衆議院

メインへスキップ



第8号 令和5年3月16日(木曜日)

会議録本文へ
令和五年三月十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 あかま二郎君 理事 斎藤 洋明君

   理事 武村 展英君 理事 鳩山 二郎君

   理事 石川 香織君 理事 奥野総一郎君

   理事 守島  正君 理事 中川 康洋君

      井林 辰憲君    井原  巧君

      石原 正敬君    岩田 和親君

      上杉謙太郎君    川崎ひでと君

      国光あやの君    小森 卓郎君

      佐々木 紀君    坂井  学君

      島尻安伊子君    田所 嘉徳君

      中川 貴元君    西野 太亮君

      長谷川淳二君    古川 直季君

      穂坂  泰君    務台 俊介君

      保岡 宏武君    渡辺 孝一君

      おおつき紅葉君    岡本あき子君

      神谷  裕君    重徳 和彦君

      徳永 久志君    本庄 知史君

      道下 大樹君    伊東 信久君

      市村浩一郎君    中司  宏君

      輿水 恵一君    西岡 秀子君

      宮本 岳志君    吉川  赳君

    …………………………………

   総務大臣         松本 剛明君

   総務副大臣        柘植 芳文君

   総務大臣政務官      国光あやの君

   総務大臣政務官      中川 貴元君

   総務大臣政務官      長谷川淳二君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            小笠原陽一君

   参考人

   (日本放送協会経営委員会委員長)         森下 俊三君

   参考人

   (日本放送協会会長)   稲葉 延雄君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 林  理恵君

   参考人

   (日本放送協会専務理事) 伊藤  浩君

   参考人

   (日本放送協会理事・技師長)           児玉 圭司君

   参考人

   (日本放送協会理事)   中嶋 太一君

   参考人

   (日本放送協会理事)   山名 啓雄君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     岩田 和親君

  佐々木 紀君     穂坂  泰君

  杉田 水脈君     上杉謙太郎君

  道下 大樹君     本庄 知史君

  湯原 俊二君     徳永 久志君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     石原 正敬君

  上杉謙太郎君     杉田 水脈君

  穂坂  泰君     佐々木 紀君

  徳永 久志君     湯原 俊二君

  本庄 知史君     道下 大樹君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     金子 恭之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として総務省情報流通行政局長小笠原陽一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。

 今日はNHK予算でありますが、放送法四条の問題、大事な、これは放送業界のインフラでもありますから、憲法というようなものでもありますから、質問させていただきたいと思います。

 まずは、高市元大臣が一昨日の本会議答弁で、委員会前夜、委員会というのは二〇一五年五月の参議院の総務委員会のことだと思いますが、委員会前夜の私と大臣室の答弁案に関するやり取りのメールや、答弁案を作成した課から大臣室に送られてきた資料について、お求めいただけましたら、本院に提出をさせていただきたく存じます、こう言っておられます。

 本院というのは衆議院のことだと思うんですね。大臣室に送られてきた答弁案を作成した担当課というのは総務省の課ということだと思うので、まずは、高市さんの方からそういう問合せが総務省に来ているのか、来ているとして、現担当大臣ではないんですが、やはりこれは総務省の当時の問題でもありますし、放送行政に関することでありますから、このメール等々資料について、この総務委員会の理事会の方に御開示いただけないかということでありますが、大臣、いかがですか。

松本国務大臣 御指摘の答弁は、一昨日の衆議院本会議で高市大臣がお答えになったものでございます。

 御指摘の資料の取扱いについては、私も出席した昨日の参議院予算委員会の場で御議論があり、理事会での協議事項になっていると承知をいたしております。

 高市大臣、私も内閣の一員として、国会のお求めに対しては、お示しできる資料をお示しし、御説明申し上げてきたところでございまして、引き続き、国会のお求めに対しては真摯に対応いたしたいと考えております。

奥野(総)委員 真摯に対応していただけるということでありますので、是非、整ったらお示しいただきたい。理事会でまたお願いします。

浮島委員長 後刻、理事会で協議いたします。

奥野(総)委員 ただ、どう見ても中身は、例示とかもほとんど変わっていないので、どういうものが出てくるかというのは非常に興味深いところでありますけれども。

 この放送法の四条の問題のポイントは、当時、七年前でしたが、私は予算委員会でも取り上げ、この総務委員会でも取り上げ、今日パネルを使いますけれども、当時の資料をそのまま使えるんですね。ですが、その当時も今もポイントは何かというと、当時の官邸が政治的圧力をかけたのではないか、そして、それによって憲法が保障する報道の自由や表現の自由を奪おうとしたんじゃないかということであります。

 これも当時の資料でありますけれども、放送というのは電波法の無線局免許で管理していますから、電波法の規定をここに引いてきましたけれども、総務大臣が、この法律というのは電波法、放送法に違反したときには、三か月以内の期間を定めて無線局の運用の停止を命じるということで、いわゆる停波ということが総務大臣の一存でできるんですね。放送法違反が認定されれば、停波が総務大臣の一存でできるというのがこの電波法の七十六条であります。

 となると、じゃ、放送法違反とは何ですかというときに問題になっているのがこの放送法の三条の部分であります。三条というのは放送番組について定めておりまして、放送番組というのは、第二号、下線が引いてありますけれども、政治的に公平であることが求められている。もちろん、事実を曲げないとかいろいろありますけれども、今回問題になっているのは、この二号の問題、政治的に公平であることが放送法で求められている。これに違反をすれば直ちに、大臣が違反していると判断すれば可能性としては停波ができる、これは当時の高市大臣もおっしゃっていますし、今も答弁は変わっていないと思うんです。

 そうすると、じゃ、何が問題になるかというと、政治的に公平であることとは何ですか、ここが問題になってくるわけです。これを恣意的に判断されると、時の政権が気に食わないというだけの理由でテレビ局、テレビの電波を止める、一つの番組を狙い撃ちにして止めることができるというようなことも、この二号の解釈によっては可能となる。だから問題なんですね。

 こういうことで、もし二号が変な解釈になれば、メディアにとっては物すごく圧力になり得るということ、官邸の意向に沿わないと番組を停止するというふうに脅せるようなツールとしても機能するということが問題なんです。だから、この二号の問題が大事なんですね。

 この二号の解釈については、スタンダードなものとしては、平成六年三月二十四日、当時の江川局長答弁というものがあります。それ以前にもあるんですが、ここですね、冒頭のところです。ありますけれども、全体として判断すると。番組全体として政治的公平を判断するというところ、この一番左端のところですが。一つの番組ではなく、放送事業者の全体番組を見て判断するという、この答弁は今も生きているということでよろしいでしょうか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の平成六年三月二十四日の衆議院逓信委員会において、「「政治的に公平であること」とは、「政治上の諸問題を扱う場合には、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏することなく、いろいろな意見を取り上げ、放送番組全体としてバランスのとれたものでなければならない。」」と政府参考人から答弁しております。

 これにつきましては、昭和三十九年の答弁と終始一貫の解釈であるというふうに理解しております。すなわち、政治的に公平であることについて、番組全体で見て判断するという従来の解釈を述べたものであるというふうに理解しております。

 なお、政府統一見解は、政治的に公平であることについて、番組全体で見て判断するという従来の解釈を補充的に説明し、より明確にしたものであり、従来の解釈を変更したものとは考えていないところでございます。

奥野(総)委員 現在に至るまで、この四条二号の政治的公平性に違反するということで処分を受けた、行政指導等を受けた事例というのはあるんでしょうか。

小笠原政府参考人 お尋ねの行政指導という点でございますが、放送法第四条第一項第二号に規定する政治的公平に違反したことを理由とした行政指導の事例は、これまでございません。

 なお、政治的公平に関する地上波放送への行政指導事例は、例えば、政治的公平との関係で編集上必要な注意義務を怠ったことを理由とした事例など、二件ございます。

奥野(総)委員 平成十五年十一月四日のテレビで、当時の民主党の、これは選挙の投票日の前夜なのかな、ネクストキャビネットを紹介した事例。あるいは、平成十六年、これは地方選挙でしょうけれども、自民党だけの政府広報番組、これは地方選の直前の時期ですかね、延々と放送した事例というのが、関すること。ただ、これは四条二号違反であるとは言っていないんですよね。放送番組の編集上の問題だと言って、四条二号ということで明確に処分をしたという事例ではない。そこまで配慮してきたということであります。

 また、昭和三十九年答弁では、極端な事例を除いてというワードが入っていたんですが、この江川答弁ではそこがないんですよね、極端な事例という言葉も入っていなくて。

 この江川答弁というのは、実は、椿事件といって、当時、細川連立政権ができた直後に某テレビ局の方が、自民党政権の存続を絶対に阻止して、何でもいいから反自民の連立政権を成立させるように、手助けになるような報道をしようじゃないかみたいなことを言って、大問題になったことがあったんです。そのときですら、この政治的公平性の違反というのは問わなかったんですよ。これは問題になりましたが、結局、社内の内部問題だということで、問わなかったんですね。

 そのときの答弁が、この全体を見るという話でありまして、極端な事例という言葉もワーディングは言っていないんですよ。

 ということで、使えないように、使わないようにしてきたんですね。極めて謙抑的にこの二号というのは運用されてきたわけであります。

 ところが、平成二十七年五月十二日、この真ん中の部分ですね、参議院総務委員会での、今回問題になっている高市大臣の答弁というのがありました。

 もう内容については触れませんが、一つの番組の場合でも、極端な場合ですね、選挙期間中、それに近接する期間において殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合という例示を挙げて、あるいは、国論を二分するような政治課題について、一方の政治見解のみを取り上げると、例示を挙げて答弁されています。

 これは補充的答弁と言われていますが、補充というのは、国語辞典的には、不足しているものを補うということでありまして、新しい意味合いが付加されているんじゃないでしょうか、いかがですか。

小笠原政府参考人 御答弁申し上げます。

 補充的説明についてのお尋ねでございますが、補充的説明につきましては、政治的に公平であることについて、放送番組全体を見て判断するという従来の解釈の考えの下、一つの番組でも、極端な場合においては、一般論として、政治的に公平であることを確保していると認められないことがあることは、昭和三十九年四月二十八日の参議院逓信委員会において政府参考人から答弁しているところであり、このような解釈を変更したものではありません。

 その上で、この極端な場合について、国会において、委員からの御質問に対し、より明確化する答弁をさせていただき、平成二十八年二月には、国会からの御指示を受けて、見解を提出させていただいたものでございます。

奥野(総)委員 なぜ私が江川答弁が出発点じゃないかと言ったかといいますと、江川答弁は、極端な場合というフレーズは使っていないんですよ。だから、ここで答弁が書き換えられているんですね。

 なぜかというと、そこで極端な場合と認めてしまうと、椿問題というのは処分せざるを得なくなったと思うんですね。だから、それを避けるためにも、極端な場合という言葉をあえて使わなかった。

 この平成六年の答弁がスタンダードだとすれば、極端な場合を例示したというのは新しい意味合いをつけ加えたことになるし、昭和三十九年答弁をもってしても、極端な事例というのは挙げていないんですね、具体的な事例を。具体的な事例というのは新たな意味合いを加えることになるんじゃないでしょうか。そういうことをすると、使われるんですよ。

 資料三を御覧いただきたいんですけれども、これが、放送法遵守を求める視聴者の会という、資料三でありますけれども、御覧いただきたいと思います、ちょっと小さくて見えにくいんですが。これが出たのが、二〇一五年十一月十五日の読売新聞、産経新聞の全面広告なんですよね。

 左端のところで、メディアとしても安保法案の廃案に向けて声をずっと上げるべきだと。これは、当時のニュース23のメインキャスターの岸井さんの二〇一五年九月十六日のニュース23の発言を取り上げて、新聞広告をしている。これが、政治的な公平性、放送法四条二号に反するんじゃないかという意見広告でありまして、下の方ですね、下段のところにありますが、放送法四条が求める放送の政治的公平性や多様な見解への配慮について、総務大臣答弁、平成十九年と言っていましたが、これは当時の答弁、今の御紹介した答弁と同じだと思いますが、一つの番組ではなく当該放送事業者の番組全体を見て、全体としてバランスの取れるものであるかを判断することが必要だ、こう言っている。その答弁が問題ではないかと言っているわけであります。

 最後のところ。私たちは総務省に対し、国民の知る権利を守るために放送法四条が正しく生かされるように、平成十九年大臣答弁より妥当性の高い見解を示すように求めます、こういうふうに言っています。

