衆議院

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第13号 令和5年5月16日(火曜日)

会議録本文へ
令和五年五月十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 あかま二郎君 理事 斎藤 洋明君

   理事 武村 展英君 理事 鳩山 二郎君

   理事 石川 香織君 理事 奥野総一郎君

   理事 守島  正君 理事 中川 康洋君

      井林 辰憲君    井原  巧君

      金子 恭之君    川崎ひでと君

      国光あやの君    小森 卓郎君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      坂井  学君    塩崎 彰久君

      島尻安伊子君    杉田 水脈君

      田所 嘉徳君    冨樫 博之君

      中川 貴元君    西野 太亮君

      長谷川淳二君    古川 直季君

      松本  尚君    務台 俊介君

      保岡 宏武君    渡辺 孝一君

      おおつき紅葉君    岡本あき子君

      神谷  裕君    重徳 和彦君

      道下 大樹君    湯原 俊二君

      伊東 信久君    市村浩一郎君

      中司  宏君    輿水 恵一君

      西岡 秀子君    宮本 岳志君

      吉川  赳君

    …………………………………

   総務大臣         松本 剛明君

   総務副大臣        柘植 芳文君

   総務大臣政務官      国光あやの君

   総務大臣政務官      中川 貴元君

   総務大臣政務官      長谷川淳二君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   内山 博之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房長)   今川 拓郎君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  吉川 浩民君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            小笠原陽一君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            竹村 晃一君

   参考人

   (日本放送協会会長)   稲葉 延雄君

   参考人

   (日本放送協会理事)   根本 拓也君

   総務委員会専門員     阿部 哲也君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     國場幸之助君

  西野 太亮君     松本  尚君

  古川 直季君     塩崎 彰久君

  渡辺 孝一君     冨樫 博之君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     金子 恭之君

  塩崎 彰久君     古川 直季君

  冨樫 博之君     渡辺 孝一君

  松本  尚君     西野 太亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 放送法及び電波法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)


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     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、放送法及び電波法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本放送協会会長稲葉延雄君及び日本放送協会理事根本拓也君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人としてデジタル庁審議官内山博之君、総務省大臣官房長今川拓郎君、自治行政局長吉川浩民君、情報流通行政局長小笠原陽一君及び総合通信基盤局長竹村晃一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。保岡宏武君。

保岡委員 ありがとうございます。自由民主党、鹿児島の保岡宏武です。

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 総務委員会では一年ぶりの質疑となります。十五分と限られた時間ですので、早速質問に移らせていただきます。

 今回の放送法及び電波法の一部改正は、デジタル時代において放送事業が持続的に維持発展していくための選択肢を増やすための改正と理解をしております。後ほど政府にはこの点をお伺いしたいと思いますが、まずは、その前提でNHKに質問をいたします。

 国民の中には、NHKは全く見ないという方もいるかもしれませんし、一方、NHKしか見ないという方もいらっしゃるかというふうに思います。かくいう私も、地元のニュースと情報番組、スポーツ実況以外はNHKしか見ない、NHK派の人間でございます。また、最近では、ほとんどリアルタイムでテレビを見ない私にとって、ネットで見られるNHKプラスも大変重宝をしております。加えて、妻からは、ふだん家にいないあなたに代わって歌のお兄さんやお姉さんが一緒に子育てをしてくれたんだというふうによく嫌みを言われますが、そんなお母さん方も世の中には多いのではないかというふうに思います。

 何が言いたいかといいますと、NHKには、大河ドラマや朝ドラ、教育番組、ドキュメンタリーなど多くの優良なコンテンツがあり、過去放送分も含めて、これらを生かしたサブスクや番組企画の権利販売など、コンテンツビジネスの展開を世界規模で考えてほしいと常々思っているということでございます。

 ネットと放送の融合はNHKの課題かと思いますが、例えば、今後、このようなコンテンツビジネスの収入を原資として、人口減少における将来の受信料収入の減少分を補ったり、あるいは国民の皆様からいただく受信料の値下げに充てたりすることなども考えられるかというふうに思います。

 今回の法案とは直接関係はありませんが、せっかく稲葉会長がお越しでございますので、デジタル時代のNHKの戦略、展望、また世界戦略など、どのようにお考えなのか、お聞かせ願えたらありがたく存じます。よろしくお願いいたします。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、放送番組を始めNHKのコンテンツを多角的に活用することは、視聴者の要望に応え、NHKの放送事業の成果を広く社会に還元していくためにも必要であるというふうに考えてございます。

 現在、放送法に基づき、子会社などを通じて、番組DVDや関連する書籍の発行、あるいは外部の放送事業者や配信事業者へのコンテンツの提供、さらにはイベントの実施などに取り組んでございます。

 ここ数年は、コロナ禍の影響もございまして、そうした事業から上がる副次収入というのは減少傾向にございますが、今後は、NHKが保有する過去の番組や映像といったような資産、いわゆるアーカイブスでございますけれども、これらを積極的に活用してサービスの提供を強化し、NHKのコンテンツをより多くの人々に知っていただきたいというふうに、現在考えてございます。

 そういうことで、この事業活動から得られました副次収入は増えていくものと考えてございますが、それがまた視聴者の負担の抑制、あるいはNHKの財政に貢献するというふうに考えてございます。

保岡委員 ありがとうございます。

 実は、私、今日は大島つむぎのネクタイを着けてきているんですが、今年は地元奄美が日本に復帰をして七十周年になります。また、NHKの総合、教育放送が放送を開始してちょうど七十年にも当たる年でございます。そして、実は当時の郵政政務次官が私の祖父でございまして、この総務委員会で質問させていただくということが非常に不思議な御縁を感じております。

 これからもまた、国民のために、そして日本の文化や情報を広く世界に発信をしていただきますように、NHKの活動を心から応援をしていきたいというふうに思いますので、どうか頑張っていただきたいというふうに思います。

 さて、本題に入ります。

 先ほども申し上げましたが、今回の放送法及び電波法の一部改正は、端的に言うと、デジタル時代において放送事業が持続的に維持発展をしていくための選択肢を増やす改正だと私は理解をしております。

 今回の改正の背景、趣旨などを改めて政府にお示しいただきたいと思います。

小笠原政府参考人 本法案の前提となる放送の役割ということから御説明いたしますが、電波は有限希少な資源であり、国民共有の財産であることから、通信に用いられる場合も含めて、電波の利用者は、電波法の規定に基づき、公共性が求められます。

 加えまして、放送につきましては、放送法の規定に基づき、言論報道機関としての社会的影響力を踏まえた放送ならではの公共的な役割を果たすことも求められます。

 具体的に申し上げますが、放送は、災害情報、地域情報などの公共性の高い情報をあまねく伝えるとともに、「報道は事実をまげないですること。」等の番組準則という規範にのっとって、いわば質の担保された情報を提供することにより、公共的な役割を担ってきたところです。

 我が国では、公共放送と民間放送が切磋琢磨する二元体制の下、放送の公共的な役割として、あまねく受信できるように責務が課されることで、多元的な主体による多様な放送が確保されているところでございます。

 そして、近年、放送を取り巻く環境が変化する中、放送の視聴者や広告収入が減少し、放送事業者の経営状況は以前にも増して厳しく、放送事業者の経営基盤を強化することが課題となっております。

 また、デジタル時代において、インターネット上で膨大な情報が行き交い、フェイクニュース、誤情報などの問題も顕在化する中、放送のメディアとしての重要性が増しております。

 さらに、コンテンツ分野は、我が国の成長を牽引する将来可能性ある分野として、また日本のソフトパワー等にも決定的な役割を果たすものとして期待されており、このため、ローカル局を含む日本全体の放送番組の制作人材とその制作能力の維持強化に取り組むことが重要と考えております。

 以上の状況の中で、放送の公共的な役割を果たし続けていただくため、本法案において、経営基盤を強化するために、経営の選択肢を拡大する制度を整備することとしております。

 このような放送事業者の経営基盤を強化し、放送分野全体の番組制作能力を高めることは、地域発の情報発信を通じ、政府の重要課題である地方創生にもつながるものというふうに認識しております。

保岡委員 経営基盤の強化ということで、中継局設備の共同利用や、複数の放送対象地域における放送番組の同一化、基幹放送事業者の業務体制確保に係る規定の整備など、三つの点が私はポイントだというふうに事前にお伺いをしております。

 質問時間が限られておりますので、私は、中継局設備の共同利用について中心的に伺いたいというふうに思います。

 今回の改正では、NHKが民放事業者と中継局設備を共同利用することができるようになります。そもそも、国民の皆様からいただく受信料で賄われるNHKの設備などを、営業活動で利益を得ている民間事業者が一緒に共同で利用するということを、なかなか国民の皆さんに理解を得られるのかという懸念も残っておりますが、その点においてどのようにお考えになるのか、お示しいただけますでしょうか。

国光大臣政務官 保岡委員の御質問にお答えをいたします。

 御指摘のとおり、本法案は、国民そして視聴者の理解を得ることが非常に重要だと考えております。受信料は、御指摘のとおり、NHKの業務運営を支えるためのものとして、国民や視聴者の皆様に御負担をお願いをしております。他方、放送法におきましては、NHKに対しまして、民放が地域においてあまねく受信をできるようにするという努力義務を果たすために講じる措置に協力する努力義務を課しております。NHKが果たすべき役割として位置づけられているところでございます。

 したがいまして、NHKは民放との中継局の共同利用に貢献することができると考えまして、本法案におきましては、その共同利用を可能とする制度を整備するものでございます。また、共同利用はNHK自体の業務運営の効率化にもつながるものと考えております。

 NHKにおきましては、放送法にのっとりまして、その業務に支障のない範囲において協力を行うとともに、視聴者・国民の理解を得られるようにしっかりと説明責任を果たしていきたいと考えております。

保岡委員 ありがとうございました。

 丁寧に説明を尽くしていただきたいと思いますと同時に、この法案が通った暁には、運用面におきましても国民の皆さんから疑念を抱かれることがないように、NHKの側にも強くお願いしてまいりたいというふうに思います。

 また、この共同利用に関しては民放側の視点もございます。御存じのように、テレビの広告費はインターネットに抜かれ、コロナ禍、円安など、不況が進展する中で、特に地方の民放は、広告収入が落ち込む一方で、人件費、インフラ整備費が高騰し、経営を圧迫しております。

 今回の改正で、民放にとって設備投資低減の新たな選択肢が増えるということはよいことだというふうには思いますが、一方、これが強制や義務化されることがないかということが、民放の側からは懸念もあるように聞いております。この点に関して、政府の見解をお示しください。

小笠原政府参考人 現在、放送事業者は、その放送対象地域にあまねく放送番組を届けるため、自ら多くの中継局を設置されておりますが、放送を取り巻く環境が大きく変化する中、放送の視聴者数が減少し、放送事業者の経営状況は以前にも増して厳しく、放送事業を行うための固定費用の削減が課題となっているところでございます。

 これを踏まえ、本改正法案は、中継局の共同利用を強制するものではなく、経営の選択肢として、希望される放送事業者において中継局の共同利用を可能とする制度整備を行うものでございます。

保岡委員 ありがとうございます。

 今お答えをいただいたことであれば、これは経営判断の選択肢の一つであるということは十分理解をできました。

 私の地元の鹿児島では、奄美地方など離島を多く抱えていることもあり、従来から、民放四局が、中継局の建設、保守、更新を共同で行うなど、共同利用に関して先取りをする形で進めております。そのような中で、多くの中継局が更新時期を迎えて、地元奄美の中継局更新は大きな負担になっていることも事実です。過去には、奄振の活用、デジタル移行期には国の補助などもあったというふうに伺っております。

 デジタル時代とはいえ、まだまだテレビやラジオの果たす役割は大きいことは事実で、地元からも、県内全域に良質な番組、とりわけ防災など緊急情報を広くあまねく伝えるためにも公的な補助が欲しいという要望も上がってきております。また、ブロードバンドなどによる小規模中継局の代替も検討されているとも聞いております。

 最後に、大臣に、全国の離島の放送や小規模中継局維持などを含めた、デジタル時代において放送事業が持続的に維持発展していくための中長期的な展望について、政治家としてのお考えを伺えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

松本国務大臣 御質問いただき、ありがとうございます。

 現在、放送事業者は、その放送対象地域にあまねく放送番組を届けるため、自ら多くの中継局を設置しており、放送を取り巻く環境が大きく変化する中、こうした放送事業を行うための固定費用の負担が課題となっているところでございまして、委員の御地元にも離島を抱えておられるローカル局があろうかというふうに思いますが、このようなところでは特に大きな課題となっていると認識をしております。

 このような状況において、放送事業者が各地域においてその重要な役割を果たし続けるため、経営形態の合理化を含め、経営基盤を強化することが大切で、本改正法案はそのための選択肢として、中継局の共同利用、異なる対象地域における放送番組の同一化等を可能とする制度整備を行うものであるところ、委員からも御指摘をいただいたとおりでございます。

 この中継局の共同利用に関しては、有識者検討会の取りまとめでは、「具体的な選択肢となるよう、総務省も適切に関与しつつ、NHK及び民間放送事業者をはじめとした関係者間で具体的な検討・協議を進めていくべきである。」とされておりまして、この取りまとめも踏まえ、総務省としても、地上テレビジョン放送のデジタル化の際の事例も参考に、NHK、民放、総務省による検討の場を設けるなど、それぞれの役割分担も含めたコンセンサスの形成に向けて、必要な後押しをしてまいりたいと考えております。

 ローカル局は、放送法による放送の公共性を担保する仕組みの下、地域情報を始めとした国民生活及び経済活動に欠かせない情報の基盤としての機能を果たして、貢献をしてきていただいたと認識をしておりまして、ローカル局には、各地域においてその重要な役割を果たし続けていただくことが重要でございます。

 総務省としても、そのための後押しを引き続きしっかりと進めてまいりたいと考えており、その際には、離島を始め、条件不利地域にもしっかりと配慮してまいりたいと考えております。

保岡委員 松本大臣、ありがとうございます。

 離島にも政府の目をしっかりと向けていただきたい。特に、今年は奄美が本土復帰をして七十年の節目の年でもございます。奄振法延長の年でもございますので、総務省としても格段の御支援を賜りますように、よろしくお願いをいたします。

 最後に、情報通信インフラ強化に関する党の提言が取りまとめられました。私もその議論の場に参加をさせていただきました。放送設備、情報通信インフラは、現代のデジタル社会を支える最重要なインフラでもございます。この設備維持管理を政府には万全に行っていただきたいという思いを申し上げ、私の質問を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

浮島委員長 次に、輿水恵一君。

輿水委員 おはようございます。公明党の輿水恵一でございます。

 本日は質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、早速でございますが、放送法及び電波法の一部を改正する法律案につきまして、質問をさせていただきます。

 初めに、ただいまもございましたけれども、中継局の共同利用について質問をさせていただきます。

 現在、全ての特定地上基幹放送局、いわゆる地上テレビ局は、番組の制作と併せて、その番組を放送するための本局、親局、中継局等の放送設備の保有と運用並びに維持管理を一貫して行っております。

 今日まで、中継局につきましては、NHK及び民間放送事業者において、可能な限り共同建設を行うなど、効率的な整備が進められてきましたけれども、今後は、設備の更新に加え、維持管理等に必要な人材の確保も困難となっていくことが考えられます。

 本改正では、地上テレビ放送を行う地上基幹放送局について、諸外国の制度及び設備運用の事例も参考に、更なる効率化を図る観点から、中継局の保有、運用、維持管理を担うハード事業者の設立により、中継局等の共同利用を進めようとするものでございます。

 ここで、中継局の共同利用に当たっては、NHKと民間放送局の連携が想定されることから、本改正においては、NHKも、自らの設備だけではなく、子会社であるハード会社の設備を用いることを可能とすることも盛り込まれております。

 中継局の共同利用は、放送事業者の中継局の運用、維持管理を効率化していく上で必要なものであると思いますが、他方で、その事業の継続性が確保される必要性もあります。そこで、共同利用会社の設立の際、放送事業の継続性を担保する観点からどのような措置を講ずるのか、お考えをお聞かせください。

小笠原政府参考人 お尋ねの中継局の共同利用会社についてでございますが、これは、電波法の規定に基づきまして、中継局の免許人ということが想定をされます。その免許の審査において、免許期間における事業の継続性を確保する観点から、その申請の際、事業計画や事業別収支見積りを提出いただくということになろうかと思います。

 こうした規定に基づきまして、総務省といたしましては、共同事業会社の設立に当たり、その業務継続性が担保されるよう、しっかりと対応してまいります。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 この共同利用会社は、今後、NHKや民放で具体的な検討を行っていくこととなると思います。

 そこで、共同利用会社の設立に向けて、NHKとしてどのような視点を持ってどのように取り組んでいくお考えなのか、お聞かせ願えますでしょうか。

根本参考人 お答えいたします。

 地域の放送ネットワークインフラにつきましては、総務省の有識者会議で、若者を中心としたテレビ離れや放送の広告市場の縮小などの環境変化により、コスト負担の軽減が課題として指摘されております。

 こうした課題を踏まえまして、NHKでは、地域の皆様にNHKと民間放送事業者の放送を将来にわたって届け続けていくために、改正放送法で定められた民間放送事業者への協力努力義務への拠出などに繰越金から六百億円を充てることを、修正した経営計画に盛り込んでおります。

