衆議院

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第6号 平成28年11月2日(水曜日)

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平成二十八年十一月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 大見  正君 理事 佐藤ゆかり君

   理事 白須賀貴樹君 理事 牧原 秀樹君

   理事 吉川 貴盛君 理事 北神 圭朗君

   理事 近藤 洋介君 理事 高木美智代君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      石川 昭政君   うえの賢一郎君

      小倉 將信君    尾身 朝子君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝沼 栄明君    勝俣 孝明君

      神山 佐市君    神田 憲次君

      塩谷  立君    島田 佳和君

      田畑  毅君    高木 宏壽君

      中川 俊直君    中谷 真一君

      星野 剛士君    三原 朝彦君

      宮崎 政久君    宮路 拓馬君

      村井 英樹君    八木 哲也君

      簗  和生君    山際大志郎君

      大畠 章宏君    落合 貴之君

      篠原  孝君    鈴木 義弘君

      田嶋  要君    中根 康浩君

      福島 伸享君    中野 洋昌君

      藤野 保史君    真島 省三君

      小沢 鋭仁君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   経済産業大臣政務官    中川 俊直君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   平井 興宣君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    吉井  巧君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 開出 英之君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 井上 裕之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     住田 孝之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           星野 岳穂君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           高科  淳君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          柳瀬 唯夫君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     飯田 陽一君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          末松 広行君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          安藤 久佳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            藤木 俊光君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    木村 陽一君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            吉野 恭司君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            高島 竜祐君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           堀家 久靖君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   経済産業委員会専門員   木下 一吉君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     田畑  毅君

  尾身 朝子君     宮路 拓馬君

  神山 佐市君     勝沼 栄明君

  塩谷  立君     神田 憲次君

  白石  徹君     中谷 真一君

  山際大志郎君     村井 英樹君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     神山 佐市君

  神田 憲次君     塩谷  立君

  田畑  毅君     小倉 將信君

  中谷 真一君     青山 周平君

  宮路 拓馬君     尾身 朝子君

  村井 英樹君     山際大志郎君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     白石  徹君

    ―――――――――――――

十一月一日

 割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 割賦販売法の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官平井興宣君、消費者庁審議官吉井巧君、総務省大臣官房審議官開出英之君、法務省大臣官房審議官金子修君、財務省大臣官房審議官井上裕之君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官住田孝之君、経済産業省大臣官房審議官星野岳穂君、経済産業省大臣官房審議官高科淳君、経済産業省経済産業政策局長柳瀬唯夫君、経済産業省通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長飯田陽一君、経済産業省産業技術環境局長末松広行君、経済産業省製造産業局長糟谷敏秀君、経済産業省商務情報政策局長安藤久佳君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長藤木俊光君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史君、中小企業庁次長木村陽一君、中小企業庁事業環境部長吉野恭司君、中小企業庁経営支援部長高島竜祐君、国土交通省大臣官房審議官堀家久靖君及び原子力規制庁原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。穴見陽一君。

穴見委員 自由民主党の穴見陽一でございます。大変久しぶりの登板でございまして、大変緊張しております。

 世耕大臣には、日ごろから大変親しく御指導を受ける仲でございまして、大変うれしく思っておりますと同時に、経営者の側面もお持ちでいらっしゃったということで、経済感覚も非常に豊かな大臣が立たれたということで、経済産業政策が非常に前進するのではないかと高く期待をしておるところでございます。

 本日は、中小企業の政策について、幾つか質問をさせていただければと思っております。

 本年四月に熊本地震が発災をいたしまして、私も大分県の出身でございますので、大分県内もさまざまな中小企業が、特に湯布院を中心に、観光業を中心に大きな被害を受けました。その際、さまざまな中小企業庁また経済産業省の支援、金融支援や、またさまざまな補助金等で救っていただきました。最終的に、九州ふっこう割ということで、先日もちょっと用事があって湯布院の方に行ったんですけれども、震災直後は、生まれて、これまで見たことのないような、死の町のような、誰一人歩いていないという湯布院であったのが、原宿の竹下通りのように、大変なにぎわいが戻っておりまして、本当に心から感謝をしている次第でございます。

 また、ことしは、非常に地震も多くございますけれども、気象も、非常に特異な気象条件のもとで、台風も日本近海で発生したり、また大きい勢力のまま、東北や北海道に上陸をしたりしました。九州は、割と台風の襲来に向けて日ごろからある程度インフラ等の備えもできておるんですけれども、これまでそういった経験のなかった東北や北海道の地域に、非常に大きな台風が直接上陸をするという形で大きな被害をこうむったわけであります。

 とりわけ、北海道や、また岩手県などの中小企業や小規模事業者は、大変深刻な影響を受けて今も苦しんでいらっしゃるわけですけれども、局激等がなかなか使えないというような状況の中で、どのような支援ができるのかということを我々も大変危惧しております。

 これに向けて、先般、大臣より、第二次補正予算を活用して北海道や岩手県などの中小企業、小規模事業者向けの支援について行いたいという旨の発言がございました。その具体的な措置についてお話しいただければと思います。

世耕国務大臣 今御指摘のように、台風十号によって被害を受けられた北海道や岩手県の中小企業あるいは小規模事業者向けの支援に関しては、局激ということでありますので、我が省としては、資金繰り面での支援の拡充などを局激指定に基づいて行ってきたわけであります。

 しかし一方で、被災地からは、金融支援だけではなくて、やはり補助金による支援が欲しいという声も上がっていたのは事実であります。先日は、松村副大臣と井原政務官にそれぞれ現地に入ってもらいまして、いろいろヒアリングなどをやりました。あるいは、実態の把握、ニーズの具体的内容の把握などを行ってきたところであります。その結果、やはり補助金による支援や、あるいはその補助金自体を遡及して適用してほしいというような具体的ニーズが確認をされたところであります。

 そういうことで、今回、二次補正予算を中心として、被害の激しかった局激の四市町、久慈市、岩泉町、宮古市、南富良野町につきましては、特例の措置をとっていきたいというふうに思っております。

 具体的には、小規模事業者の販路開拓を支援する小規模事業者持続化補助金、これを採択するときの採択の加点を行ったりとか、あるいは補助上限額の引き上げを行ったり、あるいは遡及適用を行うというようなことを考えています。また、革新的なサービス開発、試作品開発を支援するものづくり補助金、これの採択の際の加点を行いたい。そして、当初予算を活用した商店街向けの補助金の遡及適用などの柔軟な運用、この三点を措置させていただいて、具体的に被災地で使っていただけるようにしていきたいというふうに思っております。

 そして、やはり、今委員御指摘のように、異常気象等によって大分被害がふえてきております。熊本地震のように本激指定にまで至れば、サプライチェーンが毀損しているということになれば、当然、グループ補助金という補助金が使えるわけでありますけれども、今の制度のままですと、局激指定のときは、やはりこういった補助金の運用で何とか対応していくしかないというのが現状であります。

 そういった中でどうすればいいかということで、経産省の中で新たに研究会を設置いたしました。過去の災害における中小企業者の状況とかそういったものももう一回総括をして、中小・小規模事業者が被害に遭ったときの対応としてどうするか。これは御自身が共済等で事前の備えをしておいていただくことも重要ですし、そういったことをしっかり啓発するということも含めながら、そういう中で、国がどういう支援ができるのかということを今後の災害対策の、事前の国としての備えとしてしっかり検討をしていきたいというふうに思っております。

穴見委員 大臣、ありがとうございます。

 本当に異常気象もふえてございますし、そういった外部からの予想できないショックが起こったときに、どうしても小規模また中小企業は経営体力が非常に脆弱でございますので、そういった国の支援をぜひ今後に向けて充実を図っていただきたいと思います。

 そして、きょうは、ちょっと中小企業の、また小規模事業者が今後経営していく中で、今、事業承継等々、また事業再生についてもさまざま充実が図られているわけでありますけれども、その中で最も厳しい局面について少し議論をさせていただければと思っております。

 今、産業の新陳代謝も非常にスピードアップをしてきておりまして、事業承継といっても、やはり数十年前にスタートしたビジネスモデルが今や通用しなくなってきている。少子高齢化または東京の一極集中化が進む中で、特に地方では、産業というか業種というか、そういったマーケットそのものが非常にシュリンクしてきて、なかなか再生や、また承継ということでは片づかない、そういう問題も多々発生しているわけであります。そういう中で、最終的には、残念ながら解散であるとかまたは破産という道を選択せざるを得ない、そういう事業者も生まれてくるわけであります。

 例えば、事業承継する際においても、そういった親族が過去に積み重ねてきたさまざまな負債であるとかさまざまなしがらみ、そういったものを債権者としては解消してほしいという思いはあるんでしょうけれども、新しく事業を始めようかという人にとって、そういう十字架を背負ったまま承継をしていくということのデメリットと、真っさらな状態で事業をスタートするということを比較したときに、なかなか事業承継というのも難しい面があるのではないかというふうに思います。

 また、解散であるとか破産というものを見ていきますと、残念ながら、今、中小企業や小規模事業者というのは、個人の債務保証のもとに借り入れを起こし、それで事業をしているという事実がありまして、そうしますと、破産すると、自己破算と同じように、経営者は九十九万円と家財道具しか手元に残らない。本当にほうほうのていで放り出されるというような姿になってしまっているわけであります。

 やはり経営者として、それぞれの地域の中で顔役をやったりとか、またお子さん、家族もそれなりの近隣とのつき合いもある中で、そういったところから、一転、そういう非常に惨めなところに放り出されてしまうというのが現状でございます。中には、それを苦にして、人生の選択を厳しい方向に切らざるを得ない方も出てきたりもしてございます。

 そういう意味では、自己破産というものと同等に、経営者といっても、もちろん自業自得でそういう道に行ってしまうということもあるかもしれませんけれども、多くは、やはり世の中の移り変わりであるとか、またはリーマン・ショックのような外的なショックであるとか、そういうことを通じて経営の窮地に追い込まれるという方々が大勢であろうと思います。そういう、本当に一生懸命やってきた方々が、人生の局面でそういうところまで追い込まれていいのかな。または、そういった姿を見た人たちが、それだけリスクの多い経営者という道に進んでいこうと思うのかなという心配もございます。

 海外では、これはみちのりホールディングスとかをやっている冨山さんの言い分ですけれども、アメリカであれば、倒産をするといっても、それは事業の整理であって、個人の持ち物等は、例えば、今は経営者保証ガイドラインでも華美でない自宅は保全されますけれども、華美であったらこれは整理されるかもしれない、アメリカであれば、家を何軒持っていてもそれは保全されるというような言い分であります。

 先日、レクを受けまして、外国の事例についてもお尋ねしたんですけれども、調査そのものをしたためしがない、データがないということで御返答いただけなかったのでありますけれども、やはり日本の国内の事情だけ考えても、そういった経営が破綻するというときにも、それなりに、やはり経営者そのものは日本国民の中でも非常に数少ない貴重な人材であって、そういう力を持った方々が再チャレンジをしていくことが日本の経済界そのものを活性化することにも通じていくんだろうと思います。

 そういう意味では、破綻をした際にも再起が図れる程度の、何とか経営者を守るための措置がとれないかという問題意識の中で質問をさせていただきたいと思っております。

 経営者保証ガイドラインについてなんです。

 これも、今金融機関の方でできるだけこういうガイドラインに沿った形での融資ということでありますけれども、それはなかなか進んでおりませんで、現在一一%程度というふうに聞いております。

 その経営者保証ガイドラインの中でも、華美でない自宅が保全される、そして当面の生活費が保障されるということであるんですけれども、この経営者保証ガイドラインがどうしてなかなか進んでいかないのか。そして、華美でないというところが非常にわかりにくい。また、当面の生活費というところもちょっとわかりにくい面がございます。そのあたりを少し説明していただければと思っております。

木村政府参考人 まず、経営者保証ガイドラインでございます。

 まず、民間金融機関における活用実績は、先生が御指摘のとおり、例えば新規融資に占めます経営者保証に依存しない融資割合というのは、大体件数ベースで一二%ぐらいということでございまして、また、メーン行としてガイドラインに基づく保証債務整理を成立させる、実際に窮境に陥ったときに保証債務をどうするかという最終的な取り扱いの部分でございますけれども、これが二百六件というデータを持っております。

 確かに、御指摘のとおり、最終的に窮境に陥ったときに、自宅の取り扱いでございますとか、あるいは生活費としてどの程度残すべきかというのは、これは曖昧なところは確かにあるのかもしれませんけれども、経営者保証ガイドライン自体は、かなりの歳月をかけて、金融機関と事業者団体が相当認識のすり合わせもしてできたものでございます。

 引き続き、その運用を透明化あるいは徹底していくということを私どもとしても図ってまいりたいというふうに思いますけれども、まずはこれを周知し、事例を積み重ねる中で、できるだけわかりやすいラインというものを見定めていく必要があるのかなというふうに思ってございます。

穴見委員 ありがとうございます。

 ガイドラインそのものの適用も拡大していただきたいのと同時に、またガイドラインも、確かに、例えば全銀協であるとか、または日商というところの話し合いの中で、これ以上条件を厳しくすれば貸し出しそのものが細るというような危惧もあるという話であります。

 ただ、金融が、これは消費者金融の場合もそうでしたけれども、借りやす過ぎるということがかえって経営を悪化させるというか、堕落させる面もあろうかと思います。しっかりとした経営指導のもとに、本当に必要な事業資金と、そして個人の生活を守るための資産というものを切り分けた形で、しっかりと経営者がみずからの生活を破壊しないような形を守っていけるような、そういう金融の指導、また貸し金というものも進めていっていただきたいと思っているわけであります。

 それとまた、先ほどの冨山さんの言い分でありますけれども、特に日本の場合は、非常に退出がしにくい。つまり、破産であるとか整理というものの手続が法的なものによらねばできない。私的整理を行おうと思っても、全員がこれを承諾しないと成立しない。成立させようとしても、後で裁判等に訴えられるとそのスキームを破壊されてしまう。そのようなことがあって、実質的には法的整理に進むしかないわけでありますけれども、その法的整理の手続のハードルが高かったり、また時間がかかる。こういった問題はやはり解消していただく。

 または、私的整理であれば、例えば債権者の七、八割方の方々の合意の得られる整理案というものをまとめることはできるんだけれども、法的整理に進むとそれもふいにされてしまうということでございます。ぜひ、さまざまなこれまでの実質的な取引関係や関係性に基づいて、例えば、事業再生ADR等で私的整理案ができ上がって、七、八割方の、多くの、大勢の債権者がそれを納得しているという状況があれば、法的整理に進んだ段階でも、裁判所の方にそれを重視していただいて再建案をつくっていただく、そういうふうな取り組みができないのかということをお尋ねしたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘の私的整理は、これは債権者と債務者が話し合いの上で、どの程度の債権の減免をするかということでございます。もちろん、債権者にとっては大きな痛みを伴うことですので、合意ということが前提になります。ただ、大方の合意がある中で、全員合意に至らないがために頓挫してしまうということがあって、そうすると法的な手続に進まざるを得ない、先生の御指摘のとおりです。

 今、政府の方としましても、私的整理で検討されてきたことを法的整理の中で何らか反映させることができないのかということは課題として認識しております。事の性質上、法的整理と私的整理は性質を異にするので、当然に連続するというわけにはいかないのですけれども、私的整理手続が先行していた場合には、それが成立しなかったときも、それに引き続く法的手続の中で何らかの形で考慮するということができないかということにつきましては、平成二十八年六月二日に閣議決定されました「日本再興戦略」改訂二〇一六におきましても、私的整理手続における反対債権者がある場合にもなお事業再生を迅速かつ円滑に行えるようにするために何らかの検討ができないかという問題意識が示されております。

 法務省としても、関係省庁とともに、この再興戦略に掲げられた事項について必要な検討をしていきたい、協力していきたいというふうに考えております。

穴見委員 ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 あわせて、清算手続を進めていく際に、地方自治体から保証協会に対して損失補償が行われる債権が含まれる場合、保証協会が代位弁済を実施して求償権を放棄するためには、個別に地方議会の議決が必要になるんですけれども、この際に、社名が公表されたり、またタイムリーな手続に至らない、阻害をするというような問題があって、なかなかそういった整理そのものを進めていくことを困難にしているということで、既に各省庁から地方自治体に対して、この条例化についての働きかけ、つまり地方議会の議決ではなく、首長による決裁でこれが可能になるように条例の制定をお願いしているということでありますが、なかなか遅々として進まないということでございます。

 これをさらに促進するための何らかの法的措置なりがとれないのかということをお伺いしたいと思います。

木村政府参考人 保証協会が保有する求償権に関しまして、地方自治体からの損失補填を受けるものが含まれております場合には、保証協会がその債権を放棄するために地方議会の議決が必要となるというのは御指摘のとおりでございます。

 一部の地方自治体におきましては、議決を経なくても首長の権限で債権の放棄を認める条例が整備されてございます。確かに、こういった条例を制定していただくということは、私どもにとっても非常にありがたいことではございます。

 他方、御指摘のように、地方議会の議決を不要とすべく国が法的措置を講ずるということになりますと、これは地方自治に対する介入といいますか、あるいは地方自治を支える地方議会の議決の位置づけそのものにかかわってくる問題でございますので、そこは慎重な判断が必要になるだろうというふうに思っております。したがいまして、条例が未整備の自治体に対して働きかけをしっかり行っていくということがまずは重要かなというふうに思っております。

 これも、御指摘いただきましたとおり、過去二回、文書でお願いをしてございます。その結果、もちろん、それが端的に、それと因果関係があってやっていただいたのかどうかはちょっとわかりませんけれども、実際にかなり進んできたという実績もございまして、直近ですと、またことしの八月、九月ごろに担当の管理職が各地を回りまして、そこで丁寧な働きかけをしてまいっております。

 まず、こういったことを続けまして、そうした条例が早期に制定されるという働きかけを強めてまいりたいというふうに思ってございます。

穴見委員 ぜひ、これまで以上の強い働きかけをお願いしたいと思います。

 それと、あと、そういった整理を困難にしている日本的な特徴がございまして、実は買掛金等の支払いサイトが、または下請代金等も含まれますけれども、非常に長い。例えば、アメリカであれば、三カ月を超えれば不良債権として取り扱われるということでありますけれども、日本の場合は、下請法によれば六十日以内の決裁。だけれども、それを手形でやっている。手形は百二十日以内、それは割引が怪しくなるかどうかのラインが百二十日ということでありますけれども、百二十日を超えた手形もまだ五%以上あるというような現状があるそうであります。結果として、十カ月というような非常に長い支払いサイトが実際に動いている。

 または、買掛金等の普通の商行為に関してはそういった取り決めはない、そして、下請法で支払われている慣行にどちらかというと影響される形で、そういった買掛金のサイトも非常に長いというような特徴があって、これが新規事業者の参入を妨げたり、または、そういった資金繰りのショート等によって破綻が起きた場合の連鎖倒産等の影響が非常に広範に広がりやすいというような産業界の特徴を持っている。

 また、整理の段階でも、金融債権と、またはそういった取引債権が極大、取引債権の方が金融債権よりも非常に大きくなるというような問題があって、整理をする際も非常に妨げになるというような現実もございます。

 そういう意味において、下請法によるコントロールしかきかないんでしょうけれども、そのあたりの取引の慣行を改めるために何か手を打っているのかということを問いたいと思います。

木村政府参考人 まず、下請代金の支払い期日でございますけれども、御指摘のとおり、受領の日から起算して六十日以内に支払うこと、その範囲でできるだけ短い期間内に払うことということが下請代金法に定められてございます。

 この支払い期日における支払い代金の支払い自身が手形で支払われるケースというのが存在してございまして、割り引くことで支払い期日内に現金化できるといたしましても、確かに、手形を用いることで、実質的にこういった期日の規制が潜脱されてしまうというようなことがないようにしなくちゃならないというふうに思っております。

 現金払いの比率を増加させること、それから手形サイトの短縮化、あるいは割引料負担を下請事業者に押しつけないといったようなことについて、今後、その対策を強化していきたい。具体的には、そういったものを含みます通達を、公正取引委員会と共同で年内を目途に発出をしたいなというふうに思ってございます。

 もう一点、御指摘の下請取引以外の取引についての支払い条件でございますけれども、これは当事者同士が自由な協議で定めるというのが原則であろうというふうに思っておりまして、一律になかなか政府として介入しにくいところはございます。他方、一般的には、発注者が優越的な地位を利用して、例えば一方的に不利な支払い条件を押しつけるといったようなことがあってはならないだろうというふうにも思っております。

 この辺の取り扱いは、公正取引委員会の所管でございますので、明確なお答えはちょっと難しいんですけれども、そういったことも含めて、中小企業の資金繰りに細心の注意を今後も払ってまいりたいというふうに考えてございます。

穴見委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 そして、時間が迫っておりますので、最後に、中小企業再生支援協議会等が地域のリスケ等の支援を行っておりますし、また、よろず支援機関等もさまざまな中小企業の問題に対応しておりますけれども、とにかくパワーが非常に弱い。人数的にも非常に少ないし、数十万社、数百万社に上る企業を相手にするには余りにもボリュームが小さ過ぎるという問題がございます。

 民間の資金や、または能力、機能等もうまく活用したスキームをつくっていただいて、そういった再生であるとか、または、最終的には整理ということにも進むかもしれませんけれども、そういうところの相談支援体制をぜひ強化していただきたい。

 と同時に、やはり経営者はお山の大将で、なかなか勉強しないんですけれども、お金に困ったときだけは、本当にわらにもすがる気持ちで一生懸命になるものであります。そういう機会を捉えて、しっかりと座学の勉強もしていただいて、経営を学んでいただく、そういうよすがに金融機関が深く関与していく。特に信金、信組は、そういった比較的初歩的な経営技術を身につけるべき経営者が非常に頼っているわけでありますから、そういうところの返済率というかデフォルトのリスクを下げていくためにも、よろず支援機関、また中小企業大学校も全国に九カ所しかありませんし、そういった経営者を指導、育成する機関というものを、民間と協力しながら、ぜひ構築していただきたいというふうに願っております。

