衆議院

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第18号 平成29年5月10日(水曜日)

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平成二十九年五月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 宮下 一郎君

   理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君

   理事 伴野  豊君 理事 上田  勇君

      石崎  徹君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    大見  正君

      勝俣 孝明君    神田 憲次君

      木村 弥生君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    坂井  学君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      竹本 直一君    津島  淳君

      中山 展宏君    鳩山 二郎君

      福田 達夫君    堀井  学君

      宗清 皇一君    村井 英樹君

      山田 美樹君    今井 雅人君

      重徳 和彦君    古川 元久君

      古本伸一郎君    前原 誠司君

      鷲尾英一郎君    伊藤  渉君

      大口 善徳君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   財務副大臣        大塚  拓君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  池田 唯一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君

   政府参考人

   (消費者庁次長)     川口 康裕君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           太田  充君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     海堀 安喜君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行理事)     宮野谷 篤君

   参考人

   (日本銀行理事)     吉岡 伸泰君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十日

 辞任         補欠選任

  坂井  学君     國場幸之助君

  福田 達夫君     木村 弥生君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     堀井  学君

  國場幸之助君     鳩山 二郎君

同日

 辞任         補欠選任

  鳩山 二郎君     坂井  学君

  堀井  学君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、理事雨宮正佳君、理事宮野谷篤君、理事吉岡伸泰君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長池田唯一君、監督局長遠藤俊英君、消費者庁次長川口康裕君、財務省大臣官房総括審議官太田充君、国土交通省大臣官房建設流通政策審議官海堀安喜君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 去る平成二十八年十二月十三日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁黒田東彦君。

黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に、通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 日本銀行は、四月末の金融政策決定会合において、二〇一九年度までの経済、物価の見通しを展望レポートとして取りまとめました。これを踏まえ、まず、我が国の経済金融情勢について御説明申し上げます。

 我が国の景気は、緩やかな拡大に転じつつあります。企業部門では、輸出と生産が、グローバルな製造業や貿易面の改善などを背景に、増加基調にあります。そうしたもとで、企業収益は高水準で推移しており、企業の業況感は業種の広がりを伴いつつ改善しています。家計部門では、雇用・所得環境が着実な改善を続けています。失業率は二%台後半まで低下するなど、労働需給の引き締まりが続いているほか、今春の賃金改定交渉において四年連続となるベースアップが多くの企業で実現する見通しにあるなど、賃金も緩やかに増加しています。そうしたもとで、個人消費は底がたく推移しています。

 先行きの我が国経済は、海外経済の成長率が緩やかに高まるもとで、極めて緩和的な金融環境と政府の大型経済対策の効果を背景に、二〇一八年度までの期間を中心に、景気の拡大が続き、潜在成長率を上回る成長を維持すると見られます。二〇一九年度は、設備投資の循環的な減速に加え、消費税率引き上げの影響もあって、成長ペースは鈍化するものの、景気拡大が続くと見込まれます。

 物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、このところゼロ%程度となっています。先行きについては、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、二%に向けて上昇率を高めていくと見ています。二%程度に達する時期は、見通し期間の中盤、すなわち二〇一八年度ころになる可能性が高いと予想しており、その後は、二%程度で安定的に推移していくものと見込んでいます。このように、物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けていますので、引き続き注意深く点検していく必要があると考えています。

 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。

 日本銀行は、昨年九月の金融政策決定会合において、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入しました。この枠組みのもとで、日本銀行は、経済、物価、金融情勢を踏まえ、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促しています。四月末の金融政策決定会合では、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする金融市場調節方針の維持を決定しました。我が国の長短金利の動向を見ますと、こうした金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されています。

 現在、世界経済が好転するもとで、我が国の景気の足取りもよりしっかりとしたものになってきています。しかしながら、二%の物価安定の目標までにはなお距離があり、これをできるだけ早期に実現するためには、現在の金融市場調節方針のもとで、強力な金融緩和を推進していくことが適切であると考えています。

 ありがとうございました。

御法川委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田達夫君。

福田(達)委員 おはようございます。自由民主党の福田でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 本日は日銀総裁をお迎えしてということなんですけれども、総合商社の調査部の人間だった者としますと、日銀総裁に質問するなんというのは本当にびくびくしてしまうんですけれども、実は、私は九三年から商社の調査部というところにおりまして、丸十二年やっておりましたが、この間の十二年は、本当に安定しない十二年でありました。まだまだバブル崩壊というのがはっきりわからない中で数年過ごした後に、就職氷河期を迎え、また、消費税の引き上げ、アジア通貨危機、いろいろなことがありました。本当に安定しない中で経済運営をするというのは、本当に大変だったと思いますし、また、世の中の方々の意識が統一しない中においてやられたということで、これは政府もそうですけれども、日銀の方も大変な御苦労があったと思います。

 また、日銀法の改正の後、政府との間でちょっと意見のそごということもありまして、いろいろなことがございましたけれども、そのころから比べますと、今、政府、日銀の間というものは、非常に安定した協力関係ができる中で、力を合わせて仕事ができているのかなというふうに思っています。

 実は、きょうは、時間は短いんですけれども、役割分担ということをテーマにちょっと御質問したいと思っています。

 と申しますのは、この日本という国は、いろいろな悪いことが言われていますけれども、私は、総じて言いますに、そんなに悪いことじゃないよな、悪い国じゃないよな、ただ、アセットアロケーションが間違っているんじゃないのかなというふうに思っているものですから、それぞれの方が立場で話すのでなくて、自分たちが持っている力というものを十全に出して、役割を担って仕事をすれば、本当は、この国はもっとよくなるんじゃないかなという観点から、役割分担というお話をさせていただきたいと思うんですが、今の安定という意味でいいますと、総裁がこれをどういうふうに考えていらっしゃるのかということであります。

 きのう、この同じ場で、宮崎委員の方から総裁人事の話や何かも出ていましたけれども、やはり安定というものを考えると、そういう議論を今するべきじゃないんだろうなという気もいたしますし、実は総裁人事という話になりますと、私は二〇〇八年に汗をかいた覚えが非常に強くございまして、当時の民主党の方から手厳しい御指導をいただきながら、しかもリーマン・ショック前夜という状況において、そういうこともありました。

 今の政府と日銀との関係について、どのように総裁が思っていらっしゃるか、お聞かせ願えればと思います。

黒田参考人 御案内のとおり、政府、日本銀行は、二〇一三年の一月に共同声明を公表いたしまして、デフレからの早期脱却と物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現に向けて政策連携を強化し、一体となって取り組むということにしております。すなわち、日本銀行は、金融緩和を推進し、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現することを目指す一方で、政府は、成長力の強化に向けた構造改革、構造政策を進めるとともに、機動的な財政運営を行いつつ、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進するということにしております。

 こうした枠組みのもとで、日本銀行は、二〇一三年四月、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現することを目指して、いわゆる量的・質的金融緩和を導入いたしました。その後も、経済・物価情勢の変化を踏まえまして、量的・質的金融緩和の拡大、あるいはマイナス金利の導入、そういった対応を行った上で、昨年九月以降は、冒頭御説明いたしましたように、長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとで強力な金融緩和を推進しているわけでございます。

 共同声明以降の四年間で我が国の経済、物価は大きく好転していると思います。すなわち、実体経済面では、企業収益が既往最高水準で推移しているほか、労働需給の引き締まりを背景に、中小企業を含む多くの企業で四年連続のベースアップが実現する見通しにあるなど、賃金は緩やかに増加しております。また、物価面では、生鮮食品とエネルギー価格を除くベースの消費者物価の前年比は、二〇一三年の秋にプラスに転じた以降、現在まで三年以上にわたってプラス基調で推移しております。

 こうしたことは一九九〇年代末に我が国がデフレに陥って以来初めてのことでありまして、そういった意味では、既に、我が国は物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっていると思っております。

 ただ、まださまざまな課題が残っていることは事実でありますので、この政府、日本銀行の共同声明のもとで、委員御指摘のように、それぞれの役割分担を適切に果たしつつ、連携して大きな成果を上げてまいりたいというふうに思っております。

福田(達)委員 ありがとうございます。

 経済の基本というか主役は民間企業でありますので、政府、日銀というものはそれに対するプラットホームを提供するだけなんですが、ちょっと正直に申し上げまして、実は一年前の麻生大臣への質問でも申し上げたんですが、それにしては、少し、民間企業がしっかり担ってもらってないのかなという気がしなくもないわけであります。

 ちょっとコメントをいただきたいと思ったんですが、時間も時間なので、こちらから申し上げますと、ある意味、これはデフレというケの状態が続いている中において、祭りを持ち込んで一緒にみこしを担いで、それでハレに転換していこう、非常に俗な言い方をしますと、そういうことがアベノミクスの本筋というか本論だと思っております。

 やはり、みんなでみこしを担がなきゃいけないときに、いや、あのみこしは重そうだからいいよというふうに言われちゃったら祭りにならないわけでありまして、そこについては、実は昨年も麻生大臣の方から、経済団体の方もアベノミクス、三本の矢は俺たちの仕事だというふうなことを言っていただいたことに対して期待感を寄せているわけでありますけれども、今、政治と経済で日本の抱えている問題点というものをしっかりと共有できて、それぞれの持っている力をどういうふうに役割として出すのかということについての政治論がちょっと必要なのかなというふうに思っているわけであります。

 ちょっと思い出しますのが、うちの祖父が松下幸之助さんと話をしたときに、松下さんが、政治は何ができるんや、で、わしらは何をすりゃいいんだということをおっしゃっているのを目の当たりにして、ああ、こういうものだなというふうに子供心に思ったことがあるんですが、そういう関係が今のところ少し弱いのかなという実感を私自身はちょっと持っています。

 ただ一方で、今、総裁の方からお話がございました、中小企業においてもベアができているというふうにおっしゃっていますけれども、これは主体的にそれができる環境になってできているのであったらばいいのでありますが、ちょっとそれは違うのかなというのが実感であります。

 その商社の調査部というのは、目の子メトリクスという、非常にエコノミストとしては恥ずかしい手法を駆使していたわけでありますけれども、ただ一方で、マクロでもって見せていただくのと、実際の企業行動だとか人事評価システム、それに基づくサラリーマンの企業行動などの面から、もしくは、サプライチェーンがどういうふうに変わっていくか、実体経済が変化する中においての趨勢というものとマクロの見方というものをクロスして見せていただく点におきましては、実は商社の調査部というのは、予測においては余り悪い成績ではございませんで、評価もされていたわけであります。

 そのときに気がついたのが、この国はいろいろな意味で、時間がないので、きょうは細かく説明できませんけれども、大企業、大都市の世界と、中小企業、地方の世界というのは完全にこれは二分しているなと。もう一国二制度と言ってもいいぐらい、これは別の世界であって、同じコンテクストで語ってしまっては間違えるんじゃないか。私は過去二十年間の政治の失敗の大きなところにその部分があるんじゃないかなというふうに思っているんです。

 今現在、例えばベアの話をされました、もしくは需給ギャップの改善という話もしていただいておりますけれども、例えば労働分野について言いましても、地方、中小企業の世界から見れば、労働指標の改善ではなくて、労働需給の逼迫であるというのが正直な事態だというふうに思っています。

 また、働き手不足で廃業というものも出ている中におきまして、全体としての景況感、マクロの景況感と地域の景況感のずれ、これがどういうところで生じているというふうに考えていらっしゃるか、これは雨宮理事の方から御説明いただければと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 私ども、日本の全体の景気につきましては緩やかな拡大に転じつつあると判断しておりますけれども、今委員御指摘のとおり、やはり経済構造の違いですとか、あるいは地域ごとの特性などから、地域間で改善のペースにばらつきがあるということは御指摘のとおりであろうかというふうに認識してございます。

 ただ一方で、今回の景気回復局面の特徴を、例えば前回のグローバル金融危機前の長期回復局面、これは二〇〇二年から二〇〇八年でございますけれども、その当時と比べますと、地方への広がりが見られるということも実は特徴でございます。

 ちなみに、例えば私どもの短観の業況判断DIというのを地域別に見ますと、二〇一三年の十二月調査以降、全ての地域でプラスとなっておりますし、あるいは先日公表しました、私どもの地域経済報告、いわゆるさくらレポートの地域の景気判断を見ましても、全ての地域で緩やかな回復、ないし緩やかな拡大ということでございますので、かつての景気回復局面と比べると、景気の改善が地域的に広がりを持っているということも事実だろうというふうに認識してございます。

 ただし、御指摘のとおり、まだ地域間、あるいは中小企業、大企業の間で、改善のペースにばらつきがあることも事実でございますので、私どもとしましては、引き続き、本支店の調査機能を生かしつつ、地域経済についてもきめ細かく点検していきたい、こういうふうに考えてございます。

福田(達)委員 ありがとうございます。

 フローベースでいうと、景気が循環的によくなってきているというのは確かだと思います。問題は何かというと、では、しっかりと構造的にそのフローが続けられる、無理なくしっかりと回せるような状況に地方があるかというのが多分一番の問題だというふうに思っています。

 先ほどの労働の問題もそこがポイントでありまして、結局、都市部への人口の流出がとまらないということも、構造的な問題として、そこに住んでいらっしゃる方々がそういう判断をしてしまうという状況がまず前提にあった上で今のフローでの好況が来ている。では、これをしっかり支えられるだけのアセットが地方にあるのかというと、多分そうではないだろう。であれば、これは大分無理をしているので、やがてそれは疲弊が来るのではないかというふうな観点で見なければいけないのかなというふうに思っています。

 そこで非常に重要なのが、地域において経営力も相対的に最も高いはずである金融機関というものの役割というのも実は重要だと思っています。

 結局、景気というのは単純な話で、その地域にどれだけ金が入ってくるか、そしてその金がどれだけ出ていかないか、そしてその地域の中で一年間に何回転するか、それだけで決まる話でありますから、金融機関というものは金を扱う、マネーを扱う主体者としても重要でありますけれども、地域の中で相対的に高い経営技術を持っているという点でも、実は地域の経済に対して、直接的な利益にならないかもしれないけれども、間接的に果たせる役割があるのかなというふうに思っております。

