衆議院

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第23号 平成29年5月26日(金曜日)

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平成二十九年五月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 丹羽 秀樹君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 高鳥 修一君 理事 とかしきなおみ君

   理事 三ッ林裕巳君 理事 井坂 信彦君

   理事 柚木 道義君 理事 桝屋 敬悟君

      赤枝 恒雄君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    江渡 聡徳君

      大隈 和英君    勝沼 栄明君

      金子万寿夫君    木原 誠二君

      小松  裕君    今野 智博君

      白須賀貴樹君    新谷 正義君

      田中 英之君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    冨岡  勉君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      長尾  敬君    丹羽 雄哉君

      福山  守君    堀内 詔子君

      務台 俊介君    村井 英樹君

      山下 貴司君    阿部 知子君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    中島 克仁君

      長妻  昭君    初鹿 明博君

      水戸 将史君    伊佐 進一君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      高橋千鶴子君    堀内 照文君

      河野 正美君

    …………………………………

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   内閣府副大臣       松本 洋平君

   法務副大臣        盛山 正仁君

   厚生労働副大臣      古屋 範子君

   文部科学大臣政務官    樋口 尚也君

   厚生労働大臣政務官    堀内 詔子君

   最高裁判所事務総局家庭局長            村田 斉志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           瀧本  寛君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           浅田 和伸君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児童家庭局長)       吉田  学君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           大野 高志君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十六日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     金子万寿夫君

  白須賀貴樹君     今野 智博君

  中川 郁子君     勝沼 栄明君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     中川 郁子君

  金子万寿夫君     赤枝 恒雄君

  今野 智博君     白須賀貴樹君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)


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     ――――◇―――――

丹羽委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る三十日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官小田部耕治君、法務省大臣官房審議官金子修君、文部科学省大臣官房審議官瀧本寛君、大臣官房審議官浅田和伸君、厚生労働省健康局長福島靖正君、雇用均等・児童家庭局長吉田学君、農林水産省生産局畜産部長大野高志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局家庭局長村田斉志君から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

丹羽委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

丹羽委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡本充功君。

岡本(充)委員 おはようございます。

 きょうから児童福祉法等の改正についての審議ということになるわけでありまして、いろんな論点があろうかと思います。

 最初でありますので、いろんな論点、これからというところであるのでありますが、まず、その法案の中身ももちろんそうですが、子供の給食に関して、特に乳幼児が食べている給食について、少し気になる話があって、きのう農林水産委員会で取り上げさせていただきました。堀内政務官にもお答えいただいたところでございまして、連日で申しわけありませんけれども、そこで公開で質問通告もしておるところでありまして、きちっと調べてきてもらっていると思いますが、委員の皆さんにお配りをした一のペーパーを見ていただいて、ちょっと、あらかじめ説明をしたいと思います。

 そもそも、脱脂粉乳を使って、お菓子や、また、おやつ、そしてまた、場合によっては給食に使う、こうした食べ物、脱脂粉乳、これは、国内でつくっている乳製品からできる脱脂粉乳が、少なくとも、現在、四万数千トン、四万四千トンですか在庫があるというこの状況。そして一方で、海外から輸入をしている脱脂粉乳も一定程度あって、その脱脂粉乳には関税がかかる、二五%ですか、関税がかかって、そして、さらにそこにマークアップの料金が乗るので、現実的には一キロ当たり、ALICという団体が入札をして海外から買い受けている、国家貿易で買っている脱脂粉乳は七百三十三円だときのう御答弁をいただきました、一キロ当たり。

 七百三十三円でちまたに出回っているこの脱脂粉乳、これでは高いからという理由もあるのかと思いますが、学校給食用には、もしくは児童、また幼児等が口にするこうした脱脂粉乳は、厚生労働省において、公益財団法人児童育成協会、ここが随意契約でおよそ一千トン強の脱脂粉乳を購入している。この脱脂粉乳を随意契約でニュージーランドの会社からこれまで長きにわたって購入をし続けています。

 一方、きょう文科省にも来ていただいていますが、文科省は、同じくこのニュージーランドの会社、プラス、オーストラリアの会社も使いながら、同様に、関税割り当てを得て、無関税で脱脂粉乳を購入している。そして、購入している金額は、そこに書いてあるとおり、厚生労働省所管の児童育成協会の方はキロ当たり三百十七円、そして学校給食研究改善協会の方は三百十円で、それぞれ無関税で、関税なしで輸入をしている。

 では、それが一体全国の保育園に幾らで、学校で幾らで配られているのか、これをきのうは問うたわけであります。そうしましたら、何と保育園に行っている脱脂粉乳はいつの間にかキロ当たり八百二十五円に化けていて、そして学校給食の方は、まだ都道府県単位ですけれども、三百六十五円。最後、学校に幾らで入っているのか、これはぜひ調べていただきたいというお願いをしたいと思いますが。

 いずれにしても、国内産の脱脂粉乳がキロ当たり五十トン以上の大口で七百一円、こういう現状を見ると、やはり全国の保育園に行っている脱脂粉乳はちょっと高過ぎやしないか、こういう思いになるということをきのう指摘させていただいたわけです。

 結局のところ、この公益財団法人児童育成協会は一年間で、脱脂粉乳のいわゆる利ざやですね、売ったお金から買ったお金を差し引いた金額として総額幾ら利益が出ているのか、まずこれを確認させてくれときのう通告していますので、一年間に幾らになりましたか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 私ども、手元に、直近、平成二十七年度の、今御指摘をいただきました公益財団法人児童育成協会の決算報告書を入手いたしました。これによりますと、今御指摘いただきました、財表の歳入の部における粉乳の売り上げ、収益と経常費用のところに計上されております粉乳の購入費、この差っ引き、収支差といたしましては、この数字からいくと、二億二万八千三十七万円弱でございます。

岡本(充)委員 やはり数億円の利益がこれは出ているわけですね。極めて大きい利益だと思います。これは、給食をもっと安くしてほしい、おやつをもうちょっと安くしてほしいというお母さんたちの声に応えることができるはずなんですね。

 もっと言えば、農林水産省にきょうお越しいただいています。畜産部長、きのうも御答弁いただきましたけれども、きのう農林水産省としても、大臣の方から、二十五キロ当たり一万七千五百三十七円、もうちょっと安くできないか検討したい、こういう御発言もありましたし、国産を使ってほしいという意欲もある、こういう発言があった。これは事実でありますよね。事実確認をさせてください。

大野政府参考人 お答え申し上げます。

 昨日、農林水産委員会におきまして、私ども、山本大臣からそういうふうに御回答させていただきました。

岡本(充)委員 という状況なんですね。

 それで、今度厚労委にやってきて、厚労大臣にもこの話を聞いていただきたい。

 そもそも、いや、農林水産省もこれまで国産にしてほしいということを要請もしてこなかったし、厚生労働省としてもその要請を受けてこなかったということでありますけれども、こういう事態を受けて、事実を皆さんに御披瀝する中で、国産の脱脂粉乳の方がむしろ安くて、しかも在庫もある。

 私は、かつてこの話を聞いたときに、こう聞いたんですよ。ニュージーランド産は脱脂粉乳は質がいい、調理師や栄養士の皆さん方からぜひともニュージーランド産を使いたいという希望があるからニュージーランド産を使っているんだという説明を何年か前に受けたことがありました。

 そのときは、そうかなと思ったんです。でも、いろいろ調べていくと、国産の脱脂粉乳がそんなに品質が悪いわけじゃない、調理に向いていないわけじゃない、これは使えるということが明らかになってきまして、あのときの説明は一体何だったのかと思う一方で、これはやはり金額も、そしてまた、いわゆる生産している酪農家も国産のものにかえていくべきじゃないか。千トン、学校給食の方で七百トン強ですね、文科省、いいですよね。というこの数字、二千トン近い脱脂粉乳を国内の子供さんに食べていただくチャンスになるか、そういう機会でもあると思います。

 そこでちょっと、文科省にもきょうお越しいただいていますので確認の意味も込めて。文科省、私のつくっているこの数字を含めてこの図は正しいということでよろしいですか。そしてまた、学校に卸しているお金、実態をちょっと少し調べてもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。

瀧本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の作成いただいた資料の数字、流れ等についてはこのとおりで間違いないと考えております。

 もう一つ、学校でのその単価という御質問ございましたが、私ども、この図、イメージ図と捉えておりまして、図の公益財団法人学校給食研究改善協会から都府県の学校給食会の先については、現在使われている脱脂粉乳の過半はパンに加工されておりますので、多数を占める小中学校で申し上げれば、間に市町村教育委員会がパンをつくる加工業者に流しておりますので、実際に学校で使われる際は大部分はパンになっています。ごく一部はシチュー等のときに使われますけれども、そのまま使われますけれども、したがって、御要望のございました単価がどのぐらいになるのかということについては、ちょっと研究、努力をさせていただきたいと思いますが、簡単にキロ当たり幾らというふうにはちょっと出しがたいところがあるのかなと思っております。

 以上でございます。

岡本(充)委員 いや、この先で物すごい化けていて、この都道府県学校給食会に、さっきの話じゃないけれども、数億のお金が入っていますみたいな話になるのは芳しくないし、もっと言えば、これだけのまとめた量が本当にきちっと学校給食に使われているのか、その確認も、単価が確認できないということは使われた結果も確認できないということと相通じるところがあるわけでありまして、本当にきちっと学校給食で使われているのか、無税を利用してほかごとに使っていないかはやっぱり確認するべきじゃないかと思うんですね。これは非課税ですから、無税ですから。

 そういう意味で、本来、先ほどの繰り返しです、キロ七百三十三円で民間が調達をしている脱脂粉乳を無税で安く購入しているはずなのに、いつの間にか厚生労働省はキロ当たり八百二十五円になっていて、民間業者が国産で調達をしている脱脂粉乳より高くなっちゃっている。そしてまた、学校は一体幾らになっているかわからない。これではやっぱりいけないと思いますので、ぜひ調べていただいて御報告をいただきたいと思いますので、その点、よろしく、今検討していただくということですから、使われ方についてもきちっと追っていただきたい。それもあわせて、もう一度御答弁ください。

瀧本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、無税で入れさせていただいている脱脂粉乳でございますので、私どもとしては学校給食に確実に使われているものと考えておりますけれども、御指摘も踏まえまして確認をさせていただきたいと思います。

岡本(充)委員 ということでございまして、ここまで、きのうのやりとりを少しレビューしながらお話をしましたけれども、大臣、厚生労働省側のこのスキーム、これも、局長から、これはこのスキームで、この数字、正しいですよね。どうですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 まず、ここにおけて厚生労働省と書かせていただいているところにつきましては、販売そのものは基本的には公益財団法人児童健全育成協会と全国保育園の間の民民契約におきまして、私どもは、その間、関税の割り当てを確認されるに当たって、保育園からの必要量を取りまとめさせていただき、一方、児童育成協会からの申請量について確認をさせていただくという形でこの仕組みにまずコミットしているという点、一点申し上げたいと思います。

 また、基本的にここに書いていただいております、例えばキロ当たりニュージーランドからの百三十一円、あるいは、等々の数字につきましては私どももこのような数字というふうに確認をしてございます。

 ただ二点ほど、一つは、先ほど来、収支差の話もございまして、価格が非常に大きくなっているという御指摘をいただいておりますが、私ども、児童育成協会から聞いております範囲では、この価格につきましては、仕入れに加えて、全国七千四百二十二カ所の保育園等からの発注を受けて、それを配送手続をする人件費でございますとか、あるいは実際に配送いたします、あるいは倉庫に関する経費などについても中に勘案し、また、全体としてのこの事業に係るPR経費なども入れた必要経費を計上させていただいた上で、八百二十五円という形で販売しているということでございます。

 先ほど収支差についてもお話がございましたけれども、先ほど私、正確に申し上げたつもりでございましたが、財表における収入、この売上価格と購入費のところでございますので、今申し上げましたような配送手続をやっております人件費等につきましてはほかの全体の事業の中にも紛れ込んでいる、経費としてはそういうこともあるということを付言させていただきたいと思います。

 また、そういう意味では、市中の価格との比較におきましては、今いただいております先生の御指摘の資料におきましては、下にございます大口需要者向け価格という形になってございます。先ほど御質問の中でも御紹介いただきましたように、これは五十トン以上の購入者ということでございまして、通常、先ほど申し上げましたこのスキームに乗ってニュージーランド脱脂粉乳を購入いただいております七千四百余の保育園の方々、一カ所当たりでそれだけの数になりませんので、この価格というのは一般価格、通常いろいろと幅はあろうかと思いますが、私ども把握している限りでいうと、一キロ当たり千円余の価格で購入できるような価格のものと比較してということかと思いますので、そのあたりの実態も含めて、このいただきました資料、基本的な数字につきましては私ども確認させていただいていますが、この資料、いただきましたものを私どもどう解釈するかにつきましては、今申し上げたこと、また、先日の農水委員会、本日の御指摘を踏まえて、私ども、事務的にも精査を引き続きさせていただきたいと思っております。

岡本(充)委員 大臣、今後の行方まで局長に答えていただいておりますが、大臣として、この話を聞いて、どういう感想を持って、どういうふうに対処していこうとお考えでしょうか。

 私は、やはり、これは人件費だ何だと言っているけれども、結果として、いや、私は見に行きましたよ、きのうも言ったんですけれども、誰もが知っているデパートの地下売り場に行ったら、二百グラムのすごい少量単位で売っていました。よつ葉さんという、実質ホクレンさんがコミットされているんだろうと思いますけれども、この会社のマークのついた脱脂粉乳が二百グラムで三百円程度で売っていました。二百グラムですからさらに個包装、小さいんですね。きれいな包装もされていて、デパートで売っていてこの価格です。やはり、そういうことを思うと、これが本当に安いのか、いや、そもそも最初、何で無税で入ってきているのかということがこれではわからなくなってしまうと思います。

 そういう意味で、これは、スキームを見直して、もっと品質のいい、いや、品質のいいというか、品質は今のと同程度で、そして価格の安い、こうした脱脂粉乳を保育園等に供給するための工夫を、大臣、決意を込めて、やると言っていただけませんでしょうか。しかも期限を決めて、来年の割り当てからは、そういう意味では、こうした脱脂粉乳とは違う価格の、そしてできれば国産の、農水大臣も、もっと安く売れないか、この国内産の脱脂粉乳の価格よりもっと安くならないか農水省も検討すると言っていますから、ちょっとそこを協力して取り組んでいただきますようにお願いしたいと思いますが、どうですか。

塩崎国務大臣 これは、恐縮ですが、けさ初めて私も知って、何かよくわかりにくいなという感じを受けているわけでありまして、大事なことは、子供たちに栄養価の高い脱脂粉乳がちゃんと行くということが大事で、安全なものが、ということで、国内と輸入物との値段の比較も、私どもの、今よつ葉乳業の話が出ましたが、これとて必要な、今保育園に渡っている、いろいろなものを添加しないといけないようでございまして、それを同じだけに比べてみると、やはり、よつ葉よりも、この一万九千八百円、二十四キログラムが高いということにもなっているようなので、これはやはり安価で、安く、安全な、ちゃんとした栄養価のあるもの、これが子供たちに渡るということが大事なので、今の、無税で入ってきているから安いはずのものが高くなってくるというのもなかなか理解がすっとはいかない、私もいきませんので。

 そういうことを考えてみると、児童育成協会が全国の保育園との間で価格は決めているようでありますけれども、そういったことをどういう根拠で決めているのかとか、それから、先ほど農水省は国産を使ってほしい、こういうことでありますけれども、そこの値段が本当に保育園に渡るときのいろいろな成分で正確に比較をした場合にどうなのか、そういうことを含めてしっかり見直したいというふうに思っております。

 いずれにしても、この価格自体を厚生労働省が決めているわけではないということは言えると思いますが、しかし、結果として保育園が無為に高いものを買わされているというのであるならば、それは改善をしないといけないというふうに思いますので、よく調べてまいりたいというふうに思います。

岡本(充)委員 大臣、ぜひ気をつけてください。私も、最初これを聞いたときにおかしいじゃないかと言った記憶があって、震災直後で、私、申しわけない、言いわけするわけじゃないけれども、震災対応がいろいろある中で、この話はいいかなと思ったのも事実なんです、そのときは。

 ただ、後から考えてみたら何かおかしいなと。いや、もう一回聞いてみたら、品質がいい、大臣、聞いておいてください、事務方からこういう話が来たんですよ。大臣、聞いておいてください。私はこう言われたから、これは言っておきます。品質が違うんです、溶けが違うんですとかいって説明に来る役所の人もいますから。いや、最初、それで私も、ああそうか、ニュージーランド産は品質がいいんだと。国産に比べて品質がいいから乾燥度が違うんですと言っていたけれども、これはそうじゃないんです。乾燥度は工場の生産の過程でどのようにでも変えられるわけでありまして、これは、私も危うく、そうかと思い込まされた時期がありまして、それを乗り越えて、後でちょっとおかしいと思って、きょうこうやって改めて整理をして問うていますので。

 大臣、ぜひ御自身でしっかり調べてもらって対応していただかないと、これは協会からすると今の話で二億円の収益が飛ぶ話ですから、協会としては二億円の利益が出ている話なんですよね。これを国産に切りかえて、無税じゃなくて、要するに、仕入れ値と、いわゆる出すときの、払い出しのときの値段に利ざやがなくなると、協会としては収益が減るから、これは抵抗すると思いますよ。だから、そこはしっかり、どのようなスキームがいいのか、場合によっては、もう協会ではなくてほかの方法で大量に調達する方法を考えるとかいうことも含めてこれは考えないといけないということを指摘しておきたいと思います。

 では、きょうのところはこの話はこのくらいにして、また後刻どうなったか聞きたいと思いますので、大臣、スピード感を持ってやっていただきたいと思います。

 さて、きょうは法案の中身の方についても少し問うていきたいと思います。

 カラーじゃなくなったのでちょっとわかりづらいかもしれませんが、二ページ目。これは、児童相談所を設置する都道府県市別の虐待対応件数、警察からの告知件数、虐待を理由とする一時保護件数を人口十万人当たりで割り戻したものの表をつくっていただきました。

 想像以上に大きな差があるというのが私の印象です。特に、下の方に書いてあります警察からの通告に対してどのように対応したのか。つまり、警察からの通告の件数が一定程度高くても、対応をとっている件数と比較をしてどのようなバランスなのか。ちょっと言い方をかえると、警察からの通告が児童虐待対応件数の何割を占めるのかというのを見ても、この割合もかなり違っているんです。

 ここで、通告は警察からだけではないということはあるわけですけれども、警察庁にもきょう来ていただいています。都道府県警においてこれだけの通告の件数の差がある、これは警察庁としてどのように理解をしているのか、どうしてこんな都道府県ごとにばらつきがあるのか、鳥取、島根は物すごく少ないですし、一方で、岡山はどうか。例えば、そうやって見ていくと、ばらつきがすごく多いです。大阪府などは大変多いわけでありますし、これをどのように理解しているのか、まずその点についてお答えいただきたいと思います。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の数字は厚生労働省の統計でございまして、平成二十七年度におきまして児童相談所が対応した虐待件数のうち、警察からの通告が占める割合を都道府県別等に示したものだと認識しておりますけれども、この統計におきまして、地域によりまして警察からの通告割合に差異があることは承知しているところでございます。

 この差異が生じる原因につきまして、警察庁としては把握しておらないところでございますけれども、今後、都道府県警察からの聴取などによりまして状況を把握して、改善すべき点等が認められれば適切に対処してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 いや、これは、大阪、堺市は非常に多いけれども、神戸にいくと激減するんですよ。神戸にいくと激減するんです。これはやはり、都道府県警においての、大阪と堺はそんな差がないんですよ、これは運用に差があるとしか思えないんですね。

 これはやはり、どういう運用がより効果的で、そしてまた、さまざまなリスク低減につながるのかということを研究するべきだと思いますが、そうした研究、検討をし、全国に均てん化をしていく、そういう御意向は警察庁としてありますか。

小田部政府参考人 警察におきます児童虐待に関します通告でございますけれども、警察庁におきましては、各都道府県警察に対しまして、一一〇番通報等で児童虐待が疑われる事案を認知した場合には、児童の安全確保を最優先としながら確実な通告を行うように指導しているところでございます。

 警察では、警察職員が現場臨場を行いまして、児童の安全確認を行い、児童の言動、外傷その他の周囲の事情から児童虐待を受けたと判断される場合には、確実に通告を実施することとしておるところでございます。

 また、その時点においては通告の必要がないと判断された場合におきましても、児童相談所等に対しまして当該児童に係る取り扱い状況等について照会を実施いたしまして、それにより得られた情報について十分勘案した上で、当該児童に係る通告の要否について総合的に判断をして対応しているところでございます。

 警察といたしましては、今後とも、こういった関係機関との情報共有を徹底し、連携を一層強化しながら、通告も含め、児童虐待の早期発見と児童の安全確保に取り組んでまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 いや、それは検証する気がないというふうな答弁に聞こえるんですよ。

 これは、例えば宮崎県と大分県、どうしてこんなに差があるんでしょうね。宮崎県なんて、ほとんど警察からの通告はない。でも、大分県にいくと、どんとふえる。これは、やはり県警ごとに差があるとしか思えないんですね。

 そういう意味で、どういう方法がより効果的なのか検証して、効果的、そしてリスク低減に資する端緒のつかみ方、こうしたものをきちっと研究した上で全国に広げていく、好事例を広げていく、こういった取り組みをやるべきだと言っているんですが、やっていただけるのかやっていただけないのか、そこだけ端的にお答えいただけますか。

小田部政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、こういった差が生じる原因につきまして、私ども警察庁として把握しておらないところでございますが、今後、都道府県警察からの聴取などを行うことで状況を把握いたしまして、改善すべき点が認められれば適切に対処していきたいと考えております。

岡本(充)委員 いやいや、だからそれを、好事例を均てん化していく。いや、個々に聞いて、あなた、こうしなさい、こうしなさいと個別にやっていくのもいいけれども、あそこはこういうふうにしているからこうした方がいいよというのを、まさに周知することができるのは警察庁の役割でしょう。だから、それをやってくださいと。個別に聞いて、あなた、こうした方がいいよという個別指導じゃなくて、いい事例はこういうのがあって、こういうふうにしているからと。だから、このばらつきがなくなってくるような運用をしていくべきではないかと言っているんです。どうですか。

小田部政府参考人 御指摘の数字につきましては厚生労働省の集計された統計でございまして、そういった統計でありますので、私どももこういった差異が生じる原因につきまして把握しておらないところなんでございますけれども、状況を把握しながら、先ほど議員御指摘のような形で、通告等に関しましても、当然、ベストプラクティス的なものがあれば、そういったことも含めて全国で共有する等、対応を今後とも行っていきたいと考えております。

岡本(充)委員 ぜひ、次回の本法改正があるときまでと言わず、もう可及的速やかに対応をとっていただきたいと思いますし、きょうは雇用均等・児童家庭局長の方から御答弁いただけると思いますけれども、それ以外の通告のあり方ですね。病院だ、例えば、あとどこですかね、学校からもあるんでしょうか、いろいろなところから通告があるんだろうと思いますが、そういう通告のあり方についてもぜひ考えていっていただきたいし、そもそも、これは累次にわたって私は指摘をしているんですけれども、端緒をどうやって把握するかというのが非常に大きな課題であって、厚生労働省として速やかにこれも検討して結果を出して、その端緒となり得るものはどういうものであり、どこでつかめるのかということを関係する職員等に徹底するべきだと思います。

 そういう意味で、端緒の研究のあり方、それからそれ以外の通告の状況のばらつきについての均てん化、こういったことにどのように取り組んでいくのか、局長からで結構です、御答弁ください。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 お示しいただきました資料、私どもの方で整理をさせていただいたものを引用していただいているわけでございますが、先ほども御指摘ありましたように、そもそもの相談対応件数あるいは一時保護件数、あるいは、この後、細部にわたりますと、どこからの通告であるのかなどなど、人口十万人当たりで標準化した数字におきましても都道府県ごとにいろいろとばらつきが生じているという事態、私ども改めて今回把握をさせていただきました。

 今御指摘いただきましたように、そもそも虐待の相談件数あるいは一時保護の件数、そして今御指摘いただきました、それぞれのルートからの通報に対しての対応など、どういう形で地域差があるのか、それぞれの事情があろうかと思いますし、国といたしましては、私ども、その扱いについて、児童相談所の運営指針ですとか、あるいは「子ども虐待対応の手引き」という形で一定の標準化という目安を示させていただいておりますが、ファクトはファクトとして今お示しいただきましたような内容でございますので、私どもとして、その地域差について、少し調査研究という形で実態把握をさせていただきたいというふうに思います。

 また、その中では、先ほどもう一つの御指摘として、端緒のお話もいただいております。これにつきましても、私ども、今年度から具体的に、この端緒に着目する部分につきましては、先行して外部の方に研究をお願いする形で進めさせていただこうということで今公募をさせていただいておりますが、それに従いまして、まず、これは単年度研究の形で今回はやっておりますので、今年度中に一定の成果をまとめさせていただき、次に向けてのさらなる分析につなげていきたいというふうに考えてございます。

