衆議院

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第12号 平成29年5月12日(金曜日)

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平成二十九年五月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 うえの賢一郎君 理事 大見  正君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 白須賀貴樹君

   理事 吉川 貴盛君 理事 北神 圭朗君

   理事 近藤 洋介君 理事 高木美智代君

      穴見 陽一君    石川 昭政君

      小倉 將信君    尾身 朝子君

      大岡 敏孝君    大串 正樹君

      岡下 昌平君    梶山 弘志君

      勝俣 孝明君    神山 佐市君

      木村 弥生君    工藤 彰三君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      島田 佳和君    高木 宏壽君

      豊田真由子君    中川 郁子君

      星野 剛士君    三原 朝彦君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      簗  和生君    山際大志郎君

      大畠 章宏君    落合 貴之君

      篠原  孝君    鈴木 義弘君

      田嶋  要君    中根 康浩君

      福島 伸享君    升田世喜男君

      中野 洋昌君    大平 喜信君

      畠山 和也君    真島 省三君

      木下 智彦君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   財務大臣政務官      三木  亨君

   農林水産大臣政務官    細田 健一君

   経済産業大臣政務官    大串 正樹君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  彦谷 直克君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三角 育生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 嶋田 裕光君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 籠宮 信雄君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 生川 浩史君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 山本 哲也君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      山田 昭典君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            中島 淳一君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 菊池  浩君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宇山 智哉君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           浅田 和伸君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           板倉 康洋君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)     鍜治 克彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     住田 孝之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 茂明君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           星野 岳穂君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           三田 紀之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           前田 泰宏君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          寺澤 達也君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          末松 広行君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁次長) 多田 明弘君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            藤木 俊光君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    宮本  聡君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    吉野 恭司君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           北本 政行君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          山田 知穂君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           齋藤 雅一君

   政府参考人

   (防衛装備庁技術戦略部長)            三島 茂徳君

   参考人

   (日本銀行理事)     雨宮 正佳君

   経済産業委員会専門員   木下 一吉君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     木村 弥生君

  工藤 彰三君     大岡 敏孝君

  高木 宏壽君     中川 郁子君

  中根 康浩君     升田世喜男君

  畠山 和也君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     工藤 彰三君

  木村 弥生君     穴見 陽一君

  中川 郁子君     豊田真由子君

  升田世喜男君     中根 康浩君

  大平 喜信君     畠山 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  豊田真由子君     高木 宏壽君

    ―――――――――――――

五月十一日

 中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事雨宮正佳君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官三角育生君、内閣官房内閣参事官彦谷直克君、内閣府大臣官房審議官嶋田裕光君、内閣府大臣官房審議官籠宮信雄君、内閣府大臣官房審議官生川浩史君、内閣府大臣官房審議官山本哲也君、公正取引委員会事務総局経済取引局長山田昭典君、金融庁総務企画局審議官中島淳一君、法務省大臣官房審議官菊池浩君、外務省大臣官房審議官宇山智哉君、文部科学省大臣官房審議官浅田和伸君、文部科学省大臣官房審議官板倉康洋君、経済産業省大臣官房地域経済産業審議官鍜治克彦君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官住田孝之君、経済産業省大臣官房審議官田中茂明君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、経済産業省大臣官房審議官星野岳穂君、経済産業省大臣官房審議官三田紀之君、経済産業省大臣官房審議官前田泰宏君、経済産業省通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、経済産業省貿易経済協力局長寺澤達也君、経済産業省産業技術環境局長末松広行君、経済産業省製造産業局長糟谷敏秀君、資源エネルギー庁次長多田明弘君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長藤木俊光君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史君、中小企業庁長官宮本聡君、中小企業庁次長吉野恭司君、国土交通省大臣官房審議官北本政行君、原子力規制庁原子力規制部長山田知穂君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官齋藤雅一君及び防衛装備庁技術戦略部長三島茂徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。簗和生君。

簗委員 自由民主党の簗和生でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましてまことにありがとうございます。

 本日は、まず初めに、現行の中小企業・小規模事業者振興施策及び地域振興施策について質問を行ってまいりたいというふうに思います。

 今、地方経済の再生、活性化が年来の課題となっておりますけれども、地方、地域は、雇用の増加と、そして賃金の上昇というものを求めています。

 地方創生の流れの中では、若者の定住促進のために、安定した仕事があるということ、そして、景気回復を地方に波及させるという点では、賃金、所得の増加が求められております。

