衆議院

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第2号 平成29年3月3日(金曜日)

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平成二十九年三月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    江渡 聡徳君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      勝沼 栄明君    木原 誠二君

      小松  裕君    佐々木 紀君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      冨岡  勉君    豊田真由子君

      中川 郁子君    中谷 真一君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      福山  守君    堀内 詔子君

      村井 英樹君    山下 貴司君

      阿部 知子君    大西 健介君

      岡本 充功君    郡  和子君

      中島 克仁君    長妻  昭君

      初鹿 明博君    水戸 将史君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   内閣府大臣政務官     豊田 俊郎君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   最高裁判所事務総局家庭局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 吉田 眞人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   中尾  睦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房年金管理審議官)       伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  神田 裕二君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            山越 敬一君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    堀江  裕君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  蒲原 基道君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  鈴木 俊彦君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           木原亜紀生君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     勝沼 栄明君

  白須賀貴樹君     佐々木 紀君

  中川 郁子君     中谷 真一君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     赤枝 恒雄君

  佐々木 紀君     白須賀貴樹君

  中谷 真一君     大岡 敏孝君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     中川 郁子君

    ―――――――――――――

二月二十四日

 最低賃金引き上げ、食品衛生監視員を大幅にふやすこと等に関する請願(志位和夫君紹介)(第二二八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二九号)

 同(堀内照文君紹介)(第二三〇号)

 社会保障費の大幅な削減を中止し、保育、医療、介護、年金などの拡充を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三一号)

 同(池内さおり君紹介)(第二三二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二三三号)

 同(大平喜信君紹介)(第二三四号)

 同(笠井亮君紹介)(第二三五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二三七号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三八号)

 同(清水忠史君紹介)(第二三九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二四〇号)

 同(島津幸広君紹介)(第二四一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二四二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二四三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二四四号)

 同(畠山和也君紹介)(第二四五号)

 同(藤野保史君紹介)(第二四六号)

 同(堀内照文君紹介)(第二四七号)

 同(真島省三君紹介)(第二四八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二四九号)

 同(宮本徹君紹介)(第二五〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第二五一号)

 同(堀内照文君紹介)(第三〇四号)

 安全・安心の医療・介護を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二七二号)

 介護保険制度の見直しに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二七三号)

 同(池内さおり君紹介)(第二七四号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二七五号)

 同(大平喜信君紹介)(第二七六号)

 同(笠井亮君紹介)(第二七七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二七八号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二七九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二八〇号)

 同(清水忠史君紹介)(第二八一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二八二号)

 同(島津幸広君紹介)(第二八三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二八四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二八五号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二八六号)

 同(畠山和也君紹介)(第二八七号)

 同(藤野保史君紹介)(第二八八号)

 同(堀内照文君紹介)(第二八九号)

 同(真島省三君紹介)(第二九〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二九一号)

 同(宮本徹君紹介)(第二九二号)

 同(本村伸子君紹介)(第二九三号)

 憲法を生かして安全・安心の医療・介護の実現を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第二九四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官吉田眞人君、法務省大臣官房審議官金子修君、財務省理財局次長中尾睦君、厚生労働省大臣官房年金管理審議官伊原和人君、医政局長神田裕二君、労働基準局長山越敬一君、雇用均等・児童家庭局長吉田学君、社会・援護局障害保健福祉部長堀江裕君、老健局長蒲原基道君、保険局長鈴木康裕君、年金局長鈴木俊彦君、国土交通省大臣官房審議官木原亜紀生君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。

 大臣の所信をお聞きしての最初の質疑ということで、本日とそれから水曜日と、それぞれにかけて、それぞれの立場から質疑をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 私の方は、きょうは、通告として、国有地の売却問題に関連しての部分と、それから待機児童問題についてお伺いをさせていただきたいと思っていますが、実は、冒頭、塩崎大臣、申しわけありませんが、通告をしていないんですが、可能な範囲でお答えをいただきたいんです、一問ですね。通告していないので、可能な範囲でお答えいただきたい内容があるので、ちょっとお聞きいただきたいと思います。

 三月一日、これは産経新聞の配信なんですけれども、二月の日米首脳会談において安倍総理とトランプ大統領が会談されたわけですが、それに関連して、アメリカのロス商務長官が、一兆ドルの投資を日本に期待、そしてこれは年金ファンドなどを想定している、こういう配信を、これはワシントン支局の小雲記者さん、されておられます。

 この点について、少し私も気になったものですから、知っている、御承知の範囲でちょっとお答えいただければありがたいんですが、このロス商務長官、特に私が気になったのは、年金の基金の活用の部分なんですね。日本がアメリカの同盟国で、金融機関が巨額の資金を保有していることに触れ、日本はすばらしい資本の供給源、そして、日本政府の年金基金は巨大で、保有資産を分散しようとしていると指摘し、アメリカのインフラ投資計画が、日本の年金ファンドなどの投資の受け皿になるとの見方を示したと。最後のくだりで、二月の日米首脳会談で、安倍首相がトランプ大統領に対して資金援助の意思があると示唆したことも明らかにしたとの報道です。産経新聞です。

 そもそも、塩崎大臣、このことについては事前に御存じでしたか、こういうやりとりが行われるということ、御存じでしたか。

塩崎国務大臣 これは、一般的に、インフラ投資をアメリカがやる、つまり老朽化をしたインフラについての投資をするということで、トランプさんは選挙戦からずっと御主張をされてきた、言ってみれば公約みたいなものですよね。それに対してどういうファイナンスをアメリカ政府がするのかは、これはアメリカ政府が考えることで、日本の民間を含めた、資本がどういうふうな投資をするのかというのは、これは民間が決めることであります。

 GPIFの問題については、もちろん、今、報道は、いろいろなものがぐじゃぐじゃに入った話が報道されるという、いつもの報道の特徴ある流れ方だろうというふうに思います。

 GPIFの運用については、もう総理からも私からも明確に申し上げているように、これは、被保険者の利益のためだけにこの投資をどうするかということを考えるんだということが法律に明記をされており、政治的な配慮が加わるようなことはあり得ないということは総理も私からも申し上げてきたことでありますので、ひたすら、GPIFには、被保険者の利益だけを考えて運用に励んでいただくというのが、基本的に彼らがやっていることであり、私たちがお願いをしていることでもあり、また何よりも法律がそれを規定しているところであります。

柚木委員 お答えいただいていないのでちょっと改めてぜひお答えいただきたいんですが、この日米首脳会談で安倍首相がトランプ大統領に対して資金援助の意思があると示唆したことも明らかにしたとの報道があるんですが、仮にこの報道が、事実かどうかわかりませんが、事実だとするならば、その資金援助の意思がある、特に年金基金が絡むということであれば、所管の厚生労働大臣の確認もなく総理大臣が発言するとは思えないものですから、この報道が事実とするならば、事前にお聞きになられておられましたか。おられていないのであれば、これは事実じゃないと否定してください。

塩崎国務大臣 全く聞いておりません。

柚木委員 聞いていないということは、この年金基金を使って、まさに一兆ドル投資の中に年金基金が含まれないというふうに理解してよろしいですか。

塩崎国務大臣 これは、御存じのように、先ほど申し上げたとおり、GPIFに厚生労働大臣は委託をして運用してもらい、彼らは法律にのっとって被保険者の利益のためだけを考えてやるということでありますから、どういうふうな投資をし、分散投資の中でリターンを上げ、リスクを低下させていくか、そのやり方については、GPIFがみずからお決めになることであるわけでございまして、少なくともはっきりしていることは、政治的にああせいこうせいだのいうようなことは私たちはやらないということははっきり申し上げているところであります。

柚木委員 事前に安倍総理からは聞いていないと明確に否定したにもかかわらず、この年金基金が一兆ドルの投資に使われるかどうか、今否定されませんでしたよ。これは、大臣、とんでもないことですよ。

 まさに、渡米前に経産省から情報が流出したかどうか知りませんけれども、今は全部鍵をかけているそうですけれども、そのことを安倍総理は否定されて訪米されたにもかかわらず、一兆ドルの投資の中に年金基金が含まれる、資金援助の意思があるとの報道、これを今大臣は否定しなかったんですよ、あれだけ事前に総理も否定していたのに。

 四月から実際に年金が減るわけですよ。年金カット法案が仮にこの春から施行されていたら三万円カットされているんですよ。そういう中で、まさに国民の老後の最大、かつ、人によっては唯一の資産が、一兆ドルというのは百兆円以上でしょう、日本円で、この中に年金基金が投資をされる。今否定されなかったというのは大変なことだと思いますよ、大臣。

 これは、ちょっとこの後、もう少し事実関係を、水曜日にもまだ続きがありますから、また我々の方でも調べさせていただいて、これは本当に大変な問題ですよ、この後も審議をしっかりさせていただきますので、水曜日までにもう少し詳細を調べておいてください。

 大臣、何かありますか。

塩崎国務大臣 さっき申し上げたように、被保険者の利益のためを考えたら、当然リスクが低く、リターンが高いというものを選ばなきゃいけないわけですね。だから、メキシコとの間の塀に投資して一体どれだけのリターンが上がるのか私には全く理解できないし、そういうことを考えていけばおのずと分散投資をする先は、GPIFが考えるところは限られてくるわけでありますので、おまけにこれは委託運用をするという形になって、ダイレクトにインフラに投資をするだのようなことはやってきていないわけでありますので、どうぞひとつ基本をもう少し踏まえた上の御質問をしていただくとありがたいなというふうに思います。

柚木委員 GPIFの運用のスキームはわかっていますよ。ただ、私がやはり問題だと思うのは、訪米前と後とで、実際に全否定していたことを、資金援助の意思があるとの報道を今大臣も否定しなかったんですから、これは本当に、この後、水曜日も含めて、しっかり議論をさせてもらいます、水曜日までに幾つかの情報を私たちも確認させてもらいますので、そのことを申し上げておきたいと思います。

 通告どおり質問に入りますが、これは、今、森友学園の問題で、きょうも、まさにそのために大臣も参議院の予算委員会に行かれたり戻ってきていただいたりするわけで、このことが非常に大きな問題になっています。

 私、資料におつけしておりますが、これは、国有地の売却あるいは貸借のスキームなんですけれども、御承知のとおり、待機児童解消のための国有地の活用を進めると。これは、待機児童解消加速化プランの中で示されていて、実際、財務省の所管の国有地についての売却、定借、それぞれ活用状況について、五十六、四十五、まだ検討中、それから活用の希望があるのが九、合計百十、こういうような状況もあります。

 さらに、二枚目をごらんいただきたいんですけれども、これは、安倍総理御本人も、国有地を、保育園あるいはその他医療関係、介護関係含めて活用して、まさに待機児童解消を加速する、そういうことを成長戦略スピーチの中で発表されていて、その中で、それぞれ定期借地と売却とで、十四、二十、協議中十七、合わせて五十一というのが、これは二十五年度までの数字でございます。

 それで、最新のものを聞くと、こういう状況です。

 これは、社会福祉分野等における国有地の活用実績。保育関係、介護、障害者関係、医療関係、それぞれ二十八年度十一月末までの最新のものを出していただきました、二十二年度以降。五十二、三十四、二十八、八で合計百二十二の売却、そして定期借地の方は、保育、介護、障害、医療関係それぞれで四十五、十六、六、一、六十八ということで、これを見ても、やはり保育園の待機児童の解消に向けて国有地の活用が重要であり、そして実際にそういうことが進んできているということがおわかりいただけると思うんです。

 次です。

 これは、まさに今問題になっております森友学園の小学校が大阪府内に建てられる。大阪府において調べてみると、この間、二十二年度から二十八年度までで、売却が三、定期借地はわずか一なんです。

 森友学園は、定期借地から売却にというような、まさに過去に例のないスキームで今回建設が進んでいるわけですが、これは、これだけ大阪においてもまだまだ待機児童がたくさんおられる中で、こういう保育園に対しての国有地の利活用というのは非常に重要な取り組みだというふうに認識できるわけであります。

 きょうは、財務省の理財局の次長にお越しいただいておりますので、これはちょっと確認をさせていただきたいんですけれども、国有地の利用について、最初は定期借地でありながら、途中から売買に変えての保育園の契約というのは過去にあるのか、あるなら何例なのか。それから、同時に伺いますが、国有地の払い下げについて、売買代金の分割払い、これを認めた保育園の例というのは過去にあるのか、あれば何件なのか。お答えいただけますか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 未利用国有地の処分に当たりましては、売却を基本としておりますが、貸し付けを行うケースは限定されております。ただ、公用、公共用等の用に供する場合で、貸付財産の買い受けが確実と見込まれ、それまでの間、賃貸借をすることがやむを得ないと認められる場合には、売り払いを前提とした貸し付けも可能となっております。

 委員御指摘の、契約相手方の利用用途が保育園であり、定期借地契約から売買契約に変更した事例、あるいは買い受け特約つき定期借地契約の事例につきまして、定期借地制度の活用を本格的に開始いたしました平成二十二年度以降の事例を確認いたしましたが、該当事例はございませんでした。

 それから、いわゆる分割払いという御指摘でございます。国有財産の売り払い代金は一括納付が基本でございますけれども、国有財産特別措置法において、買い受け人が売り払い代金を一括して支払うことが困難である場合には、確実な担保を徴し、かつ、利息を付した上で、分割払いとすることが認められております。

 委員御指摘の売買代金の分割払いを認めた保育園の事例について、平成二十一年度以降の事例を確認いたしましたが、該当事例はございませんでした。

柚木委員 どちらもないんですよね。これは、森友学園においては、どちらも過去に例のない形で認められているんですよ。

 これは、政府としても、まさに国有地の活用、待機児童解消、まさに一七年度末まで、断念というような表明もされていますけれども、全力で取り組むと言われていて、この不透明な森友学園のスキームの中では、特例でそれぞれ定期借地から売買に変える、あるいは分割払いも認める。先ほど、ちゃんと支払いが確実とみなされるようなと言って、森友学園はまさにそういうことが難しいから分割にしたのであって、先が見えているかというと、むしろ見えていないということが大阪府の中での議論でも問題になっているわけですね。そういう中で特例で認めておきながら、他方で、保育園についてはこういうものは認めていない。

 これは、理財局次長、やはり森友学園のような小学校の建設のときの国有地の払い下げで特例を認めるのではなくて、本来、まさに安倍総理もおっしゃっている、待機児童解消のための国有地の利活用、そのために、まさに場合によっては、こういった特例、柔軟運用も含めて、ちゃんと事業の安定性、園児の安全確保ということを担保した上で、より柔軟に、そういう保育園をつくるために認めるのならわかりますけれども、この森友学園だけそういう特別扱いをするというのは、私は、やはり国民の皆さんから見ても腑に落ちないと思うんですね。

 これは、やるのであれば、保育園の整備などでも特例を認めて柔軟運用する、一定の条件のもとで、そういうふうにしないと公平性が担保されないと思うんですが、次長、いかがですか。

中尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御紹介いただきましたとおり、財務省におきまして、現在、待機児童解消に向けた保育施設整備のための国有地の有効活用にも積極的に取り組ませていただいているところでございます。保育分野におきまして、国有地に関しまして、地方公共団体等に対しまして国有地の情報提供を積極的に行わせていただいておりますとともに、地方公共団体等の利用要望を踏まえた優先的売却や定期借地権の活用による貸し付けを行うなど、相当数の国有地が活用されてきておるところでございます。

 さまざまな制度を駆使すべきという御指摘でございます。

 今後とも、個々の財産に係る地方公共団体や社会福祉法人からの具体的な要望等を踏まえまして、法令等に照らしまして、保育所等の必要な社会資本の整備に国有地が有効に活用されるように取り組んでまいりたいというふうに思っております。

柚木委員 塩崎大臣、今、理財局からそういう答弁がありました。つまり、やはり保育園の待機児童問題の解消、まさに安倍政権挙げて一七年度末までに取り組むと言って、もう一旦棚上げみたいな答弁もあって、まさに所管の厚生労働大臣として、国有地の払い下げ、利活用、保育園を最優先で。国民の皆さんは、私もこの間、ことしも保育園落ちたというお母さん方と二度ほどお話ししました。端的に言えば、森友学園小学校をつくるより保育園をふやしてほしいと言っているんですよ。

 ぜひ安倍総理に、国有地の利活用、保育園最優先で取り組んでもらいたいと、塩崎大臣、これは所管の大臣としてしっかりおっしゃっていただけませんか。

塩崎国務大臣 今、一億総活躍社会づくりのもとでさまざまなことをやっておりますけれども、その中で、特に二つの大きな柱があって、一つは子育て支援、そしてもう一つは、介護離職ゼロと言っておりますけれども、介護の体制整備ということをやっているわけであります。それは、言ってみれば、二大柱として安倍内閣は進めているわけでありますので、もちろん、待機児童解消も、ゼロということで加速化プランの推進を強力にしているわけでありますから、この優先度も高いことは間違いないわけですけれども、何が最優先という問題ではないんだろうというふうに思います。

 いずれも大事なことであって、そしてまた、国有地の、どこの国有地について活用が可能なのかということはそれぞれでありましょうし、また、どこの運営主体が希望されるのか、どういう形で希望されるのか、それぞれだろうと思うので、優先順位としては、子育て支援、そしてまた介護の整備、いずれの整備も大事だというふうに思いますので。

 もちろんその他の、例えば子供の関係でも虐待関係なんかもございますし、いろいろあろうと思うので、お気持ちはよくわかりますが、何かが一つ最優先でほかが劣後するということではないんじゃないかなというふうに思います。

柚木委員 驚くべき答弁ですよ、塩崎大臣。何が最優先かではないと。

 次の資料をちょっとごらんいただけますか。

 これは、豊中市の保育園に落ちた方々の現在の基準での待機児童七百八十六人、新基準だと二百十七人です。ちなみに、森友学園の小学校の募集、一年生、二年生で四十人ずつ定員で募集されています。これは、六学年全部定員どおり入れば二百四十人ですね。新基準だと待機児童が解消されちゃうんですよ、豊中の。

 何が最優先かじゃない。保育園に落ちて復職できなくてお先真っ暗で生活ができない、本当に涙ながらに訴えられているその場に、残念ながら与党の先生方は一人もいらっしゃっていませんでしたけれども、そういうお母さん方あるいはお父さん方の声、届いていないんですか。

 これはぜひ、塩崎大臣、申しわけありませんが、保育園に落ち続けている、ことしも落ちたお母さん方は、安倍晋三記念小学校より保育園をふやしてほしいとおっしゃっているんですよ。自治体に丸投げしていい話なんですか、今やじが飛んでいますけれども。

 塩崎大臣、これはぜひ、安倍晋三記念小学校のような、議論になっている不透明な形の国有地の払い下げ、そういうようなスキームよりも、やはり保育園を国有地においても利活用、貸借、売却、そちらを優先していただくべきだと私は思いますが、改めて御答弁ください。

塩崎国務大臣 この新基準というのは一体何のことかと思って注を見ると、「厚生労働省の定義によります。」と書いてありますので、ちょっと不可解なんですが、今の厚生労働省の定義というのはもともと民主党時代にも使っていた定義ではないのかなというふうに思いますので、論理の組み立てがよくわからないということであります。

