衆議院

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第3号 平成30年12月7日(金曜日)

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平成三十年十二月七日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂井  学君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 田畑  毅君 理事 寺田  稔君

   理事 藤丸  敏君 理事 川内 博史君

   理事 前原 誠司君 理事 竹内  譲君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石崎  徹君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    神谷  昇君

      神田 憲次君    小泉 龍司君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      斎藤 洋明君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      武部  新君    津島  淳君

      土井  亨君    中山 展宏君

      本田 太郎君    牧島かれん君

      三ッ矢憲生君    宗清 皇一君

      山田 美樹君    義家 弘介君

      今井 雅人君    末松 義規君

      高木錬太郎君    浅野  哲君

      源馬謙太郎君    緑川 貴士君

      伊佐 進一君    野田 佳彦君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      青山 雅幸君    佐藤 公治君

      鷲尾英一郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   内閣府大臣政務官     長尾  敬君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    長谷川秀司君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  佐々木清隆君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      森田 宗男君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (国税庁次長)      並木  稔君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           小波  功君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行審議委員)   西田 貴子君

   参考人

   (日本銀行理事)     前田 栄治君

   参考人

   (日本銀行理事)     衛藤 公洋君

   参考人

   (日本銀行理事)     吉岡 伸泰君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月七日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     佐々木 紀君

  斎藤 洋明君     神谷  昇君

  津島  淳君     武部  新君

  古本伸一郎君     源馬謙太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  昇君     高木  啓君

  佐々木 紀君     穴見 陽一君

  武部  新君     津島  淳君

  源馬謙太郎君     浅野  哲君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     上杉謙太郎君

  浅野  哲君     古本伸一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     斎藤 洋明君

    ―――――――――――――

十一月二十二日

 さらなる消費税増税を行わないことに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三号)

 同(志位和夫君紹介)(第四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第八号)

 同(藤野保史君紹介)(第九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第一一号)

 同(本村伸子君紹介)(第一二号)

 消費税増税の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三号)

 同(笠井亮君紹介)(第一四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二〇号)

 同(藤野保史君紹介)(第二一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二号)

 同(宮本徹君紹介)(第二三号)

 同(本村伸子君紹介)(第二四号)

 消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(宮本徹君紹介)(第七四号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(宮本徹君紹介)(第一一二号)

同月三十日

 消費税率の引き上げ、消費税の複数税率導入に反対することに関する請願(宮本徹君紹介)(第二六三号)

 消費税増税の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二六四号)

 同(笠井亮君紹介)(第二六五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二六六号)

 同(志位和夫君紹介)(第二六七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二六八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二六九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二七〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二七一号)

 同(藤野保史君紹介)(第二七二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二七三号)

 同(宮本徹君紹介)(第二七四号)

 同(本村伸子君紹介)(第二七五号)

 消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七六号)

 同(笠井亮君紹介)(第二七七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二七九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二八〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二八一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二八二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二八三号)

 同(藤野保史君紹介)(第二八四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二八五号)

 同(宮本徹君紹介)(第二八六号)

 同(本村伸子君紹介)(第二八七号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(宮本徹君紹介)(第二八八号)

十二月四日

 さらなる消費税増税を行わないことに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三二〇号)

 同(辻元清美君紹介)(第三五〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第四二一号)

 同(青柳陽一郎君紹介)(第四八〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第四八一号)

 同(末松義規君紹介)(第五一九号)

 消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(岡島一正君紹介)(第三二一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三二二号)

 同(篠原孝君紹介)(第五二一号)

 消費税一〇%へのアップ中止を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第三七四号)

 消費税増税の中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第三七五号)

 同(笠井亮君紹介)(第五二〇号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(篠原孝君紹介)(第五二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

坂井委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、審議委員西田貴子君、理事前田栄治君、理事衛藤公洋君、理事吉岡伸泰君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官長谷川秀司君、金融庁監督局長栗田照久君、財務省主税局長星野次彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 去る平成二十九年六月二十日及び十二月八日並びに平成三十年六月十九日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁黒田東彦君。

黒田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に、通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日、我が国経済の動向と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 まず、我が国の経済金融情勢について御説明いたします。

 我が国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大しています。七―九月期の実質GDPは小幅のマイナス成長となりましたが、これについては、自然災害などの一時的な要因の影響が大きいと見ています。やや詳しく見ますと、海外経済が総じて見れば着実な成長を続ける中、輸出は増加基調にあります。設備投資は、企業収益が改善基調をたどり、業況感も良好な水準を維持するもとで、増加傾向を続けています。個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、振れを伴いながらも、緩やかに増加しています。

 先行きの我が国経済についても、緩やかな拡大を続けると考えています。なお、先行きのリスクについて見ると、保護主義的な動きの帰趨とその影響など、海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きいと考えています。

 物価面では、消費者物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると、弱目の動きが続いています。その背景として、長期にわたる低成長やデフレの経験などから、企業の慎重な賃金、価格設定スタンスや家計の値上げに対する慎重な見方が根強く残っていることが大きく影響しています。加えて、非製造業を中心とした生産性向上余地の大きさや近年の技術進歩などが、経済が拡大する中にあっても、企業が値上げに対して慎重なスタンスを維持することを可能にしている面もあります。

 もっとも、先行きを展望しますと、消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、二%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。このように、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されていますが、なお力強さに欠けていますので、引き続き注意深く点検していく必要があると考えています。

 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。

 日本銀行は、二〇一六年九月に導入した長短金利操作つき量的・質的金融緩和の枠組みのもとで、強力な金融緩和を推進しています。このうち、長短金利操作については、二%の物価安定の目標の実現のために最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促すよう、短期政策金利をマイナス〇・一%、十年物国債金利の操作目標をゼロ%程度とする金融市場調節方針を掲げ、市場において国債の買入れを実施しています。

 七月の金融政策決定会合では、こうした強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、現在の政策の枠組みを強化することを決定しました。第一に、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持するという、政策金利のフォワードガイダンスを導入しました。これは、将来の政策金利の水準をあらかじめ約束することにより、強力な金融緩和を継続する姿勢を明確にすることを狙いとしたものです。第二に、金融市場調節や資産の買入れをより弾力的に運営することを決定しました。これにより、金利形成の柔軟性が高まるなどして市場の機能度が向上すれば、政策の持続性強化につながると考えています。

 日本銀行としては、こうした政策対応は、経済や金融情勢の安定を確保しつつ、二%をできるだけ早期に実現することにつながると考えています。今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済、物価、金融情勢を踏まえながら、適切な政策運営に努めてまいります。

 ありがとうございました。

坂井委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武井俊輔君。

武井委員 おはようございます。自民党の武井俊輔でございます。

 早速質問させていただきますが、報告書にもありますが、地域金融機関のあり方、現状等について、短い時間ですけれども御質問させていただきたいと思います。総裁始め皆様、よろしくお願いいたします。

 年末になりまして、私どもも忘年会に行くシーズンになってまいりました。企業の忘年会などに行きますと、銀行の方がお見えになっていまして、いろいろとお話もする機会も多くなるわけでありますけれども、お話していますと、名刺を見ると、去年までと人は同じだけれども支店の名前がかわっていたりとか、あとは、私、九州の宮崎県ですけれども、去年まで来られなかった隣の県の銀行の方が来られたりとか。いろいろと業界も大きく動いていることを実感をするわけでありますが、やはり地銀のあり方とかいうもの、また地域金融機関のあり方、非常に厳しさを増しているというのはさまざまな報道があるわけでして、非常に不安のある部分もあるわけです。

 特に、大学生、四年生なんかと話をしますと、今まで大体、私たちのような、地方に帰るというと、銀行に入るというのは、特に大卒で地元に帰って就職するというと、まずマスコミとか銀行とかというのが挙がってくるわけですけれども、この前も、ちょっと相談に来て、銀行大丈夫だろうかみたいなような話もあるわけでして、そういう意味で、地域金融機関というもののこれからのあり方というものを、しっかりと強いメッセージを示していくということが改めて重要だということを実感をしているところでございます。

 そういう意味で、まずやはり、地域金融機関の基礎的な収益力の低下が進んでいるわけであります。もちろん、人口、企業数の減少とか、また地域経済が縮小している。あとはやはり、今お話ししたような金融機関の競争もそうですし、親が亡くなると、どうしても地銀にあったお金を東京の自分の銀行に移してしまうとか、人口減がそういう形で副次的な影響も及ぼしているなということも実感をするわけでして、やはり今、実際にそういう銀行員の方と話をしても、貸出しとかという本業というよりは、どちらかというと経営コンサルというか企業と企業のマッチングとか、そういったようなものでこれから生きていくんだといったような思いもよく伺うわけであります。

 もちろん、今お話ししたような、店舗の統廃合、経費削減、いろいろな自助努力もされているわけですけれども、やはりそういう意味で、将来性また地域の信頼感というものに対しては、不安感が広がっていることは否めないというふうに思っております。しかし一方で、地域においては、金融仲介機能を担う存在として重要であることには間違いないわけであります。

 こういったもろもろの要因はあるわけですけれども、もう一度、改めてこうした地域金融機関の収益力の低下の要因についての現状認識をお伺いしたいと思います。

衛藤参考人 お答えをいたします。

 地域金融機関の基礎的な収益力に関しましては、今ほとんど委員がお話しになったとおりでございますけれども、やはり、低金利環境が長期化しているというのがベースにございますけれども、地域の人口それから企業数が減少しているといった構造要因が強く働いておりまして、それを背景に収益力が低下しているということです。

 特に、人口、企業数の減少に伴いまして、景気拡大を背景とした、実質的に無借金の企業がふえているということもございますので、人口、企業数の減少と相まって資金需要が減少しているというようなことも、要因としては加わっているというふうに理解をしております。こうしたもとで金融機関間の競争が激化しているということでありまして、貸出利ざやも縮小している、中心的な利益である資金利益がその結果として縮小しているということであろうと思います。

 地域金融機関は、加えまして、大手行に比べると手数料収入もそれほど多くないということでありますので、より基礎的収益力が低下しやすい一因になっているということかと思います。

 基礎的収益力は低下しておりますけれども、まだ資本基盤は地域金融機関は充実しているということでありますので、金融仲介機能が低下するというところまではいっていないというふうに私ども理解しておりますけれども、今後の動向につきましてはしっかり見ていきたいというふうに考えているところでございます。

武井委員 今お話がありました、まさにそういった要因だろうというふうに思います。

 いろいろと企業もありますと、今お話ありました無借金経営しているというような企業もありまして、そういうところに銀行の方が数日でいいから借りてくださいみたいな話で頼みに行くとか、いろいろな話もあったりもしますし。また、保証協会とのボールの投げ合いといいますか、そういったようなものも、私、県議会にもおりましたが、県議会でも間々取り上げられて、保証協会にもいろいろと勉強してほしいというお話もするわけですが、現実的に、ではそういったようなものが今おさまったかというと、まだまだそういったようなところもあるんだろうと。

 そういった非常に厳しい状況の中で、今後、今のお話も踏まえまして、国として地域金融機関にどのような経営を行ってほしいと期待しているか、お伺いをしたいと思います。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 地域金融機関は厳しい経営環境の中にあるわけでございますけれども、そのような中にあっても、持続可能なビジネスモデルを構築し、将来にわたる健全性を確保しつつ、金融仲介機能を十分に発揮することによって地域企業の生産性の向上を図り、ひいては地域経済の発展に貢献していくということが求められているのではないかというふうに考えております。

 このためには、経営陣が適切な経営戦略を策定し、それを着実に実行するための体制を構築する、さらに、策定された経営戦略の実行に当たっては営業店への浸透を図るとともに成果を常に検証し改善を図る、さらに、取締役会がガバナンスを発揮して必要な規律づけを行うというようなことが重要であると考えております。

 このような問題意識のもとで、地域金融機関に対しては、経営やガバナンスについて、深度あるモニタリングを行っていきたいというふうに考えてございます。

武井委員 その中で、やはり合併の話が非常に今さまざまに新聞などもにぎわせているわけでありまして、私どもの宮崎でも、先日、宮崎の信用金庫宮崎と、第二の都市の都城とかの、そこの信金が二つ合併をしたりということもしたわけですが、ただ、合併してもまだまだ国が求める資産額には足らないといったような状況の中で、より一層そういったようなことも進めていくということになるんだろうというふうに思うんです。

 しかし一方で、やはり合併に対する、市町村合併などもかつてありましたものですから、やはりそういったようなものに対する不安、また、地域の金融機能、支店機能など、もちろん隣り合っているところが統廃合されるとかということはやむを得ないと思うんですが、支店の統廃合、特に、営業時間もある程度柔軟に対応できるといったような話も出てきている状況の中でありますので、そういった中で、余りこれが過度に不安になるようなことになってはならないというふうにも思うわけでありますが、今後、統合合併について、もちろん自主的にされていくということが前提だというふうには思いますが、国としてどういった方針で臨んでいこうとしているのか、お伺いします。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、合併等の経営統合は、あくまで銀行の自主的な経営判断に基づき決定されるべきものであるというふうに考えております。

 その上で、地銀の今の経営環境は、人口減少とか低金利環境の継続などを背景に厳しさを増しておりまして、そうした中で、経営統合というのは、金融機関が将来にわたって健全性を維持し、地域において適切な金融仲介機能を発揮していくための一つの選択肢であるというふうに考えてございます。

武井委員 もちろん一つの選択肢でありますから、現にその選択をとっているところがたくさんあるわけですから。お伺いしたかったのは、どういう方針で臨むか、またそれによる影響というものをどう考えるかということであったわけですけれども、引き続き、当然プラスの面もあればマイナスの面もあるわけですので、よくトレースしていただきたいというふうに思います。

 済みません、ちょっと、総裁がお見えでございますので、一点お伺いをしたいと思うんですが。

 これは先月の二十三日付の日経でしたけれども、総裁が、地銀の今後のあり方について、最新の状況把握に努めるとともに必要に応じ金融機関に具体的な対応を促していくと述べたというふうに報道であるわけでありますけれども、これについての真意をお伺いしたいというふうに思います。

黒田参考人 まさに委員御指摘のとおり、地域金融機関が直面しているさまざまな課題に対して、それぞれの金融機関がそれぞれの立場で、また、その地域の特色、独自性を生かした形で、収益の改善あるいは地域への貢献を拡大していくということをそれぞれ考えていかれるということが一番大事だというふうに思いますが、他方で、政府あるいは日本銀行としても、そういった形で地域の金融仲介機能がフルに発揮されて地域経済の発展に資するということがやはり重要ではないかと思っております。

 その観点から申し上げますと、地域金融機関の経営統合の問題というのも、やはり、それぞれの地域金融機関がそれぞれの立場で考えるべきことであることは事実なんですけれども、これも一つの選択肢、多様な課題に対する選択肢の一つであるというふうに私は思っております。

 その場合、当然のことながら、経営統合によって、みずからの営業基盤あるいは収益力の展望というものをまず踏まえる必要があります。その上で、その経営統合がみずからの収益力の向上につながるかどうかということはやはり十分分析する必要があると思いますし、さらには金融仲介機能の適切な発揮を通じて顧客や地域経済にプラスの影響をもたらすかどうかといった観点からも統合の意義をみずから見きわめていく必要があると思います。

 その際に、日本銀行としても、さまざまなその地域の経済あるいは金融の分析を踏まえた上で、そういった地域金融機関との対話を行い、必要に応じて適切なアドバイスはしていきたいというふうに思っております。

 ただ、委員も言われたように、あくまでもこれは、それぞれの金融機関の自主的な経営判断というのが一番大事であるというふうに思っております。他方で、それが地域の経済、地域の金融に対してプラスになるというものでなければならないという点も、まさにそのとおりであると思っております。

武井委員 ありがとうございます。

 どうしても、報道などを見ていると、日銀の政策によって非常に地銀が傷んでいる、そういった側面がないとは言いませんけれども、オーバーバンキング含めて、それも一つのファクトでしかすぎないわけですけれども、どうしてもそういうふうに見えているところもあるわけですので、日銀としても積極的にそういった役割を果たしていただきたいというふうに思いますが。

 最終的にはこれは政治のリーダーシップによるところであろうというふうに思っております。地域金融機関の金融また合併等の今後のあり方も含めて、政治としてどのように考えられるか、副大臣にお伺いをしたいと思います。

田中副大臣 地域金融機関の経営についてでありますが、これはやはり、顧客企業の経営問題、これに対して適切な助言ですとか資金供給、これを通じて地域企業の生産性向上ですとか、最終的には地域経済の発展、これに貢献をしていくことが期待されるところであります。このことこそが、また金融機関自身の経営基盤、これを確保することについても大変重要だ、そのように考えております。

 今、委員がおっしゃられた経営統合、再編でありますが、これも繰り返しになりますが、これはあくまでも各金融機関の自主的な経営判断に基づき決定されるべきものである、これは前提であります。その一方で、経営統合によって生じた余力、これをやはり活用して、地域企業ですとか住民に適切な金融サービス、これを更に提供して地域経済の発展に貢献していく、これも大変重要なことだと思っております。

 こうした観点から、やはり政治がしっかりとリーダーシップを持って金融行政をしっかりと遂行してまいりたいと思います。

武井委員 お二人の果敢なるリーダーシップを期待して、終わります。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。公明党の竹内譲でございます。

 私からは、主に海外経済の動向についてきょうはお尋ねをしたいというふうに思っております。

 展望レポート二〇一八年十月によれば、基本的には景気の拡大基調が続くというふうにございます。また一方で、日本経済は外需への依存が大変大きい構造でございますから、やはり今後の米国の動向であるとか中国の動向、また新興国の動向、また英国のブレグジット、こういうことの影響もかなりあると思うんですね。

 そういう意味で、海外経済の動向は予断を許さないというふうに思っておりますが、まず全体として、先行きの海外経済につきましてどのように見通しておられるかお尋ねしたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、海外経済については、十月の展望レポートにおきまして、米国のマクロ経済政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、保護主義的な動きの帰趨、英国のEU離脱交渉の展開やその影響など、下振れリスクの方が大きいというふうに判断をしております。

 ただ、先行きにつきましては、保護主義的な動きの影響が米中間など一部の貿易活動に見られるものの、多くの国で雇用・所得環境が比較的良好な状況にありまして、内需がかなり増勢を維持しているということなどから見ますと、総じて見れば着実な成長を続けるというふうに考えられます。

 これは、IMFの最新の世界経済見通しでも、ことし来年と三・七%ぐらいの世界経済の成長があるのではないか、リスクは高まっているけれども、それから春の見通しよりも若干下方修正されているけれども、リーマン・ショック後の比較的高い成長率を超えた、あるいは過去二十五年ぐらいの平均よりもやや高いぐらいの着実な成長を続けるのではないかというふうに見ております。

 私どもも、世界経済は総じて見れば着実な成長を続けると考えておりますけれども、やはり今後とも、海外経済をめぐるリスクについては注意深く点検してまいりたいというふうに考えております。

竹内委員 この十二月一日に、中国の通信機器最大手のファーウェイの最高幹部が逮捕されるという事件が起きました。この背景にはいろいろあるんだろうと思うんですけれども、重要なことは、アメリカでは、二〇二〇年八月からファーウェイなど中国ハイテク企業の製品を使用しているだけで米政府との取引禁止の方針を打ち出すというような法案も既に通っているわけでございまして、そういうことも踏まえて、現在、米中貿易摩擦は一時休戦に半年ほど動いておりますけれども、今後これが世界経済に与える影響は大きいのではないかなというふうに思っております。

 その意味で、これらが二〇一九年以降の日本経済に及ぼす影響についてはどのようにお考えでしょうか。

黒田参考人 私どもも、最近、企業に対するヒアリング調査などを行っておりますけれども、現時点で米中の貿易摩擦の影響が大きく出ているということではなくて、限定的、一部の産業に中国への輸出の受注がやや低下してきているというような話はありますけれども、いわゆるハードデータというかそういうものに摩擦の影響が明らかに出ているというところは余りないようであります。

 ただ、企業に聞きますと、現在は東アジア全体のサプライチェーンというのが非常に複雑にできていまして、そういうものに米中貿易摩擦がどうやって影響してくるかというのはなかなか正確に見積もることが難しいということで、不安を感じているということがあるようであります。

 また、この先、貿易摩擦が長期化するようなことがありますと、単に貿易だけではなくて、企業や家計のマインド、あるいは金融市場の不安定化といった経路を通じて影響が広がる可能性もあるということは懸念をしております。

 今のところ、我が国経済は先行き緩やかな拡大を続けると見ておりますけれども、こういった貿易摩擦の帰趨、その影響を始めとして海外経済をめぐるリスクについては引き続き注意深く点検してまいりたいというふうに思っております。

 特に、米中のことにつきましては、御案内のとおり、先日のブエノスアイレスにおける米中の首脳会談において、九十日間停戦と言ったら怒られるかもしれませんが、関税率の追加の引上げはしないということで交渉をするということになっていますので、私どもとしては、できるだけ早くこの問題が解決されることを期待しているということでございます。

竹内委員 次に、英国の、イギリスのEU離脱が国際金融市場に及ぼす影響についてお尋ねをしたいというふうに思っているわけでございます。

 御承知のように、ロンドンは世界的な金融拠点でございまして、特にデリバティブ取引ではまさに中心地と言われております。離脱した場合には、ロンドンが清算拠点として機能しなくなるのではないかという懸念もございます。その数字は、四十五兆ポンドとか約六千五百兆円というような天文学的数字もいろいろ指摘されているところでございます。

 清算拠点をロンドンからドイツなど他の国に移す場合には、全契約を結び直さなければならないとか、そういうこともございますし、それから、契約条件をそのまま引き継げるとは限らない。英国の合意なき離脱で、突然、取引を強制清算しなければならないというような事態もあり得るのではないかという指摘もあるわけでありまして、そうなると、リーマン・ショックのような事態がいつ起きてもおかしくはないというふうにも考えられるわけでございます。

 現在、EUとの離脱協定が今英国議会で審議されておりまして、十一日にもその結論が出るということでございますけれども、その政治的影響はさまざまであろうとは思いますが、万一、このEUとの離脱協定が議会で否決されて合意なき離脱に至った場合は、国際金融市場にどのような事態が想定されるか。日本としても、国際社会としても、万一の場合の対応を検討しておく必要があるのではないかというふうに考えますが、日銀の見解を伺いたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、十二月十一日、来週の火曜日に、英国議会でEUとの離脱協定に関する採決が行われるということであります。

 その動向はもちろんどうなるか私どもよくわかりませんが、仮に議会でこの離脱協定が否決された場合でも、その後まだ協議が行われることになろうと思いますので、いきなりそこで来年の三月二十九日に合意なき離脱になるというふうに決めつけることはできないとは思うんですけれども、市場参加者の間でも、最終的に合意なき離脱に至った場合の影響を懸念する声があるということは私どもも承知をいたしております。

 その上で申し上げますと、現時点でも、仮に、万一、合意なき離脱と言われるものになった場合でも、金融サービスについては英国の金融当局とEU側の金融当局との間で既にかなりの話合いが進められておりまして、仄聞するところでは、そうなった場合でも現在の仕組み、取引は当面そのまま継続してよいというような方向で対応しようというふうに話が進んでいるようでありますので、その限りでは、少なくとも金融サービスについては一挙にカタストロフィックなことになるという可能性は少ないと思うんですが。

 実は、ノーディールブレグジットになった場合、いわゆる合意なきブレグジットになった場合には、航空機の発着とか税関における貨物の通関とか、そちらの方に物すごい影響が出てくる。金融の方は、いわば規制当局同士で合意すればそのまま今の形が続けられますけれども、物の貿易とかサービスの貿易とか、ほかのものについてはかなり大変なことになる可能性はあるというふうに思います。

 いずれにしても、特に金融につきましては、日本銀行としても今後とも、海外の中央銀行も含めて内外の関係者と連携をしつつ、この展開、あるいはそれが国際金融市場に及ぼす影響については十分注視してまいりたいと思っております。

竹内委員 それでは最後に、お手元の資料で、お配りしておりますが、消費税増税の影響についてお尋ねしたいと思います。

 二〇一八年四月の展望レポートでは、ここにありますように、過去の消費税増税前後の家計のネット負担額と今回の家計負担額が推計をされておられるわけであります。

 やはり過去二回は家計負担が大変重い、右端ですね、これが消費を抑制することになって経済の回復をおくらせたことが明確になっているんだろうというふうに思います。

 ここから推定すると、明年、予定どおり消費税が引き上げられるとした場合、日本経済に与える影響について日銀としてはどのように見ているか。また、そういう意味からいうと、家計負担を軽減することがやはり有力な経済対策となるのではないかと考えますが、これも含めてお尋ねしたいと思います。

黒田参考人 消費税率引上げの影響の大きさというのは、やはりその時々の消費者のマインドあるいは雇用・所得環境その他の動向に左右されるものでございますが、御指摘の本年四月の展望レポートで指摘しましたように、来年十月の消費税引上げのときの家計のネット負担額は、前回に比べかなり小幅なものにとどまるというふうに見ております。

 その原因は、税率の引上げ幅が前回よりも小さいことに加えまして、飲食料品を中心に軽減税率が適用されることに加えて、教育無償化等の措置があわせて実施される予定であるためでございます。

 このほか、最近、政府は、消費者へのポイント還元支援などを打ち出したり、柔軟な価格設定のガイドラインを公表するなど、いわゆる消費税率引上げ前後の需要変動を平準化するための措置に取り組まれておられます。こうした取組は、税率引上げの影響を軽減し、経済の改善基調を持続することに資するというふうに考えております。

竹内委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

坂井委員長 次に、高木錬太郎君。

高木(錬)委員 皆様、おはようございます。

 黒田総裁始め、皆様、よろしくお願いいたします。立憲民主党・市民クラブの高木錬太郎です。

 早速お伺いしてまいりますが、まずはデフレについてです。

 十月三十一日の総裁の記者会見を紹介させていただきますが、「一九九八年から二〇一三年まで十五年続いたデフレの時期のデフレマインドが、企業や家計からなかなか簡単に払拭されない」と御発言がありました。そして、先ほど総裁から御説明ありました報告書の説明の中にも、デフレについての言及がございました。

 そこで、まず伺いますが、デフレマインドというものは何でしょうか。

黒田参考人 御案内のとおり、我が国では既に物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっているわけですけれども、物価安定の目標の実現にはなお時間を要しているわけでありまして、この背景には、長期にわたる低成長やデフレなどの経験から賃金や物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残っている、これを広い意味のデフレマインドだというふうに言っていいと思いますけれども。

 こういったことのあらわれとしては、例えば、正規雇用者が賃金の引上げよりも雇用の安定を優先する傾向が根強いということから、労働需給の引き締まりにもかかわらず、本格的な賃金上昇には時間がかかっているということもあります。また、こうした状況では、家計の値上げに対する許容度が明確には高まっていないということにもつながっているというふうにも思われます。

 したがいまして、日本銀行としては、やはり強力な金融緩和を粘り強く続けるもとで、賃金の明確な上昇とともに、家計が値上げを受け入れやすくなり、物価上昇率も緩やかに高まっていくという好循環が実現することが望ましいというふうに考えているわけでございます。

