衆議院

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第8号 平成31年3月13日(水曜日)

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平成三十一年三月十三日(水曜日)

    午前八時三十分開議

 出席委員

   委員長 坂井  学君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 武部  新君 理事 寺田  稔君

   理事 藤丸  敏君 理事 川内 博史君

   理事 緑川 貴士君 理事 竹内  譲君

      井上 貴博君    石崎  徹君

      大野敬太郎君    木村 弥生君

      小泉 龍司君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    杉田 水脈君

      鈴木 隼人君    津島  淳君

      土井  亨君    中曽根康隆君

      中山 展宏君    牧島かれん君

      三ッ矢憲生君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    簗  和生君

      山田 美樹君    義家 弘介君

      今井 雅人君    末松 義規君

      高木錬太郎君    佐藤 公治君

      前原 誠司君    伊佐 進一君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      野田 佳彦君    青山 雅幸君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  清水 茂夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  河内 達哉君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    武内 良樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         小澤 典明君

   参考人

   (株式会社国際協力銀行常務執行役員企画部門長)  橋山 重人君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     宮路 拓馬君

  今枝宗一郎君     簗  和生君

  神田 憲次君     杉田 水脈君

  武井 俊輔君     大野敬太郎君

  本田 太郎君     中曽根康隆君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     武井 俊輔君

  杉田 水脈君     神田 憲次君

  中曽根康隆君     木村 弥生君

  宮路 拓馬君     穴見 陽一君

  簗  和生君     今枝宗一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     本田 太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇号)


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     ――――◇―――――

坂井委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として株式会社国際協力銀行常務執行役員企画部門長橋山重人君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官清水茂夫君、内閣参事官河内達哉君、財務省国際局長武内良樹君、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官小澤典明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。今井雅人君。

今井委員 立憲民主党・無所属フォーラムの今井雅人でございます。

 法案の中身に入ります前に、ちょっと一点御質問したいと思います。

 今、籠池元理事長が公判中であられますけれども、国策捜査だとかいうふうに批判をしておられますが、きょう政府参考人としてお越しになっている財務省の武内国際局長は、八億円の値引きをしたときの近畿財務局長だったと思いますけれども、あの八億円の値引きがなければ、公文書の書換えもありませんでしたし、自殺者も出ることはありませんでした。ですから、起点はあの値引きが行われたこと、そのときの一番の責任者は武内国際局長ですね。

 武内さんは、嫌疑不十分ということで検察からの処分はなかったということでありますが、嫌疑あくまでも不十分であって、嫌疑がなかったというふうに認定されているわけではありません。そういう方が今こうして国際局長としてここに立っておられる。事のてんまつに対する御自身の責任というのをどうお感じになっているか、まずお聞かせいただきたいと思います。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の三月に近畿財務局の職員が亡くなられたことにつきましては、大変に残念なことでございまして、深く哀悼の意を表したいと思っております。

今井委員 御自分の責任についてどうお感じですか。

武内政府参考人 この場で私の責任ということでございますけれども、深く哀悼の意を表したいと考えているところでございます。

今井委員 責任をどう感じるかというのに哀悼を表するってちょっと答弁になっていないと思うんですけれども、ほかに言い方はないんですか。

武内政府参考人 大変残念なことだったと思っております。

今井委員 非常に無責任な発言で、もう少しまともな答弁をいただけると思いましたけれども、ちょっとあきれました。

 今、統計問題もいろいろ議論になっていましたけれども、やはり組織というのはきちっと処分するときはしっかりして締めないと、また同じことが起きますよ。こうやって甘い人事をやるから、いつまでたっても役所のぬるま湯体質が変わらないんです。

 大臣、このことについて大臣はどうお考えか、一言だけ下さい。

麻生国務大臣 昨年の三月の七日に近畿財務局の職員というのが亡くなっておられるという大変痛ましい話が起きておりますが、今言われました話に関しましては、いわゆるこのことに関してそういった事態が起きたということはまことに遺憾なことなのであって、謹んで御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。

 また、文書の改ざんの話になっていった一連の経緯等々は、これはもう御存じのように、検察が入り、また、いろいろな形での第三者機関による調査が行われた結果は、不起訴、証拠不十分等々、いろいろな話がありましたけれども、いずれにいたしましても、そういった文書の改ざんが起きたという事実は間違いない事実でありますので、そういった意味におきましては、一連の経緯等については、調査結果というのを取りまとめて、関与した職員に対しましては厳正な処分を行わせていただいたというところであろうと思っております。

 いずれにしても、この問題行為というのが、こういったようなことが起きないようにするためには、これは組織風土というものを、組織風土というのは、少なくとも近畿財務局の中において、これはいかがなものかという意見があったにもかかわらず事が進んだという風土が問題なのであって、そういった点の、風土の改革を含めて、改めて信頼回復に努めてまいらねばならぬところだと考えております。

今井委員 今、厳正な処分というのをおっしゃいましたけれども、私は、全く身内に甘い、緩い処分だと思いますよ。こういうことをしていると本当にまた同じようなことが起きるということを指摘をさせていただきたいと思います。

 きょうは法案審議でありますから、この話はこれぐらいにさせていただきたいと思いますけれども。

 では、法案の中身に入りたいと思います。

 今回の世銀グループへの増資は、全体での増資の中の一定部分の引受けをするということでありますので、その趣旨はよく理解しておりますが、それに際しまして、これまでの出資がどれぐらい効果があったというか、日本にとってプラスになっているかという点を少し御質問したいと思います。

 まず、資料の一ページのところに、IMF、世銀グループ、ADBへの日本の出資拠出比率と日本人の職員数という表があります。

 見ていただけると、IMFは日本の出資比率六・五%、これはアメリカに次いで二番目ということですが、世銀グループは、四つありますけれども、それぞれ出資、これは全部二位です。それからADB、アジア開銀は、通常資本のところで一五・六ということで、これは日本が一番ということであります。