 地域の放送ネットワークインフラの維持管理のコストや保守管理の人材確保が課題となる中、民間放送事業者と連携協力して設備維持のコストの抑制に取り組む必要があると考えております。具体策につきましては、次期中期経営計画の期間内に検討することとしております。

 総務省の有識者会議で放送事業者の経営の選択肢として提示された、共同利用型モデルの推進やマスター設備の効率化、それに、小規模中継局などのブロードバンドなどによる代替も踏まえて、今後、民間放送事業者と意見交換をしながら、経済合理性にも配慮し、持続可能な仕組みを検討してまいりたいと思っております。

輿水委員 ありがとうございます。

 是非、適切な推進をよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、マスター設備の技術革新と運用についてお伺いを申し上げます。

 各地上テレビ局、放送事業者が作成した番組は、マスター設備から放送のタイミングに合わせて送出し、親局並びに中継局等から放送されていますが、このマスター設備の更新も、放送事業者にとって大きな負担となることが想定されています。

 放送におけるマスター設備はテレビ局の心臓部と言われる大変に重要なものでありますが、このマスター設備は、放送が始まった当初に比べると様々な点で技術革新が進んでいると思います。

 そこで、特に着目すべき点についてお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

小笠原政府参考人 お尋ねのマスター設備に関してでございますが、近年のICTの動向として注目しておりますのは、柔軟な機能拡張あるいは効率的なリソース共有を実現するクラウドが各分野で積極的に活用されていることでございます。

 放送分野においても、クラウド化によりまして、番組制作から送出までクラウド上で一貫して行うことによる業務フローの短縮、簡略化、あるいは設備の設置場所に依存しない運用体制の構築、自社設備から外部リソース利用への転換による設備投資の負担軽減などの業務効率化や利便性向上、コスト削減等の実現が期待されており、御指摘のマスター設備につきましても、クラウドを活用したシステムの開発が進められるものというふうに考えております。

 総務省としても、その技術動向を注視するとともに、必要な環境整備に取り組んでまいります。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 ただいま御説明いただきましたとおり、今後はマスター設備のクラウド化が進められることと思いますけれども、委託によるマスター設備の運用であっても、放送事業者には番組の送出を適切に実行する責任があると思います。

 そこで、放送事故等の発生防止のために、委託先のマスター設備の維持管理や運用面に対して、放送事業者としては具体的にどのような関与が考えられるのか、総務省の見解をお聞かせください。

小笠原政府参考人 御指摘の点、放送事業者がクラウド等の外部事業者が提供する設備、サービスを利用する場合でございますが、この場合でも、放送事業者の責任において安定的な放送を確保する仕組みが重要であるというふうに考えております。

 このような観点から、本改正案では、放送事業者に対しまして、外部事業者を含めた業務管理体制の維持義務を課しまして、その履行を担保する制度を新たに設けることとしております。

 具体的には、放送事業者に対し、外部事業者も含めて、非常時や緊急時であっても業務を確実に実施することができるよう、適切な体制の維持を求めるものでございます。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、非常時、緊急時にも適切な取組、管理ができるようによろしくお願いを申し上げます。

 近年、テレビ放送の広告収入というのは低下傾向にあり、特にローカル局の経営が厳しさを増していると伺っております。

 一方で、ローカル局の、地域の魅力を積極的に取材し発信する地域情報番組は、地域コミュニティーを維持向上させる意味からも非常に重要であると思います。

 さらに、近年、台風、集中豪雨等の大規模な災害により大きな被害が発生しており、災害時においても、放送により必要な情報をきめ細かく伝えるなど、ローカル局の果たす役割は大きいと思います。

 今回の改正、ローカル局においても、中継局またマスター設備の共有、また番組の同一化など、適切な効率化を進める中で、事業の継続を期待をしたいと思います。

 次に、マスター設備のクラウド化に当たっては、サイバーセキュリティー対策等、安全性また信頼性の確保が重要と思いますけれども、その環境整備をどのように進めていくのか、総務省のお考えをお聞かせください。

小笠原政府参考人 御指摘のクラウド等による柔軟な機能拡張、あるいは効率的なリソース共有を実現する技術が各分野で活用されておりまして、放送分野におきましても、利便性向上やコスト低減の観点から、マスター設備のクラウド化が進むものと想定しております。

 現在、マスター設備はインターネット等外部ネットワークから隔離されておりますが、クラウド化により外部ネットワークと接続され、設置場所や維持管理等にも変化が生じることから、これらに関する安全、信頼性対策について検討する必要があるというふうに考えております。

 このような状況を踏まえまして、昨年十二月から、情報通信審議会におきまして、マスター設備のIP化、クラウド化等に伴い、新たに措置すべき安全、信頼性対策等の技術的条件を審議いただいているところでございます。

 また、先ほど御答弁いたしましたが、本改正法案において、放送事業者が外部事業者を利用した場合であっても、安定的な放送を確保する観点から、外部事業者との間を含めた業務管理体制の維持義務を新たに設けることとしているところでございます。

 総務省といたしましては、これらの取組を通じまして、放送事業者が経営の選択肢としてマスター設備のクラウド化を選択した場合に、安心、安全かつ円滑に導入できるよう、技術及び運用の両面から、必要な環境整備に取り組んでまいります。

輿水委員 どうもありがとうございます。

 まさに、放送事業者の選択肢として、経営を今後しっかり安定させていく意味での、先ほどのいわゆる中継局の共同利用、あるいはマスター設備の共有化とか、さらに、今法案にあります番組の同一化等、様々な選択肢の中で、しかし、ローカル局としての役割をしっかりと果たせるような環境の整備をしっかり進めていただければと思います。

 また、マスター設備のクラウド化ということになりますと、まさに、インターネットというか、そういった形での接続環境も生まれる中で、ただいまのセキュリティー対策ということもしっかりと進めていただければと思います。

 本日は、放送の効率化等について議論してまいりましたが、放送と同じく、国を支える情報通信インフラについての強靱化もまさに必要だと思っております。放送と情報通信は共に国民への情報を迅速かつ的確に伝達するものであり、大変に重要なインフラであると思います。その整備や維持管理については、今後も総務省の方で総合的に判断をしながら適切に進めていただければと思います。

 若干時間が余っておりますけれども、以上で私からの質問とさせていただきます。

 本日は、大変にありがとうございました。

浮島委員長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野総一郎でございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 最初に、放送法四条の方のお話をさせていただきたいと思います。

 お手元にお配りをしております、答弁を二つ載せております。

 三月に、大臣に私が御質問させていただいたときに、昭和三十九年の四月の答弁において、政府から、極端な場合には、一つの番組でも、政治的公平性を確保していないと認められる場合があると、この三十九年答弁で言っている、そこから今回は変わっていないんだ、そういう趣旨の答弁があったかと思います。ただ、これをよく読むと、結構、一つの番組について見るということに否定的な答弁なんですね。

 事例は、八時、ゴールデンタイムに、池田総理が突然割って入って、十五分間、ストの問題について政府の説明をした。これを見ると、民放ぶち抜きで、各局全部で枠を使ってやった。ちょっと今では考えられないようなことだったんですね。

 それに対して、当時の社会党側から、政治的公平性に反するんじゃないか、こういう話がありまして、停波の問題なんかも当時から議論はされてはいるんですが、政府側はこれに対しては、むしろ政治的公平性は守られているんだ、こういう答弁をしています。全体で見て、例えば、成田書記長とか太田総評議長が別のところで意見を述べているからいいんだ、その全体を見て言っているというような話もしていますし、ある期間全体を貫く放送番組の編集の考え方としてバランスが取れていればいいんだというようなことも言っているんですね。この時点では、放送番組全体とかそういう言葉は使っていないんですが、今と同じような考え方を述べていて、バランスが取れているんだということを言っています。

 その中で、上の宮川答弁ですけれども、真ん中辺にあったように、ある一つの番組が、極端な場合を除きまして、これが直ちに公安及び善良な風俗を害する、あるいは、これが政治的に不公平なんであるということを判断する、一つの事例につきましてこれを判断するということは、相当慎重にやらなければいけませんし、慎重にやりましたとしても、客観的に正しいという結論を与えることはなかなか難しい問題であろうということ。それから、もう一つ、番組の内容について、いろいろな自由ということを別に考えなければならない、表現の自由とかという意味だと思いますが、個々の番組について、一々これを判断して、常にテレビ番組あるいは放送番組の内容を監視していくというのはできない、こう言っているわけですよ。

 これは、一つの番組について見るのは難しいという答弁なんですね、実は。だから、そうは言っていないんです。

 私、二〇一六年のときに安倍総理ともやりましたけれども、あのときは、一つの番組を見ればいいじゃないですか、こういうトーンだったんですね。見ることはできます、見ればいいじゃないですかと。私は、それに対して、検閲じゃないですか、こういうことを申し上げたんですけれども、そういう答弁だったんです。明らかに違ってきているんですよ、昭和三十九年答弁と現在と。

 じゃ、今のスタンダード答弁って何ですかというと、確かに、この昭和三十九年答弁は今と同じ、そういうふうに捉えれば、個別の番組を見るということについてはよくないんだというトーンで答弁をしていて、じゃ、それについてきちっとまとめたものが、この平成六年三月二十四日の江川答弁。これが多分、従来は、この問題のスタンダード答弁だったと私は認識しているんですよ。

 これは非常にコンパクトにまとまっていて、下の方ですね。政治的に公平であるとは、政治上の諸問題を扱う場合には、不偏不党の立場から、特定の政治的見解に偏することなく、いろいろな意見を取り上げ、放送番組全体としてバランスの取れたものでなければならない、こう言っていて、一言も、一つの番組についてという話は触れていないんですよね。

 この答弁というのは、例の椿発言の問題でもめたときですけれども、もし一つの番組を見るというようなことを言ってしまったら、大騒ぎになったと思うんですよ。それこそ停波とか、そういう話につながりかねない大騒ぎになったと思うんです。だから、それを打ち消すために、こういう答弁、全体を見ているんですという答弁をしていると思うんですね。

 これがスタンダードだったとすれば、あるいは昭和三十九年の答弁の取り方にもよるんですが、一つの番組を見るということは、政府は一貫して言っていないんじゃないかと思うんですね。だとすれば、今回の、あれは二〇一五年か、高市答弁というのは、補充と言っていますが、新しい見解をつけ加えたんじゃないですか、違う意味合いをですね。三十九年答弁にしても、平成六年江川答弁にしても、個々の番組を見ることについては非常に消極的な、江川答弁はこれにそもそも触れていないです、触れていないということはやらないということだと思うんですが、話だったものが、個々の番組まで見ていいんだということで、明らかに内容が変わったと思うんですね。

 ちょっと長くなりましたけれども、大臣、この辺りを説明いただければと思います。

松本国務大臣 今質問いただいた件でありますが、委員も御案内のとおり、これまでも、国会におきましては、一回の番組について、政治的公平性の観点からその適否について御議論があったことがございました。また、社会全体というべきかどうかはあれですけれども、放送倫理・番組向上機構、BPOにおきましても、それぞれの番組の政治的公平性について議論に付されたこともあるかというふうに理解をいたしております。そのような国会での御議論などがあったこともございます。

 そういったこともございます中で、平成二十八年に政治的公平の解釈について政府統一見解を申し上げたところも御案内のとおりでありまして、この場合も、一つの番組でも、「例えば、」として二つの事例を例示し、「極端な場合においては、一般論として「政治的に公平であること」を確保しているとは認められない」という考え方を示し、「これは、「番組全体を見て判断する」というこれまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたもの。」とさせていただいたところでございます。

 その中で、今、三十九年の答弁の中でも、下の辺りでしょうか、「この法律の具体的な取り上げ方」という言葉が出てきておりますが、その意味というべきかどうかはあれでありますが、放送法四条に違反するとして、放送法第百七十四条及び電波法第七十六条の運用についてということで申し上げれば、これも従来から変えておらず、放送法が憲法二十一条によって保障される表現の自由や国民の知る権利を保障することを目的としていることも踏まえ、要件を全ては申し上げませんが、例えば、同一の事業者が同様の事態を繰り返しといったような幾つかの要件を付して、極めて限定的な状況のみにおいて行うこととするなど、極めて慎重な配慮の下、運用すべきであると従来から取り扱ってきております。

 このような業務停止命令や無線局の運用停止命令が実施されたことがないことも委員御案内のとおりで、御指摘の昭和三十九年、平成六年の政府参考人の答弁も含め、従来の解釈は変更したものではなく一貫したものだと考えているところであり、この点については放送行政も変えていないということを放送関係者にも御説明を申し上げてきたところだというふうに考えているところでございます。

奥野(総)委員 三十九年答弁は、その停波の話まで、これは古くて新しい問題ですけれども、出てきていて、それをやらないんだという話をしているわけです。

 一方で、二〇一六年のときは、頭の体操としてはやるかもしれない、こういう話なんですね。力点の置き方が明らかに違うんです、三十九年答弁と。

 百歩譲って、その三十九年答弁が一つの番組についての話をして、してはいるんですが、ただ、これは、そこは極めて難しいし、そこについて判断できないというトーンでやっているんですけれども、それが先例になるとおっしゃるとしても、平成六年答弁、江川答弁のときには、一つの番組という話は一切出てこないんですよね。番組全体としてバランスの取れたものじゃなきゃならない、こう言っていて、一つの番組という話は一切出てこないんですよ。

 答弁の先後関係でいうと、こっちが新しいんですね。検索の仕方にもよるんでしょうけれども、私が見た限り、ここで初めて「放送番組全体として」という言葉が出てきて、新しい答弁をしている。新しい答弁というか、私から言わせると、三十九年答弁をより分かりやすくまとめた形で答弁を作っているんじゃないかと思うわけです。

 そうすると、これは、一つの番組ということは触れていないということは、あくまで放送番組全体について見ましょうとしか言っていないですね。だから、これが最新、三十九年の答弁の説明より精緻な説明。あるいは、大臣は、三十九年答弁でも一つの番組は見るべきだと言っているとおっしゃるんですが、そうだとした場合でも、それと違うことを言っている、書き換えているという答弁になろうかと思うんですよ。だから、ここの答弁が出発点だとすれば、明らかに二〇一五年答弁というのは新しい考え方を持ち込んでいるというふうに思うんですよね。

 だから、この平成六年答弁って、なぜ、じゃ、個別の番組の話はしていないんでしょうか。

松本国務大臣 今お話がありました点で申し上げなければいけないかというふうに思いますが、放送法第四条に違反するとして、放送法の業務停止命令、電波法の無線局の運用停止命令、放送法の方は昭和三十九年当時以降の、平成二十一年、二年ですかね、時の改正によって加わったものだと理解していますが、電波法の無線局の運用停止命令も、先ほども申しましたように、極めて限定的な状況のみにおいて行うこととするなど、極めて慎重な配慮の下、運用すべきという考え方、これが三十九年の考え方であろうかというふうに思いますし、平成六年も、具体的に問われて、その考え方に基づいてこのように答弁をしたのではないかというふうに思っております。

 なお、平成二十七年、八年の議論において、今もお話がありましたが、他方では、これまで、放送法四条は規範性があるものということについての解釈も申し上げてきている中で、規範性がある中で、先ほどの無線局の運用停止命令や業務停止命令は一切行われないのかといったような問われ方をした場合には、規範性があるので一切行われないことはないといった趣旨の議論のやり取りであったのではないかというふうに私は記憶をしておりまして、その意味で、慎重に運用をするのかといったような問われ方であるとか、具体的な運用を聞かれれば、慎重にということでありますが、いわば、慎重にということは、一切ないということかと言われれば、慎重にというふうに答えたという意味で、私は一貫しているのではないかというふうに理解をいたしているところでございます。

奥野(総)委員 ちょっとその論点が私の質問と違っていて、江川答弁ではなぜ放送番組全体とだけ言って個別の話をしていないんでしょうかというのが質問だったんですね。

 ちょっと時間もなくなってきたので、これ以上言っても水かけ論になると思いますが、江川答弁がスタンダードだとすれば、当然、一つ、個別の番組について見るということを、新たに二〇一六年、二〇一五年答弁、あるいは二〇一六年の政府見解でつけ加わった、こういうことになるんですね。だから、メッセージ性が出てくるんですよ、違ったことを言っていると。だから、そこが新しいんじゃないですかと。新しいんだとすれば、それは、メッセージが出た、個別の番組でも政府は見ているよというメッセージを出したということで、報道の萎縮を招いてしまったんじゃないかとあえて過去形にしますが、じゃないかというところですね。

 であれば、もう一度、メッセージという意味で、あの補充答弁を撤回して、この江川答弁に戻すべきじゃないですかというのが私の申し上げているところなんですね。

松本国務大臣 先ほども申してまいりましたけれども、恐らく、この平成六年の江川政府参考人の答弁についても、繰り返しになりますが、法の適用について問いをいただいて、慎重に対応するという趣旨で番組全体をということで申し上げたかというふうに思いますが、今御議論があります平成二十七年、八年の議論の中でも、一部の引用になりますが、これは平成二十八年三月三十一日の参議院の質疑でありますが、先ほども申しましたように、質疑者の方が、「一つの番組のみの判断で業務停止命令がなされることはないということでよろしいですよね。」と問うたのに対して、当時の高市総務大臣は、「それは一〇〇%ございません。」と答えておりますので、その意味でも、法の運用についてそのような答弁をしているという意味でも、私は変わっていないというふうに理解をいたしております。

