衆議院

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第2号 平成29年2月15日(水曜日)

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平成二十九年二月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 宮下 一郎君

   理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君

   理事 伴野  豊君 理事 上田  勇君

      青山 周平君    今枝宗一郎君

      岩田 和親君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    大見  正君

      鬼木  誠君    勝沼 栄明君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      今野 智博君    佐々木 紀君

      斎藤 洋明君    坂井  学君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      竹本 直一君    津島  淳君

      中村 裕之君    中山 展宏君

      福田 達夫君    牧島かれん君

      宮路 拓馬君    宗清 皇一君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      山田 美樹君    和田 義明君

      若狭  勝君    今井 雅人君

      古川 元久君    前原 誠司君

      鷲尾英一郎君    角田 秀穂君

      浜地 雅一君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        木原  稔君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐川 宣寿君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    武内 良樹君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         村田 善則君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 平垣内久隆君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛装備庁装備政策部長)            中村 吉利君

   政府参考人

   (防衛装備庁技術戦略部長)            野間 俊人君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十五日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     八木 哲也君

  鬼木  誠君     宮路 拓馬君

  神田 憲次君     今枝宗一郎君

  斎藤 洋明君     中村 裕之君

  津島  淳君     勝沼 栄明君

  福田 達夫君     牧島かれん君

  伊藤  渉君     角田 秀穂君

同日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     青山 周平君

  勝沼 栄明君     岩田 和親君

  中村 裕之君     斎藤 洋明君

  牧島かれん君     今野 智博君

  宮路 拓馬君     鬼木  誠君

  八木 哲也君     神山 佐市君

  角田 秀穂君     伊藤  渉君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     神田 憲次君

  岩田 和親君     佐々木 紀君

  神山 佐市君     若狭  勝君

  今野 智博君     和田 義明君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     津島  淳君

  和田 義明君     福田 達夫君

  若狭  勝君     石崎  徹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主税局長星野次彦君、理財局長佐川宣寿君、国際局長武内良樹君、文部科学省高等教育局私学部長村田善則君、国土交通省航空局次長平垣内久隆君、防衛省大臣官房審議官土本英樹君、防衛政策局次長岡真臣君、防衛装備庁装備政策部長中村吉利君、技術戦略部長野間俊人君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大見正君。

大見委員 おはようございます。自由民主党の大見正です。質問の機会を与えていただいて、感謝を申し上げます。

 昨日の麻生財務大臣の所信表明を受けまして、質問をさせていただきます。

 日本経済は、安倍政権の四年間の取り組みによりまして、名目GDP、有効求人倍率などの各種の指標が着実に改善するなど、経済の好循環が生まれていると感じております。今後も、この流れを確かなものとし、成長と分配の好循環を加速していく必要があると感じております。

 しかしながら、米国トランプ大統領の就任により、ツイッターでの投稿などにより、自動車産業を中心に、今後の我が国の経済の行方にも大きな影響が出るのではないかと心配する声もあります。

 こうした心配から、きょうはトヨタ自動車の本社がございます八木哲也先生がお越しでありますけれども、私のところも、実はグループ企業が林立をしている選挙区でありますので、固唾をのんで、その関係者の皆さん方が成り行きを見守っているというのが現状でございます。

 このような中、先週末、安倍総理とトランプ大統領の首脳会談が持たれ、麻生副総理も同行されたのでありますけれども、我が国の安全保障に係る点については大きな成果が上げられたと評価する声が大きいと承知をしておりますが、自動車産業についてはどうであったのか。我が国の自動車産業が米国で百五十万人もの雇用を生み出し、品質管理や生産性向上などの面でもこれまで大きな貢献を果たしてきたことなどについて米国の十分な理解が得られたのか、伺います。

 また、為替問題もやり玉に上げられておりましたけれども、我が国の金融政策が、為替操作を目的にしたものではなく、デフレ脱却を目的にした金融緩和政策であるとの信認は得られたのか。日米協議全体の成果とともに、お答えをいただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 極めて不確実性の多いトランプさんという方ですから、私らから見てどういう人かというのは、政治家でこの方に会った人はおられぬわけなので、安倍総理が就任前に会っておられるだけなものですから、どういう方かというのは極めて、両者のケミストリー、化学記号が合うかどうかが非常に大きな問題だとは思っておりましたけれども、昨年の十一月、よかったという話の結果は知っていましたので、ただ、本人はどうかなというのが正直なところだったんですが。

 少なくとも、話は極めて率直でしたし、建設的な話が多かったと思っておりますので、首脳会談で約四十分間ぐらい、昼飯で一時間、四十分、五十分ぐらいだったと思いますけれども、極めて雰囲気としては悪くなかったし、しゃべり倒すような感じよりは、ノートをとって聞いているという感じで、極めて雰囲気としては、私の想像していたものとは違っていました。

 それから、自動車産業のお話がありましたけれども、この話は、ここは多いですな、本当に。おたくたちは古本さんもいるんだよな、たしかそこに、きょうはいないけれども。皆、ここにずらっと四、五人いらっしゃいますけれども、自動車の生産台数は、私ども福岡県も愛知県に次いで多いので、非常に気になっているところではあるのですが。

 かつて、車は三百八十万台、九十万台を輸出していたものが、今、百六十万台ぐらい。対米輸出がそれくらい減ったことは確かなんですが、アメリカでつくられている自動車は、プラザ合意の前後のころは四十四、五万台、それが今じゃ三百八十万台ぐらいつくられている。これはペンスというインディアナ州の知事で、今度、副大統領になった人が教えてくれた数字なんですが。

 少なくとも五大湖、五大湖というのはオンタリオとかあの辺の五大湖で、カンザス、オハイオ、インディアナ、イリノイ、あの辺の州、いわゆる今回の選挙でラストベルトと言われた、あの地域の代表知事みたいな人なんですが、この方の話は、日本の車生産が、例えばインディアナだとスバルがあそこへ行っているんだと思いますが、エンジンやら何やらで極めて優秀で、ほとんど日本人はいない、アメリカの労働者だけを使って車をつくってくれているなんという話はとうとうと、こっちよりよっぽど詳しく知っていましたので、そういった意味では、日本の産業というものの貢献度に関しては、雇用に関しては最も貢献度の高いのは日本。これもすらすら言えるぐらいよく知っていましたので、そういった意味では、今後の交渉をやるに当たっても、この種の話としては、まずそこの辺の常識、わかっている話をひっくり返すところからスタートするのとは全然わけが違って、この人とは話がしやすいかなという感じが私の率直な実感でしたけれども。

 やはりしゃべり倒す、ペンスはほとんどしゃべらないという感じですから、大統領と副大統領の性格は全然違っているという感じはしますけれども、いいコンビだ。あれは組み合わせが合えばいいコンビなんだなと思って、片っ方は議会に圧倒的な支持がある人ですから、片っ方は議会のつき合いはゼロという人ですので、そういった意味では、両極が一緒になってどうなるかなと思っていましたけれども、二人を見ていた感じは、極めてペンスはトランプを立てますし、いいところだなと思って見ておりましたので、日米関係というのは、今後、そうぐちゃぐちゃするような形になるということではないのではないかと。希望的な観測が入っているかもしれませんけれども、率直な実感です。

大見委員 いい関係になっていくというお答えがあり、大変期待をするところであります。

 また、インディアナ州の知事を務められたペンス副大統領と麻生副総理の間で、今後、日米対話が始められることが決められたということも伺っております。この対話では、自動車問題などの日米の、先ほどお話があって、ないとは思いますけれども、無用な摩擦というのは回避をしつつ、本来であれば、日米が協調して世界経済をリードするような、そういう中身の濃い対話が行われることが望ましいというふうに考えております。

 実際の経済対話の中身は、TPPからの離脱も踏まえて、二国間貿易のあり方や、また、インフラ投資に係る分野など、極めて実務的なものになるのではないかという報道もあるようでありますけれども、どのような中身でいつごろから始まるのか、具体的なものは発表をされておりませんでした。

 また、安倍総理は、日米首脳会談後の共同記者会見で、新幹線やリニアモーターカーなどの高速鉄道技術で日本の貢献を提案されておりましたけれども、JR東海のある地元の愛知県の議員としては、日米経済対話の方で米国での導入と鉄道インフラの協議も議題にもし上がるとすれば、ぜひ、麻生副総理の手で交渉をまとめていただきたいと大きく期待をするところであります。

 そこで、日米経済対話では、新幹線、リニアも含めましてでありますけれども、どのような内容を取り上げていくのか。基本的なお考えなど、副総理としての見解を伺います。

麻生国務大臣 昔、佐藤・ニクソン会談という、多分これが日米の繊維交渉のスタート、始まりで、これ以来、日本は繊維だ、鉄鋼だ、自動車だとありとあらゆるこういった交渉をやり、その後は、関税障壁だ、非関税障壁だ、産業構造だというのをずっと長いこと日米間で経済交渉をやってきたんですが、向こうが何とかしてくれという話をこっちは受けて、どうするかという話だけだったと記憶しますが、今回初めて日本側から、経済対話というより、こちら側から振り込んで、こちらから交渉するのは、副総理を出すから、おまえのところは副大統領を出せという話で、相手の名前まで指名してやった例は過去に一回もないと思いますが、そういった意味では、枠組みとしてでき上がっているんですが。

 基本的に、この方の大統領選挙に出られるときの話を見ても、今のアメリカの貿易赤字が、対中でこれだけ、対日、対メキシコという例を四つ引かれていますが、ドイツがぽこっと抜けていたり、余り知識がそんなにはっきり入っているわけじゃないなと思って数字は聞いていたんですけれども、そういう感じの方ではあると思いますけれども。

 少なくとも、一回覚えると話はぱっと、次の会議からは二度とその数字は、別の数字を言ってきますから、きちんと知識が入ると、インプットされると、ちゃんとそれを消化して話ができる人だという感じはしました。

 今回も、ペンスというのを安倍総理の方から振り込まれて、大統領との首脳会談の席でペンスに向かって、では、こっちはペンスとその場で指名しましたので、そこでペンス副大統領と握手をして、それでスタートすることになったんですが。

 先ほど申し上げましたように、少なくとも、アメリカの中西部にいたという方は大体パスポートを持っている人がほとんどいない、国会議員でもほとんどパスポートを持っている人はいなかった、いないのが昔だったんです。最近は少しふえたとは思いますけれども、昔は三分の一も持っていない、ハワイといったら日本かと思っている人が多いぐらいの国会議員が多かったという記憶が、私はもう何という国だろうなと思ったのが三十年、四十年ぐらい前の記憶なんですけれども、今はそんなことはないんでしょうけれども。かなり中西部にいる方というのは、この辺が世界の中心と確信しておられる方が多いので、話としては難しいところがあるんですけれども。

 ただ、この方は日本に七回か八回か来ておられますし、自動車交渉というより、自動車の誘致をやられて、積極的に来られたという方でもあるので、いろいろな話は、自動車側に限らず、新幹線の話も、これはきょうもアメリカ側から、ダラス―ヒューストンというのが今一番具体的なんですけれども、ダラス―ヒューストン、東京―名古屋ぐらいになりますか、そういったところの新幹線をやりたい。これはリニアじゃなくて新幹線です、こういったものをやりたいという人がアメリカからきょう日本に来ますし、そういった意味では、かなり積極的に動いているという動きがあることはもう事実だと思っておりますが。

 いずれにしても、こういったものを含めて、長く時間がかかって、TPPなんて、あれは三年かかって、今から結果が出るのは十五年も先の話になるものはいっぱいありますが、こちらの方は中間選挙までにそれなりの成果を得たいと、極めて即物的な話だと想像できますので、そういったものに対応するような話を手際よくやっていかないかぬなという感じがしておりますので。

 私どももチームを組んで、こういったプロジェクトを含めて、ウィン・ウィンの関係にならぬと話にならぬので、向こうが言ってきたものをどうやって受けるかだけでは全然意味が違うと思っております。

大見委員 時間の方が大分迫ってきておりますので、国内の政策運営についても一点だけお伺いをいたしたいというふうに思います。

 国内政策、これを着実に進めていくというのは、今の日米関係のような世界経済の変化という外的な要因は別にして、大変重要なことだというふうに思っております。デフレからの完全脱却、これを軌道に乗せていくためには、さらにアベノミクスを加速させていかなければならないところであります。

 そのためには、企業活動で、大臣がたびたび言及されておりますように、企業の内部留保を賃上げや投資に回していただき、各層各分野、全国津々浦々に行き渡るような、あらゆる政策を総動員していかなければならないというふうに考えております。

 そこで、今後の経済運営について、財務大臣としてどのようなかじ取りをしていくのかをお伺いして、質問を終わっていきたいと思います。

麻生国務大臣 間違いなく、マクロの数字としては有効求人倍率、失業率、GDP、賃上げ等々、いずれもマクロ的な数字は大きく改善していることは間違いないと思うんですが、地域差や企業間格差、また世代間格差、いろいろなものが残っておりますので、こういったものをやり直していく、構造改革していくというのが大前提なんだと思いますが。

 いずれにしましても、今、中小企業、零細企業等々、いろいろ区別の仕方があろうとは思いますが、今、内部留保の話が出ましたが約三百兆、この三年間で見ましても、年間平均二十三兆から二十五兆円の内部留保がたまっていっておりますが、それに比べて設備投資が、約七十五兆円に対して設備投資が八兆ちょっと。

 賃上げが、上がった上がったといったって三兆ちょっとぐらいなものですから、そういった意味では、こういったものがもう少しきちんとした形で賃金とか配当とか、それからまた設備投資といったようなものに回っていくようなことを考えないで、金利もつかない金を内部留保でため込んだって何のあれにもありませんから、そういったものがIoTとかAIとか介護ロボットとか、今いろいろなものが出てきておりますけれども、こういったものをやる。

 加えて、働き方改革という話が最近よく出てきておりますが、長時間労働の話とか、まあ、国会の長時間労働もいいかげんにしてもらいたいなと思わないところがないわけではありませんけれども、そういった意味でも、こういったものをきちんといろいろやっていくいい機会なんだと思いますので、私どもとしては、いろいろなことをやっていくのに当たって、いい機会だと思っておりますので。

 こういったものを連合の方々も、きのうもお話ししましたけれども、いろいろ話をしておられますので、私どもとしては、こういった話を含めまして、日本人の生活全体への、この働き方の改革というのは大きな生産性につながっていく、大きな糸口になり得ると思って、私どもとしては、こういったものも含めて検討させていただきたいと思っております。

大見委員 時間が参りましたので終わりますけれども、金融政策については伺うことができませんでした。

 今、さまざまな政策メニューがあるわけでありますけれども、これを使っていかなければ効果が上がっていかないというふうに思いますので、その意味で、金融機関の果たす役割というのは非常に多いというふうに思います。またしっかりとした金融機関との連携をとりながら、こうした施策を一つでも二つでも大きく前へ進めていただくように望みまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、浜地雅一君。

浜地委員 おはようございます。公明党の浜地雅一でございます。引き続きまして、質問させていただきたいと思います。

 私も、先週行われました安倍総理また麻生副総理の訪米について、まずはお聞きをしたいと思っております。

 まず、麻生大臣、訪米、大変お疲れさまでございました。まさにトランプ大統領が大統領就任前からさまざまな発言をされまして、国民の中に安保の面また経済の面で不安があったわけでございます。

 特に、安保の面でございますと、駐留米軍経費の問題。これも、安倍総理が帰ってこられた後に、NHKの番組でこの問題は終了したのではないかという表明をされました。非常に国民の中では懸念が払拭された、大変安心をしたということで、すばらしい訪米だったというふうに私は思っております。

 経済の面でおきましても、先ほど大見委員から御質問がありましたとおり、為替の問題でありますとかアメリカへの投資の問題についても、ある一定程度の枠ができたのであろうというふうに思っております。

 私、今回の訪米を見ておりまして、まさに政権が安定することの大切さというものと、それと、やはり外交におきましては、政治家個人の資質というものの大事さというものを感じました。

 やはり、外交の面で、自分の国の政権が足元が揺らいでおきますと、足元を見られ、外交もうまくいかないという中で、自公政権はもう五年目を迎えます。しっかりと安定した中、安倍総理と麻生財務大臣、副総理として行かれまして、非常に安定感を持った外交が今回の結果を導いたのではないかというふうに思っております。

 それと、やはり政治家個人の資質でよりますと、これは安倍総理自身がNHKで言われておりました。ペンスさんに今回のカウンターパートは麻生大臣ですよと言ったときに、非常にタフな男だなというふうに答えられたと言っております。

 私は見てのとおり軽量級でございますけれども、大臣とは三十歳違いますけれども、しっかり経験を積んで、相手方に少しでもタフな男に見られるように頑張っていきたいなというふうに思った次第でございます。

 ですので、今回の訪米は、蜜月なんて言われておりますけれども、やはり、麻生副総理としての存在感が一つアメリカ側に緊張感を与えたのではないかというふうに私個人としては思っております。

 そこで、先ほど、大見委員の質問とかぶりますけれども、麻生大臣の方で、ペンス副大統領とのお話につきまして、日本企業はアメリカに非常に直接投資を行い、また雇用も含めて大変大きな貢献をしているということの認識があるというふうにお伺いをいたしました。

 私自身も、ペンス副大統領はインディアナ州の元知事でございますし、昨日の予算委員会でもございましたとおり、日本の多くの自動車企業が直接投資をこのインディアナ州に行っております。むしろ逆に、このインディアナ州の例が全米に広がるんじゃないかという淡い期待をまたペンスさんに持たれても逆に困るなというぐらい、インディアナ州はうまくいっているところだと思うんです。

 改めまして私からも、日本企業のこれまでの米国への直接投資の評価、また、ペンスさん自身の、麻生大臣がお会いになって、個人的な人物像の感想も含めて、私の方からもお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 私と真逆で、物すごく真面目な人だと思いました。ちょっと一杯行こうかという雰囲気の人ではなかったので、真面目な人だというのははっきりしていたと思いますし、日本に七回来て、いろいろな講演なんかしているんですけれども、この話の内容を調べてみても極めてまともなことをしゃべっていますから、そういった意味では、わあ、これはえらいかたいおじさんやなという感じはしましたし、見るからに、トランプが私の方に振り込んできて、こっちはげらげら笑っても、向こうは黙って固まっているような人だったので。

 終わった後、あなたはゴルフをするのかと聞いたら、すると。大統領とか総理は勝手にやっているんだ、俺たちもやらない手があるか、こっちだってやろうやと。インディアナに行こうかと言ったら、インディアナに来た日本の閣僚はおらぬと言うから、じゃ、呼んでくれと。ゴルフ場はあるのかと言ったら、ばかにするな、物すごくいいゴルフ場があると言われて、ああそう、じゃ、呼んでくれ、そうしたら行って交渉しようという話をしたんですけれども、肩をやわらかくするのに少し時間がかかるかなという感じの人ではありました。

 少なくとも、今、自分の州に日本の企業が百九十一社あるとか、雇っている人間の数は四万三千九百人そういった人がいるとさっと言いますから、そういったことに関しては、事自分の州のことに関しては間違いなくきちんと頭に入っているんだと思いますが、アメリカ全体で何十万とか、そういった数字にちょっと勉強し直してもらわないかぬところが出てくるんだとは思いますけれども。

 こういったような話をして、日本とアメリカ、実質一番と二番の経済力を持っているところが組んでやるということの安定感、どれくらい大きなものをこのアジアに与えると思っているんだ、もう大西洋より太平洋に軸を移さないかぬ時代に変わってきていることはアメリカだって確かなんだろうから、何となくヨーロッパはちょっと今ぐちゃぐちゃしているけれども、アジアは伸びていくんだから、こっちに軸足を移さないといかぬのではないのという話をしてありますので。

 ゆっくり話をすることになるんだと思いますが、時間をかけてきっちり、やはりやってよかったという話をする形にしないと意味がありませんので、我々としては、今までのように言われた話をいかにうまくやるかではなくて、こちらもいろいろ提案をして、両方で話ができるという形にしていかないかぬところだろうと思っております。

浜地委員 ありがとうございます。

 お二人の関係の具体的なイメージが非常に湧いた御答弁をいただきました。

 先ほど、大見委員の御質問の中では金融政策についてのアメリカ側の理解ということも問われておりましたけれども、私からももう一度お聞きをしたいと思っております。

 ムニューチン氏が財務長官にきのう承認をされまして、はっきりとしたカウンターパートとして、また経済対話以外の金融政策についても、これからムニューチンさんとの間で麻生財務大臣として対応されていくことになろうかと思っております。

 為替の問題をさまざま言われましたけれども、まずは金融緩和をしたのはアメリカでございました。その後日本がおくれて、自公政権になって本格的な金融緩和を行いまして、それでマネーサプライの量というのは非常にリバランスをしてきております。ですので、これは決して為替操作ではないというふうに私自身は思っております。

 この為替政策、為替政策と言いますとちょっとマーケットに影響がございますので控えますけれども、金融政策の日本のあり方について、安倍総理は一定の理解を得られたというふうに思われておりますが、麻生大臣としましてアメリカ側の認識はどうだったかをお聞きしたいと思っております。

麻生国務大臣 私が向こうに行ったときは、まだスティーブン・ムニューチンという人は議会で承認をされておられません。五十対五十で、一回は、副大統領の一票で入って、五十一対五十で上院は通ったんですが、その他のところは通らず、実は問題というので月曜日に延ばされて、月曜日の午前中が午後になって、午後六時だったかな何かで、こっち時間で九時半だったと思いますが、その辺で通ったのが、五十三対四十七ぐらいで通っていますので、そういった意味では、いろいろ、内部の中にも反対があるという人なんでしょうけれども。

 仕事はできる、それから、GS、ゴールドマン・サックスだかJPモルガンだかで、日本に半年いたと言ったかな、半年ぐらいいた経験があるので、東京がどうたらとかいろいろな昔の話をされるそうですから、そういった意味では、日本に詳しい、詳しいとは言いませんけれども、知っている人なので、全くの無知ではない。

 それから、金融に関しては、為替、こういったような話やら何やらに関しては、これはもう、彼の上司というのをちょっと知っておりましたものですからその上司から聞き出した話は、おやじほどすさまじいトレーダーではないけれども、おやじに比べて能力は落ちるが人柄はいいぜと教えてくれたので、ああそう、サンキューと言って、そいつにはお礼を言ったんですが。私は直接知りませんので、情報しか知りませんけれども。

 少なくとも、為替やら何やらで、トレードなんかの話で為替を介入させる、これはG7、G20では全然その話は今通りませんから、そういったことはできないというのが国際情勢であって、事の知識だけはしっかりしているという話の保証だけはもらっていますので、そういった話を避けて、きちんとした話をしていかないかぬのが一点。

 それから、G7の中ではみんな知っていますけれども、少なくとも、二〇〇八年のリーマン・ブラザーズの破産のときに、あの騒ぎのときに、日本が十兆円のローンをやってIMFを安定させて、そのときに、イギリスとアメリカが先頭を切って金融緩和をやって、ポンド安、ドル安をやったというのの、間違いなく切ったのは向こうがやったのであって、うちはその間じっと黙って耐えた方ですから、七十円まで円が暴騰させていった間、あのとき日本も同じことをやったら一九三〇年代のあの騒ぎと同じようなことになったはずなのに、日本が耐えたからなったんだろうがということはよく向こうも知っている、これだけは間違いないという話だったので。そこがわかってもらわないと、最近のことしか知らない人たちばかりを相手に話していると、今の話しかしませんので、そういった点はしっかりしていることは確かだそうです。

 こういった話をわかっておいてもらうのであればいろいろな話の仕方もありますので、今後とも、日本が金融緩和で円安だなんて言われたって、まだおまえ、俺のところはリーマン・ブラザーズのときのあれが、二百四十円が百二十円まで円高になったときでしたから、まだ百二十円まで行っていませんから、うちは円安と言われる覚えはない、まだ円高の方なんだということが言えるという状況が頭に入った上での話をするのと、そうじゃないのと全然意味が違いますので。

 そういった意味では、これからゆっくり話をしていかないかぬところだと思いますが、どの道、バーデンバーデンのG20が最初のときになるんでしょうから、そういったときからいろいろバイでスタートさせていかないかぬと思っておりますけれども。

 私のときはジャック・ルーという人とその前のガイトナー、そこらあたりが私の最初だったんですけれども、その人たちも最初はえらい基礎的知識を覚えてもらうのに時間がかかりましたけれども、この人の場合、最初からそこのところはわかっておるという、本当かどうか知りませんよ、という話ですから、そこらでは話がしやすい人なのかなとは思っております。

 いずれにしても、向こうもアメリカを背負って出てくるので、こちらもこちらの国益に沿って戦っていかないかぬところだと、戦っていくと言うとちょっと聞こえが悪いですね、話し合っていかないかぬところだと思っております。

浜地委員 かなりお詳しい答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 本当に、麻生大臣は経済対話の面でも、こういったほかの金融政策の面でも、さまざまこれから実務の面で働かれると思いますので、しっかりとまた我々もサポートをさせていただきたいと思っております。

