衆議院

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第19号 令和元年5月21日(火曜日)

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令和元年五月二十一日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 冨岡  勉君

   理事 大串 正樹君 理事 小泉進次郎君

   理事 後藤 茂之君 理事 田畑 裕明君

   理事 橋本  岳君 理事 西村智奈美君

   理事 大西 健介君 理事 高木美智代君

      安藤 高夫君    上野 宏史君

      大岡 敏孝君    大隈 和英君

      木村 哲也君    木村 弥生君

      国光あやの君    小林 鷹之君

      後藤田正純君    佐藤 明男君

      塩崎 恭久君    繁本  護君

      田村 憲久君    高橋ひなこ君

      谷川 とむ君    丹羽 秀樹君

      福山  守君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君    渡辺 孝一君

      阿部 知子君    池田 真紀君

      尾辻かな子君    吉田 統彦君

      稲富 修二君    岡本 充功君

      白石 洋一君    山井 和則君

      桝屋 敬悟君    鰐淵 洋子君

      高橋千鶴子君    藤田 文武君

      柿沢 未途君    中島 克仁君

    …………………………………

   厚生労働大臣政務官    上野 宏史君

   参考人

   (日本社会事業大学専門職大学院教授)       宮島  清君

   参考人

   (明石市長)

   (弁護士)

   (社会福祉士)      泉  房穂君

   参考人

   (特定非営利活動法人CAPNA理事長)      萬屋 育子君

   参考人

   (東京都児童相談センター次長)          西尾 寿一君

   参考人

   (弁護士)

   (日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事)    花島 伸行君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十一日

 辞任         補欠選任

  新谷 正義君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     新谷 正義君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)

 児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案(岡本充功君外十名提出、衆法第七号)


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     ――――◇―――――

冨岡委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案及び岡本充功君外十名提出、児童虐待を防止し、児童の権利利益の擁護を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、両案審査のため、参考人として、日本社会事業大学専門職大学院教授宮島清君、明石市長・弁護士・社会福祉士泉房穂君、特定非営利活動法人CAPNA理事長萬屋育子君、東京都児童相談センター次長西尾寿一君、弁護士・日本弁護士連合会子どもの権利委員会幹事花島伸行君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず宮島参考人にお願いいたします。

宮島参考人 日本社会事業大学専門職大学院の宮島清と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、とても重要な二つの法案の審議に当たり意見を述べさせていただく機会をいただき、心から感謝を申し上げます。

 私の方は、六枚の資料を用意させていただきました。

 一ページ目は、レジュメ本文でございます。これに沿ってお話をさせていただきます。

 二ページ目から五ページ目までについては、これは、三月の末に、香川・目黒事件、船戸結愛ちゃんの事件ですね、また野田市の栗原心愛ちゃんの事件を中心に法改正についてインタビューをいただきまして、それを記事にしていただいたものがございましたので、その写しをつけさせていただきました。

 最後の六ページに二つの事例を挙げております。一つは、昨年五月の末に発生しまして、香川・目黒事件と同じ六月に報道された、東京新宿で起きた、二十五歳の女性が新生児を漫画喫茶で殺害し、遺棄してしまった事件、もう一つは、やはり昨年の一月に発生しましたが、ことしの三月に第一審判決が出ましてその報道がなされた、愛知県豊田市で三つ子の子供のうちの次男をお母さんが殺害してしまった事件、この資料をつけさせていただきました。

 なぜこのような構成にしたかと申しますと、児童虐待というものの悲惨さ、これはもちろんですけれども、同時に、児童虐待が非常に多様なものであるということを先生方にお伝えして、そのことも含めて今回の法案の御審議に当たっていただきたいと心から願ったからでございます。

 それでは、一枚目のレジュメに沿ってお話を申し上げたいと思います。

 そもそもの内容で恐縮ですけれども、「児童虐待についての認識」ということの表題をつけさせていただきました。

 児童虐待は、本来は憩いの場所であり、また子供が健やかに育つ場所です、その家庭が生き地獄あるいは戦場となる、そのようなものであるという認識に立つべきだというふうに思います。栗原心愛ちゃんが沖縄から千葉に来たときに、お母さんに地獄だったというふうに話したという報道が先日ございました。まさに児童虐待は、家庭が生き地獄、戦場となるものだと思います。子供の命、弱い者の命が奪われ、人権が奪われます。家庭で殺人、暴力、人格否定、支配、レイプ、食事を与えられない、そのようなものが起こるのが児童虐待です。

 ですから、虐げられている者の体験していること、このことを第一に考慮して全てのことが進められるべきだというふうに考えています。

 よく児童虐待においては安全確認という言葉がございますが、一時安全確認をすればわかるというものではないと考えています。その子供の置かれている状況、事例ごとの家族メンバーの個性や特質、メンバーとメンバーとの関係、生活の全体像、家族の歴史、これらが的確に把握され判断される、その的確な判断のもとに対応がなされなければ子供の命は守れない、そのように考えております。

 状況は常に変化し続けます。その変化をきちんと見ていかなければなりません。安定して見えた家庭で、そこで急変することもございます。

 ですから、事例に何らかの形で接触がとれたとき、あるいは通告がなされたとき、相談がなされたとき、そのときに的確に内容の全体像をつかみ、それにふさわしい継続的な状況把握をし、それに基づき対応することが必要だと思います。先ほども申し上げましたけれども、児童虐待が多様なものであることを忘れてはならないと考えます。

 日本では、毎年八十名前後の子供の命が奪われます。最も多いのはゼロ歳児、うち半数は新生児殺、遺棄です。育児ノイローゼや親子心中も多数認められます。豊田市の事件のように、双子、三つ子のお子さんへの虐待や、子供が発達上の課題を抱え、そして子育てに悩んで虐待に及ぶ例もございます。

 もちろん、今回の二つの事件のように、しつけのつもり、体罰のエスカレート、そのようなものもございます。また、さまざまな要因で生じるネグレクトも多数発生しています。親御さんの疾病のために、したくてもできないというような状況も多数発生しています。DVのために、自分を守れず、子供を守れない、そのような事案も多数認められます。そのような内容をきちんと見ていかなければならないと思います。統計上は発生件数が少なく見える性的虐待も、魂の殺人と言われるものです。これは、暗数も含めれば相当数あると考えます。

 このような多様な児童虐待の内容、悲惨であり、かつ多様である、そのことを含めて対応、対策を進めていかなければならないと思います。

 残念なことに、深刻な課題がある場合には、指導や支援をしても容易には改善されないものもございます。形式的に治療、教育プログラムを受講し、引取りを強く要求するような例もございます。

 そのようなことを踏まえ、教育的なプログラムが有効な例もあれば、そうではない例、その両方を見据えて対応すべきだというふうに思います。また、母子が加害者から離れることを助けるべき事例、生活の土台の再構築が必要な例、抱える疾病の治療を優先すべき例、レスパイトや保育サービスで軽減できる例もございます。そのようなさまざまな内容を踏まえた対策が必要だと思います。

 このように考えますので、この下に挙げた二つ目、三つ目、児童相談所と市町村の体制整備だけでは足りず、国民が皆関心を持ち、自分にできることをしなければならないと考えますが、限られた時間ですので、二番と三番について申し上げたいと思います。

 児童相談所の体制整備と職員の力量の向上は、どうしても必要なことだと思います。

 児童相談所は、ほかの機関では担い得ない固有の機能を持っているからです。

 また、そのためには、直接対応する児童福祉司や児童心理司の増員と力量の向上が必要です。

 この力量の向上のためには、適性も大事です。また、基礎的な学びも大事です。そして、経験を積むことが大事だと思います。促成栽培はできないものと考えています。

 また、担当者の力量のアップだけでは児童相談所が的確に対応できるようにはならないと思います。児童相談所の増員だけではなく、的確な進行管理ができる組織の規模、あり方が重要です。今挙げた重大事案も含めて、多くの事案は進行管理の失敗と捉えられるというふうに考えております。

 子供を守るためには、速やかな、ちゅうちょなき一時保護が必要だというふうに言われています。このことを達成するためにも、児童相談所の一時保護所を含めて、一時保護所が子供の制約にならないようにすることが大事だと思います。

 最後になりますが、最も大事なことは、ここにあるようにも考えております。児童相談所だけでは子供たちを守ることができません。基礎自治体である市町村の体制の充実、そこでどう子供や家族を受けとめ、守っていくか、そのことを中心に据えて法案の方の審議を進めていただきたいと存じます。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、泉参考人にお願いいたします。

泉参考人 このような機会をいただき、ありがとうございます。

 本日は、中核市の市長の立場から意見を申し述べたいと思います。

 お手元の方のレジュメに沿ってお話をいたしますので、御参照いただければ幸いです。

 一ページ目の下の方に写真があります。明石市は、ことしの四月に、自治体としては九年ぶりに児童相談所を設置いたしました。一カ月前のことでございます。

 一時保護所も同時に整備をいたしまして、定員は三十名。明石市は人口三十万人ですので、人口一万人当たり一人です。この後お話しいただく東京都は、人口千三百数十万で定員二百十三、六・五万人に一人で、一〇〇%入れません。一時保護所に入れないから保護できないのは間違いです。明石市では、人口一万人に一人の定員とし、原則個室、全員が自分のお風呂に入れるように、一人一人がほかの友達から体を見られないような状況もつくり、しっかりとした一時保護所を整備いたしました。

 次のページをごらんください。つくった場所は、明石市内の一番真ん中のJRの駅前につくりました。

 児童相談所は、迷惑施設ではありません。子供を本気で守ろうとする明石市民の誇りです。市議会は全会一致で賛成、地域の反対などありません。町のみんなで子供を守る、そういった町こそが発展する、そういった思いで明石市は取組を続けています。

 つくった場所は保健所の隣、連携が必要です。来年四月には、全国二カ所目となる研修センターも整備する予定にしております。まさに、これらを含めてしっかりやっていく予定にしております。

 開設までには三年かかりましたが、三年でできます。中核市が児童相談所をつくれないわけがありません。やっていないだけです。やろうと思ったら、三年、五年で全部できるのは当たり前です。子供が死んでいくのを放置し続ける、そんなことが許されていいわけがありません。中核市は、保健所は全部つくっています。保健所がつくれて児童相談所がつくれない理由などあるわけがありません。人がいなければ育てればいいだけだと私は思っております。

 次のページ。明石市は、本気で子供を応援する、全ての子供たちを、誰一人見捨てることなく、地域と一緒に本気で取り組む、こういった町です。明石の児相の基本的な方針は、子供最優先であります。

 次のページをごらんください。中核市だからこそ必要なんです。

 都道府県のよさもありますが、都道府県の限界もあります。中核市の場合、早い段階の子育て相談から、その後、自宅に帰った後のフォローまでできます。ここが大事なことです。都道府県だけでは足らないところを市町村がしっかりやれるというふうに思っております。

 組織といたしましては、明石市では、緊急支援課に六名、さとおや課五名と、独立した課を設けたのが特徴です。

 右上の方をごらんください。ここが最大のポイントです。

 明石市の児相の職員数は、国の基準の倍です。国の基準だと、原則、人口四万人に一人、明石の場合、人口三十万ですから七、八人ですが、そんな人数で子供は守れるわけがありません。野党案とて不十分です。明石は倍の十八人の人員を配置し、心理司も倍の八名、保健師は一人でなく四倍の四名、弁護士も、常駐で男女一名ずつ、弁護士二人が常駐している体制をとり、更に拡充を図ります。なぜか。子供の立場から考えたら、これぐらい必要だということです。

 なお、国基準を上回る人件費は全て明石市民の負担です。それでも明石市はやっている状況をお伝えしたいと申し上げます。

 次のページをごらんください。めくります。中核市児相のいい点です。

 大きくポイントを三つ言います。

 中核市、基礎自治体だからこそ、妊娠届の受取をするのは市町村です。明石では、妊娠届の受取のときに、一時間程度、相談に応じます。おなかの中の子供と相談するつもりで相談をします。そして、その後、いわゆる四カ月健診などの際に、一〇〇%、子供と会っています。きょうはチラシも入れておりますが、明石の場合、子供に会えなかったら、児童手当につきましては銀行振り込みを停止します。幸いにして、土曜、日曜に保健師が家庭訪問することにより、一〇〇%の子供に会えています。会うことは可能なんです。家庭訪問をし、家庭にいなければスーパーで待ち構えてでも子供に会う、そういったことを明石市は現にしています。

 そして、二つ目です。

 学校現場と連携ができますので、明石は四月に一時保護所をスタートしましたが、小学生、中学生は、一時保護所からもとの学校に通っています。そんなところ、ほかはほとんどありません。都道府県の児相でそれができますか。

 身近なところで学校と連携をして、親と離れ離れになっても、せめてクラスメートの友達とはこれからも話し合える環境をつくる、これは政治、行政の責任だと私は思い、そのためには、送り迎えを職員がしています。職員を配置すれば、送り迎えをすれば、学校と連携をすれば、子供の環境を大きく変えなくても保護することは可能であります。一時保護所は不幸な場所ではありません。一時保護所は子供たちの安らぎの場所であるべきだと考えております。

 そしてさらに、地域との連携です。

 明石では、子供食堂が小学校区二十八全てにもう立ち上がり、現在三十八カ所で、一つも潰れることなく子供食堂が運営されており、更にふえています。子供食堂に来る子だけではありません。子供食堂に来た方がいいのに来ない子供の情報も共有化し、行政が家庭訪問し、必要な子供には食事を届けています。そこまで明石は既にやっている状況で、難しいことではありません。子供たちに近い基礎自治体であればできるというのが私の考えです。

 次のページをごらんください。里親にも本気で取り組んでいます。

 明石は、未就学の子は、一〇〇%、里親にします。やり切ります。

 これまで明石市では、都道府県任せで、一年に一人ぐらいしか登録がふえませんが、明石市は昨年度、一気に十四人の里親家庭の登録になりました。本気でやれば、里親をリクルートすることは可能です。市であれば、地域のボランティアさんの顔も浮かびます。地域の方を口説いていく、そうせずに里親がふえるわけがありません。単なる啓発活動やキャンペーンをやっていて里親がふえるわけはないんです。本気で市町村が里親のまさに確保に取り組めば、子供たちの環境を大きく変えないことは可能だと思っております。