 この比率に対して職員の数がどうかということなんですけれども、下を見ていただけるとわかるように、いずれも出資比率を大きく下回っています。特に世銀グループ、IMFは半分程度ということになっていまして、お金を出すだけでは、やはりなかなかプレゼンスを上げられないと思うんですね。人を出すということが非常に大事だということなんですが、出資比率に比べて非常に職員の数が少ない状況が続いてしまっております。

 このことについて、どうしてこういうことが起きているのか、今の現状をどう認識しておられるか、まずこの点をお伺いしたいと思います。

武内政府参考人 委員御指摘のとおり、出資の比率に比べまして、日本人職員の数は比率としては低うございます。

 ただ、最近の数字を申し上げさせていただきますと、二〇一七年のIDA増資法案の参議院での附帯決議をいただいた段階での数字に比較させていただきます。

 世銀については、二〇一七年一月末時点で百八十八名であったところ、二〇一八年十二月末時点では二百十三名に、IMFについては、二〇一六年四月末時点では五十五名であったところ、直近、二〇一八年十一月末時点では六十二名までそれぞれふえているところでございます。

今井委員 一定の努力をされていることはわかりましたが、それでもまだ数は少ないわけで。

 具体的な数値があるかはともかく、今後もこういう活動を続けていかれると思うんですけれども、どういうところを目標にして増員をしていかれるおつもりでいらっしゃいますか。

武内政府参考人 具体的に数値を設けてそれを目指すということはなかなか難しゅうございますけれども、政府といたしましても、国際機関で日本人が働くというのは非常に重要なことだと考えておりまして、政府として、国際機関における日本人の採用を支援していく上で、できることはやっていきたいと思っております。

 具体的に申し上げますと、国際機関での採用を念頭に、必要な学位を取得するための奨学金の支給、それから、IMFにおける経済分析手法を習得できるようなワークショップの開催、こういったものをやっているところでございますし、さらには、採用を実際に支援するために、日本人職員の採用につなげるべく、当該職員について当初の二年間程度は人件費を日本政府が支援をする。さらには、これは最近力を入れている取組でございますけれども、世銀やIMFの幹部に日本に来てリクルートミッションを出してくれというような要請もしているところでございます。

 こういった取組を引き続きやってまいりたいと思っているところでございます。

今井委員 済みません、ちょっと確認をし忘れたんですけれども、専門職員の中には、役所から出向している人とプロパーで入っている人、両方いらっしゃると思うんですけれども、当然増員を目指していくというのは、役所からの人をふやすということではなくて、プロパーの人材をふやしていくための施策ということでよろしいですね。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、必要な学位を取るための奨学金等々、もちろんプロパーの人間をできるだけふやしたいということを念頭にやらせていただいているところでございます。

今井委員 ぜひ、それをやっていただきたいんですが、大臣、その上で、世銀だけじゃないんですけれども、やはり今日本の人材として、海外で活躍する人材というのが、どうしても内向きになって、そういう人材が不足してきていると思うんですね。特に、学位を取るという、こういうところは修士あるいは博士号を取っているのが望ましいということでありますので、これは、済みません、財務省の所管ではないとは思いますけれども、政府として国際人材のさらなる育成というのは非常に私は重要だと思うんですね。ぜひこういうのを、政権の一つの大きな柱として、人を育てるということで取り組んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 語学のせいもありますけれども、基本的に、英語がよほど流暢にしゃべれて、かつ、しゃべれるだけでは誰でも、そこに生まれれば、育てば、しゃべれるようになりますから、語学はそういった意味においては基本的な話ですけれども。

 今武内の方から申し上げましたように、修士だ博士号だという学位がないと採用の対象になりにくいというのが今のこういった国際機関における通常。日本でPhDだMAだとか持ったからといって、日本でそんな就職が有利になるなんて話は余り聞いたことないですからね、今に至るまで。

 しかし、海外ではそういうことになってくると、それを持っていないとどうにもならぬということになりますので、基本的には、そういったようなことを支援するということは大事なところでありまして。

 もう一つは、やはり働きたいという人が今までそんなにいましたかね、日本人で。私、ぜひ聞いてみたいと思って随分聞いてみたんだけれども、行く気ないですもの。英語が、おまえそれだけうまければやればいいじゃないかと言っても、全然海外に住む気はない。非常にカンファタブルに、日本の会社で十分ですからといって、全然行く気がない。

 そういった人たちがおられたのが多いと思いますし、私らの世代というのは、ほとんど、語学の問題もありましたので、そういったところはなかったんだと思いますが、少なくとも今私ども、こういった意味でこの数年努力をさせていただいたように、先ほど局長の方から申し上げましたように、IMF、今回のデービッド・マルパス世銀の総裁予定者ということになりましょうかね、ジム・キムの後の。

 この人が日本に来ていろいろ話をしていたときに、採用というのを話をしておりますけれども、この数年間、ジム・キム前の総裁とも随分話をさせていただいて、日本人の職員の採用数は、今、一番アメリカ、二番インド、三番フランスかな、四番、ドイツが五位、日本が今イタリアを抜いて六番になっていると思いますけれども、それだけ上がってきていることは確かですよ。

 そういった意味では、今後、そういったようなものにもっと出ていくような雰囲気がもっと出てこぬといかぬのだと思いますけれども、なかなか海外でやろうという人の数が、絶対量がもともといないというところが問題なのかなという感じはいたします。

今井委員 そういうことを本当は議論したいんですけれども、そういう場ではないのでこれまでにしておきますけれども、私も国際金融の世界にいましたし、海外にも住んでいましたけれども、やはり、語学というのは本当に大事で、英語がどれだけできるかというのは物すごいアドバンテージなんですね。

 それと、今おっしゃったように、やはり、国内で満足している人材が多過ぎる。これは教育のせいです。ですから、そういうところの教育からもやはり変えていかないと、国際社会で日本はなかなかこれからプレゼンスを上げていけないという意識を私は非常に持っておりますので、これはまた別の場でやらせていただきたいと思います。