高木(錬)委員 私が先ほど紹介しました記者会見の発言や十月の展望レポートにも同様の言及がございますが、この五年間、総裁、ことしの春、再任されたわけですけれども、五年間、さまざまな金融政策始め、日本銀行は取組を重ねてきたかと思いますが、にもかかわらず、やはり結果的に、現状、十五年間にわたってこびりついたデフレマインドというものが国民の中から払拭されていない、そういう御認識でよろしいでしょうか。

黒田参考人 そういうことであるというふうに思っておりますが、ただ、いろいろな面で、そういったものが次第に和らぎつつあるという面もあるということも指摘いたしたいと思います。

 例えば、賃金につきましても、非正規の方々の賃金は二%から三%上昇しているわけでございます。そこでは、やはり労働需給の逼迫というのがダイレクトに賃上げに反映しているということもございます。

 それから、この五年半程度で、たしか労働に携わっている人々の数が三百万人ぐらいふえているわけでございまして、雇用者所得自体はかなりふえて、それが消費を支えているという面もありますので、そういった意味で、デフレマインドというのが根強く残っていることは事実なんですけれども、それも少しずつほどけてきているというか和らいできているということもあろうと思います。

 今後とも、現在の需給ギャップがプラスで労働需給が引き締まっているという状況をできるだけ長く続けることによって、賃金全体が上昇し、雇用者所得も更に増加して、消費者の価格上昇を受け入れる許容度も高まり、また、企業の方としても、そういったことを踏まえて賃金、価格設定スタンスを積極化していくというふうになっていくというふうに考えております。

高木(錬)委員 今総裁は、賃金の話と雇用の話がありました。非正規の皆さんも二%上がっているという話もありました。

 まさに今、参議院で攻防がありまして、きょうまさに最大の局面を迎えている入管法改正でありますが、これが成立しまして、外国人労働者の受入れが拡大したならば、総裁、これは物価、賃上げの下方圧力になるんじゃないでしょうか。いかがですか。

黒田参考人 この入管法の改正案につきましては、現在、国会において審議が行われているわけでございまして、その内容とか影響について、私の立場から具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが。

 その上で、一般論として申し上げますと、労働需給が極めてタイトな中で、同一労働同一賃金の原則のもとで外国人材の受入れが拡大するとしても、そのこと自体が必ずしも賃金の抑制につながるわけではないというふうに理解しております。また、政府においては、外国人材の受入れが労働環境に悪影響を与えないよう運用を図っていく方針にあるということも認識をいたしております。

 いずれにいたしましても、外国人材の受入れが拡大することになった場合、日本銀行としても、その経済、物価への影響についてしっかりと点検してまいりたいと考えております。

高木(錬)委員 先ほどの御答弁の中で、家計の値上げに対する許容度というお話がありました。

 若干、自己紹介的な話になりますが、総裁、私は、昨年の秋、立憲民主党北関東比例単独で立候補いたしまして、初めて議席を預からせていただくことになりました。議員になる前の約十年間は、実は主夫をやっておりまして、妻が埼玉の県議会議員でありまして、妻の議員活動をサポートしながら、大方の家事を私が担っていました。

 そもそもは、妻が、当時は市議会議員だったんですが、二歳の子供がいるときに、想定外の下の子、双子が生まれまして、これはもうにっちもさっちもいかないと。妻が政治家をやめるわけにはいかないので、私が、家に入るという言葉は変ですね、妻の仕事をサポートしながら大方の家事をやっていくということの役割分担になったわけですね。

 そうしますと、週に何回か近所のスーパーに買物に行っていました。チラシを見て少しでも安いスーパーを探すというところまではしなかったんですけれども、少しでも家計に助かるスーパーを探して、日用品や日々の食材はそこで買おうという努力などもしていたわけですね。例えばプライベートブランドを買うとか。

 ちょっと若干くだらない話にもなっちゃうんですけれども、私、ヒジキの煮物が好きでして、よく晩御飯につくっていたんですけれども、料理も私がほとんどやっていたんですけれども、乾燥ヒジキを買うときに、やはり国産のが高いんですよね。輸入品を選んじゃうんです。そういったことがあったり。

 更に言えば、私、強烈な印象と申しますか記憶に残っているのが、粉の洗濯洗剤なんですね。一キロ一九八、百九十八円とかだったんですよね、私がそれこそ主夫を始めたころは。だんだんだんだん内容量八百で一九八になって、内容量一キロのままだと二百九十八円とか三百九十八円で販売されていて。そうしましたら、内容量は二百グラム減だけれども、やはり消費者心理としては一九八を選ぶんですよね。それで、二百グラム減ですから、ちょっとずつ、微妙なさじかげんで、一回の投入量を、細心の注意を払って、できるだけ八百グラムを長もちさせようと工夫、努力するんですね。まさにこれが主夫というか、家庭の知恵だったりするのかな、家事の知恵だったりするのかなとも思いながらもやっておったんですけれども。

 まさにこういうことが、今私が紹介したことがまさにデフレマインドなんでしょうかね。やはり、二百九十八円、三百九十八円は選ばない、百九十八円を選ぶんだ、これがまさにデフレマインドなんでしょうか。いかがでしょうか。

黒田参考人 デフレマインド自体は、先ほど申し上げたように、賃金、物価が上がらないということを前提にした慣行あるいは行動というものが企業や家計の中に広がっているという状況だと思います。

 御指摘の点は、デフレマインドというのか、あるいは、スーパー等の商品の値づけが百九十八円とか、米国の場合ですと九十九セントとか一ドル九十九セントとか、そういうふうによくされますし、それから、容量をそのままで値上げするのでなくて、容量を少し減らしたりすることによって実際上値上げするとか、あるいは品質を改善してよりよいものにして値上げをするとか、いろいろなスーパー等の商品戦略もあろうかと思いますが。

 あくまでもデフレマインドというのはさっき申し上げたようなことでありまして、委員が御指摘の洗剤を節約するという節約志向というものも、あるいはデフレマインドの一つのあらわれかもしれませんが、あくまでも、デフレマインドというのは、先ほど申し上げたように、価格に対する、あるいは賃金、物価が余り上がらないということを前提にした行動とか慣行、それがやはり根強く残っていて、GDPギャップがプラスに転化してずっと来ている、あるいは労働需給が非常にタイトになっている状況のもとでも、賃金、物価が経済の好調さに比べるとやや弱目であるということの一つの原因ではないかと考えております。

高木(錬)委員 日常生活の中で、今私が紹介したような話というのはごろごろしていると思うんですよね。百円ショップしかり。食パンを買うにしても、百二十八円じゃなくて九十九円を選ぶとか。今総裁もおっしゃられましたが、つつましい節約なんだと思うんです。

 少なくとも、私が子供の成長過程の中で出会った、そして友人になっていったママ友、日々の多くの家事を担っている多くのママ友たちは、大体私と同じ感覚で日々努力、苦労をされているんですよね。

 デフレマインドということがあたかも悪のように言われていた時期もあったような記憶があるんですね。全てはデフレが悪いんだ、デフレマインドが悪いんだと。

 総裁、この私が今紹介したような感覚とか購買行動、消費者心理というのが、まさに日銀がこの五年間追いかけてきた、求めてきた二%物価安定目標達成の阻害要因になっているんでしょうか。

黒田参考人 繰り返し申し上げておりますとおり、二%の物価安定目標の達成ということは、あくまでも、日銀法にも掲げられておりますとおり、物価の安定を通じて健全な国民経済の発展に資するということでありますので、あくまでも、雇用が拡大し、企業の収益も増加し、賃金が上昇するという過程の中で物価が徐々に上がっていくということを目的として、この二%の物価安定の目標を掲げて金融緩和を続けてきているわけであります。

 そうした中で、これも先ほど来申し上げておりますとおり、経済成長あるいは企業収益、雇用といった実体経済の面では非常に大きな改善が見られているわけでございます。ただ、そのもとで、賃金、物価が、実体経済の改善ぶりに比してやや弱目であるということは事実でありまして、その背景にはいろいろな要素があると思いますけれども、一つの要素としてデフレマインドというものがあるということでありまして。

 デフレマインドはいいとか悪いとか言っていることではなくて、そういう賃金、物価が余り上がらないということを前提に行動するあるいはそういう慣行というものが根強くあることによって、実体経済のかなりの改善にもかかわらず、賃金、物価がそれほど、まあ賃金も上がっていますし物価も一%ぐらい上がっているわけですけれども、それほど上昇していないという状況を説明する一つのファクターとしてこのデフレマインドというものがあるということを指摘しているわけでございます。

高木(錬)委員 賃金が上がらないことが前提となった、さまざまな企業、個人の考え方や慣行。私も、周辺を見て、人々の予想物価上昇率というんでしょうかね、上がっていく期待感があふれているという雰囲気は余り受けませんし。

 総裁は福岡県大牟田市御出身だそうで、私は高知の四万十市なんですが、地方に行きますと、各先生方、選挙区を持っていらっしゃって、御地元へ帰っていろいろ肌で感じていらっしゃると思うんですけれども、なかなかそういった期待感がどんどん大きくなっているとは考えられない、考えにくい。引き続きそういう状況が続いてるんだろうなということを各先生方も感じていらっしゃるところなんだと思います。

 今、ちょっと地域の話を話しましたが、私、昨年から財金、当委員会に所属させていただいて、全く金融業界にいたわけでもありませんし、先ほど申しましたような経歴でありますので、必死になってこの一年間、さまざまな課題に取り組んでいる、研究しているところなんですけれども、日銀が公表されている例えば展望レポートであるとか、いろいろな公表されているものを読んでいる中で、気になっていますのが、格差という言葉が全くどこにも見当たらないのが気になっておりまして。

 と申しますのは、先ほど申しましたように、地域間格差、所得格差、それから格差の拡大、格差の固定化、現下、我が国における大きな課題だと思います。格差の拡大や格差の固定化は、経済の下振れ要因にもなろうかと思います。

 格差是正となりますと政府の責任であり仕事になると思いますし、政府が出してきた格差是正対策について審議するのは我々の仕事だったりすると思うんですが、現在の経済状況の認識を分析する中で、日銀が格差というものに言及してもいいのではないかというふうに思うんですが、そこら辺の御認識はいかがですか。

黒田参考人 御指摘のとおり、地域経済を見ますと、それぞれが直面する需要の違いあるいはいろいろな制約条件などによって回復度合いにばらつきがありますし、また、人口や企業数の減少といった構造問題を抱えている地域も少なくないわけであります。また、所得に関しましては、正規雇用者と非正規雇用者の賃金格差は続いているというふうに認識をしております。

 もっとも、二〇一三年の量的・質的金融緩和の導入以降、我が国経済は息の長い回復を続けておりまして、ここ数年、景気拡大の裾野は地域的にも広がりを見せております。

 また、強力な金融緩和の継続によって経済が改善し、国民所得が増加したことのメリットは、雇用あるいは所得環境の改善などを通じて国民各層に幅広く及んできているというふうに見ております。例えば、パート等の非正規雇用者の賃金上昇についても、正規雇用者の賃金上昇率を上回るといった状況が続いているわけでございます。

 日本銀行としては、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることによって、こうした景気改善の裾野の広がりあるいは所得環境の改善を伴いながら、消費者物価の前年比も二%に向けて徐々に上昇率を高めていくというふうに見ております。

 ただ、御指摘のこういった地域格差あるいは所得格差に関する分析等も非常に重要だと思いますので、引き続きそういった面にも十分目配りをしていきたいというふうに思っております。

高木(錬)委員 ぜひ目配りしていただいて、さまざまな分析の中で日銀にも言及していただきたいところであります。

 これまでの総裁の御答弁の中に、雇用という言葉もたびたび出てまいりましたけれども、先ほど申しましたように、これまでの国会審議や総裁のこれまでの発言などを研究してきている中で、国会審議の方ですね、また気になるところがありまして、それが、平成二十五年、西暦でいくと二〇一二年の暮れに旧民主党政権から自民党に政権が移って、年が明けて一月二十二日に共同声明があり、その直後の予算委員会でのやりとりであります。

 この予算委員会の中で安倍首相が、日本銀行について、雇用に対しても責任を持っていただく、そういう認識を持ち始めた、要は日本銀行がですね、日本銀行がそういう認識を持ち始めたということはよかったという御答弁があるんですけれども、総裁、今、この安倍首相の答弁を聞いて、どのような認識をお持ちですか。

黒田参考人 まず、先ほど来申し上げているとおり、日本銀行法自体が、金融政策運営の理念として、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というふうに定めております。

 したがいまして、物価だけが上がればよいというのではなく、雇用の状況を含め、国民経済が健全に発展するような状況を目指すということが必要でありまして、日本銀行としては、企業収益や雇用、賃金の増加とともに、物価上昇率が緩やかに高まっていくという好循環をつくり出して経済の持続的な成長を続けていくということが重要であると考えております。

 そう申し上げた上で、日本銀行の責務としてはもちろん物価の安定ということでありますので、二〇一三年の一月に政策委員会で定めました二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということに向けて、最大限の取組を行っているわけでございます。

高木(錬)委員 非常に踏み込んだ重い発言、答弁だと思っているんですよね。雇用に対しても責任を持っていただく、そのような認識を持った、それはよかったと。非常に違和感を感じて読ませていただきました。

 話があちこち行って恐縮なんですけれども、次に、共同声明についてちょっと、まさに浅学非才でありますので、さまざま教えていただきたいと思うんですけれども。

 この共同声明に基づいて、さまざま、この間、政府、日銀一体となって政策連携を強化して取り組んでこられて、消費者物価の前年比上昇率二%という物価安定目標に向けて取り組んでこられたんだと思いますが、この共同声明の中にある、「日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識」という記述があります。

 「幅広い主体」というのは、具体的にはどういうことを指していらっしゃるんでしょうか。

黒田参考人 この共同声明自体が政府と日本銀行の政策連携ということで、デフレ脱却と持続的な経済成長実現のためにどのような政策をそれぞれがとっていくかということでございます。

 その第二パラグラフで、まず、「日本銀行は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することを理念として金融政策を運営するとともに、金融システムの安定確保を図る責務を負っている。」と。そう言った上で、御指摘の「日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している。この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする。」という文言になっているわけであります。

 この共同声明全体をごらんになっていただきますとおわかりいただけると思いますが、我が国の経済の長期的な成長力というのは、やはり、政府による成長戦略の推進、あるいはそのもとでの女性や高齢者による労働参加の高まり、企業による生産性向上に向けた取組などが続く中で次第に高まっていくというふうに考えられるわけでありまして、その場合、物価安定の目標の実現に向けて金融緩和の効果も一層強まることが期待できるわけでありまして、共同声明における「幅広い主体の取組の進展」ということは、こうした状況を指しているというふうに理解をしております。

 ただ、あくまでも物価の安定は日本銀行の使命でありまして、物価安定の目標の実現のために必要な政策を推進していくということはやはりみずからの責務であるというふうに考えております。すなわち、政府の成長戦略あるいは成長力の高まりということはこうした目標の実現をサポートしてくれるわけですが、やはり日本銀行はみずからの責任において物価安定の目標の実現に全力を尽くしていく方針でございます。

高木(錬)委員 まだ一年たってもなお、なれないもので、たくさん質問を用意させていただいております。恐縮です、本当に。

 時間がそろそろ迫ってきているんですけれども、今質問させていただいた共同声明を始め、先ほども触れました二〇一三年の予算委員会を始めとするさまざまな国会での場面での首相の発言が、ある意味、今となってみれば、ある種の縛りと申しますか、いろいろな制約になっていて、機動的なと申しますか柔軟な政策運営ができなくなってしまっているんじゃないかなという印象を持つんです。

 二〇一二年に政権がかわって、ある種の高揚感とかもあったんだとは思うんですが、相当踏み込んだ、私などは、非常に冷静さを欠いた答弁なども首相には見受けられて、そのせいでいまだに縛られているのではないかと。現状、五年間、さまざま取り組んでこられたのに、二%を達成しない。

 そもそも、先ほど来総裁が繰り返し御答弁してくださっているように、あくまでも物価の安定であり、持続的なまさに物価の安定であり、必ずしも上昇ということに拘泥しなくてもいいのではないかということだったり、あるいは、もう五年続けてこれだけの状況になってしまいますと、二%に上げてしまったときの大きなリスクであるとか、そういうことを考えますと、何と申しましょう、出口のデの字も言えないとは思うんですけれども、まさに柔軟に政策転換と申しますか、していった方がいいのではないかと思うんですけれども、なかなかそこが、この共同声明や当時の安倍首相の予算委員会等での御答弁により、制約を受けているのではないかと思って仕方ないんですね。

 時間が参りましたので、何か済みません、まとまりがないんですが、一つだけ最後に聞かせてください。

 財政も、大変、日銀としては、総裁としては注視しているところだと思いますが、平成三十一年政府予算案がまだ閣議決定されませんで報道ベースでありますが、キャッシュレス決済時のポイント還元に五千億使うという報道を私は見て驚愕したんですけれども。

 これだけプライマリーバランスの先送りや健全化に向けた動きが先送りされていて、遅々として進んでいないということも、大きな、日銀としてもリスクだと認識されていると思うんですけれども、そういった報道ベースの話で恐縮ですが、ポイント還元は二%と当初は想定してその準備をしていたのを、これまた安倍首相の五%という一言によって五千億まで膨らむことになろうかという報道でありましたけれども。

 財政健全化を目指す、それも日銀として注視している中で、この三十一年度予算案、しかもこの五千億の使い方、消費税増税対策、今どのように考えていらっしゃいますでしょうか。

黒田参考人 消費税率の引上げ、消費税対策、あるいは全体としての財政運営については、常に申し上げているとおり、政府、国会の責任において行われるものであると認識しておりますので、具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、先ほど来申し上げておりますとおり、消費税引上げの影響については、来年十月の税率引上げ時の家計のネット負担は、前回に比べてかなり小幅なものになっております。

 もっとも、税率引上げの影響はその時々の経済情勢や企業や家計のマインドにも左右されるものでありますので、政府が財政規律に配慮しつつ駆け込み反動減の平準化のために必要な施策に取り組むことは、税率引上げの影響を軽減し、経済の改善基調を持続することに資するというふうに考えておりますが、具体的な、この案について私からコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

高木(錬)委員 終わります。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。前原です。

 まず、世界経済の見通しにつきまして、先ほどの同僚委員とは重複しないように質問させていただきたいというふうに思います。

 グローバル金融市場では、世界的な景気減速懸念が高まっております。背景にありますのは、米中摩擦の深刻化、それに伴う中国の景気減速。最終的には、世界の景気を減速させるとの見方があります。

 先ほど総裁が、IMFの見通しについて言及されました。下がっても三・九から三・七だから、それほど大した話ではないというようなニュアンスで受け取ったわけでありますが、下方修正は二年ぶりなんですね。

 私は、きょうお配りをしている資料の一ページ、まず上をごらんいただきたいんですけれども、これが予測値でございます。中国、日本、アメリカの経済成長率、右肩下がりでこれから下がっていくという形になっているわけでありますが。

 特に総裁には、この下の米国の長短金利の推移を見ていただきたいんです。長短金利が逆転する。普通なら、長期金利がより金利が高いというのが当たり前のことであります。しかしながら、アメリカの債券市場では、逆イールドという逆転現象が起き始めているということ、これが二番目の図表として示したわけでございますけれども、二〇〇〇年以降でも二回起きているんですね。二〇〇〇年以降では、二〇〇〇年の前半と二〇〇五年の末、これが二回、逆イールドが起きておりまして、この逆イールドの後はいずれも景気後退になっている、こういうことでありますが。

 この逆イールドが起きている中で、アメリカの経済というものに絞ってお聞きをしたいというふうに思いますけれども、逆イールドが起きたことに対する総裁の見立て、見方をお話しいただきたいと思います。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、イールドカーブがフラット化してきて、米国において五年物国債の利回りが二年物国債を下回って、いわゆる逆イールドとなったということは承知しております。

 また、御指摘のとおり、米国においては、長短金利の逆転が起きた後に景気後退入りしたことが何度かありまして、マーケットの一部では、将来の景気後退のリスクを指摘する声も聞かれております。

 ただ、昨今のイールドカーブのフラット化あるいは今回の逆イールドにつきましても、米国のFOMCでは、政策金利の緩やかな上昇予想、それからFRBの資産買入れによるタームプレミアムの低下など複数の要因があって、必ずしも過去の経験則が当てはまるとは限らないとの指摘もあるわけであります。

 いずれにいたしましても、FRBは米国の経済、物価情勢などを見きわめながら適切な金融政策運営を行っていくというふうに見ておりますけれども、御指摘の要因も含めて、米国の経済が今後どうなっていくのかということについてはかなり幅広い議論が行われておりまして、景気回復が相当長く続いているとか、あるいは大幅な減税の効果が二〇一九年ないし二〇二〇年の前半までにはなくなってしまうということで、中長期的な米国の潜在成長率は二%程度と言われていますので、現在の三・五%成長というのはいつまでも続けられないわけでして、だんだん二%に収れんしていくのではないかと。ただ、その時期とかテンポについては、まだいろいろな議論があるというところでございます。

前原委員 今週のニューヨーク・ダウというのは、上がって下落し続けているということでございます。日経平均もかなり下がって、きょうは午前中は若干上がっているようでございますけれども。

 そのダウ平均が下がり続けている二つの大きな要因というのは、一つはこの逆イールド、もう一つは、今から質問いたしますけれども、ファーウェイのCFOが拘束される、こういうことの中で、米中経済摩擦というのがより深刻になっていくんじゃないか、こういう見立てがあっているわけであります。

 実は、この国会で安保委員会でも私質問をし、外務大臣や防衛大臣ともこのことを議論したわけでありますけれども、総裁に、米中の今の問題というもの、今後の金融政策を取り仕切られる責任者として、米中の貿易摩擦をどう見ていくのかということについてお伺いしたいと思うんですが、まず私の意見を申し上げたいというふうに思います。

 もうこれは経済摩擦ではない、私は覇権争いだというふうに思っています。ただ、新冷戦だと言う方もおられますが、これはイデオロギーの闘いではありません。単なる軍拡競争だけではないということで、米中というのは、世界第一の経済大国、第二の経済大国で、相互依存性が極めて強いものですから、お互いが冷戦ということにはなかなかならないだろうというふうに思いますが、覇権争いの色彩が極めて強いわけですね。

 例えば、もともと、ことしで改革・開放四十年でありますけれども、中国のGDPは二百倍になっている。貿易量も二百倍になった。公表されているだけで、軍事費というのは六十倍になっているんですね。その上に、一帯一路、海のシルクロード、陸のシルクロード、そして中国製造二〇二五。製造業ではまだまだ日本や欧米におくれをとっている、先端の技術において勝つということが世界の覇権を握ることになるし、また、先端技術が軍事に結びつくと軍事の覇権も握れる、こういう大きな戦略に基づいて行われている。

 それでアメリカは、それに対する警戒感を強めると同時に、技術を窃盗しているんじゃないか、盗んでいるんじゃないか、あるいは不当に国家が私企業に対するてこ入れをし過ぎているんではないかということ、そして、今回、ファーウェイとかZTEというものを、米政府、米議会、米軍、あるいはオーストラリア政府はもうそれを決めたわけでありますけれども、要は、去年できた国家情報法という中国の法律が企業に対して情報を提供しろというものを定めていますので、結局、ファーウェイやZTEというものを使うと、全て情報が中国政府に漏れてしまうんじゃないか、こういうようなさまざまなコンフリクトというか、覇権争いの中での大きな問題が生じているということで、かなり私は、一過性のものではなくて構造的なものである、こういう認識を持っているわけでありますが、総裁の御見解をいただきたいと思います。

黒田参考人 私も実は委員と類似した懸念を持っているわけですが、中央銀行総裁として何か特別な知見があるわけではございませんので、最近お会いした中国の方あるいは米国の方の御意見を踏まえて申し上げますと、貿易紛争というか、米中の二国間の貿易収支の不均衡というものが最初に出てきて、それが大きな議論になり、相互で報復関税をかけるというようなことになってきたわけですが、その後、御案内のペンス副大統領の講演というのが非常に包括的に米国としての対中懸念というか、そういうことを示されたということも、これも米国や中国でよく認識をされておりました。

 ただ、一方で、そもそもの始まりがやはり二国間の貿易不均衡ということでありますので、それに対応する対策というものを中国が提示し米国が受け入れるということになれば、この関税の引上げ競争というようなものはある程度収束する、あるいは完全に収束しなくても鎮静化していくという可能性は、私は依然としてあるのではないかと。

 今回のブエノスアイレスでの米中首脳会談で関税の引上げを九十日間ストップして交渉するということになったわけですので、そういう可能性は依然としてあると思いますが、御指摘の先端技術争いとか地政学的な話とか安全保障の話とかいう話になってきますと、これは容易に解決できる話でもないし。

 ただ、逆に言うと、潜在的にあった問題が顕在化して米中で冷静な話合いが行われれば、世界経済に何か異常な事態が起こるということは避けられるのではないかと思いますが、ただ、後者の問題は、御指摘のような、覇権争いと言うのがいいのかどうかわかりませんが、貿易問題を超えた非常に大きな問題ですので、これはなかなか簡単には解消されないのかなという感じを持っております。

前原委員 私も、先ほど申し上げたように、世界第一の経済大国、第二の経済大国ですから、余り首を絞め合うと両方が失速する、世界全体が悪い方に行ってしまうということの中で、ある程度の言ってみれば圧力と妥協、こういうものは、特に、今総裁がおっしゃったように、関税の面では出てくると思います。

 そして、貿易、アメリカからすると赤字、アメリカ全体の貿易赤字の四七%が中国です。二番目がメキシコの八・六ぐらいですか、日本が三番目で八・一ぐらいだと思いますけれども、半分が中国なんですね。ですから、ここの部分についてはある程度の話合いというのはできるというふうに思いますけれども、ただ、やはり先端技術、軍事、そしてそれを、アメリカから言わせると、先ほど十月四日のペンス副大統領のハドソン研究所での演説の話をされました。あれは、財界もアメリカの民主党もみんな賛成なんですね、あの演説の内容については。そういう意味では、かなり根深いものになっていくということの中で、話をもとに戻しますけれども、経済の見通しというのはなかなか難しいものもあるのではないかという認識の中で、引き続き質問をさせていただきたいと思うんです。

 先ほど総裁が、FRBの話をされました。三・五%ぐらいまで政策金利を上げていくのではないかというふうに見られていたのが、十一月二十九日に公表した米連邦公開市場委員会、FOMCの議事要旨では、段階的な利上げという声明文の文言は次回以降の会合で見直す必要があるだろう、こういう言い方をしているんですね。つまりは、四半期置きに機械的な利上げをしてきた、しかし、これを一時停止する可能性があるということであります。

 そして、パウエル議長自身も、十一月二十八日の講演では、金利は中立水準、つまりは、景気を過熱もさせないし冷やしもさせない、一番いい金利水準を中立金利と言うそうでありますけれども、三%ぐらいじゃないか、こういうことで、利上げの打ちどめ時期が近いということであります。

 したがって、十二月のこの会合においては、恐らくマーケットはもう利上げするということは織り込んでいるというふうに思いますが、それが現段階においては最終的になるのではないかというふうに思っているわけであります。

 このアメリカの金融政策のいわば修正、三・五まで機械的に上げていくということの中で、米中貿易摩擦そして世界経済の減速感、この中で言ってみれば修正するということでありますけれども、このアメリカの金融政策の修正が世界や日本、日本の中央銀行の総裁でいらっしゃるわけですけれども、それがどういう影響を与えるか、その点についてお答えいただけますか。

