衆議院

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第16号 令和5年5月24日(水曜日)

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令和五年五月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      畦元 将吾君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    小泉進次郎君

      小林 鷹之君    塩崎 彰久君

      新谷 正義君    瀬戸 隆一君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    橋本  岳君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      吉田 真次君    阿部 知子君

      井坂 信彦君    大西 健介君

      白石 洋一君    堤 かなめ君

      野間  健君    山井 和則君

      一谷勇一郎君    遠藤 良太君

      吉田とも代君    古屋 範子君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   経済産業大臣政務官    里見 隆治君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  佐々木昌弘君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     池光  崇君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十四日

 辞任         補欠選任

  吉田 統彦君     堤 かなめ君

  早稲田ゆき君     白石 洋一君

同日

 辞任         補欠選任

  白石 洋一君     早稲田ゆき君

  堤 かなめ君     吉田 統彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案(内閣提出、第二百十回国会閣法第六号)


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 第二百十回国会、内閣提出、新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。加藤厚生労働大臣。

    ―――――――――――――

 新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

加藤国務大臣 ただいま議題となりました新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明いたします。

 新型コロナウイルス感染症等への対応の中で、旅館業の施設における感染防止対策に係る課題が顕在化し、また、旅館業等の事業環境は厳しさを増しております。こうした情勢の変化に対応して、旅館業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図ることが必要です。

 このため、旅館業の施設において適時に有効な感染防止対策等を講ずることができるようにするとともに、旅館業等の営業者が必要に応じ円滑かつ簡便に事業譲渡を行えるようにすることを目的として、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の内容につきまして、その概要を御説明いたします。

 第一に、旅館業の営業者が新型インフルエンザ等感染症等の症状を呈している宿泊者等に対して感染防止対策への協力を求めることができることとし、当該求めに正当な理由なく応じない場合に宿泊を拒むことができることとします。

 第二に、宿泊しようとする者が営業者に対し、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返したときは、営業者は宿泊を拒むことができることとします。

 第三に、旅館業の営業者は、その施設における感染症の蔓延防止対策の適切な実施や、高齢者、障害者等の特に配慮を要する宿泊者への適切な宿泊サービスの提供のため、その従業員に対して必要な研修の機会を与えるよう努めなければならないこととします。

 第四に、生活衛生関係営業等の事業譲渡による営業者の地位の承継に係る手続を整備します。

 最後に、この法律案の施行期日は、一部の規定を除き、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日としています。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要でございます。

 御審議の上、速やかに可決していただくことをお願いいたします。

三ッ林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官佐々木昌弘君、観光庁審議官池光崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。勝目康君。

勝目委員 おはようございます。自由民主党、京都一区の勝目康でございます。

 本日は、正式名称は随分長くて意味がぱっと頭に入ってこない法律でありますけれども、要するに、コロナ対応を踏まえた旅館業法等の一部を改正する法律案ということだと思います。その審議に当たって質問の機会を頂戴しまして、誠にありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思いますけれども、まず、法案そのものに対する質問の前に、今、旅館が置かれている現状を鑑みたときに、旅館に対する支援をどうしていくか、ここから始めないといけないな、このように思っております。

 私の地元京都は、御案内のとおり国際文化観光都市でございまして、多くの旅館が長きにわたって営業をしております。新型コロナは、まさにこの京都の基幹産業の一つであります観光、そして観光を支える旅館業を直撃をいたしまして、この三年余りの間、まさに需要の蒸発とも言える大変厳しい事業環境に置かれてきたわけであります。もちろん、これは京都だけのことではありませんで、全国的に同様の事態になっていたんだ、このように考えております。

 この間講じられてきました様々な支援策によって、事業と雇用の継続にこれは大きな役割を果たしてきていただいた、このように考えています。その結果、例えば旅館の倒産件数、これは、リーマン・ショック時よりもかなり抑え込まれていると承知をしております。