 そして、右側に行きます。人がいないと言います。いなければ育てるんです。

 明石では、この七月からは全国二カ所目としての研修センターを立ち上げ、来年四月には箱物もつくります。明石で育てて全国の子供たちも守りたい、そういった思いで明石市は全国二カ所目となる研修センターをつくる形にしました。

 人材がいないのは言いわけです。いなければ育てればいい、私はそう思っております。弁護士や市町村の職員についても、児相職員以外も研修対象に入れております。

 次のページをごらんください。こういったことをするのは町のためです。子供たちのためだけではありません。

 明石市では、実際、決意だけではなく、私が市長になってから、子供関連予算は二倍にふやしました。市長就任前百二十六億円だったものを、現在は二百四十四億円のお金を使っています。お金は要るんです。人についても、子供部門の職員数を三十九名から百二十六名にふやしました。三倍増です。そうすれば子供の送り迎えは可能です。そうすれば家庭訪問は可能です。金と人が要る、これが私の考えであります。

 右側をごらんください。その結果、明石はどんどん元気になってきました。人口減を脱し、六年連続人口増、転入割合は関西第一位になりました。赤ちゃんもどんどん生まれています。地域経済も活性しています。まさに、子供に本気の町こそが発展すると私は考えております。

 最後になりました。きょうお伝えしたいことは、まさに基礎自治体こそが重要です。中核市には児相を、そして中核市以外にもしっかりと子供に寄り添える人材確保を、このことを最後にお願い申し上げ、私の意見といたします。

 どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、萬屋参考人にお願いいたします。

萬屋参考人 愛知から参りました萬屋と申します。

 私は、愛知県の社会福祉職として採用され、五カ所の児童相談所に二十七年間、二カ所の福祉事務所に十一年間勤務しました。退職後はCAPNAで活動しております。今でも養子縁組親子家族とおつき合いがあります。養護施設の暴力、性暴力の問題で、養護施設にも定期的に出かけております。さらに、個人的には、児童相談所長時代に親権喪失を申し立てた子供の未成年後見、引き続き成年後見を務めています。

 私は、三点お話ししたいと思います。まず、虐待対応についてですが、これは日々奮闘している児童福祉司のことについてお話ししたいと思います。二つ目は、家庭養育推進です。三つ目は、養護施設内の暴力、性暴力の問題についてお話ししたいと思います。

 私は、児童虐待の死亡事例、深刻な事例をなくするために法律を整備し、児童相談所の権限を強化することは重要であり、必要不可欠のことと考えています。児童相談所の権限を使い子供を守る、その最前線にいるのは児童福祉司です。新しい年度が始まりましたが、既に退職者が出ている、育児休業などの補充職員がいないまま出発した児童相談所があると聞いています。

 児童相談所の権限が強化されればされるほど、児童福祉司に大きな責任が出てきます。虐待の通報を受け、子供を保護するかどうかも決めて、受入れを探し、子供を移送する傍ら、親に連絡をとり、面接の手はずを整える。親がすんなり認めることはめったにありません。夜遅くまでの面接もしばしばあります。最近は警察からの身柄つき通告もふえ、子供の受入れに苦慮していると聞いています。最初の通報から、一時保護、施設入所、退所も児童相談所が決めます。親子関係の修復ができたと判断して子供を家庭に帰した後も児童相談所がかかわります。

 そういうことを担っている児童福祉司は、現状としては卒業したばかりの新人、経験年数二、三年の若い人たちがやっています。女性も多くいます。とても長続きしません。経験を積んだ女性が、自分の子供はネグレクトしている、子育てができないと退職に追いやられています。せめて、私は、任務についての最初の一、二年を研修に充てていただきたいと思っています。訓練、見習期間が必要だというふうに思います。

 そして、もう一つは、児童福祉司の処遇の改善だというふうに思います。

 児童相談所は、ブラックな職場としてささやかれ、愛知県では社会福祉の採用枠があるんですけれども、その採用枠で入りながら児童相談所を希望しない職員がふえているとも聞いています。志を持って児童相談所に来た若い人たちが、仕事に愛着を持ち、やりがいを感じ、長続きできるような環境整備をお願いしたいと思います。

 二つ目は、家庭養育推進についてです。

 里親、養子縁組も、児童相談所の業務と明記されました。愛知県は、児童相談所の業務と明記される前から、赤ちゃん縁組、特別養子縁組を社会的養護の重要な手法と考え、取り組んできました。

 虐待死で最も多いのは、ゼロ歳児、ゼロ日児童です。遺棄された場合に、報道も少なく、行政は責任を問われることはめったにありません。遺棄された子供の中で、運よく生きている赤ちゃんがいます。この赤ちゃんの場合に、愛知県の児童相談所は、特別養子縁組の親に直接つなぎます。赤ちゃんにとってはいい方法だと思いますが、なかなかこれも広がりません。

 乳児院、児童養護施設に入れっ放しになっている赤ちゃん、子供たちについても処遇を考えなければならないと思います。子供時代の大半を乳児院、養護施設で生活し、家なし、親なしで社会に出る子供たちがいます。衣服のクリーニングでも引取りの期限がありますが、子供についてはありません。年齢に応じて入所期間の期限を決め、親が引き取る見通しがなければ、親権喪失、停止について考えるべきだというふうに思います。

 子供たちが求めているのは、ずっと家族であること、一生親子であることです。安心、安全で安定した親を用意することは、最大の子供の福祉であり、児童相談所ができることというふうに思います。大きくなった養子たちの言葉を聞いて、そう確信しています。

 最後に、児童相談所が送り込んだ児童養護施設の問題です。

 児童養護施設内の暴力、性暴力について、最近、厚生労働省の調査が行われ、発表されました。施設の実態を一部明らかにしたという点では評価できます。初めての調査です。養護施設入所中の小学校女児が中学生男子から性的被害を受け、引き取った女児の母親が訴えた裁判が、この調査のきっかけになりました。

 養護施設内の暴力、性暴力は、以前からありました。大人から子供へ、子供から大人へ、子供間、死亡事例も出ています。愛知県では、数年前に、自立支援施設で入所児童が職員を殺害した事件があります。養護施設の職員も、この暴力問題、性暴力の問題の対応に苦慮し、さまざまに工夫しながらやっていますが、繰り返されているのが現状です。有効な手段が見出せず、手をこまねいています。

 施設内暴力、虐待は、長い間放置されてきました。この問題の解決に尽力されている田嶌誠一氏は、施設内の暴力、性暴力はかくも長き間ネグレクトされてきた、施設内暴力、虐待への対応なしには虐待からの保護さえ終わったことにはならないと言います。

 今回の調査は、性的問題についてのみでした。施設内で起きている出来事は、性的問題ではなく、性暴力であるということ。さらには、子供間の性暴力だけが注目されているということでは不十分と言わざるを得ません。施設の小規模化、家庭養育推進だけでは、この問題は解決不能です。里親宅でもファミリーホームでも、そこのおうちで暴力、性暴力の問題が起きて、児童相談所が子供を引き揚げている現状があります。

 私は、児童相談所がせっかく保護した子供たちを、被害者にも加害者にもしてはならないと思います。現役のころ解決の手法がないと諦めていましたが、退職のころに、田嶌誠一氏の考案した安全委員会方式に出会いました。この方法なら施設内の暴力、性暴力問題を解決できると思い、県内の養護施設に導入を進めました。資料を添付していますので、ごらんください。

 愛知県内では五つの施設が導入をしまして、成果を上げています。合い言葉は、たたくな、蹴るな、口で言おう、優しく言おう、相手が悪くてもたたいてはいけないというのを、大人も子供も守っています。安全委員会を導入した養護施設では、養護施設の中の雰囲気が大変落ちつきましたし、子供たちの関係がよくなりました。

 このように、いろいろな施策が必要だというふうに思っています。全ての赤ちゃん、子供が、安心、安全で安定した家庭、家族のもとで育つことを願っています。そのために、子供をめぐるさまざまな施策がより充実されることを望みます。

 以上で終わります。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、西尾参考人にお願いいたします。

西尾参考人 東京都児童相談センターの西尾でございます。

 本日は、児童福祉法改正の審議に当たりまして、現場の実情、課題を説明させていただく機会をつくっていただきまして、感謝申し上げます。

 今回の法改正につきましては、ぜひとも、現場の職員の活動を後押しする、実効性のある内容にしていただければと思っております。どうぞよろしくお願いをいたします。

 私からは、資料に沿いまして、幾つかポイントを絞って御説明をさせていただきます。

 まず、最初の一ページでございますが、東京都の児童相談所、十一カ所ございます。保護所七カ所で運営しております。児童人口は百八十万以上でございます。

 次のページでございます。

 東京都の虐待に関する相談状況でございます。ごらんのとおり、二十五年度から二十九年度に右肩上がりのカーブが厳しくなっております。

 その下、経路別の対応状況でございますが、囲みでございます、警察からの通告がふえてございます。二十七年度二千九百三十八が、二十九年度は五千七百三十五でございます。

 その下に参ります。虐待内容別の対応状況でございますが、心理的虐待がふえております。これは、警察からの面前DV、いわゆる面前DVがふえているという、それが統計的にあらわれてございます。

 次のページでございます。

 東京都では、昨年三月、御案内のとおり、目黒で重大な事件が発生いたしました。これを受けていろいろ強化をしております。任期つきの職員を緊急で年度途中に採用しております。また、児童福祉司や一時保護所職員を補佐する非常勤職員も増員をしております。育成担当の管理職、専門課長もふやしております。

 表に行きまして、二十八年度、児童福祉司の定数でございますが、二百二十七を三十一年度は三百十五までふやしております。心理におきましては、二十八年度は九十一、三十一年度が百四十一ということで、非常なハイペースで定員をふやしております。

 次のページでございます。

 児童福祉司の採用方法をまとめました。主なものを三つ取り上げております。まず、最初の表でございますが、1類B、これはいわゆる福祉職の採用でございます。それから、その下、キャリア採用というのは、民間企業経験者から人材を登用しております。それから、その下は、任期つき、期限つきで児童福祉司の採用を行っております。

 その下の表でございますが、合格倍率でございます。それぞれの区分で載せておりますけれども、網かけのところをごらんいただきたいと思います。1類Bのところの倍率は二倍から三倍、それからキャリア採用も四倍、任期つきも四倍程度のところでございます。決して高くない倍率でございます。

 そして、囲みのところをごらんいただければ、合格者の数、これが二十五でございますが、そのうち実際に採用されたのが八でございます。これは、他局、他事業所に配置された分もございますけれども、辞退者が多く出ているということでございます。これは人材のとり合いが既に始まっているというあらわれでございます。

 次のページをごらんいただきたいと思います。

 児童相談所が求められる専門性、虐待対応に求められる専門性でございます。少しまとめてみました。適時適切なリスクアセメントの実践、サインを見逃さずに迅速に対応しなければなりません。それから、何といっても強力な法的権限をいただいております。これをちゅうちょなく行使することが必要です。

 それから、ケースワークそのものの困難性もございます。子供の利益のため、保護者の意向に反しても毅然と対応しなければなりません。相談のニーズのない相談を受ける、これが児童相談所の非常に大きな特徴でございます。それから、親子分離と再統合、相反することを両立させながら対応しなければならない、この難しさがございます。

 子供と家族全体を支援する、多くの関係機関との連携、調整が必要でございます。心理的アプローチも必要でございます。

 これには、経験値に支えられた専門性が必要でございます。五年から十年で中堅、十年以上がベテラン、そういう目安でございます。

 次のページでございます。

 経験年数のところをまとめてみました。東京都では、児童福祉司、児童心理司ともに、二年以下の経験年数の職員が半数を占めております。そして、今後、ベテラン職員の大量退職が見込まれております。

 この中で、SV、スーパーバイザー、そして中間職員、これが非常に重要な役割を占めておりますが、ここが非常に枯渇している状況でございます。

 児童福祉司の構成例を挙げてございますが、課長代理一名、これは相談援助業務を統括しております。その下に班が幾つかございまして、班長がございます。この班長クラスと課長代理、これが東京都でSV層でございます。この職員が進行管理と育成を同時に行うという、非常に負担の多くかかった業務を行っております。質、量ともにハードな相談援助業務を新人も担当している。

 先ほどのお話で、育成期間が必要との御指摘がございましたが、今、東京都ではその余裕はございません。多分、全国の児童相談所もそうだと思います。相談業務部門で長期に活躍できるように、職員の処遇改善ですとかキャリア形成の仕組みが必要だと考えます。

 次に、弁護士、医師の活用についてでございます。

 東京都では、協力弁護士、非常勤弁護士制度というのを採用しております。十一カ所に非常勤では一名採用しておりまして、総勢四十五名体制で法的対応を強化しております。今年度も非常勤の回数を月二回から四回に増員、それ以外にも、随時、電話、メールで相談をしております。

 この制度のいいところは、ベテランの弁護士さんと新人の弁護士さんがペアを組みまして、弁護士さん同士での育成ができるということでございます。また、四十五名の弁護士さんが、各自の経験と知識を結集して、最適な助言を得ることが可能でございます。私どもは、この形が非常にベストだと思っておりますので、常勤弁護士の配置というのも大切かもしれませんが、私どもの形、このいい形をぜひとも堅持したいと思っております。

 それに、医師につきましては、児童相談センターで常勤医師五名を配置しておりまして、各児相を巡回しているところでございます。その他にも、民間医師との連携を十六名体制で行っております。

 次のページでございます。

 一時保護所の現状と改善に向けた取組でございます。一時保護所、都内、定員二百十三名ございますけれども、逼迫状況でございます。

 右の方の箱のところ、課題についてでございますが、一時保護所の非常に難しいところは、さまざまな子供たちが日々入所し、集団の構成が変化するところでございます。これをまとめるのが非常に困難なところでございます。

 東京都の取組といたしましては、一時保護所の定員増、外部評価制度の導入、第三者委員制度の導入等を行っております。

 この一時保護所につきましては、対応の困難性、ケア充実の必要性等を踏まえまして、施設基準、児童養護施設の基準よりも更に手厚い、一時保護独自の職員配置基準が必要と考えております。

 次に、九ページ、保護者援助プログラムについてでございます。

 東京都では、各児童相談所が、保護者のアセスメントを行いまして、その虐待のレベルに応じてプログラムを提供しております。各児童相談所の心理職によるプログラムの提供、それから、重篤なケースにつきましては、児童相談センターは、中央相談所機能を担っておりますけれども、グループカウンセリングなどを行っております。それから、児相の援助を拒否する場合等、比較的軽度な虐待の場合は、区市町村や関係機関の皆さんとの連携で行っております。

