衆議院

メインへスキップ



第4号 令和2年3月17日(火曜日)

会議録本文へ
令和二年三月十七日(火曜日)

    午前八時五十分開議

 出席委員

   委員長 盛山 正仁君

   理事 後藤 茂之君 理事 新谷 正義君

   理事 冨岡  勉君 理事 長尾  敬君

   理事 平口  洋君 理事 小川 淳也君

   理事 岡本 充功君 理事 高木美智代君

      あべ 俊子君    安藤 高夫君

      上野 宏史君    大岡 敏孝君

      大串 正樹君    大隈 和英君

      大西 宏幸君    木村 哲也君

      国光あやの君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    後藤田正純君

      佐藤 明男君    塩崎 恭久君

      繁本  護君    白須賀貴樹君

      田村 憲久君    高木  啓君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      出畑  実君    船橋 利実君

      堀内 詔子君    三ッ林裕巳君

      山田 美樹君    阿部 知子君

      稲富 修二君    尾辻かな子君

      岡本あき子君    下条 みつ君

      白石 洋一君    中島 克仁君

      西村智奈美君    山井 和則君

      伊佐 進一君    桝屋 敬悟君

      宮本  徹君    藤田 文武君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      稲津  久君

   厚生労働副大臣      橋本  岳君

   経済産業副大臣      牧原 秀樹君

   財務大臣政務官      井上 貴博君

   厚生労働大臣政務官    小島 敏文君

   厚生労働大臣政務官    自見はなこ君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房総括審議官)           渡邉  清君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 達谷窟庸野君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宮嵜 雅則君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            坂口  卓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            小林 洋司君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         藤澤 勝博君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  高橋 俊之君

   参考人

   (一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部長) 正木 義久君

   参考人

   (日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長)  仁平  章君

   参考人

   (中央大学大学院経済学研究科委員長・経済学部教授)            阿部 正浩君

   参考人

   (全国労働組合総連合雇用・労働法制局長)     伊藤 圭一君

   厚生労働委員会専門員   吉川美由紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     出畑  実君

  高橋ひなこ君     高木  啓君

  堀内 詔子君     大西 宏幸君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     堀内 詔子君

  高木  啓君     高橋ひなこ君

  出畑  実君     大隈 和英君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 雇用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一二号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

盛山委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房総括審議官渡邉清君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官達谷窟庸野君、医政局長吉田学君、健康局長宮嵜雅則君、労働基準局長坂口卓君、職業安定局長小林洋司君、雇用環境・均等局長藤澤勝博君、年金局長高橋俊之君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

盛山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 法案について質問いたします。

 今回の法案は、六十五歳から七十歳の高齢者の就業確保の努力義務を課すものであります。六十歳から六十五歳については、雇用確保の義務化を課す際に、年金の受給開始年齢の引上げとセットだったわけですよね。今回もそうなるのではないかという大変大きな懸念が国民の中から出ております。七十歳までの就業確保の今後の義務化、そして、それに伴って年金受給開始年齢が引き上げられるのではないか、この点、大臣、どうでしょうか。

加藤国務大臣 まず、七十歳までの就業確保、これは努力義務ということになりますけれども、二〇一九年六月に閣議決定された成長戦略実行計画、二〇一九年十二月の全世代型社会保障検討会議の中間報告に記載をされて、今般新たに設ける高年齢者就業確保措置を講ずる努力義務についての実態の進捗状況を踏まえて検討する、これは確保義務でありますが、現時点で具体的な見通しが立っているわけではありませんが、あわせて、年金支給開始年齢については、今申し上げた二つの報告でも、七十歳までの就業機会の確保に伴い、現在六十五歳からとなっている年金支給開始年齢の引上げは行わないと明確に記しているところであります。

宮本委員 六十五歳になれば誰もが年金で暮らせる、そういう年金制度こそ目指すべきだということを申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、今回は、この七十歳までの高齢者の就業確保の努力義務の際に、創業支援等措置というものが入ります。これは雇用によらない業務委託契約や有償ボランティアでもよいという中身になっていると思いますが、この創業支援等措置、法律の中では当該事業に係る委託契約その他の契約という文言も出てきますが、これは具体的にはどういう働き方を指すんでしょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 創業支援等措置でございますが、これは労使合意に基づいた多様なものが想定されるわけでございますけれども、主なものを申し上げますと、個人との請負契約、あるいは高齢者が起業した企業との請負契約等を想定しているところでございます。

宮本委員 主なものとして個人請負だというのが一番初めに出てまいりました。

 大臣、働く人を保護するという点で、雇用と比べて個人請負あるいはフリーランスなどの業務委託契約というのはいかなる問題点があるというふうに認識されていますか。

加藤国務大臣 まず、雇用と比べてということでありますけれども、労働関係法令による保護が適用されないということ、また、高齢者にとって六十五歳までとは異なる就労形態となること、こういった違いというんでしょうか、があるということであります。したがって、その就労条件、業務の内容、あるいは高年齢者に支払う金銭などについては労使双方で十分に話し合って、労使双方が納得した措置が講じられることが重要だと考えています。

宮本委員 労働者保護法制の外に置かれてしまうということなわけですよね。

 企業の側が雇用を請負に切りかえるということは今でも起きているわけですけれども、それは、どういう理由から企業は請負だとかに切りかえるんでしょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 企業がこれまで雇用していた人について、業務委託契約に切りかえる理由については把握していないところでございます。なお、雇用していた人を業務委託に切りかえる場合に、雇用したときと同様に、労働者性のある働き方のまま指揮命令下に置くことは認められないものでございます。

 今般の改正でございますが、七十歳までの就業機会の確保を図る上で、六十五歳以前と比べて、就労に対する考え方など、個人差が大きくなることなどにも配慮して、六十五歳以降の働き方として、それぞれの高齢者の特性に応じて選択できる仕組みを導入するものでございます。

 したがいまして、措置の適用については、本人の希望を聴取し、本人の希望を勘案して選択できるような仕組みとする必要があり、こうしたことを指針に定め、対象となる高齢者の希望を踏まえた措置が講じられるようにしてまいりたいというふうに考えております。

宮本委員 いや、本人の希望といっても、労使合意やあるいは労働者代表との合意で、請負しかありませんよという選択肢が示されたら、請負で働くしかなくなっちゃうじゃないですか。労働者保護法制の外に置かれるわけですよね。

 しかも、企業が雇用を業務委託契約に切りかえる理由というのは把握していないということですけれども、ホームページを開いたら、企業向けのいろいろな宣伝がされていますよ。業務委託契約に切りかえたらどんなに企業にメリットがありますかということで、社会保険料の負担がありませんよとか、契約関係を都合によって打ち切れますよ、そういうふうに宣伝もされているわけですよ。把握していないとか、そういうことじゃまずいんじゃないですか、労働者保護をする厚労省の立場で。

 もう一点お伺いしますが、雇用が業務委託契約に切りかえられたことに伴う労働相談というのは、厚労省にどういうものが寄せられていますか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 これまで雇用していた人が業務委託に切りかえられることについての労働相談の件数というのは、具体的に把握していないところでございます。

 繰り返しになるわけでございますが、六十五歳以降の方については、それぞれの個人差というものも大きくなる中で、それぞれの高齢者の特性に応じて選択できるような仕組みを導入しようということでございます。

 ハローワーク、労働局におきましては、これまでも高齢者雇用に関する相談、助言、指導等を行ってきておるところでございますが、七十歳までの高年齢者就業確保措置につきましても、高年齢者の相談を受けること、あるいは適切な指導、助言を行うことといったことを行いまして、高年齢者のニーズに対応した措置が講じられるようにしっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

宮本委員 どういう労働相談が寄せられているのかという質問をしたのにもかかわらず、その中身も把握されていないようで、大変こういうことをやっていくのは心配だなというのを改めて思いました。

 その上で、業務委託契約、請負というのはどういうことが具体的に起きているのかということで、きょうは最近の事件について紹介したいと思います。配付資料をごらんいただきたいと思いますが、これは今月六日付の東京新聞でございます。東京電力のメーター交換をされている方々のお話であります。

 労働組合をつくられたわけですね、このメーター交換をされている請負労働者の皆さんが。この渡辺さんという方を見ますと、三十数年、この仕事をずっとやって生活をしてきたということでございます。この方々は、東電系の孫会社のワットラインサービスと個人で請負契約を結んでいる。そして、収入の確保や雇いどめの撤回を求めて労働組合を結成した。しかし、ワットライン社は、請負契約で、労働者ではないということで団交を拒否した。これに対して、都労委に申立てをして、時間はかかりましたけれども、都労委は、三月四日、不当労働行為、これを認定して救済命令を出したということです。

 次のページに、東京都のホームページから、救済命令の載ったものを張りつけておきました。主文の二のところに、会社が組合らの団体交渉申入れに応じなかったことは不当労働行為であると認定されたこと、今後繰り返されないように留意することということが書いてあります。

 その下に、判断の要旨、これを全部読むと時間がないからあれですけれども、二のところに、計器工事作業者の労組法上の労働者性について、ア、事業組織への組入れ、計器工事作業者は会社の計器工事部の主要事業を担い、研修や賞罰制度、業務地域や業務日の割り振り等によって会社に管理されており、第三者に対して会社組織の一部として表示され、会社の計器工事に専属的に従事しているのであるから、会社の計器工事の遂行に不可欠な労働力として会社組織に組み入れられているということができる、それ以降、契約内容の一方的・定型的決定をしている、報酬の労務対価性もある、業務の依頼に応ずべき関係性もある、広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束もあるということで、最後に、団体交渉拒否について、団体交渉に会社が応じなかったことは正当な理由のない団体交渉拒否に該当するとともに、組合らの存在を否認し、その弱体化を企図した支配介入にも当たるというふうにされたわけであります。

 今回のこういう法律をつくると、表面上は業務委託だけれども、実態は労働者性のある個人請負の偽装が広がっていくんじゃないですか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 労働基準法上の労働者に該当するか否かは、契約の名称にかかわらず、実態を踏まえて個別具体的に判断され、労働基準法上の労働者と認められた場合には必要な保護が図られるということになるわけでございます。

 高年齢者就業確保措置の取組におきましても、雇用によらない措置を希望し、業務委託といった働き方を選択したにもかかわらず、実態として指揮命令が行われ、雇用関係が成立していると判断されるような事案が生じることはあってはならないというふうに考えております。

 法の趣旨を逸脱した不適正な取扱いを事業主が行う場合には、適切な運用が図られるよう、都道府県労働局等により必要な指導、助言等を行ってまいりたいというふうに考えております。

宮本委員 あってはならないとおっしゃいますけれども、現に起きているわけですよね。そして、労働者性を認めてもらおうと思ったら、例えば労働組合法上の労働者性を認めるだけでも何年もかかるんですよ。これが、現在、現に進行している問題じゃないですか。

 それで、この東京電力の孫会社のワットラインで今何が起きているかということなんですけれども、今、請負労働者の皆さんの来年度の契約更新が行われております。その際、突然、前年比七割カットなどが行われております。資料の三枚目を見ていただきたいというふうに思います。

 分会長もやられている組合員のAさんですけれども、二〇一九年度の契約は、メーターの交換個数、六千七百個を請け負っていました。年収換算にすれば九百六十七万円。もちろん、ここから、請負ですから、自分の車代、ガソリン代、工具代、こういうものがあるわけであります。それから引いたもので生活されるわけですけれども、二〇二〇年度は一年契約じゃなくて十一カ月契約で、二千個というのが提示されたんですよ。しかも、単価は引き下げられております。そうすると、ここに書いてあるとおり、年間、この仕事で得られる収入というのは二百二十万円。ここからガソリン代や車の維持費は全部賄わなきゃいけないということなんですよね。これが、東京都労働委員会が労働組合法上の労働者性はあると認めた方々の扱いであります。

 正当な理由もなく仕事量を前年比の四分の三もカットして、生活も成り立たないほどの契約にしちゃう、こういうことは許されるんですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御紹介ありました個別の案件についてということにつきましては、コメントは差し控えさせていただきます。

 ただ、一般的な議論として申し上げますと、先ほど安定局長の方からも申し上げましたとおり、労働者性、いわゆる賃金であったり契約ということにつきましては、労働基準法上の労働者に該当するか否かということが重要になってくるわけでございますけれども、この点につきましては、契約形態にかかわらず、仕事の依頼あるいは業務指示等に対する諾否の自由があるか、業務を遂行する上で指揮監督を受けているか、あるいは支払われた報酬が提供された労務に対するものであるかというような実態を勘案して、総合的に判断されるものでございます。

 その上で、この労働基準法の労働者に該当するということになった場合には労働契約法という法律も適用になりまして、労働契約法の第八条では、労働者及び使用者は労働契約の内容である労働条件の変更についてその合意により変更することができるとされておりますので、そういった点を勘案して判断がされるということかと承知します。

宮本委員 先ほど来、労働基準法上の労働者と認められるかどうかという話が出てくるわけですけれども、それを認定してもらおうと思ったら、裁判なりなんなりで闘っていかなきゃいけないという話になるわけですよね。

 実際は、この請負労働者の皆さんは、まず労働組合法上の労働者の認定というのを都労委の命令でかち取ったわけであります。そういう方々に対してこういうことが行われているわけですよね。今度の法案ができたら、どこでもこういうことがどんどんどんどんやられていくという危険性は私はあると思いますよ。業務委託契約というやり方をしたら、七十歳までの安定した就業の保障というのは実際はなくて、業務の打切りやあるいは縮小、こういうのは自由にできるようになっちゃうんじゃないですか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたように、実態が労働者性がある場合には労働基準法上の保護が行われるということであります。

 それで、今般御提案をさせていただいております業務委託契約、雇用以外の措置でございますが、法文上、七十歳までの間の就業を確保するということが明記をされております。また、業務委託の場合は、高年齢者就業確保措置の対象となる高年齢者が七十歳になるまで業務委託を継続的に行う制度を設けるということを努力義務としておるところでございます。

 業務委託の場合におきましても、所定の年齢に到達する前に、正当な理由がなく、安易に業務委託を打ち切られれば、それは雇用確保措置の趣旨を損なうことになるものでございます。この点につきましては、昨年十二月の労政審の報告書におきましても、雇用による措置と雇用以外による措置について就業継続の可能性と就業時の待遇の確保における均衡が求められるということが指摘をされまして、労使合意によってこれを担保することが提言をされているわけでございます。このため、就業条件、業務の内容ですとか金銭のほか、業務委託契約等の解除の条件につきましても労使双方で十分に話し合って、労使双方が納得した措置が講じられることが重要であるというふうに考えております。

 今後、就業確保措置について運用計画を労使で作成していただくことになるわけでございますけれども、その際の規定内容として、業務の内容とともに契約の解除に関する事項等も踏まえてきちっとした計画を策定していただく、また、そういったものが同意を得た内容に基づかないで運用されておるといったような状況がある場合には、適正な運用が図られるよう、都道府県労働局等により必要な指導、助言等を行ってまいりたいというふうに考えております。

宮本委員 労使合意で担保するんだということをおっしゃるわけですけれども、労使合意で何でも担保できるわけじゃないですよね。労使は力の差があるわけですよ。だから労働法制はあるわけでしょう。労使合意で何でも担保できるんだったら、労働法制は要らないわけですよ。

 実際は、打切りはだめですよとお話しされますけれども、こういう形、今回の東電の孫会社の請負労働者の皆さんみたいに、生活できないようなところまで縮小される可能性というのは否定できないわけでしょう。否定できるんですか。

小林政府参考人 先ほども申し上げましたが、これは六十五歳以降の働き方に関する規定でございます。六十五歳以降は、普通の業務委託のフリーランスの関係と異なりまして、この方々というのは六十五歳以降の方であって、六十五歳まで雇ってきた事業主がその後の雇用、就業の確保措置を講ずる、その内容として七十歳までの継続的な業務委託等を努力義務としているところでございまして、そういった規定、あるいはそれに基づく指針等を踏まえて労使で実際の計画を策定していただいて、それを運用していくということになるというふうに考えております。

宮本委員 ですから、何の担保もないということだと思います。

 もう一点、この資料を見ていただきたいんですが、この東京電力の孫会社のワットラインの請負労働の皆さんがワットライン社から提示された二〇二〇年度の計器交換個数の減り方というのは均等じゃないんですよね。前年度実績との関係でいえば、大きく減っている人もいれば数%減の方もいます。組合員Aさん、Bさんというのは、年収換算すれば四分の三カット、四分の一程度になっているわけですよね。非組合員のCさんは、個数でいえば、十一カ月換算で見れば前年比の九六・一%というふうに、マイナス四パー程度の提示ということになっているわけであります。

 労働者性が認められる請負契約について、請負契約の際に、対象労働者が労働組合活動を行っていることをもって、仕事量を大幅に減らして非組合の請負労働者と差別する、こういうことは許されるんですか。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 この点につきましても、個別の案件についての御答弁は差し控えさせていただきますが、一般論で申し上げますと、労働組合法上の労働者に該当するか否かという問題につきましても、契約の名称を問わず、事業組織への組入れ、それから契約内容の一方的・定型的な決定、報酬の労務対価性ということなどを判断要素としまして、個別の事案に応じまして、労働委員会や裁判所において判断されるということとなっております。

 労働組合法上の労働者に該当するということになりますれば、使用者が労働組合の組合員であることを理由に解雇等の不利益取扱いをすることは不当労働行為として禁止されているということでございますので、こういった不当労働行為を受けた労働者は労働委員会に救済の申立てということができることとなるということでございます。

宮本委員 一般論というお答えですが、こういうことは、法律上、不当労働行為で禁止されているということなんですよ。雇用者であれば労働契約法で労働条件の不利益変更というのは許されないので簡単にできないわけですが、請負契約ということでは契約の不利益変更が頻発しかねないわけですよ。そして、そのたびに、請負の皆さんは勇気を持って声を上げて闘っていかなければ不利益をこうむり続けるということになるわけですよね。

 きょうは、牧原さんに来ていただきまして、ありがとうございます。

 この不当労働行為を認定されたワットライン社は、東京電力パワーグリッドのスマートメーター交換という仕事を落札をされているわけであります。そして、このワットライン社は東光高岳社というところの一〇〇%子会社ですが、この東光高岳社の筆頭株主は東電で、三五%の株を保有しております。東電の関連企業が東電の仕事をやっているということなんですよね。そして、もちろん、この請負労働者の皆さんは東電の発行する委託従事者証を持って働いているということでございます。

 ワット社が都労委命令に従うように、経産省として東電に対してちゃんと指導すべきじゃないですか。

牧原副大臣 宮本先生の質問でございますけれども、お尋ねの事案自体は厚生労働省の所管の労働組合法等の労働法制に係るものでございますし、また、現在係争中の個別事案ということでございますので、経済産業省としてコメントする立場にはないことを御理解いただきたいと思います。

宮本委員 いやいや、東電は発注者の責任があるわけですよ、発注者の責任が。そして、株主としての責任もあるわけですよ。それで、東電は国民の税金で今生き長らえている企業ですよ。そこが明々白々な不当労働行為だと認定をされ、更に団交拒否という不当労働行為がここまで認定されたわけですが、今やっているこの組合員の皆さんに対して差別的な契約をやって、生活できないような事態に追い込もうとしているわけですよ。政治家としてですよ、牧原さん、政治家としてこういう事態を許していていいのかということなんですよ。

 だって、東電はただの会社じゃないんですよ。国民の税金がなければ成り立たない会社ですよ。しかも、スマートメーターの交換というのは国が進めている事業じゃないですか。その中で起きている事案ですよ。ちょっと、調べるなり、対応するなり、言ってください。

牧原副大臣 スマートメーターを推進しているのは、確かに省エネを進めるという点でそのとおりでございますけれども、事案自体はあくまで個別の、今なお係争中の事案でございますので、今、経済産業省の副大臣の立場として、やはりお答えする立場にはないということでございます。

宮本委員 係争中の事案といっても、都労委の命令はもう既に出ているじゃないですか。都労委の命令は出ているじゃないですか。これに基づいて指導すべきなんじゃないですか。これを放置するんですか。加藤厚生大臣、これを放置するんですか、こういう問題を。これはまさに労働組合潰しそのものになっていくわけですよ。こういう契約の仕方をしていったら、この人たちは生活できないわけですから、このままだと。

加藤国務大臣 委員の資料にもあるように、今、中労委の方に上がって、調整というんでしょうか、それが進んでいるということでありますから、今の段階で個別の問題について申し上げるのは控えたいというふうに思いますけれども、いずれにしても労働者としての実態があれば労働基準関係法令の保護を受ける、これは当然のことだろうというふうに思います。

宮本委員 ですから、本当に、こういう問題が起きていても、争っている間に生きていけなくなるわけですよ。それを政治が放置していていいのか。私は、真剣に大臣にも牧原副大臣にも考えていただきたいというふうに思いますよ。

 法令遵守すべきだぐらいは東電に言うべきなんじゃないですか。法令遵守しなさいも言えないんですか、法令を遵守しなさいと。法令を遵守しなさいも言えなくなったら大変ですよ。法令遵守しなさいぐらいは東電に言ってくださいよ。国会でも指摘があったと、法令を遵守しなさいと言ってください。

牧原副大臣 先ほど申し上げたように、電気事業は経済産業省が所管をしております。

 そして、一般論としては、東京電力のパワーグリッド始め送配電事業各社においては二〇一八年七月に閣議決定されたエネルギー基本計画を踏まえて適切にスマートメーターの設置を進めてもらいたいと思いますが、その前提としてはもちろん法令遵守でございますので、そうしたスマートメーターの設置については法令遵守をするようにということは申し上げたいと思います。

宮本委員 スマートメーター設置にかかわってこういう不当労働行為が起きているわけですから、そういうニュアンスをしっかりと伝えていっていただきたいというふうに思います。

 時間がちょっと足りなくなってしまいました。

 結局、私、きょうはこういう事案を紹介しましたけれども、今回の法案を成立させていったらこういう事態がどんどんどんどん広がるんじゃないかというのを大変危惧しているわけですよ。現に、今起きている問題についても、係争中だったら政治は何の手も差し伸べることをしないし、法律上できないというのかもわからないんですけれども、そうなっちゃっているわけですよね。大変問題があるんじゃないですか、今度の請負契約というのをどんどん入れていいということにするのは。

 大臣、その点は、今起きている事案との関係でどういう認識でしょうか。

加藤国務大臣 現在、高齢者の雇用継続は六十五歳までしかないわけでありますから、それを七十歳まで、どういう形で雇用なり就業というものの継続をしていける条件をつくっていくのか、その一歩が今回の法律だというふうに理解をしているところであります。当然、六十五までと違って就業の形態も多様になっていくということで、もちろん、これまでのような定年延長とか定年の廃止とか引き続きの雇用継続措置ももちろん含むわけでありますけれども、それ以外の選択肢も広く含める中で幅広く雇用であり就業の継続を図っていきたい、これが今回の趣旨であります。

 委員御指摘の、その中でさまざまな懸念が生じることについては、先ほど説明いたしましたように、省令であり、あるいは指針であり、これからつくる中身において、これも労政審で御議論いただくわけでありますけれども、そうしたことが生じないような対策をあわせ講じながら、本来の趣旨である、七十歳まで高齢者の皆さん方もそれぞれの希望に応じて働き、また就業できる環境をぜひつくっていきたいと思います。

宮本委員 時間が来たから終わりますけれども、雇用以外を入れなきゃいけない必然性は私はどこにもないと思いますよ。短時間労働を希望するんだったら、短時間の雇用でいいじゃないですか。なぜ、雇用じゃない、請負という働き方をわざわざ労働法制の中に組み込んでいくのか。六十五歳以下まで広がっていく懸念すら今上がっているわけですよ、今回こういう大穴をあけることで。

 私は、こういうことは許されないということを申し上げまして、きょうの質問は終わらせていただきます。

盛山委員長 次に、山井和則君。

山井委員 午前中三十分、午後十分に分けて質問させていただきます。雇用保険の問題、さらに、コロナショックで株が下がっておりますので年金損失の問題、また、コロナウイルス関係の質問も一緒にさせていただきたいと思います。

 今御質問されていたとおりでありまして、私も、今回の法改正の最大の問題点は業務委託を推進することであると思っております。そこで、業務委託にすることによって労働基準法から外れるわけですよね、労働者ではなくなるわけですから。

 そこでお伺いしたいんですけれども、ということは、加藤大臣、今まで、六十五歳までやっていた仕事と同じような仕事を請負でやってもらう、六十五歳以降になって。それで、大幅に給料を今までより減らすということになれば、換算して最低賃金割れという、機械的に換算してですけれどもね、そういうふうな低賃金での請負というものも請負になったら合法化されるという理解でよろしいですか。

加藤国務大臣 請負になるかならないかというより、どういう場合に最低賃金が適用されるか、適用されないかということなんだと思いますけれども、こうした業務委託契約に基づく場合は、これは最低賃金の対象にはならないということであります。

山井委員 いや、これは恐ろしいですよね。そもそも、最賃割れという以前に、最賃は関係なくなるということですね。

 それで、それに関連して、じゃ、業務委託で労働基準法から外れることになるわけですけれども、過労死をされましたと。長時間労働、晩遅くまで、連日休みなく働いて過労死をされた、そうしたらこれは労働災害に認められますか、大臣。

加藤国務大臣 まず、一般的には、業務委託契約の締結により七十歳までの就業機会を確保する場合には労働基準法等の労働関係法令は適用されないということになります。ただ、委員御承知のように特別加入という仕組みがありますから、その扱いをどうしていくかということは別途あろうかと思いますが、今、基本的な仕組みとしては対象にはならないということです。

山井委員 いや、強烈ですね。きょうも、配付資料で三ページにありますけれども、「高齢フリーランス 安全網ないまま 月百四十時間残業 六十六歳男性自死 高年法改正で不安定就労加速」と。私もこの過労死の防止の問題をやっていますけれども、労基法があっても過労死をしている、最賃割れのブラック企業がふえている中で、労基法も適用されない。いや、これはもう大反対です、私は。

 そこで、改めてお聞きしたいと思いますが、今、特別加入という方法があるとおっしゃっていましたけれども、もちろん私は大反対という大前提でですが、労災保険には少なくとも、任意で特別加入ということじゃなくて、全員加入させるべきじゃないですか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、労働基準法の労働者に該当しないため、基本的な意味においては対象外でありまして、労災保険においては、業務の実態、災害の発生状況等から見て労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者について特別加入を認めている。ですから、これは、それぞれいわば任意の加入ということになるわけであります。

山井委員 先ほどの質問にもありましたけれども、六十五歳以上でこういう働き方をふやすと、これがオーケーなんだったら、六十五歳と言わなくても、三十でも四十でも、解雇します、請負でやってくださいと。これはブラック企業どころの話じゃないですよね。そもそも、最賃割れ、長時間労働、過労死が労災にもならない。これは絶対やってはならないと思います。

 そこでなんですが、業務委託は大反対という大前提でですが、業務委託でなければならないという合理的、客観的理由というものをきっちりと書面で出させるべきだと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 業務委託を含めて、創業支援等措置による就業、これは労働関係法令による労働者保護の対象から外れるということでありますから、労使間の話合いに際し、雇用ではなく委託契約とする理由、これをしっかり説明していただくことは大変重要だと思います。

 さらに、創業支援等措置を講ずるに当たっては、その実施内容については運用計画を書面により作成して明示し、過半数代表者等の同意を得て講ずるものとされております。これは単独の場合であります。

 雇用の措置を講じて、あわせてする場合には、基本的には、法律上求めていませんが、これも指針等で求めていきたいと思っておりますけれども、そうした中身については省令で定め、そして具体的には指針でということでありますから、これから労働政策審議会に議論いただくわけでありますが、その際には、委員今御指摘がありました、事業主が書面で示すべきではないか、こういった点も含めて御議論をいただきたいというふうに思います。

山井委員 十分な実効性は期待できないと思います。ブラック企業でもなくなるんですよ、合法なんですから。最賃割れ、長時間労働、過労死、好きで働いたんでしょう、そういうことになって、一切事業主の責任が問われない。この業務委託に関して、事業主の安全配慮義務というのをどう担保するんですか。

加藤国務大臣 業務委託契約の締結により七十歳まで就業機会を確保する場合において、労働安全衛生法等の労働関係法令は適用されませんが、この場合についても、高齢者が安心して安全に働けるかが非常に重要であります。

 このため、業務委託契約の締結により七十歳までの就業機会を確保する場合においては、就業条件、業務の内容、高年齢者に支払う金銭のほか、安全及び衛生に関して必要な事項について労使双方で十分に話し合い、労使双方が納得した措置が講じられるよう、事業主が導入しようとする制度について、安全及び衛生に関する事項などを盛り込んだ運用計画を作成し、当該計画について同意を得るという手続を省令で規定すること、また、事業主には委託者として一定の安全配慮義務が認められる場合があることを踏まえて、業務の内容について、高年齢者の能力等を踏まえたものとして、業務の内容、性格等に応じて必要な安全、健康確保のための措置を講ずることを指針に定めるということ、こうしたことについて、きょうからまた議論いただくわけでありますけれども、さまざま、国会の指摘も踏まえながら、労働政策審議会でしっかり御議論いただいて、具体的な姿をつくっていきたいと思います。

山井委員 私、もちろん、この法案全てに、一から百まで反対と言っているわけじゃないんですが、特にこの部分は大問題だと思います。労基法から外れてしまう、労災からも外れる、最賃からも外れる、今おっしゃった安全配慮義務も果たさなくていい、これは大問題です。

 具体的にお聞きしたいんですけれども、例えば、ある方が六十五歳になりました、この部屋のこの席で今まで仕事をしていました、全く同じ席で似たような仕事を六十五歳になったから請負としてやってください、こういうことは法律的には可能なんですか、それは禁止されているんですか。似たような今までの仕事を、同じような職場で、しかし請負として六十五歳からはやってもらう。いかがですか。

加藤国務大臣 まず、余り同じ部屋かどうかというのは意味がないんだろうと思いますけれども、具体的にどういう仕事をどういう形でしているか、まさに労働基準法の労働者に該当するか否かということになると思います。

 これは、契約の中身がどうである、要するに、雇用契約という名前をとっているのか、委託契約という名前をとっているのかという名称にはかかわらず、まさに実態を踏まえて個別具体的に労働者性を判断していく、そして、労働基準法上の労働者と認められた場合には、当然、それにのっとった必要な保護であり、また、労働基準法等の法令が適用されるということになるわけであります。

山井委員 今おっしゃったように、非常に危ないんですね。同じ部屋かどうかは関係ないということは、裏返せば、同じ部屋で同じような仕事でも、請負として安い賃金で働かせることを必ずしも排除していないということであります。

 続きはまた夕方にさせていただきたいと思いますが、非常にコロナショックで株が下がっておりますので、そのこともちょっと質問をさせていただきたいと思います。

 配付資料の九ページを見ていただきたいんです。

 現在も、きのうの時点でこの表をつくりました、株が大幅に、日本、海外、下落しておりまして、年金損失が出ております。ここ、一万七千円と書きましたけれども、けさの時点では一万六千五百円まで下がっております。これは下がったり上がったりですから、一喜一憂する気もありませんが、トレンドについて御質問したいと思います。

 ここに書いてありますように、二〇一九年の十二月末、つまりコロナショックの前よりも国内外の株式が二、三割下がっているんですね。それで、昨日の時点で大まかに私たちが試算すると、大まかな試算ですよ、約二十二兆円ぐらい。約二十兆円ぐらい年金評価損が生じているというふうに私たちは認識しているんです。

 細かい計算はもちろん要りません、これは一日一日変動するわけですから。これは私たちの年金ですから、大まかな認識を加藤大臣にお伺いしたいんですけれども、大体、この年末以降のコロナショックの三カ月で二十兆円ぐらいの年金損失が生じているのではないか、大まかにそういう認識でよろしいでしょうか。(発言する者あり)

