年の議員立法があり、そして区割り画定審議会の御審議があり、そして本案の提出、御審議をいただくということになったわけでございます。

竹本委員長 質疑時間が終わっていますので。

階委員 参考意見ではないと思いますよ。撤回した方がいいと思いますが。

高市国務大臣 失礼しました。多数意見でございました。

階委員 多数意見ですので、ぜひ面積ということも考えて今後の区割りというものを議論していただきたいと思います。

 以上です。

竹本委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

竹本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。升田世喜男君。

升田委員 民進党の升田世喜男でございます。

 質疑の機会を与えていただいたことにまずもって感謝申し上げたい、こう思います。

 これまで既に六名の委員が質問しておりますので、私の二十五分の中で多少重複する質疑もあろうかと思いますが、御理解を賜りたい、こう思います。

 僕は、本州は日本海の最北端、旧小泊村という人口約三千人の小さな漁村に生まれました。そこで小泊村会議員を三期経験させていただいて、北津軽郡という選挙区エリアで二回県会議員を経験させていただきました。その後、国政に挑戦し、しばらく時間がかかったんですが、今、国会議員をさせていただいておりますので、そういう歩みをした一人でありますので、地方の目線からの質疑になることに御理解を賜りたい、こう思います。

 質疑に入る前に、先般、前今村復興大臣がまさに地方をあるいは東北を蔑視するような、あっちでよかった、東北でよかったという発言がございました。僕の中では、今なお、この発言に対する怒りや憤りというのは全く消えておりません。二度とこのような発言がないことをこの機会に申し上げさせていただきたい、こう思います。

 さて、質疑の第一点目でありますけれども、今回の区割り法案の改定案では、十九都道府県九十七選挙区にその影響が及ぶわけでありますけれども、変化がある場合、やはり有権者に周知徹底するということは極めて重要なことだ、こう思います。

 そこで、周知をしないといけない分野が、選挙区並びに比例区がございます。それぞれにどんな方策でもって徹底した周知を図ってまいるのか、まず冒頭にこのことをお伺いしたい、こう思います。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の、まず小選挙区でございますけれども、区割りの改定におきまして、選挙区定数が減少し、選挙区番号が変更となる団体、また新たに分割や分割の区域の変更となる団体がございますので、有権者の方々に混乱が生じないように、それぞれ見直し内容を丁寧に周知してまいりたいと考えております。

 また、比例代表選挙区につきましても、定数が減少となる選挙区がございます。ここの有権者の方々に対しまして、改正内容について周知を行うことも必要と考えております。

 そのため、区割りの改定法案が成立した暁には、直ちに、小選挙区とそれから比例代表をあわせて、総務省ホームページや総務省の広報誌などを活用したきめ細やかな広報活動を行って、周知徹底に努めてまいりたいと考えております。

 また、区割りの方でございますが、関係都道府県、市町村の選挙管理委員会に新しい区割りの地図やデータやポスターなどを提供しまして、地元自治体の協力を得て、市民便りなどの広報誌への掲載や公共施設への掲示などを通して効果的に周知をしてまいりたいと考えております。

升田委員 この件について、今、選挙区で有権者とお会いをさせていただくと、升田さん、あれは本当なんですかと。今なお、こういう問いかけが意外と多いんですよね。いや、本当ですよと。青森県は四から三に変わります。僕も中身でいくと非常に厳しい状況になるんですが、これはいたし方ありません。

 ずっと先のことでしょうという感覚が、まだ今なおあるんですね。ですから、これほど重要なことであっても、一般の有権者にとっては遠い話であるという認識を持っていただいて、ありとあらゆる手だてで周知は徹底してほしいなと思います。

 ここでこの法案が通って、いわゆる一カ月間でもって実施される、これが余りにも早いんじゃないかなというのは誰しも思うことなんですけれども、この一カ月間というのは短過ぎませんか。どうでしょうか。

大泉政府参考人 今回の区割り法案につきましては、平成六年の区割りの画定法、それから平成十四年、二十五年の二回の区割りの改定法におきましても、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行するとされていたこと、それから、衆議院議員選挙区画定審議会による勧告、これは四月十九日でございましたが、この時点から各種報道などがなされていることなどから、施行までの周知期間が一カ月、すなわち施行期日は区割り改定法の公布の日から起算して一カ月というふうにしております。

 有権者に混乱が生じること等のないよう、区割りの見直しにつきまして十分周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

升田委員 さて、今回の区割りの法案の改定の根拠が、青森県は四から三になるわけでありますが、人口の配分でこのような結果になるということであります。これまでの各委員が述べていたように、特に先ほど階委員の質疑を私は拝見させていただいて、自分のところも端から端まで六時間になったものですから相当広くなったなと思ったら、階委員のところは青森県全部が大体選挙区になったということであります。

 そこで、一般有権者が思うのは、この方法でいきますと、地方がどんどん減って、そして都会がどんどんふえていく。では、民意の反映というのは一体どうなるのかなというところが、誰しもが懸念していることでありまして、都会はふえて地方が減る、バランスがどんどん崩れていく、このことに対してどのような見解をお持ちですか。

冨樫大臣政務官 お答えいたします。

 地方の小選挙区の定数が削減されることを懸念する意見があることについては、承知をしております。

 しかしながら、昨年五月に成立した衆議院選挙制度改革関連法においては、衆議院議員の〇増六減の定数削減や一票の格差の是正が規定されており、政府としては、この法律に基づき、衆議院議員選挙区画定審議会の作成した勧告に基づいて今回の法案を提出しているところであります。

 以上です。

升田委員 人口を判断の物差しにしているという根拠は何なんでしょうか。

大泉政府参考人 これまで、累次の最高裁判決などで、人口による格差が二倍になるといけないというような判決が出ておりますので、その司法の判断、あるいは、昨年通りました衆議院選挙制度関連改革法につきましても二倍以上にならないというような条文が盛り込まれましたところから、そのように人口格差を重視しているというところでございます。

升田委員 この機会にお伺いしたいんですけれども、世界の各国の議席配分の仕方というのはどんな物差しなんでしょうか。この辺、お知らせしていただければ。

大泉政府参考人 国会図書館の情報でございますけれども、アメリカは、下院でございますが、人口に基づきまして各州の定数配分をしておりまして、原則として、各州議会が行うというふうになってございます。国勢調査に基づきまして、十年ごと格差の見直しをやっているということでございます。最大格差は約一・八八倍ということとなっております。

 ドイツの場合は、選挙区画委員会というものが区割りを行っておりまして、最大格差は約一・四七倍ということになっております。

 それから、イギリスについては、これは二〇一八年十月の見直しの勧告を受けているというような状況でございますが、例外を除き一・一一倍以下というふうな最大格差を目指しておりますが、まだ施行は、そのとおりにはなっていないというようなことを承知しております。

升田委員 これは、世界もやはり人口が基準なんですね、調べてみますと。

 ただ、今アメリカのお話がありましたけれども、アメリカでは、マイノリティーですか、少数派の意見も聞くようにということで、いささか工夫の流れがあるやに聞いておりました。

 そこで、次の質疑なんですけれども、これは今冒頭申し上げさせていただきましたけれども、この方向でいきますと地域のバランスがなくなる、何とか工夫してもらいたいなという気持ちなんです。

 今、鳥取県を例にすると、二十六万から二十八万、三十万弱で国会議員が一議席与えられる、こういうデータでありますけれども、これは頭の体操で恐縮でありますが、もう本当に人口だけでいきますと、例えば一棟十万人のマンションがそこのエリアに三棟ありました、そこで人口三十万人いました、それでは、そこで国会議員が一人誕生しますね。理屈でいくと、こうなります。

 そうしますと、そこに食料の議論が生まれますか、エネルギーの議論が生まれますか、そして今、北朝鮮の事案に懸念があるように、国防の議論が生まれますかということになります。

 僕は青森県選挙区です。青森は、食料自給率、カロリーベースでありますけれども、一一八パー前後だと思います。そして、エネルギーは、国策ということで、しっかり承って、今実施されております。そして、国防については、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊、三沢に米軍基地、三軍はおろか四軍をそろえて、これは国防に貢献している。食料、エネルギー、国防、これは国の根幹をなす三つの分野、これを抱えている地域なんですね。

 では一方で、極端に言ったら、四十万人のマンション一つ建ったら、そこで一人の国会議員。では、そこでは地域課題が一体何なんでしょうか。エレベーターがもうちょっと大きければいいねとか、最上階まで行くまであと十秒ぐらい早く着いたらいいなとか、あるいはエレベーターはやはり外の景色が見える方がいいねとか、こういうことになるんでしょうか。

 やはり民意の反映というのは、多様な課題を背負って、地域の課題や特性を背負って国会で発言、行動するのがあるべき姿だと私は思うんです。しかし、人口のみにいったら、僕自身が今述べたことは極端な例でありますけれども、食料は議論にならないわ、エネルギーは議論にならない、国防の議論にならない、これで国政を語られたら、私はこれはアンバランスになると思いますよ。

 ですから、やはり工夫する必要があるんだ、僕はこう思うんですが、大臣、いかがですか。御感想を。

高市国務大臣 選挙制度のあり方につきましては、国会における審議ですとか各党各会派における議論の積み重ねの中で、現在の制度になっていると思っております。

 地域のバランスとともに、今先生おっしゃいましたような課題、また政策バランスということを考えながら例えば議席配分をするということになりましたら、それはまた議会政治の根幹にかかわる非常に重要な問題でございますので、政府として見解を申し上げるべきではなく、各党各会派で御議論いただくべきだと思います。

 例えば、例に挙げられました、都市部でマンションがたくさん建っているところで人口が多い、でも、それぞれの方々の生活の中で、高齢化に伴うこと、また社会保障制度、子育て、さまざまな課題が、そこにも重要な課題があると思います。また、エネルギーの大消費地でもあると思います。

 ここにいらっしゃる全ての国会議員の先生方は、全国民の代表であられますので、選出されている地域に関係なく、安全保障問題、エネルギー問題、農林水産業問題、そして社会保障問題、さまざまな課題にお取り組みのことだと承知をいたしております。

升田委員 確かに、都市部で人口が集中しますと、子供の環境とか、あるいは教育問題とか、社会保障問題等々、これも重要でございます。全くこれは軽視はしておりませんが、一方で、地方は総じて食料を守っているわけでありますね。ちなみに、東京は食料の自給率は一%と聞いています。青森県の百十八分の一なんですね。

 所得も、これを比較しますと、青森県は二百三十五、六万というデータが出ていまして、東京は四百八十万あるいは五百万という平均所得のデータなんですね。ダブルスコアがついているんですね、所得で。

 所得で倍高いところの地域にまた国会議員がふえていく、そして、東京の所得を基準にしたら、半分に満たないところの地域の国会議員がまた減っていく、本当にこれでいいのかな、こう思えてなりません。

 これは、地方に住む人は皆共通の懸念している事項だと思うんですね。重ねて、工夫の余地がないかどうか考えていただきたいなということを申し上げさせていただきたい、こう思います。

 あと七分ほどお時間がございまして、この機会に、直接法案とはかかわりがないと思うんですが、せっかくの機会でありますから、大臣並びに政務官とも政治談義ができればいいなと思います。それは、解散権なんですよね。

 この解散権が、僕がふだん思うに、内閣総理大臣の御判断で解散できるように日本はなっております。いろいろ理由づけがあるんでしょうが、日本国憲法の七条ですか。憲法学者からいったら、七条での解散にはいささか無理があるなという御指摘もあるわけでありますけれども、現実にそれで解散できているのが事実であります。

