衆議院

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第18号 令和元年5月17日(金曜日)

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令和元年五月十七日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    上野 宏史君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      鬼木  誠君    木村 哲也君

      木村 弥生君    黄川田仁志君

      国光あやの君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      笹川 博義君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    杉田 水脈君

      鈴木 隼人君    田村 憲久君

      高橋ひなこ君    武井 俊輔君

      谷川 とむ君    中谷 真一君

      丹羽 秀樹君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君    渡辺 孝一君

      阿部 知子君    池田 真紀君

      尾辻かな子君    大河原雅子君

      篠原  豪君    長谷川嘉一君

      初鹿 明博君    山川百合子君

      山本和嘉子君    稲富 修二君

      岡本 充功君    白石 洋一君

      山井 和則君    桝屋 敬悟君

      鰐淵 洋子君    高橋千鶴子君

      藤田 文武君    柿沢 未途君

      中島 克仁君

    …………………………………

   議員           阿部 知子君

   議員           初鹿 明博君

   議員           池田 真紀君

   議員           岡本 充功君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   厚生労働副大臣      大口 善徳君

   法務大臣政務官      門山 宏哲君

   文部科学大臣政務官    中村 裕之君

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 筒井 健夫君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 保坂 和人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           矢野 和彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           丸山 洋司君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           玉上  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            土屋 喜久君

   政府参考人

   (厚生労働省子ども家庭局長)           浜谷 浩樹君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  繁本  護君     泉田 裕彦君

  新谷 正義君     黄川田仁志君

  丹羽 秀樹君     鈴木 隼人君

  池田 真紀君     大河原雅子君

  尾辻かな子君     初鹿 明博君

  吉田 統彦君     長谷川嘉一君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     杉田 水脈君

  黄川田仁志君     武井 俊輔君

  鈴木 隼人君     丹羽 秀樹君

  大河原雅子君     池田 真紀君

  長谷川嘉一君     山川百合子君

  初鹿 明博君     尾辻かな子君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     繁本  護君

  武井 俊輔君     鬼木  誠君

  山川百合子君     篠原  豪君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     池田 道孝君

  篠原  豪君     山本和嘉子君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     中谷 真一君

  山本和嘉子君     吉田 統彦君

同日

 辞任         補欠選任

  中谷 真一君     笹川 博義君

同日

 辞任         補欠選任

  笹川 博義君     新谷 正義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

 児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外十名提出、衆法第七号)


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及び岡本充功君外十名提出、児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として法務省大臣官房審議官筒井健夫君、大臣官房審議官保坂和人君、文部科学省大臣官房審議官矢野和彦君、大臣官房審議官丸山洋司君、大臣官房審議官玉上晃君、厚生労働省職業安定局長土屋喜久君、子ども家庭局長浜谷浩樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田美樹君。

山田(美)委員 おはようございます。自由民主党の山田美樹と申します。

 質問の時間をいただきまして、感謝を申し上げます。

 児童虐待をめぐっては、昨年三月の目黒区の結愛ちゃんの事件、ことし一月の野田市の心愛ちゃんの事件を始め、痛ましい事件が相次ぎました。子供たちを虐待から守る体制の整備が急務であります。

 私の地元の港区では、二〇二一年四月に、児童相談所を含む子ども家庭総合支援センターの開設を予定しております。建設予定地が表参道にほど近い南青山の一等地であることから、近隣住民の反応がメディアでとりわけ大きく報道されました。

 実際には、地元の方々のお声を伺いますと、多くの方が御理解を持ってくださっていることをまずお伝え申し上げたいと思います。

 港区は、近年、急速に人口がふえている都心区の一つでございます。区内の全世帯のうち、核家族が九割、集合住宅に居住する世帯が九割という都心の生活スタイルの中で、毎年三千人のお子さんが生まれています。保育所をふやす、小学校を新設するのと同様に、子供と家族を守るための施設整備を行うことは区の責務であるとして、区の行政に大変力を入れていただいているところであります。

 今回の児童福祉法改正では、中核市で児童相談所の必置を目指すべきか否かが大きな議論となりました。

 政府案では、中核市の財政や人的資源の制約から、今回の法改正での必置化は見送りました。中核市、特別区における児童相談所の目指すべき方向性を考え、いかにして少しでも多くの自治体で設置を可能にしていくのかを考えていくのが重要かと思っております。

 そこで、まず最初にお伺いしたいのは、中核市や特別区は、児童相談所を設置することによって、自治体で既に行っている子ども家庭支援サービスや家庭相談などを更に充実できるメリットがあるのではないかという問題意識です。

 中核市や特別区には、都道府県等の広域的な児童相談所よりも、寄り添い型で、予防に力を入れることができ、また、退所後も引き続き近くで見守ることができるという利点がございます。早期予防や見守りは身近な自治体の方が適しており、介入は都道府県が離れた立場から行う方がやりやすいと思われます。

 実際、港区の場合、数年後に人口三十万人程度になると予測しており、区では、児童相談所の設置とあわせて予防重視の相互支援を展開するには人口規模がちょうどよいと考えている旨伺いました。

 中核市や特別区も、人口規模はさまざまです。東京二十三区では、練馬区を除いた全ての区で児童相談所を設置する方向、あるいは設置の方向で検討中と表明をしておりますが、人口六万人の千代田区から人口九十万人の世田谷区のような政令市規模の区まで、かなりの幅があります。

 施設規模の違いはありますけれども、全ての中核市、特別区で金太郎あめのように同じ児童相談所をつくれという話ではなく、自治体の独自性に沿った形で児童相談所と既存の子ども家庭支援サービスとの相乗効果を出していくことが可能ではないかと思うのです。

 特に、二十三区のように自治体が隣接している場合は近隣の自治体同士でノウハウを共有することも考えられますし、中核市、特別区の中で市内に都道府県の児童相談所が既に存在する場合には、重要なリソースは都道府県と中核市、特別区が共有できるよう、国からも推奨していただければと思います。こうした連携が、情報共有と行政の負担軽減の双方に資するものだと考えます。

 こうした特別区、中核市における児童相談所設置のメリットについて、根本厚生労働大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

根本国務大臣 児童虐待防止に関しては、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速的確な対応、被虐待児童への自立支援を切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要だと考えています。

 特に、虐待の発生予防、早期発見については、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センター、生後四カ月までの乳児のいる全ての家庭を訪問し、養育環境等を把握する乳児家庭全戸訪問事業、保護者の養育を支援することが特に必要と判断される家庭に対して、養育に関する相談支援や育児、家事援助を行う養育支援訪問事業、行政サービスなどにつながっていない子供に支援を行き届かせるため、昨年初めて未就園の子供を対象に拡大して実施した子供の状況把握などについて、市町村が主体となって実施しております。このような取組は、委員が御指摘のとおり、市町村の独自性を生かして実施されているものも少なくありません。

 中核市、特別区が児童相談所を設置することによって、地域の実情に応じて、地域のさまざまな資源も活用しながら、このような身近な地域で子育て支援から虐待への対応までの切れ目ない一貫した対応がより一層推進されるものと考えております。

 委員のおっしゃられた意味で、相乗効果が上がるようにそれぞれうまく対応していただきたい、こう思います。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 政府案では、この法改正の施行後五年間を目途に、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるように施設整備それから人材確保、育成の支援などの措置を講ずるものとしておりますけれども、現在既にある支援として、児童相談所の設置準備に係る補助職員の配置ですとか、一時保護への支援、里親養育への支援などがありますが、これらに加えてどのような支援措置を検討しているか、伺います。

 特に、人口規模がさほど大きくない自治体が児童相談所を設置するに当たっては、専門性を強化して、丁寧に行き届いた施策を行うための助成措置を行ってほしいとの強い要望がございます。児童相談所や子ども家庭支援センターが通常行うべき業務よりも更に一歩踏み込んで、例えばですが、虐待を行ってしまった親御さんが自分自身を乗り越えられるよう、医療機関と共同して保護者支援プログラムの開発に取り組みたいですとか、今どき、親子、母子で密室育児という時代でもなく、お母さん、母親にも自己実現がある、お母さんがリラックスできるようなアウトリーチ型支援も行いたいなど、さまざまなプランが出てくるかと思います。

 それぞれの自治体の特性を生かした創意工夫、先進的な取組について、国からどのような支援のあり方があり得るか、お伺いをいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待防止対策におきましては、身近な地域で子育て支援から虐待への対応まで切れ目のない一貫した対応が重要だと考えております。

 こうした対応を可能にするために、中核市、特別区における児童相談所の設置を促進してきたところでございます。

 経緯を少し申し上げますと、平成二十八年の児童福祉法改正におきまして、まず、特別区はそれまで設置できなかったわけですけれども、特別区も含め児童相談所を設置できるように改正いたしました。その改正法の附則におきまして、政府は、施行後五年をめどに中核市、特別区が児童相談所を設置できるよう必要な措置を講ずることとしたところでございます。

 その上で、こうしたことを踏まえまして、今年度予算におきましては、人材確保、育成あるいは施設整備に関する支援を拡充するなど、順次取り組んできているところでございます。

 中核市からは、国と中核市との間で丁寧な議論を積み重ねるとともに、継続的かつ安定的な支援措置を講じる、あるいは、一時保護所、児童相談所の整備への適切な財政措置あるいは御指摘のような専門人材の育成、確保といった要望が寄せられているところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、議員御指摘のとおり、本法案におきましては、施行後五年間をめどとして、中核市、特別区が児相を設置できるよう、児相の整備それから職員の確保、育成の支援その他の必要な措置を講ずる、この支援を行うに当たっては地方団体とよく連携する、よく話をする、こういったことが法律上も規定されております。

 また、法案の閣議決定と同じ日に決定いたしました関係閣僚会議の決定におきましても、児相設置に向けた施設整備、人材確保、育成支援の抜本的拡充、それから国、中核市、都道府県等の関係団体が参画する協議の場の設置を盛り込んでおりまして、そういう意味では、議員御指摘のとおりの地方団体からのいろいろなさまざまな工夫なども、協議の場の中でいろいろ議論してまいりたいというふうに思っております。

 また、そういった協議の場などを通じまして、いろいろな、今御紹介のような事例、あるいは子育て支援から児童虐待対応まで一貫した対応を行っている事例などもございます。こういった中核市、特別区のそれぞれの特色を生かした取組につきまして十分その協議などを通じて把握いたしまして、先進事例として共有するなど、必要な支援に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

山田(美)委員 ありがとうございます。これまでの経緯も含め、詳しい施策の内容についてお話をいただき、ありがとうございました。ぜひしっかりと実行していただければと思います。

 特に、児童相談所は、公共機関ではなくて行政機関であるため、施策の中身が一般の人にはわかりづらいということもあり、自治体が住民の理解を得て設置を進めていく、さまざまな予算措置を自治体としても講じていくに当たって国の後押しがぜひとも必要だとの声もありました。必要な支援については、五年というふうに期限を切ってしまうのではなくて、ぜひそれ以降も継続していただけるようにお願いを申し上げます。

 そしてまた、さまざまなノウハウが蓄積されていくだろうということで、児童相談所間の経験交流についてもお伺いをしたいんです。

 中核市や特別区の各自治体がその自治体の置かれた環境に適した児童相談所のあり方を模索していくに当たっては、おのおのの児童相談所の体制構築ですとか実施の内容ですとか、理想的には全国の事例を情報共有して検証していくことがぜひとも必要だと考えております。

 現在既に、学会や児童相談所長会、都道府県のイニシアチブ、厚生労働省さんでも、全国、主催して会議などを開催されていると伺っております。こうした既存のものはさまざまありますけれども、それよりまた更に境目を崩した形でより柔軟な経験交流を充実させていくために国はどのように後押しをしていくのか、お伺いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、各児童相談所でのさまざまな経験を共有いたしまして、児童相談所職員の専門性向上を図っていくことが極めて重要だと思っております。

 まず、これまででございますけれども、このためでございますが、児童相談所職員等の研修センターにおきまして、一定の経験を有するスーパーバイザーを対象といたしまして、参加者同士の実践報告あるいは事例検討を行うような研修を実施してまいりました。

 それに加えまして、今年度の予算におきまして、これは新たにでございますけれども、国が主催するブロック単位の児童相談所職員への研修の開催などの措置を講じようというふうに思っております。

 特に、今年度から国が主催するブロック単位の研修におきましては、スーパーバイザーなどの実務経験が豊富な各児童相談所における中核的な職員を対象といたしております。こういった職員を対象といたしまして、地域の関係機関あるいは有識者等も含めたケース検討、それから死亡事例の検証結果、こういった具体的な例を活用した実践的な研修を行うこととしております。

 こうした複数の地方自治体の職員が一堂に会したケース検討においてそれぞれの経験に基づくアセスメント、見立てに関する議論が行われることによりまして、各児童相談所での経験が共有されることが期待されるというふうに考えております。

 こうした取組を通じまして、児童相談所職員の専門性向上あるいは情報共有に努めてまいりたいというふうに考えております。

山田(美)委員 ありがとうございます。ぜひ充実した経験交流の機会をふやしていただければと願っております。

 そこで、ここまでは児童相談所設置に向けた質問でございましたけれども、次に、虐待の未然の防止についてお伺いをいたします。

 虐待による不幸な事件を二度と起こさないためには、早い段階で虐待の兆候を突きとめ、支援に結びつけることが重要であります。ダイヤル「いちはやく」の機能強化は言うまでもありません。

 また、乳幼児健診や学校健診で子供の歯を見る歯科医師には、顔面や口の中の不自然な外傷ですとか重症な齲蝕の放置などを見ると、虐待がすぐにわかるというお話も伺います。

 歯科医師の先生が虐待の疑いに気づいたときに、適切な支援に結びつけるためにとるべき行動については、都道府県歯科医師会や日本小児歯科学会が対応ガイドラインを出しておりますし、地域によっては通報システムを確立しているところもあります。とはいえ、虐待が疑われるケースの経験がある歯科医師の先生というのはまだまだ数が少ない上に、経験があっても通告をためらう歯科医師の先生も実際いらっしゃる。通告することに不安を感じているという声も聞かれます。

 乳幼児歯科健診や学校歯科健診は法律が実施を義務づけているもので、全ての子供が受けるものであること、また、子供の身なりや服装、不自然な外傷などに比べますと、歯科医療上の発見というのは、客観性が非常に高く、確かな証拠となり、通告にはなおさら強い確証因子になるということから、児童虐待の早期発見、防止において、歯科医師の先生方との連携は必須だと考えます。

 歯科医師の先生方の自助努力に頼るだけではなくて、国としても連携強化に力を入れるべきだと考えますが、どのような方策を検討しているのでしょうか、お伺いいたします。

上野大臣政務官 今委員から御指摘いただいたとおり、歯科医師の方々が児童虐待の兆しや疑いを早期に発見して子供や家庭への支援につなげる、そうしたことは大変重要であるというふうに考えております。

 歯科医師は、乳幼児健診や学校健診などを通じて、児童虐待の兆しや疑いを直接的に発見しやすい立場にあります。このため、支援を要する児童や妊婦を把握した場合にはその情報を市町村に提供するよう努めるほか、児童相談所や市町村から児童虐待に係る情報の提供を求められた場合には情報を提供できることとしており、これまでも連携協力体制を構築してきたところであります。

 さらに、こうした取組を推進するため、昨年七月の緊急総合対策等に基づいて、要保護児童対策地域協議会における学校、医療機関、児童相談所等との情報共有の推進、また、地域の医療機関で児童虐待を発見しやすい体制を整えるための歯科医師、医師等への研修費用に対する補助等を行っているところであります。

 これに加えて、本年三月に関係閣僚会議で決定をした「児童虐待防止対策の抜本的強化について」に基づき、乳幼児健診や学校健診などにおいて、虐待の疑いのある子供に適切に気づくための歯科医師向けの研修の実施でありますとか、歯科医療機関向けの対応の手引の作成など、今後も、関係団体と協力をしながら、児童相談所や市町村と歯科医師の方々との連携が強化されるよう努めてまいります。

山田(美)委員 ありがとうございます。ぜひ、しっかりとこの連携体制の中で歯科医師の先生方にも頑張っていただきたい、そんなふうに思っているところでございます。

 続きまして、退所後の支援、とりわけ児童養護施設を退所した十八歳以上の方に対する支援のあり方についてお伺いをします。

 十八歳以上の方に対する支援の継続は平成二十八年の改正児童福祉法で対応がなされて、一時保護中に十八歳に達した方の一時保護の延長措置、里親委託中に十八歳に達した方の措置変更や更新、一時保護が可能になりました。しかし、現場で児童養護にかかわる方々からは、施設や人員が十分ではなく、どうしても十八歳未満の方が優先になってしまうという声も聞かれます。

 それに、そもそも、施設や里親のもとにいる時間を延長するというよりも、そこから巣立って社会の中で自立して暮らしていけるように、将来に向けた支援を充実させることの方が重要なのではないかとも考えます。

 ことし二月に、東京渋谷区の児童養護施設の施設長が元入所者の二十二歳の若者に殺害されるという痛ましい事件が起こりました。報道では、十八歳で退所後も施設が住居や就職の支援をしていたということでしたけれども、改めて自立支援の難しさを痛感いたしました。

 厚生労働省は、この事件をどのように受けとめ、今後はどのような対応策が必要だと考えているか、お伺いいたします。

上野大臣政務官 委員から、渋谷区の事案についても言及をいただきました。亡くなられた施設長に、心より御冥福をお祈り申し上げます。また、厚生労働省としても、こうした事件が発生したことを重く受けとめております。

 児童養護施設等の退所者が円滑に社会生活を送ることができるよう、継続的な支援が提供されるよう今後も努めてまいります。

 具体的には、十八歳を超えて施設に残ることを希望する方には、二十二歳の年度末までの間、就労支援などの支援を行う事業、また、退所する方に生活費や家賃を貸与し、五年間の就業継続を条件に返済を免除する貸付事業、さらに、今年度予算においては、施設に入所中の方の大学進学を支援するための、塾を利用する際の措置費を増額したところであります。

 また、昨年七月には、都道府県に対し、これらの事業の活用を含めた自立支援策の強化を、今年度中に都道府県が策定をする社会的養育推進計画に盛り込むよう依頼をしたところであります。

 さらに、本年三月の児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定において、十八歳到達後の方を含め、児童養護施設を退所した子供たちに対し、住まいの確保や進学、就職を支援する措置の拡充を図ることを盛り込んでいるところであります。

 社会的養護が必要な子供たちは、虐待などの理由で保護者からの支援を受けづらい状態にあります。こうした子供たちの未来が生育環境に左右されることのないよう、支援の手をしっかりと差し伸べて自立支援に取り組むことは急務であり、委員の御指摘も踏まえて、今後もしっかりと取り組んでまいります。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。十八歳を超えて、また二十を超えて社会の中でしっかりと自立をしていっていただけるように、本当に多くの方々が力を尽くしていただいているんだと思いますし、ぜひそうした支援をこれからももっと拡充していっていただきたいと思います。

 そこで、最後に、職員の方々の専門性向上ですとか処遇の改善についてお伺いをしたいと思います。

 虐待対応の網の目を密にするために児童相談所の設置を進めることは重要ですけれども、ただ建物ができればいいというものではなく、同時に重要なことは、適切なアセスメントや子供たちのケアを行うことができる機能というのを児童相談所がしっかりと持つことが大事だと思います。

 政府においては、昨年十二月に、児童虐待防止対策体制総合強化プラン、いわゆる新プランを策定し、今後四年間で、現在三千人いらっしゃる児童福祉司について、二〇二二年度には五千人体制とすることや、児童心理司、保健師を増員するなど、児童相談所の体制強化を図ることとしていますが、児童相談所がきっちりと機能を果たしていくためには、児童福祉司の方々を始めとする児童相談所職員の方々一人一人の資質の向上を図っていくことも極めて重要だと考えます。

 そうした児童相談所職員の専門性向上のために、今後、国としてどのように取り組んでいかれるのか、厚生労働省にお伺いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所の体制強化のためには、御指摘のとおり、量的拡充のみならず、職員の資質向上は極めて重要でございます。このため、まずは、本法案におきまして、児童福祉司とその指導を行いますスーパーバイザーの任用要件の見直し等を盛り込んでおります。

 その具体的内容でございますけれども、一つは、児童福祉司、それから所長もそうなんですけれども、その任用要件といたしまして、新たに精神保健福祉士と公認心理師も規定することとしております。

 また、児童福祉司の任用要件でございますけれども、現在、幾つかルートがございまして、その一つのルートの社会福祉主事として従事したことがある方については、一定の実務経験があれば児童福祉司の任用要件になるわけでありますけれども、現在は児童福祉事業という経験でよいことになっておりまして、これは、例えば児童手当の支給業務とか事務処理業務を含めて実務経験にカウントされております。これを、相談援助業務、いわばケースワーク業務というふうにいわば限定するということを盛り込んでおります。

 それからまた、いわゆる指導監督職員、スーパーバイザーでございますけれども、これは実効上配置をされておりますけれども、実は、法律上明確な設置の規定がございませんでした。この配置について法律上明確に規定することとしておりますし、また、任用要件につきまして、現在でも研修受講は義務づけられておるんですけれども、スーパーバイザーになる前に事前にきっちりと研修を受けなければいけない、こういったことも明確化することといたしております。これが法案の内容でございます。

 このほか、予算事項でございますけれども、今年度の予算におきましては、二十八年改正の児童福祉法により義務づけられました児童福祉司の任用後の研修につきましての実施費用の補助経費、それから児童相談所職員等の研修センター、現在、全国で一カ所、横浜市に子どもの虹情報研修センターという一カ所しかございませんけれども、今年度から二カ所、具体的には、西日本における拠点といたしまして明石市におきましても研修センターを設け、研修を実施予定といたしております。また、先ほど申し上げましたとおり、ブロック単位の研修の開催ということも行ってまいりたいというふうに考えております。

山田(美)委員 ありがとうございます。まさに、専門性向上のためにさまざまな手を尽くしてくださっている御説明であったかと思います。

 そして、考えてみますと、児童虐待防止対策を支えてくださっているのは、現場で一つ一つのケースに向き合っていらっしゃる児童相談所の職員の方々だと思います。現場の方々の昼夜を問わない対応によって多くの子供たちの命が救われているんだなということをつくづく感じるところでございます。

 児童相談所の職員の皆様は、大変な精神的プレッシャーそれから肉体的な負担を感じながら業務に取り組まれておりますし、今回の改正法案ですとか、ことし三月の関係閣僚会議決定に盛り込まれた対策、これをまた更に着実に実施していくということになりますと、今まで以上に現場の対応が生じてくることも予想されます。

 こうした状況や今後の人材確保という観点からも、児童相談所の第一線で働く児童福祉司などの職員については、その職責の重要性ですとか負担に見合った処遇に改善していくことが重要だと考えますが、どのように取り組むのか、お伺いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、児童相談所におきましては、児童虐待に関する通告への対応、あるいは介入的な対応、夜中でも立ち入るとかですね、それから夜間、休日、まあ休日も含めてですけれども、緊急に対応する備えが必要でございます。そういったことから、職員については、精神的、肉体的負担が極めて大きい業務でございます。また、加えて、専門性を有する人材の確保も求められております。

 こういったことを踏まえまして、この三月に関係閣僚会議で決定いたしました中に、児童相談所の児童福祉司等の職員につきまして、手当などによる処遇改善を図ることが盛り込まれております。

 そういう意味では、関係閣僚会議決定でもそういった方針を決定しているわけでございまして、今後、具体的な内容につきまして、地方団体等の意見も伺いながら、概算要求に向けて、その内容について検討してまいりたいというふうに考えております。

山田(美)委員 ありがとうございます。ぜひともこうした処遇改善にもしっかりと対応していただきたい、そういうふうに思っております。

 さて、いただいた時間もいよいよ終わりが迫ってまいりましたが、私、この問題をつくづく考えまして、人間って生まれる国や生まれる家を選ぶことはできないなということを感じました。けれども、日本という国は不幸な境遇にある子供たちを誰一人として見捨てたりしない、そういうふうに胸を張って言えるような対策をさまざま講じていただきたいと願っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、船橋利実君。

船橋委員 自由民主党の船橋利実でございます。

 私の方からも質問をさせていただきたいと思います。

 言葉を失うような、親による女児虐待死という事件を受け、今回の法改正によって、関連する制度、政策面において、あるいは現場で対応する専門職の働きかけの面において、繰り返されてきた子供の命が失われる事件が二度と再び本当に起きることはないのかという、今この瞬間も虐待におびえる子供たちと国民の問いかけに応えていく、そんな思いでお尋ねをしてまいりたいと思います。

 厚労省の資料によりますと、心中以外の児童虐待による死亡数は、平成十五年から平成二十八年までの十四年間だけでも、六百八十五例、七百二十七人もの何の罪もない児童たちの命が奪われております。平均すると、月に四・三人、週に一人以上が亡くなっているという極めて深刻な事態になっております。

 問題解決を図る上で児童相談所が果たす役割が重要でありますけれども、これまで関係者から伝えられてきた児童相談所が抱える課題の一つに、児童福祉司によって、あるいは児童相談所によって、子供や保護者などとの面接や聞き取りの進め方、必要な情報の収集の進め方、児童養護施設等への措置の進め方や措置後の対応方法、一時保護所での生活によって子供のすさみが一段と深刻な状況に陥り、癒やされないまま施設に措置されてくる実態への対処について、そのいずれもが全く顧みられてこなかったなどなどの声に代表されるように、実践力の大きな格差が問題視されてきました。

 このような児童相談所に内在する実態について、児童相談所の関係者も含めて、多くの関係者が周知してきているものばかりでありますけれども、こうした課題を始め、今回の法改正によって、これまでの問題点を間違いなく改善をさせる、そして児童虐待と虐待死をなくすという大臣の決意をまずお聞かせいただきたいと思います。

根本国務大臣 虐待によって子供の命が失われる事件が繰り返されること、これはあってはなりません。痛ましい虐待事案が繰り返されないよう、関係閣僚会議を開催するなど、これまでもさまざまな法改正が行われてまいりましたし、政府全体で累次の対策の強化を図ってまいりました。

 それにもかかわらず、本年一月に千葉県野田市において痛ましい事件が繰り返されてしまったこと、これはまことに残念であり、事態を深刻に受けとめております。

 最近の児童虐待事案においては、しつけと称して児童虐待を行う事案、関係機関からの情報漏えいにより虐待リスクが高まった事案、DV対策との連携が必ずしも十分でない事案などが生じておりました。また、児童相談所の管轄区域が大き過ぎることにより、今委員からも御指摘がありましたが、きめ細やかな対応が十分にできなかったのではないかという指摘もあります。

 このため、本法案では、体罰禁止を法定化する、学校、教育委員会などの関係機関の職員は児童に関する秘密を漏らしてはならない旨の規定の整備、DV対策を担う婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターの職員は児童虐待の早期発見に努める旨の規定の整備、児童相談所の管轄区域に関する参酌基準の設定といった事項も盛り込むことといたしました。このほか、児童相談所の体制強化、関係機関の連携強化の観点から実効性ある対策を盛り込んでおります。

 これらを通じて、痛ましい事件が繰り返されることのないよう総力を挙げていきたいと思います。

船橋委員 ありがとうございます。

 それでは、ここからはもう少し細かな部分もお尋ねしてまいりたいと思います。

 次に、今回の法改正におきましては、児童福祉審議会において児童に意見を聞く場合においては、その児童の状況、環境などに配慮するものとするとありますけれども、児童の状況、環境などの配慮すべき点が適切であるか否か、どのように、誰が責任を持ってこれを判断するのか、また、意見を聞くに当たり、児童が事実を話しやすい環境をどう用意をしていくのか、実際に意見を聞いた後、精神や行動面などで変化が生じた場合の対応をどうしていくのか、事前に事実として確認をしていた内容と異なる意見であった場合の取扱いをどうしていくのか、聞き取りをする者と聞く場所がこれまでと変化することになっていくのかどうかなど、今回の法改正により改善をされていく点についてお伺いをいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童福祉審議会におきましては、その調査審議に当たりまして、児童やその家族等の関係者の出席を求め、その意見を聞くことができることと現在でもされております。しかしながら、この仕組みが現在では十分活用されているとは言えない状況でございます。

 こういった状況を踏まえまして、昨年行われました社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおきましても、この児童福祉審議会を活用いたしまして、児童がみずから意見を表明する機会を確保していくべきという御議論をいただきました。

 こういった御議論を踏まえまして、今回の改正では、御指摘のように、児童福祉審議会は、意見を聞く場合においては、意見を述べる者の心身の状況、その者の置かれている環境その他の状況に配慮しなければならないというような規定を設けたところでございます。

 まず、現在の取組でございますけれども、厚生労働省におきましては、児童福祉審議会を活用して、子供の意見を受け付け、必要な助言、調整を行う取組等をまとめたガイドラインを策定したところでございますけれども、さらに、本法案におきまして、こういった規定を受けまして、意見聴取の仕組みのさらなる活用、適切な運営がなされますよう、例えばでございますけれども、意見を述べる児童を支援する専門的知識及び技能を持つ職員の児童福祉審議会事務局への配置、それから、審議会の場で児童が安心して意見を述べることができる雰囲気づくり等の配慮等を想定いたしております。

 御指摘のあった判断権者は、基本的には児童福祉審議会ということでございますけれども、具体的な運用につきましては、今申し上げましたようなことを中心にいたしながら、今後具体的に検討してまいりたいというふうに思っております。

 また、加えてでございますけれども、本法案の附則におきましては、その施行後二年をめどとして、児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置として、児童が意見を述べることができる機会の確保、あるいは、そうした機会において児童を支援する仕組みの構築等について検討することといたしております。

 こういった取組を通じまして、子供の権利擁護のための取組が適切に進められるよう、引き続き必要な検討を進めてまいりたいと考えております。

船橋委員 これは保護児の、いわゆる子供たちの年齢とか環境とかによってかなり困難さが伴うものであると思いますし、そもそも、そうした意見を述べることができる機会があるということをどう伝えるかというところから始まるお話だというふうに思っておりますので、ぜひ適切な対応というものを今御答弁があったようにやっていただけるように要請をしたいというふうに思います。

 次に、児童の権利擁護の上で、親権者及び児童福祉施設の長などに児童のしつけに際して体罰禁止を法定化するとともに、この法律の施行後二年をめどとして、民法に定める懲戒権のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとしておりますけれども、具体的にはどのような検討を行っていくのか。結果に基づくというふうにありますけれども、例えば、懲戒権という文言を削除する、表現を変えるなどということも考えられるわけでありますけれども、どのようなことを想定されているのかお伺いをいたします。

 また、それまでの間、今回の法改正によって懲戒権のあり方に関する扱いというものがどうなるのか、教えていただきたいと思います。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 この法律案には、施行後二年をめどとして、民法第八百二十二条の規定のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の検討条項が盛り込まれております。

 この懲戒権の規定のあり方につきましては、国民の間でもさまざまな議論がありますが、法務省といたしましても、国会における議論等を十分に踏まえ、速やかに必要な検討を行っていきたいと考えております。

 具体的な検討の進め方については現在検討中であり、見直しの方向性については今後検討することになりますが、この検討の際には、御指摘がありましたように、民法第八百二十二条の規定を削除することや、懲戒という文言の当否といった点を含めまして、さまざまな選択肢を視野に入れて検討がされることになるものと認識しております。

 それから、懲戒権のあり方について、必要な措置を講ずるまでの間、懲戒権の取扱いがどのようになるのかというお尋ねがございました。

 懲戒権の行使として許容される行為の範囲は、時代の健全な社会常識により判断されるものと考えられますが、児童虐待が社会問題として深刻化している現状等に照らしますと、その範囲は相当限定されることになると考えられます。

 そして、親権者による体罰を禁止する規定が盛り込まれました本法律案が成立した場合には、この体罰に該当する行為は民法第八百二十二条に言う子の監護、教育に必要な範囲には含まれないと解釈され、懲戒権の行使として許容されなくなるものと理解しております。

船橋委員 ありがとうございます。

 次に、児童養護施設の小規模化について伺います。

 新たな社会的養育ビジョンでは、社会的養護が必要な子供たちの養育環境は、家庭的養育環境を重視し、里親への委託率を高め、児童養護施設は地域分散型、小規模化した施設しか基本的には認めないとしておりまして、方向性としては正しいというふうに認識をいたしております。

 ただ、そこに向けて課題を整理する必要性がある、こう思っています。

 例えば、児童養護施設の中には、従前の国の方針などを踏まえた施設整備などを行っており、借入金を償還中である施設も見られます。こうした事例では、自治体から補助金を受けている場合もありまして、新しい方針に基づく施設整備をすぐに行うということは財政面なども含めて困難という声も上がっております。

 また、分散化に必要な土地の確保、これは場所もそれから資金的なことも含めて困難であるというお話でありますとか、地方にある施設ほど人材不足が深刻であること、小規模化により総体の収容人員が減り、現状でも施設が不足する状況がある中で、養育や保護を必要とする児童の数に対して里親が十分に確保できないという状況になりますと行き場を失う子供たちが出てしまうというおそれがあること、児相や里親が対応できない子供たちの場合には施設が現状では受皿になっているということ。

 最近、里親の意識の方も変化をしておりまして、中には養育放棄をする方もいらっしゃいます。私が聞いたケースでは、里親となってお子さんを育てている中で、夫婦二人の時間がとれないために里親をやめますというケースを聞きました。

 ほかにもいろいろとお話を聞いたことがあるのでありますけれども、こうした現状を正確に把握し、そして、解決策というものを具体的に提示し、目指すべき方向性に進んでいく必要性があると思いますが、所見をお聞かせください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 新しい社会的養育ビジョンを受けまして、現在、里親等への委託の推進に向けた取組、それから、御指摘の施設の小規模かつ地域分散化、高機能化及び多機能化、機能転換に向けた取組、こういったことを含みます家庭的養育の推進のための社会的養育推進計画を、今年度中に策定していただくように都道府県にお願いをしております。

 これにあわせまして、各施設に対しましても今後の計画の策定を求めております。そういった中で、厚生労働省といたしましても、各都道府県に対しまして、各施設への助言、それから調整、これもお願いしているところでございます。

 また、厚生労働省といたしましては、現在、都道府県を対象にいたしまして、計画を策定するに当たっての課題、多分、その課題の中には御指摘のような施設における現状とか里親の現状、それから今後の見通し、支援策、資質向上策、そういったことも課題の中に入ると思います。それから、厚生労働省への要望事項等を把握するためのヒアリングを行っております。また、計画の検討状況に関する調査も行っているところでございます。

 こういったヒアリング、調査なども通じまして、あるいは関係団体からの御意見、こういったことも踏まえまして、必要に応じでございますけれども、その課題を整理し、必要であれば必要な支援策も検討いたします。

 そういった現場の御意見それから現場の課題をしっかり解決する方向で、それも考慮した上で、計画の推進に向けてしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

船橋委員 今ほどお答えをいただいた内容というものが、各都道府県、そして対象となる各施設などにきちんと伝わっていくように、最大限の配慮というものを求めたいというふうに思います。

 次に、児童養護施設の関係者が児童相談所に寄せられている問題について伺います。

 施設入所時に送付されてくる児童票の記載内容を通じて、施設関係者は、措置を受けた子供の実像、子供が抱えている怒りでありますとか悲しみ、切なさ、そして希望、願いなどを知る手がかりになるはずでありますけれども、施設側に求められている自立支援計画を策定する過程で、記載内容を精査してまいりますと、児童福祉司による保護者に対する丁寧さに欠ける面接や聞き取りの結果、以後のかかわりの方向性を左右する重要なポイントになります保護者などとの専門的信頼関係、これが破綻をしたまま放置され、その修復の努力を施設側に丸投げされているという実態があると指摘されております。

 これは、子供の担当児童福祉司がまとめる児童票の記入業務の省力化が生み出した弊害の一つでもありまして、単にパソコンソフトに組み込まれている事項にチェックマークを入れる、パソコンの画面で求めてくる事項に沿って記入をしているという業務だけでは不十分でありまして、その結果、不足をする情報の提供について施設側から求めていっても、担当する児童福祉司はこのアセスメントの意味というものを理解していない場合が多く、このアセスメントそのものについての共有化というものができないことが多い。