盛山委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 第三・四半期は七・四兆円の収益になっているところでございます。現時点については、これは四半期ごとに運用実績を発表するということですから、本年七月ごろにGPIFにおいて公表されるものと承知をしております。

 ただ、いずれにしても、年金積立金の運用は長期的な観点から安全かつ効率的に行うこととされておりまして、今委員御指摘の、株式市場を含む市場の一時的な変動に過度にとらわれるべきではないというふうに考えております。

山井委員 長期的に見るべきだというのはもちろん私もわかっていますが、今も話がありましたが、本当にこのコロナショックというのが一時的で済むのか、まだまだこれは下がる可能性もあるわけです。そういう中では、繰り返し言いますけれども、国民の年金保険料を積み立てているわけですから、私たちのものなわけですからね。このコロナショックで幾らぐらいの年金損失が出ているかということぐらいは国民も当然知りたいと思うんです。

 きょうの配付資料にもありますけれども、例えば、一昨年の十月から十二月が過去最大で、三カ月で十四兆円赤字だったんですね、一昨年の十月から十二月が。それと、左のページは、赤線が引いてありますけれども、リーマン・ショックがあった二〇〇八年には九兆円ぐらいの赤字だったんじゃないかと。

 リーマン・ショックが九兆円、一昨年の十月から十二月の過去最大が十四兆円、しかし、それを上回る過去最大の年金損失がコロナショックで出ているのではないかと思うんです。加藤大臣、十四兆円を現時点で上回っているんじゃないか、その認識はいかがですか。

加藤国務大臣 ですから、それは四半期ベースで公表するということになっているので、それを待ってみないと、今の段階で私が幾らだということを申し上げるものを持っておりません。

山井委員 推計は、機械的に少しやればできる話じゃないですか。そのことの説明責任は加藤大臣にあるんじゃないんですか。一月から三月の発表は六月か七月でしょう。それはやはり遅過ぎるでしょう、どう考えたって。正確なのはそれでいいですよ、正確なのは。

 でも、現時点で刻々と株が下がっている中で、やはり、過去最大の年金損失の規模になりつつあるという認識ぐらいは当然加藤大臣は持っておられると思うんですよ。持っておられるんだったら、そのことぐらいはお認めになるべきじゃないですか。私も、普通に私の事務所で計算して、二十兆円ぐらいだなということになっております。

 例えば、一喜一憂はしませんが、きのうの晩もアメリカで株がかなり下がったので、これは五十三兆円じゃなくて四十八兆円ぐらいに下がっているのではないか、となると、ポートフォリオを変更した五十兆円を下回っているんじゃないか、そういう事態にもなりつつあるんです、これは。

 私がこういうことを言っているのは、私個人がどうじゃなくて、国民の皆さんはやはりこれに関心があるし、不安なんですよ。株式運用の比率を安倍政権で上げたことによって、株が上がればもちろんどんと上がります、これはいいことです。でも、今回みたいに株が下がればどんと下がる。この振れ幅が、変動が大きくなるんですよね。変動が大きくなるわけです。今、もたないんだよというやじも自民党から出てきておりますが、私は、もつ、もたないの議論もあるとは思いますが、じゃ現状がどうなっているのかという情報公開は国民に対して必要だと思うんです。

 ですから、加藤大臣に改めてお聞きしますが、過去最大は十四兆円でした。でも、現状のような株価が三月末まで続けば、一月―三月のこの年金損失というのは十四兆円を上回る、二十兆円規模になる可能性があるという理解でよろしいですか。

加藤国務大臣 いずれにしても、私がこれから先の株価が上がるとか下がるとかということを申し上げる立場ではありませんし……(山井委員「現時点のことを聞いている」と呼ぶ)現時点じゃなくて、これはいつも四半期ベースで全部発表させていただいているんですから、一日一日の動向を逐一私どもが推計するという立場にはないと思います。

 それから、これは基本的にGPIFにお任せをしているわけでありますから、我々として、むしろ、GPIF側がこういった形で公表する、それにのっとって対応するということ、それが原則になっていることはぜひ御理解いただきたいと思います。

山井委員 いや、私がなぜこういう質問をするかというと、安倍政権になって株式運用比率を倍増しているんですよね。非常に振れ幅を大きくしているわけです、リスクを大きくしているわけです。前まで来て、ちょっと、やじをするのはやめてもらえますか。

 だから、ここは私も冷静に議論はせねばならないと思いますけれども、私は、やはり、株がコロナショックで大幅に下がっている、そのことによって年金にどういう影響を及ぼしているかという最小限の情報公開、情報開示、説明責任は加藤大臣にあるんじゃないかと思うんです。

 私たち、これは試算していますよ。でも、勝手な、間違った試算をするわけにももちろんいきませんから、大体これは桁としては二十兆円ぐらいですかということぐらいは、加藤大臣も国民の年金を預かっているわけですから、現状認識をお述べいただければと思います。

加藤国務大臣 まず、同じことを何回も言って恐縮なんですが、年金というのは一日一日で運用しているわけじゃなくて、長期運用という中でやっている、したがって、見るべきスパンというのも、当然そのスパンで見て、そして、今GPIFは、本来は一年ごとのものを四半期ごとも、そういった意味で情報を開示しようということでしているわけでありますから、今委員御指摘の今期のこうした動向、もちろん株価の下落というのはGPIFのみならず日本経済にもいろいろな影響を及ぼすわけでありますけれども、このGPIFに関しては、四半期ごとに出させていただいていますから、そういった中でしっかりとそれはお示しをさせていただく。

 また、GPIFにおいては国内外の市場動向も踏まえて適切なリスク管理をやっていくという、これはまさにGPIFそのものでありますから、我々政府としてはしっかりとその役割を担っていただきたいというふうに思いますし、また、重ねて申し上げれば、政府がGPIFに対して具体的な投資活動をまさに指図する立場ではないんですね。したがって、まさにGPIFにおいて適切に行い、適切に情報開示をしていただく、そしてその中で国民の皆さんが自分たちの年金を預けていることに対するいわば安心と理解を求めていく、こういうことなんだろうと思います。

山井委員 これはいろいろなエコノミストの方々もすぐに試算をされるとは思いますが、念のためお聞きしますが、では、GPIFが正式に一月から三月の年金損失額、変化額を出されるのはいつごろになりますか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたが、七月ごろになると思います。

山井委員 ほかの聞き方をしますと、では、二〇一四年、年度末、このときまでは古いポートフォリオ、つまり株の運用損失は少なかったわけですよね。それで、二〇一五年の年始から、株の運用比率を倍増したわけです。このポートフォリオ変更前の五十兆円の収益額を下回ってしまうのは、日本の株が大体幾らぐらいのときだと思われますか。

加藤国務大臣 それは、さまざまな運用をしておりますから、日本の株価だけじゃなくて、ほかの、国債価格、あるいは海外がどうなっているか、トータルを見なければわからないんだろうと思います。具体的に今申し上げた条件の中で試算をするというのは困難だと思います。

山井委員 もちろんこれは、海外とか国債とかいろいろな、総合的な判断が必要かと思いますが、私が心配しておりますのは、きょうも動いておりますけれども、今の時点でも、きのうの晩のアメリカ株が下がった段階で四十八兆円ぐらいになって、ポートフォリオ変更の際の累積収益額を下回っているのではないかというように思うわけであります。

 ここはもちろん正式な厚生労働省なりGPIFの発表を待ちたいと思いますが、やはり、株の運用比率を私たちの反対を押し切って倍増されたのは政府であるわけですから、少なくともその説明責任は、いいか悪いか以前に、説明責任、必要なデータの公表はやっていただきたいと思っております。

 それで、ちょっとコロナウイルスのこともお聞きしたいと思います。

 けさのニュースで流れております、テドロスWHO事務局長がきのうメッセージを出されました。きょうの配付資料を見ていただきたいんですけれども、これは非常にわかりやすいメッセージです。八ページ。

 加藤大臣、こう書いてあるんですね。WHOヘッド、アワー キー メッセージ イズ テスト テスト テスト。ウイ ハブ ア シンプル メッセージ フォー カントリーズ テスト テスト テスト。わかりますか、これ。検査をしなさい、検査をしなさい、検査をしなさい、各国に伝えたいのはとにかく検査だ、疑わしいケースは全て検査すべきだ、誰が感染しているかを知らなければパンデミックをとめることはできない。

 これは、私、日本に言われているんじゃないかと思うんです。今や、先進国で最も検査数が少ない国の一つは日本なんです。それで、バッハ会長は、東京オリンピックをやるかどうかはWHOのアドバイスに従う、こういう発言までされているんですね。そのWHOがとにかく検査しなさいと言っている、この積極的検査という方針の真っ向から反対をやっているのが日本ではないかと私は心配しているんです。

 それで、エビデンス、ファクトに基づいて話をしたいんですが、きょう、またこのグラフを先週からつくりかえました。私も、厚労省の方は加藤大臣を先頭に頑張ってくださっているので余り批判ばかりしたくはないんですけれども、例えば、最新の検査数が発表されました、それによると、ここに書きましたが、三月一日から七日の一週間は八千二百二十六件、平均一日千百七十五件、そして先週、三月八日から三月十四日は一日平均千二百三十一件。一週間で一日平均五十六件しかふえていないんです。調査能力は六千二百件あるとおっしゃっているんです。それの五分の一なんですよ。幾ら何でも少な過ぎませんか。

 その意味では、テドロス事務局長の、検査しなさい、検査しなさい、検査しなさいというこの方針に今の日本の現状は反しているんじゃないかと思うんですけれども、加藤大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 ちょっと手元に正確な発言はないんですが、テドロス事務局長から、日本は非常に封じ込めをうまくやっている、こういうふうに評されているんですよ。そう本人が言っておられるんですから。だから、まさにこれは、日本向けに言っておられるということではなくて、広く世界向けに言っておられるんだろうというふうに思います。

 それから、別に、国内で、ここで言っているのは二つあると思います。PCR検査には、まさに医師の判断でお願いをするPCR検査と、疫学的調査をして感染の範囲をどこまでと認識する、例えば和歌山のときにもいろいろやりました、それは東京でもやっています、北海道でもやっています。当然、そういうことをすることによって今我々はいわゆるクラスターの封じ込めを図っているということでありまして、そしてそれに対するWHOの評価は、今、冒頭申し上げた、日本は封じ込めをうまくやっている、こういう評価になっているんだろうと思います。

山井委員 多額の寄附をWHOにもされておられますので、封じ込めに成功しているという発言をどこまで額面どおり受け取っていいかというのは、一〇〇%受け取れない可能性も、それはリップサービスで言っている面も多少あるんじゃないかと私は思います。

 それで、今、和歌山のモデルの話をされました。きょうの配付資料にも、七ページにありますように、全国平均は三%なんです。帰国者・接触者相談センターの相談件数十七万九千七百二十七のうち、検査件数は五千五百四十六、三%なのに、和歌山は、四百三十六件の相談に対して、先日もおっしゃったように、ちょっとベースが違うことはわかっていますよ、わかっていますが、数字的には、百五十八件で三六%、約十倍なんです。こういう、積極的に早目に多くの検査をされているという和歌山モデル、これについての加藤大臣の評価をお聞かせください。

加藤国務大臣 先日も御説明しましたけれども、多分千件ぐらいになっているんだと思います。その半分は例の病院関係で、これは積極的疫学調査でやられました。それから、残りの四百ぐらいのうちの百五十ぐらいは、和歌山の場合、疑わしき例が出た段階で既に、その周辺の濃厚接触者、疑わしき者の濃厚接触者についても事前にやっておられる、まさに疫学的調査の件数が非常に多いんだろうというふうに思います。

 あと、医療機関からに関しては、私どもが聞いている限りは、ほかの都道府県と同じように、帰国者・接触者相談支援センター、外来、場合によってはかかりつけ医の方から専門外来、こういった流れの中でPCR検査がなされているというふうに承知をしています。

山井委員 田村大臣も先日テレビで評価しているとおっしゃいましたけれども、ぜひ、こういう和歌山モデルというのも評価していただければと思います。

 それで、十三ページ。PCR検査をすると医療崩壊する、必ず病院に入院させねばならない、だからPCR検査をふやせないんだという一部の批判があるんですけれども、十三ページにありますように、三月一日のこの厚労省からの通知によって、赤線を引きましたけれども、症状がない又は症状が軽い方にはPCR等検査陽性であっても自宅での安静、療養を原則とする、こういうことは都道府県知事などの判断があれば現時点で可能だという認識でよろしいですか。

加藤国務大臣 今でも入院措置はできるという規定ではありますが、基本的には、陽性になった方は病院に入院していただくということで対応しているというふうに認識をしております。

 ただ、これから増加をした場合については、もちろん全員を病院で抱え込むということはなかなか難しくなりますから、そのときには、無症の方、無症で陽性の方ですね、あるいは軽症の方、こういった方は、病院以外、自宅がいいのか、それ以外の別の場所がいいのか、これは議論があると思いますけれども、そういったことの対応というのはあり得るんだろうと思います。

山井委員 だから、必ずしも病院に入院させねばならないというわけではないというのが三月一日の通知です。

 最後に、一問だけ質問させてもらいます。四ページにありますように、ドライブスルーですね。

 トランプ大統領も、検査おくれを指摘されて、大幅に検査をする、来月、一カ月で五百万人のPCR検査をするとまで言っているんですね。その中で、ドライブスルーなども積極的に活用していくという方針をアメリカはとっています。韓国、ドイツ、アメリカはドライブスルーをふやしておるんですね。厚労省の中でも、医師の検査が必要という範囲で今後はPCR検査をやっていくということなんです。

 そこでお伺いしたいんですけれども、医師の診断を得た上でという大前提で、日本でもこのドライブスルー方式というのは将来的にやっていくべきではないかと考えるんですが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 まず、そのドライブスルーは、どこからどこを見てドライブスルーと言うのかというのはなかなかちょっと私もわかりませんが、ただ、基本的に、ちょっと厚労省のツイッターで当初正確ではなかったこと、これはおわびをしなければいけないと思いますが、諸外国も、基本的に、医療の部分が多分ドライブスルーで、その中の一環としてPCR検査もやっている、こういう理解なんだと思います。

 実際問題、私の地元でも、疑いのある人が待合室に入られるとほかの患者さんに感染するおそれがあるということで、駐車場で待っていただいて、その車の中にむしろお医者さんが出かけていって診断をしているなんというケースもありますので、これは、それぞれの状況の中で、まさに感染防止の立場から、よりいいというんですか、それぞれの状況に適した方法をとっていただければいいんだろうというふうに私は思います。

 もちろん、構造物を建てるということになれば、これは建築基準法とかほかのものがあるのかもしれませんが、それを除いては、別にどういうやり方がいいとか悪いとかというのを私どもは申し上げているわけではなくて、感染防止の立場、それから、他の患者さんに感染しないような十分な配慮をとって、こうした新型コロナウイルスの患者さん、あるいは疑いのある者に対応していただきたいというふうに思います。

盛山委員長 山井君、時間となっておりますので、質疑を終了してください。

山井委員 はい。確認ですが、そういう配慮をしてであれば、ドライブスルー方式も日本で可能性はありという理解でいいですか。

加藤国務大臣 別にどういう形をとっても、今申し上げた感染防止がしっかり行われていれば、それをドライブスルーと言うかどうかは別として、いろいろなやり方があってしかるべきだと思います。

山井委員 それでは、終わらせていただきます。残りは後でやります。

    ―――――――――――――

盛山委員長 本日は、本案審査のため、参考人として、一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部長正木義久君、日本労働組合総連合会総合政策推進局総合局長仁平章君、中央大学大学院経済学研究科委員長・経済学部教授阿部正浩君、全国労働組合総連合雇用・労働法制局長伊藤圭一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず正木参考人にお願いいたします。

正木参考人 日本経済団体連合会、経団連で労働政策本部長を務めております正木でございます。

 本日は、雇用保険法等の改正法案に対する経団連の考え方につきまして御説明をさせていただく機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 改正法案は多岐の内容にわたりますが、私からは、主に雇用保険法と高年齢者雇用安定法の改正内容につきまして、賛成の立場から考え方を述べたいと思います。

 まず、雇用保険法の改正法案に対する考え方を申し上げます。

 経団連では、昨年九月に、労働政策審議会等の議論に対応するために、雇用保険制度見直しに関する提言というのを公表いたしております。今回の改正法案は、その提言で申し上げておりました見直しの方向と合致しておりまして、高く評価しております。

 個別の論点のうち、財政運営の面で二点、制度見直しの面で一点、それぞれ私どもの考え方を述べたいと存じます。

 財政運営面での第一点目でございますけれども、雇用保険料率及び国庫負担の時限的な引下げ措置の二年間継続についてでございます。

 雇用保険は、景気循環、雇用情勢の変動に機動的に対応することで、雇用のセーフティーネット機能を果たす必要がございます。中期的に健全な雇用保険財政の運営を確保していくことが重要と考えております。

 失業等給付に係る積立金残高でございますが、直近三年間の保険料率と国庫負担の時限的な引下げ措置によりまして、二〇一五年、平成二十七年度には過去最高水準となっておりまして、約六・四兆円ございましたけれども、二〇一九年、令和元年度については四・二兆円まで減少いたしております。引下げ措置を継続した場合、更に積立金残高が減少するということは確実でございます。

 措置が終わった後、保険料率が急激に上昇するのではないかと懸念されるため、経団連では、措置は最長二年間に限るべきであるということを主張いたしました。今回の改正法案で時限的引下げ措置を二年間とした点は妥当だというふうに考えてございます。

 ただし、国庫負担の取扱いについては一言申し上げたいと思います。

 雇用保険における国庫負担は、国が主導する雇用政策の責任を明確化するものでございまして、国家財政の状況あるいは雇用保険の積立金の多寡によって変わるものではございません。

 この点、前回の雇用保険法改正時の衆議院厚生労働委員会の附帯決議に盛り込まれました、雇用政策に対する政府の責任を示すものである雇用保険の国庫負担については、早期に安定財源を確保し、本則に戻すという御指摘は、労使間でも一致した考えでございます。時限的引下げ措置が終わる二年後にしかるべき対応をお願いしたいというふうに考えてございます。

 財政運営面での第二点目でございますが、雇用保険財政の安定的な運営確保に資する対応でございます。

 経団連は、昨年九月の提言で、雇用保険の積立金残高の水準目安のあり方につきまして、支出構造や特性を踏まえた見直しを検討し、時限的な引下げ措置が終了した後も、保険料率の急激な引上げを回避しつつ、中期的に健全な雇用保険財政を実現すべきだということを主張いたしました。

 一部に育児休業給付について給付の引上げを求めるといった声もある中で、労働政策審議会では、労使双方から、今後の雇用保険財政に及ぼす影響を懸念する、あり方の見直しが必要との意見が出されました。

 改正法案では、保険料率の弾力条項について、雇用のセーフティーネット機能の根幹である求職者給付により焦点を当てて、景気動向に応じて判定できるよう算定方法を見直すとともに、育児休業給付を失業等給付から分離することで経理を明確化、見える化してございます。こうした見直しは、雇用のセーフティーネット機能を財政面で確保する観点から妥当でございまして、高く評価いたしております。

 制度見直しの面では、高年齢雇用継続給付の見直しについて申し上げます。

 経団連は、昨年の九月の提言で、仮に見直しを行うとしても、受給者への十分な配慮とともに、企業における人事賃金制度見直しの動向とあわせて考えることが不可欠であり、十分な経過措置を講じるべきと主張いたしました。

 労働政策審議会における議論の過程では、労使双方から見直しに慎重な対応を求める旨の意見が出されまして、改正法案では、こうした意見を踏まえて、高年齢雇用継続給付につきましては、二〇二四年度、令和六年度までは現状を維持した上で、二〇二五年度、令和七年度から五%縮小するという見直しということになりました。給付見直しの水準面、並びに縮小を開始するタイミング面の両面から企業労使の今後の対応に一定の御配慮をいただいたものとして評価いたしております。

 続きまして、高年齢者雇用安定法の改正についての考え方に移ってまいります。こちらについて申し上げます。

 経団連では、高齢者の就労ニーズの多様性、個人差が拡大する特性を踏まえながら、意欲と能力のある健康な高齢者が専門能力の発揮、技能の伝承、若手の育成などを通じまして企業内外のさまざまな場で活躍できることが重要であると、本年一月に公表いたしました経団連の経営労働政策特別委員会報告等において表明をいたしております。

 高齢者の活躍推進に向けては、企業での対応だけではなくて、高齢者の再就職支援、地域での多様な就業機会の確保に向けた社会全体での環境整備も求められます。こうした考え方に沿いまして、改正法案について、七十歳までの就業確保措置に係る二つの論点に関する考え方を申し上げたいと思います。

 第一は、努力義務による対応とした点でございます。

 経団連では、多様性に富む六十五歳を超える高齢者の方々の就業機会の確保につきましては、法律による一律の義務化ではなくて、企業労使の創意工夫を生かした、多様で柔軟な対応というものを求めてまいりました。

 改正法案では、七十歳までの対応につきまして、雇用による措置、雇用によらない措置、いずれかの就業確保措置を事業主の努力義務として講じるとしております。義務ではなく努力義務とすることで、企業労使の間で各社の実情あるいは高齢者のニーズを踏まえつつ十分な議論を重ねて、例えば段階を踏んだ導入など、創意工夫を凝らした対応を講じることが可能となるものと受けとめております。

 第二点は、六十五歳までの雇用確保措置と異なりまして、努力義務のもとで選択肢を拡大したという点についてでございます。

 改正法案では、雇用による措置として、定年の廃止、定年延長、継続雇用制度導入の三つの措置に加えまして、グループ会社ではないほかの企業との雇用契約も認めることとしております。加えまして、雇用によらない措置として、フリーランスや起業される方への業務委託、社会貢献活動への従事を支援する制度の導入を盛り込んでございます。対応の選択肢を広げることとあわせまして、勤務成績や健康状態などに基づき、対象者を限定するための基準を設けることも可能とされております。

 こうした点も、企業側から見れば、努力義務のもとで自社の実情や多様な就労ニーズに合わせたさまざまな工夫を可能とする内容であると評価いたしております。

 ただし、企業が七十歳までの就業確保措置を具体的に考えていく上では、法案が成立した後、省令や指針で詰めていただくべき点がございますし、企業規模を問わず先進的な好事例を横展開していくこと、それぞれの選択肢の内容をわかりやすく周知していくことが重要と考えております。

 以上、簡単でございますが、今回の改正法案に対する私どもの認識でございます。

 御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

盛山委員長 ありがとうございました。

 次に、仁平参考人にお願いいたします。

仁平参考人 連合の仁平です。本日は、参考人としてお招きいただいて、どうもありがとうございます。

 私は、法案の内容を審議いたしました労働政策審議会で、労働側の委員を務めさせていただいております。本日は、高齢法、雇用保険法、労災保険法についての意見を述べさせていただきたいと思います。

 本日、お手元に、簡単に考え方をまとめたレジュメを御用意しておりますので、こちらをごらんいただきながら話をさせていただきたいと思います。

 まず、表紙をあけていただきますと、ページ番号の一というところに高齢法の改正案についての意見を書いてございます。

 連合としては、働きたいと願う高齢者が年齢にかかわりなく働き続けることのできる環境整備、これは非常に重要であり、現在六十五歳までしか法的な枠組みがないことを考えれば、今回の議論については前向きに受けとめているところでございます。

 ただし、今回の七十歳までの就労機会の議論の前提として、二点ほど申し上げておきたいと思っております。

 前提の一点目でございます。公的年金の支給開始年齢の引上げは行わないということでございます。

 この点、昨年の成長戦略実行計画においても明示されておりますが、連合が実施しました調査においても、高齢法が改正されればやがて年金の支給開始年齢も引き上げられるのではないかという危惧の声も多く寄せられているところでございます。こうした不安の声に、政府としてもしっかりと対応していただきたいと思っております。

 前提の二点目でございます。希望者全員が六十五歳まで働く環境がその土台になるというところでございます。

 そのために、現行の高齢法で義務づけられている三つの選択肢、すなわち、定年年齢の引上げ、継続雇用制度の導入、定年制の廃止という六十五歳までの雇用確保について、企業の規模を問わず、全ての企業において完全に実施される必要があると考えております。

 その上で、今回の七十歳までの就業機会確保に向けた選択肢には、非雇用の選択肢も含まれております。この非雇用の選択肢は抽象度が高く、しかも労働者保護の観点から課題もあるものと捉えております。

 その観点から、三点ほど意見を申し上げたいと思います。

 一点目は、労働法規による保護が及ばない非雇用の働き方のさらなる拡大に対する懸念でございます。

 今回の改正法案では、創業支援等措置という新たな選択肢が示されております。六十五歳以上の者に限定されているとはいえ、高齢者雇用安定法という、雇用ということが明記されている法律に雇用でない措置も書き込まれることになります。そのため、将来的に雇用でない措置が六十五歳以下の労働者にもなし崩し的に広がる懸念も拭い去ることができません。本来雇用であるべきところを、事業主の責任を回避するために委託契約に変更するということはあってはならないことだと考えております。

 そのため、六十五歳以上の高齢者に限らず、就業者保護の観点から、現在雇用とみなされない就業形態で働く全ての者に対するセーフティーネットの構築に向けた議論、これが早急に進められていく必要があると申し上げておきたいと思っております。

 同時に、今回の法改正の目的が七十歳までの就業機会の確保ということであるならば、どの選択肢であっても遜色がないよう、それぞれの選択肢の均衡を図った上で、就業を希望する者に対し、その機会を確実かつ継続的に提供する枠組みとすることが必要だと考えます。

 二点目についてです。創業支援等措置を選択する者の保護に向けた具体的な対応が必要だということでございます。

 今回の制度に基づき業務委託契約を結ぶことが想定されるわけですが、契約上は委託契約であっても、高齢になれば事故の発生率は高くなってまいります。あるいは、労働安全衛生の観点からも、そういった視点から保護すべきものであるということを指針等で記載すべきだというふうに考えております。また、事故等が発生した際の補償のあり方についても検討が必要だというふうに考えます。

 さらに、事業主が委託契約の制度設計を行う段階において、意図的に委託契約の対象となる事業を限定したり、同業他社との取引がある場合には業務委託を行わないとしたり、あるいは、事業の開始当初のみの支援措置にとどまったりということも考えられると思います。そうしたことを防止するためにも、報酬のあり方や、年間を通じた仕事の発注、途中解約の要件等について、これも指針に記載するとともに、施行後の労働局や監督署による調査や適正な指導というのも必要だと考えております。

 三点目でございます。創業支援等措置における労使合意の枠組みについてでございます。

 創業支援等措置のみを企業が講じる場合には集団的労使関係による労使合意がその要件とされておりますが、しかしながら、裏を返して読みますと、創業支援等措置と雇用による措置、この二つを組み合わせた場合は労使合意が不要だ、こういう理屈になります。その点は、労働政策審議会の中でも議論をしてきたところでございます。

 私たちが危惧していることは、労使合意を避けるがために、例えば、他の事業所による継続雇用制度を形式的に創設しておき、実際は創業支援等措置しか活用されないといったケースでございます。その場合でも法律上の努力義務を果たしたということになりますが、これは法制度の趣旨からかけ離れたものだというふうに考えております。

 トラブルを未然に防ぐためにも、例えば、労使合意に必要な内容を指針で明確にした上で、その合意内容を労働局や監督署に提出するなどの措置が必要であると考えます。労働組合がない職場での話合いも含め、実効性のある制度を労使でつくり上げていくための枠組みを指針でどう定めていくのか、今後の大きな課題だと考えております。

 次に、レジュメのラストのページを見ていただきたいと思います。雇用保険法についてでございます。二点ほど申し上げたいと思っております。

 一点目は、国庫負担の引下げ措置の継続についてでございます。

 労働政策審議会では、労使ともに、雇用対策への国の責任に基づき、失業給付の国庫負担を本則に戻すべきだ、こういう意見を申し上げてまいりました。しかしながら、昨年十二月の審議会の取りまとめにおいては、雇用保険財政の安定的な運営が維持されると見込まれる二年間に限り暫定措置を継続することを、苦渋の決断としてやむを得ないものとしてきたところでございます。

 今回のリーマン・ショックを超えるとも言われる新型コロナウイルスの影響による先行き不透明感が漂う中、三年前の国会の附帯決議をほごにしてまで、この時点で国庫負担の引下げを更に継続することに対して、政府として十分な説明をお願いしたいと思っております。

 二点目は、高年齢雇用継続給付の縮小についてでございます。

 セーフティーネットの観点から継続すべきというのが基本的な考え方であり、縮小するのであれば、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保が前提となると考えます。

 継続給付を当てにした処遇制度設計を行っている企業も少なくないことから、まずは、同一労働同一賃金に関する法律に基づき、不合理な待遇差が解消されることに加え、高年齢労働者の処遇改善に先行して取り組む事業主に対する支援や、縮小後の激変緩和措置などが必要だと考えます。

 最後に、労災保険法について一点申し上げたいと思います。

 労災の認定について、複数の事業所での負荷が合算され、労災の給付も、複数の事業所の賃金をベースに合算して支給するもので、労働者にとってプラスな改正だと認識しております。

 合算の対象として、いわゆる一人親方として働く者が加入できる特別加入も入っているわけですが、実は、この特別加入制度は昭和四十年代から大きな修正がされておりません。そのため、この制度を今の時代に合うようにアップデートした上で広く周知、広報し、今回の高齢法改正により委託契約で働くこととなった者も含め、非雇用で働く者へのセーフティーネットを広げていくことが必要だと考えます。

 以上、我々の課題認識を申し述べさせていただきました。今後の国会審議におきまして、ぜひとも議論を深めていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

盛山委員長 ありがとうございました。

 次に、阿部参考人にお願いいたします。

阿部参考人 おはようございます。中央大学で労働市場に関する諸問題を研究しております阿部と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。

 意見を述べるに当たりまして、まず初めに、議員の皆様にはお願いしたいことがございます。

 御承知のとおり、新型コロナウイルス感染症問題は、日本だけではなく、世界各国に拡大をしております。経済社会にも甚大な影響を与えています。政府は雇用調整助成金の拡充など対策を進めておりますが、休業を余儀なくされている労働者もいらっしゃいますし、また、この三月に卒業予定の学生の中には、四月からの入社内定を取り消される、そういった方もいらっしゃるという報道がございました。

 感染症問題がいつまで続くのか先が見えない中、場合によっては労働市場政策を更に拡充していくということが必要になるかもしれません。四月以降の労働市場政策を円滑に進めていくためにも、今回の雇用保険法の改正につきましては、慎重、丁寧な議論はもちろんではございますが、早急に御審議をいただきまして、一つの結論をいただきたいと希望している次第でございます。

 それでは、今国会に提出されております雇用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、私の意見を述べさせていただきます。

 先ほど述べました感染症問題は、労働市場に一過性の影響を与える問題であり、いわば短期的な課題であると考えられますが、これとは別に、日本の労働市場には長期的、構造的な課題もございます。

 議員の皆様も御承知のとおり、少子高齢化の影響がそれでございます。少子高齢化の進展によって労働力の減少を余儀なくされておりますし、それが日本経済の成長力の足かせになりかねないと考えられています。

 国立社会保障・人口問題の将来推計人口によりますと、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口は現在おおよそ七千五百万人でございますが、二〇五〇年には五千三百万人程度と大きく減少していきます。今後三十年間で現在の約三割ほど生産年齢人口が減少すると考えられているところです。労働力人口の減少は、経済成長ばかりではなく、今後の社会保障の維持にも大きな影響を与えます。早急の対策が必要であることは言をまちません。

 昨年四月からは働き方改革が本格的に始まり、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方が選択できるような社会の実現に一歩踏み出しております。今回の法案も、働き方改革が実現しようとしている多様な働き方が、選択の実現だけではなく、より安心、安定した働き方になることを後押しする政策だと個人的には評価しております。

