衆議院

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第5号 令和6年2月28日(水曜日)

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令和六年二月二十八日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 伊東 信久君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    畦元 将吾君

      井野 俊郎君    石原 正敬君

      英利アルフィヤ君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      金子 容三君    木原 誠二君

      岸 信千世君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    高木  啓君

      中川 郁子君    中山 展宏君

      仁木 博文君    藤丸  敏君

      藤原  崇君    古川 禎久君

      細田 健一君    堀内 詔子君

      三ッ林裕巳君    宮下 一郎君

      宗清 皇一君    保岡 宏武君

      簗  和生君    山田 美樹君

      若林 健太君    井坂 信彦君

      江田 憲司君    階   猛君

      末松 義規君    野田 佳彦君

      馬場 雄基君    原口 一博君

      藤岡 隆雄君    山岸 一生君

      米山 隆一君    沢田  良君

      藤巻 健太君    掘井 健智君

      竹内  譲君    中川 宏昌君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   厚生労働副大臣      宮崎 政久君

   経済産業副大臣      岩田 和親君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   衆議院法制局法制企画調整部長           神崎 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣官房新しい資本主義実現本部事務局次長)   坂本 里和君

   政府参考人

   (内閣官房令和5年経済対策物価高対応支援、令和4年物価・賃金・生活総合対策世帯給付金及び令和3年経済対策世帯給付金等事業企画室次長)

   (財務省大臣官房総括審議官)           坂本  基君

   政府参考人

   (内閣法制局第三部長)  佐藤 則夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 中澤 信吾君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 和田  薫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 鈴木  清君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           笠置 隆範君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 吉田 雅之君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   寺岡 光博君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    青木 孝徳君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    奥  達雄君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           増田 嗣郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           石垣 健彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房新事業・食品産業部長)    小林 大樹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房首席スタートアップ創出推進政策統括調整官)      吾郷 進平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           鋤先 幸浩君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林  出君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西村 秀隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           牛山 智弘君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   参考人

   (日本銀行理事)     清水 誠一君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十八日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     金子 容三君

  越智 隆雄君     青山 周平君

  木原 誠二君     畦元 将吾君

  山田 美樹君     高木  啓君

  若林 健太君     中川 郁子君

  階   猛君     米山 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     三ッ林裕巳君

  畦元 将吾君     堀内 詔子君

  金子 容三君     保岡 宏武君

  高木  啓君     山田 美樹君

  中川 郁子君     仁木 博文君

  米山 隆一君     井坂 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  仁木 博文君     若林 健太君

  堀内 詔子君     木原 誠二君

  三ッ林裕巳君     井野 俊郎君

  保岡 宏武君     石原 正敬君

  井坂 信彦君     山岸 一生君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     細田 健一君

  山岸 一生君     藤岡 隆雄君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     簗  和生君

  藤岡 隆雄君     階   猛君

同日

 辞任         補欠選任

  簗  和生君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事清水誠一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官平井康夫君、新しい資本主義実現本部事務局次長坂本里和君、令和5年経済対策物価高対応支援、令和4年物価・賃金・生活総合対策世帯給付金及び令和3年経済対策世帯給付金等事業企画室次長、財務省大臣官房総括審議官坂本基君、内閣法制局第三部長佐藤則夫君、内閣府大臣官房審議官畠山貴晃君、大臣官房審議官中澤信吾君、警察庁長官官房審議官和田薫君、総務省大臣官房審議官鈴木清君、自治行政局選挙部長笠置隆範君、法務省大臣官房審議官吉田雅之君、財務省主計局次長寺岡光博君、主税局長青木孝徳君、理財局長奥達雄君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房審議官増田嗣郎君、大臣官房審議官石垣健彦君、農林水産省大臣官房新事業・食品産業部長小林大樹君、経済産業省首席スタートアップ創出推進政策統括調整官吾郷進平君、大臣官房審議官鋤先幸浩君、大臣官房審議官小林出君、大臣官房審議官西村秀隆君、大臣官房審議官牛山智弘君、中小企業庁事業環境部長山本和徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。江田憲司君。

江田委員 おはようございます。

 本日開催予定だった政倫審、公開、非公開をめぐる与野党の争い、特に自民党の公開しないというかたくなな態度で、開催をされなくなったということでございます。

 これは、先週の与野党合意で、予算案の衆議院通過、出口を見据えた上での日程設定だったはずなんですね。それがこういう異常な事態に至ったことについて、まず、財務大臣、受け止めをお聞きをしたいと思います。

鈴木国務大臣 今回の一連の出来事によりまして、国民の皆さんの政治に対する不信が高まっているということ、これは大変深刻な問題であると受け止めております。

 いろいろなことをやっていかなければならないわけでありますが、その中の一つとして、関係者の方の説明責任を果たしていただくということ、これは、幾つかやらなければいけない中におきましても重要な点だと思っております。

 政倫審の持ち方については、これは政倫審でお決めになることでありますが、円満な、条件が整って、そしてその場で説明責任が果たされるということが望ましい、そのように考えております。

江田委員 この政倫審の開催は、やはり、予算委員会、重要課題が山積しておりまして、その審議もある、一方で、これだけの大問題化したこの裏金問題についての国民に対する説明責任というか、政治への信頼が地に落ちた状況で、国民に向かってしっかり説明をする機会として、この本人、疑惑を受けた議員の皆さんの弁明の場としての政倫審を分けて考えようという、そういう意味でのそれなりの知恵だったわけですけれども、残念ながら、御本人にとっても、これはテレビ入りで、完全公開で、国民に向かってしっかり疑惑を晴らすための説明をするということが必要だと思うんですけれども、どういう理由なのか、完全公開をされない。

 これは、今財務大臣がお答えになったような、人ごとではないんですよ。これはまさに、予算の早期成立を目指す財務大臣として、立場からしても、これは衆議院通過という出口を見据えた今日、明日の政倫審の設定、そして中央公聴会の設定、それを我々としても踏まえた上で先週合意をした。その前提が崩れたということですから、今日。

 これは、鈴木財務大臣の立場にとっても、予算をとにかく衆議院を通過させ、財務大臣の立場であれば、早期成立、できれば年度内成立という立場からしても、看過できない事態だと思っているんですね。

 だからこそ、鈴木財務大臣も岸田政権の、岸田内閣の重要閣僚ですから、岸田総理の方も、予算委員会の方で同僚議員が総理からしっかり指示をしろという要請をしておりますので、これは人ごとじゃありませんからね。予算の衆院通過と直結している問題ですから、是非、鈴木大臣の方からも、公開しろ、政倫審でしっかり弁明しろという働きかけをしていただけませんでしょうか。

鈴木国務大臣 江田先生から御指摘のとおり、私にとりましても、来年度の予算というものを年度内に成立させるということが大変重要なことでございます。政倫審の開催が今進まないということがその障害になっているということ、これは重々認識をしております。

 先ほど私の気持ちは述べさせていただきましたけれども、政倫審の場で与野党の協議が今進められているところだ、そのように認識をしております。是非それが整って、そしてその後の予算委員会を含む審議というものが進んでいくこと、それを心から望んでいるところでございます。

江田委員 それは、大臣としては何もしないということですか。

鈴木国務大臣 今、新聞報道によりますと、我が党が何か機能不全に陥っているというような厳しい御指摘もございますが、伝統的にも自民党では、つかさつかさでしっかりと役割分担をしながら、責任を持って物事を決め、前に進めてきたと思っております。

 今閣内にいる私が党内の問題に直接申し上げることは、それはできないことだ、そのように思っておりますが、先ほど申し上げましたとおりに、来年度予算、何とか年度内の成立をお願いを申し上げたいという立場で、今の政倫審のやり取りを見守っているところでございます。

江田委員 これは結局、完全公開しないと我々としても終えられませんのでね。というか、国民の皆様は、しっかり弁明を聞きたい、こういう思いで満ち満ちておりますから、そういう国民の声をバックに是非とも公開をしていただきたいと思いますし、もしそれをかたくなに拒むのであれば、今度また予算委員会に戻して、参考人招致、証人喚問と、もういつまでたっても衆議院通過は見えませんよ。

 だから、そういう意味で、やはり、財務大臣ももう重鎮でいらっしゃる、自民党の中で。是非とも、同僚議員を説得されるなり、幹部の方とも相談されて、本当にこれは政倫審を開催しないと大変なことになると思います。我々だって、能登半島の被災地対応の予算も含む来年度予算はできるだけ通したいとは思っていますけれども、その前提条件として、この政治不信を払拭しなければと思っている、その思いを突合した上での日程設定が、今日、明日の政倫審、あしたの中央公聴会、これは与野党合意したわけですから。それを踏みにじったのは自民党さんの方だということをはっきり申し上げておきたいと思います。

 さて、政策活動費、これは国税庁も課税対象だと明確に認めました。二階当時幹事長には五年間で五十億円弱、現幹事長の茂木さんには十億円弱、これは明らかに、自民党の収支報告書に明記されている疑いようもない事実ですから、これを国税庁が課税対象と言っておきながら、なぜこの使途不明金に税務調査に入らないのか、私には全く理解できませんので、もう一度、税務調査、入りますね。国税庁、答弁をお願いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 個別にわたる事柄についてはお答えを差し控えさせていただきます。

 所得税は申告納税制度でありますので、まずは、納税者におきまして自身の収入や必要経費を計算し、申告していただくということでございます。

 その上で、一般論として申し上げますと、国税当局におきましては、様々な機会を捉えまして、課税上有効な各種資料情報の収集に努めまして、これらの資料情報と提出された申告書とを分析し、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めることとしております。

江田委員 見事に同じ答弁を繰り返し繰り返し、何とかの、昔の言葉で言えば壊れたテープレコーダーみたいに言うんですけれども、それでは、ちょっと問い方を変えましょう。

 一般論として、企業に十億円、年間の使途不明金がある、そういう場合も、もう税務調査に入らないんですね。これは深刻なのは、仮に政策活動費に、十億円規模の使途不明金に税務調査に入らないということであれば、今後一切、民間企業に十億円の使途不明金があっても入れませんよ。

 財務大臣、いつでしたか、予算委員会で、課税や徴税には国会議員、民間の区別はないとおっしゃいましたね。そうですよね。

鈴木国務大臣 そのとおりです。

江田委員 であれば、個別の事案じゃないんですよ。明々白々に、自民党の収支報告書に、茂木何がし、十億円弱、五年間で二階何がし氏に五十億円弱と明記されているんですよ。使途は分からないじゃないですか。明々白々の事実が目の前にあるんですよ。

 では、会社で会計帳簿を調べました、十億円の使途不明金がありますと言っても、もう手を出せなくなるということですよ。私だったらこう言いますよ。いや、十億円、課税対象だ、政策活動費、使途不明金だ、明々白々だ、にもかかわらず、国税庁は税務調査に入らなかった、じゃ、私のところにも入らないんでしょうねと言って、入ってきたら訴えますよ、入ってきたら、国税庁を。それで、訴えた訴訟の場で、じゃ、自民党のあれはどうしたんだという話をしますよ。裁判所はどうするんですか。その政策活動費の領収書を出せという話に発展していくでしょう。

 だから、これは、はっきり言うと、政策活動費を課税対象と認めて税務調査に入らないとなると、国税行政がどつぼにはまるんですよ。そういう悪例を前例として残すということを、明々白々、世間に知らしめるということを意味するんですよ。それでも税務調査に入りませんか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論でございますが、国税当局は、様々な機会を捉えまして、課税上有効な資料情報の収集、分析に努めておりまして、仮に、政治家個人に帰属する政治資金につきまして、適正な申告が行われていないということで、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなどにより、適正、公平な課税の実現に努めることとしております。

江田委員 国税庁、財務大臣から税務調査に入るなと指示されているんですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税庁におきまして、財務大臣から委員御指摘のような指示等は受けていないということでございます。

江田委員 裏金議員への税務調査もそうなんですけれども、財務大臣にお聞きすると、常に返ってくる答えは、私は国税庁に指示することは控えておりますという御答弁ですよね。

 それって、考えてみると、どこに根拠があるんですか。どういう理由で、国税庁には容喙できない、手を出せない、指示できない、そういうことになっているんですか。ちょっと教えていただけませんか、財務大臣。

鈴木国務大臣 国税の賦課徴収につきまして、財務大臣として国税庁に指示を行うことができないという明文の、法律上の根拠はございません。

 しかしながら、政治家を含め多くの国民が納税者である中、国税当局の執行権限は検察、警察などと並び得るほど強力であり、政治的中立性が強く求められるところであります。

 我が国の税制が申告納税制度の上に成り立っており、税務行政への信頼を確保するためには、客観的な事実関係に基づく処理への要請が強いことなどを踏まえ、明文の規定はないとしても、いわば不文律として、財務大臣として国税の個別案件に指示等を行うことは歴代の財務大臣も控えてきたところでございまして、私もそれはしっかりと守らなければいけない不文律であると思っております。

江田委員 そういうお話を聞くと、これだけ強大な権限を持つ国税庁というのは、どこに民主的正統性を持つんですか。この役所、国税庁といえども一役所、役人の集団が、この議院内閣制、民主主義国家において、どこに民主的統制ができるんですか。大臣が何も言えない、そんな独立愚連隊というかアンタッチャブル、治外法権は許されるんですか。

鈴木国務大臣 国税庁でありますけれども、財務省設置法上、財務省の外局として位置づけられておりまして、財務大臣から完全に独立した地位にあるものではございません。

 ただし、一般に、国家行政組織法上、外局については、その長に事務を統括する権限が付与されており、国税の賦課徴収に関する権限は、一義的には国税庁長官に委ねられているところであります。

 先ほど申し上げたとおり、税務行政については政治的な中立性の確保が強く求められているところでございまして、指示等を財務大臣として国税に行うということ、この不文律は守らなければいけないと思っております。

江田委員 それでは、こういう場合、いわゆる、ここまで明々白々な事実が国民の前にあるというのに税務調査に入らないという、じゃ、不作為がある場合に、これはもうしようがないんですか。大臣も何も言えない、第三者機関もない。

 例えば、あの検察庁、同じような強大な捜査権を持つ、独占的な起訴権を持つような検察庁には、御承知のように、検察審査会というのがある。それから、法務大臣も、法律上、一般的な指揮権を持つ、検察庁には。個別事案については検事総長のみ指揮できるという指揮権、これは是非はありますけれども、事の是非はありますけれども、そういう枠組みで民主的統制を図っているわけです。

 だけれども、今のお話を聞くと、それに匹敵するような強大な徴税権、査察権、それから重加算税の賦課とか、こういう国民の権利義務に重大な影響を及ぼす強力な権限を持つ国税庁という役所をチェックする機関が全くないじゃないですか。こんなこと、民主主義国家で許されていいわけないじゃないですか。

鈴木国務大臣 今、江田先生から、検察審議会の話とか、そうした第三者の目でのチェック機能があるのに対して、国税にはそういうものがないではないかという御指摘でございました。

 しかし、これは、国税当局が自ら律して、きちんと税務行政を行っていると私は信じているところでございます。

 先ほども申し上げましたとおり、国税当局の執行権限は検察と並び得るほど強力でございまして、政治的中立性が強く求められること、また、客観的な事実関係に基づく処理への要請が強いこと、そういうことを踏まえて、国税当局におきましては、しっかりと与えられた職責を果たしていただいているもの、そのように思っております。

江田委員 あり得ない答弁ですよ、この民主主義国家においては。普通の一般官庁が独立しているということを言っているんですよ、あなたは。

 例えば、アメリカのIRS、内国歳入庁というのがありますよね。そこにはちゃんと監督官庁があって、監視委員会というのが設けられています。英国歳入関税庁にも、女王から任命されるコミッショナーを含む執行委員会というのが曲がりなりにもあるんです、日本で言う国税庁の中に。

 私は、これは釈迦に説法で申し訳ないですけれども、結局、国民主権、主権者である国民に選ばれた国会議員、その国会議員の投票で選ばれた内閣総理大臣が一番強い民主的正統性を持ち、その総理大臣が組閣をして、その役所は大臣を頂くからこそ、そこに民主的正統性が出るわけです。これが中央省庁を再編するときの基本的な考え方ですよ。

 その鈴木財務大臣が、全く国税庁に物が言えない。あり得ないんです、これは、制度の組立て上。ですから、言えるんですよ。

 ただ、問題は、大臣が国税庁に、税金まけろとか、どこそこの会社の税務調査はやめてくれとか、こういう指示は駄目ですよ。しかし、今回のような、御自らが所属する政党の不祥事で、これだけ国民の怒りと怨嗟の声が満ち満ちている中で、脱税だ、何で俺たちが確定申告を真面目にしているときに国会議員だけ特別扱いして脱税で免れるのか、こういう怒りの声に応えるための指示は、大臣として当然持っているんです。持っていないとおかしいんですから。

 ですから、そういう意味で、大臣、もうこの期に及んだら、国税庁に、税務調査ぐらい入れと。入って調べた結果、白だったら、それでいいんですよ、証明されたら。とにかく入って調べてみないと、もう何度も何度も聞いた国税庁次長の、個別事案で、一般論として答えますが、個別事案って、もうはっきりしているんですよ、全部明確に。

 ですから、大臣、このぐらいの指示は、税務調査に入れと、政策活動費と今言われている裏金議員に対して税務調査に入れと是非指示すべきだと考えますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 今、江田先生からも御指摘がございましたが、財務大臣として国税当局に、税務調査に入れとか入るなとか、そういう指示をしないというのは、お話がございましたとおり、あの人物の税務調査をしろとか、それからあの人物の税務調査には手心を加えろとか、そういうことがあってはならない、そういう国税当局に求められる中立性、こういうものに配慮して、先ほど申し上げております不文律というものが存在しているんだと思います。

 国税当局においては、日頃から様々、課税に関する有効な資料とか情報とか、そういうのを集めております。ですから、それに基づいて、必要があれば、きちんと税務調査をやるということでございます。

 決して、これから先の話は全く、税務調査をしないとかするとか、そういうことは言っているわけじゃないわけでございまして、私といたしましては、やはり、そうした長年続いている不文律というものは、これは守らなければいけないと思いますし、その上で、税務当局においては、日頃収集している様々な情報、資料等に基づいて、税務調査をやると判断したらやる、こういう対応をしっかりやっていただけると思っております。

江田委員 それでは、もう大臣は一切物は言わない、言えないということですね、国税庁に。

鈴木国務大臣 徴税に関わる、特に税務調査等については、これは言わないということであると思います。

江田委員 ならば、もう財務省から独立させましょう。

 国税庁分離独立論は、九七年、橋本政権下における中央省庁再編を検討する行革会議において、当時の橋本首相自らが提案をしたことです。要は、国家公安委員会、三条委員会、独立行政委員会の下に警察庁がぶら下がっている、それは、警察権力を政治から中立、公平、中立性を確保するための、民主的統制を加えるための措置としてあるわけです。それと同じように、国税庁は、一役所でありながら民主的統制を全く受けないことはあり得ないことですから、これは。憲法違反ですから。

 ですから、そこまでおっしゃるのなら、もう大臣は一切、徴税関係、いろいろな租税関係から、国税には文句がつけられませんと言うんだったら、まあ、徴税委員会でも何でも名前はいいですよ。三条委員会、独立行政委員会にして、そこに国税庁を傘下に置く、そこで民間からの委員の登用も含めた民主的統制も図っていくということじゃないと、これは組織がもちませんよ。大臣が何も物を言えないと言うんだから。今だって運用は全て、その点については大臣は物は言わない、言えないと言うんだから。

 きっちりと、この民主主義国家において、この国税庁という役所の、強大な権限を持つ国税庁という役所の民主的な正統性を確保するために、徴税委員会、第三条委員会を設けて、その下に国税庁を置く。これは、中央省庁再編基本法の附則で、引き続き検討ということにもなっておりますから、是非、大臣、そういう決断をされなきゃいかぬと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 江田先生の御提言は、独立した第三条委員会で設置する組織とすべきではないかという御指摘であると思います。

 このことにつきましては、平成二十五年、政府の検討チームにおいて、税制の企画立案を行う財務省と執行を行う国税庁の分離について検討がなされたところであります。その検討チームにおきましては、税制の企画立案は執行現場で把握された実態を踏まえるとともに、執行部局も税法の趣旨を踏まえた統一的な解釈、運用を行う必要があることから、問題があると整理しておりまして、適当でないと考えております。

 徴税は国の財政運営の基盤であり、国税庁を財務省から切り離して独立した行政委員会の管理の下に置くのではなくて、今後とも、一人の大臣の下、財務省と国税庁が常に緊密な連携を図りながら各々の機能を適切に果たしていくことが重要である、そのように考えております。

江田委員 まあ、ここだけの話ですけれども、当時も自民党の幹部の皆さんから私に対して、江田君、三条委員会で独立なんかさせたら、政治家がもう国税に物が言えなくなるよと、そういうことなんですよ。

 要は、建前だけで議論しても駄目。本当に国税は公正中立にやってほしいと思うし、ただ、そのためには、役人を信じろ、役所を信じろで国民が納得するわけないので、しっかり制度的に、法的に民主的正統性を担保しないと、今回の件で国民は痛感したと思いますよ。検察が不起訴ならば、検察審査会に訴えられる、申し立てられるんですよ。国税が懈怠する、不作為をする、何にもできないじゃないですか。

 大臣、では聞き方を変えましょう。

 国民のそういう思いはどこに伝えればいいんですか。おかしいじゃないか、税務調査に入れと。これは、世論調査だって圧倒的多数ですよ。どこに行って、誰が権限を持って国税庁を指導してくれるんですか。

鈴木国務大臣 それは、今ある組織のどこに言うかということではなくて、そういう国民の声というのは、やはり世論として盛り上がり、政治がその盛り上がりをしっかり受け止めて、例えば省庁再編というものが必要であるというものが政治課題になってくる、そういう中で政治の場で考えられる、国民のそういう思いを受け止めて改善をしていくというのが一つの考え方ではないか。

 江田先生が橋本行革のときに先頭に立って苦労をされたことは私も傍らから見ておりましたけれども、あのときも、政治の、国民の世論を背景とした政権、政治の受け止めがあのような大改革に結びついた、そういうふうに理解をしております。

江田委員 橋本総理も大蔵族と言われまして、大蔵大臣もやられて、精通された立場から、これは私が言ったんじゃないですよ、橋本総理が自ら提案されたんです。当時は、財政と金融の分離が最重要課題でした。これは金融庁の独立ということである程度は達成できたけれども、国税庁の分離独立はできなかったですよ。歴代自民党の税調会長の大物に全部大蔵省が根回しをして、大反対の嵐でしたからね。

 しかし、それほど難しい問題ではあるけれども、今の大臣の話を聞いて、私は本当に不安になりました。国税庁をチェックする機関がない。これだけの大権力を持っている役所、誰も容喙できない、物が言えない、こんな役所が日本の民主主義国家において存在しているとは、私はついぞ今まで思わなかったですけれども、そういうことがはっきりとしたと思います。

 さて、今問題になっている政治資金パーティーですね、鈴木大臣はパーティーをやられていますか。どのくらいそれで収益を得られているんでしょうね。

鈴木国務大臣 いわゆる資金パーティーでございますが、毎年行っております。直近の一年間で申しますと、令和五年の四月と十一月に東京と岩手におきまして、それぞれ二回ずつ開催をいたしております。

 どれぐらい集めているかということでありますが、一回一回において規模も違いますし形式も違いますので、それぞれでありますが、少ないものにつきましては一回当たり百十六万円、規模の大きいものでありますと二千百十三万円の収入を得ているところであります。

江田委員 私でちょっと収支報告を見させていただくと、令和四年ですけれども、何回かやられていて、パーティー収入が六千七百九十万三千六百八十四円、支出が六百十二万三千百二十三円。結局、これを引くと、いわゆる利益率が九〇%ということなんですよ。ですから、大体、自民党の派閥のパーティーや自民党の皆さんが個人でやっておられるような利益率と平均的なものなんでしょうかね。

 鈴木大臣に率直にお聞きしたいんですけれども、こういうパーティー、九〇%の利益を上げて、大臣は申し訳ないと思っておられるのか、それとも、そんなことはチケットを買っている人ももう織り込み済みで、別にこれはパーティーと称しているけれども寄附みたいなものだから、九〇%の利益率でもいいんだ、お互い納得ずくだと思っておられるのか、大臣のお気持ちはどういう感じなんですか、このパーティー開催について。

鈴木国務大臣 利益率の話がございましたが、恐らくその時期はコロナ感染症が盛んな時期であって、学校形式でお話をして、申し訳ないんですけれども、会場経費と、それから食事などは提供しないというふうな形式のものも続いてまいりましたので、いわゆる利益率がよかったと思っております。

 そして、政治資金パーティーそのものにつきましては、これは法律で、ちゃんと記載すれば開催していいという形式、それは守らなければいけないわけでありますが、そういう規定の中で行うということにつきましては、私は、私を支援してくださる支持者の方がそういう機会を通じて資金的に応援していただけるということで、特に何か後ろめたいとか、そういうことは感じておりません。

江田委員 そこで事務方にお聞きしたいんですけれども、政治資金パーティーは、政治資金規正法八条の二にありまして、定義があります、定義が。そこは、対価を徴収して行われる催物で、収入と支出の残額を政治活動に使うものというふうに規定され、それは政治団体によって行わなければならない、こういう定義があるんですね。

 そこでちょっとお聞きしたいんですけれども、このパーティーにおける対価というのは、定義を教えてくれませんか。

笠置政府参考人 お答えいたします。

 政治資金規正法、先ほど委員の方から御紹介がございましたけれども、八条の二におきまして、政治資金パーティーとは、対価を徴収して行われる催物で、当該催物対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動に関し支出することとされているものと定義をされております。

 ここで、対価とは、催物に参加することの反対給付として支払われる金銭その他の財産上の利益を指すと解されております。

江田委員 ですから、その催物で提供されるサービスに対する対価ですよね、これは日本語の常識で。その催物で提供されるサービスの対価ですから。

 もっと言うと、その債務の履行として、サービスの対価の債務の履行として払うので、それは寄附ではないという整理でしょう。それでいいんでしょう。

笠置政府参考人 政治資金パーティーに係る収入、これは、先ほども申し上げましたけれども、当該パーティーへの参加の対価として支払われるものであるので、政治団体の事業収入として位置づけられておるということから、寄附、寄附の定義も規制法上置かれておりますけれども、御紹介を申し上げますと、寄附とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものとされておりますが、そうした寄附とは性質が異なるということでございます。

江田委員 ですから、催物で提供されるサービスの対価だから、寄附ではないから許されているんですよ、これは。法律というのは、何度も言いますけれども、社会通念、社会常識に基づいて解釈すべきなんですよ。

 では、具体的に言いましょう。

 このパーティーにおいて、ペットボトル一本、派閥のメンバー表、資料一冊、これに対して二万円を払うというのは、二万円は対価なんですか、お答えください。

笠置政府参考人 個々の事例について評価をすることは差し控えますけれども、先ほども申し上げましたけれども、政治資金パーティーの対価というのは参加の対価ということでございます。(発言する者あり)

津島委員長 もう一度、明確に答弁願います。

笠置政府参考人 先ほども申し上げましたが、政治資金パーティーの対価とは、催物に参加することの対価として支払われるということでございます。

江田委員 寄附との違いは。

笠置政府参考人 寄附というのは、先ほども申し上げましたけれども、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付で、党費又は会費その他債務の履行としてされるもの以外のものということでございますが、政治資金パーティーの対価と申し上げますと、催物に参加することの反対給付ということで、そこで違いがあるということでございます。

江田委員 それは、チケットに二万円と書けば全部許されるんですか。

笠置政府参考人 何でも許されるかというお話でございますけれども、これは個々の話であろうと思いますが、政治資金パーティーの定義を申し上げましたけれども、そうしたものに合致をする。あと、実質的に寄附という場合が理論上あり得るかもしれませんけれども、そこは個々具体の判断ということで、私の方から申し上げることではないことでございます。

江田委員 久しぶりにまともな答弁ですね。いや、個々の事案によっては寄附に当たる場合もあるという答弁ですから。

 ですから、二万円のチケットそのままが対価ではないですよ。だから、二万円が過剰であれば、例えばペットボトル一本で二万円、社会常識で考えてください、催物に行って。それが債務の履行で寄附ではない、対価だなんて言ったら、あほかと言われますよね。ですから、その答弁をしっかり記録して、二万円を取って余りにも少ないサービスしか提供しない場合は、過剰分は寄附に当たるということですね。ですから、これは形を変えた企業・団体献金というか、企業・団体献金そのものなんですね。

 もっとひどい例。西村康稔さんの件は、架空パーティーと週刊誌は報道しましたけれども、私もよく知っているホテルですよ。二、三十人入ればいっぱいの会場、二時間数万円の会場料で、数百人にチケットを売って、誰一人来ない。これは明らかに、そもそもチケットを売る方も、チケットを買う方も、そのパーティーに行く気はさらさらない。これはもう形を変えたどころか、企業、団体が買っている場合が多いですから、その分は企業・団体献金そのものですよ。

 しかも、この西村さんの場合は、総合政策研究会といって政治家個人の資金管理団体だから、これは法律で企業・団体献金は禁止されていますからね。これはひどい。もう鈴木大臣のパーティーが比較的いいんじゃないかと思えるほど、ひどい。

 これは明らかに企業・団体献金寄附違反でしょう。まず総務省、続いて法務省に答えていただきたいと思います。

笠置政府参考人 総務省といたしましては、個別の事案につきましては、具体的な事実関係を承知する立場にはございませんので、お答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、先ほど来御紹介を申し上げておりますが、政治資金規正法上の政治資金パーティーというのは八条の二に定義が置かれているわけでございまして、いずれにしても、この定義に該当するか否かにつきましては、具体の事実関係に即して判断されるべきものと考えております。

江田委員 いやいや、この問題が深刻なのは、六百人に売っているんだけれども、六百人は入れない会場だということなんです。まだ、利益率九割で派閥のパーティーだ何だというのは、それは一応、売っている人が全部来るわけではないけれども、一応入れるキャパは用意しているんです。

 西村さんの場合は、二、三十人が入ればもう立錐の余地もないようなところに何百枚も売っているということなので、そもそも入れないパーティーなんですよ。そんなもの、パーティーで認めるというんだったら、二、三十人分だけですよ、認められるのは。あとは、それは企業、団体が買っているんですから、寄附そのものでしょう。

 法務省、これは捜査して立件すべきじゃないですか。

吉田政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動内容に関わる事柄でございますので、法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきますが、あくまで一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、法と証拠に基づいて、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処しているものと承知しております。

江田委員 これは告発されると思いますから、しっかり捜査してください。誰が見てもおかしい、これ。チケットを売る方も買う方も、そもそも行く気がないパーティー、対価もへったくれもないパーティー、そこに二万円払う。西村さんの場合も、二十回近く年間開いて、一億数千万円。いや、私、何の恨みもないですよ、私の後輩ですからね。何の恨みもないけれども、許せない、こんなことは。社会的不正義だ。社会的不正義じゃない、法律違反ということですよね。

 岸田闇パーティー。おととい、驚愕の首相答弁がありました、野田佳彦議員に対して。この広島の総理祝賀パーティー、いや、僕は聞いていてびっくりしました。岸田さんは、これは実質的に政治資金パーティーじゃないと言い切ったんですよ。その理由が、当初はこの余剰金、利益金ですよね、余剰金をどう扱うか決めておりませんでしたから、実質的な政治資金パーティーではありませんと。

 前回、私と総務省との議論では、当然、この任意のパーティー、要は、この祝賀パーティーもパーティーに当たるんだけれども、それが任意団体で許されるかどうかを議論しているんですよ。当然、広島の祝賀パーティーはこの八条二の資金パーティーに当たるんだけれども、それが政治団体でなければならないと書いてあるから、任意団体でいいんですか、いや、もう例外的に任意団体でもいいですという議論をしていたのに、今度は、岸田首相はそれさえ認めないんですよ。これは闇パーティー以上のどういう表現があるのか私は分からないぐらいに、総理大臣ですよ。

 これ、何ですか、岸田総理が言うように、総務省、パーティーを開く当初には利益金をどこに処分するか決めていない、しかし、事後的に岸田さんの政党支部に三百二十万円ちゃんと寄附している、そういうのは八条の二の政治資金パーティーに当たらないんですか。明確にお答えください。前回は当たる前提で議論していましたからね。

笠置政府参考人 前回、委員との間の、個別の催物を想定して御質問でしたけれども、私の答弁でしたが、規正法上の規定を申し上げたということでございます。

 今回のお話でございますが、政治資金パーティー、これは政治資金規正法上の定義がございます。したがいまして、その定義に合うものが政治資金パーティーということでございます。

 実際に、例えばでよく聞かれる話とすれば、一般論として、当初より収益が上がることを予定していないようなものというのは政治資金パーティーに当たるんですかというようなものにつきましては、これは政治資金パーティーに当たらないということでございます。

 それは何ゆえかというと、八条の二において、対価を徴収して行われる催物で、対価に係る収入の金額から経費の金額を差し引いた残額、言ってみれば収益前提の書きぶりでございます、この残額を政治活動に支出することとされているものということが、政治資金パーティーの定義として明確に置かれているわけでございます。

 この定義に合うか合わないかということでございまして、個別の会合あるいは催物といったものが、この定義に合うものであれば政治資金パーティー、規正法上の政治資金パーティーに該当する、この定義に合わないようなものにつきましては、規正法上の政治資金パーティーとは言えないということだろうと思います。

江田委員 そうすると、私がパーティーを開くときに、これはパーティー形式を取るけれども、収益が上がるかどうか分かりませんと。収益が上がった結果、誰かの政治団体にその収益を寄附したって八条の二には当たらないんですか。そういう言い訳が通るんですか、岸田総理の言う。いわゆる、当初は余剰金をどう処分するか決めていなかった、でも、事後的に岸田さんの政党支部に三百二十万円が寄附されていた、こういう言い訳が通るということですか、今おっしゃったのは。

笠置政府参考人 政治資金パーティーというのは、先ほど申し上げましたけれども、実質的には政治資金を集めるパーティーでございますので、その政治資金パーティーについては、事前の告知義務とか、先生方がやられている、先生方御案内のとおり、事前に、この催物は政治資金パーティーですといったような形で、チケットなりを売るときにはお示しをしているということでございますので、政治資金パーティーかどうかというのは、開催をする政治団体がまず一義的に判断をし、それに基づいて、これは政治資金パーティーだということになりますと、当然それを書面に記載して、チケットというかパーティー券といったものを販売しているということだろうと思います。

 今お話があるのは、個別の話とは別に一般論として申し上げますと、ある団体がいろいろな会合等、集会等をやるというのは、これは自由な話でございまして、その中で会費なり何かいろいろなお金を集めて会合をし、その結果、たまたまお金が、収益が上がったというか剰余金が出たといった場合、これをどうするかということにつきましては、その開催した団体なりの御判断だろうと。それについては規正法においては規定がないということで、規正法に規定があるのは、政治団体がやるような話とか、そういったことについては規定がありますけれども、全く、例えば私が五、六人で集まって会議をやったといって多少剰余金が出たといった場合に、これについてどう使うかといったことについては特段規定がない。

 ただ一方、一つだけ言えるのは、そういった団体というのは、任意団体というか、政治団体とかではありませんので、もし、それを仮に政治活動に関してどこかに寄附をするということになりますと、政党、政治資金団体以外の政治団体には普通の団体は寄附できませんから、その中で、そういった場合には政党に寄附ということも、その決定の中においては、その団体の判断になろうというふうに思っております。

 ただ、それは具体的に中身を承知しておりませんので、一般論として申し上げた次第であります。

江田委員 全く訳が、理解不能ですね、私は。幾らでも抜け道があるということですね、これは。だけれども、そういう、もう何度も言いますけれども、法律の文言というのは、標準的な日本語能力のある人が読んで分かるように解釈しないと駄目です。ましてや総理大臣でしょう。総理大臣は遵法精神がなければ駄目でしょう、当然のことながら。何でこの抜け穴のまた抜け穴、例外中の例外ばかり狙ってやるんですかね。もう脱法キングと言いたいですよ、抜け穴キング。それを総理大臣がやっている。

 私も、自民党の総理大臣を身近で支えましたよ。あり得ないですから。こんなビヘービアを取る。これだけ国民の怒りが満ちている、政治と金の問題。自民党への信が失墜しているときに、もう抜け抜けと、いや、実質的に政治資金パーティーではありません、総理祝賀会。千百人呼んだ。後援会長が堂々と、今日は千人を超える方が集まっていただきまして、ありがとうございます。一人一万円。これは特定パーティーじゃん。証言しているじゃない。