 そういう点でいいますと、先ほどの労働の件につきましては、例えば三重県の百五銀行と三重労働局が今回提携を結んで働き方改革についての対応というものをしっかりとやっていくということもやっていただいていますけれども、金融庁さんの方から、金融行政も、いわゆる九八年から二〇〇六年の不良債権処理時代から大分転換をしてまいりまして、金融機関そのもののガバナンスのみならず、地域に対してのという観点からしっかりと金融行政も転換をしていただいていると思っていますけれども、この転換、もしくは今現在の金融機関に対する政策方針について、簡単に御説明いただきたいと思います。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のように、地域金融機関というのは、その地域における極めて高い経営力を持っている、そういった組織でございます。

 地域金融機関は、自分の収益だけを考えるのではなくて、自分たちの持っている目きき力、これを発揮して、企業が、担保とか保証、これが十分でない先、あるいは信用力というものが必ずしも高くない先に対しても、その企業の企業価値の向上あるいは生産力の向上という観点から、ファイナンスでありますとかコンサルティング、アドバイスを行うというようなことが重要だ、ひいては、それが地域経済の発展に貢献していくことにつながるのではないかなというふうに認識している次第でございます。

 このように、地域金融機関が地域経済の発展に貢献することは、地域金融機関自身の収益の安定にもつながるものでございます。持続可能なビジネスモデルの構築という好循環を生み出すことができるのではないかなというふうに考えている次第でございます。

福田(達)委員 ありがとうございます。まさにそのとおりだと思います。

 マイナス金利というのが地域金融機関に与える影響というのは直接的に大きいと思います。これはなぜかというと、ビジネスモデルがそうではないから、そこでもうけられる形になっていないからでありますけれども、もう一歩先を考えて、マイナス金利が自分たちのお客さんにとってどうかというと、これはチャンスですから、とにかく金がただで使えるという、変な話、世界なものですから、ぜひそこを突き抜けて考えていただけるととてもありがたいなというふうに思うんです。

 ただ、現実的に考えれば、地域金融機関さんが急にそのマインドを転換できるか、ビジネスモデルから転換できるかというと、そういうわけでもないのも事実であります。

 正直、呻吟が聞こえてくるというのは地元に帰っても同じことでありますけれども、転換ができる前に地域の金融機関が弱ってしまうということも多分リスクとして考えられると思いますけれども、総裁としては、その辺についてどういうふうに考えていらっしゃいますでしょうか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、地域金融機関というのは、やはり地域における企業の実情あるいは金融サービスに対するニーズを一番よく知っているわけですので、金融面で重要な役割を担っていると思います。そうしたもとで、地域金融機関には、金融サービスの付加価値を高めて、地域における企業や家計の経済活動を金融面から後押ししていくということが期待されておりますし、これによって地域の経済力が高まれば、実は地域金融機関自身の収益力の強化にもつながるというふうに考えております。

 御指摘の点は、私どももよく承知しておりまして、地域金融機関の収益状況あるいは地域における金融活動などは注意深く点検しておりますけれども、今後とも、ぜひ地域金融機関には、成長分野への貸し出しあるいは創業支援、事業再生、承継支援などを通じて、企業の金融ニーズにさらに対応していくと同時に、やはり個人の資産運用ニーズなどにも対応して、例えば金融商品の販売などを通じて多角的な金融サービスを提供するということをやっていっていただきたい。そういうことによって地域の経済力もつくし、また金融機関の収益力もついていくのではないか。ただ、この点は確かに、英語で言うと、非常にチャレンジングでして、私どももいろいろな形で地域金融機関をサポートしてまいりたいというふうに思っております。

福田(達)委員 時間が来ているので、一点だけ、ちょっと問題提起をさせてください。

 今総裁がおっしゃったとおり、資料でも、「タンス預金が止まらない」という記事も配らせていただいていますし、また高齢者の持っていらっしゃる資産というものも非常に多くストック化しています。これは、ぜひITを使って動かしていただきたいという思いもあります。

 ただ、一点だけ問題提起をさせていただきたいのが、例えば、予想物価上昇率の先行きが二%に収束していく、こういうふうにおっしゃっていらっしゃいますが、その一つ目の理由であります適合的な期待形成、今の日本人が本当にこの適合的な期待形成という、緩やかなインフレに基づく経済成長という前提に基づいている経済学の、その中の合理的行動ができるようになっているのかどうかというところが、実は私自身、非常に強い問題意識を持っています。

 あるメガバンクの役員さんがおっしゃっていましたけれども、既に行員の八割がデフレの中でしか人事評価をされてきていない中において、生きる金の使い方というものを実体験していない方々が、今、部長さんなり支店長さんである。今、判こを握っていらっしゃる方々であるということ。また、九〇年代後半から管理というものが非常に強くなりました。ガバナンスでありますとかアカウンタビリティー、リスクミニマイズをするということが非常に重要視されていた中で育ってきた方々が今権限者になっています。こういう中においての適正的な、合理的な判断というものは、多分リスクミニマイズになります。

 経済は拡大であります。この部分についてどういうふうに考えていくかということは非常に大きな問題なのかなというふうに、この部分を教科書的な理解に基づいてやっているとついてこれないかな。しかも、マインドの転換といっても、マインドというもので転換する、返るべきインフレーションエコノミーのことを知らない方々にその世界を知っていただくのは非常にチャレンジングだと思います。地銀にとってチャレンジングかと思いますけれども、総裁にとっても、多分、非常にチャレンジングだと思いますけれども、期待しておりますので、よろしくお願いします。

 終わります。

御法川委員長 次に、宗清皇一君。

宗清委員 おはようございます。自由民主党の宗清でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきます。

 さて、黒田総裁による量的・質的金融緩和が始まってから今月で五年目に入りました。二〇一三年の政府、日銀の共同声明のもとで、両者が連携して思い切った景気刺激策と構造改革が行われてきたわけでございます。日銀について申し上げれば、物価目標の達成にはまだまだ距離があるのではないかというふうに考えますが、それでも確実に政策の効果が上がっているというふうに考えています。

 しかし、この委員会でもしばしば御議論があったように、絶えず政策の検証というのは必要でございますし、国民の皆様方への説明というのは極めて重要だと思います。そうした観点から、きょうは質問させていただきたいというふうに思っております。

 先日、日銀から新しい展望レポートが出ました。日本経済は拡大に転じつつあると力強い評価があり、輸出の増加がポイントになっているようでございます。

 輸出は確かに増加しているようなんですけれども、私の地元は中小企業が集積している町なんですが、この地元企業のお話を聞いていても、国内の中小企業がプラスの影響が出るためには、数量面での輸出の増加が特に重要だというふうに言われています。

 そこで、確認をさせていただくんですが、輸出企業の業績が改善している原因が、円高によって輸出企業の利益幅が拡大しているのか、そうではなくて、円安によって量も拡大しているのか、また為替の影響は関係なくて、海外市場が好調であるから輸出が伸びているのか、さまざまな要因があると思います。こうした視点を含めて、輸出の動向が我が国経済にどのように波及をしているのか、また輸出増加によって、中小企業を含む関連企業の設備投資や雇用の状況が現在どのようになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。

黒田参考人 日本銀行が量的・質的金融緩和を導入して以降、それまでの過度の円高が是正されたわけですけれども、輸出数量はなかなか増加しない状況というのが続いてまいりました。その背景としては、企業が海外生産シフトを進めた結果、為替レートが輸出数量に影響しにくくなったということがあると考えられます。こうしたもとで、為替円安は、主として輸出企業の利益の拡大を通じて、日本経済にメリットをもたらすことになってきたわけであります。

 もっとも、委員も御指摘のように、輸出は最近かなり好調でありまして、特に昨年半ば以降、世界経済が着実な改善を続けるもとで、特にリーマン・ショック後、長期間にわたって低迷してきました製造業や貿易面の改善が明確になっております。この点は、二週間ほど前にワシントンでありましたIMF関係の会議でも、IMFから明確に指摘されているところであります。こうしたもとで、日本経済についても、輸出数量がかなりはっきりと増加してきております。

 我が国経済の特徴といたしましては、輸出数量が増加し、これに伴って企業の生産活動が活発化することが景気の前向きの循環を強める傾向がございます。実際、輸出数量の増加は、企業収益の増加、改善と相まって、設備投資の増加をもたらしております。また、企業の生産活動の活発化が雇用の増加をもたらしておりまして、雇用・所得環境は着実に改善している。こうしたもとで、個人消費も底がたく推移しているということでありまして、このように、輸出の増加は、企業部門だけでなく、家計部門を含めて、日本経済に幅広いプラスの効果をもたらしていると思います。

 いずれにいたしましても、為替の変動と経済のさまざまなセクター、企業あるいは家計等に及ぼす影響については、きめ細かく注視してまいりたいと思っております。

宗清委員 ありがとうございます。

 言うまでもありませんけれども、経済が力強さを取り戻すために、GDPの六割を占める個人消費の回復が当然不可欠でございますけれども、アベノミクスを批判される方々からは、日銀のこの金融緩和が始まって、これは結果的に円安という方向になっているわけですけれども、この円安と低金利政策が家計にダメージを与えているので個人消費が伸びないという御批判もあるわけでございます。

 当然、円安になれば、それだけ輸入品は高くなりますし、円安は、日本の物やサービスを海外には安く売って、海外の物やサービスは高く買うという理屈になりますので、家計の実質購買力の低下が消費の足を引っ張る、こういう理屈であります。

 もう一つは、長引く低金利政策によって、生命保険の掛金が上がって負担がふえるとか、また家計の利子収入が減少する、個人の消費意欲はこれによってマイナスになるという御批判であります。

 この点では、貯蓄や年金で生活をする高齢者の割合が増加をしているので、低金利政策が続くことで、この先もずっと利子収入が減少するのではないか。また、円安になって、輸入品が、また値段が上がっていくんじゃないかという悪いイメージが定着することで、個人消費にマイナスに働くのではないかという心配の声を聞くこともございます。

 また、景気回復の道筋というのは、雇用者として、企業からの報酬だけではなくて、利子収入の増加や通貨高による実質購買力の改善という道筋があるという意見もございます。

 それこそ円安というのは、内需中心の産業から見たら、そこに大きな負担をかけて輸出企業に補助金を渡しているんじゃないか、こういう意見もあるわけで、非製造業やサービス業の生産性を損ねている一つの要因になっているという意見を伺うこともございます。

 そこで、日銀は、個人消費について、今回の展望レポートの中で、雇用者所得の改善が続くもとで緩やかに増加基調をたどるということにしていますけれども、今の低金利政策が雇用者所得の改善にどのように効果があるのか、それは私が今申し上げたような懸念を上回ると言えるのか、その辺について、しっかり御説明をいただきたいと思います。

 あわせて、節約志向が特に強いと見られる、貯蓄や年金で暮らされている高齢者の消費を喚起するのに何が重要なのか、御意見があれば聞かせてください。

黒田参考人 委員が指摘されましたように、円安は、他の条件を一定としますと、輸入物価の上昇を通じて家計の実質購買力の低下をもたらすことになります。また、家計は、部門全体としては資金余剰主体でありますので、低金利政策はネットで見た利子所得の下押しに作用するということも事実でございます。

 もっとも、この金融緩和の効果を考えるに当たりましては、経済全体に与える影響という観点から考える必要があると思います。

 先ほど来申し上げましたとおり、円安は、輸出企業の利益の増加などを通じまして、設備投資や雇用にもプラスの影響を及ぼしております。また、金利水準の低下は、設備投資や住宅投資などの経済活動を刺激して、国民所得を全体として増加させるものでありますので、これも、間接的にではありますけれども、プラスの影響を及ぼすと思います。

 特に、家計だけに限って見ましても、金融取引に伴う収支だけでなく、経済全体の好転に伴う雇用・所得環境の改善、あるいは資産価格の上昇などの面もあわせて評価すべきであろうと思います。

 特に、雇用・所得環境の改善というのはこの数年大変顕著でありまして、御承知のとおり、失業率は二%台の後半まで低下しておりますし、有効求人倍率は四半世紀ぶりぐらいの高い水準になっております。これが雇用・所得環境を改善して消費を底支えしているというふうに思っております。

 今後とも、こういった労働需給の引き締まりが続き、中小企業を含めて、多くの企業で賃金の上昇が実現していくということで、消費に対してプラスの影響があるというふうに思っております。

 したがいまして、経済が全体として改善し、国民所得の伸びが高まりますと、年金収支の改善あるいは将来不安の軽減などを通じて、そのメリットは、年金生活者も含めまして、国民各層に幅広く及んでいくものというふうに考えております。

 ただ、やはりタイミングとか大きさその他、国民各層への影響というのはある程度幅がありますので、そのあたりの状況は、私どもも、単にマクロ的な効果だけでなく、所得分配その他を含めて、ミクロ的な影響についても、引き続き十分調査してまいりたいというふうに思っております。

宗清委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、デフレ脱却というのは現政権の最優先課題ですので、日銀には引き続き全力で頑張っていただきたいというように思います。

 最後に、ちょっと質問させていただきますが、私が心配しているものの一つは財政運営についてなんですが、現在、日銀が大量に国債を買い入れて長期金利もゼロ%にコントロールをしていること、これは意図的ではない、目的ではないことは十分承知はしているんですが、結果的に国債が発行しやすい環境になっているのではないかということでございます。実際、予算に計上されている国債の利払い費も大きく減少しています。

 財政出動の必要性というのは十分に理解をしているんですけれども、需要の先食いをしているのではないか、この先、もし経済が悪化した場合に次の政策対応の余地がなくなるのではないかという、さまざまな心配がありますので、この点については財務省に見解をお聞きしたいと思います。