 これに対して、総務省は答えをしているんですね。このパネルを見ていただくと分かりますが、十一月二十六日に公開質問状があるということが記事になって、実際、公開質問状が、放送遵守を求める会から総務大臣宛てに出ています。十二月四日に、総務大臣が視聴者の会にわざわざ答えているんですよね。これは、皆さんの配付資料、お配りしている資料五のところに高市大臣の答え、これは全くこの五月の総務委員会の答弁と同じものをわざわざ答えているんですね。

 これは一団体ですよ。ケント・ギルバートさんとか、民間の一団体のこういう意見広告に対して総務省として答える。こういう事例はほかに、大臣、あるんでしょうか。ほかの事例。一団体のこういう広告に対してわざわざ文書を大臣名クレジットで答えた事例ってあるんでしょうか。

小笠原政府参考人 御答弁申し上げます。

 こういう団体に対するお問合せということについて、こういった反応をすることがあるのかということでございますが、総務省の通常の業務といたしまして、様々な放送に関する、あるいは放送行政に関するお問合せということがあれば、それに対して真摯にお答えしていくということは、通常の業務として行っているものというふうに承知をしております。

奥野(総)委員 当時のやり取りだと、そういうのはないんだというような答弁もあったんですよね。一々こういう新聞広告を取り上げていては切りがないですからないんだという答弁は、当時はあったんですよ。

 高市大臣の会見を見ると、わざわざ、これは皆さんにはお配りしている、パネルはないんですが、これまでも歴代大臣が全体で判断すると答弁してきたんだけれども、高市大臣は、ただ、私が国会で答弁いたしましたとおり、仮に一つの番組でもと言って、先ほどの解釈をわざわざメディアの前で言っているわけですね。これは、意図的に聞かれて意図的に答えているというふうに取れるわけです。

 その結果、結果かどうか分かりませんが、偶然かもしれませんけれども、この後、岸井さんは結局、このパネルにもありますように、平成二十八年、二〇一六年一月十五日に降板を発表されました。ほかにも、古舘さんとか国谷さんとか、このタイミングで、これ以降のタイミングで辞めているわけですよ。当時、大きな問題になった事案であります。

 総務大臣に伺いたいんですけれども、これは全く影響がないと言えるんでしょうか。こういう例示を殊更にしたということで、こういった影響が報道の萎縮ということを招いたんじゃないですか。だとすれば、この補充部分、私は、付加部分、新しい答弁だと思いますが、この部分については撤回して元に戻すべきじゃないですか。昭和三十九年の答弁が極端な事例と言っていたのを、江川答弁では極端な事例というのは外しているんですね。だから、また元に戻せばいいじゃないですか。どうですか。これをやれば、この問題は私は落ち着くと思うんですけれども、大臣。

松本国務大臣 これまでも申し上げてまいりましたけれども、補充的説明とおっしゃる部分は、政治的に公平であることについて番組全体で見て判断するという従来の解釈を補充的に説明し、より明確にしたものであると考えております。

 番組全体を見て判断するとしても、番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、一つ一つの番組を見て全体を判断することは当然のことでありまして、こうした考え方の下、一つの番組でも、極端な場合においては、一般論として、政治的に公平であることを確保しているとは認められないことがあることは、委員も御案内のとおり、昭和三十九年四月二十八日の参議院逓信委員会において政府参考人が答弁をいたしているところでございます。

 今御指摘ございましたが、この高市大臣の回答というもの、拝見をさせていただきましたが、この下の方に、高市大臣の回答についても表現の自由にも触れており、解釈を変えず、表現の自由をしっかりと大切にするという趣旨は述べられているのではないかというふうに考えられるかと思います。

 その意味で、委員御指摘の平成六年の政府参考人の答弁も含め、従来の解釈を変更するものとは考えておらず、放送行政を変えたとも認識しておらず、放送関係者にもその点について御理解をいただけているのではないかというふうに認識しておりまして、今お話がありました補充的説明は撤回をするものではないというふうに考えております。

奥野(総)委員 なぜこのタイミングでこういうことが行われたか、なぜこのタイミングでわざわざ補充的な例示をされたかというのを今回の行政文書は示していると思うんですね。あれが真実だとすれば、意図的に表現の自由を抑え込もう、メディアをコントロールしようとした意図が官邸に見て取れるわけです。そういういわくつきの解釈は、私は撤回すべきだと思います。

 ちょっとごめんなさい。最後、NHKの問題なので、ごめんなさい。会長、経営委員長に来ていただいていますが、最後、質問したいんですけれども。

 私がずっと聞いてきたのは、議事録開示の問題があります。例のかんぽの不正営業問題について、NHKの情報公開・個人情報保護審議委員会、全面開示の答申が二回も出ているのに、開示まで二年近くかかりました。私は、これは大きな問題だと思います。

 法律上も開示が義務づけられているわけですから、開示義務というのは会長も併せて負っていると思いますので、会長に、この問題についての所感、それから、今後、開示をもっときちんとやっていくという決意を伺いたいと思います。

 それから、森下経営委員長、毎回申し上げていますが……

浮島委員長 奥野君に申し上げます。

 申合せの時間が経過しておりますので、おまとめください。

奥野(総)委員 最後、もう一問だけ。

 のみの会といって、経営委員会なんだけれども非公表が前提の会があるということでありますが、経営委員会で非公表の前提の会があるというのは、私は非常に問題だと思います。全て開示すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 以上です。

稲葉参考人 御指摘の情報公開の件でございます。

 NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の答申を尊重して、情報公開については、求めがあった文書については全面開示したというふうに聞いてございます。

 情報公開に関しては、NHK情報公開基準やNHK情報公開規程にのっとって適切に対応していく必要があるというふうに考えてございます。

 なお、経営委員会における議事録の取扱いにつきましては、まずは経営委員会が主体的に御判断することだというふうに考えてございます。

森下参考人 お答えいたします。

 まず、先ほどの議事録の開示ですが、開示した文書に該当する部分につきましては、追記する形で既に、二〇二〇年の七月に、公表の議事録としてホームページに掲載しております。

 情報公開制度に基づいて情報公開請求者に開示した文書につきましては、経営委員会議事運営規則第五条第四項により、非公表事項に該当するため、非公表として取り扱っておりますので、御了解をいただきたいと思います。

 それから、委員のみの会についてでありますが、経営委員の多くは非常勤でありまして、NHKの経営に関する情報を確認し、協会の経営に関する基本方針の議決や、役員の職務の執行の監督など、経営委員会の責務を果たすためには、議論の前提として、理解を深め、課題を整理する場や意見交換をする場が必要なので、経営委員会のみによる会合は現在でも行っております。

 ただし、経営委員会のみによる会合につきましても、非公表の事項を除きましては議事録として公表しておりますので、御理解のほど、お願いをいたします。

奥野(総)委員 時間が来ましたから終わりますけれども、今回の受信料の引下げについても、議事録には明確に書かれていないんですね、経営に与える影響等。その辺、しっかり、会長、お願いしたいと思います。

 以上です。

浮島委員長 次に、守島正君。

守島委員 日本維新の会の守島です。

 早速、質問に入ります。

 まず、昨年の通常国会におけるNHK予算案に我々は反対したものの、臨時会における平成三十年度と令和元年度のNHK決算の審査をした際には、たった数年前なのに、令和四年度予算時よりも事業支出が約五百億円多かったことなどを踏まえて、改めてNHKは肥大化していたという認識を持つとともに、この三年間の、前田前会長の下でスリムで強靱なNHKを目指して行われた改革に関しては評価する旨を伝えて、決算には賛成いたしました。

 しかしながら、今月一日、稲葉新会長が職員に向けたメッセージで、前田前会長の改革を再検討すると伝え、今期の経営計画における重要項目として掲げられている人事制度改革を見直す考えを示されたことが、各報道機関を通じて発せられました。

 もちろん、こうした取組の評価というのは重要だというふうに思っているんですが、稲葉会長の発言が改革の後退を示唆するんじゃないかということは危惧しております。

 会長が言うように、もし綻びがあるのならばそれを見直すべきだと思っているんですが、改革途上においては職員の不評を買うこともありますので、どういうふうに対処するかというのが大事だというふうに考えています。

 そもそもこの綻びの原因というのは、管理職を減らすことや選抜試験導入などの若手の幹部登用を含めた人事制度改革自体に由来するのか、若しくは、実際に制度を運用するに当たって職員から評価がアンフェアじゃないかというような不評を買っていたというものなのか、どちらの認識なのか教えてほしいのと、総体的な前田人事改革の評価と、今後の人事制度をどの方向性で考えているのかを新会長に聞きたいと思います。

稲葉参考人 お答えいたします。

 私は、繰り返し申し上げてきているつもりでございますが、私に課せられた役割は、改革を検証して、更にこれを発展させることだというふうに考えてございます。したがって、これまでの改革を否定するつもりは全くございません。綻びがあるのであれば丁寧に手当てをして、問題のないところはこれまでどおり進めていくという方針でございます。

 人事制度改革の本来の目的は、職員一人一人がその能力を最大限発揮できるようにするということだと考えてございますが、そうした当初の狙いどおりに制度と運用が十分機能しているかどうか、この点を様々な職員たちと議論しながら、これまでの取組の結果について検証を進めていく、こういう必要があるというふうに考えたところでございます。

 今月発足させた改革の検証チームが作業を開始したところでございますので、まずはその検証結果を待ちたいというふうに思ってございます。

守島委員 会長、ありがとうございます。

 これまでのことを検証し、更に発展させるということで、しっかり検証に取り組んでいただきたいというふうに思っているんですが、ちなみに、昨年、会長も御存じのとおり、五月に、NHKの有志による、NHKを壊すなという、前会長批判のリポートが出されました。有志の意見も理解するんですが、週刊誌などを活用して身内潰しというか、社内政治に利用するという一部の職員のやり方に関しては、賛同できません。あくまで組織内政治で、さっき会長がおっしゃったように、職員と話すとか、そういうふうにして職場というのを改善していくべきと考えていますので、会長メッセージがこうしたやり方に屈したように思われるのはちょっと嫌なんですね。

 週刊誌とか、ほかのマスコミを利用した外圧で自社の経営陣を批判し、NHK自体の評価と利益を損ねるような動きに対して、組織ガバナンスの観点から会長はどんな見解をお持ちでしょうか。

稲葉参考人 ただいま御指摘の記事に関しましては、私は、その内容の真偽を含めて、詳しい事情を承知してございません。しかし、先ほども申しましたように、前田前会長が進めてきた改革を否定するつもりは全くないということを改めて強調したいと思います。

 そこで、人事制度改革では、その目的として本来掲げていた、職員一人一人が能力を最大限発揮できるようにするということのために、制度と運用が十分機能しているかどうか検証が必要だと思っておるわけですけれども、検証チームも、各部局から幅広く意見を聞きながら、職員一人一人がどのような考えを持っているのか、どのような受け止め方をしているのかというようなことをしっかり聞き取って、改革が当初の狙いどおり進んでいるかどうかを検証したいというふうに思っております。

 その検証の結果を踏まえて、必要な修正を行い、職員の納得感を醸成しながら改革を発展させていきたいというふうに考えてございます。

守島委員 ありがとうございます。

 是非、広くいろいろな立場の方の意見を聞いて、職員のモチベーション維持を図っていただきたいというふうに思っているんですけれども、改革の方向性を堅持し、発展させるとなると、一定、こうした批判というのはつきまとうものだと僕は思っています。

 各職員の立場によって制度の評価というのは変わりますので、先日の質問で、会長が、ベストに近いとか、ベストであるようにとおっしゃっていたんですけれども、なかなか全員にとってベストな解というのはないと思いますので、そうなると、全体最適のために、時には一定批判を浴びながらも改革を進めないといけない状況もあると思うので、その覚悟を持って新たな人事制度改革に取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 次に、受信料の支払い率について聞きます。

 直近二〇二二年度の見込みでは約七八%とされておりまして、予算時の想定の八一%を下回っている状況です。

 そんな中、前にも指摘したんですが、沖縄の支払い率が断トツで低く、現状五〇%を下回っているという問題ですが、さすがにこれは半分を下回ると、払わない方が得というか、払う方がマイノリティーになってしまって、払うと損というバイアスがかかってしまうと思うんですね。