 最後の質問にさせていただきたいと思います。

 公明党としましては、内政の問題で、軽減税率制度の周知徹底状況について、最後お聞きかせをいただきたいと思います。

 私も、税理士会に出たり小売業の販売の方々とお話をしまして、いまいち、この軽減税率の制度というもの、特に、テークアウトなのか店内飲食なのかとか、または、小売業者におきますと、いわゆる五千万以下の売り上げにおきますとみなし売り上げで軽減税率が計算できる等々、さまざま、国民の懸念について周知徹底をし、措置をとっているわけでございますが、消費税増税が延期をされまして、この軽減税率制度の導入も少し時間が延びたわけでございます。

 しっかりとこの軽減税率のさまざまな懸念についても周知徹底を財務省にお願いしたいというふうに思っておりますが、ここは木原副大臣に、今の軽減税率の周知徹底状況をお聞かせいただきたいと思います。

木原副大臣 浜地委員御指摘のとおり、政府といたしましても、この軽減税率制度の円滑な実施に向けては、周知、広報等にしっかりと取り組むべきだというふうに考えております。

 また、法律の中身についても、事業者の準備状況等を検証しつつ、必要な対応をするということが明記されております。

 現在の取り組み状況ということでございますが、軽減税率制度についてのQアンドAを公表するとともに、事業者団体等とも連携の上、平成二十八年四月から現在までの間に約七千五百回の説明会等を実施しております。そして、参加企業等は延べ二十一万事業者数ということになっております。また、事業者からの相談についても、専用の窓口において丁寧に相談に応じているところでございます。

 引き続いて、この準備状況を把握しつつ、万全の対応を行ってまいります。

浜地委員 ありがとうございます。私もしっかりまたこの軽減税率制度を説明していきたいと思っております。

 以上で終わります。ありがとうございます。

御法川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。伴野豊君。

伴野委員 民進党の伴野豊でございます。

 まず冒頭、恐縮でございますが、きのう大臣所信をいただいてきょうから質疑、野党におきましてはこの一時から四時間ということで質疑をさせていただくわけでございますが、漏れ伝え聞くところによると、予算委員会では職権で中央公聴会が立てられたということでございまして、当委員会におきましても、充実した審議をしていく中で、与野党筆頭も重ね重ね協議をしているところでございまして、昨年の末の議長さんの所感にもありますように、当委員会におきましては引き続き与野党の真摯な協議のもとで委員会運営がなされますことを改めて、言わずもがなではございますが、委員長にお願いしておきたいと思います。

 さて、では質問に入らせていただきたいと思います。

 麻生副総理・財務大臣におかれましては、予算委員会の中、あるいは当財務金融委員会が控える中で渡米されて、そして国益をかけて御協議あるいは会談に臨まれたこと、この点に関しましては、同じ政治家の一人として、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。

 そうした上で、これこそ副総理におかれましては言わずもがなかもしれませんが、やはり政治は結果責任だと思っております。報道ではゴルフ云々というお話が出ておりますが、私の個人的な意見として、両首脳のコミュニケーションが円滑にいき、そして本当に腹を割った、日米同盟の上でのお互いウイン・ウインの、そして、あるときは助け合う、あるときは支え合うということがきちっとできる、そうした協議がなされるのであれば、私は、二十七ホールと言わず、五十四ホールだって、でも、これは結果責任だと思います。全然ゴルフをやらなくても、結果が出なければ、私はそれは一定の責めを受けるんだと思いますが、別に遊びをされているわけではない、スポーツをされているわけでございますが、それはなかなか緊張感の中でやっているわけで、プライベートのものとは、私も外交を少しかじった人間としましては、やはりその中でも、お食事をされている中でも緊張感の中でやっていらっしゃると思いますので、私はそういう認識をしております。

 今回の首脳会談は、本当に、大変失礼な言い方をすれば、トランプさんが御当選されて、多分、副総理初め我が国も、どちらかというとびっくりされた方が多かったのではないか。とりわけ選挙中に発言されたことというのは、選挙中だからと許されることでもないようなことも御発言があったやに思います。そうした中で、今回、言ってみれば、双方が戦々恐々の中でなされたわけでございますが、ほっとされた方が多いのではないかと思っておりますし、政財界挙げて、多分同じような思いではないかと思っております。

 私ども野党におきましても、野党といえどもという言い方がいいのか、野党だから、よりいい関係にしていただくために、きょうは、副総理・財務大臣のさまざまな思いや御意見を承って、よりいい関係を築いていただくために少しでも御提案をさせていただければ、そんな思いで質問をさせていただきます。

 午前中も、トランプさん初め、いろいろな人物評が各委員から御質問があり、その側近の方、首脳の方にお会いする方というのは本当に今の中ではごくごく限られた方でございますので、やはり国民の皆さん方初め、私どもも、より知りたいということがございます。

 繰り返しになって恐縮ですが、先ほど、トランプさんの評に関しては、率直な、建設的な意見を案外言う方だというお話や、あるいはノートをとって聞いていらっしゃるという、ちょっと失礼な言い方をすれば、意外な一面も感じ取られた中で、やはりトランプさんという方がどういう方なのか、これから非常に重要なことになってくると思いますので、まずは、それ以外の点で、あるいは重なっても結構でございますので、副総理の率直な御意見をトランプさんに関して教えていただけませんでしょうか。

麻生国務大臣 政治家の経験がないで大統領になったという人は、多分、私の知っている範囲では、戦後では軍人さんがいきなり大統領になったアイゼンハワーとトランプだと思いますので、政治家につき合いはゼロです。だから、政治家でこの人を知っている人はいないんですが。お目にかかったのは、トランプ大統領との首脳会談で四十分、それから、その後の昼飯から出られるまでの一時間、二時間近く、あの時間だけしか知りませんし、直接見た感じでしかしゃべりようがないんですけれども。

 先ほどもどなたかの御質問にお答えしましたように、少なくとも、しゃべっているのはこちら側の方が圧倒的に多くしゃべり、質問をするのは向こうで、しゃべるのはこっち。安倍さんは、俺が七割ぐらいしゃべったからと。私が見た感じ、八割以上安倍さんがしゃべっていたように思いましたけれども。大体人間は自分がしゃべっている方が少ないと思うものだそうですけれども、明らかに、あれは安倍さんの方が八割はしゃべっておられたと思います。

 その後、ゴルフをされたときの話を聞いても、最初の十八ホールはほかの人もいたそうですけれども、最後の九ホールは二人きりだけでカートで回っておられますので、通訳はどこに乗っていたんだと聞いたら、後ろのゴルフバッグの隣にぶら下がっていましたという話でしたので。

 そのときの話でも、ほとんど、安倍さんに対する質問に対して、安倍さんが答えておられるという感じだから、よく人の話を聞く人、今、なったばかりということもありますので、アジアに関しては全くということだったので、主に情報収集に一生懸命やっておられるんだと思いましたね、正直なところ。

 それが意外と、自分一人で頑張ったというおじさんなんでしょうけれども、もっと、俺が俺がという感じじゃなかったというのが非常に印象的だったのと、人の話はよく聞くのと、何となく、安倍さんという人に対する、ほかの外国のメディアも全部そうでしたけれども、やはり握手で十九秒というのは長いですよね。かなり、選挙でも誰かにこうやるとき、十九秒というのはかなり長いなと思いましたけれども、えらい長いこと握手しているなと思いましたけれども、ずうっと向こうが離さないという感じでしたから、そこらのところは意外なところ。

 直接しゃべったというのは、ゴルフの話以外直接しゃべっておりませんので、ちょっとほかの情報を持っているわけではありません。

伴野委員 日米同盟が基軸だと思いますので、そういう中で日米の首脳が十九秒握手したというのは、私、個人的には評価させていただきたいと思いますけれども、ただ、あちらとしてはまだ攻撃に転じていない、まだ本当に準備段階なので、いろいろ情報をとられたんだろうと思うんですね。

 選挙中の印象でございますが、やはり目的達成のためならば手段を選ばないタイプの方だなと、よくも悪くもですね。だから、やはり相当これから準備をして反転をされる、したたかな方ではないかな、今のお話も伺っていまして、そんなふうに思っております。そのあたりのところは、多分、安倍総理も副総理も同じおつもりではないかと思うんですが、一方で、思ったより明るく陽気なアメリカ人の、ごくごく一般的なタイプと言うと失礼ですが、そういうタイプでもあるのかなということはほっとしている部分もありますし、選挙戦の勝ち抜き方を見るとやはり運のいい方である。

 やはり、パートナーとして運のいい方と組むというのは悪いことではない。これは松下幸之助さんだったと思いますが、御自身が自分のさまざまな仕事のパートナーを選ぶ、あるいは部下を選定する、入社試験なんかで最終的にそういう点を非常に評価した。私は、運がいいというのもやはり実力のうちで、よくよく、運がいいといって、そねみやねたみで使う場合があるんですが、やはり運のいい方というのは、それなりの準備、用意周到されているから、確率論的にそこへ狭まってきて、右か左かといったときに当たる可能性が高い。だから、はたから見ていると運がよく見えるんですが、私は、運のいい人というのは、やはりそれなりの実力とそれなりの用意をしているから結果的に運がいいのではないかなと思っている一人でございます。

 ぜひ、今後もしっかりとしたコミュニケーションをとっていただければと思うんです。

 そしてまた、副総理は今回非常に重大な任務を担われたというか、まさにこれからだと思います。一人はペンスさんという副大統領とやっていただかなければいけない。そして、昨日だったですか、財務長官、ムニューチンさんも就任されるということでございました。このお二人を向こうに回して、お一人で頑張っていただく、まあ、お一人じゃないとは思いますが、ただ、一対二という関係で、歳費を二倍よこせとは多分おっしゃらないとは思いますが、でも、お二人も相手にしていただかなきゃいけない。

 最初にその印象として、真面目な、かたい気質の方だというようなことも論評されておりますが、それ以外に何か、お気づき、あるいは、午前中もこのペンスさんの御印象というのも承りましたが、さらに何か、私はかなり数字には強い、ただ、米国の一つの地域はかなりお詳しいんだけれども、地球規模のお話になるとどうなのかなと、午前中にも出ていたかもしれませんが、そのあたり思っておりますので、お教えいただければと思います。

麻生国務大臣 この方の略歴を見ていて、まず、所属しているのが、ボーン・アゲイン・クリスチャンという、生まれてくるならクリスチャンという宗派、宗派というか、クリスチャンの戒律が厳しい、一番右端にいるところみたいな宗教に属しておられる方で、たばこは吸わない、酒は飲まないという人で、ちょうど私と大体逆で、全く対極にいる人だなと思って、最初、会う前にそれを聞いて、えっと思っていたんですけれども。姿勢正しく、ばしゃっとして聞いているという感じで、こっちがしゃべっている間もほとんどばっとして聞いているという感じで、トランプさんはその辺はそんな感じじゃありません、ノートをばあっと書いている感じやら、どんどん普通にしゃべる人でしたけれども、こちらの方はもっと、うんという感じで聞いているような感じだったのがすごく印象に残った。

 俺は何でもできると大体政治家というのはみんな言いたがるものなんですけれども、この人は、私はインターナショナルな交渉の経験が乏しいと、すとんと言うんですよ。だから、これは初めて日本からプロポーズしたという、少なくとも、繊維交渉以来、向こうから振ってきてもこっちから逆に振り込んだという例は余りありませんので、しょっぱな、これから入ってきておりますので、多分初めてのことが起きたんだと思いますが。それに対して、そっちが言うならいいよということは言わない。ただし、私はこの種の交渉をやった経験がないので、日本がプロポーズして、大統領が私を指名された場合は大変光栄に思うというような言い方をする人だったのがすごく印象的で、なかなかちょっと、アメリカ人というのはもっと俺が俺がというのが多いんですけれども、その点はあなたイギリス人ぽいなという感じはしました。

 あとは、酒も飲まない何もしない人だというので、ゴルフするのかと聞いたら、ゴルフはやるという話をしたので、結構やるんだろうなと思ったので、大統領たちもやっているんだからこっちもやろうやという話をしても、そのときだけは初めてにっこり笑ったぐらいで、あとはほとんど真面目に、怒っているわけでも何でもない、普通にいても黙って聞いているという感じだったので、何となく、この種の人と話をするときは丁寧にきちんとやっていけば話は詰まっていくだろうなという感じはしましたけれども、答えはきっちり、逃げない、そんな感じがしました。

伴野委員 ありがとうございます。

 ペンスさんは、御案内のように、連邦下院の予算委員長もやられている方で、確かに交渉というのは経験が初めてなのかもしれませんが、今おっしゃったように、謙虚な方であるような気がいたしますし、数字には随分お強いような感じもしますので、謙虚であり、かつ目的に向かって多分緻密におやりになってくるんではないかと、事細かくですね。だから、ぜひ麻生大臣も、黒い帽子で颯爽と、日本の麻生太郎ここにありというような感じで、迫力負けはしておりませんので、ペンスさんがナイトならば武士の感覚で、ぜひ正々堂々とやっていただければ、そんなふうにも思います。

 午前中はまだそんな話はなかったのかもしれませんが、もう一人、ムニューチンさんについてもぜひちょっとお聞きしたいんですが、歴代財務長官というのは民間の方が多いアメリカでございますし、その流れを組んでいらっしゃるんだろうとは思いますが、この方は、まだこれからお会いになる、印象としてはどんなことをお持ちか、教えていただけますか。

麻生国務大臣 私が行ったときにはまだ承認をされておられませんでしたので、昨日の、向こうの夕方、こちらの午前の九時半ごろに、五十三対四十七だか何かで承認をされておられると聞いておりますけれども。

 いずれにしても、少なくとも前のジャック・ルーの場合は予算委員長やら何やらしていましたけれども、この人の場合は、いわゆるゴールドマン・サックスというところにいて、最初の赴任地が日本、したがって、日本に半年いたという話でしたけれども、おやじさんは伝説のトレーダーと言われる人なんだそうですけれども、その方は私とは全然つき合いがありませんし、私はこの方を全然存じ上げているわけじゃないんですが、この人を知っている人たちからは、何人か、おやじよりはいいやつだぜなんという電話ぐらいはかかってきたぐらいの情報しか持っていませんけれども。

 少なくとも、為替の話やら何やらをトレードの中に入れろとかいう話は、前のオバマ政権のときにはもう何回もやって、後半なんかは、円が百円を切ってというようなときには、もう毎日アメリカから、TPPのサインの直前ぐらいだったんですけれども、そのときにも物すごい勢いで、為替をこのTPPの交渉の中に入れろという話が何回も来ていましたから、そういったようなことは、とにかく、今のG7、G20の長い歴史では、だめ、そういうことはしないという約束になっているんだからという話を何回も何回もしていましたけれども、とにかく、こういったような話をまたぞろゼロからスタートするというような感じじゃない、少なくともその種のことが難しいということはゴールドマンにいれば誰でもわかりますから、そういったことは強い人だと思っていますので。

 金融市場に深い洞察があるというのは大事なことですので、私どもとしては、いろいろな意味で、これからアメリカも、ウォールストリートというか、ニューヨークのストックマーケットでいろいろな話をされていくに当たって、すごくこういった経験豊富な人というので、ジャック・ルーの場合はずっと予算管理局の局長という役所で上がってきた人でしたけれども、この人の場合はそうじゃないと思いますので、為替の話とか、そういったマーケットの話は、この人とは交渉しやすいというか、わかった上で話のできる人だという感じだけは持っております。

伴野委員 最初のお手合わせが、G20、三月のドイツであると認識をしております。ぜひしっかりとお見きわめいただきたいなと。といいますのは、やはり、ゴールドマン・サックス御出身で、強いドルということを歴代長官のようにおっしゃっていたかと思うと、トランプさんが少し強過ぎると言ったら、ちょっと最近ぶれているんじゃないかなというところも見えますので、よくそのあたりを見きわめていただいて、御対応いただければと思います。

 税の国境調整についてもちょっと後で触れさせていただきたいと思いますが、三方のお人柄についての質問はこれぐらいにさせていただきたいと思っております。

 続いて、二月十日、副総理は、総理が対談される前にペンスさんとお会いになって、そのときの報道で知るだけでございますが、最初に日米経済対話のお話をされたときは、ちょっと、話を聞いていなかったというようなことはないのかもしれませんが、先ほどの謙虚さが出たのかもしれませんが、というようなことも聞いておりますが、そうした中で、午前中もたしか副総理はおっしゃっていましたが、これは今回日本の方からしかけたというような認識でよろしいんですかね、今回、それをしかけられた経緯とか背景というものを改めてちょっと教えていただければ。

麻生国務大臣 日本とアメリカのこの種の経済交渉の歴史というのは、ニクソン・佐藤会談から起きた例のいとへんというか繊維交渉と言われたものが多分、一九六〇年代ですけれども、これが最初だったと思うんですが、それ以後、鉄鋼、鉄の交渉やら自動車の交渉やら、関税障壁だ非関税障壁だ何だかんだ、ありとあらゆる話が出て、全部、向こうから出たのをこっちが受けてどうするという歴史がずっと続いていたんだと思っております。最後に、経済産業政策までいろいろ問題なんだと言われて、通産省が産業政策を手放して、一九八〇年代、それでももたなくて、ついに、八五年度のプラザ・アグリーメントでいきなり二百四十円がどんと、一年間で百二十円まで円高になっていったというあの歴史なんです。

 そういうのに対して、今度は明らかに日本の方から、今後の日米というものを考えたときに、あらかじめ日米でどういったようなことをやるかということをよく詰めようやというので、エコノミックダイアログといって、経済対話という話にして、こちらから向こうに話を持ち込んでおります。

 したがって、各省みんな関係してきますから、うちの方は副総理を出すからそっちも副大統領で対処してくれと言ってうちは振り込んで、当然、向こうとしてみればUSTRがあるとかなんとかかんとかいろいろ言ったんですけれども、いやいや、それは格が違う、うちは副総理なんだ、そっちは副大統領だと言って、向こうがそれはおりて乗ってきたんですけれども。

 最初にペンスという人がこれを受けるかどうかわからなかったものですから、午前中の会議でペンスさんと会ったときにこの話をしたときに、私は、先ほど申し上げましたように、俺は大変光栄だけれども経験がないということを言ったので、いや、経験がないといったって、みんな周りのスタッフがいるだろうがと言ったんだけれども、今はあそこはスタッフは三千人からの人がいなくなっちゃっていますから、今からずっと詰めていくまでに時間がかかると思います。いずれにしても、そういった、時間をかけてやっていくんだと思いますが、きちんとした対話をやれるようになるまでの間、こっちと事前にいろいろ交渉はやっていくんだと思います。

 いずれにしても、真面目にこういったものに取り組もうという姿勢だけははっきりしていましたので、指名が終わった後も、こっちに来てからよろしく頼むという話を向こうがしていましたから、そういった意味では、一緒にやろうという話をしておるので、何か四月に、何とか会合で日本に表彰されたので、それは副大統領になる前の話らしくて、この何月か、春か何かに日本に何とかの表彰を受けに来るというから、ぜひ来いという話はしてありますけれども、ちょっと今から、まだまだ、とてもそのときまでにスタッフなんかそろっているはずがありませんから、第一回目としても、そこはそんなに詰めた話ができるとは思いませんけれども、まずはそれが最初になるかなという感じはいたしております。

伴野委員 早ければ四月ぐらいにお会いいただいて始めていただくということになるのかもしれませんが、これも報道で聞くことでございますけれども、一つとして、財政政策や金融政策などマクロ経済政策の連携、二つとして、インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙などの経済協力、三つとして、二国間の貿易に関する枠組みということで、三項目を取り上げていくということで、これを包括的に議論するという形になるわけでございますが、包括的にやるということは、何かやはり戦略的にあるんでしょうか。

麻生国務大臣 こちらから考えて、個別にやっていきますとどうしても細かい話になっていきますので、まずは、日本とアメリカと、今後とも、明らかに、過去七十年間の間にアジアの情勢というのは全く変わっております。スタートしたころは、アメリカが世界のGDPの四〇%、こっちは一%以下。今、アメリカが二〇%ぐらい、日本が一〇%ぐらい、もうそんなぐらいになってきておりますので、猛烈な勢いで、経済力も七十年前とは違っておりますし、東西冷戦が始まる直前、今は、終わっちゃってさらに二十年、三十年たっておりますから。

 そういった意味では情勢が全然違うので、もう一回、日米関係というものをきちんとするというんだったら、枠組みから決めていかないと、何となく、そっち守る人、こっち守られる人みたいな感じだけじゃとてもできないし、G2とかG7とかいったって、もう今はGはゼロみたいな形になっているわけですから、そういった意味では、もう一回、お互いに役どころをきちんとしないと、両方、何となく安易な期待だけでやっているとろくなことになりませんから、きちっと文書にして、きちんとやることはやろうというのが今回の共同声明の裏でもあるんですけれども。

 そのほかにも、我々はやらなきゃいかぬことは幾つもあるんだと思って、今言ったエネルギーとかいろいろなものをずっとこの中に持ち込んで、経済関係だけはきちんと大枠を決めようという話が今回の背景、我々が振り込んだ背景でございます。

伴野委員 そういう経緯と背景で包括的にやられるということでございますが、総理がそれをやるというときは、官邸にもその機能があると思いますし、日ごろからそうやって各スタッフが、エキスパートが集められていると思うんですね。

 今、副総理のお立場、財務大臣でもあり、それは財務省のスタッフは優秀だと思いますが、これを包括的にやるというと、やはり副総理のもとにそれなりの省庁からそれなりのメンバーを集めて、実際、日々はやらないと、これはもう多分、場合によっては二十四時間体制でガチンコでがんがん逆にやって、あちらは準備ができれば、多分やっていらっしゃるんだろうと思いますので、そういうお話も頭に置いていらっしゃるんじゃないかと思いますが、そういうスタッフ体制の話なんかはいかがですか。

麻生国務大臣 私どもとしては、当然これは、外務省でできますのは、それは財政とか金融とか為替とかそういったような話が我々はふだんの仕事でありますから、そういったのは渡しておりますけれども、例えば通商の話にしても、そういった話になりますと、なかなかそんな簡単にうちができるわけではありませんから、これは、例えば経産省とか外務省とか、例えばインフラなんというのであれば建設省とか、そういったところからしかるべき人を集めて、TPPのときに、我々としては、各省から人を出して担当させてチームをつくったのと同じようなことを考えておかないかぬだろうなとは思っております。

 今の段階でまだ人選やら何やら考えているわけではありませんけれども、そういったところへ入れる前提で話を考えておかないと、とても財務省だけでできるわけではございません。

伴野委員 ぜひ、副総理・財務大臣のもとにしかるべきスタッフを構成していただいて、こちらもこれからは攻められる、攻められるという言い方もあれですが、いよいよ協議がいろいろな形で始まっていくということでございますので、いい関係を築くためにも、いいスタッフを集めていただいて御対応いただければ、そんなふうに思います。

 そうした中で、先般、二月十日の共同声明の点にちょっとだけ触れさせていただきたいんです。

 これは今後どういう、これからまさにいろいろ対応されていくんだと思いますが、前原委員が予算委員会でお聞きになった中で、ペンスさんとは、直接お会いになったときは、為替政策の話や日銀さんの政策についてのお話はなかったんですよね、というふうに伺っております。

 そうした中で、また、この共同声明を読んでいく中で、日米経済関係の中で、TPPなんかも、総理は、渡米されるまでは、最初は食いついていきたいようなこともおっしゃっていたんですが、もう諦められたのかなという感じもしないでもないです。副総理としては、いやいや、そんなことはないんだ、始まったらTPPの食いつきもやっていくんだというふうにお思いなのか、このあたり、ちょっと確認だけさせてください。

麻生国務大臣 バイの話でという話から、個別の話をする前には、ダイアログ、対話ですという話で、いわゆる経済対話の話でスタートすることになりましたけれども、中間選挙が二年後に行われますので、中間選挙が終わったぐらいになると、大体その種の話は、一応のものができ上がって、しかるべき結果を得れば、やはりこの種の話はマルチの方がいいじゃねえかという話が必ず、多分出てくるだろう。それまでの間、オーストラリアから肉がとか、ニュージーランドから何とかとかいうときになると、アメリカも農業が、一番やりたいところが全く進まない、日本との間に。となると、ちょっと待ってくれ、交渉してくれと言ったら、じゃ、TPPをやろうや、TPPの話にもう一回乗っかれやという話が出るような雰囲気が醸成できるのは、やはり中間選挙が終わった後ぐらいかなというのが正直なところです。

 したがって、TPPを、あれだけ三年もかけてでき上がったものですから、そんな簡単に御破算願いましてはもう一回なんということは、とてもじゃないけれども、時間の浪費ですから、そういったことはするつもりもありませんので、あれはそれまでおいておいて、私どもとしては、しかるべきそれまでの間、もしTPPになっても日本の農業とか弱い産業がきちんとできるように、時間のある間に対応をして、国内の対応はきちんと準備をしておく必要があろうと思います。

 そういったことを踏まえながら、TPPは、きちんとした、世界的な流れとかそういった自由貿易の流れというものは私は変わらぬものだと思っておりますので、やはり戦後、国土が狭くなって経済力が強くなった国というのは間違いなく日本とドイツですけれども、いずれも自由貿易というのがあったから日本とドイツはこれだけ立ち直れておりますので、そういった意味では、自由貿易というのは大事な、我々としてはお宝、大事にしておかなければならぬ哲学であり、考え方なんだと思っております。