黒田参考人 まず、FRBの金融政策自体について直接的なコメントをするのは避けたいと思いますが、御案内のとおり、米国経済は現状極めて好調でありまして、失業率は四十数年来の低さ、そして物価上昇率もほぼ二%程度で、目標をいわば達成しているということですので、御指摘の中立金利に次第に政策金利を近づけていくということは当然であろうと思いますし、前任のイエレン議長のときからそれが始まって、現在のパウエル議長のもとでそれが続いているということであります。

 ただ、そういう状況になってきますと、目標からすごく離れているときはどんどんやっていけということなんですけれども、もう目標はほぼ達成されていて、そして、そういう状況で市場の動向とか経済の動向を見ながら微妙な金融政策の運営をするという時期に来ていますので、余り、どんどん上げますとか、どこまで上げますとか言えるような状況でなくて、むしろ、目標はほとんど達成されているので、非常に微妙なかじ取りが必要となっているというときだと思います。

 ですから、御指摘の中立金利というものについても、実はパウエル議長は、そうかちっと決まるものでなく、経済モデルでいろいろ推計して、経済成長率とかその他から導き出される数字ですので、一義的に、確定的に決まるものではないということも言っておられるので、そういう、全体として目標が達成されて、微妙な時期に来ている中で、経済とか物価とか金融情勢を見ながらかじ取りをしていくという、ある意味で難しいというか微妙な時期に来ているということを示しているのではないかと思いますので、それがどういう影響を日本に及ぼすかというのはなかなか難しいんですが。

 一方で、これまで非常に懸念されていたのは、米国がどんどん金利を上げていく、そうするとドルがどんどん上がる、そうすると新興国から資金が流出する、新興国のいわゆる金融危機までいかないにしても、防衛的に金利をどんどん上げていかなければならないということになるのではないか、それが新興国経済にマイナスの影響が出るんじゃないかということが非常に懸念されていたわけですけれども、その話はむしろ和らいでくる。

 他方で、今言ったような微妙なかじ取りの中で、ドルの対円、対ユーロといった先進国の通貨との関係がどういうふうになるのか、ここはまた微妙な感じになってきているとは思うんですけれども、全体としてそういった適切な対応をされていくこと自体は、まさに米国経済が順調で物価安定目標も達成されているということですので、それ自体が何か日本にとってマイナスになったり、あるいは日本の金融政策で何か対応しなくてはならないということにはならないと思いますが、ただ、そういう微妙な状況であり、かつ、米中貿易摩擦とか、その他ブレグジットとか、ほかの不確実要因もありますので、そこは十分注意して見ていきたいと思っております。

前原委員 アメリカの中央銀行、そして今からヨーロッパの中央銀行の話を伺って、その後、いよいよ日本の金融政策についてお話をしたいというふうに思うのであります。

 なぜ私がこういう話をしているかというと、もちろん世界経済がどうなっていくかという懸念が大前提にありますけれども、これだけ経済がずっといい状況が続くというのはなかなかないだろう、いずれは景気後退が来るだろうというふうに考えて、そして、アメリカはイエレンさんのときにテーパリングを行って、そして今、金利を上げるということをやってきていて、そして最終段階ぐらいかなと、今、黒田総裁がおっしゃったところまで来ている。

 もう一つ、ヨーロッパ中央銀行、ECBですけれども、ECBにしても、日本銀行と一緒に金融緩和をやっているのかなと思ったら、もう、この表三を見ていただくと、資産購入額というものを減額し始めているんですね。減額し始めていて、そしてことしの十二月では、ドラギさんは、テーパリングを終了する、こういうことを言っているわけです。

 私がちょっと総裁に見解を伺いたいのは、六月に発表しているんですね。六月に、十二月のテーパリング終了を目標とすると発表しているんですけれども、この六月の前の五月というのは、イタリア国債の利回りが急上昇したり、それから、それがスペインやポルトガルなどの周辺国にも波及するということで、極めて不安定な状況がヨーロッパにあったわけですけれども、それでも気にせずにテーパリングに行くということからすると、私は、やはり将来的な金融政策の幅というものを持っておきたいという意思のあらわれではないかというふうに思います。

 ECBが、もう、いろいろなことがあってもとにかく十二月にはテーパリングを終了するんだと言うような背景には何があるのか、どういう考え方であるというふうに認識されているか、お答えいただきたいと思います。

黒田参考人 まず、ECBは、物価安定目標は二%をちょっと下回るぐらいのところというインフレ率の目標について、それに向けて持続的に収れんしていくという見通しに立ってテーパリングを始めているわけであります。

 具体的には、委員御指摘のとおり、二〇一八年十二月でネットの資産買入れは終了する、ただ、高いバランスシートはまだ維持したまま、それから、政策金利は来年の秋までは少なくとも上げない、秋に上げるとも言っていないわけですけれども。ということで、あくまでも物価安定目標に相当近づいてきて、しかも、もう収れんする見通しが立っているという中でそういうことを検討しておられるということだと思います。

 それから、イタリアの国債の金利の上昇というものについては、ヨーロッパの中央銀行の中でいろいろ議論がされたようですけれども、今のところ、ほかのところに波及は見られていない。

 それは、結局、イタリア独自の、イタリアの現在の政権が欧州委員会のアドバイスにもかかわらず財政赤字を拡大するということについてマーケットが懸念して、それも、イタリアの方が言っておられますけれども、これでデフォルトリスクが高まったということでイタリア国債の価格が下落しているのではなくて、今の政権がユーロから離脱するというおそれがあるんじゃないかということで下落しているという分析になっておりますが、今の政権はユーロから離脱する気はないということを言っていますし、その後、ある程度イタリア国債の金利も落ちついてきておりますので、少なくとも、これはユーロ圏全体の問題ではなくて、あくまでもイタリアの財政に関する問題ということなので、先ほど申し上げたような物価安定目標に向けて持続的に収れんしていくという目標の中で始めておられるということだと思います。

 その中に、将来の景気後退に備えて政策余地を残しておきたいという気持ちがあるかどうかわかりませんが、あるかもしれません。ただ、そういうことは言っておられません。

    〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕

前原委員 やはり、さまざまな状況の中で、バランスシートはまだまだおっしゃったようにECBも高い状況ですし、FRBも高いですね。高い状況の中で、しかしながら、金融政策の余地を広げていこうという中で取り組んでいる。もちろん、それは慎重に、中央銀行の政策目標というのは物価安定ですから、これをしっかりと達成しながら、しかし、それをうまくそろりそろりとやってきたということだと私は思います。

 さて、その中で、いよいよ日本の話をさせてもらいたいというふうに思うわけでありますが、ちょっと耳の痛い話をまずさせていただくと、七という表を見ていただきたいんですが、二%の物価安定目標は何回先送りされたのかということであります。何回したというふうなことを意地悪く聞くつもりはありません。つまり、ずっと二%の目標ということの中で先送りをされてきたということであります。

 政策を変えてこられましたよね。今、総裁が日銀総裁になられてから六年目に突入をしているわけでありますが、総裁になられる前のターゲットは金利でした。それを、総裁になられた後に要は量に変更して、異次元の金融緩和、量的緩和というものをやられて、そして、二〇一六年の一月には今度はマイナス金利の政策を導入されて、金利ターゲットを復活するということでありますが、それから、その年の九月に、イールドカーブ・コントロールという形で、操作対象は再び量から金利へということになってきたわけですね。

 ですから、当たり前だということなのかもしれませんが、グラフの四をごらんいただきたいのでありますが、この赤が国債購入額のネット増をあらわしたものでありまして、先ほど、二〇一六年の九月というのが政策変更、イールドカーブ・コントロールが導入されてからでありますけれども、そこから見事に赤は右肩下がりで下がっていって、八十兆円という、ふやしていくというものが今、四十兆円ちょっと、半分近くまで減っていっているということでございまして、いや、これは量から金利に変えたんだよということで説明はつくんですけれども。

 私が伺いたいのは、ことしの七月に微修正をされましたね。いわゆる長期金利をゼロにするということで、今まではプラスマイナス〇・一%というのを、総裁は会見の中で倍とおっしゃったんですね。倍ということは、プラス〇・二、マイナス〇・二の幅で許容する、こういうことですね。

 五のグラフをごらんいただきたいわけでありますが、ちょうど、五のグラフというのは、微修正を行われて、いわゆる許容範囲を倍にすると言われたわけですけれども、許容というのは上に行ってもいいし下に行ってもいいわけでありますが、完全にマーケットはいわゆる金利上昇というものを容認したんだねという形で、この金利は上昇しているわけですね。

 先ほど、アメリカのFRBが機械的に三・五まで上げようとしていたのが、もう打ちどめじゃないかということの中で、今、長期金利は下がっていますね、アメリカの。それで逆イールドが起きているという先ほどの説明がありましたけれども、そういうことで若干今は下がっているんですけれども、そういうものがなければ、国債のいわゆる保有残高も減っているし、ネットではふえていっているんですよ、いわゆる購入額が減っていっているし、金利の上昇もある意味で容認しているということになると、これは実質的にはテーパリングをやっているということになるんじゃないですか。

黒田参考人 二〇一八年七月に行いました政策決定の一番の肝というか基本は、現在の大幅な金融緩和を粘り強く続けていくと。それは、経済が好転してプラスのGDPギャップが続いている、労働市場も極めてタイトである、ただ、その中でも物価上昇率はまだ一%、そして予想物価上昇率は、一旦落ちたものが上がってきたんですが、このところずっとフラットだという状況ですので、まだ相当長く金融緩和を続けなければならないという状況のもとで、二つのことを示したわけです。

 一つは、フォワードガイダンスとして、現在の極めて低い長短金利を当分の間維持しますと言うことによって、早い出口の議論とかそういうことはありません、むしろ、今の非常に低い金利を当分の間続けますというふうにフォワードガイダンスで約束したということが一つ。

 もう一つが、委員御指摘のとおり、資産買入れについて弾力化いたしまして、国債の金利、イールドカーブ・コントロールでは十年物国債金利をゼロ%程度というふうにしてきたわけで、これは変わっておりませんが、ことしの前半はややリジッドになって、極めて変動が少なくなって、経済とか物価とか、あるいは国際的な金利の動きにはほとんど反応しない、値幅が非常に小さくなったものですからしばしば取引が成立しない、需要があっても供給がない、供給があっても需要がないということで、そういうことが何度も起こったわけでして、これは国債市場が機能がちょっと低下しているということでしたので、これまでプラスマイナス〇・一%の狭い範囲で動いているのはいかがか、もっと幅広く上下してもゼロ%程度というイールドカーブ・コントロールが守られる限りは問題ありません、例えば従来の倍ぐらいになっても問題ないということを申し上げたわけでして、あくまでもゼロ%程度というイールドカーブ・コントロールの操作目標は変えずに、しかも、フォワードガイダンスでそういう低い金利を当分続けますと言った上で、そういう、より国債市場が機能を発揮するようにということにしたわけでございます。

 その後の状況を見ますと、国債の取引はやや活発化し、取引が成立しないという日も極めて少なくなっております。それから、金利も、御指摘のように上がったり下がったりしておりまして、その多くは、国内経済の動きもさることながら、国債金利の動きにかなり反応するようになっているということでありまして、その限りでは、国債買入れについて弾力的にし、ゼロ%という目標は変えずに国債市場の機能を改善するということは一定の成果を上げたと思いますし、それ自身はあくまでも現在の強力な金融緩和を長く続けるということをしっかりしたものにするために行ったということでございます。

    〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕

前原委員 以前、総裁とは議論させていただきましたけれども、私は二〇一六年の九月の政策変更というのは一定評価をしているんです。つまりは、量的拡大をやっていると限界が近づくということの中で、量から金利へと政策目標を変化されて持続可能性を高められたということについては私は評価をしているんですが。

 私が申し上げたいのは、二%の物価目標ということを言って、本来であればそれを実現をするということを目標にされているわけですね。何回も何回もそれを先送りされている。そして、それがいよいよできるというふうなことのいろいろな条件が整っているということをおっしゃるのであれば、いわゆる買入れ価格が減るにしても、金利というものについて、その幅を倍にする、そうしたら、金利が上がっているということになると、誰がどう見たって、国債の買入れについてはいわゆる減少しているし、そして金利の上昇も認めているということになったら、これはテーパリングと言うんですよ。

 本来であれば、二%の物価目標に到達するためには、むしろ追加緩和をする。日銀の議事の中には、そういう主張をされている方もおられますよね。本来ならそうしなきゃいけない。

 でも、今総裁がおっしゃった中で、一つの要因として、いわゆる副作用として、国債市場の機能低下をしたんだ、したがって、そんなに追加緩和どころじゃないんだという話だったと思いますけれども、しかし、国債の回数とか、何か変えられたんですよね。ということで、弾力化をされる中で、国債市場の機能低下というのは一旦は食いとめられていると私は思うんですね。

 だったら、二%に上げるために、こういう金利についても、さらなる、二%に到達するような、コミットメントされる、フォワードガイダンスされている以上は、それに対しての行動をとられたらいいのに、なぜとられないんですか。

 そして、言ってみれば、こういう、はたから見たら完全にテーパリングの状態になっているということを放置していて、でも、口では二%の物価上昇を実現しますということを言っていたら、この人、本気でやるつもりはないんだなというふうに思っちゃいませんか。

黒田参考人 そこは、七月に先ほど来申し上げているフォワードガイダンスそれから国債買入れの弾力化というものを決めた直後に、委員御指摘のような誤解があったと思うんですが、変動幅を大きくするのを許容するというのは、経済とか物価とかあるいは金融市場、国債金利の動きなどを反映して変動幅が大きくなるのが当然なんですけれども、そういうことでなくて、これはむしろ金利引上げを容認するというふうなマーケットの一部に見方があって、金利が急上昇するおそれがあったので、指し値オペを何度かやって、そういうものは否定することははっきりさせておりますし、そうした中で、十年債の金利の動きも上下していますので、その上下の動きは、基本的に、今、国内経済や特に国際的な金利の動きにフォローして変動が大きくなっているということなので、それ自体は、国債市場の機能を改善する一方で、ゼロ%のイールドカーブ・コントロール自体はきちっと維持されている。

 そのもとで、いわばもう内生変数になっている国債買入れ額が、確かに年率でいうと半減ぐらいしているわけですけれども、ゼロ%程度という十年物国債の操作目標はきちっと維持されているということで、何か、いわゆる、外国の人が時々ステルステーパリングではないか、こっそりやっているんじゃないかというような議論がありますけれども、私どもはそういうふうには全く考えておりません。

前原委員 ステルステーパリングというか、実際、見たら、金利もそして国債買入れもテーパリングに見えているわけです。そして、金利も、倍とおっしゃったのは、もうちょっと上げていいんだなとみんな思っているわけです。一部じゃないです、思っている。

 さまざまなこういう金融政策をやっていく中で、もちろんトライ・アンド・エラーだと思うんです。試行錯誤だと思うんです。そして、いろいろ先ほど、僣越ながら評価をすると申し上げたように、量から金利に変えられて、そして持続可能性を高められたということについては一定の評価をしながらも、ただ、問題なのは、やはり一番初めに二年で二%と言っていたのが、もう六年ですよ。ならない。ならないし、それをやろうとしたら、さまざまな副作用が出てくるということがわかってきたわけじゃないですか。

 その一つが、今総裁がおっしゃった国債市場の機能低下ですよね。これは運用を弾力的にするということでやられている。もう一つ、おっしゃらなかったけれども、一番大きな問題が、副作用が起きているじゃないですか。それは、金融機関のいわゆる収益性の悪化ですよ、金融機関の。これが最大の問題じゃないですか。つまりは金融機関の、銀行の六割が本業赤字ですよね、今。

 こういうことの中で、結局は、言ってみれば、二年で二%という無理をしても副作用が出てきてなかなか難しいねということの中で、二%には到達しないけれども、うまく、まあ何とかということで今維持されているわけじゃないですか。

 私は、先ほど、ステルステーパリングという言葉じゃなくて、やはり二%の口先介入というのはやめられるべきだと思いますよ。二%というのは諦めない、中長期の目的として諦めないけれども、しかしデフレはよくない、したがって、一%近傍の物価に何とかコントロールする。そのための現実的な、先ほどFRBもECBも申し上げたとおり、景気後退というのは必ず来るんですよ。日本の経済のファンダメンタルズが今いいとおっしゃるのであれば、だったら、余地を残すというようなことを堂々と言う。それは、まずは掲げられたものを少し変えて、中長期の目標にされて、そして、デフレはよくないのでコミットメントし続けますということでいいんじゃないですか。いつ達成できるかわからない二%というものは中長期の目標なんだとおっしゃったらどうですか。

黒田参考人 現在の物価安定の目標というのは、二〇一三年の一月に金融政策決定会合において二%の物価安定目標を定めて、それをできるだけ早期に実現するということを決定しているわけです。それを反映して、政府と日銀の共同声明においてもそれがうたわれているわけでございます。それ自体は現在も維持されているし、変える必要があるとは思っておりません。

 ただ、それを踏まえて二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入した際は、二年程度を念頭に置いてということでやったわけです。そのときの考え方は、できるだけ早期に実現するということであっても、ある程度タイムスパンがわからないと、物すごく離れているわけですから、当時、デフレで、毎月〇・五から〇・七%ぐらい物価が下がっていた時期ですので、非常に離れている。それを、二年程度を念頭に置いて、このくらいのことをやれば、他の需要に比して一定であれば、二%になるだろうということで、リバースエンジニアリングみたいなものですけれども、ああいう大胆な金融緩和政策、量的・質的金融緩和政策というのを導入したわけですね。

 ただ、その後、二〇一四年の夏には確かに物価上昇率も一・五%くらいになり、予想物価上昇率もそれに近いところまで上がったんですが、御承知のような消費税引上げ後の消費の低迷が二四半期続いた。それよりも大きかったのは、その夏から始まった、石油価格が下落していくわけですね。百十ドルぐらいから、最終的には一年半かかって三十ドル以下に落ちるわけですが。それが非常に大きな影響を及ぼしてきたので、それに対応して、量的・質的金融緩和を拡大したり、マイナス金利を導入したり、いろいろしたわけですが、それによってデフレでない状況になり、また、経済も順調に回復して、緩やかな成長を続けているわけですが。

 先ほど来申し上げているとおり、いわゆるデフレマインドというか、賃金、物価がそれほど上がらないということを前提にした行動や慣行が企業や家計に根強くあるという中で、二年程度というのはもう外しているわけですね。できるだけ早期にということを、二〇一三年一月の政策決定会合で決めたことに従って今もやっているということであります。

 そういった面で、御指摘の、あのときは二年程度と言っていたのに、もう五年半かかってまだ達成できていないではないかということについては、私自身も残念だと思いますけれども、それぞれの時期にいろいろな経済状況、ショックがあって、それに対応して、できるだけ早期に達成できるような措置はとってきたと思っております。

 今のところ、現在の政策を継続することによって、プラスのGDPギャップを続け、タイトな労働需給を続けていけば、賃金、物価も上昇していって、物価は徐々に二%に近づいていくという考え方に立っているということでございます。

前原委員 時間がなくなってまいりましたので、最後の質問通告はちょっとあわせてさせてもらいたいんですが、若干本音を今おっしゃったと私が思っているのは、政府と日銀の共同声明、これは私が経済財政担当大臣をしているときに、アコードのようなものをということで、それをリバイスされたわけでありますが、そこに書かれちゃっているんですね。

 ですから、そこがやはり一つの、もちろんそれは変わりなくやっていくよということですが、もう誰もが二%を本気で達成しようなんというふうに思っているとは思わないんですね。だって、もう五年半、六年近くたってできていない、なかなかこれからも厳しい、世界経済は減速するんじゃないか、こういう状況ですよね。それは共同声明に縛られている。

 まず一つの質問は、この共同声明というのは見直すべきとは思われないかということが質問の一つ。

 もう一つは、逆に言うと、これから景気後退になった場合に、非常に日銀の場合は限られた施策しか残っていないと思うんですけれども、何があるんだろうかということなんですが、もう一遍、量的拡大に行きますか、あるいは金融機関に極めて不評な、体力をおとしめるような、マイナス金利の深掘りをやりますか。あるいは、もう一つ現実的なのは、複利金利、今〇・一ですね。

坂井委員長 申合せの時間が超過しております。

前原委員 はい。

 これを下げる、こんなことが考えられると思うんですけれども、まず、共同声明というのはこのまま続けるということでいいのか。それとも、景気が減速したときに、追加緩和ということの要求が私は出てくると思いますよ、そのときに何がとり得るのか。その点についてお答えください。

坂井委員長 黒田総裁、簡潔にお願いをいたします。

黒田参考人 はい。

 政府との共同声明については、変更する必要があるとは考えておりません。日本銀行自身が決定した二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するというために必要な金融政策を引き続きとっていきたいというふうに思っております。

 それから、仮に、内外のいろいろなショックで景気後退あるいは不況になったときにどういった対応ができるかということでありますけれども、長短金利操作つき量的・質的金融緩和の導入時に公表したとおり、手段としては、確かに、政策金利の引下げあるいは長期金利操作目標の引下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速などいろいろ考えられますけれども、具体的な手段については、予断を持つ必要もありませんし、やはりコストとベネフィットをよく考えて決めないといけないと思いますが、現時点でそういったことが必要になるというふうには考えておりません。

前原委員 終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 無所属の会の野田佳彦でございます。

 黒田総裁には、ことしの四月のこの衆議院財務金融委員会において、一時間ほど質疑をさせていただきました。そのときは、異次元の金融緩和のもろもろの副作用についてと、それから、出口をめぐる議論をする際のいろいろ環境整備にかかわるようなお話をさせていただきましたけれども、きょうはちょっと持ち時間が二十分なものですから、通告をしたもの全てたどり着かないかもしれません。

 特に、最初の通告は、前原さんと同じように、米国経済の先行きについてお尋ねをするつもりだったんです。これも、長短金利の逆転という、もしかすると米国経済が後退局面に入っていく予兆ではないかという議論がありましたので、その心配をしておりましたので御見解をお伺いをしようと思いましたが、これはカットします、時間がありませんので。

 この問題から最初に入ろうと思いましたのは、いずれにしても、来年の夏には、順調にいったら米国経済は拡大を十年続けることになる。そろそろ後退局面というのが見えてくる時期なんだろうと思います。あるいはそれを覚悟しなければいけない。

 世界経済を牽引してきた米国経済が失速をしていくならば、当然、日本を含めて世界にも大きな影響を及ぼす。そのときの問題意識は、次の利上げはアメリカはやるかもしれませんが、そのサイクルはもういよいよ短くなってきて、さっき、微妙な時期ということを多用されておりましたけれども、そういう時期に入ってきた。とすると、日本の出口はどうなるんだろうということなんです。

 世界経済が減速し、特にアメリカ経済が減速をしていくと、日本が異次元の金融緩和というこの金融政策を正常化させていき、金融緩和を縮小していくという出口を行っていくチャンスを逃すことになるわけですよね。チャンスを逃す。

 そうすると、次の景気拡大局面まで待たなければならないとすると、この大胆な金融緩和が長期化をする、粘り強くというお話をさっきからずっとされていますが、長期化せざるを得なくて、ずっとゼロ金利に固定化されたまま。動けない状態。

 まさに金融政策の選択肢が狭まる危機感を持っているから、まず米国経済の行方についてお聞きしようと思いました。問題意識はそういうことでございます。

 この問題はおいておいて、この出口をめぐる議論で、私は、とても気になった発言、これは黒田総裁ではありません、安倍総理の発言なんですね。

 自民党の総裁選挙中だったと思います。私の任期中のうちにやり遂げたいと出口について発言をされたんです。この発言は、総裁はどう受けとめられましたか。まず率直に御感想をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 なかなか、総理の御発言に私がコメントするというのは難しいということを御理解いただきたいんですが、御指摘のその総理の御発言の後、総理自身が、十一月五日の国会答弁で、この三年でデフレ脱却の道筋をしっかりつけるという趣旨であるという説明をされたというふうに認識しております。

 もちろん、デフレ脱却云々というのは、これは政府が判断されることであり、政府も幾つかの指標で見ると言っているわけですね。今自身、デフレの状況でないということも政府は言っているわけです。

 これは、デフレの定義からいって、持続的に物価が下落する状況ではありませんのでデフレでないわけですけれども、デフレから脱却したというその宣言のためには、すぐにまたデフレに戻るような状況でないということをその幾つかの指標で確認して、デフレ脱却宣言をするというふうに言っておられるわけですね。だから、そこは政府の御判断であり、私どもが何か申し上げることではないと思うんですが。

 一方で、日本銀行としては、二〇一三年の一月に決定して以来、やはり二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するというこのことは、やはり日本銀行の物価安定の使命の具体化であり、必要なものであるというふうには思っております。

 ただ、総理の御発言の趣旨とかその意味とかいうことについて、直接的にはなかなかお答えしにくいということを御理解いただきたいと思います。

野田(佳)委員 遠慮がちな御答弁でございましたけれども、私は、率直に言って、無責任な発言だと思いましたよ。無責任と言ったのは、さっきのように、出口をめぐる議論をしていくという、事の重大さと困難性に対する自覚がないですよ。しかも、任期中ということは最長で三年ということでしょう、今おっしゃったように。三年以内に道筋をつけたり、めどをつけたり、実現するということを言うということは、三年という期限は、具体的な方法は日本銀行に任せるとしても、具体的な時期を明示するということは、金融政策の根幹じゃありませんか。

 だって、二年で二%という二年を六回延長して、やめてきた。時期というのは物すごく今微妙じゃないですか。それはまた、多くの人が関心を持つことですよ。その関心を持つ金融政策の根幹を軽々しくしゃべるということは、私は、総理大臣の金融政策を語るときのたたずまいは、わかっていないんじゃないかと思いましたし、それは日銀にとって私は大きな迷惑だと思いますよ。私は、日本銀行の、中央銀行の独立性にもかかわる私は発言をしたというふうに思いますが、答えにくいかもしれませんが、私の見解についてどんな感じを持たれたか、お尋ねしたいと思います。

黒田参考人 委員の御懸念自体はよく理解できるわけでございますが、先ほど来申し上げているように、政府は、二%云々というよりも、デフレ脱却、この定義、この判断というのは、私どもが目標にしている二%の物価安定目標をできるだけ早期に達成するというのと若干ずれがあるように思うんですね。

 ですから、具体的に、どういう数字になったらデフレ脱却宣言を政府がされるのか、これは政府の御判断にまつしかないんですけれども、私どもとしては、やはり二%の物価安定目標というものをできるだけ早期に実現すべく最大限の努力をし、それが実現に近づいてきた際には、当然のことながら、委員御指摘の出口戦略についても、金融政策決定会合で議論し、必要な発信をしていくということになると思いますが。

 確かに、委員が懸念されているとおり、現在の展望レポートの見通しでも、二〇二〇年度の物価上昇率の見通しも一%台半ばということですので、この二〇二〇年度までの見通し期間でも二%に達成できないのではないかというのが委員の見通しですので、その意味では、従来考えていたよりもかなり長く時間がかかる、したがって、粘り強く緩和を続けていくということになると思うんですが。

 私は、委員の懸念は理解できるんですけれども、日本銀行の独立性そのものは、御承知のように九八年に施行された日本銀行法ではっきり明示されておりますので、私自身はそういう懸念は持っておりません。