 そこで、今の、最優先に国有地を保育に使え、そういうケースもあるかもわかりませんし、それはそもそも、保育園をつくろうというふうに思っていただける方が当該国有地についておられればそうでしょうし、それはそれぞれだろうと思うので、内閣として我々が大事だと思っているのは、子育て支援のための整備を進め、そして介護についても同じように進めて、介護で離職をしなくていいようにしていこうということでもございますので、それはそれぞれだろうと思います。

 待機児童を解消するということにあらわれているように、私どもが優先順位を、最優先の一つにしていることが、待機児童を解消するためにさまざまなことをやっているわけですから、そのことで、国有地は全部保育のために、全て最優先でやっていけというのは、必ずしも当たらない場合もあるのではないかというふうに思います。

 いずれにしても、大事なことは、政策優先順位として、保育園を整備していくということ、そして介護施設についても同じようにサービスを整えていくということも同時にやっていかなきゃいけないことであるというふうに思います。

柚木委員 私は、安倍政権はあるいは塩崎大臣は、待機児童解消が最優先でないということを今言われて、驚きますよ。どちらも重要、それはそうですよ。でも、そこで優先順位をつけて、今理財局が答弁したじゃないですか、必要な情報提供もさらにしっかり行って、利活用が進むようにやっていくと。違うじゃないですか。そんなことを言っているから一七年度末の待機児童ゼロを諦めざるを得なくなるんじゃないんですか、安倍総理は。ちょっとこの問題はさらに水曜以降やります。(発言する者あり)

丹羽委員長 御静粛にお願いいたします。

柚木委員 同じく、雇用保険法の今回改正法案、この中に、かつて、育休三年だっこし放題、これは、一体誰が三年も休むんだ、三年休んで戻る場所はあるのか、保育園は入れるのか、大問題になって撤回して、今度は、育休二年だっこし放題なんですか、出てきました。

 大臣、こういう声が上がっているんですよ。二年に延長できると言われても、まさにこういうタイミングで落ちましたと合否が来て、新年度から入れると思っていた人がそうじゃなくて、では延長しなきゃならないなんて言われても、会社も困るし言う方も困るし、こういう声にどう応えるのか。合否判定時期の見直しの工夫など、検討できないのかというのが一つ。

 そしてもう一つは、仮に育休二年とれたとしても、保活、つまり保育園探しのポイントとして加算されない。むしろ保育園に入りにくくなるんです。さらに、育休中ということで、まさに基準の中で待機児童数にもカウントされないような自治体も出てきて、見かけ上の待機児童が減っちゃうんですよ。こういうマイナス問題が出てくるんです。

 今回、三人に一人が都会を中心に政令市で保育園を落ちていますよ。落ち続けているんです。どうやってこの問題を解決していくのか。

 今まとめて質問しましたが、大臣、これはぜひ整理して、きっちりと、待機児童、本当に新年度から困っているんです、お母さん方。お母さん方に対して、あるいはお父さん方に対して、御答弁をお願いいたします。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、一億総活躍プランの中で五十万人分の整備を進めていることを最優先でやっていることは、御説明申し上げたとおりであります。

 それから、育休の二年に延長という今回のことでありますけれども、合否判定が早い方が会社と復職時期の調整がやりやすいということ、こういったことは理解はできるわけでありますけれども、単に入園決定の時期を前倒しした場合、入園申し込みの締め切りの時期も早くなってしまって、そうなると、例えば、転勤に伴う遅いタイミングでの引っ越しなどの事情によって不利益が生ずる可能性も逆にあるというようなこともあります。

 むしろ、今国会に提出をしております雇用保険法改正法案において、育児休業期間を最長二年まで延長できることとしたのも、保育園に入れない場合、この場合ですが、直ちに離職を迫られることがないように、働く人々の選択肢をふやそうということができるようになるという仕組みでございます。

 それから、ポイント制の話がありました。

 ポイント制は大変大事であることは御指摘のとおりでありまして、これにつきましては、育児休業が終了する予定の方々、こういった方々については特に市町村が配慮をするように、私ども通知を行っております。すなわち、保育園入園の優先度を判断する際に用いるこのポイント制について、加算をすることなど、入園の優先度を高める、そのことによって、育児休業も終わってしまうという方々、迫っている方々について特に配慮をするようにということで、各自治体に通知を既に行っております。

 待機児童かどうかにかかわらず、保育園に入れなかった方々に対しては、育児休業中の方も含めて、保育コンシェルジュの活用など、一人一人ニーズも働き方も違うわけですので、寄り添ってしっかりと御事情をよくお聞きしながら支援を行うように各市町村に要請をしております。

 これは、必ずしもきめ細かくやっておられないところが散見をされたということもあって、特にきめ細かく対応していただくようにお願いをしているところでございます。

柚木委員 きょうはこれで終わりますが、ぜひ、保育園また落ちた、さようなら私の自立と、お母さんは泣きながらおっしゃっていますよ。今回の育休二年は、労使、公益、みんな、大前提は保育園の整備、男性の育児、家事参加、これなくしてこれだけやっても逆効果ですよという指摘が出ていますから、この問題は引き続き法案改正のときにもしっかりさせていただきます。

 終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 きょうは、昨年質問した病児保育、病後児保育、そしていわゆる院内の二十四時間保育といった、保育の質の問題についてから、まず質問をさせていただきたいと思います。

 去年の四月一日の当委員会で、私は、病児保育については、一体どういうことをすることが結果としてうまくいくのか、モデルケースを示してみてはどうかということを、先行事例を含めて示してみてはどうかと大臣に問うたところ、大臣が、「その考え方は大変いいと思いますので、既にもうやっていらっしゃるところもあるわけでありますので、そういうところの御意見も伺いながら、何らかの形でのモデルケース的なものを示せれば示していきたいというふうに思います。」こう答弁いただいたんだけれども、この一年がたってもなかなかモデルケースが示されてこないんですね。

 病児保育の方は時間がなくて最終的に大臣の答弁はいただいておりませんが、神田局長の方から、「どういう点が問題で実施ができないのかということも含めて検討をした上で、さらに進めていく方策を検討していきたいというふうに思っております。」こういう答弁をいただいたんですね。

 しかし、こちらも、何が課題かということの解決策が示されていないというか、示せないという状況の中で、きょうは、私は提案も含めてお話をして、さらにこれを進めていく方向、もちろん、ニーズのあるところに進めていかなければなりませんけれども、進めていく方向に後押しをしたい、こう思っています。

 まず、病児保育、病後児保育の方からですけれども、現状で、こうしたモデルケースがなかなか示せない状況にありますが、どういった課題があるというふうに厚生労働省は考えていらっしゃいますか。

吉田(学)政府参考人 お答えいたします。

 病児・病後児保育の現状につきましては、私ども、先生御指摘いただいておりますように、非常に重要な施策ということで、現状におきましても、それぞれの地域のニーズに応じた事業推進が図られているというふうに思っておりますが、まず、基本的に、量で拝見いたしますと、保育園を今一生懸命それぞれの地域が整備していただいているその増加に比べて、病児保育、病後児保育の箇所数というのは、いま一つ伸び悩んでいるのかなという問題意識を受けとめております。

 そういう中で普及促進をしなければならないということから、御指摘いただきましたように、この間、私ども、関係者の方からいろいろお話は伺ってきておりますけれども、その中で、課題としては、日ごろ保育園に通っておられるお子さんが病気にかかった際に、両親が仕事を休んだり、時にはおじいさん、おばあさんが対応していただく、いろいろなケースがありまして、なかなか病児あるいは病後児保育のニーズの把握が難しいという点、あるいは、感染症が流行して保育園に行けないような場合がございますけれども、そういう流行時期によって利用児童数に季節変動がありますので、事業を運営していただいている方の立場からすると、事業運営がなかなか安定しにくいということを課題として承っているところでございます。

岡本(充)委員 そういう課題は当然想定をされていて、私も、いろいろ地元で聞いて歩いていくと、いろいろ課題があると思っていまして、利用者の保護者の方からすると、やはり一つ大きいポイントは、どこで病児保育、病後児保育を利用しようと思うか、つまり、家で発症したのか、園で発症したのか。

 家で発症した場合には、おじいさん、おばあさんに預けに行くという話とあわせて、結局、これから何日か休むことを考える、利用することを考えると、利用料が高い。例えば、パッケージで、インフルエンザ五日間で幾らという上限が決められていて、例えば五日間で五千円、普通に行くと一日三千円ぐらいが多いと聞いておりますけれども、五日間利用しても五千円のパッケージがあるだとか、こういう料金のキャップが見えていると安心ができるという話があったり。

 あともう一つ、園で発症した場合には、やはり送迎ですよね。送迎は今、補助金がことしから出るようになったと聞いておりますが、園で発症し、日ごろ通っている園から病児保育まで、誰が迎えに行くのか。わざわざ親が早退して迎えに行って、迎えに行って病児保育に預けてまた会社に戻るということはなかなか考えにくいわけですよね。

 だから、やはりこれは送迎が一つの肝で、もう一つ言うと、送り出し側の園というか、日ごろ利用している園の方にも一定の手間がかかるわけですから、そこもきちっと費用を見てあげるというような形をもって、この連携がとれる。なおかつ、親が両方の園に連絡をとるのではなくて、日ごろ通っている幼稚園、保育園の方から、発熱されましたが、病児保育、病後児保育、近くにこうありますけれども利用されますかと。その後の手続は園の方でやって、お母さん、お父さんはその後、病児保育、病後児保育に迎えに行くだけになれれば大分利便性も高くなる、こういうようなこともありますので、こうしたものをパッケージにして示さなきゃいけないと思う。

 それから、病児保育のパターンは、都市部と都市近郊と違うと思います。今、厚生労働省が聞いているのは、東京二十三区の園を中心に聞いていますが、私の選挙区のように、名古屋市の外にあって、小さな市町村があるエリアでいうと、やはり二十三区のイメージとは違って、親との同居率も一定程度高いということになりますから、そういう意味で、近くにいる、もしくは同居をしているような地域でどういうニーズがあるかということをきちっと把握する、こういうことが必要じゃないかと思っていますので、これは大臣、ぜひこういった点も踏まえて、モデルケースを示せるように努力していただきたいんですが、大臣からまずお答えいただけますか。

塩崎国務大臣 私の地元なんかでも、やはり今まであったのは、数少ない、小児科が二カ所ぐらいやっていただけで、それも二人ずつぐらいの病児保育をやっていました。しかし、無認可で、看護師を配置して、二人ずつぐらいまで預かれるというところもございますが、そこで、その方が同じ、今度は企業主導型の保育で、東京でたしか二十人ぐらいの病児保育をやるということを今計画しておりますが、そこでわかったことは、東京都の場合は、必ず、朝、病院に行って医師に診てもらって、その上で、昼間一回、病児保育をしているときにも回診に来なきゃいけないというようなルールがあるそうでありますが、私どもの愛媛県の場合には、無認可の場合には何の基準もない。こういう基本的なインフラも不統一で、子供の安全のことを考えてみると、いささかどうかなという感じもいたすわけであります。

 今のお話で、モデル事業をよく、どういうものがあるのかということも踏まえながら、全国で展開できるようなことにつなげるような意味合いで、そういったものがどうなっているのかということをきちっと調べろ、こういう御指摘かなというふうに思いますし、前回の御質問のときも同様の御趣旨だったと思いますので、この一年ぐらいの間に、いろいろな試みをされながら、いろいろな問題点も浮き彫りになっても来ていますし、しかし、ニーズは高まる一方であります。

 今御指摘のように、迎えをどうするのかという、誰が迎えるのか、ベビーシッターをまた別途用意をするとか、いろいろな形で体制整備をしないといけないということもあろうかと思いますが、そのコストをではどうするのかというようなことも含めて、実態、今どういう動きを、皆さん、御苦労の中から生み出そうとしておられるのかということを、もう少しやはり幅広く見ないといけないなということを最近特に感じているところでございます。

岡本(充)委員 モデルケースを示すようにさらに努力していただける、そういう御答弁でよろしいんですよね。うなずいていただきましたので。

 それを踏まえて、今度は院内保育の方に話を移しますが、院内保育も二十四時間保育はなかなか難しい。三交代で働いている看護職の方の話を聞くと、零時から仕事が始まるのに、寝ている子供を十一時過ぎにたたき起こして園に連れていけるか、こういう話があるんですね。その連れていけるのかどうかというのはそれぞれの考え方かもしれませんが、現実的に、寝ている子供を起こして二十四時間保育に預けて、零時から働き始めるということにちゅうちょを持つ親御さんが多いのも理解できると思います。

 どういう方法で預けることが、より子供と親との負担が少ないのか。要は、夜も働く必要のある職場の代表的な場所でありますから、やはりこれはしっかり事例を研究して、ニーズに即したサービスを展開しないと、本来、スリーピングナースで、働きたいと思っている方でもなかなか、子供の養育をする中で職場復帰が難しい方はたくさんいらっしゃいます。これからますます看護基準が見直されていく可能性もあるわけでして、やはり、看護師で働きたいと思っている人が働ける社会を目指してもらわなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。

 そういう意味で、こうした、いわゆる看護職の皆さんだけではありませんが、病院職員の皆さん方がどういう形で院内保育をしていくことがよりニーズに沿うのか、今の、夜中にたたき起こして連れていくというのはさすがに忍びないという気持ちにどう応えていけるのか、こういったことも研究していく必要があるんじゃないか、これがニーズをしっかり喚起するポイントじゃないかというふうに思いますが、局長、どうされますか。

神田政府参考人 昨年、岡本先生から御指摘をいただきまして、ことしの二月に病院内の保育所を運営しているところの調査などを行っております。

 昨年も御質問ございましたけれども、二十四時間保育をやっているのは病院の六割ぐらいですけれども、必ずしも毎日行っていないとか、あるいは実施をしていないところもございます。その理由などについても我々の方で伺っておりますけれども、利用者の勤務シフトの工夫によって調整を行っているため、二十四時間は必要ないという割合も一定程度ございますけれども、難しいという理由としては、利用者が十分に集まらない、また、院内保育所のスタッフの確保が困難である、経営面の理由から実施が困難といった理由が掲げられております。

 先ほど御指摘ございましたように、特に、小規模のところでの実施率が低いということでございますので、今、行いました調査等を踏まえまして、さらに具体的に、中小規模のところで積極的な取り組みをしているところの好事例ですとか留意点などを整理いたしまして、都道府県等に周知をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 大臣、こちらについてもぜひリーダーシップを発揮していただいて、課題克服して、これもニーズがないとよく言われるんです。私の知っている病院なんかでも、聞くと、数人しか希望者がいない。それは、今働いている人ではそうかもしれないけれども、やはり、まだ働いていない方の中、働きたいと思っているけれども仕事についていない方の中に深いニーズが、大いにニーズがあるんじゃないかと私は思っているんです。それを拾えていないんだと思います、この調査では。

 やはりちょっとやり方を変えて、しっかりそのニーズに基づいた設置をしていく決意を、ぜひ一言。

塩崎国務大臣 私は、地元でミニ集会なんかでいろいろお話を聞いていく中で、需要がないということはないと思います。むしろ足りない。

 特に、病院の中で医師はむしろ少し遠慮ぎみで、看護師さんとか、そういう方々の子供さんを先に、優先的に預かっていくがゆえに、最近女性医師がふえているので、特に産科などでは、泊まりがけでいる際に、子供さんを預けるときに看護師さんを優先するということは、それは優先しないといけないように、需要と供給がマッチしていないという意味ですから、ここのところを考えてみれば需要がないことはなくて、むしろ、看護師さんだけではなくて女医さんも、まあ、場合によっては男性医師が子供を連れてくることもあるかもわかりませんが、当然そういうことも考えていかなきゃいけないので、しっかり、調査はより実態に合ったものにしていかなきゃいけないんじゃないか、そんなふうに思います。

岡本(充)委員 ぜひ、しっかり調査の上、対応をとっていただきたいと思いますし、去年は四月に質問して二月に調査がまとまったというんじゃ、やはりちょっと遅いと思いますので、もう少し早目にぜひやっていただきたい。局長、よろしくお願いしますね。

 それでは、続いて、専門医制度について少し伺います。

 専門医制度の新整備指針というのが去年の十二月に一般社団法人日本専門医機構から示されているところでありますが、専門医制度を見直していく話は私は大変関心が深くて、かねてよりいろいろと質問してきたところでありますが、お手元にありますように、「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」ということで、医師では五十六の専門医が現状ある。

 問題意識は二つありまして、一つは、この専門医制度が、それぞれきちっと、患者さんないしは御家族の方から、医師や病院を選ぶための情報となり得ているかどうか。つまりは、言い方は悪いですけれども、専門医と名乗っているけれども、本当に専門医性をキープし続けていられているのかどうか、こういった観点で課題があると考えています。

 もう一つは、やはり何といっても、これがたくさんふえ過ぎていくと、これから先、学問の自由とはいえ、ふえ過ぎていくと、患者さんや御家族は、一体、自分はどこの専門医にかかればいいのかわからない、本当にそうなんですよ、ということになってきかねないわけであります。

 その中で、ここに、三ページ目ですか、厚生労働省の告示の中で、「医療法第六条の五第一項第七号に規定する厚生労働大臣の定める事項は、次のとおりとする。」というので、二にイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、トとありますけれども、一つはロというところ、「会員数が千人以上であり、かつ、その八割以上が当該認定に係る医療従事者であること。」ということ。それからもう一つ、チであります、「資格を定期的に更新する制度を設けていること。」とあります。

 そこで、質問です。

 まず一点目、チの方ですけれども、定期的に更新をする制度と言っていますが、更新は学会に参加をするだけ、もしくは学会に参加をする以前に学会員であることをもってなどという範囲で更新が認められているということであると、若干緩いのではないかという気がするわけですね。試験をするなり、レポートをするなり、講義を受けに行くなり、こういうようなことがなされて、もしくは、実際臨床に従事していてそういう症例は現に扱っている、こういうようなことがやはりないと、かつてやっていましたけれども今は診ていませんといっても専門医と言い続けられるような制度ではまずいのではないかという問題意識を持ちながら、これは学問の自由に踏み込むことではなくて、やはり患者さんや御家族サイドから見たときの情報として有意なものかどうかという観点から、この点について、やはりしっかり調査をして対応を考えていくべきだと思います。

 きょうの時点でどういう更新内容になっているか、聞くことにはしておりませんが、これからしっかり調べていって対応を考えていくべきだと思いますが、大臣、御答弁、局長でもいいです。

神田政府参考人 先生御指摘のとおり、今、医師の専門性に関する資格名としては、医師については五十六の資格が広告可能というふうになっております。これにつきましては、その質を担保するということで、先ほど先生から御指摘ありました、会員数が一千人以上でありますとか、更新制度をとっているとかの医師でしたら、五年以上の研修の受講を条件としている、資格取得の条件としているというような一定の要件を課しているところでございます。

