衆議院

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第14号 平成29年4月14日(金曜日)

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平成二十九年四月十四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 宮下 一郎君

   理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君

   理事 伴野  豊君 理事 上田  勇君

      石崎  徹君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    大見  正君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      神田 憲次君    斎藤 洋明君

      坂井  学君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    竹本 直一君

      津島  淳君    中山 展宏君

      福田 達夫君    宗清 皇一君

      村井 英樹君    山田 美樹君

      今井 雅人君    奥野総一郎君

      重徳 和彦君    古本伸一郎君

      前原 誠司君    鷲尾英一郎君

      伊藤  渉君    大口 善徳君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   財務副大臣        大塚  拓君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  池田 唯一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      佐々木清隆君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  浜地 雅一君     大口 善徳君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  古川 元久君     奥野総一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野総一郎君     古川 元久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融商品取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事雨宮正佳君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長池田唯一君、監督局長遠藤俊英君、証券取引等監視委員会事務局長佐々木清隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。重徳和彦君。

重徳委員 おはようございます。民進党の重徳和彦です。

 きょうは、金融商品取引法の改正案について質問をさせていただきます。

 まず一点目は、証券の高速取引への対応なんですね。この高速取引ですが、むちゃくちゃ、もう我々人類の域を超えるぐらいの高速取引、超高速取引と言ってもいいようなものだと認識をしております。

 資料をお配りしておりますけれども、東京証券取引所、それから大阪の証券取引所も一部導入されているんですけれども、コロケーションエリアというのが設けられているんですね。東証の取引をするサーバーのすぐ隣に、近接する場所に、高速、超高速取引をしようという投資家のサーバーが置かれて、一刻一秒を争うというよりは、本当に何マイクロ秒という秒数を競って証券取引を行う、こういう時代であります。

 資料をごらんいただきますと、二〇一〇年から、コロケーションエリアに置かれているサーバーからの取引、コロケーションエリア内の取引というのが、注文件数をごらんいただきますと、二〇一〇年四億七千七百万件だったのが、二〇一六年には七十八億九千九百万件という数になっています。それから、約定件数でも、一億一千六百万件だったのが七億一千七百万件であります。売買代金ベースでいうと、七十四兆円が三百三十二兆円。こういう、コロケーションエリア内からの高速取引に基づく件数あるいは金額というのは、これほどの勢いでふえているわけであります。

 この七年間で高速取引が急増しているその理由、背景を金融庁から御説明をお願いいたします。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 東京証券取引所におきましては、従来、海外と比較いたしまして、注文の処理速度ですとか処理容量が劣っているという指摘がございました。これを受けまして、東京証券取引所では、二〇一〇年に売買システムの更新を行いまして、注文処理時間の大幅な短縮が図られたところであります。また、IT技術の進展により、投資家の発注システムについても、注文の処理速度の高速化が見られております。

 そうした中で高速取引の割合が増加しているわけですけれども、そうしたことの背景としまして市場関係者の間では、一つに、証券取引のグローバル化といったこと、それから、情報通信技術の発達なども受けてアルゴリズムを用いた自動的な売買手法の進歩、そうしたことが背景にあると指摘されているものと承知をしております。

重徳委員 そうなんですね。アルゴリズムに基づく自動的な売買システムですから、人間を介さないシステムなんですね。

 今回、二〇一〇年から東証に、大証にも導入されているコロケーションエリアからの高速取引なんですが、確認なんですが、いわゆる高速取引とそれ以外の、それ以外の取引といっても回線を通じたそれなりの高速取引だとは思いますけれども、技術的にはどのぐらいのスピードの違いのことを言っているんでしょうか。

池田政府参考人 東京証券取引所によりますと、投資家が注文を行いました後、その注文に係ります情報が取引所の売買システムに伝達されるまでに必要となる時間につきまして、コロケーションエリアから注文を行う場合は四・七マイクロ秒、マイクロ秒は百万分の一秒でございます、四・七マイクロ秒である一方、コロケーションエリア外から注文を行う場合には数ミリ秒の時間を要するというふうなこととされております。

重徳委員 我々人間の感覚からすると想像もつかないようなスピードでありますけれども、四・七マイクロ秒、マイクロというのは百万分の一、外からだと数ミリ秒ですから、ここに千倍の差があるわけですよね。このぐらいの、そうはいってもその世界の中では千倍違うというわけでありまして、本当に超高速取引ということだと思います。

 しかし、我々人間からすると、何マイクロ秒であれ何ミリ秒であれ、高速は高速だと思うんですよ。こういった、どこまで高速を競うのかというような世界だと思うんですけれども、基本的な認識として、速く取引を終えたいんだったらとことんその速さを競えばいいじゃないか、金融庁としてもこういう認識なんでしょうか。

 この資料を見ても、やはり、高速取引が占める注文件数で見ても、全体が、金額で見た方がいいですよね、金額で七百三十一兆円のうち半分近くがコロケーションエリア内からの取引なんですよ。これはもう、やりたいんだったらどんどんコロケーションエリアの中でやったらいいじゃないか、こういうことなんでしょうか。どう認識されているんでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 コロケーションエリアから注文いたしました場合に、そうでない場合と比べまして、注文が取引所の売買システムに到達するまでの時間が短いということは先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、この点については、個々の投資家の投資戦略、投資行動はさまざまであると思いますが、こうした取引の時間が短いことの重要性というのは投資者ごとに異なるという面がございます。

 それから、コロケーションエリアの利用その他高速の取引を行うには、相応のコストもかかるということもございます。そうした中で、最終的には個々の投資家の方々の投資戦略、投資行動によって選択がされていくということかと思っております。

 ただ、同時に、高速取引について、例えば、中長期的な投資家ですとか個人投資家等の間に、そういう高速取引について不公平感を与えているのでないかということは懸念されるところでありまして、そうしたことからも高速取引の実態についてはこれまで以上に情報を収集していくことが必要であると考えておりまして、今回の法案の提案をさせていただいているところでございます。

重徳委員 高速取引ができるようになったということで、取引の件数も金額もたくさんになったということで、流動性が高まっているという前向きな評価もあるわけなんですね。

 ちょっと確認したいんですけれども、コロケーションエリアにサーバーを置いている投資家の数はどのぐらいなんですか。それから、ちょっと気になるのは、国内の投資家と外国の投資家がいると思うんですけれども、数字もわかれば教えていただきたいんですが、どうなんでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 コロケーションエリアに置いている社は、おおむね七十社程度ではないかと考えております。そのうち十社程度は証券会社が置いているというものでありまして、したがいまして、差の六十社程度が今回の法律案に基づきまして登録の対象として想定している社であるということでございます。

 それで、国内、海外につきましては、この六十社の大宗は海外に存在している投資家であるというふうに考えております。

重徳委員 国内、国外ということですが、最初の御答弁でも、やはり、東証のシステムが海外と比べて遅いということが問題だという指摘を受けて東証が対応したということだと思うんですけれども、外国の投資家のためにいろいろやっているという感じがするんですが、その辺はどうなんでしょうか。日本の投資家のためだったらやる気も出てくるんですけれども、何か外国の投資家のためにばかり、いろいろなサービスをよくしたり、あるいは対応を迫られたり。このあたりについての問題意識をお答えいただきたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 証券市場におきましては、内外問わず幅広い投資家を呼び込み、厚みのある市場の中で公正な価格の形成を行っていくということがその重要な機能であると考えておりますので、国内の投資家の厚みということも極めて大事だと考えていますが、同時に、海外の投資家の厚みということも重要であり、したがいまして、証券取引所が国内の投資家のみならず海外投資家のニーズも踏まえて取引制度の見直しを行っていくことは、それなりの意義のあることであると考えているところであります。

 ただ、同時に、取引の高速化に関する懸念などが存在していることも事実でございます。そうしたために、今回、必要なルール整備を提案させていただいているわけですが、こうしたものについては、国内の投資家のみならず海外の投資家の方々にも対応をいただくことが重要だと考えております。

 したがいまして、今回の法律案でも、海外の投資家に対しても実効性ある形で今回提案しているルールが適用されていくように、例えば、外国籍を有する方が高速取引を行う場合には、この法律案に基づく登録に際しまして、国内における代表者あるいは代理人の設置をいただくですとか、高速取引を行う営業所が所在しております国の当局と私ども当局とであらかじめ覚書を締結するなど、我が国の調査協力に相手国の当局が調査協力に応じていただける旨の保証がある、そうしたことを要件として登録を認めることとしている等の措置を講じさせていただいているところでございます。

重徳委員 ここで大臣にちょっとお聞きしたいんですが、今、池田局長からも、こうした高速取引、超高速取引じゃなくても通常の回線を通じた投機的な取引というのは、中長期的な、本来、株主として会社を育てていく、こういう観点を阻害するものではないか、こういった指摘がなされているわけでありますが、私は、本来的な投資の姿勢の観点から見ると、ちょっと、こうした高速取引、いかがなものかというようなところがあると思うんですが、大臣の御認識を教えてください。

麻生国務大臣 これは、一秒間に数千回、機械が進歩していますから多分もっといくだろうと思いますけれども、こういう高速取引が中長期的な取引に与える影響。傍ら、多分、アルゴリズムに乗って、短期で一日のデートレードみたいなものがふえていますから。そういったことになりますので、与える影響というのについてはこれは必ずしも明確ではないんですが、少なくとも、他の投資家に比較すれば、先に売買しますので、他の中長期の投資家の売買の機会というものを制約しちゃうという点もありますでしょうし、取引のコストは当然のこととして上がります。

 また、中長期的な企業の価値というものに基づいて価格形成というのがされて、この会社は今はだめでも来期、再来期、この投資の分が見合ってというようなことを考えてやっている分を、そのときの数秒間の話でうわっと動いていくということになりますと、いわゆる中長期的な企業の価値というものに関する価格形成を阻害し得る要因にはなると思いますよ、私どもは。

 したがって、こうした懸念がありますから、今回、高速株式取引を行う方々に対してはいわゆる登録制というのを導入させてもらって、体制の整備とかリスクの管理とかいろいろありますけれども、そういったものをやるとともに、高速取引の実態というのが正直いまだよく確認できておりませんので、そういったものができるように、ルールの整備をさせていただこうと思っております。

 どういう影響が出てくるかということに関しましては、今申し上げたようなところまではわかるんだけれども、ほかにもいろいろな影響が出ておるのではないか等々、懸念は幾らでもありますけれども、そういったのが今現状だと理解しております。

