衆議院

メインへスキップ



第5号 平成28年11月2日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十一月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 永岡 桂子君

   理事 上川 陽子君 理事 亀岡 偉民君

   理事 前田 一男君 理事 宮川 典子君

   理事 山本ともひろ君 理事 菊田真紀子君

   理事 長島 昭久君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    秋本 真利君

      池田 佳隆君    尾身 朝子君

      大串 正樹君    岡下 昌平君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      木村 弥生君    城内  実君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      下村 博文君    田野瀬太道君

      谷川 とむ君    冨岡  勉君

      馳   浩君    船田  元君

      古田 圭一君    松本 剛明君

      八木 哲也君    太田 和美君

      坂本祐之輔君    高木 義明君

      平野 博文君    牧  義夫君

      升田世喜男君    笠  浩史君

      樋口 尚也君    吉田 宣弘君

      大平 喜信君    畑野 君枝君

      吉田 豊史君    吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       松野 博一君

   財務副大臣        大塚  拓君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    田野瀬太道君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 池田 憲治君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原  誠君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     木村 弥生君

  工藤 彰三君     八木 哲也君

  櫻田 義孝君     秋本 真利君

  福井  照君     岡下 昌平君

  笠  浩史君     升田世喜男君

  伊東 信久君     吉田 豊史君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     城内  実君

  岡下 昌平君     福井  照君

  木村 弥生君     安藤  裕君

  八木 哲也君     工藤 彰三君

  升田世喜男君     笠  浩史君

  吉田 豊史君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  城内  実君     櫻田 義孝君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 教育公務員特例法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一七号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

永岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、教育公務員特例法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官池田憲治君及び文部科学省初等中等教育局長藤原誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠浩史君。

笠委員 おはようございます。民進党の笠でございます。

 松野大臣とは、私も、これまでもいろいろな教育の分野について、党派を超えてさまざまな施策についてもいろいろな議論もさせていただきました。きょうは、大臣に就任されてからは初めての論戦を交わさせていただくということで、また大臣なりのしっかりとした答弁を求め、教育の問題については、しっかりと党派を超えて子供たちの将来、未来のために取り組んでいくということで、そういう視点に立って質問をさせていただきたいと思います。

 まず、教育現場において、やはり教職員、学校の先生の果たす役割というものは非常に大きいわけで、養成段階あるいは採用、さらには研修ということで、それぞれの過程の中において、その環境をどのように時代に応じて我々が充実させていくのかということは、これは喫緊の課題であり、また、不断の見直しをしていかなければならないことだというふうに思っております。

 ただ、今回も研修制度の見直し等々があるわけですけれども、例えば、OECDの二〇一三年の国際教員指導環境調査というものがございますけれども、この中で、職能開発、自己のスキルあるいは知識、そして専門性、そのほか教員としての特性を発展させることを目的とした職能開発という活動について、参加に当たってそれぞれの国でどういった事柄が障壁となっているのか、そういう調査がございますが、各国、やはり教師の仕事のスケジュールとなかなか合わないというようなことが挙げられているわけで、職務が多忙であることが、こういったスキルアップへ向けた職能開発の参加を困難にしている状況というのが明らかにされております。特に日本の場合は、参加国平均が五〇・六%の中で、我が国は八六・四%。これは、やはり教職員の多忙さというものを一つ裏づける調査だと私は思っております。

 そもそも、やはりこういう研修を充実させるためには、そういった今の教職員の置かれている環境をどのようにしていくのか、そして、一人一人の教員がそういった研修を充実させるためには、私は、やはり教職員の定数というものをしっかりとこういった観点からもふやしていかなければならないというふうに思っております。

 大臣も、概算要求の中で、そういった教職員の定数をしっかりと増員していく、確保していく、きめの細かい一人一人の子供に対する対応、あるいは少人数教育、少人数学級、こういったことを推進する必要性というものについては、大臣自身も思いがあろうかと思いますけれども、少人数教育あるいは補助教員というものをふやしていくというやり方もあろうかと思います。

 まず、そこへ向けた大臣自身のお考えを、端的に冒頭、伺いたいと思います。

松野国務大臣 おはようございます。

 笠先生は、教育分野においても常に建設的な御提言をいただいておりますことに敬意を表するものであります。

 教職員定数改善についてでありますが、私は常々、日本の学校の先生方というのは極めて優秀で真面目な方であると思っておりますし、そこから生み出される指導効果は、世界各国と比較をしても大変高いものがあると承知をしております。

 しかしながら、その成果が教員の現場での長時間労働に支えられているということは問題であると認識をしておりますし、この体制の持続可能性を考えたときにも、これは改善が必要であると認識をしております。

 そして、学校現場におきます喫緊の課題に対応するためにも、教員の資質向上とあわせて、チーム学校の推進や学校現場の業務改善等の取り組み、次世代の学校に必要な指導体制を構築すること等々を考えても、やはりこのことに対応していくためには、定員をふやして教員の多忙感を抑えていくということが重要なことであると考えております。

 来年度の概算要求におきましても、小学校専科指導やアクティブラーニングの視点からの授業改善、発達障害等の児童生徒への通級による指導や外国人児童生徒等の教育の充実、指導教諭の配置促進やチーム学校の実現に向けた基盤整備など、これらの課題に対して定数改善を要求しており、そして、地方が計画的に配置に向けて動けるよう、義務標準法の改正を目指していきたいと考えております。

 文部科学省として、学校現場を支援し、子供たちの教育現場を充実していくために必要な教職員定数の確保、充実について、これはもう超党派で先生方に応援をしていただきながら、実現を目指していきたいと考えております。

笠委員 私も、政務官、副大臣のときに、特に政務官のとき、きょうは当時の高木大臣もおられますけれども、私どもも、この少人数学級ということでは、小学校一年生、ここは法に基づいて、法改正によってやったわけです。そして、小学校二年生というところまで三十五人以下学級を実現いたしました。ただ、そこから先、残念ながら、その流れというものが今とまっているんじゃないか。

 そして、これは大臣も、自民党の大臣の方も、やはり私も、経験からいっても、どうしても財務省との戦いになるわけですね。その財源というものをどういうふうに確保していくのかということが大きな課題になってまいります。確かに、毎年毎年の予算の折衝の中で、我々、党派を超えて、与野党を超えて応援はするんだけれども、財政審等々のいろいろな理屈を持ち出して、この委員会でも、私もそうですけれども、多くの委員もその点は指摘をしてきているところです。

 私は、そろそろ考えなければならないのは、本当に、これはスピードというのも大事ですから、教職員定数のしっかりとした確保、資質の問題は後ほど議論したいと思いますけれども、やはり一定の数というものが大事です。それを確保することも含めて、やはり教育財源をどのようにしていくのかということを私は考えていく時期に来ていると思います。

 これは、それが目的税として消費税がいいのか、あるいは何らかの教育国債、子供国債、そういったものをやはり検討するのがいいのか、そこは大いに、党派を超えて議論をしていく流れをもうつくり、一定の財源を確保していく。そして、大胆にこの改革を行い、教員の皆さん方も本当に一人一人の子供たちと向き合える、そういう環境をつくっていくということ、これをぜひやっていきたいなというふうに私は思っておりますけれども、その点についての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。

松野国務大臣 教育は未来への先行投資ということが言われますし、私もそう考えております。この未来への先行投資の意味は、一つは、一人一人の子供たちにとって、その能力、個性を最大限に引き出して充実した人生を送っていただくための先行投資であり、あわせて、日本社会の継続的な繁栄、成長、こういったものをもたらすために必要な投資であると考えております。あわせて、最も有効な社会政策だと考えておりますし、効果が高い経済政策でもあると考えております。

 平成二十九年度の概算要求の具体的な項目として、学ぶ意欲と能力のある学生等が経済的理由によって高等教育機関への進学を断念することがないよう、給付型奨学金制度の創設、無利子奨学金の充実、授業料の減免の拡充などの条件整備、教職員定数の充実、教員の資質、能力向上など、次世代の学校創生のための指導体制強化などを盛り込んでいるところであります。

