衆議院

メインへスキップ



第8号 平成28年11月25日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十一月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 永岡 桂子君

   理事 上川 陽子君 理事 亀岡 偉民君

   理事 前田 一男君 理事 宮川 典子君

   理事 山本ともひろ君 理事 坂本祐之輔君

   理事 長島 昭久君 理事 富田 茂之君

      青山 周平君    安藤  裕君

      池田 佳隆君    尾身 朝子君

      大串 正樹君    岡下 昌平君

      門山 宏哲君    神山 佐市君

      工藤 彰三君    小林 史明君

      櫻田 義孝君    下村 博文君

      田野瀬太道君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    馳   浩君

      福井  照君    船田  元君

      古田 圭一君    松本 剛明君

      平野 博文君    牧  義夫君

      宮崎 岳志君    村岡 敏英君

      笠  浩史君    樋口 尚也君

      吉田 宣弘君    大平 喜信君

      畑野 君枝君    伊東 信久君

      吉川  元君

    …………………………………

   文部科学大臣       松野 博一君

   財務副大臣        大塚  拓君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   文部科学大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    田野瀬太道君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 鈴木 三男君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      山下  治君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          有松 育子君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          藤原  誠君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            常盤  豊君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       伊藤 洋一君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            小松 弥生君

   政府参考人

   (文化庁次長)      中岡  司君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 谷井 淳志君

   文部科学委員会専門員   行平 克也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十五日

 辞任         補欠選任

  福井  照君     岡下 昌平君

  菊田真紀子君     村岡 敏英君

  笠  浩史君     宮崎 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  岡下 昌平君     福井  照君

  宮崎 岳志君     笠  浩史君

  村岡 敏英君     菊田真紀子君

    ―――――――――――――

十一月二十四日

 教職員の定数改善と給与・待遇に関する請願(井上信治君紹介)(第七四八号)

 私立学校の保護者負担軽減、教育環境改善のための私学助成充実に関する請願(稲津久君紹介)(第七四九号)

 同(渡辺孝一君紹介)(第七五一号)

 同(和田義明君紹介)(第一〇〇七号)

 障害児学校の設置基準策定に関する請願(畑野君枝君紹介)(第七五〇号)

 同(堀内照文君紹介)(第七六四号)

 同(本村伸子君紹介)(第七六五号)

 同(宮崎岳志君紹介)(第七八〇号)

 同(大畠章宏君紹介)(第八一九号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第八二〇号)

 同(中根康浩君紹介)(第八二一号)

 同(福島伸享君紹介)(第八二二号)

 同(荒井聰君紹介)(第八九六号)

 同(大平喜信君紹介)(第八九七号)

 同(奥野総一郎君紹介)(第八九八号)

 同(篠原孝君紹介)(第八九九号)

 同(畑野君枝君紹介)(第九〇〇号)

 同(原田義昭君紹介)(第一〇〇六号)

 同(郡和子君紹介)(第一〇七三号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第一二一五号)

 同(田嶋要君紹介)(第一二一六号)

 同(野間健君紹介)(第一二一七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一二一八号)

 同(泉健太君紹介)(第一三五七号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一三五八号)

 同(清水忠史君紹介)(第一三五九号)

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の不登校対策にかかわる部分の白紙撤回に関する請願(堀内照文君紹介)(第七六三号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第七七五号)

 同(辻元清美君紹介)(第七七六号)

 同(升田世喜男君紹介)(第七七七号)

 同(笠井亮君紹介)(第八一五号)

 同(島津幸広君紹介)(第八一六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八九四号)

 同(池内さおり君紹介)(第一〇〇〇号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一〇〇一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇〇二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一〇七二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二一四号)

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の廃案に関する請願(大平喜信君紹介)(第七七八号)

 同(志位和夫君紹介)(第八一七号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八九五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一〇〇三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一〇〇四号)

 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案の慎重審議に関する請願(畑野君枝君紹介)(第七七九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第八一八号)

 同(落合貴之君紹介)(第一〇〇五号)

 学校現業職員の法的位置づけに関する請願(郡和子君紹介)(第一〇六八号)

 同(篠原孝君紹介)(第一〇六九号)

 同(松木けんこう君紹介)(第一〇七〇号)

 同(宮崎岳志君紹介)(第一〇七一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一二一九号)

 同(池内さおり君紹介)(第一二二〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一二二一号)

 同(大平喜信君紹介)(第一二二二号)

 同(笠井亮君紹介)(第一二二三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一二二四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一二二五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一二二六号)

 同(清水忠史君紹介)(第一二二七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二二八号)

 同(島津幸広君紹介)(第一二二九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一二三〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二三一号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一二三二号)

 同(仲里利信君紹介)(第一二三三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一二三四号)

 同(畠山和也君紹介)(第一二三五号)

 同(藤野保史君紹介)(第一二三六号)

 同(堀内照文君紹介)(第一二三七号)

 同(真島省三君紹介)(第一二三八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一二三九号)

 同(宮本徹君紹介)(第一二四〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第一二四一号)

 同(小川淳也君紹介)(第一三六〇号)

 同(菊田真紀子君紹介)(第一三六一号)

 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一三二六号)

 同(池内さおり君紹介)(第一三二七号)

 同(泉健太君紹介)(第一三二八号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一三二九号)

 同(大平喜信君紹介)(第一三三〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三三一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三三二号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一三三三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三三四号)

 同(清水忠史君紹介)(第一三三五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三三六号)

 同(島津幸広君紹介)(第一三三七号)

 同(田島一成君紹介)(第一三三八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一三三九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三四〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一三四一号)

 同(畠山和也君紹介)(第一三四二号)

 同(平野博文君紹介)(第一三四三号)

 同(藤野保史君紹介)(第一三四四号)

 同(堀内照文君紹介)(第一三四五号)

 同(真島省三君紹介)(第一三四六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三四七号)

 同(宮本徹君紹介)(第一三四八号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三四九号)

 同(吉川元君紹介)(第一三五〇号)

 同(笠浩史君紹介)(第一三五一号)

 給付型奨学金制度の導入・拡充と教育費負担の軽減に関する請願(梅村さえこ君紹介)(第一三五二号)

 給付制奨学金の創設と学費負担軽減に関する請願(大平喜信君紹介)(第一三五三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三五四号)

 同(畠山和也君紹介)(第一三五五号)

 大学の学費連続値上げ反対に関する請願(畠山和也君紹介)(第一三五六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

永岡委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官鈴木三男君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長山下治君、生涯学習政策局長有松育子君、初等中等教育局長藤原誠君、高等教育局長常盤豊君、科学技術・学術政策局長伊藤洋一君、研究振興局長小松弥生君、文化庁次長中岡司君及び防衛省地方協力局次長谷井淳志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

永岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

永岡委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大串正樹君。

大串(正)委員 自由民主党の大串正樹でございます。本日は、質疑の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 私も、初めての文部科学委員会での質疑ということで、一般的な、基本的なことを少しお伺いしたいというふうに思いまして、準備をさせていただきました。

 文部科学行政の分野の中で教育政策についての議論をするのが我々の仕事であり、そして、よりよい教育をつくっていくための政策というものをしっかりと形づくっていくというのが仕事として携わっているわけでございますが、そもそも教育政策とは何かというところから入りたいと思いますので、まず、一般的な定義で構いませんので、文部科学省として教育政策はどのように位置づけられているかについてお伺いしたいと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におけます教育政策とは、教育分野におきまして特定の行政課題に対応するための基本的な方針の実現を目的とする行政活動の大きなまとまりというものを指すものと承知をしております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 課題解決型の、基本的な、非常にわかりやすい定義だというふうに思っております。

 恐らくそういう定義が普通に普及されるべきなんでしょうけれども、実は、教育学という学問の世界では、教育政策というのは非常に有名な定義がございまして、宗像誠也という人の定義で、教育政策とは権力に支持された教育理念という定義をほとんどの教育学研究者が引用するという、教育学の世界ではこれがクラシックな定義として定着をしている。

 この権力に支持されたという概念そのものが、比較的シニカルといいますか批判的な定義ではないかなというふうに感じているわけなんですけれども、つまり、教育政策が権力に支持された教育理念であるという定義に基づくと、この宗像先生の定義では、教育行政というのは、権力の機関が教育政策を現実化することである、そういう定義である。ですから、逆に、権力に支持されない教育理念を実現しようとする、そういった行為のことを教育運動である、そういう定義がなされているわけでございます。

 ここで少し私の疑問というか、これだけ権力批判的な定義を用いられて教育学という分野が形成されているにもかかわらず、これだけ長期にわたって教育現場の方向性が権力とは同じ方向を必ずしも向いていない、そういう状況がなぜこれだけ続くのかなというのが一つの疑問として考えられたわけでして、それについてきょうは、いろいろな視点があると思うんですけれども、構造的な問題とか、あるいは政策的な大きな流れの中で、なぜそういうことが起こってきたかについて少しお伺いしたいなというふうに思います。

 一つは、まず、教育政策の大きな形として、アウトプットとして出てくるのが、やはり学習指導要領を中心とする教育課程改革、この歴史を振り返ってみたいと思うんです。

 この教育課程改革というのは、長きにわたっていろいろな形で打ち出されてきたわけなんですけれども、有名な研究の分類によりますと、大体、戦後の流れというのは四つぐらい大きな流れがあります。

 まず、一九四七年ぐらいの経験主義と呼ばれる時代。教育学を勉強される方は、大体最初に始まるのが、ジョン・デューイというアメリカのプラグマティズムの哲学者が提唱していた経験に基づく教育という、教育は経験の再構成である、そういう基本的な概念に基づいて教育政策というのは議論されてきたわけなんですけれども、経験を大変重視する、そういった流れが、経験主義という形で、最初の教育基本法、教育課程の中に生かされてきたという歴史があります。

 そのほぼ十年後ですね、次の段階では、系統主義と呼ばれる時代が訪れます。この時代は、なぜそういう時代が来るかといいますと、デューイの経験主義、経験に基づく教育政策、これは学力低下を招いたということで、学力低下批判によって、系統化によって最低基準の基礎学力を重視する、そういう方向性が打ち出されたわけなんです。

 その後、また時代が変わりまして、一九六〇年代の後半は、能力主義ということで、この当時は、皆様も御承知のように学生運動が盛んな時期で、我々も、高度経済成長の中、経済効率を高める教育政策、そしてその中で新しい価値観というものを生み出す、主体性に基づく人的能力の開発というところが主眼に置かれたわけであります。

 そして、時代が一九八四年以降、きょうはこの辺の話からしたいと思うんですけれども、新保守主義と呼ばれる時代が訪れます。文化、伝統主義に基づく自由化、個性化、国際化、こういったことがテーマになるわけであります。

 この一連の流れを見ましても、経験主義から学力低下批判が起こって、十年ごとぐらいに教育政策というのは大きく転換をしてきた。

 ですから、冒頭にお話ししましたように、権力に支持されていながら、実は、教育政策というのは、社会のいろいろな要請に基づいて、あるいはいろいろな世論の動きに合わせて大きく変遷をしてきた。世論に左右されてきたというのが、一つの現実として、戦後の教育課程の歴史を見ると明らかなんです。ただ、教育政策といいますと、やはり長期的なスパンで物事を考えなければいけない政策の一つではないかなというふうに思っております。

 教育政策あるいは教育課程そのものの、これがよかった、悪かったというのは、その教育を受けた子供たちが成人して社会でどんなふうに活躍をしてくれたか、そういったところで評価されるべきではないかなというふうに思うんです。そうすると、十年ぐらいでふらふらと政策が変化してきたということは、やはりこれはお互いに不幸なことではなかったのかなというふうに思うんですけれども、政策的なタイムスパンの問題として、これまでの教育課程改革を振り返りながら、今の教育課程のこれからのあり方についてお伺いしたいと思います。

松野国務大臣 おはようございます。

 委員御指摘の、教育改革がほぼ十年の間隔で変わってきたというお話がありました。具体的には、私どもが教育の方向性を示すということになりますと、学習指導要領の改訂ということになるかと思います。

 学校教育において、いつの時代でも共通して求められる資質、能力というのはあるかと思います。あわせて、変化の激しい社会の状況に対応した資質、能力、双方を育むことが重要であろうというふうに思います。

 グローバル化や情報化、技術革新などの社会変化が今加速度を増している中、時代の変化や子供たちの状況、社会の要請等を踏まえた学習指導要領とするため、おおよそ十年ごとに学習指導要領の見直しが行われているところでございます。このように、十年程度ごとの学習指導要領の見直しは必要ではないかというふうに考えております。もちろん、その検討に当たっては、知徳体のバランスなど教育の不易たるものというのはしっかりと踏まえていくことが大事だ、このことも考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 今確かに、これだけ時代の変化が激しいときでございますので、それに合わせて、必要とされる人材ももちろん変わってくるわけでございますが、冒頭お話しいただきましたとおり、時代によっても変わらないものというものがあろうかと思います。そういった点も踏まえて、これからの日本を本当に強くしていくためにどういった人が必要なのか、あるいはどういった人たちが活躍することがお互いにとってハッピーなのかということを考えていかなければいけないのかなというふうに思います。

 そして、現在の教育課程の大きな流れをつくったのが、時代的に見ると、やはり一九八四年以降の臨教審と呼ばれるその時代の改革の流れではないかなというふうに思います。

 この当時、ちょうど一九七一年には昭和四十六年の中教審の答申、四六答申というものとあわせて、第三の改革というふうに呼ばれた時代でございます。第一というのが、一八七一年と大分昔なんですけれども、ちょうど近代的な学校制度ができた時代。第二の改革というのが、第二次大戦後の改革。そして、この第三の改革というのが、まさに個性あるいは独創性を重視したような、そういう新しい時代の要請に応える教育改革であったというふうに言えるわけでございます。

 ちょうど一九八〇年代というのは、皆さんも記憶にまだ新しいかと思いますけれども、日本が世界に打って出る際に、日本の個性、オリジナリティーというのはどこにあるんだ、そういう新しい力を身につけさせる、生きる力という言葉がこのころから出てくるわけなんですけれども、みずからが問題を発見して解決していける能力をいかに養っていくかというのが大切な視点になってきたという時代でございまして、ちょうど臨教審の最終的な答申の中には、個性の重視、生涯学習、変化への対応といったところがテーマに挙げられたわけでございますが、同時にこのころから、いじめであるとかあるいは学級崩壊など、そういった教育現場の荒廃といったものが深刻化してきたわけでございます。

 この点も踏まえまして、臨教審以降、臨教審そのものの政策が今にどのように生きているか、そして、臨教審というのは現在どういうふうに評価されているかについて御意見をお聞かせいただければと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の臨時教育審議会が取りまとめました答申におきましては、教育改革の視点といたしまして、まず第一に個性重視の原則、第二に生涯学習体系への移行、第三に国際化や情報化といった変化への対応が掲げられておりました。また、初等中等教育の内容につきましては、徳育の充実や基礎、基本の徹底を図りつつ、豊かな個性や社会性を育むこと、高等学校教育の多様化などのために必要な改善を行うことなどが指摘されていたところでございます。

 こうした教育改革の視点や改善の方向性につきましては、現在の教育課程の改善に関する議論においても踏まえるべき重要な事柄でございまして、引き続き大きな意義を持つものと考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 大きな流れが今でも大事な視点として生きているということでございますけれども、この一九八〇年代ぐらいからの教育の成果というのを考えたときに、ちょうどこれが今から二十年から三十年近く前の話になりますので、このころ教育を受けた、このころの教育の実績が、恐らく今の例えばノーベル賞の受賞につながっていたりとか、ある意味、私は、このころの教育の考え方が結果的に今の大きな成果を生み出しているのではないかなと。タイムスパンとして見れば、こういった長い時間の中で成果が生まれてきたところはもう少し評価されてもいいのではないかなと。

 決して、我々がやってきたことは間違ってはいなかったし、その結果が確実に今出てきているということで、このよかった点をぜひまたこれからも生かして、余り時代背景に左右されずに、教育政策というのはもう少し信念を持って貫く姿勢もあってもいいのではないかなという、このタイムスパンの一つの問題として、時間の感覚をやはりほかの政策とは違う長いスパンで考えていくべきではないかなというのが一つ目の質問です。

 次に、もう少し、今度はプロセスの問題についてお伺いしたいと思います。

 学習指導要領をつくりまして、それが実際に実施されるのは学校の現場でございまして、ではどうやってそれが生かされていくかというそのプロセスのことを少しお伺いしたいと思います。

 そもそも学習指導要領というものは誰がつくるのかということなんですけれども、今は当然文部科学省がつくるということになっておりますが、もともと、一九四九年、これも大分昔の話で恐縮なんですけれども、当時の文部省の設置法では、文部省というのが最低基準を設定する、そして教育委員会が学習指導要領を作成して、学校が教育課程、いわゆるカリキュラムを作成する、そういうふうに定められていたわけなんですけれども、ここに注釈がありまして、当分の間は文部省が学習指導要領を作成するというふうに定められていたというのが実情でございまして、この文部省設置法が一九五二年に改定された際に、この当分の間という注釈の部分が削除されまして、実質的に学習指導要領というのは当時の文部省がつくるというふうになったというわけでございます。