重徳委員 まずは実態を把握して、どういう懸念に対応していくべきかということをまず把握をするということでございます。

 そもそも、超高速といいましょうか、四・七マイクロ秒とかこういう世界はどこまで進んでいくんでしょうね、大臣。どこまででも進んでいくんでしょうか。どう予測されていますか。

麻生国務大臣 来年、多分世界一になるコンピューターがありますけれども、それが今のスーパーコンピューター「京」と言われる、よく言われるコンピューター「京」ですけれども、あのスーパーコンピュータの「京」の大きさが大体丸ビルぐらい、昔の旧丸ビルぐらいあった大きなコンピューターだったんですが、今既にでき上がっておりますのは、電気洗濯機で五台ぐらいですかね、あの大きさからいったら。その角にぽいっと入る、もっと小さかった、このくらいの高さで、数台で入ります。

 電気がやたら食うからといって、何で一番じゃなきゃだめなのとか、とぼけたことを聞いていた人がいましたけれども、いましたけれどもってまだ死んでないですよ、まだ死んでないけれども、生きておられると思いますけれども。

 その方の話をおちょくるわけじゃありませんけれども、電気代は、原子力発電所の十分の一、十万キロワットぐらい要るという話で、何でという、電力の無駄じゃないのと言うんですけれども、そのコンピューターは空冷じゃありませんから、水冷ですから。そういったものが既にこれは日本製でできております。

 去年の、省エネ電力スーパーコンピューター、グリーン五〇〇の一番、二番は全部この会社ですから。そういったものができてくると、今のコンピューター「京」のさらに百ペタとか百五十ペタと言っていますから、それはちょっと数字がむちゃくちゃなことになってきますので、それは幾らでも出てくるということになり得ると思いますので。

 そういった処理速度が高速化したということがもう実現していますので、IT技術のさらなる進歩ということは、まずコストが相当ふえてくるということも、やられる方はあるところだと思いますので、投資家としては、その利益に見合ったようなものになるのかという問題はこれは全然別の話で、やられるのは御自分でなされればいいだけの話ですけれども、実際にどれだけ高速化されていくかということを見通すことは、今のコンピューターの技術の進歩の方に少々、知識があるものだから、これはちょっと、さらにもっといく可能性があるんだと思いますので。

 気をつけておかなければならないのは、その安定性というのは大丈夫ですかという話とか、いろいろなことを考えなきゃなりませんし、また、金融庁としては、公平性はどう確保するのとかいろいろなことを考えておりますので、今回の法案によって、少なくとも取引というのの実態というものについてはある程度把握をさせていただいておかないと、大きな問題が起こってからということになりかねぬというのが、我々この法案を提出させていただいておる背景です。

重徳委員 大臣の問題意識はわかりましたし、どこまでも高速化が進んでいく可能性がある、ただし、コストとか安定性とか、そういった、それに伴う課題はあろうかということでございます。

 ちょっとここで整理しておきたいんですが、今回の法改正によって問題がすかっと解決されるというよりは、これからいろいろなことを把握していくということだと思うんですが、ちょっと改めて局長から、本改正によって何がどう改善されていくのか、特に、フラッシュクラッシュとか、それから大規模な数億ドル規模の損失を出すような誤発注というのがこれまであったわけでありまして、そしてその会社が破綻する、こういった事件も起こっておるわけなんですけれども、こういうことを防げるというようなことなんでしょうか、その辺の認識をお願いします。

池田政府参考人 取引が高速化している、そうしたことも念頭に置きながら、取引所におきましては、これまでもさまざまな制度的な対応は行われてきていることでございます。

 例えば、投資家に冷静な判断を行うための機会を設けるなどの観点から、価格急変の増幅を防止するための措置として、例えばサーキットブレーカー制度ですとか制限値幅の制度などが導入されているところでございます。あるいは、誤発注という御指摘がございましたけれども、市場に混乱を来す注文の排除といった観点から、誤発注が起きた場合に、一度成立した売買を取り消すことができる誤発注取り消しルールといったものも取引所では導入をされておりますし、また、証券会社に対して、システム管理体制の整備や顧客注文の審査なども求められているところでございます。

 こうしたことに加えまして、今回の法律案では、株式等の高速取引を行う者に対して登録制を導入して、取引システムの適切な管理運営や適切な業務運営体制の整備等を求めることとしているということでございます。

 私どもとしては、今回の法律はもとより、取引所でとられているさまざまな取り組み、こうしたことを全体として行うことによって、市場の公正性、透明性、安定性の確保を図っていきたいというふうに考えているところでございます。

重徳委員 まず、この高速取引については大体そんなことだということで理解いたしました。

 ちょっと変な時間割りなんですけれども、この後、十時十五分からもう一度私の出番があるようですので、最後の一問として、フェア・ディスクロージャー・ルールについて、インサイダー取引規制とどう違うのか、どういう関係にあるのか、これについて御説明を願います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 フェア・ディスクロージャー・ルールは、上場会社が重要な情報を証券アナリストなどに提供した場合、他の投資家にも公平に情報提供することを求める、そうした企業の情報提供に関するルールであるということが言えると思います。

 具体的には、上場会社の役員やIR担当部門の従業員など、通常の業務遂行において、投資家等に情報提供を行う役割を負う者から、証券会社、投資運用業者、機関投資家等の有価証券の売買に関与する蓋然性が高いと想定される者に対して、当該上場会社等の運営等に関する未公表の重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすものが伝達される場合に、上場会社に対して、その情報を同時または速やかに一般に公表することを求めるものであります。

 これに対しまして、インサイダー取引規制は、上場会社と特別の関係にある者が当該企業に関する重要な情報を知った場合に、当該情報の公表前に取引等を行うことを禁じるという、企業の関係者等から情報を受けた者の取引に関するルールであるということでございます。

 また、これらのルールについては、例えば罰則の適用につきまして、今回、御提案申し上げていますフェア・ディスクロージャー・ルールにおきましては、このルールに基づく情報開示がなされない場合には、まずは、企業に速やかな公表を促し、これに適切な対応がとられなければ、行政的な指示、命令を行った上で、それでもなお、正当な理由なく命令に従わない場合に、初めて罰則の対象とするということとさせていただいております。

 他方、インサイダー取引規制につきましては、五年以下の懲役または五百万円以下の罰金といった形での刑事罰等が規定されているということでございます。

重徳委員 一旦終わります。変な時間割りですけれども、この後、十時十五分から私の質問を再開させていただきます。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 本法案にあります高速取引の実態をつかむルールの整備や、あるいはフェア・ディスクロージャー・ルールの整備、これは重要だと考えますが、取引所グループの業務範囲の規制緩和については懸念がある、このことを申し述べた上で質問をさせていただきます。

 一九九〇年代の金融ビッグバンの規制緩和の中で、取引所集中義務が撤廃され、そして取引所外取引が導入され、その後、取引所とイコールフッティングの方向へ規制緩和が重ねられてきました。

 昨年十二月にまとめられました金融審議会の市場ワーキンググループの報告を見ますと、証券会社が運営する私設取引所、PTSのシェアは五%程度となっております。他方、アメリカでは、取引所外取引が三〇%以上を占め、英独仏においても、我が国と比べ、取引所外取引のシェアが相当程度高い、こういう書きぶりで報告書には書いてあるわけですが、大臣に伺いたいのは、今後、取引所外取引をさらに広げよう、こういう方向性なんでしょうか。

麻生国務大臣 このPTS、PTSというのは私設取引システムですかね、この制度というのは取引所外の取引なので、取引というものが解禁されましてから、いわゆる市場におけます競争を促す観点から導入されたものなんですけれども、足元を見ますと、利用者のニーズに合った取引の手法を定めるところは一定程度認めますが、今言われたように、五%、六%ぐらいのところだと思っているんです。

 私どもとしては、このシェアをさらに、アメリカが、今、五、六倍あったかと記憶しますから、三〇%を超えているというぐらいあるんだと思いますけれども、ああいうようにシェアの拡大を目指しているわけではないので。私どもとしては、取引所と、取引所外取引を担いますPTSの間で、いわゆる適切な競争というのが図られることによって、いろいろな意味での利用者の利便性向上が進んでいくということを期待しているのであって、これを急激に大きく伸ばそうと思っていることを考えているわけではございません。

宮本(徹)委員 拡大を目指しているわけではない、適切な競争のために必要なんだというお話です。

 適切な競争といいますけれども、取引所と私設取引所はいろいろな点で対等ではないわけですよね。私設取引所は、取引情報等、情報開示が義務づけられていません。気配情報については、取引所は気配情報全体ですが、私設取引所は最良気配情報のみが開示が義務づけられておるということですので、これは、私設取引所に参加している人は、両方の、全ての情報が見られるわけですけれども、私設取引所に参加していない方は得られる情報は少ない、情報格差があるわけですよね。

 東証の株式部長だった方の論文を見ましたら、やはりこういう情報格差が生じたまま形成された価格や取引は適正と言いがたい、こういう指摘もありました。

 さらに、取引所は、法令に基づいて自主規制法人が売買審査を行っておりますが、PTSには、法令上、自主規制機関もないわけですよね。

 大臣にお伺いしますが、証券会社が運営している私設取引所の問題点、課題、これはどのように認識されているでしょうか。

麻生国務大臣 このプロプライアタリー・トレーディング・システムと称される、いわゆるPTSというんですけれども、これをめぐる課題として、アメリカなんかを見ると、この取引所だけでも、五、六十あったと思いますので、そういった取引所が存在しておりますので、流動性とか情報の面では、これは市場の分断というのが発生しますので、ベストプライスというのを探すという意味においては、これはえらいコストがかかることは懸念をされております。

 これに対して、日本の場合は東証のシェアが九割を超えていると記憶しますから、少なくとも、このPTSのシェアが数%、五%前後だと思っていますので、アメリカのような懸念はないと思ってはいるんですけれども、今、宮本先生が言われましたように、例えば、投資判断に重大な影響を与えるおそれがある情報が生じた場合はどう対応するのかということについて、取引所とPTSというのが連携して、市場の透明性とか公平性というのを確保して、いわゆる投資家保護というのを図っていくということが一番基本的な、大事なところじゃないかと思っております。

宮本(徹)委員 課題があるということで、投資家保護が大事だということをおっしゃられました。

 ただ、これはPTSを解禁したときから、やはり自主規制機能がないということについては、投資家保護という面でPTSは劣るんだという指摘が、当時の日経新聞なんかをひっくり返してみましたら、書いておりましたが、その投資家保護で劣るという状態がやはり放置されてきているということだと思います。