 笠先生のお話にあったとおり、やはり教育財源、安定した財源を確保していくというのは、ここが一番ポイントとなるところでありますが、ぜひ、各党それぞれに御提言を持ち寄っていただいて、この教育財源の確保に向けて、これも先ほどお願いしたとおり、この課題も超党派でお取り組みをいただいて、日本の子供たちの将来に向けた有効な投資ができるよう、財源確保に向けて、私たちも努力をしてまいりますし、先生方のお力添えもいただきたいと考えております。

笠委員 きょうは、忙しい中、大塚副大臣にもおいでをいただいていますけれども、副大臣、我々も随分、副大臣にもこの委員会にも来ていただき、その当時当時で議論しました。今の限られた予算の中で、一千兆円を超える借金を抱える中で、なかなか我々が思ったとおりの予算を確保できないという現状で、財務省の事情もわかる。しかし、今、大臣にも、前向きな同じ思いを共有しているということが確認できました。

 私どもが、例えば、先ほど申し上げたように、目的税なのかあるいは国債なのか、その方法論というもの、財源確保に向けた方法はまた党派を超えて議論をし結論を出していったときに、そのことは財務省としてしっかりと受け入れて、そして、この教職員の定数改善へ向けた流れに含めてこの教育予算をしっかりと充実させるということについては、財務省もまさか反対をされることはないということをここでお約束いただきたいと思います。

大塚副大臣 教育予算の確保は財務省との戦いであるということで御指名をいただいたわけでございますけれども、財務省としても、教育は、未来を担う人材を形成するものでございまして、日本の将来にとって極めて重要な課題であるということは重々認識をしているところでございます。

 一方で、御指摘のように、日本の財政状況は非常に厳しいというのも事実でございまして、こうした観点から、まず財務省として申し上げていることは、とにかく質は、要するに、かけるコスト当たりの質は、もうこれは世界トップを目指してやっていくべきだろう、できるだけエビデンスベースでPDCAのサイクルというものを回しながら、教育効果が最も高いものに優先的、重点的に割り振っていくことが必要だろうというふうに考えているということは前提といたしまして、その上で、笠先生おっしゃられましたように、何とか財源を確保して教育を充実していきたいという思いはあるわけでございます。

 今も、給付型の奨学金の議論などがございますけれども、日々、どうやって財源を捻出しようかということで四苦八苦をしているという状況でございます。

 これは必ずしも、一人当たりの公財政教育支出ということで見ると、OECDの中で、一人当たりではそう悪い方ではないと思うわけですけれども、これ以上ふやしていくということになると、もう一点指摘をいたしたいのは、租税負担率というものが日本はOECDの平均より大分下にあるということもまた事実でございまして、笠先生も御指摘になられましたように、それが消費税なのか目的税なのかというふうにおっしゃいましたけれども、そうした財源を新たに求めていくというのも一つの考え方としてはあり得ようかというふうに思います。

 ただ、これは国会の先生方の御議論、そして国民の、納税者の皆様の御理解が得られるかどうかというところにかかってくるものと思いますし、また、教育国債という話もございましたけれども、単純に国債ということで出しますと、これはせっかく教育投資をした子供たちが将来またそのツケを払わなければいけないということになってはいけないと思いますので、そういったところをどのように克服していけるかということも含めて考えていく必要があろうかなというふうには考えております。

 いずれにいたしましても、超党派の先生方で御議論をいただいているところというふうにお伺いをしておりますので、先生方の御議論もまたよくフォローさせていただきながら、財務省としてもできることを一生懸命考えてまいりたい、このように考えているところでございます。

笠委員 毎回同じ答弁で本当にがっかりするところもあるんだけれども、ただ、我々は決して、教育に対する投資は必要だけれども、そのことで借金を重ねていくことはできないし、国民の皆さんに理解をいただいて、国の成長のためにはやはり人づくりなんだということは、これは我々一人一人の議員が、しっかりと国民の皆さんに納得をしていただける、そういったことは我々の責務だと思っています。

 ただ、そういった上で、やはり我々は、しっかりとした教育財源の確保ということをきちんとこれから議論し、また、一つの方向性を出していきたいというふうに思っておりますので、そのときには財務省もしっかり我々の立場に立ってそういったことを考えていただきたい、そのことを申し上げて、副大臣は日程がおありでしょうからここで結構でございますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 それでは、教職員の問題の方に、今回の法案の問題について幾つか御質問したいと思うんです。

 まず大臣、教職員に求められる資質の部分ですね。全教員に共通に求められる基礎的、基本的な資質、能力を確保するというようなことが今回もこの法案を提出する理由の中にも入っているわけでございますけれども、大臣の考えられる教職員に求められる資質というのは、どのようにお考えなのかをまずお聞かせいただきたいと思います。

松野国務大臣 教員が備えるべき資質、能力ということに関しては、さまざまな視点からの御議論があるかと思いますが、これまで中央審議会の答申において提言をされたものとして、例えば使命感や責任感、教育的愛情、教科や教職に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力、コミュニケーション能力等が挙げられております。

 私も、これらの点というのは極めて重要な点であろうというふうに認識をしておりますし、能力ということに関しましては、今日、学校教育において子供たちが主体的に学んでいくこと、いわゆるアクティブラーニングと言われる方向に向けての授業改善、小学校における外国語教育の早期化、教科化などの教育改革や、発達障害を含む特別な支援を必要とする児童生徒への対応など、多様な課題に対する対応力が求められていると考えております。

 こうした課題に対応するために、さきに申し上げたような教員として不易とされる資質、能力に加えて、平成二十七年の中央教育審議会答申において、「自律的に学ぶ姿勢を持ち、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を生涯にわたって高めていくことのできる力や、情報を適切に収集し、選択し、活用する能力や知識を有機的に結びつけ構造化する力などが必要である。」と示されていると承知をしております。

笠委員 今大臣がおっしゃったことは本当にもっともなんですけれども、本当にこの資質というものは、これは、先ほど申し上げたように養成段階も大事だし、そして、この研修というものも不断に、やはり教職員の皆さん方が現役である限り、そのときそのとき、あるいは置かれている環境というものも違いますし、しっかりと充実をさせていかなければならないわけですけれども、一点、今回、十年研修というものを中堅教諭等資質向上研修ということに変えたわけですけれども、これは法定研修であることは変わりはないわけですよね。

 確かに、先ほど申し上げたようないろいろな教職員の多忙を理由に、もう少し時期というものを弾力的にしていいんじゃないかというような、そういった負担の軽減策ということも一つの狙いかと思いますけれども、本当にこれでその負担軽減につながるのかなと、私は、そこはちょっと疑問を持っているんです。

 その中で、私は、法定研修であるこの中堅どころの大事な時期の研修というものを、果たして今のまま将来的にも法定研修であることが必要なのかということを問題意識として実は持っております。

 将来的にはやはりそれを外してもいいんじゃないか。それぞれの地域の実情、こういったものに応じた形での大胆な見直し、研修は必要なんですよ、しかしそれを法定研修でこの中堅段階での研修を位置づけることが果たしていいのかどうかということを大臣にお伺いしたいと思います。将来的には、私は、もっと柔軟にすべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松野国務大臣 まず、笠先生の方から御指摘があった、今回の十年経験者研修を中堅教職員の研修に変更していくという点でございますけれども、平成二十六年三月に取りまとめられました教員免許更新制度の改善に係る検討会議の報告においても、十年経験者研修について、免許状更新講習の受講時期と重なる教員の負担感、重複感の解消を図るために必要な措置を講じるということが提言をされております。

 こうした提言を踏まえて、これまでにも各都道府県教育委員会において、十年経験者研修の一部について免許状更新講習として認定を受けるなどの取り組みを進めてきたところでありますが、このたび、法案においては、さらに、十年経験者研修について、実施時期の大幅な弾力化を図り、実施年次に制限を設けない中堅教諭等資質向上研修に改正をしたということでございます。

 この法案が成立をすれば、これまで免許状更新講習と重複しやすかった研修の実施時期を、当該学校や地域の教員の年齢構成を踏まえて調整することが可能になり、研修や講習の受講に係る過密なスケジュールが緩和されるなど、学校現場における教員の負担軽減の観点からも効果が期待できるものと考えております。

 あわせて、この法定研修のあり方についてどう考えるかという御質問でありますけれども、教員の研修に関しては、現在、各自治体で行われる研修のほか、教育公務員特例法に基づき、法定研修として、初任者研修、指導改善研修、十年経験者研修が位置づけられております。