野田(佳)委員 懸念があると言うと大変なことになりますから。私、外側から見る人間にとっては極めて強い懸念を持たざるを得ないということだけは申し上げておきたいと思いますが。

 同じようなことが、私は、かつても総理の発言で感じたことはあるんですね。その発言に行く前に、端的にお聞きします。もう持ち時間の半分になってしまいましたので申し上げますけれども、デフレは貨幣的な現象であると言う人が結構かつてはいました。今はちょっと、余り言わなくなってきたと思うんですが。

 この見解について、総裁はどのようにお考えでしょうか。

黒田参考人 一九九〇年代の末、具体的には一九九八年以降、二〇一三年までデフレが続いていたわけですが、その背景には、不良債権問題、あるいはITバブルの崩壊、リーマン・ショックなど、さまざまな実体経済のショックがあったと思いますし、また、その間、円高の進行、あるいは新興国からの安値輸入品の流入など、物価を直接的に下押しする要因もあったというふうに思います。

 したがいまして、物価には、金融政策だけではなく、さまざまな要因が影響するということは確かであります。ただ、日本銀行は物価の安定を使命としておりますので、物価安定の目標を実現する責任があるという意味では、金融政策の役割というのは重要であるというふうに思っております。

 ただ、委員が言われたように、何か金融的な現象で全部物価が決まるとか、それだけでデフレになったりインフレになったりするというのは、少なくとも一九九〇年代末からの日本経済を見る限りそういうふうにはなっていないということは、そうだと思います。

野田(佳)委員 黒田総裁がこれまでの御発言で今言ったような御発言をされたかどうか、貨幣的な現象と言ったかどうかはちょっとわかりませんが、今の御答弁でいうと、物価を上げるというのはそう簡単ではない、金融だけではうまくいくはずではないとか、これは体験も含めてお話しされたと思うんですが。

 デフレは貨幣的な現象であると二〇一三年の二月に前原さんの質問に対して安倍総理が答えているんですよ、明快に。貨幣的な現象であると言っていて、金融政策によって物価は上げられると明言しているんです。

 これも私は軽率でうかつな発言だったと思うんですね。また、金融政策を縛る発言ですよ。そういう論者が当時多かったです、二〇一三年のころも。多分、総理の家庭教師みたいな人たちが周りで言っていたかもしれません、それをうのみにして言ったのかもしれませんけれども、一つの論に立って金融政策をきっぱりと語り過ぎることは、私は、一般の政治家ならいいですよ、内閣総理大臣が言ってはいけないことだと思うんですね。この種の発言が、私は、日銀がやろうとしていることの妨げになりかねないというふうに思います。

 ということを申し上げますが、この貨幣的な現象というのは、間違いなく、今の日本銀行の見解としては、もっと物価を上げるのは大変なんだよ、期待に働きかけたってそう簡単に効果は出てこないんだよということで、総理の見解とは現段階では違うという認識でよろしいですね。

黒田参考人 何度も申し上げて恐縮ですが、総理の御発言について私から何かコメントすることは差し控えたいと思いますが、先ほど来申し上げたとおり、物価に対してはさまざまな要因が影響を与えておりまして、金融政策だけでないことはそのとおりであります。そういう意味では、何か貨幣的現象ということで、金融政策だけが物価を決定しているというふうに見るのは言い過ぎであると。

 御承知のように、米国の有名な経済学者のフリードマンが、インフレ、デフレというのは貨幣的現象であるということを非常に鮮明に言って、たしか一九六八年の米国経済学会の会長講演でそれをおっしゃって、ことし米国では、フリードマンのそのマネタリスト宣言が間違っていたか正しかったかということをめぐって、さまざまなコンファレンスが行われております。ちょうど五十年たったということなんでしょうか。

 ただ、その間のいろいろなことを踏まえて、米国の学者たちも、貨幣的現象である、まあ、金融政策だけで物価が決まるということは当たっていないのではないかと。ただ、フリードマンが米国の金融史を調べた本で示したように、非常に長い期間をとると金融政策、マネタリーベース、マネーサプライの増加というものが物価の状況に大きく影響しているということは事実かもしれないけれども、その時々の金融政策によって物価がすぐに変わっていくということにはならないし、実体経済のいろいろなショックが物価に大きな影響を与えるということはもう事実だというふうに思います。

 ただ、その上で、先ほど来申し上げていますように、やはり日本銀行、中央銀行としては物価の安定というのが使命でありますので、それに向けて、その時々のいろいろな影響によって、物価が影響されるもとで、できるだけ早期に物価の安定を実現するために最大限の努力をする責務があるというふうに考えております。

野田(佳)委員 黒田総裁、フリードマンのお話をされましたけれども、フリードマンは、インフレはいつでもどこでも貨幣的な現象であると言っていて、デフレについては言っていないんですよ。デフレで置きかえて言う論者が日本には急にふえたというのは事実であって、その辺の論理に立っていた人が今、金融政策決定会合に多いんじゃないですか。私は、そこにも警戒感を持ちますよ。

 ということだけ申し上げて、今ちょっと金融政策決定会合に触れたので、もっと、非伝統的金融政策の評価であるとか、最近の金融政策決定会合において金融仲介機能の停滞リスクみたいな議論が出ていますね。そういうお話も聞こうと思ったんですが、もうあと二、三分しかないので、最後の質問で、せっかく、うえの副大臣に来ていただきました。いつもこの財金では顔を合わせているんですけれども、直接質問したことは多分なかったと思いますので。

 金融政策決定会合担当をされているということですよね。ということは、時折出ていらっしゃるでしょう。御出席。

 私も金融政策決定会合に出たことがあるんです。何回か、財務副大臣をしているときに。だから、二〇〇九年の後半から二〇一〇年代について出ました。

 私の率直な感想は、物すごい不思議な空間に入ってしまったなと。総裁、副総裁、三人いらっしゃって、そして、委員の皆さんがいらっしゃるじゃないですか。足元の経済とかなんか、あるいは展望とか、国内、海外、順番に意見を言うというか、レポートを読み上げていくんですよ、皆さん。経済学のゼミみたいな感じなんです。それで三時間、四時間とどんどん時間が超過して、ちょうちょうはっしの議論というよりも、レポートの読み合いですね。これは不思議だなと。

 私がいつも出ていたときは、何か採決があったときも八対一とか九対〇で、円滑な議論の場面ばかりで、例えばマイナス金利の導入のときは五対四に分かれたじゃないですか。ああいうときはもっといろいろな、違う展開だったのかもしれません。限られた経験ですから、想像がちょっと偏っているかもしれませんけれども。

 あのとき思ったのは、やはり、日銀の委員になっている皆さんは、理事さんのつくってきたいろいろな資料を踏まえて発言をされたりする、そのいわゆる世界と、政治家がまさに毎日、きょう先ほどの冒頭の質問にもあったけれども、いろいろな中小企業の人に会ったり金融関係者に会ったりして膝突き合わせて聞いている議論と、ギャップが出てくるのではないかと心配を持ちました。

 鳥の目で見る経済も大事だけれども、虫の目で見る経済も大事。その感覚を持って、政府の代表として副大臣は出席されますけれども、政治家は出席しなければいけないなと。採決には参加できませんが、意見表明できますよね。という思いで、きょうはうえの大臣の決意を聞いて終わりたいと思います。

うえの副大臣 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 金融政策決定会合の感想についてはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますが、今、野田委員の方からお話のあったように、マクロ経済学のレポートの読み上げが延々と続いているという状況では現在はないものというふうに認識をしています。

 そうした中で、御案内のとおりでございますが、日本銀行は、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないとする日銀法の趣旨に鑑み、政府からの出席が認められているところであります。二〇一三年の一月に公表いたしました共同宣言において、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府、日銀の政策連携が掲げられているところでもございます。

 決定会合に当たりましては、政府と日銀の十分な意思疎通を通じてデフレ脱却と持続的な経済成長の実現に努めるとの決意で出席をしておりまして、委員御指摘のように、現場のさまざまな感覚を持ち合わせながら、そのような決意で臨ませていただいているところでございます。

野田(佳)委員 ありがとうございました。終わります。

坂井委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは日銀によるETFの買入れについて質問をさせていただきたいと思います。

 現在、主要国の中央銀行は、金融政策の手段としてはETFの購入は行っておりません。

 総裁、なぜ禁じ手とされているんでしょうか。

黒田参考人 日本銀行に限らず、各国の中央銀行は、それぞれの経済あるいは物価情勢さらにはそのもとで中央銀行が置かれた法的な枠組みといったものを反映して、それぞれの中央銀行で独自のというか、さまざまな、異なる手段を活用して物価安定の目標の実現に努力しているということでありまして、私どもとしても、何か特定の手段をあらかじめ排除するということではなくて、コストとベネフィットを比較考量した上で最適な手段を選択してきているというふうに考えております。

 現時点で主要国の中央銀行の中でETFの購入を行っている中央銀行はございませんが、私どもが資産買入れで行っているもの以外の、かなり違った資産を買い入れている中央銀行も多いわけでございます。ただ、先ほど来申し上げているように、それぞれの国の経済、金融情勢、法的枠組みに従って最適と思われる手段を選択している結果ではないかと思っております。

宮本(徹)委員 なぜ他の主要国の中央銀行の政策として伝統的にとってきていないのか。

 かつて、白川総裁は、日銀が初めてETFの買入れを決めた直後にこう言っているんですね。最終的に損失負担が発生した場合には、納税者の負担につながる可能性があるほか、個別の産業、企業に対するミクロ的な資源配分にかかわる度合いが強くなる、白川前総裁はこれを弊害だとおっしゃっていました。今、この弊害の懸念が更に拡大していると言わなきゃいけないんじゃないかと思います。

 資料をお配りしております。一枚目、二〇一八年の日経平均株価の変動と日銀のETF買入れの実績です。赤く塗っているところは株価の下降局面、十回あります。日銀が七百億円を超すETF購入をいつやっているのか。この十回の株価下降局面では、八十九日の営業日のうち六十二回で行っております、約七割ですね。一方、それ以外の営業日百三十八日では十四回、一割にとどまっている。明らかに株価の下降局面で購入しているわけですね。

 ことし最も株が下がったのは十月でした。日銀は、月別でことし最も多い八千七百億円のETFの買入れを行っています。二十二日の営業日のうち十二日で七百億円を超す買入れを行っているわけですね。まさに買い支えじゃないかと思います。

 黒田総裁、日銀が株価を買い支えていると言われても仕方がないんじゃないですか。

黒田参考人 このETFの買入れというものは、あくまでも長短金利操作つき量的・質的金融緩和の枠組みの一つの要素として、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを通じて、経済、物価にプラスの影響を及ぼしていくという観点から実施しておりまして、特定の株価水準を念頭に置いて、それを実現するために実施しているというわけではありません。

宮本(徹)委員 株価水準を念頭に置いていないということをおっしゃいますけれども、では、一体日銀のETF買入れは、誰の判断で、何を基準にして行っているんですか。

黒田参考人 このETFの買入れについては、保有残高が年間約六兆円に相当するペースで増加するよう行うこととしております。その際、資産価格のリスクプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて弾力的に買入れを進めております。

 実際の買入れの運営は、市場の状況に応じて、日本銀行が定める基準に従って、受託者である信託銀行が行っておりますが、その基準の具体的な内容については、市場に不測の影響を与えることがないよう明らかにしない扱いとしております。

 なお、日本銀行では、ETF買入れを実施した都度、当日中にホームページで買入れ額を公表しているところでございます。

宮本(徹)委員 信託銀行に委託しているという話ですけれども、信託銀行が勝手に信託銀行の判断で買い入れているというわけではないですよね。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、実際の買入れの運営は、市場の状況に応じ、日本銀行が定める基準に従って、受託者である信託銀行が行っております。

宮本(徹)委員 では、日本銀行の定める基準でやっているということですけれども、資料の二枚目を見ていただきたいと思います。

 日銀のETF買入れ傾向がどうなっているのかというのは、いろいろな人がいろいろなホームページで出しております。私もホームページを眺めてみましたら、毎日毎日、日銀の購入予測をホームページで公表しているサイトもあるんですね。

 TOPIXが前場でマイナスのときに買入れプラスの場合はない、前引けが前日の終わり値より上昇していれば買入れなし、前引けがマイナス〇・五%より下落していれば一〇〇%買入れといった法則性があるというふうにそこには書いていまして、午前中の相場を見て予測と出て、その後買い入れたら当たりと出ているホームページで、非常に法則的に買い入れているんだなと思いました。

 ちなみに、このお配りしている資料の左側がホームページに出ていた表です。右側の表は、日銀の過去の買入れの実績ですね。

 右側の表を見ていただきますと、TOPIXの前引けが前日の終わり値に比べてマイナス〇・四五%より下落していれば、一〇〇%日銀はETFの買入れを行っております。逆に、マイナス〇・三五%までだと買い入れることはめったにないということなんですね。

 総裁、このような買入れを行っているということで間違いないですよね。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、日本銀行では、ETFの買入れを実施した都度、当日中にホームページで買入れ額を公表しております。

 その上で、御指摘の図表二の記載内容は誤っていないというふうに思います。

宮本(徹)委員 総裁も誤っていないということですから、日銀は指示している基準を明らかにしていないですけれども、それを全部、毎日毎日統計処理すれば、基準は明々白々になってしまうわけですね。ですから、ホームページでこういう予測がやられているように、日銀は極めて法則的に買い支えをやっているというふうに見られているわけであります。

 この法則的なETFの購入というのは、ホームページに出ているということは、投資家の重要な判断材料になっているということだと思うんですよね。市場に明確に影響を与える法則的な買入れをやっているということじゃないですか。

黒田参考人 繰り返しになりますけれども、日本銀行のETF買入れは、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを狙いとしておりまして、特定の株価水準を念頭に置いてやっているわけではありません。ただ、リスクプレミアムに働きかける中で株価に影響を与えるということはあるというふうに考えております。

 もっとも、実際の買入れ規模という面から見ますと、ETFを通じた日本銀行の株式保有額は株式市場の時価総額の四%程度にとどまっております。また、買入れに当たっては、幅広い銘柄から構成されるTOPIXに連動するETFのウエートを高めるなど、個別銘柄の株価に偏った影響ができるだけ生じないような工夫もしております。

 したがいまして、ETFの買入れが株式市場の価格形成や機能度に大きなゆがみをもたらしていることはないというふうに認識をしております。

宮本(徹)委員 総裁はそういうふうに強弁されますけれども、しかし、実際は多くの方が、日銀がこういうふうに買い入れているのかというのを見てやっているわけですよね。市場のゆがみをもたらしているのは私は明々白々だと思います。

 夏に当委員会でスイスの投資家の皆さんと懇談した際に、日銀の政策についてこういう意見がありましたよ。株価操作は中央銀行の仕事ではない。大変手厳しい意見がありました。株価をつり上げるため、若しくは株価の下落を買い支えるために日銀が株式をどんどんどんどん購入していくというのは極めて問題だと言わなければいけないと思います。

 そして、こうやって毎年六兆円規模でETFの買入れを続けていますけれども、続けていくと大変困難になるのが、買い入れたETFを将来どう処分していくのかということになります。

 このETF、将来どう処分していくのか、日銀は今何らか検討されているんでしょうか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、このETF買入れというもの、現在の長短金利操作つき量的・質的金融緩和という枠組みの中で行っておりますが、現状、二%の物価安定の目標の実現になお時間がかかることを踏まえますと、ETF買入れを含む金融緩和からの出口のタイミング、あるいはその際の対応を検討する局面には至っていないというふうに考えております。

 もとより、先行き、物価安定の目標の実現に近づく際には、出口に向けた戦略や方針についても、金融政策決定会合で議論し適切に情報発信していくことになるというふうに考えております。

宮本(徹)委員 まだまだETFも買入れを続けていくんだという話ですけれども、そうなると、ますますこのETFの処分は困難さを増す一方だというふうに思いますよ。

 大体、今時価で二十九兆円ぐらいですかね、ETFは。これだけのETFを市場に売却しようということを考えたら、株価を大きく引き下げる要因になることは火を見るよりも明らかだと思うんですね。

 株価に影響を与えず処分する方法なるものというのはあるんですか。

黒田参考人 いずれにいたしましても、現在保有しているETFの今後の扱いというものは、先ほど申し上げた出口との関係もありますし、いずれにせよ、その時々の情勢を踏まえて判断するものであるというふうに考えております。

 仮に将来において処分を行うという場合には、新たに処分の方針を定めるということになると思いますが、その考え方としては、政策委員会で定めた基本要領において、市場等の情勢を勘案した適切な対価によること、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避すること、損失発生を極力回避することといった方針を既に明らかにしておりますが、仮に処分するということになれば、そういった基本要領における方針を踏まえて処分の指針を定めることになるというふうに思います。

宮本(徹)委員 それは存じているわけですけれども、ですから、一体全体、これだけのETFを購入しちゃって、じゃ、市場に攪乱的な影響を与えないという処分方法があるのかということですよ。

 考え方の基準だけはおっしゃりますけれども、こうやれば、市場に混乱を与えずに、株価の大幅な下落をもたらさずに処分できる方法というのは示すことができないわけですよね。地獄の道を突き進んでいるんじゃないかという感じがいたします。

 GPIFの方も株式購入を進めていますけれども、GPIFの方は、積立金を将来縮小させるということになりますので、当然、市場で売却するわけですね。そうすると、ますます日銀の側は、GPIFが売っているときに日銀が売ったらもっと株価に影響が出るということで、ETFの処分ができなくなってしまうのではないか、そういうふうに考えてしまうわけであります。

 そして、資料の三枚目を見ていただきたいと思います。

 現在、日銀は、ETFとは別に、二〇〇〇年代以降の金融不安の際に金融機関から買い入れた株式というのを持っております。これを市場で売却を進めております。

 お伺いしますけれども、毎年どれくらいの規模でこの株を売却しているのか。仮に、今この株式を売却しているのと同じ規模で現在保有しているETF二十九兆円分を売却しようとしたら、何年かかるでしょうか。お答えください。

黒田参考人 日本銀行が金融機関の株式保有リスクの削減を促すために買い入れた株式、これは二〇一六年の四月以降、市場での売却を行っておりまして、十年間でおおむね均等のペースで処分することにしております。これは、ETFのような指数商品ではなく、個々の生株であります。

 現在の実績は、大体年間で簿価ベースで千六百億円程度の規模で売却を行っております。

宮本(徹)委員 簿価ベースで年千六百億円ということですよね。

 ちょっと私、過去の資料を見ましたら、二〇一五年十二月の政策委員会では、売却期間は十カ年、売却規模は年間約三千億となるというふうに書いてあったんですよね。三千億という目標を持ったけれども、今、実際売っているのは年間千六百億円だということですよね。

 ですから、株式市場に影響を与えずに売却を進めようと思ったら、簡単に売るというのはできないということだと思うんですよね。大変苦労しながら、過去に買い入れた株についても売り払っているという話だと思います。

 それで、簿価ベースで年千六百で過去の株は売却している。じゃ、二十九兆円分のETFを売却するのは、割り算したら何年になるでしょうか。

黒田参考人 先ほど申し上げました年間千六百億円ぐらいというのは簿価ベースでありまして、時価ベースでは三千四百億円ぐらいの売却をしております。

 いずれにいたしましても、物価安定の目標の実現にはなお時間がかかるために、ETFの買入れを含む金融緩和からの出口については、具体的に検討する局面には至っておりません。

 こうしたもとで、保有ETFの売却に関して、仮定に基づく御質問にお答えするのは適当でないというふうに考えております。

宮本(徹)委員 時価ベースだと三千四百億円。二十九兆円、割れば、百年まではいかないですけれども、八十年ぐらいですか。八十年ですよ。総裁が百五十歳まで生きれば見届けられるかもわからないですけれども、私だって八十年後は当然生きていないです。ここにいる方みんな、医学がどれだけ発達しても、そこまで生きていることはないというふうに思いますが。

 何世代も先にまでわたって、もし今売却を始めたとしても、株式市場に影響を与えずに処分しようと思ったらそれぐらいかかるものを買い入れてしまっているというのが今の事態だというふうに思います。

 そうすると、売却が大変困難だということになると永久に株式を保有するという選択肢が日銀にはあるのか。保有中に株価暴落が起これば日銀の損失は誰が補填するのか。国が補填するということもあり得るんじゃないかと思いますが、総裁、いかがでしょうか。

黒田参考人 物価安定の目標の実現になお時間がかかるために、ETF買入れを含む金融緩和からの出口について具体的に検討する局面に至っていないということは、繰り返し申し上げているところであります。

 なお、株価下落の影響につきましては、二〇一八年九月末時点で日本銀行が保有するETFには七・二兆円の含み益があるために、株価が下落しても直ちに決算上の期間損益に影響を与えるわけではありません。また、仮に将来、時価総額が帳簿価格の総額を下回る場合にはその差額に対して引当金を計上することにしておりまして、これにより財務の健全性の確保を図ることができるというふうに考えております。

 なお、現行の日本銀行法では政府による損失補償に関する条項は置かれておりませんで、日本銀行はこうした認識のもとで金融政策運営を行っております。

宮本(徹)委員 時間が来ましたからこれで終わりますけれども、株価が暴落することだってあるわけですね。過去、何度も暴落というのは起きているわけであります。含み益もすっ飛んでいく、引当金でも足りないと。

 そういうことになれば、初めに御紹介したように、白川前総裁が懸念していたような、最終的に損失負担が発生した場合は納税者の負担につながる可能性がある、こういうことにもなりかねない。ETFの買入れを進めれば進めるほど、そういう危険を増していくということになると思います。

 後は野となれ山となれという考え方でETFの買入れを進めるのは極めて無責任だ、この問題は国民的な議論が求められるということを指摘しまして、質問を終わらさせていただきます。

坂井委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 午前中は、私と川内委員とあと二人でございます。引き続きよろしくお願い申し上げます。

 私も、経済をいろいろ質疑する中で、余り共産党さんと方向性が一致することって結構少なくてあれなんですけれども、ちょっときょうは先ほどの宮本委員と少し方向性が近くて、ETFに関して私もかなり懸念をしておりまして、この点を中心に黒田総裁にお伺いしていきたいんですけれども。

 先ほどから、ETF買い付け二十九兆という巨額の額について、その意義をリスクプレミアムに対する働きかけという形でずっと同じ御答弁をされてきているんですけれども、それが果たして、本当にリスクプレミアムに働きかけているかというのは、非常に私は疑問を感じているんですけれども、その辺、このETFの残高が非常に高くなっている中でどうお考えなのか。

 そして、気になるんですけれども、数字を教えていただきたいんですけれども、日銀の財務諸表を見ていますと、いろいろ数字が出てくるんですが、大体、この信託報酬、会社の方に支払う信託報酬を幾らぐらい払っていらっしゃるのかなと思って見たんですけれども、それ自体の数字は出ていなくて、恐らく、財務諸表に出てくる経常費用のその他の欄が一千億円ぐらいなんで、このうちの何億か、何百億かがそれかなと思ったんですけれども、信託報酬の額についてもちょっとお伺いしたいんで、そこも含めて、日銀総裁、お伺いできますか。

黒田参考人 ETFの買入れは、何度も申し上げておりますとおり、物価安定の目標を実現するための金融緩和政策全体の枠組みの一つの要素として、株式市場におけるリスクプレミアムに働きかけることを通じて、経済、物価にプラスの影響を及ぼす観点から必要な措置として実施しているわけであります。

 リスクプレミアムのはかり方についてはいろいろな考え方があり得ると思いますけれども、私どもの見るところでは、ETFの買入れによってリスクプレミアムに一定の引下げ圧力がかかっているというふうに認識をしております。

 結果的に、現在、時価ベースで見たETFの保有残高は二十九兆円程度となっておりますけれども、日本銀行は、このETF買入れの事務を委託している信託銀行に対しては信託報酬を払っておりますが、具体的な報酬額は開示しておりませんけれども、信託報酬の前提となる想定信託報酬率は百万分の一ベーシスポイントというふうに認識しております。

丸山委員 額ではわかりますか。

前田参考人 技術的な御質問ですのでお答えしますが、私どもは具体的な信託報酬額については開示しておりません。

丸山委員 どうして開示できないんでしょうか。

前田参考人 これまでのところ開示していないということでございます。

丸山委員 ぜひそれを開示していただきたいんですけれども、できないですか。

前田参考人 この信託報酬の額につきましては、私ども委託している信託銀行、相手方があることでございますので、相手方としっかりと調整する必要がありますので、現段階ではお答えできません。

丸山委員 これはしっかり国会としては確認していきたいところなんですが、検討を含めて、相手もある話なので。

 まず、総裁、それについてはどうですか。

黒田参考人 ただいま前田理事が答弁したとおりでございます。

 先ほど申し上げたとおり、具体的な信託報酬額は開示しておりませんけれども、その前提となる想定信託報酬率は先ほど申し上げたとおりでございます。

丸山委員 ちょっと要領を得ないので、後で理事会で協議いただく形にさせていただきたいというふうに思います。

坂井委員長 では、理事会で協議をいたしたいと思います。

丸山委員 そこにこだわってしまったら時間がなくなっていきますので、これは理事会でもお話をして、日銀にお願いしていきたいと思いますが。

 聞きたいのは、総裁がずっとおっしゃっているリスクプレミアムに働きかけるというところで、先ほど総裁がおっしゃったのは、一定の効果があると見ていらっしゃると思うんですけれども、正直、市場の反応というか、いろんなエコノミスト、アナリストの話を聞いていても、本当にそれは日銀の総裁がおっしゃるような、きちんとリスクに対して働きかけができているかというと、正直私も、いろんな数字を追ってもそうは思わないんですが。

 例えば、イールドギャップを見てもそうですし、今データがあるんですけれども、シラーPERのリスクプレミアムのラインを見ても、果たして、量的緩和されて、ETF買入れ以降、このリスクプレミアムの推移の数字を追ってみても、総裁がおっしゃるような効果があったかというと甚だ疑問なんですが、これはどういった数字で総裁は効果があるとごらんになっているんですか。

黒田参考人 このリスクプレミアムの指標についてはいろんな議論があるところで、何か一つで決められるものではないと思いますけれども、市場でいろいろ言われているさまざまなリスクプレミアムの指標を見ますと、二〇一三年度以降、リスクプレミアムがはっきりと低下しているということは示されております。

丸山委員 私が持っている数字を見ていると、明らかにほぼほぼ変わらないラインでの数字の上下をしているんですが、何をもってそう思われるんですか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、さまざまな指標がありますので、どれか一つで決め打ちできないと思いますが、幾つかの指標を見ると、それもマーケットの人の言っている指標を見ると、そういうふうに見えるということであります。

 何よりも、ETFの買入れによって市場の株式投資リスクに対する懸念が低下し、それは先ほど来申し上げているとおり、特定の株価水準を目標としてやっているわけではないんですけれども、リスクプレミアムへの働きかけを通じて、株価に対する影響も出ているというふうに見ております。

丸山委員 先ほど宮本委員から、買い支えじゃないかみたいな話もありましたけれども、市場の反応を見ていても、前場で下がっているときに買い、後場ではかなりそれに対して反応しているというのが実際に出ていまして、数字を先ほど出されていましたけれども、統計的に見ても明らかにそういった傾向があると言えるような状況になっているんですけれども。