 EUでは、取引所外取引に対しても、取引所と同様の規制を課すという原則があります。やはり公平な価格形成だとか、あるいは不正の防止ということを考えましたら、私設取引所についても情報開示を進めていく、自主規制機能や監視を強めていく、こういうことが大事なんじゃないかと思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、宮本先生、かなり進んでいるんだと思っているんですが、このPTSというものを運営する会社には、金融商品取引法に基づきまして、注文や約定価格に関する情報はきちんとタイムリーに出せ、また、インサイダー取引とか、いわゆる相場操縦等々の取引の公正を害する売買を排除するための体制整備を求めるなどというのをやらせていただいているんですが。

 いずれにしても、これらを踏まえまして、PTSを運営する証券会社において業務運営にきちんと取り組んでいるものと考えてはいますけれども、いずれにいたしましても、この点に関しましては、そういったことをやるのはある程度善意のある者を前提にしていますけれども、そうじゃない人も世の中にはいっぱいいますから、そういったことも考えた上で、いろいろな意味で適切な監督とか監視というのは、引き続き、きちんと努めていくということが必要なことだと思っております。

宮本(徹)委員 適切な監督、監視が必要だという御答弁ですけれども、それをやっていく上でも、やはり取引所と同じような規制のルールをしっかり設けていく必要があるんじゃないかと思います。

 PTSでも、問題がある取引については証券等監視委員会に報告するというふうになっているわけですけれども、では、これは何件報告されているのかというふうに金融庁に問い合わせても出てこないんですよね。なぜかというと、法律で義務づけられていないから国会議員にもわからないという話になっているわけですよね。

 ですから、こういう点では、PTSの監視をどう進めるのかというのは大きな課題ですし、真剣な検討が必要だと思います。

 次に移りますが、金融審議会の報告書を見ますと、現在、PTSについては認められていない信用取引についても、適切なスキームの構築がされた場合には、PTSにおける信用取引を認めることも考えられるという文面がありました。

 これまで金融庁は認められないというふうに言ってきたと思うんですが、認められることも考えられる、こう変わったのはなぜでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 PTSにおけます信用取引につきましては、従来、PTSを提供する業者自身が信用取引に伴います資金の貸し付けですとか株券の貸し付けを行うとすれば、利益相反のおそれがあるのではないかということ、それから、PTSを提供する業者に対して自主規制機関と同様の自主規制機能の発揮を求めることができるのか、そうした点を指摘してまいったところでございます。

 これらの点に関しましては、その後、関係者による議論、検討などを踏まえて、例えば、PTSを提供する業者等が実質的な資金、株券の提供者にならない、それから、自主規制機関がPTSについても一定の自主規制機能を発揮するなどの手当てがされた適切なスキームが構築された場合には、従来から申し上げている二つの問題点もクリアされるものと考えられますことから、御指摘のような整理をさせていただいたということでございます。

宮本(徹)委員 この報告書を見ましても、PTSを提供する業者自身が金融商品取引業者である以上、取引参加者に対する調査、処分については、当該業者が直接行うことは困難であると考えられるというふうに考えているわけですよね。

 ですから、以前の金融庁の考え方を見ましても、参加証券会社に対する監査、処分まで考えた自主規制機能というのは、取引所と同等のものを求めることは現実的でなく、認められないというふうに書いているわけですよ。これが変わったというのはなかなか納得しがたいというふうに思います。PTSで信用取引が解禁されれば、投機的取引の一層の拡大も懸念されると思います。

 それから、もう一点聞きたいのは、ダークプールの問題です。

 これも金融審議会の中で議論されてまいりました。ダークプールというのは気配情報を開示しない取引の場ということですが、今回は、法案の中には、このダークプールの規制については具体化されておりません。

 きょうは、配付資料でお配りしておりますけれども、このワーキンググループの議論の中で、東証の専務執行役員の土本さんがこう述べているんですね。ダークプールについて、「PTSと同等の市場として実際には機能しているのではないかと認識しております。」「自己売買業も行っている証券会社が、その自社内で運営する市場ということでございますので、顧客と証券会社との利益相反が生ずるおそれは否定できません。現在のところ、取引所やPTSとは異なって、特段の定義もなく証券会社内部でどのような取引がなされ、それが真に顧客利益にかなっているのかどうかといった実態が必ずしも明らかでないということでございますので、ダークプールという市場に対して、新たな枠組みが必要ではないかと考えております。」こう述べられております。

 大事な問題提起だと思うのですが、なぜこの土本氏の意見というのは採用されなかったんでしょうか。

池田政府参考人 お答えいたします。

 ダークプールとは、複数の顧客からの注文を電子的につけ合わせますが、気配情報については必ずしも開示をしていない取引の場ということかと考えております。

 御指摘のとおり、米国では、ダークプールの運営者は、証券会社の登録とともに、日本のPTSに相当しますATSという制度の運営者としましてSECに届け出を行って、システムの安全性確保等の一定の規制に服することとされているところでございます。

 日本では、ダークプールにつきましては、複数の顧客からの注文を電子的につけ合わせた上で、それを取引所の立ち会い外市場に同時に取り次いで約定させるという形で取引が行われているところでございます。この点は、米国とは取引形態が異なっているのが実態ということでございます。こうしたことから、その運営は、証券会社の業務といたしまして、PTSの認可を受けることなく行うことが可能とされているものであります。

 そして、この審議会の場では、御指摘のような意見もあったところであるわけですけれども、我が国のダークプールにつきましては、一つには、これは証券会社が運営するものでありますので、金融商品取引業者として登録を受けておりまして、その中で業務の運営状況等について当局の監督を既に受けているということ、それから、先ほど申しましたように、約定が取引所の立ち会い外市場で行われていて一定の透明性が確保されているということ、それに加えまして、ダークプールを一律に認可の対象とした場合、取引の円滑を阻害しかねないこと等の指摘が多くの委員からなされ、最終的には、当局が、引き続き金融商品取引業者に対する規制を通じて実効的な監督に努めるとともに、将来的に新たな課題や環境変化が生じた場合には、必要に応じ、制度的な対応を検討することが適当とされたところでございます。

宮本(徹)委員 一定の透明性といいますけれども、約定の情報は出てくるかもわからないですけれども、証券会社の中でどうつけ合わせているのかという情報は全く出てこないわけですよね。その点は全く不透明、だからダークプールと言われているわけですよね。

 配付資料の下にも書いておきましたが、この黒沼さんという方は座長だったわけですけれども、こう言っているわけですよね。「取引所の立会外市場というのは、最初に出てきたときはこういった大規模なダークプールは想定していなかったのではないかと私個人は思っています。そうだとすると、事情が変わってきたので、本来は規制を入れたほうがいいと思います」。けれども以下は先ほど述べられたことが書いてあるわけですけれども、本来は規制を入れた方がいいというのが座長も述べられていることなわけですよね。

 ですから、ダークプールでも、ヘッジファンドなどは高速取引もやっているのは明らかですから、早急に実態は把握していくということが必要だと思いますし、規制の導入も引き続き検討しなきゃいけないんじゃないかと思いますが、その点はどうでしょうか。

池田政府参考人 証券市場におきまして、取引の公正確保は極めて重要な課題であると認識をしております。

 御指摘のダークプールの点も含めまして、証券会社におけます業務の運営や証券取引の状況については絶えず注視をいたしまして、必要な実態把握を行い、その上で、取引の公正確保の観点から、問題があれば規制のあり方についても機動的に検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 しっかりと実態把握していただいて、規制もしっかり検討していっていただきたいというふうに思います。EUではこれに対するルールづくりも進められているということでございますので、この点もぜひ参考にしていっていただければと思います。

 それから、きょうは、残り時間は短くなってしまったんですけれども、証券等監視委員会にも来ていただきました。

 検査というのは人海戦術でやられていることだというふうに思いますが、一検査対象当たりの平均延べ検査投入人員というのはどうなっているのか、また、第一種商品取引業者と投資運用業者に対して多くの人員を割いている理由、これを教えていただけるでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 監視委員会が行います検査の一検査対象当たりの平均延べ検査投入人員、これは人数掛ける日数でございますけれども、平成二十七年度におきましては、第一種金融商品取引業者が百四十一人日、第二種金融商品取引業者が二十八人日、投資助言・代理業者が二十九人日、投資運用業者が百八人日、適格機関投資家等特例業務届け出者が六十六人日となっております。

 検査に要します人員、時間は、個々の業者の規模、業務の内容等によりましてまちまちではございますけれども、一般的には、第一種金融商品取引業者及び投資運用業者は相対的に規模が大きく、業務の内容が複雑であることから、これらの業態の検査につきましては、他の業態に比べまして、より多くの人員、時間を割いて検査を実施しているところでございます。

宮本(徹)委員 監視委員会の報告書も見せていただきましたけれども、海外関連会社等を通じた不公正な取引だとか、あるいは虚偽記載、あるいは金融商品取引に精通した者による悪質な詐欺的取引が国境を越えても行われているということも書かれております。専門的な調査能力を持った職員の方々が本当にたくさん必要なんだなということを改めて感じました。

 最後にお伺いしますけれども、近年の職員の増員状況はどうなっているんでしょうか。そして、今後の増員の見通しというのはどうなっているんでしょうか。これはやはり思い切ってふやす必要があると思いますが、その点を伺って質問を終わります。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 近年の、例えば課徴金制度の対象拡大、あるいはプロ向けファンド業者に対する規制強化等の一連の制度改正に的確に対応するために人員を増強してきておりまして、例えば、今申し上げました課徴金制度、情報伝達・取引推奨行為に関します規制の導入に伴いまして、課徴金及び犯則調査に伴う増員四名を二十七年度において行っております。また、適格機関投資家特例業務届け出者に対する行為規制の導入、これは平成二十八年四月でございますが、それに伴う検査体制の整備として三名の増員を行っているところでございます。

 監視委員会といたしましては、市場の公正性、透明性の確保及び投資者保護の使命を的確に果たしていくためには、これまでも体制面の充実強化を図ってきているところではございますけれども、引き続き必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 これで質問を終わりますけれども、いただいた資料では、証券取引等監視委員会の事務局職員数は、平成二十五年から平成二十八年までふえてきたんですけれども、平成二十九年になると減っているんですよね。

 この点は、やはりしっかり市場を監視していくためには人の配置が必要だということを訴えまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、石崎徹君。