 そして、去る五月八日、新型コロナ感染症が感染症法上の五類ということで位置づけられまして、人の流れもかなり戻ってきたところであります。観光客も増えて、緊急的、特例的な支援措置も、順次、平常化に向けて方向転換をしている、今、そういう状況であると承知をしております。

 ただ、ここで忘れてはいけないのは、コロナ期間中講じられてきました支援策の中で圧倒的に金額が大きいのは、いわゆるゼロゼロ融資だということであります。これは実質的に、コロナ禍における営業損失に対するいわば埋め合わせ的な資金繰り支援だったわけですけれども、特例的に好条件での借入れであったとはいえ、借金は借金であります。いわば、三年分の借金の蓄積が過剰債務問題として今旅館を営む事業者にのしかかっている、こういう状況にあります。この過剰債務問題を何とかしないと、経営の持続性が確保できない、さらには、将来に向けた攻めの投資もできない、こういう状況です。ひいては、日本の旅館業、観光産業全体の衰退を招いてしまう、このようなおそれがあると思っています。

 そこで、まずは返済原資、これをどう確保するかというのが重要になりますけれども、旅館業は、コロナが去ってまた一難ということで、大変なまた別の課題に直面をしております。人手不足で、せっかく予約が入ってもその予約を取り切れない、収益機会を逸してしまっているということもありますし、物価高騰が収益を圧迫している、こういう状況にもございます。そういう中で、ポストコロナ、観光立国を再び目指していくに当たって不可欠なインフラであります旅館の持続性確保のため、まずは収益確保を強力に後押しすることが必要だと思っております。

 人手不足への対応を含めて、旅館業に対するエールを込めて、観光庁としての支援策を伺いたいと思います。

池光政府参考人 お答えを申し上げます。

 旅館を始めとします宿泊業におきましては、コロナ禍によりまして、債務残高がコロナ前に比べ四割以上増大をし、人手不足の状況を示します欠員率、こちらも全産業に比べ相当高い水準となっております。

 観光需要の回復が見られる中で、人手不足による供給制約等により収益確保に支障が生じないよう、収益性、生産性の向上に資する観光地一体となった宿泊施設等の高付加価値化、DXの推進、必要な人材の育成、確保に強力に取り組むことが不可欠であります。また、こうした取組の果実として、従業員の方々の待遇改善が図られ、担い手の確保につなげていくという好循環を目指していくことが重要と認識しております。

 このため、観光地、観光産業の再生、高付加価値化事業といたしまして、昨年度の第二次補正予算において千五百億円を計上をいたしまして、全国各地で、宿泊施設の改修、地域全体の面的DX化への支援、また、観光DX推進といたしまして、地域内の宿泊施設等における予約や在庫等のデータの共有、また、こうしたデータを活用した、利活用によって新たな価値を生み出す等への取組支援、さらには、人材育成、確保のための支援といたしまして、観光人材を育成する教育プログラムの作成や、これの実践に向けた支援、こういったものに取り組んでいるところでございます。

 引き続き、こういった支援も十分活用いたしまして、観光産業が持続可能で稼げる産業へと変革していくことを目指しまして、しっかり取り組んでまいります。

勝目委員 ありがとうございます。

 高付加価値化事業につきましては、かなり事業者の関心も高いと思います。今、一次募集の手続をされているところかと思いますけれども、全部はけない場合は、二次、三次に向けて伴走的に御支援、お支えをいただくということも大事になってくるかというふうに思います。そしてまた、人材の育成あるいは処遇の改善というところにも言及をいただきました。こうしたところ、総合的に取り組むことが大事だと思います。

 全国旅行支援も、今の予算が終わればこれで終了ということになっておろうかと思いますけれども、いきなり支援が終わってその後何もなしということになってしまうと、いわば支援の崖ができてしまう。事業者としても、その後何もないのかというようなこと。あるいは、旅行需要そのものが一気に減退してしまう、こんなことも懸念されるわけでありまして、旅館業そして旅行産業全体への支援というものに引き続きしっかりと取り組んでいただきたい、ここは強く求めておきたいと思います。