 こんなものが放置されていたら、法治国家じゃないですよ、これ。検察の、もう機能不全。(発言する者あり)不作為。いや、国税や検察への信頼は高かったと思いますよ、今まで、国民の。だけれども、これは跳ね返ってくるんですよ。自民党だけじゃなくて、国税という組織、税務署という組織、検察という組織に跳ね返ってくるんですよ。

 ちょっと検察に聞きたいことが一つだけ。いろいろ通告してあるんだけれども。

 絶対これから問題になることは、下村さんの発言です。これから検察審査会、裁判、いろいろなプロセスの中で必ず検察が責められること。

 下村さんは、一月三十一日の会見で、安倍さんがこのキックバックをやめようとおっしゃった後に亡くなられた、その後の八月に派閥幹部と会合を持った、塩谷さん、西村さん、世耕さん、下村さんでキックバックの扱いについて協議をした、出席者の一人から、還流分を議員個人のパーティー収入に上乗せし、政治資金収支報告書に記載する提案があった、こういうことを会見で言われているわけですよ。会見で言うぐらいだから、検察は、五人衆か派閥の事務総長、一番最後に下村さんを呼びましたよね、報道によると。当然、検察の事情聴取にもこれはちゃんと供述しているはずですよ。

 なぜ、その供述があるにもかかわらず、派閥幹部の違法性が問えなかったのか。これはまさに、派閥幹部間に違法性の認識があったということを自白しているようなものじゃないですか。そこのところはちゃんと捜査をして調べて、立件の可否は検討されましたか。

吉田政府参考人 お尋ねは、個別事件における検察当局の事件処理に関わるとともに、捜査や証拠の具体的内容に関わる事柄でもありますので、法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げれば、検察当局においては、個別事件の捜査、事件処理に当たり、捜査を尽くした上で、法と証拠に基づいて、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処するものと承知しております。

江田委員 これは絶対問題になりますからね。

 あともう一つ。私、なぜ検察が、この裏金、キックバック、還付金ですか、自民党の言う、交付が政治団体への寄附というふうに断じたのか、全く理解できないですよ。これは領収書が要らないお金ですよ、わざわざ、これは収支報告書に記載しなくていいですよと。逮捕された池田議員のように、いや、これは政策活動費と思っていましたと。政策活動費というのは明らかに個人への寄附ですからね。個人への寄附と思っていました、自民党の聞き取りだって、これはちょっと危ない金だと思ったから保管していました、引き出しに置いていました、ある人は自分の個人口座に入れていましたと。これがどうして政治団体への寄附になるのか、全く私は理解できませんよ。

 検察は、あえてそこに矮小化して、記載するしないの罪に問うたわけでしょう。共謀が立件できなかったというシナリオを作って、今回、一応捜査は終了した。私に言わせれば、これは記載するしないの形式犯じゃなくて、まさに、個人への寄附は政党しかできないという規定違反だと思っていますよ。

 なぜ、検察ともあろう捜査能力高い組織が、わざわざ無理筋の政治団体への寄附と断じて不記載だけに問うたのか。記者会見をされていますからね、次席検事が。これは重大な案件だから、国民の関心も高いから。記者会見をされたことは多としますから、是非、この点だけは、この場で国民に向かって説明をいただけませんか。

吉田政府参考人 御指摘の点は、個別事件における証拠の具体的内容や評価に関わる事柄でございますので、また、検察当局の事件処理に関わる事柄でもございますので、お答えは差し控えざるを得ないことを御理解いただければと存じます。

江田委員 これも大問題になると思います、裁判で、検察審査会も。だって、常識的に考えてあり得ないもの。政治団体への寄附だと言って、それを不記載かどうかを問いましたと、これは会見でもそうおっしゃっていますよね。どう、この受渡しの対応や外部的徴表を見て、個人への寄附ではなくて政治団体への寄附と断じたのか。そこに私は、非常に今回の特捜の現場と検察首脳の間でそごがあったのではないかと。百人体制でやったんでしょう。国民も期待しましたよ。だけれども、大山鳴動してネズミ三匹でしょう。

 これ以上は言いません、もう時間が来ましたので。

 最後、本当に、国税庁の皆さん、検察庁の皆さん、私も今まで信をおいてきました。巨悪を退治する、特に政治の巨悪はしっかり退治する。そういう役割を果たさないと、国民の怨嗟の声は今度、国税庁に向かいますよ、検察庁に向かいますよということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて江田君の質疑は終了いたしました。

 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 まず、財務大臣に伺います。

 能登半島地震について、先日特措法が成立しまして、今回の災害による損失については、今年に入ってからの損失だけれども、前年の申告をする際に損失として含めていいということになりました。これはこれで大事なことだと思いますけれども、もう一歩踏み込んだ災害損失に対する支援が必要ではないかというふうに思っております。

 これは、所得税法七十二条という条文がありまして、控除の種類がいろいろある中で、災害による損失というのは雑損控除に含まれるということです。この雑損控除ということになりますと、災害の損失は、盗難や横領と同じ扱いになっているわけです。なおかつ、所得税法の八十七条一項によって、この雑損控除は、基礎控除とか扶養控除とか毎年発生する人的控除、これに先立って控除を行うことになっています。

 私は、災害で損失を被るというのは、災害大国である日本において、いつ何どき誰に起きてもおかしくないことだと思っておりますし、その損失というのは、物心両面で人生を一変させるほど重大なものになり得ると思っております。

 災害損失を盗難や横領と一緒くたにすることも問題だと思いますし、災害損失の控除を先に行う結果、一般の人が毎年受けている人的控除の恩恵を、より手厚い支援が行われるべき被災者はかえって受けられなくなる、こういう矛盾があると思っております。

 そこで、お尋ねします。人的控除の前に災害損失の控除を行うというのが現行制度でありますけれども、果たしてこれが合理性があるものなのかどうか、お答えください。

鈴木国務大臣 雑損控除の、その控除の順番を見直すということにつきましては、今先生から御指摘をいただきました。また、同様のことが、例えば日本税理士連合会からもなされているということも承知をしております。

 雑損控除でありますが、これは、災害などによって住宅や生活に必要な資産など生活の基盤に損失が生じた場合における直接的な担税力の減殺を調整するものでございます。

 所得税の計算に当たりましては、まずは収入から必要経費を差し引き、担税力の基礎となる所得を求めることとされております。災害による住宅などの損失は、必要経費に類似した性質を有するものとして取り扱われております。

 このことから、世帯構成等に応じた人的控除よりも先に災害による損失に係る控除を行うこととされておりまして、災害による損失への対応として現行の雑損控除は適切である、そのように考えております。

階委員 必要経費だから人的控除より先に控除するんだという趣旨でしたけれども、過去には違うことを政府が答弁しているんですね。

 古い答弁ですけれども、昭和二十六年の参議院の農林委員会というところで政府参考人から、当時は政府委員と言ったかもしれません、そちらから言われたのが、雑損控除については繰越しが認められるからまず先に引く、医療費、扶養等の控除は原則として繰り越さない建前にしているといったような答弁があったわけです。

 要は、繰越しが認められるものはなるべく早く控除を使い切ってしまおう、そして早く平時の税収を取り戻そうという考え方がこの答弁から読み取れるわけです。つまりは、被災者に寄り添っているのではなくて、税を集める立場に立ってこの雑損控除の扱いが定められているのではないか。

 これは先ほど申し上げました、災害によって人間の人生は大きく変わります。そして、誰しもがそれは経験し得る、そういう世の中です。それを考えると、徴税側の立場ではなくて被災者の立場に立って、私が申し上げたとおり、雑損控除の取扱い、まずは人的控除をやってから、その後雑損控除の中でも災害損失による部分は控除を行う、そして繰越しがあれば翌年その翌年と控除を行っていってなるべく税負担が少なくなるようにする、こういうふうにすべきだ、これは税理士会、先ほど大臣も言及されました、税理士会も同じような考え方ですよ。これはやるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 昭和二十六年の政府委員のこの発言については、私、承知をしておりませんでした。後で見てみたい、そういうふうに思います。

 いずれにいたしましても、政府の今の立場でございますけれども、これは、まずは収入から必要経費を差し引きまして、そして、まず所得を決める、担税力の基礎となる所得を求める、その後に人的な控除を行うということにしておりまして、災害に係る住宅などの損失は、必要経費に類似した性質を有するものとして取り扱っているところでございます。

 いろいろな御要請が各方面からあり、今先生からも御指摘をいただいたところでございますが、そうした今の現状について御理解をいただけるように努力をしたいと思います。

階委員 昨年ですか、税制改正で、災害による損失の繰越期間を三年から五年に延ばしましたよね。これも一歩前進だと思うんですよ。ただ、せっかく繰越期間を延ばしたんだったら、それを使えるように、なるべく使えるようにした方がいいんじゃないですか。私が言ったように控除の順番を変えることによって、繰越期間を延ばしたということもより生きてくるわけですよ。

 そういう意味でも是非これはやっていただきたいし、税理士会の要望について、資料の一ページ目にもつけていますけれども、やはり、災害の規模や被災地域の経済状況等によっては損害の回復や復旧に相当の時間を要する場合も想定されるため、災害による損失が十分に救済されるよう税制上の更なる手当てが必要だということを最後の方に書いていますけれども、是非この考え方に立って、更なる手当て、御検討いただけませんか。よろしくお願いします。

青木政府参考人 先ほど、扶養控除は繰越しできなくて雑損控除が繰越しできるというお話、昭和二十六年の御答弁、お話がありましたので、その点について少し御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、所得税、暦年課税が原則でございます。したがって、基礎控除それから扶養控除といった人的控除につきましては、納税者における暦年ごとの事情に対応して担税力を調整する趣旨から設けられております。

 したがいまして、人的控除の金額が所得金額を上回るからといって、上回った金額を翌年の担税力の調整に回す理由はないのではないかというふうに考えております。

 なお、雑損失の繰越控除につきましては、要は、災害などによって非常に異常な損失が発生した、そういった異常な損失に対する担税力の調整を複数年で行うという観点から、所得税の暦年課税の例外として認められておるものでございます。

階委員 今、へ理屈をいろいろ述べていましたけれども、別に人的控除を繰り越せなんてことは一言も言っていないですよ。順番を変えることによって、より被災者を手厚く支援できるのではないかということを言っているわけですよ。

 大臣、税理士会の要望を一ページ目につけていますけれども、下の方に災害対応税制という項目がありまして、その下から五行目ぐらいですよ、災害による損失が十分に救済されるよう税制上の更なる手当てが必要だということを言っていて、さっきも私が申し上げたとおりです。

 この更なる手当てについて、是非政治の力で検討していただきたい、このことを強く申し上げたいんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 今現在、税制改正プロセス、これは直近のもの、中期的なものも含めて、党税調で決めることになっております。恐らく党税調の方にも日本税理士連合会からの要望というのはあるんだと思います。

 私が党税調の立場で申し上げるわけではございませんが、いろいろな御要請を受けながら、必要とあるもの、それは、現下のいろいろな情勢を踏まえて、例えば災害というものが頻発化あるいは強いものになっているというようなことも踏まえながら、必要ということになれば、党税調において議論をされることである、そういうふうに思っております。

階委員 鈴木大臣は私と同じ被災地の岩手県出身ですし、自民党ですから、党の税調においても何らかの影響力はあると思っています。

 是非、財務大臣という立場を離れてでもいいですから、この見直しについて積極的に取り組んでいただきたいと思うんですが、財務大臣御個人としての御見解をお願いできますか。

鈴木国務大臣 党税調で決めることについて、これは基本的に今、決定プロセスがそうなっておりますので、政府としてもそれを最大限尊重する、党税調で決まったことは、それは政府としてもしっかりと法案にしていく、こういうことでございますので、党税調で議論されるということが重要なことである、そういうふうに思っております。

 個人的なことについては、このことに限らず、いろいろな思いもございます。そういうことも含めて、話をする機会はあるんだと思います。

階委員 是非、党の中でも積極的に議論を進めていただければというふうに思います。

 次に、私は立憲民主党のネクスト財務金融大臣という立場にありますので、少し大きな話、財政再建についてお話をさせていただきたいと思います。

 まず、歳出改革という言葉がいろいろな局面で使われているわけですけれども、今問題になっている少子化財源を捻出するための歳出改革についてお聞きしたいと思います。

 資料の二ページ目を見てください。

 これがこども未来戦略の抜粋でありまして、歳出改革については、二〇二八年度までに一・一兆円程度の確保を図るというふうに三というところにありまして、脚注として、社会保障関係費等の歳出の目安の下での歳出改革により、年平均〇・一八兆円程度増加といったようなことが書いてありますね。

 注目したいのは、社会保障関係費等の歳出の目安の下での歳出改革によりということですから、これから新たに歳出改革を深掘りしてやっていくということではないと思うんですが、この点、確認させてください。

鈴木国務大臣 御指摘のとおり、子供、子育て政策の強化に充てられる財源を確保するための歳出改革については、こども未来戦略において、一・一兆円程度の確保を図るとされております。これは、社会保障関係費の伸びを高齢化による増加分に収めるとの歳出改革の方針の下、これまで子供、子育て関連予算を国、地方で年平均〇・一八兆円程度増加させてきたという実績、これを踏まえて、こうした歳出改革努力を二〇二八年まで継続することを前提とするものであります。

 そういう中で、令和六年度予算におきましては、こうした方針の下、薬価等改定や医療保険制度改革などの取組を継続した結果生じました公費節減効果を活用し、国、地方で千九百億円程度の子供、子育て予算の追加を行いました。

 来年度以降におきましても、昨年十二月に閣議決定いたしました全世代型社会保障改革に係る改革工程に従いまして、医療・介護制度等の改革を実現することを中心に取り組み、公費節減の効果を積み上げていきたいと考えております。

階委員 まず、総額三・六兆円でしたか、加速化プランの財源。そのうち一・一兆円を歳出改革で捻出するんだというような図をさんざん見せられてきましたけれども、要は、新たな歳出改革がないんですね。やらないのにやるようなことを言うのはごまかしだと思います。

 その上で、毎年これまで〇・一八兆円ぐらい歳出改革で子供の財源を手当てしてきたから、これまでもやるんだということなんですが、今までと同じ歳出改革を継続するということは、高齢化の範囲に伸び率を抑えるということも毎年やらなくちゃいけないということですね。それ自体が非常に大変なんですね。物価も上がる、賃金も上がるという中で、それ自体が非常に大変。あわせて、千八百億円を更に子供の予算として毎年毎年積み上げていかなくちゃいけないんですよ。それが二重に大変なことであって、そんなこと本当にできるのかと思うんですけれども、今のお話を聞いていても、希望的な観測を言っているだけで何ら具体策はないと思うんですね。

 本当にできるんでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げたのが、まさに財源確保の歳出改革による方針でございます。この方針に沿って、実績を踏まえながらやってまいりたいと思っております。

階委員 まず、ここで言っている歳出改革はごまかしだということは指摘させていただきたいと思います。

 次に、防衛財源。これも、毎年二千億円、五年で一兆円調達するということで、そのために毎年二千億円ずつ歳出改革しなくちゃいけないということなんですが、三ページ目を御覧になってください。来年度予算では二千百億円、歳出改革で捻出できたということを言わんとしているわけですけれども、これはまやかしではないかと私は思いますよ。

 というのは、まず、上の方に下線を引いています、これまでの歳出改革の取組を継続するということがありまして、これまでの歳出改革、どんな成果だったのかというと、下の方の注に書いてあるところなんですが、平成二十六年度から令和五年度における消費者物価上昇率の平均プラス〇・七%程度、この範囲に社会保障関係費以外の歳出の増加を抑えるということで、平均で四百四十七億円程度の増加に抑えたということを成果として言っているわけですね。

 これを直近の政府経済見通しの物価上昇率二・五%に置き換えると、〇・七%で四百四十七億円だったから、二・五%になると三・五倍の歳出抑制効果が生まれるだろうということで、それが千六百億だということを上の方の下線の千六百億円程度ということは意味しているわけです。

 ちょっと面倒な話をしましたけれども、要は、物価が大きく上がったので、今までは物価の伸びの範囲に歳出を抑制するんだといっても大した金額じゃなかったのが、ここに来て大きく膨れ上がっている。千六百億円になりました、だから、自動的に、千六百億円のところをゼロにすれば、千六百億努力した、歳出改革したということになるわけです。

 今回は、ゼロじゃなくて、マイナス五百までしたので、千六百億足す五百で二千百、歳出改革で捻出したと言っていますけれども、これははっきり言って、二・五%という他力本願の物価上昇率があったからこそなせた業であって、これがもし今後、直近はもう二%を切りそうな水準になってきましたよ。それでどんどん低下していくと、当然、二千億出すためには、削る幅を増やしていかなくちゃいけないということになると思うんです。削るのは本当に大変なことですよ。社会保障の話もさっき言いましたけれども、社会保障以外だって、人件費だって上がるでしょうし、いろいろなコストが上がる中で、削り幅を増やしていくというのは容易じゃないですよ。

 こんなことを本当にできるんですか。お答えください。

鈴木国務大臣 階先生が今ずっと丁寧に御説明いただきましたけれども、若干繰り返しになるかもしれませんけれども、防衛力強化に充てられる財源を確保するための歳出改革につきましては、非社会保障関係費を対象として、令和九年度時点において、令和四年度と比べて一兆円強を確保することとしております。

 令和六年度予算におきましては、令和五年度予算に続き、対前年度比で二千百億円程度の財源を確保しております。

 具体的には、経済、物価動向等を踏まえつつ、これまでの歳出改革の取組を継続するとの従来の方針に沿いまして、非社会保障関係費の伸びを対前年度比プラス一千六百億円程度に抑制する中で、防衛力整備計画対象経費以外の非社会保障関係費全体を対前年比で五百億円程度減額することによって、この二千百億円程度という数字が導き出されているわけでございます。

 今後とも、各種の政策課題に対応するために必要となる予算措置、これを的確に講じつつ、各分野における予算事業の一層の効率化、適正化に努め、徹底した歳出改革を継続していくことで、こうした枠を防衛財源の確保として図っていきたい、そのように思っております。

階委員 結局、今後本当にできるかどうかということについては、希望的観測を述べられただけでした。やはり、この防衛財源の歳出改革の方は、まやかしだと言わざるを得ません。

 そして、もう一つの歳出改革は、二五年度のプライマリーバランスの黒字化を達成するために、一・三兆円、歳出改革をすればいいみたいなことが今回の内閣府の中長期見通しの中で書かれていたと思います。

 四ページ目を御覧になってください。これがその根拠とされているものですけれども、この中の左上の方に、社会保障を中心とした歳出効率化努力による改善がプラス〇・七%、三・八兆円程度という過去の実績を基にして、一年当たり、これは三年で三・八兆円なので、一年に直すと大体一・三兆円とか、そんなふうな話だったと思います。

 ここは内閣府にお聞きしたいんですけれども、これまでと同じ努力をすれば、一・三兆円、歳出改革で確保できるようなことを中長期見通しに書いていたと思いますけれども、これは成長実現ケースである名目三%成長が前提になっています。

 更に言うと、一・三兆円の歳出改革をしなくちゃいけないのは、二五年度の予算の段階でこれをやらなくちゃいけないわけですよね。そうすると、二五年の予算編成というのは非常に重要なわけですけれども、この予算編成の段階で一・三兆円の歳出改革を行っているかどうか、これを検証するすべはあるのかどうか、これをお答えください。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先生御指摘の……(階委員「端的に、短くね」と呼ぶ)はい。先生御指摘の一・三兆円の計算ですけれども、配付していただいた資料にありますように、過去の期間について、元々中長期試算の成長実現ケースで示されていたPB歳出、いわゆる自然体の歳出と、歳出の目安に沿った予算編成を行った後のPB歳出を比較して、前年度の補正予算の執行なんかを考慮した上で、両者の差を歳出効率化努力としております。

 したがいまして、過去の目安に沿った予算編成がなされた場合の平均的な歳出効率化によるPBの改善見込みということでお示ししておりますので、御質問いただきました二〇二五年度に歳出改革を行うというのは非常に容易ではないんですけれども、仮にそういうことが行われた場合の一つの数字の目安として一・三兆円という数字は使えるということを考えております。

階委員 二五年度にプライマリーバランス黒字化を達成するには、一・三兆円とかその程度の歳出改革をしなくちゃいけないと思うんですよ。実際にそれを行っているかどうか、これは予算編成の段階でちゃんと検証できるんですか。内閣府、お答えください。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しのお答えになって恐縮ですけれども、過去に歳出の目安……(階委員「質問に答えてください。検証できるかどうかと聞いているんです、予算編成の段階で」と呼ぶ)はい。歳出の目安に沿った歳出改革が行われた場合には、元々中長期試算で見込んでいた歳出に比べてその程度歳出が抑制されるという計算になると考えております。(階委員「ちょっと待って」と呼ぶ)

津島委員長 階君、発言の際は挙手をお願いします。

階委員 はい。

 それは、理屈の上ではそうかもしれませんけれども、我々、予算を審議する段階で、二〇二五年度、これだけ歳出改革をやりましたということを実績というか、実際の数字をもって示すことはできるのかと聞いているんです。二〇二五年度の予算編成の段階で今年度の歳出改革は幾ら行われましたということを言えるんですかということを聞いているんです。正直にお答えください。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。

 この一・三兆円に関しましては、元々中長期試算で示していました成長実現ケースの自然体の歳出の数字との比較において現実の予算がどうなっているのかということを示しておりますので……(階委員「知っていますよ、そんなことは。質問に答えてください」と呼ぶ)そういった意味で、元々の中長期試算で見込んでいたものとの対比でどれぐらい歳出が削減されたかということに関しては、数字ということは計算は可能かと思っております。(階委員「だから、答えていないって」と呼ぶ)

津島委員長 階君、もう一度。

階委員 歳出改革をやった結果、やらない場合に比べてどれぐらい歳出が減ったかということは、事後的には分かるんですよ。ただ、事前的に、つまり、予算編成のタイミングで、今年度はどれだけ歳出改革が行われたかということをちゃんと検証できる体制になっていますかということを聞いているんですよ。

 検証できないでしょう。私、昨日さんざんあなたの部下とやり取りしましたよ。検証できないということを正直にお答えいただければいいんですよ。お答えください。

中澤政府参考人 お答え申し上げます。(階委員「答えてくださいよ、質問に。時間がもったいない」と呼ぶ)はい。

 中長期試算に関しましては、予算編成が終了した後の一月に通常、翌年度の予算を踏まえた形のプライマリーバランスの数字をお出ししておりますので、その段階で、先生おっしゃるように、事後的にはお示しできるということかと思っております。

階委員 結局、そうなんですよ。事後的にしか分からないので、本当に二〇二五年度の予算で必要な歳出改革をやったのかどうか検証できない。一・三兆円やればプライマリーバランス黒字化を達成できるようなことを言っていますけれども、検証するすべがないんですよ。つまり、ほったらかしですよ。

 要するに、歳出改革、今日三つ挙げましたけれども、いずれも、ごまかし、まやかし、ほったらかしで全く実効性がないということをちゃんと指摘させていただきたいと思います。

 それから、五ページ目を見てください。

 これは財務省に試算してもらったもので、令和六年度、来年度の利払い費は既に数字が出ておりまして九兆八千億なんですが、その後、債務も増えますし、金利も上がっていくということを理論的に見積もっていきますと、どんどんどんどん利払い費は増えていって十年後には二・八倍ぐらいになるということで、これは財務省に機械的に数字を算定していただきました。

 原口先生がおっしゃったように、そもそも発射台のところが大きいのではないかという議論はあるかもしれませんが、一応財務省としてはこれを公式に発表しているわけですね、九兆八千三百億円のところは。それを理論的に将来まで伸ばしていくとこういう数字になって、とんでもない利払い費になるということなんです。

 ところで、財務省は、こういう利払い費の急増に対する財源の手当て、これについて考えているのかということを財務大臣にお尋ねします。

鈴木国務大臣 後年度影響試算におきましては、一定の経済前提を仮置きした機械的な試算の結果として、二〇二七年度の利払い費が、名目経済成長率を三%とするケースにおいて十五・三兆円となり、昨年度の試算に比べて約三割増加する姿をお示しいたしました。我が国の債務残高が高い水準にある中で、今後も金利が上昇して利払い費が増加すれば、財政状況が悪化をして政策的経費が圧迫されるおそれがあるものと認識をいたします。

 具体的な将来の利払い費増分の財源についてお示しをすることはできませんが、政府としては、利払い費が増加しても適切な予算編成が引き続き可能となるように、歳出歳入両面での改革努力、これを着実に推進しなければならない、それによって必要な財源の確保に努めてまいりたいと思っております。

階委員 子供とか防衛費については、ごまかしであったり、まやかしであったりして何とか財源をこしらえようという努力はあるんだけれども、利払い費についてはないんですよ。ただ、利払い費は怠ったらデフォルトですからね、国家財政は破綻しますからね。本当だったら、この財源をどうするかということを最優先で考えるべきですよ。

 それが全くないということを問題点として指摘させていただいた上で、この利払い費をちゃんと見ていく上で、今の予算フレームの在り方は極めて問題だということを指摘させていただきたいと思います。

 六ページ目、令和六年度の予算フレーム、実はこれは予備費が能登半島の地震の関係で五千億追加されたんですが、その前のものだということをお断りさせていただきます。その上で、本質的なところはそことは関係ないので、このフレームを基にして説明させていただきます。

 歳出の中で、国債費とありまして、この中で債務償還費と利払い費、十七兆が債務償還費、利払い費が十兆弱ということなわけです。この間、二月十六日のたしか掘井さんの御質問だったかと思うんですが、この債務償還費を国債費に含めるのはいかがなものかといったような御指摘もあったと思います。

 私も、ちょっと立場は違うんですけれども、同じようなことを考えていまして、債務償還費、要は借金を返すところにこの十七兆が入っているわけですけれども、実は、その下の歳入のところを見ますと、公債金というところで、債務償還費相当分、全く同じ額、十七兆ぐらいを新たな借金で手当てしているわけですね。借金を返すと言いながら、その原資は借金なわけですよ。ということは、これは相殺していい話であって、借金を返したことにはなっていないと思うんですよね。

 もし本当に債務償還費を充てたいのであれば、一部だけ取り上げるんじゃなくて、たしか百三十五兆円ぐらい、今期、借換えがあると思うんですよ、百三十五兆円償還しました、でも、百三十五兆円借換えで調達しました、ここまで全部書いて初めて意味を成すと思っていて、中途半端に債務償還費十七兆円だけ書いても何の参考にもならない。むしろ、それをやるぐらいだったら、この部分は相殺して利払い費だけを国債費として上げた方がよっぽど財政のちゃんとした考え方ができるんじゃないかと思うんですよ。

 これ、どうですか、やめた方がいいんじゃないですか。債務償還費、中途半端なやり方だったら消した方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 階先生御指摘の債務償還費につきましては、国債の償還財源を確実に確保しつつ、償還のための財政負担を平準化するといった観点から、法律において規定されております六十年償還ルールに基づき計上しております。

 予算の全体像としていかなる姿をフレームとしてお示しすべきかについてはいろいろな御意見があると承知をしておりますが、この六十年償還ルールが財政健全化の精神を体現するものとして長年にわたり定着しているものであると認識をしているところから、これを前提とする一般会計の姿の見せ方には意義のあるものと考えております。

階委員 六十年償還ルールを守っていると言えるんでしょうか。償還していないですよね。償還分を新たに借金しているだけじゃないですか。それは、全然、財政健全化努力を示したことにはならないと思います。意味のないことはやめましょうよ。本当に税収の中からお金を返しているんだったら出す意味があると思うんだけれども、借金でもって借金を返している、意味のないことをやることは私は有害無益だと思います。これ、見直しませんか、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 一般会計の姿の見せ方というのには、いろいろな御意見があると思っております。階先生の御意見も一つの有力な御意見である、そういうふうに思います。

 政府といたしましては、先ほど申し上げましたとおり、この六十年償還ルール、借換えになるわけでありますけれども、これが財政健全化の精神を体現しているという観点、そして、長年にわたり定着をしているという認識、そういう二つの点から、これを前提とする一般会計の姿の見せ方には意義があるのではないか、そのように思っております。

階委員 全く説得力がないと思いますね。借換え分の調達を含めて出すんだったら、百三十五兆全部出した方がいいと思いますし、それはやらないというんだったら、借換え分で債務償還した分は除いた方がいいと思いますよ。全く今のやり方では財政を見誤るということは指摘させていただきたい。これも、ごまかし、まやかし、ほったらかしの一部だということを申し上げます。

 さて、もう時間も大分たってまいりましたので、ちょっと、財政に関する残りのことはまたじっくりお尋ねするとして、租特の問題についてお尋ねしたいと思います。

 労働分配率が大企業は低いので賃上げの余力はあると思うんですが、中小企業、特に大臣や私の岩手の方などは労働分配率がもう高くなっていまして、最低賃金もなかなか上げられない、そして一般の賃上げもできないということなんですが、この労働分配率が高い中小企業において、今回やろうとしている賃上げ税制は効果が見込めないと思っています。やるべきことは労働生産性の向上です。

 十ページ目に最近の「経済教室」の記事をつけさせていただきましたけれども、徳井先生という信州大学の先生がおっしゃっているのは、やはり、三十年間で国内の地域間の労働生産性の格差が拡大している、その背景には、研究開発ストック、これが都市部に集中したせいがあるということを言っているわけです。

 だから、労働生産性を特に地方で上げていくためには、地方の研究開発拠点、これを充実させていく必要があると思います。

 そういった意味で、これもちょっと地元の話で恐縮なんですが、大臣の地元、私の地元の岩手では、国際リニアコライダーの誘致なんかも検討していますけれども、こういったことも含めて、全国的に研究開発拠点を増やす、そして、労働生産性を高め賃上げにつなげる、そういう好循環を考えていくべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 地方におけます研究開発拠点、これを増やすべきである、それが中小企業の賃上げにもつながるという御指摘であると理解いたしました。

 御指摘の地方の研究開発拠点の強化につきましても、今回の税制改正において、企業が研究所等を地方に移転する際に適用できる地方拠点強化税制の延長、それから、令和五年度税制改正において、中小企業向け研究開発税制のめり張りづけなどを行っておりまして、こうした取組を通じまして、地方を含め、持続的な賃上げや労働生産性の向上を図ってまいりたいと思っております。

 国際リニアコライダー、我々にとって大きな悲願であるわけでございますが、こうしたものにつきまして、まず文部科学省において国内外の研究者コミュニティーの議論を踏まえつつ検討をしていかなければならない、この点については、階先生と思いは全く一緒でございます。

津島委員長 階君、申合せの時間が経過しております。

階委員 はい。

 時間が来ましたので、質問は終わります。

 今回の税制改正の中で戦略分野国内生産促進税制というものが含まれていますが、これは、総務省の租特の点検結果が非常に悪い。極めて悪い。そして、なおかつ、これは一部の大企業に受益が集中しており、かつ、税収に与える影響も十年間で二兆円ぐらいということで極めて大きいということで、厳密に審査しなくてはいけないのにそれが行われていなかったのではないか、非常に問題であるということを最後に指摘させていただきまして、質問を終わります。ありがとうございました。

津島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。

 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 限られた時間ですので、早速質問に入らせていただきます。

 まず最初に、税制の議論をする前に、税のありようについてということで質問させていただきます。

 これは予算委員会でもさんざん議論しておりますし、今朝も江田議員からさんざん質問させていただいているところなわけでございますが、当然のことながら、国民は納税の義務を負っているということで、それは別に、政治家だから免税特権があるということでは全くないというふうに思います。

 ところが、二月二十二日の衆議院予算委員会におきまして、鈴木大臣は、政治活動に使わずに残った所得で控除し切れない部分があると議員自らが判断した場合、納税することはもちろん可能性としてはある、疑義を持たれた政治家は政治責任を果たすという観点から判断されるべきだというふうに答弁をされたことに対して、世の中では、納税するかどうかが議員個人の判断なのか、納税は国民の義務じゃなかったのか、国民も納税するかどうかは個人の判断でよいということなのかという戸惑いというか怒りの声が上がっております。

 このことについて、一昨日の予算委員会で、立憲民主党の城井崇議員からは、ダブルスタンダード、国民に厳しく自民に優しい、こういう税の運用であってはいけないではないか、こういう指摘も鋭くさせていただいたところです。

 やはり、個人名を挙げて、この人に調査しろというのはさすがに、大臣も今朝も答弁いただきましたけれども、それはできない、やるべきでない、政治的な中立性だ、恣意的な運用はしないというのは、それは分かります。でも、納税することは可能性としてあるというのではなくて、納税は義務なので納税してください、脱税は犯罪です、脱税者は見つかる、査察官は見つけると、はっきりと自民党の裏金議員に呼びかけていく、そのことを大臣に御提案申し上げますが、いかがでしょうか。やっていただけますか。

鈴木国務大臣 冒頭、私の二十二日の予算委員会における発言について、いろいろSNSなどで取り上げられておりますが、全く私の真意を反映していない取上げ方だと思っております。あのときはずっと一連の流れがありまして、その流れの中を通じて聞いていただければ分かっていただけると思うんですけれども、何かそこの部分を切り取って、さらには曲解をされてしまったなと。しかし、逆に、それだけ発言には注意しなくちゃいけない、そういう思いを新たにしているところでございます。

 所得税というのはそもそも、申告納税制度、これを基本にしておりまして、これは、国民の皆様、それで国会議員であれ、まずは納税者において、法令に基づいて自身の収入や経費、これは自分が一番知っているわけでありますから、それを正しく計算して、所得が発生した場合には申告していただくことになるわけであります。

 御指摘の私の発言は、政治が国民の信頼の下で成り立っていることに鑑みますと、政治責任を果たすという意味で、各議員が自ら課税関係をしっかり確認し、法令等に沿った判断をするということで疑義を晴らしていただきたいという考えから申し上げたものであります。

 税の徴収、課税等につきましては、政治家とか一般の国民の皆様とか、その分け隔ては全くないというのは当たり前のことだと思っています。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

櫻井委員 やはり、税を納めるというのは、誰しもなかなかしんどい、つらいことなわけなんです。その中で、公平だからというので皆さん納得して納税しているのに、ただ、今の状況を見ると、何だ、自民党の議員は納税しないのか、しなくていいのか、そういう不公平感が税という国家の基礎を揺るがしている、こういう事態なわけなので、是非、疑いがあるということであれば、本来であれば本人が進んで納税をする、大臣がおっしゃられた今のとおりだと思うんですが、そうでないのであれば、ちゃんと国税庁においてきちっと調査をするということを、今日、今朝、江田議員からも厳しくその点を申し上げたところでございますので、重ねて申し上げさせていただきます。

 次の質問に移らせていただきます。

 国際協調への貢献ということで、大臣所信で、「国外に目を向けますと、国際社会を分断と対立から協調へと導いていく必要があります。」こういうことを述べられました。

 そこで、二月十六日の大臣所信に対する質疑、この委員会で私、今日ですね、G20の財務大臣・中央銀行総裁会合が開催される、まさにこのG20の場こそ、国際社会が分断それから対立、まさにその場なわけですから、是非出席をして協調へと導いていただきたいとお願い申し上げた。そのときには検討しますということだったんですが、今、大臣、ここにいらっしゃるということは、G20は欠席をされたということです。

 これは、何でこの貴重な機会、欠席をされたんでしょうか。そして、この重要な国際会議を欠席しておいて、どうやって国際社会を分断と対立から協調へ導いていくのか。この点、お答え、お願いいたします。

鈴木国務大臣 G20の会合がブラジルで開催されるわけでありまして、本来であれば私が出席をしなければならないということ、そして日本の立場をG20の場でしっかりと表明をしていくこと、これが大切だということは身にしみて感じているところでございます。

 また一方において、現下の情勢を見ますと、能登半島の地震の対応も含めた来年度予算の審議が佳境になっておりまして、仮にブラジルに出張いたしますと、この一週間は予算委員会は全く開かれないという状況になってしまうということで、その辺を総合的に勘案をいたしまして、これは予算審議を優先しなければならないという思いの中で、出席を断念をせざるを得なかったということでございます。

 代わりに神田財務官が出席をするわけでございますが、財務官とは複数回にわたって事前に十分打合せをいたしました。そして、方針につきましては、こうしたらいいんじゃないかという指示もいたしました。そしてまた、必要に応じて現地との連絡も取れるようにしております。

 G20におけます日本のプレゼンス、これを維持すべく、しっかりと対応をしていきたいと思っております。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