 次に、資料の三ページ目ですか。世銀のさまざまなプロジェクトがありますが、そのプロジェクトをどれぐらいその国の企業が受注しているかという数字でありますけれども、見ていただけますと、インド、中国が、シェアとしては二三パー、一七パー、非常に大きいです。これは、プロジェクトそのものがインドや中国の中で行われていて、地場の企業を優先するような事案もあったりしますから、この数字が大きいというのは私は理解できるんです。しかし、三番目、四番目、五番目、スペイン、フランス、イタリア、これは四・六、三・七、三・六。これは先進国ですから、世銀が対象になるような国じゃないと思うんですね。

 日本はどうかというと、四十位。わずか、シェアですと〇・四%。日本の企業は〇・四%しか受注できていないんですね。これは、出資第二位の国として、非常に国益を損ねているというか、せっかくこれだけの出資をしているのに、日本企業にそういう受益が来ていないという結果になっているというふうに思うんですけれども、この辺がどうしてこういうふうになっているのか、教えていただきたいと思います。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、世銀のプロジェクトの日本企業の受注割合、〇・四%と非常に低くなってございます。

 これは、一つには、世銀のプロジェクトは基本的には入札することとされておるために、単価の安い企業が有利であるということがありますし、また、今委員が御指摘されましたように、プロジェクトの入札の一部では借入国の業者を優遇する仕組みがとられていることも背景にあると考えてございます。

 こうした状況の中、日本としましては、日本の企業が受注できるようにさまざまな取組を行っているところでございます。例えば、世銀の調達制度については、以前は入札価格のみが考慮されていたところでございますけれども、二〇一六年七月より、日本の主張を踏まえて新しい制度が導入されまして、入札価格だけではなく、ランニングコストも加味したライフサイクルコスト、機器性能や提案の質に関する要素なども入札の評価基準として用いることが可能となったところでございます。この新しい調達基準は、品質の高い財・サービスを提供する日本企業にとって望ましいものだと考えてございます。

 また、日本企業自身に働きかけをするべく、例えば、世銀の東京事務所におきましては、日本人コンサルタントを雇用し、日本企業に対するアドバイスの提供やセミナーを開催してございますし、新調達ガイドラインの日本語版を作成するなどの働きかけを行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、今後とも、日本の企業が受注を増加できますよう、取組をしてまいりたいと思っているところでございます。

今井委員 ぜひ、その取組を積極的にやっていただきたいと思います。

 せっかく出資をするんですから、そのベネフィットというか、受益をやはり日本も当然とっていかなきゃいけませんから、人材の面でも、こうした受注の面でも、まだまだおくれているというのは今お認めになっていらっしゃいますから、それが追いつけるように、ぜひ取組をしていただきたいというふうに思います。

 ちょっと法案と直接は関係ありませんけれども、世銀は、言ってみれば、そこに出資して、全体で、マルチでいろんな貢献をするという仕組みでありますけれども、ODAなりなんなり、相対で、二国間でやるという取組があると思うんですが、ODAはODAとして非常に必要なんですけれども、もう一つ、今、政府は、二〇二〇年に海外のインフラ投資三十兆円、こういう目標を掲げてやっておられますけれども、これの目標達成に向けて今現状がどういう状況なのかをちょっと説明していただきたいと思います。

河内政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国企業によりますインフラ受注実績につきましては、現時点で積み上げができている二〇一六年では約二十一兆円に達してございまして、二〇一〇年の約十兆円をスタート地点とした二〇二〇年の約三十兆円の目標に向けまして、増加基調を維持しているところでございます。

 政府といたしましても、引き続き、官民一体でさらなる競争力強化を図るとともに、トップセールスやファイナンス等の支援策を総動員することで、目標達成を目指していく考えでございます。

今井委員 このインフラ投資の中には、原発輸出も含まれていますね。どうですか。

河内政府参考人 対象として含まれてございます。

今井委員 今現状、原発輸出の実績はありますか。

河内政府参考人 今のところは実績はございません。

今井委員 そうなんですね。

 原発も含まれているんですけれども、もう原発輸出は、皆さん御存じのとおり、イギリスでもだめになりましたし、トルコでもだめになりましたし、どこもめどが立っておりません。これを早く成長戦略からおろして、原発に依存しない、そういう政策にぜひ変えていただきたいと思うんですけれども。

 その上で、こうした取組は、今、恐らく価格の競争などで中国やそういうほかの国と激しい競争をしていると思うんですけれども、単独でこういう取組をするよりは、そういう第三国との協調とか、こういうものも検討に値するのではないかと思うんですけれども、このあたりの取組について教えていただきたいと思います。

小澤政府参考人 お答えいたします。

 原発の建設プロジェクトにつきまして、我が国といたしましては、各国では、原発建設の計画を進めている国、これは数多くございますので、こういったニーズに応えるとともに、まずは、原子力の我が国の人材、技術、産業基盤の維持強化をしていくことを通じて、原子力の海外展開を推進してまいりたいというように考えてございます。

 その上で、さまざまな国との協力、そういった可能性というものももちろん出てくると思いますので、そういったことについても検討していく可能性はあるかというように思います。

今井委員 原発の話は経産委員会ですからそちらでやりたいと思いますけれども、もう既に、原発輸出というのは、その目標自体が破綻していますから、早くその旗を下げて、新しく再生可能エネルギーで原発に頼らない社会をつくっていく、そちらにかじを切っていただきたいというふうに話をしておきたいと思います。

 今の第三国ですけれども、これは中国も当然視野に入っていますか。

小澤政府参考人 お答えいたします。

 可能性としては、そういったものは否定されていないというように思いますけれども、現状考えられているのは、例えばアメリカとかフランスとか、そういったところが中心になろうかというように考えてございます。

今井委員 価格の面で勝負をしようということになると、どうしてもやはり、今、中国の価格競争力は非常に高いわけで、今後はそのこともやはり考えていかなきゃいけないというふうに思うんです。