 支払い率の全国的な低下は、訪問によらない営業であったりコロナ禍に起因するというのは重々分かっているのですが、この沖縄特有の問題に対しては何かしら対処しているのでしょうか、お答えください。

稲葉参考人 お答えいたします。

 受信料の公平負担というのは大変重要な課題だというふうに思っております。

 委員御指摘のとおり、沖縄県の推計世帯支払い率は、二〇二一年度末には前年度から〇・五%ポイント向上して四九・五%と、半分を切っているということでございます。

 支払い率の向上には、地域に向けた放送・サービスの充実がやはり大事ではないかなというふうに考えてございます。そのため、沖縄の本土復帰五十年に当たる二〇二二年度には、連続テレビ小説の「ちむどんどん」の放送やイベントなど、様々な接点を通じた理解促進活動を展開いたしました。

 沖縄県の支払い率につきましては、受信料制度に対してなじみがない期間が長く続いたことといった歴史的な背景が影響しているというふうに考えてございますけれども、今後も、地域放送・サービスの充実を通じて、受信料をお支払いいただけるよう取り組んでまいりたいというふうに思っております。

守島委員 歴史的な経過は存じ上げていますが、日本復帰からもうかなりの年月がたっているので、いつまでも目をつぶっている状況ではないなというふうに思っています。

 昨年、割増金制度が整備されたことを踏まえれば、受信料の未払いについては、NHKは強い姿勢を取るというスタンスだと思っておりますし、地域間格差があるということは、それだけ事業収入を増やす余地もあると思いますので、更なる収支改善に向けて、そして、会長今おっしゃったように、不公平感をやはりなくしていかないといけないと思うので、この問題にも真正面から取り組んでいただきたいというふうに思っています。

 次に、放送センターの建設費に関してなんですけれども、この点も昨年度予算審査で質問しましたので細かくは聞きませんが、平成二十八年の放送センター建て替え基本計画において、想定建設費は千七百億円とされております。昨年度末には、約千七百億円の建設積立資産が計上されておりまして、そこから、第一期工事で令和五年度に百四十億円取り崩すとのことですが、当該建設積立資産に関しては、実際に平成三十年度から取崩しが始まっておりますし、建設に係る費用を減価償却資金の繰入れで対応しているものもあります。かつ、建物経費とは別に約千五百億円の機械、設備経費も必要とされる中で、実際にトータルコストが放送センター建て替えのために幾らかかっているのかというのが非常に不明瞭だと感じるんですね。

 今後、実コストに対する評価が必要ということを考えると、単年度の予算だけでは正確な数字が把握できないので、次の予算時には、単年度の建設積立資産や取崩しの額だけではなく、これまでの事業にかかったトータルコストも予算説明時の資料として提示していただけないでしょうか。事務局でいいです。

伊藤参考人 お答えいたします。

 放送センター建て替えに係る建物工事費につきましては、現在、計画の抜本的な見直しによって削減することを検討してございます。

 放送波の整理削減など、今後の放送サービスの在り方、最新技術を活用した効率的番組制作の手法やリモートワークの活用等のオフィス改革などを念頭に、計画の抜本的な見直しを進めているところでございます。

 御指摘のとおり、二〇二三年度予算の説明資料には、放送センター建て替えに係る二〇二二年度、二三年度予算のみの記載となってございます。受信料で成り立つNHKの事業運営において、視聴者の皆様の御理解は不可欠だと考えてございまして、いただいた御指摘を踏まえ、今後の資料作りにおきましては、より分かりやすい説明となるよう工夫してまいりたいと考えてございます。

守島委員 ありがとうございます。

 非常にうれしい回答をいただきました。是非分かりやすい資料提供をしていただきたいというふうに思っていますので、何とぞ御検討をよろしくお願いします。

 次に、インターネット関連予算に二百億円のキャップがはめられている件について、これもさきの臨時会でも話したんですけれども、放送と通信を融合していく中、新たな時代に対応するために、放送偏重にならずに通信事業へしっかりと投資していくべきで、こうした費用制限に縛られるべきではないと訴えました。

 当時、前田会長は、テレビで届けるのもインターネットで届けるのも目的は同じで手段の問題とおっしゃられて、一定の理解を示してくれたんですが、キャップをはめているのは総務省ということもありまして、具体的な、二百億に対する回答はありませんでしたので、改めて、総務大臣、総務省として、インターネット活用業務費用の上限規制の緩和に対しての見解をお伺いします。

松本国務大臣 委員御承知のとおり、我が国の放送は、公共放送と民間放送の二元体制の下で、国民生活や経済活動に欠かせない情報の基盤として健全な民主主義の発達に貢献をしてきており、NHKはあまねく日本全国において受信できるように義務づけられており、現在、全国どの地域であっても、公共放送と民間放送がいずれも視聴できる環境が実現されております。その中で両者が切磋琢磨し、多様で質の高い放送が普及されることが期待されております。

 NHKのインターネット活用業務は、放送法上、任意業務として位置づけられていることから、現状、その実施に当たっては、国内放送などの必須業務の円滑な実施に支障を来さないよう、過大な費用を要するものでないことを求めております。これを踏まえ、NHKが自ら定め、総務大臣が認可したインターネット活用業務実施基準において、業務の実施に要する費用を年額二百億円を超えないものとしているところでございます。

 若者のテレビ離れやインターネットを通じたコンテンツ視聴の拡大など、放送を取り巻く環境が大きく変化する中、こうしたインターネット活用業務の在り方等について、総務省は有識者会議、デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会公共放送ワーキンググループを開催しているところでございまして、昨日も開催され、活発な御議論をいただいたと承知をしておりますが、あるべき公共放送の姿について、しっかりと検討を進めてまいりたいと考えております。

守島委員 是非検討を進めていただきたいと思います。

 大臣おっしゃったように、公共放送という枠組みで必須業務であるか否かということであったり、民間との線引きという話で費用上限というのが決まっているのであれば、むしろ維新のNHK改革法案のようにNHKを大きく二分して考えて、一方は公共性を引き継いで必須業務を行う、もう一方は費用に制限をかけずに、NHKがこれまで培ってきたコンテンツや技術を引き継いで民間市場に打って出るべきと思っています。

 こうした経営形態の変更も視野に入れれば、費用の上限キャップのような規制は必要なくなりますし、こうした内向きの議論をするのではなく、NHKを国内企業で最も強いネットコンテンツを率いるような存在にしてほしいと思いますし、そうした議論も検討していただきたいと思います。

 NHKが持続的に国民の期待に応えていくために、時代に合わせた流動的な組織変革や経営が必要だと改めて訴えさせていただき、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、中司宏君。

中司委員 日本維新の会の中司宏です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。これまでの質問と重複するところもありますけれども、重ねて質問しますので、よろしくお願いいたします。

 現在のネット社会において、テレビの視聴時間が急速に減少している。そうした中で、テレビを受信料の対象とする受信料制度、こうした制度など、近年の放送と通信の融合の流れに対して、NHKには、スピード感を持って大胆な改革、これが求められているところでございます。そうした中で、我々日本維新の会は、前田前会長の改革路線について一定評価をしてき、また、その改革を後押しするという意味を込めて、昨年、分割・民営化を柱とするNHKの改革推進法案というものを提出をさせていただいたところです。

 稲葉会長が就任をされまして、改革路線の継承、発展を期待するわけですけれども、これまでの御発言の中で、改革を見直す、検証するとの考えが示されておりました。先ほどの守島委員の質問の中で、路線の変更ではなくて継承、発展だ、こういうふうにおっしゃったので、理解するわけですけれども、改めて、その真意と、それから、二〇二四年度からの次期経営計画の中で、どうこの路線を継承されていくのか、発展させていくのか、そのことについてお示しいただきたいと思います。

稲葉参考人 先ほどお答えいたしましたとおり、前田前会長が進めた改革を否定するつもりは全くございません。改めて強調させていただきたいというふうに思います。

 私は、改革の検証と発展、こういうふうに申してきました。検証した上で発展させるということが大事なことだと思っております。綻びがあるようであれば、そこは丁寧に手当てをしますし、問題がなければ、そこのところはこれまでどおり進め、発展させるべきところは更に力を入れて発展させる、こんな形でやっていきたいというふうに思っております。

 検証作業をこの先進めていきますけれども、そこで出た結論、考え方などは今後の中期経営計画の中でしっかり織り込んでいくということでございまして、いずれにしても、これまでの改革路線を大きく変えるということは全く考えていないということでございます。

中司委員 理解をいたしますが、この厳しい時代の中を今後NHKに生き残ってもらいたい、そういうことで、会長の真意もしっかりと伝えて、メッセージを発信していただきたいと思います。

 大臣の意見の中にも、徹底した行革というものが求められているわけでありまして、先ほど言いましたように、今後の中期経営計画の中でも、会長がどう手腕を発揮されるのか、あるいは改革の方向がどうなっていくのかということについては、我々もしっかり見定めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、令和五年度の予算ですけれども、事業支出が事業収入を上回るという赤字予算でありまして、民間企業なら異例のことでありますが、こういう予算が組めるのも国民が受信料を負担しているからこそであると思いますが、赤字の要因が十月以降の受信料値下げを踏まえたものなので、一定理解はするところであります。

 一方、評判が悪かった訪問営業から訪問によらない営業への転換ということで、営業経費率を一〇%以下に減少させたということも理解できるわけであります。

 ただ、受信料の支払い率、つまり受信料を納めている割合ですね、これは先ほども質問ありましたが、これが下がっているのは問題だと思います。訪問によらない営業によって営業経費率を下げることはもちろん最重要課題でありますが、同時に、支払い率も上がってこその改革の成果だと思います。

 テレビの視聴者の中で受信料を払っている方と払っていない人、払っていない人の割合が二〇%を超えるということは、不公平感があって納得できるものではありませんので、先ほど沖縄の例もありましたが、改めて会長の見解を伺います。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、受信料の公平負担というのは大変重要な課題だというふうに考えてございます。

 NHKでは、これまでの、戸別の御家庭を中心に訪問してお支払いをお願いする、そういう営業から、そうした形には頼らない営業活動への転換を進めているところでございます。具体的には、インターネットを通じた視聴者の皆様との接点の拡大、あるいは電力・ガス事業者など外部企業の方々と連携強化する、あるいは特別あて所配達郵便の活用などを通じて契約していただけるよう取り組むということでございます。

 新しい取組が定着するまではやはり一定の時間がかかると考えてございますけれども、でき得る限り早く軌道に乗せて、受信料の公平負担に努めてまいりたいというふうに考えております。

中司委員 ありがとうございます。是非ともよろしくお願いいたします。

 冒頭申し上げましたように、我々日本維新の会は、去年NHKの改革推進法案を提出しております。これからの時代にふさわしいNHKの在り方として、小手先の改革ではなくて抜本的な改革を実施をし、肥大化したNHKを、教育それから報道、福祉など本来の公共性の高い放送を担う部門とそれ以外の民間部門とに分割をして、そして、受信料はスリム化した公共部門のみ求めるということで国民負担を大幅に削減をする、軽減をする、そういう内容であります。

 稲葉会長は、NHKと民放との二元体制を堅持すると強調されますけれども、いわばNHKと民放をすみ分ける二元体制は、NHKが放送分野を報道、教育、福祉など公共性の高い分野に重点特化してこそ、そうして初めて成り立つと考えます。

 そこで、二元体制の在り方と、本来のNHKの公共性とは何なのか、公共についての考え方、これを会長に伺います。

稲葉参考人 御案内のとおり、NHKには、放送法に基づき、報道、教育、教養、娯楽の各部門にわたって、豊かで、かつ、よい放送番組をお届けするということが求められてございます。

 せっかくの御提案でありますけれども、仮にNHKの報道、教育、福祉等とそれ以外を分割するというようなことをいたしますと、正確、公平公正で豊かなコンテンツをあまねく伝えるという、放送法で定められた公共放送としての役割が果たせなくなってしまうのではないかというふうに考えてございます。

 これまでの放送法の下で受信料を基本財源とするNHKと、広告収入を主な財源とする民間放送との二元体制が着実に根づき、互いに切磋琢磨して日本の放送文化の根幹を成してきたというふうに受け止めておりまして、今後も二元体制を堅持していく必要があるというふうに考えてございます。

 NHKとしては、構造改革を着実に進めるとともに、公平公正で確かな情報を間断なくお届けし、質の高いエンターテインメントを提供することで、公共的役割をしっかり果たしていきたいというふうに考えております。