 最近では、さらに国債を発行して、教育の無償化というような議論もありますけれども、これは子供たちのためというよりは、むしろ、大人が自分たちで支払うべき現年の教育費を将来にわたって子供たちに支払わせるという理屈になると思います。バランスの問題であるというのは十分承知しているんですが、現世代の受益と負担、将来世代の受益と負担という観点で考えても、将来世代の負担を現世代が勝手に決めるというのは、民主主義の観点から考えても、私は賛成できないわけでございまして、この点についても財務省に見解をお聞きします。

 それと、中長期的な財政の信認が低下すれば、人々の将来不安が強まったり、それに伴って長期金利が上昇して経済の下振れにつながるのではないかというリスクもあると思います。一方で、財政再建の道筋に対して信認が高まれば、将来不安が軽減されて、経済が予想よりも好転する可能性が高まるのではないかと私は考えますが、財政の信認がもたらす経済の影響について、財務省の見解を聞かせてください。

大塚副大臣 三点まとめて御質問をいただいたと思います。

 まさに宗清先生おっしゃるとおりでございまして、金利が低いからといってどんどん財政出動をしていいかというと、私どもはそういうふうには全く思っておりませんで、政府、日銀の共同声明においても、政府は、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進するということとなっておりまして、低金利環境といって、むやみに財政出動を行うべきではないということも確認をされているところでございます。

 委員も御指摘になられていましたけれども、もちろん、そもそも、日銀が行っている国債の買い入れは物価安定目標の達成のために行っているわけであって、国債を発行しやすい環境をつくるためのものではないということは改めて指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、教育国債についてお問い合わせがございました。

 教育、予算を無償化するために確実な償還財源もなくて教育国債を発行するということは、御指摘のように、今以上に借金を子供世代に、しかも子供世代の判断ではないのにもかかわらず負わせる、こういうことになるわけでございます。

 奨学金も、せっかく給付型の奨学金をふやしているにもかかわらず、その世代全体に貸し付け型の奨学金を負わせるようなことにもなるわけでありまして、余り方向性としても、目指している方向と違うのではないかなという気は私もしておりますけれども。

 いずれにしても、教育国債というものの実質は、親世代が租税負担を逃れ、子供世代に借金をツケ回すことにほかならないわけでありまして、名前を変えた赤字国債であるというふうに考えておりまして、適切ではないというふうに考えてございます。

 それから、財政の信認が経済にどういう影響をもたらすかという御質問がございました。

 これは先ほど日銀の黒田総裁もお答えになっておられましたけれども、財政の信認を確保することは、家計や企業の将来に対する不安を払拭することを通じて、個人消費や民間投資を持続的に拡大する効果を発揮し得るものと考えているわけでございます。

 こうした意味でも、早急にデフレを脱却するとともに、財政健全化に向けての歩みを進めていくということが非常に重要だというふうに考えておりますので、引き続き、経済・財政再生計画に沿って、経済再生、財政健全化の取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。

宗清委員 ありがとうございました。

 これで、質問を終わらせていただきます。

御法川委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民進党の前原です。

 まず、黒田総裁に金融政策の現状についてお話をさせていただきたいと思います。

 昨年の九月の二十日と二十一日に行われました政策委員会・金融政策決定会合で、従来の一部マイナス金利つき量的・質的金融緩和から、イールドカーブ・コントロール、オーバーシュート型コミットメントの組み合わせから成る、長短金利操作つき質的・量的緩和に変更をされました。

 私は、何回か予算委員会やこの財金で黒田総裁と議論をさせていただいておりまして、この変更については評価を、僣越ながらさせていただきました。なぜ私が評価をしたかといいますと、八十兆円のネットでの国債の保有拡大というのはいずれ限界が来るだろうということの中で、いわゆる長短金利に目標をシフトして、そして、主従の関係でいうと従の関係で、オーバーシュート型のコミットメントというものは当然ながらある程度は続けなきゃいけないだろうということで、言ってみれば、国債のネットでの拡大というものが表舞台から一歩退いて、そして持続可能性を高めるという意味において評価をしたわけなんですね。

 それで、これがどうなっているかと日銀保有の長期国債の推移というものを調べたところ、これは九月でしたので、昨年の十月からことしの三月まで半年間で三十六兆二千七百七億円というのがネット増の合計でありまして、その前の半年は三十八兆九千七百四十八億円、その前の半年が三十九兆六百六十六億円ということでありまして、若干は減っているんですけれども、私は、期待しているよりはこの減りぐあいというものが少ないのではないか、こう思っているわけでありますが、私の評価と、そしていわゆる国債の保有の拡大について、黒田総裁の御所見を伺いたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘の点、特に前半でお話しされた長短金利操作つき量的・質的金融緩和の新しいフレーム、それからその目的、趣旨等はまさに委員御指摘のとおりでありまして、現在のフレームワークのもとでは、あくまでも金融調節方針の中心はイールドカーブ・コントロールと申しますか長短金利操作でありまして、国債の買い入れ額とかあるいはマネタリーベースの増加額というものはあくまでもめどでありまして、いわば内生的に決まってくるものであって、操作目標はあくまでも長短金利でございます。

 そのもとで、実際の国債買い入れ額というのは、毎月変動しますので何とも言いがたいところはありますけれども、足元でいいますと、多分、年間で六十兆円前後ぐらいになっていると思いますけれども、これはあくまでも従属変数でありますし、経済や金融市場の動向で動くものである、あくまでもターゲットは、操作目標は長短金利であるということを御理解いただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、委員御指摘のような傾向というのは十分続き得る、あり得るというふうに考えております。

前原委員 総裁おっしゃったように、私が日銀から資料でいただいたのが、二〇一七年、ことしの三月まででありますので、この三月が初めて一兆円を割り込んで、月額が七千二百十五億円ということになっているわけでありますが、今総裁がおっしゃったように、多いときもあれば少ないときもあるということで、今までいただいた図表でもこういう大きな振れがある、こういうことでありますので一概に言えないわけでありますが。

 別に皮肉を言うつもりではありませんが、二年で二%の物価上昇というのがもう五年目に入っていて、それが二〇一八年に達成できるかどうかというのがわからない中で、長期戦の様相を示してきたということであれば、持続可能性を高めるという意味においては、今総裁が答弁されたように、あくまでも長短金利操作、イールドカーブ・コントロールというものに重きを置くということが私は大事なことではないかと思うんです。

 技術的なことなのでこの点については教えてもらいたいんですけれども、このイールドカーブ・コントロールというものをさらに強化して、そして、いわゆるオーバーシュート型コミットメント、つまりは量的拡大というものを縮小する、そういった組み合わせというのはできないものなんですか。

黒田参考人 一般論的に申し上げてできると思いますけれども、現時点での私どもの長短金利操作つき量的・質的金融緩和のフレームワークは、委員御指摘のようにこの二つの部分から成っておりまして、一つがいわゆるイールドカーブ・コントロール、短期の政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債の操作目標をゼロ%程度というふうに置きまして、この二点を押さえることによって適切なイールドカーブを形成する。これはもちろん、今後とも、経済、物価、金融動向に合わせて、毎回の金融政策決定会合において議論していくことになると思いますが、二%の物価安定目標との関係ではまだ距離があるわけでございますので、当面、現在のような金融緩和を強力に続けていくということになると思います。

 もう一つのオーバーシュート型コミットメントにおきましては、二%の物価目標を実際に達成してある程度それが続くという、つまり、実際の物価上昇率が二%を超えるまで量的な緩和を続けますということでありますが、そこにおいては、かつてのような、マネタリーベースを年間八十兆円ふやしていくというようなターゲットは設定されておりませんので、あくまでも、量的緩和は、二%の物価安定目標を達成して、その二%を実際の物価上昇率が超えるまで続けます、そういうオーバーシュートを容認するというコミットメントであります。

 したがいまして、こういった両方の組み合わせの中で、経済、物価、金融動向に合わせて、さまざまな調整というかアジャストメントというのが可能ではありますけれども、現時点では、何と申しましても、二%へ向けて、モメンタムは維持されていると思いますけれども、足元、例えば予想物価上昇率が弱目に推移しているとか、相当注意していかなければならない要素もありますので、現時点で具体的にこの組み合わせをどのように変えていくかということは考えているわけではありませんけれども、委員御指摘のように、理論的にはさまざまな組み合わせが今後考えられ得ると思います。

前原委員 持続可能性を高めるためには、イールドカーブ、長短金利操作というものに重きを置くということで、私はやられるべきであろうというふうに思っています。

 次の質問に移らせていただきますが、物価目標が二%に達する時期を二〇一八年ごろとされていますね、今。私はなかなか難しいだろうと思っているわけです。ことしはある程度上がると思います。去年、原油価格が上がりましたので、前年度比ということからすると、ことしは上がるだろう。だけれども、では来年はどうなるのかということになると、その原油上昇効果というものは来年はなくなるわけですから、そういう意味ではなかなか難しいんじゃないか。

 そして、今までは、円安、つまりは、量的・質的金融緩和を行うことによって円安基調にして、輸入物価を上げてということでありましたけれども、特にトランプ政権ができてから、為替操作国というようなこと、ちょっと後でまた質問させていただきますが、そういった厳しい視線というものが向けられていて、なかなか大幅な円安というものに振れることは難しいだろう。ということになると、輸入物価の上昇ということで物価上昇というものに寄与させるということはなかなか難しいなという部分があると思います。

 ただ、世界の基調として、今、経済は拡大基調にあるというのはそのとおりだというふうに思いますので、何とかそれは努力をしていただきたいというふうに思っております。達成できるかどうかということについては今回は聞きません。

 今回、私が伺いたいのは、お配りをしているグラフの一であります。つまりは、仮に日本銀行が、おっしゃっているように、二%の物価上昇というものが達成できたという場合においてどういう問題が出口であるのかということについて幾つかお尋ねをしたいわけであります。

 この一は、財務金融委員会の調査室につくっていただきました、想定を幾つか置いて。まず、名目GDPと名目長期金利、消費者物価上昇率は、内閣府の中長期経済財政に関する試算の経済再生ケースを想定する。そして、日本銀行は二〇一八年に二%とおっしゃっていますけれども、二〇一九年度にかけて出口に直面することを想定して。そして、直近における日銀保有長期国債の平均償還年限七・四四年及び日銀保有長期国債の加重平均利回り、現状は〇・四一五%でありますけれども、二〇一九年までは一定と仮定をする。そして、日銀保有長期国債の加重平均利回りは、名目長期金利と同じ一・五ポイントだけパラレルシフトして、一・九一五に上昇するということを想定している。つまり、一・五%、加重で金利が上がるということを想定する。そして、先ほどの御答弁では足元の長期国債残高の増加は年額約六十兆円ぐらいじゃないかということをおっしゃいましたけれども、一応、八十兆円で仮定をしております。そうすると、この下のグラフのようになるわけですね。

 置く仮定によって数字は変わってきますけれども、これだけの長期国債の保有をされているということは、それだけ、金利が上がれば、あくまでも評価損ですよ、評価損としてはこういった五十兆円とか六十兆円とか、あるいは金利がもっと上がればさらに大きな評価損というのが出ると思うんですけれども、そういう認識ということは共有していただけますか。

黒田参考人 まず、評価損の問題ですけれども、御案内のとおり、また委員も御指摘になったように、日本銀行は国債の評価方法についていわゆる償却原価法を用いておりますので、長期金利が上昇していわゆる評価損が出たといたしましても、決算上の期間損益において評価損失が計上されるということはありません。

 ただ、その上で申し上げますと、ある意味で機械的な計算ですけれども、例えば長期金利が一%上昇する、イールドカーブが一挙に一%上がるというときにどのくらいの評価損が出るかというふうに試算しますと、二十三兆円ぐらい出るということですので、御指摘のように、一・五%ポイント上昇したときの評価損がその一・五倍、あるいはこれで見ますともう少し大きいですけれども、これは前提の違いによると思いますけれども、おおむね、こういう状況を前提にすれば、こういったような試算ができるということはそのとおりだと思います。

 ただ、ポイントは、具体的に、いつどのような形でエグジットするか、そして、その際の市場の長期金利がどのように動いているかということにもよりますので、不確実性は大きいと思いますけれども、こういった試算ができるということはそのとおりであります。

前原委員 それに基づいて、今度は二ページのグラフをごらんいただきたいわけでありますけれども、今のはあくまでも評価損なんですね、実損ではないわけでありますが、出口に差しかかったときの、仮に二%という物価上昇目標というのを達成したときには出口に入るわけでありますけれども、これをどのようなオペレーションをやっていくかということであります。

 これも、まず私の置く前提で話をいたしますと、満期が来た国債を自然に減らしていくということはやるんだろう、しかし、それにプラスして新たなものを売るということをすると実損が出ますね。ですから、多分そういうオペレーションはされないんだろうというふうに思います。

 その上で、ではどういう出口のやり方があるかというと、付利金利というものを上げられるということで、日銀の当座預金の付利金利を上げて、そこでお金を吸収していくというやり方をされるのではないかというふうに思っておりますけれども、その場合、どういった日本銀行のいわゆる経常収支になっていくのかということを、これも一定の条件に基づいて出したものなんですね。

 一部のエコノミストがおっしゃるように、この評価損が全て実損になるということではなくて、日本銀行というのはやはり通貨発行益というのがありますので、この通貨発行益というものからすると、結論から言うと、この財務金融委員会の調査室にやっていただいた、この一定の条件を置いたもの、これは後で、ちょっと時間がないので注を、どういう条件を置いたかということはお読みをいただきたいわけでありますが、そういう条件を置いても、この十年間というシミュレーションの期間の中では黒字なんですね。ただし、言ってみれば、金利が上がるということは国債価格が下落をするということの中で、この我々の試算では二〇二二年から二〇二六年にかけて赤字が出るということになります。