 これにつきまして、先生御指摘のとおり、専門医制度のあり方に関する検討会におきましても、こうした学会が乱立して認定基準が統一されていないので国民にとってわかりやすい仕組みになっていないという指摘がございまして、これを踏まえて、現在、日本専門医機構におきまして、統一的な指針に基づく仕組みの構築に向けた検討がされているところでございます。

 その報告書におきましても、広告可能な医師の専門性に関する資格名については、「新たな専門医の仕組みの構築に併せて見直すことが必要」というふうにされてございます。専門医機構が認定する専門医を広告可能とすることとあわせまして、それ以外の学会等が認定する資格名の広告の取り扱いについても検討する必要があるというふうにされておりますので、この中であわせて議論をしていくようにしていきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 ちゃんと調査をしなきゃいけないですよ、局長。いいですね、やってくださいよ。どういうような更新の内容になっているか、しっかり調べてくださいね。うなずいていただいていますから、お願いします。

 それで、もう一つは、余りに細分化していくと、一体自分の疾患の専門医はどこかわからないという話ですね。これは、会員数、千というのは、昔の医師の数の状況の中ではこういう話もあったかもしれませんが、これから先、やはり一定数もう少し多い団体にしていくなど、人数でどういう変化があるかの調査を含めた上で、調べた上で、それ以外にも、こうしたいわゆる専門医以外にも、標榜医やいわゆる指定医、精神保健指定医など指定医、それから、日本医師会が認めております産業医制度のようなもの、こういったものも含めて、あり方全体をもう少し見直していく、整理をしていく必要があると思いますが、それについていかがですか。

神田政府参考人 お尋ねのありました、例えば精神保健指定医などについては、入院の必要性の判断を担う、また、同じように、今、資格名として広告できるものといたしましては、身体障害者福祉法による指定医、これは身体障害者手帳の交付申請に必要となる診断書の作成をするとか、あと、難病の指定医、これも、医療費助成の支給認定申請に必要な診断書を作成するということで、患者さんにとって有益なものもあるというふうに考えております。

 ただ、先ほど先生から御指摘ありましたように、非常に多くの資格名が今広告可能というふうになってございますけれども、新しい専門医資格の取り扱いとあわせまして、その中で議論をしていただくようにしたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。

 大臣、これは問題意識として、患者さん、御家族の側からして、どこにかかって、どうすればいいのかというのにいろいろなステップが必要になって、何カ所も受診しなきゃいけないという話になるのはやはり不利益だと思いますので、わかりやすい制度にしていく。何より、専門医の話は、やはり本当にそこで専門性がある人に専門医になってもらわなきゃいけない。

 私がこれを言い出したときは二〇一一年のときでしたけれども、そのときに言ったのは、私、今でもまだ専門医なんですよね、この中の。私がこれをやっていて、まだ専門医を更新できるというのはおかしい、私が更新できないような専門医制度にしなきゃだめだと。それはそうですよ、国会議員として仕事をしているわけですから。それで、この中の専門医を私は標榜できるんですよ。

 やはりそういう意味で、見直しをしっかりやってほしいと思いますけれども、大臣、きちっと答弁してください。

塩崎国務大臣 全く同感でありまして、そういう有名無実化したような資格では、先生がそうだとは申し上げませんが、やはり患者側、国民側から見れば、何を頼っていいのかよくわからない。これは、医療の場合には特に情報の偏りが激しいわけで、お医者さんの方が圧倒的に優位な立場にある中にあって、主人公はやはり国民、患者でありますから、そこにわかりやすいようにするという今の先生のお考えは、全くそのとおりだと私も思いますので、今、五十六もあること自体がわかりにくいわけであります。

 米国の場合には、専門医といったら本当に専門医で、もうこれは死ぬほど勉強しても通るか通らないかわからないというようなことで、なおかつ、恐らく更新手続もなかなか大変なんだというような話も聞いておりますので、やはり信頼される資格制度にして、皆さんがそれを見ながら、どの先生がいいのかなということを選べるような制度にすべきではないかというふうに思います。

 なお、病児保育について、ちょっと一つだけ加えますと、今、好事例を調べています。これについては、ことしの夏ぐらいまでにまとめてお示しをして、全国に周知をしていきたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 ぜひよろしくお願いします、来年も同じ質問をしなくて済むように。

 続いて、事故調の話です。

 事故調、動き始めて一年余り。調査報告が出て、三百八十八件、相談件数千八百二十件、そして医療事故報告は百六十一件、センター調査の依頼が十六件という紙をいただきました。

 これによって、では実際、患者さんの満足度はどうなっているのか、御遺族の満足度はどうなっているのか、やはりそこを調べるべきだと思いますね。今はそういう仕組みになっていないけれども、可能な範囲でアンケートをとるなりして、まず患者さんの満足度、そして御遺族の納得度はどうなのか。

 そして、もう一つ重要な点として、医療裁判、医療の事故に対する裁判がどう変わってきたか、これを調べていないんですね、きのうやりとりしたら。最高裁のデータが来るのを待っていますと言われていましたけれども、待っていますじゃなくて、やはりきちっと積極的に調査するべきだと、局長、思いませんか。ちゃんとやってもらいたいと思いますが、いかがですか。

神田政府参考人 医療裁判の件数につきましては、二十六年から二十八年度までの件数でいいますと、八百六十二件、八百二十六件、八百七十八件ということで、ふえたり減ったりということで一定の傾向は見られないというのが現状かというふうに思っております。

 それから、先ほど先生おっしゃられたように、遺族の方の満足度というものは、この制度を評価していくに当たって重要であるというふうに考えております。

 ただ、この報告をいただくときには、患者さんの名前は匿名等で報告していただいておりますので、医療機関でないとその患者さんにアクセスするのが難しいといったこともございますので、どのような方法でやるのか、またどういった内容を調査するのかということにつきまして、医療界、患者団体などからも御意見を伺いながら検討していきたいというふうに考えております。

岡本(充)委員 大臣、今局長が言われたのは年度で区切っていますから、この事故調が始まってからどういう傾向にあるのかというのは、もちろん、今すぐトレンドが出るわけじゃないですよ。ただ、これを調べていないというのが問題で、やはりそういう観点で裁判数の変遷を見るなり、御遺族の納得度、満足度を伺うなりしないと、次の制度改正につながらないんですよ。

 したがって、そういう仕組みでの調査を始めないと、後から調べようと思っても、御遺族はどこへ行ったかわからなくなってしまう。病院側からしか聞かないという話になると、病院側、ワンサイドからの話だけですよ。いや、御遺族は満足されておりましたと病院側は言うかもしれない。

 病院と患者さんと、それぞれにやはりきちっと評価を聞いた上で次の制度改正のポイントを絞るべきだと考えておりますので、大臣、そういう観点での調査を進めていただきたいと思いますが、御決意いただけませんか。

塩崎国務大臣 患者のサイドに立ってこの問題を考えるということは、大変私も大事だというふうに思っています。したがって、その後、患者やその御家族の思いをよく調べるということは私も大事だというふうに思いますので、どういうやり方にするのか、そのことも含めてしっかり考えなきゃいけないと思っております。

 世界は、医療事故という、もともとこの医療事故調も、医療の安全を確保して医療事故の再発防止を目的とするということでスタートしたもので、いろいろな経緯がありましたが、とりあえずスタートして、この二年でもう一回見直すということでいたわけでありますけれども、今月の、実は三月の二十九、三十に、ドイツで第二回のグローバル・サミット・オン・ペーシェント・セーフティーというのがありまして、私も本当は呼ばれているんですが、なかなか。

 これは二回目なんですが、一回目はロンドン。これはイギリスの保健大臣ハントさんが提唱して、医療安全というふうに我々は言っちゃいますけれども、ペーシェントセーフティー、つまり患者の安全。やはり患者中心に考えるのが世界の流れだろうというふうに思いますので、先生の問題意識は私も共有をするところでありますので、調査についてしっかり、何をやったら一番有効なのか、考えていきたいと思います。

岡本(充)委員 ぜひ取り組みを期待したいと思います。終わります。

丹羽委員長 次に、三ッ林裕巳君。

三ッ林委員 自由民主党の三ッ林裕巳でございます。

 大臣所信に対する質疑の機会をいただきまして、心から感謝申し上げます。

 質問に入ります。

 まず、データヘルス改革について質問させていただきます。

 世界に例を見ない速さで進む少子高齢化に対し、質の高い健康、医療、介護サービスを効率的に提供し、一人一人の健康寿命をいかに延ばしていくかが喫緊の課題であります。今日、技術革新により、ICTの活用が社会課題の鍵となっている中で、健康、医療、介護分野でICTをフルに活用し、難局を乗り越えていくことが重要です。

 これまでも、健康、医療、介護分野でICTの取り組みが進められてきましたが、我が国全体として、ICTの利活用が一体的に機能してきたとは言いがたい面があります。この結果、必ずしも、医療現場や産官学の力を十分に引き出したり、患者さんや国民の皆さんがメリットを実感できる形とはなっていないように思います。

 こうした中、塩崎厚生労働大臣は、本委員会の所信演説で、データヘルス改革の推進について強い決意を表明されました。

 それによれば、データヘルス改革を進め、健康、医療、介護のデータを収集、分析し、これを予防医療の促進、生活習慣病対策、新たな治療法の開発、創薬、自立支援介護の実現等につなげていく、そして、医療関係者のみならず、自治体、保険者、国民、企業等が活用可能な総合システムとして保健医療データプラットフォームを構築し、二〇二〇年度からの本格稼働を目指すこととされております。

 しかしながら、現在の医療分野のICT活用には課題が多いと考えます。

 提出した資料をごらんいただきたいのですが、例えば、データのデジタル化、標準化です。

 電子カルテのデータは、必ずしも、互換性が不十分で、分析に足りるデータの標準化、ルール化がなされてはおりません。そもそも、この電子カルテについては、大病院では導入が進んでいるものの、診療所の導入率はまだまだ三五%程度と低い実態があります。

 また、地域の医療機関などで患者さんの医療情報を共有する医療連携ネットワークについてであります。

 近年、地域でのネットワークの構築が進み、全国で約二百五十ほどのネットワーク数に至っておりますけれども、全国的なネットワークの展開や、地域を超えた情報のやりとりができるようにしていかなくてはならないと思います。

 さらに、健康、医療、介護分野でのビッグデータを活用し、サービスの質や効率性の向上、イノベーションにつなげていくことも重要です。

 このため、我が国の膨大なデータを囲い込むのではなく、産官学の多様なニーズに応じて安全にデータを提供していかなくてはなりません。同時に、ビッグデータが分析、利活用にたえられるようデータの信頼性を確保していくことも不可欠です。

 健康、医療、介護分野におけるデータヘルス改革については、期待も大きく、今後着実に進めていくことが必要です。そのためには、国がリーダーシップを発揮して、現場の理解を得ながら徐々にさまざまな課題をクリアしていかなくてはなりませんけれども、厚生労働省としてどのようにこれから取り組んでいくのか、答弁をお願いいたします。

鈴木(康)政府参考人 医療分野のICTの活用についてお尋ねでございます。

 現在、健康、医療、介護分野のICTにつきましては、御指摘のように幾つかの課題がございます。例えば、御指摘のように、電子カルテ、これは病院を中心に普及が進んでおりますけれども、標準化が十分でなく、なかなか互換性がないという問題。それから、地域の医療機関等が入る地域のネットワークでございますが、数は増加しておりますけれども、全国統一のインフラとはなっておらず、例えば市町村の境界を越えると使えないという問題がございます。さらに、厚生労働省には、保健とか医療、介護に関する幾つかのデータベースがございますけれども、個別に管理されていて、なかなかつながっていないということがございます。

 こうしたことから、まずはやはり、データの標準化をきちっと徹底するということ、それから、地域における健康、医療、介護のデータの全国ネットワークをきちっと実現して、国民の方一人一人を中心としたデータの統合による個人に最適な健康管理、介護等を目指していく必要があるというふうに思っております。また、データベースにつきましても、個人ベースで連結をし、個人の健康、医療、介護に関するヒストリーをビッグデータとして分析できるようプラットフォーム化を進め、産官学での幅広い活用につなげていく必要があるということでございます。

 現在、これらの御指摘の課題に対応しまして、二〇二〇年度からのICTインフラの本格稼働を目指しまして、厚生労働大臣のもと、部局横断的にデータヘルス改革推進本部を立ち上げておりまして、具体的な方策はその中できちっと検討していきたいというふうに思っております。

三ッ林委員 ぜひ早急な、二〇二〇年に向けての対応をお願いしたいと思います。

 また、個人情報の厳格な管理、これを前提として、国民一人一人の生涯を通じた保健情報が一元的に管理されて、これをもとに一次予防から三次予防、こういった保健事業が国民のライフサイクルに応じた生活保健事業として的確に実施されなければならないと思っておりますので、ぜひとも力強く進めていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。児童虐待についてであります。

 児童虐待の疑いがある事例が、医療機関に受診した際に発見されることがあります。実際に診察した医師が児童相談所に通報しても、直ちに児童相談所が判断を行えない場合、一旦、児童を家庭に帰さざるを得ず、虐待が深刻化するおそれもあり、実際そういった事例もあります。

 諸外国では、児童虐待の可能性に気づいた医師が一時保護の判断を行える仕組みもあるようであります。我が国においても直ちに医師に一時保護の判断を行う権限を与えるかどうかについては、じっくりと議論しなければならない課題ではあると思いますが、まずは、現行の制度を前提とした上で、できる限り迅速かつ的確な判断を行う努力が必要と考えます。

 虐待による重症化を防ぐためにも、児童虐待を発見した医療機関から通報を受けた児童相談所が迅速に対応する取り組みを進めるべきと考えますが、この点についていかがお考えでしょうか。答弁をお願いします。

吉田(学)政府参考人 お答えいたします。

 地域の医療機関から要保護児童を発見した旨の通告があった場合、これを児童相談所が受けた場合に、できるだけ迅速な対応をしなければいけない、こういう点については、まさに先生おっしゃったとおりだというふうに私どもも思っております。

 これまでも、児童相談所などが適切に虐待対応を行うために、具体的な支援方法などを私ども、「子ども虐待対応の手引き」という形でお示ししておりまして、その中では、医療機関から通告があった場合、その通告に対しては、その日のうちに医療機関へ出向いて、そこで事実や状況を把握するということをお示ししております。

 そういう中において実態がということかと思いますので、私どもとしては、この手引の内容を全国会議などあらゆる機会において改めて徹底するということと、この手引、改定の検討が必要ではないかと私ども思っておりまして、その次回の改定の際には、改めてこの迅速な対応という部分を強調する、そういう内容に記載を改めるということを考えさせていただくとともに、今御指摘いただきましたように、通知あるいは手引で書いてあることが実行につながるように、昨年四月に策定いたしました児童相談所の強化プランというものに基づきまして、児童相談所の専門職の増員を地方自治体の御理解をいただいて進めることによりまして、児童相談所が確実にその日のうちに医療機関に駆けつけられるような体制を整備させていただきたいというふうに思っております。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 この「子ども虐待対応の手引き」でありますけれども、現在は、その日のうちに医療機関に出向いてその事実や状況を把握する、そういった児童相談所の所長の対応が記載されているわけですけれども、実際なかなか行われていないという声を現場から私は聞くことがあります。これが四十八時間の対応でやるということになっているので、そこにちょっと、その日のうちにと言っている割には四十八時間の対応ということになっていまして、そこを次の手引ではもっとより厳密に改定していただきたいと思います。

 米国のカリフォルニア州の州法では、チャイルドアビューズが発見されたときには、書面で、全部終えて三十六時間以内に提出しなくてはいけない、そういった義務もありますし、より厳格な児童相談所、そしてまた今回の、児童相談所と各医療機関等の連携を密に、そのような手引にしていただきたいと思います。

 昨年の通常国会におきまして、私も厚生労働大臣政務官としてかかわらせてもらいましたが、児童相談所の機能強化を図る児童福祉法等の改正を行いました。これにより、かけがえのない子供たちの命が守られ、幸せな生活が保障されることが期待されています。本年四月一日から予定されている改正法の本格施行が円滑に進むよう万全の準備を行うよう、お願いしたいと思います。

 他方で、昨年の法改正では、児童虐待防止に対する司法の関与のあり方など、さらなる検討課題があることが改正法附則にも明示されております。塩崎厚生労働大臣の強力なリーダーシップのもと、改正法成立後直ちに精力的に検討が進められ、今国会にさらなる児童福祉法等の改正案が提出される予定であると承知しておりますけれども、今後、さらに児童虐待防止対策を強化するためにどのような方針で臨むのか、お答えをいただきたいと思います。

吉田(学)政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止対策につきましては、全てのお子さんが健全に育成されるように、今委員御指摘がございましたように、昨年の通常国会におきまして、児童福祉法等の一部を改正する法律という形で、全会一致で成立をさせていただいたところでございます。その本年四月の全面施行に向けて、今関係の準備を、いろいろ有識者の方々のお知恵もかりながら、また自治体の方々とも意見交換をしながら進めさせていただいているところでございます。

 また、昨年の改正法の附則におきまして、児童虐待対応における裁判所の関与のあり方について検討を行うこととされておりますので、それを踏まえまして、児童等の保護についての司法関与を強化することなどを内容とする児童福祉法等の改正法案を今国会に提出すべく、今、検討作業の大詰めを迎えさせていただいております。

 今検討させていただいております改正法案、目指すものといたしましては、保護者指導に裁判所を関与させることで、施設入所に至る前の在宅ケースにおける指導の実効性を高めて、良好な家庭養育の確保を図る、また、一時保護は現行法上、行政、これは児童相談所長でございますけれども、のみの判断で行うことができるということになってございますが、裁判所の審査を導入することで手続の公正性を一層高めるということなどを狙って、今現在、改正法案の作成作業をさせていただいております。

 今後、まず昨年の改正法を着実に実行するということと、あわせて、発生予防から自立支援まで一連の対策のさらなる強化を図るために必要な制度の見直しを進め、着実に進めさせていただきたいというふうに思っております。

三ッ林委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 最後の質問となりますけれども、診療報酬改定についての質問であります。平成三十年度の診療報酬、介護報酬の同時改定についてお尋ねしたいと思います。

 高齢化が急速に進展し、医療や介護を必要とする方が増加していく一方、我が国は既に人口減少社会に突入しており、今後、社会保障の担い手が減少していきます。そのような中で、医療や介護が必要になっても住みなれた地域で安心して暮らし続けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築を推進し、安全、安心で質の高い医療を効率的に提供する体制を構築していかなければならないと考えます。

 このため、現在、各都道府県では地域医療構想の策定が進められ、地域の関係者の間で、二〇二五年を見据えた医療や介護の提供体制の構築に向けた議論が活発に行われているところであります。

 こうした状況の中で医療、介護関係者が大変な注目や期待を寄せているのが、今回の平成三十年度の同時改定であります。二〇二五年やその先の我が国の社会保障を考えていく上でも大変重要な改定になると思います。どのように取り組んでいくのか、伺いたいと思います。

