衆議院

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第7号 平成28年11月18日(金曜日)

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平成二十八年十一月十八日(金曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 永岡 桂子君

   理事 上川 陽子君 理事 亀岡 偉民君

   理事 前田 一男君 理事 宮川 典子君

   理事 山本ともひろ君 理事 坂本祐之輔君

   理事 長島 昭久君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    安藤  裕君

      池田 佳隆君    石川 昭政君

      尾身 朝子君    大串 正樹君

      勝沼 栄明君    門山 宏哲君

      神山 佐市君    工藤 彰三君

      小林 史明君    櫻田 義孝君

      下村 博文君    田野瀬太道君

      谷川 とむ君    冨岡  勉君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      馳   浩君    福井  照君

      船田  元君    古田 圭一君

      松本 剛明君    若狭  勝君

      太田 和美君    高木 義明君

      寺田  学君    平野 博文君

      牧  義夫君    本村賢太郎君

      笠  浩史君    樋口 尚也君

      吉田 宣弘君    大平 喜信君

      畑野 君枝君    伊東 信久君

      吉田 豊史君    吉川  元君

    …………………………………

   議員           青山 周平君

   議員           河村 建夫君

   議員           笠  浩史君

   議員           富田 茂之君

   議員           伊東 信久君

   文部科学大臣       松野 博一君

   財務大臣政務官      三木  亨君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    田野瀬太道君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原  誠君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十八日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     勝沼 栄明君

  尾身 朝子君     若狭  勝君

  福井  照君     中川 郁子君

  船田  元君     中谷 真一君

  菊田真紀子君     本村賢太郎君

  笠  浩史君     寺田  学君

  伊東 信久君     吉田 豊史君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     石川 昭政君

  中川 郁子君     福井  照君

  中谷 真一君     船田  元君

  若狭  勝君     尾身 朝子君

  寺田  学君     笠  浩史君

  本村賢太郎君     菊田真紀子君

  吉田 豊史君     伊東 信久君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     安藤  裕君

    ―――――――――――――

十一月十八日

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の慎重審議に関する請願(畑野君枝君紹介)(第五六三号)

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の不登校対策にかかわる部分の白紙撤回に関する請願(奥野総一郎君紹介)(第五六四号)

 同(仲里利信君紹介)(第五六五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第五六六号)

 同(辻元清美君紹介)(第六三〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第六三一号)

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の廃案に関する請願(畑野君枝君紹介)(第五六七号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七〇二号)

 同(池内さおり君紹介)(第七〇三号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第七〇四号)

 同(大平喜信君紹介)(第七〇五号)

 同(笠井亮君紹介)(第七〇六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七〇七号)

 同(斉藤和子君紹介)(第七〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第七〇九号)

 同(清水忠史君紹介)(第七一〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七一一号)

 同(島津幸広君紹介)(第七一二号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七一三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七一四号)

 同(畑野君枝君紹介)(第七一五号)

 同(畠山和也君紹介)(第七一六号)

 同(藤野保史君紹介)(第七一七号)

 同(堀内照文君紹介)(第七一八号)

 同(真島省三君紹介)(第七一九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七二〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第七二一号)

 同(本村伸子君紹介)(第七二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案(丹羽秀樹君外八名提出、第百九十回国会衆法第三四号)


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     ――――◇―――――

永岡委員長 これより会議を開きます。

 第百九十回国会、丹羽秀樹君外八名提出、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長藤原誠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。

 質問の機会をいただきました、また、この法案について取り扱いを決めていただきました永岡委員長、また与野党の上川、長島両筆頭に心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。また、立法チームで大変な御指導をいただいた河村会長を初め笠委員、富田委員、また共産党の畑野さんにも、きょう、お礼を申し上げたいと思います。

 まず最初に、我が国の教育に関する法律で、不登校児童生徒という文言を規定した法律はあるのかないのか、また、第十三条に規定されておりますけれども、休養の必要性を認めたというふうな文言で、いわゆる学校に出席をしないということを認めることになりますが、こういう規定はこれまでの我が国の法律にあるのかどうかを藤原初中局長にお伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず第一の、法案第二条第三号の「不登校児童生徒」の用語でございますが、現在の法律においてこの用語を使った例はないというふうに承知しております。

 また、本法案の十三条の「休養の必要性」につきましても、この用語を使った用例は現在の法律においてないと承知しております。

馳委員 提出者の河村建夫議員にお聞きしたいと思います。

 そもそもこの法律が必要とされたという社会的背景や立法の事実、このことについてお答えをいただきたいと思います。

河村議員 お答えいたしますが、その前に、馳委員には、この問題についていち早く研究会を立ち上げていただきまして、活発な議論をいただいて今日がありますこと、感謝を申し上げます。

 このような問題を取り上げていこうということになったのは、御案内のとおり、不登校の児童たちが十二万を超えておるというこの現状をまず直視しなきゃいかぬだろう、そして、今日、日本が誇ると言われる義務教育の中にあって、そういう子供たちに、どのような教育を受けて、そしてほかの方々と同じように社会に出ていく機会をどういうふうにつくっていったらいいだろうかということが最初の課題でございまして、それについてあらゆる角度から議論をしたわけでありますが、もちろん、不登校にはさまざまな理由がありますから、それをどのように定義していくか、どのように考えていくか、議論になったところでございます。

 そういう視点に立ってこの問題を取り上げ、そしてそういう人たちにも教育の機会をいろいろな角度から与えていこうというのが、今回の法律を提出した理由でございます。

馳委員 そこで、法律第二条第三号の「不登校児童生徒」の定義についてお伺いしたいと思います。

 ここには、「学校における集団の生活に関する心理的な負担」と表現をされております。この表現だけを読むと、ともすると、不登校の原因は児童生徒の側にあると強調され過ぎている嫌いがある、こういう解釈ができます。

 私は、そうではないと思っているんです。そもそも、学校の空気、教職員の言動、友人関係、あるいは、個人的な問題に入りますけれども、LGBTの問題やいじめの問題等々、さまざまな要因があると思われますが、法律の条文でこういうふうに規定されますと、一方的に、児童生徒が学校に行かないのがよくないんだ、こう現場の教育委員会や学校長なども解釈しがちであります。

 そうではないということの意味で、改めて文科省には、この不登校児童生徒の定義のところにおいて、その要因は非常に幅広いさまざまな事情があるということを明確にお答えいただきたいと思います。藤原局長、お願いします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 不登校児童生徒の定義につきましては、文部科学省の問題行動等調査におきまして、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にある者としており、法第二条第三号における定義については、これを踏まえて文部科学省で定めることとしております。

 一般的に、不登校の要因といたしましては、委員御指摘の、教職員の言動、学校管理下の問題、友人関係、いじめ、LGBT、貧困あるいは家庭の問題等さまざまなものが考えられまして、これらを含めた何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により登校しない、あるいはしたくともできない状況にある場合には、定義に該当することとなるというふうに考えております。

馳委員 そこで、この法案の肝となる部分は第三条の理念のところでありまして、松野大臣にお伺いをしたいと思います。

 実は、立法の過程で、自民党の部会で、この第三条第一号は当初ありませんでした。しかし、当時、松野委員は、強く、そもそも学校の体制をしっかりと整備すべきであると主張されて、その上で、原案の修正という形でこの理念の第一号が入ったという経緯があります。

 であるとすれば、松野大臣の思いも含めて、どのような学校の体制整備、環境整備、法律の条文によりますと、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるような環境の確保が図られるようにするために、こうなっております。確保でありますから、ここは、文科大臣は法案成立後に大きな責任を負うことになると思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

松野国務大臣 馳委員から御指摘をいただいたとおり、児童生徒にとって、豊かな学校生活を送るとともに、学校が安心して教育を受けられる場であることは重要なことである、この認識は私も共有をしているところであります。また、不登校になった児童生徒が再び学校に通うことができるよう、学校における環境を整えることも重要なことであると考えます。

 このため、文部科学省としては、次世代の学校指導体制の実現に向けた教職員の指導体制の充実、養成、採用、研修の一体的改革による教員の資質、能力の向上、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等の配置による教育相談体制の充実などに取り組んでいるところであります。

 このように、教職員の質と量の両面からの充実や専門スタッフの配置の充実等を通じて、児童生徒一人一人の状況に応じた学校の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

馳委員 大臣がこうして明確におっしゃっていただきましたが、肝心の予算づけをするのは財務省であります。

 きょうは財務省の三木大臣政務官が来ていると思いますけれども、改めて問いたいと思います。

 予算折衝の中でよく財務省はエビデンスと言いますが、財務省が考えているエビデンスとは何か、具体的におっしゃっていただきたいと思います。

三木大臣政務官 馳委員の方から、教育政策に関するエビデンスについてお尋ねをいただきました。

 六月に閣議決定されました骨太の方針二〇一六におきまして、「教育政策においてエビデンスに基づくPDCAサイクルを確立する。」とされておるところでございます。

 その上で、エビデンスの例としては、同じく骨太の方針二〇一六等におきまして、学級規模等の影響や効果の調査、あるいは加配教員、専門スタッフの配置の効果分析、あるいは高い成果を上げている地域や学校の取り組み、教育環境の分析といった教育政策に関する実証研究による成果が挙げられておりまして、財務省としても、こうした科学的根拠のあるエビデンスが必要というふうに考えております。

 また、文部科学省におきましても、こうした方針に基づきまして、二十八年度より、教育政策に関する実証研究事業が進められているものと承知いたしております。

馳委員 教育環境の整備とおっしゃいましたね。

 では、三木政務官にお伺いしますけれども、例えば、三木政務官の地元の中学校の体育館が耐震、防災上の課題がある、つり天井の改修をしなければいけない、予算づけが必要だ。もしその予算づけが可能となれば、恐らく、学校長だけでなく保護者、子供たちも非常に安心すると思いますし、自分の地域で教育環境がそのように整備されれば、三木さんも安心すると思います。

 その安心感というのはエビデンスという数値で表現できるんですか。

三木大臣政務官 馳委員の質問にお答えしたいと思います。

 我々としても、教育政策において教育成果の全てを数値化できるわけではないということは理解しております。

 ただ、骨太の方針等においてエビデンスやPDCAサイクルを重視するべきとされた背景には、行政の説明責任を徹底し、政策の質を高めるために、透明性の高い政策評価を行うことが求められていると考えております。