 子供の自立支援、家族としての再統合支援に踏み出せないだけではなくて、支援家庭で何らかの問題が顕在しなければ、児童相談所と施設が共通テーブルに着けない事態の改善に見通しが立たないとする問題性は、長年にわたり指摘をされてきていたわけでありますけれども、こうした点についてはどう改善を図っていくのか、見解を伺いたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所におきましては、御指摘のような、相談を受理した子供ごとに児童記録票を作成いたしております。その他資料についても適切に作成、保管することを児童相談所の運営指針において示しております。また、児童相談所から児童福祉施設に入所措置をとるに当たりましては、子供の援助に必要な資料を共有することについても指針で示しております。

 この共有する内容、記録票でございますけれども、御指摘のような子供に関するさまざまな情報、氏名、年齢、家族構成、性格行動、生育歴、健康状態、家庭環境、地域環境等々でございますけれども、こういった資料につきましては、指針におきましても、できる限り綿密なものであることは言うまでもないというようなことを示しております。

 児童福祉施設におきましては、これらの資料をもとに、子供が施設において安定した生活を送るような援助、あるいは家庭に向けた取組、自立支援を行うこととしておりますので、児童相談所において資料の作成、共有が適切に行われることは、基本、重要ということでございます。

 そういう意味では、委員の御指摘のような問題があるとすれば、この指針の趣旨が徹底されていないということだと思いますので、こういった子供の情報に関する記録、情報共有、記録の仕方等におきまして、児童相談所におきまして対応が更に徹底されるよう周知を図ってまいりたいと考えております。

船橋委員 御答弁ありがとうございます。

 児童相談所の機能強化と児童福祉司の実践力向上のため有効な方策が、ソーシャルワークの充実だというふうに考えます。

 今回の東京都目黒区や千葉県野田市で起きた事件の背景にあったのは、家庭内における親の養育する能力の脆弱性でありました。その結果、子供は、人となるに必要な社会化の過程が崩壊をして、その再生の機会と支援も得られないままに成長し、みずからの意思で暴力を介在させて、関係性の醸成を抑制できない大人、家族が再生されているという問題性が、今回の悲劇を生み出した要因と分析をされております。

 この社会化の過程を促進し、必要であれば再生の機会と支援を提供していたのが、洋の東西を問わずソーシャルワーカーであるからこそ、児童福祉司がその役割を担えることが重要だと考えますが、見解をお聞かせいただきたいと思います。

 また、改正案の骨子の一つに、児童福祉司の実践力向上を図ることの関連から、実務経験五年程度を目安にスーパーバイザーに登用する方策が検討されておりますけれども、しばしば社会福祉の領域で登場する実務経験ということ、果たして、社会福祉専門職としての業務の内部質保証を果たす形で機能した実態というものがどの程度まで把握できているのかという指摘があります。

 欧米におけるスーパーバイザー養成というのは、実務経験よりも、どこで、誰に指示をされながら、どのようなトレーニングを受けたかという点が重視されておりますけれども、スーパーバイザーの質をどのように高めていくお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと、質問が多岐にわたりましたので、全てお答えできるかどうか自信がございませんけれども。

 まず、基本的に、児童福祉司、スーパーバイザーの資質向上は極めて重要だというふうに考えております。先ほども申し上げましたけれども、児童福祉司についての任用要件の見直し、あるいはスーパーバイザーについての要件の見直し等を今回の法案でも規定をいたしております。

 また、スーパーバイザーにつきましては、研修等につきまして、全国一カ所から二カ所への拡充、あるいはブロック単位の研修等を新たに加えますとともに、研修修了を要件としているところでございます。

 そういう意味では、資質向上のためには、事前の研修、座学的なものと実務経験と両方を兼ね備えて資質が図られるものと考えておりますので、そういった両面から職員の資質向上に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

船橋委員 今、スーパーバイザーに関する御答弁をいただいたんですが、ソーシャルワークとソーシャルワーカーの重要性ということに関しての御答弁がなかったと思いますので、ソーシャルワークの必要性、ソーシャルワーカーの重要性ということについてのお答えもいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 子供の権利擁護、保護を図るためには、家庭環境も含めて、しっかりと調整、支援することが必要だと思っております。

 そういう意味では、児童福祉司の基礎資格として、社会福祉士も基礎資格の一つになっておりますけれども、そういった家庭全体を見て支援するといったソーシャルワークの機能、能力といったものは、児童福祉司、あるいは児童相談所全体として重要な機能だと思っております。

 こうしたことから、基礎資格といたしまして社会福祉士等を位置づけますとともに、また、研修等におきましても、ソーシャルワーカーも含めて、資質向上を図っているということでございますし、今後とも、そういった研修等の内容の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。

船橋委員 次に、家庭内における親の養育する能力の脆弱性への支援システムということについて、その必要性を伺いたいと思います。

 現在は、虐待があれば措置をすることで家族分離を図ることが想定されておりますけれども、このような問題の予防のあり方として、危機介入を進める前の家族支援、つまり、家族員として子供を養育する能力の再生化、活性化を図る環境やシステムの創出方法というものをいち早く検討して、そしてそれを進めていく必要性を感じております。

 デンマークにおきましては、家族員を分離して支援するのではなく、家族を分解させないために、家族を一体化して支援する方法がソーシャルワークを機能の中核に据えて実施されております。

 こうしたシステムを参考にしながら、我が国でも、子育て支援と子育ち支援の方法について、家庭とは何かということを考えるに当たりましては、これまでの思考の枠組みにこだわらない、パラダイム転換の発想に立って検討していくべき時期に来ているように感じます。

 そこで、家族問題が重篤な状態にならない前に対応を講じる支援のあり方を検討していくべきと考えますが、見解をお聞かせください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、御指摘のとおり、なかなか地域社会等のつながりも薄い中で、家庭が孤立化しているというような状況もございます。そういう意味では、家族に対する支援をまず一般的には行っていく必要があろうと思っております。

 そういう意味では、子育て支援サービス、子育て支援拠点等のいろいろなサービスがございますけれども、そういったサービスを通じて子育て家庭を支援していく、あるいは子育て世代包括支援センターにおきまして妊娠期からさまざまなサポートをしていくというようなことがまずは基本だというふうに思います。

 その上で、なかなか難しい御家庭、あるいは一旦家庭分離をされた家庭等におきましては、保護者に対する指導、援助が重要だというふうに思っております。そういった指導、援助の一つといたしまして、児童相談所におきましては、保護者の特性に合わせて各種の保護者支援プログラムというものによる支援を行っております。

 これは大きく二つございまして、一つは、日常的な子育てのスキルを高めるためのプログラムでございます。子供とのかかわりに具体的に役立つような子育てのスキル、そういったプログラムと、もう一つは、ちょっと視点が違いますけれども、保護者自身の心理的な課題に焦点を当てて解決方法を見出すようなプログラム、これは保護者自身のいろいろなトラウマの治療、そういったようなプログラムでございます。

 そういう意味では、一般的な施策それから一旦問題が起きた家庭に対する保護者への支援、こういったものをトータルで取り組んでいく必要があるというふうに考えております。

船橋委員 私が今御紹介したデンマークの事例は、いわゆる児童養護施設の機能とそれから家族支援の機能、これが同一の敷地の中で機能分化されて、合築されているといいましょうか、そういうような施設の場合でありました。

 ですから、今ほどいろいろとお取組についてお答えはいただいたのでありますけれども、こうした事例などももう少し研究していただいた中で、よりよき体制整備というものがなされますようにお願いしたいというふうに思います。

 次に、児童相談所の第三者評価についてお伺いしたいのでありますけれども、これは、法改正がなされた後には行われていくということになってまいりますけれども、いつ、誰が、どのような形で実施するということを想定しているのか。

 と申しますのも、この第三者評価をするのには、受ける側もそれに向けての準備というのが相当大変なことになってまいります。ですから、児相の現場は、非常に日常的に忙しい中にあって、第三者評価の諸準備をどう進めていったらいいのか。それに加えて、この第三者評価を誰が行うかということによっては費用負担ということも発生してくるということも想定されるわけでありますけれども、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、この第三者評価でございますけれども、昨年行われました、先ほども御答弁申し上げましたけれども、社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおきまして、全国どの地域におきましても子供の権利が守られることを目的といたしまして、児童相談所の質の確保、向上が図られるよう、自己評価及び第三者評価を行う仕組みの創設に取り組むということとされました。

 こういった審議会の報告を受けまして、本法案には、都道府県知事は、第三者評価の実施を含む児童相談所の業務の質の評価等を行うことにより、業務の質の向上に努めなければならない旨のいわば努力規定を盛り込んだところでございます。

 その具体的な評価を誰がするか等でございますけれども、これは、具体的には今後の検討ということでございますけれども、既に一部の自治体で取り組んでいる例もございます。既に取り組んでいる例では、例えば児童福祉審議会の委員が第三者評価を行うといった例もございます。あるいは海外の例等もございます。こういった例も参考にしながら、より効果的な評価のあり方を検討した上でガイドラインの策定を行おうと思っておりまして、ガイドラインの策定の中でそういった評価者のあり方などについても検討し、それで、これは段階的な実施ということを想定しておりまして、まずは幾つかでモデル的に実施する、その上で全国展開、そういったプロセス、ステップを踏んで行ってまいりたいというふうに考えております。

船橋委員 時間となりましたので、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、鰐淵洋子君。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 きょうは質問の機会をいただきました。大変にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 本年一月、千葉県野田市の小学校四年生の女の子が父親から虐待を受けて亡くなるという大変に痛ましい事件が起こりました。

 けさもニュース等で報道が繰り返されておりましたが、これまで、このような痛ましい虐待事件を受けまして児童虐待対策の強化に取り組んできたやさきのことでもあり、かつ、児童相談所や学校など多くの大人たちがかかわる中で、このような最悪の事態を避けることができなかった。ざんきにたえません。

 今回の痛ましい事件を受けまして、公明党といたしましても、緊急に児童福祉法等の改正案に盛り込むべき事項も含めまして再発防止対策の提言をまとめさせていただき、二月十九日に菅官房長官の方にも提出をさせていただいております。

 一日も早く、この改正案に盛り込まれました施策を含めまして児童虐待防止対策を実行いたしまして、子供たちの人権が守られ、子供たち一人一人が輝く社会をつくっていかなければいけないと思っております。

 今後、痛ましい児童虐待事件を二度と起こさないという強い意思を持って、政府を挙げて児童虐待防止対策を強力に進めていただきたいと思いますが、まず冒頭、根本大臣にその御決意をお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 今冒頭、お話がありましたように、委員を始め、御党におかれて、児童虐待防止対策に非常に強力に取り組んでおられます。

 虐待によって子供の命が失われる事件が繰り返されることはあってはなりません。痛ましい虐待事案が繰り返されないよう、関係閣僚会議を開催する等をして、政府全体で、昨年七月、十二月、本年二月、三月と累次の対策の強化を図ってまいりました。

 特に、昨年十二月には、新たなプランを策定いたしました。現在三千名の児童福祉司について、今年度一気に千名増員し、二〇二二年度には五千名体制とするなど児童相談所の体制を抜本的に強化することに加えて、児童心理司も二〇二二年度に八百名増加、保健師についても全児童相談所に配置することとしております。加えて、市町村の体制強化についても、子ども家庭総合支援拠点を二〇二二年度に全市町村に設置することなどによって相談体制の整備を進めていきたいと考えております。

 また、本法案では、これから述べる実効性のある対策を盛り込んでおります。体罰禁止の法定化、ちゅうちょなく一時保護に踏み切れるよう、介入担当者と保護者支援担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、DV対策との連携強化等々を盛り込んでおります。

 何よりも子供の命を守り、社会全体で子供を見守り、児童虐待防止対策を進めるため、全力で取り組んでいきたいと考えています。

鰐淵委員 大臣、ありがとうございました。

 今、具体的に御答弁いただきました。今すぐできること、中長期的な課題、また他省庁との連携、さまざま課題はあるかと思いますが、いずれにしましても、今御答弁いただいたように、二度と起こさないという強い決意のもと、ぜひとも大臣のリーダーシップのもと着実に進めていただきたいと思いますので、重ねてお願い申し上げたいと思います。

 子供たちは未来の宝でありますし、また、その子供たちの心身を傷つける虐待は、どんな理由があったとしても絶対に許してはなりませんし、あってはならないことだと思っております。

 我が党は、先ほども申し上げましたが、緊急提言におきましても、体罰禁止規定の創設と民法の懲戒権規定のあり方の検討について要望いたしまして、しつけに体罰は必要という誤った認識を社会全体から一掃するための取組を政府に対しまして要請しているところでございます。

 その結果、今回の改正児童虐待防止法第十四条に、親権者は児童のしつけに際して体罰を加えてはならないこととすると規定されたことは評価をいたしますが、その実効性を確保していくことが何よりも重要であると思っております。

 これまでも広報啓発また周知徹底に取り組んできていただいていることは承知をしておりますが、今回の法改正によりまして、実効性の確保に向けた取組をどのように強化していくのか、厚生労働省の御見解をお伺いいたします。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 体罰は、児童虐待にもつながり得るものでございます。また、痛みや苦しみを利用して子供の言動を支配しようとする行為、こういう行為そのものを許さない、体罰そのものを許さないことが、児童虐待防止対策の観点から重要だと考えております。

 また、各種研究結果におきまして、さまざまなことが明らかになっております。一つ、体罰が脳の発達に深刻な影響を及ぼしているという研究がございます。また、子供にとっても望ましくない影響をもたらしている、こういう研究結果も出ております。

 こうしたことを含めまして、議員御指摘のとおり、これまでも、啓発資料「子どもを健やかに育むために 愛の鞭ゼロ作戦」、こういったものを活用いたしまして、体罰は許されないことを社会全体で共有して、体罰によらない育児を推進してきたところでございますけれども、保護者がしつけの一環である体罰と称して虐待を行ってきた事案が依然としてあるということを踏まえまして、今般、体罰が許されないものであることを法定化し、民法上も、体罰が許されない懲戒であることを明らかにしたものでございます。

 今後の普及啓発の取組でございますけれども、まずは、体罰の範囲、それから体罰禁止に関する考え方、これを国民にわかりやすく説明するためのガイドラインを作成してまいりたいというふうに考えておりまして、このガイドラインをまず作成した上で、それをベースにさまざまな普及啓発を行ってまいりまして、国民全体で体罰によらない子育てを推進していくような国民運動的な取組を行っていければというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 先ほども答弁していただきました、具体的なガイドラインまたパンフレットを作成していただいて、国民の皆様にもわかりやすく伝えていただくということでございます。

 海外でもさまざまな取組事例もあるかと思いますので、そういったことも参考にしていただきながら、また後の質問でも触れさせていただきますが、やはり子供とのかかわり方、子育てについて、なかなか親の立場としてかかわり方がわからないという、そういった保護者の方もいらっしゃるとも伺っておりますので、本当に幅広い支援、具体的に体罰がこれだとか小さいことではなくて、子育てという大きな範囲で、ぜひとも、体罰について国民の皆様にわかりやすく周知していただけるような取組をお願いしたいと思っております。

 また、関連いたしまして、体罰禁止規定に加えまして、法施行後二年をめどとしまして、民法第八百二十二条の規定のあり方について検討を加えることとされました。これも先ほど質問がございましたけれども、これにつきましても我が党としましても強く主張してきたところでございます。

 今後、どのようにこの検討が進められていくのか、法務省の方にお伺いをしたいと思います。

筒井政府参考人 お答えいたします。

 御指摘がありましたように、本法律案には、施行後二年をめどとして、民法第八百二十二条の規定のあり方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる旨の検討条項が盛り込まれております。

 この懲戒権の規定のあり方につきましては、国民の間でもさまざまな議論がありますが、法務省といたしましても、国会における御議論等を十分に踏まえ、速やかに必要な検討を行っていきたいと考えております。

 具体的な検討方法やスケジュールにつきましては現在検討中でございますが、法務省としては、本法律案の施行後二年をめどとする時期までには一定の結論を得ることを目指し、スピード感を持って取り組んでまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 これまでも、懲戒権につきましてはさまざまな議論が重ねられてきまして、また改正も行われてきたと承知をしております。しかし、この懲戒権の存在自体が、体罰を繰り返す親の言いわけ、また口実にされているという指摘もございまして、本会議で我が党の富田議員が、この件につきまして安倍総理に質問させていただきました。安倍総理の方からは、「国会における議論等も踏まえながら、法務省を中心に徹底的な議論を行い、適切な結論が得られるよう全力で取り組んでまいります。」このような答弁があったところでございます。

 先ほど、法務省の方からも御答弁がございました。さまざまな御意見、議論がある中ではありますけれども、やはり子供たちの人権を守るというところで適切な結論を出すことができるよう、法務省を中心にしっかりと議論を重ねていただきたいと思いますし、私たちもしっかりとかかわっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 これは答弁は結構でございますが、ぜひとも法務省におかれましては、子供たちの人権を守るということで、例えば学校の教育の分野であったり、また相談の窓口であったり、ほかのことでも大変にかかわっていただくことになるかと思います。そういった意味で、ぜひとも厚労省とも連携をとっていただいて、この児童虐待防止に法務省の方も全力で取り組んでいただきたいということを要望させていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に入らせていただきたいと思いますが、先ほど山田議員の方からも、児童虐待を防ぐ取組ということでお話がございました。やはり児童虐待を防いでいく、また早期に発見していく、こういったことが大変に重要になってくるかと思います。

 例えば、地域、社会で孤立をして、子育て等の悩みや課題を抱えていても誰にも相談できずに自分一人で抱えていらっしゃる、そういった方も多くいらっしゃるかと思います。こういったことを受けまして、我が党としましても、妊娠期から子育てまで切れ目のない支援が必要であるということで、日本版のネウボラ、公的子育て支援施設の設置等にも取り組ませていただきました。

 また、母親が父親から暴力などのDVを受けている家庭は子供も虐待を受けているケースが多いという、こういった指摘がある中で、子育てやDVに悩む親が児童虐待に至る前にみずからSOSを出せる環境、またそれを受けとめることができる環境を整えていくことが重要であると思っております。

 厚労省の見解、お取組をお伺いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 問題意識は共有しております。孤立しがちな子育て家庭を早期に発見して必要な支援策につなげることが、虐待予防の観点からも重要だと考えております。

 このため、今議員御指摘がございましたけれども、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行うための子育て世代包括支援センターの設置促進、これは二〇二〇年度末までに全国展開を目指すということにしております。また、予期しない妊娠等で悩む妊婦に対しまして、産科への同行支援等によりその状況を確認して関係機関につなぐ事業、こういった事業も実施しております。

 また、冒頭、大臣からも答弁申し上げましたけれども、戸別訪問して家庭の相談支援を行うために、乳児家庭への全戸訪問事業、これは生後四カ月までの乳児のいる全家庭の訪問でございますけれども、これによる養育環境の把握、それから、そこで特に支援が必要だという家庭に対しましては、また個別に訪問する養育支援訪問事業といったことも行っております。

 さらに、DVとの関係でございますけれども、本法案には、DV対策との連携強化のために、婦人相談所及び配偶者暴力相談支援センターの職員につきましては児童虐待の早期発見に努めることといたしまして、児童相談所は、DV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターと連携協力するよう努めるということで、そういう意味では、DV対策と虐待対策の相互連携の規定も盛り込んでいるところでございます。

 こうした取組によりまして、子育て等に悩み、孤立しがちな家庭を早期に発見し、適切な支援につなげることで児童虐待の予防を図る、あるいは子供の健全な心身を育成する社会をつくるよう取り組んでまいりたいというふうに考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 特に、孤立している家庭に支援をしていかなければいけないと思っておりますが、しかし、そういった家庭に支援がつながりにくいというのが現状かと思っております。そういったことからも、身近なところで、例えば市町村でしっかりと相談できる体制の充実も重要であると思いますし、また、先ほど戸別訪問ということもございました。アウトリーチ、訪問型のこういった支援が大変に重要になってくるかと思います。ぜひ、このような観点で、引き続ききめ細やかな支援をお願いしたいと思います。

 また、ちょっと御紹介させていただきたいと思いますが、これは全国国公立幼稚園・こども園長会から伺った話でございますが、子育てのための教材、パンフレットをつくりまして、例えば子供たちとどのように遊べばいいのか、かかわればいいのか、そういったことを保護者の皆様にアドバイスするという取組をしていただいております。ですので、こういった子供とのかかわり方、子育て支援ということで、いろいろな方々から御協力をいただきながら、親への支援ということもしっかりと進めていく必要があると思っております。

 そういった意味で、文科省もそうですし、また、先ほども申し上げました法務省、しっかりと連携をとっていただいて、社会全体で子育てを応援していく、子供たちを守っていくという体制にぜひとも引き続き取り組んでいただきたいと思いますので、要望ばかりで恐縮ですけれども、よろしくお願いしたいと思います。

 その上で、具体的に、児童相談所の体制強化ということで、次の質問に入らせていただきたいと思います。

 野田市の事例も含めまして、児童虐待の大きな課題といたしまして、連携ということが取り上げられるかと思います。

 児童相談所や学校に虐待の事実を把握されたことをきっかけに、ほかの地域へ転居を繰り返すという親も多く、そういった場合、転居元の児童相談所は転居先の児童相談所に引き継がなければなりませんが、その際、虐待の危険性が十分に共有されず、対応がおくれ、取り返しのつかない事態となることが懸念をされております。全国の児童相談所間のみならず、市区町村との間での情報共有も、基本的に今、紙ベースで行われると伺っております。これでは、短期間で転居を繰り返すような緊急性の高いケースなどには迅速な対応ができないと思っております。

 そこで、私たち公明党としましても、二月に取りまとめました提言の中にも、全ての都道府県、市町村で情報共有システムを速やかに構築して対応していくべきだということで盛り込ませていただいておりますが、この件につきまして、厚生労働省の見解をお伺いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待の対応に当たりまして、支援の対象としている家庭が転居する際に、自治体間のケースの引継ぎをしっかりする、これは必要不可欠でございます。それをより効率的に引き継ぐためには、ICTを活用したシステムを使用することが有効だと考えております。

 このため、今年度の予算におきまして、まず今年度でございますけれども、同一の都道府県内での児童相談所と市町村の情報の集約や共有を可能とするようなシステム構築、これを支援するための必要な予算、費用を計上しております。まずは、それが財政面でございます。

 それから、このシステムで扱う情報の項目も含めて、国が標準的な仕様をガイドラインとしてお示しする予定でございます。これによりまして、今後、都道府県等で構築されるシステムの標準化を図っていく、そういうことを想定いたしております。これが今年度の取組でございます。

 これは、そういう意味では、県内の各市町村との県内での情報共有というところがまずベースです。さらに、この情報共有システムを活用いたしまして、都道府県間で情報共有を行うことも検討すべき課題というふうに考えております。そういう意味では、一定の標準仕様を示すわけですけれども、その標準仕様をもとに県間の共有も可能にしていく、これが次の課題だというふうに考えております。

 これは次のステップでございますけれども、そういうことも視野に入れながら、より効率的に情報共有を行うことができるシステムの構築に努めてまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。段階的に取り組んでいただけるということでございました。

 やはり、今おっしゃっていただきましたが、運用に当たりましては、全国統一で、都道府県を越えても、また市町村をまたいだとしてもしっかりと対応できるように、国におきましてルール、ガイドライン、基準をつくっていただくということでございますが、いずれにしても、速やかな対応をお願い申し上げたいと思います。

 続きまして、児童相談所の体制強化ということで、政府は昨年十二月に決定しました児童虐待防止対策体制総合強化プランにおきまして、二〇二二年度をめどに児童福祉司を二千二十人程度増加するということで発表されております。

 今回の野田市の事案でも明らかになりましたが、一つの児童相談所が抱える児童虐待事案の件数は膨大でありまして、また複雑でもございます。そういったことから、特にまた大都市におきましても、十分な数の児童福祉司を確保できないという実態がございます。

 そういった中で、児童福祉司の増員を目指すということで、どのように人材を確保し養成していくのか、副大臣の方に御答弁をお願いしたいと思います。

大口副大臣 鰐淵委員にお答えをさせていただきます。

 今御指摘をいただきました新プランにおきまして、二〇二二年度を目指して二千二十人の増加、そして二〇一九年度には千七十人増加をさせていくということで今進めているところでございます。

 これによりまして、現在三千人の児童福祉司を二〇二二年度には五千人体制とすることによって、児童福祉司一人当たり業務量を、児童虐待相談及びそれ以外の相談、非行、養護、障害を合わせ五十ケース相当だった配置基準を四十ケース相当となるよう見直しを行い、児童福祉司の業務量軽減を図ることとしております。

 また、自治体における専門的な人材を確保するということを国としても支援するために、自治体の採用活動を支援するための補助を行うほか、採用のみならず、児童相談所における組織としての専門性を確保することが重要であると考えておって、積極的に児童相談所配属経験者の再配置、児童相談所OB職員の再任用等を行うこと、また、個々の児童福祉司等が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルで人事配置を行うことなど、自治体で工夫が進むよう周知をしていきたい、さらには、日本社会福祉士会等の専門職団体に働きかけを行ってまいりたい、こういうふうに考えております。

 専門性の向上につきましても、本法律案に、児童福祉司及びその指導を行うスーパーバイザーの任用要件の見直しを盛り込んでおりますし、また、今年度の予算におきましては、平成二十八年度改正により義務づけられた児童福祉司の任用後研修等の実施費用の補助を継続するとともに、児童相談所職員等の研修センターを全部一カ所から二カ所に拡充する、国が主催するブロック単位の児童相談所職員への研修の開催といった方策を講じ、資質の向上を図ってまいりたいと思います。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 今後、数と質の確保ということで、大変に大きな重要な課題になってくるかと思います。現場の皆様の声を伺いながら着実に進めていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 また、今回の法改正の中で、児童相談所が措置決定やそのほかの法律関連業務について常時弁護士による助言、指導が受けられるように、都道府県には弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うことになります。この件につきましても、本会議におきまして富田議員の方から、弁護士の積極的な関与につきまして質問がございました。

 特に、職員が判断に迷うとき、また威圧的な態度で迫られたとき、そういったときに後ろ盾になる弁護士がいらっしゃることによって、法に守られた中で対応できるということで職員の皆さんも安心して対応できると思いますし、また実際に子供たちを守るという、そういったことができるかと思います。

 また、今回の野田の事件を受けまして、学校現場、教育現場の方からも御意見をいただきました。

 私たちは、児童虐待やいじめ、不登校に対応する知識がまだまだ足りない、また情報も足りない、そういった中で、虐待やいじめなどに対応するに当たって相談できる窓口が身近にあるといいということで、ぜひとも、例えば教育委員会に窓口を設置して、そこに弁護士にいていただいて相談ができるような、そういった体制もつくっていただきたいということで、学校現場からもこのような声をいただいております。

 特に学校現場におきましては、いじめや虐待、さまざまな問題も抱えておりますし、法律の知識が必要になってくるかと思います。学校におきましては、いわゆるスクールローヤーということになるかと思いますが、こういった弁護士の方の役割、必要性も強く感じているところでございます。

 児童虐待防止に向けまして、弁護士の関与が大変に重要と考えますが、厚生労働省と文科省にそれぞれ御見解、お取組をお伺いしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 この間のさまざまな事件を踏まえますと、御指摘のとおり、例えば威圧的な保護者への対応、それから措置決定、措置決定の際には家庭裁判所の関与があることもございます、そういったことなども踏まえますと、児童相談所におきまして法的な知見を踏まえた対応ができることが重要でございます。

 まず、二十八年改正児童福祉法におきまして、「児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行う」という規定があったわけでございますけれども、今回の改正では弁護士の関与をもう少し濃密にしております。

 具体的には、法律に関する専門的な知識経験を必要とする業務について、「常時弁護士による助言又は指導の下で適切かつ円滑に行うため、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行う」、こういう規定に改正しようということでございます。これは、児童相談所におきまして弁護士から日常的に法的な助言、指導を踏まえた対応をとるための体制整備、こういったことを想定しておりまして、これによりまして体制整備が促進されるものというふうに考えております。

 また、本年三月の関係閣僚会議の決定におきましては、今後、弁護士に係る体制整備に必要な財政支援等の拡充、こういったことを盛り込んでおります。

 こういったことも踏まえまして、今後、児童相談所において法的知見を踏まえた体制整備がより促進されるよう努めてまいりたいと考えております。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員から、スクールローヤーについての御指摘をいただきました。

 学校が、虐待やいじめ等の児童生徒を取り巻く問題について、弁護士に相談をし法的なアドバイスを受けることは有効であるというふうに考えております。

 文部科学省では、法律の専門家である弁護士が、その専門的知識経験に基づき、学校における教員からの法的相談に対応する体制の整備や、法的側面からのいじめ予防教育に関する先進的な取組を開発するため、いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究を現在実施しております。

 具体的には、虐待やいじめ等の児童生徒を取り巻く問題への法的な助言、法的側面からのいじめ予防教育、いじめ問題への法令に基づく対応状況の確認を行い、調査研究結果の施策への反映を通じて虐待やいじめ等の諸問題の効率的な解決等に資することを目指すものであります。

 文部科学省といたしましては、虐待事案におけるスクールローヤーの活用が期待をされていることに鑑み、調査研究の成果も踏まえつつ、日弁連等とも連携協力の上、適切に対応してまいりたいと考えております。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 それぞれ、弁護士の関与ということで御答弁をいただきました。言うまでもありませんが、いずれも重要なことは、ただ単に問題やトラブルを解決すればいいということではないと思いますので、現場のことをよくわかっていただいている、また子供のための対応をしてくださる弁護士の方が大変に重要になってくるかと思います。ぜひともそういった点も注視していただいて、弁護士の方にかかわっていただくということで、お取組の方よろしくお願い申し上げたいと思います。

 では、幾つか質問を用意していたんですが、申しわけありません、ちょっと時間がなくなりましたので、最後、大口副大臣に質問をして終わらせていただきたいと思います。

 今回の事案の一つの課題ということで、先ほども、連携ということで、児童相談所間の連携についての質問をさせていただきました。

 最後に伺いたいのは、児童相談所また学校そして警察、こういった連携がどうだったのかということで、しっかりと今回のことも含めて総括をしていただいて、二度とこういった事件が起こらないような取組、この連携についてしっかりと総括をしていただいた上で今後どうしていくのか、これが大変に重要になってくるかと思います。このことにつきまして、最後、副大臣の方に御答弁をお願いしたいと思います。

大口副大臣 昨年三月に五歳の結愛ちゃんが児童虐待により亡くなったことを受けまして、児童虐待防止について政府が一丸となって取り組むため、昨年七月に緊急総合対策を取りまとめました。それにもかかわらず今回のような事案が繰り返されたことはまことに残念であり、厚生労働省といたしましても事態を深刻に受けとめております。

 このため、本年二月と三月の関係閣僚会議において、児童虐待に係る情報について、学校及び教育委員会に開示の求めがあった場合に児童相談所等と連携して対応すること、学校及び教育委員会は、保護者の威圧的な要求に対して児童相談所、警察等と共同して対処することなど、児童相談所と学校、教育委員会、警察の連携強化に係る内容を盛り込んだ対策を決定したところでございます。

 また、本法案には、学校の教職員や警察官に対する守秘義務の規定を盛り込むとともに、関係機関との連携を妨げるものではない旨を明確化し、積極的な連携強化につながるようにしております。

 厚生労働省と文科省で、今、この虐待防止について共同のプロジェクトチームも設定して、浮島副大臣と私で対応しているところでありますけれども、しっかりこの三者間の連携を図ってまいりたいと考えております。

鰐淵委員 時間となりましたので終わりますが、二度とこういったことを起こさない、その強い決意で最後まで取り組んでまいりたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党・無所属フォーラムの阿部知子です。

 本日は、児童福祉法並びに児童虐待防止法、そしてDV防止法の改正、与党案、野党案それぞれに、どうすれば子供たちの不幸な事案を防げるかということで提出をされまして、熱心な御論議のことと思います。

 早速質問に入らせていただきます。

 大臣にまず冒頭お伺いしたいと思うのですが、大臣のお手元に、いわゆる社会的養護全般にかかわる日本の予算の対GDP比というものが出てございます。

 これは、平成二十六年度の厚生労働児童福祉問題研究事業において発表されたもので、実は厚労省みずからのものと思ってよいと思いますが、ここに挙げられた国々、これは半分しかちょっと入れてございませんが、日本、英国、ドイツ、デンマーク、スウェーデン、ルーマニア、アメリカなどと並べて見ますと、日本の社会的養護の費用の格段の低さ、桁が二桁違うということが浮かんでくると思います。数値で言うと、この時点で〇・〇二%。ちなみに、ドイツで〇・二三、十倍、デンマークで〇・七五、三十倍ほどであります。もっと高いところでは、アメリカはちょっととり方が違いますが、二・数%となっております。

 そういたしますと、大臣、そもそも、ここにいるみんなは熱心に社会的養護を充実させようと思って審議に臨んでいるわけですが、この大枠はいかに何でもひどい。私は、日本は子供を大事にしない国なんだなと、はっきり言って、この数値を見て思います。

 実は、平成二十六年が対GDP比で〇・〇二%、予算にいたしますと千三十二億。これは、平成二十六年の指標になったものを挙げて千三十二億。そして、令和元年が千六百九十八億で、対GDP比は〇・〇三%と、〇・〇一上がった。これは、私が思いますに、塩崎大臣は社会的養護に大変熱心でありましたから、熱心なところで上がって〇・〇一%。でも、私は評価したいと思うんです。

 根本大臣に冒頭お願いですが、やはりこの費用では、この予算では、至るところで子供たちの問題、特に社会的養護、今、子供たちを育てる家庭の力も落ちてきている、どうしても社会的養護が不可欠であるという中で、圧倒的に不足ですし、破格に充実されねばならないと思いますが、冒頭、御答弁をお願いいたします。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

根本国務大臣 御指摘の国際比較データについては、各国の社会的養護関係予算の定義が異なることから単純に比較することは困難であるということもありますが、これらのデータの比較の中で、今御指摘のとおり低水準にあるのは事実であります。

 厚生労働省としても、保護者による養育が困難又は適当でない子供が安心して適切な養育が受けられるよう、社会的養育の充実は極めて重要な課題だと考えています。

 今年度予算においても、里親家庭の相談支援に関し、子供と里親家庭のマッチングなどを行う民間の里親養育包括支援機関、民間フォスタリング機関に対する補助を大幅に拡充いたしました。また、児童養護施設における小規模かつ地域分散化された生活単位における養育体制の充実、あるいは施設職員のプラス一%の処遇改善を始め、社会的養育関係予算の充実を図っております。

 今後も、全ての子供が健全に養育されるよう、財源の確保とあわせて社会的養育のさらなる充実に頑張って努めていきたいと思います。

阿部委員 私は、この数値を見たときに、ただ低いじゃなくて、超低い、格段に低い、破格に低い、とんでもないと思っていただかないと、いろいろな対策は進まない。本当に今、日本が少子化だと言われ、にもかかわらず、子供たちが虐待で命を落としていく、この状況を何とか変えたいと強く大臣にも自覚していただきたいと思います。

 そして、もう一つの特徴ですが、各国の社会的養護に係る機関というところも見ていただきますと、一つの大きな特徴として、やはり市町村の役割、特に北欧諸国を見ていただきますと、市議会の中に子ども・青少年委員会が設けられたり、あるいは子どもの福祉の委員会が自治体に設置されたりということで、地域の大事な宝としての子供たちをどう守るかというところに力点を移しております。

 実は、日本の子供たちの社会的養護政策においても、平成二十八年度の改正で、それ以前も、さかのぼる十年ほどの間に、例えば平成十七年からは児童虐待相談が市町村窓口で行われるようになったり、平成二十八年度、子育て世代包括センターができたり、また二〇二〇年度までには全市町村に必置とされる支援拠点ができたりということで、シフトはしておりますが、さはさりながら、私は、さきの対GDP比のあの低い予算では、とても市町村もこれを担っていけないと思います。大臣にこの点の認識を伺います。

根本国務大臣 児童虐待については、発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速的確な対応、被虐待児への自立支援を切れ目なく一連の対策として講じていくことが重要であります。特に、発生予防、早期発見や児童虐待発生時の迅速的確な対応においては、市町村も極めて重要な役割を担っております。

 このため、昨年十二月、新プランを策定し、二〇二二年度末までに、子供や家庭に対する相談支援を行う市町村子ども家庭総合支援拠点を全市町村に整備するとともに、要保護児童対策地域協議会の進行管理事務を担う調整担当職員が全市町村において常勤となるよう配置を進めていくことを決定いたしました。