鈴木(康)政府参考人 平成三十年度の診療報酬、介護報酬の同時改定についてお尋ねでございます。

 我が国におきましては、二〇二五年に、いわゆる団塊の世代が七十五歳以上になる超高齢化社会を迎えるために、その中においても国民の方一人一人が状態に応じた適切な医療や介護を受けられるよう、医療と介護の提供体制をしっかりと構築していく必要があるというふうに考えております。

 平成三十年度は、御指摘のように同時改定でございますけれども、これは、医療計画、介護保険事業計画が同時に改定される年でもございます。二〇二五年までの残された期間を考えますと、今回の六年に一度の同時改定は非常に重要であるというふうに考えております。

 このため、今回の同時改定におきましては、高齢者の住まいも含めた地域包括ケアシステムの構築、医療と介護の連携強化、効率的なサービス提供の構築ですとか、急性期から回復期、慢性期、在宅医療までの医療機能の分化、連携の推進を、御指摘の地域医療構想を支える、そして生かすという形で進めていくこと、さらにはICTの活用、それから現場の負担軽減につながるような効果的な医療、介護の提供の推進、そして高齢者の自立支援の取り組みの推進等を図りたいというふうに思っております。

 今後、関係者の方々の御意見も伺いながら、中央社会保険医療協議会と介護給付費分科会等の場におきまして、平成三十年の同時改定に向けてしっかりと検討していきたいというふうに思っております。

三ッ林委員 ありがとうございます。

 地域医療構想、地域包括ケアシステムを成功させるためには次の平成三十年の同時改定が大変重要でありまして、私は、人への財源手当て、これが必要であると思います。診療報酬の本体プラスの改定、これがその基盤となると思います。中医協や介護給付費分科会での検討においては現場を第一に置いて対応していただきたい、そのように思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、穴見陽一君。

穴見委員 自由民主党の穴見陽一でございます。

 今国会から厚生労働委員を拝命いたしまして、初めて質問に立たせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 きょうは、大臣所信の中から、また、今働き方改革ということを政府も進めていただいている中で、非常に関係の深いと思われます社会保険の適用拡大についての質問をさせていただきたいと思っております。

 昨年の十月から社会保険が、五百一名以上の事業所で二十時間以上の労働者に対しての適用が拡大をされましたが、その適用拡大後の影響について、まず初めに教えていただきたいと思います。

馬場大臣政務官 穴見委員にお答えします。

 昨年十月から施行されました被用者保険の適用拡大では、対象者を約二十五万人と見込んでおりましたけれども、十一月の時点で既に二十万人を超える方に被用者保険が適用されており、さらに増加傾向にあると承知しております。

 また、十月施行の前後に企業からヒアリング等を行ったところ、企業や業界によって多少の違いはあるものの、適用対象の短時間労働者のうち、おおむね三割程度は、単に適用されるだけではなくて、適用拡大を機により長く働きたいという希望を持っておられることがわかりました。

 一方で、短時間労働者の中には就労時間を短くする方がおられまして、その理由としては、夫の扶養から外れると、夫の働く会社から支給されている配偶者手当がなくなるからという声が多いこともわかりました。これについては、一月二十五日の経済財政諮問会議において、安倍総理からも、企業の配偶者手当の見直しについて前向きな取り組みをお願いしたところであります。

 適用拡大後の影響につきましては、労使団体等にも参加いただく協議会を開催して状況を伺うなど、引き続き実情の把握に努めてまいりたいと存じます。

穴見委員 ありがとうございます。

 二十万人を超える方々が適用の対象になったということは非常によかったなと思っているところでございます。私の予想では、もう少し就業調整が進んで、労働時間を短くされる方がふえるのではないかなと思っておりましたけれども、一定の成果が上がったことは非常によかったと思っております。ただ、その中にも、労働時間を短く調整される方も五万人近くいらっしゃったということだろうというふうに思います。

 そういう意味では、今後適用の拡大を五百名以下の事業所に拡大をしていく際には、さらに事業所の規模そのものが小さくなってくる、そうすると、事業所サイドもよりコストコンシャスの強い対応として、就労時間を短く調整していく方々がふえてくるのではないかなということを心配いたします。

 また同時に、今現場の方から聞こえてきますのは、最低賃金も順次高まってきていることもあり、また時給の実勢価格も相当上がってきているという中で、実際には労働時間を短く調整されていらっしゃる方がふえてきていて、なかなか現場の労働力が足りない。二十時間という範囲で適用を拡大すると、逆に、労働時間を短く調整する方がふえて、労働力を圧縮してしまう効果があらわれるのではないか。

 むしろ、これが、例えば十時間以上の労働者に適用を一気に拡大することによって、企業側も労働者側も就労調整をする意欲そのものをなくしてしまうことによって、逆に、労働時間を長く働かせたい、また働いてもらいたい、働きたい、そういう意欲を喚起することによって、より労働力を拡大するという方向性で考えていくことができるのではないかと思うんですが、それに関しての考えをお聞かせください。

馬場大臣政務官 お答えします。

 適用拡大の状況は、企業や業種によって異なっていると承知しております。例えば、ヒアリングを行った小売業の企業からは、施行前に行った従業員アンケート調査によりますと、労働時間を延ばしたいが約四〇%、労働時間を減らしたいが約三〇%、労働時間はそのままで社会保険に加入したいが約二五%、未定等が約五%という結果でありまして、施行後も、おおむね見込みどおりの結果だと聞いております。

 こうしたことから、こういった個別企業だけでなく、さまざまな業種の企業など、企業全体の状況もさまざまな手法でしっかりと把握していきながら、働きたい人が働きやすい環境整備を目指し、委員御指摘の点も踏まえながら検討を進めてまいりたいと存じます。

穴見委員 ありがとうございました。

 それで、今後、また社会保険の適用拡大については検討が進められていくのではないかと思いますけれども、その具体的なスケジュールであるとか、または議論が進められていく場所、どういった場を設けて進めていくのか、そういうことを教えていただきたいとともに、今、社会保険の適用が義務化されていないものとして、個人事業としての士業なんかが多いわけですけれども、そういった個人事業所でありながら従業員数が相当数に上る、そういった事業所もあって、そういうところは、社会保険の適用に関しては任意となっているというような問題もございます。

 こういった業種への適用拡大も含めて、今後どのようにお考えなのかをお聞かせいただきたいと思います。

馬場大臣政務官 お答えします。

 昨年成立いたしました年金改革法も同様でありましたけれども、年金制度改正は、財政検証を行った上で、その結果をもとに実施していくものと考えておりますために、まずは、平成三十一年を予定しております次期財政検証に向け議論を進めていく必要があると思います。

 同時に、被用者保険の適用拡大につきましては、来年度に、施行状況の把握のために大規模な統計調査の実施を検討しておりまして、今後の議論に向けた準備を進めてまいりたいと存じます。

 その上で、年金制度改正の具体的な中身については、この調査結果等を踏まえて、社会保障審議会年金部会等で議論を行うこととしてまいりたいと存じます。

鈴木(康)政府参考人 後段の御質問の、社会保険適用義務の免除についてでございます。

 御承知のように、社会保険につきましては、法人事業所については、業種を問わず、一人でも使用している者がいれば適用されるということになっておりますけれども、個人事業所の場合には、農林水産業、接客業、法務業等の業種または五人未満の個人事業所については強制適用事業所になっておりません。その理由としては、これまでは、保険料徴収等の面から見て実態把握が困難であるとか、小規模で変動が著しい等の技術上の困難性が挙げられていたものでございます。

 ただし、被用者には、厚生年金保険、健康保険を適用するということがやはり原則であるというふうに考えております。

 今後、さらなる適用拡大を検討する中で、こうした事業所に勤める方の適用のあり方についても、しっかりと実務上の問題も含めて検討してまいりたいというふうに思っております。

穴見委員 ありがとうございます。

 ぜひ、三十一年度の見直しに向けて財政検証等も必要になってくるわけでありますけれども、大変大きな議論でもありますので、できるだけ早い段階からしっかりと議論を進めていただきたいと思っております。

 また、先ほど私も仮にということで申し上げましたけれども、今後、週十時間以上まで適用拡大した場合、厚生年金の場合、支給が、所得代替率一〇〇%を超える場合が計算上出てくるということにもなります。その場合に、保険の制度として、所得代替率が一〇〇%を超えるのはいかがなものかというような議論もかねてからあるわけでありますけれども、もともと、そういった方々というのは通常の収入が非常に低い状態であるわけで、こういった方々が、例えば、今、短時間労働で低収入の方々というのは、社会保険ではなく、国民健康保険であったり、または年金は国民年金ということで、その支給額では、とてもではないけれども、老後、自立して生活がかなわない。

 また、本来であるならば、国民年金、国民健康保険というのは、自営業者、つまり、定年もなく、定年を迎えるような年齢になっても仕事が続けられて一定の収入があるが、老齢によって収入が下がってきたことを補填的に賄うための年金制度として想定をされているわけでありますが、それが、一千万人を超えるような多くの実際の雇用労働者、そして、職を失う、収入を失うという方々に対してもこういった年金制度が適用されているということがある以上、放置しておけば、将来、高齢者の生活保護受給者を非常に増大させていく懸念というものがあるわけであります。

 こういった、所得代替率が一〇〇%を超えるような形であったとしても、低所得者向けの社会保険、厚生年金の適用をすることによって、逆に、生活保護に頼らない、そして、全体の財政から見れば、ある意味では、非常に合理的、または効率的な財政運用にもかなう、そういう考え方に通じていくのではないかとも考えるわけでございますけれども、それについての厚生労働省のお考えを聞かせていただければと思います。

鈴木(俊)政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生年金でございますけれども、この給付、御案内のように、現役時代の報酬とそれから保険料の拠出期間に比例して金額が決まってまいります報酬比例部分、それから報酬とは関係なく拠出期間だけで金額が決まります基礎年金、この二階建てになっております。

 こういう構造の中で所得の再分配効果が働くわけでございまして、今先生から御指摘ございましたように、所得の低い方は高い方に比べまして代替率が高くなる。この点は従来から、二十六年の財政検証を初め、明らかにしているところでございます。

 そうした中で、今後、制度を考えていく上ででございますけれども、例えば、数十年の長きにわたって、ずっと週十時間程度の短時間で働くといった方だけを基本に考えるということもございますけれども、そうでもなくて、生涯の一時期に所得の低い方、そういった働き方をした場合にも、その時期に係る給付については、先生今御指摘ありましたように、再分配効果を働かせていく、こういったこともあわせて考えていくことが必要だろうと思っております。

 いずれにいたしましても、若い世代の方々に老後の所得保障を厚くしていく面で、適用拡大というのは非常に重要で、必要な施策でございます。したがいまして、こういった適用拡大に当たりまして、広く国民に御理解していただけるように、今いただいた御指摘も踏まえながら、例えば個人の就労実態、企業に与える影響、それから社会保険としての給付と負担の公平性とか所得再分配の効果、こういった点について御指摘いただきましたので、こういったことも十分踏まえて、今後検討を進めてまいりたい、かように考えてございます。

穴見委員 ありがとうございます。ぜひ御検討いただきたいと思っております。

 また、最近、国税庁の情報等と突合をすることによって、これまでなかなか発見することのできなかった社会保険適用義務のある企業の、ある意味では適用逃れというか義務違反というか、そういった事例の摘発や是正というものが行われているというふうに聞いておりますけれども、それの現在までの進捗についてお聞かせいただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘ございましたように、厚生年金の適用の可能性がある事業所に対しまして、国税庁の法人情報を活用して今取り組みを進めております。平成二十七年九月末時点で約七十九万事業所を把握しておりました。

 その後、日本年金機構におきまして、加入指導を強化するさまざまな取り組みを進めておりまして、平成二十七年度中に、平成二十二年度実績の約十九倍に当たる九・三万事業所を適用いたしました。さらに、本年度に入りましても、この一月末までの十カ月間で、前年度一年間の実績を上回る約九・八万事業所を適用いたしまして、一月末時点では、一年半前に把握されていた約七十九万事業所が約四十四万事業所へと四割減少いたしました。

 しかしながら、他方、新たに国税庁から情報提供をいただいておりますと、新たに設立された事業所の中で未適用のところもございまして、それが八・五万件把握しております。

 こうした新たに設立された事業所への対応も含めまして、適用促進の取り組みを一層強化する観点から、現在、昨年実施いたしました実態調査の集計、分析を踏まえまして、この春にはその調査結果を踏まえた具体的な対策を取りまとめまして、関係団体、関係省庁と連携しながらさらに対応を進めてまいりたい、このように考えております。

穴見委員 ありがとうございます。

 残る五十三万社ですか、ぜひ順次進めていただきたいと思っております。これから適用拡大も進んでいかなければならないと思いますし、また、既に適用義務のある企業についてはしっかりと適用を進めていただいて、若い世代でも生活保護の受給に頼らざるを得なくなっている原因というのが、国民健康保険の保険料を滞納してしまって、年金はそもそも払っていない人が多いわけですけれども、健康保険の保険料すら滞納してしまい、病気になったときに滞納を理由に病院に行けない、保険がないというような状態の中で生活保護に陥ってしまうというようなことになるわけであります。

 社会保険であれば、企業側が代理納付等を行うことによって保険を失うということがなくなる。そういう意味では、若い世代等々の生活保護に転落してしまうリスクというものをヘッジする、非常に重要なことであろうと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思っております。

 それと、最後にちょっとお尋ねしたいんですけれども、今懸念されておりますのは、実質的に雇用関係にあるのではないかと思われるんですけれども、契約上は個人事業主との業務請負契約というような形で仕事をしている、もしくは、そういうことを強要する事業者、そういうものがあって、これは労働基準法の適用逃れ、ある種の脱法行為ではないかと思われるようなケースがあろうかと思います。これはまた、ILOの方でも国際的にも問題になっている、労働のアンダーグラウンド化というか、そういった流れにも通ずるような国内での問題でもあろうかと思います。

 こういう問題に対しての対策についてお聞かせをいただきたいと思います。

山越政府参考人 お答え申し上げます。

 労働基準法上の労働者でございますけれども、これは、事業に使用され、賃金を支払われる者をいうものでございますので、労使間の契約の名称にかかわらず、仕事の依頼に対する諾否の自由がどうかとか、業務の遂行方法などについての指揮命令があるかないか、あるいは報酬の労務対償性などの要素を総合的に見まして判断していくこととなっております。そして、実質的に事業に使用され、賃金を支払われる者と認められる場合には、労働者として労働基準法が適用されるわけでございます。

 こうした労働者に当たる場合につきましては、労働基準監督署等におきまして、労働基準法違反について是正勧告などを行いまして、必要な指導に努めてまいる考えでございます。

穴見委員 ありがとうございました。

 いずれにしましても、働き方改革も進めていく中、労働者が老後も含めてまた健康に働き続けられる、そういった社会を実現するためにも、基準監督署のそういった監督等がもっともっと強化される必要があると思いますし、監督官の数も非常に不足をしている、諸外国と比べても非常に少ないという中で監督官をふやす方向性というのが出てきていることはいいことだと思いますけれども、今の取り締まりの状況等を見ても、相当数、監督官も足りないんだろうというふうにも思います。

 法的な措置もさることながら、やはり行政の執行上の公平性というものも担保していかないと、本当の意味で、企業サイドもフェアな競争環境というものが維持されない。正直者がばかを見るような、そういう労働監督のあり方であってはならないと思いますので、今後のますますの努力に期待をいたしたいと思います。

 本日は、まことにありがとうございました。

丹羽委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして、質疑に入らせていただきます。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 まず、先ほど来議論になっております待機児童問題について、私からも一問、質問をさせていただきます。

 保育の受け皿の確保は必要不可欠な施策、もう言うまでもございません。都市部において待機児童問題は大変深刻でございまして、とにかく、どなたにお伺いをしても、もう本当に大変だ、こういうお声でございます。

 もちろん、政府・与党としても、この保育の受け皿の確保は、もう全力で今やっていただいているというふうに認識をしております。

 例えば、処遇の改善にいたしましても、来年度予算、全ての保育士に二%の処遇改善、これで、自公政権になりまして約一〇%改善ということでございます。そしてさらに、経験のある保育士の皆様、最大で月四万円、当初、消費税の財源でやろうとしてきた以上の、さらに処遇の改善をやっていく。とにかく、この加算がしっかりと行き渡っていく、これが大事だというふうに思っております。そしてまた、量的拡充にしても、当初の計画を超える量で今整備をしている。

 こういう状況ではございますけれども、しかし、大変残念なことに、保育のニーズがそれ以上にふえている、こういうような議論もございました。引き続き、施策を総動員して受け皿の確保に努めていっていただきたい、このような、もう本当にお願いでございます。

 今後の保育のニーズについて、保育のニーズがふえているということであれば、やはりそれに沿った形でしっかりとやっていかないといけない。この今後の保育のニーズについて、どのようにお考えか。そして、特に都市部において深刻な待機児童問題、この解決に向けた施策の取り組み、これらについてお伺いをしたいというふうに思います。

堀内大臣政務官 中野洋昌議員御指摘のように、女性の活躍や保育受け皿の拡大の取り組みを受けて、保育の申込者数が増加しております。このために、待機児童者数が依然として二万人を超える水準で推移するなど、非常に厳しい状況が続いております。

 保育の実施主体である各市町村では、これまでも、将来に向けて、潜在的な保育ニーズを幅広く把握し、整備計画の見直しを行っており、平成二十五年から二十九年の五年間で約四十八万人分の拡大が見込まれているところであります。さらに、企業主導型保育事業による受け皿の拡大見込み約五万人分と合わせれば、合計で約五十三万人分となります。

 政府としては、これらの保育園の整備等に必要な予算を確保するとともに、保育園等の設置の際の地域住民の方々との合意形成に対する支援、そしてまた、賃借料の高騰などに対応した賃借料への支援、そしてまた、保育園等に土地を貸す際に固定資産税の減免が可能な旨の明確化などの施策を総合的に展開しているところでございます。

 今後も、女性の就業のさらなる増加に伴い、保育ニーズも高まることが想像されるため、各市町村の取り組みを強力に支援し、引き続き待機児童の解消に向けて全力で取り組んでまいりたい所存でございます。

中野委員 ありがとうございます。

 都市部のこの待機児童問題、本当に深刻な課題でございます。しっかりと与党としても、これが進んでいくように、また後押しをしていきたいというふうに思います。

 続きまして、発達障害への対応ということで御質問をさせていただきます。

 この発達障害、特別な支援を必要とする子供が非常に増加をしておるということで、こうした子供たち一人一人の可能性を開いていくための対応をしていきたい。

 例えば、来年度予算では、教育の分野では、発達障害に対する特別の支援を行う通級指導というものがございますけれども、これの教職員定数が今まで非常に不安定であった。これを基礎定数化して、それぞれの学校で支援が行き届く、他省庁ではこうした取り組みもしていただいておるところでございます。

 この発達障害につきまして、早期発見、早期対応ということでさまざまやっておりますけれども、やはり実際に対応する専門的な医師、病院の数、これが圧倒的に不足をしているというのが御指摘でございます。受診まで大変に長い期間を待たないとこれが受診をできない。

