衆議院

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第13号 平成30年4月25日(水曜日)

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平成三十年四月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 後藤 茂之君 理事 田村 憲久君

   理事 橋本  岳君 理事 堀内 詔子君

   理事 渡辺 孝一君 理事 桝屋 敬悟君

      赤澤 亮正君    秋葉 賢也君

      穴見 陽一君    安藤 高夫君

      井野 俊郎君    大岡 敏孝君

      木村 哲也君    木村 弥生君

      国光あやの君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      國場幸之助君    佐藤 明男君

      繁本  護君    白須賀貴樹君

      鈴木 憲和君    田畑 裕明君

      高橋ひなこ君    長尾  敬君

      船橋 利実君    牧島かれん君

      三ッ林裕巳君    山田 美樹君

      伊佐 進一君    中野 洋昌君

      浦野 靖人君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      高木美智代君

   厚生労働大臣政務官    田畑 裕明君

   厚生労働大臣政務官    大沼みずほ君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           定塚由美子君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十五日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     國場幸之助君

  塩崎 恭久君     鈴木 憲和君

  足立 康史君     浦野 靖人君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     小林 鷹之君

  鈴木 憲和君     牧島かれん君

  浦野 靖人君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     塩崎 恭久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二〇号)

 生活保護法等の一部を改正する法律案(池田真紀君外九名提出、衆法第九号)


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会及び日本共産党所属委員に対し御出席を要請いたしましたが、御出席が得られません。

 理事をして再度御出席を要請させますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

高鳥委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度御出席を要請させましたが、立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会及び日本共産党所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案及び池田真紀君外九名提出、生活保護法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案の審査に資するため、昨日、委員八名が参加し、台東区及び足立区において視察を行いましたので、参加委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。

 まず、台東区のNPO法人自立支援センターふるさとの会において、佐久間代表理事及び滝脇常務理事から法人の概要、居住支援の概況等について説明を聴取し、無料低額宿泊所における生活支援の課題、亡くなられた方への対応等について質疑応答を行った後、同法人が運営する無料低額宿泊所ふるさと日の出館及び地域生活支援センター台東を視察しました。

 次に、足立区くらしとしごとの相談センターにおいて、橋本所長から生活困窮者自立支援制度の実施状況等について説明を聴取し、学習支援事業の効果等について質疑応答を行った後、学習支援事業の現場を視察しました。

 以上が視察の概要であります。

 最後に、今回の視察に御協力いただきました皆様に心から御礼を申し上げ、視察の報告とさせていただきます。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省子ども家庭局長吉田学君、社会・援護局長定塚由美子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。

 これより立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会及び日本共産党の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、渡辺(孝)委員長代理着席〕

    〔渡辺(孝)委員長代理退席、委員長着席〕

高鳥委員長 これにて立憲民主党・市民クラブ、希望の党・無所属クラブ、無所属の会及び日本共産党の質疑時間は終了いたしました。

 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。本日はよろしくお願いいたします。

 きのう、参考人の皆さんにおいでいただきまして、参考人質疑をさせていただきました。その中で参考人の方々からお話があったことを、少し質問をしたいと思います。

 日本で一番生活保護世帯が多い大阪市の市長である吉村市長ですけれども、状況を把握するためにいろいろな権限を市町村はもらっていますけれども、その中で、やはり民間への調査権限をもう少し拡大してほしいと。特におっしゃったのが、金融機関への調査権限ということを言っていましたけれども、自治体としてそういう声があるということに関して政府はどうお考えでしょうか。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 生活保護制度は、資産、能力その他あらゆるものを活用してもなお生活に困窮する方に対して最低限度の生活を保障する、最後のセーフティーネットとして大変重要な制度でございまして、御指摘いただきましたとおり、国民の信頼を確保するという観点から、不正受給の防止などに取り組むこと、大変重要と考えているところでございます。

 このため、前回、平成二十五年の生活保護法改正におきましては、生活保護受給者の資力などの調査に関する福祉事務所の調査権限につきまして、資産及び収入に限定されていた調査事項に就労状況などを追加し、また、官公署等に情報提供の求めに対する回答義務を課すなどの強化を図っているところでございます。