 これに基づいて、市町村の体制強化を図るため、今年度から地方交付税措置を講じております。引き続き必要な支援に努めていきたいと思います。

 このほか、本年三月の関係閣僚会議決定に基づいて、市町村における訪問支援や地域における支援体制の構築を進めるための取組について、概算要求に向けて検討を進めていきたいと考えています。

阿部委員 私が申し上げたいのは、交付税措置だけで足りるのかということなのです。後ほど、中核市における児相の設置の問題にかかわって、この問題を再度取り上げさせていただきますが、例えば安倍総理は、待機児童問題では、いわゆる、産業界に拠出金をお願いして待機児童をなくすための予算というので組んでいくわけです。これはうまくいっておりませんけれども、正直なところ、企業主導型保育事業は、でも、私は、そこにあるものは、緊急性を持ってそこにきちんと枠づけした予算をつくらないと、子供の虐待事案への対応はできない、特に、後ほど申し上げます児童相談所はそうだと思いますので、また別途取り上げさせていただきます。

 次いで、子供の意見表明ということについてお尋ねをいたしますが、実は、今回、心愛ちゃんの事件がございましたが、それに先立って、昨年の三月、結愛ちゃんの事件がございました。五歳の女の子が、もうお願い、許してという言葉を残して亡くなっていった。そして、今度の心愛ちゃんの事件が、お父さんに暴力を振るわれています、先生助けてという言葉を残して亡くなられていった。

 この二つから私たち政治が受けとめるべきは、子供の声を受けとめられる仕組みをどうつくっていくかということであろうかと思います。

 そこで、お尋ねをいたしますが、一九九四年に批准された子どもの権利条約にのっとって、実は平成二十八年度の児童福祉法の改正では、子供の権利にのっとるという言葉と、子供の意見の表明の尊重ということが初めて法文上でうたわれました。以降、平成二十九年八月、新しい社会養育ビジョンにおいても、また平成三十年の子供の死亡事案の検証報告においても、子供の声をどうやって受けとめていくかということの重要性が指摘されておるところであります。

 さて、政府にあっては、この子供の意見表明ということにどのように対応していくのかということで、現時点での対策を教えてください。

根本国務大臣 子供の意見表明の尊重という観点から、あるいは子供の意見を受けとめるという観点で、子供の権利擁護の仕組みを構築するために、昨年度、都道府県等が、児童福祉審議会を活用して、子供の意見表明等の仕組みを設けるためのガイドラインを作成する調査研究事業を行いました。

 このガイドラインは、都道府県などが、児童福祉審議会で子供が意見表明することができる仕組みが推進されるよう、児童福祉審議会のもとに部会を設置し、子供の意見表明を支援する支援員を配置すること、子供の意見について支援員が聞き取りを行い、子供の意見表明をサポートすることなどのモデル的な枠組み例を示したものとなっております。

 今後、自治体において参考となるように、ガイドラインを周知し、取組を支援していきたいと考えております。

阿部委員 大臣のお手元の資料二枚目を見ていただきたいですが、これが、今大臣御答弁の、児童福祉審議会を活用した子供の意見表明モデルであります。幾つかのモデルがあるのですが、子供から直接に行くものとして、電話やはがき等で児童福祉審議会に意見表明をすると。

 ちょっとあり得ない。子供が児童福祉審議会にお手紙を書く、結愛ちゃんや心愛ちゃんの声がこういう形で届くということは、私はちょっと甘過ぎると思います。こういう児童福祉審議会を活用するとしても、子供たちの声をどのように拾っていくかということで、もう一つも二つも工夫と制度が必要だと思います。

 そこで、大臣にお伺いいたしますが、一九九九年に、兵庫県の川西市というところにおいて、子どもの人権オンブズパーソンという制度が市の条例によってつくられました。オンブズパーソンですから、行政機関とは独立した第三者機関として、子供たち、例えば学校のいじめ、あるいは場合によっては虐待ケースもあろうかと思いますが、そういうことについて調査権限も持ち、あるいは是正勧告することも提案できるという制度で、現在、日本全国で三十四余りの自治体に設置をされております。

 私は、この児童福祉審議会を活用するとしても、ここに必要な問題が身近なところから上がり、学校のいじめなどもそうですが、そこのどこに問題があるかというようなことで、何を是正すればいいかということも含めての、こういうオンブズマン制度との連携ということが具体的で現実的だと思います。大臣はいかがお考えでしょう。

根本国務大臣 今、川西市の事例の御紹介がありました。

 子供の意見表明権を保障する仕組みについては、平成二十八年児童福祉法改正の附帯決議で、「自分から声を上げられない子どもの権利を保障するため、子どもの権利擁護に係る第三者機関の設置を含めた実効的な方策を検討する」とされております。

 また、昨年行われた、社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおいて、全ての子供の意見表明権を保障するアドボケート制度の構築を目指すべきだという議論をいただきました。

 このワーキンググループの中でいろいろと意見が出ておりますが、例えば、乳幼児も含め子供の声を代弁し届け、子供の最善の利益を実現するアドボケートが必要、あるいは児童福祉司とは別の独立した第三者性のあるアドボケーターが必要等々、さまざまな意見がありました。

 本法案の附則において、児童が意見を述べることができる機会の確保、当該機会における児童を支援する仕組みの構築などのあり方について、施行後二年を目途として検討することとしております。

 このような仕組みの一つとして、今委員からお話のあった、御指摘のオンブズマン制度なども考えられるものと理解しておりますが、いずれにしても、今後は、海外における事例を含む先行事例の研究を行うなど、有識者による検討の場を設け、まずは、施設入所の措置等の対象となっている児童の意見表明を支援する仕組みの構築について検討していきたいと思います。

阿部委員 オンブズマンとかオンブズパーソンとかアドボケートとか、みんな横文字なので、私は、大変わかりにくいし、混乱していると思うんですね。

 オンブズマンというのは、大臣の手元の三ページ目にありますけれども、子供の人権問題について相談ができるということで、そこから、オンブズパーソンが独自に入手した資料等々に基づいて調査もできて提言ができるという機能であります。大臣がおっしゃったアドボケートは、傾聴、聞く、寄り添って聞く、子供の声に耳を傾ける、これも重要な機能なのです。両方要るということなのです。

 大臣が今、アドボケート制度について御答弁をくださいましたので、実はこの制度は、例えば二〇〇二年、イギリスでは、各自治体に、自治体とは別途、第三者機関としてアドボケート制度を置いて、例えば社会的不利益を抱えた子供たちの意見を常に聞くための仕組みをつくる、傾聴する仕組みをつくるということで法定化されております。

 ちなみに、自民党の皆さんの児童の養護と未来を考える議員連盟並びに私どもも参加した超党派の児童虐待から子どもを守る議員の会で、二〇一九年の二月に大臣のところに申入れに参りました。この申入れは、今おっしゃったように、このオンブズマン制度も法定化していただいて、例えば各自治体に置くということを法定化していただくということであります。

 私は、亡くなられた結愛ちゃんや心愛ちゃんが今一番求めるものはこれなんだと思います。とにかく声を聞いてと。私たちは、逆に、この二人の死によって重大なことに気づかされ、そういう機能が身近にないんだということを改めて突きつけられていると思います。

 何度も申しますが、超党派の議員連盟で伺いました。自民党内でも必要性の自覚が強くおありなところでございますので、モデル事業云々ではなくて、早急にやれるところからやる、加速する。

 オンブズマン制度も、先ほど申しましたように、三十四の自治体が既に取り組んでおります。もう二十年になります。しかし、これもまだまだ、全国の自治体数に比べれば。

 とにかく、これから児童虐待の主戦場が市町村であると考えた場合に、例えば児相に送致されたお子さんに、児相の中ではなくて別途声を聞く場がなければ、その子は本当の心を隠したまま暮らしていくことになるかもしれないということであります。

 オンブズマン制度もあるいはアドボケート制度も早急に必要とされているということで、大臣には、その認識を再度確認させていただきます。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

根本国務大臣 委員の御紹介のあったイギリスのアドボケート制度、二〇〇二年に導入された、私も多少そこは勉強しておりますが、子供の意見表明権を保障する仕組み、これは、本法案の附則において、施行後二年を目途として検討することとしております。

 先ほども答弁をいたしましたが、今後、海外における事例を含む先行事例の研究を行うなど、ちょっと繰り返しになりますけれども、昨年行われた、社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおいても、全ての子供の意見表明権を保障するアドボケートの制度を構築を目指すべきということも議論をいただいておりますし、委員の御指摘のオンブズマン制度なども考えられ得るものと理解しております。

 いずれにしても、海外における先行事例の研究を行う有識者による検討の場を設けて、まずは、施設入所の措置等の対象となっている児童の意見表明を支援する仕組みの構築について検討していきたいと思います。

阿部委員 私が申し上げるのは、施行後二年では遅過ぎるんです。三十二年に施行して、あと二年、今から五年ですよ。どれだけ子供が死ぬでしょう。

 それから、先ほどの死亡事案の分析の中でも指摘されていることなのです。やれるところからやっていく。モデル事業ばかりやっていて、子供を死なせないでほしいんです。

 私は本当に、大臣は先ほど御答弁になりました、児童相談所の中に、そういう中にというか、入る子供たちにそういう機能の窓口をつくってあげてもいいんです。やれるところからやれば、その分、子供たちが助かると私は思います。

 引き続いて、児相や養護施設に関連する性暴力についてお伺いをいたします。

 大臣、めくって四ページ目を見ていただきたいですが、これは、そもそも児童虐待相談の対応件数及び虐待相談の内容という厚生労働省が出しておられる資料で、平成二十九年度で十三万三千七百七十八、そのうち性的虐待は一・一%となっております。

 私は小児科医でありますので、子供たちのいろいろな相談に乗ってもおりますが、私の実感から見ると一桁も少ない。なぜ、報告される件数の中でこれだけ少なくなってしまうのであろうか。

 例えば、大臣も御承知のように、今度の心愛ちゃんのケースでも性虐待が潜んでいた。あるいは、十九歳の女性が父親から、準強姦罪という形で訴えたけれども、これが無罪になったけれども、中学時代から、もっとさかのぼればもっと前かもしれない、性虐待を受けていた。潜在化し、わかりにくく、そして、子供たちには魂の殺人と言われるような傷を残すことであります。

 まず、この集計の仕方について、私は、なぜ性的虐待はこんなに少ないんだろうとずっと疑問に思っておりましたが、伺いましたところ、主な相談原因ということで、例えばDV、心愛ちゃんもそうですが、物理的な暴力の方が先に来ればそちらに集計される。性虐待の有無と普通に聞いただけじゃわからなくて、十回も二十回もその子に添って聞いていかないと出ないものであります。

 こういう集計のとり方をひとつ改めていただけまいか。やはりおかしいと思う。実態が浮かばない。いかがですか、大臣。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、この相談対応件数でございますけれども、主たる要因ということで一つ書いていただくということでありまして、そういう意味では、御指摘のような複合的なものについては、身体的なものの中にそういうものも含まれているという可能性がある統計でございます。

 この統計のあり方でございますけれども、これは、御指摘の問題意識もよくわかるところでございますけれども、簡素効率化とか事務負担という問題もございますので、どのような対応が可能か検討をさせていただきたいと思います。

阿部委員 政府がとる統計というのは非常に重要です、統計不正問題もありましたけれども。そこで、問題として対策しなきゃいけない基礎になるわけです。

 私が先ほど来、また大臣もその方向に御意見がありましたアドボケート制度などがあれば、そのことによって、子供はそこで、ぽつりぽつりと子供に起こったことを話してくれるということもあります。

 私は、今の体制の不備がこうした結果しか出していない。そして、加えて、そのことが何に結びついているかというと、先ほどの、いわゆる社会的養護施設、児童養護施設や一時保護施設あるいは児相などで、数多く報道されております、施設内の性虐待だと思います。

 三重でございました。三重県の、二〇〇八年から二〇一六年まで、県下の施設で一体どれくらいの性虐待があったろうということで、九年間で百十一件という報告をなさいまして、それが昨年の四月のことでした。

 それを受けて、厚生労働省が養護施設等々を調査されました。回答率が七十数%だったと思いますが、七百六十三施設から回答を得て、例えば六百八十七件の性的な子供同士のケースがあったとして、その多く、八割が児童養護施設で起きていて、その年齢などを見ましても、十歳未満が三五・九%と多く、また十四歳から十六歳が一七・三%だったと。

 もちろん、性被害というと、例えば思春期に性的ないろいろな変化が起きてということに思われがちですが、実はそうではなくて、子供自身が、いろいろな虐待経験の中で、自分が被虐待児であった場合に、とりわけ性虐待あるいは面前DVなどに直面した子供は、今度は支配の形態として性暴力に及ぶということでございます。

 私は、政府の行った調査、ここに、子供間の性的暴力の事案への対応という厚生労働省子ども家庭局の通達が出ておりますが、大臣のお手元にもございます。裏には結果の新聞記事もございますが、これを見ていると、どう施設内で対応するかに力点が置かれて、その子供たちの背景、なぜそうなってしまったかということに言及されたり、あるいはその声を聞く仕組みが整っていないと強く思います。子供たちを管理していくためのものではなくて、子供たちを人間的に、成長をサポートするためのものでなければ私は性被害もとどまらないと思いますが、大臣の御認識を伺います。

根本国務大臣 まず、御紹介をいただきました調査研究、これについては、今年度も、得られたデータを活用して分析等を行って、問題発生の潜在リスクの予測や予防策など、個々の現場で取り組むことのできるマニュアルやチェックリストなどを策定することとしております。

 また、子供が安心して意見表明できる環境を整えること、これは、委員からもさまざま御指摘がありました。これは重要であると認識しておりまして、昨年四月に、都道府県や施設等に対して、意見箱や第三者委員に相談する仕組みがあることなどを改めて子供たちに周知していただくよう依頼をいたしました。

 さらに、先月二十六日のこの調査研究結果の公表に合わせて、性教育の実施など、今回の調査で聞き取った施設の取組事例を参考に、未然防止や早期把握を徹底すべきこと、あるいは、今御紹介がありましたけれども、事案を把握した場合の児童相談所や保護者への報告と、被害者に対する安全確保や専門的ケアを確実に実施すべきことを改めて周知いたしました。

 これらの取組を周知し、委員からもいろいろ今御意見、御指摘がありましたが、これからも、子供の意見表明の確保や、子供の間の性的な問題発生の未然防止を図っていきたいと思います。

阿部委員 私が大臣にお願いしたいのは、性虐待に加わった子と加わらなかった子、何が違うのか、リスクファクターとかを分析するのではなくて、全ての入所する子供たちに丹念に寄り添って、アドボケートしてその子の背景を聞いてあげるところからしか解決がないということであります。大臣にも御理解いただいていると思いますので、そのような手法を専らにしていただきたいし、そのために必要な仕組みとして、私ども野党で、性暴力被害者支援センターというものを、法案としてもう二年も前に提案しております。

 これは、医療機関も加わって、特に大阪のSACHICOという医療機関、ここには小さい子供向けのサチッコというのもございまして、子供の診察から、どういう状況にあったのというヒアリング、あるいは司法面接まで医療機関の中で、医療機関が加わりながらできる仕組みでございます。

 私どもが性暴力被害者支援センターを求め続けても、法案の審議もされず、加えて、県に窓口があるというふうにいつも御答弁されます。しかし、子供は県の窓口に言っていくことはできません。例えば、児相で、そういうことを疑われた子供さんをどこに連れていって、診察したり聞いたり、それから気持ちのケアをするかということにおいて、子供の権利センターあるいは性暴力被害センター、医療機関に伴う者が必要です。

 子供は、自分の身体に極めてネガティブな、自分はだめなんだ、例えば傷つけられた、汚れたんだと、自己否定的になってまいります。自己肯定感を持てない子供になれば、当然、その後も、生きていくのが本当に大変になります。

 ぜひ、性暴力被害者支援センター、与党もです、前向きに取り組んでいただきたい。これだけ性暴力が横行して、恥知らずの国になると思います。大臣の御答弁を伺います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと、性暴力被害センターについてのコメントは、所管の問題もございますので、差し控えさせていただきたいと思いますけれども、子供の権利擁護センターといいましょうか、虐待を受けた子供に対する調査などの面接と医療的な診察、これを一緒にするというようなことについては、そういう事例もあるということは承知をしております。

 特に、性犯罪に遭ったお子さんなど、心に深い傷を負った子供の支援に当たりましては、被害児童にとって二次被害とならないような十分な配慮や適切な治療が重要だというふうに考えております。

 さまざまな子供の心の問題、あるいは被虐待児の心のケアにつきましては、今の厚労省の枠組みでいいますと、子どもの心の診療ネットワーク事業というものがございます。これは、都道府県等が指定する拠点病院を中核といたしまして、地域の医療機関や保健所、児童相談所、学校等の関係機関が連携して、地域における子供の心の問題等に、医療対応も含めてですけれども、対応する体制の整備ということでございます。

 こういった取組を進めますとともに、御指摘のような先進的な事例も含めまして、子供の心理的負担の軽減の観点から、今後、どのような取組ができるか、研究してまいりたいと考えております。

阿部委員 性暴力被害者支援センターが厚生労働省にかかわらないわけはないのです。法案は内閣に出しておりますが、医療機関が関係いたします。

 そして、大臣に、今ほどの御答弁が厚労省の認識であるならば、二つの機関を視察に行っていただきたい。一つは、伊勢原にある子どもの権利擁護センター。ここは、性被害のお子さんの身体的な診察と、司法面接と、寄り添うアドボケートをやっておられます。あと、先ほど御紹介した大阪のSACHICO。ここも、性暴力被害センターとして、日本の中で一番充実をいたしております。

 私は、そういう取組がきちんと日本の行政の中にないことが、これだけ子供たちの性暴力を潜在化させ、救われない状態をつくっていると思いますので、お時間、多忙と思いますが、二つ、よろしくお願いいたします。御答弁はもう、うなずいていただきましたので、結構です。

 次に、中核市における児童相談所の設置についてお伺いをいたします。

 実は、平成二十一年に地方分権一括法が成立する以前は、児童相談所というのは、人口五十万人当たりに一カ所という目標をもって設定されておったそうであります。しかしながら、平成二十一年の段階で実は六十万人に一カ所、平成三十年の段階でも六十万人に一カ所。

 すなわち、この十年間は、地方分権一括法以降、そういう基準を置かないでやってきたけれども、現状においてはほぼ進んでいないということで、今度は参酌すべき基準として法案に出ておりますが、それとて九年後であります。法施行が三十四年、令和四年から五年たったらもう九年、今から十年後。

 私は何度も申しますが、もうスピードアップしないと間に合わない。大臣、これは、いかに何でも私はひどいと思います。

 例えば、地方分権一括法の中で、命にかかわるような緊急の事態というのは分権ということを上回るというふうなこともきちんと述べられておると私は思います。大臣のお手元の最後の資料ですけれども、国民の生命身体への重大かつ明白な危険に対して国民を保護するための事務であって、全国的に統一して定めることが必要とされるものは、いわゆる分権法以降も残るんだという理解でございます。

 にもかかわらず、分権法はできた、そして枠も外して何十万人に一つというのもなくなった、でも、全然、一切と言っていいほど。中核市は、ついせんだって、三つ目が明石市に四月一日からできました。奈良市も準備をしていただいている。でも、まだまだです、正直言って。こうした事態について大臣はどうお考えか。

 私は、いかに何でも、基準をつくるのが施行後五年なんていうのじゃとても待っていられないと思いますし、そもそも、塩崎大臣のときの御答弁、平成二十八年段階で、中核市と特別区は五年以内に全て設置できるようにサポートしていかなければいけないと。二十八年で五年だから三十三年ですよね、どう見ても。令和三年ですよ。でも、全くこのことについて前向きじゃないと思いますが、大臣の御答弁をお願いします。

根本国務大臣 今委員が御紹介いただきましたように、この児童相談所、ふえてはきていますが、ただ、全国平均すると、現在、人口約六十万人に一カ所設置されているという状況にあります。

 このような状況、あるいは児童相談所の管轄区域が大き過ぎることによってきめ細やかな対応を行うことが困難になっているのではないかということなども踏まえて、本法案において、児童相談所の管轄区域について、地理的条件、人口、交通事情その他の社会的条件について政令で定める基準を参酌して都道府県が定めるものとする旨の規定を新設することにいたしました。

 具体的な基準設定、これは今後、地方公共団体等とも協議しながら検討していく予定でありますが、いずれにしても、虐待予防、早期発見から虐待発生時の迅速的確な対応を切れ目なく行うとともに、一つ一つのケースに対して一層きめ細やかな対応をとることが可能となるように検討していきたいと思っております。

阿部委員 大臣はそう御答弁されますが、設置は先送りされているだけなんですね。私は、もっと積極的な打つ手があろうかと思います。

 例えば、奈良市。今度できますが、児童相談所と一時保護施設を合わせると、大体施設だけで六億。それに対して国が半分の補助があるということですが、補助率のかさ上げだってできるわけです。だって、緊急なんですから。本当に、漠然とやらないで、やはり人と金なんです。大臣もおわかりと思います。

 あと、特別区。これは、つい平成二十八年の改正で置くことができるとされて、今進んでおるところであります。中核市は平成十六年から置くことができる規定で、進んでいない。地方財政が厳しいということが背景にあるし、人材が不足する。

 日本の中で、児童福祉司あるいは児童養護関連の人材育成は神奈川にあります子どもの虹の研修センター一カ所で、今度やっと関西に、明石市に拠点ができるということです。

 人材育成も急がなきゃいけない。お金の今のサポートの仕方が十分なのか、交付税措置だけでやれるのか。もっと大胆に切り込んでいかないと、子供たちの命があたら失われていく。大臣に覚悟を伺います。

根本国務大臣 中核市及び特別区における児童相談所の設置については、身近な地域で子育て支援から虐待対応までの切れ目ない一貫した対応につながるものであって、設置が進むように、地方公共団体と丁寧な意見交換を行いながら、必要な支援をしっかりと講じていきたいと思います。

阿部委員 母子保健との一体化が必要なので、やはり行政単位である中核市とかが持つことは極めて重要ですと申し添えて、質問を終わります。

冨岡委員長 次に、池田真紀君。

池田(真)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの池田真紀です。よろしくお願いします。

 質問に入る前になんですが、先ほど、十一時六分だったでしょうか、十六名しかこの部屋にいなかった。野党はそのうち五人、場外二人というような形で、今回、重要広範議案ということで、安倍総理入りの児童虐待防止法を選んだのではないでしょうか。

 結愛ちゃん、心愛ちゃんの問題、この国会でしっかりと前向きに、一歩でも二歩でも前に進めなければいけない本当に重要な法案だと私は思っています。与党対野党だけではなくて、中身を充実させなければいけないこの審議において、本当にだらけていると私は思います。

 まず、このことを今この会場にいらっしゃる皆さんが受けとめていただいて、そしてきちっと、もちろん与党だけではないかもしれませんが、でも、与党というのは閣法を出しているわけですから、もっと責任は重大だと思います。

 今回は本当にこの法案を前に進めるという強い覚悟で私は質問して向かってまいりたいと思いますので、全委員の皆さんにもお願いしていきたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 法案の中身というよりは、法案の前というか、法案全体の構図といいますか、これからの児童福祉においてどういう取組を行っていくのか、考え方そのもの、全体的なものを、きょうは大臣に考え方をお伺いしたいというふうに思っています。

 まず、資料二枚目といいますか、ぺらっとめくっていただいたところでございますけれども、こちらですが、児童福祉法、高齢者福祉法そして障害者福祉法と、過去、長い歴史の中での福祉法がありました。この変遷については大臣も御存じかと思いますのでこれは割愛いたしまして、児童虐待防止法が始まってからの三つの虐待防止法に関連して、虐待という観点からこの法律をちょっと見てまいりたいというふうに思っています。

 こちらは、まず、一番左にあります児童虐待防止法でございますけれども、二〇〇〇年の十一月に施行ということであります。さかのぼってみますと、一九五九年の国連の児童の権利条約といったものが採択をされてから三十年もたってからの日本の発効ということで、非常に遅い。

 この中で、虐待防止法が成立をする、施行をする前の段階でございますが、ここに私は着目をしています。一番下になりますが、保育園の入所でございます。一九九七年の児童福祉法改正によって、この条文は今読みませんけれども、二十四条が改正をされました。保育に欠くというところから利用契約制度、措置入所からの利用契約制度に変わったということの中で、多くの人たちが、児童福祉の中で保育といったものが、少しでも社会化に一歩近づいてきたのではないかというふうに思われていたところであります。

 しかし、現実は、保育園がいっぱいで、選ぶどころか、まだまだ選びようがない状況の中で、妥協しながらの保育入所ということに変わりはないわけではありますけれども。

 そういう中で、まず、高齢者の虐待防止法も行われました。こちらの方は、二〇〇六年ということで虐待防止法が制定をされています。

 しかし、こちらの方をごらんいただきますと、前段、やはり、この一番下の方ですけれども、介護保険法が二〇〇〇年ということでありました。二〇〇〇年の施行であります。この二〇〇〇年の施行のときに、介護保険法、今までの措置といったものから保険制度に変わった。普遍的に、多くの方々が利用ができる制度に移行したということではあります。

 この中で、法は家庭に入らずという原則を否定して、この虐待防止法といったものが一歩ずつ家庭内等に入っていったということではありますけれども、ここで一歩、高齢者においてはもう一歩進んだんですね。

 これは、施設内の虐待についても、家庭内だけではなくて施設内といったものも対象にし、そして、身体、性、心理的な虐待だけではなく、経済的な虐待も対象としました。そして、養護者の介護のストレスを解決しない限り高齢者に対する虐待を防止することはできないという認識のもと、加害者である養護者に対する支援を盛り込んだ総合的な虐待防止法制がここで始まったというふうに受けとめられるかと思います。

 こういう中で、もう一歩進んだのが、介護保険法の改正、こちらが二〇〇五年ですが、ここで何が起きたかといいますと、地域包括支援センターですね、それまでは在宅介護支援センターだったものが地域包括支援センターということで、介護予防といった概念が盛り込まれてきたということになります。これでまず高齢者。

 そして、障害者の虐待防止法に目を向けますと、そこからまた更におくれるわけではありますけれども、障害者制度の方においては、二〇一一年の十月の施行でございますけれども、その前に、福祉制度をさかのぼりますと、支援費制度、これは短い制度でありましたので余り文献もなかったり御存じない方も多いんですが、支援費制度が行われて、措置から契約というような利用契約制度が実行されたわけであります。その中で、その後、自立支援法になって、そして総合支援法というような経緯になりました。

 あわせて、権利条約の方はどうなるかということでございますが、権利条約の批准がまだだったんですね。このときの虐待防止法の成立に向けては、与野党それぞれが、私は現場の人間でおりましたけれども、国会の中では与野党の障害者の虐待防止法が衆議院に提出をされたと思います。二〇〇九年の七月にそれぞれ提出をした上で、国会の方が解散ということで廃案になって、また改めてのものだったと思われます。

 そのときに、議論がなされていた中身というものが、与党案では、高齢者虐待防止法と同時に、虐待通報義務があるということは、身体と生命に重大な危険が生じている場合に限定しているのに対して、野党案については限定していないという違いがありました。また、野党案では、虐待の定義の中に、正当な理由のない身体的拘束を含めているなどの違いもあったわけであります。

 しかし、先ほど申しました障害者の権利条約の批准という政治的な要請が急務であったということから、野党案をベースに修正を加えて、議員立法によって今般の障害者虐待防止法が成立したというふうに私も承知をしておるところであります。

 こういう中におきまして、いろいろな時代背景がある中で、大臣、ごらんになってどう思われますでしょうか。

 タイトル名をきちんと読みますと、高齢者虐待防止法、上の方の欄ですけれども、下線を引いておりますが、正式な法案名になりますが、高齢者虐待防止、高齢者養護者に対する支援等に関する法律と、法律名から養護者に対する支援というのがきちんと盛り込まれているのが、障害者、高齢者にあります。

 そして、ここの中には入っていないんですが、この間にDVの防止法も施行されたわけであります。DV防止法はこの高齢者の前でありましたけれども、DV防止法の正式な名称といいますものは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律ということで、防止と同時に保護という言葉が盛り込まれています。

 この三つの虐待防止法を並べる限りにおいて、児童虐待防止法、足りないものはありませんでしょうか。大臣はどう受けとめていらっしゃいますでしょうか。

根本国務大臣 まず、児童福祉の体系について申し上げたいと思いますが、児童が心身ともに健やかに育成されるよう、児童の福祉に関しては、児童福祉法に基づいて、保護者に対する支援を含めた基本的な行政サービスを提供しております。要は、児童福祉法という法律が、ある種、児童福祉の一般法としてある。こういう中で、この中には、保護者に監護させることが不適当であると認められる要保護児童に対するサービスも含まれております。

 しかしながら、児童虐待は、児童の心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、次の世代に引き継がれるおそれもあるということで、児童虐待の増加に伴い、特に個別の法律で対応すべきという意見がありました。

 そこで、平成十二年に、児童虐待の予防及び早期発見や児童虐待を受けた児童の保護などに特化した児童虐待防止法、これが議員立法により制定されました。

 高齢者虐待防止法あるいは障害者虐待防止法、そして児童虐待防止法、これはいずれも議員立法により制定されました。まさに国会の議論を通じて議員立法により制定されたものであります。

 この法律の中には、児童虐待を行った保護者に対する指導、助言などの必要な支援に関する規定も含まれておりますが、児童相談所において子育てに悩む保護者に対する相談に応じ、助言を行う等の一般的なサービスについては、これは引き続き児童福祉法に基づいて提供しております。

 その意味では、今後とも、児童福祉法と児童虐待防止法、これを両輪として、それぞれの法律が役割を発揮して、全ての子供の健やかな成長、発達や自立などが保障されるような社会づくりを進めていきたいと思います。

池田(真)委員 今、大臣の答弁の中で、必要な支援というものが、指導と助言というふうにおっしゃいました。まずここの認識も、ちょっと後での問いになりますけれども、若干認識が異なるのではないかなというふうに思います。

 児童福祉法が支援だということであれば、高齢者もそうなんですね。高齢者福祉法があります。介護保険法もあります。でも、介護保険法ができたからといって、高齢者福祉法はなくならないで、措置もまだ存在しています。実施件数がどのぐらいか、施行されていなかったとしても、実施されていなかったとしても、法律をなくすということはしていません。

 そして、障害者もそうです。障害者施策においても、障害者福祉法とさまざまな支援の法律があるわけです。

 でも、児童については、虐待を本気でなくすということであれば、同時に虐待防止には何が必要かという認識が今回大きく異なっているのではないかというふうに思いますので、今国会、ぜひ議論してまいりたいというふうに思っています。

 そして、次に質問させていただきたいと思いますけれども、きょう本当は、質問のレクといいますか問取りいただくときに、きょう添付をさせていただきましたけれども、野田市の事件の概要といったものがあって、これが正解とかということではなくて、どこに分岐点といいますか、一つ挙げるのであれば、たくさんあると思うんですね、こういうのは、分岐点、ここでああいう対応をとっていたらというのはたくさんあると思うんです。

 でも、一つ挙げるなら、皆さんそれぞれどこに着目しますかということで、政務官始め多くの政治的な立場の方々に、事務方ではなくていらしていただきたいということでお願いを申しましたら、きのうの問取りの中では、レクの中では、だめだと言われたので、きょうは残念ながら大臣だけということになります。

 これは、大臣にだけ聞きたいのではなくて、皆さんに聞きたかったんですね。これは正解とかではないから。要するに、人によって違う観点があるということなので……(発言する者あり)聞いてもいいですか。お答えいただけるようであれば。(発言する者あり)してないです。させてくれなかったんです。問取りにおいてはそうなんですね。

 非常に、問取り自体も、質問の順序を変えろと言ってみたり、先ほどの一番目の質問をするなと私は言われました。今大臣がおっしゃったとおりなんです。児童福祉法があるから、これは異なっていて当然なんですということを事務方から言われて、質問をさせないような事前レクだったんですね。非常に私は不愉快であります。

 きょうは無理に大臣にお答えいただきましたけれども、きょうは野田市のこの事件、どういう観点かということで、本来であれば全員の政治的な立場の、政務官始め大臣も含めてお答えいただきたいなと思ってレクをさせていただきましたが、ここは割愛させていただきます。

 結局、何を申したいかといいますと、着目点、いろいろ違うんだということなんです。専門職でもそうです。かかわりのぐあいにおいても違うし。そして、どういう専門職かによっても違うんです。なので、一つの答えを見出すときに、チームアプローチが非常に必要だということであります。

 今回の事案についても、要対協等ありましたけれども、こちらの方で見ますと、四月から十一月まで要対協の会議が行われていたにもかかわらず、一度も誰も訪問していないということに、私は非常に無念でなりません。これは、現場に行けばわかることが本当にたくさんありますから、誰もこの会議を了承しなければ前に進めなかったのかといいますと、これは、どこに専門職がいて誰が責任を担っていたのかということが全くわからない状況で、残念であります。

 その中で、一つ申し上げることができるのが、緊急一時の保護解除であります。

 緊急一時保護解除でございますけれども、平成二十九年において、児童入所、一時ですけれども、その後、保護解除の割合なんですが、先に小さい方から言いますが、里親が三・七%で、他の児相に移送したというのが四・五%、家裁への送致が〇・四%です。ごくわずか。その後に、何とか施設入所になったよというのが一九%、それ以外は、五二%が帰宅。その他の二〇%も、その他の内訳が非常に、中身を開いてみないとわからない状態だと思います。これは七〇%も帰宅というふうになっていますが、それが適切かどうかということも、ぜひ多角的な視点で検証する必要が私はあると思っています。

 私も多くの事案と向き合ってまいりましたが、一時保護解除の中で、本当に施設の都合で、長期休暇になるときに帰されるというようなことが、何も家庭の状況は変わっていない、そして、支援するサポートの用意もできていない、しかも、急なんですね。急に帰すという事案が本当に多くて、これは、帰ったらまたやられるだろうと。

 また、あるいは家庭ではないところ、遠い親族、一緒に住んだこともないような親族のところに送られるわけです。当然、送られるところは、過去に親御さんがDVを受けていたというようなことで、問題があるから同居をされていなかったような親族に送られる。これは、社会的地位があるから信用ができるというような、児相や警察の理由でした。こういうところから、私も、本当に言い合いをしながら、児童の保護といいますか、時にはその方向ではない方向に支援を決定していくということも多くあったわけですが。

 ということを考えますと、専門性とかをいろいろ検証する際に、この中身がどうなのかということをもっと丁寧に分析しなければいけないと思います。一方的な見方では絶対よくないと思いますよ。その後何があったのかということを含めると、多くは不適切だったと私は今思っています。

 これが一つ申し上げたい点でございました。大臣には、本当は質問というところで、先ほどの野田の案件でございましたけれども、次の質問で大臣に見解を伺いたいと思っています。

 まず、今回の法案の中に入っていますが、中に入っているといいますか、検討事項の中に入って先送りになっておりますが、こちらの新資格化の議論について大臣の見解を伺いたいと思っています。

 一年をめどに検討を加えるということでありますが、これは部会での説明のときに、児童福祉の専門職、技術を必要とする支援を行う者、社会福祉士とか精神保健福祉士があるけれども、児童に特化した資格のあり方をこの一年をめどに検討を加えるということがあります。

 これは、大臣の見解として、本当にこの一年の間に何をどう考えて進めようとしているのか、見解をお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 今委員の指摘になった国家資格化、これは、改正法附則の第六条で「政府は、この法律の施行後一年を目途として、」と書いてあります。今委員が御指摘のこの条文、こういう条文が改正法附則で位置づけられております。

 国家資格化については、昨年行われた社会保障審議会のもとに設置したワーキンググループにおいて、子供の福祉に関する業務を担う人材の専門性向上のため、子供の福祉に関する国家資格を創設すべきという御意見があった一方で、社会福祉士等を活用し、養成カリキュラムの充実で対応するべきなど、さまざまな御意見がありました。

 しかしながら、いろいろな議論がありましたけれども、人材の専門性の向上及び具体的な方策について検討すべきであるという点については意見が一致したところであります。今後、国家資格化も含めて、一定の年限を区切って、引き続き検討すべきと取りまとめをいただきました。

 このようなことを踏まえて、本法の附則においては、その施行後一年を目途として、児童福祉司等の資格のあり方を含めた資質の向上を図るための方策について検討することとしております。