 今、経済産業省さんとして、GDP六百兆円の達成に向けて、サービス産業の生産性向上を図るというのが一つの政策の目玉として掲げられていますけれども、ちょっとこれについてきょうは考えてみたいというふうに思います。

 広義のサービス産業は、GDPベースで約七五%を占めていると言われ、地域雇用の過半を支えているということから、地方創生においても重要な鍵を握っているというふうに言われております。

 ここで考えてみたいのですけれども、生産性というものをわかりやすく捉えると、ある投入量のもとでどれだけの産出量を実現できるかということになります。図式化すると、分母に投入量、そして分子に産出量ということで生産性が示されるわけですけれども、ここで注意が必要なのは、この生産性というものを、数字だけ見たときに、分子が増大しない、つまり、産出量がふえないという中でも生産性の向上というものは生じ得るということだというふうに思います。

 つまり、労働生産性について言えば、労働投入量が減少するという場合でも、産出量が変わらない、あるいは、減少すらしてもこの労働生産性というものが向上するケースがあるということなんです。

 今、IT化等を進めて生産性を高めることが一つの方向性とされていますけれども、単純な人切りとか、あるいは、人手不足とか労働人口が減少するということを所与の条件としてなされる生産性向上では、地域が求めているような、雇用の増加とか、あるいは定住人口の増加という意味での、真に地方や地域に裨益するようなものにはならないというふうに思いますし、ましてや経済成長も、産出量がふえていないわけですから、実現もしないということにすらなるわけでございます。

 需要がなければ、いかに生産余力があっても、それに見合う供給、つまり産出量の増加は生じ得ないわけでありまして、供給サイドの生産性を高めるという取り組みだけではなくて、経済成長を図る上では、それだけでは不十分であるというふうに言えます。総需要をふやす経済政策と一体になって初めて供給サイドの政策というものが意味を持つ、そのように考えております。

 それでこそ、経済成長、すなわちGDP六百兆円というものの実現があって、そして、その需要に見合う生産力、供給力という意味での生産性向上が求められるということになり、そして、そこにおいては、地方、地域が真にその恩恵に浴するという意味で、地域の雇用の増加と賃金の上昇が伴っていなければならないということだというふうに思います。

 そして、そもそも、地方、地域に人口がふえる、あるいは一人当たりの消費額がふえるといったことがなければ需要は伸びないわけでありますから、当然ながら、雇用の増加と賃金、所得の増加が実現されなければ経済成長も難しいということになるというふうに思います。

 そこでお伺いをしてまいりたいんですけれども、需要サイドへの刺激、つまり総需要をふやすという意味では、もちろん、財政政策の部分が非常に大きいですから経済産業省さんの所掌を離れる部分もあるわけですけれども、改めてお伺いしたいのは、経済産業省の取り組みとして、需要をいかに創出するかということも含めて、真に地方、地域に裨益する生産性向上に関する施策をどのように進めていくのか。

 地方、地域における雇用や賃金の動向等も含めて、地方経済に係る経済産業省さんの現状認識、施策、そして取り組みの現状等も踏まえて御回答いただきたいと思います。よろしくお願いします。

世耕国務大臣 アベノミクスの影響もありまして、地域、地方でもかなり状況はよくなってきている、なかなか実感は湧かないという御指摘もいただくわけでありますけれども、雇用ですとか、生産、設備投資、消費、それぞれのデータは明らかによくなってきているわけであります。

 その中でも、特に雇用が非常に手がたくて、全国でも有効求人倍率が一を超えている、これは歴史上始まって以来の状況であります。また、中小企業でもベアがしっかりと行われているという状況であります。

 そういう中で、今御指摘のように、我々は、生産性の向上を目指した取り組みというのもやっていくんですが、一方で、しっかりとした需要をつくり出していくということも重要であります。

 そのためにも、この雇用というものをもっと質の高い雇用にして、安定的で、かつ、将来もっと賃金がふえていくということを期待できるようなそういう質の高い雇用にしていくということ、そして、そもそも、需要そのものもつくり出していくということが非常に重要だというふうに思っております。

