衆議院

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第3号 平成29年3月10日(金曜日)

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平成二十九年三月十日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 うえの賢一郎君 理事 大見  正君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 白須賀貴樹君

   理事 吉川 貴盛君 理事 北神 圭朗君

   理事 近藤 洋介君 理事 高木美智代君

      秋本 真利君    穴見 陽一君

      石川 昭政君    小倉 將信君

      尾身 朝子君    岡下 昌平君

      梶山 弘志君    神山 佐市君

      菅家 一郎君    工藤 彰三君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      島田 佳和君    助田 重義君

      高木 宏壽君    中川 俊直君

      橋本 英教君    古川  康君

      星野 剛士君    三原 朝彦君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      簗  和生君    山際大志郎君

      大畠 章宏君    落合 貴之君

      篠原  孝君    鈴木 義弘君

      田嶋  要君    中根 康浩君

      福島 伸享君    中野 洋昌君

      畠山 和也君    真島 省三君

      木下 智彦君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   経済産業大臣政務官    中川 俊直君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 杉本 和行君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      宇野 雅夫君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 開出 英之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     住田 孝之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中川  勉君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林 一久君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          柳瀬 唯夫君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            嶋田  隆君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    宮本  聡君

   経済産業委員会専門員   木下 一吉君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     古川  康君

  勝俣 孝明君     秋本 真利君

  神山 佐市君     助田 重義君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     橋本 英教君

  助田 重義君     菅家 一郎君

  古川  康君     尾身 朝子君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     神山 佐市君

  橋本 英教君     勝俣 孝明君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長宇野雅夫君、総務省大臣官房審議官開出英之君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官住田孝之君、経済産業省大臣官房審議官中川勉君、経済産業省大臣官房審議官小林一久君、経済産業省経済産業政策局長柳瀬唯夫君、経済産業省通商政策局長嶋田隆君、経済産業省通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、経済産業省製造産業局長糟谷敏秀君及び中小企業庁長官宮本聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中根康浩君。

中根(康)委員 民進党の中根康浩でございます。

 大臣所信に対する質疑ということで三十五分間時間をいただきましたので、充実した審議をしてまいりたいと思います。

 世耕大臣の所信演説で、第四次産業革命が成長戦略の柱だと述べられております。そして、人や物の移動、医療、介護、ものづくりなど幅広い分野を変革し得るのがAIでありロボットであり、IoT、あるいはICTだということであります。

 確かに、AI、ロボット、IoT、ICTの導入は、製造業のみならず、保育、介護、医療、福祉、あるいは農業、こういうさまざまな、日本の社会で課題が山積している分野で働く人たちの負担軽減や労働時間の短縮につながり、第四次産業革命が社会的課題解決型として展開されることの期待感を抱くものでございます。また、新しいビジネスモデルの創造の可能性も感じます。

 他方、AIに仕事の多くが奪われるのではないかという指摘もあるわけでございます。AIに何ができて、何ができないか、あるいは、何をさせてよくて、何をさせてはならないか。つまりは、AIと生身の人間とのすみ分け、ベストミックスはどうあるべきかというようなことを念頭に置いた第四次産業革命でなくてはならないと考えるわけでございます。

 第四次産業革命の司令塔になるのが、安倍総理自身が議長となっている未来投資会議、世耕経産大臣は副議長というお立場でございます。

 このメンバーを見ると、例えば、医療や介護や保育や福祉、労働、こういった分野の人たちが未来投資会議の主要メンバーに入っておりません。ものづくりだけではなくて、第四次産業革命が今申し上げましたような社会課題解決型のものとして期待に応えていくとしたならば、人づくり、あるいは人に寄り添う分野の代表者の方がこの未来投資会議のメンバーになり、それらの意見が具体的に反映されるべきではないかと考えます。

 例えば、がん医療の現場がわかっている人、障害者の移動の困難さがわかっている人、地域包括ケアシステムの構築について詳しい方や、あるいは、介護分野で腰痛などのそういう現状がわかっている人や、学校で先生方の多忙さの実態がわかっている人、こういう人たちがメンバーに入るべきではないかというふうに考えるわけでありますけれども、大臣の、経産省のお考えはいかがでしょうか。お聞かせをいただきたいと思います。

世耕国務大臣 メンバー構成の理由については内閣官房の方から聞いてもらえばいいと思います。

 人工知能がまだこれは今、立ち上がり期でありまして、人工知能が本当に世の中を変えていく可能性は非常にあると思いますし、人工知能による未来予測なんというのもいろいろ読んでみますと、人間は働かなくてよくなって、一日じゅうお茶飲んで、本読んで、テレビ見て、ベーシックインカムの形で、人工知能がつくり出したお金が国から分配されるなんという世の中になるんじゃないかとか、いろいろな予想は出ていますが、現時点ではまだそこまでは全くいかないわけでありまして、やはり、今一番未来投資という観点からいくと、AIとものづくりを結びつけていくのが一番日本の勝ち筋ではないかというふうに考えていまして、私は、そういう観点から未来投資会議で、人工知能、経済産業省としての立場を述べていっているわけであります。

 確かに、人工知能はいろいろな分野に影響を与えますよ。ただ、影響を与える分野の人全員を呼んでいると、あらゆる職種の人を呼んで会議をやらなきゃいけないということになりますから、そこは少し、ヒアリングとか、そういうことで対応していけばいいのではないかというふうに思います。

 詳細は内閣官房から答えてもらいます。

宇野政府参考人 お答え申します。

 未来投資会議の構成員につきましては、内閣総理大臣が、未来への投資に関しすぐれた識見を有する方の中から選定をされることになっております。

 ただ、議事の運営に当たりましては、議長である内閣総理大臣が必要と認めるときは「関係者の出席を求めることができる。」としておりまして、例えば、これまで、医療、介護分野につきましても、現場のニーズを熟知する方々をお招きして議論をさせていただいております。

 具体的には、昨年十一月十日に開催した未来投資会議におきましては、「医療・介護の未来投資と課題」という議題のもと、日本医師会の会長を初めといたしまして、医療や介護を専門とする大学の学長、教授の方、あるいは介護施設の施設長の方々等々をお招きして議論を行ったところでございます。

 今後とも、関係する議題に合わせまして、このように必要な方々をお招きして議論を深めてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

中根(康)委員 今の大臣あるいは内閣官房からの御答弁だと、例えば、今例に挙がった医師会、あるいは労働分野の代表である連合の方とか、今話題になっている保育の方とか障害分野の方とか、こういった方々は必ずしも常任のメンバーでなくてもいいということであったと思いますけれども、私は、この第四次産業革命が、ものづくりだけではなくて、社会課題解決型のものとして、人に優しい、暮らしを豊かにしていくものとして展開されていくためには、全ての人とは言いませんけれども、今、全くと言っていいぐらいそういった方が入っていないわけでありますので、そういった方をもう少しふやしてもいいのではないかと御提案を申し上げているわけでありますので、ぜひ内閣官房の方で、あるいは経産大臣からも、そういった御提言を賜りたくお願いを申し上げるところでございます。

 AIやロボットは確かにいい仕事をしてくれるかもしれませんけれども、やはりこの人間社会は人間が主役でなくてはならないわけでありまして、ロボットは消費行動をしませんし、ロボットは人口をふやさない、こういうわけであります。ロボットが主役ではなく、主役はあくまでも生身の人間である。技術がひとり歩きするのではなくて、人と親和性の高い第四次産業革命であってほしいということを期待申し上げて、そういった観点から、未来投資会議のメンバーの人選も、あるいは議論の中身もそういうものであるということを期待申し上げるわけであります。

 民進党は、第四次産業革命小委員会というものを経済産業部門の中に設置をいたしまして、大畠先生が顧問、北神先生が座長という布陣で強力にこの分野についての勉強を進めてまいりたいと思っておりますので、ぜひまた政府とも連携していきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、車のことについて幾つかお尋ねをしてまいりたいと思います。

 アメリカのトランプ新大統領、こういうことを言っておりましたよね。アメリカで車が売れないのは日本のせいだ、日本の自動車貿易は不公平だ、為替操作しているのではないか、日本はアメリカ車の販売を不可能にするような措置をとっているのに、大きな船に数十万台も車を積んできて売りつけるというようなことを言っておられました。(発言する者あり)

 実態はそうではない。今、筆頭理事の近藤先生が言っておられるように、言いがかりなんですよ。日本市場は十分解放されておりますし、関税があるのはむしろアメリカの側でありますし、日本の自動車産業は米国内で百五十万人も雇用をつくっておりますし、輸出台数も、ピーク時の約三百四十万台から、二〇一六年の数字で言えば約百七十万台に半減しているというのが実情であるわけであります。

 日米首脳会談やトランプ大統領の施政方針演説などを見ると、最近ではトランプ大統領、以前のようなこういうことは言わなくなったようにも見えますけれども、日本の自動車産業や車を取り巻く日米関係、通商関係について、トランプ大統領による誤解が既に解消されて、正しい事実の認識が大統領の中で深まっているということになっているのかどうか、世耕大臣の見方をお示しいただければと思います。

世耕国務大臣 あのトランプ大統領の発言は、誤解か、あるいは情報不足があったというふうに思います。

 総理が訪米される前に経産省の方からいろいろなデータや資料をお渡しをして、言っていただきました。例えば自動車については、アメリカでの自動車生産を減らしているのは実はアメリカの自動車企業でありまして、一九九九年から二〇一五年までの間に、三百六十一万台、アメリカ系の自動車会社がアメリカでの生産を減らしています。その間、日本系の自動車企業は、何と百四十九万台もふやしているんです。ヨーロッパもふやしてはいるんですが、ヨーロッパ系の自動車会社が七十万台に比べて、日本はその倍以上ふやしております。

 そして、トランプ大統領が大変気にされる雇用という面でも、先ほど言っていただきました、関連産業まで含めたら自動車で百五十万ですが、正確な数字としては、例えば、アメリカの総雇用者数の中で日本が生み出している数というのは八十三・九万人。第二位で、シェアとしては一三・二%。外国企業が生み出している雇用の中で一三・二%ということになります。また、製造業に限って見ますと、三十八・三万人。これはもう一位でありまして、シェアが一五・六%。大変雇用の数も生み出しています。

 では、雇用の質がどうかといいますと、アメリカ全体で平均賃金が六万三千二百七十七ドルのところ、日本系の企業で働く人たちの平均賃金は八万一千百四十六ドルということで、非常に質の高い雇用も生み出しています。

 そして、日本はアメリカの輸出にも大変貢献していまして、アメリカの総輸出額は四千二百五十二億ドルということになりますけれども、その中で日本系の企業は七百八十七億ドル、一八・五%も輸出にも貢献をしている。

 こんなデータを安倍総理に持って首脳会談に臨んでいただきました。

 その結果、会談の詳細は私もわかりませんけれども、総理は、ゴルフのラウンド中も含めて、こういう話をトランプ大統領に粘り強くされたんだというふうに思います。明らかに、今御指摘のようにトランプ大統領は、日本の自動車産業に関して余り情報不足のお話をされることはなくなったというふうに思っています。

 ただ、一方で、最近の報道では、政権幹部がまだ引き続き、例えば、日本の自動車には非関税障壁があるとか、そういう発言をまだされています。実際は非関税障壁なんてもうありませんけれども、そういう発言もされています。これからも、粘り強く政権側にしっかりとした説明を行っていく必要はあるんだろうというふうに思います。

 そういう意味で私も、国会のお許しをいただければ近く訪米をして、カウンターパートであるロス商務長官初め関係者と会談をして、この自動車産業が、逆にアメリカの輸出ですとか雇用に貢献をしているということをしっかりと説明をしてまいりたいというふうに思っています。

中根(康)委員 確かに、けさのニュースで、アメリカの政権幹部の方が非関税障壁があるということを言って、いまだにまだそんなことをおっしゃっておられるのかということで、まだまだ誤解が解けていないというか、わかっていてあえてそんなことを言っているのか、よくわからないんですけれども、誤解を解かないふうにというか、しようとしているのではないかと思えるような感じもするわけでありますけれども。

 安倍総理も、ゴルフを随分やった、あるいは大統領とかなり長時間にわたって同行していたというか、ともに過ごした。間違いなくこういうことを、今大臣が御説明いただいたことを大統領に伝えていただいたということですか。うなずいておられますのでそういうことだと思いますが。

 これから、TPPがなかなか困難な状況になってきている中で、通商交渉は二国間の交渉がなされていくという見方もあるわけでありますけれども、例えば米のように、ミニマムアクセスだとかいって最低限何台、日本はアメリカの車を買わなきゃいけませんよ。アメリカの車が売れないのは、売りたいと思えば、日本人が好むような仕様にやはりアメリカの企業が努力をするべきであって、例えば、最低限の輸入を課すとか、そういうようなことには絶対にならないような交渉を、これから厳しいものになると思いますけれども、世耕大臣には大いに期待をさせていただきたいと思います。

 ロス長官に会う、恐らく近藤理事も大臣の訪米はお認めになるんじゃないかなと思いますけれども、もし行かれたらぜひ有意義なものにしていただいて、また、その結果を踏まえた議論がこの経産委員会でできるということを期待をさせていただきます。

 次はエコカーについてでありますけれども、一月二十日の総理の施政方針演説では、結構いろいろなことをおっしゃっておられるんですね。

 水素エネルギーは、エネルギー安全保障と温暖化対策の切り札です。日本で未来の水素社会が幕をあけます。あるいは、来年春には、全国百カ所で水素ステーションが整備される。また、二〇二〇年には、現在の四十倍、四万台規模で燃料電池自動車の普及を目指します。さらには、世界に先駆け、国際的な水素サプライチェーンを構築しますなどなど、水素に対する強い思いは表明されておられるわけでありますけれども、この施政方針演説の中では、電気自動車に対する言及はありませんでした。

 この総理の思いからすると、我が国のこれからのエコカーは、燃料電池車が主役となるということになるのかというふうにも感じ取れてしまうわけであります。

 FCVにしてもEVにしても、水素スタンドあるいは充電スタンドが必要で、エコカーの普及とインフラの整備は両方相まって進んでいかなければならないわけでありますけれども、現在、政府は、水素スタンドにも電気スタンドにも、両方に設備設置補助金を出しております。

 将来、両者が共存することを想定しておられるのだとは思いますけれども、総理がFCV、燃料電池車のみ語り、電気自動車は語らないということになると、電気自動車に対する投資は無駄になるのではないかと思われかねないわけであります。また、エコカーの中には燃費基準を達成したLPガス車も存在しているわけでありまして、これからの企業の投資戦略にもかかわる問題でもございます。

 日本のエコカー戦略というものを、この際、世耕大臣から明確にお示しをいただければと思います。

世耕国務大臣 次世代自動車というものは、いわゆる燃料電池自動車だけではなくて、EVですとか、あるいはプラグインハイブリッドの自動車、こういったものも、CO2の排出削減ですとか省エネルギー推進の観点から、非常に重要な次世代自動車だというふうに考えております。

 政府としては、二〇三〇年までに、新車販売に占める次世代自動車の割合を五から七割にするということを閣議決定をしております。こういった普及目標の達成に向けて、昨年三月に公表したEVそしてプラグインハイブリッドのロードマップですとか、あるいは水素・燃料電池戦略ロードマップでは、我が国における保有台数について、まず、EVそしてプラグインハイブリッドについては、二〇二〇年までに最大で百万台、そして燃料電池車については、二〇二五年までに二十万台程度という目標を定めたところであります。

 いろいろなファクターで、まずはやはり価格を安くしていかなければいけません。燃料電池車なんというのは、まだとても手が届くような値段ではなかなかない、非常に高い値段であります。

 また、充電器ですとか水素ステーションといったインフラ整備も非常に重要であります。

 和歌山では、水素自動車が自動車ディーラーに展示してあるんですが、全く動けないんです。なぜならば、水素ステーションが遠くて、そこへ行って帰ってくるだけで水素が空っぽになっちゃうという状況でありまして、そういうインフラの整備というのも、次世代自動車の普及には非常に重要だというふうに思っております。

中根(康)委員 ということになると、総理は燃料電池車について随分強い思い入れをお示しになられましたけれども、世耕大臣としては、燃料電池も、電気自動車も、プラグインハイブリッドも、いわゆるエコカーと言われているものが全体的に普及していく、それが我が国のエコカー戦略だということだと思いますが。

 例えば、よく例に挙げられる例が、以前、ベータとVHSのビデオテープ、あれが、両方とも走っていたんですけれども、結局一つは淘汰されて片方に集約されていった。こういうこともあるわけでありますので、燃料電池と電気自動車も同じようなことにならないとも限らないという懸念もささやかれているわけでありますが、その点はどうお考えになっておられるでしょうか。

世耕国務大臣 これは基本的にはメーカーの戦略ということになるかと思いますが、当然、いろいろなバランスを見ながら、また、海外にも売っていかなければいけないわけですから、そういういろいろなトレンドとかを見ながらということだと思います。