 続いて、金融支援についてお伺いをいたします。

 旅館業界におきましては、日頃おつき合いの深い政策公庫ですとか商工中金、これらの政府系金融機関によります資本性劣後ローンの活用促進など、更なる金融支援を求める声、これが強くございます。利率ですとか期間などの条件面での改善、あるいは金融機関としてのノウハウを生かした支援も含めまして、政府系金融機関としての対応方針、是非、政務官御自身、旅館に対する応援のお気持ちも含めまして、お伺いをしたいと思います。

里見大臣政務官 御答弁申し上げます。

 御指摘のとおり、コロナの影響の長期化や物価の高騰に加えまして、今後コロナ融資の本格的な返済を迎えるなど、旅館業を含む中小企業を取り巻く環境は非常に厳しい状況にございます。事業再構築投資に必要な資金などについて、借入金を資本とみなすことで民間金融機関から新規融資を受けやすい環境を整備するため、資本性劣後ローンの活用を促進することは大変重要だと考えております。

 コロナ対応としての政府系金融機関による資本性劣後ローンについては、通常のものよりも金利を大きく引き下げるとともに、融資期間の延長や融資限度額の引上げを行うなどの措置を取ってきたところでございます。本年三月には、経済産業大臣、財務大臣等から、官民金融機関に対し活用の促進を要請しているところでございます。

 加えまして、日本公庫の資本性劣後ローンの活用促進に向けまして、令和三年四月から、税理士等の認定支援機関、これは全国で三万五千機関ございます、これらの支援を受けて事業計画を策定していれば、民間金融機関との協調融資がなくとも利用が可能となるよう措置をしたところでございます。この制度を一層周知するため、本年三月に公表いたしましたコロナ資金繰り支援継続プログラム、こちらにおいて認定支援機関との連携強化を盛り込んだところでございます。

 あわせて、制度の活用促進のため、官民の金融機関や信用機関に対し、金融庁等と連携をして全国で説明会を開催し、周知広報を行っているところでございます。

 なお、商工中金におきまして、令和三年に設置した宿泊業専門支援チーム、これが中心となりまして各地の旅館組合への支援も実施しているところでございまして、今月より、一般社団法人日本旅館協会と連携をし、業績回復や成長に取り組む宿泊事業者への経営サポート強化に向けた体制を構築しております。

 引き続き、こうした取組を通じて、旅館業を含む中小企業をきめ細やかに支援をしてまいりたいと考えております。

勝目委員 ありがとうございます。

 もろもろ手を尽くしていただいておりまして、この周知をよりしていただいて、より活用しやすく、そういう環境をつくっていただきたいと思いますし、また、商工中金さんの支援チーム、こういうノウハウ支援も含めたハンズオン的な支援というのも非常に重要になってくると思いますので、どうぞよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 旅館の過剰債務問題の解決がポストコロナの観光立国の帰趨を左右をすると言っても過言ではないと私は思っております。観光立国というのはどういうことかというと、これは、インバウンドも含めて観光を我が国の重要産業の一つとして育てていくんだ、こういうことだと思っております。旅館はそのインフラであります。金融秩序を踏まえつつではありますけれども、まさに、産業インフラを守って育てる、この思いで、現場に寄り添ったしっかりした対応をとことん追求していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

 里見政務官と池光審議官、御退席いただいて結構でございます。他委員会までお呼び立ていたしまして申し訳ございませんでした。ありがとうございました。

三ッ林委員長 里見政務官、また池光審議官は退席して結構です。

勝目委員 それでは、引き続きまして、本日の案件であります旅館業法等の改正についてお伺いをいたします。

 この法案は、さきの臨時国会に提案をされまして、それが継続審議となって、結果的には、新型コロナ感染症が五類に変更になってからの審議入りということになりました。今回の記憶が鮮明なうちに、その教訓を生かして次なる感染症に備えるということ、そういう制度をつくって、さらに、旅館の営業者にとっても、宿泊者にとっても、また公共の福祉の観点からも、予見可能性を持って、極力混乱なく現場で運用されるものにしていくことが重要だ、このように考えております。そうした観点から何点かお伺いをしたいと思います。