 労働市場の現状を見ますと、多様な働き方を必要とする労働者の多くが女性及び高齢者だと考えられています。二〇一九年の総務省統計局労働力調査によりますと、六十五歳以上の男女の労働力率は二五・三%、約四人に一人が、働いている、あるいは仕事を探している状態にございます。ちなみに、十五歳から六十四歳までの生産年齢人口の男女の労働力率は七九・六%となっております。また、今のところは仕事についていないけれども仕事をしたいと考えている六十五歳以上の方は、現在五十一万人ほどいると推定されております。

 こうした方々の労働参加の機会を整備するということは、働きたいと考える個人にとっても、また社会全体にとっても望ましいことであろうと考えております。今後は六十歳以上雇用継続義務化後の方々がふえてまいりますので、更に就業希望の方がこれまで以上にふえていくと考えられます。これらの方々の労働参加がかなうことは望ましいと思います。

 ただし、その際、注意しなければならない点もあると思っております。

 御承知のとおり、高齢者の方々の体力や健康の状態は個人差が大きく、個別の労務管理を行う必要性が高まります。実際のところ、六十歳以上の高齢者の労働時間や就業日数は、ほかの年齢階級と比べまして相対的に短いだけではなくて、個人的に大きなばらつきがあるということが観察されます。労働時間や就業日数を柔軟に決められる、そうした働き方を積極的に選択されている高齢者の方々も多いと考えられます。

 六十代後半あるいは七十代の方々がその希望に応じて活躍することは望ましいことではありますが、それには個々人の体力や健康に応じた多様な働き方を整備していく必要性があると考えられます。

 こうしたことから、今回の高年齢者雇用安定法及び雇用保険法では、高齢者の就業機会の確保及び就業の促進を一層展開していくため、従来からの雇用の継続以外にも、雇用以外の就業形態を継続就業の選択肢として示しております。労働者個人にとって働きやすい就業形態を選択できるよう、より幅のある多様なメニューを企業が提示することを可能にしています。

 従来から、自営業者は年齢にかかわらず就業できると注目されており、六十五歳以上の自営業者割合は他の年齢層に比べて高いことは事実です。ただし、自営業者が働きやすい形態とはいいましても、経営を軌道に乗せるためには、仕事を遂行するための知識や技能だけではなく、資金調達や顧客開拓などの経営基盤が必要となります。

 労使がその支援内容を十分議論した上で就労形態の一つとして雇用以外の働き方を選択することは、企業からの支援措置などもその条件に入っている点からもあり得ると、私個人としては認識しています。ただ、その際、雇用以外の働き方を選択するかどうかだけでなく、資金調達や顧客開拓といった企業からの支援内容についても、その企業の特性に合わせて、労使で十分議論していただきたいと考えているところでございます。

 女性の働き方についても、これまで以上に労働市場の整備を図る必要があると考えます。とりわけ、結婚や子育てと就業が両立するよう、社会全体で取り組む必要があります。

 従来から育児休業制度が整備されてきましたが、育児休業給付については雇用保険の失業給付等と同一会計から支給されることとなっておりました。失業給付は景気循環と連動して支出額が変動するのに対して、育児休業給付は景気循環とは関係なく一貫して支出額が伸びる傾向にある、また、育児休業給付が失業給付額と並ぶ水準に達している、こういうことから、今回の雇用保険法の改正では育児休業給付の区分経理を導入するということになりましたが、これもリーズナブルであると考えます。

 少子化対策のためには、労使だけでなく、社会全体で育児・介護休業制度、あるいはその周辺の制度を充実させていくことが望ましいと考えていますことを付言させていただきます。

 なお、今回、国庫負担の引下げを暫定的に二年間継続することになっておりますが、これは公労使ともに雇用保険の財政状況を鑑みた苦渋の選択であり、二〇一七年の雇用保険法改正時における附帯決議の内容に沿ったものではないということについては非常に残念に考えているところでございます。

 今後の労働市場を考えると、もう一つ解決すべき課題があると考えます。

 技術革新やグローバル化の進展に伴い、働き方そのものが大きく変化しており、いわゆるギグワークを行う雇用類似の働き方、あるいは副業などで複数の企業に雇用されるといった働き方が今後も増加していくと予想されます。今回の雇用保険法並びに労災保険法におきましてマルチジョブホルダーに対する給付が整備されるということは、いまだ不十分ではないかという御意見もお聞きするところではございますが、新しい働き方への対応への第一歩を踏み出したという点で評価できると思っております。

 もちろん、こうした新しい働き方が労働市場で増加していけば、それに合わせて制度を拡充することはもちろんのことであります。厚生労働省は、こうした新しい働き方の動向を十分に踏まえ、政策の検証と検討を継続して行い、適切な制度を整備していく必要があると思います。

 最後に、今回の法改正に当たりまして、労働政策審議会におきましては、公労使三者が十分に議論し、意見を集約してまいりました。労働現場の実態をよく知る労使の御意見を踏まえ、今回提出されている改正案となったことを御理解いただきまして、先ほども述べました新型コロナウイルス感染症に対する労働市場政策を円滑に進めるためにも、速やかな御審議を、労働政策審議会の委員の一人として希望したいところであります。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

盛山委員長 ありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 全国労働組合総連合の伊藤と申します。雇用と労働法制の担当をしております。

 きょうは、意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。私の方から、発言の要旨と、あと、改正事項についての評価というものを、要点をまとめた資料を皆さんのお手元に配らせていただいております。

 今回の法案、論点は多岐にわたりますけれども、私の方からは、中に問題と思われる点がありますので、三点ほどお話をさせていただきたいと思います。

 まず一点目です。法案の柱である雇用保険法そのものについてですけれども、雇用情勢の悪化に備える内容になっていないのではないか、修正すべきというふうに考えております。

 新型コロナウイルス感染症が景気と雇用に重大な影響を及ぼしております。全労連の地方組織が構えている各地の労働相談センターにも、今、多くの相談が寄せられております。九日には全国一斉の労働相談ホットラインをやりましたけれども、そこにはまずは三百四十九件の相談があり、百七十一件、要するに半数がコロナウイルス関連でした。相談内容としては、休校の影響で働けない保護者への助成制度ですとか、休業手当が払われない、そうしたお話が多かったんですが、中には、これを機にした解雇や雇いどめ、そういうものも出てきています。

 政府は雇用調整助成金の特例措置等を打ち出しておりますけれども、雇用情勢は残念ながら更に悪化する可能性があります。まさに雇用保険制度がその本領を発揮すべきときが来る可能性があります。ところが、提出されている雇用保険法案は、立案時の情勢として、今の情勢を想定したものとはなっておりません。雇用情勢は着実に改善が進み、失業者は減っている、そうした認識のもとでの内容になっております。

 幸い、今、先生方は法案を審議されているわけですから、この先を見通して、失業増加等の事態に備えるべきではないかと考えます。

 先ほど来問題にされている労働保険会計における国庫負担金、これは一七年の改正で本来の負担率の一〇%まで下げられています。法案ではこれはあと二年間継続するとしておりますが、この暫定措置の条項はやはり削除し、これは労使ともに言及があったと思いますが、国庫負担金の割合は本則どおりとし、危機に備えるべきではないかと考えます。

 あわせて、雇用保険の基本手当の日額の引上げというものを検討いただきたいと思います。コロナウイルスに関連する雇調金、それから保護者支援の措置として八千三百三十円という金額、これが雇用保険の上限額で、それと足並みをそろえたということで今注目が集まっておりますけれども、低過ぎるのではないかという意見が大分上がっております。これを、二〇〇〇年当時からかなり下げておりますので、生活を補填するに値するような金額まで引き上げていただきたい。

 これが一点目の修正の要求です。

 二点目、これが最大の問題だと考えますけれども、高年齢者雇用安定法から委託契約や有償ボランティアを可能とする条項は削除すべきだというふうに考えております。

 法案では、第十条の二というものを新設して、事業主に対して、六十五歳から七十歳までの雇用若しくは就業、創業支援措置という言葉で、これをとる努力義務を課すとしております。

 雇用については後ほど述べますけれども、まず、就業措置の方です。

 ただし書き以降を見ると、一定の要件を満たせば委託契約、有償ボランティアでもよいというふうにされております。企業から独立して自営で働く人は今でも存在しておりますし、労働法がその妨げとはなっていないわけで、委託契約の選択肢をここにつける必要がないわけです。必要がないどころか、これを入れることによって働き方に重大な悪影響を及ぼすことが懸念されると私は思っております。

 全労連でも、実際、労働相談をもとに、今、争議状態になっている、そういう仲間がいます。雇用契約を業務委託に切りかえられる、それによって必要な経費を全て自分持ちにされる、コストゼロ社員なんという言い方があるそうですが、非常に厳しい状態に置かれます。労働法の規制を逃れてコストダウンを図る、これをしたいという事業主は少なくない、そういうふうに思いますので、高齢者の就業環境整備の名目で、企業負担が軽い、不安定で保障のない働き方、こうしたものをふやしてしまうのは誤りではないか、こう考えます。

 御承知のとおり、フリーランスとなれば、労働法の適用が外れる、最低賃金規制も労働時間規制もかからない。コロナウイルス対策においても、有給休暇がない、感染症による休業補償も傷病手当金もない、こんな点が注目をされております。何らかの保護を求める声が上がっているわけです。

 特に高齢者で懸念されるのは、労働安全衛生の問題です。六十代後半の労働災害の発生率は、二十代後半に比べて、男性で二倍、女性で四・九倍と高くなります。加齢の影響が目立つのは、転倒、転落・墜落、それから交通事故など、命にかかわるものが多いわけです。幸い命を落とさなくても、治癒にかかる時間も長い。また、疾病を抱えながら就労する人の割合も加齢につれて増加するわけです。

 要するに、高齢者雇用安定法案の対象者となる方々は安全衛生面で特段の配慮が必要な人たちであり、労働基準法はもとより、労安法、労働災害補償保険法等による保護が特に必要な方々、こういうふうに言っていいと思います。厚生労働省は、人生百年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議報告書によってこうした知見も述べているところです。そうした報告書の内容とこの法案はちぐはぐじゃないか、こう考えます。

 委託契約になったとはいえ、元従業員だった方々ですから、事業主は退職前と同様の指揮命令をしてしまう、そういう可能性も高いのではないかと思います。そうなれば、委託契約は労働契約を偽装した違法なものとなります。こうした行為を誘発する制度を職場の労使合意を要件として合法化する、これは認めてはならないことだと思います。従業員の過半数代表者の同意はありますが、しっかりした過半数労働組合があればともかく、そうではない場合は、多くの場合、歯どめにはならずに、使用者の意のままの結論が導き出されてしまう、こうした傾向は、労働時間規制、三六協定等でも、既に先生方も御承知のとおりだと思います。

 また、そもそも労使が合意しようが労働基準法の適用を免れることはできないというのが労働法の原則だと思います。高齢者雇用安定法は廃案が妥当だぐらい、きつく考えております。少なくとも第十条の二のただし書き以降を削除すべき、こう考えております。

 六十五歳以上の雇用ならいいのか、これは望ましいとは言いつつも、別途、年金支給開始年齢の引上げのための地ならしとされるのではないか、こうした見方もあります。そういうものであれば反対であります。

 三点目、高年齢者雇用継続給付金についてです。

 年金制度の見直しのために導入された六十代前半の雇用確保措置義務ですけれども、実際、定年延長、定年廃止の事例は少数でして、多くの労働者は再雇用で働いております。その際の賃金水準の大幅な低下を助成する措置として、高年齢者雇用継続給付金は多くの企業で活用され、定着もしてきたと思います。利用数は年間累計で二十万人弱と、若干減っているとはいえ、中小企業等、私ども労働組合があるところでも、これをもとにしているところは多いわけです。

 法案では、給付率を二〇二四年までは現状維持とするものの、二五年以降は給付率を下げていく、その先には廃止の見通しも出ているそうです。こうした給付率の削減は労働者の収入減少や企業における賃金体系の改悪を促す可能性がある、こう考えております。これも反対であります。

 後ろの資料で、労災補償保険法と雇用保険法等の拡大についての態度表明があるところがあると思います。労災保険、雇用保険について、複数の事業で働く方々、マルチジョブホルダーについての一定の配慮をする、これは賛成ではあるんですが、副業推進というような政策自体については、働き方改革の本旨にも反するのではないか、長時間労働になるのではないか、こうしたことから私どもは反対をしています。

 この制度自体は、既にダブルジョブ、トリプルジョブをする方もいらっしゃいますから、これ自体はいいことだと思いますが、全体として副業、兼業を推進するという方向については懸念があるということも申し添えまして、私の発言にかえさせていただきます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

盛山委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

盛山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。谷川とむ君。

谷川(と)委員 おはようございます。自由民主党の谷川とむです。

 本日は、雇用保険法等の一部を改正する法律案の参考人質疑ということで、参考人の皆様方におかれましては、公私何かとお忙しい中、本委員会にお越しいただき、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。

 限られた時間ですので、全ての参考人の皆様に質問できるかどうかわかりませんけれども、御理解いただきまして、よろしくお願いいたします。

 阿部参考人からも冒頭お話がありましたけれども、新型コロナウイルス感染症対策、しっかりと私も取り組んでいきながら、経済対策も打ち出していけるように尽力してまいりたいと思いますので、どうか参考人の皆様方におかれましても御協力いただきたいなというふうに思っております。

 それでは、さて、令和元年六月二十一日に閣議決定された成長戦略実行計画において、高齢者の体力、運動能力はこの十年強で五歳若返り、歩行速度については十年で十歳若返り、健康状態だけを見ると、高齢者の就業率は現在より大幅に高い水準になる余地があるとの分析があります。

 また、六十歳以上の方で、七十歳以降まで働きたい、そういうふうに希望している高齢者は八割に上るという指摘もあります。人生百年時代を迎え、改めて、働く意欲のある高齢者がその能力を十分に発揮できるように、高齢者の活躍の場を整備することが必要であると私も考えております。

 そこで、まず、現行六十五歳から七十歳までの雇用機会を確保するための本改正法案では、定年の引上げなどの選択肢だけではなくて、他企業への再就職の実現といった新たな選択肢も明示した上で、事業主としていずれかの措置を講ずることを努力義務といたしております。

 多様な選択肢としたのは、体力や健康状態その他本人を取り巻く環境が六十五歳以前のものと比べて個人差が大きく、また、人件費等の負担が増加するという事業主側の懸念にも配慮したためであると考えられていますが、いかがお考えでしょうか。

 先ほど少し触れていただきましたけれども、また、今後議論となり得る完全義務化についても重ねてお聞かせいただきたいと思います。

 この質問は、正木参考人と阿部参考人、よろしくお願いいたします。

正木参考人 御質問ありがとうございます。

 多様な選択肢を設けて、さまざまな選択肢をつくるということにつきましては、まさに先生御指摘のとおり、高齢者の方々、働く側の方も、七十までまだ会社に縛られるのかといったことで、やはりいろいろな働き方をしたいというニーズがあるということですので、それに応えたいというふうなことを考えたということでございます。

 一方で、もちろん、定年の延長という形で働くということもやられている会社さんも既に中小企業なんかでもございまして、私どものことしの春季労使交渉の手引であります、経営労働政策委員会の報告書と一緒に出している手引なんかでも、新潟県のある会社さんの例を出しているんですけれども、七十歳まで雇用を延長する、そのときに賃金体系なんかも七十でもモチベーションがちゃんと維持できるように設計をし直した、それを労使で話し合ったと。

 先ほどからいろいろな参考人の方も御指摘になっていますけれども、問題は、やはり、工場、作業場ですので、安全、先生の御指摘の、おっしゃるようにやはり体力等も変わってまいりますので、それをみんなで話し合ったと。安全通路の確保ですとか、作業場とか棚の高さを見直すとか、より安全に作業できる自動化設備の導入とか、そういった工夫をして、お互いにうまくやっていきましょうということで七十まで雇用を延ばした、そうすると、周りの会社さんは六十五定年だけれども、自分の会社は七十ということで、競争力が高まったというお話を伺いました。

 また、高齢の方が、これは缶をつくる会社さんなんですけれども、地域のごみステーション、これを自分たちの技術でつくったらどうかと提案してつくったということで、おかげで地域の方からも会社が評価されるようになった、高齢者を七十まで活用してハッピーだったというお話を伺っておりまして、それを紹介しております。

 こういう好事例をどんどん展開していくことを私どもとしてもしていきたいなと思っております。

阿部参考人 御質問ありがとうございます。

 先ほど議員御指摘のとおり、人生百年時代に向けて、六十五歳から七十歳の雇用確保というのは非常に大事なポイントだと思います。

 それで、七十歳まで雇用を継続するということを基本としつつ、先ほど議員もおっしゃったとおり、体力あるいは健康状態、さまざまな事情が、高齢者の方々は多様性がありますので、雇用継続を基本としつつも、その他のさまざまな就業機会を提供するという制度設計というのは非常に望ましいかと考えております。

 以上でございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 いろいろと、高齢者の皆さんも、七十歳まで働くという中でいろいろな働き方をまた望んでいらっしゃる人もいますから、多岐にわたるような、その選択肢があれば、より一層第二ライフがいいようになっていくのではないかなというふうに思っていますので、また引き続きの御支援をいただきたいなというふうに思っております。

 しかしながら、なかなかやはり六十五歳から七十歳まで働くという、働きたい仕事につけない方もたくさんいると思うんですけれども、この六十五歳以上の求職者に対する再就職支援などが、何か有効的なものが、こういうのがありますよというのがあればぜひお聞かせいただきたいと思いますけれども、これも正木参考人と阿部参考人にお聞かせいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

正木参考人 先生おっしゃるとおりでありまして、会社で、今回できる選択肢も、例えば最後に社会貢献活動という選択肢があるんですけれども、地域の町内会とかボランティア活動までは選択肢にならなかったんですね。働く場所についても、関係会社まで今回は選択肢となりましたけれども、それ以外のところで活躍したいとかいったこともあると思います。そういった場合に、産業雇用安定センター、産雇センターとか、高齢者の雇用のマッチングをしている機関がございます。こういったところをぜひ活用していきたいというふうに思いますし、そういうところの活動を活発にしていただきたいなというふうに思っております。

 また、サプライチェーンの中で、今、大企業と中小企業の連携が本当に大事になっております。BCPなんかの部分でもそうなんですけれども、こういった部分でも、今回はグループ以外の会社という選択肢も認められましたから、大企業の方でも活躍できた、例えば経理ができる人とか、こういうエンジニアリングの仕事ができるという人を中小企業に積極的に御紹介していって、うまくマッチングが図られればいいなというふうに思っております。

阿部参考人 六十五歳ですぐにいろいろな仕事につきたいといっても、対応することは必ずしもできるわけではございません。以前から、やはり労働者の方々が自身で、キャリアやあるいは自分の将来設計、生活をどのようにしていくかというのを考えてほしいと思います。とりわけ技術革新のスピードが速いものですので、それまで身につけたスキル、知識がどんどんどんどん劣化していくという可能性もございます。

 したがいまして、六十五歳からの職業生活を考えるに当たっては、六十代あるいは五十代、四十代以前からキャリアカウンセリングを受講するといったことをしたり、あるいはリカレント教育を受講するといったことが我々個人にとっても必要かと思います。

 そのために、国としては、キャリアカウンセリングを整備するとか、あるいはリカレント教育の制度を整備していくということが必要になるかと思います。

 以上でございます。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 私も、リカレント教育やキャリアカウンセリング、またマッチングが非常に重要であるなというふうに思っていますので、その辺をしっかりと推し進めていけるように努力してまいりたいなというふうに思っております。ありがとうございます。

 次に、多様な働き方を選択する者や、パート労働者等で複数就業している者が増加しております。

 政府においても、働き方改革実行計画に、労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業、兼業を認める方向で、副業、兼業の普及促進を図ると盛り込むなど、副業、兼業を推進しております。そのような実情を踏まえて、セーフティーネットとしての機能を果たしている労災保険制度の見直しを行い、複数就業者が安心して働くことのできる環境を整備することも重要であると考えております。

 本改正法案では、複数の事業主に雇用されている労働者の場合に、非災害発生事業場の賃金額も合算して労災保険給付を算定し、複数就業者の就業先での業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行うこととしております。

 他方、複数就業者の中には、例えば、公務員である者が民間企業、この場合、労災保険適用事業場で副業を行うなど、就業の場所の一つが労災保険法以外の法律を受ける事業場である場合もあります。この場合における複数業務要因災害についての明文の規定はありません。本改正法案においても、複数就業者が他の災害補償制度に加入している場合の保険給付についての措置はありません。その点についてどうお考えでしょうか。

 正木参考人、よろしくお願いします。

正木参考人 先生御指摘のとおりでありまして、今回の労災保険法の改正というのは、現在は事故のあった事業場の賃金だけしか補償の対象となっていないところを、複数のところで働いていたものを合算できるということですので、先ほど阿部参考人もおっしゃっていましたとおり、今回のはまだ第一歩であるというふうに思います。

 まさに先生御指摘のとおり、ほかの保険のものとのという仕組みは今ございませんので、これから、もしそういったことも必要であるということであれば、連携をしたものをつくるとかいったことが、更に改善というのが考えられると思います。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 続きまして、先ほど正木参考人に少し触れていただいたんですけれども、働く高齢者の増加に伴って、体力の衰え等による労災も本当にふえてきております。二〇一八年の六十歳以上の労災発生数は全体の四分の一を占めております。高齢者の労働災害発生率は若年者に比べて非常に高い。

 また、七十歳までの労働者が増加すると、企業側には労働災害防止のための対策にますます積極的に取り組んでもらわなければ、高齢者が安心して働ける環境づくりができないというふうに思っております。その場合、労働災害防止について、企業側にどのような支援策、先ほど少し触れていただきましたけれども、もう少し踏み込んでお話しいただければなと思いますので、これは正木参考人、また仁平参考人、よろしくお願いいたします。

正木参考人 先生御指摘のとおりでございます。まず健康状態のきめ細やかな把握ということ、それから設備、作業環境の整備、こういったものをやっていくということになります。

 企業の方々にこういった点についてお伺いしてみたところ、やはり設備、制度を、スロープにしてもそうですし、いろいろ、段差をなくす、作業台の高さを調整する、いろいろな設備を設けるときに例えば助成金などの形で政策的支援があれば非常にありがたいという話を伺っております。ぜひよろしくお願いいたします。

仁平参考人 御質問ありがとうございます。

 確かに、先生御指摘のとおり、高齢者になると労災の発生率が非常に高くなるものですから、実は、昨日、厚労省の方で、高年齢者の安全と健康確保のためのガイドラインというものを作成し、発表しております。この中には、実は、請負形式による契約により業務を行う者にも本ガイドラインを参考にすることが期待されるというふうに書いておりまして、こういった内容を広く周知していただく、守っていただくということは一つ大事なことかなと思っております。

 あと、さまざまな政府の補助金などもあるとは思いますが、もう一つ、直接の労働災害とは別に、やはり高齢になると病気を持たれる方がどうしても多くなるものですから、そうすると、働き方などについても、働きやすい日数とか労働時間なども含めて、ハード面の職場の整備のみならず、こういったソフト面での働き方の工夫というのも、ぜひ、労使でも話し合いますし、それを支援していただくような仕組みというのもお願いしたいと思います。

 以上です。

谷川(と)委員 ありがとうございます。

 本当に、労働者の年齢が高くなればなるほど、多分、体の調子も変わってきますし、いろいろな状況の変化が生まれてくるので、一人一人の働き方ということはしっかりと、企業なり、その人なり、また同僚ですよね、助け合いながら職場環境をつくっていくべきであるというふうに思っています。

 そういう対策をいろいろ講じていただいても、メンタルヘルスもしっかりとサポートしていかないとやはりなかなかうまいぐあいに働けないのではないかなというふうに思っておりますので、私も、その意見をしっかりと受けとめながら、これからもしっかりと歩んでいきたいなというふうに思っております。

 残念ながら、もう時間となりましたので、この辺で質問を終わらせていただきますけれども、参考人の皆さん方におかれましては、本当に貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。しっかりとこれからも取り組んでまいりますので、引き続きの御支援を賜りますようによろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 きょうは、参考人の皆様方には貴重な御意見を御披露いただきまして、感謝申し上げたいと思います。

 まずは、限られた時間ですので、できるだけ参考人の皆さんの御意見を聞きたいと思いますので、質問に入りたいと思います。

 一点目は、昨今のコロナウイルスの感染症に伴って景気状況が悪化しているのではないかという声があります。さまざまなインターネット上の検索などでも内定取消しというのがキーワードになっているんですが、この内定取消しに対して経団連としてはどういう取組をし、どういうふうに考えているのか、教えていただきたいと思います。

正木参考人 この四月に入社されるという方の内定取消しというニュースは、まず本当に痛ましいことだと思っております。

 先週の金曜日、経団連に対して正式に、内定取消しのようなことがないようにと、政府の関係省庁から連名という形でいただきました。早速、金曜日のうちに経団連の会員企業に徹底もいたしました。

 中西会長に私の方から、こういった要請があったので、すぐ、徹底ということで、内定取消しのようなことがないように、雇用の維持というのは大事ですねということの通達といいますか、連絡を全会員企業にしましたという連絡を会長に入れましたところ、中西会長からも、雇用の維持は本当に大事だから、ここのところはぜひこれからも強いメッセージとして出していくようにというふうに指示を受けておりますので、まさに今御質問いただいたので申し上げておきますけれども、私どもとしても、ぜひ雇用の維持というものについて力強く取り組んでまいりたいと思います。

岡本(充)委員 雇用の維持というのは重要なんですが、確認ですけれども、内定が出た段階で雇用契約が成立している、したがって、内定取消しというのは雇用契約の解除に当たる、こういう立場でよろしいですよね。

正木参考人 失礼しました、おっしゃるとおりで、内定取消しというのは、これは雇用契約の解除と、特にこの三月の末という段階でございますので、同等のことということでございます。

岡本(充)委員 ぜひそういう認識で対応していただきたいと思います。

 続いて、仁平参考人にお伺いをするわけでありますけれども、高齢者の雇用についていろいろな懸念をされておりました。

 今回の創業による措置をしていくに当たり、いろいろなメニューを用意しています、雇用によらない措置の場合には労使合意だ、一方で、全部を一遍に提示をして、労使間での合意ということではなく、全部を一括して提示をし、そして結果として雇用によらない措置だけを講ずるというようなことがあってはならない、こういう御意見だったというふうに理解をしておりますけれども、その点について御懸念があるという理解でよろしいでしょうか。

仁平参考人 先生御指摘のとおりでございます。懸念を持っております。

岡本(充)委員 そういう意味では、本当に雇用によらない措置になることが懸念をされているわけでありますが、そこで、ちょっと阿部参考人にお伺いしたいのですが、働き方もいろいろ個人差が年齢で出てくる、働く時間、労務管理、いろいろばらつきが出るということでありますけれども、その中で、やはり、高齢者の方の雇用によらないいわゆる就業ということになってくると、労災見合い、若しくは事業場での災害に対して十分対応ができないんじゃないか。

 特に、私が懸念しているのは、そこで起こった事故について、本来、次は労働者が同じところで事故を起こすかもしれない、例えば、事業場内に段差があった、つまずいた、転んだ、それは、高齢者で雇用によらない措置で就業しているわけだから、労災ではないからそのまま放置というわけではなくて、やはりそこは事業者に何らかの対応を求めるべきだ、こういうふうに考えるんですけれども、その場合、リスクアセスメントをするなり、こうした事故が起こった概要をきちっと事業者が把握をし、対応する、そして労基署もそれを知るという仕組みづくりが必要なのではないか、こういうふうに思うわけですが、それについて、いかがお考えでありましょうか。

    〔委員長退席、冨岡委員長代理着席〕

阿部参考人 まず、委託契約であっても労働者性が認められる場合には現行の労働法でも対応されているということを御認識いただきまして、私もそのように認識しております。

 その上で、委託契約で労働災害が起こるというケースでございますが、これから国がどのような指針を出すかということにもかかわってまいりますが、基本的には事前に、労働災害を起こさないように、委託契約でも事前に合意しておくということが必要かと思います。

 それから、先ほどもありましたけれども、偽装委託といったことが横行しないように、それは今回の法が求めるものではございませんので、労働契約とみなすことにしていったらどうかというふうに個人的には考えております。

 以上でございます。

岡本(充)委員 いや、労働者性があるものについては労災だとなる可能性は高いんです。しかし、企業側としては労働者性がないと考えて就業させているという中で事故が起こる、これは労災と言われないという状況になる中で、でも、事業場の改善が必要なんじゃないか、そういう意味での仕組みづくりをしていく、今の労災と同様の、監督署も把握をし、事業場にも改善を求める仕組みづくりが必要ではないかということを問うているんです。それについてのお考えについて、賛成いただけるか、それとも、それには課題があるとお考えなのか。

阿部参考人 それにつきましては、当然私も賛成いたします。

岡本(充)委員 ちなみに、経団連としては私の今の提案についてどう思われますか。

正木参考人 委託の中身が、今どんなものをイメージされているかということだと思いますけれども、例えば、同じ事業場の中でということであれば、当然、ユニバーサルじゃないですけれども、同じようなものが設備なりなんなりには適用されると思います。

 例えば、今話題になっているギグワーカーみたいな形で、運送をお願いするというような形ですと、これは事業場の外に出てしまいますので、そこの安全というのを荷物の運搬をお願いする事業場の方ができるのかというと、それはかなり難しいんじゃないかというふうに思います。

岡本(充)委員 いや、私が聞いているのは、事業場の中で何らかの事故が起こるというような場合には、委託だからといってその起こった事故を放置するというのは問題ではないかということについては賛成していただける、そういう理解でよろしいですか。

正木参考人 先生のおっしゃるとおりであります。恐らく、事業場の何かの、例えば設備のふぐあいがあって事故が起こるとなると、これは労災かどうかはともかくとして、設備に何らかのふぐあいがあった、それを設置した者について責任があるというようなことじゃないかと思います。

岡本(充)委員 ぜひそれは対応をとるということを、これから労政審の中で議論していただくことになるんだろうと思いますけれども、私は、何らかの労働者保護と通ずるような政策的な取組が必要なのではないか、こう思っているんですが、仁平参考人はどう思われますか。

仁平参考人 先生御指摘のとおりでございます。

 雇用にあって非雇用にないものというのは、やはり安全等のセーフティーネットだというふうに思っております。そういう意味で、委託契約になったとしても、同じ職場で働いている者については安全配慮義務も課していただきたいと思いますし、加えて、労災があった場合については、監督署等に報告を求め、再発防止に向けた検討をしていくことが必要だというふうに考えております。

岡本(充)委員 どういう仕組みをとるかというのは本当に課題だと思いますけれども、やはり、監督署にもそういうことがあったということがわかる取組、改善をしたということがわかる取組、これを経団連でもぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

正木参考人 改善したということがわかる取組というのがちょっとイメージできていないんですけれども、先ほども申し上げましたとおり、高齢者にとって働きやすい環境をつくらなければ高齢者の方に活躍していただけないわけで、そういったものを整備するというのがやはり今後労使合意などを結んでいく上でも重要なキーポイントになってくると思いますので、働きやすい環境をどうやってつくったらいいかというのを労使で真剣に、安全のものも含めて話し合うべきだというふうに考えております。

岡本(充)委員 ぜひお願いします。

 次は、雇用保険の料率について伺いたいと思います。

 伊藤参考人は、現下の厳しい経済情勢の中で、この料率の国庫負担でいいのかという疑問点を先ほど呈されたと思います。そういう意味でいうと、今後の経済の状況を見ると国庫負担は定額であるべきだという御主張だと思いますが、いわゆる労使の負担については、これは今の法案では低過ぎるというふうにお考えなのか、これはこれでいいというふうにお考えなのか、そこはもう一度教えてください。