 まずは、今年度行う調査研究において海外の事例や国内の実態の把握を行うとともに、施行後一年を目途として、具体的な方策について、関係者の意見も聞きながら検討していきたいと思います。

池田(真)委員 全体のビジョンが全く見えないんですね。しかも、実態とおっしゃいますけれども、実態の中では、児童福祉司の専門性といったところにいろいろな職種の専門性をぶち込んできちゃったんですね。

 例えば、介護保険でいいます地域包括支援センターでいえば、主任ケアマネがいて、ケアマネジャーさんですね、それとあとは保健師、あとは精神保健福祉士や社会福祉士というようなソーシャルワーカーということで、医療的な観点、そしてソーシャルワーカーと、さらには、法律、制度におけるマネジメントする専門職というような形で、多職種での支援といったものをきちんと構想した上でケアマネジャーの制度を構築いたしました。

 なので、この児童福祉司においても、専門職といったものがまだ特化されない、ソーシャルワーカーだけを大前提にしながら進めることもまずなかった段階で、何を資格化するのかというところで、これは一年でというのは非常に無理があるのではないかと危惧しております。

 多くの団体が声を上げていると思いますが、例えば、実際に、児相なりあるいは子供の関係、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー等に携わっている精神保健福祉士や社会福祉士の仲間から声が上がっておりますけれども、やはり複合的な課題を抱えるケースが多いんだと。

 要するに、子供だけの特化メニューをしたとしても、実際に、高齢者の問題や認知症の問題、さまざまなネグレクトの問題、あるいは年金の問題や、本当に多くの問題があるということで、これは多角的な、全般的なものが必要だとか、あるいは、心理学的な見地とあるいは社会福祉学的な見地における意見の相違といったものが常に混在をするわけなんですが、そういったところを十分議論した上で、点を面にしていく、こういった議論が必要ではないか。そして、治療モデルではなくて社会モデルへの支援が必要だというようなことも言われております。

 また、多くの人は、スクールソーシャルワーカーとスクールカウンセラーの意味がわからないみたいなこともありますし、社会福祉士や精神保健福祉士を持った中で、どういうソーシャルワーカーの位置づけとして働いているかという中でいいますと、例えばこの方は十年間スクールソーシャルワーカーをした専門職です、国家資格を持つ専門職です。年間百万円しか給料がない。要するに、通い型でありますから、副職をいろいろしている中でのスクールソーシャルワーカーでありますが。この中で、毎年三十万円以上の研修費用を独自で、自分で捻出をして、二百時間の自己研さんを毎年行っているというような、本当に熱意のある方だからこそ、今続けているような状況なんです。

 処遇改善というのは、給与だけではなくて、こういった実態も視野に入れて検証していかなければならないというふうに考えています。

 この中で、全体のビジョンと申しまして、本当はもうちょっと全体の構想というところで多職種連携の構想をちょっと御提案して、大臣の御見解をいただきたいと思ったんですが、もう少し先に、専門職の議論とか、恐らく見解の違いなんかもあるので、この先の国会で議論させていただいて、そして最後には提案させていただきたいななんというふうに思っておりますので、引き続きよろしくお願いをしたいと思います。

 そして、時間がないので、最後に一つの項目だけになりますが。

 今、この法案の中には書いてありませんけれども、体罰は加えてはいけませんよ、これは与野党ともに同じだと思います。懲戒権の見直しに向けて、全ての人が体罰を子供に与えてはいけないよというメッセージを発信するということは変わらないと思いますが、一方で、ニュース等で聞こえてまいりますのが厳罰化です。要するに、児童虐待罪の創設などを検討してはどうかというような研究者もいらっしゃいますし、関係者もいらっしゃるわけなので、ここについての実際の大臣の御見解もいただきたいというふうに思います。大臣自体、どう思われているでしょうか。

根本国務大臣 今の御質問は、厳罰化について私がどう考えるか、こういう御質問ですか。(池田(真)委員「はい」と呼ぶ)

 児童虐待罪を創設することについては、対象となる行為の外延が明確に規定できるかなどの観点から、慎重な検討が必要であると理解をしております。これは、所管するのは法務省ですから、法務大臣からも今私が申し上げたような考え方が表明されております。

 厳罰化の議論については私はそういう考えだと思いますが、児童虐待防止の観点からは、何よりも子供の安全確保を図るとともに、子供が健やかに育つ観点から家庭への支援を行うことが重要だと考えております。

 保護者への支援は、個々の状況に応じて、関係機関とのネットワークのもとに継続した支援を行うことが重要であると考えておりますので、保護者支援プログラムに加えて、家庭環境の改善のために行う訪問サービスや一時預かりサービスのほか、児童福祉司が家庭へ通い、家庭環境を踏まえた上で行う助言、指導などについても、保護者の特性に合わせて取り組んでおります。

 このようなさまざまなメニューを組み合わせながら、関係機関が継続してかかわることによって虐待の再発を防ぐことが重要と考えております。

池田(真)委員 今回の法案について、NHKが三月の八日から十一日に調査をしています。今回の法案改正で虐待は減るかというような問いですね。体罰をしないとか、こういったことに関してなんですけれども。減らないということとあとどちらでもないということで七〇%以上、七五%なんですね。何でなんだろうというふうには思いますけれども、その他の要因があるのではないかというところを私たちはこの調査で受けとめなければいけないのではないかと思います。

 また、二〇一三年から二〇一七年の警視庁の自殺の状況の調査においては、小中学生の自殺の要因、一番多いのは家族からの叱責ということでありました。これも、今の核家族化で、逃げ場があるというか、どなたか子供に寄り添う人がいればこれも防げるのではないかというような受けとめをしていかなければいけないのではないかと思います。親子関係の不和といったものも次に続いて多い、これもそうだと思います。

 今、大臣は、家族関係の改善というふうにおっしゃいました。でも、改善するために何が必要なのかというのは、指導だけではなくて、これは徹底的な親へのサポートだというふうに私は思います。

 実際に支援を行っている人たちからのメッセージとしても、体罰禁止といったもののメッセージは、当事者にとっては大変重たく、追い詰められるメッセージであります。核家族化がふえて我が子が初めての赤ちゃんという家庭が多くなっていて、適切に子育てができる方が奇跡、うまくできなくて当たり前なんだと。保護者には、禁止ではなく、とにかく徹底的な支援をする、あるいはサポートし合える環境を構築することが必要だというメッセージをいただいております。

 また、行政に相談をするということは非常に難しくて、ここの団体においても、虐待をしている親と役所に判断される、児童相談所に子供をさらわれる、夜に家に警察が来る、だから絶対に行政には相談しないというようなことの声も聞かれています。

 さまざまな生の声を、大きな団体とかそういう有識者だけにとらわれず、一人一人の声を、実際に支援をしている方々の声も今回きちんと受けとめて、双方から今回の出口を一緒に探していかなければいけないのではないかというふうに思います。

 引き続き、私も多くのお声をいただいておりますので、重ならない部分になると思いますから、ぜひ受けとめていただいて、本当にこの国で虐待を生まない、虐待をさせない、そういう児童福祉の実現を図ってまいりたいと思いますので、今後とも大臣にはよろしくお願いしたいと思います。

 それで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 初鹿明博です。また久しぶりに厚労委員会で質問させていただきます。

 何度も虐待の問題をこれまでも取り上げてきましたが、本当に、一体どれだけ法律を改正していけばなくなるのかなということをつくづく感じているところです。

 けさのニュースを見ていましたら、ちょうどきのう、野田市の心愛ちゃんの事件の母親の初公判があったということで、亡くなった当日に一体どういうことが行われていたのかということが詳細に報じられていて、本当にひどい状況だったなということを感じました。

 それと同時に、今回私が非常に不可解というか、本当にこれでいいのかなと思っているのは、DVを受けていた母親が逮捕されて、今裁判になったわけですよね。その母親の証言などを聞いていても、DVを受けていて、自分も暴力を受けるかもしれない、実際に、とめたら馬乗りになって殴られたとかそういうこともあったという証言を聞いていると、やはりなかなか、そういう状況にある母親が子供を守るために虐待をしている父親の静止をできるかというと、難しいんじゃないかなということを感じ、今回、こうやって起訴をされているということが果たして本当にいいのかなというのは、非常に疑問を持っております。

 最終的には、裁判所がどういう判決を下すかということになっていくわけですけれども、やはり、母親がDVを受けている場合には、その母親をしっかりと守っていくということを我々はやっていかなければならないのではないかなということを感じたところであります。

 それでは質問に入りたいと思いますが、感想を述べさせていただきました。

 まず最初に、先ほど池田議員から体罰の禁止のことも触れられておりましたけれども、私も、これは何度も何度も国会で取り上げているんですよね。民法八百二十二条の懲戒権の中に体罰を含むという答弁がなされていて、それがいまだに維持をされている。その状況の中で、今回は禁止をはっきりと法律に明記する、その一方で、民法の八百二十二条については、法施行後二年をかけてどうするのかということを検討する、そういうことなんです。

 懲戒権の中に体罰が含まれるという答弁は、平成十二年に当時の法務省の民事局長が行っているわけであります。このときに、この懲戒権には体罰も場合によっては含まれるわけですがという答弁をしているんですよ。この答弁をしたのはまさに児童虐待防止法の審議の中でのことなんですが、この答弁がずっと維持をされ続けていて、その結果、虐待の理由として、体罰を行っている理由として、しつけのためにやったんだということが繰り返されている。今起こっている事件でも、同じようなことが言われているわけですよね。

 ですので、私は、懲戒権自体をどうするかというのは、例えば八百二十二条を削除するかどうかということについては、確かに法律事項ですから、法制審でしっかり議論をしていくということは必要なのかなとは思います。ただ、懲戒権の中に体罰を含むかどうかというのは、これはこの民事局長の答弁が前提となっているわけでありますので、私は、何度も言っていますけれども、この答弁を撤回する、訂正する、修正するということが必要なのではないかと思います。

 今回、法律で禁止をするということまで言うわけですから、これは答弁の撤回などもあわせてやらないと、政府として何か見解が一致していないように思われるわけですよ。私は、これを再三再四、何度も言ってきているんですが、なかなかそのことを法務省もまともに受け取っていただけないまま、今になっているわけであります。

 改めて伺いますけれども、民法八百二十二条の懲戒権の中に体罰を含むというふうに体罰を残したまま、体罰の禁止という条文を加えるということは、政府として一貫性に欠けているんじゃないか。いかがでしょうか。

根本国務大臣 初鹿委員がこれまでの委員会の中で、この議論を盛山当時の副大臣といろいろやりとりしたことは、私も議事録を読ませていただきました。私も頭を整理する上で、ある種、非常にいいやりとりをしていただいたと思っています、あのときの法務省の解釈が、ある意味で、考え方が明らかにされておりますから。

 これまでの法務省の答弁、これは初鹿委員が一番詳しいと思いますが、民法第八百二十二条の懲戒権の行使は、子の監護上必要かつ相当なものでなければならない、必要かつ相当なものであるか否かは、その時代の社会通念によって判断される、体罰を子に対する全ての有形力の行使と捉えた場合、体罰が監護及び教育に必要な範囲に含まれないとは断定できないという答弁が存在をしております。

 したがって、現行法のもとでは、有形力の行使が民法に定める監護及び教育に必要な範囲に含まれるか否か、これは、その時代の社会通念に従って、個別の事案ごとに判断されることになると理解しております。

 今回、児童虐待防止法の改正により体罰の禁止を法定化することで、それが民法上の懲戒権の範囲を超え、許されないものであることが法律上明らかになります。政府としては、体罰はどのような理由であっても許されないということを法律の上でも国民の意識の上でも徹底することで、虐待の根絶につなげていきたいと思います。

初鹿委員 大臣、今大臣が答弁したように、政府としては、体罰は許されないということを言うわけですよね。でも、八百二十二条の懲戒権の中には、一部、有形力の行使が体罰というんだったら体罰は含まれるんだということをいまだに維持しているというのは、私はやはり理解できません。

 懲戒権の中の体罰を、体罰という言葉じゃなく有形力の行使という言い方にちょっと変えて、有形力の行使が全て体罰だったら、それは有形力の行使の中には認められるものもあるんだということを法務大臣が言っているわけですよ。

 私は、三月二十六日にも法務委員会でこの問題を取り上げたんですね。そのときに指摘をさせていただいているんですが、二〇〇六年に子どもの権利委員会が、体罰とはどういうものなのかということをきちんと定義づけしているんですよ。

 それを、法務委員会のときにも言いましたけれども、改めて申し上げますと、有形力が用いられ、かつ何らかの苦痛又は不快感を引き起こすことを意図した罰を定義するということなんですね。あと、こういうことも言っているんですよ。子供を保護するための身体的な行動及び介入が頻繁的に必要とされることを認識する、これは、何らかの苦痛、不快感又は屈辱感を引き起こすために意図的かつ懲罰的に行われる有形力の行使とは全く別である、人々を保護するために必要な有形力の行使は認めている。

 ですから、全ての有形力を体罰なんて言っていないんですよ。子どもの権利委員会は、懲罰的なもので苦痛や不快感を与えるものが体罰だと言っているんです。それで、更に加えて、子供その他の者を保護する必要性を動機とする有形力の行使と、罰するための有形力の行使の違いは明確であると言っているわけですね。

 つまり、二〇〇六年に、もう世界の、子どもの権利委員会が、定義として、体罰はこういう懲罰的なものであって、それ以外の有形力の行使とは一線を画しているんだ、別物ですよということを言っているわけです。ところが、日本だけは、有形力の行使を全て体罰であるかのように答弁をして、だから懲戒権に体罰を含まないとは言えないということを言い続けている。

 やはり私は、ここでちゃんと整理をする必要があって、懲戒権に体罰は含まれない、ここははっきりさせるべきだと思います。

 これから二年議論をして、その議論の結果、懲戒権は削除するという方向になれば、私はそれで、そもそも懲戒権の中に体罰があるかどうかというのはどうでもよくなってくる、なくなるわけだからいいんですけれども、仮に、法制審で審議していった結果、八百二十二条はやはり必要ですよね、懲戒権はありますよねとなったときに、体罰は一部残りますよという今の答弁を続けるんですか。私は、それは続けられないと思うんですよね。だったら、ここできちんと整理しましょうということを私は言いたいわけです。

 改めて伺いますが、今の私の有形力の整理、有形力の中には体罰という懲罰的なものもあるし、そうじゃない有形力の行使もあるということがきちんと整理されている、その前提で、懲戒権の範囲の中に体罰を含むと言うことはもうやめた方がいいんじゃないかということについて、大臣の御見解を伺います。

根本国務大臣 私が先ほど答弁をいたしましたが、現行法のもとでは、有形力の行使が民法に定める監護及び教育に必要な範囲に含まれるか否か、それは、その時代の社会通念に従って個別の事案ごとに判断されることになると理解しております。

 今回、児童虐待防止法の改正によって体罰の禁止を法定化いたしますので、それが民法上の懲戒権の範囲を超えて許されないものであるということが法律上明らかになる。これは、実は法務省から答弁いただいた方がいいと思うんですが、今回、児童虐待防止法の改正で体罰の禁止を法定化することになりますので、懲戒権の取扱いについては、親権者による体罰を禁止する規定が盛り込まれたこの法律が成立した場合には、体罰に該当する行為は、民法八百二十二条に言う子の監護、教育に必要な範囲には含まれないと解釈され、懲戒権の行使として許容されなくなるもの、民法を所管する法務省の方もこう理解をしているということだと思います。

初鹿委員 だったら、答弁を撤回した方がいいんじゃないかなと思うんですけれどもね。

 これ以上は時間がもったいないのでやりませんけれども、今後、体罰の禁止を徹底していく上で、ガイドラインなり何らかを示していくと思うので、その中できちんと、有形力の行使は、懲罰的なものとそうじゃない、子供を保護するものと、二つにきちんと区分けられているんだということをはっきり記すようにしていただきたいというふうにお願いをさせていただきます。

 その上で、法律で禁止をすれば、それが国民みんなに広く行き渡って、みんなが体罰をしなくなるかというと、私はそんなことないと思うんですよね。禁止をしたところで罰則規定があるわけではないわけですから、やはり、子供を育てる親に、特に虐待のリスクが高いような方々にきちんと、子育てで体罰をしてはいけないということを周知していかなければならないと思います。これは、私は非常に実は難しいんじゃないかなと思うんですね。

 虐待をしてしまう親の多くは、社会的に孤立をしているような方であったり、経済的にも困窮をしていたりということであり、また世の中のことに対して関心を持たないような、そういう方も多いんじゃないかと思います。こうやって我々が議論をし、そして毎日のようにニュースで流れたとしても、テレビのニュースを全く見ない、新聞を見ないという方々にとってみれば、法律が変わろうが何しようが、それは伝わっていきません。

 ぜひ、この本当に届けたい人たちにどうやって届けるのか、どうやって周知を行っていくのかということを真剣に考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 体罰によらない子育てを推進するためには、本法案によって、児童虐待防止法を改正して体罰の禁止を法定化する、これは、民法上の懲戒権の範囲を超え、許されないものであることが法律上明らかになります。

 委員がおっしゃられたとおり、法律に体罰が禁止されたからといって、それがストレートにそのまま理解されるということは、そこはしっかりと周知徹底を図る必要がある、それは委員のおっしゃるとおりだと思います。

 これまでも、体罰によらない育児を推進する啓発資料として「愛の鞭ゼロ作戦」を作成して、乳児健診時や保育所などで配付しております。この「愛の鞭ゼロ作戦」は、子育てに体罰や暴言を使わないことや、育児の負担を一人で抱え込まず自治体等に相談を行うこと等について周知を行ってまいりました。

 今回禁止する体罰についても、今後、体罰禁止に関する考え方などをガイドラインとしてまとめ、国民の皆様にわかりやすく説明するためのリーフレットなどを作成して普及啓発を行いたいと思います。

 いかにして普及啓発、わかりやすく理解していただくか、これはやはり、私は社会全体で取り組むべき話だと思います。政府としては、体罰はどのような理由であっても許されないということを法律の上でも国民の意識の上でも徹底することで、虐待の根絶につなげていきたいと考えています。

初鹿委員 それこそ、出生届を受け付けるときにそういうパンフレットを配ってその場で読んでもらうとか、私はそれぐらいのことをやる必要があるんじゃないかというふうに思います。特に、母親の場合は、健診などで保健師さんやそういう方々と会う機会が多くて、比較的そういう話を聞く機会が多いと思いますが、父親は、自分で腹も痛めていないし、なかなかそういう機会がないので、必ずこれは読まないとだめですよぐらいにしないとなかなか伝わっていかないんじゃないかと思います。

 そろそろ時間なんですけれども、先ほど阿部議員も質問しておりましたが、中核市や特別区に児童相談所を設置するということについて、我々野党は、これは必置にするべきだろうというふうに考えて、そういう法案にいたしました。

 今回の野田市の事件を見ても、やはり地方自治体との連携というのが非常に課題になるわけですね。また、これまでの虐待の事案を見ても、子供の保護と同時に、親への支援もしなければならない。親の状況、生活環境を変えない限り、なかなか虐待がおさまらないんじゃないかということもあるわけです。

 そういう観点からすると、やはり基礎自治体が児童相談所の機能を持つということは、私は重要ではないかなというふうに思います。我々は必置だと言っておりますが、政府案はそうはしていない。その理由についてお聞かせください。

根本国務大臣 中核市及び特別区における児童相談所の設置については、身近な地域で、子育て支援から虐待対応まで切れ目ない一貫した対応につながるものであると考えております。

 しかしながら、児童相談所の設置を一律に義務化することについて、地方団体から、児童福祉法上の都道府県と市町村の役割分担を踏まえて、市区は地域に根差したきめ細やかな支援に特化し、都道府県は専門的、広域的な観点での支援に特化すべき、こういう意見もありました。また、限られた福祉人材について都道府県と市区で分散させることは、それぞれの体制を弱くするのではないかという意見もありました。また、中核市は人口二十万人程度から六十万人程度とばらつきがあることや、都道府県の体制や近隣自治体の状況、地理的条件など、その置かれた状況もさまざまであって、一律に義務化することは適切ではない等々の意見が寄せられております。

 このようなことを踏まえて、現時点においては、一律の義務化を前提とした検討を行うのではなく、まずは、中核市、特別区における児童相談所設置に向けて関係地方団体と十分に協議する、そして、十分に協議するとともに、児童相談所設置に向けた支援を抜本的に拡充すべく取り組んでいきたいと思います。

初鹿委員 午前中の時間が来ましたので、続きは午後にしたいと思います。

 どうぞよろしくお願いします。

冨岡委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

冨岡委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。初鹿明博君。

初鹿委員 午前中に続き、質問を続けさせていただきます。

 午前中の最後に、中核市、特別区への児童相談所の必置をなぜしないのかということについて質問をし、答弁いただきました。

 その答弁の中で、専門的、広域的な見地からは都道府県の役割だというような、そういう趣旨のお答えがあったんですけれども、じゃ、児童相談所の仕事というのは広域的なものなのかというのは、私は若干違うんじゃないかというふうに思うんですよね。むしろ、地域に密着をしているようなことなんじゃないかなと思います。

 例えば、子供の虐待の背景には、やはり親の、保護者の経済的な問題があったり、また生活の状況などもあったりしますし、虐待が発見できるケースとして、例えば学校とか保育所でわかることもありますよね。今回の心愛ちゃんのケースでも、学校のアンケートで書いていたということもあったり。また、乳幼児健診だとか予防接種を受けていないとか、そういうことで虐待が疑われて、結果として発見できることもあるということを考えると、地方自治体の施策の中で相当数虐待が発見できたりということを考えると、やはり基礎的な自治体が児童相談所の機能も持つということは、私は非常に理にかなっているんじゃないかというふうに思います。

 実際に、じゃ保護した後どうするのかということだとか、児童養護施設に入れるときにどうするのか、同じ地域でいいのかということはまた別の問題としてあると思いますが、それはそれで連携という形がとれると思いますけれども、一義的には、子供や親と直接やりとりをするのは、基礎自治体の方がよりきめ細やかな対応ができるのではないかというふうに思いますので、そういう面では、やはり中核市や特別区ぐらいの人口規模のあるところは必置にしていただきたいなというふうに思います。

 ただ、財政的な問題でなかなか厳しいこともあるんだということもよくよく理解をしておりますので、その点をしっかりケアできるかというか、支援できるかということが重要なんだというふうに思います。

 今回、国としてもいろいろ考えて、児童相談所を設置するに当たってかなり財政的な支援を行うということで、これはこれで私も評価をしているんですよ。ただ、施設整備だとか一時的にかかるところには財政的な支援があるんですけれども、ランニングコストの部分の話になると、いつも交付税措置ということになるんですね。

 ほかの施策でもそうなんですが、国がこれは義務ですよと言っておきながら、交付税で財政は措置しますというものが非常に多くて、これを聞くと、私は東京なので、特別区は不交付団体でありますので、非常に苦しいんですよ。どんどんいろいろな仕事が降ってきて、それで対応するんですけれども、確かに、ほかの自治体と比べたら財政的には豊かに見えるかもしれませんけれども、それでも、どんどん仕事がふえてくれば、今までやっていたことを削るとかしていかないとお金が出せないわけですよ。

 特に、ランニングコストの部分をふやされると自治体としての自由度がなくなるので、ぜひ、児童相談所の機能というのが子供の命を守る上で非常に重要だ、国としてこれは強化していかなければならないんだ、そういう考えを持っているならば、不交付団体に対する財政支援も行っていただきたい、特にランニングコストの面で行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 児童相談所の運営に要する経費、これについては普通交付税の基準財政需要額に算入することとされております。そして、児童相談所の設置支援策として、施設整備に関する財政支援の拡充を今年度予算に計上いたしました。これは不交付団体も対象となります。ランニングコストは対象になっていませんけれども。

 今回の本法案においては、施行後五年を目途として、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、児童相談所の整備並びに職員の確保、育成の支援、その他の必要な措置を講ずること、この支援を行うに当たっては、地方団体等の連携を図ること、それに加えて、施行後五年を目途として、児童相談所の整備並びに職員の確保及び育成の支援のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずること、そういう法律上のたてつけになっております。

 いずれにしても、支援内容や方法、これについては、三月十九日に関係閣僚会議で児童虐待防止対策の抜本的強化について決定いたしましたが、その中で、中核市、特別区の児童相談所設置に向けた施設整備、人材確保、育成の支援の抜本的拡充、あるいは、国と中核市及び都道府県の関係団体が参加する協議の場の設置などを盛り込んでおりまして、特別区長会も含めた地方団体との協議を行いながら、概算要求に向けて必要な対応を行っていくこととしております。

初鹿委員 何か、ごまかされたような答弁だったんですけれども。

 改めて言いますけれども、これはこの問題だけじゃないんです。国の全ての施策に及んでくるんですけれども、国がどんどんいろいろな事業を義務づけたり、これをやれということが言われているんだけれども、財源の裏づけが地方交付税ということになると、早晩、二十三区は、特別区は本当に財政的に行き詰まってしまうようなところが出てくるんじゃないかと思いますので、本当に国全体として交付税措置のあり方というのをやはりちょっと考えていただきたいと思います。

 二十三区もいろいろありますからね。千代田区とか渋谷区とか港区とかそういうところと私の住んでいる地元の江戸川区は財政的な状況が違いますので、住んでいる人の年収も全然違いますから、我々の江戸川区と港区で、三倍近い平均年収の差がありますからね。それぐらいの違いがあるので、それで同じだと見られると非常に苦しいなということを指摘させていただきますので、よろしくお願いいたします。

 では、次の質問に入りますが、これまで、今回の野田市の件もそうですけれども、死に至るような深刻な虐待事件の多くがというよりも、ほとんどそうだと思うんですけれども、一旦一時保護をしているケースが非常に多いんですよね。一時保護をしておきながら、保護解除をして家に戻してしまい、結局最悪な結果になってしまうということなんですね。

 一時保護所が足りないという状況もあって、できるだけ家庭に戻そうという意識に児童相談所の職員がなってしまうということもわからないでもないですし、また、親の方も、やはり一旦一時保護されてしまうと、それをできるだけ取り戻したいと思うわけですから、いい親に変わりましたよということを見せるんだと思います。そして、今まで子供にそんなに関心もなかったような親でも、児童相談所に連絡をしたり足を運んだりということで、非常に熱心に、ちゃんと子育てをしますということを訴えるんだと思うんですよね。それで、大丈夫かなという判断をして子供を戻してしまうということが、結果として最悪な事態を招いているんじゃないかというふうに思います。

 そこで、我々の野党案で加えているんですけれども、一時保護を解除して戻すことの前提として、やはり虐待をした親に対して、虐待をしないような、再発しないような、そういう防止プログラムみたいなものを必ず受けさせて、そして、それをきちんと消化できた親に対してだけ一時保護の解除を行うというような仕組みに変えていかないと、このような問題はこの先も起こってしまうんじゃないかというふうに思います。

 やはり育てる親の意識を変えないとなかなか変わらないんじゃないかと思いますので、虐待防止のための再発の防止プログラムの受講を親に義務づけるということについて、御見解をお伺いいたします。

根本国務大臣 確かに、親に対する取組、対応というのは大事だと思います。

 児童相談所は、保護者への指導、援助を行っております。その手法の一つとして、保護者の特性に合わせて、各種の保護者支援プログラムによる支援を行っております。

 代表的な例は二つありますが、例えば日常的な子供の子育てスキルを高めるプログラム、これは子供とのかかわりに具体的に役に立つものでありますが、コモンセンスペアレンティングという手法があります。そしてもう一つは、保護者自身の心理的な課題に焦点を当てて解決方法を見出すプログラム、「MY TREEペアレンツプログラム」というのがあって、これは精神医学的な治療や保護者自身のトラウマをあわせた心理療法、原家族との関係や育ちのテーマを治療的に扱う。代表的にこういう二つのプログラムがあります。

 保護者支援プログラムは、虐待を行った保護者本人が問題意識を持って取り組まないと効果が期待できないのではないかということだと思います。

 このため、保護者支援プログラムの実施を解除要件とした場合、これを義務づけた場合、一時保護解除のみを目的に保護者が漫然とプログラムに出席し、真に更生していない保護者のもとに児童を返すことになりかねないのではないか、かえって児童の保護の観点から不適切となることが想定されるのではないか、こういう課題があるんだろうと思います。

 また、これまでも、児童相談所において保護者支援プログラムは一定程度行われておりますが、職員の不足や研修のための予算の不足などの課題から、十分には活用されていない状況にあります。

 このような状況を踏まえて、現段階では、一律に保護者支援プログラムを義務づけることは今回の法案でも考えておりませんが、より効果的にプログラムが実施されるよう、その実務を担う専門人材の養成や実施する場合の支援の拡充を行うなど、より児童相談所でプログラムを実施しやすい環境整備や、保護者がプログラムによる支援を受けやすくするための仕組みやアプローチ、こういうものを検討していきたいと考えています。

初鹿委員 これは大臣の責任じゃないと思うんですけれども、答弁をつくった担当の人は少し考えてもらいたいと思うんですよね。

 それこそ解除を目的に受けて、真に回復もしていない人に返すか返さないかは、それはきちんと判断すればいいだけで、何もやらないよりかはやった方が明らかにいいと思いますよ、私は。プログラムを受けないで今こういう悲惨な事件が起こっているわけだから、こういうプログラムを受けるということをまず前提にして、受けても効果のない人も私はいると思いますよ、でも、受けることによって変わる人もいますよ。

 ぜひそのことを考えて、積極的に捉えて、受けることに余り意味がないようなことを言わないで、まあそこまでは言っていませんでしたけれども、やはりきちんと、受けるということを前提にしてほしい。

 それと、今答弁の中で、一定程度やっているところもあるけれども、職員の不足や研修のための財源がないというようなお話でしたよね。職員の不足とか金の問題でやらないということは、やはり子供の命ですから、やめてもらいたい。お金よりも命の方が大切ですよ。ですから、職員も、足りないんだったらもっと積極的に増員をして、しっかりこういうプログラムが受けられる体制を整えるということをぜひしていただきたいということをお願いいたします。

 次に、今は虐待をしてしまう親の心理的な面の改善ということを申し上げましたけれども、それだけじゃなくて、親の経済的な状況、例えば仕事がなかなか見つかっていないだとか、あと生活面での課題、子育てよりも遊びに行きたいみたいなことでネグレクトをしてしまうような、そういう親に対しては、やはりしっかりと支えることも考えないといけないんだろうというふうに思います。

 先ほど、午前中、池田議員が質問の中で挙げていましたけれども、虐待に関する法案というのは三つありますよね。先ほども言っていましたが、高齢者、障害者は、法律の名前がそもそも、高齢者の虐待及び高齢者の養護者に対する支援の法律となっている。障害者も、障害者の養護者に対する支援の法律となっている。ただ、児童虐待防止法だけ、児童の虐待等に対する防止法となっているわけですよね。つまり、児童虐待防止法についても、保護者に対する支援の法律というふうに名前も変えて、そして保護者に対する支援にもっと積極的に取り組んだ方がいいのではないかというのが私の考えであります。

 ただ、今回、名前まで変えるということを求めてはいないわけですが、子供だけではなくて親への支援をどうやってやっていくかというのは非常に重要だと思うんですね。

 今回、介入と支援を分けていくということなんですけれども、その分、今まで一人で対応していたものが二人で対応するということになると、職員の数が必要になってくるわけですよね。職員を増員するといっても、倍までふえるわけではないから、場合によっては一人当たりの持ち担当数が多くなる。それで十分な支援ができるのかという心配があります。

 時間が来ましたので手短にしますが、保護者に対する支援のあり方についてどのように考えているのかということを最後にお聞かせいただきたいと思います。

根本国務大臣 保護者への支援ですが、先ほどの保護者の支援プログラム、私はこれは非常に大事だと思っております。

 ということを申し上げさせていただいた上で、手短にということですから、保護者への支援、これは、さまざまな状況、いろいろな要因が複合的に絡み合って起こっておりますので、委員の問題意識からいいますと、個々の状況に応じて、生活保護や生活困窮者自立支援制度の活用も含めて、関係機関とのネットワークのもとに継続した支援を行うことが重要だと思っております。

 具体的には、生活保護や生活困窮者自立支援制度担当との連携に加えて、家庭環境の改善のための訪問サービスや一時預かりサービスのほか、児童福祉司が家庭へ通い、家庭環境を踏まえた上での助言、指導などについても、今も保護者の特性に合わせた支援に取り組んでおりますが、さまざまなメニューを組み合わせながら保護者の支援に努めて、そして、関係機関が継続してかかわることによって虐待の発生予防や再発を防ぐことが重要だと考えております。

初鹿委員 今挙げたいろいろな施策を見ると、やはりこれは基礎自治体の施策なんですよね。

 そういうことを考えると、やはり基礎自治体である中核市や特別区が児童相談所の機能をしっかり持つということは重要ではないかなということを最後に指摘して、私の質問を終わりにいたします。

冨岡委員長 次に、大河原雅子君。

大河原委員 立憲民主党・無所属フォーラムの大河原雅子でございます。

 先週、本会議に登壇させていただきまして、この児童虐待防止のための福祉法の改正、ここで口火を切らせていただきました。

 本当に、この国の子供の権利に関する感度というのはずっと鈍いなと思ってまいりました。

 私は東京都議会に一九九三年に初当選をさせていただきまして、翌年に日本がこの条約を批准いたしました。ちょうど、いじめ問題とか自殺とか、いろいろな風潮が高まって、子供たちの窮状というのは目に余るようになり、そして、大勢の大人たちが、この子どもの権利条約を日本が批准したということについても非常に大きな期待を持っていたと思います。そして、何より期待をしていたのは子供たちだというふうに思います。

 意見表明権のこともずっとこの間出てきているわけですけれども、やはり、今回、やっとかという思いで、子供たちが何人犠牲になれば、この国は子供を一人の権利主体として認め、そしてその教育を、またその擁護をしていくんだろうかというふうに疑問を持っておりましたので、しっかりと審議をさせていただきたいというふうに思います。

 ちょっと、最初の質問に入る前に、通告してないですが、当然のことなので大臣にお答えいただきたいと思うんですが、子どもの権利条約を批准して、子供の権利、子供たちの最善の利益を実現していくために国がやらなければならない一番最初のステップ、これは何でしょうか。国の責務は何でしょうか。

 時間がかかりますか、こんなこと。

 じゃ、委員長、いいです。

冨岡委員長 いいですか。(大河原委員「はい、いいです」と呼ぶ)

 それでは、どうぞ続けてください、質問を。

大河原委員 一番簡単なのは、子供の権利がどんなものか、子どもの権利条約を批准した日本の国が、その子どもの権利条約の中身をしっかりと普及啓発させることです。そうですよね。誰も知らないという状態じゃ困るわけですから。

 私が都議会にいたときに子供の権利ということを言いますと、必ず、義務というふうに例えば某知事は反論されるんですよ。でも、この子供の権利にかかわっている者は、そうじゃないということをよく知っているわけなんです。

 ところで、二〇一六年に、子どもの権利条約にのっとる、このことを子供福祉の中心に置くということで、これを児童福祉法の中に基本理念として入れられたんですね。このことで、それでは、厚生労働省は、この子どもの権利条約のパンフレットなど、普及啓発をされましたでしょうか。

冨岡委員長 普及啓発、パンフレットとかされましたか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 パンフレット等については、ちょっと今、手元にございませんので定かでございませんけれども、厚生労働省のホームページに掲載いたしまして、普及啓発を行っております。

大河原委員 これが批准された当時も、外務省が窓口だったので、外務省がパンフレットを一回配り、それから、各教育委員会が独自に配ったというところもございます。でも、批准から二十五年、パンフレットは、私は、ほとんど配られていないと。しかも、二〇一六年にこの子どもの権利条約を基本理念にすると言っていた厚生労働省は、パンフレットをつくっていないわけですよ。ホームページに載せただけ。

 大臣、どう思われますか。

根本国務大臣 まあ、周知とか広報というのは、私は、いろいろなやり方があるのではないか、こう思っております、児童福祉法の改正で、そこは、平成二十八の改正で理念にも位置づけているわけですから。

 子どもの権利条約という、ストレートにそれを周知広報するかということが、あるいはそれも含めて児童福祉法の改正をやっているわけですから、当然、子供は社会の宝ですから、そういうものを含めて、さまざまな形で周知広報を行っているものと考えています。