 御質問いただきました金融機関などの民間企業が保有する情報に関する照会については、回答義務とはなっていないところではございますが、平成二十四年には、金融機関への照会が効果的、効率的に実施できるように、本店に対して国内全店舗の口座についての一括照会を行えるというふうにしているところでございます。

 また、平成二十六年には、金融機関への照会に対して早期に回答いただきたいということを関係団体に依頼をするということ、さらには、雇主に対しても、給与などについての報告を求めた場合の回答をいただきたいという依頼を、関係団体に対して平成二十九年にしているところでございます。

 引き続き、地方自治体などの意見を伺いながら、こうした取組を通じて、調査が円滑に行われるように取り組んでまいりたいと考えてございます。

浦野委員 参考人、この質問はお三方全員にさせていただいたんですけれども、教育格差をなくすために教育の無償化を進めることに関して、皆さん、ぜひやっていただきたいというお話がありました。

 厚生労働省といえば、特にゼロ歳から乳幼児の無償化に目が行きがちです。ところが、今回の法案に含まれているように、やはり、生活困窮者の方々の観点から、そういった高等教育に関するものも無償化の方向へ進める中で議論が厚労省ではされるということになると思うんですけれども、その観点から、厚労省としてこういった取組をこれから、今回の法案に一定書かれましたけれども、まだまだ進める議論はされているのでしょうか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 厚生労働省における子供の教育面での支援といたしましては、今回提出させていただいております法案において、生活保護世帯の子供の方々への、大学等への進学準備のための一時金の創設、さらには、生活保護世帯を含む生活困窮者世帯のお子さんに対する学習支援の強化などを行うとともに、平成三十年度においても関係予算の拡充を行わせていただいております。

 また、一人親家庭を対象として、すくすくサポート・プロジェクトに基づき、親の就業による自立に向けた支援を基本とはしておりますけれども、子供の居場所づくりなどの子育て・生活支援を始め総合的な支援を実施するとともに、一人親家庭に対して修学資金などの貸付けを行います母子父子寡婦福祉資金貸付制度につきましては、平成三十年度から大学院への進学を貸付けの対象に追加をしたところでございます。

浦野委員 今の参考人の皆さん方のお話、国会での議論、厚生労働省内での議論も含めて、大臣はこういったことに関してどのように考えておられますか。

加藤国務大臣 子供の貧困率で見たときには、政権交代後、雇用が大きく増加し、経済が好転するということで、改善した数字も出てきておりますけれども、まだ、さはさりながら、一定、貧困率の状況があるわけでありますし、また、今委員からもお話がありましたように、子供が生まれ育った環境によってその将来が左右されない、このことは非常に重要であり、そういった観点から貧困対策に取り組んでいきたい。

 今、具体的な話は担当局長からさせていただきましたけれども、さらに、新しい経済政策パッケージでも、幼児教育の無償化、高等教育の無償化等々を進めていくことにしております。こういった施策を着実に進めていくとともに、そうした施策が具体的に子供の貧困対策をどう改善していくのか、そういったことをしっかり見ていきたいというふうに思っております。

浦野委員 きのうの参考人質疑は、もともとは、野党から政府に対して、審議の中で必ずやるべきだということで要望をされて、実現したものです。午後には、視察も行かせていただきました。この視察も、きょう欠席されている野党の皆さんから要望があって、ぜひそういうところも、現場を見に行くべきだということで実施されたものです。そういったことを要望しておきながらそれには参加をしない、そういった態度が本当に国会議員としての責務を果たしていることになるのかというふうに私は思っています。

 きのうの参考人質疑のように、現場の、直接かかわっている方々の意見を聞くというのは非常に重要なことだと思います。そういった現場の声を吸い上げるような会議というか、そういうものはどれぐらいの頻度で行われているのか、最後、確認したいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、生活保護制度におきましても、また生活困窮者自立支援制度におきましても、まさに現場で、自治体と、それから自治体と一緒になって取組を進めていただいている民間団体の方々、こうした支援者、自治体の御意見を聞く機会は大変重要であると考えております。