 きょうは、大臣にこの問題点について認識していただきたいという思いで参考人と議論をさせていただきましたけれども、最後に、大臣の所感をいただければありがたいなと思います。

世耕国務大臣 中小企業再生支援協議会については、なかなか人数をばんとふやすというわけには、これは一朝一夕、難しいわけでありますので、なるべく成功事例を共有するとか、業務の効率化をしっかり進めることで、できるだけ多くの案件に携われるようにしていきたいというふうに思っております。

 きょう委員から御指摘のあった廃業の問題というのは非常に大きな問題だと思います。成長戦略の根幹の一つとして、やはり産業の新陳代謝を進めていかなきゃいけない。そのためには開業率とともに廃業率もある程度大きくしていかなきゃいけないわけですが、まだまだ、これはOECD諸国に比べて、日本は開業率も廃業率も低い状況にあるわけであります。

 きょう委員が御指摘になったいろいろなファクターが、やはりなかなか日本で廃業が進まない、どうしても地域での評判とかあるいは全財産とられちゃうとか、そういうことがあって、最後の最後までしがみついて、本当に悲惨なケースで、もう破産するしかないというような状況がふえている、これは本当によろしくない事態だと思います。

 委員が海外の状況を質問されたら答えが出てこなかったということでありますので、至急、海外の状況も、廃業に関する仕組みがどういうふうになっているかというのは勉強したいというふうに思います。

穴見委員 大臣、ありがとうございました。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、中野洋昌君。

中野委員 公明党の中野洋昌でございます。

 通告に従いまして質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 私の地元の選挙区は兵庫県の尼崎市というところでございまして、もともとが阪神工業地帯の中心のところだったということもありまして、やはり今でも製造業など中小企業の方が大変多い、そういう地域柄でございます。

 この数年間、地元に帰ってさまざまな中小企業の方にお話を伺って、やはり中小企業が元気になっていかないと日本の力強い経済というものは取り戻せないな、こういう思いを強くしているわけでございますけれども、なかなか元気になっていかない、こういう状況も感じておりまして、やはり中小企業に対する支援策をどうやっていくのかというのは大変に大事だな、こういう思いを強くしております。

 そういった観点で、きょうは、中小企業の支援策ということを中心に質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 ここしばらく、やはり大企業に比べて中小企業の業況の改善はおくれている、こういう指摘はあるわけでございます。数字を見ましたところ、中小企業においても、二〇一五年の経常利益を見ますと、全体で約五・二兆円ということでございました。これは、大企業に比べて確かにおくれてはおりますけれども、中小企業についてもかなり高い、過去最高に近い、そういう水準だというデータも見せていただきまして、間違いなく改善傾向にはあるのかなという思いはございます。

 しかし、その改善のあり方というのがやはり大企業ほど強くない。ですので、今こそここで生産性向上に向けた取り組みというのをしっかりやっていかないといけない、こういうことで、私どもも、本年、中小企業等経営強化法、こういう法律もつくったわけでございます。こうして、中小企業の生産性を向上させていこう、そういう投資をしっかりと前向きにしていただこう、そのためにいろいろな支援措置を講じていこう、こういう仕組みをつくったわけでございます。

 ことしの七月に施行された、こういうことでありますけれども、やはり現場に行くと、こうした政府全体の動きについて、そんな動きがあるんですかということで、余り知らないという声もまだまだ聞くわけでございます。やはり、こうして政府としてさまざまな取り組みをやっているこの支援措置というものにできるだけ多くの方に取り組んでいただく必要があるんじゃないか、こういう思いがございます。

 この経営強化法の今の施行の状況というか、まだ七月から余り間はないわけでございますけれども、どの程度この支援というものを今活用していただいているのかということについて、まずは現状をちょっと教えていただければというふうに思います。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御紹介がありましたとおり、中小企業等経営強化法が七月に施行をされております。

 この法律では、中小企業等の生産性向上策をまとめた事業分野別指針を国が策定しまして、この指針に基づく計画の認定を受けた中小企業等を支援することとしております。

 これまで製造業やサービス業十二業種について指針を策定しておりまして、運用しているところでございます。認定計画に従って行われる設備投資に対しては、赤字法人にも活用可能な固定資産税の減税が措置されておりますし、資金繰りの支援などの措置を講じているところでございます。

 その認定の方でございますけれども、九月の末現在で千六百二十一件となっております。これまでのところ、法施行はそういう意味では順調であるというふうに考えておりますが、全国にはこの制度を活用いただきたい多数の中小企業がございますので、幅広い周知、広報に引き続き取り組んでいるところでございます。

 以上でございます。

中野委員 今、各業種別にさまざまな経営の指針というものをつくっていただいているということで、徐々に件数も着実に伸びているという御報告もいただきました。

 やはり、なるべく多くの業種そして多くの方に使っていただく、そうすることで初めて中小企業の生産性を上げていくということだと思います。恐らく、業種によってはガイドラインというか指針そのものもこれからというところもございますし、しっかりと、できた仕組みでなるべく多くの方が支援を得られるようにということで、ぜひ万全を期していただきたいと思います。

 毎回、経済産業、特に中小企業の関係でいろいろな支援策というものを国の方で講じるわけでございますけれども、どうやって現場にアプローチをしていくかということがいつも課題というか、大変御苦労していただきながらやっていただいているわけでございます。

 もちろん、各種団体、商工会議所であるとか商工会であるとかさまざまなところがこういったものを説明していただく、あるいは、経営指導員であるとか認定支援機関であるとか、どうやって現場の生産力向上というか改善というか、そういうものを後押しするのかというのは、その時々に応じていろいろな仕組みをつくっているわけでございますけれども、それでも一番最前線のところにはなかなか届いていかないという思いも持っていることも事実でございます。

 例えば金融機関であるとか、例えば税理士、税務の関係であるとか、本当にさまざまなチャンネルを総動員してしっかりとアプローチを、特に中小企業等経営強化法ということで、小規模事業者も含めてありとあらゆるところにしっかりと網をかけていこう、こういうことでございますので、そういう総動員をしてアプローチをしていただきたい、こういうことをぜひお願いしたいと思うんですけれども、これについても答弁いただければと思います。

吉野政府参考人 この法律でございますけれども、中小企業の皆様の本業そのものの経営力を強化する、生産性を向上させていくということで、ぜひとも裾野を広く利用いただきたいと思っております。

 そのために広報にも取り組んできておりますけれども、具体的に申し上げますと、まず、中小企業者向けに全国各地で八十七回の説明会を実施しまして、七千の事業者に参加をいただきました。

 それから、御指摘ありました、中小企業の方々にとって税理士の皆さんは非常に身近であるということで、全国の十五カ所の税理士会の会合でも説明をさせていただきまして、千二百名の税理士の方々が御参加をいただいたということでございます。

 それから、各地の金融機関を初めとした支援機関から、これは要請があれば説明会に赴くということで、これも九十四回、六千百名の方々に参加をいただいております。

 それから、やはりこの制度を身近に感じていただくという意味におきましては、具体的な事例、特に先進的な事例を御紹介することも大事だということで、私ども中小企業庁のメールマガジンに八万人登録をいただいているんですが、これによりまして、先進事例の配信も開始をしたところでございます。

 この制度によりまして、可能な限り多くの中小企業の皆様が収益力を上げ、それから生産性を向上させるための計画を策定されまして、これが実現されていくことを後押ししたいと思っております。引き続き、この法律の周知、広報に全力で取り組むとともに、さらなる支援の強化に努めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

中野委員 今国会で成立をしました補正予算、あるいは来年度の予算、こうしたものにも中小企業を後押しする支援策というものがさまざま入っているわけでございます。

 例えば、革新的なものづくり、IT導入、こうしたものに対して支援を行う地域未来投資促進事業というものがございまして、事業者の皆様には、ものづくり補助金というのが名前としては大変に知られていると思いますけれども、いろいろな団体にお伺いをしても、地元に帰っても、やはりこうした予算に対する御要望、ニーズというものが大変に強いな、これを非常に感じておるわけでございます。

 しかし、限られた予算の中でということでございますので、どうしても、準備する予算に対してこれを使いたいというニーズが非常に多いということでございまして、限られた予算の中でどうしても支援がなされないケースも出てくるということで、地元でよくお伺いをするのが、今まで補助金を受けてきたようなところは引き続きそういう支援が得られるケースが多いんだけれども、特に、小さなところとか、新しいことをやろうという新規のところとか、こういうところにどうしても支援というものがなかなか届かないケースが多いんじゃないか、なるべく幅広い支援が行えるように、限られた予算の枠内ということでございますので、そういった運用もしっかり工夫をして、なるべく多くの人が受けられるようにしてほしい、こういうお声もあるわけでございます。

 予算の執行、また運用に関して、ぜひこうした工夫というのもしていただきたいと思いますけれども、これについても御答弁いただきたいと思います。

高島政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘いただきましたとおり、小さな事業者でありますとか、あるいは新規の事業者の方、中小企業、小規模事業者の方々に幅広く支援策を使いやすくしていくということは大変重要なことであるというふうに考えております。

 ものづくり補助金の御指摘をいただきましたが、ものづくり補助金におきましては、本年七月の最新の公募要領では、各記載欄にどのような事項を記載すればよいか、審査項目との対応関係がわかるような補足説明を追加いたしまして、事業者の方から見てわかりやすい公募要領となるよう、工夫をしてきたところでございます。

 また、申請書類の簡素化というのも図っておりまして、必須記載事項は、申請者情報、事業内容、補助経費の明細書の原則三枚以内におさまるように配慮してきているところでございます。

 加えまして、ものづくり補助金の申請に当たりましては、地域の金融機関や、今委員がおっしゃられたような税理士など、認定経営革新等支援機関と連携をすることにしておりまして、これらの認定支援機関が、申請書の事業計画の策定に当たりましては、きめ細かな指導助言を行うことといたしております。

 またさらに、昨年度二十七年度補正予算からは、小規模事業者の企業規模にも配慮した類型を設けまして、小規模事業者の利用を促しておりまして、小規模事業者の方の利用率も上がってきているところでございます。

 これらの工夫によりまして、ふなれな事業者の方でも採択できるよう、引き続き工夫をしてまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 せっかく予算措置として準備をしているわけで、非常に現場のニーズも高いというものでございますので、それが届いていくようにという最後の運用の部分でございますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 続きまして、資金繰りの関係で質問をさせていただきます。

 先ほどの御質問でも、経営者保証のガイドラインというのがテーマとして挙がっておりましたけれども、今まで資金繰りのお話を伺うと、安定しているところには、いろいろなところがぜひ借りてくださいということで、いろいろな声が来るんだけれども、新しいところ、あるいは新たな事業を始めるようなケース、こうしたケースでは、個人保証を求められたりとかして、どうしても経営者に対する負担というのが非常に強いというお声もございまして、こうしたさまざまな声を受けて、経営者保証のガイドラインをしっかり決めて、事業性というものがしっかり評価できるように、こういうこともずっと続けておるわけでございます。

 先日、事業者の団体にお伺いをしたところ、新規の融資という点では個人保証というものについては徐々に外れつつある、こういう動きもある、こういうお声もいただいておりまして、やはりこうした取り組みをもっと進めていくことが大事であるというふうに思います。

 そして、新しい事業を始める、新しいチャレンジをする、こういうものに対してしっかりと事業性が評価されて資金がまた供給をされていく、こうしたものが後押しをされていかないと、なかなか生産性の向上、こうしたものには結びついていかないのではないか、こういう思いでございまして、今やっている取り組みというのをもっと後押しする必要があるというふうに思います。これについても答弁いただければと思います。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃられましたように、中小企業の皆様の新しいチャレンジに対して民間の金融機関が中小企業に寄り添った金融をしていく、これは大事なポイントかというふうに思っております。

 加えまして、政府系金融機関の方もリスクマネーをしっかりと供給していくといったところも重要なポイントかと思っております。そうした公的金融が民間金融機関をリードする、呼び水効果になるといったところをしっかりと発揮できるようにしていきたいと思っております。

 日本政策金融公庫におきましては、おっしゃられましたチャレンジ、特に創業、新事業展開といった分野を中心に民間金融機関との協調融資を積極的に行ってきているということで、昨年度一年間で一万五千件、額にして六千億円を超える融資を行ってきておりまして、リスクの高い案件への融資を展開する民間金融機関を後押ししていくということでございます。

 それからさらに、今般の補正予算を活用いたしまして、先ほど触れました中小企業等経営強化法の認定を受けた中小企業向けの新たな融資制度も新設をしておりまして、民間金融機関が長期でのリスクがあるということで対応できない部分に関して公的金融で補完をするといったこともしているところでございます。

 御指摘のありました、チャレンジに当たりまして個人保証を求めないことが非常に大事だということでございますけれども、この点に関しましては、政府系金融機関においても取り組みを進めてきているということでございます。

 政府系で申しますと、個人保証によらない融資でございますが、本ガイドラインが運用開始されましたのは二十六年の二月でございますが、その当時には、新規融資の一五%、金額では二二%でありましたものが、直近、平成二十八年度の上半期、四月―九月で申しますと、件数にして三三%、金額にして五一%と、この割合は着実に増加をしてきているところでございます。

 民間の金融機関におきましても、保証をとらない融資がふえてきているということも聞いております。

 こうした取り組みを通じまして、今後とも、中小企業の創業や新たな事業展開をしっかりと支援してまいりたいと思っております。

中野委員 少し質問の順番が前後するんですけれども、下請の取引の適正化についてもお伺いをしたいというふうに思います。

 この夏に世耕大臣のところに党の部会で御要望に伺わせていただいたときにも、私から特に大臣にお願いを申し上げたいと言いましたのがこの点でございまして、そのときにはたしか大臣も、これは官邸にいらっしゃったときからずっと取り組まれていることだということで、大変に力強いお言葉をいただきまして、非常に力強い思いをした、こういうことがございました。

 とにかく中小企業の関係でいいますと、経済の好循環のためには元請がもうかるだけではなくて、やはり下請のさまざまな中小企業にも取引というものの適正化をしていかないといけない、こういう問題意識で政府として進められているわけでございます。

 現在、ヒアリングであるとか精力的に取り組みを行っていただいておりまして、例えば金型、こういう業界だと、古い金型を保管する、このコストが今下請の方に押しつけられているんじゃないか、こういう声をいただいて、こういうものはルール違反なんだ、こういうことに対して厳格な運用を行っていこう、こういうことも進めております。あるいは、今、手形の支払いが多い、こういうものも現金払いの原則をしっかりお願いしていこう、こういういろいろなお声を伺って一つ一つ取引を適正化していこう、こういう取り組みをまさに進めている。ルールの改正であるとかいろいろなものも進めていこう、こういうことでございます。

 私、大変大事なことは何かといいますと、こうしたルールを改正するというのは確かに大事なんでございますけれども、この改正したルールをやはり元請の方であるとか親事業者、こういうところにこういうふうにルールが変わったということをやはり周知徹底していく、あるいは、全体的な世の中の機運としてそういうものを醸成していく、こういうことがこれから大事になってくるんじゃないかと思っております。単年度の取り組みで終わらせるのではなくて、こうした働きかけをずっと続けていく、やはり継続してやっていく、これが非常にこれから大事になってくるんじゃないか、こういうふうに思います。

 この下請取引の適正化の点、今後の取り組みの方向性、こういうものについて大臣にぜひ御答弁いただきたいと思います。よろしくお願いします。

世耕国務大臣 今委員御指摘のように、この問題は、私、官房副長官時代から、アベノミクスを全国津々浦々の中小企業、零細事業者にしっかりと届けていくためには、やはり下請取引の適正化をやらなきゃいけないという強い思いでやってまいりました。また、公明党さんにも、この問題には山口代表を初め非常に熱心に取り組んでいただいて、背中を押していただいているというふうに思っています。

 もともとこの取り組みのやり方は、発注側の大企業とそして下請側の中小企業、この両方に対して徹底的なアンケート調査とかヒアリングを行う、それも業界別に行ったり地域別に行ったりいろいろな形でやって、そして大企業側には、ちゃんと下請取引の改善をやってくれていますかと。こういうことをやっていますという答えが返ってくる。でも一方で、下請の中小企業の方からは、いや、自分たちはまだこういうことで困っていると。

 そうすると、その声を我々が間に入って発注元側に、まだおたくの業界では下請からこういう声が出ていますよ、こういう取引慣行があると言われていますよ、まだまだ直すべきところはあるんじゃないですかと。そういうことをやって問題点をあぶり出して、サプライチェーンを抱える大企業に行動を変えてもらう、ここが今回の取り組みの一番のポイントだというふうに思っています。

 それで、問題点があぶり出されてきたことを受けて、公取も動いてくれまして、下請法の運用基準の改正ということになりました。ここではやってはいけない実例というのがしっかり出てきますので、大企業側もはっきり自覚ができるというようになります。

 経済産業省でも、下請振興法の振興基準というものの見直しをやって、発注側に対して下請取引の適正化に協力をしてもらうということになりました。

 また、各業界にも、私、就任以降、全部お訪ねをして要請しております。特に、大きなサプライチェーンを抱えている自動車ですとか、電機・情報通信機器、繊維、こういった五業種十団体には、自主行動計画を年内には大筋を決めて、年度内にはきちっと策定するというお約束をいただきました。これは年度内というのが非常に重要でして、大体、各業界、年度初めに単価というのは決まりますから、しっかり年度内にこの行動基準というのを策定してもらうというのも重要だというふうに思っています。

 委員の御指摘はまさに私も同じ思いでして、運用基準を決めました、自主行動計画をやってくれました、よし、これでいいやではなくて、これからもしつこくやっていきたいと思います。中小企業の現場の声を特に聞いていって、どうですか、状況はよくなりましたかというヒアリングを頻繁に行って、まだ変わっていないというようなこと、あるいは新たにこういう問題が出てきたということがあった場合には、また我々がしっかり動いて、そういうところも改善をしていく、フォローアップをしていくということを粘り強くやっていきたいというふうに思っております。

中野委員 ありがとうございます。

 ぜひ、大臣のリーダーシップで引き続きこれを進めていただきたい、このようにお願いを申し上げます。

 業種によってさまざま状況があるというふうにも思います。経済産業省の所管の業種という意味では大臣がさまざま動いていただけると思うんですけれども、地元でよく聞く話ですと、他省庁の所管で、例えば運送業とかは、いわゆる元請、下請ということだけではなくて、荷主と運送事業者、こういう関係でも改善をお願いしたいということもお願いをされております。

 しばらく、賃金を上昇させようということで、特に大手の例えば製造業、こういうところが賃金を上昇させよう、こういう動きをやっていたときも、地元の運送事業者の方からは、かといって、では運送料金をアップさせてくれるかというと、決してそんなことはなくて、むしろ、どちらかというとカットを求められるような、大変厳しい状況に言われたこともあった、こういうことも伺ったこともございます。

 この業種別の取り組みもしっかり進めていく必要があるというふうに思いますけれども、きょうは国土交通省に来ていただいておりますので、例えば、こうした運送業について、この下請の取引の適正化、こういうものを今後どのように進めるのか、これについてぜひお伺いをしたいというふうに思います。

堀家政府参考人 お答え申し上げます。

 トラック運送事業者は、委員御指摘のように、荷主等に比べて立場が弱く、適正な取引条件が十分に確保されていない面がありますことから、荷主等の協力も得ながら、その取引条件の改善を図ることが重要であると認識をしております。

 国土交通省といたしましては、まず、トラック運送事業者の取引実態を把握しますため、官邸に設置していただきました下請等中小企業の取引条件改善に関する関係府省等連絡会議の枠組みの中で、本年二月にはトラック運送事業者に対する調査を、また、本年七月から八月にかけましてトラック運送事業者及び荷主企業に対する大企業ヒアリングを実施したところでございます。

 これらの調査の結果明らかになりました課題を踏まえまして、具体の取り組みとして、独占禁止法、下請法との関係において問題となり得る行為などを示した事例集、あるいは価格交渉ハンドブックを作成し配布して啓発を実施するための予算を平成二十八年度補正予算で確保いたしました。

 また、公正取引委員会による、荷主と物流事業者との取引の公正化を図ることを目的とした、いわゆる物流特殊指定の調査の拡充にも協力をしたところでございます。

 今後とも、関係省庁とも連携の上、荷主等への働きかけも含めまして、具体の方策を検討し、実施してまいりたいと考えております。

中野委員 ありがとうございます。

 中小企業の支援という意味では、こうした生産性の向上の取り組み、あるいは下請取引の適正化、こういうさまざまな取り組みをこれからも進める必要があるというふうに感じております。我々としても、しっかり引き続き要望してまいりたいと思います。ぜひ取り組みを進めていただくことをお願い申し上げます。

 中小企業の後押しという意味で、現在、TPPの協定、これも審議中でございますけれども、特に製造業など、中小企業のさまざまな団体からも、この早期の批准によってビジネスチャンスが生まれる、こういうお声もいただいているわけでございます。

 現在輸出を行っている事業者の方というのは、どういうメリットがあるのか、こういうのは非常にわかりやすいわけでございますけれども、他方で、今輸出を行っていない、こういう中小企業の経営者にとっては、なかなか、新しいチャンスだといっても、そのメリットがわからないのではないかという思いもございます。そういう意味では、成長する分野に輸出を促進していく、新しいビジネスを開拓していく、これも中小企業にとっては大変に大事なことであるというふうに思います。

 今、新輸出大国コンソーシアムということで、輸出の支援というものについては大変に力を入れている段階であるというふうに思いますけれども、やはり今まで余り輸出を考えていない、こういう事業者に対して新しい取り組みを後押しするというのは、それもかなり周知が大変だなというふうにも思っております。

 今までより、より能動的なアプローチで輸出支援というものを行っていく必要がある、このように感じておりますけれども、今後の輸出の支援という取り組みについても答弁をいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、約六千の中小企業の方が輸出を行っておられますけれども、先生御指摘のように、輸出をまだ行っていない中小企業の四割の方がぜひ海外展開をしたいとおっしゃっております。