 その上で、大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、現在、国際金融機関として中国が主導してAIIBを立ち上げて、今、活動が始まっているわけでありますけれども、日本はまだこれに対して参加するかしないかということを、態度を保留しているというか決めていないということでありましたけれども、現在のAIIBの活動についての評価と、日本は今後これに対してどういうふうに向き合っていくおつもりなのか、そのあたりの見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 エーシャン・インフラストラクチャー・インベストメント・バンクでしたかね、AIIB。三年ぐらい前でしたかね、この話がG20か何かで出てきて、これに各国が参加するかどうかというのはG7の話でもその話が出たので、私どもは参加しませんと。最初から参加をしないということを申し上げたのは日本が最初だったと思います。ほかの国はいろいろ参加されたんだと思いますが。

 私どもが何でこれに対して懐疑的かといえばこれは極めて明確でして、出資をしたときの話をさっきいろいろ聞いておりましたけれども、出資の代表が集まって意思決定を行うというのは、理事会というのを当然こういったディベロップメントバンクというようなところで皆置くんですけれども、こういう国際開発金融機関のようなものというのは必ず理事会というのが常駐しているものなんですけれども、これは今でも常駐はありません。したがって、理事会の権限はどこがやっているのといったら、事務局です、事務局はどこにあるの、北京ですというような話になっておりますのが一点。

 それから、AIIBというところがいろいろプロジェクトを実施されておりますけれども、ではどれくらいの人数でやっておられるんですかといったら、百人やっと超えたぐらいだと思いますが。普通、ADBで千二百人ぐらいおりますかね。IMFでも二千人ぐらいおりますし、世銀でも四千七、八百いると思いますけれども。そういうようなものではなくて、日本のADBでも、日本に置かずフィリピンが本社になっていると思いますけれども、そういうのが普通行われている状況ですけれども、私どもとしては、少なくとも、こういった状況で公正なガバナンスというものが期待できますかねということを一番問題視しておりますし。

 債務の持続可能性とかそういったものに対するいろいろな配慮等々が今話題になっておりますけれども、そういったものをきちんとした対応で運用されているかということに関しては、甚だ、私どもとしては疑わしいところがあるような感じがしますので。少なくとも、ここが国際金融機関としてのレベル、ふさわしいレベルを備えるということは私どもとして大いに期待するところでありまして、そういったような段階までなってきた段階で検討するということで、今の段階ではその段階にはとてもではないという感じはしております。

今井委員 ありがとうございます。

 透明性は非常に重要ですので、そういうのを確保した上で、やはり多方面の可能性を探っていくということはぜひやっていただきたいというふうに思います。

 済みません、ちょっと細かい点をあと一点、二点お伺いしたいと思うんですけれども。

 世銀の、IBRDのこれまでの借入国の累積で見ると、一番多い国はインド、それからブラジル、メキシコ、インドネシア、中国というふうにつながっていますけれども、名前だけを見ると、これは世銀が本当に支援をする、それぐらいの規模の国なのかというふうに感じることもあるんですね。

 つまり、発展途上国からだんだんだんだんと今先進国化している国というのが出て、もうこういう支援が必要なくなっているんじゃないかという国があると思うんですけれども、IBRDあるいは世銀グループで対象国とするのは、どれぐらいの規模になってくるとこの対象国から外れていく、そういう何か基準はありますか。

武内政府参考人 お答えいたします。

 世銀グループの中では、世銀というのは、比較的所得の高い国々を対象にしているところでございまして、一人当たりGNI千百四十五ドルより所得の高い国をIBRDの支援対象としております。

 そういった中で、六千七百九十五ドルより所得の高い国につきましては、卒業に向けた議論を開始するということになってございまして、六七九五というのが一つの基準になっているかと思います。

今井委員 もう一点、済みません。

 投票権についてなんですけれども、投票権は、加盟国の経済規模とIDAへの貢献の度合いに従って変化するということでありますけれども、この投票権は非常に重要ですので、この決まり方について、最後ちょっと教えていただいてよろしいですか。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 前回の増資のときの合意された出資の割合をスタートラインにしまして、それに経済規模、それから、過去のIDAへの貢献度、そういったものを加味して、各国が議論をして決めることになってございます。

 そういった中で、実際に勘案されますほかのファクターとして重要なのは、貧しい国々でも最低限の投票権を持つべきだという議論が一つ。それから、前回の出資の割合に比べて急激な変化は抑えられるべきであるといったこと。そういったものも議論の中に加味しまして、コンセンサスが得られた水準というものが、今回、合意を見た水準でございます。

今井委員 時間が来ましたので終わりますが、せっかく出資をするんですから、それなりの受益をしっかり日本がとれるような形でぜひやっていただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆様、きょうも質疑、お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士と申します。

 ただいま議題となっています法律案について、お尋ねをいたします。

 今回の改正案、二〇一五年に国連で採択をされた持続可能な開発目標、SDGsの、今回、達成のために、世界銀行グループの一つ、IBRDの増資に伴う改正の中で決められることであります。

 日本で求められている今回の追加の出資額は、日本円にしておよそ四千五百七十億円であります。このうち、実際に払い込む必要のあるお金がおよそ五百八十三億円。そして、残りの大半三千九百八十八億円については、仮に、途上国が借りていた資金の返済が滞ってIBRD債の償還などが難しくなる、つまり、IBRD自身が債務不履行に陥るというようなそういう例外的な場合に、日本からもお金を払ってくださいねというIBRDからの請求に基づいて払うことになるお金でございます。

 これまで援助を受けた途上国はそうした状況になったことがありませんので、加盟国が払込みを請求されたことは、かつての一度もありません。もしものときのためとはいっても、この大きな額が想定されている、そもそも、極めて異例の出資をたびたび法律に規定しておくことの必要性について、大臣、まず、どのような御認識でしょうか。