 私も、実際にこうした対応をされている医師の方にお伺いをしたことがございますけれども、やはり非常に忙しい、全く数が足りない、こういう課題がございます。私は、診療報酬のあり方なども含めて、しっかりとこうした受け皿の確保ができるように、やはりこれから頑張っていっていただきたいというふうに思います。

 厚生労働省におきまして、こうした専門的な医療機関の受け皿、こうしたものの確保に向けての対策、これについてお伺いをしたいというふうに思います。

    〔委員長退席、とかしき委員長代理着席〕

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 発達障害が疑われる児童の初診待ちというようなことも問題になってございまして、こうしたことに対応するためにも、専門的な医療機関を確保するということが非常に重要だという認識でございます。

 この発達障害に対する専門的医師ということにおきましては、厚生労働省では、国立精神・神経医療センターにおいて、都道府県等において指導的な立場にある医師などに対する研修を実施してございまして、平成二十八年度も延べ百六十四名の方の研修を実施しているところでございます。

 ただ、この問題につきましては、専門的医療機関に患者が集中し過ぎるというのもまた一面の見方でございまして、発達障害の診療にかかわる医師の裾野を広げていくということも大事だということでございまして、そうした患者の集中が緩和できるよう、今年度から、発達障害に対応できるかかりつけ医を育成するために、都道府県、指定都市が研修事業を行う場合に、国庫補助を行っているところでございます。

 現在、来年度予算案の中に入れさせていただいていますものでございますけれども、来年度からは、この補助事業を、地域生活支援事業の中の国として促進すべき事業として新設する地域生活支援促進事業と位置づけまして、確実に国庫負担五割の補助金を確保して、都道府県等が積極的に研修に取り組めるように措置しているところでございます。

 今年度は六十七の都道府県、政令市のうちの九の県に参加していただいていますけれども、これで大分来年度はふえるのではないかというふうに考えてございます。

 さらに、都道府県の方で、発達障害の適切な医療が提供できる医療機関の開拓などを行います発達障害者地域支援マネジャーの配置を今お願いしていまして、現在、今年度の六月時点で百三十三名いるんですけれども、これは、県によっては十名いる県もあり、まだ、六十七の都道府県、政令市のうちの三十八のみの配置になってございます。

 この三月に第五期障害福祉計画に係る国の基本指針を公表する予定でございますけれども、その中で、都道府県等に対しまして、こうした発達障害者地域支援マネジャーの配置を促すこととしてございまして、さらにこの事業につきましては都道府県等が積極的に取り組めますよう、地域生活支援促進事業にも位置づけて行うこととしてございます。

 こうしたことを通じまして、専門的医療機関の確保を図ってまいります。

中野委員 ぜひともしっかりと進めていただきたい。教育の通級指導のところも、ずっと受けたいんだけれども受けられないという、これも待機児童というふうな御指摘もございまして、さまざま改善もしていただいたところでございます。専門的な医療機関の受け皿確保も、しっかりと努めていっていただければと思います。

 続きまして、働き方改革について、今まさに実現会議におきまして、長時間労働の削減、これが最大のテーマで、労使で調整を行っていただいている、そんな状況でございまして、三六協定でも超えることのできない時間外労働の上限を設ける、これが最大の今のテーマでございます。

 この上限そのものも議論になっておりますけれども、実はこの上限、もともと業種によって適用除外の指定がございまして、例えば運送業であるとか建設業であるとか、そういったものが現在適用除外ということでございます。

 しかし、こうした業種、現在でもかなり人手不足ということでございます。こうした業種が魅力のある職業となっていくためには、やはり長時間労働を削減していく取り組みをぜひとも進めていっていただきたい。私としては、ぜひこの適用除外の対象からも外していただいて、長時間労働の削減をしていくという取り組みを進めていただきたいと思っておるんですけれども、しかし、個別に伺ってまいりますと、かなり現場においては御苦労をされているなという感じがございます。

 例えば、建設業、現場で作業をしております。それが、施工管理をされる方というのは、現場の作業が終わってから、さらに書類をいろいろ書いたり、いろいろな作業がある。他方で、現場代理人という制度もございまして、これは当然、施工管理でずっと現場にいないといけない。そうすると、ずっと現場に張りついて、また書類をつくる、これでどうやってその労働時間を削減していくか。こういう、例えば現場代理人の制度の規制の緩和をするですとか、いろいろなことを、もちろん、発注者側の取り組みも含めていろいろやっていかないと、これはなかなか難しいんじゃないかという御意見も地元ではいただいたところでございます。

 しかし、こうした具体的課題を、今回の議論を機に、ぜひさまざま前に進めていっていただきたい。今回、こうした特定の業種というところでテーマになっておりますので、きょうは国交省に来ていただきましたので、例えば建設業の長時間労働の削減の是正はどういう取り組みを進めていかれるのか、お伺いをしたいというふうに思います。

木原政府参考人 お答えいたします。

 建設業をより魅力ある産業とすることで将来の担い手を確保するためには、建設業においても、長時間労働の是正等、働き方改革を進めていくことが不可欠であると考えております。

 ただいま、現場代理人などに関して御指摘がございました。

 国土交通省におきましては、これまでも、平成二十二年に標準約款を改正し、工事現場の現場代理人について、一定の条件を満たせば常駐を要しないことといたしました。また、若年層の入職促進と技術者の確保、育成に向け、建設業法に基づく技術検定試験の一部について、平成二十九年度より年二回実施することといたしました。このような現場代理人の常駐義務の緩和や技術者の確保、育成により、現場での技術者の負担が軽減され、長時間労働の是正にもつながることを期待しております。

 また、長時間労働の是正に関しましては、現在、政府の働き方改革実現会議において議論が進められているところでございます。国土交通省におきましても、本日、各建設業団体のトップを省内に招き、長時間労働の是正等について、国土交通大臣との意見交換会を開催する予定でございます。

 建設業は、社会経済の根幹を支える重要な産業でございます。将来の担い手を確保する観点からも、国土交通省としても建設業界の働き方改革にしっかりと取り組んでいく考えでございます。

中野委員 まさに、きょう、大臣がさまざまお願いをされているというふうな御答弁もございました。各省においても、こうした長時間労働の削減というのは、ぜひ進めていただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 少し通告が前後いたしますけれども、生活困窮者自立支援制度についてお伺いをしたいというふうに思います。

 二〇一五年四月から施行でございますけれども、自治体によって取り組みの進み方がさまざまあるというふうにも聞いております。

 私の地元で取り組みを伺うと、やはり就労支援というのが非常に大事だなというふうに感じておりまして、もしこれがなければ、そのまま、ひょっとすると生活保護を受ける、こういうケースになってしまうかもしれない。しかし、働いていただく、生活を自立していただく、これは非常に大事でございます。

 例えば、私、兵庫県でございますけれども、伊丹市ですとか川西市ですとか、そういうところでは市の委託事業という形でこれをやっておりまして、私がお伺いしたところによると、平成二十八年度の上半期では、例えば七十八名相談をいただいて、今、何らかの形で社会参加ということで五十五名の方にやっていただいて、そのうち十八名の方が一般就労に結びついている、こういうケースもお伺いをいたしました。

 やはり働いて生活が自立できなければ、またいろいろな行政の、引きこもったままかもしれない、あるいは仕事がないままかもしれない、生活保護を受けていたかもしれない、こういう方がこれだけ自立できているということは、自治体にとっても非常に大きなメリットだというふうに感じております。

 こうした好事例というのも、ぜひいろいろなところに展開をしていっていただきたいと思いますし、また、この就労支援の取り組みをする事業者に対する、例えばインセンティブをもっと与えていく、こうした支援の強化というのもぜひとも検討していっていただきたい、このように感じております。

 厚労省の方から答弁いただきたいと思います。

堀内大臣政務官 お答え申し上げます。

 認定就労訓練事業は、いわゆる精神的なもの、また健康的な面で、すぐに一般的な就労につくことが難しい方に対しまして、その前に、御本人の状況に応じて勤務時間や業務内容などについて柔軟な働き方を提供することで、徐々にステップアップしていただいて、将来の一般就労につなげていく大切な事業であります。

 その就労訓練を行う場として民間企業や社会福祉法人等を認定しており、そういった認定を受けることによって、固定資産税等の各種税制の優遇、そしてまた、自治体が物品購入等で随意契約を行う場合のいわゆる優先発注といった支援を受けることができる場合がございます。

 これまで、優先発注の仕組みを設けている、先ほど先生がおっしゃいました、先生の御地元である兵庫県の伊丹市の事例につきましては、先進的な取り組みとして自治体向けに周知してきてまいっているところでございます。

 現在進めている生活困窮者自立支援制度の見直しに向けた論点整理のための検討会における議論の中では、就労訓練を行う事業所に対する経済的なインセンティブや、受け入れのための技術的支援の必要性等が論点として挙げられており、今後、見直しを進めていく中で、どんな方策が考えられるかを検討してまいりたいと存じます。

中野委員 ありがとうございます。

 さまざまな事例が創意工夫でなされております。

 例えば、私が聞きましたのは、子供食堂と学習支援みたいなものも連携をしているであるとか、あるいは、遠隔地の他の地方の農業、こういうところと連携をして、広域でそういう就労支援をしている事例でございますとか、いろいろな事例がございます。ぜひ、研究もしていただきまして、取り組みを進めていただきたいというふうに思います。

 きょう、総務省に来ていただいております。災害時における障害者の方々への情報提供ということで、少し御質問をさせていただければと思います。

 災害時において、これも私、こうした御意見を地元で伺ったんですけれども、テレビなどでは地震情報とかテロップがいろいろ出るわけでございますけれども、これが音声化ができなくて、字幕としては、どこが震度何とか、いろいろな情報は出ておるんですけれども、例えば視覚障害者の方はこうした情報に直ちにアクセスできないのではないか、こういう御意見をいただいたこともございます。

 災害時における障害者の方、これはやはり災害弱者でございます。さまざまな配慮をする必要があるというふうに思いまして、特に障害者差別解消法も施行されました。二〇二〇年には東京オリパラということで、パラリンピックも開催されるということでございます。障害者に対する合理的配慮というものを大きく進めていっていただきたいというふうに思っております。

 今後の放送分野におきまして、こうした災害情報、こうしたものが障害者の皆様に届いていくようにいろいろな取り組みを進めていただきたい、このように思いますけれども、総務省から取り組みを伺いたいというふうに思います。

    〔とかしき委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(眞)政府参考人 お答え申し上げます。

 放送法上、放送事業者は、災害時に役立つ放送を行うこと、視聴覚障害者のため、字幕番組、解説番組をできる限り多く設けることということとされております。

 災害放送の具体的な実施につきましては、各事業者が法令上の義務を踏まえまして自主的、自律的に行っているものであり、視覚・聴覚障害者へのあり方も含めて、適切な災害情報の伝達が確保できるように努めていただいているものというふうに承知しております。

 特に大規模災害時におきましては、一部の放送事業者ではございますけれども、テロップと同等の内容をアナウンサーが読み上げる、あるいは、緊急地震速報のチャイム音の後に自動的に定型的な文言を読み上げる音声が送出され注意を呼びかけるといった取り組みもされているところでございます。

 また、テロップなどの文字情報を自動的に音声で読み上げるシステムについて、放送事業者において研究開発が進められているというふうに承知をしております。

 今、先生御指摘のように、障害者差別解消法の施行や二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催も踏まえまして、今後とも放送事業者において災害情報の確実な提供に向けた取り組みが進むということを私どもとしても期待をしておるところでございます。

中野委員 ありがとうございます。これも非常に大事な政策でございますので、しっかりと前に進めていっていただきたいと改めてお願いを申し上げます。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時六分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 大臣、参議院の予算委員会、お疲れさまです。

 少々時間がおくれたようですけれども、早速質疑に入らせていただきます。

 まず最初に、先日の安倍総理の施政方針演説で、給付型の奨学金のことを話すときに、その前段で、「どんなに貧しい家庭で育っても、夢をかなえることができる。そのためには、誰もが希望すれば、高校にも、専修学校、大学にも進学できる環境を整えなければなりません。」そういう発言を安倍総理はしているんですね。それを受けて、先般の衆議院の予算委員会で我が党の細野議員が、では生活保護の世帯の子供が大学に行けるのか、そういう指摘をさせていただいたというように思います。

 私は、大学ではなくて、その前の段階の高校の進学においても、生活保護世帯はかなり厳しい状況にあるということを指摘させていただきたいと思います。

 去年の四月にも、この問題、ちょうど児童扶養手当法の審議のときに指摘をさせていただいたんですが、生活保護世帯の中学生が高校受験をするときに、入学をする際の入学金や授業料や入学の考査料、受験料というんですか、それが十分に保護費から支払われているのかというと、そうではないということを指摘させていただきました。

 ちょっとおさらいをしますけれども、例えば授業料は、私立だと平均で三十九万円ぐらいかかる。それに対して、公立だと十一万八千円なんですね。今、授業料は、就学支援金があるので、公立に入れば基本的にはお金はかからないし、私立でもその分が支援されるということですけれども、ではその差額の分の見合いが保護費で入るかというと、そうはなっていない。

 また、入学料、入学のときに払う金額、私立だと大体十六万円ぐらいが平均だと言われております。公立は五千六百円なんですけれども、生活保護の基準だと公立分しか出てこないんですね。

 受験のお金も、試験を受けるだけですよ、公立は、都立だと大体二千二百円だそうです。私立だと、受験料というのは平均一万五千八百九十八円だということなんですよ。私の江戸川区、私立高校が三校ありますが、調べましたら全部二万円で、全て調べたわけじゃないですけれども、東京は、この受験料というのは二万円になっているんです。でも、生活保護だと基準額は公立の金額になっているということですね。

 高校は必ずしも希望しているところに入れるわけではないということは御承知のとおりです。試験で受からなければ合格できません。ですので、都立を希望していても、落ちた場合に私立に行かなければならない。その費用の負担が厳しいということになると、経済的な理由で公立をランクを落として受けなければならない、そういう人、そういう世帯というのはたくさんあるんだと思います。恐らく、生活保護の世帯の子供たちというのはそういう選択をせざるを得なくなっているんじゃないかと思います。

 仮に、何とか頑張って公立を受けたと。でも、落ちる場合だってあるわけですよ。そのときに仕方がなく二次募集、三次募集で私立の学校を受けたときに、やはりそこで一校受けると二万円の、受けるだけでも負担がある。仮に受かったとしても、入学金だ何だということで、生活保護で出てくる金額はそれに満たない。

 私は、せめてこの入学にかかる費用は全額、生活保護費の中で賄うようにすることが必要なんじゃないか、四月二十日にもそういう主張をいたしました。まさに今回、安倍総理が、全ての子供たちに進学できる環境を整えなければならないということを主張されたわけですから、生活保護制度もそれに見合う制度に変えていただきたいというように思います。

 仮に高校で私立の学校に行くときにかかる費用、これを全額保護費で実費分しっかりと見るということに変えることはできないでしょうか。

堀内大臣政務官 お答え申し上げます。

 生活保護世帯の自立助長の観点から、生活保護受給世帯の子供の高校進学は大変重要であると認識しております。しかしながら、高等学校等就学費の基準額の設定につきましては、生活保護を受給されていない低所得者世帯とのバランスを考慮して、公立高校の入学費用の実態を踏まえて設定させていただいているところでございます。

 私立高校に入学する際の費用については、高等学校等就学費の基準額で賄い切れない場合は、生活福祉資金の貸し付けや奨学金の活用などによって対応していただきたいと考えております。

 いずれにせよ、子供のいる世帯の扶助や加算のあり方については、子供の貧困対策の観点も踏まえて、平成二十九年度に本格化する生活保護基準の検証において、さまざまなデータを活用しながら丁寧に議論してまいりたいと存じております。

初鹿委員 四月二十日の答弁から一歩も前進していないんですよ。総理が違う発言をしたわけですよね、もっと前に進むような。ぜひ厚生労働省も、それに応えるような制度の改正を行ってもらいたいと思いますよ。

 前回も言っていましたけれども、生活保護を受給されていない低所得者世帯とのバランスをということを言いますけれども、そもそも日本は生活保護の捕捉率が低いわけです。そこからしっかりと支援をしていくということも考えなければならないと思うんですよ。我が党は、低所得者対策ということでいえば、全ての人にちゃんとした最低限の保障ができるように給付つきの税額控除とかそういうものを主張してきておりますから、そういう抜本的な制度改正ということも少し考えていただきたいというふうに思います。

 そしてもう一点、これはちょっと確認をしておきたいんです。

 先日、給付型の奨学金の拡充を求める集会に出た際にある高校の先生が言っていたんですけれども、自分の高校の優秀な高二の学生が、生活保護世帯だったんですけれども、ある民間奨学金を受けられるようになった。評定平均四・三、かなり優秀ですよね。一年で五万円で、二年もらえることになったので十万円がそこである。それと、自分でアルバイトをする、そして親族からの借り入れで、合わせれば、その子は保育士になりたいという夢を持っていたんですけれども、その専門学校への入学金を賄えるというふうに考えて、ソーシャルワーカーがいろいろこういうことでできないかということで、福祉事務所に相談に行ったら、進学資金の蓄積は収入認定の免除の対象にならないということで、収入認定されるよと言われて、結局、そのプランを断念して別の進学の道に進んでいったということなんです。

 現状、これは改善されているということでいいんですよね。収入認定の免除の対象になるんですよね。

堀内大臣政務官 生活保護制度は、利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件としていることから、毎月の最低生活費から、あらゆるものを活用して得た収入を差し引いた差額を保護費として支給することが原則ではあります。

 親族からの貸付金についても、親族の扶養として生活保護に優先して、収入として扱われることとなっております。

 けれども、一方で、生活保護家庭の子供の進学による自立を支援することは重要な課題であり、収入を大学等の入学金や受験料に充てる場合は、子供のアルバイト収入については平成二十六年四月から、また、奨学金については平成二十八年七月から、収入として認定して保護費の減額をするのではなく手元にちゃんとお金が残るように順次運用を改善してきているところであります。

 貧困が世代を超えて連鎖しない環境を整備することは極めて重要であり、今後とも、生活保護制度の原則との関係にも留意しつつ、生活保護世帯や低所得者世帯の子供たちの自立支援に取り組んでまいりたいと存じます。

初鹿委員 これは、自治体の福祉事務所の現場に徹底をしていただきたいというふうに思います。

 もう一点、四月の二十日にも指摘をさせていただいたんですけれども、資料をお配りしておりますが、四月に皆さんにもお配りをした資料と全く同じものです。これは小学校の子供が二人いる世帯で試算をしている額ですけれども、中学生でもそれほど変わりがないので、同じものを使わせていただきます。

 児童手当や児童扶養手当は四カ月に一回のまとめ払いになっているんですが、児童扶養手当や児童手当が入らない月は生活保護費からその分が減額をされて、まとめて後でどんと乗っかるような形になっているんですね。その結果、本来、生活保護の基準でもらうべき金額が、児童手当も児童扶養手当も両方もらえない月は減らされるんですよ。