伴野委員 今、副総理からも、自由経済、自由貿易という共通の価値観、これを共有していただく意味で間合いをとっていらっしゃるんだろうと解釈をさせていただきたいと思いますので、しかるべきときには頑張っていただければ、そんなふうに思います。

 先ほどちょっとムニューチンさんのお話をしましたが、少し税の国境調整について大臣のお考え、これは他国の税のことですから、我が国が対処するといってもいろいろ限界があるのかもしれませんが、やはり先ほどの同じ価値観を共有する者として、しかるべき政策なのかどうかということも含めて、いろいろなことをおっしゃっていただいた方が行く行くはいいのではないかと思いますので、このあたりはどういうお考えを持っていらっしゃるか。

麻生国務大臣 大統領の会見とかこれまでの記者会見なんかを聞いた範囲ですけれども、国境税の導入にいろいろ発言しておられたり、また、下院の共和党の方がたしかこれに関する発言をいろいろしておられるというのは私らとしては承知をいたしておりますが、じゃ、その国境税というのは関税ですか、それとも法人税ですか、どっちでやろうとしているのか全然わかりませんし、まだ、言っておられることが、税制改正の内容というのは全然よく伝わってきませんので、ボーダータックスという言葉だけがひとり歩きしている状況でございますので、今の段階でちょっとコメントというのはできるような状況にはないんですけれども。

 いずれにしても、どういうのをやろうとしておられるのか、これは話し合ってみなきゃわからぬところだと思いますけれども、余り、言っている本人もそこはよくわかっておられぬのじゃないかなという感じはしました。

伴野委員 そうはいっても、どうも二、三週間以内に驚くような税制改正をすると言っていらっしゃるわけで、ぜひ情報を早くとっていただいて、こちらもきちっとした速やかな対応をしていただければありがたいかと思います。

 さて、経済対話の中の一番目の財政政策に続くところで金融政策が入っているというのがどうしても気になるところでございまして、やはりムニューチンさんとしては今後為替の話をどうしてもしてくるのではないか。前政権においてもいろいろあったというお話も先ほど承りました。

 まず、経済対話をする前提で、今までの我が国のさまざまな金融政策は円安誘導ではない、これはもう言い切って向かっていただくということでよろしゅうございますか。

麻生国務大臣 二〇〇八年のいわゆるリーマン・ブラザーズの破綻のときに、当時、G7で、日本から、IMFがもう金がなくなるので、多分えらい勢いで破綻することになりかねませんから、あのとき、一千億ドル、約十兆円の融資をします、融資です、そのローンが十兆円あれば、それで取りつけ騒ぎが起きるような国々の分はそこから救えるはずだという話を申し上げて、そのときに条件を三つしたんです。いわゆる平価の切り下げ競争はしない、それから、関税を勝手に切り上げない、ブロック経済を激しくやらない、第二次世界大戦に入っていくときの条件がそれでしたから、そういったことをやらないように、その三つで、これでみんなで合意した。

 ところが、裏口入学とは言いませんけれども、いわゆる金融を緩めるということによって、結果として円が一挙に七十円台までということになりましたので、当時百二十円でしたから、とてもじゃないという話になったんですが、では、こっちも切り下げだということになると、これは戦前と、一九三〇年代と同じ話になりますので、日本はその点は頑張った、極めて厳しい状況になったのは事実ですけれども。

 その間、一番先頭を切ってやったのがアメリカとイギリス。一番いいかげんだったんじゃないの、それを忘れてもらっては困るよと、これはアメリカ人のその種の担当には私はもう何回も言ったことがありますので。あんたら若いから、忘れているとは言わさないよ、これは前の政権だったから俺は知らないとかそんなことはなしよという話も何回もしたことがありますので。これは今回も、そういう話になったときは、まずそこからスタートせないかぬかなとは思っておりますけれども。

 いずれにしても、日本の場合は、この種の話を、少なくとも為替の介入とかそういったような話はマーケットでやるということはもうG7、G20で合意しましたので、伊勢志摩サミットでも同じような合意が再確認されておりますので、その線できちんと対応していきたいと考えております。

伴野委員 今後これはどういう状況になっていくか、それは予断を許さないわけで、余り言い切らせても副総理の協議のこれからの幅を持たせるためにはよくないのかもしれませんが、いま一度、為替問題ということに関して協議が生じるというようなことは、ないとまでは言い切れないですよね。

麻生国務大臣 為替がどれくらいのところが一番いいのかという話は、皆都合がいい話をするので、自動車業界は何十円だったら黒、瀬戸物やら何やらやっている業界は百何円だったら黒と、各業界によって損益分岐点が分かれておるのは確かなので、どれくらいがいいのかというのはこれは各業界によっても違うので、これはアメリカにおいても当然違うんだと思いますけれども。

 そういったことを前提に置いて、これをフィックスしちゃうというような話はそれはだめという話で、これはマーケットでやるのが最もいいんだということでずっと合意したんだから、アメリカだけでそれを言ったって無理ですよという話は、きちんと我々はしていかないかぬところだと思っております。

 ただ、言っていることは、ドルを安くしたいと言いながら、傍らFRBは金利を上げているんですから、金利を上げたら普通為替は高くなりますから、言っていることとやっていることが全然違いやせぬですかという感じは正直ありますけれども、まだ正式に言われているわけではありませんので、言われたら、そのときはまず最初に、一番わかりやすいのは、今やっている現実は、ドル高政策をやりながら言っていることは安くしろという話になっておりはせぬかという点は、一番最初に、すぐ目につく矛盾点だろうと存じます。

伴野委員 先ほど来、今回の日米経済対話のテーブルというのは、日本の方からしかけたということでも、あるいは積極的に取り組まれたということなんだろうと思いますが、一方で、それがあちらからの逆襲と言ったらあれですが、用意周到にいろいろ戦略的に考えて、過去、日米摩擦を見ますと、その場が、経済対話がいつの間にか圧力対話になってきてしまう、そういう懸念を持たないわけではありませんが、ここはひとつ、絶対にそうさせないというような意気込みをお聞かせください。

麻生国務大臣 今回は、言われっ放しにならないように麻生さんに頑張ってもらいたいとか、人に仕事を押しつけるような話をぽろぽろしておられる方もいらっしゃいましたけれども、やはり、自由で公正な貿易のルールというのは、これは完全にコミットしますということをばさっと両首脳で完全に言い切っておられますし、そういった話にもなっておりますので、そういった共通の認識のもとに、どういった形で日本とアメリカで世界の中で強い経済を引っ張っていくかという話を我々はしていかなならぬのだといって、これはペンスという方ともその話をしたので、どちらかが一方的に言うからという話じゃなくて、双方で合意するということで、これで伸びていくところは太平洋よ、大西洋じゃない、まあ明らかに西海岸は太平洋側なんだから、軸足は太平洋に置かないとという話は、前のオバマのときでも後半は太平洋に振ってきましたから、もう大西洋じゃないでしょうが、太平洋に力を置いてもらわないかぬという話をしておりました。

 いろいろな意味で、私どもとしては、今後とも、この太平洋の中において、今いろいろ、南シナ海等々、けたたましい話があちゃこちゃできたり、騒ぎになったり、ボートにぶつかってきたり、何かいろいろ話があっているのは確かですけれども、それはそれとして我々はきちんと防衛の点はやるにしても、経済の話やら何やらというのは、きちんとできるところはありますので、そういうところはきちんとやりながらということをやっていかないかぬと思っております。

伴野委員 ぜひここは頑張っていただいて、麻生副総理・大臣に期待されるところ大だと思いますので、やはり政治は結果でございますので、ぜひいい結果を期待したいと思います。

 黒田総裁、お待たせしました。

 そうした中で、今回の首脳会談では名指しのどうのこうのというのはなかったんですが、過去、やはり相当、場合によっては中国と同列に扱われて言われていたような時期もあったと思います。アメリカから言われて変わるものではないという御発言もされていたやに伺っているんですが、今後、この点また、仮の話をして恐縮ですが、トランプさんがまた我が国の金融政策についてさまざまな御批判をされてきた、あるいは円安誘導というようなお話もされて、今後、長短期の金利操作つき量的・質的金融緩和、今までやってこられたこのことについて見直すようなことがあり得るのか、絶対ないとおっしゃるのか、仮に見直すとすればこういうことぐらいはあるのかなというようなことを、まず一点、お聞かせいただきたい。これはあればですけれども。

 さらには、昨今イエレン議長が発言されていることをどのように分析されて、これは今後日本にとってどういう影響が出てくるのか、今の時点でのお考えをお聞かせいただけませんでしょうか。

黒田参考人 まず、第一点についてでございますけれども、御案内のとおり、日本銀行の金融緩和政策は、あくまでも二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために行っているわけでありまして、為替相場を目的としたものではないということでございます。

 そして、これも御案内のとおり、各国の金融政策につきましては、物価安定の実現という国内目的のために適切に運営するという考えが、G20でもG7でも従来から共有されております。そういうことに基づいて私どもも行っているということでございます。

 具体的には、長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとで、経済、物価、金融情勢を踏まえながら、二%の物価安定の目標の実現に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すことにしております。

 委員が触れられたようなことに関しては、まだ二%の物価安定の目標までの距離は相当ありますので、これをできるだけ早期に実現するためには、やはり現在の金融市場調節方針のもとで強力な金融緩和を推進していくことが適切であるというふうに考えておりまして、国際的な金利が上がったから日本の金利操作目標も上げるとか、そういうようなことは考えておりません。

 二番目の御質問に関しましては、昨日、FRBのイエレン議長が議会証言をされまして、その中で、今後の金融政策の運営のあり方につきまして、このように言っておられます。

 今後のFOMCにおいて、雇用情勢や物価上昇率が見通しに沿って改善するかどうかを点検した上で、その場合には政策金利のさらなる調整が適切となるというふうに発言されるとともに、その上で、経済の先行きには不確実性があり、将来の金融政策運営はあらかじめ定められているわけではないとも述べられております。

 こうしたイエレン議長の一連の発言は、金融政策運営に関する従来からの考え方を改めて述べられたものというふうに理解しております。

 米国の金融政策につきましては、これまでも米国の経済あるいは物価情勢を見きわめながら適切な金融政策運営を行ってきておられますし、今後も適切に対応していかれるというふうに理解しております。

 米国経済は世界最大の経済でありまして、世界経済、ひいては日本経済にとっても大きな影響を与えるものでございますので、引き続き、FRBが適切な金融政策を行っていかれるということが大切なことだというふうに考えております。

伴野委員 二%目標まで時間があるというお話等されておられましたが、ただ、やはりトランプさんが当選されてから少しずつ金利も上がってきているのではないか。これは本当に水ものでございますので、いつ何どき急激なということもないわけではございませんので、よく注視をしていただければと。

 やはり長期金利が上がりますと、財投初め社会資本整備の目標等々にも大きな影響が出てくるのではないかと思いますので、このあたり、御配慮いただければと思います。

 お時間があると思いますので、どうぞお引き取りいただいて結構です。

 では、あと数分ありますので、今度は、ちょっと国内的な話題で金融庁さんの話題に、金融担当大臣としてお聞きしたいと思います。

 地方創生というようなことで安倍政権もいろいろ取り組まれているんですが、やはり私は、具体的な動きとして、銀行さん、特に地方銀行さんの目きき力が上がる、これが多分一番活性化していただける一丁目一番地じゃないかなと。

 確かに、バブルがはじけた後、かなり認定等々も厳しくなって、焦げつきをつくりたくない、リスク回避したいというのは、貸す側はそうかもしれませんが、貸していただく方としては、失敗したらそれは責任をとらなきゃいけないわけでございますが、連帯保証のあり方等々、もう少しやはり目きき力を高めていただいて、大変失礼な言い方をすれば、何かリスクがあっても、銀行さんは銀行さんが担保されているというような感じで、銀行さんは痛まないけれども、やはり事業者、挑戦していく人たちが痛むという、このやり方というのはやはりつらいものがあるんじゃないかと思うんですね。

 今回、所信の中にも、大臣みずからおっしゃっております。そういったところを踏まえながら、一つには、私、信用保証協会のあり方もやはりこの際改めていただいた方が、私も地方を回っておりますと、そういう中小企業の方からは、銀行さんは非常にいいことを言っていらっしゃるんだけれども、最後、信用保証協会さんが絡んでくると、信用保証協会さんがそうおっしゃるからということで、なかなか事業者の方は信用保証協会さんとはやれなくて、これは銀行さんがやっていらっしゃるんだと思うんです。銀行さんの方としても、自分としてはそうしてあげたいんだけれども、信用保証協会さんがそう言わないからこうしないとだめなんですよということで、結局、今までと余り変わらない状況になっちゃってというようなことをよく聞きます。

 やはりここは、金融処分庁から金融育成庁になっていただくというのは本当にいいことだと思いますので、ぜひ積極的にやっていただくということで、大臣から、最後、決意みたいなのをいただければ。

麻生国務大臣 金融につきましては、おっしゃるとおりに、金融庁ができましたころは、とにかく、バブルがはじけた後の破綻の処理というのにえらい時間を食いましたので、その意味にはそれなりの意義があったんだと思いますが、時代が大きく変わって、今、日本の銀行、金融機関というのは、ほとんど内容が、アメリカの銀行なんかに比べましても自己資本比率は高くなっていますので、非常によくなっているんだと思います。

 時代が変わって、今度はいわゆるマネーサプライの方がふえないという状況になっておりますので、そこをふやしていくためには、やはり企業を育成するという方に切りかえてもらわないかぬというところだと思って、その方向にいたしております。

 今の信用保証協会、あれは中小企業庁ですからね。あれはここじゃない。だから、中小企業庁に言っていただかないといかぬのだ、それはそう思いますけれども、中小企業庁もそういう意識が出ているように、この間、長官とはちょっと話をしましたけれども、そういう意識が、大分時代が変わってきているので、質屋をやっているんじゃないんだから、こっちはちゃんと、そういった投資やら何やら、ある程度リスクをとって貸すということで貸さないと意味がないよという話はちょっと話をしておるところですけれども、所管はちょっと正直違いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

伴野委員 所管は違っても、副総理という立場でぜひやっていただければと思います。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民進党、木内孝胤でございます。

 ちょっと質問の順番を変えさせていただきたいと思います。伴野委員の質問のときに、黒田総裁を四十分ほど足どめをして申しわけないなという気になってしまったものですから、先に質問させていただいてから、その時点で御退室いただければと思います。

 私はアベノミクスをちょうど四年たって振り返ってみますに、アベノミクスの一番の成果をいつも最初に言うようにしております。なぜかといいますと、こちらからいろいろ御提言しているんですが、批判から入りますと、全く聞く耳を持っていただけないかなという気がしておりまして、アベノミクスのいいところをできるだけ最初に申し上げるようにしているわけです。

 私はアベノミクスの最大の成果、成功は、実は黒田さんという方を日銀の総裁に任命したこと、そして黒田総裁が、二%、二年、二倍、極めてわかりやすいメッセージを市場に訴えたことだというふうに考えております。

 一方で、野党でもございますし、失敗も同時に申し上げたいんですが、アベノミクスの最大の失敗は、私は二〇一四年四月に消費税を五%から八%に上げたことだと考えております。

 もちろん、現下の財政状況は非常に厳しいということも承知しておりますし、私は決して財政再建を軽視している立場ではございませんけれども、需要が足りない中で五%から八%に増税をして、そして個人消費を大きく冷え込ませたということは最大の失敗であったと思います。

 やはり野党ですので批判的にいきたいと思いますが、アベノミクスの最大の罪は何かと思っているかといいますと、やはり、これだけ株価が上がって、有効求人倍率等々、いい数字がたくさんある中で、びっくりするくらいアベノミクスというのは構造改革を進めてこなかった。私は、市場の関係者とも話す機会は非常に多うございますけれども、構造改革をこれだけの支持率、こういう状況の中で進められなかったということは、そもそも構造改革をやる気がないのではないか、非常に罪深いなというふうに同時に思っているわけでございます。

 四月に就任四年間になりますけれども、黒田日銀総裁の金融政策、四年間を振り返って、昨年、包括的検証ということで、いろいろ検証というか評価は承知しておりますけれども、改めてそれの総括的な評価と、マイナス金利政策を始めましてから一年がたちます、それの評価。もちろん、これはプラスの部分と、例えば銀行等からは収益のマイナス要因になるというようなこともあったり、あるいは生命保険業界、資産運用としては非常にやりにくい環境になった、さまざまな両面の声がございますけれども、その点をどういうふうに思っているのか。この二点をお伺いいたします。

黒田参考人 まず、御質問の第一点につきまして、御案内のとおり、日本銀行は、二〇一三年の四月に、物価安定の目標を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するということを目指して、量的・質的金融緩和を導入いたしました。その後、我が国の経済、物価は大きく好転しておりまして、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなったというふうに考えております。

 ただ、その一方で、二%の物価安定の目標は実現できておりません。

 その背景としては、昨年九月に公表した総括的な検証でも示したとおり、原油価格の下落、消費税率引き上げ後の需要の弱さ、新興国発の市場の不安定化などの逆風によって実際の物価上昇率が下落し、その結果、過去の物価上昇率に引きずられやすい予想物価上昇率も横ばいから弱含みに転じたということが主な原因であると考えております。

 こうした中で、日本銀行としては、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するとの方針を堅持しておりまして、必要に応じて政策の対応を実施してきております。

 具体的には、二〇一四年十月に量的・質的金融緩和の拡大を行ったほか、御指摘のように、昨年一月にはマイナス金利を導入いたしました。さらに、昨年九月には、総括的な検証を踏まえ、それまでの政策枠組みを強化する形で、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入したところでございます。

 今後とも、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するため、長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとで強力な金融緩和をしっかりと推進していく所存でございます。

 第二点の、昨年一月の金融政策決定会合において導入したマイナス金利、具体的にはマイナス金利つき量的・質的金融緩和のその後の成果、結果を御報告申し上げます。

 まず、御承知のように、その後の金利動向を見ますと、国債金利は、イールドカーブが全般的に大きく低下いたしまして、これが貸出金利の場合は、企業への貸し出しも、それから住宅ローンの金利も、さらには社債金利などの低下にもしっかりとつながりました。先ほど申し上げたように、特に昨年の前半というのは、世界経済の減速あるいはさまざまなリスクが顕在化するもとで、国際金融市場が不安定化する状況にありまして、我が国経済にとっては逆風だったわけですが、そうした中でも、マイナス金利のもとでの極めて緩和的な金融環境は企業や家計の経済活動をサポートしたというふうに考えております。

 この間、金融機関の貸し出し態度は引き続き積極的でありまして、金融仲介機能の悪化はうかがわれないわけですが、これも委員が御指摘のように、金融機関の利ざやは縮小しております。また、長期あるいは超長期金利が過度に低下しますと、保険、年金の運用などに影響して、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性がございます。

 こうした点を念頭に置いて、昨年九月には、総括的な検証を行って、それまでの政策枠組みを強化する形で長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入したわけでございます。現在の枠組みで、経済、物価、金融情勢を踏まえて、二%の物価安定の目標の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促していくことにしております。

 御案内のとおり、その後、世界経済の成長のモメンタムは高まっておりますし、グローバルに長期金利が上昇するもとでも我が国の長期金利は操作目標であるゼロ%程度で安定的に推移しておりまして、こうした政策は強力な緩和効果を発揮しているというふうに考えております。

 このように、これも委員御指摘のとおり、マイナス金利の導入によるプラスの面と、それが保険、年金等に与えた影響等々も踏まえて新しい枠組みにしたわけでございますけれども、全体として、マイナス金利導入以降の金融政策運営は、二%の物価安定の目標の実現に向けて必要であったし、適切であったのではないかというふうに考えております。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 先ほど、イエレン議長の議会証言の話がございました。議会証言のメモというかノートを見ますと、恐らく今後利上げを、市場の予測どおり、それが三月になるのか六月になるのか、利上げをしそうだなという印象を持っておりますが、実はアメリカの経済は、リーマン・ショック前までは、大体二・七%ぐらいをベースに成長していた。その後、いい形で経済再生はしたものの、二・一、二%が今基調になっているというのが私の理解でありまして、これだけ株価も最高価格になり、一方で企業収益との相関で見ると、やや割高感が増して、リスクも高まっているというのが私の認識でございます。

 こちらに経済のチームの表を載せておりますが、まだ本当の意味で、ムニューチン氏が昨日議会承認されたということですので、アメリカの経済政策が見えていないところはございますが、私は、一つ大きなリスクとしては、イエレン議長はこのまま利上げを三回ほどことしやるというのが、実はアメリカ経済、ひいては世界経済の大きなリスクファクターではないかというふうに思っているんです。

 今、利上げの回数を減らしたり、あるいは緩和に転ずるということはなかなか市場では言われておりませんけれども、万が一その事態が生じた場合には、一気にまた百円、百五円程度への円高傾向になりかねないというふうに思っております。

 今、これだけ大きく緩和をどんどん進めているわけで、評価するようなことは申し上げたものの、やはりこれだけ日銀が引受額をふやすということに関するリスクも同時に感じている中で、もしまた百五円、百円という基調になりますと、そうすると、税収も減ったり、企業収益も悪化したりということでございますが、そういう場合、またデフレ傾向が強まると思うんです。

 そうした場合、日銀が今やっています年間八十兆円程度という金融緩和の額を、そのときは大胆にふやす選択肢というのも考え得る、状況次第では二%目標を実現するためには考え得るというふうに理解していてよろしいのか、その点の御確認をお願いします。

黒田参考人 先ほど申し上げました、昨年の九月に新たな枠組みとして導入いたしました長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとでは、短期の政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債の操作目標をゼロ%程度ということで、それを実現するために適切な国債の買い入れを行うということにしております。

 当面、八十兆円という従来のものをめどとしておりますので、現にそういったペースで進んでおりますけれども、これはあくまでもめどでありまして、金融調節手段は、以前の年間八十兆円という国債買い入れ額目標というものから、イールドカーブ・コントロールという形で、短期金利、長期金利の操作目標を決めて適切なイールドカーブを形成していくということでございますので、世界経済の状況あるいは国内の経済の状況いかんでは、さらなる金融緩和が必要になれば、当然のことながら、今申し上げたような金利についてさらに引き下げを行うということは十分考えられるわけでございます。

 ただ、その場合に国債買い入れ額がどのぐらいになるかということは、今や国債買い入れ額自体は、金利が目標になって、国債買い入れ額自体は調節目標ではありませんので、これはあくまでもめどということでございますのでフレキシブルに考えていただいたらいいと思うんですが、御指摘の趣旨は、世界経済あるいは国内経済の状況いかんでさらなる金融緩和が必要になった場合どうするかということであれば、当然、現在の長短金利操作の目標をさらに引き下げるということになろうかと思います。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 もう一つの日本サイドから見た経済のリスクというのは、私は黒田総裁の後継者リスクだと考えております。

 来年四月に黒田総裁の任期が来ます。ことしの年末ぐらいになるのか、あるいは来年の初めぐらいになるのか、次の日銀の総裁を決めなければなりません、もちろん任期を継続するというのも一つの選択肢かもしれませんが。

 こうした人事にかかわる話というのは、私も、聞くのも不粋といいますか意味がないというふうに承知しておりますが、やはり、昔、大蔵省にいらして、国際金融の世界でずっと働いてきて、次の日銀総裁になる方の資質というか要件というか、我々は、これは日本経済にとって本当に大切な選択というか人事だというふうに感じております。

 黒田総裁におかれましては、うそか本当か知りませんけれども、飛行機の中で読んでいる本を見たら、英語とか原書で哲学の本を読んでいたりと、非常に教養があるというような話も聞いていまして、あるいは、一緒に働いていた古川委員などから話を聞くと、実に魅力的な方だとか、いろいろなエピソードを聞くわけでございますけれども、日銀総裁として最も大切な資質等、我々がいろいろ意見を言う上で参考にするべき事項があれば、教えていただければと思います。

黒田参考人 これは当然のことながら、内閣が指名をして、議会の承認を得て任命されるということでございますので、私から何か申し上げるのは適切でないと思いますので、具体的なことは申し上げかねますけれども。

 世界各国の中央銀行総裁という方を見てみますと、いろいろなバックグラウンドの方がおられます。民間の金融機関の経験が長い方もおられますし、イエレン議長などは大学の教授であり、かつて大統領経済諮問委員長もされたわけですけれども、そういう方もおられますし、また、経済省とか財務省のような政府のバックグラウンドのある方もおられます。

 ですから、いろいろなバックグラウンドの方がおられるということで、その資質というものを何か一義的に決めるということは非常に難しいと思いますけれども、恐らく一番重要なことは、経済とか金融というのは非常に変化をしてまいりますので、そういった変化に対応して適切な政策運営を行うということが一番重要な資質ではないかなというふうに思っております。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 いま一つよくわかりませんでしたけれども、総裁、これで結構でございます。ありがとうございました。

 麻生金融担当大臣にお伺いしたいと思います。

 昨日午後二時から質問取りをさせていただきまして、その質問が終わった後に速報ニュースで出ていましたので、それからの追加質問ということになりますが、先週も予算委員会で質問した東芝の粉飾決算の件でございます。

 昨日十二時に決算発表される予定でありましたが、一カ月間、決算発表は延期ということになりまして、決算発表ではないけれども、業績の見込みとして、米国の原発事業の減損、七千億円を超える減損になる見込みだということが発表されました。このままいきますと、十二月末時点で債務超過ということに相なります。