 そこで、お答えできるかどうかはわかりませんが、日本のような解散ができる国というのは世界の中でほかにどの国があるんでしょうか。

大泉政府参考人 済みません。事前の通告がございませんでしたこともありまして、お答えすることはできません。

 済みません。

升田委員 私も詳細に勉強しているわけではないけれども、かなり勉強しました。

 カナダですね、自分の調べた範囲の中では。ついこの間まではイギリスがあった。しかし、今、先進国の中ではカナダしかありません。ドイツ等々は、あるいはフランスは、解散はできますが、相当ハードルを高く設けております。カナダはほぼ日本と同じぐらいなんですね、解散できるハードルの低さは。

 ここで議論するのもなんでしょうけれども、これは考え直した方がいいと思うんですよ、ここは。大臣、大臣は安倍内閣の閣僚の一員でありますから、どこかでこういう話題が出たということを述べていただければありがたいと思うんですよ。

 日本というのは、いつ解散するんだ、秋か、一月か、暮れか、いや来年かというのを何か当たり前のように言いますけれども、これは国政だから何となく違和感ありませんが。皆さん、僕が仮に町長だとします。町内会の会長が何か今度町長選に出るという話が聞こえた、まずは親戚が集まったみたいだ、こういう話を聞いて、おお、そうか、では、総務課長を呼べよ、来月町長選をやるわ、理由はつけられるから。これを行ったら、何期も町長やれますよ。知事でも。

 国政は何となく受け入れていますけれども、解散権を行使するというのは、私は、議会制民主主義が育っていかない原因の一つになりやしないかと思って、ふだんから懸念しているんです。国会議員もやはり気になりますから、いつ解散かと。そうしますと、政策勉強や民意を深く深く受けとめようとするよりも、どうしても心半分あるいはそれ以上が、選挙のことが頭になっていく。

 ですから、ここはじっくり、今こういうふうに経済の問題もあるいは安全保障の問題もいろいろな複雑化している中で、解散というのは世界の標準に合わせていくというような考えがあっても私はいいのではないかなと思うんです。町長や知事がそのようなことができるとなったら、これは相当おかしくなる。国はやれるけれども、地方はほとんど不信任案が通らないとこれは解散できないわけでありますから。

 大臣、今僕が述べたことに対して、何か御感想はありませんか。

高市国務大臣 憲法第六十九条で、内閣が不信任ということになりましたら、解散しない限り総辞職ということになります。そういった事態が生じることによる解散もあると思いますし、先ほど升田委員がおっしゃっていただいた七条解散、これは内閣の助言と承認によっての天皇の国事行為ということになりますけれども、それらの規定がございます。

 また、衆議院、参議院、二院がございまして、参議院は六年間しっかり任期をお務めになって、国政の中長期的な課題も御議論いただいていることだと承知をいたしております。

 今の委員の御質問にお答えするのはなかなか難しゅうございますが、憲法の改正の発議権というものは国会にございますので、また各党各会派で御議論を賜れましたらと思います。

升田委員 そろそろ時間が近づいてきたようであります。

 この解散権については、なぜこだわるかといいますと、ともすれば、やはり依存人間をつくってしまうんじゃないかとか、あるいは、我が国の文化として、和をもってとうとしとなす、すばらしい言葉だと思います。しかし、和して同ぜずという言葉も、極めてこれも大事であります。こういうことを考えると、堂々たる政治運営という観点から、ぜひ、どこかの場面で、こんな意見もあったということを述べていただければありがたいなと思います。

 あと、最後に、今の区割り法案を決めた物差しが続けられますと、いわゆる地域バランスが崩れるということは重ねて申し上げさせていただきたいと思います。

 地方の議席がどんどん減って、選挙区がどんどん広くなって、民意をつかみ取るのにどんどん難しくなっていくというこの方向は、ぜひ、いろいろな工夫をしながら、バランスをとっていただきたい、このように思います。

 このことを述べて、時間が参りましたので、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

竹本委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民進党の落合貴之でございます。

 本日は、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案についてということで、質問をさせていただきます。

 今回の衆議院小選挙区の区割りの改定の後に、また五年後ぐらいに改定が予定をされていて、その後は十年ごとに見直していきましょうということになっております。

 今回の改定、また今後の区割りについて、注意していかなければならない点、これは多々あると思います。特に、細かい部分で注意しなければならない点があると思いますので、きょうはそれについて取り上げさせていただければと思います。

 先ほど、升田委員、青森ということで、私自身は東京ですので、主に東京の選挙区を例に出して質問をさせていただければと思います。

 まず、平成十四年の法案の附帯の件から入らせていただければと思うんですが、平成十四年の公職選挙法の一部を改正する法律案に対して附帯決議がついております。その附帯決議の後半に、「審議会が小選挙区の区割りの改定方針及び改定案の調査審議を行うに当たっては、都道府県知事や市町村長から意見を聴くことなどにより、地域の実情を反映した勧告となるよう努めること。」とあります。

 これは、実際に自治体の長の意見が区割りに反映されたという事例はあるんでしょうか。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 第三者機関である衆議院選挙区画定審議会における区割り改定案の審議につきましては、私自身関与しておりませんで、具体の区割り案作成における知事意見の採否の詳細については承知をしておりません。

 審議過程の詳細につきましては、差し支えなければ、事務局である選挙部長からお答えを申し上げたいと思います。

落合委員 では、選挙部長、お願いします。

大泉政府参考人 区割り審の事務局も務めておりましたので、その点から、議論について御紹介をさせていただきたいと思います。

 都道府県知事は都道府県の行政、地勢、交通等全般に通じ、区割りについて都道府県全体を総合的に判断し得る視点を持っていると考えられることから、区割り審では、関係都道府県知事に対して、区割りの改定案の作成方針や具体の区割りについて意見照会を行ったところでございます。

 その際、御指摘のございました平成十四年の附帯決議がございますので、知事へ意見照会をする際には、関係市町村への意見照会をするなど、地域の実情を踏まえて意見を提出するようにお願いしておるところでございます。

 こうして提出された意見につきましては、区割り審の方の審議で検討し、区割り改定案の作成方針等に照らしまして、合理性があると認められるものについては区割りの改定案に反映したものでございます。

 例えばでございますが、具体の提案が採用された例としては、選挙区でいいますと、千葉県からの意見で千葉県四区の区割りの見直し、それから神奈川県でいいますと、川崎市に関する神奈川県九区、十区、十八区の見直しに関する意見などが審議会において採用されているところでございます。また、青森県から出されておりました、市町村合併によって二つの選挙区に分断されている青森市の区域を一つの選挙区に統合していただきたいというような御意見がございましたが、これも区割りの見直しにおいて採用しております。

 このほかにもございますけれども、御紹介させていただきました。

落合委員 機械的に選挙区をつくらないようにする、ある程度地域の実情を反映していく、地域の文化とか人の流れも反映していくということは大変重要なことだと思います。

 しかし一方で、その地区地区の政治状況というものが実際の世の中にもあるんだと思います。例えば、ここの自治体の長は何党系の人が自治体の長をやっているですとか、そういう地域の政治状況が区割りに反映されてしまうのではないかという懸念も一方ではあると思います。

 これは参考人に伺えればと思いますが、事務局として、地域の声をしっかりと聞いていく仕組みをつくっていく一方で、公平性ですとか中立性の担保、これは大変重要であると思いますが、ここのところはしっかりと担保しているんでしょうか。

大泉政府参考人 ただいま都道府県知事の意見について御指摘がございましたが、区割り審の勧告後は、都道府県知事の意見につきましてはホームページなどで公開しておりますので、そういうことで説明責任を果たしているのではないかというように考えております。

落合委員 地域の実情は吸い上げつつ、ぜひ、今後も改定がありますので、公平性、公正性、中立性に御留意をいただければと思います。

 それでは、細かい部分で質問をさせていただきます。

 まず、昨年の十二月二十二日の区画審の審議会で区割りの改定案の作成方針というのが決められていて、市町村は分割しないことを原則としますというふうにされました。しかし一方で、区割りの作業をする上で、二倍以下にしなきゃいけないということで、市町村がより多く分割されたという結果になったと思います。午前中の答弁でも、今までの制度では市区町村が八十八選挙区に分割されていたが、この成立後は百五になりますという答弁もありました。

 今回、人口の多い東京などは、多くの自治体、特に二十三区が分割されることになったわけでありますが、実際の集計作業を担うのは市区町村単位の選挙管理委員会、地元の選挙管理委員会が作業をするということで、一つの自治体に二つ三つの選挙区ができれば、それは自治体の負担になっていくわけでございます。

 実際に、首都圏の知事や政令都市の市長でつくる九都県市首脳会議でも先日の五月十九日に意見書を出していまして、地域が分割される自治体の負担が増加するということについて言及がされています。

 こういった各自治体の負担増については、総務省もしっかりと対策をとっていきますということであると思うんですが、それについて改めて確認をさせていただければと思います。

原田副大臣 お答えをいたします。

 今回の区割り改定法案が成立した暁には、都道府県の議員定数が減少し、選挙区が変更となる団体や、新たに分割または分割の区域が変更となる団体が生じることとなります。

 特に、分割市区においては、投開票所などの増設や変更、増設した場合の事務従事者の確保、関係地域住民への適切な周知などの事務が新たに発生することが予想されるとともに、選挙公報の配布誤りなどがないよう注意が求められております。

 こうした投開票の増設などに伴う経費につきましては、執行経費基準法に基づき措置されるものでございまして、総務省としても、必要な予算確保に努めてまいりたいと思います。

 また、今回の区割り改定法案では、同一選挙区内で数市町村の区域の全部または一部を合わせて開票区を設けることなど、柔軟な対応を可能とする内容も盛り込んでおりまして、引き続き、管理、執行に関し、関係団体からの相談にきめ細かく応じるなど、必要な支援もしてまいりたいと思います。

落合委員 今、後半におっしゃられた数市町村が一緒に開票作業もできるようにするというようなこと、これは特に二十三区のような複雑な選挙区がつくられているところは重要だと思います。

 例えば東京七区、先ほども出ていましたが、五つの区に分かれているということで、今までの開票の仕方だと、区ごとに開票作業していますから、五カ所の開票所に、立候補する側も立会人を出していかなきゃいけない。しかも、例えば七区のうち一カ所は、杉並区の部分が杉並区方南一丁目と二丁目しかない。それを杉並区の開票所で開票するとしたら、立会人はその方南一丁目と二丁目に住んでいる人しか出せないわけでございます。

 そういった観点からしても、開票する側も大変ですし、立候補する側も今までの制度だとかなり大変なことになってしまうわけですから、開票作業を選挙区ごとに束ねていくというのは重要な点だと思います。

 こういうような仕組みをつくったわけですから、実際にどんどんやっていくニーズがあるというふうに考えてよろしいでしょうか。

大泉政府参考人 実務的なことですので、私の方から答弁させていただきます。

 この制度でございますが、もともと現在の現行法におきましても、「数町村の区域を合せて一開票区を設けることができる。」というような規定がございまして、今回、分割市区が出るということで、町村と同程度の規模のものもあるというように考えましたことから、これに、町村のところを改めまして市町村、市だと全部大きくなりますので、市町村全部または一部の区域を合わせて開票区を設けることができるように見直すこととするものでございます。

 具体的な細目につきましては、公職選挙法施行令等の改正により詰めていくことになりますけれども、実際には、関係選管が協議の上、一方の選管にその事務を委託するなどして、適切に選挙の管理、執行が行われる道を開いたものと考えております。

 普通の市町村、特別区などもそうですが、政令指定都市においてもそのようなことができますので、そういう意味では、ニーズはあるのではないかと考えております。

落合委員 今までもあったんですね、それは知らなかったですけれども。

 これで、東京はこれからもっと、アダムズ方式を入れていくと定数がふえていくということですけれども、今、調べてみますと、自治体がもう既に三つの選挙区に分けられてしまっているところが、五の自治体あると思います。