 そうした方針を踏まえまして、今後、研究者の方々とも協力いたしまして、できる限りの工夫をしていく必要があるというふうに考えています。

馳委員 このエビデンスと財務省がおっしゃる問題については、今後、委員会があれば、毎回のように三木政務官をお招きして徹底して議論したいと思いますので、委員の皆様にも御協力をお願いしたいと思います。

 さて、法の第十四条に入ります、夜間中学校における就学の機会。

 松野大臣にお伺いいたします。夜間中学校は四十七都道府県に一つずつつくる必要があるとお考えでしょうか。

松野国務大臣 夜間中学については、義務教育未修了のまま学齢を超過した方々や、本国において義務教育を修了していない外国人等の就学機会の確保に重要な役割を果たすと考えております。また、今後は、不登校等により実質的に十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した者の受け入れという役割も期待をされます。

 こうした中、現在、夜間中学の設置は全国で八都府県三十一校にとどまっております。このため、文部科学省としては、各都道府県に少なくとも一つは夜間中学が設置されるよう、その設置を促進していきたいと考えており、各教育委員会における設置に向けた取り組みを引き続き支援してまいりたいと考えております。

馳委員 設置に向けた取り組みを促進するためにも、法の第十五条で協議会の設置は都道府県の責務になっていて、国はどのようにひな形を示して指導していくか、そのことの具体性が必要だと思っています。

 したがって、文科省としては、全都道府県の教育委員会にアンケートをして、またこの協議会の持ち方について指針を示して促していくという明確な姿勢を示す必要があると思いますが、この点について、藤原局長にお伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 夜間中学の設置等を行うに当たりましては、各都道府県と各市区町村間の役割分担や連絡調整を行うことが重要であり、協議会を組織して取り組むことは、そのための有効な手段と考えております。

 このため、文部科学省といたしましては、本法案が成立した際には、夜間中学に関する取り組み状況の調査を行い、協議会の組織化等についての各都道府県の状況を把握してまいりたいと考えております。

 また、今後、速やかに、各教育委員会等の参考となるよう、夜間中学の設置、充実に関する考え方をまとめた手引を作成したいと考えておりまして、その中で、協議会の体制や協議会で扱う事項の内容等についても記載していきたいと考えております。

馳委員 時間ですので、これが最後の質問になりますが、この夜間中学校には、いわゆる学齢期の生徒は含まれるのかどうか。実は、形式卒業生が含まれるということは昨年通知で出していただいておりますが、この法案にもかかわります不登校の児童生徒の現状を考えれば、夜間中学校においても学齢期の児童生徒も対象にしてもよいのではないかと思いますが、このことを最後に藤原局長にお伺いして、終わります。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 いじめ等の理由によって在籍する中学校へ通学することが困難な状況にあるなどの事情がある場合につきましては、多様な教育機会を確保する観点から、夜間中学において、本人の希望を尊重した上での学齢生徒の受け入れは当然可能と考えております。

馳委員 終わります。

永岡委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘でございます。

 本日も、このように質問の機会を賜りましたこと、委員長また理事の皆様、委員の皆様に心から感謝を申し上げます。

 得がたき機会でございますので、早速、質問に入らせていただきます。

 今法案、教育機会確保法案、この法案を質問するに当たり、事前に文部科学省の方と少し勉強をさせていただきました。

 文部科学省の調査によると、小中学校の不登校生徒の数、これは、私の受けとめでございますが、高どまりをしていた状況から、近年少し増加傾向にあるのかなというふうな印象を持っております。

 文部科学省におきまして、この実態、状況についてどのように認識をされておられるのか、状況について分析をなされておられるのかについて、まず伺いたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省の問題行動等調査によれば、平成二十七年度における国公私立の全小中学校の不登校児童生徒数は約十二万六千人となっておりまして、これは三年連続での増加でございまして、教育上の大きな課題であると認識をしております。

 この調査によれば、小中学校における全不登校児童生徒について、不安の傾向がある場合と無気力の傾向がある場合で約六割を占めておりまして、その背景といたしましては、特に家庭の状況が原因であるということが多く、次いで、学校における友人関係、あるいは学業不振に関する問題が多いことがわかっているところでございます。

 このように、一般に、不登校事案の多くは、本人、家庭、学校に係るさまざまな要因が複雑にかかわっていると考えられておりまして、今後、文部科学省といたしましては、関係機関と連携しながら、さらなる詳細な要因の分析に取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(宣)委員 文科省としても、この状況についてしっかりとした分析等がなされているというふうに受けとめました。

 では、この状況に係る分析を踏まえて、具体的に施策は打っていかなければいけない。例えば、これは決して子供の責任ではないわけです。不登校になるのは子供の責任ではない。しかし、やはりできれば学校に行って、みんなと一緒に勉強もして、遊んだりしてというふうな状況にぜひなってほしいなと私は心から思うところでございますが、文科省においてそのような取り組み、施策について、具体的にお聞かせをいただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしましては、これまで、不登校児童生徒への支援につきまして、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどの配置による教育相談体制の充実、地域の不登校施策の中核的役割を担う教育支援センターの充実、義務教育段階の不登校児童生徒が自宅においてICTを活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取り扱いなどの環境整備等の対策に取り組んでまいりました。

 また、不登校にならないために、魅力のあるよりよい学校づくり、いじめ、暴力行為等問題行動を許さない学校づくり等に関しまして、文部科学省から各都道府県教育委員会等に対して、その取り組みを促す文書を発出しているところでございます。

吉田(宣)委員 文部科学省としても最大限の努力はなされているやと思います、そのような私は受けとめでございます。特に、今の答弁の後段にあった、今元気にやっている子供が決して不登校にならないというふうな取り組みについては、もっともっと私は進化をさせていっていただきたいなというふうに思っております。

 ただ、一方で、先ほど文科省からの答弁もございましたけれども、やはり、それでも学校に行けないという生徒さん、児童さん、お子さんがいるのも現実の問題なんです。この現実の問題に適切に対処するのは私ども立法府に置かれる者の責務であろうというふうに私は思います。もちろん、文部科学省とも本当に連携を密にしてこういうふうな対策に取り組んでいかなければいけないと思いますが、立法府でできることはやはり立法府でもやっていかなければいけない、実は、その結晶が今回のこの法案であるというふうな私は認識でございます。

 この法案の意義について、法案提出者の方から、まず、確認の意味においても御説明を願いたいと思います。

富田議員 吉田委員が御指摘になりましたように、私どもは、立法府の責任だという思いから、超党派で立法チームをつくりまして、二十一回にわたる議論を重ねてこの法案の提出に至りました。

 不登校に関しては、学校に行けないことへの罪悪感を抱く児童生徒や、不安を抱えている保護者も少なからずいらっしゃいます。また、児童生徒の学習環境が十分に整っていないケースもあるなどさまざまな課題があり、個別の状況に応じた対応が求められているというふうに考えております。

 夜間中学に関しては、さまざまな事情により義務教育を修了することができず、教育の機会を希望される方も多数いらっしゃいます。

 本法案は、こうした課題に対応するため、教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進することを目的としております。

 法案では、不登校に関し、基本理念の第三条第二号で、「状況に応じた必要な支援が行われるようにすること。」と定めるとともに、不登校特例校や教育支援センターの整備充実に必要な措置を講ずるよう努めること、多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、児童生徒や保護者に対する情報提供、助言その他の支援に必要な措置を講ずることなどを定めております。

 また、夜間中学における就学機会の提供や地方公共団体間の役割分担に関する協議等を行う協議会の設置なども定めております。

 本法案が成立することにより、不登校児童生徒への支援策のさらなる拡充や、夜間中学の設置促進が図られ、一人一人の状況に応じた支援を一層推進することができるものと考えております。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 今答弁にあったとおり、さまざま細やかな施策がこの法案には取り込まれていると思います。

 私も、この法案の作成といいますか、そういったところに携わらせていただきました。それは、私、我が公明党の前文部科学部会長である浮島智子先生の思いを受けて、また、背中を見て、その熱い取り組みに心を打たれて、私も取り組まなければならない、そういうふうな思いでやらせていただきました。この法案についてはさまざまな意義があろうかと思いますけれども、私は、大切にしていかなければならないと思っております。

 ただ、一方で、今回、法律が新たにできるということについて、残念ながら不登校である子供の環境がやはり変わってくるかと思うんです。このことが、我々が意図しないような形でかえって子供にプレッシャーを与えるようなことになってはならないと私は思っているところでございます。そのような配慮は最大限、例えば、我慢に我慢を重ねて学校に行かなくてもいいんだよというふうなメッセージも込められているかと思いますが、この点に関する規定の中身について、法案提出者の方から御説明を願いたいと思います。

富田議員 吉田委員のおっしゃるとおりだというふうに思います。立法チームでもそのような議論をずっと重ねてまいりました。

 不登校児童生徒の社会的自立を支援するために、第十二条におきまして、不登校児童生徒の状況を継続的に把握すべき旨を定めるとともに、第十三条におきまして、児童生徒及びその保護者に対する必要な情報の提供、助言その他の支援を行うために必要な措置を講ずるものとされております。

 ただ、こうした支援は児童生徒の意思を十分尊重した上で行われることは御指摘のとおりであり、その旨を基本理念で明記させていただいております。

 基本理念におきましては、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるよう定めるとともに、第十三条におきまして、学校以外の場で行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、必要な措置を講ずるものと定めております。

 このように、本法案は、個々の不登校児童生徒の状況等に十分配慮した支援を行うことを趣旨としております。

吉田(宣)委員 大切な答弁であったかと思います。

 休養の必要性、これはやはり、我々人間でございます、大人でもそうです、心を休める時間帯、その環境が極めて大切になってこようかと思っております。そういった部分に関して配慮がなされている法案であるということを私は今認識させていただきました。

 続きまして、今法案が晴れて成立をして、これから新しい試みが始まろうかと思いますが、この法案ができる以前、今もそうなんですけれども、それ以前に教育の機会の提供を受けることができなかった方、この方に対する配慮も大切であろうと思います。