伊藤参考人 この間、中小企業家の方々のお話も聞いておりますが、恐らく、保険料率を上げることについては相当厳しいという御意見もあると思います。私も、そこは共有すべきだと、四月以降どうなるかはわかりませんけれども、極めて厳しい雇用情勢、それから景気そのものが厳しいという状況になれば、そこで使用者負担、労使の双方の保険料率を上げるとか、そういうことは難しいであろうということは言えると思いますので、まずは、国庫負担金、ここを本則に戻すことで備えるべきだ、そういう考えであります。

岡本(充)委員 国庫を本則に戻しても、私が想定している大きな雇用情勢の変化からすると、場合によっては足りなくなる可能性もあるのではないか、こういう懸念を持っているわけでありますけれども、その場合、労使の負担を上げることについて、それぞれ、経団連と連合さんの御意見を聞きたいと思います。

正木参考人 今、伊藤参考人がおっしゃったように、この四月から、先ほどからもあります同一労働同一賃金のことですとか、中小企業さんはかなりいろいろ負担が上がっているわけですよね。その中で、労使の負担する保険料率を今このタイミングで上げるというのは非常に厳しいだろうというふうに思っております。

 我々が提言したのも、ぜひ、厳しくなったときに上げるんじゃなくて、その手前のところで少しずつ、段階的に上がるようにする方がいいという議論の中で出していたわけですけれども、事ここに及んでは、今はとても上げられないというところでありまして、それで足りなくなったらというのは、改めて財政状況を見て考えるしかないということだと思います。

仁平参考人 ありがとうございます。

 現時点の雇用保険の積立金を前提に、仮に法案を、二年間に限って引下げを継続するということであれば、この積立金残高の動向をこれまで以上に注視しながら、必要に応じて一年でこの引下げ措置をやめるなどの機動的な対応も必要ではないかと思っているところでございます。

 仮に、本当に一年でこの積立金がかなり減るような状況であるということであれば、企業もそうですし、労働者の懐というのもかなり痛んでいるという状況ではないかと思っております。そういう意味では、労使に保険料の負担を求める前に、まず政府として、本当に非常事態であるので、一般財源というところでしっかり対応していただく、これが最初にやるべきことだというふうに考えております。

岡本(充)委員 重ねて聞くんですけれども、経団連として、これをもし一年でやめると、今は同一労働同一賃金で厳しいけれども、政府が本則に戻す、若しくは財政出動した上でこの〇・二という数字を上げていくということについて、経団連としては、場合によってはあり得るという理解でいいのか、いやいや、この二年間はしっかり引き下げたままにしてほしいと思っているのか、最後に、もう一回だけ確認をお願いします。

正木参考人 これはやはり財政状況によるということだと思います。まだ積立金が四・二兆ということでございますので、これで二年間本当にもたないのかどうかというのを、この後また、実際の状況を見て判断するべきだというふうに思います。

岡本(充)委員 きょうは、貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。

 時間になりましたので、終わります。

冨岡委員長代理 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 参考人の皆さんには、お忙しい中で足を運んでいただいて、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 私も、冒頭はコロナ対策で、雇用との関係です。

 もちろん、政府も今いろいろな手を打っておりまして、資金繰りももちろん大事だと思うんですが、やはり、私、最後は、守らなきゃいけないのは雇用だというふうに思っております。つまり、雇用にまで影響してくるほど大きな影響があるのであれば、ここは単なる需給ギャップの話じゃなくて、本当に立ち直っていくのに相当時間がかかるんじゃないか、本当にリーマンのような状況になるんじゃないかというふうに思っています。だから、いかにこの雇用というものへの影響を少なくしていくかということが大事だと。

 これまで政府は、雇調金、雇用調整の助成金を含めて、当初は、日中間の往来が減少するような旅行業とか、こういうところに限定していたわけですが、これを拡大して、感染症の影響を受ける全ての業種に広げたということもあります。要件も緩和した。さらには、今さらなる拡大というものも議論に入っているという状況でありますが、このコロナ対策の中で、雇用問題として、雇用としてどういうことをもっとすべきか。伊藤参考人からはさっき一部お話しいただいたと思いますので、仁平参考人からもいただきたいと思います。

    〔冨岡委員長代理退席、委員長着席〕

仁平参考人 先生、どうもありがとうございます。

 我々も、先週、労働相談をさせていただいております。受け切れないくらいの相談が来ているところでございます。その中には、職場の安全衛生上の問題もありますが、同時に、やはり雇用問題についての相談もたくさん来ているところでございます。まだ数字の上では余り失業率等に反映されていないところはありますが、先行きに非常に心配は持っているところでございます。

 先生御指摘のとおり、雇用調整助成金、これも使い勝手をよくしていただいているというふうに思っておりますが、北海道のみならず、全国で更に、補助率なども含めて、しっかり雇用に万全を尽くす、まさにリーマンを超えるくらいの取組をぜひお願いしたいというふうに思っております。

伊佐委員 働き方の点でもう一点なんですが、テレワークです。

 政府も、このコロナ対策の前からテレワークというものを多様な働き方あるいはワーク・ライフ・バランスという観点で進めてきたわけですが、後押しをしてきたわけですが、今回、こういう外的な要因で進めざるを得ないというような状況になってまいりました。結果、これで働き方改革というのがもしかすると進んでいくのかもしれませんが、ちょっと個人的に大胆な提案をして、ぜひ御意見を伺いたいなと。

 正木参考人と阿部参考人に伺いたいと思いますが、以前、くるみん税制というのがありました。このくるみん税制で認定を受けたら、税制優遇が受けられた。今はなくなったと思うんですが。今回、テレワークを推進するようなところに対して、テレワーク減税、法人税減税、こういうようなもので強力に後押しするというのもあるんじゃないかというふうに個人的には私は思っておるんですが、お二人の参考人の意見を伺いたいと思います。

正木参考人 御指摘ありがとうございます。

 まさにいろいろな手段をとってテレワークを推進するべきだと思います。今、自治体のレベルのものも含めて、かなりいろいろな助成金等もあると思います。

 ただ、テレワークに関しては、例えば私どものようなところですと比較的やりやすいというところはあるんですけれども、工場の現場があるですとか、お客様へのサービスを対面でどうしてもやらなきゃいけない仕事ですとか、テレワークを導入したくても、なかなかそれだと仕事にならない現場というのもございます。そういったところ等については、では何もないのかということに対して応えていけるような形で、いろいろな制度を考えなきゃいけないなというふうに考えております。

阿部参考人 一つの考え方としてはあるだろうとは思います。

 ただ、今、正木参考人も御発言なさったとおり、できる企業とできない企業というのがございます。私が所属している大学でもテレワークが可能かというと、それはちょっと難しいだろう。自宅から授業ができるかとか、あるいは千人を超えるような受講生のいる場合にどのようにテレワークを実現するかとか、いろいろな問題がありますので、その事業所、事業所の特性があるということを御認識いただきたいなというふうに思います。

 ありがとうございます。

伊佐委員 ありがとうございます。

 それでは、法案の内容に入っていきたいと思います。

 実は、先ほど、午前の審議でも議論になったのが、七十歳までの就業機会確保の中で、非雇用に対する懸念というものです。業務委託契約であったりとか有償ボランティアというものが、今回、七十歳までの方々には導入されるという法案になっておりますが、この非雇用への懸念というのは、参考人の中でも何人かの方から御懸念のお示しがございました。確かに、労基法が適用されない、これで大丈夫なのか、雇用じゃなくなって大丈夫なのかという点がありました。これは私は大事な指摘だというふうに思っております。

 もちろん、これは労使合意というのが要件ですので、勝手にできるわけではもちろんありませんが、その上で、今御指摘いただいた課題というのは、今回のこの法案で高年齢者の就業確保措置をきっかけに発生している問題というよりは、もともとこの問題というのはあって、例えば、フリーランスの働き方をどうするのか、委託契約の方々をどうやって守るのか、あるいは、企業家のセーフティーネット、このいわゆるセーフティーネットをどうするかというのはそもそもある議論であって、ここのところは政府もこれまでも議論してきましたし、これからもしっかりと中身を詰めて、実効ある政策を打っていくべきだというふうに私も思っております。

 その上で、では実際のニーズがどうなのか。この新しい措置に対して、では現場ではニーズがあるかどうか、経営者側から見て、あるいは労働者の側から見てどうなのか。私は、このニーズというのは全くの空集合じゃないと思っています。

 実際に多様なニーズというのが現場ではあって、そのニーズについてはどうなのかという点を、正木参考人と仁平参考人に伺いたいと思います。

正木参考人 いろいろなニーズのお話があるんですけれども、卑近な例でいいますと、私、社会保険労務士としても登録をしているんですけれども、同じ仲間に聞いてみますと、兼業、副業で開業というのをしていらっしゃる方もいる。私は、勤務等という開業できない形です。それは兼業、副業です。

 さらに、六十五歳以降のことを考えますと、私もできれば開業とかをしてみたいなと思うわけですけれども、いきなり開業してもお客さんがなかなかつかない。こういうときに、六十五歳から七十歳のこの新しい選択肢ができて、会社から例えば給与計算のお仕事がもらえるとかいうことになれば、まずは開業して、一人目のお客さんは自分のもといた会社だということでできますので、非常にこれはありがたいなというふうに思います。

 こういった、自分の夢を実現したいという方にとって、いい制度じゃないかなというふうに思っております。

仁平参考人 ありがとうございます。

 実は、先ほどのレジュメの中の資料にもちょっと引用させていただいておるんですが、連合の方で、十二月、昨年の末に行いました高齢者に関するアンケート調査というのをやっておりまして、本日は持ってきておらないんですが、その中で、どれぐらいのニーズがあるのかというのも実は聞いております。その中でいいますと、基本的には、高齢者の方は、現役時代と同じ会社で働くというのが実は一番目に多い選択肢でして、フリーランスというのはおよそ一割ぐらいの方が希望されているということでございます。

 ただ、十二月の時点と申し上げたのは、今の時点で、やはり、コロナの問題が発生して、どれだけフリーランスというもののセーフティーネットの脆弱性があるのかといったことについて気づかれた方も多いのではないかというふうに思っておりまして、こういったもので、もうちょっと少なく見積もっておいた方がいいのではないかというふうなのが一つ思っております。

 それともう一つなんですが、実は、六十五歳以上の働きたい方というのはやはり一定数おりまして、なぜ働けないのかということを聞いたときに、実は自分の会社では七十歳まで働ける制度がないんですと答えられる方が多いですので、今回の高齢法でこういった七十歳までの道筋を努力義務とはいえつくっていただくということは、非常に大きな一歩ではないかと思っております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 つまり、もちろんさまざま配慮しなきゃいけない事項があって、ガイドラインみたいなものでそれを少しでも担保するというのは大事な観点だと思いますが、少なくとも、今おっしゃっていただいたのは、経営者側から見ても、あるいは働く側から見ても、ニーズはあるんだということだというふうに理解をいたしました。

 次に、副業、兼業の話を伺いたいと思います。

 副業、兼業、複数就業者の額の算定を労災保険の制度でどうするかという話を私が調べると、最初に議論したのが平成十四年で、そのときに研究会を立ち上げて議論をして、有識者の皆さんの出した結論は、しっかりと複数の仕事の賃金を合算して給付額を出すべきだと、平成十四年、十五年の段階で既にそうなっておりました。

 ところが、労災保険部会に、労政審に持っていったら引き続き検討となって、ずっとその間検討がなかなかされずに前に進まなかったということです。ようやく昨年の労政審で結論が出された。労政審でも相当時間がかかってきたわけですが、その中で、ちょっと阿部参考人に伺いたいと思います。

 今回の改正内容は、対象になるのは六十五歳以上となっています。第一歩だというふうにさっきも言及いただきましたけれども、まず、議論の中で、なぜ今回は若者を対象にしなかったのか。そもそも、もともとは若者のマルチジョブホルダーをどうするかというのが議論のスタートだったと思うんですが、なぜ若者が対象とならなかったのかということについて伺いたいと思います。

阿部参考人 委員御指摘のとおり、今回は六十五歳以上に限定されているわけでございますが、労政審の中での議論では、全年齢にこの制度を実施するとなると、どの程度雇用保険財政に影響するか、事前になかなか予測がつかないということで、まず六十五歳以上から始めて、そこで、雇用保険財政への影響がどの程度か、それから制度設計上どのような問題があるか、これを確認した上で将来的には全年齢に制度を実施していくというのがよろしかろう、そういう議論だったと思います。

伊佐委員 ありがとうございます。

 阿部参考人、もう一回確認なんですけれども、この報告書の中でもそうですし、この法案でもそうですが、施行後五年をめどに検証するということになっていると思います。つまり、五年間見てみた上で若者に対しての適用をどうしていくかということだと思いますが、もう一度、五年間どういうものを見て、こういう条件があれば若者に適用できるということになる、そういう議論があったんでしょうか。

阿部参考人 議論がどこまで詳しく起きたかということは今すぐにお答えできませんが、まず、どの程度事故が発生するのか、それから、それはどの程度財政的な影響があるのか、それ以外にもどういった問題が起こるのか、こういったところを少し検証してみないと現段階では予測しづらいということだったと思います。

伊佐委員 ありがとうございます。もともとの議論の発端が若者というのもありましたので、しっかりとそこは、また五年間、見させていただきたいと思います。

 最後に、もう一問、阿部参考人に。

 もう一度さっきに戻って、今回の七十歳までの就業機会確保で、六十五歳までの雇用について、最初は三つの措置というのは努力義務でした。それが義務化になった。経緯をひもとくと、平成十二年に努力義務になって、平成十六年にそれが義務化されました。

 今回の七十歳までの就業確保措置についても、まず第一段階として努力義務化でやりましょう、その後、第二段階をやりましょう、これが労政審の議論だったと思いますが、正木参考人からも段階的にという言及があったと思いますが、では、六十五歳までは四年かけて義務化になりましたが、今回の七十歳までのこの措置については、いずれ義務化、どれぐらいのタイムスパンで議論があったんでしょうか。

阿部参考人 どのぐらいのタイムスパンでとか、あるいは努力義務から義務化へ移行するかといったことは、詳細には議論していないと認識しております。したがいまして、努力義務がいつ義務になるということも全く議論していないと記憶してございます。

伊佐委員 私、時間になりました。きょういただいたさまざまな意見をしっかりと法案の審議に反映させてまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 宮本徹です。

 今回の法案は、雇用によらない働き方を六十五歳から七十歳に入れていく、ここは朝の法案審議でも質問させていただきました。

 仁平参考人と伊藤参考人にお伺いしますが、今、新型コロナウイルスの影響で労働相談をやられているというお話がお二人からありましたけれども、雇用によらない働き方をしている方々からはどういう相談が具体的には寄せられているんでしょうか。

仁平参考人 先生、ありがとうございます。

 全国でやっているものですから十分集約はできておりませんが、フリーランスの方からも、契約を途中で打ち切られた、あるいは報酬を一方的に下げられる、特に、コロナなどについては、催物の開催がなくなったことで、やはりその分の補償がないなどの相談があろうかと思っております。全ては把握しておりませんが、重立ったものでございます。

伊藤参考人 御質問ありがとうございます。

 相談事例で寄せられたもののうち、中身は仁平参考人と同じような話がありましたが、もう一つ多かったのが、政府が新しく打ち出されている制度についての質問です。

 今回、休校措置につきましては、フリーランスの方々にも一定の救済措置をするという情報は流れておりますけれども、まだ受け付けはされておらず、詳細も出ていないということで、その中身について聞かれることが多いです。

 あわせて、雇用調整助成金等で雇用労働者は救われる、雇用保険非適用の非正規の方も一般会計から、こういう話が流れる中で、雇用保険非適用のフリーランスもそれは何かあるのではないかといったような期待と質問というものも来ているところです。

宮本委員 今回の事態で、雇用によらない働き方の脆弱性があらわれたというのを仁平参考人も先ほど述べられていましたけれども、本当に、まさにそのとおりだと思っております。

 それで、伊藤参考人の初めのお話の中に、従業員の過半数代表者の同意は、多くの場合、歯どめにならず、使用者の意のままの結論が導き出されてしまう傾向にあるというお話がございました。

 きょう朝の法案審議では、いや、これは労使合意が担保になるんだ、歯どめになるんだという答弁ばかり続いたわけですが、歯どめにはならないんだということについて、具体的にはどういう事例があるのか、述べていただけるでしょうか。

伊藤参考人 実際には、三六協定なんというのがよく出てくるところ、議論になったところですが、特に、従業員の過半数代表者を選ぶ仕組み自体が、法的には余り厳格にはつくられていないわけですね。経営者の方々が見ている中で挙手をするだとか、社内メールで賛否を問うだとか、それをすれば、当然、使用者の目を皆意識して挙げるわけです。結局、使用者が指名した方が代表になるというケースが極めて多いです。それから、従業員懇親会ですとか、そういう方の代表が横滑りするですとか、あるいは、人事権を持つような方が自分の名前で書いて判こを押してしまう、こうした事態もよく起きているというところです。

宮本委員 続けて伊藤参考人にお伺いしますが、企業が雇用を業務委託に切りかえる、委託契約の偽装を行っているというお話がありましたけれども、これについても、実例について詳しく教えていただけるでしょうか。

伊藤参考人 議員はきょう午前中は業務委託についての質問もされたというふうに承知しておりますが、私が先ほど若干言及したのは、もともとは営業職で、これは布団の販売をしている営業職の方々なんですね。その方々が、そろそろ自立して頑張れですとか、あるいは、成績が振るわない場合に、もう委託契約じゃなきゃ雇わないというような圧力をかけられる中で、雇用契約を委託契約に切りかえるというところに追い込まれて働き始めた。そうしてみると、当初、労働条件、就業条件等についてそう知らされないで働いてみましたら、営業用の車のリース料を取られる、ガソリン代も取られる、そうしたことで、経費は全て自分持ちである、中にはマイナス給与なんという話もあるそうで、売上げよりも経費の方が上回ってしまう、こんなことも起きているというふうに聞いております。

 今、当事者たちは裁判を起こして、この経費について返金要求もしつつ、そもそもその労働者性自体についても問いたいというような闘いをしている、そうした事案であります。

宮本委員 偽装委託、今でも雇用を業務委託に切りかえるという形で起きているわけですけれども、今度の法案ができたらそういう偽装委託が広がっていくのではないかという懸念があるんですが、この点について、これは正木参考人と仁平参考人と阿部参考人、お三方にお伺いしたいと思います。

正木参考人 今回の法案でそうしたものが広がるという認識は持っておりません。

 以前、派遣法の改正のときに偽装請負というのが問題になりまして、そういったことはできないようにということで、かなり監督も厳しくなっているというふうに思いますので、先ほど御指摘が前の議員からもありましたけれども、請負あるいは業務委託に関する問題というのは今回の法案に限らず共通の問題だと思いますけれども、いずれにせよ、監督というのは、それは厳しくされるものだというふうに認識しております。

仁平参考人 御質問ありがとうございます。

 雇用によらない選択肢の場合、労働関係法令による労働者保護が図られていないがゆえに、労使合意も含めてこういうフレームになっているんだろうというふうに私は思っております。

 その担保をとるために、我々としては、雇用でなく委託契約でなければなぜ業務ができないのかという、合理的で客観的な理由というのを労使が合意するときに文書ではっきりしておくべきではないかと思っております。その中身についても、行政に提出するなどして、後々のトラブルがないように、防止策を十分するべきだというふうに考えております。

阿部参考人 私も、正木参考人、仁平参考人と同じような意見を持っております。今回を機に委託契約がふえるとか、あるいは雇用によらない就労形態がふえるといったことは、特に雇用から非雇用へ変わるといったことは大きくはないだろうというふうに認識しております。

 また、その際にさまざまな問題が生じた場合は、国が今後ガイドラインを作成するに当たって検討していく事項もあると思いますが、問題のないように、労使合意を基本としつつガイドラインを作成していったらいいんじゃないかというふうに思っております。

宮本委員 朝、私、午前中の質疑で、東京電力のスマートメーター交換の作業をされている請負労働者の皆さん、東京電力が筆頭株主をやっている会社の一〇〇%子会社のワットライン社と請負契約を結んでいるわけですけれども、そこが今月、三月の四日に、その請負労働者の皆さんが組合をつくって団交を申し入れたのにそれに応じなかったことについて東京都の労働委員会から救済命令が出て、不当労働行為だということがなされたという問題について取り上げました。

 きょう、経団連の正木さんが見えていますのでお伺いしたいんですけれども、経団連加盟企業の法令遵守ということを考えた場合に、その加盟企業が業務を委託している先の法令遵守だとか、あるいは加盟企業が筆頭株主になっている企業の法令遵守に対して、経団連としてはどういう姿勢で臨まれているんでしょうか。

正木参考人 経団連は企業行動憲章を数年前に改定したんですけれども、そのときも、サプライチェーン全体のことを考えなければいけないという話をしております。また、今ですと、下請法の話なんかも含めて、サプライチェーン全体でこういうことは考えていかなきゃいけないですよということを会員企業に呼びかけております。

宮本委員 サプライチェーン全体で考えた場合、実際にそういう事態が起きて、不当労働行為だということで認定もされる事件が起きているんですけれども、そういう問題があった際には、経団連から改めて、何らか加盟企業に対して注意喚起だとかというのはされたりしないんでしょうか。

正木参考人 個別の事例で何か、指導とかそういうことをできる、行政の団体じゃないものですからそういうことはないんですけれども、毎年十月の企業倫理月間のときには必ず企業倫理セミナーというものをやりまして、会員企業、皆さんに参加していただくようにしまして、時々の、最近こういう事例があったけれども、こういうのはよろしくないねとか、こういうふうにしましょうとかということをセミナーでやっております。

宮本委員 現に起きている問題ですので、ぜひ注意深く経団連としても対応していただきたいなと思います。

 あと、これも経団連の正木参考人にお伺いしますが、高年齢雇用継続給付金を縮小する中身が今度の法案に入っておりますが、これは実際は多くの企業で活用されているものだと思います。そして、これがあることを前提に給料が低くなっている賃金体系のところも少なくないというふうに思うんですが、実際、高齢者の雇用継続給付金が縮小された場合は、経済団体としては、当然、賃金は引き上げていくべきだ、こういう取組をなされるということなんでしょうか。それとも、それぞれ任せということなんでしょうか。

正木参考人 まず、高齢者の六十歳から六十五歳の状況ですけれども、定年の引上げをやる会社がまずふえております。これはやはりモチベーションを上げるためにということでございます。そうしますと、この給付金はそもそも使えなくなるということでございます。

 今ある制度は、現役時代の六割まで賃金を下げても、一五%、つまり七割五分まで賃金を戻せるといいますか、一五%分助成金が出るということなんですけれども、これはやはり、同一労働同一賃金の考え方からすると、何か一律に下げてもいいような形に見えるというところが問題点であると認識しております。ただ、現実に、この制度を前提に今いろいろなものが進んでおりますので、今回についてはしばらくこの形を残して、だんだん縮減という方向になったと考えております。

 したがいまして、今度、一五%支給なのが一〇%に縮減になるということは、当然、今、現役時代の六割に下げて、残り一五%で補填してくれよという会社がもしあったとすれば、六五%に引き上げなければ手取りが今と同じ水準が維持できませんので、そういう意味で賃金の引上げをすることが迫られるということだと思います。

宮本委員 賃金の引上げを迫られるということで、経団連としてはそれは当然やらなければいけないという認識だと思いますが、その際の原資をどこから持ってくるのかといったときに、四十代、五十代の賃金の上がり方を抑えて持ってくるというところがあらわれないかという懸念の声もあるんですが、その点、経団連、いかがでしょう。

正木参考人 これは、従業員のエンゲージメントをどう保つかということだと思います。恐らく、今の御指摘のような、四十代、五十代のものを削って六十代の方につけますということを普通に説明すれば、四十代、五十代の方のやる気がなくなるということにつながると思いますので、ではどういうふうにして生涯賃金をふやしていくのかとかいったことについて、労使でよく話し合って処遇を考えていくべきだと思います。

宮本委員 時間になりましたので、終わります。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武と申します。

 本日は、四名の参考人の皆様、お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思います。

 今回の改正案に複数就業者等に関するセーフティーネットの整備等が盛り込まれておるわけですけれども、少し四名の皆様に御見解をお聞きしたいところは、兼業、副業というものがそもそも労働市場にとってプラスかどうかということをお聞きしたいと思います。

 全世代型社会保障検討会議の中間報告の中に、思考・分析といった高度人材では副業をしている人がそうでない人よりも本業での賃金が三六%高くなっていて、これは非常に兼業、副業のよい効果であると示唆されるというような記述がありまして、これの参考資料を見ておりますと、いわゆる高度人材以外の、運動タスク、コミュニケーションタスク、思考・分析タスクと三つ領域がありまして、運動タスクは恐らく肉体労働、ブルーワーカーに近いもの、コミュニケーションタスクは恐らくサービス業を中心とした職種、こういったものが含まれて、こちらに関しては相関関係が見られず、むしろ、運動タスクに関しては明確な優位性はないけれどもちょっと下がっているというデータもあります。

 こういうところを見たときに、社会保障検討会議等では、兼業、副業を推進したい、兼業、副業がいいよというようなメッセージを放っているように思っているわけです。

 そこで、疑問点として、兼業、副業が果たして労働市場全体を見たときにプラスかどうかという疑問がございます。四名の皆様に、その点について御見解を聞かせていただけたらと思います。

正木参考人 先ほど、社会保険労務士の友人が兼業、副業という形でやっているというお話を申し上げました。その方は、伺いますと、ふだん人事の担当で、会社の中で人事相談などをやっているんだけれども、土日に役所の労働相談窓口などで働いたりするとやはり会社の外からの視点というのもよくわかるということでしたので、そういう面でポジティブなんだろうと思います。

 ただ、先ほど、肉体というか運動系というふうなお話がございましたけれども、やはり、A事業所とB事業所と両方、雇用の場で働くとなりますと、これは労働時間の規制の問題があります。私どもも働き方改革に努めておりますので、働き過ぎというのは困るというふうに思っておりまして、その部分については今回の法案では未解決ということだと思います。ここは今後よく検討していかなければいけないところだと思います。

仁平参考人 御質問ありがとうございます。

 実際に副業、兼業で働いている方がふえているというのは事実だと思っております。ただ、その中身がどういう人なのかということは、よく考えてみないといけないというふうに思っております。

 高所得の方で自分の能力を生かすために副業されているという方も一方ではいるんでしょうが、数的に言いますと、特に我々の近くにいる人たちでいきますと、細切れ雇用を組み合わせて、やむにやまれず兼業、副業をする中で生活を成り立たせている人というのもおりまして、こういう人を見るときに、今足りないのはやはりセーフティーネットの問題だというふうに思っております。

 そういう意味で、今回の労災保険の通算、あるいは雇用保険についても六十五歳以上から始まりますが、こういったものについてもより広く拡大していくなどなどのセーフティーネットが前進していくということは、こういった方々にとっての一つ安心材料になるかと思っております。

 いずれにしても、まず、ディーセントワークといいますか、一つのところでちゃんと仕事ができて生活ができるというのが本来のあり方なのではないかというふうには思いますが、こういった実態もある中での対応としては、セーフティーネットの整備が大事だというふうに思っております。

阿部参考人 先ほど正木参考人、そして今、仁平参考人がおっしゃったとおりのことを私も考えますし、加えまして、この兼業、副業のメリットとしては、人生百年時代において長くキャリアを築く際に、一つ、今の仕事ではなくて、もう一つ仕事を持つことで、お試しのインターンシップ的な、実際にどういう仕事があるのかということを考えるきっかけにもなるかと思いますので、そういった点もメリットとしてはあるかなと思います。

 ただ、もちろん、だからといってやみくもにやればいいかというわけではなくて、その裏側には、やはり安全衛生管理ですとかそういったセーフティーネットも必要だろうというふうには思います。

 以上です。

伊藤参考人 二点申し上げたいんですが、一つは、やはり、低賃金でやむを得ず働かざるを得ない不本意ダブルワークの方のことをきちんと考える、本業での賃金をまともにする等が大事だと思っておりまして、私どもは、全国一律の時間給、千五百円の最低賃金実現を求めて、先生方にも要請をしている次第です。

 もう一点は、やはり、人手不足と働き過ぎが言われる中で、副業推進ということを余り強く言うと問題があるかと思います。

 今回、雇用保険について、複数事業所での働き方について労働時間把握をする、週単位で、十時間、十時間であれば二十時間という時間把握をするということがシステム上可能となるようなことが検討されているわけですから、これは労基法の三十八条にかかわりますけれども、複数の事業所で働いた場合の通算を、現行の法制を守りつつ、かつ従来よりも厳格に、本人が複数の事業所で何時間働いたかを把握し、その上で、労基法の原則にのっとり、要するに、時間外を、超えた場合には割増し賃金をきちんと使用者に課すということを従来より厳格にできる技術上の基盤が整ったと考えますので、そのあたりで労働時間把握、管理をしていくべきというふうに考えています。

藤田委員 どうもありがとうございます。

 今のお話をお聞きしても、労働市場全体に当てはめて兼業、副業を推進するというメッセージは、私は少し穴があるんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 今、四名の皆様から、どちらかというと労働者側からの観点からお話をいただきましたが、こういう労働関係の政策を考えるときに、皆さんはすごくバランスを持ってきょうはお話をいただいて感謝しているんですけれども、労使は常に対立関係で、労働者は企業に搾取されているというようなイメージの間違った認識を持たれて、企業側と労働者側が共通価値を、相互利益を最大化させるために持てないというような観点から議論を進めるのは、私はちょっと違うなと思うわけです。だから、いわゆる企業と労働者の権利義務の関係というのは、どちらか一方に偏り過ぎると労働市場がゆがむのではないかというふうにも思います。

 その中で、事企業側から見たときのお話を少しさせていただきたいと思います。

 特に、中小企業。中小企業の従業員は労働市場の七〇%と言われておりますから、非常に重要な問題です。中小企業は赤字企業も多いですから、非常に苦しい経営環境の中、そして、全体のGDPが自然増しない経営環境の中で経営をやっておるわけでございます。

 その中で、昨今の状況を見てみますと、そもそも労働人口が減少し、人手不足、そして採用難、採用コストもどんどん上がっていっています。その中で、消費税の増税があり、キャッシュレスへの対応を迫られ、そしてインボイスも検討されている。同一労働同一賃金、それから、労働債権の時効期間延長は先週ここの委員会で通りましたが、それから、今回のに含まれています定年延長、兼業、副業の推進、パートを含む年金の適用拡大、最低賃金の毎年の引上げ、社会保険料の毎年の引上げと、企業側から見ると、企業の経営環境を揺さぶるような、一つ一つはそこまで大きなインパクトではないにしろ、あわせて見ると、人を雇うのがかなりしんどいというような政策が近年立て続けに打たれているわけです。

 これは労働者保護の観点から見ると全てプラスに働くと思いますが、労働者と企業の権利義務関係を労働市場で最適化させていくために、中小企業の負担増というのをどう捉えるかというのを、皆さんの御見解をお聞きしたいと思います。四名の皆さんにお聞きできたらと思います。

正木参考人 おっしゃるとおりでございまして、経団連の経営労働政策特別委員会報告でも書いたんですけれども、二〇一八年度の一般労働者一人当たりの現金給与総額、継続的な賃金引上げが始まる前の二〇一三年度から比べまして四・四%ふやしたんですけれども、社会保険料負担が一〇%増となったということで、税引き前の賃金額の伸びは三・五%増にとどまっております。

 そんなことで、非常にいろいろな負担がかかってきておりまして、日本商工会議所の三村会頭も、本当に何重にも負担がかかってきているんだということを訴えておられるわけでございます。