中司委員 私が言っておりますのは、二元体制を堅持していくためにも、本来の公共部門に特化するべきではないかということを申し上げているわけでありまして、公共放送と呼ぶにふさわしい本来の公共の部分と、それ以外の民放と競合する部分との仕分とか検証というものを是非しっかりこれから行っていただきたい、これは要望に代えさせていただきます。

 最後に、この機会に、短波放送「しおかぜ」について質問させていただきます。

 去年の本委員会においても、北朝鮮による拉致被害者の救出を目指して、特定失踪者問題調査会が、NHKが独占使用する茨城県内のKDDI八俣送信所から北朝鮮に向けて発信している短波放送「しおかぜ」について、寺田総務大臣にお聞きしたわけでございますが、この放送に対して北朝鮮から妨害電波が発信されているので、対抗手段として、常に複数の周波数によって二重放送を行っているわけですけれども、施設の老朽化によって来年アンテナつけ替え工事が実施されるわけですけれども、これが長期間に及ぶので、その間、二重放送ができなくなる、放送が妨害される可能性が高い、こういうことでございます。

 このことへの対策について寺田総務大臣は、「しおかぜ」の担うこれまでの重要な役割等も踏まえて、適切に検討する、こう答弁されました。その後の検討経過について、松本総務大臣に伺います。

松本国務大臣 今委員からも御指摘がございましたように、昨年十月二十七日の総務委員会においても質疑があり、寺田大臣からも御答弁させていただいたと承知をしております。

 私も、拉致問題は大変重大な問題でありまして、岸田内閣の最重要課題であるというふうに位置づけられているとも認識をいたしております。総務省といたしましても、拉致被害者等に向けた情報発信は重要であるというふうに考えているところでございます。

 「しおかぜ」の短波放送設備の使用関係については、既に今も御指摘がございましたが、短波放送施設を所有、管理するKDDI、施設の賃借人であり免許人の特定失踪者問題調査会と、同様に施設の賃借人であるNHKとの三者間の取決めに基づき定められており、これらの関係者の間で、現在、運用面の調整を行っておられるというふうに伺っております。

 総務省といたしましては、関係者間で協議をしていただいた上で、「しおかぜ」の担う重要な役割等を踏まえて適切に検討してまいりたいと思っておるという状況でございます。

中司委員 重要な役割を踏まえて適切に検討するということを繰り返しおっしゃっていただいたわけですけれども、是非ともこれは前向きに考えていただきたいと思っております。

 この件について、運用の一端を担われているNHKとして、どう考え、どう対処されるのか、会長にもお聞きいたしたいと思います。

稲葉参考人 以前私は申し上げたことがありますが、私は日本銀行に三十年勤務してございまして、その日銀の先輩である新潟支店に勤務していた横田滋さんのお嬢さん、めぐみさんが拉致事件の被害に遭いました。私としては、そういうこともあって、早期帰国を心から願ってきているものでございます。その気持ちは今も全く変わってございません。

 お尋ねの「しおかぜ」に対しましても、NHKは、人道上の見地から、可能な範囲で協力しておりまして、業務に支障がないことを条件に、NHKが短波による国際放送の発信に使っている送信機の一部を、調査会、KDDI、NHKの三者による覚書に基づいて、「しおかぜ」が使用しているということでございます。先週九日には、三者による定例の協議を行い、「しおかぜ」の使用期限の延長に向けた覚書の締結について話合いを行ったところでございます。

 一方、「しおかぜ」に使用している送信機につきましては、移行作業を行う予定でして、この作業中は、一定期間、一波による送信となる見通しとなっています。作業の時期や方法など、具体的にはこれからの検討でございますけれども、この作業は、今後も「しおかぜ」を安定的に継続していくために必要な作業と考えてございます。

 調査会、KDDI、NHKの三者による協議の場において調査会から御要望をいただいた際には、三者で結んでいる覚書を踏まえて検討していきたいというふうに考えてございます。

中司委員 しっかり対応していただければと思います。

 今のデジタル社会の中においても、有事の際には、在外邦人の保護などにおいて短波放送はやはり貴重な情報の伝達手段となると思いますので、我が国の安全保障上の観点から、また国益を損なわないためにも、有事に備えて、必要に応じて国が、送信施設、維持管理をし、そして送信技術も継承して周波数を確保しておくべきことが大事だと思いますので、そのことを指摘させていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日は、令和五年度NHK予算質疑ということで、NHK稲葉新会長ほか、NHK役員の皆様にお越しをいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。十四日の質疑、また本日の質疑とも重なる部分もあるかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 十四日の質疑におきまして、石川委員の方から、現在放送中のNHKテレビ小説「舞いあがれ!」について、航空大学校がある北海道、とかち帯広空港が大変ロケ地として盛り上がっているというお話がございましたけれども、空とパイロットに憧れた主人公が暮らす物づくりの町、東大阪とともにロケ地となっておりますのが、主人公の祖母が暮らし、そして主人公の第二の故郷とも言える、幼少期を過ごした、私の地元長崎県の自然豊かな五島列島でございます。多くの地元の皆様がエキストラとしても番組作りに参加をされておりますし、大変盛り上がりを見せております。

 このような物語の舞台となる地域それぞれにおきましては、その地域の人々のきずなですとか、地域の生活や伝統文化、そして自然のすばらしさというものが同時に描かれまして、舞台となっている複数の地域がまたそれぞれの魅力を伝え、そして、その物語の中に、我が国が抱える、そして地域が抱える問題が織り込まれながら、一体として重層的に描かれている。そして、この番組によって、地方創生ですとか地方活性化、観光振興にも資するということも含めると、NHKならではの番組であると思いまして、私も一視聴者として大変楽しみにいたしております。

 今後も、是非、全国の各地域の魅力を伝え、また、その地域の活性化に資するすばらしい番組を引き続き作成をしていただくということを心から御期待を申し上げて、質問に入りたいと思います。

 稲葉会長におかれましては、一月二十五日、第二十四代NHK会長に御就任をされました。稲葉会長にお尋ねをさせていただきます。

 就任された記者会見におきまして、志の高い仕事に関わっていけることを大変名誉に感じていると述べられております。今、大変大きな時代の転換点の中で重責を担われたわけでございますけれども、根本となるNHKの公共放送としての使命についてどのようにお考えになっているかということにつきまして、まずお伺いをさせていただきます。

稲葉参考人 公共放送の使命についてのお尋ねでございます。

 私は、いつも、こういう御質問があったとき申し上げていますのは、放送法の規定でございます。何度も繰り返しになって恐縮ですけれども、NHKがよって立つ放送法第一条には、放送の目的として、放送の効用を国民にあまねく普及し、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発達に資するということがうたわれてございます。公共放送であるNHKは、放送法に定められたこの目的の達成に向けて、視聴者・国民の信頼や期待に応えていく普遍的な役割、使命があるというふうに考えてございます。

 そのために、まずは、公平公正で確かな情報を間断なく皆さんにお届けして、視聴者の皆様の日々の判断のよりどころになりたいというふうに考えてございます。また、質の高いエンターテインメントを提供することで、視聴者の皆さんの生活がより豊かで文化的なものになるよう貢献していきたいとも考えてございます。

 NHKは、今後とも、この使命をしっかり果たしていけるよう、会長として先頭に立って頑張ってまいりたいというふうに思っております。

西岡委員 会長、ありがとうございます。

 先ほど会長の御答弁の中でもあっておりますけれども、稲葉会長の御経歴としては、日本銀行に入行されまして、日本銀行理事、そして、退任後には株式会社リコーに入社されまして、取締役、専務執行委員、コーポレートガバナンス推進担当、取締役会議長等を歴任された御経験をお持ちでございます。これまでの会長が経験をされました御経歴を、NHK会長としてどのように生かしていかれるのでしょうか。

 また、記者会見におきまして、デジタル化の大きなうねりに翻弄される企業を見てきた、NHKも例外ではない、生き残りを懸けた努力が必要だということも述べられております。その言葉に込められました思い、また、今後どのような理念の下で会長として経営に取り組んでいかれるのか。一言で表すと、稲葉会長のカラーというのは何というふうに御自身でお思いでしょうか。お伺いをさせていただきます。

稲葉参考人 委員御指摘の、記者会見での発言ですが、デジタル化の進展によって、ビジネスの世界では急激な変化への対応が迫られております。当然、NHKもそうした動きとは無関係でいられないという趣旨で申し上げました。

 例えば、放送の世界でも、放送と通信の間の垣根がなくなってきている中で、公共放送であるNHKがどうあるべきか、どういった役割を果たすべきかという点は、大変重要な課題だというふうに認識しております。

 私は、日銀という公的な組織と、それから民間企業の両方を経験してきましたので、それぞれの組織の持つ特色を、ある程度理解しているつもりでございます。会長の職務を執行するに当たっては、そうした経験やこれまでの知見を生かしつつ、私なりの視点を大切にして取り組んでまいりたいというふうに考えております。

西岡委員 先ほどの質問をさせていただいた中で、稲葉会長のカラーというのは御自身でどのように思われているかということを質問させていただいたんですけれども、もし一言、御自身で、これが稲葉カラーだというものがございましたら、御自身のお言葉で、もしお話しいただけることがあればと思います。

稲葉参考人 自分でカラーを申し上げるのは非常に恥ずかしいと思っておりますが、モットーというようなことであれば、私、難しい課題にぶち当たったときは、みんなで一緒に考える、考えるだけで足りなければ考え抜くということをモットーでやってまいりました。難しい課題に直面すればするほど、みんなでしっかり考え、考え抜いていくことが大事だということをモットーとしているということでございます。これは、日銀時代、いろいろたたき込まれた考え方だと私自身思っております。

西岡委員 ありがとうございます。

 今会長がおっしゃった言葉、大変重要なことだと思います。是非、現場の皆様とともに、様々な課題があると思いますので、今後、リーダーとしてしっかり取り組んでいただくことを御期待申し上げたいと思います。

 それでは、続きまして、これも十四日の質疑の中でも質問の中にございましたので、重ねての質問になるかと思いますけれども、先日の委員会質疑においても、私の役割は改革の検証と発展であるというお言葉がございました。これは、人事制度、受信契約の営業手法の改革やコスト削減等、受信料の引下げに道筋をつけるなど、改革に大なたを振るわれた前田前会長の経営方針や改革を踏まえての言葉であるというふうに考えますけれども、前田前会長の三年間について、稲葉会長としてどのように評価をされておられるのか、また、踏襲すべきところと、ここは方針転換を考えていかなければいけないところだとお考えのことがありましたら、御見解をお伺いをしたいと思います。

稲葉参考人 前田前会長が取り組まれてきた改革は、大胆な業務の効率化を進めるということで、受信料値下げに伴う収入の減少を収支均衡にまで持っていく、そういう道筋をつけていただいたというふうに受け止めてございます。

 ただ、かなり大胆な改革であり、かつ大急ぎでやったということでもあるので、若干の綻びが生じている部分があるかもしれないというふうに考えておりまして、もしそうであれば、しっかり検証した上で、丁寧にそれに手当てをするということで、ベストな姿に持っていきたいというふうに考えています。

 そのために、まず、改革全般に関して、これまでの取組を検証するチームを今月発足させました。検証作業を開始したところでございます。その検証を急いで、なるべく早く一定の方向性を出していきたいというふうに考えてございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 やはり、様々なことを検証というのは大変重要なことだと思っております。中期計画、二〇二三年度は最終年度となりますので、次の計画へ向けまして、その検証を基に、今後のNHKのあるべき姿をしっかり明確に位置づけていただくことを御期待申し上げたいと思います。

 引き続きまして、これまで取り組んでこられましたいわゆる三位一体の改革について、どのように評価をされ、今後、このことにどのように取り組んでいかれる方針かということを質問をさせていただきたいと思います。

稲葉参考人 業務、受信料、それからガバナンスの三位一体の改革と言われていますが、これは着実に進んでいるというふうに考えてございます。

 具体的には、訪問だけに頼らない営業への転換など、あらゆる業務の見直しを進めた結果、事業支出は三年間で六百三十四億円の削減と相なってございます。

 また、グループ経営改革として、中間持ち株会社を設立したり、ガバナンスの強化と業務の効率化を進めてございます。関連団体の数は、ピーク時、一九九八年の六十五団体からおよそ三分の一に減ってございます。