 先ほどの私の前提が黒田総裁の前提とまず合致するかどうかということをお答えいただきたいんです。つまりは、その前提というのは、満期が来たものは自然にそれは減っていく。新たな国債を売るというオペレーションは基本的にはせずに、付利金利を上げるというやり方を行う。そして、そのことによって、だんだんだんだん国債の量が減っていく過程において、このようなカーブの中で、一定期間、もちろん前提の置き方、数字の置き方によっては変わってきますけれども、こういった赤字を生ずる期間というものがあって、その期間内は国庫納付というものが停止をせざるを得ないという期間が生じるという認識を持っておられるかどうか。その点についてお答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 まず、具体的な、出口の局面でどのような政策をとるかというのは、その時点の経済、物価、金融情勢いかんによるわけですので、今の時点で何か具体的なイメージを持ってお話しするということは難しいんですが。

 御指摘のような前提というのは、実はFEDがやっている出口の政策そのものでありまして、FEDはどういうふうにしたかといいますと、御案内のとおり、まず国債のネットでの新規の買い入れをストップいたしまして、残高をフラットにしている。そのもとで付利金利を徐々に上げてきている。そして、今後、これは最近のFOMCの議事録によりますと、バランスシートを一定にするために再投資しているわけですけれども、年末までにその再投資の額を減らして、だんだんとバランスシートが縮小していくようなプロセスを決める可能性がある。まだそこまでいっていませんけれども、まだ残高は一定のまま、再投資をずっとやっている段階であります。

 FRB自体も、国債を売るような可能性とか、そういうことは前は言っておられましたけれども、今やもう売る可能性はなし。したがって、キャピタルロスとかいうことはない。ただ、再投資の額をだんだんだんだん減らしていって、バランスシートを縮小していく過程の中で、付利金利を上げていく。その場合にFEDの収支がどうなるかということは、具体的なシミュレーションは出ておりませんけれども、恐らく黒字が減っていくというか、あるいは赤字になる可能性もあるかもしれません、その辺はわかりません。

 その上で、委員御指摘の試算ですが、今申し上げたようないわばシナリオに沿って試算されたものだと思いますので、このシナリオに即して言えば、そのとおりだと思います。

 ただ、先ほど申し上げたとおり、まさに、FEDのやっておられることは参考にはなりますけれども、二%を達成して出口に向かっていく段階で日本の経済、物価、金融情勢がどうなっているかということは、まだ確実に予測できる段階ではありませんし、何よりも米国の場合とは金融市場の状況も違いますので、具体的な形で申し上げるということはできませんけれども、委員の前提のもとでこういうふうになるということは、こういう試算というのは一つのコンシステントな試算であるというふうに思います。

前原委員 日本銀行は、今、国庫納付金を一部積み立てに回されていますね。積み立てに回しているということは、私のシミュレーションでいうと、赤字を生んだときにその積み立てで言ってみれば穴埋めをする、トータル、ならすという、私は一つの予防的な措置を行っておられるという認識を持っているわけでありますけれども、その認識でよろしいですか。

黒田参考人 そのとおりであります。

前原委員 ですから、どういうやり方をやられるか。私は、何度も申し上げているように、二年で二%ということがもう五年目に入っていて、そして、なおかつ、出口についてはまだ時期尚早であるというのは、ツーレートはあっても、時期尚早ではもうないですよ。

 ですから、言ってみれば、極端な議論があるわけですね。先ほど申し上げたように、評価損が実損だと思っている人たちも結構いるわけで、いや、そうじゃないよ、こういうオペレーションをしていけば、一つのオペレーションをしていけば、ちゃんと財政的にもサステーナブルなものになっていくんだということの説明を、やはりちゃんと私はされるべきだというふうに思うんですね。

 したがって、日本銀行も、一つのシナリオに固執をすべきだ、FRBのシナリオとかに固執すべきだとは申し上げませんが、やはり幾つかのシナリオの中で、こういった出口が考えられる、しかし、御心配なく、一時期にはこういった国庫納付が停止せざるを得ない状況も来ます、今それを前提に、いわゆる通貨発行益を含めた積み立てを行っています、トータルで考えれば、ちゃんと、とんとん、あるいはプラスになります、こういうような説明をされるべきじゃないですか。

 こういうシミュレーションを出していただけませんか。

黒田参考人 確かに、御指摘の点はよく私も理解しております。

 ただ、繰り返しになりますけれども、出口の際に実際に収益がどうなるかというのは、やはり、将来の経済、物価あるいは金利環境に加えまして、どういう手段でやっていくかということにもよりますので、具体的なシミュレーションというのは、一つでなくて幾つも、幾つものシナリオでという場合でも、なかなか、かえって議論を混乱させるおそれはないかなという気もいたしますので、慎重に検討したいとは思いますけれども、御指摘のように、金融政策運営の考え方について、それが日本銀行の財務面に及ぼす影響も含めて、わかりやすく説明していくということは非常に重要ですので、委員の御指摘も踏まえつつ、今後、検討していきたいと思います。

前原委員 委員長、日銀に対して、今前向きな御答弁をいただきましたので、ぜひ、委員会でもそういったシミュレーションを要求するということでお取り計らいをいただきたいと思います。

御法川委員長 後刻理事会で協議いたします。

前原委員 それから、少し話をかえますが、以前私がこの委員会でも、あるいは予算委員会でも資料要求したものを出していただきました。委員長、そして内閣府のお取り組みに感謝を申し上げたいと思います。

 四の資料なんですね、出していただきましたのは。これが、いわゆる経済再生ケースに基づいてどれだけ公債等残高対GDP比が下落をしていくのかということでありますけれども、ちょっと三ページをまずごらんいただきたいんです。

 なぜ私がこういう問題意識を持っているかというと、一番上のグラフで見ていただくと、二〇二三年から、経済再生ケースでいきますと、名目GDP成長率と名目長期金利が逆転するんですね。逆転をすることによって、言ってみれば、一千兆円以上の借金があることがおもしとなって、実は、経済再生ケース、経済さえ成長すれば財政赤字は減るということが果たして本当なのかということの問題意識の中で資料を出していただいたということなんですが。

 例えば、この赤の折れ線グラフを見ていただくと、経済再生ケース、二〇二二年から二〇二三年までは一・九%下がって、二〇二三年から二〇二四年は一・七%下がって、そして、二〇二四年から二〇二五年は一・四%下がって、四ページをごらんいただいて、二〇二五年から二〇二六年は一・二%下がって、そして二〇二六年から二〇二七年は〇・四%下がるということで、だんだんだんだん下がり方が鈍化していっているわけですね。

 これは越智副大臣に伺いたいんですけれども、二〇二七年以降は上昇するんじゃないですか。どう思われますか。

越智副大臣 まず、この試算について、今回出させていただいたわけでございますが、若干御説明をさせていただきたいというふうに思います。

 中長期試算は、安倍内閣におきましては、十年程度を推計期間として、これまで年に二回推計値を出させていただいてまいりました。その中で、前原委員からリクエスト、御指摘をいただいて、内閣府の方で、それに加えて、今出させていただいた四ページ目の資料、二年分ですね、追加的に資料をつくらせていただきました。

 この試算につきましては、従来、十年程度ということでモデルを組んでいたものですから、この試算につきましてはあくまで機械的試算ということでつくらせていただいているわけでございまして、そういう意味では、前提としましてはここに書かれたとおりだということでございます。

 その上で、今までの趨勢と、二六、二七年までの、これ以降どうなるかという御質問でございましたけれども、委員の三ページ目の資料にもございますが、ドーマー定理を基本としました数式がございますけれども、やはりここは、名目成長率と名目長期金利とそれとPB、この三つの状況の組み合わせの中で決まってくるというふうに考えているところであります。

前原委員 質問にお答えいただいていないんですが。

 お答えいただくために、二〇二八年、二〇二九年、あと二年出してもらえませんか。そうすると、プラスに転じていることが、プラスというか増加に転じることが明らかになるはずですから。いかがですか。

越智副大臣 先ほど御説明をいたしましたけれども……(前原委員「簡単でいいです、時間がないですから」と呼ぶ)はい。

 基本的に、この中長期試算のモデルは十年程度を想定してつくられているものなので、十年程度を超えますとかなり不確実性が高くなるものであります。その中で、今回、前原委員のリクエストに基づいて、二年間、別の形で機械的に出させていただいたものでございますので、そういうふうに御理解いただきたいというふうに思います。

前原委員 委員長、これは財政健全化の議論で大変重要なポイントですので、あと二年間、機械的なもので結構ですので、出してもらうように、お取り計らいをいただけませんか。

御法川委員長 理事会で協議いたします。

前原委員 では、時間が来ましたので、最後の質問にさせていただきたいと思いますが、黒田総裁にお聞きしたいんです。

 このように、財政が経済成長だけでは健全化しないということはほぼ明白になってきたわけでありますが、抜本的な歳出歳入改革が必要だと思いますけれども、一部には、シムズ理論というのもありますし、また、日銀の通貨発行益を当てにして、財政赤字をふやしても日銀が国債を購入し続ければいい、こういった意見もあるわけであります。

 私は、これは、今でも実質的な財政ファイナンスだという批判もあるわけでありまして、赤字がやりやすい、赤字を出しやすい環境をつくっているわけではなくて、あくまでも日銀は物価目標というもの、そういう日銀法で定められた目標を達成するものであって、やはり財政健全化というものは、そんな通貨発行益に頼るような、あるいは日銀の引き受けに頼るようなものであってはいけないと思うんですが、その点について、お答えをいただきたいと思います。

黒田参考人 委員の御意見と全く同じでありまして、日本銀行の金融政策というのはあくまでも物価安定を目標としておりますので、二%の物価安定目標が実現され、さらに物価がどんどん上がっていくような状況で国債を買い続けるということはあり得ないわけでして、あくまでも、日本銀行の金融政策は物価安定のために行われる。

 他方で、もとより、金利が低いときに国債費が下がるということは事実であります。それが財政収支を改善するということも事実でありますけれども、私どもの金融政策はあくまでも物価安定のためであり、財政の持続可能性を達成するということは、あくまでも、歳入歳出の見直しを通じて収支を改善していくという政府の役割であると思っております。

前原委員 終わります。

御法川委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民進党の鷲尾でございます。

 ゴールデンウイーク期間中も、それこそ世界情勢も刻々と動いておりまして、きょうは、ゴールデンウイーク前に日銀から発表されました展望レポートなどを踏まえまして、質問させていただきたいと思います。

 まず、展望レポートにもありますけれども、我が国の景気というのは緩やかな拡大に転じつつあるということでございます。もちろん、いろいろな要因があるとは思いますけれども、一つは、やはり二〇一三年に、異次元の金融緩和ということで市場にインパクトを与えた、それがカタリストとなって、これまで超デフレ下で、非常に日本企業自身も苦しむ中でも、収益を確保するための体質改善を持続的に続けられてきたというところが、結果としての為替水準が正常化することに伴いまして、非常に収益を生む環境が改善されたというところもこれあり、景気というか、収益力の上昇に伴いまして、株も高くなるし、それが好循環を生んでいるというところはあろうかというふうに思います。

 そういう中で見ますと、ほかの先進国もありますけれども、日本企業も相当厳しい環境でこの間やってきている。総裁も御存じだと思いますけれども、アメリカの生産者物価指数と比べた数値を見ますと、購買力平価で見ますと、購買力平価よりも、通貨の交換レートがずっと円高基調で来ている。ずっと来ていた中で、最近ようやく、若干それが逆転して円安になってきている。これは日本企業にとってみると非常にプラスなのではないかというふうに思っているわけでございます。

 一つ総裁にお聞きしたいのは、そういった事業環境において、むしろ先進国よりも日本企業の成長は今後も非常に力強いんじゃないか、そういう感じもいたしているところですが、その点についての総裁の見解をお聞きしたいということとあわせまして、結果的に、為替水準、今申し上げたように非常に円高トレンドが続いてきている中で、今申し上げたように、物を交換する為替レートよりも通貨を交換する為替レートがずっと円高基調で来たところ、最近はそれが逆転をしているという状況になってきておりますから、そういう意味における総裁の今後の見通しについてもお聞かせをいただけたらと思います。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

黒田参考人 確かに、日本企業は、これまでの大変な体質改善の努力によって競争力を強化してきたということは、そのとおりであります。

 それが日本経済全体の成長率にどのように影響するかということをマクロ的に申し上げますと、当然ですけれども、設備などの資本ストックが量的にも質的にもよくなる、それから、労働の投入につきましては、労働力人口自体は御案内のとおり毎年百万人近く減っているわけですが、この四年間、女性の就業率が格段に上昇して、アメリカの水準を上回るぐらいまで来ていますので、そういったこと、あるいは労働力の質の改善というようなこともあったと思います。

 そして、最後に言えば、いわゆるトータル・ファクター・プロダクティビティーと申しますか、イノベーションとか新技術、新製品による全般的な成長率の押し上げ、こういった三つの要素から成っていると思いますけれども、いずれについても日本企業の努力というものは非常に大きかったと思いますし、この三つの面で、引き続き積極的な投資あるいはイノベーション、そして人的な投資ということが必要であるし、そういう前向きな取り組みが今後とも行われることを期待しているわけであります。

 そうしたもとで、為替の水準というのは確かに日本企業にかなり影響は与えるわけですけれども、御案内のとおり、輸出のGDP比率というのは日本経済ではそんなに大きくないんですね。実はアメリカ並みでして、ドイツとか韓国とか、そういう国は輸出のGDP比がたしか三〇%を超えているんだと思いますが、日本やアメリカはその半分ぐらいだと思います。したがいまして、為替レートが直接的に輸出を伸ばして、そして成長率を大きく引き上げるという意味での、輸出主導型の成長というものでは日本やアメリカはなくて、むしろドイツや韓国がそういう傾向があるということだと思うんです。

 他方で、過去十年、二十年の間に、日本企業は生産の海外シフトを非常に大きくやっておりまして、自動車やエレクトロニクスなどでは、ほとんどの大企業が売り上げの半分とか三分の二が外国で上がっている、利益もそちらが上がっているということが多いわけですが、そういった企業にとっては、連結決算で決算すると、輸出はふえなくても、海外生産の利益が円建てに換算すると非常に大きくふえるわけですね。