 これは、これからまた東京の二十三区ですとかを中心に、今は都心部はそういった三つには分割されていないんですけれども、これから定数がふえる地区に関しては、三つに分割される自治体も単純に考えると出てきてしまうと思うんですが、三つに分割される自治体も次の改定ではふえていくことは否定できないというふうに考えてよろしいですか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 現在、三以上の選挙区に分割されている市区は、三県五市区に存在をいたします。いずれも、合併または指定都市への移行に伴い、行政区と選挙区の区域にずれが生じたことによるものでございます。

 今回も含め、これまで衆議院議員選挙区画定審議会が作成した区割り改定案において、選挙管理執行上の観点も考慮したと考えられますが、市区町村を三分割した例はないと承知をいたしております。

 なお、次回以降の区割りの見直しにおける分割市区町村の取り扱いにつきましては、衆議院議員選挙区画定審議会において適切に御判断をされるものと考えております。

落合委員 私が挙げたその五の自治体が三つに分かれているというのは市町村合併が原因であるということですが、これは、このまま細かく分けていったら、また二十三区などが細分化されていく可能性があるわけでございます。これは、一つ考慮をしなくてはならない大きな問題だと思います。

 先ほど港区で町会さえも半分に分かれちゃったところがあるというふうな話がありましたが、先ほど私も挙げた杉並区では、今回初めて杉並区が分割されるわけですけれども、方南一丁目と二丁目というほんの一部の地域だけが隣の渋谷区にくっつくということになります。これは、方南一丁目、二丁目だけが生活圏が独立しているわけではなくて、駅も近くにあって、その駅の周辺が半分に分かれてしまうわけですけれども、生活圏が一緒なのに、選挙区が細切れになっていく例がどんどんふえていってしまう。

 このことについては、問題であることをしっかりと認識はされていらっしゃいますでしょうか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 衆議院議員選挙区画定審議会における区割り改定案の審議には私は関与しておりませんので、詳細についてはわかりませんが、衆議院選挙制度改革関連法の規定に基づき、選挙区間の一票の格差を是正するために、必要となる改定を行ったものと考えております。

 審議会においては、市区町村を分割する際、市区町村において円滑に選挙の管理、執行ができ、また、有権者への影響が少なくなるよう適切な隣接選挙区を選択した上で、原則として投票区を手がかりとして、支所、出張所の状況、町内会などの地域的つながり、道路や河川の状況等、それぞれの地域の実情を考慮しつつ、必要最小限の範囲となるよう案を作成されたものと承知をいたしております。

落合委員 実際には第三者的な立場である審議会が策定するわけですので、一つ一つ、これがああだこうだということは我々が言う立場でもないですけれども、ただ、実際に選挙をやる立場、それから有権者に接する立場からすると、いろいろな、細かい部分で問題があるということはやはり言っていかなければならない。これから委員に選ばれる人たち、それから審議会のメンバーの人たちにも知ってもらわなければならない大きな問題だと思います。

 今まで応援していた人に投票できなくなるということは、今まで若年層の政治参加が低下している、投票率が低下しているというのもありますけれども、新たに今度は、今まで投票していた人にできないから投票に行く気がしないという高齢者も出てきてしまうかもしれない問題が生じると思います。こういった点で、選挙区がころころ変わってしまう、それから、一部が切り取られるということは重要なポイントだと思います。

 これについては、我々、選挙で選ばれている身、選挙区を持っている身の者がどんどん発信をしていかなきゃいけないと思いますが、副大臣、それについてはどのように思いますか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 審議会におきましては、今回、格差が二倍以上となっている選挙区については、平成二十七年日本国民の人口だけではなくて、平成三十二年の見込み人口においても格差を二倍未満とすることとなっております。このため、東京都など都市部においては、格差二倍以上または二倍近くである選挙区が林立し、市区町村単位で異動する方法をとり得ず、市区を分割する以外に改定方法がない場合が数多くありまして、その場合においては、異動する人口をできるだけ小さくして、選挙区の安定性を大きく損なわないように努めたものであると承知をいたしております。

落合委員 憲法上も一票の格差は重要ですので、今後も、今の小選挙区制度を続ける限りは、分割する市町村、市区町村が出てきてしまうというのは仕方のないことだと思います。だからこそ、単に数字だけではなくて、今までの歴史だとか生活だとか文化だとか、そういうところも考慮をしてこの審議会、第三者の立場である審議会が作業してくださるように、やはり総務省からも要望をしていただければと思います。

 例えば東京の二十三区ですと、東京七区が、今までは渋谷区と中野区だったわけですけれども、今度は中野区の一部、杉並区の一部、目黒区の一部、品川区の一部と渋谷区が一緒になるというような選挙区になります。今までは渋谷区と中野区の代表を選ぼうという選挙だったのが、中野区と杉並区と目黒区と品川区の一部と渋谷区の代表を選ぼうということになるわけでございます。これも、やはりどこの代表なのかわかりづらいという一つの問題があると思います。

 それから、区割りの仕方についてさらに指摘をさせていただきたいと思うんですが、先ほど我が党の後藤委員からも、変なところでというか、番地の途中で区切れているような、そういう地区が、後藤委員の選挙区にもありますし、それから二十三区にもあるし、あと福岡県の南区にもありますというような話がありました。

 私の選挙区の世田谷も、前回の緊急是正法のときにそういったことがありました。前回の区割りの改定で、世田谷区の世田谷区池尻まちづくりセンター管内というところが私の東京六区から五区に移ったわけですけれども、名前が世田谷区池尻まちづくりセンターにもかかわらず、池尻四丁目の三十三番から三十九番というほんの狭いところが、池尻まちづくりセンターに入っていなくて、違う地名のまちづくりセンターに入っていました。

 したがって、池尻は違う選挙区になりましたということが告知されていたにもかかわらず、三十三、三十四、三十五、三十六、三十七、三十八、三十九番地の人たちだけが実は選挙区が変わらなかったということが起こりました。

 さっき、大臣も副大臣も政務官も選挙部長も地図とかでちゃんと配りますというふうにおっしゃっていましたけれども、そのときも地図を配っていたんです。でも、一個、旧道のような道がちょっと行っているところで切れていて、池尻四丁目のほんの数%だけが残っているというのはよく見ないとわからないぐらいの切れ方だったわけです。これは、名前を見ても判断ができない、地図を見てもほとんど、よく見てみないとわからない、こういう選挙区の切れ方もあったわけで、実際に私の地元では、もう投票できないと思ったのに、行ってみたら私に投票できたということの電話等が実際にありました。

 こういう選挙区の区切り方も、数としては二倍以内に入れるという目的を達成するためにそういう区切り方をするのはいいですけれども、やはり、道一つだけで区切っているがために、地図を見てもわかりにくい、地名とまちづくりセンターが一致していない、こういうことが恐らく全国で起こり得ると思います。やはりここはしっかりと考慮に入れていくべきだと思います。

 重要な問題なので、いろいろな方が聞いていますけれども、大臣に改めて伺えればと思うんですけれども、こういったわかりにくい事例がある、あり得るということにプラスして、やはり先ほどから、そうじゃない地区も周知というのが重要だと思います。

 これは、周知期間一カ月の中でしっかりとやっていくというところが、次の選挙においては、国民の選挙に対する理解、政治参加という上でも重要であると思いますので、改めて周知を徹底する、それから、わかりにくいところが実際にあるので、そういったところも総務省もしっかりと、自治体に任せっきりにならずにやっていきますというところを御説明いただければと思います。

高市国務大臣 今回の改正法案でございますが、区割り画定審議会の方で、さまざま難しい課題に直面しながらも、まずは一票の格差是正というここに主眼を置いて、最善と思われる策をお取りまとめいただいたと思っております。

 ただし、非常にわかりにくい例もあり、有権者の方々の投票する権利を奪うことのないように、本法案を成立させていただいた暁ではございますが、すぐに選挙部長にも指示をしまして、具体的に周知広報活動を強化してまいりたいと思っております。今はまだ法律案御審議中でございますので、各種報道で皆様が御承知の範囲だと思っております。

 まず、新区割り地図のデータやポスター、これは関係都道府県や市区町村の選挙管理委員会に提供いたしますし、また、地元自治体の御協力を得まして、市民便りなどの広報誌に載せていただいたり、公共施設にポスターの張り出しをしていただいたりといった方法もあるかと思います。

 また、管理、執行で間違いが起きないように、例えば選挙公報の配布誤り、これが起きては大変でございますので、ここもしっかりと注意をしてまいりたいと思っております。

 なお、投開票所の増設など、さまざま経費もかかりますが、これは執行経費基準法に基づき措置されますので、総務省としても必要な予算の確保に努めてまいります。

 また、選挙、いよいよ選挙ということになりましたら、直前の周知啓発活動というものも各自治体で行われると考えますので、ここもしっかりと支援をしてまいりたいと存じます。

竹本委員長 時間が来ておりますので。どうぞ。

落合委員 はい、済みません。ちょっと私、時間を五分間違えていました。

 終わらせていただきます。ありがとうございました。

竹本委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 最初に、今、この委員会の出席状況なんですけれども、過半数いっていないと思うんですね。委員会が成立していないと思うんですが、確認してもらえますか。

竹本委員長 二十人いるということです。

塩川委員 何にしても、こういう出席状況でこういう重要法案をやっているのかということが厳しく問われるんじゃないでしょうか。

 私は、この法案に当たって、やはり、そもそも議会制民主主義の根幹にかかわる選挙制度であります、まさに国民の参政権にかかわる重要な法案について、しっかりと国会で議論することが必要だと。当然、委員として出席していただくのは当たり前のことなんですが、去年も、この法案のベースとなった衆議院の選挙制度改革法案について、国民の声を聞くべきだということを申し上げたところです。残念ながら、公聴会が行われなかった。

 今回のこの法案についても、今、委員御質問のあったように、非常に有権者、選挙人の方々にとっても混乱を招くような、また、実際の選挙実務においても大変苦労が多いような仕組みとなっている。こういった現場の声をしっかりと聞くことを含めて、参考人質疑が必要だという提案もしましたが、残念ながら、それも受け入れられるものではありませんでした。極めて残念であります。

 市区選管の連合会ですとか指定都市や都道府県の選管連合会の方、まさに実務に精通している方なんかに来てもらって、各党それぞれ質問もして議論を進めれば、いろいろな課題が出てくるはずなんですよ。こういうことこそしっかり行うべきだ、こういった審議のあり方は極めて問題だということを冒頭申し上げておくものです。

 それで、質問ですけれども、現行の小選挙区比例代表並立制が導入されて以降、二〇〇二年の区割り改定、前回、二〇一三年の〇増五減の区割り改定、そして今回の区割りと、三回の区割り見直しが行われてきております。

 お尋ねしますが、二〇〇二年の改定、それから二〇一三年の改定、そして今回の改定において、それぞれ区割り変更となる都道府県の数、小選挙区の数はどうなっているか、お答えください。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇二年、平成十四年の改定におきましては、二十都道府県の六十八選挙区に異動がございました。

 二〇一三年、平成二十五年の区割りの改定におきましては、十七都県四十二選挙区の異動がございました。

 今回、区割りの改定案となっておりますのは、十九都道府県の九十七選挙区でございます。

塩川委員 過去最大の見直しとなっているわけです。

 重ねてお聞きしますが、小選挙区において、市区町村内で分割をしている自治体数、その小選挙区数について、九四年の制度導入時は、分割市区数は十五、その小選挙区数は二十九でしたが、その後、どうだったか。〇二年の区割り改定後、一三年の区割り改定後、今回の改定、それぞれどうなっているのかについて説明してください。