岡本(充)委員 質問の順番が前後になっちゃいましたけれども、そう言うだろうなと思って最後に聞こうと思っていたんですけれども、そもそも、これは、児童相談所として虐待に対応してきた歴史というのは、どういう歴史だったんですか。いつから、どういうことをきっかけに、児童相談所が、まあ、当時は児童虐待という定義はなかったのかもしれませんが、どのように対応してきた歴史で、そしてその間に、実際に虐待についての研究というのは、厚生労働省、やってきた歴史があるんですか。そもそもどうです、歴史的にひもといてみて。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、児童相談所、根拠の法律は児童福祉法という法律でございまして、これは昭和二十二年に制定をされております。当時から、まあ、今御指摘いただきましたように、虐待という言葉ではなく、要保護児童対策というふうに当時は大きく構えてございましたが、その一環として、今日でいうところの虐待を受けたお子さんたちの保護などに取り組んできたという歴史がございます。

 その中でも、特に虐待というものに着目をして、相談対応件数という形で把握をさせていただき始めたのは平成二年度からでありますし、平成十二年度に、これは議員立法で先生方、児童虐待防止法をつくっていただきましたので、その施行以降、いろいろな議員立法としてあるいは閣法としての改正をもってして、この虐待対策、児童相談所における取り組みを強めてまいりました。

 その間におきましては、昭和二十四年度以降でございますが、こういう都道府県のといいましょうか、現場における運用について一定の知見が積み重ねられてまいりましたので、ケースワーク集という形で、当時、関係者、有識者の方々、実務の方々の知恵を集めたものを随時発行させていただいたり、あるいは、平成十一年度には、児童相談所などでありますけれども、専門機関が虐待事例に適切に対応していただけるためのいろいろな手引書としての「子ども虐待対応の手引き」というものをまた有識者の意見なども入れながらつくらせていただいたという事実、そしてそれが、累次にわたる改定をさせていただいたということがございます。

 またさらに、特に、児童虐待防止法以降におきましては、死亡事例、先ほどおっしゃっていただきました端緒の問題とも絡むのかと思いますけれども、検証を進めるべしということで、厚生労働省に有識者の方々から成る委員会を立ち上げさせていただきまして、虐待による、残念ながら死亡に至った事例の検証など、これまで進めて、十二次までの報告を出させていただいておりますので、こういう積み重ねの中、それぞれのタイミングにおける課題について、私ども、引き続き研究をまた深めてまいりたいというふうに思っております。

岡本(充)委員 厚生労働省単独でやはり研究して工夫をしてきたという歴史というよりは、対応に追われてきた歴史ということを、この間、局長は説明されたんです、事実的には。そうですよね。そうなんですよ。やはり、これは前向きの研究をやってこなかったんですよね。

 厚生労働省の所掌範囲は広くて大変だということは十分わかった上で、わかった上で言っているんですけれども、さはさりとて、かなりの予算を持っているわけですから、前向きの研究を、だから、先ほどの話で、端緒についてどう考えるのか、通告についてどうあるべきなのか、こういうことをやはりやっていかなければ、悲惨な事件は減らないし、児童の保護が進む話が私は見えてこないんじゃないかということを危惧しています。

 そして、これはもう一つ、今度、一時保護をしたときに、子供の側から見てどうなのかということも考えてみたんですね。

 さまざまな事由、自分に非がある理由で児童相談所に通告される人もいますが、自分にその責任がない中で児童相談所に一時保護をされる、一時保護をされたら、その翌日から学校に行けなくなる。事実関係として、やはり、児童相談所に行っている子供さんはその後学校に通えなくなっているんじゃないかと思います。

 では、二週間でもいい、場合によっては、今度から二カ月を超えたら裁判所が関与するという法改正ですけれども、それだけ長い人は五百人程度だと言ってみえますが、それにしたって、二週間、三週間、一カ月程度、学校に自分に責任がないのに行けなくなる、そしてある日戻ってくるということになると、今度、学校の側でどういう対応をするかというのが極めて重要になると思うんですね。

 文科省にきょう来ていただいておりますけれども、重ねて、今度は、児童相談所に入った子供さん、保護された子供さんが学校に戻ったときに学校としてどういうケアをしているのか、もしくは、いない間に学校においてどういうふうな説明をしているのか、何でペケペケ君、きょうから来ないのという話になりますから、そこはどのような対応をしているのか、まず文科省からお答えいただけますか。

瀧本政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、児童相談所における一時保護の後に学校に復帰した児童生徒に対する対応ないしはケアでございますけれども、文科省におきましては、そうした子供が学校に復帰した際に、いじめとかあるいは不登校にならないかといったことも十分注意をしながら、家庭環境が困難にある児童生徒についてはスクールソーシャルワーカー等を活用した支援を積極的に行うよう学校現場に周知をするとともに、いじめに関して申し上げると、虐待を受けた子供たちについては、わざと相手から怒られたり嫌われたりするような言動を繰り返してしまうという兆候があるということも報告をされておりますので、いじめを受ける可能性が高い、あるいは特に配慮が必要な児童生徒ということで、日常的にその特性を踏まえた適切な支援を行うとともに、周囲の児童生徒に対する必要な指導を組織的に行うよう周知をしているところでございます。

 虐待を受けた児童生徒については、児童相談所を初めとする関係機関と連携をしながら適切に対応するよう、引き続き、教育委員会、学校等を指導してまいります。

 また、もう一点お問い合わせのありました、いない間についての、その子について、在校している子供たちに対する説明。個々のケースに応じてどのような説明を学校現場でやっているかというところまでについては、私ども、詳細に把握しているものではございませんが、子供が、一時保護の後、戻ってからも、友達と一緒に仲よく学習ができるように十分配慮しながら指導が行われているものと考えております。

 以上であります。

岡本(充)委員 信じていますという、何か祈りにも近い答弁が最後でしたね。

 私は、それではいけないと思うんですね。把握しておりませんがじゃなくて、やはりこういう、いや、その子の責任じゃなくて学校に行けなくなるわけですよ。その間どういう説明をするか、そして、それがやはり復帰するときのソフトランディングにつながるんじゃないかという気がしますよ。

 だから、そこは把握していません、適切に児童相談所と連携していきますと、もう役所がつくる答弁そのものですね。やはりそれは、きょうの私の指摘を受けて、文科省、対応をもう一度考え直していただいて、速やかにこれも対応を徹底していただきたいと思います。

 一方で、厚労省の側としてできることは何なのか。どうやってその子が登校を継続することができるかということを、これは努力するべきじゃないかと思うんですね、やはり。

 その子供さんが長期にわたって学校に行けなくなる、その間は児童相談所でも誰かが勉強を教えますから大丈夫ですわと、きのう、レクに来た方がそう言われました。それは、算数の勉強はするかもしれない、理科の勉強はするかもしれない、でも、実験をしたり、体育を通じて友達と仲よくなっていく、その過程が奪われているわけだから。

 やはり、そういう意味で、この部分は私は大変重要だと思うんですね。だからこそ、どうやって通学を続けることができるかということを真剣に、そして前向きに考えて取り組むべきだと思います。大臣、どうでしょう、そこら辺、ちょっと、お考えいただくように指示を出してもらえませんか。

塩崎国務大臣 当然、児相は、その子供を、言ってみれば、全体として、一人の人間として見るわけですから、就学児であれば当然学校に行くというのが基本で、それが行けないということをどう克服するのかということも一緒に児相として考えていかなきゃいけないところですし、実際、考えていることが多いんだろうと思います。

 それが、では万全の体制でうまくいっているかというと、なかなかそこまでは手が回っていなかったり、いろいろなことがあると思うので、そういう意味で、専門性の高い人をこれからどんどんふやしていこうということになっているのは、そういったところにも、今御指摘のようなところにも気が、ちゃんと配慮ができるような、そういうことになっていかなきゃいけないんだろうというふうに思いますので。

 私どもとしては、子供にとって一番大事なのは、やはり学校であり、また交友関係でもあり、人間関係でもあって、社会との接点を一時保護によって奪われているというままでいくのは、できる限りこれは最小限に食いとめなきゃいけないというふうに思いますので、御指摘の問題点はそのとおりだと思いますので、児相に改めてそういうことについてもよく配慮をするように申し上げていきたいというふうに思います。

岡本(充)委員 配慮するようにといったって、配慮しているんですよ。今だって配慮していないわけじゃないんです。行けたら行かせてあげたいと思っていると思いますよ。ただ、恐らく物理的に行けないんだと思います、私は。だから、配慮をするようにという話だけだったら、配慮は今でもしているんです。

 物理的にどうやったら行けるようになるのかということは、やはり予算をつけることしかないんだと思います。そういう意味で、こうした、通学をする子供の権利を奪うのではなくて、どうやったら通学が継続できるのか、工夫をするのにやはりお金が必要だということだと思いますよ。そういう意味で、大臣、ここは、配慮をするようにではなくて、もう一歩踏み込んで御答弁を再度お願いしたいと思います。

塩崎国務大臣 通学ができればいいんですけれども、通学した場合の危険性というのもあるわけですから、当然、そうなると、一時保護のままで、どうやったら一番ベストなコンディションで学習を続けるかということも考えていかなきゃいけない、そういう意味で配慮をするということを申し上げているので、行くことだけではない可能性が私は高いと思うんです。親からまた連れ去られるとか、そんなこともあるわけでありますので。

 ですから、そういう意味で、ケース・バイ・ケースで、きちっとした配慮ができるようにしていく。予算が必要な場合ももちろんありましょうし、一時保護のままで、これは施設の場合もありますけれども、そこで教育を施すということについては、またこれも予算も必要なこともあろうかと思いますから、そういう面で、予算について考えなきゃいけないこともあるかもわからないという可能性は、それはそのとおりだというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、大臣、虐待の場合はそういうケースもあるでしょう。虐待以外でも保護されている子供もいますから。だから、それは親がやんごとなき理由でどうしても養育することができない状況になった子供もいます。それで教育の機会を奪われている子供なんかは、どうやって学校にアクセスするかですから、これは。そういう意味では、虐待は確かにそういう面もありましょう。しかし、虐待だって、工夫の仕方で、学校まで連れていけば、行けるのかもしれない。

 そういう意味で、さまざまなケースがありますけれども、子供が学校に通えることを前提としたスキームづくりを、どうしてもそれは行けないケースはありますけれども、それを考えてくれ、それに向けて予算をぜひ確保してほしい、こういうお話をしているので、大臣、もう一度御答弁いただきたい。

塩崎国務大臣 今回、虐待との関係で、司法関与等々、一時保護も含めて御提案申し上げているものですから、虐待に重きを置きながらの説明をしました。そういう意味で、それ以外の一時保護ということであれば、それは御指摘のとおりかもわかりませんし、そういった面での踏み込んだ予算のことについても考えていかなきゃいけないということは、十分あり得ると思いますから。

 いずれにしても、今回は、やはり虐待に起因するさまざまな問題への答えを出そうということだったものですから、そのように申し上げたということでございます。

岡本(充)委員 では、それ以外も含めて、虐待でも通えるものがあり得ると思いますので、そういうものも含めて検討いただける、こういう理解ですね。では、ぜひ予算の獲得を御期待しております。児相もきっと、そういうことがかなえば、ありがたいと思うと思いますので。

 それでは、次の課題に行きたいと思います。里親と特別養子縁組について少し紹介したいと思います。

 私は、大阪に仕事で行って泊まると、何の新聞がいいですかというと、かなりの確率で毎日新聞を頼むんです。何でかというと、そこのページに、六ページ、七ページにあります。こういう特集があるんですね。大阪版に載っているんです。いや、私、これを最初に見たときに衝撃を受けました、新聞にこういうことが載るんだと。しかも顔写真つきで、こんな子がいて、「あなたの愛の手を」、こういった欄があるんですね。私は愛知県で、中日新聞をよく読みますけれども、中日新聞の地方版にこういう特集はないものですから、いや、どうなのかという話をしたら、きのう、厚労省の職員でも、一部の方は御存じでした。

 これは「家庭養護促進協会のホームページ」と書いていますが、その後、八ページ目にありますけれども、養子縁組あっせん事業者の一つのようですね。今度から、許可制にしていくという方向で改正がなされた法律が実施をされていくんでしょうけれども、こうした事例は、私は、大阪の養子縁組に効果をもたらしているんじゃないか。こういう子供がいる、実際に見て、どういう子なのか。

 大臣、読んでみてくださいよ。「ぽっちゃりとした頬にえくぼを作り、ニコニコと笑顔を見せる男の子です。ゴロンゴロンと体を回転させながら職員に近づき、ボディータッチをして、うれしそうにしました。」こう読んでいくと、いや、こんなかわいい子が愛の手を求めているのかと思うと、これはやはり、うちで何とかならないかなと思う家庭も多くなってくると思いますよ。

 こういう取り組みをもっと広げていったらどうかと私は思うんですけれども、どうでしょう、大臣、これこそまさに、こういう事例をどうやって広げていくかのまさに展開ができるのは、厚生労働省の仕事だと思いますよ。ぜひ、全国の今後許可を受けるであろう事業者、また自治体、児相などと協力して、こういう周知をする方法を展開されていってはいかがかと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 基本的に全面賛成だというふうに申し上げたいと思います。

 そもそも、こういう形で特別養子縁組を、あるいは、まあ、悪くて里親としても、こういう年齢で、まさに愛着形成がなされる一番大事な時期に、これが施設で今までは預かられて、乳児院に行き、そして児童養護施設に行って、十八歳までずっと施設にいる、こういうことはやはりもう避けようというのが、去年の児童福祉法の改正の心だったと思います。

 そういう意味で、私は、乳児院への、あるいは他の施設も含めてですけれども、新規入所は停止をするぐらいの気持ちで臨まなければ、去年の法改正の意味がないというふうに思っておりまして、そういう意味では、こういう子供たちを養子にもらおうという人、あるいは少なくとも里親で引き受けよう、そういうような人たちを探し出すということは、とても大事だというふうに思っております。

 これは去年も審議の際に申し上げましたけれども、例えば特別養子縁組というのは、ほとんどの方が知りませんから、そして、やっとこの間の法改正で児相の業務になってきましたので、これからやはり、例えば、産婦人科の待合室にポスターを掲示するとか、あるいは、今御指摘のように新聞、雑誌、さまざまな広告を試みるということ、そういうようなことを、あらゆる手を使ってやって、こういう、本当に、本来の親からの愛を受けて真っすぐ育っていくチャンスをより多く与えていくということを私はやるべきだと思っておりますので、児相にも頑張ってもらいましょうけれども、私ども、児童福祉法の所管は厚生労働省でありますから、率先してやらなきゃいけないというふうに思っております。

岡本(充)委員 ぜひこれを均てん化していく、要するに、多くの人に読んでもらえる。いや、この新聞、多分、委員も、ほかの資料と違って結構一生懸命今読んだと思いますよ。見ていたらみんな一生懸命読んでいました。これで目にして、やはり読もうという気になりますよ。この記事、人の心を動かしますよ。そういう意味で、こういった事例を広げていっていただきたいということをお願いして、きょうの質問時間になりましたので、終了します。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 今回、審議の対象となっている児童福祉法の一部を改正する法律等、これは、昨年、児童福祉法の改正案が全会一致で成立して、この四月から施行されているところですが、司法関与ということに関して、施行後速やかに要保護児童の保護措置に係る手続における裁判所の関与のあり方というものを検討するという条項がついておりまして、それを受けたものだと聞いております。

 ただ、この法案というのは、大臣初め政務三役の皆様の強いリーダーシップのもとで提出に至ったということも聞いております。そこで、まずは、今回の改正についての副大臣の思いを伺いたいと思います。

古屋副大臣 山下委員にお答えをいたします。

 大臣初め政務三役、いずれも、児童虐待や社会的養護の問題など、子供に関する問題につきましては、非常に重要な問題として力を入れて取り組んでまいりました。近年、塩崎厚生労働大臣の強いリーダーシップのもとで、政務も含めて、厚生労働省一丸となって、これらの問題への対策をかつてないスピードで進めてまいりました。

 昨年、国会に提出をし、成立させていただきました児童福祉法等の一部を改正する法律では、子供の権利を初めて法律上明確に位置づける抜本的な改正を行いまして、家庭養育の原則を定め、特別養子縁組や里親委託を優先することを盛り込みました。

 また、昨年の改正法の附則におきまして、委員おっしゃいましたように、法律の施行後速やかに検討を加えて必要な措置を講ずることとされた児童虐待対応における司法関与につきましても、塩崎大臣の指示のもとでスピード感を持って取り組んでまいりました。

 具体的には、昨年の改正の施行を待たずに、昨年七月から、児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組の利用促進の在り方に関する検討会におきまして検討を進め、今回、保護者に対する指導や一時保護への司法関与を強化する改正法案を提出させていただいたところでございます。

 今回の改正法案によりまして、件数が増大をしております、また、深刻化をしている児童虐待への対応につきまして、司法の関与を強化して、より子供の命を守っていきたいと考えているので、何とぞ御理解をいただきたいと思います。

山下委員 非常に温かく、また強い決意、ありがとうございました。

 まず、そこで、そもそも児童虐待通報が近年増加している現状について、本法の前提条件として確認させていただきたいんですが、このパネルでございます。

 パネル一として資料を配付させていただいておりますけれども、近年、非常に児童虐待相談対応件数がふえている。この十六年で大体八倍、九倍ぐらいになっているところであります。二十七年に初めて十万件を突破したということでございますが、これは何も、親御さんが急に虐待をするようになったということではなくて、今まで見つかっていなかった、相談されていなかった、実は前から虐待があったということも含まっての件数の増加というふうにも思われるんですが、この件数の増加の原因、そしてその分析について、当局としてどのように分析しているのか、お答え願います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員、パネルでもお示しいただきましたように、今の事実関係、また、自治体の方々からの御意見、現場の意見なども踏まえますと、一つには、心理的虐待がふえているという事実がございますし、その要因といたしましては、子供さんが同居する家庭における配偶者に対する暴力、いわゆる面前DVと言われるようなケースについて、警察からの通告が増加している。

 これにより、また、平成二十七年七月から、私ども、全国の児童相談所、全国の共通ダイヤルとして一八九という三桁の相談ダイヤルを設置させていただいておりますし、そのような動きについて、また、昨今の虐待の状況について、マスコミなど、いろいろな事件報道などもありますことから、国民の方々あるいは関係機関のこの虐待問題に対する意識が高まって通告が増加した。そういう意味では、初期段階での相談につながっているというふうに考えております。

山下委員 ありがとうございました。

 通告がしやすくなったということで多くなったということにはお答えいただいたんですけれども、そもそも、やはりちょっと子供に対する虐待というのが実態としてふえているのではないかという考えもございます。

 この表を見ていただければおわかりのように、相談の内容別割合ということで、数がふえているものというのを見ると、例えば身体的虐待とか心理的虐待、面前DVとかがあるんですが、これは、実は私は最初赤丸をしていなかったんですが、指摘させていただいたのは、やはり見逃しちゃだめなのはネグレクトなんですね。身体的虐待というのは、外見上、学校がわかるということもある。心理的虐待も、やはり何かトラウマを抱えてという部分があるんですが、ネグレクトにつきましては、かなり子供が我慢していたりとか、あるいは、ちょっと痩せているなというふうに思うんだけれどもなかなか気づかない、そういったこともあろうかと思います。

 それで、最近、やはりこういったネグレクトが、この表も見ると二三%ということで、ふえているように思うんですが、そのことについて、もしお考え等があれば。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員まさにパネルで御指摘いただきましたように、ネグレクトにつきましても、全体のケースの中における一定比率を占めておりますし、ネグレクトが結果的に、親御さんの養育技術というのでしょうか、養育意欲あるいは養育意識、あるいは手法というものについて十分伝承されていない、あるいは、いわゆる養育に当たって親御さん自身がいろいろな困難を抱えておられるケースもあり、結果的にネグレクトというケースがあるというのも現場の声として承っておりますので、私ども、その点についても十分注目してまいりたいと思っております。

山下委員 ありがとうございます。

 そういった現状分析を受けて、虐待ももちろん、ネグレクトに関しても適切な指導等ができるようにということもあって、今回の司法関与があったと思うんですが、これはちょっとパネルではなくて、配付資料の「児童虐待対応の基本的な流れ」ということで、改正後のイメージを書かせていただいております。

 児童虐待の通告があった場合、これがどう流れるかということで、まず、通告があった場合に、一時保護に至る場合というのもあるんだろう、あるいは、通告がそのまま家庭復帰や在宅指導ということもあり得るでしょうし、また、甚だしい場合には、家庭裁判所の承認の審判申し立ても、一気にあり得ることもある。

 ただ、一時保護に行った場合に、その後、施設入所のラインに流れるか、あるいは家庭復帰、在宅指導ということに流れるかということをまず判断しなければならないんですが、この一時保護において、今回の法改正において、この一時保護が親権者の意に反して二カ月を超える場合、これについては家庭裁判所の承認が必要になったということで、二カ月ごとにチェックが入っていくという法制になったということでございます。

 そして、施設入所が必要ではないかと判断される場合に、残念ながら、親御さんが、もう施設で預かってくれ、あるいは里親に委託してくれという場合には、一番上の、親権者等の意に反しない場合ということで、里親委託、施設入所等ということで、児童福祉法二十七条の流れに流れる。

 親権者の意に反する場合、これについては家庭裁判所の承認の審判の申し立てということになり、これはもう一発アウトだということにおいては承認ということで、そのまま、意に反していても施設入所、里親委託がなされるということであります。これまでは、そうじゃない場合には却下ということで、いきなり家庭復帰、在宅指導ということだったんですが、今回の法改正で、その中間項として、家庭裁判所による保護者指導の勧告という手続ができたということでございます。これが今回の改正の具体的な流れでございます。

 こういった、先ほど言ったように、児童虐待を行った保護者については、児童相談所がこれまでも指導を行うということがございました。そんな場合、児童相談所と保護者の対立がある場合というのは、やはり現実にあると思います。それで、実効性が上げられないケースもあるというふうに聞いております。

 今回、こういった先ほど申し上げた改正をするということで、どういった指導の実効性、あるいは親御さんへの働きかけ、虐待あるいはネグレクトその他があるとお考えなのか、裁判所の勧告の活用が期待されるのか、古屋副大臣に御回答願います。

古屋副大臣 保護者に対する指導への司法関与について御質問いただきました。

 今回の改正法案では、里親委託や施設入所等の措置の承認の申し立てがあった場合に、家庭裁判所が都道府県等に対して保護者指導を勧告することができることといたしまして、家庭裁判所は、その結果を踏まえて審判を行うことといたしております。

 保護者が家庭裁判所の勧告のもとでの指導に従ったかどうか、里親委託や施設入所等の措置に関する審判において重要な判断要素の一つとして考慮をされることから、保護者に対して一定の効果が見込まれると考えております。

 加えて、今回の改正法案では、家庭裁判所が勧告をした場合には、保護者に対して勧告をした旨を通知することとしておりまして、裁判所が勧告した事実が保護者に直接伝わることで、指導の実効性が高まると考えております。

 また、家庭裁判所の勧告の活用が期待される事案といたしましては、例えば、保護者によるネグレクトが長期化をしている、必ずしも緊急性は高くないものの、子供にとって不適切な養育が続いているといった事案で、家庭裁判所の関与のもとでの実効性ある保護者指導が行われれば、引き続き家庭養育の可能性があると考えられる場合などを想定いたしております。

山下委員 ありがとうございます。

 今までは児童相談所が保護者指導をしていたというところではあるんですけれども、今回、勧告という家庭裁判所のいわば権限、それに裏打ちされたものがあるということで、その勧告に基づく指導ということで、保護者の指導も実効性が高まるのではないかと思われるところでございます。

 指導に従わなければ報告をするよとか、あるいは、勧告した内容が保護者に届いて、家庭裁判所としてはこういうことが必要だからということで伝わる、こういうことで、これまで行われてきた児童相談所の指導、これが非常に実効性が高まるものと期待されるわけでございますけれども、残念ながら、それでも保護者、もう従わないという方もおられようかと思いますけれども、こういった勧告のもとで保護者が従わない場合、これはどういう対応がなされるのでしょうか。当局に伺います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 家庭裁判所は、保護者指導の勧告が家庭裁判所から勧告された場合、この勧告のもとでの保護者指導の結果について、今委員御指摘のように、都道府県等から報告を受けるという立場に家裁は立ちます。その内容を踏まえて審判をするということでございます。

 審判の内容自身は、それぞれ個々の事案に応じて判断されるということでございますけれども、保護者が勧告のもとでの指導に従わないというようなケースの場合においては、里親委託あるいは施設入所等の措置を承認するという、その道に行く重要な考慮要素になるのではないかというふうに思っております。

山下委員 ありがとうございました。

 勧告に従わない場合にはやむを得ないということではあるんですが、これは逆に、こういう手続を設けることによって勧告に従うということで、ネグレクトというのは、わざとという、まあ、わざとではあるんですけれども、余り強い自覚なくやられている場合も多い。そういったことで、裁判所も加わっての勧告ということで、親子がやり直しをする、そういったチャンスを与えるという機会でもあろうかと思います。そうしたことを、今回、塩崎大臣、古屋副大臣、堀内政務官の強いリーダーシップで行われた。非常に重要なことであろうかと思います。

 以上が勧告ということでございますけれども、ちょっと時系列的には、先ほどの配付資料のとおり、さかのぼるわけでございますけれども、一時保護の場合において審査が導入されるということになります。つまり、一時保護、これは児童福祉法三十三条でございますけれども、ここに、二カ月を超える場合には家庭裁判所による審査を導入する。これは、司法審査は、やはり長いものについては必要でございます。これは評価したいと思うわけでございます。

 ただ一方で、こういう審査、手続が複雑になる、そういったことで、こういう言い方はちょっと家庭裁判所に失礼なんですが、そういう手続が加わることによって、ただでさえ忙しい児童相談所の必要な権限が逆に抑制されたり、あるいは児童の安全確保、保護がないがしろにされるようなことがあってはならないというのは当然のことでございます。