 中小企業においては、賃金、それから社会保険料、さらに、もしこれで弾力条項が発動できなくなると、雇用保険料まで含めて引上げということになると、非常に負担は重たいというふうに考えます。

仁平参考人 先生、どうもありがとうございます。

 我々労働組合の中では生産性三原則というのがありまして、何かと申し上げますと、これは中小、大手かかわりなくということでございますが、一つは、やはり労使で雇用の安定というのはいずれにしても守っていかなきゃいけない。その上で、生産性向上を始め、そこでしっかり労使協議をしていくということが一つあろうかと思います。技術革新の激しい中で、足元の短期的な利益のみならず、将来に向けた投資、事業計画をしっかり話し合うということが必要だと思います。三番目が、その成果については適正に、株主もそうですが、そこだけに偏らず、働く人にもきちっと還元するといったことがやはり基本になくてはいけないんだろうと思っております。

 足元の人手不足などを考えますと、中小企業、取引関係なども含めて厳しさがあるというのは我々の傘下の労使関係でも重々知っているところでございますが、では、それに甘んじて何もしなくていいのかということでいけば、本当に、若手、中堅含めて誰にも来ていただけないような企業になってしまうのではないか。

 そういう中で、やはり魅力ある企業づくりということについては、労働組合としても、これは労使関係の中でしっかりやっていく課題、取組というふうに認識しているところでございます。

阿部参考人 さまざまな制約条件のもとでも、中小企業の中には、職場環境をよくしてこの人手不足を乗り切ろうというような企業も幾つもございます。私自身も、そういった企業にお邪魔させていただきまして、どういった取組をしているかといったことを勉強する機会もありました。

 そうした中で、やはり企業経営の中ではよい職場環境、労使関係というのが非常に大事ですので、そうした取組もお願いしつつ、行政もさまざまな補助金を準備しておりますので、それをうまく活用してよりよい職場環境をつくるといったことをしていただければいいかなと思います。

 もちろん、経営が苦しいということは重々承知しておりますが、その中で創意工夫を図っていくというのがこれまで日本の労使関係で取り組まれてきたことだろうと思いますので、そうしたことを今後ともお願いしたいなというふうに思っていますし、また、そうしたいい経営をしている企業に行政が支援をしていくということを拡充する必要性はあるかと思います。

 以上でございます。

伊藤参考人 御質問ありがとうございます。

 全労連も、労使関係を対立的に見てというのではなくて、健全な労使関係のもと、それがあることこそが事業の健全な発展だということで、各加盟労働組合は努力をしているところであります。

 先生のお話の中小企業の苦しさですが、これを見る場合に、労使、要するに、労を優遇し過ぎて苦しくなっている、そういう社会保障制度があるということではなくて、私はむしろ、大企業、中小企業関係、要するに公正取引ルール、この弱さからきているのではないかというふうに思います。

 最近、政府の方でも過剰な内部留保というお話がありますが、多くは、下請中小企業について話を聞きますと、この間、相次ぐ原価低減ですとかさまざまな制約がある中でほぼ利益を持っていかれてしまうんだ、このような社長の述懐をよく聞くところであります。

 私は、そうしたことについても目くばせをした上での中小企業関係というものをちょっと議論していただいてはどうかというふうに思う次第です。

 ありがとうございました。

藤田委員 時間になりましたので、終わらせていただきます。

 本当にきょうはありがとうございました。

盛山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 午後三時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十分開議

盛山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 引き続き、内閣提出、雇用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。船橋利実君。

船橋委員 自由民主党の船橋利実でございます。

 それでは、これから三十分間、質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、現在、六十五歳までの雇用確保措置を事業主の義務としている中にあって、七十歳までの就業機会の確保について新たに努力義務とする理由についてお伺いをするとともに、高齢者の就業ニーズや二〇四〇年ごろまでを見通した人口動向などを踏まえ、改正の必要性について御説明をいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 六十五歳までの雇用確保措置でございますが、これは、年金支給開始年齢が現在六十五歳に向けて引き上げられつつある中で、希望者全員の雇用継続を進め、雇用と年金の接続が図られるように今まさに労使で取り組んでいただいているところでございます。この六十五歳までの雇用確保措置を確実に進めていくということが一つ大きな課題でございます。

 この六十五歳までの雇用確保措置につきましては、平成二年に初めて努力義務が設けられて以来、長い年月をかけて今日まで取組が続いてきたという経緯があります。

 こうした時間軸に立って二〇四〇年ごろまでを見通しますと、団塊二世の方がそのころには六十歳代後半に達するということになるわけでございまして、六十歳代後半の雇用、就業機会の確保に向けた取組というものに今から着手する必要があるというふうに思っております。六十歳代後半は、年金も支給される中、就業ニーズも多様化することを踏まえて、選択肢の多様化も図ってこれを着実に推進していくということにしておるところでございまして、高齢者の多様なニーズに対応した活躍機会が促されるように、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思います。

船橋委員 ありがとうございます。

 次に、継続雇用制度を行う事業主の範囲について、これまでの特殊関係事業主に加え、今回の法改正の中ではほかの事業主にまで広げることとしておりますが、例えば中小企業や地方なども含めて、高齢者が経験などを生かして活躍できる場の確保につなげていければ、御本人にとっても企業にとってもプラスというふうに考えておりますが、見解を伺いたいと思います。

 あわせまして、今回、雇用以外の措置を新たに加えた理由、それから、委託をする業務が労働者にとって不利なものとならないようにするべきと考えますが、見解を伺います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今般新たに努力義務といたします高年齢者就業確保措置でございますが、六十五歳以降につきましては、年金が支給されるとともに、六十五歳以前と比べて、就労に対する考え方など、個人差が大きくなることにも配慮いたしまして、多様な選択ができる仕組みとするよう、今御指摘をいただきました他の事業主による継続雇用制度も含めて措置の選択肢を設けることとしたものでございます。

 この選択肢が生かされるためには、それの対象になります高年齢者の知識経験あるいは能力の活用が十分に図られるということが非常に重要となってくるというふうに思います。例えば、公益財団法人産業雇用安定センターというところがございまして、企業間の転籍支援を行っておるわけでございますが、こうした支援も活用しながら、御指摘のような、中小企業における人材確保対策、あるいは地方創生の観点からのマッチングの促進が図られることに寄与できないか、そういったことについてもよく研究してまいりたいというふうに思います。

 それから、高年齢者の措置を新たに選択肢として盛り込む理由ということでございます。

 これは、今申し上げましたように、六十五歳以降につきましては、年金が支給される中で、就業に対するニーズというのも多様化してくる、それに伴って多様なメニューを選択できるような仕組みを設けることが適当であるというふうに考えるからでございます。

 このため、改正法案につきましては、六十五歳までと同様の措置に加えまして新たに雇用以外の措置も設け、そのうちいずれかの措置を講ずることを事業主の努力義務としたものでございます。これによって、高年齢者が年齢にかかわらず活躍できる社会づくりというのを進めてまいりたいと思いますし、この雇用以外の措置についての適正さを確保する観点から、労使の合意を前提とするという仕組みを盛り込んでいるところでございます。

船橋委員 今ほどお答えをいただきましたが、こうした雇用以外の措置を新たに設けるということで、各企業においては、従業員の方々の多様な就労ニーズや企業の実情に合わせてさまざまな工夫を行っていくということも可能となってまいります。

 また、六十五歳以降は、年金も支給される中で、その就業ニーズというものもかなり多様化をしていくであろう、そうした視点に立って、雇用以外の措置というものが七十歳までの就業機会の確保を進める中で御本人にとっても企業にとってもしっかりと役立つように取り組んでいくということが重要と考えますが、見解を伺いたいと思います。

小林政府参考人 今御指摘いただきましたように、六十五歳以降というのは年金が出る、あるいは個人差も大きくなるということで、多様な働き方に対応した選択肢を用意するということでございますが、個人の自由度の高い雇用以外の措置ということで、雇用以外の措置も盛り込んでいるところでございますが、こういった措置が生かされるためには、労使双方が十分に話し合い、創意工夫をし、労使双方が真に納得して制度が導入されることが重要であるというふうに考えております。

 省令や指針というものをしっかりとしたものといたしまして、また、各事業主や労働者に制度を正しく御理解いただけるよう、丁寧に対応してまいりたいというふうに考えます。

船橋委員 今ほど御答弁いただきましたが、雇用以外の措置に関しましては、午前中の参考人質疑の中でも参考人の方々からさまざまな御意見があったということでございますし、今ほど省令あるいは指針のあり方についてのお答えというものがございましたが、そうした省令、指針をしっかりとしたものにしていくということは当然のことであろうというふうに思いますし、高齢者の方々の経験やあるいは能力というものを生かせるような働き方を広げていくという意味では、優良事例というものをふやしていくことが今後は非常に重要になってくるのではないかというふうに思う次第でございますが、そうした優良事例などの取組については、やはり厚労省としても積極的に企業あるいは労働者の方々に情報提供などをしていくべきということを要望、指摘をさせていただきたいと思います。

 次に、高年齢者の活躍というものを促進するためには、法整備ということに加えて、国による支援策というものも必要になってくるかと思いますが、今後どのように実施をされていくのか、お伺いいたします。

小林政府参考人 御指摘いただきましたように、六十五歳以降の取組というのは新たなチャレンジということでございますので、事業主による取組が進みますように、国による支援策というのも非常に重要となってくるというふうに考えております。

 今回の法改正におきまして、高年齢者就業確保措置を実施する事業主の方への支援につきまして、雇用安定事業として支援を行っていくということを法文上位置づけをいたしました。令和三年度からの予算を確保いたしまして、事業主の積極的な取組を促すよう支援をしてまいりたいというふうに考えております。

 具体的には、七十歳までの就業機会につきまして、制度を導入した事業主に対する助成や相談、援助などが必要となってまいりますが、こういった就業機会の確保だけではなく、高齢者が安心、安全に働ける職場環境の構築に対する支援、あるいは地域における多様な雇用、就業機会の確保に対する支援などを通じ、高齢者の方が年齢にかかわりなく活躍できる社会の実現に取り組んでまいりたいというふうに思います。

船橋委員 よろしくお願いいたします。

 次に、副業、兼業に係る労災保険及び雇用保険での対応ということについてお尋ねをいたします。

 改正案におきましては、近年、複数就業される方が増加している現状を踏まえ、セーフティーネットとしての機能を果たしている労災保険制度の見直しと、長年の職業人生で得られたスキルを生かして多様な就労を目指すと考えられる六十五歳以上の労働者を対象に制度を試行し、その効果などを検証するというふうにあります。

 必要性については理解できるものでありますが、どのように安心感が高まっていくのか、例示をしていただければと思いますし、雇用保険の制度の試行というのはどう行っていく考えであるのか、お伺いいたします。

小林政府参考人 お答えいたします。

 今般、副業、兼業に関します労災保険及び雇用保険の改正事項を盛り込んでおるところでございます。

 まず、労災保険でございますが、複数の就業先での賃金を合算した額を算定基礎として保険給付を行う、これによって労災事故があった際の給付額が増加するということになります。また、複数の就業先における業務上の負荷を総合的に評価し労災認定をするという仕組みを盛り込んでおります。これにより、今までであれば労災認定されなかった方が新たに労災認定をされるということにつながるものでございます。

 また、雇用保険でございますが、これまでは一事業所当たり週二十時間以上ということで適用してまいりましたが、二つの事業場での短時間勤務を組み合わせて週二十時間以上という働き方をしている方を適用対象にする、これは試行的に六十五歳以上ということでございますが、こういった取組によりまして、片方でも離職した場合に、給付を受けながら次の職を探すことができるといったことが可能になるわけでございます。

 こういった形で、複数事業所で雇用される労働者が安心して働くことができる環境を整備するというものでございます。

 また、もう一点、雇用保険の試行適用についての仕組みについてのお尋ねでございますが、これまでの仕組みとは異なりまして、労働者からハローワークに対して二つの事業場の所定労働時間の合計が二十時間以上であるという申出をいただきましたら、ハローワークにおいて必要な調査をして、その方が被保険者となれるかどうかということを確認いたします。それが確認できましたら、ハローワークの方から事業主に通知するということによりまして確実な適用が図られるようにしてまいりたいというふうに思っております。

 こういった詳細につきましては今後検討していくことになりますが、新たな仕組みということでございますので、事業主、労働者の方に対して十分周知を行ってまいりたいというふうに考えております。

船橋委員 今ほどお答えいただきましたが、働く皆様方のセーフティーネットとしては大変望まれているものであろうというふうに思うところでありまして、今ほど、まだ詳細の部分が、これからの部分もあるというようなお答えでありましたが、内容をきちんと詰められて、そして、そのことが働く方々にも、それから事業主の方々にもきちんと情報として理解される形で伝わるような工夫というものをぜひお願いしたいというふうに思います。

 次に、今回の労災保険法の改正に伴う保険給付等の額への影響というものはどの程度と見込んでおられるのか、また、施行までにしっかり周知をしていくべきではないかと考えますが、見解を伺いたいと思います。

坂口政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の労災保険法の改正では、先ほども答弁ございましたように、複数就業者の労災保険給付について、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や、給付の対象範囲の拡充等の見直しを行うものでございまして、これに伴います保険給付の増といたしましては、年間にならしまして約百二十億円の影響が見込まれると試算しております。

 また、周知につきましては、委員御指摘のとおり、私ども、施行準備を速やかに行いまして、労使団体等の御協力もいただきながら、わかりやすく積極的に周知を行ってまいりたいと思います。

船橋委員 ありがとうございます。

 次に、人生百年時代におきまして職業生活の長期化というものが見込まれる中にありまして、一つの会社で勤め上げるといった職業人生を希望する方のみならず、中途採用によりまして新たな活躍の機会を求める方々も多くいらっしゃいます。

 もちろん、これまでの、新卒一括採用での一つの企業で勤め上げるといった日本的雇用慣行のすぐれている面を大事にしていくという視点も大事でありますけれども、一方で、社会の流れを見てみますと、中途採用によるキャリアチェンジや再チャレンジを可能とする環境整備を更に推進していく視点も重要であると考えております。

 こうした観点から改めて改正趣旨を確認をいたしますけれども、大企業に対して中途採用比率の公表を義務づけることによってどのような政策効果というものを目指していらっしゃるのか、お聞かせください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 現在の中途採用をめぐる状況でございますが、正規雇用の採用者数全体に占める中途採用比率というのは大企業ほど低くなっているという傾向がございます。一方で、大企業におきましては長期安定雇用の機会が確保され、ただ、それが新卒の方にやや偏っているのではないかというような指摘もされるわけでございます。

 今回の法改正でございますが、大企業の事業主に対しまして、統一的な指標により、中途採用に関する情報の公表を求めるというものでございます。これによりまして、企業が長期的な安定雇用の機会を中途採用者にも提供しているという状況を見える化していこうというものでございます。数年分の公表を求めるということを考えてございます。これによりまして、求職者が就職を希望している企業が中途採用に積極的かどうかといった、採用方針に関する企業間での比較も可能となり、求職者にとっては職業選択に役立つ情報が得られることになりますので、中途採用を希望する労働者と企業とのマッチングを促進していく効果があるというふうに考えております。

 また、こういった統一指標とは別に、求職者が中途採用を通じて企業で働く自身をイメージできるようなその他の職場情報につきまして、自主的な公表が進むような支援ということも検討してまいりたいというふうに思っております。

 こうした取組によって、就職氷河期世代を始めといたしまして、中途採用を通じて就職希望をかなえようとする方々にとってメリットがあるものになるというふうに考えております。

船橋委員 ありがとうございます。

 今回の改正は、職場情報の見える化を図って、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングを促進していくことが目的であるということが、今の御答弁から理解することができました。

 求職者の方にとりましては、企業の中途採用に関する採用方針を把握できて、中途採用を通じて企業で働く自身のイメージというものを情報として得られることは非常に有用なことだというふうに思います。政府は、求職者の方が職業選択に役立つ情報が適切に得られるよう、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 次に、今般、雇用保険料について二年間の暫定引下げを実施いたしますが、今後景気が悪化しても雇用保険財政は大丈夫なのか、お尋ねをいたします。

自見大臣政務官 お答えいたします。

 今般の改正法において、雇用保険料の暫定引下げを措置するに当たっては、昨年十二月ごろまでの雇用情勢の動向を踏まえ、平成三十年度の失業等給付に関する収支の状態が継続するものとして財政運営に関する試算を行った上で、今後二年間は安定的な運営が可能だと判断したものであります。

 しかしながら、今後、例えば予期せぬ急激な雇用情勢の悪化が生じた場合には、労働政策審議会の意見を聞いて、弾力条項に基づき設定できる範囲内で保険料率を引き上げて収入を確保することも可能であり、そうした手段を必要に応じて活用しながら適切に運用してまいりたいと思います。

船橋委員 御答弁ありがとうございました。

 次に、雇用調整助成金の件に関して数点お尋ねをしてまいりたいと思います。

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大を防止するということが国民の命と健康を守る上では最優先の取組ということになるわけでありまして、このことに向けて最大限の努力を政府として今やっていただいていることに心から敬意を表する次第であります。また引き続きお願いしたい、こう思うところでありますが、一方で、経済に対する影響というのも、かなり深刻な状況が今生まれてきております。

 そうした中、この雇用調整助成金、北海道に関しましては、二月二十八日に北海道知事が非常事態宣言を発出いたしました。これを受けて、通常は雇用調整助成金の助成額というものが大企業の場合には二分の一、中小企業は三分の二ということになってございますけれども、北海道に関しましては、二月の二十八日から四月の二日まで、大企業は三分の二、中小企業は五分の四とする特例的な措置を講じていただいている次第でありまして、このことには大変感謝をいたしているところであります。

 現在、活動の自粛期間というものが三月の十九日ごろをめどとしていると聞くところでありますけれども、今ほども申し上げましたように、観光関連産業だけではなくて、ありとあらゆる業種、業界に今影響が出てきております。そうした中で、きょう、北海道からも、今の状況が六月まで続くと経済的な損失が三千七百億円に上るという試算が出てきております。

 こうした状況を踏まえた中で、優先されるべきものは感染拡大阻止、終息させるということでありますが、一方で、この深刻な経済的な状況というものに対してどう対処していくのか、特に雇用をどう守っていくのかということが私どもに問われているのではないかというふうに思います。

 そこで、今ほど北海道の特例措置のことをお伝えいたしましたが、実は、今、二月二十八日から四月の二日までの特例期間という設定なんですね。四月三日以降になりますと、これは毎月申請をする事務だというふうには聞いておりますけれども、四月三日以降に関しては通常の、大企業の場合には二分の一、中小企業は三分の二の方に戻ってしまうというふうに聞いております。

 ただ、現状を見る限りは、なかなかこれが今すぐに終息をする、四月二日までに終息するとは残念ながら見通せないという状況の中にありましては、更にこれを延長していくという措置についても御検討いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 北海道におきまして、新型コロナウイルス感染症患者が他の地域に比べまして多数かつ集中的に発生し、感染拡大防止のために知事が住民、企業の活動自粛を求める旨の宣言が発出されたところでございます。こうした自治体による宣言を受けまして、他の地域にも増して事業活動が抑制されることが見込まれるため、雇用調整助成金につきまして、先生からも発言がございましたが、さらなる特例を設けまして、助成率の上乗せ等を実施したところでございます。

 この特例の適用される期間でございますが、知事による活動自粛要請により事業活動が抑制される期間、今回、三週間ということでございますが、それに基づき設定しているところでございます。

 なお、新型コロナウイルス感染症に伴う雇用調整助成金の対応につきましてですが、今後、この感染症の雇用への影響も十分注視しながら、必要な対応を検討してまいりたいというふうに考えてございます。

船橋委員 必要な対応を検討したいというのは具体的にはどういう意味なのか、もう一度お答えいただけないでしょうか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましても、さまざまな、今、雇用情勢について、いろいろなお話、あるいは状況を把握しているところでございまして、それを踏まえまして、今先生からもお話もいただきました、あらゆる可能性も考えながら対応を検討してまいりたいということでございます。

船橋委員 各企業におかれては、雇用を守るために、売上げがどんどん減っていく状況の中でいろいろな努力をされています。その中で最優先されているのが雇用の問題なんですね。融資などについても政府を挙げてやっている中にあって、一方では、この雇用の調整助成金が私はワンセットだと思うんです。ですから、ここは、経済の状況がどうなっているかということをよく見ていただいて、私は七月の二十三日まで今回の雇用調整助成金は期限としては設けているというふうに聞いておりますので、それぐらいまで私は特例期間を設けてもいい状況だというふうに思っておりますので、指摘をさせていただきたいと思います。

 一方で、実は、雇用調整助成金を使えないという事業者さんがいらっしゃいます。私が聞いているのはタクシー、ハイヤーでございます。これは、今、特例的に、北海道に関しては減車をしてもいいという特例措置が出ておりますが、それにしても、全ての車両を休ませることはできない。それは公共交通機関としての使命があるからであります。

 したがって、売上げが下がる、しかし公共交通としての使命を果たすために休業ができない、こうした場合にも、何らかの支援策というものが、この雇用調整助成金をうまく使えるような方策というものを検討していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 雇用調整助成金につきましては、終日休業することを原則といたしております。この場合、必ずしも労働者の方全員を一斉に休業させる必要はございませんで、例えば、業務の状況に応じまして、一部の労働者の方は勤務していただいて、残りの労働者の方は休業していただくという場合につきましても助成の対象として認めているところでございます。

 今先生からお話がありましたタクシー、ハイヤー業界を始めまして、各業界、さまざまな事情を有するところでございますので、そういう中で、雇用調整助成金を御活用いただけるよう、引き続き丁寧な説明及び周知に努めてまいりたいと考えてございます。

船橋委員 せんだって、具体に言いますと、北海道のタクシー、ハイヤー協会の皆さん、幹部の方が直接厚労省の担当の方とやりとりをして、地元に戻られて、そして地元の労働局の方と更に詳細な詰めをやったんですよ。そうすると、結果として使えないという結論なんですよ。

 タクシーの場合には、一台の車を複数の方が運転手として使われるわけですよ。ですから、午前休んでしまえば、午前中は誰もその車を動かせないという話になっちゃうんですね。午後休ませれば同じようにそういうことが起きるんですよ。ですから、今お答えありましたけれども、その業種、業界ごとの事情というものをよく確認していただいて、どうやれば雇用調整助成金を使えるのかということを一緒になって考えていただいて、実行していただきたいと思います。

 それでなくても、実際に申請をしてから雇用調整助成金のお金がおりるまでに三カ月ぐらいかかるというふうに言われていて、そうすると、その間のつなぎ融資を受けなきゃいけないという話も実際出てきているわけでありますから、業種、業界への対応と、それから、早くこの雇用調整助成金も支給されるということに最大限の御努力をいただく、そのためには、窓口業務をしっかりと広げていくとか、そんなことも含めて御対応いただくことを私の方から要望させていただいて、質問を終わります。

 以上です。

盛山委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後四時休憩

     ――――◇―――――

    午後四時二十二分開議

盛山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 早速議論に入りたいと思います。きょうは定例外ではありますが、本当に細切れの中を御協力いただいている野党の先生方に感謝申し上げながら、私が感謝する立場ではありませんが、早速中身に入りたいと思います。

 副大臣、御苦労さまでございます。通告をしていないテーマで発言をしたいと思いますから、聞いておいていただきたいと思います。

 昨日、相模原の殺傷事件の植松被告に対して死刑の判決がなされました。平成二十八年七月の事件であります。十九人の重度障害者の命が奪われた事件でございます。お亡くなりになった方に改めて御冥福を祈りたいと思いますし、心に大きな傷をこうむられた方々にお見舞いを申し上げながら発言をしたい。きのうのきょうでありますから、議事録に一つ残したいという思いであります。

 裁判では、被告の動機の解明、必ずしも明らかにならなかったというふうに感じております。重度障害者は周囲を不幸にする不要な存在というような思いは、私には全く理解ができないわけであります。なおかつ、現場で処遇を経験する中で生まれた被告の思いのようでありまして、私も若い時代に重度障害児の施設で知的障害児の指導員をしておりまして、そんな思いからいたしますと、全く残念な思いをしているわけであります。

 ただ、私の経験からしても、これを特異なケースとして捉えるのではなくて、およそ福祉の現場で活動している人たち、その人たちに求められる資質といいましょうか、特に、他を思いやる、他に対して、他を理解するということは、とりもなおさず自身を知るということでありまして、自己認識あるいは自己覚知というものが福祉の現場に生きる人に求められる大きな資質であろう、私はこう思っております。

 そういう意味では、現場における、福祉の現場で働いておられる皆さん方の不断の取組が大事ではないか。ともすると弱い心も当然ながら福祉の現場で働く人たちにもあるわけでありまして、私も反省するところがあるわけであります。こうした自分自身を知るという自己認識、自己覚知、この資質を高めるための取組、不断の取組が私は求められると。副大臣も、福祉の現場で御経験をされておられます。虐待をなくすという意味でも非常に大事な取組ではないかと私は思っております。一人一人がみずからに問いかける作業であろう。

 二度とこうしたことが起きない、起こしてはならない、あってはならない、こういう思いで、厚労大臣はきょうは特段発言はされておられないようでありますが、また時を見つけて、私は、そうしたメッセージを福祉の現場で働く人たちに発信していただきたいし、そんな取組をお願いしたいというふうに思う次第でございます。

 それでは、雇用保険法等の一部を改正する法律案の質疑に入りたいと思いますが、高木厚労部会長の御指示で、コロナ対策をまずやれ、こういうことでありますから、新型コロナウイルス感染症対策についても、特に雇用保険の関係から内容を確認させていただきたい、このように思います。

 雇用調整助成金、話が先ほども出ておりましたけれども、第一弾の要件緩和に加えて、第二弾ではさらに、特例措置の対象拡大、その周知徹底、あるいは特別な地域における助成率の上乗せ、これを打ち出しているわけでありますが、具体的な中身と予算額をお示しをいただきたい、財政措置の中身をお示しいただきたいと思います。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症に係ります雇用調整助成金の特例措置につきましては、雇用保険被保険者期間が六カ月未満の労働者を助成金の支給対象とする、あるいは、過去に受給していた事業主に対する受給制限、クーリングを撤廃するなどのさらなる要件の緩和を第二弾におきまして行うこととしたところでございます。

 さらには、地方公共団体の長が住民、企業の活動自粛を要請する旨の宣言を発出している地域、現時点では北海道のみということになりますが、におきまして他の地域にも増して事業活動が抑制されることが見込まれるため、雇用調整助成金のさらなる特例を設けまして、助成率の上乗せ、また、雇用保険の被保険者とならない週二十時間未満の非正規雇用の労働者を対象とした支援等の特例措置も実施することといたしました。

 予算額についてでございますが、令和元年度予備費、一般会計二十五億円、雇用勘定既定経費で三百四十九億円ということでございまして、計三百七十四億円を計上しているところでございます。

桝屋委員 雇用調整助成金、雇用保険の二事業で三百四十九億ということでございます。さらには、一般会計で二十五億。二十五億については、特別地域の非正規分ではないかなと理解をしております。

 この三百四十九億円という事業規模でありますが、これはどうですか、通常、最近は非常に経済の状況はいいわけでありますが、最近の雇用調整助成金の支給実績からいきますと、どういう規模になるのか。改めてお示しをいただきたいと思います。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 直近の支給実績、平成三十年度ということでございますが、大変雇用情勢が良好であるということもございまして、平成三十年度の支給実績は二十億円ということでございます。

桝屋委員 直近が二十億という中で三百四十九億の事業費を確保されたということで、これは、特別の思いで取り組もう、こういうことであろうというふうに思います。

 そこで、一般会計二十五億円の話であります。それから、さらには、特別な地域でございます、先ほども北海道の話が同僚議員から出ておりましたけれども、緊急特定地域特別雇用安定助成金、この取組が今進められているというふうに思いますが、これは、北海道、先ほどの御説明では知事が、首長がそうした宣言をされるということでございますが、単にそれだけなのか。

 どういうことで北海道が指定をされたのか、その詳細と、今後北海道と同じような地域が出てきた場合は同じような対応が可能なのかどうなのか、お示しをいただきたいと思います。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 地域指定に当たりましては、まず一つ目といたしまして、新型コロナウイルス感染症の患者の数が他の地域と比べ一定数以上かつ集中的に発生している地域であること、それから二つ目といたしまして、感染拡大防止のために、要望に係る地域が所在する地方公共団体の長が、一定期間について住民、企業への活動自粛を要請する旨の宣言を発出していること等の要件を満たしているか、確認することといたしてございます。

 現在、北海道のみを指定しているところでございますが、今後同じような地域が出てくるということでございましたら、同様の取扱いをしていく考えでございます。

桝屋委員 要件についてでありますが、一定の要件ですが、他の地域に比べて一定数以上かつ集中的な発生、これは具体的には、十万人当たりの患者数、この患者数が感染数なのかどうなのか私も疑問なんですが、患者数が全国平均より相当程度高く、大幅な増加が懸念される、したがって、自治体の長が一定期間について宣言を発出している、こういうことになるんだろうと思うんです。

 十万人当たりの患者数が全国平均より相当程度高く、私の理解では、今、北海道は患者数がもう百人を既に超えて、百四十八人、あるいはもうちょっとふえているかもしれませんが、全国平均でいきますと、それこそ八百人台でありますから、人口十万人でいきますと〇・六三ぐらいの数字になるのかな、こう思っております。それでいきますと、北海道が十万人当たり二・八、四・四倍というような状況かと思いますが、これぐらいが一つの目安というふうに理解をしていいのでありましょうか。重ねてお伺いします。

達谷窟政府参考人 今先生お話ございました北海道、私ども、ちょっと古いデータでございまして、三月九日現在でございますが、十万人当たりの患者数が五・五倍という数字でございまして、他の地域に比べて一定数以上かつ集中的に発生しているということでございますので、一定数以上、今申し上げましたような一定数、あるいは集中して発生しているということで、クラスターが確認されるとか、そういう状況も総合的に勘案しながらやっていきたいというふうに考えてございます。

桝屋委員 総合的に判断というのが大変難しいわけでありますが、北海道は確かに、全国平均に比べて四倍から五倍、四・四倍、四・五倍でありますけれども、愛知県が私の計算では二・五倍、あるいは、人口十万人ということでいきますと、高知県は二・七倍ぐらい出ているんですね、人口が少ないからそういうことになるんですけれども。そこは、今、達谷窟審議官がおっしゃったように、クラスターの存在であるとか、あるいは何よりも首長さんがどういう判断をされ、どういう取組をされているかということだと思います。

 ただ、最近の傾向を見ますと、大阪なんかも相当、大阪や愛知もふえておりますから、では北海道のように首長さんが宣言を出すかというようなことにもなるわけでありますが、今後の動向にはぜひ注意をしなきゃならぬなというふうに思っている次第でございます。

 それで、副大臣に聞いていただきたい話でありますが、これは私も悩みながら質問します。

 雇用調整助成金、雇調金ですが、二〇〇八年のリーマン・ショックの際は、事業者があわせて教育訓練を実施した場合の加算額、当時千二百円であったものを一気に六千円に引き上げる取扱いを行いました。これは大変に喜ばれまして、多くの事業者が実施されたわけでありますが、私も副大臣時代に随分反省をしたわけですが、中には不適切な事例がたくさん出てまいりまして、いわゆるモラルハザードが起きてしまったという反省もあるわけであります。

 今回の新型コロナウイルス感染症対策、我々もいろいろな団体にお話を伺っておりますが、例えばバス会社などは団体客が全くなくなったと、本当に悲鳴のような声が聞こえているわけでありまして、これは、今後の状況を見ながら、リーマン・ショックの際の取扱いも念頭に置いて、例えば、さっき申し上げた緊急特定地域特別雇用安定助成金の地域であるとか、あるいは業種を限るとか、知恵の出し方もあるだろうと思いますが、私は、今後の対応を状況を見ながら検討する必要があるのではないかと要望しておきたいと思います。