大河原委員 ホームページで子どもの権利条約についても広報しているということだったんですが、ホームページを開いたら、別なものを見つけちゃったんですよ、さっき。「子どもを健やかに育むために 愛の鞭ゼロ作戦」。愛のむちをいまだに使っているんですよ。しつけをするのに体罰を使わずにやりましょうと言っていたのに、「子どもを健やかに育むために 愛の鞭ゼロ作戦」、愛のむちだったらいいのかと。むち自体、使っちゃいけないものじゃないんですか。

 だからこそ、これをやめようと幾ら言っても、こういった表現がどうしても、本当に子供の権利というものについてわかっているのか。率先して子供の最善の利益をつくっていこう、そういう先頭を切る省のそうしたホームページにこれが出ているわけですから、私はなかなか根は深いと思います。

 大臣、改めて、この子供の権利について、普及啓発のために、子供たち自身に届かなければ、子供たちは意見表明権があるということさえわかりません。教科書にちらりと載っていた、そういう経験がある人もいます。でも、今、若い方たちに聞くと、ううん、何だったっけという方も結構多いんですよ。

 子供の虐待の防止策をつくっていこうという中に、この子供の権利のことをしっかりと、万人が小さいときから大人になるまで、当事者もそれから関連する大人たちも自覚ができる、わかる、そしてそれを進める、そういう立場に立つためには、改めて、この普及啓発の方法、パンフレットを配るとかいろいろなことはあると思いますよ。まさか変なポスターはつくらないでほしいですけれども、どうでしょう。簡単なことだと思うので、お答えください。

浜谷政府参考人 まず「愛の鞭ゼロ作戦」でございますけれども、これは、愛のむちをゼロにしようということでありまして、そういう意味では、体罰の禁止も含めて、先ほど来答弁申し上げておりますけれども、今回、体罰の禁止の法定化も盛り込んでおりますので、体罰の禁止の法定化の話も含めまして、子供の権利をしっかり守るための普及啓発にしっかり取り組んでまいりたいというふうに考えております。

大河原委員 もちろん、そうおっしゃるだろうと思いますよ。だけれども、愛のむちという言葉を使い続けるという、私はその精神はやはりおかしいんだと思うんです。

 昔、イギリスで愛のむちはありましたよ。お尻をたたく道具とか、手のひらをピシッとやる道具がね。でも、そういうことじゃないんですよ、今は。そういったことが高じて、まだしつけというものを愛のむちをお題目にして、子供を本当に生命の危機的な状況に陥らせる大人が多い。

 そのことを私たちは解決しようとしているわけですから、ぜひこれは、例えば子供の人権にかかわる諸団体、NGO、NPOがありますよ、そういったところからヒアリングしたらどうですか。

 この表現自体、わかりやすく、伝えやすく、そのこと自体が、何しろ子供たちにも伝えなきゃいけないわけですから、これは大きなことなんですね。大人になってから、あのとき体罰がだめだということを知っていたら当時の自分は相談するということもあったかもしれない、そういう記事も先日見受けました。

 ぜひ、全省庁の施策の中にこの子どもの権利条約の基本理念が生きているかどうかを責任を持って、根本大臣、お調べいただけないでしょうか。そして、手を打っていただきたいと思います。もう一度、済みません、お答えください、大臣から。

根本国務大臣 先ほど申し上げましたが、児童福祉法の中の理念でこれはしっかりと書き込んでいるわけですから、それぞれの省庁のそれぞれの施策、必要に応じて、いわば児童福祉法の理念にきちんと法律で位置づけているわけですから、それはそれらを踏まえて適切に対応しているもの、あるいは対応されるものだと思います。

大河原委員 今大臣は、法律に書き込んだんだからいいじゃないか、そうおっしゃったんですね。私は、そんなことでは締約国としての責務は全然果たせないと思います。これから政府への質問をさせていただきますけれども、ここから先の答弁についてもなかなか信頼ができるものじゃないんじゃないかというふうに思います。本会議場でも質問させていただきましたけれども、文字面の御答弁をいただきましたけれども、それ以上にしっかりと子供たちから信頼される答弁をいただきたいと思います。

 まず、政府への一問目は、二〇一九年三月、ことしの三月に発行された子どもの権利擁護に新たに取り組む自治体にとって参考になるガイドラインに関する調査研究報告書、大変厚いものですけれども、これも目を通させていただきました。この調査の背景と目的について改めて伺いたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の、子どもの権利擁護に新たに取り組む自治体にとって参考となるガイドラインに関する調査研究、これにつきましては、平成二十八年三月十日の社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告、それから平成二十八年の児童福祉法改正、それとその附帯決議、これらを踏まえまして、子供の権利擁護に新たに取り組む自治体にとって参考となりますよう、子供が意見を申し立てる環境整備、あるいは、その子供の意見を尊重して子供の権利侵害の問題の調査や調整を行う取組等に関するガイドラインを作成するために実施したものでございます。

大河原委員 この調査報告書で、児童福祉審議会を活用する、そこで子供の意見表明を実現するということなんですが、午前中も阿部議員がこの点を追及されました。

 それを含めて、この児童福祉審議会はなかなか遠いものなんですね、子供たちにとって。まさに、手紙や電話で通じる、手の届くところじゃございませんし、まして、この児童福祉審議会の子どもの権利部会、こういったものがきちんと機能している自治体というのは本当に少ないと思います。

 こうした子供の意見表明について福祉審議会を活用するということですけれども、このところ、これまでの阿部議員の質疑も含めて、どうやって施策に反映をしていこうと思っていらっしゃるのか、お答えをいただきたいと思います。

根本国務大臣 子供の権利擁護の仕組みを構築するために、今局長から答弁しましたように、昨年度、都道府県などが、児童福祉審議会を活用して、子供の意見表明等の仕組みを設けるためのガイドラインを作成する調査研究事業を行いました。

 このガイドラインは、都道府県などが、児童福祉審議会で子供が意見表明することができる仕組みが推進されるように、児童福祉審議会のもとに部会を設置して、子供の意見表明を支援する支援員を配置すること、子供の意見について支援員が聞き取りを行い、子供の意見表明をサポートすることなどのモデル的な枠組み例を示したものとなっております。

 今後、自治体において参考となるように、このガイドラインを周知して、取組を支援していきたいと考えています。

大河原委員 わざわざ自治体に役に立つようなガイドラインということなんですが、私はやはり、これまでの議論を聞いていても、そしてまた実態としても、児童福祉審議会が本当に直ちに機能できるか。もちろんそこで意見表明することは大事だと思いますが、そこで意見表明するということはよっぽどのことだというふうに思います。本当に必要なことは、そこに行くまでに地域で子供たちが出遭うさまざまな危機、子供たちの声、このことをしっかりと、大事に至らない前にきちんと受けとめて解決をする、そういうことではないかと思います。

 このガイドラインがなかなか自治体のお役に立つというふうには見えないので、むしろ地域のそうした子供の権利擁護のネットワークを張りめぐらせること、そうしたことをぜひ私は求めていきたいと思っています。

 次に、野党案を質問させていただきます。

 野党案も出しているわけですが、本法案の主な特色、これについてまず伺います。

阿部議員 御質問ありがとうございます。

 本法案は、東京都目黒区や千葉県野田市で発生した児童虐待による痛ましい事件も踏まえ、児童虐待防止対策の総合的かつ抜本的な強化を図るものであります。

 私どもの野党案の特色を四つの視点、すなわち、直接的な児童の権利利益の擁護の視点、児童の権利利益の擁護のための体制強化の視点、児童虐待の再発防止の視点、さらにはDV防止の視点から説明をいたします。

 まずは、直接的に児童の権利利益を擁護する観点から、親権の行使に当たっては体罰を加えてはならない旨の明確化及び児童虐待を受けた児童が転居する際の指導措置の解除制限を始めとする児童の転居等に係る対応の強化の措置を講じております。

 次に、児童の権利利益の擁護のための体制強化について、市町村におけるきめ細やかな対応を充実させるために、中核市及び特別区に児童相談所を必置とすることを始めとする児童相談所の設置の促進及び市町村子ども家庭総合支援拠点の必置の措置を講じております。

 さらには、児童虐待の再発防止の観点から、児童虐待を行った保護者に対して、児童虐待の再発を防止するためのプログラムの実施及びチャイルド・デス・レビューの活用の措置を講じております。

 これらに加えまして、児童虐待とDVとが強く関係しているケースも多々あることから、DVの発見者による通報及び医師等が業務上DV被害者を発見した場合の通報の義務化とその通報先の拡大の措置を講じております。

 以上が本法案の特色であり、法案名にあるように、児童虐待を防止し、児童の権利利益を擁護することを強く意識した内容となっております。

大河原委員 子供もその親御さんたちも、住んでいる地域でいち早くそうした事態が散見されるときに救出をする、問題解決に当たる、このことが求められております。だから、責任をやはり大きく感じているのは市町村なんですね。だから、市町村への支援、市町村を励ましながらしっかりと子供たちの権利擁護を国が後押しするということは重大な責務だと思います。

 先ほども質疑がありましたが、中核市や特別区に児童相談所を必置とすることを始めとして野党案はできております。そして、大事なのは、市町村子ども家庭総合支援拠点の必置、こういったこともやるようにというふうに言っているわけですけれども、改めて、もう一度、この相談所の必置、また子ども総合支援拠点の必置ということについての野党案の思いをお聞かせいただきたいと思います。

初鹿議員 御質問ありがとうございます。

 現行法上、児童相談所については都道府県及び指定都市に設置が義務づけられており、中核市等については設置することが可能とされていますが、現在、中核市等で設置されているのは横須賀市、金沢市及び明石市であり、必ずしも設置が進んでいない状況であります。その原因は、児童相談所の機能を持つことが自治体にとって負担になることもあると考えます。

 そこで、人口規模、財政規模等を勘案して、改正後の児童福祉法第五十九条の第一項において、中核市及び特別区について、児童相談所の設置を義務づけるとともに、同条第七項において、児童相談所の設置が過度な負担とならないよう、国による児童相談所の職員の人材育成やその確保のための支援、財政上の措置等の規定を設けております。

 最近の虐待対応件数の増加を踏まえると、基礎自治体におけるきめ細やかな対応が必要であり、また、児童と家庭に関する相談についての基礎自治体の役割が強化されている中で、基礎自治体において、子育て支援から児童虐待への対応まで一貫した児童福祉施策を実施することが求められていると考えます。

 そのため、子供の命を守る観点から、中核市及び特別区について、児童相談所の設置を義務づけることとしています。

大河原委員 本当にそのとおりなんですよね。地域で、やはり子供たちがいろいろな目に遭います。そして、もちろん、それを支えていくいろいろな人たちが既に活動もしています。児童虐待を一刻でも早く発見するため、だから「いちはやく」という、あの番号なわけですよね。

 ですから、本来、この法案で、一刻も早く発見するためにどういう措置を講じているのか、そしてまた、同時に聞きたいと思いますが、先ほどの、児童福祉審議会を活用するという報告、これについてどう思われているのか、野党の提案者に伺いたいと思います。ちょっと二つ一緒に聞かせていただきましたが、別々にお答えください。

初鹿議員 では、先に、児童虐待を一刻でも早く発見するためにどのような措置を講じているのかという点について答弁をさせていただきます。

 現行法上は、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は速やかに児童相談所等に通告する義務が課されており、また、児童虐待を発見しやすい立場にある教職員や医師等については児童虐待の早期発見の努力義務が課されています。

 本法案では、児童虐待でさらなる早期発見につなげるべく、まず、改正後の児童虐待防止法第四条第七項において、一、児童虐待に係る相談等を容易にするための措置、二として、居住の実態を把握することができない児童の所在把握等のための措置を講ずるものとしております。具体的には、例えば児童虐待に係る相談を容易にする措置についてはSNSの利用を想定しており、自治体におけるトライアル実施においても大きな成果を上げていると聞いております。

 さらに、同条第三項及び第四項において、特に児童虐待を早期に発見しやすい立場にある医師等に対しては、児童虐待の発見のため必要な知識及び技術等に関する研修を実施するとともに、そのような知識と技術を有する医師等の確保、養成及び資質の向上を図ることとしております。

 また、同法第八条第二項及び第三項では、児童相談所において、通告等を受けた児童の心身の状況に関し医師の所見を求めることとしており、これも児童虐待の早期発見につながるものと考えます。

 これらに加えて、児童虐待とDVとの関係が強いケースもあることから、改正後の児童福祉法十条の二第一項において必置とされている市町村子ども家庭総合支援拠点に婦人相談員を配置することを同条第二項で規定し、DVと関係する児童虐待の早期発見を図ることとしています。

 最後に、本法案の附則第九条第二項においては、乳幼児に対する健康診査、学校における健康診断が児童虐待の早期発見にとって重要であることを踏まえ、これらの機会において児童虐待の発見を容易にするための措置について検討し、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとしております。

阿部議員 引き続き、御答弁申し上げます。

 委員御紹介の報告書では、子供の権利擁護の実現のために、児童福祉審議会を活用した子供の意見表明に関する都道府県の体制整備等について書かれているものと承知しております。

 子供の権利擁護の観点から子供の意見表明の機会をつくるという方向性については、私どもも意を同じくするものです。しかしながら、その内容を見ると、意見表明の方法が子供にとって十分に利用しやすいものと言えるのか、児童福祉審議会自体が子供にとって遠い存在ではないかといった点が懸念されるほか、何より、施設入所等の措置や一時保護を行う際に事前に必ず意見を聞かなければならないとはされていないことが問題ではないかと思います。

 子供の意見表明について、児童虐待を受けた児童に対する施設入所等の措置や一時保護については、とりわけ児童の権利利益に重大な影響を与える場面であることから、児童みずからが意見を表明する機会を設けることが重要であると考えております。

 そのため、本法案においては、改正後の児童虐待防止法第十条の七及び第十三条の第一項から第三項までにおいて、施設入所等の措置や一時保護の実施又は解除に当たって必ず児童の意見を聞くこととし、その際には児童の心身の状況や環境等に十分配慮しなければならないことといたしております。

 さらに、附則第六条第四項において、児童の意見の代弁や意見表明の支援のための制度の導入など、アドボケート制度、子供オンブズマン制度の構築に関する検討を行うことといたしております。

大河原委員 本当に、早く虐待を発見すること、それから子供を守り切ること、そういったことが急務なんですね。

 先ほど、このパンフレットも配っていないということを申し上げましたけれども、批准された当時、実は厚生労働省は、児童養護施設、そうした自立支援施設、こういった子供たちには権利ノートを配って、そしてそこには施設のオンブズマンがいた、そういうこともきちんと説明していたはずなんです。残念なことに、そういうところでも虐待は起こったりしておりますけれども、もともと厚生労働省は、この子どもの権利条約の普及啓発については、実は他省よりは多少よかったということを私は思っているんです。

 子どもの権利ノート、自治体の参考になるガイドラインと書いてありますが、この中にも、権利ノートにはがきがついていて、それを出してくれと書いてあるんですよね。

 だから、そのはがきのことはあれですけれども、今御答弁をいただいた、子供の小さな声、声にならない声もしっかりと受けとめるアドボケート機能、こういったものをしっかりつくっていくのが何より重要で、しかもそれは、身近なところで声が受けとめてもらえる、ぽつりぽつりとしか子供たちは言わないかもしれないけれども、そのことがある安心というのは全く違う世界を見せてくれるというふうに思います。

 児童虐待の背後にDVがあるということは本会議の質疑でも訴えさせていただきましたけれども、この背後にあるDV、子供だけを保護すると、DV被害者が加害者のもとに残されてしまうんですね。ですから、とても危険な状況が起こります。

 攻撃の対象が一つになるわけですから、野田の事件、全容はまだわかりませんけれども、そういう意味では、子供自身は、どんな暴力、虐待を受けても親をかばおうとする、そういうことがあります。だから、自分の身体を差し出すということもありますし、被害者というのは、きのうの例でいえば野田のお母さんですね。加害をされている、加害のマインドコントロールというか、力の支配、心の支配のもとにありますから、何もすることができなかった。それでも幇助罪に問われているわけで、そういう中では、加害を受けた子供だけを引き離して保護するとか、親だけを別にするとか、非常にターゲットが小さくなり、その分、激しさが増すということをぜひ御理解いただきたいと思います。少なくとも、加害者と引き離して、DVがわかる相談員に事情を聴取させるということが必要なわけです。

 この児童虐待の裏にあるDVということに着目されたと思いますが、児童の権利利益の擁護を図るためにDV防止法自体を改正する必要があると思いますけれども、今回は虐待防止法にあわせた改正になっております。その点について御説明ください。

阿部議員 御答弁申し上げます。

 千葉県野田市の事案では、被害児童が声を上げ、複数もの関係行政機関が実際の対処にかかわっていたにもかかわらず児童が死亡するという最悪の事態となってしまいました。加えて、この事案で逮捕された母親については、昨日も公判の様子が報道されておりましたが、DVを受ける中で十分な判断力を持てない状態になっていたと考えられます。

 この事件だけに限らず、内閣府が実施している調査からは、DVと児童虐待との相互の関係が指摘されるところです。つまり、DVによって追い詰められた被害者が虐待から子供を守ることができなくなっていくという暴力の連鎖があると考えられます。

 そこで、DVを防止することにより、DVの裏に隠れた児童虐待の防止を図るべく、児童虐待防止法等の改正と一体となってDV防止法を改正する必要があると考えたところでございます。

大河原委員 検討項目に、DV被害者の保護のための機関とそれから児童相談所の連携について明記する、このことについてもいま一度伺いたいと思います。この連携をする趣旨というのをいま一度御説明いただけるでしょうか。

池田(真)議員 お答えいたします。

 千葉県野田市の事案においては、以前より母親がDVを受けていた可能性が認識されていたにもかかわらず十分な対応がとられることはなく、結果として痛ましい事態を引き起こすこととなってしまいました。

 この事案だけに限らず、内閣府が実施した調査からは、DVと児童虐待との相互関係が指摘されるところです。

 このため、DV被害者の保護のための機関と児童相談所がそれぞれ独立して事案に当たるのではなく、連携協力して問題解決に努めるべきことを改めて強調しておくことが必要になります。

 そこで、配偶者暴力相談支援センターがその業務を行うに当たり、連携に努めるべき機関に児童相談所を加えるとともに、DV被害者の適切な保護が行われるよう、相互連携を図りながら協力するよう努めるべき関係機関として児童相談所を明記することといたしました。

大河原委員 今、児童相談所の連携とDVのこと、着目した視点を持った人たち、地域の連携が必要ということなんですが、通報それから保護命令の申立ての対象になるDVの拡大、これに関して検討項目を設けておりますけれども、この趣旨、意図は何でしょうか。

池田(真)議員 近年、DV被害については、精神的DVや性的DVの被害経験のあった人の割合が増加傾向にあります。千葉県野田市の事案においても母親が精神的DVを受けていた可能性が指摘されており、このような状況を踏まえると、DVや、これと関連して起こる児童虐待を防止するために、身体的DVだけではなく、精神的DVや性的DVについても通報及び保護命令の申立ての対象とする必要があると考えています。

 ただし、通報に関しては、夫婦のプライバシーにいたずらに介入することを防ぐための手だてが必要となり、また保護命令に関しては、個人の行動の自由を刑罰をもって予防的に制限する制度であるために、その対象となる行為を明確にする必要があるといった慎重な意見がDV防止法の制定当初から出ていたところです。

 このような意見も踏まえるとして、本法公布後三年を目途として検討を加える旨の規定を設けることといたしました。

大河原委員 通報及び保護命令の申立ての対象になるDVの拡大が検討項目に挙げられたことは評価をし、それが必ず実現をしてほしいと願うものです。

 DV法の喫緊の課題は、保護命令の対象に精神的暴力とか性暴力を入れることだと思っています。共同親権や親子断絶防止を求める、そういう方々もおられますけれども、身体的暴力以外はDVではないという御主張もあり、驚くべきことに、DVセンターの所長あたりでもそういうふうに思い込んでいらっしゃる方が多いんですね。

 そういうことがございますので、一時保護すら精神的暴力では対応してもらえない、こういうことが数々報告されております。政府の御対応も、こうした点をぜひ勘案して対応していただきたいというふうに思います。

 最後に伺いますけれども、DVの発見者による通報先として市町村を加える趣旨、これについてお答えをいただきたいと思いますが、通報を受けた市町村はどのような対応をとると想定しておられるでしょうか。

阿部議員 お答えいたします。

 現行のDV防止法では、DVの発見者による通報先は配偶者暴力相談支援センターと警察官とされております。しかし、全ての市町村において配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たす施設があるわけではないため、DV被害者を発見したとしても、一番コンタクトをとりやすい身近な自治体である市町村に通報先がないことで、通報をためらう可能性も考えられます。

 このため、通報の機会をよりふやすために、DVの発見者による通報先として市町村を加え、通報の窓口を広げる必要があると考えます。

 なお、通報を受けた市町村においては、通報された事案を適切に処理するために、必要に応じて都道府県若しくは近隣の市町村の配偶者暴力相談支援センター又は警察官に事案を移送することが考えられます。

大河原委員 最後に、私、一言意見を述べさせていただきたいと思います。

 今、配暴センターのところまできて、DVと子供虐待の裏表の関係というか、その密接な関係に注目がありました。市町村が通報を受け、それに適切な対応をしていくためには、もっと実は市町村には人材があるんですね。それは、男女共同参画担当部署というのが必ずあります。

 ですから、そこには既に教育、研修を受けた方たちがおられるわけなので、関係機関の中に男女共同参画センターとか女性センターが入っていないので、人材はそういうところに、DV相談ができる人たちが福祉事務所とかDVセンターのほかにもいるということをぜひ御認識いただきたいなと思います。

 公的機関でジェンダーについて学んでいる職員がどれほどいるか、ちょっと心もとないですけれども、この女性センターなどにいらっしゃる方たちは確実な方なんです。ですから、市町村の体制強化の部分では、こうした女性支援を担ってきた機関を入れる必要があると私は主張したいと思います。DVのことについて学んでいるか、あるいはそのことをきちんと理解して一緒にやる、解決する、対応する、そういう対応をすべきだ、体制をつくるべきだと主張申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、白石洋一君。

白石委員 国民民主党の白石洋一です。

 子供の命、そして虐待、命があったとしてもその育ちをどう守っていくかということで、現場のお声を聞いてまいりました。その現場のお声をもとに質問させていただきたいと思います。

 まず、虐待した親にはそれぞれの原因、理由があると思うんですね。生まれたときというのはもう、かわいい赤ちゃん。でも、どうしてその子に手を出すようになってしまったのか。あるいは、生まれたときから虐待をしてしまう。それなりに理由はあると思うんです。

 耳目を集めるのは、新聞に載って、命を失った場合。これは、早く物理的にその親と子供を引き離せということで、その通報がどのタイミングで行われたかとか、警察はどの時点で介入したか、そういう物理的な隔離というのに注意が行くんですけれども、それ以外にもたくさんの虐待の事例があって、その虐待一つ一つが子供の育ちを妨げているということを考えれば、その理由を一つ一つ丁寧に拾い上げていく、虐待した親に対して丁寧に聞き取りして調査して、何にストレスを感じてそれに至ってしまったのかということを分析して、それから政策につなげていくということが必要だと思うんです。

 それは、厚労省の中だけの政策につながらないかもしれない。いろいろな分野に至る、ほかの省庁にかかわるかもしれない。若年出産、低学歴、低賃金、非正規雇用、もう幾ら頑張っても、あがいてもあがいても、そこからはい上がれない、こういう社会のあり方まで見直さないといけないものが出てくると思うんですね。

 そこで、大臣、その事案、虐待の事例を、体制として、制度として聞き取り調査して、それを分析し、政策につなげていく、このような制度は確立されていますでしょうか。

根本国務大臣 児童虐待の問題、そしてそれにどう対応していくか。委員がおっしゃられるとおり、やはり、どういう原因で起こったのか、そのきちんとした事実関係あるいは因果関係、原因を含めて、こういうものをきちんと分析した上で必要な施策につなげていく。

 これは、これまでも児童虐待については累次の法改正もありますし、我々直近でも四度にわたって政府で累次の対策を各省庁を挙げて打ち出してまいりましたが、その前提には、当然、どういうことで起こったのかという原因を踏まえた上での対応策を練るということでやっております。

 そして、具体的に、例えばこういうことをやっております。過去の児童虐待事例を分析し、そこで明らかになった課題を具体的な対策につなげていく、これは私も今申し上げたように極めて重要であります。

 例えば、こうした分析の一環として、社会保障審議会のもとの専門委員会において、児童虐待による死亡事例等の検証を行っております。この検証においては、養育者の心理的、精神的な問題や家庭の地域社会との接触状況などについて把握するとともに、毎年数例、現地ヒアリングを行うなど、個別事例を踏まえた分析を行っております。

 このような検証に加えて、虐待を受けた子供の生育歴や家庭状況などについて児童相談所に対して調査を実施するとともに、社会保障審議会のもとの専門委員会において、現場の実務に携わる有識者あるいは社会的養護の経験者も含めて議論を行うなど、現場、当事者の声も対策に反映できるように取り組んでおります。

 今後、例えば今、死亡事例検証という例を申し上げましたが、保護者の状況などを含めて、虐待の要因等について引き続き分析を深めるとともに、検証結果を踏まえた体制強化等の対応状況をフォローアップするなど、子供の命を守る社会づくりを全力を挙げて進めてまいります。

白石委員 死亡事例について分析しているということなんですけれども、もちろん、死亡する、命を失うということが一番重大な事案で、当然、その調査分析というのは必要なんですけれども、私が言っているのはそれだけじゃなくて、それだとどうしても物理的に引き離すというところがあるんですけれども、もっと根底のところまでその理由を探るためには、虐待事例をもっと広く調べて、それを広く社会に問うて、国民的な議論を巻き起こしていく、審議会で、専門家、有識者だけじゃなくて、国民的な議論を巻き起こしていく、そういうことが必要なんじゃないかなというふうに思うんですけれども、御所見があればお願いします。

根本国務大臣 過去の児童虐待の事例を分析するということで、今、死亡事例等の検証を行っているということで御紹介申し上げました。

 例えば、保護者がどうして子供を虐待するのか、これは今までのいろいろな分析を踏まえて、厚生労働省が地方自治体の職員用に作成した「子ども虐待対応の手引き」においては、子供時代に大人から愛情を受けていなかったこと、あるいは生活にストレスが積み重なって危機的状況にあること、社会的に孤立化し援助者がいないこと、親にとって意に沿わない子、予期せぬ妊娠、愛着形成阻害、あるいは育てにくい子などであることなどのさまざまな要因が複合的に絡み合って起こるものとされております。

 いずれにしても、児童虐待に対してさまざまな手、対策を打っているわけですが、今回の二つの事案についてもどうしてこういうことが起こったのかということは、現場での検証も踏まえて対策を講じておりますが、そこは、例えば私が今申し上げた、どうして保護者が子供を虐待するのか、これも、やはり虐待をした保護者の意見を聞くなどを踏まえてこういう分析をしていると考えておりますが、今委員御提案の保護者の意見を聞くべきである、私は、実態、どうしてこういうことが起こったのかは大事だと思いますから、この保護者の意見を聞くべきではないかということについては、どのような手法で把握するかなども含めて、今後、更に検討していきたいと思います。

白石委員 システムとして広く調査して、そしてそれを広く国民、そして他の省庁も巻き込んで政策につなげていくようにお願い申し上げます。

 次の質問ですけれども、今、児童相談所の量の拡大をしようであるとか、あるいは中核市に一つつくるべきだとか、そういう話をしていますけれども、利用者目線からしたらどういうことになるかというと、例えば、愛媛県でいったら、今、中予、南予、東予と三つあって、中予というのは松山市、県庁所在地にあるわけですね、それが中核市になりますといっても、利用者としては、松山にあることには間違いない、それが県の所管になっているか松山市の所管になっているか、余り関係ないわけです。

 重要なのは、利用者の目線でいうと、そこで事が全部ちゃんと済むのかということが大事だと思うんです。そこで解決まで導いてくれるのかどうか、そこに行ったんだけれども、これは所管が違うからあっちに行ってくれこっちに行ってくれといって分散してしまう、これがなくなるような児相をつくってほしいというのが利用者の声だと思います。

 そこに行ったら、児童相談所、児童福祉司だけじゃなくて、ほかの分野の人たちもいる、今の法案でも連携を深めるというのはありますけれども、一つの事例としては、大阪に子ども家庭センターとドーンセンターというのがあって、それが非常に、そこの中に入ったら事が全部済むらしいんですね。先ほどのDV、家庭内暴力なんかも含めて、全部そこで事が済む、専門家がいる、相談に乗ってくれるということであります。

 そういったものを、都会だけじゃなくて、各県、地方の県にも一つは、県庁所在地ぐらいにはあるべきだと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 今、委員の方から、虐待とDVへの相談支援、こういうものを一体的に行うべきではないか、こういうお話がありました。

 児童虐待防止法において、児童が同居する家庭における配偶者への暴力、これは心理的虐待とされております。また、児童虐待と配偶者からの暴力、DVには一定の関連性があるという調査結果もあります。

 その意味で、配偶者への暴力が行われている状況のもとでは、子供への虐待の制止が困難となる場合がありますので、児童相談所と配偶者暴力相談支援センターなどが連携して対応を行うことが重要だと考えています。

 実は、支援機関、窓口が同一の建物、今の委員の御意見はそういう御意見で、私も同一の建物にあれば確かに利用者にとっても使いやすいという気はいたしますが、同一の建物に集約するか否か、これについては、地域における支援体制の状況などを踏まえて、これは個々の、それぞれの地方公共団体の判断で実施いただくことになるわけでありますが、国としても連携強化を図ることが重要と考えております。

 このため、本法案においては、DV対策との連携強化のために、婦人相談所及び配偶者暴力相談支援センターの職員については、児童虐待の早期発見に努めることとし、そして、児童相談所は、DV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターと連携協力するように努めるものとする規定を盛り込んでおります。

白石委員 法案でもあります、大臣おっしゃった関係機関の連携強化のその一つの意味として、ぜひ、各県一つは物理的にそこで事が全部済むといったことも厚労省として支援していただきたいと要望いたします。

 そして、次なんですけれども、実際、虐待事案が出て、これは司法上の訴追が必要になったとします。そのときに、被害者というのは、つらい思いを何度も思い出して人に話をしないといけないということはやりたくないわけであります。それを、専門家が違うからそれぞれ何回も話すということは避けた方がいい、それは、特に子供の場合は更に大事だと思うんです。それぞれの場所で何度もつらい出来事を話さないといけない、こういう状況をできるだけ精神面の配慮から少なくするということが必要だと思うんです。

 精神的な二次被害に遭わないために、司法面接者がワンストップで、その子供、被害を受けた、虐待を受けた子供から話を聞くというふうにする仕組みがあると思うんですけれども、そこのところについて答弁をお願いします。

保坂政府参考人 御指摘のいわゆる児童虐待事案も含めまして、検察当局におきましては、児童が被害者等である事件につきまして、平成二十七年の十月に最高検、最高検察庁から通知を発出いたしまして、それは「警察及び児童相談所との更なる連携強化について」という通知でございますが、これに基づきまして、警察及び児童相談所との連携強化を進めているところでございます。

 そして、児童の負担軽減、そして児童の供述の信用性確保という観点から、警察及び児童相談所の担当者と当該児童からの聴取の方法について担当の検察官が協議を行った上で、そのいずれかの代表者が児童から聴取をするなどのいわゆる代表者聴取というものの取組を進めているところでございます。

 件数について御紹介いたしますと、先ほど申し上げた平成二十七年以降でございますが、法務省が把握できている限りで、これまでに合計で一千八百件以上の代表者聴取が実施されているものと承知をいたしております。

白石委員 代表者聴取というのがあるんだ、千八百件以上ある。ただ、その中で、児童虐待に関する件数というのは、きのうおとといのレクだと把握できていないということなんですけれども、周知徹底ができていないんじゃないかなという気がして、今は検察の方からの答弁でしたけれども、警察、そして児童相談所の職員さんにも、こういう制度があるということをもっと周知していただきたいなと。

 これは問題提起されて、これで自殺者が出たりして、つらい思い出を何度も話さないといけないということで自殺者も出ているというところから何とかならないかと。調べてみたら、代表者聴取というのがありますよと。これを知らなかったという児童福祉司さん、おられます。

 ぜひこれを周知していただくということと、そして、代表者というのはどのように決まるのかというのも大事だと思うんですね。周知徹底と、代表者がどのように決まっていくのか。この点、もしお答えできればお願いします。

保坂政府参考人 こういった代表者聴取について周知がされていないのではないかというお尋ねでございますけれども、先ほど申し上げたとおり、平成二十七年の十月に最高検から、最高検察庁から通知を発出して以降、先ほど申し上げたように、多くの事件で代表者聴取を実施しておりますほか、検察における研修等で、例えば厚生労働省、警察庁、医療機関からも講師として招いて児童虐待事案に対処するための研修を行いましたり、あるいは、各地の検察庁における代表者聴取などの三者連携で有益であった事例、好事例の共有というものを行っているなどしているところでございまして、検察の現場におきましては、代表者聴取の取組というのが着実に定着しているものと承知をいたしております。引き続き、児童の負担軽減等の観点からこういった取組を進めていくものと承知をいたしております。

 次に、代表者聴取の場面における代表者についてどのように決めるのかということでございますけれども、これは、私どもが承知しておる限りにおきましては、誰を代表とするかについての一律の基準があるとは承知をしておりません。それぞれ個別の事件ごとに、児童相談所、警察及び検察の担当者が協議をして、その事件の内容を踏まえて、児童の負担軽減、そして信用性の確保という観点から、例えば場所も含めて適切な代表者や聴取内容等が選定されているというふうに承知をしているところでございます。

白石委員 ぜひ、被害者が誰であれですけれども、特に子供が被害者の場合は、この制度があるということを更に引き続き徹底して周知いただきたいと思います。

 次は、専門性を高めるということがよく言われるんですけれども、もちろん知識は大事ですけれども、この分野は経験というのが非常に大事なんじゃないかなというふうに思います。日ごろ児童に接している、あるいは御家庭に行っている児童福祉司さんの人事ローテーション、やはりなるべく長くそこで職務をし、経験を積んでいただき、そして、その経験を生かして、ほかの職員さんと共有するということが行われるべきだと思うんですけれども、さらに、その幹部のところ、例えば児童相談所長であるとか部長であるとか、この幹部のところ、これは都道府県ですから地方公務員になると思うんですけれども、そのあたりはやはり通常のローテーション、幹部ローテーション、通常は二年とか三年ぐらいでかわっているようなんですね。

 ここのところを、やはり、モラルが下がらないということは配慮しながらも、なるべく長くそこにいて、現場の職員さんも指導してほしいという要望があるんですけれども、大臣、このあたりはいかがでしょうか。

根本国務大臣 私も委員のおっしゃるとおりだと思います。

 児童相談所の職員について、必要な専門性が確保できるよう、計画的な人材確保、育成が図られることが重要で、委員がおっしゃられるように、経験というのは非常に大切だなと思います。

 幹部職員を含む児童相談所の職員については、各地方公共団体において採用され、選定されるものでありますが、児童相談所において組織としての経験も蓄積され、引き継がれるようにする必要があると考えています。

 このため、都道府県などに通知を発出して、三点申し上げたいと思いますが、幹部職員も含めた個々の児童福祉司等が必要な専門性を確保できるような人事異動サイクルで人材配置を行うこと、将来的に指導、教育的な立場に立つ職員の計画的な育成をすること、積極的に、児童相談所配置経験者の再配置や児童相談所OB職員の再任用などを行うことなどを依頼して、自治体での工夫が進むように取組の周知を行っております。

白石委員 大臣、趣旨はそのようなことで、更に現場に近いところ、さっきおっしゃった児童福祉司等とか専門職だけじゃなくて、幹部のところについてもそのようなことを進めていくと。

 総務省に聞きますと、職場にとどまる期間の制限はないらしいんです。十年でも二十年でも、退職まではできると。一応その制限はないということですので、所長、部長級についても、なるべく長くいて、専門性をあるいは経験を生かしていただきたいということをお願いしたいと思います。

 最後の質問で、これはパートさん、非正規雇用の雇用保険の件なんです。ちょっと虐待から離れてしまいますが、済みません。

 今、雇用保険で、その加入の条件というのは、週二十時間以上の勤務なんですね。週二十時間以上の勤務。一方、受給の資格については、月十一日の出勤、月十一日の出勤というのが条件になっているんです。これがある一定期間ないといけないということになっていて、そこにそごがあるわけです、物差しの違いがあって。でも、ほぼほぼ同じでも、谷間に落ちる人が出るというのが今の雇用保険の規定になっているんです。