奥野(総)委員 停波の話だけを見ればそうなんですが、行政指導とか免許の条件とかいろいろやり方もあるわけですよ、停波について問うたらそういうふうに答えているかもしれないけれども。一つ一つの番組を見るというメッセージを出したことは間違いないんですね、この政府見解というのは。

 申し上げているのは、江川答弁では一つ一つの番組を見るということは一切言っていないわけです。あの大変だった椿事件のときですらそういうことを言っていないのに、何事も起きていない平時にわざわざ、一つ一つの番組を見ているよというメッセージを出したのはどうかと言っているわけです。停波の話はもちろんあっちゃいけないし、そこの答弁はそれで生きているならそれはそれでいいと思うんですが、今出している一つ一つの番組を政府はチェックしているよ、官邸が見ているよというようなメッセージが私は問題だと申し上げていて、それを撤回できませんか、こう申し上げてきたわけであります。

 ちょっと、余りこれ以上やるとほかの通告が駄目なので、じゃ、そこのところだけもう一点。

松本国務大臣 既に委員御案内のとおり、行政指導についても、政治的公平性に関して行政指導がなされたものがこれまで三件あるところではありますけれども、これは個別の番組について申し上げたものがあるというふうに承知をしておるところでございますが、政治的公平性が確保されていないとしての行政指導ではなかったというふうに理解をいたしているところでございます。

 その上で、免許についてお話がございましたけれども、今回の放送法の改正においてもお願いをさせていただいているように、放送には放送ならではの使命があるからこそ、放送というものが大変重要であるというふうに私どもも考えておるわけでありますけれども、放送が国民の知る権利、表現の自由に関わるものであるという放送法の趣旨をしっかり体して、これからも運用してまいりたいと考えております。

奥野(総)委員 とにかく、与党、野党を問わず、やはり放送に圧力をかけるのはよくない。そういうふうに取られるような、とりわけ政府は、解釈を示すのは私はよくないと思います。ごめんなさい、時間を使ってしまいましたが。

 今回の法案についてですけれども、やはり、一番の問題はインターネットとの関係だと思うんですね。これまでは、県域放送、ローカル局があって、キー局があってとやってきたんですが、ネットで一気に全国的に同じ番組が見られるようになってしまった、あるいは、しまいつつあるということなんですね。

 そうしたときに、じゃ、ローカル局の存在意義というのは何なんですか、あるいはやっていけるんですかという話がそもそもあるということなんですね。だから、日本が多分遅れてしまったのはそこ。県域放送なるものがあって、そこの経営は守らなきゃいけない、それは当たり前のことなんですが、そこをどうするかという話があったので、同時再送信というものがなかなか進んでこなかったということだと思います。

 今このタイミングで恐らくやられている、今回の法案、あるいはマス排の緩和とかについてやられているのは、NHKのインターネット活用業務、これを必須業務にするかどうかという議論が今行われていると思うんですね。時代の流れからすると、当然、それはもう本来業務であるべきだと私は思うけれども、もちろん、民放との競争条件というのはきちんと整えた上でなんですけれども、それとの関係があると思うんですね。

 まず伺いたいんですが、これも順序が違いますけれども、NHKのインターネット活用業務の在り方について今政府で検討されていると思いますが、その進捗状況を伺いたいと思います。

松本国務大臣 委員よく御案内のとおりでありますが、我が国の放送は、受信料を財源とする公共放送であるNHKと、主に広告料収入を財源とする民間放送が切磋琢磨することで、国民生活や経済活動に欠かせない情報の基盤としての機能を果たしていただいているところでございますが、これも、今御指摘ありましたように、近年は、インターネット動画配信の普及、若者のテレビ離れなど、放送を取り巻く環境が大きく変わってきております。NHKの公共放送としての機能が将来にわたって十分発揮され、国民に必要な情報が届くようにしていくことは、放送行政において重要な課題であると考えております。

 また、日本の放送番組は世界の中でも大変評価されているコンテンツであるというふうに考えておりまして、コンテンツは、将来が期待される産業分野でもありますし、日本のソフトパワーにも大きな役割を果たすものだというふうに考えておりまして、NHKにおかれましては、これからも豊かで、かつ、よい番組を制作いただくとともに、こうした優れた放送番組を国の内外に発信するプラットフォームとして、重要な新たな役割を果たしていただきたいと思っております。

 このような認識の下、総務省においては、有識者会議を開催いたしまして、これからの公共放送の役割や、それを踏まえたインターネット活用業務の在り方、NHK業務に対する今後の費用負担の在り方など、あるべき公共放送の姿について、我が国の放送業界の発展への貢献という観点も含め、様々な観点から検討を進めていただいているところでございます。

 ただいま進捗というお話でございましたけれども、検討を進めさせていただいているというのが現段階での御答弁になろうかというふうに思います。

奥野(総)委員 いや応なしに、だって、今、テレビを見ると、Huluとかネットフリックスとか、ボタンがついていて、ちゃんと設定すれば、ネットテレビがぱんと出てくるんですね。例えばそれに、まあ、同じ話です、チャンネルのところ、一とか二とかというところを押せばインターネットにつながるようにすれば、インターネットテレビが見られるようになるはずなんですよ。だから、実はもう、見ている側は余り意識せずに、ネットなのか電波なのかと意識せずに見る時代が来ている。

 それにやはり対応していかなきゃいけないんですが、そこでやはりずっと問題になってきたのが、ローカル局、県単位でいっぱい、何社かあるローカル局を、経営問題はどうなるのか。ネットで全部中央から見られてしまったら、ローカル局の番組を見なくなる。じゃ、経営、スポンサーがつかなくなるということであります。

 これにどう対応していくかということですが、一つは、資本関係を広く持たせるということで、出資関係を緩めるということだと思いますが、時間がなくなってきたので、まず伺いますか。これまで、特定隣接地域の特例とかを課したり、あるいは、認定持ち株会社の十二地域制限とかという縛りがあったんですが、今回、そこを改正していますよね。その理由。絞って言うと、例えば、九局、特定隣接地域の特例要件を外していますが、相変わらず兼営又は支配できる局数を九と限定していますが、これは九と限定する必要があるんでしょうか。どういう理由でやっているんでしょうか。

小笠原政府参考人 お尋ねは、九ということのお尋ねですので、特定隣接地域特例ということでちょっとお答え申し上げます。

 お尋ねのところでございますが、元々、特定隣接地域特例ということでございますけれども、放送法九十三条第一項五号の委任を受けまして定める省令におきまして、二以上の放送対象地域のうち、ある一つの放送対象地域に他の全ての放送対象地域が隣接する位置関係にある地域、それを特定隣接地域ということにいたしまして、兼営、支配する放送局の放送対象地域が特定隣接地域に含まれる場合、マスメディア集中排除原則に適合しているものとする特例であったわけでございますが、その場合、都道府県の地理的な隣接関係に照らしますと、長野県を中心とする位置関係になりますが、それが九局が上限というふうになっていたわけでございます。

 それで、今回、上限を九としたことについてのお尋ねでございますが、今申し上げました特定隣接地域特例におきまして、今申し上げた地図上の都道府県の隣接関係に照らして九局というものが上限となるということを踏まえて、九という数字を設定させていただいたところでございます。

奥野(総)委員 済みません、時間が来てしまいましたが、最後、一点だけ。

 ネットのことを考えたときに、じゃ、県域放送をどこまで維持できるのかとか、あるいは、資本関係、マス排はどこまで残すのかといった問題があると思います。というよりは、むしろローカルコンテンツを支援して、コンテンツ産業として地方局を生かしていく、なかなか難しいかもしれませんが、そういう支援が私は必要だと思うんですね。

 最後、大臣に、十年後の放送の未来、そういった、私は、ローカルコンテンツを残しながら、だんだんネットに移行していくべきだと思っていますが、いかがでしょうか、大臣。

松本国務大臣 ローカル局ということで申し上げると、先ほども政府参考人の方からも答弁させていただきましたけれども、放送には放送ならではの使命があると考える、その中には、具体的なものとして、災害情報や地域情報など、公共性の高い情報をあまねく伝えることというふうに申し上げてまいりました。

 加えて、コンテンツについても、先ほども少し申し上げさせていただきましたけれども、やはり、ローカル局も含めた、日本全体の放送番組の制作の力を維持、伸ばしていくことを目指していきたいと思いますし、ローカル局には、それぞれ地方からの情報発信が期待をされるところでありまして、地方創生が我が国の発展に欠かせない要素と考える政府の方向性からも、大変重要だというふうに考えております。

 委員からは、その維持発展のためには支援が必要ではないかという御指摘をいただいたというふうにお聞きをいたしたいと思います。

奥野(総)委員 以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日も質問の機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 放送法についてということで、私からも質問させていただきたいと思います。

 先ほどからお話にあるとおり、今般の法改正の事情の一つとしては、近年のテレビ離れというのか、様々な放送環境の変化があるというふうに理解をしているところでございますけれども、結果として、今、ローカル局の経営そのものがちょっと厳しい状況、見通せない状況になっているのではないかというふうに思うわけでございます。

 まずは、ローカル局の経営状況、今どんな状況にあるのかということについて確認をさせていただきたいと思います。

小笠原政府参考人 御指摘の点でございます。ローカル局を始めといたします放送を取り巻く環境は、スマートフォンの普及等により、視聴スタイルの変化、インターネット動画配信の普及、若者のテレビ離れ等、大きく変化しております。

 これによる経営状況の変化ということについて、売上高、広告収入、それから視聴率、その三点からちょっと御説明いたします。

 まず、ローカル局の売上高でございます。平成十九年度において、七千三百七十五億円を計上しておりました。以降は減少傾向をたどりまして、令和三年度におきまして六千三百四億円にまで落ち込んでおり、回復の見込みが立っていないという声を多くお聞きしているところでございます。

 次に、主要な収入である広告費の状況でございます。広告費の推移につきましては、地上波テレビに投下される広告費が、平成三十年一・八兆円から令和四年までの間に六%減少した一方で、インターネットの広告費につきましては、令和元年、二・一兆円に達して地上波テレビをこの時点で上回りまして、令和四年の現在まで、四七%増の三・一兆円に達したことで、その差は大きく開いてきており、ローカル局の厳しい経営状況の一因となっていると考えられます。

 次に、視聴率でございますが、在京キー局の五社における視聴率につきましても、全日帯世帯視聴率の合計が、平成二十年度三五・六%であったことに対し、令和元年度二九・九%と、やはり減少傾向をたどっておりまして、こうした状況もローカル局の経営状況に影響を及ぼしているものというふうに考えております。

 以上のとおり、視聴者行動の変化、それに伴う広告収入の減少、こうしたことでローカル局の経営状況は大変厳しいものとなっていると認識しているところでございます。

神谷委員 今お話にあったとおり、大変に厳しい状況ということが本当によく分かる数字であると思います。

 先ほどあったように、七千三百七十五億あったものが令和三年に六千三百四億と、一千億超落ちている、これはやはり大変な状況なんだろうというふうに思うわけでございます。

 これは、全体としての、放送の全体の在り方が変わりつつあるというようなことなのかもしれませんけれども、こういう状況の中では、ローカル局の経営の見通しというのも決して明るいという状況にはないということが今確認をされたと思います。

 しかしながら、そうはいっても、ローカル局そのものの存在意義というのは極めて重要なんじゃないかというふうに私自身は思っておりまして、だからこそ今回のこの法案が出てくるんだろうというふうに思うわけでございますが、改めて、大臣に、このローカル局、どれだけ大事なのかということ、この重要性について確認の御答弁をいただけたらと思います。いかがでございましょう。

松本国務大臣 委員御指摘のとおり、ローカル局の存在意義、重要性については、私も委員と認識を共有させていただけるのではないかというふうに思っているところでございます。

 御承知のとおり、電波の利用者は、電波法の規定に基づいて公共性が求められているところでございますが、放送につきましては、加えて、放送法の規定に基づいて、言論報道機関としての社会的影響力を踏まえた、放送ならではの公共的な役割を果たすことが求められている、こう考えているところでございます。

 その内容については、先ほど、災害情報や地域情報などの公共性の高い情報をあまねく伝えること、「報道は事実をまげないですること。」等の番組準則という規範にのっとって、いわば質の担保された情報を提供することなどが挙げられるかと思いますが、特にローカル局は、災害と地方行政関係の情報など、地域に密着した情報を提供する基盤としての役割をこれまでも果たしていただいており、大変重要であろうかというふうに思っております。

 ローカル局のコンテンツにつきましては、先ほど奥野委員からの御質問にもお答えをさせていただきましたけれども、地方発のコンテンツの意義というのは大変深いものがあるというふうに私も考えているところでございます。

神谷委員 今ほど大臣からも御確認をいただいたとおり、ローカル局というのは極めて重要だと思います。特に、この国において、ローカル局については殊更大事にされているように私自身には思えます。この国の国土で、この広さであっても多様性というのが非常にありますし、この多様性の中でしっかりローカル局というのが根差して報道していただいて、これは本当に重要なことだと思います。

 ただ、こういう重要性が全然変わらないんですけれども、経営の方は厳しい、深刻な状況にあるということが確認をされたところでございます。だとするならば、やはりしっかりとローカル局の経営を支えていく、そのことをしっかりやっていかなきゃいけないだろうと思うわけでございます。

 その一方では、先ほどからあるように、やはり放送というのは、ある意味、政府からの一定の距離、独自の、自分たちの信じる、いわば政治的な公平性も含めてでございますけれども、一定の距離はやはり必要でございますし、そういった観点を踏まえて、やはり支援といってもなかなか難しいのかなというふうに思うわけでございますが、そういった観点から、踏まえた上での今回の法案になったのではないかと思うのですけれども、こういった、地方のメディアを健全にしていくための支援というのか、この法案なんですけれども、これについて、改めて、どういう形で支援をしていこうじゃないかということを考えているのか、御確認をさせていただきたいと思います。

小笠原政府参考人 今委員御指摘のとおり、放送を取り巻く環境ということは非常なスピードで変化をしておりまして、先ほど御説明も申し上げたとおり、放送事業者の経営状況は以前にも増して厳しく、放送事業を行うための固定費用の削減ということが課題となっているというふうに認識をしております。

 このような中においても、今委員も御指摘をいただきました、放送事業者が各地域においてその重要な役割を果たし続けていただくためということで、本法案、今回の法案におきまして、経営形態の合理化を含め経営基盤を強化することが重要であり、本改正案は、そのための選択肢として、中継局の共同利用、それから異なる放送対象地域における放送番組の同一化等を可能とする制度整備を行うものでございます。

 総務省といたしましては、各放送事業者において、このような経営の選択肢、その活用も含めて、それぞれの御事情に応じ、自ら戦略的に経営基盤の強化を図ることによって重要な役割を果たし続けていただきたいというふうに考えているところでございます。

神谷委員 局長、今御答弁いただいたんですけれども、先ほど申し上げたとおり、非常に経営の状況が厳しくなっているような状況でございます。もちろん、少しでもハードの部分、固定費用の部分を削減していく、そのための選択肢を提供していく、これは非常に重要なことではございますが、ただ、一方でいうと、これで本当に十分なのかなというのが正直な思いでございます。

 もちろん、固定費用を削減していくのは大事なんですけれども、既にある程度の投資はなされているでしょう。これからこれが利いてくるのかどうかというと、なかなか難しいのかなと。もちろん、後ほど、だんだん利いてくる部分もあるかもしれませんが、ただ、経営の厳しさが増していく中では、これで十分と言えるのか、もう少しやはり様々な方策が必要なんじゃないかなと思うんですが、これについて、もう一言お願いをしたいと思います。

小笠原政府参考人 御答弁申し上げます。

 今回の法案及びそこで行われた措置につきましては、総務省で開催をいたしました研究会の提言ということを踏まえて、今、提案をさせていただいているところでございます。

 そこの研究会におきましても、今回こういった法案あるいは直前の省令ということで措置を提案させていただいておりますが、やはり、その効果あるいは状況については不断に検証ということが必要である旨も御提言をいただいているところでございます。

 委員おっしゃいましたとおり、こうしたローカル局の非常に厳しい経営状況ということを踏まえまして、本法案ということを活用いただくということをまずは期待を申し上げるということかと思いますが、総務省といたしましては、その後も、その効果それからローカルの状況を勘案いたしまして、不断の検証ということを行ってまいりたいというふうに考えております。

神谷委員 今回の法改正では、このほかにも、ブロック単位での放送番組の同一化、いわば広域化が進むことが想定をされるわけでございますけれども、ただ、もう一方で申し上げますと、ローカル局の重要な役割というのは、先ほど大臣にも御確認をしたとおり、地域の情報の発信の担い手というようなことになります。ということは、この法案を進めることによっていわば広域化は進むんだけれども、一方で、地方の発信という、この二律背反したことを実現をしていかなきゃいけないということになっていくのではないかと思います。

 この点について、この法案では、広域化、そしてもう一方で本来持っている役割、これをどう調和、ハーモナイズさせていくのか、この二律背反したものをどういうふうに担保していくのか、この辺についてのバランスというのは非常に重要じゃないかなと思うんですけれども、この辺の所感について伺いたいと思います。

小笠原政府参考人 ただいま委員からブロック単位というふうな御質問がございました。

 これに関しまして、放送法は、地域の自然的経済的社会的文化的諸事情その他の事情、これは放送法九十一条三項に出てくる言葉でございますが、そういったことを勘案いたしまして放送対象地域を含む基幹放送普及計画を定めることとしておりまして、民間基幹放送事業者の放送対象地域は県域単位ということが基本というふうになっております。