 先ほど馳先生からも御質問があった夜間中学校の規定、これは、もう一度やはり学びたいという方に対して大変意義あるものであろうと思っております。質疑のやりとりの中にも、八都府県二十五市区三十一校という夜間中学校の実施がされているわけでございますが、逆を言えば、これ以外のところでは行われていないということかと思います。

 本法案が成立した暁に、夜間中学校の実施が他の都府県でも行われるようになろうかというふうに私は期待をしておりますが、法案提出者の方から、この点について答弁をいただきたいと思います。

富田議員 夜間中学につきましては、義務教育未修了のまま学齢を超過した方々や、本国において義務教育を修了していない外国人等の就学機会の確保に重要な役割を果たしております。また、不登校等により実質的に十分な教育を受けられないまま中学校を卒業した方の受け入れも行われつつあります。

 今、吉田委員御指摘のように、また先ほど松野大臣からもお話ありましたが、残念ながら、現在、全国で、八都府県で三十一校の設置にとどまっております。

 本法案では、第十四条におきまして、地方公共団体は、「夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。」としており、全ての地方公共団体に対して夜間中学の設置を含む必要な措置を行うことを義務づけるものとなっております。

 これに基づき、本法案の成立後には、夜間中学の設置を含む必要な取り組みを全ての地方公共団体において進めていただきたいというふうに考えております。

 松野大臣から先ほど、各都道府県に最低でも一校はという御答弁がありました。これは、教育再生実行会議でもずっと議論させていただきまして、下村元大臣もそういう答弁をこの委員会でしていただいておりますので、我々もしっかりこのバックアップをしてまいりたいと思います。

吉田(宣)委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、本法案を機に、先ほどのお話にもありましたように、各都府県に最低でも一校、これはぜひ実現をしていっていただきたいと思いますし、最後に、文部科学省におかれましても、この取り組みについて、運用面においてはしっかり支援をしていただきたくお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 まずは、常任委員ではないにもかかわらず、この場で質問の機会をくださいました委員長を初め理事の皆様、委員の皆様に心から感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

 それとまた、本当に長い道のりながら、そしてまたさまざまな紆余曲折もありながら、着実に前進を進めてくれた、今回の法案を提出された議連の皆様、河村先生、馳先生初め多くの皆様に感謝を申し上げたいとともに、私も、かなり前からフリースクールのことに関して議連の中で頑張ってまいりましたが、昔を思い起こしますと、まず、文科省に担当の部局がありませんでした。フリースクールに通う子供たちの通学、学割を何とか適用できないかということに取り組んでおりましたけれども、まず文科省から言われたのは、担当する部局がありませんと。その後、何とかこじあけて、生涯学習局ですと言われました。その後、私も落選を二年していましたけれども、今、初中局が担当し、そしてフリースクール担当の亀田さんがいらっしゃる。私は、大きな大きな道のりの中での前進だと思っています。文科省、そして今政権を担っている安倍政権にもそれは感謝をしたいと思っています。

 今回、法案によって、学校そしてまた学校以外の学びの場を含めた多様な学習機会を確保し、子供たちがそれを享受していこうという道のりの前進の法案だと思っています。私個人としては、まだまだ十分なところには達していないと思いながらも、本当に大きな一歩だと思っています。

 そう考える上での二つの視点を申し上げながら、大臣そしてまた提案者の方にお伺いしたいと思います。大臣には、ちょっと通告していない基本的なこともお伺いするかもしれませんので、何とぞよろしくお願いします。

 二枚、資料をお配りしました。一枚は、ちょっと恥ずかしながらですが、私が以前、毎日新聞、二〇一二年に載った記事、それともう一つは、これはTBSの「情熱大陸」というところで特集をされた、ある学校のお話です。

 まず、一つ目の毎日新聞の方からですけれども、いじめによって自殺をする残念なケースというのは絶え間なく起きているんですが、話題になるときが何年かに一度あります、この記事が載ったときはそのときだったと思いますが、学校に行くのがつらいので自殺をするということで自殺をしてしまった事件が大きな話題となったときに載せられた記事です。

 「不登校のススメ」という、ちょっと多くの方には賛同されないようなセンセーショナルなタイトルで書かせてもらいましたが、一言で言えば、死ぬぐらいなら学校なんて行かなくていい。もちろん学校は大事だと思いますが、みずからの命を捨ててまで通うところではないと私は思っているので、本当に苦しいのであれば学校なんて休んだっていいし、休んだって、人生、長い目で見れば何のことはないということを書いた記事です。

 その中にも書いていますが、私、こういう大柄な形をしていると余り想像されにくいんですが、私も一時期いじめられました。もちろんいじめたときもあるので、本当に自分では自業自得だと今でも反省をしているんですが、学年のほぼ大半の方に無視をされ、記事にも書いていますが、死ねと書かれ、私の写真に画びょうを刺され、本当に生きているのがつらかったです。本当につらくてつらいときに、親に休みたいと言ったところ、休ませてもらったので、今私はこうやって立っていることができているんだなと本当に思っています。

 こういう不登校の議論をしていると、先ほどの質疑の中でもいろいろありましたが、不登校児が非常に残念な立場にあるということに私は違和感を覚えます。私は、不登校児であることは何ら恥ずかしいことではないと思います。たまたま私の場合はいじめでした。後ほど述べますが、私の妻も不登校だったんですが、たまたま教育の方針が合わなかった。そういう形で、学校に通えなかった、通わなかったということはあり得ると思うんです。なので、私は、何ら恥ずかしいことではないと思いますので、冒頭申し上げたとおり、多様な教育機会が確保されることが本当に大事だと思っています。

 大臣にお伺いしたいんですけれども、これは私、以前も文科委員会に出張で質問させていただきました。いじめのときでした。これも同じように聞いたんですが、大臣、ここは本音でお話ししていただきたいんですが、私が今述べたとおり、同じような気持ちを持った子供たちはたくさんいると思います。私は、死を覚悟するぐらいなら学校なんて行かなくていいんですよと。私は今国会議員ですけれども、私は、大臣がそういう同じお気持ちを持っていただくだけで、どれぐらいの子供たちが救われるかわからないと思うんですよね。

 大臣、ちょっとお伺いしたいんですが、学校に行くのはつらいから死ぬ、そう思うぐらいだったら学校なんて行かなくていいよと私は考えているんですが、どう思われますか。

松野国務大臣 何よりも命が尊重されるということは当然のことであると考えております。

寺田(学)委員 学校行政、文科行政をつかさどる大臣ですから、直接的には言えないお立場であるということはわかっていますが、実は、これは伊吹大臣のときにもお伺いしたんです。そのときは、伊吹文科大臣に対して、助けてくださいという手紙を出した、そういうのが届いたというのが報道になっていました。私はそのときにも聞いたんです、伊吹大臣に。そんな子供が直接大臣にお願いしているんだから、休んでいいよと一言言ってくれという話を言ったら、けんもほろろに、私がそんな立場で言えるわけないでしょうと言われたんです。それに比べれば、まあ伊吹大臣は伊吹大臣で立派な方ですけれども、今の松野大臣のお言葉は、私は、本当に多くの子供たちの命を救えると思っています。

 何より命が大事なんだということは本当に私は子供たちに思ってほしいし、大臣、言えないと思いますけれども、学校にいっとき行けない、もしかしたら学校と言われるものに最後まで行けないかもしれないけれども、人生の可能性は無限大に広がっているんだということをしっかり、それこそ、行政であり政治に携わる者は絶えず発信していくべきじゃないかなというふうに私は思っています。

 今回、不登校というところに焦点が当たって、この法案に対して、私は可能性が広がる法案だと思っているんですが、不登校が差別されるんじゃないかということを危惧される方もいらっしゃると思います。実際、そういうような方の声もいただきました。ただ、やはり私は、その方々からしてみると十分な形でないにせよ、今不登校で悩んでいる子供たち、そしてまたそれを抱える保護者の方々にとっては大きな一歩になる法案だと思っているんですよね。

 提出者の方にお伺いしたいんですが、この法案の持つ、そして多様な教育機会を開く第一歩となるようなこの法案に対してどのように、立法趣旨というのを重ねて聞くのもやぼですけれども、もう一度お伺いしたいなというふうに思っています。

笠議員 今、寺田委員からございましたように、今、松野大臣も申されたとおり、私自身も教育の問題にかかわってくる中で、やはり寺田委員の御指摘のとおり、本当につらい思いをして、児童生徒、子供たちがまさか自分の命を絶つようなことになるぐらいだったら、私も、休んでいいんだよと。学校を休養をとって、しっかりとまたその子供たちが自分自身の生きていく道を取り戻す、そういった環境に置かれていくことができるようにやはり何かやらなければいけないということが、今回のこの立法にかかわってきた、恐らくは全ての提案者の思いであろうというふうに思っております。

 不登校児童生徒、現在も多くの、十二万人を超えると言われる子供たちが直面をしています。先ほど来ありましたように、さまざまな、いろいろな要因があろうかと思います。これは決して子供たちの責任ではありません。家庭の事情あるいは学校でのさまざまな対人関係、いろいろあると思う。

 そういった中で、そういう子たちが今、教育委員会などが設置をしている教育支援センターや、あるいは、今回、寺田委員も取り組んでこられたフリースクール、ホームエデュケーション、さまざま民間の取り組み、さらには自宅など、学校以外の多様な場で学んでいるという現実があるわけでございます。

 こうした実情を踏まえて、不登校児童生徒が学校以外の場において行う、多様でその子たち一人一人に応じた適切な学びの環境というものをしっかりと確保していくことができるように、その思いを持ってこの法案を今回提案させていただいたところでございます。

寺田(学)委員 ありがとうございます。

 ある種、私も、不登校児の当事者だった人間として、本当にこういう大きな前進というものは心強いですし、これからも、もう一歩もう一歩進めていきたいと思っています。

 その中で、私はいじめによっての不登校ではあったんですが、そのときに、やはり恥ずかしかったです。自分がなじめていないということ、そしてまた多くの方から嫌悪されているということのつらさがあり、自分自身のアイデンティティーを本当に失いかけたときがあるんですが、私はそのときに単純に休むことができたので、今ここにいるわけですけれども、やはり学校に通うこと、重ねて申し上げますが、学校は大事だと思っています、教育機関の大きな大きな柱だと思っていますが、それ以外の選択肢があるということが私は大事だと思っているんです。