麻生国務大臣 これは、緑川先生御指摘のとおりで、今回の増資の日本の負担分の約四千五百七十億円のうち四千億円分というものは、今おっしゃったように、いわゆる国際復興開発銀行の債券というものがその対象になっているので、例外的にしか請求されない、もう確かです。そういったことは過去に余りないので、多分一回もないと思いますけれども、請求払い資本なんですが。

 こういった例外的な場合でも、加盟国による支払いを通じまして、IBRD債と称する国際復興開発銀行債という債券に対しては、極めて高い安心感、クレディビリティーというんですけれども、いわゆるランクというものがつけられるので、トリプルAが、多分、たしかついていると思いますけれども、そういったようなものが獲得できているのは、世銀が低利で市場から調達することを可能にしているというのは、これが一番なので、低利で借りている分だけ低利で貸し出せるということにもなるので、極めて重要な役割をこれが担っているということなんだと思っております。

 したがって、この請求払い資本というものが、これは、途上国で、いわゆる発展していくために、貢献する上でこれは非常に必要不可欠なものなんだろうと思いますので、これを授権をいただくというのは極めて重要なので、今決めておくことが必要かと言われれば、私どもとしては、この格付をとって安く、低利で金を借りられ調達できてというようなもとのもとまでたどっていくと、やはりここが一番大事なところかなという感じがしております。

緑川委員 格付で、スタンダード・プアーズですね、本当にIBRDが安心してお金を借りられるということの信用力の源泉が、加盟国のこうしたお金の緊急時の持ち出しというのが可能であるということであると思いますけれども、後ほどまた触れたいと思いますが、もう一つ、確認のためにお尋ねをいたします。

 今回の改正では、また、こうした有事の際、もしものときの出資に当たって、日本がアメリカ・ドル建ての国債での払込みを可能にする規定も明記されることになりますが、これは、見方によっては、円に対する信用性を問題としたものであるというふうにも捉えられかねないと思うんですね。はっきりと、これは確認のためなんですが、手続上の合理性を図るものであるというふうには思いますが、IFCでもこういう規定がなされているということを聞いておりますが、どういう意義があるのか、改めて御認識を伺いたいと思います。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 IBRDの払込資本の払込通貨につきましては、市場での信用力が認められる自由利用可能通貨が指定されておりまして、この中には米ドルや円も入ってございます。その払込みの方法でございますけれども、米ドル以外の自由利用可能通貨につきましては、IBRDの財務上必ずしも直ちに必要とされない場合があることから、出資国債での払込みが認められる一方、払込資本の一割については市場で最も流通している米ドルのキャッシュで払い込むことが、これまでは求められてきたところでございます。

 これに対して、今回の増資におきましては、IBRD側の決定によりまして、この部分の米ドルも、キャッシュではなく出資国債での払込みが認められました。その理由は、先ほどの出資国債の払込みと同じ理由でございまして、IBRD側からは、必要に応じてすぐにキャッシュが得られること、さらには出資国側からしますれば、米ドルでの資金繰りが楽になるということ、そういったことからこういった特例が認められたところでございます。

 このような経緯に鑑みますれば、ドル建て出資国債での払込みが可能となったことは、円に対する信用の問題とは関係ないところでございます。

緑川委員 明確にお答えをいただきました。

 IBRDが市場から資金調達を行う際の信用力を高める機能を担保するということで、その都度法律に、今回も書き込んでいるわけです。それがドル建て国債であっても円建てであっても、いずれにしても、その国の信用力をもとに調達された資金の使われ方、これも、どの国に対象国として融資をしているのか、また具体的に触れたいと思いますけれども、その資金援助の対象国については、日本として、出資している以上はしっかり見ていかなければならないというふうに思います。

 先進国だから、お金があるから出資が当然という意識ではなくて、国内の厳しい財政状況と向き合いながら、この中で、なけなしの出資を今回も増額をしているんだという意識を忘れてはならないと思います。

 今は純出資国の日本でありますが、戦後は、世界銀行の主要な貸出先の一つが日本でありました。一九五二年にIBRDに加盟した後に、その翌年から十三年間、日本が借り入れたお金、八億ドル以上になりますけれども、この資金が、東海道新幹線のインフラ整備、また高速道路、発電所、製鉄所、こうした建設に充てられる。こういう借入金が、戦後の復興期から高度成長期にかけての日本の歩みを前に進めるようなエンジンになったわけです。

 時代とともに担う使命と役割は変わっていますけれども、日本が出資しているお金が、やはり国民の一般的な感覚として、一体どこでどのように世界で使われているのか、かつての日本のように役立てられているんだろうか、国民の理解を深めていくことがより重要であると思います。

 この理解のために、世界銀行の活動について、やはり、わかりやすく国民に対して周知をしていくこと、出資国の一つとして世界銀行の財務状況を厳しくチェックしていくことが国民に対する情報発信の重要性に大変大きな意義があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これはもう御指摘のとおり、昭和二十年代から三十年代にかけて、間違いなく、日本は多額の金を、これは何も世銀に限らずいろいろなところから金を借りております。特にアメリカの銀行から大量の金を借りたことは事実であります。そして、それを全て、約定どおり、一回の滞りもなく全額返済しておるという国も日本ぐらいなものです。借りた金をいまだかつて一回も滞ったことなく返した国は日本だけですよ、多分。暇があったら調べてみられるといいと思いますが。

 日露戦争のときに借りた五百万ポンドですら、第二次世界大戦のときに滞ったとき以外は、あれは六十年債で借りているんですけれども、一九六五年に返済が終わるはずですが、そのときの金は返済ができず、戦争でしたから。しかも、敗戦国になったので普通はそういった金は返さないことになっているんですが、日本は、敗戦したにもかかわらず、その金を、二十年延ばして一九八六年に全額完済。金利は六%、五・六だったか六・五だったかのパーセント。日本は借りた金を必ず返すという神話が世界で定着したのは、これが背景です。

 それ以外にも、IMF、世銀、アメリカの銀行から金を借り、新幹線等々、言われるとおり、つくってきたのは事実なので、おっしゃるとおり。したがって、私どもはそういったお金を借りてできてきたので、今度は私どもが貸す時代というような、力を入れたときに当たって、私どもはこういったものに対していろいろやらせていただいておりますが。