 ちょっと総裁の認識と、やはり市場の認識との乖離というのは、今聞いていて非常に感じるんですが、もう一つ感じるのは、市場の流動性だとか、個別銘柄に対する影響みたいな部分も、総裁の認識と市場の認識が非常に違うんじゃないかと思っているところもありまして、二つ目の質問のところなんですが。

 いわゆる市場で日銀以外の、ETFを別にして、ある企業なり、個人投資家が買った場合、五%ルールがあって、五%以上は報告書で大量保有について出さなきゃいけませんし、もっといけば、二〇%あれば関連会社で連結決算になっていきますけれども、二十九兆という非常に巨額のETFを買い入れている中で、間接的ですが、かなりの銘柄、しかもそれも、大量に保有している銘柄が出てきていると思います。

 市場の予測ではいろんな個別銘柄が出ていて、例えばファーストリテイリング、ユニクロさんなんか、一七年の時点で一五・八%ぐらい間接保有しているんじゃないかと。恐らく、浮動株だけで見れば六三%。浮動株の六三%というのは、かなりの額を押さえられていると思うんですけれども。

 全体の話はいつも総裁はお答えされているんですね。全体の三%しか持っていないので、基本的にはそんな大きな影響はないとお答えされているんですが、個別銘柄に対する影響というのは非常に大きいものがあると私は考えているんですが。

 まず、間接的に保有している中で、こうした五%を超えるような銘柄というのはどれぐらいあると把握されているのか。このあたり、どのように考えていますか。

黒田参考人 従来から申し上げておりますとおり、日本銀行が買い入れたETFの銘柄に関する情報は、市場において不測の影響を及ぼし得るために公表しない扱いとしております。

 その上で申し上げますけれども、あくまでもこのETFは、TOPIXのシェアを高める等を通じて、株式市場全体について、個別銘柄への影響を極力排除する形で購入を行っておるということは御理解いただきたいというふうに思います。

丸山委員 現時点でも個別銘柄に影響を与えていないというのが総裁の御見解ですか。

黒田参考人 株式市場の関係者は、いろいろ与えているとか、それをまたセールスポイントにしていろいろなことを言っておられる方はおられますけれども、私どもの見るところでは、セールストークであって、具体的に個別銘柄に大きな影響を与えるということになっているとは思っておりません。

丸山委員 議決権を直接日銀さんが行使されるということはないと思うんですよ。ETFの投信会社が、ある程度、最初に出した方針に基づいてやっていらっしゃるんだと思うんですけれども、そういう答弁をずっとされていますが。

 一方で、例えば、影響がないとおっしゃいますけれども、議決権の行使だけじゃなくて、そもそも、今申し上げたような浮動株のうちの六割も買い付けるようなものがあれば、そこの流動性の問題、そして株主に対する説明責任等々含めて、コーポレートガバナンス上、かなり企業統治の機能というのは、どう考えても低下していくと考えるのが普通だと思うんですけれども、そうした企業判断に対しての影響も日銀としてはない、総裁としてはないとお考えなんですか。

黒田参考人 その議論は、ETFのようなものについて、アメリカなどでも一部言われたことがありますけれども、我が国のETFについても、御承知のように、信託銀行等が適切な株主権を行使しているということで、コーポレートガバナンスに大きな影響が出ると思っておりません。そもそも、現在の日銀がETFを通じて持っている株式というのは市場の四%ぐらいですから、そういった大きな影響が出ると思っておりません。

 ただ、その議論を突き詰めていくと、こういうファンドでETF的なものが好ましくないという話になってしまうんですね。それは、このETFのようなファンドの株式投資が非常に広がっているアメリカでもそういう批判が一部にありましたけれども、今は、むしろ、そういう間接的なファンドによる投資というものが幅広い投資を可能にしているし、問題があるというふうには考えられていないと思いますので、日銀が持っているのは四%ぐらいですということ、それから、そもそも、そういうファンド、指標によるファンドのようなものを通じる投資形態というものがコーポレートガバナンスにマイナスの影響があるというふうに考える必要はないし、考えるべきでないというふうに思います。

 それを考えると、そういうものはけしからぬという話になってしまうわけですね。それは、アメリカでもさすがにそういう意見は出ていないと思います。

丸山委員 私も、ETF自体を批判するつもりはありません。

 そうした中で、今回、総裁、政策決定会合含めて、TOPIX銘柄に話を広げていくという話をされています。これは、いろいろな理由があると思うんですけれども、一つ考えられるに、そもそも、日経二二五銘柄では買い付け額がすごく大きいので限界があるということと、同時に、要は企業統治の観点から特定の個別銘柄を買い増すことになってしまうのでそれを分散させるという意味もあると思うんですけれども、TOPIX銘柄を今回、枠をつけかえて広げると思うんですけれども、ここはどういう意図でされるか。この点で正しいんですか。そういうお考えでやられるんですか。

黒田参考人 まさにそのとおりでありまして、別に、特定のETFをあげつらうわけではありませんが、TOPIXは東京株式市場の全体を平均的に代表するようなETFでございますので、日経二二五よりもより個別銘柄への影響が回避されているということで、TOPIXの関係のものをふやしたわけでございます。

 なお、先ほど、信託報酬率について、百万分の一ベーシスポイントと申し上げましたが、間違いです。百万分の一%です。

丸山委員 もう一つ、政策決定会合でこのETF関係で上がったのは、買入れの増加ペースについて、今回初めて買入れ額は上下変動し得るという話もありました。これについて同様の、つまり、買い過ぎているんじゃないかとお思いでの部分かなと私は思ったんですが、このあたりはどういう意図ですか。

黒田参考人 これは、買い過ぎているということではなくて、年間六兆円程度の買入れを行うということでずっとやってきたわけですけれども、それは変えておりませんが、従来、ややもすると、それを十二分の一に割ったような感じで毎月の買入れを行っていた傾向があるので、まさにリスクプレミアムに働きかけるという観点から、もっとめり張りをつけて、リスクプレミアムが拡大しそうなときにはたくさん買うし、そうでないときにはもっと少なくてもいいということでやっておりまして、現に、その決定以降は、月々のETFの買入れ額はかなり変動しております。

丸山委員 もう一つ、やはり出口の話は私も気になるところなんですが、先ほどの話で八十年かどうかは別にして、明らかに、恐らく総裁が総裁でいらっしゃる期間を超えてのこれに対する、市場に戻していくというのがあると思うんです。

 特に、国債と違って、国債は償還期間があるのであれですけれども、株は持ち続ける限り、要は、利益も出ないし損益も出ないし、含み損はもちろんありますけれども、含み益ももちろんありますけれども、しかし、どっかで売却を考えていかなければ、ずっと持ち続けるのは変だと思いますので。

 そうすると、手法は考えられますが、既に前に持っていたように同様に、二兆円ぐらい別枠で持っていらっしゃるのがあると思うんですけれども、これと同様のやり方をやるか、若しくは、恐らく、銀行等保有株式取得機構というのが例の銀行のときにありましたけれどもああいう形で、日銀さんの勘定、財務諸表を見ていると非常にいびつな形になりつつあるので、勘定を切り離してやるというのは非常に手法としてはあり得るんじゃないかと思うんですけれども。

 巷間そうした話も出てきていますが、こうした切離し論に関しては、どのように総裁はお考えですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、二%の物価安定の目標の実現になお時間がかかることを踏まえますと、ETFの買入れを含む金融緩和からの出口のタイミングとかその際の対応を検討する局面にはまだ至っていないと考えております。

 もちろん、先行き、物価安定の目標の実現に近づく際には、こういった問題も含めて、出口に向けた戦略や方針についても金融政策決定会合で議論して適切に情報発信していくことになると思いますけれども、現時点で、何かETFの出口戦略について具体的に申し上げられる段階ではないというふうに思います。

丸山委員 と読んでいただいて、お聞きしたいのは、機構についても議論の可能性はある、可能性としてはあり得るということですか。

黒田参考人 今の段階で何とも申し上げられませんが、個人的にはそういう可能性は余りないと思います。

丸山委員 個人的にはないというお言葉をいただきましたので。

 時間がそろそろ参りましたので、最後、お伺いしたいのは、物価目標の達成の話、ずっときょうも議論されていましたが、消費税が来年秋に上がるということで非常に影響があると思うんですが、このあたり総裁としてどのように影響があるとお考えなのか、お答えいただけますか。

黒田参考人 これも何度か申し上げましたとおり、前二回の消費税の増税と違いまして今回の消費税増税は、税率それから軽減税率の導入、教育無償化その他さまざまな措置が既に決まっておりまして、その影響は小幅なものにとどまるというふうに考えております。

 さらに、政府は、駆け込みと反動減というものをならすようないろいろな措置を検討されておりますので、前二回のような影響があるとは考えておりません。

 ただ、消費の動向については、さまざまな要因が影響しますので、十分注視していきたいと考えております。

丸山委員 時間が来たので終わりますが、午後も時間をいただいておりますので、午後に続けたいと思います。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、川内博史君。

川内委員 私も、ETFのことについて若干聞かせていただきたいと思います。

 現在、正確なETFの買入れ残を教えてください。

前田参考人 お答えいたします。

 簿価ベースで見ました日本銀行のETF保有残高でございますが、直近、本年十一月末現在で二十三兆円程度となっております。

川内委員 正確に教えてくださいと言ったんですけれども。

前田参考人 ただいま持ち合わせている手元の数字では、二十二・九兆円となっております。

川内委員 それで、時価で評価すると三十兆円程度ということになると。

 総裁、リスクプレミアムに働きかける、経済が一部のエリートや一部の方たちの中で回っているということの象徴的な言葉だと思うんですけれども、リスクプレミアムに働きかける。田舎のじいちゃんやばあちゃんは、リスクプレミアムに働きかけると言われても何のことやらさっぱりわからないわけですね。みんなにわかる言葉で総裁は語るべきであるというふうに思います。

 リスクプレミアムに働きかけるというのは、わかりやすく言うとどういう意味なんですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、リスクプレミアムの状況については、単一の基準で判断しているわけではなくて、多くの市場参加者もいろいろな指標を使って議論しているわけですが、端的に申し上げますと、株価の変動、企業収益や配当の動向も含めてさまざまな指標の動きを踏まえながら、結局のところ総合的に判断していくしかないと思いますが、市場関係者は幾つかの典型的な指標を使って、ボラティリティーとかいわゆる確定利付の債券に投資した場合とのリターンのギャップとかいろいろなのが、十以上あると言ったら言い過ぎですけれども幾つかあって、いろいろな議論をしていますが。

 基本的には、今申し上げたように、リスクプレミアムが低下すれば、株価の変動とか企業収益とか配当も余り大きく動かなくて、それによって設備投資その他が促進されて、経済や物価によい影響が出るということだと思いますが、このリスクプレミアムだけをとって、どういう指標で、どうなったらどういうふうになるというふうにはなかなか申し上げにくいということは御理解いただきたいと思います。

川内委員 済みません、私の聞き方が悪かったです。リスクプレミアムって何ですか。

黒田参考人 まさに、確定利付の債券は、もちろん破綻する懸念はありますけれども、例えば国債であれば破綻する懸念がないとして、その場合の確定利付のものはリターンがはっきりしているわけですね。それに対して株の場合は、配当といい株価といい変動しますので、変動するものと変動しないものとの差がリスクプレミアム。ですから、平均的には、株を持ったときのリターンはリスクプレミアム分だけ確定利付の債券に投資したときよりも高くならないと株式投資はしないだろうということであります。

川内委員 だから、株が余り急激に下がらないように、株式投資の利回りがマイナスにならないように働きかけるよということで、これを買い支えと一般的には言うわけですよね。

 だから、いろいろな難しい言葉を使っていらっしゃるわけですけれども、もう一つ、ETFの買入れ残がマーケットの四%しかないんだというふうに御説明されていらっしゃるわけですけれども、マーケット全体の四%ですよね。では、ETFに組み入れられている銘柄の時価総額でいうと、現在日銀が持っているETFの買入れ残は、ETFの組入れ銘柄だけで見ると何%ですか。わかったら教えてください。

前田参考人 お答えいたします。

 委員御質問の件は、恐らくETFの市場規模に占める私どもの保有額ということでよろしいでしょうか。

 これは、本年九月末時点でございますけれども、七七・五%となっております。

川内委員 個別銘柄に影響を与えないと盛んにおっしゃっていたけれども、余りにもETFの買入れ残が多くなり過ぎたために、ちょっと工夫しようねということだろうというふうに思いますが、ETFは、ここまで買っちゃった以上なかなか売れないし、売ることも考えていらっしゃらないと思うんですけれども、どういうふうに後始末をされていかれるのか。また、これからも買われるんでしょうから、なかなか難しい問題だろうなと。たまにはこっちにも相談してくださいということを申し上げておきたいというふうに思いますが。

 あと、もう一点、総裁に。

 平成二十八年九月に、金融政策決定会合で長短金利操作つき量的・質的金融緩和というものが決まった。このときに、国債の買入れについて、平均残存期間の目標を廃止するということを決定をされていらっしゃいます。

 この国債の平均残存期間の目標を廃止する、それまでは十年ぐらいまでのものにしようね、平均残存期間を十年ぐらいにしようねということで買われていたわけですけれども、その目標を廃止したということなわけですけれども、この目標廃止については、安倍総理大臣から、何らかの示唆とかあるいはアドバイスとかあるいは要請とか、また財務省からとか、あるいは政府関係者からとか、そういう働きかけがあったかなかったかということだけ教えてください。ないならないでいいです。

黒田参考人 そういった働きかけはございません。

川内委員 事前に相談をしていたということはよろしいですか。

黒田参考人 事前に相談したこともございません。

 なお、財務省の国債管理政策につきましては、当然、日本銀行としても関心を持っておりますので、さまざまな機会に理財局の国債担当者から国債管理政策についてはお話は伺っていますけれども、本件について何か財務省と相談したとかいうことはございません。

川内委員 ありがとうございます。

 それでは、私の質疑時間は超短いので次の話題に移りますが、きょう西田審議委員にお運びをいただいております。ゴーンさんとの関係でさまざまにマスコミで今取り上げられて、一躍注目を浴びていらっしゃるわけですけれども、当然、ゴーンさんとは面識はあるということでよろしいですね。

西田参考人 お答え申し上げます。

 個別のお話に関しましては、こちらでの御回答を控えさせていただきたい、このように思います。

川内委員 めちゃめちゃおもしろい答弁をされたわけですけれども。

 ゴーンさんと面識がございますかということをお尋ねしているわけですけれども、それにもお答えにならないというのは、私、昔ゴーンさんといろいろあったんですと言っているようなものですけれども。

 きょう証券取引等監視委員会に来ていただいていますけれども、ゴーンさんの新生銀行でのデリバティブ取引について、証券取引等監視委員会は来ていない。

坂井委員長 こちらには。

川内委員 午後か。午後やります。済みません。

 じゃ、西田さんに引き続きお尋ねをいたしますけれども、このデリバティブ取引、ゴーンさんの新生銀行でのデリバティブ取引を損失が出て日産につけかえたというふうに言われている。これはまだ報道ベースですね。そのとき新生銀行の部長さんであられたというふうにマスコミでは報道されていらっしゃいますけれども、それは事実でしょうかね。

西田参考人 お答え申し上げます。

 二〇〇八年当時、新生銀行のキャピタルマーケッツ部部長の職にあったことは事実でございます。

 もっとも、当時の個別取引に関することにつきましては、守秘義務の観点から、そもそも新生銀行がこの取引に関与していたか否かといった事実も含めて、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

川内委員 新生銀行さんにいらっしゃって部長さんをしていらっしゃったということでございますが、個別の取引についてはさまざまに守秘義務があるというのは私みたいな者でもわかります。

 他方で、その取引がイリーガルなものであるとするならば、そのイリーガルな取引にもし携わっていらっしゃったとしたら、今ここでどうこう答弁される必要はないと私も思いますけれども、総裁とよくよく御相談をされて、出処進退を明らかにされるべきというふうに私は思います、もしそれが事実であるならばですよ。事実でないならば関係ないですけれどもね。

 しかし、報道されているわけですから、そのことについて、責任あるお立場、日本の金融政策をある種決定し執行されていかれるお立場として、過去におけるさまざまな出来事について、しっかり総裁と御相談されて、私は、内部で問題を解決するならするというふうにされたらいかがかと思いますけれども、その辺については総裁と相談されていますか。

西田参考人 お答え申し上げます。

 そういったことに関しましては、特段何も相談はさせていただいておりません。

川内委員 ゴーンさん、今大変話題ですし、もし私的損失を会社に、日産に肩がわりさせていたとしたら、これはもう特別背任というか大変なイリーガルな取引であろうというふうに思いますし、そのときにキャピタルマーケッツ部部長でいらっしゃった西田審議委員がもしその取引に携わっていたとするならば、それは御自身の中でしっかりと対応をされていくべきことではないかというふうに思います。

 だから、この場は、答えられません、まだ相談していませんということで、もう私の質疑時間も来ておりますので終わるわけでございますけれども、私からのアドバイスとしては、どうであったのかということを御自身で日銀の中でしっかり明らかにされていかれるべきということをアドバイスを申し上げて、終わらせていただきたい。

 総裁もちゃんと対応しますよね。そのことだけちょっと答えてください。

坂井委員長 申合せの時間が経過しておりますので……(川内委員「対応しますということだけ、総裁に最後、一言」と呼ぶ)

 じゃ、一言。黒田総裁。

黒田参考人 私から何か今申し上げることはございません。

川内委員 終わります。

坂井委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

坂井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 去る六月二十二日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 本年六月二十二日に、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出をしております。

 報告対象期間は、平成二十九年十月一日以降平成三十年三月三十一日までとなっております。

 御審議に先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。

 次に、預金保険機構による資金援助のうち、救済金融機関等に対する金銭の贈与は、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十九兆三百十九億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関等からの資産の買取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。

 なお、預金保険機構の政府保証つき借入れ等の残高は、平成三十年三月三十一日現在、各勘定合計で二兆六百十億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。

 金融庁といたしましては、今後とも、各金融機関の健全性にも配慮しつつ、金融システムの安定確保に向けて万全を期してまいる所存であります。

 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

坂井委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

坂井委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁雨宮正佳君、理事衛藤公洋君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総合政策局長佐々木清隆君、監督局長栗田照久君、証券取引等監視委員会事務局長森田宗男君、財務省主税局長星野次彦君、国税庁次長並木稔君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官小波功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 きょうは、大臣の報告とはちょっと違うんですけれども、銀行のハラスメントということについてお伺いします。

 例えば、自分や家族が銀行に預金したお金が引き出せないという、健全な市民が受けた銀行ハラスメントともいうべき問題がございまして、これはどういうことかというと、もともと、振り込め詐欺とかマネーロンダリングとかなどの組織犯罪防止のために幾つかの法的規制があって、そして、その観点から銀行において適切な措置がとられているということ、これは必要なことということで重々承知はしているんですけれども、近年、必要な限度を超えた過度な情報を顧客に求めたり、余りにも機械的なマニュアル対応で顧客が窮地に陥ったり、感情を傷つけられたという、こういう現象がございまして、私はこれを銀行ハラスメントと呼んでいるわけでございます。

 この点について、私のところにも、銀行の対応に怒り心頭に達したとか、大変困ったとか、本当にどうしようもなく途方に暮れたとか、幾多の事例とか、あるいは、そういった対応に対する改善の要望が寄せられております。

 他方、銀行の内部の情報として、こういう時期に顧客の定期預金をできるだけ解約させるなとか、あるいは顧客の預金をできるだけ引き出しさせるなというような銀行の内部の、内々の指示があるというような情報にも接しているわけでございます。

 これらの観点から、限度を超えた銀行ハラスメントの具体的な事例を紹介しながら、問いただしていきたいと思います。

 まず第一なんですけれども、これは私の事務所に来た陳情なんですけれども、ことしの五月に、定期預金をしているお母様の件で解約できなかったというケースなんです。

 ことしの五月に、入院中のお母様が病状が急変しまして、意識もうろうとなった。そのために、息子さんが、入院費用を充当するためにお母様の定期預金を解約しようとして拒否をされたんですね。これは当然、銀行としては、後見人じゃないじゃないかとか、いろいろな形で言って拒否をしたんですけれども、その間、その息子さんは、銀行員の失礼な態度に大変な不快な思いを持ったということを何度も言われていました。結局、お母様の体調が回復したことしの十月、つまり五カ月後にようやく定期預金の解約がなされて、入院費用のめどがついたという話をいただいたわけです。

 私が問題にしたいのは、五月から十月の五カ月間も放置をされて、しかも、ずっと拒否をされていた状況、これが人道的にも問題だと思いますし、こういったことはもっと銀行の方が、組織犯罪とは違うケースですし、要すればそこで確認をして必要な対応がとられればこんなことは起きなかったと思うんですけれども、その辺について、何か救済策はなかったんでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 お客様本人の意思確認ができないで親族の方がお客様の預金を解約したり、引き出ししたりする場合の金融機関の対応につきましては、あらかじめこうした事態を想定して内部規定などで基準を定めて、病院からの請求書があるなど、名義人本人のための払戻しであることについて客観的に疑念がない場合などについては払出しに応じるというような金融機関があるというふうに承知しております。

 また、あらかじめ親族を代理人に指名していただきまして、一定の場合においては代理人がお客様の預金を引き出すことができる制度を設けている金融機関もあると承知しております。

 いずれにいたしましても、金融機関におきましては、個々の事例に応じまして、お客様の苦情ですとか相談に真摯に向き合って、それぞれのお客様の事情を勘案した柔軟な対応ができるように、手続を明確化して職員に周知する必要があるというふうに考えておりまして、我々としても、そういうことを促していきたいというふうに考えております。

末松委員 今の御答弁がそのまま実行されていれば、この陳情者の方は何も悩まなくて済んだわけですよ。

 それが実際には、この方、トラブルを本当に抱えていて、この前も金融庁の方にもそういったことを実際に述べてもらったんですけれども、だから、本当にトラブルが何回も何回も重ねられて、結局、五カ月間、何にもできなかった。そこが、ちょっと本当に、現場は実際そうなのか、そういうふうに制度をつくりました、それであとはオーケーですというのは、ちょっと現場の状況を見ると違うなというのが私の印象なんですね。

 二点目、これは私自身が経験したことなんですけれども、私の父親が郷里の福岡県でことしの八月に亡くなったんですね。そのときに、病院の先生がもうあと二、三日しかもちませんと。私、危篤の情報を得て、そのまますぐに飛んで帰った。

 そういう状況のときに、母親がいつも取引をしている顔なじみの銀行に行って、葬儀の費用もあるのでその準備として引きおろしたいということで、百万円以上、払戻しをお願いしたら、そうしたら、銀行の担当の方が、どこの介護施設に入院しておられますか、確認してみますからと言われたので、どうぞ確認してくださいということで電話番号を言って銀行の人が確認をしたと。

 そうしたら、父親が入院していた介護施設が何と言ったかというと、御本人はこの介護施設におられます、ただし、病状については個人情報でありますのでこれは開示できません、こう言ったわけですよ。そうしたら、銀行の方が、確認できないので払戻しはできませんと言って突っぱねた。

 そこで、私も母親のSOSの電話でその銀行に行きまして、そして、私の普通免許、身分証明書の免許を持って、私は父親の息子だということで、母親の言っていることは事実だから、ぜひそこは葬儀の費用等を含めて払戻しをさせてくださいというふうに言ったんですね。もちろん、母親は銀行の通帳、印鑑、そして身分証明書を持ってやっているわけですよ。そうしたら、銀行の方は、それはだめですという形で拒否された。

 いたし方ないので、私は、持っていた議員の身分証明書、これを提示して、私の言っていることは事実なのでそこは信頼してほしいということを言ったら、銀行の窓口の人がしばらくお待ちくださいと言って、かなり時間はかかったんですけれども、多分幹部と話をしたんでしょう、今回は特別に認めますという話になった。

 でも、逆に考えたら、なぜオーケーされたのかといったら、実は、このお母さんはいつもひいきにしていただいている顔なじみの客ですからと言ったんですね。顔なじみの客のことも信用されなかったのかいということなんですね。

 そして、多分、その行員の方は言わなかったけれども、要するに、私が議員だということもあって幹部がオーケーをしたんだろうと思うんですけれども、議員みたいな形の、そういうふうに提示をしたからオーケーになって、そうじゃなかったら、運転免許証だったら却下されて拒否された、こういうケースというのは本当に困るわけですよ。

 そして、父親が数日後に亡くなるんですけれども、亡くなったらもう父親の口座は相続関係のことで凍結されて、数カ月間、相続関係が解決するまで一切引きおろしはできない、そうなったら母親の生活費もどうやって出すんだという話になるわけですが、こういったケースについては、どういうふうに考えていますか。

栗田政府参考人 今委員御指摘のような、お客様の不測の事態を受けまして親族の方が必要な費用などに支弁するために預金を引き出すというような場合の対応につきましては、相続の関係もございまして難しい場合もあるかと思いますけれども、一部の金融機関におきましては、一定額以下の預金については、一定の条件のもとで払出しに応じるというところもあるというふうに承知しております。

 いずれにいたしましても、先ほども申しましたように、金融機関におきましては、そういう困難に直面されたお客様に対して、個別の事情をよく勘案した上で柔軟な対応をできるように手続を明確化して、さらに、こういうことを現場に徹底することが重要であるというふうに考えております。

 そういう観点から、我々といたしましても、そういう柔軟な取扱いができるように、きちんと職員の教育等をするように、今後とも促していきたいと存じます。

末松委員 全国の銀行の方にも、そういう本当に困って、組織犯罪とは明らかに違うような形ですね、そこはしっかりと徹底した形でやっていただかないと、いや、もうこういう仕組みがありますからだから問題ないんですという話になって、自分たちは組織犯罪だけやっていればいいんですという話は、これは話が逆で、真面目で健全な一般の預金者の保護というものをやってもらわないと本当に困ると思うんですね。

 引き続き、ちょっとまた例を言いますと、今度は、自分のお金を自分で預金していて引き出しに、印鑑、通帳、そして身分証明書を持って銀行へ行ったときに、娘の結婚費用をおろそうとしたらこれまた疑われて、この方は銀行の待合室で警察を呼ばれて、とんでもない状況で、えらいショックを受けて、かんかんになって帰ってこられたという話がありました。

 これは人ごとの話なんですけれども、私の家内も同じように、銀座だったんですけれども、彼女が自分のお金をおろそうとしたら、何だかんだと。私はたまたまそこに、隅の方にいたので見ていたんですけれども。そうしたら、警察の人が三人やってきて、家内を取り囲んで、何だかんだと質問し始めたわけですよ。何やっているんだと思って、家内からもちょっと来てよと言われたので、行って話を割って入っていったら、いやいや、オレオレ詐欺の疑念があったんでどうこうどうこう警察が言っていましたけれども。

 でも、そこで家内が一番ショックを受けたのは、一般の待合室のところに警察を呼んで何だかんだという、このやり方なんですね。ちょっと別の部屋に来てくださいというならまだいいんですよ。一般の人に見えるようにやっている。これはデモンストレーションでやっているんだという言い方があるかもしれないけれども、やられた方はとんでもないですよ。そういうこともしっかり考えた上でやってきているのか。結局、家内はそこで最後はおろせたんですけれども、これも本当に不愉快ですよね。