 このうち初任者研修は、任命権者が、公立小学校等の採用の日から一年間の教諭等に対して、実践的指導力と使命感を深めるとともに、幅広い知見を得させることを目的とし、また、指導改善研修は、任命権者に指導が不適切であると認定された教員の指導の改善を図るものであります。いずれも、全国的な教育水準の維持向上の実現に必要不可欠であると考えております。

 今般、十年経験者研修を見直して新たに設ける中堅教諭等資質向上研修については、教員の年齢構成など、地域の実情に応じ、その実施時期を弾力化するとともに、具体的内容、実施時期については各自治体の判断に委ねることとしております。

 これらの法定研修については、いわば必要最低限の全国的な教育水準の維持向上を実現するためという目的でございまして、引き続き存置することが不可欠であると考えております。

笠委員 私は、研修というものは必要だというのは大前提なんですけれども、やはり地域がいろいろ主体的に、ある意味では任命権者がしっかりと、生涯にわたって現職の先生方の研修システムというものを義務づけるということは、国が責任を持ってその義務づけはするけれども、中堅だとか、今度、十年が中堅ということになるわけだけれども、その辺は、そういう全体の、生涯にわたってという義務づけにして、その枠組みの中でしっかりとやっていただくというふうに、さらにもう一歩進めていくことが必要なんじゃないかと私自身は考えております。そういったことで、それぞれの地域性、あるいはまた任命権者である教育委員会等々が主体的となってきちっとやっていく形の研修制度というものを今後検討していただきたいというふうに思っております。

 一点、具体的に伺いたいんですけれども、今回の制度設計の中で、協議会のあり方というものが非常に重要になってくると思うんですけれども、これは形骸化することだけはやはり避けていかないといけないというふうに思っております。

 大学等との連携ということが一つの大きな課題となっております。今、横浜市の例なんかを見ると、五十以上の大学と連携をしながら、既に、新しい、まさに一つのモデルケースとしてこのことが進められているわけですけれども、大学と連携するといっても、できるところと、地域によってはできないところ、今、都道府県の教育委員会でも、幾つかの教育委員会においてはその連携というものが全くなされていないところもあるんですね。

 ですから、そういったところに対しての支援。首都圏とかあるいは都市部だとか、大学が近くにあったり、いろいろな教諭養成をやっているような大学を抱えているところはいいけれども、なかなか、そういった大学が全国に津々浦々あるのかというと、そうでもない実態も、ばらつきがあると思います。そういった大学との連携に対してやはり文科省として支援をしていかなければ、できるところはできるけれども、できないところは取り残されていくということに私はなるんじゃないかという危惧を持っております。

 その連携についての文科省としての具体的な支援、それについてどのようにお考えか、お伺いをしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の協議会におきましては、任命権者である教育委員会と大学が連携を深めていくことは、教員の養成、採用、研修を通じた教員等の資質の向上に向けた体制を構築していくという観点から非常に重要であると考えております。

 協議会における指標の作成や、教員の資質の向上に関する協議や検討に資するように、文部科学省といたしましては、モデル事業として、まず第一に、教育委員会と大学等が相互に議論し、協働して教員の養成や研修の内容を協議し、指標を策定するような取り組み、あるいは、いわゆる教師養成塾の取り組みを通して、採用前の学生を大学と教育委員会が連携して育成する取り組み、さらには、学校インターンシップを教職課程に位置づけて実施するための仕組みの課題を検討する取り組み、あるいは、教職大学院と連携した研修を行うことによって、現職教員が勤務しながら専修免許状を取得することを促進する取り組みなどにつきまして、財政的な支援をすることを通じて、教育委員会と大学等の連携を支援してきているところでございます。

 さらに、これらの取り組みに加えまして、文部科学省といたしましては、仮にこの法案が通った段階では、施行通知を発出いたしまして教育委員会と大学等の連携を深めることを求めていきたいと考えておりますし、さらに、この法案によって教員研修センターを改組してできる教職員支援機構を通じました助言などによって、協議会におきまして、任命権者である教育委員会と大学等の連携がさらに一層深まるように支援してまいりたいと考えております。

笠委員 いや、今のお話を伺っても、こういうふうに例えば周知をしていくとか徹底をしていくとかそういうことじゃなくて、私が伺いたいのは、例えば横浜なんかでも、大学等それぞれに、例えば教員をその養成段階で大学側にも派遣して、またその大学側も役に立つ、大学の先生方、そういった知見を持っておられる方がまた教育の現場に来られるという相互の交流であり、お互いにそういった中で交流システムというものが機能するから恐らくいいんですけれども、なかなか、そういったことが本当に全国でできるんですかと。

 そういったことができるのは、横浜はたくさんありますよ、五十大学以上。まあ、五十大学と連携しているというのはなかなか、これがいいのかどうかはちょっと私はわかりませんけれども。しかし、そういった状況に置かれていないところに対して、では人の派遣であるとか、相互交流をしてもらうために何らかの形でやはり文科省がバックアップしないと恐らくできないでしょう。そういったところに対する具体的な支援をやってあげないと、ただ単に、やれやれ、こういうふうに頑張ってくれと言っても、私はそれは無理だと思う。

 ですから、そういったところをぜひ大臣、具体的に、この制度が始まるに当たっては、各地方のそれぞれの教育委員会の実情、大学との連携についてこういったことをしてほしい、そういった要望をきちんと聞いていただいて、そしてやはりそれはきちんとした形で文科省としてフォローしていくということについてお願いをしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松野国務大臣 本制度の目的として、やはり、教員の養成と研修を一体的に、そしてそれぞれに、大学側にとっても、実際の教育現場の情報をより収集することによって養成課程の効果を上げていただかなければなりませんし、任命権者による研修の中に大学が持つさまざまなノウハウを取り入れていくという相互の向上が望まれるということが目的であります。

 加えて、笠先生の御指摘のとおり、これは実際に運用すれば、その中においてさまざまな課題が出てくるかと思います。第一義的にはもちろん任命権者によってなされるものでありますが、文科省としても、現場のこの法律が運用された後の情報に関してもしっかりと交換をしながら、必要な措置をとってまいりたいと考えております。

笠委員 大事なことは、横浜だけではございません、今回、こういう法改正をするまでもなく、それぞれの教育委員会レベルでいろいろな取り組みをしているところはいいんです。ただ、なかなかそこに至っていない、やりたいけれどもいろいろな財政的な問題も含めてできない、あるいは、そういったネットワークがなかなかないというようなところに対する支援というものについてはしっかりと行っていただきたいというふうに思います。

 それで、先般の議論の中でもありましたけれども、私も最後に一つちょっと聞いておきたいんですけれども、この大学等の「等」というのは何を指しているのか、どういったものが対象として考えられるのか、まずちょっと短目にお答えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点につきましては、今回新たに創設いたします教育公務員特例法第二十二条の五の中で、その第三号で、その他当該任命権者が必要と認める者、これがその「等」で該当しているものでございます。

 具体的に、この任命権者が必要と認める者につきましては、それは任命権者の判断によるんですけれども、既に協議会の組織を設けている自治体の例を見ますと、例えば校長会の代表者などが構成員とされている例がございまして、そのようなものがイメージされるということでございます。

笠委員 恐らく校長会であったりあるいはPTAであったり、そういったことになろうかと思いますけれども、今教員の皆さん方が日々子供と実際に接している、指導している、やはりそういった教職員の現場の声というものが反映されるような協議会でなければ、私は、先ほど申し上げたように、どんなにいろいろな議論をしたとしても、これが形骸化していく可能性もあると思いますので。

 大臣に最後にお伺いをさせていただきますけれども、そういう実際のこの教職員の皆さん方の声というものが、校長会とかではなく、きちんと届く協議会というものをしっかりとつくるということを文科省としても何らかの形で私は指導していただきたいというふうに考えておりますけれども、そのことを最後に伺いたいと思います。

松野国務大臣 この協議会の性格上、学校現場の多様な意見をお伺いすることは重要であるというふうに認識をしております。その意味において、任命権者が必要とするメンバー、適切に構成をされていくものと期待をしております。