大泉政府参考人 先生御指摘のとおり、小選挙区制導入時においては、分割されていた市区が、二十九選挙区十五市区でございました。

 二〇〇二年、平成十四年の改定におきましては、三十二選挙区十六市区でございました。

 その後、市町村合併の進展、あるいは政令市に移行した市がございました関係で、二〇一三年、平成二十五年の改定におきましては、分割されていたのは百十七選挙区の八十八市区までふえております。

 今回、区割りの改定では、百三十選挙区百五市区となっております。

塩川委員 分割市区数がどんどんふえているというのが実態であります。区割りをするたびに分割される行政区がふえ、今回の改定で分割市区が八十八から百五に増加をしています。区割り変更の選挙区数も過去最大なら、分割される行政区の数も過去最大となっているわけです。

 そこで、この分割市区の問題は、区割り審が行った関係都道府県知事からの意見聴取でも意見が出されているところであります。どのような意見があったのか、その特徴について説明してください。

大泉政府参考人 知事意見の中には、分割に反対する意見がございました。また、分割しない形での改定を希望する意見、現在分割されている団体について可能な限り現在の組み合わせを維持すべきだというような意見もございました。

 一方で、分割する区域を明示して分割してほしいというような意見もあったところでございます。

塩川委員 いわゆる分割されている市区の解消というのは、自治体としての大きな意見ということであります。

 区割り改定については、実際の選挙実務に携わる各地方選管連合会からも要望書が出されております。そこで、全国市区選挙管理委員会連合会及び指定都市選挙管理委員会連合会の衆議院小選挙区の区割りに関する要望事項というのは、どういう中身かわかりますか。

大泉政府参考人 全国市区選挙管理委員会連合会からは、直近において申し上げますと、平成二十八年十二月に要望事項として出てきておりまして、衆議院小選挙区において、市区を選挙区ごとに複数に分割される市をできる限りなくすよう法を改正されたいというような要望でございました。

 また、指定都市選挙管理委員会連合会からは昨年の十月に出てきておりまして、同様に、これは指定都市でございますので、選挙区が同一の行政区内において複数の選挙区にわたるいわゆる分割市が解消されるよう改められたいというような内容の要望が出てきております。

塩川委員 選挙事務に携わる選管連合会の方からは、分割市区の解消というのは当然の要望として出されているわけです。

 有権者にとって、行政区が分割されている選挙区はどういう問題を持っているのか。

 区割り審の知事意見の中で、北海道は、振興局の区域と国政の選挙区とが異なる状態が続いていることで住民に戸惑いが生じており、選挙時にも候補者がわかりにくい、選挙への関心が持てないといった弊害が生じていると指摘をしています。

 長崎県は、前回の区割り改定で佐世保市の一部が分断をされました、このことで住民の混乱が懸念されておりましたが、実際に分断された地区において、分断後初めて行われた平成二十六年の衆議院議員選挙における投票率の低下や無効票の増加という傾向が見受けられましたと指摘をしているわけであります。

 大臣にお尋ねいたします。

 全国市区選挙管理委員会連合会の要望事項では、選挙人からは分割選挙区が解消されない理由を求める声も多数寄せられていると指摘があり、指定都市選挙管理委員会連合会の要望事項では、選挙人に誤解や混乱を招くと指摘がありました。このように、少なくない有権者が市区町の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きを押しつけられているのが現状であります。大臣、このことについてはどのようにお考えでしょうか。

高市国務大臣 昨年の五月に議員立法で成立をしました衆議院選挙制度改革関連法においては、各選挙区の人口に関して、次回の見直しまでの五年間を通じて人口格差が二倍未満となるよう、平成二十七年国勢調査による日本国民の人口に加えて、平成三十二年見込み人口においても格差を二倍未満とすることが求められました。

 この結果、相当数の選挙区の改定が必要になり、今回の区割り改定案の勧告では、十九都道府県九十七選挙区において改定を行うということになり、分割される市区町の数も十七ふえるということになりました。

 例えば、東京都などの都市部におきましては、格差が二倍以上もしくは二倍近くであるという選挙区が林立しておりますので、市区の分割が避けがたいという状況であったと承知をしています。

 今後、政府にできることは、今回の区割り改定法案成立の暁には、この改定の趣旨や内容を十分御理解いただくということはもとより、特に選挙区の変更について、有権者の皆様を初め、選挙管理委員会関係も含めて、関係者の皆様に混乱が生じることのないように、丁寧に周知啓発活動を行ってまいりたいと存じます。

塩川委員 結果として、こういった、地域が分断をされる、有権者の皆さんは非常に戸惑っておられる、そういう状況があるのに対して、丁寧にと言うんじゃなくて、そもそもが、こういった状況に置かれている有権者の方の思いをどう受けとめるのかということについて、ぜひお伺いしたいんです。

 例えば、青森県五戸町の事例について、読売新聞の報道で紹介しますと、「県南東部の五戸町は隣接する八戸市と同じ新青森二区に組み込まれる。同町は前回二〇一三年の見直しで同市と別の選挙区になったばかりで、七十歳代の主婦は「(将来の見直しで)また違う選挙区に組み込まれてしまうのでは」と話した。」

 前はこっちで、次はこっちで、また戻って、そんなことなんかも起こり得る。こういう、有権者が戸惑う姿が目に浮かぶわけで、選挙のたびに不自然な選挙区変更を強いられるようなことについて、有権者の思いについて、大臣としてはどのように受けとめておられるのか、お考えをお聞かせください。

高市国務大臣 有権者にとりましても、立候補を予定される方にとりましても、それは、選挙区の区割りが変更になるということは大変負担の大きいことであろうと思います。

 私自身も今まで立候補する区域が変わった経験を二回持っておりますので、投票できなくなった方々がどんなに残念な思いをされたかということ、自分自身も、随分混乱もし、大変だったという経験は持っております。

 ただ、今回の御審議いただいている法案につきましては、議員立法によって成立した衆議院選挙制度改革関連法に基づいて、区割り審としては、安定性にも配慮しながら、それでも一票の格差を是正していくということを第一義にして、精いっぱい御審議をいただいて、その結果の答申であったと思っております。

 私自身が有権者の皆様の思いということも十分理解しつつも、今回提案している法律案についての経緯というものはそういうものであったということ、そして、やはり選挙というのは民主主義の根幹でありますので、これは、国会で各党各会派の御議論を経て、選挙制度については御議論を進めていただきたいということを申し上げます。

塩川委員 そういう点では、今回の法案は、去年の衆議院選挙制度改革関連法を踏まえてのものでありますから、そもそもこういう、有権者が戸惑うような選挙制度のあり方そのものが問われているということを言わなければなりません。

 幾つか数字を確認したいんですが、二〇〇五年と一四年の衆議院選挙において、管理執行上問題となった件数、いわゆる選挙事務のミスの件数はどうなっているか、また、一四年衆議院選挙における選挙事務ミスのあった都道府県の数はどうなっているのかについてお答えください。

大泉政府参考人 総務省におきましては、国政選挙等における管理執行上問題となった事項について、選挙後に、各都道府県選挙管理委員会を通じまして報告を求めているところでございます。

 二〇〇五年、平成十七年の衆議院議員総選挙におきまして、管理執行上問題となった事項として報告のあった件数は六十四件でございました。

 二〇一四年、平成二十六年の衆議院議員総選挙におきましては、管理執行上問題となった事項として報告のあった件数は百九十四件であり、その発生した都道府県の数は四十一都道府県であったということでございます。

塩川委員 六十四件が百九十四件と、この十年近くで選挙事務ミスが三倍にふえています。四十一都道府県という話がありましたから、ほとんどの都道府県内で選挙事務ミスがあったということは極めて重大であります。選挙の公正を損なうことにもつながりかねません。

 さらには、二〇一三年の参議院選挙では、高松市の選管での不正開票事件がありましたし、一四年の総選挙では、仙台市選管でも不正事件がありました。

 分割される選挙区について、投開票事務の非効率など問題が上がっていると思いますが、現場から問題点は聞いていませんか。

大泉政府参考人 総務省としては、現時点では、特段、分割市区となる見込みの団体から管理執行上の具体的な問題点について報告、相談は受けていないところでございます。

 ただし、分割市区におきましては、先ほどから申し上げているとおり、投開票所などの増設や変更、増設した場合の事務従事者の確保、あるいは関係地域住民への適切な周知などの事務が新たに発生するというようなことでございます。また、選挙公報の配布誤りなどがないように注意が求められておるところでございます。

 そのため、関係団体におかれては、選挙の万全な管理、執行に向けて、必要な準備を進めていただきたいと考えているところでございまして、総務省としても、引き続き、管理、執行に関し、関係団体からの相談にきめ細かく応じるなど、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

塩川委員 選挙実務を行う選管の要望を見ますと、先ほども紹介した全国市区選挙管理委員会連合会は、投開票事務の非効率を招く大きな要因になると述べておりますし、指定都市選挙管理委員会連合会は、投開票事務の効率化を阻害する要因となると、今回の区割りについて指摘をしているわけであります。

 この十年近くで選挙事務ミスが三倍にふえている中で、今回のような非常に大きな区割りの見直しというのは大変大きな負担になるだろう。選管の皆さんは非常に、現場で、今でもぎりぎりのところで頑張っているわけです。苦労もしているわけですけれども、もともとミスをしようと思ってやっているわけではありませんから。しかしながら、分割選挙区が増加をすることで、選挙事務ミスがさらに増加をする懸念がある。

 こういった選挙制度、区割りのあり方というのが選挙の公正性にとって大きな障害となるのではないか、このように思いますが、どのようにお考えですか。

大泉政府参考人 これまでの衆議院議員選挙におきましても分割市区はございまして、分割市区となった団体は適正に選挙が執行されてきていたものと考えております。

 一方で、新たに分割市区となった団体で、先ほどの管理執行上の事務ミスについて、前回の区割り改定に際しまして、一件、これは選挙公報の配布誤りでございますが、そのようなミスがあったというような報告を受けているところでございます。

 これ以上、同様の事務ミスが発生、増加しているとの事実は承知しておりません。

塩川委員 さらなる負担が生じるという中での懸念というのは強いと言わざるを得ません。

 区割り審の知事意見の中で、北海道は、「選挙事務の管理執行上、事務の複雑化に伴う事務量の増加、迅速性の確保のための経費の増加など大きな問題も生じている。」と指摘をしています。分割する地域の多い東京都は、「期日前投票所での受付や選挙公報の配布を始めとする選挙運営のミスを防止するための体制整備などの負担が増大する。」と指摘をし、「一つの区市町村の区域を三分割することは、有権者への周知の困難さに加え、投票所入場券及び選挙公報の区分配布、開票所の三カ所設置の必要性など、結果として選挙の運営に支障をきたす可能性が高いことから行なうべきではない。」と要望したわけです。

 今回、東京都の分割は、行政区で三つ以上の選挙区となったところはありませんが、二つの選挙区の実務を行わなければならない区は多くなりました。また、今回の区割り見直しで二つの選挙区に分割をされた座間市においては、遠藤三紀夫市長が、市選管の人事や予算は一つの選挙区を前提にしている、選挙事務が煩雑になることにどう配慮してくれるのか説明がなく、国は無責任だ、このような報道もされているところです。

 この間、我が党は、国政選挙の執行経費法案の審議の際に、再三、経費削減が投票所や開票所の数の減少、投票時間の短縮、選挙事務ミスの増大に拍車をかけていると指摘をしていたことを述べておきたいと思います。

 総務省にお尋ねしますが、参議院の選挙区を合区としたときには合区選管を設けましたが、小選挙区の場合は一つの選管が複数の選挙区の事務を行っています。複数の選挙区を抱える選管は、投票所入場券や選挙公報を配布するにも、選挙区ごとに間違えないよう配布しなければなりません。役所につくる期日前投票所は、それぞれの選挙区で入り口を分けて、投票を間違わないよう工夫するとかしていると聞いております。