 今回の本法案では、異なる放送対象地域で放送番組の同一化を行うことを一定の条件下で認めるというふうにしておりますが、放送番組の同一化を行う放送事業者には、今委員からも御指摘ございました、地域社会に特有の要望を満たすという放送に期待される機能を踏まえまして、地域性確保措置を講ずることを求めるとともに、同一化を可能とする放送対象地域の数の上限ということも省令で定めることとしております。

 以上のような地域の情報発信機能を確保する上で重要な地域性確保措置につきまして、じゃ、具体的にどのような内容にしていくか、そして放送対象地域の具体的な数の上限をどう定めていくか、こういったことにつきましては、国会における御議論、御指摘を踏まえますとともに、地方自治体等の幅広い方々の御意見を聴取しつつ検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

神谷委員 是非この部分の検討というのは早急にやっていただきたいというふうに思います。

 先ほどから申し上げているように、やはり経営というのは厳しい、これはどんどんどんどんこの先も続いていくだろうというふうに思うわけでございます。もちろんコスト削減は大事なんですけれども、これであっても限界はあるし、あるいはその面がいわばソフトの面に影響しないとも限らないわけでございます。だとするならば、存在意義そのものが失われていくということにもなりかねませんので、ここら辺については真剣に考えていかなければいけないんだろうと思うわけです。

 その意味では、この法改正というのは一つの処方箋になる可能性は理解をいたします。ハード面でのコスト削減ができるということ、これは分かるわけでございますけれども、ただ、それ以上に、最初に確認したように、ローカル局の経営状況というのは極めて厳しいわけでございますし、放送を取り巻く環境が、これから先、好転するとはなかなか思えないわけでございます。

 だとするならば、一方でいえば、先ほど大臣から言っていただいたとおり、引き続きローカル放送を頑張っていただかなきゃいけないわけでございますけれども、今この時点で、この法案だけでなくて、しっかりとやはりもう少し、処方箋というのか、先ほど奥野さんからも様々議論をしているよねという確認があったと思いますけれども、この際、しっかりとやはり議論をしていただいて、どういう支援の在り方があるのか、できるのかも含めて、もう一段進めたものにしていただきたいと思いますし、できることであれば、これでもう地方局は盤石だよね、大丈夫だよね、将来の見通しが立つよねみたいなことまでできれば作っていただきたいと思っています。

 私自身にその腹案があるわけではないので、誠に申し訳ないのですけれども、この辺についての所感を伺えたらと思います。いかがでございましょうか。

松本国務大臣 委員から御指摘ありましたとおり、現在の放送を取り巻く環境が大きく変わる中、ローカル局が大変厳しい状況にあるという認識は、先ほど政府参考人からも御答弁申し上げたように、共有をさせていただいているかというふうに思いますし、しかし、他方で、ローカル局の存在意義は極めて重要なものであるという認識も共有させていただいている中で、委員からは処方箋ということでお示しをいただきました。

 私どもとしても、今回の法案改正を一つの処方箋ということでお示しさせていただいたわけでありますが、これも先ほども御答弁申し上げましたけれども、やはり地方発のコンテンツの意義であるとか、そういった意味からも一層の期待があるところは申し上げるまでもないところでございます。

 そういった中で、総務省としては、今回の改正案により拡大される経営の選択肢の活用も含め、それぞれの事業者が、実情に応じて自ら戦略的に経営基盤を強化しつつ、併せて、放送事業者の人材とその放送番組の制作能力を維持強化するための投資を行っていただき、経営合理化を通じた番組制作人材、設備など様々なレベルでの再編統合にも取り組んでいただき、新たな事業展開の可能性を広げていただけたらと考えているところでございます。

神谷委員 早急にいろいろとやはり考えていただきたいと思います。

 経営の合理化は大事かもしれません。ただ、大臣、やはり経営の合理化を進めている上では、将来はなかなか見通せないんじゃないかなというふうに思います。小さくなればいいということではなくて、将来に対する投資はやはりしっかりやっていただかなきゃいけませんし、やはり心配なのは二極化じゃないかなと思っていて、二極化というのは、要は、キー局が全国に見られる。そして、地方局がいつの間にかなくなっていって、ひょっとするとコミュニティー放送みたいなものが小さな範囲で残っていくような、そんな二極化みたいなことも起こり得るんじゃないか。

 ただ、そういったところでは、本当に小さなコミュニティーでのいわばメディアとしては活躍できるかもしれませんけれども、もう少し、地元の発信であるとか、特色を出していくのもなかなか難しいんじゃないかなと思いますし、やはり地方局というのは非常に大事なものでございますから、大臣には是非リーダーシップを取っていただいて、この法案だけでなく、しっかりと処方箋を書いていただけるように御尽力をお願いをしたい、このようにお願いを申し上げます。

 さて、質問を変えます。情報インフラの整備について伺いたいと思います。

 社会のデジタル化が進んでおります。そして、多くの手続がオンラインでできるようになっておりますが、御案内のとおり、送金手続や支払いの手段としてスマートフォンで対応できるような、そんなような状況になっています。もちろん、デジタルの世界を利用するには、ブロードバンドサービスが利用できることが大変に重要なことでございますけれども、現在のブロードバンドサービスの整備状況について伺いたいと思います。

竹村政府参考人 有線、無線のブロードバンドの整備状況でございますが、昨年三月末現在で、光ファイバーの世帯カバー率が九九・七%、5Gの人口カバー率が九三・二%となっているところでございます。

神谷委員 進めていただいていることはありがたいんですけれども、まだ一〇〇%ということにはなっておりません。もちろん、国としてもデジタル化を進めている以上、未整備の地域の解消を早急に進めるべきであるというふうに思いますけれども、まだブロードバンドサービスが整備されていない地域について、どのように整備を進めていくのか、確認をさせてください。

竹村政府参考人 総務省としても、ブロードバンドの未整備地域の解消を進めていくことは重要であると考えております。

 総務省では、昨年三月にデジタル田園都市国家インフラ整備計画を策定し、例えば、光ファイバーについては二〇二七年度末までに世帯カバー率九九・九%、5Gについては二〇三〇年度末までに人口カバー率九九%などの整備目標を掲げ、整備の加速化に取り組んでおります。

 具体的には、条件不利地域での整備について補助金による支援を行うとともに、自治体や通信事業者などで構成される地域協議会を開催し、個々の地域の実情を踏まえた整備を進めております。

 今後とも、地域の要望を踏まえて、着実に未整備地域の解消を進めてまいります。

神谷委員 今、二〇二七年度というような一つのお話ございましたけれども、もはやデジタル社会というのは待ったなし、ましてや国民の共有のインフラにしなければいけないというような状況でございます。そういった中で、まだちょっと時間がかかるというのはいささか問題なんじゃないかなというふうに思います。

 デジタルの世界を支えているのは、やはり情報通信インフラでございます。四月三十日に実施されたG7のデジタル・技術大臣会合におきましても、通信インフラの強靱化の必要性が閣僚宣言に盛り込まれております。

 そのような中でいいますと、我が国では、昨年の参議院選挙期間中でございますけれども、携帯電話の通信障害なども発生しております。その後にも通信事故や障害が発生しているというふうに承知をいたしているところでございます。緊急時通報などもございますし、通信インフラの障害は国民生活にとっても大変な問題であるというふうに理解をしているわけでございまして、先ほど申し上げたように、G7の閣僚宣言というのはいわば国際約束をしているようなものでございます。

 情報通信インフラの整備、維持管理について、政府として、やはり必要な対応を早急にしていただく必要があると思うんですけれども、この点について大臣の所感を伺いたいと思います。

松本国務大臣 委員からも御指摘をいただきましたけれども、四月の終わりにG7デジタル・技術大臣会合を行いまして、安全で強靱な情報通信インフラの構築の重要性についてG7各国との間で認識を共有したところでございまして、我が国は議長国として今後の方向性をアクションプランとして取りまとめたところでもございます。

 デジタル田園都市国家構想の実現に係るデジタル田園都市国家インフラ整備計画を改定した、その辺りについては、今、政府参考人からも御報告を申し上げたところでございますけれども、今委員からもございました度重なる通信障害の発生を受けて、リスク管理や保守運用の体制など業界に共通する構造的問題について、総務省の有識者会議において本年三月に報告書を取りまとめたところで、技術基準の見直しを含む情報通信ネットワークの安全性、信頼性の更なる向上に取り組むこととしております。また、障害が発生した場合の対策として、非常時の事業者間ローミングの早期導入に向けて取り組むこととしているところでございます。

 事業者それぞれにおいては、複数SIMの導入などが行われていることも承知をしているところでございまして、インフラ整備計画には、事業者間ローミングについても、その旨、盛り込んだところでございます。

 総務省といたしましても、国民の誰もがデジタル化の恩恵を実感できる社会の実現に向けて、デジタル基盤の整備を自治体や通信事業者とも連携して着実に進めてまいりたいと考えているところでございますけれども、委員からは、デジタルのスピードに合わせて急ぐようにというふうに御要請をいただいたというふうに理解をいたしたところでございます。

神谷委員 大臣、果たして、思いをしっかり聞いていただいて、ありがたいなというふうに思いました。

 お話にありましたとおり、本当にこれは待ったなしだと思いますし、早急にやはり、国民のインフラでございますから、しっかりとやっていただきたいと思います。通信障害みたいなことが起こった、こういったことがもうないように、是非御尽力をいただけたらと思います。

 それでは、時間が参りましたので、私の質問とさせていただきます。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、岡本あき子さん。

岡本(あ)委員 立憲民主党・無所属の岡本あき子でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 放送法、電波法に入る前に、総務省の所管ですので、昨今、マイナンバーカードによる戸籍抄本、謄本等も含めて、コンビニでの誤交付があった件について伺わせていただきたいと思います。

 今現在で把握できている誤交付の件数はどのくらいなのか。それから、次、ちょっとデジ庁にも伺いますけれども、総点検をするという指示が出ていると思いますが、この総点検の状況についてお聞かせください。

吉川政府参考人 お答えいたします。

 これまでに、横浜市、足立区、川崎市、徳島市におきまして、別人の証明書が交付される事案が発生したことを把握しております。別人の証明書が交付された事案の件数の合計は、横浜市が十件、足立区二件、川崎市一件、徳島市一件の計十四件と把握しております。

 また、これらと異なり、別人ではなく本人の古い印鑑登録の証明書が発行された事案といたしまして、新潟市で延べ三件、熊本市で五件、さいたま市で延べ三件発生したことを把握しております。

内山政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のコンビニ交付サービスにおける誤交付の事案につきましては、いずれの事案も富士通Japan社が開発したアプリケーションを原因とするものであることから、御指摘ありましたように、先日、五月八日、デジタル庁より同社に対して、システムの運用を停止し、徹底的に再検討を行うように要請を行ったところでございます。

 富士通Japan社からは、デジタル庁の要請を踏まえまして、システムの運用の一時停止を含め、再点検の方法等について検討し、自治体に対する協力依頼を行い、取組を進めているという旨の報告を受けているところでございます。

 同社におかれまして速やかに徹底した再点検がなされ、二度と同じ事象が起きないことを期待しているところでございます。

岡本(あ)委員 報道に加えて、昨今だと印鑑証明もやはり複数の自治体で過去の古いデータが出ていたというようなことも起きております。

 報道だと自治体単位で指名停止とかそういうような話も流れておりますけれども、私、根本の責任というのは、やはりデジタル庁及び総務省にもあるんじゃないかと思っております。

 そういうことも含めて、例えば、点検のために停止をする、休日とかで一日、二日ということであれば今までもメンテナンス等で停止をするようなこともありましたけれども、複数日にわたってコンビニ交付が止まってしまうと、不利益を被るのは国民、住民ということ、この点についてもしっかり考えるべきではないかと思います。

 改めて、ここは総務委員会ですので、総務省として、事業者に対する処分、あるいは、不利益を被る方に対して、補償といいますか、その住民サービスを受けられなかったこと、あるいは代替として窓口に来なさいとか郵送でやりなさいといったときにかかったコスト、こういう部分について、住民が受けた不利益に対する補償、こういう点はお考えがあるのか、お聞かせください。これは大臣に伺いたいと思います。

松本国務大臣 まず、事業者に対する処分というお話でございましたけれども、一連のコンビニエンスストアでの証明書交付サービスに係る事案に関しては、いずれも、各自治体が構築し管理する証明書発行及びこれに関連するシステムにおける誤ったプログラム処理が原因というふうに聞いているところでございます。

 別人の証明書が交付されるという個人情報の漏えい事案が立て続けに発生したことは誠に遺憾であると申し上げなければならないというふうに思っているところでございます。

 総務省におきましても、各自治体が構築し管理するシステム、これに関連するシステムではありますけれども、自治体だけではなく、当該事業者、富士通Japan株式会社からも、直接、原因や再発防止について確認をさせていただいているところでございます。

 私どもとしても、全国の自治体や委託事業者に対して、既に行っていた総務省とJ―LISからの運用監視の徹底やシステムの総点検の要請に加えて、五月十日に、他社の証明書発行サーバーに連携するシステムを含め、誤交付が生じる仕組みになっていないか、関連システムの点検を要請をいたしたところでございます。

 その上で、富士通Japan株式会社に対しては、五月十一日、富士通本社及び富士通Japan株式会社の責任者から総点検の状況について聴取し、個人情報の漏えい事案が二度と生じないように強く求めさせていただきました。様々な環境での動作確認、運用監視体制の強化、申請者と印刷ファイルのひもづけ改善等のシステムの根本的な改善の実施などを要請をいたしました。

 現在、富士通Japan株式会社において、この要請を踏まえてシステムの総点検を進めるとともに、システムの改善の検討を進めていただいているとしているところでございます。

 処分ということでございますが、総務省が物品等の契約に係る指名停止等の措置を行うかどうかということについてであります。先ほど申しましたように、複数の自治体は、委員からもお話がありましたように、富士通Japan株式会社を指名停止処分することは承知をしておりますけれども、総務省における物品等の契約に係る指名停止等措置要領やその運用基準がございまして、これは原則、指名停止措置は、総務省の契約に係る違反、入札資格を有する事業者の贈賄や独占禁止法違反、事業者の業務に関する法令違反による逮捕又は公訴といった場合に対する措置となっておりますので、現時点で指名停止措置を予定をしているものではありませんが、今後の動向や事業者の対応等を注視しつつ、適切に対応してまいりたいと思っております。

 不利益を被った方への補償ということについてもお話がございましたが、総務省としましては、各自治体の証明書交付サービスの安定的な運用が図られるよう、また国民の皆様が安心してサービスを利用できるよう、必要な対応をしっかりとまず行ってまいりたいと考えているところでございます。

岡本(あ)委員 やはり、住民、国民にとって不利益が高じないようにということが最優先であるべきだと思いますし、ましてや、戸籍の情報が他人に知られる、望まない形で知られるということは、やはり最高のプライバシーに値するということで、こういう情報の価値というところも、改めて、デジタルの社会だからこそ、情報の価値ということは是非認識をしていただきたいと思います。

 また、今後、例えば、様々な行政のシステムが全国で標準化をしていく流れがあります。こうなりますと、各自治体の責任なのか、そもそも統括をしているデジタル庁の責任なのか、あるいはその業務に関わる総務省の責任なのか、こういう点も出てくると思いますので、この点も今後整理が必要かと思います。この点はしっかり注視をしていきたいということをお伝えさせていただきます。

 さて、放送法、電波法の改正案について伺わせていただきます。

 先ほど奥野委員とのやり取りもありましたので、私からは、根本的なところを一点、簡潔に。

 放送法の目的、第一条ですけれども、それから、第四条の二号、政治的公平性、これは、番組一つ一つではなく、全体でバランスを取ること、この放送法の目的は決して逸脱しないということ、改めて確認をしたいと思います。大臣、お答えください。

松本国務大臣 放送における表現の自由を確保するために放送法が定められているというふうに理解をいたしております。

 放送法の第一条第二号において、放送法の原則の一つとして「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。」を掲げているところでございます。

 第四条第一項において、放送事業者は放送番組の編集に当たって番組準則を遵守するということで、その中の一つとして、政治的公平であることなどを確保しなければならないとされていることも委員御案内のとおりでございます。

 この放送法第四条の規定は、放送事業者が自主的、自律的に遵守いただくものだと理解をしているところでございますが、これまでも申し上げてまいりましたように、放送行政の在り方は、法にのっとって、慎重かつ適切に、表現の自由や国民の知る権利をしっかりと、憲法で保障される権利を理解して、進めていきたいと思っております。

 番組、政治的公平の解釈につきましては、先ほど奥野委員との議論で申し上げてまいりましたとおりで、国会においても一つ一つの番組についての議論がございます中で、平成二十八年の政府統一見解で、一つの番組のみでも、例えばとして二つの事例を例示し、極端な場合においては、一般論として政治的に公平であることを確保しているとは認められないという考え方を示しております。

 これは、番組全体を見て判断するというこれまでの解釈を補充的に説明して、より明確にしたものであるとも申し上げてきているところでございます。

 その上で、先ほども申しましたけれども、放送行政は慎重かつ適切に、表現の自由や国民の知る権利を踏まえて進めてまいりたいと考えているということで、是非御理解をいただきたいと思います。