石崎委員 皆様、おはようございます。自由民主党の石崎徹でございます。

 本日は、貴重な十五分の質問の時間をいただきまして、理事、委員の皆様方に心から御礼を申し上げたいと思います。

 今、全国的に地銀の再編というのが進んでいるわけでございまして、私の地元新潟県におきましても、第四銀行と北越銀行が経営統合に向けて調整を進めているという報道があっているところでございます。県内首位と第二位の銀行の経営統合によりまして、総資産約八兆一千億円、貸し出しシェアは県内で五割となるということでございまして、地元にとって大きなニュースとなっているところでございます。

 新潟におきましては、この二つの銀行以外にも、大光銀行という第二地方銀行、九つの信用金庫、十一の信用組合がございまして、金融過剰地域と指摘されたこともあるところでございます。

 この新潟の二行の合併以前にも、三重県、大阪府、兵庫県、こうした関西の地域、あるいは長崎県などで地銀の再編という報道が出てきているところでございます。

 都市銀行におきましては、二〇〇〇年ごろに大きな再編が行われたわけでございますけれども、金融庁として、こうした地銀の再編、第二地方銀行の再編につきましてどういうお考えをお持ちなのか、非常に市場の関心も高いところであるかというふうに思います。

 今回の新潟におきます第四銀行、北越銀行の経営統合によりまして、先ほど述べましたように、県内の貸出金融機関に占める割合が半分を超えてしまうということで、残りの五割の部分をその他二十一の金融機関で分け合うということになっていくわけでございますけれども、こうした銀行の統合がその他の地域の金融機関にどのような影響があるのかという点をお聞かせいただきたいのと、そして、この統合が、県民の借り手側に非常に不安視する声も出てきているところでございますけれども、こちらも、大変お忙しいところで恐縮でございますけれども、麻生金融担当大臣に御感想をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

麻生国務大臣 今御指摘のあったように、北越、第四銀行、昔のナンバー銀行なんですけれども、この統合が発表されたことは承知をいたしております。

 まず、これは基本的に個別の金融機関にかかわる話なんですが、統合が新潟におけます地域経済とか、また、ほかの信金とか信組とか、そういった金融機関に与える影響、その地域における市場動向とか、金融機関間の競争する環境等々による変化というのはどういうようにと言われると、その地域の変化によって全然違ったことになるので、一概に申し上げるということはなかなか困難なんですが、一般論で言えば、新潟というのは、昔は人口のやたら多い県だったんですが、それが今は、御存じのように、人口というものだけで見れば減ってきているという方向の一つであるので、それでいえば銀行が多いじゃないかという話が昔からあるのは御存じのとおりなんです。

 やはりこういったもので、合併をすることによって、かかって経営者の能力、経営者の方法、指針によって随分変わってくるんですが、その地域において抱えております状況というのを見た場合に、いい話をアドバイスできるだけの余力を合併することによって人的には持ちますので、目ききとか、いろいろな表現があるんでしょうけれども、そういったようなものができる人たちが、それらの両行をあわせれば絶対量がふえるわけですから、その人たちを適切に使っていただいて、この企業とこっちの企業は、持っている技術が一緒なんだし場所も同じなんだから、ちょっとこうしたら、もっと経営がうまくいきますと言って、人数が減るか。

 また、それを足し合わせて、うちの取引先のもう一個とくっつけたら、この仕事は別のこういう商品を生み出すんじゃないかとかいったような話というのは、銀行のちょっとしたアドバイスからできた企業というのは、意外と世の中に幾つもありますので、そういった顧客本位のいい意味でのサービスというのができる可能性というのはあるんだと思っておりますので、経営資源の余力とか、いろいろな表現をしますけれども、積極的に地元企業の支援のために役立つ形で俺たちはやっていこうという姿勢を銀行が持つかどうかなんですよ。大体、銀行というのは地元で一番でかい面をしている産業というかグループでしょう。昔は電力会社だったんですけれども、今は間違いなく地銀ですわな。だから、そういった形になっているのが実態だ、私はそう思っています。

 そういった意味では、この経営統合の結果がどう出てくるかという方にむしろ私は興味があるので、それがうまくいくかいかないかというのを見ますと、昔でいけば、山口県の銀行が広島県の銀行を買い、北九州の銀行を買い、いろいろな形で成功しているところというのがありますのは、あれは、かかって山口の人の経営感覚がいい感覚だったからだと思いますけれども、そうじゃない、ただ大きくなって、何にも経営効率が上がっていないじゃないかというところもないわけではありません。

 ぜひそういった意味で、地域によってかなり差があるというけれども、地域より、その経営者の能力によってすごい差が出てくるんだという点が私どもから見て一番気になるところですけれども、いずれにしても、この二つを合わせると、預金だけでも六兆円を超えるような大きな預金量を持ちますので、それなりの仕事はできるような形にもなりますので、期待をしているところではあります。

石崎委員 麻生大臣、ありがとうございます。

 経営者感覚ですばらしい御答弁をいただいたところでございまして、期待を申し上げるということでございました。新潟も、経済活性化に向けてまだ道半ばのところでございますので、引き続き、ぜひ期待を持って見ていただければというようなところでございます。

 今御指摘ございましたとおり、このあたり、地域でもまだまだ、期待と不安の声があるところでございまして、先日伺いましたところ、長崎市におきましては、十八銀行と親和銀行の統合に関しまして、こうした地域の不安の声に応えるべく、金融庁主催で企業向け地域金融行政に関する説明会というものが開催されたと承知をしているところでございます。

 先ほども、地銀の再編方針につきまして、金融庁として明確な方針というものは発表していないわけでございますけれども、こうした地元での説明会におきまして、担当の審議官が、統合で生まれる余力を地域の企業の価値向上に役立てるということが重要であるというようなことを御発言されて、そちらが報道で出てきているところでございます。

 金融庁として、ぜひ新潟で、これから再編が行われる、まさに新潟の現場で同じような金融庁主催での説明会を開催することで、こうした地域のさまざまな期待の声と不安の声に対して、金融行政の担当としての説明をぜひしていただきたいと思うんですけれども、いかがでありますでしょうか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の説明会は、長崎県におきまして、地域金融行政への関心が寄せられていることを踏まえまして、三月八日に開催させていただきました。地元の企業関係者の方々に対して、地域金融行政に関する基本的考え方や金融庁の取り組み、あるいは経営統合に関する金融庁の考え方について御説明したものでございます。

 経営統合に関しては、三つの点を具体的に御説明しました。一つは、経営統合それ自体が目的ではなく、銀行の自主的な経営判断に基づき決定されるべきものであり、金融庁としては、地域銀行の自主的な経営判断を尊重した行政運営に努めており、経営統合そのものを推進してはいないこと、二つ目は、人口減少などに伴い地域銀行の経営環境が厳しくなる中、経営統合によって経営効率の向上が期待されますが、これによって創出される経営資源の余力が、地元企業の価値向上、地域経済の活性化に役立つ形で使われることが重要であること、三つ目が、地域銀行は地域の利用者に対し、経営統合の効果を具体的にわかりやすく説明することによって理解と信認を得ていく必要があるということなどを説明したところでございます。

 金融庁といたしましては、こうした考え方をさまざまな機会に説明し、地域の方々の理解が一層深まるように努めてまいりたいと考えております。

 委員の御指摘も踏まえまして、説明会の開催を含めまして、今後、どのような形で発信していくかについて検討してまいりたいというふうに考えております。

石崎委員 ありがとうございます。ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 今回のこの金商法の改正についてでございますけれども、今回の改正によりまして、高速取引には規制が加えられるということでございます。これまで、危機の際等で、いろいろなルールをつくってきたというふうに伺っているわけでございまして、私も、リーマン・ショックのときには財務省におりまして、世界の株式市場の動向を注視しながら、こうした空売り規制とか株価の大きな変動に対しては、私も非常に問題意識を持っているところでございます。

 今回の法改正によりまして、実態把握が進んでいくというふうに伺っているわけでございますけれども、この実態を把握した上で、過度な空売りですとか高速取引システムの暴走などが原因とされますフラッシュクラッシュ等、いろいろと市場を乱す事案というのが、これからどういうような形で、いい形で取り締まりというか、それを減らす方向に持っていけるのかという点に非常に関心がございます。

 こういった点で、今回の法改正を踏まえた、こうした空売り規制等のさらなる実態把握、そして、その規制等、金融庁としてどうお考えなのか、政務官にお伺いしたいと思います。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

武村大臣政務官 お答えいたします。

 これまでも空売り規制などを講じているほか、取引所におきましても、投資家に冷静な判断を行うための機会を設けるなどの観点から、価格急変の増幅を抑制するための措置といたしまして、例えば価格の急変時に取引を一時中断するサーキットブレーカー制度や、一日の値動きの幅を一定限度までとする制限値幅などが導入されているところでございます。

 これらに加えまして、今回の法案では、株式等の高速取引を行う者に対しまして、登録制を導入し、取引システムの適正な管理運営や適切な業務運営体制の整備等を求めるほか、当局に対する情報提供を確保するための措置を講じ、高速取引の実態の把握に努めることとしております。

 金融庁としましては、こうした取り組みを全体として行うことによりまして、市場の公正性、透明性、安定性の確保を図ってまいりたいと考えております。

石崎委員 武村政務官、ありがとうございます。

 また、今回の法改正におきまして、取引所の出資規制というものを緩和するということでございます。ということで、我が国の証券取引所が海外の証券取引所等の持つ子会社等に出資できることが可能になるということでございます。

 今、海外の状況をずっと鑑みてみますと、直近では、去年二月に計画発表されましたロンドン証券取引所とドイツ取引所の合併というものが三月に撤回をされるというようなニュースもございましたけれども、全体的な趨勢といたしまして、ニューヨーク証券取引所が、パリ、アムステルダム、ブリュッセル等の各証券会社が参加されているユーロネクストというものと合併してNYSEユーロネクスト、こうした取引所の再編というものは進んでいるんですけれども、このあたりで、なかなか日本の取引所の存在感というのがまだまだ出てきていないのかなというようなところでございます。

 そういった点で、こうした法改正を踏まえて、世界的な潮流に合わせて、日本の取引所も海外展開を積極的に進めていくべきだというふうに思っておりますけれども、このあたり、どのような法改正の意義があるのか、武村政務官にお伺いしたいと思います。

武村大臣政務官 委員が御指摘されましたとおり、海外では、例えばシカゴ・マーカンタイル取引所グループによるニューヨーク商業取引所の買収であるとか、インターコンチネンタル取引所によるニューヨーク証券取引所等の買収など、取引所間の合従連衡が見られるところでございます。

