衆議院

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第18号 令和5年5月31日(水曜日)

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令和五年五月三十一日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 三ッ林裕巳君

   理事 上野賢一郎君 理事 大岡 敏孝君

   理事 田畑 裕明君 理事 高木 宏壽君

   理事 小川 淳也君 理事 中島 克仁君

   理事 池下  卓君 理事 佐藤 英道君

      秋葉 賢也君    畦元 将吾君

      五十嵐 清君    上田 英俊君

      柿沢 未途君    勝目  康君

      川崎ひでと君    岸 信千世君

      小泉進次郎君    小林 鷹之君

      塩崎 彰久君    新谷 正義君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      田村 憲久君    高階恵美子君

      土田  慎君    橋本  岳君

      堀内 詔子君    本田 太郎君

      松本  尚君    三谷 英弘君

      山口  晋君    吉田 真次君

      阿部 知子君    井坂 信彦君

      大西 健介君    西村智奈美君

      野間  健君    山井 和則君

      吉田 統彦君    早稲田ゆき君

      一谷勇一郎君    遠藤 良太君

      吉田とも代君    古屋 範子君

      吉田久美子君    田中  健君

      宮本  徹君    仁木 博文君

    …………………………………

   厚生労働大臣       加藤 勝信君

   財務副大臣        井上 貴博君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   厚生労働副大臣      伊佐 進一君

   厚生労働大臣政務官    畦元 将吾君

   厚生労働大臣政務官    本田 顕子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 友井 昌宏君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   内山 博之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官)            城  克文君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 堀井奈津子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           原口  剛君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  榎本健太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  佐原 康之君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         八神 敦雄君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            田中 誠二君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用環境・均等局長)         村山  誠君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           川又 竹男君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  伊原 和人君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         田中 一成君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            横島 直彦君

   厚生労働委員会専門員   若本 義信君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     五十嵐 清君

  小泉進次郎君     山口  晋君

  田村 憲久君     鈴木 隼人君

  吉田 真次君     岸 信千世君

同日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     上田 英俊君

  岸 信千世君     吉田 真次君

  鈴木 隼人君     田村 憲久君

  山口  晋君     小泉進次郎君

    ―――――――――――――

五月二十九日

 国立病院の機能強化に関する請願(篠原豪君紹介)(第一二四二号)

 同(長妻昭君紹介)(第一二四五号)

 同(浅野哲君紹介)(第一二四九号)

 同(新垣邦男君紹介)(第一二五〇号)

 同(徳永久志君紹介)(第一二五一号)

 同(中島克仁君紹介)(第一二五二号)

 同(荒井優君紹介)(第一二五七号)

 同(小宮山泰子君紹介)(第一二五八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一二六七号)

 同(井坂信彦君紹介)(第一三四〇号)

 同(白石洋一君紹介)(第一三四一号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一三四二号)

 同(山田勝彦君紹介)(第一三四三号)

 同(菅直人君紹介)(第一三七五号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三七六号)

 同(長友慎治君紹介)(第一三七七号)

 同(道下大樹君紹介)(第一三七八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三七九号)

 パーキンソン病患者への難病対策の推進に関する請願(棚橋泰文君紹介)(第一二四四号)

 同(関芳弘君紹介)(第一二四八号)

 全国一律最低賃金制度への法改正に関する請願(浅野哲君紹介)(第一二五三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三八〇号)

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(浅野哲君紹介)(第一二五四号)

 同(山下貴司君紹介)(第一三〇三号)

 同(野田聖子君紹介)(第一三八一号)

 若者も高齢者も安心できる年金と雇用に関する請願(荒井優君紹介)(第一二五六号)

 同(白石洋一君紹介)(第一三三九号)

 難病・長期慢性疾病・小児慢性特定疾病対策の総合的な推進に関する請願(小熊慎司君紹介)(第一二六一号)

 同(荒井優君紹介)(第一二六八号)

 同(井林辰憲君紹介)(第一二六九号)

 同(伊藤渉君紹介)(第一二七〇号)

 同(池下卓君紹介)(第一二七一号)

 同(大石あきこ君紹介)(第一二七二号)

 同(大口善徳君紹介)(第一二七三号)

 同(逢坂誠二君紹介)(第一二七四号)

 同(金子恭之君紹介)(第一二七五号)

 同(城内実君紹介)(第一二七六号)

 同(佐藤茂樹君紹介)(第一二七七号)

 同(塩崎彰久君紹介)(第一二七八号)

 同(鈴木貴子君紹介)(第一二七九号)

 同(武村展英君紹介)(第一二八〇号)

 同(徳永久志君紹介)(第一二八一号)

 同(中曽根康隆君紹介)(第一二八二号)

 同(西野太亮君紹介)(第一二八三号)

 同(野田聖子君紹介)(第一二八四号)

 同(福重隆浩君紹介)(第一二八五号)

 同(吉田宣弘君紹介)(第一二八六号)

 同(渡辺周君紹介)(第一二八七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三〇四号)

 同(五十嵐清君紹介)(第一三〇五号)

 同(笠井亮君紹介)(第一三〇六号)

 同(吉良州司君紹介)(第一三〇七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三〇八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一三〇九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三一〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一三一一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一三一二号)

 同(長友慎治君紹介)(第一三一三号)

 同(馬場伸幸君紹介)(第一三一四号)

 同(馬場雄基君紹介)(第一三一五号)

 同(福田昭夫君紹介)(第一三一六号)

 同(藤岡隆雄君紹介)(第一三一七号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三一八号)

 同(宮本徹君紹介)(第一三一九号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三二〇号)

 同(浅野哲君紹介)(第一三四五号)

 同(岩屋毅君紹介)(第一三四六号)

 同(小渕優子君紹介)(第一三四七号)

 同(岡田克也君紹介)(第一三四八号)

 同(金子恵美君紹介)(第一三四九号)

 同(菅家一郎君紹介)(第一三五〇号)

 同(宮澤博行君紹介)(第一三五一号)

 同(山井和則君紹介)(第一三五二号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一三五三号)

 同(渡辺創君紹介)(第一三五四号)

 同(田中健君紹介)(第一三八五号)

 同(玉木雄一郎君紹介)(第一三八六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一三八七号)

 高齢者の命・健康・人権を脅かす七十五歳以上医療費窓口負担二割化中止に関する請願(田村貴昭君紹介)(第一二六六号)

 建設アスベスト被害給付金法を改正し、建材企業が参加する補償基金制度の創設を求めることに関する請願(浅野哲君紹介)(第一三四四号)

 国民の医療と介護を守ることに関する請願(鎌田さゆり君紹介)(第一三六九号)

 同(神田憲次君紹介)(第一三七〇号)

 同(牧義夫君紹介)(第一三七一号)

 同(笠浩史君紹介)(第一三七二号)

 安全・安心の医療・介護の実現のため人員増と処遇改善を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三七三号)

 福祉職員の大幅な賃金の引上げと増員に関する請願(宮本岳志君紹介)(第一三七四号)

 保険でよりよい歯科医療を求めることに関する請願(長妻昭君紹介)(第一三八二号)

 同(牧義夫君紹介)(第一三八三号)

 全ての世代が安心して暮らせる持続可能な社会保障制度の確立に関する請願(馬場雄基君紹介)(第一三八四号)

は本委員会に付託された。

五月二十日

 国民を腎疾患から守る総合対策の早期確立に関する請願(第九七六号)は「北村誠吾君紹介」を「加藤竜祥君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 厚生労働関係の基本施策に関する件

 良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案起草の件

 戦没者の遺骨収集の推進に関する法律の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

三ッ林委員長 これより会議を開きます。

 厚生労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁長官官房審議官友井昌宏君、デジタル庁審議官内山博之君、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官城克文君、大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官堀井奈津子君、大臣官房審議官本多則惠君、大臣官房審議官原口剛君、医政局長榎本健太郎君、健康局長佐原康之君、医薬・生活衛生局長八神敦雄君、職業安定局長田中誠二君、雇用環境・均等局長村山誠君、社会・援護局長川又竹男君、社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君、保険局長伊原和人君、経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官田中一成君、中小企業庁経営支援部長横島直彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。佐藤英道君。

佐藤(英)委員 公明党の佐藤英道です。

 まず、雇用保険制度の失業認定のオンライン化について伺いたいと思います。

 離職された方が雇用保険の基本手当の受給資格の決定を受けるにはハローワークへの来所が必要であり、その後も基本手当を受け続けるためには、原則として、四週間に一回、ハローワークに出向いて職員と面談し、失業の認定を受ける必要があります。

 私は昨年、地元の札幌市議会議員を通じて、進行性の難病を患う方からの相談をお聞きしました。具体的には、ハローワークが指定する失業認定日に出向くために、身体的な負担に加え、移動のためのヘルパーさんや介護タクシーの手配などの事前準備にも相当の負担が発生するため、基本手当の受給を諦めてしまったということでございました。こうした事例を踏まえて、私は、厚生労働省に対してハローワークへの来所が困難な方についてオンラインで失業認定をすることができないかとその必要性を再三訴えるなど、取組を進めてまいりました。

 厚生労働省では、本年一月から、一部の離島の住民を対象として、市町村役場又は自宅からのオンライン面談による失業認定を試行的に実施しており、夏以降は、新たに九都道府県の一部の地域において、ハローワークへの来所が困難な住民の方々などを対象としてオンライン面談を試行する方針と承知しております。

 この試行実施の効果検証を速やかに行った上で、この度の事例のような難病患者の方々のほか、長期療養されていらっしゃる方や子育て中の方も含めて、ハローワークへの来所が困難な方がオンライン面談による失業認定を受けられるよう取組を進めていくべきではないでしょうか。見解を伺います。

伊佐副大臣 失業給付を受給するためには、原則、四週間に一度、ハローワークにおいて職員と面談することによって失業の認定を受けることが必要となっております。

 しかし、佐藤委員からいただいた御指摘も踏まえまして、今年の夏から、既に実施中の離島に居住されている方に加えまして、九つの労働局において、難病患者、また長期療養されている方、子育て中の方を含めてハローワークへの来所が困難な方々についても、自宅からのオンラインでの面談による失業認定を可能とする取組を実施することといたしました。

 加えまして、計画的な早期再就職を目指してハローワークの支援を受けている方々についても、オンラインでの手続のみによる失業認定を可能とする取組を実施する予定でございます。

 こうした取組の効果検証も踏まえながら、労使の御意見もまた伺いながら、利用者とハローワークの双方がメリットを感じられるように、デジタル技術を活用した失業認定の取組を更に進めてまいりたいというふうに思っております。

佐藤(英)委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 次に、応援手当について伺いたいと思います。

 先日、三月二十二日の厚生労働委員会で加藤大臣に、子育て期の柔軟な働き方の推進と男性育児休業の取得率の目標について質問をさせていただきました。大臣は、ニーズに対応した働き方の促進や中長期的に男性の育児休業の取得率を向上させることについて前向きに取り組まれると答弁されました。

 その後、三月末に公表されたこども・子育て政策の強化について、いわゆる試案にこれらの方向性が反映されましたけれども、この試案では、気兼ねなく育児休業を取得できるようにするための周囲の社員への応援手当の支給など、育児休業を支える体制の整備を行う中小企業に対する助成措置の拡充や、次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画への男性の育休取得等に関する目標、行動の義務づけにも言及がありました。

 これらについてお伺いしていきたいと思いますが、まず、中小企業では育休取得者の業務を代替する者がいないことが課題となっているわけでありますけれども、両立支援等助成金の助成やノウハウ提供などの支援内容はどのようになっているのか、まずお伺いします。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、中小企業におきましては、育児休業の取得に伴う代替要員の確保が重要な課題となっており、中小企業団体からも対応を求められているところでございます。

 このため、中小企業における代替要員確保等のノウハウを持つ、仕事と家庭の両立支援プランナーの派遣による個別の支援のほか、両立支援等助成金の出生時両立支援コースでは、男性労働者が産後八週間以内に育児休業を取得した場合、その方の業務を代替する労働者を新たに雇用することへの支援として、代替要員一人につき二十万円の支給を行っているところでございます。

 一方、この出生時両立支援コースにおきましては、職場の同僚が育児休業取得者の業務を応援した場合に手当を支給する取組については現時点で助成の対象としておらず、また、新規雇用に対する支援も、代替要員を確保した期間の長さにかかわらず支給額を一律としている現状にございます。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 気兼ねなく育休を取得するためには、職場の同僚の理解が得られることが重要であります。業務を代替する方に対して応援手当の支給など、育休を支える体制整備について、中小企業を支援していくことの効果は極めて大きいと考えます。

 実際に、社員が育児休業を取得した場合に取得者の業務を代わりに行う職場の同僚に手当を支給する企業があると伺っておりますが、是非そのような取組への支援を強化する検討を進めるべきと考えますが、大臣の見解を伺います。

加藤国務大臣 委員が今御指摘のように、育児休業取得者の業務を分担する労働者へ応援手当を支給する企業があることは、私どもも承知をしております。

 実際、育児休業を取得するときに、どうしても他の同僚に気兼ねをする、業務を代替する人が逆に過度な負担を感じる、こういったことがありますので、そうしたことがないよう、業務の分担や内容を見直した上で応援手当の支給を行うことは有効な取組であると考えており、また、本年三月のいわゆる試案、たたき台においても、周囲の社員への応援手当など、育休を支える支援整備を行う中小企業に対する助成措置を大幅に強化することなどが盛り込まれております。

 厚労省では、両立支援等助成金の出生時両立支援コースにおいて、男性労働者が産後八週間以内に育児休業を取得して事業主が代替要員を確保した場合等に助成を行っているところでありますが、今後、複数の社員のチームで業務をシェアする職場環境をつくるなど、育児休業を取得しやすい環境づくりに向けて、御指摘の応援手当支給への支援強化も含め、両立支援等助成金の拡充を検討していきたいと考えております。

佐藤(英)委員 よろしくお願いします。

 次世代育成支援対策推進法において一定規模以上の企業には事業主の行動計画の策定が義務づけられておりますが、この計画は着実に運用されているのでしょうか、また、検証の仕組みがあるのでしょうか、お聞きします。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画は、各企業等において集中的に取組を推進する観点から期間を区切って策定することとなっており、十万三千余りの事業主が計画を策定した旨を届け出ているところでございます。

 その上で、この法律に基づく行動計画策定指針におきましては、二回目以降の計画策定に当たりまして計画の実施状況の点検、評価を行い、その結果をその後の対策に反映させるというPDCAサイクルの確立が重要である旨を示しております。しかし、この点は法律上の義務とは現時点でなっておりませんため、全ての企業においてPDCAサイクルの取組が徹底しているとは言えないといった御指摘もいただいているところでございます。

 なお、あわせて、この法律では、育児休業取得率等の要件を満たした事業主を認定し、認定を受けた場合、商品に認定マーク等を使用できる、くるみん認定等の仕組みを設けておりまして、次世代育成支援に向けた企業の積極的な取組を促しているところでございます。