 そこで、この家庭裁判所による審査、これを導入することで、児童相談所の必要な権限行使が抑制されることがないのか、そうしたことについて当局から御説明願います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案で、家庭裁判所による審査を導入する部分につきましては、先ほど来委員御説明いただいておりますように、一時保護全てのケースではございませんで、親権者等の意に反して二カ月を超えて引き続き一時保護を行う場合ということでございまして、その狙いとしては、手続の適正性を一層確保しようということでございます。

 ということは、一時保護自体は、従来どおり、行政の判断で行うことができるということでございますので、今回の改正により、児童相談所が必要な一時保護をちゅうちょするなど、必要な権限行使が抑制されるようなことがあってはいけないというのが私ども基本的なスタンスでございます。

 こういうことから、昨年、児童相談所の運営指針というものを見直させていただいて、一時保護を行う場合には、子供の安全の確保などが必要な場面があれば、親御さん、保護者の方々の同意の有無にかかわらず、一時保護をちゅうちょなく行うべきということを明記しておりますので、この点につきましても、今回の改正、お認めいただいた後におきましても、都道府県等に対して周知徹底をさせていただきたいと思っております。

山下委員 ありがとうございます。

 一時保護というのは、一旦保護して、その後、最終的に施設入所ということにするのか、家庭に戻すのかということで、その判断をする期間でもあるんですが、これが余り長引いてはいかぬと思うんですね。二カ月ごとに家庭裁判所の審査が入るからといって、それを前提に、それを繰り返せばいいんだということがあってはならないと思います。

 一時保護ではなくて、ちょっと先ほど御紹介した家庭裁判所の承認の審判の申し立て、これは二十八条、この審判については、審判までに二カ月から四カ月を要することが多いというふうにも聞いておりますけれども、その前段階の一時保護、これが次の段階の二十八条審判のように長引くということが余りあってはならぬだろう。だから、そういった、二カ月を超えることが前提でということであってはならない。

 この一時保護については迅速な手続の処理をやっていただきたいんですが、その点については、当局のお考えはどうでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回、新たな審判事項となります一時保護の審査期間につきましては、もちろん、個々の事案に応じてさまざまではございますけれども、今御指摘いただきましたように、そもそも、一時保護が二カ月を超えて行われるたびごとに審査というものが申し立てられるということからいたしましても、できる限り迅速な審査が必要だというふうに思っております。

 そのためには、今回の法律案、認めていただいた施行までの間に、裁判所において審理手続の詳細など必要な検討が行われるというふうに承知をしておりますけれども、迅速な審理が行われるために、児童相談所から必要な書類が適切に提出されるということも重要であるというふうに思っておりますので、私ども厚生労働省といたしましては、法務省などと連携させていただいて、必要な検討を行った上で、手続の具体的な内容について都道府県に周知して、全体としての審査期間が迅速に行われるように取り組ませていただきたいと思っております。

山下委員 そうですね。一層の取り組みを期待したいところでございます。

 先ほど申し上げたように、一時保護においても家庭裁判所の承認というのが入る。あるいは、そのほか二十八条審判、家庭裁判所の承認の審判の申し立てにおいても、家庭裁判所による保護者指導の勧告という新たな手続が入るということで、ある意味、家庭裁判所の関与する機会がふえるということでございます、一時保護と二十八条審判においてですね。そうなると、やはり家庭裁判所が関与する業務というのが一定程度増加すると思われるんですけれども、これについて、まず、どれぐらい増加するというふうに厚生労働省が見込んでいるのか、お答えいただければと思います。

吉田政府参考人 私ども、今回の改正案を検討するに当たりまして、全国の児童相談所に対して行いました調査結果によれば、親権者等の意に反して二カ月を超える一時保護の件数が年間四百六十八件程度というふうに推計をさせていただいておりますので、今回の部分につきましても、おおむね同程度の件数が対象になるのかなというふうに考えておりまして、このようなケースについて、なかなか、では、どれぐらいの、個々、現場において事務負担になるかということについては、一律ではないと思いますけれども、そのあたり、児童相談所側の体制整備もきちっと進めながら、今後注視してまいりたいと思っております。

山下委員 ありがとうございます。

 一時保護について、二カ月ごとの承認というのは五百件弱であろうというお答えがあったんですけれども、家庭裁判所もこれに対してしっかり対応していただく必要もありますし、先ほどお話しした二十八条審判で、新たな勧告をするためにはやはりそれなりの調査が必要で、報告を受けてということで、ワークロードというか負担が、家裁の裁判官においても、あるいは職員においても負担がふえると思うんですよね。それについて、やはり家庭裁判所においてしっかり体制整備をしていただくということが重要であろうと思いますが、家庭裁判所として、最高裁としてどのようにお考えなのか、その点、お話をいただきたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 家庭裁判所では、家事事件の事件数が増加傾向にございまして、特に成年後見関係事件の申し立てが増加している状況にあるというようなことも踏まえまして、これまでも家事事件への対応を充実強化するため、事件処理にたけた判事ですとか家事事件を担当する裁判所書記官、これを相当数増員するといった必要な人的体制の整備を図ってきたところでございます。

 御質問をいただきました、今回の法改正を踏まえた人的体制の整備につきましては、まずは国会でのこの御審議の結果を踏まえて対応を考えてまいりたいというふうには考えておりますけれども、家庭裁判所による一時保護の審査など、新たに導入される制度ということになりました場合には、これが円滑に運用されますよう、これまで増員してきた現有人員の有効活用を図るほか、法改正の趣旨を踏まえまして必要な人的体制の強化に努めてまいりたいと考えております。

山下委員 ありがとうございます。

 今回、本当に家庭裁判所の判断というのが、ある意味、セーフティーネット、人権においてもなるということで、やはりきめ細やかな対応が家庭裁判所においても求められると思います。そういった意味で、最高裁におかれては、必要な人員そして予算の確保、これにぜひ努めていただきたいと思いますし、私たちも本当にそれは応援したいと思っております。

 あと一つ、今回の改正につきましては、接近禁止命令を行うことができる場合の拡大というのがございます。

 この接近禁止命令というのは、従来は、親権者の意に反して施設入所等の措置がとられている場合、これについては、親の意に反して施設入所等をやっている、親が子供懐かしさの余り子供に会いに来る、でも、それが不測の事態をもたらすとも限らないということで接近禁止命令を行うということになっているんですが、今回それを拡大したということでございます。

 これは現場の意見を踏まえた対応だということでございますけれども、今回の接近禁止命令の拡大について、どういった理由で拡大し、活用についてどういうふうに期待されるのかについて、当局の御説明をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正案に盛り込ませていただきました接近禁止命令の拡大につきましては、まさに、通告件数のふえている児童相談所、現場の方々の御意見を踏まえて対応させていただいております。

 全国の児童相談所からの調査をさせていただきましたところ、今回の拡大による活用機会ケースというので、例えばでございますけれども、性的虐待を受けたお子さんを一時保護して高校に通学させていたけれども、虐待を行った保護者自身が学校にあらわれて接触を持つおそれがある事例に対応していきたい、あるいは、父親が身体的虐待を行って逮捕、勾留されていたというケースで、お子さんが母親の同意を得て施設に入っていた、それで、お父さんが出所後に当該施設にあらわれて子供たちにつきまとったりするおそれがあるケース、あるいは、一時保護中にお子さんを病院に受診させたいということがあるんだけれども、保護者などにより連れ去りのおそれがあるようなケースに対して何とかできないかというような声、また、今回の拡大により対応したいということを私ども考えさせていただいております。

山下委員 ありがとうございました。

 同意があってもやはり会いたい、特に性的虐待の加害者であるような場合もありますし、また、一時保護ということで判断がまだついていない場合でも、やはり保護の必要性はあるわけですね。そういった意味で、今までの穴が塞がれたということで大変有意義な改正であろうと思います。

 このように、司法の関与というのが広がってきたわけでございますけれども、配付資料の2を見ていただきたいんですが、こういう裁判所の関与が強化される、これに伴って、やはり児童相談所における法的な知識が必要な業務がより一層増加すると考えられるわけでございます。

 そういった意味で、配付資料の2で、児童相談所における弁護士の活用状況等、これは去年の十月一日のデータではあるんですけれども、常勤の職員として弁護士を配置するところであるとか、あるいは非常勤職員として弁護士を配置する場所であるとか、あるいは、職員として配置はしていないけれども、弁護士事務所や県弁護士会推薦の弁護士との契約というところがどんどんふえているというところでございます。

 弁護士の活用状況というのが、全国二百十カ所ということで、進んでいるというふうに考えておりますが、この取り組み状況、活用状況を踏まえて、児童相談所職員の法的な専門性を向上していくというための取り組み、これについて副大臣から御意見があればお願いしたいと思います。

古屋副大臣 児童虐待の相談対応件数が増加をしまして、複雑困難なケースも増加をする中で、児童相談所においては、親権者等の意に反する里親委託や施設入所等の承認の審判の手続、また、親権停止、喪失の審判の手続等、法律に関する専門的な知識経験を要する業務が増加をいたしております。

 こうした業務を迅速に、的確に行っていくために、昨年の児童福祉法改正によりまして、今委員から御指摘がございましたように、児童相談所に弁護士の配置またはこれに準ずる措置を行うものといたしまして、児童福祉司とスーパーバイザーに、司法手続に関する科目を含む研修受講を義務づけることとしたところでございます。

 今回の改正による司法関与の強化によりまして、家庭裁判所による一時保護の審査など、法律に関する専門的な知識経験を要する業務がより一層増加をすることから、引き続き、弁護士配置の促進や研修の実施を通じて、児童相談所職員の法的な専門性の向上に努めてまいりたいと考えております。

山下委員 ありがとうございます。

 そういったことで、こういった協力関係もやることによって、弁護士会としても人権擁護の観点から非常にありがたいですし、また、児童相談所の職員の方もやはり心強いと思います。こういった取り組みをどんどん進めていただきたいと思っております。

 以上、制度論についていろいろ伺ったんですが、例えば我が党でも、虐待に関する特命委員会ということで、児童に限らず、さまざまな虐待について課題を整理するとともに議論を行っているわけでございますけれども、その中で、児童虐待について、やはり、今申し上げたのは起きてしまった話なんですね。でも、そもそも虐待が起きないようにする、子供と子育てに優しい社会、これが虐待のない社会につながるということが、我が党で呼んだ有識者も主張されているところでございます。

 そしてまた、堀内政務官からも、日ごろ、そういったお話を伺っているわけでございますけれども、今回、児童虐待という事案の対症療法でなく、そもそも虐待の起こりにくい社会を実現するために、児童虐待の発生予防のための取り組みが重要と考えますが、その点について、古屋副大臣の思いを教えていただきたいと思います。

古屋副大臣 残念ながら起きてしまった児童虐待に対して迅速的確に対応することに加えて、児童虐待の発生予防の取り組みを進めることは極めて重要でありまして、そのためには、子育て家庭の不安を早期に発見し、解消していくことが必要であります。

 このため、昨年の児童福祉法等の改正によりまして、妊娠期から子育て期にわたる切れ目ない支援を実施する子育て世代包括支援センターを法律に位置づけ、今、全国展開を目指しております。

 さらに、市町村におきまして、生後四カ月までの乳児のいる全ての家庭を訪問し、養育環境等の把握を行う乳児家庭全戸訪問事業、こんにちは赤ちゃん事業や、その中で養育支援が特に必要な家庭への養育支援訪問事業を実施いたしまして、孤立しがちな子育て家庭へのアウトリーチ支援に取り組んでいるところでございます。

 また、児童虐待による死亡事例等について、国の専門委員会で毎年度分析、検証を行いまして、その検証結果を踏まえて対策の改善につなげております。

 今後とも、児童虐待の発生予防に取り組んで、児童虐待のない社会の実現を目指してまいります。

山下委員 時間が参りましたので、終わります。

 この問題は、もう与野党を超えての取り組みでございますので、しっかりと力を合わせて頑張りたいと思います。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速、児童福祉法等改正法案の審議を進めさせていただきたいと思います。

 まず、児相の整備について、体制強化もありますが、そもそもの児相の設置について伺いたいと思います。

 先日、新聞報道でありましたのは、中核市の児相の設置、アンケートをとると、七割ぐらいの中核市が設置を検討していないというような回答が得られた、こういう報道でありました。これは、都道府県あるいは政令市というものは、児相は必置ということになっております。それで、中核市は義務じゃない。これは当然、現場現場できめ細かに対応していくというためには、児相をしっかりと中核市にも設置していただいて、裾野を広げていくということがまず大前提、大事じゃないかと思いますが、まずこの点について副大臣にお伺いしたいと思います。

古屋副大臣 中核市における児童相談所の設置につきましては、昨年の児童福祉法等の改正案の附則を踏まえまして、改正法の施行後五年を目途に、全ての中核市において児童相談所を設置できるよう必要な支援を行っていくことといたしております。私の地元横須賀には児童相談所が設置をされております。

 このため、厚生労働省といたしましては、平成二十九年度予算におきまして、児童相談所設置に係る事務量の増加に対する職員配置への新たな補助を創設するとともに、児童相談所の設置準備から開設までに必要な事項をまとめたマニュアルを作成いたしました。また、各都道府県等に対しまして、児童相談所設置自治体の拡大に向けた協力を依頼する等、支援策を講じているところでございます。

 さらに、今月の九日でございますが、開催をされた中核市長会総会におきまして、塩崎厚生労働大臣から直接、市長の皆様に対しまして、中核市に児童相談所を設置することの意義等を説明させていただき、前向きに検討いただくようお願いをさせていただいたところでございます。

 中核市市長会においても、児童相談所設置に向けた検討などを行うプロジェクトを今年度立ち上げて、活動を開始していると承知をいたしております。

 今後、厚生労働省といたしましても、現在行っている支援策の効果を見きわめつつ、中核市の御意見も伺いながら、引き続き、中核市における検討が深まるよう働きをかけてまいります。

伊佐委員 大臣みずからが中核市の皆さんの会合に出られて、そこで児相の設置を訴えられたということです。さまざま取り組みをしていただいていると思いますが、強力にバックアップをしていただければというふうに思っております。

 次に、児相の体制強化の話をさせていただきたいと思います。

 児童福祉司の皆さんが受け持つ虐待事例、どれぐらいあるかということですが、皆さんに調査をしたアンケートを見させていただきました。これは、一人の児童福祉司が受け持つ虐待事例、どれぐらいが妥当だと思いますかというような質問を福祉司の皆さんにさせていただいた。そうすると、十件以上二十件未満ですと答えた方が全体の三分の一、三二・四%、十件未満ですとおっしゃったのが三〇・二%、二十件から三十件ですとおっしゃったのが二一・二%。合わせて、三十件未満というのが、結局、八割ぐらいは三十件もあれば妥当ですということなんですが、実際は、一人大体四十件ぐらい今案件を持たれているということです。

 こうした件数の多さもさることながら、また専門性の話もございまして、児童福祉司の皆さん、専門性を確立する、確保していくのに、大体五年から十年かかるというふうに言われております。ところが、現場では、三年未満の方が五六・七%、半分以上いらっしゃる。平均年数は、キャリアの年数は二・九年というふうに言われております。

 こういう状況ですので、現場は本当にもうてんてこ舞いの状況でありまして、子供の数が今どんどん減っているにもかかわらず、虐待対応件数というのはどんどんふえて、今十万件を突破したという状況でありまして、ぜひこれは児童福祉司の計画的な増員、また児相の強化というものに取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所の体制、そして専門性の強化につきましては、昨年の児童福祉法の改正によりまして、児童心理司あるいは弁護士等の専門職の配置を新たに法律上に位置づけさせていただきましたし、児童福祉司等の職員に対する専門的な研修を義務づけるなどの措置を講じさせていただきました。

 この法改正を踏まえた政令改正によりまして、児童福祉司の配置基準につきまして、人口当たりの数をふやすとともに、人口だけじゃなくて、業務量も考慮していけるよう見直しをさせていただきました。

 さらに、昨年四月に策定いたしました児童相談所強化プランに基づきまして、児童福祉司などの専門職を、平成三十一年度までの四年間で千百二十人増員ということ、計画的に増員するということを目指してございます。

 この目標に向けましては、必要な地方交付税措置が講じられるものと承知をしておりまして、児童福祉司について、平成二十八年度においては、標準団体、いわゆる人口百七十万人の標準団体当たり三人、平成二十九年度には、さらに標準団体当たり二人の増員という形で手当てがされていると承知をしてございます。

 今後も引き続き、児童相談所の体制あるいは専門性を着実かつ計画的に充実させてまいりたいというふうに思っております。

伊佐委員 局長、今、着実にというふうにおっしゃっていただきましたが、申し上げたように、専門性を確保するためには、これは五年から十年かかると言われておりますので、今始めても時間がかかるというものですので、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、家裁の体制の強化、これは、先ほど山下委員も体制の強化を訴えられておりましたが、ちょっと私、違う観点で申し上げたいのは、専門性の強化という観点です。

 これも長らく言われておりまして、私も、例えばDV、このDVの被害者の皆さんであったりとか、あるいは加害者とされた方の声も、両方とも聞いてまいりました。両方の方とも言われるんです。家裁の体制として、例えばDV被害者の方々からお話を伺うと、なかなかDVと認定してくれない。体に例えばあざがあったりとか、お医者さんの診断書があったり、そういう場合はともかくとして、例えば心理的なDV、こういうものはなかなか、なおさら証明するのが難しいという話があったりとか、あるいは逆に、DV加害者と認定された側からも、例えば、きちんと調査されずに短時間でぱぱっと調書だけとられて、いつの間にかDVと認定されてしまったという声も聞きます。双方から、家裁の体制をしっかりしてほしいというのを伺っております。

 今回の法改正では家裁の関与というのがより大きくなっていくわけですので、専門性の向上、もちろん、もし人が足らないようなことになれば、その措置も含めてしっかりと体制強化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず、専門性の点でございますけれども、児童虐待に関する家庭裁判所全体としての専門性の向上は、重要な課題であるというふうに認識をしております。

 裁判所におきましては、これまでも、委員御指摘のありましたようなDV被害関係につきましてもそうでございますし、そのほかにも、児童虐待などをテーマに、精神医学や心理学等の専門家をお招きして御講演いただくなどを内容とした研修を行ってきております。今回の改正を受けまして、改正法の趣旨にのっとった審理を実現できるよう、一層の研修の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

 また、人的体制の整備につきましても、まずは国会でのこの御審議の結果を踏まえて対応を考えさせていただきたいとは思っておりますが、家庭裁判所による一時保護の審査など、新たに制度が導入されるということになりますれば、その制度が円滑に運用されますよう、これまでに増員してきた現有人員の有効活用を図るほか、法改正の趣旨を踏まえまして、必要な人的体制の強化、これについても努めてまいりたいというふうに考えております。

伊佐委員 家裁の体制強化、先ほど児相の強化の話を質問させていただきましたが、私、もう一点大事だと思いますのは、お医者さん、医師の専門性の強化。

 これも、新聞報道でありました。頭部外傷で、頭の外傷で亡くなったお子さんがいて、ある医師が警察からこのケースについての再鑑定を依頼された、この頭部外傷のケースというのは明らかに揺さぶられ症候群の典型だった、ところが、この虐待について、最初の診断では全く触れられていない、記述がない、再鑑定すれば、これはもう典型的ですねといって虐待が確定した、こういうケースがありました。

 こういうケース、もう亡くなってしまった後でさまざま取り組んでも仕方ないわけですが、もしお医者さんに虐待の知見があれば、最初に子供が病院に来たときに早期に発見できる、予防できる、こういう観点でも非常に大事だというふうに思っております。

 ところが、今、実際の教育現場ではそうなっていません。厚労省の研究班の調査の結果ですが、医学部を持つ大学に調査をした、児童虐待に関する授業をしているのはどれぐらいかと。回答を全部で四十八大学からいただいたそうですが、児童虐待に関する授業をしているのは、わずか半分でした。授業時間の平均は二十分という状況でした。

 医学教育の中で虐待についてしっかり学ぶ、もう少しちゃんと体制整備すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

樋口大臣政務官 お答えいたします。

 伊佐議員御指摘のとおり、医学部教育において児童虐待について学ぶことは極めて重要であるというふうに認識をしております。

 児童虐待については、学生が卒業時までに身につけておくべき必須の実践的診療能力の学修目標を示しました医学教育モデル・コア・カリキュラムにおいて、「児童虐待を概説できる。」といった項目が盛り込まれております。

 これに基づきまして、各医学部においては、児童虐待の早期発見、応急措置について説明することができる、虐待を受けた子供や虐待をする家族の特徴を理解し、支援、対策について理解するといった学修目標を掲げた児童虐待に関する教育が、講義や実習の場を通じて実施をされているものと承知しておりますが、今御指摘いただきましたように、それが平均二十分とか、また、一こま以上のところが少ないとかということを研究されているレポートも見せていただきました。

 つきましては、文部科学省といたしまして、今後とも、全国の医学部長会議等の医学部関係者が集まる各種会議等において、できるだけ高いレベルで、そして周知、要請を行うなどの取り組みを通じて、児童虐待に関する教育の一層の充実に努めてまいりたいと思います。

伊佐委員 私、樋口政務官にはちょっと言いやすいので言わせていただくと、先ほどコア・カリキュラムで書いていますということをおっしゃいましたが、私も見たんです。それで、どうかというと、これはEの7の3の6というところに書いてあるんです。つまり、全体の項目の中での一つの項目の、枝番の中の枝番の、さらにその枝番になって初めてちょろっと一行、「児童虐待を概説できる。」と書いてあるだけなんですよ。これは、もう少し何とかならないのかなと。きのう文科省とも話していると、いやいや、大学には文科省としてなかなか言いにくいんですと言うんです。私、そんなことはないと思います。

 これは、年間十万件を超えていく中で、もう少しこの医学教育、今のこんな二十分しかやらない実態というのは、私は問題だというふうに思っておりますので、お医者さんが早期に発見できれば助かる命というのがたくさんありますので、ここはぜひ引き続き樋口政務官とも議論させていただきたいというふうに思っております。

 お忙しい中、ありがとうございました。もう結構ですので。

 次に、保護者指導について伺いたいと思います。

 今回の法改正の中で、二十八条審判、つまり、児童相談所が、このケースは親子分離をした方がいいというようなケース、この申し立てを家庭裁判所に行う。そのときに、家庭裁判所が判断をする前に勧告をする。児相に対して、保護者にきちんと保護者指導してくださいと。養育環境を改善していく、こういったことを目指して、保護者指導を児相にやってもらう。その効果を見きわめながら、家裁は、では二十八条審判、本当に親子分離をすべきかどうか、里親委託とか、施設に入ってもらわなきゃいけないのかどうか、こういうものを見きわめようという法改正でございます。

 でも、これは一般的に、保護者指導を行う場合、つまり、児相が、これは親子分離した方がいいんだと申し立てる場合というのは、そもそも保護者と児相が対立関係になっている場合が多いです。その上で、児相はそうした対立関係を乗り越えながら保護者指導をするわけですが、これは当然すごい大事な取り組みだと私も思いますが、ただ、その効果があらわれるまでにはかなり時間がかかるだろう、これが現場の声です。

 そうすると、この効果、保護者指導の効果を見きわめるまで判断しないということにもしなるとすれば、これは二十八条審判の審理期間がどんどん長くなります。大幅に長期化していく、こういうおそれもあります。いやいや、そんなことはありません、二十八条審判は通常二、三カ月かかると言われていますので、この二、三カ月の間で判断します、保護者指導の効果を見きわめますということになるのであれば、保護者指導の効果が上がらないという結論に結局なるんじゃないかなというふうに思っておりまして、これはどう考えればいいでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案による勧告の仕組みにつきましては、例えば、必ずしも緊急性は高くないものの、お子さんにとって不適切な養育が続いているといった事案など、一定期間の保護者指導を行って、その効果を見きわめることが適切な場合というものを想定してございます。

 一方で、今御指摘のように、逆に言えば、家庭裁判所は、申し立てのあった事案について全て勧告を行うということになっているわけではございません。そういう意味では、親子分離が避けられないほど深刻な虐待の場合など、迅速な裁判が必要と考えられる場合には、従来どおり、勧告を経ずに審判が行われるということも、もちろんあり得るということでございます。

 そういう意味では、今回の形で、保護者指導、また、その報告を踏まえてという、家裁の方々に御判断いただく道をつくるわけでございますけれども、いろいろな仕組み、また、今回新設させていただく勧告の仕組みの活用をどういうふうにするかという点につきましては、今後、この法案成立後、都道府県等に周知し、その仕組みが勧告に適した事案に活用される。

 そういう意味では、逆に、必要な、急ぐ事案については、きちっと対応できるということが確保されるように、迅速な審判の、事案についての審判の長期化を防ぐということも考えてまいりたいというふうに思っております。

伊佐委員 今局長がおっしゃったのは勧告できるということなので、勧告しない場合もある、すぐに審判する場合もあるということなんです。それはわかるんです。わかるんですが、私が申し上げているのは勧告した場合です。勧告して、保護者指導しなさいよとなった場合に、どうやってこの保護者指導の効果というものを見きわめるかということで、私が申し上げたいのは、二十八条審判の判断を、この保護者指導の成果のみをもって左右されるようなことにしちゃいけないなというふうに思っています。

 あくまでこれは長期的な取り組みだと思うんです、保護者指導というのは。結局、二十八条審判で却下したとします。親子分離は今回しませんとなったとしても、引き続き制度上は家裁の勧告のもとで保護者指導できるわけですから、そういう意味では、長期的な観点としてしっかり取り組むという制度にしていただきたいと思います。