 しかし、これは、人員が確保できる場合であります。例えば、東京の多摩地域の選管では、市の規模などもあって、選管職員が三人とか四人しかいないというところがあって、そういう自治体で二つの選挙区を抱えているために、どうやって実務をこなせばいいのかという問題に直面していると聞いています。

 このような選挙事務の人員配置や予算配置など、実際に適切に対応できるものなのか、この点についてはどのようにお考えですか。

大泉政府参考人 御指摘のありました投開票所の増設などでございますけれども、こういう経費につきましては、執行経費基準法に基づきまして措置をされているものでありまして、総務省としても必要な予算確保に努めてまいりたいと考えております。

 また、今回の区割り改定法案では、同一選挙区内で複数市町村の区域の全部または一部を合わせた開票区を設け、効率的な開票作業体制を構築するなど、柔軟な対応をする道を開いているというようなことでございますので、引き続き、執行機関、選挙の管理機関に対しまして、関係団体からの相談などにきめ細かく応じていくなど、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

塩川委員 それが、実際にお願いする方、受ける方の関係とかがどうなってくるのかという話もあるわけです。そういう意味でも、二つに分かれるような場合に、その二つに責任者を置かなくちゃいけない、人数が三人でどうできるのかとかいう現場のいろいろな悩みがあるわけですね。そういうところが実際どうなってくるのかというのが大変心配するところです。

 それと、今の答弁にありましたけれども、今回の法案で、数市町村の区域の全部または一部を合わせて開票区を設けることができるとする規定が盛り込まれたところです。

 そこで、お聞きしたいんですが、同じ選挙区内で、開票区を持たない選管と開票区を持つ選管ではどういう関係になるのか。例えば、A市内の一部が隣接するB市と同じ選挙区となった場合に、A市選管は投票まで執行して、開票はB市選管に委託するということになるのか。二つの行政区から成る選挙区の場合はまだわかりやすいかもしれませんが、東京十区のように、四つの区選管が全て分割した選挙区を持っている場合はどうするのか。その一点では具体的にどうでしょうか。

大泉政府参考人 分割市区において、市区の区域の全部または一部を合わせて開票区を設けられることとするという規定でございますが、今後も実態に、いろいろ御相談に応じながら、どういう体制がいいのかということも考えていきたいと考えております。

 また、今後、公職選挙法施行令によりまして、手続など具体的なことを定めていくことになると思います。端的にイメージしているのは、一方の選管にその事務を他方の選管が委託するような、本体のところに分割で、それほど大きくないところを委託するような格好になるのではないかというふうに現在では想像しております。

塩川委員 そういう点では、実際の現場の要望なんかも背景にあって、そういう手続の話も出てくるわけですけれども、実際、その人員の配置をどうするか、費用負担をどうするのか、やはり個別に対応が必要だという問題だと思いますので、そういう点での制度設計なども、現場の要望を踏まえてきちっと行っていただくところだろうと思います。

 分割選挙区が多くなったことで選挙執行が大変になるということは、よくわかります。そして、多くの自治体からも要望が上がっている周知徹底の問題ですけれども、今回の区割り改定は、過去最大の見直しとなっていますが、その施行日は、公布の日から起算して一月を経過した日となっています。こういう、一カ月間で本当に周知徹底が図れるのかということは誰もが思うところですが、この点についてはいかがお考えですか。

冨樫大臣政務官 お答えをいたします。

 今回の区割り改定法案では、平成六年、十四年、二十五年の改定の際にも、公布の日から起算して一月を経過した日から施行することとされていたこと、先月十九日の衆議院議員選挙区画定審議会による勧告の時点から各種報道がなされていることなどから、施行までの周知期間を一カ月としております。

 有権者に混乱が生ずることなどがないよう、改定内容に、十分周知徹底を図ってまいりたいと思います。

塩川委員 過去の例でいえば、もうちょっと早く具体の話が出されていたんですよ。それが、今回の場合には、本当に直前の話になってきていますから、今までよりも、こういう周知に係る期間が全体として事前のアナウンスを含めて短いのに、実際に区割りで改定されるのは非常に多いという点で、私はやはり、一月というので本当に大丈夫なのかということは、強い懸念を覚えざるを得ません。

 現場の話でいえば、衆議院の小選挙区の区割り改定の周知徹底を図る場合に、実際、そこの選管でほかの地方選挙をやっている場合というのがあるんですよね。東京でいえば、都議選がもう目の前です。都議選のような地方選挙が行われているのと並行するようにこういう衆議院の小選挙区割りの周知と言われても、これは有権者が混乱するだけじゃないでしょうか。

 私は、そういう点でも、ワンクッション置くようなことというのが、現場の実情を踏まえれば、当然必要なことだと思うわけです。

 区割り審の知事意見の中で、東京都は、選挙区の区域が変更される区市町村は、選挙関連システムの設定変更が必要となり、同時に住民への十分な周知も求められることから、公布から施行までの期間を十分に確保すべきと述べています。

 ですから、もう一回お尋ねしますけれども、例えば、東京のように、もう目の前、都議選です、選管はそれに目いっぱいやっています、そういうときに並行してこんな周知徹底が図れるのか、一月でいいのかというのは、大問題じゃないですか。その点、政務官、どうですか。

冨樫大臣政務官 今回の区割りの改定では、都道府県の議員定数が減少し、選挙区が変更となる団体や、新たに分割または分割の区域が変更となる団体が生ずるところであり、有権者の方々に混乱が生じないよう、丁寧に改定内容を周知する必要があります。

 総務省としては、法案成立後直ちに、ホームページや広報誌などを活用したきめ細かな広報活動を行い、周知を徹底してまいります。

 また、関係都道府県及び市区町村の選挙管理委員会に対し、新区割り地図のデータやポスターを提供し、各自治体の広報誌への掲載や公共施設への掲示などを促すことにより、効果的に周知してまいります。

 以上です。

塩川委員 いや、だから、都議選みたいに地方選挙をやっているような選管で、一月で大丈夫だと言える根拠はどこにあるのかというのを聞いているんですけれども。もう一回。

高市国務大臣 この法律案を成立させていただき、また、公布された日から一カ月ということで施行になりますが、それまでの間ももちろん周知をさせていただきます。当然、東京都議会選挙というものがある中でも、法律が施行されるわけでございますから、それについての情報提供で、今できることは速やかに行います。

 先ほど来も答弁させていただいておりますように、総務省のホームページや広報誌、そしてまた、地方自治体によって可能なところには市民便りなどに掲載をしていただいたり、またポスターの掲示もさせていただきます。

 ただ、あわせて、仮に衆議院がまた解散になったというような場合には、その直前の集中的な広報、周知というものもございますから、その中でより多くの有権者の方にしっかりと、特に区割りが変更になった選挙区の有権者の方に正しく御理解をいただくように、例えば、投票カードの送付と同時に、今でも地図が入ったり投票所の住所が書いてあったりしますけれども、今度のあなたの選挙区は何々県第何区でございますと、その該当する市区町村名ですとか、また投票所もわかりやすくというような形で、より進化した周知の方法ということについても横展開をしてまいりたいと思っております。

塩川委員 有権者が混乱するような選挙の設定を可能とするような、そういったやり方そのものが問われているんだと思いますよ。

 そういう点でも、一つ一つの選挙がきちっと適正に執行されるような選管の実務を保障するし、有権者がきちんと判断できるような取り組みという点でも、こういった一月という周知徹底の期間というのは極めて実態にそぐわないものだということは強く指摘をしておくものです。

 有権者に周知徹底するのは当然であるわけで、丁寧にと言えば事が進むわけじゃないわけですから、こういったことについても言っておきます。

 もう一つ、今回の区割り改定で確認しておきたいんですが、今回の区割り改定作業は、二〇一五年簡易国勢調査人口をもとにした選挙区間の人口格差を二倍未満にするとともに、二〇二〇年見込み人口でも選挙区間の人口格差が二倍未満であることを基本としています。

 今回の改定では、二〇二〇年見込み人口で格差一・九九九倍となる勧告を行いました。区割り審の小早川光郎会長は、四月十九日の会見で、二〇二〇年見込みで一・九九九倍とはしたものの、実際には二倍を超えないとは言い切れないというふうに述べたと紹介されています。

 政府として、二倍を超えないと言い切れるんですか。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 今回の改定案につきましては、昨年の選挙制度改革関連法に基づきまして、次回の見直しまでの五年間、人口格差が二倍未満となるように、平成二十七年度国勢調査に対しまして、それにトレンドで平成三十二年の見込み人口を求めまして、その平成三十二年見込み人口においても格差を二倍未満とするようなことが定められておりますので、それに基づきまして区割り審の方では区割りをして勧告をしたということでございます。

 そういう中では、現在の二十七年国勢調査の日本国民人口において格差を計算しますと、最大格差が一・九五六倍というふうになっておりまして、過去の勧告の中では一番縮減されている数字でございます。

 また、次回の見直しまでの五年間を二倍にならないように抑えて、結局、そういう意味では一・九九九倍ということでございますけれども、そういう措置で区割りを行っています関係から、すぐに二倍を超えるようなことはないのではないかと考えております。

塩川委員 それは実際に推計した数字の伸ばし方いかんで変更し得る、もともと推計ですから。そういう点でも、本当に二倍以内におさまるのかというのはわからない話です。

 二〇二〇年の大規模国勢調査に基づく区割り改定では、アダムズ方式による都道府県への定数の再配分が行われます。

 仮に、二〇二〇年見込み人口を用いて都道府県への定数の再配分を行った場合に、定数が増減する都道府県はどこか、その増減数を紹介してください。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、あくまで仮の話ということでございます。

 平成三十二年、二〇二〇年の見込み人口を用いてアダムズ方式で計算しましたところでは、定数が増加する都道府県は、埼玉県一増、千葉県一増、東京都四増、神奈川県二増、愛知県一増というふうになります。

 また、定数が減少する都道府県は、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、広島県、山口県、愛媛県、長崎県で、いずれも一減という九県というふうに計算の上ではなってまいります。

塩川委員 定数が増減する都県だけでも十四にもなります。格差が二倍とならないようにするための見直しも含めれば、今回改定以上にさらに大きな見直しとなることは必至であります。

 区割り審の知事意見の中でも、多くの知事が、次回、五年後の区割り改定においても変更が見込まれることへの懸念が表明されています。

 首都圏に立地する九都県市首脳会議による「衆議院議員小選挙区の区割り改定案について」の意見表明では、自治体の一体性が損なわれた区割りは望ましいものではないと指摘し、平成三十二年の国勢調査に基づく区割り改定では再度の変更が想定され、関係する地域住民の一層の混乱を招きかねないとしています。

 大臣にお尋ねいたします。

 五年後には今回以上の区割り見直しが行われて、今回以上に大きな混乱も想定されるのではありませんか。

高市国務大臣 議員立法で成立をしました衆議院選挙制度改革関連法により、衆議院議員選挙区画定審議会設置法が改正されました。

 次回、平成三十二年以降の大規模国勢調査に基づく区割り改定案の作成に当たっては、当該国勢調査の結果による日本国民の人口に基づき格差を二倍未満とするとともに、都道府県別定数配分をいわゆるアダムズ方式によって行うということが規定されています。

 平成三十二年の国勢調査に基づく区割りの見直しに当たりましては、衆議院議員選挙区画定審議会は、こうした衆議院議員選挙区画定審議会設置法の規定に基づいて改定案の作成を行われるということになります。

 平成三十二年の国勢調査に基づく区割り改正の内容ですとかその影響につきましては、現時点においてお答えすることは困難でございます。

塩川委員 実際に見込まれるそういう推計人口でもこういった大きな変化にならざるを得ないわけで、そういったことを考えると、こういうスキームそのものの問題というのが問われてくるわけです。