 今回の改正につきましても、審議会はもとより、さまざまな場でこうした御意見を聞いているところでございますが、自治体について、生活保護制度について御紹介させていただきますと、昨年二月から六回にわたりまして、大阪府、大阪市、福岡県、広島市、豊島区、高知市、広島県坂町、島根県邑南町、この八つの自治体が自治体の代表として参加をしていただいて、生活保護制度に関する国と地方の実務者協議を開催してきたところでございます。

 また、昨年十二月には、大臣とそれぞれの自治体の首長さんによるハイレベル会合を実施いたしまして、この中では、生活保護受給者の健康管理であるとか、医療扶助の適正化であるとか、無料低額宿泊所、またお子さんの大学進学支援、被保護者就労準備支援事業などにおいて議論し、合意が行われているところでございます。

 このほかにも、毎年、地域ブロックごとに、自治体の担当者と生活保護制度の実施に当たっての課題について意見交換を行ってきておりまして、こうした中で、事務負担の軽減も含めたいろいろな意見交換をさせていただいて、今回の改正法案にも反映をしてきたところでございます。

 今後とも、しっかり地方自治体の声あるいは支援者の声を聞きながら、制度のたゆみない改善に向けて努力してまいりたいと考えております。

浦野委員 質問時間が終わりましたので、一言、最後。

 私、今ツイッターでアンケートをとっておりまして、どういったものかといいますと、大臣が辞任するまで国会をサボるのは当然だという項目と、それとこれは別、法案審議は国会議員の責務だ、この二択のアンケートを行っています。サボるのは当然だの支持が八%、法案審議は国会議員の責務だが九二%となっておりますので、皆さん、自信を持って国会審議を続けていただけたらと思います。

 以上で質問を終わります。

高鳥委員長 次に、堀内詔子君。

堀内委員 自由民主党の堀内詔子です。

 本日も質疑の機会をいただき、高鳥委員長を始め先輩、同僚各議員の皆様方に厚く御礼申し上げます。

 ちょうど三週間前もこの委員会で質疑の機会を与えていただきました。生活困窮者自立支援法等改正案について、技術的な面や細部の問題について尋ねさせていただきましたが、本日は加藤厚生労働大臣にも御出席をいただいておりますので、確認の意味も含めまして、また、採決前の最後の質疑になるのではないかという思いを込めまして、より根本的な思想ですとか理念、そもそも論を中心に質問させていただければありがたいと思います。

 申し上げるまでもないことでございますが、日本のよさというのは本当に数々ございます。まさに枚挙にいとまがありません。その一つとして挙げられるのが、いわゆる競争と共生、競争していくことと、ともに生きていくこと、そのバランスがまさに巧みでございまして、いわゆる自助、互助、共助、そして公助、このバランスが見事にとられてきたところにあるのではないかと思っております。

 競争やいわゆる自助が行き過ぎてしまいますと、社会の格差は拡大し、また、いわゆる弱肉強食といった思想に走りがちでございます。一方、逆に共生や共助、公助、そういったものに余りに比重が置かれてしまいますと社会の活力が失われてしまう、そういったおそれもございます。

 こうしたバランスはさまざまな制度で維持されてきましたが、本日の議案である生活困窮者自立支援法等もその重要な一部だと思っております。

 皆様御存じのとおり、いわゆる仏教には禅語がございまして、その中にそっ啄同時という言葉がございます。そつとは、ひな鳥が殻の中からつんつんつん、もう出ていきたいよ、そういった合図、そういった行動を起こすことでございますが、一方、啄とは、親鳥が外からそういったひな鳥の行動を察知して殻をついばむ、そういった動作でございます。この二つが同時に行われてこそ、殻が割れて中からひな鳥がこの世に誕生してくる、そういったわけでございます。

 いわゆる生活困窮者自立支援制度は、まさにこのそっ啄同時のような、あうんの呼吸、いわゆるバランス、そういったものの上で成り立っているものではないかと思っております。

 ちなみに、昨日、本委員会で台東区や足立区の支援の現場を視察させていただきました。その現場では、今回の制度改正を機に、生活支援をきちんと位置づけてもらいたい、また、生活支援の必要性を認知してもらいたいといった貴重な御意見があり、現場の方々もこの改正案の成立を待っていらっしゃる、そういったことをひしひしと感じました。