 そういった意味で、為替水準が輸出に大きく影響するということは、今でももちろん影響はしているんですけれども、輸出数量を大きく増加させるという効果はそれほどないかもしれませんが、それから、仮にあったとしても、輸出のGDPに占める割合が韓国やドイツの半分ぐらいですので、輸出主導型で成長を続けるということにはならないと思いますけれども、しかし、為替は非常に企業収益あるいは日本経済全体にいろいろな影響を及ぼしますので、この点は非常によく私どもも注視をしております。

 ただ、為替水準とか為替の動向につきましては、あくまでも我が国では為替政策は財務省の担当ですし、G7やG20でも常に確認されておりますように、主要国の金融政策というのはあくまでも国内目的、つまり物価安定のために行われているということでありますので、私から今後の為替の動向とか望ましい水準とかいうのを申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。

鷲尾委員 きょうは大臣がいないので、もうちょっと言っていただけるかなと思ったんですけれども。

 先進国に比べても、それこそ、先ほど総裁が答弁されたような状況がありますから、先進国よりもある意味日本の企業の体質というのは非常に改善されてきている。そういう意味で、収益力はこれからまたさらに伸びていくんじゃないか、そんなところの見通しについてはいかがでしょうか。ちょっと、先進国と比べてどうかというところが答弁されていないように思いますので。

黒田参考人 我が国の潜在成長率についてはいろいろな計算がありますけれども、たしか、内閣府は〇・八%ぐらい、日銀のスタッフのある計算では〇・七%ぐらいではないかというふうに見ているんですけれども、この中長期的な潜在成長率というのは米国などに比べますとかなり低いわけですね。

 その主たる原因は、一つは、やはり何といっても労働力人口が毎年百万人近く減る、アメリカはふえているわけですね、それが非常に大きいんですけれども、そのほかにも、実は、トータル・ファクター・プロダクティビティーの増加というか、労働生産性という面に限れば労働生産性のレベルとか上昇率がやはりアメリカに劣っている。

 そこは、実は製造業の生産性はアメリカに劣っていないんですけれども、サービス業の、非製造業の生産性の水準がアメリカなどに比べるとまだ六、七割ぐらいのレベルだと思いますし、伸び率も低いということがありますので、輸出輸入競争に大きくさらされている製造業は世界トップレベルの生産性、競争力を持っているわけですけれども、内需中心のサービス業についてはまだまだ生産性の改善の余地がある。それは、大企業、中小企業を問わず、さまざまな技術革新あるいはICTの活用とか、そういった面でもまだ大きな改善の余地があるのではないかというふうに考えております。

鷲尾委員 それでは、次の質問に移りたいと思いますけれども、先ほどの総裁の答弁にもありましたけれども、労働需給が引き締まっておりまして、展望レポートにも、これからさらに引き締まっていくのではないかということであります。

 先ほど、女性の労働参加率がアメリカよりも上回っているでありますとか、この間、随分と女性の労働参加が進んだことによって、労働力の、ハンディが生まれなかったということが日本企業の業績を下支えしているという、そういう話もございましたけれども、この労働参加率の推移について日銀としてどういうふうにお考えになっているのか。

 加えまして、当然、労働市場改革、今、働き方改革という形で政府も取り組まれておりますけれども、これは、なかなか、いろいろな問題をはらんでいると思うんです。その点につきましての総裁の見解もお示しいただきたいというふうに思いますけれども。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、このところ労働需給は大変引き締まっておりまして、労働集約的な業種を中心に人手不足の深刻化が事業展開の制約となり得るのではないかというような指摘もあります。

 ただし、この間、労働需給の逼迫あるいは賃金の緩やかな上昇を背景に、企業はこういう人手不足に対して技術革新等の対応を打っておりまして、これは女性の参加率の上昇にもつながると思いますけれども、女性や高齢者など多様な労働力の活用ですとか勤務形態の見直しといったことに加えまして、省力化投資などの工夫を行っておりまして、現段階においては、経済全体として考えれば、こういう人手不足はどちらかというと、むしろ技術革新ですとかさまざまな工夫を促す方向に動いておりまして、人手不足自体が景気回復の制約になるとは考えておりません。

 ただし、もっとも、長い目で見れば、やはり経済の成長力というのは供給力に規定されるわけでありますので、より高い成長を実現するためには、経済全体としての供給力を引き上げる努力が不可欠でございます。

 この点、政府におかれましては、労働生産性の向上を企図した働き方改革などの改革に取り組んでおられるわけでございまして、これが進められて、企業が生産性向上のための取り組みをさらに進めること、これが日本経済の供給力強化に不可欠、こういうふうに考えております。

鷲尾委員 今、政府の想定よりも労働参加率の推移の見通しというのは随分上振れしてきているというところだと思います。この上振れが本当にどこまで続いていくのか。当然、労働参加率が高まればいいという話じゃなくて、労働環境の整備をどういうふうにしていくのか。

 それは、働き方改革ということで政府がおやりになっていることのさまざまな問題点によっては、必ずしもその上振れシナリオがずっと続いていくというわけではなくて、その部分がいつ来るのかというのは、先ほど答弁にもあったとおり、中長期的にはそれが制約になるんだという話ですけれども、それが近年起こる可能性だって当然あるということでありますので、そこは政府もしっかりとやっていただけるんじゃないかというふうに思いますけれども、日本企業にとっての一つのリスクではあろうかというふうに思っております。

 続いての質問ですけれども、展望レポートにもあったんですけれども、物価の中心的な見通しについては、二〇一八年度ころに二%程度に達するということでありました。しかし、その後に、安定的に推移する、こう記されてあるわけですけれども、この安定的に推移するとされているその根拠といいましょうか、先ほど総裁の答弁にもありましたけれども、予想物価上昇率が弱含みである、しかし一方で、日銀がその二%の物価安定目標について極めて強くコミットされている、これは大事なことだと思います。その目標についてぶれてしまうと、かなり大変なことになるだろうと思います。

 強くコミットしているんだけれども、実際は、先ほど前原委員からもありましたけれども、物価安定目標がどんどんどんどん後ろ倒しになっていますし、その中で、二%に達したその後、安定的に推移していくんだ、こう記されている根拠についてお聞かせをいただけませんか。

黒田参考人 御案内のとおり、物価上昇率は短期的にはさまざまな要因の影響を受けるわけですけれども、やや長い目で見た物価の基調的な動き、これは中長期的な予想物価上昇率とマクロ的な需給ギャップということによって決まるというふうに考えられます。

 そうした意味で、先行きの消費者物価上昇率について、展望レポートでは、マクロ的な需給ギャップの改善、これは潜在成長率を上回る成長が続くということによって需給ギャップが改善し続ける。それから、中長期的な予想物価上昇率も高まっていく。

 これは、我が国においては、もちろん日本銀行の強いコミットメントによってフォワードルッキングに予想物価上昇率が上がっていくという要素もありますけれども、昨年の総括的検証でも明らかになったように、我が国では、九八年から二〇一三年まで続いたデフレの中で、物価上昇期待というものはあくまでも足元の物価上昇率に引きずられるという適合的な期待形成になっておりますので、実際の物価上昇率も上がっていく中で、中長期的な物価上昇率も次第に上がっていくだろうということであります。

 そこで、委員の御質問の件ですけれども、今後、そういったテンポで進んでいって、見通し期間の中盤である二〇一八年度ころに二%程度に達すると見ているんですが、その後、安定的に推移するというためには、もちろん適切な需給ギャップ管理、つまり適切な金融政策というのは重要ですけれども、もう一つ非常に重要なのは、やはり中期的なあるいは中長期的な予想物価上昇率が、アメリカや欧州の一部の国のように二%の物価安定目標にアンカーされているということが重要なわけですね。

 二%程度の物価上昇をある程度続けることによって物価上昇期待自体も二%に次第にアンカーされていく、そうした中でまさに安定的に推移するということですので、これは私どもの見通しでありますけれども、委員が御指摘になったようにかなりチャレンジングなことでありまして、ただ、今のところ一番チャレンジングなのはまずその二%を達成するということでありまして、その上で二%程度で安定させるということかと思います。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

鷲尾委員 ちょっと歯切れが、ちょっとどうかなと思いましたけれども、根拠という部分では切れ味が余りよくなかったなと思います。つまり、チャレンジングであることを言い続けるということによるフォワードルッキングな期待形成なのかなということを今私は強く感じたところでございます。

 ただ、この目標を下げてしまいますと大混乱が待っているだろうなと思います。ただ、これを強くコミットし続けて、その後、先ほど前原委員からも指摘がありましたとおり、今度は出口戦略をどうするのかという問題もあろうかと思いますので、なかなか、マーケットが混乱しないように運営をしていただきたいなというふうに思っているところでございますけれども。

 次の質問ですけれども、これも物価展望レポートにあるんですが、既往の為替相場の円安方向への動きについてでありまして、この既往の為替相場の円安方向への動きというのが、物価について、特に輸入物価についてですね、価格上昇圧力を高める方向に作用するんだ、こんな話でございます。

 ただ一方で、先ほど来の議論もありますけれども、トランプさんの発言が必ずしも米国の金融政策のいわゆる出口戦略と整合していないところもあったりしますものですから、これが、この二〇一七年度を中心に価格上昇圧力を高めるという方向に作用する、こう言い切っておられるところについてどうなのかなと思っているところであります。

 この点、総裁から一言いただけたらと思います。

黒田参考人 為替相場の国内物価への影響というのは一定のタイムラグを伴いますので、これまでの調査研究によりますと、為替相場の変動が物価上昇に与える影響というのは、一年程度というか、半年から一年、あるいは場合によってはもうちょっと長く影響が続くということでありまして、まさに、既往の円安というか、円高の是正というものが二〇一七年度においても物価を引き上げる要素として働く。為替の物価への影響というのはかなりタイムラグがございます。

 他方で、石油価格の変動などは国内の石油価格の変動に相当ダイレクトにききまして、その影響も、消費者物価への影響もある程度早いんですけれども、為替の場合はずっと経済全体に広がっていて、いわばさまざまな価格弾力性のある違う財貨・サービスに影響していきますので、やはりタイムラグがあるということであります。

 ですから、既往の円安が二〇一七年度の物価上昇率の引き上げにきくというのはそのまさにタイムラグでありまして、今後さらに円安になるとか円高になるとかいうことを申し上げているわけではありません。

鷲尾委員 その既往の動き、タイムラグがあるということと、それこそトランプ大統領の発言あるいはFRBの出口戦略との関連についてはいかがですか。

黒田参考人 トランプ大統領の発言について私がコメントするのは差し控えますけれども、トランプ政権の経済政策が積極的なものであるという期待から、昨年末以来、長期金利は既に上昇しているわけであります。

 もとより、理論的には、各国の金利水準とその方向性が為替相場に影響するということは事実であり、かなり大きな要因であることは事実なんですけれども、現実の為替相場は、金利だけではなく、その他のさまざまな要因によって変動するわけでございます。

 したがいまして、先行きの為替相場について具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、米国において経済が順調に成長しており、IMFにしてもFEDにしても来年の経済見通しはたしか二%台の半ばというふうに見ていると思いますので、経済成長はさらにことしよりも加速していくと。そうした中で、先ほど申し上げたような積極的な経済政策運営に対する期待もあって、金利も上昇し、若干ドルも強くなっているということでありまして、今後の為替の動きというのは、先ほど申し上げたように、金利だけではなくてさまざまなことに影響されると思いますが、長期金利については、市場のエコノミストも、ちなみにIMFなんかも、米国においては上昇トレンドをたどるというふうに見ているようであります。

鷲尾委員 ちょっと時間がなくなりましたので、最後の質問になってしまうんです。

 きょう越智副大臣にも質問しようかと思っていたんですけれども、ちょっとまた別の機会に、本当に申しわけなく思っております。ただ、同じように質問させていただきますので、官僚の皆さんも答弁の準備は不要ということで御容赦いただきたいというふうに思います。

 最後、総裁に質問したいと思います。

 海外経済のリスク要因を、展望レポートの「経済・物価の上振れ要因・下振れ要因」というところで、海外経済の動向は不確実だということである。これは私も、それは日本よりも不確実だろうと。勝手知ったる日本だから、私が直観的にそう理解しているだけなのかもしれませんけれども。少なくとも、「市場や経済主体がそうしたリスクをある程度意識していることを踏まえると、展開によっては上振れにつながる可能性もある。」というんですよね。

 これはどういうシナリオなんでしょうか。「上振れにつながる」というのは、ちょっとにわかには理解しがたいところなものですから、そこを少し具体的に教えていただけるとありがたいです。

黒田参考人 これは、実は、二週間前にワシントンであった一連の会議でもさまざまな意見が出た中で、同様な、つまり、上振れる可能性もあるということが議論になっておりました。

 その背景としては、典型的には昨年のブレグジットの国民投票の後でありまして、国民投票の直後は、英国の市場にしてもポンドにしても大幅に下落するとか、そういうようなことがありましたが、予想に比べて影響は軽微ではないかという見方が広がって、御承知のように、ブレグジット投票の前のIMFの見通しよりも今のIMFの英国経済についての見通しの方が上方修正されているんですね。

 ですから、市場は確かにいろいろなリスクを、地政学的リスクとか政治リスクとか、さまざまなリスクを勘定に入れて市場の価格は成立しているわけですけれども、実際にそういう事件が起こった場合に、その結果が必ずしも、予想してプライシングしていたのと比べると軽微だったということになると、むしろ市場は回復し、経済の見通しも上昇するということはあり得るわけですので、リスクがある以上、必ず下方リスクだけであるというわけではなくて、リスクがあっても、それを市場や経済主体がどのように評価しているかということによっては、かえってプラスの方に展開するという可能性もあるということでございます。

鷲尾委員 それでは、時間が来ましたので、質問を終わります。どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 総裁にお伺いをいたします。