 他方で、輸出されていない方は課題も抱えておられまして、パートナーをどうやって探したらいいか、それから、海外の人材が不足している、それから、そもそもどうやって海外展開をするのか、そういう御相談をいただいております。

 先生御指摘いただきました新輸出大国コンソーシアムをことしの二月に立ち上げまして、専門家による海外事業計画の策定、それから現地での商談のサポートなど、きめ細かなハンズオンの支援を既に始めております。現在、二千四社の中小企業の方のお申し込みをいただいております。

 それから、御支援いただく方のことでございますけれども、全国各地の商工会議所、商工会、それから地域の金融機関、九百七十五の支援機関に御参加をいただいておりまして、身近な相談窓口に御相談をいただければ、ジェトロの窓口につないで専門家を御紹介するということでございます。

 周知も含めて、しっかりとやっていきたいと思います。

中野委員 最後に、少しテーマはかわるんですけれども、商店街の活性化というものについてもお伺いをしたいと思います。

 と申しますのも、私の地元がかなり多くの商店街がある地域でございまして、地方の商店街というのは大変に疲弊をしている、この状況というのは近年そんなに改善をしていないわけでございますので、毎回、経産委員会で取り上げさせていただいているわけでございます。

 いろいろな消費の喚起をしてほしい、こういうお声も強いのでございますけれども、地方の商店街の活性化というのは、直ちに特効薬があるかというとなかなか難しくて、これは大変難しい問題だなと感じてはおるんですけれども、そんな中でも、新しい取り組みで商店街を盛り上げよう、そういう機運も出てきております。

 例えば、私の地元ですと、商店街でバルという取り組みで、クーポンみたいなものを使って、いろいろな共通のお店でその日はそのクーポンを使って食事ができるようにしよう、こういうもので商店街全体で盛り上げていこう、こういう取り組みを市内のいろいろな地域でやっていたりですとか、あるいは、今、訪日外国人が二千万人をいよいよ突破、こういうニュースもございまして、こうしたインバウンドの需要というものをもっと取り込んでいけないかという意見であるとか、大変な中でもこういう新しいいろいろなチャレンジというのをどんどんしていただいている現状であるというふうに思います。

 こうした新しい取り組みを地道に応援していく、あるいはこういう新しいアイデアで商店街を活性化させるような人材や担い手の育成に取り組んでいく、一見、地道に思えるかもしれませんけれども、こうしたところの支援というものを粘り強く続けていかないとやはりこうした活性化というのはできないのではないか、こういう思いがございます。

 ぜひ取り組んでいただきたいと思いますけれども、これについて最後に答弁を求めたいと思います。

浮島委員長 中小企業庁高島経営支援部長。申し合わせの時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 商店街の担い手育成について御質問をいただいたかというふうに思います。

 私ども経済産業省では、地域・まちなか商業活性化支援事業という事業を行いまして、全国のモデルとなるような商店街組織が実施する事業を支援してきているところでございますし、また、中小企業等支援人材育成事業という事業で、そういったまちづくり等に関する専門知識を学べるような研修も実施いたしまして、そういった人材の育成も図っているところでございます。

 こうした先生おっしゃいましたような全国的にモデルとなるような取り組み、そうしたものをモデル事例集という形にいたしまして全国に周知をして、そういったモデルを全国的に広めていく、そういった取り組みを行っていきたいと考えているところでございます。

中野委員 以上で終わります。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 おはようございます。民進党の中根康浩でございます。

 一般質疑ということで、きょうは、縦割り行政ということでいえば、必ずしも直接経済産業省の所管ではない、課題ではないということになるかもしれないんだけれども、しかし、経産省としても無関心でいてもらってはいけない、無関心でいてもらっては困る、こういうことについて幾つか取り上げていきたいというふうに思っております。

 まず、加工食品の原料原産地表示ということでありますけれども、これは、TPPの衆議院の議論も大詰めというか、まだまだこれから本格化する、こういう局面でありますけれども、TPPが発効された場合に輸入原料が拡大する、こういうときに、消費者が国産原料でつくられた加工食品を容易に選択できるようにするため、これは、どちらかというと、TPPを早く発効したいと考えている政府の方や、あるいは自民党の皆様方の後押しでこういう動きが出てきたということのようでありますけれども、現在一割程度にしかすぎない加工食品の原料原産地表示制度を、内閣府令を改正することによって、全ての加工食品に拡大するということが検討されているということであります。

 まず、消費者庁にお尋ねをするわけでありますが、消費者庁と農水省が有識者の検討会に提示した表示方法の素案というものがあるということでありますけれども、この素案における原料原産地表示の原則と例外について御説明をいただきたいと思います。

吉井政府参考人 お答えいたします。

 加工食品の原料原産地表示につきましては、消費者庁と農林水産省の共催で、本年一月より、加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会を開催しているところでございます。

 検討会では、これまで消費者、生産者、事業者、流通業者等々の幅広い関係者の参加のもとに、全ての加工食品への原料原産地表示の導入に向けて、今後の対応方策について幅広く検討しているところでございます。

 本検討会は、本年秋に中間的な取りまとめを行うということとしております。本日の午後も検討会を開催する予定でございまして、中間的な取りまとめに向けての議論を行う予定でございます。

 加工食品の原料原産地表示の拡大に当たりましては、事業者の実行可能性という面で、頻繁な原材料産地の切りかえへの対応をどうするのかといったような問題、あるいは物理的スペースの制約の問題、原料原産地情報のわからない輸入中間加工品への対応の問題等々の課題があるというふうに認識をしております。

 このため、検討会では、議論されている新たなルールの素案では、まずは原料原産地表示を国別に表示するということを原則とするということを基本としながら、消費者の誤認を防止するための方法を明確にした上で、中小の事業者を含めた事業者の実行可能な表示方法として幾つかのものが検討されているというところでございます。

 具体的には、複数国の原料を使用する可能性がある場合には、使用が見込まれる重量割合の高いものから順にA国またはB国というふうに表示をする可能性表示、それから、三つ以上の複数国の外国を使用する場合には輸入という形で表示をする大くくり表示、中間加工品原材料を使用している場合には、製造地を例えばA国製造というような形で表示をする製造地表示といったような例外の表示が検討されているところでございます。

 いずれにいたしましても、検討会での取りまとめを踏まえまして、消費者それから事業者にとっても、適切な原料原産地表示制度となるよう努めてまいりたいというふうに考えております。

中根(康)委員 国別の表示が原則ということで、事業者のいろいろな負担を勘案して、例外も検討されていると。

 もう一度、この例外のところを少し丁寧に御説明いただけないでしょうか。

吉井政府参考人 お答えいたします。

 まず、可能性表示、一つ目に挙げたものでございますけれども、これは、複数の原材料を使用する場合に、現時点での国名、国別の原材料、これが不明な場合があるということでございまして、そうした場合には、過去の実績に基づいて表示をしていただくというようなことを考えて検討していただいているところでございます。

 それから、二つ目の大くくり表示、これにつきましては、三つ以上の複数国の外国を使用する場合には、なかなか、一年間の間に原材料の国が相当程度変動するということでございまして、包材を一年の間にしょっちゅう変えなくてはいかぬというようなことが考えられるわけでございまして、そうした場合には、実行可能性という面から、輸入という形で大くくりに表示をしていただくというような方法でございます。

 三つ目の中間加工原材料の製造地表示でございますけれども、これは、例えば海外の原材料を使っているといったような場合には、そもそも中間加工原材料の原産地がわからないといったようなものが多々ございます。そうした場合には、A国製造なり、例えばそれが国内で製造されているものであれば、国内製造というような形で表示をするという形のものが今検討されているということでございます。

中根(康)委員 何とか表示をして、消費者の方に少しでも情報を提供したいという思いは伝わらないわけではありませんけれども、今の過去の実績という可能性表示、これはあくまでも過去の実績ですから、現在、どういう原料がどの原産地から来ているか、これは表示されないということになってしまいますし、大くくり表示ということでいえば、輸入ということでありますので、例えば、特定の国名を挙げては申しわけないんですが、やはり日本人として一番繊細に心配しているのは、中国から来ているのか来ていないのか、こういうことが示されない、こういうことになってしまうわけであります。

 そのほかに、聞いた話だと、例えば缶詰のゆで小豆の場合、主役である小豆の産地を知りたいと思っても、重量表示ということになりますので、その缶詰の中の重量割合が高いのは実は砂糖であるということで、表示されるのは、小豆ではなくて砂糖の産地が表示されてしまうということになってしまう。

 あるいは、輸入または国産という表示も可能になるようなことが検討されているということで、輸入または国産というのは全くわからないですよね。これは、世界じゅうのどこで、地球上のどこから来たものかということがわからない、結局産地が全く情報として提供されないのと同様だ、むしろ混乱を招いてしまうのではないか、こういうことであるわけであります。

 カナダまたはアメリカというような表示も可能になってくるということもありますけれども、これもカナダなのかアメリカなのか、まあカナダとアメリカぐらいだったらいいんですけれども、例えばアメリカまたは中国とか、スイスまたは中国とか、ノルウェーまたは中国とか、そういった場合だと、またはの方は大変重要な課題になってしまうということでありますので、これは産地の切りかえのたびごとにパッケージを印刷し直すのは、確かに事業者にとってはコストがかかり過ぎて現実的ではないかもしれない。

 しかし、今消費者庁さんがお示しになられた素案というものでは、余りにもまだ生煮え過ぎるということで、消費者のメリットと事業者の対応能力のバランスをとったということかもしれませんけれども、表示方法についてはもう少し、これはもともと出てきた話が、TPPが発効されたら国産を求める消費者のニーズが高まるだろうということでありますので、TPPはまだしばらく発効する見込みもないわけでありますので、きょうの午後も会議が行われて、この秋の中間取りまとめということになり、中間ですから、それはそれでいいんですけれども、それにしても、中間取りまとめとはいえ、消費者団体の方々からも、この素案ではいかがなものかと。これは消費者庁さんにもたくさん声が届いていますよね。

 これは加工食品ですから、経産省の所管ではないかもしれませんけれども、ぜひ大臣も関心を持っていただきたいと思って経産委員会で取り上げているんですけれども、表示方法についてはもっと検討が加えられていいというふうに考えております。

 商品そのものの包装に対する印刷ということでなかなか無理があるということであれば、ホームページでお知らせをするとかで、いろいろな方法はあると思うんですね。むしろ、中途半端なというか、本末転倒のような表示がされるよりも、そういったところで、正確な、的確なものが情報提供された方がいいということもあるわけであります。

 世耕大臣、表示方法の検討は日本再興戦略にも書かれていて、検討がされているということでありますので、先ほど消費者庁さんが、農水省さんと、あるいは有識者の方々と検討を加えて、近々中間報告が取りまとめられるということでありますから、ぜひ、日本再興戦略の一環ということでもありますので、内閣の一員である経産大臣としても、この表示方法について、何か口を挟むということはできないかもしれませんが、今の御説明を聞いてお感じになったことがあれば、お聞かせをいただければと思います。

世耕国務大臣 実は、平成十一年ぐらいだったと思いますが、加工食品の原産地表示制度が導入されて、第一号は和歌山の梅干しが原産地表示。一個だけじゃだめだということで、鳥取の砂丘ラッキョウとともに、この原産地表示の対象に、この二つだけが一番先頭で、これは包丁が入っていないからということで、この二つが選ばれたわけであります。

 その後、私は国の名前は申し上げませんけれども、デパートとかの梅干し売り場で裏を見て、ああ、国産だなというのを見て買っていらっしゃる消費者なんかも見て、やはり原産地表示制度というのはいい制度だというふうに私は思っています。

 今の委員の御指摘、非常に私も勉強になりました。わかりやすい表示をすることが非常に重要だと思っています。ただ、これは基本的に農水省と消費者庁で決められることで、経産省として絡めるとしたら、その商品が置かれる現場である小売業界、ここが、チェーンストア協会などは、やはり消費者が混乱するような表示では困るということを言っておられます。我々としては、やはりその小売段階での混乱、消費者の混乱が起きないようにという立場で、この問題を注視してまいりたいというふうに思います。

中根(康)委員 経産大臣の御所見を承ることができました。ありがとうございます。

 消費者庁さん、これで結構でございます。ありがとうございました。

 次に、またかという話になると思いますが、車に関する税金の話であります。

 平成二十八年度の与党の税制改正大綱では、抜粋をいたしますと、「簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減、グリーン化を図る観点から、平成二十九年度税制改正において、安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。」こういうふうに書かれているということは、もう何度もここで取り上げてまいりましたけれども、改めて、この税制改正大綱の中にある総合的な検討というのはどういうものか、どういうふうに行われるか、どのようなメンバーで、どのような形式で、何が議論されていくのか、こういうことをお尋ねしたいと思いますが、いかがでしょうか。どなたか、お答えいただけないでしょうか。

糟谷政府参考人 与党税制改正大綱は、さまざまな議論の積み重ねを踏まえて与党で取りまとめられたものでございますので、その総合的という言葉について、政府として、その解釈についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、昨日発表になりましたけれども、十月の国内新車販売台数、これは〇・四%減少いたしまして、特に軽自動車は二十二カ月連続の減少でございます。

 こういう中で、自動車関連産業、消費や雇用、生産基盤などの実体経済をしっかり支えていく上で非常に大事だという観点に立ちまして、経済産業省といたしましては、平成二十九年度の税制改正において、期限を迎えるエコカー減税やグリーン化特例の延長、それから自動車税の税率そのものの引き下げなどを要望しているところでございます。来年の三月末に、現行のグリーン化特例、それからエコカー減税、このままでは切れてしまいます。そうすると、単純な増税になるわけであります。これをどうするのか。

 それから、自動車税の税率そのものの引き下げについて、我々要望しておる立場から、税制当局といろいろと今要望に基づいて議論を始めておるところでございます。これから与党の税調も開催されます。そういうところで、幅広い御理解が得られるように、しっかり取り組んでいきたいと考えております。

中根(康)委員 総合的なというところをなぜお尋ねしたかというと、もちろん、経済産業省は、自動車産業あるいは国内産業振興の立場から、常にいろいろな自動車関係諸税の廃止や軽減を含めた御提言や御要望をしていただいているということは十分理解しておりますが、立場が変われば、総務省は総務省の立場がある、財務省は財務省の立場がある、こういうことになっていくわけなんですが、だから、そういうところが、ある意味、しっかりと顔を合わせて、包み隠さず意見を言い合って、最終的に、あるべき自動車関係税制のあり方という結論を導き出していただきたいんです。

 そのときに、ぜひ総合的な検討ということの中で、当然、御理解をいただいていると思いますけれども、今まで、私どもからすると、どうも不足しているのではないかというのがいわゆるユーザー目線、車を買う人、持つ人、走らせる人、こういう立場からの御意見が十分あるいは十二分に反映された議論になるべきだというふうに思っております。

 自動車税制は、地方税の割合が大きく、廃止、軽減などもってのほかだ、むしろもっとふやしたいという立場もあろうかと思いますけれども、ユーザーの負担が重いままでは、今御説明があったとおり、国内販売が減る。国内販売が減れば、国内の産業が縮小し地方の経済と雇用にしわ寄せが来る、こういうことは明らかだというふうに思っておりますので、ぜひユーザーの、車を買う人の目線での議論をこの総合的な検討の中に十分反映してもらいたいということを重ねて御要望を申し上げておきたいと思います。

 車体課税については、今までも消費税との二重課税状態になっている例えば自動車取得税のようなものがある。あるいは、車はもうぜいたく品ではなく、特に地方では移動の大半は車に頼っている。こういう意味で、生活必需品であるということ。一般財源化によって課税根拠がもうなくなっている、払わなくてよい税金を国民は納めさせられている。車ユーザーの負担で地方財源を確保することはおかしい。車体課税を抜本的に改正し、見直し、成長の原動力を、あるいは雇用の確保をすべきである。こういうことをずっと申し上げているわけであります。

 改めて、そういうことを言うだけではなかなか話が前に進みませんので、もう一度、ちょっと原点に立ち返って、きょうは確認をしたいと思います。

 今まで再三この場でも申し上げておりますが、課税根拠がなくなった税金を納めるのはおかしい、なぜですかということを言っているんです。そこで、改めて確認するんですけれども、きょうは、課税根拠ということについては経済産業省や国交省にも聞きたいと思ったんですが、これは要求官庁だから、要望する側だから課税根拠については説明する立場にはないということでありますので、総務省と財務省にお越しをいただいております。

 それぞれのお立場から、なぜ車に税金がかけられているのか、なぜ車に税金をかけてもいいのかということについて、御説明を賜りたいと思います。

井上政府参考人 まず、自動車重量税についてお答え申し上げます。

 自動車重量税につきましては、自動車の走行が道路損壊、大気汚染などの多くの社会的費用をもたらしている、それから、道路等の社会資本の充実の要請が強いということを考慮し、自動車ユーザーの方々に広く御負担を求めるものとして創設をされております。

 道路特定財源の見直しの後におきましても、自動車ユーザーの方々が道路整備等によりメリットを受けておられること、自動車の走行が道路損壊でありますとかCO2の排出などの社会的費用を発生させていることに変わりはございませんので、我々としましては、引き続き課税理由があるというふうに考えております。

開出政府参考人 お答え申し上げます。

 地方税でございますが、まず、自動車税及び軽自動車税につきましては、自動車及び軽自動車を所有している事実に基づく担税力及び道路損傷負担金的性格から自動車の所有者に課されるものでございます。

 また、近年におきましては、環境性能に応じた軽課や重課が特例措置として講じられるなど、環境損傷負担金的性格もあわせ持つ税となってございます。

 自動車取得税につきましては、権利の取得、移転に担税力を認めて課される流通税であるとともに、自動車がもたらすさまざまな社会的費用に対応して、地方公共団体が提供する行政サービスから便益を受けるということに着目して、自動車の取得者に課されるものでございます。

 道路の整備や維持管理等の行政需要は自動車関係諸税の税収よりも大きく、また、道路行政以外の自動車関係の行政需要も存在するところでございまして、一般財源化後も引き続き課税する理由があるというふうに考えております。

中根(康)委員 まず、担税力という話がありますが、先ほど申し上げましたように、これも何度もここで申し上げているんですが、昔はぜいたく品だったかもしれませんけれども、もはや担税力のない人でも、車がなければ、地方では生活できないし仕事もできないわけなんです。ここに担税力を認めて課税をするということは、もう時代おくれの議論にほかならないというふうに思います。

 それと、車を走らせることによって道路が摩耗して、そこを補修したり、あるいは道路をつくったりということ、これは一般財源化される前の特定財源の時代の考え方そのものであって、特定財源ということであるならば私たちは認める余地があるんですけれども、一般財源化されたということを前提に、なぜ税金をかけるんですかということを言っているんです。

 一般財源化されても税金をかける理由は、今の財務省と総務省のそれぞれの御説明の中には見出すことができなかったということだと思いますが、これは通告しておりませんが、大臣、課税根拠についていかがですか。

世耕国務大臣 我々は、財政当局と交渉する、要望する立場であります。まさに、中根委員が先ほどの質問から御指摘をいただいているいろいろな項目、今おっしゃっていた、一般財源化されたことで自動車ユーザーに負担を求める理由が失われているんじゃないかというユーザーの声があるということ、そういったことも踏まえながら、我々は財政当局に要望、議論をしているわけであります。

 今後も、車体課税の負担軽減に向けて、財政当局と十分に協議しながら、幅広い関係者の御理解を得られるよう取り組んでまいりたいと思います。

中根(康)委員 財務省さんと総務省さんに課税根拠の有無について御説明をいただきました。

 それぞれのお立場はそれぞれわからないわけでもないんですけれども、車に関して言えば、これはやはり車のユーザーが税金を納める理由としては大変希薄なものである。特定財源であったらいいんですよ。確実に渋滞解消に使われる、あるいは道路の整備に使われる、こういうことならいいんですが、一般財源化されたということの中で、担税力であるとか道路の補修のために使うとか、これは特定財源の旧態依然とした説明であるわけでありますので、課税根拠はないと私たちは判断せざるを得ないので、経産大臣、応援しますので、この一点をもって、ぜひ車体課税の抜本改革を来年度こそは押し切っていただきたいというふうに思います。

 まあ、例えば百歩、あえて百歩、千歩譲って、地方の何とかということであるならば、段階的に、まず国の分だけでも廃止をするとか、何か前に進めていただかなくては、いずれ車ユーザーの大反乱が起きる、いつまでもユーザーは黙っていないということになると思いますので、今の課税根拠を十分説明し切れなかった、ここをもって、経産省、経産大臣、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 総務省さん、財務省さん、ありがとうございました。これで結構でございます。

 次に、きょうは残された時間で、中小企業にとって深刻な問題の一つである人手不足ということについて取り上げていきたいと思います。

 経産省としては、人手不足をIoTとかロボットとかで解消していこうということだろうと思いますけれども、改めて税制にもきちんと目を向けていただきたい。

 そこで、取り上げるのは配偶者控除ということであります。これは言うまでもなく、税金を納める世帯主の家族に年収百三万円以下の妻が、例えば妻がいたら三十八万円を控除する、これが百三万円の壁と言われるもの。ただ、実際には配偶者特別控除があって、百四十一万円までは控除は受けられる。現実問題として重要なのは、企業のいわゆる家族手当というもので、これが配偶者控除の適用条件と連動していることが多い。この意味で、やはり百三万円の壁ということが存在するというわけであります。

 政府は働き方改革を掲げて、働き手をふやして、ひいては税収増や消費拡大につなげることを目指しているはずであります。すると、配偶者控除は廃止をするということになるはずなのに、政府の議論では、控除の年収制限を百三万円から百五十万円に引き上げることが検討されているようであります。制度の廃止どころか拡充ということが検討されている。

 特に、中小企業においては、人手不足でパートの時給が上がっている、就労調整によってパートさんの労働時間が短くなる、さらに人手不足に拍車がかかる、こういう実態があるわけであります。生産年齢人口が減少している我が国において、就労調整の理由になっている配偶者控除あるいは配偶者特別控除、これは拡充ではなくて廃止の方向で検討すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中小企業の人手不足は深刻化しつつあるというふうに認識をいたしております。