 一方、余りにも共生や共助、公助に比重が置かれ過ぎますと社会の活力が失われかねないということを先ほど申し上げましたが、私は、失敗を恐れずにチャレンジする社会をつくり上げていく必要もあると同時に考えております。そのためにも、いざというときに支えとなってくれている重層的なセーフティーネット、そういったものが機能していく必要があると思っております。

 しかし、完璧な制度というものはございません。絶えず検証し見直していくことによって、よりよい制度になると思っております。そして、今回の生活困窮者自立支援法等の改正も、その観点から検討され、文字どおり生活困窮者の自立支援が目指されているところでもございます。

 具体的に数字を挙げて申し上げさせていただきますと、現行の制度は、平成二十七年四月の施行からの二年間で、新規の相談者数が約四十五万人もあり、そして、就労、そしてまた増収、収入が上がった方々がその中で約六万人と、着実にその実績を積み上げているところでもございます。

 このような制度の実施状況の中で、今回改めて生活困窮者自立支援制度に係る基本理念が創設されることになったわけでありますが、その趣旨について、まず加藤厚生労働大臣にお尋ねいたしたいと思います。

加藤国務大臣 今委員からお話がありました生活困窮者自立支援制度は、平成二十七年の四月から、生活困窮者の方々に対するいわば第二のセーフティーネットを全国的にもつくっていく、こういうことでスタートをし、その中においては、生活困窮者の自立と尊厳を確保していく、あるいは生活困窮者支援を通じた地域づくりを図っていく、こういった観点をこの自立支援制度に係る関係者の皆さんが共有をしていただきながら、生活困窮者の方々に対する包括的な支援を積み重ねてこられたわけであります。

 そうした中において、今回の生活困窮者自立支援法に係る社会保障審議会における議論、そしてその報告書では、多様な関係者の間で共有を一層図るため、法令において生活困窮者の定義や目指すべき理念を明確化すべきだとされたところでございますので、これを受けて、この法案では、基本理念として、生活困窮者の尊厳の保持、生活困窮者の状況に応じた包括的、早期的な支援、地域における関係機関等との緊密な連携、これを明記をするとともに、生活困窮者の定義規定、これも明確化をいたしました。そして、さらに具体的な自立支援の強化についても盛り込ませていただいております。

 今回の法改正を契機に、生活困窮者支援にかかわる関係者の間で目指すべき理念の一層の共有化が図られ、適切かつ効果的な支援の展開にぜひつなげていきたいと考えております。

堀内委員 大臣、ありがとうございました。

 私は、今月四日の本委員会におきまして、改正社会福祉法に基づきます地域共生社会の実現、我が事・丸ごとに向けての取組における包括的な支援体制の整備に関するモデル事業の実施状況について質問をさせていただきました。

 一方、生活困窮者自立支援制度は、いわば第二のセーフティーネットとして地域の中で全ての人を包括的に支援する制度でございまして、この考え方は、本年四月から施行されております改正社会福祉法によります取組を通じた地域共生社会の実現に向けても極めて重要な役割を担っているところと考えております。

 生活困窮者自立支援制度の相談支援は、地域にあらわれてきます課題の解決に当たる中核的な存在としてその機能を一層強化していく必要があると思いますが、両者の関係、つまり、地域共生社会の実現に向けた取組と生活困窮者自立支援制度の果たすべき役割について、いま一度、厚生労働省から御説明を頂戴したいと思います。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 人口が減少して地域社会が脆弱化するなど変化していく中で、人々がいろいろな課題を抱えながら住みなれた地域で暮らしていく、このようなことのためには、地域の住民の方々や地域の多様な主体がそれぞれ役割を持って支え合う地域共生社会、これをつくっていくことが重要と考えているところでございます。

 昨年の通常国会において成立をしました改正社会福祉法により、地域共生社会の実現に向けて、制度、分野ごとの縦割りを超えて、地域の住民や地域の多様な主体が参画して課題を発見し、解決につなげていく地域づくりを、先生から三週間前に御質問を受けまして説明させていただきましたモデル事業の実施などにより進めているところでございます。