 ただ、燃料電池車というのはやはり、水素社会という言葉がありますけれども、社会全体の構造を変えていくという意味で非常に意味があるものだというふうに思っておりますし、あえてもう一つ言うと、電気自動車は割と誰でもつくれますが、燃料電池車は相当なつくり込みの技術がないとできないということ、これは日本がやはり得意で、日本が勝っていける可能性が非常に高いというところがある。

 そういう意味で我々は燃料電池車を結構重視はしているわけでありますけれども、当然、EV、プラグインハイブリッドも含めて、バランスよくやっていくということが重要だと思います。

 その辺のバランスは、各メーカーがそれなりに判断をされながらやられるのではないかと思います。

中根(康)委員 そういった中でぜひ国際標準化戦略にも勝ち抜いていただいて、日本がこのエコカー戦略の主導権を握る、そのことを通じて日本が稼げる体制をつくっていく、こういうことに結びつけていただきたいと期待をいたします。

 次にエコカー減税でありますけれども、年末年始の税制議論でエコカー減税の対象車種をめぐって、財務省、総務省グループと経産省との間で綱引きが行われたとも感じています。財務省、総務省は税収を確保したくて対象車種をできるだけ絞り込みたい、経産省は販売減を恐れて絞り込みを最小限にしたいという思惑がぶつかり合ったのではないかと見ておりました。

 しかし、これはいずれもおかしな話でありまして、もともとエコカー減税は地球温暖化対策のために導入されたはずだと私は認識をしておりまして、改めてこの場で確認したいと思うんですが、総務省の方に来ていただいておりますが、エコカー減税のそもそもの導入の目的は何であったか。お示しをいただければと思います。

開出政府参考人 お答えいたします。

 エコカー減税は、燃費性能がよりすぐれた自動車の普及を促進する観点から、燃費性能に応じて税率の軽減措置を講じるものでございます。

 燃費水準が向上する中で、対象範囲の見直しを行わなければ政策インセンティブ効果が低下するため、これまでのエコカー減税の見直しにおきましても燃費基準を適切に切り上げてきたところであり、このことにより、エコカーの普及や燃費値の向上に一定の成果を上げてきたものと考えてございます。

 今回の延長に当たりましても、足元の自動車販売への影響に十分配慮しつつ、このような観点から燃費基準を見直すこととしたものでございます。

中根(康)委員 今の総務省の御説明だと、それでは、エコカー減税の導入の目的の中には地球温暖化対策という観点は含まれていなかった、燃費水準、イノベーションのインセンティブを上げるために導入した、こういうことになるんでしょうか。もう一度確認させてください。

開出政府参考人 エコカーの普及や燃費値の向上が図られるということでございますので、地球温暖化にもいい影響があるということになるかと思います。

中根(康)委員 結果的に地球温暖化に寄与する、こういうことで、もともと、そもそもの導入目的の中には地球温暖化対策ということは入っていなかったということで、ちょっと僕の認識とは違ったものでありましたけれども。

 今回のエコカー減税の対象車種の絞り込みの議論は、あたかも、エコカーが売れ過ぎると税収が減って困るからというようなものになってしまったのではないか。その結果、二〇一七年度与党税制大綱では、新車に占めるエコカー減税の対象車種は、これまでの九割から、二〇一七年度には八割、二〇一八年度には七割に縮減をするというものになってしまいました。エコカーが売れ過ぎて税収が減るから、対象車種を絞って実質増税にするというのでは、本質を見失ったものと言えるのではないでしょうか。

 エコカー減税の趣旨からいえば、逆にもっと拡充をすべき、エコカー対象車を少なくとも現状維持をする、あるいはふやす、拡充をするという対応がとられてしかるべきだったのではないかと考えます。

 LPガス車も、燃費基準を達成すればエコカー減税の対象となるべきだというふうに思いますし、エコカー減税の議論が本来の趣旨からかけ離れたものになってしまった、税収確保のための議論になってしまったという感じがいたしますけれども、この点については政府はどうお考えになるでしょうか。

開出政府参考人 与党税制改正大綱におきましては、エコカー減税制度の取り扱いにつきまして、いろいろな観点からの指摘が大綱に盛り込まれております。

 例えば、道路の維持管理、更新や、防災、減災等の推進に国、地方において多額の財源が必要になるという点、先ほど申し上げました政策インセンティブ機能の強化を図る観点、原因者負担、受益者負担としての性格、市場への配慮、さまざまな観点からの検討が必要であるということに基づきまして結論が導き出されたということでございますので、そういったいろいろな観点からの検討が必要ではないかというふうに考えてございます。

中根(康)委員 今、例えば道路の維持管理というようなこともおっしゃられましたけれども、まさにここはかねてから議論をしているところでありまして、車に関する税金は一般財源化されて特定財源ではないということで、そういう意味では既に課税根拠が失われているということはかねてから指摘を申し上げているにもかかわらず、依然として、今御答弁されたような目的で税収確保を図るというところに、本来の車体課税のあり方、自動車関係税制のあり方がねじ曲げられている原因になっているのではないかと指摘を申し上げておきたいと思います。

 車に関する税制のもう一つの重要な論点は、やはり、これもかねてから申し上げております。ユーザー負担の軽減と、税制自体の簡素化ということであります。

 与党税制改正大綱に、平成三十一年度税制改正までに、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置をとるとあります。

 これを素直にそのまま受けとめれば、最低限、自動車取得税は廃止をする、自動車重量税の当分の間税率は廃止をする、自動車税に環境性能割は課さない、課税根拠のない税金は課さない、つまりは、ユーザー目線からの税制の抜本改革を実現をするということがこの与党税制改正大綱の意味するところであると受けとめられるわけでありますけれども、その真に意味するところを御説明をいただきたいと思います。

糟谷政府参考人 与党税制改正大綱は、さまざまな議論の積み重ねを踏まえて与党において取りまとめられたものでありまして、政府として、その文言の内容についてコメントしたり解釈する立場にないという点は御理解をいただきたいと思います。

 その上で、先ほど先生御指摘のように、簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減等を図る観点から、「平成三十一年度税制改正までに、」「自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。」というふうに明記をされたわけでございます。

 経済産業省といたしましては、この税制改正大綱を踏まえながら、自動車関連産業が生み出す消費や雇用、生産基盤などの実体経済をしっかり支えていくという視点に立って、車体課税のユーザー負担軽減に向けた検討を行い、しっかりと必要な要求をさせていただきたいと思います。

 結果については、その上の、与党税調等における御判断の結果ということになろうかと思いますが、経済産業省としては、しっかりと検討を行い、要求を行ってまいりたいと思います。

中根(康)委員 与党の決めた税制大綱だから、経産省としては、コメントをしたり、あるいは解釈をする立場にないと糟谷局長はおっしゃいましたけれども、でも、何らかの形で、何かの意味をここから受けとめなければ、解釈しなければ政策をつくれないわけでありますので、やはり解釈するんでしょう。どうなんですか。これを読んでも何も考えないんですか。

糟谷政府参考人 我々なりの立場で受けとめて、要求をしたいと思います。

中根(康)委員 言いにくいところもあるんでしょうから、これは経産省としてはユーザー目線での抜本改革を目指していただく。解釈をしないとおっしゃいましたけれども、おっしゃったように、消費や雇用に対する影響というものを考えたときに、車を売りやすく、買いやすくするということ、国民に不必要な、あるいは、もともと課してはならない税金をやめていくということが国民経済、国民生活に寄与するということになるのは誰が考えても当然のことでありますので、経産省としてはそういうお立場で政策づくりを進めていただくということでありますが、せっかく総務省さんもお越しいただいておりますので、この点については、総務省さんはこの与党の税制改正大綱を、解釈はしないのかもしれませんが、どう解釈をされるんでしょうか。お尋ねいたします。

開出政府参考人 与党税制改正大綱におきましては、委員の御指摘ありました、「税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。」とございますが、幾つかの観点であるとか留意事項があわせて示されてございまして、その中には、やはり私どもの立場といたしますと、「安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、」という留意点も記載されているところでございますので、そういった点を含めまして総合的に検討をするということになろうかと思います。

中根(康)委員 安定的な財源の確保というのは必ず出てくるんですけれども、車の中だけで考えちゃいけない。税制全体で歳入を考える。あるいは、総理がいつも、全国津々浦々、景気はよくなっているということでありますので、そうならば税収は上がっていくわけで、上がらないとすればこれはアベノミクスがうまくいっていないということになるわけでありますけれども、そういう歳入全体で考えていくということであって、車の中だけでつじつまを合わせていこうとすると、それはおかしな税制になってしまう。僕は、この点について言うと経産省に軍配を上げたいなと思うんですが。

 最後に、もう時間があと一分ということになりましたので、ユーザー目線からの自動車関係税制の抜本的な見直し、これが雇用や経済に与える影響ということから考えて自動車税制はどうあるべきか、政府の中で大臣がどう発信をして提言をしていくか。できれば、ここで力強くお示しをいただければと思います。

世耕国務大臣 私も委員と考え方は一緒です。やはり、長い視点でバランスをとっていかなきゃいけない。

 一般論ですけれども、一旦減税になっても、きちっとそれで産業が活性化して、やがて税収で成長の果実として返ってくるという考え方をしなければいけないと私は経産大臣としては思っていますが、どうしても単年度の中で安定財源をしっかり確保しなければいけないという考えの役所もありまして、それが、議論をして政府として総合的に決める。

 ただ、自動車は非常に重要であります。雇用の一割を占めている産業であります。自動車が最近ちょっと国内生産が頭打ちというか、落ちてきていまして、そんな中で、民間の調査では、買うときの負担になるのは何かといったら、消費税よりも、保険料よりも、やはりこの自動車関連の特別な税だということをおっしゃっている方が多いわけでありまして、我々としては、今後もこういった観点から税制に対してしっかりと要望をしていきたいというふうに思います。

中根(康)委員 総務省のお立場でいっても、地方に行けば行くほど公共交通機関は脆弱でありますし、車は生活の足ということになるわけでありますので、車を取得しやすい環境を整えた方が地方創生ということにも結びつくということだと思いますので、これはもう省益ということではなくて、国民目線でぜひ考えて、結論といいますか、政策づくりを進めていただきたいということを御要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 おはようございます。民進党の鈴木義弘です。

 質問に入りたいと思います。

 大臣所信の中に「通商国家として成長してきた我が国」という言葉が述べられているんですけれども、日本の輸出依存度というのが一一・四%の、内需国家じゃないかということです。G20で日本は十八位、米国はそれよりも低いと言われているんです。これで通商国家として成長してきたと言えるのかどうか。

 過去の資料を見ても、高度成長期のときもそうだったみたいなんですけれども、輸出でもうけているというよりも、意外と、内需型の国家でずっと来ているというデータが出ているんです。

 それについて大臣の御所見をお尋ねしたいと思います。

世耕国務大臣 今御指摘の面で、同意できるところも多々あると思っています。いわゆるシンガポールのような国では日本はありません。国内に一億人を超える人口を抱え、たくさんの人々が消費し雇用されるという社会であります。内需というのは非常に大きいものがあるわけであります。

 しかし一方で、例えば、我々はもう資源を輸入しないと生きていけない。その資源を輸入するためには、やはり外貨を獲得しなければいけない。そして、そのためにはやはり、貿易をして、いい製品を海外に売って外貨を持ってくる。そして、その外貨でエネルギーを確保して、そして、国内がしっかり立っていけるようにしていかなければいけない。こういう国であるということであります。

 そして、輸入した資源を加工して、またそれを自動車とか家電のような最終製品として海外へ輸出する。この循環で日本経済は、高度成長期も含め、そして今も成り立っているわけでありますから、通商国家として成長してきたということは、疑問を挟む余地はないのではないかなというふうに思います。

鈴木(義)委員 最近は、原油を買うために、一生懸命付加価値を上げて、産業を興して何とかやっているんじゃないかというふうに言われるところもあるんです。中東に一生懸命いろいろなものを売って、結局、ガソリンを買うためだけにお金を一生懸命稼いでいる。

 そこで、今回、ちょっと数字を幾つか挙げさせてもらいたいと思うんです。

 そもそも実質的な輸出依存度は、その指数の数値よりずっと低いと述べている方もいらっしゃるんです。なるほどなと思ったんですけれども、その輸出依存度の計算式をおさらいすると、輸出総額割ることのGDPイコール輸出依存度。このGDPは、御案内のとおり、売り上げから経費を引いて利益になる。それが付加価値額になるんです。ですから、輸出依存度の計算式は、本来、(輸出総額引くことの輸入原価)割ることのGDPが輸出依存度じゃないかということなんです。これの方が実数に近いんじゃないかということなんです。

 輸出に依存している割合、先ほども述べましたように、一一・四%の計算式は、今前段で申し上げた、輸出総額割ることのGDPで輸出依存度を出しているんです。でも、本来は、資源を入れて、それから加工して外に出すということを、輸出に依存をしているんだというふうに考えるんだったら、差し引きしたところをGDPで割らなかったら本来の数値にならないんじゃないかという考え方なんです。いかがでしょうか。

中川政府参考人 委員より今、輸出依存度のはかり方についてのお尋ねがございました。

 確かに、輸出依存度については、二通り考え方があると最近言われてございます。従来、私どもが使っておりますのは、財とサービスのグロスをGDPで割った輸出依存度というのがございますが、近年、委員御指摘のとおり、OECDがWTOとの間で、輸出から輸出原価を差し引いた付加価値ベースの輸出額というものを指標として提唱しておることもございます。

 それで見ますと、私どもの輸出依存度は、当然、輸出から輸入原価を引きますので、グロスでの輸出依存度よりも低くなるのは確かでございます。

 その二つの輸出依存度の統計でございますが、どちらが適しておるということでは必ずしもございませんで、グロスの輸出貿易統計に加えまして、ネットの、委員御指摘の、輸出からその総額を引いたもの、それにつきましては、まさに財、サービスのリアルな動きを把握するだけでなく、いわゆるグローバルサプライチェーンを把握するという意味で、貿易の実態を把握するための重要なものというふうに私どもも考えてございます。

 いずれにいたしましても、私どもといたしましては、従来からのグロスの貿易統計のみならず、ネットの付加価値統計をも踏まえて、両方あわせて貿易統計として活用していきたいと考えてございます。

鈴木(義)委員 済みません、聞き漏れてしまったんですけれども、では、実質、数値としたら幾つになるんですか、今の計算式だったら。

中川政府参考人 現在、利用可能な数字といたしましては、最新のものが二〇一一年の統計でございます。いわゆるネットの輸出依存度で見ますと、日本は一二・七%ということでございまして、同じように、G7の中では第六番目、そういうことでございます。

鈴木(義)委員 それで大臣にお尋ねしたいんですけれども、通商国家というのが、だから、こういう数字もきちっと把握した中で経済再生をしていくといったときに、輸出に偏った政策だけやっていたのでは経済再生にならないじゃないかという考え方なんです。

 そこのところをどう捉えるかということを、もう一度繰り返しお尋ねしたいと思います。

世耕国務大臣 その点は全く賛成ですよ。内需をしっかり刺激をしていくということは重要だと思います。どちらかというと、貿易摩擦以来、かなり内需を刺激する政策に我々はシフトをしてきている面もあろうかというふうに思っています。

 ただ、一方で、やはり貿易で外貨を稼いできたというのもこれは非常に大きい。単にエネルギーを買うだけではありません。日本の外貨準備高というのが、これが日本の財政に対する大きな信認のバックになっている面もありますし、その外貨準備をバックにして我々はいろいろな対外的な政策も打てるわけでありますから、そのバランス、輸出と内需のバランスをしっかりとりながら国の運営をしていくべきではないかというふうに思います。

鈴木(義)委員 また数字の話をさせてもらいたいんです。

 今、働き方改革、まあ厚労委員会でやるのが筋なんでしょうけれども、産業政策として捉えたときの考え方なんです。よく言う、労働生産性を上げろ、これももう一回、その労働生産性の数式はどこから来るのかといったら、付加価値額割ることの従業者数、こういうふうになっているわけです。付加価値額は、人件費、支払い利息等、動産・不動産賃借料、租税公課、営業利益、これを従業者数で割って労働生産性を出している。公式に使っている指標だと思います。

 では、人件費を上げれば生産性が上がっちゃうんじゃないかということなんです。

 これも一つ、わかりやすい例示を挙げるんですけれども、「日本がギリシャより労働生産性が低いのは、当たり前。」という見出しの記事を見たんです。労働者全体の生産性は、失業率の高いギリシャが高く、失業率が二二%、これは年度によって多少幅があります。生産性の低い産業の労働者が多く含まれる日本では低くなる。今、完全失業率が三・二とか、四に行ったり前後していると思います。労働生産性が低い原因を働き方に求めるのは、一人一人の働き方を変えればGDPが上昇すると言っているのに等しいと述べている人もいるんです。