 配偶者控除につきましては、いわゆる百三万円の壁として、就労調整の原因になっていると指摘されることがあるということは承知をいたしております。

 他方、現行制度では、配偶者の給与収入が百三万円を超えて百四十一万円までの場合は世帯の手取り収入が減少しない配偶者特別控除制度が導入されておりまして、税制上はそうした壁は解消されているものと理解をしております。

 ただし、依然として心理的な壁は存在しているのではないかという指摘があることも事実であると考えております。現在、政府の税制調査会におきまして、さまざまな観点から配偶者控除のあり方について議論されているものと承知をいたしておりまして、まずはその議論を注視してまいりたいと考えております。

 一方、御指摘のとおり、中小企業の人手不足は大変深刻でございますので、この対策といたしましては、私どもといたしましては、これまで中小企業と、女性や高齢者も含めたさまざまな人材とのマッチング支援、これらを行って、中小企業の人材確保を支援してきたところでございます。

 また、中小企業がより魅力ある職場になり、多様な人材から選ばれるような職場になるということが大事であると思いますので、そうした好事例を収集、分析するための研究会も始めたところでございます。

 引き続きまして、中小企業の人手不足への対応力の強化に向けまして、各省庁連携しまして、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

中根(康)委員 配偶者特別控除の話までしていただきましたけれども、実際には、先ほど私も申し上げましたように、配偶者控除百三万円の壁が企業の家族手当等の基準になっているということもありますので、その意味でも、配偶者控除を廃止すべきだ。あるいは、働き方改革ということ、女性活躍、一億総活躍だ、こういうことでありますので、この配偶者控除のあるなしによって働き方が変わるということはやはりおかしいということになりますので、中小企業の人手不足も深刻な問題でありますけれども、それ以前に、根本的な話として、廃止の方向で検討していただかなくてはいけないんだろうというふうに思っております。

 例えば、配偶者控除を適用されているのが千四百万人だそうです。国税で六千億、地方税で五千億、廃止するとそれだけの財源が出てくるということにもなりますので、これを子育てとか介護の支援の方に回すという考え方もあると思っておりますけれども、この考え方についてはいかがお考えでしょうか。

柳瀬政府参考人 配偶者控除のあり方につきましては、女性が就業調整をすることを意識しないようにする一方で、家庭における配偶者の貢献を積極的に評価すべきじゃないかということで、働き方や家族のあり方について国民的議論を行いながら、十分に検討していく課題だということで、廃止をするという方向が決まったというふうには承知してございません。

 現在、政府あるいは与党の税制調査会において丁寧に議論が進んでございます。まずはその議論を注視して、その後、そこをどういうふうに財政上していくかという議論はその次の議論だと認識してございます。

中根(康)委員 配偶者控除は廃止の方向が決まったといいながら、与党の中では、与党か政府かはちょっとはっきりわかりませんが、百三万円から百五十万円にむしろ拡充するという、逆行する議論がされていると報道されておりますが、これもまたおかしな話で、きちんと筋の通った議論をしていただきたいというふうに思います。

 もう一つの就労の壁は、社会保険料負担であります。先月から適用対象が拡大されて、さらに今後拡大されていく見込みである。先月からの拡大は、五百一人以上の企業の場合、週二十時間以上、月収八万八千円を超えると適用対象となって、これが年収ベースだと百六万円、これが新たな壁として生じてくるということであります。スーパーなど、一店舗は小さくても、全体から見れば五百一人以上である場合が多くて、地方でも影響は決して小さくありません。スーパーでパートをしている多くの人が適用拡大の対象となっております。

 この社会保険料は、働く側にとっては就労調整の理由となるし、保険料負担を折半することになる会社にとっては雇用調整の理由となるわけであります。人手不足状態では、中小企業は、人は雇いたい、しかし社会保険料負担が経営を圧迫することにもなりかねない、こういうことであります。

 この社会保険料負担、社会保険の適用拡大に際して中小企業が新たに抱える課題ということに対して、経産省としては何か支援をしていくお考えはないか、お尋ねをしたいと思います。

高島政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保険の適用拡大についてのお尋ねでございます。

 本年十月から社会保険が適用拡大されておりますけれども、それにつきましては、年金の適用拡大を機により長く働きたいという方もいらっしゃる一方で、社会保険料の負担から、労働時間を減らしたい、そういう方もいらっしゃる、そういう声もあるというふうに承知をしておりまして、今後の中小企業に与える影響ということにつきましては、これはまだ十月からでございまして、これから注視していく必要があろうかというふうに思っております。

 いずれにしましても、委員御指摘のとおり、中小企業の人手不足は大変深刻化しておりますので、中小企業は育児から復職なさった女性の方に職場として選択される傾向も比較的強いと考えております。中小企業が女性とか高齢者といった多様な人材に今まで以上に目を向けていくことが大事であるというふうに思っておりまして、人材確保支援、それから職場の魅力向上支援などに引き続き取り組んでいきまして、中小企業の人手不足への対応力強化に向けて、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

中根(康)委員 社会保険の適用拡大による事業者の社会保険料負担、これが経営を圧迫するのではないかということに対して、これから検討していくということでは、余りにも現状認識が甘過ぎると思います。

 もう既に、本来は正社員を雇いたい、しかし社会保険料負担が、これは赤字であっても納めなくてはならないということの中において、やはり正社員雇用の重荷になっている、こういうことであります。これはパートさんについても同じようなことが当てはまるわけでありますので、ここは、中小企業支援ということであるならば、何らかの施策を講じていかなければならない。

 だから、私たちは、前の前の国会から、中小企業の社会保険料負担の軽減法案というものを国会に提出させていただいているわけでありまして、これは、ぜひこの委員会で早期に審議をさせていただきたいと委員長にもお願いをさせていただきたいわけであります。やはり、無策であるわけにはいかないというのがこの中小企業の社会保険料負担だというふうに思っております。

 今御答弁で、育休や、あるいは高齢者雇用のことについても言及をしていただきました。

 これはもう時間がありませんので要望にとどめておきたいと思いますけれども、育休が一年半から二年に延長されるというようなことも報道等で仄聞をしているわけでありますが、これも、もちろん育休をとりたい人にとってはいいんですが、その一方で、育休をとられる側の、とられると言ったら申しわけないですが、活用される事業者の方からすると、有力な戦力が二年も現場を離れるということになっては経営にとっても相当なダメージだということになるわけであります。

 それと、高齢者の方々の活用ということもこれから大切な時代になってくるんですけれども、在職老齢年金というものがあって、それが長く働くことを思いとどまらせるという原因の一つにもなっている。

 こういう、社会保険料のこと、あるいは配偶者控除のこと、育休のこと、在職老齢年金のこと、さまざま、人口減少、労働力が減っていく、中小企業の人手不足が深刻な状況に直面している、こういうことを考えたときに、いろいろと政府全体として、経産省だけではなく、厚労省であったり、内閣府であったり、さまざまな省庁が横断的に横串を刺して検討していかなければならない、それをもって中小企業の支援に、あるいは地方の、地域の雇用の確保のためにしていかなければならない、こういう問題は山積みになっているということであります。

 加えて言えば、課税根拠のなくなった車体課税、これを抜本的に改革していくということが日本の産業振興あるいは雇用確保にとっても極めて重要だということがわかった、きょうの質疑であったというふうに思います。

 最後に、大臣の御所見をいただいて、終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。

世耕国務大臣 まず、中小企業の人手不足というのは本当に深刻だというふうに思っていますし、今御指摘のように、配偶者控除の廃止や社会保険の適用拡大、育休の延長、こういったことも中小企業にとっては確かに負担になる面もあると思います。ただ、マイナスに捉えるだけではなくて、やはりこれをチャンスと捉えて、積極的に働き方改革をすることで人材の確保に努めてほしいというふうに思っています。

 例えば、お菓子を製造しているある中小企業は、ほとんどパートの女性社員が多かったんですが、フレックスタイム制度や、あるいは短時間勤務制度を導入した結果、みんな正社員に切りかえてきた。そして、正社員になった元パートの社員の皆さんが、会社へのロイヤリティーが高まって、商品開発に参画をして、購買層は女性が多かったものですから、大ヒット商品が生まれたなどという例も出てきていますので、こういう好事例も横展開をしながら、中小企業の活性化につながるような制度になるように、我々としても、いろいろな検討をしたり、必要な支援策を講じてまいりたいと思います。

 車体課税については、きょう委員からお届けいただいたような声があるということを十分踏まえながら、我々としては、財政当局に車体課税の軽減を求めてまいりたいというふうに思います。

中根(康)委員 終わります。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 おはようございます。民進党の鈴木義弘です。

 先週に引き続きまして、質問をさせていただきますことを厚く御礼申し上げたいと思います。

 先日、新聞の見出しに、「福島賠償 新電力も負担」という大きな見出しなんですね。

 新聞の記事だとか週刊誌だとか、いろいろな記事を取り上げて質問をすると、大体、TPPのときもそうだったんですけれども、いや、政府の公式な見解じゃないんだから答えられない、こういうふうにさんざん言われたことがあるんですけれども、世耕大臣は真摯な方ですから。

 これは誰が流したんだかよくわからないんですけれども、経済産業省は、東電の福島第一原子力発電所事故の賠償費用を電力自由化で参入した新電力にも負担させる検討に入ったという記事なんです。これは正しいのか正しくないのか、まず最初にお尋ねしたいと思います。

世耕国務大臣 今、電力の全面自由化が進んでいて、規制料金がなくなった中で、例えば、安全、防災対策ですとか、廃炉への備えとか、CO2の削減など、さまざまな課題への対応が必要となっておりまして、このような課題について、外部の有識者に参加いただいている委員会において、徹底的に御議論をいただいています。

 また、福島第一原発事故に伴います賠償、廃炉の問題や、今申し上げた全面自由化に伴ういろいろな費用の負担ですとか、あるいは再エネ拡大の課題への対応などについて、東電委員会とか、あるいは電力システム改革貫徹小委員会で御議論をいただいています。

 今御指摘の報道にあったような賠償費用や廃炉費用の負担のあり方についても、外部の御意見をいただきながら、徹底的に検討していきたいと考えております。現時点で何らかの方針が固まったということではなく、徹底的に検討した上で、国民が納得できるような解決策を見出していきたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 もう少し記事が書いてあるんですね。東電ホールディングスや関西電力など大手が担ってきたが、一部を新電力との共同負担に切りかえるんだそうです。事故処理費用の負担が新電力に回る初めてのケースになり、廃炉費用については、利益を優先的に充当する仕組みをつくり、東電一社に負わせる方針だとなっている。方針なんですよ。方針だと書いてある。

 今、大臣の答弁では、まだ固まっていないんですよと言いながら、なぜこういう記事が出るんですか。

村瀬政府参考人 御答弁させていただきます。

 今大臣から御説明させていただいたとおりでございまして、現時点で何らかの方針が固まったということではございませんで、徹底的に御議論いただいた上で、国民が納得できるような解決策を見出していきたい、このように考えているところでございます。

鈴木(義)委員 では、これは日経新聞に何か言わなくちゃだめだね。

 新聞記事で随分踏み込んだなというふうに私も思った内容だったんですね。東電側の努力はどこまでいって、どうしても、やはり国民に負担を強いらなくちゃいけないんだ。東電がどこまで努力したのかというのはわからないで、いきなり、新しく入ってきたところに、あんたも負担しろよというのは、これは筋が通らないんだと思うんですね。

 これは説明責任がまだ足らないんじゃないかと思うんです。専門家の人たちが専門委員会みたいなものをつくって、そこで議論するのは結構な話なんでしょうけれども、実際、払うのは国民ですよ。税金で払うのか、電気料金で払うのかの違いだけで、払うのはみんな国民。個人か、もしくは企業が払うんです。

 だから、きちっとそこのところを、国が賠償するにしても、今申し上げたように、税金で払うし、東電やほかの電力会社が負担するにしても、原資は電力料金なんです。新電力で再生可能エネルギーの割合を増加させて、ベストミックスをつくっていく方針を立てているわけじゃないですか。だから、賠償や廃炉を既存の電力事業者以外に求めたら、再生可能エネルギーが成り立っていかないんだと思うんです。

 そもそも、原子力政策というのは国が主導でやった国策じゃないんですか。それをもう一度確認したいんです。

村瀬政府参考人 御答弁させていただきます。

 先ほども申し上げましたとおり、現在、有識者の意見をいただきながら、徹底的に議論をさせていただいているところでございます。

 いわゆる自由化の中で、事業者の負担の公平性といったような観点も含めてしっかり御議論いただく、こういうことだというふうに承知しているところでございます。

鈴木(義)委員 だから、私がお尋ねしているのは、昨年も、電力自由化の法案が通って、経産委員会でも質問させてもらいましたけれども、結局、そのベストミックスをつくっていきましょうと経産省が方針を立てるわけじゃないですか。原子力はどのぐらい、化石燃料はどのぐらい、再生可能エネルギーはこのぐらい、水力はこのぐらい、そういう方向に持っていこうというふうに計画を出したわけでしょう。それが前提であって、外部有識者の意見を聞いて、最終的な方針を決めていくというのでしょうけれども、こういう新聞の記事が出るということは、既成事実を積み上げようというふうにしか思えないんだよね。

 今お尋ねしたのは、原子力政策は国策だったのかどうか、電力事業者がやりたいといって始めたことなのか、国がやりたいということだったのかということなんですよ。今回のいろいろな賠償だとか廃炉の計画も、どこが責任を持ってやらなくちゃいけないのかというのが、去年もそうだったんですけれども、何かよくわからないで終わってしまっているんです。もう一度お答えいただきたいと思います。

村瀬政府参考人 お答えさせていただきます。

 原子力事業については、民間事業者の判断として、これを事業として責任を持って営んでいるということでございますけれども、国としても、先ほど御指摘いただいたようなエネルギーのベストミックス、これを実現していくために最大限の取り組みをしていくということになってございまして、原子力も含めまして、電力事業に関する事業環境整備にしっかりと取り組んでいく、こういうことだというふうに認識しているところでございます。

鈴木(義)委員 原子力の話を長々するつもりはないんです。

 これは私の持論なんですけれども、福島第一原子力発電所の事故が起きたことに鑑みれば、周囲十キロとか二十キロとか、やはり国有地化していった方がいいんじゃないかと思うんですね。それは賃貸にするのか譲ってもらうのかは別としても、それをやっていかないと、岬の突端につくっているようなところで廃炉しますよといったって、放射能だらけのものをどこに持っていくんですか。海から運ぶんですか、陸から行くんですか。

 だったら、やはりある程度敷地を拡張していくようなこともしていかなければ、廃炉に向けた計画をこれから立てますといっても、どこに埋めていいのかもわからない状況でどうするんですかと、いつも同じ議論になっていくと思うんですけれども、その辺、もしお考えがあったらお答えいただきたいと思うんです。

村瀬政府参考人 今、福島第一原発の廃炉の事業についての取り組みということで御指摘かと思います。

 もちろん、一刻も早い福島復興それから事故収束に向けて、国としてしっかり取り組んでいくということで頑張らせていただきたい、このように考えております。

鈴木(義)委員 この問題はこれで終わりにしますけれども、最後に、大臣としてのお考えがもしあったら、総括でお答えいただければありがたいんです。

世耕国務大臣 原発というのは、基本的には、最初に設置をするときも、あるいはその間の運営も、あるいは廃炉も含めて、原子力事業者がみずからで行うということが大原則であります。

 また、廃炉に伴って一時的に巨額の費用が発生することで、事業者による廃止措置の円滑かつ安全な実施に支障を来したり、あるいは事業者の合理的な廃炉判断をゆがめることがないように、我々はそういった会計制度、廃炉会計制度というのを整備しているわけであります。

 そういったことを含みながら、最終的には、現時点で何らかの方向性が固まっているということは全くないわけでありますけれども、徹底的に専門家に御議論をいただいた上で、我々もしっかりその議論に参加をしながら、国民が納得できるような方策というのを見出してまいりたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 次の質問に入りたいと思います。

 一つの資料に目がとまったんですけれども、世界経済のリスクと展望という題材だったんですね。これはある研究所の調査報告書なんですけれども、これを要約していくと、世界経済は金融危機のような差し迫ったリスクに直面しているのではない、しかし、主要先進国は依然として低成長と低インフレからの脱却に苦慮している、日銀とECB、欧州中央銀行のことを言っているんですけれども、一段と金融緩和に踏み込んでマイナス金利を導入するに至っている、世界経済は再加速する手がかりをつかみかねているということなんだと。各国の非伝統的な金融政策の効果を振り返ると、株式など資産市場への影響はあっても、実体経済を浮揚させる効果は予想を下回るという意味で、金融政策の手詰まり感が強まっているんじゃないかというふうに言っているんですね。

 株は上がったんです、アベノミクスをやることによって。円安にもなったんです。でも、実際にそれが実体経済に反映されていないんじゃないか。きょうも、朝、ミーティングがあったので、ある講師の方がおっしゃっていましたけれども、確かに株価は上がったんです、でも、個人の消費が全然伸びていない、そこが問題なんだ、こういう話なんです。これは、私はきょう聞いた話なので、通告はきのう出していますから。

 だから、大臣の所信のときも世耕大臣からお述べいただいたんですけれども、今こういう状況にあるという認識はされていると思うんですけれども、大臣の御所見をまずお聞かせいただければと思います。

世耕国務大臣 金融政策が手詰まりなのかどうなのかという御議論だというふうに思います。

 ことし、G7やG20で各国が合意をしているわけですけれども、世界経済の先行き全体にリスクが見えてきている中で、金融政策と財政政策、そして構造改革、こういったあらゆる政策手段を用いて取り組むことが重要だ、それぞれの政策がうまく連携をすることも重要だというふうに私は考えております。

 日本経済は、まさにアベノミクス三本の矢ということで、G7、G20でことし合意したことを既に我々はやってきているわけでありますけれども、その中で、確かに消費は動いていないという面がありますが、一方で、もはやデフレではないという状況はつくり出しましたし、特に、国民生活にとって、重要な雇用は、大きく改善していることは間違いがないわけであります。

 我々は、それをどう消費につなげるかということで、例えば、先ほどの質疑でも出ましたけれども、中小企業の下請取引の改善なんというのは、きちっとした業績のよさが中小企業にまで回り、中小企業で働く人々の賃金も上がって消費が動くようになるのではないかとか、あるいは第四次産業革命などというものに取り組んでいるのも、そういった中から新しい商品が出てきて消費が動くのではないかという取り組みをしているわけであります。

 アベノミクスは、まだ百点満点ではとてもありません。ただ、失敗しているわけでもなく、道途上だというふうに思っています。

 金融緩和についても、日銀は、九月に金融緩和を強化する新たな枠組みとしてイールドカーブコントロールなどを導入するなど、金融緩和を強力に進めてきておりますし、黒田総裁は、金融緩和の拡大はまだ十分可能であり、必要であれば追加措置もちゅうちょしないと説明をしているわけであります。

 金融政策の手法については日銀に委ねられるべきでありますけれども、政府と日銀が緊密に連携しながら、金融、財政、構造改革、あらゆる政策を総動員して、デフレから脱却をして、力強い成長を目指していく。そういう意味で、金融政策はまだ手詰まりだというふうには考えておりません。

鈴木(義)委員 金融政策、何かこれも新聞だったか雑誌だったか、アベノミクスじゃなくてクロダミクスじゃないかというふうに言われているんだそうですね。金融政策に偏り過ぎた政策をやってしまったがために、財政政策だとか規制改革、成長戦略の方がおろそかになってしまっていて、過度な金融政策に今突出されちゃっているんじゃないか、だからクロダミクス、こういう言い方になってしまうんです。

 G7のことを蒸し返すつもりはないんですけれども、例えば、中国の景気がよくなれば、日本も大変いろいろなものを輸出していると思うんです。中国の今の構造改革というんですか、あとは景気対策を打ったことで世界の経済を牽引していたんだというふうに言われているんですけれども、それだけでは、結局景気の浮揚には、世界全体が低成長で今あえいでいる。G7のときに、あらゆる政策を出動するんだというふうに言ったんですけれども、緊縮財政を堅持するようなユーロ圏の先進国の国がばさっと財政出動するかといったら、それはなかなか、あらゆる政策は出動するんだといっても、そう簡単にはいかないんだと思うんですね。

 そういった中でこの報告書は締めくくっているんですけれども、その件に関して、中国だけでいいのかという、どこの国がどうだということじゃないんでしょうけれども、そこに対する大臣の御所見をいただければと思います。ちょっとわかりづらいですか。

世耕国務大臣 やはり中国の成長が一時期ほどの成長率ではなくなっているということ、これは世界経済にいろいろ影響を与えていると思います。また一方で、その副作用というか、鉄鋼の過剰生産問題などというのも出てきて、これがまた世界に影響を与えているというようなこともあります。もちろん、中国は今や世界第二位のGDPを誇る国でありますから、中国経済の動向というのも非常に大きいというふうに思っています。

 ただ、それだけではなくて、米国の景気の動向も大きいですし、EUの動きも大きいですし、もちろん日本自身も、国内の需要というのも日本経済にとっては非常に重要だというふうに考えております。

 今御指摘の財政出動に関しては、これは確かに、G7の首脳の中では大分熱い議論がありました。ただ、これは安倍総理が議長国としてかなりイニシアチブを発揮いたしまして、もともと構造改革だけでいいじゃないか、財政出動はないんだと言っていたような国も、最終的には、首脳コミュニケをまとめる段階では、財政出動の必要性も認めた。世界的なリスクが見えてきている中で、やはり財政出動も必要な対策だということでG7は一致をしたということであります。

鈴木(義)委員 中国の議題がちょっと出たので。

 これも新聞の記事に目がとまったんです。同じ日経新聞なんですけれども、「中国の買収 ドイツ「待った」」こういう見出しなんです。中国は世界で企業を買収し放題だ、しかし、海外企業による中国企業買収になると、事実上不可能じゃないか、ドイツはここに来て中国企業による自国企業の買収に待ったをかけたとの記事なんです。