 二〇一五年八月の予算委員会でも私は麻生金融担当大臣にこの件を質問いたしまして、もちろん、個別の銘柄について、そして市場で取引をされている銘柄についていろいろコメントしづらいということは、私も市場にいた人間として承知をしておりますけれども、それでも、一言で申し上げて大変お粗末ではないかというふうに思っているんです。

 これは、金融担当大臣として、何か責任とか、あるいは金融市場の信頼性を損ねたと、いろいろお感じになっているのではないかと思いますけれども、その点、大臣、御所見をお願いいたします。

麻生国務大臣 よく御存じのように、個別企業の財務の内容について我々がコメントするということはできませんので。

 その上で、事実関係から申し上げさせていただければ、昨日東芝から公表された資料においては、これはまだ未監査、監査が終了していないという意味でとしながらも、平成二十八年度の第三・四半期末、いわゆる十二月末ということですが、株主資本合計がいわゆる債務超過になっている、マイナス千九百十二億円となる見通しである旨記載されているものだと承知をしておりますが。

 また、同じく昨日、同社より昨年十二月期の四半期の報告書について提出期限の延長というのが申請をされて、関東財務局でこれを承認いたしております。

 いずれにしても、私どもとしては今の段階で何も申し上げることがあるわけではありませんので、これは市場において速やかに正確な情報が開示されるように、これは東芝がしっかり、アメリカの分やら何やらいろいろなものが出てきているという事情はわからぬでもありませんけれども、これはしっかり対応していただくように、情報開示というものを、きちんとしたものをやっていただくようにしてもらわにゃいかぬということだろうと存じます。

木内(孝)委員 個別の銘柄についてコメントできないというのはそのとおりだと思う一方で、一年半前からやや人ごと的な答弁がこういう結果につながっているのではないかというふうに感じております。

 私は一つの個別の会社の一事案として本件を捉えているわけではございません。日本は競争力を大きく失っています。その理由は、政官業の癒着構造というのが大きな原因の一つとなっていると思っています。

 例えば、この東芝から、平成十七年から平成二十六年までの九年間に、自民党さんに二億七千百万円の政治献金がなされております。野党に自民党さんが転落したときは、三千八百五十万円だったものを千四百万円に減額しております。野党になると力がないからという、私も、落選したり野党になると、非常に風当たりが冷たくなるというのを感じておりますので。それが与党になった瞬間、二千八百五十万円、二倍以上の金額になっております。

 一昨年、私が質問したからかわかりませんが、これは不適切ではないかと予算委員会で質問したところ、去年、おととしと寄附を取りやめているというのが今の状況でございます。

 実は、今、東芝は経営危機に陥っておりまして、日本政策投資銀行から場合によっては融資の可能性が否定できない状況になっております。あるいは、産業革新機構から資本注入の可能性が否定できない状況となっております。さらに言いますれば、原発事業というのは事実上の国策事業でありまして、国が、東芝が生きるか死ぬかというその生死を握っている状態に今なっております。

 そうした状況の中で、二億七千百万円の献金をもらっているという状況は政策判断に全く影響しないと言い切れるのかどうか、この状況が適切であるとお思いかどうか、これは麻生副総理としてお伺いいたします。

麻生国務大臣 今、副総理と言われましたので、副総理としては全く答えることはできません。

 受け取っておられるのが、政府が受け取っておるわけではありませんので、党が受け取っておりますので、副総裁としてお答えくださいといって、私、副総裁ではありませんので、副総理ですから、私は副総裁ではありませんので、政府の役職としてしか答える立場にありません。

木内(孝)委員 それでは、質問をかえまして、麻生財務大臣に対しまして、こうした状況が財務大臣として適切だとお考えかどうかをお伺いいたします。

麻生国務大臣 財務大臣も政府の役職であります。

 したがいまして、この問題は党に対して行われたという話を今しておられますので、私ども、その内容を詳しく、つまびらかではありませんので、お答えのしようがないということだと存じます。

木内(孝)委員 それでは、質問をまたかえまして、平成十七年、十八年は大体二千八百万円、それから三千八百万円、平成二十二年から二十四年までは千四百万円、これは民主党政権のころですね、二〇一三年、四年が二千八百五十万円、ここに数字がございますので、もしよろしければお届けしても結構なんですが、こういう状態で適切な政策判断ができるのか。私は、自民党員として自民党の二階幹事長に、この二億七千百万円、寄附金の返金をするべきと一自民党員として二階幹事長に提案するべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的に、これまで党の役職も幾つかやってきた経験から言わせていただければ、これは多分国民政治協会を通してやっておられるんだと思いますので、東芝が直接やられたんじゃなくて、国民政治協会を通してやっておられると思いますので、国民政治協会が、多分適法に対処しているということだろうと思いますので、ちょっとそこのところがよくわかりませんので、今の前提条件の中ではお答えのしようがありません。

木内(孝)委員 今の御答弁では国民は多分納得しないと思うんです。

 だって、今、東芝という会社が生きるか死ぬかで、もしかしたら政策投資銀行がお金を出すかもしれない、それを所管する財務大臣であります。産業革新機構がこの間日本ディスプレイにお金を出しましたけれども、私も官民ファンドは大反対の立場でございますけれども、お金を出すかもしれない。

 そうした状況の中で、適切に処理しているとかしていないとかではなくて、二億七千百万円もの献金をもらっていながら正しい判断ができるのかどうかといえば、私はできないと思うんです。それをきちんと、この状態が問題ないとお考えだという理解でよろしいか、改めてお伺いいたします。

麻生国務大臣 木内先生の想像と思い込みでしゃべっておられる部分がかなりあるんだと思いますが、政府に救済をまだ申し込まれてもおりませんし、東芝はたしか、私が得た新聞情報でしかありませんけれども、半導体部分を売るんじゃないの。半導体部分という一番大きな部分を売却する、その売却する相手を今探していますという話で、自力救済というのを考えておられるというところしか私は知らないので、少なくとも、政府に対して資金の援助を申し込んできたという話は私は知りません。

木内(孝)委員 半導体部門の一九%を売却するかもしれないという報道と、きのうの時点では、その過半数を売却するかもしれないという可能性を今言っているわけでありますが、いずれにしても、私はこれは極めて不健全な状態にあると思っていますので、ぜひ、この二億七千百万円の寄附金の返還を御検討いただきたいというふうにお願いを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 日米経済対話の創設と意義等につきましては、もう既にるる質問がございましたので、そこについては省略をさせていただきます。

 昨日の予算委員会等々でも、まだいろいろ経済対話の中身がわからないところはございますけれども、一つ、予算委員会の議論等を見ていて感じますのは、やはり今まで投げかけられるボール、為替ですとかあるいは自動車の通商政策について、大きな懸念があって、それは、大きな心配が今のところは安堵感になっているのかなというふうに感じております。

 日米経済対話というのができる中で、私は一つ、今まで取り上げられていないAIIBについてのスタンスの変化についてお伺いをしたいと思います。

 二〇一五年の三月に、イギリス・ショックといいますか、突然イギリスがAIIBに参加表明をして、その後、ガバナンスの体制等々について問題があるから現時点では日本は参加をしないというふうな理解でございますけれども、逆に、麻生副総理が主導する形で、アメリカを巻き込む形でAIIBに今後参加するようなスタンスに変更するということを、日本主導でリードするお考え、それはないでしょうか。

麻生国務大臣 御存じかと思いますけれども、誇大な、膨大なアジアのインフラに対する需要に応えていくということは極めて重要な課題なので、これは日本の将来にとっても大変大きなところなんだと思いますが、問題は、このAIIBなる組織が国際金融にふさわしいスタンダードを備えているんですか、どこで誰が審査しているんです、誰が、融資を審査できる能力のある人がいるんです、どこから呼んできたんです、今までおたくはやったことがないんだから、誰がやるんですと。

 あれだけ誇大な、怪しげなシャドーバンキングなんという実態を踏まえて、また、さらにこれが出てこられるということは、これはえらい影響が出ますよということで、私どもとしては、きちんとした審査組織というものをやっていただきましょうというのが条件ですよ、それをそろえたらやります、うちは参加しません、はっきりしていますということを申し上げて、何回かアメリカ側とも話をして、では、日本が参加しないならアメリカも参加しないと、アメリカも参加しませんでした。

 結果的に、日本とアメリカが参加をしていないこの種の開発銀行というのは、世界にこの種の開発銀行というのは二十幾つあると思いますが、日本とアメリカが一番か二番か占めているところは全部総じてトリプルAがついていると思います、ADBにしても、ほかのところにしても、IMFにしても、ワールドバンクにしても、みんなそうだと思いますが。

 これまでのところ、あのAIIBというのは九件融資をしております、実績として。その実績の中で、ADBと組んだり世銀と組んだりしているものがほとんどでありまして、大きなものでいくと、ほかにも幾つかあります。単独融資というのがある、単独融資というのは九件のうち三つだけだと思いますけれども。そういった意味でいきますと、まだ確立されたものができているとはとても思えない、私どもはそう思っておりますので。

 借り入れ国というか、借りた国がその債務を返済可能なような絵を描いてやらないで、ただ、ぞぞっと借りて、返済計画も立て切らないような国に一方的に金を貸すというのはかなり無責任なことになって、ほかの国がまともに貸していた分を取りっぱぐれる。被害を受けるのはADBであり、貸しているこちらですから、そういったことになるとたまりませんから、運用を注視していきたいということを申し上げておりますが。

 その内容が今まで変わった、大いに変更をされたということを寡聞にして知りませんので、AIIBについては、今後とも注視はしていきますけれども、アメリカとの関係で言われれば、我々は聞かれたらその情報を正確に提供するということで、引き込むとか引き込まないとか関係ないです、それは。

木内(孝)委員 今、AIIBの話を質問しましたのは、ひとつ米国のインフラ投資とも絡んで質問させていただいております。

 訪米前に、五十兆円の経済パッケージ云々ということが報道されまして、予算委員会でも、安倍総理がGPIFの年金基金は使わないということを明確におっしゃいました。しかしながら、もしかして、これは今後の経済対話の中で、インフラ投資、何とかお金を出してくれよということになるのではないかということを心配しておりまして、要は、中国はこういうAIIBをつくってほかの国の資金を自分の国に有利なようにインフラ投資をしようということをしている。米国も、五十兆円のインフラ投資といっても、全額自分の国の税金で出すのではなくて、民間が資金を入れたり、あるいは外国資本を入れたりということで、できるだけ自分の財布が痛まない方向でこういう資金を出しております。

 一方で、日本は、ちょっと不思議なことに、例えばリニア新幹線を、どう見てもあれはあのままJR東海の民間資金で出せるはずのものを、わざわざ財政投融資で出したり、安易に財政に、国民の税金に手をつけているというのが私の理解でありまして、そこら辺の安易さというか、特に、日本は最初に税金を出して、しかも、ほかの国のインフラ投資にもしかしたら年金基金とか外為特会を今後私は出す可能性があると非常に心配しておるんです。

 では、麻生財務大臣としても、外為特会のお金とかGPIFの年金基金を、アメリカのインフラ投資に資金を拠出するというのは決して好ましくないという認識でいらっしゃるという理解の確認をさせていただきたいんですが、いかがでしょうか。

木原副大臣 財務省としての見解ということで、私の方から答弁をさせていただきます。

 御指摘のような、そのGPIF、また、そういった報道があることについては承知をしておりまして、予算委員会でも安倍総理が答弁されているとおり、たしか委員が質問されたと思っておりますが、あそこでも明確におっしゃっているとおりでございまして、報道にあるような、経済協力のためにGPIFが米国のインフラ事業への投資を行うということを政府として検討している事実はないということを財務省の立場としても報告させていただきます。

木内(孝)委員 ぜひ、外為特会とか年金資産は、アメリカのインフラ投資ではなくて、ジャパン・ファーストで御活用いただければというふうに思います。

 次に、麻生財務大臣にお伺いします。

 昨年一年間、ずっと消費税を上げるのかという質問をして、十回ほどですか、経済は好循環だから予定どおり消費税を上げるというのを一月から六月まで質問いたしました。しかしながら、世界経済のリスク、不確実性が高まっているから、やはり消費税は上げないというふうな答弁に、ある晩、突然変わりました。

 麻生財務大臣が現在認識されています世界経済の不確実性、リスクについて、どのような点を、三点でも四点でも結構ですけれども、もし三つほど挙げていただければ、教えていただければと思います。

麻生国務大臣 世界経済につきましては、間違いなく、二〇一六年の後半に中国が少し持ち直しを始めたとは思っておりますけれども、先進国のいわゆる弱い感じのする動きも和らいできておりますので、全体としては緩やかな回復基調かなとは思っております。

 ただ、三つと言われますと、これは中国は去年一年間で外貨準備高が一兆減った。一兆というのは、日本の持っている外貨準備高が丸々なくなったということですから、外貨準備高が一兆ドルなくなるというのは、ちょっと普通じゃない状態だと思いますね。

 しかし、とにかく過剰債務問題というものの動向等によっては、これは景気が下振れするリスクがあるというのは、やはり考えておかないかぬ大きな問題の一つだと思っております。

 それから、英国のEUの離脱ですけれども、これはいろいろ言いますけれども、これはイギリスよりユーロの方がもっと問題になるんじゃないのか、大体、何語でみんなしゃべるようにするわけと聞きたくなるんですけれども、全員で英語からフランス語に変えるんですかという話を言われても、そう簡単にはいかぬだろうなという感じがしないでもないぐらい。

 今、正直、長期的に見ますと、金融機関というのはEUの中に移らざるを得なくなって、イギリスからどこかへ移すとか、ルクセンブルクに移すというのは随分多いですけれども、そういったようなことをやっていくと、それはコストがその分だけ上がることになりますし、EUはEUを維持するために、イギリスが払っていたのは、EU全経費の二〇%はイギリスの負担だと思いますが、そのイギリスの全負担二〇%は減りますから、それをみんなで、残りの二十六で割るわけですよね。その分だけ税金が上がるということになりますから、それは結構な額になるというのが二つ目。

 それから、やはり先ほど言われましたように、米国が、イエレンという人の言われるように三回上げるとしますよ、やるかやらないか知らないけれども。やるやると言って去年ほとんどやっていませんですから、よくわからない話がありますので何とも言えませんけれども。それになると、当然のこととして、金利が高くなればドルは高くなりますから、ドルを安くしろ、安くしろと言っていながら金利を上げると、やっていることと言っていることが両方とも矛盾したことを今やっておられるわけですから。

 そういったことになると、仮に木内先生の予想のとおりに三回上げるとしますと、その分だけ新興国からドルがキャピタルフライト、資本流出が起きることになりますので、新興国経済と言われるものはかなりリスクは高まってくるだろうと思って、特にアジアの国々なんかは結構きついことになるところが出てくるような気がしますから。

 三つ挙げろと言われたら、それぐらいのところが今多く、今すぐというのであれば、全体の流れとして、短期的に見て、中長期的に見て、その三つが今言えるところだと存じます。

木内(孝)委員 麻生大臣、ありがとうございます。

 大変僣越ながら、私も全く同じ三点だったものですから、非常に認識が共有できている、僣越ではありますけれども、そう思いました。

 ちょっと今中国リスクに触れられましたけれども、一兆ドルの外貨準備が落ちたというのは私も非常に着目しておりまして、前から麻生大臣は非常に懸念しているところですが、中国は若干、何か落ちついている感がある一方で、やはり今、いわゆるルイスの転換点、高度経済成長期から一気に低成長の転換期にあると思っています。日本に例えれば一九七〇年代の終わりぐらいで、今後は、七%ぐらいの成長が四、五%ぐらいに落ちつく、日本のまさに八〇年代ぐらいに入るんだと思います。

 ここで、私は、日米の経済対話の中でぜひ一つアジェンダとして挙げていただけないかなと思っておりますのが、中国経済が悪くなるというのは世界不安、世界のリスクの一番大きな点の一つだと思っておりまして、低成長になるのは一定程度いたし方ないんですが、四、五%にソフトランディングできれば、これはかなり上できだと思っています。これを下手に放置していますと、いわゆる長期停滞、日本と同じ一%成長とか二%成長に中国はすぐになるという強い心配をしております。

 その中で、中国に対して変動相場制移行による改革開放路線、資本取引の自由化、中国がそれに応じるかどうかはわかりませんけれども、私は、これは中国のためにもなり、日米が協力してきちんと持ちかければ十分に実現が可能だと思っております。

 ペンス副大統領という方は大変立派な方だとは思いますが、やはり政治経験、あるいは世界の国際金融、経済、あるいは政治の世界の中で、麻生副総理の方が二倍も三倍も上手だと思っています。

 そうした中で、変動相場制とか改革開放路線、資本取引の自由化、こうしたものは今回は出ていないかと思いますけれども、今回これは質問通告はしておりませんので特段のコメントは結構なんですが、こうしたものをアジェンダとして取り入れていただけないかということをちょっと麻生副総理にお伺いいたします。

麻生国務大臣 中国がだめになるのは間違いないですよね。はっきりしていますよ、それは。みんなそう思っているんだから、はっきり言った方がいいよ。みんなそう思っているんだから、言わないだけで。私みたいに言うから問題が起きるんだろうけれども。

 どうだめになるか、いつだめになるかが問題なんだと、私は御本人たちにはそう言ってあります。私の場合は、本人の悪口は面と向かって言うことに決めていますので、陰口はたたかない、人の前で言っていますから。もう既に楼継偉にも言っていましたし、周小川にも言ったことがありますから、今度の新しい人はまだ知りませんけれども。

 少なくとも、ソフトランディングというのが、今の定義は難しいところなんですけれども、木内先生が言われるように、四%、五%、四%を切るとちょっとしんどいですよね。

 だから、そういった意味では、ソフトランディングしてもらうようにするためにどうするかという話は、これはちょっと真面目な話、おととしの十二月にいきなり一千億ドル減ったんですよ。去年一月、また一千億ドル減ったから、表に出ますからね、冗談じゃないと。

 一千億ドルというのは、日本がIMFに貸した金が一千億なんだから、それが毎月減っているんですから、こんなことをやったら三年でパアだぞ、どうするつもりなんだ、電話しろといって電話をしてやり合って、いろいろあったんですけれども、ちょっとそのあたりのいきさつは、事実だけ申し上げると、いろいろあって、結果減ったんですよ。トランプになった途端、いきなりぼんとまた上がってきた。十二月、また上がった。事実です。したがって、三兆ドルを切るかなと思ったら、十二月はもちましたけれども、三兆百億ドル。そして、一月、もう出ましたけれども、一月になったらついに四兆を切りました。三兆台までどんと落っこちてきています。だから、そういった意味では、また十一月以降はとまっていないんですよ。

 そういった意味では、これは手口をきちんと、やったことがないとか言うから、そんな全体主義国家で何でも決めたらやれる国が、やる手口は幾らでもあるだろうがと。日本でばんばん使っている銀聯カードなんというのを、使い出し制限を決めたらどうだ、二百万円までとか百万円までにしろとかいうような話を決めればいいじゃないか、簡単にできるんだろうからというような話をしても、うんと言って、謝謝と言って、それでそうなるんですよ。簡単になりますから。びっくりするぐらい、なっちゃう。

 そういったような話をやるのを、これは向こうも結構必死なんだと思いますよ。だから、それを素直に、こういう話をという話を、もっと来てくれれば、こっちも、それはといって、こうすれば、ああすればと。向こうは勝手に潰れてもいいですけれども、こっちも迷惑しますから。そういった意味では、両方、アメリカもそうでしょうから、こういったような話は、もう少し状況を見詰めた上で、アメリカの方もそれなりのスタッフができ上がってこないと何ともこの種の話ができませんので、これは財務大臣レベルの話じゃなくて、もっと、デピュティー、財務官とかそういったところの仕事になろうかと思いますので、そういった話もきちんと、今御提案をいただきましたけれども、ひとつ頭に入れておかないかぬところだと思います。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

 中国は、中所得国のわな、長期停滞シナリオに、私は、このまま放置すれば、今麻生大臣がおっしゃったとおり、なる可能性が非常に高いと思っていますので、これは我が国にとってもよくないことですし、アジアの安定にとってもよくないことですので、ぜひアメリカを巻き込みながら、そっちの方向のアジェンダを取り上げていただければと思います。

 きのうの所信の中でもございましたが、経済は好循環ですというふうに書かれております。私も、先ほど申し上げたとおり、雇用関係の有効求人倍率とか株価が上がっていることを非常に高く評価している一人として、あえてお伺いします。

 今年度、税収が一・七四兆円下振れをしております。これは木原副大臣にお伺いした方がいいのかもしれませんけれども、割と経済が順調、順調、順調という、どこを見ても何かバラ色のように書かれているにもかかわらず、消費税は上げることができなかった、あるいは税収は下振れ。当然、下振れは仕方ないと思うんですが、第一次オイルショックとか二次ショック、アジア通貨危機、こういうときだけ下振れているわけですね、過去、大震災とかリーマン・ショックとか。

 ことしは、何か順調だ、順調だと聞いて、ふたをあけたら一・七四兆円。円高要因でどうのこうのとかいろいろ御説明はいただきましたけれども、なぜ、こんなに順調だと言っているのに税収は下振れているのか、要因をお聞かせいただければと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、二十八年度の税収の補正につきましては、一・七兆円減、五十五・九兆円と見積もったところでございますけれども、これは、直近の課税実績、企業収益の見通し、政府の経済見通し等をもとに、主な要因といたしましては、二十八年の年初から円高方向に推移したことによりまして、当初予算に比べて、輸出企業の円建て売り上げの減少を通じて法人税収が減少する、また、円建ての輸入額の減少を通じて消費税収が減少すると見込まれることから、このような減収を立てたということでございます。

木内(孝)委員 税収の下振れは非常に重い話でございますので、ぜひ予算案の審議においても緊張感を持って続けていただければと思います。

 最後の質問になりますが、資料をお手元に用意しているんです。

 日本は世界で第三位の経済大国であります。製造業生産額も世界で第三位、輸出額四位、研究開発ランキング三位。最近ですと、ノーベル賞あるいはオリンピックの金メダルの数等々、割と世界の上位にランキングされております。

 とてつもない国日本ということで自信を持つことは大変結構なことだと思っています一方で、おめくりいただいて、一人当たりのGDP、これは為替が乱高下すると上がったり下がったりはするので、あくまでも購買力調整後の為替レートで換算しております。世界のOECDの、一万ドル以下の国を除いてみますと、今、日本は、いわゆる先進国と定義される国の中で、二十八カ国中二十七位が一人当たりの生産性ランキングということに相なっております。同様にして、次のページに、輸出額ランキングも四十四位とか、研究開発ランキングも十位。一人当たりに換算すると、極めて厳しい数字になっているんです。

 こうした厳しい数字というのは、ある意味、日本の実力そのものに今なっていると思っておりまして、私は先ほど構造改革のおくれがひどいということを申し上げましたが、自信を持つことはいいことなんですが、足元をきちっと見て、こういう今の状況、一人当たりに換算すると、先進国でびりから二番目であるというような、そうした危機感とかいうのが全く私は今の政府から感じられません。

 最後に、木原副大臣からこの点につきましてコメント等いただければというふうに思います。

木原副大臣 日本の潜在成長率につきましては、労働力人口の減少や、また、委員おっしゃったように、長引くデフレ不況の中で企業が設備投資に慎重であったことなどを背景として低下傾向にあったものと認識をしております。

 政府といたしましては、潜在成長率を高めていくためにも、未来への投資の拡大に向けた成長戦略を推進するとともに、一億総活躍社会の実現に向けて、働き方改革や子育て、介護の環境整備等の取り組みを進めるなど、少子高齢化を乗り越えるための取り組みを推進していく所存でございます。

 民間部門においては、高水準の企業収益を賃金引き上げ、設備投資に回していくことが重要でありまして、政府といたしましても、中小企業の攻めの投資を後押しするため、固定資産税の軽減措置の対象拡大、賃金引き上げ環境整備のため、所得拡大促進税制の拡充を実施することとしているところでございまして、民間の積極的な取り組みに大いに期待しているところでございます。

 長年続いたデフレの不況からの完全脱却に向けて、今後とも、あらゆる施策を総動員し、アベノミクスを一層推進してまいる所存でございます。

木内(孝)委員 すっかり忘れ去られた構造改革にもぜひ力を入れていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 以上です。

御法川委員長 次に、古川元久君。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

古川(元)委員 民進党の古川元久です。

 麻生財務大臣、まず最初に、副総理として、日米経済対話とトランプ政権の経済政策について御質問したいと思います。

 先ほど同僚の伴野委員の質問の中に、今度の、これから始まる経済対話、日本政府側の事務局体制はまだこれからだ、ただTPPの本部みたいに各省庁から集めてという話がありました。

 私は、かつて役所にいたときに、一番末端でしたけれども、日米構造協議とかそういうところにも携わった者として、TPP以上に、TPPは多国間でしたから、もともと多国間を、我々の政権でも目指したのは、バイでやるよりも、バイでやるのはなかなか、アメリカというのは相当タフネゴシエーターですから、やはりそこは各国と、ほかの国と協力してというところもあったわけなんですが、今度は日米、バイですから、まさに八〇年代後半から九〇年代のような貿易摩擦やああいう構造協議のような、大変厳しい、対話と言いながら事実上バトルのような、そういう協議になる可能性は十分あると思います、特にトランプ大統領が今まで言っていることを考えれば。