 もう一枚お配りしたところ、「情熱大陸」という民放の番組ですけれども、よみたん自然学校という沖縄の学校です。ここに書かれているのをお読みになられると、どういう価値観を持った学校なのかということを御理解いただけると思うんですが、私もこのテレビ番組を見てからファンになって、毎年一回通って、ささやかながら応援をしているんです。

 ここの、私が敬愛する教育者の小倉さんという方なんですが、いわゆる既存の学校教育の中においては、ある種ぴかぴかの方です。灘高を出られて東大に入り、そして大手商社に入って、自分自身が何をやりたいのかということを考えられないことに気づいて、物すごく仕事はできたみたいですけれども、自分自身で自発的に何かを考えてみようということが苦手なことに気づいて、やめて沖縄に奥さんと行き、学校をつくって、今でも頑張ってやっていらっしゃいます。本当に私は敬愛をしています。

 ここにも書かれているとおり、一般的な幼稚園のようなカリキュラムだったり、やることを大人が決めることはありません。子供たちが決めて、その後、子供たちのやることに関してある種見守り、そして時には誘い、誘導しながら子供の自発性、成長というものにずっと寄り添ってやっていく。

 いろいろ聞く中で、私はすごいなと思うのは、文字の読み書きを教えなくとも、自分の大好きな人に手紙を書きたいからといって、文字を教えてくれ、そしてまた、読みたい本が順番待ちで読めないんだったら自分で読みたいからということで、文字を教えてくれ、読み方を教えてくれといって、飛躍的な速さで物事を覚える。そして、読み書きができるようになる。自発性も物すごく強くなる。子供を完全に信じ切って教育をしているのが、このよみたん自然学校の一つの大きな柱だと思っています。

 何を申し上げたいかというと、学校を休んで学校以外の学びの場に通うことが、私は恥ずかしくないことだと思っていますが、多くの方が恥ずかしくない、それも一つの道なんだと思うには、このような学校が、ある種、国からというのもあれですし、行政というのもあれですけれども、当然の存在として認められ、そしてそれが何かしら、必要であれば地域の方、そして行政の支援もあって、そこに通う子供たちが胸を張ってそういう一つの新たな学びの場に通って勉強することが私は大事だと思っているんです。

 本当に日本の学校教育、ある種、一つのあり方だと思いますが、私の妻も、学校教育が合わなくて、それなりの時間不登校で、自分の家で勉強していたという話ですけれども、こういう新しい一つの学びの場、多様な学びの場をつくるということは私は大事だと思っています。

 時間が来ましたのであれですけれども、私が申し上げたいのは、いずれにせよ、学びの場は子供にとって多様であるべきだと思います。その大きな柱が学校であることは私は否定しません。ただ、それ以外の学びの場がつくられ、応援する気風になって初めて、子供たちは伸び伸びと生活をし、自分に自信を持ち、前に進んでいけるんだと思いますので、どうか文部科学省の方々には、そういう視点をより一層強く持っていただき、そして、私も議連の一員ですけれども、議連の皆さんとともにこれからも歩み、そして、今回の法案を反対される不登校の親の方々もいらっしゃると思うんですが、こういう同じような考え方を持った議員もいるんだということを信じてくださって、何とか前に進めていければというふうに思っております。

 質問の時間をいただきまして、本当にありがとうございました。

永岡委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案について質問をいたします。

 この法案は、夜間中学の部分と不登校の部分との二つから成る法律案です。

 夜間中学については、当事者、関係者が一致して賛成をしており、我が党も賛同するものです。しかし、不登校の部分には、本来、一番歓迎されるべき当事者、関係者の中から強い批判が起こっています。慎重審議などを求める請願署名は、十一月十五日時点で一万五百三十筆に及び、まだ集まってきているという状況です。紹介議員は五十五人に及びます。

 ですから、我が党は、夜間中学の部分は一致しているのだから、まず立法化をする、不登校の部分については、これは分けて引き続き話し合いを継続しようと主張をしてまいりました。

 まず、夜間中学について伺います。

 十五歳を過ぎて義務教育を修了していない人は全国に百数十万人いるとされていますが、公立夜間中学は八都府県に三十一校あるのみで、北海道、東北、中部、四国、九州には一校もありません。夜間中学が設置されている地域においても、入学要件が市内在住、在勤などに限定されている場合があって、区域外に住む人々の就学の機会が制約されている状況があります。

 本法案には、夜間中学の拡充、設置拡大を進めるために都道府県ごとに協議会を設置することが盛り込まれていますが、努力義務にとどまっています。

 松野文部科学大臣に伺います。

 全国各地で夜間中学が設置、拡充される必要がありまして、そのためにも全ての都道府県で協議会を設置すべきだと考えますが、いかがですか。

松野国務大臣 夜間中学の設置等に当たって、都道府県及び域内の市区町村等が協議会を組織して、役割分担をしながら取り組むことは有効な手段であると考えております。一方で、地域の実情に応じて、それ以外の方法により協議を行ったり、周辺の市町村が互いに協力したりして取り組みを進めることも考えられます。

 文部科学省としては、先ほど答弁もさせていただきましたけれども、各都道府県に少なくとも一つは夜間中学が設置をされるよう、本法案が成立した際には、各地方公共団体において協議会の仕組みも活用しながら検討を進めていただきたいと考えております。

畑野委員 各県でつくろうということですから、ぜひこれを進めていただきたいと思います。

 現在、全国で約三十校の自主夜間中学が頑張っています。これら自主夜間中学の関係者を協議会の構成メンバーに入れる必要があるのではないかと思いますが、提案者、いかがでしょうか。

富田議員 この問題は、もう畑野先生は当然御存じのように、PTの中でもかなり時間を割いて話し合いをしました。結論として、今のような第十五条第二項第三号において、協議会の構成員として、「学齢期を経過した者であって学校における就学の機会が提供されなかったもののうちその機会の提供を希望する者に対する支援活動を行う民間の団体その他の当該都道府県及び当該市町村が必要と認める者」というふうに最終的に規定させていただきました。この「民間の団体」には、例えば自主夜間中学の関係者も含まれる場合もあるというふうに考えております。

 いずれにしても、各都道府県及び市町村におきまして、地域の実情に応じて検討していただき、協議会の構成員をお決めいただきたいと考えております。一番詳しいのは多分先生がおっしゃったとおりだと思いますので、必ず入っていただけるようになっていくのではないかと期待しております。

畑野委員 提案者の、自主夜間中学をきちっと位置づけていくという御答弁でした。

 そこで、松野大臣に伺います。

 公立夜間中学でフォローし切れない人が通う自主夜間中学への今後の支援、施設利用費免除措置などを行う必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

松野国務大臣 公立夜間中学のみならず、いわゆる自主夜間中学についても、義務教育を卒業していない者等に対する重要な学びの場として機能していると認識をしております。

 文部科学省としては、自主夜間中学に対する取り組みについて、各地方公共団体に対し、地域の実情に応じて適切に検討いただくよう促してまいりたいと考えております。

畑野委員 ぜひ国としても支援を進めていただきたいと思います。

 次に、不登校について伺います。

 まず、不登校の認識についてです。

 不登校は一九八〇年前後から急増し続け、二〇〇〇年代に入っても高どまりのままです。十二万六千九人という結果です。これは前年度の約十二万三千人からさらにふえていて、大きな社会問題になっています。

 その多くは、競争的で管理的な学校社会から自分の心と命を守るための緊急避難、自己防衛だと言われています。わけのわからない校則、いじめや体罰、あるいはそれを見ていることの苦痛、忙し過ぎる生活、学校生活の中で何らかの理由で身も心もすり切れた子供たちは、なし得る最後の行動として学校を休みます。そして、不登校を始めると、さらに苦しみを負います。行けない自分を責め、期待を裏切っている罪悪感にさいなまれる。不登校の子を持つ親も、自分の子育てが間違っていたかと苦しむ。そして、このままだと大変なことになると我が子に登校を促せば、子供が暴れ、家の壁に穴があくなど、家庭が何とも言えない状況になっていくわけです。

 そんな場合に、子供にまず必要なのは何か。多くの当事者は、まず命の確保、安心、信頼できる人間関係のある居場所だとおっしゃいます。教育機会は、そのずっと後になって、ケースによっては数年間の命がけの葛藤を経て、教育を受けてみようとなるというんです。

 提案者は、不登校の子供に何よりも必要なのは命の確保、安心であり、教育の機会はその後にやってくる課題だという認識はありますか。

河村議員 答弁申し上げたいと思いますが、その前に、この不登校問題を扱う勉強会に畑野先生は大変熱心に御出席をしていただいて、いろいろな角度から御指摘をいただいて、我々も勉強させていただきました。

 さて、今御指摘の点はあの場においてもいろいろ議論があったところでございますが、不登校の原因にはいろいろな原因があるわけで、先ほどの寺田先生は、いじめからだ、こうおっしゃった。現実に不登校の状態の子供たちがたくさんいるということについては、やはりそれは直視しなきゃいかぬ。そして、教育は、やはり命を育む教育でなければならないわけでありますから、命第一ということは当然の前提だというふうに我々も考えております。

 これは、不登校児童だけの問題じゃなくて、あらゆる児童についても言えることではございますが、特に、不登校状態にあるということは、その児童において、登校している子供たちと違った心理的ないろいろな問題を抱えているということ、これをやはりしっかり受けとめた形での対応をする。したがいまして、命最優先であるという御指摘は当然の前提であるというふうに考えます。

畑野委員 命最優先とおっしゃいました。

 一方で、子供の心理的な問題、それに私は逃げちゃいけないと思うんです。本当に命優先というのならば、なぜこのような法案のたてつけになっているのかということを問わなくてはなりません。