 EUには、海外企業による慎重な判断を必要とする買収を審査する米国の対米外国投資委員会のような機関がないということなんですね。これが日本にはあるのかないのか、まずお尋ねしたいと思います。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 外国投資家による対内直接投資につきましては、外国為替及び外国貿易法、いわゆる外為法によりまして規制をしております。

 特に、武器または軍事転用可能な汎用品といった国の安全に係る機微な製品を製造する国内企業、電力、ガス事業といった公益を担う国内企業に対する対内直接投資について、財務大臣及び事業所管大臣への事前届け出の対象としております。

 事前届け出がありました場合には、外為法の規定に基づきまして、事前審査を行います。その上で、国の安全を損なうなどのおそれがある場合には、所定の手続を経まして、投資の内容の変更または中止を勧告することができます。また、外国投資家がこれを応諾しない場合には、変更または中止を命ずることができるとされております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 それで、外国の投資家に対して財務大臣や事業所管の大臣が届け出制をされているんだと思うんですけれども、例えばファンドを組まれていたり、小口で分散されたりした場合には把握できるのかどうか。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、財務大臣、事業所管大臣が事前審査をする中で、届け出のありました投資家、それから投資家のその背景などについても十分に審査をし、把握に努めるということでございます。

鈴木(義)委員 把握に努めるということは、できないこともありますよと言っているようなものなんですね。

 会社四季報のホームページに既に公開されている外国人持ち株比率上位五十社を見ていくと、大丈夫かなと思うのは私だけじゃないと思うんです。特に時価総額の大きい企業を挙げていくと、もう御案内のとおり、外国人持ち株比率が高い。具体名を出すのがいいかどうかはありますけれども、日産自動車だとか、ソニーだとか、中外製薬だとか、HOYAだとか、あとはファナックだとか、SMCとか、ナブテスコなどの製造ラインの重要部品や工業用ロボットを製造する企業がずらっと並んでいるんです、五〇%以上の持ち株比率。

 政府は、外国企業の日本への誘致に向けた五つの約束を初め、安倍内閣は外資を直接的、間接的に呼び込むことに力を注いできたんだと思うんです。ゼロサムゲームとは言いませんけれども、自国企業が衰退して、外資企業が日本にどんどん入ってくる国が本当にすばらしい国なのかどうかということなんです。国際的な優劣は別として、やはり国内で製造、サービスを提供できる企業がいっぱいあるわけですよね。

 今申し上げたように、国の安全だとか公の秩序にかかわるものは外為法だとかその他の法律で規制しているんですけれども、今部長から御答弁いただいたように、努力していますということで終わっちゃっているんです。では、私が羅列させてもらった企業はどれだけ国の安全にかかわっているのか、かかわっていないのか、判断できますかということなんです。

 だから、先ほどドイツの例を引き合いに出しましたけれども、日本は法律がきちっと整備されていてやっているんですと言いながらも、なぜ外資がこれだけ企業の株を持っているんですか、大丈夫なのかなということなんです。

世耕国務大臣 今御指摘の、確かに最近、製造業でも、外国人の持ち株比率が非常に多い企業が大分目立ってきています。これはかなり有名な、我々は当然日本の企業だろうと思っていたら、もう過半数は外国人株主が持っているというケースがあると思います、ちょっと個々のケースはまだよくわかりませんけれども。

 ただ、これは誰か一人が過半数を握っているという感じではなくて、例えば年金基金とかあるいは投資ファンドといった機関投資家が七、八%ずつ持っているというようなケースが多いんじゃないかというふうに思います。この人たちは、別にその企業をばら売りしようとか、技術を海外へ持っていって売っ払おうというようなことを考えているよりは、その企業がしっかり成長をして、そして株価が上がって、それでリターンを得たいという健全な投資家がほとんどだと思いますから、私は、必ずしも外国から投資が行われることが全部ネガティブだというふうには考えません。私は、ある程度外国のお金を呼び込みながら、それをエネルギーにして日本企業が成長するということも非常に重要だと思っています。

 ただ一方で、今御指摘のように、安全保障にかかわる技術とか、日本の将来にとって革新的な、この技術を押さえておかないと、これをよそにとられたら大変だというような技術についてはしっかりと守る手だてを考えていかなきゃいけないと思いますし、例えば、勝手に営業秘密を海外へ持っていくなんということは不正競争防止法でとめることができますし、軍事転用可能な技術の国外移転については外為法でとめることができますし、さらに、常日ごろ、我々も産業界としっかりコミュニケーションをして、どういう技術を守るべきなのか、あるいはどういう企業から買収のオファーがあったときには気をつけなきゃいけないのか、そういう情報交換というのはよくやっておく必要があるだろうというふうに思っています。

鈴木(義)委員 持っている技術がそういうものに転用できるかできないかというのはわからないんです。過去に、ダイナマイトをつくって、平和利用してくれといってノーベル賞をつくっているわけです。原子力発電所も同じでしょう。クローン羊のドリーちゃんも同じです。

 科学者とか研究者というのは、こういう視野を持っていなくて、こうだから、いろいろなことを発明、発見ができるんですね。それを抱えている企業が、どれが当たるかわからない。中国みたいなところは、いろいろなところの国の株を買って傘下におさめようとしているわけですよ。だから、防衛していくなり、少し予防するような考え方を持たないと。

 確かに、世耕大臣のような方ばかりが世の中にいっぱいいらっしゃるんだったら、全然摩擦も起きなければ、ドンパチも起きないんだと思う。でも、現実に起きているんですよ。だから、日本の国内だけでも少しはシビアに見ていった方がいいんじゃないかということなんです。

 東証の株を売買して利益を上げているのは七割が外国人投資家だと聞くわけです。本来、株を持つということは、その企業に投資して配当をもらうことが資本主義の考え方だったんだと思うんです。今は、短期間、それも一日だとか数時間で利益を上げちゃう人もいるんでしょう。数秒で莫大な利益を手にすることができる時代。それをもっともっとやろうという人もいれば、いや、この辺にしておこうぜといって、この間も何か政府が見解を出したような記事も見たんですけれども、やはり日本の株を継続的に買ってもらって持ってもらう。

 例えば、バブルの経験から、不動産取引には厳しい規制がかけられているわけです。五年までの短期の売買に当たって利益が出た部分に関しては七〇%か七五%、もっと高い金額だったと思うんですけれども、税金をかけています。長期で持っていて利益が出た場合は税率をぐっと下げたりして、バブルが起きないような規制をかけたんです。

 なぜ、株や投資しているものに関してそういう考え方を取り入れられないのかということなんです。日本の企業を応援してもらいたくて株を買ってもらう、それで投資を呼び込む、だったら、一日でも長く持っていてもらうように誘導していけばいいじゃないですか。

 昨年の四月に、トヨタ自動車が、五年以上株を持っていたら少しサービスをしますよという株を売り出すんだ、これが新聞の、たしかテレビでもニュースになっていたと思います。企業がそういうふうにやり始めるんだったら、その後押しをするような制度をつくっていった方が、日本の企業は安心して、企業買収だ何だってやられなくても、技術を研ぎ澄ませていくことができるんじゃないかと思うんですけれども、その辺について、お考えがあればお聞かせいただきたいんです。

世耕国務大臣 まず、高速取引については、これは金融庁とかあるいはSECとか東証、そういったところがこれからいろいろなルールを考えていかれるんだろうというふうに思います。これは経産省としてはコメントを控えさせていただきたいと思います。

 ただ、政府として、株を何年以上保有しろとか、そういう規制を入れるのは、ほかの海外のマーケットとの比較とか、日本への投資を促進するという意味では、私は余りプラスにならないのではないかというふうに思います。

 逆に、トヨタさんがやっておられるように、企業自身が長期に持ってもらえるようないろいろな努力や取り組みをすることの方が適切だと思いますし、そもそも、企業の業績がしっかり上がっていて、成長していて、この企業は持っているとどんどん成長していくな、慌てて売るよりもしっかり持っていよう、配当もしっかりくれるな、企業自身がそういうふうになるということが私は本質ではないかというふうに思います。

鈴木(義)委員 なかなか日本政府としてはできないのかもしれませんけれども、別に外国の人たちに喜んでもらうような制度を日本がする必要もないんですよ。日本は日本でいいんですよ。だから、すばらしい国だなとか、ああ、行ってみたいなという憧れの国に今まで以上にしていくようにすればいいので、別に、アメリカの人に褒められたから、ヨーロッパの人に褒められたから、中国の人に褒められたから日本を運営しているわけでも何でもないんだと思うんです。

 ちょっとそこのところが違うような気がするんですけれども、もう一回御答弁いただければありがたいです。

世耕国務大臣 何も海外の人に喜んでもらうための政策をやっているわけではない。

 確かに、東京証券取引所では、外国人投資家の比率が高いのは事実だと思います。これは、外国人投資家が来ていることが悪いのではなくて、やはり日本の個人投資家とか日本の企業が株式に投資をする量がまだ少ないんじゃないか。やはりバブルの崩壊の経験がありますから、株の投資は非常に怖いと思っている、そういうところのイメージを変えていく必要がある。

 どうしても、株への投資というと、いわゆる投機的に売ったり買ったりとかいうイメージになるんですが、逆に、これは企業に対する投資を通して社会全体を成長させていく、あるいは社会全体をよくしていく、今そういう考え方になっています。投資家も責任が問われるようになっていて、国連でESG投資という、環境、社会、ガバナンスに配慮した投資をしっかり行いましょう、そういう企業じゃないと投資をしないとかという動きも出てきています。

 ですから、必ずしも外国人のためにやっているわけではないですけれども、一方で、外国人だからだめだというのではなくて、もっと、外国人も含めて、自由で活発な株式市場をつくっていくことが重要ではないかというふうに思います。

鈴木(義)委員 結局、株で売ったり買ったりしてもうけを出すような金融経済を、今、私の見方ですが、実体経済と金融経済がどんどんどんどん乖離しているんです。バブルを起こすのも金融経済。バブルがはじけるのも金融経済。一番困るのはこの人たちじゃないんだ。実体経済で生活したり仕事をしている人が困っているんだ。だから、そっちを助長させるようなことをいつまでやってもしょうがないんじゃないかという考え方なんだ。だったら、五年なら五年、長く持ってもらえるんだったら、五年以上持ってもらえれば、税金を一〇%じゃなくて五%でもいいでしょう、短期で売買するんだったら三〇%、五〇%利益を下さいねと言ってもいいんじゃないかと思うんです。

 だから、いつも翻弄されるんです、金融経済の人たちに。景気は必ず上がったり下がったりしますから、いつも困るのは、現場で働いている、また中小企業、そういう人たちが困るわけですよね。そこのところをよく考えて、やはり方向をちょっと出してもらうだけで違うと思うんですね。

 日本の景気と雇用体制が改善されない根本の理由の一つに、日本が先進国になったことで、貨幣価値が安い国の労働者が労働力として使用されて、貨幣価値の高い日本が、海外の安い労働力が購入されて、国内の価格の高い労働者は使用されないのが原因だというふうに述べる人もいるわけですね。まさに、海外の製品を製造している労働者と同じような製品やサービスを提供している企業や経営者が競争に追いやられている。仕事がふえず、賃金が上がらず、大企業を中心にしたところだけが利益を得ているのが現状であるんじゃないかと思うんです。

 この状態が改善されない限り、先ほど大臣が答弁の中でおっしゃられたように、下請法を改正するんだから、これできちっとうまくいくんです。でも、私も下請の仕事をやっている一人ですけれども、お客さんに、これはおかしいですよと言えば、二回目、仕事は来ないよ。これが現実の話です。法律を幾ら整備したからといって、ないよりはあった方がいいんです。でも、それを整備して、うちのお客さんに、おかしいよ、随分俺たち頑張っているのに、もう少し利益をもらったっていいじゃないか、それを言った途端に、ああ、もう要らないと。それは、今も昔もこれから先も同じだと思いますよ。

 そういう状況で、賃金がふえない。先ほど申し上げましたように、ふえているというふうに言ったり、雇用がふえているという話を大臣はされるんですけれども、やはり消費購買力が上がっていかない。だから、それがいい循環に回っていかないのが現状だと思うんです。

 これは一つの考え方で、これはお尋ねしないのですが、私が思うには、戦後七十年たった今も、戦後の考え方の社会構造が変わっていないんだと思うんです。

 一つは、人口増加する社会の考え方をずっと踏襲してきている。事件や事故が起こったりすると、社会の中に規制をかけるために法律を制定して、企業や国民にそれを従わせる制度をつくっているんです。私たちがそれは賛成するか反対するか。

 しかし、許認可制度を取り入れると同時に、国が一定要件を満たした者に資格を与えてきたんです。それをもとにして、条件が整えば許認可、届け出制度にして仕組みをつくってきたんですけれども、ある資格は社会的ステータスが高く評価されて、その収入も高収入となって、誰もがそれに憧れ、資格を取るために大学へ進学して就職しているのが現在だと考えるんですね。しかし、理容業や美容業、柔道整復師を初め、士業と呼ばれる先生方、弁護士さんだとか公認会計士さん、税理士さん、仕事自体に供給過剰の波が襲ってきているんじゃないかという考え方です。

 結局、需要がなくて、毎年毎年、何千人、何万人供給していくわけです、許認可をとらせるために、資格を取らせてですね。ですから、一人で百人のお客さんがいたのが一人で十人のお客さんになれば苦しいんですよ。その制度を全体的に見直していかないと、みんなが、仕事がないない、景気が悪い悪いというのがこれから先も続いていくんじゃないかと思うんです。

 もともとのパイが縮小している中で、そこで働く人がどんどんふえてきてしまっている業種、業態がいっぱいあるんです。だから、そこで競争になって、賃金が上がらない、仕事がない、こういう話なんですね。

 社会主義みたいな考え方は私は取り入れてほしくないんですけれども、それであれば、資格制度を少し絞っていくことも考えていかなくちゃいけない時代が来ているんじゃないかなと思うんですけれども、お考えをお聞かせいただければ。

世耕国務大臣 確かに、そういう御指摘の問題はあると思っています。

 特に、我々は、司法制度改革で、弁護士の司法試験の合格者、ロースクールを導入して、それを卒業すれば割と合格しやすくするということで、ばっとふやしましたけれども、これもいろいろ、逆に需要の方の開拓ということを行ってこなかったということで、弁護士の資格は取ったんだけれども、なかなか仕事がないという人がふえたというような実情もあるわけであります。

 仕事というのは、これは士業だけではなくて、一般の方も需要と供給のバランス、アンバランスというのはいつも起こってくるわけであります。

 例えば、ものづくりに携わっている方々も、これからIoTでロボットが入ってくると仕事がなくなるかもしれない。そういった中で、士業の人も含めて、きちっとした雇用の流動性、この仕事はなかなか、もう仕事がないなとなれば、例えばもう一回学び直して別の分野で勝負をするとか、そういう社会にしていくことが一つの解決策なんじゃないかなというふうに思っております。

鈴木(義)委員 では、実際にそれを学び直すような社会の仕組みができているかといったら、できていないんだよね。都道府県がやっている高等専門学校なんかもそうですよね。旧態依然としたやり方をずっとしてきている。

 その仕事も大事なんですよ。だから、学んでもらおうという。ニーズがあるからやっているんです。でも、そこを弾力的にやっていくような仕組みをつくらないと、そのときに考えたからできるとか、これはやるとかやらないとかじゃなくて、何かの基準に合わせてそれをやれる仕組みをつくっていかないと同じことがどんどん起きていくと思います。

 一つは、先ほど大臣がおっしゃられたように、一つ目が供給過剰じゃないかと言われている。もう一つが技術革新、これは先々週も議論させていただいた。インターネットの技術が発達したことであらわれた、グーグルやヤフーやアマゾンなど数々のスター企業が誕生したんです。確かにいい面が強調されて、それでIoTだとかAIだとかという方向に進んでいこうとするんですね。でも、その反面、多くの人から仕事を奪ってきた面もあると言われているんです。三つ目、消費者自体の行動の変化が影響を受けているので、ネットを使ってすぐに全国で一番安いお店を探すことができるようになったと言われているんです。

 私も、価格ドットコムをたまに使うんです。同じものだったら安い方がいい。それだけインターネットを使うことによって、今まではある程度の商圏があったものが、全国展開、下手をすれば世界から物が取り入れられるような時代になったときに、それは確かにいいことなんでしょう、消費者にとっては。それの裏返しとすれば、今までやっていた小売店の人たち、飲食店の人たちは商売にならなくなっている。それに付随した製造業の人たちも、やはり商売にならなくなってきているんですね。

 ですから、こういった表裏の関係にあるようなことについて、まず初めに、御所見があればお聞かせいただきたいと思います。

世耕国務大臣 技術革新には必ず光と影の部分というのがあるんだろうというふうに思います。

 影の部分ということでいえば、こういうEコマースが進むことによって、確かに既存の小売の人たちは非常に商売がやりにくくなっただろうと思います。

 私も、自分のことを考えると、ほとんどネットで買い物ですね。忙しくてリアルの店舗に行っている時間がありませんから、必要なものはほとんどネットで買っているという状況で、最近、妻が専業主婦になりましたので、少し、かわりに買い物してもらっているところはありますけれども、やはりそういう影の面というのはあると思う。

 ただ、やはり一方で、例えば、今まで地方に住んでいて買うのを諦めていた人が、ネットを使うことによって買えるということで、逆に販売の数がふえてきているという面があるかもしれません。あるいは、では、そういったところに、地方の商店がもうリアルで売るのは諦めて、このEコマースへ乗っかっていく、今までは自分の周辺の人にしか売れなかったのが、Eコマースで、逆にアマゾンとか楽天に乗っかることによって、全国の人に自分のところで販売しているものを売ることができる、そういう光の面もあるんだろうというふうに思います。

 我々としては、そういうEコマースに参加をしている中小の店舗とかが不当な扱いを受けることがないように、これはよく見ていく。例えば、出店料を非常に高く取られるとか、ある日突然サイトを閉じられるとか、そういうことがないように、公取とも連携しながら、目を光らせていくのが、これは政府の役割ではないかなというふうに思っています。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 今やはり問題にしなくちゃいけない、光を当てなくちゃいけないというのは、その影の部分に光を当てなくちゃいけないんだと思うんです。できる人はどんどんやっていくんです。今景気がよくならないのは、結局、そっち側にいる、光が当たっている人たちは別に自分たちでやっていくんです。そうじゃないところをどうするかという話だと思うんですね。

 結局、これは二年前にオックスフォード大学で、あと十年で消える産業、なくなる仕事、これが話題になったんだと思うんです。これは、ずらずら言うと時間がないので、クリエーティブエコノミーの時代を切り開いていかれるような人しか仕事がないんじゃないか、人口が減少して、現場の労働者が減少していく中で、そこをロボットにかえていこうという話なんだと思うんですね。そうなっていきますよと。

 ただ、全部の人間が高度なクリエーティブのエコノミーとして仕事ができるほどスキルを上げられるかという問題が出てくるわけです。そうすると、私たち人間は、おなかが減った、眠いな、疲れたな、一杯飲みたいな、こういう話になるんです。機械は全然それを言わない、やり続けるんです。

 だから、今からあと八年しかないというふうに思うか、いや、十年も二十年も先の話なんだよというふうに考えるかで違ってくるんですけれども、でも、そのパンドラの箱はあけたんですよ。だから、どこまでをしましょうかというルールづくりを早目にしていった方がいいんじゃないかという考え方です。

 それと、そのスキルを身につけられなかった人間にどういう仕事をしてもらうのか。だから、そこはやはりルールづくりだと思うんです。そこのところを今からでもいいからやり始めないと、スキルが身につかない人間もたくさんいるわけです。

 だから、光の部分と影の部分でいえば、影の部分にどこまでの光を当てるかというのを、今大臣のお考えがあれば、お聞かせいただきたいんです。

世耕国務大臣 今の小学生が将来就職するときには、六五%は今ない仕事に就職するだろうというふうに言われている、それぐらい、変化の時代だというふうに思います。そういう意味で、やはり初等中等教育段階から、そういった時代の変化に対応できるような教育をやっていくということがまず一つ。

 そして、既に社会に出ている人間あるいは我々の世代のような人間がもう一度学び直して新たなスキルを身につけるようにすることも重要だと思いますし、あるいは、ITに十分に対応できない、例えば小規模事業者に対しては、これは国が逆に支援をして、ITを利用したいろいろなビジネスができるようにするということも一つの知恵だと思います。

 また、一方で、今ネット通販とかあるいは量販店とかが出てきている中で、地方で、これはこの間私も読んだおもしろい取り組みですが、電器屋さんですね、もうはっきり言って売れない、ところが、ここは新たな取り組みで、会員制にして百人ぐらいしか面倒は見ない、定価でしか売らない、ただし会費を払ってもらって、そしてその会費を払ってくれた百人の会員の人には徹底的にサービスをする、言われたらすぐ行って使い方を教えてあげる、ちょっとでもぐあいがおかしくなったらすぐ見てあげるということをやった結果、きちっとその電器屋さんは存続をしている。

 こういうアイデアもいろいろあるというふうに思いますから、教育をしっかりやるということと、また、いろいろな、こういう時代だからこそ、逆にそれを逆手にとったビジネスのアイデアというのが出てきて世の中が活性化していけばいいなというふうに思っております。

鈴木(義)委員 もう時間が来ていますので。

 人間はやはりいい人ばかりじゃないということですね。悪意のある人間がいるんだということなんです。今からAIをどんどん進めていくときに、悪意のある人もその世界に入ってくる。だから、どこでとめるかとか、どこまでにさせるかというのを早目に方向を出した方がいいんじゃないかという考え方なんです。ぜひ御検討いただければありがたいなと思います。

 以上で終わります。

浮島委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民進党の落合貴之でございます。

 本日は一般質疑ということで、先ほども、鈴木委員も前段で取り上げていましたが、原発について、そして再生可能エネルギーについてなど、電力の関係の質問を中心にさせていただければと思います。