 また、我が国の取引所グループにおきましても、海外ビジネス基盤の強化に向けて取り組んでいるところと承知をしております。

 こうした中で、今後、我が国の取引所も外国取引所等に新たに出資を行うことが考えられますが、その際、出資先となる外国取引所等の子会社の業務が取引所グループに課されている現行の業務範囲規制を超えるものであった場合に、当該子会社の業務の再編を行った後でなければ、当該外国取引所等を子会社化することができないことになります。

 そのため、今回の金商法改正では、出資先の外国取引所等の子会社の業務が業務範囲規制を超えるものであっても、原則五年間、取引所グループが保有することを可能としております。

 これによりまして、我が国の取引所グループが好機を捉えて、外国の取引所等に出資を行うことが可能となるものと考えております。

石崎委員 武村政務官、ありがとうございます。

 本日は、十五分という限られた時間でございましたけれども、大臣、そして金融庁の事務方から、地元での説明会に前向きな答弁をいただきましたし、また、武村政務官から、二つのこの重要な法改正の意義につきまして御説明をいただきましたこと、本当に心から御礼を申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 きょうは、どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、金融行政全般、そして、きょうの議題であります金融商品取引法の改正につきまして、限られた時間ではありますけれども、質問させていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 それでは、早速内容に入らせていただきますけれども、まず最初に、金融モニタリング有識者会議報告書が三月十七日に発表されまして、今後の金融検査監督の基本的な方向性についての提言がございました。

 これまでの、いわば金融危機対応に主眼を置いた、すなわち、金融システムの安定とか預金者などの利用者の保護、あるいは市場の公正さとか透明性といったものから、むしろ、これから経済成長を促進していこうというところに重点を移して、なおかつ、その両立を図っていこうということを目指したものでございます。これまでの金融検査監督の方針の大きな転換とも考えられます。

 金融システムの危機の時代から環境は随分変わっておりますので、その必要性は認識をし、こうした見直しは賛成でございます。

 ただ、監督官庁が、金融機関のリスクテークであるとか収益力の向上といった、いわば経営戦略の中枢にかかわるようなことに過度にかかわっていくということは、この金融行政の本旨には反するものではないかというふうに思います。

 以前の、ずっと昔の金融行政というのが、大蔵省が、いわば指導も含めて監督と両方兼ねていたというような面も批判があって、それを受けて、いわゆる仕組みとか組織の改編が行われたわけでございます。

 そうした経緯がある中で、本来であれば、こうした経営戦略というのは金融機関が自主的に考えるべきことでありますけれども、現状を見ると、残念ながら、必ずしも金融機関全体ではそういうふうなことがうまくいっていないという面もあります。そこで、行政が後押しをしなければいけないという面が出てきているというのは事実なんです。

 今申し上げたようなことを踏まえると、今後の金融行政というのは、こうした二つの側面というのをうまく両立をさせていかなければならないということなんだというふうに思います。

 そこで、今後の検査監督の基本的な考え方を伺うとともに、今度は、そうした考え方を具体的にいろいろなガイドラインであるとか指針とかに落としていかなければならないと思うんですけれども、どういうふうに具体化を提起されていくのか、お考えを伺いたいと思います。

越智副大臣 委員から御指摘をいただいたとおり、三月に、金融モニタリング有識者会議の報告書が出ました。

 この提言の中では、御指摘のとおりでございますけれども、金融行政の目的の達成のためには、金融システムの安定だけじゃなくて、経済成長という言葉を使われていましたけれども、経済成長に資する金融仲介機能の発揮、この二つの両立が必要だということが述べられておりまして、その実現のためには、従来のような最低基準の充足状況の確認だけじゃなくて、将来的に最低基準に抵触する蓋然性がどうか、それに応じた対応をしなきゃいけないという新しいアプローチ、また、金融機関が金融サービスのより高い水準を目指した努力を行うように促す対話というような新しいアプローチが必要だということが言われております。

 また、金融機関とこうした対話をする場合のあり方についてなんですけれども、金融機関の抱える経営課題について深度ある議論を実施すること、及び金融機関の多様で主体的な創意工夫が発揮されるよう促すことの両方が重要だというふうに御提言をいただいております。

 こうした対話を実現するためには、金融庁の責務として必要だと考えている意見については金融庁にしっかりお伝えしていくことが重要であるというふうに思いますけれども、一方で、金融機関側からも遠慮なく御意見をいただくという中で、建設的な議論を行っていけるような関係が構築されることが重要だというふうに考えております。

 今後のことでありますけれども、金融モニタリング有識者会議報告書を踏まえまして、金融庁自身としての考え方、また作業の工程を公表した上で、金融界や利用者等との対話を行いながら、具体的な取り組みを進めていきたいというふうに考えているところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 これまでも状況の変化に合わせて金融行政を随時見直しはしてきているんですけれども、いわば、これは明確な形で大きな転換をするということになりますので、ぜひ、その辺はこれから、いろいろな周知であるとか、また金融機関との調整などにも御努力いただきたいというふうに思います。

 次に、中小企業信用保険法等の改正案、今国会に提出をされておりますけれども、それに伴います中小・小規模事業者への資金供給の問題についてお考えを伺いたいと思います。

 今国会に提出をされております中小企業信用保険法等の改正案では、大規模な経済危機とか災害等が起きたときにはセーフティーネット保証の機能を強化する、あるいは特に小規模事業者への支援の拡充を行うという措置がとられておりますけれども、その一方で、既存のセーフティーネット保証については、保証割合を一〇〇%から八〇%に引き下げるということとしております。

 中小企業等の経営改善において、金融機関が前面に立ってより積極的な役割や責任を果たしていくということの制度改正の趣旨には賛成であります。

 ただ、現実を見てみますと、やはり、地域金融機関などでは、企業の経営内容とか将来性というようなことではなくて、信用保証があるかないかというところに、そこだけを見て、そこに過度に依存した融資の判断を行っているという実態もあります。

 今回の改正で、そうした中小企業等への資金の供給に支障が生ずることがないよう、金融庁において、地域の金融機関等に対して、今回の制度改正の目的、それから趣旨の周知を図っていただくと同時に、積極的な融資の拡大、そういったことも働きかけていくべきであるというふうに考えますけれども、金融庁としてのお考えを伺いたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 金融機関におきましては、企業の経営改善や生産性向上等を図るために、担保、保証に過度に依存することなく、企業の事業内容や成長可能性などを評価し、企業価値の向上に資するアドバイス、ファイナンスを行うことが重要であるというふうに考えております。

 平成二十七事務年度に我々は企業アンケートを実施したのでございますけれども、企業からは、依然として、担保、保証がないと融資を受けられないといった御意見を伺っておりまして、我々の取り組みはまだ道半ばではないかなというふうに認識している次第でございます。

 現在、金融機関との対話を進めながら、担保、保証に依存しない融資の取り組み、その実態の把握に努めているところでございます。

 すぐれた取り組みも見られるようになってきております。金融機関の中には、信用保証を利用することで、顧客に対し必要以上の保証料負担を負わせるべきではない、あるいは、メーンバンクとして責任を持ってプロパー融資を進め、顧客企業が不調になったときは経営改善に積極的に関与していくべきといった、経営トップの強い方針のもとに、信用保証の利用を真に必要な場合に限るなどの取り組みを進めつつ、中小企業向け貸し出しを積極的に進めているところも見られるようになってきております。

 今般の信用保証制度の見直しの柱として、信用保証協会と金融機関との適切なリスク分担が掲げられております。すなわち、金融機関におきましては、過度に信用保証に依存せず、事業を評価した融資を行い、適切な管理を実施することによって中小企業の経営改善、生産性向上につながる、そういった仕組みを構築しようとするものでございます。これは、金融庁が進めている施策と整合的であるというふうに考えております。

 金融庁といたしましては、これまでも金融機関に対して、金融機関との意見交換会等の場を通じまして制度見直しの趣旨の周知を図ってきたところでございますけれども、今後ともそうした周知を徹底するとともに、金融機関において信用保証制度の見直しの趣旨に沿った対応が進み、中小企業の実情に応じた適切かつ積極的な金融仲介機能が発揮されるように促してまいりたいというふうに考えております。

上田委員 今答弁いただきましたけれども、実態は、特に地域の金融機関においては、まずは信用保証があるかないかというところで、そこに過度に依存した判断が行われている部分があります。今、こうやっていろいろと周知徹底をやっていただくということでありますので、ぜひこれは、そうした地域金融機関の経営陣だけじゃなくて、やはり、現場の金融の融資担当者にもそうした趣旨がしっかりと伝わるような御努力をお願いしたいというふうに思います。

 次に、金融業の拠点開設サポートデスク、これは東京のビジネス環境向上を目的としたものでありますけれども、本年度から金融庁で開設をしたというふうに承知をしております。これは、日本再興戦略二〇一六にも、東京圏における国際都市機能のさらなる向上とか、また、二〇二〇年までに、都市総合力ランキングにおいて、東京が三位以内に入るというようなKPIを設定している、そういったことの達成に向けての取り組みの一つだというふうに受けとめております。また、これは東京都と一体的な取り組みである点も理解をしております。

 このサポートデスクの開設の意義、また期待される効果についてお伺いしたいというふうに思います。

越智副大臣 東京の国際都市機能のさらなる向上、とても大切なことだというふうに思っています。

 今、御承知のとおり、世界の都市総合力ランキングにおきましては、昨年初めて東京が四位から三位に浮上いたしまして、パリを抜いたということでございますけれども、近年、国際都市間の競争は激化しておりまして、引き続きしっかりと取り組みを進めていく必要があるというふうに考えております。

 金融面においても、東京が、魅力あるビジネスの場として認知されまして、世界じゅうから人材、情報、資金の集まる国際都市として発展していくことは重要でございます。日本の強み、その一つとしましては、巨額の家計金融資産があるというふうに思っております。金融機関における資産運用力の向上などを通じまして、国民の安定的な資産形成や成長資金の供給を促していく必要があると思います。

 先ほど委員から御紹介ございましたけれども、金融業の拠点開設サポートデスクは、今月一日に開設をされたところでございます。それに加えまして、東京都も同日にサポートデスクを、こちらは金融法令以外の手続に関する相談窓口としてつくられたわけでありますけれども、金融庁と東京都と連携して、一体的に取り組んでいくとしているところでございます。

 金融庁としましては、こうした取り組みを通じまして、海外の金融事業者による拠点開設の動きをしっかりと支えてまいりたい、促進してまいりたいと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 それでは最後に、フェア・ディスクロージャー・ルールについて一点お伺いいたします。