 保護者自身が必要を感じないと援助できない、これが最大の課題でございます。これにつきましては、今後、司法の直接関与の検討も必要と思います。また、さまざまなプログラムがございます。効果もケース・バイ・ケース、トレーナーの養成にも費用がかかるのが現状でございます。

 次に、十ページ、東京都における児童相談所と区市町村の連携と役割でございます。

 左の箱に、虐待のレベルと対応内容を整理しました。三角の図がございますけれども、下の方が、子育て支援による予防、健康群でございます。これは、区市町村がいろいろなサービスを活用して対応しております。上の方は、法的対応、重篤なケースは児童相談所。そして、真ん中の中程度、軽度のところは、児童相談所と区市町村が重なり合いながら支援をしております。互いに機能を強化して、なお一層の連携強化をする、これが非常に大きな成果を生むものと考えております。

 次のページでございます。

 これは、警視庁との情報共有の拡大を行っております。リスクが高いケースは全て共有をしております。

 次の十二ページは、東京都では、本年四月一日に虐待防止条例を制定いたしました。体罰等の禁止なども盛り込んでおります。

 以上、私からの説明でございます。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 次に、花島参考人にお願いいたします。

花島参考人 私は、仙台で弁護士をやっております。少年事件の付添人、児童相談所長の代理人、それから子供を抱えてDV被害から避難してきた方の離婚事件の代理人、さまざまな事件の経験の中で、多くの子供たちにかかわる機会がございます。実感をするのは、少年非行の背景には児童虐待がある、児童虐待の背景には家庭内の暴力、DVがあるということです。子供を暴力から守るのは社会の責任だと私は考えております。

 本日は、貴重な機会をいただきましたので、改正法案のうち、お手元の資料、A4一枚物ですけれども、そちらに沿って三点、私個人としての意見を申し上げます。

 まず、児相への弁護士配置の規定のあり方ですけれども、改正案を拝見しますと、常時弁護士による助言と指導のもとでという実質的な文言を追加するとしながら、準ずる措置は引き続き認めるというものです。これは、全国各地の実情を踏まえて柔軟な対応を認めるという点で、私は大変適切な考え方じゃないかなというふうに思っております。

 次に、二点目ですが、児童への体罰を禁止する規定を児童虐待防止法などに書き込むということは、体罰も虐待だから許されないんだよということを明らかにする意味で大変重要なことだと思います。ただ、虐待防止法十四条の改正案を拝見しますと、体罰禁止を求める名宛て人が児童の親権を行う者に限られているという点には不十分さがあると思っております。

 これは、もともと虐待防止法十四条が親権の行使に関する配慮の規定であること、それから、より根本的には、親権を行う者に対して懲戒権を認めている民法八百二十二条の存在から来る限界だと思います。この点は、見出しを「体罰の禁止等」というふうに野党案は書きかえていらっしゃいますけれども、見出しを書きかえても同じことが当てはまるんじゃないかと思っております。

 結論としては、やはり懲戒権の規定の削除を急いでいただきたいというふうに思います。

 しつけとか指導というものに名をかりた体罰という虐待は、親権者ではない内縁の夫、それから教育機関とか児童福祉施設の職員などによっても起きています。

 この点、虐待防止法三条をごらんいただくと、名宛て人を特に限定せずに、「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。」というふうに規定しております。虐待防止法に体罰の禁止規定を設けるのであれば、私は、国連子どもの権利委員会の勧告を参考にして、虐待防止法三条の「虐待」の後ろに括弧書きで、体罰その他の残虐な又は品位を傷つける形態の罰を含むというふうにつけ加える改正がよいと考えます。

 三点目として、子供の意見表明権に関する意見を申し上げます。

 子供の意見表明権を保障するということは、私たち大人の側で意見を聞くという責任を制度化して、これを引き受けるということだと思っています。

 この観点から改正案を拝見しましたが、意見を聞く大人としては、児童福祉審議会を活用することが前提になっております。意見を述べる子供が置かれている状況に配慮しなければならないというのを児童福祉法八条に書き加えるという内容ですよね。他方で、意見表明権を保障する仕組みの構築などの配慮の具体的な内容については、附則における検討事項にとどまっているというふうに拝見します。

 児童福祉審議会というのは、児福法の平成二十八年改正以降は、児童からの苦情を受け付けるなどして子供の意見を聞くことができる機関とされてきました。でも、実際に子供の意見が児福審に届いた件数は、ごくわずかのようです。

 児福審には、もともと、子供を施設入所させるべきかどうかを審議するような役割、それから、児童虐待によって死亡事例が出た場合にそれを検証する役割、さらには、いわゆる施設内の虐待に関する通告の受理機関としての役割、さまざまな役割が担わされていますが、受理機関といっても、私も部会のメンバーを長くやっていましたけれども、外部委員ですので、調査活動も含めて事務局頼みの体制にならざるを得ません。部会としては、機動的、主体的に活動することはなかなか困難でした。

 こうした経験を踏まえますと、今後、施設入所中の子供などの意見表明について児福審を本格的に活用するというのであれば、ほかの部会とは独立した、機動性を持った専門部会を設置する必要があります。

 私は、宮城県仙台市の委託事業で、社会的養護のもとで暮らす児童の自立に向けたリービングケア、それから自立した後のアフターケアに弁護士の有志としてかかわっています。十八歳の誕生日の一カ月前に、意見も聞いてもらえずに、突然里親の委託を解除されて実家に帰されたという男の子がいました。結果的に、その男の子は、実父による虐待の被害を訴えて、そのときはもう十八歳を越えていたわけですけれども、私たちに保護を求めてきたというケースがございます。

 児童相談所による措置とか解除の判断に対する子供の不服についてもこれから児童福祉審議会が担当するわけですから、行政組織からの独立性、第三者性、中立性の高い体制を整えないと子供たちの信頼を得ることができないというふうに思います。

 この点、つい最近公表された厚労省の研究事業の報告書が参考になります。お手元の配付資料の裏面、資料の二、これはその報告書に掲載されている意見表明モデルの図の一部でございます。

 児福審の中に子ども権利擁護部会を設置して審議する、審議の前提になる調査活動は、部会から調査権限を与えられた調査員が機動性を持って行うというアイデアです。

 さらに、子供に直接会って、話を聞いて意見表明を助ける役割、これも、行政組織からの独立性を保障された意見表明支援員が担うというアイデアです。報告書では、この支援員のことを、イギリスやカナダの制度を参考に、子供アドボケートというふうに呼んでおります。

 独立性のある意見表明が行われるには、児福審の部会員と調査員、支援員を分ける必要があります。そして、この調査員、支援員は外部委託によるべきとされているのも特徴です。まずは、公費で予算をつけて、子供の権利擁護に関する専門性を持った人材を確保する制度を築く必要があります。

 この点で、各地の弁護士会との連携も不可欠になると思います。市民アドボケートの養成講座の動きもあって、これも重要だと思います。今年度、厚労省のモデル事業も行われるようですので、まずは制度化をして内容を充実させていくとよいと思います。

 子供から見た支援員へのアクセスの問題があります。

 子どもの権利ノートと呼ばれる冊子の活用ですとか、相談を受け付ける電話窓口の運営、それから、プライバシーを保護するシールとセットになったはがきを配付する、こういった細かい工夫も欠かせません。

 何よりも、子供に寄り添う支援員の存在というのを子供に知ってもらうためには、支援員がみずから施設や一時保護所を定期的に巡回訪問して制度のPRをする手間をかける必要があります。里親に委託されているお子さんのことを考えると、アウトリーチの問題についてはアクセスの大きな壁がある、これも問題ですので、指摘させていただきます。

 こう考えますと、子供の意見表明権を保障する役割を児福審が現実に担うには、一定の調査権限が与えられて、機動性、独立性、第三者性、専門性を兼ね備えた人員の配置が課題となります。これは簡単なことではありません。

 この点、私は、地元宮城県の児童自立支援施設で、社会福祉法に基づく苦情解決の第三者委員を十五年以上やっております。そこでの取組を振り返りますと、まず、施設の中で解決されない悩みを聞く大人が施設と利害関係のない第三者だということ、それから、相談用紙に書いて寮の中のポストに入れるだけで、職員から委員に連絡が来て、すぐに話を聞きに飛んできてくれること、そして、内容によっては、第三者委員から施設側に子供の意見を伝えて改善を求めてくれる仕組みになっていること、これが大事だと思っています。子供たちは常に入所、退所の入れかわりがありますので、委員の顔を覚えてもらうために、定期的に施設の訪問も行っております。

 子供から見て、制度がふえるばかりでは、複雑になるだけで意味がありません。ですから、第三者委員の制度が機能している施設においては、第三者委員が子供のかわりに児福審への申出を行うとか、意見表明支援員の役割を兼任する特例を認めてもよいと思います。

 以上を前提に附則の検討事項案を拝見しますと、意見表明支援員、それから子供アドボケートを想定した制度、子供の権利救済機関の設置に踏み込んだ具体的な制度設計を政府に義務づける内容を持つ野党案の実現を強く希望するものであります。

 また、児童の一時保護や措置の際に児童相談所で子供の意見を聞くということは現状でも行われているわけですが、これを野党案のように意見表明権の保障の観点から制度化するのであれば、やはり子供の意見表明を支援するアドボカシー制度とセットで整備する必要があると思います。

 以上です。ありがとうございます。(拍手)

冨岡委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

冨岡委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。谷川とむ君。

谷川(と)委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむでございます。

 参考人の皆様方におかれましては、公私何かとお忙しい中、当委員会に御出席いただき、また貴重な意見をありがとうございました。

 限られた時間でございますので、全ての参考人の皆様に質問ができないかもしれませんけれども、御理解をいただきたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 さて、児童虐待の防止と早期対応のため、児童福祉法や児童虐待防止法は複数回にわたり改正されてきました。こうした法整備により、通告の仕組みやその後の対応などの制度的な整備が進み、また、国民にも児童虐待に関する関心が高まってきています。しかし、児童相談所における児童虐待相談対応件数は増加の一途をたどっており、厚労省の資料によると、平成十五年から平成二十八年末まで、心中を含むと千二百人を超える児童が虐待により亡くなっています。

 暴力を振るう、食事を与えない等の行為によって保護者が我が子を死に追いやるといった事件が相次いで報じられており、本当に心が痛いです。平成三十年三月に東京都目黒区で発生した虐待による結愛ちゃんの死亡事件や、ことしの千葉県野田市の心愛ちゃんの死亡事件は、まだ記憶に新しいところです。児童虐待は絶対にあってはならない、誰一人、子供の命が失われないように、子供たちが幸せに暮らせるように、我々は一致団結して全力を尽くしていかなければならないと考えております。

 まず、虐待を起こす者がいない社会が構築できれば一番いいのは言うまでもありません。そのために、何が一番重要で、何を一番すべきか、宮島参考人と西尾参考人に御意見をいただきたいと思います。

宮島参考人 谷川先生、ありがとうございます。

 何が必要か、優先順位をつけるのはとても難しいことだと思いますが、申し上げたいと思います。

 まず、この問題を他人事にしないということを国民の一人一人が考えていただく、受け入れていただくということが必要だと思います。

 非常に悲惨な事件が起こっています。問題のある方が子供を辱める、こういったものが確かにございます。それを否定してはいけません。これに対しては厳しい対応が必要だと思いますが、先ほども申し上げたように、非常に多様なものであるということが児童虐待の特徴にあると思いますので、そういった多様なものを理解した上で、他人事にしないで取り組むんだということをまず国民の皆さん、またそれぞれの活動、支援の担い手の方々、こういった方々と共有していただくということが大事だと思います。

 また、本来は子育ては喜びであるべきだと思いますし、実際に喜びを感じながら子育てをしている人たちが多くいると思います。この子育ての喜びを広げるというような、裾野を広げるということが必要だと思います。

 そして三つ目に、そういった裾野を広げた上に、専門職、専門機関が適切な判断力、進行管理を行い、そして子供を守っていく。それは、子供を本当に苦しめないということと同時に、保護者を加害者にしないということだと思います。このためには、お金と人をかける、このことがどうしても必要だと思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 実務を預かる立場からいたしますと、まずは、何をおいても児童相談所の体制強化だと思います。具体的には、児童福祉司、児童心理司の増員でございますけれども、これはどうしても育成とセットで考えていくことが不可欠でございます。

 増員計画は非常に重要ではございますけれども、児童相談所の職員が専門性を身につけるには、どうしても一定の経験値が必要でございます。私どもも、常に有効な育成の方法を模索はしておりますけれども、先ほど宮島先生のお話にもありましたとおり、促成栽培はできないという話がありました。まさにそのとおりであります。一定の時間がかかることは皆様方に御理解をいただきたいと思います。

 また、もう一点。長期的に見れば、やはり一番大切なのは虐待の予防だと思います。虐待は、その多くが地域から孤立した家庭に生ずるものでございます。区市町村の母子保健サービスですとか子育て支援サービスを一層充実すること、これが非常に重要だと考えております。

 以上でございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 他人事にはしない、一人一人国民が考える、そして子育てを喜びと考える、そしてまた、専門的な見地を広げていきながら体制も整備していかないといけないという御意見をいただきました。本当に私もそういうふうに思っております。引き続き御協力いただければというふうに思っています。

 しかし、残念ながら、その体制を進めていくにおいても、児童虐待というものは終わりが見えないところまで来ていると私は考えております。

 虐待を行ってしまった保護者に対して、二度と虐待を起こさない取組も必要であると考えています。そのための更生プログラムは大変重要であると考えています。政府も、関係閣僚会議でその推進を決定しています。

 他方で、そうしたプログラムは、本人の意欲なくして効果が得られないとも聞きます。先ほど、西尾参考人からも少しお話がありました。また、プログラムの内容は、そのアプローチが多様であり、保護者の置かれた状況等によって効果的なプログラムの種類は変わるとの意見もあります。

 そうした背景の中で、一律にプログラム実施を法律上義務づけることについて、専門的な見地からどうお考えか、また、更生プログラムを効果的に実施していくために必要なことは何か、また宮島参考人と西尾参考人にお尋ねいたします。

宮島参考人 ありがとうございます。

 プログラムというものは、全ての事案にあまねく適用して効果を上げるものだというふうには思いません。

 プログラムというものがどういうものかということの考え方がまず大事だと思います。このプログラムを、カウンセリングとかあるいは心理治療とか、加害者の個人的な要因のみに目を向けたものとするならば、むしろ適用外の事例が非常に多いということを申し上げなければならないと思います。