 これを批判的に言う人は、国が実質に権限を強化したのではないかというふうに捉える人もいるんですけれども、そもそも、学習指導要領というのは、なぜ、教育委員会がつくるというところから文部科学省がつくるというふうに変わってきたかというその辺の経緯について、当時の話がもしわかるようであれば、教えていただきたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 公教育におきましては、教育基本法等に基づきまして、全国的に一定の教育水準が確保され、実質的な教育の機会均等を保持することが求められているところでございます。

 学習指導要領は、こうした公教育を実現するために、国におきまして、学校教育法に基づいて、それぞれの教科等の目標や最低限教えるべき教育内容について大綱的な基準を定めたものでございます。

 文部科学大臣がこの学習指導要領を告示するということは、今申し上げたような理由でございまして、恐らく、当時の議論としてもこういった点が背景にあるものと考えております。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 大変古いお話で申しわけなかったんですけれども、いろいろ時代の中で教育委員会にそこまでのことを要請するというのも難しかったこともあったかもしれませんし、現在に至る、国の方である程度教育水準を一律に、そしてできるだけ公平にということでの配慮ではないかなというふうに受けとめますけれども、そういった方向性を出すにしても、結果的には、教室の現場で先生がどんな形で教えていくかというところが最も影響力を持つのではないかなというふうに思います。

 教育委員会のその中での役割というのは大変重要になってくるかと思いますが、一般に政策過程論で言われる政策の段階的なプロセスといいますと、政策、ポリシーと呼ばれる政策の部分があって、それはより具体的な施策に落とし込まれる、これがプログラムと呼ばれる部分でして、そして具体的な事業として実施される、プロジェクトとして実施される。

 この政策、施策、事業という三つの段階で表現されることが多いんですけれども、これを教育に当てはめますと、恐らく、学習指導要領という政策を定めた上で、それが教育課程というカリキュラムの中で施策として学校現場ごとあるいは地域ごとに実施されて、そして、教室という中で具体的に子供に単元をどうやって教えようかという、そういう事業として展開されるわけだと思いますけれども、この段階的な実施をする中で、教育委員会の本来的な政策的な役割についてお伺いしたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 教育委員会は、地方公共団体における教育行政の執行機関として、公立学校の設置、管理、施設整備、教職員人事等に関する事務を行うこととされております。そのうち、市町村立の小中学校の教職員は県費負担教職員でありまして、都道府県教育委員会が、指定都市を除く教職員の任免を行っております。

 また、各教育委員会におきましては、学習指導要領を初めとした国の定める法令等に基づいて、教育課程や教材の取り扱い等についての地域の実情に応じた方針等を定め、各学校に対して指導するなど、所管する学校の教育課程、学習指導等に関する事務を行っているところであります。

大串(正)委員 ありがとうございます。

 学校現場にとっては、やはり教育委員会の存在というのは非常に大きく、ある意味頼もしい存在でもあるということではないかなと思います。今のお話のとおり、学校現場に寄り添うような形で、むしろ国よりは現場に近い位置づけにあるのではないかなというふうに思います。

 実は、冒頭お話ししましたように、国の政策が現場と大分かけ離れる場面が出てくる一つの理由としては、やはり国の政策、そして教育委員会による施策の実施、そして教室現場での教育の実際的な実践に至るこの一つのプロセスが、国がなかなか現場にまでは関与できない状況があるのが一つの要因ではないかなと思います。

 逆に、国が教室現場まで関与するというふうになると、これは現場からの反発も大変強いものがありますけれども、ただ、一つ言えるのは、大変いい授業をしている、教え方の上手な先生がいれば、その指導方法についてはもっともっと普及させるためのサポートをもっとやってもいいのではないかなというふうに私も考えるところでありまして、そういった意味で、これから、チーム学校やカリキュラムマネジメントの中でそういった施策を充実させていってはいかがかなというふうに思います。

 時間となりましたので、またこの続きは機会を改めてお伺いしたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。

永岡委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 前回に続きまして、ちょっと奨学金の件について質問をしたいと思います。

 まず、無利子奨学金についてですが、本年九月二十六日、安倍総理は、所信表明演説におきまして、「若者こそ、我が国の未来。若者への投資を拡大します。本年採用する進学予定者から、その成績にかかわらず、必要とする全ての学生が無利子の奨学金を受けられるようにします。」というふうに表明されました。

 無利子奨学金の受給者は、予算措置により年々増加させており、親の年収三百万円以下の家庭の学生、全体の約三割程度ですが、成績要件を満たせば全員が受給できることとなっております。平成二十八年度予算では、これに加え、年収三百万円以上の家庭の学生を中心に、プラス六千人、対象を拡充しまして、合計四十八万人の学生に奨学金が今供与されております。

 総理が言われるように、残存適格者二・四万人、平年度ベースで七・二万人に無利子奨学金を支給するためには百四十九億円の財源が必要となるというふうに推計されていますが、これはどのように手当てをするんでしょうか。まず、松野文部科学大臣に尋ねたいと思います。

松野国務大臣 富田委員御指摘のとおりの経過によって、残存適格者数は、平成二十四年度の十万五千人から、平成二十八年度は二万四千人まで段階的に減少しております。平成二十九年度概算要求において、残存適格者の解消に向けて、無利子奨学金の貸与人員の増員分として所要額約百五十億円を要求しているところであります。

 政府の閣議決定においても、この財源については、奨学金制度については安定財源を確保しつつ制度の拡充を図ることとされており、その中で無利子奨学金の残存適格者の解消が位置づけられているところであります。

 こうした閣議決定の考え方を踏まえ、平成二十九年度予算編成過程で必要な財源を捻出し確保すべきものと考えており、御党の格段の御支援もお願いを申し上げる次第であります。

富田委員 きょうは財務省から大塚副大臣に来ていただいていますが、副大臣、今のような考え方でよろしいんですか。

大塚副大臣 無利子奨学金の残存適格者については、これまでも、財源を確保しつつ段階的に解消してきているという経緯にあるわけでございますけれども、今文科大臣からもありましたように、安定財源をしっかり確保していくということが必要でございますので、これをどのように確保していくかということを含め、二十九年度における対応についても予算編成過程で検討を今進めているところでございます。

富田委員 それに関連して、十月二十八日付で、無利子奨学金の低所得世帯の生徒に係る成績基準の実質的撤廃の通知が発出されました。この内容がどうなのか、また、これに対してどのぐらいの財源が必要になるか、また、現場にどのように周知徹底していくのか、高等教育局長にお尋ねしたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 十月二十八日の通知の内容でございますが、一つは、経済的事情により進学を断念せざるを得ない者の進学の後押しを一層図るため、無利子奨学金について、低所得世帯の生徒に係る成績基準を平成二十九年度進学者から実質的に撤廃し、必要とする全ての生徒が無利子奨学金を受給できるよう基準を変更したこと、これが一点、二点目は、また、それとあわせて、日本学生支援機構から追加推薦の依頼を高等学校等宛てに発出したこと、この二点を通知したものでございます。

 今回の追加採用につきましては、推薦される人数にもよりますが、平成二十七年度の進学実績でございます約二万人が対象となると仮定をいたしますと、その人数に例えば月額五万円を貸与した場合、初年度おおよそ百二十億円が必要となると考えられます。具体的な所要額につきましては、実際の推薦状況等を踏まえながら予算編成過程の中で具体化し、所要の予算を確保してまいりたいと考えてございます。

 また、現場への周知についてもお尋ねがございました。日本学生支援機構から、対象となる全ての学校に対する通知を発出いたしますことに加えまして、文部科学省から各教育委員会等に対し、募集の周知を依頼する旨の通知の発出、文部科学省及び日本学生支援機構ウエブサイトへの募集内容の掲載、それに加えまして、高等学校等の関係団体や全都道府県の高等学校長協会の会長が参加する会議等における資料の配付、説明の実施、こういうことを行っているところでございまして、この徹底に努めてまいりたいと考えております。

富田委員 大塚財務副大臣にお尋ねしますが、約百二十億かかるということです。この財源についても、今後財務省でどのように検討されていくお考えですか。

大塚副大臣 これはまさに予算編成過程でございますので、どこからどういうふうに財源を繰り回していくかということを総合的に今考えている真っ最中ということでございますけれども、無利子奨学金については、未来への投資を実現する経済対策において成績基準を実質的に撤廃するということを踏まえて、学生支援機構が追加募集を開始したというのは御指摘のとおりでございますので、それも踏まえ、今しっかり検討しているところでございます。

富田委員 十一月十六日の当委員会での質疑でも指摘をさせていただいたんですが、今、大塚副大臣言われたように、給付型奨学金は、ニッポン一億総活躍プラン並びに未来への投資を実現する経済対策にも記載があります。政府の最重要政策の一つとして実現するものであり、財源は政府予算全体の中で拠出することが必要であるというふうに我々も考えています。財務省もこういう認識に立っているというふうに、十一月十六日の委員会における質疑において木原財務副大臣から御答弁をいただいたところであります。

 その上で、我が党は、教育・研究職返還免除制度の廃止に伴う免除額の将来的な縮減分の免除枠も財源の一つとして検討すべきだというふうに考えております。

 資料の二と三をぜひ委員の皆様にはごらんいただきたいんですが、資料二は、私の事務所の方でJASSOからいただいた資料をもとにつくったもので、資料三は、JASSO、日本学生支援機構の資料であります。

 資料三の方を見ていただきますと、平成三十二年度以降、この免除額がずっと減っていって、平成四十四年度にはゼロになります。この枠が私たちは活用できるのではないかというふうに考えているんですが、残念ながら、財務省の中には、平成十六年度採用からの教育・研究職返還免除制度の廃止と同時に大学院の業績優秀者免除制度を創設し、来年度以降も百二十六億円程度の免除額が予定されているので、教育・研究職返還免除制度の免除額の将来的な縮減分の免除枠は財源としては活用できない、財務省の一部にはそういう意見があるというふうに仄聞していますが、大塚副大臣、そういうふうな理解でよろしいでしょうか。

大塚副大臣 財源の手当ての整理としましては、今御指摘のあったような形で、教育・研究職返還免除制度が廃止されると同時にというか、廃止が決まったときに同時に創設をされた業績優秀者返還免除制度、平成十六年度でございますけれども、ここに財源的に充てていこうという整理で、制度が入れかわったと言ってはあれですけれども、そういう形であったというふうに経緯を聞いているところでございます。

 ただ、御存じのように、教育・研究職免除制度は、直ちに財政的負担がなくなるわけではありませんで、十五年間かかって、さらに、途中、猶予があった方々が段階的に縮減をしていくというところがありますので、その部分は実は財政的には前倒しで使ってしまっている部分ということにもなるわけでございますので、確かに、御指摘のように、キャッシュフローは、三十二年度以降、徐々に、段階的に少しずつ出てくるわけですが、これは十六年度に採用した新しい制度のための財源という整理になっているところでございます。

富田委員 大塚財務副大臣は多分事務方からそういう説明を受けたと思うので、資料四をちょっと見ていただきたいんですが、この上の、黄土色の部分が残っているんだ、これが今言われた業績優秀者免除制度の枠なんだというふうに財務省の一部では考えているんだと思います。

 実は、十一月十六日、この委員会で質疑を終えた後に、財務省の事務方が会いたいというので、お会いしましたら、そういう説明を受けました。全く同じ説明をされました。その説明を聞いていて、私はちょっと違和感を覚えたんですね、あれ、何か変だなと思いまして。

 四月二十二日に、安倍総理に給付型奨学金の提言をさせていただきました。その際に、私たちは、資料二の資料と同じものを総理にお見せしまして、この枠が活用できると思いますというふうにお話をしたんですね。総理も大変興味を持っていただきました。そうしましたら、その後に財務省の事務方から、違うんですという説明を受けたんですね。

 資料五を見ていただけますか。「教員・研究職免除制度について」と書いてあります。ここに、「平成十六年度採用者から廃止になっている特別返還免除は、平成三十二年度以降毎年必要額が減少していくが、その減少分は毎年拡充する無利子奨学金に充てることになる。(残存適格者の解消に四百八十億円必要)」と書いてあります。わざわざアンダーラインで、減少分は無利子奨学金に充てると。無利子奨学金の財源になるというふうに書いている。これは財務省の事務方が私にくれた資料です。私の資料の中に埋まっていました。見つけてくれと、出てきたんですよ、これが。

 それで、きょうお出ししましたけれども、無利子奨学金の財源になるのに、なぜ給付型奨学金の財源にはならないんですか。おかしいと思いませんか、大塚副大臣。事務方なんかにいろいろ言われないで、御自分で、今私の説明を聞いて、どう思われますか。

大塚副大臣 私も、いろいろ事務方から聞いている経緯だと、多分、当初、新しい制度を創設するときに、これが財源なんですということをきっちり文書にして残しておけば、公表文書にでもして残しておけばこういう混乱は起きなかったのかなというふうに思うわけですけれども、これは部内での税源のやりくりの中での整理だったということで、ひょっとすると、部内でも、よくよく調べないと、共有がうまくできていなかった部分もあるのかもしれないなという印象もちょっと受けながら、私も聞いていたところでございます。

 ただ、富田先生もお配りいただきました資料を見ても、確かにそういう整理になっていたんだろうなというふうに事後的に私としては整理をしているわけでございまして、ちょっと、富田先生への情報の伝達という意味で不手際がありましたら、おわびを申し上げたいというふうに存じております。

富田委員 大塚副大臣のすごく誠意ある答弁、よく理解できるんですが、実は、この資料を使って、財務省の事務方は総理にも説明しているんですよ。無利子奨学金の財源に使えますよと総理に説明をしているんですが、総理は余り関心を示さなかった。多分全く同じ日に、私たちは給付型に使える、財務省の事務方は無利子の財源にしたいというふうな説明をされたんだと思うんです。

 そういう意味では、財源として使えるのは間違いないんです、どういう整理をしていようが。どこに充てるかという話なので、給付型には使えないというふうに財務省の中で決め打ちしないでもらいたいんです。四月の時点でこういうふうに私に説明していたんだから、給付型の財源にまだなり得る可能性はあるんですよね。

 先ほど大塚副大臣が言われたように、前倒しで使っているという部分も確かにあると思いますので、全部が全部活用できるとは思いませんが、財源の一つには十分なり得るので、ぜひ副大臣に財務省の中でリーダーシップを発揮していただいて、これも財源の一つとして検討しろというふうに言っていただきたいと思いますので、答弁はいいですから、ぜひお願いをしたいと思います。いいです、答弁はいいです。(発言する者あり)では、答弁を。

大塚副大臣 給付型、これは、今も富田先生からもありましたように、四十四年度に向けて段階的に縮減していくということなので、来年度からの給付型の財源として直ちに使えるかというとちょっと難しいかなという側面と、これを使えば、当然、将来的に残存適格者向けの財源に当て込むのか。これは、もともとの財務省の整理は恐らく、その分赤字が減るねということであったのではないかなとは思いますけれども、将来的にそっちの財源もなくなっていくということもありますので、その辺も含めて御理解をいただければありがたいというふうに思っております。(発言する者あり)前向きに、御理解をいただきたいと思います。

富田委員 ぜひ前向きに検討してもらいたい。

 これは、給付型の財源にもなるし、無利子の財源にもなるんですよ。だから、どういうふうに振り分けていくかという話だと思うので、全くだめなんですというふうに一部の事務方に誘導されないように、副大臣、ぜひ力強くリーダーシップをとっていただきたいというふうに思います。

 残りの時間、ちょっと提言をさせていただきたいんですが、自由民主党の文部科学部会給付型奨学金の制度設計に関するプロジェクトチームと公明党の給付型奨学金推進プロジェクトチームで今協議を進めています。馳先生、宮川先生にも、また福井先生にも入っていただいて一緒にやっているんですが、その中で、もう協議はほぼまとまりつつあるんですが、この協議においては、進学を諦める子供たちの進学を後押しするようになるように、給付額についてはまず三万円程度を基準にしようというところでほぼ合意ができています。プラス、給付対象世帯の家庭からの仕送りや学生生活の実態、国公私や自宅、自宅外といった状況の違いによる支出差に配慮して上乗せを検討していこう、ここも合意に向かいつつあります。

 その上で、我が党から、社会的養護を必要とする学生に対しては特段の配慮をすることと提案させていただいて、ここもほぼおおむね合意をいただいています。児童養護施設出身者や里親の家庭から進学する方、また、今、児童養護施設で、十八で普通は出なきゃいけないんですが、残ったまま通えるようにも制度改正でなりましたので、そういった意味で、社会的養護を必要とするというような文言にさせていただいたんですが、こういう方たちに特段の配慮をということを合意文書の中に入れさせていただこうと今しております。

 そこで、一つ提案したいと思うんですが、平成二十六年度末に高等学校を卒業した児童養護施設出身者は千八百人です。現在の進学率は二三・三%。これを、給付型を設けることによって進学率を五〇%まで押し上げた場合の進学者は九百人になります。この九百人に、無利子の貸与者は今掛ける五六%ぐらいですから、九百人に五六パーを掛けると約五百人、この五百人に我々は月五万四千円支給すべきだというふうにまだ考えているんですが、この五百人に月五万四千円の給付を行うと仮定すると、初年度三億二千四百万、平年度で九億七千二百万が必要となります。

 児童養護施設からの自立と進学を同時期に迎えて、また、親御さん、家庭からの支援が期待できない学生に特段の配慮をした支援を行うということは、一億総活躍の趣旨に最も沿う、国民の納得も得られるものと思いますが、こういう特別な配慮について、松野文部科学大臣、そして大塚副大臣はどのようにお考えでしょうか。