 不登校経験者の方、Oさんは、自分の体験を次のように語っています。

 私は昔、不登校でした。学校へ行くことがただただ苦痛でした。でも、家にいれば楽に過ごせたわけではありません。自分は学校に行けないだめな人間なんだと自分を責めていたからです。こういうとき、体は動きません。だめな人間でごめんなさい、だめな人間なのに生きていてごめんなさい、これは決して私一人の特殊な考え方ではないと思います。多くの不登校の子は、ただ学校に行けないというだけで自分を責め、時には生きていることすら悪いことだと追い詰めたりしています。そこへの、みんな待っているよ、学校においで等の働きかけはもちろん、学校が無理ならフリースクールもあるよ、それも無理なら家で勉強したら等の、働きかける側が、どんなに善意からでも、いえ、善意であればこそ、自分を責めている当事者には凶器になります。みんながこんなにいろいろしてくれているのに、自分はそれに応えられない超だめ人間なんだと思わせるには十分だからです。

 提案者に伺います。

 教育機会の確保がメーンの法案のもとで、不登校している子供とその親は追い詰められるのではありませんか。

河村議員 この法案においては、基本理念として掲げてありますように、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われるようにするということが大前提でありまして、不登校の施策がこの基本理念に基づいて行われるわけであります。

 第十三条にも、「学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、」と同時に、「個々の不登校児童生徒の休養の必要性を踏まえ、」ということで、そういうような観点に立って措置をやっていこうということであります。また、二十条におきましては、教育及び福祉に関する相談を初めとする各種の相談に乗るための体制整備ということでありますから、この法案によって、個々の児童生徒たちの意思といいますか状況に応じて、それを十分尊重しながらやっていかなきゃいかぬということでありますから、その結果において、今議員御指摘のように、追い詰めるようなことになってはいかぬ、こう思っているわけであります。

 今回のこの法案によって、いわゆるフリースクールといったようないろいろな多様な機会もある、そういうものを包含した中で、どのような支援ができるかということを考えていこうということで、大きな一歩になるということでこの法案を出させていただいた、こういうことであります。

畑野委員 教育の機会よりも命の確保、安心の方が大事なんだということなんです。ところが、法案のタイトルはどうなっているかといえば、教育機会の確保等なんです。メーンは教育機会。今おっしゃった支援などは、「等」の中に隠れているだけで、つけ足しじゃありませんか。明らかに順番が違う。

 そのいろいろな対応をするという名のもとに、現実はどうかといえば、学校復帰の圧力が強められて、子供と親が追い詰められている現状があるんです。だから、当事者や関係者は心配しているんです。

 その一つが、不登校の減少を数値目標にして追求する現場の状況です。もとは国です。教育振興基本計画で、成果指標として全児童生徒数に占める不登校児童生徒の減少を挙げて、それによって、地方自治体の計画では、例えば、二〇一七年度までに不登校児童生徒の割合がゼロになることを目指すという北海道や、二〇一〇年度比で、二〇一六年度までに小学校で五十人以上、中学校で五百人以上減少させるという埼玉県など、各地で数値目標を掲げております。

 しかし、不登校というのは、いじめや暴力などの問題行動ではありません。やむにやまれず子供が選択する、身を守る行動です。むしろ、不登校は子供の命のために保障されるべきものです。それを数値目標で、例えば、来年にゼロにしろと言えばどんなことになるでしょうか。命を守る、その必要のために不登校をしている子供にとって、来年の自分の存在は許されないということになるではありませんか。

 子供や親たちからも、不登校数ゼロとか半減とか言われれば自分たちが否定されているように感じると訴えるのは当たり前です。

 こうした数値目標で不登校の子供を追い詰めるようなことは、やめるべきではないでしょうか。提案者、そして松野大臣に伺います。

河村議員 先ほど来から、命の大切さということについては私も共有をしているというふうに思います。

 政府あるいは地方自治体が計画を立てていく、そのことそのものを、今ここで私の方からよしあしについて述べる立場にはございませんが、ただ、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送ってもらいたい、また安心して教育を受けさせてもらいたい、そうした学校における環境づくりというのは非常に大事だということ、このことは基本的な考え方にあるわけでありまして、教育委員会あるいは学校が、児童生徒が安心して教育を受けられる環境をつくっていく、これに向けてやはり努力することは積極的に評価されなきゃいかぬというふうに思うんです。

 そのことが、結果として、不登校児をどんどん引っ張り出すことによって数字が上がったとか、そのことのために今回の法案があるとは私は思っておりませんで、先ほど申し上げました理念にもありますように、その過程過程、あるいは不登校の子供自身、それぞれの状況の違いがありますから、それについて支援を行うことが必要だし、学校が、そのテリトリーの中で不登校児がいるということについては、やはりどういうことでそういうことになっているかという理解を深めていく必要はある。また、そのことが、将来、不登校児をつくらないように努力をすることにつながっていくと私は思うんです。

 したがって、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援ということ、あるいは意思を十分に尊重することの重要性ということは基本理念に強くうたってあるところでありますから、そういうことについて配慮をして本法案を運用していただくことが大事だと思いまして、おっしゃるように、不登校の子供を追い詰めたりする、そのようなことにならないような配慮というのは当然あった上で、全ての子供が安心して学校に出られる、学校で教育が受けられる環境を整えていこうということ、それは不可能なことではないと思っております。

 しかし、さっき申し上げましたように、あらゆる教育の機会、多様な機会というものを設けていこうということですから、そういうものを考えながら、やはり教育現場、義務教育における教育の機会均等というこの基本は崩すわけにいきませんけれども、その中にあって、多様な教育の機会も持ちながら、多くの児童生徒が、豊かな学校生活といいますか、教育の中にあって、教育が受けられる環境をつくっていこうというその第一歩として、この法案を大きな前進として出させていただいた、こういうことであります。

松野国務大臣 児童生徒が安心して登校できるように関係者が努力をするということは重要なことであります。教育委員会や学校におけるそのような努力というのは、やはり積極的に評価をされるべきだと考えております。ただし、児童生徒の状況や意思に配慮しながら支援を行うということが重要であることも当然のことであります。

 今、不登校の状況にある子供たちも、それは、一人一人状況も違う、環境も違う。その中において、先生からお話があったとおり、非常にシリアスな状況の中にあって、その子に対する接し方に関して、慎重を要さなければいけないということもあると思いますし、自分で学校に行きたいと思いながら、何かしらの理由によって今学校に足が向かない子供たちに相談、アドバイスをすることによって、その子供たちが学校現場に戻って、結果、その子にとっていい方向に向かうこともあるかと思います。それは、個別の状況に応じて適切に判断をしていくということになるんだろうと思います。

畑野委員 ですから、数値目標などやめるべきだというふうに言いました。やめるとは言わない、こういう点ではだめです。

 数値目標というのは、企業などでは掲げられることはありますけれども、教育、特に不登校というナーバスな課題で掲げられればどうなるか。子供一人一人の人生にどう寄り添うかではなくて、とにかく数を減らす、そのために学校に来てもらうとかいう本末転倒のことが起こるわけです。

 校門タッチで出席扱い。学校の校門をタッチしたら出席扱いというやり方があると訴えられました。親の会の小学校六年生の娘さんのお母さんが、せめて校門まで連れてきたら出席扱いにしますと担任から言われたと語っているんです。現に、こういうことが今あります。

 不登校のお子さんは、学校近くを車で通ると、車の中で身を隠します。学校や学びで、友達の中で傷つく経験を重ね、もう無理と、最後の一滴が満杯のコップからあふれ出た状況です。最後の一滴が満杯のコップからあふれている。学校へ向かうと、涙が出たり、身体症状として腹痛が出たり、頭痛を訴えたりします。今学校へ行くと自分が壊れてしまう。正常な反応です。自分の命を守る最後の手段で、気持ちをわかって、この苦しさ、しんどさ、つらさを受けとめて、助けてと言っているんです。死にたいと、多くの不登校のお子さんが親御さんにぶつけます。

 学習活動の支援云々ではなく、生存の危機に直面しているお子さんもいます。そこまで追い詰めるのは何なんですか。学習活動よりも休息、休養ですというふうに語っています。私は、数値目標を正そうとしない皆さんに猛省を求めたいと思います。

 さて、松野大臣に伺います。

 文部科学省が従来言ってまいりました不登校の定義とは何でしょうか。

松野国務大臣 平成十年度から、不登校児童生徒を、一年度間に連続または断続して三十日以上欠席した児童生徒のうち、病気、経済的な理由を除き、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるものと定義をしております。

 なお、平成四年度から平成九年度までは、学校嫌いを理由に一年度間に三十日以上欠席した児童生徒を登校拒否児童生徒として定義していたと承知をしておりますが、現在、もちろんこの定義は使っておりません。

畑野委員 そこで伺います。

 国の定義では何らかの心理的負担とありますが、法案では、学校における集団の生活に関する心理的負担と、あたかも不登校の子供は集団の生活に心理的負担を感じる子供だと言える表現になっております。

 提案者に伺います。どういうことでしょうか。

笠議員 今先生からお話がありましたように、私どもは、この定義について、法案第二条第三号においては、「相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。」としております。

 ただ、この不登校の事案については、先ほど来さまざま皆様方の御指摘もあるように、家庭あるいは学校にかかわるさまざまな要因が複雑にかかわり、登校できない状態になっているものと私どもは考えております。

 文部科学省の調査においても、小中学校における不登校児童生徒については、友人関係であったり、あるいは学業不振であったり、本当にいじめであったり、さまざまなこうした不安の傾向があるケースというものが多く見られるわけでございます。

 こうした点を踏まえて心理的負担と、負担を規定したものでありますけれども、これはあくまで例示であり、具体的な定義においては、心理的負担以外のさまざまな要因、背景を考慮した上で定められるものだと思っております。

畑野委員 それに加えて、もう一つ見過ごせないことがあります。国の定義にはある社会的要因、背景が、条文からなくなっております。

 国の一九九二年の調査研究協力者会議の報告では、不登校の社会的な要因として、社会においても学歴偏重等受験競争をあおる風潮などが学校や親に不安感を与えており、それが日常生活の中で子供自身にプレッシャーやストレスを与え、将来への不安感を感じさせ、学習への意欲や将来への希望を失わせてしまっているとして、それ以来、定義に社会的要因、背景を明記したわけです。

 提案者はこれまでどおり大丈夫ですと言うんですが、その法律上の保証はどこにあるのか、伺います。それと、もう時間がありませんので、松野大臣、先ほど大臣が答弁された、これまでの国の不登校の定義を引き継がれますか。二点、まとめてお答えください。