 それから、今年十月には受信料の一割値下げを実施するとともに、二〇二四年三月末には衛星波一波を削減する、こういうふうになってございます。

 問題は、こういう改革を進めると同時に、一方で、多様で質の高いコンテンツを作り続けるということがNHKの生命線だというふうに考えてございます。その際には、デジタルテクノロジーの更なる活用などが大事なポイントではないかというふうに考えてございまして、これまで以上に高品質なコンテンツを効率的なコストで生み出していくよう取り組んでいきたいというふうに思っております。

西岡委員 会長、ありがとうございます。

 続けて、松本総務大臣にお尋ねをさせていただきます。

 今回の予算につきまして、総務大臣の意見の中で、一層の合理化、効率化を求めるということがございます。この三位一体の改革については道半ばという認識の下での御発言かと思っておりますけれども、具体的に大臣が求めておられる内容についてお伺いをし、また、大臣としては更なる受信料の値下げが必要であるとお考えなのかどうかということも含めてお尋ねをさせていただきます。

松本国務大臣 NHKの三位一体改革につきましては、業務、受信料、ガバナンスを一体的に、不断の改革に取り組んでいくことが重要だと考えております。

 その改革の一環として、NHKでは、本年十月以降に現行の受信料額を一割引き下げることとしていますが、その結果、令和五年度収支予算では事業収支差金が二百八十億円の赤字となっていること、御案内のとおりでございます。

 そのため、総務大臣意見におきましては、予算の執行に当たり、引き続き、公共放送の役割を果たすために必要な事業規模について不断の見直しを行うことにより、事業経費の一層の合理化、効率化に取り組むことを求めております。

 具体的には、特に配意すべき事項として、子会社や関連公益法人等の統合効果について随時検証を行い、必要な見直しを行うこと、子会社等の随意契約比率の引下げなどを通じた取引の透明化や経費削減を進めること、放送センターの建て替えについて、中期経営計画で示された新放送センターの建設計画の抜本的見直しの具体的内容を早期に明らかにすることなどを求めているところでございます。

 NHKは、国民・視聴者の負担する受信料で支えられていることを踏まえ、受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けた取組を着実に進めることが極めて重要だと考えております。

 以上のような経営改革を進めることと併せて、良質なコンテンツ制作の一層の強化を図り、我が国のコンテンツ産業の中で積極的な役割を果たしていただきたいと考えております。

 将来的に更なる値下げを行うかという点については、そうした取組を進めた上で、NHKにおいて御判断をいただけるものと考えております。

西岡委員 大臣、ありがとうございます。

 引き続きまして、NHKにお尋ねをさせていただきます。

 二〇二三年一月に、二〇二一年から二〇二三年度の経営計画の中で、安心、安全を支える、それと、あまねく伝えるの内容を強化するための修正が行われました。それぞれ、命と暮らしを守る報道を強化し、より強靱なネットワークを構築、また、確かな情報、サービスを一人一人に届け、分断化、多層化した社会をつなぐとなっており、いずれも極めて重要だと考えます。

 中でも、災害報道、また有事における情報発信の在り方、これにつきましては、どのような有事においても、あらゆる手段を用いて、公共放送として正確な情報を伝え続ける役割を果たすための体制整備が大変重要だと考えております。そのための取組の方針についてお伺いをさせていただきます。

林参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただきました命と暮らしを守る報道は、公共放送NHKの重要な使命であり、その実施体制については、検証と改善を不断に行っております。

 緊急報道におきまして、現場の状況を速やかに生中継でお伝えするため、ロボットカメラを全国のおよそ八百五十か所に配備しております。

 また、ヘリコプターも広域的に運用し、災害などの緊急報道に使用しております。南海トラフ巨大地震への備えとしても、大阪や愛知などからいつでもフライトできる体制を構築しております。

 東京渋谷の放送センターでは、頻繁に、記者やアナウンサーなどが参加して、災害や有事を想定した緊急報道の訓練を続けております。

 また、首都直下地震などに備えて、渋谷の放送センターの機能が停止した場合でも放送を継続することができるよう、大阪放送局の機能強化にも取り組んでおります。

 先月、大阪放送局では、西日本の各放送局の担当者などが参加して、南海トラフ巨大地震の発生を想定し、取材体制の構築、情報発信などについて検討する図上訓練を実施いたしました。

 引き続き、ソフト、ハードの両面で、災害報道、緊急報道を強化するための取組を進め、万が一災害や有事などが起きた際には、全国の放送局のネットワークを駆使して、確かな情報を迅速にきめ細かくお伝えし、公共放送の役割をしっかりと果たしていきたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられました、やはり訓練、実地に訓練、どういう状況が起きたときにどういう体制を取っていくかということは大変重要な取組だと思っておりますので、不断の、様々な想定をした中でのお取組をお願いしたいと思います。

 その体制強化の中の重要な取組の一つとして、サイバー攻撃など情報セキュリティーの強化や拡充というのが大変重要だと考えております。

 現在の高度情報化社会におきましては、国家、行政、医療、教育、そして防衛、放送、通信、あらゆる企業や個人においても、全ての分野で情報漏えい、不正アクセス、サイバー攻撃のリスクにさらされているのが現状でございます。

 特に、ロシアによるウクライナへの侵攻によりまして、見えない戦場とも言われるサイバー空間では大規模なサイバー戦が繰り広げられておりまして、我が国における情報セキュリティー強化というものは喫緊の課題でございます。国際的にも、また各国においても、放送、通信へのサイバー攻撃が頻発をいたしております。この今の現状に対しまして、NHK、そして総務省、それぞれの強化の取組についてお尋ねをさせていただきます。

 まずNHKにお尋ねをさせていただいた後、総務省にお尋ねをさせていただきます。

中嶋参考人 情報セキュリティーに関する御質問でございますけれども、NHKは、サイバーセキュリティ基本法で定められた重要社会基盤事業者でありまして、国の重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画に基づいて、放送サービスを安全かつ持続的に提供することが求められております。

 東京オリンピック・パラリンピックを控えた時期を契機にいたしましてサイバーセキュリティー対策を強化しておりまして、外部関係機関と連携しながら、サイバー攻撃に即応する態勢や監視の仕組み、こういったものを整備するなど、放送サービスを継続するための取組をこれまで進めてまいりました。

 現在は、働き方の変化に伴うリモートワークの拡大に対応したセキュリティーの施策の強化でありますとか、関連団体などサプライチェーンリスクへの対処など、NHKグループ全体のIT管理レベルの向上とセキュリティーリスクの低減に努めているところであります。

小笠原政府参考人 お尋ねのセキュリティーに関してでございますが、総務省では、放送法におきまして、放送設備のサイバーセキュリティー確保に関する技術基準を整備し、各放送事業者に対して適合維持義務というのを課しております。具体的には、番組送出の起点となる番組送出設備を外部ネットワークから隔離するための措置などを求めているところです。

 総務省といたしましては、引き続き、放送法に基づく対応等を通じまして、関係省庁等とも連携しつつ、放送事業におけるサイバーセキュリティーの確保に取り組んでまいります。

西岡委員 大変重要な課題でございますので、しっかりと今後も取組を強化していただくことをお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、これまで組織のスリム化、コスト削減の大改革が図られ、これにつきましては評価の声がある一方で、当然三位一体の改革は必要でございますけれども、現場への影響を指摘する声もございます。その影響がどのような形で現場に及んでいるのでしょうか。

 特に、地方局ですとか海外支局の現場において、当然、今、インターネット業務の取組も相まって、人材不足、人員不足という課題も指摘をされております。現場の状況の課題をどのように認識しておられるのでしょうか。NHKにお尋ねをさせていただきます。

林参考人 お答えいたします。

 全ての都道府県に放送局を持つNHKにとりまして、地域情報の発信は重要な役割だと認識しております。職員の半数以上を地域に配置し、予算につきましても、来年度全体では百七十億円を削減する中で、地域放送に係る経費はほぼ同額を確保しております。

 地域情報発信を強化するため、放送を出している放送局の平日夕方のニュースをインターネットで配信する取組を進めております。来年度の早い時期には、全ての放送局について実施できる予定です。さらに、地域とつながりの深い人材の採用を増やし、取材、制作体制の強化を図っております。

 一方、海外の総支局につきましては、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を始め国際情勢が大きく変化する中で、重要性が高まっておりまして、特派員の機動的な運用や緊急報道用の機材の整備を着実に進め、取材体制を強化しております。また、世界各地で起きるニュースの速報や映像の確保などを目的に、海外の放送局との取材協力関係の強化にも力を注いでいるところでございます。

 正確な情報の発信や多様で質の高いコンテンツを作り続けていくことは、NHKの生命線だと考えております。しっかり取り組んでまいりたいと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 続きまして、令和五年度NHK予算案について質問をさせていただきます。

 巡回訪問営業から訪問によらない営業へと業務モデルの転換が図られまして、これによって、契約件数の減少について今後どのような見通しを持っておられるのでしょうか。

 また、値下げも予定をされておりまして、二三年から二六年度は赤字となると見込まれております。そして、二七年度にも赤字を解消するという方針でございますけれども、若者を中心としたテレビ離れが進む中で、今後の営業の在り方も含めて、どのように取り組んでいかれるのかにつきまして、NHKに方針をお伺いをいたします。

山名参考人 お答えいたします。

 改革の途上であることや学生免除の拡大の影響もありまして、来年度予算では、契約総数は五十八万件、衛星契約数は十三万件の減少としております。けれども、公平負担の観点から、できるだけ早く減少に歯止めをかけたいと考えております。

 若年層を中心にテレビ離れが進む中で、公共放送の財源であります受信料を確保していくためには、幅広い世代の視聴者の皆様にNHKの価値に共感していただき、納得した上で受信料をお支払いいただくことが重要だと考えております。

 このため、放送、イベントやインターネット等、様々な接点において、多様で質の高いコンテンツ、サービスを提供するとともに、公共放送の役割や受信料制度の意義について丁寧にお伝えして、自主的に契約を届けていただけるよう取り組んでいるところでございます。

 こうした、訪問だけに頼らない営業活動への転換には一定の時間がかかると考えておりますが、引き続き受信料の公平負担と収入の確保に努めてまいりたいと考えております。

西岡委員 ありがとうございます。

 三月十八日からはフェスを予定されているということもお聞きをいたしておりますけれども、今の大変厳しい現状の中で、今回、新しい業務モデルに転換をされたという中で、今後も様々なことを含めてしっかりと良質な番組を作っていける体制というものを確立をしていただきたいと思っております。

 続きまして、先ほどお話もございましたけれども、今年十月からの地上契約の受信料の一割値下げや、また、衛星契約につきましても値下げを予定をされております。また、学生への免除を拡大する方針も表明をされております。コロナ禍の長期化ですとか現下の燃料油、エネルギー価格を始めとした物価高騰など、その物価高騰についても長期化が予測をされておりますけれども、今後、新たな受信料の負担軽減というものを考えていかれる方針があるのかどうか、NHKにお尋ねをさせていただきます。

山名参考人 お答えいたします。

 今年十月に予定しております受信料の値下げは、地上契約、衛星契約共に一割ということで視聴者の皆様に還元することとしております。また、学生に対する免除を拡大しまして、現在、家族割引で半額の受信料をお支払いいただいている方を含め、独り暮らしの学生のほぼ全てが全額免除となります。こうした還元策等の影響もございまして、二〇二三年度は四百五十億円の減収を見込んでいるところでございます。

 まずは、今回の値下げと免除拡大を着実に実施してまいりたいと思っております。

西岡委員 今の様々な物価高騰、エネルギー価格を始めとした大変厳しい状況も踏まえて、今後、様々な検討を加えていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。

 次に、受信料の公平負担の面から、割増金制度の運用が四月一日からスタートされます。どのような基準によって運用をしていく方針でございましょうか。懲罰金的な制裁金に対する懸念の声もありますけれども、誰がどのような基準でその悪質性を判断するのかなど、課題もあると認識をいたしております。慎重な運用が求められると考えますけれども、NHKの御見解をお尋ねをいたします。

山名参考人 お答えいたします。

 四月から運用を開始いたします割増金は、不正な手段により受信料の支払いを免れた場合や、正当な理由がなく期限までに受信契約の申込みをしなかった場合に対象となります。また、昨年の法改正に当たっての附帯決議においても、「真にやむを得ない場合にのみ割増金の徴収を行うこと。」とされております。