 一方で、生活困窮者自立支援制度でございますが、こちらは、利用する方の属性にかかわらず、生活に困窮しているという状態を捉えて包括的に支援をしていく、このことを通じて地域づくりも進めていくということを理念の一つとして掲げているものでございます。

 地域共生社会づくりの中核的な役割は、この生活困窮者自立支援制度の特に相談窓口などの支援が担っていくものと考えているところでございます。この点に関しまして、今回の法案においては、自立相談支援と就労準備支援、そして家計改善支援に関する事業を一体的に進めるなど、生活困窮者自立支援制度による包括的な相談支援の体制の強化を図るということとしているわけでございます。

 こうした取組を進めることによりまして、地域の多様な主体が、その活動の中で、生活にお困りの方に気がついて、これを早期に生活困窮者の自立支援の窓口につないでくる、窓口につながれた場合に、自立相談支援だけではなくて、就労準備支援や家計改善支援の事業、一体的に支援をしていって解決に導いていくということが図られることになると考えております。

 同時に、こうした方々の就労や活躍の場を地域に見出していって、生活困窮者の方が支えられるだけではなくて支える側にも回るような支援を進めていくということで更に地域の力が強まっていくということ、こうした好循環を生み出して、地域共生社会の実現を目指していくということを図りたいと考えているところでございます。

堀内委員 ありがとうございました。

 厚生労働省の皆様方におかれましては、先日、山梨県にも我が事・丸ごとの事業について御説明に来ていただいたり、また、実は、私どもの所属しております山梨県連女性局は、先日も申し上げましたように、Familyやまなし構想、お互いにイーブンのような関係で、家族のような関係で支え、支え合える、そういった山梨県を今目指しているところでもございます。

 冒頭に申し上げさせていただきましたように、自助、互助、共助、そして公助がこれからもうまくバランスよく機能して、そしてそれを維持していくことがいわゆる持続可能な社会にとっても重要であると思いますので、不断の検証と、そして改善をよろしくお願い申し上げます。

 今回の改正で新設されます基本理念におきましてもうたわれておりますように、生活困窮者支援制度は、就労、健康状態、社会的孤立など生活困難者のさまざまな課題に合わせた断らない相談支援、そういったものを目指して展開されてきたと理解しております。

 しかし、この断らない相談支援ということを実現できるかどうかは、何よりも、現場にいらっしゃる相談員の方々が、充実した心身の状態のもとで安心して御自身が支援に携わることができるかどうかが大変大きなポイントとなっております。

 この点、生活困窮者の方々が抱える課題が複雑かつ複合化している、そういった傾向を踏まえていきますと、相談員の方々のいわゆるバーンアウト、燃え尽き症候群を防ぐための積極的な取組も求められていると思うわけでございますが、この点につきまして厚生労働省の御見解を伺いたいと思います。

定塚政府参考人 生活困窮者自立支援制度におきましては、御指摘いただきましたとおり、生活に困窮されている方の複雑かつ複合的な課題に関して包括的に対応していくということとしているわけでございまして、このためには、相談員を始めとする支援者の人員の確保や育成、そして、困難な事例に直面した際の相談員に対する支援といったバーンアウト対策を行っていくこと、大変重要なことであると考えてございます。

 このため、本法案におきましては、都道府県が管内自治体に対して支援を行う事業を創設をしているところでございまして、この中で、市町村の相談員に対する研修を実施して相談員の育成を図る、また、支援が困難な事例に関しては、市の市域を超えて、経験豊富な相談員に対して支援の手法の相談を行ったり、ケースの検討を行う場や相談員のネットワークをつくるといったことなどをメニューとして位置づけておりまして、こうしたことに対して国としても補助を行うこととしているところでございます。

 また、相談員の配置を含む相談支援の体制づくりにつきましては、本法案において、自治体に対する人員配置の努力義務を創設することとしています。また、これに加えまして、支援実績の高い自治体を補助に当たって適切に評価をする、また、人員配置の状況を全国との比較で客観的に把握できる仕組みをつくるということによりまして、人員配置が薄い自治体の底上げを促すこととしているところでございます。

 こうした取組を通じて、支援の基盤である人材を量、質両面で充実をさせることで、生活困窮者自立支援制度が目指す、断らない相談支援の実現を図ってまいりたいと考えております。