 先ほど、最初に意見を申し上げたところで、さまざまな事案がある、生活の立て直しが必要な事案、むしろお母さんや子供が加害をする方から離れるということが必要な対応、そういったものもございます。やはり、残念ながら指導とか治療というものが効果をなかなか及ぼさない、そのような事案もございます。形式的にプログラムを受講して、そして、これを終えたのだから引き取らせてくれというように要求する者もございます。

 やはり、対応とか治療とかいうものは、非常に多様なものとして十分練った上でそれを実施していく、また、効果的であるか、この方に適用していいかどうか、このあたりを十分吟味して行う、こういったことが必要だ、そのように考えます。

 以上です。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 虐待の再発防止のために、保護者の援助プログラムは非常に重要でございます。治療的、心理的、教育的なプログラムを私どもも活用しながら保護者を支援しているところでございます。

 保護者のアンケートをとりますと、軽度の方ですと、大体三、四回で自分の養育の仕方が変わったというようなお答えをいただく方が多いです。ただ、重篤な方は、年単位でのプログラム、援助が必要でございます。

 先ほども申しましたが、私ども現場の支援に携わる者が非常に苦慮しているのは、なかなか支援につながらない、保護者にその気がなければプログラムを受けていただけないというところでございます。そしてもう一つ、プログラムにつきましては、先ほどの宮島先生と同様に、手法もさまざまでございます。こうしたことから、一律な内容を決めるのではなくて、そのケースに応じて児童相談所が示したプログラムを柔軟に選択できる仕組みも必要ではないかと思っております。

 話は戻りまして、保護者を的確にプログラムにつなげるには、司法の直接関与も検討が必要かと存じます。

 以上でございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 さまざまなケースがあるということで、なかなか支援につながらない可能性もあるということを御意見でいただきました。これから、引き続き、何が一番ベストであるか、ベターであるかというものを皆さんと一緒に考えて、また進めていきたいというふうに思っています。

 もう一つ、児童相談所の設置促進についてお伺いします。

 現状では、児童相談所は都道府県と政令指定都市に設置が義務づけられていますが、平成十六年の児童福祉法改正により中核市、平成二十八年の改正により特別区にも児童相談所を設置できることとされました。しかしながら、中核市五十八市のうち、設置しているのは横須賀市、金沢市、ことし四月一日に設置した、きょうも市長がお見えでございますけれども、明石市を含めて三市にとどまっています。

 一方で、特別区では、練馬区を除く二十二区において設置する方向又は設置の方向で検討中となっておりますが、そのような中、中核市、特別区においても設置を義務化すべきとの意見もあります。

 財政上の問題に加えて専門的人員の確保が非常に難しいという現状を踏まえると、現実的には難しいのではないかとの声もありますが、その点、いかがでしょうか。宮島参考人にお伺いいたします。

宮島参考人 ありがとうございます。

 中核市については、私は、人材育成以上に財政的な問題の方が大きいのではないかというふうに考えています。

 確かに、人材を確保することは難しいというふうに思いますが、中核市は地方の中心的な都市ですし、歴史がございます。自治体の職員の方の基礎能力が非常に高いということや、また生活保護や障害福祉、あるいは高齢者福祉、母子保健、こういうところを担っている職員の方もたくさんいらっしゃいます。このようなことを考えれば、中核市では、人材の確保は、先ほど泉市長もおっしゃっておられましたけれども、やればできるという点があると思います。

 一番大事なのは財政的な問題ではないか。

 児童相談所を設置するということは、これはどことは申し上げられませんが、中核市で児童相談所を設置しているところとやりとりがございますので、過去に聞いたことがございますが、年間十億から十五億かかるというようなお話を伺ったことがございます。正確な数はわかりませんが。しかし、市民の方から、児童相談所をつくらなければ保育対策や子育て支援の方に回せたのではないかという質問が率直な形で寄せられることがあるというふうに伺っています。

 やはり、本当に、お金を負担していく、限りある中で児童相談所の方にお金を向けるのだということ、これに市長の方も、また市民の方も合意していただけないと、また、その財源が与えられないと実現しないのではないかというふうに思います。

 むしろ、都道府県の地方の方が、人材の確保という面では難しい面がある。募集してもなかなか来ない、合格者が流れてしまう、そのような例がたくさんあるということを聞き及んでおります。

 以上です。

谷川(と)委員 済みません。西尾参考人にも御意見を賜りたいと思います。

西尾参考人 実務を扱っている立場から申し上げますと、何といっても課題は、人材確保が非常に難しいのではないかと感じております。

 先ほども資料でごらんいただきましたけれども、首都圏でも人材の取り合いが始まっております。

 児童相談所は、経験値が本当に大事な世界でございます。OJT体制など、本来的には組織に余裕がなければ十分な人材育成はなかなかできないというところでございます。新しい自治体が、新しい組織で、進行管理もしっかりやりながら人材育成をするということは、大変困難を伴うものではないかと考えております。この点、十分に配慮しながら、慎重に進めるべきテーマではないかと考えております。

 以上でございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 やはり財政面、あと人材確保というところが大変だというふうな御意見を賜りました。

 明石市の泉市長のように、明石市のようにスムーズにできるところもあれば、なかなか難しい中核市、特別区もあるのではないかなというふうに思っていますから、これからまたいろいろと御意見を賜りながら、しっかりと進めていくべきところは進めていきながら考えていきたいなというふうに思っております。

 もう時間が参りましたので、参考人の皆様、質問できなかった皆様方には大変失礼いたしましたけれども、児童虐待の問題について、国民一人一人がしっかりと考えられるような体制を我々も頑張っていきたいというふうに思いますし、私もしっかりと最後まで頑張っていくことをお約束させていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

冨岡委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 立憲民主党・無所属フォーラムの阿部知子です。

 本日は、五人の参考人の皆様、どの御意見も本当に貴重だと思いながら拝聴しておりました。

 国会では、平成二十八年に児童福祉法の改正、これは大変大きな改正であったと思いますが、一に、子どもの権利条約にのっとって子供の意見表明権を法案の中にうたったということ、そして、そのもとに各市町村の支援拠点というものを明確に充実させるという方向性を打ち出したこと、さらには、この支援拠点とのかかわりもあろうかと思いますが、家庭的養育ということに第一義的な重きを置いたことなどがあると思います。

 そして、そうした中で、同時に、先ほどの御質問にありました、中核市やあるいは特別区においても児童相談所を積極的に設置していこうという方向性も打ち出されて、当時厚生労働大臣であった塩崎大臣の御答弁の中には、平成二十八年から五年以内に中核市や特別区において設置がされるようにということを御答弁でありました。

 そうしたさなかに実は結愛ちゃんの事件、心愛ちゃんの事件が起こって、平成二十八年の改正とは何であったのか、それを実際に動かしていくために何が欠けておるのかということで、私どもも二回にわたって野党案というものを出させていただいて、きょうの審議の場を迎えております。

 私は、まず第一、特に、今申し上げた中核市や特別区における児童相談所の設置というものは、緊急性ということをもっては、一時保護という、重要な子供の生命や身体への危機をどう守るかという問題と深く連携しておると思いますし、もう一方でいえば、面としての支援、自治体と連動した支援ということが今後の中心になろうという意味で、二つの意味があると思っております。

 そこで、泉市長と西尾参考人にお伺いをいたしますが、私は、先ほど泉市長が述べられた中で、目からうろこのことがございました。実は、一時保護にいる子供たちが地域の学校に通える。子供にとって、家庭も一つの居場所ですが、学校というのは大変重要な居場所であります。それが、中核市に児相があれば、そして一時保護所があれば、その子の地域の生活、すなわち大きな活動である学校生活が担保をされる、このことは今までほとんど述べられたことがなかったかと思います。

 一時保護の今後のあり方ですね。やはり今の一時保護は、とにかく引き剥がせばよいというところから始まっておりますが、そこにおける子供の再生に向けた、子供の次のステップに向けた一歩と私は思いますので、この点について泉市長の御意見と、もう一つ、西尾参考人には、先ほどの御質疑の中でもありましたが、特別区は極めて前向きに児童相談所を持ってくださる。世田谷区は二〇二〇年に開設の準備がもう進んでおりますが、その一方で、現状、東京都下の一時保護所は常に満杯状態であります。特別区に児相ができることによって、一時保護機能が更に拡充することによって都内の子供たちの本来的な児童福祉が私は大幅に推進されるのではないかと思いますが、この点については西尾参考人にお願いいたします。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 端的に言って、中核市が児童相談所をつくることは可能です。

 もっとも、課題はあります。お金と人です。ですから、国の方からしっかり財政的支援をお願いしたい。

 そして、もう一つ、人です。いない、いないと言うのではなくて、育てるということだと思います。いきなり来年には育たなくても、五年、十年計画ででもしっかりやっていくのが今だと思っております。

 そして、何よりも大事なのは、決めることだと思います。

 実は、十五年前、中核市に児童相談所の開設の法改正がなされた二〇〇四年、平成十六年に、私は、皆さんと同じ、そちらの席に座っておりました。そのときに必置化をしていれば。

 あれから十五年たっております。この十五年間で、ことしの四月の明石市を含めて、五十八分の三しかできていません。子供の命を救うことは、してもしなくてもいいことではなく、すべきことだと思います。しっかりとやると決めて、そしてやれるようにお金をつける、やれるように人を育てる、そうすると、五年、十年後には同じ議論をしなくて済むのではないかと強く思っておるところでございます。

 もう一点の一時保護所でございますが、私も、明石市で児童相談所をつくるに際して、全国十三カ所の児童相談所、一時保護所を見て回ってまいりました。率直に言って、残念ながら、一時保護所そのものが児童虐待の現場ではなかろうかと思ったのが正直な思いであります。こんなところで子供を預かっていていいわけがないと思いました。

 そういった思いもあって、一時保護所についても、施設の改善は不可避であります。また、人員の強化も必要であります。

 この中で特に重要なことは、今おっしゃっていただきましたが、この児童虐待のテーマは、市区町村こそしっかり責任を果たすテーマだということであります。もちろん、都道府県が重要であることは言をまちません。警察の力も必要です、都道府県の応援ももちろん必要ですが、やはり子供たちに近い行政は市区町村です。妊娠したときからかかわります。早い段階から子供のリスクに気づくことができます。地域と一緒に子供たちを見守ることもできます。より早く気づくことができる、そして地域と連携できる、その結果、里親もふやすことができます。

 そういった観点から、市区町村がこの児童虐待というテーマに対してしっかり責任を果たしていく、そういったことをまさにこの国会の場においてお決めいただき、それができないという言いわけを繰り返すのはもうやめて、それをするために何をすべきかという議論をぜひお願いしたいと思っております。

 以上でございます。

西尾参考人 一時保護枠の拡大と、特別区の児相設置についてでございました。

 確かに、私ども、二百十三の定員を都内で持っておりますけれども、一時保護所の定員は逼迫をしております。単純に考えれば、特別区の児童相談所が一つ一つ一時保護所をつくっていただき、拡大すれば東京都内の総体としての枠は拡大する。この数だけ見れば、非常にありがたいことだと思っております。

 ただ、一つ懸念されるのは、一時保護の職員につきましても、人材育成ということが重要でございます。

 先ほど私は、一時保護所の難しさ、日々集団構成が変化するところがあるという点を申し上げましたが、これには一時保護所職員の人材育成も不可欠であります。

 それから、やはり、一時保護所だけではなくて、児童相談所の業務は、その後の施設入所ですとかいろいろな一連の業務がございます。特別区は今、二十二区が表明しておりますけれども、これが一遍に一時保護所をつくるということでは、広域的な調整はどうするのか、あとは、何といっても、また戻りますけれども、人材育成はどうするのかというのがどうしても私は払拭ができません。

 以上でございます。

阿部委員 私は、今の泉市長の御発言の、やはり子供たちが暮らす場、御家庭のある場、すなわち市町村ということがこれからの子供たちの健やかな成長のベースである、そこをしっかりと確認していかないと、そしてまた、児童虐待の後もまた暮らしていく場にどうつなげていくかという視点がないと、今までの児童相談所行政が一番そこに困難を抱えていたように私は思いますので、そのことを思い浮かべながら御意見を伺いましたし、また、東京都の中央児相に当たるセンターにあっては、これから特別区が各児童相談所をつくられるときに、ぜひセンターとしての機能、助言も含めてお願いをしたい。多くの知見が東京都のセンターにはあると先回視察をさせていただいて思ったところでありますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 そして、何人の方からか御意見が出ておりましたが、実は、子ども家庭支援拠点を市町村の窓口に置くことも、あるいは児相を中核市や特別区でふやしていくことにおいても、職員の研修というものがやはり本当に重要であるということの御指摘がありました。

 宮島参考人からいただきました御発言のペーパー以外に、昨日いただいたものを読ませていただきまして、宮島参考人の御意見の中には、平成二十八年の子ども家庭支援拠点を置くということは是としながら、果たして今後の職員配置によってはそのレベルが下がってしまうこともあろうかという御懸念の点も述べられておりましたので、どんな育成を伴えばよいのか、あるいは市町村で人を配置するとはどういうことなのか、そのことも含めてお話をいただきたいと思いますし、できれば萬屋参考人にも、実際に児相で長年所長としてやってこられて、人材育成のあり方、ここをどう国が支援していけばよいのかをお願いしたいと思います。

宮島参考人 ありがとうございます。

 市町村子ども家庭支援拠点、この制度ができたときに書いたものを阿部先生が読んでくださったんだというふうに気づきました。心から感謝を申し上げます。

 これは、国の通知で細かく仕事の進め方が述べられております。非常に内容の濃い、またしっかりした内容が記されているというふうに感じております。

 一方で、そこに配置しなければならない職員の配置というものが非常にその時点で少ないということに私は驚きました。かなりの大きな市でも常勤一名、非常勤の二名、これで何とか、いいよというような内容ですね。また、従来から配置されている、市の福祉事務所に置かれている家庭児童相談員さんというのがございますが、御活躍いただいていますけれども、その方と兼務でもいいよというような内容です。

 やはり、センターという看板があって、場所があっても、そこにきちんと仕事のできるスタッフがいなければ実際は回らないということが起こると思います。

 多くの市ではかなり厚い体制を実際つくっておりますけれども、しかし、一律に示すということになると、国通知で示された配置しか書き込めなかったのではないかと、これは私の推察ですけれども、思いました。それを見て、かえってこれを理由に職員を減らされるようなことがあってはならない、そこが懸念されるというふうに考えた上の記述でございます。