 冒頭、総裁は、物価の見通しについて、二%程度に達する時期は見通し期間の中盤になる可能性が高い、こう述べられました。しかし、政策委員の大勢見通しを見ますと、消費者物価指数、除く生鮮食品の中央値は、消費税率引き上げの影響を除くケースで、二〇一八年度でプラス一・七%、二〇一九年度でプラス一・九%でしかありません。これで、どうして二〇一八年度ごろということになるのか、お伺いしたいと思います。

黒田参考人 この政策委員の見通しでございますけれども、これはさまざまな前提、石油価格をどのように委員が見ておられるか、あるいは為替をどのように見ておられるか等々、いろいろな前提があると思いますけれども、その上で見通しを出されて、その中央値を特に示しているわけですが、御指摘のように、二〇一八年度の中央値はプラス一・七%ということですが、これはあくまでも年度の平均でございますので、二〇一八年度の毎月がプラス一・七になるというわけではなくて、むしろ、普通に言いますと、年度の当初から年度の末にかけて、だんだん物価上昇率は上がっていくということになろうと思います。

 ただ、これはあくまでも一般論でありまして、委員方はそれぞれが年度内の四半期ごとの動きとか何かについて一定の考えはおありだと思いますけれども、見通し自体はあくまでも年度の平均値を皆さん示しておられるということでございます。

宮本(岳)委員 改めて確認しますけれども、この見通し、先ほどの二%の見通しというのは、黒田総裁就任後の金融政策が掲げる二%の物価安定目標の達成時期、これと同じだ、こう理解してよろしいですか。

黒田参考人 この展望レポート、それから展望レポートに附属しております政策委員の見通し及びその中央値等は、全て政策委員会で議論して合意されたものであります。したがいまして、当然、二%程度に達する時期を二〇一八年度ころとしている展望レポートの記述と、それに附属している政策委員の見通しとは整合的になっているわけで、あくまでも政策委員会で決めたものでございます。

宮本(岳)委員 現在の金融政策である長短金利操作つき量的・質的金融緩和、これは目標達成時期を、二〇一八年度ごろを経て終了もしくは出口政策に転換する、こう考えてよろしいですね。

黒田参考人 ここは出口政策等との関連もございますが、あくまでも二%の物価安定の目標を目指して、これを安定的に持続するために必要な時点まで、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を継続するということにしております。

 いずれにいたしましても、金融政策、金融調節方針につきましては、毎回の金融政策決定会合において議論して決めていくということになりまして、何か機械的に、二%になったら一挙に政策が変わるというものではないということであります。これは、米国やその他の中央銀行の金融政策の動向をごらんになっていただいても全く同じことであると思います。

宮本(岳)委員 機械的にそこで変わるものではないということでありましたけれども、そうしますと、長短金利操作つき量的・質的金融緩和の終了時期については、政策委員の二〇一九年度の見通しを見ますとプラス〇・九からプラス二・〇、こうなっておりますから、二〇一九年度中には見通せない、こういうことでございましょうか。

黒田参考人 二〇一九年度の政策委員の見通しの中央値はプラス一・九%となっており、見通しの幅についてはプラス〇・九からプラス二・〇というふうになっております。さらにリスク等も、グラフで示されておりますように、委員の見解には一定の幅がございますけれども、先ほど申し上げたように、中央値は、二〇一九年度はプラス一・九ということでありますので、これはあくまでも二〇一九年度の平均ですので、当然、そうした中には二%に達している時期もあるということだと思います。

宮本(岳)委員 達している時期もあるということでありましょうが、安定的に二%が確保された段階でということでいいますと、なかなかその時期が見通せないということになろうかと思うんですね。

 二年をめどに始めた物価安定目標でありますけれども、既に四年が経過をいたしました。さらに二年を費やしても確たることは言えないという状況です。ずるずるとこういう金融政策を継続するのではなくて、ここはしっかり見直すべきだというふうに私は思います。

 一方で、金融政策の副作用のリスクが高まっております。

 長期国債の保有者内訳について聞くんですけれども、黒田総裁就任の二〇一三年三月では、日銀が保有する長期国債等は九十兆円で、発行済み長期国債等の一一・七%を占める程度でありました。直近の数字を教えていただきたい。三月末の日銀の長期国債等の保有額と保有率は幾らになりますか。

黒田参考人 二〇一七年三月末時点の日本銀行の長期国債保有額は三百六十八兆円でありまして、これは長期国債の発行残高全体の四一%であります。

宮本(岳)委員 黒田総裁の四年間で、四〇%にまでこの比率を高めることになりました。これは過去にない、未知の世界を今走り続けている状態だと思います。

 多くの研究者やエコノミストがさまざまな理由から長期国債等の買い入れの限界ということを指摘しておりますけれども、黒田総裁は現時点でも買い入れには限界がないとの考えなのか、それともいずれ限界が訪れるという考えなのか、どちらでございますか。

黒田参考人 これまでのところ、日本銀行の国債買い入れは円滑に行われておりまして、先行きについても、買い入れに支障を来すような事情があるとは考えておりません。

 なお、日本銀行は昨年九月、それまでの政策の枠組みを強化する形で、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入いたしました。具体的には、金融市場調節方針において短期政策金利と十年物国債金利の操作目標を示した上で、これを実現するように国債買い入れを行うこととしております。

 新たな枠組みでは、国債買い入れ額などを操作目標としていた従来の枠組みに比べて、経済、物価、金融情勢に応じたより柔軟な対応が可能となり、政策の持続性も高まっているというふうに考えております。

宮本(岳)委員 仮に、二〇一九年度末、約三年後まで現行の金融緩和策を続けていくということになれば、日本銀行の長期国債等の保有率をさらに二〇%程度高めることになり、六〇%を超えることになります。その程度は問題がない、日本銀行は現行の金融緩和策をその程度まで十分継続できる、そういう見通しでありますか。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、日本銀行の国債保有額は大きく増加しておりますが、これは二%の物価安定の目標のために大規模な金融緩和を行っている結果であるというふうに認識しております。

 日本銀行としては、長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとで、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するため、強力な金融緩和を推進していく所存でございます。国債保有額自体が問題であるとは考えておりません。

宮本(岳)委員 議論が堂々めぐりになるんですけれども、到底、理論的根拠があるとは思えません。一刻も早く出口戦略を検討すべきだということを申し上げておきたいと思います。

 さて次に、私は日銀の金融政策とアパート融資の膨張の問題について取り上げたいと思います。

 四月三十日の時事通信の配信によりますと、日銀は、賃貸住宅の建設資金を個人に貸し出すアパートローンの膨張について警戒を強めているといたしまして、一七年度の銀行の立入検査、いわゆる考査でアパートローンの審査体制を重点的に点検する方針だということでございました。

 二〇一七年度の考査の実施方針等についてではどのような方針を掲げたのか。また、どのような認識を背景にして重点的な点検方針をとることにしたのか。お答えいただけますか。

黒田参考人 最近の銀行貸し出しの動向を見ますと、幅広い業種で増加しておりますが、このところ、地域金融機関による貸し家業向け貸し出しの伸びが高まっております。

 こうした動きについては、郊外から市街地への人口移動など、貸し家需要の増加、富裕層による資産運用や節税ニーズといった供給側の動機を受けて、貸し家の着工が増加していることが背景にあると考えられます。

 現時点では、郊外の物件など、一部に空室率の上昇などが見られるものの、マクロ的に見た貸し家の需給バランスや金融機関のリスク管理などの点で、大きな問題が生じているとは見ておりません。

 もっとも、貸し家業向け貸し出しは長期にわたるものが多いために、実行段階における物件ごとの収支見通しの検証だけでなく、実行後における物件の状況変化の早期把握などの面で適切なリスク管理を行うことが重要であります。

 こうした認識のもとで、二〇一七年度の考査の実施方針においては、貸し家業向け貸し出しなど、金融機関が与信姿勢を積極化させている分野について、今申し上げた観点から、金融機関の審査、管理が適切に行われているかどうかを点検することとしているわけでございます。

宮本(岳)委員 ちなみに、アパートローンの実態はどうなっているか。不動産業向け融資、国内銀行の新規融資額、年ベースの直近三年間の額と前年比を、これは理事の方で結構ですので、述べていただけますか。

宮野谷参考人 お答え申し上げます。

 国内銀行の不動産業向け貸し出しを見ますと、直近三年間で申し上げますと、二〇一四年における設備資金新規貸出額は十・一兆円の増加、前年比で申し上げますと、プラス五・四%の増加となっております。続く二〇一五年につきましては、新規貸出額は十・七兆円の増加、前年比はプラス六・〇%の増加となっております。二〇一六年につきましては、新規貸出額は十二・三兆円、前年比ではプラス一五・二%の増加となってございます。

宮本(岳)委員 二〇一四年、二〇一五年と五%、六%だったものが、二〇一六年にはプラス一五・二%、これは過去最高の高い伸びであります。

 地域経済報告、さくらレポート二〇一七年一月には、貸し家の着工数の増加の原因について各地支店からの報告が掲載されております。金沢及び仙台からの報告はどのような報告でございましたか。これも理事の方で結構です。

宮野谷参考人 お答え申し上げます。

 さくらレポートにおきまして、金沢支店からは、「県内の貸家の着工戸数は、二〇一五年一月の相続税制度改正を契機とした節税ニーズの高まりと、金融機関の貸出金利低下を背景とした賃貸物件の投資利回りの改善などから、増加している。」と報告されております。

 次に、仙台支店でございますが、仙台支店からは、「低金利環境、安定的な家賃収入、相続税対策などを背景に、個人・企業による貸家経営が増加している。特に近年では、株価や為替相場の変動が激しい中で安定的な家賃収入が得られる点が投資家から好感されている。」と報告されております。

宮本(岳)委員 貸し家着工件数増加の主な要因は、相続税節税ニーズと金融緩和の効果、影響ということであります。

 昨年の一月にマイナス金利政策を導入した際に、黒田総裁は、住宅ローン金利の低下による住宅着工数の増加への波及効果というものを私に対しても述べておられました。しかし、持ち家や分譲の戸数は伸びずに、この貸し家系のみが増加したというのが実態でございます。

 総裁、これは想定どおりと言えるんですか。

黒田参考人 マイナス金利政策というものは、あくまでもイールドカーブの起点を引き下げて、大幅な長期国債買い入れとあわせて、金利全般に強い下押し圧力を加えることを狙ったものでございます。これによって、極めて緩和的な金融環境を整え、企業や家計の経済活動をサポートすることを主たる波及経路として想定しております。

 こうした強力な金融緩和政策のもとで、貸出金利が短期、中期、長期と大幅に下落し、その結果、不動産関連も含めて資金需要全体が高まったということは、もちろん日本銀行として想定していたところでございます。

宮本(岳)委員 金融システムレポートを見ますと、「特に、不動産業向け貸出については、世帯数などの需要要因から説明できる水準を大幅に上回って貸出を増やす銀行もみられる。一部地域で賃貸住宅の空室率が高まっていることも踏まえると、貸家市場の需給動向のモニタリングを含め、これまで以上に入口審査や中間管理を綿密に実施することが重要である。」と指摘をしております。

 これは、既に一部の地域では供給過剰が起こっているということではありませんか。

黒田参考人 本年四月に公表いたしました金融システムレポートでは、一部地域で不動産業向け貸し出しが世帯数や景気といった経済の実勢を上回って増加している可能性を示しております。あわせて、郊外の物件など一部に空室率の上昇が見られることも指摘しております。

 先ほど申し上げたとおり、現時点では、マクロ的に見た貸し家の需給バランスや金融機関のリスク管理などの点で大きな問題が生じているとは見ておりませんが、郊外の古い物件などを中心に需給が緩みつつある可能性を指摘する声も聞かれております。

 日本銀行としては、今後とも、貸し家市場全体の需給動向を注視するとともに、何よりも、金融機関に対して適切なリスク管理を促してまいりたいと思います。

宮本(岳)委員 これは今の金融システムレポート、「近年は、不動産業向け貸出残高の実績が、経済の実勢で説明できる水準から上方に乖離している。」こういう指摘もあるわけなんですね。

 そこで、マイナス金利政策などによりアパートローンが膨張する中で、サブリース業界は活況を呈しております。業界第一位の大東建託は、二〇一七年三月期の決算で、九期連続の増収増益で、売上高は一兆四千九百七十一億円、営業利益は千二百億円と、どちらも過去最高を更新いたしました。第二位の積水ハウスグループは、売上高は初の二兆円を達成し、営業利益は四期連続で過去最高を更新しております。第三位のレオパレス21は、二〇一二年三月期より五期連続の黒字を達成し、一七年三月期も黒字を見込んでおり、近年、売上高も営業利益も伸ばしております。

 黒田総裁はこのようなサブリース業界の好調な業績について御存じでございましたか。

黒田参考人 そうした報告は受けております。

宮本(岳)委員 御存じだということでありますけれども。

 私は、二〇一三年四月十五日の予算委員会第一分科会で、レオパレス21のサブリース問題を取り上げました。当時の森まさこ消費者庁担当大臣は、救済しなければならない問題であると私に答弁をいたしました。

 消費者庁に来ていただいておりますが、消費者庁はその後どのような対策を講じられましたか。

川口政府参考人 お答え申し上げます。

 いわば賃貸不動産所有者でございます、サブリースにおける貸し主におきましても、事業者である賃貸住宅管理業者、サブリース業者との間で情報量、交渉力の格差に基づくと思われるトラブルが時に発生しており、当該貸し主が同種の行為を反復継続的に行っていると見られない場合につきましては、消費者安全法や消費者契約法などにおいて消費者と見ることができる場合があり得ると考えております。

 このため、全国の消費生活センター等におきましては、自己が所有する土地にアパートを建てサブリース契約をするようにといった勧誘を受けた場合の対応など、サブリースの貸し主の立場の相談にも丁寧に対応しているところでございます。

 こうした相談における助言にも役立つよう、国民生活センターでは平成二十六年八月に、機関誌「国民生活」におきまして、「不動産サブリース問題の現状」という特集を組みまして、サブリース問題の論点、被害の実態等について、専門家による論文を掲載したところでございます。