堀内委員 ありがとうございました。

 これは、生活困窮者の方々だけでなくて、社会的弱者の方々への支援や手助けに携わっていらっしゃる方々、そういう福祉分野の方々全体に共通する課題でもあります。

 私の地元の山梨県の話で申しわけありませんが、地元の民生委員の方々、児童委員の方々、また、前回質問のときに申し上げさせていただいたいわゆる困窮者施設の方々、そういった方々がそれぞれ一生懸命その地域の福祉の増進のために努力していらっしゃいます。そのお姿を拝見するにも頭の下がる思いがいたしますが、どうか、この皆様方のバーンアウト防止策につきましても引き続き御検討いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 次に、生活困窮世帯の子供たちに対する支援について伺いたいと思います。

 この改正案では、生活困窮者の定義が「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者」となっております。

 何らかの理由で経済的困窮に陥った方々に、地域全体が、さらに社会全体が温かい手を差し伸べることに異議を唱える方々はいらっしゃらないと思いますが、その中でもとりわけ、子供はまさに国の宝であります。

 私は、負の連鎖を断ち切るためには、次世代を担う生活困窮者の方々の子供たちに対し、自立に向けた支援を一層充実させていくことが何よりも重要であると思っております。

 去る三月三十日の本会議であったと思いますが、安倍総理は、子供の貧困に関し、子供たちの無限の可能性が、家庭の経済事情に左右されることがあってはならない、それは政治家としての信念である、そういった大変心強い御答弁をいただき、深い感銘を受けたところでございます。

 今回の改正案の中には、生活保護世帯の子供たちに対する進学準備給付金の支給や、生活困窮者制度における子供たちの学習支援事業の強化など、子供たちの貧困対策となる事項が見られます。これに加えまして、高等教育無償化の話題も出ております。

 そこで、改めて、生活困窮世帯の子供たちに対する支援のあり方について、厚生労働省の御見解をお尋ねしたいと思います。

定塚政府参考人 子供の将来がその生まれ育った環境により左右されることのないようにすること、極めて重要でございます。

 子供の貧困対策に取り組むに当たっては、子供本人やその世帯が抱えている課題を把握した上で、子供が成長の過程で社会から孤立せず、公平な条件で人生を歩むことができるよう、貧困の連鎖を防ぐという視点に立って積極的な支援を行うことが重要であると考えております。

 このような考え方から、今回の制度改正では、生活保護世帯を含む生活困窮世帯の子供に対する子供の学習支援事業につきまして、従来の学習支援に加え、子供の生活習慣や環境の改善に向けた支援や、進路選択に当たっての相談支援などを拡充をして子どもの学習・生活支援事業として強化をする、また、あわせて、高校中退者など高校生世代や小学生などに対する支援の強化を図ることとしております。

 また、生活保護制度において、生活保護費の中から大学等への進学後の費用を貯蓄することが認められていないということを踏まえまして、生活保護世帯の子供の大学等への進学準備のための一時金として、自宅から通学の場合十万円、自宅外の場合三十万円の給付を創設することとしております。加えて、平成三十年度予算については、自宅から大学等に通学する場合の住宅扶助費の減額を取りやめることとしております。

 さらに、平成三十年度よりは、大学等への進学費用に関する相談や助言、各種奨学金の案内などによって進学に伴う不安や経済面での課題などへの対処を支援するために、生活保護世帯のお子さんや保護者に対しての家計相談支援事業を実施することとしてございます。

 加えて、昨年十二月の新しい経済政策パッケージでは、生活保護世帯を含めた所得の低い家庭の子供たちの高等教育の無償化を実現することとされていると承知をしており、文部科学省と連携をして、生活保護世帯の子供などの大学等への進学支援に取り組んでまいりたいと考えております。

 こうした子供本人や保護者に対するさまざまな施策を組み合わせて、総合的かつきめ細やかに、生活困窮世帯の子供たちの支援にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

堀内委員 定塚局長、ありがとうございました。

 今回の法案では、児童扶養手当の支払い回数を現行の三回から六回にするという見直しも盛り込まれております。小さな見直しではあるかもしれませんが、生活資金のやりくりが大変な一人親家庭の方々にとりましては、必ずや歓迎される改正であろうと思っております。