 NHKにおきましても、割増金は、対象となる事由に該当する場合に一律に請求するのではなく、お客様の個別事情を総合的に勘案しながら運用してまいります。

 今後も、NHKの価値や受信料制度の意義を御理解いただき、納得してお手続やお支払いをいただくというこれまでの方針には変わりはございません。

西岡委員 慎重な運用が求められること、また、基準と申しますか、今申されました様々な不正ですとか、そういう状況をどういうふうに判断していくのかということについても、やはりしっかり透明性を持って対応していかなければならないと思いますし、慎重な運用をお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、インターネット活用業務の在り方につきまして、テレビを全く、あるいはほとんど見ない方々を中心に、昨年、第一期社会実証が行われました。続けて、二期目として、今年の二月十日から二十四日まで、テレビを持っていない方々や日常的に利用されていない方々千三百人に対しまして第二期の実証が行われたと承知をいたしております。近く結果が公表されるとお聞きをいたしております。

 日本民間連盟と日本新聞協会からは、公正競争を阻害するおそれがあるとの認識の下で、更なる拡大について懸念の声が出されております。現在、NHKが、公共放送として、今後のインターネット活用業務の在り方については評価委員会での議論が行われているところでございますけれども、このことについて、稲葉会長、そして松本総務大臣の御見解を続けてお尋ねをさせていただきます。

稲葉参考人 インターネット活用業務のお尋ねでございます。

 現在、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻とか、相次ぐ大規模災害の発生とか、社会経済の先行きにはますます不透明感が強まってございます。一方、インターネットは、幅広い世代に利用されてはおりますけれども、不確かで曖昧な情報があふれているという状況でございます。

 こうした情報空間の課題に対して、NHKとしては、インターネット上においても正確で信頼できる情報を発信し、視聴者と国民の安全、安心を支え、あまねく伝えるということで、健全な民主主義の発達に資するという、放送と同様の公共的な役割を果たしていくことが必要ではないかと考えてございます。

 これまで、インターネット活用業務の社会実証を二回にわたって実施しておりますが、こうした情報空間における公共性の検証を行っているということでございます。その結果や、総務省における有識者会議の議論などを踏まえて、公共放送として適切なインターネット業務の在り方を検討、具体化していきたいというふうに考えております。

松本国務大臣 放送を取り巻く環境が大きく変化をする中、NHKでは、テレビを保有していない方々を対象として、様々なインターネットサービスの社会実証を段階的に実施しており、サービスのニーズや社会的な意義の検証を進めていると承知をいたしております。昨年四月から五月にかけて、約三千人の参加を得て実施した第一期の実証においては、三つの機能、七つのサービスの有用性を検証し、参加者から一定の評価を得たと承知をしております。

 その結果を踏まえ、今委員からも御指摘がございました、本年二月に、約千三百人の参加を得て第二期の実証を実施し、七つのサービスのうち、災害マップと、一望・連続再生、動画ニュースの一覧表示を対象に、更に具体的に検証していると承知をしております。

 総務省におきましては、有識者会議、デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会の下の公共放送ワーキンググループを開催しまして、インターネット活用業務の在り方など、あるべき公共放送の姿について検討を進めていただいているところでございます。

 日本の放送番組は世界の中でも優れたコンテンツであると考えており、日本のコンテンツ産業の競争力を支える重要な構成要素であると認識をしております。NHKにおかれては、これからも、豊かで、かつ、よい番組を御制作をいただくとともに、こうした優れた放送番組を国の内外に発信するプラットフォームとして、新たな役割を果たしていただければと考えているところでございます。

西岡委員 時間となりました。準備をいたして通告をしておりました質問をさせていただくことができませんでした。おわびを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 NHKにとっても極めて重大な、放送法四条一項に定める政治的公平の解釈をめぐる行政文書の問題について、まず、総務省に確認をいたします。

 三月の二日に小西洋之参議院議員が公開した政治的公平の解釈についての一連の文書について、総務省に文書として保存されているものと同一か精査を行った結果、小西議員が公開した文書は全て総務省の行政文書であることが確認をされました。

 そこで、これは情報流通行政局長に聞きますけれども、この文書は、行政文書ファイルに保存されていたのかどうか、行政文書ファイル管理簿には記載されていたのかどうか、どのような形で保管されていたのか、お答えいただけますか。

小笠原政府参考人 お答えいたします。

 文書管理共有フォルダ及び行政文書管理簿、双方のお尋ねでございますので、まず第一に、三月七日、総務省が行政文書として公表した文書は、総務省において電子的に保存されていたものでございます。そして、総務省が行政文書というふうに認めさせていただいた文書につきましては、確認した結果、行政文書ファイル管理簿への記載が行われておりませんでした。

 このように、行政文書の管理が適切に行われていなかったことは大変申し訳なく思っております。法令にのっとり、速やかに分類、整理を行い、行政文書ファイル管理簿への記載をすることとしております。

宮本(岳)委員 行政文書管理ファイルに記載されていなかったということが確認をされました。

 ただ、これはもちろん紛れもない総務省の保管する行政文書でありまして、七十八ページということで公表されていますけれども、これが全てであるというふうに報告を受けております。

 二〇一五年五月十二日の参議院総務委員会で当時の高市総務大臣が、この放送法の政治的公平性について、自民党の藤川政人議員に対して、従来は、一つの番組だけで判断するのではなく放送事業者が放送する番組全体を見て判断するというのが基本的な判断であったものを、極端な場合には、一つの番組のみでも、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められないと答弁したことが、今改めて問題になっているわけですね。先ほど奥野総一郎委員の方からも、るるお話がありました。

 松本大臣は、この間の国会審議で、補充的説明であって昭和三十九年以来の政府解釈を変えたものではない、これを繰り返しておられます。

 その昭和三十九年四月二十八日参議院逓信委員会における郵政省宮川岸雄電波監理局長答弁、これが、番組全体でなく一つの番組だけで公平であるかどうかを判断してもよい根拠となると。こう松本大臣はお考えなんですか。

松本国務大臣 まず、放送法につきましては、当委員会でも、また、国会における他の場所でも、本年もでありますが、これまでも累次の質疑が行われてきたというふうに承知をしております。

 委員が御指摘いただいた昭和三十九年四月二十八日における答弁もそうでございますが、それも含めて、これまでの累次の答弁は、放送法の四条の大切な解釈を変えたものではなく、その時々の質問にお答えをして御答弁を申し上げたものであるというふうに考えているところでございます。

宮本(岳)委員 資料一を見ていただきたい。その会議録ですよね。

 これはちゃんと線を引いておきましたけれども、確かに、太い赤線部、「ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、」、太い部分、これはございます。しかし、出てくるのは一度だけ、ここで出てくるだけでありまして、個々の番組に対する判断というものは非常に難しい問題だと。一つのものにつきまして、客観的に正しいという結論を与えることはなかなか難しい問題、難しいと、一つの番組で判断するのは。そう繰り返した上で、個々の番組でやろうと思えば、常にテレビ番組あるいは放送番組の内容を監視して見ていくということが伴わなければできないんだ、だから番組全体でやらなければならない、考えていかなければならないと答弁しているんですね。

 ここの答弁は、これは間違いないですね、大臣。見ていただきましたか。

松本国務大臣 先ほど御答弁を申し上げたとおりでございまして、私、先ほども奥野委員との質疑でも出てまいりましたが、これまでも、この四条に係る政治的公平性の議論につきまして、具体的に、これに関係する編集等に関して、地上波についての意見、行政指導があったというふうに御答弁を申し上げましたが、放送法四条の規定でございますので、これまでも、文理上これは法規範性を有するというふうに御答弁を申し上げているところでございますが、実際に、この違反として放送法における業務停止や電波法における停波の処分が行われたことは、私としてはないと承知をしているところでございます。

宮本(岳)委員 そんな議論、していないですよ。法規範性をここで議論しようというつもりもないですし、それで停波されたかどうかという事実を聞いているわけじゃないんです。

 この答弁は三十九年の答弁ですね、このときの電波監理局長答弁というものは、なるほど、「ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、」という枕言葉がついていますけれども、つまり、おっしゃっていることは、一つの番組で判断することは難しいんだ、そして、一つの番組で判断しようと思えば、全ての番組を常時監視するようなことになるのでやるべきでないという答弁なんですね。

 ところが、高市総務大臣の二〇一五年五月十二日の参議院総務委員会における藤川政人議員への答弁では、一つの番組ではなく放送事業者の番組全体を見て判断するとされてきたと聞いているなどと言いながら、初めて、一つの番組のみでも、政治的に公平であることを確保しているとは認められない二つの場合というのを例示したわけですよね。二つがどういう場合かというのは、この間、繰り返し議論されてきたとおりであります。

 これを受けて、藤川政人議員は、一番組だけでも政治的公平に反すると言える場合があるという御答弁をいただいたと。つまり、それまではそういう答弁は余りなかったものを、ここで、一番組だけでも政治的公平に反すると言える場合があるという御答弁をいただいた、その点についても放送事業者を十分御指導いただきたいとまで、この五月の議論では述べているわけですよね。

 だからこそ、今回公表された行政文書、資料二につけました。二〇一五年二月十八日、官邸で行われた、これは安藤友裕情報流通行政局長による山田総理秘書官へのレク結果、未定稿という文書をつけておきました。取扱厳重注意という赤い印が押してありますけれども。山田秘書官も、「政府がこんなことしてどうするつもりなのか。礒崎補佐官はそれを狙っているんだろうが、どこのメディアも萎縮するだろう。言論弾圧ではないか。」とまで述べております。

 この丸がついているのは、全部、山田総理秘書官のお言葉なんですね。それに対して、バツのついているのが情報流通局長、当時の安藤さんの発言ですけれども、一体この情報流通局長は何と語ったか。現情報流通行政局長にひとつ、このバツのところに何と書いてあるか、お読みいただけますか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 当該文書については、ちょっと、関係者の聞き取りにより、その正確性は十分でないというふうに考えているという前提で読ませていただきますが、「法制局には当たっていない。礒崎補佐官も現行の「番組全体で」とする解釈を変更するものではなく、あくまで「補充的な説明」と位置づけ。国会で上手に質問されてしまったから答弁せざるをえない形を取ることとしている。」以上でございます。

宮本(岳)委員 随分早口で読まれましたけれども。

 ここで、バツのところに書かれていることは、「礒崎補佐官も現行の「番組全体で」とする解釈を変更するものではなく、あくまで「補充的な説明」と位置づけ。」、ここに持っていこうと。「国会で上手に質問されてしまったから答弁せざるをえない形を取ることとしている。」、こういう話でまとまっているということを、これは安藤さんがおっしゃっているわけですね。

 今、松本大臣が繰り返している、変更していない、いろいろあっても、変更していないから問題ないんだ、この行きがかりについては、文書の正確性その他まだまだいろいろな、正確かどうかは調査が必要だと。

 しかし、変更していないんだと言って、それ以上もう、これがどうであったとしても議論する必要はないという物事の落としどころを決めようというのは、まさにここで既に安藤さんがおっしゃっていることじゃないんですかね。大臣の答弁とこれとは符合していると思うんですが、違いますか。

松本国務大臣 私どもは答弁する立場でございますので、国会での答弁がどなたが上手かどうかということについてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、御質問をいただいたことに真摯にお答えするのが私どもの使命であると同時に、答弁については、政府として責任を持って答弁をさせていただくということではないかというふうに思っておりますが、当然、答弁の御趣旨に対して、答弁に、的確にお答えをすることが私どもの使命でございます。

 その上で、この放送法の解釈については、改めて平成二十八年にも政府統一見解を出させていただいているのも、大変重要な表現の自由、知る権利に係ることであるからこそ、政府の統一見解として皆様に分かりやすく政府の考え方を御説明を申し上げる必要があると思っておりまして、その意味では、番組全体を見て判断するとしても、番組全体は一つ一つの番組の集合体であり、一つ一つの番組を見て全体を判断するというような形で御説明をさせていただいているというふうに理解をしております。

宮本(岳)委員 いや、政府統一見解がその後出たことなんか分かっているんですよ。分かっているんです。

 私は、この昭和三十九年の答弁で既にある、今お話をした局長答弁ですね、このときの局長答弁、これのままなんだ、このときから既に一つの番組で判断できると言っているんだという話が、全然違う、このときはそんなことは言っていないと。枕には置いていますけれどもね。