櫻井委員 いや、このG20の重要性、今、ますます高まっていると思いますよ。

 このことについては、財務大臣も経験された野田元総理から、以前、この委員会において、ちゃんと出席してくださいというようなことを申し上げたところであります。今回、神田財務官が代理で出席をしていると答弁されるんですけれども、次官級は次官級でいろいろな会合はあるわけですよね。その中で、神田財務官が大臣の代わりに行っちゃうと、次官級の会議の方がまたお留守になってしまうわけですし、やはりそこはちゃんと、本来であれば大臣が行く、国会審議がとおっしゃる、まあ、国会も重要ですから、それを大事に思ってくださることは大変すばらしいことであるんですけれども、ならば、副大臣が行くとかということがあるんじゃないでしょうか。

 更に言えば、毎年二月の下旬に、予算審議の佳境に差しかかったときにG20の財務相・中央銀行総裁会議があると分かっているわけですから、そのことを逆算して、ちゃんと国会を召集するとか、いろいろな審議の日程を組むとかしておくべきなんじゃないですか。

 特に、今年はブラジル開催ということで遠いので、行くのに丸一日かかって、会議が二日間あって、帰ってくるのに丸一日ということだから、なかなかしんどいというのは分かりますけれども、それらも含めて日程調整しておくべきではないのかということを重ねて申し上げさせていただきます。

 来年、大臣、そのまま留任されるかどうか分かりませんけれども、来年は是非出席をするようにということで、大臣、留任されれば御自身が、次の方に替われば次の方に、そのように申し送りをしていただくようお願いいたします。

 それから、あともう一言申し上げますと、二月十六日のこの委員会におきまして、日本銀行の植田総裁にもG20に出席するんですかというふうにお尋ねしたところ、そのときはまだ検討中ですということだったんですが、ぎりぎりになって、出発間際になってから理事会に報告ということになって、ちょっとそれは遺憾だなというふうに思っております。もっと、会議があることはずっと前に分かっていたわけですし、私からもどうするんですかとわざわざお尋ねしたのに、いざ行くとなったら前日にとかいうのはちょっとどうかと思いますので、この点、早めにちゃんと根回しをしていただくよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、続きまして、プライマリーバランスの黒字化目標について、二〇二五年ということで、先ほど階委員からも質問させていただいたところです。私からも質問させていただきます。

 これも前回、大臣所信の中で、「財政健全化に取り組むことで中長期的な財政の持続可能性への信認を確保していかなければなりません。引き続き、骨太方針二〇二三等における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革を着実に推進し、歳出構造の更なる平時化を進めてまいります。」このように所信で述べられているわけなんです。

 このことについて、今朝、階議員からも質問がありましたし、また、二月十六日の当委員会において野田議員からも質問がありました。そのときに野田議員からは、プライマリーバランス達成を掲げて実現できなければ、日本国債の信用に関わる問題、すなわち格付の引下げにつながりかねない、こういう指摘がございました。

 また、私、いろいろな国際金融を担当している民間銀行のバンカーからも、お話をいろいろさせていただいておりますけれども、その中で、国債の信用格付ということについては、これはまさに各民間の金融機関の信用格付に直結してくると。民間銀行はカントリーシーリングを超えられないということがございます。日本国債の格付が更に低下すると、民間銀行の格付も下がって、ドル資金を十分に調達できなくなってしまう、日本の民間銀行の国際金融ビジネスが成り立たなくなる、こういう悲痛なお声も頂戴しております。

 そこで、本日、中長期の経済財政に関する試算について資料を用意しております。これは、この資料自体全部出しますと数ページに及びますので、重要なところだけ抽出をしております。

 今年の一月二十二日も経済財政諮問会議に提出されておりますけれども、二十一ページにベースラインケースが記載されております。これを見ますと、二〇二五年度は対GDP比でマイナス〇・七%ということで、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化は達成できないという数値になっております。

 もう少し過去の分を見てみますと、二〇二二年一月の試算によりますと、このときは、二〇二二年の一月に提出されたものについては、二〇二三年、二〇二四年、二〇二五年と比較的堅調に推移しているかのように見せておりますが、それが一年たった二〇二三年一月になりますと、二〇二三年度というのはもう目前に迫ってきているわけなんですよね、そうすると途端に現実的になって、マイナス四・二%。マイナス一・五%がマイナス四・二%と途端に悪くなる。そして、二〇二四年一月には、これはもう決算の段階に入ってきております、そうするとマイナスの五・三%ということで、当初は楽観的な見通しを示していながら、だんだん予算の段階になり、決算の段階になり、現実的になると、どんどん数字が悪くなっていくということになっています。

 これは二〇二三年度についてもそうですし、二〇二四年度についても、二〇二二年、二〇二三年の一月に提出されたときにはマイナス一・〇なりマイナス一・六ということで比較的楽観的な見通しだったのが、二〇二四年、今年になりますとマイナス三・二ということで、途端に悪くなってしまっているんです。

 こういうふうになってくると、来年一月に出される二〇二五年のプライマリーバランスの見通しについても、一応今の時点ではマイナス〇・七%というふうに出していますけれども、これは来年になったらまた同じように一%か二%ぐらい悪くなるんじゃないのか、こんなふうにも思ってしまうわけなんです。

 そこで、大臣に改めてお尋ねしますけれども、基礎的財政収支の黒字化は視野に入る、これは岸田総理がおっしゃられていますけれども、これはどういう意味なんでしょうか。つまり、結局のところ、プライマリーバランス、二〇二五年の黒字化は達成できない、こういうことなんでしょうか。

鈴木国務大臣 先生からは、資料一でベースラインケースについての試算を、これは内閣府でまとめたものでありますけれども、お示しをいただいたところでございます。

 内閣府の試算では、成長実現ケース、これにおいて、二〇二五年度時点での国、地方のプライマリーバランスは、歳出が自然体で伸びる場合には赤字となるものの、歳出効率化努力の継続というものを前提とすれば黒字化するという姿がこの中長期試算で示されているところでございます。

 二〇二五年度PB黒字化目標の達成、これは、高い経済成長と歳出効率化努力の継続、この両立が必要でありまして、決して容易なものではないということを私も認識をいたしておりますけれども、政府といたしましては、目標達成に向けて、デフレからの完全脱却を果たし、経済を立て直すことと併せて、緊急時の財政支出を長期化、恒常化させないよう歳出構造の平時化を進めるとともに、行政事業レビュー等を活用して予算の効率化、無駄の削減に取り組むなど、歳出歳入両面での改革努力、これを全力で着実に推進をして、この目標に到達したいと考えているところであります。

櫻井委員 ちょっと驚きましたけれども、今年の一月の時点では、二〇二五年度マイナス〇・七%というふうに出している。ただ、ここから更に努力してプラスに持っていく、ここのマイナス〇・七より数字をよくするとおっしゃられたわけですよね。

 ところが、二〇二三年度、二〇二四年度を見ますと、予算が見えてこない段階ではマイナス一・五だったのが、その次、マイナス四・二まで二〇二三年度はなっているわけなんですよ。これを見ると、二・七%悪くなっているんですよね。二〇二四年度についても同じように見ると、マイナス一・六だったのが、直前、予算が視野に入ってくるとマイナス三・二ということで、マイナス一・六%下がっているんですよ。

 同じように考えたら、よくなるどころか、いつもの財務省の手口、内閣府の手口で、予算が目前に迫ってくるとまた悪くなるんじゃないのというふうに私なんかは素直に思ってしまうんですけれども、これは本当によくなるんですか。

 しかも、歳出努力をしますというふうにおっしゃいましたけれども、先ほど階議員からもありました歳出改革、これは、防衛財源の確保のときにも、去年さんざんこの委員会で議論いたしました。そのときにも、歳出改革とさんざんおっしゃられました。それから、あと、子供の予算の財源確保についても歳出改革とおっしゃいました。そして、今回、プライマリーバランス黒字化でも歳出改革というふうにおっしゃられているんです。

 あちこちで歳出改革をやっているんだから、もうこれ以上歳出改革はしようがないじゃないかと思うんですが、そういったものを盛り込んで、なお歳出改革はできるんですか。そんな余地がどこにあるんでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げたとおり、この達成に向けては、決してその道のりは容易でないということは認識をしておりますが、この歳出改革というのは、自然体から歳出改革をするということでございます。自然体の状況から歳出改革の余地はあるわけでありまして、これをもう徹底してやらなければならないということだと覚悟をしています。

櫻井委員 来年になれば結果が出るわけですので、それはそのときに、今おっしゃられた答弁に基づいて、またしっかり審議をさせていただきたいと思います。

 ただ、歳出改革とおっしゃいますけれども、一方で、政府は賃上げと言ってやっているわけですよね。民間で賃上げがどんどん進めば、それに対応して人事院勧告ということで、公務員の人件費だって上がっていくわけです。

 それから、土木工事とかいろいろなものがございますけれども、物品調達についても、インフレで結局、物品購入の部分がどんどん上がっているわけですし、特に防衛費について言えば、中期防衛計画、想定為替レート、一ドル百八円でやっていて、今、百五十円。物品購入費だって、装備の購入費だって全然値段が上がっていて、足りなくなっているんじゃないのかな。歳出改革どころか、歳出はどんどん増えていくんじゃないのかな。

 例えば、私は関西が選挙区になりますけれども、大阪万博だって、もう工事費は倍増ですから、そういったことを見れば、歳出改革どころか、インフレによってむしろ歳出増にどんどんつながってしまうのではないのか、こういうふうにも懸念をいたします。

 その上で、もう少し細かく聞かせていただきますけれども、プライマリーバランスに関する要因として、一つ大きなポイント、まず防衛増税。これは、去年この委員会でさんざん議論したときには、そのうちやるということなんですけれども、どうやら、予算委員会等の審議を聞いていますと、二〇二五年度はやらなさそうな感じの答弁をされています。そうすると、防衛増税を先送りした場合、これはプライマリーバランスの赤字要因になりますか。

鈴木国務大臣 防衛財源に関して、これまで閣議決定された枠組みが維持される限り、税制措置の実施時期は必ずしも試算の結果には連動しないと存じております。

 これは、防衛財源の確保の在り方につきましても、現行の枠組みを、一定の前提条件を置いて、お示しされました中長期試算に既に織り込んでいるものであります。このことは、内閣府の中長期試算においても説明がされているところだと承知をしております。

櫻井委員 いやいや、防衛費が歳出の方で増えるというのは織り込んでいるでしょうけれども、歳入の方で防衛増税を織り込んでいるんじゃないんですか。防衛増税は織り込んでいない、プライマリーバランスのこの計算の中で織り込んでいないんですか、どっちなんですか。(鈴木国務大臣「いない。内閣府」と呼ぶ)

津島委員長 内閣府は要求がありませんので。

 では、鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたつもりですけれども、防衛財源に関しましては、これまでの閣議決定された枠組みが維持される限りにおいて、税制措置の実施時期が必ずしも試算の結果には連動しないということであります。

櫻井委員 いや、内閣府を呼びますかと昨日レクのときに聞いたら、いいですと政府側が言われたんだというふうに思っているんですけれども。

 ともかく、ただ、防衛増税をやるかやらないか、これはプライマリーバランス、赤字要因になるのか黒字要因になるのか、やるやらないでやはり変動するんじゃないんですか。どっちで織り込んでいるんですか。やらないということで織り込んでいるんですか。

鈴木国務大臣 枠組みはやるということでありますから、やるということで織り込んでいると理解しています。

櫻井委員 それが、やるということを織り込んでいるけれども、いつ、何年から始まるというのがポイントで、二〇二五年にやるのかやらないのかで、それでその分変わってくるじゃないですか。どっちなんですかね。

鈴木国務大臣 これは、一昨年末の決定によりまして、令和九年度に向けて複数年かけてやるということで、いつからやるということは党の税調の議論に任されているところであります。

櫻井委員 でも、ずっと先までこのプライマリーバランスの計算を出しているじゃないですか。いつからそれに盛り込んでいるのかということがまさにこのプライマリーバランスの計算の中で重要なんですけれども、どうなんでしょうか。何年から盛り込んでいるんですか。

青木政府参考人 済みません、主税局長でございますが、ちょっと今確認して御答弁をさせていただきます。

 二〇二五年から二七年度にかけ、防衛費の関係は、防衛費の財源の枠組み、税外収入もございますし、歳出削減もございますし、それから税制措置もございますが、それは二〇二五から二七年の各年度におきまして、この内閣府の試算上、政府の歳入、その他収入の中に盛り込んだ上で盛り込んでいるということでございます。

櫻井委員 では、防衛増税を盛り込んで、このプライマリーバランス、盛り込んでもなおマイナス〇・七%だったのが、防衛増税をやらなかったら、ますます、マイナス〇・七か、より悪い数字になるじゃないですかということを聞いているんですけれども、そういうことでよろしいですか。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げたとおり、これまでの閣議決定された枠組みが維持されるということで、この枠組みは防衛増税をするということでございます。

櫻井委員 二〇二五年度は防衛増税する、こういう御答弁と受け止めさせていただきました。確かに、それだったら、当初のプライマリーバランスの計算で盛り込んでいて、実際にやるということだったら、これはプラスマイナスそのとおりということになります。

津島委員長 事実関係について、鈴木財務大臣から発言を求められております。

鈴木国務大臣 先ほども答弁させていただきましたけれども、いつから防衛増税をするかということ、これは、時期も含めまして与党の税制調査会の議論に委ねられているところでありまして、今、何年度からやるということが決まっているところではございません。

櫻井委員 いや、だから、そうなんですよ。

 プライマリーバランスの計算上、このマイナス〇・七%という数字が出てくる背景に防衛増税は盛り込まれた上で、増税するということを盛り込んだ上でのマイナス〇・七%だと、今、主税局長は御答弁されました。

 ところが、当てにしていた防衛増税が入ってこなかったら、更に財政赤字は膨らむんじゃないですか。

 それは、二〇二六年度はおっしゃられたように増税するかもしれないけれども、二〇二五年に増税するかどうか、これが、まさに二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化、このピンポイントの、この年度においてのプライマリーバランス黒字化になるかどうかの境目じゃないですか。

青木政府参考人 繰り返しになりますけれども、防衛力強化の財源につきましては、歳出改革、それから決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金税制措置が想定されております。

 中長期試算では、それらによって賄われる財源の総額を盛り込んでおりますが、予算で具体化されていない二〇二五年度以降の具体的なその内訳については想定しておりません。総額を盛り込んで中長期試算は計算されているということでございます。

櫻井委員 ちょっと、ここで止まっていてもしようがないんですけれども。

 では、ちょっとそこはしっかりと整理をしていただいて、二〇二五年度に、歳出で盛り込んでいるのは分かりました。歳入でこの防衛増税を盛り込んでいるのか、盛り込まれていないのかについて、後でちょっと確認の上、理事会に提出していただいてもよろしいですか。

 委員長、お取り計らいをよろしくお願いいたします。

津島委員長 理事会で協議をいたします。

櫻井委員 続きまして、こども未来戦略に記載のこども・子育て支援特例公債、これの発行についてもお尋ねをいたします。

 これも発行するということになれば、プライマリーバランス赤字要因になるというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 こども・子育て支援特別公債につきましては、安定財源確保までのつなぎとして、国民経済計算における社会保障基金により発行されることが見込まれるため、これはもう別のところにあるわけでありますので、国、地方のPBには影響を与えないと承知をしています。

櫻井委員 いや、これ、だって、特例公債なんでしょう。赤字国債ですよね、実質。それなのに、別枠でやっているからプライマリーバランスの黒字、赤字の計算に入れませんというのは、何かとても変ですよね。

 何か昔、ちょっと私、バブル崩壊した後に銀行に入行したんですけれども、その頃は損失の飛ばしとかがはやっていて、親会社の赤字を子会社に飛ばしてつけ替えて、それで親会社の財務体質はきれいに見せるという手法がはやっていたんですけれども、結局、それも限界が来て、破綻する金融機関も出てきたわけなんですが、何かそれと同じようなことをやっているのかなというふうに見えたんですね。大丈夫ですか、そんなことで。

 もう一つお尋ねをいたします。

 GX債も発行されると、これは大臣所信でも述べておられました。GX債の新規発行、これもプライマリーバランスの赤字要因になるんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 GX経済移行債につきましては、復興債と同様に、多年度で収支を完結させる枠組みを設定していることから、国、地方の財政の姿を示す際にはこれを除いて示していると承知をいたしております。

櫻井委員 いや、多年度で収支完結する……(鈴木国務大臣「多年度」と呼ぶ)複数年で収支を完結させる、それは当たり前のことじゃないですか。要は、借りたお金はちゃんとお返ししますと言っているにすぎないので、それは当たり前のことなので、それを入れないというのはおかしいじゃないかというのが一つ。

 それから、今、復興債のことをおっしゃいましたけれども、復興債については、野田総理の頃でしたでしょうか、非常に苦労されて、ちゃんと財源も明確にして、それで、ここからこの分で増税しますと明確にしているわけなんですよ。

 これは、GX債の返済原資というか、もう決まっているんですか。

鈴木国務大臣 これは、考えとしては、将来のカーボンプライシングがその財源になるということであります。

櫻井委員 将来のカーボンプライシングが財源になる、そこまでは分かりました。何%になるんですか。どういう課税になるんですか。それで一体幾ら税収が入るんですか。

青木政府参考人 今、大臣の方から御答弁させていただきましたとおり、将来のカーボンプライシングで得られる将来の財源によって、二〇五〇年度までに償還を終えることが想定されております。

櫻井委員 だから、何%、どういう課税なんですか。カーボンプライシングというのは何に対して幾ら課税するんですか。

鈴木国務大臣 それについては、今まだ決まっていないところであります。

櫻井委員 そうですよね、まだ決まっていないんですよね。決まっていないけれども、その財源を当てにしますというのは、さすがにそれは虫がよ過ぎるんじゃないんですか。百歩譲って、復興債のように、復興税で所得税で何%、法人税で何%とばちっと決まって、しかも何年までにといってばちっと決まっていれば、もう見通しは完璧に立っているから大丈夫ですと言えますけれども、GX債については、幾ら入ってくるか、どんな税率になるのか、それも定かでない。防衛増税についてだって、やるやると言いながら、どんどん先延ばしにしているじゃないですか。そんなものを当てにしていていいのかなと。

 結局、何か、かつてバブル崩壊の頃に、親会社から子会社に負債をつけ替えて飛ばして、親会社の財務体質をきれいに見せかける、まさに粉飾決算ですよね、そういうことがはやっていましたけれども、そういうのは一時的にはしのげても長続きしなかったというのが、三十年前の反省だと思うんです。それと同じようなことを国の財政でやっているんじゃないのかな、そんなふうに見えてしまうんです。

 大臣は金融担当大臣も兼務されていますけれども、こんな会計処理を民間の金融機関がやっていたら駄目ですよね。粉飾みたいなことをやっていて、こういうものを許していいんでしょうか。

鈴木国務大臣 それは金融担当大臣というか財務大臣の立場だと思いますが、決して粉飾をしているとは考えておりません。

櫻井委員 一番最初に申し上げましたけれども、やはり国の信用に関わる問題ですから、国の信用格付が下がれば、カントリーシーリングがあるわけですから、民間企業はみんな、全て効いてくるわけなんです。そういったことも含めて、是非、粉飾決算のようなことはやめていただいて、まず正直に話していただく、正直に見せていただくということをお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、税制の個別のところについて質問させていただきます。法人税についてです。

 減税、いろいろな形で出てきておりますが、まずイノベーションボックス税制について、ちょっとこれは質問しようと思っていたんですが、昨日の予算委員会の分科会で経産大臣にこの点、お尋ねをしましたので、ここはちょっと飛ばさせていただきますが、ただ、このイノベーションボックス税制、目的は大変すばらしいんですよ。我が国のイノベーション拠点の立地競争力を強化する、これができたらすばらしいなと私も思います。ただ、目的はすばらしくても、本当にそういう効果が得られるのかどうか。

 このイノベーションボックス税制は、一応七年間の期限付の措置というふうに承知をしております。ただ、研究開発をして、特許を取って、製品化して、ライセンス収入が入ってくるというまでには優に七年ぐらいかかったりするものです。そうすると、せっかく、イノベーションボックス税制ができた、研究開発しようと思って頑張ってやっても、七年たっちゃいました、税制は終わりましたというんじゃ、結局インセンティブにならないといいますか、当てが外れてしまうわけなんです。ということを考えれば、余りインセンティブにならないんじゃないのかな、こんなふうにも心配するものですから、このことをちょっと申し上げておきます。

 これも本当に所定の効果を得られるのかどうか、EBPMでしっかりと検証していただきたいというふうに思います。

 続きまして、賃上げ税制についてです。

 これは、今回の改変を含めまして、来年度の分としては一・三兆円の減税規模になるというふうに承知をしております。一方で、第二次安倍内閣以降、この十年間、賃上げ税制をやってきたわけなんです。

 では、その成果はどうだったのかということなんですが、資料二、これは毎月勤労統計、厚生労働省が発行しているものをそのまま持ってまいりました、二ページ目になります。これの囲っているところ、真ん中辺、実質賃金というところがございますけれども、これを見ますと、平成二十八年からありますけれども、プラスの〇・八%、その次はマイナス〇・二、その次はプラス〇・二、その次はマイナス一・〇、マイナス一・二、プラス〇・六、マイナス一・〇、マイナス二・五。特に、岸田内閣が始まってからは、プラスの〇・六からマイナス一・〇、マイナス二・五。

 岸田総理は賃上げと度々おっしゃられますけれども、それとは裏腹に、実質賃金はどんどん悪くなっている、下がっていっている。去年はマイナス二・五という状況でございます。

 賃上げ税制は、結局どのような効果があったんでしょうか。賃上げ税制によって、何%実質賃金が上がったんでしょうか。お答えをお願いいたします。

鈴木国務大臣 賃上げでありますけれども、これは企業収益の動向でありますとか雇用情勢等、税制以外の要因による影響も受けておりまして、この税制の効果だけを取り出して定量的に申し上げることは困難であると思います。

 その上で、賃上げ促進税制につきましては、その創設以来十年間で、延べ百十一万件の企業が税制措置の適用を受けまして、その減税規模の累計は約三兆円と、多くの企業に活用されてきたところでありまして、賃金の上昇に税制として一定の効果があったものと考えております。

 令和四年度税制改革において抜本的に拡充された賃上げ促進税制は、幅広く企業の賃上げに活用されてきたと認識しておりまして、三十年ぶりとなる昨年の高い賃上げにも一定程度寄与しているものと考えているところであります。

 ただし、さきに申し上げましたとおり、企業収益の動向とか雇用情勢等、税制以外の要因による影響も受けて賃上げは行われるわけであります。この税制の効果だけを取り出してその効果を定量的に申し上げることは難しいと思っております。

櫻井委員 岸田総理は繰り返しEBPMというふうにおっしゃられている、エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキングとおっしゃられているんですが、分からないという御答弁でした。分からないものに一・三兆円もかけちゃうんですか。これは税の在り方として大変問題だと思います。

 財務省は何もやっていないわけではないというふうに承知をしております。昨年十二月に自民党の部会で、賃上げ税制の効果について説明があったというふうに聞いております。自民党で説明したんだったら立憲民主党でも説明してくださいよということで、今年に入ってから、立憲民主党でも同じ資料を使っていただいて説明をいただきました。それを資料三の一、三の二、三の三でつけております。

 こちらの説明にも、財務省の説明資料にもありますとおり、結局、効果があったのかどうかよく分からなかったということなんです。特に、この境目、三%を超えたら、四%を超えたらそれで適用になりますよ、こういう境目のところがあるんですけれども、せめて、この境目をちょっと下回っている企業は、賃上げ税制を受けるために、もうちょっと、もう一伸び、もう一声賃上げしてこの税制の恩恵を受けられる、そういう効果ぐらいはあるかどうかかな、あるかもしれないなというふうに思っていたんです。

 そのことをバンチングというふうに財務省ではは言っておられるようですけれども、バンチングの可能性が見られたと言いつつ、三の一のグラフを見てみますと、ほとんど分からないぐらいの、誤差の範囲ぐらいでしかないですよね。

 資料三の二に至っては、給与総額の引上げを示唆するような大きなバンチングは確認されなかったというふうに書いてあります。そして、資料三の三には、因果関係の特定には課題、こんなふうにもなっています。

 要するに、分からない、分からないというか、効果は確認できなかったというのが財務省の検証結果だったんじゃないでしょうか。

 私も、賃上げ、是非やるべきだと。賃上げをどんどん、日本の賃金はこの三十年間全然上がっていない、民間企業の収益は三倍に増えたのに、そして株主配当は六倍に増えたのに、にもかかわらず実質賃金はむしろマイナスというのが、この三十年間の日本の姿です。せめて、企業収益が三倍に増えたんだったら、その分ぐらいは賃金も上がってしかるべきじゃないのか。労働生産性は上がっている、でも賃金は上がらない、逆の相関関係になっている、これは変えなきゃいけないというふうに私も思います。ですが、税制では変わらないんじゃないんですか。

 一・三兆円あるんだったら、ほかのところでこの一・三兆円を使った方がよっぽど賃上げ効果はあると思うんですけれども。例えば、今回ですと、介護の分野でも在宅介護についてはばさっと切られちゃっているというので、またこれは大変な問題になると思います。在宅介護をばさっと切られちゃったら、それこそ介護離職とか、また別な問題を引き起こしていって、日本の経済に悪い影響を与えるのではないのか、そんなふうにも心配するんですけれども、例えばそういったところに充てるとか、いろいろなやり方があるはずなんですけれども、これは、効果も確認できないものを、少なくとも確認できないものをこのまま続けるんですか。大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 賃上げというのは岸田政権におきましても重要な課題の一つでありまして、それを実現するためには政策総動員で行うということも、総理もかねがね言っております。そういう中で、税制でも対応する、政策総動員の中で税制でも対応するということで、賃上げ促進税制というものがその一つとして行われている。これだけで賃上げを実現しようとしているわけではないということをまず御理解をいただきたいと思います。

 その上で、令和四年度の申告事績に基づいて賃上げ促進税制の分析を行いましたが、その分析によりますと、賃上げ率の要件について、現行では、大企業向けは三%及び四%の二段階を設けているものの、ほとんどの適用企業が四%の要件を満たしていること、それから、教育訓練費に係る上乗せ特例については、適用対象となる大企業であっても活用しているものは三割にとどまっていることなどが、その分析から分かったわけであります。

 そして、こうした分析を受けまして、今回の改正におきまして、賃上げのインセンティブの強化、人への投資を促進する観点ということから、様々な見直しを行っているところでございます。多くの企業に活用いただいて、物価上昇を上回る持続的な賃上げにつなげたいと考えているところです。

櫻井委員 多くの企業に利用いただいてとおっしゃいますが、確かに利用している企業はたくさんあるでしょう、一・三兆円も利用されているわけですから。ですが、利用している企業から見て、別な理由で賃上げをする、人材確保ですとか、いろいろな形のために賃上げをした、その結果、あら、びっくり、賃上げ税制で減税になるわということで、ラッキーという、ある種、棚からぼた餅的な、棚ぼた的な減税で、あら、よかったわ、こういうことになっているんじゃないのかな。決して、何かインセンティブになっているようには見えないわけなんです。

 先ほど申し上げたイノベーションボックス税制も、結局、特許を取りました、別な理由で特許を取っていて、あら、見たら減税になったわ、ラッキーということで、インセンティブにはならない、そういう減税。これだったら、政策効果は別に発現しないということになりはしませんか。

 ですから、財務省も、いろいろ調べてみても、効果は確認できなかったと言っているわけなので、是非、EBPMと岸田総理は繰り返しおっしゃられているわけですから、それに基づいて、一・三兆円もの財源、これを減税で使っちゃうのか、それ以外の方法で使うのか。それによって、より効果のあるものに、賃上げの政策実現のために取り組んでいただきたいということをお願い申し上げます。

 続きまして、所得税の定額減税の方についてもお尋ねをいたします。

 これは、今回の所得税の定額減税とそれから定額給付と両方やっているということなんですが、両方受けられるケースもあれば、両方受けられないケースもあるというような、いろいろな問題があるということは、前回の田村議員の質疑の中でも指摘をされたところでございます。

 今回、所得税だけじゃなくて住民税も一緒にやるということで、これは、国の方針でやるんだったら所得税だけでやればいいじゃないですか、何で住民税まで、地方自治体まで巻き込むんですかというのが一つ大きな疑問でございます。実際、地方自治体の現場では大変な苦労をしているわけなんです。

 何でこれ、ということを聞いているとちょっと時間がなくなるので、せっかく総務省にも来ていただいているので総務省にお尋ねしますが、地方自治体のシステム改修費、これは一体誰が負担しているのか。国なのか地方自治体なのか、その点を教えていただきたいというのと、それから、まずそれを御答弁をお願いいたします。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 個人住民税の定額減税の実施に伴う自治体のシステム改修費につきましては、毎年度の税制改正に伴うシステム改修経費について交付税措置を講じておりますほか、給付金の支給事務に関連する改修につきましては、重点支援地方交付金の活用も可能としているところでございます。

櫻井委員 それで全部賄えたんでしょうか。ちゃんと自治体はそれで十分賄えているのかどうなのか、それも併せてお答えいただけますか。

鈴木政府参考人 お答えをいたします。

 各自治体におきまして、税制改正に対応したシステム改修、それぞれのシステムによりまして、それぞれ違いがあろうかというふうに考えております。今回の対応につきましては、そういった自治体への負担にも配慮するような形で制度設計をさせていただいたところでございます。

櫻井委員 そうすると、今の答弁からすると、上手にやってうまくやりくりしたところは、もしかしたらお釣りが来ているかもしれないけれども、もしかすると、システム改修に苦労したところでは足が出ているかもしれない、こういうことなんでしょうか。

 あと、窓口でも結構大変なんですよね。結局、よく分からない制度だから、分からないという問合せ、また苦情などは、地方自治体の税の窓口に来られたりするということになってきます。

 そういったところでも非常に負担が重いということをちょっと指摘をさせていただいて、ちょっと時間が迫ってまいりましたので、次の点について聞かせていただきます。

 地方自治体もさることながら、所得税は源泉徴収制度でやっていますので、源泉徴収義務者においてもシステム改修が必要だというふうに承知をしております。このシステム改修費、一体誰が負担しているんでしょうか。国なのか、それとも源泉徴収義務者なのか、どちらでしょうか。

鈴木国務大臣 今回の定額減税につきましては、源泉徴収義務者のシステム改修が必要な場合があることは事実でありますが、毎年の税制改正への対応については、源泉徴収義務者を含め、各納税者の皆様において御対応いただいており、今回も納税者の皆様において御対応いただくということにしております。

櫻井委員 これは普通の税制改正と違って、今回、すごく複雑、奇怪なわけですね。一回で引き切れなかったら二回、三回と引いていくとか、まあ大変なわけなんですよ。一年たって引き切れなかった人だって出てくるわけですし、それをまた別のところに話が回っていく、給付の方に話が回っていくとか、いろいろ複雑なので、そう簡単じゃないと思うんですね。それを源泉徴収義務者に押しつけているというのもいかがなものか。せめてシンプルな制度にしてそんな負担にならないようにするというのが、税のあるべき姿ではないかというふうに思います。

 この点、ちょっと資料の四をつけさせていただきました。実はコロナ禍のときにも、給付でやるのか減税でやるのか、どっちがいいんだろうみたいな議論がございました。

 二〇二〇年四月十五日、経済産業委員会で、当時の住澤主税局長が御答弁されています。源泉徴収義務者において減税を実施していくためには、システムの改修を始めとした多大な事務負担をこうした中で必要とすると。それから、源泉徴収義務者において、月々の源泉徴収税額から差し引く減税額の管理が必要になってくるといった手間暇が生じますほか、現在問題になっておりますフリーランスですとか個人事業主の方々については、そもそも源泉徴収が行われていないケースが多うございますので、こういった方々については、給付による対応よりも非常に遅い対応になるという問題がございますということで、減税はいろいろ手間がかかるから、問題が多いからやめましょう、給付にするんです、こういうふうに主税局長が答弁されているんです。

 それでも、今回、減税、給付もやりますけれども、メインは減税にしようということで、財務大臣、強行されるんですかね。私は、住澤主税局長、さすが国税庁長官になられる方だけあって、的確な答弁をされたというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、今回、給付でなく減税とした理由でありますけれども、今般の定額減税につきましては、コロナ禍や物価高騰といった苦しい中において納税していただいた方々に、所得の上昇をより強く実感していただくことが重要と考えまして、減税という分かりやすい方法が望ましいと判断したものでございます。

 それから、先ほど事務負担の話がございましたが、誰が負担するかという御質問であったのでそこで止めましたけれども、今回、定額減税の実施が決まってから、業界団体を通じたものも含めまして、五十社を超える税務関連のソフトウェア開発会社に対してヒアリングを実施いたしました。ヒアリングした全てのソフトウェア開発会社において、定額減税に対応した改修を行っていただける予定であり、現在主流となっておりますサブスクリプション契約の場合には、利用者である源泉徴収義務者には追加的な金銭コストは生じないことが一般的である、そのように伺っているところでございます。

櫻井委員 今の話と御答弁ですと、このシステム改修費、源泉徴収義務者は負担していないけれども、結局システム改修業者が負担した、こういうことなんじゃないんですか。結局誰かが負担しているわけですよ。世の中、ただのものなんてないと思いますよ。ですから、その負担のところについて、一々国が、国の制度変更ですからといってお願いできないにしても、やはり、その負担がなるべく小さくなるように配慮するべきものなんじゃないでしょうか。

 それから、やはり私は住澤主税局長の答弁は的確だったと思いますので、今、この税制の審議、最終盤に差しかかっているところで今更というところはありますけれども、やはりこの主税局長の答弁を踏まえて、今後のこうした制度設計をするときには参考にしていただきたいな、これを踏まえていただきたいなということをお願い申し上げます。

 最後に、ちょっとインボイス制度についても質問させていただきます。

 これはやはり、経理部門や税務担当の事務負担が非常に大きい。結局、これをやっても、頑張っても一円の利益にもならない、骨折り損のくたびれもうけ、こういうお話も現場からは聞いております。

 税務署は、インボイスの番号が合っているかどうか、そこは一々チェックしませんよみたいなことを言われるけれども、しかし、いざ、税務調査、いつ入られるか分からないという中で、そこをしなくていいかというと、やはりそれは一応チェックしなきゃいけないよねということで、現場では大変な苦労をされているわけなんです。先ほど来話になっております、国民は増税、自民は脱税という話の中では、やはり、そうした手続をする中で改めて怒りが湧いてくる、こんな話もございます。

 やはり、別に自民党の裏金問題があったからというわけではないんですが、やはり純粋に、いろいろな、納税義務者に負担を負わせるような、事務負担を負わせるようなものについてはやめていくべき、インボイス制度は廃止するということで、改めて御要望、お願いしたいんですけれども。

 現場の様子、大臣も御存じかと思います。この点を踏まえて、御見解、よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 インボイス制度の施行に伴いまして、足下で事務負担が想定以上に重いといった声、また、労働生産性が低下しているといった声があること、これは承知をしております。

 インボイス制度の導入によって一定程度事務負担の増加があるということ、これはもう間違いないことでございますが、こうした問題について、受領したインボイスに記載された登録番号の有効性確認を会計ソフト上で自動的に行うための仕組みを国税庁が提供しているほか、こうした会計ソフトの導入についてもIT導入補助金等を通じて後押しするなど、業務の効率化に資する支援を行っております。

 また、税制についても、売上げさえ分かれば税額を計算できる簡易課税、二割特例、一定規模以下の事業者について少額のインボイスは保存不要とするなど対応を講じているわけでありまして、売手買手双方におけます事務負担にも配慮をしているところでございます。

 インボイス制度、これは複数税率の下で課税の適正化を確保するために必要な仕組みであるわけでありまして、中止をするということは考えておりませんけれども、引き続き、事業者の立場に立って、よくいろいろなお声を聞いて、きめ細かく対応をしていきたいと考えます。

櫻井委員 あと、このインボイス制度もそうなんですけれども、実際の税の現場で頑張られている方々、税務署の方々ですけれども、大変な苦労があるわけなんです。そのほか、高水準で推移する申告件数、滞納税額、これも増えております。それから、経済取引のグローバル化、デジタル化ということで、困難化、複雑化ということもしております。