 法案でその規定を定めております。これは有効な措置だというふうに考えておりますが、法律で定められるということは、かなり細かくは決めているものの、限界があります。情報提供者の範囲であるとか、情報の確度あるいは情報受領者の範囲、情報開示の方法など、法律の解釈に幅がある、規制の運用が明確にならないと、会社等が投資家との会話を行うことを必要以上に萎縮させてしまうというような懸念もあります。

 わかりやすいガイドライン等を整備し、解釈に疑義が生じないような取り組みが必要と考えますけれども、方針を伺いたいというふうに思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回御提案させていただいております法律案におきましては、フェア・ディスクロージャー・ルールにつきまして、例えば情報提供の範囲を上場会社の役員やIR担当部門の従業員など、通常の業務遂行において投資家等に情報提供を行う役割を負う者に限定するですとか、情報の受領者の範囲についても、証券会社、投資運用業者や機関投資家等の有価証券の売買に関与する蓋然性が高いと想定される者にするなど、相当に内容を特定させていただいている。また、情報開示の方法についても、企業のホームページによる公表を認めるということで、企業の実務負担にも配意しているところと考えております。

 以上に加えまして、ただいま御指摘のありました本ルールに係るガイドラインの策定等を通じて、本ルールの適用の明確化を図っていくということについても検討してまいりたいと考えております。

上田委員 以上で終わります。

御法川委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 重徳和彦です。再び登場いたしました。

 きょうは、日銀の雨宮理事にもお越しいただいておりますので、先に日銀関連の質問をさせていただきたいと思います。

 皆さん御承知のとおり、黒田総裁は就任から四年を経過いたしました。残り任期一年を切りました。そして、物価安定目標、当初、二年で二%を達成するということに置いておりましたけれども、四年を経過した今なお、民間の予想を見ても、一%も到達していないんじゃないか、こういう状況でございます。

 そんな中で、きょうはちょっと財政再建との関係、財政規律との関係でお尋ねをしたいと思います。

 要するに、国債をどんどん日銀が買い入れるわけですから、そして、その目的も、まさに国債の金利を低く抑えるということでありますから、政府からすれば、これは明らかに財政規律を緩めることにつながることを四年間ずっと続けてこられているわけであります。

 本来の目的は、金融緩和を通じて物価上昇を目指すということではありますが、しかしながら、最初は二年でその目標を達成するという状況だったわけですから、もう四年ずっとこういう状況を続けて、そして、財政規律は本来政府の役割だといっても、日銀がやっていることが大分寄与する状況になっているわけですから、この点について、財政規律の観点も含めた国債の購入を心がけるべきではないかと考えるんですが、雨宮理事のお考えを教えてください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 私どもの日本銀行の国債買い入れあるいは量的・質的金融緩和、イールドカーブ・コントロールでございますが、これらはあくまでも二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するという金融政策運営上の目的のために行っているものでございまして、財政ファイナンス、あるいは財政を支援するということを目的で行っているものではないわけでございまして、この点は、量的・質的金融緩和、二〇一三年導入時の公表文においても明確に指摘申し上げているところでございます。

 財政運営につきましては、二〇一三年一月の政府、日本銀行の共同声明で、デフレ脱却に向けた日本銀行の努力を明確に規定すると同時に、政府におかれましても、成長力の強化に向けた構造政策を進めるとともに、機動的な財政運営を行いつつ、中長期的に持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進することというふうにされておりまして、私どもとしては、政府におかれまして、この方針に基づき財政運営を行われているものというふうに承知してございます。

重徳委員 雨宮理事、きょうは黒田総裁じゃなくて、ポスト黒田もにらんで、雨宮理事にあえてお越しいただいたわけですが、今引用されました二〇一三年の共同声明、もう四年前の話なんですよ。しかも、繰り返しになりますが、二年で物価安定目標を達成するという前提といいましょうか、それを想定して、政府は持続可能な財政運営をするべし、こういう共同声明が出されたわけであります。

 もう四年たちました。私、今、本当にお尋ねしたかったのは、日銀が国債を買い入れるに当たって、あくまで二%を達成するためだとか、財政支援ではない、それはそう言い続けられると思いますけれども、しかし、現に、どう考えても、国債の金利が安いということは、財政運営をする側、政府側からすれば、これは非常に好材料なわけであります。

 ですから、今後どういう形で出口を見据えていくか、そのタイミングもあると思いますが、しかし、出口に至るその前、出口戦略のことは次にお聞きしますが、現時点においても、国債の買い入れを、財政規律をゆがめないという観点からも抑制的に、今、八十兆円という金額ベースで国債の買い入れをするという方針ではないわけですから、ですから、金利を見ながらも、金利だけでなく、財政規律に与える影響も勘案しながら国債の買い入れの規模についても考えていくべきではないかと思うんですが、もう一度、再度お聞きしたいと思います。どうでしょうか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今、私どもが行っております金融政策、イールドカーブ・コントロールという、適切なイールドカーブの姿を実現するために国債購入をしておるわけでありますけれども、私どもとしては、まず二%という物価安定の目標を実現することが、物価安定のもとでの持続的成長を実現する早道であり、それが、結局は、国民経済全体、あるいは財政運営の健全化にも資するものというふうに考えておりますので、まずは、中央銀行といたしましては、この二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということを目的に金融政策を運営していきたいというふうに考えてございます。

重徳委員 御答弁はそういうふうになるのかもしれませんが、しかし、そういう今私が申し上げました視点からも、財政規律をやはり無用に緩めるようなことにならないような、そういう国債の買い入れ政策を実施していただきたいということを要求したいと思っております。

 それから、もう一つは出口の話なんですが、これも、基本的には決まり切った御答弁しかないと思ってはおりますが、しかし、今申し上げましたように、なかなか物価安定目標は達成できないし、もう永久に達成できないんじゃないか、こういう見通しもあるわけでありますし、そういう中で、アメリカの金利は上昇局面を迎えておりまして、今、国際的な環境からしても、やはり日本における金利もこれに引きずられるということは当然想定しておかなきゃいけない。そうなると、なおさら今の金融緩和の政策の持続性というものに疑問もついてくるという環境に今追い込まれているんじゃないかと思っております。

 そこで、黒田総裁もあと一年でということでありますから、当然、出口については、出口戦略に入れるかどうかも、正直いつになるかわからないし、そういう段階をどういう形で迎えるのかもわかりません。しかし、ちょっとその先を見据えると、出口戦略と言われる期間というのは相当な長期間にわたるんじゃないかということを思います。

 要するに、一気に国債を放出するようなことをしたら金利に与える影響も甚大になるわけでありますから、この物価目標をいつ達成するのかというのは、その目標時期もどんどん先延ばしになっているわけでありますが、その後の、出口戦略にかかる期間というのは、私は相当長期間になるんじゃないかと思うんですが、その見通しについて御見解をお知らせください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 出口に関する御質問でございますけれども、出口がどういう状況で、どういう格好で私どもが迎えることになるかというのは、やはりその時々の経済、物価、金融情勢に依存するわけでございますので、現段階で出口の時期、あるいは出口に要する、出口を終了するまでの期間について、あらかじめ予断を持ったシナリオ等々を申し上げるのは、やはり時期尚早であり、適当ではないというふうに考えてございます。

 ただし、私どもといたしましては、いずれ出口というときは、やはり経済・物価情勢が改善しているはずでありまして、二%の物価安定目標も達成されているはずでございますので、それに応じて金利は自然な格好で、整合的な格好で上昇していくということになろうと思いますが、日本銀行は各種の政策手段は有しておりまして、そうした局面におきましても市場の安定を確保しながら適切に金融政策を運営していくということは、時間がかかろうとも十分可能であるというふうに考えてございます。

重徳委員 日銀に対する質問は以上としたいと思いますが、そろそろポスト黒田もにらみながらいろいろなことを考えていかなくちゃいけないんじゃないかな、こんなことを思っている次第でございます。

 そして、もう一つ、財政再建との、というか財政運営との絡みなんですけれども、資料の三ページ、四ページをごらんいただきたいと思います。

 日本は、消費税増税について、今後、これも先延ばし先延ばししておりますが、しかし、消費税についての増税のことばかり世の中では言われているわけであります。しかし、所得税についても、少し改めて実情を理解しておく必要があると考えております。

 この資料の三をごらんいただきますと、個人所得課税、国、地方を合わせた税収の対GDP比は、日本は大変低いんですね。一九九〇年ごろは八%ぐらいまでいっていましたけれども、ここのところずっと四%、五%といったところであります。アメリカ、独、英、仏は、八%から一〇%ということであります。

 これは低いんですけれども、この要因をちょっと見ますと、次の資料の四をごらんいただきますと、これはやはり限界税率ブラケット、その構造が、日本は、いわゆる最低税率五%が適用される納税者が六割である、そして、その次の一〇%以下の適用税率を合わせると八割を超えるわけですね。国際比較をいたしますと、〇%から一〇%は、日本は八四%なんですが、アメリカは二七%、イギリス二%、フランス三三%であります。そして、一〇%超から二〇%以下、これが日本は一三%にすぎませんが、アメリカ四二%、イギリス八一%、フランス五〇%であります。

 こういった所得税の累進構造、非常に日本はフラットになっているんですけれども、このことによります財源調達機能をどう考えておられるか、これをお聞きしたいと思います。

大塚副大臣 重徳先生の問題意識はまことにごもっともだと私も思っておりまして、御指摘のとおり、日本の所得税において個々の納税者が適用されているブラケットの税率を見ると、御指摘がありましたように、納税者のうち約八四%の方が五%または一〇%というブラケットに入っているわけでございまして、ほかの主要国と比べても、こうした低い水準の税率が適用されている納税者の割合は非常に大きい状況にあります。

 御参考までに御紹介申し上げますと、日本は今申し上げたように八四%ですけれども、アメリカが二七%、イギリスは二%、フランスは三三%ということで、極めて顕著な差があるという状況になっていると思います。

 こうした状況によって、御指摘のように、租税の最も基本的な機能である公的サービスの財源調達機能というものが低下をしているという面があることは否めない事実だろうというふうに思っております。

 一方、財務省としての公式見解としては、所得税が果たすべき財源調達機能の水準は、公的サービスの規模や、消費税や法人税など他の税目が果たしている財源調達機能とのバランスにもよることを留意する必要があるというふうなこととか、所得税は、累進税率や控除の仕組みを通じて所得再分配機能についても重要な役割を担っており、経済社会の構造変化を踏まえながら、負担構造のあるべき姿について検討していくことが重要であるというような考え方もあるわけでございます。