岡本(あ)委員 一つ一つの番組に政治的介入というのは決してあってはなりませんし、政治的には全体として公平であること、この点について、特例として示されたという部分も受け止めつつ、放送法の目的、それから政治的公平であるということは、ねじ曲げられることはあってはならないということは改めて申し上げたいと思います。

 さて、また、この放送法ですけれども、先ほどマイナンバーカードのことは資料一だったんですが、資料二を御覧ください。

 今回、法改正の説明を受けつつ、ちょっとびっくりしたんですけれども、今年三月十日に実は省令が改正になっております。私、今回の法の改正以上に、省令改正の、この資料二の部分、非常に重たいんではないかと思っています。

 まず、マスメディア集中排除の特例のところですけれども、放送対象地域が隣接しない場合でも最大九局まで兼営等ができるということ。それから、右側ですけれども、認定放送持ち株会社傘下の基幹放送事業者、十二地域制限という部分を全く撤廃をするという内容です。

 隣接しない内容が入るということは、もはや隣接特例と言わないんじゃないかと思いますし、制限撤廃ということは、マスメディアの集中排除ではなく、逆に集中化を認めるという方針転換とも言えるのではないかと思いますが、この点、趣旨を御説明ください。

松本国務大臣 委員からも今御指摘がございました放送事業者に関する資本規制、いわゆるマスメディア集中排除原則に関しては、放送の多元性、多様性、地域性を確保するために設けられているものであることは委員御案内のとおりでございます。

 御指摘の令和五年三月の省令改正については、このマスメディア集中排除原則は維持しつつ、放送法において省令で定めることとされている例外を拡大したものでございます。

 具体的には、放送を所管する総務省として、放送の公共的な役割を維持強化するための施策について検討する必要があると考えまして、政府の規制改革実施計画の内容も踏まえて総務省の有識者検討会において検討を行った結果、インターネットを含め情報空間が放送以外にも広がる現在においては、マスメディアの集中排除原則の政策目的、先ほども申しましたように、放送の多元性、多様性、地域性を確保するためという政策目的を実現するための政策手段によっては、経営の選択肢を狭め、かえって多元性等を損なうことにもなりかねないといった考えが示されました。

 放送事業者からの要望も踏まえまして、認定放送持ち株会社が傘下に置くことができる地上基幹放送事業者の地域数の制限の撤廃、放送対象地域の隣接、非隣接にかかわらず、地上基幹放送事業者の兼営、支配を可能とする制度の創設の二点を例外として加えたものでございます。

 このため、令和五年三月の省令改正は、放送を取り巻く環境が大きく変化する中において、放送の多元性等が損なわれないよう、放送事業者の経営の選択肢を増やす観点から行ったものであると御理解をいただけたらと思います。

岡本(あ)委員 今回の法改正も、事業者、当事者からの要望があって法改正をしていくんだという趣旨でした。

 これがそもそも今回の法改正の趣旨なんですけれども、それよりも先んじて、勝手に省令で、しかも、番組を一緒にするというのが法改正ですが、こっちは経営を一緒にしていいよ、あるいは規制緩和していいよというものになっています。

 私は、こっちこそ本来は法改正の趣旨と併せて一緒に提案する、あるいは法改正でこの趣旨が認められたら省令が改正されるという、タイミングとしてもそうあるべきだと思うんですが、法改正をする前に、確かに、整理上、権限があるのかもしれませんけれども、勝手に省令を改正できるよとなっていること自体がちょっとおかしいのではないかと思います。

 もう一度、大臣、お答えいただきたいんですが、本来は法改正で、その中の説明の一つとして省令も改正をしていくんだとするべきだと思います。この点、お答えください。

松本国務大臣 御指摘の点についてでございますが、放送法第九十三条第一項五号は、マスメディア集中排除原則を定めるとともに、その例外を定めることを省令に委任しているところでございます。この規定を踏まえて、法律から委任された範囲内で省令が定められたものと理解をしております。

 本年三月の省令改正は、このマスメディア集中排除原則は維持しつつ、放送法において省令で定めることとされた例外を拡大するもので、法律から委任された範囲内のものであると考えているところでございます。

 続いて担当局長から技術的な部分について御説明を申し上げたいと思いますが、改正の時期についてのお話がございました。

 放送を取り巻く環境が大きく変化をしており、放送事業者の経営の選択肢の拡大は迅速に進める必要があること、そして、政府の規制改革実施計画においても令和四年度中の措置が求められていたことがございまして、法改正に先んじることとなりましたが、省令の改正と法改正と、それぞれ手続にのっとって迅速に進めてきたところかというふうに承知をしております。

 担当局長から技術的な面について御答弁させていただきたいと思いますが、お願いしたいと思います。

小笠原政府参考人 今、大臣が御答弁申し上げましたが、省令委任の範囲ということについての御説明をさせていただきます。

 令和五年三月の省令改正におきましては、今も御説明をいたしましたが、認定放送持ち株会社が傘下に置くことができる地上基幹放送事業者の地域数の制限の撤廃、それから、放送対象地域の隣接、非隣接にかかわらず、地上基幹放送事業者の兼営、支配の制限を可能とする制度の創設、これらを行ったものであります。

 これらにつきましては、まず、こういった規制を緩和する中におきましても、引き続き一定の制限が設けられており、マスメディア集中排除原則は維持されているというふうに考えられること。

 そして、こういったことを検討していただきました有識者の検討会におきまして、資本関係とそれから自社制作番組比率との関連性について分析を行っていただきました結果、放送の多様性、地域性に大きな影響は見られない、したがって地域制限を維持する必要性ということは必ずしも認められないのではないか、そういうふうにされたこと。

 そういったことを踏まえまして、放送事業者の経営の選択肢を増やし、そして放送事業者がその経営基盤を強化できるよう省令改正を行ったものでございます。

 これは、法律の委任の範囲を超えるものではないというふうに考えているところでございます。

岡本(あ)委員 私はちょっと違和感はあります。

 今回、法改正を求めるに当たって、経営基盤を強化していくんだ、あるいは選択肢を増やしていくんだというのが今回の法改正の趣旨で、今までから、現行の法律から考え方を少し当事者間でも前向きに捉える方向で動かすという趣旨です。

 今御説明いただいた省令改正は、全く同じ御説明です。ですので、私は、タイミングとすると、やはり、法改正をする提案をして、今の厳しい状況の中で経営を、基盤強化をしていくんだ、そういう流れの中でいろいろと規制緩和というものもしていくんだ、省令の中でも当然マスメディア集中排除は原則にあるんだ、その中でもここの部分は緩和をしていくんだと、一連のものではないかと思います。

 今までの質疑の中でも、やはり、この省令改正の部分も含めて、法案の審議の中で先輩委員とかやり取りをされていたことも含めると、やはり私は、番組が一緒になることももちろん大きな変化ですけれども、経営が替わるということは本当に根本的なところにもなると思います。今までは確かに影響なかったかもしれませんが、今回、省令で認めることによって、例えば、経営と番組、放送を流す中身というのが、より影響を受ける可能性も広げることもあり得ますので、決して、今までが大丈夫だったからというよりは、今回、法律改正をする趣旨が規制緩和をしていくんだという趣旨であれば、やはりこの点は、タイミングとしても、本来は、法改正をして、その上で関連をする省令も規制緩和をするというのが筋ではないかという、この点は指摘をさせていただきます。

 さて、今回、この法律の中で、資料三を御覧いただきたいと思います。今までの委員の皆さんからも様々御意見が出ておりました。この中で、地域性の確保というところが非常に重要になってまいります。

 ちょっと先にこの資料三の点を伺いたいと思いますが、地域のきめ細やかな情報を届けていた貴重な機関であり、かつ事実を伝える手段である、この価値は失ってはならないと思います。また、地域の隅々にわたる情報、コストはかかりますけれども、これは費用対効果では測れないものだと思います。また、地域のラジオ局も、移動中のリアルタイムな地元情報、こういう情報は地域にとって非常に宝でございます。また、災害時にきめ細やかな情報を届けていただくこと、マーカーをつけておりますけれども、こういう価値というのは改めて失ってはならないと思います。

 この地域性の確保の点については、今回の法改正で損ねることということはないんでしょうか。この点、大臣に伺います。

松本国務大臣 地域性の確保というのは大変重要なことであるというふうに私どもも考えているところでございまして、今回の法改正におきましても、放送番組の同一化を行う放送事業者において、地域固有の需要を満たすために講ずる措置である地域性確保措置を講ずることを求めることとしているところでございます。

 地域性確保措置の具体的な内容は地域ごとに異なり得るものと考えますが、地域において放送に期待される役割を踏まえて、例えば、各地域の情報、各地域の取材拠点、各地域向けの災害放送体制などがなくならないように維持することが考えられます。総務省としては、こうした地域性確保措置の具体例を事業者に周知することを予定しているところでございます。

 本法案をお認めいただきまして後、この地域性確保措置を具体的にどのような内容にしていくかについて、国会における御議論、御指摘も踏まえつつ、地方自治体等の幅広い方々の御意見を聴取しつつ検討を進めて、関係者と方向性を共有できるようにしてまいりたいと考えているところでございます。

岡本(あ)委員 時間がなくなりましたので、最後にお伝えだけさせていただきたいと思います。

 やはり、災害時の情報を、本当に県域、地域、きめ細やかに取材があることという価値は、非常に重要だと思います。また、資料三の下二段になりますが、アテンションエコノミーとかフェイクニュースとか、インターネット上の偏った情報あるいは事実と違う情報が飛び交う中で、放送法は、改めて、事実を伝え、正しい情報かつきめ細やかな情報、そして、こういう情報に対してお墨つきを与える仕組みというのも今後必要だと思っております。

浮島委員長 岡本さんに申し上げます。

 申合せの時間が経過いたしておりますので、おまとめください。

岡本(あ)委員 はい。

 単にネットとの自由競争の中で自力で戦えということよりも、こういう情報が価値あるということで、先ほど支援という言葉もありました、この点もしっかり検討していただきたい。この要望をお伝えし、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 日本維新の会、市村でございます。

 質疑をさせていただきます。

 電波法、放送法でありますが、電波を三百万メガヘルツ以下の電磁波と定義した上で、まあ、使いやすそうだったんでしょうね、その電波を有効にどう使うかということで、これまでいろいろな方が努力、御尽力いただいたということ、そして、その中でも放送ということについてこれを特に割り当ててきたということについて、放送については先ほどからも議論がありますように、多様性、それから優良な質のコンテンツ、いろいろなコンテンツの質を保つということ、それから、様々な、公平性とか、そういうのを担保しながら、いかに放送業界をよりよくしていくかということでいろいろ御尽力をいただいたんだと思います。

 その御尽力は多とします。しかしながら、私もちょっと思い出していたんですが、中学三年のときの教科書ですけれども、今からもう四十四年前ぐらいになりますけれども、テレビが普及することによって一億総白痴化の時代になる、ですから、何が必要かというと、いわゆる放送されている情報をうのみにしないということが必要なんだということが中学三年のときの教科書に書かれていた覚えがあるんですね。

 そこで、今日なんですが、今はもう、いわゆる情報というものは放送で得る時代ではなくて、ますます圧倒的にネットの世界、通信の世界で情報を得るという時代になってきている状況の中で、これまでもこの総務委員会でもいろいろ質疑をさせていただきましたが、放送という概念という切り口は、もはや余り意味がないのではないかというふうに思っているんですね。

 やはり、何で情報が伝わっているかということを考えた上で、じゃ、その情報がより質のいいもの、より事実を反映しているものとか等ということで話をしていく、多様なものとか多元性のあるものとか。そういう議論をするのが国会の役割かなと思っているんですね。

 官僚の皆様におかれましては、今ある、立法されたものの範囲でいろいろ、じゃ、立法されたものをどう有効に使うか、どう時代に合わせていくかという議論をされるんだろうと思います。

 しかし、国会での議論は、それをもっと先取りして、今の時代の状況はどうなのかという観点で話をすべきだと私はずっとかねがね思っています。

 その観点で、松本総務大臣の所信で、まず大臣になられた直後の所信では、日本をいま一度つくり直そうという大きな志を掲げておられるわけでありまして、今回のいわゆる放送法、電波法の改正につきましては、じゃ、これまで積み上げたものをいきなりなくせという議論はもちろんないわけでありまして、なるべく、今の時代に大変苦しい状況にある放送業界が、これからどう次の時代に向けて転換する、まあ、豹変していくといいますか、変わっていくための要するに猶予期間を与えるものだというふうに認識をしていますが、総務大臣として、今回のこの法改正について、私の今の話についてどういう御見解をお持ちか、ちょっとお聞かせいただければ幸いでございます。

松本国務大臣 委員からも御指摘のとおり、情報のいわば集め方というか、それぞれ国民一人一人にとっては、どこから情報を取るのかという意味では、通信の発達などによって非常に幅広くなって、時代が変わってきているということは御指摘のとおりかというふうに思います。

 そのような中でございますが、電波につきましては、電波法で電波の利用者は公共性が求められていることも委員御案内のとおりでありますが、放送については、加えて、放送法の規定に基づいて、放送ならではの公共的な使命があると考えているところでございます。

 その内容としては、先ほども申しましたが、災害情報や地域情報などの公共性の高い情報をあまねく伝えること、「報道は事実をまげないですること。」等の番組準則という規範にのっとって、いわば質の担保された情報を提供することが挙げられようかというふうに思っております。

 今申し上げたようなことは、近年、デジタル時代において、インターネット上で膨大な情報が行き交う中で、フェイクニュース、誤情報などの問題も顕在化しているからこそ、放送のメディアとしての重要性が増しているのではないかというふうに考えているところでございまして、放送を取り巻く環境が変化をする中で、放送事業者の経営基盤を強化することが課題だということで本法案を提出させていただいたところでございますけれども、やはり、放送法の適用を受けて高い公共性を果たす、放送といういわば情報源ということには意義があるのではないかというふうに考えているということを、今の委員の御質疑について申し上げたいというふうに思っております。

市村委員 議論が実はかみ合っていないということは、もう大臣、よく分かっていらっしゃると思いますが、とにかく、時代の状況、流れを見て、今どこで情報が発信されているのか、そこには、通信の業界は、先ほどから議論ありますように、フェイクもたくさんあるだろう。情報の海の中から本当に良質なものをつかみ出すという、いわゆるリテラシーを持つことが必要なのでありまして、そういう議論がやはり必要ではないかな。

 もはや一人一放送局時代であって、一億総白痴化じゃなくて一億二千万放送局時代と言っても過言ではない時代にあるわけでありまして、もはやそれをコントロールすることはできないんですね、多分できないと思います。これはもう日本だけじゃありません、地球上でいろいろな情報が発信されています。その中から本当の真実を見抜く力というのを身につけるような流れをつくっていくのが必要ではないかな。

 それには実は哲学が必要なんですね。そういう教養というか哲学というか、そういうものをしっかりと我々が日本国民として日本語でつかみ取るやはり努力をこれからしていかなくちゃいけないと思っているんですね。

 その大きな観点の中で考えると、今回の法律改正、これは本当に法律事項なのかなと。さっき、省令というのがいかぬという議論もあったようですけれども、私は逆に、こんなのを法律でやらなくちゃいけないのか、中継局の統合などというものを一々法律事項でやらなくちゃいけないのかというのは逆に疑問に思うところであるんです。

 国会で議論することは、先ほどから申し上げてもおりますように、こういう官僚的な議論ではなくて、もっと、国会議員として、やはり、大きな時代の流れを見通した議論をしなくちゃいけないというふうに私はかねがね思っているところでございます。

 大臣、ちょっとこれは、時間がありませんので、御答弁はこれ以上求めません。済みません。

 それで、今日はまた、放送の親玉であるNHKの稲葉会長にも来ていただいているわけでございますが、私は、まさにNHKが放送をある種代表しているような、放送業界を代表しているようなところだという認識でありますが、今、先ほどから申し上げていますように、大きな時代の変革の中で、この間、NHKの予算のときにも議論させていただきました。

 そのときに、いよいよNHKの大改革プランをやり始めているというところでございまして、私はそのときに、稲葉会長の稲葉大改革プランを、ビジョンを是非ともお聞きしたいということで申し上げておりましたが、まだあれから二か月もたっていませんけれども、今のところどういう議論が進んでいるか、ちょっとだけ、短くお話しいただければと思います。

稲葉参考人 委員御指摘のとおり、放送と通信の間の垣根というのがなくなってきてございます。したがって、放送かとか通信かとか、そういったような議論は余り有益ではないのではないかというふうに思います。むしろ、公共的役割を果たしているNHKとしては、どういう在り方が望ましいのか、どういった役割を果たしていくべきかということが重要な論点ではないかというふうに思ってございます。

 インターネット活用業務の位置づけなどを含めて、総務省の有識者会議で様々な検討が行われてございますが、まずは、そこでの議論の推移というのを注視してまいりたいというふうには思ってございます。

 ただ、公共放送であるNHKは、まさに委員がおっしゃったとおり、正確で公平公正な情報を常に発信し、豊かで良質な番組を幅広く提供する、その上で、健全な民主主義の発展と文化の向上に貢献するということが重要な役割だとされてございますが、これはインターネットの分野でも同様な役割を担っているというふうに私は考えてございます。