 必要なことは何でもする、こういう姿勢が大事ではないかと思いますが、副大臣の御所見を伺いたいと思います。

稲津副大臣 お答えさせていただきます。

 雇用調整助成金の教育訓練に係る加算につきまして、通常一日千二百円の加算額であったところを、リーマン・ショックに伴う大変厳しい雇用情勢を踏まえて、大企業に四千円、中小企業に六千円、こうした引上げが行われて、そして、その後も必要な見直しを行いつつ特例措置を講じてきた、このように承知をしております。

 今般の新型コロナウイルスの感染症に伴う雇用調整助成金の対応につきまして、今後、新型コロナウイルス感染症が雇用に与える影響をしっかり、十分注視しながら検討していかなければならないと思っています。

 今委員からも御指摘のありました、例えばモラルハザードのことですとか、しかしながら、もう一方でやはり大変な厳しい雇用環境情勢に今陥っているということを踏まえたときに、例えば業種の指定とか地域の限定等々、そうしたことも十分加味しながら、教育訓練の加算について、過去の取組も参考にしながら、どのようなことができるのか、こうしたことを検討してまいりたいと考えているところでございます。

桝屋委員 ありがとうございます。ぜひ御検討をお願いします。

 先ほどの、午前中の参考人の質疑でも、参考人から、リーマンを超える対策が求められるという声もありました。あるいは、北海道だけでなく、本当に必要な地域をよくよく見定めてもらいたい、こういう声もあったわけであります。

 今副大臣からも御答弁がありましたが、過去の事例、教育訓練の判断基準として、助成金の対象とならない教育訓練、いろいろ事例がありました。これもよく私もわかっておりまして、そうしたことも十分踏まえながら御検討をお願いしたいというふうに思います。

 もう一つ、第二弾では、学校の臨時休校に伴う保護者の休暇取得支援、いわゆる新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金、非常に長い助成金でありますけれども、打ち出されています。これは正規、非正規を問わない新たな助成金の創設ということでありますが、事業費の枠が千五百五十六億円となっているわけでありますが、この予算の中身あるいは事業について御説明をいただきたいというふうに思います。

藤澤政府参考人 お答えを申し上げます。

 小学校等の臨時休業等に伴いまして子供さんの世話を行うために仕事を休まざるを得ない保護者の方々を支援し、子供さんの健康や安全を確保するための対策といたしまして二つございまして、一つは、雇用されている方には、今委員がおっしゃいましたように、正規雇用、非正規雇用を問わずに、有給、賃金の全額支給ということで、有給の休暇を取得させた企業に対して休暇中に支払った賃金相当額の全額を支給する助成金を創設いたします。

 また、二つ目といたしまして、個人で就業する予定であられた方々についても、一定の要件を満たす場合に、就業できなかった日数に応じまして、一日四千百円を定額で支給する措置を講じることとしてございます。

 予算についてのお尋ねでございますが、雇用保険の被保険者を対象とするものにつきましては労働保険特別会計を活用し、また、雇用保険の被保険者でない方を対象とするものにつきましては一般会計により措置をすることとしております。その予算措置額でございますが、それぞれ、一千八十七億円程度、また、一般会計の方が四百七十億円程度を見込んでいるところでございます。

桝屋委員 ありがとうございます。

 昨日も、参議院でこの点は随分議論があったようでございます。今、一千八十七億円については、例の両立支援助成金の一環として取り組む、こういうことだろうと理解をしております。

 それから、特に個人の場合でありますが、二十時間未満あるいは非雇用者について、昨日の参議院でも、これの対象は十二万人というような御説明をいただきました。これは予算上の数字だろうと思いますが、今御答弁がありました一定の要件、特に委託を受けて個人で仕事をする場合の支援なんですが、具体的なスキームとそれから一定の要件を、改めて簡略に、この衆議院の厚労委員会の場でも御説明をいただきたいと思います。

 特に、雇用されていない個人の場合はどこに相談に行けばいいのかということが一番我々は心配でありまして、事業主なのかどうなのか、だけれども、事業主というのは、今回、事業をしないわけでありますから、そうした方々はどこに相談に行けばこの事業にたどり着くのか、ここを御説明いただきたいと思います。

稲津副大臣 お答えさせていただきます。

 個人で業務委託契約等で仕事をされている場合の方への御支援については、その就業できなかった日について、一日当たり四千百円の支援ということでございまして、この支援の対象となるのは、二月の二十七日から三月三十一日までの間に、新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業等をした小学校等に通う子供や、新型コロナウイルスに感染した又は風邪症状など新型コロナウイルスに感染したおそれのある小学校等に通う子供の世話を行うことが必要になった保護者であって、これが一定の要件を満たす方であるというふうになっています。

 その具体的な要件につきましては、一つは個人で就業する予定であった場合、業務委託契約に基づく業務遂行等に対して報酬が支払われることになっており、発注者から一定の指定を受けている場合などというふうにお示しをさせていただきました。

 そして、御質問がありました相談窓口の関係でございますけれども、身近な相談窓口として、コールセンターを三月十三日に設置をさせていただきました。問合せ先等は厚生労働省のホームページに掲載しているところでございます。

 そして、もう一つ、きょうここで明確にお答えさせていただきたいのは、あすになりますけれども、制度の詳細ですとか申請先を厚生労働省のホームページでお知らせするとともに、支給申請の受け付けを開始するということで、申請に当たってはできる限り必要な書類を簡素化するということで、支援が必要な方にしっかりと届くように最大限努力していきたいと思っております。

桝屋委員 副大臣、その受け付け申請は、個人が、多分個人になると思うんですが、どこへ出すんでしょうか。

藤澤政府参考人 申請先につきましても、ちょっとまだ現在調整中でございますが、身近なところにということで現在考えているところでございます。また、郵送の形でまずは出していただくようなことで現在調整をしているところでございます。詳しくは、あす発表したいということで考えております。

桝屋委員 大変に御苦労さまです。今、本当に徹夜作業でその準備をされているというふうに思います。明日、厚労省のホームページで明らかになるということでございますから、またそうした内容についても、我が党でもしっかり、地方議員と連携をいたしまして、PRに努めてまいりたいというふうに思います。

 もう一点、雇用保険二事業への財政の影響について確認したいと思いますが、これは飛ばします。雇用安定資金、今一兆三千億ぐらいあるだろうと思っておりまして、ここは十分対応できる資金があるという理解を私はしておりますので、次の質問に行きたいと思います。

 本体の質問に入りたいと思いますが、育児休業給付の独立について、今般、失業給付から育児休業給付を独立させるということでございまして、私は、時代の流れを受けた大事な取組だ、改正だというふうに思っております。

 ただ、少子化対策の観点から育児休業の取得促進を進めているわけでありまして、今後とも増加が見込まれますが、令和六年までの試算について示されているというふうに理解をしておりますが、改めて、これは事務方で結構でございますが、お示しをいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答えいたします。

 育児休業給付につきましては、今御指摘ございましたように、育児休業取得促進に伴いまして、近年一貫して増加をしております。平成二十八年度から平成三十年度までの三カ年の平均が八・八%の増ということになっております。

 こうした状況が当面は続くのではないかというふうに考えておるところでございまして、それに基づいて試算をし、これは労働政策審議会の方にもお示しをしているところでございますが、直近、平成三十年度の実績五千三百十二億円に対しまして、この伸びが続きますと、六年度の支給額は約九千億円ということが見込まれるところでございます。

 今般、育児休業給付の財政基盤の見直しを行いまして保険料率を設定したわけでございますが、今申し上げた今後五年間程度の給付の伸びを勘案いたしまして、収支のバランスがとれるようにしようということで、千分の四をこの育児休業給付の料率として設定をいたしたところでございます。

桝屋委員 一つ飛ばして、これは副大臣に確認したいんですが、男性の育児休業給付、実は、多分まち・ひと・しごと、地方創生の総合戦略の中で初めて明らかになったんじゃないかと思いますが、現行六%の取得率を三〇%に引き上げるという野心的な目標、私は最初見たときにのけぞったのでありますが、これが二〇二五年の目標だったと記憶しております。

 しかし、今の局長の御答弁からしますと、これは自然にここまでいくのかなというふうに思ったりするのでありますが、六パーから三〇パーへの増加、二〇二五年までのこの目標は試算の中に入っているという理解でいいのかどうか。では、局長でも結構です、どうぞ。

小林政府参考人 お答えいたします。

 男性の育児休業給付の初回受給者数でございますが、近年、二年で二倍、毎年一・四倍ぐらいのペースで増加をしております。

 先ほど申し上げました財政運営試算につきましても、このトレンドでの増加ということで仮定をしております。これでまいりますと、今御指摘いただきました二〇二五年、三〇%というものを達成する数字ということになっております。

桝屋委員 六パーから三〇パー、これを織り込んだ財政試算だという理解でよろしいですね。

 男性の育児休業取得率がこれからどんどん伸びていく、大いに結構なことでありますが、今回、国庫負担率八分の一は変わらないわけでありますが、せっかく失業給付から独立をさせるということでありますれば、雇用勘定に育児休業給付資金を新たにつくるということでありますから、改めて、この国庫負担八分の一ということも、今後の少子社会対策を考えるときに一回検討してみる必要があるのではないか。

 八分の一という根拠は一体何なんだろうというふうに思うんですが、局長、これの根拠は何でしょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 雇用保険制度におきます国庫負担でございますが、失業者に対する求職者給付の国庫負担率が四分の一、育児休業の方につきましては、これは休業給付ということで、完全な失業状態ではないということで、その半分ということで、八分の一ということで今日に至っておるところでございます。今回、育児休業給付の位置づけを見直しましたけれども、給付内容自体は変更がないということで、引き続き、そこの八分の一というところはそのままにしております。

 ただ、今御指摘いただきましたが、この二年間、国庫負担率を本来の負担率の一〇%にする暫定措置を引き続き行うということになっております。今後、四年度以降をどうするかという話が出てまいりますので、中長期的に雇用保険制度の財政運営の安定が図られ、その効能を十分発揮できるような必要な措置について議論を進めていく必要があるというふうに考えております。

桝屋委員 もう一点、もう一回男性の育休取得に話題を戻しますと、我が党の中には、ぜひこの際育児休業給付の中身をレベルアップしたらどうかという声もあるのでありますが、男性の育児休業の取得を進めるために何が必要かということでありまして、今後六パーから三〇パーに取得率がふえるのかもしれませんが、育児休業を取得しない理由について厚労省はどうお考えになっているか。我が国の育児休業給付の給付のレベルというのは非常に高いということもよく聞くわけでありますが、そのあたりを御説明いただきたいと思います。

藤澤政府参考人 お答え申し上げます。

 男性が育児休業を取得しなかった理由でございますけれども、厚生労働省が実施をしましたアンケート調査によりますと、会社で育児休業制度が整備されていなかったから、あるいは職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったからといったような回答が多くなっておりまして、職場環境に関する理由が多く挙がっているという状況にございます。

 こうしたことを踏まえますと、助成金制度で現在も事業主さんを支援しておりますが、男性が育児休業を取得しやすい職場風土づくりに取り組んだ事業主に対する助成金がございますけれども、来年度予算案では、個々の男性労働者の方に面談等を通じて育児休業の取得を後押しした場合の上乗せ助成をそういったものにも盛り込んでいるところでございます。

 引き続き、職場環境の整備をしていただいて、男性の育児休業の取得率の向上に努めていきたいと考えております。

桝屋委員 もう時間が来ましたので質問を終わりますが、男性の育休取得、とるだけ育休という言葉がありまして、育休をとって本当に家事や育児に男性が参加していただくように、実は、多くの男性の中に、女性の場合はママ友というのがいるんですけれども、パパ友という言葉は余りないんですね。ぜひ、そうした環境づくりということも私は大事だろうと思っておりまして、近々少子社会対策大綱も発表されるようでありますが、しっかりそうした政策の連携ということを図っていただきたいことをお願いして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、山井和則君。

山井委員 十分だけ、午前中の続きを質問させていただきます。

 午前中に質問して、改めて私が衝撃を受けましたのが、六十五歳以上であって請負になれば労災も適用されない、最低賃金も関係ない、過労死しても労災にならない。本当にとんでもないことだなと。ブラック企業とさえならなくて、全く、個人事業主になるわけですから、安全配慮義務も持たされない。そういう意味では、この法案、いい面もあるし問題点もあるわけですけれども、この請負の部分だけはぜひ削除していただきたいと思います。

 そのことについて質問もしたいんですが、午前中の加藤大臣のWHOのテドロス事務局長の発言についてちょっと確認したいことがありますので、お聞きしたいと思います。

 きょうニュースで流れておりますが、テドロス事務局長は、テスト、テスト、テストと、全ての疑わしい人に検査をしなさい、それが感染拡大を防止しますということを呼びかけられました。これについて、先進国の中で今まで一番検査数が少なかったのがアメリカですけれども、アメリカが今後急速にPCR検査をふやすという中で、この日本は検査数が非常に少ないわけですね。そのことを質問したら、加藤大臣は、かなり食いとめている、封じ込めているということで評価をされているということで、私はその議事録を今調べてみました。そうしたら、私が本当にびっくりしましたのは、これがその議事録なんですけれども、確かに前半では安倍政権が感染抑制に取り組んでいるということが書かれているんです、こっち。

 ところが、そのラストの部分には何と書いてあるか。日本から百六十六億円の寄附をいただいてありがとうございますと書いてあるんですよね、同じメッセージの中で。つまり、聞きようによっては、百六十六億円の寄附を受けたのでちょっとこれはリップサービスをしようとしたんじゃないかとさえ思われかねない。まさに同じスピーチの中で、安倍政権は頑張っている、百六十六億円の寄附をありがとうと言っているわけなんですね。ですから、額面どおりにこのリップサービスは受け取れないんじゃないかと私は思うんです。

 そこで、改めてお聞きしますが、例えば一つの報道の中でも、テスト、テスト、テスト、あらゆる疑わしい人を検査しなさい、誰が感染しているのかわからなければ流行を防ぎようがありません、各国は疑わしい人を全てとにかく検査ですということを言っているわけですね。このメッセージの対象には当然日本も含まれる、もっとテストしろ、検査しろという対象には日本も含まれるという理解で、加藤大臣、よろしいですね。

加藤国務大臣 どこかを除外しているわけではないんです。ただ、委員が御指摘になったところにノートと書いてあるのは御存じですか。(山井委員「いや、読んでいますよ、全部」と呼ぶ)だから、ノートには、WHOは症状を示した場合のみ陽性者の接触者にテストすることを推奨すると言っているわけで、何でもかんでもテスト、テストしろなんということは言っていないということがこのノートから明らかだと思います。

山井委員 それは逆でしょう。ですから、熱やせきが出た人には検査をしなさいと言っているわけですよ。逆に、三十七度五分が四日間出ないとだめですよとか、相談センターをクリアしないとだめですよとか、諸外国に比べて一番高いハードルを掲げて、症状が出ても検査を抑制しているのは日本じゃないんですか、加藤大臣。まさに加藤大臣が今指摘されたノートのところに書いてあるじゃないですか、症状が出て疑わしい人は全て検査しろと。それをやっていないのは日本じゃないんですか。

加藤国務大臣 これは連鎖の、ここで言っているのは、むしろ日本でいう積極的な疫学調査を通じた封じ込めの話をして、テスト、テスト、テストと言っておられるわけであります。それについて、ただ、症状がある場合のみ、確認されたケースをテストするということが書いてあるわけであります。

 委員がおっしゃっている、医者が必要だと言ったもの等をやる、PCR検査をやる、これは当然のことでありまして、これはむしろ治療のためなんですよ。彼が言っているのはそうじゃなくて、封じ込めをするためにどうすればいいかということで主張しているのがテスト。要するに、しっかり怪しいところはテストをして、そして封じ込めをやりなさい、隔離をしなさい、まさにそういうことを言っているわけであります。

山井委員 だから、私は、そこで、この質疑をさせていただいているんですよ。テドロス事務局長が言っている、症状がある疑わしいケースは検査せよということは残念ながら日本ではできていないという、私のところにも山のようにいろいろな相談や苦情が来ますよ。PCR検査を受けたいと言ったけれどもはねられたと言って、それで、後で何日かしてから陽性が発覚して、その間にうつしてしまったというような事例は毎日のように報道されています、残念ながら。

 そういう意味では、加藤大臣、テドロス事務局長が言っている疑わしいケースは全て検査ができていない、後手に回っている部分がある、そういう認識は加藤大臣はお持ちになっていますか。

加藤国務大臣 ですから、先ほど申し上げているように、一つは医療の関係で、PCRをしっかりやる。確かに、個々においてなかなかうまくつながっていないケースは指摘をされていますから、それは一つ一つ解消すべく我々も努力をしている。

 ただ、この疑わしいというのは、他方で、先ほど申し上げておりますように、日本でいえば、陽性者が出た、陽性者の濃厚接触者を当たって、そしていかに封じ込めをしていくか、まさにこういった作業をしっかりやれということをテドロス事務局長は言っているわけであります。

 それから、前に申し上げたように、そうした取組を、クラスターへの綿密な調査を含む安倍総理主導の政府一丸となった対策が、リデューシングトランスミッション、感染拡大を抑える決定的なステップであるということを三月十三日にテドロス事務局長が発言しているのにも通じているというふうに思います。

山井委員 だから、それは百六十六億円を寄附したリップサービスじゃないですかと言っているわけですよ。

 一言お聞きしますが、今回のテスト、テストの指示に対して、例えば、ある報道では、日本政府がウイルス対策基本方針で決めた感染者クラスター重視の対応より、韓国などで実施されている個別の感染者と感染経路の特定を目指す手法に近い提言と見られると。報道でもそういうふうに書かれているんですよ、日本のやり方じゃないと言って、このテドロス事務局長が言っているのは。

 テドロス事務局長の指示に、今の日本のやっている非常に少ない検査数というのは反しているんじゃないんですか。いかがですか。

加藤国務大臣 検査数が多いか少ないかじゃなくて、どういう手法で封じ込めをしているかということを彼は言っているわけでありますから、当然、国内における感染者数あるいは疑い者数によって検査の数は変わってくる、これは当然のことなんだろうというふうに思います。したがって、今私どもがやろうとしている、クラスターを見つけて、そしてそれを徹底的に封じ込んでいく、まさにそういったこと、これは、感染者を見つけて隔離をして、そして封じ込んでいく、そういうことなんだろうというふうに思います。

山井委員 先々週から先週に比べて、一日平均五十六件しかふえていないんです。遅々として進んでいないんです。先進国の中でも、さっきも言ったように、アメリカと日本が別格を争っているんですよ、検査数の少なさでは。

 なぜこんなことを言うかというと、バッハ会長は、東京オリンピックをどうするかについてはWHOのアドバイスに従うと言っているんですよ。そのWHOのテドロス事務局長が検査、検査と言っているにもかかわらず、今の加藤大臣のように、日本のやっていることは検査数は少ないけれどもこれで正しいんだと言っていたら、東京オリンピック開催というものに関して、ああ、日本はWHOの言うことを聞かないんだな、検査数をふやさないんだなと。これでもし開催できなくなったら、これは加藤大臣の責任になりかねないですよ。

 やはり謙虚に、今のやり方では少な過ぎるということを反省して、大幅にふやすということを、今、明言すべきじゃないですか。

加藤国務大臣 ちょっと、先ほどからお話しになって、非常にいろいろなところにひっかかることがあります。まず、テドロス事務局長の発言に対して、日本が出資をしたからそれで発言を変えているという、国会でそういうことを言われるのは私はいかがなものなのかなと。これは、日本国政府として、逆に、WHOを日本の国自体が軽んじているんじゃないか、むしろそういう印象を受けるおそれがあるんじゃないのかなという思いを持ちながら聞かせていただきました。

 我々は、WHOに対して日ごろから連携をとり、そしてWHOとよく意見交換もしながらやらせていただいているところであります。したがって、この一つの文書を見るだけではなくて、やはり、そこにどういう真意があって、どういうことを日本に求めているのならば、それはしっかり我々は聞きながら対応をさせていただきたいというふうに思います。

山井委員 残念ながら質問時間が終わりましたので終わらせていただきますが、私はエビデンス、ファクトに基づいて言っているんです。先進国の中で検査数が圧倒的に少ないんですよ、韓国の十分の一なんですよ。

 そういう意味では、もちろんWHOも褒めてくれている部分もあるかもしれない、そう受け取りたいですよ、額面どおり。でも、やはり、テスト、テスト、テスト、疑わしいケースは症状が出たらテストしろと言っているけれども、繰り返し言いますが、多くの日本国民も、疑わしい症状だったらPCR検査を日本でみんなが受けられているとは、ほとんどの人が思っていないんじゃないんですか。そういう意味では、バッハ会長がWHOのアドバイスに基づいてオリンピックを決めると言っている以上は、私は、もう少し謙虚に、このWHOのテドロス事務局長の今回のメッセージ、テスト、テスト、テストを日本は遵守して実行すべきじゃないかということを言っているわけです。

 また引き続き、雇用保険の問題も質問させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、尾辻かな子君。

尾辻委員 お疲れさまでございます。立国社の尾辻かな子です。

 きょうも夕刻まで質疑ということになりました。非常に大事な法案ですので、いろいろお聞きしていきたいと思うんですけれども、まず、ちょっと先に新型コロナウイルス感染の対策のことについて数点お聞きをいたしましてから、雇用保険の方に行きたいと思います。

 まず確認をさせていただきたいと思うんですが、PCR検査のことについてです。

 三月十四日の記者会見で総理は、今月中には一日当たり八千件まで検査能力が増強できる見込みですというふうに発言をされたというふうに認識をしております。これは非常に混同される場合があって、つまり、八千件の検査能力というのはイコール八千人できるというわけではなくて、私も地元の公衆衛生研究所などでお聞きしますと、咽頭拭い液と、たんがとれる方はたんをとるので、お一人当たり二件、検体が出ることが多いというふうにお聞きをしております。

 ですので、総理のおっしゃるこの八千件というのは検体数だということ。ですから、計算上、もしお一人が二検体出すとしたら、四千名分を確保するということでいいのかということについて確認したいと思います。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 PCR検査につきましては、新型コロナウイルスの検体採取マニュアルにおきまして、下気道由来の検体、喀たんとかですけれども、と鼻咽頭拭い液の二検体の採取をお願いしておりますが、たんが出ない、下気道の方の検体がとれないなど、難しい場合は鼻咽頭拭い液の一検体のみで構わないということにしております。

 実際、患者さんの症状によって検体がどういうふうにとれるかということがありますので、一検体又は二検体で検査しているということですけれども、先生の例えで申しまして、必ず一人二検体ということですと四千人分になりますし、一検体ということであれば八千人分というようなことになろうかと思います。

尾辻委員 そうなんですね。だから、PCR検査の能力を見るときに、件数で見るのか、人数なのかというのは、大分受ける印象が変わってくるというふうに思うんですね。

 更にちょっと確認をしてまいりたいと思いますが、山井委員の配付資料を使わせていただきます。実は、十二ページの方に、厚労省さんが出していただいた国内における新型コロナウイルスに係るPCR検査の実施状況というのが、二月十八日火曜日から三月十四日の土曜日まで、国立感染研、検疫所、地方衛生研究所・保健所、民間検査会社、大学、医療機関ということで、数が並んでおります。

 これが、私はきょうの朝、部会でもお聞きしたんですが、国立感染症研究所は人、何人やったか、検疫所も何人やったか、でも、地方衛生研究所・保健所は何件やったか、民間検査会社は人か件かちょっとわからないというふうにお聞きをしております。これは事実でしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 山井先生の資料の横表だと思いますけれども、これは基本的には検体の件数で、報告があった件数を計上させていただいているというふうに御理解いただければと思います。

 そんな中で、今先生お話があったようなところは、感染研は基本的に一人の方からは二検体というよりは一検体でやっているとか、あるいは、検疫所については逆に、状況によって違うのかもしれませんけれども、二検体を検査していても一人分を検査しているということで人数で、ニアリーイコールで報告しているというようなことがあろうかと思いますが、ここに計上している数え方というか考え方は基本的には検体数というふうに御理解いただければと思います。(尾辻委員「検体数、全部」と呼ぶ)この表はです。

尾辻委員 私がきょうの朝聞いたのは、国立感染症研究所は人数だというふうにお聞きをしていまして、それは違うということでよろしいですか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げましたように、感染研は一人につき一検体ということでやっておりますので、検体数と人数がほぼ同じというような形で計上されているということでございます。

尾辻委員 つまり、二検体あったとしても一検体として数えているということですかね、国立感染症研究所は。

宮嵜政府参考人 申しわけございません、そこまで確認はしておりませんけれども、基本的には一人につき一検体を検査しているので、記載上、検体件数と人数がイコールだというふうに聞いてございます。

尾辻委員 ちょっと、この辺、整理をしていただきたいんですね。要は、何人検査をしたのかということと、何件検査をやったのかというのは別なわけです。もしかしてこの表は混同されて数字が載っているんじゃないかというように、きょう、私が朝聞いたときはそういう感じだったんですね。

 例えば民間検査会社なんかは件数なのか、人なのか。これは今どうなっていますか。

宮嵜政府参考人 御指摘のというか、お示しいただいている表で申し上げますと、この表は基本的に検体件数で載せてございますので、民間のところも検体件数という御理解をいただければと思います。

尾辻委員 では、もう少しここに、やはりこれは件数なんだということを書いていただきたいのと、逆に言うと、これで見えないのは、人数が見えないんですよ。実は何人やったのかということが、やはりこの表では見えてこない。検体数と人数というのは、皆さんが不安に思われる中で、しっかりと皆さんに発表していただく必要がやはりあると思うんですね。

 ですので、この辺は発表の仕方を工夫していただくなり、もし人でわかるものなら、それを理事会に提出していただくなり、検討いただけないでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、先ほどの表は基本的に件数ベースということですので、先生御指摘のように、どの数字にどういう意味があるのかというのをしっかり書かないと誤解が生じると思いますので、しっかり表記できるものはしていこうというふうに考えております。

 それとは別に、それぞれの地方ごとの陽性者の数とか検査の人数というのはホームページ上は別の表で掲載されておりまして、これも、報告ベースですので、どのくらい固まっている数字かというと別ですし、県によっては件数で報告されているところもあるので、そこは、この県は件数ですよというような表記をしながらホームページにも載せてございます。

 いずれにしても、我々は、こういう数字をわかりやすく発信していくというのは大変重要なことだと思いますので、いろいろ御指摘もいただきながら、よりよい、わかりやすいものにしていきたいというふうに考えております。

尾辻委員 ちょっと、本当にわかりにくいんです。というのが、例えば、この検査件数の中には、退院に必要な方がPCR検査をする、二回しなければいけない、これも入っているわけですよね。そうすると、ますます、一体何人にしたのか、特に、知りたいのは、新規でPCR検査した方が何人なのかということをやはり聞きたいところですので、それはちょっと整理して出していただけないでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほどと重なりますが、都道府県別に報告があったベースでは、人数ベースで出させていただいております。

 今先生御指摘がありましたように、退院されるときとかは二回続けて検査するとか、その前も、入院するときに陽性が出ているので三回検査されているとか、そういうところはなかなかちょっと今の状況ではつなぎにくいので、そこは、わかりにくいというか、大変難しいところなんですけれども、そういうところも除外しながらとか、配慮しながらできる限りわかる数字を今も載せさせていただいておりますけれども、引き続きわかりやすい情報発信に努めてまいりたいというふうに考えております。

尾辻委員 やはり、不安の原因の一つは、数字がわからないとか、そういうことになりますので、しっかりとわかるように出していただきたいということを要望申し上げたいというふうに思います。

 続いて、橋本副大臣、来ていただきました。自見政務官とともに、この間、ダイヤモンド・プリンセス号において感染症対策に本当に御尽力をいただきまして、心からねぎらいの言葉を申し上げたいと思いますが、本当にお疲れさまでございました。

 きのうから登庁されて、健康観察期間が終わったということでありまして、いろいろな困難や課題がその中であったかと思います。今もやはり、DMATの方、DPATの方を含めて対応された方には、さまざまな、何というか、誹謗中傷や差別的な扱いがあったりとかしまして、これは非常に大きな課題だと思っておりまして、この経験をしっかり生かしていただきたいというふうに思っております。

 そこで、橋本副大臣の方に数点、ちょっとお尋ねをさせていただければというふうに思っております。

 それが、神戸大学の医学研究科の岩田健太郎教授とのやりとりというかツイッター上でのことでありますけれども、岩田教授の方からは、船内のゾーニングについて、これが悲惨な状況であるというふうに指摘をされました。それに対して橋本副大臣が、それを打ち消すかのような、船内の写真とともに、清潔のゾーンと不潔のゾーンというふうに紹介されるツイートをされたかと思います。これは、ツイートを途中で取り消されたということなんですけれども、この取り消された理由は何だったんでしょうか。

橋本副大臣 まずは、ねぎらいの言葉をいただきまして、まことにありがとうございます。これからもしっかり務めてまいりたいと思います。

 さて、お尋ねの、御指摘のツイートでございますけれども、これは、ダイヤモンド・プリンセス船内における感染症予防の取組ということで、厚生労働省が発表した資料をまずはツイートをして、それに補足をさせるというような意図を持って、検体採取により乗客等と直接接する者が防護措置として着用していたマスクやガウン等を脱いでから通るルートと、そうした業務に従事していない者が通るルートというのを分けているということをお示ししようということを意図して投稿したものでございます。

 ただ、こうした取組を、写真をぽっと上げたものですから、客船内という特殊な環境下で行い得る適切なものと考えてはおりますけれども、その画像に写っている場所が、例えば医療関係者が主に通るエリアを撮影したものであるということであるとか、あるいは、船内の感染防御の全体のあり方、結局、それだけではなくて、乗員の方にはこういうようなことをやっている、乗客の方にはこうした手だてを講じている、それから我々サポートに入った者についてはこうだということをきちんと御説明をしないままに、何というんですかね、画像だけぽっと上げて、それはあらぬ予見を招くようなものであったかというふうにも思いましたので、その画像については削除をしたということでございます。

尾辻委員 ちょっと確認をしたいんですけれども、あの写真で写っていたシーンというのは適切なゾーン分けだった、適切だったというふうに評価されているのか、やはり船内という限られたところではあれが限界だったというか、これは後から検証はしなければいけないでしょうけれども、その辺の御認識はどうだったんでしょう。

橋本副大臣 何というんでしょうかね、最終的には政府の方で検証いただくというふうに思っておりますので、そこでさまざまな御評価をいただくものだというふうに思っておりますし、私もその検証にはしっかりと御協力をしていきたい、このように思っておりますが、ゾーニングについては、感染症の専門家の先生方にも御意見を伺い、というか、先生方にこういうふうにすべきだということを御指導いただいてやっておりました。

 その中で、業務を行うゾーンと検体採取等で汚染したガウン等の感染防護具を脱ぐゾーンを分離して、まあ、ゾーンを分離してというかルートを分けていて、要は、こちら側を通る人は、例えば、陽性の乗客の方に診察等を行った、ウイルスに暴露した可能性のある方がこちら側を通って、そこで順次防護具を脱いで、そして消毒をして、そこから先に入るというルートと、それ以外の、例えば私のような事務的なことをやっている者が通るルートというのを分けていることによって、その両者が一緒に通り、出入りする中で感染が広がるということを防ぐ、そういうルート分けをしていたということです。そういったことを通じて、ゾーニング、要するに、この空間はどういう人がいる場所ということを分けていたということにつながっている。