 別の方は、労働生産性にとって重要な何かは、国や企業にとって売るものが何なのか、そして、それが売れるのか、売れる構造を持っているのかというふうな指摘をする人もいるんです。従業員の努力だけじゃなくて、会社が売れるものをその従業員に売ってもらわないと売れないでしょうという考え方です。国も同じです。

 労働者にとって労働生産性を上げるモチベーションが日本にはないんだと言う人もいるんです。生産性向上が個人の給与に反映される仕組みになっていない。労働生産性の低い産業に共通するのは、人件費の安さと利益率の低さなんですけれども、どちらも、上げろと言われて簡単に上げられるものではないでしょうということなんです。

 日本の労働生産性が低いという問題は、労働者の勤勉さや仕事のやり方、利益の分配などだけではなくて、日本経済や産業構造全体の非効率性の問題だというふうに言って指摘する人もいるんです。

 もう少し具体的な言い方をすれば、これは、外国人のコンサルタント会社の社長が次のように幾つかの要因を述べています。

 一つは、結果より努力を賞賛する考え方。残業を前提にした仕事量と予算設定。残業代の悪影響。収穫逓減の法則が理解されていない。管理者が効率を重視しない。政府もそうかもしれないですね。縦社会が生む非効率。労働市場の流動性の欠如。これも当たっているなと思うんです。非効率な社員を解雇できない。お役所化。IT技術の不活用。従業員をコストとしか見ない。フルタイム以外の労働力が十分活用されていない。従業員の満足度は重視されない。鬼上司が許されている。

 労働生産性向上と一口で言うんです、今言っているんです。日本の現状を直視すべきだと、逆に、今並べた一つの例示があります。これは提案なんですけれども、それを一覧表にして国民にも訴えかけて、政治で解決するものと企業や国民に協力してもらうもの、それをきちっとやらないと労働生産性は上がらないんじゃないかと思うんです。

 そこのところを大臣の御所見を伺いたいと思います。

世耕国務大臣 今ざあっと指摘されたことは、私も、エコノミストがおっしゃっていることだと思いますが、全部一つ一つうなずけることだと思います。

 特に、今読まれた、労働の流動性が低いとか、あるいは非効率な社員を解雇できない、この辺、ぜひ委員、賛成されるんだったら、我々の労働法制にも御賛成をいただければなというふうに思うわけであります。

 今、働き方改革というのは、別に単純な話をしているわけではありません。賃上げをやりましょうとか、我々はそういう単純な取り組みをしているわけではありません。働き方改革というマインドを働く側も経営者も持つことによって、今示されたような課題を一つ一つやはり正面から向き合って解決をしていかないと、本当の意味での労働生産性というのは上がってこないんだろうというふうに思っておりまして、今回、こういう運動をすることによって、各所でいろいろな考え方が出てきています。経済産業省でも、何度も申し上げていますが、答弁作成過程というものを抜本的に見直して、効率いい答弁づくりをやろうじゃないかなんということも今始めさせていただいています。

 経営者も働く方々もそういう視点でいろいろな取り組みをしていくということこそが重要なんではないか。特に、生産性の向上と賃金の上昇というのを、これを車の両輪のような形にして経済の好循環を実現をしていくということが非常に重要だと思っております。

鈴木(義)委員 私たちはずっとこの国で生まれ育ってきているわけなんで、働くことに関しては、やはり慣行とか慣習というのがあるんですね。いろいろな業種、業態の中、地域によっても変わってきます。だから、何が効率性が悪いのかというのはわからないんです。わからないということがわからないんです。わかりますか、わからないですか。(世耕国務大臣「いえ、わかります」と呼ぶ)わかりますよね。

 だから、第三者の目で見て一つの指標を出した方がいいんじゃないかということなんです。それがないのに、ただモチベーションだけ変えろとか、考え方を変えれば、何となくみんな自分たちで考える。だから、考えてもわからないんですよ。そこを国がきちっと示してあげないと、働き方改革だと言うだけで終わっちゃうんじゃなくて。

 今みたいな、外国人から見たときに、日本人のこういう慣習、慣行がおかしいんじゃないかと指摘されたんだったら、それを直していく方向にすれば生産性が上がるということです。いかがでしょうか。

世耕国務大臣 確かに、どういう働き方が効率的なのかとか、その辺の基準というのは難しいと思います。業種によっても、人によっても、年代によってもいろいろ違いが出てくると思いますから、国が一方的に何か指標をつくるというのはなかなか難しいんじゃないかな。

 でも、今、わからないことを私もよくわかります。そのわからないことをわかるようにしようという民間の取り組みも結構出てきていまして、例えばある重電会社では、ウエアラブル端末を身につけて、その社員の動きをずっと記録をして、例えば、よく打ち合わせをしている部署が遠いところにあると効率悪いですから、それを見つけ出して、よく会う部署をなるべく近くの場所へ置くとか、あるいは会議に、一人一人がそのウエアラブル端末で何かわかるらしいんですね。体の揺すり方で、すごく効率的に参加している人と全然ぼうっとしている人を見分けられるらしくて、そういうデータを蓄積して、もうこういう人は会議に参加しなくていいんじゃないかとか、そういうことも取り組んでいる会社もあります。

 いろいろな取り組みをやりながら、どうやって効率的に仕事をしていくかということを探求をしていくことが重要ではないかなというふうに思います。

 国においてもしっかり研究はしていきたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 ぜひ経済産業省がお手本を見せてもらったら、みんなが右へ倣えをするんじゃないかと思うんです。

 では、次にいきます。

 「夢から覚めたシンガポール。景気減速の要因は「外国人労働者」か?」と題した記事が目にとまったんです。八年前に私がシンガポールに視察に行った際、当時は県会議員だったんですけれども、現地の日本大使館やJSTのシンガポール支局の説明を思い起こしたんです。

 当時は人口が五百万人、うち、市民権を持つ人たちが三百六十万人、外国人労働者が百四十万人。人種、民族、宗教観がばらばらで、コミュニティーのとり方が一番政府として気を使っているという説明を受けました。外国人労働者は建設、土木等の現場労働者が多くて、自分たちの居住区と仕事場を往復して、市民権を持つ市民との交流を極力しないように努めているんだそうです。

 印象としては、外から見るのと内で聞くのは随分違うなと。シンガポールへ行くと、どこかのテレビコマーシャルで、屋上にあるプールで何か泳いでいる姿が目に浮かぶんですけれども、何か、すばらしい何とかライオンが水を出しているところしか私も思い浮かばなかったんですけれども、実質その経済を支えているのは、外国人労働者が三分の一もいらっしゃるということなんです。

 このシンガポールが、二〇一〇年のGDP成長率は前年比でプラス一四・五%と過去最高の成長率を達成したんだそうです。でも、二〇一五年では前年比プラス二・五%にとどまっていて、景気減速は明らかという、こういった記事なんです。中国の経済低迷の影響が挙げられるというものの、国内では、これまでの、政府が積極的に受け入れ、シンガポールの経済成長を支えてきた外国人労働者たちへの国民の不満が募っているということなんです。景気のいいときはいいんです。悪くなったときどうするのかということなんです。

 特に、職につけない国民が、金融セクターなどで働いている外国人に対して不満を持っている。これは、金融セクターで働いているということは、現場労働者とはまた違う、もう少し稼ぎのいい人たちのことを言っているんだと思うんです。

 政府は、外国人の就労基準を厳しくするなどして、国民の不満の高まりを抑える姿勢を示してきていますが、働き手である外国人労働者を規制すれば経済低迷に拍車をかけることにもなり、そう簡単に解決できる問題ではないだろう。

 入ってくる人は優秀な人、でも、国内で残っている人たちは仕事が奪われる、こういう話になっていったときに、入れる人を規制すると経済が落ちる。こういう話も、現実、近くの国であるということなんです。

 日本が高度プロフェッショナル人材をどんどん入れましょうという、経産省ではそういう方針を打ち立てているじゃないですか。そのときに、結局、大臣が所信の中で述べているように、イノベーションを促進するために、産学連携や海外からのトップ人材や企業の呼び込みを進めて、世界を目指すベンチャー企業を育成すると述べられているんです、所信の中で。

 では、そこで質問させてもらいたいんですけれども、外国人労働者の受け入れ政策が、平成二十四年から導入がもうスタートしている。その中で、では、平成二十八年六月末で、高度外国人として在留している外国人が、在留外国人の二百三十万人のうち、トップ人材の人が今はどのぐらいいるのか。では、それを今後どのぐらいふやしていこうというふうな考え方なのかということなんです。

世耕国務大臣 まず事実関係を申し上げますと、現在、専門的、技術的分野の在留資格を有する外国人というのは二十六万人ということになります。その中でも、特に高度な専門性を有する高度専門職は約四千七百人ということになります。

 政府としては、この高度専門職の方を二〇二〇年までに累計一万人を認定していくことを目指しているわけであります。

 私が所信で述べたこのトップ人材とは、まさに、我が国のイノベーション促進に資する技術ですとか知識ですとか経験を有している人材を指しておりまして、現時点で明確な受け入れ目標がそういう分野であるわけではありませんけれども、関係省庁と連携をしながら進めていきたいと思いますし、進めるに当たっては、今委員御指摘の、シンガポールの経験とか、あるいはヨーロッパの経験ということをしっかり生かしていかなければいけないと思いますし、既に生かしているからこそ、我々はのべつ幕なしに外国人を入れるわけではない。高度人材という形で、日本がこれから成長していくに当たって貢献してくれる人をしっかりと入れていくという判断をしているんだろうと思います。

鈴木(義)委員 この経済産業委員会で発言する内容じゃないと思うんですけれども、何か自分の地元に帰っていくと、日本人がやっていた中華料理屋さんがいつの間にか台湾の人がやっていたり中華系の人がやっている店がいっぱいできているんですよ。この人たちって高度人材なのかなと思うんですけれども、でも、どんどん外国人の方が職を求めて日本に入ってこられる。トップ人材は四千七百人を一万人にしていこうというのはそれは結構な話なんですけれども、そうじゃない外国人の人が日本人の職を逆に奪ってきているんじゃないかと思うんですよ。正しいか正しくないか、ここでこの議論をするつもりはないんですけれども。

 例えば、ブラジルの日系人の人が、景気がよかったときに、日系人である証明を出してもらえれば、日本で働いてください、特に製造工場のところに多かったと思うんです。リーマン・ショックの前だったと思います。景気が悪くなったら、もうそろそろうちはリストラして工場を閉めていくから、お帰りくださいと言って、国は三十万ぐらいそのときに飛行機代を出してやって、お帰りください、残る人はどうぞ残ってくださいというようなやり方をしたんです。その子供たちは、ポルトガル語はしゃべるんだけれども、日本語は全然しゃべれない。日本人の普通の小中学校に来られても、ポルトガル語がしゃべれる先生がほとんどいないんです。それが現実に起きたんですよ。

 でも、心ある日系のポルトガル人というより日系人が、自分で日本人学校をつくってその子供たちをサポートしようということをやって、手伝ってくれないかというふうに言われたこともあったんですけれども、だから、これも新聞に書いてあった話なんですけれども、外国人材を受け入れるのに日本の機が熟したのかどうかということなんです。

 まだ四千七百人が一万人だとか、今大臣から御説明いただいた二十三万人ぐらいだったらいいんですけれども、実際、外国人の方が二百三十万人、日本で少なからず働いているわけですよ。働いていないお金持ちもいるでしょう。

 でも、ある方は、五十万人から百万人単位で五年から十年かけて外国人を入れた方がいいんじゃないかというふうに言っている一方で、高度人材だとか技能人材に絞り込んで少しずつ入ってきてもらった方がいいんじゃないかというふうに述べている方もいらっしゃるんです。

 差別に反対するポリティカルコレクトネスというんですか、私はイングリッシュは余りうまくないので。政治的正しさが日本は大好きですよ、政治的正しいという言葉、実際それを言われてきたんですけれども、でも、米国も欧州も建前に疲れてしまった。だから、建前と本音の距離が広がり過ぎてしまって、すり合わせが必要になるんだ、世界はそういうモードになっていくんじゃないかというふうに締めくくっているんです。

 私も、この後から述べられた方の意見に同感をする一人なんです。日本人の考え方だとか価値観というものをきちっともう一度整理して、社会的ストレスは甘くないという言葉、先ほどのシンガポールの話じゃないんですけれども、日本人がストレスを抱えてしまうような社会になってしまったら、いい人材を入れたり外国人労働者を入れることによって私たちの生活の経済を下支えしてもらうのはいいんだけれども、では、日本というのはどういう国なのか、日本人というのはどういう考え方なのか、何を価値にしているのかというのをきちっと理解した人に入ってきてもらうようにしなければ、必ず社会の中での摩擦が起きると思うんです。

 その辺を産業政策としてどう考えるか、大臣にお尋ねしたいと思います。

世耕国務大臣 産業政策として考えると、実は、日本はこれから労働力人口がどんどん減っていく。労働力人口が減る中で経済成長した国というのは過去にないんです。だから、日本はこれから非常に難しいテーマに取り組んでいかなきゃいけない。

 実は、その労働力人口を埋められる手段として移民というのがあるわけですから、特に海外の人たちから見れば、日本は何で移民を入れないんだ、移民を入れない限り成長できないんじゃないかという見方を特に海外の人はたくさんします。でも、我々はその選択肢は今とっていません。

 それは、御指摘のように、社会的ストレスが高まる、治安の問題で発生するコストも出てくるかもしれない。その辺はよく慎重に見て、まず高度専門人材を入れていく。あるいは、分野を限って、技能実習制度という形で分野も限るし、期間も限った形で人手不足が顕著な分野に入れていくとか、そういうことを、これから慎重に考えながら、この問題は、委員御指摘の点は私もよく理解できますので、じっくりと考えながら前へ進めていく必要があるというふうに思っています。

鈴木(義)委員 自由な国アメリカであっても、米国人で補えないような仕事、足らないところの分野とか業種だとかポジションだとか、そこに限って移民を認めたり就労を認めているんです。

 今、日本がやっているのはそうじゃないですよ。先ほど例示で挙げた、だって台湾の方が地元で中華料理をやっているんだから。本当なんだ。自動車の解体現場に行けば、外国の人が大手を振って車の解体を輸出しているんですよ。現場をよく見た方がいい。そういう仕事は、外国の人がやらなくても日本人でもできる。でも、そこに規制をかけるということをしないでずっと日本はやってきているんですよ。高度人材ばかりじゃない。

 この経済産業委員会で言うことじゃないのでもうこれ以上質問はしませんけれども、だから、大臣がそのお考えがあるんだったら、ぜひほかの省庁にきちっと言って、社会的ストレスは甘くないんだよというのをやはり声を大にして言わないと、五年先、十年先、もっともっと外国の人が入ってきたときに、必ず、どうしようかという後の議論になるんじゃないかと思うんですけれども、もう一度御決意をお聞かせいただきたいと思います。

世耕国務大臣 その御指摘の中華料理店のことはちょっとよくわからないです。ただ、おっしゃる意味もわかります。私だってコンビニへ買い物に行ったりすると、やはり外国人の方がレジ担当でいるなんてケースは本当によく見ますし、建設現場でもよく見かけるわけであります。

 ただ、それは不法に入っている人でない限り、何らかの研修制度なり何らかの制度のもとで入っておられるんだろうと思います。いわゆる移民としてのべつ幕なしに入れるという政策は我々はとっておりませんし、私は、日本において今後もそれをとるというのは、今御指摘のシンガポールのケースとかドイツのケースなどを見ていると、これはなかなか難しいのではないかなというふうに思います。

鈴木(義)委員 以上で終わりますけれども、ぜひ、一回よく調査してもらった方がいいと思います。

 終わります。

浮島委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民進党の落合貴之でございます。

 本日は、大臣所信に対する質問を行わせていただきます。

 まず、ロシアとの経済協力についてでございますが、昨年、安倍総理とプーチン大統領の日ロ首脳会談の際に、八項目の協力プランが発表されました。そして、ことし一月、世耕大臣がロシアに行かれまして、何人かの要人と会談をされています。

 この八項目をもとにしたロシアとの経済協力、この進捗状況をお聞かせいただければと思います。

世耕国務大臣 昨年十二月、プーチン大統領の訪日に合わせまして、従来、我々日本側からロシア側に提示をしていたこの八項目の協力プラン、それぞれの項目のもとで、八十件、内訳としては政府当局間で十二件、そして民間機関間で六十八件の文書が署名されるなど、協力プランの具体化が進んでおります。

 そして、私もプーチン大統領訪日から一カ月置かない間にモスクワを訪問して、シュワロフ第一副首相を初め関係省庁の幹部とこの八項目の協力プランの進め方についてしっかりと打ち合わせをやってまいりました。