 そうした中で、今後の将来像でございますけれども、NHKとして具体的にどう取り組んでいくかでございます。今、役員間で精力的に検討を進めている次期中期経営計画においてその辺をお示ししたいと思いますが、私の考えも含めて、くっきりした形でお示ししたいと思いますが、もうしばらくお時間をいただきたいというふうに思っております。

市村委員 ありがとうございます。

 今度、最近報道で、グーグルテレビなるものが、日本で、いろいろ話が出ている場で話題になっています。これは何か、世界の八百チャンネルですね、無料放送を同時配信するんだというような役割をやるんだというふうに言っているんですね。しかも、それはもう受像機ではない。我々、テレビというとブラウン管テレビなんですが、先ほどからも議論がありました、今のやつは、もはやモニターであって、あれは受像機じゃないですね。チューナーが受像機というか受信機ですね。

 だから、NHKは、受像機があるところは受信料を払わなくちゃいけないということになっているんですが、もはや時代が受像機じゃないんですね。そうなると、グーグルテレビなどというものが普及するようになったときに、NHKがグーグルテレビに配信されるかどうかというのを今日は議論したかったんですが、ちょっと時間がないので、もう議論しません。

 ただ、大切なのは、いわゆる受像機を持っているところが受信料を払うのであれば、グーグルテレビは受像機じゃないと主張されるのであれば、もう払わなくていいんです。しかし、受像機じゃないけれども、NHKもひょっとしたら見られるかもしれない、しかも同時配信ですよ。

 こういう時代に今あるというところの中で、NHKも、やはり、本当に受信料でいいのかどうかとかを含めまして、自ら自己改革を図らないと、いわゆる国民からすると、何で受信料を我々は払わなくちゃいけないのかということになります。

 そのときに、今、大改革を進められていますが、私は、是非とも、私のこれは要望ですけれども、日本語というもののすばらしさというものを世界に伝えてほしいんですね。どうせやるんだったら、どうせ残るんだったら。公共メディアとして、放送というか、日本公共メディア協会に名前を変えていただいたぐらいで、そして、日本語というもので、日本語で世界に日本の情報を発信する。もちろん、アニメや漫画とか、既に発信されて高い評価を受けているのもありますが、それ以外にも発信してほしい。日本語熱というのも大変あります。

 ですから、NHKが同時配信で、無料で、世界に八百チャンネルならば、そこに入っていただいて、むしろ積極的に出ていっていただいて、NHKのすばらしいコンテンツを、日本語コンテンツを世界に発信する。そこで世界の皆さんの日本語熱を高めていただきたいぐらいの、私は、これは個人的要望でございます。

 是非ともお願いしたいと思いますが、会長から最後に一言、ちょっとお願いしたいと思います。

稲葉参考人 NHKの国際的な放送の今後のありようなのでございますけれども、やはり、グローバル化が急速に進む中で、日本の姿、正確な情報を理解してもらうということは特に大変大事なことだと思ってございますが、それらはこれまでも努力していることなんですけれども、それに加えて、私は、日本のメディアから見た世界の在り方、視点というものも世界に発信していくべきではないかというふうに思ってございます。

 日本人が世界に対してどういう見方をしているのか、どのような考え方をしているのか、そういうことを世界に発信しながら、世界の平和とか民主主義の発展などに日本人として貢献していきたいというような形で国際放送を充実していきたいなというふうに考えてございます。

 現在のところ、ポストコロナを見据えて日本の価値、魅力を再発信するとか、世界で分断が深まる中で確かな情報、日本の視点を提供して相互理解を促進する、そういうコンテンツを充実させるということに努めてきてございますが、今後とも、更に質、量共に充実させるという形で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

市村委員 是非ともお願いします。

 日本の伝統文化を是非とも伝えていただきたいと思います。

 あと、残りの時間で、MNPワンストップについてちょっと質疑をさせていただきたいと存じます。

 携帯電話の契約会社を変えて同じ電話番号が使える電話持ち運び制度、これがMNPでございますが、について、MNO四社などが、大手四社なんだと思いますが、五月下旬にも、乗換先で申し込むだけで手続が完結する仕組み、いわゆるMNPワンストップを導入する予定との報道が出ているところでございまして、また、総務省としましても、ワンストップ導入に向け、ガイドラインの改正のためのパブリックコメントを実施中と承知をしております。

 MNPワンストップの実現は、乗換えを簡易にすることで携帯電話事業者間の競争を促進する観点から、望ましい方向と考えています。五月に予定されていると報道されている大手事業者のワンストップ導入以降、ワンストップを利用できる時間や範囲を拡大するよう事業者に促す等、より多くの国民がワンストップの利便性をより享受できるように引き続き検討してほしいというのが私の要望でございます。

 結局、ちょっと一つ具体的に言いたいのは、このワンストップが五月下旬から導入されるということなんですが、実は、現状、そのワンストップが利用できないケースがあります。一つは、店頭での手続ができない、ネットのみということであります。それから、ウェブでも二十四時間対応になっていないということ、これは二十四時間対応が義務づけされていないということ。この二つはまあ何とかと思うんですが、もう一つ、最後、家族割や光割を使用しているケースは、これは、やはり、そこに行って一回それを解除した上でないとネットでできないという状況になっているんですね。それではなかなか促進が進まないと思うんですが、これにつきまして総務省の御見解をお願いいたします。

竹村政府参考人 お答えいたします。

 MNPワンストップ手続は、既存システムの活用による低コスト化と、可能なところからできるだけ早く実現することを優先した結果、移転先事業者のホームページからのオンライン手続を基本として、先生御指摘のとおり、五月下旬から開始をすることとしております。

 御指摘の三つの課題につきましては、まず、店頭における手続につきましては、利用者からワンストップでの手続を希望する旨の相談を受けた場合には、携帯ショップのスタッフがオンライン手続への誘導や案内を行うとともに、利用者へのサポートを行うよう事業者に対して検討を求めてまいります。

 次に、夜間時間帯に行われた手続について、手続完了が即時に行われない点につきましては、即時の処理を実現するためには、移転元事業者の業務処理手順ですとかシステムの大幅な改修が必要となると聞いており、そのような点も踏まえて検討する必要があると考えております。

 また、家族割やセット割に関する手続につきましては、様々な契約や条件が複雑に関係することから、現在のMNP手続においても一括の対応はできておらず、まずは課題の整理が必要と考えております。

 いずれにせよ、総務省としましては、こうした課題につきましては、総務省の競争ルールの検証に関するワーキンググループにおいて検証を行いまして、利用者の利便性向上に向けて引き続き取り組んでまいります。

市村委員 では、検討をお願いいたします。

 これにて質疑を終わります。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 今回提出された放送法及び電波法の一部を改正する法律案に関しまして、まずは松本総務大臣に確認したいんですけれども、この改正案の意図はどこにあるか。つまりは、地元に地域情報を伝えている地方放送局、残念ながら先細りしていっているということで、今回の法案が提出されたと思うんですけれども、こういった地方放送局に対する、延命させるための救済策なのか、若しくは、もう抜本的に地方放送局の合理化、業務効率化を目指して新たな体系を構築するためのものなのか、その目指すものを、総務大臣、教えてください。

松本国務大臣 まず、今委員からもお話がございましたけれども、これまでも申し上げてまいりましたように、放送については放送法の対象となっておりまして、放送ならではの公共的な使命があると考えるというふうに申し上げてまいりました。

 具体的には、放送の、災害情報や地域情報など、公共性の高い情報をあまねく伝えるとともに、「報道は事実をまげないですること。」等の番組準則という規範にのっとって、いわば質の担保された情報を提供することにより、公共的な役割を担っておられるものと考えているところでございます。

 特にローカル局につきましては、地域の災害情報や地域の公共の情報などを提供する役割を果たしているという意味でも、大変大切であるというふうに考えております。

 先ほど、市村委員からの御指摘で、リテラシーというお話がございました。私ども、ICTリテラシーは大切であるという考え方でこれまでも進めてきているところでございますが、いわば情報リテラシーは受け手側の課題であるということでいきますと、放送について私どもが意義があると申し上げるのは、いわば情報の出し手側として放送の存在意義があるのではないか。

 その意味で、地方発のコンテンツというのは地方創生の観点からも重要でありますし、また、コンテンツの分野というのが将来期待される産業であるということからも、ローカル局も含めて日本全体の番組制作能力を維持発展をさせていきたいということで、今回の法案を出させていただいたところでございます。

 もちろん、これも先ほど議論がありましたが、経営の選択肢を増やすということで、経営の合理化を進めていただくことが期待をされているわけでありますが、私自身も、経営の合理化というのは、その先に続く投資など、新たな展開をするためのものであると期待をしているところでありまして、各放送事業者におかれては、今回御用意をさせていただいた選択肢なども活用していただいて、必要な合理化、また人材などの再編統合などもしていただきつつ、前向きな投資をしていただくことで、新たな事業の可能性などにも広げていただけたらと思っているところでございます。

伊東(信)委員 大臣のお話をお伺いすると、いわゆるびほう策というか、地方局の延命措置じゃなくて、もう抜本的に新しい体系を構築するものであると捉えさせていただきたいんですけれども、ただ、そういった場合、今回の法案の改正も、デジタル時代にある放送制度の在り方に関する検討会の取りまとめなどを踏まえて提出に至ったと思うんですけれども、そもそも、こういった地方放送局の経営難とか改革についてはこれまでも議論があったと思うんですけれども、なぜ今国会に至るまで出されなかったか、この時期に提出が必要とされた理由というのは何かございますでしょうか。

松本国務大臣 総務省としましては、これまでも、放送を取り巻くその時々の状況に応じて、制度の見直しなど必要な取組を進めてきたものというふうに承知をしておりますが、特に最近、スマートフォンの普及などによる視聴スタイルの変化、インターネット動画配信の普及、若者のテレビ離れなど、放送を取り巻く環境が大きく変わってきております。令和二年においては、全世代平均において、ネット利用時間がテレビ視聴時間を上回ったとの報告も聞いているところでございます。

 また、コロナ禍による経済の悪化という中で、放送の視聴者数や広告収入が大変減少をしたという状況も出てきておりまして、放送事業者の経営状況が以前にも増して一段と厳しくなったのではないかと判断をしたところでございます。

 このような状況を踏まえまして、総務省としては、令和三年十一月から有識者検討会を開催して、昨年八月の取りまとめを踏まえて、経営基盤を強化するための経営の選択肢を拡大するための、処方箋という言葉が先ほどありましたけれども、そのような趣旨で本改正案を提出をしたところでございます。

伊東(信)委員 そういった取りまとめの意見を聞いての話もあるんですけれども、やはり大臣もお感じになっておるように、ネット環境、ICTとかの発達によって、本当にもう少し早くてもよかったのではないかなとも思っております。

 そんな中で、この法案の中の方策の一つであります地域における放送番組の同一化に関して、やはり問題点は三つ四つ指摘せざるを得なくて、大臣の答弁にもありましたように、やはり地域の放送に対しての、災害とかの報道など、そういったところは共通認識だと思うんですけれども、であるのならば、やはり、同一化することによって地域の個性の低下が起こったり、放送番組の画一化を招くことになったり、若しくは、その地域の視聴者の利便性の向上という目的が果たされないのではないかという指摘もございますけれども、そういった点はどうでしょうか。

松本国務大臣 やはり、地域からの発信というのは大変重要であるというふうに思っておりますし、私も、総務大臣を拝命をしましてから、各地域を様々回る中で、総務省としても力を入れている各地域での地域おこしに協力をしている方々なども、一度地域に行きますと、本当に、三分の二近くの方がその地域での定住をお考えになるという意味でも、日本の地域はそれぞれ大変な魅力を持っているというふうに思っております。

 その意味で、是非やはり地域からの発信をこれからも行えるようにしてまいりたいと思っておりまして、委員も御案内のとおり、今回の改正案におきましても、放送番組の同一化を行う放送事業者には地域性確保措置を講ずることを求めております。また、同一化を可能とする放送対象地域の数の上限も省令で定めることといたしました。

 地域の情報発信機能を確保する上での重要な地域性確保措置については、具体的にどのような内容にしていくか、放送対象地域の具体的な数の上限をどう定めるかも含めて、国会における御議論、御指摘を踏まえつつ、地方自治体の幅広い方々の意見も聴取しつつ検討を進め、関係者と方向性を共有してしっかりと行われるようにしていかなければならないものというふうに考えております。

伊東(信)委員 本当に、メリット、デメリット、両方併せ持つことにはなると思うので、そういったところの問題意識を大臣はお持ちだと思いますので、そういったところのチェックは今後ともお願いしたいわけなんです。

 そういった中で、やはり地域の放送局のスポンサー離れというのは課題であると、その前の御答弁でもされていたわけなんですけれども、私は関西地方なので、あえては歌いませんけれども、例えば、グランシャトーであったり、オウミ住宅さんであったり、かに道楽さんだったり、「づぼらや」さんだったり、大人も子供も、今申し上げたメーカーの名前を出すとぱっと歌が出てくるんですね、子供の頃から慣れ親しんで。まあ、関西の人じゃないと分からないと思いますけれども。

 何が申し上げたいかというと、本当に、これ以外にも各地名産のコマーシャルがあったりとか、地域を支えていたスポンサーというのが、なかなか、昨今の状態によるとスポンサー離れが甚だしくなっているんですけれども、政府としては、何かこのスポンサー離れに対して、問題解決へ向けた方策というのを持っていられるんでしょうか。総務大臣、何かあればおっしゃってください。

松本国務大臣 放送の同一化を行うと、事業者からも、スポンサー離れのリスクに対する御指摘もあったわけでありますが、そのリスクについて御指摘をされた事業者も、経費の削減効果が大きいので、この収支バランスを勘案しながら判断をするということになるだろうというふうに申しておりました。

 経営の選択肢としての番組の同一化を御提案をさせていただいているところでございますけれども、経費の削減の効果、固定費、費用抑制の効果、十分に勘案をしていただいて、スポンサー離れのリスクをどう御判断いただくかは経営判断ではなかろうかというふうに思っているところでございます。

 私も今、委員にお話をいただいたCMは、確かに名前を聞けば歌いたくなるというのは分からなくはないんですが、やはり、是非、これは各地域における地方創生も含めて、地方の経済の振興というのも、私どもも政府としても是非進めていきたいと思っている中で、各地方で、それぞれ企業も御活用いただき、また放送に対する貢献もしていただけるような形を目指していくことが望まれているのではないかというふうに理解をしております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 ちょっとした自慢じゃないんですけれども、私も医療法人を経営していまして、数年前はサンテレビで、阪神タイガースの野球中継を見ていますと、僕のコマーシャルが出ていました。

 これはおいておきまして、ちょっと、全くもっての自慢ですけれども。済みません、貴重な時間を使ってしまいました。

 ちょっと話を変えまして、複数の特定地上基幹放送事業者によって中継局整備の、共同利用に関することに関してもお尋ねしたいんですけれども、一定の放送設備の共用が行われている現状において、事業者間で中継局に関するサービスや耐障害性の水準についてもやはり食い違いが生じているとお聞きしています。

 そうなると、やはりトラブルとか運営上の問題が生じることも必至と思いますけれども、政府として何らかの対応を想定しているのか、若しくは、複数の事業者が中継局を共同利用する場合、それぞれが実質的に中継局に、運営に必要な負担金である共同利用料金を払う必要があるんですけれども、この負担料金に関する合意が成立しない場合とかもあると思うんです。設備の共同利用が困難になる可能性もあるんですけれども、こういった場合も政府として何らかの関与を想定しているのでしょうか。ちょっと二つまとめて御質問します。

小笠原政府参考人 では、二つのお尋ねで、後段の、今、料金というお話で、各利用者が同じ条件できちんと利用できるのか、そこのところについてのちょっとお尋ねがございましたので。

 今の共同利用会社というものでございますけれども、複数の放送事業者に対して中継局を提供するということになりますので、基幹放送局の免許人ということになりますので、放送法において基幹放送局提供事業者というものに当たることになります。こういったものに当たりますと、放送法の規定に基づきまして、その提供に関わる料金、あるいは設備の管理方法等を定めた提供条件ということを事前に定めまして、総務大臣の方に事前に届出ということを行っていただく義務が課せられます。

 また、そういった提供条件以外の提供条件によって中継局を提供してはならないというふうに制度上されておりますため、制度上、利用者となる各放送事業者さんは、不当な差別的な取扱いをされないということが担保されるということになります。そうした環境下で中継局の共同利用ができるということになっているということであります。

 それから、もう一つのお尋ねでございますが、共同利用設備ということについて、実際、運営上、ちょっといろいろなトラブルあるいは運営上の問題が生ずるといったとき、そういったときに対する対応ということでございますが、まず、放送事業者さんは無線局の免許人ということになりますので、無線局の維持管理体制ということをしっかりと整備するということが求められます。

 したがって、実際、放送事業者さんが非常時、緊急時を含めて確実に業務を実施する体制を維持するということを現実にやっていただいているわけですが、今回の共同利用会社さんも電波法上の放送局の免許ということを受けることになりますことから、同じように、緊急時を含めて業務を確実に実施する体制ということを維持することが求められるところでございます。

伊東(信)委員 時間になってしまいましたので終わりますけれども、本当は電波オークションの必要性についてもお聞きしたかったんですけれども、浮島委員長に迷惑をかけるわけにはいかないので、終わります。