 ただ、結局、先ほど申しましたように、その画像一枚でその全体を、口頭で今いろいろ御説明しましたが、説明し切れていたかというときっとそうではなかった、ちょっと、ある意味でまさにあらぬ予見を招く可能性があるなということを思いましたので削除したわけですけれども、ただ、ゾーニングそのものについては今申し上げたような形でしておりましたし、また、感染の制御の支援チームの先生方が巡回してアドバイスというかコンサルテーションを随時していただきまして、指摘をされた点についてはその日中に対応するというようなことで改善を積み重ねていっておりました。

 また、二月五日以降に個室管理等々の措置を始めたわけですけれども、ゾーニングなどの措置がとられて、それから徐々に発症者が減少し、二月十九日の時点でほぼ感染者の発症がないという状況で、これは資料でそういうのをお示しをしております。そういう意味でも、船内での感染拡大防止の措置が有効に行われていたということは二月十九日の専門家会議におきましても確認されたところと承知をしております。

尾辻委員 ああいうふうに一枚写真を出したということについては、やはり課題があったということですよね。この辺、どういうふうに情報を出していくかというのは、やはりリスクコミュニケーションにおいても非常に大事だと思っております。

 あと、済みません、ちょっと一点だけ短く確認させていただきたいんですが、岩田先生と橋本副大臣の意見が分かれているところが一点あって、船内でお二人が会われたのかどうか。岩田先生はツイッターで、橋本岳さんにはお目にかかっていませんとツイートされているんですけれども、副大臣の方は、お見かけした際に私から御挨拶をして、御用向きを伺ったものの明確な御返事がなく、よって丁寧に船舶から御退去をいただきましたというふうにあるんですね。これは、事実としてはどちらでしょうか。

橋本副大臣 私の認識している事実ということを申し上げるしかないのですけれども、私はそのときに、船内の作業スペースの奥の方で一人でパソコンを打っておりました。大きなマスクをし、それから厚生労働省の作業着の上着を着、あと衛生用のポシェットをつけて、アルコールをぶら下げてみたいな、そんな格好をしておりました。岩田先生だと私は認識をしましたけれども、ただ、直接面識があったわけではございません。おられましたので、厚生労働省の橋本と申しますが、岩田先生とお見かけをしますがというお声がけをしたと認識をしております。名刺交換を実はしようとしたんですが、それをお断りになられましたので、名刺交換はできておりません。こういう状況がございました。

 ですので、今振り返ってみますと、もともと私と岩田先生は今まで面識がございませんでしたので、突然厚生労働省の橋本ですと言われて、その人が副大臣だったかどうかということを、私も副大臣ですということをあえて申し上げてもおりませんので、そこは岩田先生がそういう、何というんですかね、御認識をされなかったのかなというふうに私は受けとめております。

尾辻委員 じゃ、お互いの認識にちょっとそごがあるということで、こういうふうに、会った、会わないという話になったのかなというふうに思います。こういうときにしっかりコミュニケーションをとるのは本当に大事だなと思うんですが、今いろいろ状況が変わっていく中で、いずれにせよ、やはり、この巨大クルーズ船においての感染症対策をこれからどうしていくのか、しっかり検証していかなければいけないと思います。

 その際に、やはり、政府による検証だけじゃなくて、第三者の専門家が入った検証をすることが大事だと思いますが、大臣、この辺はいかがでしょうか。

加藤国務大臣 もちろん、政府でやるにしても、政府の役人だけでやったのでは全く意味がないので、当然、第三者が中心になってやっていただくということが基本なんだろうと思います。それらも含めて、ちょっと今、私の所信の文書を持っておりませんが、所信においても、しっかり検証させていただきますということを申し上げたところであります。

尾辻委員 第三者、専門家を入れて、しっかり検証いただきたいと思います。

 それでは、済みません、雇用保険法の改正案の方に行きたいと思います。

 まず最初に、今回の法案が束ね法案になっているんですね。何本束ねられているのか、簡潔にお答えください。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案でございますが、雇用保険法を始め、合計六本の法律を束ねて改正をしております。

尾辻委員 働き方改革関連法案のときは八本だったんですね。このときも多過ぎるということで私たちは抗議いたしましたけれども、これも、重要な論点があるものが束ねられて六本になっている。それも日切れの法案があるということで、日程的にも非常に厳しい中で議論しなければいけない。

 高年齢者雇用安定法に関しては、これは非常に大きな論点で、本当は切り離して議論をするべきものだというふうに思います。これを切離しをしないまま審議に入ったということについては、遺憾の意と、強く抗議をしておきたいというふうに思います。

 それでは、内容ですけれども、まず立法事実についてお伺いしたいと思います。大臣、何のために七十歳まで働けるようにするんでしょうか。

加藤国務大臣 何のために七十歳まで働けるか。

 要するに、高齢者になられて、今、人生百年とも言われている時代の中で、六十を超えても、いや、六十五を超えても、あるいは七十を超えても働きたいという方がおられるわけであります。そうした方々の希望をどう実現していくのかということ、これは個人の問題。

 それから、マクロ的に見たときに、御承知のように、いわゆる生産年齢人口と言われている十五歳から六十四歳がもう既に減少し、これから更に減少していくという中で、いわゆる支える、支えられる側という二つに分解するのが正しいかどうかと若干私も疑問は持ちますが、わかりやすく言えば、いろいろな形で支える側の方をふやしていく、そういった意味においても、仕事をされる、あるいは社会活動をしていただく、そういう形をふやしていくということが社会の持続性をもたらしていくことにもつながっていく、そういう環境の中で、特にこれは働くということに着目をさせていただいて、特に六十五歳までは今継続雇用制度がずっと来ているわけでありますけれども、六十五歳以降も働く意欲がある方が働ける環境をつくっていくということで、この法案を、この部分については提出させていただいているということであります。

尾辻委員 今国会、安倍総理は施政方針演説で、「高齢者のうち、八割の方が、六十五歳を超えても働きたいと願っておられます。人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。働く意欲のある皆さんに、七十歳までの就業機会を確保します。」こういうふうに演説をされました。

 本当に高齢者のうち八割の方が六十五歳を超えて働きたいと言っているのかという、まず事実の確認をしたいんですが、内閣府にお聞きいたします。この数字は、内閣府の、二〇一四年、つまり六年前の高齢者の日常生活に関する意識調査から出てきた数字かということを確認したいと思います。簡潔に、イエスかノーかで。

渡邉政府参考人 内閣府が平成二十六年度に実施いたしました高齢者の日常生活に関する意識調査、こちらの調査結果について使われているのではないかというふうに承知しております。

尾辻委員 総理の発言というのは、いつも誇張があるんですね。

 この調査結果をじっと見ると、この二〇一四年の意識調査、三千八百九十三人の六十歳以上の男女に質問されていて、仕事をしている人がその中で三五%、千三百五十六人、その中で七十歳まで働きたいと言った人が八割なんです。仕事をしていない人はそのとき六五%で、二千四百三十七人いるんですよ。そうすると、この仕事をしている人、仕事をしていない人を両方合わせると、実は七十歳まで働きたい人は約五五%になる、こういう調査結果ですよね。これも確認です。

渡邉政府参考人 先生お問いかけの件でございますけれども、細かくデータを確認いたしますと、先生がおっしゃったとおりの調査結果になっております。

 総理の施政方針演説につきましては、仕事をしている六十歳以上の方の八割がというところを根拠に述べられたものと承知しております。

尾辻委員 ですから、高齢者のうち八割の方がじゃないんですよ。二〇一四年の調査で、三五%の仕事をしている人がこのまま七十歳まで仕事をしたいかといったときが八割であって、これは立法事実として、私は、またまたごまかしがあるなというふうにすごく思っております。こういう、立法事実からごまかして議論をしようということ、この姿勢に私は強く疑問を感じるところです。

 ちょっと時間がないので各論に入っていきますけれども、努力義務で七十歳まで働ける選択肢をふやしていこうということですけれども、じゃ現在六十五歳まで本当に働けるのかということですけれども、定年六十五歳の企業、今、定年を六十五歳にしているのは二割弱なんですね。雇用確保措置のある企業は九九・八%、〇・二%の企業が未実施、これだけだと結構できるようになっているのかなと思いますけれども、実はこの数字は常時雇用労働者が三十一人からなんですね。つまり、三十人以下の企業については、どういうふうになっているのかちょっとこれではわからないというようなことになっています。

 ただ、日本において三十人以下の企業というのは半数ぐらいあるというふうに言われていますから、今本当に六十五歳までしっかりと雇用確保措置がとられているのかどうか、まずはこれの実態把握や行政指導が必要だと思いますが、いかがでしょう。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 高年齢者の雇用状況集計結果、元年度によりますと、集計対象企業、これは常時雇用する労働者三十一人以上の企業ということでございますが、約十六万社のうち雇用確保措置を実施していない企業が二百六十一社、〇・二%ということでございます。

 一方で、常時三十人以下の事業主につきましても、法律上、雇用確保措置の実施状況を報告する義務が課されているところでございます。これらの報告を受けまして、雇用確保措置の未実施の企業を把握した場合には、管轄のハローワーク及び労働局から訪問等による指導を行った上で、改善が見られない場合には指導文書の発出、なお違反があるときには労働局長からの勧告、さらには、改善が図られない場合には企業名の公表を行うこととされてございます。

 これらの指導等により企業名の公表を行った例はこれまでございませんが、今後とも、各企業における実施状況を的確に把握するとともに、必要な指導等を実施し、適切に措置が講じられるよう取り組んでまいりたいと考えてございます。

尾辻委員 確認なんですが、三十人以下の企業は六十五歳までの雇用確保措置を全部やっているということですか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 九九・八%というのは、先ほど申し上げました集計対象の企業、約十六万社の三十一人以上の企業でございまして、三十人以下の事業所につきましては私どもは集計を行っていないということでございます。

尾辻委員 ですので、まずは、今、六十五歳までちゃんと雇用確保措置をしなきゃいけないのに三十人以下の企業がどうなっているかわからない、これは私は大問題だと思うんです。ちゃんと把握していただきたいんですが、いかがでしょう。

達谷窟政府参考人 私ども、繰り返しで恐縮でございますが、集計対象としては、先ほど申し上げました三十一人以上の企業をやっているということでございます。

 三十人以下の企業、例えば、私ども、管轄のハローワークとか労働局に御相談いただくこともございますし、そういう中で、必要な把握をした上で、必要な指導を行ってまいりたいというふうに考えてございます。

尾辻委員 いや、把握するべきじゃないですかということについて、イエスかノーでお答えいただけないですか。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 現状は先ほど申し上げたとおりでございますが、三十人以下の事業主につきましても把握するように努めてまいりたいというふうに考えてございます。

尾辻委員 しっかり把握していただかないと、どうなっているかわからない、現実がわからないまま政策だけが進んでいくということは非常におかしい状態ですから、ちゃんと把握して報告してください。

 次に行きますけれども、高年齢者雇用安定法の問題について今からやっていきたいと思います。

 六十五歳までは高年齢者雇用確保措置だったんですね。それが今回、七十歳まで、就業確保措置というふうに名前が変わるわけです。そして、先ほどからいろいろな委員の方が指摘されているように、業務委託契約とか三つの種類の社会貢献事業については、労働契約でない委託契約ができるような努力義務が定められたということです。

 これは確認になりますけれども、この業務委託などをやることによって、労働関係の法規、つまり労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、そして例えば労働審判、こういうのはもう使えなくなるということでよろしいですか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 創業支援等措置につきましては、実態として労働者性が認められる場合を除きまして、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、労働審判法等の労働関係法令は適用されないところでございます。

尾辻委員 これは、関係者からは、まだ派遣の方がましだと言われるぐらい。労働者というところから外れるというのは、何かあったときに守ってもらえる法律がなくなるということなんです。これを、雇用安定法、高年齢者の雇用安定の法律に入れるというのは、私はこれは間違っていると思います。今までは労働審判で三回でできたものが、今度はどうするんですか。裁判所に行って民法で闘う、そうしないと問題解決しない、こういうスキームになるということですよね。これは本当に私は問題だと思っています。

 きょう配付資料でもお配りさせていただきましたけれども、高年齢者の方が委託契約によって長時間労働で追い詰められて自死されるなんということが起こっているわけです。

 今問題になっているのは、例えばコンビニエンスストアのフランチャイズオーナー。これは労働者じゃないということで、一日も休めず三百六十五日、何年間も働き続けなきゃいけないとか。あと、布団の丸八グループとかタニタ。こういうところでも業務委託契約になって、結局、最低賃金以下で働かされたりとか、マイナス分を貸し付けられるとか、丸八なんかはそういうことまで起こっているわけです。

 今、新型コロナウイルスで、感染で問題になっているのも、こういう委託の人たちが結局セーフティーネットにひっかからないということが問題になっているのに、なぜ今このときに高齢者雇用安定法にこういう委託ということを位置づけなければいけないのか、私は理解に苦しみます。

 次に、労災事故のことについてお聞きをしたいと思います。

 高齢になると、当然、視力や動作にも課題が出てきて労災事故が多くなる、これは私が配付した新聞の中でも指摘をされております。これは、労災の範疇に委託の場合は入らないということですよね。ということは、一体どうなるのか。例えば、転倒による労働災害は六十歳以上が三九・五%なんですよ。六十歳以上の死亡も全体の四割。

 やはり、高齢者が事故しやすい、お亡くなりになりやすい、なのにこれを本当に委託だということで外していいのか。例えば、シルバー人材センターは重傷の場合は報告する義務があります。やはり、創業支援等措置でも労働者の死傷病報告などをしていただくべきじゃないでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のございました死傷病報告自体は、これは雇用労働者に関する罰則つきの労働安全衛生法に基づいて義務づけられておるものでございまして、これとなかなか同列に論ずることはできないわけでございますが、この死傷病報告を事業主に義務づけております一つの目的、これは、事業者が災害発生状況ですとか発生原因を把握することで災害防止に取り組むようにするところにあるというふうにされております。

 こういったことを踏まえますと、今般、創業支援等措置を行うに当たって、労使合意の上で運営計画を定めていただくことになるわけでございますが、こういった中に、災害防止のための措置を講ずるということはもちろんでございますけれども、災害発生があった場合の再発防止措置を検討すべきといったようなことも指針に盛り込むことが考えられるところでございまして、どういったことが考えられるか、よく審議会で御議論いただきたいというふうに思います。

尾辻委員 創業支援措置は、まだちょっといろいろ論点があります。私の質問時間は終わりましたので、これは引き続き、あす、しっかり聞いていきたいと思いますので、きょうのところは以上で終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次に、岡本あき子君。

岡本(あ)委員 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。立国社の岡本あき子でございます。

 橋本副大臣は御退席されましたが、自見政務官、本当にお疲れさまでございました。ありがとうございました。

 私、きょう一日の朝からの委員会で、ちょっと確認をしたいことがございます。加藤大臣は、朝、山井議員の質問のところで、ドライブスルー方式、あり得るような答弁をされた。もし違っていたら、確認です。

 韓国は診察をドライブスルーでやっている、そういうやり方であれば、医療機関でも駐車場で診ている、そういう御答弁をされたかと思うんですが、私が映像で韓国を見ておりますと、確かに、事前に熱があるかどうかとか、そういうチェックはされていたと思いますが、ドライブスルーで検体をとって検査に回していたと思います。ああいう映像のやり方のドライブスルー方式も日本でもあり得るということを想定してお答えになったのかどうか、確認をさせてください。

加藤国務大臣 私も映像を見る限りそういう印象を受けたんですが、申し上げたベースは、日本から韓国に行っている大使館の方から確認をしていただいて、診療と検査、一体として行われているということでありました。

 実は、逆に、今委員のおっしゃった、先入観で、私どものホームページで、検査だけというのはありませんねというのを実は出させていただいて、それに対していろいろ御批判をいただきまして、調べたら、今申し上げたように、診療と検査がいわば一体的になされていたということを確認したということで、ツイッターの記載も変更させていただいたところであります。

岡本(あ)委員 そうしますと、その上で、日本において、ああいう、車で診察をして検体をとるところまでやる、しかも、韓国でいきますと、次々並んで、診察のところをクリアされてから来ているのかもしれないんですが、あれだけの量をされておりますけれども、そういう方式もあり得ると想定して午前中御答弁されたのか、確認させてください。

加藤国務大臣 ですから、具体的に、日本においても、どういう形で、例えば感染の疑いのある方を診る場所を設定してどうやるかというのは、それぞれが工夫をしてやっていただいているわけであります。自分のところに、待合室に入る。あるいは、二つの待合室を持っておられるところは、それをうまく使われるでしょう。一つしかないところは違う形でやっておられる。それぞれの工夫があるわけでありますから、それにのっとってやっていただくという形の中で、ドライブスルー方式というのが何を指しているかというのは全然定義がないわけでありますけれども、外において、あるいは違う場所をセットして、そこにおいて診療と検査をおやりになるということ自体、要するに、どういうやり方、どういう形で診療と検査をしなきゃいけないかというのは、特段こうだというルールがあるわけではありません。

 ただ、大事なことは、当然、今回のケースでいえば、感染防止がしっかりとなされている、これが大前提になるわけでありますので、そういった措置がとられる中で、それぞれの病院が自分の状況を踏まえながらどういうやり方をとっていただくかということについては、今申し上げた感染防止をとりながら、来られた方に対してきちんとした対応ができる状況をつくっていただく、これはそれぞれにお任せをしているという意味で申し上げたということで、別にドライブスルーをやっていただいていいとか悪いとか言っているわけではなくて、特段そういう制限を持っているわけではないということを申し上げたわけであります。

岡本(あ)委員 それぞれというのは都道府県という意味かなと思って受けとめましたけれども、そこも確認させてください。

加藤国務大臣 いや、都道府県ではなくて、それぞれの医療機関ということであります。

岡本(あ)委員 今の御答弁でいきますと、私、加藤大臣、それから、特に安倍総理の、国民が誤解を招くことになってしまうというところに対してはとても懸念を持っております。きょうの御答弁でいきますと、医療機関において、韓国の映像のような、来る方は来ていただいて次々に車で検査をする、そういうことも決してないわけではないという御答弁だということで私は受けとめたんですが、それでよろしいですか。

 もう一つ、やはり、検査体制。感染予防は当然しなければいけません。日本での通知に基づくと、診察、接触者外来は、基本的にはゴーグルも、それからガウンもされて、個人の防護服を着ていらっしゃいます。診察が終われば全部取りかえて、新たな形で防護服を身につけて診察をしている、これが通知上のマニュアルだと思います。そのとおりやっているかどうかはわかりませんけれども、韓国方式のように同じ防護服のままで次々ということは、多分、今の日本の通知上はあり得ないと思うんですが、先ほどの御答弁でいくと、韓国のような流れになることも決して否定はしていないということでよろしいですか。

加藤国務大臣 私ども、韓国のやり方に対してこうだああだと言うつもりはありませんし、言う立場ではないので、それをベースにしているわけではなくて、申し上げたいのは、それぞれの医療機関が感染防止をしっかりやっていただく中で、どういう形で診療し、実際の検査、基本的には拭うわけですね、そういった検査をされるかというのは、それぞれの実情を踏まえて対応していただければいいということを申し上げているわけであって、じゃ、そういったことがしっかりできたような形を持つものがあれば、それはそれで、それはいいとか、それは悪いとかいうことを申し上げる立場にはないということを言っているわけであります。

岡本(あ)委員 私自身は、今の段階であの方式を日本でやるというのは非常に厳しいんじゃないのかなと思っております。

 それぞれ、各地域での発生状況も異なりますけれども、もう一つ、この間、安倍総理が、検査体制ができました、七千、八千できますと言うと、多くの国民は毎日七千、八千検査できるんじゃないかと期待をされます。ちょっとでも症状があれば、やはり、不安を除去するために検査をしてほしいというニーズにつながってしまうと思います。今の日本の流れはそうはなっていないと思うんですね。

 そういう不安のニーズに応えるという意味でいくと、韓国のやり方というのは一つのやり方かなと思うんですが、ただ、一方で、韓国もフランスも、結果として、陽性と出ても自宅にいていただく、そういう場合も現実に起きております。

 今、日本の場合は、軽症でも症状がなくても必ず入院を勧めて、結果として入院をしていただいて、最低だと四日ぐらいいていただいて、陰性に変わって、二回陰性が出るまでは病院にいていただくと思います。

 ある意味不安を解消するための検査ではないのであれば、それは違うということをしっかり出すべきだと私は思うんですね。

 不安の解消に応えるんだ、検査を八千用意しました、検体が二つ三つありますので、三千、四千、毎日応えていくんだというのであれば、検査体制に基づいてよりキャパをふやして不安に応えていくというのも一つの手ですけれども、今政府がとろうとしているのは必ずしもそうではなくて、症状がある方で、さらに、ちょっとこの後質問させていただきますけれども、かなり厳しいハードルを持っていらっしゃると思います。

 そのハードルのもとに検査をしているのであれば、そのことをしっかり発信しなければ、逆に、八千もあるのに何で検査してくれないんだ、私が問い合わせても断られたという件数だけがふえていくことを私は恐れておりますが、その件については、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 岡本委員の認識と私の認識は多分一緒なんだと思います。

 どういう認識かといえば、まさに医療の、お医者さんが、新型コロナウイルスの感染の疑いがあるという判断の中で、PCR検査をすべきだといった方についてPCR検査をやるというのが日本のやり方であって、不安があるからちょっとやってみてください、もともと医療の中にそういうのはないわけでありまして、やはり、医療として実施されるのであれば、一定の症状があって、それを治療するために必要な検査をしていくというのが基本になるわけでありますから、そのことはこれまでも再三再四申し上げておりますし、あくまでもお医者さんが必要だと判断された方についてPCR検査をやっていく。

 ただ、その能力については、これから感染者がふえていくということも、我々はないように努力をしていますけれども、そういった事態も想定されることを考えれば、PCR検査の能力をより拡大をしていく必要があるということで、この月末までには八千件の能力ができる、これは、感染研、地衛研のみならず、民間の検査所、あるいは大学、医療機関の力もかりながら、これを更にもっと高めていきたいと思っていますけれども、これをやっていく必要があるというふうに思っています。

岡本(あ)委員 私、基本的な考え方は合っていると思うんです。ただ、国民に対してきちんと伝えて、そして本来必要な方をしっかり受けとめるということはちょっとずれているところがありまして、ちょっと指摘をさせていただきたいと思います。

 一つは、前回私が質問したとき、医師の判断の、ドクター、医師というのは接触者外来だと答弁をされたんです、私に対して。私は、かかりつけ医の判断というのはそれで一つの判断だと認めるべきだと思いますが、そこはどうでしょうか。

加藤国務大臣 判断といっても、そのかかりつけ医の方が実際に拭うことができるかどうかということなんですね。そういうことなんですね。もしかかりつけ医の方でそういう力があれば、これはむしろ帰国者・接触者外来という形でやっていただければ我々としてはありがたいというふうに思います。

 したがって、自分のところに来た患者さんが、特にふだんから接しておられる方がいた、どうも聞いていると疑いがある、やはりお医者さんの世界ですから、帰国者・接触者外来を誰がやっているかというのはわかっているわけですから、そうすると、うちにこういう患者さんが来たからちょっと診てねといって、そちらに回されて、自分もこう思うよという所見も加えてお話をされて、そして、受けた方の帰国者・接触者外来のお医者さんがそれも踏まえながら実際に診断をして、これは疑いがあるから検査する必要があるね、こういう流れも別に私どもは否定しているわけではありません。多分、実態としてはそういうケースもあるんだろうというふうに思います。

岡本(あ)委員 今、接触者外来は公表されておりません。たまたまかかりつけ医が、接触者外来がどこで、電話番号がどこでとわかれば、それはやってくれると思います。そうであれば、かかりつけ医の方から接触者外来につないでいいんだという方針をしっかり出していただきたいと思います。

 資料の三の一番、これは電話の相談センターからのフローです。

 相談センターで、まず問合せをします。要件一、二、これは濃厚接触者か中国の地域縛りの件です。そこには該当しません。そうなった後は、重症化しやすい者であるかどうかの確認というところになります。重症化しやすいとなると、基礎疾患、妊婦、高齢者、抗がん剤を用いている、免疫抑制剤を使っている、この方々は重症化に入りますが、それ以外だとそのままフロー四になるんですね。

 フロー四は、資料三の二を見ていただければ、相談センターに行って、あなたはフロー四ですと言われると、まずそこで、あなたは該当しませんというか、対象じゃないという言葉は多分今は変わっていると思いますが、一回かかりつけ医に相談してくださいという誘導になっております。かかりつけ医が判断をしたら本人に伝えて接触者外来まで行けるルートになっているんですが、多分ここで、相談センターの方がここではなくてかかりつけ医でと言った時点で、もしかしたら、私は断られたといって不安を募らせる結果になってしまうんじゃないかと思います。

 本来、フロー四の方でも、呼吸の症状があるよ、熱があるよということであれば、本来はそのまま帰国者・接触者外来につないでいただきたいと思うんですが、この流れは今も、一回かかりつけ医に行きなさいという流れになっておりますが、これで間違いないですか。

加藤国務大臣 これは、要するに、疑似症の要件に該当しなくて重症化しやすい者でないという方でありますけれども、日ごろの病院があれば、相談センターでは判断できませんから、まず近くのお医者さんでちょっと相談してみてください、あなたの症状をふだん診ている方がおられればということでありますが、ただ、ここに書いてありますように、帰国者・接触者外来の連絡先を伝えておくということになっているわけであります。特に、この辺の流れも余りスムーズじゃなかったので、そこは非常に弾力的にやってくださいということも申し上げているわけでありまして、そういう意味において、もし全然受診する機関がなければ、むしろこの方が帰国者・接触者外来に連絡をしていただいて、そこで相談をし、そうだったら来てくださいということであれば受診をしていただく、こういう流れになるというふうに思います。

岡本(あ)委員 残念ながら、そうもなっていないところがございます。

 結果として、受診調整を接触者相談センターが、ここは保健所がついていますので、受診調整をこのセンターがやっているところが、多分、都道府県には多いと思うんですね。なので、多分、直接接触者外来に、体が行ってしまえば拒否することはないと思いますが、電話をすると、また、一回相談センターに行ってくださいという流れも起きかねないんです。

 そこは現場現場で、できるだけ、こういう流れであれば、かかりつけ医に、もしあれば、かかりつけ医に一回相談してみてください。ただ、今、かかりつけ医も、うちに来られてもちょっと困るというお話が結構聞こえてきていますので、本来であれば、フロー四でも、この後、資料五、六にありますけれども、症状がある方は接触者外来につなげる流れにまずはしていただきたいと思います。

 資料五、六の説明をしますが、この間もこのやりとりをさせていただきました。加藤大臣は、三十七・五度以上が四日ぐらい続いて呼吸器症状があればそれは積極的に受けるんだという答弁をされましたけれども、入院を要する肺炎が疑われるという項目はずっと消えていないんですね。熱があって、ぜいぜい言っていて、入院を要する肺炎が疑われて、接触者外来につながるという基準が今も残っております。

 せめて、入院を要するかどうかは接触者外来の医師に任せるとして、三十七・五度以上の熱が続いて呼吸器症状があるということをもって接触者外来につなげるように変えてはいかがでしょうか。

加藤国務大臣 委員が御指摘になった資料五とか資料六は、基本的には帰国者・接触者外来の医師がどう判断してPCR検査につなぐかという話の姿を出しているもので、それ以前の話ではありません。

 それから、ここにあるように、まさに発熱かつ呼吸器症状、かつ入院を要する肺炎が疑われれば、これはまず検査してくださいね、そうでなくても、この四角がかかった三つ目でありますが、医師が総合的に判断した結果、疑われるのであれば、これも検査してくださいねという、検査に回していただくケースをむしろ三つ羅列しているということであります。

岡本(あ)委員 私、接触者外来につながった先が断られているというケースは、逆に私の感覚でいくと、そう多くなく受けとめているんです。接触者外来まで行けない方が結構多くいらっしゃって、例えば、テレビで何回も流れるシーンは、かかりつけ医の方が接触者外来につないでほしいと、それは保健所となっていますが、相談センターのバックにある保健所、検査を判断する保健所ではなくて、接触者外来につないでほしいと言っても、その症状ではと言われて。

 どちらにしても、解熱剤ですとか、呼吸器症状をとめる、処方される中身は、接触者外来で陽性と出ようが陰性と出ようが同じ対処の薬が渡されるんだとは思いますけれども、かかりつけ医が保健所に連絡をしても接触者外来につないでもらえないというのが大きな山になっていると思います。その際に基準になっているのは、やはりこの入院を要する症状というところは依然として残っていると思います。

 なので、相談センターからつなぐ分には入院というところは要らないということは明言していただけませんか。

加藤国務大臣 いや、もともとこれはそこの話をしているわけではなくて、帰国者・接触者外来から、今は保険適用になりましたので不要になりましたけれども、これまでは行政検査でしたので、帰国者・接触者外来の先生が判断をして、そして、保健所にPCR検査にかけますけれどもいいですかと言って断られる例があったということで、これは整理をさせていただいて、それはお医者さんの判断だという。これは行政検査。今は、保険適用している部分はもう保健所に一々確認する必要はありませんから、それはPCR検査に行く。

 ただ、今先生がおっしゃった、まさに帰国者・接触者相談支援センターに電話をしました、そうすると、相談の目安、受診の目安で、三十七・五度が何日続いていますか、三日です、じゃ、もうあと一日、二日見てくださいというのが確かにあったという指摘も、これは私どもも聞いております。

 したがって、そういったケースにおいては、状況にもよると思うんですね、ちょっと熱があるけれども普通にやっていますよという方と、かなりせき込んでいたり倦怠感があったりということ、そこをよく聞いていただいて、適宜、柔軟に、四日ということだけで見るのではなくて、まさに総合的に勘案をしていただいて、つないでいただく。

 それから、つないでいただくときも、例えば、また電話してもらうということではセンターも大変ですから、場合によっては、ちょっと待って、もう一日様子を見た上で、それでも続くんだったらこちらに電話してくださいとか、そういう柔軟な対応をしていただくということで、改めて通知も出させていただいたということであります。

岡本(あ)委員 私のが杞憂に終わればいいんですが、やはりちょっと相談センターの方でハードルがあるなと思っています。

 ちょっと担当の方にお聞きしますけれども、ここで、三日、四日たたないとだめなんだよという根拠をお示しください。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 相談・受診の目安のところは、四日たたないとだめとはどこにも書いていなくて、申しわけないんですけれども、普通の風邪だなと思っていたんですけれども、それよりも長く四日以上熱があるとか、そういうときに新コロナかなと考えて相談してくださいと。

 そのときも、いろいろ持病がある方とか基礎疾患がある方は二日でとか、あるいは、そもそも受診行動としては、この時期でしたらば、当然、熱が出たら、風邪かな、インフルエンザかなと考えるのが普通ですから、まず、そこのかかりつけ医に行ってまず診てもらってくださいというようなことも含めてパンフレット、チラシをつくらせていただいているので、あくまでも、今回の新コロナウイルスの特徴が、普通の風邪よりは長引くとか、あるいは全身倦怠感が普通の風邪より強いというような特徴を捉えて、そこを強調して、そういうときには、普通の風邪だなと思ってほっておくんじゃなくて、四日たっても下がらなかったらかかってください、そういう趣旨でつくらせていただいているものでございます。

岡本(あ)委員 私、伺っていたのは、インフルエンザだと、熱が出て翌日あたりだと検査をすると出る、でも、熱が出たその日に行って検査しても陽性、陰性がわからない、コロナの場合はもうちょっと期間がたたないと陽性、陰性という判断が出にくい、だから、三日、四日様子を見た方がいいと聞いたんですが、それは間違いですか。要は、症状があって検査をすれば陽性、陰性という判断はできるものでしょうか。

宮嵜政府参考人 お答え申し上げます。

 この新コロナウイルスの場合、症状が出てから何日目ぐらいからウイルス量が多くなって検査が出るかというのはまだわからないところもありますので、明確に、四日たたないと検査してもほとんど陽性に出ないとか、そういうことではなくて、そもそも、相談とか受診の目安というのは、普通の風邪よりも長いなとか、普通の風邪とちょっと違うんじゃないかと思ったときには迷わずに相談してください、そういうような趣旨でつくらせていただいているものでございます。