 ぜひとも市町村子ども家庭総合支援拠点は必置を、いずれは必要だと思いますけれども、現時点でそれをすぐ必置ということになりますと、形式だけを整えて、十分な力量のない職員、そのような形で構成されてしまうおそれはないかというようなことも考えております。本当に、地域で子供を守る体制をどうしても充実させるべきだという点については賛同ですが、書き込むことがこの点についてかえってマイナスにならないのか、このあたりも十分御検討いただきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

萬屋参考人 私は、児童相談所に二十七年間いました。そのうち、児童福祉司として二十四年間、最後の三年間、児童相談所のセンター長をしましたけれども、児童相談所の福祉司の業務というのは大変にハードです。自分で判断して自分で実行していくというのを、最初の通報から施設に入れるのを決める、それから、施設にいる間も児童相談所の責任なんです。退所してからも児童相談所の責任。退所後に何かあれば、その退所したときの判断が正しかったかどうかというのを問われます。大変、公務員の職場の中では、職員の決定が大きく子供の運命を左右するぐらいの力があります。

 その中で、四月一日に大学を卒業してきたばかりの職員が、いろいろな通知がいっぱい、マニュアルも国から、県から出ていますけれども、それを読み込む間もなく児童虐待の通報に動かなければならないのが現状です。これは余りにもやはりひど過ぎます。

 最初の一年、二年というのはやはり見習、ほかの専門職、専門性の高い職種にはそれがあるはずです。例えば、家庭裁判所の調査官なんかは、二年間はそういう育成の期間があるというふうに聞いています。児童相談所にもぜひそういうのが欲しいと思います。そうでないと、せっかく志を持って児童相談所に配置された職員も、疲弊してしまって、年度末にはほかに希望を出すとか、あるいは子育てでやめてしまうというのが続出しています。

 やはりその辺のことについて、専門職の配置と同時に、その育成について十分な政策的なものが必要というふうに考えます。

 以上です。

阿部委員 ありがとうございます。

 明石に西日本で研修センターが拠点としてできると。大変に前向きで、うれしい限りです。

 あわせて、最後に実は花島参考人にも御質疑しようと思いましたが、野党案のアドボケート制度、特に子供が一時保護などの解除に当たって意見を述べることが必要とされるというところを評価していただきまして、ありがとうございます。質問できず申しわけありません。

 終わらせていただきます。

冨岡委員長 次に、大西健介君。

大西(健)委員 国民民主党の大西健介でございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 きょうは、本当に、参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。

 まず、中核市における児相の必置について、泉市長にお伺いをしたいと思うんです。

 厚労省のアンケートによると、中核市の七割は、今後、児相の新設を検討していないというふうに回答していて、その理由として、財政面、人事育成面での負担が大きいと。それから、次の理由として挙げているのが、国や県の動向を注視している、こういう理由を言っておられます。

 これは裏返して言えば、先ほど市長が言われたとおり、まず決めること、国が決めればやるんだということだと思いますし、それから、やはり財政面、人事育成面での支援が必要だということだと思います。市長から、人と金は要るんだというお話がありました。

 この点について、先ほど宮島参考人からも、財政上の問題が中核市では一番大きいんじゃないかという話がありました。私の方も金沢市とか横須賀市でどれぐらいかかっているのかなと見ると、運営費に十二億から十三億かかっている。国や県からの支援が大体四億円ぐらいあるといっても、差し引くと八億円以上かかるということなので、やはり金の問題が一番大きいのかなというふうに思うんです。

 先ほど宮島参考人のお話の中で、それだけの金があったら別のところに回せるじゃないかという反対の声が市の中でもやはりあってそれが難しいんじゃないかという話がありましたけれども、泉市長にお伺いをしたいのは、明石市では、まさに新たな財政負担が生じることに対して反対の声が当然あったと私は思うんですけれども、どのような反対の声があったのか、あるいはそれを乗り越えるために市長はどのようなことをされたのか、この点について御意見をいただければと思います。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 率直なところ、明石は、児童虐待防止のテーマだけじゃなくて、御案内のとおり、子供の医療費の無償化や第二子以降の保育所の無償化、公共施設無償化などなど、子供の予算を二倍にふやしておりますので、そういった中でまさに児童相談所のテーマも位置づけた。わかりやすく言ったら、町の予算をシフトして子供に二倍のお金をつけたということをやりました。

 もちろん市長就任当初はさまざまな議論がありましたが、いろいろな議論をする中で、やはり子供の命を救う以上に大事なことがあるのだろうか、子供の命を本気で守っていくというような話をする中で、明石の市議会では全会一致でまさに児童相談所の設置に賛同をいただき、加えてお伝えしますが、明石は、国基準以上の倍の職員を市民の税金で雇う決断をし、その予算についても全会一致で御賛同をいただいている。わかりやすく言うと、子供の命をまさに見殺しにするような町ではないんだ、本気で子供を守る町にするんだ、こういった決意をまさに市民とともにやってきたという認識です。

 ポイントは、腹をくくることだと思います。そして、それを決めるのはまさに国会だと思います。私もまさに多くの市長と議論をしますが、本音のところは、国が決めてくれたらやるという市長はたくさんおられます。ただ、実際上、議会調整とかいろいろな関係者の調整で手間取っているので、国がやれといった瞬間に、急にみんな手のひらを返して必死に頑張ると思いますので、お決めいただくことだと私は思っております。

大西(健)委員 先ほども、決めることが大切という話がありましたし、十数年前に決めていればこういうことがなかったんじゃないかという話もありました。

 もう一つは、先ほど市長のお話の中では、そういう子供の予算を倍増することによって、転入者もふえている、子供の数もふえている、そして町も活性化しているんだと。実際そういう効果も出てきているということをまた市民の皆さんに実感していただくことも重要なのではないかなというふうに思います。

 次に、児相の体制強化について伺いたいんですけれども、野田の事件で栗原心愛さんを担当していた柏の児童相談所、管轄区域の人口が約百三十万人ということなんですけれども、この網の目の粗さというのは、やはり私はちょっと問題じゃないかなと思っております。

 というのは、ちなみにですけれども、県や政令市には児相が必置されていますけれども、今、人口減少で、人口百万人を割っている県というのが全国に十県あるんです。だから、百三十万人というのはやはり多過ぎると思うんです。

 例えば、人口五十万に一つ以上といった設置基準、こういう人口基準みたいなものを私は決めるべきじゃないかというふうに思うんですけれども、この点について、宮島参考人と萬屋参考人の御意見をいただきたいと思います。

宮島参考人 御質問ありがとうございます。

 人口百三十万人という規模が柏児相ではあるというふうに先ほどお聞きしました。

 私のゼミの卒業生でも、現職として児童相談所長を務めている者、あるいはそれに準ずる管理者にいる者がございます。その方々に聞きますと、職員の名前と顔もすぐには覚えられないような状況があるというふうに聞いております。

 また、卒業生や在学生に聞きますと、異動した者もございまして、この春、卒業して今まで五十万人を切るところの児童相談所に勤めていたけれども、百万を超えるところに異動した、全く状況が違うというふうに話していました。逆に、百万を超えたところから七十万人ぐらいの管轄のところに異動した所長も後輩にいますけれども、本当に状況が違うというふうに伺っています。

 やはり、進行管理をするというためには、適正な規模の組織とするということが不可欠だというふうに思います。

 ただ、今、野党案では五十万人とたしか記されていると思いますけれども、そのことについては幾つかの心配を持ちます。

 以前、この五十万人という数字は、児童相談所運営指針に記されていたことがございます。それが、地方分権のあり方等によってむしろ削除されました。しかし、現行で百万を超えるところが非常にたくさんあるという状況の中で、これがいきなり五十万人になったときに果たしてどのような混乱が生じるのかということを心配します。

 また、先ほど、百万を下回る都道府県も多くなっているということですので、人口三十万程度の児童相談所もかなりの数ございます。逆に、そういったところが、五十万人ということが示されることによって、統合してもいいのではないかというような動きになることも懸念されます。

 やはり進行管理がきちんとできる体制がどうしても必要だと思いますが、現時点で五十万人ということが示されることについては、いろいろ検討を十分する必要があるのではないかと考えます。

 以上でございます。

萬屋参考人 児童相談所は、現在は虐待対応で大変注目されていますけれども、そのほかの仕事もたくさんしているんです。障害の子供たちの問題、それから健全育成、不登校の子供たちの相談にも乗っています。そして、非行の相談にも乗っています。それらを全てやっていくということであれば、やはり百三十万とかという人口は大変多いというふうに思いますし、愛知県内ですと、名古屋市を除いて七百万ぐらいの人口で十カ所ありますので、ほぼほぼ、満たしてはいないですけれども、やれていると思います。

 ただ、先ほどありましたけれども、面積も重要だと考えるんですね。やはり都市の中であれば、車で一時間以内で管内に行けるようなところじゃないと大変難しいです。一時保護といっても遠くまで行かなくちゃいけない、そして夜の出番もありますので、そういうことを考えると、人口だけではなくて、やはり面積、管内にどれぐらいの時間で行けるかということも考慮に入れなければいけないんじゃないかというふうに思います。

 以上です。

大西(健)委員 先ほどの御意見の中では、宮島参考人から進行管理という話がありましたけれども、先日、この委員会の質疑で、我が党の岡本委員が、関東のある市の要保護児童対策地域協議会の実例を取り上げて質問されていたんです。そのとき、大体、一回二時間程度の会議の中で新規案件というのが、月によって変動はあるけれども、五十件から百件ぐらいある、それから、通年で五百件ぐらいの継続案件というのを抱えていて、それを全部毎回やるわけじゃなくて、その中から動きがあったものをやるということなんですけれども、その時間でそれだけの数の進行管理をするということは、一件一件に割ける時間というのは本当にわずかであって、要は、精査をする時間というのがないんじゃないかと。これは、何か我々がイメージしていたものとも大分かけ離れているなというふうに私は思ったんです。

 先ほども、常に変化している、状況を継続して把握していくことが必要であるし、そして、宮島参考人からも、多くの事件というのは進行管理の失敗なんだという話がありました。例えば、野田の事件でも、糸満市から野田市にDVの話というのはちゃんと引き継がれていたんですけれども、要対協の場では共有できなかったということで、児相だとか警察には共有されていなかったということなんです。

 やはり、要対協をもっとちゃんとしていくというのが私は一つのポイントだというふうに思うんです。多数の関係機関が円滑な連携協力ができるように要対協をもっと充実させていく、これが重要だというふうに思いますけれども、この点について、泉参考人と萬屋参考人から御意見をいただきたいというふうに思います。

泉参考人 改めて御質問ありがとうございます。まさにおっしゃるとおりだと思います。

 子供のテーマについては、例えば都道府県だけでも不十分、市町村だけでも不十分、警察だけでも不十分、みんなが力を合わせる必要があると思います。

 とりわけ重要なのは地域だと私は思っております。地域と一緒になって子供を継続して見守り、情報を早期に把握する、そしてそのテーマについてみんなで情報を共有化した上で対応していく。もちろんプライバシーの問題はありますが、それをしっかりした上で対応していく。そういう意味では、いわゆる要対協の充実化は全く重要なことであり、賛成でございます。

 なお、一点だけ。人口規模で児相をつくるという御意見がございましたが、大事なのは人口規模だけではなく、面積も大事。さらに一つは、地域と連携できるような児相をつくることだと私は思っております。

萬屋参考人 要対協というのは、多分、各児童相談所でそれぞれの市とやっていると思うんですけれども、やはり物すごい数が上がってきますので、一つの案件について十分な時間をかけるというのは大変難しいです。

 その上で、親の同意を得ずに保護した場合には、二カ月のあれがあるんですね。二カ月は児童相談所は一時保護できるけれども、二カ月以上になるのであれば、現在ですと、家庭裁判所にたしか二カ月以上超えるという申立てをしなくちゃいけないと思うんですが、その判断を早目にやっていかないと書類が整わないという事情があります。私は、千葉県の柏市の事件についても、その二カ月の期限というのが一つの壁になったんじゃないかなというふうに思っています。

 やはり一つずつの件について時間をかけていくというのは大変難しいです。二時間、一日のうちにとられると、その間にもまた虐待通報がありますので、それでまた途中で抜けていくというような状況でした。

大西(健)委員 残り時間はわずかしかありませんけれども、最後に、警察との全件共有の話がよく話題に上りますけれども、今、八府県で行われていて、私の地元の愛知県でも昨年の四月から協定が結ばれて実施に移っています。

 萬屋参考人は、刈谷の児相のセンター長も務められて、現在も子どもの虐待防止ネットワーク・あいちの理事長をされています。愛知で全件共有が始まっていますけれども、まだ日が浅いですけれども、これはうまく機能していると思うか、また、実際に耳にしている課題等があればお話をいただければというふうに思います。

萬屋参考人 警察との情報共有というのは一つの方法だというふうに思いますが、情報共有をする前から、私が相談所のときには、虐待防止法ができて、警察官の援助を求めることができるという規定があると思いますので、たとえ情報共有というあれがないときでも警察との協力関係はスムースにいっていました。

 情報共有することで、やはり児童相談所が気がつかなかった事例を警察が指摘してくるというのはあると思います。ただ単に情報共有だけでは、その中でどれが本当に危ないものかどうかという検討が必要なんだというふうに思います。

大西(健)委員 時間になりましたので終わりますけれども、萬屋さんといえば、愛知方式の新生児里親委託、特別養子縁組を前提にした新生児里親委託で大変有名です。先ほどもこれがなかなか広がらないという話がありましたけれども、私は、これは本当にすばらしい取組だと思いますので、これをぜひ全国に広めていきたい、我々もぜひ応援をしていきたいというふうに思っています。

 また、施設内での暴力、性暴力の問題、これはこれからの課題だというふうに思いますので、しっかりこの委員会でも審議をしていきたいというふうに思います。

 きょうは、ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、鰐淵洋子君。

鰐淵委員 公明党の鰐淵洋子でございます。

 参考人の皆様、きょうは、本当にお忙しい中、また足元の悪い中、国会までお越しいただきまして、大変にありがとうございました。

 これまでそれぞれのお立場でこの問題に対しましてお取り組みいただき、また尽力してこられたことに、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうございます。