松野国務大臣 給付型奨学金の制度設計については、省内に設置した有識者も参画する検討チームにおいて議論を進めているところであり、社会的養護が必要とされる者は給付対象とする方向で議論が進んでおります。また、給付額については、進学を後押しする観点から、負担感を解消するようなものとすることが適当であると考えられております。

 具体的な検討に当たっては、社会的養護を必要とする学生に対しては、厚生労働省も進学を支援するための事業に取り組んでいるため、こうした他の支援制度との関係も整理しつつ、御指摘の特段の配慮をすべきとの御意見も十分踏まえ、平成二十九年度予算編成過程の中で検討を進めていきたいと考えております。

大塚副大臣 学ぶ意欲と能力のある者が経済的理由により進学を断念することがないように後押しをしていきたいというふうには考えておるわけでございますが、一方で、給付対象となる世帯とそうでない世帯のバランスとか、今文科大臣からも指摘がありました、厚労省で児童養護施設向けの、これは給付で、手厚い制度もございますので、そうしたこととのバランスも踏まえて予算編成の過程の中で考えていきたいというふうに考えております。

富田委員 今、お二人から、厚生労働省の措置があるというお話でしたけれども、これは確かに給付型なんですけれども、生活費五万円、住宅手当五万円、卒業後五年間きちんと働くというような要件があるんですね。

 そうすると、高校生にとっては、そこまで縛りがあると、そこだけを頼りにというのはなかなかできないと思いますので、ぜひ給付型奨学金の創設の際にこういった配慮をしていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 民進党の宮崎岳志でございます。

 本日は、文部科学委員会で質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、質問に入る前に、文部科学大臣に一言申し上げたいと思います。

 原発事故のため福島から横浜市に避難していた中学一年生の生徒が、何年間も暴力を振るわれるなどのいじめを受けていたことが判明をいたしました。小学五年生のときには、賠償金をもらっているだろうなどと言いがかりをつけられ、百五十万円も恐喝をされていたということであります。このようないじめが卑劣きわまりない行為なのはもちろんでありますが、学校や教育委員会が事実を把握しながら、まともな対応を行わず、犯人への十分な指導も行わず放置したことは許しがたい問題であります。

 既に多くの議員の方々が質疑をしておりますので答弁は求めませんけれども、文部科学大臣には、厳正な対処そして再発防止をお願い申し上げます。(発言する者あり)では、求めてもよろしいですか。答弁いただけますか。質問通告していないので、済みません。

松野国務大臣 横浜市の事案については、被害者の保護者が行った記者会見については不確定な部分もございますので、コメントは差し控えたいと思います。

 十一月二十二日の会見の冒頭で私から申し上げましたとおり、本事案については、横浜市から直接聞き取りをし指導を行うために、義家副大臣を市に派遣しております。義家副大臣からは、原子力発電所事故の被災児童生徒に対するケア、重大事態として対応しなかった判断の検証、小学生同士の多額の金銭のやりとり自体が積極的に対応すべき問題であったとの認識などについて指導したところであります。

 引き続き、横浜市のいじめ防止対策の改善や被害生徒の今後のケアについて、国としても指導、助言、支援をしていきたいと考えております。

宮崎(岳)委員 私、かつて新聞記者をやっていた時代に、やはり小学校のいじめ問題を取材したことがありました。

 いじめの問題が発覚をして、教育委員会が、我々は聞いていない、学校からそういう報告を受けていないと言っていたんですね。私、校長のところに取材に行きました。校長先生はなかなかちゃんとした方で、いろいろその内実についても語っていただいたんですが、そのとき、校長、教育委員会に報告していないんですねと言いましたら、いや、私はすぐにしております、こういう答えだったんですね。教育委員会の方にまた聞きました。報告したというふうに校長は言っていますよと。そうしたら、口頭では聞いたことがあるけれども、文書では報告を受けていない、だから報告を受けたことにはならない、こういう主張を教育委員会の方はした、こういうことが群馬県のある村でありました。

 いろいろ教育界の体質というものも、私も家内が教員をやっておりますので余り教員の悪口は言わないんですけれども、こういう教育界の体質というものもメスを入れながら、よりよい教育の実現に御尽力いただきたいと思います。

 さて、きちんと通告をいたしました質問の方に入りたいと思います。

 TPPの特別委員会の方の積み残しでありまして、なかなか十分な政策論議を深めるということができなかった審議を反省しながら、質問に入りたいと思います。

 著作権の問題であります。

 TPPによって、著作権の保護期間の延長や著作権侵害等の非親告罪化が行われます。著作物を利用する側から見ると、規制強化ということになるわけであります。これによって、コミックマーケット等で販売される同人誌、特に既存のアニメやゲーム等のキャラクター、設定等を活用して新たな作品を創造する、いわゆる二次創作の分野に萎縮効果を与えるのではないかということが懸念をされております。

 私自身は、友人が同人誌のブースを出していたりしたこともあったものですから、まあ大昔です、二十代のころにコミックマーケットに二、三度行ったことがあります。晴海や幕張で行われていたころのことなんですが、当時、アマチュアで同人誌をつくっていた方々が、今、プロとしてその業界のトップにいて、クール・ジャパンの牽引役というふうになっている事例も数多くあるということを申し添えたいと思います。

 私は新聞記者の出身なんですが、小説を書いていたこともございます。恥ずかしいのですが、少女向けの小説でございまして、集英社コバルト文庫というところから三冊出版をしております。そして、当時、女子中学生等から結構ファンレター等もいただきました。今は抗議の手紙ぐらいしかいただかないわけでございますが、そういった時代もあったということであります。

 そういった立場から、著作者の権利保護というのも大切なんですが、それ以上に、著作物の活用ということは大切だというふうに強く思っております。

 そして、著作権法の改正について、まず総論を伺いたいんですが、TPPで著作権法が改正され、大半が米国の制度に合わせる内容になると思うんですね。アメリカに対して、日本にはこの改正によってどのようなメリットが生ずるのか、また、TPPによって米国側は制度の改正を迫られる部分があるのかどうか、これについてお答えいただけますでしょうか。

松野国務大臣 今回の改正は、TPP協定の実施に伴い、国際調和の観点から、著作物の保護期間の延長、著作権等侵害罪の一部非親告罪化等の措置を講ずるものであります。保護期間が延長され、長期間にわたり収益が得られることにより、新たな創作活動、アーティストの発掘、育成が可能となること、著作権等の一部非親告罪化により、海賊版対策の実効性を上げることなどが期待をされるなど、国内における著作物の適切な保護に資することが期待されています。

 これらの法改正は、我が国における著作物の利用について、その著作物がどの国の著作物であるかにかかわらず、同様に及ぶものであり、我が国の著作物に比べて米国の著作物に有利な保護が与えられるものではありません。

 文部科学省としては、今回の改正によって、我が国の著作物等が適切に保護され、新たな創作活動が活性化されることなどにより、我が国の文化発展につながることを期待しております。

 なお、アメリカの著作権に関する法律がこれに伴って改正されるということは承知をしておりません。

宮崎(岳)委員 そんなに日本にとってメリットがあるのであれば、TPPに関係なくやればいい話なんですね、保護期間の延長とか非親告罪化とかいうのは。逆に、やはりこれは、日米の関係でいうと、アメリカ側にメリットがあり、日本側には、かくこれだと言えるようなメリットがないということではないかというふうに思います。また、先ほど、アメリカの著作権法については、これを改正するということは承知していないということでしたので、つまり、改正はしない、アメリカはもとのままで、日本が一方的に合わせる制度だということだと思います。

 さらに続けて伺います。

 TPPで著作権の保護期間が延長されるわけですけれども、これまで死後または公表から五十年、こういう規定が七十年に延長されます。

 これは参議院の方でも審議されておりますが、米国の著作権法は、ミッキーマウスの著作権が切れそうになるたびに保護期間が延長されるので、ミッキーマウス法とやゆされてきました。

 ミッキーマウスの初公開は一九二八年で、映画の保護期間は公表後七十年、日本は、後に述べる戦時加算がつきますので八十年ということですから、日本では、デビュー映画の著作権は二〇〇八年に切れております。しかし、アメリカではまだ続いている、こういうことであります。

 そして、キャラクターとしてのミッキーマウスは、作者が誰だか諸説があるんですが、ウォルト・ディズニーとアブ・アイワークスの共同著作だとすると、アイワークスが逝去した一九七一年から起算して五十年、戦時加算を含めるとおおむね二〇三一年ということになります。ディズニー単独の著作であると判断しますと、二〇二六年なので、もう目の前だということになります。

 今のは一例なんですが、五十年の保護期間切れを目前に控えた著作物というものは海外や日本にどんなものがあるのかということを、具体的な代表例をお示しいただければと思います。

松野国務大臣 現在、保護期間が満了する時期が近づいている著作物の例としては、日本に関しては、没年が一九六七年である山本周五郎氏の「樅ノ木は残った」や、壺井栄氏の「二十四の瞳」などの作品が挙げられるものと承知をしております。

 海外の作品については、作者の没年、作品の創作時期について必ずしも十分な情報を持ち合わせていないため、具体的なお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

宮崎(岳)委員 私も文化庁から資料等をいただきました。三島由紀夫の「金閣寺」が二〇二〇年に切れる、志賀直哉の「城の崎にて」が二〇二一年、こういうことであります。そういうことを考えてみると、最近切れるというものの中に、海外から著作権料を多額に、巨額に得られるというものは余りないんじゃないかというふうに思います。

 その一方で、アメリカでは、先ほどのミッキーマウスに関連する商品の年間売上高は全世界で九十億ドルとも言われております。日本円で一兆円近い額でありまして、ネズミ一匹で一兆円稼ぎ出すという状況であります。

 また、十年ほど前ですか、くまのプーさんの著作権をめぐる訴訟がありまして、当時の新聞記事を見ますと、関連の売上高が年間六十億ドルということであります。プーさんの小説の作者のアラン・アレクサンダー・ミルンは一九五六年に死去しておりまして、結果的に、著作権は日本ではことし切れております。イラストの著作権はあと二十年ほど続きますが、イラスト抜きのくまのプーさんというキャラクターは、今、日本では誰でも使える状況になっているということだと思います。

 古いその時代の著作物というのは、ブロードウェーの演劇であったり、音楽であったり、ドラマの原作小説であったり、日本は米国に歯が立つような状況ではございません。著作権の国際収支も大赤字ということでありますので、保護期間の延長は国益に資するとは私は考えられないというふうに思っております。

 そして、私も小説を書いていたというふうに申し上げましたが、絶版になりまして、今、中古本がアマゾン・ドット・コムで一円で販売されております。世の著作物の九九・九%はかくのごときものでありまして、発売から長い時を経て利益を生み続けるというものは、ほとんどありません。多くの場合、著作権の相続者すらわからない、その子孫がいるのかどうかすらわからない、これが現状であります。

 使用許諾がとりようがないという著作物は、通常、世の中から結果的には消えていくということになります。ミッキーマウスなど少数の例外のために保護期間を延長するということは、それ以外の大多数の著作物の活用を制約して死蔵を招くということになると思います。

 ことし十月ですが、日本劇作家協会、日本俳優連合、日本劇団協議会、日本演出者協会など、特に演劇関係の七団体が、TPPと著作権に関する緊急アピールというものを出しました。その中で、保護期間の大幅延長について、遺族の収入増には結びつかず、逆に大多数の作品の死蔵を招き、新たな創造を困難にするという批判をしております。

 人類共有の財産というべき著作物を活用し、文化を発展させる観点からは、著作権の保護期間は延長すべきではないというふうに私は考えておりますが、文科省の見解はいかがでしょうか。文部科学大臣、お願いします。

松野国務大臣 多岐にわたって御質問をいただきましたが、まず、国際収支を含めた問題であります。

 冒頭お答えをさせていただきましたとおり、今回は、TPP協定の実施に伴って、国際調和の観点というのがまず第一でございます。

 貿易収支に関するものも、委員の御指摘のとおり、今、日本は赤字でありますけれども、その赤字の九七%はコンピューターソフトによる赤字でございまして、コンピューターソフトは、大体、市場に流通するものが平均二、三年という短いものでございますから、今回、五十年から七十年に保護期間が延長されても、この面に関しては実質的な影響は少ないものと考えております。

 一方、日本のアニメ、漫画は、特にアジア諸国を中心に大変な人気のものも多くありまして、その面での著作権収入は日本は上がってきているわけでありますけれども、この部分が保護期間の延長によって長期的に安定化して保護されるということは、日本の国益に沿うのではないかというふうに考えております。

 しかし、この問題は、委員のお話にありましたとおり、いわば、その国のソフトパワー、開発力に帰するところが大きいものでありますから、このフェアな条件の中で今後しっかりと日本がITの分野、コンピューターソフト、また、アニメ、漫画等、さまざまな部分において創造性を発揮して国際的な競争力を高めていくということが肝要かと存じます。

 もう一つ、日本劇作家協会等が発表した、TPPと著作権に関する緊急アピールと題する文書の中において、保護期間の延長については、これは委員が御指摘をされましたけれども、遺族の収入増に結びつかず、逆に大多数の作品の死蔵を招き、新たな創造を困難にする等の懸念が表明されていることは承知をしております。

 保護期間の延長によりましての利点は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、一方で、これが利用しづらくなるという状況は回避をしていかなければならないと考えております。

 そのために、著作物の利用円滑化を図るということが重要でありますけれども、保護期間の延長に伴って増加が予想される権利者不明著作物等の利用のための裁定制度の改善、権利処理コスト低減のための権利情報の集約化、社会のニーズに対応した権利制限の見直し等、著作物の利用円滑化のため、必要な措置を同時にとっていかなければならないと考えております。

宮崎(岳)委員 先ほど、著作権関係の赤字について、コンピューターが大部分だから余り関係ないというようなことをおっしゃいましたが、それは全体での割合が少ないということであって、例えば映画だとか小説だとかそういったものの著作権同士で比べても、これは日本は大幅な赤字だということは事実だと思います。

 そして、アニメや漫画が、確かに最近利益を生み出しているものもありますけれども、これは今から百年後ぐらいの話なんですね。著作者が亡くなって、そこから七十年ということですから、百年ぐらい後にそれが生み続けるかどうかという話であって、現在、つまり今まさに切れかかっているような分野、直近のところについては、やはりこれは大赤字だということで間違いないのではないかと思います。

 そして、保護期間の延長ということで、孤児著作物、権利者不明の著作物の利用を扱いやすくするというのは、確かにこれはすばらしい取り組みだというふうに思うんですけれども、今、やはりコンピューターネットワークの広がりが非常にありますので、世界的には著作権の保護期間を短くしようという議論もかなり出ている。我々は、長くし過ぎて、ネットワークでつなげるようになって、アーカイブ化して検索するようなことができたのに、この人類の財産を十分に使いこなせていないということで、ヨーロッパ等ではこれを短縮すべきじゃないかという議論も出ているということだと思います。

 TPPがこれで通らないというか発効しなければもう一度見直すチャンスが出てまいりますので、ぜひこれは延長ありきでない取り組みをお願いしたいというふうに思います。

 さて、著作権法違反、著作権等侵害罪の非親告罪化についてお伺いをしたいと思うんですが、非親告罪化には一定の制約がかかっておりまして、適用は海賊版の販売等に限られるというふうにされております。

 しかし、非親告罪化によって、第三者から嫌がらせ的な通報があったり、あるいは、警察から、これはもちろん起訴するときには親告罪だということになるんですが、その手前で、例えば捜査に至らないような問い合わせとかそういったことがふえて、表現活動の萎縮を結果的に招くんじゃないか、そういうおそれは十分にあると考えます。

 こういった面から、私も、非親告罪化については極めて慎重に当たらなければならないのではないかというふうに思いますが、文部科学大臣の見解をお示しいただけますでしょうか。

松野国務大臣 委員から今御指摘がありました今回の著作権等侵害罪の一部非親告罪化において、二次創作活動への萎縮が生じないようにすることは大事なことだと思います。そのために、範囲を悪質な侵害行為に限定するということとしております。

 具体的には、対価を得る目的または権利者の利益を害する目的があること、有償著作物等について原作のまま譲渡、公衆送信または複製を行うものであること、有償著作物等の提供、提示により得られることが見込まれる権利者の利益が不当に害されることとなる場合であることの全てに該当する場合に限り、非親告罪とすることとしております。

 既存の著作物をもとに行う二次創作は、一般的には、原作のまま著作物を用いるものではないこと、また、市場において著作物の正規品の販売等と競合するものではなく、権利者の利益が不当に害されることとなる場合との要件に該当しないことから、非親告罪とはならないというふうに考えております。

 すなわち、二次創作活動による著作権等侵害行為は、仮に権利者でない第三者が通報したり告発したとしても、権利者の告訴がなければ公訴を提起できないものであることは今回の改正により変わるものではありません。したがって、今回の著作権等侵害罪の一部非親告罪化は、第三者の通報等により二次創作を行う者に対する萎縮効果を生じさせることとなるものではないと考えています。

 文部科学省としては、改正法の施行に当たって、二次創作活動の萎縮を招くことがないよう、関係省庁とも十分に連携をして、非親告罪化の趣旨や要件の具体的内容について十分に周知を図ってまいりたいと考えております。