 ですから、ペンス副大統領と麻生副総理との間で見れば、まあ、けんかは麻生副総理の方が強いのかなというふうに思いますけれども、でも最後ですから、最終的な責任者はそうかもしれませんが、やはりこういう協議というのは下から積み上げていかなきゃいけない。ですから、要は、事務局の力というのが極めてこれは、今後この対話において、ちゃんと我が国の国益を守る、主張をきちんと通せるかどうかというところで大きなポイントになってくるんだと思うんですね。

 その点からしますと、やはり、アメリカの場合は通商ではUSTRがあるように、USTRというのは、別に役人だけじゃなくて、グローバルな、いろいろな厳しいビジネスの交渉で勝ち残ってきているというか、そういう中で大変優秀な弁護士とかそういう人も集めてやっているわけですね。ところが、日本の場合には、これはみんな、別にお役人が悪いとは言いませんけれども、そういう厳しいビジネスの、それこそトランプみたいな人とやり合ったことのあるそういう官僚の人はいないわけですね。

 ですから、かつて長銀の破綻のときに、リップルウッドに買収されたときに、後から瑕疵担保責任というのが出てきて問題になった。当時あの交渉に当たった私のかつての同僚の官僚の人と話したときには、相手に出てくるのはそういう企業買収とか何かのプロの、ばりばりの一線の弁護士が出てきて、こっちはそんなことやったことない役人が交渉している、そういうことがああいう瑕疵担保責任みたいなものをのまされてしまった、そういう一つの背景だったという話も聞いたことがあります。

 そういう意味からしますと、この日米経済対話に臨むに当たっては、よほどこちら側は強力な事務局をつくらなきゃいけない。ですから、そこには、各省庁から集めてくる、各省庁から集めてくると、やはりどこもこれは、一番よく副総理も御存じだと思いますが、主導権争いとか、外交はすぐ、いや、まず外務省だとか、もうとにかく、なかなか、日本政府の場合は、よく相手や何かに聞くと、日本の場合は来る人の役所の所属によって全然言うことが違うんだ、一体どこが本当なのかわからないと言われるぐらいに、まとまりもなかなかないとか、主導権争いで、内輪の中でエネルギーを使ってしまう部分が多いんですね、往々にしてあるんです。

 ですから、やはり、今度の日米経済対話は、よほど腰を据えてやるためには、日本版USTRのような、やはりこれは官僚だけじゃなくて外からもですよ、そういういろいろなビジネスの先端の交渉で優秀だと言われているような人たち、そういう人も集めた事務局体制をつくるべきだというふうに思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 もとお役所におられただけあってよくおわかりのとおりなんですが、昔と違ったのは、多分、この数年間の間、世の中の流れが非常にインターナショナルな話になってきて、財務省でいえば、余りメーンじゃなかった国際局がメーンに躍り出てきて、端パイとか言われていたのがいきなり真ん中に出てきて、今、国際交渉というのはもうほとんど財務官というのが全く表に出てくるようになりました。

 したがって、財務省に限らないんですが、通産省もどこも皆、そこそこ横文字に不自由しないのがだんだんだんだん、皆、長い時間をかけて育ててきたんだと思いますが、そういった人が結構おるような時代になってきているというのが、昔のストラウスという人がカーター大統領のときにやったあのころの時代とはもうかなり違ったものになってきているというのが、一つの実感としてはあります。

 ただ一方、今委員言われましたように、MアンドA、買収やらそういったのに手なれた人というのは間違いなく日本の弁護士の中にも随分ふえてきているのも確かなものですから、そういった意味では、我々としてもいろいろな人を、大いに知恵を使って交渉せねばならぬと思っております。

 いずれにしても、まず経済政策をやって、エネルギーやらインフラやらの話、そして貿易だ、投資のルールを決めましょうという話をやっていきますので、やはり、枠組みをつくるというのはすごく大事でして、ルールをつくるのは、自分に都合のいいようにルールをつくるのが大国ですから、やはりルールをきちっとつくり上げるというところはまず今後やっていかないかぬところだと思います。

 いずれにしても、財務省一つでできるはずもありませんので、先ほど伴野先生の御質問にもありましたけれども、私どもとしてはそこはきちんと、各省はもちろんのこと、いろいろそういった知恵のある人を借りて、私どもとしてはきちんとしたチームをつくるんですが、言われましたように、各省がやらせるとばらばらになる、だから副総理なんだというように理解していますので、そこのところはこちらできちんと最後の調整はせないかぬだろうと覚悟しております。

古川(元)委員 もちろん、一番最後は副総理ですよ。しかし、やはり事務局の段階でもきちんとグリップする人というのはつくっておかなきゃいけない。これが、やはりどこかの役所から来ていると、どうしてもその尻尾が、その人もあるし、ほかの役所の人間もそうやって見るんですよ。

 ですから、今、金融庁あたりだとかなり弁護士だとか公認会計士だとかそういう人たちも来ているようですけれども、やはり民間の優秀な人を事務局をつくったときには入れる。それこそトップにそういうような人を入れて、各省庁とは別に関係ないというような、それくらいの体制でやらないと、トランプ大統領はもともとビジネスマンですから、特に不動産屋さんですからもともとが、それは海千山千で、これまでツイッターなんかでいろいろ見ていても、明らかに従来の政府間の交渉以上にトランプ政権とやるのは覚悟をして、そして準備をしてやらないと、これは本当にひとたまりもないんじゃないのかなというふうに思いますので、ぜひそこのところは、そういう民間の、それこそさっき副総理からもお話あったように、今、日本人でもそういう優秀な人たち、グローバルなところで活躍している人はいますから、そういう人をちゃんと雇うなりしてそういう体制をつくっていただきたいということをお願いしたいと思います。

 次に、トランプ政権の経済政策についてちょっとお伺いしたいんですが、感想といいますか感覚を、まだ、これから具体的な話なんですけれども。

 これまでのトランプ大統領の選挙中なんかの発言から今までを見ていますと、柱は、大幅減税とか、あるいはかなり大規模な公共投資や財政出動、そしてまた規制緩和。こういうところを見ると、レーガン政権のときのレーガノミクスとよく似ているんじゃないか、そういうことをよく言われたりします。

 麻生副総理は長い政治経験がございますから、今の現時点で、レーガン政権、あのレーガノミクスは一時期、大変一世を風靡しました。ラッファー曲線といって、減税すれば税収が上がるんだといって、それは今となっては、あれはブードゥー曲線だといっていわば信仰みたいなもので、実際には減税したら大幅な赤字になって、結局、その後のブッシュ大統領も、ブッシュ大統領は、リード・マイ・リップス、増税しないと言ったのにレーガン大統領のレーガノミクスの負の遺産のために増税してうそつきだとなって、大統領選挙に負けちゃった。クリントン政権も、財政赤字対策で増税をするとなったわけでありますが。

 今から考えて、現時点で、このレーガノミクス、これをどう麻生副総理は評価されておられるでしょうか。

麻生国務大臣 一九八〇年代だったと思いますが、米国経済というものはインフレがえらい高くて、しかも低成長というような時代の中で、経済再生をレーガンとしては目指したんですが、当時のアメリカの中で、大学も行ったことないあんな三流の役者が何ができるんだと、私の友達は全員ぼろかすでした。ところが、あけてみたら、少なくとも、戦後最も評価の高い大統領に八年間で化けたということなんだと思っております、これは結果としては。あとの評価はまた別のあれで、少なくともそうなった。

 やったことは何かといえば、国防費以外の支出は早い話が大幅にばさっと切って、歳出の伸びをまずやたらと抑えたのが一つ。それから、所得減税、それから投資税額の控除など、今言われたような税額控除というのを大幅にやったのが二つ目で。それから三つ目に、金融機関というものの業務拡大をやるために大幅な規制緩和をやった、あの人は。それで、通貨供給量の伸びを抑制的に調整するという金融政策を、インフレを抑えるためにやったんだと思いますが。こういった一連のものを総じてレーガノミクスと言うんですが、これで、いい思いも悪い思いもあるんですが、いい思いをしたのは、多分、クリントン政権時代にそれが全部花開いてというような形にはなったとは思います。

 規制とか減税とか規制の緩和とか、今やろうとしている話が漏れ伝わってくる、今のトランプさんの話と似ているところもないわけではありませんが、インフレというのを、確かに、長く続いたインフレを抑え込んで、結構景気のいいものにプラスしたというのは間違いないとは思いますが、同時に、財政の面からいったら、これは、いわゆる双子の赤字という言葉があの当時出たんですけれども、とにかく実質の金利高とか、それからドル高ということになりましたものですから、貿易やら経常収支の赤字がえらい勢いでふえていった、マイナスの面も非常にあったと思います。

 これは評価として、インフレを抑え込んだとか、少なくともソ連を崩壊させたとか、そういった成果が上がったことは確かだと思って、そこのところは高い評価をアメリカで今得ているんだとは思いますけれども、傍ら、そういった負の部分が多かったということも、これは両方見ておかないと、片っ方だけ評価すると危ないなという感じはします。

古川(元)委員 東西冷戦の終結とかそういう安全保障面はおいておいて、私は、経済政策として見たときですよ、レーガンの税制改革とか、あるいはそういう双子の赤字を生むことになった、軍事費とはいえ相当財政出動はしたわけです、一方では。

 ですから、この財政政策や、あるいは税制改革、これについて現時点でどう評価しているかということです。

麻生国務大臣 確かに、航空機会社なんかでは、パンアメリカンなんという会社は我々から見たらえらい会社でしたがなくなりました。多くのそういった航空機会社がばたばたなくなっていったというので、規制緩和して、LCCにしていって。いろいろありますけれども、そういったようなもので非常に活性化させたことも確かでしょうけれども、同時に、貧富の差がついていったはしりには、端緒になったのも、多分あの辺から始まっているのかな、私自身はそう思っておりますので。

 レーガノミクスというものに関しては、私は、何となく、ソ連がなくなって世界が冷戦構造から解放されたというところは、結果として経済に大きな影響を与えたのかもしれませんけれども、アメリカ自体を見た場合には、一国の経済としては、あれだけ大きな双子の赤字を抱え込んでえらいことになっていったという面は忘れちゃいかぬところだろうなと。経済面だけからいったらいろいろ評価が分かれるところだ、私はそう思います。

古川(元)委員 では、もうちょっと絞って。

 法人税の大幅な減税をやりましたね。さっきもラッファー曲線と。これは、どういうふうに今は評価していますか。

麻生国務大臣 貧富の格差がさらにつけていったものにアクセルを踏んだかなという感じがしないでもないんですが、強い会社がさらに強くなっていったというのは確かだと思いますけれども。少なくとも、ITなんというものを使ってえらい勢いで伸びていったというのが始まりましたので、結果として、いわゆるアメリカの広大な中西部のところが何となく貧しくなっていって、西海岸と東海岸だけのところで、カリフォルニア、オレゴン、ワシントン、この辺あたりのところの航空機産業だ、シリコンバレーだというようなところがよくなっていったのに対して、真ん中の辺の、昔から仕事をしていたところでいえば、いとへんはもっと前からでしたけれども、いとへん、鉄鋼業者、みんな軒並み厳しいような状況になっていったのは、そういった税の改革というのもかなりの影響を与えたんじゃないかなと思うぐらいですから。

 やはりそういった意味では、法人税の減税というものの与えた影響は、プラスマイナス両方あって、結構マイナスの面は忘れられていますけれども、倒産していった会社というのは結構な数に上っているなというのが私の実感です。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 そうすると、トランプ大統領もかなり大規模な法人税減税をしようとしているわけです。今、麻生副総理がおっしゃった言によれば、レーガンのときにそれで東西の両海岸はよかったかもしれないけれども中西部がと。トランプさんは、まさに逆に、ここの中西部の、ラストベルトと言われる人たちの不満を吸収して勝ったと言われているんですけれども、しかし、そういう状況の中で、また法人税減税を大幅にやるというのは、どうですか、レーガンのときの二の舞になる、そういう危険を感じませんか、いかがですか。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 御指摘のとおり、国境税の話やら何やらしておられるのも確かですし、こういうのは全部で言わないと何とも言えないんですが。まだスタートしたばかりなので、具体的な内容がよくわからぬので、言って実際になったらやらないとかいろいろ話がありますので、正直、もうちょっと時間をかけて見ないと、非常に誤解を受けかねぬから、こういったところでしゃべると、おまえあのときああ言ったじゃないかと後々ずっとつけ込まれたりなんかしますので、私の立場は。そういった意味では、よくよく言葉を選ばないかぬところだとは思っていますけれども。

 ただ、今言われましたように、中間選挙を勝ち抜くためには中西部から票をとらないとどうにもなりませんよ。その中西部の人たちに何て言ってあの人は票をとったかといえば、まさに今の話を。ですから、そういった意味では、減税というのをやった分だけ、その分だけ中西部に何を与えるんですかねというのが私らにはちょっと見えてこないんです。

 ですから、したがって、今のペンスにしても何にしても、まさに中西部のオレゴンだオハイオだカンザスだ、あの辺から出てきた人たちが今の中核にいるわけですから、こういったことを考えますと、法人税減税というのだけを見ているとちょっと間違えちゃうので、よくよく見ないと、実際に、今アメリカは三五ぐらいあるのをいきなり一五にしますというような話が実質可能ですかということを言われると、私はちょっと、正直、ムニューチンにしても周りにいる人たちはちょっと待ってくれ、そんな簡単な話じゃありませんよと言う人たちも出てくるだろうと思いますので、今からどういう動きになってくるかはわかりませんけれども、私どもとしては、この話はいろいろな、刺激もありますけれども毒もありますから、両方をよく見ておかないと何とも申し上げられぬなという感じがしますので、もうしばらくして、スタッフがそろった上でどういう話が出てくるかということなんだろうと思っております。

古川(元)委員 先ほど木内委員との中で、経験で、中国が聞いたらちゃんと教えてやろうという話がありました。副総理、アメリカに対しても、やはり長い経験を持っていらっしゃるんですから、そういう危惧があればこういう場で、対話のような場で伝えることも必要じゃないかと思うんですよね。

 また、先ほど副総理おっしゃいましたけれども、結局、レーガノミクスの減税でまた格差が拡大したんじゃないかという話がありました。今回のトランプ大統領を生んだ、あるいはサンダース現象の背景には、やはり格差の拡大がある。ですから、本当にトランプ大統領がやろうとしている税制改革、これがそういうものをむしろ助長するようになってしまったら、これはアメリカの問題だけでなくて、世界の大きな問題、波及する話でありますから、特に法人税の減税競争が世界じゅうやり始めたら、それが本当に世界全体にどう影響を及ぼすかということも含めて、そういった意味では、しっかり言うべきことは言っていただかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っています。

 ですから、ここの部分はぜひ副総理も、中国に対してもちろん言うことは言う、アメリカに対してもちゃんと言うことは言うということが必要なことだと思いますから、しっかり対話の中で言っていただきたいなというふうに思っております。

 次に、対話が進んでいく中で私が若干危惧するのは、レーガン政権の話をさっきからさせていただいておりますけれども、レーガノミクスが双子の赤字を生んで、ドル高になって、ドル高が余りにも進行したがために、その是正のためにということで八五年に、例のプラザ合意が交わされるわけですね。このプラザ合意が交わされて、一日たっただけでドル・円レートは二百三十五円から約二十円下落して、一年後には百五十円台まで、こういう急激な円高が進んだんですね。

 こういう余りにも急激にやはり為替調整を行ったがために、我が国は、その後深刻な円高不況に陥って、その円高不況への対応ということで、それが過度の金融緩和そしてバブルにつながって、そのバブルが崩壊をして、その後の今に至る長期のデフレマインドというかそういう状況に、低迷に陥っていったわけですね。

 ですから、そうやって、今になって振り返ると、このプラザ合意というのは、私、何年か前にダボス会議に行って、中国の人民銀行の副総裁だったかな、あるパネルで、中国の為替が安過ぎる、さっきの木内さんの話じゃないですけれども、実勢価格に合うようにもっと切り上げろみたいな話になりまして、日本のプラザ合意を例に出して、中国は日本のようなああいう失敗は犯さない、余りにも急激に為替調整をして、日本はその後バブルが起きて、崩壊しておかしくなった、だから、為替の調整はもちろん必要だと思うけれども、徐々にやはりやっていかなきゃいけない、プラザ合意を教訓にしてそういう発言がありました。

 今からしてみると、やはり、我が国の当時置かれていた状況とかそういうものを考えると、あそこまで急激な為替調整をのんだというのはちょっとこれはやり過ぎだったんじゃないのかな、そういうふうに思いますけれども、現時点で、副総理はこのプラザ合意をどういうふうに評価しておられますか。

麻生国務大臣 あれはたしか九月の二十二日でしたっけ、昔トランプが持って破産して売ったホテルがプラザというホテルなんですけれども、あのホテルで、フランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカでしたかな、先進五カ国の蔵相・中央銀行総裁会議というのを開いて、結果として、あそこで円の独歩安みたいに言われていた話を一気に円の独歩高みたいにやられたんだと思っておりますけれども。

 私に言わせたら、やはりドル高是正をせにゃいかぬということで、各国が合意したという点に関しては、結構、各国、五カ国全部合意した上でやっていますから、そういった意味では、為替のレートはファンダメンタルズに反映すべきだとかいろいろな理屈はくっついていましたけれども、とにかくそういったような話をされたんだと思っていますので、各国が具体的な行動について合意したという点に関してはそれなりの意義があったとは思います。

 一方、円高の要因としては、それプラス、日本側は十月の後半になってから、あのときは、たしか一月ぐらい後からいきなり日銀によって短期の市場の金利を上げたんですよね、たしかわあんと。それで、そういったものもあったものだから、プラザ合意による協調介入だけが原因とは言いませんけれども、いずれにしても、バブルが発生する結果となっていったのは確かなので、やはり、円高不況に見舞われたものであって、プラザ合意がバブル発生の原因とまでは言い切れないんじゃないかと思いますけれども。

 いずれにしても、景気が急激に拡張していくところにおいては、大規模な経済対策をやったのが、一九八五年がプラザ合意で、八七年にやって、それでその後の金融緩和等々を実施してきたんだと思いますけれども、いずれにしても、政策運営というものがバブルの発生の一つの素地になったということは間違いない事実だと思いますので、あれは非常に私どもとしては、今後を考えていったときに大いに参考にしていかねばならぬ、歴史の教訓として覚えておかないかぬ大事なことなのであって、あの種の後の日銀の対応やら政策対応というものは、我々としてはきちんと日本の歴史として頭に入れておかないと、歴史に学ばないということになりかねぬと思っておりますので、今後ともこういったものは、金融に携わる者としては頭に入れておかないかぬ大事なところだと思っています。

古川(元)委員 私は、為替で一番大事なのはやはり安定だと思うんですね。ですから、それはプラザ合意だけじゃないと思いますよ、我が国のバブルの話は。しかし、やはりあれがきっかけになったことは間違いないと思うんですね。

 余りにやはり急激な為替の調整が行われた。私は、これからの、今度は財務大臣と財務長官との為替も含めた協議とか何かで、今の言っている、まだわかりませんけれども、これまでのトランプ大統領の発言で政策をやれば、どう考えても、普通に考えたら、ドル高に進んでいく。しかし、そこは、先ほどから副総理もおっしゃっているように、ドル高が進んでいったら、トランプさんを応援してくれた人たちからしたら、ちょっと話が違うような状況になってくる。

 そうすると、政策的にというか、普通の市場に任せておけばドル高が進むのを、それこそあのプラザ合意みたいな形で、強引な形でですよ、為替の調整を求められるという可能性は絶対ないとは言えないんじゃないかなと思うんですね、しかも、あのトランプさんのああいう性格からしたら。ツイッターで、とにかくトヨタに、メキシコに工場をつくるんだったらけしからぬと言うような人ですからね。

 仮に、将来、そういうような厳しい話があっても、我が国としては、やはり為替というものは安定的で、そんなプラザ合意のような急激な為替調整というものは、どんなにこれは言われても、やはりそこはのめませんよということは、もし仮にそういう状況があったら、はっきり言うべきだと思いますけれども、そこは大丈夫ですね、副総理。

麻生国務大臣 それこそ、仮定の質問のそのまた仮定みたいな話ですからお答えのしようがありませんけれども、おっしゃるように、為替というものは、基本的には、変わるにしても、スローリー、ステディーという、よく英語で言うものです、ゆっくりであっても確実にというラインというのでやっていかないと、今でいうボラティリティーとか、いろいろな表現をしていますけれども、アップ・アンド・ダウンが激しいというのは、これはいい思いをする人は一人もいませんので、株屋がもうかるだけみたいな話になりかねませんから。そういったようなことにならぬように、きちんとした形でやるように、両方とも、これは、各国、財務大臣というのは、スタビリティーとかステーブルとかみんなよく言いますけれども、そういったことに関しては皆合意をしておるところでもありますので、今言われたように、一方的なことになるというようなことはない、そう思っております。

古川(元)委員 しっかりこれからの日米の協議の中で、我が国としてやはり、アメリカもアメリカ・ファーストと言うんですから、我が国も、我が国経済を第一に考えたそういう交渉に臨んでいただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 ちょっと時間も過ぎましたので、次の項目に行って、国債管理政策についてちょっとお伺いしたいと思います。

 ことしの予算の中でもなんですけれども、皆さんにちょっと、これはうちの財金の部門会議に財務省から出してもらった資料をお示ししておりますけれども、このところずっと、予算の中における利払い費の国債金利について、これを見ていただくと、積算金利、平成十九年は二・三、それが二十年に二%に下がって、しばらくそれが続いて、今、一・六まで下がってきています。

 一方で、実績の金利の方は、このゼロ金利状況から、さらに黒田総裁になってからの異次元の金融緩和というもの、そして、マイナス金利とかいうものもあって、これを見ていただきますと、積算金利と実績金利の乖離というものは、年々やはり大きくなってきているんですね。

 これは、私は、もっと実勢に合わせてもいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、予算上の積算金利、これが実績金利とこんなにかけ離れている、乖離している状況について、財務大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 この二十九年度の積算金利ですけれども、これは、当面、長期金利をゼロ%程度で推移するよう長期国債の買い入れを行うということを日銀が明言しておられますので、いわゆる超低金利が続いているということを前提にしておりますのが一点。

 もう一点は、過去、今まで、例えば運用部ショックと言われた、平成十年でしたかのときに、あれは〇・九%が、いきなり、どんと二・〇まで上がったという、過去に例がありますのが一回。それから、もう一回激しかったのが、その後の、五年後のVaRショックのときに、このときは〇・五だったものが一・六だったかな、何かどんと上がった記憶があります。いずれにしても、一・一一気に動いたという過去に例があります。

 したがって、政府としては、調節方針に従って金融政策を行うものと認識しておりますけれども、物価安定目標の実現のために行われるもので、今後、その時々、物価情勢を踏まえて変更される可能性があることを考えて、長期金利というものは、金融政策だけじゃなくて、経済とか財政の状況等々さまざまな要因を背景にして市場において決まるのが基本だと思っております。

 したがいまして、過去と同様、これまでと同様、もし仮に金融市場にどんと何かショックが起きたときに、ちゃんとそのバッファーを持っておかないとえらいことになりますので、ある程度のリスクバッファー、そういうアローアンスをとっておかないといかぬというのが我々としての務めですので、金利の急上昇時の例というものを用いたものだと思っておりますので、一・一ぐらいのものを持っておかないと、もしもということに備えるのに対応できないというのが過去の例から我々が学んだことであります。

古川(元)委員 過去の例からとおっしゃるんですけれども、でも、ずっと一・一じゃないんですよね。ですから、私も別にバッファーを全く否定するものじゃないですよ、しかし、ここまで、一・一までバッファーを持たなきゃいけないという理由が、しかも、不測の事態がというふうにおっしゃいますけれども、それに備えてと言いますけれども、今まさに日銀が長短金利操作つき量的・質的金融緩和といってコントロールしているわけでしょう。

 そういう事態を想定するということは、日銀を信用していないということですか。そこはどうですか。

麻生国務大臣 これまで、言われたように、確かに、一・六、一・八、一・八というような状況になっておりますときに、金利の方は〇・七、〇・五、〇・四、〇・一、実績金利の方は下がっているんじゃないかと、この例はこのとおりです。

 このとおりなので、私どもとしても、その点はよく踏まえて、本年度、二十九年度は一・一にして、こっち側はゼロであるであろうということを想定して、それで私たちの過去の経験から見て一・一というのを設定させていただいておるというわけであって、我々としては、日銀を信用するという話ではなくて、過去にそういったショックが起きたときにどんと一・一になったという例がありますので、その二回の例を私どもはきちんと記憶して、一・一にさせていただいたのがことしであります。

古川(元)委員 でも、そんなことを言うんだったら、では、平成二十年度とか二十一年度、全然一・一もないわけでしょう。いつから、突然、一・一にすることにしたんですか。