 さらに言えば、二十八条の申し立てのときに、児相から見て、これは保護者指導は実際難しいだろうというケースもあると思うんです。これは不可能だなというケースもあるはずなんですが、こういう場合に、だから二十八条、親子分離の申し立てを家裁にして、もし家裁がそのときに現場の状況がわからずに勧告して、いやいや、親子指導しなさいと言っても、何もできないという状況もありますので、あくまでしっかりと児相の意向を確認して、聞いた上で実施していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきましたように、現場の児童相談所の指導方針も十分確認いただいた上で、家庭裁判所が、勧告の要否、そもそもするかしないか、あるいはどれぐらいの期間かということを適切に判断していただくということが、この全体のスキームにとって重要であろうというふうに思っております。

 私ども、そういう立場からしますと、児童相談所から家庭裁判所に対して、勧告のもとでの指導の必要性、あるいは、必要とする場合には、その期間とか内容についても、児童相談所の立場から考えられることを上申書などの形を通じて十分に家庭裁判所に説明し御理解をいただいて、両者相まってきちっと事態に適切に対応できるように、そのような仕組みになるよう都道府県等に周知させていただきたいというふうに思っております。

伊佐委員 ありがとうございます。児相の意向をしっかりと踏まえて対応していただきたいというふうに思っております。

 次に、一時保護について伺いたいと思います。

 この一時保護というのは、あくまで緊急措置ということで、緊急措置として児相が子供を一時保護する。緊急措置ですので、この制度のたてつけとしては、二カ月を超えてはならないというふうになっております。

 二カ月をもし超える場合には、さらに、かつ親の意に反して二カ月を超えて一時保護する場合には、これまでであれば、都道府県の児童福祉審議会の意見を聞くということになっておりました。今回の法改正では、児童福祉審議会、都道府県じゃなくて、家裁の承認というふうに変わる、つまり手続が重くなるわけですが、さっき山下委員の質問でも、これが重くなることによってちゅうちょにつながらないようにという質問がありました。

 では、例えばこういうケースはどうかということなんですが、一時保護されています、引き続き保護が長引いて二カ月を超えるというような状況になってきました、親も同意している。ところが、同意していたにもかかわらず、いよいよ二カ月をそろそろ超えるという目前になって親が翻意する、いや、やはり嫌だ、子供を返してほしいということになる。ところが、そうなった場合に、今まで親の同意で二カ月延長だったものが、急遽、親の意に反する一時保護というふうに変わるわけです。

 こうしたケースは、現場にお話を伺うと間々あるそうでして、これは法改正で、こういう場合も急遽家裁の承認が必要になるということですが、すると、現場はどういう対応を考えるかといいますと、親が明らかに反対しているという場合は、そういう場合は当然二カ月延長できるように申し立ての準備をします。ところが、これは翻意して、もしかしたら反対に変わる可能性があるなと、可能性がある場合でも、念のために家裁への申し立ての準備をするんです。こう伺いました。そうすると、結局、大半の一時保護が申し立て準備が必要になってくるんです。

 これは当然、都道府県の審議会でやるよりも、家裁の方が、もしかすると資料も多く必要かもしれませんので、こうした現場の負担というのを考えると、ぜひ審理の手続というものを簡素なものとしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 現場ではいろいろなことが起こり得ます。その中で、今回入れますような適正手続というものを確保しながらということでございますけれども、今御指摘いただきました現行制度におきましても、都道府県の児童福祉審議会の意見を聞くに当たって、幾つかの証拠書類を提出するという形の手続を踏んでございます。

 今回の新たな制度を入れるに当たりましても、現行の資料などがどういう量になっているかなどを参考にさせていただいて、今後、施行に向けての関係機関、これは法務省サイドあるいは裁判所サイドともよく相談させていただいて、現場の事務負担、結果、その手続において、子供のことを、一番優先すべき子供に対して不適切なことが起こらないように、私ども、準備を進めさせていただきたいというふうに思っております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 次に、接近禁止命令について伺いたいと思います。

 この接近禁止命令、都道府県知事の権限でありますが、これまで、接近禁止命令というのは、親権者の意に反する里親委託あるいは施設入所をしている場合というふうに限られておりました、その接近禁止命令を出すことができた。

 それを、今回は、親権者の意に反する場合だけじゃなくて、同意して里親や施設入所となっている場合にも接近禁止命令を出すことができる。あるいは、一時保護についてもこの接近禁止命令が適用されるというふうに拡大されるわけですが、これは、一つちょっと確認をさせていただきたいのは、あくまでこの接近禁止命令が出せるのは里親委託あるいは施設入所という場合であって、例えば、虐待を行った保護者と離れて親族に預けられている、親族宅で生活しているような場合には接近禁止命令を行うことができないというふうになっておりますが、これはこれでよろしいんでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案、議論の過程ではさまざまな議論を有識者からいただきましたけれども、私どもが今回提案させていただいている内容につきましては、接近禁止命令の主体は行政とさせていただきながら、その対象は一時保護や同意入所の場合への拡大までということで提案をさせていただいております。

 御指摘いただいておりますように、親族宅に子供がいるというようなケースにつきましては、確かに、虐待を行った保護者によるつきまといなどによる児童の安全が確保できない場合ということもあろうかと思います。

 その場合、児相がきっちりかかわることが必要であります。その際には、必要に応じて、当該親族、親族に対しての一時保護の委託という形をとって、その上で接近禁止命令を行うというようなケースもあり得るかなと思っておりますが、いろいろなケースの中、適正手続という観点、あるいは現場の必要性の中、いろいろな手続の活用について、私どもも整理をさせていただき、現場とも意見交換をし、適切にお子さんの保護を図れるように取り組んでまいりたいと思っております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 親族であったとしても、制度上、その親族に対する委託という形、一時委託ということにして、ケース・バイ・ケースで、いろいろな、現場のさまざまなニーズに対して取り組みができるんだというお話をいただきました。

 次に、DVと虐待の関係について、実はいろいろな研究がございまして、かなりの場合、DVと虐待というのは関連しているというような研究成果があります。

 例えば、配偶者に対するDV、もちろん、それを子供の目の前で見せる、子供が見てしまうのは、これは心理的な虐待でもあるわけですが、ある研究によると、妊娠中の妻に対する心理的なDVというものにも、例えば罵倒するであるとか、あるいは批判するであるとか、そういう場合も妻の産後うつを誘発するんだと。そうすると、その結果、子供を産んだ後で、産後うつになったお母さんが、残念ながら子供を揺さぶってしまったりとか、あるいは虐待をしたりするケースがふえる。こういう科学的な、実際にデータがあるというのを、報道を読ませていただきました。これは、つまり、妻へのDVというものが、今度は妻から子供に対する虐待というものに連鎖をしてしまうという話です。

 それで、私が伺った足立区の例、これはかなり先進的な取り組みをしておりまして、まだ始まったばかりなんですが、妊娠届を電子化する。妊娠しましたという届け出があったときに、それを電子化して、妊婦健診、あるいは三カ月、一歳半、三歳、保健師の皆さんが家庭訪問する、この内容を全部データ化していく。データ化して、お母さんや子供へのいろいろなアクセスというのを、ログを全部残していくんだそうです。ログを残して、データ化して、これを分析して、一体どういう介入をするのが一番効果的なのか、どういうふうにかかわっていくのが一番効果が上がるのかというようなものを調査研究する、分析する、こういう取り組みをしているそうです。そうしたログの積み重ねの中で、例えば虐待であったりとか、あるいはDVであったりとか、こういうきっかけをつかもうと。こういう足立区の取り組みがございます。

 保健師の皆さん、三カ月、一歳半、三歳で各家庭に来られるわけですが、今、保健師の皆さん、丸腰で親子に接しているわけです。もう勘と経験だけというような状況でありまして、私、小さい子供がいますので、私の家にも保健師の皆さんが来られますが、そのときに、例えば、特に若い保健師の方が来られると、一生懸命なので、何とか虐待を見逃さないようにということで、疑いの目でというか、かなり一生懸命チェックされるというようなところもありまして、逆にそうした姿勢がお母さんの心を開けなかったりとかというような状況も伺っております。

 そういう中で、足立区がやっているのは、専用のアプリというものを開発して、このアプリを持って、このアプリをお母さんと一緒に見る、その中には、いろいろなコミュニケーションツールとして情報が入っているというようなものがあります。

 これは恐らく足立区だけじゃなくて、各地でそれぞれいろいろな先進的な事例はあるんだと思います。将来的には、こうしたログがデータ化されたものを関係者間で共有するということも考えられると思いますが、こうしたデータ化、あるいは将来のそうしたデータの共有について、副大臣に御意見を伺いたいと思います。

古屋副大臣 妊産婦に対する切れ目ない支援のためには、電子化された個人の記録を活用した保健師等による支援は大変効果的だと考えています。

 伊佐委員から御指摘の、足立区の事例について確認をしたところ、妊娠の届け出の際のアンケート結果や、乳幼児健診の問診結果等を電子化していくとともに、保健師が行う家庭訪問等の支援内容とその結果の電子化による支援内容の標準化に向けた研究を進めているものと承知をいたしております。

 自治体のこうした先進的な取り組みを把握いたしまして参考とさせていただくことは非常に重要であることから、こうした取り組みの状況も把握するなどによりまして、データ活用に関する課題の整理等を進め、全国的な推進策を検討してまいりたいと考えております。

伊佐委員 ぜひ、こうしたすばらしい取り組みについては厚労省としても後押しをいただいて、また横展開していただければというふうに思っております。

 最後、もう時間になりますので、質問はいたしませんが、受け皿について、これもしっかりと厚労省にお願いしたいと思います。

 今、施設数というのはふえてきているということですが、当然、我々、前回の法改正でもありましたとおり、目指すべきものというのは、家庭に近い環境で子供たちが養育されるということであります。そういう意味で、里親委託、これをいかにふやしていくかということですが、残念ながら、ほとんどの人が知らないというような状況でもあります。先ほど、岡本委員の方からも、毎日新聞の例もございました。ぜひこれの周知徹底をお願いして、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長代理 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民進党の大西健介でございます。

 きょうはもう早速質問に入っていきたいというふうに思いますけれども、このたび、家裁による一時保護の審査導入の背景には、司法の関与を強めることで手続の適正化を担保し、一時保護の長期化を抑制する、こういう狙いもあるというふうに聞いております。そこで、まず、一時保護の期間の長期化の状況、これについて質問をしていきたいというふうに思います。

 そこで、まず確認なんですけれども、従来、国や自治体は一時保護の平均入所日数、これは公表されているということでありますけれども、例えば、原則の二カ月を超える、そういう入所者が全体のどれぐらいの割合いるのか、あるいは最長どれぐらいの日数入所しているのか、こういう数字、自治体別の数字というのは余り外には出ていなかったというふうに思うんですが、そういうことで間違いないか、また、その理由がどういうところにあるのか、事務方の方からお答えをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 一時保護所の状況につきましては、私ども、毎年、都道府県等の御協力をいただきまして調査をしております。その中では、今御指摘いただきました平均入所日数など、他の自治体とみずからの自治体が比較できるようにということで、全国の児童相談所長あるいは都道府県の担当者の方々がお集まりになる会議でこれまで公表をしてまいりました。

 ただ、今御指摘いただきました二カ月を超える入所者の割合ですとか最長入所期間については、今回、御審議いただく法案を検討するに当たりまして、私ども、必要なデータだということで臨時的に自治体に対して行った調査ということでございまして、これまでの継続的な調査という位置づけではございませんでした。

 私どもとしては、これまでの調査、いろいろと実態を把握する範囲に応じて必要にして十分ということでございますけれども、できるだけ多くの調査項目を設定して正確に把握すべきという思いと、一方で、今回のように、法改正のためにという形で御理解をいただいて調査をいたしましたが、継続的にやるということになりますと、非常に多忙な児童相談所の現場に事務負担をおかけするという点もございまして、その両面を考えながら、現在のところ、調査項目については整理をさせていただいているところでございます。

大西(健)委員 今の御答弁の中に、継続的な調査ではやってこなかったけれども、今回、法改正に当たって調査をしたということで、厚労省の方から、一時保護の期間別件数という資料をいただいています。これは、平成二十八年の四月一日から七月三十一日までの四カ月間だけなんですけれども、一時保護が終了したケースを対象に、どれぐらいの入所日数があるのかというのを調べたものなんです。

 その結果、では、二カ月を超えたケースが全体に占める割合がどうだったのか、また一年を経過したものはどのぐらいあったのか、また最長期間は何日だったのかについて簡潔に教えていただけますでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回、法案の議論をするに当たりまして、平成二十八年四月一日から七月三十一日まで四カ月間に一時保護が終了したケースというものを対象に調査を実施させていただきましたところ、その調査対象期間の四カ月におきまして、一時保護そのものは約一万件終了してございましたが、そのうち、二カ月を超えた割合は約一二%、一年を超えた件数割合が十三件、最長期間は三千三百三十一日ということでございます。

 この最長期間が三千三百三十一日、ちょっと長いので私どもとしても確認をさせていただきましたところ、このケースにつきましては、一時保護所ではなくて児童福祉施設に一時保護委託をされていた、そういう意味では、福祉施設に入所をされながら一時保護委託という位置づけであったというケースであったということを承知してございます。

大西(健)委員 今、三千三百三十一日は異常に長いのでちょっとそれは具体的に調べてみたとおっしゃっていましたけれども、まさに私が思うのは、平均だと、一時保護所というのは一日で出る子供もいる、だから平均日数だけ見ていたのでは浮かんでこない最悪の事例、だから今も、三千、えっ、すごいなと思って実際見てみたらこうだったということですから、やはりそれは、最長の日数とか二カ月を超えているのがどれぐらいあるんだろうか、それをまた調べていくと自治体ごとにばらつきがあって、短いところもあれば長いところもある、では、短いところは何か工夫をしているのかな、長いところは何か問題があるのかなというふうに対策を立てるにも私は役立つと思うので、これはやはり継続的にとっていくべきだと思います。

 そこで、実は、新聞社はこういう調査をやっています。

 皆さんのお手元に配った資料、一枚目ですけれども、これは東京新聞さんが昨年の九月に行った調査です。首都圏の一都三県、五市で、保護日数が二カ月を超えた子供の割合は全体の二割を超えていました。先ほどの厚労省の四カ月間の調査では一二%とおっしゃっていましたけれども、二割を超えている。二カ月超えが、多いところでいうと相模原市が四二・七%、千葉県も三八・六%、また、最長日数でいうと横浜の五百七十二日、こういう結果が出ています。

 それから、その裏のページ、これは毎日新聞がやった調査ですけれども、首都圏の一都三県と大阪府、二十政令市、二中核市の計二十七自治体の四十九の一時保護所における滞在日数等を調査した結果です。二カ月超えの割合が高いのは、埼玉の三一%、続いて相模原、それから、先ほど古屋副大臣は横須賀が地元と言われましたかね、横須賀で二八%。また、過去三年間の最長日数は、横浜市が、先ほどと同じですけれども五百七十二日、横須賀市が五百五十二日、札幌市が五百五十日と、一年半を超えているところもこのように見られる。

 ですから、やはりこういうのも見ていくというのは、私は、複数の新聞社が調査しているということでいえば、みんなが関心ある事項だと思うんです。

 この二つの調査を見比べても、ただ、二カ月超えのパーセンテージなんという数字は、ちょっと微妙に異なっていたり、食い違っているところもありますので、この点、先ほど申し上げましたが、改めて、国が責任を持って全国の自治体別の一時保護所における滞在日数をしっかり把握して公表する、公表することによって、うちの自治体はやはり長いなとか、そういう意識を皆さんにやはり持ってもらえるということで、私は継続的にこれは把握をして公表すべきというふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今、一時保護のデータについて御指摘をいただいているわけでございますが、一時保護に限らず、自治事務という整理で、全国のさまざまなこういった重要な基礎的なデータを十分集めてこなかったということは、厚生労働省として反省をしないといけないというふうに思っています。先ほど、岡本委員のときにもばらつきの話がありましたが、これについても、ばらつきを放置してきたということも反省をしないといけないというふうに思います。

 一時保護所の状況につきましては、毎年、都道府県等の、まあ児相の協力を得て調査も実施してまいっておりますけれども、他の自治体とみずからの自治体が比較できるように、全国の児童相談所長や都道府県の担当者などが集まる会議の場などで公表してきたということで、こういう基礎的なデータをどこでどういうふうに発表するかということも定まっていないということが問題だろうというふうに私は思います。

 この調査では、施設としての平均在所日数とか、あるいは個別対応のための環境改善の状況については調査対象としてはおりますけれども、個々の子供の所在日数、保護期間が二カ月を超える子供の割合、さらには最大保護日数といったデータについては、現状では調査をしていないという状態でございます。

 一時保護所の実態をより詳しく把握するためには、今後も継続的に調査を行う必要があって、調査項目やデータの公表の仕方等については、御指摘を踏まえて、都道府県などの、児相を含め関係者の意見を聞きながら、どういうことができるのかということをしっかりやっていきたいと思っております。

 前回、去年の児童福祉法の改正の際に、新たに、第三十三条の九の二というところで、「国は、要保護児童の保護に係る事例の分析その他要保護児童の健全な育成に資する調査及び研究を推進するものとする。」と。これは、まさに国がこういった基本的なデータを踏まえた上で調査研究を進めないといけないという責任を書いたつもりでございますので、そういった観点からも、今御指摘のような基本的なデータを集め、そして調査し、公表するということについて、私もそのとおりだというふうに思います。

大西(健)委員 大臣、前向きな御答弁ありがとうございます。

 先ほど言ったように、例えばですけれども、非常に長い、二カ月超えが、多いところだと相模原市は四二・七%ですけれども、金沢市は三%なんですね。これだけ開きがあるというのは、やはりいろいろな理由があるんだと思います。ですから、やはりそういう数字をしっかり分析していくことに私は意味があるというふうに思っていますので、ぜひともお願いをしたいと思います。

 何で長期化が問題かというと、当たり前のことですけれども、一時保護中は、親や友人などの虐待や非行の関係者との接触を避けるために外出や外部との連絡が制限される、そのため入所者の精神的な負担が大きい、だから長くなるのはよくない。特に問題なのは、原則として学校に行けないんですね。学習用のプリント等では学習のおくれは取り戻せないですし、特に、虐待を受けているような子供にとって、唯一の話し相手である友達と会えない、あるいは学校生活を奪われるというのは、子供たちにとってははかり知れないストレスになるというふうに思います。

 しかし、小学校、中学校というのは、当たり前ですけれども義務教育のはずであって、児童福祉法でも、児童養護施設等は入所中の児童を就学させなければならないとしています。では、一時保護所はなぜ児童の就学義務が免除されているのか、これについて改めて御答弁をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、児童福祉法第四十八条の規定によりまして、児童養護施設等の長あるいは里親に対しましては、学校教育法に規定する保護者に準じて、その施設に入所中または受託中の児童を就学させなければならないという明確な規定がある一方で、児童保護所については当該規定の適用になってございません。

 私ども、今回いろいろと改めて整理をさせていただきました。私どもの考えといたしましては、一時保護所の目的あるいは一時保護所という性格づけを踏まえてということでございますけれども、児童相談所が行う一時保護の、子供の安全確保、心身の状況、その置かれている環境等を適切に把握するために行う一時的かつ限定的なものとしての位置づけということからいたしますと、子供の安全確保あるいは心身の安定のためには、外部との通信手段をある程度遮断することなど一定のルールを設けることが許容されるのではないかという整理かと思います。

 もちろん、一方で、御指摘いただいておりますように、一時保護されているお子さんにも子供の権利というものは可能な限り擁護される必要があるというふうに考えておりまして、私ども、子供の個々の学力に応じた学習支援というものにこれまで取り組み、教員OBの方など学習指導協力員の配置などを進めることによって、学習の機会の確保にはこれまで図らせていただいております。

大西(健)委員 御答弁にもあったように、一つは、やはり一時的だから許されていると思うんです。でも、先ほど言いましたように、原則二カ月を超えている例がかなり多くなってきている。一時保護の期間が長期化して一年半を超えるような例も間々見られるということであります。そのときに、果たして学校に通わせなくてもいいのか。

 やはり、子供には学校に行く権利が私はあると思います。今言われたように、指導員を一時保護所に派遣して、中で学習するからいいんだということではなくて、私はやはり、さっきも言いましたように、家庭で虐待とかを受けた子供たちにとって、友達と会える、あるいは学校に行けるというのが唯一の心の救いみたいなところがあるわけですから、それを、一年、一年半と閉じ込められているというのは、学習の機会が与えられているからいいんだということでは済まされないというふうに思います。

 そういう面では、長期滞在している子供がいる場合には、もちろん安全確保は重要ですけれども、例えば安全な通学を見守る方法を考えるなど、個別、ケース・バイ・ケースだと思いますけれども、児童が学校にできるだけ通えるような個別対応をすることも検討する必要があるのではないかと思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 去年の児童福祉法の改正で、第一条に、「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他福祉を等しく保障される権利を有する。」と。子供の権利として、健全な養育を受ける、心身の健やかな成長及び発達並びにその自立を図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有するということでありますから、教育も、当然のことながらその中に含まれているわけで、当然の権利として子供さんは、教育、学校に行く、あるいは学校に行けない場合には、それにかわる手段で同じ権利を行使できるようにしなければいけないのではないかというふうに考えております。

 厚生労働省としては、児童相談所運営指針において、一時保護期間が長期化する子供については、特段の配慮が必要であって、教育委員会等と連携協力を図って、就学機会の確保に努める旨を定めて、都道府県等に示しているわけであります。

 昨年三月に取りまとめられました新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の提言におきましては、一時保護期間中に子供が学校教育を受けられていないということから、通学時の送迎を保障するなどして、できる限り学校教育を受けることができるように尽力すべきである、そして、その際には、子供の学校生活の連続性を保障するために、もともとの所属している学校への通学の可能性をまず検討すべきである、こういった指摘がなされているわけであります。

 こうした課題を含めて、一時保護のあり方につきましては、今後、厚生労働省の新たな社会的養育の在り方に関する検討会、ここで検討することとしておりまして、その議論などを踏まえて、子供の権利擁護を図る観点から、御指摘の点についても検討してまいりたいと考えているところでございます。

大西(健)委員 大臣からも、子供は学習を受ける権利がある、学校に行く権利があるということも言っていただきましたので、ケース・バイ・ケースでありますけれども、安全確保ができるような通学の付き添い、まあ、お金もかかることですからあれですけれども、やはりできるだけ、私は本当に、学校に行けるような工夫を現場でしていただけるように、再度、厚労省からもぜひ徹底をしていただきたいと思います。

 次に、資料の二ページ目の表ですけれども、児童虐待における関係機関の連携について、日本小児学会が、虐待で死亡した可能性のある十五歳未満の子供が全国で年間約三百五十人に上るという推計をまとめました。この推計の人数と厚労省の集計には三倍から五倍の開きがある。では、何でこんな開きがあるのか。多くの事例が見逃されている可能性があるんじゃないか。その背景の一つとしては、例えば医師の知識不足というのも指摘されています。

 これについて、私も医学部における虐待に関する教育という話を質問しようと思いましたけれども、先ほど全く同じ質問を伊佐さんがされましたので、それはもう省かせていただきます。

 それから、厚労省の研究班が全国の医師を対象に二〇一〇年から二〇一四年度に実施した調査では、医師が虐待死を疑った百五十四例のうち、児童相談所へ通告したのは四割にとどまっている、それから、医師が、確実に虐待や、虐待の可能性大と判断したもの、これだけとっても、一割が警察には通報されていなかったということがわかっています。さらに、医師が虐待を疑った事例のうち、捜査機関が起訴したのは八%にすぎません。

 関係機関の情報共有が機能しなかったために、医療機関が得た情報が有効に活用されなかった可能性があるんじゃないか。虐待に関する機関の間で情報共有のルールというのを、私は整備していく必要があるというふうに思いますが、この点、厚生労働省、どのように考えておられるか、御答弁をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 虐待をめぐり、社会それぞれの構成員の方々が、それぞれのレベル、地域であれ国であれ、共有し、情報についてもできる限りの共有をしていくということが大変重要であるという、まず基本認識に私ども立ってございます。

 その上で、幾つかの切り口からの御指摘をいただきました。

 例えば、医療機関等との情報共有という点につきましては、どのような場合に市町村等への情報共有が必要となるかというのが現場で判断しやすくなるように、昨年の十二月に、これは日本医師会など関係者とも調整の上に通知を出させていただいて、通報、情報共有の対象となり得る保護者あるいは子供の特徴を詳しく示して、関係者間で共有をさせていただく形にいたしました。

 また、警察との共有につきましては、昨年四月に、警察庁との間で、私ども厚生労働省、十分調整をさせていただいて、警察サイド、また厚生労働省、都道府県サイド、それぞれについて、関係する情報を把握した場合に迅速かつ確実に共有されることを、それぞれのラインからも通知という形で徹底をし、共有をしております。

 また、現場という意味では、市区町村におきまして、児童相談所、警察、医療機関、保育園、学校等の関係機関で構成されております要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協を設置させていただいておりますけれども、その場における子供の保護や支援に必要な情報と考え方の共有ということから始めていただくということを進めておりまして、結果、連携して家庭への支援を行っていただくということにしております。