 以上でございます。

佐藤(英)委員 また、企業を始めとした社会全体で子育てと仕事の両立を支援する機運をつくっていく上で、次世代育成支援対策推進法において、男女共に子育てと仕事の両立という視点を明確にして、事業主に育児休業の取得率などの定量的な目標設定を義務づけるとともに、PDCAサイクルを徹底させるなどの取組も極めて重要と考えますが、見解を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 次世代育成支援対策推進法では、常時雇用する労働者数が百一人以上の企業に対して労働者の仕事と子育てに関する一般事業主行動計画の策定が義務づけられておりますが、計画に記載する目標や目標達成のための対策は行動計画策定指針に即して作成するとのみ規定され、具体的な内容は企業の任意となっており、そのため、実際の計画の内容や進捗管理の仕組みは個々の企業でまちまちというのが今の状況であります。この点について定量的な目標設定やPDCAサイクルに沿った目標管理を法律上も明確化することで、各企業においてより実効性を持った取組が行われ、社会的な機運の醸成にも資すると考えられております。

 子供、子育てのたたき台においても、次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画に男性の育休取得を含めた育児参加等に関する目標、行動を義務づけること等が盛り込まれたところであり、今後、現行の次世代育成支援対策推進法、これは令和七年三月までとなっておりますが、その取扱いも含めて、仕事と育児の両立を円滑に推進する制度の在り方、またそれぞれにおける計画の作り方、こういったことについて検討していきたいと考えております。

佐藤(英)委員 是非御検討いただければと思います。

 大臣、次に仕事と介護の両立支援についてお伺いしたいと思います。

 私が子育てと仕事の両立と並んで特に重大な問題だと認識しているのが、やはり介護と仕事の両立の問題であります。いわゆる介護離職に陥る方が直近では年間九・九万人に上ると伺っています。その中には、介護サービスの利用など、介護に必要な準備ができておらず、家族の介護を全て自ら行わざるを得ないと考えてしまい、うまく仕事と両立できないというケースも含まれるのではないかなと考えております。

 国としても、育児・介護休業法の介護休業制度など両立支援のための法制度を整備していると承知はしておりますが、更なる見直しが必要ではないでしょうか。今後の両立支援の方針について、加藤大臣の御見解をお聞かせください。

加藤国務大臣 まず、介護休業制度自体が、介護するための休業というわけではなくて、家族を介護するための体制を整え、介護サービスを使って仕事との両立を準備し実施していく期間として活用していただくことが制度の趣旨であります。この趣旨について、より効果的な情報提供や周知を行い、広く労働者に御理解いただくことで、今後介護に直面する可能性のある労働者が、これは誰もが可能性がございますが、あらかじめ仕事と介護の両立に向けた準備をしておくことが介護離職を防止する上でも重要と考えております。

 実際、厚労省が開催している有識者研究会でヒアリングをいたしましたが、企業の現場や介護離職防止のためのサービスを提供している団体からは、トラブルが起きてからの対応では、まさに介護が必要になってからの対応では離職リスクが高くなるため、あらかじめ介護に向けての準備をしておくこと、また、地域包括センターなどの相談機関へ早期に相談していくことが重要といった意見をいただいたところでございます。

 こうしたことを踏まえて、仕事と介護の両立支援制度については、介護保険制度と併せた効果的な周知が重要であり、企業による労働者個人に対する個別の情報提供の在り方、これらの制度を利用しやすくするための相談窓口の設置、社内研修の実施等の雇用環境の整備の在り方、こうしたことについて引き続き検討し、必要な対応を講じていきたいと考えています。

佐藤(英)委員 是非、仕事と介護の両立支援についても特段の支援をお願いしたいと思います。

 次に、小児がんなどのドラッグラグ、ドラッグロスの早期解消についてお伺いしたいと思います。

 公明党は、去る五月九日、加藤大臣に医薬品の安定供給に向けた提言をさせていただきました。この提言の中でも特に喫緊の課題として、小児がん等のドラッグラグ、ドラッグロスの早期解消についてお伺いをしたいと思います。

 子供の薬の開発に当たっては、成長の各段階での適切な用法や用量を探る必要があることなどから大人用のものに比べて開発コストがかかる一方、患者の数は大人に比べて少なく、市場が小さくなることから採算性が低くなります。また、がんは種類が多く、薬を用いる対象となる患者が年間数十人といったケースもあります。日本の国内市場では売上げが見込めないなどの理由により、台頭著しい海外の新興企業を始めとする外資系企業が日本での薬剤の開発に着手すらせずに素通りしている現状は、ドラッグロスとも呼ばれております。

 こうした実態から子供たちの命を救うために、小児がんなどの未承認の治療薬について、患者申出療養制度等の保険外併用療養の運営方法や手続などの改善を図るべきと考えます。可能な限り早く、かつ患者さんの負担なく治療につなげられるようにし、欧米の法制度なども参考に、製薬企業に国内での開発を促す新たな制度を導入するなど、小児がんなどのドラッグラグ、ドラッグロスの早期解消に取り組むべきと考えますが、子供たちの命を救うためのこれらの取組状況についてお伺いしたいと思います。

伊佐副大臣 ドラッグラグ、ドラッグロスの問題につきましては、現在、薬事、薬価制度の在り方、また創薬力強化を含む様々な課題について検討しております有識者検討会においても指摘されているところでございます。また、委員から御指摘のあった公明党からいただきました提言でも、とりわけ患者数が少なく、あるいは市場が小さい小児がんの治療薬にも影響が及ぶというような言及もいただいております。こうした提言も踏まえまして、患者申出療養制度については手続が煩雑であるとの意見もあると承知しておりますので、今後、患者申出療養評価会議の専門家の御意見も伺いながら見直しを検討してまいりたいというふうに思っております。

 また、厚労省では、小児用医薬品の開発を促進するために、これまで、特定用途医薬品指定制度による優先審査などの取組を行ってまいりました。欧米の法制度などを参考に、製薬企業に国内での開発を促す新たな制度の検討について、現在、厚労科研において欧米の制度や支援策また開発環境等を調査しまして我が国との比較を行うことによって、こうした調査研究の結果を踏まえまして、より効果的な制度設計や運用の在り方をしっかりと検討してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(英)委員 よろしくお願いします。

 最後に、帯状疱疹ワクチンの接種について伺います。

 帯状疱疹は、激しい皮膚の痛みを伴い、加齢とともに発症しやすくなるとされます。そして、八十歳までに三人に一人が帯状疱疹を発症されるとされます。予防のためのワクチン接種は予防接種法に位置づけられておらず、接種費用は接種者の負担となっています。接種費用は、ワクチンの種類にもよりますが、一万円から四万円程度とされます。

 この帯状疱疹のワクチン接種費用については、独自に助成を行う自治体が増えております。例えば東京都は、五十歳以上を対象に接種費用の助成を行う市区町村に対し、その経費の二分の一を補助することを決定しました。これを受けて、東京都の半数以上の市区町村が今年度から助成事業を開始しております。

 厚生労働省は帯状疱疹ワクチンの定期接種化を検討していると承知しておりますが、その検討状況など、定期接種に向けた取組状況についてお伺いをしたいと思います。

佐原政府参考人 お答えいたします。

 帯状疱疹ワクチンを定期接種に位置づけることにつきましては、これまでも審議会において議論いただいており、医学的、科学的知見等についての整理を進めております。

 帯状疱疹ワクチンについては、発症予防効果等の持続期間に関する最新の科学的知見や、これを踏まえた費用対効果等について更に評価を行い、これらを踏まえて、どの年齢層にどのような方法で接種するべきかなど、様々な検討課題があるものと認識をしております。こうした点について審議会での議論を進め、その結果に基づき必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 終わります。

三ッ林委員長 次に、野間健君。

野間委員 立憲民主党の野間健です。

 本日は、まず、障害者福祉の六十五歳の壁の問題について質問させていただきます。

 今、障害者の方のほぼ半数以上、五二%以上が六十五歳を超える、そういう時代になっております。人口でいいますと五百万人以上の障害者の方が六十五歳を超える、高齢化の世代に入っているわけであります。

 六十五歳になる前までは障害福祉サービスを受けていた障害者の方が六十五歳から介護保険に入らなければいけないということで、例えば、住民税非課税世帯の非常に家計も苦しい障害者の方が介護保険に入ることによって自己負担が生じてくる、そしてまた自分がそれまで通い慣れていた事業所にも介護保険サービスに移れということで行けなくなるということで、今までも、岡山市や千葉市に住む浅田さんとか天海さんが訴訟を起こして、岡山においては浅田さんは勝訴しています。そして、千葉でも、東京高裁で彼は勝ったわけですが、今はまた最高裁にも上告をされているところであります。

 高齢化に伴ってこういった六十五歳の壁が生じて、いわゆる障害者総合支援法と介護保険法とのはざまといいますか、この間で、どうしても介護保険に入って移らなきゃいけないということで非常に困っている、厳しい状態に置かれている方々が出ているわけですけれども、これに対して政府は今どういう取組をしているんでしょうか。

辺見政府参考人 我が国の社会保障全体の体系におきましては、あるサービスが公費負担制度でも社会保険制度でも提供されているときは、保険料を支払って国民が互いに支え合う社会保険制度によるサービスをまず利用するという保険優先の考え方が原則となっているところでございます。このため、障害福祉制度と介護保険制度の関係につきましても、この関係に基づきまして、障害者が高齢となり、同様のサービスを介護保険サービスにより利用できる場合には、まずは介護保険制度を利用していただくこととしているところでございます。

 その上で、その運用に当たりましては、お一人お一人の個別状況を丁寧に勘案し、その方が必要とされている支援が受けられることが重要でありまして、介護保険サービスの支給限度基準額の制約等により十分なサービスが受けられない場合には障害福祉サービスも利用できるなどの取扱いを通知などでお示ししてきたところでございます。

 さらに、介護保険制度の利用者負担との公平性にも留意しつつ、一定の要件を満たす高齢障害者について介護保険サービスに係る利用者負担を軽減する制度、新高額障害福祉サービス等給付費と申しますが、こうした制度を創設したり、障害者が高齢になっても使い慣れた障害福祉サービス事業所を利用したいというニーズを踏まえまして、障害福祉サービスと介護福祉サービスの事業所が相互にそれぞれの指定を受けやすくする共生型サービスを創設する、こういった取組を進めてきたところでございます。

 保険優先の考え方は原則として維持しつつ、申請者ごとの個別の状況を丁寧に勘案し支給決定がなされるよう、令和四年六月に取りまとめられました社会保障審議会障害者部会の報告書等も踏まえまして、市町村における運用に当たって留意すべき具体例を示すべく現在検討を進めているところでございまして、引き続き制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

野間委員 確かに、今おっしゃったように、新高額障害福祉サービスなど、あるいは共生型サービスの施設をつくったり認定したり、穴を埋める政策はされているんですけれども、例えば、新高額障害福祉サービスなどは非常に手続とか要件が煩雑でほとんど使われていないというんですね。一昨年の調査だと、一自治体当たり年間三・四人しか使っていない、ほとんど使われていないと。そしてまた、共生型サービスも施設がまだまだ少ない状態で利用がいっていないということでありますので、なかなか、厳しい立場にある六十五歳を超えた高齢の障害者の方に寄り添った形にはなっていないと思います。

 そこで、障害者総合支援法と介護保険法のはざまであえいでいる皆さんを助けるためには、両法の何らかの意味での統合とか、あるいは市町村の、今、自主性とか裁量権を与えるということは言っていますけれども、なかなか、具体的にもよく分からないし、また、そういったことが周知されていないということで、やはり抜本的な対策が必要ではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 これまでも議論いただいたように、あくまでも保険優先の考え方が原則ということ、これは本件に限らず、社会保障全般についてそういう原則で対応していただいているところでありますし、また、新高額障害福祉サービス等給付金のお話もありました。なかなか利用が十分に行き届いていないということでございます。各市町村において対象者などに対して制度の概要等について丁寧に説明いただくようお願いしているところであります。引き続きお願いをしていきたいと思っております。

 障害福祉制度と介護保険制度の統合に関する御指摘、これは、障害者自立支援制度をつくるときにもいろいろな議論があって今日の姿になったというふうに記憶をしております。

 そもそも、障害者の日常生活及び社会生活において障害者のニーズに基づく必要な支援を行う障害福祉制度と介護保険制度では法律における目的、趣旨も異なることから、この枠組みの中で適切に対応していくということが現時点においては適切と考えております。

 また、各市町村においても、障害福祉制度と介護保険制度の関係について、引き続き、保険優先の原則に基づき制度の運用を行うことを前提としつつも、高齢の障害者のお一人お一人の個別の状況を丁寧に勘案し、介護保険サービスだけでなく障害福祉サービスの利用も含めて、その方が必要とされている支援が受けられるよう適切に対応していただく必要があると考えており、我々としてもそうした形で市町村に対して対応をしていきたいと考えております。

野間委員 るる対策は打たれているということなんですけれども、制度に高齢化した障害者の皆さんを合わせるのではなく、やはり障害者の皆さんの生活実態に合わせて制度を是非運用していただきたいと思います。

 次に、先ほどもちょっと薬価、薬の話が出ましたけれども、特に漢方薬や伝統的な医薬品についてですね。

 薬価の決め方、新薬も、漢方薬の場合は千年とか二千年前から一つの薬というのは決まっていますので、薬価が上がるとかということはもう考えられませんし、新薬が出るということもないわけです。薬価はある意味基本的には下がっていく一方なんですが、今はどういう決め方になっているんでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 医薬品の薬価につきましては、市場実勢価格を踏まえた改定、これを基本としながら、保険医療上必要性が高い医薬品であって、薬価が著しく低額であるために供給継続が難しいもの、これにつきましては薬価を維持又は引き上げる不採算品再算定という仕組みがございます。そういうことをすることによりまして、漢方薬も含めまして医療上必要性の高い医薬品の安定確保を図っているところでございます。

 今年度の薬価改定におきましては、臨時特例的な措置としまして、原材料費の高騰、それから安定供給の確保、こうした観点から、漢方薬も含めて不採算となった全千百品を対象に薬価を引き上げたところでございます。

 今後とも、不採算品再算定の仕組みを適用するなど、薬価制度の適切な運用を図ってまいりたいと考えております。

野間委員 確かに、不採算品の再算定などの仕組みを使って何とかコスト割れがないようにということでやっていることは分かるんですけれども、いわゆる漢方薬全体から考えると、非常に継ぎはぎ的な、その場その場を何とかしのいでいくというやり方だと思います。

 それでは漢方薬を産業として維持していくことは非常に難しいですし、先が読めない産業になってしまっていると思います。私も地元鹿児島で薬草の栽培をやっているんですけれども、国産の漢方薬の原材料は二割しかない、八割が中国を始めとした輸入の薬草に依存しているという状態になっています。

 御承知のとおりだと思いますけれども、例えば中国は中医薬ということで、世界の二百か国ぐらいに中医薬ということで東洋医学のいろいろな輸出をやっていますよね。一つの戦略物資として、輸出産業として伸ばしているわけです。我が国が非常に高度な漢方薬の製造技術といったものを今後産業として伸ばしていくためには、もう少し戦略的な産業を育成するという意味で、とりわけ伝統的な、新薬も出ない、しかし高度な技術を持っている、こういう漢方薬の産業を育成するために、産業政策として、大臣、考えられないでしょうか。