 しかし、それが、礒崎さんその他が様々動きをした結果、その政府統一見解も含めて、一つの番組でも大丈夫だということに変えられたことは明瞭だ、なぜ変わったのかを明らかにするのが当委員会のやはり責務だということを申し上げたいんですが、今日はそのことをやる場ではありません。追ってやりましょう。追って、そのことについて徹底的に総務委員会で解明する必要があるということを今日のところは申し上げておきたいと思います。

 そこで、委員長にお願いがあります。

 改めて、本件の真相解明のために、それぞれ当時の、礒崎陽輔総理補佐官、それから安藤友裕情報流通行政局長、そして山田真貴子首相秘書官、当委員会への参考人招致を求めたいと思いますが、お取り計らいを願います。

浮島委員長 後刻、理事会で協議いたします。

宮本(岳)委員 さて、そこで、NHKの会長にお伺いをいたしたい。

 稲葉会長は、先日の当委員会でも、日銀時代に日銀法の改正に携わった際に放送法に接したことを振り返って、その第一条に、放送の目的として、放送の効用を国民にあまねく普及し、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発展に資すると書かれていたことに感銘を受けた、こうおっしゃいました。今、NHK会長となって、えにしを感じるとともに、大変名誉に感じていると述べられました。

 まず、会長の自主自律、公平公正な立場を堅持する御決意をお伺いしたいと思います。

稲葉参考人 今ほど委員がおっしゃったように、私は、日銀時代に放送法に接する機会がありまして、放送法第一条に大変感銘を受けました。

 第一条には、放送の目的として、放送の効用を国民にあまねく普及し、表現の自由を確保し、健全な民主主義の発達に資するということがうたわれてございます。こうした放送の役割をしっかり果たすために、公平公正で確かな情報を間断なくお届けして、視聴者の皆様の日々の判断のよりどころになりたいというふうに強く思っております。

 NHKは、放送法にのっとりまして、事実に基づいて、公平公正、不偏不党、何人からも規律されることなく、自らを律して放送に当たってございます。政治的公平性につきましても、こうした自律的な取組の中でしっかり確保していくという決意でございます。

宮本(岳)委員 大変大事な御決意だと思います。

 しかし、残念ながら、この間、NHKはこの点で重大な問題が発生してまいりました。NHK予算の承認案件に、我が党は、従来は、受信料負担増など国民負担増や経理などの不祥事があった場合、あるいは政治家の圧力に屈した場合や会長が不偏不党を脅かす発言を行った場合などを除き、基本的には大半に賛成をしてまいりました。しかし、二〇二〇年、二一年、二二年と三年連続で反対の態度を取ってきたのは、かんぽ生命の不正販売を取り上げた「クローズアップ現代+」をめぐって、当時の日本郵政の鈴木副社長からの抗議を受けて、予定した第二弾の放送番組を取りやめ、先送りし、さらには、経営委員会がNHK会長に厳重注意を行い、事実上、番組編集に圧力をかけたからであります。

 この経営委員会の行為は、放送番組は何人からも干渉されないとする放送法三条に違反し、公共放送たるNHKの自主自律を脅かすものであり、断じて許されるものではありません。

 しかも、経営委員会は、国民への説明責任を放棄し続け、先ほども奥野委員からも指摘がありました、今なお厳重注意をめぐる議事録の公開に背を向け続けております。そのような下で、その執行部が編成し、経営委員会が議決した予算には、残念ながら今年も承認を与えることはできません。

 しかし、一番あってはならない、放送番組への政治など外部からの介入が起こるときには、かんぽ生命不正販売問題の「クローズアップ現代+」といい、二〇〇一年に発生した「ETV2001 問われる戦時性暴力」番組といい、結局、一つの番組に注文がつき、様々な形で圧力を受けているわけですね。だから、番組全体ではなく、一つの番組だけでも文句がつけられるとなれば、山田真貴子首相秘書官が指摘したように、それこそ放送事業者にとっては萎縮しかねないということになるんだと思うんです。

 個々の番組に次々と意見をつけるということがやられたら、やはり放送事業者にとっては大変つらい。これは、稲葉会長、そういうふうにお感じになりませんかね。

稲葉参考人 NHKには、視聴者を始め様々な方面から、様々な御意見を日々頂戴してございます。しかし、そうした中で、NHKは、不偏不党の立場を守りながら、公平公正、自主自律を貫いて放送に当たってきておりまして、今後もこの姿勢に変わりはありません。

 政治的公平性について、NHKは、自律的な取組の中で確保していく決意でございます。

宮本(岳)委員 その立場をしっかり貫いていただきたいんですけれども、放送への信頼を取り戻すには、放送法の本来の理念に基づいた、NHK自身の自律的な努力こそが求められていると思います。

 ところが、今回の総務大臣意見の「国内放送番組の充実」を見ると、二〇二一年十二月二十六日に放送されたBS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」において、自らの番組基準に抵触する放送が行われた件を取り上げて、事もあろうに、再発防止に向けた取組を徹底することが求められる、まあ、それはいいんでしょうが、今後、定期的に、本件に関連する法令等の遵守状況や再発防止策の取組状況を取りまとめた上で公表することが求められる、こう総務大臣は意見をつけておられます。

 ここに、法令という言葉を使っておられるんですね。この法令の中には、この意見の中に出てくる法令の遵守状況というものは、まさに今議論になっている放送法、とりわけ、今一番の議論になっている放送法四条も入っているわけですね、大臣。

松本国務大臣 今御指摘の件でございますが、御指摘のNHKの放送した番組については、昨年二月に、NHK自らが放送ガイドラインを逸脱していたことは明らかと公表したことにより、放送法第五条第一項の規定に抵触するものと認められた事案であるというふうに承知をいたしております。これを踏まえて、総務大臣意見に記載した御指摘の法令等の遵守状況の法令等は、放送法及びNHKが自ら定める番組基準などを指しております。

 放送法四条ということでございますが、放送法でございますので、放送法四条を始めとする放送番組の編集に関する規定も含まれるというふうに考えております。

宮本(岳)委員 それなんですよ、私が言いたいのは。

 NHKが自ら様々な形でこの問題を検証したり発表するのは、もちろん結構です。それから、この件が五条に関わるものであったことも、それは今おっしゃったとおりでしょうけれども、しかし、事もあろうに、それについてつけた意見の中で法令等と述べて、この法令には放送法四条も入る、今議論になっているやつも入ると。まさに一番組でも文句がつけられるという、私は変えたと思いますが、あなた方が変えていないというこの解釈に関わることも入ると。

 こういう意見を総務大臣がつけること自身が、私は、問題だ、NHKに対する圧力であり、介入にもなりかねないというふうに指摘をせざるを得ないわけであります。

 また、大臣意見には、「受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けた取組等」として、冒頭に、受信料の適正かつ公平な負担の徹底に向けて、未契約者及び未払い者対策について現状分析と課題の整理を十分行った上で、民事手続の適切な活用などにより、こう書いてございます。大臣意見で民事手続の適切な活用などと触れたのは、かつて何回ございましたか。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の民事手続の適切な活用につきましては、過去、平成二十年度及び二十一年度の収支予算に付した総務大臣の意見においても記載をしているところでございます。

宮本(岳)委員 私のところに来た総務省の職員は、支払い率が七九%になることが見込まれているということに強い危機感を表明しておりました。今の予算ですよ、このかかっている大臣意見のついた予算について。今答弁にあったように、以前に、総務大臣意見がこの民事手続に触れた二〇〇八年、二〇〇九年というのも、受信料の未払いが激増したときのことで、強い危機感が表明されたときでありました。

 では、改めてNHKに聞くんですけれども、NHKが本予算において支払い率の低下、受信契約率の低下を想定せざるを得ないのはなぜなのか、そして、その理由は何だと考えておりますか。

山名参考人 お答えいたします。

 支払い率は、受信料の公平負担の状況を表す指標として重要なものでありまして、向上させていく必要があると考えております。

 ただ、来年度につきましては、訪問だけに頼らない営業活動への転換の途上であることや、学生免除の拡大の影響もありまして、支払い率は七九%と見込んでおります。

 支払い率を向上させていくため、現在行っている、インターネットを通じた視聴者の皆様との接点の拡大や、特別あて所配達郵便の活用などで直接間接のコミュニケーションを図り、契約していただけるよう取り組んでまいります。

宮本(岳)委員 理由は、やはり直接間接のコミュニケーションと。間接とも入れられましたけれども、コミュニケーションを図らないとやはり進まないんですよ。国民の理解が広がらないと進まないことは明瞭だと思います。つまり、受信料の意義、NHKの在り方に国民的な支持と理解を広げることが何よりも大事なんですね。

 ところが、制度を理解していない人に強制的に迫る、例えば民事手続をやるとかということをやれば、理解が進むどころか、更に誤解と反感が広がりかねないと私は思います。

 国民の支持を失った結果、新規契約率や受信料収納率が下がり、収入が減る中でコストカットせざるを得なくなる。受信料を下げると言うが、それが一層公共放送としての意義や魅力を失わせる結果となって更に収入が減るという悪循環に陥ったらまずいと思うんですね。

 一昨日の質疑でも、稲葉会長は、縮小再生産になっては意味がない、こう答弁をされました。まさに縮小再生産は公共放送NHKにとって死滅への道だと私は思いますが、稲葉会長のお考えをお伺いしたい。

稲葉参考人 ただいま委員が御指摘になりましたように、私が申し上げたかったのは、受信料収入の値下げによって名目上の事業規模が縮小することで職員の士気が下がり、結果的によいコンテンツを作れなくなってしまうことがあってはならないということでございます。

 先日もお答えしたとおり、この点につきましては、例えばデジタルテクノロジーの更なる活用など様々な工夫をして、多様で質の高いコンテンツを作り続け、結果として、視聴者・国民の皆様にNHKの価値を感じていただくと同時に、受信料制度の意義を丁寧に説明をすることで納得していただく、そして受信料をお支払いいただく、そういう流れにすることが必要だというふうに考えてございます。

宮本(岳)委員 NHKに対して民事手続の適切な活用などということをけしかける総務大臣も総務大臣と言わなければなりませんが、しかし、NHK自身の方針にも大きな問題があります。四月から実施する割増金制度ですね。資料三から五は、割増金について視聴者・国民から寄せられている意見です。

 資料三。割増し料金を払いたくないから契約するというのは脅されて契約するに等しく、NHKが国民・視聴者の皆様に丁寧な説明を行い、十分な理解をいただいた上で受信契約を結んでいただくことが重要とする答弁に矛盾しており、強く反対する、四十代男性ですね。

 受信料の全額に対して二倍の割増金を設定することに反対です、現在のNHKの番組には公共放送と呼べないものが多くを占めており、その費用全てを割増金の対象とすることは視聴者に著しい不利益が生じます。

 資料五。受信料割増金について国民を脅すようなやり方で強制的に受信料を取って理解してもらえると思うのですか、むしろ、更に反発を受けるということに気づいてほしいです、三十代女性。

 会長は、割増し料金によっては受信料制度への国民の理解が広がるわけがない、このことは、どうですか、お気づきになりませんか、会長。

稲葉参考人 割増金制度は、受信料の適正かつ公正な負担を図るために放送法でもって規定されたものというふうに認識してございます。

 その際、昨年の法改正に当たっても附帯決議をいただいておりまして、「真にやむを得ない場合にのみ割増金の徴収を行うこと。」とされておりまして、やはり、制度の趣旨やどのような場合に割増金の対象となるかなど、視聴者の皆様に丁寧に周知広報することが必要だというふうに考えてございます。

 実際、割増金制度の導入後も、NHKの価値や受信料制度の意義を御理解いただく、納得して契約のお手続やお支払いをいただくというこれまでの方針に変わりはなく、この方針の下で、更に受信料制度の理解を広げていくということが大事ではないかと考えております。

宮本(岳)委員 おっしゃるとおり、放送法改正によって、これはNHKにそういう制度が入れられた。だから、NHKだけの責任じゃないんです。

 私たちは、今回、これが具体化されていることを、当然、本承認案に対する反対の理由にしておりますけれども、それは、この法改正そのものに原因があるということは申し上げておきたいと思います。

 二〇二一年から二三年の経営計画では、訪問によらない営業へのかじを切って、クレームが多かった法人委託だけでなく、地域スタッフによる営業も二三年度で終了するとされております。総務大臣意見でも、訪問によらない営業への転換に伴う財政面や事業運営面に与える効果の検証を求めております。NHKではどのような検証をしたのか、契約数の増減、併せてお示しいただけますか。