 まず、今回法案に盛り込まれる感染症に係る宿泊拒否事由の明確化についてでありますけれども、この規定が発動されるのは、特定感染症が国内で発生している期間に限るというふうにされています。

 ただ、実際に宿泊者に対して、特定感染症患者に該当するかどうか、この報告の求めであるとか、あるいは感染防止対策に対する協力の求めを行って、正当な理由なく求めに応じない場合は宿泊拒否、こういう判断もしなければならない旅館にとって、この仕組みを発動できるのは一体いつからなのか、あるいは、いつその期間は終わるのか、これが分かっていないと適切に制度が運用されない、こういうことになってしまいます。

 新型コロナ感染症のケースを例に取って御説明をいただきたいと思いますし、また、全ての旅館に対して始まりと終わりの情報がしっかり届く必要があると思いますけれども、どのような仕組みでこれを伝達されるのか、お聞かせいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 特定感染症の国内発生期間につきましては、感染症法上の類型によって、一類、二類、新型インフルエンザ等感染症などで多少異なりますので、委員御指摘のとおり、新型コロナウイルス感染症を、今回のケースを当てはめた場合の始期についてお答えしたいと思います。

 まず、この感染症が発生した約三年前、その当時の規定と今と異なっており、一概には答えられませんが、そのときに当てはめますと、新型コロナウイルス感染症が国内で発生した旨の公表は、令和二年一月十六日に行われました。また、指定感染症に指定され、入院等の規定が準用されたのは、二月一日でございました。同日時点で、症状の程度が重篤であり、かつ、全国的かつ急速な蔓延のおそれがあるものと認められていたとすれば、今回のケースについては令和二年二月一日が始期に当たったものと考えられますし、また、終期につきましては、新型ウイルス感染症が、その時点では新型インフルエンザ等感染症になっていたものが、本年五月八日に五類感染症へ移行したことから、本年五月七日が終期に当たると考えられます。

 続いて周知ですけれども、旅館業の営業者が感染防止対策への協力を要請できる期間については、特定感染症が国内で発生した際に、厚生労働省から、旅館業の営業者や、何より国民の皆さんに対して、ホームページや通知等によって速やかに周知を行ってまいりたいと考えております。

勝目委員 ありがとうございます。

 中国武漢で確認されたのが二〇一九年十二月であったかと思います。そして、国内では一月十六日に最初の確認ということでありますけれども、実際に指定感染症としての位置づけが与えられたのは二月一日なので、今回のケースでいうと二月一日からになる、こういうことですね。それまでの間いろいろな情報が飛び交うわけでありますけれども、実際に始まるのは、当然のことではありますが、法律上の位置づけができたときからだということでございます。事業者への周知の仕組みの構築を含めて、しっかりとお願いをしたいと思います。

 続きまして、条文上は必ずしも策定されることにはなっていないんですけれども、ガイドラインについてお伺いをいたしたいと思います。伊佐副大臣に対する質問でございます。よろしくお願いいたします。

 感染防止対策と宿泊拒否に関しまして、旅館側としては、判断の基準となるような、根拠となるようなきめ細かな基準、これが必要だと思いますし、宿泊者側としても、予見可能性が高い方がこれはいいわけであります。

 感染防止対策に関してはどういう内容にするのか、あるいは、求めに応じない場合の正当な理由というのはどういうものなのか、あるのかないのか、これが旅館側の任意の判断に委ねられるということでは、これは旅館側の要請にも利用者側の要請にも結局応えられないことになるんじゃないか、こんなことを懸念するところであります。