 事務負担がふえることにつきましては、自治体の皆様に対して丁寧な御理解とそして御協力をお求めになるよう、改めてお願い申し上げたいと思っております。

 もちろん財政上の制約はありますものの、支払い回数の見直しだけではなく、可能な限り一人親家庭の支援の充実も図っていくべきであると思っております。

 政府は、児童扶養手当の所得制限の見直しを行うこととしたと承知しておりますが、その内容と考え方、また予想される効果につきまして、厚生労働省に御説明いただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘をいただきました児童扶養手当の所得制限につきましては、平成三十年度予算において、いわゆる全部支給の所得制限限度額について引上げを行いまして、特に経済的に厳しい一人親家庭の皆さんの自立支援を強化するという見直しを講じさせていただいております。

 具体的には、扶養親族が一人というケースを例にとらせていただきますと、従来の限度額が年収百三十万円となっておりましたものを百六十万円に引き上げることにより、これを、ことしの十二月支給分から適用させていただこうというふうに思っております。

 この見直し、おおむね五年に一度行っております全国ひとり親世帯等調査の平成二十八年度調査の結果、これを踏まえて、離婚等による母子家庭の母の年収中央値が現在の限度額を設定した当時より約三十万円増加したということを踏まえて行うものでございます。

 これにより、対象者数という意味では、一部支給停止から全部支給になるという形での引き上がる方が約十五万人、一部支給停止で額が引き上がるという方が約四十万人と推計してございまして、合計五十万を超える世帯で児童扶養手当の支給額がふえることになると見込んでございます。

堀内委員 吉田局長、ありがとうございました。

 五年半前の政権交代後、雇用環境は大きく改善しており、全国の経済の好循環が徐々に生まれつつあります。格差や貧困に関します指標におきましても、社会保障、税によります所得再分配機能がちゃんと機能している結果、所得再分配後のジニ係数はおおむね横ばいで推移しておりますし、相対的貧困率も、かつては長期的に上昇傾向にありましたが、政権交代後は改善に転じており、とりわけ子供の貧困率につきましては大きく改善していると見受けられます。

 こうした流れを一層推し進め、格差を固定化することなく、あわせて、今回の改正などによります重層的なセーフティーネット機能を強化する、そういったことで、誰もが生き生きとチャレンジする、また、再チャレンジすることができる社会をつくり、また、何よりも全ての子供たちが夢に向かって頑張ることができる、そういった環境をつくっていくことこそが政治の要諦、いわゆる最も大切なところであるのではないかと考えております。

 そこで、最後に加藤大臣に、改めて生活困窮者の方々に対する支援の充実強化に向けた意気込みを伺いたいと思います。

加藤国務大臣 近年、単身世帯の増加、あるいは高齢化の進展、また地域社会との関係の希薄化などという状況が見られるわけであります。生活保護受給者全体については減少傾向にあるわけでありますが、高齢の生活保護受給者は増加傾向にあるなど、生活に困窮する方の状況は非常に多様化をしているわけでありますから、それに応じて、多様かつ包括的な支援を早期に展開をしていく必要性が高まっているわけであります。

 こうした状況を踏まえまして、生活困窮者自立支援、生活保護両制度における自立支援の強化、生活保護制度の適正な運営の確保、貧困ビジネス対策の強化、児童扶養手当の支払い回数の増加などを内容とした法案を今提出をさせていただいております。

 その中で、生活に困窮する方に対しては、自立相談支援、就労準備支援、家計改善支援に関する事業、これを一体的に実施をしていく、そのことを促進をしていくことによって、できる限り生活保護受給に至る前に生活を立て直していく、そうした支援をしっかりやれる体制を強化しているわけでありまして、まさに重層的なセーフティーネット機能の強化、これをしっかり図っていきたいと思います。

 また、これまでも議論がありました、子供における貧困の連鎖をどう断ち切っていくのかということについても、本法案では、進学準備給付金の支給、子供の学習支援事業の強化等に取り組むこととしております。それ以外にも子供の関係施策もございますから、そういったものと相まって、生活困窮世帯の子供がその生まれた家庭環境に左右されずに意欲と能力を発揮できるよう、支援をしっかり行っていきたいと思っております。