加藤国務大臣 漢方薬は御指摘のように幅広く日本で活用されておりますし、また、一般の医療の場においても漢方薬が提供されている、そういった意味で安定的な供給の基盤をしっかりつくることは非常に私も大事だと思っておりますが、ただ、現状は、委員御指摘のように、漢方薬の原材料である生薬の約八割が特定の国からの輸入という非常に輸入に依存した体制になっており、一たびそこで何か止まるようなことがあれば安定的な供給にも課題を生ずるということでございます。

 このため、漢方の原材料である薬用植物の国内生産を支援する取組をこれまでも進めており、薬用植物の栽培技術の開発に向けた研究、これは私どもの方で、また、農林水産省とも連携をして、薬用植物の産地化を志向する地域の自治体や生産者等に対して漢方薬の市場動向や国内生産の意義等に対する説明会を行っているところでございます。

 引き続き、農林水産省など関係省庁と連携し、漢方薬の供給に支障が生じることのないような薬用植物の国産化に向けた生産支援にしっかり取り組んでいきたいと考えています。

野間委員 是非、農業のためにも新しい作物として育てていっていただきたいと思います。

 次に、子供医療費のいわゆる自動償還請求という問題についてちょっとお聞きしたいんですが、少々お恥ずかしい話でありまして、鹿児島県でしかこういう現象が今起きていないということなんです、現象といいますか。

 課税世帯の未就学児童に対して窓口負担ゼロ、鹿児島県以外の都道府県はゼロだということを実行されているんですけれども、鹿児島県の場合、窓口に課税世帯の未就学児が行くと、お金を払うんですね。後で返してあげますということで、窓口に行ったときにはお金を払わなきゃいけない。ところが、本当に厳しい家計の方は、手元に現金がないとなると、子供さんを、今日はちょっと我慢しなさいということで、医者に行けないということが実際に起きているんです。

 なぜ鹿児島県だけがそうなっているかといいますと、国民健康保険の国庫負担減額調整措置ということで、国が決めている以外の医療サービスといいますか、今申し上げた窓口負担ゼロの場合は自治体が負担するわけですけれども、国の決めたこと以外のことをやるということで、国がペナルティーを科しているんですね。一種の罰則を科して、これが減額調整措置ということで、その分、お金を減らすということです。鹿児島県もその分、国からお金を減らされているものですから、鹿児島県のような非常に財政力が弱いところは、それならばということで、後でお金を返すから、その場では払ってくれということで、これまた受診を控える厳しい家計の方がいるわけですよね。

 調べてみますと全体で四百五十億ぐらいの国の減額措置の制度でありまして、ですから、大きな自治体ももちろん減額されて困っています。いろいろな各県からも要望が政府にも上がっています、こんなに減額しないでくれということで上がっているんですけれども、これだけ少子化の問題で世の中が、政府もまた様々な対策を打っている中で、減額するのをやめていただけないかなと思います。

 なぜ減額するのかという理由も、政府の説明ですと、要するに、窓口に行ってお金を払わなければ、どんどん病院に行く人が増えていって医療費が上がるから、そのペナルティー、罰則として減額するんだという理由なんですよね。これはちょっとひどいんじゃないかな。やはり公平に、厳しい状況にある子供が手元に現金がなくても受けられるようにすべきではないかと思うんですけれども。他の都道府県も、直接的にはしていませんけれども、やはり減額措置でそういうペナルティーを受けています。どうお考えでしょうか。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 国民健康保険の減額調整措置につきましては、自治体が行う医療費助成によって患者の自己負担が減額される場合、国民健康保険財政に与える影響、限られた財源を公平に配分していくという観点から、負担軽減に伴い増加した医療費分の公費負担を減額調整するという措置でございます。先ほど先生が御紹介されたとおりでございます。

 現行の減額調整措置におきましては、自治体による医療費助成が償還払い方式、鹿児島の課税世帯の場合かもしれませんけれども、この場合には医療費波及増がないと考えられますので、減額調整の対象とはしておりません。結果として、現物給付だけが減額調整措置の対象となっておりますが、これは、先ほど申し上げたように、限られた財源の公平な配分等の観点からは必要ではないかと考えてございます。

 他方、子供医療費につきましては、少子化対策という議論もございまして、現在、全国の自治体での取組状況を踏まえまして、平成三十年度より、未就学までを対象とする医療費助成については減額調整措置の対象外とさせていただいてございます。さらに、本年三月に取りまとめられた子供、子育て政策の強化に関する試案におきましては、地方自治体の取組を支援する観点から、おおむね全ての地方自治体において実施される子供医療費助成について国民健康保険の減額調整措置を廃止すること、こういうことが盛り込まれたところでございます。

野間委員 是非、早く廃止をしていただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか。確かにこういう仕組みはあるんですけれども、少子化の問題を含めて、厳しい家計にある子供さんたちを助ける意味で早く廃止の措置をしていただきたいと思いますけれども、大臣の御見解を聞きたいと思います。

加藤国務大臣 今局長からお話をしたように、たたき台においてもその方向性を明確にさせていただいているところでございます。

 ただ、あわせて、不適切な抗生物質の利用などの増加が懸念されるなど様々な課題があるので、そういったことに対して対応していく必要があると思いますが、必要な子供さんに必要な医療が届くということ、このことは大事なことだというふうに思います。

野間委員 非常に前向きの答弁があったと思います。今、鹿児島県で困っている家庭の保護者の皆さんも聞いていただいたと思いますけれども、希望を持って、そういう意味で廃止に向かっているということを確信して、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 本日は、前半は、日本の労働生産性をいかに上げて給料をアップするかというテーマ、そして、後半は、地元の障害者の御家族が悩んでおられる切実な問題について伺います。

 政府は、五月十六日、三位一体の労働市場改革の指針を発表しました。現在、国の在職者への学び直し支援策は、企業経由が七五%、個人経由が二五%となっています。これを、今後五年かけて、働く個人が主体的にこの学び直しプログラムを選択可能となるよう、全体の半分以上が個人経由での給付となるようにし、在職者のリスキリング、新しい技術の学び直しの受講者の割合を高めていこうという指針であります。

 正規の労働者については、私もこの方針でよいと思います。しかし、問題は、パート、派遣、そして契約社員などの非正規の労働者です。この非正規労働者については、労働者側も、そして企業側もリスキリングに対する動機づけが非常に弱く、個人給付のリスキリング政策を増やしても、企業の人的投資を後押ししても、非正規労働者のリスキリングは進まないと考えます。その結果、正規の労働者はリスキリングでより高度な仕事ができるようになり、給料が上がる、そして非正規との格差が拡大するおそれがあります。

 大臣に伺いますが、在職中及び失業中の非正規労働者のリスキリングをどのように促進するか、お答えください。

加藤国務大臣 非正規雇用の課題として、今委員御指摘のように、正規の雇用労働者と比べて能力開発機会が乏しいということが指摘をされております。そういった意味で、誰もが主体的にスキルアップを行う環境整備を行うに当たっては、非正規雇用労働者に対してもその恩恵が、十分に浴するようにしていくことが大事だと思います。

 厚労省でも、求職者支援訓練、教育訓練給付、あるいは人材開発支援助成金、こうした制度がございますが、それについても、非正規雇用労働者も含めて講ずることで人材育成の支援を行ってきております。

 今後、三位一体の労働市場改革の指針などを踏まえて、企業内でも訓練機会に乏しい非正規雇用労働者等について、働きながらでも学びやすく、自らの希望に応じたキャリアアップにつながっていけるよう、柔軟な日時や方法によるリスキリング支援の実施などに向け対応を進めていきたいと考えておりますし、また、あわせて、労働者が在職中から安心してリスキリングに取り組むことを可能とするため、キャリアコンサルティング機能、これをしっかり充実をしていきたいと思っておりまして、そうしたことも通じて、非正規雇用労働者も含め、リスキリングを通じた能力の向上が図っていけるように対応していく考えであります。

井坂委員 今大臣がお答えいただいたように、指針の中にも一行だけ非正規労働者のことは書いてあるんです。ただ、おっしゃった内容というのは、これまでもやってきたことでありますし、また、やはり主に正規雇用の労働者を想定に用意をされている政策だというふうに思いますから、是非、問題は認識していただいていると思いますので、ほっておくと非正規労働者のリスキリングは進まないということで、そこに特化した更なる工夫を考えていただきたいというふうに思います。

 次に、長時間労働の是正についてであります。

 日本の労働生産性が低迷している一つの原因に長時間労働があります。私は、長年、この厚生労働委員会や予算委員会で長時間労働を減らす議論、そして議員立法の提出をしてまいりました。その後、過労死など痛ましい事件もあり、政府も長時間労働の規制にかじを切ったわけであります。

 しかし、長時間労働の是正は、労働者の健康を守る以外にも、今、新たに重要な目的があります。今回、個人給付のリスキリングが今後主体になる、こういう指針が出されたわけでありますが、労働者が、会社が終わってから個人で学び直しをするということになるわけであります。毎日残業してから個人でリスキリングというのは現実的に無理があります。

 大臣に伺いますが、リスキリングの時間を確保するという意味でも、長時間労働の更なる是正が必要ではないでしょうか。

加藤国務大臣 令和三年度の能力開発基本調査によると、労働者が自己啓発を行う上での問題点が、仕事が忙しくて、時間、啓発の余裕がないというのが最多になっております。労働者のリスキリングの促進のためには、こうしたリスキルするための時間の確保が大変重要であります。

 また、働く方がその健康を確保しつつワーク・ライフ・バランスを図るなどの観点から、長時間労働の是正を始め働き方改革に取り組んでまいりましたが、働き方改革はリスキリングのための時間の確保を直接の目的とするものではありませんが、こうした取組が進むことで、結果において、労働者の方がリスキリングするための時間の確保にも資すると考えております。

 また、昨年六月に厚生労働省が労使の参画を得て策定した職場における学び・学び直し促進ガイドラインにおいて、企業において労働者の学び、学び直しのための時間を確保するよう推奨しております。具体的な支援策として、教育訓練給付において、在職者が利用しやすいよう土日、夜間の講座を拡大する、教育訓練のための休暇等制度を導入、適用した企業に対し、人材開発支援助成金により支援をすることとしております。

 引き続き、働き方改革の推進、またガイドラインの周知、そして今申し上げた各種支援制度の利用を通じて、働いている方々がリスキリングをできる時間を確保し、そしてリスキリングに励んでいただけるように対応していきたいと考えています。

井坂委員 土日祝日とかいろいろ柔軟にやっていただいても、やはり残業続きで、更にその隙間を縫ってリスキリングというのは現実的に大変難しいというふうに思いますから、是非、長時間労働の是正というのを、特に、今後個人給付が中心になるというのがポイントですので、これは、これまでみたいに働いている時間内に企業がリスキルを提供するという形では今後なくなってくるということでありますから、そういった文脈でも、長時間労働の是正を更に進めていただきたいというふうに思います。

 この長時間労働の是正は、少子化対策のためにも必要だと考えています。子育て支援や児童手当などの金銭給付ももちろん大切です。しかし、男性が育児、家事をする時間が短過ぎるということも少子化の大きな原因と言われています。

 参考人に伺いますが、少子化のためにも、子育て世代の男性の長時間労働をどのように是正をしていくのか、お伺いいたします。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、育児期に当たる三十歳代、四十歳代の男性の長時間労働の結果、夕方から夜にかけての子供の世話が最も重要な時間帯に帰宅できず、育児や家事の負担が女性に集中するということにつながっているという実態がございますので、育児期の長時間労働の是正は大変重要な課題であるというふうに認識をしてございます。

 こうした中、現行の育児・介護休業法におきましては、三歳に満たない子を養育する労働者が請求した場合、残業を免除するという制度が設けられてございます。

 現在、厚生労働省において、今後の仕事と育児の両立支援制度について検討している研究会におきましては、子が三歳まで請求できる残業免除制度について、請求できる子の年齢を延ばすこと、より対象を広げていくということ、また、全ての労働者の時間外労働の縮減等に向けて、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の在り方について見直すことなどの論点について御議論をいただいているところでございます。

 委員が先ほど来御指摘の、労働者の健康確保に向けた時間外・休日労働の上限規制の徹底、履行確保、これはこれで大変重要なことでございますので、たゆむことなく取り組む一方で、仕事と育児が両立しやすい職場環境づくりに向けまして、子育て世代の労働時間短縮に向けても検討を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

井坂委員 三歳までの残業免除はこれまであって、これを六歳までという議論、確かにそういう議論はあり得ると思うんですが、しかし、そもそもこの三歳までの残業免除の制度を果たして子育て世代の男性がどれほど取ってきたのかという実態を見れば、じゃ、そこを延ばしたから何かよくなるかという簡単な話じゃないというふうに思いますので、是非実態を見て、実効性のある打ち手を考えていただきたいというふうに思います。

 次に、三位一体の労働市場改革の指針にはこういうことが書いてあります。リスキリングをするかしないかで失業給付がもらえる期間が変わったり、あるいは、リスキリングをしなければ雇用調整助成金を引き下げることを検討する、こういうことが書いてあるわけであります。

 大臣に伺いますが、失業給付とか雇用調整助成金、これはそもそもセーフティーネットとして実施すべき政策であります。リスキリングをしない場合に金額を減らすとか期間を短くするとか、こういうのは間違いではないでしょうか。

加藤国務大臣 雇用保険制度では、倒産や解雇といった自発的でない理由による離職、いわゆる自己都合離職については給付制限が設けられておりまして、これは、繰り返し失業給付を受給することを抑止し、安易な離職を防止するということがその目的であります。

 一方で、リスキリングをして、そして場合によっては次なる仕事に行こうとされている方々、こういった方々については、仮に行こうとして、そのままつなげれば失業給付はないわけでありますが、思ったとおりいかない場合もあります。そういった場合にも支援をしていく必要があるのではないか、こういった観点から、三位一体の労働市場改革の指針で、自己都合離職に対する給付制限について、失業給付の申請時点から遡って例えば一年以内にリスキリングに取り組んでいた場合などについては会社都合の場合と同じ扱いとするなど、自己都合の場合の要件を緩和する方向で具体的な検討を行うとされたところでございます。

 これは、あくまでも自らの選択による労働移動の円滑化という観点から盛り込まれたものでありますので、今後、その具体的な内容は、今申し上げた趣旨に沿って検討を深めていきたいと考えています。

 また、一方で、雇用調整助成金は、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、失業の予防その他雇用の安定を図るため、休業、教育訓練又は出向による雇用調整により労働者の雇用の維持を図った場合に休業手当の一部を助成するという制度でありますが、今般の指針で、急激な経済情勢の悪化に対する雇用維持政策として重要な役割を確かに果たしてきた一方で、助成が長期にわたり継続すると、労働者の職業能力の維持向上や成長分野への円滑な労働移動を阻害するおそれがある、いわば雇用の安定にも決してそぐうものではないということで、雇用調整の期間中においても、労働者の職業能力を向上、維持することが期待される教育訓練を企業が選択しやすくなるよう、また、それを通じて雇用の長期的な安定にもつながる、そういった方向で助成内容等について検討していきたいと考えているところでございます。