 基本的に、尋常じゃなくほかの国と差があるということは紛れもなく事実でありまして、なかなか、所得税のこのあたりのブラケットをいじるというのは、多分いろいろ政治的に難しいところもあって、過去の経緯でこうなっているんだろうと思いますけれども、私としても非常に問題意識を持っておりますので、ぜひ、重徳先生にもがんがん突き上げていただければというふうに思っているところでございます。

重徳委員 大塚副大臣、尋常じゃないほど差があるということであります。一目瞭然なんですけれども、おっしゃるとおりで、過去、消費税を増税するときに、税収中立ということで、この所得税率ブラケットをいじって所得税を軽減してきたという経緯もあると思うんです。

 いきなり、低所得層、中所得層を増税するぞというわけにはなかなかいかない、だけれども、日本の所得税の状況が国際的に見てこういう状況にあるんだということは、事実として広く国民に知っていただく、これはやはり、事実は事実なんですから、そういう努力が必要なんじゃないかなと思います。

 そして、財政再建する見通しが、これも国民的にもう相当難しいというふうに思われているわけであります。ですから、消費税の増税論がある中で、大変厳しい状況ではありますけれども、こういった所得税の累進構造はこうで所得税収がこうだということは、やはり、よくよく、なかなか消費税と違って伝わりにくいメッセージでありますけれども、いろいろな工夫をしながら伝えていかなきゃならないんじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。

大塚副大臣 まことにおっしゃるとおりだというふうに思っております。

 個人所得課税の税収、対GDP比というものを見ても、米、英、独、仏が八%から一〇%程度、アメリカ一〇・二%、ドイツ九・六%などとなっているのに対して、日本は五・七%にとどまっている。

 これは、御指摘がありましたように、消費税の導入から引き上げという過程の中で、レベニュー・ニュートラルという考え方に基づいていろいろ議論がされ、調整されてきたところだと思いますけれども、所得税の財源調達機能が低下してきた、これは事実でございますので、ぜひ、やはり国民の皆様にも事実を知っていただいた上でいろいろお考えいただくということがまことに重要だろうというふうに思っております。

 財源調達機能のみならず、所得再分配機能、いろいろな重要な役割を担っていることも踏まえる必要があるわけでございますけれども、経済社会の構造変化、それから財政構造、こういったものを踏まえつつ、負担構造のあるべき姿を検討していく必要がありまして、政府税調において、これまでもさまざまな角度から分析を行い、所得税をめぐる環境について広く一般にもお示しをしながら検討を進めてきたというふうに認識はしておるわけでございますけれども、まだまだ所得税の構造については十分認知されているとは私も思っておりませんので、こうした委員会での御議論を深めていただくこともまた国民の皆様に知っていただくよい機会になろうと思いますので、ぜひ、引き続き重徳先生には御指導いただきたいというふうに思っております。

重徳委員 私も頑張りますので、ぜひ大塚さんも頑張ってください。

 さて、話を戻しますけれども、金商法のフェア・ディスクロージャー・ルールについて話をしていきたいと思っております。

 資料の二をごらんください。これは、金融庁の方から示された、未公表の企業情報の伝達が問題となった近年の事例であります。例えば、二〇一五年十二月に行政処分を受けた例ですけれども、東証の上場会社が、公表前の四半期の業績に関する情報を、公表前に証券会社のアナリストに伝達をしました。そして、当該アナリストがその会社の営業員にその情報を伝えたことによって、公表前の情報をその営業員が顧客に伝えてその株の売買を勧誘した。こういうことであります。

 ちょっとこれは確認なんですけれども、行政処分をこれによって受けたということですが、どの部分について誰がどんな処分を受けたということなんでしょうか。ちょっと、御答弁できたらお願いします。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 ここで示されております事例におきまして、「証券会社」とありますこの証券会社につきまして、情報管理に問題があったということで、証券会社が行政処分を受けておるということでございます。

重徳委員 このことは通告してなかったので、どう答えたらいいかということかもしれませんが。

 要するに、未公表の情報をアナリストに伝えた、だけれども、そのアナリストが営業員に伝えちゃって、営業員が顧客を売買勧誘しちゃったわけですね。だから、これは、そもそも、今回の法案によって、アナリストに伝えたんだったら、ほかの人にも、つまり公表しろよ、こういう法案なわけですよね。だけれども、今の状況では、未公表の情報を受けたアナリストが営業員に伝えちゃったり、あるいは営業員が勧誘しちゃったり、この取り扱いが問題になっているという理解でいいんですよね。そういうことでいいと思います。

 ただ、このときにどんな情報だったのか中身は知りませんけれども、今回の法律、フェア・ディスクロージャー・ルールによって、では、アナリストに伝えました、その内容いかんを問わず、伝えちゃったんだからもうホームページなんかで全部公表せよというのは、場合によっては適切でないこともあるんじゃないかと思うんです。おかしなルールだと言われかねないことも出てくるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 このフェア・ディスクロージャー・ルール導入と申しますのは、こうした事案があったことが導入の契機にはなっておるわけですけれども、そのルールの趣旨を申しますと、証券アナリストが公表直前の決算情報などを入手して、そういう情報に基づく短期的な売買を推奨していくということではなくて、公平に開示された公表情報を活用して企業の中長期的な分析を行い、その分析に基づく推奨を行う、そうしたことを通じて中長期的な視点に立った投資が促進される、そういう期待を持って導入を検討したということでございます。

 また、海外では、企業と証券アナリストの間では、未公表の決算情報等の提供を伴うということなく、企業の中長期的な経営戦略ですとかその進捗状況などについてやりとりが行われるという実務が広く一般化しておりまして、我が国でも、情報管理のしっかりとした上場会社や証券アナリストの間では同様の実務が行われているものと認識をしているところでございます。

 今回の法案を策定するに当たっては、その結果生じる、企業あるいは証券アナリストの方に対して過度の負担にならないように制度的な工夫はできる限りさせていただいているつもりですが、基本的にはそういう考え方に基づくルールで、これは必ずしも我が国特有のものではなくて、かつ一般的に定着している実務だというふうに私どもは考えているところでございます。

重徳委員 つまり、この事例でいうと、アナリストに伝えた情報はどういう場合であっても公表せよということになるんですか。どういう場合がそうじゃないとか、何かそういうルールは、例外的なルールとか、その辺を教えてください。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法律案では、そうしたことに関係しまして、幾つかの取り扱いに関します規定が置かれております。

 まず、上場会社と証券アナリストとのやりとりの中で、通常は適切な情報管理が行われていても、何らかの理由で決算情報等未公表の重要な情報が提供された、されてしまったという場合には、両者の対話を通じて一部の者に情報提供がなされた以上、既に情報提供が可能な状態になっているとして、その情報を広く公表するという方策もあろうかと思いますが、そうではなくて、当該情報が公表できるようになるまでの間に限って証券アナリスト等に守秘義務を持っていただくというような対応の仕方も考えられようかと思います。

 あるいは、そうした守秘義務があることを前提に情報提供が行われたものの、その守秘義務契約が遵守されなかったということを上場会社が知ったような場合には、その情報をその時点において公表することが求められるわけですけれども、そうした場合に、何らかやむを得ない理由により当該重要情報を公表することができない場合その他の、これは内閣府令で定める場合には、当該情報の公表を求めないということができるような規定を置かせていただいているところでございます。

重徳委員 ちょっとわかりにくかったんですけれども。

 この事例で、本来、売買を勧誘しちゃいけないようなそういう未公表の情報を証券会社が注意しなさい、つまり、証券会社はその情報がどういう情報なのか、未公表の情報なのかとか、場合によってはインサイダー取引につながるような情報なのか、こういうことを証券会社が注意しなさいよ、証券会社はその取り扱いに気をつけなさいよ、こういう行政処分だと思うんですね。

 だけれども、今回、基本的に未公表の情報を伝えるというのはない世界をつくるというようなものですよね。誰かに言ったからには全部みんなに伝えなさいというルールですから、証券会社にかかる負担が、そういう意味では軽くなるというか、基本的にどんな情報も未公表情報であるはずがないというような世界になるというふうに理解していいんでしょうか。その場合に、今おっしゃった例外というのは、どういうことを具体的に想定されているか、もう一回御答弁いただきたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、先生御指摘のありましたように、証券会社におきましても、しっかりとした証券会社においては、情報管理として、そのような情報が仮に提供された場合、それは分析などには入れない、あるいはもうアナリストとしての意見の推奨は対象から外すというような取り扱いがされていることが一般かと思いますし、また、企業サイドについても、特定の方にはしゃべらないという取り扱いがされているのが一般であり、それを今回、法令上も担保している。

 したがいまして、証券会社サイド、企業サイド、いずれからもそういう情報はやりとりしないという形で対応がされるというのは、先生の御指摘のとおりでございます。

 ただ、やりとりの中で、何らかの拍子にそういう情報がやりとりをされたときも、これも、そういったものは重要情報になる、そう思うものを証券アナリストが例えば受けた場合には、今のは重要情報ですねということで、企業に公表を求めるか、あるいは、企業がそれを公表しない場合には、みずからそれを推奨銘柄から外すというような対応を、これは一般に、実際にそういうふうに対応がされていると理解をしております。

 それから、お尋ねのありました、やむを得ないケースというのは、内閣府令で定めることにはなりますけれども、例えば、重要情報の公表を行うことによって、何らか、進行中の重要な交渉が決裂するおそれがあるですとか、上場会社の競争上の利益を害する場合など、かえって投資家に不利益を及ぼすことになるような場合、そうした場合に、一定の時点までそういう公表を差し控えてもらうというような取り扱いがされるというようなときに例外に扱うというようなことが考えられようかというふうに考えているところでございます。

重徳委員 わかりました。

 わかりましたが、アメリカやヨーロッパでは、二〇〇二年とか二〇〇三年ぐらいにはもうできたルールなんですよね。それを、十数年たって、日本でもこれから、それも、こういった行政処分の例が出てきたからというような背景もあるというふうに伺っておりますので、恐らくいろいろなケースへの当てはめというのがこれから試される部分もあるんじゃないかなということを思いますので、適切な運用をしていただければというふうに思っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。拍手ありがとうございます。