 この要対協に対しましては、国としても、要保護児童対策地域協議会の設置・運営指針というものを設けておりまして、この中で、子供虐待の重症度が軽度以上の子供さん、あるいは保護者に監護させることが不適当と認められる要保護児童、あるいは子供虐待を受けたと思われる子供さんについては、この協議会に事案を登録して、関係機関と連携を図ってくださいということもお示ししてございます。

 こういうそれぞれの関係機関間における情報共有が適切になされるように、我々は、それぞれの状況に応じて、それに即して、例えば要対協の活用も含めてでございますが、関係機関の情報提供、情報共有にかかわる取り組みの推進に向けて徹底してまいりたいというふうに思っております。

大西(健)委員 いろいろな取り組みをしていただいているということでありますが、例えば、NPO法人のシンクキッズというところは、関係機関の情報共有をもう法律で義務づけたらどうだというような御提案もされています。あるいは、前回の法改正のときだと思いますけれども、参議院の厚生労働委員会でも、漏れなく確実に情報共有されるよう必要な検討を行うという附帯決議がついています。それから、現場ではという話がありましたけれども、例えば高知県なんかは、八年前から、こういう警察との情報共有は自治体で進めているという話でありますので、ぜひそうした事例なんかもしっかり共有していただいて、さらなる関係機関の情報共有を進めていただきたいと思います。

 それから、その上で、それをやっていく上で私が大事だと思うのは、事後の検証、これをしっかりやっていくことだというふうに思っています。全ての関係機関が連携して、全ての子供の死因を討議、検証するような制度が必要ではないかというふうに思っています。

 この点、米国や英国では、虐待死や事故死が見過ごされないように、子供の全死亡事例を病院や警察、福祉機関などの関係機関が情報を共有し、原因などを検証できる子供の死亡登録・検証制度、チャイルド・デス・レビュー、CDRというそうですけれども、これを英国や米国ではやっている。日本でもこの制度を導入したらどうだと、二〇一三年に、小児科医でつくるCDR研究会が内閣府に要望書も提出しているんです。

 国内において、実は既に、これは消費者問題ですけれども、誤飲だとか転落などの子供の事故死については、昨年度から、消費者庁、警察庁、厚労省など八省庁と内閣府の連絡会議というのが発足しています。この機会に、虐待死を含めた日本版CDR、チャイルド・デス・レビュー、これを導入すべきじゃないかというふうに思いますが、きょうは内閣府松本副大臣に来ていただいていますので、ぜひ前向きな御答弁をお願いしたいと思います。

松本副大臣 内閣府といたしましては、死因究明等の実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題となっていることを踏まえまして、死因究明等推進計画を平成二十六年六月に閣議決定いたしまして、その推進に努めているところであります。

 本推進計画を策定する検討会におきまして、平成二十四年度の厚生労働省の研究事業において行われました、我が国におけるチャイルド・デス・レビューに関する研究の成果につき報告が行われますとともに、検討会の委員より、小児の死亡については、その全例につきまして画像診断を実施すべきとの意見も出されたところであります。

 これらのことを踏まえまして、本推進計画におきましては、厚生労働省が小児死亡事例に対する画像診断の情報を収集、分析するモデル事業を実施することとされたところでありまして、実際に、平成二十六年九月から、厚生労働省において現在実施をされているものと認識をしております。

 また、最近における新たな取り組みといたしましては、厚生労働省におきまして、平成二十八年度から三十年度までの三カ年の調査研究を実施いたしまして、予防可能な死から子供を守るため、医療分野における情報収集の方法やその進め方について検討しているところと認識をしております。

 さらに、消費者庁におきましては、子供の事故防止関係府省庁連絡会議を開催するとともに、人口動態調査の調査票情報を用いまして、子供の死亡事故の状況につきまして分析をし、再発防止に向けた注意喚起を行うなどとしているところであります。

 内閣府といたしましても、引き続き、こうした各省庁における活動の状況を注視しながら、子供の死因のレビューを含めた死因究明等施策の推進に努めてまいりたいと思いますし、また、チャイルド・デス・レビューを日本で導入することはできないのかというお問いかけに関しましては、もちろん、これは厚生労働省を初めとして、そのあり方も含めましてさまざまな研究や取り組みが行われているところであります。これらの成果を踏まえつつ、関係省庁として、連携をして検討していくことが必要だというふうに考えておりまして、そうした検討というものを進めてまいりたいと考えております。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

大西(健)委員 厚労省のモデル事業をやっているからいいんだみたいな、ちょっと逃げ腰な感じもしたんですけれども、ぜひ内閣府、今、死因究明法案というのが、失効してしまっていて議員立法でまたというような話もあるというふうに聞いておりますし、また、厚労省はやっていると言いますけれども、例えば、児童虐待防止に関する情報集約や研修をする民間機関、子どもの虹情報研修センターの調査では、厚労省が発表した〇八年から一一年度の虐待死四百十三人のうち、検証が確認できたのは約三割にとどまったと。つまり、厚労省、今はまだモデル事業ということですけれども、今まで、やはり全体の子供の死亡について三割程度しか事後検証もできていないわけですね。

 先ほども言いましたように、誤飲だとか転落については、内閣府が音頭をとって、厚労省も含む関係省庁の連絡会議というのができているわけですから、誤飲、転落、加えて子供の全ての死について関係機関が寄って検討し、事後検証するような、まさに諸外国で行われているようなチャイルド・デス・レビューみたいなものを、私はやっていいんじゃないか、もう少し内閣府にそこはリーダーシップを発揮していただいてもいいのではないかなというふうに思っております。ぜひとも引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 それでは、一時保護の中でも、特に親の同意なく強制的に子供を引き離す職権保護、これは、現場での判断は多分非常に難しいんだろうなというふうに私は思います。そういう意味では、先ほど来話が出ているように、現場も、非常に人員的にも逼迫をしていて大変な中で、こういう難しい事例の判断というのは非常に悩むところだと思います。ですから、今回、司法の介入というのも入っているんだと思うんですけれども。

 私自身、職権保護について、地元で百八十度異なる相談をいただいています。一方では、例えば、虐待でも何でもなくて、ただ日常生活でぶつけてあざができただけにもかかわらず、虐待を疑われて、強制一時保護で子供を連れ去られてしまった、それから会わせてももらえないし、連絡もさせてもらえない、もう本当に発狂しそうなお母さんの相談というのを、人を介して受けたこともあります。それから、一方では、親との関係の悪化をためらうばかりに、児相が一時保護に非常に消極的になっている、これは一時保護しなきゃいけないんじゃないか、本当に児童の生命身体が危ないんじゃないか、こういうケースの相談も受けています。全く百八十度異なります。

 きょうは、後者のケースで私が実際にかかわった事例に即してお聞きをしたいというふうに思うんですけれども、これはこういう話です。

 児童は十六歳の少女。アルバイト先の方が、真夏なのに長袖を着ているから、おかしいなと思っていろいろ事情を聞いてみると、両腕はもうリストカットの跡だらけということで、幼少のころから家族全員から心理的な虐待を受けてきた、中学校もずっと不登校だったということなので、自傷行為や自殺未遂を繰り返しているということです。

 これを見て、そのアルバイト先の方が、これはやはり助けてあげなきゃいけないということで、児童相談所に相談をされました。最初はやはり、家族じゃない第三者だからということで、なかなか、そもそもちゃんと話も聞いてもらえなかったようですけれども、最終的には、児童がそのバイト先にいるときを、まあ、なかなかほかのところでは難しいのでということで、見計らって相談員との面談がセットされた。保護してほしいと訴えたところ、児相がその後、家庭訪問した。家族は、当然のことながら、虐待していないと否認する。児童は、児相職員から、家族に会って話を聞いたけれども、もっとお母さんを信じてあげなさいと言われて、自分の味方になってもらえると思ったら、そう言われてしまって、非常にショックを受けて、もう児相のことが信じられなくなってしまった。

 それからさらに、児童は、父親から、おまえが児童相談所に電話したのかと問い詰められて、いや、知らないとしかもちろん答えられなかった。これを受けて父親は児相に対して、娘はあなたのことは知らないと言っているというふうに答えています。その後、児相は、親に、通報したのは自分だと告げないと自分たちは動けないと言ったそうです。児相が児童の家に電話したところ、父親は、おまえのせいで妻がノイローゼになっている、もう連絡してくるなと言って、児相からの電話を切ったそうです。

 その後、児童は余り家からもう出してもらえなくなって、しばらくたってやっと久しぶりにアルバイト先の方が会えたときには、記憶障害が出ている、精神科の医院で解離性障害の診断も受けたということがわかりました。

 これまでこの児童を助けたいという思いで支援してきたアルバイト先の方のお話を聞くと、児相は、親と一緒に来て、本人が親の前で保護を求める意思を示さないと動けないと言っているとのことです。しかし、このケースでは、私は、児童は強い家族の心理的な、精神的なコントロールの支配下にあって親の前では怖くて本心が言えない、こういうケースで、親と一緒で、親の前で、助けてください、保護してくださいと言わなきゃ動けないなんというのはちょっとおかしいんじゃないかと。

 実際、この子が書いた手紙というのを私は読みましたけれども、例えばその中には次のようなことが書かれています。

 助けてください。お願いします。あの家から早く出たいです。いつも監視されてつらいです。皆さんが寝てから何度もリストカットやっています。死にたいと思っています。自分を責めたりしています。何で自由にさせてくれないの。今まで、本当のことを話しても誰も信じてもらえず、家族がうそでごまかすので、私がうそつきにされてきました。○○さんは私の話を信じてくれて、かわりに通報してくれています。

 こういうふうに書いているんです。もうはっきりしているんです。ですから、本人の保護してほしいという意思は、私ははっきりしていると思います。

 でも、やはり心が揺れるんでしょうね。また別の手紙には、今まで○○さんに迷惑かけてしまったし、今でも親がうそついている姿を見るのがつらいので、もう○○さんのところからは離れますみたいな手紙を今度は送ってくる。あるいは、児相の職員が行っても、ずっと話していると、きょうから自分が家で強くなりますというふうに言っちゃうそうなんですね。

 ですから、やはりこのケースについて言えば、もう自傷行為を繰り返しているし、解離性障害まで出ているという緊急性がある。それから、親の精神的な支配から離してやることがやはり私は必要だと思うんです。そういう意味では、一時保護をこれはためらうべき事案ではないと思いますし、場合によっては、精神病院への一時保護委託を検討することも考えなきゃいけない事案だというふうに思います。

 あってはならないことですけれども、これだけやってこの子が自殺するようなことがあったら、これはもう、私は児相の責任が問われるような問題だというふうに思います。

 個別案件についてお答えいただきたいというのは難しいと思いますので一般論で結構ですけれども、はっきり明確にしていただきたいのは、子供の安全の確保が必要と認められれば保護者や子供の同意がなくても児童相談所は一時保護をちゅうちょなく行うべきであるということで間違いないかどうか、厚労省の御見解をお示しいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員からもお話がございまして、あくまで一般論ということで申し上げますけれども、私ども、今御指摘のように、一時保護を行う場合、子供の安全確保を第一義として行うということから、平成二十八年九月の児童相談所運営指針見直しの際に、一時保護を行う場合に児童や保護者の同意を得ることを原則にしていたところ、子供の安全確保等が必要な場面であれば、同意の有無にかかわらず一時保護をちゅうちょなく行うべきということをまず明記させていただいております。

 一方で、そういう仕組みとして運営についての方針をお示しするとともに、現場において、昨年の改正児童福祉法を踏まえて、一時保護の目的なども明確化しましたので、それにきちっと対応できる児童相談所における専門職の配置、あるいは児童福祉司の研修受講の義務づけといった形で現場の専門性なども高めて、子供の安全確保を最優先に、迅速かつ的確な一時保護がなされるように私どもとしても取り組んでまいりたいと思っております。

大西(健)委員 ぜひ徹底をしていただきたいなというふうに思います。

 今私が示した事例でも、心理的虐待を受けた児童は、精神科で解離性障害の診断を受けて、現在は通院、服薬をしている。心理的な治療を必要とする虐待を受けた子供というのはたくさんいると思います。心理治療が必要とされる子供たちのうち、家族と暮らしていても状態の改善が見込めず悪化してしまうおそれのある子供たちの受け皿先として、情緒障害児短期治療施設というのがあります。いわゆる情短というものです。

 資料の新聞記事、最後のページを見ていただきたいんですけれども、これは少し古いですけれども、読売新聞の調査によりますと、入所者の何と七六%は虐待を経験している、同じような調査を九六年に行っているんですけれども、そのときに比べると倍増していると。

 情短というのは、もともとは不登校の子たちを一時的に預かるようなそういう施設だったんですけれども、現在では、虐待を受けた子供、特に状態が非常に厳しい、心理的なケアが必要な、そういう子供の受け皿になっている。虐待が問題になっている今こそ、この情短は必要とされているはずであります。

 国は、二〇一四年度までに全都道府県に一カ所はつくるということを目標に掲げていますけれども、現在どこまでいっているのか、それから、特にまだ未整備の都道府県はどこなのか、なぜその目標達成に至っていないのかの理由について、厚労省の方からお答えをいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただいております情緒障害児短期治療施設、昨年の法改正でこれは名前が変わりまして、児童心理治療施設という形になってございますが、この児童心理治療施設につきましては、今御指摘いただきましたように、平成二十七年三月の少子化社会対策大綱で、平成三十一年度末までに四十七カ所の設置目標を掲げております。

 これまでの設置数としましては、二十六年十月時点で三十八カ所三十道府県、二十七年十月時点で四十三カ所三十二道府県、二十八年十月時点で四十六カ所三十四道府県という形での設置でございます。

 都道府県単位で見ますと、今御指摘いただきましたように、二十八年十月時点において、十三の都県において児童心理治療施設が設置されていないという実態でございます。具体的にという御指摘でございましたけれども、秋田、山形、福島、東京、新潟、富山、石川、福井、山梨、奈良、徳島、佐賀、沖縄というところでございます。

 なぜかという点につきまして、私ども、施設関係者などからの声を聞いてみますと、医師などの専門職の確保が困難だということを理由に挙げるケースが多いというふうに承知をしてございます。

大西(健)委員 これは非常に、私は重要な施設だというふうに思っています。私の友人が横浜の情短の園長をやっているんですけれども、情短の職員は愛情に飢えた子供たちによる自傷行為などの試し行為に振り回されて、日々発生する、まあ男女の中学生や高校生がいますから、性的なトラブルとか職員への暴力でもう燃え尽きている状態、なかなか職員も集まらない、それから医師等の専門職もなかなか確保できない、こういうことを聞いております。やはり、ここはしっかり、増員、配置基準の見直し、措置費の引き上げ、こういったことをやっていただきたいなというふうに思っております。

 司法を介入させて家庭分離しても、受け皿の整備を進めなければ、虐待を受けた子供たちの行き場はなくなってしまいます。突き詰めて言えば、やはり我が国は欧米に比べて社会的養護に使っているお金が少な過ぎるんだというふうに思います。そこをぜひ充実させていただくことを、この審議を通じて改めてお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 塩崎大臣は、今、受動喫煙対策で大変御苦労をされているということでありますが、きょうは与野党の対立もなく、誰もが虐待の防止、虐待をなくしていくということについては一致をしている児童福祉法の改正でありますので、そういう面で、前を向いて質疑を行っていきたいというふうに思います。

 まず、この虐待の問題で、常に虐待の加害者になる親が言いわけとして口にすることは、しつけのためにやっているんだということなんだと思います。しつけのために暴力を振るって言うことを聞かせる、これを改めさせなければ、なかなか虐待というものはなくなっていかないんじゃないかというふうに思いますし、やはり、親のそういう子育てに対する意識を変えていくということは、結果として虐待をなくしていくことに非常に大きな効果があると思うんですね。

 そういう面では、皆様のお手元に新聞の記事をお配りさせていただいておりますが、厚生労働省が「愛の鞭ゼロ作戦」ということで、リーフレットをつくったということなんですね。一枚めくっていただくと、資料二、資料三に、そのリーフレットの現物のコピーを配付しておりますので、委員の皆さん、初めて見るという方の方が多いんじゃないかと思いますが、結構いいことが書いてあるので、ぜひ読んでいただきたいと思います。

 裏面が中身なんですけれども、ポイント一のところで、「子育てに体罰や暴言を使わない」と書いてありまして、ここに、「叩くことによって得られた子どもの姿は、叩かれた恐怖によって行動した姿。自分で考え行動した姿ではありません。」と書いてあるんですよね。

 つまり、たたかれるのが嫌だから親から言われたとおりにやっているだけで、そのことが本当に悪いことだからやらないようにしているわけではないと。つまり、たたかれない状態になったら、また同じことをやってしまう可能性があるということですよね。

 次のポイント二、「子どもが親に恐怖を持つとSOSを伝えられない」、これは非常に重要だと思うんですが、「親に恐怖を持った子どもはどのような行動を起こすでしょうか。親に気に入られるように、親の顔色を見て行動するようになります。 また、恐怖を持つ親に対しては、子どもが心配事を打ち明けられなくなります。心配事を相談できないと、いじめや非行など、より大きな問題に発展してしまう可能性もあります。」ということが書かれております。

 つまり、親に殴られるのが嫌だから常に親の顔色を見るようになって、親のことを意識して行動するようになってしまう。つまり、自尊心が育たないというか、自立心が育たないことにもなるし、また、そういう親に対して何か相談をしたら怒られてしまうんじゃないかという意識になって、自分がいじめられたりしていても、そのことが相談できないということになる。これは非常にマイナスだなというふうに思うんですね。

 また一枚、こっちの表の方を見ていただいて、こちらの一番最後の面には、「体罰・暴言は子どもの脳の発達に深刻な影響を及ぼします。」ということも書いてありますし、「体罰は百害あって一利なし。子どもに望ましい影響などもたらしません。」ということが書いてあるんですね。

 非常に私、このリーフレット、いいことが書いてあるし、こういう考え方を子供を育てる親にきちんと徹底していくということが、結果として虐待をなくしていくことにつながるというふうに思います。

 まず大臣にお伺いいたしますが、厚労省が「愛の鞭ゼロ作戦」のこのリーフレットをつくった意図と、これをどのように活用していくつもりでいるのかということをお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 この啓発資料でありますが、昨年の参議院の厚生労働委員会で附帯決議が児童福祉法の改正の際にございまして、それを踏まえて、子供のしつけには体罰が必要という誤った認識、風潮を社会から一掃しようということを目的にして、母子保健や子育て支援の専門家の協力をいただいて作成した、こういう経緯でございました。既に今月十五日に、厚生労働省から全国の自治体と関係団体にはお送りをして、周知をしているわけでございます。

 今後、この資料を活用して、体罰によらない育児について、各地方自治体で乳幼児健康診査あるいは育児相談等のさまざまな機会を捉えて、関係者の協力も得ながら、広く国民に対する意識啓発に努めていただきたいというふうに思っていますが、去年の児童福祉法の改正の際に、子供に対する暴力を禁止する条項をぜひ入れてくれという声を受けました。大臣室にもいろいろな団体の方々が来られて、私の地元の弁護士さんも来られました。

 そういう声がありましたが、なかなか、法務省の解釈やらいろいろなことがあって、結局、それを入れ込むということにはならないということになって、見送ることになりましたけれども、やはり大事な論点でありますので、こういうような形で、まずみんなの意識をしっかりと持ってもらうということで、こういう啓発資料を進めてまいりたいというふうに思っております。

初鹿委員 今、大臣からの答弁で、法務省との見解のことで言及がありましたが、まさにそのことをこれから聞いていくわけです。

 まず、この取り組みを進めたのは非常にいいことであるし、厚労省としては、厚労省の立場では、子供のしつけに体罰は必要ない、するべきではない、そういう立場であるということを今申し述べていただいたと思うんですが、それで間違いないですよね。子供のしつけには体罰は必要ないというか、体罰をもって子供のしつけをしない、そういう立場で厚労省はいるということで間違いないですよね、大臣、確認させてください。

塩崎国務大臣 私どもとしては、監護、教育に必要な体罰を具体的に例示することは、体罰の定義をどう捉えるかということももちろんありますけれども、子供に対するいわゆる有形力の行使というのは、仮に虐待に当たるほどではない行為であったとしても、基本的には不適切だというふうに思います。

初鹿委員 今の大臣の答弁を、まず厚労省の立場として確認させていただきました。

 では、文部科学省はどう言っているかというと、これは平成十九年に、問題行動を起こす児童生徒に対する指導という通知で、こういうふうに書いてあるんです。まず、「教員等は、児童生徒への指導に当たり、いかなる場合においても、身体に対する侵害(殴る、蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならない。体罰による指導により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあるからである。」そういうことを文科省は通知で出しているんですね。

 つまり、体罰をやって指導しても、要は、力で抑えればいいんだという価値観を植えてしまって、正常な倫理観は養えない、教育的に効果が逆効果になるということと、殴って解決すればいいんだと、問題解決の手段で暴力を使うということをかえって助長することになるんじゃないか、そういうことを文科省は言って、教員に体罰はだめだということを言っています。

 また、体罰を行うことの副作用として四つのことを挙げているんです。

 まず一つは、人間関係を悪くする。殴っている側と殴られる側の間での人間関係が悪くなる。学校でいえば教員と生徒、家でいえば親と子供。先ほども言いましたけれども、子供が親に相談ができなくなる、または子供が親を毛嫌いするようになるということもあると思います。

 もう一つは、これは非常に重要なんですが、体罰の前に無力になって、自主性や積極性が損なわれる、そういうことがあるということなんですね。殴られてしまうと、力で抵抗できなくなると、もう言うままになってしまうということだったり、先ほども言いましたけれども、自分で物を考えるということができなくなるということです。

 先ほど大西議員が実例を挙げておりましたが、そのお子さんの例も、まさにそういうことじゃないかなと思うんですよね。やはり、親の力によって支配をされてしまって、そこから抜けられなくなるということだと思います。

 そしてもう一つが、先ほども言いましたけれども、暴力で物事を解決するということを教えてしまうことになる。

 そして四番目として、ほかの教育方法やしつけの方法を学ばなくなる。つまり、殴って、それでその場をおさめることを覚えてしまうと、殴らないで、要は話したりすることによって、相手に、子供に理解をさせるというやり方を学ぶことができなくなる、そういう悪い副作用があるということを文科省が指摘しているんです。

 こういう厚労省の立場、文科省の立場を踏まえて、きょうは盛山副大臣、一年前に続いて、何度もしつこくて恐縮なんですが、私は、やはり一番ひっかかるところは、この法務省の答弁、民法の八百二十条の懲戒権にかかわる答弁について、皆さんのところに資料をお配りしていますが、平成十二年の、まさに今回改正案が審議されている児童虐待防止法が、平成十二年に最初に審議されたときの田中甲議員からの質問に対して、当時の民事局長が、「この懲戒には体罰も場合によっては含まれるわけですが、」と答えている。体罰が懲戒権の懲戒の中に含まれているという答弁があって、体罰も教育的な効果があればいいんだということにつながってしまっているということなんです。

 昨年も盛山副大臣に質問させていただきましたが、この答弁、見直しませんか。懲戒権の中に体罰は含まない、含まないということを、ここではっきりさせた方がいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

盛山副大臣 初鹿委員御指摘のとおり、平成十二年の衆議院の青少年問題に関する特別委員会におきまして、当時の民事局長が、場合によっては懲戒には体罰が含まれること、そして、それが子の監護上必要かつ相当なものとされるべきかどうかは、その社会、時代の健全な常識により判断されるべきものという趣旨の答弁をしております。

 先ほど来、先生とそして大臣との御答弁の中でもいろいろございましたけれども、現行制度のもとでは、民法八百二十二条におきまして、子に対する懲戒権は、子の利益のために、子の監護及び教育に必要な範囲内で行使することができると規定されているところでございます。

 この点につきましては、平成二十三年の民法改正によりまして、親権者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負うこと、そして、そのような監護及び教育に必要な範囲内でのみ懲戒することができるということが明らかにされているところでございます。

 体罰、今議論になっております体罰につきましては、法律上の定義、規定があるわけではございません。懲戒権の行使として体罰が許容される場合があるかどうかは、体罰の定義をどのように捉えるかによることになるため、両者の関係を一概に申し上げることは困難でございます。

 仮に、およそ子に対する有形力の行使は体罰であると捉えた場合には、体罰が懲戒権の範囲に含まれることはないと断定することは困難と思います。しかしながら、有形力の行使が懲戒として許容される範囲は、社会と時代の健全な社会常識により判断されることになるものと考えられております。児童虐待が社会問題として深刻化している現状や、懲戒権の範囲を明確化した平成二十三年民法改正の趣旨を踏まえると、その範囲は相当限定されることになると考えております。

初鹿委員 去年の答弁とほとんど変わらないんですけれども、先ほど私が述べていったとおり、教育上必要な体罰というものは、およそ想定ができないわけであります。懲戒と体罰の範囲がわからないとか、体罰の定義がなかなか決められないとか、そういうことをおっしゃったり、また、社会と時代の健全な社会常識により判断されるというようなこともおっしゃっていますが、現状、厚労省が「愛の鞭ゼロ作戦」というものを出して、しつけで体罰を使うなということを広めていこう、それを常識にしていこうということでありますから、これは、社会の常識としては、有形力の行使である体罰は懲戒には含まない、そう断言をしてもういい時代になっていると思いますし、物事というのは法律をつくることによって常識が変わってくる場合もありますから、これは、この国で体罰をなくす、そして、体罰を理由にした、しつけを理由にした虐待をゼロにするということを考えたら、私は、法務省のこの見解を改める、そういう時期に来ていると思います。