 さらに、今大臣おっしゃられた軽減税率制度やインボイス制度の実施のために事務量は増えているわけなので、是非こうした現場の方々のことも配慮をいただいて、国税職員の定員確保、それから、専門性、特殊性、困難性、そういったものも適正に評価いただいた給与水準の確保、機構の充実ということを、時間になりましたので最後にお願い申し上げて、要望申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

津島委員長 これにて櫻井君の質疑は終了いたしました。

 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。

 まず、当委員会において、二月十六日に、確定申告初日に質疑がある際に、一度大臣にも今の確定申告の現場に行ってみてはどうかという御提案が我々からありました。また、予算委員会においても同じようなことが言われたかと思います。その際、大臣は御地元の方で、税理士相談会でしたでしょうか、足を運ばれたということでございましたけれども、その後、確定申告の現場、あるいはその現場からの報告、声など、何かお聞きでしょうか。

鈴木国務大臣 確定申告が始まった十六日以降、税務署に私は直接伺っておりませんが、先ほど稲富先生から御指摘があった、地元での申告無料相談でありますとか、それから、これまでも複数箇所、税務署を視察をしておりまして、現場で対応しております職員の皆さんのお話を伺い、また御苦労も聞いているところであります。

 今回、政治と政治資金に関わる問題で、納税者の皆さんと接している現場の職員の皆さんに大変負担がかかっているということについては、内心本当にじくじたる思いをしているところでございます。そうした現場の方のお気持ちというものもしっかりと受け止めながら、納税者の方々、真面目に申告納税している方々が不公平感というものを感じることがないような丁寧な対応、そうしたものに心がけてまいりたいと思っています。

稲富委員 是非、ネット上でも様々な書き込みがあったり、御意見があります。含めて、是非、大臣におかれては、現場の声をずっと受け止めていただいて、行政に生かしていただきたいと思います。重く受け止めて、是非よろしくお願いいたします。

 そこで、今回、確定申告のことが、二月十六日から始まったということで、多くの話題になります。しかし、一方で、給与所得者というのは、もう年末にある意味納税額を確定しているということで、実は、納税者というのは、確定申告の方とともに、日々、毎月、勤務の方も当然ながら納税している。そして、御存じのとおり、申告納税とはいいながらも、各会社においては、ある意味納税者を代行する形で納税をしているわけでございます。したがって、給与所得者においては、納税者が令和三年でいくと四千五百万人いる、あるいは源泉徴収義務者は三百六十万件あるということで、確定申告の方々とともに、日々納税事務に当たられている方、当然一円から、これはゆるがせにできない業務をしているわけでございまして、併せて是非その点も御理解いただいた上で、現場の声を聞いてもらいたいというふうに思います。

 さて、裏金の問題なんですけれども、改めてですけれども、課税の原則についてなんですが、やはり公平ということを、大臣もよくおっしゃるし、国税庁の方もよくおっしゃる。

 伺いたいのは、大臣の考える公平とは何かということを是非お伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘の租税原則におけます公平には、経済力が同等の人々は等しく負担をすべきであるという水平的な公平、それから、大きな経済力を持つ人はより多く負担すべきであるという垂直的公平などの考え方がありまして、公平、中立、簡素の租税原則の中でも、税制に対する国民の信頼の基礎として最も公平ということが重要なものであると考えております。

 今般の政治資金をめぐる問題に関しましては、国民の皆さんから厳しい指摘があることを、私も身にしみて感じるところであります。

 執行段階におけます公平性、この観点からも、法令等にのっとりまして適切に取り扱われる、一般の国民の納税者の方も、政治家であれ、全く納税については同等に公平に扱われる、こういうことが大切であると考えています。

稲富委員 ありがとうございます。

 もちろん、三原則、いろいろありますけれども、やはり最初に公平が来るということで、私も、ある意味、ここをどうするか、この公平感をいかに国民の皆さんに抱いていただくか。それは、私なりに言えば納得感ということになろうかと思います。いわば、どうすれば公平と感じていただけるのかということが一番難しい。そして、それが一番大事であると私も思うんですね。

 その意味でいうと、今回、所得税法の質疑、六十九兆四千四百億円という、これだけのお金のことに関する法案を扱うということであれば、本来であれば、この税法の審議の前に、様々な裏金の問題の政治責任も含めて終わった後で、私は、国民にこういう場で、国会で審議をすべきだと思うんですね。

 残念ながら、この問題がいわば解決しない中でこの審議をしなきゃいけないということを、やはり重く受け止めなきゃいけないと思うんです。多くの国民の皆さんに、税金を預かるということをこの場で審議をし、一方で、政治家の責任はいまだ宙に浮いたままということ、このことをやはり重く受け止めなきゃいけないというふうに思います。

 そこで、公平ということで考えたときに、この裏金問題というのは二つの側面から、私は違法性の疑いがあると思っています。一つは政治資金規正法違反、二つは納税を意図的に回避した可能性がある、この二つです。これはるる、当委員会でも予算委員会でも指摘があります。

 一つ目の政治資金規正法違反については、これはもちろん納得しているわけではありませんが、検察によって捜査が進められた。しかし、二つ目の税務のことに関しては、裏金と税務の話というのは、まだ税務調査が行われていないということも含めて十二分に審議が尽くされていない。要するに、この二つ目の問題は、まさにこの当委員会でやらなきゃいけないことだと思います。

 そこで、基本的なことを少し確認をさせてください。

 今回の裏金のことで、自民党さんの調査報告、聞き取り調査報告の中では、政治活動以外には使っていないということでございまして、したがって、それは帰属は政治団体にある、あるいは政治活動にあるから、それは課税の対象ではないということで納税をしない、こういう理屈で進んでいるわけですよね。一方で、しかし、納税した方がいいんじゃないかという御意見も一部報道でもありました。

 質問は、要は、自民党の報告書には政治活動以外には使っていないと言っている、書いてある。しかし、例えばですけれども、いや、税務調査がもしかして来るかもしれない、あるいは世論の批判が大きくなるかもしれないということで、本来は政治活動だけれども、やはりそのことを踏まえて、これは個人の所得として修正で申告をするということが可能なのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 申告納税制度の下では、まずは、納税者において、御自身の収入や必要経費を計算し、申告していただくこととなります。その上で、一般論で申し上げますと、納税者におきまして収入や必要経費を再計算した結果、当初提出した申告書と異なる税額となった場合には、修正申告により申告内容を訂正することができるということでございます。

稲富委員 つまり、修正申告できるということですよね。報告書には、政治活動で使っていた、したがって課税関係は発生しないとは言っているけれども、要は、個人が修正申告しようと思えば申告納税制度の下ではできるということ、そういうことだと思います。

 そして、次に、じゃ、修正申告する場合には何年まで遡れますか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げますと、国税通則法上、国税当局が更正処分を行うことができる期限は、原則として法定申告期限から五年を経過する日とされております。その上で、国税通則法上、納税者は修正申告書を更正処分を受けるまでは提出することができることとされております。このため、修正申告書を提出できる期間は、原則として、更正処分ができる期限と同じく、法定申告期限から五年を経過する日ということでございます。

稲富委員 つまり、五年遡って修正申告ができるということかと思います。

 そこで、次の質問は、仮に、不正の行為によって過少に税金をこれまで納めてきたという場合は、何年まで遡って税務調査あるいは更正決定をすることができるのかお伺いします。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 国税通則法上、国税当局が更正処分を行うことができる期限は、先ほど申し上げましたように、原則として法定申告期限から五年を経過する日とされております。

 その一方で、仮に税務調査が行われ、偽りその他不正の行為により税額を免れたと判断された場合等につきましては、法定申告期限から七年を経過する日まで更正処分を行うことができ、この場合、税務調査の対象期間は過去七年分となるということでございます。

稲富委員 つまり、原則五年なんだけれども、これは資料の一ページ目なんですけれども、偽りその他不正の行為によってその全部若しくは一部の税金を逃れる行為がある場合には、七年遡れるということになっているわけです。

 これまで、例えば自民党の聞き取り調査あるいは各人のアンケートを見ると、全て五年のことしか書いていなくて、いわば七年間はないわけです。したがって、偽りその他かどうかということは分からないまま実は報告書が出されていて、五年だけの報告書になっているんですね。

 政治資金規正法の違反は、確かに時効は五年。だけれども、課税、あるいは脱税、偽りその他に関して言えば、七年なんですね。とすれば、これは、今まで自民党が報告した、あるいは調査をやったという五年間というのは不十分と言わざるを得ないんですよ。

 そうすると、七年間ちゃんと誰かが調査しなきゃいけなくて、誰かがそのことをやはり調べなきゃいけない。となれば、私は、ここで、やはり、もうやることは二つしかなくて、自民党にもう一回調査してもらうか、七年分、そしてもう一つは、国税庁に税務調査に入ってもらうか、これしかないと思うんですよ。誰も七年分やっていないんですよ、調査していないんですよ。

 是非、大臣におかれては、先ほど来、江田さんのときも、国税庁には税務調査ということは言えない、立場上言えないということでしたけれども、やはり、税をつかさどる大臣として、そして国民に税をお願いをする立場として、党内の主要なポストの自民党員として、やはり調査五年じゃ不十分だ、不正の場合は七年なんだということを是非党内で言っていただけませんか。

鈴木国務大臣 五年と七年のことにつきましての御指摘はよく理解をいたしました。

 そうでありますけれども、私は今閣内におりまして、今回の調査やアンケートの実施につきましても、全く関わりを持つ立場にはないわけでございますので、このことについて何か、こうするべきだとかそういうことについては、私から申し上げるのは適当ではないと思っております。

稲富委員 今回、公平、要するに、国民の納得感を得るためには、私は、大臣に何らかのアクションというか、動いてほしいんですよね。例えば、冒頭申し上げましたように、確かに、一度御地元には行かれた、しかし、税務相談あるいは確定申告の現場に足を運んでほしい、あるいは、今言ったように、何らかの動きを是非出してほしいんですよね。

 そうじゃないと、国民は納得できないんですよ。いわば、それは公平性を担保できないということなんですよ、私からすれば。じゃないと、恐らく、この不信感は本当に大きくなるばかりで、最初に言った三原則の最初の公平性を私は守れないと思います、このままだと。

 ということを申し上げ、そして、是非大臣には何らかの動きを見せてほしいんですよ。もちろん、立場はあるし、限界はあるかもしれませんけれども、是非何らかの動きを見せていただいて、納税者に分かるような形で、納得感を得られるような形で、公平性を担保するように大臣にも動いていただきたいと思うんですけれども、もう一度お願いできませんか。

鈴木国務大臣 先生のおっしゃっている気持ちはよく分かるところでございます。よく国税庁等にもいろいろな意見が電話等で寄せられているわけでございますので、そういうものをしっかりと把握をしてまいりたい、そういうものを今後の国税のいろいろなやり方に生かしてもらいたい、独立的に、独自的に生かしてもらいたい、そう思っておりますし、私自身、様々な声をしっかり受け止めたいと思います。

稲富委員 是非、公平ということを実現するために、これはもう本当に与野党関係ありませんので、是非取り組んでいただきたいと思います。

 それでは、一つ、政治団体について、質問を飛ばして伺います。

 政治団体を解散した場合に、その残金は誰に帰属をするのかということと、その残金は課税されるのかということ、これは事務方から端的にお答えいただければと思います。

笠置政府参考人 私からは、政治資金規正法の関係でお答えをいたします。

 政治資金規正法におきましては、解散した政治団体の残余財産の取扱いについて、特段の定めはないところでございます。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 政治団体を解散した場合の残余財産の課税関係につきましては、その残余財産の帰属先に応じて異なるため、一概に申し上げることは困難でございますが、その上で、一般論として申し上げますと、残余財産が例えば他の政治団体に帰属する場合には、政治団体は、法人税法上、公益法人等又は人格のない社団等に該当するところ、これらにつきましては、収益事業から生ずる所得について、法人税の課税関係が生ずることとされておりますが、一般的には、残余財産の分配を受ける行為は、法人税法上の収益事業のいずれにも該当しないため、受け取った政治団体において、法人税の課税関係は生じないということでございます。

 他方、残余財産が例えば政治家個人に帰属する場合には、一般的には、一時所得として所得税の課税関係が生ずることとなります。

 いずれにいたしましても、国税当局といたしましては、個々の事実関係に基づき、法令等に照らし、適正に取り扱うこととしております。

稲富委員 ありがとうございます。

 裏金が政治団体に帰属するか個人に帰属するか、今、解散した場合にどうなるのかというのは、非常に、私からすればすごく曖昧で、ここはやはりちゃんとしなきゃいけないというふうに思います。

 今のままでいくと、政治活動と言い張れば、これは課税対象にならないということで、非常に私は不都合だなと思います。ここは整理する必要があると強く思います。

 続きまして、定額減税について伺います。

 大臣、税の基本的な機能についてどう認識をされているか、お伺いをいたします。

鈴木国務大臣 租税の基本的な役割といたしましては、公的サービスの財源を調達する財源調達機能、所得や資産の再分配を行う所得再分配機能、景気の変化による税収の増減に伴い、自動的に景気変動を小さくする経済安定化機能が挙げられるものと承知をしております。その三つが主な機能であると思います。

稲富委員 それで、定額減税なんですけれども、昨年の国会で、岸田総理が、国民への還元が経済対策の柱として力強く打ち出されました。しかし、この定額減税について、還元の意味を問われた大臣が、減税における還元ということを言っているわけであって、その還元は、財源論でなく、税金を御負担いただいている国民にどのような配慮を行うかという観点で講じ得るものと御答弁されています。

 これは、財源論ではなくと御答弁されておりますが、財源論のない税の議論って、私はあり得るのかなと正直思いまして、財源を考えなくていいんだったら、何ぼでも減税もできますし、やりたいこと、何でもできると思うんですよ。

 財源論でなく、国民への配慮で減税を行うという、ちょっと私、これまで聞いたことのないような減税なんですね。

 先ほどおっしゃっていただいたように、基本的機能として財源確保があって、残り二つがあるということから考えれば、今回の減税というのはどういう機能を発揮したということになるんですか。

鈴木国務大臣 今般の定額減税を実施するこの令和六年度だけを見ますと、所得税収が約二・三兆円の減収となっていることから、減税後の所得税の財源調達機能が一時的に低下することになることは事実でありますが、定額減税は所得の低い方々ほど高い割合の減税となるため、所得再分配機能が高まるもの、そのように考えております。

 今回の定額減税によって、先ほど申し上げた三つの基本的な機能のうち、財源調達機能と所得再分配機能が働く、こう考えております。

稲富委員 いや、大臣、財源論ではないとおっしゃったので、それはちょっと私はおかしいと思います、財源論ではないとおっしゃったから。要するに、所得再分配なんだということだと思うんですね。

 そうすると、しかし、普通、所得再分配というのは、所得増税をします、そして所得の再分配をしますという話は分かるんですよ。しかし、今回、確かに定額減税をやって、その他の給付も含めて、低所得者の方々も含めて分配をするということなんですけれども、だったら、所得再分配だったら、これは一年限りやるというのも、またこれはおかしい話なんですよ。その一回こっきりで所得再分配をやるということですか。

 いや、普通であれば、所得再分配、これは元々岸田政権が言っていたことなんですよ、所得再分配をやりますと。そのために所得税は、私は分からないですけれども、所得税を上げるのか、金融所得課税を上げるのか、当初はそう言っていたんですよ。

 だから、そのラインに立てば、所得再分配というのはそうだなと思うんですよ。ただ、今回、一回こっきりだとすれば、それは、所得再分配と言っていることはどうなのかということを思うんですよ。

 大臣、もう一度御答弁いただけないですか。

鈴木国務大臣 今回行います定額減税は、私どもとして、今年一回のものである、そのように考えているところであります。

 そもそも、今般の定額減税は、一義的には、賃金上昇が物価高に追いついていないことによります国民の負担を緩和をして、賃上げと相まってデフレマインドの払拭につなげること、これを目的としているものでございます。

 いずれにしても、実施は一回ということで、複数回は想定はしていないところであります。

稲富委員 つまり、原則というか、基本的なところの機能を踏まえていないというふうに思うわけです、今のお話を聞くと。所得再分配なんだけれども一回こっきりということになります。

 だから、後でもう一回、午後質疑をさせていただきますけれども、もう少しこの定額減税について午後質疑をさせていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

津島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。稲富修二君。

稲富委員 午後もよろしくお願いします。

 大臣、九番のところ、ちょっと質問させていただきます。

 今回の定額減税のことなんですけれども、所得税の税収の上振れに相当する額を減税するということであれば、消費税も、令和二年から四年まで、約二・一兆円上振れています。その分を国民への配慮として給付する、あるいは減税するということも考えられると思いますが、その点はいかがですか。

鈴木国務大臣 消費税収でございますが、これは近年増加の傾向にありますけれども、総理も述べておりますが、消費税は、急速な高齢化に伴い年々増加する社会保障給付費の財源確保が課題となる中で、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられていることから、政府としては、既に、国、地方合計で一兆円を超える減収につながっております軽減税率の引下げを行うことは適当ではないと考えているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 つまり、財源論なんですよ、これは。消費税に関して問うと、財源論で、これは減税できないという話になり、所得税になったら、いや、これは財源論ではなく国民への配慮だ、減税するんだという話になるわけです。すなわち、冒頭申し上げましたように、財源論なんですよ、やはり。それは基本的機能の最初なんですから、そこから逃げられないわけです。

 だから、実は、今回の給付金と定額減税一体措置というのは物すごく財源を使っていまして、これだけ多くの減税と給付を使いながら、いま一つ評判が芳しくないという理由の一つは、やはり、そもそも一体何なのかという、基本原理にのっとっていないといいますか、そこにあるんじゃないか、簡単に言えば、思いつきなんじゃないかというところで、これは、これだけの財源を使いながらも評判が芳しくないんじゃないかと思います。

 二枚目の資料で、減税の部分は、私が聞いている範囲では三・五兆円、そして、箱の部分をトータルすれば二・二兆円、元々の給付の三万円を足すと、〇・五兆円で、六・二兆円もの定額減税プラス給付金のスキームなんですよね。

 ただし、私、一点、このことがすごく今回措置としてよかったと思うことは、これはまさに給付つき税額控除なんですよね、私からすれば。これは、消費税が、それこそ、野田総理のときに消費税が上がるときに、その負担感をどう和らげるかというときに、給付つき税額控除をどうするのか、我々はそれを進める、いや、それではなくて軽減税率を入れる、そこは意見が違ってそうなっている。でも、これは、給付と要するに減税を組み合わせた、まさに給付つき税額控除なんですよね。

 したがって、これからどういう、あるいは給付と減税という組合せが、今回たまたまこうなるのか、今後、例えば減税をすることと給付が組み合わさっていくということになれば、このスキームしかないんですよね。とすれば、今回の一体措置の中での事務コストはどうだったのか、あるいはその課題は何だったのかということを考えることは、私、非常に次につながることだと思うんですよ。

 そういう意味で、改めて、この事務コストはどうなのか、実務上の課題は何なのかということを御答弁いただければと思います。

鈴木国務大臣 定額減税と給付の一体措置、これの実務上の課題ということでありますけれども、今回の定額減税及び給付措置に当たっては、各企業や自治体の事務の実態や実施上の課題等をできるだけ把握をして対応するよう努めているところです。

 具体的には、定額減税につきましては、現在御審議いただいている法案について、成立をしていただいた場合、その成立から減税の開始までの、六月までの期間が短いことが課題となっております。このため、企業や自治体が早期に準備に着手できますように、パンフレットやQアンドA等を迅速に策定、公表してきたところであります。

 そして、給付金につきましては、対象者の特定や給付額の決定、その後の申請の受付や審査、振り込みに係る事務負担が実務上の課題と承知をしております。非課税世帯への給付につきましては、これまで複数回にわたり実施してきており、そのシステムやノウハウを活用でき、あわせて、簡素、迅速な給付につなげるためのデジタル技術の活用など執行面での工夫等を行っているところと承知をいたしております。

 このような実務上の課題に対しまして、引き続き丁寧な対応をしてまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。給付つき税額控除の課題は、当時は番号と、あと所得捕捉の問題と、あと実務上のコストが高いということでした。

 これを乗り越えられるのであれば、これは次につながるスキームだと私は思いますので、是非、その上でも、この課題について洗いざらいレビューしていただきたいなと思います。

 続きまして、賃上げ促進税制について伺います。これは先ほど櫻井さんがおっしゃっていただいたので、私からは一点だけ。

 今回よかったことは、財務省自身がレビューをしていただいて、十年たってこれは効果があるのかということを検証されたというのは、すごく私はよかったなと実は思いました。その他の租特に関してはそんなことは一切ないわけで、今回そうやってレビューをして、結果として、先ほど櫻井さんもおっしゃいましたけれども、書いてあるのはほとんど効果が見られなかったということなので、そうであれば本来はやめるということに行かなきゃいけないのに、効果がなかったから更に深掘りするというふうになるというのは、私はちょっと理解できないですね。

 そこで、伺います。

 政府税調の報告書、去年出されましたけれども、その中では、十分性という言葉を強調されて、三つの原則に加えて十分性が必要なんだ、これからは必要だということをおっしゃっています。

 そうやって考えれば、一・三兆円の減税をする、その他も減税をする、そして検証も十分に行われないという中で、政府が掲げる、あるいは掲げようとしているこの十分性ということをやはり考えなきゃいけないんじゃないかと思いますけれども、そこを考えた上での今回の減税のオンパレードなのか、その辺りを、十分性をどう考えているのかということをお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘のとおりに、政府税制調査会の中間答申におきまして、現在世代と将来世代の間の負担のバランスの確保の観点から、租税の十分性に配慮することは、次の世代に自らの税金をどう使うかの選択肢をつなぐことでもあると述べられているところであります。

 この租税の十分性との観点に関しましては、令和六年度税制改正においても十分留意しております。例えば、戦略分野国内促進税制やイノベーションボックス税制については、税制改正プロセスにおいて具体的な財源を確保しているところであります。他方、賃上げ促進税制の強化に関しては具体的な財源を確保しておりませんが、これは、賃上げと定額減税等を組み合わせることで、今年、官民挙げての物価高を上回る所得の実現に向け、これを力強く後押ししていくとの政府の方針を反映したものであります。

 御指摘のとおりに、我が国の極めて厳しい財政事情に鑑みますと、租税の十分性についてはこれまで以上に重要になっていると認識をいたしております。今後とも、この点を十分に意識しながら、租税特別措置の不断の見直し、これは重要なことでありますので、引き続き取り組んでいきたいと思っております。

稲富委員 今でも十分性を十分に考えているということであれば、余りこれは、十分性がいわば三つの基本機能に足されて物すごく重要なんだということを表しても、今の段階でも十分にそれが考慮されているとすれば、私は、原則としては全然機能していないと言わざるを得ないんですよね。

 次に移ります。

 子育て世代に対する住宅ローン減税についてですが、これを見たときに、同じですけれども、即座に思い浮かぶのは、今、首都圏でも新築マンションの平均価格が上がっている。私、地元福岡でも物すごく上がっています。とすれば、減税したらもっと上がるんじゃないかということ。結果として、子育て世帯の所得格差が拡大するんじゃないか、あるいは、これが実際活用されるのはほとんど都市圏じゃないか、いわば都市と地方の格差がより拡大するんじゃないか、そもそも子育て世代への経済的支援になるかどうか、政策目的が曖昧なんじゃないかとか、なぜ持家世帯だけがこんな優遇されるのかとか、いろいろなことを思うわけです。

 一体これは何のためにやるんですか。改めて目的を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 まず政策目的から申し上げますと、今回の税制改正では、令和七年度税制改正において結論を得るとされている子育て支援税制の先行対応として、住宅ローン控除について、子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せを行うこととしたところです。この措置は、十八歳以下の子供を持つ世帯のほか、これから子供を持つことが想定される若年夫婦世帯についても対象としておりまして、こうした世帯の住宅取得を支援することを通じて少子化対策や子育て支援につなげていくこと、これを目的としているものであります。

 また、稲富先生から、住宅価格への悪影響、価格上昇につながるのではないか、こういう御指摘もございました。近年の住宅価格の上昇の背景には、建設資材の値上がりや人手不足による建設コストの高騰など様々な要因があるものと承知をしておりますが、加えて、今回の措置が、子育て世帯等に限って控除額の上乗せを行うものであること、対象を環境性能の高い住宅に限定をしていることを踏まえますと、必ずしも住宅価格の押し上げにつながるものとは考えておりません。

 そして、格差の拡大についてもお触れになりましたが、住宅ローン控除は住宅購入に係る負担に対する支援になっておりますが、住宅を購入されない方々への支援としては、国土交通省において、例えば公営住宅でありますとか住宅セーフティーネット制度などを通じた支援を行っております。

 政策全体を通じまして、住宅に係る様々なニーズに応えていくことが重要である、そういうふうに考えております。

稲富委員 どうもありがとうございました。終わります。

津島委員長 これにて稲富君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 立憲民主党の野田佳彦でございます。

 大臣におかれましては、今一番ハードな日程をこなしているときだろうと思います。予算編成を仕上げて、そしてその審議、大事な局面で、一日七時間は委員会室に箱詰めになっている状態、これはなかなかハードですし、加えて、その合間を縫ってこうした税法の議論もしなければいけないし、時折、閣僚の中でも財務大臣は海外出張が多いお仕事ですので、そういうことも重なって本当にハードだなと思いますが、余り疲れを見せないタフネスぶりには敬意を表したいというふうに思います。

 先ほど櫻井議員も取り上げましたけれども、私も、G20、今回サンパウロのG20の財務大臣・中央銀行総裁会議に大臣が出られないことは残念だと思います。残念だとは思いますけれども、今回はやはりやむを得ないなと思うんですね。

 二年前に、ちょうどロシアのウクライナ侵攻の直前のときに、インドネシアでG20があるときに、なぜ大臣が出ないんだということを質問させていただきました。御記憶があるだろうと思います。あのときは、今日の日程よりもうちょっと、はるか前だったんですよね。しかも、ジャカルタですから、今回のサンパウロに比べれば、比較的行き帰りも可能な範囲だったと思います。

 当時の国対委員長の馬淵さんに確認をしました。政府から大臣に海外に行かせてくれという要請があるかと言ったら、ないと言うんですよ。与党にもなかったようだったので、最初から行く気がないのかなと思いまして、心配だったものですから、こういう大事な会議には出た方がいいですよ、行くなとは我々も言いませんよと国対委員長にも確認をして質問させていただいたんですね。

 今回は、それと違って、日程的には二十八、二十九のG20ということで、これは大事なテーマがいっぱいあるんですけれども、残念だとは思います。飢餓、貧困、格差、気候変動、あるいはIMFとか世銀の機構改革などなど、大きなテーマがあります。

 加えて、G20の直前にG7も開かれるんですよね。このG7の中では、ロシアへの制裁、ウクライナ支援なども確認をされる場だと思います。重要な場なんですね。重要な場でありますけれども、予算の今のこの大事な時期、税法の審議も入ってしまった。大臣が出られないというのは、残念ながら、これは一つの判断だと思います。

 でも、だからといって代理が財務官というのは、私は前回も申し上げましたけれども、二年前も神田財務官だったんです。財務官、大変優秀な人であるということは承知はしています。だけれども、さっき申し上げたような大テーマについては、やはりきちっと政治家が出て海外のリーダーたちと議論をするということが大事だと思うんです。

 なぜ、副大臣に行かせようという判断をしなかったのでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

鈴木国務大臣 昨年、この財務金融委員会の場で野田先生から、G20、G7の国際会合、中央銀行総裁会合の重要性を指摘をされました。その後、私も、そうした御指摘も胸に置きながら、この間、G20には七回、G7には八回出席をしてまいりました。

 特に、昨年はG7の議長国をいたしまして、今回がイタリアにバトンタッチをする最初の会合でありますから、是非参加したいものだと思っておりましたが、国会情勢等もございまして、大変残念な思いで、しております。結果といたしまして、欠席をすることになりました。そして、神田財務官を代理として出席をさせることといたしました。

 副大臣をやはり政治という立場から出席させるべきであるという御指摘でも今ございました。かつて、副大臣として出席をされた例もたくさんあるわけでありますが、最近を見てみますと、例えば、昨年の七月のインドでのG20会合におきましてはイギリスやフランスなどの財務大臣が欠席をし、そして、新潟で行われましたG7の財務大臣・中央銀行総裁会合でもフランスの財務大臣が欠席をしたわけでありますけれども、その際にはそれぞれの国の財務官級が代理で出席をしたということで、最近は副大臣が出席する例というのはなくなっているわけでございます。

 いずれにいたしましても、重要な会合でございますので、神田財務官には事前に複数回打合せをいたしまして、相談すべきことを相談し、指示もさせていただきました。必要に応じて、また現地と連絡を取れる体制も取っております。G20におけます日本のプレゼンスを維持すべきであると、しっかり対応したいと思っております。

 また、副大臣の代理出席ということにつきましては、検討をさせていただきたいと思います、今回は実現できませんでしたけれども。

野田(佳)委員 最近は各国でも大臣が出席できない場合は事務方が出るというお話がありましたけれども、あえて日本の場合は、政務三役は近年置かれたわけですよね。その導入の際にどういうことをみんなが考えたかというと、大臣ばかり国会で答弁をするんじゃなくて、海外へ出てもらうときは副大臣が答弁をする、責任を持ってもらう。逆に、大臣が海外に行けないときは副大臣が出ていくとか、そういう意味で、政務三役というのは適材適所で選んでほしいという願いを込めてやってきたと思うんです。

 実際に、赤澤副大臣いらっしゃいますけれども、もう当選六回で、十分、大臣が務まる力量を持った方じゃないですか。いつまでも財務官に頼るようなやり方というのは、私はよくないと思います。ということは指摘しておきたいというふうに思います。

 では、今日のちょっとタイムリーなテーマだったので取り上げさせていただきましたけれども、法案の議論に入っていきたいと思いますけれども、まず、令和六年度の税制改正による増減収見込額は幾らなのか、これは副大臣でも主税局長でも結構です。よろしくお願いします。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 令和六年度税制改正による国分の増減収額は、定額減税の実施による減収額が大きく、平年度ベースで二兆九千十億円程度の減収、初年度ですと二兆三千五百三十億円程度の減収となっております。

野田(佳)委員 個人向け、企業向けの減税策が中心となっているので、兆単位の減収ということなんですよね。去年が多分千五百億ぐらいの減収じゃないですか。その前が十億ぐらいですね。兆単位の減収というのはなかなか大きいと思います。

 その中心になっている、柱になっているのが定額減税なんですね。定額減税についてはこの後お話をさせていただきたいと思いますけれども、令和六年度のこの税制改正によって、国、地方の二〇二五年度プライマリーバランス黒字化の達成方針とこれは整合的と言えるかどうかについて、これは大臣にお答えをいただきたいと思うんです。

 今日も午前中の議論で、プライマリーバランスの黒字化については、高い成長とそして歳出改革を一生懸命やるということが前提になっていて、これを実現できるかどうかは、むしろ予断を許さないというようなお話がありました。という中で、この兆単位のいわゆる減収、減税を行うということと黒字化を達成しようとすることの整合性についてどのように考えていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほど主税局長から答弁がございましたけれども、今回の税制改正では、定額減税や法人減税によりまして約二・九兆円の減収が生じると見込んでおります。

 定額減税は複数年度にわたって実施することは想定をしていないところであり、また、賃上げ促進税制の強化などの法人減税は、構造的な賃上げや国内投資の促進を通じ、財政の基盤となる経済成長を実現することを目的とするものであって、二〇二五年度PB黒字化の目標とも整合的な形で取りまとめることができたと考えております。

 内閣府の中長期試算においても、令和六年度税制改正の内容を織り込んだ上で成長実現ケースで示された成長が実現し、これまでの歳出効率化努力を継続した場合には、二〇二五年PBが黒字化する姿が示されております。

 ただし、野田先生もお触れになりましたけれども、この目標の達成には高い成長率が前提となり、徹底した歳出削減が必要なものでありまして、決して容易なものではないということは認識しておりますが、政府としては、その実現に向けて、歳出歳入両面での改革努力、着実に進めてまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 国税ベースで所得税で二兆九千億で、いわゆる地方税の方を含めると、これは九千七百億か何かの減収ですから、国、地方のプライマリーバランスの黒字化という意味においては、これは軽微な数字では決してないというふうに思いますし、さっき大臣御自身も言ったように、高い成長とそして歳出改革を必死にやらなければいけないという前提に立っていて、途中で大きな補正予算を組んだりしたら到底実現不可能なわけなので、そんなことを考えると、全然私は整合的ではないと思うんです。

 もちろん、場合によっては何らかの政策減税が必要だという判断はあると思いますよ、あると思います。一方で、逆に負担をお願いするということの税目もあるはずであって、最近、金融所得課税とか全く聞かないんですけれども、そういうことも入れて税収中立的な対応をするということもあり得るのに、なぜか減税オンパレードで、本当にそれが効果があるのかなと思われる減税が多いもので、私は今申し上げたような疑問を持っているということを指摘をさせていただきたいと思います。

 改めてでありますけれども、定額減税による減収見込額、これを、個人の所得税とそして住民税、平年度、初年度、それぞれの数字を御説明いただければと思います。

青木政府参考人 まず、国、地方を分けて、それぞれ申し上げます。

 定額減税、国税の所得税の関係ですと、初年度が二兆三千二十億、平年度も同額でございます。それから、地方税は九千三百三十七億円、個人住民税ですね。合わせまして約三・三兆円の減収ということでございます。

野田(佳)委員 いわゆる減税による減収ということと、先ほど稲富委員も触れられたように、定額減税を伴うところの、何と言ったらいいんでしょうか、納税額が減税額に満たない人たち、要は、低所得世帯については給付を行う、予算措置が伴うわけですから、そういうことを含めると、財政的な影響というのは五兆とか六兆とかということになると思うんですね。というような、定額減税の財政的な影響というのはとても大きいということであります。

 当然のことながら、これは所得税の減税ですから、私が心配しているのは、東日本大震災の復興財源として、復興特別所得税を所得税の税額に一律二・一%上乗せをするという措置を取りました、この復興所得税への影響がどうなるのか。どれぐらいの減収になるのか、教えていただければというふうに思いますし、それに対する対応もどのように考えているか、それも含めて教えていただければと思います。

赤澤副大臣 野田委員御指摘のとおり、復興特別所得税は、所得税に対する二・一%の付加税ということです。定額減税による所得税収の減の反射的な影響として、令和六年度における復興特別所得税は四百八十三億円減少すると見込んでおります。

 復興事業を行う復興特別会計においては、復興債の発行を通じた柔軟な資金調達が可能であるため、足下の減収の増減が復興事業の執行に影響することはないということで、特段の対応ということは考えておりませんけれども、しっかり柔軟に対応できるということでございます。

 政府としては、定額減税による復興特別所得税への影響も十分に考慮しつつ、今後の復興財源に支障が生じることのないよう、責任を持って対応していきたいと考えております。

野田(佳)委員 四百八十三億円、まあ五百億近いという金額はなかなか大きな額だというふうに思いますので、特段の支障はないというお話でありましたけれども、本当に支障のないようにお願いをしたいと思います。

 それに関連をするんですけれども、ちょうど復興財源のフレームをつくったときが野田内閣でございましたし、その起案といいますか、規格をつくったときの財務大臣でございましたので、とても関心があるのは、この復興増税だけではなくて、歳出改革とか税外収入の確保とか、いろいろなことをやりながら、日本たばこの株式を売って売却収入を充てるとか、いろいろなことを枠組みで考えました。

 その中で一つ動き出そうとしているのが、東京メトロの株の売却であります。これがどういう方針なのか、具体的にどういう見通しなのかを教えてほしいんです。

 東京メトロの株は、国が五三・四%保有し、東京都が四六・六%保有している。その半分を今度売り出すという方針と聞いていますし、東京都の方はそのための予算措置なども取り入れているようであります。これが入ってくれば、まさに、ようやく復興財源として動き出すんだなと。

 今まで経緯はいろいろあったようでありますし、都と呼吸が合わなかったりしたけれども、これだけ今株高になってきたときには、やはり売却の大きなチャンスなんだろうと思います。その辺についてのお考えをお示しいただければというふうに思います。

鈴木国務大臣 御指摘の東京メトロ株式につきましては、東京地下鉄株式会社法により、国及び東京都はできる限り速やかに売却をすることとされているほか、令和九年度までに生じた国の東京メトロ株式売却収入については、復興財源確保法により復興財源に充てるものとされております。御指摘のとおりであります。

 また、この株式については、新規公開時においては国と東京都が同時、同率で保有する株式の二分の一を売却する、その後の売却においては国と東京都の協議を踏まえて対応するとの方針に沿いまして、売却に向けた検討を進めてきたところでございます。