 今回、現場で取り組んでくださっている皆様の思いも受けましてしっかりと議論させていただき、この課題を大きく前に進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 それでは、具体的に、早速質問に入らせていただきたいと思いますが、まず、体罰禁止規定についてお伺いをしていきたいと思います。

 子供たちの心身を傷つける虐待は、どんな理由があっても絶対に許してはならないですし、あってはならないことだと思っております。

 このたびの改正案におきまして、体罰禁止規定が創設をされております。

 まず、特に西尾参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、国に先駆けまして東京都におきまして保護者による体罰を禁止する条例が制定をされまして、四月一日から施行されております。まだ施行されてわずかではありますが、このことにつきまして、関係者の皆様、都民の皆様からの反応、御意見等がありましたら、そのことも含め、ちょっとお伺いしたいと思いますけれども。

 それとあわせまして、宮島参考人、また萬屋参考人、あわせて西尾参考人にもお伺いしたいと思いますが、これから、しつけに体罰は必要という誤った認識を社会全体から一掃する、そういったことをしっかりと取り組んでいかなければいけないと思っております。具体的な取組等につきまして、お考えがありましたら、それぞれお伺いをしたいと思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 東京都では、四月一日から虐待防止条例を施行し、現場の職員が、条例制定に当たって、家庭訪問等で、新たな条例が東京都でできた、体罰は子供の品位を傷つける罰であり、与えてはいけないということになりましたということで、体罰によらない子育ての推進を行っているところでございます。

 この体罰の禁止につきましては、決めていただく前に児童福祉審議会で議論していただき、さらにパブリックコメントを二回にわたって行っております。その中で、やはり体罰がエスカレートして虐待に至る、これを阻止しなければいけないという声が上がりまして、条例の内容に盛り込んだわけでございます。

 今後とも、児童相談所といたしましても、今パンフレット、リーフレット等を配布しているところでございますけれども、児童相談所としてはもとより、関係機関にもしっかりとこの条例を普及啓発し、さらに、一番大切なのは、一般都民にどうやってこれを御理解していただけるか、現場の一人一人の福祉司を始め関係機関の皆様方と一緒に普及啓発に努めていきたいと考えております。

 以上でございます。

宮島参考人 御質問ありがとうございます。

 二つのことを申し上げたいと思います。

 親権がどういうものかということの認識を十分広げていかなければ、この議論は間違った方向に行くだろうというふうに考えています。

 親権といいますと権利というように誤解されますが、実際は、子供への責任、義務、これを中身にするものであろうと思います。対外的には、まず私がこの子供の責任を負いますという権利性があるものですけれども、これは子供に対する権利ではない、子供に対しては責任と義務なのだ、このことの理解を十分進めるということが必要だと思います。

 その上で、親権には懲戒をするというような規定がありますけれども、これは、体罰等によって子供を懲らしめるということではないんだ、子供に対して責任を果たすことなんだ、それは暴力を用いる必要はないんだというこの理解を進めるということが大事だと思います。

 もう一点は、先ほど西尾参考人もおっしゃいましたけれども、体罰はエスカレートするものであるということの認識を広げる必要があると思います。

 子育てに困る、本当に子供が騒いでしまう、あるいは子供に発達の課題がある、そういった場合に、やむにやまれず手が出てしまうというようなことがあります。一見、体罰でやるとそこは抑えられますので効果があるように見えてしまう、それがエスカレートしていくという構造があると思います。

 このエスカレートするものであるということの認識に基づいて、そういった困難を抱える子育ての方に支援を届けていく、具体的にしていくということが必要であろうと考えています。

 以上でございます。

萬屋参考人 法律で体罰禁止をうたうことは大変大事だというふうに思います。やはり実際に、どれだけ広まっていくかどうかは別としても、法律に書くことで、私たちの意識それから親の意識も変わってきます。

 ただ、体罰は、イコール暴力ということを考えると、保護者だけではなくて学校それからスポーツ界においても大変問題だというふうに思います。その上で、具体的に法律を決めた後、じゃ、実際にどうするか、それにかわるコミュニケーションの手段は何かということをやはり伝えていく必要があるんじゃないかと思います。これは市町村の役割だというふうに思います。

 切れ目ない支援というのがもう言われて久しいですけれども、その切れ目ない支援の中の一つとして、体罰を使わないコミュニケーションの方法、これは子育てだけではなくて夫婦間でも一緒だと思います。そういうのを、親になったパパママ教室とか、今現在、母子手帳を出しているその時分から親たちに伝えていけば、十年たったらもう少し優しい親子関係、あるいは暴力を使わないコミュニケーションができるんじゃないかというふうに思います。

鰐淵委員 それぞれの貴重な御意見、大変にありがとうございました。

 次の質問に入らせていただきたいと思いますが、児童相談所が担う介入と支援の機能分化についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 児童相談所の機能分化につきましては、さまざまな御意見があると承知をしておりますが、例えば、具体的な考え方といたしまして、介入には専門性また公益性が求められるため都道府県の児相が担い、家庭や子供たちに寄り添っていく支援については市区町村が担う、こういった御意見がございます。これに対するそれぞれの御見解をお伺いしたいと思いますが、宮島参考人、萬屋参考人の御見解をお伺いしたいと思います。

 この質問にあわせて、泉参考人と西尾参考人にもお伺いしたいと思いますが、都道府県と中核市また特別区の役割分担にもかかわってくることになると思いますが、その観点も含めて、泉参考人と西尾参考人にもお伺いをしたいと思います。

宮島参考人 ありがとうございます。

 介入と支援を分けることが必要であるということが、これは新聞報道等でもよく取り上げられます。昨年度、厚労省に市町村と児童相談所の体制強化に関するワーキンググループというのがございまして、そこでも議論がなされました。私もメンバーに加えていただきまして、議論をしたところです。

 ただ、ここで大事なこととして、介入とはどういうものかということの概念規定が非常に曖昧になっているというふうに感じております。

 介入という言葉は、どうしても秩序維持的な警察のかかわりをイメージされます。もちろん、警察の働きはとても重要で、この事案についてどうして警察に援助要請をしなかったのかと思われる事案は多々ございます。

 しかし、福祉分野でもともと介入という言葉はどのような意味で使われているか。これは、当事者の困難や不幸に対して関心を払って、そして働きかける、かかわり続けるというのが、福祉領域での介入の定義の捉え方です。このあたりを忘れてはならない。

 私は、今後、最初にかかわった人と治療的にかかわる人の担当をかえるということは必要だと思いますけれども、一つ一つの事案を、一貫した、きちんとした見方で、方針で当たるということがそこで抜け落ちてしまうととんでもないことになるというふうに思います。

 千葉の野田の事件を例に取り上げさせていただきますと、学校から連絡があってすぐに一時保護し、一時保護は二カ月に及んでいます。これは、軽度の児童虐待事案ではないという認識がそこにあったからだと思います。

 しかし、これを引き取らせたこと自体に、最近の報道で性虐の可能性があったということで、どうだったのかという問題は残りますけれども、二年目ですね、一年近くただ見守りをしていただけ、それで実際亡くなってしまったということです。重度な、困難な事例という見方がむしろ二年目に抜け落ちてしまって、軽度な事案だ、こういう認識を当時の児童相談所長の記者会見等でも語られていました。

 やはり、一貫した対応ということが一方で必要であるというふうに思います。その上で、個々の事案に応じた丁寧な、必要に応じた、ニーズに応じたかかわり、この支援を、きちんと児童相談所も当然それを担うべきだと思いますし、何度もお話が出ておりますけれども、基礎自治体が担っていくということが大事なことであろうと考えてございます。

 以上でございます。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 支援と介入につきましては、明石市の場合は、ある意味介入に特化した課を設けましたが、実務としてはやはりそれはつながっておりますので、単純に分けられるものではございません。

 大事なのは、支援はやはり市町村が向いているというのは、もうまさに皆さんおっしゃるとおりでございまして、早い段階から継続して地域も含めて見守っていく、これは市町村の得意分野だと思います。介入については、警察のお力や、また司法手続も要りますので、常勤弁護士などの力もかりながらしっかりやっていくということだと思いますが、介入と支援を単純に分離できるほど簡単ではないから事は難しいと思っておりますので、そこの連携が重要だという認識でございます。

西尾参考人 今のお話にも通じると思いますけれども、私も、寄り添い支援、母子保健、子育て支援を活用した支援は、まさに区市町村の強みであると考えております。

 一方、児童相談所は法的対応を持ってございます。法的対応の特徴は親子分離でございます、狭義で考えれば。これは相談者が相談のニーズのない、そういった活動でございます。まさに保護者の意に反して活動しなければならない。そうすると、介入ということと寄り添い支援ということは、やはり分けて考えた方がいいと思います。

 私は、都道府県と区市町村が、役割分担のもと、しっかりとルールを決めながら連携を強化し、それぞれの機能を強化し、更に連携そのものも強化する、それが児童相談所、行政全体の対応力をアップするものと考えております。

 以上でございます。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 同じ質問を萬屋参考人にもお伺いしたかったんですが、よろしいでしょうか。

萬屋参考人 ちょっと安心していました。

 私は、介入と支援というのは、これは一貫した流れの中で行うべきだと思いますし、介入が起きる前までの支援というのは市町村の子育て支援あるいは保健センターの分野でできると思うんですけれども、児童相談所が一旦介入をした後の支援というのは、やはり児童相談所と一緒に、事案についてその都度その都度どういうことが起きているのかをちゃんと検討しつつやらなくちゃ、再びまた深刻な事態になりかねないというふうに思っています。

 大変難しい仕事だというふうに思いますし、児童相談所の中で介入と支援を分けると、支援の方に職員は行きたがります。今、里親支援担当をつくっているんですけれども、里親担当をやりたい人はたくさんいるんですけれども、介入のところに行くのはやはりつらいというのが職員の本音のところです。

鰐淵委員 ありがとうございました。

 時間も限られておりますので、最後、一問質問して終わりたいと思いますが、都と区の役割について、今、西尾参考人にも役割分担も含めてお伺いをいたしました。

 その上で、今後、都の児相が区に対して具体的にどのような支援ができるのか、また、国がどのように支援を補っていけばいいのか、最後、御意見をお伺いしたいと思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 現在、二十二区、児童相談所設置を表明している区の中で、三区が先行して来年度から児童相談所を設置するという方向でございます。

 東京都はこれまで、人材面それから施設整備面も含めて、児童相談所が確実にできるのか、確認作業等を協力してまいりました。また、現在、数多くの区からの職員をOJT研修のために受け入れております。また、いろいろ勉強会なども開いております。

 こういったことで、私ども東京都の児童相談所としてもできる限りのことを支援しておりますが、ただ、私どもも、実情を申し上げれば、虐待の件数が膨らむ中、進行管理もしっかりしなければならない、そういった中で、複数の区が児童相談所を設置するということで、どこまで支援できるのかというのが本当に、実務を預かる者としては心配なところがございます。

 ただ、できるだけのことは支援してまいりたいと思いますし、この人材育成のところは、国の皆様方にお力添えいただくとすれば、制度面ではございますけれども、先ほど萬屋参考人もおっしゃっていた、長期の研修期間が本当にとれればいいなと。ただ、これは一足飛びにはいかないなということで、今後の検討課題にしていただければと思います。

 以上でございます。

鰐淵委員 以上で終わります。大変にありがとうございました。

冨岡委員長 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、五人の参考人の皆さん、御出席いただきまして、貴重な御意見をいただきました。最初の陳述だけでなくて、皆さんのやりとりを聞いていて、一つ一つが大変参考になると思っております。そういう意味ではもっと時間が欲しいなと思っているところなんですけれども。

 ちょっと今の続きみたいになってしまうんですけれども、萬屋参考人と西尾参考人にまず伺いたいと思います。

 介入と支援の分離について、先ほど、萬屋参考人が少しお話しされたんですが、やはり児相の職員の視点から少し考えてみたいなと思うんです。

 事件があるたびに、児相が関与していたのにということが明らかになって、物すごく責任が問われるわけなんだけれども、しかし、現実は、ある程度の防弾をつけたりなどして、命の危険と闘いながら頑張っている職員の姿というものがありますし、本当に経験を積んで集団で取り組める体制というのをつくっていかなければならないということをいつも思っているわけなんです。

 親から見ると、児相が来たというのは、引き離される、そういう敵のような存在であって、だからこそ介入の仕事をなかなかやりたくないという意見も多いと思うんです。だけれども、だからこそ、どちらもうまく引き継いでいったりとか、どちらの経験も積んでいくとか、そうしたこともやはり必要なんじゃないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

萬屋参考人 介入と支援ということでいいますと、深刻な事態になった状況においては児童相談所がやはり保護するということを決断しなければならないというふうに思います。

 一時保護というのを、深刻な状況のときに介入して一時保護をするとなかなか帰すことができないんです。私は、早目に保護ということをしていました。まだ深刻な状況ではないうち、例えば、一回たたいて学校で通報があって顔にあざがついていた、こういう場合には、すぐ保護して、それから親を呼んで話合いをする。

 初期の状況では、親と話し合って、親に虐待をしない、暴力を振るわないことを約束させて帰すことができました。ただ、治療を必要とするほどの状況になってからの介入というのは大変難しいというふうに思っています。

 ですから、どの時点で一時保護を決断するのか、これは各児童相談所によって違いますけれども、虐待状況、暴力がそのおうちにあったら、早目に介入すべきだというふうに思っています。その方が後の支援につながるというふうに思っています。

 以上です。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 支援と介入のレベルについては、二つあると思います。一つは児童相談所内でこの機能分担をすること、もう一つは都道府県と区市町村の役割分担です。

 都道府県と区市町村の役割分担は先ほど申し上げたとおりです。

 児童相談所内で考えますと、東京都では、今、虐待対策班というのを所内につくっております。まさに虐待の初期対応だけを専門に行う班でございまして、十人弱の児童福祉司、児童心理司で構成しております。

 これは、効率面からいったら非常に効果がございます。ただ、先ほどどなたかおっしゃっていましたけれども、なかなか、虐待の初期対応ばかりやっていると、児童相談所のスキルとしてどうなのかという、そういった面もございます。

 例えば、私どもとしては、一年、二年、班で対応した後は、地域担当という、一般の児童福祉司の業務にローテーションをするとか、そういった工夫をしながらスキルアップを考えております。支援と介入の役割分担については、今のところ効果を上げております。ただ、これは、ベストは何なのか常に考え続けていかなければいけないテーマだと思っております。