 また、国民生活センターが行っている重要消費者紛争解決手続、ADRにおきましても、サブリース契約を前提としたものも含めまして、投資用マンションに係る契約の解約に関する紛争を何件か重要消費者紛争として受け付けまして、手続を進めたところでございます。

 さらに、消費者庁におきましては、国土交通省の賃貸住宅管理業者登録制度に係る検討委員会に参画をいたしまして、消費生活センター等に寄せられている消費生活相談につきまして主な事例と課題を説明し、貸し主の保護を含めた取りまとめに協力したところでございます。

 以上です。

宮本(岳)委員 当時の森まさこ大臣の答弁も、政府全体でいえば、一国民が被害に遭う、または苦情を申し出ているのですから、どこかの省庁できちっと引き受けなければならない、救済しなければならない問題であると認識しておりますと。その後、国土交通省等々と連携した取り組みが始まったとお伺いをいたしました。

 そこで、きょうは藤井政務官に来ていただいておりますけれども、昨年八月十二日に賃貸住宅管理業者登録制度が改正をされました。また、それを受けて、国土交通省は昨年九月一日、サブリースに関するトラブルの防止に向けてという通知を関係業界宛てに発出いたしました。

 どのようなトラブルがふえていて、何が問題と考えての改正なのか。また、通知を出した背景について、国土交通省の問題意識をお伺いしたいと思います。

藤井大臣政務官 賃貸住宅管理業者登録制度は、賃貸住宅管理業務に関して一定のルールを設け、管理業務の適正化を図るため、平成二十三年に創設されております。

 制度開始後五年を迎えまして、第三者の有識者会議、賃貸住宅管理業者登録制度に係る検討委員会での検討を踏まえまして、管理業務の一層の適正化、増加するサブリースへの対応など、現下の諸課題に対応するため、昨年八月、制度の見直しを行わせていただきました。

 具体的には、賃貸住宅管理業者につきまして、登録には一定の実務経験者等の設置を必要とし、貸し主への重要事項説明等はその者が行うようルール化、サブリースをめぐるトラブル防止のため、将来の家賃の変動等の条件を重要事項として説明するよう明記するなど、改善を図ったところでございます。

 本改正を踏まえまして、管理業務のより適正な運営を確保し、賃借人と賃貸人相互の保護が図られることを期待しておりまして、登録制度の一層の普及に努めてまいります。

 また、通知についても御質問をいただきました。

 御指摘の通知は、いわゆるサブリースに関しての家賃保証をめぐるトラブルに対応するため、賃貸住宅管理業者登録制度の改正が平成二十八年九月一日に施行されることにあわせまして、その趣旨の徹底を図るとともに、業界団体にトラブル防止に向けた取り組みを依頼するべく発出させていただいたものでございます。

 具体的には、サブリースのトラブル防止に向けまして、改正されたルールの遵守を図るとともに、いまだ登録をしていない業者については速やかに登録の検討を行うこと、将来の借り上げ家賃の変動等の説明は賃貸住宅の建設に係る契約の段階から土地所有者等に十分な説明を行うことが重要であり、適切な対応を行うことなどを指導しておるところでございます。

 今後とも、関係機関と連携して、サブリースを含む賃貸住宅管理業の適正化に努めてまいります。

宮本(岳)委員 それで解決されるのかということなんですね。

 私のところに届いた一例を挙げますと、家賃十年保証というふうに言いながら、契約した直後に、一室当たり五千円下げてくれないかという話を持ちかけられたと。これは神奈川県の、これまたレオパレスのオーナーの話であります。

 今、レオパレスは、オーナー会というものも発足いたしまして、全国的に訴訟ということも既に行われております。

 政務官、それで解決する、そうお考えですか。

藤井大臣政務官 株式会社レオパレス21につきましては、現在のところ、賃貸住宅管理業者登録制度の登録を受けていないという状況でございまして、国土交通省といたしましては、同社に対し登録を受けるよう要請を行っておるところでございます。

 いずれにいたしましても、サブリースのトラブル防止に向けて改正されたルールの遵守を図るとともに、いまだ登録をしていない業者については速やかに登録の検討を行うこと、将来の借り上げ家賃の変動等の説明は賃貸住宅の建設に係る契約の段階から土地所有者等に十分な説明を行うことが重要であり、適切な対応を行うことなどを指導してまいります。

宮本(岳)委員 そうなんですね。この制度に大体入ってないわけですね。

 この話は大変悪質な話でありまして、十年間家賃は固定という契約は、実は借り主に不利な条件であるために、たとえ契約書に記載されていても無効だという借地借家法のたな子を保護するという規定がこれに適用されます。つまり、賃料不減額特約の無効というものがレオパレスに適用されるということになるわけですね。それがわかって、そういう営業をかけて物事を進めているわけであります。

 入ってないからどうしようもないと言うけれども、実はレオパレスはそれを気にしたんでしょうか、ホームページで、「賃貸住宅管理業者登録制度に登録しないのか。」こういうQアンドAでQを立てまして、当社は登録しておりませんが、定期的に国土交通省と打ち合わせを行っております、こう述べて、そして、国土交通省による不動産取引適正化の諸施策を踏まえ、さらにお客様にとってわかりやすく、契約内容に御理解いただけますよう引き続き丁寧にやっているところでございますと言うんですが、やっていることは、事実、いまだにこういうことが続いている。

 これは本当にこんなことで解決するんですか、政務官。

藤井大臣政務官 いずれにいたしましても、国土交通省といたしましては、今後とも、関係機関と連携して、サブリースを含む賃貸住宅管理業の適正化に努めてまいります。

宮本(岳)委員 では、こういうものが一体どれほどあるかということを確認したいと思うんですね。

 一括借り上げのサブリースのトラブルで最も問題視されているのは、家賃十年保証といいながら、保証期間にもかかわらず、業者から家賃の引き下げ要請が強引にされるという今のようなケースなんですね。

 二〇一四年三月末と二〇一七年三月末でサブリース契約の件数がどう推移したか、家賃引き下げの件数がどれだけあるか、国土交通省、藤井政務官でもいいですが、お答えいただけますか。

藤井大臣政務官 賃貸管理業者登録制度の登録業者が管理しているサブリースの管理戸数は、平成二十九年三月末現在で約二百二十九万戸となっております。平成二十六年三月末現在では約百四十四万戸ということでございまして、増加をしておるという形でございます。

宮本(岳)委員 家賃引き下げ要求件数、わかりますか。

藤井大臣政務官 ちょっと当方といたしましては、通告をいただいておらないというふうに認識しておりまして、そちらの資料については今手元に持ち合わせておりません。

宮本(岳)委員 では、通告を、この場でお願いしたら、家賃引き下げ件数について御報告いただけるんですね。

海堀政府参考人 お答えさせていただきます。

 現在、国土交通省で行っております賃貸住宅の管理業者制度、任意の登録制度でございますので、各登録業者の方に問い合わせをして、可能な限りでの件数把握はできると思いますが、義務的な調査などは我々の方では実施できないという状況でございます。

宮本(岳)委員 つかんでないんですよ。通告してないんじゃないんですよ。つかめてないんです、それは。大手ならつかめると言うならつかんでくださいよ。つかんで、報告を求めておきたいと思います。

 日本銀行のマイナス金利などの低金利政策によって、サブリース業界が相続税対策や低金利を売りに営業を盛んに展開し、貸し家融資が膨張している実態があります。これはもう認めておられます。

 そこに融資している地域金融機関が、サブリース業者のこの実態を知っていながら、オーナーの土地の担保価値や、家賃十年保証、三十年一括借り上げ、こういう契約を前提に個別の収支計画を評価して貸し付けを行っているとすれば、保証期間中の家賃値下げ要求がなされるケースでいえば、サブリース業者と共犯関係に入ることになりかねません。貸し手としての重大な責任があると言わなければなりません。

 最後に、日銀の総裁にお伺いするんですけれども、アパートローンの膨張の裏には、人口の減少や空き室率の上昇にもかかわらず、サブリース業者が積極的な営業で貸し家建設をふやしていることがあり、同時に、家賃保証の契約が事実上ほごにされ、トラブルが発生している実態が少なからずございます。

 黒田総裁はこの実態をどう認識しておられるか、最後に御答弁をいただきたいと思います。

黒田参考人 私どもといたしましては、今後とも、貸し家市場全体の需給動向を注視するとともに、考査、モニタリング等を通じて、金融機関に対して適切なリスク管理を促してまいりたいと思います。

 貸し家市場全体の需給動向の中には、当然、サブリースの業界のことも入ってくると思います。

宮本(岳)委員 マイナス金利、低金利政策のもとで、サブリース契約による事実上の消費者問題が起こっていると私は思うんですね。にもかかわらず、政府の取り組みは遅く、全く不十分だ。藤井政務官、本当に不十分ですよ、これは。

 政府を挙げて、この問題に対策をとるということを強く求めて、私の質問を終わります。

御法川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、総裁、そしてきょうは大塚副大臣、ありがとうございます。済みません、きのうも来ていただいていて、私のスケジュールの中では、最後、二問お聞きするつもりだったんですけれども、麻生大臣が思ったより御発言が長くて、そういった意味で、調整しようと頑張ったんですが、最後どうしても調整できませんでしたので、きょうその続きの御質問をさせていただきたいと思います。どうしても、私、毎回最後でございますので、通告の関係上、質問しなければいけないんですが、しかし、重なってしまう部分もあれば、あとは総裁も同様だと思いますけれども、お許しいただければと思います。

 まず最初に、大塚副大臣にお伺いしたいのは、商工中金の不正融資の問題でございます。これは非常に問題だと思いますし、大きな騒ぎになっていますけれども、経産大臣はるる御発言もされております。財務省としても伺っていきたいんですけれども。

 要は、融資先候補企業の業績を審査する場合に、危機だという形で改ざんして、しかも、実際に売り上げや営業利益が下がっているかのような、そういう形で改ざんしている、しかも、それは国民の税金である政策の公庫からお金が入っているわけで、そこから、実際、今回の調査では全体の一二%しか調査ができていないらしいんですけれども、記事ですよ、記事によると、そうすると、この不正受給額、税金からも二・一億円ぐらい不正受給もあるんじゃないかということなんですけれども、一二%の調査でこれですから、全体から見ればもっともっとあるんじゃないかと思うのが普通であって、今出ているのは氷山の一角じゃないか、第三者委でのチェックでも見たら思うんですけれども。

 まず、財務省としてどのように捉えていらっしゃるか、見解と対応についてお伺いできますでしょうか。

大塚副大臣 きのうも御通告いただいて、きのうからきょうにかけて状況が少し変わりまして、業務改善命令が発出をされたということになっておりますけれども、発端、四月二十五日に、商工中金から、危機対応業務に関する不正行為について、第三者委員会による調査結果を踏まえた報告があったところであります。

 その第三者委員会の報告でもるる指摘をされているわけですけれども、これだけ有利な条件のものを、需要の実態に合わない形で、ノルマという形で計数管理をすれば、こういう結果になることは容易に想像ができるだろう、こういう形で管理をしている組織の中でそうなるだろうということは容易に想像ができると思いますし、さらにそれが内部的にチェックができなかったということで、これは大変遺憾であるというふうに考えているところでございます。

 本事案の問題解決のためには、徹底的に問題を洗い出して全容を解明することが重要であるというふうに考えてございまして、昨日、五月九日、申し上げましたように、商工中金に対して業務改善命令を発出し、調査未実施の危機対応貸し付け全体についての継続調査の実施、それから、問題の所在及びその根本原因の特定等を求めたところでございます。

 今回の業務改善命令により特定された根本原因等も踏まえ、ガバナンスの強化や役職員の責任の明確化等に関し、商工中金に対してさらなる対応を求めてまいりたいというふうに考えてございます。

丸山委員 少し副大臣に触れていただきましたけれども、ノルマがあってそれが重くて、それゆえに不正につながったんじゃないかというふうに思うんですが、今から調査されるというお話だったので、今のところ財務省としてはそこにあるんじゃないかと、仮定ですよ、仮ですけれども、考えられているということでよろしいんですよね。

大塚副大臣 これは第三者委員会の報告によるとそういうことになっていたということで、私としても、なりそうな話だなというふうには思っておりますけれども、実際にそうだったかどうかという認定については、これはさらなるしっかりとした調査、それから、委員も御指摘になられましたように、全数調査を求めておりますので、そうしたことも踏まえて判断をしていきたいというふうに考えてございます。

丸山委員 本来であれば、危機状態になった企業さんを助けるための部分であって、それをこういう形で、悪用というか、不正改ざんという形でするというのは非常にけしからぬというふうに、今、同時に委員長も副大臣も日銀総裁もうなずいていただいていますけれども、国民の皆さんもそう思っているというふうに思います。

 なので、全部調べていただいて、おかしいものはおかしい、そして、経産大臣も怒っていらっしゃいましたけれども、これは責任問題だという部分もありますので、しっかり責任をとっていただく方はとっていただく、そして新たな方がきちんと改善をしていただくというのが非常に大事だと思いますので、これは財務省としても厳しい対応でよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 次に、二個目をお伺いしていきたいんです。景気の判断です。

 非常に今、景気の判断について、悪くない報告が各種出ていると思います。財務省さんがまとめた四月の経済情勢報告で、全体の景気判断を「緩やかに回復している」という形で表現されています。

 一方で、きょうは総裁に来ていただいていますけれども、日銀は、さきの四月二十七日に、金融政策決定会合で、いわゆる展望レポートを出されていまして、そこでは、これまで、緩やかな回復基調というふうな書き方をされているのを、少し表現を引き上げて、「緩やかな拡大に転じつつある。」という書きぶりに変えられているわけで、日銀は、明らかに、前進している、景気がよくなっていると捉えているんだというふうに思います。この後、日銀総裁にもその辺を伺いたいんですけれども。