 こうした中で、東京都において、令和六年度中の株式売却に備えて、関連する経費を初めて予算案に計上したと承知をしておりまして、国としては、市場の動向等を勘案しつつ、東京都とよく連携して、売却時期について見定めてまいりたいと思っているところでございます。

 また、売却額は市場調査等を踏まえて決定していくものでありまして、現段階では、売却収入については具体的にまだお答えできる段階ではないと思っております。

野田(佳)委員 東京メトロのいわゆる純資産が約六千四百億円あろうかと言われていますね。その半分を売却するとすると約三千二百億、保有の割合を見ると、都より政府の方がやや上でありますので、ざくっと言うと、今のざくっとした話だと千七百億ぐらい。

 そうだとは言いにくいかもしれませんけれども、規模感としてはそれぐらいのものをイメージしてよろしいんでしょうか。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘になられましたその概算でございますけれども、それに関連いたしまして、私ども、ただいま御審議をいただいております令和六年度の予算案におきましても、東京メトロの株式に関する売却収入の収入見込みというものを歳入見込みに計上いたしておりまして、その額は約一千七百億円程度ということ、一千七百億円程度の収入を見込んでいるということでございます。

野田(佳)委員 だったら、そんな、大臣、ぼかさないで言っていただければいいじゃないですか。千七百億ぐらい見込めるということですよね。

 とすると、さっき、復興所得税の影響、減収が五百億近いという数字が出て、ちょっと心配になりましたけれども、メトロの株の売却が順調に進めば、それを補って余るぐらい復興債の償還に充てられるお金ができるということは確認をすることができました。

 それでは、今回の一番の減収の大きな要因になっている定額減税についてお尋ねをしていきたいと思います。

 改めてですけれども、端的に、なぜ定額減税を実施するのか、教えてほしいと思います。

鈴木国務大臣 政府といたしましては、令和六年度は、賃上げが物価高に追いつくことができるかどうかの端境期に当たるとの認識を持っております。令和六年に定額減税を実施することで、賃金上昇と相まって、所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭につなげたいと考えておるところでございます。

野田(佳)委員 物価高対策、デフレ脱却、子育て支援ということを強調されて御説明をされたこともあったかというふうに思いますけれども、政策目的のところに、何かいつも説明にぶれがあるような感じを去年の秋ぐらいからずっと私は受け止めておりまして、なかなかすとんと心に落ちない政策であります。

 元々が、この減税に総理が触れられたのが、思い返すと、去年の十月二十二日の衆参補欠選挙の投開票日の二日前であったと思います。このときは、物価高対策の目玉としての所得税減税をお話をされて、指示をするということでありました。でも、この定額減税は、十月二十三日の所信表明演説は一言も触れられていないですよね。唐突に降って湧いたような話だったと私は受け止めさせていただきました。

 しかも、これも午前中議論がありましたけれども、税の増収分の還元ということを盛んに当時は総理が説明をされました。でも、財務大臣も税調会長もそれに対しては否定的な解釈を述べられて、いつの間にか還元という言葉が消えてきたというふうに思います。

 ということで、去年の秋から今日に至るまでに何か一貫性が感じられない。ある種、深い洞察に基づいた税制改正ではないという印象を拭えないで私は持っておりますけれども、そうではないということを、財務大臣、お話しできますか。

鈴木国務大臣 定額減税が決定されるまでの過程につきましては、今、野田先生がおっしゃったことは、大体そのとおりの経緯であったと思い起こしております。

 ちょっと具体的なことを申し上げますと、この定額減税の方向性につきましては、昨年の十月二十六日、政府与党政策懇談会において総理からの検討の指示があり、与党税制調査会幹部における検討を経て、十一月二日にデフレ完全脱却のための総合経済対策として閣議決定をいたしました。閣議決定の前後にわたり国会でも御議論をいただいた上で、具体的な制度設計については閣議決定した方向性に基づきまして与党税制調査会で御議論をいただき、十二月二十二日に令和六年度税制改正の大綱として閣議決定を行ったものでございます。

 定額減税について、方向性と具体的な制度設計の二段階において与党税制調査会等にも御議論をいただいて、丁寧なプロセスを経たものと考えているところでございます。政策目的については、先ほど申し上げたとおりであります。

野田(佳)委員 さっき申し上げたとおり、税制のまさにキーマンである、言い出した総理大臣はもちろんですけれども、政府の側では財務大臣、党の側では税調会長、還元という言葉一つについても、何かチームとしての一体となった発言とは思えなかったということなども含めて、印象としては、やはり総理が一人で走って言い出してしまったのかなという印象を残念ながら持っています。

 その上で、効果があるのかどうかなんです。定額減税の実施プロセスというのは、要は、六月以降支給される給与とか賞与の源泉徴収税額から控除をするというやり方でスタートすると思います。減税額が、例えば、本人三万円、家族、例えば三人いたら、四人家族で十二万円、こういうものを、控除し切るまで控除が続くというやり方ですよね。

 ざくっと言うと、単身だったら分かりやすいんですよね。単身だったら、例えば月々の源泉徴収が二万円だとすると、三万円控除し切るには一月では終わらないから、七月までいくということじゃないですか。四人家族だと、国税でいうと十二万円になりますよね、十二万円。六月に二万円までしか控除できないとすると、八月、九月、十月、十一月というように、どんどんと後ろにずれていくんですよね、期間が。十一月までに控除し切れない場合は年末調整で控除をする、それでも控除できない場合は給付にする、この段取りというかプロセスで間違いないですよね、大体。いいですね、はい。

 ということは、収入が多くない世帯ほど支給に時間がかかるんですよ。所得の多い方は、一発、六月で控除が終わるかもしれないけれども、そうじゃない方の場合は、どんどんどんどん後ろに行く。細切れに手取りが増えるというやり方というのは実感が薄いと思います。これではやはり、給付に比べるとはるかに効果が薄くなると思いますけれども、大臣のお考えはいかがでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 税額の少ない給与所得者におかれましては、御指摘のとおり、六月以降、定額減税の控除額が引き切れるまで毎月減税が行われることとなります。その間、それまで毎月徴収されていた源泉徴収税額が、ある意味、毎月ゼロになっていくということでございますので、手取りの増加を継続して感じていただくこともできるということは、そういうメリットがあるというふうに考えております。

 また、ボーナスを受け取る月については、やはり源泉徴収額が大きくなるものですから、減税される金額も当然大きくなります。その効果を、この定額減税の効果をより実感していただくために、今回、ボーナスを受け取る方が多い六月から支給開始をさせていただいているところでございます。

野田(佳)委員 どう見ても、恩恵を受けたなという実感を受けるのは一遍に給付だと。スピーディーで、すぐ効果が発現するのは給付だと。それに比べれば、今いろいろ御説明されましたけれども、効果は明らかに薄いと思いますということは強く指摘しておきたいと思いますし、主税局長も本当はそう思っているのではないかと思います。表情に出さなくて結構でございますけれども。

 でありますけれども、更にちょっと加えてですけれども、この定額減税は所得制限を設けていますね。合計所得金額千八百五万円、給与収入にして二千万円相当超の高額所得者は減税の対象外となるということでありますが、一方で、今回の税制改正の中で、ストックオプションを行使した場合に受けられる権利行使価額の上限を現行の千二百万円から年間三千六百万円に引き上げて、富裕層を大幅に税優遇するという措置が取られていますけれども、これは矛盾する考え方ではないですか。

鈴木国務大臣 今回のストックオプション税制でございますが、これは、スタートアップを盛んにしていきたい、そういう基本的な考えがございます。

 このストックオプション税制における年間の権利行使価額の引上げにつきましては、スタートアップ育成五か年計画の期間にある中で、スタートアップを集中的に支援するという考え方の下、スタートアップが付与したストックオプションに対象を限定して、リスクを取ってスタートアップに参画する方の後押しをするという政策効果のために行うものであります。

 したがいまして、単に富裕層を優遇するためのものとは考えていないところであります。

野田(佳)委員 定額減税実施に伴う事務負担について、次にお尋ねをしたいというふうに思います。

 一回限りということでございましたけれども、この一回限りの減税のために、給与計算などのシステムを改修する費用が発生をするということになります。これはコストの面ですね。加えて、事務作業としても、年収、賞与、扶養人数などによって、一人ずつの計算が異なってまいります。これは大変煩雑だと思いますね。この負担感も大変大きいと思います。

 企業、自治体、その対応というのは、本当に御苦労されるのではないかと思います。確定申告が三月の中旬に終わった後、定額減税実施に向けて、この負担感に直面しながら準備に当たっていくんだろうと思います。給与支払い明細書にもそこの額を明示しなきゃいけないとか、いろいろと煩雑なことがいっぱい出てくると思うんですけれども、私は、要は、労多くして功なしというのはこのことを言うんじゃないのかなと思います。

 事務負担が余りに大き過ぎるんじゃないでしょうか。大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 今般の定額減税の実施に当たりましては、企業それから自治体を始めとする皆さんに一定の事務負担をお願いしなければならないということは事実であります。

 このため、企業や自治体の事務の実態でありますとか実施上の課題等をできるだけ把握をしながら、企業や自治体が早期に準備に着手できますよう、パンフレットやQアンドA等を迅速に策定、公表をするとともに、新規雇用者につきまして前職での減税適用の有無の確認を不要とするなど、事務負担に配慮した制度設計を行ったところでございます。

 以上でございます。

野田(佳)委員 企業の経理の担当をされる方とか自治体の担当をされるような方、あるいはそういう皆さんに指導したりするようなお立場の税理士の皆さんなどなどが、相当にこれは大変だというような予想をされています。しっかりと政府も周知をしたり、あるいはその仕組みについての理解を求めるために本当にあらゆる努力をしないと、混乱が多いと思います。そのことをつけ加えさせていただきたいと思いますし、混乱と言いましたけれども、むしろやめた方がいいと私は思っております。

 次に、これは一番最後の、税制改正の後段のところに書いてありますけれども、防衛増税の件で、これは実施時期がまた延びていますね。減税はどんどんとオンパレードですぐ実施なんですけれども、負担に関わるような問題というのは先送りをするというのが、私はこの政権の特徴だと思います。

 本来ならば、防衛費を増やしていく、中身はどうなのか、しっかりと吟味をして予算をつけていく、そして、その上で財源もセットで、これは三つ一体で議論を進めるというのがあるべき姿だと思いますけれども、残念ながら規模ありきで、要は、防衛費額だけが先行していって、財源の方がずっと後についてきている。でも、間違いなく、たばこ税とそして復興所得税が流用をされて変わっていく。あるいは、もう一つ何かありましたね、三つ、三税目あったじゃないですか、法人税ですか。税目は限られていて、上げることは決まっていますよね。いつかだけが決まっていないというわけじゃないですか。

 前もこの委員会で言ったかもしれませんけれども、今回は、一回こっきりの定額減税をやったとしても、後ろに防衛増税は控えているし、少子化対策での負担増も考えられるという、額はよく分からないけれども負担増もあるということは、当然、国民感情としては、手放しに消費にお金を回す、可処分所得がちょっと増えたからといって、お金を消費に回すという感情にはならずに、貯蓄に回してしまうんじゃないか。政府のそろばん勘定と国民感情に大きなギャップがあるというのは、この関連だと私は思っているんですけれども。

 改めて、防衛増税の実施時期についての、いわゆる一定程度の見通しがあるのかどうか、教えてほしいと思います。

鈴木国務大臣 防衛力の抜本強化は喫緊の課題でありまして、これを安定的に支える財源の確保、これは避けることのできない重要な課題であると思っております。

 そして、その財源確保のための税制措置の具体的な実施時期についてでありますが、これは、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施するといたしました令和五年度税制改正大綱等の内容を踏まえまして、与党税制調査会において議論されるものと承知をいたしております。

 引き続き、与党と緊密に連携してまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 私は、所得税減税の日本の過去の歴史とかこれまでの議論を聞いても、余り、かつても効果があったことがないように思うんですね、日本の場合は。

 なぜかなと思うと、アメリカで例えば所得税の減税をやった場合には、割と、ちょっと国民性を失礼な言い方でけなしてはいけないと思いますけれども、お金が入ったら使うタイプの国民がいっぱいいるんじゃないかなと、刹那的に。

 日本人の場合は、減税と言われても、もうちょっとライフサイクルを考えながら慎重に判断をするタイプの人が多いように思うので、簡単に所得税減税といったって効果がないし、さっきのように、その効果が細切れで後ろに延びていくようなやり方だと、なおさら所得税減税の恩恵感を持たないで、使わない人たちが多いというイメージを私は強く持っています。

 これはちょっと通告にないかもしれませんけれども、所得税減税はそもそも効果があるのかどうか、定額減税に限らず、所得税減税全般についてはどういうお考えをお持ちでしょうか。

鈴木国務大臣 所得税減税、国民性にもよるのではないかという先生のお話がございましたが、やはり税負担というものは国民にとっても関心の高いものであると思います。そうした税負担を、一時的であれ、それから継続的であれ、低減するということは、消費の面などについて一定の影響を与える、効果を与えるものである、そのように認識をいたします。

野田(佳)委員 一定ということであって、そんなに効果は、私はやはり、今までなかったし、ましてや今回の定額減税はもっと効果がないのではないかということであります。

 最後にもう一つだけ質問しておきたいのは、二番目に減収の規模が大きいのは賃上げ促進税制ですね。これも本当に効果があるのかなと思うんです。

 二〇一三年に、安倍政権のときに初めて賃上げのための税制措置が取られたんですね。以降、累次にわたっていろいろな改善が行われつつあると思いますけれども、私も最初は、賃上げのためにはあらゆる政策を総動員しなければならない、そのために税制というのも一つの道具だとは思っていましたけれども、本当に効果があるのかなと思います。

 賃上げ税制があるから企業は賃上げをするというよりも、物価が高くなってきているから賃上げをせざるを得ないとか、あるいは、人が離れていく、離職をしてしまうとか、新規に人が入ってこないからなどという理由が賃上げの主たる要因であって、減税措置があるがゆえに、それは、賃上げをやった、それで減税の恩恵を逆に受けていると。減税があるから賃上げという因果関係が本当にあるのかなと、その関係は私は疑問に思っているんです。それは、大臣、お考えはいかがでしょう。

鈴木国務大臣 御指摘のとおり、岸田政権において、賃上げは最重要課題の一つでありまして、あらゆる政策を総動員をするということを言っております。したがいまして、賃上げ促進税制といった税制面からも賃上げを目指していくということが基本的な考えでございます。

 令和四年度に、この賃上げ促進税制を抜本改正といいますか、強化をいたしました。これによって幅広く企業の賃上げに活用されたと認識をしておりまして、三十年ぶりとなる昨年の高い賃上げにも一定程度寄与しているものと考えております。

 その上で、今までの賃上げ税制を点検をいたしまして、効果等も含めて、それを反映させる立場で、今回の改正において、賃上げのインセンティブ強化の観点から、一定、大企業には、新たに七%までの高い賃上げ要件を創設するとともに、教育訓練費に係る上乗せ特例について、その活用を促して人への投資を促進する観点から、適用要件の増加率の緩和を行うことといたしております。

 今回の見直し、これは、賃上げや人への投資の加速に向けたインセンティブが強化されることとなると考えておりまして、物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現につながることを期待をしているところであります。

野田(佳)委員 時間が参りましたので、馬場雄基委員の前座は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬場雄基君。

馬場(雄)委員 皆さん、こんにちは。立憲民主党、馬場雄基でございます。

 私は、鈴木大臣に本会議で御質問させていただきましたので、その延長線上で議論させていただければと思いますが、既にもう多くの委員の皆様方が指摘されていますので、その点は省かせていただきたいというふうにも思います。

 まずは、やはりここから行かなくてはならないのが、裏金、脱税の件でございます。

 やや質問を飛ばします。説明責任というところにだけ絞って伺いたいと思うんですが、鈴木財務大臣も、山岸一生、私たちの議員からの予算委員会での質疑の中で、政治家個々人がやはり自らの説明責任を果たしていくということ、これが一番重要なことであると思いますと、まさに鈴木財務大臣のお言葉で述べられております。

 現時点で、鈴木大臣が思われる説明責任を果たした議員、今までにいらっしゃるでしょうか。いてもいなくても、その理由を含めてお聞かせください。お願いいたします。

鈴木国務大臣 どの方が説明責任を尽くして、どの方が尽くし切れていないかということを私が判断をして評価するということは、これは難しいことでございまして、個別に具体名で評価することは、これはできないと思っております。

 しかし、先般の予算委員会でも、山岸先生との質疑でもお話をいたしましたけれども、今後とも、あらゆる機会を捉えて、国民の信頼回復に向けて関係者は説明責任を果たすべきであるというのは、私の終始一貫した考えであります。

馬場(雄)委員 大臣、私も一緒に考えさせていただきたいんですけれども、説明責任というのが具体的に何を指すのか、恐らく、今、日本国民中誰も分からなくなってきているというふうに思います。

 誰がどこで何を具体的にすることが説明責任を果たすというまさにイメージになるのか、どういう状態を指すのか、大臣の中でどのようにお考えなのか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 なかなか難しい御質問であると思います。国民の皆様を始め、疑問に思っているところ、疑惑を感ぜられるところ、そういうものがきちんと説明を本人から、当事者からされて、それが払拭されるということ、納得されるということ、それが説明責任のゴールである、そういうふうに思っております。

 なかなか全ての方が納得をしたというところまで御理解いただくのは実際は難しいかもしれませんが、そのゴールに向けて頑張っていただく必要があるのではないかと考えます。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 言うは易しく行うは難しの世界だと思っていますし、もうここからは、説明する言葉の論争ではなく、実践するアクションの部分を我々は絶対求めていかなくてはならないと思いますし、そうしないと、いつまでたってもこの議論は終わりがないというふうに思いますから、どうか皆様方のまさに真摯ある姿勢でアクションを起こされることを期待申し上げたいというふうに思います。

 それでは、また続いて、あのときの議論に戻りたいと思いますけれども、最初に取り上げさせていただきました防衛増税について伺わせていただきます。

 今回、所得税の減税という話がもちろん趣旨ではあるんですけれども、その前に、やはり昨年増税の話があったわけですから、話がもうめちゃくちゃになりつつあるのではないかなというふうに思います。いつ行うのか、まさにこの点、先ほどの野田元総理の質疑の中でもありましたけれども、あのとき大臣は、現時点で予断を持ってお答えすることは控えたいということを言われておりました。予断を持つ、控えるという状況ではもうないというふうに思います。櫻井委員のまさにプライマリーバランスの考え方のお話の中でも、もう実際、二五年にはスタートしていかなければ、その予想値は大きく外れることになりますし、私から改めてお伝えさせていただきたいのは、二七年度に向けて複数年かけてという言葉に関してです。

 これは、前は、復興特別所得税のスキーム、これをいじること自体が私はどうしても看過できないというふうに思っていますけれども、ここがいじられるということになっていますが、復興特別所得税がどのようにつくられてきたかということですけれども、これは、二〇一一年の十月二十八日に国会に提出されて、十一月三十日に可決、成立されています。十二月二日に公布され、復興特別所得税が実際に開始されたのは二〇一三年の一月です。所得税の話ですから、一月がキーになるわけですけれども、この間、周知期間はおおよそ一年以上あったわけです。

 これを用意できるのかというところにまで、期間はもう迫っているのではないかなというふうに思います。少なくとも、周知期間、逆に言うとですよ、周知期間をほっぽり投げてしまえばまた別の話ですけれども、周知期間を同じく一年以上かけて考えた場合、複数年かけてやると言えば、二六年の一月に開始しなければ、複数年度やったことにはならないわけです。そうすると、二五年の一月に、つまり来年の今頃ですね、議論したとしても、三月末に成立、この時点でもう一年未満しかないわけです、周知期間は。

 整理したいと思います。来年の通常国会で増税法案を出さないと、二七年度に向けての複数年は実現できません。来年に増税法案を出す、ここが明言できないのか、なぜできないのか、ほかのやり方があるならば、その方法を示していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 防衛力強化に係る税制措置でありますが、今後、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施するとしました令和五年度税制改正大綱に基づいて検討されることとなります。

 その実施時期などの詳細に加えまして、実施時期を決定いただくタイミングにつきましても、与党税制調査会において御議論いただくこととしております。政府としては、その議論を踏まえて対応してまいりたいと思います。

 馬場先生から今様々シミュレーションが行われておりますけれども、法案の提出時期が遅くなれば、その分施行までの間が短くなること、これは否定できないところでございまして、政府としては、与党と緊密に連携しつつ、適切に対応してまいりたいと思っているところでございます。

 私としては、でき得るだけ早く時期を明確にしていただければありがたいと思っております。

馬場(雄)委員 大臣のお悩みの吐露が聞こえてきたような気もいたしますけれども、周知期間は余り考えずにいく可能性があるというお言葉は、少し恐ろしいなというふうに思いました。

 国民にとってどういうふうな税の形でいくのかということが、例えばですよ、これは一つあり得てしまうなと思うのが、二五年の、まだ決まっていないですけれども、臨時国会でぶつかって、法案が出されて、そのまま二六年の一月からスタートということさえ、考えたくはないですけれども、そういうこともあり得てしまうということが、その御答弁からだとかいま見えてしまうわけです。

 ですが、税というのは国の形そのものですから、しっかりと国民一人一人に納得していただけるよう説明を果たすのが、これはもう与党、野党を含めて関係なく、私たちの責務だというふうに思いますけれども、そこはやはり一年はかけるべきだと私は思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 どれぐらい期間を置くべきかということはあるんだと思いますが、おっしゃるように、決めて、間をほとんど置かずに実施するということは、これは常識的には考えにくいことだと思います。

 それから、税につきましても一応お示ししておりますのは、法人税につきましては三から三・四の付加税をお願いしたいということ、それから所得税につきましては、今、復興のための所得税、さっき先生が疑問だとおっしゃいましたが、二・一%、今なっているわけでありますが、一%下げて、一%上げるということで家計への配慮をしておりますが、そういう姿はもう既に表に出ている姿であると思います。

 そういう中で、あとは、いつからやるかということだと思います。先ほど申し上げたとおり、与党の税制調査会の議論でそこが決まってくるということであります。

馬場(雄)委員 大臣、ありがとうございます。

 ただ、いずれにせよ、やはりしっかりと国民に分かる形で示さなければいけないわけですし、本当にプライマリーバランス、私、先ほどの質疑を伺う中でも、そうだよなと思いましたけれども、既に国のシミュレーションの中で大きな位置づけになっている一つの財源でもあると思いますから、より早く動いていただけるよう大臣からもお願い申し上げたいですし、ここまで警笛を鳴らして、うやむやにずっとされ続けてしまうと、本当に最後悔やんでも悔やみ切れない状態になると思いますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、定額減税について移りたいというふうに思います。

 この話が持ち上がったのは、先ほどの話もありましたけれども、昨年以来の物価高に苦しむ中で生活の足しにしていただきたいというのが、この思いだったというふうに思います。だからこそ、急いで、スピード感を持ってやりましょうと。そして、それは、私たちは給付の在り方が妥当ではないかという議論をさせていただきましたが、減税にする、ここは再三皆様がおっしゃっていましたけれども、まさに、税の仕組みをいじってしまうということは、一回いじることは本当に大変なことでございまして、でも、残念ながら、これは一回限りということなんです。

 鈴木財務大臣からのお言葉で、いつも、複数年度にわたって実施することは想定していないと言われるわけですけれども、つまり、これは一度きり、一回限りを原則とする、こういった理解で間違いないですか。確認させてください。

鈴木国務大臣 政府としてはそのように考えております。

馬場(雄)委員 まず、こちらは一度きり、原則一度きりだというふうに考えていらっしゃるということです。

 複数年なら、こうやっていじっていくスキームで、よし、じゃ、来年度もやりましょうというのは分かるんですけれども、一度きりで本当にここまでのコストをかける必要性があるのかというのは、先ほどの櫻井委員のお話の中にもありましたけれども、大いなる疑問だというふうに投げかけざるを得ません。

 委員の皆様に配付した資料一番、新たな経済に向けた給付金・定額減税一体措置というふうなのがありますけれども、黒ポツ二個目ですけれども、ラーメン店で言う、安い、早い、うまいみたいなことが書かれているわけですが、簡素、迅速、適切というふうにあるわけですけれども、どう考えても簡素というふうには、給付と比較した場合、捉え切れないというふうに思いますが、簡素と言い切れる理由を教えていただけないでしょうか。

坂本(基)政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の給付措置につきましては、地方公共団体の実務の実情をよく伺いながら、できるだけ分かりやすく事務負担が少ない、そういう意味において簡素な制度となるよう努めているところでございます。

 例えば、定額減税し切れないと見込まれる方への給付におきましては、その方の所得税額を見込む必要があるわけでございますが、自治体が活用しやすい個人住民税の所得や控除等の情報から推計する算式をお示しするとともに、これら情報を簡易に抽出して一括算定するツールをデジタル庁において開発しております。

 あわせて、給付額につきましては、自治体の事務負担や分かりやすさの観点から、一万円単位としたところでございます。

 また、自治体が給付対象者を判定するに当たりまして、必要な情報を税務部局等から入手するために必要となる特定公的給付の指定につきまして、国が全自治体分を包括指定させていただいたほか、申請から振り込みまでのプロセスをデジタル完結できる給付支援サービスをデジタル庁が開発いたしました。その導入、初期費用は国が支援するとした上で、その活用を自治体に推奨しているところでございます。

馬場(雄)委員 何というんでしょう、政府が分かりやすいといえば分かりやすくなるというのが何かよく分からない状態なんですけれども、自治体職員向けのQA、パンフレット、まさに私の質疑の中で大臣がパンフレットというお言葉をいただきましたので、パンフレットを読んだんですけれども、よく分からないんですよね、全部文字ばかりですし。

 これが、分からないです、プロの方にとってみれば分かりやすいのか分からないですが、自治体職員の方にも実際伺いました。はっきり言って読みづらいと言っていましたし、これでたとえ間違えたとしても結局は自治体職員の人為的ミスと言われて終わりなんだよねというふうに、何かまさに吐露する感じでおっしゃっていましたけれども、本当にこういう状態で簡素と表現することに私は何か違和感を覚えるということははっきりと申し上げたいというふうに思いますし、分かりづらいまま突っ走るくらいであるならば、デジタル庁のお話もありましたけれども、AIチャットボットとかを開発するなりして、しっかりと迅速に分かるようにしていただきたいなというふうにも思います。

 まさに迅速というふうに、特に低所得者の方々というふうに書いてあるわけですけれども、給付なら昨年に全部届いています。迅速と言われるゆえんがなぜここにあるのか分からないですし、減税の効果が翌年の確定申告後に回される方々も相当数いらっしゃるわけでございまして、そういった中で、給付に比べてなぜ迅速と、こういうふうに述べることができるのか、理由を明確に教えてください。

坂本(基)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、QアンドAが分かりづらいという御指摘についてでございますけれども、御指摘のQアンドAは、自治体職員の方々からの問合せの多い事項に関しまして個別に回答することと併せまして、同様の疑問を持たれる可能性のある他の自治体の便宜のためにQアンドA形式で広く周知しているものでございます。このため、問合せ内容によりましては、かなり個別具体的な、込み入った事例に即した内容も含まれております。

 給付金に関しましては、こうしたQアンドAに加えまして、分かりやすく概要を示した資料ですとか各種事務連絡を公表しますとともに、オンライン説明会を随時開催し、自治体職員からの問合せにも丁寧に対応しているところでございます。

 引き続き、分かりやすさにも留意しながら、概要を知りたいというニーズもあれば個別の事例への答えを知りたいというニーズもあるものですから、そういった様々なニーズに応えられるように、適切な情報提供に努めてまいりたいと思います。

 なお、一般の方向けの周知、広報に関しましては、御指摘のございましたような相談内容に応じた的確な回答や窓口の紹介に資するチャットボットの活用等につきまして検討を進めているところでございます。

 もう一点の、迅速というふうに言えるのかということでございます。確かに資料に、御指摘のとおり、特に低所得者の方々に迅速と記載してございます。

 昨年の補正予算で計上しました住民税非課税世帯に対する給付につきましては、早い段階から自治体に情報提供を行うことにより、昨年末までにほとんどの自治体、九九%の自治体で給付に向けた手続に入っていただきまして、一月末までに六割の自治体で既に給付を開始してございます。

 これに続きます住民税均等割のみ課税世帯への給付や子育て世帯への加算につきましても、既に判明している令和五年度の課税情報を活用することで、早ければ年度内の支給開始を目指し、自治体をサポートしている状況にございます。

 また、定額減税し切れないと見込まれる方への給付につきましては、令和六年分所得税の定額減税の減税額が確定するのは令和七年の確定申告となるところ、まずは令和六年中に入手可能な情報を基に、定額減税し切れないと見込まれる方への見込まれる額を今年中に給付するということとしてございます。

 さらに、執行面においても迅速な給付につなげるため、デジタル技術の積極的な活用等の工夫を行っているところであり、引き続き政府として自治体における迅速な給付の実現に向けてきめ細かくサポートしてまいりたいと考えてございます。

馬場(雄)委員 答弁は迅速にお願いしたいというふうに思います。

 結局、定額減税の効果が、令和六年、確定申告後になる方々の数がどれくらいいるんですかと、これは経済効果のこともこっちがいいというふうに言われる理由の中にありましたので、じゃ、それってどのくらいの数いらっしゃるんですかというふうに伺ったんですけれども、結局見通しは立っていないということをずっと言われ続けました。

 何で経済効果として有効だというふうな説明をしているのにその見通しがないというふうに言ってくるのかがよく分からなかったので、今手元で集められる資料の中で計算式を作ったのが二枚目の資料になっています。

 これはあらあらの資料になっていますから、というか、何でこれを私が作っているんだろうというふうに思いながら作成していましたけれども、結局、この資料に基づいたとしても、三百万件、おおよそだと思いますけれども、来年度、翌年の確定申告後に回される、経済効果が回されていく方がいるということじゃないのかなというふうに思います。

 政府として、もし私がレクで聞いたとき以降にもう一度その算出が行われているならば、それを教えていただきたいですし、それを算出しないで、経済効果があるというふうにはっきりと言い切れる理由はどこにあるのか、是非教えてください。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 令和七年三月になる納税者の方なんですけれども、確定申告のときに納税される方のうち、給与、年金等の所得があって源泉徴収を既に受けられている方、又は、予定納税をされていて、予定納税の段階で受けられる方がいらっしゃると思います。

 この人数につきまして、私どもの方でも、これは一定の仮定を置いて計算しないとなかなか出てこないんですが、粗い計算をさせていただいて、おおむね数字を出しますと、約二百万人程度の納税者の方が対象になるのではないかと思います。納税者が二百万人ということでございますので、それに扶養する親族や配偶者を加えた人数が全体の人数になるというふうに考えております。

馬場(雄)委員 深化してくださりありがとうございます。私が聞いたときには全く数字が出ていませんでした。

 逆に言うと、なぜこの審議しているタイミングの中でその数字が出てくるのかというところに違和感を持ちますし、それは強く申し上げなくてはいけないところだというふうに思います。むしろ、最初からその数字が出ていなきゃいけないですし、経済効果と言うならば、その方々の数を明確に述べる必要性が財務省にはあるというふうに思います。

 加えて、この方々が一番正直苦しい状況なんじゃないんですか。一番物価高で苦しむ層の方々がまさにここにいるわけで、その方々に対して届くのがかなり遅れていくというものなのに、一枚ビラの政府の説明では、これは迅速にやりますというふうに言われるのは、私は、ちぐはぐもいいところじゃないのかなというふうに思います。簡潔、迅速、経済効果、三つの点からしても、この部分は政府の説明が成り立たないというふうに言わざるを得ないというふうにこの時点で申し上げさせていただきます。

 続いて、賃上げ税制にも移りたいと思います。

 政策には目標があると思っているのですが、これが曖昧になってしまえば、まさに意味がなくなってしまうわけですけれども、賃上げというのがどういうイメージを指すのか、どういうイメージになるのか。先ほどの説明責任の話と似ていますけれども、改めて伺います。賃上げとは何を指すのかという話です。

 大臣の御答弁では、物価高を上回る所得の実現ということをおっしゃっていました。ですが、私があのとき申し上げたのは毎勤統計の話です。毎月勤労統計調査の実質賃金をプラスにする、ここが本来は目指すべきポイントじゃないですかというふうにお伺いさせていただきました。

 改めて、この指標ではいかないのか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 答弁の前に、先ほど間違ったことを言ってしまいました。法人税の付加税について、三から三・四%と言ったのは記憶違いでして、四から四・五%が正しいということで、済みません、訂正をお願いいたします。

 それで、私は、物価を上回る所得の実現、こういうふうにお話をしたと思います。これは内閣官房や内閣府を含めた関係省庁が一丸となって取り組んでいるものであるために、財務省として必ずしも責任を持って説明できない面があることを御理解をいただきたいと思います。

 その上でお答えをいたしますと、物価高を上回る所得の実現とは、先生がお示しになりました毎勤統計とか様々あると思いますが、そうした個別の指標を念頭に置いたものではなくて、可処分所得、すなわち手取りの伸びが物価高を上回る状況を確実につくり上げていくことを目指しているもの、そのように承知をしております。

馬場(雄)委員 何というのでしょう、ばらばらで進んでいいのかなというのが、本当に、ちぐはぐというか、納得がいかないといいますか、締まりがないというか。ここに向けて頑張りましょう、これを基軸にしていきましょうというのがなくて、感覚論というか感情論に委ねている。

 例えば、このままいくと、鈴木財務大臣は賃上げできたよねと感じていても、私自身は、同じところにいても、賃上げとは感じないというふうに思う可能性が極めて高くなっていきます。だから、来年のそのときに、ある意味、政府の都合のいい数字だけをひっくるめて、ここで賃上げは達成できたというふうに表現することも可能になってしまうのがすごい怖い状態だなというふうに、これは強く申し上げたいと思います。

 やはり、一つの部分を、参考程度にでも、この指標を大事にしますよというところはしっかりと定点観測できる数字をもって示さないと、議論のまず前提が整わないんだというふうに思うんですね。

 私たちは、きれいな数字が欲しいんじゃないんです。きれいな数字が欲しいのではなくて、実態をよくしたい、その実態を見たい。逆に言えば、都合の悪いところも含めて、都合の悪いところであれば、お互いの知恵を出し合って乗り越えていければいいだけの話ですので。

 その部分を、何を大事に、基軸にして見ているのかというところは、私は大事だと思いますけれども、鈴木財務大臣、もう一度御答弁いただけないでしょうか。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 物価高を上回る所得の実現ということでありまして、私どもとしましては、手取りの伸びが物価高を上回る状態をつくるというふうに考えてございますけれども、この手取りの伸びということであれば、今年度、定額減税という制度、今回取り上げられておりますけれども、毎年毎年措置されているものではないということでありまして、その伸びを把握するための手法、これを少し、既に定まったものが必ずしもあるわけではございませんので、研究させていただきたいという趣旨で、総合的に判断するというふうに申し上げているところでございます。

馬場(雄)委員 今から研究するんですか。それはちょっと、余りにも突拍子のことだったので、びっくりしましたけれども。

 何をもって政策を判断していいのかが、本当に軸がないんですよね。なので、余り私はこういう議論を今までしてこなかったので、もしかして、こういうところで議論する中身はそういうものが多いのかもしれないな、軸足が定まらずに向かってしまう特徴がもしかしたらこの国にあったんじゃないのかなということを危惧しておりますけれども、これから研究なされるということであるならば、早急にそれを出していただく、間違いなく今年中というか、次の議論までには必ず出していただきたいというふうに思います。

 続いてなんですけれども、大企業の賃上げは進む一方で、日本の大多数の中小企業の賃金アップは全然進んでいない状況でございます。

 前提を伺いたいんですけれども、日本はこれまでトリクルダウン理論を用いて様々な政策を打ってきたのではないかなというふうに思いますけれども、結果、トリクルダウン、これは起きたというふうに政府は認識されているのでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 日本経済において、ここ三十年程度で、資本金十億円以上の大企業全体の営業利益、これは十九・四兆円増加しております。一方で、資本金一億円未満の中小企業の営業利益は〇・三兆円減少しております。また、賃金等の労働者への分配は、大企業でもほとんど増加せず、中小企業では減少してまいりました。

 岸田総理は、昨年一月の記者会見において、この三十年間、企業収益が伸びても、期待されたほど賃金は伸びず、想定されたトリクルダウンは起きなかったと述べられていると承知をしております。