 おっしゃるとおり、日本のように皆、確実にそういったものをきちんとやっているかと言われれば、これは甚だ疑問ですな。踏み倒している国は幾らでもありますから。そういった意味では、私どもとしては、その内容を見る場合に、どういった形で貸し出しているかという点に関しては、今よく言われているような、インフラの輸出に伴って、返済ができないなら、そのままその物件を押さえて、そこを九十九年間租借しますとかいうようなことというのは、今実際起きていますから。

 そういったような形というので私どもとしては御理解いただくことは大事なところなので、これは財務省のホームページを見られたらいいと思いますが、世銀を含みます国際開発金融機関の活動についてのパンフレットがどんどん出ていますし、今般の増資に関する資料も既に公表されておりますので、世銀への出資の意義とか成果について皆さん方の御理解を得られるように私ども努力をしていかねばならぬと思っております。

 また、世銀のホームページを見ていただいても、活動や成果に対する日本語のホームページがそこに、世銀において解説もされておりますし、また、増資に係る報告書の日本語の概要版というのを今回は公表が行われておりますので、私どもとしては、世銀の財務状況については、世銀から理事会への報告が義務づけられておりますので、理事会を通じて、日々、財務状況につきましても把握、監視等々を行わせていただいていると思っております。

緑川委員 大臣から、戦後の昭和期の日本が信用力を高めるに至った背景などについても、今お答えもいただきましたけれども、やはり、IBRD含め世界銀行の元来の役割は、途上国における貧困の解消、そして経済成長を更に進めるための支援、資金援助という目的で役割を担っているわけですけれども、世界第二位の日本の歩み、返済を重ねてきた、しっかり仁義を通してきた、そういった面もある一方で、世界第二位の経済大国である中国は、いまだに途上国として扱われている、この現在の世界銀行の運営のあり方には、やはり大きな課題が残されているというふうに思います。

 世界銀行に対して第三位の出資国でもありますけれども、中国に対していまだに手厚いとも言えるような支援が続いている。巨大経済圏構想の一帯一路構想のもとで、多くの国を中国自身が支援をしている立場なのに、新たな国際秩序を独自につくろうとしている中国みずからが世界銀行から融資を受け続けているというのは、やはり不自然であり、おかしい話であるというふうに思います。

 政府の説明資料に、一方で、発展途上国の膨大な資金需要に対応するためというふうに増資の目的、主眼も書いてありますけれども、この膨大な資金需要の中にはやはり中国が入っているわけですね。先ほどお話しした、なけなしの出資金を中国に回されては、やはり今の苦しい日本としてはたまったものではないはずです。

 IBRDは、中所得国及び信用力のある低い所得の国の政府に対して、LDCよりも、後発開発途上国よりも所得水準が比較的高い途上国に対して、市場の金利で融資をするということですが、まず、世銀における、先ほどの質疑でもお答えが一部ありましたけれども、発展途上国の明確な定義はあるのか、そして、純出資国ではなく、いまだ投資されるべき国として投資適格国として位置づけられている中国、この背景について御答弁を求めたいと思います。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 世銀グループは、所得水準、一人当たりのGNIでございますけれども、に基づいて加盟国を分類してございまして、原則として、千百四十五ドルより所得の高い国はIBRDの支援対象国、そのうち六千七百九十五ドルより所得の高い国はIBRDからの卒業に向けた議論を開始することとされているところでございます。

 中国についてお話がございました。

 中国に関しては、既に一人当たりGNIが八千六百九十ドルと卒業基準を超えているにもかかわらず、これまで具体的に十分な卒業に向けた議論が行われてきてございませんでした。

 今回の増資に際しましては、IBRDの卒業政策を厳格に適用することが合意されまして、卒業基準を超えた国々の将来的な卒業に向けたプロセスについてのフレームワークが合意され、個々の国についても今後しっかりとした議論がなされることとなってございます。

 日本としましても、卒業政策は厳格に適用されるべきと考えており、こうした議論に積極的に参加してまいりたいと考えております。

緑川委員 やはりGNIが既に超えているということで、そもそも、人口十億人の中国で、これまでは確かに一人当たりのGNIは低かったかもしれないです。でも、もう圧倒的に上回っている状況であり、まだ議論が進められていないことは、やはり議論を加速させていただきたいと言うしかありません。先進国ではないといいながらも、もう数値は超えているし、世界への影響力という点では、もはやほかの開発途上国そして新興国とも同じように見ることはできないわけです。

 今の融資の状況に比べて、かつての日本は、順調に経済成長を遂げてきた中で世銀からの融資を受け続けてきたことに対する批判が高まって、一九六七年には投資適格国から卒業して、これ以降、新規の融資は停止されることになりました。日本としても自立することになったんですけれども、既に、一九九〇年には世銀からの借金の全額を返済しているわけです。

 一方の、比べていただくと、中国やトルコを含めて世銀を卒業してしかるべき国々、つまり所得が高くなっている国に対する融資割合は、GNIの数値とは裏腹に、いまだに融資割合の全体の四割にもなっているわけです。今後、今の四割から三割に減らすことにしているというふうにしていますが、この点についても、結局、今から十年以上先、二〇三〇年までに四割から三割に減らすということですので、逆に言えば、今後十年以上も中国向けの融資が続くことになります。

 日本がかつて援助を受けてきた総額が八億六千三百万ドル、一方の中国が借り入れてきた総額は、これはやはり桁違いなんですね、五百二十億ドルです。日本円にして五兆七千億円余りです。時代が違いますので一概に比べることはもちろんできないんですが、これだけ見ても、返済の仕方の違いも見ても、額も見ても、やはり大きな課題であるというふうに思います。今の中国は、この五年間の平均、日本円にして二千二百億円の融資を毎年受けている状況であります。