 再度お伺いしますが、改めるつもりはないんでしょうか。

盛山副大臣 先ほど御答弁申し上げたとおり、一般的に、有形力の行使を伴う懲戒が許容される場合は、相当限定される場合になるものと考えられます。そのようなものとして、昨年も先生とやりとりをさせていただきましたけれども、例えば、子が他者に危害を加えたことから、親権者が子に反省を促すべく注意をしようとしたところ、それにもかかわらず、子がこれに応じないで、その場を立ち去ろうとした場合、親権者が子の手をとってこれを引きとめ、自身の前に座らせて説教を継続する、こういう場合もあり得ると思います。このような場合も、これが長時間に及べば懲戒権の範囲を超えることになるんじゃないかと思いますが、具体的なケース次第かと思われます。

初鹿委員 もう一回、厚労省のこの「愛の鞭ゼロ作戦」のポイント一を見てください。「叩くことによって得られた子どもの姿は、叩かれた恐怖によって行動した姿。自分で考え行動した姿ではありません。」そういうふうに言っているんですよ。

 そうやって力で抑えつけて、それで言いくるめても、それは本当に子供に伝わるかどうかといったら、伝わっていない場合が多々ある、だから体罰はいけないというふうに言っているんじゃないんでしょうか。

 だから、教育的に効果のあるような体罰というものは存在しない、そうはっきりと私は明言することが国としての責任だと思います。国としての姿勢だと思います。やはり私は、国がそういうことをきちんとメッセージを出していくということが、本気で虐待というものをなくそうということにつながっていくんだと思いますよ。

 では、厚労大臣、このパンフレットを配っているときに、今の答弁を知っている方が、でも教育上必要だと思ったら多少の体罰はいいんですよねと聞かれたときに、窓口の職員はどう答えればいいんですか。そのとおりです、八百二十二条で懲戒権は認められているので、教育上必要な範囲だったら多少有形力の行使をしてもいいですと答えられますか。大臣、答えるんですか。

塩崎国務大臣 今、盛山副大臣の方から、おおむね細川民事局長と同じラインで御答弁があったわけでありますが、先ほど申し上げたように、私どもも、児童福祉法の改正をする際に、この問題を何とか一歩前に進められないかな、こういうことで議論いたしました。その結果、去年は最終的にどうしたかといいますと、児童虐待防止法の改正を行いまして、親権者は、児童のしつけに際して、監護、教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならない旨を法律に明記をした、こういうことでございます。

 したがって、今申し上げたように、監護、教育に必要な範囲を超えているかどうかということの判断については、今、盛山副大臣も、そのことについてはいろいろあり得るということをおっしゃっていたように受けとめましたが、一文で書き切るというのがなかなか難しいということで、去年はこういうような形でいき、なおかつ、しかし、有形力の行使は、虐待に当たるほどのものでなくても、やはり基本的には不適切ではないかと私たちは考えている中で、こういうパンフレットをつくらせていただいている、こういうことでございます。

初鹿委員 明らかに不一致しているので、これ以上きょうは時間もないので述べませんけれども、ぜひ盛山副大臣、もう一回省内できちんと議論してみてください。私は、これは役人の皆さんに判断しろといっても、一回答弁しているものを変えるというのはなかなか難しいと思うので、これはやはり政治が判断しなければいけないと思いますので、ぜひそのことをお願いして、盛山副大臣、お忙しいようでしたら離席をして結構でございます。

 では、次の質問に入らせていただきます。

 資料の五ページ目を見ていただきたいんですが、三月にも質問をいたしましたが、三月のときは長崎で起こった面会交流による事件を取り上げたんですが、また今度は伊丹市で、面会交流の初めて行った日に、別居をしている父親が四歳の子供を殺して自殺をする、そういう事件が起こってしまいました。ことしに入って立て続けに面会交流で二人のお子さんが亡くなっているという、本当に痛ましい事件であります。

 一枚めくっていただいて、資料六に、この母親との一問一答のやりとりがあるので、こちらも参照していただきたいんですが、この記事ですと、裁判所の調停が行われていたということなんですが、この面会交流の取り決め自体は調停で決めたわけではなくて、調停はあくまでも養育費とか離婚についての調停だったということでありますが、いずれにしても、少なからず裁判所がかかわっていたわけであります。

 まず、ここで質問したいのは、こういう裁判所がかかわるようなケースの離婚の場合、やはり夫婦間で、ある程度、葛藤がある場合が多いと思うんですよ。この場合はそれほどでもなかったということなんですが、それほどでもない場合でも、こうやって殺人事件が起こってしまったわけですから、高葛藤な場合は、私は、面会交流するに当たって、第三者の機関を介在させるということを、ある程度ルール化することが必要なのではないかというふうに思います。

 この点について、きょうは最高裁判所が来ていただいているんですよね。裁判の実務として、第三者を介在させて面会交流の取り決めを行うということを徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 委員御指摘のような、いわゆる高葛藤がある事案におきましては、面会交流の際の付き添いですとか受け渡しの援助といった、面会交流の支援を行う第三者機関を利用することが子の福祉にかなう場合も多いと考えられますので、第三者機関を利用することを内容とする調停や審判がされている例も少なくないものというふうに承知をしております。

 もっとも、調停におきましては、第三者機関を利用するためには、そのことについて当事者の合意がもちろん必要になりますし、また、合意以外の点でも、第三者機関を利用するためには費用がかかるという場合もございますので、そういった点を考慮しますと、高葛藤事案であったとしても、全ての事案で第三者機関の利用を必須とするということは、なかなか困難な面があるというふうに理解をしております。

 家庭裁判所におきましては、個別の事案ごとに、ただいま申し上げたような事情を総合的に考慮して、適切な判断がされているものと承知をしております。

初鹿委員 そうなんですよね。費用がかかったり、地域によってそういう機関があるかどうかのばらつきがあるから、裁判所としては本当はそうしたいんだけれども、なかなかできないという事情があるわけです。

 そこで厚生労働省にお伺いするんですが、こちらの一問一答も、ちょっと二枚目のを見ていただきたいんですが、ここでお母さんが、こう書いているんですよね。「ひと言で「ああしていればよかった」というのはどれだけ考えても分からない。ただ、有料の施設で面会させるという話もあったが近くになく、料金も高額で利用できなかった。身近にそういう施設があればよかった。」こう答えているんですよ。

 現在でも、自治体の中には面会交流の支援事業を行っているところはありますが、まだまだ数は、五つでしたっけ、五つという、少ないわけですね。まず、この支援事業を広げていくということと、支援団体を育てていくということも必要だと思うし、支援団体のやはり財政的な基盤を支援しないと、なかなか費用が高額になってしまうということもあるので、まず、この三点、まとめて聞かせていただきますが、この面会交流支援事業をまず進めていってもらいたいということ、それと、それを使うのに所得制限があって使えないという場合があるので、これは所得制限をなくして、そんなに件数があるわけではないから、やはり葛藤があるということで、子供が不利益になるわけですから、親の不利益じゃないので、子供に視点を置くと、所得に関係なく利用できるようにしてほしいというのと、あと、FPICを初めとする、こういう交流を支援しているNPO、これを育てていくためにも、何らかの財政的な支援策を検討していただきたいんですが、いかがでしょうか。

堀内大臣政務官 面会交流についての初鹿議員の御質問にお答えいたします。

 面会交流を全国に広めていく必要があるのではないかといった一つ目の御質問についてでございますが、私どもとしても、やはり面会交流、父母のみで実施することが困難な場合などについては、第三者のかかわりなど一定の支援が必要であると考えております。

 厚生労働省といたしましては、平成二十四年度から、父母間に面会交流の取り決めがあり、かつ、第三者の付き添いなど支援を受けることに合意がある場合に、地方自治体が面会交流の日程や場所の調整、付き添いなどの支援を行う面会交流事業に対して補助を行っているところでもございます。

 こうした取り組みを通じて、子供の利益の観点から、面会交流が父母の協力のもとで適切に実施されるように、本事業を全国的に展開していく必要があると考えており、未実施の自治体に対しては、全国会議などを通じて積極的な働きかけを行ってまいりたいと思っております。

 そして、二つ目の、いわゆる所得制限なしにできるようにするべきではないかといった御質問に対しましては、面会交流事業には、面会交流を行う場所の提供や両親の間を取り持つコーディネーターの配置などの費用がかかってきますため、限られた財源の中で低所得者を重点的に支援するために必要な措置であると今認識しております。

 ただし、現在のところ、平成二十七年から、自治体において支援の提供に支障がないと認める場合には、同居の親または別居親のいずれか一方だけが児童扶養手当の支給を受けている者と同様の水準にない者であっても対象者とすることができるような要件緩和の方を行わせていただいております。引き続き、面会交流支援事業の利用促進が図られるように、必要な対応を図ってまいりたいと思っております。

 そして三点目、いわゆるFPICなどの、そういった民間団体さんの発展のためにやっていかなくてはならないのではないかと思っておりますけれども、それにつきましては、厚生労働省といたしましては、各地方自治体が民間団体を活用して適切に面会交流を行う場合には、平成二十四年度から面会交流支援事業として、財政状況の厳しい中、毎年度必要な予算を確保して、財政支援を行わせていただいているところでございます。

 この本事業において利用者負担は求めていないところではありますが、その実施を通じて利用者の負担軽減が図られるように、引き続き地方自治体を支援してまいりたいと思っております。

 よろしくお願いします。

初鹿委員 政務官、面会交流を全国に広げるんじゃなくて、面会交流を支援する事業を全国に広げるということですから、最初、面会交流をと言っていましたので、ちょっと訂正をしていただきたいと思いますが。

 いずれにしましても、この支援の団体がふえていかないと、やはり同じような事故、事件がまた起こってしまいかねないので、重要な事業だと思いますので、全国展開をぜひしていただきたいと思います。

 かなり質問を残してしまいましたので、来週またさせていただきたいと思います。

 では、終わります。

丹羽委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二十六分開議

丹羽委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。井坂信彦君。

井坂委員 午後一番のバッターで、また、きょうから始まります児童福祉法及び虐待防止法の審議、ぜひよろしくお願いをいたします。

 法案の審議に先立ちまして、ちょっと一点、もうどうしてもこのタイミングということで、受動喫煙防止、たばこの問題についてお伺いをしたいというふうに思います。

 そもそも、昨年十月に出された厚生労働省のたたき台は、飲食店は、バーやスナックも含め、全て屋内禁煙だったと思います。その後、厚生労働省は、バーやスナックのうち、三十平米以下の小規模なものは屋内禁煙の対象から外しました。さらに、自民党との協議の中で、バーやスナック以外の居酒屋も屋内禁煙の対象から外す妥協案を自民党に示したと報道をされております。政府の案が、自民党と妥協するためにどんどん後退をして、骨抜きになっているのではないか。先日、我が党の厚生労働部門会議でも正式にこの件を議論いたしましたが、厚生労働省の原案より骨抜きにしたらだめだという意見ばかりでありました。バーやスナック以外の飲食店は、居酒屋も含めて屋内禁煙。

 大臣にちょっと、まず一点目、確認をしたいんですけれども、バーやスナック以外の飲食店は居酒屋も含めて屋内禁煙、バーやスナックも、三十平米を超える規模であれば屋内禁煙にすべきというのが現時点でも厚生労働省の考え方ということで間違いないでしょうか。

塩崎国務大臣 私どもの正式な考えは、先般も自民党で御説明を厚生労働部会でさせていただきましたけれども、三月一日にお示しをした厚生労働省の「基本的な考え方の案」というものでございまして、一般的な飲食店は屋内禁煙、喫煙専用室設置可ということになっておりまして、小規模のバーやスナック等では、通常、妊婦や子供さん方が利用しない、そして経営者以外の従業員やアルバイトはおられないだろう、まあ、いても一人程度ということで、望まない受動喫煙は最小限にとどまるものと考えて、例外的に喫煙専用室がなくても喫煙を可能というふうに整理をしているところでございます。

 現在、成案を得るために与党との調整を行っておりますけれども、どのようにすれば本当に望まない受動喫煙が防止をできるのか、望まない受動喫煙をなくすことができるのかという点は、皆で考えなければならない重要な問題であって、引き続き、こういうような観点から調整を行ってまいりたいと考えております。

井坂委員 一方で、自民党案は、バーやスナック、居酒屋だけでなく、全ての飲食店を客室面積百平米以下なら屋内禁煙の対象から外そうとしているというふうに報道されています。

 そこで参考人にお伺いしますが、客室面積百平米以下の飲食店というのは、飲食店全体の中でどれくらいの割合を占めるのでしょうか。

福島政府参考人 お答えいたします。

 全国の飲食店の客席の面積について網羅的なデータはございませんが、幾つかの自治体が行った調査がございまして、例えば平成二十七年に東京都が行ったサンプル調査によりますと、客室面積、客席面積百平米以下の店舗の割合は、喫茶店、レストラン、ファストフード店などでは八五・七%、バー、スナック、居酒屋、焼き鳥屋などでは九五%であると承知をしております。

 また、平成二十七年に神奈川県が行ったサンプル調査では、食堂、レストラン、居酒屋などのうち、店舗の総面積からその調理場の面積を除した面積が百平米以下の店舗の割合は五七・三%であるというふうに承知をしております。

井坂委員 ちょっと参考人に確認ですけれども、それは店舗数でその割合ということですか。

福島政府参考人 この調査の対象となった、回答があった店舗のうちで、そのうちで百平米以下の店舗の割合ということでございます。全体のその店舗に占める割合ということでございます。

井坂委員 ちょっと今の参考人の数字を聞いて大臣にお伺いをしたいんですけれども、東京都では大体九割前後の飲食店が、客室面積、客席の面積が百平米以下になるということであります。

 これはまた今後どういう議論になるか予断を許さないわけでありますけれども、仮に客室面積百平米以下の飲食店を屋内禁煙の対象から外すというルールになると東京都では九割方の飲食店が屋内禁煙の対象から外れるということで、これは事実関係に間違いないでしょうか。

塩崎国務大臣 事実関係とおっしゃっても、事実は特に私にはございませんので、今の統計的なデータからいくと先ほどのような説明の数字だというのが調査の結果だということでございますので、自民党の案というのは私は正式には存じ上げません。

井坂委員 きょう、個別の案、私も報道ベースでしか存じ上げているわけではありませんので、その個別の案の中身がいつ出たのか、出なかったのかということはお尋ねはいたしません。

 続けて、ちょっと通告どおり大臣にお伺いいたしますが、これは、喫煙、分煙の飲食店というものを許した場合に、その喫煙、分煙の飲食店においては未成年を立入禁止にすればよいのではないかという案もあるわけでありますけれども、未成年の立入禁止ということが本当に実行可能なのか、また、違反の取り締まりが可能なのか、私は不可能ではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 これは報道ベースの話で、案だということで、ありそうなことでございますから、私がどうのこうの言うことではないような気がいたしますが、一般論として申し上げれば、こういうような規制を導入した場合には、類似の規制が世の中に、風営法とかですね、存在をしているので、恐らく、そういうものと同様に対応していくというようなお考えでこういうことを考えられることがあるのかなというふうに思いますが、受動喫煙の場合、大事なのは、子供さんだけではなくて、がんの患者さんだったり、あるいは妊娠をされている女性だったり、あるいは受動喫煙をなくしている文化になれ親しんだ外国からのお客様だったり、いろいろな方々がおられるということも忘れてはならないというふうに思います。

井坂委員 風営法のお話がありました。

 私も風営法、今回この質疑をするに当たってかなりいろいろ、法律、それからその運用の実態を調べてみたんですけれども、風営法の場合は、やはり深夜営業の許可をとる、ごくごく限られたお店が、しかも夜十時を過ぎた場合に十八歳未満の人が入っていないかということを、厳密にチェックする店はしているようであります。

 ただ、それも本当に、ではカラオケとかやれているのかというと、私は大変心もとない気もいたしますし、まして飲食店、さっき、東京では九割方の飲食店が百平米以下ということでありますけれども、あまたある飲食店が九割方、仮にその半分が喫煙または分煙の店になったとしても、これまでの風営法の対象とはまさに桁違いのお店がこの対象、しかも夜十時以降という限られた時間ではなくて、朝から晩までこういう入店規制をするということに本当に実効性があるのか。そしてまた、その違反の取り締まりなどはできるのかということであります。

 大臣、イメージしていただきたいんですけれども、一人でお店をやっていますラーメン屋の大将が、若者が昼でも夜でも入店するたびに身分証明書の提示を求めるんでしょうか。あるいは、居酒屋が、若いグループが来るたびに入り口で全員の身分証明書を確認して、一人でも未成年の人がいたら追い返すということになるんでしょうか。

 本当に、そういう未成年の入店規制、朝から晩まで入店規制ということがこの日本で可能なのか、しかもほぼ全ての飲食店で。ちょっと現実にどうなのか、どう思われるのかということをもう一度お答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 私の先ほど申し上げた厚生労働省の案にはそのようなことは書いてございませんので、そういうようなことを考えているわけではなくて、むしろ実効性のある受動喫煙をなくす方策を考えるわけで、その際は、未成年だけが受動喫煙から防止をされればいいというわけでは全くないということをさっき申し上げたわけで、さまざまな方々を、あらゆる人たちを受動喫煙から守らなきゃいけないというのが健康増進法ですから、これはもう若い人も御年配の方も全ての人の健康を増進するという法律で、努力義務ではうまくいかなかった、毎年一万五千人の方々がどうも受動喫煙で亡くなっておられるという研究結果があるということを踏まえた上で、今度は総理の施政方針演説の中でも受動喫煙対策を徹底するというふうに総理がおっしゃっているわけですから、徹底をしないといけないという思いで「基本的な考え方の案」というのをつくらせていただいているということでございますから、私どもが今のようなことの説明をさせられなければいけない理由は余りないような気がいたします。

井坂委員 大臣が今答弁で、厚労省としてはそういう未成年の入店規制などということを今考えているわけではない、むしろ実効性のある規制が必要であるというふうに答弁をされました。

 未成年の入店禁止は考えていなくて、むしろ実効性のある規制が必要だという御答弁ですから、未成年の入店規制というのはやはり実効性には非常に疑問が残ると大臣は考えておられるということですか。

塩崎国務大臣 やはり国民の健康を守るという意味においては、未成年だけではなくてそれ以外の方々、全ての人たちの健康を守らなきゃいけないというのが健康増進法の法の目的でありますから、受動喫煙に関しても同じように、全ての国民に対して健康を守るという発想でやっていかなきゃいけないということを申し上げているわけでございます。

井坂委員 最後に、たばこ規制に関してもう一点なんですけれども、この件、やはりいろいろな報道とかインターネット上でも、さまざまな方がさまざまな意見を述べておられます。

 これも広く出回っている記事でありますけれども、ハーバード大教授が、日本の受動喫煙対策は新興国以下だ、こういう刺激的なタイトルをつけて出回っている記事がありますけれども、ここに書かれている中で、私も一つ気になりましたのが、日本では財務省が、JT、日本たばこの株の三割を保有しているけれども、たばこ業界の影響によって積極的に受動喫煙防止の政策がとられにくくなっている面があるのではないか、こういうことも言われてしまっているわけであります。

 今、先進国の中では、ダイベストメントという動きが幾つか起こり始めております。実際、フランスの公的年金基金などは、たばこ関連産業とそれから売り上げの二割以上が石炭の企業の株式や債券を投資先からあえて除外する、こういう、インベストメント、投資の逆ですね、ダイベストメントということをことしから実行し始めるということになっております。投融資引き揚げ、ダイベストメントということであります。

 それはどういう理由かといえば、やはり、財政的にもそれから国民の健康上も問題があるような対象企業に対して政府関連がお金を出す、投資をするというのはこれは矛盾が生じる、また倫理的にも問題が生じる、こういう考え方から、投資引き揚げ、ダイベストメントということで、たばこ関連産業が除外をされているわけであります。

 こういった社会的責任投資とかダイベストメント、こういう流れが起こっている中で、大臣にお伺いいたしますが、日本の財務省がJT株を多数保有していることについて問題は感じませんか。

塩崎国務大臣 これはもう先生御案内のように、日本たばこ産業株式会社法という法律、これは昭和五十九年にできておりますが、そこに、第二条に、政府は、日本たばこ産業株式会社の、総数の三分の一を超える株式を保有していなければならないという法律にのっとって保有をしているんだろうというふうに思います。

 したがって、これは法律に基づくものでありますので、かたがた、財務省の所管事項でございますので、厚生労働省としてお答えする立場にはないというふうに思います。

井坂委員 JTの株も、政府が随時売却をしてきている中で、今ここでとまってしまっているということであります。

 大臣、このたばこ規制の問題また受動喫煙防止の問題、これは、厚生労働省は、国民の健康を守る、そして特に大臣が答弁で強くおっしゃったように、未成年者、また妊産婦の方、あるいはがん患者の方、こういった方々の健康を守るということが第一義にある省庁でありますから、ぜひ初志貫徹でこの件をやっていただきたい、このことを私から強くお願い申し上げまして、法案の審議に移りたいというふうに思います。

 午前中から大分議論がありましたので、重複するところが多くなっております。事前に通告した内容からさらにその先をお伺いする点も御了承いただきたいというふうに思います。

 まず、今回の法改正の中で一番最初にある、虐待を受けている児童等の保護者に対する指導に家庭裁判所が関与をしていこうという話であります。都道府県に対して家庭裁判所が指導を勧告する、そしてさらには、保護者に対しても都道府県にこういうことを勧告しましたよということを通知する、そのことによって、都道府県ひいては児童相談所の保護者に対する指導をより実効性を高めていこうという趣旨かと思います。

 ただ、実態、いろいろお聞きをすると、今回の家庭裁判所の勧告も結局は強制力も罰則も伴わない中で、今でさえ児童相談所に従わない保護者に、果たして、家庭裁判所がただ勧告をした、また、そのことを通知しただけで保護者が聞いてくれるようになるのか疑問である、こういう意見も聞かれるわけであります。

 この点に関して、午前中の参考人の答弁で、家庭裁判所は都道府県からの結果報告を踏まえて最後審判をするので、指導に従わなければ里親委託や施設入所になる可能性が高まるんだ、だから実効性が多少上がるんだという御答弁だったというふうに思います。

 そこで、大臣にちょっと通告のその先をお伺いするんですが、この答弁、一定わかります。ただ、もし本当にそうであれば、大臣、保護者の方に通知をする際に、単に家庭裁判所から都道府県あるいは児童相談所に勧告をしましたよ、しましたよと通知をするだけでは全く足りないというふうに思います。例えば、児童相談所の指導にきちんとあなたが従っているかどうか、我々家庭裁判所は随時報告を受けて、そして、指導に従っていないとなれば、これは里親委託や施設入所の審判を下す可能性が高まることになりますよ、こういうところまで保護者に明確に伝えないと、午前中の答弁のような理由での実効性は担保されないのではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 今回、家庭裁判所の関与、司法関与を強めるということに関しては、私どもとしては、現場の児童相談所長とか、あるいはそれにかかわる弁護士さんとか、そういう方々と随分議論をした上で今回のような仕組みを入れさせていただき、また、裁判所あるいは法務省民事局などともたび重なって議論をさせていただきました。

 現場で、虐待を繰り返す親と対峙をする児童相談所の所長を初めスタッフの皆さん方が今回のような仕組みをぜひ導入してくれという声を出してきたのは、やはり、ひとり児童相談所だけが第二十八条の措置の申し立てをするだけではなかなかうまくいかないことが多いということを私は聞いてまいりました。

 今回、このような形で、家庭裁判所の言ってみれば主導による在宅保護者指導、しかし、実際には、もちろん児相、児童相談所が日常的にはかかわりながら、今お話があった勧告を保護者に通知していただくわけでありますが、それを、言ってみればバックに、今であれば審判でもって里親委託なり施設入所、将来的には特別養子縁組という選択肢もあった方がいいのではないかという御意見もありますが、そういうようなことになるか、あるいは在宅のままでいくか。

 問題意識の原点は、在宅になって不幸な結果に終わってしまうということが大きな今回の法律改正のきっかけの一つであって、やはり、在宅に行っても、ちゃんとそれをずっと、言ってみれば在宅措置のような形で見続けていくということが大事で、その後ろ盾の一つとして裁判所の勧告、そして、それは児相に対しての勧告でありますが、それを通知するという形で保護者にも十分そのことを意識してもらった上で、在宅でやる場合には、その勧告に従って親も努力してもらうということをやり、そして、当然、児相もそれにのっとって在宅での保護者指導というものに当たっていくということだというふうに思いますので。

 おっしゃるように、強制力がないじゃないかと言われれば、それはそのとおりだとは思いますけれども、これは親子関係の問題でもあり、命の問題でもありますので、このような形で一歩前進をして、保護者ができる限り、一番はやはり生みの親が本当に育てていくということが大事でありますので、その方向に行くように皆で協力し、その際、今回は裁判所が一枚加わってもらって、この保護者指導に加わって、保護者に真っ当な道に戻ってもらうということで子供が健全に育っていくことを期待するということだと思います。

井坂委員 大臣のおっしゃるように、やはり一番いいのは、そのもとの親御さんがちゃんと児童相談所の指導をよく聞いて、もとの家で子供も円満に暮らせるように、危険なく暮らせるようになるのが一番いいわけですから。

 その聞いてもらえるために何ができるのかという中で、では、ただ通知だけで、何か家庭裁判所から紙が来たからちょっと言うことを聞かなきゃとなるのかどうか。

 我々は仕組みをわかっていますから、その勧告の通知が来たということは、これまでみたいに児童相談所の言うことをなめてかかっていたら、最後は子供と引き離されかねないぞ、そこまでわかっていれば、その通知の重みも重く受けとめるわけでありますけれども、普通は、この複雑な仕組み、なかなか当然わからないですから。先ほど申し上げたように、端的に、家庭裁判所が見ていますよ、結果が悪ければお子さんと離れることになるかもしれませんから、ちゃんと言うことを聞いてくださいね、こういうことが大事だろうというふうに思いますので、ぜひ、まさに実効性のある、強制力とか罰則がない分、実効性を持たせる工夫をしていただきたいというふうに思います。