笠委員 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 教育公務員特例法等改正案について伺います。

 子供の教育にとって、すぐれた人間味あふれる教員たちが多くいることは、ある意味で決定的に重要なことです。今回の法案は、その教員たちの養成、研修にかかわる重大な法案です。法案が果たしてよりよき教員の確保に資するものなのか、きょうは、ただしたいと思います。

 本法案の中心を占める教員の研修から伺います。

 まず、研修を行うべきとされる教員とは何か。日本政府も賛成して行われたILO・ユネスコの教員の地位に関する勧告は、教員の果たす役割の重要性について強調していますが、その六には何と書いてありますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のILO及びユネスコの教員の地位に関する勧告、パラグラフ六におきましては、「教職は、専門職と認められるものとする。教職は、きびしい不断の研究により得られ、かつ、維持される専門的な知識及び技能を教員に要求する公共の役務の一形態であり、また、教員が受け持つ生徒の教育及び福祉について各個人の及び共同の責任感を要求するものである。」と記載されております。

畑野委員 そのとおりです。教職は、厳しい不断の研究により得られ、維持される、そして受け持つ子供への責任感、それは、まさに専門職と言わなければなりません。

 松野文部科学大臣に伺います。

 このILO・ユネスコの勧告の六を尊重し、生かしていくということでよろしいですね。

松野国務大臣 この勧告については、決議当時から、法的拘束力はない努力目標としての性格を持つものとして位置づけられてきましたが、決議に加わった我が国においては、留保条項を除き、この勧告について尊重しているところであり、御指摘のあったパラグラフ六についても同様でございます。

畑野委員 松野大臣もお認めになりましたように、教員は子供にかかわる専門職である、それは国際的合意です。であるならば、公務員として見た場合、教育公務員の研修は、その職務の特殊性から、一般の公務員の研修とはおのずから区別されると思います。法令上は、地方公務員法では研修、教育公務員特例法では研究と修養となっています。

 一般公務員と教員の研修の違いについて伺います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、教育公務員の研修につきましては、その職務の特殊性に鑑みまして、ほかの一般公務員と比較して特段の配慮が要請されるとの考え方に基づいて、教育公務員特例法第二十一条により、「その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」と規定がされております。

 このことは、教育の本質は教員と児童生徒の人格的な触れ合いにあり、単なる知識、技術の伝達にとどまらないものであることから、公教育の担い手である教育公務員には絶えず研究と人格の修養に努めることが求められており、この意味において、一般の公務員と比べて研修の必要性が高いものであると認識をしております。

畑野委員 今おっしゃったことを含めてですけれども、学校運営必携というのがあるんですが、その中でもそのようなことを述べられておりまして、研修の機会についても、勤務時間内における自主的な研修や、現職のままの長期研修について規定しているということも書かれております。

 教員の研修とは、今おっしゃったように、研究と修養、教育についての研究と人間的な修養であります。であるならば、行政が主催する研修を含めて、研修する主人公である教員の自主性、主体性が尊重されなければならないと思います。

 その点で、判決として確定している一九七七年二月十日の札幌高等裁判所判決では、次のように言っております。「教師にとつて研究修養は、自己完成目的に志向された手段であるとともに、教師たる資格を具備するための必要不可欠の要件ともいわなければならず、その自由と自主性は尊重されなければならない。」このように述べております。

 松野大臣、教員研修では、この判決で言う自由と自主性が尊重されなければならないと思いますが、いかがお考えですか。

松野国務大臣 御指摘の判決は、直接には、教職員組合の集会に参加した教員が、当該集会参加について、給与支給の対象たる勤務として行った研修であると主張したのに対して、同主張を棄却したものであると承知をしております。

 本件判決は、児童生徒の人格的完成を担うという教職の性質上、教員にはそれにふさわしい能力、識見を有する人格者であることを求められることから、教員にとっての研修は、教員たる資格を具備するための必要不可欠な要件であり、その自由と自主性は尊重されなければならない旨、述べております。

 他方において、本判決は、公務員等の職務に基づく身分関係を有する者は、そうした身分上の地位に伴う服務上の規律を受けることを免れず、これを無視して、その職務の専門性に基づく自由な自律性、自主性のみを絶対視することはできないこともあわせて述べているところであり、教員の研修に係る自主性、主体性について、無制限に認めたものではないと認識をしております。

畑野委員 質問にお答えしていただいた部分を確認しますと、自由と自主性は尊重されなければならないことは当然であるということだと思います。判決の言うとおりに、教員の研修は教員の自由と自主性が尊重されなければならない。ですから、行政が行う研修といえども、あくまでも教員自身の研究と修養をサポートするものであって、何か行政が自分たちの考えを押しつけていくということはあってはならないと思います。

 松野大臣に伺いますが、今回出された法案、国の価値観を押しつける危険を増すことになりませんか。なぜなら、法案では、文部科学大臣が教員の資質の向上に関する指針を定めるとし、各地の任命権者、つまり都道府県、政令指定都市の教育委員会が、その国の指針を参酌して自治体の教員の資質向上の指標を定め、その指標を踏まえて教員研修計画を策定するというふうになっております。

 こういう仕組みは、国が号令をかけて地方に国の考えている研修をやらせる、そのことによって教員の研修の自由と自主性を阻害することに拍車をかけるのではないかと思いますが、この点、いかがですか。

松野国務大臣 本法案においては、文部科学大臣が教員等としての資質の向上に関する指標を策定するための指針を定めることとしておりますが、同指針は、あくまで、任命権者が同指標を策定する際に参酌する大綱的な指針であります。

 当該指針は、教員等に求められる資質や研修内容等を個別具体的に示すものではなく、当該指針によって個々の教員に対する国の直接的な関与が及ぶものではないことから、御指摘は当たらないと考えております。

畑野委員 そうはいいましても、各自治体の行政研修はどうかということです。

 例えば、国が新学力観といえば、各地で新学力観の研修が行われたではありませんか。それで、一生懸命教える教員に、教えてはだめとか、教員が何も言わないのがいい授業などと言われて、現場は混乱した。最近では、アクティブラーニングなどで、現場ではいろいろな混乱が生まれているというふうに伺っております。

 今ですら、国の考えの押しつけが行われているのが実態です。その反省なしに法律でさらにこんな仕組みをつくれば、さらに行政研修ががんじがらめにされるのではないでしょうか。

 大臣、教員研修の自由と自主性の尊重という観点は、自治体が行う行政研修でも尊重されなければならないと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 教育基本法において、教員は、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならないとされているとおり、教員等がその時々において必要な資質、能力を身につけることは、教育の充実を図る観点から非常に重要であります。

 そうした教員等の研修については、自発的に、その職責の重要性に鑑み、みずから研修するという基本的な態度が必要であると考えており、そのことは、本法案により制度が改正されたとしても、変わるものではありません。

 他方、教育委員会は、任命権者として教員等の資質の向上を図る責任を負っており、社会の変化や新しい教育課題等に対応するため、教員等に対して体系的な研修を実施していただく必要があるものと考えております。

畑野委員 確認ですけれども、そうやって行政が行う研修には、教員の自由と、そして自主性の尊重が入っているということでよろしいですね。

松野国務大臣 委員の質問の趣旨を私が今正しく理解しているかどうかわかりませんが、もちろん、今までの委員との御議論の中であったとおり、自主性というのは尊重されるべきであるかと思います。

 しかし一方で、先ほど答弁をさせていただいたとおり、やはり公務員としての職責の範囲においては、無制限にそれが認められるものではないということだと認識をしております。

畑野委員 そういうはっきりしない立場ではだめだと思います。きちっと国際的にも、これはやるべきだ、尊重するというふうに言っているわけですから、それはあまねくあらゆる現場の研修でも尊重されるべきだ、そのことを指摘しておきます。

 さて、研修には、行政研修以外にも、校内で先生方が自主的に行う研修、さらに民間教育団体に参加しての研修、教員組合の教育研究集会に参加しての研修など、さまざまな研修があります。しかし一方、教員の多忙化が深刻になっております。それが研修に大きな支障を来しております。

 教員の多忙化と研修との関係について、国際調査ではどのような結果が出ていますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の国際教員指導環境調査、いわゆるTALISによりますと、我が国の教員は、他国の教員と比較して、担当教科などの分野に関する知識、理解や指導法、それから生徒への進路指導やカウンセリングなどに対しての研修のニーズが非常に高く、教員の自己研さんへの意欲が高い状況がうかがえるところでございます。