 もうぎりぎりのところですよ。非正規で、パートさんのみが念頭にあるんですけれども、週二十時間といったら、大体、一日八時間勤務を標準とするならば、週に二・五日間ですね。それが月四週間ということであれば、十日間になるわけです。

 さっき言った受給資格というのが月十一日ですから、そこにずれがあって、そこで谷間が生じて、どういうことが起きるかというと、雇用保険の保険料はずっと払っているのに、ずっとパートさんとして長く、たとえ十年、二十年働いていたとしても、自己都合で退職するときには受給資格がないということが起きてしまっているわけです。この物差しの違い。

 もう一つ問題なのは、パートさんは加入資格週二十時間を上回ったり下回ったりするぎりぎりのところで勤務しているんですね。上回っているときには保険料を払う、下回っているときには停止してください、実務的に無理です。今月は上回るから払います、今月は下回るから払いません、このスイッチを毎月毎月オン、オフするのは実務上無理だと思うんですね。

 この二つの問題。物差しの違いの問題と、そして、上回ったり下回ったり、オン、オフは実務上難しいという点について答弁をお願いします。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用保険の制度におきましては、御指摘をいただきましたように、まず、適用の場面では、週所定労働時間が二十時間以上の労働者の方々が適用されるということでやっております一方で、基本手当を受給する場合には、離職の日以前の二年間に被保険者期間が十二カ月必要だということが要件になっておりまして、この被保険者期間につきましては、月十一日以上の賃金の支払い基礎となる日がある月を被保険者期間として算入する、こういうルールになっているところでございます。

 こうした受給資格の要件につきましては、保険制度として運用している中で、原則として保険料を一定期間以上納付をしているということを前提としていることに加えまして、直近の労働の状況、実態を確認し、これを踏まえて手当を支給するという趣旨からこのような要件を設けているところでございます。

 御指摘にあったような個別の事例については、それぞれ事情をよく精査して検討する必要があるというふうに考えておりますが、御指摘も踏まえまして、適用要件あるいは受給資格要件の設定のあり方については、先ほど申し上げた受給資格要件の趣旨や働き方の実態といったものも踏まえつつ、保険料を御負担いただいている労使が参画をする審議会、労働政策審議会の雇用保険部会におきまして御議論いただきたいというふうに考えているところでございます。

白石委員 そうですね。これは検討が必要だと思います。さっきおっしゃった、労働の状況を踏まえたとか働き方の実態を踏まえた、それの具体的な計測の仕方が、加入のときには週二十時間以上の勤務、一方、受給のときには月十一日以上の出勤と、これがずれているということは全くもっておかしいので。加えて、もしこれを平仄を合わせたとしても、パートさんでそれを上回ったり下回ったりするというのはどういうふうに考えていけばいいのかと。

 働き方改革で労働時間規制が適用されて、あるいは、厚生年金の加入資格というのもやはり労働時間というのが物差しになる。勤務時間管理というのは物すごく大事になるので、そのことによって、この雇用保険も一つの例として、入ったり入らなかったり、保険料を納めたり納めなかったり、納めたとしても、それがいざ解雇のときにはもらえなかったり、こういうことにもなるので、勤務時間管理ということをどのようにしていくかというところもぜひ議論していただきたいと思います。

 これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、山井和則君。

山井委員 三十分間、質問時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうの議論でも出ていると思うんですが、まず最初に本当に申し上げたいのは、昨年の結愛ちゃんの虐待死の事件を受けて、私たち野党が中心になって香川県や品川区の現地に行き、そして児童虐待防止法の改正法案という議員立法を早急につくって、去年六月から審議をしてほしいということをお願いしておりました。繰り返し、現地調査、集中審議、この法案の審議を求めておりましたけれども、きょうは五月ということで、残念ながら、十一カ月間、審議をしてもらえませんでした。その間、残念ながら痛ましい事件が更に起こってしまったわけであります。

 どういう事情で審議をされなかったのか、私たちにはわかりませんけれども、やはりこういう人道上の法案を十一カ月も放置された、そして対策が十分に進んでいないのではないかと思いますが、そのことについては強く抗議せざるを得ません。

 ついては、十一カ月間審議を拒否されたわけですから、その分も含めて充実した審議をするとともに、今後も、私たち野党案の審議も並行でしているわけですから、岡本理事とも話して、今、野党案の丸のみを与党にはお願いしているということですけれども、十一カ月放置されたのは仕方がないんですけれども、その分も含めて、ぜひ丸のみに近い形で、いい法案の形で成立をさせることができればと切に願っております。繰り返し言いますけれども、与野党で対立する話ではないと思いますので、ぜひともお願いしたいと思います。

 それで、私も議員になって二十年ですけれども、化学の研究を大学院まで行ってやっていましたけれども、なぜ政治家を志したかという最大の理由は、母子寮、母子生活支援施設で、まさにDV被害、児童虐待の被害に遭っている子供たちの遊び相手を六年間、私は大学時代にさせていただきまして、その中で、人間不信、対人恐怖症、不登校、さまざまな苦しみを子供たちが背負っておられました。遊び相手ぐらいしかしていませんけれども、毎週水曜日、二回、その施設に通っておりました。

 その中で、本当にお母さんが幾ら頑張ってもなかなか立ち直れない、そして子供たちは本当に恐ろしい被害を受けておられる。そういう子供たちを幸せにするために少しでもお役に立てたらということで、私も、化学の道からこういう福祉や政治の世界に入ったわけです。そういうことを含めて、今回の法改正で、とにかく児童虐待を防止せねばと思っております。

 今回の千葉県の心愛ちゃんの事件も、きのう、初公判がなぎさ被告について行われました。

 そこで、まず一問目の質問をしたいんですが、今回の法改正で体罰防止規定が入ったわけですね。体罰禁止規定が入ったけれども、ただ、根本大臣、これは体罰を見たらすぐに通報ということではないと思うんですよね。

 私の配付資料にありますように、「いちはやく」、一八九ということで、この七ページ、「未来へと命を繋ぐ189(いちはやく)」そして、児童虐待には通告義務というのがありまして、児童福祉法第二十五条の規定に基づき、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合、全ての国民に通告する義務が定められているということなんです。

 私は、今回の心愛ちゃんの痛ましい痛ましい事件を通じて、近所の方、親戚の方を含め、DVが行われていること、また児童虐待が行われていることというのはやはり薄々感じられていたのではないかと思いますし、児童虐待というよりも体罰ですね、身体的虐待、この「いちはやく」という資料にもありますけれども、身体的虐待には、殴る、蹴る、たたくと。

 そういう意味では、根本大臣にお伺いしたいんですけれども、今回、体罰の禁止規定は入った、体罰には通報義務まではない、でも、児童虐待には、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した場合には、全ての国民に児童相談所に通告する義務がかけられているということです。

 ついては、体罰は禁止規定だけで通報義務はないんですけれども、虐待と言えるようなひどい体罰を見たら一八九に電話すべきと、厚生労働省としてポスターを作成するなどして広報し、今回、体罰の禁止規定が法改正で入ったことを機に、国民に周知すべきだと考えます。そのことが今回の心愛ちゃんの事件の再発を防ぐことにもなるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 児童相談所全国共通ダイヤル「いちはやく」には、虐待を受けたと思われる子供を見つけたときには、どのような虐待であっても、ためらわず通告できることが重要だと思います。体罰によって児童虐待をされている、要は、そういうことを含めて、どのような虐待であっても、ためらわず通告できることが重要だと考えます。

 これまでも、その周知を図るために、ポスターやリーフレットを全国の自治体、関係機関、関係団体に配布しているほか、インターネットやSNS、政府広報ラジオ、新聞広告の活用など、さまざまな手法を用いて幅広く広報を行っております。

 また、発信者の利便性の向上として、電話をかけてから児童相談所につながる時間を短縮するためのガイダンスの時間の大幅な短縮や、コールセンター方式の導入を行ったほか、平成三十年度補正予算に無料化に必要な費用を計上しております。

 児童虐待に気づいた人が速やかに通告し、相談につなげることができるよう、「いちはやく」のさらなる周知に努めてまいりたいと考えています。

山井委員 今までからもやっておられるということなんですけれども、私があえて言っているのは、今回新たに体罰禁止規定も入りましたから、そのことを私たちは知っていますが、一般の国民の方々にはそう簡単に周知ができないと思うので、体罰禁止規定が入った、ついては、ひどい体罰というのは児童虐待なわけですから、「いちはやく」に電話してくださいよ、体罰の禁止規定が入ったことを周知しながら、体罰も、ひどい体罰はしつけを超えて児童虐待ですよ、一八九に連絡してくださいよという新たなポスターなどをつくるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 委員おっしゃるように、周知広報の必要性、私は指摘のとおりだと思います。いろいろな形があるわけでありますが、どのような方法が効果的かよく考えて、拡充して対応していきたいと思います。

山井委員 ぜひ、新たなポスターもつくるということを明言していただけませんか。インターネットとかいろいろあると思いますよ。それはインターネットは簡単だと思いますよ、ホームページにぱっと書けばいいんだから。ただ、やはりポスターもかなり有効だと思うんですね、一般の方々からすると。

 今までからポスターはやっているらしいですけれども、ぜひ、体罰禁止のことも含めた新しいポスターをつくっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 ポスターをつくるかどうか、まだこの段階では明言はできませんが、いずれにしても、どのような広報がより効果的な手法かということはいろいろ考えていきたいと思います。

山井委員 これは法改正が一歩前進だとは思いますけれども、そのことを国民に知らせないと実効性がないわけであります。

 それに関連して、今回も、DVのことも児童虐待と密接に関係しているということが心愛ちゃんの事件でも明らかになりました。

 平成十四年の改正で、面前DVが児童虐待に含まれるということになりました。配付資料の五ページ、「心理的虐待が半数超」。それで、赤線で引いてあります、「04年の児童虐待防止法改正で、面前DVをはじめ、暴力を見せたり聞かせたりして、子どもに苦痛を与えることが心理的虐待に当たると明記された。」こう書いてあるんですね。

 手前みそになりますが、私も、この二〇〇四年の児童虐待防止法改正のときの与野党議員の議論の中に入っておりまして、強くこれを主張させていただきました。

 といいますのが、私が六年間ボランティアをさせてもらっていた母子生活支援施設では、本当に子供たちが傷ついて、人間不信になり、特に、残念ながら、男性の大人への恐怖症。私は、何でかなということを遊び相手をしながら考えてみたら、自分が殴られたりしていなくても、酒を飲んだりして毎晩のようにお父さんがお母さんを殴ったりいじめたりしているところを小さいときから目の前で見せられたら、それはDVじゃなくて児童虐待なんですね。それで、そのやはりトラウマ、後遺症で精神的に傷ついてしまう、不登校になる、あるいは攻撃的な性格になるとか、子供に対する甚大な後遺症、被害が残るわけです。そういうこともあって、私も強く主張して、この面前DVが児童虐待に入ったわけです。

 ついては、先ほどの質問とも関連するんですけれども、ポスターやリーフレットなどで広報してもらう際に、今回もそうですよ、虐待の現場そのものを見ていなくても、子供のいる空間でDVが行われているということがわかったら、それはDVじゃなくて、自動的に児童虐待なんです。そのこともきっちりとポスターやリーフレット、広報に入れて、子供の前で行われるDVは児童虐待なんです、だから一八九に連絡してくださいと。

 今までのイメージでは、やはり子供がばあんとたたかれて泣いていたら一八九に連絡しようというイメージだったかと思うんですけれども、それだけじゃなくて、子供の前で奥さんが、結局、多くの場合、奥さんですけれども、妻がDVを受けている、それも「いちはやく」に連絡するように、そういうふうな広報もぜひやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

根本国務大臣 今委員がおっしゃられたとおり、児童虐待防止法において、児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに児童相談所等に通告をしなければならないとされております。

 そして、委員が今お話しいただきましたが、同法において、児童が同居する家庭における配偶者への暴力、いわゆる面前DV、これは、委員が今もう既におっしゃられたとおり、心理的虐待に当たるとされておりますので、通告いただくべきものと考えております。

 「いちはやく」は、児童虐待に対応する相談、通告窓口として、面前DV等の心理的虐待も含めて、虐待を受けたと思われる子供を見つけたときなどに、ためらわず通告し、相談できる環境を整えることが必要であります。

 まずは、その周知を図るために、ポスター、リーフレットを全国の自治体、関係機関、関係団体に配布しているほか、インターネットやSNS、政府広報ラジオ、新聞広告の活用など、さまざまな手法を用いて幅広く広報を行っております。これからもしっかりとした周知広報に努めていきたいと思います。

山井委員 面前DVも児童虐待であって、すぐに「いちはやく」に連絡をという答弁をいただきました。

 もちろん、今回の心愛ちゃんのケースのように、児童相談所に連絡したものの、児童相談所の対応がいま一つ十分でなかったというケースもあろうかと思いますが、とにかく、未然の防止のためには、近所の人、親戚の人を含めて、気づいた人がどんどん通報するということが子供の命を救うことになるのではないかと思います。

 それで、一つ問題は、昨年のこの議論でも「いちはやく」を無料化するということを決めたんですけれども、それで予算措置もされているということですが、私もさっき電話してみたら、やはり最初に、この電話は二十秒で十円かかりますと、電話したらまず出てくるのがそれなんですよね。まずお金のことなんですよ。皆さんも電話してみられたら。「いちはやく」に電話したら、最初の自動音声が、この通話は二十秒間で十円かかりますと。まずお金の話かということになる。

 これはもう当たり前の話、無料と決まっているのに、まだ無料になっていないんです。それで、いつから無料になるんだと厚労省に聞いたら、これは今言っているんじゃないですよ、去年の国会で問題になって、無料にしようと決まったから、私はてっきり無料になっていると思ったら、きょう電話しても、二十秒間十円、十分三百円、三十分九百円と。そういう話じゃないと思うんですね、これは。「いちはやく」、虐待している、人の命を救ってくださいと言っているのに、お金の話かと。言っちゃなんですけれども、別に通報したからお金をくれとは言いませんよ、全然。でも、通報したらお金がかかりますよ、「いちはやく」と言いながら金を取りますよというのは、何か矛盾していると思うんです。

 だから、そういう意味では、いつから無料になるかまだわからないとかおっしゃっているんですけれども、やはりこれだけ切実な問題だから、ぜひ一週間後とか一カ月後とか、ちょっと明確な答弁をいただきたいと思います。

根本国務大臣 児童相談所全国共通ダイヤル一八九「いちはやく」は、広く周知するとともに、平成三十年度補正予算に無料化に必要な費用を計上し、利便性の向上に努めていきたいと思っております。

 今年度から、「いちはやく」の無料化を実現するために必要なシステム改修等を実施することとしております。今年度中に、システム改修が終了次第、できる限り速やかに「いちはやく」の無料化を実施する予定です。(発言する者あり)

山井委員 これはもう一年前のこの審議から言っていることなんですよ、今も岡本さんがおっしゃったように。これは人の命がかかっているんですから。そんなもの、今年度中って、来年三月じゃないですか。いいかげんにしろという話ですよ。一カ月以内とか二週間以内とか、明確な答弁を。

 これは、繰り返し言いますよ、電話して最初のアナウンスが、二十秒十円かかります、そういう次元の話じゃないと思うんです、本当に。必死になって、子供の命をかけて、連絡する人も連絡しているわけですからね。

 大臣、やはり明確に、できるだけ早くじゃなくて、一カ月以内とか二週間以内とか、ちょっとめどをお答えください。

根本国務大臣 必要なシステム改修を今実施するということにしておりますので、要は、システム改修が終了次第、できる限り速やかに「いちはやく」の無料化を実施する予定です。

山井委員 だから、そのシステム改修をいつまでに終わらせるのかというのを聞いているんですよ。

根本国務大臣 これはシステム改修の問題ですから、できる限り急がせてやりたいと思います。

山井委員 本当にやる気があるんですか、これは一年前から議論していて。何を言っているんですか。きょう初めて質問しているんじゃないんですよ。去年からずっとこの議論をして。本当にきょうはびっくりしましたよ、電話したらいきなり金の話が出てきて。てっきり無料化だと思っていたら。おまけに、今質問しても、いつかわからないと。

 今、後ろから耳打ちがありましたけれども、せめて、ある程度具体的な期日を答えてください。そうしないと、これは法案審議の意味がないじゃないですか。法案審議をやって、急いでください、来年三月までにはやります、そんなもの、やる気ある答弁と言えないでしょう。

根本国務大臣 今年度中にシステム改修となっていますが、今、システム改修を急がせるべく、精力的にやっております。

山井委員 当然、採決までには答えてくださいよ、こんなことぐらい。一年前から言っているんですからね。

 一年間審議拒否して審議もせず、やっと審議したと思ったら、一年前の宿題をいつまでにやるか、めども立たない。何のための国会審議なんですか。何のための大臣なんですか。検討中で来年三月までにやりますだったら、審議する意味がないじゃないですか。

 ちょっと今、何かまたレクが入ったので、ぜひ半歩でも前向きな答弁をしてください、具体的に。

根本国務大臣 今、業者を急がせております。年度内というより年内にやれるように、今、業者を急がせております。

山井委員 ちょっと耳を疑いますよ。そういう話じゃないでしょう。年内って、半年以上先じゃないですか。それはあんまりですよ。もうちょっと前向きな答弁をしてくださいよ、そんなもの。

根本国務大臣 これは「いちはやく」ですから、当たり前だけれども……(発言する者あり)いやいや、冗談を言っているわけじゃない、ちゃんと言っております。こんなのはできるだけ早くやらせるのが当たり前ですから、もっと早くするように、今……(発言する者あり)いや、これはシステム改修の問題ですから、だから、しっかりやれ、早くしろ、こう指示をしております。

山井委員 これは審議が続くと思いますので、次回の答弁のときには、ぜひ一カ月以内とか、いやあ、これは言いたくはないけれども、繰り返して言いますけれども、私、当然無料になっていると思ったんですよ、無料にすると聞いたから。びっくりしましたよ、本当にきょう。一事が万事なんです。

 それで、もう一つ、去年六月に、岡本理事また西村理事、そして阿部知子さんを始めとして、必死になって、高橋千鶴子さんにも頑張っていただいて、私たち野党で法案をつくったんですよ。ところが、六月末に提出した後、十一カ月、ほったらかしになりました。

 何が違うかというと、このグラフ、つまり、一つの違い、幾つも野党案の方がすぐれているところがあるんだけれども、一つは児童福祉司をふやすスピードが速いんですよ。私たちの法案では、三万人に一人と書きました。その三万人に一人と書いたことによって、政府もそれを取り入れて、私たちは来年度までに三万人に一人にしろと言ったのに、四年後までということで、ゆっくりになってしまったわけですよね。

 そこで、とにかく、せめてこれぐらいのことはやっていただきたいんですが、何が与党案と野党案で違うかというと、各児童相談所に一人加算するということになっているんです。その結果、ここを見ていただきたいのが、二〇二二年の目標が、五千二百六十人と五千四百七十人、二百十人違う。これの大きな理由は、各児童相談所に一人底上げするという、そこなんですよね。

 これは法案の修正協議にもかかわると思いますが、ぜひ根本大臣、十一カ月も法案審議がおくれたこともありますから、野党が言っているように、全ての各児童相談所に一人上乗せする、そのことをやるという御答弁をいただけませんか。

根本国務大臣 昨年十二月に児童虐待防止対策体制総合強化プラン、これはいわゆる新プランと言っていますが、これを決定しました。二〇一九年度からの四年間で、現在三千人の児童福祉司を二〇二二年度には五千人体制とする、児童心理司も二〇二二年度に八百人程度増員する、保健師を各児童相談所に配置するなど、児童相談所の体制の抜本的拡充を図ることといたしました。

 さらに、本年二月八日に関係閣僚会議で決定した対策においては、特に初年度の二〇一九年度、児童福祉司を千七十人程度増員するなどの体制の抜本的強化に前倒しで取り組むこととしております。まずは、地方公共団体における人材確保が着実に進むように、国としても支援していきたいと思います。

 なお、来年度の増員計画については、今後、進捗状況などを踏まえながら、概算要求に向けて検討していきたいと考えています。

山井委員 また先送りですか。だから、この審議を去年やろうと言ったんですよ。去年やっていたら、ことしの予算に反映されていたんですよ。でも、十一カ月も放置されたから。そうしたら、また来年といったら、もう一年おくれるじゃないですか。

 これは修正協議の法案にも私たち入れていますから、譲れません。ぜひやってください。報道によると、与党も修正協議に前向きという報道ですからね。これぐらいの修正はやってくださいよ、十一カ月も私たち待たされたんですから。こんなこともやらないんだったら、口だけですか、修正協議をやるというのは。そこはぜひ、与党と厚生労働省でしっかりと議論してください。十一カ月も待たされて、結局全然野党の言うことも聞かないということにはならないと思います。ぜひここは修正協議でもお願いしたいと思います。

 もう一点、この下の方、つまり、この下にありますように、昨年この法案の審議をやっていたら、そして野党案が成立したら、今年度は四千七百四十九人になっていたんですね。ところが、政府のプランでは四千三百人。ここでもう四百四十九人も野党の法案と現状とが食い違ってきてしまっているんですよ。こういうこともあるんです。

 ですから、今、根本大臣が来年度予算とおっしゃいましたけれども、野党案では、来年度予算は四千九百五十九人と、ここにあるようになっています。政府のプランではここまでいきませんけれども、ぜひ、十一カ月も待たせたわけですから、来年度は四千九百五十九人、私たちの野党案のような大幅な増加をしていただきたい。

 そして、そのことを、ぜひこの法案審議のこの場で明言いただきたいんです。そうしないと、結局、幾ら法案にしたって、来年度予算で検討します、検討しますだったら、審議する意味がないんですよ。だからこそ、私たちは、三万人に一人、各児童相談所一人上乗せということを法案に明記して、与野党を超えて、仲よく協力して大幅な児童福祉司の増員を決めようと言っていたわけですよ。

 ですから、ぜひとも根本大臣、来年度、野党案にあるように、四千九百五十九人ぐらいになるんですね、この児童福祉司の増員をするということを答弁ください。

根本国務大臣 繰り返しになりますが、新プラン初年度の二〇一九年度は、児童福祉司を千七十人程度増員するなどの体制の抜本強化に前倒しで取り組むこととしております。児童福祉司の専門性向上を図りながら、まずは地方公共団体における人材確保が着実に進むよう、国としても支援してまいりたいと思います。

 なお、来年度の増員計画については、今後、進捗状況のほか、児童虐待対応件数の状況なども踏まえながら、概算要求に向けて検討していきたいと思います。

山井委員 本当に何か議論が一周おくれですね。去年もこの場で私はこの議論をさせていただきました。ぜひとも、これは修正協議にも入っている項目ですから、この法案審議中に野党案のようにするということを明言していただきたい。

 そうでもないと、全く、法案審議をしても、結局は政府としては野党の言うことを取り入れないんだったら意味がないわけで、今回は柔軟に修正に応じると言っているわけですから、私たちも、別にこれを政争の具にする気はありませんので、ぜひとも、よりいいものを、与野党を通じて協議をしていただければと思います。

 それに関連して、野党の法案では、一人当たりの虐待相談件数を四十件以下というふうに明記しております。

 結愛ちゃんが昔暮らされていた香川県のその地域の児童相談所にも私たちは行きました。そのときにも聞いたんですけれども、やはり児童相談所の現場は、児童福祉司がたくさんの件数を持っていて本当に疲労こんぱいしている、一人一人丁寧に対応したいけれども本当に手が回らないんだ、現場の人も本当に苦労しているということを強く言われまして、私たちはそれを法改正に去年したわけです。

 ここにありますように、これは都道府県の件数ですけれども、やはり全国平均四十・五件で、もっと多くの担当件数の県もあるわけです。私たちの法案に書いているのは一児童相談所当たりの件数なんですけれども。今回の法改正で、私たちは、最大一人当たり四十件だ、これは当然だと思います。

 今回の児童虐待の痛ましい事件の再発を防止するためにも、私たち野党が言っているように、こういう上限を決めるべきだ、そしてそれに対してきっちりと児童福祉司の数をふやすべきだと思います。このことについて、根本大臣の見解をお伺いします。

根本国務大臣 児童相談所の児童福祉司一人当たりの業務量を減らして、よりきめ細かなケースワークを行うことができるようにすることは重要だと思います。

 先ほど申し上げましたように、新プランを昨年十二月に決定して、新プランにおいては、児童福祉司一人当たりの標準的な業務量について、児童相談及びそれ以外の相談を合わせてこれまで五十ケース相当だった配置標準を、四十ケース相当となるように見直しを行うことにしております。

 委員の御提案の一人当たりケース数に上限を設けることについては、各児童相談所が担当するケース数が常に一定ではなくてその時々に変動するものでありますので、仮に一時的に当該児童相談所の担当ケース数が増大した場合には、追加での人員配置が急に必要となる、あるいは誰も担当できないケースが生じるという課題が生じる可能性があって、これは柔軟な運用ができなくなるのではないかと考えています。このため、一律に一人当たりケース数に上限を設けることは適当ではないと考えております。

山井委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、この三十分の短い時間でしたけれども、聞いていたら、余りやる気を感じられないです、これは本当に。

 今の四十件、何か、その児童相談所の事情もあるから一律に上限を設けられないと。そんな悠長なことを言っている場合じゃないでしょう。本当に現場は、児童福祉司の方々も大変な苦労をされているんです。それを、与野党を超えて、国会を挙げて、厚労省と力を合わせてやろうとしているときに、いろいろな提案をしても全部、できません、できません、時間がかかりますと。そんなことだったら、これは法改正をしたって魂が入りません。

 ぜひとも、この法案審議では、実効性のある前向きな結論を与野党を通じて出したいと思いますので、その結論をしっかり出す法案審議にする。それを出さないんだったら、これはそう簡単に採決できなくなりますから。そういう意味では、しっかりと前向きな答弁をお願いしたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省医政局長吉田学君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 質疑を続行いたします。岡本充功君。

岡本(充)委員 岡本です。

 それでは、質問に早速入りたいと思います。

 きょうは、まず、大きなポイントとして、要保護児童対策地域協議会、この実態がどうなっているのかということについて少し議論をしたいと思います。

 きのう随分議論を既に厚生労働省また文部科学省の職員の方としましたが、イメージはどういうイメージなんだ、どんな感じで行われているんだという話をしました。

 そもそも、この要保護児童対策地域協議会、要対協と略すようでありますけれども、設置していない自治体もあるというような状況であって、メンバーはどうなんだと言ったら、ここに書いてあるようなメンバーですということで、皆さんにお配りしている資料の一番、こういう感じですと言いました。

 これで見ると、一〇〇%参加しているところはないんですね、警察で九五・七%。そもそも、児童相談所がどのくらい出席しているのかといったら九六・二%で、児童相談所すら出ていない要対協がある。こういう状況だということでありますが、児童相談所が参加しない要対協というのは一体どうなっているだろう、こういうふうにも思うわけであります。

 また、市町村も、母子保健主管課や児童福祉主管課、こちらも七割前後しか出席をしていない。どういうことなんですかといって聞いたら、要するにそれ以外の部局が出ているんだと。構成機関に入っていない整理とされている自治体四百四十七市町村については、確認をとれなかった三市町村を除き、児童福祉・母子保健統合課、若しくは母子保健課、教育委員会等の名称として、児童福祉を主に担当する部署が構成員として加わっている、こう書いています。

 児童福祉主管課若しくは母子保健主管課が参加していない事例はない、こういう理解でいいのか、確認を求めます。全ての要対協に必ず入っているという理解でいいんでしょうか。また、児相も必ず入っている、こういう理解でいいんでしょうか。

    〔委員長退席、橋本委員長代理着席〕

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 委員配付の資料、私どもの調査ではあのとおりでございましたけれども、委員の御指摘を踏まえまして確認いたしましたところ、要保護児童地域対策協議会の構成機関として、まず、児童福祉主管課が入っていないという整理がされている自治体、これは四百四十七市町村でありました。

 それで、そこについて個別に確認いたしましたところ……(岡本(充)委員「それは今さっき読み上げたからいいです」と呼ぶ)はい。そういう意味では、結論といたしましては、確認がとれなかった自治体、三市町村以外は、いわば実質的に児童福祉主管課が入っているということでございます。

 児童相談所でございますけれども、これが入っていない自治体は六十六市町村ございました。

 それで、恐縮ですが、急な対応だったものですから余り確認できていませんで、二十市町村は確認できました。この二十市町村について、入っていない理由をお聞きしましたところ、離島等のために常設的には参加していないけれども、対応すべきケースが発生した場合には随時参加する体制を整えているということでありました。残りの四十六市町村については、現在確認中でございます。

岡本(充)委員 であれば、児童福祉主管課として入っているのなら、七四・二という、二十九年四月一日時点、複数回答可というこの紙自体をもう一回書き直さなきゃいけない。ちゃんとした資料を出していただきたいんですが、次の審議までに出していただけますか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと、その書きぶりにつきましても、個別の自治体とよく中身を調整する必要があると思いますので、できる限りの調整を行いたいと思います。

岡本(充)委員 大臣、どういう人たちが参加しているかもわからないというこの要対協の実態は、私は、やはりこれまでの児童福祉の行政に関して厚生労働省はしっかりとしたコミットをしていないんじゃないかということを思わざるを得ないわけであります。

 では、実態はどうなっているのか。

 ちょっと、文部科学省にも来ていただいていますので、お聞きしますが、教育委員会が参加をしない要対協というのは一体どういう状況になっているのか、お答えをいただきたいと思います。

中村大臣政務官 詳しく調べていませんので、今、この場ではお答えができません。

岡本(充)委員 きのう言ったんですよ。教育委員会がない市町村はないですね、こういうことを確認しましたよね。そして、教育委員会が全ての市町村にあるというのに、参加していない市町村があるということは一体どうなっているんですかと言っているはずです。にもかかわらず、結局、この時点で答弁をしてもらえない。それは、調べがつかなかったということですか。

中村大臣政務官 教育委員会又は小学校、中学校、それぞれどのような形で参加をしているかということの実態がつかめていないということです。

岡本(充)委員 だから、調べてくださいときのう言ったんですよ。

 では、せっかく政務に来てもらっています、このペーパーをもう一回見直して、本当に、どういうふうに参加しているのか、していないのか、もう一度、新しいペーパーを次の審議のときに厚生労働省と協力して出していただけますね。

中村大臣政務官 早急に実態の把握をしていきたいと思いますが、相手もいることですので、次の審議というのはいつになるか、早急に調べていきたいと思います。

岡本(充)委員 それは、理屈上でいえば来週の水曜日ですから、それまでにはきちっと、質問ができるようにやっていただきたいと思います。いいですね。はい。

 では、うなずいていただきましたので、次の質問に行きたいと思います。

 では、実態は一体どうなっているのかということで、めくっていただいて、二ページ目、これが、ある市の要対協で配られるリストだそうであります。名前と年齢、性別、担当者、相談分類、地区、所属、計画、緊急度。ここで言うところの、例えば緊急度とは何なんですかと聞きました。この自治体の場合には、緊急度については、おおむね週一回以上の支援が必要なケース、おおむね月一回以上の支援が必要なケース、継続的なモニタリング支援が必要なケースの三種類で整理をしている、こういうことでありました。それで、備考ということになるわけです。

 ここでちょっと聞きたいわけでありますが、イメージとして、大体、この市町村は、何時間ぐらいかけて何件の案件の継続案件、新規案件を見ているのか、五月の事例でお答えをいただきたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 今回の事例のケースでございますけれども、新規件数で、毎月五十から百件程度のケースを議論するということでございます。

 それで、市町村におきまして進行管理票を作成いたしまして事前に関係機関と情報共有するということでありまして、児相から当該月に情報のあった全てのケースについて情報の共有を図るといったことでございます。

 児相から移管されたケースや虐待通告のあったケースにつきましては、市町村が継続的に関与するものとして、援助方針の検討、主担当機関等について意見交換、情報共有を図るといった内容、それから、こういった進行管理票のほかに、個別記録票を用いまして意見交換、情報共有を図るというものであります。

 というのが主とした議論の内容でございますけれども、時間については、一律ではないと思いますけれども、このケースについてはおおむね二時間程度というふうに聞いております。

岡本(充)委員 二時間で何件、五月の段階で。この市は半分に割っていると聞きました。市が広いので、二つに割っていると。それで、ある半分の方のエリアについてのケースで大体何人の新規ケース、何人の継続ケースをこの二時間で議論したんですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 まず、新規ケースにつきましては、月によって違いますけれども、おおむね毎月五十から百件程度でございます。

 それから、継続ケースにつきましては、いわばストックでございますけれども、通年で五百件程度でありまして、この継続ケースにつきましては、援助方針等の意見交換、情報共有を図ることができるように、毎月順番に一定数を取り上げるというような形で進行しているというふうに聞いております。

岡本(充)委員 そこ、最後が重要ですね。つまり、毎月取り上げられない子供がいる。継続しているけれども、毎月取り上げられない子供がいる。何で継続ケースになるかというと、市町村が継続的な関与が必要となれば継続ケースになるにもかかわらず、つまり、新規で来て、これは継続が必要だねと言ったけれども、結果として、毎月議論の俎上に上らない子供がいる、そういう理解でいいですね。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 結論といたしましては、全てのケースについて議論、取り上げるということではありません。

 ただ、当然でございますけれども、継続ケースについて、事情変更があるとか対応の必要があるというものについては、機械的なものじゃなくて、随時必要なときに取り上げるというような取扱いだというふうに考えております。

岡本(充)委員 じゃ、これは、誰が必要なときにと判断するんですか。

 結局、要対協で管理しなきゃいけない子供は、二時間の間に六十人、七十人いる。一人の子供について、新規だけでも一分か二分ですよ、今の話で、一分か二分。そして、継続のケースは百人単位でいて、毎月上らない人もいる。

 したがって、継続が必要といいながら、毎月、要対協では取り上げられない子供がいる、これが事実ですね。違うのなら違う、そのような実態ですならそのような実態です、どちらかで答えてください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、抱えている全てのケースについて、毎月必ず取り上げるということではないということは事実でございます。

 ただ……(岡本(充)委員「一人当たり二分が事実でしょう」と呼ぶ)機械的に割り振りますとそうなりますけれども、議論の中身としては、ケースの軽重に応じて、何といいましょうか、機械的に一件二分とかいうことではないと思いますけれども、全ケースで割り返せば平均的にはそうなるということは事実でございます。

岡本(充)委員 つまり、大臣、考えてくださいよ。新規で情報があって、いろいろなケースがあり得ますよ。虐待されている、そういう情報があっても、一分か二分で、しかも、この備考欄、大体一行か二行ですよね、書いてあるのは、二、三行。局長、そうですね。実際には二行か三行ですね、ここ。

 情報として載っているのは、二行か三行しか載っていないこのペーパーだけで議論している。これは事実ですよね。答えてください、きのうやっているんだから、それは事実なんだから。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 議員が御指摘の進行管理票については、備考欄のところに二、三行というのは、その程度の記載というのは事実でございますけれども、進行管理票のほかに、個別記録票というもう少し詳しい資料についても別途資料として配付されているというふうに聞いております。

岡本(充)委員 個別管理票だって、名前とか家族関係は見ましたよ。名前とか家族関係とかそういうものについてはずらっと書くけれども、実際に課題として書くところは二行か三行でしょう。違いますか。長期的目標なんか、一行しか書けない、そんなスペースでしょう。それは事実じゃないですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、長期目標等のそういった欄について、一行程度の記載スペースというのは事実でございますけれども、必要な情報については口頭でのやりとりというふうに聞いております。

岡本(充)委員 つまり、大臣、それぐらいなんですよ。一行か二行で事の重大性がわかる話じゃない。

 じゃ、心愛ちゃんの事件で、一行で書けるんですか。どなたかが資料でも出していたけれども、資料で、どういうことが起こったかだけでも一枚紙になるわけですよ、少なくとも、概要だけでも。それを一行、二行の紙で議論しているのが要対協の実態なんです。一人、一分か二分の議論で終わりなんです。