 まず、今回の質問に当たりまして、経産省や資源エネルギー庁の皆様から、さまざまな問題について何回もレク、説明をいただきました。お礼を申し上げたいと思います。

 まず初めに、ここ数カ月ですが、鹿児島でも、それから新潟県でも、知事選挙で、原発再稼働に慎重な候補が知事として当選をいたしました。私の地元の世田谷も、電力の生産地ではなくて消費地なんですが、原発に対する関心は高くて、区長選挙でも脱原発が争点の一つになってしまうというぐらいでございます。

 やはり、あの二〇一一年の福島の事故のようなそういった事故は絶対に二度と起こしてはいけないという声は、国民みんな持っている、多くが持っているものだと思います。これから原子力行政を進めていく上では、やはり原発の立地している住民の理解にプラスして消費者の理解も深めていくという努力が今以上に必要である、二〇一一年以降は今まで以上に求められるというふうに思います。

 そこで、まず、新潟県の知事選挙でも話題になっていましたが、福島の原発事故の総括についてでございます。

 これは、まず事故が起こった直後から、東京電力が自前で原因究明を行ってきています。それから、政府でも国会でも事故調が立ち上がって、報告書も提出をしています。そういったものがもとになって新規制基準ができました。これはある意味で反省に立って行動をしたわけですけれども、そういった結果によって、今までの規制よりかは厳しい、世界最高水準と言われるような規制基準ができたわけでございます。

 しかし一方で、今まで、原発はここを少し規制を強めた方がいいんじゃないか、こういうリスクがあるんじゃないかということも国会でも取り上げられてきたわけですし、そういう声があったにもかかわらず、今の新しい規制基準のような基準がなかったことに対する責任というのは一体どうなってしまったかということでございます。

 今まで厳しい規制基準をつくらなかった責任、福島の事故もそういったことも一因になって起こってしまったかもしれない、こういった今まで原発行政に携わってきた行政側の責任というのは問うべきではないでしょうか。

世耕国務大臣 我々は、福島第一原発事故のような悲惨な事態を防ぐことができなかったことに関しては、本当に深い反省をひとときたりとも忘れてはならないというふうに思っています。担当大臣として、エネルギー、原子力政策を進めていくに当たっては、常にこのことを胸に深く刻んで当たっていきたいというふうに思っています。

 そして今、その反省に立って、独立した原子力規制委員会が設置をされ、福島第一原発の事故の教訓を踏まえて、IAEAや諸外国の規制基準も確認をし、そして我が国の自然条件の厳しさなども勘案をして、世界最高水準の新規制基準を策定したわけであります。

 事故以前も規制基準というのはあったわけでありますけれども、やはりそこにあぐらをかいてしまったというか、これで大丈夫だろうと思ってしまったことが私は本質ではないかというふうに思っておりまして、今も世界最高水準の新規制基準とはいいますけれども、これは規制委員会でやっていただく仕事になりますが、常に不断の見直しをして、より安全なもの、より安心できるものにしていくということこそが福島第一原発の反省に立った行動ではないかというふうに思っております。

落合委員 反省に立った行動、これは理解ができますし、しっかりと規制基準もどんどん強められているということはわかるんですが、過去の行動、過去の規制、これで大丈夫だと思っていたということの責任というのは問うべきではないでしょうか。

世耕国務大臣 やはり胸に刻んでいかなければいけないということに尽きるというふうに思います。

落合委員 胸に刻む、そして反省をして、ひとときたりともその反省を忘れない、これは重要だと思いますが、どうしてこういう基準で原発は安全だというふうにされてしまっていたのか、この究明も大切であると思います。

 ここまで踏み込む、そういった御決意はありますか。過去の責任までさかのぼって追及をしていくというようなそういった御決意はございますでしょうか。

世耕国務大臣 過去の総括については、これは、国会事故調、政府事故調、あるいはいろいろな場で行われていると思います。また、責任の追及という点でいけば、これはもう既に裁判になっているような件もあるのではないかというふうに思います。

 我々としては、今、過去の責任というよりは、まず未来へ向けて、この福島第一原発事故の深い反省に基づいて万全な安全対策を常に進化させながらとっていくということ、これが我々の責任だというふうに思っております。

落合委員 これは、裁判などを通してでも、電力会社の責任というのはどんどん追及が過去のものについてもされてきております。しかし、原子力行政という性質上、一番初めに主導してきたのは行政の色が濃いわけでございまして、やはり我々政治の人たちやそれから行政にかかわっている人たちが過去何が間違いであったのかをしっかりと明らかにしていかなければ同じ間違いを繰り返しかねない、そのように私は思います。

 これは先ほどもありましたが、国策民営という言葉が原発については使われてきた、こういう歴史もあります。やはり行政や政治の責任というのを明確にするべきだということを言いまして、私の次の質問に移らせていただきます。

 こういった事故から見ましても、一たび原発がこの前のような事故を起こしてしまえば、福島以外のところでもそういった事故が起これば、日本の国土の利用を大きく変えなければいけないというような事態も、もう一回ああいうような事故が起こってしまったら起こり得ると思います。東日本でああいう事故が起こって、例えば西日本でも同じような事故が起これば、これは国土の利用に大きな障害を起こすものであると思います。

 こういった大きな事故が起こって、電力会社の責任をどんどん追及していく。しかし、こういった国土の利用にも大きな影響を及ぼすような事故を一電力会社の責任だけで片づけていいのかという問題があると思います。

 やはり原発を、エネルギーミックス、二〇三〇年で二割ちょっとというふうに出していますけれども、維持していく、再稼働を進めていくのであれば、これは国の責任もより明確にしていくべきではないでしょうか。大臣、いかがですか。

世耕国務大臣 これは、IAEA、国際的な取り決めとして、この原子力発電というのは、民間事業者がそれぞれの会社の経営、投資判断に基づいて設置し運営するものだというのが国際原則であります。

 しかし、我々は、ではそれで民間が勝手にやっていいと言っているわけではなくて、これは、規制委員会が新規制基準を厳格に決めているという形で安全を確認するということをやっているわけです。

 私はこの間伊方の原発を見てまいりましたけれども、それはそれはもう、電力線は三重に入っていますし、バックアップの電源車も非常に冗長性を持って配置をされている、しかもばらばらに配置をされて、さらに置く高度もそれぞれ変えていて、どんなことが、海から何かが来ても山から何かが来ても電源が絶対生き残るようなそういう対策をとる。そういうことも、これはまさに規制委員会という、政府からは独立していますが国の機関が関与をして、そういうルールを決めているわけであります。

 そして最後、こんなことはもう絶対に二度とあってほしくはありませんけれども、万々々が一事故が起きた場合には、これは国として、国民の生命財産を守ることが重大な責務であって、関係法令に基づいて責任を持って対処することになります。そういう意味では、国も決して逃げていたり、完全に民間に任せているわけではなくて、国としてやるべきことはきっちりやっていくということだと思います。

落合委員 今まで、三・一一の前でも原発のリスクというのは言われていて、同じように、国がちゃんと基準をつくっていますということも言われていたわけでございます。これから、国が規制基準を厳しくしていこうとプレッシャーをかけてどんどん規制基準を高めていっても、やはりリスクはゼロにならない。

 そういった中で、大臣がおっしゃった、万々が一事故が起こることもあり得る、こういったことを起こさないためにも、やはり国の方でも誰が責任を持つのか、そういった意識が、国にも責任がある、行政にも責任がある、政治家にも責任があるということが明確でない状況であってはならないと思いますので、このところはぜひ大臣も強くプッシュをしていただければと思います。

 原発でこういうことがあった。福島で起こってしまいました。福島に関する政策の中で、大臣は所信の中で、福島を未来のエネルギー社会を切り開く先駆けの地とすべく、新たな社会モデルの構築に取り組んでまいりますというふうに表明をされています。これは、具体的にはどのようなことに取り組んでいかれるつもりなのか、お聞かせください。

世耕国務大臣 今委員御指摘のように、福島を再生可能エネルギーあるいは未来の水素社会を切り開く先駆けの地とすること、これを目指して、まず、ことし九月七日に福島新エネ社会構想を決定させていただきました。

 そして、その構想における具体的な施策としては、代表的なものを四つ申し上げます。

 まず一つは、福島での再生可能エネルギー導入拡大のために、阿武隈山地、福島沿岸部の送電線の増強を支援する。これは、風力発電とか太陽光発電を行った場合に、送電線が細ければ意味がありませんので、これからこの福島で発電をする再生可能エネルギーをしっかり届けていけるような送電線を充実させるということ、これが一つ。

 二つ目は、再生可能エネルギーを活用して、燃料電池自動車一万台分に相当する水素をつくっていきたいと思っています。これは、太陽光とか風力のエネルギーを活用して水素をつくるということであります。そして、それをつくって、福島県だけではなくて、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピックで象徴的な利用をして世界の人に見てもらうということも考えております。

 そして三つ目は、新地町、相馬市、浪江町、楢葉町を初め、福島でスマートコミュニティーの構築を支援していく。

 そして四つ目が、経産省及び関係府省庁における再生可能エネルギー等の実証研究プロジェクトなどを福島で集中的に実施する。

 こういったことをやりたいと具体的に考えております。

落合委員 これは、具体的に予算等もついていくでしょうから、私も今後注視をさせていただきたいと思います。

 それでは、先ほど鈴木委員も取り上げましたが、廃炉費用の問題について取り上げさせていただきます。

 今、福島第一原発の廃炉作業が日々進められております。そして、全国でも幾つかの老朽化した原発を廃炉にしようという決定がされております。

 この原発の廃炉費用は誰がどうやって負担するのか、現時点での検討状況で結構ですので、お知らせください。

村瀬政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、原発の廃炉につきましては、事故炉であるか通常の廃炉であるかにかかわらず、原子力事業者がみずからの責任で行うというのが大原則でございます。

 その上で、通常、廃炉費用につきましては、事業者が、電気事業法に基づきまして、解体引当金ということで毎年度一定額を積み立てていくことが義務づけられているところでありまして、その費用は事業者が負担するということになってございます。

 一方、廃炉に伴って一時期に巨額の費用が発生することで、事業者による廃止措置の円滑かつ安全な実施に支障を来したり、事業者の合理的な廃炉判断をゆがめることがないように、廃炉に伴う簿価の減損等が生じます場合には、これを分割して費用計上できる会計制度を措置しているところでございます。

 全面自由化が始まり、規制料金がなくなる中で、原発依存度低減のために措置した会計制度を自由化のもとでも継続するといった観点から、外部有識者による審議会において、費用回収の枠組みも含めて、具体的検討が進められているところでございます。

 また、福島第一原発の廃炉費用につきましては、発災事業者である東京電力が負担するということが大原則でありまして、溶け落ちた核燃料、いわゆるデブリと言われているものの取り出しを控えまして、廃炉費用の増加の可能性が指摘される中で、国民負担を増加させずに東電に資金を確保させる制度措置が可能かといったようなことなどの観点から、外部の有識者の参加を得た審議会において徹底的に御議論をいただいているという状況でございます。

 いずれにいたしましても、現時点で何らかの方向性が固まっているものではございません。徹底的に検討した上で、国民が納得できるような解決策を見出していきたい、このように考えているところでございます。

落合委員 今の説明ですと、通常の廃炉について積み立てが行われております、それから、債務認識のことだと思いますけれども、一気に不良債権のような形にならないように、不良資産にならないように会計制度も改めていきますということ、それから、事故のあった福島第一に関しては、恐らく、東電の改革を行って国民負担がふえないようにしていきたいと思いますということだと思います。

 そういった中で、それでも廃炉費用が足りなかった場合、これは何らかの形で国民負担を求める可能性があるということでよろしいですね。

村瀬政府参考人 若干繰り返しになりますけれども、現在、審議会で徹底的な議論をいただいているところでございます。

 その中で、できる限り国民負担の増加につながらない形での解決策がないかといった観点も含めまして、適切な制度のあり方について御検討いただいている、このように承知しているところでございます。

落合委員 徹底的な議論、国民の議論、専門家の議論という中で、実際には、こういう結論に持っていきたいというようなものを用意していることもいろいろな分野であると思います。

 これは昨年の平成二十七年三月に、総合資源エネルギー調査会の電力・ガス事業分科会の電気料金審査専門小委員会廃炉に係る会計制度検証ワーキンググループが「原発依存度低減に向けて廃炉を円滑に進めるための会計関連制度について」というものを取りまとめております。

 これを全部拝見させていただきましたが、後ろの方に「将来の扱い」という章がありまして、その中に、こういったことを踏まえて、競争が進展する中においても総括原価方式が残る送配電部門の料金(託送料金)の仕組みを利用し、費用回収が可能な制度とするというふうに書いてあります。

 これは、具体的にどのような制度を想定してここに記載されたんでしょうか。

中川大臣政務官 落合委員が御指摘の報告書においては、廃炉を円滑に進めるに当たって、廃炉に係る費用について、当面の間は小売部門の規制料金の原価への算入を認める、二〇二〇年ごろまでは小売規制料金での購入ができることとしているんですけれども、自由化が進められる中で、この会計措置を継続するために、将来的には、総括原価方式の料金規制が残る送配電部門の料金の仕組みを利用いたしまして費用回収を行うことを提言しております。

 具体的な制度設計については、適切なタイミングで検討がなされるべきとされておりまして、現在、審議会におきましても御議論いただいている段階でもあります。

 現時点で何ら方針が固まっているということではなくて、外部の有識者の意見をいただきながら徹底的に検討した上で、国民が納得できるような解決策というものを見出していきたいと存じております。

落合委員 ですから、これは有力な案だというふうに捉えてよろしいですね。

村瀬政府参考人 今、政務官の方から御答弁いただいたとおりでございますけれども、先ほど御指摘いただいた報告書においては、小売規制料金の中でこれを手当てするということになっていて、全面自由化の中で、規制料金がいわゆる送配電部門の料金だけになるという中では、この仕組みを利用し費用回収を行うということが提言されているということを踏まえて、今審議会で議論をしているという状況でございます。

落合委員 ちょっとまどろっこしくなってきてしまいましたが、要は、これが一つの具体的な案として俎上にのっているということであると思います。

 託送料金という言葉が出てきておりますが、これは改めて伺いたいんですが、託送料金というのはどういった料金であるというふうに政府は考えているんでしょうか。

中川大臣政務官 託送料金というのは、小売電気事業者が送配電ネットワークの利用料金として一般送配電事業者に支払うものであって、それぞれの電気の需要家が電気料金の一部として負担しているものだと考えております。

 一般送配電事業者に対して、供給区域における独占を制度的に認める一方で、電気の使用者の利益を保護するため、託送料金などの供給条件を定める約款について、経済産業大臣の認可を受けることとなっております。

落合委員 そういった点からいいますと、特定の電源のための費用を託送料金に乗せるということは、極めて例外になると思います。もしこれをやるのであれば、本当に徹底的な議論、それから、消費者が納得するようなそういった話にならなければならない、それから、国会でもしっかりと話し合いが行われなければならないというふうに思います。

 大臣は、こういった競争市場をつくっていく、電力自由化のような競争市場をつくっていくというようなことにはある程度前向きで、専門家であるというふうに思いますが、やはり、託送料金というのは電気の小売事業者が送電会社に払う料金でございますから、今申し上げたように、特定の電源の費用を偏って徴収していたら、これは公平公正ではないわけでございます。

 まず、電気事業法改正案、去年審議がされましたけれども、その中で、送電業者は公平公正であるということを経産省、エネ庁は何度も何度も説明をしてきました。確認させていただきたいんですが、この方針は変わらない、送電業者が公平公正であることは変わらない、そして託送料金も公平公正であることは変わらない、それは変わりませんね。

村瀬政府参考人 御答弁させていただきます。

 託送部門の公平性、中立性が確保されなければいけない、この点について何ら変わりはございません。

落合委員 先日、ケーブルの火災もありました。そういったメンテナンスに本来託送料金は使われるべきでございますし、また、電力自由化の中で、ITのシステムというのが大変重要になってくると思います。そのために、託送料金というのは実は大変重要な料金であるわけでございます。この料金の徴収のシステムがゆがめられてはならないということをここで申し上げさせていただいて、次の質問に行きます。

 この廃炉費用自体が、今議論をしているでしょうけれども、幾らかかるのかということが、まず見積もりがなくてはならないというふうに思います。なぜなら、廃炉費用が幾らかがわかっていなければ、自助努力で払えるかどうかもわからないからでございます。

 これは、徹底的に議論をするということにおいて、この廃炉費用をどのように見積もっているんでしょうか。

中川大臣政務官 落合委員御指摘のとおりだというふうに存じます。

 廃炉費用というのは、例えば、福島第一原子力発電所の廃炉費用につきましては、今、有識者による試算というものを行っておりまして、国の制度的な対応と東電改革の具体的な姿とともに、年末をめどに提示をすることとしたいと考えております。

 なお、通常の原子力発電所における廃炉費用については、解体引当金制度に基づきまして、廃炉時に発生することが見込まれる廃棄物の量などを合理的に見積もった上で、個別の原子炉ごとに算定を行ってまいりたいと考えております。

落合委員 この廃炉費用が試算の途中ということですが、途中であるのであれば、廃炉費用がわからないのであれば、負担をどうするかという問題も議論できないと思うんですが、大体これぐらいだという見積もりというのはどうなんでしょうか。

中川大臣政務官 お答えさせていただきます。

 現時点での見積もりということで御質問がありましたので、例えば、小型炉については大体三百六十から五百億円程度、中型炉で四百五十から六百五十億円程度、大型炉で大体五百八十億円から八百七十億円程度となっております。

落合委員 その一般的な廃炉費用に鑑みて、今、廃炉が決まっているもの、それから福島にどれぐらいかかるというふうに試算されているんでしょうか。

世耕国務大臣 福島の廃炉費用ということについては、はっきり言って、今、出ておりません。先ほど政務官がお答えしたように、年末をめどに提示することをしたいと思います。

 ただ、金額が決まっていないとなかなか東電改革の議論ができないだろうというお話であります。

 今は、年間ベースで、非常に粗い数字ではありますけれども数千億円程度の資金確保が必要となる前提で、東電をどういうふうに改革していけばいいかということを御議論いただいています。

 ですから、この辺は、最終的に国の制度的な対応とそして東電改革の具体的な姿とセットで、福島第一原発の廃炉費用というのはしっかりとお示しを年末にはしていきたいというふうに考えております。

落合委員 今のところ、そういった細切れのものしかわからないというような形です。

 ちょっと伺いたいんですが、週刊東洋経済の十月二十二日にこうあります。電力システム改革の貫徹と題した経済産業省・資源エネルギー庁の内部資料によれば、福島第一原発の廃炉費用を総額八兆と想定、中略しまして、さらに原発事故被災者への賠償費用、ほかの電力会社のものを含む通常の原発の廃炉費用やその解体費の上振れ分を含むお金が八・三兆かかるという見積もりが算段されて、その紙が、有力な政治家には説明に回っているというようなことなんです。

 今、見積もりはないと言っていましたが、実際にはどうなんですか。

世耕国務大臣 当然、いろいろなレベルの事務方がいろいろと計算はしているだろうと思います。少なくとも私のところには、そういう上がってきているというような数字、大臣が局長クラスや事務次官たちと議論をするようなレベルでの試算というのは全く存在しません。私がもしかしたら有力政治家ではないのかもしれませんけれども。少なくともそういう段階ではない。それはもちろん、いろいろな事務的な計算はいろいろな事務方がやっているかもしれません。

 その東洋経済だけではなくて、複数の報道に紙が出ているわけですが、それは一体どういう紙かというのは、はっきり言って私もわかりません。

落合委員 私も役所の方々に、あらあらでもいいから出してくれ、非公式でもいいから勉強のために出してくれというふうにお願いを何回もしたんですが、出していただけませんでした。廃炉費用は表にまだ出せない、年末になりますと。

 過程がわからないまま、年末にぼんと発表して、これで決まりましたと絶対にならないように、過程はしっかりと表に出していただければと思います。大臣、いかがですか。

世耕国務大臣 東電改革・一F問題委員会では、毎回、終わるたびに委員長が記者会見をされています。また、そこに参加をしている事務方が議論のやりとりについて記者団からかなり長時間質問を受けて、きっちりとお答えをしております。

 議論の経過は全部オープンというわけにはなかなかいかない部分もあるわけですけれども、できる限りオープンにして、議論の経過はしっかりと理解をしていただけるようにしていきたいというふうに思っています。

落合委員 この内々で回っているという資料についてもう少し詳しく書いてある報道もありまして、福島の廃炉費用八兆円のうち四兆円は託送料金に乗せる、また先ほどの八・三兆円も広く国民から徴収するというふうな形で書かれているということでございます。

 年明けに電事法の改正案も出るというようなうわさも出てきています。年末に発表して、年明けに法案になって国会にかけられるということでは、過程をしっかりと議論する時間がありません。決まりましたから、しっかり議論しましたから、国民が議論しました、専門家が議論しました、その結論ですというのがぼんと出てこないように、しっかりとやはり大臣も気を使って、ここのところは注力をしていただければと思います。重要な問題ですので、ぜひ大臣、お願いします。

 東電改革についても検討されているということで、委員会も立ち上げられております。現時点で東電改革の検討状況を教えていただければと思います。

中川大臣政務官 現状の東電委員会では、原発事故の被災者への賠償ですとか一F廃炉など、福島への責任をどのように貫徹していくかという点、さらには、そのための資金を捻出できる生産性の高い企業にどのようにして生まれ変わっていくかといった観点から、東電改革のあり方について御議論いただいている段階です。

 先月から議論を開始いたしまして、具体的な改革のあり方として、事業再編を含めた、これまでと次元の異なる経営改革や社員全員の意識改革など、過去の企業文化と決別する企業改革などについて御議論をいただいてきました。

 現時点で何らかの結論を得られているわけではないんですけれども、引き続き徹底的に検討していただき、その上で、やはり国民が納得をして、福島の方々が本当に安心をして、現場が気概を持って働けるような解決策を見出してまいりたいと考えております。