 ロシア側はやはり日本の本気度を感じてくれたと思います。単に覚書をサインして終わりではなくて、具体的プロジェクトにしていくんだという我々の思いはよく理解をしてくれたのではないかというふうに思います。

 近く、私がこの間行きましたから、今度はロシアの担当大臣に来ていただく番だというふうに思っておりまして、ロシア側のそういう意向も聞いておりますので、次は東京でこのプロジェクトの打ち合わせというのをしっかりと進めていきたいと思います。

落合委員 これまで残念ながら歴史的な経緯からしても通商関係が細かった国、そしてそれなりに大きい国との経済関係を強化していく、こういった経済協力は意義のあることだとは思います。

 ただ、ロシアという国は、どこの国も関係性に苦労している。欧州もそうですし、中国もそうですし、そういった中で、一筋縄ではいかない国との交渉をこれからもしていくわけでございます。これは大変なことだとは思うんですが、大臣がロシア経済担当大臣として心がけていることは何なのか、それをお聞かせいただければと思います。

世耕国務大臣 割と多くの人がロシアに関しては、なかなか手ごわいとか、本当に怖いようなイメージを持っている方も多いわけですけれども、私が実際にロシア人と、いろいろな人と交流してきた中で、意外と人はいいですし、あるいは、仕事の話になりますと、例えば期限を守るとか、あるいは文言の調整に関して非常に正確であるとか、極めて実務的な面を持っている人たちだなというふうに思っています。

 最近では、ビジネス環境ランキングではロシアはどんどん順位を上げていまして、そんなに日本と変わらないところまで来ているわけでありますから、余り先入観を持って考えない方がいいのかなというふうに思っています。

 あと、私が今協力プランを進めていく上で心がけていることは、まず一つは、ロシア国民によく知ってもらうことだと思っています。政府間でただやるだけではなく、企業間でやるだけではなくて、ロシアの国民に、日本とつき合ってこういうことが動き出したんだということを幅広く知ってもらうことが非常に重要だというふうに思います。

 ですから、私は今、ロシアメディアからの取材要請が来れば積極的に応えて、この八項目の協力プランとはどういうものかということを一生懸命説明させていただいています。

 また、一月、ロシアを訪問したときは、私の仲間の参議院議員十名に同行してもらいまして、相手側の議員にも出てきてもらって、議員間でこの日ロの協力について議論をしました。こういうことを通じて、また、それぞれの議員が地元へ持ち帰ってそういう話もしてくれるわけですから、そういういろいろな取り組みで八項目の協力プランというのを広くロシア国民に知らせていくということが重要だと思います。

 それともう一つ、やはり、日本の国益にとってマイナスになることは絶対にやってはいけない。日本の国益にプラスになるような形にしなければいけない。日ロがそれぞれウイン・ウインでお互いの国益にプラスになるような内容を常に心がけていかなければいけないというふうに思っております。

落合委員 今回は、特に外交にもたけている国ですので、今おっしゃった、ウイン・ウインの関係を絶対に構築するんだ、一方的にはならないんだということは絶対に重要なことだと思います。

 昨年の臨時国会でも私はこの件を取り上げさせていただきましたが、これは、一方的に技術ですとかお金をこちらが渡す約束をして、こちらには何も返ってこなかったというふうにならないようにしなければいけないと思います。

 これは、改めて見てみますと、第一副首相とも会談をされて、エネルギーイニシアチブの協議会、第二回の会合も行われています。ここで、化石燃料ですとか原子力、省エネ、再エネの各分野で合意したプロジェクトについてどんどん進めていくと。これは、特に化石燃料の分野の協力というのは我が国の経済にとって重要なことだと思います。

 一方、産業商務大臣との会談においての内容を見てみますと、これは、会談の内容がロシア企業の生産性診断及び裾野産業の人材育成の進め方について話すということで、ここで見た範囲だけでは、ロシア企業へのメリットしか読み取れないような会談もあるわけでございます。

 これは、双方のメリットがないといけない、本当に、特にロシアが相手だからこそ心がけなくてはならないと思いますので、ぜひそこに注力をしていただきたいと思います。

 ロシアとの関係におきまして、新しく経済活動を一緒にやっていきますというのと同時に、北海道の北方領土の問題、これも進めていこうと。これは外務省が中心になってやっていくことだとは思うんですが、今回、共同経済活動という言葉が出てきました。この協議会の座長は外務大臣ですが、座長代理に今回は世耕大臣も入るということで、新しい局面を迎えているものと思います。

 この北方領土の方の進捗状況はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 北方四島における共同経済活動については、昨年十二月、首脳会談、これは、まさに安倍総理とプーチン大統領が九十五分間、膝詰めで話をして、この四島における共同経済活動を進めるということに合意をしたわけであります。

 これからは、まず、これは主に外務省の仕事になりますが、日ロ双方の法的立場を害さない仕組みというのを考えていかなければいけない。

 例えば、共同経済活動で、参加している人がスピード違反を起こしたときに、ロシアの法律で取り締まられると、これは我々の法的立場が害されるわけでありますから、その辺をどういうふうに整理していくかという難しい交渉がまず一つあるというふうに思います。

 その上で、一方で、具体的案件も形成をしていかなければいけません。この具体的案件の形成に向けては、岸田外務大臣を座長、私を座長代理とする共同経済活動関連協議会というものを設置させていただきました。もう一回目の会合は行っておりまして、案件組成へ向けた検討を今各省に指示が出ているという状況であります。そして三月十八日には、東京において共同経済活動等に関する次官級の公式な協議が行われる予定であります。現在、これに向けて、経産省も含む関係省庁において具体的な検討を進めているところであります。

 共同経済活動は、本当にこれはやるのはなかなか大変です。特に、法的立場を害さない仕組みのもとでどういう経済活動がやれるのか、あるいは逆に、このプロジェクトをやっていく上で法的立場を害さないというのはどういうことなのかということを国を挙げて知恵を出してしっかりと検討して、その上で交渉をしていかなければいけない。大変な作業だというふうに思います。

 経済産業省としても、しっかり貢献をしてまいりたいと思います。

落合委員 法制度の例としてスピード違反を挙げられましたが、それだけではなくて、そもそも、商売をするというのは、何らかの法律に基づかなければならないですし、制度も整備されなければなりません。

 法律がかかわるということは、主権の問題が発生をいたします。これは、あちらの主権が認められた上で経済活動が始まるようでは絶対になりませんので、順番としては、法的な枠組み、制度的な枠組みの決着ができた上で共同経済活動が始まらないといけないわけですので、そこのところは、順番として、しっかりと主権の問題を先にめどをつけてから具体的には大臣の担当である共同経済活動の話が始まっていく、この順番はしっかりと担保するということでよろしいですね。

世耕国務大臣 もちろん、日本の法的立場を害さないという枠組みができないと、プロジェクトを具体的にスタートさせることはできないと思います。

 ただ、一方で、法的枠組みが完全に整理されるまでプロジェクトの方は何もしないということですと、逆に、具体的プロジェクトがないと、どういう法的整理が必要かという議論がなかなか具体的にできませんので、そこはうまくバランスをとりながらやっていく。ただし、本当にスタートさせるときには、当然、法的立場を害さない枠組みが全てセットされた後でないとこれは動けないということになろうかと思います。

落合委員 世界的に、歴史的に見ても、こういう状況で相手の主権を認めて経済活動をするなんということは絶対にあり得ないことですので、これは、前例のないことをやることが、悪い意味での行動をやることがないように、ぜひ、大臣の行動がかなり鍵を握っていると思いますので、御注視いただければと思います。

 これは本当に難しい問題でして、どんな国も国境沿いというのは、我が国の国境沿いの島でもそうですけれども、人口問題、そもそも、職がなくて、そこに生まれた若い人たちが都会の大学に、学校に行ってしまう、それから都会に就職してしまう、そうやって辺境の地、国境沿いの地は人口が減ってしまう、これが世界的にも安全保障上の一つの問題になっているわけでございます。恐らくロシアも、そういうことで北方領土のロシア人の人口問題、これは恐らくというか、実際には困っている状況なわけです。

 そういった中で今回合意をしました。その合意の後に、どうやらロシア軍は増強しているようである。そういった中で、では、一緒に仕事もつくっていきましょう、雇用もつくっていきましょう、ロシア人の人口もふえていきます、これをやってしまったら、これはロシアにとって都合のいいことばかりになってしまうわけでございますから、これは絶対に重要なことですから、私も注視をさせていただきたいと思います。

 これは毎月毎月進んでいく話だと思いますので、また改めて取り上げさせていただきます。

 それでは、所信の中の中小企業政策の部分について取り上げさせていただければと思うんです。

 グローバル化、グローバル化と大臣の言葉の中にも出てきますが、そういった中では、中小企業政策、特に製造業の中小企業に対してどのような政策を行っていくのか、これは重要であると思います。

 大臣の所信の中に、昨年末に下請代金の支払いに関する通達を五十年ぶりに見直し、現金での支払いを要請するなど、関係法令の運用を強化したとも述べられております。その前後もいろいろと述べられているわけですが、これらの措置をした背景を改めて伺えればと思います。

世耕国務大臣 この下請取引の改善を進めていくに当たっては、経産省を中心に、関係省庁がかなり広範に中小企業の現場にヒアリングをかけました。アンケート調査も行いました。

 そういう過程の中で、業界によってはいまだに一〇〇%手形で支払われているような業界がある。あるいは、手形についても百八十日を超えるサイトの手形で支払っているような業界もある。そしてさらに、当然、手形で受け取って、特に長いものを受け取ると、中小企業の下請の経営者は賃金とかを払うためにそれを現金化しなければいけませんから、それを銀行へ持っていったらやはり割引料を取られる。そうすると、その割引料の分は結局中小企業側が、下請側が背負ってしまっていることになるということで、これはよろしくないということで、今回、下請取引の適正化の中で見直しをさせていただいたわけであります。

 具体的には、原則手形取引はやめてほしいということも入れさせていただきましたし、ただ、それでは、実際中小企業で手形を振り出しているところもありますから、そこの資金繰りに窮するようなことがあってはいけないので、出す場合は、原則九十日のサイトにしてほしいということと、あと、割引手数料、これはやはり発注側が負担するというような原則も示させていただきました。

 もう既にいい変化は起こり始めているというふうに思っています。トヨタは、一次下請に対する支払いは全て現金化をするという宣言もしていただいております。

 時間はちょっとかかると思いますよ。急に来月から全部現金というのは、これはそれぞれの企業の資金繰りを考えても無理ですから、徐々に手形という慣習が現金払いへ変わっていって、下請中小企業の負担が減っていくことを期待したいと思います。

落合委員 アベノミクスで企業の利益は上がりましたということで、確かに上がっている部分もあると思います。経常利益を中小企業、大企業、製造業、非製造業に四つに分けて見てみると、リーマン・ショックでは全体的にどんと落ちているんですが、そこから製造業の中小企業以外は経常利益がどんどん上がってきているわけで、中小企業の製造業だけがほとんど上がっていない。リーマン・ショックで落ちたままになってしまっているということでございます。

 これは、ほかの業態が上がっているのに製造業の中小企業だけ上がらなかったということは、やはり制度的な問題があるのだと思います。やはり、ここに果敢に手を打っていくというのは重要なことだと思います。

 実際に行ったのは通達の見直しということですので、何か違反をしたら罰則をかけるわけではないわけですけれども、これは本当に今まで、いろいろと調べてみますと、製造業の場合は、取引関係に伝統があるということで、手形払いの割合は多いことが確かでして、しかも、手形を渡すまでに六十日ぐらい間がある。手形は百二十日以内となると、プラスして百八十日ですから、半年後に現金が入ってくるというような状況なわけでございます。

 でも、この半年後に現金が回ってくるような状況を五十年、通達を見直すまでこれまでやってきたような慣行があるわけで、これは、通達を見直しただけで五十年のこの慣行を変えていくというのは簡単なことではないと思います。

 しかも、こういう製造業の下請関係というのは、ただ下請が下にぶら下がっているだけではなくて、下請の下請もあって、その下請もあってと、何層にも構造があるわけで、それぞれお金のやりとりをしている。これは、大変複雑な、そして長期間にわたってやってきた商慣行を、しかもお金がかかわる問題を直していくというのは、大変難しいことであると思います。

 この実効性、しっかり担保できるのか。大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 最初にちょっと訂正させてもらいますが、今、我々の出した通達で、手形のサイトは百二十日を超えてはいけないのは当然のこととして、将来的には六十日以内という表現になっていますので、ここは正確に申し上げておきたいと思います。

 確かに、日本では、手形で払うというのがかなり長く続いている商慣行。ですから、今回の通達も、五十年ぶりの上書きということになります。

 ただ、これはやはり変えていくべきだ。フィンテックとか言われているときに、今おっしゃったような、支払いがだらだらと長くていいのか、それで本当に、逆に発注側も、きちっとした経営とか資金計画とか、そういうことをちゃんとやっていることになるのかということになると思いますから、この慣行からはしっかり脱していきたい。

 あえて通達でしかやっていませんが、かなり今、下請取引の改善ということが大分浸透してきました。その中で、手形はもう原則だめよということになっているということも、これは、私が地元で国政報告とかやりますと、手形の話をすると、わっとなります。みんな、そうなのかと言って、逆に問い合わせが、いや、うちも手形で受け取って苦労しているんだけれども、これを何とかなくしてもらえることになるんだろうかとか、物すごく関心が高いです。

 関心が高いということは、もう今、議論の俎上に上がってきていますから、だんだんだんだん、資金繰りにかかわることですから急激には難しいですけれども、しっかり変化は起こってくるというふうに思っています。

 現に、先ほど私、トヨタのことを申し上げました。トヨタが一〇〇%現金払いにする。そうしたら、きょうの新聞では、トヨタの一次下請であるデンソーと豊田自動織機が、今度は自分の下請に対して、今まで三割手形をまぜていたのを、一〇〇%現金にするということをきょう新聞で報道をされていました。

 まさに玉突き式に、現金払いの習慣、一番の発注元が現金払いにすれば、だんだんだんだんみんなお金が回るようになっていくわけですから、そういう取り組みを、法律による強制とかではなくて、やはり機運としてしっかりやって、末端まで現金払いというのをしっかり実現していきたいというふうに思っています。

落合委員 今、トヨタからデンソーまで来ましたと。ただ、デンソーは、下請ですけれどもグローバル企業の中にも入るぐらいの規模ですので、資金繰りはある程度余裕がある会社だと思います。ここから本当に下の下の下まで浸透していくのか、これはかなりリーダーシップが必要な問題だと思いますので、ぜひ注視をしていただければと思います。

 下請への圧力も含めて、こういった問題は公取が取り組んできた問題だと思いますが、公取としてこの問題の実効性をどうやって担保していくのか、伺えればと思います。

杉本政府特別補佐人 お答えしたいと思います。

 現金払いを原則とするという件につきましては、先ほど大臣からお話がありましたように、手形の問題で困っている多くの下請事業者の声を踏まえて、昨年十二月に公正取引委員会と中小企業庁において、手形サイトに係る通達を見直したところでございます。

 この通達につきましては、親事業者、大企業、そういうものについて周知徹底するように要請をしたところでございます。

 私ども公正取引委員会の下請法の執行におきましては、下請代金の手形払いについては、親事業者が下請事業者に対し一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することにより、下請事業者の利益を不当に害する場合には、これは下請法違反に当たるとされております。

 したがいまして、私どもは、割引を受けることが困難であると認められる手形、これにつきましては、繊維製品に係る下請取引については九十日、それから、その他の下請取引については、百二十日を超える長期手形については、割引を受けることが困難であると認められる手形に該当するとして、下請法違反のおそれがあるものとして、改善するように指導をずっとしてきたものでございます。

 今回、この通達を出しましたので、私どもは、この通達の趣旨、できるだけ現金払いとすること等につきまして、さらに周知徹底していくことが必要だと思いますが、同時に、長期手形の方に関する指導を行うに際しましても、あわせて手形サイトに係る通達の考え方を示しまして、できる限り現金払いとすることが趣旨であるということをこの際にも要請することによりまして、本取り組みの実効性を確保していきたいと考えているところでございます。

落合委員 これは、取引関係は複雑ですし、中小企業の数というのは物すごく多いですので、公取と中小企業庁と協力してやっていかなければならない問題だと思います。ぜひ協力してやっていただければ。また、これも経過で、必要があれば、私も国会で取り上げさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、少し大枠の問題なんですが、先ほど鈴木委員も、グローバル化について、自由貿易について、外需と内需の問題について取り上げられていましたが、私も、大局的な問題について一問取り上げさせていただければと思います。

 大臣所信の中にも、自由貿易体制を前に進めるためにリーダーシップを発揮していく、TPPは二十一世紀の世界のスタンダードにしていきますといった言葉から大臣所信は始まっております。一方で、世界を見ますと、イギリスは、国民投票でEUから離脱することを決めました。アメリカの大統領選挙でも、排外的な発言を繰り返していたトランプが大統領に選ばれたということで、世界的にはそういった現象が起きております。