 こういった小選挙区制度の区割りを続けることというのが、有権者には混乱、市区町村の一体性を損ない、また選管事務についても困難さをもたらすものとなっている。いいことは何もない。こういった混乱を招いている大もとに小選挙区制があるということを言わざるを得ません。

 小選挙区制の導入以降、区割り変更が行われても格差の問題は続き、投票価値の平等を保障する抜本的格差是正ができませんでした。

 日本共産党は、一九九三年に政治改革と称して現行の小選挙区比例代表並立制が提案されたときから、小選挙区制導入そのものに反対するとともに、小選挙区の区割りが発足当時から二倍を超える格差を容認しており、投票価値の平等を踏みにじる違憲立法だと批判をしてまいりました。

 昨年の衆議院選挙制度関連法の審議の際にも、小選挙区制のもとでは、格差是正のために市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きが避けられず、有権者は選挙区の不自然な変更を強いられることになると批判をしました。今回の区割りを見ても、まさにその指摘どおりとなっています。これは、小選挙区制がもともと投票権の平等という憲法の原則とは両立できない制度、このことを明らかにしていると言わざるを得ません。

 そこで、大臣に基本的なことを確認したいんですが、日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存する」と宣言をしています。

 主権者国民の代表をしているのが国会議員であり、政府を暴走させないようにする、それが国民の代表で構成する議会の最大の役割であります。この国民の代表たる議員を選ぶのが選挙であります。

 日本国憲法において、選挙に関する基本原則はどのようなものが定められているのか。これを踏まえ、選挙とはどういうものだと大臣は認識しておられますか。

高市国務大臣 まず、日本国憲法では、公務員の選定及び罷免は国民固有の権利であるとされています。第十五条第一項でございます。また、第十四条の法のもとの平等、第十五条第三項の成年者による普通選挙の保障、第十五条第四項、選挙における投票の秘密、第四十四条、両議院の議員及び選挙人の資格に関する差別の禁止などが規定されております。

 これらの憲法の規定に基づいた選挙制度のあり方というものは、民主主義の根幹にかかわる重要な問題であるという認識でございます。

塩川委員 普通選挙や平等選挙という、まさに民主主義の土台、根幹となる選挙制度のあり方というのが、憲法から当然説き起こされるところであります。

 選挙制度は民主主義の根幹であり、主権者である国民の参政権の問題であります。選挙制度を考える基本原則は、国民の多様な民意を鏡に映すように、できる限り正確に反映することでなければなりません。憲法が求める投票価値の平等は、選挙区間の人口格差是正にとどまりません。有権者が投票した票が国会に反映されているのかどうかという点も見なければならない。

 昨年の当委員会でも確認しましたが、総務省に再度確認します。

 現行小選挙区比例代表並立制の選挙結果についてですが、現行制度が導入されて以降、総選挙は七回行われました。各総選挙における第一党の得票率と獲得当選人の率はどうなっているのか。比率のみでよいので、お答えください。

大泉政府参考人 まず、平成二十六年、一番直近の衆議院議員総選挙の小選挙区選出議員選挙の結果における第一党は自由民主党でございまして、全選挙区の有効投票総数に占める自由民主党の得票数の割合、いわゆる得票率は四八・一%で、小選挙区選出議員選挙の全選挙区の当選人数に占める自由民主党の当選人数の割合は七五・三%でございました。

 同様に、平成二十四年の衆議院議員総選挙については、第一党は自由民主党であり、得票率は四三・〇%、当選人の割合は七九・〇%でございます。

 平成二十一年の衆議院議員総選挙につきましては、第一党は民主党でありまして、得票率は四七・四%で、当選人数の割合は七三・七%でございました。

 平成十七年の衆議院議員総選挙については、第一党は自由民主党であり、得票率は四七・八%、当選人数の割合は七三・〇%でございます。

 平成十五年の衆議院議員総選挙については、第一党は自由民主党であり、得票率は四三・九%で、当選人数の割合は五六・〇%でございました。

 平成十二年の衆議院議員総選挙においては、第一党は自由民主党であり、得票率は四一・〇%、当選人数の割合は五九・〇%でございます。

 最初の平成八年衆議院議員総選挙につきましては、第一党は自由民主党でありまして、得票率は三八・六%、当選人数の割合は五六・三%であったものでございます。

塩川委員 七回の総選挙の結果というのは、小選挙区制の根本的欠陥を浮き彫りにしています。この四回で見れば、小選挙区での第一党の得票率は四割台にもかかわらず、七から八割もの議席を占めています。得票と獲得議席に著しい乖離が生じているわけです。

 小選挙区制は、民意をゆがめて、比較第一党の虚構の多数をつくり出す一方で、少数政党は得票率に見合った議席配分が得られず、獲得議席を大幅に切り縮められます。各選挙区で最大得票の候補者一人しか当選しないため、それ以外の候補者の得票は死票となります。

 直近の二〇一四年総選挙における落選人の得票、いわゆる死票の割合というのは四七・九九%、半分が死票になっているわけですし、同じ一四年総選挙における死票率五〇%以上という小選挙区は百三十三、六〇%以上は二十二に上っているわけです。一四年総選挙は、二位以下の候補者への投票が四八%で、二百九十五選挙区のうち、死票が過半数の選挙区は百三十三にも上っています。

 このように民意を集約した虚構の多数政権による強引な政治、多数のおごり、このことが国民の民意を反映しない政治をつくっている、国民の政治不信をつくり出しているということを指摘せざるを得ません。

 大臣にお尋ねしますが、昨年度の衆議院選挙制度関連法でも、こういう小選挙区の現行制度が民意をゆがめる、過度に民意を集約するという問題点を持っていることを全政党が認めて、現行並立制の功罪を広く評価、検証することで合意しました。これまでの各党協議においてこのような合意があったところです。民意集約機能の緩和の問題を含め、抜本的な見直しについて協議していくこととなっていたわけです。

 昨年の関連法質疑の際にも、私の質問に提案者の北側議員は、集約機能が大きくなり過ぎている傾向があると述べ、逢坂議員は、確かに民意が過度に集約され過ぎていると述べておりました。

 この民意と議席の乖離という小選挙区制の根本的な欠陥を見直さなければならないのではありませんか。

高市国務大臣 現行の衆議院の選挙制度であります小選挙区比例代表並立制というのは、選挙や政治活動を個人中心の仕組みから政策本位、政党中心の仕組みに転換するということを目指して、長年にわたる政治改革の議論を経て、平成六年に導入されました。

 小選挙区制については、第八次選挙制度審議会の答申によりますと、長所としては、政権の選択についての国民の意思が明確な形で示される、政権交代の可能性が高い、短所としては、選挙ごとの票の動きが激しい、少数意見が選挙に反映されにくいなどが挙げられています。

 選挙制度のあり方ということにつきましては、いずれにしましても、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でございますので、各党各会派で御議論いただくべきものだと考えております。

塩川委員 小選挙区制はよく民意の集約と言われますけれども、民意の集約というのは投票価値の平等と相入れないんですよ。私は、そういう点でも、鏡のように民意を反映する比例代表などを中心とした選挙制度に改める、小選挙区制そのものを見直すことが必要だということを申し上げたい。

 昨年の衆院選挙制度改革は、定数削減を行ったのも重大です。国会の政府監視機能が低下をすることは明らかで、議会政治史上を見ても、国際的に見ても、我が国の国会議員の総定数が少ないことは明らかで、定数削減を行うことの合理的根拠はどこにもないということも指摘をしておきます。

 最後に、被災地の定数が減らされていることについてお尋ねをいたします。

 今回の改定では、東日本大震災の被災地である比例の東北ブロックが定数一減、小選挙区では、青森県、岩手県がそれぞれ一減、また熊本地震の被災地の熊本県も一減であります。先ほどの二〇二〇年国勢調査によるアダムズ方式の導入の試算では、宮城県、福島県の小選挙区も一減とありました。

 大臣にお尋ねしますが、このように被災地の定数が削減されていることについての見解をお聞きします。

冨樫大臣政務官 委員御指摘のとおり、今回の改正法案においては、小選挙区の定数において一減となる六県の中に東日本大震災等の被災地が含まれていることは承知をしております。

 衆議院議員小選挙区の定数削減及び六減県の決定方法については、昨年の五月に議員立法により成立した衆議院選挙制度改革関連法において定められたものであります。

 以上であります。

塩川委員 大臣にお答えいただきたいんですが、今回の区割り改定に当たって、宮城県の意見を見ると、宮城県は、「甚大な被害を受けた東日本大震災からの復興の途上にあるため、区割りの改定案の作成に当たっては、特段の配慮をお願いしたい。」とありました。福島県は、福島県の特殊事情について、「本県は、東日本大震災に加え、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、現在でも約八万六千人もの県民が県内外に避難している。 今後の避難指示の解除等により、本県の人口は、しばらくの間は不安定かつ流動的な状況にある。 人口の算定や区割りの改定にあたっては、本県の特殊事情について十分に考慮する必要がある。」と述べているわけです。

 そこで、確認したいんですが、例えば、強制的に避難しなければならず、住民票がもとのままだった有権者の投票権行使はどうだったのか。居住実態はないわけですけれども、投票を認めなかったわけではないはずであります。さらに言えば、自主避難をしていた、避難解除が行われたが、まだ住民票のある地域での居住がままならない、そんな有権者の投票権行使はどうなっていたのか。このことについてぜひお答えください。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 選挙人が投票するためには選挙人名簿に登録されなければいけませんが、選挙人名簿の登録につきましては、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満十八年以上の日本国民で、その者に係る登録市町村等の住民票が作成された日から引き続き三カ月以上、その登録の市町村等の住民基本台帳に記録されている者等について行われるということでございます。

 住所は、客観的居住の事実を基礎とし、これに当該居住者の客観的居住意思を総合して決定するものとされておりますので、一般論として申し上げますと、災害等により避難元市区町村に居住することができず、やむを得ず一時的に避難をしている選挙人につきましては、避難元市町村に住所があると考えられまして、当該住所地において選挙権行使ができるもの、これは一般論でございますけれども、そういうふうに考えております。

竹本委員長 塩川君、時間が来ていますので。

塩川委員 はい。

 要するに、投票権の行使をどう保障するかという問題なんですよ。居住実態がどうというよりも、やはりさまざまな要件があるわけですよね。そういったときに、いろいろな環境の中でも、有権者の投票権をどう保障するのか、その行使をどう担保するのか、こういう立場で知恵を出すべきだ、このことを申し上げて、質問を終わります。

竹本委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保です。

 本日議題となりました、いわゆる区割り法案について質問いたします。

 最後の質疑者になりますので、他党の委員の質問と重なる部分は多いかと思いますが、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 初めに、今回の改定により、平成二十七年国勢調査の我が国の人口を基準とした衆議院総選挙区間の最大格差は一・九五六倍となります。現行の最大格差が二・一七六倍でありますので、一定程度は改善されたことになります。また、平成三十二年の見込み日本国人口をもとにした最大格差は一・九九九倍となる見通しとのことです。

 そこで、お伺いいたしますが、今回の改定で最大格差は二倍未満となりましたが、選挙区によっては首都圏を中心に依然として二倍に近い格差となっており、投票価値を一対一に近づける努力をすべきである、一票の格差は解消されたとは言いがたい、こういった意見もあります。このような意見に対して、どのような御見解をお持ちでしょうか。お伺いいたします。

大泉政府参考人 お答えいたします。

 今回の区割り改定におきましては、平成二十七年国勢調査における日本国民人口において、最大格差が一・九五六倍に縮小されるということになっております。この数字については、これまでの区割りの改定時等の最大格差と比較しまして最も格差が縮小されており、一票の格差の是正に資するものであると考えております。