 そしてまた、これは感染症対策ではありませんけれども、営業者側にとって過重な負担となる要求を繰り返したときも、これは宿泊拒否事由として追加をされました。いわゆるカスタマーハラスメント、権利の濫用というような行為を繰り返し行うような迷惑客につきましては、これはもう、お客様というのは神様ではありませんで、対等な契約関係の一方の当事者ということでありますので、これは、従業員の肉体的、精神的な苦痛、あるいはほかの宿泊客への影響といったものを鑑みれば、宿泊拒否事由として追加される、これは当然必要なことかな、こう考えるところであります。

 他方で、これも、旅館側の完全な任意に委ねられてしまうと、宿泊拒否が不当に広がってしまうんじゃないか、こういう心配、特別な配慮を要する障害をお持ちの方あるいは高齢の方から懸念が示されていますけれども、これは非常によく分かるところであります。この点につきましても、国が一定のガイドラインを示すことが必要なんじゃないかな、こう考えるところであります。

 感染防止対策といわゆる迷惑客対応、これら二点のガイドラインについて、策定するのかしないのか、する場合、その法的な性質はどういうものになるのか、また、内容はどんなものになるのか、それぞれについてお答えいただきたいと思います。

伊佐副大臣 まず、宿泊拒否の判断でございますが、宿泊拒否事由に該当する場合を除き、宿泊を拒んではならないということになっております。

 今回の改正法案におきましては、営業者は、宿泊拒否事由に該当するかどうかを判断するに当たりまして、宿泊しようとする者の状況等に配慮するとともに、客観的な事実に基づいて慎重に検討することが求められるというふうに考えております。これを実現するために、本法案が成立した場合には、関係者による検討会で検討を行った上で、宿泊拒否等について適切に対処するためのガイドラインを策定することを考えております。

 このガイドラインについてですが、これは法規たる性質を有するものではございません。ただ、旅館業法第五条に違反して不当な宿泊拒否を行った場合には罰則の対象とされていることなどを踏まえますと、営業者に旅館業法を適切に運用していただくために重要なものになるというふうに考えております。

 このガイドラインの内容でございますが、現時点で考えられますのは、例えば、感染防止対策の内容としては、体温測定あるいは個室待機、手指消毒などが考えられますが、例えば、消毒用アルコールへのアレルギーがあって手指消毒が困難である場合、こういう場合は宿泊を拒まれない正当な理由に該当するということでありますとか、あるいは、そのほかの正当な理由としましては、医療機関の逼迫や診療時間外によって医師の診察を受けられない場合などが考えられます。

 また、営業者は、宿泊しようとする者の状況等に配慮して、みだりに宿泊を拒むことがないようにするといったことでありますとか、先ほど委員の言及のありました迷惑客の宿泊拒否対象となる事例についても、宿泊者が従業員を長時間にわたって拘束し、又は従業員に対する威圧的な言動や暴力行為をもって苦情の申出を繰り返し行う場合などが該当すること、また、障害を理由として宿泊を拒むことはできない、こういった内容を盛り込むことを考えてございます。

勝目委員 時間が参りました。

 旅館の方にも、新たに宿泊拒否という、ある意味、必要に迫られてということでありますけれども、ただ、それの根拠になるような基準、そして、お客さんからしても、自分はそれの対象になるのかどうか、この予見可能性、そして、それは公共の必要があるのか、この三つの価値をしっかり実現できるような現場実装につなげていただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。

三ッ林委員長 次に、古屋範子君。

古屋(範)委員 おはようございます。公明党の古屋範子でございます。

 今日は、旅館業法等改正案について質問をしてまいりますので、よろしくお願いいたします。

 本法案の改正に向けての検討は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が問題となって、感染防止や宿泊施設従業員の安全確保が重要な課題となったことから始まったというふうに認識をいたしております。

 改正案は、宿泊拒否禁止の例外を緩和する、また、理不尽な苦情や要求をするカスタマーハラスメントへの対応も念頭に置いて、負担が過重な要求を客から繰り返された場合も例外に加えるなど、宿泊拒否を可能とする裁量を広げるものとなっております。