 これは、要対協のあり方を見直さなきゃいけないんじゃないかということをすごく強く感じました。

 大臣にも、きょうは文科の政務にも来ていただいています。それぞれから、この運営のあり方に問題を感じてもらえば、見直していく、そして運営の指針をぜひ厚生労働省でつくってもらいたい。そして、場合によっては、より細かく分けなきゃ仕方ないです。時間がかかるんです。だから、この市はグループを二つに分けていると言いました。しかし、人口五十万人ぐらいのこのA市、名前は出しませんけれども、この市ぐらいだったら、例えば五カ所も六カ所も、小学校校区と中学校校区ごとにやっていくでもいいです、もっと細かくやるべきなんじゃないか、こう思うわけであります。

 こういった設置のあり方も含め、厚生労働省にはやり方をぜひ見直してほしいし、この情報提供のあり方では情報提供は十分じゃないという私の指摘を受けて、文科省でも、どういうような情報提供の仕方をするのか検討していただきたい。それぞれお答えください。

    〔橋本委員長代理退席、委員長着席〕

根本国務大臣 要保護児童対策地域協議会で個々のケースの課題や状況を継続的に把握して支援につなげていくとともに、関係機関がそれぞれケースに関する問題意識を持って対応していくこと、これは重要であると思います。

 今いろいろ委員から御指摘をいただきましたが、要対協においては、関係機関がそれぞれ把握している情報をもとに、子供の状況把握や問題点の確認、経過報告とその評価、新たな情報共有などの進行管理を行うとともに、支援方法の検討や役割分担を行う、これが要対協の性格でありますが、個々のケースの取扱いについては、新規のケースか継続中のケースかといった点やリスクの高さなどにより、それぞれ要対協で適切に判断しているものと考えております。

 今御指摘のように、要対協の対応状況、これは市町村によって差があるのではないかという御指摘、委員も今、事例を挙げて指摘いただいたわけでありますが、要保護児童対策協議会、この効果的な運営方法等に関するガイドラインの作成、そして、事務局で調整を担う市町村の担当職員の常勤での配置などによって、こうした的確な対応をどの市町村でも行うことができるよう取組を進めていきたいと思います。

 今、担当職員の常勤での配置ということを申し上げましたが、やはり要対協の対応状況、これは、形式的なものとならないように市町村に対して適切な運営を促すことが必要だと思います。

 具体的に、要対協における支援方法の検討などを実効的に行うためには、事務局の市町村の進行管理事務を担う調整担当職員の役割が重要であります。平成二十八年改正においては調整担当職員の配置を義務づけたところでありますが、さらに、新プランに基づいて、二〇二二年度までに調整担当職員が全市町村において常勤となるよう配置を進めてまいります。

中村大臣政務官 お答え申し上げます。

 学校や教育委員会では、要対協において虐待ケースとして進行管理台帳に登録された児童生徒について、おおむね一カ月に一回程度、対象となる児童生徒の出欠状況や欠席の理由等の情報提供を行うこととしております。学校では、日々児童生徒の状況を確認しているところでありまして、新たな児童虐待の兆候や状況の変化等を把握したときには、定期的な情報提供の期日を待つことなく、適宜適切に情報提供を行うこととしているところであります。

 その連携の具体的な事例として、ある自治体では、虐待のおそれのある児童をめぐって、保護者が、学校とは面会拒否、そして児童の登校も拒否しているという状況の中で、要対協の方の進行管理台帳に当該児童を上げたことによって、関係機関との連携によって学校が児童の安否を確認できたというような事例もあって、要対協と学校の相互連携による対応が行われ、成果を上げている面もあります。

 要対協において共有が図られた情報の活用を含め、関係機関との連携を深めながら児童虐待対応が行われるよう、虐待に関する関係通知や虐待対応の手引の周知の徹底を通じて虐待防止を進めていく、要対協の方と連携をしていくと考えております。

 以上です。

岡本(充)委員 残念ですね。僕がこれだけ言って、まだ役所のペーパーを読んでいるだけじゃだめですよ。やることは、それはもうやると言っているんですよ。私が言っているのは、こんな一行じゃわかりっこないんですよと。

 ここの欄のどこに、じゃ、出席状況は書いていますか。このペラ一枚なんですよ。出席状況なんて書いていないじゃないですか。役所から言われたペーパーを読んでいたらだめです。これは、実際にある市の現実の紙です。これだけ配っているんですから。この状況で本当にできるのかと言っているんですよ。

 それを、好事例を一個引っ張ってきて、いや、やっていますといって国会答弁をやるんじゃなくて、実態は、これではまずいということを言っている、市町村でばらつきがあるよと言っている。それを、リーダーシップをもって、なるほど、言われたけれども、本当はどうなんだといって、ちゃんと役所に帰って調べてみます、これが私はリーダーの答弁だと思いますよ。

 大臣、どうですか。政務官、もう一回。

根本国務大臣 今委員からさまざまな御指摘をいただきました。私も、そこは、今委員のおっしゃることを反すうしながら聞いておりました。

 先ほど私申し上げましたが、委員はこの一つの市の事例で御指摘をいただいた。そして、市町村によって差があるのではないかという指摘もありますので、要保護児童対策地域協議会の効果的な運営方法等に関するガイドラインを作成したいと考えておりますし、先ほども答弁申し上げましたが、事務局で調整を担う市町村の担当職員の常勤での配置、こういうことによって、的確な対応がどの市町村でも行うことができるように取組を推進していきたいと考えています。

中村大臣政務官 議員御指摘のどちらかの市の事例を見ると、確かに要対協としての機能が十分であるかどうかということに疑問を持つ部分もございます。実際に、野田市の要対協の対応にも大変な残念な不手際があったというふうに私も思っております。

 それぞれの要対協ごと、市町村ごとに対応が余りにも違ってはいけないというふうに思いますので、こうした要対協の取組状況について、厚生労働省と連携しながら、よく把握をし、適正な対応をとっていただけるように促してまいりたいと思います。

岡本(充)委員 この質問に、本当に、ほとんどの時間を費やしてしまいました。まだいろいろ重要な話がある。これは、もっと早くそういうふうに答弁していただきたいですよ。では、要対協の実態がこれから変わっていくと信じています。本当に、これは情報共有できていませんよ。

 続いて、所在が不明の子供たちの行方です。三ページ目、四ページ目に配りました。

 これはもう何カ月もやって、予算委員会で私はこれを取り上げたわけですよ。何カ月もやって、結局、まだ会えない。後日だ後日だと言い続けて、厚生労働省側で四百三十八人ですか、引き続き対応しなきゃいけないのは。そして、文科省では四百九十三人、まだ連絡がなかなかとれていない。こういう子供たちは、五月末を期日として今調査中です。それでもまだ見つからない。

 三カ月たっても見つからないのなら、警察と情報を共有するべきですよ。三カ月もやったけれども、また後日また後日と言って、結局、本人に会えない、本人が見えない。これはやはり、こういう事例があるということをきちっと警察と情報共有をするべきであって、いつまでも文部科学省、厚生労働省の方で抱えている話ではないと思います。

 警察と共有するという方針でいいですか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の四百三十八人の児童につきましては、引き続き面接等による調査を継続し、四月九日から五月三十一日までの安全確認の状況につきまして改めて報告を求めております。それで、継続して確認が必要な児童につきましては、速やかに状況確認がなされることが必要であると考えております。

 今後、地方公共団体に対しまして、全てのケースについて要対協において共有し、関係機関への協力を要請する。特に必要と考えられるケースにつきましては、警察を含む関係機関への情報共有を行うことについて地方公共団体に働きかけてまいりたいと考えております。

中村大臣政務官 緊急点検並びにフォローアップに関しまして、二月一日から十四日まで一度も登校していない児童生徒十八万七千人について調査を行った結果、市町村や児童相談所等に、虐待のおそれがあるとして、一万三千三十三人の情報を共有したところであります。

 議員御指摘のように、面会もできていない、そして安全確認ができていない、情報共有もできていないという生徒については、児童生徒あわせて千九百九十九人いらっしゃいまして、今、四月十六日から五月三十一日までの間に面会をするように現場の方にお願いをしているところであります。

 仮に、五月三十一日までの間に、学校、教育委員会及び関係機関で一切面会ができないというようなことが起こりました場合には、その全てについて児童相談所や警察に情報共有することとしているところであります。

岡本(充)委員 そうですね、ちょっと人数を言い間違えました。千九百九十九人ですね、文科省の方は。

 今、聞きましたか。どうするか要対協で考える、そうじゃない、警察に言う、児相に通告すると言っていますよ。厚生労働省は、児相だって、確認できなかったら、要対協に出すじゃなくて、警察と情報共有するべきじゃないですか、何カ月も会えないんだから。大臣、そこはリーダーシップを出すべきですよ。役所の答弁はそうなることを知っていました、きのう大分やったから。

 だから、大臣に聞きたい。文科省はこう言っているんですよ、ちゃんと警察と情報共有する。三カ月も会えないんだから、ちゃんと大臣はリーダーシップを発揮していただきたいと思います。いかがですか。

根本国務大臣 要は継続して確認が必要な児童、これは速やかに情報確認がなされることが必要であると考えています。

 今後、地方公共団体に対して、全てのケースについて要対協において共有し、関係機関への協力を要請する。そして、特に必要と考えられるケースについては、警察を含む……(岡本(充)委員「特にじゃない」と呼ぶ)要対協は警察も入っていますから……(岡本(充)委員「いや、入っていないものがある」と呼ぶ)ここは要対協で情報を共有してもらって、特に必要と考えるケースについては、警察を含む関係機関への情報共有を行うことについて働きかけていきたいと思います。

岡本(充)委員 すぐ要対協と言うけれども、要対協はまだマニュアルをつくらなきゃいけない状況なんですよ。その要対協に言ったからいいじゃなくて、やはり、捜査するかどうかは警察の判断です。しかし、こういうケースがあるということ。警察は全部いないんだから、要対協に。さっきもお見せしたじゃないですか。だから、ちゃんと情報共有をしてくださいよと言っているだけです。いかがですか、大臣。それでもやらないんですか。特に必要なケースじゃなく、それでも見つからない人は皆さんで情報共有する、そういう理解でいいですか。

根本国務大臣 要は、全てのケースにおいて要対協で共有し、関係の協力を要請するということと、特に必要と考えるケースについては警察等の関係機関への情報共有を行う、これについて強力に働きかけていきたいと思います。

岡本(充)委員 それは、何にも答弁が変わっていないですよ。さっきからそれを言っているんですよ。だけれども、それだと警察に情報提供されないケースが残るという理解でいいですか。それとも、警察に情報提供は、要対協経由であれ、どういう経由であれ、必ず警察と情報共有がなされるということなのか、警察と情報共有しないケースが残るということなのか、どっちですか。

根本国務大臣 今、五月三十一日までの安全確認の状況について改めて報告を求めております。

 その上で、ケースにもよると思いますが、警察と情報を共有しないケースも一部あると思います。

岡本(充)委員 それは、だけれども、さっきの文科省の話と大分違いますよ。大臣、リーダーシップを発揮するべきですよ、本当に。そこでもし死亡案件が出ようものなら、責任問題ですからね、大臣、ここでこれだけ言っているんですから。情報共有するべきですよ、三カ月会えないんだから。

 私はもう一回強く言う。そういうケースは残らない、残るのか、もう一回最後に。

根本国務大臣 それはリーダーシップは発揮しますよ。ただ、やはりこういうのは事実関係の問題ですから。

 要は、会うことを約束しているケースもあるという事例があるということなんですよ。全くわからないというんじゃなくて、会うことを約束しているというケースもある。ただ、そういう場合は、それはそのまま警察に行くということにはならないだろう。だから、やはり実態のケースがどういうケースかということが、私はそこが大事だと思います。そこのところの実態が大事だと思います。必要なやつは当然警察にやるわけですが、会いますよと約束しているようなケースがある。そこまで警察ということは、そこはやはり実態をきちんと把握しなければならないということだと思います。

岡本(充)委員 いやあ、残念です。

 本当は、きょうはこの学校・教育委員会等向けの虐待の手引き、これも指摘したかった。ここで、教育委員会から学校への情報提供が抜けていたり、いろいろ課題が残っています。これをもう一回見直す必要がありますから、政務官、これをぜひもう一回見直す、それを最後に答弁いただいて、終わりたいと思います。

中村大臣政務官 見直す必要があるというお話だけでは、どこを見直すということを答弁するわけにはいきませんが、現時点でこの手引の徹底を図っていく考えでございます。

岡本(充)委員 じゃ、また次回やらせてもらいます。

冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 今回の改正の焦点の一つが、体罰の禁止です。国連子どもの権利委員会は、どんなに軽いものであっても、全ての体罰を明示的かつ完全に禁止することを求めています。法律に書いただけでは変わらないという意見もありますが、しかし、法律に書いたことでやはり体罰が大きく減ったということは、国際的にも証明をされています。

 NPO法人子どもすこやかサポートネットの調査では、全面的に体罰を禁止した国は今、世界五十四カ国に上っています。スウェーデンでは、体罰を肯定する親が一九六五年には五三%もありました。七九年の法改正を挟んで、九九年には一〇%へと減少しています。フィンランドでは、一九八一年、四七%だったものが、一九八三年に体罰禁止をしたことで、二〇一四年には一五%まで減りました。お仕置きとしての軽い体罰も半減しています。ニュージーランドでは、二〇〇八年、体罰を容認する親が六二%だったものが、二〇〇七年の法制化を経て、二〇一三年調査では三五%に減っています。体罰禁止を法定することが、まず親の意識を変えて、結果として体罰を減らす効果を上げていることが実証されていると言えるのではないでしょうか。

 五月十日の本会議で、私は、児童虐待防止法の第十四条、児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、体罰を加えること、その他民法第八百二十条の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為により当該児童を懲戒してはならないとされているのは、体罰の禁止を明記したとしても、監護、教育の範囲内なら体罰を与えてもよいということにならないかと質問しました。

 それに対し、安倍総理は、監護及び教育に必要な範囲を超える行為か否かにかかわらず、全ての体罰が禁止される規定となっており、監護、教育の範囲を超えない体罰を正当化する余地を残しているという指摘は当たらないと答えました。

 最初、耳で聞いたときは、なぜ指摘は当たらないのか、どういう意味で言ったのかなと思ったんですね。字で読むと、超える行為か否かにかかわらず、つまり、範囲内であってもなくても禁止しているんだからいいんだというふうに答えている。

 どうしたらそういうふうに解釈できるのかがわからないので、この答弁の趣旨を明快にお答えください。

根本国務大臣 体罰によらない子育てを推進するために、体罰禁止を法定化いたしました。

 改正後は、児童のしつけに際して、体罰を加えること、監護及び教育に必要な範囲を超える行為、これがいずれも禁止される規定となっております。ですから、第十四条で、体罰を加えることということと、その他民法の規定による監護及び教育に必要な範囲を超える行為によって当該児童を懲戒してはならずと、こう書いてありますが、要は、体罰を加えるということと、監護及び教育に必要な範囲を超える行為、これがいずれも禁止される、そういうことなのでこういう規定の書きぶりになっております。

高橋(千)委員 つまり、今のお答えは、体罰はまず禁止している、そのほかに民法八百二十条の規定の範囲を超える懲戒はならない、二つのことを言っているんだという説明だと思うんですね。

 だけれども、体罰は懲戒の一部と捉えられてきたのではないでしょうか。

 一番直近では、三月十五日の初鹿議員の質問主意書において閣議決定された答弁文書は、「現行法令上親権者による「体罰」について定めた規定があるわけではないため、懲戒権の行使として体罰が許容されるかどうかを一概にお答えすることは困難である。」と答えています。

 ということは、監護、教育の範囲内なら懲戒権の行使として認められるものがあると解釈されてしまうのではないでしょうか。

根本国務大臣 この解釈は民法の解釈ですから法務省ということになりますが、今回のこの規定によって、法務省の答弁を引用させていただきますと、懲戒権の取扱いについて言う答弁がありますが、法務省の答弁を紹介しますと、親権者による体罰を禁止する規定が盛り込まれた本法律案が成立した場合には、この体罰に該当する行為は民法八百二十二条に言う子の監護、教育に必要な範囲には含まれないと解釈され、懲戒権の行使として許容されなくなるものと理解している、こういう答弁がありますから、私が先ほど申し上げたように、この両方、体罰を加えるということと監護及び教育に必要な範囲を超える行為、これがいずれも禁止される規定となっております。

高橋(千)委員 今の答弁は、先ほど初鹿議員自身も少し歴史をひもといて指摘をされていたように、これまでは懲戒の一部に体罰があったわけです。イコールじゃないですよ。イコールじゃないし、すっぽり入るわけでもありません。だけれども、そういう答弁をずっとしてきたんだと。でも、今回は八百二十条の範囲をはみ出るものは体罰であってそれは禁止する、だからかぶらないんだとおっしゃったんですね。でも、その境目はどこにあるのかということは明確になっていません。

 体罰は何かという定義をどのように決めるのか。学校教育法第十一条を参考とするという答弁もこれまであったと思いますが、どのようにするんでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 体罰に関する規定でございますけれども、御指摘のとおり、既に学校教育法第十一条に体罰を禁止する規定がございます。この学校教育法におきましては、懲戒行為が体罰に当たるかどうかにつきましては個々の事案ごとに判断する必要があるとされているが、殴る、蹴るなどの身体に対する侵害を内容とするもの、正座、直立等の特定の姿勢を長時間にわたって保持させるなどの肉体的に苦痛を与えるものは体罰に該当する、こういうふうにされております。

 今回禁止する体罰につきましても、この学校教育法の運用を参考としながら範囲を定めることを想定いたしております。具体的には、今後、体罰の範囲、体罰禁止に関する考え方等につきまして、国民にわかりやすく説明するためのガイドライン等を作成したいというふうに考えております。

高橋(千)委員 今、一部例示したと思うんですが、かなり少ないわけですよね、例示してしまうと。それだけかいとみんなが思うし、教室と家庭内、先生と生徒、親と子供では全く意味が違ってくるわけですよね。参考にするとは言っても、それはそう簡単ではないだろうということを言いたいと思うんです。

 それで、まず、きょうは文科省に伺います。学校教育法の第十一条は、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」こっちはできる規定ですね、「ただし、体罰を加えることはできない。」とされています。この懲戒と体罰の境目をどこに置いているのか、伺います。

丸山政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のとおり、体罰は学校教育法第十一条で禁止をされておりますが、懲戒と体罰の区別につきましては、平成二十五年三月に文部科学省から発出をした通知においてその考え方を示しております。

 具体的には、「教員等が児童生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。」こと、また、「この際、単に、懲戒行為をした教員等や、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断すべきである。」こと、「その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とするもの」や「児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなものに当たると判断された場合は、体罰に該当する。」こと、という考え方を示しているところであります。

高橋(千)委員 今読んでいただいたものも含めて、少し資料を見ていただきたいと思うんですが、資料の一枚目。これは、今読んでいただいた通知の後に出たもので、平成二十五年八月九日「体罰根絶に向けた取組の徹底について」、前川喜平さんが出しておりますが。

 「平成二十四年度に発生した体罰の状況について、」この平成二十四年度に発生した体罰というのは、皆さんも御記憶にあると思いますが、大阪の桜宮高校バスケット部のキャプテンが体罰を苦にして自殺をした事件を指していると思います。こうした痛ましい事件があって、実態把握を求めたことや対策を求めたということがありました。また、文科委員会など、あるいは青少年特などでも議論が随分されたということも承知をしております。

 その後を読みますけれども、「実態把握の結果を別添のとおり取りまとめたところですが、全国の国公私立学校における体罰の件数が六千七百件を超え、これまで、体罰の実態把握や報告が不徹底だったのではないかと、重く受け止めています。」六千七百件というのはすごい数ですよね。「体罰は、学校教育法に違反するのみならず、児童生徒の心身に深刻な悪影響を与え、力による解決の志向を助長し、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあり、いかなる場合でも決して許されません。」こう書いている。なかなか心のこもった文章だなと思って読んでいたわけであります。

 そこで、今御答弁いただいた二十五年三月十三日の通知がこれであります。

 この中に、右下の方に「懲戒と体罰の区別について」と書いてありますよね。それで、アンダーラインのところをちょっと、もう一度繰り返して申しわけないんですけれども、懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、年齢や健康状態、心身の状態云々というのがあって、「単に、懲戒行為をした教員等や、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断すべきである。」この意味するところは何かということなんですね。

 子供が体罰を受けて、つらかった、やめてほしかった、そう訴えても、いやいや、それはこの生徒の主観であって、体も大きいんだから大して痛くはなかったはずだ、そういうことがあるという意味になりますよね。

丸山政府参考人 お答えをいたします。

 委員の方から御指摘のあった点については、学教法第十一条におきましては、文部科学大臣の定めるところについてということで、このものについては学教法の施行規則の第二十六条において規定をされておるわけでございますが、具体には、児童等に懲戒を加えるに当たっては児童等の心身の発達に応ずるなど教育上必要な配慮をしなければならないこと、懲戒のうち退学、停学等については校長が行うこと、退学等については性行不良で改善の見込みがないと認められる者に対して行うことができる等が定められているところでございます。

高橋(千)委員 今何を答弁されたんでしょうか。私が聞いたのは、先ほど審議官が答弁された「懲戒と体罰の区別について」のことを聞いているんです。

 要するに、体罰を受けた、懲戒行為を受けた生徒の主観では判断しちゃいけないと書いているわけです、これには。だから、自分が苦痛だった、つらかったと訴えても、あなたは体が大きいから大したことないでしょう、客観的に言ってもうそれは体罰じゃないと言われちゃう、そういう趣旨を書いているんじゃないんですかと聞いています。

丸山政府参考人 失礼いたしました。

 委員御指摘のとおり、この通知の2のところにありますような、「懲戒と体罰の区別について」ということで、懲戒については諸条件を客観的に考慮して判断すべきものであるということでございます。

高橋(千)委員 だから、客観的といいますけれども、さっきから言っているように、この委員会ではずっと、子供が権利の主体であり、意見表明権を尊重しようという議論をしているわけですよね。

 同じ子供の話なんだけれども、学校が舞台であれば、子供が体罰を受けてつらかった、痛かったと言っても、客観的にそれは違うよと決めつけることがあるんだという意味ですねと聞いています。

丸山政府参考人 失礼いたしました。

 繰り返しになりますが、当事者からの意見ということだけではなく、関係者の意見をしっかり聴取をしてということで、諸条件を客観的に考慮して判断すべきものであるということでございます。

高橋(千)委員 そうなんですよ。結局、そういうふうにこの通知はできているんです。

 虐待の場合、これを参考に家庭に置きかえられたらどうなるんですか。心愛ちゃんが痛い、結愛ちゃんが痛いと言っても、親は、俺はしつけだと言っちゃえば認めちゃうということになるんです。それでいいんですかという指摘をしています。

 もう一枚めくってください。今、どういう事例があるかということで、「体罰」、そして(2)は「認められる懲戒」、「正当な行為」。この「正当な行為」は、生徒から暴力を振るわれたりして、いわゆる正当防衛のようなことを言っているわけですけれども。「体罰」は許されないもので、読みません。この「認められる懲戒」のときに、こういうことをみんなも、私自身もですけれども、一度は経験したことがあるなというものが書いてあります。確かに、放課後に教室に残されるとか、授業中立たされるとか、課題を余計やりなさいとか、掃除当番を当番じゃないのにやりなさいとか、そういうことを書いているわけなんです。

 それで、括弧して「ただし肉体的苦痛を伴わないものに限る。」と。これは、立たされて、長時間なんだけれども、肉体的に苦痛ではないからいいんだという趣旨で書いているわけなんですよ。でも、そうすると、長時間でそれはしんどくなりますよねということもあります。それから、誰も立っていないのに自分だけが廊下に立たされている、みんなが何しているのと見ていく、屈辱を受けます。精神的な屈辱を受けます。だけれども対象になりません。認められます。なぜなら、肉体的苦痛ではないというふうに見られるからです。

 これでいいんでしょうか。そういう趣旨ですよね。

丸山政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、そういった趣旨で我々も捉えております。

高橋(千)委員 では、厚労省に伺います。

 先ほど学校教育法を参考にとおっしゃいました。今言ったような心理的な屈辱や苦痛もそれは認められる懲戒に入るんだということや、本人が痛いと言ってもそれは客観的にはそうじゃないということもあるんだと。こうした学校教育法の例示に従いますか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 体罰に関する具体的なガイドラインの内容につきましては、これからしっかり検討ということですので、現段階でどうこうということは具体的に確定しておりませんけれども、学校教育法の運用例も参考にしながら、それを家庭にも置きかえて大丈夫かどうかというような観点を踏まえながら検討してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 同じことを大臣に聞きます。

 今言ったようなことをちゃんと考慮していただけますか。心理的な苦痛というのは当然ありますよねと。権利委員会からいったら、当然入るわけなんですよ。心理的苦痛を与えても、肉体的じゃないからそれは認められる懲戒ですとか、本人が幾ら主張してもそれを客観的に認めないですと。それは家庭の中へ持ち込んじゃいけませんよね。どうですか。

根本国務大臣 学校教育法を参考にしながら範囲を定めること、今回禁止する体罰についても、学校教育法を参考としながら定めることを想定しております。

 ただ、具体的には、今後、体罰の範囲や体罰禁止に関する考え方、これは学校の現場と教育の現場とというような要素で、例えば今の学校教育法における体罰の定義が当てはまるかどうかということも含めて、これは専門的な観点あるいはきちんとした専門的な議論も含めながら、体罰の範囲や体罰禁止に関する考え方を決めていきたいと思います。

 やはりこれは国民にわかりやすく説明をする必要がありますから、そのためのガイドラインを作成していきたいと思います。

高橋(千)委員 慎重にお願いしたいと思います。せっかくここまで積み上げてきて、いろいろ条件はあっても体罰は禁止と、そこまで書いたんだと言っているけれども、今言ったような、学校と同じ扱いですよとなったらそれは救われないよねということが出てきますので、十分慎重に扱っていただきたいと思います。

 それで、今回、附則に「政府は、この法律の施行後二年を目途として、民法第八百二十二条の規定の在り方」、つまり懲戒権のことです、「検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と書きました。

 懲戒権は削除すべしとの声があり、野党案には、国際的動向を勘案して検討するという表現が入っております。これは一刻も早く削除すべしという思いが込められているわけですけれども、大臣の思いを伺いたいと思います。

根本国務大臣 体罰は、たとえしつけを目的とするものであっても許されないものであります。今回の法案において、体罰禁止を法定化するとともに、民法に定める懲戒権について、施行後二年を目途とした検討規定を設けるということにしております。

 御指摘の懲戒権の見直し、これについては、民法の検討課題でありますので、これは法務省を中心に検討が行われるものであって、法務省において、民法ですから、しっかりと検討をしていただくものと考えております。

高橋(千)委員 大臣の思いを聞いたわけですが、少し残念な気がいたしますが。

 きょうは、門山政務官にもおいでいただいております。ありがとうございます。

 同じ質問なんですが、民法八百二十二条の懲戒権、今議論した学校教育法と懲戒というのはやはり意味が違いますので、影響しないということをまず確認したいということと、当初は五年の検討規定ということが言われていたんですが、今回、二年になったということで、やはり法務省としても削除に前向きであってほしいなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

門山大臣政務官 お答えいたします。

 委員が御指摘いただいた二年の見直し規定の趣旨でございますけれども、民法の懲戒権につきましては、家族のあり方にかかわり、国民の間でもさまざまな議論があることから、その規定のあり方を検討するためには、国会における議論等を十分に踏まえながら徹底的な議論を行う必要があると考えております。

 そのため、二年を目途とする検討期間が必要だと考えているわけでございますが、具体的な見直しの方向性については今後検討することになりますが、この検討の際には、高橋委員の御指摘にもありましたように、民法第八百二十二条の規定を削除するということも含め、さまざまな選択肢を視野に入れて検討されることになると認識しているところでございます。

 また、委員の方から、学校教育法の懲戒権との関係についての御質問がございました。

 民法第八百二十二条は、親権を行う者がその子を懲戒することについて定めた規定でございます。これに対しまして、学校教育法十一条は、校長及び教員の児童等に対する懲戒権について定めたものでございます。

 委員も十分御承知だと思うんですけれども、このように両者は異なる場面の規定であることから、仮に民法八百二十二条の懲戒権の規定を削除したとしても、直ちに学校教育法上の懲戒権の規定に影響を与えるものではない、これは委員と同じ認識であるというところでございます。

 この削除については、先ほどのように、二年を目途として慎重に検討させていただきます。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 現時点で予断を持った答えはできないと思いますが、そういう中で、削除も含めと力強く言ってくださいましたので、意を用いたいというふうに思います。

 そこで、大臣にもう一言伺いたいんですが、深刻な事案が続きますとどうしてもそこにフォーカスした対策ということが議論をされます。

 ですが、例えば千葉県においても、昨年五月に児童虐待死亡事例検証報告書というのが既に出されていて、つまり、別の案件なんですね。だから、同様の教訓、今の野田市のと同じような教訓というのは、これに限らずその前も実はあったということなんですが、既に指摘されていた。

 だから、やはりそのときにきちんとそれができていたらなという思いがあるわけなんですね。そういう認識を共有していただけるでしょうか。

根本国務大臣 昨年五月の千葉県における児童虐待死亡事例について、御指摘の報告書は昨年五月の児童虐待死亡事例について検証された報告書であります。

 その中で、児童の安全確保、関係機関との連携強化、予防に向けた取組強化などが取りまとめておられます。これは千葉県でもしっかりと受けとめるべきものだったと私も認識しております。

 それにもかかわらず、ことしの一月に千葉県野田市において痛ましい事件が繰り返されてしまったこと、これはまことに残念であり、事態を深刻に受けとめております。

 この国会で、児童虐待の発生予防、早期発見、児童虐待発生時の迅速的確な対応、被虐待児童への自立支援を切れ目なく一連の対策として講じるために、児童相談所の体制強化、関係機関間の連携強化などを行うことによって、児童虐待防止対策の強化を図るための法案を提出しました。

 この法案と、さらに全体の施策、取り組むべき施策、これは、閣議決定でさまざまな施策を打ち出しておりますので、これまで決定した対策のさらなる徹底を図るとともに、こういう法律の見直しによって、虐待防止に向けて全力で取り組んでいきたいと思います。

高橋(千)委員 時間の節約でここは指摘にとどめます。

 この案件は、平成二十六年、二〇一四年十一月六日、市原市でゼロ歳八カ月の男児が救急搬送された後、死亡した事件であります。ですから、乳児であるということだけが結愛ちゃん、心愛ちゃんと違うんですね。でも、それ以外はほとんど同じです。

 十七歳で子供を産んだ若年の夫婦であり、長期の支援、これは児相だけではなく母子保健センターが長期に支援をしておりました。DVもありました。そして、転居を繰り返しました。最後に一時保護を解除した直後の死亡であった。同じなんですね。

 だから、それをこれだけ専門家の力で検証して、状況が変わるたびに直接目視により確認することとか、個別支援会議では必ず会議録を作成して会議後に各機関に送付することとか、転居を繰り返す事例については、民生委員や児童委員や地域保健推進員とか、協力して転居先を把握して安全確認をするとか、家庭復帰の際には家族全体の生活を見る、こうしたことが丁寧に書かれてあって、どれも当てはまる教訓だと思うんです。

 これは、国も第十四次まで死亡事例の検証委員会をやっていまして、本当に貴重なことを提言されています。それが繰り返されてきたということをやはり本当に重く見て、私は本当はあれこれではないなというふうに思っているんです。要するに、法律とか制度はかなり整っていて、だけれどもそれが、回っていかないというんですか、人が足りなかったりとか、理解が不足していたりとか、そうしたことが今本当に決定的なんだろうということで、もう繰り返したくないということで指摘をさせていただきました。

 それで、最後にどうしてももう一つ紹介をしたかったのがありますので、資料の最後のページを見てください。

 毎日新聞の五月十一日付です。「体罰ダメ知っていたら」という見出しがついています。萩原みらいさん、自身の虐待経験を実名を明かして公表して、虐待対策に生かしてほしいと訴えています。

 この方は、記事の下から四段目を見ていただくとわかるんですが、困難な経験を持つ学生を対象に教育支援グローバル基金が提供する奨学金プログラム、ビヨンドトゥモローへの参加を勧められて、「同世代の学生たちと出会い、自分の生い立ちを初めて人に話すことができた。」とあります。

 ビヨンドトゥモローは、橋本大二郎元高知県知事が主宰する一般財団法人で、私も、子どもの貧困議連のつながりで国会内集会に参加をして、この方に直接お話を聞かせていただきました。本当に貴重な経験をしたなと思うんですが。新谷政務官を始め、加藤、塩崎両元厚労大臣や橋本理事も参加をされていたんですね。

 記事にもあるんですが、彼女たちが述べたことは、ほかの家のことは知らないから、自分の置かれている環境が当たり前だと思って、それが虐待だ、虐待されているんだと気づかなかったということなんですね。大変衝撃を受けました。それは考えてみれば当たり前なことで、隣の家の親子関係はどうなのか、世間一般はどうなのか知らないんだから、自分の家が異常なんだということがわからない。だから、子供は権利の主体、さっき大河原委員がおっしゃっていたこととも通じるんですが、意見表明権の尊重というんだけれども、自分にそういう権利があることを知らない、だめなことなんだということを知らなければ主張もできないということなんですよね。

 毎日お風呂に顔を埋められた、そういう壮絶な虐待体験を語りました。だけれども、このビヨンドトゥモローに出会って変わったということを生き生きと語って、若い人たちの感性で、どうしたらそういう人たちにつながりを持てて、その権利を知らせたり声を拾うことができるか。例えば車を走らせて絵本を読み聞かせしたらどうだとか、そんなアイデアもお話をしてくれたんですね。

 それで、質問は、下から三段目に書いていますが、「親であっても子どもをたたいたらダメだということを、教育の中で知りたかった」と述べています。とても大事なことで、やはりこれを教育の中で、先生方に徹底するというだけじゃなくて、子供にきちっと教えていくということが必要だと思いますが、中村政務官と大臣に、最後、お願いしたいと思います。

中村大臣政務官 親であってもたたいたらだめだということを教育の中で知りたかった、自分の置かれている環境、これがほかの家と違って、大変な虐待であり、体罰であったということを、なかなか判断ができなかったということなんだろうというふうに思います。

 子供たちを虐待から守るために、学校教育現場で虐待に関して子供たちにどのように教えていくのがよいのかということについては、それぞれの子供の発達段階にもよりますので、そうしたことを勘案しながら、厚生労働省とも相談しつつ、検討してまいりたいと思います。

 本法案には、二年後を目途に児童の意見を述べる機会の確保ということが規定されています。そうした中で、学校現場でのそうしたことについての教育もしっかり取り組んでまいりたいと思います。

根本国務大臣 平成二十八年の児童福祉法改正において、児童は、適切な養育を受け健やかな成長、発達や自立等を保障される権利を有すること、全ての国民は、児童がその年齢及び発達の程度に応じてその意見が尊重されるよう努めなければならないこと、これを明確化いたしました。

 例えば、児童相談所運営指針において、児童に対して施設入所等の措置を行うに当たっては、児童が有する権利や苦情がある場合の申出先、申出方法などについて、児童の年齢や性格に応じて懇切に説明することとしております。

 また、児童福祉施設等においても、児童の権利が守られることや、あるいは児童が意見表明できることについて、子どもの権利ノートなどを配付して説明しております。

 本法案の附則において、施行後二年を目途として、児童の意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されるための措置として、児童が意見を述べることができる機会の確保や、そうした機会において児童を支援する仕組みの構築などについて検討することとしているところであります。

 子供の権利擁護のための取組、これが適切に進められるように、引き続き必要な検討を進めていきたいと思います。

高橋(千)委員 また続きをお願いします。

 ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 本日は、機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 時間も限られていますので、早速質問に入りたいと思います。

 まず一つ目ですが、児童相談所の介入機能と支援機能、この分化について、介入と支援を明確に分離していくべきという考え方が複数の専門家からありますけれども、これについて見解をお聞きしたいんです。

 視点といたしまして、まず介入というものについて全面的に司法に委ねていくというのが現在のプレーヤーの中では難しい中で、行政において介入を行える人的資源、専門性やマンパワーを有する機関が児相しかない以上は、将来的には児相は介入に特化していくべきという意見がありまして、私も、それは将来的には非常に理のあることだなというふうに受けとめていまして、そのことに対しての意見。