井坂委員 やはりセーフティーネットがリスキリングをしないことによって下がるというのは、これはやめていただきたいというふうに思います。セーフティーネットは維持された上で、リスキリングをしたら更にその分何か上乗せしますよとか、失業給付で、今検討しておられるように、給付の期間を早めますよ、これは百歩譲って、あってよいと思いますが、セーフティーネットを下げる、リスキリングしないことによって下げるというのは、これは本末転倒だということで申し上げたいと思います。

 次に、今、いろいろリスキリングの話をしてきましたが、幾ら労働者のリスキリングをしても、会社の事業自体が飛躍的に付加価値の高いビジネスに生まれ変わらない限り、労働者の給料も日本の生産性も上がらないというわけであります。給料が上がらないまま長時間労働をなくすと、労働者の手取りまで減ってしまいます。

 政府は労働者のリスキリングを今から進めるわけでありますが、日本の労働者の能力は、国際ランキングで世界トップクラスと評価をされています。能力の高い労働者を安く使いながら付加価値の高いビジネスを生み出せていない日本の経営者あるいは上級マネジャーの能力は、国際ランキングでほぼ最下位と低く評価をされているわけであります。

 参考人に伺いますが、労働者のリスキリングだけでなく、その高度な能力を生かす付加価値の高いビジネスを経営者あるいは上級マネジャーがつくり出せるよう、経営層あるいは将来経営層になる労働者に経営能力のリスキリングをすべきではないでしょうか。

横島政府参考人 御指摘のとおり、従業員のリスキリングを生産性向上につなげるためには、中小企業の経営者や将来の経営者候補の意識改革や経営力の向上を通じ、従業員が習得したスキルや能力を生かせる職場づくりを促すことが重要だと思います。

 このため、全国九か所の中小企業大学校において、経営者などを対象に、従業員の育成や経営戦略に関する研修を行っています。

 また、中小企業庁が各都道府県に設置した無料相談窓口、よろず支援拠点において、経営者の自己変革、行動変容を促すよう継続的に支援する経営力再構築伴走支援にも取り組んでいます。

 さらに、中小企業庁では、経営者や経営幹部がリスキリングを含めた人材戦略に関する理解を深め、その実践を促すことを目的に、人材活用ガイドラインを近く公表する予定です。

 なお、実際に生産性向上のための設備を導入する際には、IT導入補助金やものづくり補助金を利用することができます。

井坂委員 今日は、経営者ということで中小企業庁にお答えいただきましたが、大臣もお考えいただきたいのが、国際ランキングで低いのは、経営者だけでなく、上級マネジャーの能力も非常に低く評価をされております。やはり生産性を上げる、労働者の給料を上げるという観点からも、是非労働政策としても、経営能力のリスキリングということを一度真剣にお考えをいただきたいというふうに思います。

 次に、精神障害者を含めた地域包括ケアシステムについて伺います。

 現在、政府は、精神障害者が精神病院から退院することを促進をしています。しかし、今、高齢の患者が非常に精神病院は多くて、退院をしても、親もいない、あるいは、いても寝たきり、そして当然お子さんもほとんどおられないという中で、じゃ、どこで地域で暮らしていくのか。グループホームも、どこに申し込んでも、日中はお世話ができないからうちは受入れは無理ですといってほとんど断られてしまうという現状があります。

 政府は今、日中サービス支援型という新しい類型のグループホームをつくり始めておりますが、これはまだまだ非常に数が少ないです。そして、都道府県はきちんと目標を持ってこれら施設をつくるんですが、類型ごとに、要は、日中サービス支援型を幾らつくる、こういう細かい計画は作っておりません。

 大臣に伺いますが、高齢の精神障害者も退院促進をするのであれば、受皿として必要な日中サービス支援型のグループホームを十分に整備すべきではないでしょうか。

加藤国務大臣 精神障害者の方々の地域移行を進めるには、地域における居住の場であるグループホームの充実を図ることは必要と考えております。

 日中支援型グループホームは、高齢の障害者や重度障害者に対して、日中の時間帯を含む常時の支援体制を確保するため、平成三十年四月に創設をされ、今日、令和五年二月の段階では、七百六十二の事業者、利用者数は一万人を超える、こういう状況となっているところであります。

 こうしたグループホームも含めて障害福祉サービスについては、各市町村が地域の障害者のニーズを把握し、障害福祉計画に基づき計画的な整備を推進することとしています。令和六年度からの障害福祉計画に関する国の基本方針を先般策定をいたしましたが、その中において、地域移行が図られる精神障害者についての必要なサービス量を見込む等、適切に支援に係るニーズの把握に努めるといった内容を明記したところであります。

 こうしたことにより、高齢の精神障害者に対する支援を含め、地域の実情に応じて必要な支援体制の整備が進むよう、国としても、必要な施設整備費の補助など、必要な支援を行っていきたいと考えています。

井坂委員 ちょっと時間切れで一問質問できませんでしたが、こういうことを、今、地域で家族会の方が本当に一生懸命やっているんです。ただ、今、高齢化をして、その家族会の方がもう運営できなくなっている。その機能がなくなると本当に国も地域も地方自治体も困ると思いますから、是非その機能を何らかの形で引き継ぐという方法もそろそろ真剣に考えていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 どうもありがとうございます。

三ッ林委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。

 私からも質問させていただきたいと思います。私からは、遺伝情報、ゲノム情報に関する法整備の必要性、本日、質疑の後議題となっております議員立法、通称ゲノム法案、この内容に関連して政府の見解をお伺いをさせていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 個人の遺伝情報、ゲノム情報に基づいて、個々人の体質や病状に適したより効果的、効率的な疾患の診断、治療、予防が可能となるゲノム医療の実現は様々な診療領域で広がっています。ゲノム医療の進歩は、いまだ治癒が期待し難い難治性疾患や罹患者数の少ない希少疾患を始め、多くの患者に個別化医療を通じた新たな希望をもたらし得るものであって、その推進には期待が寄せられております。

 政府においては、令和元年に全ゲノム解析等の計画を採択をして、実行計画に沿って、がんや難病における新たな治療法の確立、治療精度の向上に向け、国策として全ゲノム解析、ゲノム医療を位置づけていると私は認識しております。

 大臣にまずお尋ねをしたいんですが、細かいことはたくさんありますが、総論として、現在、遺伝、ゲノム情報の取扱い、またゲノム医療を取り巻く状況、課題をどのように認識されておるのか、お尋ねをしたいと思います。

加藤国務大臣 ゲノム医療については、個人の体質また病状等に適した診断、治療等が可能となることで、これまで診断や治療法がなかったがん、難病の克服にもつながるということで大変期待が高まっているところでありますし、同時に、このゲノム医療は各国それぞれが先んじて取り組んでいるわけでありますから、そうした流れに日本が取り残されることなく、むしろ先陣を切っていく必要があるというふうに考えています。

 このため、厚労省では、昨年九月に策定した全ゲノム解析等実行計画二〇二二に基づいて、がん、難病に関する本格解析等の実施、解析結果の日常診療への導入や新たな個別化医療の推進、解析結果を活用した創薬基盤の構築に取り組むとともに、こうした取組にやはり司令塔機能をしっかり持つことが必要だということで、事業実施組織の在り方についても現在検討を進めているところであります。

 他方、ゲノム医療ということになりますと、まさに個人情報そのものにもつながるわけでございますので、その管理、あるいは科学的根拠に基づいた正しい情報発信、そして患者の立場に立った情報の適切な伝え方などについて特に配慮する必要があると認識をしております。

 これらの課題に留意しつつ、国民の理解を得ながらゲノム医療が適切に行われるよう、全ゲノム解析等の推進に関する専門委員会などで議論するとともに、関係省庁等とも連携し、必要な取組を進めていきたいと考えています。

中島委員 時間の関係もあって、総論として大臣にはお答えをいただいた現状についてでございますが、やはりこのゲノム医療、全ゲノム解析もそうでございますが、パネル検査が数年前に保険適用になった、がんや難病の分野では既に、これは一部でありますが、実用化が進んでいる、その人の病状に適した治療法の選択、迅速な診断の実現などの恩恵が得られつつある。

 一方で、生殖細胞系列の遺伝情報、ゲノム情報は、生まれながらに持っていて、生涯変化しない、子孫にも受け継がれ得ることから、国民が安心してゲノム医療を受けるためには社会環境を整備する必要が不可欠、これは大分以前から指摘をされていたというふうに思います。

 今度は参考人にお尋ねをしたいと思いますが、政府として、厚生労働省として、個人のゲノム情報による不当な差別等についてどのような問題意識を持っておられるか、どのように取り組まれてこられたのか、そして今後どうあるべきだと考えているのか、お尋ねをしたいと思います。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がございましたとおり、個人のゲノム情報に基づく不当な差別や取扱いなどがないように適切に対処していくことは非常に重要であるというふうに認識をいたしてございます。

 厚生労働省といたしましては、これまで、例えば雇用分野等におきまして、採用選考の際に応募者の遺伝情報を取得、利用することは、本人に責任のない事項を採否に影響させることになり、公正な採用選考の観点から問題があるといったことから、そうした情報を把握してはならない旨を事業主に周知啓発しております。

 こういった対応を引き続きしっかりと行ってまいりまして、国民が安心してゲノム医療を受けることができるよう、関係省庁とも連携をしながら、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

中島委員 雇用に関して周知啓発、不適切な取扱いが行われないように周知啓発というふうにお答えいただきました。

 先ほども言ったように、これは究極の個人情報。仮に不適切に扱われた場合、患者様、またその血縁者に、保険や雇用、結婚、教育、医療以外の様々な場面で不当な差別、社会的不利益がもたらされる可能性があるということは十分認識していると思いますが、改めて伝えさせていただきます。

 ゲノム情報による差別については、国連、またアメリカ、EU、諸外国で法整備が行われております。代表的なのは、アメリカのGINA法、二〇〇八年ですね。ここでは、雇用分野では、事業者による遺伝情報取得の規制、採用、解雇、昇進等に関する遺伝情報に基づく不利益な取扱いの禁止、保険分野では、遺伝情報に基づく加入制限、保険料等の調整の原則禁止、これが明確に定められております。また、カナダでは、同様が二〇一七年。いろいろアプローチはありますが、ドイツでも、二〇〇九年に遺伝子診断法。さらに、韓国は二〇〇三年。フランスでは、二〇〇四年に改正、二〇〇八年に禁止法。さらに、イギリスでは、二〇一八年に更新。中国においても、二〇一九年に健康保険管理弁法というゲノムに関するいわゆる法律ができている。

 今お答えいただいたわけですが、我が国において、この究極の個人情報、ゲノム情報、遺伝情報について、この取扱いに関するルールは不明瞭な状況、業界の自主規制の検討状況を待っている状況、また、事業者における採用、雇用の決定や労働者の健康診断における個人情報、ゲノム情報の取扱いについてはいわゆる法的根拠がないという現状という理解でよろしいか、イエスかノーかだけでお答えいただきたいと思います。

城政府参考人 御指摘のとおりでございます。

中島委員 法的根拠がない現状、また、諸外国に対して、我が国にはその法律がないという現状でございます。

 もう一点、現状の確認ですが、DTC、ダイレクト・トゥー・コンシューマー、つまり、消費者に医療機関を介さず直接販売する遺伝子ビジネスに関する諸課題、このDTCに関連する諸課題についてどのように認識をされているのか、確認をさせていただきたいと思います。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のDTC、ダイレクト・トゥー・コンシューマー、消費者向け遺伝子検査、これは、個人から採取されたゲノム情報解析を行うことで体質や将来的な疾患リスクなどを調べる民間サービスでございます。近年、この分野は様々な事業者が参入してきていると承知しております。

 一方で、この検査の妥当性、あと、正確な情報提供などが適切になされない場合、消費者が混乱したり、誤った判断をするなどの課題もございます。

 経済産業省では、消費者が安心して民間サービスを利用するようにする観点から、これまで個人情報保護やビジネス実施に当たっての事業者に対するガイドラインを整備してまいりましたけれども、新たな技術などの環境変化に対応するため、DTC遺伝子検査ビジネス事業者に対する新たなガイダンスの整備、この策定に向けまして、関係省庁と連携しつつ、検討を進めてまいりたいと考えております。

中島委員 個人情報保護法、またガイドラインでの強化ということでございますが、このDTCに関しては、恐らく委員の皆さん、一般の社会でも今一万円とか二万円とか、これでゲノム解析、親子鑑定も含めて、そして、自らの健康、予防のため。糖尿病になりやすいといって健康食品を高額で売りつけられたり、こういう消費者問題にも関連する。これが今の社会の現状だと思います。

 この状況の中で、先ほどガイドラインで、また個人情報保護法レベルでということでございますが、先ほどの、厚労省さんにも確認したように、この遺伝子ビジネスとも言える状況、これをしっかり取り締まり、さらには、やはり大事な個人情報、ゲノム情報ですから、これが適切に医療につながらなければならない、そういった状況には現在なっていない、ガイドライン、個人情報保護レベル。ゲノムに特化した根拠法となるものはないという理解でよろしいでしょうか、イエスかノーかで。

田中(一)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございます。

中島委員 冒頭に、このゲノム医療、多くの希少疾患、難病を抱える方々、今日、傍聴席には全国がん患者団体連合会の天野理事長も来られておりますが、天野理事長は、二〇一八年に当時の大口副大臣にも早期の法整備、そして、ゲノム医療当事者団体連合会の皆様も、二〇一七年に法整備の必要性を、議員各位の皆さん、また厚生労働省にもお訴えをしてきた経緯がございます。

 資料にお示ししました。これは超党派議連、適切な遺伝医療を進めるための社会的環境の整備を目指す議員連盟ということで、その前の段階では勉強会から、遺伝医療を取り巻く環境勉強会という形で始まったわけでありますが、第一に目的、定義、そして第三番目の基本理念。ここで大事なのは、第三の2、生命倫理への適切な配慮、そして3、ゲノム情報の保護が十分に図られるようにするとともに、当該ゲノム情報による不当な差別が決して行われないようにすること。四、五、六を飛ばして、第七、基本施策の中でも、今ほどお話にあった、四番目は医療以外の目的、これはいわゆるDTCです、これがちゃんと質が担保され、適切に医療につながり、患者さんの健康に確実につながること、これを基本施策にも盛り込んであります。そして、基本施策の二番目、生命倫理への適切な配慮の確保もここで明確にうたい、そして三番目、ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応の確保。

 これは、当然ながら、ゲノム医療、冒頭大臣も、諸外国に対して我が国が、これは国民の皆さんに享受していかなければいけないということで、改めて、今日、質疑の後、これが委員長発議ということになっています。この内容は、法制局さんにも大変な御苦労をいただいてここまで来たわけであります。厚生労働省とも内容は詰めさせていただいておるということでございますので、改めて、この法案では、ゲノム医療の研究開発の推進、提供の推進、差別等への対応、教育及び啓発の推進など、国民が良質かつ適切なゲノム医療を安心して受けることができるよう、各省庁に関係する様々な施策、これを規定しています。

 本法案の成立に伴って、特に医療分野を所管する厚生労働省を中心に各省庁、これはまたがる話ではあります、今も、DTCは経産省、例えば、私は、遺伝子カウンセラー、ゲノム専門のカウンセラーがいるべきだというふうに思います、これは文科省、こういう各省庁にまたがる問題ではあります。だからこそ諸外国は先駆けて法整備がされているのに、我が国はまだされていない。