 昨年秋の臨時国会でこの改正法案が提出をされましたけれども、継続審議となっておりました。初めに、本法案改正の背景と意義、早期成立の必要性についてお伺いいたします。

 また、本年五月八日以降、新型コロナウイルス感染症が五類感染症に位置づけられました。元々のタイトルが、新型コロナウイルス感染症等の影響による情勢の変化に対応して生活衛生関係営業等の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案ということになっておりまして、本改正法案の提出時とは状況が異なっている。

 二類から五類への変更が改正案に与える影響はないのか、この辺についてもお伺いしたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 旅館業の営業者は、旅館業法により、宿泊を拒んではならないとされており、拒むことができる事由は制限されております。これは、先ほど委員から御指摘いただいたとおりです。

 現行法では、宿泊者が感染防止対策に協力しないことは、基本的に宿泊拒否事由に当たらないと解されております。

 このような中、新型コロナウイルス感染症の流行期に、旅館業の現場から、宿泊者に対して感染防止対策への実効的な協力要請を行うことができず、宿泊者や従業員の安全確保も含め、施設の適正な運営に支障を来したとの意見が寄せられたところでございます。

 こうした中で、新型コロナウイルス感染症は、本年五月八日から五類感染症へと位置づけが変更されており、そのため、本法案における特定感染症には該当しないものの、新型コロナウイルス感染症への対応において顕在化した課題を踏まえ、次なる感染症の発生に備えるため、旅館業の施設において適時に有効な感染防止対策を講ずることができるよう、環境を整備しておく必要があると考えております。

 また、旅館、ホテルの関係団体や労働組合等から、いわゆるカスタマーハラスメントへの対応も含めて本法案の早期成立が求められており、本法案による改正を早急に行っていただきたいというふうに考えております。

古屋(範)委員 今回の新型コロナウイルス感染症は五類に変更になったというものの、これまでの経験を踏まえた上で、次なる新たな感染症に備えて環境整備を図る法律案であるということを理解いたしました。

 次に、本法案で特に注目されるのが、旅館業法第五条の見直しであります。

 一部関係団体からは、現行法第五条の見直し法案に反対するという意見書が提出をされております。

 現行法第五条第一号の伝染性の疾病を、感染症予防法上の一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症、指定感染症に改めるとの範囲にとどめるべきであり、宿泊を拒否し得る場合の拡大については反対である。また、発熱等の感染症の症状を呈する者について法律上宿泊拒否を可能とすることは、感染症法上の理念や趣旨にそぐわない上、感染症の患者に対する差別的な意識を醸成し、社会的な偏見、差別を助長する危険性につながる。また、感染症患者への差別や偏見を助長する。差別的な宿泊拒否が横行するのではないか。障害者等への宿泊拒否など差別的な扱いにつながるのではないかとの懸念の声が出されているところであります。

 これに対しまして、本改正案では、差別防止の徹底として、感染症の蔓延防止対策の適切な実施、高齢者、障害者等、特に配慮を必要とする宿泊者への適切なサービスの提供のため、従業員に対して必要な研修の機会を与える努力義務を課しているんですけれども、果たしてこれで十分なのかどうか。

 現在でも、障害者が一人で宿泊しようと訪れたり、あるいは盲導犬を伴って訪れた際に、人手不足とか安全上の理由という曖昧な説明で宿泊を拒まれるケースがあります。

 現場の誤った判断で不当な宿泊拒否が行われないよう、関係者の方々の懸念を払拭するため、更なる対応が必要だと考えます。

 例えば、宿泊拒否等に関して適切に対応するためのガイドラインを関係者等の意見を聞きながら策定をしていく。さらに、宿泊を拒む場合は、このガイドラインにのっとって客観的、的確に判断し、第五条のどれに該当するのか、その理由を丁寧に説明する。そして、拒否した際の記録をしていく、どんな事案が起きたのか検証する仕組みを構築すべきと考えます。