麻生国務大臣 一・一というのを、過去のを例にしてどれぐらいにするか、これは差が開き過ぎているとよく例に我々は引いておりましたので、この数年間。三年間、四年間、ちょっとここは開き過ぎているんじゃないのという話をしておりましたので、どれぐらい安全を見るか、確実なところというので過去の例を調べたら一・一というのが出ておりましたので、日銀がゼロというのであれば、我々はその点に合わせて、日銀の数字の言うとおりになるのであれば我々は一・一というのをきちんと置いてはどうだというので、ことしは、ことしというのは平成二十九年度予算では、一・一というのでさせていただいております。

古川(元)委員 ただ、過去のときは、日銀がそんなことをやっていないんですよね。

 今は日銀が長短金利もコントロールするとやっているときに、そんなに、幾らバッファーが必要だからといって、過去がそうだったから、最大がそうだったからといって、それだけで一・一が正当化される理由にはならないと思いますけれども、それはいかがですか。

麻生国務大臣 我々としては、長期金利というものは、金融政策だけじゃなくて、経済や財政等々いろいろな状況を踏まえなきゃならぬと思って、さまざまな要因というものを背景にマーケットというのは決まっていくものだと思っております。したがって、過去と同様、金融市場に何らかのショックが起きる可能性というのは否定できぬと思っておりますので、我々としては、リスクバッファーというのをきちんととっておく必要があると思っております。

 それが、一・一よりもっと下げろという御意見は、私どもとしては、過去の経験に見合わせて、一・一まで行った例がこの十年間ぐらいで二回ありますので、そういった意味ではそれをとらせていただいたということであります。

古川(元)委員 でも、それは、さっきから申し上げているように、日銀を信用していないということになりますよ。日銀は、それこそかつてのように、長期金利はコントロールできないと言っていた時代ならわかりますよ。今、これだけ日銀は国債を持つようになって、もう四割を超える国債を持っていて、長期金利も含めてコントロールできる、だからやっているんだと言っているんですよ。

 それなのに、そういうコントロールもできないと言っていた、そういうものじゃないという時代、そこのところの数字を持ってきて、この一・一のバッファーが必要だというのは、日銀を信用していないということになるんじゃないですか。どうですか。

麻生国務大臣 日本銀行においても、いわゆるデフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向けて、いわゆる政策というものを強化して一体となって取り組むということをされておられますので、こうした認識のもとで、物価安定目標の実現のために金融政策をゼロ付近に抑え込むということをされておられるのは知っております。

 一方、この長期金利というのは、おっしゃるように、金融政策だけじゃなくて、いろいろな状況のもので変わりますので、これは、日銀がこれでやれると言っても本当にやれるかというのを信用しているか信用していないかといったって、過去やった例がないんですから。日銀が今までやれないと言っていたものをやれると言ったのが、やれるかやれないかというような話になってきていますから、これは、日本銀行としても、自信が一〇〇%ありますかと言われれば、それはなかなか、いろいろ、何が起きるかわからぬという世界におりますので、そういった意味ではある程度のものは考えておかないかぬ。日銀に言われましても、これは、ある程度きちんとした、我々としては我々なりの対策は持っておく必要があろうかと存じます。

古川(元)委員 時間がないのでこの件はこれくらいにしておきたいと思いますが、私は、これはちょっとバッファーとしては大き過ぎると思うんですね。

 最後に少し、時間の限り御質問させていただきたいと思います。

 このところ、与野党とも、教育の無償化を進めるべきだという声が強くなっています。我が党も、今国会に教育無償化の法案を出す準備をしております。

 私は、教育の無償化は、現下の日本の急速な人口減少や少子化ということを考えれば、そして、今子育てをしている親の世代、私もその一人でありますけれども、立場や、そういう若い人たちのことを考えればやるべきだというふうに思います。

 ただ、問題はその財源なんですね。この財源について、我が党の中でも子供国債でという話がありますが、今、自民党内では教育国債を発行したらどうだということが検討されているという報道もされていますけれども、教育の無償化の財源として国債を発行する、このことについて財務大臣はどのように考えていらっしゃいますか。

麻生国務大臣 今、与野党問わず、教育支出の財源についてさまざまな議論がなされておりますというのはよく承知をいたしております。

 このことに関して、私は以前から申し上げていると思いますが、確実な償還財源もないのに、教育国債とか子供国債とかいったいわゆる特別な国債を発行するということは、簡単に言えば、子供たちというか、次の世代に借金を負わせるということと同じことになりますので、こうした特別な国債の実質というのは、簡単に言えば、親世代が租税負担を逃れて子供の世代に借金をツケ回すのとどこが違うのかよくわからぬのですが、名を変えた赤字国債にほかならないと思っておりますので、適切ではない、私自身はそう思っております。

 これまでもしっかりした財源を確保して、今まで、幼児教育の無償化の段階的推進とか、また奨学金制度の充実とか、大学授業料免除など、これまでもこの一年取り組んできたところでもありますけれども、こういったきちんとした財源をもとにした上でやっていくということをやり続ける方が正しい、私どもはそう思っております。

古川(元)委員 今、名を変えた赤字国債という話がありましたが、そうすると財務大臣の認識は、この議論は、要は、子供を育てるというか教育をつけていくことは将来に対する投資だから、これは投資的経費として建設国債の概念の枠内に入れたらどうか、まさにそういう話になっているんですが、では、財務大臣は、これは明確に建設国債の対象にはなり得ないものだ、これは赤字国債だ、そういうふうに認識しているということですか。

麻生国務大臣 子供国債とか教育国債というものの詳細をよく知りませんので、今党でやっておられるとか野党でやっておられるとかというので、その詳細を知りませんので、なかなかコメントはできないんですが、仮に、法律で新たな国債の発行を認めたということになりますと、それは、確実な償還財源がないままに国債を発行するということなのであれば、その実質は赤字国債と何ら変わらないということになるんだと存じますが。

古川(元)委員 これは昔から、もう九〇年代ぐらいから、新社会資本とか、今まで建設国債で発行できなかったものを、ITの機器だとかパソコンとかを買うのも、物は残るんだからというので建設国債の対象にしようという議論がよく出てきて、そのたびに財政法を変えてとか、あるいは解釈を柔軟にして。そのたびに、何となく、財務省は概念は変えないけれども、建物に付随してパソコンとか何かを入れたらそれも建設国債の対象にするとか。そういった意味で、かなり建設国債の概念自体が、相当やはり解釈は緩んできている部分もあるんじゃないかと思うんですね。

 そういった意味では、私は、これだけ建設国債も発行して、かつ、赤字国債も毎年毎年発行するのが常態化して、しかも、昨年の法律で、五年間、自動的に赤字国債まで発行できるという状況になると、もう一度、財政規律をどう保つのかということの中で、建設国債の定義だとか、あるいは建設国債と赤字国債という区別、こういうのをしているのは今はもう日本ぐらいです、そういうことをやることがいいのかも含め、もっと財政規律をきちんと担保するためには、これは、自民党さんも野党時代に財政健全化法という法案を出されました。我々も今法案を出しています。やはりもう少し、ただ建設国債とか赤字国債だけじゃなくて、財政規律をきちんと確保するような法律、枠組みというようなものをやはりつくることが必要じゃないか。

 今でも、一応政府としては、二〇二〇年のPB黒字化の目標を立てて、一八年には赤字幅をマイナス一%までにするというふうに言っていますけれども、今のを見ると、何かうやむやでこれも先延ばしされそうな雰囲気になっていますが、そういう政府の恣意的な、ある意味でその場その場の状況だけで、もちろん景気弾力条項みたいなものは必要だと思いますけれども、しかし、枠組みはきちんと、財政規律、ちゃんと財政健全化目標を達成するというのは、やはり法改正も含めて、法律制定も含めてやっていくべきじゃないかなと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 財政健全化に向けた取り組みというものの実効性の確保という話なんだと思いますけれども、これは、法制化という手段というのをおっしゃっておられるんだと思うんです。

 あの二〇一五年度でしたか、プライマリーバランスを半減化するといったときに、ほとんど、絶対達成不可能と各紙みんな書かれていましたけれども、実際は目標を達成しましたように、やはり目標というものはきちんと立てて、それに責任を持ってこれを実現していくということの方が私は重要であろうと考えておりますので、今後とも、今やっておりますように、歳出もきちんと重点化する、効率化するのをやりつつ、傍ら社会保障もやらないかぬ、いろいろなことをやりながら、二〇二〇年の健全化の目標というのは引き続き取り組んでいかないかぬものだと思っておりますので、今直ちに法制化するというのは、私どもとして今考えておるわけではありません。

古川(元)委員 時間になりましたので質問を終わりますが、これはやはり、財政規律という言葉は最近何か死語のようになってきていますが、しかし、やはり将来世代に対する責任を果たすという意味でも財政規律というのは極めて重要なものだと思います。ぜひ、今後ともこの委員会で議論をさせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、この間、メディアでも報じられている近畿財務局による学校法人への国有地売却問題について質問をいたします。

 資料一を見ていただきたい。昨日付の朝日新聞でありますけれども、財務省近畿財務局から大阪府豊中市の国有地を買った学校法人森友学園が、近隣国有地の約一割の価格で買い入れていたことが今大問題になっております。しかし、国有地の売却は近畿財務局の一存でやれるものではありません。

 まず、財務大臣に確認をいたしますけれども、国有財産法は、第七条で財務大臣が国有財産の総括を行うことを定めるとともに、財務局ごとに国有財産地方審議会を置くことを定めております。これは一体どのような趣旨でございますか。

麻生国務大臣 国有財産地方審議会は、土地とか建物、個々の国有地というものの管理、処分等々の事務の大部分が地方財務局においてなされておりますので、その管理、処分に対して、地域的な特殊性、特別性等々を考えながら、地元の意見というのを十分に反映させなければならぬという観点から、いわゆる国有財産法に基づいて各財務局に設置をされております。

 国有財産地方審議会は、各財務局長の諮問に応じて国有財産の管理、処分について調査審議を行うほか、意見を述べることができる、これが基本的な考え方であります。

宮本(岳)委員 一定面積以上の国有地の処分は、国有財産地方審議会にかけられます。当然、この国有地、大阪府豊中市千五百一番の土地、八千七百七十平米を小学校の敷地として処理する事案についても、平成二十七年、二〇一五年二月十日に開催された第百二十三回国有財産近畿地方審議会で審議をされております。

 きょうは、このときの議事録全文を資料としてお配りをいたしました。配付資料の三ページ目からの資料三の二ページを見ていただきたいと思います。

 この件は、国有地の処分に当たっては売り払いを原則としているにもかかわらず、この国有地については、学校法人森友学園に対して十年間の事業用定期借地による時価貸し付けを行うとともに、十年以内の売買予約による時価売り払いを行おうとするものでありました。

 理財局、近畿財務局はその理由をどう説明しておりますか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 未利用国有地の処分に当たりましては、売却を基本としておりまして、貸し付けを行うケースは限定されておりますが、公用あるいは公共用等の用に供する場合で、貸し付け財産の買い受けが確実と見込まれ、賃貸借をすることがやむを得ないと認められる場合には、売り払いを前提として貸し付けを行うことも可能となってございます。

 本件、この国有地につきましては、森友学園より、小学校建設等に一時的に多額の資金を必要とするため、学校経営が安定するまでの間は貸し付けにより利用したい旨の要望があったところでございます。

 したがいまして、事業用の定期借地の最短期間が借地借家法上十年間と定められていることを踏まえまして、買い受けを前提とした、貸付期間十年間とする定期借地契約を締結したところでございます。

宮本(岳)委員 金がないので、内部留保が積み上がるまでは、最大十年間、借地契約にしてほしい、めどは八年間と言っておりますけれども、必ず買い取りますからという話でありました。

 当然、委員からは、そんな話で経営は本当に大丈夫か、こういう声が続出をしております。

 議事録の六ページ、読売新聞の大阪本社編集局管理部長は、今後十年で私立の小学校の経営環境というのはそれほど改善しないと思われるが、いざ売却する段になって、地価が上がっていて、買い手がその価格では買えませんと言い出すリスクはないのかと危惧を表明しております。

 七ページ、関西学院大学総合政策学部教授は、その上で十年たって定借延長します、しかし、さらに経営が改善される見込みがなくて募集停止になりましたというような最悪の際には、こういう土地は定借の期間をあるところで打ち切って国に戻すというような流れになるのか、十年後には確実に戻ってくるとは言えないとまで指摘をしております。

 これに対して、近畿財務局の管財部次長は、入り口ではきちんと期日までに小学校が実際にできるかどうかというところでまず、もしできなければ、事業予定者とはいえ、その時点でできないのであればもう打ち切りますよと、土地を更地にして返してくださいよということを義務づけていますと答えております。

 この、きちんと期日までにできなければ打ち切る、土地を更地にして返すことを義務づけているという期日は、貸し付け合意書によると何年何月何日のことでしたか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 貸付契約におきましては、その指定期日につきましては平成二十八年三月三十一日でございます。

宮本(岳)委員 審議会会長を務める中野健二郎京阪神ビルディング代表取締役社長でさえ、非常に異例な形だなという感じの印象を持っている、こう述べ、いわゆる学校法人として継続して成立していけるのか、私学審議会の中で検討してチェックしているということだから、言葉は悪いのだが、それを売却する方は信用するしかないと言い、最終的には、附帯条件がついて認可適当というのは、条件が満たされて認可適当になるので、それが満たされるという前提の中で、この審議会としては了とまとめております。いわば、私学審議会の認可適当の答申を信用して了承するということでありました。

 森友学園の小学校新設については、配付資料の議事録三ページ、管財部次長が説明しているとおり、二〇一四年十月三十一日に大阪府私学審に認可申請書が提出され、同年十二月十八日の審議会においてその認可について審議されましたが、継続審議となりました。継続審議とされた理由は、小学校建設計画の明細や生徒数確保の見込み等について、根拠資料の追加を求められたためであります。

 その後、改めて、翌二〇一五年一月二十七日に臨時で審議会が開催され、認可適当の答申がなされましたけれども、答申には、小学校建設に係る工事請負契約の締結状況、寄附金の受け入れ状況、詳細なカリキュラム及び入学志願者の出願状況等、開校に向けた進捗状況を次回以降の私学審議会の定例会において報告することとの附帯条件が付されております。

 これは事実の確認だけですが、文部科学省、間違いないですね。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係は、今先生から御指摘があったとおりでございます。

宮本(岳)委員 そういたしますと、ここに一つの疑問が生じるわけであります。

 森友学園は、二〇一四年十月三十一日に小学校新設の認可申請書を提出したとなっております。その学校用地である豊中の国有地の十年間の事業用定期借地による時価貸し付け及び売買予約による時価売り払いが検討された第百二十三回国有財産近畿地方審議会は、翌二〇一五年二月十日に開催をされております。認可申請書はこの豊中の国有地の扱いが近畿地方審議会で議論され、決まる半年近く前に提出されたということになります。

 文部科学省に聞きますけれども、土地の確保も学校の所在地も定まらないような学校の設置認可の申請などは受け付けられるはずがないと思うんですけれども、なぜそんなものが受け付けられたのか。ましてや、第百二十三回国有財産近畿地方審議会の前に、条件づきだとはいえ、認可適当などという判断がなぜできたのか、お答えいただけますか。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 私立の小学校につきましては都道府県知事が認可権者でございまして、この場合につきましては、大阪府知事が大阪府の基準に基づいて審査を行うということでございます。

 御指摘の点につきまして大阪府に確認をいたしましたところ、設置認可適当との答申を出す際には、申請の段階で現に土地の所有または借用が行われているか、相当程度の確実性を持って土地を所有または借用できる見込みが求められるということで、そういった条件を確認された上でこうした答申が出されたものと考えております。

宮本(岳)委員 といたしますと、第百二十三回国有財産近畿地方審議会の半年前の時点で、森友学園は相当程度の確実性を持ってこの土地は確保できる、こう述べて申請していたということになります。

 ということは、理財局に聞きますけれども、近畿財務局は本件土地の処分について第百二十三回国有財産近畿地方審議会に諮る半年も前から大体確実だという内諾を森友学園に与えていたのではないですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年一月二十七日、大阪府の私立学校審議会において、森友学園に対しまして附帯条件を付して学校設置の認可適当との答申がなされたものと承知しておりますが、これ以前に、財務省あるいは近畿財務局から大阪府の私学審の関係者に対しまして、予断を持って森友学園の学校運営の状況等を伝えた事実はございません。

宮本(岳)委員 いや、この土地については森友学園に貸せるだろうという見通しを伝えたことはないんですね。

佐川政府参考人 そのようなことはございません。

宮本(岳)委員 理財局は内諾を完全に否定いたしました。ということは、森友学園が大阪府私学審を偽ったということになります。

 文科省、何が認可相当ですか。このような偽りの申請を提出するような学校法人は、答申に付された附帯条件に基づいて厳格に審査しなければならないと私は考えます。厳格に審査いたしますね。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきましては、大阪府に確認をいたしましたところ、土地の買い受けないしは借用を予定している相手方は国であり、森友学園が近畿財務局に対して国有財産の取得要望の申請を行っている事実が確認されたこと等を踏まえてこうした判断をしたものということで伺っております。

宮本(岳)委員 国が安定した存在であることはそうでしょうが、国、理財局あるいは近畿地方財務局は、第百二十三回国有財産近畿地方審議会の前に、その土地が森友学園によって活用できるという見通しは与えていないということでありますから、これはおかしいんじゃないですか。

村田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、基本的に相当程度確実性があるかどうかということでございまして、大阪府におきましては、先ほど申し上げたような状況を勘案しながら判断をしたということで伺っております。

 ただ、これは先ほど申し上げましたとおり、大阪府が大阪府の権限、責任において判断されることでございますので、私どもとしては、その判断についてかわって御説明できる立場にはないということはぜひ御理解をいただきたいと存じます。

宮本(岳)委員 相当程度確実じゃないんですね。そういうことは何らなかったと理財局が否定しているわけですから、そこはしっかり大阪府にもお伝えいただきたいというふうに思います。

 さて、二〇一五年二月十日、先ほど申し上げた第百二十三回国有財産近畿地方審議会の時点で、十年間の貸し付けで本当に十年以内に買えるようになるのかと危惧された森友学園が、打って変わって一年後の六月二十日、貸し付け一年目にこの土地を買い入れたのだから、不思議に思うのは当然であります。

 しかも、その額はわずか一億三千四百万円であった。資料二の経緯年表の三行目を見ていただきたいんですが、ほぼ同規模の隣接した国有地を豊中市に公園用地として売却した際の十四億二千三百万円の十分の一以下という、極めて異常な売却額でございました。

 理財局に聞きますけれども、国有地の処分は当然適正な価格で売却しなければならないはずでありますけれども、なぜこのような非常識に低い価格で売却したんですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、最初の御指摘の豊中市の公園の話でございますが、これは二十二年三月に豊中市に対して公園用地として売却したものでございますが、この点につきましても、きちんと鑑定評価に基づきまして時価で売却しているところでございます。

 一方、森友学園に対する土地の売却でございますが、これも、更地の不動産鑑定価格九億五千六百万円から、その時点で借地契約中に見つかりました新たな埋設物がございまして、その埋設物を撤去する費用をきちんと見積もりまして、その撤去費用を差し引いた、まさに土地の時価でもって売却したものでございまして、そういう意味では、不動産鑑定価格に基づいた時価で売却しているという意味では、豊中についても森友学園も同様でございます。

宮本(岳)委員 適切ならば、こんな大問題にならないんです。

 資料一の朝日の記事を見ますと、撤去費を八億千九百万円とした根拠については、財務省は明らかにしていないと報じております。しかし、理財局は私に対して、この算定は国土交通省の大阪航空局が行ったものであることを明らかにいたしました。そして、国土交通省航空局は、私に地下埋設物撤去処分費用の算定方法と題したペーパーを提出いたしました。

 きょうは国土交通省航空局にも来ていただいておりますけれども、国土交通省が私に提出したペーパーによると、地下埋蔵物の撤去の対象面積はどれだけですか。そして、撤去する深さは、基礎くいが打たれる箇所とそれ以外でそれぞれ何メートルになっておりますか。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 大阪航空局で、近畿財務局からの依頼を受けまして、地下埋設物の撤去、処分費用の見積もりを行いましたが、その際に、対象面積は約五千百九十平米でございます。

 もう一つ、御指摘の基礎くいが打たれる箇所の深さは九・九メートルでございます。基礎くい以外のその他の箇所の深さは三・八メートルと設定いたしております。

宮本(岳)委員 基礎くいが打たれるところは九・九メートルだが、その他は深さ三・八メートル、埋蔵物を撤去するということでありました。

 大阪航空局は、既に二〇〇九年度の調査で、この土地の地下に埋設物が存在すること、また二〇一一年十一月の調査では、土地の一部に基準値を超える鉛や砒素などの土壌汚染があることを認識しておりました。だから、大阪航空局は、まだ土地の貸付契約段階だった昨年の三月三十日に学校法人森友学園と合意書を作成し、地下三メートルまでの埋設物の除去費用及び土壌汚染除去費用として、昨年四月六日を支払い時期として、既に総額一億三千百七十六万円を森友学園に支払っております。

 国交省に聞きますけれども、このうち鉛、砒素などの土壌汚染除去費用は幾らで、地下三メートルまでの埋蔵物の撤去費用は幾らでありましたか。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 大阪航空局が学校法人森友学園に対して支払ったコンクリート殻等の埋設物及び土壌汚染の除去費用の総額は、御指摘のとおり、一億三千百七十六万円でございます。その内訳でございますけれども、埋設物対策分が約八千六百三十二万円、土壌汚染対策分が約四千五百四十三万円となっております。

宮本(岳)委員 昨年六月二十日の売買契約以前に、既に森友学園は国から一億三千万円余りを受け取っておりました。しかし、そうなると、一層不可解なのが売買契約時の八億一千九百万円というこの積算であります。地下三メートルまでの埋蔵物の撤去費用がわずか八千六百万円なのに、基礎くいが打たれる場所以外は、あとわずか八十センチ、三・八メートルですから、そこからわずか八十センチを掘り下げるのに八億一千九百万円かかるという見積もりになっております。

 こんな奇妙な積算はないと私は思いますが、なぜ十倍になるんですか、航空局。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘のコンクリート殻等の埋設物及び土壌汚染の除去費用約一億三千百七十六万円と、地下埋設物撤去費用約八億一千九百七十四万円につきましては、内容が異なるため、一概には比較できないものと考えております。

 ただ、いずれにいたしましても、工事積算基準等に基づき、適正な算定を行ってございます。

宮本(岳)委員 何が適正ですか。三メートルの撤去に八千六百万円なのに、あとわずか八十センチ、三・八メートルまでさらに掘り進めるのに八億円もかかるわけがないんですね。その証拠に、資料一の朝日記事では、森友学園の籠池理事長はあけすけに、ごみ撤去にかかった費用は一億円ぐらいと語っているじゃありませんか。

 理財局、埋蔵物の撤去費用を八億一千九百万円と積算し、国民の財産をわずか一億三千万円余りで売ってやる。買った側が、一億円で片づいたと語っている。本来なら、八億五千六百万円で売却しなければならなかったはずを、七億円以上も安く売ったことになるんですけれども、これで問題ないんですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員提出の資料の、この朝日新聞の記事の見出し「ごみ撤去一億円」でございますが、この報道につきましては、森友学園側からこの報道機関の記者に対しまして、口頭で事実誤認である旨を明確に伝えるとともに、記事の修正も依頼しているというふうに聞いてございます。

 いずれにしましても、撤去費用につきましては、国土交通省におきまして、工事積算基準に基づき適正に算定されたものでございます。

宮本(岳)委員 一億円かどうかわかりませんよ。しかし、国民は誰もこの話は納得しない。

 では、航空局に聞きますけれども、航空局が近畿財務局より、森友学園から三メートル以上の深部にもなお埋蔵物が存在する旨を告げられて、地下埋蔵物の撤去及び処理費用を算定してくれと申し出があったのは昨年の何月何日か。そして、それに対して八億一千九百万円余りの算定結果を通知したのは昨年の何月何日でしたか。

平垣内政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十八年三月十四日に、近畿財務局から大阪航空局に対しまして、小学校建設工事中に深部の土の中から廃材等の地下埋設物が発見された旨の連絡がございました。近畿財務局からの御依頼を受けまして、大阪航空局において、撤去、処分費用の見積もりを行い、四月十四日に、近畿財務局に当該見積もりの結果を通知しております。

宮本(岳)委員 配付資料二の昨年二〇一六年の経緯を見ていただきたい。

 三月十一日に、森友学園が近畿財務局に想定以上の深さにも埋蔵物があることを報告すると、三日後には、近畿財務局が大阪航空局にそれを伝え、撤去及び処理費用の算定を依頼、三月二十四日には、八年間ほどは買い取れなかったはずの森友学園が近畿財務局に土地を買い取りたいと申し出た。三月三十日には、土壌汚染除去等費用一億三千万円余りを森友学園に支払う合意書が交わされ、四月六日には、大阪航空局より支払われました。四月十四日には、大阪航空局より撤去費用八億一千九百万円という過大な見積もりが示され、それに基づく不動産鑑定が行われ、六月二十日には、一億三千万円余りで土地が売却されたわけであります。