 財務省としても、今申し上げた統計数値については、事実としてしっかり受け止める必要があると認識をいたしております。

馬場(雄)委員 トリクルダウンは起きなかったということでございます。

 では、やり方を変えなくてはいけないということだと思います。

 鈴木大臣は、先日の御答弁で、中小企業の賃上げの話ですけれども、この税制とともに、価格転嫁の指針の周知、そして省力化投資の支援をすれば、賃上げしやすい環境となる、このような趣旨の御答弁をいただきました。

 ですが、これは経産省さんでも構わないんですけれども、中小企業が賃上げしやすい環境はそれで整うのかというところ、これはどういうふうに考えていらっしゃるのか、是非御答弁をお願いします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 持続的な賃上げ、これを実現するためには、中小企業が収益、売上げを拡大しつつ賃上げを行うことが重要であります。このためには、価格転嫁の推進と省力化投資を含む生産性の向上が必要であると認識しております。

 賃上げの原資となります価格転嫁の促進につきましては、三月と九月、間もなく三月でございますけれども、この二か月を価格交渉促進月間としております。この月間に基づきまして、発注企業ごとの価格交渉、転嫁の状況を公表しておるところでございまして、今年一月にも二百二十社の社名を公表したほか、状況の芳しくない約二十社の発注企業の経営トップへの指導助言を実施しております。

 さらに、触れていただきました、昨年十一月に、内閣官房と公正取引委員会が、労務費の価格転嫁の指針を公表しております。これにつきましても、各業界団体、また、ブロックごとの中小企業向けの説明会等々で周知徹底に取り組んでおるところでございます。

 また、賃上げ促進税制、中小企業向けにつきましても、前例のない長期となる五年間の繰越措置の創設によりまして、赤字でも人材確保のために賃上げに挑戦する中小企業の後押しとなるように、抜本強化させていただくものでございます。

 加えて、中小企業は構造的な人手不足を乗り越える必要もございます。

 生産性を向上し、収益、売上げを拡大すること、このため、省力化投資への支援をさせていただきます。また、革新的な製品、サービスの開発に向けた設備投資等の支援を行います。これらを令和五年度補正予算にて既に措置しておりますけれども、これらの取組によりまして、中小企業の賃上げ環境をしっかりと整えてまいりたいと存じます。

津島委員長 答弁は簡潔にお願いします。

馬場(雄)委員 ありがとうございます。

 余りにもちょっと長くて何かまた拍子抜けするんですけれども、今の言葉が本当に中小企業の経営者の方々に届くのか、あるいは、中小企業で働いている労働者の皆様方に、本当にそうやって希望の光になるような言葉で話されているのか、私にはすごく、違和感という表現よりかは強い言葉で表したいですけれども、極めて、今のお言葉だけで私は賃上げが起こるとは思いませんでした。

 パートナーシップ構築宣言というのもあると思うんですよね。パートナーシップ構築宣言、これは経産省さんがつくられております。

 そして、すばらしいことに、宣言、四万社を超えたわけでございます。価格に関する決定方法に関しても幾分明記がされているわけですよね。それをもって周知というふうに中小企業庁の皆様方は考えたわけですよね。そうですよね。これを、よかったら、皆さん、是非スマホで見ていただきたいんですけれども、インターネット環境がある方は。これでは起きないですよ。

 是非よく見ていただきたいんです。四万社のそれぞれ一つ一つの宣言、価格決定方法についての部分、よかったら鈴木財務大臣も時間のあるときに御覧になっていただければというふうに思うんですが、四万社ほぼ全て同じ言葉です。

 これは本当にびっくりするんですけれども、句読点の丸、改行するところだけは違ったりする企業がありましたけれども、ほとんどが百四十七字で決まっています。建設業は二百五十四字。あるいは、これ以外の文書、私、ごめんなさい、四十社ぐらいばあっと見ましたけれども、それ以外の文書は見当たりませんでした。

 大学生のときに、コピペは駄目だよという話をよく言われましたけれども、コピペそのものですし、最近はAIの方が主流になってきましたけれども、コピペという言葉はある意味死語になってきているかもしれませんが、これはコピペすればいいんですかという話になっちゃうわけです。

 中小企業に対して価格転嫁をしっかりしていきましょうというものよりも、補助金が欲しいから、取りあえずこれだけくっつけて宣言文だけ出しておけば補助金をもらえるからいいよねというふうに、モラルの低下を促進させる政策になっていないのか、私は甚だ疑問が残るわけでございます。

 その点、経産省さん、もう一度お答えください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただきましたパートナーシップ構築宣言、こちらには私どもの方からひな形を示しておりまして、そのひな形の中に含まれております下請中小企業振興法に基づく振興基準の遵守、これを、宣言を行った企業は、含めて御宣言いただいているものでございます。

 これはすなわち、振興基準にのっとって取引の適正化を図るというものでございまして、価格転嫁を推進していく、こういう仕掛けというふうになってございます。加えまして……(馬場(雄)委員「委員長」と呼ぶ)

津島委員長 答弁は簡潔に。

山本政府参考人 恐れ入ります。

 さらに、これの実効性を高めるという観点から、宣言企業の取引先についての調査も実施してございます。そのフィードバックも行いまして、実効性を高めてまいります。

馬場(雄)委員 では、中小企業庁は、四万社、これから更に増えると思いますが、コピペでいいということを宣言されますか。

山本政府参考人 私ども、パートナーシップ構築宣言において、発注事業者が対応していただくべき内容、これについては、広く振興基準の遵守も含めて実施していただきたいと思います。コピペという内容とはちょっと違うものであるのではないかと存じます。

馬場(雄)委員 ごめんなさい、ここに全部ありますけれども、全部同じ文章でしたよ、会社だけ違いますけれども。それが、今の国の政府が本気で実現したい中小企業への価格転嫁を促進するという政策なんですか。それは絶対に間違っていますよ。それは違う。これが政策であるという時点でやはりおかしいですよ。

 先ほどもいろいろな議論がありました。軸足が調わない、この国の向かう羅針盤がどこにあるか分からない。どこに向かっているのか、我々は分からないわけです。価格転嫁を促進しましょう、口ではきれいなことを言いますけれども、実際にやっていることがこんな状態で、我が国はどこに行くんですか。本当に価格転嫁をしたいなら、そこに魂を持った政策で動かしていただきたい。

 大臣、よかったら、これは省庁が違うわけなので、大臣の所管でないことは重々承知しているんですけれども、今回、この賃上げ税制、間違いなく中小企業へも波及させていきたいという思いは、この税制の中に含まれている精神だというふうに思います。だからこそ、省庁の垣根を越えて、改めて、どういう政策で中小企業を動かしていくのか、大企業を動かしていくのか、そのことの魂を含めた政策にしていただきたいということを、メッセージだけいただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 賃上げが一番の重要な課題であるということ、特にも中小企業の賃上げが重要である、そういうふうに認識しております。あらゆる省庁にまたがって政策総動員で対応しなければいけませんが、財務省が所掌する部分、殊にも税制等については、他省庁とも連携を取りながら、しっかり対応してまいりたいと思います。

馬場(雄)委員 本当にそういうふうに願っています。御期待申し上げたいと思いますし、我々もしっかりやっていかなければいけないというふうに思います。

 正直、ここに予算をかけるくらいであるならば、本会議の質疑のときにも申し上げましたけれども、社会保険料の引下げに対する、どういうふうな政策ができるのかとか、そういったところに、このぐらいのものしかやらないんだったら、組み替えた方がいいというふうに思いますし、今、本当に、これからインフレ、今もデフレ脱却という言葉はありますけれども、インフレに向かっていくわけでございます。インフレの調整を図るためには、正直、課税最低限の引上げも大きな柱の一つとして今後見ていかなくてはならないものだというふうに思います。政府の中で具体的な検討に入っているのか、その点について、最後、お聞かせください。

青木政府参考人 御指摘いただきましたのは、インフレに伴うブラケットクリープのお話かと思います。

 ブラケットクリープでございますが、一般に、物価上昇と同率で収入が増加した場合、物価動向を加味した実質的な収入が増えない一方で、所得税の負担が累進的に増加することにより実質的な税負担が上昇する事象を指していると承知しています。

 このいわゆるブラケットクリープといった事象への対応としては、各種控除の見直しなども検討課題になり得ると考えられますが、日本においては、物価上昇率が足下を除きまして三十年近くにわたって低位で推移してきたことに加えまして、極めて厳しい財政事情であるということも踏まえる必要があり、慎重な検討を要するものと考えております。

馬場(雄)委員 この国の形、本気で捉え直したいと思いますし、この形をつくり直す使命が私たちにあるということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて馬場君の質疑は終了いたしました。

 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久でございます。

 前回にも質疑に立たせていただいたので、質疑できなかった内容について、本日は十分だけですけれども、短い時間ですけれども、質疑させていただきます。

 本年二月十三日の本会議にて、税制全体の構造をフラットタックスに近づける必要性についてお尋ねしました。簡素な税制度というところが目標でありまして、このことについての必要性については認識いただいているという答弁を財務大臣からいただきました。一方で、所得再分配機能が損なわれることがないか慎重に検討ということもおっしゃっていただいたんですけれども。

 では、慎重に検討していただいた結果、どうかということで。つまりは、所得の再分配の話はよく分かります。一方では、努力が報われる社会をつくっていこうと思ったときに、つまり、公平なる社会というところで、頑張ったのに所得が上がれば上がるほど税率が高くなっていくところに、何となく、頑張った人の中でも不公平感も感じられている方もおられると思います。

 再分配の考えでいくと、一方で、所得が低い方に対しては、その場合はやはり福祉の部分でしっかりと現金給付など、その施策をしっかり手当てしていく必要性はもちろんあります。だけれども、税制を簡素化するという立場と、あと、再分配機能と併せて、いわゆる所得の高い人だけでなく、税金を払っている方々が、本人がどれだけ税を納めて、どれだけのサービスを受けているかということが分かる、つまり簡素化した税制というところもここに入ってくると思うんですけれども、税制を簡素化すること、国民が自らどれだけ税を納めているかを分かりやすい制度にする、この二点について財務大臣はどのように捉えていますか。

 加えて、フラットタックスについてどのようなお考えか、もう一度お尋ねいたします。

鈴木国務大臣 伊東先生から御指摘いただきましたフラットタックスにつきましては、簡素な税制度と簡素な手続を構築する御提言であると理解をいたしました。

 税制が簡素であること、これは租税原則の一つとして重要な点であると思いますが、例えば税率構造をできるだけ簡素化するということであれば、再分配機能が損なわれるおそれがあるなど、税制について検討するに当たりましては、簡素以外にも公平、中立の観点も踏まえる必要がある、そのように考えております。そして、この簡素ということが納税者の事務負担の軽減という意味でのお話であるとすれば、この観点は大変重要な御指摘である、そういうふうに思います。

 国税庁では、電子申告の利便性向上やキャッシュレス納付の推進など、税務手続のデジタル化を進めているところです。例えば、令和五年分の確定申告からは、マイナポータルと連携をいたしまして、取得された源泉徴収票のデータの確定申告への自動入力を可能とするなど、新たな取組を開始しているところです。引き続き、納税者の利便性の向上に向けて、税務手続の簡便化に努めてまいります。

 いずれにしても、簡素という視点は重要なものと理解をしております。

伊東(信)委員 公平というのは、頑張った方は頑張ったなりにその恩恵をやはり被るべきで、平等という観点では、大臣のおっしゃることはよく分かるんですね。分配の方も、やはり今、だったら歳入庁をつくるなり、全部、国民の負担を一本化するべきだというのが我々の考えでありまして、再分配するんだったら、福祉の部分でしっかり現金給付など、その施策を当てていくなり、しっかりと分けて考えていく方がいいんじゃないかなと思います。

 時間もたってきましたので、次の質問に移ります。

 同じく本会議で金融所得課税についてお尋ねしました。つまり、所得税の総合化についてお尋ねしましたら、まず、金融市場にゆがみを与えにくいことと考えて、他の所得から分離して単一税率により課税していると。金融所得のうち上場株式の譲渡益などに対し、つまり金融所得課税に対して分離しているのは、金融市場にゆがみを与えにくいとおっしゃっていたんですけれども、これはちょっと意味がよく分からないんですけれども、これは正しいでしょうか。ちょっとまずお答えください。

青木政府参考人 お答えします。

 金融所得のうち上場株式の譲渡益等に対し、他の所得から分離して単一税率により課税しておるわけでございますが、これについては、仮に、総合課税が別途この比べる対象になるんですけれども、分離課税で単一税率にしていることによりまして、税負担の軽減を目的とした意図的な金融取引を、タイミングを調整する行為を抑制することになります。これがひいては金融市場にゆがみを与えにくくなる、そういう趣旨でございます。

伊東(信)委員 そういったタイミングの話もよくは分かるんですけれども、ゆがみとまで言うのはちょっと言い過ぎでないかなと認識しております。

 分離課税にしておくのは、やはり高所得者に有利であり、いわゆる一億円の壁みたいな問題も出てくると思うんですね。つまり、先ほど、頑張った人、つまり高所得者の話をしましたけれども、こういったところで何かバランスを取っているような意図が見えて仕方がないんですけれども。

 格差拡大を防ぐという観点では、やはり総合課税というのは非常に有効であると考えているんですけれども、実際、さっきの金融市場のゆがみというのも、大臣のお言葉だったので大臣からお答えいただきたかったんですけれども、それはまあいいとして、総合課税化というのは、格差拡大を防ぐという観点というのに非常に意味合いがあると思いますけれども、財務大臣のお考えをお聞きします。

鈴木国務大臣 格差、高所得者とそれから低所得の方の格差ということであると思いますが、高所得者も含めた租税負担の公平性の確保、これも重要な課題であると認識をいたしております。

 昨年度の税制改正では、極めて高い水準の所得を対象として追加的に負担を求める措置を導入することとしております。

 今後とも、こうした措置の効果をよく見極めつつ、高所得者の租税負担の公平性について、必要な対応を引き続き検討していきたいと考えます。

伊東(信)委員 政府としては、公平、中立、簡素という租税原則ということでおっしゃっていますけれども、この公平、中立、簡素をいい具合に使い分けているような気がして仕方がないんですね。例外として、租税特別措置というのの積み上げというのもあるんですけれども。

 やはり、少子高齢化を始めとする中期的な経済社会の構造変化に応じて見直しを行うことによって、あるべき税制を構築していくことが重要とおっしゃったんですね。だけれども、この中期的な税制の構築に向けてということで、すぐアクションを起こすとは考えていない、今後必要に応じて検討していくような言いぶりになっているんですけれども、やはり少子高齢化を始めとして待ったなしということで、我々維新の会は、やはりフローからストックへのかけ声の下に資産への課税を強化することを考えております。

 先ほど、中期的な構造変化に対応したあるべき税制の構築の、この中期的というのは具体的にどういうことでしょうか。どれぐらい中期的で、あるべき税制の構築の、このあるべきとはどのような税制なのでしょうか。大臣からその中身について具体的にお答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 私の感覚では、中長期的というのは、仮に何年から何年間の間とかそういうふうに定まったものではないと思います。といいますのも、経済社会情勢の変化に対応するということでありますから、こうした変化がどういうようなスパンの中で起こるのかということにもよるんだ、そういうふうに思いますので、中長期的なことを具体的に述べることは難しいんだ、そういうふうに思っております。

 ただ、政府といたしましては、少子化など国内外の経済社会の構造変化を踏まえた喫緊の課題に対応するために、与党税制調査会の議論を踏まえつつ、税制の不断の見直しを行っているところであります。

 例を少し挙げますと、近年の改正におきましても、令和五年度税制改正では、貯蓄から投資への流れを加速し、分厚い中間層を構築するためのNISAの抜本的拡充、恒久化を行ったほか、今般の税制改正では、子育て支援の観点から、子育て世帯に対する住宅ローン控除、住宅リフォーム税制の拡充、そして物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げを目指す観点からの賃上げ促進税制の強化など、そうしたことに対する対応を行っております。

 引き続きまして、その時々、先送りできない課題に対応するために税制の在り方を検討してまいりますが、先ほど申し上げましたように、公平、中立、簡素の原則等も踏まえて、社会経済の情勢の変化にも対応できるような税制の構築に向けての検討を行ってまいりたいと思っております。

津島委員長 伊東君、申合せの時間が経過しております。

伊東(信)委員 はい。

 時間なので、しっかり守って終わりますので。積み残しの部分について我が党の議員がまた追加で質問するかもしれませんので、しっかりと更に深くお答えください。

 ありがとうございます。

津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会、埼玉の沢田良と申します。

 本日も引き続き所得税法の改正案に対する質疑をさせていただきますが、特に賃上げに関する取組など、省庁を横断するような政策についてメインに取り上げていきたいと思っております。

 我が国では長らく縦割り行政という言葉が取り沙汰されており、二〇〇一年に内閣府ができてから状況は余り変わらないように感じています。ここにいる委員の皆様も、省庁のレクがあるときに、この問題は所管外ですという言葉が言われてしまった御経験、私もまだ三年目ですので、結構あります。

 一方で、現在では、政府の打ち出す政策、これは重要な政策は特にパッケージ化されているようなものが多く、一般的になってきているように感じます。日本を取り巻く状況が複雑化する中で、多くの重要政策もまた複数の省庁にわたって進められているという印象を感じております。特に財務省は、各省庁とのやり取り、これを、それぞれの政策に対する思いを聞き取りながら予算を配分するという立場として、他省庁とのコミュニケーションが重要であるというふうに思いますので、その点を頭に入れて議論をさせていただきたいと思います。

 本日も、津島委員長を始め、委員、理事の皆様、鈴木財務大臣、そして今日は厚生労働委員会より副大臣の宮崎副大臣、そして日銀から清水理事、今日はよろしくお願いいたします。

 まずは、最近、日銀の植田総裁が発言の中で、先行きの消費者物価をめぐり、去年までと同じような右肩上がりの動きが続くと一応予想している、そういう意味ではデフレではなくインフレの状態にある、こういう認識を出されたことが多くのメディアに報道されました。やはり、その際には、政策を決める際には、足下の物価上昇率というよりは、短期的な物価上昇の変動要因を除き一年半とか二年くらい続くような基調的な物価上昇率を見て判断するという話も同時になさっております。

 これは今朝の清水理事、分科会で発言が上がっていたんですけれども、二%の物価安定目標の安定的、持続的な達成が見込まれれば解除の動きもあろうが、現時点では見通しが実現する十分な確度は持っていない、十分な確度が見込まれれば見直しを検討する、物価の状況、とりわけ賃金の動向もしっかり確認してまいりたいという発言もありました。

 今日は清水理事に来ていただいているんですけれども、日銀総裁のこの先行きの消費者物価に対する発言について、改めて、清水理事、どのように感じたのか、発言いただきたいと思います。

清水参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の国会での総裁の発言は、このところ、消費者物価の前年比はプラスの状態が続いており、先行きも、一月の展望レポート、これは私どもが一月に出したものですけれども、そこでプラスが続くと見込んでいる、そういう趣旨を申し上げたものというふうに理解してございます。

 その上で、物価について改めて私どもの判断を申し上げたいと思いますけれども、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、このところ、前年比伸び率のプラス幅は縮小しておりまして、一月はプラス二・〇%となっております。

 これは、これまでの輸入物価上昇を受けた値上げの動きが鈍化していることに加えまして、政府の経済対策の影響もございまして、エネルギー価格の寄与が大幅なマイナスとなっていることを反映したものでございます。

 一方で、賃金の上昇を反映する形でサービス価格が緩やかに上昇するという姿は続いております。

 その上で、先行きでございますけれども、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は引き続き減衰していく一方、賃金と物価の好循環が強まる下で、サービス価格等は緩やかな上昇を続けるというふうに考えてございます。

 私どもの一月の展望レポートでは、基調的な物価上昇率は、二〇二五年度にかけまして、二%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと予想していること、また、先行きの不確実性は高いものの、こうした見通しが実現する確度が引き続き少しずつ高まっているということを指摘したところでございます。

沢田委員 丁寧に御説明ありがとうございます。

 世間が本当に騒ぐ理由というのは、やはり金利の大きさですよね、金利のパワー。これはやはりすごいなと。

 この前の本会議ですか、総裁の発言の中にも、金利全般が一%上昇したという場合に、保有国債の評価損は約四十兆円程度出ると。

 これは、例えば住宅ローンは、私も借りているんですけれども、住宅ローンで考えると、やはりとんでもない動きが起こる。例えば五千万円を三十五年ローンで元利均等変動金利、今、最低、大体〇・四%になります。ここで借りた場合に、月額は大体十二万七千五百九十五円、総支払い額は三十五年で五千三百五十八万円になります。これは、一%金利が上がると、月額の支払いが二万三千五十九円増えて、十五万六百五十四円。総支払い額は六千三百二十七万。二%上がれば、月額の支払いは十七万六千七十八円。

 消費税で私たちは何%、何%というのに結構慣れているところがあるんですけれども、住宅ローンを借りている人からすれば、桁違いな上がり方をしていく。金利四・六%までいけば、月額の支払いというのは倍にまで膨れ上がるんですね。二十三万九千七百三十四円。総支払い額は一億を超える、五千万借りたときに。

 これが直接、金利全てとつながるものではないとしても、これぐらい金利のインパクトがあるというときに、市場の中でこの金利に対して日銀がどう動くのかということに対しては、すごくデリケート、かつ、いろいろなことを見ているというふうに感じています。

 賃金の動向だけでなくて、原材料、資源価格、為替水準、GDPギャップなど、物価に大きく影響するものはありますけれども、これは重要であると思います。ただ、私は、雇用の最大化であったり名目成長率の持続的な成長、この観点はより、もっと強く発信をしていただきたいなというふうに思うんですね。

 その部分において、清水理事、どう考えられていますか。

清水参考人 お答え申し上げます。

 我が国の景気の認識ということかと思いますけれども、我が国の景気は緩やかに回復しているというふうに判断してございます。

 そうした下で、雇用面でございますけれども、雇用者数は緩やかな増加傾向にありまして、労働需給は引き締まっているというふうに見てございます。

 また、景気が緩やかに回復する下で、賃金の上昇をサービス価格に反映する動きもございまして、物価上昇が続いていることから、名目経済成長率はプラス基調にあるというふうに認識してございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 是非、私、元々、財務大臣にも過去に質問させていただいたんですけれども、やはり今、日銀の目的の方に、雇用の最大化といわゆる名目経済成長率の持続的な成長というのを追加していただけないかということで、議員立法の方も出させていただいたんですけれども、これは、今、日銀の目的の方に含まれているという認識を持ったという発言をいただいているんですね。この部分は、私、本当にやはり大事な部分で、まさに日本の構造的な部分で持続的な成長を続けていけるかというところをつぶさに発信するという大事な部分になってくると思いますので、是非、引き続き、こういった部分の発信も日銀の方から強めにいただけるとありがたいというふうに思っています。

 先ほど清水理事の方からもいただきましたけれども、次、賃上げ税制について話をしたいんです。

 やはり、賃金を上昇させていくということが物価の安定にもつながっていく、そして私たちのこれからの暮らしにもつながっていくということになっていくと、今までの賃上げ税制、長きにわたって続けているんですけれども、私は、これはあくまで賃金を上げていくというインセンティブを企業さん含めてそういった方に働きかけていく、こういう一義的な役割は大きく担っていたんじゃないかなと感じつつ、昨年に政府は三位一体の労働市場改革という大きな方針を出されております。私、内容が個人的には大変応援していて、昨日の分科会でも武見大臣と議論させていただきました。

 まさに、構造的なことというのは鈴木財務大臣もいろいろなところで使われていると思うんですけれども、賃金を上げていく構造的なところは、雇用の在り方をしっかりと確定させていくこと、私はそこに懸かっているというふうに思うんですね。

 賃上げ税制は、あくまでしっかりとした雇用ができたところにどれほど援護射撃をしていくかというふうなイメージで私は見ていると、いわゆる賃上げ税制をどんどんどんどん吹かしてより高めていくというよりかは、その予算を本当は厚生労働省の方にどんどん持っていって、雇用とはどうあるべきなのか、雇用とはどういう形なのかということに積極的に力を入れていくというような考え方を軸に、どう後押しをするかという転換を、昨年の三位一体の労働市場改革のときに私は一つの方向性として変わったんじゃないかというふうに思っているんですね。でも、同じ方向性を向いているのかなと思ってしまう部分もあるんです、個人的には。

 そこで、例えば今回の賃上げ税制、令和四年度の実績でいえば、財務省がやっている部分でいえば、五千百五十億円と大変大きなお金を使われました。そこを、厚生労働省の方は、三位一体の労働市場改革が出てから、私はこれほど大規模な追加の予算があるというふうには、客観的にはちょっと見えなかったんですね。詳細はちょっと把握できていないんですけれども、それがもし分かったら、副大臣の方から教えていただきたい。

 昨日、コンサルティング会社アクセンチュアから、新たな分析の結論として、銀行業界はほかのどの業界よりもAIの恩恵を受ける潜在的な可能性がある、行員が現在費やす勤務時間のうち、AIの影響を受けにくい業務の時間はたった二七%しかないと言っているんですね。七三%も変えられる。要は、新しい技術がこれほどまでに私たちの雇用に影響を及ぼすというような中で、私は、これは激動の時代にやはり入ってきたのではないのかなと。

 これは、雇用を所管する厚生労働省が限られた予算を超えて構造的な賃上げのために全力を尽くしていただくという場面かと思うんですけれども、副大臣、是非その意気込みも一緒にお願いいたします。

宮崎副大臣 御質問ありがとうございます。

 沢田先生御指摘のとおり、構造的な賃上げを実現するために、企業において、雇用が内部労働市場においても活性化をして、その内部労働市場の活性化を踏まえて、外部労働市場における労働市場全体が活性化をしていくこと、こういったことによって雇用がしっかり成立していくことは大前提でもあるし、重要な要素であると思っておりますので、労働市場改革が前提として必要なんだという趣旨の御指摘は、全くそのとおりだと思っております。

 私も今、全都道府県で開催をしております地方版政労使会議というものに足を運んでおります。沢田先生の御地元の埼玉県にもお邪魔をさせていただきましたが、地方ではどこでも人手不足が深刻だということを、賃上げの議論をする中で切実な声を、御指摘を受けているところであります。

 賃上げには原資が必要でありますから、構造的な賃上げには構造的な原資の確保が必要だというふうに言えるわけでございまして、地域の産業を活性化させるという意味でも、よい人材の確保が一層重要な課題となっているわけです。

 そのためにも労働市場改革が重要だと認識していまして、令和六年度予算案においては、三位一体の労働市場改革を進めるために、リスキリングによる能力向上支援に向けては、個人の学び直しを支援するための教育訓練給付におけるデジタル分野の人材育成に百二十八億円、成長分野への労働移動の円滑化に向けては、特定求職者雇用開発助成金による成長分野などへの労働移動支援に百四十三億円など、予算を盛り込んでいるところでございまして、この三位一体の労働市場改革を実現させることによって、構造的、持続的な賃上げに全力で取り組んでいく、そういう決意でおるところでございます。

沢田委員 全力の決意、ありがとうございます。

 是非、これは財務大臣に、先ほどもちょっとお話しさせていただいたんですけれども、やはり、今聞いた、厚生労働省が三位一体改革における追加的な措置としてもらっている金額、私、桁が違うんじゃないのかなというふうに思う部分もあるんですね。

 やはり、私たちが働いて税金を納めていく、その流れの中のまさに雇用というところは、これから劇的な状況に入り始めます。その劇的な状況に、構造的に雇用をどういうふうに安定させていって、そして三位一体改革が示すような、今までの働き方を一歩踏み出すというところを考えると、ここにしっかりと人、物、金を投資をして、それをどうやって後ろから、賃上げ税制を含めて後方射撃していくかというふうに考え方をくるっと変えないと、私、やはり、この五年、十年苦しむのは働いている皆さんになってしまうというふうに思うんですね。

 我が国の人口が減少している中で、構造的にも国民負担率が上がってしまう、社会保障費が上がってしまう、ここは多くの議員が受け入れつつも、どうやってこれからいくかという状況に入っているというふうに思います。

 なので、今年の決まった予算は粛々と進めていただく上でですけれども、次年度以降は、厚生労働省の人を雇用するという部分にクローズアップして、財務省としても是非、賃上げ税制ももちろん大事です、けれども、もし綱引きができるのであれば、ここはやはり、厚生労働省の三位一体の労働市場改革の方に予算を回していくような働きかけを是非行っていただきたいというふうに思うんですけれども、大臣、先ほどの副大臣の決意も含めて、コメントをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 企業による思い切った賃上げを実現していくためには、あらゆる政策を総動員していくことが重要と考えておりまして、そのあらゆる政策の中には賃上げ促進税制も入るものと理解をしております。

 先ほど厚労副大臣からお話がございましたが、三位一体労働市場改革の取組の重要性とともに、リスキリングによる能力向上支援や成長分野への労働移動の円滑化に向けた予算措置についてもお話がございました。

 このほか、賃上げ促進税制について申し上げますと、今回の税制改正において、赤字法人の賃上げも後押しする観点から、中小企業向けに五年間という長期にわたる繰越控除制度を創設するとともに、大企業には段階的に七%までの更に高い賃上げ要件を創設するなど、賃上げの裾野を更に広げつつ、より高い賃上げへのインセンティブを強化しております。また、人への投資を促進する観点から、教育訓練費に係る上乗せ特例について、適用要件を緩和することとしております。

 物価上昇を上回る構造的な賃上げを目指す上で、今はまだ賃上げ促進税制の規模の縮小を議論する段階にはないと認識をしておりますが、こうした税制や予算上の取組を通じまして、御指摘のありました厚労省が所管をしております様々な事業も含めて、政策総動員で構造的な賃上げを実現してまいりたいと考えます。

沢田委員 大臣、ありがとうございます。

 宮崎副大臣、今日はありがとうございました。もう退席いただいて結構です。

 僕はずっと民間の会社をやってきたんですけれども、賃上げ税制と、実際に構造的な三位一体の労働市場改革というのを一体化して予算の枠組みが私は必要なことだと思っていますので、特に、国民負担率が上がっている中、新たに予算をつくってどんどん増やせばいいということをお願いしているわけではなく、是非、そういったもう必要だと思える予算があるのであれば、うまく使い回していただけるということをお願いできればというふうに思います。

 続きまして、以前、日本維新の会、伊東理事の方から質問させていただきました。我が国の研究開発投資額が、GDP比で見ても諸外国と遜色ないというレベルにもかかわらず、やはり、米韓と比較してコンピューター及び情報通信産業の比率が低くなっている背景というところで、大臣から答弁をいただいたものがあるんですけれども、これは、経済状況や企業業績、産業構造、政府による政策内容の違いなど、様々な要素があると考えておりますという、ふわっとした御返答をいただいたんですね。

 ただ、これは、GDP比で他国と遜色ない投資は行っているのに効果が出ていないということをはっきりとおっしゃってしまっている以上は、やはり、どこかで政策ミスであったり、日本の方向性、かじ取りが間違ってしまっているということを、大臣がもうはっきりと私たちにボールとして投げていただいたというふうに私は思っております。

 ただ、大事なことは、これは、投げて、受け取れないボールを私が投げることよりかは、やはり大臣の問題意識の中で、いろいろなものがあると思います、特にどこなら動いていけるか。私は、自分が日本維新の会で野党という存在にいても、やはり、しっかりと往復して、より国民生活に上げられることであったらば是々非々で協力をしていくという形を取っていきたいというふうに思っています。

 正直、大臣のあの答弁では、どこに問題があるのか、我が党からすれば、規制緩和や構造改革が必要なんじゃないかと思う反面、実はもっと違ったところに要素があるんじゃないかという見方もできてしまうんですね。

 もし、大臣、そこを踏み込んで教えていただけたら、一言いただきたいと思います。

鈴木国務大臣 沢田先生が御指摘になられましたとおりに、日本の研究開発投資額は、対GDP比で見て諸外国と比較しても遜色のない水準にあるわけでありますが、一方で、日本経済がイノベーションの停滞という課題に直面しているのも事実でございます。

 その背景でありますけれども、様々な要因があると思いますけれども、例えば、世界経済フォーラムの国際競争力レポートなどにおいて、日本の研究開発における産学連携の順位が相対的に低いことにも表れておりますように、自前主義に陥り、オープンイノベーションが活性化していないということも要因であると考えております。

 こうした課題を踏まえまして、政府としては、産学官連携による共同研究開発の支援や、二〇一五年から研究開発税制についてオープンイノベーション型を講じるなど、企業の枠を超えたイノベーションを促しているところでありますが、引き続き、財務省といたしましても、イノベーションの停滞というこの課題につきまして、関係省庁と連携して、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

沢田委員 まさに、その具体的な部分を今回の予算の中ではいろいろと提起をしていただいているというふうに思っております。

 ただ、やはり問題は、これからの日本の構造をどういうふうに改革していけるか、まさに三位一体の労働市場改革の中にも改革という言葉が入っています。今までの当たり前をどう乗り越えていけるか。アベノミクスの大きな失敗は、金融政策ではなくて、その後にある成長戦略、ここを余りにもしっかりとやり切れなかった。いろいろな問題があったのは重々分かっています。けれども、そこは、しっかり残された皆さんに動いていただく、残っている私たちがやっていかなければいけないことだというふうに思っておりますので、是非踏み込んだ御意見も、今後とも大臣にいただければと思います。

 今日はありがとうございました。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の藤巻健太でございます。

 所得税法等の一部を改正する法律案に関して質問させていただきます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 厚生労働省発表の毎月勤労統計によりますと、令和五年十二月の実質賃金は前年比一・九%マイナスと、二十一か月連続で下落しております。

 今回の改正が、物価上昇による負担を軽減するとともに、実質賃金をプラスにできる経済の実現をどのような経路で導くとお考えになっておりますでしょうか。

鈴木国務大臣 令和六年度税制改正では、物価上昇を上回る持続的、構造的な賃金上昇の実現、これを最優先の課題としております。

 具体的には、定額減税に加えまして、賃上げ促進税制の強化により賃上げを強力に後押しをすることで、今年、物価高を上回る所得の実現を図ってまいります。

 また、戦略分野国内生産促進税制、イノベーションボックス税制の創設などによりまして、生産性向上、供給力強化に向けた国内投資に積極的な企業をしっかりと後押しすることで、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化することとしております。

 こうした税制措置も背景に、先月閣議決定いたしました政府経済見通しのみならず、民間エコノミストの分析においても、令和六年度の賃金上昇率が物価上昇率にほぼ追いつく姿が描かれているものと承知をしております。

 政府としては、今年期待される賃上げや所得増を来年以降にもつなげ、物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げを伴う経済の実現に向けて、引き続き取り組んでまいりたいと思っております。

藤巻委員 先月総務省から発表された令和六年一月の消費者物価指数は、生鮮食料品を除いた総合指数が前年同月比二・〇%となり、依然上昇が続いており、国民の負担が大きいのは御指摘のとおりです。

 このような状況を鑑み、所得税法等の一部を改正し、国民の負担を緩和することは重要かと思うんですけれども、今回の改正が全て実施されたとして、どの程度国民の負担が軽減されると考えているのでしょうか。その効果について、定量的に予想はされておりますでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 今般の令和六年度税制改正では、所得税、個人住民税の定額減税、賃上げ促進税制の強化を始め、個人、法人の税負担の軽減につながる措置が盛り込まれてございます。

 平年度ベースで、国税約二・九兆円、地方税約一・〇兆円、合わせまして約三・九兆円の減収が生じると見込んでおります。

藤巻委員 今回の改正では、令和六年六月より所得税、個人住民税の定額減税が行われるところでありますけれども、過去において同様な措置として、平成十年には橋本龍太郎政権において定額減税が行われ、その規模は約二・八兆円でした。また、平成十一年からは小渕政権においても所得減税が行われて、その後、平成十九年まで続きました。

 今回、減税を行うに当たって、それら過去の減税措置の効果測定又は検証等は行われたのでしょうか。そうであれば、どの程度の効果があったとお考えになられているでしょうか。

青木政府参考人 御指摘ありましたが、過去、定額減税が行われましたのは、アジア通貨危機の影響などがある中で、景気対策の一環として実施された平成十年の定額減税でございます。

 こちらについて申し上げますと、財政への影響という面で見ますと、当時の経済対策の一環として、所得税、住民税合わせまして四兆円規模で実施をされております。

 経済効果という面で見ますと、減税のみでの効果は政府として算出しておりませんでしたが、公共事業なども合わせました全体、対策全体として見ますと、二%程度の名目GDP押し上げ効果が見込まれていたものと承知しております。