 冷戦が崩壊以降、本格的に経済のグローバル化というものが始まったわけですが、今、いろいろな国では、この三十年進んできた線路をそのまま進んでいいのかという声が国民から出てきているものだと思います。

 例えばTPPを見てみますと、自由貿易を堅持していくためにTPPを推進していきますという言い方をしている方もいますけれども、ただ関税障壁をなくしていくだけではなくて、非関税障壁もなくしていく、世界で統一していくというのがTPPの考え方でありまして、これも世界でいろいろ声が上がっていくように、日本の社会制度ですとか伝統ですとかを壊してしまうという危惧も起こってくるものと思います。

 実際に、いろいろとグローバル企業の収支、会計等も見てみますと、租税特別措置などが国際競争強化のためにかけられていて、税金も実は思ったよりも払っていない企業が多い。それから、グローバル企業は、株主も海外の株主も多いですので、株主の圧力も強くて、労働分配率も上げにくいというような問題があると思います。国際競争力の強化に偏り過ぎてしまうと、これはこれで問題が起こるのではないかというようなことがあると思います。

 大臣の所信を大きく見ますと、これまでのグローバル化の流れの線路をもっともっと速く進んでいきますというような話だと思うんですが、TPPが運よくというか、頓挫した状況なわけですから、ここで一回立ちどまって、グローバル経済をこのまま放置していいのか、もう少し各国がグローバル経済を、野放しではなくて制御する方向に持っていった方がいいのではないか、そういうことも考えられると思います。

 私は、自由貿易には大賛成ですけれども、非関税障壁ですとか社会制度までも急いで壊していってしまうというのは反対です。ですから、今の流れというのは少し微修正、修正していく必要があると思うのですが、大臣はどのようにお考えですか。

世耕国務大臣 いみじくも、自由貿易は大切だということをおっしゃっていただきました。

 我が国は、この国の成り立ちからいって、やはり自由貿易がしっかりしていないと国として立っていけない国だというふうに思っています。

 そういう中で、アメリカですとかあるいはヨーロッパの動きで保護主義的な動きが出てきていることを非常に懸念しています。ブレグジットにしてもトランプ政権にしても、自由貿易がターゲットになったんですが、本当に自由貿易が国民の不満の原因かどうかというのは、よく見なきゃいけないと私は思います。

 今のお話の中にもありましたが、逆に、企業の分配が足りなかった、だから、保護主義に走ったからといって状況が変わるかといったら、私は変わらないと思いますよ。それよりも、企業がしっかりとして、内部留保をためるだけじゃなくて、分配を進めていくということも重要です。安倍政権はそこに気がついているからこそ、今、賃上げ賃上げと言っているわけです。企業が稼いだ利益をちゃんと労働者にも分配をしてほしいということをしっかりと求めているわけであります。

 そういう意味では、基本的に問題意識は議員とそんなに変わらないと思っています。

落合委員 時間が参りました。これは根本的で重要な問題だと思いますので、また改めて取り上げさせていただきます。

 本日はありがとうございました。

浮島委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 大臣所信にかかわって、中小・小規模事業者の景況認識、大企業と中小企業の賃金格差の是正、重層的下請構造のもとでの下請単価の改善、取引ルールの確立などについて質問をいたします。

 世耕大臣は大臣所信で、「安倍内閣が発足してから四年がたち、名目GDPは四十七兆円増加、中小・小規模事業者の倒産は二十六年ぶりの低水準となるなど、経済の好循環は着実に回り始めています。この好循環を加速させ、日本経済を成長軌道に乗せるため、未来への投資を進めます。」とおっしゃいました。しかし、経済の好循環は着実に回り始めているという認識は、国民の暮らしの実感や中小・小規模事業者の皆さんの経営の実感とは余りにも違うと思うんです。

 そこでまず、この二十年間の日本経済についての認識を大臣に伺います。

 第一に、富裕層への富の集中。五億円以上の純金融資産を持つ超富裕層の一人当たりの金融資産は、二十年前の六・三億円から十三・五億円へ二倍以上にふえています。

 第二に、中間層の疲弊。労働者の平均賃金は、国民の実感に近い名目値で、一九九七年をピークに、年収で五十五万六千円も減っています。

 国税庁民間給与実態統計調査を見ますと、九七年から二〇一五年にかけて、年収五百万から一千万の層が二百十万人も減り、年収五百万円以下の層は五百三十二万人もふえています。

 総務省の二〇一六年平均の労働力調査によると、非正規雇用の割合が三七・五%、調査開始以来最も高くなりました。とりわけ十五歳から六十四歳という現役世代では、正規雇用は〇七年から一六年にかけて百十四万人減り、非正規雇用は百二十二万人ふえ、中間層が痩せ細っています。

 第三に、貧困層の拡大。この二十年間で、働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、就業者世帯の四・二%から九・七%へと二倍以上にふえました。貯蓄ゼロ世帯は三倍に急増し、三〇・九%に達しています。

 この二十年、以上申し上げたような、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大、これが進んだというこの事実は大臣もお認めいただけると思うんですが、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 この二十年間の我が国経済の変化の認識ということでありますが、特に、アベノミクスによってこの五年間で名目GDPは四十七兆円ふえて、過去最高水準となりました。特に就業者数、やはり雇用というのが一番重要な指標だと思いますが、就業者数は約百七十万人増加してきており、国民生活にとって最も大切な雇用が大きく改善するなど、確実に経済の好循環が生まれているというふうに思っています。一方で、中間層を中心に消費が落ちているという指摘もあることは承知をしております。

 格差というものについてはいろいろな見方があります。例えば、世帯ごとの所得格差を示すジニ係数の動向を見ると、税や社会保障による再分配後の所得の格差というのは、約二十年にわたっておおむね横ばいで推移をしているというふうに見れると思います。

 また、相対的貧困率という点で見ますと、長期的に緩やかにずっと上昇する傾向がありましたけれども、直近、これは二〇一四年のデータになりますが、直近では、集計開始以来初めて低下をするという現象が起こっています。特に、近年上昇傾向にあった子供の相対的貧困率は、アベノミクスの成果による子育て世帯の収入の増加を受けて、十五年ぶりに改善をいたしました。

 このように、過去二十年間、バブル期以降の景気低迷やリーマン・ショックなどのさまざまな経済事象が発生をしましたけれども、足元では、必ずしも格差が何か急速に拡大をしているということはないのではないかというふうに思っています。

 ただし、やはり先ほどの議論でも申し上げましたけれども、今、保護主義の動きとか、世界的に起こっている中には、私は、本当の不満の原因は格差の問題だというふうに思っております。格差が固定化をしたり許容範囲を超えるようなことがあってはならないというのは当たり前のことでありまして、私も、内閣の一員として、デフレ脱却を目指していく経済再生を図りながら、この問題もしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

真島委員 代表質問のときの安倍総理の答弁もそうだったんですが、この二十年来の、先ほど言った三つの特徴についてはちょっとストレートにお答えがなくて、アベノミクス自慢が始まって、改善しているんだと。だから、やはりこの二十年間の経済情勢についての認識を一貫してお答えにならないですね、ストレートに。

 国民生活基礎調査で、この二十年間、生活が苦しいと答えた人が四二%から六〇%になる一方で、普通と答えた人が五二%から三二%になっています。実質賃金が下がり、家計消費が落ち込み、普通に暮らしていた人たちが苦しいという生活に追い込まれている。私はどこに好循環が始まっているのかなというふうに思うんです。

 それでは、この二十年間の、雇用の七割を支える中小企業はどうなのか。

 衆議院予算委員会愛知公聴会では、公述人の皆さんから、後継者がなく、廃業が後を絶たず、商店街はシャッター通り、売り上げが上がらず、給料も上げられず、零細企業は人手不足だ、小規模な事業者にはアベノミクスの効果は出ていないという声が寄せられました。

 この声を聞いて、中小・小規模事業者のどこに好循環が回り始めているとおっしゃるんですか。

世耕国務大臣 私は、数字はいろいろな見方がありますし、いろいろなデータもありますが、好循環は着実に回り始めていると思います。

 中小企業についても、今、経常利益は過去最高水準にあるわけであります。また、中小企業の業況判断も改善基調にあります。そういうことを踏まえれば、全体としては、中小企業も改善傾向にあるのではないかというふうに思います。

 実際に、中小企業の景況調査をしますと、外国人観光客の増加で好調に推移をしているですとか、大企業からの受注がふえて売り上げの見込みが得られて今期はさい先のよいスタートになっているといった中小企業の声もいただいております。

 一方で、中小企業の経営環境については、御指摘のように、厳しい面もあると思っています。例えば、経営者の高齢化とか後継者不足を背景とした休廃業、解散といった件数は過去最多になっています。人手不足の深刻化、売上高、生産性の伸び悩みといった課題もあります。

 こういった課題に関しては、経産省としては、事業承継の支援ですとか人材確保ですとか下請取引の改善ということでしっかりと支援をしていきたいというふうに思っています。

真島委員 数字はいろいろな見方があると。いつもごまかすときはそうおっしゃるんですね、都合のいい数字だけおっしゃって。

 二〇一六年中小企業白書でも、「中小企業においても、経常利益は過去最高水準に達し、倒産件数は減少し、中小企業の事業者数の減少のペースは緩やかなものとなった。」ここのところをアベノミクス自慢でいつも繰り返されるわけなんですが、白書は、先ほど大臣が後半言われたように、続けてこう言っているんです。「他方で、中小企業の経常利益の拡大は、原材料・エネルギー価格の低下等によるところが大きく、売上の拡大を伴ったものではない。そのため、中小企業の設備投資は伸び悩み、設備の老朽化が進んでいるほか、人手不足が深刻化している」という、この両面をきちっと言わなきゃいけないと思います。

 内閣府が八日に発表しました二〇一六年十月―十二月期のGDP改定値は、実質で前期比〇・三%増、年率換算一・二%でした。国内需要の六割を占める個人消費は相変わらず低迷を続けており、外需頼りのいびつな成長が続いています。

 大臣にお聞きしますが、個人消費も中小企業の売り上げも低迷しているのに、どこに好循環が回っているんですか。

世耕国務大臣 御指摘のように、消費が非常に伸び悩んでいるというところは、これは今、アベノミクスの好循環を完全に、きれいに回す上で一番重要なポイントだというふうに思っています。

 これは、消費税が上がった影響とか、それからなかなか回復しないとか、いろいろな要因もあろうかと思いますが、我々は、これは賃上げということを通してしっかりと対応をしていきたいというふうに思っております。

真島委員 総務省が三日に発表しました家計調査を見ますと、一月の消費支出は実質で前年同月比一・二%悪化しております。昨年二月のうるう年効果を除くと、消費支出が一年五カ月連続でマイナスという異常事態です。この事実を直視して本当に危機感を持って臨まないと、経済の再生はできないと私は思うんですよ。

 安倍総理は一月二十四日の代表質問への答弁で、安倍内閣が進めている政策は成長と分配の好循環をつくり上げていくというものだとおっしゃいました。

 ちょっと大臣に聞きたいんですが、この成長と分配の好循環をつくるという意味は、成長なくして分配なしということが以前言われてきましたけれども、そういう意味なんでしょうか。

世耕国務大臣 そこまで言うつもりはないんですが、総理がおっしゃっている意味というのは、成長すれば税収もふえる、税収がふえればいろいろな社会保障対策ももっと充実させることができる、成長をしていくことによってしっかりとした分配も進めていくという意味でおっしゃっているんだと思います。

真島委員 二〇一六年、昨年の九月三十日の経済財政諮問会議で世耕大臣はこういう発言をされております。成長と分配の好循環をつくるとは、めり張りのきいた賃上げを実現できる環境を整備することです、その前提として、成長戦略と働き方改革の両輪による生産性向上こそが最重要課題だと考えますというふうにおっしゃっています。

 生産性が上がれば賃金は上がっていくのかという問題を私ちょっとお聞きしたいと思うんですけれども、配付資料一、二〇一五年版の労働経済白書の賃金と生産性の国際比較です。同白書は次のようにこれを分析しています。「ユーロ圏及び米国では実質労働生産性が上昇する局面において、若干の水準のギャップはみられるものの実質賃金も上昇を続けている。一方、我が国においては、実質労働生産性は継続的に上昇しており、その伸び幅もユーロ圏と比較するとそれほど遜色ないといえるが、実質賃金の伸びはそれに追いついていない状況がみられ、両者のギャップはユーロ圏及び米国よりも大きいことが分かる。」と白書で言っているんです。

 主要国で日本だけが労働生産性の上昇が賃金に結びついていない。何でこんなことになっていると考えられますか。

世耕国務大臣 御指摘の白書の分析においては、我が国の労働生産性の上昇が賃金上昇に必ずしも結びついてこなかったことについて、四つの仮説が可能性として示されています。

 これを申し上げますと、一つ目は、企業の利益処分が変化をして人件費への分配が抑制された可能性、二つ目は、交易条件の悪化に伴う海外への所得流出によって賃金が押し下げられた可能性、三つ目が、非正規雇用の増加によって一人当たり賃金が押し下げられた可能性、そして四つ目が、組合組織率の低下など、賃金決定プロセスや労使の交渉力に変化が生じた可能性、この四つが仮説として挙げられております。

 また、安倍政権発足から二〇一五年半ばまでの間に実質賃金が減少されたと言われるわけでありますけれども、これはやはり、デフレ脱却へ向かう過程で物価が上昇したということ、また、景気が回復する中で、雇用が増加するその過程において、まずパートで働く方がふえた。パートで働く方はどうしても賃金が低いですから、全体の平均値を下げることになるわけであります。こういったことが要因になっていると思われます。

 つまり、アベノミクスによる景気回復の過程で、雇用が拡大をして物価が上昇基調に転じたことも背景にあるのではないかというふうに思っています。

 このように、労働生産性と賃金上昇の関係については、さまざまな複合的な要因が影響してくるのではないかというふうに思っています。

 いずれにしても、アベノミクスを強力に進めて、雇用の拡大と賃金の上昇による経済の好循環の流れを確実なものにしていきたいと思います。

真島委員 我が国において、実質賃金を上げるために、労働生産性の上昇が賃金上昇に結びつかなかった。先ほど、労働経済白書、四つの仮説の分析を御紹介いただきましたけれども、私は、この四つの仮説の分析は非常に日本経済の問題点を的確に分析されているなと思うんです。ぜひ、政府でせっかくこういう分析もされているわけですから、労働生産性の上昇が賃金上昇に結びついていないその根本にメスを入れていくべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 先ほど私は白書の仮説をそのまま申し上げましたけれども、これはそれぞれもう変わってきていますね。

 一つは、賃上げ。これは、三年連続で二%を超える賃上げ、本当に久しぶりのことですけれども、行われました。二つ目、交易条件の悪化。これも今、円安傾向にアベノミクスで持ってきておりますから、かなり改善をされています。三つ目のポイント、非正規雇用の増加。これも今、正規雇用が七十七万人ふえるという状況になってきています。大分この局面が変わってきているというふうに思います。組合組織率の低下とかはちょっと私はよくわかりませんけれども。

 そういう意味で、改善に向かってきていることは、もう既に起こってきていますから、それをさらに後押しすることで実質賃金の引き上げに持っていきたいというふうに思っております。

真島委員 ちょっと今の点については後でも触れたいと思いますが、大企業はこの間、史上空前の利益を上げてきているわけなんですが、それがどこに行っているのか。

 二月十二日の東京新聞が、目立つ日本の労働分配率の低下として次のように述べています。「主要国は、企業が現・預金など内部留保を高め、賃金など労働者への分配率が低下している。そのなかでも日本の労働分配率は一九七七年に七六・一%あった。二〇一一年には六〇・六%と一五・五ポイント、率にして二〇%も低下した。他の主要国に比べ、低下割合が際立っている。」というふうに言っています。

 他の主要国と比べて日本の労働分配率の低下割合がこんなに際立っている理由について、大臣はどう考えられますでしょうか。

世耕国務大臣 ちょっと通告をいただいていなかったので。大企業と中小企業の差だったらお答えできるかと思うんですけれども。済みません。(真島委員「では後で」と呼ぶ)はい。

真島委員 これも、二〇一五年版労働経済白書ではこう言っているんですね。二〇〇〇年以降、当期純利益が増加する中、配当金の割合が大きく上昇し、内部留保も増加している、この傾向は特に大企業において顕著となっていると。「いずれにせよ、個々の企業が置かれる環境には留意しつつも、内部留保も含めた企業利益が経済の好循環につながる設備投資や労働者へ分配される環境作りが重要である。」というふうにこの白書の中で指摘しているんです。