笠議員 今、畑野委員から御指摘のあった点については、この第二条第三号の中で、「不登校児童生徒 相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるものをいう。」ということで、この「その他の事由のため」のところから読み込んでいただければと思います。

松野国務大臣 文部科学省の問題行動等調査においては、不登校の定義を、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあるとしており、これを踏まえ、定義を定める予定であります。

畑野委員 時間が来ました。まだたくさん質問があります。国連子どもの権利委員会から、高度に競争的な学校環境が不登校などを助長している可能性があると懸念されてまいりました。不登校について、世界に比べて余りに競争的で管理的な学校のあり方を是正することをぜひ検討するべきです。そのことを求めて、私の質問を終わります。

永岡委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 日本維新の会の吉田豊史です。

 本日は、我々日本維新の会も提出者となっております、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に関する質問をさせていただきます。

 まずは、子供の教育を受ける権利の観点から質問いたします。

 我々日本維新の会は、ことし三月に発表した憲法改正原案に教育の無償化を掲げ、改正原案の二十六条一項において、「経済的理由によつて教育を受ける機会を奪われない。」このことを明記し、三項では、幼児教育から高等教育までの教育を法律の定めるところによって無償にするとしております。憲法を改正しなくても法改正で十分教育を無償化できるという御意見もあり、日本維新の会は、九月二十八日に教育無償化法案を提出いたしました。

 そこで、質問いたします。

 子供たちの教育の機会の確保という点では、今回審議されております法案も、我々日本維新の会が提出した法案も、目的は同じだと思います。日本維新の会提出の教育費無償化法案では夜間中学やいわゆるフリースクールについてどのような扱いになっているのかを把握されているか、これを提出者にお聞きいたします。

伊東(信)議員 吉田豊史議員の質問にお答えいたします。

 確かに、日本維新の会が参議院に提出している教育費無償化法案には、学校教育等を受けることの重要性に鑑み、これを受ける者たち等の教育費用の負担を解消し、または軽減するための制度改革を行おうとするものです。

 さて、夜間中学の教育というのは、この法律案に言う「学校教育等」に該当します。そこで現在も無償とされている授業料以外の学校教育に係る費用は、法案の第六条により、その負担をできる限り軽減するものとされております。また、教育費無償化法案に言う「学校教育等」とは、学校教育のほか、それに類する課程を置く施設において組織的に行われる体系的な教育を含むこととしております。いわゆるフリースクールにおける教育については、将来の無償化の実施法の制度設計にもよりますが、そのフリースクールが、学校教育に類する課程を置き、組織的、体系的な教育を行うものであれば、教育費無償化法案の対象になり得るものと思われます。

 しかしながら、補足ですけれども、残念ながら、現時点では、そのようなフリースクールは少ないものと認識しております。

吉田(豊)委員 この法案は、不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等の支援、整備を核としておりますけれども、そもそも不登校にならずに済むような対策が大切だと思います。問題が生じた初期対応のミス、学校側の不適切な対応が続いたために、どうしても学校に行けなくなってしまうケースも多く見受けられます。

 不登校にそもそもさせないための方策として、学校などに対してのしっかりとした指導が盛り込まれているかどうか、これを提出者に確認させていただきます。

伊東(信)議員 吉田豊史議員の御質問にお答えいたします。

 議員御指摘のとおり、児童生徒にとって、学校というものが安心して教育を受けられる場というのは、これはそもそも重要なことでございます。

 このため、法案では、基本理念といたしまして、これは第三条第一号に明記しておりますけれども、児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保が図られるようにすることを規定しております。

 また、第八条になりますけれども、国及び地方公共団体は、児童生徒と学校の教職員との信頼関係及び児童生徒相互の良好な関係の構築を図るための取り組みなど、学校における取り組みを支援するために必要な措置を講ずるよう努めるものと規定しております。

吉田(豊)委員 次に、文部科学大臣にお伺いいたします。

 残念ながら不登校になってしまった子供たちの原因、要因に、いじめ問題が大きな割合を占めていると考えます。いじめ防止対策推進法に基づく対策と不登校になってしまった子供たちへの対策支援は密接な連携をして進めていくべきものと考えますが、この現状について大臣からお考えをいただきたいと思います。

松野国務大臣 いじめ防止対策推進法第二十八条においては、いじめにより児童生徒が不登校になった疑いがあるときは、教育委員会や学校等は調査組織を設けて事案に対処することとされており、いじめと不登校は密接に関連があるところであります。

 各教育委員会においても、いじめ対策と不登校対策がお互いに十分な連携が図られるべく、いじめと不登校は同じ生徒指導部門で担当していると承知をしております。

吉田(豊)委員 今大臣の御答弁の最後の部分ですが、同じ部門で担当すると。そのことがしっかりとした効果を生むというふうに考えているのかどうか、藤原教育局長に確認させていただきたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、各都道府県の教育委員会等において、今大臣の方から御答弁申し上げたとおり、いじめ対策、それから不登校対策が同じ担当で処理されているということによりまして、それなりの効果が上がっているのではないかというふうに認識はしております。

吉田(豊)委員 それなりの効果という、ちょっと心もとない御発言なんですけれども、これは、やはりこの法案について非常に重要な部分だろうと考えておりますので、大臣、もう少しこの効果というところを御説明いただけないかと思います。

松野国務大臣 委員から御指摘があったとおり、いじめと不登校というのが密接に関連をしているという認識において事を進めるに当たっては、何よりも情報の共有化をすることが重要であります。そのために、同じ生徒指導部門で担当することによって、その情報の共有化が進み、このいじめと不登校との関係の中において適切な処理がしやすくなるというふうに認識をしております。

吉田(豊)委員 ありがとうございます。本当におっしゃるとおりで、やはり情報の共有というところこそが、さまざまな問題にとって一番大切なポイントになるというふうに私自身も考えております。

 続きまして質問いたしますが、国民にひとしく教育を受ける権利があると同時に、保護者には子供たちに義務教育を受けさせる義務があります、当たり前のことでございますけれども。さまざまな事情でどうしても学校に行けなくなってしまった子供たちに、学校には行かなければだめだと一律に通学を強制してしまう背景が社会的にあるということです。

 でも、我慢して通学し続けていることで逆に心が折れてしまう場合もあり、最悪のケースでは、みずから命を絶ってしまうというケースにも至りかねません。

 とうとい命を守らなければならないということから考えますと、場合によっては、学校に行かなくてもいいんだよ、命を守るためにはゆっくり休んでいいんだよ、こういうメッセージを全国の教育者、保護者が共通の認識として持つことによって、心が救われる子供たちが大勢いると考えます。

 ぜひ、その子供たちへのメッセージとして、休んでもいいという、このことを明確に発信していただきたいと考えますけれども、この法案にそのような趣旨が盛り込まれているかどうか、これを提案者に確認させていただきます。

伊東(信)議員 吉田豊史議員の御質問にお答えいたします。

 その前段階としまして、先ほどの御質問の中で、いじめ対策推進法についてのお尋ねがありました。三年前にこの法案を作成するとき、馳浩前文部科学大臣が座長となりまして、私も法案の実務者として参加させていただきまして、ほぼ三年がたちまして、ただいまその内容を検討いたしておるところです。

 実は昨日、第一回の勉強会があったんですけれども、その際に、この不登校となってしまった子供たちの対策、支援に関しまして密接な連携を図るべきという、やはりそういった議論が出ましたので、議員の御指摘に感謝いたします。

 さて、先ほど、すなわち、子供たちに休んでもいいんだよ、そういったメッセージがこの法案に盛り込まれているかという御質問がございましたので、お答えさせていただきます。

 全ての児童生徒が安心して教育を受けられるように、学校における環境の確保が必要であると、まず前段階として考えております。しかしながら、現実の問題といたしまして、児童生徒の一人一人、個々の状況によっては、例えば、いじめを受けている場合に一定期間学校を休む、つまり学校に行かないで休養が必要なケースもあるのではないかと考えております。

 私自身は、外科医もやっておりますけれども、さまざまなケースにおきまして、そうしたメンタルな患者様、児童を扱うこともございます。そういった場合、個々の例を考えると、そのような休養というのが、ともかく休養する、そういったことが必要なケースもあると承知しております。

 このため、本法案におきまして、法律として初めて、この法案の第十三条で不登校児童生徒の休養の必要性を規定いたしておりまして、この考えを明らかにしたところでございます。

 今後、本法案の趣旨につきまして国民の理解を広げるとともに、やはり児童生徒というのは人間でございますから、一人一人、個々のケースがございます、その一人一人の状況に応じた支援がこの法案の趣旨に基づきまして行われるように期待している、そういうところでございます。

吉田(豊)委員 ここは非常に大事なところだと思います。休んでもいいんだよということはもちろんそうですけれども、あと、休ませてもいいんだよというところをいかに社会通念としてつくっていくか、これがこの法案のみそじゃないかなと私は思います。そういう意味で、非常に重要な法案だと考えております。

 この法律によって一人でも多くの子供たちの教育の機会が確保される、改善されていくことを望みまして、私、吉田豊史の質問とさせていただきます。どうもありがとうございます。

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 私も、この法案の立法作業チームのメンバーでした。その意味では、昨年から真摯に議論を積み上げてきたメンバーの皆様の努力に心から敬意を表したいと思います。

 ただし、不登校の当事者の保護者あるいは経験者、さらには支援に携わる方々の中には、本法案に懸念を抱いている方々も多数存在をしております。党内の議論でも懸念や意見が出されました。その点を踏まえて、きょうは、質問させていただきたいと思います。

 最初に、二条三号、不登校児童生徒の定義についてお尋ねします。

 ここでは、相当期間学校を欠席し、学校の集団生活に関する心理的な負担その他の事由によって就学が困難である状況を不登校としております。「集団の生活に関する心理的な負担」という言葉を盛り込んだ理由をお聞かせください。

笠議員 本当に吉川先生には、ともに二十一回、立法作業チームでいろいろな御意見をいただきましたことに感謝を申し上げます。

 不登校事案については、家庭や学校にかかわるさまざまな要因が複雑にかかわり、登校できない状態になっているものと考えております。文部科学省の調査においても、小中学校における不登校児童生徒については、友人関係や学業不振など学校に係る状況から、不安の傾向があるケースが多く見られています。