 他方、この調査によりますと、研修参加の障壁として、業務スケジュールと合わないと回答した教員の割合が、他国平均五〇・六%であるのに対しまして、我が国の教員の場合は八六・四%と顕著に高い状況でございまして、多忙ゆえに研修への参加が困難な状況がこれによりうかがえるところでございます。

畑野委員 今おっしゃっていただいたTALIS調査、OECD国際教員指導環境調査、これを持ってまいりました。分厚いものですが、教員環境の国際比較、二〇一三年調査結果報告書ということで、国立教育政策研究所が出しております。

 おっしゃったように、日本の教員というのは、本当に、学びたい、研修したいという自主的な意欲が高いんですね。担当教科の分野に関する知識と理解について五一%が望んでいる、教員の職能開発ニーズで述べております。参加国平均は八・七%。日本は、五一・〇%、断然高い。にもかかわらず、職能開発の参加の障壁、今おっしゃったように、職能開発の日程が仕事のスケジュールと合わないというのが八六・四%、参加国平均五〇・六%に対して。これも本当に、それぞれが最も高い。研修したくても、忙しくて研修になかなか参加できないという実態があるということを示しております。もっともな悩みだと思うんです。

 教員全国勤務実態調査があります。多くの先生が過労死ラインで働いているのに、一番肝心な授業準備の時間、子供と接する時間がとれないという姿が浮き彫りになりました。

 全国調査では、一時間当たりの授業準備は何時間とれていますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、平成十八年度に文部科学省が実施いたしました教員勤務実態調査によりますれば、小学校では、一週間当たりの授業時数が十六時間三十分に対しまして、授業準備の時間が五時間ジャスト。中学校では、一週間当たりの授業時間が十三時間二十一分に対しまして、授業準備の時間が五時間十六分となっております。

 これを、授業一こま当たりの単位時間に換算して申し上げますと、小学校では、一こま四十五分に対して、その三分の一の約十四分、中学校では、一こま五十分に対しまして、ちょうど四割の約二十分が、それぞれ授業準備に充てられていることとなっております。

畑野委員 授業一こま当たり、授業準備は、小学校で十四分、中学校では二十分ということでした。

 では、国の定数配置基準で、この一こまの授業をするためにどれぐらいの準備時間がとれることを目安にしていますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 昭和三十三年のいわゆる義務標準法の制定の当時におきまして、一教員当たりの指導時数につきましては教科指導を週二十四時間と想定しておりまして、一日の勤務時間の半分程度を充てるとしておった次第でございます。勤務時間の残りの半分程度につきましては、授業指導の準備などの校務に充てることが適当であるという考え方でございました。

畑野委員 そうしますと、ちょっと確認ですけれども、一こまの授業について同じ時間が必要だということでよろしいんですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私の方から御説明申し上げましたとおり、教科指導が週二十四時間ぐらいを想定しておりまして、これが一週間全体の勤務時間の約半分程度でございまして、その残りの半分程度については指導の準備などの校務に充てるということが適当だという考え方で当時は考えていた次第でございます。

畑野委員 だから、では、一こま当たり何分ですか。それはどういうことですか。

藤原政府参考人 一こま当たりと申しますか、指導時数の想定が勤務時間全体の約半分、それから残りの勤務時間の半分が指導の準備などということでございまして、当時は週四十四時間勤務でございました。

畑野委員 かつて国会で、我が党の林紀子参議院議員に答えた局長答弁というのがあるんですね。それは、昭和三十三年のいわゆる標準法制定時における教職員定数を算定するに当たりまして、一時間の授業につきましては一時間程度は授業の準備が必要ではないかと考えて、それをベースに教職員定数を算定したという経緯がある、その考えについては、現在においても、これくらいな時間が必要ではないかと考えていますということですが、そういうことでいいですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、全体としての話を今私が御説明申し上げまして、それを単位時間で割り戻していけば、一時間当たりの指導時数に対しまして、その準備等の校務にかかるものがそれと同程度ということになる計算でございます。

畑野委員 ということで、数字が出てまいりました。同程度必要なのに、さっき言ったように、今は、小学校では四十五分の授業に対して十四分しか準備時間がない、中学校では五十分に対して二十分しかない。準備する時間がとれていないというのが今の実態なんですね。

 いい授業のためには準備時間は決定的です。私も、教員をやめた後、授業をどうしようかというのを夢に見て、はっと起きて、ああ、今教員じゃないんだとほっとする。これは本当に一番心血を注ぐものでした。その国の基準が、一時間の授業と同じ時間、一時間準備。ところが、実際には十四分しか小学校では準備できていない。

 松野大臣、準備の時間すらないこの現実ですね。行政研修をこれ以上ふやすことはまずい、むしろ思い切って減らしていくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

松野国務大臣 公立学校の教員等の研修に関しましては、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、各学校等のさまざまな主体によって行われているものと承知をしております。

 今般の法改正によりまして、教員等の任命権者である教育委員会等が、教員等としての資質の向上に関する指標及び当該指標を踏まえた教員研修計画を策定することにより、研修により身につけるべき資質や任命権者が行う研修が明確化されることから、各主体が実施する研修の体系化、効率化が全体として図られ、研修の精選が進むものと考えております。

 各教育委員会の行政研修の実施に際しては、こうした今般の制度改正を踏まえつつ、当該教育委員会の責任において適切に判断をしていただきたいと考えております。

畑野委員 教育委員会の適切な判断によると。国はそれでいいんですか。国がこうやって指針を決めていく法案が出されているわけです。研修はいい授業をするためのものでしょう。大目的である授業準備すらする時間がない。行政研修についてはお任せしますというのはおかしくないですかということを言っているんです。

 いろいろな工夫、研修によって学ぶこともあるでしょうけれども、現に目の前にいる子供たちにどういう授業をしようか、どんな工夫をしようか、この授業準備こそ、教員の本当に実になる自主的な研修の第一歩だと思うんですね。

 ですから、大臣、もう一回重ねて伺いますけれども、この研修を思い切って減らしていく、何よりも教員の皆さんが日々の授業準備のために教材研究の時間を確保するようにしていく、授業の準備の確保をできるようにしていく、このことが大事だと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

松野国務大臣 教師の多忙感の問題に関しては、私も問題を感じておりますし、先ほど答弁をさせていただいたとおり、それの改善に向けて、定数改善等、今要求をしているところであります。ぜひ実現をしてまいりたいと考えております。

 そして、委員御指摘のところの研修のあり方の問題でありますが、これも先ほど答弁をさせていただきましたけれども、国として法定研修として掲げているものは、今現状、初任者研修、指導改善研修と十年次の研修であります。

 必要最低限の国として必要であると考える研修の実施について定めているものでありますが、加えて、それぞれの任命権者がそれぞれの判断において、これは地域事情、また教員の年齢構成等の要素もあると思います、そういったことを総合的に判断して任命権者が今研修を行っている状況でありますので、その判断は当該の任命権者によって適切に行われるべきものと考えております。

畑野委員 それで、大臣、確認なんですけれども、教材研究の時間の確保をしっかりやれるように、先ほど、四十五分のところを四十五分準備が必要だ、しかし、実際には十四分しかとれていない、中学校では、五十分に対して五十分の準備が必要なのに、実際は二十分しかとれていないと。

 ここのところをきちっととれるように、しっかりやるというふうにしていただきたいんですけれども、もう一回確認させてください。

松野国務大臣 委員御指摘のとおり、授業に対して十分な授業準備をしていただくことは重要なことであると考えております。

 その点も踏まえて、総合的に任命権者が、今先生は研修との兼ね合いで御質問をいただいておりますけれども、研修のあり方等、任命権者の判断がそこで適切になされるものと期待をしております。

畑野委員 期待するのではなくて、国を初め、姿勢を改めていただきたいと思うんです。

 それで、国の法定研修の話がありました。必要最低限のものをやっているとおっしゃいましたけれども、では、実際どうなっているのか。これは、任命権者の責任でなくて国がやっているわけですから、そこを問うていきたいと思います。