 この法案をもって、オール・ジャパンでゲノム医療の推進のため講じられるものというふうに理解をいたしますが、それでよろしいでしょうか。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 この後ということでございますのでちょっと言及し難いところはございますが、私どもは、こうした取組をこれまでも進めてきておりますし、各省と連携してしっかりと進めていくべきものと認識をいたしております。

中島委員 最後に大臣に一言いただきますから。

 もう一点、厚生労働省さん、この議員立法は、本当に多くの皆さんに御尽力をいただいてようやくここまで来た、そして、今日、委員長提案、成立に向けて大きな前進をした状況であります。

 本法案に基づいて、研究開発などのために十分な財政上の措置も、この法案が通った場合、しっかりなされるということでよろしいですね。

城政府参考人 お答え申し上げます。

 関係省庁ともしっかり連携をして、医療の推進、研究開発等々を含めまして、しっかりと財政上の措置が講じられるよう、私どもも努めてまいりたいと考えております。

中島委員 何かちょっと心もとないわけですが。

 大臣、先ほど冒頭にも、ゲノム医療の推進、全ゲノム解析、これは国策として進められている。ただ、進めるだけでは、国民の皆さんは安心してこのゲノム医療を享受できない。分かりやすく三点、とにかく情報の適切な管理、そして差別、不利益取扱いがなされないこと、その整備、そして生命倫理への十分な配慮、この基盤があって初めて前進できる。

 そのための根拠となる法律が、今日、この後提案される議員立法です。これが成立、まだしていませんけれども、した暁には、先ほどもちょっとまどろっこしい、頼りない発言でございましたけれども、各省庁にまたがる、例えば、健康戦略室は内閣府、差別や偏見、これも内閣府が所管だとか、厚生労働省にも医療イノベーション室という位置づけ、そして経産省ではDTC、遺伝子カウンセラー、人材の確保は文科省、保険に関わることは金融庁、これは多岐にわたる分野。

 やはり厚生労働省が新たにゲノム総括室、こういった部署をしっかりつくって、横串を刺して様々な課題、会議体、合議体をつくっていくべき、その必要があるということと、ゲノム医療が安心して、このタイトルどおりです、良質かつ適切なゲノム医療を国民の皆様が安心して受けられるようにするため、総合的な計画、推進を厚生労働省がリーダーシップを取ってやっていくんだ、その決意を大臣に述べていただきたいと思います。

加藤国務大臣 委員が再三御言及されておられますように、このゲノム医療を推進するに当たっては、ゲノム情報の管理、不当な差別、取扱いへの対応、生命倫理への配慮などに適切に対処し、取組を進めていかなければならないというふうに考えております。

 これから御審議をされるということでございますから法案の中身には言及をいたしませんが、厚労省としても、国民が安心してゲノム医療を受けられるよう、科学的根拠に基づいた正しい情報発信を行うとともに、ゲノム情報の管理、患者の立場に立った情報の適切な伝え方に関するガイドラインの作成など、引き続き、厚労省としてやるべきことをしっかりと取り組むとともに、関係省庁とも連携しながら、政府全体において、この法案等で御指摘いただいた一つ一つの中身について取り組んでいきたいと考えております。

中島委員 この後議題となりますのでこれで終わりますが、この法案は、ここまで来るのに、先ほども申し上げましたが、多くの方々に御尽力をいただきました。この国会におられる方はあえて名前は出しませんが、塩崎元厚生労働大臣、そして冨岡勉前衆議院議員、薬師寺道代元参議院議員、勉強会が始まったのが八年前、そして議連ができたのが五年前、多くの皆様、様々関わった皆様に改めて敬意を表して、そして委員各位の皆様にも、このゲノム医療の法整備の必要性、理解を深めていただき、一刻も早い成立を改めてお願いをして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、吉田とも代君。

吉田(と)委員 日本維新の会の吉田とも代です。

 これまでの質疑の中で各委員から同じテーマでちょっと質問が出ておりまして、重なる部分もございますが、本日もよろしくお願いいたします。

 こども政策担当大臣が三月三十一日に公表したこども・子育て政策の強化について(試案)では、男性の育休の取得促進が掲げられ、制度面と給付面の両面からの対応を抜本的に強化することとされています。男性の育児休業の取得促進についてはこれまでも取組が進められてきており、四月一日からは一千人超の企業に男性の育児休業取得率の公表が義務づけられましたが、これに先立ち、三月十五日には男性育休推進企業実態調査結果発表イベントが開催されました。

 この調査は厚生労働省のイクメンプロジェクトの一環で、民間の企業、団体と協力して男性育休推進企業の取組状況についてアンケートを行ったものであります。この調査結果からどのようなことが分かるのでしょうか。また、男性育休の取得を促進する上で有効な取組は何であると考えられるか、お伺いいたします。

村山政府参考人 お答え申し上げます。

 厚生労働省で実施しております、御指摘の、イクメンプロジェクトが本年三月十五日に公表した男性育休関係の企業アンケートの調査結果の分析によれば、職場全体の働き方改革を進め、特に業務の属人化を見直して、いつ誰が休んでも回る職場づくりができている、そういった企業において男性育休の取得率が高く、取得日数も多い傾向にある、また、男性育休の重要性や育休取得促進の方針について当事者以外の社員も広く学べる仕組みがある企業において男性育休の取得率が高く、取得日数も多い傾向にあることが確認されており、職場全体での働き方改革と子育て当事者に限らない情報提供の取組が必要である旨提言されているところでございます。

 厚生労働省としてこれまで、まず、働き方改革につきましては、関連する法制度の周知を徹底し履行確保を図っていくとともに、業務の見直し、効率化も含めた事業主の皆様からの相談に働き方改革推進支援センターにおいて専門家が無料できめ細かく対応しており、特に育児休業を取得しやすい環境整備に向けた業務の見直しを行った上で育休取得者の代替要員を新たに雇用する中小企業に対しては、両立支援助成金の育児休業等支援コースによる経費面からの支援を行いますとともに、制度面では、先ほど委員からも御指摘、御言及がありましたが、令和三年の育児・介護休業法の改正において、育児休業を取得しやすい雇用環境を整備するため、事業主に対して育児休業や産後パパ育休に関する労働者への研修の実施等の措置義務を新たに設ける等の取組を進めてまいりました。

 御指摘のアンケートを通じて明らかになった課題に的確に対応できるよう、今後とも関連の施策を積極的に推進してまいりたい、このように考えています。

 以上でございます。

吉田(と)委員 今、調査結果の御説明をるるいただきましたけれども、働き方改革が進んでいる企業では育児休業取得、育休取得も進んでいるというふうに理解をいたしました。

 今回の調査結果を見ますとまだまだこれからのようですけれども、男性の育休取得が単なるアリバイづくりに終わらずに、実際、妊産婦さんや家族にとって意味のある育休にすることが何より重要と考えます。育休時期に男性に何をやってもらえばいいか、そういったことをトップや管理職だけでなく当事者が理解していかなければなりません。

 産後うつのリスクが高い二週間から一か月が本当に大事な時期です。今後とも温かい家庭を築いていくに当たり、大きな分岐点になるかと考えます。うまく協力できれば今後も家族の愛情は強固なものになりますし、しかし、下手をすると離婚の危機に、最悪の場合は産婦さんの自殺ということもあり得ます。出産は、新しい命を迎える喜びであると同時に、家族の危機の始まりにもなりかねません。出産を経て強固になった家族であれば二人目ということもあるでしょうし、反対に出産を通じてネガティブな感情を持つようになればそういう話にもならず、少子化は止まることもないでしょう。

 また、自治体や企業によっては孫休暇というものもあります。祖父母世代になる職員、社員が子育て支援に回ることで、家庭の結びつきを一層感じられることになります。こういった取組を増やすことがこどもまんなか社会なのだと思います。

 育休取得は働き方改革のみならず少子化対策にも大きな影響を与えていますけれども、今回の厚生労働省の調査結果で意外であったことの一つは、中小企業だからといって取得が厳しいというわけでもないということです。優良事例として、取得率一〇〇%、取得日数百五十四日という企業が紹介をされています。全ての企業がそうだということではありませんが、不可能なことではないと示されたことは大変心強いと思います。こういった企業が少しでも増えるように、厚労省として力を入れていっていただきたいと思います。

 さて、このイクメンプロジェクトのサイトなんですけれども、本気で取り組む企業などが紹介をされています。まず、厚労省が省を挙げて職員の皆さんが育児休業を取得していくことが大変望ましいと考えますが、加藤大臣の御見解を是非お伺いできればと思います。

加藤国務大臣 厚労省においては、男性職員の育児休業取得を促進させていただいております。令和三年度の数字を見ると、休業取得率は七七・五%、平均取得期間は一・七か月となっております。既に、令和七年度までの政府目標三〇%、厚労省の目標七〇%も達したところであります。

 これは、子供が生まれることが分かった段階で早期に育児休業の取得計画を提出してもらい、管理職等がその期間中の業務調整を行うなど、育児休業の取得促進に向けた取組を行ってきた成果とも認識しているところでございます。また、実際に取得した職員からは、少ない時間の中で仕事をこなすため時間を効率的に使うようになったなど、業務にプラスの影響があったということも上がっているところであります。こうしたことから、男性の育児休業取得促進をしっかり図っていく必要があると考えております。

 先般、小倉大臣の下で取りまとめたいわゆるたたき台においても、男性の育児休業取得率の目標を民間については二〇二五年に五〇%、二〇三〇年までに八五%に引き上げること、また、その実現を図るため、次世代育成支援対策推進法の事業主行動計画に男性の育休取得を含めた育児参加等に関する目標、行動を義務づけることなどが盛り込まれているところでございますが、企業を始めとして我が国全体における育児休業取得が促進されるよう、そうした制度面も含めて全力で取り組みたいと考えています。

吉田(と)委員 加藤大臣、ありがとうございます。

 令和三年度の男性育休取得率というのは一三・九七%ということですので、厚労省の男性育児休業取得率、令和三年度、七七・五%ということでお伺いをいたしまして、大変すばらしい取得率だと思います。お父さんの育児参画が出生率を上げるポイントだと考えますので、是非厚労省が体験に基づいた男性の育児参加のメリットを喧伝していただき、率先して前に進めていただきたいと考えます。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 最近の話題といえば、対話型人工知能、AIのチャットGPTです。ある記事によりますと、例えば書きたい記事の仮タイトルと見出しを入力するだけで文章が作成され、下手なリポートよりも出来がいいともいいます。イラスト作成にしても、こんな絵柄でと二から五点ほど要望を出すとイラストが提示され、イラストレーターの仕事を奪いかねないとも言われています。

 コロナ禍を経て、デジタルトランスフォーメーション、DXが大きな潮流となっています。デジタル技術の活用は雇用に大きな影響を及ぼすと考えます。経営者は、AIツールを使って人員を削減し、人件費を大幅に減らすでしょう。人口減少、高齢化が進む日本においてDXの推進は必要不可欠である一方、多くの労働者が仕事を失いかねません。特に、スキルが高く、その人でなければというプロダクツ、生産物がなければ職を失うことになります。DXの推進によって人余りが起きかねない状況について、厚労省の見解をお聞かせください。

田中(誠)政府参考人 AI等の技術革新につきましては、業務の内容や職種によりましてその雇用への影響が異なると想定されまして、例えば、AI等の技術革新の進展による産業構造の変化により定型的業務が中心の職種の就業者は減少する一方で、新しい付加価値の創出に役立つ技術職の就業者は増加するといった効果も想定されるところであり、雇用への影響はこうした両面があると考えております。

 御指摘のとおり、今後、労働力供給制約が中長期的に迫ってまいりますけれども、厚生労働省としては、こうした技術革新の積極的側面を生かすべく、AI等になじむ業務には新たな業務を活用しながら、また一方でリスキリングなどによって働く人全ての活躍や生産性の向上を実現していくことが重要であると考えております。

吉田(と)委員 日本の人材は、キャリアシフトを進めていかなければならないと考えます。DXは雇用に対し、ルーティンタスクの機械代替とノンルーティン領域へのリスキリングを求めます。望ましいキャリアシフト、実現可能なキャリアシフトとするためには、職業の類似性が高く、また中長期的な人材ニーズや賃金上昇を見込めるかが重要かと考えます。

 しかし、日本は、高度成長期に確立しました終身雇用や年功序列型を中心としたシステムであり、このような機会が乏しいと考えますが、どのように今後これらの課題に向き合っていくのでしょうか。同職種内での継続的な学び直し、またノンルーティン領域への段階的、継続的なリスキリングが有効的でありますが、効果を最大限に見込んでも不足で、解消は限定的だと捉えています。脱炭素化による産業構造の変化を生み、旧来型の人材需要は減少が見込まれます。結果、産業をまたいだ人材の流動化が必要となりますが、どのような見解か、お聞かせください。

原口政府参考人 お答えいたします。

 我が国の能力開発の現状につきましては、御指摘のとおり雇用慣行の影響もございまして、日本企業のオフJTの研修費用の対GDP比はアメリカなどに比べまして低くとどまっており、かつ近年更に低下傾向にあること、また、働く人の自己啓発の状況を見ますと、我が国においては自己啓発に取り組んでいる労働者が必ずしも多くない状況にあることなど、課題があると認識してございます。

 DXの進展など社会構造の変化の加速が見込まれることを踏まえると、リスキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化といった三位一体の労働市場改革に官民連携して着実に取り組んでいくとともに、特にリスキリング支援策については、個人への直接支援を強化することにより、自律的、主体的な学び、学び直しを後押ししていく必要があると考えております。

 このため、厚生労働省といたしましては、昨年六月に取りまとめました職場における学び・学び直し促進ガイドラインの周知など、働く人の自律的、主体的な学び、学び直しの促進に向けた機運の醸成、働く人が主体的に厚生労働大臣指定の教育訓練を受講し修了した場合にその費用の一部を支給する教育訓練給付につきまして、デジタル分野を始めとする成長分野に資する講座の拡充、今年度から新たに開始いたしました学び、学び直しを希望する労働者の方々に無料でキャリアコンサルティングを提供するキャリア形成・学び直し支援センター事業の推進などによりまして、希望する誰もがライフステージのあらゆる場面で学び直しなどを通じて能力向上やキャリアアップを図ることができるよう、しっかり取り組んでまいりたいと考えてございます。

吉田(と)委員 ありがとうございます。

 先月、四月二十二日に岡山県倉敷市でG7倉敷労働雇用大臣会合が開催され、加藤大臣が議長として御出席されました。議題は人への投資でございましたが、成果また今後の意気込みを、加藤大臣、是非お聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 G7の倉敷労働雇用大臣会合では、人口動態の変化、DX、GXを背景に人への投資の重要性が増す中で、リスキリングは、労働者が社会変化に対応するための能力向上支援にとどまらず生産性向上や賃上げにつながるもの、そして経費ではなく投資だという認識をG7各国で共有いたしましたけれども、実際、会議においても、こうした人への投資の取組、特にEUにおいては今年をザ・イヤー・オブ・スキルズと定めて職業訓練の投資等にしっかり取り組んでいくというお話も聞かせていただきました。