 こうした点を踏まえて心理的負担を規定したものですが、これは先ほど来申し上げておりますようにあくまで例示でございまして、具体的な定義においては、心理的負担以外のさまざまな要因、背景を考慮した上で定められるものと考えております。

吉川(元)委員 既に指摘もされておりますが、ことし七月に取りまとめられた不登校児童生徒への支援に関する最終報告では、不登校の定義及び認識について、不登校とは、多様な要因、背景により結果として不登校になっているということであり、その行為を問題行動として判断してはいけないというふうにされております。

 多様な要因、背景の結果が不登校だとすれば、さまざまな理由により就学が困難である状況とだけ私は記述すればいいようにも思っております。「集団の生活に関する心理的な負担」という表現、まあ例示ということでありますけれども、とりようによっては、不登校になった子供の心の問題、そういうふうに受けとめられても仕方がないのではないか。不登校はどの子供たちにも起こり得るという大前提にもなじまないようにも思います。そのことを指摘させていただきます。

 同じく不登校児童生徒を定義した二条三号、「文部科学大臣が定める状況」とありますが、これは具体的に何を指すのか、簡単に説明をお願いします。

笠議員 現行の文部科学省の調査においては、不登校の定義を、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるとしておりまして、この法第二条の第三号に定める今御指摘の定義については、この定義を踏まえて定められるものと考えております。

吉川(元)委員 先ほど大臣の方から、三十日というものは今は使っていないというような答弁、三十日間、期間の問題です。

 では、ちょっとそこだけもう一回答弁してください。

松野国務大臣 文部科学省が行っている調査の不登校の規定においては、三十日ということを使っております。

吉川(元)委員 済みません。私の聞き間違いでした。

 やはり私が思うのは、期間の問題ではないというふうに思います。実際に、学校に登校していても、通っていても、本当にぎりぎりの状態の中で通っている子供たちもたくさんおりますので、日にちを区切ってとか、これ以上とか、そういう機械的な定義づけというのはやるべきではないというふうに思いますので、そのあたりはぜひ検討していただければというふうに思います。

 次に、これも立法作業チームでも私も指摘をさせていただいたんですけれども、法案第三条、基本理念に関連してお聞きします。

 三条一号で、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境を確保する。その後に、三号において、表現は若干変わりますけれども、三条一号とほぼ同趣旨の内容、不登校児童生徒を特出しして、「環境の整備」というふうに書かれております。これはどういう意味があるのでしょうか。

青山議員 お答えいたします。

 第三条の第一号においては、全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるような学校環境の確保を図ることが重要である、必要であると規定をしております。

 その上ででありますが、第三号においては、特に、本法案による施策の対象としている不登校生徒児童については、登校できないという状況を考慮して、安心して教育を十分に受けられるよう、学校環境の整備が図られることについて明記をいたしております。

吉川(元)委員 不登校というのはどの子供たちにも起こり得るということで、これはもう恐らく皆さんも一致していることだと思います。

 そういう意味でいいますと、特殊な問題ではないという考え方に立てば、全ての児童生徒と不登校児童生徒を私はあえて分ける必要はないというふうに思います。逆に、こういうふうに分けてしまいますと、不登校の子供たちを特殊に扱っているのではないか、そういう懸念を関係者の方々に抱かせる要因になっているのではないかというふうにも私は思います。

 さて、法案の七条三項、文科大臣が基本指針作成の際に意見を反映させる対象として、さらには第二十条の相談体制の整備、そこには「民間の団体」という言葉が出てきます。これら民間の団体とは具体的にどのような団体を想定されているのか、提出者に尋ねます。

青山議員 お答えいたします。

 民間の団体とは、教育機会の確保等に関する活動を行うさまざまな団体のことであり、例えば、フリースクール、夜間中学校の設置を推進している団体や、子育て支援団体、子供たちの活動の場を提供する団体などが考えられます。

吉川(元)委員 ちょっと確認なんですけれども、いわゆるこの民間の団体というのは、営利目的の団体というものも含まれるのでしょうか。義務教育の段階、しかも不登校という、子供、親、教育関係者それぞれが悩みながら苦悩している問題、そこに営利団体が参入してくるというのは余り私は適切ではないとは思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

青山議員 お答えいたします。

 営利団体、株式会社だとか塾だとかそういったところが入るかということでありますが、一概に排除されるものではなく、その団体の活動が教育機会の確保に資するものであれば、民間の団体に含まれると考えております。

吉川(元)委員 関連して、法案の十条、いわゆる不登校特例校を主に想定しているものと思いますが、この不登校特例校は、特区から始まって全国化され、現在十校が指定を受けているものと承知をしております。

 そこで、文科省に尋ねますが、法の成立を受け、特例校をふやす、あるいはふやす予定が既にあるのかどうか、教えていただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 不登校特例校は、不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成し、学習指導要領によらずに特別の教育課程を編成することができるものとして、教育委員会等の申請に基づき、文部科学大臣が指定するものでございまして、現在、七都府県に十校が設けられております。

 文部科学省といたしましては、不登校特例校の設置促進に向けて、設置申請があった場合には、申請等に係る指導、支援を行うほか、不登校特例校に関する効果的な取り組み事例を紹介しつつ、設置を促すなどの対応をしてまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 不登校の原因はさまざまであるように、不登校の子供たちの症状も、その支援のあり方も一律ではないというふうに思います。

 この法案は、教育の機会の確保というものが大命題になっているわけですが、実際には、教育やそれから学習から一旦遮断をし、本人が安心して休める居場所を提供してあげることも非常に大切なことだというふうに思います。学校に戻って勉強したい子、勉強したいけれども今の学校には足が向かない子供、同じような境遇にある子供たちと話をしてみたい子供、それぞれの状況に見合った支援が必要だというふうに考えます。それゆえに、不登校特例校も、十一条で整備の必要性が指摘される教育支援センターも、そしてフリースクールも、それぞれの役割があるのだというふうに思います。

 ただし、基本は、不登校の子供たちが、どこの場で支援を受けるにせよ、普通の子から排除されたり、分離されているという気持ちを抱かせないようにすることが大切だというふうにも思います。その観点からすると、特例校に通う場合も、本人やあるいは保護者の意思、これが第一義的に優先されるべきだというふうに考えますけれども、法案提出者、この点についてはどのようにお考えでしょうか。

 では、文科省の方に。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 不登校特例校に関しましては、今先生御指摘のとおり、本人の意思を尊重して受け入れていくということでございます。

吉川(元)委員 次に、法案の九条の不登校生徒の支援状況に関する情報の共有の促進について尋ねます。

 まず、文科省に尋ねますが、不登校児童生徒への支援に関する最終報告では、支援の重点方策の一番目に、児童生徒理解・教育支援シートを活用する支援が挙げられています。最終報告では、このシートを含めた不登校児童の情報は関係者間で共有されて初めて支援の効果が期待できるとされ、縦横の関係で情報を共有化する必要性が指摘されております。その際、関係機関として警察も挙げられております。

 不登校生徒の情報をなぜ警察と共有する必要があるのか、この説明をお願いいたします。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本年七月に出されました不登校に関する調査研究協力者会議最終報告におきましては、児童生徒の支援の状況等を記録する児童生徒理解・教育支援シートの活用、関係機関との共有について提言がされておりまして、また、児童生徒を支援するネットワークの一つとして警察が挙げられているところでございます。

 したがいまして、例えば、不登校児童生徒が深夜にいろいろなところに行ったりするということで犯罪に巻き込まれるようなおそれがある場合が考えられまして、こういった場合につきましては、当該児童生徒の安全確保や健全育成の観点から警察も連携先の一つとして想定され得るため、警察についても情報の共有先として私どもは認識しているところでございます。

吉川(元)委員 児童生徒の安全確保のために必要な場合があるということですけれども、当事者の身になってみれば、自分が不登校であるということを警察が情報として持っている、管理している、そういうことをもし当事者が知ったとしたらどう感じるのか。やはり不登校というのは悪いことなのか、そう考えてもおかしくないのではないかと思います。

 実際にお話を聞きますと、例えば、学校でもしゃべれない、その子が唯一、心療内科の先生にはいろいろなことをしゃべれる、だけれども、しゃべったことがそのまま学校に情報が共有されて筒抜けになっている、そうなったら、その子供は心療内科に行って自分の思いをしゃべることをやめるのではないか、そういう懸念も私は持っております。

 不登校の子供たちは、非常に繊細であり、同時に、学校に通うことができない自分に対する罪悪感や自己嫌悪感を強く持っています。その子供たちがさらに悪い方向で刺激されるようなことは私は避けていただきたいというふうに思いますし、当事者やあるいは保護者が求めているのは、自分の情報が知らない間に他者に共有されるのではなくて、いろいろな情報を逆に提供してもらいたい、どんなところに行けば相談ができるのか、どういう人たちが手助けをしてくれるのか、そういう情報の提供を求めているのであって、自分の情報をあちこちで共有されることを別に求めているのではないというふうにも私は思います。

 そういう観点からいいますと、この情報の共有に当たっては、当事者たる子供やあるいは保護者にその意図や目的を含めてしっかりと説明し、その意思を確認して進めるべきだというふうに考えますが、その点はいかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、実際の情報の共有に当たっての考え方としては、当該不登校児童生徒の観点から見れば、まさに委員御指摘のとおりだと思います。

吉川(元)委員 ぜひ当事者の意思を確認して進めていただきたいと思います。

 十三条について次にお聞きします。

 不登校の子供たちを支援するフリースクールなどには、学校に通えない子供たちの学習支援をするものもあれば、まずは子供たちの居場所を提供し、キャンプやレクリエーションなど主体的に取り組んでいるものまで、それこそ子供たちの状況に応じて多様化しております。

 十三条には、「不登校児童生徒が学校以外の場において行う多様で適切な学習活動の重要性」という記述があります。この表現だと、不登校の子供にとって学校以外の場で重要性を持っているのは適切な学習活動だけであって、そうではないものが除外されているような印象を与えてしまうのではないか。