宮崎(岳)委員 私が質問したのは、やはり捜査の強化ということが行われることによって間接的に萎縮ということが波及していくんじゃないか、こういうことであります。

 現状でも、やはり行き過ぎた捜査ではないかと思われるようなこともあるんですね。お手元の資料の五ページに、「「ハイスコアガール」事件について」という資料があります。これは、いわゆる著作権関係の専門家あるいは大学教授、そういった皆さんが危機感を表明された文書であります。「「ハイスコアガール」事件について 著作権と刑事手続に関する声明」というものであります。

 この事件は、二〇一四年の八月に、「ハイスコアガール」という漫画が格闘ゲームのキャラクターを無断で使って著作権を侵害したとして、大阪府警が著作権法違反容疑で発行元のスクウェア・エニックス本社などを家宅捜索したという事案であります。出版社への家宅捜索ですから、これは大変大きな衝撃を与えた事件です。この事件で作者など十六人と法人が書類送検をされましたが、後に不起訴になっております。

 この漫画は一九九〇年代のゲームセンターを舞台にしたラブコメディーで、主人公はゲームセンターに通い詰めている小学生で、そこに同級生の女の子、ヒロインがいまして、めっぽうゲームが強いということで、ライバル心を燃やしてゲームで対決するというようなコメディーなんです。

 つまり、海賊版であるとか、原作をほぼそのまま扱っているというものではないんですね。あくまで、話のモチーフとか背景としてゲームが登場するわけで、海賊版、コピー版ではありません。あえて分類するなら、パロディーとかオマージュとかそういう一種でありまして、そもそも著作権法違反かどうかも微妙なケースであります。少なくとも、もちろん、例えば民事上の賠償責任なんかが発生する可能性はあるでしょうけれども、とても出版社に家宅捜索をするような明白重大な事案とは思えません。

 最終的にどうなったかといいますと、これは、最後のページにありますが、和解をしているんですね。和解の内容を見てもらうと、お互いに告訴を取り下げて、出版も継続をして、損害賠償金も払わない、各社のコンテンツを利用した新たな協業機会を創出しようとうたわれておりまして、お互い仲よくして、手を組んでビジネスをやろうという内容の和解なんですね。

 強制捜査というのは社会的影響が極めて大きいですし、社会的制裁の意味合いもどうしても生じてしまいます。このような曖昧な事案で強制捜査を行うというのは私は行き過ぎだと考えますが、警察庁の考えをお示し願いたいと思います。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘のございました事件につきましては、平成二十六年十一月、大阪府警察が検挙した、「ハイスコアガール」という漫画にゲームのキャラクター等を無断で使用した著作権法違反事件を指すものと考えております。

 個別の事件の詳細につきましては差し控えさせていただきますけれども、これにつきましては、権利者側からの告訴を踏まえ、法と証拠に基づき所要の捜査を行ったものと認識をいたしているところでございます。

 なお、強制捜査につきましては、一般論として申し上げれば、必要な場合に、刑事訴訟法の規定に基づき裁判官の令状を得て行っているものであります。

 警察としては、今後とも、刑罰法令に触れる行為につきましては、法と証拠に基づき厳正に対処してまいる所存でございます。

宮崎(岳)委員 何も言っていないのも同じの答弁だと思うんですけれども、やはり、最終的に損害賠償も民事関係で発生しないような事案について出版社に強制捜査を行う、家宅捜索を行うというのは、私はこれは明らかに行き過ぎだと思いますので、今後の捜査においては十分慎重に、特に著作権問題については取り扱っていただきたいというふうに思います。

 もう一点。先日、ことしの十月ですか、いわゆるパロディーTシャツの販売店六店をやはり大阪府警が家宅捜索をして、十三人を逮捕したという事案がありました。容疑者は略式起訴、罰金の略式命令というふうになったと聞いております。

 コピー品ならわかるんですが、パロディー商品はそもそも本物と区別がつくものでありまして、誤認させる意図もありませんし、パロディー商品を買ったから正規品を買わないというものでもないと思います。

 こういったことを考えると、このような違法、適法の認定が難しいパロディー商品について、任意で捜査するならともかく、強制捜査、逮捕というのはやはり余りに行き過ぎではないかと思いますが、これについてはいかがお答えになりますか、警察庁。

鈴木政府参考人 ただいま御指摘の事件につきましては、平成二十八年十月、大阪府警察が検挙した事件を指すものと考えております。

 本件につきましては、権利者側からの相談を受け所要の捜査を行ったものでございますが、有名ブランドの商標に類似する商標を付した衣類を販売目的で所持した商標法違反事件であると承知をいたしております。

 引き続き、警察といたしましては、こうした事件につきましては、被害者である権利者からの協力も得ながら、法と証拠に基づいて適正に捜査を進めてまいる所存でございます。

宮崎(岳)委員 何のお答えにもなっておりません。

 これは、商標が紛らわしいとか誤認させるものというのなら、それはわかる気もしますけれども、全く違う、冗談のためのグッズみたいなものについて、捜査をするのはいいですよ、捜査するのはいいけれども、逮捕するとかそういったことまでする必要があるのか。そして、結果的には略式起訴でしょう。罰金刑でしょう。略式起訴、罰金の略式命令ですよ。そういうものまで強制捜査を行って、しかも大々的に、警察庁の中ですか、体育館の中か何かに青いブルーシートを敷いて、そういうパロディーグッズを並べて、どうだといって広報をされている。私は、相当無理な捜査だったんじゃないかというふうに思います。

 もう時間もありませんので、最後に二つだけ伺います。

 いわゆる著作権侵害、非親告罪化の対象になるかどうかというのは非常に曖昧な部分がありますけれども、二点について、これが非親告罪化の対象になるか、また違法なのかどうかということについて伺いたいと思います。

 一つは総統閣下シリーズという動画でありまして、丸山穂高議員がTPPの特別委員会で質問されて、そのときには、これは改変されているので非親告罪化の対象ではないというふうに言われたんですが、これはもともとの「ヒトラー 最期の十二日間」という映画に日本語字幕を当てて、日本語字幕の内容がおもしろおかしい内容だ、こういう話でありますから、そこの字幕の部分を消したりとか、日本語がわからない人から見れば、もとの映画と同じなんですね。これは、本当に対象にならないと言えるのかどうか。

 もう一つは、私ども民進党でも、新聞記事をコピーして、内部で、例えば会議とかで配るということがあります。こういったものはどうなんでしょうか。原本の記事のコピーを、ある程度の人数、例えば五十人とか百人とか、そういうところに配るというのは、これは非親告罪化の対象になるのかどうか、あるいはこれ自体が違法なのかどうか、文部科学大臣の見解をお示し願えますか。

中岡政府参考人 個別のことでございますので、私の方から御答弁申し上げます。

 先ほど委員の方から御指摘いただいております総統閣下シリーズでございますけれども、また、企業等の団体が内部で利用するために行う記事のコピー配付、この二点につきましてのお尋ねでございます。

 著作権侵害である、いわゆる違法であるかどうかという判断でございますけれども、こういった個別のケースにつきましては、個々の事案における具体的な事情を踏まえて、裁判所により判断されることになります。このため、一概にはお答えすることはできませんけれども、このような例につきまして、権利者の許諾なく、無断で著作物を利用する場合には、著作権法に違反する可能性があると考えられます。

 一方、いわゆる非親告罪であるかどうかというお尋ねでございますけれども、総統閣下シリーズにつきましては、市場において著作物の正規品の販売と競合するものではなくて、権利者の利益が不当に害されることとなる場合との要件に該当しないため、非親告罪の対象にはならないと考えられます。

 また、先ほど御指摘いただきました、企業等の団体が内部で利用するために行う記事のコピーの配付でございますけれども、これにつきましては、一般的には、対価を得る目的や権利者の利益を害する目的がないと判断される場合が多いと考えられますので、このような場合には非親告罪の対象にはならないと考えられます。(宮崎(岳)委員「違法ですか」と呼ぶ)

 これにつきましては、先ほど総括してお答えいたしましたけれども、個々の事案における具体的事情を踏まえて判断しなければならないわけでございますけれども、仮に、許諾なく、無断で利用する場合については、そういった可能性があるということでございます。

永岡委員長 時間が来ておりますので、よろしくお願いいたします。

宮崎(岳)委員 はい、わかりました。

 時間となりましたので終わりますが、最後に、総統閣下シリーズというのは、いわゆる有料放映というのもやっておりますし、これは冗談的なことでありますけれども、そのパロディーにされる部分だけの……

永岡委員長 時間が来ておりますので、御協力をお願いいたします。

宮崎(岳)委員 有料上映というのもされているということを御指摘させていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、牧義夫君。

牧委員 おはようございます。

 松野大臣には二度目の質問をさせていただきます。きょう、三十分という時間をいただいておりますが、質問の数がちょっと多いかもしれませんので、できるだけ簡潔に、端的にお答えいただければと思います。私も余計なことは申し上げないつもりでおりますので、よろしくお願いいたします。

 前回の続きから入りたいんですけれども、大学が所有する知財の活用の方法について、ちょっと前回尻切れトンボだったものですから、この辺からもう一度入り直したいと思います。

 昨今、いろいろなニュースを耳にするんですけれども、例えば、これは朝日新聞だったかな、全国八十六の国立大学の四十歳未満の若手教員のうち、五年程度の任期つきの雇用が急増している、二〇一六年度は六三%に達しているということが文部科学省への取材でわかった、こういう記事がありました。この傾向は〇四年度の国立大の法人化後に強まっている、主に教員給与に充てる国の運営費交付金が減って、特定の研究ごとに若手を雇う例がふえたためだという記事でございます。

 やはり腰を据えて落ちついて研究をする環境が徐々に悪化しているんじゃないかなというふうに思うわけです。三年連続ノーベル賞を受賞というようなうれしいニュースもあるんですけれども、このノーベル賞というのは、過去の積み上げの上に現在のノーベル賞があるわけで、いきなりこういった研究の成果が出るわけではありません。したがって、こういう研究の環境のもとで、これから将来にわたって、この国の科学技術の発展等々、非常に私は憂慮すべきものがあるんじゃないかと思います。

 そういった一方で、十一月四日、財政制度等審議会の分科会で、全体としては、教育研究活動を圧迫しているとの批判には当たらないという答申が出されております。これに対しては国大協なんかも反発をしておりますけれども、きょうは財務省を呼んでお話を聞こうと思ったんですが、たびたびここに政務官ですとか呼びつけて、いろいろ言っても、最終的には、何かカエルの面に何とやらというような感じがしないでもございません。余りここでいたぶっても、後でちょっといじめの問題にも触れますので、その辺はよしておこうかなときょうは思います。

 国大協の立場と財務省の立場、双方ちょっと意見が真逆のように私は思うんですけれども、文科大臣の思いというものをここではっきりとお聞かせいただきたいと思います。

松野国務大臣 十一月十七日の財政制度等審議会の建議では、国立大学法人運営費交付金の減額は、退職手当の減や附属病院の経営努力による減要因を考慮すれば、実質三百八十二億円の減額にとどまり、全体としては、国立大学の教育研究活動を圧迫しているとの批判は当たらないとの主張がされています。

 これは、運営費交付金における減要因のみを挙げたものであり、国立大学が義務的に支出しなければならない経費の増が考慮されていないものとなっており、これを考慮いたしますと、運営費交付金は実質一千億円以上の減額となります。そのほかにも、光熱水料の増など、国立大学が対応しなければならない真に必要な運営経費の増について、運営費交付金が削減されている中で対応しているという状況であります。

 文部科学省としては、国立大学が我が国の人材育成、学術研究の中核として継続的、安定的に教育研究活動を実施できるよう、運営費交付金等の基盤的経費の確保に努めてまいりたいと考えております。

牧委員 財務省の意見も添えながらお答えいただきましたが、私、冒頭、端的にお答えいただきたいと言ったのは、やはり、ここ急激に任期つきの雇用がふえているというその実態を踏まえれば、これはゆゆしき事態だと一言おっしゃっていただければ足りたのではないかなというふうに思いますし、多分大臣もそういう思いだろうというふうに御期待を申し上げたいと思います。

 一方で、やはり、大学が持つ知財をより生かして、大学の運営に資するような形で生かすということも、私は重要だと思っております。特に理科系の分野でTLOの設立を奨励してきたと思いますけれども、ただ一方で、特許権を取っても、それが実際に使われるかどうか、あるいは、その特許権を維持するためのコストというものもかなりかかるというふうにも聞いております。

 このTLOが、実際どういうふうに功を奏してきたのか、もし実例もあれば、それも添えてちょっと説明をしていただければと思います。

伊藤政府参考人 委員御指摘のTLO、技術移転機関は、承認TLOのことかと存じます。平成十年度に、大学の研究成果を企業に技術移転するとともに、大学や研究者にその利益を還元するという目的で創設されたものでございます。

 我が国の承認TLOは、これまで、現時点におきましては三十六の機関が承認TLOとして承認されてございます。最近の申請状況といたしましては、昨年度に一件、今年度は申請がない状況でございます。

 これ以外に、国立大学の法人化以降は、承認TLOではないものの、三百二十四の大学等におきまして、内部組織として、例えば産学連携本部などに同様の技術移転機能を有する状況にございます。

 このような承認TLOの整備を含めまして、文科省としてはさまざまな産学連携全体の体制整備に取り組んできたところでございまして、その成果といたしまして、現在の我が国の大学における特許の実施許諾件数、これは平成二十六年度は一万八百二件、実施料収入は十九億九千万円となってございます。十年前に比べまして、おのおの二十二・六倍、三・七倍と、増加しているところでございます。

 なお、TLOの経営状況といいましょうか、管理維持経費でございますけれども、大学の内部組織も含まれておりますことから、全ての承認TLOについてデータを把握しているわけではございませんが、学外に置かれております承認TLO二十一機関を分析いたしますと、二十五年度の営業費用といたしましては二十五億五千五百万円、営業収入が二十六億四千二百万円ということで、八千七百万円の営業利益となってございます。

 文部科学省といたしましては、承認TLO制度のみならず、科学技術振興機構における特許出願支援などの取り組みを通じまして、大学が有する知財の活用を一層促進してまいりたいというふうに考えてございます。

牧委員 おおよそわかりましたが、まだまだ焼け石に水の感も拭えないなという感想でございます。

 そこで、この間もちょっと触れたんですけれども、必ずしもこういう理化学分野の特許に限らず、大学には大学なりにほかの知財もあるんじゃないか、入試問題等々の編集著作権、これも十分生かされていないというお話を先日私はさせていただきました。このちょっと延長線上の質問をさせていただきたいと思います。

 前回質問したときに、これは大学が所有する一つの権利だということだけは政府参考人からはっきりここでおっしゃっていただいたので、それも一つ前進だったのかなと思うんですけれども、今度は、いかにこの権利を活用していくかということに移っていかなければいけないと私は思っております。

 なぜならば、一方で、その権利を二次使用、三次使用することによって、これを商売にしている方たちもいるわけですから、その辺とのバランスを考えれば、当然、大学としてその権利を行使する、このことがまずは必要だと私は思います。

 特に、国語なんかに多いんでしょうけれども、入試問題の原著作者に対する補償というのは、大学入試そのものは秘密をきちっと守らなきゃいけないということで著作権法で守られている権利だと思いますけれども、大学がさらに試験実施後にこれを公表したりいろいろな形でリリースする場合には、きちっと原著作者に対する補償もしていると思います。

 この補償の実態について、ちょっと教えていただきたいと思います。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、大学が入学試験問題を公表する際に、当該問題中に掲載されている著作物の著作者に支払っている使用料の実態でございます。

 私どもとしてデータを把握しているわけではございませんけれども、幾つかの大学に聞き取りを行ってみました。その結果でございますけれども、著作者に支払われた使用料は、各大学ごとに年間十万円から三十万円程度という状況でございました。また、一部の大学におきましては、入試問題の中で原著作者の著作物を使用している部分は除外をして公表を行っているというところもございまして、そういう場合には著作権者への使用料は発生していないという例もあったということでございます。

牧委員 各大学ごとに十万から三十万というお話は妥当な数字だと思います。恐らく、原著作者も、そんなに権利を強引に求めるようなことは大学に対してはないだろうと思います。

 ただ一方で、これを商売にして、年間一兆円産業とも言われる予備校、塾あるいは教材出版等々の人たちに対しては、また話は恐らく別じゃないかなと思います。

 多分、原著作者の皆さんがあるいは訴訟を起こしたり等々で、こういった教材会社等から著作権料、許諾料を後からいただくというようなケースもあると思うんですけれども、ある意味、大学の責任において、入試問題は、そのまま、終わったら社会に向けてリリースしちゃうわけですから、きちっと原著作者の権利をそういうふうに侵害されないように大学としても守っていく義務が私はあるんじゃないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

常盤政府参考人 お答え申し上げます。

 大学入学試験問題の取り扱いに当たりましては、問題の中に掲載されている著作物の著作権者の権利が確実に守られるよう適正な著作権処理が行われるということは必要であると考えてございます。御指摘のように、教材会社等において、大学入学試験問題に係る著作権の取り扱いについて、法令にそぐわない実態があるという御指摘でございます。

 大学に対しまして、自大学の入学試験問題に大学が使用許諾を与える際に、問題の中に掲載されている著作物の著作権者の許諾をとるよう教材会社等にしっかりと求めるように促すといった方策が考えられると思ってございます。