 麻生大臣にも伺いたいんですけれども、本当に支援を必要としている国々にちゃんと資金を回していくために、日本が本来目的とするような途上国に対して支援ができるように、中国への資金援助をやはり改めて見直すべきときに来ているんじゃないかというふうに思うんですが、第二位の出資国として発信力を維持している日本として、どのような対応を図っていくお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは、緑川先生、今、武内局長の方から答弁をさせていただきましたけれども、中国を始めとして、被援助国の中でも相対的に所得の高い国というのは中国以外にもありますので、そういった支援を行っていることに関しては、日本としては、できる限り縮減しろということで、より貧しい国へ支援を充てていくべきだということをこれまでも申し上げてきているところです。

 他方、相対的に所得の高い国々への融資であっても、即時にゼロということになりますと、なかなかそれは難しいというのはもう御存じのとおりなので。そうした中で、今回の世銀の改革の中においても、世銀のいわゆる卒業政策というものを厳格に適用していくということを合意してくれということで、これが合意というところまで来ておりますので。これも結構時間がかかったんです。四年、五年ぐらいかかってやっとここまで来たという感じですけれども。少なくとも、環境対策などいろいろなもので真に必要な分野に限定しろと、どうしても必要というなら。そういった国でも問題のところがありますので、そういったところならともかく。

 したがって、将来的には世銀の支援から卒業していくということは更に促すべきだということを申し上げてきておりまして、今そういった合意ができましたので、着実にそれを実施させるように今後とも努力してまいりたいと考えております。

緑川委員 やはり、戦後復興期から高度成長期にかけた日本の対応、世界から援助を受けてきた日本がその債務をきちんと果たしてきた立場として、引き続き強く進言していくべきであるというふうに思います。途上国であることを理由に経済大国としての責務から逃れようとする姿勢は、世銀だけではないですね。貿易のWTO、そして温暖化対策についても、同じような理屈で逃れようとしている、そんな節もあります。やはり、日本として、この矛盾を放置したままいるわけにはいかないと思います。

 世界銀行の、今ちょうど組織改革を求められるタイミングで、また次の総裁が来月までに選ばれる予定になりますが、アメリカのトランプ大統領が今指名しているのが、先ほど大臣もおっしゃったデービッド・マルパス財務次官。このマルパス候補、今のところ対抗馬がいないということを考えれば、この候補が総裁に選ばれる公算が大きいと言われています。

 このマルパス候補、中国への厳しい姿勢でも知られていますし、中国に対する融資を速やかに減らすことが望ましいとも公言していますが、中国の世界銀行での発言権が増している中で、やはりどうしても、アメリカ、日本、そして中国という出資比率を見ても、次の増資のタイミングでは日本を抜いて二番になる中国の見通しですから、強硬派としても、改革はなかなか難しい面ももちろんございます。

 このアメリカについて一方で気になっているのが、トランプ大統領と考え方が近いと言われているマルパス候補が、例えば現トランプ政権で否定的な見解を見せている気候変動対策の関係事業が縮小される懸念も、今回、SDGsの取組の開発の中で大変重要な要素でありますので、こういう事業が縮小される懸念がないのか、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 デービッド・マルパスという人は、前のジム・キムのようにいきなり大学の先生から世銀の総裁になったというのではなくて、アメリカの財務省に財務次官補としても結構長くおりましたし、いろいろ財務省に詳しい人だと思っておりますので、この人がいろいろな意味できちんとした対応をやっていける人だということは、私ども期待をしているところですけれども。

 気候変動政策の話が出ていましたけれども、これは、今回の増資をさせていただくということになりましたときに、気候変動分野における支援の割合というものを従来の二八%から三〇%にふやすということを合意がされております。この増資に当たりましては、当然、トランプ政権の中での、いわゆる財務省というものが筆頭株主でもありますので、そういった中でこれが深く関与していくことが決まっておりますので、そういった意味では、気候変動政策というものにつきましても、これは、合意をしたときの本人というか、そのときは財務官だったかのときだったと思いますので、これは着実に、そのときの関与した、一緒に討議した人でもありますので、それはきちんとやっていくということになろうと思っております、気候変動の話につきましては。

緑川委員 マルパス候補が、中国に対する厳しい姿勢の一方で、国際機関に対しては、肥大化し過ぎているというような発言もされておりますので、効率化の名のもとに、そういう本来の重要な対策がまた形骸化しないような、形だけにならないようにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 本来の、そもそもの増資の目的であるSDGsの達成の上で欠かせないのが気候変動対策。トップがどうであれ、この気候変動の影響を軽減するための緊急対策を世銀として途上国の支援プロジェクトにそれぞれ落とし込んで、それぞれの国で具体的な対策を進めていく計画がある以上、その道筋はしっかり確かなものにしていくべきであります。

 気候変動によるものと見られる自然災害も近年頻発している中で、自然災害多発国の日本であり、一方で、すぐれた気象予報技術を持ち、また防災インフラの整備の力も持っている防災先進国でもあるのが日本であります。

 一方で、途上国で発生している自然災害の場合に、災害そのものが大きい場合もありますけれども、亡くなる人の数の多さが際立っているのは、それを防ぐインフラが未整備であることが大きな要因の一つです。

 そうしたことを考えたときに、この国連のSDGsの目標の、誰一人取り残さない社会、これを共有する上で基盤になるのが、やはり、一国至上主義ではない、多国間主義。国際機関の機能強化に貢献していきながら、日本の強みである防災という分野に特化をして、日本が掲げている質の高いインフラ投資を世界銀行においても進めていくという視点が重要であるというふうに思いますが、途上国が本来求めているレベルの投資のニーズ、つまり迅速だったり安い投資を求めている途上国のニーズもありますが、そうしたものにマッチをするものになるのか、また、質の高さを実現する場合のコストについて、その折り合いをどのようにつけていくのか、あわせて伺いたいと思います。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 インフラ整備についての途上国の考え方と我々の提唱している質の高いインフラとのギャップについて、どのようにすり合わせていくのかという御質問かと理解いたしました。