 生活保護というのは最低限の生活を保障するための制度なのに、最後に結局、後でもらえるからいいだろうということではないと思うんですよ。毎月毎月、毎日毎日御飯を食べるのに、後からお金がもらえるから我慢しなさいというのはおかしな話で、やはり生活保護でもらえる金額は、毎月同じ額がきちんと入ってくるべきだと思うんですね。それが、児童手当や児童扶養手当の額を一回減らしておいて、後でまとめて払うときに上乗せで乗っかってくる。

 この数字を見ていただいてもわかるんですけれども、例えば四月とかだと、両方合わせると三十九万、四十万近くになるんですよ。もらえるときに物すごい多額のお金になって、もらえないときは十三万幾らというふうに生活が苦しくなる。

 こうやって収入の金額にばらつきがあるというのは、非常に家計を管理する上でも難しくなるし、やはり生活を維持するという上で不適切だと思うんですね。これを改善するために毎月払いということを主張しましたが、それがすぐにできないということであれば、どっちも自治体から支給をされるものなんだから、自治体間で融通をきかせればいいんじゃないかというように思うんですね。

 つまり、生活保護費はきちんと毎月同じ金額を払う。児童手当や児童扶養手当の支給を本人に支払うのではなくて、同じ自治体の中でやりくりすればいいんだから、自治体が代理受領ということになるのかわかりませんけれども、自治体の中でやりとりをして、本人にはきちんと毎月同じ金額が入るようにできないものかなというように思うんです。

 これは単に自治体の事務の問題だと思うので、児童扶養手当、児童手当、それぞれこういうふうな仕組みをつくることはできないのか、お伺いさせていただきます。

塩崎国務大臣 生活保護制度におきます児童扶養手当などの取り扱いについて、現行では、毎月の最低生活費から、年に三回支給をされます児童扶養手当などの四カ月分の受給額を四等分した額を差し引いて保護費を支給するという形になっているところでございます。先ほど、毎月引かれるという話はこういう仕組みであるわけです。

 児童扶養手当などを福祉事務所が代理に受領して、ならしていったらどうだという御提案をいただきましたが、代理受領すること自体について、児童扶養手当制度などにおきまして、児童福祉の観点から、みずから手当の支給を受ける権利というのが保障されているというところにまず注目をしなければならないのではないか。この権利を譲り渡すことが禁止をされているという趣旨がございますので、一旦自治体が受け取って、ならしてやるということについては、このみずから手当の支給を受ける権利というものに、まあこれが基本なものですから、この趣旨に照らしてみると慎重に考える必要があるのかなというふうに思うところでございます。

 一方、生活保護世帯や一人親家庭の計画的な家計管理というのは当然大事であって、それに意を用いて先生は、ならしたらどうだ、こういうことをおっしゃっていただいているわけでありますが、私どもとしては、金銭管理に課題がある生活保護世帯に対するケースワーカーなどによる金銭管理の支援というのをしっかりとやること、それから、一人親家庭の親を対象としたファイナンシャルプランナー等による家計管理の講習会の実施などを通じて、家計管理能力のアップというものを図っていくことによって、多少の多い少ないをしっかりと踏まえながら生活を設計していくということをぜひ進めていただければというふうに思っております。

 そういうための努力というものを今、取り組んでおりますので、こういうことをしっかりと今後とも進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

豊田大臣政務官 ただいまの大臣からの答弁と重複するところもあろうかというふうに思いますけれども、生活保護制度における児童手当の取り扱いについては、現行では、毎月の保護費から、年に三回支給する児童手当の四カ月分の受給額を四等分した額を差し引いた上で、同額の児童扶養加算を加えた額の保護費が支給されていると承知をいたしておるところでございます。

 御提案の、児童手当を福祉事務所が代理受領する、行政が代理受領することについては、児童手当制度においては、児童福祉の観点から、みずから手当の支給を受ける権利が保障され、この権利を譲り渡すことが禁止されている趣旨を慎重に考え、対応すべきと考えております。

初鹿委員 その趣旨を考えれば、逆に代理受領を認めて、家計管理をしやすくした方が趣旨にかなうような気がするんですよね。確かに今、法律で監護者に支払うということになっているから、そう簡単ではないと思いますけれども、ぜひこれは前向きに検討していただきたいと思います。自治体間で融通すればいいだけの話で、それほど難しいことではないと思いますので、よろしくお願いいたします。

 あともう一点、この表を見ていただければわかるんですけれども、児童扶養手当が四月の支給になっているんですけれども、入学のときにかかるお金を払うのは三月ですから、前倒しというか、一月ずらして三月に支払い月を合わせるようにできないものかなと思うんですよ。三月に一番お金がかかるのに、あえてお金が、使い終わった四月に入るというのは生活実態に合っていないと思うので、これは一カ月ずつ全体的にずらせばいいだけなので、ぜひ考えていただきたいと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 昨年、児童扶養手当についての改正を行った際に議論が随分行われて、今のお話にも関連しますけれども、児童扶養手当の支払い方法などについて、回数を含め、議論がございました。昨年八月から関係省庁連絡会議で検討を進めておりまして、現在、支給実務に関する実態を調査しております、地方自治体で毎月の支払いをやっているところもありますので。自治体などの関係者へのヒアリングも行うこととしておりまして、これらの結果を分析した上で、一人親の方の利便性の向上と家計の安定を図る観点も踏まえ、支給時期も踏まえた児童扶養手当の支給回数のあり方について引き続き検討してまいりたいと思います。

 今、三月が家計が膨らむということで御指摘をいただいておりますけれども、確かにそういうこともありますので、そういうことを踏まえた上で、いつ、どういう支給回数で支払うことが好ましく、また可能なのかということをしっかり詰めていきたいというふうに思います。

初鹿委員 理想は毎月支給だということをつけ加えさせていただいて、三月、やはり家計が膨らむので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次の話題に入ります。

 皆様のお手元にお配りをしている資料を一枚めくっていただいて、新聞の記事を見ていただきたいんですけれども、ことしの一月二十八日に長崎市で、元夫からのストーカー被害を相談していた女性が殺害される、そして元夫も自殺をするという事件が発生をいたしました。その新聞記事です。

 この事件ですけれども、ストーカーをされている夫のもとに元妻は行っていて、そして殺害をされたようなんですね。何で、ストーカーをされているのに、本来だったら会うのも嫌な怖い相手のところに行ったのかというと、もう一枚めくっていただきたいんですが、子の面会が事件を招くという見出しになっておりますが、実は、離婚をしたときに面会交流の取り決めをしていて、子供を連れて父親に面会をさせに行っている、そのときにこの事件が起こったということなんです。

 今、議員連盟を中心に、離婚後も親子の関係を継続的に維持していこうという法案が準備をされているということでありますが、このさなかに起こった事件ですので、私は非常に注目をしておりますし、このようなことが二度と起こらないような対策をしっかりとらなければいけない、そういう思いで、きょうはこの問題を取り上げさせていただきます。

 欧米などでは、既に、共同親権ということがベースにもあるんですが、面会交流というのは進んでいて、同様の事件がたくさん発生をしていて、面会交流のあり方自体、考え直さなければいけないということが言われ出しているんです。

 オーストラリアでは、二〇〇九年、ダーシー・フリーマンちゃんというお子さんが、面会交流をしている最中に父親に橋から川に投げ落とされて殺害されるという事件がありました。それがもとになって、オーストラリアでは法律の改正というものを行われたようであります。

 また、アメリカは、これはあるNPO団体が調べた結果ですけれども、二〇〇九年から二〇一六年までの八年間で、面会交流を法廷が決めて、その上で交流をしていて殺人事件になった、そういうことで新聞に報道されたものだけで四百七十五件、一年当たり六十七・九の事件が発生している、そういうこともアメリカでは事実としてあるわけです。

 そういう現実があるということを踏まえて、では日本は今後どうなっていくのかということも考えていかなきゃいけないと思うんですね。

 御承知のとおり、二〇一二年に民法七百六十六条が改正されました。それ以降、家裁の審判や調停で、面会交流の実施というのは原則になっています。実際に、まず面会交流の調停や審判の件数が、平成二十年は六千二十件だったのが、平成二十八年には一万一千四百八十六件と約二倍になっているんです。調停が成立したものも、二十年が三千百五十六件だったのが、二十八年には七千二十一件と倍になっている。この傾向は、ますます広がっていくんだというふうに思います。

 件数がふえれば、やはり、高葛藤な夫婦で面会交流を決めて交流が実施されることも多くなる。そうなってくると、こういう事件が起こる危険性があるというふうに私は考えております。

 今回の事件は、ストーカー被害に遭っていて、LINEで、会う数日前にも、殺害をほのめかすようなメッセージが送られていたんです。自分にもまた子供にも危害が加えられるんじゃないか、そういうおそれがあるんだけれども、このお母さんは非常に真面目だったんでしょう、取り決めをしたから面会しなければいけないということで、面会に行ったわけです。

 こういう被害に遭う前に、取り決めをしているからといって会う必要はないんじゃないかと思うんですが、被害を受ける前に救済を受けるような法的な制度というか、方法というのはどういうものがありますか。

金子政府参考人 お答えいたします。

 民法上は、子の面会の交流について必要な事項を定める場合は、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとされておりますが、その趣旨は、面会交流の取り決めをする場合のみならず、実際にこれを実施する場合にも当てはまる。したがって、子の最善の利益に資するように配慮すべきものというふうに考えられます。

 したがって、面会交流の取り決めがされていたとしましても、相手方から殺害をほのめかす言動があるなど、面会交流をすることにより子の利益が害されると認められる場合には、これに応じなくても必ずしも法的責任を問われるということにはならないというふうには理解しております。

 また、仮に、一旦、面会交流が取り決められたとしましても、その後に事情の変更があったような場合は、当事者間の協議または家庭裁判所の調停、審判によって面会交流の条件を変更したり、面会交流を行わないとすることも可能となっております。

初鹿委員 済みません。豊田政務官、質問は終わりましたので、お時間がありましたら御退席しても結構ですので。

 今の答弁、確かに、そういう制度になって面会交流の取り決めをしたからといって、それを必ず守らなければいけないというわけではない、事情の変更によってはそれはやらなくてもいいし、また、裁判や調停や審判で変更することもできるということですけれども、なかなか当事者はそういうふうにならない、そういうふうにすぐに思いつかないですよね。ですので、私は、葛藤が高い夫婦で面会交流を実施する場合は、間に面会交流の支援をする第三者をかませる、第三者機関を使って面会交流の支援を行うという体制をしっかり整えていく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 そういう観点で幾つか質問させていただきますが、まず、その前の大前提として、今回の議連で準備をしている法案の中でも、DVや虐待があった場合には特別な配慮を行う、そういう趣旨になっているんですけれども、今の家裁の審判や調停の状況がどうなっているのかというと、これは、原則、やはり面会交流をさせるという決定がされていることが非常に多くなっているというふうに伺っております。

 皆さんの手元に、一番最後のページですけれども、ある名古屋家裁の判決文を持ってきました。これはぜひ皆さんに読んでいただきたいんですけれども、申立人は父親です。要は、会いたいと言っている方が父親です。そして、相手の母方にたびたび暴力を振るっていた。その子供の前でも暴力を振るっていた。でも、未成年者への直接の暴力があったことは確認できていない。だから、直接面会をすることが未成年者らの福祉を害するとまでは言えないということで、これは面会交流を認めているんです。

 そこで、ちょっと厚生労働省にお伺いしますが、子供の目の前で暴力を振るう、DVを行う、面前DVといいますが、これは虐待に当たるのではないかと思いますが、違いますか。

堀内大臣政務官 児童の面前で配偶者に対する暴力が行われることは、児童に著しい心的外傷を与えるものでありますので、児童虐待に該当すると解されております。

 そして、その場合、いわゆる、暴力を振るった側は児童虐待の加害者に当たると考えられます。

初鹿委員 つまり、この判決は、児童虐待の加害者に面会交流を認めているということですよ。DVの被害者である母親がその場にいなかったら、加害者であった父親はその瞬間、加害者じゃなくなるんですか。私は違うと思うんですよね。こういう認識がまだまだ家庭裁判所には不足をしているんじゃないかということをまず指摘させていただきたいと思います。

 それともう一点、この判決文の一番上にも書いているんですが、子の健全な成長にとって有益であり、重要な意義があるというふうに面会交流を規定しているんです。でも、民法七百六十六条はそういうふうに書いてありますか。面会交流は子供の利益だから優先すべきだというふうには、私は書いていないと思います。七百六十六条に書いてあるのは、面会交流を協議で定める、その場合は子供の利益を最優先しようと書いてあるんですよ。ところが、実際の家裁の運用などでは、面会交流が子供の利益だ、そういう観点になっているように思うんです。

 ちょっとここは法務省にきちんと見解を伺いたいんですが、七百六十六条は面会交流を子供の利益だというふうに規定しているものなのか、そうでないのか、お答えください。

金子政府参考人 お答えいたします。

 文言は今委員御指摘のとおりでございますが、このときの審議等に照らして振り返ってみますと、特段問題とならないようなケースでは、基本的には、夫婦の離婚と親子の離別は別の問題ですので、子の健全な成長という面からしますと、一般的に言えば、親との接触が継続するということが望ましいということはこの改正のときにも考慮されていたとは思います。

初鹿委員 今答えたとおり、一般的にはそうなんですけれども、裁判所の調停や審判に持ってこられるようなケースというのは、夫婦間でかなりの葛藤があって、敵対関係にあって持ち込まれることが大半なんじゃないんですか。つまり、そういう場合に、本当に面会交流を継続することが子供の福祉にかなうのかどうかということは、やはり慎重に考えるべきだと思うんですね。

 それと、子供も、仮にDVがあったりしたとしても、お父さんに会いたいという思いはあったりするんじゃないかと思うんですよ。ただ、どちらの側に対しても、どちらの側に立ったらいけないんじゃないかとかお父さんにもお母さんにも気を使って、子供が板挟みになるということは現実として今起こっていると思います。やはり子供は、どっちにつくというのはなかなか言いづらいんだと思います。

 そういう中で面会交流をするということですから、私は、親同士が葛藤をずっと抱え込まないようにすることが必要で、そのためには第三者機関をまずは介在させる、それと、親に対する支援というのもきちんとやはりやっていかなければいけないと思うんですよ。親も年々変わっていって、最終的には第三者機関がなくても当事者同士でできるようになっていくようにしていくというのが私は理想だと思うんです。そのために、まずは、面会交流をする第三者機関の支援をきちんと行って、全国に第三者機関をつくるようにしてください。

 もう時間がなくなったのでかなりはしょりますけれども、あと、父母を、父も母もきちんと支援する仕組みをつくってもらいたいと思います。特にDVの加害者の父親は、自分がDVをしていたという認識がない場合も多くあるんですね。しかし、だからといって、DVの更生プログラムに行きましょうと言っても、自分はしていないと思っているわけだから簡単にいかないので、DVだからということではなく、あってもなくても親を支援するような体制というのをつくる必要があると思います。そうじゃないと同じような事件が何度も何度も起こってしまうと思いますので。

 ぜひ、第三者機関を支援する、そういう仕組みをつくれないのか。例えば財政支援、家賃代を補助するとか運営費を補助するとか、そういうことです。それと、父母の、父や母の、親の支援をする体制をつくれないのか、この二点をお伺いさせていただきます。

堀内大臣政務官 いわゆる大変な高葛藤の状態の中で離婚した親御さんの皆様、そういった方々を支援するに当たりまして、厚生労働省としては、まず、親御さん同士の間に入って地方自治体が行うような面会交流支援事業を支援するとともに、個人、民間団体や人材の育成に関する調査研究を続けていく中で、そういった親御さんへの支援を続けてまいりたいと思っております。

 そしてまた、面会交流を適切に支援するために、まず、各事業者が、高葛藤状態にあるかどうか、いろいろ親御さんとの間を判断しながら、そして、そういった高葛藤の状態でない親御さんについては面会交流を認めたり、また、高葛藤状態にある親御さんについてはさまざまな支援を民間団体とかに委託して行いながら、例えば、先日、初鹿先生が御視察なさったFPICですか、そういった団体に、養育費相談支援センターなどにお話をしながら、親御さん自身への支援についても幅広くつなげていくように取り組んでまいりたいと存じております。

初鹿委員 FPICに行ってお話を聞いてきて、非常に大変だということをおっしゃっていました。

 そこで一点指摘されたのは、葛藤の高い、高葛藤なケースは我々がやります、ただ、そこまでいっていない、ちょっと背中を押せばうまくいくような場合は自治体で支援する体制をつくってくれということを指摘されましたので、今、明石市なんかは取り組みが進んでいますが、ほかの自治体でも、自治体で支援ができるところは、相談だけじゃなくてきちんとした支援を行うような体制をつくるようにしていただきたいということをお願いして、質問を終わらせていただきます。

丹羽委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時三十分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 本日は、大臣所信に対する質疑の時間を頂戴いたしまして、ありがとうございます。

 実は、私は、先国会からずっと大臣の所信についての質疑を準備してまいったのでありますが、なかなか厚生労働委員会は対立マターが多くて、後回しになりまして、でも、私は、この厚労委員会に集う皆さんは、国民の生活をよりよく、少しでも改善できる、国民生活のために皆さんの思いは一つだと思いますので、きょう私が取り上げさせていただくテーマは、大臣を筆頭に総意をもって取り組んでいただける、そういう問題かと思いますので、よろしくお願いいたします。

 きょうお伺いしたいのは、実は、私は小児科の医者をやっております。一九七四年に医者になりましてから、もう四十数年やっております。今でも時々夜間救急はやっていて、でも専門医ではございません、塩崎さんに言われちゃうので。普通の小児科医をやってございますが、私ども小児科医にとって一番深刻で、防ぎたいのは、子供の死であります。

 大臣にお伺いいたしますが、今、我が国の子供の死の全体像、なぜ子供は亡くなっているのか、どういう状態で亡くなっているのかなどについて、把握されたものはありますでしょうか。一問目です。

塩崎国務大臣 子供さんが亡くなるということは、本当につらい、厳しいことだと思います。

 今、統計的にどうなんだというお話でありますけれども、お子さんが亡くなったことについて、その死因を把握する統計としては、人口動態統計というのがございます。

 この人口動態統計におきましては、子供を含めた全ての方々の死亡に関して、死亡届に添付をされた死亡診断書の医師の記載をもとにいたしまして、WHOが定めた国際疾病分類、いわゆるICDに準拠して死因を選択し、集計、公表を行っているところでございます。

 一方、その死因に至った傷病名以外の動機とかあるいは背景とか、こういったことにつきましては死亡診断書への記入を求めていないことから、人口動態統計ではこれらの事項は把握できていないということでございます。

阿部委員 今大臣にも御指摘いただきましたように、私たち医師が書く死亡診断書によって、子供たちの死亡統計、もちろん御家庭で亡くなって発見されたものは、警察等々の解剖、あるいは警察での死因究明になる場合もございますが、大半が医師の書く死亡診断書にのっとっておるわけです。