 二〇一六年版中小企業白書では、個人消費低迷の理由、これをどう分析しているでしょうか、中企庁長官。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、二〇一六年四月に閣議決定いたしました二〇一六年版中小企業白書におきましては、個人消費は、総じて見れば底がたい動きとなっており、力強さを欠いているが、その理由としては、物価の伸びに賃金の伸びが追いついておらず、実質賃金が低下している結果、消費者マインドの伸び悩みにつながっていると分析しております。

 一方で、その後の個人消費の環境について見ますと、まさにこの白書で取り扱った二〇一五年でございますが、このときの実質賃金の伸び率が前年比〇・九%マイナスであったところ、二〇一六年の伸び率は前年比で〇・七%のプラスに転じております。また、消費者の景気に対する意識を示します消費者態度指数、これも過去の平均を上回っているなど、消費者のマインドの持ち直しの動きは見られると思っております。

 こうした状況を踏まえますと、個人消費の基調としては、持ち直しの動きが続いているものと認識しております。

真島委員 そこで、大臣に改めてお聞きしますけれども、国民の消費を伸ばす、経済を安定した成長軌道に乗せる、このためにはやはり実質賃金の上昇が決定的だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 当然、最終的には実質賃金をしっかり上昇させるということが、アベノミクスの好循環を完成させる上で重要だというふうに思っております。

真島委員 労働運動総合研究所の試算では、安倍内閣の誕生前まで生活水準を回復し、持続をするとしたら、二万一千五百五十六円の賃上げが必要になるという試算が出ております。二万円の賃上げを実現すれば、家計消費需要が八・三兆円拡大をし、国内生産が十五兆円、国内総生産に匹敵する付加価値が七・一兆円ふえ、それに伴って、新たな雇用が九十三万二千人必要になり、税収も一・四兆円ふえるという試算を出されています。

 これもちょっと通告しておりませんが、大臣、内部留保というのを企業が今たくさんふやしている、御存じだと思うんですけれども、これを全部取り崩さなくても、毎年ふえ続けている分を少し抑えるだけでも大幅な賃上げはできると思うんですけれども、大臣の御認識はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 内部留保というのは、別に、その分、企業の金庫にキャッシュがどんとあるわけではありません。また、当然、企業経営上も手元に少しキャッシュを残しておかないと、いろいろな買収案件とかそういったことに対応できないという面もあると思いますが、一方で、私は、労働者に対する分配も非常に重要だというふうに思っています。

 だからこそ安倍政権は、これまでずっと経済界に対して、結果としては内部留保を取り崩す形になるわけですが、賃上げはしっかりやってほしいということを我々は要請し、三年連続でそれを達成し、ことしもそれを目指しているという状況であります。

真島委員 経済界と経済の好循環に向けたいろいろな要請とか対話とかされているわけなんですが、私は、この内部留保問題をもっとよく分析をして、具体的ないろいろな試算もし、政府の側から提案する必要があると思うんです。

 こうした賃金にも設備投資にも回されない内部留保が特に大企業では一貫してふえ続けて、昨年はついに、銀行や保険業も含めて三百八十六兆円に上っています。正規も非正規も、全ての労働者五千二百八十四万人に月額二万円の賃上げをするとすれば、必要な額は十三兆六千七百億円です。これは内部留保のわずか三・五%を取り崩せばできるんです。一年間の伸びている分のほんの一部を回すだけで、全労働者ですよ、大企業だけじゃなくて、全ての正規、非正規労働者の二万円の賃上げができるぐらいの、それだけの額が積み上がっているんですよ。

 日本共産党は、八時間働けば普通に暮らせる社会をつくるということで、働き方の抜本的な改革、三つの柱で提案しております。

 きょうはちょっと時間の関係でそれは言いませんけれども、その内容は、本当に政府がその気になればすぐにでも実行できるものばかりです。ぜひ、そういう点で、そういう抜本的な働き方改革で好循環をつくるという方向に転換していただきたい。

 次に、大企業と中小企業の大きな賃金格差、これをどう正していくかという問題で、資料二をごらんください。

 ここに、大企業と中小企業の間の賃金格差、これは製造業ですが、二十年間の推移を示しております。製造大企業、従業員五百人以上の平均賃金を一〇〇とした場合、従業員百人から四百九十九人規模の企業は七〇後半から八〇弱、従業員三十人から九十九人の企業は六〇前半、従業員五人から二十九人の小規模企業は五〇から五五前後で推移をしております。

 この二十年以上、大企業と中小企業の賃金格差は全く縮まっておりません。大臣も、昨年九月三十日の経済財政諮問会議で、大企業と中小企業の賃金格差が拡大しているということを発言されておられます。

 この大企業と中小企業の賃金格差が中小企業の人手不足をあらゆる業種で深刻にしているんじゃないかと思うんですが、大臣の認識はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 民間の調査によれば、新卒者の企業選択のポイントは、やりがいや安定性、社風、そして休暇制度、知名度、成長性、賃金、さまざまなものがあるというふうに認識をしております。

 このように、賃金はやはり働き手が重視する要素の一つではありますけれども、それ以外の要素も働き手は重視をしているのではないかと思います。

 一方で、中小企業庁が昨年行いました中小企業に対する調査によりますと、賃上げを実施した理由としては、人材の採用、従業員の引きとめの必要性を挙げる企業も半数程度ありました。また、中小企業の賃金上昇率が大企業を上回ったという民間調査ももう出だしています。やはり、人手を確保するためには中小企業も賃金を上げていかなければいけないということだと思います。

 そういう調査も踏まえると、最近の中小企業の賃上げについては、これは明らかに人手不足の解消を意識したものではないかというふうに思われます。

 一方で、短時間勤務制度の導入などによって職場環境を整備して、女性や高齢者など多様な人材を働けるように確保して、賃金以外の要素で人手不足を克服している中小企業も出てきているわけであります。

 我が国全体として人材不足の状況にある中、人材不足の解消を意識した賃上げの動きが見られるのは確かでありますが、深刻な中小企業の人手不足の要因は、賃金以外の要因もいろいろあり得るのではないかというふうに思っております。

真島委員 二〇一六年度の中小企業白書は次のように言っております。一九九〇年代から存在する大企業と中小企業の間の賃金格差は依然解消されないまま推移している、中小企業の従業員数が減少している背景には、依然として規模の大きな企業との賃金の差が縮小しないこと等が考えられると。中小企業白書では、やはり人手不足の中心的な原因はこれだというふうに分析をしております。

 では、どうやってこの大企業と中小企業の賃金格差を是正するのか。これも、二〇一六年中小企業白書ですが、先ほど言いました、労働生産性とは、付加価値額割る労働力、労働者がどれだけ効率的に成果を生み出したかを定量的に数値化したもので、労働者の能力向上や効率改善に向けた努力、経営効率の改善等によって向上するというふうに説明がされています。

 一月二十四日の衆議院本会議で、我が党の志位委員長の代表質問に安倍総理はこういうふうに答えました。「大企業と中小企業の間の賃金格差は、中小企業の労働生産性が大企業に比べて低いことが要因」だと。

 それでお聞きしたいんですけれども、中小企業が大企業よりも、先ほどの労働生産性の説明によりますと、労働者の能力が低い、効率が悪い働き方をしている、経営効率が悪い、それが安倍内閣の認識なんでしょうか。

世耕国務大臣 労働生産性というものは、個々の労働者の生産性とか能力とか働き方を示すものではありません。これは、会社が総体として生み出す付加価値額を従業員数で割ったものということであります。

 したがって、総理が申し上げたのは、中小企業における従業員一人一人の付加価値額がふえれば、賃上げ原資を確保でき、また、大企業との労働生産性の差が小さくなれば、中小企業でもより高い賃金水準が実現できるという意味のことをおっしゃったということだと思います。

 また、中小企業の労働者が能力が低いとか効率の悪い働き方をしているというようなことは全く言っているわけではありません。その点は御理解いただきたいと思います。

真島委員 付加価値額を上げるために労働者の能力向上が必要、効率改善が必要、経営効率の改善が必要という説明が白書でされているわけですよ。だから、ストレートに読めばそういう意味なのかなというふうに思うんですが。

 二〇一四年版中小企業白書、これは二〇一四年、ちょっと前のものですけれども、ここではこう書いています。「中小製造業の収益力は、高い実質労働生産性の伸びを実現しているにもかかわらず、それを上回る価格転嫁力の低下によって、近年、低迷を続けている。」つまり、中小製造業は、労働生産性は高いのに適正な単価で取引ができていないからだというんです。

 先日、私、全国商工団体連合会や中小企業家同友会全国協議会の方々と、どうすれば中小企業での働き方改革や賃金アップを実現できますかというテーマで懇談をいたしました。

 こういう意見が出ました。社員に多くの賃金を支払いたいし、長時間労働はさせたくないが、できない事情もあることを理解してほしい。下請の二次から四次と取引の末端に行くほど価格決定権がなく、厳しい単価、納期も受けざるを得ないんだ。消費不況がイオンの売り上げ減やジャスコの撤退など大型店にも影響が広がる中で、納入業者の単価たたきが一層ひどくなっている。こういう声をお聞きしました。

 大臣にお聞きしますが、中小企業に価格決定権がないという、この大企業と中小企業の間の取引力の格差を解決していくことに挑んでいくべきじゃありませんか。

世耕国務大臣 なかなか御党とぴったり認識が合うということはめったにないんですが、この件は本当にぴったり同じ思いであります。

 私は、下請取引をしっかり改善して、日本の雇用の七〇%を占める中小企業・小規模事業者の皆さんの賃上げにつなげていくということが非常に重要だと思います。

 だからこそ、私は、対策パッケージ、一応省内では世耕プランと呼んでもらっていますが、これを取りまとめて、そして、自動車業界を先頭に、各業界に自主行動計画、業界内のルール、これを決めてもらっております。特に、下請代金法の運用基準で、今まで六十程度しか示していなかったんですが、百四十四ほど、これをやったら下請たたきに当たりますよという例示をさせていただいています。

 そういう中で、例えば、これはよくあった習慣ですけれども、来年度は一律一〇%ダウンしてくれとか、そういう一方的な価格低減要請はだめですよとか、あるいは、物すごく特別に短い納期で頼んでいるのに、その分の割り増し料金をちゃんと入れていないとか、あるいは、もっと電気代が上がっていますから、それをちゃんと転嫁できていないとか、そういうことはしっかりやれるようにしていく、発注元の大企業と下請の中小企業が平等な立場で価格を決めていく、こういうことを進めていくことは非常に重要だと思っております。

真島委員 この間、ヒアリングもされて実態をつかまれて、昨年も私は重層下請の問題で議論いたしましたが、従来は、ガイドラインという、美しい事例、こういう美しい公正な取引をしましょうというのをつくって、繰り返し業界団体とかに届けていたんですが、今度はかなりストレートに、こういうのが違反に当たりますよ、つまり、こういうことをしたら取り締まりますよという、かなりぐっと一歩突っ込んで、これ自体は一歩前進だと思うんです。

 ただ、業界団体に自主行動計画をつくってくれとお願いしたということなんですが、そういう取り組みだけで果たして末端まで、先ほども落合委員からありましたが、本当に下請取引の末端まで改善が進んでいくのかということなんです。

 私、二〇一五年の予算委員会で、トヨタ自動車の末端の町工場、そこの下請でシートの縫製をしている下請業者さんの例を紹介しました。取引先の親会社が会社に乗り込んできて、ストップウオッチを持って、縫った布の長さをはかって、これは非常に技術が要る立体縫製というものなんですね、そういう技術が要るということを抜きにして、単に布の長さと時間だけで一枚四百三十円という単価を百二十円にたたかれたと言うんですよ。こういう実態が現場にあるということは大臣は十分御認識されているでしょうか。

世耕国務大臣 今回、下請取引の改善に取り組むに当たっては、かなり現場で個別にヒアリングもさせていただいております。アンケート調査も行いました。また、その結果を踏まえて、大企業に対しても、おたくの業界でこういうことが、指摘があるけれどもどうなんだということも、ヒアリングも対面的にかけさせていただいております。

 そういう中で、これはひどいなという事例も、今の事例がちょっとその中に入っているかどうかはあれですが、例えば、私が一番ひどいと思ったのは、モデルチェンジをした後の金型を下請に預からせている、その保管料を払っていない、これなんかは本当にひどい事例だというふうに思います。

 こういう事例を、もうこれで終わりではなくて、これからも粘り強くそういう事例を見つけ出していって、具体的なテーマが出てきたら、公取とも連携をしながら改善を求めていくということをやっていきたいと思います。

真島委員 今回、関係法令の運用強化をされたわけなんですが、ちょっと公取委員長にお聞きしたいんですけれども、運用強化をした、法改正まではしなかったわけですよね。つまり、下請代金法やその親法である独占禁止法を厳格に運用していれば不公正な取引はもっと是正できたんじゃないかというふうに逆に思ってしまうんですが、その点はいかがでしょうか。

杉本政府特別補佐人 公正取引委員会といたしましては、これまでも、中小企業に不当に不利益を与える行為として、下請法、独占禁止法を運用して積極的に対処してきたところだと考えております。平成二十七年度におきましても、下請法については五千九百八十四件の措置、独禁法の優越的地位の濫用については五十一件の注意を行ったところでございます。

 しかし、中小企業に不当に不利益を与える行為は依然として見受けられるということは、議員の御指摘のとおりかと思いますので、今般、政府が全体で取り組んでいる中小企業の取引条件の改善に向けて、より実効的な対応を行うために、親事業者による違反行為の未然防止、これは非常に重要だと思いますので、そういった意味で、違反事例を非常に多く掲げるような運用基準の改正を行ったわけでございますが、こういったことで未然防止を行う。それから、事業者からの下請法違反行為の情報の提供にも資することになると思いますので、そういった運用基準の改正を行ったところでございます。

 優越的地位の濫用に関しましては、事務局内に優越的地位濫用タスクフォースというものを設けまして、中小企業に対する優越的地位の濫用行為に目を光らせているところでございますが、今後さらに効率的かつ効果的な調査を行って、濫用行為の防止、是正に努めていくことが必要と考えております。

 最近では物流事業者が厳しい取引環境に置かれている現状を踏まえまして、書面調査につきまして、調査対象荷主及び物流事業者を昨年からおおむね倍増させまして実施しているところでございます。

 公正取引委員会といたしましては、こうした取り組みにより、中小企業に不当に不利益を与える行為に対して、下請法、独禁法をさらに一層積極的に運用してまいるということで対応していきたいと考えております。

真島委員 これまでも公正な取引を規制するルール、いわゆる法律はあったのに、是正が十分できない面もあったということはお認めになりました。

 私、一昨年、昨年もずっと繰り返してきているんですが、中企庁、公正取引委員会、従来の申告待ち、書面調査頼みというやり方を大きく転換しないと規制が強まっていかないんじゃないかということで、やはり抜き打ち調査とか、主導的に検査に入っていく、そういう体制と取り組みをやらなきゃいけない、実効性が上がらないんじゃないかということを繰り返し指摘してまいりました。

 今回、中小企業庁が、約五十人の下請Gメンを本省と経産局に置いて、年二千社の中小企業を訪ねて違反事例を探すということを決めたと聞きました。この下請Gメンと専任の検査官の権限の違いというのは何なんでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 下請代金検査官、これは、発注側の親事業者に対しまして、下請代金の支払い遅延等の防止に関する検査を実施すること、これを所掌としているものでございます。このため、具体的には、下請代金法第九条第二項の規定に基づいて立入検査を行うこととなっておりまして、その際に、同条第四項の規定に基づきまして、検査証を携帯し関係人に提示するということが求められております。

 一方、委員御指摘の下請Gメンにつきましては、受注者側の下請中小企業から取引上の問題事案等の情報を収集する、これを主な業務としておりまして、そういう意味では、直ちに通常は立入検査まで行うことは想定しておりません。

真島委員 私はレクで聞いたんですけれども、下請Gメンは従来の消費税転嫁Gメンを横滑りさせただけだということなんです。専任の検査官全体の増員ではありません、今おっしゃったように。

 公正取引委員会は、二〇一六年の業務報告、先日大臣所信のときに配られましたけれども、それを見ますと、親事業者三万九千百五十名、下請事業者二十一万四千五百名に書面調査、親事業者の下請法違反七件に勧告、五千七百七十一件に指導されている。現状でも大変なお仕事の量だと思います。

 本気で重層下請の末端まで公正な取引を実現して大企業と中小企業の賃金格差を是正していくと言うのであれば、専任検査官の大幅な増員が必要だと思うんですけれども、来年度予算では専任の検査官の人員をどれぐらいふやす予定になっているでしょうか。中企庁と公正取引委員会。

宮本政府参考人 まず、全体の公務員の定員が厳しい状況の中で、経産省といたしましては、下請代金検査官の専任の数、過去十年間、平成十九年度から平成二十八年度まで、十名以上の増員を図っているところでございます。