浮島委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。

 本日も質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回の改正は、ブロードバンドインフラの普及ですとかスマートフォン等端末の多様化が進みまして、インターネット社会が飛躍的に進展をして、また一方で、視聴者のテレビ離れが若年層を中心に進み、また、特に地方においては、人口減少の進展、また経済状況の悪化に伴いまして地方テレビ局も広告収入が減少して大変経営状況も厳しさを増す中で、ネット時代にあって、経営基盤を強化しながら、同時に、地域独自の情報発信や正確な情報、災害情報など、ローカル地方局の持つ重要な役割をどのように担保し、持続可能なものにしていくかという中での私は法改正であると認識をいたしておりますけれども、まず、この法改正の背景、趣旨について松本総務大臣に御説明をいただくとともに、本改正の中には、複数の特定地上基幹放送事業者による中継局設備の共同利用についてということが盛り込まれておりますけれども、このことにつきましては、私は、NHKと民間放送局との相互の信頼関係の下で運用されるということが大変重要だと思いますし、民業圧迫につながらないような円滑な運用が図られることが大変重要であると思います。

 その点についても、松本総務大臣に御見解を併せてお伺いをしたいと思います。

松本国務大臣 法の趣旨ということでまず御質問をいただきましたけれども、これも御答弁を申し上げていたところですが、近年、放送を取り巻く環境が大きく変化する中にあって、放送事業者が各地域においてその重要な役割を果たし続けるために、経営基盤を強化することが重要と認識をし、本改正法案で、中継局の共同利用、異なる放送対象地域における放送番組の同一化等を可能にすることによって、放送事業者が経営の選択肢を広げ、将来的な経営形態の合理化も含め、その経営基盤の強化ができるための制度整備を行うものであるということでございます。

 その中で、今委員からも御指摘がありましたけれども、中継局の共同利用につきましては、NHKと民放が、相互の信頼関係の下、個々の放送対象地域の実情について、各事業者のニーズを含めてよく情報を共有しつつ、協力して進めていくことが重要であるというふうに考えております。

 中継局につきましては、先ほど局長から御答弁申し上げましたように、放送法や電波法にものっとった形で、総務省も法に基づいてしっかりとフォローも、関与もしてまいらなければいけないと考えているところでございますけれども、地上テレビジョン放送のデジタル化の際の事例も参考にしまして、NHK、民放、総務省による検討の場を設けるなど、それぞれの役割分担も含めたコンセンサスの形成に向けて必要な後押しをしてまいりたいと考えております。

西岡委員 今、二番目に御質問した点、大変重要だと思っております。今後しっかり、総務省の果たす役割、重要だと思っておりますので、この円滑な運用を含めて、民業圧迫につながらない円滑な運用に努めていただくことをお願いを申し上げたいと思います。

 続きましての質問でございます。

 デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会におきまして、認定放送持ち株会社傘下の地上基幹放送事業者の十二地域制限の撤廃が要望されまして、省令が改正をされ、この度の法律案につきましては、十二地域制限が撤廃というものが盛り込まれております。

 従来の大変大切な原則でありますマスメディア集中排除の原則、このことにつきましては、できるだけ多くの者に放送の機会を与えるという多元性、また、視聴者が様々な情報を入手することができる多様性、また、先ほどから議論になっております、地域に根差した放送メディアを確保する地域性、このことをどのように担保していかれる方針であるかということを、松本総務大臣に御見解をお伺いをしたいと思います。

松本国務大臣 今委員からも御指摘がありましたように、マスメディア集中原則は、多元性、多様性、地域性の確保を目的とするものでありまして、令和五年三月の省令改正については、マスメディア集中排除原則を維持しつつ、放送法において省令で定めることとされている例外を拡大をしたものでございます。

 先ほども御答弁申し上げましたが、マスメディア集中排除原則の政策目的を維持するために、政策手段によっては、むしろ経営の選択肢を狭めていることによって、多元性、多様性、地域性を維持するためのローカル局の経営を厳しくすることがあるのではないか、そこを緩和することによって経営の選択肢を広げることが求められるのではないか、そのような視点からの議論であったかというふうに思いますが、検討に当たっては、総務省の有識者検討会において、資本関係と自社制作番組比率との関連性について分析をし、例外措置によって放送の多元性等は損なわれないとの結果を得るなど、与える影響について検証をしてきたところでございます。

 また、どのように担保をするのかということでございますが、省令の改正において、例外である規制を緩和する中においても、引き続き、一定の制限を設け、マスメディア集中排除原則は維持してまいります。

 また、放送法第百六十三条は、認定放送持ち株会社の傘下の放送事業者に対して、放送対象地域向けに自らが制作する放送番組を有するように努力義務を課しているところでございまして、放送の多元性、多様性、地域性を制度的にも担保をしているというふうに理解をしております。

 加えて、有識者検討会の取りまとめにおきましても、「制度見直し後も総務省において、放送の多元性・多様性・地域性に与える影響について引き続き検証していくことが求められる。」とされておりまして、総務省としましても、マスメディア集中排除原則の趣旨を踏まえて、放送の多元性、多様性、地域性が担保されるよう、省令で定める特例について不断の検証を行ってまいりたいと考えております。

西岡委員 大臣から検証という御説明がございましたけれども、大変重要なことだというふうに思いますので、しっかりこの原則を担保していただくための総務省としてのお取組を引き続きお願いを申し上げたいと思います。

 続きまして、放送事業者におきましては、地方ローカル局の多くはキー局の傘下に属しておりまして、関東広域圏ですとか中京広域圏、近畿広域圏は高い自社制作番組の比率がございますけれども、その他の県域ローカル局における自社制作の番組比率は、平均で一〇%程度というふうに今言われております。

 その中で、広告費の低下ですとか人口減少、テレビ離れも含めて先ほど申し上げたように大変厳しい環境にあるんですけれども、今日資料としてお配りをしている、令和三年度、四年度におきまして、文化庁芸術祭受賞の一覧、テレビドキュメンタリー部門でございますけれども、やはり、地域に根差した大変高い企画力や取材力、大変すばらしい番組を生み出されております。

 また、先ほどから議論があっております災害情報ですとか地域情報も含めて、私たちが生きていく上で大変重要な基本的な情報を提供するという大変重要な役割もございます。

 今の状況におきまして、このマスメディア集中排除原則が緩和されることによりまして、例えば、キー局ですとか首都圏の事業者の影響力が相対的に強まって、地方局の番組編成の自由度ですとか独自性が損なわれていく危惧はないのかどうか、また、その懸念に対して、一定の地域性を確保するための指針ですとか、検証、評価の仕組みを設けるということは想定をされていないのかどうか、これは事業者の皆様の負担になるという御意見も一方であるというふうに承知をいたしておりますけれども、総務省の見解をお伺いをしたいと思います。

小笠原政府参考人 委員ただいま御指摘のとおり、現在、我が国の放送は、公共放送であるNHKと民間放送とが切磋琢磨するという二元体制の仕組みがあり、その二元体制の下で、ローカル局は、災害関係、地方行政関係の情報など地域に密着した情報を提供する基盤としての役割を果たし続けておられるわけでございます。

 ただ、先ほど御説明いたしましたが、放送を取り巻く環境ということが、非常にスピードが変化しており、そういったローカル局を含めて厳しい経営環境の中にあるということは御案内のとおりでございます。

 そういった中で、御指摘の、個々のローカル局における放送番組を含めた地域性の検証、評価ということにつきましては、まずは、放送事業者さんの自主自律ということで、検証し、説明いただくことが重要というふうに考えております。

 ただ、その上ででございますが、総務省といたしましても、有識者検討会の取りまとめの内容も踏まえまして、制度改正による放送の多元性、多様性、地域性に与える影響等につきまして不断に検証してまいりたいというふうに考えているところでございます。

西岡委員 先ほどの大臣の御答弁ともつながる御答弁だったというふうに思いますけれども、やはりこの検証というのは大変大切だというふうに思っておりますので、是非しっかりと進めていただくことをお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、マスメディア集中排除原則の緩和や特定放送番組同一化が、今回、法改正で盛り込まれております。

 経営が大変厳しい地方局にとっては、経費の軽減につながる一方で、当然、統合も視野に入れた中での法改正であることも含めて、統合ということが現実として起こってくるというふうに思いますけれども、そのような中で、地方局の持つ大変重要な役割をどのように持続可能的に維持をしていくかということ、確保していくかということが大変重要だと一方では思います。

 そういうときに、統合ということが行われますと、地方の制作拠点が失われるということにつながるのではないかという危惧を私自身は持つわけでございますけれども、総務省の御見解をお伺いをしたいと思います。

小笠原政府参考人 今般の改正の目的でございますが、NHKと民放という二元体制の下で、ローカル局が、災害関係あるいは公共的な情報など地域に密着した情報を提供する基盤としての役割を引き続き果たし続けていっていただく、そのため放送事業者の経営の選択肢を増やす、そういう観点から行っているものでございます。

 今回の改正を踏まえまして、それぞれの放送事業者におかれ、その実情に応じまして、経営選択肢の活用の有無というのを判断された上、自ら戦略的に経営基盤の強化ということを図っていただき、引き続き地域における重要な役割ということを果たしていっていただくことを期待したいというふうに考えているところでございます。

西岡委員 今、特定放送番組同一化実施方針の認定につきまして、私も言及をさせていただいたんですけれども、このことについて次に質問をさせていただきたいと思います。

 この認定制度における認定の要件の一つとして、自然的経済的社会的文化的諸事情という要件があるわけでございますけれども、このことは具体的にどのようなものを示すのかどうか、また、総務省令で定める放送対象地域の数はどれぐらいになる見込みであるのかどうか、もし、その数が明確に、今御提示されるのであれば、その根拠も併せて総務省にお伺いをしたいと思います。

小笠原政府参考人 委員から今御指摘をいただきました、認定の要件となっております自然的経済的社会的文化的諸事情というところでございますが、これは、放送法第九十一条に定めます「基幹放送普及計画」というところで、地域の自然的経済的社会的文化的諸事情等を勘案して定めるというふうにされていることによるものでございます。

 内容について、ちょっと若干申し上げますが、今の具体的な内容について、例えば、自然的な事情とは、地域による電波の伝搬状況、他地域からの混信状況、それから経済的事情とは、基幹放送局の置局、あるいは基幹放送の業務の基盤となる地域の経済力、それから社会的事情とは、ほかのコミュニケーション、あるいはマスメディアの手段の普及状況、文化的事情とは、地域の歴史的、文化的な一体性等が考えられるところでございます。

 そして、もう一つ、放送番組の同一化を可能とする放送対象地域の具体的な数の上限といったことの定めについてのお尋ねでございますが、これにつきましては、地域社会に特有の要望を満たすという放送に期待される機能を踏まえつつ、国会における御議論、御指摘のほか、地方自治体等の幅広い方々の御意見を聴取しつつ、検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

西岡委員 先ほどからの私の質問ともつながるんですけれども、やはりその地域独自の詳細な情報発信というものが縮小していくのではないかという懸念を持っております。

 ただ一方で、大変、今、経済的に厳しい状況の中で、経営の選択肢を広げるという意味では大変重要な法改正の内容であることも事実でございますけれども、今回の法改正の内容につきましては、幅広い事業者からの要望があったのかどうか、また、視聴者の意見を十分に聞いて、その意見が十分に反映されている内容なのかどうかということにつきまして、松本総務大臣にお伺いをしたいと思います。

松本国務大臣 委員から御指摘がありましたように、放送事業者の経営をめぐる環境は大変厳しくなってきている中で、経営基盤の強化が必要だということで、この本改正案を御提案を申し上げてきたところでございまして、経営基盤の強化に固定費用の削減が一つのテーマとしてあるのではないかということで取り上げさせていただいたところでございます。

 これにつきましては、放送番組の同一化につきましては、有識者検討会において、放送事業者から要望がございました。経営の選択肢を増やすものであることを踏まえ、ローカル局との意見交換やパブコメなどにおきまして、放送事業者を中心に意見聴取を行った上で、昨年八月の取りまとめに盛り込まれたところでございます。

 経営の選択肢という趣旨で、今申しましたように、放送事業者を中心に意見を聞かせていただいてまいりました。このような制度の運用の詳細については、また省令等で定めるところもございまして、地域性確保措置の在り方などを含めて、視聴者や地方自治体からも幅広く意見を交換をして、法の運用を進めてまいりたいと考えているところでございます。

西岡委員 この在り方検討会の前提となったアンケートの結果においては、放送対象見直しを要望したローカル局は五%にすぎなかったというデータもございますけれども、今回の法改正を含めて、様々、地域のローカル局のやはり現場の御意見をしっかりと聞いていただくということが大変重要ではないかというふうに思っておりますので、引き続き、しっかりと現場の声を聞いていただきますようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次に、複数の特定地上基幹放送事業者による中継局設備の共同利用について、質問させていただきます。

 放送ネットワークインフラにおきまして、中継局においては、保有、運用、維持管理を担うハード事業者の設立が経営上の選択肢になり得るということが、検討会の中での議論で方向性が出されまして、NHK及び民間放送事業者による共同出資も考えられるという方向性が示されたことによって、法改正につながったというふうに理解をしておりますけれども、NHKが他の地上基幹放送事業者と中継局設備を共同利用するための規約が本改正には盛り込まれておりますけれども、NHKの受信料の一部が民間放送の経営基盤を支援することに使用されるということについて、NHKに受信料を払っている視聴者の理解を得ることは可能であるのかどうか。そこをしっかり、どのような形で説明をしていかれるのか、松本総務大臣とNHKにそれぞれお伺いをして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

松本国務大臣 御質問の件につきましては、私ども国光大臣政務官からも御答弁を申し上げてきたところでございますけれども、受信料はNHKの業務運営を支えるためのものであり、そのような性格のものとして国民・視聴者に御負担をお願いしているものと承知をしております。

 現行の放送法におきましては、NHKの業務を定める第二十条において、民放があまねく受信できるよう努める義務を履行する際には、NHKは必要な協力をするよう努めなければならないとされているところでございまして、NHKが果たすべき役割として法に位置づけられていると理解をしております。

 したがいまして、NHKは民放との中継局の共同利用に貢献することができると考えられることから、本法案において共同利用を可能とする制度を整備するものでありまして、また、中継局の共同利用によりましてNHK自体の業務運営の効率化が図られることもあると考えられます。

 NHKにおかれましては、放送法にのっとって、その業務に支障のない範囲において協力を行うとともに、視聴者の理解を得られるようしっかりと説明責任を果たしていただくことを期待をいたしたいと考えております。

根本参考人 委員御指摘のとおり、視聴者の皆様の理解を得ることは大変重要だというふうに考えております。

 今回の放送ネットワークインフラの共同利用などにつきましては、民間放送事業者との二元体制を堅持し、地域の皆様にNHKと民間放送事業者の放送を将来にわたって届けていくことを目的としております。その際、重要なのは、地域の放送ネットワークインフラを維持していくことだというふうに考えております。民間放送事業者と連携協力しまして、維持管理のコスト抑制や保守管理の人員確保に取り組むことで、視聴者の将来の負担軽減につなげていきたいというふうに考えております。

 詳細な内容につきましては、毎年度の事業計画で公表し、適正性などを説明することで視聴者の皆様に理解していただけるよう取り組んでまいりたいというふうに考えております。

西岡委員 時間となりました。これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 インターネットの普及による動画視聴やニュース閲覧など、テレビからの視聴者離れが進んでまいりました。本法案は、このような放送事業を取り巻く経営環境の変化を理由に、地上波テレビ、ラジオ放送事業者の経営合理化を一層促進しようというものであります。

 集約効果を上げるというのであれば、全ての放送時間帯でCMも含めて放送番組を同一にすれば一番コスト削減効果があると思いますが、そうじゃないですか、総務省。

小笠原政府参考人 ただいまの御質問の御趣旨、CMを含めた全ての放送番組を同一化する場合と、CMだけ別々にするなど、番組、一部を同一化するということと比べれば、全部を同一化した方が制作コストが一番削減されるのではないかという御質問でございます。

 御指摘のCMを含めて全ての放送番組の同一化を行う、そういうことによりまして、放送番組を送出をいたしますマスター設備等、設備を集約、統合するということが期待できます。

 その一方、一部の放送番組の同一化をするということになりますと、今の設備の集約、統合ということが困難となり、全ての番組を同一化する場合と比べますと、番組送出に関わる固定費用の削減の効果というところが限定的になるのではないかというふうに考えるところでございます。

宮本(岳)委員 この放送番組の同一化は、今回の法改正で初めて制度化するわけではありません。二〇一四年の法改正により制度化された認定経営基盤強化計画で既に制度化されたものであります。

 当時、この制度はラジオ局への適用を視野に入れたものでありましたけれども、我が党の塩川議員の質問に、テレビ局への適用も可能と答弁をしております。

 ラジオだけでなくテレビも視野に入れたものでありましたけれども、実際にその認定を受けるために計画を立てたケースはありましたか。

小笠原政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の経営基盤強化計画認定制度につきましては、制度が導入されて以降、これまで放送事業者からの申請実績はなかったと承知しております。

宮本(岳)委員 なかったんですね。なぜ実際に認定を受けるための計画が立てられなかったのか、その理由についてお答えいただけますか。

小笠原政府参考人 ただいま委員御指摘の、平成二十六年の放送法改正によって導入された経営基盤強化計画の認定制度でございますが、リーマン・ショック、あるいは地上テレビジョン放送のデジタル化などへの投資の負荷、又はラジオ等の放送事業者の経営状況が悪化した中で、引き続き放送に期待される機能を維持することができるよう、総務大臣が指定する放送対象地域において、放送事業者の経営の維持が困難である場合の特例として導入されたものでございます。