山名参考人 お答えいたします。

 これまでは巡回型で何度も訪問する営業を展開してまいりましたが、営業経費の高止まりや訪問員へのクレーム等の課題が指摘されてまいりました。そのため、訪問だけに頼らない営業活動に転換いたしまして、NHKの公共的価値を理解していただいて、納得して受信料をお支払いいただくための取組を進めているところでございます。

 こうした取組によりまして、二〇二三年度の営業経費率については、前年に続き一〇%を下回る計画であります。苦情の件数も、今年度はコロナ禍前の十分の一以下に減少しております。今年度の契約数につきましては、十万件の減少の計画に対しまして、四十三万件の減少と今のところ見込んでおります。

 新しい取組を定着させていくには一定の時間がかかると考えておりますが、いち早く軌道に乗せて、来年度の事業計画の達成に努めてまいりたいと思っております。

宮本(岳)委員 私は、この間、NHKから受信料契約等の業務を委託する全日本放送受信料労働組合、全受労の皆さんからお話をお伺いいたしました。訪問によらない営業で契約取次ぎが激減し、受信料収入が揺らぐのではとの懸念を示されておりました。この方々は、毎日地域を歩く中で、NHKに対する市民の受け止めや、その変化を日々実感しておられます。不祥事が相次いだ時期は、まさにNHKへの不信、不満を真正面から受け止めて、信頼回復の最前線に立ってこられたわけですね。

 営業とは、単に契約者を増やせばいいというものではないと思います。NHKに対する市民の声を集めて、それがNHKに反映されることで、信頼の回復を促す重要な役割があるのではないかと私は思いますけれども、会長、いかがでございましょうか。

稲葉参考人 まさに委員御指摘のとおり、営業活動というのは、単に受信料の徴収を増やすということだけに集中するのではなく、その過程で、視聴者の皆様がどのようなお考えを持っているのか、どのような御希望を持っているのか、そういうコミュニケーションの一つのツールとして役立てていくということが大事な営業の役割ではないかというふうに思ってございます。

宮本(岳)委員 全受労の皆さんからは、新たな雇用問題も起こっているとお聞きをいたしました。

 NHKは、二〇二三年度をもって訪問による営業がなくなるため、営業に当たっていた地域スタッフに対し、受信料未納者の集金を担う仕事に当たってもらうとし、現在その任に当たっているメイトさんと呼ばれる方、この方の契約を全て二三年度で終了するということであります。

 資料六を見ていただきたい。新しい個人委託制度における委託費モデルという、これはNHKから提出を受けた文書であります。

 新しい委託契約で収入が激減するのは一目瞭然です。上段のパターンA、年収四百四十万円、これがほぼ現状レベルと聞いておりますけれども、パターンB、年収三百六十万円、パターンCとなると、年収二百八十万円となっております。こういう委託費モデルで今検討していることは、NHK、事実ですね。

山名参考人 お答えいたします。

 現行の地域スタッフ制度は二〇二三年度末で終了いたしまして、二〇二四年度より新しい個人委託制度を開始することを計画しておりまして、地域スタッフの皆様には、こうした方針や新しい業務内容等について丁寧に説明をしているところでございます。

宮本(岳)委員 時間が参りましたから、最後に一つだけ会長に。

 こういう労使の問題をここで議論するつもりはございません。

浮島委員長 宮本君に申し上げます。

 申合せの時間が経過しておりますので、おまとめください。

宮本(岳)委員 はい。

 最後に会長に、NHKに働く方々の労働条件や賃金についても、しっかりと守り、引き上げていく必要があると考えますが、その思いをお聞かせいただいて、終わりたいと思います。

稲葉参考人 賃上げについてのお尋ねがございました。

 物価高騰が続いている中で、企業の賃上げに関して、ベアとか、あるいは一時金とか、毎月の手当の支給の中でいろいろ工夫するといった、民間では各社、各業界で様々な対応を取っていることをよく承知してございます。

 職員の給与につきましては、NHKは、公共放送の立場として、民間の対応状況や、それから組合の要求などをよく踏まえて、また、NHKの財務の状況にも鑑みて答えを出していきたいというふうに考えております。

 また、子会社等についても、NHK本体の対応を踏まえつつ、子会社等のそれぞれの財務状況を踏まえながら判断していくというふうに考えております。

宮本(岳)委員 ありがとうございました。終わらせていただきます。

浮島委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本岳志君。

宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、放送法第七十条第二項に基づき、承認を求めるの件、いわゆるNHK二〇二三年度予算の承認に対して、反対の討論を行います。

 放送の自主自律を遵守しなければならないNHK執行部、経営委員会の無反省極まりない姿勢に、国民の信頼は得られていません。

 NHKのかんぽ生命の不正販売報道をめぐって、我が党は、NHKが日本郵政グループからの圧力に屈して、第二弾の放送を延期し、経営委員会が会長を厳重注意したことは、放送番組は、何人からも干渉され、規律されることがないと規定する放送法第三条及び経営委員に個別の番組に干渉することを禁じる第三十二条に反する行為であると厳しく指摘し、二〇二〇年度、二一年度、二二年度のNHK予算の承認に反対いたしました。

 経営委員会は、今なお厳重注意をめぐる議事録の公開に背を向け、国民への説明責任を放棄し続けています。こうした下で、執行部が編成し、経営委員会が議決をした二〇二三年度予算を承認することはできません。

 また、今回のNHK予算は、昨年成立した改正放送法で創設された還元目的積立金制度と割増金制度が導入される初めての予算です。我が党は、還元目的積立金制度について、NHK受信料決定に行政が介入し、NHKの自主性を毀損すると厳しく批判し、割増金制度による未契約者へのペナルティー導入にも反対しました。NHKの経営と予算をゆがめるこれらの制度の導入は認められません。この立場から、制度導入の最初の予算となる本件の承認に反対するものです。

 対面による丁寧な説明の機会をなくした上で、民事手続や割増金による対応を増やすことは、国民の信頼、受信料制度への理解を得ることと逆行するものです。国民・視聴者の受信料で成り立つ公共放送として、NHKは、受信料制度への理解を得るために、丁寧な説明に徹底して力を尽くすべきことこそ求めて、討論を終わります。

浮島委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 これより採決に入ります。

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について採決いたします。

 本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浮島委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 この際、ただいま議決いたしました本件に対し、武村展英君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。神谷裕君。

神谷委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)

  政府及び日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。

 一 協会は、放送番組の編集に当たっては、受信料を財源とする公共放送の性格を定めた放送法の趣旨を十分踏まえ、事実に基づく放送に強い責任を自覚し、かつ政治的公平性を保つとともに、「人にやさしい放送」の更なる拡充により放送のバリアフリー化を進め、我が国の公共放送としての社会的使命を果たすこと。また、寄せられる様々な意見に対し、必要に応じ自律的に調査し、その結果を速やかに公表し、国民・視聴者に開かれた公共放送として信任を得られるよう努めること。

 二 政府は、日本国憲法で保障された表現の自由、放送法に定める放送の自律性に鑑み、協会を含めた放送事業者の番組編集について、引き続き自主・自律性を尊重すること。また、経営委員会委員の任命に当たっては、公正な判断をすることができる経験と見識を有する者から、教育、文化等の各分野及び全国各地方が公平に代表され、かつ、女性の比率を引き上げるなど多様な意見が反映されるよう幅広く選任するよう努めること。

 三 協会は、その運営が受信料を財源としていることを踏まえ、国民・視聴者に対し、情報を十分に開示し、説明を尽くすこと。また、そのために、経営委員会及び理事会等における意思決定過程や、財政運営上の規律、不祥事に伴う処分、子会社等の運営の状況、調達に係る取引等を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、経営委員会及び理事会の議事録の適切な作成・管理を行うとともに、原則として公表すること。

 四 協会は、平成二十九年十二月の最高裁判決にも鑑み、公共放送の存在意義及び受信料制度に対する国民・視聴者の理解の促進や信頼感の醸成に協会一体となって、一層努めること。また、支払率の低下について、訪問によらない営業との関係も含め、その原因を分析し、対処方法について検討を行うこと。なお、令和四年の放送法改正により導入された割増金については、個別事情に配慮し、適切な対応を行うこと。

 五 協会は、令和五年度末の衛星波の削減に際しては、引き続き視聴者の多様なニーズに応える番組の編成に留意するとともに、視聴者への丁寧な説明及び周知を行うこと。また、音声波の削減については、災害時における情報提供手段としての高い有用性があること、ラジオ第二放送が民間放送事業者の手掛けにくい教育・教養番組の放送を多面的に行っていること等を考慮した検討を行うこと。

 六 協会は、放送センターの建替えに際し、受信料を財源としていることを踏まえ、中期経営計画で示された「新放送センターの建設計画の抜本的な見直し」の具体的な内容を早期に明らかにし、国民・視聴者の理解が得られるよう説明を尽くすとともに、建替えに係る費用の圧縮に徹底的に取り組み、その成果を国民・視聴者に適切に還元すること。

 七 経営委員会は、放送法が定める協会の自律性を担保するために、協会の経営に関する重要事項を決定する権限と責任を有する最高意思決定機関であることを深く認識し、職務を遂行するに当たっては、放送法を遵守し、特に、何人からも介入されることのない個別の放送番組の編集への経営委員会の介入が疑われるような行為は厳に慎むこと。また、協会が放送法に定められた役割を的確に果たせるよう、監督権限を行使すること。

 八 協会は、子会社及び関連公益法人等を含むグループ全体としての経営改革について、関連事業持株会社の設立による業務効率化や関連公益法人等の統合の効果を随時検証し、その結果を踏まえ、組織を挙げて迅速かつ確実に取り組むこと。また、子会社等との契約において高止まりしている随意契約の割合を引き下げることを含め、より効率的かつ透明な手続による調達の推進に取り組むこと。

 九 協会は、経営改革の実行に当たっては、職員の雇用の確保及び処遇の改善に十分配慮すること。

 十 協会は、協会の業務に携わる者の命と健康を最優先すべきであったにもかかわらず、過労により職員が亡くなる事態が再発してしまった事実を厳粛に受け止め、適正な業務運営と労働環境確保に全力で取り組むこと。また、ハラスメントの防止など職場の環境改善を進めるとともに、障害者の雇用率の向上及び女性の採用・登用の拡大を図ること。

 十一 協会は、受信料を負担する国民・視聴者共有の財産であることを自覚し、放送と通信の大融合時代にふさわしい公共放送の在り方、受信料の在り方について、引き続き真剣に検討し、新しい社会と技術に対応した公共メディアとして将来にわたって持続・発展していくことを可能とする経営ビジョンを早急に構築すること。

 十二 協会は、国民・視聴者に対する還元等により、当面、事業収支差金の赤字が見込まれていることについて、必要な還元を進めつつも、不断の経営改革により、できる限り早期に赤字予算を解消し、受信料収入と事業規模との均衡を確保すること。

 十三 協会は、インターネット常時同時配信等通信分野における業務の実施に当たっては、二度の社会実証の結果や民間放送事業者の見解に十分留意しつつ、国民・視聴者のニーズや動向を的確に把握し、国民・視聴者に対する情報提供や関係者間での情報共有及び連携を図るよう努めること。

 十四 協会は、自然災害が相次いでいる現状に鑑み、地震災害、風水害、雪害等、いかなる災害時にも放送・サービスが継続され、正確な情報が国民に伝達されるよう、地方局と連携し、放送設備と体制の強化を図ること。

 十五 協会は、国際放送については、我が国の経済・社会・文化等の動向を正しく伝え、我が国に対する理解を促進するよう努めること。また、世界情勢等に鑑み、在外邦人に対し、生命と身体の安全に関する情報を適切に伝えるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

浮島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浮島委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、松本総務大臣及び日本放送協会会長稲葉延雄君から発言を求められておりますので、順次これを許します。松本総務大臣。

松本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

浮島委員長 次に、日本放送協会会長稲葉延雄君。

稲葉参考人 日本放送協会の令和五年度収支予算、事業計画及び資金計画につきまして御承認を賜り、厚く御礼申し上げます。

 本予算を執行するに当たりまして、御審議の過程でいただきました御意見並びに総務大臣意見の御趣旨を十分生かしてまいります。

 また、ただいまの附帯決議は、十分に踏まえて協会の運営に当たり、業務執行に万全を期したいと考えております。

 本日は、どうもありがとうございました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

浮島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.