 こうした点も含めまして、教材会社等による大学入学試験問題の利用に当たりまして適正な著作権処理が行われるように、私どもといたしまして、大学入学者選抜の担当者向けの会議もございますので、そういう場を通じまして、適正な著作権処理について周知をして、各大学の取り組みを促してまいりたいというふうに考えてございます。

牧委員 そこはきちっと促していただきたいと思います。

 そして、もう一つは、最初の話に戻りますが、大学そのものが所有する編集著作権、入試問題そのものの著作権の処理についての質問をさせていただきたいと思うんです。

 さっきちょっと触れましたように、いわゆる受験産業というんですか、教育産業全体の市場というのは二兆五千億円、そのうち、学習塾とか予備校が九千五百億円、約一兆円規模の産業であります。ここからどれぐらいお金を大学が還元させることができるのかは、ちょっと計算してみないとわからないと思うんですが、私はこれをしっかり厳正にやるべきだと思います。大学にはそれを求める権利があるということは、前回ここではっきりさせていただきましたので、では、今度は、権利に基づいてそれをどうやって大学が回収するのかということに私は取り組んでいただきたいと思うんですね。

 ちょっと話はそれますけれども、この間、ある記事を見たんですけれども、文部科学省が二〇一四年度に行った調査では、公立の小中学生で学習塾や参考書の購入などに充てる年間費用は、年収四百万円未満の世帯は、小学生、四・五万円、中学生、十五・五万円だった。これに対して、年収一千二百万円以上の世帯は、小学生が七・九倍に当たる三十五・六万円、中学生も二・六倍の四十・六万円。前回の一二年度調査と比べると、小学生、四・九倍、中学生、二・一倍と、さらに格差が広まっていた、こういうお話があるんですね。

 これは紛れもなく、受験向けのいろいろな産業界がこれだけの収入を得ている、反対にこれだけの負担を父兄が強いられている、その負担を強いられる中で、これだけ所得によって格差が生じているということですから、ひいては、大学の受験問題の編集著作権、これをある程度お金にして、ちょっと飛躍かもしれませんけれども、逆に、所得の低いことによってそういう学習の機会が所得の多い人よりも得られない、そういうところに還元するとか、あるいは、冒頭の話にあったように、大学そのものの運営費交付金に充てるなり、そういうこともいろいろ私は考えていくべきだと思いますけれども、大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

松野国務大臣 大学入学試験問題の二次利用に使用料を求めるか否かについては、基本的には各大学の判断によるものであります。

 一方で、先ほどの大学の管理責任も含め、大学全体の共通な課題もあると考えられるため、文部科学省としても、本日、牧委員の方から御指摘をいただいた内容に関して、大学団体等の大学関係者にもお伝えをし、団体内で必要な対応について検討いただけるように促してまいりたいと考えております。

牧委員 しっかり検討していただきたいと思います。

 次に、これもやはりちょっと著作権にも絡む話かもしれませんけれども、デジタル教科書について質問させていただきたいと思います。

 小中学校で使う教科書のデジタル化について検討してきた文科省有識者会議が、二〇二〇年度からの導入を目指すという一定の結論、方向性を出されているというふうに聞いておりますけれども、そもそも教科書とは何ぞやという話になるんですね。

 教科書というのは、教科書検定を受けて、採択をされて学校現場で使われる紙媒体なわけですけれども、例えば、これは一昔前になるんですか、拡大教科書、極端な弱視の生徒さんのために文字の大きな教科書をつくって、これが教科書として認められるか認められないかということで、何か不毛な議論だったような気もするんですけれども、なかなか教科書として認めてもらえなかったような時代もありました。そういう時代からすると、何か隔世の感があるんですけれども、デジタル教科書というのは、そこから比べると一気に飛躍しているような感がしないでもないんです。

 いろいろなコンテンツ同士がくっついたり、あるいは中で動いたり、そういったことも恐らく含まれる話だと思うんですけれども、どこからどこまでが教科書と言えるのか、その辺のところをちょっと教えていただきたいと思います、基本認識を。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のデジタル教科書でございますが、まず、現行の教科書制度におきましては、数多くの法令から構成されているところでございまして、これらの法令によって、我が国の教科書については、そもそも各学校において使用しなければならない、あるいは文部科学大臣による検定を経る必要がある、それから義務教育段階においては児童生徒に無償で給与される、それから国から発行者に対して発行の指示あるいは定価の認可等が行われている、さらに著作、編集等に関して著作権の権利制限が認められているなど、ほかの教材とは異なる特別な位置づけがされているところでございます。

 先ほど委員御指摘ありました、デジタル教科書に関しての有識者会議の中間まとめにおきましては、デジタル教科書につきましては、教科の一部において、紙の教科書にかえて使用することができる特別の教材として位置づけることが適当であるとされておりますので、その意味におきましては、この中間まとめにおけるデジタル教科書は、紙の教科書が有する法令上の位置づけのうちの一部を有している性格のものであるというふうに考えております。

牧委員 ということは、従前どおりの紙媒体の教科書というのはこれまでどおり無償のものとして教育現場で使われ、それと同時に、いわば、その一部を含む、そのコンテンツを含むデジタル教材ができるというような理解で多分いいんじゃないかなと思うんですけれども、そうなると、いろいろな課題があると思うんですね。

 教科書と教材がいわばくっついたような、そんなコンテンツができると思うんですけれども、今まで教育現場で、例えば漢字のドリルですとか、そういった紙媒体の教材というのを父兄の負担で購入させてきた経緯があると思います、現在もそうだと思いますけれども。そうなると、今度、デジタルコンテンツについても、無償の教科書とは別に、デジタル教科書というのを父兄の負担で購入させるという形になるんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の有識者会議における本年六月の中間まとめにおきましては、デジタル教科書について、その導入後においても、法律に基づいて義務教育段階全ての児童生徒に紙の教科書が無償で給与されるということでございます。それで、紙の教科書に加えましてデジタル教科書の使用を希望する地方自治体につきましては、その責任でデジタル教科書を使用するための環境整備を進めるということになります。

 その際、可能な限り保護者に負担を課すことがないように、文部科学省といたしましては、この有識者会議における議論の結果も踏まえた上で、地方自治体に対してどういう支援ができるかということについて検討していきたいということでございまして、できるだけ保護者負担を課すことがないよう努めていきたいと思っております。

牧委員 そこだけはしっかりしていただきたいと思います。地方の負担になるのか国の負担になるのかはともかくとして、これ以上の父兄への負担ということは避けていただかないと、これまででも、紙の教材だけでもそれなりの負担でありますし、就学援助を受けているお子さんもいるわけですから、その辺との兼ね合いというのをやはりしっかり考えていただいた上で、この仕組みを進めていただきたいと思います。

 そこで、デジタル化、教育現場のICT化といいますか、その辺のインフラの整備というのはどこまでどう進んでいるのか、ちょっとお聞かせをいただければと思います。

有松政府参考人 お答え申し上げます。

 デジタル教科書の導入に当たりましては、教育用コンピューターやインターネット環境等の整備が必要でございます。平成二十八年の三月一日現在で、教育用コンピューターは一人当たりの児童生徒数が六・二人、つまり六・二人に一台という状況で、普通教室における超高速インターネット接続率は八四・二%、また無線LANの普通教室における整備率は二六・一%という状況でございます。

 文部科学省では、平成二十六年に教育のIT化に向けた環境整備四カ年計画を策定いたしまして、計画期間である平成二十六年度から二十九年度まで、毎年千六百七十八億円の地方財政措置が講じられておりますけれども、教育の情報化の意義についての認識がやや不十分であったり、あるいはICT機器の整備に関する知見とかノウハウが不足しているという地方公共団体も見られ、地方公共団体間でばらつきがあるということで、目標達成には取り組みの加速化が必要だというふうに考えております。

 このために、ことしの七月二十九日に教育の情報化加速化プランを策定いたしますとともに、各都道府県・指定都市教育委員会向けに、「教育情報化の推進に対応した教育環境の整備充実について」の通知を発出いたしました。

 また、自治体のニーズに応じまして学校のICT環境の整備に必要な助言を行う、ICT活用教育アドバイザーの派遣をするなどの取り組みによりまして、地方公共団体による学校のICT環境の整備を促しているところでございます。

 また、ことしの十一月からは、地方公共団体におけるこうした計画的なICT環境整備の支援をすることに向けまして、教育ICT教材の整備指針、仮称ですが、これの策定に向けた検討も開始したところでございます。

 文部科学省といたしましては、このような支援策によりまして、引き続き地方公共団体による学校のICT環境整備の加速に努めてまいりたいと考えております。

牧委員 しっかりやっていただきたいと思います。教員の指導力の足りないところを補ったり、あるいは、離島ですとか、そういうところの教育等々にも、私は、このICT環境を整備してこれを進めるということは有意義だと思いますので、ぜひしっかりと進めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 もう時間がございませんので、たくさん質問するつもりでしたが、最後にちょっと道徳教育について。

 平成三十年度から特別の教科、道徳について全面実施ということでございますけれども、その目的について大臣の所見をお聞かせいただきたいと思います。

松野国務大臣 道徳とは、自立した人間として他者とともによりよく生きていくために必要な規範意識や社会性、思いやりの心など、個人の内面的な行動原理として働くものであると考えております。将来の変化を予測することが困難な時代にあって、子供たちが道徳について学ぶことはますます重要になると考えます。

 しかし、これまでの道徳教育には、他の教科に比べ時間の確保等で軽視をされたり、形式的な指導に陥りがちであるといった課題も指摘をされてきました。こうした状況を踏まえ、道徳の特別の教科化は、一人一人の児童生徒が道徳の問題を自分の問題と捉え向き合う、考え、議論する道徳へと質的転換を図るものであります。

牧委員 この道徳の教育がいじめの対策にもつながるというような大臣のメッセージも発信をされております。これも確かに意味のないことではないと思いますが、この道徳教育そのものが子供たちを社会の規範の中に無理やり押しつけるようなものであってはならないということ、そこをきちっと踏まえてやっていただかないと、私は、逆効果にもなりかねないと思うんですね。

 ほかの子と同じことをしていないとだめですよみたいな話になっていくと、多様性を認められない、より一層そういう社会になっていきかねない。そんな中でこそ私はいじめが生まれるんじゃないかなというふうに思いますので、なまじっか間違った道徳教育をすると、私は、逆にいじめがふえるんじゃないかという懸念も持っております。

 ほかにいろいろ質問するつもりでおりましたが、時間になってしまいましたので、また次の機会に回したいと思います。

 きょうはありがとうございました。

永岡委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 私は、中国地方を回っておりまして、住民の皆さんや自治体の皆さんからさまざまな要望をお聞きするわけですが、その中でも多いのが、学校施設整備に関する要望です。

 配付資料の一枚目をごらんいただけるでしょうか。

 これは鳥取市のある小学校の校舎の写真です。この校舎は、耐震補強工事は終えたものの、ごらんのように、老朽化で外壁のコンクリートが剥げ落ちた箇所を赤い塗料を塗って応急手当てをしているところです。校長先生も、いつ外壁が落ちてくるのか、子供たちに万が一のことがあったら、そういう心配の声を寄せられておりました。

 また、トイレの改修の要望も数多く寄せられております。古い汚い学校のトイレには行きたくない、こうして困っている子供たちの話をたくさん聞きます。特に洋式トイレへの改修を望む声を多く聞くわけですが、学校はその多くが災害時には避難所にもなる、こういう点からも、バリアフリーや洋式トイレへの改修は早急に求められていると思います。

 文部科学省が先日、公立小中学校施設のトイレ状況調査を実施し、結果を発表しております。その調査結果の概要を簡潔に御説明ください。

    〔委員長退席、山本(と)委員長代理着席〕

山下政府参考人 お答えします。

 本年四月に起きた熊本地震では避難所である学校施設において和式トイレが敬遠されたことや、学校設置者のトイレ改修の需要が高まったことを踏まえまして、まずは現状を把握するために本調査を実施しております。

 その結果、公立小中学校におけるトイレの全便器数は約百四十万個であり、そのうち、洋便器数は約六十一万個、和便器数は約七十九万個でございました。また、トイレ整備に対する教育委員会の方針を聞き取ったところ、各学校で和便器よりも洋便器を多く設置する方針の学校設置者が全体の八五%でございました。

大平委員 洋式トイレ六十一万個、割合でいいますと四三・三%でした。圧倒的な自治体、八五%が洋式トイレへの改修を進めていきたいと考えておられる、そんな調査結果が発表をされております。

 大臣にお伺いしたいと思います。

 先ほどお示ししました学校施設の老朽化対策を初めトイレの改修、さらにエアコンの設置など、子供たちの教育環境改善の事業は計画的に進めていくことが重要だと考えますが、大臣の御所見を伺いたいと思います。

松野国務大臣 委員から御指摘をいただきましたとおり、学校施設は、子供たちの学習の場、生活の場であるとともに、災害時には避難所となる極めて重要な施設であります。トイレを含めた学校の老朽化の状況は極めて深刻であり、今後数十年にわたって計画的に整備を進めていくことが必要です。

 このため、文部科学省としては、老朽化対策、トイレ改修、空調整備等を含め、公立学校施設整備費等として、平成二十八年度第二次補正予算で約千四百億を確保し、平成二十九年度概算要求で千八百十一億を要求しているところであります。

 今後とも、地方公共団体が計画的に施設整備を行えるよう、必要な予算の確保に全力で取り組んでまいります。

大平委員 御答弁にありましたとおり、大臣も、計画的に進めることが重要だ、そういう御認識だということでした。

 自治体がこうした施設整備を計画的に進めていく上で、そのネックになっているのが国の予算不足の問題です。昨年の通常国会でも、私はこの委員会で質問をいたしましたが、年度の当初予算では、自治体から寄せられた需要に応えることができず、今年度の当初予算の場合では、地方需要の約半分の一千百億円の事業が不採択になったと聞いております。

 文科省は、一千四百七億円の補正予算で地方需要には応えたとおっしゃるわけですが、配付資料の二をごらんいただきたいと思います。

 この資料は、平成八年、一九九六年以降の公立学校施設整備費予算額の推移について、文科省の資料から私の事務所で作成をしたものですが、棒グラフの青色の当初予算額は、ごらんいただいてわかりますとおり、ずっと減ってきております。平成十八年、二〇〇六年あたりからは当初予算と補正予算などの額が逆転して今日まで至っている、そういう状況であります。

 ことし五月に全国都道府県教育長協議会が行った緊急要望で、予算額の不足は年々拡大しており、全国における計画的な学校施設の環境整備に著しい支障が生じていますと指摘をしており、今年度の予算の確保とともに、来年度以降、地方公共団体の計画する事業が年度当初から円滑に実施できるよう十分な予算を確保すること、このことを求めております。

 きょうは財務省の大塚副大臣にもお越しいただきました。お伺いしたいと思います。

 公立学校施設整備事業がこうした補正予算頼みの事業になってしまっており、地方自治体が計画的に事業を進めていけないとおっしゃっている点について、いかがお考えでしょうか。

大塚副大臣 学校施設は安全性の確保が極めて重要であるということは私どもも思っていることではございまして、地方公共団体において計画的に整備されることは重要だという認識は持ってございます。

 このような考え方のもとで、二十八年度は、当初予算で七百九億で、第二次補正予算で先般、千三百八十七億円を措置したところでございますが、十分ではないのではないかという御指摘であろうというふうに思っておりますけれども、我が国の財政状況は極めて厳しいのも一つ事実でございます。我々も、すぱっと言われただけつけることができればこんなにいいことはないと思っているわけでございますが、なかなかそれが許されない状況のもとで、とにかく補正でも何とかできる限りの手当てをしようということで、これは補正としては大分大きな額だと存じますけれども、手当てをしているというところでございます。

 この財源、ほかの事業も重要なことがいろいろございますので、その中でもこの安全性は重要でございますので、優先順位をつけて、緊要性のあるものから順次対応してまいりたいと考えております。

大平委員 計画的にこの事業を進めていく上では、やはり当初予算がしっかり確保されることが重要である、これが地方自治体の要望であるということも重ねて訴えておきたいと思いますし、要は、副大臣もおっしゃいましたが、国民の税金をどう使うかという、この問題だというふうに私は思います。

 一つ御紹介をしたいと思いますが、山口県の米軍の岩国基地では、厚木基地からの空母艦載機移駐計画に伴って、私たち日本国民の税金を使って、総額一兆円を超える、そういう大規模な増強工事が行われております。その中で、米軍の子供たちのためにと、小学校、中学校、高等学校が基地の中に新築をされております。

 きょうは防衛省にも来ていただきました。お聞きしたいと思うんですが、岩国基地に新設された小学校、中学校それぞれの概要と建築費、延べ建築面積、一平米当たりの建築単価を御説明ください。

    〔山本(と)委員長代理退席、委員長着席〕

谷井政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの、岩国基地に所在し、空母艦載機の移駐に伴って整備した米軍関係者の子弟が通う学校施設について申し上げますと、小学校、中学校、高校がございます。

 そのうち、小学校の概要は、鉄筋コンクリート造二階建ての二棟であり、その建設費のうち建築費については約九十五億円であり、延べ建築面積が二棟の合計で約二万九千平方メートルとなっております。また、一平方メートル当たりの建築単価は約三十三万円となっております。

 中学校の概要は、鉄筋コンクリート造三階建ての一棟であり、その建設費のうち建築費については約三十四億円であり、延べ建築面積は約一万三千平方メートルとなっております。また、一平方メートル当たりの建築単価は約二十六万円となっております。