 また、経産省におきましては、専任の下請代金検査官のみならず、併任のその他の検査官、あるいは今委員御指摘の転嫁Gメン、これを含めまして、全体として必要な体制を確保しているところでございます。

 来年度に配置します専任の検査官の数につきましては、これは現時点ではまだ決まっていないところでございますが、いずれにいたしましても、中小企業の取引条件の改善に向けて、体制の充実に努めてまいりたいと思います。

杉本政府特別補佐人 お答えさせていただきます。

 公正取引委員会の下請法の執行体制につきましては、国家公務員の定員事情、これが非常に厳しい状況の中でございますが、下請法違反行為に対して迅速かつ効果的に対処するため、下請取引検査官等の増員の体制強化を図ってきていただいているところでございます。

 平成二十九年度予算案におきましては、上席下請取引検査官一名及び下請取引検査官四名、計五名の定員増が盛り込まれているところでございます。

 今後とも、各方面の御理解を得ながら、体制の充実等には努めていきたいと考えております。

真島委員 この専任検査官の数、今おっしゃられたように、公正取引委員会は、いろいろ厳しい中で、来年度、五人ふやして百八人に全部でされるというふうにお聞きしました。

 ところが、五十年ぶりに通達を見直して関係法令の運用を強化すると言っている中小企業庁は一人もふやさないというふうにレクで聞いたんです、五十七人と。十年間はふやしてきたんだということをおっしゃいましたけれども、こういう大きな転換をして頑張っていくんだと言っているときに検査官をふやさないでいいのかなというふうに思うんです。

 約五十人の下請Gメンが年二千社の中小企業を訪ねて見つけた違反事例、結局、これを指導し監督するのは、中小企業庁と公取合わせて百六十五人の専任の検査官の人たちなんですよ。そこの仕事はふえるわけですよ。関係法令の運用を強化しても、それを徹底していく専任検査官が抜本的にふえないと、不公正な取引の根絶にはつながっていかないんじゃないかと思うんです。これはぜひ検討していただきたい。

 大臣、今こそ、重層下請の末端まで価格決定権を保障していく、全ての中小企業が働き方改革も賃上げも実現できるように、やはり重層下請の産業構造の民主的な改革をやっていくという点で新たな挑戦をしなきゃいけないと思うんですが、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 まず私は、下請Gメンのヒアリングというのは本当に重要だと思います。今回、この取引条件の改善を始めるに当たって、私は、官房副長官時代ですけれども、ともかくヒアリングをしろ、徹底的に行け、そして常に発注元と対面調査のような形をとれと。これは中小企業の皆さんから、ようやく聞いてくれたのか、今まで、声を下手に上げると発注をとめられたりするリスクがあるので怖くてできなかったけれども、ようやくきちっと政府が間に入って聞いてくれるということで、非常に歓迎をされています。

 これは、今回、年間二千件にふやして、もっといろいろな情報が集められるように、それで、ここで終わりというのはありません。いろいろなガイドラインをちゃんと守っているかどうかというのは、繰り返し繰り返しチェックをしていきたいというふうに思っています。

 今、重層下請の末端までというお話でありましたけれども、本当に日本のブランド価値というのは、やはり下請がつくってくれているというところが非常に大きいというふうに思います。

 こういう力を伸ばしていくためには、発注元の大企業との取引が公正なものになって、正当な利益が確保されて、そして従業員の賃上げや技術開発などにつながっていくことが重要だというふうに思いますので、これからも下請対策にはしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

真島委員 専任の検査官が百六十五人、来年度予算でなるわけなんですが、下請Gメンが五十人。ちょっとバランスが悪過ぎるというか、下請Gメンを五十人置いたのは、それは非常にいいことだと思いますよ、より実情をつかむという点では。だから、そういう点では、専任の検査官を抜本的に増加させていただきたい。

 二月二十日の朝日新聞で、「三年前に比べて、くらしはよくなったと感じますか? シリーズ「われら中小企業」」という記事がありました。

 半導体や自動車、食品などの工場で使う産業機械の設計、製作をしている従業員約五十人の会社の社長さんがこう言っています。「二年前も昨年も、我が社では賃上げができませんでした。」「やっぱり、従業員の幸せの軸は、賃上げです。この春こそは何としても、たとえわずかでも賃上げをしたい」と。

 この社長さんは、「中小企業には、政府が企業に賃上げをうながす「官製春闘」のしわ寄せが来ている」と言うんです。どういう意味かなと思ったら、賃上げをした大企業が、人件費がふえるので、その分は町工場などの下請へのコストダウン要求を厳しくしてきていると言うんですよ、この数年。交渉の結果、一〇%ダウンを五%ダウンに抑えることができても、やはり価格は下がってしまう。そして、仕事の量はふえているので、従業員は残業をして忙しさは増すばかり、申しわけなさでいっぱいですとこの社長さんはおっしゃっています。この社長さんは、自分の役員報酬はかなり削って、以前会社員だったときの給料の方が高いぐらいまで削っているそうです。

 皆さん、本当に御存じだと思うんですよ。そういう多くの下請中小企業の皆さんが、今できる精いっぱいの賃上げをされているんです。

 そこで、配付資料三をごらんいただきたいんですけれども、これは企業規模別の労働分配率の推移を示しています。

 これを見ますと、二〇一五年度の企業規模別の労働分配率は、資本金十億円以上の企業が五二・七六%、資本金一億円以上十億円未満の企業が六七・九六%、資本金一億未満の企業が七七・〇七%、資本金一千万未満の企業が八二・三四%。

 大臣にお聞きしたいんですけれども、なぜ大企業の労働分配率がこんなに低くて、まだ減り続けていると思われますか。

世耕国務大臣 まず、今御指摘のような、大企業が、発注元企業が賃上げをしたからそのしわ寄せを下請価格に転嫁する、これはあり得ないことでありまして、これは今我々が業界のルールを策定してもらっています。そういうルールがきちっと定まっていけばそういうことはなくなっていく、なくなっていかなければいけないというふうに思っています。

 今の企業規模による労働分配率の差なんですけれども、労働分配率というのは人件費を付加価値額で割ったものでありますから、労働集約的な企業の方が人件費は非常に大きくなって労働分配率が高くなる一方、資本集約的な企業は労働分配率は低くなるという傾向があります。

 大企業は、高炉による製鉄メーカーのように、大規模な設備や施設を保有して、中小・小規模事業者に比べて資本集約的であることから、労働分配率が低くなる傾向があるのではないかというふうに思っています。

 いずれにせよ労働分配率は、企業を取り巻く事業環境や業種の特性等に左右されるものでありますから、企業の規模別の労働分配率の水準のみをもって、従業員への還元の度合いのよしあしを議論するのは必ずしも適当ではないのではないかと思っております。

真島委員 中小企業の皆さんの賃上げ、本当にぎりぎりいっぱいやっているというところ、それと大企業が内部留保を積み上げていっているという、やはりそこのところをよく見ていただきたいと思うんです。

 二〇一六年十一月十六日の働き方改革実現会議で、総理は財界代表に対して、経済の好循環を実現するため、二〇一七年春闘ではベースアップの四年連続実施、将来の物価上昇率を踏まえた賃上げ議論、下請中小企業の取引条件改善を求めております。これを受けて榊原経団連会長は、賃上げのモメンタムは継続していきたい、総理の意向を踏まえて春季労使交渉の経営側の基本スタンスを決定していきたいとおっしゃっています。昨年の経済財政諮問会議でも同様のやりとりが繰り返し行われているんです。

 ところが、二月二十二日、トヨタの第一回労使交渉では、組合側がベースアップに相当する賃金改善分、月三千円、一時金六・三カ月分を要求したのに対し、経営側は、トランプ政権の動きなどを挙げて、取り巻く環境はかつてなく不透明だ、引き上げる要素は見当たらないと言っています。

 トヨタは、三月期の営業利益見通しが一兆八千五百億円、利益剰余金は十七兆円超。そのほんの一部を回すだけで組合の賃上げ要求に満額で応えられるんですよ。トヨタのような企業がこんなスタンスでは、日本企業全体の賃上げの足を引っ張ると思うんです。

 これは通告していませんけれども、大臣、もう一度トヨタの経営陣に要請する必要があるんじゃないですか。

世耕国務大臣 個別の企業と個別の組合の交渉状況についてちょっとコメントは控えさせていただきたいと思いますし、安倍総理も、やはり経団連会長だから要請しているのであって、個別の社に要請し出すと大変なことになりますので、あくまでも榊原会長が諮問会議の場でおっしゃっていただいたことを我々としては重視したいと思いますし、各企業も、経済界のトップがそういうふうにおっしゃっているわけですから、その方向性で取り組んでいただきたい。強く希望したいと思います。

真島委員 先ほど大臣も、十人に一人がトヨタ関連で働いているんだと。この影響力は物すごく大きいですよ。しかも、賃上げする力は十分にある。だからこれは、直接トヨタに言わなくても、経団連会長を通じて、業界の中で話し合ってくれ、要請したのはどうなっているんだと言うべきですよ。

 そして、先ほどの朝日新聞の社長さんの例は実名で登場されていますので、これはけしからぬ、こんなのは許されないとさっきおっしゃっていたので、直ちにこれは是正をしていただきたいということも含めて、最後に、こういう重層下請構造という日本の独特の構造を本当に改革していく、そういう立場でさらに頑張っていただきたい。私も、そういう意味で積極的な提案を今後もさせていただきたいと思います。

 これで質問を終わります。

浮島委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦です。

 約半年ぶりにこの経産委員会に戻ってまいりました。久しぶりなんですけれども、実はこの経産委員会で世耕大臣に質問するのは初めてですので、よろしくお願いいたします。

 最初に、せっかくですので、ちょっと自己紹介的なこともさせていただこうかなと思ったんです。

 というのは、世耕大臣がこういう世界に入られる前、NTTにいらっしゃった、関西支店にいらっしゃったという話を見ていて、ちょうど私、その時期に、もともと大阪出身なんですけれども、大阪におりました。何をしていたかというと、二十年弱、この世界に入る前に商社で働いていたんですけれども、やっていたのが情報産業。特に情報通信関連を積極的にずっとやっておりました。

 ちょうどその関西にいたときに携帯電話が普及し出して、私どもも準備室をつくって、携帯電話の一次販売代理店、今ではもう上場企業になっていますけれども、そういうのをつくる準備室を私が割と積極的にやらせていただいた。その前で言うと、ポケットベルであるとか、ああいうのも扱っていたんです。

 ちょうど、恐らく大臣がそういう仕事をされていたときに、一番NTTさんと太い関係のある仕事をさせていただいておりまして、それは何かというと、一般電話加入回線、あれの二次販売を実は私はやっておりました。二次販売なので直接のかかわりは少ないんですけれども、自慢ではないんですけれども、その当時、日本の二次販売の回線取引量で、恐らく私が取り扱いが一番だったんだろうなと。思い出しますと、あの山一証券が廃業されたとき、あそこの回線は一万数千回線あったんですけれども、全部私が買わせていただきまして、販売した。その際にNTTさんに相当助言をいただいたので、非常に感慨深いものがあるなと。

 これから先も、そういった経験も踏まえながら、大臣といろいろと同じような認識でお話ができるんじゃないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、きょうは所信に対する質疑ということで、大体、大臣が所信でお話をされたことに沿ってお話をさせていただきたいと思います。

 頭の方からずっとやろうかなと思ったんですけれども、まずちょっと最初に聞いておきたいなと思うのが、やはり大阪ですので、今回、ここでも書いているんですけれども、「二〇二五年国際博覧会を大阪・関西に誘致できれば、第四次産業革命がもたらす未来の姿を発信し、我が国が世界をリードする絶好の機会となります。」というふうな形で書かれています。

 常々聞いていきたいというふうに思っているんですけれども、今の状況、それから、どういった面が今苦労されているのかとか、そういう部分も含めてもう少しちょっと詳しく、これは事務方で結構ですので、お話しいただけますか。

住田政府参考人 万博についてのお尋ねでございますが、今御指摘のとおり、万博を国内に誘致するということは、我が国の第四次産業革命のもたらす未来の姿あるいはライフスタイルといったものを我が国から発信するという非常に大きな意味があるわけでございますが、現在、大阪府の方からの基本構想の案が昨年の十一月に提出をされました。これをベースにしながら、経済界、あるいは有識者から成る検討会というのを設けまして、こちらにおいて議論を進めさせていただいておるところでございます。

 この検討会の議論をできれば今月中にまとめさせていただきたいというふうに思っておりまして、それをある意味で国としての基本構想のベースということとして、国としての、今後の立候補に向けた判断をしていくということにさせていただきたいというふうに思っております。

 この検討会におきましては、どういうテーマでやっていくか、もともとの大阪府からの提案は健康、長寿ということでございましたが、これを含むような形で、より幅広く、多くの国にアピールできるようなそういったテーマにしていきたいと思っておりますし、では、そういった中で具体的にどのような事業をやっていくべきなのか、会場はどうあるべきなのかといったようなことを検討会において議論をさせていただいているというところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 今お話ししていて、見ていたら、当然のことながら、大臣もつけていただいておりますけれども、これは大阪万博のバッジ、つけていただいておりました。

 今もお話しありましたけれども、もともとが大阪府から提案があった形になった。ただ、もう今は国が主導するプロジェクト、そういうことだというふうに理解しました。

 これって実は私、すごく重要だなと思っているんです。なぜならば、昨年、決算委員会か何かで私質問させていただいたことがあるんですけれども、万博の話ではなくて、オリンピック・パラリンピックの話をしたんです。そうしたら、オリンピック・パラリンピックは、IOC、国際オリンピック委員会と東京都が、みずからオリンピック組織委員会に委託をした形で民事上の契約を結んでいる、そういうふうに説明されていたんです。

 ですから、今、小池知事がいろいろなことを言われています。でも、これは聞いたんですけれども、例えば東京都知事が、やはりもうオリンピック・パラリンピック、会場もちゃんとうまくいかないし、お金もなかなかかかってうまくいかない、だからやめますというふうに言ったら、いろいろありますけれども、これは論理的にはやめられるということなんですかというふうに質問させていただいたら、政府からは、そうですという答えが返ってきた。(発言する者あり)いや、大阪はちょっとあれですけれども。いろいろなことを外野で言われる方がいらっしゃるけれども。

 えっ、そういうことなんだと。私なんかは、国家プロジェクトだというふうにこれを思っていたんですよ。国民の皆さんほとんどがこれを国家プロジェクトだというふうに思っていたにもかかわらず、実際には契約上は民事上の契約が結ばれていて、国は最大限のサポートをするだけだというこういう状態なんです。

 こういうことをやっていながら、テレビなんかでは小池さんはまるでヒーローのように扱われてやっていますけれども、実際には、ちゃんと早くやってよという感じがしちゃうんです。国家プロジェクトだとみんな思っているけれども、結局東京都の責任なんですよねと、私はちょっとそういう解釈をしたんです。

 この万博については、今のお話では、違うんだ、やはりこれは国家プロジェクトだというふうなそういう認識だと思っていいんですか。これをまずもう一度お話しいただけますか。

住田政府参考人 万博につきましては、国として、BIEという国際博覧会協会の方に立候補するということで、国として立候補するということになります。

 例えばフランスなどは、過去に立候補をして決まったんだけれども、今御指摘のような、後からやはりできないからやめたとか、こういうことはなかったかと言われると確かにあるんですが、その場合はしたがって、国として何なんだということになるということは間違いないと思います。

木下委員 ありがとうございます。

 これは非常に安心できることだと思うんです。やはり東京都と国は違うのと同じで、大阪でやったらいいじゃないとかいろいろ言われていましたけれども、これはよく間違われる方がいらっしゃると私は思っているんです。やはり、大阪といったら今みたいに言われる方もいらっしゃって、どうしても私どもの政党の色が濃い。そうなんです。大阪が万博をするというふうに言ったら、何かもうそれだけで、何だよ、どうせ維新がという感じのことを思われる方もいらっしゃるので、これは違って、国家プロジェクトだというふうなことをちょっと確認させていただいたんです。(発言する者あり)そうだったのかと言っていただきまして、ありがとうございます。

 それで、テーマの話についてちょっとお話しさせていただきたいんです。

 もともと、健康、長寿、これについてもさまざまな意見がありました。私、実際にこれからの万博はどうあるべきなのかなと思ったときに、一番望ましい、しかも集客も含めて、そして世界から注目される、これは何なんだろうなと。長寿というふうに言った時点で、長寿に対してまだそこまでキーンでない、そういった国もあるんだ、だから余り国際的なあれにはふさわしくないんじゃないかという意見なんかもあったので、よくよく考えてみたんです。