 インフラ整備が必要なのは、当座の道路のため、橋のためだけではなくて、実は、その国の経済発展の礎となるからであります。

 つまり、きちんとしたインフラを整備する、質の高いインフラを整備することによって、雇用も創出され、技術も継承され、さらには民間の資金も流れ込んでくる、そういったものを実現するようなインフラこそが、長い目で見てインフラとして重要だということを我々は考えてございます。

 そういった意味では、ライフサイクルコストで見たときに、果たしてそのインフラが割に合うものなのか合わないものなのか、そういった考え方をしてくださいということを途上国側に説明しているところでございまして、そういった形で引き続き理解を得るよう努めてまいりたいと思っております。

緑川委員 中長期的な視点に対する理解、即効性を求めたいという支援を受ける側としての思いもやはりあると思いますけれども、そういうところの説明も、インフラの提供、投資だけではなくて丁寧に現場に対して説明をしていく、こういう姿勢も求められるというふうに思います。

 一国至上主義が心地よく思えてしまうような時代の中で、貿易戦争とか反グローバル化の機運が広がっている中で、ことし六月に大阪で開かれる予定のG20、ここでは主要な先進国、新興国も顔をそろえます。この首脳会議の議長国になる日本としては、やはり、先ほど申し上げた多国間主義、これを醸成する機運を高めるきっかけとしてこの会議を捉えていくべきであるというふうに思います。

 この指導力を日本として、プレゼンスを世界銀行の出資国として一層発揮していくために、やはり、防災分野における投資だけではなくて、少子高齢化、人口減少、こういった課題の先進国という位置づけとしても政策プランを練る力を磨くことが大切であるというふうに思います。いつかは途上国も日本と同じような人口構造をたどることになりますので、そういった方策をきちんと日本として途上国に対して訴えていく、こういう役割も重要であるというふうに思います。

 最後の質問にいたしますが、途上国とされながら成長の著しい中国、そして今やインドも、資金力の面では、日本が対抗するにはやはりそろそろ限界が見えてきているところがあります。

 先進国としての資金の力だけではなくて、政策や知恵で勝負をしていく。アジアなどの新興国のインフラ投資に対しては、今の中国がリードしている経済構想には多くの国が警戒感が拭えていないわけです。そういう中で、多くの国が納得できるような多国間の協調の枠組みを提案する、これがやはり、日本人が本来持っているバランス感覚を大いに発揮できるようなところであるのかなというふうに思います。リーダーシップを示すチャンスと見るべきであると思いますが、麻生大臣、最後に伺います。

麻生国務大臣 これは、緑川先生御指摘のとおり、発展途上国とか新興国の成長に貢献していくためには、これは、資金の量だけじゃなくて、知恵とか、いろんな表現があるんでしょうけれども、質というものが重要であるという点に関しましては、これはもう日本もこれまでその方向で取り組んできたと思ってきております。

 例えば、かねてから、インフラだったら、安かろう悪かろうみたいなのがやたら多かったように思いますけれども、少なくとも、カンボジアの橋の話が多分、一番最初に世の中に出てきたのかな、世界でお札の裏が橋というのは多分カンボジアだけだと思いますから。あの橋は日本橋という橋ですけれども、きちんとした橋の絵が出ているというので、質の高いインフラストラクチャーというのを私どもとしては推進してきているんですが。

 この質の高い、ハイクオリティーインフラストラクチャーという言葉を我々が使い始めたのは五年ぐらい前だと思いますけれども、昨年からはとにかく中国でも、質の高いインフラとかなんとか、意味をどれぐらい理解しているのか知りませんけれども、そういう言葉を使い始めているのは事実なので、この言葉が定着しつつあることは確かなんですが。

 いずれにしても、こういったものは、そのもの自体がいいんじゃなくて、それによって、少なくとも、例えば雇用が創出されるとか、中国みたいに、ごそっと人を連れていってそのままそれを置いてきちゃうとかいうようなことではありませんから、雇用を創出する、また、そこにいた人、従業員を全部教育して技術のレベルを上げていくとか、そして、例えば鉄道であれば、その後のメンテナンスも、運用、運営、運転する、ずっと継続していくそのメンテナンスもやっていくとか、そういった意味で、技術の移転等々を含めまして、こういったものの現地で与える経済的な波及効果の大きなもの、そういったようなものが質の高いインフラストラクチャーだということでこの議論は結構定着したと思いますので。

 G7はもちろんですけれども、G20などでも、主なコンセプトは理解されておりますので、今回のG20の議長になりますので、そのときには、さらに、これに加えて、開放性だと。少なくとも、一国だけで独占的に使おうとかいうんじゃありませんよ、開放的にしなきゃだめだよと。それから、これは、借りた国はその金を返済するということになりますので、その金が返済が可能なような、きちんと日本が何十年かけて返済してきたのは、約定どおり返済してきたわけですから、そういった返済できるような、いわゆる返済の継続性、そういったようなものを含めたものも含めて考えてもらわないといかぬというので、私どもとしては、新たな原則を合意させていきたいものだ、このように思っております。

 また、人へのインフラの投資の観点からは、今、UHC、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、これは世銀と日本が一緒に組んでいるプロジェクトですけれども、そういったものに関連した取組で、いわゆるパンデミック等々のものをきちんとやるというのに際して、日本の技術というか、例えば国民皆保険制度とかそういったいわゆるソフトなインフラの話ですけれども、そういったものを含めた取組とか、それから、低所得国に対しての債務というものに関して、その返済するに当たってのやり方、金利、どれくらいの分担で返していくかという年数、五年で返せないでしょうから……

坂井委員長 大臣、時間を超過しています。簡潔にお願いをいたします。

麻生国務大臣 十五年できちんとやっていくということをやるということを申し上げておりますので、G20の議長国としてそういった議論を主導してまいりたいと考えております。

緑川委員 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次回は、来る十五日金曜日午前八時二十分理事会、午前八時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時三十四分散会


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