 これは、二〇一六年、昨年三月三十一日、つまり第百二十三回国有財産近畿地方審議会で議論が噴出し、きちんと期日までにできなければ打ち切る、土地を更地にして返すことを義務づけていると表明した期日である昨年の三月末を前にして、森友学園が買い取れるように便宜を図ってやったのではありませんか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、その使用指定期間の三月三十日につきましては、森友学園の方からその以前に申し込みがありまして、北部の川から土砂物が流れた、あるいは資材が高騰しているということで、その期限を一年間延ばしてほしいという申し込みがありまして、その変更合意書は既に三月の十日時点で締結をしているところでございます。

 それと、なぜ買い取ったかという話でございますが、この買い受け特約を付した有償貸付契約でございますけれども、これは十年以内でございますれば、どのタイミングで買い取るかということにつきましては、これは森友学園の経営判断でございます。

 したがいまして、この有償貸し付けの間にまさに学校建設工事を始めているわけでございまして、そのときに、今まで知っていたごみとは別に、新たに地中深くに地下埋設物が発見され、撤去する必要が生じる。さらに、小学校の開校予定時期は約一年後というふうに迫っている中で、こういう工事を、国がまさに撤去工事を対応するといったことをすれば、入札などいろいろな手続がございまして、一定の時間を要します。

 さらに、土地の貸付契約の中で埋設物を対策するといったときに、仮に土地の利用計画の変更などが出てくれば、さらに国から承認の手続が要るということで大変時間がかかる手続でございまして、一年後の開校予定ということを森友学園は考えまして、まさに、早期に学校を整備し開校するため、みずから土地を購入して、埋設物の撤去及び建設工事を実施して、開校予定に間に合わすようにしたというふうに承知してございます。

宮本(岳)委員 一年前の地方審議会の段階では八年めど、十年でも難しいんじゃないかといっていたのに、突如として経営環境が変わった。

 大体、本当に一億三千万円で買い取って、それ以外に八億円かけて撤去するというんだったら、はなから九億五千万のお金を持っていたということになるわけでありまして、それなら、もとからこんな話にならないんですよ。

 大体、国は、四月六日に、地下三メートルまでの埋設物の除去費用及び土壌汚染の除去費用として、森友学園に一億三千百七十六万円を支払い済みでありました。その上、さらに六月二十日の売買で埋蔵物の撤去費用を八億一千九百万円と見積もり、控除してやったとすれば、合計九億五千万円の支出になりまして、この土地は、国にとってただで手放したということになりませんか。

佐川政府参考人 土地を国が売却するというのは、何度も申し上げておりますように、不動産鑑定評価に基づいて時価で売却しているわけでございます。

 したがって、更地の価格からさまざまな撤去費用を控除したものが時価でございますので、御指摘の値段というのは当たらないというふうに考えます。

宮本(岳)委員 ここまでの話の流れは全部驚きですけれども、私はこの国有財産売買契約書、これを読んで驚きました。そもそも森友学園は、その一億三千四百万円さえ、国に全額即座に払っておりません。驚くべきことに、森友学園は、頭金二千七百八十七万円を即納した後は、十年間分割払い、千百万円余りを毎年納めればよいという契約になっております。延納利息はわずか一%です。

 学校法人に対してこのような延納を認めた事例は、近畿財務局で直近三年間さかのぼってもゼロだと確認しておりますけれども、理財局、直近の三年間で全国で一つでもありましたか。

佐川政府参考人 まず、延納の話でございますが、基本的に、国有財産の売り払い代金につきましては、国有財産特別措置法で、一括して支払うことが困難である場合、確実な担保を徴し、利息を付した上で分割払いとすることが認められるということでございまして、国有地の売り払いに当たりまして、こういう分割払いというのは一般的に行われている行為でございます。

 それで、先ほどの御質問では、学校法人に対しては、この三年間ではないということでございます。

宮本(岳)委員 ないんじゃないか。

 大臣、財政法第九条には、「国の財産は、」「適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。」とあります。冒頭述べたように、財務大臣が国有財産の総括を行っているわけでありますから、こんな不明朗な国有財産の処分を許しておいてよいとお考えですか、大臣。

麻生国務大臣 本件につきましては、これは地方審議会において十分な審議をいただいた上で多分処分をさせていただいたものだと承知しておりますので、その方針に従って、我々としては、法令に基づいて適正な処分が行われたんだというように考えるということしか今の段階で答弁のしようがありません。

宮本(岳)委員 この結果は地方審議会にも報告されておりません。

 徹底的に調査をして、このような不明朗な国有地売却については今からでもきちんと見直すことを強く求めて、私の質問を終わります。

御法川委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 大臣所信について質問いたします。麻生大臣は所信で歳出改革の取り組みを強化するとおっしゃいましたが、私も再三指摘しておりますが、軍事費は聖域になっております。

 先日行われました日米首脳会談の共同声明でも、「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす。」とされました。日米同盟の中での日本の役割の強化が打ち出され、軍事費が一層増大する危険がメディアでも指摘されているという状況であります。

 安倍総理は共同記者会見で、東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも、航行の自由を認め、法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない、こう述べられました。

 南シナ海、そしてインド洋、これが東シナ海と並列で述べられたわけですが、一体、南シナ海、インド洋で、どんなより大きな役割を日本が果たそうというんでしょうか。

若宮副大臣 お答えさせていただきます。

 委員御指摘の、日米共同声明におきますところの「日本は同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす。」という旨が発表されました。

 これは、我が国といたしましては、国際協調主義に基づきます積極的平和主義の立場から、我が国の安全及び国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していこうという方針でございまして、日米同盟の中でもみずからが果たし得る役割の拡大を図っていくことを述べたものでございます。

 また、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインでございますけれども、この中で、宇宙とかサイバーですとかこういった新たな分野、これはまさに国境がなくなって、非常に、どこから来るかわからないというようなものでございますので、我が国といたしましては、これまで以上に役割を果たすことによって日米同盟全体の抑止力、そしてまた対処力というのを強めていかなければいけないのではないかなという考え方でございます。

 いずれにいたしましても、今回の共同声明につきましては、我が国の役割について、今委員が御指摘になられましたような具体的な地理的な範囲というものを決めたわけではないというふうに御理解いただければと思っております。

宮本(徹)委員 地理的な範囲を決めたものでないと言いながら、総理は共同記者会見で、南シナ海、インド洋、こういうところまで東シナ海と並べて言っているわけですよね。安保条約で定めている極東の範囲からはるかに広い地域ですよね。インド洋といえば、アメリカの第七艦隊が守備範囲としているところですよ。そこまで含めて自衛隊が一緒になってどこまでも活動していくという方向に踏み出そうとしているんじゃないか、こういう懸念があります。

 麻生大臣にお伺いしますが、日本が同盟におけるより大きな役割及び責任を果たす、こういうことになれば、この間膨れ上がってきた防衛省予算、軍事費が一層増大する、これは必定なんじゃないですか。

麻生国務大臣 共同声明で述べられております、日本の日米同盟におけますより大きな役割及び責任とは、日本として、国際協調主義のもとで、いわゆる積極的な平和主義という立場から、日本の安全及び国際社会の平和と安定及び繁栄の確保というものにこれまで以上に積極的に寄与する方針であります。したがって、日米同盟の中でもみずからが果たし得る役割の拡大を図っていくとの決意を表明したものだと理解をいたしております。

 したがって、共同声明におけるこのような決意の表明によって直ちに防衛関係費が増大するとの御指摘は当たらないと存じますし、いずれにいたしましても、防衛力に係る経費につきましては中期防衛力整備計画で定める総額の枠内で計画的に予算編成を行っているのは、御存じのとおりです。

宮本(徹)委員 直ちにふえることはないというふうにおっしゃいますが、実際は中期防以上のペースで防衛費はふえているというのを私は何度も指摘してきましたし、補正予算まで使って防衛費は積み増しを毎年毎年されているというのが現状であります。

 トランプ大統領は、会談後の共同記者会見でこうおっしゃいました。日本と米国がともにこの同盟に大量の投資を続け、防衛体制と防衛力を増強することが重要だ、インベスト・ベリー・ヘビリーということをおっしゃっているわけですね。

 この発言にかかわっての産経新聞の報道を見ますと、日米政府筋の話として、貿易不均衡の解消の秘策として、F35戦闘機といった最先端の武器の大量調達に加え、新型兵器の共同開発を水面下で模索、こういうふうに書かれております。

 アメリカ製の兵器の購入を一層ふやしていく、これを水面下で模索している、こんな検討はされているんでしょうか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になりました二月十二日の産経新聞の報道につきましては、私も承知をいたしているところでございます。

 今委員が御指摘になりました戦闘機F35を初めとする私どもの防衛省・自衛隊の装備品でございますけれども、これは基本的に、防衛大綱、そしてまた中期防衛力整備計画に基づきまして、我が国の防衛を全うするために必要不可欠なものを計画的に取得いたしまして、着実に防衛力を整備しているところであります。

 したがいまして、今委員が御指摘になりました、貿易不均衡の解消策としてF35戦闘機ほか何らかの装備品などを大量に調達するとかそういったことは全くございません。

宮本(徹)委員 メディアの報道を見ていますと、次期の防衛大綱を前倒しして改正しようということが報道されているわけですよね。そして、それに合わせて中期防を改定するときにアメリカ製の兵器をさらに買い増していく、こういうことなんじゃないですか。そういうことは絶対ないと言えますね。

若宮副大臣 今委員が御指摘になられたようなことは全くございません。

宮本(徹)委員 では、防衛大綱を前倒しして改正していく、これもないということでいいわけですね。

若宮副大臣 私ども、我が国日本を取り巻きます安全保障環境が厳しさを増しているのは委員ももう御承知のとおりだと思っておりますが、我が国の防衛力のあり方、これはやはりさまざまな点で不断の検討を行うということは必要であろうかと思っております。

 ただ、現時点で、防衛計画の大綱の見直しですとか、あるいは具体的な検討ということを行っているということでは全くございません。

 また、中期防につきましても、現時点におきましては、自衛隊の体制あるいは防衛関係費の見直しを直ちに行う必要があるとは考えておりませんで、現在の中期防を見直すということは全く検討していない。

 引き続き、安全保障環境を十分に、日々、時々刻々と変わっておりますので、このあたりは注視しながら、着実な防衛力整備を図っていきたい、このように考えているところでございます。

宮本(徹)委員 防衛大綱を前倒しで変えるということを否定はされないわけですよね。

 先日、稲田大臣もグアムにTHAADの視察に行かれておりますが、日米同盟の中での役割を日本が強化するとなったら、これはアメリカ製の兵器だってさらに買っていくということになるわけですよね。

 私、何度も指摘しましたけれども、安倍政権のもとで兵器の調達が急激にふえているわけですよ。後年度の負担も、安倍政権のスタート時は三兆一千億円だったのが、来年度予算案、これでいけば四兆八千億円になるわけですよね。こういう勢いで後年度負担が伸び続ける中でさらに兵器の調達を増大させるということになったら、ほかの予算、暮らしのための予算を圧迫していく、こういうことになるのは明白じゃないですか。麻生大臣、どうですか。

麻生国務大臣 防衛関係費につきましては、これは後年度負担というものも含めて、中期防衛力整備計画などを含めて計画的に予算編成を行うこととしておりますので、際限なく膨張するかのような批判は全く当たらぬと思っております。

 平成二十九年度の予算においても、翌年度以降の予算の硬直化ということにつながらないように、装備品の価格低減を通じた調達効率化などによって新規後年度負担額の抑制を行っているところであります。

宮本(徹)委員 新規後年度負担額抑制といったって、第三次補正予算に新規後年度負担分を回しているだけじゃないですか。だから後年度負担が、昨年、二十八年度予算の時点では四兆六千億だったのが、今度四兆八千億になるわけですよ。抑制していたらふえることはないわけですね。ふえているというのは、どんどん後年度負担をふやしているということですよ。

 しかも、この後年度負担が余りにもふえ過ぎたために、毎年の当初予算では対応できない規模になっているわけですよね。この間の第三次補正予算のときも指摘しましたけれども、税収が減って赤字国債を発行せざるを得ない、こういう事態になっているにもかかわらず防衛省の予算を計上する、その中身の大半は、後年度負担のツケを払うためのものだったわけですよね。異常な状況ですよ。財政規律からいっても、本当に大変な事態だというふうに思います。

 私は、未来にわたって暮らしのための予算を奪っていく、こういう兵器の購入の拡大は断固としてやめるべきだということを求めておきたいと思います。

 さて、日米共同声明を見ますと、こういう文言があります。「防衛イノベーションに関する二国間の技術協力を強化する。」とあります。午前中、参議院の本会議でこの中身について総理は問われて答弁しておりますが、軍事技術の優位の確保のために、具体的にはこれから中身は進めていくということでした。

 アメリカの側の狙いは何なのか。私も改めて防衛白書を見ましたら、アメリカの第三のオフセット戦略というのが書かれておりまして、その中ではアメリカの国防イノベーション構想が紹介されております。アメリカとしては、軍事作戦上及び技術上の優位が徐々に失われつつあることから、優位性を維持拡大するために国防イノベーション構想を発表したと。その中で、民生技術を注視、活用していくために民間部門との緊密な連携を打ち出していると防衛白書には書いてあります。

 つまり、今、アメリカは、軍事技術上の優位を保つために民間の研究をごっそりすくい上げていこう、こういう方針を打ち出しているわけですね。そういう中で、今度の日米共同声明の中身であります。

 そうしますと、これからアメリカと日本が共同開発をする、技術協力の強化を武器の開発で進めていく、こういうことになりますと、防衛省が今始めている安全保障技術研究推進制度、この研究成果も日米間の武器の国際共同開発に利用されていく、こういうことになっていくんじゃないですか。若宮さん、どうですか。

若宮副大臣 今委員が御指摘になりましたポイントというのは非常に大事なところだと思っておりまして、先ほども申しましたように、安全保障環境が非常に厳しくなってまいります中、やはり、新たな脅威に対応するためには、戦略的に重要な分野において技術的な優位と優越を確保するということは、非常に大事な、喫緊の課題だというふうに認識をいたしてございます。

 先ほどの、指針と申し上げましたガイドラインにおきましても、日米両国間におきまして実効性をさらに向上させるがために、安全保障あるいは防衛協力の基盤として、防衛装備ですとか、あるいは技術協力の分野を発展させ、強化させていこう、こうした旨も示されているところでもございます。

 今おっしゃられた安全保障技術研究推進制度、この研究成果がどうなるのかというような御指摘でございますけれども、この制度自体は、この成果を将来の防衛装備の研究開発に活用することを目的として、その基礎研究についての公募と委託を行っているものでございます。平成二十七年度の創設時から研究成果を全て公表できることといたしてございまして、これは民生分野でも活用していただくということを大いに期待いたしているところでもあります。

 この公表されました研究成果につきましては、これはもちろんのこと、一般の研究者の皆様方、あるいは民間企業の方、あるいは国民の皆様、広く誰もが活用できるというものになろうかと思います。これは、いわゆるほかの競争的な資金制度による研究というふうなものと同様というふうにお受けとめいただければと思っております。

 こうした点をさらに明確にすることが適切だろうという観点から、本制度におきましては、この契約書では、研究成果の公表を制限しないことなどを明らかにするということで、その契約書のひな形などは防衛装備庁のホームページにも公表させていただいているところでございますので、委員の御指摘にはちょっと当たらないかなというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 私が指摘したのは、これは、安全保障技術研究推進制度の成果も日米間の武器の国際共同開発に利用されていくんじゃないですかということを聞いているわけですよ。それを否定されないわけですよね。

若宮副大臣 この研究推進制度は、あくまでも、研究の成果を防衛省におけます将来の研究開発に活用することを目的といたしてございます。日米共同研究開発におきまして、この研究成果を活用するかどうかにつきましては、今後の研究成果や、今後いかなる日米共同研究開発を行うべきかといったことを踏まえて検討するような問題になろうかというふうに考えております。

宮本(徹)委員 つまり、今後の検討によっては活用していくこともあり得るというのが今の答弁だったと思います。極めて重大ですよ。

 今、学術会議で、御案内のとおり、軍事研究の是非が議論されております。この防衛省の制度をめぐっては、やはり軍事研究に大学人を巻き込むのは問題だということで、否定的な意見が多数だということで、メディアでも報じられているわけですよね。しかも、アメリカは、世界で無法な無人機攻撃などを繰り返しているわけですよね。こういうところにまで大学の研究を巻き込んでいくようなことは絶対に許されないということを指摘しておきたいと思います。

 さらに、次に進みますが、日米同盟の中での日本の役割の拡大ということで、先日の日米防衛会談では、具体的に、南シナ海への関与の強化で一致をいたしました。そして、昨年、日本・ASEAN防衛協力イニシアティブでは、防衛協力の手段として防衛装備協力が掲げられております。そして、今国会には、財政法九条の特例として防衛省の保有する装備品について無償譲渡を可能にする法案が出されております。法案の中身を見ますと、譲渡を求める申し出があれば、武器弾薬以外の装備品は無償譲渡できるということになっています。

 確認しますが、掃海艇だとかの船舶だとかあるいは航空機、武器がついていても、これは武器を外せば譲渡は可能になるということですね。

若宮副大臣 今委員が御指摘になりました、今般新設をさせていただくことといたしております改正自衛隊法第百十六条の三に基づきます装備品等の無償譲渡、これはいかなる場合にいかなる装備品について実施が可能であるかということにつきましては、いわゆる外為法の運用基準でございます防衛装備移転三原則、これも踏まえまして、個別具体に検討することになろうかと思います。

 ですから、今御指摘になられました例は、例示されましたのですが、一概に申し上げるということはちょっと難しいということを御理解いただければと思っております。

 従来から可能でありました適正な対価を受けた上での装備品の他国への譲渡につきましては、これは財政法第九条の一項の特例として無償または低価で行い得るということになってはございます。

 また、実際に装備品等を譲渡するに当たりましては、これはやはり先ほどの三原則を踏まえましてその可否を判断することになってこようかと思いますけれども、いずれにいたしましても、防衛装備の海外移転につきましては、日本として平和国家としての基本理念をきちっと維持しつつ、厳正かつ慎重に対処していく方針には全く変わりはないというふうに申し上げられるかと思います。

宮本(徹)委員 一概に言えないということですけれども、対潜哨戒機P3Cがあります。これは、武器を搭載していなければレーダーやソノブイだとかをつけたまま譲渡するということは、一概に言えないという話だったので個別に聞きますが、P3Cは可能ですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘のございました、P3Cについて、武器を除けばレーダーやソノブイをつけたまま譲渡可能かという件でございますが、先ほど副大臣からも御答弁申し上げましたとおり、いかなる場合にどのような装備品の無償譲渡が可能になるかということにつきましては、防衛移転三原則なども踏まえまして、あくまでも個別具体的に検討する必要があろうかというように考えてございますので、この点について確定的にお答えすることは差し控えたいというように考えてございます。

 いずれにいたしましても、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたとおり、防衛装備の海外移転につきましては、平和国家としての基本理念を維持しつつ、厳正かつ慎重に対処する方針に変わりはございません。

宮本(徹)委員 個別に判断するという話ですけれども、NSCで判断するということに最後はなるんでしょうけれども、事前のレクでは、法律上はP3Cは可能だという話を伺っております。

 P3Cは、海の中の潜水艦を捜索して一隻一隻見分ける大変高い能力を持っています。武器を外して譲渡しても、いざとなれば、後で自前で武器を搭載すれば、攻撃も可能な兵器ということになります。

 そうすると、P3Cのような航空機を譲渡すれば、それに伴って、搭乗員の訓練やあるいはメンテナンスの援助も自衛隊がやり、他国軍隊の育成に大きく踏み込んでいくことになるんじゃないですか。若宮さん、どうですか。

若宮副大臣 繰り返しになって本当に恐縮なんでございますけれども、装備品の譲渡等に関しましては、何よりもまず、外為法の基準でありますところの防衛装備の移転の三原則、これを大前提に踏まえまして、本当に具体的に、相手国のニーズですとか、それからどういった内容かというのをまさに個別具体に、その場その場で状況を検討しなければなりません。

 ですから、今、漠然と、例えばその機種のこれがというふうな形でおっしゃられましても、これは一概に申し上げるのが困難であることを御理解いただければと思っております。

 また、いろいろな運用ですとかメンテナンスとかで他国の軍隊の育成に踏み込むのではないかというようなお話がございましたけれども、こういった形でやることが他国の軍隊の育成に大きく踏み込むということには、私どもでは全くならないというふうに認識をいたしているところでございます。

宮本(徹)委員 きのう総理は予算委員会の中で、パッケージとしてやるのが大事だという話をやられていましたよ。訓練だとかメンテナンスも一緒にやっていくんだと。そういうことになれば、当然、他国の軍隊を育成していくことになるわけですよね。

 アメリカは戦後、世界戦略として、世界各地で親米国の軍隊を武器も供与しながら育成してきました。日米同盟の中で日本の役割の拡大といってこんなことまでアメリカの役割の肩がわりをしていくというのは、憲法九条の理念に全く反するということを言っておきたいというふうに思います。

 そして、最後、一問だけお伺いします。

 昨年二月、海上自衛隊のP3C二機がベトナムを訪れております。朝日新聞の報道では、こう書いています。P3Cはベトナム海軍が将来的な導入に期待を寄せる、海上自衛隊はベトナム軍に機内を見学させP3Cの使用を想定した初の合同図上捜索訓練も実施した、緊迫する南シナ海情勢を念頭にした両国の防衛力強化だ。こう報じられております。

 現在、法案上、防衛大臣が装備品等を提供できる国はインドとフィリピンということになっていますが、南シナ海の関与の強化ということになりますと、こういう法律をつくっていって、譲渡できる国をさらに拡大していくということですか。これは最後の質問です。

若宮副大臣 委員の御指摘でございますけれども、海洋国家であります私ども日本といたしましては、これまでも地域の平和と安定、また繁栄の観点から、シーレーンの要衝に位置いたしますASEAN諸国との防衛装備、技術協力というものは重視をしているところは御承知のとおりかと思います。

 また、昨年の十一月に、今後の日本とASEAN防衛協力の指針として表明をいたしましたビエンチャン・ビジョンにおきましても、ASEAN全体の能力向上のために、装備品や技術の移転、また防衛装備、技術協力に係る人材の育成、それから防衛産業に関するセミナーなどの開催を進めていくことともいたしているところでもございます。

 防衛装備の移転につきましては、日本の平和国家としての戦後の歩みもございます。そしてまた、基本理念をきちっと維持しつつ、厳正かつ慎重に対処していく方針には全く変わりがないということを申し上げておきたいと思います。

宮本(徹)委員 私たちのこの国の平和憲法の理念とは全く違う方向で今進もうとしているわけですよ。こういう形でP3Cを南シナ海の紛争当事国の一方に上げていくということになれば、この地域の軍事的緊張を高めることにしかつながらないですよ。

 今、フィリピンはドゥテルテ大統領になって、中国との関係の改善という新しい動きも生まれているわけですよ。私は、外交的にこの地域の問題は解決していく、このことにこそ日本政府は努力すべきであって、一方の側に軍事的に肩入れするなどもってのほかだということを強く申し上げまして、質問を終わります。

御法川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 先国会、たくさん質疑に立たせていただきまして、いろいろな論点から、麻生大臣にも、また財務省事務方の方、そして日銀総裁にもお伺いしてまいりました。きょうはことし最初の質疑ということで、少し大枠になりますが、所信に関連して御所見を伺っていきたいというふうに考えます。

 きょうの大臣のいろいろな委員からの御答弁を伺っていまして、非常に興味深いなという点があります。特に、訪米されたときに、ペンス副大統領に、副大統領はインディアナ州の知事だからインディアナ州の数字は明るいけれども、しかし全米の数字はわかっていない、なので日本の数字はこうなんだというのを教授されたというお話がありまして、全米のお話をアメリカの副大統領に教授できるのは日本広しといえども麻生副総理ぐらいかなと思って非常に興味深く聞いていたんです。その話も細かいところを聞いていきたいんですが、まず最初に、日本経済全体の話から大臣の御所見を聞いていきたいんです。

 今、景気というのはいいんでしょうか、悪いんでしょうか。特に物価が、上がっているのか、それとも目標どおりいっていないのか、政府の答弁も国民から見たら非常にわかりにくいんじゃないかなというのは率直に感じるところで、国会のない間に地元を回っていましても、非常にその辺、政府はどうなんだよというお声が多かったと思うんですけれども、国民の皆さんに対してどのように、麻生大臣はいつもわかりやすい御答弁が好評だと思いますので、その麻生節も含めて、今の景気状況をどう捉えるか、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 景気がいいのか悪いのかという話は、これはもう丸山先生、これは人間の、景気と言うぐらい気分の問題というのがやたらありまして、財布の中に二万円あったら、二万円もあったと思うか二万円しかないと思うかは、二万円という絶対額は同じでも気分が違うと全く違うという話なので、景気というのはなかなか、ちょっと一概には申し上げられないんですが。

 数字でいえば、一番わかりやすいのが、アベノミクスによってGDPが四十七兆円ふえましたというのは間違いないと思っておりますし、企業の収益も過去最高というのも、これも確かです。そして、有効求人倍率、就職があるというのが、昔は〇・八四とか言っていましたが、簡単に言えば百人の学生さんが就職を求めたら八十四社しかないというのに対して、今、一・四二ですから、百四十二社からあれが来るというのは、間違いなく有効求人倍率が上がっているということなので、こういった意味では、いわゆる横文字でいえばファンダメンタルズという、基礎的なものは極めてはっきりしているんだと思っておりますし、先日でしたか、二〇一六年の十―十二月のGDPの速報が出ましたけれども、これは四四半期連続でプラスが出ましたので、そういった意味では間違いなく続いていることが確認できるんだと思っております。