 以上でございます。

高橋(千)委員 ありがとうございます。引き続き考えていきたいなと思っておりますが、またほかのことも聞きたいものですから、次に行きたいと思います。

 花島参考人に伺います。

 仙台市のモデル事業にかかわった経験から、アドボケートの重要性についてイメージができるようにお話ししてくださったと思います。ありがとうございます。子どもの権利条約に照らしても意見表明権の尊重は不可欠と思うんですけれども、同時に、子供たちの本当の気持ちを引き出す、あるいは気持ちに気づくというんでしょうか、そのことは非常に困難なことでもあるかと思うんです。

 例えば、トラウマだとか親との支配関係ですとか、あるいは一時保護された状態のままでの環境でなかなか思うように物が言えないですとか、いろいろなことがあるのではないかなと思いますが、経験を踏まえて御意見をいただければと思います。

花島参考人 ありがとうございます。

 どういう子供の像を想定するかによっていろいろあるとは思うんですけれども、私が接してきた子供たちから受ける印象は、大人がちゃんと向き合って、話を聞いてくれる人もいるんだということに驚いて、そこからぽつりぽつりと話してくれるという子供が圧倒的に多いと思います。

 どこかで声を上げても、それが受けとめられない結果、もう大人は助けてくれないものなんだという気持ちのまま、一時保護所に来た後も同じ気持ちだったという子はたくさんいますし、そこを、やはりチームで、信頼できる大人がいるんだということをチームで示すことが出発点になるんじゃないかなというふうに思います。

 そういう意味では、誰が聞きに行ってもいいんですけれども、とにかく裏切らない、遮らないで聞いてくれて、受けとめて一緒に考えてくれる大人たちがいるんだということをPRして事に当たるということが非常に大切じゃないかなというふうに思っております。

高橋(千)委員 ありがとうございます。

 なるほどなと思って今聞いていました。先日、一時保護所を見せていただいたときに、やはり子供の顔色が非常に暗くて、多分、その子供から見ると、我々視察に行った議員なんというのは、どこのどいつで、自分のことをわかってくれるはずもないというか、そんなふうに思って見ているだろうなというのがすごく自分の中にあって、まずは信頼できる大人がいるということが最初の出発点だというのはとても大事な指摘だったかなと思っております。

 それで、もう一回花島参考人と、萬屋参考人に伺いたいと思うんですけれども、先ほど施設内の性トラブルの問題の指摘がございました。厚労省としては初めての調査ですので、これを受けて、実際にどういう子供たちがそういう事件を起こしているのか、事件というほどのものでもないのも含まれておるんですけれども、そこから対策を議論していくということで、丁寧にやっていると思うんですけれども。

 ただ、その中に、やはり親子の関係というのが反映されているんじゃないか。例えば、悪いことだと思わなかった、でも、それは両親のDVを見てきているからとか、そういうので当たり前にやってしまっているとか、いろいろなことが見えてくるのではないかと思うんですけれども、その点で、今起こっているいわゆる子供たち同士の暴力、それが、やはりその背景に親子の関係というのもあるんじゃないかと思うんですが、御意見を伺いたいと思います。

花島参考人 ありがとうございます。

 私も、環境の中で身につけてきてしまった常識というものが子供にそういう行動をさせているんだという理解が非常に大事だと思います。そういう意味で、違った常識に触れるチャンスということなんだと思います。

 ただ、施設内の虐待ということでいうと、同じような経験をしている子供たちが、複数、すごく密度の高い空間で暮らしているということですので、やはり大人の目が届かなければ、その当たり前の感覚で不適切な行動になるということが起きるのはある意味当然のことです。

 もう一つ指摘したいのは、施設内の虐待で、乳児院の問題にまでさかのぼる必要があるというふうに思っています。声を上げられない、言葉が通じないゼロ歳児、一歳児の時期からどういうふうに権利を保障するのか、あるいは言葉が使えない子供の意見表明というものをどういうふうに大人が代弁していくのかということも、セットで考えていかないといけない。

 施設内虐待の問題は、そういう根深さが非常にあるというふうに思っております。

萬屋参考人 私は、退職後に、愛知県内の三つの養護施設にかかわっています。その中で、施設内の暴力、性暴力をなくするための取組をしています。

 確かに、家庭環境はあります。けれども、実際に、性暴力、暴力の加害者、被害者になっている子供たちは、乳児院から養護施設に来て、引取りの見通しもないままいる子供たちです。その中で、加害者の子供、思春期以降の中学生、高校生が加害者になることが多いんですけれども、その加害者も、かつては被害児だったということが往々に見られます。これは、児童福祉施設の職員なら、繰り返されている、それから、児童養護施設のあしき伝統、風土だとまで言われています。多いのは、男の子同士の性器なめとかというような現象です。

 これは本当に痛ましいことですけれども、虐待から保護してきた子供たちですから、施設の中が安心、安全でなければ保護そのものがどうなのかということになります。保護してきた子供たちを私は加害者にも被害者にもしてはならないと思いますし、何かあったら言ってきてくださいと言っても、ほとんどの子供たちは言わないです。加害をしていても、被害に遭っていても、言わない。被害に遭っていて、大人に変に言いつけるともっとひどい目に遭うということを経験的に知っています。

 ですから、私が入っている養護施設では、毎月子供たちから聞き取りをしています。暴力をしていないか、されていないか、見ていないか、聞いていないかということについて、毎月聞き取りをして、その聞き取りの内容に応じて、外部を入れた安全委員会というのを構成して、その中で審議して対応しているということです。とても丁寧な取組が必要です。

 以上です。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 お二人から、乳児院のときからというキーワードが出てまいりまして、非常に重要な指摘だなと思ってどんどん続けて聞いていきたくなるんですが、時間がとにかくないものですから、ちょっと残念に思っておりますが。

 先に泉参考人に伺いたいと思うんですけれども、先ほど、明石市の取組として、人に対しても、そして予算をつけるということでも本気で取り組んできた、そのことが、結局、子供に対して特化しているように見えるけれども、市全体を上昇させる大きな力になっているというお話があったと思います。非常にありがとうございました。

 その上できょう伺いたいのは、親に対する支援ということなんですけれども、虐待問題においても親をどう支援していくのかということがなかなか置き去りにされて、やはり本当は大事なことなんだろうと思うんですね。死亡事例でいうとゼロ歳児が多い、だけれども、虐待全体でいうとやはり小学生くらいの世代が一番多いわけなんです。そうすると、やはり親の貧困ですとか若年の夫婦ですとか孤立ということがさまざまあると思うんですけれども、親への支援についてどんなことができるかというのでぜひ御意見を伺いたいと思います。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりで、子供を支援するというのは、親も支援する面が強いと思います。親が心に余裕ができ、経済的にも余裕ができ、そして子供に向き合えると思います。

 明石市では、例えば、まさに妊娠届のときに一時間ほど時間をかけてお話を聞きます。そして、子供のリスク状況を確認し、保健師がマンツーマンになってフォローします。電話がかかってきて、夜に寝られません、大変ですと電話があれば、保健師が家庭訪問して、子供をおぶって、その間、お母さんに寝ていただくということもやっております。そうすることによって、虐待のリスクが減っていくと思います。

 大切なことは、早い段階からかかわり、親も含めて、たたく前にまず支援する、親に対して懲らしめるだけではだめで、そういう場面も必要かもしれませんが、できるだけ早く親の支援もやっていくということが重要だと思います。

 また、明石市では、離婚の際には、明石市がコーディネートをして、別れ離れになったお父さんとの面会交流を市の職員が立ち会ってやっておりますし、養育費についても立てかえを始めております。そうすると、親御さんが自分から払い出します。

 そういったこともやる中で、まさに親を総合的に支援することによって、子供のリスクを減らす考えでございます。

高橋(千)委員 ありがとうございました。

 後半の話もまた引き続き聞きたいなと思ったんですけれども、時間になりました。また次の機会にやりたいと思います。

 大変ありがとうございました。

冨岡委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 本日は、五名の参考人の皆様、本当にありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 他党の先生方も、介入と支援の機能分化についていろいろ御質問がありまして、このことは、私も自分の中で、なかなか正解がない非常に難しい問題であるなというふうに思っておるんですけれども、私の立ち位置としては、やはりできる限り分化していった方が、専門職の養成として長期的に見たらよいのではないかというふうに思っています。

 特に、役割葛藤みたいなものがあって、支援と介入でいうと支援の方が人気があるというお話も先ほどありましたが、支援の方でかかわられて専門職として知識、スキルを醸成された方が管理職になられて総合的にマネジメントしたときに、やはり価値観として支援に寄ってしまう、そういう形も人情としてはわからなくもない。一体的に進めるべき問題であるとはいえ、やはり現場の役割葛藤というのは非常に大きいものじゃないかなというふうに、問題意識として持っています。

 その中で、一体的にやりつつも、連携をして役割分担をいかに適切にするかという中で、この役割葛藤のようなところをどう解消していくかというところについてはぜひ皆さんの御意見をちょっとお聞きしたいなというふうに思っているんですけれども、全員の皆様から一言いただけたらと思います。

宮島参考人 ありがとうございます。

 支援と介入、先ほど私は、介入という意味の定義が曖昧だということを申し上げましたが、役割分担という言葉も誤解を生じるというところがあることを申し上げたいと思います。

 役割分担は、ここからここまでが私たち、ここからここまでが私たちということになりますと、押しつけ合いが生じます。また、その間に当事者が落ちる、子供たちが落ちるということが生じます。やはり役割分担についても、これは介入と支援もですけれども、のり代があり、きちんと一貫したものがあるという前提で役割を分けていくということはとても大事だと思います。

 先ほど泉参考人が総合的な支援が必要だというふうにおっしゃいましたけれども、総合的な支援、あるいは地域包括支援という言葉がございます。高齢者分野、障害者分野では、地域で包括的に多層的に支援する。これがどうして子供の世界にないのか、これが必要ではないかというふうに考えてございます。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 本当に悩ましいテーマであります。本当に日々悩んでいますが、私の認識は、支援と介入は単純に分けられない。介入も、ある意味支援でもあると思っております。

 具体例を一つ申し上げます。

 明石市では、最近のことでありますが、一時保護、親御さんが子供さん一人を殴ったケースで、あとの兄弟も保護いたしました。そして、少しゆっくりしてくださいと親御さんにゆっくりしてもらって、話し合って、そしてお戻しする方向をとっております。

 ポイントは、一時保護をしていても子供たちは学校に通えますし、子供たちも、楽しい時間を過ごせる一時保護所であれば、それほど過度に緊張関係を伴わず、親御さんも、少しゆっくりしていただいてからまた改めてということも可能になりますので、繰り返しになりますが、介入と支援というのは単純に分けられない、まさに総合的に、場合によって毅然と一時保護し、しかしながらフォローしていくということが重要かと思っております。

萬屋参考人 介入、支援、どちらも子供を守るためにすべきものですので、役割分担というのは大変難しいんじゃないかというふうに思います。介入しながら支援する、支援している中で介入すべきときには介入するというような事態がしばしば生じていますので、明確に分けることは大変難しいと思いますし、かかわる中でそういう事態が生じたときに、子供を守るということの一点で介入したり、それから支援したりすることになるかというふうに思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 都道府県と区市町村の介入と支援の問題に特化してお話ししたいと思います。

 私は、先ほど来申し上げておりますけれども、都道府県の児童相談所が持つ法的対応と、区市町村、基礎自治体が持つ母子保健、子育て支援を活用した支援、この強みをお互いに発揮しながら役割分担して行っていくのがいいのではないかと考えております。ただ、もちろん、先ほど宮島先生がおっしゃったように、のり代、協働して対応するということは当然必要でございます。

 実は、東京都では新たな試みを行っておりまして、区市町村の管理職の方に、児童相談所に配置、併任という形で来ていただきまして、現に一時保護の判断の関与に加わっていただいております。こうした区市町村の職員が一時保護の判断そのものに関与することによって、のり代部分をしっかりと築いていきたい、こういった新しい取組も始めているところでございます。

 以上でございます。

花島参考人 私は、弁護士としてDV離婚をたくさん担当しているんですけれども、DVをしているという男性と直接交渉する場面が大変多うございます。

 結局、介入と支援に引き直して言えば、弁護士として介入をするわけですけれども、どういう子供になってほしいか、自分はどんな親になりたいか、最終的にどんな親子になりたいかという目標に達するまでが介入で、達した後、それを実現するまさに本人の課題をサポートするところが支援だという意味では、児相でやっていらっしゃる方、ワーカーさんは、仕事をそういう形でやっている方が実は多くて、制度設計する場合も、そのロットが非常に多いということは踏まえるべきじゃないかなというふうに思います。

 逆に、介入だけして支援は無理だという見切りをつけなければならない、残念ながらそういうケースもありますけれども、どこに照準を合わせるかという意味でいえば、ほかの委員の方もおっしゃるように、これは不可分で連続的なものだという意識はやはり持っておく必要があると私は思います。

藤田委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、こういうせんだってからの非常に凄惨な事件がありますと、当事者に対して厳罰化をすべきだという意見も一ところにはありますけれども、厳罰化が果たして抑止になるかどうかも含めて、宮島参考人、泉参考人、花島参考人から御意見をいただけたらと思います。

宮島参考人 ありがとうございます。

 子供が非常に悲惨な思いをして、苦しめられ、また命までも奪われるということですので、こうした犯した罪をきちんと明確にし、償っていただくということは不可欠であろうというふうに思います。

 しかし、厳罰化によって救える命と、そうでない命があるというふうに考えております。むしろ、さまざまな事情があって困難を抱えている家に加害をしてしまった事例があり、もちろん、その方も罪を償わなければならないと思いますけれども、非常に重い、長い刑期が科されているというような事案が幾つか出てきております。

 厳罰化で救える命があるという前提には、なかなか私は立てません。もちろんそれは、きちんと償っていただくということを軽視することではないというふうに考えてございます。

 以上でございます。

泉参考人 厳罰化という言葉をどう捉えるかでありますが、私の理解としては、そのことによって子供にどうプラスがあるかという論点で考えたときには、私は、早期介入とかそういうことは大変賛成ですが、事後的な厳罰化がどういう効果をもたらすか、正直、詳細な知識を持ち合わせておりません。