 大臣発言では、今後の各国の取組の方向性として、DX、GXの進展に伴う新規分野への労働移動を支援するためのキャリアガイダンスの提供や、企業による労働者の学びの時間確保なども盛り込んだところでございます。

 今後は、大臣宣言に盛り込んだ施策を着実に実施していくべく、また引き続き各国とも協調して取り組んでいきたいと考えております。

吉田(と)委員 ありがとうございます。経費ではなく投資だということで、人への投資、労働者の職業能力向上と雇用に向けたキャリアシフトの後押し、こういったことを政府、企業、個人がばらばらにならずに一丸となって取り組んでいただけるようにお願いいたします。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、池下卓君。

池下委員 日本維新の会の池下卓です。本日もよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、まず一問目の御質問をさせていただきたいんですけれども、GLP受容体作動薬の目的外使用というものについてお伺いをしていきたいと思います。これは俗にGLP1ダイエットということで呼ばれるわけなんですけれども。

 このお薬は、飲みますとインスリンの分泌を促進させまして、食事によって吸収した血液中の糖分をエネルギーに消費したり等々しまして、血糖値を下げる効果があるというものであります。また、こちらのお薬は以前から糖尿病薬として承認されているということであるんですけれども、一方、別の効果として、体内の糖分を体外に排出するという効果もあるということから、ダイエットに使われていくという傾向が今言われているところであります。特に、病的な肥満といいますのは、心臓疾患であったりとか高血圧など幅広い健康問題を起こしまして、脳卒中や痛風、こういったような幅広い問題につながっていくと懸念をしております。

 ただ一方、効果的なお薬なんですけれども、病的な肥満でない健康的な方が摂取をするとどうなるのかといいますと、低糖質状態になるということで、以前にも私は質問させていただいたんですけれども、骨粗鬆症ですかね、骨がすかすかになるということもありまして、非常に副作用が怖いのかなという形で思っております。

 日医の今村副会長も、健康的な人に医薬品を使うことにはリスクがある、適正使用の観点から禁止すべきだという意見も述べられております。

 そこで、今年一月に、病的肥満の方に対して効果的な薬であるということで、このGLP1のお薬なんですけれども、承認されたと承知をしています。一方で、今月、五月二十三日の中医協では薬価収載されることがありませんでした。なぜ薬価収載されなかったのかについて、ちょっと確認させていただきたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 一般論で申し上げますと、薬事承認された医薬品については、企業から保険収載の希望が出され、中央社会保険医療協議会において了承されれば保険収載されることとなります。

 御指摘の抗肥満薬ウゴービにつきましては、本年三月二十七日に薬事承認されたところでございますけれども、現時点では企業から保険収載の希望が出されておらず、したがって保険収載を行っていない、こういう状況でございます。

池下委員 御答弁にあります、三月にウゴービが承認されたということ、安定供給ができないという企業側の理由ということは承知をさせていただきました。

 そこで、ちょっと皆さんに御覧いただきたいんですけれども、資料の、これはインターネットから引っ張ってきたものなんですが、GLP1ダイエットの広告を是非見ていただきたいなという具合に思います。こちらの方は、いろいろなクリニック等々でやられているんですけれども、美容目的ということで、自由診療で処方されているというものであります。アメリカでは一般的な肥満治療薬であり、リバウンドを起こしにくいであったりとか楽してダイエットできますよということで広告を打たれておりまして、また、有名芸能人も、サイトを見ていきますと、この中に出てこられるという状況です。非常に誤解を生みやすいなということで、私は非常に懸念をしているところなんですが。

 抗肥満薬として承認されているものであるのは理解しているんですが、健康な方がダイエット目的で使用し深刻な健康障害が生じた場合、いわゆるPMDAの医薬品副作用救済制度、こういった公的な救済というものが受けられるのか。また、当該医薬品は医師による処方箋の医薬品ということは承知をしているんですけれども、責任の所在についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。伊佐副大臣にお伺いしたいと思います。

伊佐副大臣 医薬品副作用被害救済制度、これはPMDA法に基づくものでございますが、これは、適正な使用目的に従い、適正に使用された医薬品の副作用を救済の対象としております。この判断に当たりましては、最終的には個別の事案ごとに総合的な見地から判断されますが、原則的には、適正な使用目的ということの判断については、承認を受けた医薬品の効能又は効果の範囲内での使用であること、また、適正使用されているかどうかについては、医薬品の容器又は添付文書に記載されている用法、用量及び使用上の注意に従って使用されていることが基本となります。こうした使用目的又は適正使用に該当しないと判断される場合は、救済制度の対象とはなりません。

 責任の所在についてでございますが、これも個別具体的に判断されるもので一概にお答えすることは困難でありますが、一般論として申し上げれば、患者の皆様へのインフォームド・コンセントとして、医薬品を処方する際には提供する医療に関する適切な説明を行い理解を得ることを求めているところでありまして、こうしたことも踏まえて判断されるというふうに承知をしております。

池下委員 ありがとうございます。まさに目的外の使用というのは公的な救済外ということを理解いたしまして、お医者さんの処方箋ということですので、お医者さんにやはり責任が一般的にはあるのかなと思っております。

 この広告を見ましても、オンライン診療等々でこれが今やられているわけですよ。逆に、抗肥満薬として承認されたからこそ政府のお墨つきが入っているような形で、言ってみたら、健康な方が使用されるということになったら非常にまずいのかなと私は思っています。まさに健康被害が生じてからでは遅いわけですから、国民に対してもっと注意啓発をやっていくべきだと私は考えているんですけれども、今後の対策につきまして、大臣に御見解をお伺いしたいと思います。

加藤国務大臣 医療法では、医師等に対して患者への説明と理解、いわゆるインフォームド・コンセントを求めております。GLP1ダイエットを含む美容医療サービス等の自由診療については、患者が安全性や有効性について理解した上で受けていただくことが重要であります。

 平成二十五年に、美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントに関して特に留意すべき事項として、施術の有効性及び安全性に係る説明に当たっては効果の程度には個人差がある旨を直接丁寧に説明しなければならないことなどを都道府県に対し通知し、その周知、遵守の徹底を図っているところでございます。

 さらに、患者、国民に対しては、平成二十八年に美容医療サービス等の自由診療を受ける際のインフォームド・コンセントの観点からチェックシートを消費者庁と合同で作成し、患者から医療従事者等に理解できるまで追加の説明を求める等の対応を促したところでありますが、さらに、そのチェックシートを令和二年に改定し、GLP1ダイエットについては安全性や有効性が確認されていないとする日本糖尿病学会の見解を紹介して注意喚起を行っており、今後も引き続きそうした認識についての普及啓発を進めていきたいというふうに考えております。

池下委員 普及啓発を進めていただくということなんですが、昨日、問取りのところで、たしか四回、連絡が発出されたということで聞いているんですけれども。

 実は、昨日、うちの事務所にお客さんが来られまして、女性の方だったんですけれども、この話をしていたんです。実は私、オンラインで飲みましたと言われていたんです、そのときは吐き気がして食欲がなくなって食べられなかったと。お母さんも飲まれたそうなんですけれども、お母さんも嘔吐されたそうです。嘔吐されたレベルではPMDAの救済なんかは受けられないんですけれども、そういうところには行かれないですし、お医者さんにもオンラインでわざわざ、ちょっと吐き気がするくらいでということでは行かないかもしれないんですけれども、そういう地に潜んだものもあるかもしれませんので、承認されてまだ期間が短いですけれども、こういう対策をしっかりとやっていただきたいと思います。

 ちょっと時間がないので、一問飛ばさせていただきながら、次は、ちょっとお題が変わるんですが、オンラインカジノのギャンブル依存症対策についてお伺いをしていきたいと思います。通告はしましたけれども、ちょっと一問飛ばさせていただきます。

 先月、五月ですね、ギャンブル依存症対策の団体さんから御意見を、依存症の議連の勉強会で聞かせていただきました。その中で、オンラインカジノが非常にこのコロナ禍で広まっていて危ないんだということを聞かせていただきました。

 今回、資料の方に添付させていただいておりますけれども、今、警察庁と消費者庁が合同で、こちらの、オンラインカジノは犯罪ですということで、チラシを五万枚ほど配付されていただいているということなんです。ギャンブル依存症問題を考える会の皆様からも、このチラシは五万枚あるんですけれども、まだなかなか見かけない、我々の団体にも欲しいということと、ツイッター等のSNSやユーチューブにターゲット広告という形で打っていただいて広めていただく、オンラインカジノはあくまで賭博で犯罪ですよということを広めていただきたいという御要望もいただいております。

 認められないオンラインカジノは賭博であり深刻な犯罪だというものであるということを、しっかりと注意喚起対策を行っていくべきだと考えますけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

友井政府参考人 お答えをいたします。

 警察では、犯罪の未然防止の観点から、消費者庁と連携をいたしまして御指摘のポスターを、オンラインカジノの違法性についての御指摘のポスターを約五万枚作成して都道府県警察などに配付したほか、警察庁のウェブサイトなどにおいて広報啓発を行ったところでございます。

 このポスターにつきましては、各種要望を受けまして、更なる配付を検討しておるところであります。また、御指摘の広告等も含め、一層効果的な広報啓発についても関係省庁と連携して検討してまいりたいと考えております。

池下委員 細かくはあれなんですけれども、前向きな御回答ということで承知をさせていただきました。

 もう一つ、オンラインカジノで、広告事業者、いわゆるアフィリエイターという存在があるんですけれども、これが賭博自体を助長しているという声もあります。賭博を助長している事実があった場合、賭博罪の共犯となり得ると考えますけれども、現行法においてどのような犯罪に該当して検挙されるのかについてお伺いをしたいと思います。

友井政府参考人 お答えをいたします。

 お尋ねのインターネット広告事業者につきましては、その広告の対象や方法などが様々であると考えられますことから一概にお答えすることは困難ではございますが、御指摘のような賭博罪の共犯となるものなど、刑事事件として取り上げるべきものにつきましては個別具体の事実関係に即して対処してまいります。

 オンラインカジノに係る様々な問題については警察としても認識しており、これに関与するものについては法と証拠に基づき捜査を推進してまいりたいと考えております。

池下委員 先日、京都府警ですかね、オンラインカジノで検挙されたと、具体的なことは分かりませんけれども、検挙されたという事例がありました。

 先ほどちょっとインターネットで見ていたんですけれども、オンラインカジノは違法かどうかという検証サイトみたいなものがあったわけなんですけれども、この中で、解説では、オンラインカジノの運営会社の多くが上場企業であり、ライセンスを持っているので信用できる企業だというように書いていました。恐らくこれは海外の会社だという具合に思います。もう一つ、オンラインカジノに対して明確に定められた法律がないので合法でも違法でもないという解説がされていました。まさに時代がどんどんどんどん変わっていく中で、やはり時代に即した形で法律も改正していかなきゃいけないと思いますので、是非そちらの方を御要望させていただきながら、私の御質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、田中健君。

田中(健)委員 国民民主党、田中健です。よろしくお願いいたします。

 まず、マイナ保険証について伺いたいと思います。

 一昨日の二十九日に全国保険医団体連合会が、マイナ保険証を使える医療機関二千八百七十四件のうち、六割に及ぶ千四百二十四機関でシステム上のトラブルを経験したという調査を発表いたしました。トラブルの種類は、本人の資格確認の際、無効、該当なしと表示されてしまうが六七%、その原因は、古い保険証がデータ上切り替わっていないことに起因しているということでありましたが、この報告をどう受け止められているか、また、このような状況は想定していたことなのか、再発防止も含めて大臣に対応を伺います。

加藤国務大臣 まず、今、転職等により資格変更があった場合において、資格変更後に保険者が保険者向け中間サーバーに被保険者の資格情報を登録するに当たりタイムラグがありますので、その間においては無効、エラーという形で表示されることとなります。このような場合にこうした表示が出ることについては最初から想定をしており、医療機関等向けの運用マニュアルやトラブルシューティングなどでオンライン資格確認の運用当初からそのことはお示しをさせていただいております。

 一方で、同じようなことは実は通常の保険証でも当然、発行するまでの時間がございますからそうしたことは生じるわけで、逆に、マイナンバーカードと健康保険証を一体化することによって、保険証であれば届くまで使えないわけでありますが、一体化されればデータがくっついた瞬間から使える、その期間が短縮されるというメリットもあります。

 さらに、こうした場合、タイムラグをできるだけ少なくするということで、二月十七日にまとめられたマイナンバーと健康保険証の一体化に関する検討会の中間まとめにおいて、保険者の迅速かつ正確なデータ登録を確保するため、資格取得から保険者によるデータ登録まで計十日以内とするための対策をお示しし、今般、省令の改正も行わせていただいたところでございます。

 このように、制度上の仕組みの整備と併せて、保険者や事業主の実務上の課題にも丁寧に対応していくことで、保険者による迅速かつ正確なデータ登録を実現するとともに、データ登録のタイムラグをできるだけ短縮していきたいと考えています。

田中(健)委員 タイムラグということを何度もおっしゃっていただきましたけれども、紙の保険証でしたら、タイムラグというか、次の保険証が来るまでの間がありますし、かぶる期間もあるので、そのままデジタルに切り替わる、だからタイムラグは仕方ないというような言い方ですと、余りにも無責任じゃないかなと私は思ってしまいます。

 さらに、想定されていたということであればしっかりと伝えておきませんと、無効、該当なしというふうになってしまいますと、その方が保険証がないということと同じになってしまいますので、是非、それは医療機関にも御説明が必要だったかと思いますし、何せ時間のない中で進めたということで間に合わなかったということも指摘されていますので、もう一度検証をしていただきたいと思います。

 さらに、他人の医療機関がひもづけられていたというミスも現時点で三十七件報告がされました。以前発覚した公金口座の誤登録というのは、共同端末を使って前の人がログアウトしていなかったというようなことで説明がありましたけれども、今回の原因というのは違う原因であったと思いますが、どのようなことでこの誤登録が起きたんでしょうか。

加藤国務大臣 まず、現行の保険証でも、例えば企業を替えたら前の保険証はその時点から使えなくなりますので、古い保険証は使ってはならないということで、新しい保険証が出るまでの間はどうしても空白が出るというのは紙の保険証でもあるということを申し上げたかったということでございます。

 その上で、今の、間違った形でひもづけされたということでございますが、その原因としては、届出に記載された個人番号が、届出というのは本人等からでありますが、届出に記載された個人番号が誤っていた、あるいは、被保険者が個人番号を提出しなかったため保険者においてJ―LIS照会を行ったわけでありますが、十分な確認を行わなかったため別人の個人番号を取得して登録してしまった、また、保険者が個人番号等の入力を誤ったなどの事実が確認されておりますので、これを踏まえた対策を先般公表させていただいて、これから新たに新規に入れるというときに対してしっかりチェックするだけではなくて、過去分も遡って全部チェックするということも発表させていただいたところでございます。

田中(健)委員 ありがとうございました。

 済みません、私も、先ほどの大臣に説明いただいたものを、前のものが切り替わるというか期限が切れたときにかぶるということで私も誤認をしていましたので、失礼いたしました。確かに転職のときは次のものが来るまで使えないということは、私の認識の違いでありまして、失礼いたしました。