 そこら辺についてもどうなんですか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員今お話がありましたように、近年、振り込み詐欺被害が増加しておりまして、これを防止する観点から、例えば高齢の方が多額の現金の引き出しをなされるといったような場合には、金融機関においてお客様に注意喚起を行う、あるいは、場合によっては警察に通報するということもあるということは承知しております。

 他方で、過度に画一的な対応をとることによってお客様に御迷惑をかけたり不愉快な思いをさせたりするということはあってはならないというふうに考えておりまして、金融機関におきましては、お客様のそれぞれの事情を配慮して適切な対応をしていく必要があるというふうに考えております。

末松委員 うちの家内はそんなに老けているように見えないんですけれどもね。

 もう一点、海外送金についてなんですけれども、これもやはり私の知人が、ニュージーランドでしたか、旅行に行くというので、その方はたまたまニュージーランドに口座を持っておられた。そこで、五十万を送金したいということで行ったら、何だかんだといちゃもんをつけられて、最後、チケットを見せろ、そうじゃないとだめだというような感じで言われて本当に困ったと。チケットを見せるところまでそれを指導しているんですか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 金融機関のお客様が海外に送金をなされる場合につきましては、犯罪収益移転防止法ですとか外為法に基づく取引時確認が義務づけられておりまして、送金目的について、確認に必要な資料の提出を求める場合もあるというふうに承知しております。

 そのやり方につきましては、その状況に応じて個別対応ということになるわけでございますけれども、その際、金融機関においては、法令上必要があるということについてお客様に丁寧に説明することが重要でありますし、その具体的な確認の仕方についても、お客様の事情をよく配慮して行う必要があるというふうに考えております。

末松委員 確かに、マネロンに甘い国だと日本が言われて、来年の秋ですか、何かまた調査団が来るという話があるという事情は私も知ってはいますけれども、本当に少額、例えば五十万円ですよ、それは三百万、五百万とか一千万というなら話は別ですけれども、そういうこともちょっと常識の中で判断をしてもらいたいということを、ぜひそこはお願いをしておきますよ。

 これは法人の取引ですけれども、地銀の六割が現金送金を海外には停止したとか、こういうのも本当に、マネロンとかそういうことを規制するという意味では当然理解はできますけれども、規制をやり過ぎちゃうと健全な取引そのものを阻害してしまうので、そこはぜひお願いをして、そして、日本国じゅうの健全な一般の預金者が過度の困難とか感情を害されることがないように、ぜひ教育を徹底してもらいたいし、そこはぜひともお願いをします。

 最後になりますけれども、大臣の決意をお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 今、個々の例をいろいろ末松先生挙がっておりましたけれども、そういうこともあるのかなと思って伺っておりまして、知らないわけではありませんけれども。

 やはり、えらくそういったような感じが激しくなったのはこの数年なんですね。背景は、多分、私の知っている範囲では、六年前にオレオレ詐欺や振り込め詐欺が減っていって、七千件か六千件まで下がっていったんですよ。このところ、一万七千件ぐらいいっていないかな、この五、六年で、倍どころじゃないね、六千件だったら約倍ですな、一万何千件ふえていますから。そういった意味ではえらくふえてきた。ことしも既に一万三千件ぐらいまで来ていますから、十月で。

 そういった意味では、そこらのところがあるものだから、そうなると、おまえのところでちゃんと洗っていないからこういうことになったんだと言われるのがかなわぬからなるべく自分のところに来ないようにとえらく厳しくなってきているんだけれども、それは客にとっては甚だ不愉快だしおもしろくはないからそういった話になってくるんだと思うんですけれども、これは各銀行いろいろ対応をちょっと考えないと、そこのところのマニュアルがあるわけでもないので、なかなか難しいのかなと思って伺っていたんですけれども。

 いずれにしても、送金とかそれから引き出しという、まともな権利をまともに執行するに当たっていろいろ不愉快な思いをしてまでということになりかねないことになっているんだというお話だと思いますので、これは各銀行で窓口等々の対応についてちょっと検討してもらわないかぬことかもしれませんね。

末松委員 質問を終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、川内博史君。

川内委員 今、末松さんの話を聞いていて、銀行も一般の顧客には非常に厳しいわけですけれども、特に、銀行がこうやってもうけようというビジネスモデルをつくり上げてそこに猪突猛進していくと、今度は銀行の内部で違法あるいは違法すれすれのことが行われて顧客に迷惑をかけるということになるわけです。

 スルガ銀行さんの問題ですが、スルガ銀行さん御自身が発表していらっしゃる数字でいうと、レントロールの改ざん百三十一件、自己資金の改ざん、通帳の改ざん千百一件、収入の改ざん八十五件、二重契約等二百二十五件、銀行法十三条の三、三号、抱き合わせ販売の禁止、これはカードローンをつくらせたというものだと思うんですけれども、五百三十四件、銀行代理業の許可制違反又はそのおそれ八十八社、その一方で、創業家ファミリー企業への融資総額四百八十八億円、創業家ファミリー企業から創業家個人への融資総額六十九億円という形で。これはもう、何でこんなことになるまで金融庁も日銀も、検査なり考査なりしているだろうに、気づかないのというふうに思うわけですね。

 現状、被害者、ほぼ詐欺まがい、あるいは詐欺によって被害を受けていらっしゃる、スルガ銀行からお金を名目上借りていらっしゃる方たちが物すごくたくさんいらっしゃって、大変な悲鳴を上げていらっしゃいます。

 大臣に、まず冒頭、金融庁として、この被害者に対して、スルガ銀行を適時適切に指導監督をして被害者に寄り添った解決策をともに考えていくよということをまずお話をいただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 今お話がありましたスルガ銀行におけるいわゆる経営管理の体制というのが正確な標語ですかね、経営管理の体制等々の問題とか、コンプライアンス、法令遵守の話等々につきましても、これはそういったものをやる企業文化みたいな、多分背景みたいなのがある程度あるのかなという、今回の件に関してはそんな感じがしないでもありませんけれども、いわゆるシェアハウス等々に向けた融資の話からこの話が発生したというか発覚したというか、そういうことになっていること、これは甚だ遺憾な話なんだと思っております。

 金融庁としては、これは他の金融機関と同様に、これはオンとかオフという、オンとオフって意味はわかりますよね、オンとかオフとかいうそういった話でモニタリングにも努めてきたんだとは思いますけれども、結果としてこういう問題が起きるということを察知できなかったという点につきましては、これは否めない事実だと思っております。

 したがって、この点は反省すべきところはきちんと反省をいたしまして、より効果的ないわゆる検査、モニタリングというものを行って、今後とも必要な改善というのを行っていかなければならぬと思っております。

川内委員 被害者の方たちに対して、担当大臣としても、あるいは金融庁としても、被害者に寄り添った解決策が図られるようスルガ銀行を指導監督していくよということをお話をいただきたかったんですけれども。

麻生国務大臣 今申し上げたのは、スルガ銀行に対して今から対応をやっていきますので、御指摘のとおりだと思っております。

川内委員 大臣、この抱き合わせ販売、カードローンをつくらせていた五百三十四件なんですけれども、これは発覚する直前に金融庁はカードローンに特化してスルガ銀行にも検査に入っているんですよね。だけれども気づかなかったということで。

 いつも感じるんですけれども、日銀さんにしても金融庁にしても、何か問題があると、その後検査すると物すごいことがいっぱいわかりました、こういうことになるわけですけれども、本当に不思議だなと思うんですが。

 日銀さんも、総裁には午前中に引き続き大変恐縮なんでございますけれども、このスルガ銀行に考査に入っていらっしゃるわけですけれども、そのときは気づかなかったということでよろしいんでしょうか。

黒田参考人 私どもの考査につきましては、契約に基づいて行っておりまして、個別の考査結果については守秘義務を負っておりますのでお答えは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げますと、考査では、金融機関のガバナンスの有効性それから業務に内在するリスクの管理体制を点検して、その経営への影響について評価しておりまして、必要に応じて改善を求めております。

 スルガ銀行への考査も同様の考え方で実施しておりますが、いずれにいたしましても、委員御指摘のとおり、スルガ銀行において不正等があったことは大変遺憾なことでありまして、日本銀行としても適切な業務運営が確保されるよう努めてまいりたい、促してまいりたいというふうに考えております。

川内委員 ところで、この創業家に対する物すごい融資なわけですけれども、焦げついているものもあるよということが行政処分の文書などにも出ているわけですけれども、この責任者であられた岡野さん、退任していらっしゃいますけれども、退職金は払われているんですかね。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 スルガ銀行によりますと、岡野氏に対する退職金は支払われていないというふうに承知しております。

川内委員 それは、現段階においてということですね。現段階においてということですね。

栗田政府参考人 現段階において支払われておりませんし、今後も支払う予定はないというふうに承知しております。

川内委員 あと、きょう、証券取引等監視委員会にも来ていただいておりますので一問お答えいただきたいと思いますが、午前中お尋ねした、ゴーンさんと新生銀行とのデリバティブ取引に関してなんですけれども、新生銀行に対して、証券取引等監視委員会として、二〇〇八年から二〇〇九年にかけて定期的な検査にお入りになられているか、その時期について。そして、そのときに問題となる取引について指摘をしたのかということについてお答えください。

森田政府参考人 先生お尋ねの点につきましては、個別事案に関する事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

川内委員 検査に入ったかどうかというのは答えていただけるんじゃないですか。

森田政府参考人 繰り返しになりますけれども、個別事案に関することでございますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

川内委員 いや、個別事案について聞いているんじゃなくて、定期検査として新生銀行に検査に入りましたかということを聞いているんです。これは、金融庁さんも日銀さんも、どこの銀行にいつ検査に入ったということは公表していらっしゃいますよ。

森田政府参考人 お答えいたします。

 証券取引等監視委員会といたしましては、証券会社のみならず、銀行に対しましても、登録金融機関として検査に入ることはございます。

 そうした観点から、以前、新生銀行に対して検査を行ったことはあるということでございます。

川内委員 だから、二〇〇八年から二〇〇九年にかけて、あるいは、その時期を教えてくださいということを言っているんです。

森田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十年につきましては、十一月四日に検査に着手し、二十一年四月十五日に検査を終了しているというふうに承知しております。

川内委員 時間が来ました。

 答弁を用意しているんだったらそれをすぐ教えてくれればいいのに。時間が十分しかないんですから。

 委員長、抗議して終わります。

坂井委員長 はい、わかりました。

 次に、緑川貴士君。

緑川委員 国民民主党・無所属クラブの緑川貴士と申します。

 私からも、スルガ銀行の不動産不正融資に絡む問題について質疑をいたします。

 金融庁がことし十月にスルガ銀行に対して行った、投資用の不動産向けの新規融資の六カ月間の業務停止命令がありました。国内銀行に対する業務停止命令は実に五年ぶりですが、地方銀行でこれほど重たい処分を受けたのは、スルガ銀行が初めてではないでしょうか。

 このスルガ銀行の不動産向けの融資先の多くは、副収入目当ての三十代から五十代のサラリーマンであります。その返済能力、担保を評価するための貸出審査を通るようにするために、書類をわざわざ改ざん、偽造までして、一人当たり一億から二億円という巨額を貸し込んできたこと、そして、その融資金の投資先であるシェアハウスを扱う不動産業者スマートデイズとスルガ銀行の営業職員が結託して不正を行っていたこと、また、それを強要するような創業者の後ろ盾を得た一部の執行役員による厳しい業績達成へのプレッシャーと、そして過大に課されていた現場のノルマ、さらに、それに輪をかけるように、現状を放置して適切に監督機能を果たさなかった上層部、大変問題の根は深いというふうに思います。

 スルガ銀行がスマートデイズの顧客に融資した総額はおよそ一千億円に上るというふうに言われております。今回の行政処分の中で、不動産向け融資に対する貸出金利の引下げや完済条件の見直し、そして、何より元本の減免などを含めて、債務者に対して適切な対応をするように金融庁は求めていますけれども、どのくらいの規模で債務免除が認められるのかなど、スルガ銀行の債務者への対応状況、現在どうなっているんでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のありましたスルガ銀行に対する業務改善命令におきましては、金利引下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための体制の確立を求めているところでございます。

 これを受けまして、スルガ銀行の業務改善計画におきましては、顧客一人一人の状況を丁寧に伺い、事務的、画一的な運用に陥ることなく、可能な限り顧客の理解と納得が得られる最適な解決方法を提供すること、返済困難な顧客に対し、金融機関としてとり得るあらゆる選択肢について踏み込んだ検討を行い、元本の一部カットも含めた対応に取り組むということが公表されてございます。

 スルガ銀行におきましては、本年六月にシェアハウス等顧客対応室を設置いたしまして、債務者の置かれた個々の状況に応じまして、まずは金利引下げ、元金据置きなどの対応を行っており、さらに、元本のカットのための基準づくりなどを行っているものというふうに承知してございます。

緑川委員 そもそも市場価格の二倍で取引されている内容であります。そして、この行政処分が下される過程の中で、自殺されている方も出ています。債務者である個人投資家の中には、スマートデイズに多額のキックバック料を含む不当に高額な建設費を請求されている、これで命を絶たれている方もいる、極めて悪質な事件です。実質を伴った真摯な金融庁のお答えを強く求めていきたいというふうに思います。

 このほか、金融庁の行政処分命令の中で、反社会的勢力との取引など、新たな事実も盛り込まれております。極めて深刻な内容です。スルガ銀行の公表によれば、暴力団など反社勢力とわかっていながら新規口座を開設した例が実に四十六件、既存取引先が反社勢力とわかった後でもカードローンの与信枠内で融資を続けていた例が二十二件もありました。

 スルガ銀行がなぜこうした状況を放置してきたのか、そして何より、なぜこれを監督する立場の金融庁がこれまで指摘できなかったのかを伺います。

麻生国務大臣 このスルガ銀行の問題というのを放置してきたことについての話ですが、これは金融庁としては先般スルガ銀行に対して業務改善命令というのを既に発出しておるんですが、反社会的勢力との取引の管理体制に不備、また、その要因として経営管理の体制の問題、また、法令遵守を、いわゆるコンプライアンスを軽んじる企業文化があるのではないか等々、いろんな点について認められたといたしております。

 いずれにしても、この点をきちんとして対応できるよう、今後モニタリングをしていかなければならぬと思っておりますが、この問題を指摘できなかったという点を今言っておられるんだと思いますが、金融庁では、スルガ銀行に対しましても、これは他の金融機関と同様、オンとオフ、わかりますね、立入りとかそういう意味ですよ、オンとオフについて一体のモニタリングというものに努めてきているんですけれども。

 結果として今回のこの問題を事前に察知できなかったというのは事実ですから、これは否めない事実だと思っておりますので、この点に関しては、きちんと反省すべきところは反省をして、今後とも、効果的なモニタリングというものを行っていくというために、必要な改善というものを今後図っていかねばならぬところだと思っております。

緑川委員 このスルガ銀行の、やはりきな臭い、いろんな融資を含めたさまざまな慣習というのは、以前から言われていたことであります。この投資用の不動産への融資業務だけではないさまざまなモラルハザードが行内全体で発生していた状況、これはやはり、企業文化のさまざまな影響があると思いますが、そうした影響がもたらしている結果であるというふうに思います。

 本来、金融機関でよく言われる、貸すも親切、そして貸さぬも親切という言葉がありますけれども、行員にとって矜持となるような大変重要なお言葉、相手にとってどう役立つのかを、スルガ銀行は、それを忘れてむやみに融資を実行し続けた結果、高収益を維持できなくなって、結局は、砂上の楼閣のように崩れ果ててしまう、事実上の解体的な出直しであります。

 この第三者委員会の調査においても、シェアハウス融資のサンプル百二十七件の売買価格の平均額は、先ほどお話ししたとおり、適正に評価した額の二倍であったというふうに報告されておりました。

 シェアハウスオーナーは、実勢とかけ離れた高い家賃収入を保証されて、しかも、不動産購入の必要額のほぼ全額を当のスルガ銀行が融資することも約束されている。それによって、本来不当であると感じられる、高額であるはずのシェアハウスの価格にお墨つきが与えられているような状況がつくり出されていたわけです。

 スルガ銀行が関与したように、不動産業者が家賃保証を著しく高く設定することで投資の収益性をオーナーに誤認させるような仕組みが実質組み込まれていた、こういうビジネスモデルをほかの金融機関が模倣しているケースもあるというふうに言われていますが、金融庁として把握されていますでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁におきましては、スルガ銀行において発生した問題を踏まえまして、同様の問題が他の金融機関においても生じていないかを横断的に検証すべく、アンケート調査や検査を活用したモニタリングを実施しているところでございます。

 今般の検証を通じまして、投資用不動産向け融資に関する金融機関の融資審査管理体制、顧客保護等管理体制、法令等遵守体制の適切性につきまして、横断的に実態把握をしてまいります。

緑川委員 この間にも、地域の本当に一生懸命に利益を上げようと頑張る地方銀行が、後で触れますけれども、金利政策の影響もあります、収益が本当に減少を続けている中で、六年連続で増益を記録してきた、地銀の優等生とまで言われたスルガ銀行のそのビジネスモデルをまねる地方銀行、信用金庫があるというふうに聞いています。盛んに個人投資家向けに不動産担保融資を行っている、そのシェアハウス不正融資問題は、これは氷山の一角であって、ほかの金融機関でも同様の問題が出てくる可能性は否定できません。

 これはビジネスモデルというよりも、いわゆるポンジ・スキームというふうに言われておりますが、つまり、投資家に平均を上回る利回りを提示してその気にさせて出させたお金を使って、それと関係ない別のところで支払いを済ませる、それを自転車操業のように繰り返して、これは国内では違法と言われる出資金詐欺に当たるものであります。

 この手口では、初めのうちは投資家に高い利払いをしますが、更に多くのお金を投資すればもっともうかるというふうに信じ込ませて、そこにほかの投資家が飛びつくようになれば、口コミ、あるいは勝手に群集心理で投資が集中するという、これは悪質なものです。

 スマートデイズの不正を知りながら、融資先であるオーナーに融資をしていたスルガ銀行も、積極的にかかわっていたことで社会問題に発展している今最中であります。

 ほかの銀行や信用金庫がこうした手口に加担をしていないのか、その実態の全容把握、そして取締りに向けては改めてどのように対処していくお考えか、大臣から伺いたいと思います。

麻生国務大臣 これは先ほども局長の方から申し上げましたけれども、これは不動産向けの融資に関する金融機関の融資審査管理体制、顧客保護等管理体制、法令遵守体制の適切性について、これはもう横断的にやっていく以外にほかに方法がありませんので、これはきちんとそういったことをやっていくんだと思いますが。

 いわゆるポンジ・スキームのお話だったんだと思うので、これに対する取締りにつきましては、金融庁としても、こうした業者がいるわけですから、そういった業者に対しての監督権限というのを金融に関しては持っていますけれども、そこらに対しての検査、捜査、そういった権限を私どもが持っているわけではありませんので、そういったところに関してはちょっとお答えする立場にないということは御理解いただきたいと存じます。

緑川委員 地銀の経営の苦しさというものは、やはり私は一因で、今回の一件、大きく関係しているというふうに言わざるを得ません。

 地方銀行の経営環境について詳しくお話をしていきたいと思いますが、少子高齢化で地域の人口が大きく減少している中、午前中の審議にもありました、人口減少で新たな融資先が減っている上に、日銀のマイナス金利政策です。地銀の平均貸出金利は直近で〇・九五%、まさに一%を割ってしまっている。そして、国債の運用利回りはほぼゼロ%です。

 本業の貸出利ざやの縮小が続く中で、前原委員のお話もありましたように、上場企業の地銀八十行のうちの六割以上が減益か赤字になっている。信用力の高さが何より支えの地域の地方銀行の苦しい経営状況が一段と鮮明になっているではないですか。地域経済を循環させる心臓部です。この心臓部が大きな打撃を受けている、こうした状況が依然として続いています。

 マイナス金利政策による本業の利ざや縮小が銀行を追い込んで、スルガ銀行の不正融資を更に助長させていった面があるのではないですか。伺います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、地域金融機関においては基礎的な収益力が低下傾向にあるわけでございまして、その背景といたしましては、人口や企業数の減少といった構造要因に加えまして、やはり低金利環境の長期化といったことが作用しているというふうに考えてはございます。

 地域金融機関は、こうした収益環境の悪化に対しまして、有価証券運用の多様化ですとか、あるいはミドルリスク企業向け貸出しの積極化といった取組を行ってきているわけでございます。

 ただ、当然のことながら、こうした取組は法令などに従って適切に行われる必要がございまして、金融機関においては、適切な経営管理体制やリスク管理体制、コンプライアンス体制を整備するということが前提でございます。

 スルガ銀行におきましては、金融庁の今般の業務改善命令においても、これらの点に不備があったとの指摘を受けておりまして、この点、私どもとしても大変遺憾に思っているところでございます。

 日本銀行としましては、考査やモニタリング、あるいはセミナーの開催などを通じて、今後とも、金融機関の収益力向上に加えまして、経営管理体制の充実、リスク対応力の強化に努めてまいる所存でございます。

緑川委員 地銀への影響は否定されませんでしたし、そして、特異な存在であるスルガ銀行に対しては、今御見解いただきましたけれども、スルガ銀行がなぜそんな極端な、リスク管理も怠るような経営に走ったのか。

 いろいろな企業文化の、もちろん、そうした風土、大きな風土があります。スルガ銀行が、地銀の平均の三倍以上にもなる、何といっても三・六一%、ことしの三月末の貸出金利ですが、この高い貸出金の利回りになったのは、以前まで行っていた中小企業向けあるいは自治体向けなどの貸出金利の引下げ競争が日銀のマイナス金利政策で一層激しさを増したことで撤退をせざるを得ない状況もありました。この金利政策が結果としてこうしたバブル融資に走らせた、そうした側面は私は否めないというふうに思います。

 高い貸出金利が期待できる個人向けローンにスルガ銀行が傾斜をしてしまった、その結果として、属性の不確かな個人投資家が、不動産投資家にとっては、大きな融資を期待できる頼みの綱である、まさに駆け込み銀行になったのが当行であります。

 スルガ銀行のケースも含めて、銀行から甘い審査で貸し出された不動産担保融資の残高が山のように積み上がって、ことし新たに貸し出された不動産融資はおよそ十一兆七千億円です。このうち、アパートなど貸し家向けが三兆三千億円余りにもなります。

 その甘い審査で個人投資家が組めるアパートローンの金利が、長期金利に連動していますけれども、その長期金利は今ゼロ%、当然これ以下には下がらない水準の中で、不動産投資を行う個人投資家は、いわゆるキャッシュフロー、つまり、毎月入ってくる家賃収入の中から銀行への利払いと融資返済を差し引いた残り、このキャッシュフローに基づいて投資をしますから、今、金利が最も安い状況で融資を引き出して投資物件を購入でき、このキャッシュフローも黒字にしやすい局面ですが、今後は、この長期金利、アパートローン金利は上がっていくしかありません。

 この来るべき今後の金融の引締めの影響によって、個人投資家が融資を受けている金利が仮に一%でも上がれば、毎月の銀行への利払い額は格段に上がります。ましてや、この数年の間に金利が二%に上昇していくとすれば、ほとんどの投資家でキャッシュフローが赤字になる可能性だってあります。

 この金利の上昇が、多額の負債を抱えた個人投資家をふやして、そこに融資をした金融機関の不良債権化が進む懸念があるというふうに考えますが、金融庁としてはどのように捉えていらっしゃいますでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに委員御指摘のとおり、変動金利による融資におきましては、基準となる金利が上昇すると債務者の利払いが増加するということになります。

 ただ、実際の返済に与える影響につきましては、この金利の動向のほかに、金利更改のタイミングですとか、家賃相場の変動状況、それから担保となる不動産価格の動向など、さまざまな要素が影響すると考えられますので、その影響について断定的なことを申し上げることは難しいと考えております。

 また、金融機関ごとに保有資産に占めます投資用不動産向け融資の割合も異なってくるために、金利上昇が金融機関の健全性に与える影響についても一概には申し上げられないということを御理解いただきたいと存じます。

 ただ、当庁といたしましては、平素から金利上昇の影響を含めまして金融機関が抱えるリスクの把握に努めるとともに、特に投資用不動産向け融資につきましては、金融機関に対して現在行っておりますアンケート調査の結果も活用しまして、金利変動の影響も含めた返済に関する収支シミュレーションを実施しているかなど、リスク管理の質の向上に向けた対話を行っていく予定でございまして、引き続き、金融機関の適切な業務運営の確保に努めてまいりたいというふうに考えてございます。

緑川委員 タイムラグがあるにしても、やはりこれは時間の問題であって、いずれは影響が出てくるというお答えであります。

 午前中もお話がありました。世界の流れは、今、金融の引締めに向いております。黒田総裁がみずから掲げながらも六度も先送りを続けている物価上昇目標二%、これがいわば呪縛のようになってしまっている、金融引締めを渋るしかない状況ですが、野田委員からも御指摘がありましたように、金融緩和などの選択肢を将来持てるようにしておかなければならない以上、今後は金融を引き締めていかなければならない局面は来ます。

 この日本が金融引締めに転じて金利が上昇した局面で、例えば三年間で二%の金利上昇というものもあり得る中で、スルガ銀行に追随するとされる他の地方銀行、信用金庫がここ数年で行った過剰なバブル融資、これはいずれ不良債権化していく、これは間違いありません。それに対応していくことが求められていると思います。この話については、今後も議論をさせていただきたいと思っております。

 話をかえまして、前回、先月二十日の質疑で、関連いたしますけれども、限りある国家予算、財源の中で、私は、ある支出を削ること自体が目的になってはならないというふうにお話をいたしました。それを削った結果、例えば、被災地や地方の成長、また、支えを必要としながらもなかなかこの国会の場にこの声が届いていかないような、立場の弱い多くの方が抱える将来不安の解消が先送りにされるべきではない、そうしたお話をいたしました。

 一方で、我が国の防衛は国民全ての利益になるものであります。有事への十分な備えと、先ほどの平時からの暮らしの安心、このバランスがまず不可欠であるという立場に立ってお話を進めさせていただきたいというふうに思いますが、防衛関係費、五年連続で過去最大、五兆三千億円の概算要求。まさに青天井予算になっている。このバランス感覚を問いたいわけです。

 最新のステルス戦闘機F35、これを最大で百機、一兆円以上をかけて取得をすると言われています。今あるこのF15戦闘機で修理できない九十九機がありますが、この後継機体として、F35の取得計画の見直しを、まさに今後、中旬の閣議で決定をするようですが、このF35戦闘機、一機百億円以上になります。今回、生活保護費用の百六十億円を削減して、受給者二百十万人の声よりもこの機体一機の方が優先されるというのは、やはり私はおかしいなというふうに思います。百十万世帯の生活保護受給費が最大五%も減額をされます。

 財政の総額にそれだけ気を使うのであれば、この戦闘機を一機でも減らす検討、その努力をまずしていただきたい。我が国の財政はアメリカの財布ではありません。費用が明らかにかさんできている。

 秋田と山口を配備先と説明しているイージス・アショアについても同じです。昨年十二月の閣議決定に向けて、アメリカから必要な情報を収集した、調整を行った結果、導入に踏み切ったというふうにお話がありましたが、その割には、イージス・アショアから発射する新型ミサイル、SM3ブロック2Aの命中率が、実験では、昨年とことしで四回行われた、そのうち成功したのは二回、迎撃できる確率は現在二分の一。