 本来は拒否できない場合まで宿泊拒否が拡大することがないよう、これらの取組を徹底すべきと考えます。これについての厚労省の見解を伺います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 この法案をお認めいただいた場合は、先ほど伊佐副大臣から勝目委員にお答え申し上げたところですが、検討会を立ち上げてガイドラインをしっかり策定し、周知しようと考えております。

 具体的には、まず検討会ですけれども、旅館、ホテルの利用者、また旅館業の業務に関して専門的な知識経験を有する方、さらには感染症に関して専門的な知識を有する方、こういった方で構成される検討会で御検討いただいた上で、旅館業の営業者が感染防止対策への協力要請や宿泊拒否等について適切に対処するためのガイドラインを策定したいと考えております。

 今度はガイドラインの方ですけれども、例えば、営業者は、宿泊しようとする者の状況等に配慮し、みだりに宿泊を拒むことがないようにすること。また、営業者は、宿泊を拒む場合には、旅館業法第五条に定める宿泊拒否事由に該当するかどうかを客観的な事実に基づいて判断し、宿泊しようとする者からの求めに応じてその理由を丁寧に説明することができるようにすること。また、営業者は、宿泊を拒んだ場合には、都道府県から報告を求められる場合等に備え、その理由等を記録すること。こういった内容を盛り込みたいと考えております。

 加えて、本法案においては、旅館、ホテルの現場において適切なサービスが提供されるよう、従業員に対して必要な研修の機会を与えることを旅館業の営業者の努力義務とする規定を新たに設けることとしております。この研修においてもガイドラインの内容を周知していただくなど、ガイドラインを踏まえた適切な対応がなされるようしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 関係者、特に宿泊業の関係者、また感染症の専門家を入れた検討会を立ち上げてガイドラインを策定されるということでございます。

 そして、そのガイドラインにつきましては、現場で観光客に対応する従業員にまで徹底をしていただきたいと思います。みだりに拒むことがないよう、何がみだりに拒むことなのか、この判断基準を客観的に適切に選択することができるよう、研修を行っていただきたいと思います。

 次に、今回規定された特定感染症だけではなくて、平時においても、多くの感染症が発生をして宿泊施設に持ち込まれてしまうという可能性があると思います。通常の、例えば季節性インフルエンザ流行時、せき込む、明らかに体調が悪そうだなという宿泊客に対して、医療機関への受診やマスクの着用などを促すなど、普通に起こり得るケースについての対応について不安となったという感があります。

 現行法第五条で想定していた伝染性の疾病、例えば、はしかとかノロウイルスのように集団発生が危惧される伝染病などの対応について、改正案ではどのような取扱いになるのか、これについてお伺いをしたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 現行の旅館業法の伝染性の疾病につきましては、厚生労働省が定める管理要領、具体的には旅館業における衛生等管理要領というものがございますが、この中で、宿泊を通じて人から人に感染し重篤な症状を引き起こすおそれのある感染症との解釈を示しております。これは、逆に言えば、伝染性の疾病の具体的な範囲につきましては、この病気、この病気という形では具体的には明確には定めてはおりません。

 この法案においては、伝染性の疾病を特定感染症へと改正し、感染症の感染力や重篤性等に鑑み、対象となる感染症について、感染症法における一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症、新感染症のほか、指定感染症のうち入院等の規定が適用されるものとすることを法律上で明記をすることとしております。

 このため、感染症法において五類感染症に分類される例えばはしか、麻疹、またノロウイルスについては、改正後の特定感染症には該当しないことが明確になる、こういう法案の内容になっております。