 もっとも、効果があるという意味においてのサンクションとしては、例えば養育費を払わない親御さんに対して厳罰化していく、これはほかの国はやっておりますので、そういったことは厳罰化してもいいと思いますが、ただ、子供を殴ったからといって罰をかけて、では、その後の家族の統合はどうなっていくかの論点もありますので、悩ましいテーマだなと思っております。

花島参考人 私も泉さんと同じで、厳罰化よりも、介入のタイミング、程度を深くすることがポイントだと思います。

 今まで、法は家庭に入らずというところから出発して、必要な弱者を救うためには権力が介入することがむしろ国の責任だというふうにかじを切ってきていますけれども、そこがポイントであって、出口のところで法定刑を上げるということは、少年法が、子供に対して保護と教育で接していることがその後の社会復帰につながるのと同じ発想で考えれば、厳罰化は余り効果が上がるものではないというふうに思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 次に、花島参考人にお聞きしたいんですけれども、弁護士の配置について、確かに専門性の高い方が一人、デスクが常設であってずっとサポートしてくれるのは、それは一番いいことだと思うんですけれども、なかなか人的な資源の中で難しい児童相談所等がある中で、テクノロジーを活用して、登録しているところの弁護士さんにアクセスができる。例えば、最近なんかですと、これは前回の委員会でも質問させていただいたんですが、実際に柔軟な対応として、医療でも遠隔医療なんかが進んでいる昨今でございますから、そういったことを活用する中で、本当に地元の先生方のみならず、幅広い先生方の知見とサポートを得られるような、そういうテクノロジー、ICTを活用した運用の仕方というのは、現実的に実際現場を見られている先生から可能かどうか、ちょっと御意見をいただけたらと思います。

花島参考人 ありがとうございます。

 ツールとして、スカイプですとかいろいろなツールでもって、現場に行かなくても情報をやりとりすることは十分に可能だと思います。現にそういう形でやりとりをしております。

 セキュリティーの問題がしっかりしていさえすれば、おっしゃるとおり、それは可能ですし、常勤で机があっても、私もいろいろな常勤弁護士の話を聞いていますけれども、常勤の机が別室にあって、なかなか職員と必ずしもコミュニケーションがとれないとかそういった問題も見ていきますと、やはり、そこに席があることが全てではない。地方の実情に合わせて、ICTを活用しながら随時適切にやりとりをするということは、現にできるし、これからもやっていくべきだと思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 次に、西尾参考人にちょっとお聞きしたいんですけれども、相談窓口の中でSNSを活用していくということで、東京都の事例なんかも含めてお話を聞きたいなと思っているんです。

 LINEとかそういういわゆる気軽にアクセスできるものは、間口を広げるという意味で非常にいいかと思うんですが、反面、そこにアクセスしてくる子たちというのは、非常に精神状態も不安定だったり、アクセスしてくる内容というのも理路整然としているわけではないケースもあるという中で、どのようにフォローしていくかというのは結構難しい問題だなというのを前回の委員会でも質問させていただいたんですが、現場の実情なども含めて教えていただけたらと思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 東京都では、昨年、試行で、LINEによる相談を受けております。たしか六百件ほどいただいたと思いますけれども、その中で、本当に深刻な、継続的な支援が必要な相談がどれぐらいあるかというところを見きわめるのが非常に重要だと思います。

 昨年はトライアルですから、その試行の知見を生かして今年度本格実施しようと思っておりますけれども、最初のサインをどれだけ見逃さないか、そこでピックアップしたものをしっかりと、私ども、できれば対面で相談をしてほしい、そこにどうやってつなげるかというのは、これからもしっかり考えていきたいと思います。しばらく試行錯誤が続くと思います。

 以上でございます。

藤田委員 ありがとうございます。

 SNSは、私も非常にいいツールだと思う反面、マンパワーの意味で非常に運用が難しいことだなという認識を持っておりまして、また勉強させていただけたらと思います。

 時間が迫っておりますので、最後にちょっと意見だけなんですけれども、僕の地元は寝屋川市といいまして、中核市にこの四月からなりました。きょう、泉参考人のお話をお聞きしまして、非常に熱意あふれる中核市のあり方、そして子供の予算等も含めて市の方向性をしっかりと示して、覚悟を示していくということは、私は非常に感銘を受けました。

 その中で、現状、やはり中核市が児童相談所を設置するということに対して、いろいろな慎重な意見等もありながらネガティブな現状になっているということは心苦しいところでありまして、ぜひともこれから、この四月に立ち上がった児童相談所を含め、この施策が成功することを本当に心から祈っておりまして、また視察等に行かせていただけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いします。本当にありがとうございました。

 きょうは、五名の皆さん、本当にありがとうございました。

冨岡委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 社会保障を立て直す国民会議の中島克仁です。

 本日は、お忙しい中、五人の参考人の皆様には御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場での陳述、大変参考になりました。

 時間が限られておりますが、前の委員と重複しないように気をつけながら質問をさせていただきたいと思います。

 私からは、まず児童虐待の早期発見、また重大事案に発展させないための医療機関、特に医師また歯科医のかかわり、役割について質問したいと思います。

 野田市の案件、また目黒区の案件においても、医師の意見がその後の対応に反映をされずに、重大案件に発展してしまった。また、児童相談所への虐待相談の経路別件数の割合を見ても、欧米諸国は約八%と言われている中で、我が国においては直近の数字で二%。必ずしも数字だけで判断、評価することは難しいとは思いますが。

 まず、宮島参考人、また萬屋参考人、西尾参考人、それぞれにお尋ねをいたします。医療機関、医師又は歯科医師が児童虐待の早期発見、重大案件に発展させないために果たす役割、重要性についてどのようにお考えになっておるのか、お尋ねをしたいと思います。

宮島参考人 ありがとうございます。

 今回、香川、目黒の事件、また野田の事件がございましたが、忘れてはならない事案として、江戸川区で七、八年前に亡くなった小学校一年生の岡本海渡君というお子さんがいらっしゃいます。この方は、夏休み明けに歯医者さんに行って診療を受けました。そして、その歯科医師の方が通告をした。しかし、その通告が生かされなかったという事案です。そのこともあり、東京都の二十三区の中で、まず最初に江戸川区が開設に動いているということの背景にあると考えております。

 専門的な知見を持っている先生が、診療等で間近で子供を見る、またさまざまな聞き取りをすることができる、それを生かさないということはあってはならないというふうに思います。ぜひともこの連携を強化するということが必要だと思います。

 また、医師の児童相談所への配置ということがあります。先ほど、個室があってもそこにとどめられているようでは困るということですけれども、やはり、先生方と児童相談所の児童福祉司や管理者の方が率直に、活発に意見交換ができる、そして先生方の知見が生かされる、そういったことを進めることがぜひとも必要だと考えてございます。

 以上です。

萬屋参考人 医療機関から来た通報というのは、私は大変重要だというふうに思っています。もう既にけがをして治療が必要なほどの状態になっているということを考えると、医療機関から通報があったら、私は現役のころ、大変緊張しました。保護を前提で医療機関に行っていました。

 そういった意味で、病院の医師から通報があるというのはとても大事だと思いますし、親御さんの話、子供の話を別々に聞いていただいて、やはりそこに不都合、ふぐあいが生じているならば、虐待のおそれでいいですので通報していただきたいというふうに思っていました。

 愛知県では、早くに医療機関向けのマニュアルをつくり、今、歯科医の方でマニュアルづくりが始まっていると聞いています。やはり、どの医療機関でも、子供にとってはとても大事な場面ですので、そこで不審を感じた傷、あざがあれば通報していただくのが一番いいというふうに思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 二点申し上げたいと思います。

 一つは、地域の医療機関からの情報を確実に支援につなげることの重要性、これはやはり、要保護児童対策地域協議会のネットワークの中で、しっかりと医療機関からの情報を受け取って対応することが重要だと考えております。

 それからもう一つ、特に東京都内では大きな病院が多いので、その中に虐待対策のための委員会を開いていただくということで、その運動を随分前から私ども働きかけを行っておりまして、七十、八十ぐらいですか、かなりの病院の中にこの委員会を立ち上げていただいております。ここで複数の医師が検討し、これは通告にしようということで、しっかりとした知見のもと通告をいただく環境ができていると考えております。

 医療機関からいただいた情報におきましては、先ほど萬屋委員もおっしゃっておりましたけれども、特に私ども緊張感を持って対応しているところでございます。

 以上でございます。

中島委員 ありがとうございます。

 児相への医師の配置ということも一定程度大事かと思いますが、現状において常勤でおられる医師は今は少ないということ、また、児相に配置されている医師の役割また業務が非常に多く、虐待に特化していくということはなかなか難しい現状だ。

 今もお話の中でもございましたが、第一発見者として通報した医師の意見をその後の対応にどう反映させていくかということは、ある程度、一つのシステムとしてつくる必要があるんじゃないかなと、今御意見を聞いていても非常に思いました。野田市の案件、目黒区の案件においても、意見が十分に反映されなかったことが重大案件につながってしまったということだというふうに思います。

 一方で、早期発見の観点からは、実は私も医師なんですが、十数年前に、予防接種で来たお子さんの診察をしていたら、わきの下が真っ黒だった。私は、そのときにそういう観点を余り持っていなかったんですが、保健師さんに相談をして、一週間後に一時保護された。

 そういう意味で、医師また歯科医師においては、学校健診また歯科健診等で児童の心理的、身体的変化に気がつきやすい。しかしながら、医師がその観点を持っていなければ、早期発見できたものができない。そういうことから、ふだんから地域に根差して最前線にいる医師がその観点を持ち合わせるということは非常に重要だ。

 そこで、泉参考人にお尋ねしたいんですが、行政として、先ほど、資料の中にも、明石市の職員の基準について、医師も大変多く協力体制にあるというふうにお示しいただきました。医師また歯科医師、団体でいうならば地域の医師会、歯科医師会とどのように連携構築をされておるのか。早期発見のための研修状況等もございましたら、加えてお話しいただければと思います。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 明石市では、医師常駐体制でやっております。

 明石の児童相談所は、児相の通常職員と医師と弁護士が普通の大部屋で一緒に仕事をしている状況です。保健師も四名おります。ちなみに、児相の所長も保健師でございます。研修も、医師会と一緒にやっております。医師や歯科医師を始めとした医療機関からの通報は大変重要だと思っております。

 加えて、明石市では、教育機関や保育所とも連携をして、マニュアルをつくり、早い段階で何か気づきがあれば御連絡いただく体制をとっているところでございます。加えて、地域の例えば子供食堂などでも、気になる情報についてはお寄せいただくという形を始めておりまして、できるだけ早い段階で子供に関する情報を把握させていただく、そして個別のケースに応じて対応を迅速に毅然としていくということだと思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 先ほど私のお話もしたんですが、早期発見、また通報の仕方も、当然一般の医学部でも教わっているわけではございませんので、日本子ども虐待医学会でBEAMSという研修、ステージ一、二、三とあって、ステージ一はいわゆる開業医レベル、本来あるはずのないところにあざがある、さらには、通報の仕方も含めて、ほんの数時間で受けられる研修もある。そういったことを、今回、虐待防止法改正を含めて、私は、地域にいる医者に義務化していくぐらいの、面で見る体制を整えるべきだというふうに考えています。

 加えて、西尾参考人に、先ほどもちょっとお答えいただいたんです。

 資料の中で、七番目の医師の活用についてのところでございますが、協力医制度という制度なのか対応なのか、ちょっとわからないんですが、これをちょっと具体的に教えていただきたいのと、括弧書きで、やはりそうは言っても「医師確保の困難性」ということが、東京都だとは思いますが、あるということだと思います。協力医制度の具体的な内容と医師の確保の困難性について、現状をお話しいただければと思います。

西尾参考人 御質問ありがとうございます。

 協力医師制度は、契約によって、私ども、都内で十六名の医師の方のいろいろな知見を活用させていただいている、そういった制度でございます。

 具体的には、揺さぶられ症候群、シェーキングベビーで脳に重篤なダメージを負った場合の医学的知見をいただいたり、その他非常にセンシティブな医学的知見、あとは骨折関係ですね、そういった知見を非常に高く持っていらっしゃるお医者様に登録していただいて、その案件が起こった都度、事例を見ていただいて所見をいただく、そういった制度でございます。

 医師確保困難性につきましては、私ども、都内で非常勤医師を一名から二名配置しておりますが、ここの確保に非常に苦慮しております。

 児童相談所の医師の業務は、先ほど触れていただいたように、多岐にわたります。特にボリューム感の多いのが、療育手帳の診断でございます。ここについては、都内でも三千件を超える診断がありますけれども、それに対応する医師を確保するのに常に苦慮している。一年、二年で残念ながらおやめになってしまうというパターンが数多くございます。そういう意味で、医師確保に苦労しております。

 以上でございます。

中島委員 ありがとうございます。

 続けて質問したいんですが、時間の関係で、最後、泉参考人にお尋ねをしたいと思います。

 あかし里親一〇〇%プロジェクト、大変興味深くて、これは釈迦に説法でございますが、我が国は欧米諸国に比較して里親委託率が非常に低い。これは文化的な背景やさまざまな要因があるとは思いますが、そんな中で、このあかし里親一〇〇%プロジェクト、全国で初めてということで、二年間で一・六倍にふえたと。もともと、里親委託率は地域によって随分差があるという現状の中で、これを二年ということですが、これはもしかしたら本当に全国に展開をして参考にしていくべきことだというふうに思います。

 その意義と、また今後のさらなる取組について、御見解をいただきたいと思います。

泉参考人 御質問ありがとうございます。

 大変重要なテーマだと思います。私も、このテーマに取り組みまして、改めて、できると実感しております。わずか二年で里親登録は一・六倍になりました。

 なぜできるかというと、地域に近いからです。子供食堂でチラシを配り、こういったチラシを町内会の回覧板で回し、ポスターを張り、イベントをし、相談会をやる。そういうことを続けながら、心ある方々が多くかかわっていただいております。

 子供にとっては、できるだけ家庭的な環境で、誕生日にはホールケーキで自分のろうそくを立てて消すような、そういった日々が送れるようなことまでフォローするのが行政の責任であり、一時保護をして終わりではありません。その後もしっかりやっていきたいと明石市は考えており、必ずやり遂げたいと考えております。

中島委員 ありがとうございます。

 花島参考人にも御質問を用意していたんですが、時間の都合でできませんでしたことをおわび申し上げます。

 大変参考になりました。ありがとうございます。

冨岡委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、明二十二日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十一分散会


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