 その上、この新型ミサイルに対応するレーダーも、現行のものではなく最新のものにしなければ、イージス・アショア本体で一基当初八百億円と言っていたものが、最新で四百億円以上の追加の購入費用で、結局、当初の想定の一・五倍にコストが膨らんでいます。

 さらに、土地の造成といった施設の設備費、そしてまた、迎撃ミサイルの発射装置なども必要になってきますから、今後の維持運用経費なども含めて、二基で四千億円以上です。これは、企業法人税率の一%分の税金に当たります。

 日進月歩で進む防衛技術を考えれば、五年後の配備の時点で、二〇二三年に配備がされるというふうに言われておりますが、新たな装備がその時点でまた必要になってくるかもしれません。

 アメリカの言いなりではないと前回改めて説明をされました。ましてや、自分たちで購入したというふうに答弁されたのであれば、その費用がどんどん膨らんでいることについては、逐次、国民に説明する必要があると思いませんか。

原田副大臣 イージス・アショアの購入費用につきまして御質問があったと承知をいたしまして説明をさせていただきますが、先ほど委員お示しのとおり、当初、八百億という説明をさせていただきました。

 本年七月のレーダー選定時における見積りとして、一基当たり一千三百四十億円であるということを公表いたしまして、また、本年、八月末の三十一年度概算の要求時点においては、一基当たり約一千二百三十七億円であると公表いたしております。

 当初の見積りは、委員お示しのように、海上配備のイージスシステムを参考にしたものでございまして、今回、イージス・アショアに搭載するレーダーはLMSSRという最新鋭で高性能なものとなっており、海自のイージス艦に比べ、ロフテッド軌道への対応能力や飽和攻撃に対する同時対処能力等、我が国の弾道ミサイル防衛能力は飛躍的に向上するものとしております。単純に価格が上がったのではなくて、より高い能力を有するものを取得しようとしていることを御理解をいただきたいと思います。

 また、本年七月から八月にかけましては、米国政府等から提案のあった見積りから必要な機能等を精査した結果、先ほど申し上げたとおり、約百三億円の費用低減を行っております。

 現在も、平成三十一年度政府予算案の編成に向けて一層の費用低減に向けて努めておるところでございまして、米国政府等と緊密に調整をしておるところでございます。具体的には、米国政府から費用についての情報提供を受けて、必要機能の精査やコストダウンに関する交渉を行っております。

 このように、イージス・アショアの価格については、あらゆる段階で米国政府や企業とも調整の上、真に必要な経費をよく検討し、更に費用の低減に努めてまいります。

緑川委員 やはり説明が後手に回ってしまっているんですね。導入についてもそうですし、山口と秋田、この説明についても、住民から促されてようやく重い腰を上げて説明をする。こういう姿勢では納得は得られないというふうに思います。

 このイージス・アショアについては、何度も他の委員会でも尋ねておりますが、飛行制限区域を設定する可能性も否定されていません。そこを通らなければならないドクターヘリがあれば、停波のために、電波をとめるために患者の搬送がおくれて救命の可否にかかわる可能性。

 そして、秋田空港、地元にありますが、秋田と札幌間を離発着する航路は、まさに配備候補地の脇にあります。すぐ横を通っていくわけで、この際も、飛行制限区域があるかないかで大きな支障が出てきます。秋田の観光にも影響が出る問題であります。

 海外の配備地と比較しても比べ物にならない狭さの配備候補地では、迎撃ミサイルが発射された場合の衝撃や爆風の周辺への影響もどのくらいか、現状では全くわかりません。

 副大臣、通告はイージス・アショア全般にしておりますが、このあたりについて所感を伺います。

原田副大臣 今、ドクターヘリや民間航空機の運航に支障はないのかというお尋ねでございます。

 防衛省がレーダーを配置する場合においても、ドクターヘリや航空機の運航に支障を与えないかを十分に調査した上で、仮に支障を来す場合には必要な対策を実施いたしております。

 イージス・アショアのレーダーについても同様でありまして、現在実施中の電波環境調査により航空機等の運航に与える影響を十分に調査した上で、運航に支障がないか把握してまいりたいと思っております。

緑川委員 レーダーの現地調査についてですけれども、やはり影響があると言う専門家もいれば、防衛省では安全だというふうに説明がございます。現地で肝心の電波を発する調査はしないということで、アメリカから仕入れたデータだけで、机上で分析するだけでは、今からやればいい話なんですね。来年の一月以降に調査をするというふうに時間を設ける必要はないというふうに思います。

 今後、現地で電波を使った調査をするか、お考えがありますでしょうか。

小波政府参考人 お答えいたします。

 防衛省におきましては、これまでも国内法令を遵守し、人体を含む周辺への影響がないよう、各種レーダーを設計、製造、運用しているところでございます。

 ただいま委員から御指摘ございました十月二十九日より実施中の電波環境調査では、現在、既存の公共施設、住宅などの位置やレーダーとそれらの施設の間の地形状況等の把握を行っているところですが、イージス・アショアが使用する電波に関する細部情報をもとに正確にシミュレーションを行い、安全性を確認してまいるつもりでございます。

 シミュレーションによる安全性の確認は、民間等において電波を発する機材を新たに導入する場合にも同様の方法がとられており、この方法は、防衛省・自衛隊だけの特別なものではなく、一般的な確認方法となっております。

 なお、委員御指摘のように、実際に実機が完成した際には、民間等においてもこれも同様でございますけれども、現地で電波を発した調査による安全性の確認を確実に行ってまいる所存でございます。

緑川委員 余りにも残念なんですよ。なぜシミュレーションで安全が確実に確保されるか、そうしたことができるのか、大変疑問であります。

 その上で、最後にお尋ねいたします。

坂井委員長 申合せの時間が経過しております。

緑川委員 昨年の行政文書を始め、資料やデータの改ざんなどが公然と行われている政治行政には厳しい目が向けられているわけです。

 レーダーから発生する電磁波が安全かどうか平行線をたどっている中、調査の透明性を確保する、それに基づく分析の結果を、防衛省だけの判断ではなくて、客観的に判断できるような外部の有識者から成る団体などの関与も、分析に当たっては重要であるというふうに考えておりますが、副大臣、最後にお答えいただきたいと思います。

坂井委員長 簡潔に願います。

原田副大臣 今、御指摘のように、第三者の意見も聞きながら、透明性の確保が重要であると考えておりまして、そのように調査を実施していきたいと思っております。

緑川委員 前向きなお答えと受けとめて、質問を終わります。

坂井委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 午前中に続きまして、質問をさせていただきたいと思います。

 ことしになりまして、麻生大臣とは、通常国会でも十回以上質問をさせていただく機会がございました。先般も大臣所信についての質疑をさせていただきましたが、大体テーマは、財務大臣に対する質疑という形で、税制や財政あるいは国際会議出席に当たっての決意などをお尋ねをしてまいりました。きょう初めて、金融を担当する大臣として、麻生大臣に基本的な御見解をお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 私もまずスルガ銀行の問題について触れたいと思うんですけれども、たまたま新聞広告で本の広告を見まして、それがスルガ銀行の創業者を扱った伝記だったんですね。取り寄せて読んでみたんですけれども、なかなか立派な人なんですよ。岡野喜太郎といって、タイトルは「炎の銀行家」、十月二十五日に第一回の刊行をされているという、本当に最近出た本なんですね。まさに生い立ちから創業に至るまでの、まさに少年時代、青年時代を描いたものですが、大変地域を愛し、人を愛し、おおらかな人物です。

 その方が十九世紀後半、一八九五年に創業されて、今日あるのがスルガ銀行なんですが、この人は一八九五年に創業してから一九五七年まで六十二年間、頭取なんですね。百一歳でお亡くなりになるまで、経営にいろいろかかわったという方です。これだけの、人材じゃなくて人物とも言える人が創業して、しかも、環境を見ると、横浜銀行と静岡銀行の間にあるじゃないですか。大変なところですよ。大変なところに立地するところで反骨心を持ちながら頑張ってきた、そういう銀行だったと思うんです。

 とても今回のような不祥事というか不正を行うような、創業者の人物像からは考えられないんですが、どこの企業でも、創業者の思いをしっかり受けとめない、そういう企業もよくあることなので、不思議でしようがないんですけれども、そもそも何でこういうスルガ銀行は不正融資に手を染めたと大臣はお考えなのかを、端的にまずお伺いしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 今の話は初代の話だと思うんですね。今この問題の起きているのは二代目だか三代目だったと思いますね。私よりちょっと若いぐらいかな、知らないわけじゃありませんけれども。そういう創業者のイメージ、私、創業者の方も知らないわけじゃありませんでしたけれども、この方はおよそイメージの違う人だったなという記憶だけはありますので。

 二代目、三代目になってくると、いろいろ出てくるんじゃないんですかね。まず、それが当たり前だと思いますよ、どこの世界でも。二代目、三代目もちゃんとしているという方が世の中なかなか珍しいというのがよく言われるところなので。私もよく三代目や四代目で同じようなことを言われていましたので、そういう話にどうやってたえていくかというのは、なかなか難しいところだと思いますが。

 いずれにしても、不正融資に手を染めるというのは、多分、自分のところの銀行に限りませんけれども、今の地方銀行、今百六行ぐらいあると思いますが、いずれも今、金融というのは、人口の少子また高齢化等々に伴って、銀行に対する資金は、資金の不足より融資をする先がないという条件が今の経営を厳しくしていると思いますので。

 そういった背景が非常に大きな背景で、こういったものに急激に手を染めて、行けると思って、わあっと行ったというところと、あと、コンプライアンスの話とかなんとか、そういったものに対して、ちょっと待て、ほかのところも考えたらという、待て待てという中での、そういった声を反映させる企業文化、そういったものが少し欠けているのかなという感じはしますけれども。

 今おっしゃられたところでは、こんな立派な人だという人に対して、今はどうしてそうなったのかという背景といえば、多分、その中のこの約数十年間の間に、何となく、銀行という金融業を取り巻く環境というのが、金の足りなかった一九四〇年代、五〇年代とわけが違いますんで、そういった意味では、だんだんだんだん状況が変わってきたのに対する対応もなかなか難しかったのかなという感じはいたします。

野田(佳)委員 本当に残念な事案でして、金融育成庁を金融庁は目指すということですが、まずはやはり、監督の部分も猛省しながらやっていただければというふうに思います。

 おとといのニュースか何かだったですかね、年末になってくると何とか大賞というのが随分出てくるじゃないですか、流行語大賞とか。ブラック企業大賞というのがあるらしいんです。候補社、候補の会社、企業が九あるんですね、九社。その中にやはりスルガ銀行は入っているんです。猛烈なパワハラで、高いノルマを課して、そのために社員が椅子を蹴飛ばしたり乱暴な言葉を言ったりする壮絶なパワハラ。それがやはりブラック企業大賞の候補になっちゃった。ちなみに財務省も入っちゃっていますけれども、セクハラの問題で。どっちにしろ、ちょっと余りいいことではないんですけれども。

 今、背景のお話をしていただきました。私、だから、スルガ銀行という個別行の問題ももちろんあると思うんですけれども、今、背景の金融をめぐる環境が大きく変化をしているということを御指摘されましたけれども、やはりそこが重要な構造的な問題だというふうに思います。

 その関連でお尋ねをいたしますけれども、先般の十一月十五日に、全国地方銀行協会が発表していますが、地銀の七割、四十三行が減益という中間決算の結果が出ております。厳しい結果だと思いますが、これについての大臣の御所感をお伺いをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 九月の数字だったと思いますが、九月の決算期においてのもので、これは、地方銀行の平成三十年九月期決算という数字なんだと言っておられるんだと、これは七割が減益ということになっておる、そういう数字が挙がっておるということは間違いないと思っております。

 基本的に、それを考えるに当たって、まず、野田先生、一番肝心なことは、地域銀行の中を見た場合に、まずもって、現時点において、いわゆる資本規模はどうなっているのと、これらの銀行らの資本基盤というものはどうなっているのかというと、これは極めて総体としては安定したものになっておりまして、少なくとも、国内の基準行でいきますと、いわゆる最低自己資本比率というのは決められているんですが、これはたしか四%だと思いますが、国内基準行で、これの倍の約九・六八ぐらい今あるはずです。

 それから、国際基準行を見ましても、これは、自己資本比率が八%になっていますけれども、これは一四・何%になっていると思いますので、そういった意味では、総体として安定しているということをここではまず大前提にしておいて、いかにも銀行経営が危なくなっているという話ではありませんから、そこのところは、ちょっと変な話になると、また変なパニックでも起こされちゃたまりませんので、そこのところはまず最初に申し上げておかねばならぬところだと思っております。

 しかし、その上で、先ほども申し上げましたように、全国的な人口減少とか、それから低金利政策とか、いろんなものが継続している背景がありますので、地域銀行というものを取り巻く環境というのは、これは地域によっても違いますし、経営環境というものも、その地域やら、人口がふえているところもありますので、そういったところについては状況が違っていると思っておりますが。

 いずれにしても、銀行としては、将来にわたって健全性というものをきちんとしたものを確保した上で、ビジネスモデルとして、こういった可能性があるんですよというようなことを今後考えていかねばならぬというのは大きな課題なんだと思っておりますので。

 私どもとしては、金融庁としても、オン、オフ一体で、いわゆる、こういったモニタリング等々を通じて、どういった取組をやっていかないと、おたくはこれをやっておられますけれどもといって、他行に比べてこういうところがというようなところを真剣に話をさせていただくというのを、いわゆる規制という形で差し込むような感じではなくて、相談に乗る、もっとそういったような形で、銀行と金融庁と一体となって、地銀等々、そういったものの経営というものを、零細銀行とかいろんな表現はありますけれども、そういった銀行に対する対応というものを考えていく必要があろうかとは思っております。

野田(佳)委員 現段階で私も、金融業界にパニックを起こさせるような、そんなことを意図しているわけではないんですけれども。だから前段の部分の大臣の御説明もわかりますが、一方でやはり危機感を持っていますのは、あのスルガ銀行もしかりでありますが、要は飯の種をどうつかむかという、まあ俗な言葉で言うと。

 収益を上げていくビジネスモデルを失ってしまっていて、それを見出すために悪戦苦闘しているところが今多いと思うんですね。大手行もそれなりに苦しんでいますけれども、それより厳しいのはやはり地方銀行であり、今、だから地銀の中間決算の話をしました。もっと厳しいのはまた信用金庫であったり、序列もいろいろあるというふうに思います。

 という環境の中で、きょう午前中の中では景気後退局面に入った場合の話なんかをしたんですが、景気後退局面に入っていくと、もっと加速度的にその収益が悪化していく可能性というのがあると思います。その辺をにらみながら、地方銀行の今のいわゆる体力といいますか、よく分析をしていかなければいけないというふうに思いますけれども、まさに地域金融機関の、あるいはもっと広く言って大手行も含んで金融機関の基礎体力を失わせているのは、今大臣も御指摘のあった、一番大きいのはやはり超低金利が続いているということだろうというふうに思いますが、この辺の御認識についてお尋ねをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 日銀の話が基本的に今の金融の話で、金利の話からいくと、基本的には今日銀の低金利政策というところがどうかというお話に究極的には収れんされていくんだろうとは思いますけれども。

 いわゆる銀行というのは、この六年間ぐらいの間、安倍内閣になって以降、私どもは、金融政策というのは、金融収縮をやった結果、少なくとも日本はどうなったかといえばデフレ。そして、その結果、いろんな形で、私どもとしては、経済がデフレーションによる、正確には資産のデフレーションによる不況というものが長く続いて、それの対応政策を間違えた。日銀はもちろん、政府もあわせて間違えておりますので、デフレによる不況が長引いた。

 これを緩和するためには政策を変えてもらわないかぬということで、金融は緩和ということで、結果として金融は緩和をさせていただいた結果、今少なくともいろんな意味で、ドルが七十九円、野田先生のころに七十九円九十銭ぐらいまで円高・ドル安に振れたと思いますが、今、きょうで百十二円七十八銭とか九十銭とかそんなところになっていると思いますが、そういったところまで金融が緩和された結果、円安・ドル高に振れて、結果として、輸出産業等々はいわゆる企業収益を改善させて、今各社の企業収益は戦後最高と言われるようなところまで来たんだと思っておるんですが。

 その結果、銀行の貸出残高というものもこの六年間でふえておりまして、二〇一二年の二百十三兆円から二〇一七年は二百五十四兆円ということで約四十兆ぐらい貸出総額がふえてきておりますから、そういった意味では、間違いなく金融庁として、そういった方向としては間違いなく景気の上昇に伴って銀行の貸出総額もふえているというのは事実なんだと思っておりますが。

 問題は、銀行の貸出しの仕方も、今までのように金がない時代とは違いますから、みんな金は預金をやたら持っておるわけですから、そういった意味で、それをどうやって事業に充てていくかというのを、貸した金利のさやだけ取って稼いでいるというモデルで今までの時代は楽に回っていたんだと思うんですけれども、なかなかそれだけではいかなくなってきて、本業を支援するに当たって、もうちょっと企業に対して、銀行と一緒になって、こういったものがあればもっとというような話やら何やらいろんなことで持続可能なビジネスモデルというのを考えていかなきゃいかぬということなんだと思っておりますので、私どもとしては、単なる金貸しをやっているんじゃないですよと。もう少し銀行と企業と一緒になって、この企業を伸ばしていくというようなことを真剣に考えていく。

 特に地域において、何といっても、その中でうまくいっているところは、その地域に一番根差している地域銀行というのが一番大きいと思いますので。

 例えば広島信用金庫なんてよく例に引きますけれども、どう考えてもあの信用金庫だけは間違いなく貸出総額も伸びていますし預貸率も上がっていますし、異常なぐらい伸びている。

 しかし、あそこぐらいよく働く理事長なんて見たことないですな。あの人の下にだけは働いちゃいかぬなと思いながら、あの人の話をよく聞きますけれども。あの人を見て、この間もどこかテレビに出ていましたけれども、テレビはそういうところしか撮らないので。テレビなんてのは偏っていますから、そこの部分しか撮っていないんだとは思いますけれども。

 あの調子で働かされたら下はたまらぬと思って、たまたま会いましたから、恵まれない上司のところで働いていますねと言ったら、げらげら本人も笑っていました。ただ、その本人は、私も本当にしんどいんですけれども、正直言って生きがいがありますと言われたので、へえ、そんなことを下に言わせるやつがいるのかと思って、ちょっと正直、もう一回会いたいなと思った人なんですけれども。

 ぜひ、そういった意味で、いろいろな金融機関の頭取というか、一番上をやっておられる方、いろいろいらっしゃるとは思いますけれども、ぜひそういった意味で、この金融の状況というのは間違いなく、野田先生おっしゃるように今から大きく金融機関が変わっていきますし。

 世界じゅうから安定した金利を目指して日本にも入ってきていますので、そういった国際金融の世界では間違いなく金利はそんな低金利じゃなくて、海外で回して海外で金利を稼いで、またこっちへ戻してきているという例も幾つもありますので、いろいろな面で、国際化やら何やら、地銀もいろいろなことを学ばねばならぬ、やっていかねばならぬ時代になってきているのかなという感じはいたしますけれども、新しいビジネスモデルは、従来のものだけではなかなか対応し切れなくなってきている傾向はある、そのように認識をいたしております。

野田(佳)委員 今、海外のお話もされましたけれども、地方銀行も含めて、結構リスクの高いような海外の債券を買っているというケースもあるようなので、まさにスルガ銀行と同じように、やはり貸出しだけではなかなか収益が上がらないし、国債を持ったって、これは利ざやもないし、益がないということで、やはりリスクあるところへ挑戦せざるを得なくなっている。

 目ききがよくてうまくいっているところがあればいいんですけれども、目ききというのはなかなか難しくて、そう簡単にいかないわけですよという状況があるということをやはり押さえておいた上で、今大臣が触れたように、超低金利の問題は本当に問題だと思って、日銀に聞けばよかったんですが、きょう時間がなくなっちゃって聞けなかった分、大臣にお尋ねしましたが、それと同時に、今いわゆる企業行動の変化について少し触れられたというふうに思います。

 優良企業、今無借金がふえていますよね。リーマン・ショックの後に随分ふえたと思うんです。一挙にふえてしまって、実質無借金というのが、要は、金融機関に頼らないというのが四割ぐらいあるんじゃないでしょうか。

 これは原因は何なのかというと、これは大臣にお尋ねしたいんですが、相当やはり資金繰りに苦労したときに嫌な目に遭ったのか苦しい目に遭ったのか知りませんけれども、もう金融機関に頼らないぞというマインドになっちゃっているんですよ。そこをまたお客さんに取り戻すのは大変であって、そうじゃなくて、優良企業はなかなか帰ってこない、収益力のない、要は利益率の低いような企業に今金融機関は群がっていかないと商売できないという構図になっているのではないかと思うんですけれども、これはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 金のないときに経営をやった、私はその部類ですから、余りいい思いをしたようなことなんかないんですよ、この時代は。

 ところが、その時代に貸し剥がしやら貸し渋りやらやったやつが今ちょうど偉くなって、常務なんですよ、頭取なんですよ。そいつの面を見ただけで、あいつにだけは頭を下げたくないと。思っています、経営者だったら。思っていないやつなんかいませんよ。これははっきり言えると思いますね。あいつがいる間だけは絶対にあの銀行から借りないというやつが多いんです、今。

 私は、それは頭取に向かってみんな言いますから。あなたは最も企業から嫌われている顔ですよと僕は面と向かって言いますから。だけれども、そういったのは、本当に、野田先生、今ちょうど変わりつつあるかなとは思いますけれども、でも、現実問題として、今ちょうど年次としてはそうなっております。

 そういった前提に立ちましても、企業は金を借りないで自己資本だけでやりますというのが物すごくふえてきておりますから。結果として、今企業は、御存じのように、利益を配当に回すか、賃金に回すか、設備投資に回すか、普通企業はその三つで大体対応するものですが、しない。絶対量はふえているにもかかわらず。ふえているのは内部留保です。内部留保はこの数年間で二十五兆とか二十六兆ずつふえて、前回は、昨年は四十兆ぐらいふえたと思いますが、今総額四百四十兆ぐらいの内部留保まで膨れ上がってきていますから。そういった意味では、なかなか新しいものをやるときに、自己資本だけで賄う、おまけに設備投資は控えるとなれば、間違いなく企業が金を借りるはずがありませんし、設備投資をするときには国内でしないで海外でするようになってくるとか、その金を使ってMアンドAをやる。

 それによって、いわゆるGDPではなくて、グロス・ナショナル・インカム、GNIに変わっていくといっている最近の流れを見ましても、そういった企業の内容、マインドというのは、これはなかなか難しいだろうなという感じは、正直、私どもでも思いますから。もうちょっと私より若くなると、それらの人たちは意識が少し変わってくるのかなとは思わないでもありませんけれども、企業の自己資本比率が高いこと自体は決して悪いわけではありませんので。

 かつて、アメリカに比べれば日本は何で自己資本比率がこんなに低いと言われ続けて、日本の企業の方が、今、アメリカの企業より高くなってきたりしているところもいっぱいありますので決して悪いことではありませんけれども、金融との関係からいけば、かなり自己資本比率だけで回せる、そういった内部留保の厚い、自己資本比率の高い企業が優良企業の中でふえてきているという流れというのは事実でありますので、そういう優良企業にしていくように、そうではない企業を育てていくというような発想も……

坂井委員長 大臣、時間が経過しておりますので、簡潔に願います。

麻生国務大臣 やはり持たないといかぬのだと思っております。

野田(佳)委員 オーバーバンキングを聞こうと思いましたけれども、時間がなくなりましたので終わります。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 私はシェアハウス投資事件については通常国会で取り上げさせていただきました。スルガ銀行への立入検査や被害者の救済を含む指導を求めてまいりました。その後、金融庁の立入検査が行われ、一部業務停止を含む行政処分が下されることになりました。

 問題は、なぜもっと早く見抜くことができなかったのかというところが一つあると思います。スルガ銀行に対して、経営管理やリスク管理などのフルスコープ型の検査はこの十年でいうと二〇一〇年と二〇一二年。その後、金融検査の方針を変えたので定期的な検査はやっていません。その間に、スルガ銀行のアパートローン、シェアハウス投資などが拡大していったということになりました。

 ここでお聞きしたいんですけれども、金融庁の相談室には早い段階から相談が寄せられていたんじゃないでしょうか。いつからどんな相談があったのか、答えていただけますか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁の金融サービス利用者相談室に寄せられましたスルガ銀行に関する投資用不動産融資に係る苦情相談につきましては、平成二十七年一月以降、把握している分につきまして申し上げますと、例えば、スルガ銀行と不動産業者が結託して物件価格を高額に設定し投資用不動産向け融資が行われていたですとか、特定の不動産業者は、融資後、建物も建てずに経営者が行方不明となってしまった、当行は同社の経営悪化を知っていたのではないかといったものがございます。

宮本(徹)委員 一番早いものの相談はいつありましたか。

栗田政府参考人 時期については全てを把握しているわけではございませんけれども、遅くとも二十七年からはあったということでございます。

宮本(徹)委員 二十七年の何月からですか。

栗田政府参考人 二十七年一月にはあったということでございます。

宮本(徹)委員 つまり、捨てちゃったそれまでの相談は、二十七年一月以降しか把握していないんですね、文書が残っているものは。そのうち、一番古いものにもスルガ銀行からの相談はあったという話なんですね。

 その二十七年一月の相談というのは、さっきお話があった、スルガ銀行と不動産業者が結託して投資物件の価格を高目に設定して不動産融資をあっせんしている、こういう中身の苦情だったんですよね。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げた例が二十七年一月ということではございませんけれども、類似のものが二十七年一月以降あったということでございます。

宮本(徹)委員 類似のものはあったということですから、ずばり、この問題の核心の相談は、相当早い段階から金融庁に相談として寄せられていたわけですよ。ところが、何の検査にも入らなかった、金融庁はモニタリングの検査の対象ともしなかったということであります。

 アパートローンが急拡大する中で、こういう相談が寄せられている中で、なぜ、ああ、これはおかしいなと思わなかったのかと、私、不思議でならないんですよね。逆に、前長官は、スルガ銀行は突出した利益率を上げているということで、褒めるということまでやっていたと。全く不可思議であります。

 このスルガ銀行の違法、ずさんな融資、今回の一連の問題を見抜けなかった責任について、これは大臣、どうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは、先ほどたびたびほかの方の御質問に答えたのと同じことでありまして、こういったようなことがきちんと、いわゆるオンでもあって、オフでもあっても、いろんな形でやっていながら見抜けなかったというのは甚だ遺憾なことだと思っております。

宮本(徹)委員 極めて重大なミスだったというふうに思います。

 そして、金融庁は業務改善命令の中で、元本の一部カットを含め、個々の債務者に対して適切な対応を行うための体制の確立をスルガ銀行に求めております。こういうことをスルガ銀行に求める以上は、個々の債務者に対して適切な対応が行われているか、金融庁として最後まで責任を負うべきだというふうに考えますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは個々の話なんであって、基本的に銀行として誠意を持って対応すべきものだと思っております。