 私で最後、十五分でございますので、おつき合いのほどよろしくお願い申し上げます。

 私からも、金商法、いわゆる金融商品取引法の改正案について質疑を進めさせていただきたいと思います。

 超高速取引、いわゆるHFT、ハイ・フリークエンシー・トレーディングだと思いますけれども、本当にとてつもない速いスピードで、どれぐらいの速さなのかなと思って調べますと、気配情報を取得してから売買の送信、片道だけで数十マイクロ秒以下で、ということで、マイクロ秒って何だということで、百万分の一秒がマイクロ秒なんで、それでもわけがわからないので、どれぐらいなのかなと想像するのに、まばたき一回が何か十万マイクロ秒ぐらいだそうなので、まばたき一回やる瞬間に百回以上、もう何百回とできるような超高速の取引が今の時代、ほとんど進んでおります。

 そういった意味で、これに対する適正な規制を、必要な部分はかけていかなきゃいけないというのが今回の法案の趣旨の一部だと思います。この高速取引の部分、時間がありませんのでそこに絞ってお伺いしていきたいというふうに思います。残りの部分は、先ほど来の各委員の先生方の質疑にもございましたので、割愛させていただきます。

 早速ですけれども、今回の法改正における、先ほど来お話をさせていただいたこの高速取引、超高速取引、これの各規制をしていきたいというのが今回の法目的、改正の趣旨だと思うんですけれども、この立法事実として、過去、どのような問題があって、そうした部分を政府は認識しているのかどうかも含めて、まず、具体的な事例をわかりやすく挙げていただければと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 高速取引につきましては、欧米のみならず、我が国の証券市場においてもその影響力が増大している状況にありまして、市場の安定性や公正性等の観点からさまざまな懸念が指摘されているところであります。

 また、こうした取引について、海外では、二〇一〇年五月に、フラッシュクラッシュと呼ばれます事例がございます。これは、米国のダウ平均株価が、およそ三十分という短期間で、急落して、その直後に急騰をした、そうした動きに高速取引がかかわっていたとされております。

 また、二〇一二年八月に、高速取引を行っておりました投資会社、ナイト・キャピタル社が、システムトラブルにより、ニューヨーク証券取引所で大規模な誤発注を行い、最終的に約五億ドルの損失が発生し、破綻した事例が存在しております。

 我が国においては、こうしたような事例はこれまでのところ発生はしていないわけですけれども、海外のこうした状況も踏まえ、今回、高速取引を行う者に対して登録制を導入するなどの枠組みの整備をお願いしているところでございます。

丸山委員 局長、御丁寧な答弁、ありがとうございます。

 今、局長がお話しいただいた時間の間で、恐らく、この取引を考えたら、何十万回という多分取引ができるぐらいのスピード感のもので、アメリカでは、現に今お話があったように、フラッシュクラッシュみたいな形で起きている。日本でも起きる可能性もあるし、きっちりこれを規制していくということは、私もそうすべきだというふうに思います。

 ただ、規制の場合に、具体的にきちんと定義を固めていかないと、その業界にいらっしゃる方は不安になりますので、そのあたりを詳しく残りの時間で聞いていきたいんです。今回の法律の対象となる高速取引を行う者、これはどういう方を定義していて、現状どれぐらいの数が存在すると政府は認識しているんでしょうか。お答えいただけますか。

池田政府参考人 今回の法案の対象となります高速取引を行う者としましては、株式等の取引を行うことについての判断をプログラムに従い自動的に行い、かつ、コロケーションエリアからの発注など、当該判断に係る情報の伝達に要する時間を短縮するための方法を用いている者を定めさせていただいております。

 こうしたことに該当します会社は、現状、約七十社程度かと考えておりますが、このうち十社程度は証券会社として既に登録を受けておりまして、今回の法律案により新たに登録義務が義務づけられる会社は約六十社程度ではないかと見込んでおるところでございます。

丸山委員 想像したより少ない数なんですけれども、しかし、その中で、恐らくその市場の取引の中では大部分を占めるような高速取引が行われているのが今の市場の現状だというふうに思います。

 このシステム、登録制も含めて、欧州では導入されることが決まり、今後、導入される予定だということなんですけれども、政府の資料を見ていますと、昨年末の市場ワーキンググループの報告を見ていましたら、各注文において、アルゴリズムの取引、いわゆるこの超高速の取引であるならば、それをきっちり明示をさせるというのをやるべきだというふうに記載があるんですけれども、しかし、今回お出しになった改正案にはこれが盛り込まれていませんけれども、なぜこれを落とされたのかという点をまずお伺いしたい。

 そして、そもそも、例えばそうした無登録者の方が、今回、登録制になりますから、取引をすればそれは違法なんですけれども、しかし、証券会社がもしそういうものを受託したとしても、禁止はされているんですが、罰則規定すらないんですけれども、そういった部分が漏れ落ちているんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

池田政府参考人 まず、第一点目でございますけれども、金融審議会の報告書では、各注文がアルゴリズム取引によるものであることを明示するということが適当だとされております。この点につきましては、今後、取引所において、取引所のルールなどで所要の手当てが行われていくというふうに承知をしておりまして、そちらの方で所要の手当てがされていくものと考えております。

 それから、無登録者の取引を証券会社等が受託することを禁止している規定について罰則規定がないということについてでございますけれども、この法律では、まず、高速取引を行う者自身に対して無登録で高速取引を行ってはいけないという義務を課した上で、その実効性を確保するための、ある意味補完的手段として、無登録者の取引を証券会社等が受託するということを禁止させていただいているものであります。

 こうした趣旨を踏まえ、こうした禁止行為違反の悪質性等を勘案して、違反行為に対する罰則規定は設けないこととしておりますが、この禁止規定の対象は証券会社等の金商業者等になりますので、この規定に違反した場合には当然に行政処分の対象になる、また、こうした行政処分に基づいて行われる命令等に違反した場合には、その時点においては罰則の対象になるということを考えているところでございます。

丸山委員 今のお答えを総合してみますと、証券会社等、金融機関の役割というのは、このチェックにおいても非常に大きくなるなというのがお聞きしたところです。

 きっちりやるのなら、最終的には政府の方が、明示も義務づけるとか、もしくは、後半の方の、万が一、証券会社がという場合には罰則があってしかるべきだと思うんですが、ただ、現行を見ますと、証券会社は、チェック機関である、規制官庁である金融庁にチェックされているということは意識しておりますし、もしこれで罰則がなかろうが、今のお答えだと、もし万が一、無登録の方が取引したのを証券会社が、要はこれをはじかなければ、その取引をやってしまえば、何らかの措置が金融庁からあるということが今の御答弁でわかりましたので、まずは、そこで様子を見ながら運用を進めていくのがこの流れの中なのかなというふうに感じます。しっかりそれはやっていただきたいというふうに思います。大きくうなずいていただいておりますけれども。

 次に、高速取引行為者に対する登録拒否要件があると思いますけれども、そこに最低純資産額というのが要件に含まれています。これはどの程度の金額を想定しているか、現時点で政府のお考えを教えてほしいんです。

 もう一つ重ねて、時間がないので恐縮なんですが、今回の法改正によって登録制になる株式等の高速取引を行う者、先ほど定義をいただきましたけれども、これが、要は、体制整備とリスク管理に係る措置をしっかりしろという形になっていると思うんですけれども、これはどういうのを具体的にやっていけばいいのかというのはきっちり明示しておかないと、やはり業者にとってみればリスクの部分にもなりかねないと思うんですけれども、これは政府として具体的にどのような管理体制を求めているのか、お答えいただけますでしょうか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 高速取引を行う者に対しましては、今回の法律案で、最低資本金要件と、それから御指摘のあった純財産要件を課すこととさせていただいております。

 具体的な金額は政令で定めることとされておりますけれども、現時点では、最低資本金については一千万円、これは、取引システムの運営管理に係る初期投資のために一定の資本が必要であろうという考えに基づくものでございます。

 それから、純資産額については、負の値でないこと、債務超過でないということを要件とすることを検討しておるところでございます。

 次に、取引システムの管理あるいは業務管理体制整備の具体的な内容ということかと思いますが、これについては、今後、内閣府令において定めることになりますが、現時点では、例えば、取引システムにより不正な取引が行われないことを確保すること、高速取引の内容、規模に応じて財務ポジションを適切に管理するための措置を講ずること、それから、社内規則等の整備あるいはそうした社内規則等を遵守するための従業員に対する研修を行うことなどを定めることを検討しているところでございます。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。我が党としてもこれは賛成でございますので、時間もそろそろ最後になりますのでこれ以上はできないので、しっかりお願いしますと申し上げて、終わりたいと思いますが。

 最後、大臣に、参議院の方を終わられて戻ってこられまして、ありがとうございます。本当にえらい時代になったなというふうに正直思います。若い私が言っても、おまえ、何言うとんねんと思われるかもしれませんが、大臣はいつも、戦前生まれでというお話もされていますけれども、昨今、北朝鮮のミサイルも、いざ飛んでくれば、数分あれば飛んでくる時代で、この取引だってまばたき一回の間に何百回という取引をする、そういう時代になってまいりましたが、そういう時代だからこそ、しっかりとして監督官庁としてやらなきゃいけないことがあると思いますので、そういった意味で、この法案についての大臣の所感を最後にお伺いして、終わりたいと思います。

麻生国務大臣 スピードが速くなったおかげで、便利なところもありますけれども、リスクもばんとそれだけ飛躍的にふえることになりますので、我々として、今、この高速取引に関してどんなことになっているかという情報が全く制度としてはありませんので、情報を収集するというシステムすらないわけですから、そこのところをきちんと、枠組みがないというので登録制にさせていただいて、少なくとも、投資家がそれによって、アルゴリズムだ何だかんだ、それがさらに進んで、人間が考えないでAIだけですべて考えてやっていくというような時代が、あなたの生きている間に間違いなく来るでしょうから、そういった時代になったときに、投資家のリスクはそれだけ飛躍的に増大しますから、そのときの、いわゆる負債を抱え込んだりすることになるという点も、あらかじめきちんと考えておく必要があろうと思いますので、この法律だけでうまくいくのかどうか、ちょっと正直、そこのところ、ICTのスピード次第によると思いますので、十分にこれを、慎重にきちっと見ておかないかぬところだと思っております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 金融商品取引法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、土井亨君外四名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び日本維新の会の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。木内孝胤君。

木内(孝)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    金融商品取引法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 本法に基づく制度の運用に当たっては、情報通信技術の進展等の我が国の金融及び資本市場をめぐる環境変化を踏まえ、投資者保護の観点から、実効性のある検査及び監督体制を整備すること。

   その際、優秀な人材の確保と職員の専門性の向上を図るとともに、必要な定員の確保及び機構の整備に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

御法川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

御法川委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

御法川委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

御法川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十分散会


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