 まず、財務省として、これは違いがあるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、どのように捉えればよいか、財務省の景気判断も含めまして、改めてお伺いをしたいと思います。

大塚副大臣 まず、経済情勢報告、計算しておりますのは内閣府でございまして、それを政府の見解として統一して採用しているわけでございますけれども、確かに若干の表現の違いがあるわけですけれども、計算をしているのが内閣府と日銀ということで主体が違うということと、推計方法も、特にGDPギャップ、需給ギャップのところで推計方法に違いがありますので、そこのところが主な要因かなというふうに個人的には思っております。いずれにしても、方向性としては、前向きな動きをしているということについては一致をしているわけでございます。

 ちなみに、御参考までですけれども、展望レポートの最後の方にボックス図表四というのがあって、日銀、内閣府だけじゃなくて、IMF、OECDおのおのの需給ギャップと潜在成長率のグラフが載っていますけれども、確かに、推計方法はおのおのの機関で違いますからばらつきはあるんですけれども、方向としては、同じ前向きな方向に行っているというふうに考えてございます。

 財務省としても、政権交代以降、安倍政権のもとにおいて、足元の日本経済は、二〇一二年の第三・四半期と一六年の第三・四半期を比べると、名目GDPが四十七兆円増加をしてきており、企業収益も過去最高水準、有効求人倍率は、二十九年三月で一・四五倍ということで、二十六年ぶりの高水準、それから、賃金引き上げ率は、三年連続、今世紀最高水準ということにもなってございますので、経済のファンダメンタルズは確かなものであるというふうに考えているところでございます。雇用環境、所得環境も改善しているということでございます。

 内閣府と日銀で表現ぶりの違いはあるものの、景気は全体として前向きな動きが続いているという認識は同じであり、これは財務省も同じ見解をもちろん持っているわけでございますけれども、日銀とも大きな違いがあるとは考えていないということでございます。

丸山委員 方向性としては一緒ですし、内閣府、政府として出しているものと、日銀が出されているもの。とはいえ、難しいなと思うのは、微妙な表現の違いでこれを表現してきたのが景気のあり方の、それぞれ、日銀も、内閣府も、政府としても出してきたものですので、確かに、副大臣おっしゃるように、需給ギャップ等、数値の使い方の違いがここにあらわれているのかなというのが一つだと思います。

 とはいえ、いつも難しいと思うのは、政府として使う資料と例えば日銀の資料が違うのがいいのか悪いのかというのは、常にこの財金でも議論しているんですけれども、一緒じゃなきゃ、例えば財政赤字がどうなっていくとか今後の成長率とか、ほかの資料にも影響しているわけで、そういった部分に関して、日銀が考えているのと政府が考えているのがずれているということから、数字がずれてしまう。一方で、同じものをやるよりは、二つ、三つ公式なものがある方が、比較の中から建設的な議論ができるという意見もあるので、一概にどちらが悪いとは私は思わないんですけれども、しかし、このずれについて確認していくことは大事だと思いますので、今の御答弁でわかりましたので、よろしくお願いします。ありがとうございます。

 逆に、日銀の方から伺いたいんですけれども、日銀はこの景気判断をどのように捉えていらっしゃるか。特に、内閣府、政府としてのものもごらんになっていると思うんですけれども、その辺との違いについてもどうお考えになっているか、お答えいただけますか。総裁、よろしくお願いします。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、四月末の金融政策決定会合において、展望レポートで、我が国の景気の総括判断を、それまでの「緩やかな回復基調を続けている。」から「緩やかな拡大に転じつつある。」というふうに、一歩前進させたわけであります。

 その背景は、このところ、輸出、生産を起点とする前向きの循環が強まる中で、労働需給は着実に引き締まり、経済活動の水準を示す需給ギャップのプラス基調が定着しつつあるということであります。

 先ほど財務省の方から御説明ありましたとおり、景気認識において基本的な違いはないと思っておりまして、何と申しましても、二〇一七年度をとりますと、政府の大型経済対策や極めて緩和的な金融環境のもとで、日本経済が潜在成長率を上回る成長を続けるという点で全く一致しておりますし、そのもとで、需給の引き締まりにより物価上昇率も大幅に改善するというふうに見込んでおりまして、これも政府と日本銀行との間で見方に大きな差異はないと思っております。

 その上で、委員御指摘のように、各国ともそういうことになっておりますけれども、政府の経済見通しと各国の中央銀行のそのときそのときの見通しとはおのずと違っているわけでありまして、その一番大きな理由は、中央銀行はかなり頻繁に、日本銀行でいいますと四半期ごとに見通しを出しているということがありますし、政府は、普通、年に一回とか修正を一回するとかいうことが多いようですので、その点が違うということと、それから、中央銀行、私どもの経済見通しも、あくまでも九人の政策委員の各自が自分の考えている経済、物価の見通しを示し、それを単純にアグリゲートするために中央値を示し、また幅を示しているということでありますので、政府の経済見通しというのは政府としての見通しですので一つの見通しということになりますので、そういった点もおのずと違いがあるのではないかというふうに思っております。

丸山委員 よくわかりました。ありがとうございます。

 総裁、引き続き、ちょっと話題はかわりますけれども、ADBの年次総会に出られたと思いますけれども、古巣のADBへ行かれていろいろお話をされたんだと思うんですけれども、記事等、記者から聞いていますと、金融政策についてやはり苦心されているんだなというのがお言葉に出ているかと思うんです。教科書を文字どおり適用できない難しさがあるということで御発言もされていますけれども、この年次総会も含めて、この辺の発言についても、もう少し詳し目に、やはり苦労されているんですかね、大変だと思うんですけれども、その辺も含めてお答えいただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘の発言は、アジア開銀総会に合わせて、ADBの総会に合わせて開催されたセミナーで私が発言したことを指しているのではないかと思いますが、実は、教科書どおりにいかないという発言は、為替レートに関する議論の中での発言でありまして、金融政策についての発言ではありません。

 セミナーに参加された方々が、アジアのいわゆるスモール・オープン・エコノミーの方々だったので、為替レートの動きとか資本移動の影響とか、そういうことが非常に大きな議論になって、その中で、為替レートが、特に自国通貨安が輸出の増加をもたらして貿易収支を改善するかどうかという話で、BISのエコノミストも、それからアジアのスモール・オープン・エコノミーの中銀総裁たちも、貿易収支を改善するというふうにおっしゃっていたんですが、私からは、日本の経験を見ると、自動車や家電などの企業が現地生産シフトをかなり大幅に進めた結果、為替レートの変化が輸出に余り影響しなくなって、むしろ、企業収益の影響から設備投資とか消費に影響するという、そちらの方の影響がより顕著になっている、そういう意味で、為替レートの変動が貿易収支に与える影響というのは、なかなか教科書どおりにはいかないですねという話を申し上げたわけでございます。

丸山委員 なるほど。総裁、為替政策に関してはやはり難しいなということで、金融政策はそこまでではないとはおっしゃるわけじゃないんですけれども、そこについて言及されているというわけじゃないということですね。了解いたしました。

 済みません、更問いという形になっちゃうんですけれども、このADB、今回、麻生大臣と総裁が行かれて日中経済対話をされていて、中国の、向こうのトップの方とお話しされていると思うんですけれども、総裁としては初めて向こうの総裁と経済対話で、出られているという認識でいるんですけれども、中国に関してどういう受けとめをされたか、このあたりについて、更問いでお伺いできますか。

黒田参考人 横浜では、アジア開銀の総会に合わせてさまざまな国際会議が行われまして、一つは日中韓の財務大臣・総裁会議、それから日・ASEANの財務大臣・中央銀行総裁会議、そしてASEANプラス3の財務大臣・中央銀行総裁会議がありまして、それらには全て私は参加いたしましたが、日中財務対話は、あくまでも麻生副総理・財務大臣と中国の新しい財政部長との間の会議でありまして、日銀のスタッフも陪席はさせていただいていますけれども、私は出席しておりません。

 なお、中国の新しい財政部長には、バーデンバーデンのG20、あるいは二週間前のワシントンにおけるIMFその他の会議等でお目にかかってはおります。ただ、直接お話ししたことはございません。

丸山委員 日銀は総裁じゃなくて事務方がお出になっていらっしゃったんですね。それは失礼いたしました。

 直接お話しできていないということなので、隣国でもありますので、しっかり、議論すべきはしていただきたい。必ず機会はあると思いますので、ぜひよろしくお願いします。それは、されてからまたお伺いしていきたいというふうに思います。

 そうしましたら、次の項目を伺っていきたいんですけれども、日銀のバランスシート、先ほども出口の議論をされていましたけれども、ここを私からもお伺いしていきたいんですが。

 出口戦略を考えたときに、懸念も数多くお話が出ているわけで、例えば、そもそも日銀として二%の目標達成をするんだという話をされているので、達成した場合、もちろん市中の名目金利も二%を超えて上昇していくことが十分想定される、そうなんだと思うんですけれども、そのときに、日銀が持っているものはどうなっていくかというと、市中金利を上回る金利の、銀行に対して超過準備を付与していかなきゃいけない状況になる。

 また、その場合には、日銀は、今は低利かつ長期の国債を資産として大量に持っているわけですから、逆に、反面、負債サイドは、その二%を達成していくと、短期で、しかも、持っているのに比べれば高利の日銀当座預金等を抱えることになるというのが、論理上そうなっていくと思うんですけれども。

 そうすると、受け取り金利が減少して支払い金利が増加するわけで、どう考えても、今いっぱい持っているわけですから、毎年かなりの規模の損失が発生するんじゃないかという指摘、ごもっともだというふうに私は思うんです。

 付利の引き上げという話を今しました。それだけじゃなくて、例えば、保有国債を売却していくんだという考え方もあると思うんですけれども、それでも国債の価値が変わるわけで、持っている価値より安く売るということになると、多額の売却損という形で発生するようになると思うんですけれども。

 いろいろ話が、そういった意味で懸念の点が出ていると思うんですけれども、今までやってきたいわゆる伝統的な政策と違う形で総裁は今挑戦されていて、そして確固たる決意でこの二%の達成をするということをおっしゃっていますけれども、この出口を見据えたときの不安やリスクというものをきちんと説明していかないと、ここの部分に対して不安を皆さん感じていらっしゃるのは当然だというふうに思うんですけれども、このような指摘に対してどのように総裁はお答えになられるか、よろしくお願いいたします。

黒田参考人 これは日本銀行だけにかかわらず、FRBとかECBとか欧州のその他の中央銀行も、皆何らかの形で量的金融緩和を行っておりますので、中央銀行のバランスシートが大きく拡大しているということであります。

 拡大している過程では、中央銀行の収益は押し上げられるわけですけれども、一方、いわゆる出口の局面では、バランスシートをどう処理するかということと、それから短期金利をどのように運営していくかということが、出口の場合の大きな二つのイシューになるわけです。

 御指摘のように、仮に日銀の当座預金に対する付利の引き上げ、あるいはその他の方法によって出口ということになった場合に、収益が今度は減少するということは、そういう特徴があることは事実であります。

 こうした点も踏まえまして、日本銀行では、二〇一五年度から、収益が上振れる局面でその一部を積み立てて、将来、収益が下振れる局面で取り崩すことができるように、債券取引損失引当金を拡充したところでございます。これは、こういった量的な緩和に伴う収益の振幅を平準化して財務の健全性を確保する観点から行ったわけですけれども、一定の効果を持つと考えております。

 もっとも、将来における実際の収益というのは、あくまでもその時点での経済・物価情勢それから金利環境、バランスシートの状況などによって左右されますので、現時点で、この引当金で全て十分だというふうに言えるかどうかはまだわかりませんが、少なくとも、事前の対応としてはかなりしっかりしたものを行っているということであります。

 その上で、具体的な日本銀行の収益の動向につきましては、これは従来から申し上げておりますとおり、出口でどういう政策をとるかということと、その時点での経済や金融情勢次第でありますので、事前に具体的に申し上げるのは非常に難しいと思います。

 ただ、いろいろなシナリオがあり得るではないかということであれば、そういったことについての考え方のようなことは内部でも議論しておりますので、そういった議論を将来、今すぐというわけではありませんが、将来、御紹介することはできるかもしれませんが、何回も申し上げますが、具体的な出口、そしてそれに伴う収益の変化というものを今からお示しするというのは、かえって、非常に、余計な思惑とか混乱を招くおそれがありますので、それは難しいということは御理解いただきたいと思います。

丸山委員 しっかり内部でも議論していただくということなので、やっていただきたいと思います。

 日銀は、国庫納付金がありますので、これが減少すれば、我々が見ています政府の財政収支にもマイナスの影響を与えますので、ここをしっかり、日銀が債務超過に陥らないように手当てをやっていくというのは重要だと思います。具体な話が今できないというのももちろんわかりますから、内部でしっかり詰めていただければいいと思います。

 ただ、決意だけ伺いたいんですけれども、そうした状況にならないようにソフトランディングさせていくために、もしくは円の信認を損なわないように、日銀がそういうことになればもちろん円の信認が危ぶまれることになると思いますので、こうした円の信認を維持するようなきっちりとした措置を講じていく、そうした決意でいらっしゃるということでよろしいんですよね。

黒田参考人 何と申しましても、最も日本銀行の責務として重要なことは、物価安定を保つということでありまして、具体的には、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということであると思います。

 そのために、現在実施しております資産の買い入れなどは、もちろん財務に影響を与え得るわけですけれども、当然、最大の責務である物価安定のために必要な政策として行っておりますので、今後も、財務の健全性に配慮しつつ必要な政策を実施していくということにしたいというふうに思っております。

 なお、収益の動向、あるいは資産、負債の動向等につきましては、当然、十分配慮しておりますし、先ほど申し上げたような収益を平準化するような努力もしておりますので、何か円の信認を失うようなことになるということは全くないと考えております。何よりも重要なことは、物価の安定を持続的に達成することによって、まさに、それこそ通貨に対する信認を維持するゆえんであるというふうに考えております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

御法川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十二分散会


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