 さらに、高等学校の概要は、鉄筋コンクリート造三階建ての一棟であり、その建設費のうち建築費については約四十八億円であり、延べ建築面積は約一万六千平方メートル、一平方メートル当たりの建築単価は約三十万円となっております。

大平委員 文科省にお尋ねします。

 国が補助をするときの建築単価は幾らに設定しているでしょうか。

山下政府参考人 お答え申し上げます。

 公立小中学校施設の施設整備における補助単価は資材費や労務費等の変動を勘案して毎年設定をしてございますが、平成二十八年度の補助単価は、一平方メートル当たり、これは小中学校校舎、鉄筋コンクリート造の場合でございますが、十七万五千九百円としております。

 なお、事業の特性等により必要な加算を行っているところでございます。

大平委員 先ほど防衛省そして文科省からありましたとおり、米軍の子供たちの学校は日本の約二倍、それ以上ということになっておるわけです。

 通告をしておりませんが、文科大臣、この格差についてどんなふうにお感じになるでしょうか。

松野国務大臣 所管外のことでございます。それはそれぞれの省庁の判断の中において実施をされているものと考えております。

大平委員 岩国基地の小中学校は、当然トイレは洋式でしょう。空調もきっと完備されていると思います。私は、米軍の小中学校がぜいたくだと言いたいのではありません。軍事費や思いやり予算などの米軍関係費を聖域にしていることは問題ではありますが、米軍の子供たちにこうした教育環境を日本の税金で提供するのであれば、日本の子供たちにも当然、そして早急に同様の教育環境を整えるべきとの思いは、私は、党派を超えて皆さん共通するのではないかと思うわけです。

 日本の子供たちの教育環境を改善するために十分な予算措置を重ねて求めて、次の質問に移りたいと思います。

 財政制度等審議会は十一月十七日に、来年度予算編成にかかわる建議を公表しました。私は、それを見て強い怒りを覚えております。全国どこでも教員が足りない、先生たちは、過労死ラインで働いても、授業準備の時間すらまともにとれない、少人数学級は国民の強い要求であり、発達障害、外国人の子供を考えても教員増が急務になっている、それにもかかわらず、教員定数を四万九千人も機械的に削減するという、とても容認できるものではありません。

 私も財務省の資料を見ましたが、機械的削減という結論先にありきの、まさにデータの歪曲、論点のすりかえの連続でした。

 例えば、その資料の中に、「公立小中学校の教職員定数と児童生徒数の推移」とのグラフが掲げられていますが、文科省に確認ですが、この数字は本当に公立小中学校のみの数字でしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の資料における教職員定数及び児童生徒数につきましては、公立小学校、中学校のほかに、中等教育学校前期課程及び特別支援学校の小学部、中学部の数字が含まれているところでございます。

大平委員 局長の御答弁にあったとおり、義務教育は大きく分けて公立小中学校と公立特別支援学校とに分かれております。財務省の数字はそれらを総計した数字であり、それを公立小中学校のみの数字と言うのは、まさに初歩的な誤りだと言わなければなりません。

 財務省は何かといえばエビデンスを示せと数字にこだわるわけですが、ところが、自分たちが説明する番になれば、こうした数字はうその数字を示してくる。こうした対応は決して許されない、はっきり申し上げておきたいと思います。

 そこで、小中学校での通級指導教室に関する財務省資料についてお伺いしていきたいと思います。

 通級指導とは、小中学校の通常の学級に在籍し、言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害、LD、注意欠陥多動性障害、ADHDなど、こういう障害のある児童生徒を対象にして、主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら、障害に基づく学習上のまたは生活上の困難の改善、克服に必要な特別の指導を特別の場で行う、そうした教育形態であります。この通級指導は、アスペルガーやADHDなどいわゆる発達障害のある子供たちが急増する中で、現在ニーズが高まっており、教室が足りず、入りたくても入れない待機児童がふえております。

 財務省、財政審も、この五月には、通級指導にかかわる教員を基礎定数化するという方向を出しました。ところが、今回、一転して待ったをかけ、その理由を三つ挙げております。

 まず第一の理由は、海外では特別支援教育において学級規模と学力の間に有意な関連は見られないという研究例が多数存在するというものです。全くわけのわからない話です。

 まず、財務省が問題にしている通級指導教室というのは、学級ではありません。通級に通う子供たちは、ふだんは小中学校のそれぞれの学級で学んでいるわけです。通級は週一回、一こま程度だけ通う、そういう場になっているわけです。財務省は通級指導教室は学級ではないということを知らないのでしょうか。お答えいただきたいと思います。

大塚副大臣 まず、先ほど、財務省が財審で出した資料はうその資料だという御指摘があったわけですけれども、これは積算の根拠の説明のところにはっきり、特別支援学校、特別支援学級含めて、それを踏まえて計算していると書いてありますので、そういううその資料ではないということははっきり申し上げておきたいというふうに思います。

 その上でですけれども、御質問の趣旨がわかっているかどうか、ちょっと私も自信がないわけですけれども、当然、御指摘のような位置づけというものはもちろん踏まえた上で、財審の資料でお示しをしておりますのは、通級指導の教室、当然通常はそれを前提にしているわけでございますけれども、そうでない方法で取り組みをされている自治体もいろいろ全国にあるという事例がございますので、そうした事例の取り組みをよく分析して、どういうやり方が最も効果的かということをいろいろ今後のために分析してみる必要があるのではないでしょうかということを提案申し上げる意味で資料をお示ししているものというふうに考えております。

大平委員 全く質問に答えていただいていないわけですが、学級規模を問題にするわけですから、特別支援教育、通級指導教育というのは学級ではない、そのことを知ってこのことを言っているのかというふうにお尋ねしたわけです。

 さらに重大なことは、その後にあります学力、要するにテストの点数でこの問題を論じている点です。

 通級指導教室は、子供たちに教科を教えているのではありません。通級指導教室は、発達障害などの子供たちに人と人との間で生きる心地よさを伝え、ありのままの自分で大丈夫だと伝えて、人間の温かさという、まさに生きる土台、そして社会的スキルを育む場であります。だから必要とされているのであります。

 社会的スキルを育む場の必要性を評価するのになぜ学力ではかるのか、この点についてお伺いしたいと思います。

大塚副大臣 私どもも、障害を持った児童生徒への教育においては、学力面だけではなくて、情緒的、社会的な学習成果も重要であるというふうに考えてございます。

 資料でもいろいろ海外の研究事例をお示ししているわけですけれども、これも何も学力だけに焦点を当てているわけではもちろんございませんで、さまざまな形での学習成果とか達成度といったものを対象にした学術論文を紹介させていただいているところでございますので、別に学力だけを考えているということもございません。

大平委員 財務省の第一の理由に、特別支援教育において学力の間に有意な関連は見られない、こういうふうに書いてあるから私は伺っているんですね。

 文科省にお伺いしたいと思います。通級指導教室について、先ほど述べた社会的スキルを育む力、このことに着目したデータがあれば御紹介いただきたいというふうに思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省において、委員御指摘の点についていろいろ調べました。

 例えば、ある中核市におきましては、発達障害のある児童に対して通級の指導を行っているわけでございますが、その当該児童は、衝動的に行動するため、集団の中でトラブルを起こしやすいといった課題があったところでございますが、この通級による指導によりまして、ロールプレーを通じた怒りのコントロールを初めとするソーシャルスキルトレーニングを実施するなど、児童が集団に参加する手順や決まりを理解するための個別の指導を行ったわけでございます。

 その結果、この児童は、非常に落ちついて、授業に参加できるようになったのみならず、友達を褒めるとかあるいはルールを守るといった、委員御指摘の社会的スキルの改善につながった次第でございます。

大平委員 御答弁ありました、友達を褒める、ルールを守る、そのほかにも、葛藤の解決とかあるいは主張性、いずれも、よりよくこの社会で生きていく上での大事な力であり、そのいずれもが、通級指導に通う中で育まれているという文科省の重要なデータが示されております。

 テストの点数ではかるこの財務省の視点、視野がいかに狭いもの、いかに滑稽なことであるかということも私は浮き彫りになっているというふうに思います。

 財務省が挙げている第二の理由は、通級指導に関する教員一人当たり児童生徒数は都道府県別で最大で十五倍もの差というものです。

 財務省財政審の資料では、山梨県の中学校は三十人の生徒を一人で見ているとありますが、文科省にお尋ねします。山梨県の中学校では三十人の生徒を何人の教員で指導していますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の事柄につきまして、文部科学省から山梨県教育委員会に確認をしたところ、当該調査時点におきましては、三十人の生徒につきまして、中学校に配置されている担当教員一名と特別支援学校に配置されている担当教員一名の合計二名の教員で指導を行っていたということでございます。

 通級による指導を受ける児童生徒は小中学校に在籍いたしますが、通級による指導の担当教員を特別支援学校に配置して、特別支援学校に設置されている通級指導教室に小中学校の児童生徒が通う場合、あるいは特別支援学校に配置されている担当教員が小中学校に赴いて指導するといった場合もございます。

 委員御指摘の財政制度審議会の資料におきましては、特別支援学校に配置されております担当教員一名が計算に含まれていないものと承知しております。

大平委員 財務省、これは三十人に二人で間違いないですよね。御見解をお尋ねします。

大塚副大臣 これは、出典は、文科省の「平成二十七年度通級による指導実施状況調査結果について」というところの教員数のデータをもとに割った数字をもとにつくったグラフであるわけでございますので、山梨県は御事情で特別支援学校から一人教員がサポートに回られている、そういう事情まで反映した数字になっているわけではございません。

大平委員 訂正をしていただきたいと思います。三十人の児童を二人で見ているというのが山梨県の実態だということであります。

 第三の理由は、外部人材を活用することで通級指導教室を設置していない自治体もある、先ほど副大臣が御引用されたことかというふうに思います。

 では、通級指導教室を設置していない自治体は通級指導教室が必要ないと言っているのでしょうか。財政審建議でも引用されている「発達障害のある児童生徒の指導等に関する全国実態調査」ではどうなっているか、文科省、お答えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所が実施いたしました「発達障害のある児童生徒の指導等に関する全国実態調査」におきましては、通級指導教室を設置していないと回答いたしました三百九十七自治体から、通級指導教室の必要性について回答のなかった十九自治体を除いた三百七十八自治体のうち、その五八・二%に当たります二百二十自治体が、通級指導教室が必要だが現在は設置していないという回答をしております。

大平委員 約六割の自治体が、必要だが現在は設置していないというふうに回答している、そういう御答弁でした。

 同じ調査でさらに伺います。「発達障害のある児童生徒の今後の指導等について」の中で挙げられている課題の中で一番多かった項目はどういう項目でしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの、発達障害の関係の調査におきまして、発達障害の診断、判断がある、または可能性のある児童生徒の通級による指導における課題と考えられることにつきまして、九項目を示して、重要だと考える順に一位から九位までを選択するよう求めたところ、一位として選ばれた選択肢の中で最も多かったのは、必要とする児童生徒数に見合う通級指導教室の新設及び増設でございまして、全体で千二百十七自治体の回答の中から、今申し上げたところは、四百四十二の自治体が今の点について回答しているということでございます。

大平委員 通級指導教室の新設及び増設が今後の指導について一番求められていることだ、そういうデータでした。

 この調査の「考察」では次のように書かれておりました。現状としては通級による指導を受けている児童生徒は発達障害のある児童生徒全体の二割に満たない、通級指導教室の設置に関しては明らかに少ないことは事実である、十分な数の設置が強く望まれるとされております。

 さらに言えば、この調査は、発達障害、自閉症やアスペルガー症候群その他の障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、ADHD、こうしたものを対象にしたもので、通級指導そのものは、ほかにも、言語障害や難聴、弱視、肢体不自由、病弱、身体虚弱なども対象にしています。これらの障害での通級指導を受ける子供たちの数の推移を紹介していただけるでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 通級による指導を受けている児童生徒のうち、言語障害、難聴、弱視などの児童生徒数の合計につきましては、近年、やや増加の傾向となってございます。例えば、平成二十三年のデータとしては三万三千七百八十八名だったのが、平成二十七年には三万七千五百七十八名ということでございます。また、これらの児童生徒は、通級による指導を受けている児童生徒全体の約四二%を占めておりまして、平成五年の制度創設時と比べると三倍以上に増加しております。

 通級による指導は、発達障害のみならず、ほかの障害のある児童生徒にとっても非常に重要な役割を果たしていると考えております。

大平委員 局長の御答弁があったとおり、発達障害はもちろんですが、そのほかの障害種においても、通級指導の拡充、充実はまさに待ったなしの課題となっていると言わなければなりません。

 私は、先日、山口県のことばを育てる親の会の方からお話を伺いました。

 他校通級が当たり前になっている状況の中で、親御さんが車で一時間から一時間半かけて通級指導教室のある学校まで送っている、そして一時間の指導を受けて、また一時間半かけて帰るとおっしゃっておられました。中には、通級指導教室のあるその近くにわざわざアパートを借りて通っている子供もいる、そういうお話でした。それでも、子供たちは本当に通級指導教室を楽しみにしていて、元気の源、心のオアシスだと言われておりました。だからこそ、大変な中でもどうしても通わせてやりたいというのが親御さんたちの切なる思いなわけです。

 しかし、こうしたことができるのはごく一部の家庭だけであり、ニーズのある全ての子供たちが通えるように抜本的に教室の数をふやしてほしい、そういうふうに切実に訴えられました。この思いを政府は正面から受けとめていただきたいというふうに思います。

 きょうのこれまでの質疑でも明らかなように、財政審の建議で挙げられた指摘、通級指導とはクラスサイズの話でも、また学力の話でもないこと、教員一人当たりの児童生徒数も間違っていること、地方が求めているのは通級指導教室の新増設であり、発達障害以外の通級指導の拡充も求められていることなど、まさにどれをとっても、的外れも甚だしいと言わなければなりません。

 財政審建議、財務省の主張の方が、副大臣、エビデンスどころか議論の前提さえも欠いているのではないでしょうか。お答えいただきたいと思います。

大塚副大臣 先ほど来、間違っているとかなんとかいろいろよくおっしゃいますけれども、間違っていないということをお示しした事例も含めて、最後にまた間違っているとおっしゃったのはいかがなものかなと思っておりますけれども。

 あるいは、先ほどの教員一人当たり児童数も、山梨県も、これはちゃんとしたデータに基づいて計算しておりますが、個別事情でそうでないように手当てはされているということはあるにしても、データとして間違っているわけではないということと、山梨県を仮に除いたとしても最大で十倍、差があるという、これもまた事実でございますので、それも含めて御指摘を申し上げておきたいと思いますが、通級指導の意義を私どもも否定しているわけではございませんで、そういう御要望が多いということもよく認識をしております。

 一方で、文科省の実態調査でも、五十の自治体が、発達障害の児童生徒がいるが通級指導教室の設置は必要ないというふうに回答している自治体もあるわけでございまして、こうしたところでどういう取り組みがなされているかということは、これは今後参考にできる事例が含まれている可能性も多分にございます。こういうところもしっかり丁寧に分析をし、横展開、全国展開できるような知恵がそこに隠れているのであれば、そういったものを引っ張り出していく必要があるのではないかということを申し上げているだけでございますので、通級指導が必要ないということを財務省が提案しているという間違った印象を与えるような質問をされない方がありがたいなというふうに思っているわけでございます。

大平委員 山梨県の特別の措置というお話もありましたが、それが実態だと、私は実態に基づいて議論をしている、質疑をしているというふうに言いたいと思います。

 最後に、松野文科大臣にお伺いしたいと思います。

 こうした財政審の建議には、当然、松野大臣もくみしていないというふうに思います。通級指導の基礎定数化初め、教職員定数の改善を必ず実現していくということを私は強く求めたいと思いますが、最後に大臣の御決意をお聞きしたいと思います。

松野国務大臣 今までの御議論にもありましたけれども、発達障害などにより、通常の学級に在籍しながら障害の状態に応じた特別指導を受ける児童生徒は、十年間で二・三倍に増加をしております。日本語能力に応じた指導が必要な児童生徒は、十年間で一・六倍に増加するなど、学校を取り巻く課題が複雑困難化をしており、きめ細やかに対応していくことが重要だと考えております。

 さらに、このような個に応じた必要な指導が受けられていない児童生徒が相当数いる実態を踏まえれば、一刻も早く対応することが必要だと考えております。

 このため、文部科学省としては、平成二十九年度概算要求において、「次世代の学校」指導体制実現構想を策定し、発達障害児等の児童生徒への通級による指導や外国人児童生徒等への日本語指導にかかわる教員の基礎定数化などの定数改善を要求しており、このことにより安定的、計画的な採用が行われるとともに、子供たちにきめ細やかな指導が行われるよう取り組んでまいります。

大平委員 財政審建議にくみすることなく、国民の多くが求めている教職員定数の改善を強く求めて、きょうの質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

永岡委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。

 本日は、三つほどのテーマを御質問したいわけですけれども、時間の関係上、どこまで御質問できるかわかりませんが、まず第一に、基礎研究についてです。

 皆様御存じのとおり、ことしのノーベル医学・生理学賞を東京工業大学栄誉教授の大隅良典教授がおとりになったわけですけれども、受賞理由になりましたオートファジーといいますのは、大隅教授が一九八八年から研究を続け、九三年にオートファジーに関する遺伝子を解明し、その後、たくさんの研究所にて活発に研究されております。