 ところが、この死亡診断書は、背景を見たものではございませんので、頭蓋内に出血があった、これは、診断書上は頭蓋内出血と書きますが、果たして虐待によって投げ飛ばされて頭にそうした事態が起きたのか等々は全くわかりません。

 おまけに、これから取り上げますチャイルド・デス・レビュー、前にも一回取り上げさせていただきましたが、子供の死を全て登録して、いろいろな検討を加えて分けていくと、実は、死亡診断書と異なる死因が見つかるものが三分の一あるというふうに、これはアメリカの統計でございます。死亡診断書でそう書かれていても実は違うというようなことが、このチャイルド・デス・レビューによってわかってきたということがございます。

 子供の死は、病死、一番これが私どもの目に触れやすいですが、虐待、事故死、交通死、交通事故を含む死亡、転落などなど、あるいは自殺というものもありましょうが、防ぎ得る死かどうかという観点が、実はすごく重要だと思います。

 大人の死でも当然なのですが、子供は本来、まだまだ長い命をいただいて健やかに育つべきものが中断されてしまう、もぎ取られてしまうということによって、まず防ぎ得る死かどうかというふうに視点を変えてみるためには、全体をもっと背景も含めて分析しなければならないという問題意識であります。

 大臣のお手元に、見ていただきたい資料がございます。

 これは、チャイルド・デス・レビュー、子供の死の登録、検証が最も進んでいると言われるアメリカの事案で、アリゾナ州、一番症例の報告数が多かったので取り上げましたが、実は、チャイルド・デス・レビューは一九七八年にロサンゼルスから始まりまして、現在アメリカでは五十州のうち四十八州が、そこで起きた全死亡について報告し、分析し、そして防ぎ得る死かどうかを見ているという実態がございますが、特に進んだアリゾナ州について取り上げさせていただきました。

 ここに書いてある内因死、御病気が、一歳以上と一歳未満で分けてございまして、大体これは七、八割が、子供の死は病気関連であります。しかし、その中にも八%は防ぎ得る死がある。御病気であっても防ぎ得る死があるということは、救急医療が適切であったり発見が早ければ防ぎ得る、こういうデータが出ております。

 一方、外因死、ここに書いてあります自殺や他殺や虐待や溺死や交通事故死、こういうものを丹念に調べますと、実は九一%の外因死は防ぎ得る。例えば、虐待ですと未然の監視システムがあったり、交通事故では、最近出ておりますが、子供の巻き込まれが多くて、これもいろいろな配慮、子供を守るための取り組みによって防ぎ得るであろうなどを全部背景分析していくと、外因死の九割は防ぎ得るというデータになっております。

 母集団がアリゾナのものが一番多いので出させていただきましたが、四千八百六名の小児死亡の予防可能性について分析をいたしました。

 私は、日本の社会が本当に子供を守っていこうと思うならば、こういう視点、そして分析、これを改めてきちんと厚労省のリーダーシップのもとに、塩崎大臣のリーダーシップのもとに、まず物事は、視点を変える、どこに目をつけるかということが大事なので、大臣において、このチャイルド・デス・レビュー制度とその成果、意味などについてのお考えを伺います。

塩崎国務大臣 これは以前にもお取り上げをいただいて、私も、こういうことを海外ではやっているんだということを学んだ記憶がございます。

 これは去年の五月十八日、阿部委員から御質問をいただいたわけであります。その際に私は、例えば海外の事例を参考にしたモデル事業の検討など、予防可能な死亡から子供を守るために必要な取り組みを検討してまいりたいというふうに答弁をしているわけであります。

 これを踏まえて、まず、平成二十八年度から三カ年の調査研究、厚生労働科学研究、これを実施いたしまして、予防可能な死亡から子供を守るための医療分野における情報収集の方法であったり、あるいはその進め方について検討をしているところでございます。

 私は、三年というのはまた随分時間をかけるんだなと、正直、指摘をしたところでありますけれども、今まで日本でこういうことをやったことがない中にあって、少しじっくり研究をしたい、そういう動きのようでございますので、とりあえずこれを二十八年度から動かし出すということで、今ちょうど一年目が終わるところでございますけれども、ぜひこれを進めてまいって、今のように三分の一が予防可能死であったということであれば、予防するために何をすべきなのか。

 昨年の通常国会での児童福祉法の改正の虐待対応、今回もまた児童福祉法、さらに司法関与などについて御提起を申し上げたいと思っておりますけれども、これも、こういった予防することが可能な死をどうやって減らすかということで、もっともっと司法にも関与してもらおうということでもありますので、この分析をしていくということは大変大事ではないかというふうに思います。

阿部委員 大臣の基本的視点を大変に評価いたします。

 その一方で、実は、このチャイルド・デス・レビュー制度については、厚生労働省の科学研究としては平成二十二年から既に始まっておりまして、少しずつタイトルが違いますが、目的は、防ぎ得る死、子供の死を防ごう、そして、そのための報告制度や検証制度はどうあるべきかという研究班は実は続いております。そして、平成二十五年度には、子どもの死亡予防のためのチャイルド・デス・レビュー創設のためのガイドラインまで研究班報告で出ております。

 三年は先行研究があって、次の二回目の研究でガイドラインが出されて、さて今さら、はたまた厚生労働科学研究で三年間かけてというのは、研究ばかりしている間にも子供は死んじゃうじゃないか。大臣、ぜひスピードアップ。

 いい研究成果がたくさん出ています。特に、私の小児医療の仲間たちは、必死に、この国でこの制度をどう実現しようかということで取り組んでおりますので、都度報告書を出すんだけれども、また次も研究、次も研究となって、実行されないのであります。本当に私は歯がゆい思いで実は今回また改めてこの俎上に上らせていただきました。

 と申しますのも、大臣は今の私のことを聞いて即々やってくださる大臣ですし、今度、児童福祉法の改正も司法の関与も含めてあるということも存じておりますので、あわせて、ぜひこの制度、とにかく全部の死を登録する。その登録からしか始まらない。

 実は虐待も、虐待として上がっている事案と同じ数だけ事故死の中に混入しておるというのが、先行のアメリカなどの事案でもあるところであります。今もちろん虐待死の研究もしていただいていますが、そこにはまってこない、その網に入ってこないものが同じだけあるとしたら、私たちの社会は随分損をしている、大事な子供たちを守れていないと思います。

 その事案に例示できるものを挙げさせていただきます。

 大臣も御承知のように、昨年の国会は、保育園落ちた日本死ねということから始まりまして、子供の保育所をふやそうと私ども野党は野党でまた主張をし、大臣にあっても御尽力をいただいていると思っております。当然ながら、受け皿の数の増加は第一でありますが、質はどうか。そこで安心して子供が預けられるか、不慮の事故で亡くなったりはすまいかということが一番問題であります。

 二ページをあけていただきますと、「これまでの保育施設等における死亡事故の報告件数等」というのが、平成十六年から平成二十七年までここに上がっております。

 この報告、全体で百七十四件になっておりますが、平成二十六年が十七件ですか、あったかと思いますが、いずれも、見ていただきますと、認可外の保育園の方が圧倒的に多いわけです。これも多々御指摘があるところと思います。

 保育園において起こる死亡事故については、内閣府の方で子ども・子育て支援制度にのっとって報告を義務化しておるのですが、無認可の保育園等々には義務がかかってございません。

 報告されたものはされるでしょうということであって、どういう仕組みになっているかというと、三枚目をあけていただきますと、「重大事故発生時の報告の仕組み」というのがございまして、上に具体的な根拠となる法令とか対象となる施設の区分があって、下に「報告の系統」というチャート図がございます。

 大体、認可外の保育園や、始まったばかりですね、居宅型の保育施設は都道府県の管理監督になっておりまして、死亡等々重大事故も都道府県に上がるようになって、これが義務ではないということです。

 上の保育園等々については、義務化されているのは認可保育園で、例えば学童保育、ファミリー・サポート・センター等は任意でありますが、上がるところが自治体であるというところで、まだ近いということであります。無認可では県に上がるということを、まず大臣、この図で御認識いただいて、そういう仕組みかということを、御存じかもしれませんが。

 そして、ここにどんな問題があるのか。一つは義務化されていないということと、県の立入調査は実は大変に間隔があるということもございまして、なかなかこれは俎上に上りにくいということがございますが、まず、これらの実態については、子ども・子育て支援制度は内閣府の担当だと言わず、子供を守るために各省庁連携してお願いしたいので、いかがでありましょうか。

塩崎国務大臣 今お話しのとおり、認可保育所での事故につきましては、内閣府の運営基準によって報告が義務づけ、こうなっているわけでありますね。

 一方で、認可外の保育施設で発生した事故については、国に設置された有識者による検討会の取りまとめを受けて、平成二十七年の四月から、割合最近であります、通知によって報告を求めているということで、義務化をされているわけではない。

 厚労省の事務方としては、この仕組みについて、保育の担当課長会議など全国会議の場などあらゆる機会を活用しながら周知徹底をして、認可外保育施設からの事故報告というのがしっかりと行われるようにしていきたいということであります。

 問題は、施設の問題ではなくて、子供の死でありますので、やはり、子供の死は認可外であろうと認可保育園であろうと同じだと思いますので、同様な扱いにする方がよいのではないかと私は思っておりますので、義務化をするということを厚労省としては考えたいなというふうに思っております。

阿部委員 おっしゃっていただいたように、報告を求めるだけだとなかなか上がってまいりません。

 次に御紹介するのは、私は藤沢が選挙区ですが、隣が茅ケ崎、その隣が平塚なのですが、その平塚で起こった悲しい事例でございます。

 皆さんのお手元の四枚目の紙を見ていただきますと、「元保育士を再逮捕」という新聞記事が載ってございます。

 この平塚のちびっこBOYという、認可外で夜間も預かっている保育園ですが、ここで二〇一五年の十二月に実は生後四カ月の赤ちゃんがお亡くなりになって、この子は病院に運ばれて、病院の方で、やはりちょっとおかしいかということを考えまして解剖いたしましたところ、頭の中に出血があったということで、これは、ただ保育園ですやすや寝ていて亡くなったものではないのではないか、暴行が加えられたのではないかということで、この角田という容疑者を逮捕して起訴するということを今やっております。

 実はこの角田という容疑者は、これまでその保育園に勤める前に児童ポルノの製造をしていたということで、二〇一五年の九月に、この保育園で預かっているお子さん、赤ちゃん、女の子の服を脱がせて裸にして、スマートフォンで撮影した、あるいは、彼はほかの保育園でも同じようなことをやっていたということが次々明らかになりました。それだけでなく、実刑判決を受けた過去もあったということで、これはどんな実刑判決だったかというと、幼児の体をさわった強制わいせつ罪で懲役三年の実刑判決を二〇一〇年の十一月に受けていた。

 思うだに、ぞっとすると思うんです。子供を預けているお母さんたちは、女の子であれば裸にして撮影し、男の子であれば暴行を加えて殺され、その保育者は実刑判決まで受けた人であった。何でこんなことが起こるのか。もちろんこの事案は、県に報告される前に医療機関から、これは疑わしいぞということで解剖もして、発覚をしたわけです。

 実は、この施設は県から三回勧告を受けております、保育士さんの数が足りないと。足りない、でも埋められない。こういう過去のある人と知ってか知らずか、保育士として雇って、究極的には子供が殺されたかもしれない。もちろん、まだ容疑です。でも、これまでの経緯を見ると、子供を預かるには極めて不適切な、最悪な方が保育士さんとして使われていたということであります。

 大臣には、この一例を検証するだけでも、私はいろいろな改善点が出てくると思います。本来は、そういう実刑判決を受けたら、二年間は保育士としての資格を取り消されます。なぜ取り消されなかったのか。本当に二年間でいいですか。再犯を繰り返し、子供たちを餌食にしています。

 大臣、きょうはこの事案を御紹介することで、厚生労働省としても、やはり国主導でこの検証を行っていただきたい。県任せでは、もちろん県はやらねばいけません、だって県に報告があったかどうかだって定かではありません、うやむやです。そうこうしているうちに次々事案が発覚をしております。

 私は、ベビーホテル、昔から問題でしたが、今、働くお母さんがふえて、勤務時間も長時間化して、子供を預ける、預けざるを得ないという方はふえていると思います。そうした中で、何の監視もない、この人はたった一人で子供たちを見ていた、そういう事案です。

 ぜひ、きょう、私が大臣に御紹介しただけに終わるかもしれませんが、問題意識を共有していただいて、子供にこういう人を近づけていいわけもない、起こるべくして起こっていると思いますので、大臣の御認識を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 今御指摘をいただいた平塚の死亡事案、そしてまたこの犯人の扱いでありますが、私もこれを見て、改めて、また仕組みを見て、知って、はねるには、こんなふうになっていてはなかなか難しいなというふうに思いました。

 保育士の欠格事由に該当した場合に、保育士本人がその旨を都道府県知事に届け出ることとなっております。つまり、自分は欠格事由に該当したということを、こういう犯罪を犯して懲役刑が確定したということをみずからが届け出る、こういうことになっているわけで、欠格事由に該当した保育士の登録の取り消しが適切になされるように、保育士証を発行する機会などを捉えて、届け出義務の徹底を周知しなきゃいけないというふうに、私どもは、とりあえず、できることは、そういうことでやらなきゃいけないと思っておりますけれども、本人からの届け出ということ自体が、やはり不可解なことだなというふうに思います。

 したがって、例えば、本籍地の市区町村が犯歴情報というのを最終的には持つようになっているようでありますけれども、これが生かされていないということでありますので、本人が届け出るという限りは。ということであれば、どういうような形にすれば、このような情報がしっかりと把握できて、実効性のある対策として、このケースであれば、保育士としての資格は登録できない、認められないということ、これが担保されるということにならなければ、次々とこういう犠牲者が出てきてしまうということになりますので、どういうようなことができるのか、実効性のある対策を、検討を至急やっていきたいというふうに思います。

阿部委員 ありがとうございます。

 先ほど申しましたように、認可外で起きた事案は、県には、基本的には報告を求めるということであって、それ以上でも以下でもない。それから、県に登録している保育士さんの資格等々で、本人が言ったか言わないかで、全くやぶの中になってしまう。そして、何回も県が監査に入っても、人手不足が指摘されながら改善もされない。これでは子供が守れない。

 問題点は多々あると思いますので、ぜひ、厚労省としても、きちんと焦点を絞って改善をお願いしたいと思います。

 引き続いて、虐待の問題に入らせていただきます。

 保育園で起きるさまざまな死も、ある意味で、十分な監視の目がなく亡くなる、あるいは、果ては、こういう暴力、縛って、子供を熱中症で死なせる等もありまして、それは虐待とも言えると思いますが、そういうもの以外にも虐待の事案というのはたくさんございまして、虐待ということは、二〇〇〇年に児童虐待防止法ができまして、あるいは、平成十六年になりますか、児童虐待防止について国が検証委員会を持つということが法改正され、さらに、平成十九年には都道府県に検証委員会を設けよう、今度、虐待問題でやらせていただきますが、そういう仕組みにはなっています。

 虐待という事案について、重篤な事例、死亡事例は国への報告、これが平成十六年改正、そして平成十九年の改正が、都道府県でそういうものをきちんと把握していくということをやった上で、大臣、次のページを見ていただきますと、これは、昨年度、第十二次と書いてあるのは、昨年度の集計の中で起きた、県に報告されているというか県が収集したいわゆる虐待事案についてどのくらい検証がなされているか。

 検証というのは、なぜ死んだのか、どういう事態が起こったのかということを見るということですが、ここに上の段、表がございますように、心中と心中以外を分けた場合に、検証が実施されているのは約半数であります。先ほど申しました、国が集約する情報を、そして県が検証する。でも、半数しか検証がなされていない、残ってしまうという実態がございます。

 時間の関係で、そのすぐ下へ行かせていただきます。

 ここは、では、医療機関に来たもののうち、虐待あるいは虐待を強く疑う、虐待可能性高度、これが3B、そして虐待確定的が4というこの二つ、虐待としてきた例がどのくらい解剖をされているか。解剖というのはやはりつらいことですが、死因を明らかにしていく大事なツールでございまして、虐待が確定的とされても、実は剖検率は半分であります。検証も半分、剖検も半分。不確実な、よくわからない不詳死群では、剖検は二割というふうになっております。

 こういう実態が全てをやぶの中に追いやり、再発防止の策も出されず、繰り返し子供が亡くなるということになると思いますが、大臣には、県における検証のあり方とその改善点など、そして、実は私は、これらは改善もされねばいけないけれども、先ほどの、全体の死を登録するものがないと、ここに来るのは新聞で報道されたものとか明らかな、顕性なもので、実際それの二倍、三倍あるものはつかまりませんので、全体のチャイルド・デス・レビューのような登録制度に振りかえていくべきだと。

 国としては、国の虐待検証制度をやってきた、そして都道府県にもおろした。だけれども、実際半分くらいでとどまっているということを受けて、大臣の御所見を伺います。(発言する者あり)

丹羽委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

丹羽委員長 速記を起こしてください。

塩崎国務大臣 恐らく、都道府県別にかなり跛行性があって、虐待対応で、児童相談所も、あるいは専門性のある人の配置なども含めて非常にばらつきがございまして、今半分ぐらいのところしか解剖をやっていないじゃないかというお話を頂戴いたしましたが、確かにそのようなばらつきがあって、本来しっかりと原因を究明するということを果たした上で子供の健全な発育を確保していくというのが都道府県がそれぞれやらなきゃいけない責務なんだろうというふうに思います。

 いろいろやっていて、死因がなかなかわからない、死亡と虐待の関係がどうなっているのかわからない、あるいは裁判中とか、いろいろな理由でやっていない理由があるんだろうと思うんですけれども、それも不統一でやっては、我が国の子供ですから、地方自治体が考えるにせよ、ある程度の目安を持って、徹底的にきちっとした解明がなされるようにしていくということが大事なんだろうというふうに思いますので、私ども厚生労働省としても、各都道府県がなぜ亡くなったのかということがわかるまでしっかりと検証するように指導していきたいなというふうに思います。

阿部委員 子供の死を防ぐために、国にあっても都道府県にあっても最大限努力していただきたいし、虐待あるいは保育現場での死、事故死、ばらばらにやっていては、なかなか能力が向上しません。そのためのチャイルド・デス・レビューですので、一括して集めて、振り分けて検証しながらトータル像をつくるということでありますので、大臣には念頭に置いていただければと思います。

 最後ですが、こういう死亡事案以上にもしかして深刻なのは、子供の性虐待だと思います。潜在化しやすくて、子供は何が起きたかわからない、でも非常に自己否定的な感情になりますし、そして離人感、子供は自分が誰なのということを自分で確定していけなくなる、深刻な事態が起きております。

 こういう子供に起きる性虐待を含めて、子どもの権利擁護センターというものが神奈川県にできております。伊勢原というところにございまして、日本で初めてですが、もしかして大臣には御視察に行かれたかもしれませんが、子供が性虐待等々を受けたときに、受けたのではないかということが疑われたときに、そこでいろいろな職種の人が協力し合いながら体の診察や司法面接をしていくための機関でございます。