 初任者研修について次に伺います。

 今回の法案の背景になっている昨年十二月の中教審答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」では、初任者研修の現状の問題点について述べております。簡潔に、要約的にお答えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 初任者研修の現状の課題につきましては、委員御指摘の、昨年十二月の中教審答申で次のように述べているところでございます。「特に義務教育段階で、初任者をはじめとする経験年数の浅い教員の割合がこれまでになく高くなっている状況下において、初任者に過度な負担がかかっているという指摘もある。また、初任者が授業を担当しつつ、多くの校内研修や校外研修をこなさなければならないことが、初任者の消化不良などにつながっているという指摘もある。」

 以上のように述べられております。

畑野委員 初任者に過度な負担がかかっている。授業を担いながら校内研修や校外研修をこなさなくちゃいけない。教員一年目というのは本当に大変です。ところが、一九八九年以来、その一年目の教員に行政研修を法制化いたしました。その結果、今、中教審も報告で認めたように、過度な負担になっています。

 私も、初任研の実態について、何人かの教員の皆さんから実態と要望を聞いてまいりました。

 初任者研修は、校外の研修と校内の研修に分かれています。ある小学校の先生は、月一回、校外研修のために担任のクラスを離れることが本当にきつかった、いないときに限って、起こらなければいいなと思う事件が起こる、離れるときに授業を頼むための教材準備までしないといけない、後補充の先生、いない間に埋めてくれる後補充の人も非常勤の先生だったので大変でしたと述べられていました。

 多くの小学校の先生が、校外研修で学校を離れることは嫌だったと述べております。しかも、行った先の話がおもしろいかというと、おもしろくないというのを本当に聞くんです、八割方、役に立たなかったと。中には、もちろんいいのもあるでしょうけれども。

 それから、校内の研修。多くが、これでいいのかという声です。

 例えば、自分の授業をやめて別室で授業研修をしたり、校長先生の講話を聞くということなんですけれども、一時間一時間の研修の出来事を全て報告書として記録しなくちゃいけない。その書いたレポートが、指導教員、教頭、校長、指導主事と回されて、意見の附箋、黄色いのがべたべたと張られていく。四回、五回、書き直しを命じられるというケースもある。附箋が、レポートにあくところがなくつくから、ぐるりとレポートの周りを覆って花のヒマワリだ、わかりますでしょうか、黄色い花びらがいっぱいついているヒマワリの花みたいだ、こういうことですよね。

 詳しいことは、これは初任者研修制度・新規採用教員問題シンポジウム、全日本教職員組合など含めて多く言われてきていることです。現場からは、初任者を育てるのではなく、初任者を潰すことを目的にしているのか、そういう声も起きていると伺いました。

 松野大臣、今回、中教審答申は初任研の運用方針の見直しに言及いたしました。初任者というのは、右も左もわからない、時間が幾らあっても足りない時代です。そのときに、過度の行政研修を課すなどあってはなりません。小学校の担任をクラスから引き離さないでほしい、過度のレポートの負担を軽減してほしい、こういう声を真摯に受けとめて、初任者研修の思い切った見直しをすべきではないかと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 初任者研修は、教育公務員特例法第二十三条に基づき、任命権者が、公立小学校等の採用の日から一年間の教諭等に対して、実践的指導力と使命感を深めるとともに、幅広い知見を得させることを目的として、組織的、計画的な研修を行うものです。

 近年、多くの都道府県において、初任者の研修内容の確実な習得や、学校現場を一時離れなければならないことといった負担の軽減を目的として、初任者研修の内容の見直しを進めております。

 具体的には、教職大学院と連携した取り組みにより研修内容の充実や運営上の工夫を図ったり、初任者研修のみで若手期間の研修を終えるのではなく、二年目研修や三年目研修を実施したりするなど、多くの改善例が見られます。

 文部科学省としては、今後、より一層初任者研修の実施時期や研修の内容について弾力的な運用が図られるよう、各地域の好事例を発信するとともに、モデル事業の実施等を通じ、初任者研修の充実をさらに進めてまいります。

畑野委員 二年、三年に分けたという教員の話も伺いました。二年目、三年目にも、担任する子供を置いて校外の研修に行かなくちゃいけない、かえって、その分期間が長くて大変だったという声も聞くんですね。本当に、現場の若い教員たちの声をきっちりと聞いて対応していただきたいと思うんです。

 それで、先生方の、教員たちの話を聞いていて、さらに気になることがありました。それは、初任者研修における高圧的な態度です。

 今おっしゃったように、初任者研修を受ける一年間はちょうど条件つき任用の期間です。ある教員からは、初任者研修に行くたびに、仮採用だからねと言われるというのがつらかったと。つまり、言外に、いつでもやめさせることができるという圧力があるわけですよね。

 校外研修で一部の指導の教員がそういう高圧的な態度や物言いをする。退勤時間の時刻になっても終わってくれない、休憩なしでぶっ続けでやられる。体育館の講話では、椅子もなしに、足を伸ばして体育館座りを強制された。スーツ姿だから、スカートの女性にとってはセクハラじゃないかという事態が起きている。それから、クールビズを推奨している自治体で夏の研修があって、クーラーが故障してしまった、でも、研修は身なりからといって、猛暑にもかかわらず、ジャケットの着用を義務づける。

 こういう、パワハラではないかと言わざるを得ない、上から目線の研修が横行しているのではないかと思わざるを得ません。その殺し文句が、初めに紹介した、仮採用だからだという発想なんです。

 松野大臣、指導者は、条件つき任用を盾に初任者研修でパワハラまがいのことを行うなどということはあってはならないことだと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 公立小中学校等の条件つき採用期間にある初任者に対する初任者研修での指導教員の指導助言については、初任者の意欲を大切にし、その自主性を育てるような形でなされるような配慮が必要であると考えております。

 パワーハラスメントについては、研修の場であっても、その防止に努めるべきことはもう当然であり、文部科学省としては、パワーハラスメントの防止にかかわる情報提供等を通じ、引き続き各教育委員会に適切な対応を促してまいります。

畑野委員 しっかりやっていただきたいと思うんです。こういう実態が各地で横行しているということです。

 条件つき任用という制度も、国が初任者研修と一緒に、現場の反対を押し切って導入した制度です。そういうもとでこういうことが起きているということにしっかりと目を向けなくてはならないということで、直視をして、是正する措置をとることを強く求めます。

 仮採用だからいつでもやめさせることができるという発想は、司法からは断罪されております。

 二〇〇五年三月三十一日、京都市が初任者の教諭を、学級崩壊を引き起こした、その他の理由をたくさんつけて分限免職にしたのに対し、その処分は裁量権の誤った行使として違法と判決されました。

 確定した二〇〇九年六月四日大阪高等裁判所の判決は、一年目の教員について次のように言っております。今後研さん等に努めて成長していく過程の者である、このように言って、個々の事象の評価、つまり学級崩壊になったとかということに過度にかかわるものではなく、一定時間の経緯の中で評価すべきだとして、学級崩壊などに対しても、管理職らの指導、支援体制も必ずしも十分ではなかったなどの事情を指摘して、京都市の主張を退けました。

 松野大臣、初任の教員を、今後研さん等に努めて成長していく過程の者として温かく支援することが研修に必要だと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 本判決において、条件つき採用期間中の教員は、教員として十分な経験を経た者ではなく、今後研さん等に努めて成長していく過程の者であるから、当該期間中の職務成績が、経験のある教員と比した場合、必ずしも十分でなかったとしても、直ちに分限免職の対象になるとは言えず、教員として将来成長していくだけの資質、能力を有するか否かという観点から判断すべきであると示されております。

 初任者研修については、教員として将来成長していくために不可欠な実践的指導力と使命感を養うとともに、幅広い知見を得させるために実施しており、このような趣旨を踏まえ、適切に任命権者において実施をされていると承知をしております。

畑野委員 国がつくった制度ですから、国として責任を持ってきちっとやっていくことが必要だと思うんです。

 その根底は、最初から述べているように、教員の自由と自主性を尊重する、それがあってこそ、現場で子供たちに接する、生徒たちに接する、その教員の資質も高まって子供たちのためになる、そのための研修であります。

 次に、それでは、その初任者研修にとっての、それを支える条件整備、これがどうなっているのかということについて伺います。

 先ほどから述べておりますように、初任者の校外、校内の研修で子供たちの授業に穴があきます、その教員がいられませんから。いなくなった分の穴を塞ぐ手だてはどういうふうになっているのか、これは総務省に伺います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 教員の初任者研修に伴い配置されます非常勤講師に係る経費につきましては、平成十六年度に国庫補助金が一般財源化されたところでございます。