 そして、経営基盤強化計画認定制度におきましても放送番組の同一化は可能でございますが、放送事業者の方々から、経営リスクが顕在化する前に積極的な経営戦略を描きたい場合に利用できない、あるいは、認定後も毎年、計画の実施状況を報告する必要があるなど、経営基盤強化計画の申請、認定等の手続が煩雑で使い勝手が必ずしもよくないというふうな御意見があったところでございます。

 本法案は、こうした経営基盤強化計画に対する放送事業者さんからの御意見あるいは御要望ということを踏まえ、異なる放送対象地域での放送番組の同一化を経営リスクが顕在化する前に行うことができるようにするとともに、申請、認定等の手続といった運用面におきましても、簡便なものとすることで対応してまいりたいというふうに考えております。

宮本(岳)委員 経営の悪化が見込まれないとできない制度だったんですね。そんな計画を立てれば、あの放送局は経営危機らしいということになりますので、収入源である広告主が離れていく可能性が高いです。結局、放送局自らがそういうことをするはずがないんですね。

 今回の改正では、経営の状況にかかわらず認定できることといたしました。経営の悪化とか収益性の向上などにかかわらず、これで全ての放送時間帯で同一放送番組を同時に放送することもできることになります。これは、一体、誰の要望だったんですか。

小笠原政府参考人 委員御質問の点でございます。総務省の有識者検討会におきまして、テレビ朝日ホールディングスから、具体的に、系列内の複数地域で同一放送が可能となれば、当該複数地域の情報発信を維持しながら固定的費用の抑制が可能となり、コンテンツ制作にも寄与できるといったような御要望がございました。

 これを踏まえまして、取りまとめでは、具体的には、放送対象地域自体は現行から変更せず、希望する放送事業者において、異なる放送対象地域の放送番組の同一化が可能となる制度を設けるべきという提言が行われたところでございます。

 こうした提言を踏まえまして、近年の放送を取り巻く環境の変化を踏まえ、原則として異なる放送対象地域間の放送番組の同一化を認めていない現在の規制を緩和することとしたものです。

 具体的には、本改正法案では、放送事業者が経営困難となる前に経営の合理化が進められるよう、総務大臣の認定を受けて、異なる放送対象地域間の放送番組の同一化を、地域性確保措置を講ずる等の一定の条件の下で、経営状態にかかわらず可能とするものです。

 今後の詳細な制度設計を踏まえつつ、放送事業者において、放送番組の同一化の活用に向けた検討が進むものというふうに期待しているところでございます。

宮本(岳)委員 端的に答えてくださいよ。テレビ朝日ホールディングスから要望があったと。

 しかし、放送番組の同一化について、ローカル局がやはり影響は一番大きいんですね。ローカル局がどうおっしゃっているか、私も読ませていただきました。

 熊本県民テレビ、同一化が実現した場合には、ローカルスポンサーのニーズに応えられない可能性が出てくると考えられる、その結果、収益の悪化を招き、ひいては地域情報発信の量、質共に著しく低下するおそれがあると考える。

 テレビ金沢、一つの県等を放送対象地域とする放送局が他のエリアでも放送できるようにする制度変更については、政府が地域の歴史や経済事情などを総合的に勘案して定めた基幹放送普及計画と整合性が取れなくなるおそれがあるため、今後も認めるべきではないと考える。

 また、南日本放送からは、複数の放送対象地域における放送番組の同一化が要望されていると言うが、この検討会の議論の前提として示されたアンケート結果では、放送対象地域の見直しに関する要望は六社、約五%しかなく、地上波テレビ局の九割を占めるローカル局の意見が広く反映されているとは言い難いと異議を唱えております。

 だからこそ私は、本法案の審議を進める上で、地方ローカル局の視察や地方公聴会、地方ローカル局関係者を招いた参考人質疑などが不可欠だと言ってまいりました。総務省、地方のローカル局から、先ほど紹介したような批判の声や不安の声が出ていることは事実ですね。

小笠原政府参考人 今御指摘をいただきましたそれぞれの点についてでございますが、今御質問のありましたのは、有識者の検討会の取りまとめ案のパブコメに対し、三者から御意見を頂戴したところでございます。

 まず、熊本県民テレビでございますが、経営の選択肢が増える点では評価できるというふうにした上で、ローカルスポンサーのニーズに応えられない可能性について御指摘がございました。これにつきましては、放送事業者において、そのような可能性と同時に、番組同一化による固定費用の抑制の効果、それを十分に勘案した上で自らの経営に取り組んでいただくということではないかと考えております。

 それから、テレビ金沢からも、方向性は基本的に御理解いただけるということでございますが、基幹放送普及計画と整合性が取れなくなるおそれがあるという御意見がございました。これにつきましては、放送番組の同一化において、基本放送普及計画と同様に、放送対象地域の自然的経済的社会的文化的諸事情を考慮することとして、基本放送普及計画との整合性を取っております。

 最後、南日本放送については、ローカル局の意見が広く反映されているとは言い難いとの御意見がありました。

 その一方で、総務省の有識者検討会での議論に際し、県域の放送事業者さんとの意見交換を実施いたしました。その中では、地域での広告の価値、需要が下がる懸念があるが、将来的に経営状況が悪化した場合の選択としてあるということはあり得る、あるいは、選択肢が増えることはローカル局が経営力の維持向上を目指す上で前向きな材料になる、そういった御指摘を受けたところではございます。

 また、本法案で制度整備される放送番組の同一化については、放送事業者の経営の選択肢としてお示しするものでございます。本法案をお認めいただいた暁には、放送番組同一化の地域性確保措置、あるいは放送対象地域の具体的な数の上限等、ローカル局の御意見も十分に踏まえながら検討してまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 というふうに言い訳をせざるを得ないぐらい、現に私の指摘したとおりの意見が出ているわけですよ。

 それで、法案と併せて、マスメディア集中排除原則の特例を定めた省令が改正されております。マスメディア集中排除原則とは何か、この原則は既に打ち捨てられたものなのか、これも端的に御説明いただけますか。

小笠原政府参考人 マスメディア集中排除原則でございますが、放送法第九十三条第一項第五号に規定されております、一の者によって所有又は支配される放送事業者の数を制限するという考え方であり、同号のただし書におきましては、放送の種類、放送対象地域その他の事項に照らして基幹放送による表現の自由ができるだけ多くの者によって享有されることが妨げられないと認められる場合として総務省令で定める場合は、この限りではないというふうにされております。

 現在、放送事業者は、放送法九十三条第一項第五号の遵守が求められているところでございます。

宮本(岳)委員 現状でもこれは維持されているわけですね。

 それで、私、改めて、このマスメディア集中排除原則というものをめぐって、ここにお持ちをした放送法制立法過程研究会が出版した資料・占領下の放送立法というものをあらかた読んでみました。戦後の放送行政の原点は、一九五〇年六月の一日、電波法、放送法、電波監理委員会設置法のいわゆる電波三法が施行された日、この日なんですね、いわゆる電波の日であります。

 日本放送協会による放送の独占に問題があったことから、戦前の体制を改善するということで、民間放送を実現することで民主化を達成する目的があった。放送法施行後の一九五六年二月に、当時の郵政省は、テレビジョン放送局用周波数の割当計画基本方針を決定をし、基本方針では、基幹放送地域への開局を優先させるとともに、その後、他の地域へ波及させる中で、同一地域に複数の放送局を置くという内容でありました。

 マスメディア集中排除原則は、多様で自由な言論活動を保障するため、限られた電波が特定のメディアに集中しないように規制する政策であって、先ほど来何度も出ているように、多元性、多様性、地域性という三原則が掲げられております。これはつまり、分かりやすく視聴者の側からいえば、視聴者にできるだけ多くのチャンネル、選択肢を保障することが大切だ、こういうことで、大臣、よろしいですか。

松本国務大臣 マスメディア集中排除原則は、憲法二十一条により保障された放送による表現の自由ができるだけ多くの方によって享有されることによって多元性、多様性、地域性の確保を目的とするものでありまして、視聴者が、異なる様々な放送事業者から地域情報も含めた様々な放送番組の提供を受け、情報を入手することができるということが大変重要であるというふうに考えております。

 今回のマスメディア集中排除原則につきましては、政策目的は重要であるとした上で、有識者会議におきましては、その政策手段によっては経営の選択肢を狭め、かえって多元性を損なうことにもなりかねないと取りまとめられたことを踏まえて、今回、令和五年三月に省令を改正をしたものであると御理解をいただけたらというふうに思っております。

宮本(岳)委員 例えば、つい先日、岸田首相が約一時間にわたって日本テレビのバラエティー番組に出演をされました。これはG7サミットの説明などといって済まされない問題として、たちまち賛否両論、国民的議論が巻き起こっております。見たくなければチャンネルを変えればよいという声もありますが、そもそも変えればよいというものでもないと思います。しかし、チャンネルが一つしかなければ、あるいは放送番組が完全同一化してしまえば、どの地域に行っても全部同じ、岸田首相の顔ということになります。

 大臣、こういうことにならないためにマスメディア集中排除原則というのはあるんだと思いますが、それでいいですね。

松本国務大臣 マスメディア集中排除原則の意義については申し上げたとおりで、個別の番組についてのコメントはここでは差し控えさせていただきます。

宮本(岳)委員 もう一つ聞きますが、放送番組が完全同一化してしまえば、マスメディア集中排除原則の大事な内容の一つである地域性はどうやって守られるのか、これは局長にお答えいただけますか。

小笠原政府参考人 本法案におきましては、異なる放送対象地域で放送番組の同一化を行うことを一定の条件下で認めることとしておりますが、その場合、放送事業者には、地域社会に特有の要望を満たすという放送に期待される機能を果たしていただくことになります。具体的には、放送番組の同一化を行う放送事業者には、地域性確保措置を講ずることを求めるとともに、同一化を可能とする放送対象地域の数の上限を省令で定めることとしております。

 地域の情報発信機能を確保する上で重要な地域性確保措置につきましては具体的にどのような内容にしていくか、そして放送対象地域の具体的な数の上限をどう定めるかにつきましては、国会における御議論、御指摘を踏まえるとともに、地方自治体等の幅広い方々の御意見を聴取しつつ、検討を進めてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 番組内容の同一化で地域性をないがしろにしておいて、確保措置というのも大きな矛盾なんですね。仮に例示であっても、その例示が番組編成上の基準となってしまいます。そもそも放送番組の完全同一化によって独自の番組の編成、編集の権利を奪った上で番組内容にまで行政が口を出すならば、結果としては、放送事業者の自主自律、編成、編集権への制限にほかなりません。

 そもそもマスメディア集中排除原則は、既に長年にわたって骨抜きにさせられてきました。私がお話を伺ったある識者は、マスメディア集中排除原則は一九五九年に省令化されているが、このときから実は骨抜きになっている、今まで幾度も緩和というのがされてきたが、実際には適用されたことはほとんどないとおっしゃっておりました。今回の改正で、それが更に骨抜きにされてしまいます。このような省令改正は、一体、誰の要望なのか。

 先ほど述べたデジタル時代における放送の将来像と制度の在り方に関する検討会で、フジ・メディア・ホールディングスがマスメディア集中排除原則の緩和についてプレゼンを行ったというのは事実ですね。

小笠原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの持ち株傘下に入る放送事業者についての地域の数の制限ということについてのちょっと御要望がフジ・メディア・ホールディングス等々、事業者さんからございました。

 ちょっと、いずれもその理由といたしましては、放送事業を取り巻く環境が急速に変わる中で、やはり経営の選択肢ということを拡大するという必要がある、そういう趣旨で御要望があったものというふうに承知しております。

宮本(岳)委員 しかし、今回の法改正、立法の根拠がよく分からないんです。事前に伺った話では十三社が赤字だとも聞いたんですが、すぐにでも停波しそうなところがあるのかといえば、そういうわけでもありません。

 いろいろ調べてみたら、二〇二一年六月十八日に閣議決定された規制改革実施計画が目に止まりました。これは今回の法改正の議論の出発点として極めて重要です。

 この規制改革実施計画の中の十二、ソサエティー五・〇の実現に向けた電波・放送制度の在り方の二十、ローカル局の経営基盤強化には何と書いてありますか、局長。

小笠原政府参考人 令和三年の規制改革実施計画におきましては、マスメディア集中排除原則に関しまして、総務省は、マスメディア集中排除原則が目指す多様性、多元性、地域性に留意しつつ、ローカル局の経済自由度を向上させるための議論を進める。特に、役員兼任規制の見直しなどローカル局から直接要望のある論点に限らず、制作能力や設備面の集積や共用による、ローカル局の総合的な経営力、企画力の向上が可能となるよう、隣接県に限らない経営の連携等の枠組みなど、中長期的な放送政策の全体像を踏まえた施策を検討するというふうに記載されているところでございます。

宮本(岳)委員 ローカル局から直接要望のある論点に限らず、隣接県に限らない経営の連携等の枠組みなど、中長期的な放送政策の全体像を踏まえた施策を検討などと述べております。結局は、政権の意向を大手キー局に主張させて法案にしたものにほかなりません。邪道だ。

 このような邪道の放送局の経営効率化や放送番組同一化には決して未来がないということを指摘して、私の質問を終わります。

浮島委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、これを許します。宮本岳志君。

宮本(岳)委員 私は、日本共産党を代表し、放送法及び電波法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 本法案は、二〇一四年に定めた認定経営基盤強化計画を改め、制度利用について収益性の向上の規定を廃止し、経営の悪化が見込まれなくても、特定放送番組同一化実施方針の認定によって、特段の制約がないまま放送番組の同一化をできるようにするものです。これは、放送事業者が合理化を最大限求める場合、県域を越えて複数の放送局が同一の放送番組を同時放送できることになり、問題です。全ての放送番組で同一化されれば、放送を通じ様々な形で地域に貢献してきた民間放送局の地域性、多元性、多様性を損ないかねません。放送の魅力が失われれば、結果的に、視聴者や地元企業の放送離れ、経営の悪化を招くことになります。

 また、総務省は、将来にわたる放送事業の確保を名目に、放送番組の同一化を促し、地域性をないがしろにするにもかかわらず、地域性確保措置を求めること自体が矛盾です。地域性の確保を理由に総務省が番組の自主制作比率などの何らかの指標を示すならば、放送事業者の自主自律、編成、編集の自由への制約になりかねません。

 本法案に併せて、マスメディア集中排除原則の特例を定めた総務省令を改め、キー局に関連する持ち株会社が保有できる子会社の数について、都道府県の上限と隣接地域の制限をなくしました。これは、放送番組の同一化と併せて進めることで、視聴者を無視したキー局を中心とする地方のローカル局の再編を促進するものであり、視聴者・国民の放送視聴の選択肢を狭めるものです。

 そもそも、本法案の出発点は、ローカル局や視聴者の要望から出されたものではなく、規制改革実施計画の閣議決定が求めたローカル局の再編です。

 このような放送局の経営合理化、放送番組の同一化では、決して未来はないと厳しく指摘して、討論を終わります。

浮島委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 これより採決に入ります。

 放送法及び電波法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浮島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、武村展英君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。岡本あき子さん。

岡本(あ)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。

    放送法及び電波法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び日本放送協会は、本法の施行に当たり、次の各項の実施に努めるべきである。

 一 政府は、基幹放送事業者が本法による特定放送番組同一化を行う場合における地域性確保措置については、それぞれの放送対象地域における放送番組に対する固有の需要を引き続き満たせるよう、有効な当該措置となり得る典型例を示すなどの取組を行うとともに、当該措置の実効性が確保されるよう、必要な措置を講ずること。

 二 協会は、基幹放送局提供子会社の設立や当該子会社が提供する中継局設備の民間放送事業者との共同利用が、受信料を基にして行われることに鑑み、協会の資産を適切に使用するよう留意するとともに、広く国民・視聴者の理解を得られるようにすること。また、中継局設備の保守運用に係るコストが民間放送事業者よりも高いとの指摘もあることから、その要因を分析し不断に見直すとともに、共同利用を行う民間放送事業者の過度の負担とならないようにすること。

 三 政府は、特定放送番組同一化及び中継局設備の共同利用が柔軟な事業運営を可能とするためのものであることを踏まえ、基幹放送事業者が利用しやすいものとなるよう、その要件・手続等の明確化・透明化を図ること。

 四 政府は、令和五年三月の省令改正によるマスメディア集中排除原則の緩和後においても、基幹放送事業者によるそれぞれの放送対象地域における放送番組の多様性が確保されるよう、不断の検討を行うとともに、必要な措置を講ずること。

 五 政府は、協会及び各地の民間放送事業者が行ってきた放送が、災害情報や地域情報等の発信等において重要な社会的役割を果たしてきたこと、また、通信と放送の融合が一層進展していることに鑑み、引き続き視聴者へ良質なコンテンツを提供するなど放送の持続的な維持・発展を可能とするため、地方ローカル局の経営合理化など、その将来的な経営の在り方を含めた放送の今後の在り方について不断の検討を行うとともに、必要な措置を講ずること。

 六 政府は、デジタル社会を支え、国民生活に必要不可欠な放送・情報通信インフラの整備の推進、維持管理の確保に万全を期すこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

浮島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

浮島委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、総務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。松本総務大臣。

松本国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

浮島委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

浮島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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