 最後、時間が近づいてまいりますが、今度は一時保護について。

 今回、一時保護を二カ月以上やる場合の手続が強化をされますけれども、午前中の質疑からも、長期化がいろいろ問題となっております。実際、この一時保護の場所が全く足りなくて、定員超過、また混合処遇という問題がこの間ずっと続いておりますが、最後、大臣、一言だけ。そもそものこの問題をどうやって改善していくのか、お伺いをして、質疑を終わります。

塩崎国務大臣 一時保護の問題については、先ほど来もずっと議論がございましたけれども、残念ながら、一時保護される子供の数が増加傾向にあって、入所率は常に一〇〇%前後に、全国、かなりなっているところが多い。こういうことで、各都道府県などにおいて、地域の状況に応じて一時保護所の数や定員をふやすとともに、必要に応じて一時保護を児童養護施設などに委託をするということをやってきているわけでありまして、これまでも、一時保護される子供たちに対して、年齢とか性別に配慮した処遇が行われているときもあれば、そうじゃないときもあって、それこそ非行の子供と虐待を受けた子供が同じ部屋にいるということもあって、個室がないというところも多いと思います。

 そういうことをいろいろ考えてみると、虐待、非行、養育困難、いろいろなニーズのある子供たちが、難しい問題を抱えた子供たちに対して、私どもとしては、やはり、一時保護所の改修もしながら、場合によっては個室をつくるなりの整備費の補助を行う。あるいは、平成二十八年度から、児童養護施設などが一時保護委託児童を一定数受け入れてくれていますけれども、その際の専用の居室等を設けている場合に、その運営費を、補助の加算をするというようなこともありますし、これは二十八年度の補正予算において、一時保護所の居室の小規模化、あるいは年齢、入所事由に応じた処遇の確保を図るために、特例的に国の補助を二分の一相当から三分の二相当に引き上げるといった整備の促進を図ったりしているわけでありますけれども。

 一応、一番大事なことは、一時保護されないということが大事であって、しかし、それをやらざるを得ないということであれば、やはり子供たち本位に、それに見合った環境をこの一時保護の際にも用意し、そして長期化しないようにしていくように、私どもとしては、それぞれの措置権を持ったところが、児童相談所が対処していただけるように、できる限りの支援をやっていきたいというふうに思っております。

井坂委員 終わります。ありがとうございました。

丹羽委員長 次に、堀内照文君。

堀内(照)委員 日本共産党の堀内照文です。

 法案の審議ということで質問させていただきます。

 この法案は、児童虐待の対応にかかわって司法の関与を強めるというものであります。具体的には、第二十八条措置にかかわって家庭裁判所の関与を規定するとともに、一時保護の審査についても、親権者等の意に反して二カ月を超えて一時保護を行う場合に、家庭裁判所の承認を得なければならないようにするといったもの等々であります。

 親子の分離介入と再統合支援という複雑な機能と役割を持つ児童相談所の業務の困難さというのは、従来から指摘をされておりました。そして、司法の関与の必要性も指摘されてきたところです。親権停止を創設した二〇一一年の民法と児童福祉法の改正の際にも、審議会でもそういう議論がありましたし、参議院の法務委員会での審議で我が党の井上哲士議員が、親と児相との対立の解消という点でも、また、一時保護が長期になれば子供の権利侵害にもなりかねないという点からも、司法関与が検討されるべきだと提起をしております。

 その際、当時の江田五月法務大臣からは、司法関与が当時困難だった理由として、今の司法やあるいは児童相談所の体制の現実を考慮しますと、迅速な一時保護が困難となって、かえって児童の保護が図られないおそれがあるという指摘もあったことや、この当時はそういう制度を、司法関与を取り入れなかったわけでございますが、その根本には、子供をしっかりと支えていく社会的なサポート体制の弱点であるとか、あるいは司法、とりわけ家庭裁判所の人員の脆弱性であるとか、そうしたものが根本にあるということを考えていかなきゃならないという答弁でありました。

 きょうは最高裁にも来ていただいています。このときと比べて体制が充実したのかということであります。司法の側の担い手でいえば家庭裁判所調査官になると思うんですが、この人員、当時の法改正の議論があったときと比べて増員されているのかということをまずお聞きしたいと思います。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 平成二十三年の改正のことをお話しされたかと思いますが、平成二十二年度以降、家裁調査官につきましては、増員はいたしておりません。

堀内(照)委員 全国で千五百九十六人、今ありましたように、その前の法改正があった前に五人増員して以降、ずっとないわけですね。ですから、二〇一一年時点の議論で体制面の心配で見送った司法の関与なんですが、その後増員がないのに今回導入ということなんですが、これは対応できるんでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 裁判所といたしましては、家裁調査官の人的体制につきましては、家事事件及び少年事件の動向や事件処理状況に照らして検討をしているところでございまして、これまで行ってきた人的体制の整備の状況に加えまして、少年事件の事件数がこの十年だけ見ましても約三分の一程度にまで減少しているということなどに照らしますと、成年後見事件を含む家事事件の事件動向を考慮しても、家裁調査官の現有人員を有効活用することによって各種事件の適正迅速な処理を図ることができるものと考えまして、平成二十九年度においては家裁調査官の増員を行わなかったというところでございます。

 今般の法改正によります司法関与の強化を踏まえました人的体制の整備につきましては、まずは国会での御審議の結果を踏まえて考えてまいりたいと存じておりますけれども、現有人員の有効活用を図り、新たに導入される制度が法改正の趣旨を踏まえて円滑に処理されるよう努めてまいりたいというように考えております。

堀内(照)委員 少年事件の減数ということをおっしゃったんですけれども、家事事件の方は一方でふえているということも今ありましたが、総数で見たらやはりふえているんですね、足しても、トータルでいえば。確かに、その全てが、調査官が関与することが必要であるとは限りませんけれども、一方で、社会がいろいろ複雑になる中で、扱う領域等もやはり広がっているわけですね。

 ですから、現場からはこういう声が上がっています。

 ことし三月の裁判所職員定員法の審議の際に、衆議院法務委員会で参考人として意見陳述をした中矢正晴全司法労働組合中央執行委員長は、離婚や子供をめぐる問題など家庭を取り巻く社会環境が厳しくなっているもとで、裁判所に求められる役割も大きくなっているということ、それから、少年事件が減っているというけれども、近年の少年の特徴として非社会的な少年がふえて、話を聞き出すのも非常に時間や手間がかかっているとの現場の声があるということ、そして、成年後見利用促進法の成立を踏まえた人的体制の整備の必要性などを挙げて、とりわけ家庭裁判所の増員が必要だ、特に、家裁の充実を図ろうと思えば、調査官の人員体制の整備なしには考えられないという声であります。

 それに加えて、児童虐待問題で今回、新たな役割が加わるということであります。

 今、この審議と法の施行状況を踏まえてということでありましたけれども、やはり必要な増員というのは図るべきだと思うんですけれども、いかがですか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所といたしましては、これまでも、家事事件への対応を充実強化するために、家裁調査官につきましては、平成十二年度から十八年度まで、事務官からの振りかえも含めますと合計六十八人の増員を行っておりますし、先ほど委員の御指摘にもございましたが、平成二十一年度についても、少年事件における被害者配慮制度への対応として五人の増員というのを行ったところでございまして、家庭裁判所が、その特色である科学性あるいは後見性を十分に発揮して的確な事件処理を図れるよう、必要な体制整備を行ってきたというふうに考えておるところでございます。

 裁判所といたしましては、委員の御指摘にもございましたが、社会が裁判所に求める役割が増大しているということは認識をしておるところでございまして、これを踏まえまして、法改正に伴う事件動向あるいは事件処理状況等を注視しつつ、今後とも、的確な事件処理が図れるような、必要な体制の整備に努めてまいりたいというふうに思っております。

堀内(照)委員 この中矢氏は、調査官の調査の対象となっている子供や家庭をめぐる状況がどんどん複雑になっているわけですから、その仕事も年を追うごとに複雑になり繁忙になっている、そして、人と向き合う仕事でありますので、時間で区切ることも難しく、きちんと行おうとすればするほど非常に時間と労力を要する仕事であることを御理解いただきたいということで、増員が必要だということも指摘していますので、改めて私からも、増員を図るべきだと指摘しておきたいと思います。

 続いて、児童相談所の一時保護所の問題であります。

 二十四日付の読売新聞の夕刊で、「児相「一時保護」施設不足」と報じられました。例えば、四人部屋に七人が入所しているとか、平均入所率が一〇〇%を超えている施設が八カ所ある、一時的に定員超過になるような入所率八〇%以上の施設が十九カ所に上っているということであります。また、虐待対応が二〇一五年度は過去最多の一万七千八百一件、保護期間も長期化し、定員オーバーが目立つという報道でありました。今回の法改正の背景にも、この長期化の問題もあろうかと思います。

 また、虐待事案がおよそ半数を占め、家庭環境に深刻な問題があり、保護される子供自身も深い心の傷を負っていることや、発達障害などの子供もふえ、一人一人に応じた個別の支援が必要になってきております。一時保護所が緊急避難的な場所であり、保護された子供たちの心の安定の場所であるとともに、生活の場所であるという必要性が増しているんだと思います。また、本来、一時保護所の役割は、安全、安心の確保とともに、アセスメントを行って次の支援につなげていくという役割を持っているわけであります。しかし、その役割にふさわしい場所になっているのかということであります。

 一時保護所には、設備、職員配置の基準というのがあると思うんですが、それは児童養護施設の最低基準の規定を準用するというものであります。

 しかし、現場からは、例えば、聴覚過敏により、他の子供たちの喚声やテレビの音で平穏を保てなくなる子がいるとか、男性といるだけで心理的に負担になる性暴力被害に遭った子供が、日中、男性と同じ部屋で過ごさざるを得ないですとか、突然、フラッシュバックで、集団の中にいること自体がしんどくなる子供ですとか、そうした対応のために部屋やスペースをつくっていかなければならないということや、プレールームを潰して幼児の生活の場にした例ですとか、パニック障害の子が落ちつくスペースがないということで、廊下の階段の下のスペースをそういう場として利用せざるを得ないとか、設備の面で、とりわけケアが必要な子供たちの居場所とは言えないような実態があるんだと思うんです。

 大臣に伺いたいと思うんです。

 求められる一時保護所の役割を果たすためにも、今、児童養護施設の最低基準の準用ということになっているんですが、一時保護所独自の設備基準というのがきちんとあるべきじゃないか、設けるべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 おっしゃるように、一時保護所は全国それぞれでございまして、決して満足できる状態のところばかりではないことは、私も現場を見て、そのように感じたところでございます。

 今お話のあったとおり、一時保護は、虐待等を受けた子供について、迅速に安全確保をまずする、そして支援につなげるためのアセスメントを行う、今おっしゃったとおりでありまして、そういう機能を果たすわけでありますけれども、現行の児童相談所の一時保護所の設備あるいは運営につきましては、今御指摘のように、児童養護施設の面積や職員配置などの基準を準用するという格好で運営をさせていただいているわけであります。

 一時保護所の基準につきましては、昨年の三月の、社会保障審議会児童部会の新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会というのがございまして、そこの報告において、子供の年齢等を勘案しつつ、原則として個室対応を基本とする、そして、ケアワーカーなどによる個別対応を可能とするような職員配置と環境整備を行うべき、こういうことで職員配置や、配置基準、整備基準などに触れているわけであります。

 昨年四月に策定をされた児童相談所強化プランにおいても、一時保護所については、個々の児童の状況等に配慮した対応を確保するために、居室の小規模化、児童の年齢そして入所事由等に応じた処遇確保等の改善を図ること、こういうふうになっています。

 さまざまな事情を抱える一時保護中の子供たちにきめ細かく対応しなければいけないわけでありますので、一時保護のあり方については、厚生労働省の新たな社会的養育の在り方に関する検討会がございますが、そこの検討でその議論などをしっかりとしていただいて、一時保護所の基準についてどう考えるのかということを、今の堀内先生からの問題点指摘も受けて検討してまいりたいというふうに思います。

    〔委員長退席、三ッ林委員長代理着席〕

堀内(照)委員 ぜひ独自の基準をと求めておきたいと思います。

 一方で、今のその準用、児童養護施設の最低基準を準用するとされている現行の基準自体は、二〇一二年度に改正をされています。適合していない施設がどれぐらいあるか、おわかりになれば教えていただきたいなと思っています。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、今現在においては、一時保護所の設備あるいは運営につきましては、児童養護施設の面積あるいは職員配置基準等を準用するという形になってございますが、私ども、それぞれ自治体の設置しております一時保護所でありますものの、その準ずる基準をベースに、基準を満たしているかどうかというところについての実態について、詳細、手元に把握をしてございません。

 これまでの定期的な調査の中では、そのような形で把握できてございませんが、私どもとして、今回、一時保護所についていろいろと今後研究するに当たりまして、まず自治体から状況について、時間をいただきながら報告を求めて、実態把握に努めさせていただきたいと思っております。

堀内(照)委員 つかんでいないのが現状なんですが、日本子ども家庭総合研究所の和田一郎先生らが平成二十五年に調査し、まとめた一時保護所の概要把握と入所児童の実態調査というのがありますが、これによれば、例えば、児童福祉施設最低基準第四十一条に示されている一部屋の定員四人を超えた施設というのが約二割あるですとか、そのうち四件は平均値が六人を超えていたですとか、面積では、一人当たり四・九五平方メートルの基準に満たない施設が約四割もあった。これはいずれも、乳児のみで使用している場合もありますので、必ずしも全てが基準を満たしていないかというと、厳密に見ていかないといけないところはあると思うんですけれども、それでも、乳児基準の一人当たり三・三平方メートルに満たない施設でさえ約一割あったんだということであります。

 これは、二〇一二年改定の最低基準なんですが、適用は、それ以後に建てられた、もしくは大規模改修で対応できたものに限っているから、こういうことになっているんだと思うんです。自治体にとっても、国から一定の財政支援、きょうも何度も大臣から答弁ありましたが、財政支援はあるんですけれども、やはり独自の負担も自治体としても発生しますので、なかなかこの基準に合わせた改築等が進まなかったと思うんです。これでは、やはり最低基準にならないんだと思います。

 大臣に伺いたいと思います。

 今後、新たな独自の基準も設けるんだと、それに基づいて整備をしていかなければならないと思うんですが、これまでのような取り組み方では、やはり最低基準としてきちんと生かされていくのかなと思うわけであります。今、現状をつかんでいきたいというお話もありましたから、ぜひ、整備が進まなかった原因も含めて把握いただいて、実際に改築等が進むように、必要な財政支援はもちろんですが、どの子にもこの最低基準の処遇が保障されるような国としての支援のあり方というのを具体化すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 一時保護所の整備については、先ほど来答弁も申し上げておりますけれども、改修をするということになれば、必要な整備費の補助は従来から行ってきて、先ほど申し上げたように、二十八年度の補正では、特例的に国の補助を二分の一相当から三分の二相当に引き上げるということで対処してまいっているわけでありますが、いかんせん、これまで一時保護所に対する問題意識というのが必ずしも十分ではなかったように私は思います。

 もちろん、先進的にやっている、福岡なんかはそうでしたが、ツーフロア使って一時保護施設がございまして、ワンフロアは完全に個室になっていて、難しい子供さんはそちらできちっと対応していくということになっていますが、それ以外、もう一つのフロアは相部屋になっているというようなことでありまして、多分、随分整備費がかかったんだろうなと。立派なツーフロアでありました。

 そういうことを考えてみると、一時保護所独自の基準の策定についてお話がございましたが、そういうことを考える中で、一時保護が必要な子供の安全などを適切に確保するために必要な支援はどうあるべきかということを本格的に考えなければいけないし、その分、一時保護そのものの長期化を防いで、むしろ短期化を図るために何が必要なのかということを考え、当然、一時保護の際は大変難しい状況で入ってくる子供さんたちが多いわけでありますから、専門性のある方々がそこに待ち構えていていただかなきゃいけないという意味においても、短期化を図るんだったらばそういうことも一緒にやらなきゃいけないので、整備の基準だけではなくて、人的なリソースについても一緒にやっていかなきゃいけないんじゃないか、そんなふうに思っているわけでございます。

 いずれにしても、今の問題意識をしっかりと受けとめて、財政支援についても、応援団が多くないといけませんから、先生方にぜひ御協力いただいて、しっかりとした予算を確保してまいりたいと思います。

堀内(照)委員 ぜひお願いしたいと思うんです。人的なことも、この後聞こうとは思っています。

 子供たちの処遇の問題で私が驚きましたのは、施設によっては、威圧的な命令口調で子供と接しているとか、私物の持ち込みを認めずに、下着まで番号の振られた施設のものを使用させられるなどの実態があるということです。

 これは、先ほど大臣が少し言われました、この四月に行われた新たな社会的養育の在り方に関する検討会でも、そのことが報告されております。報告したNPO法人リビング・イン・ピースの慎泰俊理事長は、一昔前の暴力的な体育教師のあの口調での命令が朝から晩までずっと続くのです、保護所は安全な場所であるとは思うのですけれども、心の中の安心が本当に得られる環境であるのかというと、とてもそうは思えないようなものでしたと報告されています。

 一時保護所に入所する児童は、心身ともにさまざまな暴力に尊厳を傷つけられた子供たちも多いわけです。安心、安全な場で、温かく当たり前の生活を保障する場であるべきです。そして、人として尊重される場でなければなりません。集団を管理する過剰なルールというのは極力控えるべきだと思うんです。

 これは大臣に伺いたいんですが、この検討会で報告されているような実態、これは私はふさわしくないと思うんですが、大臣の認識はいかがですか。

塩崎国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、去年の児童福祉法の改正で、第一条に子供の権利というのを初めて明確に示したわけでありまして、当然、今の一時保護に当たっても、全ての子供は可能な限り健全なる養育を受ける権利を持つわけでありますから、一時保護中もその権利は当然あるわけでありますから、今お話しのような、威圧的な態度で児相の方々が接するというのはいかがなものかなということを感じるわけでございます。

 私どもとしては、もちろん、一時保護中の規律は大事でしょうけれども、あるいは、一定のルールを持っていないと、親からまた、携帯なんかを持っているとアプローチがあって、いろいろな電話を通じた威圧的なことも親からまたあったりというようなこともあってもいけないので、ルールは必要でしょうけれども、しかし一方で、健全な環境の中で子供たちは、一時保護といえども生き続けなければいけないというふうに思います。

 一時保護所についても、子供の権利擁護を図って、運営の透明化を図るために、平成二十九年度の予算に新たに、第三者評価、これを受けた場合の費用の補助を盛り込むなど、その質の向上を図ることとしております。

 こういうような取り組みを通じて、最大限、子供の権利擁護を図って、一時保護の目的を達成することができるように、そしてその短期化、そしてそこから出るということが早く実現するように取り組んでまいりたいと思います。

堀内(照)委員 やはり、子供の安心まで奪うような行き過ぎた管理や指導というのは間違っているんだということだと思うんです。

 今、第三者評価という話もありました。私は、それと同時に、こういう点でも、子供たちにふさわしい対応ができるようにするためにも、先ほどありました人的な配置、これはやはり非常に大事なんだと思うんです。

 これも大臣に伺いたいんですけれども、人員の配置の面でも、子供の心のケアを初め専門職を正規できちんと配置していく、これは現状からの増員も含めて、そういう検討というのが基準をつくっていく上で必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 児童相談所の一時保護所において、子供が適切なる処遇を受けて、そして子供の心に寄り添う支援を行うことができるようにするためには、保育士であったり、あるいは心理担当職員であったり、さまざまな専門職の配置が必要ではないかというふうに思います。場合によっては、看護師さんのような医療がわかった人がいる方が便利なときもあるかもわからない。

 こういうことで、一時保護所にこうした職員を配置するための財政支援を厚労省として行っているわけでありまして、今、児童相談所一カ所当たりの人件費として、保育士一人、それから心理担当職員一人、主任児童指導員一人、調理員一人、こういうことを定めているわけであります。

 一時保護所における職員の配置基準につきましては、現行、児童養護施設の基準を、これも準用する形で定められておりますが、今後、先ほど来出ている新たな社会的養育の在り方に関する検討会において、一時保護のあり方について検討もしていただくということになっていますので、その中で、専門職の位置づけを含めて、一時保護所の職員の配置基準についてもしっかり検討してまいりたいというふうに思います。

堀内(照)委員 もう一点、一時保護の問題として、これもきょうずっと出ていますけれども、子供の学習権の保障の問題であります。

 一時保護される子供らには、そもそもそういう学習という面では課題のある子も少なくありませんし、学校にも行けない一時保護となりますと、その後、学習のつまずきにもなりかねないわけであります。そうならないようにということで、きょうは通学保障というお話もありました。私も必要だと思っております。ただ、同時に、行けない子も確かにいるわけですし、そこの中で、やはり一時保護所の中でどう学習権を保障していくかということも大事なんだと思います。

 さきに紹介した和田先生の調査では、九割の施設がプリント形式の対応になっているんだ、個別対応でないというところが三割以上に上るということも報告されております。

 識者の中には分校の設置ということを提唱する人もいますが、私は、少なくとも正規職員として教員を置く、最低、教員を置くということがやはり必要じゃないか、これからつくっていく基準の中でそういうことも盛り込んでいくことが必要じゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

塩崎国務大臣 一時保護所においても、当然、子供さんたちは教育を受ける権利があるわけでありまして、個々の子供さんの学力に応じた学習指導というものが行われるべきでありますので、今、教員OBなどを学習指導協力員として配置するなどの取り組みを行っております。厚生労働省では、協力員の配置に要する費用への補助、これを行っておるわけであります。

 平成二十七年度に実施をした調査によりますと、回答のあった一時保護所のうち、約六七%の一時保護所におきまして、教員資格等を有する職員が授業を行っている、それから、約六二%の一時保護所において、個々の学力の進みぐあいに応じた学習プログラムを整備している、こういうことになっているわけでございます。

 今後も、こうした子供さんの最善の利益を図るという観点から、子供に寄り添った支援を行うことができるように、学習支援を含めて、一時保護所における処遇の改善というものを子供さんたちのために図っていかなければならないというふうに思います。

堀内(照)委員 学習権の問題は、きょうもいろいろ出たように、それでもやはりなお課題があるんだと思いますので、私、正規の配置も含めてということで提起しましたので、ぜひ検討いただきたいなと思います。

 次に、婦人相談所の一時保護所及び婦人保護施設における同伴児童への支援について伺いたいと思っております。

 婦人相談所に駆け込む女性のほとんどがDV被害者です。わらをもすがる思いで駆け込んでこられます。その同伴児童は、当然、常に家庭でDVにさらされ、直接的に暴力の被害を受けた子供も少なくありません。被虐待児童そのものであります。婦人相談所の一時保護所や婦人保護施設というのは、そういう意味では、ここも被虐待児の受け皿になっているんだと思うんです。

 一つ伺いたいのは、婦人相談所において、こうした同伴児童はケアされるべき対象として位置づけられているのかということであります。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 DV被害に遭われた女性の方々の同伴児童につきましては、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律、いわゆるDV法におきまして、婦人相談所や、これは一時保護所も含みますが、婦人保護施設において同伴児童の保護を行うと法律上まず位置づけられております。

 その上で、具体的に、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針、これは、内閣府、国家公安委員会、法務省、そして私ども厚生労働省の共同告示でございますけれども、この基本的な方針におきましては、同伴児童は児童虐待を受けている可能性もございますので、アセスメントを行うとともに、必要に応じて、適切な支援が実施されるように児童相談所と密接に連携を図っていくということが必要だという旨も明記をしてございます。

 さらに、このような同伴児童に対する支援を行うに当たりましては、婦人相談所の一時保護所あるいは婦人保護施設において、心理的ケアを行う心理療法担当職員の方、あるいは同伴児童の保育それから学習支援などを行う指導員の方が配置できるように今手当てをしてございまして、このようなことが相まって、同伴児童に対する適切な支援を行う体制の整備を図っているところでございます。

    〔三ッ林委員長代理退席、委員長着席〕

堀内(照)委員 被虐待児としてしっかり扱って、心理的な支援も行うんだということでありますが、そして、今、体制整備の途上だということですかね。ですから、現実にはなかなか十分ではありません。心理療法担当職員は、ほとんどの施設で一人いるかいないかというような状況、ゼロのところも少なくありません。ですから、そういうことをうたっているんですけれども、まだ実際には追いついていない、現実はそうなっていないということなんだと思います。よく指摘されていますのが、同伴の子供というのは支援対象から事実上外されているじゃないかという指摘がされています。

 DV被害に遭った子への支援については、やはりとりわけ専門性が必要なんだと思います。

 初鹿さんのさっきの資料、パンフでも、暴力が脳にどんな影響を与えるのかということも厚労省自身が出しておりますが、暴力による支配が当たり前の中で育つと、暴力で人を支配することが普通のこととしてインプットされてしまう。こういう境遇になったのは母親のせいだとか、もしくは自分が悪かったからだということで、その感情が母親や自傷行為として向かうこともある。