 大隅さんは、受賞後の記者会見で、基礎研究を国が軽視しているというような発言をして問題視されました。大隅教授は、自分の発言の影響力を理解された上で、このような発言をされていると思います。ただ、その後のメディアの報道、そしてこの国会内での議論をお聞きしていますけれども、何となく、基礎という言葉に若干の誤解を招いているように感じます。

 基礎というのは、決して、社会貢献をしないという意味とはイコールではございません。大隅教授がされた研究は酵母菌に関するもので、確かに、直接的に医学、生理学に結びつく、つまり人体に結びつくものではないかもしれないですけれども、大隅教授は、いわゆる医学への貢献というか、人体に対する応用を全くもって考えていなかったわけではないと思います。ただ、たくさんの研究者が世の中にいて、花を開かない方もおられるということを理解してほしいという意味で発言されたと思うんです。

 この発言の背景に見える基礎研究のあり方で、最終的に例えば出口が創薬であったりするとすれば、その後に、基礎研究の後に臨床研究、そして実際に創薬として使用され、もしくは医療製品として発売されるとするのならば、基礎研究は文部科学省、そして臨床研究は厚労省、そして製品は経済産業省ということですけれども、この橋渡しが果たしてされるのかどうか。

 大隅教授の御発言の中に、我々の研究していることは種である、つまりシーズである、これが応用されるにはニーズとならなければいけないと。このシーズからニーズへの橋渡しということに関して、そのシーズに携わっている文部科学大臣にお伺いいたします。

松野国務大臣 まず、文部科学省として、基礎研究を軽視しているということは決してありません。科研費や補助金、各種制度を使って、しっかりと基礎研究が進む環境整備をしなければならないという認識を持っております。しかし、それが今十分だと考えているかといえば、これはもうさらなる努力が必要であると認識をしております。

 基礎研究は、委員御指摘のとおり、イノベーションの源泉となるシーズを生み出すものであります。その結果を実用化につなげていくことも、当然求められるわけであります。そのため、昨年四月に日本医療研究開発機構を創設いたしまして、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の研究費を集約して、基礎から実用化まで切れ目ない研究支援を一体的に行う仕組みを構築したところであります。

 この中で、文部科学省としても、大学における革新的な基礎研究の成果を臨床研究、実用化につなぐため、橋渡し研究を推進しています。これにより、例えば脳梗塞に対する新たな治療法の臨床試験の開始や有用な治療法がない疾患に対する治療薬の製品化など、基礎研究の成果をもとにした画期的な成果が創出されております。

 引き続き、関係府省と連携を密にしながら、基礎研究の成果を臨床や実用につなげ、健康長寿社会の実現に取り組んでまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 切れ目ないとおっしゃっていただいて、シームレスの意味だと思うんですけれども、そういった橋渡し、シーズに携わる文科大臣、文部科学省からまず発信をぜひともしていただきたいということと、文科省として基礎研究を軽視していないということは私も十分理解をしております。

 国の財源というのは、もうここでしっかりとやはり我々議員が認識しなければいけないのは、国の財源は決まっています、その財源で、本当にあり余る財源があればいいわけですけれども、財源が決まっている中でどのように分配していくか。ようかんの大きさが決まっている、その切り方であって、ようかんがたくさんないんだったら、本当にその切り方を考えなければいけないわけなんです。

 現場の声から、ぜひとも検討をしていただきたいという声があった中に、例えば大学などの研究機関で医学、生命倫理に関するところに、有識者の倫理委員会というものがあります。この倫理委員会というのは、人事面以外で規定されているものというのは果たしてあるのでしょうか。

 といいますのは、実際に研究している現場の声として、予算がなければ研究者があり余っていくわけです。あり余っていった中で、中には余り研究にきちっと携わっていない方が倫理委員会にぽっと入って、マイナス効果になったりする場合もあります。

 そういった費用面のことを考えまして、これはもう素直な研究者の声だと理解していただいたらいいと思うんですけれども、倫理委員会にかけている費用を抑えて研究費に回してくれよという声もあるんですね。その分の費用を研究部門に回すことができないか、そういった御意見もあったんですけれども、こういった倫理委員会についてどのように考えておられるか、政府の見解をお聞きいたします。

小松政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、医学系研究分野の文部科学省告示でございます、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針というのがございますけれども、ここにおきましては、研究機関の長が研究の実施に当たり倫理審査委員会の意見を求めるというふうに定めておりまして、さらに、その委員会の構成がどういうふうになるかということを定めております。

 構成の要件といたしましては、自然科学の有識者、それから人文・社会科学の有識者、そして一般の立場から意見を述べることのできる者が含まれているということのほか、男女両性で五名以上であることなどが定められております。

 私どもといたしましては、大学においては、この国の定めました指針を遵守して、倫理審査委員会の委員も適切に選んで運営をされているものというふうに承知をしております。

 予算面につきましても、恐らく人数が過剰なのではないかというふうな御指摘なのかなというふうに思いますけれども、倫理審査委員会が中立かつ公正な審査を行うために、適切な規模の委員を任命し、適切な予算を使って運営が行われているものであると認識をしているところでございます。

伊東(信)委員 生命倫理に関して、いわゆる一般の方の御意見、人文の御意見、宗教的なところは外してはるというところで理解もしているんですけれども、現場の声として、研究者の声としてそういった声も、本当に最先端の研究機関からの声でしたので、そういった声も上がり出してきているということだけは認識してください、これ以上の追及は今回はしませんので。

 では、ちょっと時間も限られていますので、次のテーマに移りたいと思います。

 次は、子供たちへの食育、いわゆる学校給食について御質問したいと思います。

 現在の学校給食、中学校の場合、提供方法には、自校方式やセンター方式、民間業者に委託する方式など数種類あると思いますけれども、大まかに二つだと思うんですが、それぞれのメリット、デメリットをまずは簡単に御説明いただきたいと思います。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 学校給食の提供方法のメリット、デメリットについてのお尋ねでございますが、地域の実情などによるため一概に申し上げることは難しい面もありますが、一般的には、単独調理場方式につきましては、調理後すぐに提供が可能であること、各学校の実態に応じた献立対応が可能であることなどのメリットがある一方で、学校ごとの施設管理あるいは食材管理が必要であって、それぞれに経費がかかるというデメリットがあるところでございます。

 また、共同調理場方式あるいは外部からの配達方式につきましては、スケールメリットを生かした食材調達や調理作業が可能であるというメリットがある一方で、学校への配送時間を配慮して調理する必要があるといったデメリットがあるところでございます。

伊東(信)委員 そういったデメリット、メリットを考慮した上で質疑を展開させていただきたいと思うんですけれども、一つ確認ですが、その際ですけれども、アレルギーを持つお子さんに対しての対応食についても何か御検討なりされていますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におきましては、従来から、通知や、あるいは食に関する指導の手引、学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドラインの配付等を通じまして、校長、学級担任、養護教諭あるいは栄養教諭などによる指導体制の整備を行って、可能な限り個々の児童生徒の状況に応じた対応に努めるように指導をしてきているところでございます。

伊東(信)委員 大阪においては、幼稚園などは、大阪市立大学と連携して、いわゆるアレルギー対策に対するかなり高度なノウハウとかを持っています。ただ、これは小学校、中学校ではなく幼稚園の側からですし、提供業者からの話なんですけれども、やはり行政がこのアレルギー対策に対してちょっと足りないという、こういった御指摘もあったので、理解していただければいいと思います。

 それでは、学校給食の現在の普及率、そして普及の目標の数値というのは設定されているんでしょうか、お教えください。

松野国務大臣 学校給食は、児童生徒の健康の保持増進を図るとともに、食育を効果的に推進する上で重要な役割を果たすものと考えております。

 一方、平成二十六年五月現在、主食、ミルク、おかずを提供する完全給食は、公立小学校の九九・一%で実施されていますが、公立中学校では八七・五%にとどまっております。また、公立中学校の実施率を都道府県別に見ると、一〇〇%の県がある一方で、約四分の一に満たない県があるなど、実施率に差がある状況です。

 このため、本年三月に策定した国の第三次食育推進基本計画においては、平成三十二年度までに完全給食を実施している公立中学校の割合を九〇%以上とする目標を新たに設置したところであります。

 文部科学省としては、引き続き、各教育委員会への働きかけを行い、学校給食の普及充実に努めてまいります。

伊東(信)委員 大臣及び文科省の方から、子供たちの栄養を鑑みるということをおっしゃっていただいております。本当に、現実、食が多様化する中で、いわゆる成長期の子供たちの栄養をしっかりと専門家が議論した上で確保するというのは非常に大事だと思いますし、教育、食育という面での学校給食の大切さというのも理解した上で、平成三十二年九〇%という、普及の目標ということをおっしゃられましたけれども、現在、地域によっては選択制で給食を実施している自治体があります。

 例えば、私の地元であります大阪府の枚方市の現在の喫食率、実際に給食の提供を受けている生徒の率は中学校において二三・一%で、おっしゃった四分の一に満たない、そういったところでございます。大阪市内では、市長がかわったせいかわかりませんけれども、一〇〇%になっております。大阪府内では、実は、北摂の地域におきましては三・九%しかないという事例もあります。

 選択制で給食を実施している学校ではどのような問題がネックになって喫食率が上がらないかの分析はされていますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの件につきまして、文部科学省において網羅的に調査しているわけではございませんが、例えばのケースとしては、冷たい食事をとらざるを得ないとか、そういった問題があるというふうに承知しております。

伊東(信)委員 私が聞き取りしたところによりますと、今おっしゃった、冷たい、そして量が少ない、また異物混入が多かったという異物面での懸念もあった、これは実際にメディアでも報道されていたんですけれども。

 さらに、現場及び業者にヒアリングいたしましたところ、例えば異物混入に関して言いますと、業者は本当に死活問題になります。メディアなりの介入というのは業者であれば容易にできますので、かなり神経質になられておるのも事実です。

 しかしながら、そういった喫食率の上がっていない学校におきまして、衛生面でのノウハウがまだしっかりとしていない。例えば、髪の毛に頭巾をかぶる、白衣を着るなどのそういったところが徹底していないところもあります。学校側の協力がなかなか得られないために、喫食率が向上しない実態があるとも聞きました。

 実際、教職員の皆さんにおかれましては、給食を提供するとなると衛生管理や配膳作業などの負担がふえるため、反対しているという声も聞くんですけれども、こういった問題というのは国として把握されていますでしょうか。把握されているとしたら、どのように指導されていく予定なのか、お教えください。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 子供たちに安全な学校給食を提供するため、学校給食の調理、配送及び配食の各過程を通じまして衛生管理を徹底することは、委員御指摘のとおり、非常に重要でございます。

 このため、文部科学大臣が定めました学校給食衛生管理基準におきましては、調理過程において遵守すべき事項を定めるとともに、まず第一に、学校外の調理場からの配送につきましては、容器及び運搬車の設備の整備に努め、運搬途中のちりやほこり等による食品等の汚染を防止すること、また、調理済み食品等が給食されるまでの間の温度の管理及び時間の短縮に努めることとしております。

 また、第二に、配食につきましては、配膳室の衛生管理に努めること、食品の運搬をする場合は容器にふたをすること、配食を行う児童生徒及び教職員の健康状態、衛生的な服装であることを確認するとともに、配食前、用便後の手洗いを励行させることなどを定めているところでございます。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 そういった衛生面のこととか、いわゆるデリバリーの際の時間のギャップに関して工夫というのはできると思いますし、そう認識されると思います。

 先ほど私がヒアリングした、もしくはメディアで報道されている、量が少ないということを指摘する場合もあるんですけれども、それでは逆に、給食のいわゆる残食率に関して、どの程度把握、改善指導しているか、お伺いします。

 環境省が行いました、平成二十五年度の学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査結果によりますと、生徒一人当たりの年間の発生量は七・一キロ、大阪で、中学校で実施する給食の食べ残しが、食材費に換算して年間約五億円、これは食材の二十億円の四分の一に当たるという大変残念な結果になっております。

 子供たちの健康管理の観点から栄養摂取基準を文科省が出していることは承知しておりますし、資料もいただきました。その際ですけれども、運用面で各自治体に工夫の幅を持たせてもいいのではないでしょうか。

 先ほど、おかずとミルクとおっしゃいましたけれども、私が子供のころは小学校にしか給食がなくて、私の小学校では御飯食はなかったんです、公立の小学校ですけれども。パン食で牛乳がありました。なぜか牛乳は一気飲みしていましたけれども、牛乳があったわけで、御飯がなかったんですね。ただいま牛乳が、これは牛乳がいけないという意味じゃないです、ただ、御飯と牛乳を一緒にすることができない子供たちもおられるんじゃないかと。そういえば、ひな祭りのときにおかずがなぜかぜんざいで、ぜんざいとパンと牛乳という、これはちょっと、さすがに好き嫌いのない私も食べにくかったんです、結果的には全部おいしくいただいたわけなんですけれども。

 子供たちの健康管理の観点から栄養基準を文科省が出していまして、工夫をしていただくという観点で、例えば、地産地消の推奨、身近で栽培されている野菜などを給食で使用してもらう。その場合、価格が高くて給食費に影響を与えるようなケースでは、これは提案として聞いていただきたいんですけれども、食費という観点で補助を出す。

 先ほどの牛乳の話じゃないですけれども、カルシウムの摂取不足を牛乳で補う、だけれどもメニューに合う日だけにする。本当に、どう考えても和食ばかりなのに、牛乳が、ちょっと食べにくいという子供もおられるんじゃないか。日本食が世界じゅうから注目されている今、和食がユネスコの無形文化財にもなりましたけれども、和食の勧めといいますか、和食中心の給食を推進するというのも手ではないでしょうか。カルシウム不足も、魚料理などで解消されるのではないでしょうか。

 テレビドラマで、今学校給食がテーマになっている番組もありますけれども、実際に民間業者に聞くと、お客様と児童生徒を捉えると、そのニーズに応えることはできると。ただ一方で、学校教育という、好き嫌いをなくすという単純な話でいいますと、食育とは反するということもあります。ただ、民間業者では、そういったニーズのあるメニューで届けたい、そうすれば残食率も低下するという意見もありました。

 いろいろ申し上げましたけれども、少なくともこういったことを、残食率に関する意識があるのか、そして残食率を議論する、こういった場を検討するべきだと思いますけれども、御見解はいかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 近年、委員御指摘のとおり、偏った栄養摂取など子供の食生活の乱れや肥満あるいは痩身傾向が指摘されておりまして、子供に食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身につけさせるなど、学校において、適切な学校給食の提供を初めとして、食育を推進することは極めて重要な課題であると認識をしております。

 特に、毎日の学校給食の時間は、適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図るとともに、望ましい食習慣や、食物を大事にし、食物の生産等にかかわる人々へ感謝する心などを育成する上で重要な役割を果たすものでございます。

 今後とも、文部科学省といたしましては、食育推進の中核となる栄養教諭の配置の促進、あるいは学校給食の普及充実など、食育の推進を図ってまいりたいと思っております。

 また、委員御指摘の調査研究というか検討につきましては、前向きに対応していきたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 前向きに検討とおっしゃっていただいたので、そういった議論する場というのがまずは必要ではないかと。本当に答弁はすばらしいので、きっちり子供たちのためによろしくお願いいたします。

 時間ももう差し迫ってきましたので、最後のテーマなんですけれども、先日の委員会でも質問させていただきました通学路の安全対策の追加質問をさせていただきます。

 平成二十四年度の通学路緊急合同点検の結果で、通学路にカラー塗装、グリーンベルトが有効だという見解がありましたけれども、このグリーンベルトに関しての文部科学省の御説明、御見解をまずはお願いいたします。

松野国務大臣 路側帯をカラー舗装するいわゆるグリーンベルトについては、道路管理者による通学路安全対策の一環として行われているものであり、歩行空間の改善に資する対策として、時間やコストのかかるガードレールの設置等と比して、即効性のある対策として行われているものと認識をしております。

伊東(信)委員 文科省の方から補足説明はございますでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣の方からお話し申し上げたとおり、グリーンベルトの位置づけについては、まさに即効性のある対策として従来から進められておりますが、他方、せんだっての質疑の際も委員から御指摘ございましたとおり、グリーンベルトで滑った事例があるというようなことについてもお話しいただきました。

 文部科学省においては、その点について十分承知はしておりませんが、今後とも、学校や道路管理者が連携して、このグリーンベルトなどを含む通学路の安全対策については推進していきたいと考えております。

伊東(信)委員 ありがとうございます。

 即効性という意味では、意味があると思います。ただ、今回は関係省庁も呼んでいませんので、ガードレールの設置についての検討をさらに進めるべきだというのは、これは前提としてあるんですけれども、こういったことは申し上げません。

 ただ、一つ御指摘したいのは、グリーンベルトに使用されている塗料について特別の規定がない、グリーンベルトは法定以外というものなのでという御説明がありました。しかしながら、子供たちの安全確保の観点から考えると、グリーンベルトの幅が広い。松野大臣の御説明にあったように、グリーンベルトというのは、境界線ではなく、歩道そのものなんですね。歩道そのものであるがゆえに、幅が広い。逆に、そのために、残存した、グリーンベルトの塗っていない歩道もあるわけで、逆に歩道のスペースが狭く見えてしまったり、上を歩いて滑って転んでしまったりという、本当の目的を果たせないという事例を先日示しました。