藤巻委員 先ほどからの質問とちょっとかぶってしまうんですけれども、今回の減税、当初、給付措置も一案として上がっていたとは思います。六月より少しずつ源泉徴収額が減る所得減税よりも、一度に収入が増える給付措置の方が物価高に対して効果があり、可処分所得も上昇するわけですから、経済効果も大きいと直感的には思われます。

 その点を踏まえて、今回なぜ給付措置ではなくて定額減税措置を選んだのか、合理的な理由はあったのでしょうか。

鈴木国務大臣 今回、給付措置ではなく定額減税を選んだ理由ということでありますが、政府といたしましては、令和六年度は賃上げが物価高に追いつくことができるかどうかの端境期に当たると認識をしております。そして、令和六年に定額減税を実施することで、賃金上昇と相まって所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭につなげたいと考えております。

 なぜ給付でなく減税かというお尋ねにつきましては、コロナ禍や物価高騰という苦しい中において、納税をしていただいた方々に所得の上昇をより強く実感していただくことが重要と考えまして、減税という分かりやすい方法が望ましいと判断したところであります。

藤巻委員 ちょっとこの質問もかぶってしまうんですけれども、今回、減税、一年限りの限定的措置だと理解しているんですけれども、当然ながら、それに対応する事務的な準備も必要となります。多くの場合、給与システムだったり徴収システム、今回のためだけに改修する必要が出てくると思います。そういった人的コスト、金銭的コスト、事務コスト、これはどのように計算されておりますでしょうか。

青木政府参考人 事務コストについて御質問をいただきました。

 定額減税の対応につきましては、政府それから地方自治体におきまして、他の税制改正項目への対応や通常の税務事務と一体となって行われますので、定額減税に係る部分の事務コストのみを試算することはなかなか難しくて、事務コストの試算は行っておりませんが、今般の定額減税及び給付金の実施に当たっては、企業や自治体を始めとする皆様方に一定の事務負担をお願いすることは事実でございます。

 このため、企業や自治体の事務の実態や実施上の課題などをできるだけ把握しながら、企業や自治体が早期に準備に着手できますように、パンフレットそれからQアンドAなどを迅速に策定、公表いたしますとともに、例えば、新規雇用者について前職での減税適用の有無の確認を不要とするなど、事務負担に配慮した制度設計を行っておるところでございます。

 各企業などの事務負担の軽減に私どもとしてもできるだけ努めてきたところでございますが、引き続き丁寧な対応を行ってまいりたいと考えております。

藤巻委員 二月八日にIMFが、対日四条協議終了に当たり声明を出しました。的が絞られていない所得税減税は、その時限的な性質や、日本の家計の消費性向が低いことを考慮すると、債務のダイナミクスを悪化させる一方で、成長に及ぼす影響は限定的と予想されるとあります。IMFもその効果には限度があると、日本の財政状況に懸念を示しております。

 この声明についてはどのように受け止められているでしょうか。

鈴木国務大臣 IMFが御指摘のような見解を示していることを承知をしているところでございます。

 物価高騰に苦しむ国民の皆様に対し、令和六年に定額減税を実施することで、賃金上昇と相まって、所得の伸びが物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭と好循環の実現につなげてまいりたいというのが定額減税を入れる目的でございます。

 賃金上昇に定額減税等が加われば、今年、所得の増加が物価上昇を上回る状況をつくり、デフレマインドの払拭と相まって、これが更なる消費や利益の増加につながり、成長が増進されるものと期待をしているところでございます。

藤巻委員 先般、内田日銀副総裁がこのように述べられております。様々なデータや情報を丹念に点検し、賃金と物価の好循環を確認していきます、そして、それをベースに、二%目標の持続的、安定的な実現が見通せるようになれば、こうした大規模な金融緩和は役割を果たしたことになり、その修正を検討することになると考えていますと。

 これは、普通に読めば、日本銀行は金融緩和を修正、巻き戻す時期が近くなっている可能性があるというふうに読めます。

 また、先日の予算委員会では、日銀植田総裁が、今はデフレではなくインフレの状態であるとおっしゃいました。そして、同行は、日本経済の需要と供給の差を示す需給ギャップについてはほぼ解消と試算しているようです。

 そこで、今回の減税なんですけれども、需要を必要以上に拡大させて、インフレを悪化させてしまうリスクはないのでしょうか。

鈴木国務大臣 定額減税がインフレを招くことになるのではないかという御指摘はいろいろなところであるわけでございます。

 政府といたしましては、定額減税の効果も既に織り込んだ政府経済見通しにおいて、令和六年度の消費者物価の見通しについて二・五%と見ており、令和五年度の三・〇%よりも低い数値となっていることを勘案すれば、この定額減税が必ずしもインフレをもたらすものとは見込んでおりません。

 これは、民間のエコノミストの平均を見ましても同様の見方がされている、そのように承知をしているところであります。

藤巻委員 六月に実施されたら、しっかりと状況を注視していっていただければと思っております。

 続いて、税制適格ストックオプションについてお尋ねします。

 この税制適格ストックオプションの優遇措置制度、この制度の導入目的について教えてください。

青木政府参考人 今般の税制適格ストックオプションの改正目的についてでございます。

 一昨年に決定されましたスタートアップ育成五か年計画の期間にある中で、この期間にスタートアップを集中的に支援するという考え方の下で、ストックオプション税制について、スタートアップが付与したものについて、年間権利行使価額の限度額を最大で現行の三倍となる三千六百万円に引き上げました。また、発行会社自身による株式管理スキームを創設することといたしました。また、社外高度人材への付与要件の緩和を行うこともいたしました。

 こうしたことによりまして、制度の拡充を図ることとしております。これにより、スタートアップの人材確保や従業員のモチベーション向上が後押しされることを期待しております。

藤巻委員 他国においてもこのような制度はあるというふうに承知しておりますけれども、日本と比べて、どの程度、どういったふうに違いがあるのでしょうか。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、諸外国におきましてもストックオプション税制が措置されております。例えば、米国では、年間の権利行使価額が上限十万ドル、それから、付与日から十年以内に行使をすること、こういった要件を満たしますと、通常でありますと権利行使時に給与所得課税が行われるところが、株式譲渡時まで課税が繰り延べられる、そして譲渡益所得として課税されるという税制が適用されるというものでございます。

藤巻委員 スタートアップ企業、ベンチャー企業等は、自社の業績が上がると一般的に株価が上昇するので、ストックオプションを付与された個々人の資産が増加し、働く人のインセンティブは、おっしゃられるとおり、大きく上がることが期待されます。また、いわゆる資産効果により、消費や新たな投資が増えることも期待されます。

 現在、これらのスタートアップ企業のうち、この制度を利用している企業、会社として制度としてあるだけではなくて、実際に利用している企業はどの程度あるでしょうか。

吾郷政府参考人 お答えいたします。

 民間の調査会社のデータによりますと、二〇二二年に新規上場した九十五社のうち、ストックオプションを利用していた会社は八十社、八四%、そして、そのうち税制適格ストックオプションを含みます無償ストックオプションを利用していたのは七十三社、七七%となっております。

藤巻委員 働くインセンティブが大きく上がることが期待できるのは、スタートアップ企業だったりベンチャー企業のみならず、いわゆる大企業や上場企業など、国際競争にさらされている多くの企業の役員、従業員、またその社外協力者にも言えることだと思います。

 今回、この税制適格ストックオプションを給与制度に組み入れている上場企業はどれぐらいあるでしょうか。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 東証が発行しております上場会社コーポレート・ガバナンス白書二〇二三によりますと、二〇二二年において、東証上場企業のうち、税制適格であるものないもの含めまして、ストックオプション制度を導入している会社は二九・三%となっております。

 市場別に見ますと、プライム市場で二三・五%、スタンダード市場で二〇・二%、グロース市場、これはベンチャー企業中心でございますが、ここでは七九・七%というのがストックオプション制度を導入していると承知しております。

藤巻委員 スタートアップの方は比較的多く利用されている一方で、上場企業の方は余り利用できていないというのが現状だと思うんですけれども、今回の制度を最大限活用してもらって企業活動の活性化につなげていくために、どのような方策をお考えになられているでしょうか。

吾郷政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の見直し、これが実現しました場合には、経済産業省といたしましては、業界に対する説明会あるいは広報などを通じましてその周知を図りますとともに、見直し内容も含めたスタートアップの報酬に関するガイダンスというようなものを策定いたしましたり、あるいは、社外高度人材に対するストックオプション税制の活用の手引を改正したりいたしまして、このストックオプションの活用促進に向けた取組を一層進めてまいりたいと考えております。

 加えて、今国会に提出させていただいております産業競争力強化法等の一部改正法案におきまして、スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できるよう、ストックオプションの発行につきまして、株主総会から取締役会に委任できる内容、期間を拡大する措置を盛り込んでいるところでございます。

 こうした点も含めまして、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

藤巻委員 今回、この制度の利便性を向上するための方策の一つとして上限を引き上げているとしても、少し金額が小さいという側面もあるとも考えられます。これは三倍の三千六百万円ということなんですけれども、この数字の根拠はどこにあるのでしょうか。

 元々、日本の賃金は他国と比べても低いのが現状です。国際的にも、人材確保の競争力を高める意味でも、もう少し大胆に引き上げて、意欲のある会社の人たちに夢を与えて、勤労意欲や事業意欲を刺激して、日本経済を引っ張っていってもらうことは一つの方策として考えられないでしょうか。

 また、優秀な研究者それから卓越した技能を持った技術者の方々が海外に流出する理由の一つに、海外の企業による柔軟かつ高額な給与システムが挙げられると思います。このような人材を国内に引き止めるためにも、この制度に限らず、成功した場合の報酬に対する課税優遇を広げることはできないでしょうか。

青木政府参考人 お答えします。

 二点御質問いただいたというふうに認識しております。

 一つ目は、三倍にした理由でございます。

 ストックオプションの税制におきましては、ストックオプションを行使して株式の交付を受ける際に払い込む価格、権利行使価額でございますが、これがストックオプションを付与されたときの株価を上回らなければならないこととされております。このため、市場におけるスタートアップの株価が上昇するに従いまして、行使できるストックオプションの数が少なくなってしまうということになっております。特に、上場前後のスタートアップの人材確保ということを考えますと、千二百万円という水準が十分に魅力的なものではなくなっているというふうに承知しております。

 具体的に、現行の限度額一千二百万円への引上げを実施した二〇〇四年と、二〇二二年、足下の数字を比較しますと、スタートアップの上場時の株価が大きく上昇しております。上場時の平均時価総額で見ますと、四十億円から百十億円と、約三倍に増加しております。

 こうしたことを踏まえまして、今般の見直しに当たっては、スタートアップが付与したストックオプションに対象を限定した上で、年間の権利行使価額を現行の最大で三倍の三千六百万円としたものでございます。

 もう一点、更なる拡充の御提案でございますが、まずは、今回の見直しの結果をしっかり見極めることが必要であるというふうに考えておりますほか、特に、所得税の優遇措置に当たっては、富裕層の優遇となる可能性もありますので、そういったことにも留意し、公平性の観点にも配慮する必要があるというふうに考えております。

藤巻委員 今回、限度額を三倍に引き上げることで、マクロ的にどのような定量的な経済効果が期待されていますでしょうか。

鈴木国務大臣 今回のストックオプション税制の見直しによりまして、スタートアップの人材確保、従業員のモチベーション向上が後押しされることが期待されます。このような資金面や人材面での課題解決を支援することによりまして、スタートアップの事業環境が整備されれば、日本全体の生産性向上、ひいては潜在成長率を高めることにつながるものと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。その有効性を実現すべく、しっかりと状況を注視していただければと思っております。

 続きまして、本改正に、電気自動車、半導体を対象に、戦略分野国内生産促進税制を創設するとあります。

 先週の土曜日、TSMCの熊本工場の開所式が行われました。政府は、第二工場を含め、一兆二千億規模の補助金を出す方針とのことです。このTSMCの熊本工場が、雇用の創出など、地域経済の活性化につながることは間違いないかとは思うんですけれども、日本全体の、日本の経済並びに研究開発環境にどのような影響を及ぼすとお考えになられていますでしょうか。

岩田副大臣 お答えいたします。

 まずもって、半導体はあらゆる産業の基盤でありまして、DXやGXの実現にも必要不可欠です。また、経済安全保障上も極めて重要な物資でありまして、日本の将来、産業競争力全体を左右する戦略物資であるとも言えます。

 TSMC、JASMに関しましては、熊本の第一工場の整備により、自動車用途を始めとした需要の増加が見込まれる、二十八から十二ナノのロジック半導体の国内における製造が行えることとなります。これにより、これまで我が国に供給能力がなかったミッシングピースが埋まることになりまして、我が国の産業全体のサプライチェーンの強靱化に大きく貢献をいたします。

 周辺産業への裨益という点におきましては、JASM第一工場に対して日本のメーカーから多数の技術者が派遣をされており、また、日本が強みを有する製造装置、部素材企業がJASMと取引を行うことが期待されます。こうしたことを通じて、我が国の産業の更なる技術力の向上にもつながるものと考えております。

 また、本プロジェクトを始めとした半導体分野での大型投資によりまして、地域における直接的な雇用増や賃金上昇などの効果に加えて、サプライチェーンに関わる産業全体が活性化することが期待されております。

 こうした流れを日本全体で継続をしていくことが重要でありまして、引き続き、半導体を始めとする国内投資の促進に取り組んでまいります。

藤巻委員 今回のTSMC熊本工場のように、外国資本企業の誘致を今後も方向性としては進めていくということでよろしいでしょうか。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 海外企業の誘致によりまして、人、物、金、アイデアなどを積極的に呼び込むことで、イノベーションの促進や雇用創出をして、日本経済の持続的成長や地域経済の活性化につなげていくということが重要であると考えております。

 この点、昨年の四月に政府が取りまとめをいたしました海外からの人材・資金を呼び込むためのアクションプランにおきまして、対内直接投資残高を二〇三〇年に百兆円とする目標を掲げて、政府が一丸となって取組を進めております。

 経済産業省といたしましても、このアクションプランに基づいて、半導体、DX、GX、バイオ、ヘルスケア等の重要分野における投資促進に向けて、引き続き、積極的な投資、対外発信、地域における誘致活動への支援、ビジネス環境の整備に取り組んでまいります。

藤巻委員 円安も進んでいることですので、これをプラス材料にして、内外の状況は変わっていく中、しっかりとした対応を望みます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、今回、五千円以下とされていた飲食費の金額基準が一万円以下にまで引き上げられます。この一万円という数字に根拠はあるのでしょうか。金額を引き上げることで飲食需要を喚起し、コロナ禍で傷ついた飲食業界の活性化につなげることができるかと考えますが、将来的には、例えば、日本商工会議所が求めていた二万円への引上げに検討の余地はありますでしょうか。

鈴木国務大臣 今回の改正におきまして、交際費から除外される飲食費の基準について、会議費の実態を踏まえて一万円まで引き上げることといたしております。

 この一万円の根拠は何かということでありますが、これは、要望省庁であります厚生労働省が都内のホテルに行ったアンケート結果に基づき、ビジネスランチでの最も多く利用されるコース価格の平均値により把握した実態を踏まえて、与党税制調査会で御議論をいただいた結果であると承知をいたしております。

 そして、今後の交際費の在り方につきましては、冗費や乱費の抑制といった交際費課税の趣旨も踏まえつつ、まずは、今回の見直し後の状況をよく見極めていく必要があるものと考えているところであります。

藤巻委員 岩田副大臣、ありがとうございます。

 御退席いただきまして大丈夫でございます。

津島委員長 岩田副大臣、どうぞ御退席ください。

藤巻委員 コロナ禍で特に大きくダメージを受けた業界の一つが、飲食業界であります。

 昨年五月に新型コロナ感染症が二類から五類に移行されて十か月近くがたちますが、飲食店に人は戻ってきていますでしょうか。この十か月で、飲食業界の状況の回復、どの程度になっていますでしょうか。データ等ございますでしょうか。

小林(大)政府参考人 お答え申し上げます。

 大手レストランやファストフードなどを会員とする一般社団法人日本フードサービス協会が実施した調査によりますと、会員企業の二〇二三年の全体の売上げは、年間を通して外食需要の回復基調が継続したことで、コロナ禍前の二〇一九年比で一〇七・七%となっております。

 一方で、同調査によりますと、会員企業の客数につきましては、二〇二三年全体で、コロナ禍前の二〇一九年比で九〇・九%と、まだコロナ禍前の水準まで回復していないと推定されております。

藤巻委員 今後、更にどのように飲食業界の活性化を図っていくか、将来的な方策、何か考えておりますでしょうか。

小林(大)政府参考人 お答え申し上げます。

 食の外部化が進展する中で、我が国の外食産業は、コロナ禍前の二〇一九年の国内生産額が二十九兆円にまで拡大しておりまして、国民生活にとってなくてはならない重要な産業となっております。

 外食産業の振興に関しましては、インバウンド需要の取り込みや付加価値向上の取組が重要でありますことから、国内外に向けた日本食、食文化の魅力発信を進めるほか、外食事業者と農林漁業者の地場産食材のマッチングなどを支援しているところでございます。

 農林水産省としましては、引き続きこうした外食産業の振興に取り組んでまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 続いて、企業の雇用環境や働き方についてお尋ねいたします。

 本改正のように賃上げの動機づけをしていくことも大事かと思うんですけれども、働く人のモチベーションそのものを上げることも重要かと思います。

 従来の日本企業の雇用形態は、メンバーシップ型雇用が主流でした。メンバーシップ型雇用とは、終身雇用や年功序列を前提とした上で、職務や勤務地などを限定せずに雇用契約を結ぶ雇用システムのことです。転勤や異動、ジョブローテーションを繰り返しながら、長期的に人材を育成するのが特徴です。

 それに対するのがジョブ型雇用で、特定の職務内容に対して、その仕事の遂行能力を持つ人材を雇用する制度でございます。雇用のミスマッチを防ぐことができますし、多様な働き方にも対応でき、専門性を高めて国際競争力を高めることも可能かと思います。欧米では、こちらの方が主流です。

 ゼネラリスト人材の育成など、もちろんメンバーシップ型雇用にもメリットは多くありますけれども、近年の業務内容の複雑化や働き方の意識の改革、テレワークの普及等々を含めると、ジョブ型雇用を社会として積極的に進めていくことも是であると私は考えておりますが、いかがお考えでしょうか。

坂本(里)政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘いただきましたとおり、ジョブ型人事についてでございますが、現在、GX、DX等に対応するための労働需要の変化や人口減少による人材供給不足の中で、御指摘いただいたような伝統的な雇用慣行において、職務やスキルが明確でないためにリスキリングの意欲が生じにくいといったような問題が指摘をされております。こうした問題意識から、昨年五月、新しい資本主義実現会議におきまして、三位一体の労働市場改革の指針がまとめられたところでございます。

 この指針に基づきましてジョブ型雇用の導入を後押しすることによって、これまでのようにキャリア決定は会社次第というシステムから脱却をして、個々の職務ごとに必要なスキルを明確にすることで、個々人のリスキリングを促し、企業内、企業外を問わず、個人が自らの希望に応じて職を選択し、キャリアを形成していく仕組みに移行する必要があると考えております。

 このために、個々の企業がそれぞれの実情に応じてジョブ型人事の導入方法を検討していただけるように、既に導入されている多様な事例をまとめまして、具体的で分かりやすい指針を本年春をめどに策定し、導入を検討されている企業の後押しをしてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ジョブ型雇用を進めると同時に、転職市場の活性も必要かと考えております。転職しやすい社会は、自分のライフステージに合った働き方を選択できること、いわゆるブラック企業から健全な企業へ転職できること、違うステージで再チャレンジすること、個人としてもメリットは大きいですし、社会全体で見ても、労働力を生産効率の高い分野や大きな経済成長をもたらす分野に移動させることは大きな意味を持ちます。

 転職市場の活性化、充実化についてのお考えをお聞かせください。

坂本(里)政府参考人 御指摘いただきましたとおり、働く方一人一人が希望する職場や働き方を選択できるようにしていくということが重要でございます。

 そうした観点からも、職務ごとに求められるスキルを明らかにすることで、個人が自らの意思でリスキリングを行っていただいて、社内、社外共に労働移動しやすい環境をつくっていくことが重要であると考えております。

藤巻委員 転職市場の活性化、充実化、労働力の円滑な移動に対して、どのような方策を現在しておるのでしょうか。また、今後どのような方向性で考えていられますでしょうか。

坂本(里)政府参考人 お答えいたします。

 産業構造、労働需要が大きく変化する中で、労働者における新たなスキル獲得とともに、円滑な労働移動のための環境整備を同時に進めていく必要があると考えております。

 このため、リスキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じたジョブ型人事の導入、そして労働移動の円滑化、これらの三つを、三位一体の労働市場改革を通じて、労働者自らの意思に基づいて、企業内での昇任、昇給や、企業外への転職による処遇改善、さらにはスタートアップ等への労働移動といった機会を確保していくことが必要であると考えております。

 具体的な取組といたしましては、リスキリングによる能力向上支援の拡充として、デジタル分野を中心とする公的職業訓練の充実や、リスキリングに取り組む個人を直接支援するための教育訓練給付の拡充に取り組んでいくこととしております。

 さらに、在職者の学び直しに対する支援策につきましては、現状七割が企業経由ということになっておりますので、これを五年以内をめどに、その過半が個人経由での給付になるように進めてまいりたいと考えております。

 こうした取組やジョブ型人事の導入の促進などを通じまして、意欲ある個人の能力を最大限生かしながら、希望する個人が円滑に労働移動できるような環境をつくってまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 労働市場改革、経済そのものに直結している非常に重要な問題ですので、しっかりと向き合っていただければと思います。

 ちょっと税金の話に戻りまして、先ほどから指摘が出ているんですけれども、そもそもの話であるんですけれども、日本の税制、これはかなり複雑過ぎなのではないでしょうか。毎年このように改正を繰り返して、税制を十分に理解できている人はほとんどいないのではないかというふうに思っております。

 税金の原則、簡素、公平、中立であります。その原則から大きく離れてしまっているのかなというふうに思うんですけれども、そういった指摘に対してはどのようにお考えになられていますでしょうか。

鈴木国務大臣 税制が簡素であること、これは租税原則の一つとして重要であると考えております。

 今般の税制改正で創設することとしております戦略分野国内生産促進税制やイノベーションボックス税制といった各種の租税特別措置によって税制が複雑になっているという面、これもございますが、こうした租税特別措置は、公平、中立、簡素という租税原則の例外として、その時々の政策ニーズに応じて時限的に講じられているものであるという点、この点は御理解をいただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、今後の税制の在り方につきましては、簡素を始めとする租税原則や経済社会の構造変化等も踏まえつつ、国民の納得感というものを得ながら検討していく必要があると考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。本日は誠にありがとうございました。

津島委員長 これにて藤巻君の質疑は終了いたしました。

 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の掘井健智でございます。

 まず、質問の順番を変えたいと思うんですけれども、拉致問題の経費についての質問をいたします。一番最後の質問から前に来ましたので、大丈夫でしょうか。

 私は、市議会議員のときから、地元の拉致被害者に有本恵子さんがおられたということもありまして、この拉致問題に非常に関心を寄せて、いろいろな活動をいたしました。

 今夜、女子サッカーのパリ五輪アジア最終予選第二戦で、日本と北朝鮮が国立競技場で対戦いたします。北朝鮮の国内ではこれを大々的に報道しております、異例なことでありますけれども。また、金正恩総書記から能登半島地震に対するお見舞いメッセージもありました。これまでにない状況になっております。

 スポーツ外交というと、ピンポン外交を思い出します。ピンポン外交というのは、一九七一年、名古屋で行われました世界卓球選手権に中国が六年ぶりに参加するということで、そこで、キッシンジャー大統領補佐官が極秘に訪中して、そして、ニクソン大統領の訪中につながりまして、朝鮮戦争のことから米中の緊張緩和が実現したということで、後の我が国の日中国交正常化にもつながりました。

 拉致問題を解決するためには、私はサッカー外交もあるのではないかと思っております。今日あたりそんな話をしているかな、そんな想像もしますし、この夏にひょっとしたら帰ってくるんじゃないのかなと、想像ですけれども、こんな想像をしておるところであります。

 これは外務委員会ではありませんので、質問いたしますけれども、この拉致対策予算は、内閣官房と内閣府で十七億八千三百万円、令和六年度、計上されております。例年も同じような金額が計上されておりますけれども、その使途を、これはどのようなものか、教えていただきたいと思います。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 令和六年度予算案につきましては、対前年度比で約一千五百万円増額し、約十七億八千四百万円を計上したところでございます。

 その内訳といたしましては、内閣官房経費といたしまして、北朝鮮衛星テレビのモニタリング強化や人工衛星画像を活用した情報収集・分析体制の強化など、情報の収集及び分析その他の調査に必要な経費で約十億三千五百万、中学生サミットの成果を活用して作成した広告動画のSNS等の若年層啓発を含む拉致問題の理解促進等に必要な経費として約三億三千二百万円を、さらに、内閣府経費といたしまして、拉致被害者給付金等の給付や生活相談など帰国拉致被害者等の支援に必要な経費、約四億一千六百万円を計上しているところでございます。

 拉致被害者御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であります。引き続き、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国の実現に向けて全力で果断に取り組んでまいりたいと存じます。

掘井委員 ありがとうございます。

 思いも聞かせていただきましたけれども、これは通告しておりませんけれども、総理は首相直轄のハイレベルな協議をしたいと、こんな非常に強い思いでありますけれども、内閣を構成する大臣のその思い、よかったら聞かせていただけませんでしょうか。

鈴木国務大臣 所管外の事柄でありますが、本会議やあるいは予算委員会などで総理の答弁をお聞きしておりますと、総理は、無条件で金正恩委員長と会う覚悟があるといいますか、そういうことを再々述べているということ、それは承知をしているところでございます。

 全然、所管外ですから申し上げる資格はないんですが、閉塞感のある段階を何かで打開しなければいけないのではないかと感じます。

掘井委員 ありがとうございます。

 次の質問に移ります。

 今回の定額減税は、政略に基づく思いつきのようにも見えます。そう見えるのは、総理又は大臣、政府参考人の発言の矛盾からくると思うんですね。

 ちょっとお聞きしたいんですけれども、衆議院の本会議で、まず、岸田総理、昨年の十月二十四日でありますけれども、岸田総理の税収上振れの還元の発言を受けまして、鈴木財務大臣は衆の財金委員会で、税収の上振れは既に使用済みで、還元には国債の発行を要するという発言がありました。総理のこの発言は財源論ではないという趣旨の答弁をしており、答弁の整合性が図られているということになっております。言い訳をしておるというふうに聞こえるんですけれども。

 この点について、さらに、令和五年十一月二十日の衆本会議で岸田総理は、コロナ禍という複数年度の間に国民が多く納めた所得税、住民税を、今度は物価高に苦しむ国民に戻すという趣旨であると説明しております。やはりこれは還元である、こう言っております。さらに、岸田総理は、この財務大臣の発言について、財務大臣は財政の構造、すなわち財政の手続上の単年度の話であるものと理解しているという趣旨の答弁をしております。あくまで還元であって、そして、財務大臣は財政の構造上の話をしている、こう言っているんですね。よく分からない、正直よく分かりません。

 さらに、鈴木財務大臣は、財金委員会の中で、十一月八日ですかね、財政構造上、還元の原資としてキャッシュがないので、仮に定額減税をしない場合と比べればその年度の国債発行額は増加するという非常に分かりやすい説明をしております。総理が言うこの還元の原資は構造的には国債発行で成り立っているということを言っており、これを聞くと、すなわち、剰余金からの還元とは言えず、私は、構造的には国債だろう、そのように思っております。

 他方、これはまた財金委員会でありますけれども、先週の二月二十日の政府参考人の答弁です。定額減税は特定の財源と一対一で対応するものではないとした上で、これはすなわち、減税は剰余金で対応するものではない、こう言っております。一般財源には色がないということですね。そして、新規国債発行額を昨年度比で減額していることから、財源に国債発行を充てているという指摘は当たらないという答弁をしております。減税の分の穴埋めは国債とは関係ない、こう言っているんですね。

 財源に国債の発行を充てていない、こう答弁されておりますけれども、これもよく分かりません。特定の財源と一対一で対応するものではないにもかかわらず、それこそ予算案は、一般歳出、また利払い、税外収入の増減で、それこそ色のない費用が変化しております。そういった中で、新規国債発行額が減ったことを根拠として特定財源である国債発行は財源になっていないということを断言できる、その理由があれば、もう少し説明していただきたいと思います。

鈴木国務大臣 私の以前の発言と主税局長の発言のことについて矛盾があるのではないかということであると思いますが、昨年の臨時国会の本委員会での質疑において、私は、減税をしない場合と比較して国債発行額が増加すると説明をいたしました。これは、国の財政の構造から見て、定額減税を行った上でその他の条件が変わらなければ、その分、国債の発行が増加することというその事実、ということは事実でありまして、そのことを繰り返し申し上げてきたとおりでございます。

 その上で、先日の主税局長の答弁については、定額減税による減収については予算の編成全体の中で措置することとしたものであり、歳出歳入両面でやりくりを行った結果、令和六年度予算案において新規国債発行額を減額していることから、減収分と国債発行を一対一で対応させ、安易に国債発行に頼ったものではないという趣旨で答弁したものと思いまして、矛盾はないものと考えております。

掘井委員 安易に国債発行に頼っていないということでありますけれども、我が国の国債発行は金融政策と密接でありますから、新規国債発行が減っていく理由もいろいろあると思うんですね。また、全体的な予算の中で、やはりいろいろな歳入があり、国債費も実際は含んでおります。お金に色がついていないのであれば、逆に、国債費も定額減税を補填するのに大きく貢献しているはずなんです。であるならば、私は、構造的にはやはり国債であると言えると思っております。

 そもそも、やはり僕は、財務省が国民を助ける減税の穴埋めをするのに国民から借金している、こういうたてつけに見えることを嫌ったから、こうなったんだろうなと思うんです。日本のこの国は健全な国債発行を含めて成り立っている、これを認めたらすっきりするのに、国債の発行となりますと、非常に財務省はいこじになりますね。増税理由を求める遺伝子的なものがそうさせるのではないのかなと想像いたしますけれども、こういう財務省だけが持つ財政規律の価値観が、大臣の答弁に矛盾をはらませ、そして、ひいては国の政策をゆがませていると私は思えてならないということを主張させていただきたいと思います。

 続いての質問です。所得税の減税について、防衛力強化に係る財源確保との関係についてであります。

 やはり、裏にありますのは、増税の先送りであります。長期的な防衛力強化に係る財源確保のための税、この措置が控えているということであります。増税の先送りで一時的に国民の可処分所得は若干プラスになるか分かりませんけれども、やはり国民は、お金を使う際に、今年や来年のことだけを考えているわけではないと思うんですね。

 少子化対策の財源の問題もありますけれども、やはり防衛増税は、時期の決定が先延びされていますけれども、防衛力強化の税負担が先にはあるということも周知されていますよね、今日の質疑の中でも。将来の負担増が意識されたままでは消費を手控えるだろうと思うんです。これは、大臣の所見、どう思われますでしょうか。

鈴木国務大臣 防衛力強化に係る確保のための税制措置でありますけれども、防衛力の強化のために税制措置を取るということがもう見えている中で減税をしても、それは消費意欲を高めないのではないかというふうな御趣旨だと思いますが、防衛力強化のための税制措置の中で、家計に影響を与えるということでいえば所得税であるわけでありますが、この所得税について言えば、付加税の創設に合わせまして復興特別所得税の税率を引き下げることとしておりますので、現下の家庭の負担増は生じない仕組みになっております。

 したがいまして、定額減税の効果を減殺するものではないと考えているところであります。

掘井委員 余り効果はないと思いますよ。

 次の質問でありますけれども、この度の所得税減税を含む定額減税、これはやはり目的を達成するためには非常に弱く、効果がないと思っております。

 先ほど野田委員の方からも指摘がありましたけれども、定額減税は薄く広く引かれております。お金が分割されるわけであります。年末調整もありますし、時には自分で確定申告をしなければならない。このことで、自治体や会社は本当に新しいシステムをつくることになって大変なんですね。納税者も、地方自治体も、誰も得をしていないと思うんです。複雑で、そして長期にわたり、実感として消費意欲を上げるものでは私はないと思いますけれども、これでも大臣、効果があるとお思いでしょうか。

鈴木国務大臣 掘井先生御指摘のように、税額の比較的少ない給与所得者の皆さんにおきましては、一回で引き切れないものでありますから、六月以降、定額減税の控除額が引き切れるまで、毎月減税が行われることになります。その期間は、それまで毎月徴収されていた源泉徴収税額がゼロとなるために、手取りの増加を継続して感じていただくことができるというメリットもあるものと考えているところであります。

 また、ボーナスを受け取る月につきましては、源泉徴収税額も大きくなることから、減税される金額も大きくなり、その効果をより実感していただけると考えられるため、減税の開始時期について、ボーナスを受ける方が多い六月からとしているところであります。

 また、事務負担が大きいという御指摘がございましたが、今回の定額減税、そして給付金につきましては、企業が減税開始後に雇用した方について、前職での減税についての確認を不要とし、またデジタル技術の活用等の執行面での工夫をするなど、各企業や自治体の事務負担にも配慮した制度設計や執行上の工夫を行っているという点について御理解を賜りたいと思います。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

掘井委員 私は、当初から消費税がいいんじゃないのかなと言っておりますけれども、いろいろな理由で、所得減税、また住民減税になったと思うんですけれども、やはり効果がない、政局のにおいが本当にぷんぷんします。

 次の質問であります。住宅ローン控除拡充と子育て支援についてであります。

 資料一を御覧になっていただきたいと思うんです。総務省の統計局の住宅・土地統計調査結果を御覧ください。上から五行目の住宅総数に占める持家の割合であります。一番上の青い色の行は世帯の年間収入の階級になっておりまして、左から順に収入が増えていきます。世帯の年収が低ければ低いほど持家率は低くなります。世帯の年収が高ければ高いほど持家率は高くなる傾向があります。年収百万円未満で四四%、百から二百万未満で五三%、世帯年収の平均は約五百五十二万円だと、五百から七百万未満で七一%になります。二千万円以上では八七%であります。

 実質は、子育て世帯のうち高い所得への減税の要素が非常に大きく、そもそも、持家住宅率が低い子育て世帯のうち、低い所得への恩恵にはこれはならないのではないでしょうか。この点について御所見を伺いたいと思います。

赤澤副大臣 大変重要な視点だと思います。

 今回の税制改正では、住宅ローン控除の拡充として、子育て世帯等に対する借入限度額の上乗せ等を行うこととしたところですが、これは、与党税制調査会の議論において、住宅ローンの利用者の中でも、子育て世帯においてはその他の世帯に比べて借入額が大きい傾向があるということや、現下の急激な住宅価格の上昇といった状況を踏まえて措置することとしたものであります。

 先生がお示しの資料の中でも、これは百から二百万円未満の世帯よりも、もうそれ以上であれば、百万円以上であれば持家の割合が半分を超えるということもあるので、今のような住宅価格急上昇といったような状況の中でこういった支援を打てば、子育て支援につながる面はかなりあると考えているのが一点であります。

 それから、もう一方、住宅を購入されない方々についても、例えば、公営住宅などについて子育て世帯等が優先的に入居できる仕組みの導入の働きかけとか、空き家の子育て世帯向けのセーフティーネット住宅への登録の促進といった施策を進めることが、子供、子育て政策における加速化プランに位置づけられておりまして、子育て支援については、歳出も含めた政策全体を通じて、それぞれの世帯の置かれた状況に応じて進めていくことが重要であるというふうに考えております。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

掘井委員 よく分かりました。

 やはり、子供を産み育てることを経済的理由で諦めない社会を実現するという目的の政策でありますから、十分に子育て支援にふさわしい施策を展開していただきたいと思っております。

 次の質問です。賃上げ促進税制の強化についてであります。

 政府、日銀は、物価が上がれば賃金が上がって消費が増えるという好循環を考えておりますけれども、実際は、株価が先に上がって、買い控えが生じて消費が落ちておると。根本にあるのがやはりデフレマインド、デフレマインドがあるということですね。この好循環は、デフレマインドが続く限り、なかなか起こらないのではないかと思っております。デフレマインド、消費意欲ですね、この払拭の実現には、一時的な減税ではなくて、特に中小企業と雇用者が本当に安心できる中長期的な支援が必要であると私は思っているんです。