 その際、マイナ保険証を利用する患者本人と当該医療機関において薬剤情報や医療情報の閲覧が今回の誤登録によって可能になってしまったんじゃないかというような懸念が出ています。他人がマイナポータル等で薬剤や診療情報というのを見てしまった、意図しなくても閲覧したという可能性は捨て切れません。患者のプライバシーや情報漏えいの懸念が上がっている中、全医療機関への調査というのをしていただきたいと思いますし、改めて、先ほどのミスであったとか注意不足であったというよりも、しっかりとその関係というのを確認していただきたいと思いますが、再度お願いいたします。

加藤国務大臣 こうしたミスがあったということ、これは我々も謙虚に受け止め、こうしたことで国民の皆さんに御心配をおかけするのは大変申し訳なく思っているところでございます。

 一方で、マイナンバーカードを活用するメリットももう既に実感していただいているところでございますので、こうした利用を安心、安全に行っていくということ、特に個人情報が保護される中で進めていくということが必要であり、今後もこうした誤登録の問題が、これはどうしても人がどこかで作業に介在しますので、全くミスがないということではなくて、むしろそういったことも起こり得るということを想定しながら二重三重のチェックのシステムをつくらせていただきたいし、それに向かって作業を進めさせていただいているところでございます。

 また、既に登録済みの全データについても、先ほど申し上げた全体をチェックさせていただく、そして、仮に個々人においてこれはおかしいという疑義が生じたような場合には、問合せ窓口に御相談いただければ迅速に対応機関につながり、具体的な対応が取れる体制も整備をさせていただいているところでございますので、こうした施策をしっかり進めることによって、今いろいろな疑問あるいは懸念が生じている、そのことを一つ一つ払拭していくべく努力していきたいと考えています。

田中(健)委員 マイナ保険証についてはやはりまだまだ皆さん心配がありますので、今言った二重三重チェック、そして、必ずミスはあるんだけれどもそれを改善できるということをしっかり大臣の方からも伝えていただければと思っています。また改めて質問させていただきたいと思います。

 続きまして、先ほど野間委員からも指摘のありました障害福祉サービスの六十五歳の壁についてのお話をしたいと思います。

 介護保険の申請をしなかったことを理由に千葉市が六十五歳で障害福祉サービスの支給を打ち切ったのは違法だとして、脳性麻痺患者の天海さんが同市を訴えた裁判が東京高裁でありまして、判決では天海さんは勝訴をいたしました。まず、この判決について国の受け止めがあれば、お願いしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がありました訴訟につきましては、自治体における個別の事案についての訴訟でございまして、その判決について国からお答えすることは差し控えたいと考えております。

 なお、一般論として申し上げますと、我が国の社会保障全体の体系においては、あるサービスが公費負担制度でも社会保険制度でも提供されているときは、保険料を支払って国民が互いに支え合うという社会保険制度によるサービスをまず利用するという保険優先の考え方が原則となっているというところでございます。この考え方に沿って適切に運用をしてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 これをなぜ取り上げたかといいますと、千葉市は、この四月七日、取消しや損害賠償の支払いを命じた東京高裁を不服としまして上告受理を申し立てたんですけれども、この内容が、市に変更権限のない国制度によってもたらされた障害者間の不均衡が論点になって敗訴したことというのを問題視しまして、東京高裁は自治体の裁量権の範囲を過大に求めるものであり、受け入れ難いということであります。

 今し方御説明がありましたが、もちろん介護保険優先原則というのはあるんですけれども、一方、必要な支援を受けられることが重要なので、一律に介護保険サービスを優先させることなく、個々の状況に応じて支給決定がなされるようお願いするという通達を厚労省からも市町村に出しております。つまり、運用での解決をそれぞれ図ってくれと言っているわけですけれども、それが今回のような問題を生んでいるんじゃないかという問題意識で質問させていただいております。

 例えば、国立市では、介護保険は強制しない、介護保険の申請がない限り障害福祉サービスを継続できる。介護保険との併用というのを含め障害福祉サービスを提供している自治体もある中、利用者本人が自分自身で制度を選んでいくというような体制また制度にというのはできないのか、見解を伺いたいと思います。

辺見政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、我が国の社会保障全体の体系における保険優先の考え方に照らしますと、障害福祉サービスと介護保険サービスのどちらを利用するかを利用者本人が選択できるようにするということはこうした原則の考え方と適合するものではないと考えておりまして、市町村におきまして引き続き原則の考え方に基づいて制度の運用を丁寧に行っていただくことが必要だと考えております。

 ただし、その運用に当たりましては、高齢の障害者に対して一律に介護保険サービスが優先されるものではなく、お一人お一人の個別の状況を丁寧に勘案し、介護保険サービスだけでなく障害福祉サービスの利用も含めて、その方が必要としている支援が受けられるということが重要であるということについては御指摘いただきましたとおりでございます。

 こうした保険優先の原則を維持しつつ、申請者ごとの個別の状況を丁寧に勘案しながら支給決定が行われるように、令和四年六月に取りまとめられました社会保障審議会の障害者部会の報告書におきましては、市町村における具体的な運用について留意すべきことを具体例として示すべきことが指摘されており、このことに基づきまして現在検討を進めているところでございます。

 こうしたことに取り組みながら、引き続き制度の適切な運用に努めてまいりたいと考えております。

田中(健)委員 公平な観点からというのがありましたけれども、自治体がうまく運用すれば障害福祉サービスも受けられる、つまり住んでいる自治体によって判断が違うというのでは、逆に不均衡ではないかと思ってしまいます。どこで暮らしても、幾つになっても、障害があろうがなかろうが、生活の質を守る、サービスを受けられるというような制度でなくてはならないと思うんですけれども、自治体によって差が出るということに対しては、これは不公平ではないという理解でいいんですか。

辺見政府参考人 自治体における運用におきましては、個別の状況を丁寧に勘案しながら支給決定が行われることが重要と考えておりますが、個別の自治体における具体的な事例ということを把握しながら、先ほど申し上げましたような具体的な例を、今後、市町村に対して留意すべき事項としてお示しするということを考えているところでございます。

田中(健)委員 是非、障害福祉と介護保険のはざまで苦しんでいる人や、そこから漏れ落ちてしまうような人がないように、制度を更に磨いていってほしいと思います。

 ちょっと時間がなくなってしまいましたので、最後に一問、障害者の雇用代行ビジネスについて伺いたいと思います。

 四月十七日の労政審で、いわゆる障害者雇用ビジネスに関して初めての報告が出ました。事業者二十三、また就業場所が百二十五か所、千八十一社以上の企業が利用し、就業障害者は六千五百六十八人という調査結果であります。これまでも国会で法定雇用率を形式的に満たすだけに利用されているんじゃないかというような問題視がされてきましたが、今回、具体的にこのような把握がされました。

 厚労省は代行ビジネス自体は違法ではないという見解でありますが、私も全てを否定するものではありませんが、雇用率達成のために障害者雇用を丸ごとアウトソーシングする、一〇〇%企業には負担はない、お金さえ払ってくれればいいというような制度で、つまり雇用率を金で買うような行為にも思えてしまうんですが、障害者雇用の理念の、共同であり、共生社会であり、障害者の人たちとともに生活するという、それに照らし合わせて適切であるとは思えないんですが、大臣としての見解を伺います。

加藤国務大臣 そうした御懸念あるいは指摘もありましたので、令和四年一月以降、労働局で障害者雇用ビジネス実施事業者やその利用企業の実態把握を行ってまいりました。

 本年三月末時点で把握できた障害者雇用ビジネス実施事業者二十三法人が運営する就業場所百二十五か所においてでありますが、明らかな法令違反は確認されておりませんが、障害者雇用促進法の趣旨に照らし疑義が残る事例等があった一方で、能力開発や向上につながる、こういった事例も見られたところでございますので、こうした事例を踏まえ、整理し、障害者雇用の場面場面に応じた望ましい取組のポイントについて、先月、労政審に報告をいたしました。

 これらの内容に関し、障害者雇用ビジネス利用企業等向けのリーフレットを近日中に作成し、能力開発、向上につながる事例や、障害者が活躍できる職場環境の整備、適正な雇用管理のために事業主に望まれる取組の方向性について周知啓発を図ることとしたいと考えております。

 引き続き実態把握も進めながら、障害者雇用ビジネス実施事業者やその利用企業等に対して必要な助言、支援を行うことによって、障害のある方が能力を発揮し、やりがいを持って働ける環境、その整備に努めていきたいと考えております。

田中(健)委員 法的には問題ないというんですけれども、法定雇用率を何とか守ろうとする、そういったいろいろな課題が潜んでいると思いますので、また質問させていただきます。

 以上で終わります。ありがとうございました。

三ッ林委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 この後、通称ゲノム法案が提案されます。ゲノム情報によって、保険だとか就職あるいは結婚などで差別や社会的不利益が行われないように国の施策が求められるわけです。今日は、雇用の分野に限ってお伺いします。

 先ほどの中島委員への答弁では、現状、雇用の分野では就職等での差別が行われないよう周知啓発している、こういう答弁がありました。周知啓発も大事なんですけれども、やはり事業者による遺伝情報の取得の原則禁止、そして遺伝情報に基づく採用、昇進、解雇などの不利益扱いの禁止、不利益を受けた場合の救済について、更なる法整備も含めた国の対応が求められると思いますが、いかがでしょうか。

堀井政府参考人 お答えいたします。

 今、宮本委員から御指摘があったように、まず、採用選考に当たって講じている措置、そしてまた昇進、解雇等、そういったことにおける不利益取扱いがされた場合、こういった場合については、労働契約法において、使用者が、労働契約に基づく権利行使に当たって、それを濫用することがあってはならないと規定をされていますので、解雇の要請については、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となるとされている、そういったことが最終的には司法において個別の事案ごとに判断されることになると考えています。

 そしてまた、解雇等の不利益な取扱いを受けた場合につきましては、全国の労働局等に設置をした総合労働相談コーナーで相談を受け付けております。そして、相談の内容や相談者の希望に応じて、事業主に助言、指導を行っているほか、紛争調整委員会によるあっせんも行っております。

 厚生労働省としましては、遺伝情報について雇用の分野において不利益な取扱いを受けることがないようにすることから、こういったことが重要であるということで、これらの取組を進めてまいりたいというふうに考えております。

 また、委員御指摘の不利益取扱いの禁止規定を設けるべきかどうかという点につきましては、関連する状況を踏まえた関係部局による検討等を要するもので、今にわかにお答えするということは困難でございますが、今後の遺伝情報やゲノム情報の利用の状況に注意を払いつつ、遺伝情報について不利益な取扱いを受けることがないよう、雇用の分野について、先ほど申し上げたような取組を進めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 にわかに答えられないということなんですけれども、今回、理念法としてですけれども、国として差別は許さない、不利益取扱いを許さない、必要な対応を取っていくということが中身に入っているわけですから、それに基づいて具体的に、諸外国ではしっかり不利益取扱いの禁止、ここまで法整備をしている国もあるわけですから、しっかり検討をしていっていただきたいと思います。大臣、うなずいていただければと思います。

 それから、もう一点、この後、戦没者の遺骨収集の推進に関する法律の改正案も委員長から提案される予定であります。

 これに関わってお伺いしますけれども、今、沖縄県の南部には多くの遺骨が残り、ガマフヤーの皆さんなど、遺骨の収集が続けられております。

 ところが、防衛省の設計変更では、この辺野古の新基地建設の軟弱地盤を固めるために土砂が当初の六・七倍必要だとして、土砂の調達先を変更して拡大して、県内土砂の七割を南部の激戦地の地域から調達しようとしているわけであります。

 これに対して、戦没者の尊厳を冒涜するものだということで、全国で三月末までに二百二十九の自治体から、辺野古の埋立てに南部の土砂を使うな、こういう意見書も上がっている状況です。

 まず、大臣の基本的な認識をお伺いしますけれども、この南部の激戦地の土砂、まだ遺骨も混じっている、こういう土砂を基地の埋立てに使っていくというのは、戦没者の尊厳に対するこれほどの冒涜はないと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 沖縄戦では、さきの大戦末期に県民を巻き込んだ凄惨な地上戦が行われ、軍民合わせて多くの貴い命が失われたところであります。特に、御指摘の本島南部では多くの住民の方が犠牲になったものと認識をしております。

 厚労省としては、沖縄県において、県と役割分担をして遺骨収集を進めており、御遺骨を収容する仕組みも構築をされているところでございます。実際、地下ごうや開発現場などから御遺骨が発見された場合、この仕組みにより市町村等へ通報していただくよう伝えているところでございます。

 厚労省としては、引き続き、沖縄県と連携して、一柱でも多くの御遺骨を御遺族にお返しできるよう取り組んでいきたいと考えております。

 そうした中で、今、普天間飛行場代替施設建設事業にございましたが、事業そのものは防衛省の事業でございます。我々は、今申し上げたようなスタンスで、一柱でも多い御遺骨の収容に取り組んでいきたいと考えております。

宮本(徹)委員 一柱でも多く遺骨の収集をしたい、やはりそれは本当に戦没者の無念、そして遺族の皆さんの思いをしっかり受け止めてというのが厚労省の立場だと思うんですね。

 その立場に立ったら、防衛省に対して、ここの土砂を埋立てに使うなんてまかりならぬ、このことをしっかり厚労大臣として迫る必要があるんじゃないですか。

加藤国務大臣 先ほど申し上げましたが、沖縄県においては御遺骨を収容する仕組みが構築をされており、防衛省を始め関係機関に対し、地下ごうや開発現場などから御遺骨が発見された場合、この仕組みによって市町村等へ通報していただくということをお願いをしているところでございます。

 また、防衛省に対しては、開発行為等の過程で御遺骨が発見された場合の通報手順などについて関連事業者により丁寧に周知をすべく、沖縄における遺骨収集の背景、現状、適切に御遺骨を収容する必要性などの理解を深められるよう、事務レベルで適切に説明を行ってきているところであります。

宮本(徹)委員 何か心がない答弁なんですよね、本当に。与党の皆さんも、この後、皆さん全体で、この遺骨収集の集中期間を延期しよう、こういうことをみんなで委員長発議を確認しようとしているのに、それと全く反することが沖縄でやられるかも分からないわけですよ。これは止めなきゃいけないじゃないですか。是非その立場に与野党を超えて立っていただきたい、このことを強く申し上げておきたいと思います。

 続きまして、次の問題に行きます。

 少子化対策の財源として、この間、医療保険料への上乗せや介護、医療の歳出改革、こういうことが報道されているわけであります。医療保険料への上乗せ、社会保険料の問題は、私もここで駄目だということを申し上げさせていただきました。さらに、今回出てきている医療、介護の歳出改革ということが言われているんですね。

 五月二十五日に、医師会だとか看護協会、四病院団体協議会、老人保健施設協会などなどの連名の声明が出されております。その中でこう書いているんですね。

 子供、子育て、少子化対策の財源を捻出するため、診療報酬、介護報酬の抑制、医療機関収支の適正化等を行うべきとの意見もあります、子供、子育て、少子化対策は大変重要な政策ですが、病や障害に苦しむ方々の財源を切り崩してはなりません、当然の意見だと思うんですよね。