 一般財源化に当たりましては、地方自治体の財政運営に支障を来すことがないよう、一般財源化された従来の国庫補助金分も含めた地方負担の全額について地方財政措置を講じているところでございます。

 具体的には、国庫補助金の一般財源化分を上乗せして経費を積算した上で、教職員数に応じて普通交付税により措置しているところでございます。

畑野委員 総務省に確認ですけれども、教職員数にというふうにあったんですけれども、教職員数というのは初任者研修に行っている人数ですか。そうじゃないですよね。一般的なものですか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げました教職員数に応じてといいますのは、普通交付税の基準財政需要額を算定するに当たって用いております測定単位であります教職員数でございます。

畑野委員 そうすると、もう一回確認ですが、わかりやすく言っていただけますか。

 初任者研修として穴があく、その後補充のための教員の数に基づいて出しているのか、出していないのか。お答えください。

池田政府参考人 初任者研修に伴う講師の数、あるいは初任者研修を受ける数ということではなく、小学校費あるいは中学校費を算定する際の測定単位として用いております教職員数に応じて算定をしているものでございます。

畑野委員 つまり、それまでは充てていたかもしれないですね、一般財源化して、補充がちゃんと算定されていないということですよね。だめですよね、これでは。

 私、文科省にはきょうは聞きませんが、そういう実態も、ちゃんと後補充ができているのかというのもやっていただきたいと思うんですが、その確認だけ、お答えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点につきましては、現時点において必ずしも十分文部科学省において把握をしているわけではございませんので、さらなる実態の把握について努めてまいりたいと考えております。

畑野委員 ぜひ進めてほしいんです。ここが曖昧になっているんですよ。国がやるべきことが自治体任せになっている、三位一体改革でそういうふうにしてしまったということです。

 私が伺った例では、かわりの教員が全く配置されない。だから、半年間ずっと自習になっていた。初任者研修に教員が出ている間の授業です。もう授業が進まない。子供たちにとって、本当に深刻な事態が現に生まれているんです。

 これは、手当てを含めて、今まで曖昧になっていたことにメスを入れていただいてやらなくちゃいけないということは指摘しておきますが、そういう手当てがない中で研修に出すということ自身が問題ですから、そういうことはもっと検討する、改善する、弾力的に運用するということをきちっと、子供に支障が出ないように手当てをすることはもちろんなんですけれども、手当てがされない現状の中ではそういう研修に行かなくてもいいということなどを含めて、松野大臣、やる必要があるんじゃないですか。

松野国務大臣 既に答弁をさせていただきましたけれども、初任者研修、校外研修に参加する際の補充のための非常勤講師の雇用に関する経費は地方財政措置で今なされておりますから、現状、文科省の方として正確にそれを把握しておりません。

 しかし、研修の重要性もお話をさせていただきましたが、それと同時に、学校現場で子供たちの学習に支障が出るということでは本末転倒でありますから、これは地財措置でございますので、第一義的には地方の任命権者によってなされるものでありますが、適切な措置がなされるよう、私どもも促してまいりたいと考えております。

畑野委員 そうですね。穴があいていれば、きちっとそれを埋めるようにする、それは初任者研修をつくった国の責任ですから。同時に、現実にそういう穴があいていたら、いろいろな手だてがあるでしょう。研修の問題も、もっと縮小するとか。何よりも、授業準備に本当に邁進できるようにしてあげるということが、とりわけ一年目の教員にとって大事だと思うんです。

 さらに初任者には、現在、初任者指導専門の教員として、拠点校指導教員がつく制度だというふうに伺いました。初任者四人に一人の指導専門の教員がつくということです。一日に一人ずつ回って四日間、あとの一日で今後の指導方向を考えるというふうに伺いました。

 この制度が導入された二〇〇三年当時の初任者数と指導教員の定数はどうなっていましたか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの平成十五年度につきましては、現在と比較が可能なデータがとれておりませんので、平成十六年度の数値でお答え申し上げたいと思います。

 当該年度におきましては、初任者研修の対象者の人数が、義務教育段階、高等学校段階を含めて合計一万九千三十九名となっております。それに対する初任者研修に係る指導教員の加配の定数につきましては、これは義務教育段階に限った数字ですけれども、三千四百五十九名となっております。

畑野委員 高校まで含めて初任者が一万九千三十九人、小中学校の指導教員が三千四百五十九人というお答えでしたね。

 では、直近の初任者数と指導教員の定数はどうですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 現在集計できている直近のデータは平成二十六年度でございますが、初任者研修の対象者の人数が、義務教育段階、高等学校段階を含めて二万八千五百十二名となっております。また、初任者研修に係る指導教員の加配定数につきましては、義務教育段階でございますけれども、三千四百五十九名となっております。

畑野委員 初任者が、高校まで含めて、二〇〇四年の段階では一万九千三十九人だった、それで、現在が直近で二万八千五百十二人になった、一・五倍に初任者がふえている。ところが、指導教員、これは義務教育段階、小中学校ですけれども、二〇〇四年が三千四百五十九人、直近でどうかというと、三千四百五十九人、全く一緒ですよね。

 初任者数が一・五倍、これは高校を含めたトータルで、後でまた分けて伺わなくちゃいけないんですが、しかし、指導教員は小中学校を見ても全然ふえていない、全く末尾までぴったり同じ。しかも、初任者数がふえることはわかっているわけです。これまで計画的な教職員の定数改善をやってこなかったツケが、今、回っているということですよ。そういうことがわかっていながら、指導教員の増員についても、あるいは三十五人学級の推進についても、概算要求もしていないということですよね。

 指導教員の概算要求は来年度もしていないんですけれども、松野大臣、きちんとこの指導教員を含めて増員するべきではありませんか。

松野国務大臣 近年、教員の大量退職を受け、採用人数がふえており、初任者研修の対象者がこの十年間で一・五倍になったことは、委員御指摘のとおりでございます。

 このような中、若手教員の育成の強化を図るため、二年目、三年目研修を実施するなど若手教員のための研修を継続して実施する例や、メンター方式により、校内のベテラン、ミドルリーダークラスの教員が、若手教員のみならず、臨時的任用や非常勤の教員も含めて研修を行い、成果を上げている例も見られます。

 このため、文部科学省としては、初任者研修のための加配措置に加え、平成二十九年度概算要求において、他の教員に対して指導助言できる指導教諭の配置促進を目的に新たな加配制度を要求しているところであり、今後とも、教員の資質の向上に向けた取り組みを支援してまいりたいと考えております。

畑野委員 驚くべき数字をもらいました、文部科学省から。

 初任者研修に係る教員加配についてですけれども、二〇〇二年、これは三千四百五十九人なんです。二〇〇三年、三千四百五十九人なんです。それで、先ほど言った二〇〇四年、三千四百五十九人なんです。毎年毎年三千四百五十九人で、二〇一六年、今年度までずっと三千四百五十九人なんです。十五年間ずっと同じなんです。初任者研修という制度をつくりながら、やる気がないということじゃないですか。

 指導教員、どうされるつもりですか。松野大臣に伺います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、初任者教員に対する指導教員につきましては、過去十五年間、同じ数字になっておりまして、来年度、平成二十九年度の概算要求も同数を求めているところでございます。

 ただ、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたとおり、指導教諭について、新しい加配制度の要求をして、増の要求を来年度の概算要求でしております。

 これら両方を組み合わせて今後対応していきたいと考えておりますが、また、委員御指摘の指導教員につきましては、さらに今後のあり方を踏まえて対応していきたいと思います。

畑野委員 私は、そもそも初任者研修の問題、そのものの問題点があると思います。無理なんですよ、今のやり方が。

 やはり条件整備として国が行うべきは、三十五人学級のさらなる推進を初め計画的な定数改善を行って、現場に、子供たちのところにちゃんと教員がいる、手厚くいると。人間と人間の力によって、学校は現場で成り立っているわけです。

 初任者の願いは、悩みを聞いてくれる先生が欲しい、いい授業のコツのようなものを知りたい、暴れている子供への温かい見方を教えてくれる先生が欲しい、保護者への対応のコツも知りたい、そういう支援を心から望んでおります。