 それから、今回の法案では、介入を職員レベルで、いわゆる職員を分けて、機関を分けるのではなくて、同じ児相という機関の中で職員で介入と支援を分けていくという形で解決策がなされているんですが、実態をちょっと見てみると、実際には、児童相談所は、実際にお子さんだったり保護者さんに対するときに、いわゆる専門職の長年の職人芸のようなものによってある種担保されている部分も多くありまして、今のこの人材不足の中で、どうしてもそういう詳しい方に支援も介入も聞いていくという組織マネジメントの難しさというのが実際的には起こるはずなんです。

 ですから、将来的には、やはり機関として分けていって介入をより適切にやっていくというのは、これは組織マネジメントで考えても、児相の組織文化として、支援というのにこれまで特化というか、そこを依然として重視してきたというのがあって、保護者さんとの信頼関係で、なかなか介入というところまで踏み込むには難しいという心理的な障壁もありまして、現場の職員レベルで解決していくというのは非常に難しいというのが思っているところであります。

 こういう視点の中で、介入と支援を将来的に明確に分離していくべきという意見に対して、政府と野党の方からも御意見をいただけたらと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 必ずしも先生の問題意識を正確に把握できているかどうか、ちょっと自信がありませんけれども。

 児童相談所が介入のみを行う、そういう機関に特化すべきという意見につきましては、これまでの児童相談所と市町村の役割分担の方向といたしましても、支援機能については、できるものについてはできる限り市町村に委ねていく、それで、児相については介入的機能と、いわば重要度といいましょうか、比較的重たいようなものについて支援を行っていく、そういうような方向での改正がなされてきておりまして、そういう意味では、方向感としてはおおむねそういうような方向感だと思います。

 ただし、完全に児童相談所が介入機能に特化するかどうかというところについては、やはり議論がかなり必要なところだというふうに考えております。

池田(真)議員 お答えいたします。

 親子の分離をも含み、緊急性を要する介入については、警察との連携や緊急の一時保護機能も必要であり、児童相談所が担う役割が大きいと考えられます。

 また、保護者に対する支援についても、家庭にとって身近な市町村の果たす役割が重要である一方、専門的な知識及び技術を必要とするものに関しては、そのための人的資源等を有する児童相談所が重要な役割を果たすべき状況にあります。

 先ほど申しましたとおり、現在の児童相談所は介入機能と支援機能の両方を担っていますが、支援における保護者との関係を考慮する余り、一時保護等の介入を行うことをためらってしまうのではないかとの懸念が示されております。そのため、本法案では、児童相談所の内部における両機能の分化を図る観点から、都道府県が一時保護等の介入的対応と保護者支援を行う職員を分ける等の措置を講ずるものとしています。

 機関レベルで機能分化を行うことについては、一層の機能分化が図られるメリットがある反面、介入と支援の円滑な連携をどう確保するのか、別途検討すべき課題もあるように思われます。

 なお、本法案については、子育てに困難を有する保護者に対する支援のあり方について、児童虐待防止法の見直しを含め検討することとしており、支援と介入のあり方についても検討することとしております。

藤田委員 ありがとうございます。

 大体考えはわかりましたが、私自身は、今すぐは難しいと思うんですけれども、やはり機能分化をよりしていって、機関レベルでもしていった方がいいんじゃないかなという意見ですので、ぜひ検討していただけたらと思います。

 それから次に、児童相談所と警察の情報共有についてなんですけれども、虐待情報の全件共有というものが大阪では二〇一八年から行われていまして、これは賛否両論あって、大阪もすんなりいったわけじゃないんですけれども、反対意見もある中でこれをやりました。実際に、通告の概要とか家庭訪問時のやりとり、もちろん児童と保護者の氏名等を月次で報告して、府警側は、DVの有無とかその他の情報と照合して、より踏み込んだ介入が必要かどうかということを警察側からも情報共有していく、こういうことをやっているんですね。

 実際に、全件共有前で、大体ざくっと一万件ぐらいの虐待情報があって、四千件ぐらいは既に共有されていて、大体それがプラス六千件ぐらいになるわけなんですけれども、これは、僕個人的には全国で検討していくべきじゃないかなというふうに考えているんですが、それぞれの御意見をいただけたらと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所におきまして情報共有を行う目的でございますけれども、これは、情報共有を契機といたしまして警察と連携し、子供の安全確認を確実に行うとともに、安全確保あるいは必要な支援の実施につなげる、これが目的でございます。

 このため、情報提供を行った後の支援等におきまして、単なる情報共有にとどまるのではなくて、円滑に連携が図られるように、要保護児童地域対策協議会も活用しながら、警察と支援の方針等の方向性を一にした対応をとることが重要だというふうに考えております。

 児童相談所と警察の情報共有につきましては、昨年七月の緊急総合対策におきまして、虐待による外傷、ネグレクト、性的虐待があると考えられる事案、それから通告受理後四十八時間以内に安全確認ができない事案、一時保護等が解除され、家庭復帰する事案、この三つにつきましては必ず警察と情報共有を行うことといたしております。

 一方で、児童相談所と警察で全件情報共有をすることにつきましては、例えば、今御指摘もございましたけれども、相談の中には、保護者や家族と時間をかけて信頼関係を醸成しつつ継続指導を行うことが改善につながるケースもあるといった意見、あるいは、機械的に警察と全件共有をすることについては、警察に相談内容を知られることで保護者、関係機関等が相談を控えるおそれがあるのではないかなどの指摘もございます。

 児童相談所が対応する事案を全件共有している自治体は、平成三十一年の一月現在で、児相を設置する六十九自治体中十自治体、一四・五%でありまして、前回調査、平成三十年の六月から見ますと、六自治体増加しております。こうした自治体におきましても、情報共有だけではなくて、例えば警察との人事交流を行うとか研修等を行うなど、連携体制もあわせて構築しながら取組を進めているものと承知をいたしております。

 引き続き、今御指摘の大阪府など先行する自治体での取組も十分踏まえながら、警察との情報共有のあり方につきまして検討してまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)議員 御質問ありがとうございます。

 児童虐待への適切な対応については、関係機関間の的確な連携が必要であり、連携を図るに当たっては情報の共有が必要だと考えています。

 そこで、本法案では、改正後の児童虐待防止法第四条第一項において、国及び地方公共団体による児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に関し、児童相談所、警察を含む関係機関の連携の強化について明記するとともに、連携の強化の内容として、児童相談所と警察の間の情報共有に関する協定の締結が含まれることを明らかにしています。

 もっとも、委員御紹介の例のような全件共有については、迅速な対応のために導入すべきとの積極的な意見がある反面、保護者や家庭との信頼関係の醸成に悪影響があるのではないか、保護者等が相談を控えてしまうのではないかといった懸念があるとも承知をしております。

 そこで、本法案におきましては、情報共有のあり方について一律に定めるのではなく、どのような事案について情報共有を行うかも含め、各地域における児童虐待への対応の状況等を踏まえ、個別に判断していただくこととしているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 私も、これをすぐやった方がいいかどうかというのは、なかなか自分としても、もうちょっと見た方がいいかなと正直思っているところで、大阪府の事例なんかも今後検証されていくと思いますので、追っかけてまた提案、質疑させていただきたいと思います。

 それから次に、教育、福祉、医療等の特に専門職の方々に対して特別な通告義務を課していくべきじゃないかという意見もありますけれども、そのあたりの見解を政府の方にお聞きしたいと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 現行制度におきましては、児童虐待を受けたと思われる子供を発見した者につきましては、教育、福祉、医療等の専門職も含めまして、その立場にかかわらず児童相談所等に通告をしなければならないこととされております。

 また、御指摘の教育、福祉、医療等の職務に従事する者につきましては、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めること、それから、支援を要すると思われる児童等を把握した場合にはその情報を市町村に提供するよう努めること、児童相談所や市町村から児童虐待に係る情報の提供を求められた場合には情報を提供できること、こういった規定がございます。

 そういった意味では、教育、福祉、医療等の専門職には、御指摘の趣旨と同様に、通告義務のほかに早期発見の努力義務、あるいは市町村への情報提供の努力義務が現行法でも課されているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 次に、野党共同案に盛り込まれています、児童虐待を行った保護者に対しての指導とか支援の強化について、私は、これはぜひやってほしいなというふうな立場です。というのも、現場を見ていますと、保護者さんも、産まれる前から虐待をしようと思って子供さんを産まれる方なんて恐らく一人もいないわけで、やはり何らかの環境の中でそういう虐待に陥っているというのがケースの中のほとんどです。ですから、やはり保護者に対してもしっかりとした支援をしていくということが必要だという立場です。

 先ほど初鹿議員からもこの指摘がありましたけれども、その中で、一定程度やっていて、でも、やはり人員の問題とかでなかなか進んでいない部分もありますよ、そういうような御答弁がありました。そこに関しては、私も、順序は必要でしょうけれども、一定期間を置いてやはり必須にしていくべきだという立場でございます。

 この点につきまして、野党側とそれから政府側に御答弁いただけますでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童相談所におきましては保護者への指導、援助を行っておりますけれども、その手法の一つといたしまして、保護者の特性に合わせて各種の保護者支援プログラムによる支援を行っております。

 保護者支援プログラムでございますけれども、やはり虐待を行った保護者本人が問題意識を持って取り組まないと効果が期待できないものであるというふうに考えております。

 また、これまでも、児童相談所におきまして保護者支援プログラムにつきましては一定程度行われておりますけれども、職員数の不足あるいは研修のための予算不足などの課題から、十分には活用されていない状況でございます。例えば、虐待ケースにおける実施数の割合で見ますと、現在では平均で三・二%という状況でございます。

 こうした状況を踏まえますと、現段階では一律に保護者支援プログラムを義務づけることは考えておりませんけれども、より効果的にプログラムが実施されるように、その実施を担う専門人材の養成、あるいは実施する場合の支援の拡充を行うなど、より児童相談所でプログラムを実施しやすいような環境整備、保護者がプログラムによる支援を受けやすくするための仕組み、アプローチ等について検討してまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)議員 児童虐待が起きた場合、児童虐待を受けた児童の保護や支援が必要なことはもちろんですが、児童虐待の再発を防止するためには、児童虐待を行った保護者が虐待の事実を受けとめ、みずから変わることが重要であります。

 現行法においても、児童虐待を行った保護者に対する指導を実施しておりますが、これを一層充実する観点から、本法案では、改正後児童虐待防止法第十一条において、保護者の意に反する一時入所等の措置がとられた場合には、その保護者に対して再発防止のための指導を行うことを義務づけるとともに、それ以外の一時入所等の措置や一時保護の場合においても、再発防止のための措置に係る規定を設けているところでございます。

 もっとも、児童虐待の防止の観点から、児童虐待を行った保護者への指導といった対応だけでなく、広く子育てに困難を有する保護者に対して支援を行うことが重要であると考えています。

 そこで、附則九条において、子育てに困難を有する保護者に対する支援のあり方について、児童虐待防止法の見直しを含めて検討を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずる旨の検討条項を設けているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 これはちょっと、やはり強制力をつけないとなかなか進まぬのじゃないかなというのが個人的な思いです。というのも、虐待をされた保護者さんに対してのプログラムもかなり研究が進んでいますし、各国の事例等もありますから、ぜひこれを進めていただきたいなというふうに思っています。

 それから、現場の状況でいうと、強制力がないと、そんなの受けぬでもええんちゃうかというような親御さん、保護者さんもやはりいますし、実際にやりとりが非常に困難になってくるというのは現場でもありますので、ちょっと検討していただきたいなと思います。

 続きまして、中核市、特別区への児童相談所設置の義務化についてなんですけれども、今回は見送られました。五年を目途として設置できるよう支援を講ずるとされていますけれども、これは実際的にはどういうアプローチ手法で、どんなスケジュール感で動くかというのをお聞きしたいんです。

 ちょっと背景として、私の地元は寝屋川市というところで、ことし四月から中核市になりました。これは、実際に現場の職員の皆さんだったり議会の皆さんとかとお話をしていると、義務化されることについては非常にネガティブです。

 なぜならば、理念としてはもちろんわかります。私も当初、特別区、中核市は必ず設置した方がいいというふうに思っていました。でも、やはり現場を見るとそれほど簡単ではない問題で、進めていかないといけない、乗り越えないといけない課題がたくさんあります。

 その中で、ただ、やるというのであれば、それをどんなスケジュールで、実際にどういうことを支援としてやっていくかということを早目に示さないことには、これから中核市を目指そうというところも不安は取れませんし、目指さないという選択肢、反対理由の代表的なものに圧倒的になってくる、こういうふうな危惧がされるわけです。

 ですから、実際に、これは五年を目途として設置できるように支援を講ずるのであれば、アプローチ手法それからスケジュール感というものをぜひ示していただきたいと思います。これは、参考資料で、中核市市長会がかなりネガティブな緊急要請を出されていまして、これを見ても、特にやはり現場の状況を把握した上で御提示いただきたいなというふうに思いますが、このあたりはいかがでしょうか。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 この件につきましては、中核市市長会から、国と中核市との間で丁寧な議論を積み重ねるとともに、継続的かつ安定的な支援措置を講じること、あるいは、一時保護所、児童相談所の整備への適切な財政措置や専門的人材育成、確保といった要望が寄せられております。

 こうした状況を踏まえまして、本法案におきましては、御指摘のとおり、施行後五年間をめどとして、中核市及び特別区が児童相談所を設置できるよう、児童相談所の整備並びに職員の確保、育成の支援その他の必要な措置を講ずること、また、この支援を行うに当たっては、地方団体等との連携を図ることというような規定を置いています。また、その五年間が過ぎた後、施行五年後ということでありますけれども、施行後五年をめどとして、児童相談所の整備等についての支援のあり方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる、こういうことになっております。

 法案と同じ日の三月十九日に関係閣僚会議で決定した「児童虐待防止対策の抜本的強化について」の中では、中核市、特別区の児童相談所設置に向けた施設整備、人材確保、育成の支援の抜本的拡充、こういったことと、国と中核市及び都道府県等の関係団体が参画する協議の場の設置、こういった二つを盛り込んでおります。

 そういう意味では、法律に基づきまして、この法案が成立した暁には、できる限り速やかに協議の場を設置いたしまして協議を開始したいと考えておりますし、支援の抜本的拡充につきましては、地方団体との協議を行いながら、二〇二〇年度予算に向けて必要な対応を行っていく予定でございます。

藤田委員 確認なんですけれども、これは五年をめどとして設置させるように持っていくのか、五年をめどに方向性を決するのか、どちらですかね。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 施行後五年間、要は、児童相談所の設置を希望する中核市について、児童相談所が設置できるように支援していくということでありまして、そういう意味では、希望する自治体全てが設置できるように支援する、そういう考え方でございます。

藤田委員 これは非常に言葉遣いが難しいんですけれども、地元の状況でいうと、そもそもやはり必要なものであるというのは私も同じ認識ですけれども、実際にそれをやるとなると、市町村又は行政コストも考えないといけないことで、なかなか二の足を踏むというのが現場感の現状でして、例えば周辺市よりも先駆けてそういう支援を拡充したりするという施策に関しては、実際、本音と建前があって、本音の部分ではなかなか二の足を踏んでしまうというのは現状としてあります。

 ですから、これは私はやるべきだというふうに思っていますし、ここに方針も示されている以上、やはり適切にかつ迅速に方向性を示して旗を振らないことには進まないというふうに思いますので、ぜひとも迅速なる対応のほどをよろしくお願いいたします。

 それから次に、「常時弁護士による助言又は指導の下で」という文言が入りまして、法的対応体制についての見解を少しお聞きしたいんです。

 これは、本会議で安倍総理からも、大阪方式を妨げるものではないという御答弁をいただきました。常勤弁護士に限らず、あらかじめ登録された多数の弁護士の輪番だったりサポート体制によって運用するというのが大阪方式でありますけれども、私はもうちょっと踏み込んで、例えば、弁護士は専門職で、企業でもそうなんですけれども、ずっと横にいてもらわないと困るという職業でもないわけです。ですから、最近では医療なんかも遠隔医療がどんどん研究され進んでいっている時代でございますから、例えばそういうテクノロジーを活用して、その場にいなくても法的なサポートを受けられるであったりとか、そうすることで、例えば大阪でしたら、大阪府下にいる先生方だけが対象の弁護士さんになるわけじゃなくて、遠隔地にいらっしゃっても支援をしていただけるとか事例を共有できるみたいなことも進むはずなんです。

 ですから、児相の現場というのは、非常に毎日が戦いのような、本当に心ある人たちが頑張っておられる現場ですから、できるだけ柔軟性がきくところは柔軟な対応を認めていただきたいというのが私のスタンスでございます。

 この件につきまして、見解の方を聞かせていただけたらと思います。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、弁護士の配置形態につきましては、弁護士の人数あるいはその確保方策も地域によりさまざまでありますので、一律に配置方法を定めるのではなくて、地域の実情に応じて、実質的に日常的に弁護士が関与できる体制がとれるよう、常時弁護士による助言又は指導のもとで法的業務が行える体制整備を行うこととしたものでございます。

 そういった中で、そういう意味では、大阪方式も含めて、実質的に日常的に弁護士が関与できる体制であれば今回の法案の趣旨に沿っているということでありますし、今御指摘のICTの活用、テレビ電話とかそういった活用については、ちょっと今具体的に、どこまで認められるかとかそういうことについて確定的な見解はございませんけれども、そういったものも含めて、どのようなところまで今回の法案で対応可能か検討してまいりたいというふうに思います。

藤田委員 ぜひそれも検討してもらいたいなと思います。国会のいろいろなところの効率化もそうですけれども、やはり民間企業はどんどんテクノロジーが進んでいますので、そういったよさをこういうところにも取り入れていただいて、現場ができるだけスムーズに動くような対応を法整備していただけたらと思います。

 それから次に、児童虐待が増加する要因の一つに、次世代への、つまり数年後に親になっていく世代への教育不足というものが考えられています。

 この中で、未来のDVとか児童虐待をなくしていくための教育、これは非常に重要になってくると思うんですけれども、文部科学省の方に来ていただいていると思いますので、いっとき、性教育バッシングのようなものもあって、非常にこれは難しい問題ではありますけれども、恋愛とか又は暮らしとか、それから出産、育児というものに対しての認識を教育として特に中学生の年代にしていくということに関してはどうお考えかという御見解をお願いいたします。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省といたしまして、高等学校学習指導要領の解説では、「家族計画の意義や人工妊娠中絶の心身への影響などについても理解できるようにする。」などと記載しているところでございます。また、中学校の学習指導要領では、「異性の尊重、情報への適切な対処や行動の選択が必要となることについて取り扱うもの」と記載しているところでございます。学校における性に関する指導の充実は、発達段階に応じて図られるように努めてまいりたいと考えているところでございます。

 また、将来親となる子供たちが、その発達段階に応じて、生命の尊重、子育てや親の役割などについて学ぶということは非常に重要なことと考えておりまして、学校教育におきましては、例えば学習指導要領に基づき、家庭科、技術・家庭、特別の教科、道徳などにおいて、家族や家庭生活について理解したり、生命を尊重したり、幼児との触れ合いを通して幼児への理解、関心を深めたりするなどの学習が行われているところでございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 これは、外部の人材とかも積極的にぜひ活用していただいて、多様な問題が噴出していまして、そういう専門家の力をおかりしてでも、やはり子供たちへの、次世代への教育にぜひ力を入れていただきたいなと思っています。

 最後に、相談、支援につながりやすい仕組みづくりの一環として、SNS等の活用、相談窓口の設置などの検討を進めるというのがありますけれども、具体的にはどのような手法を想定しているのか、お答えいただきたいと思います。

 といいますのも、幾つかの都道府県で試行的に始まりました、例えばLINEを使ってというような相談窓口。これは、間口を広げて相談を気軽にできるという側面としては非常にいい試みだと思う反面、実際にそういう相談をされる方というのは結構精神的にも不安定だったりして、私もそういうLINEを実際見たことあるんですけれども、非常に心苦しいような内容、今すぐ助けてほしいとか、内容もなかなか論理的に書いてあるわけでもない。そして、例えば対応窓口が午前の九時から夕方の五時までという形だったら、そんな自動返信が来た日には余計にへこんでしまう。そういうような対応の難しさというのは、余計に広がるというおそれもあります。

 ですから、これは非常に難しい問題で、間口を広げることと、対応を迅速にちゃんと本当の意味でしていけるかどうかというのは、気軽にできるからこそ難しい問題であるというふうに私は捉えていまして、そのあたり、具体的にはどのような手法を想定してSNS等の活用というのをおっしゃられているのか、教えてください。

浜谷政府参考人 お答えいたします。

 児童虐待に対応する相談、通告窓口といたしましては、虐待を受けたと思われる子供を見つけたとき、子育てに悩んだときに、ためらわずに通告、相談できる環境を整えることが必要だと考えております。

 ということで、三月の関係閣僚会議におきましては、若い世代が電話よりもSNSでコミュニケーションをとることが多いことを踏まえまして、子育てに悩みを抱える者あるいは子供からの相談につきましてSNS等を活用した相談窓口の開設、運用を進めることを決定いたしまして、相談、支援につながりやすい仕組みづくりに取り組むことといたしております。

 具体的にはということでございますけれども、まず今年度の予算におきまして、子育てに悩みを抱える者や子供本人からの御相談について、多くの方が利用しやすいよう、SNS等を活用した相談窓口を開設、運用するための補助を計上しております。

 具体的なSNSの活用方法、今御指摘の点等でございますけれども、先行して行っている自治体がございます。東京都、神奈川で試行的に運用を行っております。そういう意味では、先行して行っているSNSを活用した相談の実施状況、課題等も参考にしながら、引き続き利便性の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。

藤田委員 時間なので終わりますが、このSNSの対応は、僕は結構慎重に、よくやり方を考えていただきたいなと思いまして、その対応のまずさというか、リアルタイムで対応し切れるのかどうかということが、送ってきた子に対しての最後の何か頼みの綱になるかならないかということも深刻に受けとめていただいて、使い方の方を検討していただけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

 きょうはありがとうございます。

冨岡委員長 次に、柿沢未途君。

柿沢委員 久しぶりに質問に立たせていただきます。

 児童虐待の問題でありますけれども、もちろん、児童虐待が起きている、そうした状況を発見し、また子供の命を救う、こうした点は大変大事だと思いますけれども、しかし、その手前の問題をきょうは少し取り上げたいというふうに思っています。

 孤立した子育てが児童虐待を生む、こういう認識のもと、脱孤育てをキーワードとして、地域全体の子育てファミリーの支援と関与のつながりの仕組みをつくっていこう、こういう取組が、当事者の住民主導の取組として、私の地元の江東区で進められております。

 きょうお配りをさせていただいている一枚目の資料に脱孤育てと書いてあるんですけれども、ぱっと聞くと何を言っているのかわかりませんが、孤立の孤、孤独の孤、その孤独な孤育てから脱しようということが、この脱孤育てというワードであるわけです。

 住民の皆さん、子育てファミリーの皆さん、また子育て支援にかかわる皆さんが実行委員会をつくって、こうとう子育てメッセというイベントを二〇一六年から毎年やっておりまして、二〇一九年、ことしで四年目の開催を迎えるわけですけれども、昨年、二〇一八年のパンフレットをきょうはお配りをさせていただいておりますが、この年は四千二百三十人の来場者があったということであります。

 ここに「こうとう子育てメッセとは?」ということで書いてあるんですけれども、大変よくできた文章だと思いますので、あえて朗読をさせていただきますが、

  こうとう子育てメッセは、地域のつながりづくりと子育て支援情報の発信を目的としたイベントです。参加することで、子育て世代が感じている「困った…」「辛い…」を行政や民間サービスを使って解決するちから=自助力を育むことを目指しています。

  昨今問題になっている児童虐待は、特別な保護者が起こす特別な事件ではなく誰にでも起こりうることです。子育ての困難をみんなの問題としてとらえ、虐待にまで至らないよう地域で助けるまちづくりができるよう願っています。

こういうことが書いてあります。

 まさにこれこそが、虐待予防、まさに脱孤育ての考え方だと思います。

 児童虐待は、先ほど言ったように、起きてしまったときの発見と対処も重要でありますけれども、そもそも児童虐待に及んでしまうようなファミリーの状況をどうつくらないようにしていくか、未然の段階での予防の取組こそが本当はもっともっと重要だというふうに思います。そのときに、子育てファミリーを孤立させない、脱孤育て、このコンセプトを共有するのは非常に重要であるのではないかと思います。

 言葉をみんなで共有すれば何かが変わるわけではないというふうにも思いますけれども、しかし、こうした考え方を社会に広めていくことがとても重要だというふうに思うんです。

 大臣にお伺いします。

 この脱孤育てという言葉に対する感想と、また、児童虐待未然防止の取組の必要性について認識をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

根本国務大臣 脱孤育てという言葉、きょう初めて私も触れました。

 この脱孤育てという言葉に対する私の個人的な感想ですが、今委員のお話にあったように、子育てファミリーを孤立させないという思いや、本質、コンセプトが的確に表現されている言葉だなという印象を持ちました。

 孤立しがちな子育て家庭を早期に発見し、必要な支援策につなげること、これは虐待予防の観点から重要であると思っております。

 具体的に、我々こういうところに取り組んできている、あるいは取り組みたいということでいえば、妊娠期から必要な支援につなげられる体制を整備するために、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターの設置促進、あるいは、予期しない妊娠等で悩む妊婦に対し産科への同行支援等によりその状況を確認し関係機関につなぐ事業の実施、さらに、戸別訪問して家庭の相談支援を行うために、乳児家庭全戸訪問事業によって、生後四カ月までの乳児のいる全ての家庭を訪問して養育環境の把握を実施しておりますし、これにより把握した、保護者の養育を支援することが特に必要と判断される家庭に対して、養育支援訪問事業によって、養育に関する相談支援や育児、家事支援を実施しております。

 行政サービスにつながっていない子供に支援を行き届かせるために、未就園の子供などを対象に拡大した子供の状況把握、これにも今取り組んでおります。

 相談窓口につながりやすくするために、「いちはやく」を周知するとともに、子育てに悩みを抱える人が適切に通告、相談できるよう、「いちはやく」の無料化に必要な予算を計上しております。

 こういった取組によって、子育てなどに悩み、孤立しがちな家庭を早期に発見し、適切な支援につなげることで、児童虐待の予防を図るとともに、子供の健全な心身を育成する社会をつくっていきたいと思います。

柿沢委員 ここは別にキャッチコピーのプレゼンの場ではないんですけれども、しかし、私はこの脱孤育てというコンセプト、ワードは、とても今、児童虐待予防、防止に関して非常に的を射ている、ピンポイントをついている、こうした言葉ではないかというふうに思うんです。

 そういう意味で、ぜひ広めていただきたいというふうに思いますし、また、この脱孤育てそのものも、このこうとう子育てメッセの実行委員の方が考えついて、このイベントのキャッチコピーになったそうでありますけれども、機会があったらぜひ大臣にもお越しをいただきたいというふうに思います。

 それで、このこうとう子育てメッセの主催者であり、それがまた広がって江東子育てネットワークというつながりがそれこそでき上がっているんですけれども、その共同代表で、落合香代子さんという女性がいらっしゃいますが、その方が、脱孤育ての鍵を握っているのは二つあるということを言っております。

 一つは、受けられる支援の情報を発信して子育てファミリーが情報にアクセスしやすくする、二つ目が、地域のつながりをつくる、この二つであります。今言ったように、子育てメッセのイベントで子育て中のファミリーや支援関係者を集めて基礎をつくった上で、そして子育てネットワークを構築する。

 三枚目のペーパーの「江東子育てネットワーク」というのの後ろを見ると、「江東子育てネットワークのビジョン」と書いてありますけれども、五年後には、「多機関連携で地域の安全安心を守る」。そういう意味ではしっかりとしたビジョンを掲げて、それに向けて進んでいっているということで、大変、私はこの江東区の住民主導の取組は先進的なものではないかというふうに自負をしております。

 一方、現状を見ると、聞いてみますと、自治体や行政機関あるいは民間団体から何らかの支援が得られるというのを全く知らないママ、パパもいる、知らないんだから支援の情報にアクセスしようがない、こういうこともお聞きをしています。

 今や江東区は、何と乳幼児を育てている家庭の九五%が核家族、こういう状況だそうです。私も改めて聞いてびっくりしたんですけれども、九五%が核家族ですよ。他地域からの転入で、近くに身寄り、頼りもなくて、そして、それで子育てをしているファミリーも多い。支援情報にそれでアクセスできないとなると、それは孤立しますよね。結果、江東区の子育てファミリーの半数以上が子育てに不安を感じているということであります。

 受けられる支援の情報を発信して子育てファミリーが情報にアクセスしやすくする、そして地域のつながりをつくる、この二つ、特に大都市部における先ほど言ったような核家族の状況を見ますと、とても虐待予防に重要なポイントだと思いますけれども、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 今委員がおっしゃられたように、なるほど、子育てファミリーが受けられる支援についての情報にアクセスしやすくする、地域のつながりをつくる、私も非常に大事だと思っております。

 孤立しがちな子育て家庭を早期に発見して、必要な支援策につなげることは、非常に、社会的な孤立を防ぐということで極めて重要だと思います。

 こういう観点から、厚生労働省としては、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を行う子育て世代包括支援センターの設置、あるいは、子供の身近な場所における、子供や妊産婦等の支援を行う子ども家庭総合支援拠点の設置等々を推進しておりますし、子育ての孤立化による子育ての不安感や負担感などに対応するため、地域の身近な場所で子育て中の親子の交流や子育て相談、情報提供等を実施する地域子育て支援拠点事業、例えばこれは七千二百五十九カ所でやっております。そして、身近な場所での相談や情報提供、助言等必要な支援を行う利用者支援事業を推進しております。

 このような取組を通じて、今委員の指摘されたような二点について対応し、子育て家庭の社会的な孤立の防止に努めていきたいと思います。

柿沢委員 根本大臣はお地元は福島でいらっしゃると思いますが、私が選挙区とする大都市のマンションの町においては、子育て世帯の九割以上が核家族で子育てをしている、こういう現状があるということでありますから、本当にそういう意味では、地域の目が入り、また必要な支援がどこで受けられるかということがわかるということが、孤立した、また閉じた家庭の中での虐待につながっていくようなそうした状況をなくしていくことにつながっていくというふうに非常に強く思います。

 今回の法案ですが、いわゆる体罰の禁止ということが法律上明記をされるということになったわけでありますけれども、体罰禁止と法律に書いたから体罰がなくなるわけではありません。子供に対する親の懲戒権についても同様だというふうに思います。むしろ、法律に書いたにもかかわらず、体罰や虐待の実態が変わらない、法律が社会の規範として機能しない、書いてあるけれども守らない、こういうことになってしまうことを関係者は実は危惧しています。

 そういう意味では、体罰によらないしつけが子育てにおいてより有効であるということを社会に、そして親御さんに知ってもらわなければならないと思うんです。

 日本の大人の六割近くがしつけに伴う体罰を容認している、そして現に子育て中の親の七割が何らかの体罰を実際にしている、こういう調査結果もあるわけです。

 体罰によらないしつけの手法として、カナダの児童心理学者でありますジョーン・E・デュラント博士によって考案されたのが、ポジティブディシプリンという考え方、直訳すれば、ポジティブディシプリンですから、肯定的なしつけということになります。

 このポジティブディシプリンというのは、もともとは、国連事務総長の依頼によって実施された子供に対する暴力の調査研究報告を踏まえて、その対策としてつくられたというものであります。基本的な原則は、次の四つです。長期的な目標を決めること、温かさを与えること、枠組みを示すこと、子供の考え方、感じ方を理解すること、課題解決型の手法をとること。

 これ以上詳しくは時間の関係で述べませんけれども、このポジティブディシプリンのジョーン・E・デュラント博士が、セーブ・ザ・チルドレンというNGOとともにつくり出した、科学的根拠と子供の権利に基づいた養育者のしつけ支援のプログラムもあります。前向きなしつけに行動を変えるためのツールであります。

 既に民間ベースでは大変注目を集めているこのポジティブディシプリンの考え方でありますけれども、まさに、体罰によらない子育て、しつけが、むしろ子供の成長にとってより有効であるということを、実際に子育てをしているファミリーの皆さん、そして社会全体に知っていただくために、これも大変有用な考え方だというふうに思いますけれども、これについて、ぜひ広めていただきたいと思いますが、御見解をお願いいたします。

根本国務大臣 委員はいつもいろいろよく勉強されているなと思います。

 これまでも、啓発資料で、「子どもを健やかに育むために 愛の鞭ゼロ作戦」などを活用して、体罰は許されないことを社会全体で共有し、体罰によらない育児を推進してまいりました。

 ただ、これまでの児童虐待事案においても、保護者は、しつけの一環である体罰と称して虐待を行ってきた事案があって、中には死亡に至るなどの重篤な結果につながるものもありました。

 このようなことを踏まえて、本法案においては、体罰が許されないものであることを法定化して、民法上も体罰が許されない懲戒であるということを明らかにしております。委員がおっしゃるように、法律が社会的規範として有効に機能する、これが大事だと思います。

 その意味で、御指摘のポジティブ・ディシプリン・プログラムも、暴力によらず、親子のコミュニケーションを重視することによって、子育てのストレスや不安が軽減されることを目指すものと認識しております。

 その意味では、このポジティブ・ディシプリン・プログラムを含めて、今後も、よりよい子育てのためのツールなどがあれば啓発の中で活用しながら、国民全体で、体罰によらない子育てを推進していきたいと思います。

柿沢委員 ぜひ研究してみてください。本当にありがとうございます。

 だんだん時間がなくなってきましたが、次の質問に行きます。

 虐待というのは、子供の安心、安全を阻害する全てのものを指すと厚労省のマニュアルにも書いてあります。殴る蹴るだけが虐待ではない。ところが、何が虐待に当たるのか、子育て支援や虐待防止にかかわるスタッフの間でも理解が共有されていない、こういう実態があります。

 数多くの虐待事例と向き合ってきた松戸市立総合医療センターの小児科医長の小橋孝介先生が、先日、それこそ江東子育てネットワークで行った講演なんですけれども、あの「巨人の星」、ちゃぶ台をひっくり返す、星飛雄馬に大リーグ養成ギプスをつける、これは虐待ですかと聞くと、子育て支援に関する関係者でも、どうだろうと考え込んじゃうんですね。

 しかし、子供の安全、安心を阻害する全てのものを虐待というということであるとすれば、これも場合によっては虐待とみなせるものなわけですね。これは実際にそういうことなんですよ。

 警察との全件共有の話がよく出ますけれども、こういうことも、虐待とはいかなるもので、児童虐待にはどう対処すべきなのかという点について、警察の皆さんとの理解と知識の共有が当然の前提になります。現状は残念ながらそうなっていない。医療者、福祉関係者ですら、虐待対応に関する教育を実はほとんど受けていない、これが現場の声なんですね。

 そういう意味では、いわばレベル合わせ、いろいろな多機関連携をするに当たっても、虐待とは何か、そして、どの段階でどういう対処をしなきゃいけないのか、この考え方の共有がなければ、これはもうちぐはぐになってしまうということなんです。

 この点について、私は、理解促進、そして考え方の共有、これを進めていくことが大切だと思いますけれども、まさに関係閣僚会議の、いろいろな多機関のある意味では束ねの役割を担っておられる厚生労働省として、考え方をお伺いしたいと思います。

根本国務大臣 委員のおっしゃるとおりだと思います。

 児童虐待については、早期に気づき、迅速かつ的確な支援につなげていくためには、地域において関係機関との連携体制を構築する、そして関係者の皆さんが共有する、これが必要だと思います。

 このため、地方自治体においては、学校の教職員や医師など、地域における児童虐待の予防や早期発見、早期対応において重要な役割を担っている関係者に対して、児童虐待とは何かという話もありましたが、その児童虐待についての知見を提供する研修を実施しております。国としてこれを支援しております。

 さらに、三月に関係閣僚会議で決定した抜本的強化についてに基づいて、学校の教職員や医師などに対する研修を推進することとしており、関係機関で児童虐待を発見しやすい体制の整備を進めてまいります。

 あわせて、要保護児童対策地域協議会の仕組みを活用して、関係機関が共通した認識を持つとともに、有機的に連携することで、児童虐待防止につながるような取組を進めていきたいと考えています。

柿沢委員 通告した質問を一問残してしまいましたが、時間になりましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る二十一日火曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

冨岡委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十一日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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