落合委員 今、事業再編も含めてというふうにおっしゃいましたが、原子力部門をどうするかというのは重要な問題であると思います。国民の関心も高いですし、電力業界にとっても結論によって大きくマーケットが変わってくる、それから原発行政のあり方も大きく変わってくると思います。ここのところも、やはり結論だけがぼんと出てくることがないように、ぜひ大臣にお願いしたいと思います。

 では、原発の件はこれで一区切りということで、再エネのコストの問題についてお伺いさせていただきます。

 政府の二〇三〇年代のエネルギーミックスの目標でも再エネの目標は二割ちょっとに設定をしていまして、各大臣就任のときの所信でも、最大限、できる限り努力をして広めていきますというような方針を打ち出されております。

 その中で、電力自由化の議論の中でもありましたが、再エネは発電コストが高いということが今まで問題とされてきました。

 それで、実際に諸外国はどうなのかなということで、これも役所に資料を請求して、きょうの資料として添付をさせていただきました。左側が太陽光で、右側が風力発電の発電コストの国際比較でございます。

 例えば、左側の太陽光発電を見てみますと、資本費、これはわかりやすく言えば初期費用だと思うんですが、これがドイツと比べて二・五倍、運転維持費がランニングコストに当たると思うんですが、これもドイツと比べて二倍以上あります。

 なぜか日本の再エネが特に、格段、発電費用が高いわけですが、これはどのように分析されていますか。

中川大臣政務官 落合委員の方で資料を出していただいていますけれども、本当に御指摘のとおりなんです。

 日本は本当に、ドイツなどの諸外国に比べて太陽光については発電コストがおよそ二倍と高くなっておりますし、具体的には、パネルなどの機器は欧州、ヨーロッパの一・七倍、さらには工事費でいうと二・一倍となっています。

 その原因といたしましては、分析するに、やはり一つは、市場における競争が不足をしている点が、いわゆる太陽光パネルや機器などのコスト高を招いているということになっていると思います。そして二つ目は、土地の造成を必要とする場所が非常に多い、また台風や地震の対策をする必要もあるなど、日本特有の地理的な要因というものがもたらす工事費などの高さというものもあるんだろうというふうに思います。さらには、過剰流通構造によるコスト高なども考えられると存じます。

 また、風力発電についても、同じように発電コストはドイツなどの諸外国の二倍の水準となっておりまして、具体的には、風車価格は世界平均の一・四倍、工事費は一・六倍となっております。

 その原因といたしましては、導入量が少ないことによる風車価格の高どまり、環境アセスメント、系統制約による予見可能性の低さですとか、さらには山岳地域に設置することが非常に多くて建設費用がかかるなど、やはり同様に日本特有の地理的な要因がもたらす工事費の高さなどが考えられると思います。

落合委員 これは国際的に比べてかなり差があるわけですから、ここにはメスを入れていかなくてはならないと思います。

 いろいろ調べてみますと、我が国も参加している国際機関である国際再生可能エネルギー機関が、ことしの六月十五日に報告書を発表しています。これは、太陽光発電のコストが世界で二〇二五年までに五九%下げられる、そうなると、一キロワット時当たり五、六セント、なので五、六円になると言っているわけでございます。

 その報告書をもうちょっと読んでみますと、既にこの五年間で五八%下がりましたということでございます。ここの事務局長のコメントとして、既に幾つかのマーケットでは太陽光や風力は最も安い電源になっている、そして、さらなるコスト削減で再エネはさらに広がっていくという見解を示しています。

 世界ではどんどん再エネの投資が行われていて、再エネが高いということはもう世界の常識ではなくなってきています。

 そこでお伺いしたいんですが、我が国は、何年までにどれぐらいコストを下げる、そういう目標を立てているんでしょうか。

中川大臣政務官 落合委員が本当に御指摘のとおりで、国際社会というのはどんどんと価格が下がっているというような現状の中で、改正FIT法というのをやっております。事業者の努力やイノベーションによるコスト低減を促す観点から、政府が中長期的な価格目標を示すこととしているわけです。

 この検討に先立ちまして、太陽光発電については、実は、本年の八月から九月にかけて、太陽光発電の競争力強化のために有識者による研究会を開催いたしまして、目指すべきコスト水準やコスト競争力の強化などについて御議論をいただいているところです。

 この研究会では、太陽光発電のコストについて、現状がFIT価格で二十四円、これは二〇二〇年に一キロワット時当たり十四円、そして二〇三〇年に一キロワット時当たり七円を目指すべきという提言をいたしております。

落合委員 これは新聞にも、二〇三〇年までに三分の一ぐらいに下げたいというふうに経済産業省が言っているという記事もありました。大体、今の御答弁と同じように、二〇三〇年に三分の一というのが目標、めどであると思います。

 大臣、これを実現していくために、三分の一にコストカットというのは大変なことであるとは思うんですが、どのように実現されていくおつもりでしょうか。

世耕国務大臣 再生可能エネルギーのコスト低減というのは、まず、再生可能エネルギーそのものを最大限導入していくという点で、そしてまた国民負担の抑制という点で非常に重要だというふうに思っています。

 ことし五月に成立した改正FIT法では、まず、将来の買い取り価格の予見可能性を向上させて、事業者の努力やイノベーションによるコスト低減を促す観点から、電源ごとに中長期的な価格目標を示す、そして、競争を通じて買い取り価格の低減を促すことができる電源については、入札を実施するといったコスト効率的な再生可能エネルギーの導入を促す仕組みが導入されているわけであります。

 価格目標や入札制度の具体的な設計については、現在、買い取り価格の設定に関して調達価格等算定委員会で御議論いただいているところでありまして、その意見を踏まえて、発電のコストの低減が着実かつ適切な形で進んでいくよう、その運用に努めてまいりたいというふうに思います。

落合委員 これから、技術開発についても予算をつけて、大学との連携等もしていくと思います。そういった中で、その技術がオープンになるように、どんどん広まっていくように、ぜひそこも目を光らせていただければと思います。

 では、最後の質問に入らせていただきます。

 大臣は、きょうからモスクワに行かれるというふうに朝刊で読みました。

 先日、大臣に日ロ経済協力について質問させていただいた際に、ロシアの廃炉技術なども協力としてはあり得るというお話もいただきました。ロシアは旧ソ連時代にチェルノブイリの原発事故も経験をしております。チェルノブイリはウクライナですけれども、ロシアにも、事故対応ですとか住民避難、健康被害などについて、ソフト面でのノウハウも蓄積されていると思います。

 このソフト面での連携、これもかなり重要である、原子力行政をやっていく上で重要であると思うんですが、そこについてはいかがでしょうか。

世耕国務大臣 国会のお許しをいただけましたので、今晩からモスクワの方へ行ってまいって、私のカウンターパートに当たる大臣たちと議論をしていきたいというふうに思っています。

 個別の案件の進捗状況については、これは相手方もある話ですので今お話しできませんが、我々としては、ロシアは原子力関連の高い技術も持っておりますし、事故対応の経験や廃炉の経験といったもの、技術といったものを持っているわけでありますから、ソフト面も含めて、福島第一原発の事故収束への協力の可能性もあるというふうに思っております。

 いずれにしても、今、日露エネルギー・イニシアティブ協議会を立ち上げようということをこちらから呼びかけています。恐らく、行って、あした立ち上がって、向こうのエネルギー担当大臣と第一回の会合をやることになりますので、そういったところでよく協力内容の具体化を議論してまいりたいと思います。

落合委員 いい結果が出ることを願いまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 午後一時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十分開議

浮島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 熊本地震を踏まえた原発の問題について質問します。

 七月の鹿児島県知事選では、三反園訓氏が、福島第一原発事故後、全国で初めて再稼働にゴーサインを出した前知事を八万四千票余の大差で破り、薩摩川内市でも三反園氏が七票上回りました。三反園知事は、就任後、九州電力に対して、川内原発の即時停止と総点検、活断層の調査などを二度にわたり要請しています。

 十月十六日の新潟県知事選挙では、福島原発事故の検証、健康と生活への影響、避難計画の実効性の三つの検証がなされない限り再稼働の議論はできないと訴えた米山隆一さんが、六万三千票余の大差で圧勝しました。無党派層の七割、自民党支持層の三割が米山氏を支持したと言われています。

 ところが、総理は今国会で、規制委員会が新規制基準に適合すると判断した原発は、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針だと答弁されました。

 大臣、川内原発は地元の理解を得て再稼働したのではなかったでしょうか。そしてもう一つ、政府の一貫した方針のもとでのこうした立地県での県民の審判をどう受けとめておられるでしょうか。

世耕国務大臣 鹿児島県及び新潟県知事選挙の結果については、両県の有権者の皆様が選ばれた結果であるというふうに受けとめています。

 いずれにせよ、原発の再稼働に当たっては、地元の理解を得られるよう、丁寧に取り組んでいくことが重要であります。

 原子力に対する理解活動に終わりはありません。引き続き、立地自治体を初め関係者の皆様の声にしっかりと耳を傾けるとともに、国民の皆様に丁寧な説明を尽くし、幅広い理解が得られるよう、粘り強く取り組んでまいりたいと思います。

真島委員 理解を得るということが前提になっていないということなんですか、今の答弁は。

 熊本地震を踏まえて、地震の規模の予測方法についても新しい知見が出ております。

 十月五日の地震学会で、纐纈一起東京大学地震研究所教授は、政府の地震調査委員会が予測していた断層で初めて起こった熊本地震の観測データをもとにして、活断層による地震の規模を予測する二つの計算手法の妥当性を検証して、政府の地震調査委員会が二〇〇六年に公表した方法では地震の規模が過小評価になることがあるという結論を発表しました。

 政府の地震調査委員会が活断層による地震の規模の予測地図をつくるために採用している方法では、実際の地震の規模をおおむね予測しておりました。ところが、政府の地震調査委員会が二〇〇六年に公表した方法、つまり、地震調査委員会が予測地図をつくるために採用していない方法では、実際の規模の八分の一ということだったんですね。

 この纐纈教授は、政府の地震調査委員会の強震動評価部会長をしております。今回の地震学会での発表は、今後の同部会などでも審議されていくんじゃないかと思います。

 原発では、政府の地震調査委員会が二〇〇六年に公表した方法を用いて、原発の耐震設計の目安となる基準地震動を決めるもととなる地震の規模を予測しています。政府の地震調査委員会が活断層による地震の規模の予測方法で新たな知見を出した場合、それを踏まえて原発で採用している予測方法は見直すことになるんでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生御指摘のように、本年七月から、地震調査研究推進本部の地震調査委員会において、強震動評価手法、俗にレシピと称しておりますけれども、その現行の手法を見直すための検討を開始しているということはお聞きしております。

 その検討の結果、仮に新たな強震動予測手法が示されれば、それを原発の規制にどう取り入れるかについては、その時点で、原子力規制委員会として適切に判断してまいりたいと考えております。

真島委員 熊本地震では、未知の活断層という問題もありました。

 益城町には総延長四キロの地震断層があらわれ、市街地に甚大な被害を与えましたが、この断層は事前に認定されていませんでした。我が国にあるとされる約二千の活断層の多くが、このように推定活断層という位置づけのまま、詳しい調査がされておりません。

 政府が五月十三日に出しました地震調査委員長見解を見ますと、「今回の熊本地震は、我が国における地震のリスクを再認識させるものであった。」としています。

 四月十四日のマグニチュード六・五に続いて、十六日にマグニチュード七・三の地震が発生した。内陸地震では日本の観測史上最多の余震を観測した。九州を横断する百二十キロを超える地域で震源が移動した。一つの断層が活動範囲を拡大しつつ一連の地震活動を引き起こした。活断層の連動によって想定以上の揺れを引き起こした。未知の断層が相次いで発見された。

 こうした熊本地震で再認識されたリスクや断層評価の難しさというものがあるんですが、今、電力会社が調べた原発周辺の断層評価の中にはこうした問題というのは既に反映されているんでしょうか。

田中政府特別補佐人 熊本地震の知見に関しては、現在、学会等で議論がなされていることは承知しておりますが、今のところ、原子力発電所の審査における断層の調査、評価の考え方を見直さなければいけないというような新知見は認められていないと考えています。

 新規制基準の適合性審査では、基準地震動を評価する際には、断層の連動を考慮したり、強い地震力を発生させる部分を敷地に近くして評価を行うなど、不確かさを考慮して保守的に評価しております。

 例えば、先生御指摘の熊本地震ですが、川内原発の評価においては、熊本の今回起こったところは、布田川、日奈久断層帯と言われて、もともと活断層があって地震が起きるということを言われておりまして、その長さは九十二・七キロ、最大でマグニチュード八・一ぐらいのものを想定されていました。

 そういったものを私どもも考慮して、川内原発の基準地震動の評価をしておりますと、大体百ガル程度であります。実際に今回の地震で川内原発で観測されたのは、六百二十ガルが原発の基準地震動になっておりますし、自動停止のレベルが百六十ガル程度ですけれども、熊本地震で観測されたのは八・六、場所によって少し違うんですが十二ガルぐらいということで、十分、地震動には耐えられるように評価されております。

真島委員 私が聞いたのは、今度の熊本地震で実際に川内原発がどの程度揺れてどうだったかということではなくて、前半の方に言われた、今回の熊本地震でいろいろなリスクや活断層評価の難しさというのが指摘されているという問題について反映されているのかという点では、まだ知見がきちっと出そろっていないので反映をしていないということでしたけれども、九州電力の再稼働申請書には、同社が調べた川内原発周辺の活断層分布というのが記されていますが、これはもうきれいに原発の五キロ周辺部だけぽっかり空白になっているんですね。川内原発の直近にあります川内川推定断層についても、九州電力は、活断層はないという判断をしています。

 大臣にお聞きしますけれども、熊本地震を踏まえて、原発周辺の断層の徹底した再調査、これは電力会社任せではなくて政府の責任でやはりやらなきゃいけないと思うんですが、どうでしょうか。

世耕国務大臣 原発の安全性につきましては、電力事業者が実施した断層の評価が十分か否かも含めて、これは独立した原子力規制委員会が判断することとなっております。

 したがって、断層の再調査の必要性について私からコメントすることは差し控えたいと思います。

真島委員 独立した機関が判断するとおっしゃったんですけれども、実際、実態的にやっているのは電力会社なんですよね。

 この熊本地震を踏まえて、川内原発の耐震設計も問われていると思います。

 二〇〇六年に改定された原発の耐震設計審査指針は、まれな大地震が来ても安全が損なわれない基準地震動を想定して設計するように求めておりましたが、過去十年間で基準地震動を超えた事例が五回もあります。

 原子力規制委員会が定めた新規制基準の内規、基準地震動及び耐震設計方針に係る審査ガイドは、基準地震動の半分を下回らないようにと定める地震動に対して「おおむね弾性状態に留まる範囲で耐えること。」としていますが、これは、部分的には弾性範囲を超えることが許されているということなんでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生御指摘の議論は少し難しいところがあるんですが、まず、基準地震動、俗に言うSsというのがあります。川内原発でいえば六百二十ガルになります。

 それで、これまでのさまざまな知見から、いわゆる弾性設計用地震動というか、そういうものを設定して、各機器によって全部それが違ってまいりますので、それがSsの半分以上ということは、大体、二分の一から十分の一ぐらいで普通の機器は十分耐えられるという知見を得られているんですが、原子力発電所、原子力施設については、二分の一以上、より厳しい、最も厳しい方をとっております。それで、それに耐えられる、弾性範囲を超えないようにということでやっております。

 ただし、これは弾性範囲にとどまるということは、全ての機器が全部ではなくて、それ自身の機能が損なわれない、部分的には若干弾性領域を超えることがあっても、おおむねきちっと機能は確保できるようにということの評価をしております。

 特に安全上重要な施設については、基準地震動という、こちらはいわゆる弾性設計用地震動よりも厳しいわけですが、そういう震動に対しても十分安全機能は保たれるということは確認させていただいております。

真島委員 田中委員長は、四月二十日の会見で、基準地震動レベルの地震が繰り返された場合の原発の耐震性を問われて、弾性範囲にある分には、五回、十回、百回ぐらい繰り返したって何も起こらない、変形が出るような構造物もゼロではないということだが安全上に影響を及ぼすことはないと。今、このことをより説明していただいたと思うんです。

 配付資料、これは川内原発一号機、二号機の蒸気発生器伝熱管の応力評価結果ですが、弾性設計評価基準値よりも基準地震動による応力発生値が大きくなっています。これは、つまり、塑性域に入って変形している伝熱管の健全性に、繰り返し起こる地震によって影響があるということでいいのでしょうか。

田中政府特別補佐人 先生のまとめていただいた資料を拝見しました。

 ここで、いわゆる基準地震動による応力値と弾性設計用地震動、先ほど二分の一以上にするということを申し上げましたけれども、それをストレートに比較するということではなくて、要するに、いろいろな各コンポーネントについては、弾性設計というかデザインをしていかなきゃいけませんので、その場合に、簡単に簡易手法で評価した場合でも、基準地震動のような大きなものよりも弾性設計用地震動でも十分大きい場合にはもうそれ以上細かい評価は要らない。

 今先生御指摘のこれは、それよりは弾性設計用地震動の方が少し小さくなっていますので、これについては十分な評価、詳細な評価をして、本当にどうなっているのかということを確認させていただいていまして、実際には、その場合に、今、二百六十三メガパスカルという値になっていますが、これは実際に詳細に評価すると百七十五ということで、十分安全な設計になっているということを確認させていただいています。

 ですから、先生のまとめていただいたのは非常に解釈が難しいところがあるんですが、そういうことでございますので、ぜひ御理解願えれば。

真島委員 いや、難しいと思うんですが、聞いていると。

 それで、今言ったように、いわゆる塑性域に入って変形している伝熱管の健全性に、繰り返し起きる地震によって影響はないというふうに見られているということですね。

田中政府特別補佐人 詳細な評価をしたところ、ここに書いてある二百六十三ではなくて、百七十五ぐらいだということですので、弾性領域に入っているということで、繰り返し応力がかかっても健全性は保たれるということであります。

真島委員 新潟大学名誉教授の立石雅昭さんが毎日新聞のインタビューに、基準地震動は基本的には活断層が起こす可能性がある揺れの平均像で、起こり得る最大を予測したものではない、原発の設計では、その平均像から数倍に達するよりも大きなものが起こっている現実を予測にどう生かすかということが重要だというふうにおっしゃっております。

 もう一つ、次に、原子力規制委員会は、十月二十六日に、これまでに新規制基準に合格した川内一、二号機、高浜原発一―四号機、伊方原発三号機について、審査の際に考慮した大気中の火山灰濃度の約十倍の濃度での影響を評価するように事業者に求めることを決めた、あわせて、火山影響評価ガイドの改正の検討にも着手する方針を了承したと聞きました。

 大気中の火山灰濃度が十倍になれば、非常用発電機のフィルターが目詰まりするまでの時間の見込みが、約二十六時間から二時間半になってしまう。

 原子炉等規制法第四十三条の中に、「施設の使用の停止等」、いわゆるバックフィット制度という規定があります。この規定は、原子力規制委員会は、安全性が高められた新たな基準が定められた場合、許可済みの既存の原子炉施設設置者に対して、当該基準に適合させるための命令等を行うことができるとするものです。

 火山影響評価ガイドの改正の検討に着手されるというわけですから、少なくとも、安全性が高められた新たな基準ができて、その基準への適合が確認されるまで、今稼働中の原発は停止する、再稼働の予定のところは動かさないというふうに命令するべきではないでしょうか。

田中政府特別補佐人 今先生御指摘の火山灰の濃度については、最近、新しい知見が得られております。それで、これについて、本当にこれを踏まえた改正が必要かどうか、いわゆる各サイトによって大分違いますので、それについて、まず、どの程度の影響があるものかというのを評価を求めたところでございます。

 それによって、いわゆるフィルターの目詰まりみたいなものは、設計対応、機器の改善とかそういうことも必要になればそういうことになりますが、今の段階では、まだそういった判断を求めるというような状況ではありませんし、二時間という時間があれば、フィルターを交換するとかいろいろな方法もあるでしょうから、その辺は、そういうことを認識しつつ、とにかく今、その影響をまずきちっと調べた上で、必要があれば、バックフィットというようなことも考えていかなきゃいけないと思います。

 ただ、一般論ですけれども、バックフィットというのを機械的に、そういう新しい知見があるから、すぐ原発をとめなきゃいけないということになりますと、これはバックフィット制度自身の自殺行為になりまして、新しい規制基準のいわゆる肝というのか、バックフィットできるという、そこのところの考え方が崩れてしまう可能性がありますので、これについては、私どもとしても、バックフィットは大事な制度ですから、それを踏まえつつ、慎重に、そこのところは十分に調べた上で、そういう規制要求をしていきたい、そのように考えています。

真島委員 バックフィットというのは、非常に大事な、国民の命を守る、だから、そこのところは判断が難しいと思うんですよね。新しい知見が出た、それが、今おっしゃったように、すぐその知見に対応できるものなのか、それともかなり対応するのが難しいのかというところでの判断になってくるんじゃないかというふうに思うんです。

 それでは、いわゆる目詰まりするまでに二十六時間だったものが二時間半。二時間半ごとにフィルターを取りかえれば大丈夫だという判断をされているということですね、今回適用しないとすれば。

田中政府特別補佐人 例えで、フィルターを交換するということもあるだろうし、場合によっては詰まった灰をたたき落とすとか、いろいろな方法はあると思いますが、それはどんな方法があるか、空気の取り入れ口のところに工夫するとかいろいろなことが考えられると思いますので、それを含めて、今、事業者にその影響の大きさとその対応について調査を求めているところですので、それを見て、私どもとして慎重に判断していきたいと思います。

真島委員 その判断をするまでの間が非常に不安に住民の方は思うと思うんですよね。

 これはやはり、火山灰によるこういう事態に対応するというのは全く新しい事態です。技術的にもそうですし、実証的な訓練とかもやはり必要じゃないかと思うし、そこら辺が大丈夫なのかなというふうに思います。

 最新の知見を既存施設にも反映する規制への転換、これがバックフィット制度なんですけれども、これは、シビアアクシデント対策、安全規制の一元化と並ぶ、新規制基準の前提となる原子炉等規制法の三本柱の一つになっています。