 こうした暴力の連鎖を断ち切って子供の回復に向かうためには、例えば、それまで親から、いろいろなことがあっても外で言うなと口どめされてきたようなことなんかを、自身のそういうつらい状況や経験を話せるように心を開かせていくこと、その感情の表出を受けとめてやり、子供が個人として尊重されるようになることや、暴力の定義を学ぶとともに、両親間の暴力に子供は何の責任もないこと、暴力というのはそもそもいけないんだということ、自身の感情を知り、その表現方法を学び、非暴力コミュニケーションを身につけていくこと、そうしていわゆる自己肯定感を高めていくんだ、こういうプロセスを経て回復へと向かう心理的なケア、そういう支援プログラムが必要だということがいろいろ指摘もされております。

 そうした専門的なケアが必要ですが、実際には、今言いましたように、専門職の配置というのがまだまだ十分ではありません。子供独自の支援プログラムが組まれているわけでもありません。

 大臣に伺いたいと思います。

 婦人相談所の一時保護所そして婦人保護施設、ここにおいても、DV法で位置づけたわけですから、子供の支援を本来業務としてしっかり位置づけて、位置づけを高めて、子供への独自の支援プログラムを持ち、それにふさわしい人員体制、今の心理担当職員や保育の職員というのは加算の対応だと思うんですが、これも最低基準でしっかりと配置できるようにすべきじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 婦人相談所の一時保護所とか、それから婦人保護施設における被害女性の同伴児童の問題についてお取り上げをいただいております。

 まず、婦人相談所におきましては、一時保護された女性の同伴児童、子供さんに対して、児童相談所と連携を図りながら支援を行っておるわけであります。次に、婦人保護施設においては、各入所者ごとに自立促進計画をつくるということになっておりまして、同伴児童の支援についても、母親への支援計画の中に盛り込まれる形で、支援計画の一部をなしている、こういうことだと思います。

 また、これらの施設において同伴児童に対する職員配置への支援、これにつきましては、少し古くなりますが、平成十四年度に、非常勤の心理療法担当職員の配置に対する財政支援というのを始めました。平成十九年度には、その対象を常勤職員にも拡大いたしまして、加えて、平成二十一年度からは、同伴児童の保育や学習支援等を行う指導員の配置に対しても財政支援を行っているところでございます。

 さらに、平成二十九年度の予算では、こうした指導員の配置に対する財政支援について、その上限を二名から三名に拡充するなど、これらの施設における同伴児童への適切な支援体制の整備を進めてまいっているところでございます。

 婦人保護事業につきましては、今年度より、その実態把握、これをやることにしておりまして、同伴児童に特化をした支援プログラム作成の必要性や、同伴児童対応職員を、今御指摘の配置基準、この中に組み入れるかどうかについても、実態等をしっかりと踏まえて検討してまいりたいと思います。

堀内(照)委員 例えば、厚労省からちょっといただいた資料を見ますと、宮城県の婦人保護施設は、乳幼児二十六人、小学生十五人いますが、保育士、その他同伴児童対応職員はゼロです。心理療法担当職員も非常勤でようやく一名です。大阪は、二カ所で乳幼児八十四人いますが、保育士が非常勤で一人のみ。二カ所で一人というのは一体どういうことなのかよくわからないんですけれども、そういう実態なんです。

 二〇一五年度婦人保護施設の役割と機能に関する調査報告書というのがありますが、そこでも、加算がとれずに、必要性があっても配置できないという声があります。

 ぜひ、独自の支援プログラム、今、母親の計画の中でということですが、やはり独自のプログラムと、そして人的配置、しっかりと行っていただきたいということを重ねて申し上げ、最後に、面会交流について伺いたいと思います。

 これは、大臣も本会議で、子の最善の利益の観点から適切に判断されることが重要だということでおっしゃいました。ところが、この間、痛ましい事件が相次いでいます。

 初鹿さんも先ほど取り上げられましたが、私の地元の兵庫県でも、四月末に伊丹市で、四歳の娘が巻き込まれる父子心中事件が起きました。報道によれば、元夫は生活費を月二万しか渡さずに、借金を繰り返し、暴力も続く、まさにDVでありました。離婚調停後初めての面会交流が最悪の結果になったわけです。それ以前には、ことし初めに長崎で、元夫によって元妻が、面会交流のために二歳の長男を元夫宅へ連れて行った際に殺害されるという事件も起きています。

 これはいずれも家裁の決定による面会交流じゃないということでありますが、面会交流の決定に家裁が関与しているか否かにかかわらず、今後の面会交流の判断のためにも、この間の事件については、面会交流のあり方がどうだったのか、実態をよくつかんで検証していくことが必要じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

村田最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 事件の検証についてのお尋ねでございますが、裁判所にそもそも何らの申し立てがされていないような事案でございますと、裁判所といたしましては、その事案について何ら事情を把握していないということになりますので、これについては検証することは難しいと言わざるを得ないかと思います。

 また、裁判所に何がしかの申し立てがあった事案につきましてですが、最高裁判所事務総局といたしましては、裁判官の独立との関係がございますので、個別の事案でその審理や判断等の当否をこちら側から、事務当局側から検証するというのはできかねるということは御理解をいただきたいと思います。

 その上で申し上げますと、一般的な面会交流の審理のあり方につきましては、これまでも裁判官あるいは職員を集めた裁判所内部の研究会などで数次にわたって取り上げられてきておりまして、今後も、面会交流についての適正な審理、判断がされるよう、そういった必要な取り組みを支援してまいりたいというふうに考えております。

堀内(照)委員 命がかかわる事件が相次いでいるわけですから、やはりそういった社会的な事象からもしっかり学ぶということが必要だと私は申し上げたいと思うんです。

 面会交流についての家裁での取り決めの法的な効果について伺いたいと思います。判決と同等の重みがあるのかという点ですね。よろしくお願いします。

村田最高裁判所長官代理者 家事事件手続法上、面会交流を定める調停調書あるいは審判については、執行力ある債務名義と同一の効力を有すると規定されておりますので、判決と同様の効力を有するということになります。

堀内(照)委員 ですから、これは非常に重いんです。それだけに、一たび決定されてしまえば、当事者にすれば、自身が怖くても決定に従わなければと、面会交流に応じざるを得ないんだと思うんです。

 この点で、一つ最後に、ちょっと時間が来ましたので確認だけして終わりたいんですが、ことしの四月十一日に参議院の法務委員会で我が党の仁比議員も確認したんですが、家裁で一旦取り決めがされた場合でも、必要と認めるときには変更することができるとされています。面会交流を是とはしたものの、その後、一方の状況に変化があれば、これは子の最善の利益にならない、面会交流自身がならないとなれば、当然、その変更があり得るということであります。

 この点について、状況に変化があれば取り決めの変更ができるんだということをあらかじめ、当初の調停や審判の際に当事者に周知する必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

村田最高裁判所長官代理者 面会交流に関する定めにつきましては、民法七百六十六条三項におきまして、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、これを変更することができると定められております。

 したがいまして、個別の事案における具体的な事情を踏まえまして、調停委員会あるいは裁判官の判断によって、委員の御指摘のような点を当事者にお伝えしているという例もあるかとは思います。

 もっとも、一般論として申し上げますと、一度、裁判所において、当事者の合意あるいは裁判所の判断によって面会交流について何がしか定められたということになりますと、事情の変更がなければこれに沿って履行されるということが期待をされますので、全ての事件においてあらかじめ明示的に御指摘のような点をお伝えするというのは、難しい面もあろうかなというふうに思います。

 もっとも、家庭裁判所におきましては、手続の利用を検討されている方から家庭裁判所の手続に関して御不明な点のお問い合わせがあれば、申し立て方法やその後の手続について説明をしておりまして、面会交流に関しましても改めて調停や審判を申し立てることができるんだ、こういった点も含めて家庭裁判所における手続について説明をさせていただいているものと承知しております。

堀内(照)委員 手続上の問題として周知するということであれば問題はないと思いますので、ぜひ検討いただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

丹羽委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美です。

 議題の児童福祉法等改正案につきまして、一回目の質問に入らせていただきたいと思います。

 かなり通告をさせていただいておりますが、時間が二十四分間ということですので、可能な限りきょう質問させていただいて、また次につなげたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、児童虐待について伺いますが、児童虐待防止法の制定は平成十二年だというふうに思っております。その当時の相談対応件数は一万七千件余りだったということでありますが、平成二十七年度には、児童相談所で十万三千件を超え、市町村でも九万三千件余りと、かなり右肩上がりのすごい状態が続いていると思います。

 まず、増加がとまらない理由について、政府の認識を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待につきましては、お子さんの命が失われる痛ましい事件が後を絶たないという残念な状況でございます。

 児童相談所における相談対応件数につきましても、今御指摘いただきましたように、近年増加を続けているという状況でございますけれども、その虐待相談の内容別の件数で見ますと、心理的虐待の割合というのが年々増加しておりまして、平成二十七年度で四万八千七百件、全体の四七・二%と、最も多い形になってございます。その他の類型、内容別ということで申し上げますと、身体的虐待、ネグレクト、性的虐待という件数、それぞれございます。実は、このそれぞれの類型、いずれも件数はおおむね年々増加してございますけれども、その心理的虐待の件数の増加幅が非常に大きいので、結果、率というか全体に占める割合としてはこの後者三つは下がっているというのが現状でございます。

 また、その件数の増加要因につきまして、現場あるいは自治体からの御意見などを踏まえますと、心理的虐待に関する増加は、その要因の一つとして、お子さんが同居する家庭における配偶者に対する暴力、いわゆる面前DV事案というものが、特に警察からの通告をいただいているというのが増加しているということが一つ。

 また、平成二十七年七月から開始してございます児童相談所の全国共通ダイヤル、いわゆる一八九、三桁化という形で広報をさせていただいております。こういう形ですとか、マスコミによる児童虐待の事件報道など、国民の皆さん方あるいは関係機関の方々の虐待に対する意識が高まったということに伴い、通告がふえて、初期段階での相談につながっているのではないかというふうに私どもは受けとめております。

河野(正)委員 今いろいろお答えいただきましたので、ちょっと先に進みたいと思います。

 虐待相談の経路は、平成二十七年度は、警察等が三七%、次いで近隣の知人一七%、家族九%、学校等が八%となっていると思います。

 十年前の平成十八年度を振り返りますと、家族、近隣知人、福祉事務所、学校等が一五%でほぼ並んでおりまして、警察等は七%にすぎなかったということであります。

 この十年間で警察等からの相談経路が急激にふえているというふうに思いますが、その一方で、学校、家族等の割合が減ってきておるようです。そうした変化の理由、背景について、どのように認識をされているのかを伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 虐待相談件数、経路別ということで見ますと、今御指摘いただきましたように、警察等の割合が年々増加しているということで、直近、平成二十七年度で三七%と最も多くなってございます。一方、御指摘いただきましたように、その他の経路という意味では、家族あるいは学校等という話がございますけれども、実は、このカテゴリーも、件数としてはいずれもおおむね増加傾向ということではあるんですけれども、これまた警察等の件数の増加幅が大きいということから、全体に占める割合として、後者の経路につきましては相対的な減少傾向にあるというふうに思います。

 この警察等からの件数、特に二十四年度から増加してございますけれども、この要因といたしまして私どもが考えますのは、一つは、児童相談所と警察との連携体制、これはかねてより強化すべしという御指摘をいただいておりますけれども、この一層の強化をするために、平成二十四年四月に、警察庁のサイドにおいて、都道府県県警に対して、危険度あるいは緊急度の判断を的確に行って、必要な場合には児童相談所に通告等を迅速に行うという通知が出されたということ、また、子供が同居する家庭における配偶者に対する暴力、いわゆる面前DV事案について警察からの通告がふえているというこの状況が背景にあるものと受けとめてございます。

河野(正)委員 次に、具体的に確認をさせていただきたいと思いますが、平成二十七年度児童虐待相談対応の件数が十万三千二百八十六件で、そのうち、一時保護は一万七千八百一件、施設入所等は四千五百七十件となっていまして、その他、面接指導といった在宅での支援が中心になっているということであります。

 それぞれの対応において、虐待の類型ごとの数を把握されているのか、確認をしたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所における対応件数につきましては、私ども厚生労働省で実施してございます福祉行政報告例という定期物で把握をしてございます。この調査におきましては、一時保護あるいは施設入所等の措置に至ったそれらの件数は把握してございますが、委員御指摘の虐待類型ごとにわたっての把握は、現時点のところ行ってございません。

 私ども、今回、虐待の増加の中で対応するに当たりまして、一時保護あるいは入所措置等の実態を正確に把握するために、できるだけ多くの調査項目を設定するというのが一方で求められる反面、児童相談所の事務負担というものを考慮する必要があろうと思っております。

 先ほど大臣の方から御答弁ございましたように、昨年の法改正を踏まえて、調査研究ということについて国の責務も明確になっているところでございますので、私ども、そういうことを踏まえて、調査方法でありますとか調査項目の改善に向けて検討させていただきたいというふうに思っております。

河野(正)委員 例えば、性的虐待での相談を受けた子供さんは、まずは家に帰さずに保護することが重要かと思いますけれども、現場では帰してしまう例が少なくないという声も聞いております。

 どういう理由で帰す、帰さないという判断をしているのか。本来であれば帰すべきではないが、保護する場所がなくて帰さざるを得ない、帰っていただかざるを得ないということもあるのかどうか、判断の基準について教えていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所におきまして虐待相談等を受理した場合、そのお子さんたちの家庭復帰の判断に当たりましては、お子さんあるいは保護者の状況、それから家庭環境等を総合的に評価するというのがまず基本でございます。その上で、子供の健全な成長、発達にとっての最善の利益を確保するという観点から、お子さんや保護者等に対する最も適切で効果的な援助方針をまず組織的に立てて、その上で、一時保護すべきかどうか、あるいは施設入所、在宅援助等の判断を現場において行っております。

 このような判断の背景といたしまして、背景といいますか支援といたしまして、虐待に関する基本的な対応のあり方を示すために、私ども厚生労働省が「子ども虐待対応の手引き」というものを作成してございます。

 そこの中では、子供の安全確保に問題がない、あるいは保護者が児童相談所等の指導に従う意思を示している、あるいは、子供が学校や保育所など所属集団に毎日通っていて、継続的に子供の状況確認が可能であるなどなど示した上で、こういう条件が満たされる場合には、在宅援助により、虐待の未然防止あるいは再発防止を図りながら、お子さんの健全な成長のために家族の生活を援助するというふうに示してございます。

 また、子供の安全確保が必要な場面ということになりますれば、同じ「子ども虐待対応の手引き」を示しておりまして、この中で、客観的で合理的な要否判断基準を用いて、一時保護をちゅうちょなく行うというふうにしてございます。このようなものを判断根拠として、現場において、子供の安全を最優先に確保し、迅速かつ的確な一時保護がなされるように、私どもとしてもきちっと支援し、また見守ってまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 次に行きたいと思いますが、本改正案では、児童虐待の防止等に関する法律の第四条で定める国、地方公共団体の責務等と、児童虐待の早期発見等を規定する第五条において、歯科医師、助産師、看護師を加えています。その趣旨、意図するところを教えていただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止法第五条におきましては、児童虐待の早期発見に係る責務を有する者ということで、例示として医師、保健師等が示されてございます。

 その上で、昨年の児童福祉法改正案の国会審議などにおきまして、同様に子の虐待の早期発見に非常に重要な役割を果たしておられる方の中の例示として、歯科医師も追加すべきではないかという御意見もあったところでございます。

 こういう御指摘なども踏まえまして、私ども、今般の改正に当たりましては、医療関係職種、例示ではございますが改めて整理をして、歯科医師などなど、保健師、助産師、看護師をあわせて例示に追加するという規定の整備をさせていただいております。

河野(正)委員 次の設問に移りたいと思いますが、保護者指導に関する勧告で、現行制度では、児童虐待防止法十一条三項によって都道府県知事から保護者に対して勧告ができるといった仕組みがあります。これは、児童虐待を行った保護者が都道府県による指導を受けない場合、保護者に対して都道府県知事が指導を受けるよう勧告するというものでありますが、平成二十七年度は四件しかなく、過去も年間で十件前後と非常に少ないように思います。この理由についてまず伺いたいと思います。

 あわせまして、家庭裁判所は、児童福祉法二十八条一項、二項に基づく措置をとった後、その終了後の家庭その他の環境の調整を行うため保護者に対し指導措置をとることが相当と認められるときは、保護者に対し指導措置をとるよう都道府県に勧告できます。この件数は、平成二十七年度三十九件で、おおむね年間三十から五十件程度で推移していると思われます。これもまた少ないように思うわけでありますが、どのように受けとめているのか、この二点、あわせてお尋ねいたします。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 二点御質問いただきまして、まず一点目、児童虐待防止法第十一条三項に基づく勧告の活用状況でございます。

 委員お触れいただきましたように、この法律当該規定に基づきます保護者指導に対する勧告の実績といたしましては、平成二十五年度が十一件、二十六年度十一件、直近二十七年度が四件というのはお示しいただいたとおりでございます。

 私ども、この評価、なかなか一概に言えません、難しゅうございますけれども、私ども全国の児童相談所に対する調査などを踏まえますと、都道府県知事による勧告ということになっておりまして、直接保護者指導を行っております児童相談所も都道府県の機関ということになっておりますので、保護者の方から見れば、同じ県の知事部局から来るか児童相談所から来るかということで、そういうところも実効性が高くないのではないかというふうに受けとめて、現場ではなかなか活用に結びついていないという声を承知しております。

 また、二つ目、児童福祉法二十八条の第五項に基づく家庭裁判所の措置の承認の審判を行う際の保護者指導の勧告についてでございますけれども、この実績につきましては、平成二十六年が五十五件、二十七年が三十九件、平成二十八年が三十五件ということになってございます。これはもちろん、家庭裁判所の行っておられることでございまして、個々の事案に応じて裁判所が御判断いただいているということでありますけれども、それぞれに応じた必要な事案には勧告が行われているんだろうというふうに私どもとしては受けとめております。

 その上で、今回の改正法案におきましては、承認の審判の際の勧告も含めて、家庭裁判所が勧告を行った場合には、その旨を保護者に通知するという仕組みにさせていただいておりますので、あわせて保護者指導の実効性は高まるという形で狙っているところでございます。

 こういう形で、今回新たに設けた審判前の勧告あるいは却下の際の勧告ともども、承認の審判の際の勧告も一層活用されるように、私ども児童相談所サイドからは、必要と考えられる指導の内容等について、家庭裁判所に対して上申書等を通じて十分に説明する、児童相談所のサイドからも、家庭裁判所にきちっと申し上げるべきことを御説明申し上げるということを通じて、実際にこの仕組みがうまく動いていきますように、都道府県等に対して周知を行ってまいりたいと考えております。

河野(正)委員 先に進みますが、これまで、児童虐待の対応に係る制度において、司法、裁判所は、立入調査の後の臨検、捜索の許可、親権者等不同意での施設入所等の措置の承認に限られていたというふうに思っております。

 今回の法改正案が成立しますと、さらに司法の関与がふえることとなります。まず、虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与について伺いたいと思います。

 新たに、児童相談所が、家庭裁判所の勧告のもとでの保護者指導が可能になる仕組みが設けられておりますが、このことで指導の実効性が高まるというふうな説明だと思いますが、なぜそのように断言できるのかどうか、政府の見解を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案では、里親委託あるいは施設入所等の措置の承認の申し立てがあった場合に、家庭裁判所が都道府県等に対して保護者指導を勧告することができるという形にさせていただいて、家庭裁判所はその結果を踏まえて審判を行うという形にさせていただいております。

 保護者の方々からした場合、家庭裁判所の勧告のもとでの指導に従ったかどうかが、里親委託あるいは施設入所等の措置、これは結果的に親子を分離するかどうかということにつながってまいります、その審判において重要な判断要素の一つとして考慮されるということもあり、一定の保護者の方々に対して効果が見込まれるのではないかというふうに思っております。

 また、加えて、今回の改正法案では、家庭裁判所が勧告をした場合に、保護者に対して勧告した旨を家庭裁判所から直接通知するという仕組みにしてございまして、裁判所が勧告した事実が保護者に直接伝わるということで指導の実効性が高まるのではないかということで、このような要素をあわせ持って、私ども、実効性を高めるのにつなげたいというふうに考えておるところでございます。

河野(正)委員 ちょっと先に進みたいと思います。

 現行制度にある勧告の仕組みは余り利用されていない状況かと思っておりますが、今回新設する制度はどの程度使われると見込んでいるのか、現時点での見通しについて伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 今回の仕組み、勧告というものを家庭裁判所が事案に応じて御判断いただくということでございますので、それぞれ、物の性質に応じて適切に御判断いただくべきものだというふうに思います。

 したがいまして、今の時点で、私ども行政のサイドから具体的な件数をお答えするのはなかなか難しゅうございますけれども、私ども、頭に、参考として、平成二十七年度の二十八条審判の請求件数が全体で二百七十七件となっているということを置きますと、こういうものをボリューム感としては念頭に置きながら、今回の新しい勧告の仕組みの利用件数というものが考えられるのかなというふうに感じております。

河野(正)委員 虐待を受けた児童を、里親委託、施設入所の措置を承認する前段階の制度が設けられることになりますが、そのことで、申し立ての承認、却下に至る結論が出るまでの時間が長くかかることにならないかという懸念があります。現行制度との比較とあわせて、政府の認識を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 家庭裁判所は、今回の仕組みにおきましても、申し立てのあった事案全てに勧告を行うというわけではございません。例えば、親子分離が避けられないほど深刻な虐待の場合など迅速な審判が必要と考えられる事案につきましては、従来どおり、勧告を経ずに審判が行われるものだというふうに考えてございます。

 勧告が行われる事案につきましても、勧告や審判までの期間は、個々の事案ごとに家裁の判断で決まるものだというふうに思っておりますが、必ずしも最終的な保護者指導の効果を見きわめるまで待たずに、その勧告の結果が出る前に、待たずに審判がなされることもあるというふうに考えております。

 こういう今回の改正法案、勧告に基づく指導を行った後、却下の審判がなされた場合にも、勧告のもとでの指導ができる仕組みというふうに考えておりますので、この仕組みを活用することで、保護者に対する指導の効果が認められ、親子分離が必要でないケースにつきまして、必要以上の審判の長期化を防ぐことができるというふうに思っております。

 いろいろ今回の仕組みで選択肢がふえるという形になりますので、私ども厚生労働省としましては、こうした勧告の仕組みの活用方法について、児童相談所、都道府県サイドからきちっと理解をして、それぞれの仕組みが勧告に適した事案に活用されるように、都道府県が理解をする、そして結果的に審判が必要以上に長期化することのないようにつなげてまいりたいというふうに思っております。

河野(正)委員 大臣にお尋ねしたいと思いますが、今いろいろ局長の方からお話しいただいた仕組みについてですけれども、これらの新しい仕組みによって、本当に指導の実効性が高まって良好な家庭養育に結びついていくのかどうか、虐待を受けた児童の成長や発達に資することとなっているのかどうか、保護者指導を重視する余り、子供自身の意向や福祉の観点が軽視されないかどうか、丁寧に検証していくことが大切だと思っておりますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 もともと、児童相談所は、全国、オーバーキャパシティーというか、仕事が対応し切れないぐらいで、先ほど来、児童虐待の対応件数となっていましたが、対応していないものがごまんとあるわけですね。したがって、児相がどう有効に児童虐待に対応できるかというときに、今まで、どうしても対応が不十分なまま家庭に戻して、そこで不幸な事件になってしまうということが間々あったわけでございまして、その際に、やはり家庭に戻すにしても、ちゃんと措置のような形でずっとウオッチしていく、指導していく、そういう仕組みがなければいけないのではないかという声が現場から随分上がっておりました。

 今回の改正法案では、家庭裁判所の関与のもとでの要保護児童を適切に保護するための措置の実施状況などを踏まえて、今回の改正事項について、施行後三年をめどとして検討を行う旨の規定を設けているわけでありますが、今回のこの規定に基づきまして、裁判所による保護者指導の勧告についても、その施行状況をよく踏まえて、制度の見直しが将来的に必要かどうかということを検討することとしているわけで、当然、先ほど来もお話が出ているように、家裁としても、初めてこういうものを正式に、言ってみれば在宅保護者指導のもとになる勧告、通知を行っていただけるわけで、一義的に児童相談所が対応するにせよ、それぞれ人材育成をもう一回やり直さなきゃいけないぐらい、体制強化をしなければいけないんだろうというふうに思います。

 運用状況の検証に当たりましては、この仕組みが子供の健やかな成長、発達に資するものとなっているかどうかという視点も重要であると思いますので、そうした視点を持ちながら、しっかりと施行状況を把握した上で、今回、三年後の見直しというものを入れておりますけれども、この新たな裁判所主導の在宅保護者指導、これが有効なるものとして、措置として、施設に入れる、あるいは里親に出すという、親子分離に至らない方がもちろん、ハッピーエンドになることが一番理想的であるわけですけれども、必ずしもそうじゃないとすれば、それは有効に機能して子供たちの健全な発育に資する制度になってほしい、こう考えているところでございます。

河野(正)委員 相談し切れない、対応し切れないぐらいの多数の事例があって、またそれを中途半端なままやってしまうと、中途半端とは思っていないかもしれませんけれども、やむを得ず、対応が結果的に十分でなかったということで不幸な事件が起きるということでありますし、しっかりと子供たちの成長に資するように、子供たちのために、しっかりとした法案になるようにしていかなければならないなと思っております。

 たくさん用意しておりましたが、時間が来ましたので、プレミアムフライデーということでもありますので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

丹羽委員長 次回は、来る三十日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時散会


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