 横断歩道には、各都道府県の警察が使用を決め、一定基準以上の塗料を使用するように指導しています。横断歩道で滑って転んだという事例がないように、横断歩道で使用を推奨している塗料と同基準の塗料をグリーンベルトでも使用するように文部科学省から働きかけ、子供たちの通学路の安全性を高めていただきたいと思いますけれども、時間になりますので、最後に大臣にこういったことも含めての御所見を聞かせていただいて、終わりにしたいと思います。

松野国務大臣 通学路の安全管理の重要性は、委員御指摘のとおりであると私たちも考えております。

 道路管理者は道路を常時良好な状況に保つように維持管理する必要があると考えており、文部科学省としては、地域の実情に応じた適切な維持管理が行われるよう、必要に応じて関係省庁にも働きかけをしてまいりたいと考えております。

伊東(信)委員 時間ですので、終わります。

永岡委員長 次に、吉川元君。

吉川(元)委員 社会民主党の吉川元です。

 本日は、高大接続改革に関連して、幾つかお話を伺いたいというふうに思います。

 まず最初に、文科省内で検討されてきた高大接続改革のうち、高等学校基礎学力テストについて尋ねます。

 二〇一九年度から実施予定の学力テストですけれども、高大接続システム改革会議の最終報告を見る限り、高等学校段階における生徒の基礎学力の定着度合い、これを把握することを目的としているというふうに読み取れるんですが、そうした理解でよろしいんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の高等学校基礎学力テストにつきましては、ことし三月末の高大接続システム改革会議の最終報告におきまして、高校教育段階における多面的な評価を推進する観点から、義務教育段階の学習内容を含めた高校生に求められる基礎学力の確実な習得、それからそれによります高校生の学習意欲の喚起のために、生徒の基礎学力の定着度合いを把握する仕組みとして、導入が提言されているものでございます。

吉川(元)委員 これはちょっと通告していないんですが、答弁をお願いしたいんですけれども、この基礎学力というものは一体どういうものなのか。いわゆる学力の三要素というのがありますが、それとの関連でいうとどういうふうになるのか。これは通告していないので、すぐ答えられるかどうかわかりませんけれども。

 といいますのが、最終報告を見ておりますと、基礎学力ということですけれども、テストで測定する資質、能力の中に、一つ目として、基礎的な知識、技能を問う問題、これは基礎学力というふうに言われてもそうだなと思うんですが、その次、二つ目として、思考力、判断力、表現力を問う問題をバランスよく出題することというふうになっておりまして、学力の三要素のうちの、主体的に学習に取り組む態度というのがもう一つの要素というふうに言われておりますけれども、これはどういうふうな関係にあるのか、わかれば教えていただけますか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 基礎学力テストにつきましては、学力の三要素のうち、基礎的な知識、技能を問う問題を中心としながら、思考力、判断力、表現力を問う問題をバランスよく出題するという趣旨で検討を進めているものでございます。

吉川(元)委員 それは私が今聞いたことをそのままオウム返しされただけでありまして、私が聞きたいのは、基礎学力というものは、今言った三要素それぞれを含む基礎的なものなのか、それとも、最初の、基礎的な知識、技能の習得というものが中心なのか、ちょっとそこら辺の定義を少しお聞きしたかったんですけれども。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 基礎学力テストにつきましては、先ほど御説明申し上げたとおり、まさに基礎的な知識、技能を問う問題を中心とするというところでございまして、その点が重視されるというふうに考えております。

吉川(元)委員 ちょっとわかったようなわからないような答弁なんですが、基礎学力というのは、中心的には基礎的な知識、技能を問う問題を解く力ということで理解をさせていただきます。

 そうしますと、大変疑問に感じるんですけれども、なぜわざわざ外部の、外部といいますか、学力テスト、こうしたものを受ける、あるいはそういうものをつくる必要があるのか。高等学校においては通常の授業が行われておりますし、また、中間や期末、今ちょうど高校は多分期末テストが始まるころだと思いますけれども、そういうものを通じて基礎学力の定着度合いは十分に把握できるのではないかというふうに思うんですが、なぜわざわざ学校の外にこうしたものをつくるのか、その点について、いかがでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 高校での学習につきましては、日々の授業や活動を通じての適切な評価と、それを踏まえた指導の改善を一体として進めることが重要でありまして、各学校においても取り組まれているところでございます。

 高大接続システム会議におきましては、多様化した高校における教育の質の充実に向けて、基礎学力定着のための各高校の工夫を促すとともに、各高校がそれぞれの実情を踏まえて活用できる仕組みとして、この基礎学力テストの導入が提言されているものでございます。

 したがいまして、高等学校等において効果的に活用できる仕組みとすることが不可欠でありまして、現在、専門家等の協力を得ながら具体化の検討を進めているところでございます。

吉川(元)委員 私が聞いているのは、基礎学力の定着度合いを把握するということであれば、もう既に学校では、今言ったような定期考査がありますし、それ以外にもたくさんのテスト、小テストも含めて行われております。また、都道府県によっては学力テストみたいなものも行われているところもあると思います。その上になぜわざわざまたこうしたものをつくるのかというのが、少し理解ができないということであります。

 関連して、この最終報告では、このテストというのは、各生徒の学習の達成状況を確認する絶対評価のテストであって、集団に準拠した評価、いわゆる相対評価ですけれども、そうした性質を持つテストではないということで、各学校や生徒等の順位は示さないというふうにもされております。

 そこで確認なんですけれども、あくまで各生徒の基礎学力を知るためのテストとするのであれば、各学校あるいは教育委員会が学校単位で成績を取りまとめて公表するようなことはない、そういうふうに理解してよろしいんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 高大接続システム改革会議の最終報告におきましては、高等学校基礎学力テストの結果については、学校での指導の工夫、充実や、都道府県等における教育施策の改善に生かすことができるよう、学校単位で受検する場合は、当該学校に対して各生徒の結果を、都道府県に対しては管内の各学校の結果を提供することとされているところでございます。

 その際、高校が多様であることや生徒個人の希望に基づき参加することもできる仕組みであることなどから、生徒の扱いと同様に、順位を示すことなどによる学校や都道府県間における比較は行わないこととしております。

吉川(元)委員 そうしますと、もう一つちょっと確認なんですけれども、今少し答弁もありましたが、これについてはあくまで任意であるという理解でよろしいんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの点につきましては、まさに基礎学力テストの受検が個人の意思かどうかということでございまして、まず、この高等学校基礎学力テストの受検料について、受検料を徴収するというような仕組みを前提としているわけでございまして、受検を希望しない者に強制的に受検させるということは、そういった意味で考えられないということでございます。

吉川(元)委員 それはつまり、任意というのはあくまで個人レベルでの任意ということでよろしいんでしょうか。例えば、学校単位での任意なのか、あるいは設置者単位での任意なのか。あるいは、あくまで個人が、例えば、うちの県はこのテストをやりますよ、では、うちの学校はそれに従ってやりますよ、そうなると、そこにいる生徒はいやが応でも参加することになるということになるのか。

 例えば、学校設置者やあるいは学校そのものがこれに参加をするけれども、私は受けないというようなことは可能なのかどうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、この基礎学力テストを受検するかどうかについては、ベースとして、個人の判断で受検するかどうかというのは前提にございます。その上で、学校単位で例えば参加するといった場合に、学校側から各生徒に対してきちんとその趣旨を説明して参加を促すといったことは可能だと思いますが、まず基本的な考え方としては、最初に申し上げたとおりでございます。

吉川(元)委員 つまり、個人が、あくまで生徒一人一人が最終的に参加をするかしないかの判断をするということでよろしいんですね。うなずいておられるので、そういうことだというふうに理解します。

 もう一つ、ちょっと関連して、これを見ておりますと、問題の収集、作成、精査、蓄積、提供の仕組みというのがこの最終報告の二十三ページにあるんですけれども、見ておりますと、同一問題、同一実施という従来型のテストではないということが書かれていて、その後に、問題を収集する、その中には、高等学校の定期考査、つまり中間や期末テスト、それからあと、既に行われている学力テストの既存の問題の提供依頼をするというようなことが書かれています。

 また、民間の資格・検定試験等からの問題提供の協力依頼を検討するなど、各方面から全国的に問題の収集を行って、それを、アイテムバンクというそうですけれども、アイテムバンクに大量に蓄積していく、その中から、例えば学校側が要望するような問題のセットを提供するというふうに書かれているんですけれども、これは一体、誰がこういうことをやるんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ございました、基礎学力テストの問題の収集、作成、精査、蓄積あるいは提供の枠組みについてでございますが、現在、文部科学省の中で検討をしておりまして、これから具体化をしていくということでございます。

吉川(元)委員 これはかなり労力が必要だというふうに思いますし、また、テストを受けて、その採点も恐らくそこが行うということになるんでしょうか。そうなると、いわゆる今センター試験を行っていますところが取り組むのか、それとも全くまた別の組織を一からつくり上げるということなんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの採点等につきましては、イメージとしては、入試センターでやることも一つの選択肢とは考えておりますが、しかしながら、この点につきましても、まさにこれから文部科学省においてよく精査して検討していきたいと考えております。

吉川(元)委員 それと、ちょっと前後しますけれども、この最終報告書を読みますと、二十八ページになりますが、「実施回数・時期・場所」というところの最初のところで、「「高等学校基礎学力テスト」を正規の教育課程の一環として実施することも考えられる。」という記述があるんですけれども、先ほど、あくまで生徒の意思でもって受けるか受けないかを決めるとありますけれども、正規の教育課程の一環というふうになるとそういうふうにはならないんじゃないかと思うんですけれども、その点、いかがですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、最終報告の中に、この基礎学力テストについては、「正規の教育課程の一環として実施することも考えられる。」という表現がございます。

 しかしながら、この点につきましても、その方向でいいかどうか今後よく検討をしていくということでございまして、例えば授業の中でこのテストを実施するとか、そういう選択肢もあり得るということでこういう記述になっておりますが、今ほど申し上げましたとおり、具体的な中身は今後検討していきたいと考えております。

吉川(元)委員 今後検討していただくのは結構なんですけれども、二〇一九年度からスタートということであります。

 それで、正規の教育課程の一環ということになると、いわゆる授業の時間の中でそのテストを行う、まあ何科目やるのかわかりませんけれども、恐らく五十分単位で三つ受けるとすれば、三時限分、テストにとられるわけです。なおかつ、先ほど答弁ありましたけれども、これは有料になるわけです。今から検討ということですけれども、正規の教育課程の一環とするのであれば、例えば、その時間も、じゃ、僕は、私は受けませんという子供たちはどうするのか。

 それからさらに、高等学校はもちろん授業料、所得制限が入ってあれですけれども、基本的には授業料を払っているわけです。払っていて、なおかつ、正規の教育課程の一環であるならば、なぜそのテストのお金を払わなければいけないのか。まあ、こんなことはないですけれども、普通に、これは一般だというんだったら、例えば中間、期末考査もその試験のテストのお金が要る、正規の教育課程の一環というふうになってしまえば、そうなるんじゃないんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的に、先ほど申し上げましたとおり、中身についてはきちっとこれから検討していくということを前提としてのお答えになりますが、学校における指導の工夫、充実に資するように、各学校の科目履修の進捗状況を踏まえながら、教育課程編成とかあるいは学校行事等を勘案しつつ、学年や時期、教科、科目等に関して、学校または設置者において、この基礎学力テストに関して適切に判断できる仕組みも考えていくということが検討課題とはされております。

 その中で、正規の教育課程の中でも受検しやすくなるような仕組みも考えたいと思っておりますが、また繰り返しになって、もとに戻って恐縮でございますが、その点につきまして、正規の教育課程に入れるかどうかということについては、これからきちんと検討して判断をしていきたいというふうに考えております。

吉川(元)委員 私が聞いているのは、正規の教育課程の一環になるかどうかはこれから検討するというのは、それはそれで結構なんですが、仮に正規の教育課程の一環となった場合には、それは例えば、いわゆるテストのお金を払うというのはおかしなことになりますし、授業時間の中でやるということになれば、当然、受けない子供と受ける子供の間に差が生じてしまいます。

 こうしたことについてはどういうふうに方向性として考え、もし仮にそうなった場合にはどうなるのか。そうなると、結局、先ほど最初に、これはあくまで任意なんだというふうに尋ねましたけれども、教育課程の一環になってしまえば、これは任意じゃなくなるんじゃないんですか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 仮にということで、教育課程の一環としてというお尋ねでございます。

 現時点においてはちょっと仮定の質問にはなかなか答えにくいところがございますが、仮に教育課程の一環としてということで考えた場合、委員御指摘のようないろいろな問題点があるので、その方向でやるという場合であれば、御指摘の論点についてはきちんと詰めなくちゃいけない課題であるというふうに認識します。

吉川(元)委員 この最終報告を読んでいると、非常に矛盾しているんですよね。任意だと言いながら正規の教育課程の一環だというふうに言ってみたり、基礎学力だと言いながら基礎学力を超えるものも含むんだというふうになったり、非常に矛盾をした最終報告になっているんじゃないかというふうに思います。

 中教審の答申からスタートしていると思うんですけれども、その際には、高校の二年、三年で受けるというふうにたしか対象になっていたのが、最終報告ではいつの間にか、一年生からテストを受けることが可能になるというふうに記載もされているようであります。

 先ほど費用の話がありましたけれども、この報告書を読みますと、最終答申では、一回数千円程度の低廉な価格設定を目指して検討する旨書かれております。

 数千円が低廉かどうかというのは、これは置かれた家庭の状況に応じて変わってくると思いますし、まさに一年生のときからこれを複数回受けるということになってくるとかなり家庭の経済的な負担がふえるというふうに思うんですけれども、この点についてどのようにお考えなんでしょうか。

藤原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、お尋ねの受検料につきましても、一回当たり数千円程度の低廉な価格設定となるように検討するということでございますが、あわせて、低所得者世帯につきましては、支援策についてもそのあり方を検討するということでございまして、低所得者層がこの受検がなかなかできないようなことがないように文部科学省としては検討していきたいと考えております。

吉川(元)委員 最初から言っておりますけれども、別段こんなものをつくる必要は私はないと思います。十分、中間、期末のテストで基礎学力の定着度合いというのは各学校、各先生方が把握をしているわけです。だから、例えば今小中学校で行われております全国一斉学力テスト、これは、目的としては、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握、分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るというのが今小中学校で行われているテストの目的。実際には、この目的からはかなり今逸脱をして、都道府県単位あるいは学校単位で非常に点を上げるための競争みたいなものが発生をしておりますし、特に悉皆にした結果としてなっている。

 ただ、小中学校義務制のときの学力テストの目的というのは、あくまで教育をする、どうやって、今子供たちがどこでぶつかっているのか、どこに課題があるのかというのを把握するためのものであったわけです。それをフィードバックしながら、教え方も含めて、あるいは教材の選び方も含めて、研究をして改善していこう、これは理解はできます。ただ、高等学校の場合の今のお話を聞いていると、目的はそうではない。基礎学力の定着を見るんだということになると、これはちょっと、やはり小中学校の学力テスト以上に何か中身が不明な、目的が不明なものになっているんじゃないかというふうに私は思います。

 この問題に関しては、最後に大臣に一点だけお聞きしたいと思います。

 今も言いましたとおり、小中学校、目的からはかなり今逸脱をしていますし、もう悉皆は必要ないのではないか、あくまで、前のように、希望する学校が参加をするということで私は十分ではないかというふうに思いますが、今回の高等学校基礎学力テスト、一斉テストではありませんし、公表の仕方も小中とは異なりますが、結局最後は正規の教育の一環というふうになっていって、最後は、基礎学力の定着度合いの把握ではなくて、テストでいい成績を上げることが目的化していくのではないかというふうにも危惧をしております。

 この点に関連してお聞きしますけれども、高等学校基礎学力テストのテスト結果の副次的利用で、大学入試試験や就職等への利用については、二〇一九年から二〇二二年までは試行実施期として見送るものの、その後のあり方は別途必要な措置を講ずるということがこの最終報告の中で書かれております。もし仮にそういうふうに受験あるいは就職について利用するということになりますと、そもそも基礎学力の定着度合いをはかるということとは全く変わってきて、高校一年から受検できる学力テストの結果が大学受験や就職に活用される。これはもう、そうなりますと、受験戦争の低年齢化を促すことにつながるのではないか。そうなれば、教員や生徒に過大な負担を強いることになります。また、これは公表しないということでありますけれども、不必要な学校の序列化を招くことにもつながりかねず、任意のはずの学力テストがやがて、これは私も今ほどもずっと指摘しましたが、必須になることも予想されます。

 このような懸念は果たして考慮されてきたのか、その点について大臣に尋ねます。

松野国務大臣 現状につきましては既に答弁をさせていただきましたとおり、高大接続システム改革会議の最終報告をもとにして、省内でその設計等を今検討しているところでございます。

 その中において、学力の定着、これは学び直しも含めたということでございますけれども、そういった目標を掲げながら進んでいるものでございますから、高校現場、また、高校生に過度な負担とならないようにすべきだと考えておりますので、先ほど申し上げました高校における基礎学力の確実な習得、学習意欲の喚起とあわせて、負担感がないものへの設計を考えてまいりたいと考えております。

吉川(元)委員 時間が来ましたので、終わります。

永岡委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.