 私どもとしては、政権交代をするときに、やはりデフレから脱却せなどうにもなりませんよというので、デフレでも景気がいい、インフレでも景気が悪いということはありますので、デフレ不況からの脱却なんですということを申し上げたんですが、今、物価が持続的に下落していくデフレ状況ではないという状況まではできたというような感じがしております。

 いずれにいたしましても、まだまだ地域間格差とか企業間格差とか産業間格差とか世代別格差とかいろいろなものがありますので、私どもとしては、今後、金融政策とか財政政策とかいろいろな経済構造政策というものを引き続いてやっていって、今の経済状況が少し上がり調子のものを一層加速させていかないかぬという意味には思っておりますので、今ただいまの状況は、四年前に比べたら景気がよくなっていることははっきりしています。

丸山委員 今の御説明を聞いても、やはり国民の皆さんからしたらどっちなんだというのは、非常にわかりにくいというのは思うところかなと。ただ、一つわかったのは、最後におっしゃった、四年前よりは景気がいいというのは非常にみんなそう思っていると思いますし、だからこそ、今の政権の高支持率なんだというふうに思います。

 一方で、不安要素もあるからこそ、いみじくも、大臣、景気の気は気持ちの気だというふうにおっしゃいましたけれども、恐らく将来に対する不安要素の部分で国民の皆さんはまだまだここの壁が取り除けなくて、そういった意味ではかつてのような、高度経済成長期からバブルと言われるような、私は若いので経験もしていませんが、しかし、そういった状況のような、景気よくなってきそうだよねという期待感にまでは膨らんでいないというのは、正直、大臣も大きくうなずいていただいていると思うんですけれども、不安要素を一つ一つ取り除いていくというのが政府において非常に大事な役割の一つだと思います。

 そうした意味で、今、世界じゅうと言ってもいいと思いますけれども、不安要素の一つと言ってもいいと思います、トランプ政権がどういう動きをしていくかというのは、非常に不安にもなりつつ、しかし期待にもなるような、だからこそ株価も乱高下をしているのが現状だと思いますが、きょう非常に興味深い話を麻生副総理より、いろいろな、対話の話とか含めて、未来の話もそうですし、この間行かれた訪米の話もお話をされました。米国の動きというのは、期待につなげられるものというふうな認識でいいのか、それとも不安のままなのか、非常にここは国民にとって大きな分かれ目の判断の一つだと思うんですけれども、率直に、大臣、その点ではどうお考えになりますか。トランプ政権、経済政策において、大臣としては期待を抱いていらっしゃるのか、それとも、まだそこは見えないままなのか、不安なのか、そうした意味も踏まえて、対話についてお伺いできますでしょうか。

麻生国務大臣 我々日本から見た場合に、やはり不安要素として、先ほどでしたか民主党の古川先生の話の質問にもあっていましたけれども、日本の不安要素を三つ挙げろと言ったら、たまたま私の意見と同じですという話が、古川先生の方から出ていましたけれども、やはり、基本的にあの三つが大きな、アンノーン、まだ不確定要素ということなんだと思っているんですけれども。

 ただ、それに加えて、トランプはどうだ、トランプという人はどうなんだと言われたら、これこそ私どもから見て、まだなられたばかりでよくわからないし、スタッフという人も私らから見たら、経済関係にムニューチンがきのうの朝決まったばかり、きのうの朝というのはこっち時間のきのうの朝なんですが、きのうの朝決まったばかりで、スタッフもまだ全然、デピュティーもアンダーデピュティーも全く決まっていませんから、誰がその下に来るのかよくわかりませんので、何とも私らとしては言えませんし、ウィルバー・ロスという人も、商務長官という話ですけれども、この人もまだ認証が終わっていない、まだ否決されていますので、ちょっとまだどうにもなっていないという話ですから。

 どういった人が周りに来るかによって正直わからないんですが、安全保障の面というのが確立しているという点に関して言わせていただければ、私どもから見て、その意味では、安全保障の面においては、安倍・トランプ会談というのは極めて有意義だったと私は思っていますし、よくフリンという人とマティスという人はどうだよ、片っ方は陸軍中将で片っ方は陸軍大将で、今は陸軍大将の方が下になって陸軍中将の方が上にいるという状況でしたから、片っ方はもう九八%で、一番最初に承認されるほどの信任の厚い方を下に置いてと言っていたら、きのう辞任していますので、ほら見ろと思わないでもありませんでしたけれども。これは前から問題だと言われていたんだから、ほら見ろと思わないでもありませんでしたけれども、そんなことを言っても始まりませんので。

 私どもとしては、より安全パイになって、その後がペトレイアスになるとかケロッグになるとかいろいろな人を言っていますので、その二人の名前しか知りませんけれども、その二人が来るのであれば、前のあれよりはさらに安定するだろうなというようなことはわかりますけれども、経済のところはまだ誰も正式に決まった人がいませんものですから、ちょっと正直よくわからぬというのが実態なんですが。

 ただ、猛烈な勢いでアメリカの貿易赤字というものを何とかしたいというのにすごく御関心があるんですが、それを為替でやろうというのであればそれは無理よと。為替というのでは完全にうまくいかないんだから、それはできないし、G7でもG20でもそれはやらないということになっていますから、それはだめと。要は、ほかの経済政策といって、公共事業を出します、何とかを出しますと言っているんですけれども、それを何年で出すんですかと言われるんですけれどもそれもまだ言わない、幾ら出しますとは言うがそれを何年間で出すのかわからないということになると、ちょっとそれは十年で割られたらとてもじゃないということになりますので、ちょっとそこらのところもよくわかりませんので、正直、今の段階ですけれども。ただ、オバマ政権のときに比べれば、日本としての関係は、僕は前よりはよくなってくるだろうという感じだけはします。

丸山委員 麻生節炸裂で、非常に興味深く聞いておりましたが。

 ムニューチンさんがカウンターパートとして決まりましたけれども、わからないというままでは不安なままですので、早急に会談か、電話会談でも構いませんが、やっていただきたいと思います。その気持ちはもちろんあるということでよろしいですね。

麻生国務大臣 一番最初に会うのは、ドイツのバーデンバーデンでG20の会議がありますので、多分その会議のときにお目にかかることになるとは思いますけれども、その前に電話するとかいうことも十分にあると思います。

丸山委員 しっかり相手を知るということは非常に戦略上重要なことでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 トランプ大統領は、特にツイッター等でぽんと何か御意見を出して、それが世界を震撼、震撼まではいかなくても、驚かせるということが非常に多うございます。そうした意味で、これはツイッターではなかったようですけれども、日本の為替、円安の政策を、日本だけじゃなくて中国と並列させて、日本が為替を円安に誘導しているんじゃないかみたいな指摘を、批判をされておりますが、それについて、批判には当たらないと私は思うんですが、大臣もそう思われていると思いますけれども、それに対してどのようにお考えになったのか、なぜそんなことをトランプさん自体が言い出すのかどうかも含めて、大臣はどのように思われていますか。

麻生国務大臣 アメリカの貿易赤字の面でいえば、一番が中国、二番がドイツ、三番日本、四番メキシコの順番だと記憶しますけれども、対中貿易赤字が、日本に対する対日貿易赤字の約四・五倍ぐらいあると思っております。次がドイツ、その次が日本で、僅差でメキシコだと記憶しますけれども、為替が少し動いたりするとちょっとその数字が違いますが、順番は大体そんなものだと思っております。今の話の中でいえば、そのうちの三つだけを選んで非常に名前を指摘されたと記憶しますが、私たちから見ていると、対日貿易赤字になった最大の理由はドル高・円安のおかげなんだということを言われたいんだと思いますが。

 もともと我々は、これは私どもがいろいろな会議でも何回も言ってきたことなので、今度そういった場面になったら同じことを言うだけですけれども、もともと、リーマン・ブラザーズという、おたくで起こした問題のおかげで世界じゅうが迷惑して、あのときは幾らだったか覚えているか、百二十円だったんだぞと。しかも、あのときにおたくらがあっちこっちに売りつけたサブプライムローンなる怪しげな金融派生商品のおかげで、みんな世界じゅう迷惑したじゃないかと。

 そのとき、早い話が市場からキャッシュがなくなったわけですよね、みんなばっと引いちゃったものだから。マーケットに全くキャッシュがなくなったときに、日本だけが一千億ドル、ローンをIMFにして、結果としてそれが世界の金融収縮を助けたというのを日本がやって、その後、おたくらはどうした、おたくらは、イギリスとアメリカは、間違いなく、やたら金融を緩めて、結果としてポンド安、ドル安を演出して、日本はその間、七十円台まで円高になったけれども、俺たちが一回でも文句を言ったことがあるか、ずっと耐えてきたじゃないか、それが今百円になって何が文句があるんだと言って、以後、反論されたことは一回もありませんから。

 私どもは、そういったようなことはきっちり、変わっちゃっていますから、そのとき私が総理大臣だった時代だったので、もうそのころの人で今残っているのはドイツのショイブレ一人ですから、私どものところで、その種の話は歴史の話になりつつありますので、きちんと新しい人にはそういうことを言って、日本が円の独歩安をやっているわけでもない、うちが金融を緩めたのは単なるデフレ対策でやっているだけという点だけはきっちりもう一回、人が、相手がかわれば同じことを言わないかぬと思っております。

丸山委員 非常に明快で、そして、恐らくこれをきちんと言えるのは麻生副総理だけだと思いますので、日本の立場で考えたら。

 しかも、今のお話を聞いていたら、まさしくペンス副大統領とトランプ大統領に対して麻生副総理がおっしゃっているのが目に浮かぶようなお話のされ方をされたので、ぜひとも、きちんと主張すべきは主張しないと、トランプ大統領が、行動力がある大統領だと思います、言ったことを現実的にどんどんどんどん前に進めようとする実行力のある大統領ですので、間違った認識をされている中で日本に対する政策をされてしまうと非常に問題が生じますので、これは再三再四、恐らくもう言うしかないと思いますので、しっかりと発信を、今と同じようにお二人の前でも言っていただきたいというふうに思います。

 そういった意味で、麻生大臣はそういうふうに言えるキャラクターだと思いますけれども、日銀総裁の黒田総裁も、非常に御説明するのが難しいなというふうに思います。

 同時に、この点、黒田総裁は、いろいろな委員会で、さきの予算委員会でもこれを聞かれていまして、為替レートの水準を目標にしていないんだというふうに主張するというふうに回答されていましたけれども、これで理解を得られますかね。非常にテクニカルな部分も含めてアメリカは論理的にも主張してくると思うんですけれども、総裁、この点、どのように切り返していくのか、お答えいただけますでしょうか。

黒田参考人 この点につきましては、繰り返しになりますけれども、日本銀行の金融緩和政策というのはあくまでも二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために行っているものであって、為替の水準とか変動とかそういった為替相場を目的としたものではないということはさまざまな国際会議等でも申し上げていますし、実際にも、御承知のとおり、G7とかG20で累次のコミュニケでも示されておりますとおり、こういった国々の金融政策というものは物価安定の実現という国内目的のために適切に運営されているという考え方でありまして、その点は主要国の間で十分共有されているというふうに思っております。

 もとより、為替レート自体はいろいろな要素で影響されますので、しばしば金利格差ということがよく言われますけれども、金利格差と為替レートをずっと相関関係を調べてみましても、関係するときもあるし関係しないときもあるし、ということは、為替レートはさまざまなファクターで影響されますので、金融政策だけで為替レートのことを説明するというのは正しくないと思います、理論的にも。

 それから、繰り返して申し上げておりますとおり、日銀を含めて主要国の中央銀行は全て物価の安定を目的として金融政策を運営しておりますので、為替を目標にして金融政策を運営しているというところは主要国の間ではありません。

 御案内のとおり、スイスとか非常に小規模な経済では、輸出や輸入がGDPの一〇〇%とか倍とかあるところがありまして、そういうところでは為替レートの安定と物価の安定というのがほとんどイコールになっているわけですね。そういう場合には、為替の安定を目的にして金融政策を運営することが即物価の安定につながるという場合があり得るわけですけれども、それはIMFも含めて認められているわけですけれども、主要国、G7諸国とかあるいはG20のメンバーになっているような国については、そういうことは認められていないというか、そういうことをやっていませんし、全て中央銀行は物価の安定を目標にしており、為替相場を目標にして金融政策は運営していないということ、これは累次の国際会議でも言われているだけでなくて、IMF、OECD等の国際機関も認めているところでございます。

丸山委員 それでわかってくれれば一番いいんですが、交渉はしていくしかないと思いますので、お願いします。

 ただ、今総裁もおっしゃったように、金利によって決定するわけじゃないんですけれども、しかし、それも一因である部分もあると思うんですね、それは否定できないと思うんですが、その点、どのようにお考えなのか。

 そして、同時に、重ねて聞きたいんですけれども、日米の金利差の話がよく言われます。一月はFRBは利上げを見送ったみたいですけれども、金利差、どういうふうにお考えであるかも含めて、その点をお伺いできますでしょうか。

黒田参考人 昨年九月の金融政策決定会合におきまして、いわゆる長短金利操作つき量的・質的金融緩和というものを導入いたしまして、従来の国債買い入れ額八十兆円というものを金融調節方針の柱にしておりましたのを変えまして、イールドカーブ・コントロールという形で、短期の政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債の金利の操作目標をゼロ%程度という形で、イールドカーブ・コントロールというものにしたわけでございます。

 これは日本の経済、物価あるいは金融情勢に即した最も適切な金融政策のフレームワークだと思っておりまして、二%の物価安定の目標にはまだ道半ばというか、まだ遠いわけでございますので、基本的に今のこのフレームワークに沿って、金融緩和を強力に進めていくということが日本銀行としては適切だと思っております。

 その上で、御指摘の、米国あるいはその他の国々が、それぞれの経済・物価情勢を踏まえて、それぞれの金融政策を行っているわけでありまして、米国の場合は、経済・物価情勢が改善しているということで、FRBが利上げのプロセスを開始しております。また、市場では、新政権のもとで、減税やインフラ投資などの積極的な財政運営によって経済成長率や物価上昇率が高まるのではないかという期待から、長期金利も上昇しております。

 一方で、我が国は、先ほど申し上げたようなことで、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を推進しておりまして、これを続けていくということでございます。

 そうしますと、確かに日米金利差というのが出てくるわけでありますが、先ほど来申し上げていますとおり、一つには、為替レートは必ずしも金利差だけで動いているわけではありませんし、二番目には、そもそも、各国の金融政策あるいは金利水準というものは、それぞれの中央銀行が経済・物価情勢などを考慮して最も適切と思われる金融環境をつくっているということでありますので、あくまでも日米金利格差というものは、そういった日米の中央銀行のそれぞれの経済、物価等に対応した政策の結果であるというふうに考えております。

丸山委員 建前の部分と、でも実際の動きを見ていれば金利が非常に影響を受けているというのは、常に見ていればそういうふうに感じるところなんですけれども。

 しかし、そういう意味で、一つお伺いしていきたいのが副作用の部分。

 いみじくも総裁が、まだ二%目標は道半ばで、そして遠いという御表現もされましたけれども、私もそうだと思います。とはいえ、もう総裁の任期が、そろそろ後ろが見えてきているので、そういうことをおっしゃっている場合かなという気もしますが、しっかりやっていただきたいんですけれども。

 同時に、副作用の部分で、例えば国債については保有割合がもう四〇パーを超えてきていますね。同時に、例えばETF購入を進められていますけれども、ついに一六年なんかは四兆円になりまして、例えば市場に流通する株式の一割以上を占めている会社の数が五十社を超えたということで、調べますと、安定株主を除いた流動している株式の中の五〇パーを超えている会社まである。どことは言いませんけれども、ありますという状況で、ETF購入、非常に拡大していると思うんですけれども、もっといけば、日銀が市場に影響をかなり持ってきているというふうに考えられると思うんですけれども、この影響力、無視できなくなっているんじゃないかなと非常に思いますし、同時に、今、株式は安定していますけれども、しかし、何かあった場合に、日銀において非常に問題が生じてくるんじゃないかと思いますけれども、年初に当たりまして、去年の数字も踏まえて、総裁、どのようにお考えなのか、改めてお伺いしておきたいと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、日本銀行によるETFの買い入れというものは、現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和の枠組みの一つの要素として、株式市場全体のリスクプレミアムに働きかける観点から実施しているものでございます。

 実際にも、日本銀行のETFの買い入れによって市場には安心感がもたらされており、リスクプレミアム縮小を促すという効果を発揮しているというふうに考えております。

 ただ、日本銀行は、個々の株式を買い入れるということではなくて、先ほど申し上げた、あくまでも株式市場全体のリスクプレミアムを縮小する観点から、日本の株式市場の代表的な指標であるTOPIX、あるいは日経二二五、JPX日経四〇〇などに連動するETFというものを買い入れているわけであります。

 したがいまして、個々の企業あるいは個々の株について、何か日本銀行が影響を及ぼすという可能性は全くないわけでありまして、あくまでも株式市場全体のリスクプレミアムの縮小ということを狙いとしてやっております。

 さらに、昨年九月には、TOPIXに連動するETFの買い入れのウエートを高めまして、いわば東証一部の五百兆円の時価総額の株全体の指標に沿った形でリスクプレミアムが縮小するようにETFを買い入れるということで、個別銘柄の株価に偏った影響が生じないような面でも配慮しております。

 先ほど申し上げたように、個々の企業、株式について、何かこちらが影響力をもたらす議決権を持つということは全くありません。その上、マーケット全体についても、均等に、いわばリスクプレミアムを縮小する効果が出るように配慮しつつやっておるということでございます。

丸山委員 総裁のお話を聞いていますと、非常に日銀にとっていい部分を切り出して言っているような気もしないでもないんですね。

 というのは、さきの予算委員会で民進党の前原議員からシムズ理論について問い合わせがあったときに、非常に私もこれは懐疑的ですが、しかし、シムズ理論に対して、いろいろ前提を置かないと出てこない話だという御答弁をされています。

 でも、よくよく考えたら、日銀が今とられているリフレのこの理論だって、要はマネタリーベースを拡大すればインフレ率が上昇するんだというのがリフレ理論ですけれども、これだっていろいろ前提を置かないと出てこないんじゃないかな。現に、だからこそ、これだけマネタリーベースをふやしていても、日銀総裁がまさしくおっしゃるような、道半ばで、まだ遠いという状況なんじゃないかなと、今聞いていて非常に同じように感じたんですけれども。

 この点を聞いていきたいんですけれども、しかし、時間もありますし、最初ですから、シムズ理論についてどのようにお考えかという点をもう一度、日銀総裁、この財務金融委員会でも御説明いただけますでしょうか。御見解を伺いたいと思います。

黒田参考人 シムズ教授が昨年夏のジャクソンホールのコンファレンスで、この物価水準の財政理論というのを紹介されたわけですね。この理論自体はシムズ教授が開発した理論ではなくて、たしか二十年ぐらい前から何人かの経済学者の方が主張しておられる理論でありまして、端的に申し上げますと、政府債務は最終的には通貨発行益を含む財政黒字でファイナンスされなければならないという予算制約式をベースに、政府、中央銀行、民間、この三つの主体の相互作用が物価水準を決定する過程というものを理論的に説明した、示したものでございます。

 この理論によりますと、確かに一定の条件のもとでは財政政策が物価水準の決定に主導的な影響を果たす場合もあるという結論が出ているわけですが、ジャクソンホールの議論の中でも、各国の中央銀行総裁は、そういった一定の条件というのが満たされているようではなくて、やはり物価水準に最も影響が大きいのが金融政策ではないかということを言っておられます。

 ただ、昨年夏のジャクソンホールの中央銀行総裁の議論の中で、恐らく、日本以外の主要先進国で、当時、財政政策を余り活用せずに金融政策に非常に依存した形で、物価安定のため、あるいは景気を回復するための政策を行っているということについて、もう少し財政政策でやっていく面があってもいいんじゃないか、あるいは、もっと構造改革を進めた方がいいんじゃないかという議論は前々からあったわけであります。

 ただ、日本の場合は、御承知のように、いわゆるアベノミクスという形で金融政策、財政政策、構造政策という三つの政策を総合的に活用するという形でデフレから脱却し、持続的な成長経路に乗せていこうということでありますので、必ずしも、そういうほかの主要国の中央銀行の総裁が考えておられる、思っておられる状況とはちょっと違っていたとは思うんですね。

 なお、この理論は、幾つかのペーパーをごらんになっていただくとわかりますように、非常に抽象的な、学術的な議論でありまして、こういう状況とああいう状況と比較した議論なんですけれども、ここからあそこに行くという、ダイナミクスというか動学的な経路というのは必ずしもはっきりしないんですね、これは理論でしばしばそういうことがあるんですけれども。

 したがいまして、私自身は、非常に興味深い理論であるとは思うんですけれども、理論そのものもまだ必ずしも完全に学者の間で共有されているというわけではなくて、むしろ、ほとんどの学者の人は反対だと思います。それから、実証的な研究もまだ十分行われていない。

 ただ、理論として非常に興味深いものではあるので、そういうものとして私はジャクソンホールでも聞いておりましたけれども、我が国の現在のいわゆるアベノミクスと言われるような金融政策、財政政策、構造政策を総合的に活用するという場面において、何かシムズ教授が言われたことが非常に政策論として新しくて、考慮しなくちゃいけないというものでは必ずしもないんじゃないかと。理論的には、先ほど申し上げたように、非常に興味深い理論であるというふうに思います。

丸山委員 私も同意見なんですが、しかし、リフレの話も、私も経済学徒の端くれでしたけれども、何年か前は、トンデモ理論とまでは言いませんけれども、しかし、あり得ないだろうと言う人も多かったわけで、そういった意味で、今回のシムズ理論もどういうふうな議論がされていくのかと非常に私は興味深く見ているんですが、またこの話は財務金融委員会でも出てくるかもしれませんが、頭に、まず最初として、総裁としてどのようにお考えかを改めて伺っておきました。

 重ねて、財政政策に関連します、今回のシムズ理論は、財政政策が物価水準を主導的に決定するんじゃないかというのがこのシムズ理論ですけれども、その財政政策をつかさどっております財務大臣、この理論をどのようにお考えになっているか、お聞かせいただけませんか。

麻生国務大臣 このシムズさんという方の話というのは、簡単に言えば、財政規律を放棄しろという話が書いてあるんですよね。私はあんな正確にしゃべれませんから、雑駁に言えば財政規律を放棄せいと。そうすると、将来、物価が上昇するのは当たり前の話なので、物価が上昇するじゃないか、その物価上昇によって政府の債務も全部チャラやと、簡単なことを言えば。持続可能になるという、極端な言い方をすればそういうことになるんだと思うんですが、それが実証できたのかといえば、実証されてはおりませんので、一つの理論としてはそういうのがあるんだと思いますが。

 現実問題、財政収支が悪化するとどの程度の物価上昇が生じて、それがコントロールできるのかというところが財政を預かる者とすれば一番大事なところなんですが、それは全く証明されておりませんので。

 私どもから見ると、今の日本というのは先進国中最悪な財政状態にあります中で、その日本が仮に今のシムズさんの話に乗っかって財政を放棄したとしますか。そうした場合、受けとめ方は、これは世界じゅうに影響を与えるのはもちろんのことですけれども、大体、日本においても国債が消化できますかねという話に次になってくると思いますので、これは現実的には極めて問題だと思いますし、そのインフレによって、多分、年金生活者の方は全く生活できなくなりますよ。

 私のように、あなたと違って戦前に生まれているからね、俺なんかの場合は。だから、戦後、一ドル二円が三百六十円になったときにどんなことになったかというのに、その中にいますから。また、それよりもっとひどかったブラジルのデルフィン・ネットの時代に、年率一八二〇%というインフレをやった。そのときに私、一年間そこに住んでいましたので。朝買ったパンの値段と夕方買ったパンの値段、同じものでも全然値段が違うという状況に住んでいましたので。そういった状況というのは極めて、非常に影響を与えるのが大きいと思いますので。

 こういった話というのは、とても混乱のリスクを増大させるというのが安易に想像ができますので、私どもとしては、やはり財政健全化というのはきちんと維持しながら今の経済を成長させていくという、極めて二律背反するみたいな話をじっとやってきて、もうこの四年間それなりにやってきて、借金は十兆減ってGDPは四十四兆ふやしていますのでそれなりのことはできていると思いますので、確実にそれをやっていかないかぬのだと思っております。

丸山委員 時間が来たので終わりますけれども、非常にすばらしい、楽しい麻生節を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

 ただ、財政政策も金融政策も一生懸命やられている中で、まだ物価目標の達成にいかないんですよね。この期待に応えるためには、多分、私は、やはり三本目の矢の規制緩和の改革だとか、人口減の対策をどうやっていくのかとか、そういった部分に最後はあるんじゃないかなということを申し上げまして、私の時間が終わりましたので、質疑を終わらせていただきます。ことしもよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

御法川委員長 以上で、大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

 次回は、来る十七日金曜日午後零時三十分理事会、午後零時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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