 地震の規模の予測方法の見直しや活断層の再調査と評価、基準地震動の見直し、火山灰の影響評価の見直しなど、これだけ原発の安全性の根幹にかかわる重要な問題が相次いで最近出てきていると思うんですね。既に新規制基準に合格した原発も含めて、やはり一旦稼働を停止して、これに臨んでいくべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 原発の再稼働については、いかなる事情よりも安全性を最優先して、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査をし、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。

 今御指摘のように、新規制基準では、最新の知見を基準に反映し、それに対する適合を義務づける、いわゆるバックフィット制度を新たに規定しております。御指摘いただいたような点を基準に反映するか否かや、直ちに稼働を中止すべきか否かといった点も含め、原発の安全性については、独立した原子力規制委員会が判断することとなっております。

 したがって、私からコメントすることは差し控えたいと思います。

真島委員 安全性を最優先にしてという枕言葉がいつも経産大臣の答弁にはつくんですが、結論は何々任せ、主体的には動かない、そういう答弁ばかりなんですよね。

 熊本地震を目の当たりにして、鹿児島、九州の皆さんは、現行の避難計画の破綻を身にしみて感じております。道路も鉄道も寸断され、現行の避難計画のままで五キロ以内の住民が迅速な広域避難ができるのか、また、熊本地震で屋外での避難生活を送る住民が多数いたということを見て、五から三十キロ圏内の約二十一万人の住民は、屋内退避は非現実的ではないかという思いを強めております。これについて、いかがでしょうか。

平井政府参考人 原子力災害時の避難計画においては、地震等との複合災害により避難道路が使用できない場合に備え、あらかじめ複数の避難経路を設定することとしております。また、避難道路が使用できない場合には、道路管理者により、自衛隊等により道路の啓開を実施することとしております。

 また、不測の事態が生じた場合には、関係都道府県等からの要請により、実動組織が住民避難の支援を実施いたします。

 五キロから三十キロ圏のUPZ内における屋内退避については、熊本地震のように、家屋が倒壊したり、相次ぐ余震の発生により家屋による屋内退避が困難である、そのような場合には、自治体により設定される近隣の避難所等にて、まずは屋内退避を実施していただくことになります。

 その上で、仮に近隣の避難所に入ることができない場合には、地震による影響がない避難所をUPZ内外を含め選定し避難させるなど、人命のリスクを最優先に考え、状況に応じた柔軟な対応を行うこととしております。

真島委員 強い地震が連続した熊本地震では、使えなくなる避難所も相次ぎました。今設定されている避難所が本当に耐えられるものかというのもいろいろ声が出ておりますし、熊本市の行った市民アンケートでは、マイカーに避難した人が何と四割もいた。

 鹿児島県の今の原子力防災計画では、屋内退避対象区域の住民等への指示事項というのがありまして、全ての窓、扉等の開口部を閉じ、全ての空調機器、換気扇等をとめて屋内への外気の流入を防止してくださいと書いてあります。水道や電気などライフラインも途絶し、夏は三十五度を超える猛暑が続く鹿児島で可能なんでしょうか。

 西日本新聞が川内原発と玄海原発の三十キロ圏内にある四県十七市町に行ったアンケートでは、半数の自治体が二段階避難に課題があると答え、熊本地震後、三つの自治体が避難計画の見直しに着手し、九自治体が今検討中です。

 大臣、今の避難計画は課題がある、見直すべきという原発周辺の自治体や住民の声に応えて、避難計画を抜本的に見直し、実効性のあるものにすべきだと考えませんか。

世耕国務大臣 避難計画につきましては、地域住民の安全、安心の観点から、地域の実情に精通した自治体が主体となって、その策定を着実に進めていくことが重要であります。

 その上で、政府としても、自治体と一体となって積極的に避難計画の具体化、充実化に取り組み、各地域の計画の内容が原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的となっていることを原子力防災会議において確認し、了承していくこととなっているところであります。

 当然のことながら、原子力災害対策にこれで完璧ということはありません。例えば、伊方地域においては、国が主催した原子力総合防災訓練の結果を踏まえて、避難道路が寸断された場合の避難方法のさらなる具体化などについて本年七月に避難計画を改定しているところであります。

 このように、政府としましては、避難計画の改善、充実に向けて、自治体と協力して積極的に取り組んでまいりたいと思います。

真島委員 避難計画に終わりがないというのは、本当にそれは当たり前だと思うんですけれども、住民の皆さんや自治体の皆さんが、自治体の半分以上がこれでは実効性がない、課題があると言っているような状態で再稼働させるのはどうなのかなというふうに思うんですよ。

 先日、鹿児島の方から聞いた話なんですが、薩摩川内市の原発から五キロ以内にある二世帯住宅の一方が空き家になっているので、どうされたんですかと聞きましたら、息子夫婦は子供が生まれたら原発が怖いと鹿児島市に引っ越してしまった、孫のことを考えるととめられなかったとおっしゃったそうなんですよね。

 私は、鹿児島や新潟の結果というのは、やはり今の政府や電力会社に対する不信といいますか、原発に対する不安があらわれた結果だと思うんです。

 最後に大臣に聞きますけれども、住民の命綱となる実効性のある避難計画、これを策定されていない原発は動かしてはならないと思います。今、見直しもされているということなんですが、動かしている原発はそれが策定されたというふうに自信を持って判断されているんでしょうか。策定されていない原発は動かさないという立場、そういうものをお持ちでしょうか。

世耕国務大臣 何度も同じ答えになって申しわけないんですが、原発を動かす動かさないについては、いかなる事情よりも安全性を最優先して、高い独立性を持っている原子力規制委員会が科学的、技術的に審査をし、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進める、これが政府の一貫した方針であります。

 避難計画についてはこれで完璧ということはありませんので、我々は、改善、充実に向けて、自治体と協力して継続的に取り組んでまいります。

真島委員 時間が来ましたので、終わります。

 実効ある避難計画がないまま動かすということは、そういう住民が避難するような事態はあり得ないと考えているということですよ。安全神話ですよ、これは。絶対にそういうことは許されない。

 原発の停止を求めて、質問を終わります。

浮島委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 きょうは一般質疑ということで、私は、気候変動問題、温暖化対策について御質問したいと思います。

 温暖化対策と経産省という話は、もともと所管は環境省なんじゃないの、こういう話があるかもしれませんが、私の経験から、かなりの部分、温暖化対策の実質的な役割は経産省が担う部分が大きい、こういうふうに私は感じてやらせていただいていました。

 条約関係は、当然、環境省が主体になって、外務省、経産省とやる。それからあと、具体的な対策になっていきますと、森林の問題等は農林水産省が入ってくるし、また適用というようなことであれば、道路とかそういう話になれば国交省も入ってくる。多岐にわたるわけでありますが、基本的には環境省と経産省で実質的なところを担っていく、こういう認識を持っているわけでございます。

 そういった私の思いから、まず、世耕大臣に、経産大臣として気候変動問題にどんな思いで取り組んでいるのか、基本的なスタンスをお聞かせいただきたいと思います。

世耕国務大臣 環境大臣もお務めになったプロの小沢委員になかなかお答えしにくい部分もありますけれども、経済産業省が所管する分野というのは、まさに地球温暖化対策に、うまく動けば非常に効果のある分野が多いというふうに思っております。

 ですので、経済産業省としては、徹底した省エネルギー、あるいは再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化、そして安全が確認された原子力発電の活用などによってエネルギーミックスを実現して、産業界の業種別対策などの取り組みもしっかり進めてまいりたいというふうに思います。

 また、我々の仕事はイノベーションという分野もかかわってまいります。長期的な抜本的排出削減に向けて、やはりイノベーションによる解決を最大限追求していきたい。そのために、国内投資を促し、国際競争力を高め、長期的、戦略的な取り組みのもとで大幅な排出削減を目指して、世界全体での排出削減にも貢献していきたい。

 これが経済産業大臣としての基本的考え方であります。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。大変頼もしい御答弁をいただいた、こういうふうに思います。

 ただ、安倍内閣という内閣全体で見たときに、環境問題に対する、気候変動問題に対する発言というのが余り出てこない、そういうふうに私は思っておりまして、地球儀を俯瞰した外交でしょうか、そういう言葉があるときに、最も行うべきはこういった気候変動問題、環境問題、そういった話が出てきてもいいのではないかと思っておりますので、どうぞ世耕大臣におかれましては、今言ったような経産省の視点からも大いに御発言をいただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。

 そこで、若干具体的な話になって恐縮ですけれども、実際の取り組みの政策のときに、私たちがやらせていただいたときには、大きな三つの柱がありました。税と、再生可能エネルギーの全量買い取り制度と、それから排出量の取引制度、この三つが三本柱でありました。

 そのうちの二つはやったんですね。税はやりました。それから、再生可能エネルギーの買い取り制度も進めました。やれていないのは排出量取引制度なんですね。

 これは、なかなか賛否両論もあるところだし、進んでやっていたEUなんかも悩んでいるところもあるようなんですが、これについて、もしコメントがありましたらお聞かせいただけますか。

世耕国務大臣 例えば、今御指摘のあった排出量取引ですとか、炭素税とか、あるいは、炭素に価格づけをする政策、いわゆるカーボンプライシングに関しては、やはり産業や雇用への影響、あるいは諸外国の動向、これは日本だけがやってもしようがない話でございますので、さらには、固定価格買い取り制度や地球温暖化対策のための税など、先行する主な地球温暖化対策の効果を見きわめる必要があるなどの点から、やはり慎重に検討しなければいけないと思っております。

小沢(鋭)委員 確かに慎重な検討が必要な課題であることは私もわかるんですが、なかなかおもしろいテーマでもあるものですから、ぜひとも御検討をいただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。

 それで、あと、実際の温室効果ガスの削減目標についてお尋ねをいたします。

 私がやったときは一九九〇年比二五%削減ということを言って、当時、世耕大臣からも、参議院の予算委員会か何かでかなり厳しく追及されたことを思い出すわけでありますが、今回は、日本は二〇一三年比二六%削減、これは一九九〇年比に直しますと一七・九%、こういう話になります。率直に言って、私の立場からは、低い水準だな、こう言わざるを得ません。

 それから、後ほどパリ協定の話もさせていただきますが、パリ協定に基づいて、もうこれは皆さん御承知のとおり、今回は、どの国が何%と決めているわけではなくて、自主的目標を提出してそれに沿ってやっていくことになりますが、どうも、その目標、出されてきている目標でやっても、当初の二度C以内、産業革命からのいわゆる二度C以内におさめるという目標はトータルでも達成できないのではないか、こういう話をIPCCは言っていますね。

 全体でも、世界じゅうでも、その二度C以内におさめることはできないだろう、日本もある意味ではそれを上回ってしまうだろう、こういう話でありまして、その目標水準そのものに関してはいかがでしょうか。

世耕国務大臣 我々日本は、二〇三〇年度に二〇一三年度比で二六%削減という中期目標を立てました。これは、具体的な対策や技術の積み上げによって、ぎりぎりの姿として設定したというふうに考えております。

 そして、他国との比較においても、我が国の目標は国際的にも遜色がない野心的な水準だというふうに思っています。

 例えば、EUの二〇三〇年目標と比較した場合、削減は、足元の二〇一三年度比で、日本の二六%削減に対して、EUは二四%の削減であります。また、目標年におけるGDP一ドル当たりの排出量で比べますと、日本の〇・一六キログラムに対して、EUは〇・一七キログラム、アメリカに至っては〇・二を超えているという状況でありまして、我々の目標は遜色のない野心的な水準だというふうに思っております。

小沢(鋭)委員 他国と比べてという数字が出てきておりますが、地球を救うための水準という視点から見直していただいて、そして、TPPも、我々は、大臣も聞いていただいたかもしれませんが、積極推進、こういう立場を政策的にとりました。

 この気候変動問題、温暖化対策でも、他国がこれくらいだからこれくらいでいいだろうではなくて、積極推進、まさに世界を引っ張っていくというくらいの思いで取り組んでいただかないと、この地球はもたないんじゃないか、こう思います。

 きょうの質疑の中で大臣も、先ほどの自然災害のときに、昨今は異常気象の影響もあって災害の程度が大きくなっている、こういう御発言がありました。異常気象というといろいろな理由があるわけでありますが、私は、その中の、全てとは言いませんが、大部分は温暖化が原因であろう、こう思っております。

 これはもうかなり前に、アメリカのゴア元副大統領が「不都合な真実」という本の中で、恐らく、これからの災害は、温暖化によって空気中の水蒸気の量がふえますから、程度ははるかに大きくなる、こういう話を、もうこれは二十年以上前になるんですかね、「不都合な真実」の中で出していて、またその改訂版も出しております。

 そういった事態が起きていますので、繰り返しになりますが、他国と比べて遜色がないということではなくて、本当に日本が引っ張っていくんだという思いでぜひ取り組んでいただきたいということをお願いしたいと思います。

 それから、今回、パリ協定批准がおくれました。隣で今審議をやっているようですけれども。これは、私、環境省の皆さんともよく話をするし、彼らも守ってあげなきゃいけないところもあるものだから、余り批判をするつもりもないんですけれども、米中が見事にうまくやりましたよね。G20の会合のときに二国間でまさに批准を決めた。僕は、あれを見て、ああ、これはやられたな、鮮やかだな、こう思いました。南シナ海の問題等いろいろあったんですけれども、そういった話は進まなかったけれども、この地球温暖化の問題に関しては二国で批准をした。これは、世界の四割ですから、この米中がそこで率先してやるという話になると影響は極めて大きい。

 そして、私がやらせていただいたときも、なかなかうまくいかなかったのは、結局はやはりアメリカが、オバマ、大統領府はかなり真剣にやっていました、しかし、全体としてなかなかアメリカとしては踏み込んでいけない。それを見ている中国は、だったら、安心して我々は抵抗していこうと。

 こういう話であって、とにかくアメリカを説得するのが最大の課題だと思って私はやっていました。トッド・スターンという交渉官がいて、彼は、共和党のときからオバマ政権に至るまでずっと首席交渉官ですよ。中国は解振華という人がいて、私が挨拶したら、あなたは十何人目の私のカウンターパートだとか言われて驚きましたが。そのトッド・スターンと解振華がいた。オバマさんと習近平さんがある意味でG20で鮮やかに決めた。

 こういう話で日本はびっくりしちゃって、準備がなかなか進まなかった、こういうことだと思うんです。それで、おくれて、今回の締約国会議にはオブザーバーとしてしか参加できないという、まあ、私にとっては情けないの一言の状態だと思っているんですが、おくれた原因と、それから、今後、そのおくれたことによる影響というのはあるのかどうか、どのようにお考えなのかをお聞かせください。

世耕国務大臣 パリ協定は、歴史上初めて全ての国が参加する公平かつ実効的な枠組みでありまして、日本としても、一日も早い締結に向けて、これまで作業、調整を行ってまいりました。

 実際には、パリ協定の署名が可能となった四月二十二日に百七十五の国・地域とともに署名を行い、外務省を中心にパリ協定と国内法の整合性の確認、これは経済産業省でも行っておりましたが、こういったことを行った上で、臨時国会開会後の審議日程の見込みなどを踏まえて、十月十一日に閣議決定を行ったところであります。

 このように、政府としては、外務省を初めとする関係省庁が一体となって、可能な限り迅速に作業、調整を行った結果として閣議決定に至ったというふうに認識をしております。

 パリ協定の合意に向けては、これまでも我が国は主導的な役割を果たしてきたというふうに思っております。締結手続を一日も早く終えて、協定を重視する姿勢が不変であることを示して、率先して議論をリードし続けることが重要だというふうに思っています。

 パリ協定が十一月四日に発効すれば、パリ協定を締結済みの国がメンバーとなる締約国会合もこのCOP22の会期内に開催をされるわけではありますが、パリ協定の実施指針策定に係る交渉は、日本を含む国連気候変動枠組み条約の全締約国が参加する場で行われておりまして、協定発効後も、引き続き、COP22を含む全締約国が参加する場で行われるというふうに認識をしております。

小沢(鋭)委員 御説明はそのとおりなんでしょうが、これは、だから、先ほども申し上げた、安倍内閣全体がこういった気候変動、環境問題に対する感度が鈍いのではないかと私は本当に思いますよ。ぜひそこはしっかりとやっていただければ、こういうふうに思います。

 これはもう大臣はよく御存じだと思いますが、いろいろな国際交渉というのは全体会合とか正規な会合だけではないですからね。いわゆる締約国の中でグループができていって、そういったグループの中でランチョンがあったり、みんなで急に集まって議論しようという話になったり、そういったときに、日本が主役の立場、まあ主役じゃなくてもいいんだけれども、主要な立場で参加できないということなんですよね。

 ですから、そういった意味では、私は、極めて影響が大きいし、これはぜひ、これ以上文句は言いませんが、今後の反省の糧にしていただきたいというふうに申し上げたいと思います。

 そこで、あと、まさに経産省が主体になってやっていただく環境対策として、エネルギーの問題を一つお尋ねしておきたいと思います。

 先ほども、落合さんでしょうか、電源別のコストの話が出ておりましたけれども、我々は二〇三〇年までにフェードアウトという言い方をしています。フェードアウトというのは、いわゆるマーケット原理において原子力が有効でなくなる、こういうことを思っているわけです。

 今の電源別のコスト、まず日本の算出をしていただきたいのと、それから、時間がないのでついでに申し上げるんですが、アメリカの電源別の発電コストを見ますと、これは恐らく日本のものは原子力が一番低いんだ、こういう説明になると思いますが、アメリカは今や、天然ガス、水力、石炭、風力、バイオマス、その次が原子力になっているんですね。

 ですから、そういった意味では、この電源別発電コストをどう考えていって、前回も申し上げましたが、当分の間は、水素や何かに行くまではガスではないかと私は言っているんですが、アメリカはガスが一番コストが低い、こういう言い方をしているんですが、それも含めて、大臣の御答弁をお願いできますか。

世耕国務大臣 まず、各電源毎の発電コストにつきましては、昨年行われました発電コスト検証ワーキンググループにおいて、日本の場合は、原子力はキロワットアワー当たり十・一円以上、石炭火力は十二・三円、そして一般水力は十一・〇円などと試算がされておりまして、現時点においてはやはり原子力が最も発電コストが安いということになるわけであります。

 当然、先ほどの質疑でも議論になっておりましたけれども、これからイノベーションが進んできたり、あるいはもっと再生可能エネルギーの価格が下がってくるという変動が起こってくれば、これはまたいろいろな取り組みが出てくるんだろうというふうに思います。

 ガスは、残念ながら、今我々は、いろいろ契約上の問題もありまして、かなり高いガスを調達しているというのが現状であります。これをどう下げていくかということは一つの政策的課題として取り組んでまいりたい。ガスもCO2を排出しないクリーンなエネルギーでありますので、これをもう少し安いコストで活用できるような工夫というのも、日本のエネルギー戦略上、非常に重要だと思っております。

小沢(鋭)委員 時間がそろそろ来そうなので、質問ではなくて、最後、私の意見を一言申し上げて終わりたいんです。

 一九七三年、昭和四十八年に石油ショックがありました。その石油ショックの後、我が国は、いわゆる原子力発電に注力をしてまいりました。

 私がCOP15で行ったデンマークという国、北欧諸国は、そのとき以降、再生可能エネルギーにシフトをしました。我が国は原子力、彼らは再生可能エネルギー。そして、御承知のように、原子力発電なしで、彼らは見事な国家運営を行っています。いわゆる国の政策が、やはりその時々のまさに判断というのは重要なんだな、つくづくそう思って、デンマークという国を見てまいりました。

 でありますので、私は三・一一を経験して以降、それまでは、気候変動で原子力というのが有用であるということを言った唯一の環境大臣でありましたが、その後、環境委員会において私は政策転換をいたしますと言って、私はそれ以降、脱原発に政策変更をさせていただいて今日に至っているわけであります。

 とにかく、今言ったような、国の政策で、まさにそういった国民生活に最も影響するエネルギーの問題なんかも変わるんだということを改めて意識していただいて、いわゆる原発が一番なんだというその神話をもう一回ゼロベースで見直していただきたいというお願いをして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

浮島委員長 次に、内閣提出、割賦販売法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。世耕経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 割賦販売法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

世耕国務大臣 割賦販売法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 近年、クレジットカードを取り扱う販売業者等におけるクレジットカード番号等の漏えい事件や不正使用被害が増加をしています。

 また、クレジットカードを発行する会社と販売業者等と契約を締結する会社が別会社となる形態が増加しており、これに伴って、クレジットカードを取り扱う販売業者等の管理が行き届かない場合も出てきております。その結果、クレジットカードを利用した取引に関する販売業者等と消費者間のトラブルが増加する傾向にあります。

 本法律案は、こうした状況及び革新的な金融サービス事業を行うフィンテック企業の決済代行業への参入を踏まえ、安全、安心なクレジットカード利用環境を実現するための必要な措置を講ずるものです。

 訪日外国人の多くがクレジットカードを利用しておりますが、日本のクレジットカード利用環境に不安、不満を抱いています。本法律案における措置は、平成三十二年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向け、こうした不安、不満を取り除き、インバウンド需要を取り込むことにも資するものです。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、販売業者等に対しクレジットカード番号等の適切な管理及び不正使用の防止を義務づけます。

 第二に、クレジットカード番号等の取り扱いを認める契約を締結する事業者について登録制度を設け、その契約を締結した販売業者等に対する調査及び調査結果に基づいた必要な措置を行うこと等を義務づけます。

 第三に、販売業者等に課されているカード利用時の書面交付義務について、電磁的方法による情報提供も可能とすることで、フィンテック企業等のさらなる参入を見据えた環境整備を行います。

 第四に、特定商取引に関する法律において、不当な勧誘により販売契約を締結した場合の消費者の取り消し権の拡充等が行われたことに合わせ、こうした販売契約と並行して締結された分割払い等の契約についても同様の措置を講じます。

 以上が本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

浮島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三分散会


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