 それを上から目線で締めつける初任者研修はやめて、教師は現場で育つ、初任者も現場で育つ、それを豊かに支え合える教員定数の増員を初め条件整備こそ行うべきだというふうに私は申し上げたいと思います。教員の自由と自主性の尊重を阻害するような研修への行政の関与や介入はやめるべきだ、それを強める法案はやめるべきだと私は申し上げたいと思います。

 それで、最後に、時間がありますので、協議会について伺います。

 大臣、教員の研修について教育委員会が定める指標は、協議会に参加する大学における教員養成に関する教育研究のあり方を拘束するものではないと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 委員御指摘のとおり、大学の自主性、自律性を確保することは重要であると考えております。このため、当然のことでありますが、参加を望まない大学を強制的に協議会に参加させることができる仕組みにはなっておりません。

 また、改正教育公務員特例法第二十二条の五第三項では、協議会において協議が調った事項について、協議会の構成員はその結果を尊重しなければならないこととしておりますので、大学として賛同した内容については尊重していただく必要があると考えておりますが、大学として賛同しなかった内容に関してまで尊重することを強いる仕組みにはなっておりません。

 なお、文部科学省としては、協議会における協議を機に、大学が自主的な判断により、学校現場で現に生じている課題等を適宜教員養成に反映させることで、実践的な指導力を持った教員を養成できるよう、主体的に取り組んでいただくことを期待したいと考えております。

畑野委員 主体性が前提だということで……

永岡委員長 申し合わせの時間が来ております。短目にお願いいたします。

畑野委員 はい。大臣、大学の自由、学問の自由を守るということでよろしいですね。

永岡委員長 時間が来ております。一言でお願いいたします。

松野国務大臣 大学の学問の自由を守ることは当然のことであります。

畑野委員 終わります。

永岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。大平喜信君。

大平委員 私は、日本共産党を代表して、教育公務員特例法等改正案に反対の討論を行います。

 本法案は、大量退職、大量採用など、教員の年齢、経験年数の不均衡による弊害などを理由に、公立の小中高の教員の研修計画の仕組みを変えることを中心としたものです。

 まず指摘しなければならないのは、今日の教員の年齢、経験年数の不均衡は、政府がつくり出したものだということです。計画的な教員定数改善を行わず、採用抑制を続けてきた文部行政の責任であるにもかかわらず、この点への反省が全くありません。

 本法案は、公立の小学校等の教員の資質の向上を図るため、新たに文部科学大臣が指針を定め、教育委員会は、その指針を参酌して策定した指標を踏まえて教員研修計画を定めるという仕組みを導入しています。これは、教育委員会の定める研修計画を文部科学大臣の指針に従わせようとするものです。本来、自主的であるべき教員の研修を、文部科学大臣の指針のもとに置き、管理、統制しようというものであり、到底認められません。

 また、教育委員会が指標づくりのために設置する協議会に教員養成大学の協力を明記し、文部科学省の求める教員づくりに大学を組み込もうとしていることも看過できません。

 さらに、法案は、十年経験者研修を中堅教諭等資質向上研修に改めていますが、研修で中堅教員がつくられるわけではありません。一九九九年以来、初任者研修、十年研修、さらに教員免許更新制と、次々に行政による研修をふやしてきましたが、そのもとでどういうことが起きているでしょうか。

 特に初任者研修は多くの矛盾を抱えており、中教審答申も、初任者が授業を担当しつつ、多くの校内研修や校外研修をこなさなければならないことが、初任者の消化不良につながっていると指摘をしています。中にはパワハラまがいの指導も横行しています。こうした研修のあり方を根本から見直すべきです。教員の資質向上などと称して、国の方針のもとで、あるべき教員像を示し、研修で育成する方法で問題は解決しません。

 教員が、学びの専門家として、みずからの職責のために自主的に研修に取り組むことが必要です。行政研修の削減、校内研修の機会の確保、充実、少人数学級推進のための定数改善、多忙化の解消を進めることこそ、教育行政の責務ではありませんか。

 以上を指摘し、討論を終わります。(拍手)

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表し、教育公務員特例法等の一部改正案に反対の立場から討論を行います。

 本改正案の趣旨は、教員の方々が、そのキャリアステージに応じてスキルアップできるよう、研修制度の充実を中心に環境整備をしていくものと理解します。その趣旨については異存はありません。

 そのためには、できる限り国の関与を減らし、地域や学校現場の実情に即した研修制度にすること、教壇での授業や生徒指導に具体的に役立つ校内研修を中心に据え、校外研修は極力減らすなどの措置で教員の義務感や負担感を減らしていくことが重要です。

 しかしながら、法案では、任命権者が定める教員研修計画に、必要な事項として文部科学省が定める事項が盛り込まれました。また、指標の策定段階で設置が義務づけられている協議会の構成でも、現場の教員や学校設置者が明示されない一方、協議会に参加する大学等は最終的に文科省令に委ねられることになっています。

 地域、そして学校現場の実情に沿った自主的、自律的な研修制度を模索するのであれば、文部科学大臣が策定する大綱的な指針以外に文部科学省が関与すべきではありません。

 法案に反対する第一の理由です。

 第二の理由は、かねて問題になってきた十年研修と免許更新講習の関係です。

 そもそも、免許更新制度には合理性、妥当性、相当性が認められません。そのことを指摘した上で、今回、十年研修を中堅教諭等資質向上研修に改め、その弾力運用を促していますが、本来であれば、十年研修と免許状更新講習、両者の相互認定こそ検討すべきだったと考えます。

 反対の第三の理由は、外国語に限った小学校特別免許状の創設です。

 教科の専門性を担保するのであれば、小学校でも外国語の専科担任制を検討することこそが本筋だと考えます。

 以上の観点から、本改正案に反対いたしますが、教員の経験年数のアンバランスを勘案し、さらに教員の多忙化の解消を進めていくのであれば、教員の計画的な定数改善がセットで実施されなければ、研修がさらに教員の負担増を招きかねないことを指摘し、討論といたします。(拍手)

永岡委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、教育公務員特例法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

永岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、宮川典子君外五名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党、日本維新の会及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。菊田真紀子君。

菊田委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    教育公務員特例法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 文部科学大臣が策定する指針については、教育委員会等が地域の実情に合わせた指標を自主的・自律的に定めるための大綱的な内容のものとし、地域や学校現場に対する押し付けにならないようにすること。

 二 教育委員会等が策定する指標については、画一的な教員像を求めるものではなく、全教員に求められる基礎的、基本的な資質能力を確保し、各教員の長所や個性の伸長を図るものとすること。また、同指標は、教員の人事評価と趣旨・目的が異なるものであることを周知すること。

 三 指標の策定に関する協議会においては、教育委員会や大学の教員養成課程の関係者のみならず、協議等を通じて、地域における課題や学校現場の状況を反映させること。

 四 指標を踏まえた教員研修計画の策定に当たっては、教員の資質能力の向上に資する効果的・効率的な研修計画を体系的に整理することにより、教員の更なる過重負担を招かないようにすること。

 五 中堅教諭等資質向上研修の実施に当たっては、十年経験者研修と免許状更新講習の時期等が重複することによる教員の負担を軽減する観点から、免許状更新講習の科目と中堅教諭等資質向上研修の科目の整理・合理化や相互認定の促進を図ること。

 六 学校現場で多忙を極める教員が、児童・生徒と向き合う時間を確保しつつ法の趣旨に則った効果的な研修を受講できるよう、事務職員や他の専門能力スタッフの拡充を推進するとともに、昨年六月に「教育現場の実態に即した教職員定数の充実に関する件」を全会一致で決議したことを踏まえ、教職員定数の計画的拡充に努めること。

 七 小学校における外国語の特別免許状の授与を決定するに当たっては、外国語の能力のみに偏重することのないよう、教育職員検定において、教員としての熱意や教科専門性を十分に問うものとすること。また、外国語が教科化される予定であることを踏まえ、特別免許状は例外的措置であり、小学校における外国語の専科担任制の拡充について検討すること。

 八 独立行政法人教職員支援機構の運営に当たっては、事務の効率化に努め、機構の業務範囲の拡大が組織の定員や予算の肥大化につながらないようにすること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

永岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

永岡委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。松野文部科学大臣。

松野国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

永岡委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

永岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.