 そうしたら、キーワードとして一番やはり必要なのは、私、これは障害者というキーワードが一つ大きなファクターになるんじゃないかなというふうに思ったんです。

 というのは、ちょっと私、手元で調べさせていただいた数字を言います。過去の夏季オリンピック・パラリンピックの競技大会の観客数等についてというところで、二〇〇〇年からざっと言いますと、これは何でかチケットの枚数と動員した人数となっているので、ちょっと枚数と人数になりますけれども。シドニーは、オリンピックが六百七十万、それでパラリンピックが百二十万。アテネが、オリンピック三百八十万、パラリンピック八十五万。北京は、六百五十万枚に対してパラリンピックは三百四十四万。ロンドンは、八百二十万枚に対して、パラリンピック二百七十万。リオは、六百万枚以上で、パラリンピック二百十五万。

 見ていると、北京なんかは、オリンピックのチケット売り上げの六百五十万枚に対してパラリンピックは、半分以上、三百四十四万の人が来ている。リオなんかも三〇%以上の人たちが見に来ている。すごいことだと私思うんです。

 そういうことを考えると、人を呼ぶためにと言うと何かちょっと違ったようにとられかねないとは思うんですけれども、障害者というふうな人たちをしっかりとキーワードに出して、そういう人たちでも楽しめるような、そういうことを前面に出してもいいんじゃないかなというふうにちょっと私は感じております。

 これは御答弁していただいても結構ですし、していただかなくても結構なんですけれども、ぜひともこういうことをもう少し真剣に検討していっていただきたいなというふうに思うんですけれども、よろしいですか。

世耕国務大臣 今、有識者の方々に御検討をいただいていますし、その中には松井知事も入っておられますから、ぜひ松井さんにもよく伝えていただきたい。

 今の視点は非常におもしろいと思います。特に、障害者と日本の産業界の関係という意味でいくと、義手、義足なんかは非常に日本はレベルの高いものがつくられておりますし、今度、義手、義足の学界の世界総会みたいなものも関西でたしか開かれるはずだったというふうに思っておりますし、また、ロボットの技術とか、サイバーダインの開発するものなんかはまさに障害者の皆さんをサポートする形でも使えるわけでありますから、そういう切り口を盛り込むというのもおもしろいと思います。

 ただ、メーンテーマは、やはり選挙を意識しなきゃいけないので、パリに勝てる、ありていに言うと、世界から支持を集めやすいメーンタイトルというのをしっかり考えていかなければいけませんから、余りタイトルそのものを絞り込んだりするとちょっと支持が得られにくくなるかもわかりませんので、その辺はうまく工夫しながら、しかしテーマの中にそういったことを入れていくというのは十分あり得るのではないかと思います。

木下委員 ありがとうございます。選挙に強い世耕大臣がおっしゃっていただいているので間違いないかなと思いますが、ぜひとも、そういう検討もこれからも続けていっていただきたいなと思います。

 それでは、次のテーマをお話しさせていただきます。

 きょうもう既に鈴木委員であるとかもお話しされていたと思うんですけれども、所信の中に書いてあるところ、「通商国家として成長してきた我が国が、内向き志向を打破するためのリーダーシップを発揮しなければなりません。」云々というふうな話が書いてあります。

 そういうところでちょっと聞きたいのが、他国間との通商関係における経済産業省それから経産大臣の役割、これは実際どういうものなのかということを聞かせていただけますでしょうか。

嶋田政府参考人 通商問題でございます。昨年の六月のブレグジットを初めといたしまして、通商のこれまでの枠組みの見直しを求める風潮が国際的に広がっている。そういう中で、国際会議でも、保護主義あるいは内向きな動きに対して懸念をする声が多くなってきております。

 通商産業省といたしましては、こうした動きに対応して、あくまでも通商国家として今まで日本の繁栄があると思いますので、自由で公正な貿易・投資環境をどうやって維持強化していくのかという観点からいろいろな仕事をしていくのが経産省の役割だということで、世耕大臣のリーダーシップのもと、いろいろな取り組みを行っているということでございます。

 そのうちの一部を御紹介いたしますと、例えば、ASEANに対して、どうやって質の高いメガFTAに彼らが参加してもらうようにするか。これは単に通商交渉だけではなくて、恐らく、サプライチェーンとかハード、ソフトのインフラ整備と、それから、いろいろな新産業創出のための協力とあわせて行う必要がございますので、こうしたものも、全体を柱として束ねて提案をして協議をしております。

 あるいは、TPPにつきましても、TPPの中の少数国の閣僚会合、閣僚の方に集まっていただいて、質の高い、特にRCEPに向けてどうした協力が必要かという議論もいたしておりますし、その他、日EU・EPAあるいは日中韓のFTA、それから、WTOでもいろいろな新しい動きが出てきております。

 そうしたものについて、質の高い合意の早期実現に向けて、国内外への働きかけを行っているところでございます。

木下委員 大体の説明は聞いたんですけれども、実際には何なんだろうな、ちょっとなかなか難しいんだろうなと。

 というのは、よくよく言われることなんですけれども、USTR、米国の通商代表部、これの役割と比較してみると、やはり、経済産業省の役割というのは相当限定的だろうと思うんです。皆さんもよくこういうふうな議論はされてきたと思うんですけれども、例えば、農水省であるとか財務省、それから外務省、この役割と、それから今の経済産業省の役割、言ってはあれですけれども、米国の通商代表部はほとんどをある程度網羅して、通商政策について、それから対外交渉も含めてやっていくという立場にある。

 ただ、今の話の中ではちょっとわかりづらかったんですけれども、経済産業省の今のやっているところ、実質的な分野というのは、鉱工業であるとか商業であるとか、そういった部分の業種にやはりとらわれていて、それ以外の他省の職掌の部分について、積極的にそれを引っ張っていくようなそういう立場に実際にこれはないんだというふうに思っているんです。

 大臣は一番そういう限界を感じられているでしょうし、そういった部分を打ち破っていくということを一番考えられているというふうに私は思っているのでこういう質問をさせていただいているんですけれども。

 これから先、そういうことを考えたら、全体的な交渉をやっていく中で、特にアメリカとのこれからいろいろな経済関係の交渉を行っていく、こういったときに、やはり、相手国がやっているUSTRに即したような、そういった役割を政府の中で担う、そういうものが、それで経済産業大臣がやられるかどうかという部分はあると思うんですけれども、これをやはり集約していくべきだと思うんです。

 この間、アメリカへ行かれたときも、総理は大統領とお話しされて、実質的な部分については副総理、麻生大臣がやられておりました。ただ、副総理がやられるんじゃなくて、専門に特化してそこに権限を集中した形でやっていくことが重要かなというふうに思っているんですけれども、大臣、その辺の御意見をいただけますか。

世耕国務大臣 USTR型で行く場合のメリット、デメリット、結構あると思うんです。やはり、実業から離れたところで、もうUSTRって何か交渉人みたいな感じになりますから、それのいいところもあれば悪いところもあるというふうに思っています。

 逆に、経産省のように、自動車産業を初め実際の産業界のことをよくわかった、たくさんのスタッフを抱えた役所が具体的に交渉するというところのいい面もあるというふうに思っています。

 安倍内閣は結構融通無碍にやっているんです。官邸はすぐ独裁と言われますが、省庁をまたがるような案件で、これはちゃんと調整しなきゃだめだというのは、官邸がぱっと出てきて調整をかけるわけであります。私も官房副長官時代、いろいろな形で、外国との交渉マターでも、幾つも省庁間をまたがるようなことはやっておりました。

 例えば、石炭火力を規制しようなんという動きが出たときは、これは外務省、経産省に加えて、環境省とか財務省も入って、きちっと調整をして外国との交渉に当たるというようなこともやらせていただきました。

 あるいは、TPPのように、これはもうかなり農業のウエートもあれば、自動車のウエートもある。この交渉はやはりしっかり束ねる担当が要るなとなれば、これはTPP担当大臣を決めて、そのもとで調整をかけていく。

 あるいは、今、日EU・EPAについては、これは、岸田外務大臣が責任者になって私もそこに参加していますけれども、調整をかけていく。

 例えばロシアのようなことになれば、私がロシア経済分野協力担当大臣という形で、その都度、案件に合わせてうまい組み立てをやっていって、省庁縦割りじゃなくて、国が一丸となって交渉していくやり方というのを安倍内閣はある程度実現できているんじゃないかな、USTRをわざわざつくらなくても対応できるのではないかなというふうに思っています。

木下委員 私も、今おっしゃられていたことにはそれなりに納得する部分はあることはあるんです。今の安倍内閣はそういうふうな形でやられているし、それなりに横の連携はできている部分もあるんだろうというふうに思うんですけれども、これはやはりこれから先のことを考えて、私は、制度化していった方がいいんじゃないかなという、そういう意見をさせていただいております。

 どんどん話をすると、いろいろと私としては、いや、私も非常に興味深いので一つ一つ深く聞きたいので、用意しておいたものを全部できなくなるかもしれませんが。

 それともう一つ、書いてあるんです。「日米首脳会談で」云々というふうな段落。だあっといろいろ書かれていて、「日米両国が、高い基準の貿易・投資ルールをアジア太平洋地域に広げるとともに、インフラ投資、エネルギー、サイバー等の分野での協力を積極的に進めることにより、」云々、経済及び雇用の成長の機会を拡大する。こう書かれているんですけれども、具体的な言葉がその首脳会談の中で出なかったからとかいう理由があるんだろうとは思うんですけれども、この中に日米FTAという言葉がやはり出てこないんです。まだTPPを何とかお願いできるようにしたいという当初のもくろみがあったかもしれません。

 あえてちょっと聞かせていただきたいんですけれども、なぜFTAについて明確に言及しなかったのか。これをお話しいただけますか。

嶋田政府参考人 今回の一連の会談におきましては、委員おっしゃるように、二国間FTAについては具体的要請はございませんでしたが、日米が主導してアジア太平洋地域に自由で公正な市場をつくる必要性については一致することができました。

 おっしゃるように、今後は、麻生副総理とペンス副大統領のもとで行われる新たな日米経済対話の中で三本柱について議論していくことになります。その具体的な構成と内容については、今後、麻生副総理のもとで、スケジュールも含めて日米で調整をしてまいります。

 なお、御承知のように、TPPでは、膨大かつ厳しい二国間交渉をずっとやり、その結果の上に合意がございます。従来、日米FTAとして有識者がいろいろおっしゃっている話を上回るスコープと内容は、既にTPPにおける二国間の合意の中で行われているという認識でございます。

木下委員 TPPの中でやられていたからということだと思うんですけれども、今、そうは言いながら、実際にFTAも視野に入れながらやられているんだということだと理解しました。キーワードとして入れるかどうかという部分はあると思うんですけれども。

 そういった中では、今、各省でそれなりのそういう対策というのをやられているんだ、各省でそういうふうなことをそれぞれ検討されているという段階にあると思ってこれはいいんですか。これはもしよろしければ。

嶋田政府参考人 TPPやその他のメガFTAも含めて、それに対応するために、例えば当省でいえば中小企業、これを新輸出大国コンソーシアムという形で、どうやって包摂的な貿易の中に取り込んでいくかといういろいろな支援策もございます。

 こうした支援策については、今、TPPがどうなるかということによらず、グローバル化していく世界の中で日本が成長力を保っていくには必要だということで進めているところでございます。

木下委員 なぜそういうことを聞きたかったか。多分、職掌の中で中小企業庁のことを言われたんですね。でも、今の話をちょっと言葉尻をとるようで本当に申しわけないんですけれども、やはり今の職掌の部分でしか言えない、これが私は問題だと言っているんです。

 要は、これから先に起こっていくであろうハードな交渉があるでしょう。そういったときに、今、各省でこういう形で自分のところのことだけしか言えないというのではなくて、面になってそれを具体的な戦術として取りまとめをする、こういうことをやはりやっていかないと、なかなか相手に勝つことができない。勝つというのはあれですが、すばらしい条件で相手との間で条約というのか、いろいろな取り決めを結んでいくということはできないんじゃないかということなので、それもあって、USTRと同じものをつくれとは言いません。ただ、そういったものも、実際に今は安倍内閣の中ではそれなりにうまく回っている部分もあるかと思うんですけれども、これをやはりこれから先、どんどんそういう世界状況になってくると思われますので、それが今の内閣だからいいという問題ではなくて、その先を見越したそういう組織をつくっていくことを、ぜひともこれは検討を続けていっていただきたいなと思います。

 次にお話しさせていただきます。これはもう簡単にお話しさせていただきます。というのは、先ほども質問があったので、ロシアとの経済分野における協力関係、具体的にプラントはどんなのがあるのと聞こうと思ったんですけれども、これは時間がもったいないのでもう聞きません。

 一言言わせていただきますと、実は、私もモスクワに住んでいたことがあります。モスクワで、携帯電話というのか、日本のNTTみたいな会社と交渉をずっとやっておりました。NTTみたいな会社の下にそういう携帯電話会社があって、そういったところとずっと話をしていたんですけれども、大臣いろいろ言われていました、ビジネス環境は相当よくなってきていて、なかなか難しいことはなくなっている。私がやっていたのは十数年前ですのであれですが、私の感覚でいうと、相当難しいです。比べると大変にあれですけれども、中国の人たちと交渉するのとほぼ同等、下手をするとそれ以上に私は難しいというふうに感じておりました。やはり、これは侮ったらいけないなと私は思います。

 質問がなくなっちゃったのでもうこっちから言うだけにしますけれども、よくプーチン大統領なんかも遅刻してこられる。私の感覚でいうと、ロシア人の方は結構やられます。今度から、時間までに来なかったら、長い間待たされるようだったら、私、一回帰ったらいいと思いますよ。もう、一回帰った方がいいと思う。そうすることによって交渉はうまくいきます。

 彼らはそれを駆け引きに利用していることが多々ありました。何遍も遅刻してきて、それが要は宮本武蔵みたいな感じだなと私はすごく感じたんですけれども、本当にそういうことをやられる。そこでさくっと帰ると、どうしたらいいかまごまごする。そうやってやりながら、彼らの中でもそういう交渉をやはりされているというところはあると思うんです。

 こんなところで言うような話じゃないんですけれども、ちょっとそういうことも考えて、ロシアとの交渉、本当に一生懸命やっていただきたい。

 それから、もう一つあるんです。それは何かというと、先ほども大臣言われていましたけれども、民間企業のいろいろなプロジェクトがたくさんある。ということは、相当民間企業を、まあ言えばリスクにさらすことになるんです。ですから、このリスクにさらされる民間企業をこれは政府がしっかりとバックアップしていく、これが一番重要なことだと私は思っておりますので、それも含めて先ほど御答弁されていたと思うんです。私の前の前の方かな、のときに答弁されていたと思うので、これも答弁を求めませんが、バックアップ、ぜひともよろしくお願いいたします。

 それから最後、本当はこれが長い時間話したかったんですけれども、インドであるとかアラブ首長国連邦という名前を出しながら、アジア、アフリカにおける重要な二国間関係の強化について、エネルギー、インフラ、人材育成、中小企業、健康・医療などの多角的な経済関係の発展強化という形で所信を出されています。

 それ以外のところも含めてなんですけれども、私、見てみて、中国という名前が出てこないんです。何で中国に言及していないんですか。

世耕国務大臣 余り意識していません。あえて入れなかったとかそういうことではなくて、戦略的互恵関係で、大切な隣国で当たり前のことということで、所信の中でも、例えば「アジア太平洋地域」とか「アジアの連携」とか、そういったところに中国を含めている、中国への思いを込めているというつもりでの所信であります。

木下委員 ありがとうございます。

 いや、そうなんですよ。ただ、意識していただきたいんです。なぜならば、エネルギー、インフラ、いろいろあります。エネルギーなんかもそうだと思いますし、特に、きょうなんか中小企業のお話をされていましたけれども、今の日本の中小企業の直接投資、右肩ちょっと下がってきたと言いながら、中国は圧倒的に多いんですよ。ここでわざわざ中小企業という言葉をつけているんだったら、「インドやアラブ首長国連邦を初め」じゃなくて、中国なんじゃないのと私は思ったんです。

 まあそれだけじゃないんですよ。これから先、先ほど言いました米国との関係、FTAになるかどうなるかという話があります。日米の安全保障の問題とかもいろいろあります。そういったときに、相当中国も難しいです、ロシアと同じように難しいですけれども、やはり、安定的な経済関係、これをしっかり構築していく、そして、相手側も日本がいることに恩恵を感じ、そして、こちらも当然のことながら中国からいろいろな経済的恩恵を感じる、そういう状態をつくっていけば、安全保障の状況も、それからアメリカとのそういった経済関係における交渉も、相当重要なてこの原理、重要なファクターになっていくというふうに私は思っているので、ぜひとも、この次またどういう機会があるかわかりません。ただ、こういった所信を述べるときには、中国についてもそういった議論ができるような、そういった表現も考えていっていただきたいなと思います。

 きょうはこれで以上とさせていただきます。ありがとうございます。

浮島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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