古屋(範)委員 なかなか、そうした専門的な疾病、感染症の分類というのは、現場で対応するときにも従業員の方々も迷うことがあるかと思います。今、大変、観光の現場も人手不足で悩んでいるときかと思いますけれども、是非、先ほど申し上げた研修の場で、正しい知識、また、対応の仕方というものも徹底をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、第五条の第四号につきまして、これまで五条を悪用、すなわち、法に触れない限り、どんな要求をしても追い出されることはないんだと法律を悪用するクレーマーがいることが宿泊施設を悩ませていたと思います。この項目の追加によって、クレーマー、また、カスタマーハラスメント対策として効果が期待できるのではないかというふうに思います。

 しかしながら、実際の運用は難しいという指摘もあるところでございます。一方、障害のある人の宿泊の機会を不当に制限することを容認するものだという意見も一方でございます。

 先ほども述べました、盲導犬を伴って宿泊しようとする障害者の方、あるいは、電動車椅子の利用者が、対応が困難だということで宿泊を拒否された実例が多数あったという現状を考えますと、この規定の新設というものが、障害のある人たち、また介護の必要な高齢者、こういう方々が旅館、ホテルを利用する機会を制約することになってはいけないというふうに思っております。

 この第五条第四号は、カスタマーハラスメント対策として理解をしているところですが、こうした障害を持った方々などの不安の声を払拭するために、正しい解釈、運用について御説明をいただきたいと思います。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、この法案における五条四号の規定につきましては、片方では、カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラ対策は重要である。その一方で、この規定を根拠に宿泊拒否をされるのではないかという不安を払拭することが大事ですし、これをいわば過剰に適用した場合は罰則規定も営業者にかかることから、これをきっちりと、この条文の考え方が理解される、これは国民の皆さんにとってもそうですし、営業者の方、従業員の方にも周知、分かることが大事だと考えております。その上で、お答えいたします。

 本法案では、宿泊しようとする者が、実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求を繰り返したときに宿泊を拒むことができることとしております。この規定に関して、旅館やホテルの現場で適切な運用がなされるのかとの御懸念を私どももこれまでいただいたところでございます。

 この法案をお認めいただいた後に、先ほど申し上げたガイドラインを策定する際には、宿泊拒否の対象となる事例として、宿泊者が従業員を長時間にわたって拘束し、又は従業員に対する威圧的な言動や暴力行為をもって苦情の申出を繰り返し行う場合などの具体例を明記するとともに、旅館業の営業者は、障害者差別解消法等を遵守する必要がある、障害を理由として不当な差別的取扱いをしてはならないこと、障害を理由として宿泊を拒むことはできないこと等をこのガイドラインに盛り込むことを考えております。

 また、さらに、この法案では、従業員に対する研修の機会の付与を旅館業の営業者の努力義務としております。先ほどもお答えしましたけれども、ガイドラインの内容等も含め、従業員に対する研修がしっかり行われる必要があるため、私どもとしては、旅館、ホテルの関係団体等にも御協力をいただきながら、例えば研修ツールを策定する、そういった形でこれが進むように取り組んでまいりたいと考えております。

古屋(範)委員 法律にありますように、宿泊者の著しい要求、これが一体どういうものを指すのか、今後の検討されていきますガイドラインでそれを明確に定めて、不当な宿泊拒否が起こらないようにしていっていただきたいというふうに思っております。

 三年間のコロナ禍の中で、観光業の方々も本当に経営に苦しんでいらっしゃいました。なかなかその間、持ちこたえることができず、やむなく閉館というような旅館もありました。

 私も、地元は神奈川県なんですが、箱根を始め、観光業は大変重要な産業の一つでございます。今、予約もようやく満杯になって、いよいよこれから景気回復へ反転攻勢をしていこうというときだと思っております。

 その中で、こうした次なる感染症に備えて環境整備をしていくことは、大変重要だと考えております。ポストコロナ、これからいつ起こるか分からない感染症の危機に対して、宿泊する側も、またそれを受け入れていく宿泊施設の側も、共に安心して旅行が楽しめるような環境をつくっていくことが重要なんだろうというふうに思っております。

 この改正案の早期成立を期していただきたいということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次回は、来る二十六日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前九時四十二分散会


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