 この点について、なぜこのような記述になったのか、またどういう意図があるのかということについて、提出者に尋ねます。

青山議員 お答えいたします。

 御指摘の「適切な」の文言の趣旨は、児童生徒にとって適切という趣旨であり、児童生徒の状況に応じた学習活動が重要であるとの趣旨を明示したものであります。

 また、「学習活動」については、不登校児童生徒の社会的自立につながる学びが含まれる活動という意味であり、教科学習のみならず社会的活動、先ほどおっしゃられたレクリエーションだとかそういったもの、自然体験を通じたもの、スポーツ活動、芸術活動など、幅広い活動を指しているものであります。

吉川(元)委員 だとするならば、ここの条文については、不登校の子供が学校以外の場において行う多様な活動ということで私は十分ではないかというふうに感じます。

 次に、夜間中学に関連してお聞きをいたします。

 十五条で、これも先ほど質問がありましたが、協議会の設置ができる規定になっていて、義務または努力義務の規定にはなっていない。その理由をお聞かせください。

富田議員 これは先生も一緒に協議した条項ですので御存じだと思いますが、夜間中学等につきましては、第十四条におきまして、地方公共団体は、「夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。」とされておりまして、全ての地方公共団体に対して夜間中学の設置を含む必要な措置を行うことを義務づけるものとなっております。

 御指摘の十五条の協議会の規定は、十四条を受けまして、このような措置を各地方公共団体が実施するに当たり、都道府県及び域内の市町村等が協議会を組織して、役割分担をしながら取り組むことが有効な手段と考えられることから設けることとしたものであります。

 一方で、地域の実情に応じまして、十五条に規定している構成員以外の構成により協議を行ったり、周辺の市町村が互いに協力したりして取り組みを進めることも考えられるため、同条においては、「組織することができる。」というふうにさせていただきました。

吉川(元)委員 時間が来ましたけれども、最後に、もう一点だけお聞きいたします。

 一つは、各都道府県に一校ずつつくるといいましても、県によっては大変広い県もあります。そこに通うとなると、夜間中学は大変交通費もかかる。そうした支援について法案提出者はどう考えているのかというのが一つ目。

 それからあと、附則に盛り込まれた、必要な経済支援のあり方の検討ですけれども、ここにはフリースクールなど民間の支援団体も含まれるべきとお考えなのか。

 この二つについてお聞きします。

富田議員 私の方から、前段の方の御質問に対してお答えさせていただきます。

 第十四条において、地方公共団体は、「夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。」と先ほど御説明させていただきましたが、この「その他の必要な措置」として、例えば、夜間中学に通う生徒に対する御指摘の交通費の支給等の就学のための支援を行うことも含まれ得ると提出者は考えております。

伊東(信)議員 後段についてお答えいたします。

 フリースクールは、不登校児童生徒の学校以外の場での学習に関する支援を行っている点では、一定の社会的役割を担っていると考えております。

 ただし、この法律というのは、全体を通じ、個々の不登校児童生徒を支援の対象としておりまして、フリースクールという団体、施設自体を支援の対象とするものではありません。

 したがって、経済的支援についても、個々の児童生徒及び保護者を対象とすることを想定しており、フリースクール等の民間の団体への経済的支援は想定しておりません。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、終わります。

永岡委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。畑野君枝君。

畑野委員 私は、日本共産党を代表して、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に反対の討論を行います。

 本法案は、議員連盟の場において、夜間中学、フリースクールへの支援をどうするかとして検討されてきたものです。しかし、本法案は、不登校の子供たちへの対応と夜間中学の設置促進を内容とするものです。一緒に法案化するのではなく、分離すべきであることを改めて申し述べます。

 その上で、夜間中学は、現在、全国で八都府県に三十一校あるのみです。また、設置されている地域においても就学の機会が制約されている状況があります。都道府県ごとに協議会を設けることで、夜間中学の開設の拡大、拡充につながり、この点については賛同いたします。

 問題は、不登校の部分についてです。不登校は、現在十二万六千人となり、大きな社会問題となっています。その多くは、過度に競争的で管理的な学校社会から、みずからの心と命を守るための緊急避難、自己防衛としての不登校です。学校に行けない自分を責め、不安や緊張感からくる命の危機にさいなまれ、家庭崩壊といった深刻な状況も少なくありません。不登校を生み続ける学校教育のあり方を根本的に改め、子供の命の確保、安全、安心を第一に、居場所や人間関係を確保することが求められています。

 しかし、本法案は、不登校の子供への対応として、教育機会の確保を掲げ、学校復帰を前提とした現在の国の施策を正当化しています。既に、国の方針のもと、不登校ゼロ、半減などの数値目標が導入され、子供と親を追い詰めています。性急に教育機会の確保を迫ることは、子供の成長、発達を深く傷つけ、子供と親を今以上に追い詰める危険性があります。

 一九九〇年代に、国は、不登校は誰にでも起こり得る、競争的教育もその一端となっていることを認め、国連子どもの権利委員会からも、高度に競争的な学校環境が不登校などを助長している可能性があると懸念されています。しかし、本法案は、不登校の原因を主に子供の心理に起因するものと定義し、不登校を生み続けている学校のあり方を不問にしています。

 以上のように、不登校の子供たちに求められているものとは逆行している本法案には賛成することができないことを表明し、討論といたします。(拍手)

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党・市民連合を代表して、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に対し、反対の立場から討論を行います。

 本法案の策定において、超党派の立法チームが時間をかけ、真摯に尽力されてきたことには心から敬意を表します。しかしながら、不登校の子供たちを支援する方々からは、依然として強い懸念が寄せられています。この事実を踏まえれば、法案のうち、夜間中学の充実にかかわる部分は分離して法制度化し、不登校にかかわる部分については、フリースクール等への支援のあり方も含めて、さらに精査すべきではないかと考え、本日の採決には反対するものです。

 法案では、不登校の定義で、当事者の心身の弱さが原因と受けとめられかねない表現が盛り込まれています。また、全ての児童生徒と不登校の児童生徒を殊さら分離するかのような条文も存在しています。不登校はどこでも誰でも起こり得るという立場に立てば、子供たちを分類するような印象は法案から排除すべきではなかったかと考えます。

 また、不登校の支援を行う民間の団体に、営利を目的とした事業者がやがて参入してくるのではないか、不登校生徒に関する情報の共有が、子供や保護者を逆に追い詰めることにならないか、そのような懸念も存在しています。これらの懸念を払拭する努力が必要ではなかったかと痛感しています。

 不登校の原因が千差万別であれば、その支援のあり方も多様であるべきです。不登校の子供たちには、一旦、学習から遮断して、安心して休める機会を必要とする子供たちが大勢いらっしゃいます。そのような子供たちに、学習の必要性や学校への復帰を直ちに求めるのではなく、やり直しはきくのだから焦る必要はないんだよ、今は安心して休みなさいと言ってあげられる社会、教育環境の整備こそ必要だと思います。

 国連の子どもの権利委員会は、日本に包括的な子供権利法が存在していないこと、政策の策定プロセスに子供たちの意見が必ずしも反映されていないことに懸念を示しています。不登校支援に当たっては、今後、当事者並びに保護者の意思を十分尊重して進めていくこと、私もその立場で取り組んでいくことを決意申し上げ、討論といたします。(拍手)

永岡委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 これより採決に入ります。

 第百九十回国会、丹羽秀樹君外八名提出、義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

永岡委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、山本ともひろ君外三名から、自由民主党・無所属の会、民進党・無所属クラブ、公明党及び日本維新の会の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山本ともひろ君。

山本(と)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 本法に定める不登校児童生徒に対する支援に当たっては、全ての児童生徒に教育を受ける権利を保障する憲法のほか、教育基本法及び生存の確保を定める児童の権利に関する条約等の趣旨にのっとって、不登校の児童生徒やその保護者を追い詰めることのないよう配慮するとともに、児童生徒の意思を十分に尊重して支援が行われるよう配慮すること。

 二 本法第二条第三号に定義された不登校児童生徒への支援、その他不登校に関する施策の実施に当たっては、不登校は学校生活その他の様々な要因によって生じるものであり、どの児童生徒にも起こり得るものであるとの視点に立って、不登校が当該児童生徒に起因するものと一般に受け取られないよう、また、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること。

 三 文部科学大臣は、本法第七条の基本指針の策定に当たっては、特に児童生徒や保護者、学校関係者などの当事者の意見を多面的に聴取しその意見を反映させるとともに、本法第三条第一号に掲げる基本理念にのっとり、多様な児童生徒を包摂し共生することのできる学校環境の実現を図ること。また、その学校環境の実現のために、教職員が児童生徒と向き合う時間を十分に確保できるよう、必要な措置を講ずること。

 四 本法第八条の運用に当たっては、本法第十三条の趣旨も踏まえ、例えば、いじめから身を守るために一定期間休むことを認めるなど、児童生徒の状況に応じた支援を行うこと。

 五 本法第三章に定める不登校児童生徒の環境や学習活動、支援などについての状況の把握、情報の共有に当たっては、家庭環境や学校生活におけるいじめ等の深刻な問題の把握に努めつつ、個人のプライバシーの保護に配慮して、原則として当該児童生徒や保護者の意思を尊重すること。

 六 本法第十条に定める不登校特例校の整備に当たっては、営利を目的とする団体による設置・管理には慎重を期すこととし、過度に営利を目的として教育水準の低下を招くおそれがある場合には、これを認めないこと。また、不登校特例校や本法第十一条に定める学習支援施設の運用においては、本人の意思を尊重することが重要であり、不登校となった児童生徒が一般の学校・学級で学ぶ権利を損ねることのないようにすること。

 七 本法第十四条に定める夜間その他特別な時間において授業を行う学校における就学の機会の提供その他の必要な措置により、就学の機会を希望する学齢超過者に対し、就学の機会が可及的速やかに提供されるよう、地方公共団体は、本法第十五条に定める協議会の全ての都道府県への設置に努めるとともに、政府は、地方公共団体に対して積極的な支援を行うこと。

 八 夜間その他特別な時間において授業を行う学校の実態を踏まえ、教員の加配も含めた教職員の配置の拡充や教職員の研修の充実を図ること。

 九 不登校の児童生徒が、いわゆるフリースクール等の学校以外の場において行う多様な学習活動に対しては、その負担の軽減のための経済的支援の在り方について検討し、その結果に基づき必要な財政上の措置を講ずること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

永岡委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

永岡委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。松野文部科学大臣。

松野国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

永岡委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

永岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


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