 こうした生活に困窮する方の多様なニーズに対応した支援をしっかりと進めていくことによって、生活に困窮する方の一層の自立が図られるよう、しっかりと取り組ませていただきたいと思っております。

堀内委員 加藤大臣、ありがとうございました。

 先ほど申し上げましたように、完璧な制度などというものは存在いたしません。今回の改正は大きな前進ではございます。けれども、絶えず実情を観察、点検、そして評価され、必要に応じて所要の見直しを行ってくださいますことを、また、できるだけ多くの方々が生活困窮の状態から脱するよう、貧困の連鎖を打ち切り、そして、子供たちがひとしく夢を描き、そしてその実現に向けて頑張れる社会にしていただけますよう、運営面での改善もお願い申し上げたいと思います。

 最後に、大変恐縮でございますが、これまで申し上げてまいりましたこととも重複いたしますが、若干の要望を申し上げさせていただきたいと思います。あくまでも要望でございますので、厚生労働省内で御検討、御留意いただければと思います。

 まず、生活困窮者世帯におきましても生活保護世帯におきましても、最もしわ寄せを受けるのは子供たちであります。貧困の連鎖を断ち切るために、また、子供たちにひとしく夢を抱いてもらうために、今回、生活保護世帯の子供たちに進学準備給付金を給付されることとなりましたことは大きな前進だと思いますが、子供たちへのしわ寄せが最小限になるよう、また、早期に貧困の連鎖を断ち切るよう、引き続き特段の御配慮をしていただきたいと思います。

 そして、まだ少し時間があるようでしたらもう一つ御要望申し上げます。

 今、まさに女性の活躍が強く求められているわけでございますが、一人親家庭、とりわけ母子家庭への特段の御配慮もお願い申し上げたいと思います。一人親家庭における子供の貧困率は相対的に高いとの統計もございます。子育てを担う一人親、とりわけお母さんたちの御負担が少しでも軽減されるような工夫をお願いできればと思っております。

 そして最後は、この生活困窮者の自立支援を単に行政の責任とするのではなく、広く社会全体が共有するようにしていただきたいと思います。

 今回の改正でこの制度の使い勝手が更によくなり、また、自立支援の実効性が更に高まることを期待してやみません。その大きな大きな期待を社会の皆様方とともに共有しながら、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 以上で、ただいま議題となっております両案中、内閣提出、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 この際、本案に対し、橋本岳君外二名から、自由民主党、公明党及び日本維新の会の三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を聴取いたします。浦野靖人君。

浦野委員 私は、自由民主党、公明党及び日本維新の会を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

 一 経済的に困窮する単身者や高齢者の増加、生活保護受給世帯の半数以上を高齢者世帯が占める現状等を踏まえ、一般の年金受給者との公平性にも留意しつつ、高齢者に対する支援の在り方を含め、生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度全体の見直しに係る検討を行うこと。

 二 明らかに過剰な頻回受診の適正化を図るため、最低生活保障との両立の観点を踏まえつつも、医療扶助費における窓口負担について、いわゆる償還払いの試行も含めた方策の在り方について検討を行うこと。

 三 各地方自治体における保護の実施体制については、その質及び量の両面において必ずしも十分とは言えないのが現状であることに鑑み、本法に定めた生活保護受給者等に対する支援施策の確実な実施を図るため、地方交付税措置の更なる改善を含む必要な措置を講ずるよう、検討すること。

 四 生活困窮世帯の子どもに対する学習支援については、福祉関係者だけでなく教育関係者等とも緊密な連携が図られるとともに、生活面も含めた包括的なサポートが行われるよう、地方自治体に対する支援の充実を図ること。

 五 一部の生活保護受給者において、ぱちんこ等のギャンブルに過度の生活費をつぎ込むといった生活保護の目的に反した支出が行われている例があることを踏まえ、家計管理への支援やギャンブル等依存症に対応した医療機関等との連携を含む適切な助言や支援の実施を推進すること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

高鳥委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力をしてまいります。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高鳥委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

高鳥委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時四十二分散会


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