 さて、この度の賃上げ促進税制の強化による減収が一兆三千億円とお聞きしております。この費用対効果はどのように評価されているのか非常に気になります。

 十三日の衆議院の本会議で、賃上げ税制について鈴木大臣は、二年前に強化されたこの税制は、三十年ぶりとなる去年の高い賃上げにも一定程度寄与した、こう意義を強調されておられました。

 まずは、従来の賃上げ促進税制の効果などの検証について伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 賃上げ促進税制の政策効果、これを詳細に把握するため、令和四年度の申告事績に基づきまして、統計的、計量的な分析を行いました。賃上げ率の要件について、現行では大企業向けは三%及び四%の二段階を設けているものの、ほとんどの適用企業が四%の要件を満たしていること、また、教育訓練費に係る上乗せ特例については、適用対象となる大企業であっても活用しているものは三割にとどまっていることといった結果が認められたところであります。

 こうした結果を踏まえまして、今回の改正では、一定の大企業には新たに七%までの更に高い賃上げ要件を創設するとともに、教育訓練費に係る上乗せ特例について、その活用を促す観点から、適用要件の増加率の緩和を行うといった形で検証結果を反映をしたところであります。

掘井委員 理解いたしました。

 次の質問です。最低賃金、これを値上げしたらどうかなという質問です。

 最低賃金の近傍労働者、つまり、最低賃金に近い低賃金で働く人の割合が二〇二二年は一四%となっています。この最低賃金近くで働く人は、十年で倍増しているとのことであります。

 物価上昇を上回る持続的な賃上げとして実効性があるのは、最低賃金の引上げではないのかなと思うんです。最低賃金の値上げはナショナルレベルのベースアップと言ってもよくて、被雇用者が安心できる、本当に中長期的な支援にもなると思います。

 各国の最低賃金について、これは資料を用意しておりますけれども、二を御覧ください。

 イギリスが、最低賃金ですよ、千九百五十七円、フランスが千八百七十二円、ドイツが千九百九十五円、アメリカは州があって州別に最低賃金を定めておりまして、ニューヨーク州の一部地域などでは時給十六ドル、つまり二千四百円ということにもなります。

 政府の方針は、最低賃金については、最低賃金審議会における議論の積み重ねによって、二〇三〇年の半ばまでに全国加重平均が千五百円になることを目指しておるとあります。この目標を前倒ししながら、もちろん、これができない理由には中小企業、零細企業があります、ここに十分な支援をした上で最低賃金を上げるということに対して、いかがお考えでしょうか。

増田政府参考人 お答え申し上げます。

 最低賃金につきましては、今年度の全国加重平均の引上げ額が過去最高となりまして、政府目標としておりました全国加重平均千円を超えたところでございますが、更に着実に引上げを行っていく必要があると考えております。

 最低賃金の引上げに当たりましては、中小企業が賃上げしやすい環境整備が重要であると考えております。厚生労働省といたしましても、中小企業の賃上げと設備投資などを業務改善助成金で支援を行っておりまして、中小企業庁などとも連携しつつ、引き続き中小企業への支援に取り組んでまいります。

掘井委員 賃上げに関して国ができることというのは本当は限られていると思うんですね。最低賃金を上げるならば、やはり中小企業が問題になりますので、そこに本当に十分な手当てをしたら可能であると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 次の質問であります。給与の総額の要件についてであります。

 賃上げ促進税制の減税の要件である給与総額に賞与が含まれるという大きな抜け穴があって、これは拡充後も同様である、こう指摘しました。これは、維新の伊東信久議員の二月十三日の本会議の質問がありました。それに対して鈴木財務大臣は、企業に対しては、新たに強化された本税制を活用して、賞与や一時金だけではなくて、ベースアップによって強力に賃上げを実現していただくことを期待しております、こう答弁されました。

 しかし、持続的な賃上げを実現するという改正目的を実現していくためには、賞与や一時金だけではなくて、やはりベースアップに限定すべきではないのかなと思ったりします。賞与や一時金の抜け道は封じるべきである。企業任せにするのではなくて、給与総額ではなくベースアップを対象に基本控除率を決定すべきではないか、こういう考えがあるんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 賃上げ促進税制について、給与総額を適用要件としていることについてでありますが、これは各企業の給与体系が多様になっておりまして、様々な支給方法に対応する必要があるということ、そしてまた、企業の実務面を踏まえ、煩雑でない制度設計とする必要があること、さらに、重要な課題である賃上げをより多くの企業に行っていただきたいとの政策判断、こうしたものによりまして、賞与等を含めた給与総額を税制措置の適用要件としているところでございます。

 持続的な賃上げの実現に向けては基本給が増加していくことも重要と考えておりますが、賃上げ促進税制の適用要件の基準の検討に当たりましては、先ほど申し上げました企業の実態等をよく踏まえる必要がある、そのように考えているところでございます。

掘井委員 たくさんの課題はあると思うんですけれども、一考していただきたいなと思っております。

 次の質問であります。大企業への課税の是非であります。

 言いにくいというか、非常に重たい問題だと思うんですけれども、二〇一五年以来、内部留保資金を活用して賃上げや投資拡大に積極的に取り組むことを期待して、法人税の実効税率を大幅に引き下げてきたという経緯があります。しかし、企業は実にこの賃上げや投資に慎重でありました。内部留保、現預金だけがやはり積み上がってきたんですね。これは企業行動を考えたら無理はないと思うんです。三十年景気が悪いわけでありますから、何かあったら大変だ、こういうことだと思うんですね。

 そこで、賃上げを期待するには、むしろ法人税率を引き上げる方が有効に機能するのではないのかなと思ったりもするんですね。私は商売もしておりますので、なぜなら、高い税率、利益の大半を国庫に召し上げることになるのならば、賃上げによって社員の士気を高揚したいな、こう思うはずなんですね。投資拡大で企業価値を高める方を選択する企業経営者が私は増えると思うんです。

 税制大綱を見ますと、アメリカやイギリスでは大型の投資減税とセットで大企業への課税強化や財政赤字削減、法人税率の引上げを断行していることを紹介しておりまして、法人税率の引上げも視野に入れた検討が必要と明記されておるんです。

 大企業への課税について、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 企業が収益を現預金として過度に保有するのではなくて、それを成長のために、そして賃上げ、人への投資、設備投資などの形で未来に向けてしっかりと活用していくようになること、これは御指摘のとおり重要なことだと思います。

 こうした点を踏まえまして、掘井先生からは法人税率の引上げというお話もございましたが、政府といたしましては、賃上げ促進税制の強化など、我が国企業の賃上げの促進や、そのための供給力の強化のための施策を令和六年度税制改正に盛り込んだところです。

 今後の法人税の在り方につきましては、これまでの改正の効果を見極めるとともに、経済社会情勢の変化、国際的な動向も踏まえつつ検討をしていく必要があるのではないかと考えます。

掘井委員 分かりました。可能性はあるということだとお聞きいたしました。

 次の質問をいたします。

 業績のいい大企業への適用の是非について質問したいと思うんですけれども、業績のいい企業は、大企業でありますけれども、賃上げ促進税制がなくても、自然に賃金が上昇していくものだと思うんですね。やるべきはやはり中小企業であると思っております。賃上げ促進税制の対象から業績のよい大企業、これは思い切って外してもいいんじゃないかな、こんなふうにも思います。

 業績に無関係に一律に法人税への減税をする、この理由といいますか、その妥当性は何でしょうか、教えてください。

赤澤副大臣 大臣からも触れた調査の結果は、大企業の、特に賃上げ促進税制を利用している企業はもう四%に張りついているというようなこともあるので、先生の御指摘も本当にごもっともなことだと思うんですが、賃上げの裾野を広げること自体が非常に大事なことだと思っておりまして、持続的な賃上げを実現していくためには、中小企業のみならず、従業員数全体の三割を占める大企業においても賃上げを促していくことが重要である、賃上げ促進税制の対象とすることが必要と考えております。

 その上で、先生がおっしゃったように、今の、これまでの税制のままだとやはり足りないということで、賃上げ促進税制の強化をしていくと。収益が拡大しているにもかかわらず賃上げや国内設備投資に消極的な企業に対する働きかけを強化する観点から、所得金額が対前年度比で増加している大企業について、一定の賃上げや国内設備投資を行わない場合には研究開発税制等の適用を停止する措置について、適用期限を三年間延長するとともに、その対象を拡大するなどの見直しも行っております。

 また、賃上げについても、最大で七%まででしたか、その引上げについて、もう少し踏み込んだようなときに、また優遇税制、更に用意をしているというような形で、見直した形で、大企業も含め持続的な賃上げが実現していくように、税制改正というものをやろうとしているところでございます。

掘井委員 分かりました。

 中小企業をどうやって助けていくかということが、非常に経済を活性していくための本当は課題だと思っておりますけれども、中小企業で働く人の割合が七〇%、大企業は三〇%と言われておりますから、中小企業で賃上げが実施されないと、やはり、賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和して、持続的な賃上げを実現していくという改正目的は、なかなか達成できないと思うんですね。

 いろいろなことを考えながら、講じながらやっていかないといけないと思うんですけれども、中小企業の六二%は赤字であるということであります。労働分配率の差が拡大しております。ちょっと時間がありますので端的に聞きますけれども、中小企業は労働分配率が約八〇%、これでは、大企業とは異なって内部留保が少ないわけでありますから、中小企業は賃上げできないと思うんですね。端的に、中小企業を対象にもっと減税できないでしょうか。

津島委員長 鈴木財務大臣、申合せの時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 はい。

 賃上げについて、中小企業についてのお話でございますが、今回の賃上げ税制の強化の中では、中小企業については、従来の賃上げ率、控除率を維持しつつ、赤字の中小企業にも賃上げのインセンティブとなるよう、中小企業向けに五年間の繰越控除制度を新たに創設するなど、思い切った強化を行うこととしております。こうしたことを通じて、中小企業につきましても賃上げが強力に進むことを期待をしているところです。

掘井委員 質問を余らせてしまいましたけれども、申し訳ございません。またの機会ということで、時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

津島委員長 これにて掘井君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、法人税について質問します。

 自民党の税制改正大綱では、日本の法人税率が約四十年間にわたって段階的に引き下げられ、現在の法人税率は最高時より二〇ポイント程度低い二三・二%となっていること、法人税率の引下げにより、企業経営者が内部留保を活用して投資拡大や賃上げに取り組むことが期待されたこと、しかし、それは実現せず、賃金や国内投資は低迷し、企業の内部留保は五百五十五兆円と名目GDPに匹敵する水準まで増加したことを指摘しています。

 そして、次のように述べています。近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかった、自民党の税制大綱です。

 鈴木大臣、同じ考えですか。

鈴木国務大臣 御指摘の近時の累次の法人税改革につきましては、平成二十七年、二十八年度税制改正で、成長志向の法人税改革として、我が国の立地競争力と我が国企業の国際競争力の強化のための税率引下げと課税ベースの拡大を併せて行いましたが、令和六年度与党税制改正大綱におきましては、近年の法人実効税率の引下げが必ずしも実質賃金の引上げや前向きな投資につながらなかったとの認識の下、田村先生御指摘のような内容が示されたものと承知をいたしております。

 我が国企業において、持続的な賃上げや人への投資、設備投資などが進んでいくことは重要であると考えておりまして、政府におきましても、これらの改革が実際にどのような効果をもたらしたかについて、今後、客観的、実証的な検証が求められるものと考えております。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

田村(貴)委員 実証、検討、そして行動しないといけませんね。

 自民党の大綱には、我が国の法人税収は、足下の企業収益の伸びに比して緩やかな伸びとなっており、法人税の税収力が低下している状況にあると指摘しています。

 資料一を御覧ください。赤色、法人税率は下がり続けています。青の折れ線、法人所得は過去最高の水準を優に超しているにもかかわらず、黄色の棒グラフ、法人税収は最高時の七七%程度しかありません。これが実態です。

 法人税の税収力の低下について、鈴木大臣はどのように認識していますか。

鈴木国務大臣 令和六年度与党税制改正大綱、今、田村先生が御指摘になられましたように、我が国の法人税収は、足下の企業収益の伸びに比して緩やかな伸びとなっている旨が指摘されております。

 例えば、平成二十四年度から令和三年度までの十年間におきまして、企業の所得金額の伸びが約一・七倍であるのに対して税収の伸びが約一・四倍にとどまるなど、近年こうした傾向が見られること、これは事実であると認識をいたしております。

 こうした点を踏まえまして、与党税制改正大綱におきましては、今般の改正において、戦略分野国内生産促進税制、イノベーションボックス税制など思い切った法人減税を行う一方で、法人税全体のめり張りづけの観点から、賃上げや投資に消極的な企業に大胆な改革を促し、減税措置の実効性を高める観点からも、税収中立の観点からも、今後、法人税率の引上げも視野に入れた検討が必要であるとの記載がなされております。

 今後の法人税の在り方につきましては、こうした考え方や経済情勢の変化、国際的な動向を踏まえて検討していく必要があると考えます。

田村(貴)委員 企業が得た純利益は配当と内部留保に分配され、内部留保金が五百兆円を超え、現預金も三百兆円に積み上がっています。配付資料の二と三です。そして、配当も上がっています。従来のやり方を改めなければなりません。下がり続けている法人税、これを見直さなければいけないと思います。

 減税額が最大である研究開発減税はどうでしょうか。研究開発減税の目的は、研究開発への投資を促すものと言われています。過去十年間で減税総額は実に六兆二千三百七十六億円にも上っています。

 資料四を御覧ください。総務省の二〇二三年科学技術研究調査結果によりますと、二〇一三年から二〇二二年の十年間で、研究開発費総額の対GDP比は横ばいです。研究費の総額は、十年前と比べて三兆三千七百九十四億円増加しています。そして二十兆七千四十億円になりました。平均すると、毎年三千三百七十九億円程度の増加であります。

 これに対して、研究開発減税の適用総額は、二〇一三年から二〇二二年の十年間で合計六兆二千三百七十六億円。平均すると、毎年の減税額は六千二百七十四億円に上ります。

 つまり、毎年六千三百億円もの減税をしているにもかかわらず、研究開発費総額は毎年三千四百億円しか増えていない。

 大臣、意図した成果がここも上がっていないのではないでしょうか。結局、大企業は、潤沢な内部留保もあり、資金がないわけではありません。減税がきっかけになっているわけではないですよね。いかがですか。

鈴木国務大臣 今申された、そういう数字があるということは事実であると認識いたします。

田村(貴)委員 市場競争の必要に応じて投資を判断しているだけではないですか。

 そもそも、研究開発減税は、資本金十億円以上の大企業に集中しています。

 昨年六月の政府税調の答申では、「例えば、減収額が最大である研究開発税制は、その恩恵を享受するのは全納税法人約百九万社のうち一万社程度であり、」百分の一、「業種別では適用額の八〇%が製造業に集中し、サービス産業の適用は少なくなっています。」と記されています。

 加えて、二〇二〇年分を見ても、減税総額全体、七千六百三十六億円の七一%が資本金十億円以上の大企業です。しかも、自動車産業や製薬産業など特定産業に恩恵が集中する異常な不公平税制となっています。

 政府税調では、「政策税制は、こうした租税原則の歪みを生じさせてなお、必要性や有効性があることが明確に認められるもののみに限定し、期限を区切って措置することが原則です。期限到来時には、必要性や有効性を検証の上、廃止を含めてゼロベースで見直す必要があります。」このように記されているわけであります。

 「廃止を含めてゼロベースで見直す必要があります。」と指摘されたにもかかわらず、ほぼ同じ制度で継続されています。反省がないじゃありませんか。

 さらに、本改正案では、平年時、二百三十億円の減税見込みのイノベーションボックス税制が創設されます。これも研究開発を促進させるものであります。目的がかぶります。

 両方の減税を、これは財務省に聞きますけれども、同時に受けることはできるんですか。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

青木政府参考人 将来の経済成長の礎となる企業の研究開発を促進する研究開発税制、それから、研究開発拠点としての立地競争を強化するイノベーションボックス税制、これはそれぞれ異なる政策目的によって講じられている措置でございまして、研究開発時点において研究開発税制の適用を受け、その研究結果として取得した特許権などから生ずる譲渡所得やライセンス所得についてイノベーション税制が、両方適用されることは可能でございます。

 その上で、一点だけ付言させていただきますと、今回、イノベーションボックス税制を創設するに当たりましては、研究開発税制の見直しにより必要な財源を確保することとしております。

田村(貴)委員 可能なんですね。意図した成果のない研究開発減税は、見直さないどころか、更に厚くするということですね。これは一粒で二度おいしい大企業減税じゃないですか。一つの研究で、開発時の投資額に減税を受けて、成果物にも減税がある。こんなやり方を続けていていいんですか。

 さらに、今回の法人税減税の目玉が、戦略分野国内生産促進税制の創設であります。経済安全保障を口実に、莫大な政府の補助金と税金が投入されます。平年度ベースで二千百九十億円の減税を見込んでいます。その減税が十年間続くことを考えれば、一体総額幾らの減税を見込んでいるのでしょうか。

青木政府参考人 総額幾らという御質問だと思います。

 措置期間全体の減収額につきましては、本税制が事業者からの計画の申請を受けまして、令和八年度までに、経済産業大臣の認定を受けてから十年という長期にわたる措置でございます。

 減収が生じ得る期間全体にわたって、各製品の市場動向、それから事業者の課税所得など、減収額を決定する要因を現時点で見通すことはなかなか難しいことから、確たることを申し上げることは困難ではありますが、その上で、あくまで一定の仮定の下で機械的に試算いたしますと、措置期間全体の減収額は一・九兆円程度となります。

田村(貴)委員 一・九兆円程度になると。この戦略分野には、補助金も含めると、国からの巨大な援助が、しかも一部の企業に与えられることになります。

 例えば、熊本県に半導体工場を建設した台湾企業TSMC、日本の子会社JASMですけれども、二十四日に開所式が行われた第一工場では、四千七百六十億円の補助金がつきます。加えて、第二工場で七千三百二十億円、合わせて最大一兆二千億円もの資金が国から補助されることになっています。

 このJASMの工場は、戦略分野国内生産促進税制の対象となるのですか。

西村政府参考人 お答え申し上げます。

 補助金と生産投資促進税制とは両立しないと認識をいたしております。

田村(貴)委員 TSMC、熊本の子会社JASMについて、この支援について伺います。

 第二工場を合わせて一兆二千億円。一方で、中小企業対策費は、新年度予算で千六百九十三億円にしかすぎないんです。その全体の中小企業対策費の七倍ものお金を一私企業に投入する。あるいは、新たな減税の対象になるかも分からない。

 鈴木大臣、歯止めのない国費の投入になっているのではありませんか。

鈴木国務大臣 そもそもでありますが、半導体支援につきましては、経済安全保障の観点から、我が国にとって不可欠な技術を他国に依存するリスクを低減することなどを踏まえ、先端半導体の製造基盤整備に取り組んでいるものである、そのように承知をしております。御指摘のTSMCへの支援につきましては、こうした政策目的実現に合致するものとして、補助金による支援を行っているものと認識をいたします。

 御指摘の誘致企業の立地する地域における人材確保や環境対策も含め、所管の経済産業省において、適切かつ効果的に予算が執行されることを期待をしているところであります。

田村(貴)委員 経済産業省岩田経済副大臣、お尋ねします。

 副大臣も九州なのでよく御存じのことだと思いますし、私もJASMをせんだって見てまいりました。もう町が一変しましたよね。報道もよくあっています。

 そもそも半導体産業を衰退させてきたのはこれまでの自民党政治であるということを前提に、ちょっと質問しますね。

 TSMCの工場で起こっている大きな問題があります。例えば、交通渋滞、これはもう大変なことになっております。それから、地価が高騰している。高い賃金に労働力が引き寄せられて、地域の雇用が深刻で、そして人手不足に陥っているということです。熊本県の最低賃金は八百九十八円です。第一工場の食堂スタッフは千五百円で募集をかけていますから、約倍です。ここに移りますよね。ラーメン屋さんが千円で募集をかけても応募がない、時給千円でかけても応募がないということです。

 さらに、熊本の水というのは地下水です。熊本市など十一の市町村は、上水道の一〇〇%を地下水で賄っているところです。一方で、JASMは年間三百十万トン、地下水をくみ上げます。枯渇がないのか、地下水は枯渇しないのか。これは本当に、県民、住民、農家の方々が心配、不安の声を上げています。取水以上の涵養をこの巨大企業はちゃんとするのか、約束を守るのか、その担保はどこにあるのか、説得ある説明が聞かされていないところであります。こうした問題、今もって政府の力で解決していませんよね。これから生じる問題、どうやって防いでいくんでしょうか。

 副大臣、私はやはり、今度の誘致に対する補助金も、際限のない、歯止めのない国費の投入によってこういう事態が起こっているということを念頭に置いて、問題点、今指摘しましたけれども、いかがお考えですか。

岩田副大臣 お答えいたします。

 TSMC、JASM工場の建設や稼働については、地域に大きな波及効果を生み出している一方で、今御指摘がありましたように、交通渋滞でありましたり、また、水を始めとする周辺環境への悪影響、そして、人材不足などの懸念の声が上がっているものと承知をしております。

 まず、環境の関係に関しましては、経済産業省としては、5G促進法に基づく認定に当たりまして、JASM、TSMCが工場の整備計画の中で我が国の法令の基準以上にしっかりと取り組んでいくことを確認をしております。

 具体的には、TSMCの全ての工場では、排水再生システムなどを活用して水の再生利用率を高めるとともに、有害化学物質規制に関する国際的な認証を取得することで、PFOS等の有害物質の使用及び製造に関して厳しく検査、確認を行っており、また、地元の熊本においても同様の対応を行うものと承知をしております。

 また、地下水の御指摘もございました。熊本県庁におきましても各種の対応を進めておられまして、地下水の水位の低下やまた有害物質の流出に関しては、地下水涵養指針を二〇二三年の十月に改正をして、新規に取水をする井戸につきましては事業者に求める涵養目標を取水量の一割から原則十割に引き上げるとともに、様々なモニタリング調査等も行っておられると承知をしております。

 また、人材面につきましては、一昨年に立ち上げました九州半導体人材育成等コンソーシアムを通じて、地域の実情に照らして、必要な人材育成を産学官が連携をして取り組んでいるところです。TSMCの工場を中心に、需要が旺盛な半導体人材のパイ自体の拡大を図って、地域企業の人材確保との両立を進めてまいりたいと考えております。

 いずれにしましても、地域の方々が不安に感じられることがないように、引き続き、熊本県庁や関係省庁とも連携をして、経済産業省としても最大限取り組んでまいります。

田村(貴)委員 副大臣、先ほど懸念の声が上がっていると言われたんだけれども、これは懸念の声じゃないんですよ。実際、影響が起きているんですよ。大問題になっているんですよ。人手不足なんですよ。そして、地場の業者さんが働く人がいないと言っているんですよ、取られてしまって。

 水の涵養、今お話があったけれども、枯渇は絶対ないと言えますか。約束してくれますか。いかがですか。

岩田副大臣 お答えをいたします。

 先ほどお触れもいただきましたが、私も九州で、佐賀県の出身でございますので、この熊本の状況等は、やはりいろいろな形で私の耳にも届いておるところであります。人材の確保、そしてまた地下水の確保等に関しまして、熊本県庁や関係省庁とも連携をして、しっかりと取り組んでまいります。

田村(貴)委員 近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと自由民主党自身が言っているにもかかわらず、今日のお答えは、減税に次ぐ減税、そして法人税は引き上げない、まだ引き上げぬ、そういう指摘が出ているという答弁に終わっています。失政の延長線上ではないでしょうか。

 次に、インボイスについて質問します。

 インボイス制度には、古物商特例があります。古物営業法の許可を得た古物商や質屋等が仕入れる古物、質物を対象としており、特例が認められればインボイスがなくとも仕入れ税額控除ができるという仕組みです。この古物商特例について質問します。

 インボイスの導入によって、パチンコ業界は経営危機になると言われています。パチンコ業界は三店方式です。一つは、ホールと言われるパチンコ店。二つは、特殊景品を買い取る景品買取り所。三つは、特殊景品を回収し、ホールに転売する問屋さんで成り立っています。

 問題が発生するのは、景品取引所です。特殊景品を買い取るときに、お客からインボイスを入手できないため、仕入れ税額控除ができなくなります。そのままでは多額の消費税の納税が発生します。しかし、特殊景品の買取りを古物商特例の対象にすることでインボイスを免除できると聞きました。

 警察庁にお伺いします。パチンコの特殊景品というのは、古物営業法で定義される古物に当たるのでしょうか。

和田政府参考人 古物営業法は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もって窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とするものであり、同法において、古物とは、一度使用された物品若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの等をいうと規定されております。

 したがいまして、窃盗等の犯罪の被害や盗品等の処分の実態が認められないパチンコの賞品については、当該パチンコの賞品を買い取ることについて、古物営業法の規制は及ばないものと認識しております。

田村(貴)委員 済みません。委員長、岩田副大臣は退席していただいて結構です。

津島委員長 では、岩田副大臣、どうぞ御退席ください。

田村(貴)委員 古物営業法の目的は、盗品等の売買の防止、犯罪被害品の流通を防止することにあります。対象は十三分野に限定されており、パチンコの特殊景品は、その対象に該当していません。したがって、古物ではないので、一般のお客から特殊景品を買い取る際にインボイスを発行してもらえないので、仕入れ税額控除はできないのであります。

 では、なぜ、景品買取り所が古物営業法の許可を取ればインボイスなしに仕入れ税額控除が認められるのか。特殊景品は古物ではないので、古物商特例の対象に該当しないのではないでしょうか。いかがですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 古物商がインボイス発行事業者以外の者から買い取る古物に係る課税仕入れにつきましては、法令上、いわゆる古物商特例によりまして、一定の事項を記載した帳簿のみを保存することにより、仕入れ税額控除の適用を受けることができるとされております。

 この古物商特例は、古物取引においては、一度消費者の手に渡ったものが再び事業者間で取引されるといった点を踏まえて設けられたものと承知をしておりまして、このような取引の実態にございます景品交換所が買い取る特殊景品につきましても、一定の要件の下、この古物に準ずる物品として古物商特例の適用対象となると考えております。

田村(貴)委員 準じる物品。特殊景品は少なくとも古物ではありません。消費税法の古物商特例の古物に準じるものに該当するだけであります。仮に、特殊景品の買取り業務だけをしている事業者にも古物営業法の許可は認められるのでしょうか。警察庁にお伺いします。

 特殊景品の買取り業務だけをしている事業者にも古物営業法の許可は認められるのか。認められる場合は、どのような条件が必要となってくるんでしょうか。

和田政府参考人 お尋ねのいわゆるパチンコの賞品買取り所が窃盗等の犯罪の被害や盗品等の処分の実態が認められないものを取り扱う場合、古物営業法の規制が及ぶものではないと考えております。

田村(貴)委員 この話は非常にややこしいんですけれども、特殊景品は古物ではないんですよね。しかし、古物営業と同等の取引によって買い受けて、古物営業法の許可を得たならば、古物商特例が受けられる。ちょっと無理が入っているやり方ですね。

 パチンコの特殊景品は古物でないのに、インボイスなしで仕入れ税額控除をするために、わざわざ古物営業法の許可を取って古物取引があるように見せかけているということですよね。金地金を使っているとしても、特殊景品は盗品や犯罪被害品である可能性が低いので、古物営業法の対象外となっています。この古物商特例の適用は、古物営業法の趣旨にやはり合っていないのではないですか。財務省、いかがですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどもお答え申し上げましたが、景品交換所が買い取る特殊景品につきましては、取引の実態を踏まえまして、古物に準ずる物品として古物商特例の適用対象となるというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 古物商特例の適用を受けるためには、古物営業と同等の取引方法によって買い受けるという条件が必要になってきます。

 もう一問聞きますね。景品買取り所にはどのような条件が求められるんですか。また、対面取引が必要とされる理由についても具体的に説明してください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 古物営業と同等の取引方法により買受けを受けるとは、例えば、古物営業法の規定に基づく取引と同様に、相手方の住所、氏名の確認や業務に関する帳簿への記載等を行うなど、古物商が古物を買い受ける場合と同等の取引方法にあることをいうとされております。

 具体的には、古物営業法においては、取引総額が一万円以上の古物の買取りに際しまして、本人確認及びいわゆる古物台帳等への相手方の住所、氏名等の記載が必要とされておりまして、古物商特例の適用に当たっても同様の対応が必要となります。

 なお、一万円未満である場合には、本人確認及び古物台帳等への住所の記載等の記載は必要なく、帳簿のみの保存により古物商特例の適用を受けることができるということでございます。

 いずれにいたしましても、古物商特例の適用対象になるかにつきましては、個々の取引の実態に即して適切に判断するということでございます。

田村(貴)委員 今のお話を景品取引所に当てはめてちょっと考えてみましょう。これはいろいろな問題が起こってくるんじゃないですか。

 古物営業法に従えば、景品買取り所は、犯罪被害品の流通を防止するために、窓口をガラス張りにするなど、お客の顔を見て取引ができる環境をつくらなければなりません。対面によって、相手方の態度、しぐさなどを見て確認するためであります。

 さらに、一万円以上の買取りについては、今答弁がありましたように、本人確認や運転免許証などのコピーの保存、帳簿の記載をする義務が生じてまいります。住所、氏名も確認する。これは、パチンコの景品取引所において行っていくということなんでしょうか。実際に、パチンコのお客さんが特殊景品を換金する際に本人確認を求められたら、これはやはり嫌じゃないですか。本当に景品買取り所がこのような条件をクリアできるのでしょうか。

 この条件を回避するために、一景品一取引と考えて、一万円未満の景品ならこの条件は必要ないとの話もありました。そもそも、風営法でパチンコの景品の価格の上限は九千六百円プラス消費税と決められていますので、この条件をクリアすることになります。例えば、総額三万円の買取りの場合、五千円の特殊景品を六回に分けて、一万円以上の取引に必要な条件を回避できるのではないかということであります。

 警察庁にお尋ねします。

 古物営業法で定める一万円以上の取引における本人確認義務などについて、五千円の古物を六個、総額三万円で買い取る場合は対象になるのでしょうか。

和田政府参考人 古物商が古物に該当する物品を一度に複数個買い取る場合は、その物品の対価を全て足し合わせた額、つまり、対価の総額で判断することになります。

田村(貴)委員 対価の総額で判断するということですから、小分けにしても、本人確認とか住所とかの確認が必要になってくるわけですよね。これは実際できますか。

 古物商特例でも、特殊景品を分けて買い取ることで、本人確認をしなければならない、それを回避することは認められないということで、今の答弁、よろしいですか。

和田政府参考人 繰り返しになりますが、古物営業法に言う古物に該当しないものを買い取る場合は、古物営業法の規制は及ばないところでございますが、古物商が古物に該当する物品を一度に複数個買い取る場合は、その物品の対価を全て足し合わせた額で判断することになります。

田村(貴)委員 鈴木大臣、インボイスを導入したがために、こういう、ある意味無理やりなやり方をしないといけないことになっちゃうんですよね。

 景品取引所が古物商取引で仕入れた税額控除をやろうと思えば、客対応でトラブルも生じかねないということになりますよね。真面目に経営をしているパチンコ屋さんは、インボイス導入で余りにも重たい負担がかかるかもしれません。しかも、対応が不十分なら、税務署に仕入れ税額控除が否認されて、景品の買取り所が破綻しかねないリスクを生むことになるわけです。

 大臣、こうしたことになるという事実、知っておられましたか。こうしたリスクを、パチンコ店の周囲で起こるということについて御存じでしたか。

鈴木国務大臣 古物商特例につきましては、今朝方、田村先生のこの質問の答弁打合せをする際に、事務方よりその制度の概要についてレクチャーを受けたところです。その上で、今、田村先生と政府参考人との間での様々なやり取り、なかなか複雑だなという思いでお聞きをしたところでございます。

 いずれにしても、こうした古物商特例が適切に取り扱われることが重要なことであるという印象を持ったところです。

田村(貴)委員 インボイスを導入する前は、こんなことにならないわけですよ。お客さんがパチンコで楽しんで、そして景品取引所に行って、そして問屋さんがまたパチンコ店に納めていく、この流れを崩してしまうことになっちゃうわけですよね。そして、景品取引所が本当に仕入れ税額控除ができないことにいつもつながりかねない。これは大問題になると思いますよ。だから、ことごとく、インボイスというのはあらゆる問題を引き起こしているわけであります。

 さらに、問題があります。古物営業法の下で中古自動車販売を行っている事業者が、インボイス問題で排除されているというケースであります。

 中古車オークションの売買のケースであります。売手、買手、どちらの参加者も、ほとんどが古物営業法の許可を取っている事業者であります。古物商特例があるので、インボイス登録業者でない者からの購入でも、インボイスなしに仕入れ税額控除ができました。

 しかし、今、中古車オークションでは、免税業者が排除されています。私の元にも相談がありました。なぜオークションに参加できないのか、理由を教えてください。

青木政府参考人 お答え申し上げます。

 中古車オークションを運営する企業の中には、インボイスの発行をオークションのシステムの中で完結させる方法で行っている事業者がおられまして、そういう方法の特性から、オークション参加資格をインボイス発行事業者に限定した企業があるというふうに承知しております。

田村(貴)委員 オークション企業の判断。オークション企業の判断だったら免税業者は参加できない、それを役所の方は是認するということになっていいんでしょうか。

青木政府参考人 済みません、最初は理由について問われたので、そこの部分だけお答えしましたが、そういう事実を担当省庁を通じて確認いたしました。

 確認したところ、落札側については免税事業者の参加を引き続き認めているという例もございました。そういう事例を今後、業界団体を通して、その場合のインボイス制度への対応方法の一例として共有していただく方向で対応するというふうに聞いております。

 財務省といたしましては、これまでも関係省庁と連携して事業者が実務上直面している課題の把握などに努めておりますが、引き続き、事業者の立場に立って、きめ細かく丁寧に対応をしてまいりたいというふうに考えております。

田村(貴)委員 オークション参加を認めるところもあれば、排除されるところもある、これはおかしくないですか。インボイスの導入に当たって、免税業者のままであり続けることはできるんですよね。そして、課税業者になることもできるわけですよね。そうした中で、免税業者であってオークションに参加したいという権利がそがれてしまった、排除されてしまった。これはやはり守らなければいけないんじゃないですか。

 何か企業の判断で、こっちはオーケー、こっちは排除、そういう無責任な対応でこのインボイス制度を運営していくということになるんですか。

青木政府参考人 繰り返しになって恐縮ですが、中古車オークションの中には、落札側については免税事業者の参加を引き続き認めている例もございます。まずは、こうした実務上の対応例を中古車オークションの業界内で共有していただき、それぞれにおいて対応を御検討いただくということが重要と考えております。

 引き続き、関係省庁と連携して、事業者が実務上直面している課題の把握などに努め、事業者の立場に立って、きめ細かく丁寧に対応してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 鈴木大臣、私、先ほど古物営業法、古物商特例のお話をしましたけれども、これはなかなか本当に難しいですね、理解するのに。大臣もなかなか難しいということをおっしゃったと思うんですよ。

 大臣がやはりそういうふうに感じておられるんだったら、商いをしている人、それから中小業者、免税業者の方、大変やはり苦しむと思うんですよね。

 今日は二つの例を出しました。この例について、不利益が生じないようにちゃんと対策を打つべきじゃないですか。

 そもそも何でこういう事態が起こっているかというと、インボイス制度を導入したからなんですよ。インボイス制度を私はもう中止すべき、廃止すべき、皆さんと一緒に言ってきたけれども、やはりこれは廃止すべきですよ。

 廃止の決断をまだされないんだったら、今起こっているこういう問題を、政府の責任において、ちゃんと不利益が生じないように、せめて不利益が生じないようにすべきじゃないですか。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 インボイス制度は、複数税率の下で適正な納税をしていただくための制度でございます。

 その上で、例としては多分少ないんだと思いますけれども、今日、先生から、古物商の特例の話に絡んで、パチンコ業界のお話、それから車のオークションのお話がございました。そういうようなものに対して不当な扱いがあって、その不当な扱いの中で不利益になるということは、これはあってはいけないことであります。

 そのために、今までも公正取引委員会等関係機関との連携というものも取ってきたわけでありまして、いずれにしましても、そうした不利益が起こらないような手だてをしっかり考えなければいけないと思います。

田村(貴)委員 引き続き取り上げていきたいと思います。

 質問を終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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