 なお、一対一に近づけるという意見もあるということでございますが、平成二十三年の最高裁判決では、選挙区間の人口の最大格差は二倍未満を基本とすると規定していた当時の衆議院議員選挙区画定審議会設置法の三条一項につきまして、「投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものということができる。」と判示しておりまして、平成二十五年及び平成二十七年の最高裁判決におきましては、この規定の趣旨に従った選挙制度の整備に向けた取り組みが着実に続けられていく必要があるというべきであると判示しております。

 また、昨年の選挙制度改革関連法におきましては、二倍未満を基本とするの基本とするというところが削られておりますので、人口格差についての厳格さが加えられていると承知しております。

 その上で、御指摘の点について一般論的に計算式などを申し上げますと、昨年、その衆議院選挙制度改革関連法に基づき、いわゆるアダムズ方式により平成二十七年の日本国民人口で都道府県別定数を配分した場合、議員一人当たり人口の都道府県間の格差を計算しますと一・五倍を上回っているところでございまして、ということは、区割りの改定により、都道府県間格差、それは都道府県における選挙区を完全に均等に割った理論値になると思いますけれども、その一・五倍を超えるということでございますので、選挙区間の人口格差を一・五倍未満に抑えるということは理論的にはできないということになっております。

椎木委員 次に、区割りの見直しについては、五年ごとに実施される国勢調査に基づいて行われることとなっておりますが、今回の改定により、区割りでは最大格差が五年後には二倍を超えるおそれがある、こういった指摘もありますが、これらの点についての見解を求めます。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の区割りの見直しでございますが、それは、衆議院選挙制度改革関連法におきまして、次回の見直しまでの五年間を通じて人口格差が二倍未満になるようにということで、三十二年の見込み人口においても格差を二倍未満とすることが求められておりまして、そのように区割りがなされているということでございます。

 その結果、今回の勧告によりますと、平成二十七年国勢調査による日本国民人口において、最大格差が一・九五六倍に縮小されるということとなっております。先ほどのような見直しをされたということでございますので、選挙区間の人口格差がすぐに二倍を超えるというようなことはないと考えております。

 また、次回の大規模国勢調査である平成三十二年の国勢調査からは、アダムズ方式による都道府県別定数の再配分が行われるということで、そこで、人口格差が二倍未満になるような区割りの改定が行われるというふうなことが見込まれております。

椎木委員 選挙部長、私は賛成の立場でお聞きしていますので、それをまず冒頭申し上げておきます。

 ちょっと一点だけ確認ですけれども、今、五年後には二倍を超えるおそれがないというような趣旨の答弁だったと思いますけれども、この点だけ再度確認させてください。

大泉政府参考人 今回の区割りがやった方式等によりまして、選挙区間の人口格差がすぐに二倍を超えるようなことはないと考えているということでございます。

椎木委員 次の質問へ入ります。

 今回の区割り改定案では、十九都道府県九十七選挙区が変更対象となっております。実は、その中の一つに、私の選挙区であります大阪二区も含まれております。

 変更対象となった選挙区の有権者が混乱するおそれがあり、十分な周知期間を設ける必要があると思うのですが、午前中からの質疑でも、各党各会派の質疑者からも同じような質問があったと思いますけれども、一カ月間の周知期間で本当に大丈夫なのか。これは、私は最後の質疑者ですので、改めてお聞きしたいと思います。

大泉政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、平成六年の区割りの画定法、それから平成十四年、二十五年の区割り改定法におきましても、公布の日から起算して一カ月を経過した日から施行されるとされておりまして、また、選挙区画定審議会による勧告が四月十九日でございますので、その時点から各種報道などがなされていることから、一カ月ということで、これまでと同様の期間をとっているところでございます。もちろん、施行日以後初めてその期日を公示される選挙から適用になりますというような前提でございます。

 有権者に混乱が生じることがないよう、区割りの見直しについては、一カ月の施行期間でございますが、十分周知徹底を図ってまいりたいと考えております。

椎木委員 これまでの答弁と同じ答弁の繰り返しをあえてお聞きしたんですけれども、私も地方自治体で選挙管理委員会の書記をやっていた経験があるんですね。

 まず、その前に一点申し上げたいのは、四月十九日の勧告により既に周知しているかのような答弁なんですが、国民の皆様、有権者からしたら、これは周知じゃないんですよ。情報提供をいただいているだけであって、これは周知とは全く違うと思いますからね。ここはしっかり認識していただきたいと思います。

 ですから、与野党の先生方みんな、この一カ月の周知期間ということを心配しているんですよ。

 一例を挙げるなら、地方の方も、地方選挙で、例えば投票所が改修になるとか、震災の影響で使えない。ほんの数百メーター近くに変更するだけでも、なかなか投票所に足を運べないんですよ。なぜかわかりますか。周知されていないからなんですよ。たった七万弱の小さな自治体であっても、そういうことというのは、ただただ多くあるんですよ。だから、僕が心配して、あえて質問させてもらっているんですね。

 ですから、選挙部長が認識されているよりも、地方は、この一カ月間で周知をされるというのは、なかなかこれは難しいことですから、このことだけ私の方は申し上げておきたいと思います。

 ただ、先ほども申し上げましたけれども、賛成の立場で質問させていただいていますから、細かいところを確認しながら質問させていただくという趣旨で、決していちゃもんをつけるつもりはありませんので、そのことだけ申し上げておきたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 区割り改定案の作成に当たっては、「行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならない。」と規定されており、衆議院議員選挙区画定審議会が定めた区割り改定案の作成方針に、市区町村を原則として分割しないことが定められております。

 今回の区割り改定案では、新たに二十六の市区が分割されることになり、総数として八十八市区町から百五市区町に拡大しております。当該の自治体の多くは少なからず当惑していると聞いておりますが、どのような見解をお持ちでしょうか。

大泉政府参考人 今回の区割りの見直しは、次回の見直しまでの五年間を通じて二倍未満とする、平成三十二年見込み人口においても二倍未満とするということが求められていたという中で、この結果、相当数の選挙区の改定の必要が生じたということでございます。

 それから、分割市区の数につきましては、御指摘のとおり、十七増加するということとなっております。

 今後、勧告に基づく区割りの改定法案の成立の暁には、区割り改定法の趣旨や内容を十分理解していただくことはもとより、特に選挙区の変更について、選挙区初め関係者の混乱が生じることのないよう、きめ細かく周知啓発を行ってまいりたいと考えております。

椎木委員 しっかり現場の声を酌み上げて、検討に検討を重ねて本当に取り組んでいただきたいと思います。やはり当惑しながらこの新しい制度に入ることだけは避けていただきたいと思いますので、その点、重ねて申し上げたいと思います。

 次に、市区町村を原則として分割しないことは、有権者にとってのわかりやすさということだけではなく、恣意的な区割りの防止や、市区町村の選挙実施に係る事務負担増の回避等の意味があると思いますが、この点についていかがでしょうか。

大泉政府参考人 昨年十二月に区割り審が決定しました区割り改定案の作成方針では、「選挙区の改定に当たっては、市区町村の区域は、分割しないことを原則とする。」と定めた上で、分割基準に該当する場合には分割するものとしておりまして、今回の区割りの改定において行われた市区の分割は、いずれもこの作成方針の分割基準にのっとって行われたものでございます。

 分割しますと、御指摘のとおり、選挙事務の負担などが増加しますが、それにつきましては、選挙管理、執行につきまして、関係団体からの相談などにきめ細かく応じるなど、必要な支援をしてまいりたいと考えております。

椎木委員 何か非常に答弁が簡単過ぎるんですけれども、これも午前中から同じ答弁の繰り返しだったと思うんですけれども、きめ細かなというのは具体的にどういうことをイメージされているんでしょうか。

大泉政府参考人 各選管から区割りの分割などに際しましてどのような問題が出てきているかということを御相談を受けましたら、今でも分割市区はございますので、それらの先行事例、これらを横展開することによって解決策を図るとか、あるいは、今回改正法案に盛り込んでおります開票所の、開票の合同といいますか、合わせて開票するというようなことにつきまして、どのような手段を考えているのかということの相談に応じまして、それで効率的な事務運営ができるようにしていくというようなことを具体的には考えております。

椎木委員 くれぐれも事務の負担の増にならないように、しっかり支援をしていただきたいと思います。

 次に、今回の改正によって、青森県、岩手県、三重県、奈良県、熊本県、鹿児島県の六県でそれぞれ一減となります。そのような中で、人口を基準にした区割りでは地方の声が国政に届きにくくなる、大都市だけがよくなっていく、こういった意見も数多くありますけれども、この点についての見解を求めます。

大泉政府参考人 これについてもでございますが、昨年五月に成立した衆議院選挙制度改革関連法におきまして、衆議院議員の〇増六減の定数削減、あるいは一票の格差是正というようなことが決まっておりまして、これに基づきまして、政府としては、昨年の五月の関連法の枠内で区割り審が勧告しました区割りの改定案を今回法律案に盛り込みまして提出しているというものでございまして、大枠は昨年の関連法にあるというふうに認識しております。

椎木委員 全く不誠実な答弁だと思いますね。

 私が聞いているのは、いいですか、地方の声が国政に届きにくくなるんじゃないかというのが一点と、大都市だけがよくなっていくんじゃないか、そういった意見がある。そういった意見については、この区画審議会の中で多分議論されたんだと思うんですね。ですから、その過程の話をしていただいた上で、今回の結論に至ったというような答弁を私は期待しているんです。わかりますか。

 全く議論されなかったんですか。

大泉政府参考人 区割り審に与えられた義務といいますか、そういうのは区割りの改定案の作成でございまして、大枠の定数配分というのは既に法律で定まっていることですので、その法律に基づいて区割りを行っていくということでございました。

椎木委員 残念ですけれども、今の答弁が最大、精いっぱいの答弁なんでしょう。

 これは高市総務大臣の奈良県も一減ですからね。私は、地方の声が届きにくくなるというのが、大半、どんな調査を聞いてもやはりこれが多いんですよ。ですから、そういったものも当然議論した上で今回の法案に至っているものかなと思ったんですけれどもね。そういうことは議論されていないという答弁なので、これ以上はお聞きしませんけれども、今後、選挙部長、しっかり地方の声も反映できるように、そういう認識だけはお持ちいただきたいと思います。

 私は大都市の大阪ですから関係ないんですけれども、やはり、地方の声は地方の声でしっかり国政に届けられる、そういうところは大事にしていただきたいと思います。

 次に、本改定の次の区割りの見直しは、平成三十二年の国勢調査に基づき、アダムズ方式によって都道府県に定数を配分した上で行うことになっております。

 試算によれば、各都道府県に割り当てられる小選挙区の数は九増九減となり、東京都が四増、神奈川県が二増、埼玉県、千葉県、愛知県がそれぞれ一増となり、宮城県、福島県、新潟県、滋賀県、和歌山県、広島県、山口県、愛媛県、長崎県、以上の九県でそれぞれ一減とのことです。

 その結果、都市部選出の議員の割合がさらに増すことになり、地方の声がどのように反映されていくのかという視点からも衆参の選挙制度改革を議論する必要があると思いますが、この点についていかがでしょうか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 衆議院の選挙制度改革に関し、格差是正等を行うことにより、地方の声が届きにくくなるという意見があることは承知をいたしております。

 各都道府県への小選挙区の定数配分の方法も含め、衆議院及び参議院の選挙制度のあり方については、議会政治の根幹にかかわる重要な問題でありまして、各党各会派において御議論いただくべき事柄と考えております。

椎木委員 今の副大臣の答弁も、これまでと一緒だと思います。これ以上私も聞くつもりはありませんけれども、多分、今後、ますますこのような声が上がってくると思うんですね。ですから、その点だけはしっかり御認識いただきたいと思います。