岡本(あ)委員 そういう御答弁であれば、三日、四日という言い方は一切要らないんだと思うんですね。いまだにコールセンターですとやはり四日、四日というルールがなぜか定着しちゃいましたけれども。最初は、私、三日、四日たたないと、検査をしても、陽性、陰性、判断の、適合が定かじゃない、だから様子を見てくれということだと伺っていたつもりなんですが、それがないのであれば、三日、四日続くということ自体が要らないんじゃないでしょうか。

 症状があって、今苦しい。まあ、入院を要するような、もうつらくてつらくてというんだったらそれこそ入院を要するレベルですけれども、やはり、熱がある、そして呼吸器症状がある、きのう、おととい、二日ぐらい続いていて気になっている、かかりつけ医に言っても、ちょっと今怖いので検査を受けた方がいいよ、それで相談センターに言っても、いやいや、四日待ってくださいみたいな話がいまだに残っているということ自体が問題だと思うので、この日にちということ自体を撤廃という判断は、大臣、どうでしょうか。

加藤国務大臣 これは、かなり専門家の方に議論していただいて、普通の風邪だと一日、二日、三日ぐらいで改善する、これはかなり長く続くということ等々を踏まえながら、一つの目安というのを出させていただきました。その背景の一つには、今局長が答弁させていただいたように、風邪だから大丈夫だよねみたいな形で三日、四日、五日過ぎてもらっては困る、少なくとも四日ぐらい続くのなら必ず受診してほしいということが一つであります。

 それから、一日目で、風邪症状なんだけれどもということで、みんなが帰国者・接触者外来に来ることになると、その方が、本来風邪だったにもかかわらず、そこに違う疑いの者がおられると感染してしまうというリスクもあります。その辺も含めて、どう全体としてやっていけばいいのかということで、専門家の方が、四日というのは一つの目安になるのではないんですかと。

 ただし、倦怠感があったり、別途、今お話があったように、かなり症状が悪化したら、これはまた別問題。

 それから、高齢者について言えば、二日程度と言っていますけれども、高齢者でもいろいろな高齢者がおられます。基礎疾患のある方も、かなり厳しい状況の方であれば、そういう方は即日受診していただいて、対応していただく。そこは柔軟な書き方をさせていただいております。

 加えて、ことしはインフルエンザ等は余り流行していませんけれども、インフルエンザの可能性もあるわけでありますから、そういう場合にはきちんと普通のかかりつけ医を受診していただくということであります。

 そこは、まさにケース・バイ・ケース、最終的にはケース・バイ・ケースということになります。

 ただ、委員御指摘のように、いささか帰国者・接触者相談支援センターで四日という基準で機械的にやっていたところがあるというのは私どもも承知をしておりますので、そこは、そうではなくて、まさに弾力的に柔軟に対応していただきたいということを改めて通知をさせていただいているということであります。

岡本(あ)委員 そうであれば、かなり柔軟に対応いただけるということであれば、今は、残念ながら、ちょっと症状があっても断られて、結果として、かかりつけ医にも今はこういうときだからうちに来られたら困ると言われて、行き場を失う方が現実にいるとすれば、やはり接触者外来にしっかりつないでいただきたいと思います。ただ、一方で、念のためにということはしっかりと切り分ける、それは当然必要だと思います。

 あと、感染症の中で、蔓延してきたら自宅療養も認めていかざるを得ない、そういう判断が出たと思います。蔓延する、タイミングといいますか、判断というのを何をもって見るのか。今、残念ながら、陽性の方が自宅にいることで感染を広げてしまうんじゃないかという不安も非常に広がっている中で、自宅療養という判断をするタイミング、基準というのをどこで持つのか、お答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 これは、基本方針を踏まえて、移行の考え方というのを整理をしていただきました。

 今のケースでいうと、入院ということを考えたときに、地域の感染拡大により、入院を要する患者の増大に伴い、重症者、重症化リスクが高い者等に対する入院医療の提供に支障を来すと判断される、あるいは来していくのではないかと判断される場合において、その当該地域、感染は満遍なく起こるわけではなくて、地域でかなり偏りが出てくるわけでありますから、そういった地域においてそうした判断があった場合には、厚労省と相談をしていただいて集中治療を要する重症者のための病床を確保する、他方で、軽症者については自宅で療養していただく、そういうモードを切りかえていくタイミングというのは、今申し上げたところで出てくるということであります。

岡本(あ)委員 ちょっと、事実かどうかの確認も含めてですが、大学病院系で、もう自宅待機というのが起きているんじゃないかという話がございました。なので、自宅に陽性の方がいる場合にどういうふうに対応するべきなのか、あるいは御家族の方がどうするべきなのかというのもきちんと理解した上で踏み込まないと、また新たな不安が起きたりとか、風評被害が起きたり、そういうことが起き得ますので、ぜひその点は留意をしていただきたいと思います。

 あと、本当は法律案のところも触れたかったんですが、私とすると、高年齢者雇用安定法の関係については、雇用以外の措置、あえてここだけなぜ入れたのか、別に入れなくてもよかったんじゃないのと思うのに、なぜここが入っているのか、この点についてまずお答えいただきたいと思います。

達谷窟政府参考人 お答え申し上げます。

 七十歳までの就業機会の確保を図る上で、六十五歳以降は年金が支給されるとともに、六十五歳以前と比べて就労に対する考え方も個人差が大きくなることなども配慮いたしまして、それぞれの高齢者の特性に応じて選択できるような仕組みとすることが必要であるというふうに考えてございます。

 このため、今般の改正法案におきましては、七十歳までの高年齢者就業確保措置として、現行の六十五歳までと同様の措置に加えて新たな措置を設け、そのうちいずれかの措置を講ずることを事業主の努力義務としたものでございます。

岡本(あ)委員 今伺っても、なぜ六十五歳以上七十歳までの間だけ、雇用以外のメニューをあえて法律の中に掲示をしなきゃいけないのかという点については理解ができておりません。あしたもこの件についてはお聞きしたいと思います。

 あと一点、最後に、マスクなんですけれども、大臣、第二弾として、マスクを各自治体に届けるという方針が出ておりましたが、もう届けたんでしょうか。届けるという報告書しか出ておりませんので、そこだけお答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 マスクについては二つありまして、まず医療用マスクについて申し上げますと、優先供給スキームというのをやらせていただいて、これは、メーカーや卸から直接、不足をしている病院等に運んでもらうというスキームで、これは二月二十八日からスタートしておりまして、また、第二弾として三月十三日から。

 ただ、二月二十八日からスタートしている第一弾も、まだ、N95については終わっていますけれども、通常のサージカルマスクは、約六十万枚と言われたことに対して、三月十三日現在では十五万枚程度の対応しかできていないということで、引き続き、メーカー、卸に、必要なところに早期に供給していただくようお願いをしているところであります。

 それ以外に、省庁が保有しているマスクのうち、当然、持っているのは自分たちのために持っているわけでありますけれども、しばらくであれば他に放出しても構わないというのが二百五十万枚あります。これについては、三月十六日に各県に到着し、三月十八日までにそれぞれ必要な医療機関に配付してほしいということでお願いをしております。

 それから、別途、国として一千五百万枚、これは国内と輸入を含めてでありますけれども、確保することにしておりまして、これについては、来週から順次、確保できたところから、特に不足をしたところを中心に供給していくということになっております。

岡本(あ)委員 ぜひ、マスクが必要な方に届くように御努力をお願いしたいと思います。

 あしたも伺わせていただきますが、私は、自覚症状がない人はハンカチを持ちましょうキャンペーンをやってほしいなと思っております。マスクは、必要な職種の方、必要な場所の方に優先して配付しましょうというのを、ぜひ大臣からもキャンペーンを張っていただきたいと思います。

 時間がないので、答弁はあした伺いたいと思いますけれども、本当に必要な方に優先するということ、潤沢に、潤ってからお互い分け合うという姿勢をお互いに持ち合いたいなと思っておりますので、よろしくお願いします。

盛山委員長 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 西村です。

 私で最後のバッターとなりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、新型コロナウイルス感染症対策について伺いたいと思います。先ほどもちょっと質問が出ていましたけれども、雇用調整助成金について。

 私は、雇用調整助成金、本来であれば、ここに至るまでに、至らないようにさまざまな手だてが講じられることが望ましいというふうには思っていますけれども、やはりここは、言ってみれば最後のセーフティーネットということでスタートしているということは、必要なことだったと思いますし、ぜひ、厚労省としても万全の対応で臨んでいただきたいと思っているものです。

 ところが、実は、雇用調整助成金、大臣も御存じのとおり、随分裁量の広い仕組みであって、今回、北海道が現状では特例としてかさ上げされているわけです。

 この要件は何か、法的根拠は何かと聞きましたら、法的根拠というよりは、厚労省が要件というものをつくって、その要件を満たしているところにかさ上げをするんだと。北海道以外にもこの後次々と出てくるかもしれないということで、その要件は何ですかということなんですけれども、十万人当たりの患者数が全国平均より相当程度高いとか、クラスターの存在が確認されているということ、そして、その前提として、首長が緊急事態宣言を出しているということだそうであります。

 しかし、そもそも、北海道の知事が発出された緊急事態宣言がいかなる法的根拠によるものなのか、そこは極めて弱いというふうに私は思っておりますし、それから、要件についても、十万人当たりの患者数が全国平均より相当程度高いということでいえば、例えば北海道という単位で見れば、確かに北海道での人口十万人当たりの感染率は高いようではあります。しかし、さっきも桝屋さんがおっしゃっていましたけれども、ほかの県でも二倍とか三倍とかというところはあるし、それから、基礎自治体単位で見ますと、北海道の感染率よりも上回っている自治体はあるというふうに思うんですよ。

 大臣、ここは端的に伺いますけれども、私は、北海道に認められている特例、やはり今回は本当に全国的な影響が出ていて、総理からの指示で、活動を自粛したり、不要不急の外出を控えたり、いろいろなイベントや仕事がなくなったりということで影響が出ているわけなので、北海道で今認めている特例というのは全国で展開をするべきじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、いかがですか。

加藤国務大臣 これはそもそもスタートしたときに、北海道の中でやはりクラスターが出てきたり、感染防止をしなければならない、そういう意味で、私どもの専門家チームも北海道に行っていろいろな議論をさせていただく、そういった中で、知事が、緊急事態宣言といっても、別に法律に基づくものではありませんけれども、道民の皆さん方に外出を抑制してほしいとか、特に週末については抑制してほしいとか、こういったことを要請したわけであります。そうした要請がなされれば、当然、圏内の、その地域における事業活動、経済活動が抑制される。したがって、雇用調整助成金としてもさらなる対応が必要だということで設けさせていただいて、助成率の上乗せも実施をしたという状況であります。

 したがって、そうした北海道と同じような形で自主的な要請をし、そしてそれに基づいて経済活動が一定程度抑制されることが見込まれるのであれば、同様な扱いをしていくというのは当然なんだろうというふうに思います。

西村(智)委員 結局、今のお話ですと、手を挙げた自治体が対象になる雇用調整助成金のかさ上げ、特例ということになるんだというふうに思うんですよ。

 私、ほかの省庁にも全部問い合わせてみましたけれども、北海道のみを特例として、例えば制度のかさ上げとか横出しとかいうふうにやっている支援、助成、措置、こういったものがあるかと聞いたら、ありませんでした。まさにこの雇用調整助成金だけなんです。やはり私は全国展開すべきだというふうに思います。

 そこについて重ねて伺いつつ、確認ですけれども、基礎自治体、市町村の単位で例えば緊急事態宣言のようなことを発出したときには、これは対象になりますか。

加藤国務大臣 経済単位をどういうふうに見ていくのかということなんだろうと思います。要するに、地域を非常に限定するということで、別にそれもないことはないんだろうというふうに思いますけれども、基本的には、私ども、都道府県において、知事がこうした自主的な意味において外出とかイベントとかを含めた要請をされる、そうすると、それに伴っていわば地域内の経済活動が低下をするおそれがある、それを含めて何がしかの支援をしていく必要があるだろうということでつくったのがこの制度だということでありまして、それぞれの地域において感染防止をよりとりやすくしていただく、そういった意味もあるんだろうと思っています。

西村(智)委員 全く答えていただけなかったんですけれども、基礎自治体は対象になりますか。

加藤国務大臣 基礎自治体単位、要するに、これは経済活動なので、一定の大きさを持って言わないと、そこで働いている方、あるいはどこにいる方という、もちろん都道府県だけでいいかというのはありますけれども、基礎自治体、例えばある町だけということであれば、それは経済として見たときに、基礎自治体で見るのが適切なのかというふうに私は思います。

西村(智)委員 重ねての主張ですが、私は、やはり、北海道でできる特例ですから、ぜひ全国で同じように措置をしていただきたいと強く要請をいたします。

 次に、学童保育について伺います。

 追加の財政措置が示されて、それはそれでよかったというふうに思うんですけれども、しかし、学校の休業があって、それに伴って学童保育をあけてくださいという話になって、それで学童保育は人の手当てもしなければならずということなんですけれども、私が伺った事例の中でこういうことがありました。

 民間が立ち上げた学童保育で、一事業者が五つの施設を持っておられる。ところが、学童保育もできれば利用を控えてくださいという呼びかけがあったがために、利用料がキャンセルになった。それで、五つの施設を運営しているので、三月分の利用料のキャンセルがすごく高額に上って、人件費が払えないというような事例があるんです。

 私、今回の学童保育をめぐるさまざまな問題というのは、政府の方からの指示、要請によってなされていることなので、やはりこの減収分などについては国が責任を持って補填をすべきではないかというふうに思うんです。

 学童保育というのは、大臣も御存じのように、本当に豊富な財源で豊富な人手があってやっているというところはないんじゃないでしょうか。そういったところがぎりぎりやっていて、そして、今回の新型コロナウイルス感染症の山を過ぎたときに、子供の安心できる居場所があり続けたね、あり続けることができたねというふうに言えるためにも、やはりここは政府が責任を持つべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

加藤国務大臣 今回の措置は、むしろ学校が臨時休業になる、したがって、例えばふだん預けておられる方においても、ふだんであれば放課後だけで済むものを、平日ですけれども日中からお願いをしなきゃいけない、そういったことを踏まえて、午前中から運営する場合、あるいは支援の単位を新たに設けて運営する場合について必要な財政措置を講じさせていただいたところでありますし、加えて、その後、人材確保に要する費用等についても、さらなる追加的な財政措置としての加算額も増額をさせていただいているということ、加えて、やはりさまざまなマスクの問題、消毒液の問題もありますから、それについても加算事業を創設して、国庫負担十分の十、こういう補助の措置をさせていただいているということでございます。

 今委員御指摘の、使わないでくれというのがちょっと意味がよくわからないんですけれども、基本的には、そういった中で運営していただけるような財政措置を講じさせていただいたということであります。

西村(智)委員 できるだけ自宅にいてくださいという指示は出ましたよね。ですので、私も学童保育を見に行きましたけれども、やはり集まってくる子供の数が思ったよりは少ないというふうに施設の方ではおっしゃっていました。

 ですので、やはりそこは国としてやるべきだというふうに私自身は思うし、もう一つ学童保育について心配なことは、とはいえ、時間を延長して働いている指導員の方がいらっしゃいます。例えば、それまでは午後から出てきた指導員の方が、今度は受け入れるためにということで午前中から出てくる。当然、勤務時間が延びますから、その分収入がふえます。

 ですが、学童保育で働いておられる指導員の皆さんの収入は大体どのくらいかというと、全国学童保育連絡協議会などが調査したところでは、年収百五十万円に満たない人たちが、二〇一二年だったか二〇一四年の当時で四六・二%、およそ半数が年収百五十万に満たない状況で働いておられるんです。

 その方々が、仮に勤務時間が延びたということで、延ばさなきゃいけないわけですよね、実際、子供たちが来ますから、あけなきゃいけない。すぐにアルバイトなんかを雇えるというような状況でもありません。感染防止策をどうするかとか、あるいは、今度はそれまで学童に来なかった子供たちも来るようになるかもしれないから、その分手厚い対応が必要になったりとかいうことですから、学校の先生がいきなり来て対応できるという話でもないんですね。そうすると、その学童の指導員の方々の収入がふえる、年収として、こういうことが想定されますし、実際、そういう話を伺っています。

 そうすると、いわゆる例えば百万円の壁とか百三万円の壁、それから百三十万円の壁、百五十万円の壁、税制と社会保険の額が、今度は例えば配偶者控除を外れたり扶養から外れたりということで、国民年金、健康保険、場合によっては介護保険、こういったものの保険料がオンされてくるということになります。これはちょっといかがかというふうに思うんですけれども、大臣、どうですか。

加藤国務大臣 私も、地元からそういうお話は伺いました。

 ただ、これは、いろいろな事情があっても、まさに一律的に、保険であれ、それから税であれ、つくられているわけでありますから、ある人だけ特例的に扱う、しかも、そこにもし給与所得が発生していないのなら別でありますけれども、明らかに所得が発生をされているということであります。そうでないと制度的な公平性も担保することができなくなってくる。それぞれの特殊事情を言い出せば、それはみんないろいろな事情があるんだと思います。

 したがって、そこはやはり一律的にやっていかざるを得ないということで、それぞれの、配偶者控除と特別控除、あるいは社会保険料についても一律な扱いをしていかなければ、特例的な扱いというのはなかなか難しいんじゃないかなというふうには思います。

 ただ、今お話がありましたように、一時期に所得が上昇したことをもって例えば被扶養者の認定をすぐに取り消すというわけではなくて、一定期間を見ながら判断をされるということは委員御承知のとおりだと思います。

西村(智)委員 すぐさまということではないというふうにもおっしゃっていただいたんですけれども、ぜひそこのところは厚労省から検討していただいて、ちょっとさすがにかわいそうだと思うんですよ。

 それは、いろいろな、私自身だって、その壁の話でいえば、一人一人の個々の働き方はやはり個々の問題だというふうに思いますから、その制度のあり方自体について言えといえば言いたいことはたくさんありますけれども、しかし、現にそういう制度があって、壁があって、壁以下で働いていたのに、いきなり百三十万円を超えたら、例えば年金の保険料とか、それから健康保険、介護保険、地域によっては月額二万数千円ですよ。いきなりこうなっちゃうというのは、それは、子供たちが来るからやはり学童だって出ていかなきゃいけないわけで、それも、国のこういった措置がなければ、その人たちは言ってみれば勤務時間はコントロールできたと思うんですよ。

 それが、ここにもってきて、そういう措置だからということで出ていかざるを得なくなった、ここはやはり重く受けとめていただいて、大臣自身として何がしか検討したいというふうに言っていただきたいんですが、どうですか。

加藤国務大臣 それぞれの事情はわかるんですが、ただ、皆さんいろいろな事情を抱えながら、本来、例えば百三十万以内に抑えようと思っていても、超えるという方はおられると思うんですね。ただしかし、やはりその事情を一つ一つ判断、しんしゃくしていたのではこの保険料であり税というのは運営できないので、一律に所得ということで判断をしていく、こういう仕組みになっているわけでありますから、そこはぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

 ただ、百三十万の壁があっていいのかどうか、これはまた別の問題として議論していかなきゃいけないと思います。

西村(智)委員 個々の事情だけではないんです、これは。個々の事情で働いたり働かなかったりということではなくて、学童保育に学校が休業したときの行き場のなかなかない子供たちが行けるということで午前中の勤務時間を長くしなければいけなかったという、言ってみればこれは政府の措置とか要請によって起きている事例なので、そこのところはよく踏まえていただいて、大臣、もう一回検討していただきたいと強くお願いをいたします。

 財務省の政務からも来ていただいておりますので伺いたいと思うんですけれども、先ほどの話はあれとして、フリーランスへの支援策についてです。

 とはいえ、やはり税金とか保険料というのは前年の収入で決まってくるので、例えばフリーランスや業務委託で働いて前年は収入のあった人たちが、今非常に大変な思いをしておられます。こういった方々への税の減免について、検討の余地はないでしょうか。

井上大臣政務官 御質問ありがとうございます。

 御指摘いただいておりますいわゆるフリーランスについて、明確な定義はなされておりませんけれども、おおむね、雇用契約ではなくて業務委託契約などにより働かれている方のことを指し示すということでお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 こういう方々に対する支援として、三月十日に決定いたしました緊急対策の第二弾において、まず、学校の臨時休業に伴って生じる課題への対応で、保護者の休暇取得支援として、新たな助成金制度を設立する、それから、個人で就業する予定であった方にも一部の要件を満たす場合に支援を実施するということが一点。

 それから、個人向けの緊急小口資金等の特例を設置するということが二点目。

 それから、資金繰り対策等に万全を期するため、売上げが急減した個人事業主、フリーランスも含めますけれども、中小・小規模事業者に対しての実質無利子、無担保の融資を行う。

 この三点で対応させていただければというふうに思っております。

 以上です。

西村(智)委員 検討しないということなんでしょうか。

 大臣、フリーランスの方の保険料についても同じ質問をさせていただきたいと思います。減免などについて、考えられないでしょうか。

 それと、先ほどもありましたけれども、フリーランスの方への支援があす発表されるということなんですけれども、これは厚生労働省のホームページを見るしかないということですか。確認させてください。

加藤国務大臣 まず、保険料の関係ですけれども、これは多分国民年金と国民健康保険に入っておられる方が多いんだろうと思います。

 国民健康保険は、収入減少等の特別な事情のある場合には保険者の判断によって保険料を減免することが可能でありますが、ただ、都道府県に対して保険者が、条例に基づく徴収猶予等について周知を適切に対応するようお願いをしているところであります。これは都道府県ごとに違ってまいります。

 それから、国民年金保険料は、失業や事業の休廃止をされた場合については適用できるという仕組みにはなっておりますけれども、失業しているわけでもないし、事業をやめたわけでもないという方については、いわば一定の仕事はされている、就労はしているということについては減免をする仕組みには今なっていないということでありますので、今般の小口の貸付資金等々をうまく活用していただくということに、減免ということについて言えば、なるということであります。

 それから、新たな制度のPRでありますが、あしたからスタートいたします。これについては、我々のハローワークとかそういったところにもそうしたパンフレットを置かせていただいて、PRには努めていきたいと思っています。

西村(智)委員 それでは、法案の質疑に入りたいと思います。

 非常に内容がたくさんあって、論点も多岐にわたりますので、本来であれば、束ね法案ではなくて個々に、一本ずつ審査、審議すべきだというふうに思います。

 まず、私の方からは、高年齢者雇用安定法について伺いたいと思います。

 先ほどもありましたけれども、就業確保措置、これがやはり私も大問題だというふうに思うんです。しかも、これが問題なのは、就業確保措置については、雇用と非雇用を組み合わせて措置するということにした場合、過半数代表者の同意が必要ではないということなんだそうです。

 法案のつくり方からいえば、雇用が六十五歳から七十歳まで延長されているので義務は果たしているとみなされるということなんだろうと思うんですけれども、やはり、この間、先ほどありましたフリーランスの話一つをとってみても、大臣も、フリーランスへの支援は、非常に個々の状況がさまざまで、例えばどういうふうに所得の捕捉とかをしたらいいのか、困難だというようなお話もありました。もちろん勤務時間もそうだと思います。

 そういったいわゆる非雇用の働き方をふやすという流れを政府は今まで多様な働き方ということでもてはやして、それを拡大する方向に法改正をしてきたんですけれども、私は、今回の高年齢者雇用安定法の改正もそういう流れに乗っかっちゃって、やはり本来労働法制としてあるべき形から外れていっちゃうんじゃないかというふうに思うんですね。少なくとも、雇用と非雇用を組み合わせた場合においても過半数代表の同意は要件とするべきではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 六十五歳までは定年の廃止、定年の延長又は継続雇用ということで対応するということでありますけれども、六十五歳以上については、やはりそれぞれの方の状況も違っているところであります。

 独立行政法人労働研、いわゆるJILの調査、二〇一九年の六十代の雇用・生活調査によると、起業による自営業をしたいとか、起業以外の自営業をしたいとか、そういった希望を持っている方もいらっしゃるわけでありまして、そういった意味で選択肢を広げていくということで、今回、雇用以外の措置も設けさせていただいております。

 ただ、その中で、今委員御指摘のように、単独で、いわゆる創業支援等措置の場合には過半数代表等との同意が必要だというふうにさせていただいておりますけれども、雇用の措置と組み合わせた場合には同意をとる必要がないということになってはおります。

 ただ、私どもとしては、高年齢者就業確保措置の実施及び運用に関する指針というのがありますが、その策定に当たって、雇用の措置とあわせて雇用以外の措置を講ずる場合においても過半数代表者等との同意を得ることが望ましい旨を盛り込むといったことも、労働政策審議会において議論していただきたいというふうには考えております。

西村(智)委員 ぜひ、過半数代表者等との同意を得ることが望ましいということについて労政審で議論する、それはそれで一つ意味のあることかと思うんですけれども、やはり同意を得ることを要件とすること、これについて前向きに議論するべきだというふうに思うんです。

 もともとの話をすれば、本当に過半数代表の同意というのがどういうふうに担保されるのかというような問題はこれありなんですけれども、就業措置をつくるというときに、私はそこの同意というのは最低限必要なものだというふうに思うんです。

 それで、例えばなんですけれども、事業主が非雇用を選んで委託契約で働く人に業務に従事してもらう場合と、それから、定年延長によって労働契約に基づいて社会貢献活動をする場合と、いろいろなケースが考えられると思うんです。定年延長して社会貢献活動というのをやるケースもあると思うんです、また他方で、非雇用を選んで委託契約で業務をやっていただく場合とがあると思うんですけれども、さっきもありましたけれども、その二つが同じ仕事をしていた場合に、労働者保護という点からは、しかし、労働法制に入る入らないでこれは著しい差が出るわけなんです。

 それで、労働者側が例えば雇用契約による就労を希望していたとしても、事業主の方が委託契約であるというふうに提示した場合、それを委託契約でどうですかというふうに言った場合に、労使の合意に至らないということも想定をされます。こういうケースにおいて、事業主の方は七十歳までの就業計画を提示しているわけですが、七十歳までの就業計画を提示しているということをもって、事業主は努力義務を果たしたというふうに言えるんでしょうか。(発言する者あり)

盛山委員長 とめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 今回の改正は、七十歳までの就業機会の確保について、事業主に対して、五つの選択肢のうちいずれか一つの措置を講ずるよう努力義務を課すものであります。

 過半数代表者等の同意を得て創業支援等措置を導入した場合には、それで努力義務を果たしたこととなるが、労働者の多数が雇用継続を求める場合は、過半数代表等の同意が得られないことになるので、その場合は雇用による措置を講ずることといったことが求められることになるというふうに考えます。

西村(智)委員 なるほど。

 それで、事業主がそのように非雇用による就業を求める際には、労使合意を得る努力をすることになっています。それが同意しなかったらだめだという話、今大臣が答弁をされました。この内容によっては、労使の間でトラブルになっていくということも想定をされます。ですので、私は、やはりこの労使合意の内容については書面でしっかりと残して労働局などに提出させる、そういう必要があるんじゃないかというふうに思うんですけれども、これはトラブル回避策として必要なことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 そういった、いわば手続と言うとあれですけれども、そういった同意をどういう形でとったのかというのをどう残していくのかということなんだろうと思いますけれども、それについても、先ほど申し上げた指針の策定の中において、どういったものを盛り込んでいくのか、今御指摘のあった点も踏まえて、労働政策審議会でしっかり議論をさせていただいて対応させていただきたいというふうに思います。

西村(智)委員 それで、非雇用による就業の合意内容についてなんですけれども、報酬や就業期間、それから経費の負担、こういったことは当然書かれることだというふうに思うんですけれども、それすらも書かれないケースもあるのかな。高齢者が安全に就労するための企業主の措置内容でありますとか、それから、なぜ雇用ではなく委託契約でなければいけないのか、そのことを客観的、合理的に理由をきちんと記載するということが必要だというふうに考えます。これについては、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 まずは、一点目にありましたけれども、高齢者就労ということになれば、特に安全の面をしっかりやらなきゃいけないということは当然のことだと思います。

 厚労省においても、労使が取り組むべき内容をまとめたガイドラインを作成しているところで、その周知啓発を通じて高齢者の安全と健康確保のための労使の取組を促進しているところでありますし、さらには、さまざまな補助金も用意しているところであります。

 今回の議論においても、当然、こうした面を踏まえながら、省令あるいは指針、運用計画は省令ということになりますけれども、指針等の中において、運用計画にどう盛り込んでいくのか、中において、今お話があった安全配慮といいますか安全衛生面の対応、これもしっかりと盛り込んでいくべく、労政審で議論をしていただきたいと思います。

 それから、今おっしゃった理由というのは、雇用でない措置をとった合理的理由といっても、これは選択の問題なので、なかなかちょっと難しいのではないかなという感じはしないではありませんが、いずれにしても、国会でいただいた件については、労政審において、そうした御意見も踏まえて、どう対応すべきかも含めて、御議論はいただきたいと思います。

西村(智)委員 しっかりお願いいたします。

 さっきちょっと長く申し上げた中で私が申し上げたのは、定年延長して例えば社会に貢献する活動をするケースもあれば、同じ仕事の中身なんだけれども業務委託で仕事をやってもらうとか、結局、同じ仕事をしているんだけれども形態が全く違うというようなケースが出てきかねないというふうに思うんですね。そうならないように、きちんと合理的な理由を記載するということは必要だというふうに思います。

 それで、次が労働災害のことなんですけれども、労働災害、やはり高年齢になるに従って発生率は非常に高くなります。男性で二倍、女性で五倍。しかも、一回傷病などに遭うと治るまでに時間がかかる。これはやはり高齢者に特有の転倒とか墜落とかいろいろあるからだというふうに思うんですけれども、しかし、高年齢の労働者に向けて労働災害防止対策に取り組んでいる事業所は、労働安全衛生調査報告によりますと五五・七%しかありません。およそ半数近くの事業所が、高年齢の労働者のための労働災害防止対策に取り組んでいないということなんです。

 これを踏まえてなんですけれども、大臣、先ほどガイドラインをつくりましたというふうにおっしゃいました。これは、雇用か非雇用かを問わず、請負の人にも事業主から、このガイドラインに基づいて対応を求めるという理解でよろしいですか。(発言する者あり)

盛山委員長 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

盛山委員長 時計を動かしてください。

 加藤厚生労働大臣。

加藤国務大臣 請負契約により高齢者を就業させることの想定される事業者、事業者団体に広くこのガイドラインは周知をして、取組を促していきたいというふうに思っております。

西村(智)委員 それで、雇用している労働者が被災した場合には労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出しなければいけないということになっておりますけれども、非雇用による就業の場合は、この報告書の提出義務がかからないということになります。

 ですけれども、さっき大臣おっしゃったように、雇用、非雇用、請負の人、こういった働き方を問わず、高齢者が働きやすい職場環境のためのガイドラインというのが、何というか、対象になってくるということですので、今後の対応策を考える上でも、やはり非雇用の人たちにもこの労働者死傷病報告の提出を求めていくということが必要になるんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 先ほど他の委員に局長から答弁させていただいたというふうに記憶をしております。

 基本的には労働者死傷病報告そのものの対象にならないのは委員御指摘のとおりでありますけれども、こうした対象になるような事案が生じたことについて事業主から報告をしていただく、このことは非常に大事ではないかというふうに思っておりますので、それについても、どういう仕組みの中でやるかということを含めて、よく労政審の中で議論していただきたいと思います。

西村(智)委員 時間になりましたので、きょうは終わります。

 ありがとうございました。

盛山委員長 次回は、明十八日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時五十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.