宮本(徹)委員 個々の問題、銀行が誠意を持って対応すべきなんですけれども、業務改善命令の中でそのことをやりなさいということを言っている以上は、見届ける責任というのが金融庁の側にもあると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 金融庁といたしましては、当行が業務改善命令の内容を踏まえ、個々の債務者に対してどのような対応を行っているのかについては、今後ともしっかりとモニタリングをしていきたいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 モニタリングをしながら、適切な、必要な指導もやっていっていただきたいというふうに思います。

 今、金融庁の業務改善命令を受けて、スルガ銀行も、元本の一部カットを含め、被害者の皆さんと話合いを進めております。

 今、和解のネックになっている一つが税金なんですね。例えば、被害者と銀行が八千万円の借金棒引きで和解した場合、債務免除益による一時所得として一体幾ら税金がかかるのか。ちょっと国税庁、きょう来ていただいていますので、お願いします。

並木政府参考人 お答えいたします。

 御質問の税額につきましては、個々の事実関係により課税関係が異なりますことから、確たることは申し上げられないという点は御留意いただきたいと存じますけれども、その上で、先生御質問の前提に沿って、仮に賃貸物件の購入資金に係る借入金について、一時所得となる債務の免除を受けた場合で、例えば、所得税の課税所得が一千万円である納税者が八千万円の債務免除を受けたときについて試算をいたしますと、所得税及び復興特別所得税の合計額は約一千八百万円となり、このほかに地方税が生ずることとなるところでございます。

 今申し上げたとおり、この計算においては、一時所得がない場合とある場合の所得税及び復興特別所得税の合計額の差額につきましては、約一千六百万になるというところでございます。

宮本(徹)委員 すごい額がかかるわけですね。一千八百万、一千六百万という数字が出ました。それ以外に地方税、住民税、これは一〇%ですから、八千万の場合は、五十万引いて二で割ったものが所得となりますので、約四百万近くということになりますから、合わせれば約二千万、税金が課されるという話になります。

 スルガ銀行と、今、債務者の皆さんの話合いというのは、全部の借金を棒引きという話になっていません。一定、幾らかの債務が残る。その上に加えて、二千万円更に税金が求められるということになると、負債を背負って更に二千万ですから、二千万の税金、手元にお金がない人が大半ですから、税金を払うために新たに借金しなきゃいけないという、こういう話になってしまうわけですよね。

 この経過は、スルガ銀行の問題もある。同時に、金融庁は、やはりこの間の検査で見抜けなかった、こういう問題もあるわけであります。そういう点では、スルガ銀行等による被害者であると同時に、金融庁の検査の見逃しによる被害者だというふうにも私は言えるというふうに思います。これほどの過大な税金を負わされたら、せっかくスルガ銀行との話合いが進んでも、税金によって自己破産に追い込まれるという、新たな悲劇が起きかねないというふうに考えています。

 東日本大震災の場合は、こういう問題について、税金を課さない仕組みを設けたりしましたけれども、この問題は、大臣、対応を考えるべきじゃないですか。

麻生国務大臣 今の話は、いわゆる一部カットを行った場合に、漠然としているから具体的なことを言うと、一部カットされたことによって、それによって早い話が債務免除ということになるけれども、その免除によって差益が出ますから、それに対しての税金がという話をしているわけですね。簡単にはそういうことね。何かえらい遠回しな言い方をしているけれども、要はそういうことを言っておられるわけですね。

 これらを含めた、これは個々の債務者に対する個別的な、具体的な話なので、これについてのコメントをすることは差し控えさせていただきますけれども、その上で、これは金融庁としては、課税関係の問題を含めて、いわゆる個々の債務者に対して、可能な限り顧客との理解と納得を得て解決してもらうというより、目指してもらう以外に、ほかにないんですけれども、適切な処理をしろと言いますけれども、そういったものがどうなっているか、ちょっと個々の話になりますので、しっかりとモニタリングして、必要に応じて対応させていかないといかぬと思っております。

宮本(徹)委員 今の話では、スルガ銀行と債務者の間で、税金の問題、これぐらい発生するんだから、その問題も踏まえて、銀行と債務者が納得できるような解決策をするようにモニタリングを進めるという話だったかというふうに思います。

 そういう点では、その問題は最低限、金融庁として、税金の問題も含めてどうするのかというのは、スルガ銀行と債務者の間で話合いをしっかり、債務者の皆さんが納得できる解決を図れるように対応していただきたいというふうに思いますし、場合によっては法的にこういう問題をどうするのかというのは、ほかの銀行でも起きている話ですから、スルガ銀行と同様の話というのは。これは考えていかなきゃいけない課題だということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、スルガ銀行ほどではありませんが、顧客の利益よりも銀行の利益優先という銀行経営というのは大変広くあります。金融庁の調査でも、投資信託の半数弱の顧客の運用損益率がマイナスということで、今、低金利の中で、手数料ビジネスに金融機関が走っております。スルガ銀行の問題の背景には、パワハラと一体の過剰なノルマの押しつけがありました。これもスルガ銀行だけの問題じゃないんですね。

 全国の信金だとか地方銀行だとか、いろいろなところが加盟しております金融労連が行員対象に行ったアンケートを見ましたら、職場への不満、不安で二番目に多かったのが、リスク商品等のノルマの追求、これが二三・四%。目標という名前で、ノルマが支店ごとに割り振られ、支店のノルマが行員ごとに割り振られ、それも、投資信託何件、カードローン何件、こういう形で割り振られる。

 ノルマを課せられるのは営業担当だけじゃなくて、三時に窓口を閉めたら、営業担当以外も名簿に基づいて電話をかけているというのが広くあるそうであります。こういう中で、顧客にカードローンのカードをつくってもらって、では、今試しに借りてみましょうということで、その場で必要もないのに借りさせる、こういうことも起きているという話も聞いております。

 ノルマが強制力として働くのは、パワハラと同時に、ノルマをこなした件数というのが人事評価に結びついているという問題もあると思います。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、金融庁は、各銀行での過剰なノルマや人事評価の基準など、つかんでいるんでしょうか。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねの金融機関の収益目標や人事評価の基準は、金融機関のビジネスモデル、企業文化を実務面から示すものでございまして、金融機関の役職員の行動に大きく影響を及ぼすものであることから、例えば、金融機関において生じました法令等遵守の問題の根本的な原因を検証する際に有用な資料であるというふうに考えております。

 このため、金融庁といたしましては、金融機関に関する情報収集、あるいはリスク評価を踏まえた上で、必要に応じ、これらの基準を把握、検証することとしております。

宮本(徹)委員 それで、その把握した上で、顧客の利益を無視したノルマと人事評価を結びつけることはやめるべきだ、スルガ銀行の事態も踏まえて、そういう指導もやっていく必要があるかと思いますが、これは、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 金融機関の方が、いわゆる顧客保護というものを無視するとか、コンプライアンス等々に関してこれを遵守しないとかいうような話はふざけた話なんですけれども、今言われたように、適切な収益目標とか、また人事評価等々のあり方というのをきちんと整備、運用するというのは、これは当然の話なのであって、そういった意味としては、不適切なものがあるのであれば、これは、我々として、そういった問題が認められるということなのであれば、当然のこととして、今局長から申し上げましたように必要な改善というものを促してまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 不適切なものがあれば必要な改善を求めていくということですけれども、手数料ビジネスがどんどんどんどん拡大しているというのは、その中で必要がない金融商品を高齢者の方だとかいろいろな方がいっぱい買わされているという裏返しの話だというふうに思いますので、これは本当に広くノルマの押しつけというのは金融機関で行われていますので、厳しく是正していっていただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、あと、日銀にきょう午後も来ていただきましたけれども、重なる質問があったのでそこは省略をさせていただきますが、手数料ビジネスの拡大もそうですけれども、そしてスルガ銀行のシェアハウス投資事件もそうですけれども、超低金利の長期化を見越した過度のリスクテーク、過度の債務の増大という副作用が日銀の政策のもとで拡大しているというのは、これは事実じゃないでしょうか。違いますか。

衛藤参考人 お答えをいたします。

 地域金融機関におきましては、御指摘のように、低金利環境の長期化ということに加えまして、人口や企業数の減少という構造的な要因というのが強く働いておりまして、この両方の要因によって基礎的な収益力が低下しているということでございます。

 こうしたもとで、各地域金融機関では、資金の運用利回りを高めるという観点から、いわゆるミドルリスク企業向けの貸出し、あるいは有価証券運用の多様化といった形で積極的に、御指摘のとおり、リスクをとりに行っているところがございます。

 もっとも、これまでのところは、金融機関は充実した資本基盤を備えているということでございますので、これとの対比で、リスクが過大、無理にリスクをとっているというところまではいっていないかなというふうに考えております。

 また、過度の債務の増大というお話がございましたけれども、経済規模との対比で、よく私どもは与信残高が大き過ぎないかということも見ておるわけでございますが、こういった幅広い指標を見ましても、それで金融循環に行き過ぎがないかということを見ておりますけれども、これまでのところは、まだ行き過ぎというところまではいっていないのかなというふうに理解をしております。

 ただ、やはり全体としてリスクをとりに行くという流れができてきておりますので、今後も、金融面で過度な不均衡が蓄積していないかということについては、丹念に私ども見てまいりたいというふうに考えております。

宮本(徹)委員 いろいろな弊害が国民生活の中には実際は出てきているというふうに思いますので、日銀には今の政策の見直しを重ねて求めておきたいと思います。

 最後に、全くテーマはかわります。今、与党の税調もやっておりますが、非婚の一人親の寡婦控除の適用についてお伺いしたいと思います。この問題は何度か大臣にも質問してまいりました。

 与党の税調の議論の報道では、所得制限をつけるという話が出ているようです、二百三十万円未満。私はとんでもない話だと思うんですよね。

 もともと、寡婦控除が非婚の一人親には適用されないのは差別だから、この差別をなくそうというのが議論の出発点だったというふうに思いますが。せっかく寡婦控除の適用をするのに、非婚の一人親だけ二百三十万円未満という所得制限をつけるんだったら、これは新たな差別ということに私はなっていくというふうに思います。シングルマザーの中でも、非婚の場合というのは一番生活が厳しいというのも実態として出ております。

 非婚の一人親だけ差別的な所得制限をつけるべきではないというふうに考えますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これはもうたびたび似たような質問をこれまで伺いましたので、同じようなことしか答えられませんけれども、あらかじめお断りしておきます。

 未婚の一人親というものに対する税制上の対応の話なんです、この話は基本はね。ずっといろいろな質問をしておられますけれども、これは同じことを言っておられるんだと思うんですが。平成三十年度のたしか与党税制改正大綱の中に書いてありますのは、「児童扶養手当の支給に当たって事実婚状態でないことを確認する制度等も参考にしつつ、平成三十一年度税制改正において検討し、結論を得る。」ということとされている中の話で、外に出ている話の一部をとってしゃべっておられるんだと思いますけれども。

 一連の報道は承知しておりますけれども、御質問のあります論点も含めて、今たしか議論をいただいている最中だと思っておりますので、その結論を私どもはまだ伺っているわけではありませんので、政府としてそれを伺った上での話だと思いますね。

宮本(徹)委員 与党の皆さんもいらっしゃいますので、与党の皆さんも税調の中で差別的な対応をすることはないようにということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

坂井委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 午後も引き続き質疑させていただきたいと思うんですけれども、総裁、お忙しい中、済みません。できる限り、終わり次第退席いただくような形でお願いしたいと思いますので。

 前半、ちょっと続きをお聞きしたいんですけれども、総裁、いわゆる二%目標の削除された今回の部分に関して、たびたび御発言されております。きょうも幾つかお話がありました。あくまで見通しであって、なおかつ政策委員会の意向とはぴったり合わないことで削除したんだという御発言を種々されているんですけれども。

 つまり、二〇一九年度ごろとずっと言っていらっしゃった、何度か変えて、最終的には一九年度ごろということなんですけれども、これが削除されたというのは、達成できないという見通しだという、そういうわけではないということなんですね。どうなんでしょうか。

黒田参考人 本年一月の展望レポート以前では、消費者物価の前年比が二%程度に達する時期の見通しを文章の中で記述していたわけですけれども、市場の一部では、こうした見通しを二%の達成期限と捉えた上で、その変化は即、政策変更に結びつくといった見方が根強くあったために、こうした時期に関する記述が達成期限ではなくて見通しであるということを明らかにするために、記述の仕方を見直すことにいたしました。

 ただ、見通し自体は、後ろの表にありますとおり、政策委員会の委員のそれぞれの見通しを示し、さらにその中央値の動きも示しておりまして、一番新しい展望レポートの見通しでは、二〇一九年、二〇二〇年度でも一%台の半ばという見通しになっております。ただ、これは現時点での見通しということでございます。

丸山委員 つまり、今の御発言だと、厳しいとお認めになったようなものだと思うんですけれども、そういうことですね。

黒田参考人 今の政策委員の見通しの中央値によりますと、二〇二〇年度でも二%は達成されないであろうということですので、達成時期は二〇二一年度以降ということになるというのが現在の見通しであります。

丸山委員 もう一つ、午前中の質疑で気になったところをお伺いして、御退室いただきたいと思うんですけれども。

 ETFのお話のところで御発言をるるいただいたんですけれども、そもそもがリスクプレミアムに対する働きかけだというお話、いろいろお伺いしました。それに対して、効果が出ているんだというお話をされたんですが、私はすごくそれがひっかかっていまして、やはり数字を追うと、どうしてもそういった数字が出ているようなものが見当たらないような気がします。先ほどお話ししたようなシラーPERもそうですけれども。例えば、単純な、配当から国債を引いたような、イールドスプレッドを見ても、おっしゃるような効果は出ていないんじゃないかなと思うんですが。

 これは事務方でも構わないんですけれども、何かしら日銀で、総裁の発言を裏づけるような、こうした、ETFに対する、日銀がお金を入れていることに対する効果みたいなことを何か数字なり何なりで出されていますか。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、リスクプレミアム、その意味、そういったものははっきりしているわけですけれども、それを具体的に一つの指標で示すというものはなかなか見当たらないわけでして、さまざまな指標を見ながら結局総合的に判断するしかないと思うんですけれども、幾つかの指標の中には、明らかに二〇一三年の量的・質的金融緩和を導入した際にETFの額もふやしたわけですし、その後、またETFの買入れ額もふやしていますけれども、そういったときに、その影響を示すような指標もないわけではない。

 ただ、いろいろな指標がありまして、先ほど来申し上げているように、何か数字的な指標で簡単に判断できるものではなくて、さまざまな指標を見ながら総合的に判断するということになろうと思います。

丸山委員 例えばPERなんか見ても、確かに日経平均ベースでの予想PERなんていうのは、例えば三兆円にふやしたとき、六兆円にふやしたとき、一時的には上がっているんですよ。しかし、すぐに戻っているところがあって、必ずしもそう言えないと思うんです。特に、短期的には確かに上がるけれども、結局すぐ戻っているイメージがあって、実はそのリスクプレミアムに対する働きかけの持続性がないんじゃないかなというところがすごく疑問に思っているんですけれども、持続性についてはどう思われますか。それもあるとお考えなんですね。

黒田参考人 この点は、いろいろな指標について見ながら総合的に判断するしかないと思うんですけれども。

 効果というのは、いつもそうですけれども、それがなかったらどうなったであろうという反実仮想、カウンターファクチュアルとの比較ですので、結果的に今おっしゃったようなことが一つの指標であったとしても、それは、リスクプレミアムを縮小する効果がなかったとは言えないわけですね。つまり、そういうことをしていなかったらリスクプレミアムはもっと上がっていたかもしれないということがあるので。

 これはなかなか、常に政策効果についてはそうなんですけれども、カウンターファクチュアル、反実仮想の、こういう政策をとらなかった場合ととった場合との差で見るしかないんですけれども、とらなかった場合にどうなっていたかというのは、まさに反実仮想、カウンターファクチュアルで、実際に起こっていないことですので。

 政策効果は常に難しいので、マクロ経済的な場合はいろいろなマクロモデルも見たりしますけれども、こういうマーケットの話の場合は、なかなかそういうトータルなモデルのようなものはありませんので、結局、さっき申し上げた幾つかの指標を見ながら総合的に判断してこうではないかということになるのではないか。

 これは、私の個人的な経験でいいますと、為替の介入も、学者の人は、介入しても、その介入したときだけちょっと影響はあるけれども、その後は全然影響はなくて、持続していないじゃないかということをよく言われるんですけれども、それは、そういう指標がそういうふうに見える場合もあるかもしれないけれども、それをやっていなかったらもっとどんどん円安ないし円高なり好ましくない方に行っていたかもしれない、それを防止できたという、常に政策判断はカウンターファクチュアルとの比較でやるものですから、なかなか難しい。

 特に、マーケットの指標のようなものについては、マクロ経済のようなきっちりしたモデルがありませんので、どうしても、そういういろいろな指標を見ながら総合判断する、あるいは、そういうものの反応を感じ取るというか、そういうことにならざるを得ないということは御理解いただきたいと思います。

丸山委員 お聞きして、非常に苦しいお言葉だなというふうに思いました。

 逆に、その総裁の言葉を言うと、逆にとれば、御自身の出された政策の効果だって、イフの仮定で、なかった場合はわからないわけで、仮定の話も含めて、やはり政策検証していくというのが、通常、経済としては考えていかなきゃいけないところですが、これ以上この話をしても難しいところだと思います。

 きょうは残りは財政政策の話をしたいと思いますので、これで総裁は退室いただいて構いません。お忙しいところ、ありがとうございました。

坂井委員長 黒田総裁は、どうぞ御退室ください。

丸山委員 それでは、財政の方に移りたいと思います。

 金融もやろうかと思ったんですが、ほかの議員の方がやられているので、ちょっと財政政策、特に軽減税率の話を、大臣、お伺いしたいんですけれども。財源は非常に、まだ見えないというふうに見ているんですけれども、この財源についてどのように考えられているのか、これをお伺いできますか。

麻生国務大臣 これは御存じのように、軽減税率の財源につきましては、平成三十年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置等を講ずる等により、安定的な恒久財源を確保することというように決めておるんですけれども、今、御存じのように、総合合算制度等々の見送りで、まず〇・四兆円とよく言われているとおりですけれども、残り六千億のものにつきましては、今、予算編成のプロセスにおいていろいろやっている真っ最中でありまして、現時点で具体的な、これが幾らということを、数字を申し上げる段階ではないということであります。

丸山委員 今やられている税調等を含めてやられていくんだと思うんですが、非常に財源すらまだふわっとしているのに、来年から軽減税率、始まっていくわけですね。非常に危惧するところです。個々細かいところも危惧ばかり、この軽減税率はあるんですけれども、今、負担軽減の話ですね。いろいろな、カードで支払いをすれば五%引くとか、あとは商品券を配るという話がいろいろ出ていますが、どれもちょっと、大臣の普段の言葉をかりたら、眉唾物というか、かなり大丈夫かなというふうに思うんです。

 特に商品券については、過去もやっているわけで、さっきの日銀のお話じゃないですが、政策検証はしっかりやっていただきたいと思うんですが、正直、この今出ている案も、きょうのNHKニュースを見ていますと、二万五千円のものを二万円で買える、一人当たり五千円。所得を制限して、所得が低い方、子供のいる世帯、それも含めて子供のいる世帯や低所得の方に二万五千円のものを二万円で買っていただいて、だから五千円お得な買物ができるという話なんですが。しかも、それは半年間の期限切りです。果たして、それで本当にその望んでいる効果があるのかなというのが、非常に私は疑問です。

 前回の消費税を上げるときも、プレミアム商品券という形で配られて、ばらまきされていますけれども、この効果は、ちょっと数字を見てみると、非常に微々たるものじゃないかなというふうに思うんですけれども、このあたり、効果検証についてどうお考えなのか、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 これは実に、先ほどの黒田総裁の話じゃないですけれども、なかりせばどうなっていたかという話と似たような話の部分もあることは確かなんだと思いますけれども。

 前回のプレミアム商品券、これは平成二十六年度だったんですが、この補正予算において、地域における消費喚起というもので、これを実施されたんだと記憶をしています。

 その効果について、あったかと言われれば、これは内閣府から、商品券等により新たな消費が生まれた、実質的消費喚起があったというような推計が示されてはいますが、その詳細等について推計などを行ったということだったら、その内容については内閣府に聞いていただかないと、私の方ではちょっとわからないんですが。

 いずれにしても、消費税の引上げに当たりましては、前回の五から八%、三%上がったときにも起きましたいろいろな事態というのを我々は勉強せないかぬところなので、そういった意味では、我々は、そういった駆け込み需要とか、いわゆる反動減とか、そういったものに影響を及ぼさないようにしておかないかぬということでありますので、私どもとしては、この商品券に限らず、いろいろな対策を考えていかねばならぬところだと思っております。

丸山委員 今大臣がおっしゃった内閣府の数字を私は手元に持っていまして、実質的な効果額は一千十九億円ということなんですが、ちょっと額が、桁が違うんじゃないかなと思っていまして。

 例えば、家計の最終支出の消費額を見てみると、GDPの六割ぐらいなので二百九十五兆ベースなんです、年間ですよ。例えば、前回規模の、今回は恐らくそこまでならなさそうなんですが、前回規模のをやったとしても、この一千十九億って、二百九十五兆の消費の中を考えたら本当に微々たるもので、じゃ、果たして今回はどうなっていくんだと考えたら、本当にどうなるんだという思いです。

 ぜひ政策決定に携われる皆さんには検証もしっかりしていただいて、やるからには、意味がないというのはちょっといかがなものかと思いますので、今後の議論を含めて、最終的な詰めがあると思いますが、しっかりとこれは検証をいただきたいと思います。

 何となく不安ですし、恐らく、来年の二月の、三月か二月かわかりませんが、この財務金融委員会、もし私がまだ所属していれば、この話、またやらなきゃいけなくなっちゃうなというのが正直なところです。しっかりやっていただきたいというふうに思います。

 同じ軽減税率で、私、ずっと危惧しているのは、いわゆる新聞がなぜ軽減税率に入るんだという話です。

 当時、麻生大臣といろいろやりとりもさせていただきまして、政府参考人の方ともやりとりさせていただいて、なぜ、じゃ、書籍が入らずに新聞が入るのかというと、昨今ニュースでも出ていますが、書籍は、有害性のあるもの、当時、大臣、「エロ、グロ等々」という表現もされましたけれども、そうしたものが排除できない、一概にできないので、基本的には書籍等はまだまだ厳しいねと。幾つかあったんですけれども。

 じゃ、今、軽減税率の対象となる、もう来年の秋からなる新聞が果たしてそれを、有害性のあるものを排除できているかといったら、正直、できていないと思っていまして。当時の答弁では、基本的には、宅配のものは排除できているというたてつけだというふうに言っていたんですけれども。

 例えば、具体例を挙げるとわかりやすいんですけれども、ちょっと内容が内容だけに中身は言いづらいですが、例えば、恐らく来年の秋から軽減税率が適用される、八%に安くなる、夕刊フジとか日刊ゲンダイ、いわゆるタブロイド紙、定期購読もあるんです。自宅に宅配もあって、実は、この二つの今挙げたような新聞は、宅配のものも、内容は変えずに、駅で売っているようなものと同じものが要は定期購読されます。

 それは、中身はどういったものがあるかというと、ちょっと内容は言いづらいんですが、いわゆる艶本というか、官能小説のような内容のものが書かれていたり、あとは、三行広告のデリバリーガイドみたいな形で、いわゆる風俗情報が普通に載っていたり、どう考えても、大臣のおっしゃるエロ、グロの有害性を満たすようなものが来年秋から軽減税率の対象になるわけですよ。

 果たしてこれで本当にいいのか、その整理についてどう考えていらっしゃるのか。まず見解を伺いたいんですけれども、政府参考人の方。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、書籍を軽減税率の対象とするかどうかの検討におきましては、例えば、欧州諸国では、いわゆる有害図書を排除する仕組みを採用している例がございます。仮に書籍を軽減税率の適用対象とする場合、そのような欧州諸国における仕組みも参考に、何らかの仕組みを設けて、いわゆる有害図書を排除することも考えられることから、これまでも、書籍を軽減税率の適用対象とするか否かの議論におきまして、いわゆる有害図書を排除する問題がある旨を説明してきたところでございます。

 一方で、新聞につきましては、日常生活における情報媒体として、全国あまねく均質に情報を提供し、幅広い層に日々読まれていること、この結果、新聞の購読料に係る消費税負担が逆進的になっていることなどの事情を総合勘案いたしまして、一定の題号を用いて、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞であって、週二回以上発行され、定期購読契約されているものといった外形的な基準に基づいて軽減税率の適用対象としたところでございます。

 今委員の御指摘で、新聞の内容がどうかといったような御指摘があったわけでございますけれども、新聞の定期購読契約が軽減税率の適用対象となるかどうかは今申し上げた定義に当てはまるかどうかにより判断されるものと考えておりまして、御指摘のような記事や内容が掲載されているか否かによって判断されるものではないというふうに考えているところでございます。(発言する者あり)

丸山委員 まさに今やじがありましたけれども、ダブルスタンダードじゃないですか。書籍だけ。要は活字文化を残していきたいという趣旨でやって、書籍が何で省かれたかというと、それで省いているわけですよ。しかし、新聞にはこういうのがあって、じゃ、こういう新聞を省かなきゃいけないんじゃないですか。検閲になっちゃうので難しいという、最後はそういう答弁になるんでしょうけれども。

 どうして新聞が軽減税率の対象になって、じゃ、外すことはできないんですか。この辺も含めてどういう整理をされているんですか。いかがですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞につきましては、ただいま申し上げたような基準に基づいて軽減税率の対象ということにしているわけでございますけれども、他方、書籍につきましては、対象範囲の外延の定義づけが困難であること、それから、書籍の購入にかかる消費税負担が逆進的とは言えないのではないかということ、また、先ほど申し上げました有害図書排除の仕組みが存在しないこと、こういったことを理由として軽減税率の適用対象とはしないこととしております。

 例えば、地方公共団体の条例におきまして、一定の書籍については、いわゆる不健全図書として青少年に販売しないなどの措置が講じられております。こういったものにつきまして消費税負担まで軽減することはなかなか国民の納得が得られないのではないかといったようなことも踏まえて軽減税率の対象からは外している、そこが新聞と違うということでございます。

丸山委員 ごめんなさい、そこを聞いているんじゃなくて、この新聞が、つまり、エロ、グロが含まれている新聞は軽減税率の対象になるということですね。これを省くつもりはないということですね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、軽減税率の適用対象となる新聞につきましては、日常生活における情報媒体として全国あまねく均質に情報を提供し、幅広い層に日々読まれていることを重視をいたしまして、週二回以上発行され、定期購読契約されているものを対象としたということでございます。

 先ほど地方公共団体の条例の例を申し上げましたけれども、定期購読契約されている新聞につきましては、こういった地方公共団体の条例におきましてもいわゆる不健全図書とされたものは見当たらないといった実態も踏まえまして、先ほど申し上げたような要件を満たせばこれは軽減税率の対象となるということで掲げているわけでございます。それは、具体的なその内容について個々に判断をするということではございません。

丸山委員 時間が来たので終わりますけれども、大臣、お聞きになってどう思われるか、最後に聞いて、終わります。

坂井委員長 麻生大臣、短くお願いいたします。

麻生国務大臣 いろいろ問題があるとは思います。

丸山委員 終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次回は、来る十日月曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時七分散会


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