 私は、本当だったら、与野党でここで特別決議を上げて、こういう財源を使っちゃいけない、子育て施策のためだと称して医療や介護の財源を持っていくなんてとんでもないというのをみんなで示していかなきゃいけないような話だと思うんですね。

 大臣、幾ら子育て支援が大事だといっても、医療や介護、ましてや、今日も人手不足の問題とかいろいろな話もありましたけれども、どこも本当に人手不足で、もっと処遇を改善して、しっかりケアできる体制をつくっていかなきゃいけない、この分野の二兆円ものカット、こんなのは絶対許さないと職を賭してでも止めなきゃいけない話じゃないかと思いますが、いかがですか。

加藤国務大臣 現在、子供、子育て政策については、こども未来戦略会議において議論が進められております。

 五月二十二日の第四回の戦略会議では、子供、子育て政策を抜本的に強化していくため、今後三年間を集中取組期間として実施する加速化プランを支えるための安定的な財源について議論が行われました。そして、総理からは、歳出改革の取組を徹底するほか、既定予算を最大限活用することにより国民の実質的な負担を最大限抑制すること、企業を含め、社会、経済の参加者全体が連帯し、公平な立場で広く支え合っていく新たな枠組みについて具体的に検討し、結論を出す必要があるといった方向性が示されたところでございます。

 子供、子育て支援の推進によって少子化、人口減少のトレンドの流れが変わっていくことは、社会保障の持続可能性を高めることにもつながると考えております。

 厚労省としては、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供されるようにするとともに、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合う仕組みの構築、まさに全世代型社会保障を構築する、それに向けて、引き続き給付と負担の見直しにも取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 自民党の議員の皆さんの中からも、とんでもない話だという声がたくさん聞こえてくるわけですよ。しかし、そういう言葉が加藤大臣から聞こえてこないんですよね。本当に、やはり医療や介護の財源は削らせません、そのために頑張りますと、皆さんにここではっきり意思表明をすべきじゃないですか。与党の皆さんもそれを求めているんじゃないですかね。何か笑っている与党の方もたくさんいらっしゃいますけれども、本当にこれは真剣な問題ですよ。いかがですか。

加藤国務大臣 まさにそういった意味で、先ほど申し上げた全世代型社会保障を構築しようということでこれまでも努力をしてまいりました。そして、そうした中で、今、医療を取り巻く、あるいは介護を取り巻く、特にコロナ禍を越える中で、物価あるいは賃金の上昇、こういった事情もございます。こういったことも踏まえて、先ほど申し上げた、引き続き持続可能な社会保障制度、あるいは、その下で必要な社会保障サービスがしっかり提供されるように、引き続き努力をしていきたいと考えております。

宮本(徹)委員 必要なサービスを提供するためには、診療報酬や介護報酬を減らすんじゃなくて、増やさなきゃ駄目なんだと、そうだということが与党からもたくさん上がっていますので、是非大臣にはきっぱりと、頑張っていただきたいと思います。

 最後に、子育て支援の問題に関わってもう一点だけお伺いします。

 財務大臣が、児童手当拡充の際には扶養控除の廃止を検討すべきだと主張をされているわけですよね。総理は、少子化対策財源確保のための新たな税負担は考えていないと言っています。これは閣内不一致じゃありませんか。

井上副大臣 お答えいたします。

 まず、子供政策強化の内容、予算、財源につきましては、現在、総理の下で議論を行っているところでありまして、また、今後、与党における議論も行われていくことから、現段階で確定的なことを申し上げられないことについては御理解をいただきたいというふうに思います。

 その上で、これまでの財務大臣の会見で申し上げたことを改めて御説明をさせていただきたいと思います。

 二十二日のこども未来戦略会議におきまして、総理から、少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えていないことが大前提であることを発言がありました。児童手当の拡充を検討する際には、これまでの児童手当をめぐる制度改正の経緯があることから、歳出と税制の在り方を総合的に考える中で扶養控除との関係をどう考えるか整理する必要があると考えていますが、少子化対策の財源確保を目的として検討されるべき事柄であるとは考えておりません。

 子供、子育て政策強化における加速化プランの具体的な内容や、それを支える安定的な財源の在り方については、現在、こども未来戦略会議におきまして議論されているところでありまして、現在、何ら確定していない段階で予断を持ってお答えすることは困難だというふうに考えております。

宮本(徹)委員 年収六百万円の方でも、扶養控除を廃止しちゃったら、児童手当が増えてもその六割は税金で消えちゃうんですよね。税理士の計算では、年収八百五十万円を超えたら、児童手当の増額分は全部増税で消えてしまう、そういう話なんですよ。本当に、子育て支援といいながら、子育て世代の中での所得の再分配にしかならない話なんですね。これは異次元の少子化対策なんですか。

 そもそも、こんな発言が出てくること自体が、全然真剣に少子化対策を考えていないということだと思いますよ。二度とこういう言葉は使わないように財務大臣に伝えていただきたい、そのことを申し上げまして、今日は時間になりましたので、質問を終わります。

三ッ林委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文です。

 今日は、配付しました徳島新聞の記事について大臣にまずお尋ねしたいと思いますが、このニュース、大臣は御案内だと思いますが、今どのように受け止められていらっしゃいますか。

加藤国務大臣 新型コロナワクチンを接種した女子中学生の方が二日後に死亡し、司法解剖を行った徳島大学の法医学教室が、ワクチン接種と死亡との因果関係を認める内容の論文を公表したという報道があったことは承知をしております。

 個別の事例の状況についてはお答えは差し控えさせていただいておりますが、一般論として申し上げれば、副反応疑い報告制度などにより、新型コロナワクチン接種後の副反応が疑われる症状について医師や製造販売業者等から報告があった場合には、審議会で評価した上で必要な対応を行うこととなっているところでございます。

仁木委員 今大臣のおっしゃられた言葉、これは非常に重いものがありまして、私も、この間、ワクチン接種を、有効性を信じて、副反応もありますが、それ以上にメリットが大きい、ベネフィットが大きいということで、推進する立場で質問してまいりました。

 しかし、リスクコミュニケーションという、あくまでもエビデンス、数字に基づいた形も重要でございます。この記事の横の方にも、実際、二十万人に一人だというふうな数字、〇・〇〇〇五%であるということも出ておりますが、リスクコミュニケーションを行う人がどのような形、具体的に言えば、行動科学からいうと、どういう表情で、そういったエビデンスに基づいてこのワクチンの有効性あるいは副反応について国民に対してコミュニケーションを行うのかによって状況が変わってくると思います。

 今、ワクチンに伴って予防接種健康被害救済制度というのがありますけれども、例えば、死因と因果関係が否定できないもの、あるいは疑いがある段階で、ある種の一時金等々が支給されている現実があります。

 ところが、例えば、皆さんがよく聞くアナフィラキシーというのは、他の、一般に薬等々でも起こるものです。メッセンジャーRNAワクチンというものが、今回、ゲノム医療法案もこの後審議されますけれども、初めて、コロナ禍で開発されまして、今、国民に打たれてきました。そういう中で、新しいタイプのワクチンが、ワクチンそのもの自体が、中長期的あるいは短期的ですけれども、人体にどういう影響を及ぼすのか。

 この記事にも記載していますように、この十四歳の中学生女子は、全身性の炎症反応症候群、その中でも顕著に心臓に表れる心筋炎と心外膜炎が原因じゃないかということで、私は論文の英語のものを持っていますけれども、病理解剖を進めまして、こういった組織の染色を行って、まさに炎症所見が見られるのが分かるぐらいな全身性の炎症所見、特に循環器、心臓の方に出ているということでございます。

 私が今日大臣に提言したいのは、この記事にもありますように、不審死というか、家族、御遺族としては、これはワクチンが原因だ、原因じゃないか、そういうふうに思ってやまない。されど、私の地元にもいますが、そういう亡くなった方が、それを接種したドクターに聞いても、ワクチンとの因果関係を認めてくれないというか、もっと言うと、協力しづらい状況が、大臣、あるんですね。これは当然だと思います。私もワクチンを接種しましたが、打った患者さんにもしこういう不幸にも死亡事案がありますと、その御遺族から、仁木先生、私の家族に先生が打ったワクチンが原因じゃないですかということを聞かれても、それはやはり答えにくい。

 そして、一般には、司法解剖、これはいろいろな法案も変わりましたけれども、犯罪性等々がある場合にのみ行われる解剖でございまして、一般に、だびに付されるまでの間、いわゆる火葬されるまでの間に詳しい検索が行われていないのが現状だと思います。ですから、私は、不幸にもこういった事案に遭った方を迅速に、そして科学的に救済していくためには、やはりそういった家族が求める場合にも、犯罪性があるとか、あるいは家族が求める場合にも司法解剖ができるような、解剖できるような、あるいは解剖のみならず、御遺体を見ていく、表面での観察である検視であるとか、あるいは、議論もこの間出ておりましたけれども、オートプシーイメージングという、いわゆるCTを使って、御遺体の方の中の肺の状態であるとか、そういう筋肉の状態であるとかを、最近のCTも機能が向上していますので使うという方法もあると思います。

 そういうことを含めて、大臣、もう少し緩和するとか、あるいは、一般に、解剖を含めた、オートプシーイメージングもそうですけれども、医師がそういった形で求めれば、例えば大学等々では、法医学教室のドクターあるいは病理の先生はそういったことをしてくださるんですね。

 ですから、そういうふうな意味で、私は、全国に、予防接種による健康被害というのは、何もメッセンジャーRNAワクチン、コロナワクチンだけに限ったわけではございませんので、この際、こういった家族、御遺族の求めに応じて、そういった相談窓口を設けて、それが大学等々の法医学教室であるとか病理学教室とかと連携して、患者さんの望む形のオートプシーというか、死因検索ができるようなシステムを提言したいと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 二つあると思います。

 一つは、本当に、接種後において、これまで元気な方が、今回のケースもそうだと思いますけれども、お亡くなりになった、本人もそうしたことになると思っていなかったと思いますし、御家族においてはなおさらのことだと思います。そうした対応において、一つは、まずは、被害救済制度がございますから、これを活用していただく。我々としては、今、申請があっても直ちに救済が決定ができておりませんから、迅速な救済を行うべく、まず努力をしていきたいと思っております。

 その上で、副反応が疑われる症状については、医療機関から国への報告、これを義務づけており、その報告を継続的に情報として収集をして、そして情報を整理した上で、定期的に開催する審議会で、第三者の立場である専門家の委員から評価をしていただいているというのが今の仕組みであります。

 そのためにも、予防接種との関連が疑われる症状等の情報を収集するものであることから、診断を行った医師から報告をいただくこととしております。さらに、患者本人や家族からも直接、副反応と疑われる症例について国等に情報提供ができる仕組みも設けさせていただいているところでございます。

 今後とも、そうしたところで得た知見、こうした情報収集を続けるとともに、その時点で得られる最新の科学的な知見、海外の動向も踏まえて、専門家の御意見を聞きながらワクチンの有効性、安全性を評価していくとともに、適切な安全対策、あるいは国民の皆さんへの適切な情報提供、これをしっかり行っていきたいと考えております。

仁木委員 新しいワクチンですから、やはりエビデンス構築というのは非常に大切だと思います。健康な人に打つ予防接種ですから、やはりそのメリット、デメリット、いわゆるリスクですね、それもしっかりと分かった上で国民が選択できる制度をつくる意味では大切ですけれども、大臣の今のおっしゃった答弁ではそこまで踏み込んだ形は得られていません。

 ですから、私は、ただでさえ、家族を亡くしたり、家族が健康被害に遭って苦しい思いをする方々は国民ですから、そういう方々の側に立った窓口、これを設けていただきたいということを重ねて申したいと思います。

 この事案というのは、例えば、過去を振り返ってみますと、イレッサ訴訟にありますように、肺がんの治療をしなきゃいけないのに、イレッサを用いたら、アジア系は実は間質性肺炎が多かった。ですから、今では、そういったエビデンスが積み重なって、遺伝子検査をして、遺伝子でそういった異常のない方、いわゆる間質性肺炎を起こしにくい方に限ってイレッサを使うような事案にもなっております。

 科学的知見をいわゆるエビデンスとして蓄積して、それを新たなワクチン行政に反映させるためにも、そしてしっかりとしたリスクコミュニケーションを行うためにも、そういったチームをつくった上で、死体というか、亡くなられた方の死因検索をしっかり科学的にしていって、こういった論文がいっぱい出てくるような、そして、その結果として、ワクチン行政を国民も安心、納得して享受できるような、そういう厚生労働行政にしてほしいと思います。

 質問はあと用意しておりましたが、時間が参りましたので、これで終わりたいと思います。よろしくお願いします。

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 次に、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 本案は、ゲノム医療が個人の身体的な特性及び病状に応じた最適な医療の提供を可能とすることにより国民の健康の保持に大きく寄与するものである一方で、その普及に当たって個人の権利利益の擁護のみならず人の尊厳の保持に関する課題に対応する必要があることに鑑み、良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策を総合的かつ計画的に推進しようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。

 第一に、ゲノム医療施策は、ゲノム医療の研究開発及び提供に係る施策を相互の有機的な連携を図りつつ推進することにより、幅広い医療分野における世界最高水準のゲノム医療を実現し、その恵沢を広く国民が享受できるようにすること等を基本理念として行われなければならないこと。

 第二に、ゲノム医療施策に関する国、地方公共団体、医師等及び研究者等の責務を規定すること。

 第三に、政府は、ゲノム医療施策を実施するため必要な財政上の措置等を講じなければならないこと。

 第四に、政府は、ゲノム医療施策を総合的かつ計画的に推進するための基本計画を策定しなければならないこと。

 第五に、国は、ゲノム医療の研究開発及び提供に係る体制の整備、生命倫理への適切な配慮の確保、ゲノム情報の適正な取扱い及び差別等への適切な対応の確保、医療以外の目的による解析の質の確保等の基本的施策を講ずるものとすること。

 第六に、地方公共団体は、国の施策を勘案し、その地域の状況に応じて、ゲノム医療施策の推進を図るよう努めるものとすること。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付しております草案を良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ林委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 次に、戦没者の遺骨収集の推進に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において御協議をいただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付いたしております。

 その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。

 平成二十八年に制定された戦没者の遺骨収集の推進に関する法律は、平成二十八年度から令和六年度までを戦没者の遺骨収集の推進に関する施策の集中実施期間としております。同期間において、基本計画に基づき現地調査及び遺骨収集が実施されてきましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、関係国への入国が困難であったこと等により、当初の計画どおりの実施は非常に困難な状況となっております。

 本案は、こうした状況に鑑み、集中実施期間を五年間延長し、令和十一年度までとしようとするものであります。

 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。

    ―――――――――――――

 戦没者の遺骨収集の推進に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

三ッ林委員長 お諮りいたします。

 お手元に配付しております草案を戦没者の遺骨収集の推進に関する法律の一部を改正する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ林委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、両法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

三ッ林委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成の総合的な対策に関する件、特にマイナンバー制度等について、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会に連合審査会開会の申入れを行いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長と協議の上決定いたしますので、御了承願います。

 次回は、来る六月七日水曜日午後零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十一分散会


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