 私は、虐待の中で一番隠れやすい性虐待、これが深刻だということを踏まえた上で、この子どもの権利擁護センター、大臣にもぜひ御視察をいただきたいし、今度、児童福祉法の中で、司法の関与ということがあるときに、司法面接の必要性も再度出てまいりますので、どんな取り組みがなされているか、御参考にもしていただきたいですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは中心的にやっていらっしゃるのは山田さん、私もよく存じ上げておりますし、今回、児童福祉法の改正の後につくりましたワーキンググループの中の司法関与と特別養子縁組のワーキンググループにも入っていただいて、積極的な貢献をしていただいている方でございます。

 このセンターについての趣旨は御本人からも聞いておりまして、診察を含め、そしてまた、いろいろな人が取っかえ引っかえ来て子供さんにさらなる心のストレスを与えるようなことはないようにというようなことで、配慮を行き届かせて立ち直るようにということをやっているのは、私としても大変大事なことだというふうに思っておりますので、こういうことを全国に周知して、やはり同様のことが、どこでもこういうことが行われるように、私どもとしても広めていきたいというふうに思います。

阿部委員 ありがとうございます。お金もかかります、よろしくお願いします。

 終わらせていただきます。

丹羽委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 きょうは、介護の問題について質問させていただきたいと思います。

 大臣の所信表明で、住みなれた地域で安心して暮らし続けることができるようにということで、地域包括ケアシステムを強化する法案を今国会で出したんだということがありました。その法案には、一定の所得のある方への介護保険利用料の三割負担が盛り込まれております。

 一昨年八月には、所得や預金がある程度ある方への利用料二割負担の導入、それから、施設利用時の食費、居住費補助、いわゆる補足給付、これの打ち切りが行われたばかりであります。

 まず厚労省に伺いたいんですけれども、このときの影響をどうつかんでおられるでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の、平成二十六年度の介護保険制度改正では、保険料の上昇を可能な限り抑えつつ、制度の持続性を高めるという観点から、先生御指摘のありました二つのこと、すなわち、負担能力に応じた負担を実現するという観点から、一定以上の所得のある方に二割の利用者負担を導入するというのが一点。もう一点は、在宅で生活する方との公平性を図る観点から、預貯金等を保有しているにもかかわらず保険料を財源とした給付が行われるといったことが不公平であるといった観点から、補足給付の要件の見直しを行ったところでございます。

 制度改正による影響についてでございますけれども、我々といたしましては、全国の利用者の方のデータを分析すること、さらには、自治体や介護事業者などの関係者からヒアリングをすることなどを通じて、日ごろから実態の把握に努めております。

 データについて申し上げますと、例えば平成二十七年八月、これが制度改正の実施時期でございますけれども、その前後のサービスの受給者数というのを見ますと、これは全体の受給者数、さらには施設サービスの利用者数も含めた全体の受給者数ですけれども、これまでの全体の傾向と比較して顕著な差は見られないといったことで評価をいたしたところでございます。

堀内(照)委員 サービスの利用をやめるというのは、これはよほどぎりぎりまで追い詰められていったあげくなんだと思うんです。

 介護施設の運営者らがつくる二十一世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会が全国の特養に行った調査では、千九百六人もの施設長からの回答が寄せられております。そこでは、これは報道もありましたので御存じだと思いますが、百を超す施設で、支払い困難を理由に退所者が出ているという回答であります。いよいよ特養を退所しなければいけない、本当に大変な事態だと思います。

 今、受給者数の伸び率ということで答弁がありました。待機者が多い特養の場合は、退所者が出てもすぐに埋まりますから、受給者数の変化にはそうした実態はあらわれないと思います。利用時間や回数を減らすということも、受給者数の変化には反映しない。

 二十一世紀・老福連の先ほどの調査では、ほかに、利用料の滞納とか、多床室へ移ったとか、日用品の買い控えとか、配偶者の生活苦、こういう回答も多数寄せられております。いずれも、今、受給者数ということでお答えになりましたが、そういった数字にはあらわれません。

 同じく影響調査を行った認知症の人と家族の会は、毎月五万円から十万円の負担増で老後の資金は見る見る減る、余りに過酷だという指摘をしております。若年性アルツハイマーの夫を介護する六十代の女性は、月八万二千円もの負担がふえた、ショックで体調を崩した、不足分は自分の給料から今は補填しているけれども、このままでは家族の生活が破綻してしまうと答えています。

 一問目の問いは、大臣に宛てては通告していませんでしたけれども、今あったように、受給者数ということで変化がないんだということでありますけれども、大臣も同じように問題ないと思われるんでしょうか。一問目です。大臣に。

塩崎国務大臣 二割負担を導入した影響についてのお尋ねであったわけで、先ほど局長から答弁したとおりでありますが、補足給付の導入も、要件の見直しというのも行いましたが、私どもが見る限りでは、先ほど答弁したとおり、制度改正の施行前後においてのサービスの受給者の伸び率を見ますと、施設サービスの利用者数も含めて、余り顕著な差はないということであります。

 その二割負担に移行した方々も、言ってみれば、限定的な所得の範囲の方々ということであるわけでございますので、負担の可能な方々ということで限っておりますので、資産の問題についても同様のことが言えるので、結果としてそういうふうになっているというふうに思っているわけで、もちろん、どういうインパクトがあるかということについては、絶えずしっかりと見ていかなきゃいけないことは間違いないというふうに思っております。

堀内(照)委員 私が今指摘したのは、受給者数の変化にあらわれない、特養の退所者ですとか、利用時間や回数を減らすということは、そこにはあらわれないわけです。ましてや、家族も含めた生活苦が大変多くなっているということが報告されているわけであります。そういう実態をやはりしっかりつかむべきだと思うんです。

 今、一定の所得の方ということでおっしゃいましたが、二割負担の導入時には、国は、家計調査の消費支出なども引いて六十万の余裕があるというふうに当初説明しておりました。これは質疑の中で、所得階層の集団が違うということで議論になって、六十万の余裕ということは誤解を生むということで撤回され、やりくりすれば何とかなるということを言われました。まさに、本当に厳しいやりくりを強いているわけなんですね。

 高齢者からは、預金を取り崩しているが、あと十年もたない、年寄りは十年生きたらそれでええというのかという声もあります。そんなに費用がかかるならと、もうデイの利用をやめてしまった、ホームの支払いができなくなったら親二人を引き取ることも考えている、これは本当に家族介護の負担が重くなると思うんです。介護離職ゼロなど、よほどかなわないと言わなければなりません。

 二割負担と補足給付という負担増を導入したばかりであります。今言いましたように、影響は本当に大きいと思いますので、そういう影響を、受給者数だけではなくて実態をしっかりつかむ、そういう調査を行うべきじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、いわゆる数字だけではなくて、いろいろな、控える行動とか、そういうことについてもよく見るべきじゃないかということでありますが、まさにそれは先ほど私も申し上げた、どういうインパクトというか影響があるのかということは、絶えず注意をしていかなければいけないというふうに思っております。

 制度改正による影響はさっき申し上げたとおりでございますけれども、社会保障審議会の介護保険部会で、認知症の人と家族の会などなどから、いろいろな、個々の利用者の実態についてお伺いをさせていただいておりまして、ですからこそ、今申し上げたさまざまな実態把握の、子細に把握をする努力、これをしていかなければならないというふうに思っておりますし、そう努めているところでございます。

 全体としては、さっき申し上げたとおりの、サービス受給者数の伸びでは顕著な差はないですけれども、サービス利用の実態把握、これがまさに、さっきおっしゃった家庭に入ってしまうというようなことを含めてなんだろうと思いますけれども、そういうことによく意を尽くして把握をして、必要な方に必要なサービスがいっているかどうかということは絶えず確認をしなければいけないというふうに思いますので、そういう意味でしっかりと見てまいりたいというふうに思っております。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

堀内(照)委員 兵庫県尼崎市で私たちに寄せられた相談では、負担増で個室から多床室に移った、それでも年金三十一万円はほとんど介護費用で消えてしまう、蓄えがなくなったら妻を退所させて一緒に死のうと考えているという声までありました。大臣が所信表明で言われた「住みなれた地域で安心して暮らし続ける」どころではありません。負担に耐えられず死のうとまで思わせるようなことは、やはり間違っていると思います。まず、その実態をしっかりつかんでいただいて、やはり検証していただく。そうすれば、三割負担なんてもってのほかだと私は思いますので、そのことは厳しく指摘をしておきたいと思います。

 もう一点、介護の制度で不安を広げているのが、保険給付から外していくということであります。

 長年保険料を払ってきたにもかかわらず、軽度だと認定されると給付が受けられなくなる。既に、要支援の皆さんは、全国一律の基準に基づく訪問、デイなどのサービスから外れ、自治体が独自に行う総合事業に順次移行しております。この四月からは全ての市町村で実施がされます。サービス内容などは自治体任せの制度であります。今、各地でサービスを担う事業所への報酬引き下げが重大な問題になっています。

 資料で毎日新聞の報道をつけておきました。無資格者でも担えるように人員基準を緩和した事業について、取り組む事業者を公募した百五十七自治体にアンケートをとっております。ヘルパーで従来の五割、デイで三割の事業者しか参入がなかったということであります。報酬が低くて採算がとれないので参入できない状況です。

 厚労省に確認したいんですが、この総合事業における報酬単価のあり方について、そもそも国はどういう考え方を市町村に示してきたんでしょうか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 市町村が行う新しい総合事業でございますけれども、要介護状態ではないが支援を必要とする高齢者の方々が多様な生活支援のニーズを有しているといったことを踏まえまして、地域の実情に応じた多様なサービス提供が行われるようにするといったことを目的といたしまして、平成二十六年の介護保険法改正において創設されたというものでございます。

 これの中身ですけれども、介護予防や日常生活支援のためのサービスにつきましては、既存の介護サービス事業者に加えて、NPOや民間企業などのさまざまな主体が総合的に実施できるように、あり方について見直しを行ったというのが一つございますし、また、そのサービスの担い手についてでございますけれども、介護専門職員以外の担い手を確保して多様なニーズに対応する一方、介護専門職員につきましては、いわば保険給付の対象となっている訪問介護など、介護の必要性がより高い方に専門的なケアを担っていただくといったようなことを狙いとしているところでございます。

 そこで、先生から御指摘ございました、今回の総合事業の中での具体的な事業についての単価設定等についてでございます。

 これにつきましては、国としてこれまで、まずは大臣の告示でございます指針を定めておりますし、さらには総合事業のガイドライン、あるいは必要な通知、事務連絡、こうしたものを流しているところでございます。

 お尋ねの、具体的なサービス単価についてですけれども、これは二つのパターンが、幾つかのパターンがありますけれども、一つ、従来、予防給付であった、対象とされておりました訪問介護、通所介護に相当するサービス、これはいわゆる現行相当サービスということでございますけれども、これにつきましては、訪問介護員等による専門的サービスであること、さらには、事業者の員数や、あるいは設備基準が従来の予防給付と一緒であるといったことを勘案して設定するようにということで示しております。

 また、緩和した基準によるサービスにおきましては、事業者の資格要件あるいはサービス内容、時間等、まさにその緩和した基準の内容等を踏まえてふさわしく設定するようにということを示して、その旨周知をしているということでございます。

 なお、一点、先ほど言及がございました毎日新聞のことでございますけれども、これは、この見出しだけ見ますと、軽度介護の事業者が半減と書いてございますけれども、これは正確に言いますと、恐らく先生も御理解いただいていると思いますけれども、緩和型で入った事業所が、もともとやっていた、個別給付だった事業者の一定の割合だといったこと、最大半分になっているということでございまして、実は、これとは別に、そもそも現行給付相当でやり続けているところもありますので、全体として見れば指定を受けている事業者数はふえている、こういう状況でありますので、ちょっとそこだけ補足で御説明させていただきます。

堀内(照)委員 ちゃんと言っているじゃないですか。緩和型のサービス事業参入について、五割、三割になっているという実態なんだと言っているじゃないですか。

 この四月から実施する大阪市では、その緩和型は従来の七五%の報酬単価で行う。今、ふさわしいという言葉もありましたが、資格者じゃない人だということも勘案してなんだと思うんですが、その担い手の時給は九百五十円で計算をしているといいます。大阪の最低賃金は八百八十三円ですので、少し上回る程度なんです。

 聞きましたら、参入事業者は、大阪市ではおよそ千二百ほどあると見込んでおります。その担い手の養成、四月までに大阪市では四百人の担い手を養成するという枠で準備しています。これ自体が大体少ないんですけれども、しかし、それとて、毎回研修をやっても筒がいっぱいに参加するわけじゃありませんし、参加した人もみんな仕事につくわけじゃありません。今見込まれているのは、およそ百数十人程度しか担い手にならないだろうと言われております。

 そうしますと、基準緩和のサービスだというんですが、実際には、やはり資格を持った人がそこの穴を埋めざるを得ない、専門職の人が担わなければおよそ回らない、そういう制度設計にそもそも大阪市の計画ではなっているわけなんですね。通常、専門職だったら時給は千三百円から千四百円のところを、事実上、九百五十円で積算された報酬単価でやれということになるわけですから、時給を引き下げるような計画になるわけであります。

 昨年の十月に、こうした例、事務連絡で、資格を持つ専門職が報酬の低いサービスを担う場合の職員の処遇について言及していると思うんですが、どう記載されていますか。

蒲原政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十月に、先生御指摘のように、事務連絡で、緩和した基準によるサービスの単価の設定について留意点を周知しております。

 この前提として、先ほど申しましたけれども、総合事業の担い手については、介護専門職以外の担い手をできるだけ確保して多様なニーズに対応する一方、介護専門職については、保険給付等の対象となっている訪問介護など、より介護の必要度が高い方に対して専門的ケアを行うといったことを考えているわけであります。

 本事務連絡では、そうした考え方の上で、先生御指摘のこの資料にありますとおり、「介護専門職としての資格をもつ職員が引き下げられた単価によるサービスを担う場合、サービス事業所の収入減となり、最終的には、介護専門職の処遇悪化に繋がることも考えられることに留意すること。」といったことを記載して、お示ししているところでございます。

堀内(照)委員 もう既に言っていただきました。資料二枚目に配付をしております、右側の下に線で引っ張ったところが、今答えていただいたところであります。

 私、いろいろ地域で実情を聞きますと、こういう例がありました。まさに、そういう報酬が下げられたサービス、もう専門職が行かざるを得ないということでヘルパーを派遣するんですが、そのヘルパーさんの時給は千円に下げないとやっていけない、そうやって実際やっているんだという事業所があると聞きました。これはまさに事務連絡が指摘している事態そのものだと思うんですね。

 ちょっと再度確認したいんですが、この事務連絡の趣旨からいえば、このような専門職の賃下げというのは本来あるべきじゃないということですよね。

蒲原政府参考人 この事務連絡でございますけれども、もともと専門職としてやられている方々について、その処遇については非常に大事だということを言っていることでございますが、いろいろな働き方がありますので、そうした、先ほどちょっと私も申し上げましたけれども、この人が働く、いろいろなかかわるケアといった部分をどういうところに持っていくかということで、より専門的なケアが必要なところについて、そういうところを担ってもらうという基本的な考え方のもとで、こうした考え方を示しているところでございます。

堀内(照)委員 全然答えになっていないですよ。それは制度はそうでしょう。しかし、基準緩和で担い手をやっても、実際にはもう集まらないという実態がある。

 そもそも大阪市の計画では、参入事業者にも、計画どおりやったって追いつかない。そうしたら、誰がやるんですか。専門職がやるしかないじゃないですか。だから、これは事務連絡で、こういうことをわざわざ言っているわけでしょう。そうやってみたら、実際に穴埋めを専門職でやらなきゃいけない、ところが報酬単価は低いままだ、だからこれはもう千円でいかなしゃあないということで、実際に事業所がやっている例があると私は今指摘したわけです。だから、これはあってはならないことなんです。それが許されるんだったら、何のための事務連絡かということになるわけであります。

 大臣に伺いたいんですが、先ほど答弁いただいたように、「介護専門職の処遇悪化に繋がることも考えられることに留意すること。」と、これをわざわざ事務連絡で言っているわけであります。それで、今紹介しましたように、基準緩和のサービスに専門職がつかざるを得ないという実態も広くあるわけであります。その現状のもとで、専門職の賃金が下がるような、こういう報酬の設定というのは果たして適切なんでしょうか。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 この趣旨につきましては、局長の方からずっと答弁してきたとおりでございますが、この緩和した基準によるサービスが、従来の予防給付よりも、従事者の資格要件等の基準を緩和している、そして報酬単価はその緩和の内容を踏まえての市町村での設定、こういうことに基づいていくわけでありますから、単価設定自体の引き下げに問題があるというわけではないんだろうというふうに思います。

 新しい単価の設定に当たってサービス事業者と十分に協議をしなければならないということと、やはり介護に携わる人たちの幅広い人材の育成というものが必要なわけで、今お話しのように、もともとの介護の専門の方々、それは、専門の方々には専門的な分野をしっかりとやっていただく、そこまで専門性は必要じゃない方々にはそうじゃないところを担っていただくというのがもともとの全体の構図であったはずでございます。

 そういう意味で、介護専門職員が、保険給付の対象となっている、さっき申し上げたような、訪問介護とか、そういう専門性の高いところをしっかりとやってもらうことが大事でありますが、一方で、そういった専門性のある方々が、必ずしも専門性のない仕事を担ってしまっていることが問題であるということをおっしゃっているので、そのことは、今起きているとするならば、それを解消するために、できるだけ早く新しい担い手を幅広く育成するということをやっていく中で、全体の、もともとこうやって総合事業として市町村に出していくということの意味が、ちゃんと実現をしていくようにしていかなければならないんだろうなと。

 したがって、介護専門職員の処遇には、もちろんしっかりと配慮をしていくということが大事だということで、ここに、通知に書いてあるようなことに留意をするということは、そういうことが起きないようにせいという意味だろうというふうに思いますので、そうなるように、私どもとしても、市町村とよく話し合いをしていきたいというふうに思います。

堀内(照)委員 担い手そのものも、今、大阪の例で言いましたように、四百人の計画でやってみたけれども実際につくのは百数十人程度だろう、それはそうだと思うんですよ。ただでさえきつい介護の現場で、資格がないからといって時給を安くたたかれて仕事につけと言われても、なかなかやはり、なり手が本当に育つんだろうか。百歩譲って、担い手を育成ということでいっても、では、それまでは専門職がつかざるを得ない現状をどうするのかという問題がやはり残ると思うんです。このままであったら、本当にヘルパー不足にますます拍車がかかる。

 報酬が下がるのは、これは緩和型だけじゃないんです。現行相当でも起こっています。これは、きょうはもう時間がありませんので、次、機会がありましたら、この続きをぜひさせていただきたいと思いますので、本当にここは真剣に取り組まないと、ヘルパー難民、介護難民というのが本当にあふれるということ、そこを最後に指摘して、きょうのところは終えたいと思います。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

丹羽委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 厚生労働関係の基本施策に関する件、特に長時間労働是正問題等について調査のため、来る八日水曜日午後一時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る八日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時三十分散会


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