 次の質問に入ります。

 今回の小選挙区の一票の格差の是正を目指す改定に関連して、参議院の選挙区の一票の格差も看過できない状況であると考えます。衆参両院の役割分担やそれぞれの院にふさわしい議員の選び方等に踏み込んで、衆参一体の抜本的な改革を検討してもよい時期に来ていると思われますが、この点についていかがでしょうか。

高市国務大臣 参議院の方で、各会派による参議院改革協議会の選挙制度に関する専門委員会などにおきまして、選挙制度改革の御議論が行われていると承知をいたしております。

 それから、今委員がおっしゃった衆議院及び参議院の選挙制度のあり方ということにつきましては、平成二十八年一月の衆議院選挙制度調査会の答申において、衆参両議院にはそれぞれ期待される役割や機能があるということが指摘されています。また、昨年五月に成立した衆議院選挙制度改革関連法におきましても、全国民を代表する国会議員を選出するための望ましい選挙制度のあり方について不断の見直しを行うものとしておられますので、こういった衆議院や参議院の役割分担ですとか議員の選び方ということについては、議会政治の根幹にかかわる重要な問題であり、先ほど申し上げたような指摘ももう既にありますことから、各党各会派で御議論をいただくべきことであると思っております。

椎木委員 ありがとうございます。大臣も、今の答弁が精いっぱいだと思いますので。私もその上でお聞きしていますけれども、十分、改めて大臣の認識を確認させていただいたということですので、御理解いただければと思います。

 次に、現行制度において、小選挙区の候補者については、小選挙区で落選しても、一定の条件を満たせば比例区で復活当選することができる制度となっております。そのため、一選挙区から三人が当選するという例もあります。

 このように、比例復活の制度を踏まえれば、小選挙区間において厳密に格差を是正することにどれほどの意味があるのかという意見もありますが、この点についての見解を求めます。

大泉政府参考人 現行の小選挙区比例代表並立制でございますが、これは小選挙区選挙と比例代表選挙をそれぞれ別々に行い、小選挙区選挙においては比較多数の得票を得た者を当選人とし、比例代表においては各政党の得票数を基礎として各政党の当選人数を決めていき、候補者名簿の上位の順番から当選人とするというような、それぞれ別の仕組みというふうになっているもとでのことでございます。

 また、最高裁におきましても、格差訴訟については、小選挙区選挙について判示しているものでございまして、比例代表とあわせてどうだというような判断はないというふうに承知しております。

椎木委員 これまで、各選挙での若年層の投票率は、他の世代と比較して低い数字となっております。平成二十七年六月に公職選挙法等の一部を改正する法律が成立し、選挙権年齢が十八歳以上に引き下げられ、一部の高校生の投票も可能となりましたが、さきの国政選挙での若年者の投票結果はどのようになっているでしょうか。

大泉政府参考人 昨年、平成二十八年の参議院議員通常選挙における十八歳の投票率は五一・二八%、十九歳の投票率は四二・三〇%、二十代の投票率は三五・六〇%でございました。

椎木委員 次の質問に入ります。

 公職選挙法の改正により、新たに十八歳から選挙権が認められ、若者の政治参加が進むこととなりましたが、残念ながら、思ったほど投票率が上がっていないということです。

 そのような中、若年者が政治参加するに当たっての必要な知識や判断能力を涵養する、いわゆる主権者教育の充実が求められると考えますが、我が国における主権者教育の現状はどのようになっているでしょうか。

樋口大臣政務官 椎木先生御指摘のとおり、主権者教育の充実が極めて重要であるというふうに思っております。

 選挙権年齢が十八歳に引き下げられたことによりまして、まず、高校生においては、平成二十七年以降、全ての高校生に主権者教育に資する副教材を配付しております。

 さらに、早い段階から子供たちが、発達段階に応じて、それぞれの子供が構成員となる社会において多様な取り組みが行われることが重要であるという認識をしておりまして、省内に、平成二十八年六月に主権者教育の推進プロジェクトとして取りまとめたところでございます。

 このプロジェクトに基づきまして、高等学校において、主体的な社会参画に必要な力を実践的に育む新しい科目「公共」の設置を決めました。検討しているところであります。次に、大学等の入学時におけるオリエンテーション等を通じた学生への啓発活動をする、子供が地域に主体的にかかわる地域行事などの機会の創出や家庭教育支援などを行っているところでございます。

 今後とも、総務省と連携をしながら、学校、家庭、地域がお互いに連携、協働し、社会全体で子供たちの発育段階に応じた主権者教育が充実されるように実施をしてまいりたいと思います。

椎木委員 今の樋口政務官の答弁のとおり、主権者教育の推進に文科省が取り組んでいるのは私も本当に十分承知しています。その上で、私が幾つか提案したいと思っていたことを全て御答弁いただきました。大変認識も共有されておりますし、極めて、主権者教育の充実に向けた必要性の全てにおいて答弁いただけたと思います。ありがとうございます。

 次に、我が国の児童生徒について、将来の有権者としていや応なく我が国の政治にかかわることになります。我が国における主権者教育の現状については先ほど御答弁いただきましたが、欧米諸国にあっては、若いうちから義務教育の中で主権者教育を積極的に取り入れていると聞いておりますが、具体的にはどのような教育内容となっているでしょうか。お尋ねいたします。

佐藤政府参考人 諸外国において、主権者教育は、特に中等教育段階において、社会科、市民科、公民科、政治科などの教科で扱われております。

 幾つか御紹介いたしますと、例えばアメリカでは、小学校からハイスクールに至るまで、歴史、社会科の中で主権者教育を学ぶこととなっております。

 イギリスでは、政治的な教養を備えた市民の育成を目指すシチズンシップ教育が中等教育において必修化されております。

 また、イギリスやアメリカ、ドイツでは、総選挙や大統領選挙の際に各地の学校で生徒による模擬選挙を実施する例や、フランスでは、初等教育において子供国会の取り組みも行われております。

 これらの事例のように、各国における取り組みはさまざまでありますが、いずれも民主主義社会に主体的に参画する主権者の育成を目指す教育を行っていると承知してございます。

椎木委員 樋口政務官、そして今政府参考人の答弁もありましたけれども、主権者教育というのはそもそも何なのか。ちょっと誤解がある部分もあるんですけれども、これは、正確に言えば、若者を選挙に行かせるための教育ではないんですね。さらに、低い投票率を上げるためのものでもない。大事なのは、社会課題についてできるだけ多くの合意を形成して、今とこれからの社会をつくっていくために政治に参画させることなんですね。

 そういった趣旨できょう質問させていただいたんですけれども、政務官と参考人からは非常に、私が心配するまでもない取り組みに着手していただいているという御答弁をいただけたと思っています。本当にありがとうございます。

 次の質問に入ります。

 十八歳以上の現役高校生が有権者として政治活動や選挙活動を行うことについて、どのような制限、制約があるのでしょうか。お尋ねいたします。

瀧本政府参考人 お答え申し上げます。

 十八歳以上の高校生による政治的活動や選挙運動については、一般の有権者と同じ制限、制約があるほか、高等学校は学校教育法等に定める目標を達成するべく生徒を教育する公的な施設であること等を踏まえ、高等学校等により、必要かつ合理的な範囲内で制約を受けることになります。

 文部科学省では、平成二十七年十月に発出した通知や二十八年一月に発出した同通知に関するQアンドAにおきまして本件に関する考え方を示しておりますが、これらにおきまして、例えばでございますが、生徒会活動等の授業以外の教育活動も学校の教育活動の一環でありますので、生徒がその本来の目的を逸脱し、教育活動の場を利用して政治的活動等を行うことは禁止されること、あるいは放課後や休日等であっても、学校の構内等では生徒の政治的活動等は制限、禁止されること、さらには、構外の活動といえども、一定の場合に、制限、禁止を含め、指導が必要であることなどを示しておりますが、具体的な指導のあり方については、これらを踏まえた上で各高校等において適切に判断されるものと考えております。

 以上であります。

椎木委員 時間が参りましたので、最後の質問、端的に申し上げますので。

 学校教育の中で、政治に関することを授業等で取り上げる際、政治的中立を前提として行わなければなりませんが、現状、どのような対応がとられているのか、手短にお願いいたします。

樋口大臣政務官 手短に答弁させていただきます。

 教育基本法第十四条二項に定める政治的中立性が確保されることも必要でありまして、特に、教員が個人的な主義主張を述べることは避け、中立かつ公正な立場で生徒を指導することなどを平成二十七年に通知として発出をしております。政治的中立性の確保等のための留意点を示しました。

 そして、さらに、総務省さんと連携をして作成した主権者教育に関する副教材や教師用の指導資料において、政治的中立性の確保等について、図表などを用いてわかりやすく示しているところでございます。

 文部科学省としましては、このような資料等に基づきまして、各学校において政治的中立性が確保された上で主権者教育の充実が図られるように、引き続き取り組んでまいります。

椎木委員 大変わかりやすい答弁を最後にいただきました。ありがとうございます。

 以上で終わります。

竹本委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、区割り改定法案に反対の討論を行います。

 昨年成立した衆議院選挙制度関連法は、小選挙区制の維持を前提に定数十削減を行いました。定数削減によって切り捨てられるのは主権者国民の声であり、国会の政府監視機能が低下するという弊害を法案提案者も認めていたにもかかわらず、根拠も示さず、我が国の男子普通選挙制度始まって以来、最少の定数に削減したことを、改めて厳しく批判します。

 本案は、この関連法に基づいて削減する六県の小選挙区と比例の四ブロックを確定し、政府の衆議院議員選挙区画定審議会勧告に沿って小選挙区の区割りを改定するものです。

 今回の区割り改定は、これまで最大数の十九都道府県九十七選挙区に及び、区割りで分割した市区町は百五に上っています。

 このような区割り改定に、対象となる都道府県から批判の声が上がっています。選挙事務を担う選挙管理委員会連合会などの、有権者に混乱を招く、選挙の事務の管理執行上、事務が複雑化、負担が増大するといった懸念の声が審議の中で明らかになりました。

 次回、二〇年の国勢調査の後、定数配分にアダムズ方式の導入も控えており、五年後にもさらなる大幅な区割り変更が見込まれております。数年間、少なくない有権者が、市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きを押しつけられ、選挙のたびに不自然な選挙区変更を強いられることになります。

 これほど大きな区割り変更を行っても、格差の問題は続きます。これは、小選挙区制がもともと、投票権の平等という憲法の原則とは矛盾する制度であるということを示すものであります。

 憲法が求める投票価値の平等は、選挙区間の人口格差是正にとどまりません。

 そもそも、選挙制度は民主主義の根幹であり、その根本は、国民の多様な民意を正確に議席に反映することです。ところが、現行制度は民意の反映が著しくゆがめられています。現行制度の最大の問題は、第一党が四割の得票で七割から八割の議席を獲得し、半数に上るいわゆる死に票を生み出すことです。

 我が党は、現行制度の提案当初から、小選挙区制が民意の公正な議席への反映をゆがめ、比較第一党が虚構の多数を得ることで強権政治を推し進めようとするものだと批判してきました。

 民意と議席に著しい乖離を生み出す小選挙区制は廃止し、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改正、改革すべきです。

 このことを改めて強く主張し、反対討論を終わります。(拍手)

竹本委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

竹本委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

竹本委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、神田憲次君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。落合貴之君。

落合委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。

    衆議院議員選挙区画定審議会設置法及び公職選挙法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  今回の区割り改定により、区割りが変更される選挙区数が多数に上り、また、分割される市区町が増加するため、政府においては、有権者に混乱が生じることのないよう新たな選挙区に関し十分に周知徹底を行うこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

竹本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

竹本委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。高市総務大臣。

高市国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

竹本委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

竹本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

竹本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十五分散会


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