 そういう中で、経産省としての取り組みとしては、まず、昨年施行されました中小企業等経営強化法、こういったものによって、サービス業を含めた中小企業の付加価値、生産性向上を支援をしていく、そして、地域における雇用創出と所得向上を実現するために、今国会に提出をさせていただき、先日衆議院は通していただいた地域未来投資促進法案、これを活用して、将来成長が期待される第四次産業革命関連分野ですとか、観光、航空部品といった、地域の特性を生かして高い付加価値を創出をして地域経済を牽引する取り組みを強力に支援をしていきたいというふうに思っています。

 これによって、地域における投資の増加と消費の活性化によって需要を生み出して、経済の好循環を促進をしていきたいというふうに思います。

 また、働き方改革も非常に重要だと思っています。これは、多様で柔軟な働き方を進めていくことによって、今まで働いていなかった、あるいは働くことを諦めていた方々にも経済活動に参加をしていただいて、そういった方々にも成長の成果を分配することによって、賃金の上昇、そして、需要の拡大を通じた、これまた成長と分配の好循環にもつなげていきたいと思いますし、また、今ようやく三回目が終わりましたけれども、プレミアムフライデー、こういった取り組みも行うことによって、需要の喚起に努めてまいりたいというふうに思っております。

簗委員 ありがとうございました。

 それで、賃金の上昇、増加という点については、特に今進めていただいている下請中小企業対策、これも重要になってくるというように思います。取引の適正化、あるいは、下請側が適正利潤を確保するための取り組みというものも重要になります。

 下請中小企業対策として、今、国の方で実態把握も含めて取り組みを強化していただいているというところは大変評価に値することだと思いますけれども、進捗状況は今どういうふうになっているでしょうか。また、業界ごとにどのような特色があるのか。それもあわせてお答えいただければと思います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業が賃上げできるような環境を整備していくためには、委員御指摘のとおり、やはり、下請など中小企業の取引条件を改善していくこと、これが大変重要だと考えております。不適切な原価低減要請、それから、金型の無償保管要請、手形払いの多用、こういった課題に対応するために、昨年の九月に、対策パッケージ、世耕プランと称しておりますが、を取りまとめ、十二月には、関係法令の運用を大幅に強化したところでございます。

 この改正した法令の内容を浸透させていくため、本年三月末までに、産業界、八業種二十一団体で、サプライチェーン全体で、取引適正化、それから、あわせて付加価値向上に向けて、自主行動計画を策定、公表したところでございます。

 自主行動計画、業界ごとに特色がございまして、例えば自動車業界で申し上げますと、不適正な原価低減を行わないことを徹底すると同時に、競争力を強化するための、取引先との生産性向上を支援する取り組み、これを広めることとしております。

 また、繊維業界では、長年続いておりました不透明な取引慣行である歩引き、これは一方的な減額措置でございますけれども、これを廃止するという宣言を行っておりまして、経産省からも、小売を含む約四千八百社に協力を要請したところでございます。

 また、トラック運送業、こちらでは、附帯作業あるいは荷待ち、こうした時間などの課題を改善するために、経産省からも、製造業あるいは流通業、こうした荷主に対して協力を要請したところでございます。

 今後は、こうした取り組みの浸透、それから徹底を図ってまいりたいと思っております。

簗委員 今、業界ごとに自主行動計画を策定している状況というものを説明いただきましたけれども、では、この徹底というものをどのように担保していくのか、これが重要になるというように思います。一次、二次といったレベルにとどまらず、三次、四次、五次といった末端の下請レベルまで恩恵を行き渡らせるための方策、取り組み等はどのようなものか、お答えください。

世耕国務大臣 おっしゃるように、自主行動計画を決めただけではだめでありまして、それがやはりしっかり実行されていかなければいけない。しかも、日本の下請構造というのはずっと、私の地元でもそうですけれども、五次下請、六次下請といったところまであるわけであります。

 ただ、やはり、行動計画を決め、業界のルールを決めて動いてもらったことで、いい傾向は出ていると思います。

 例えば、下請取引の適正化の中で我々非常に重視をしているのは、やはり手形による決済というのをなるべく減らして、現金の支払いにしてもらいたいというふうに思っているわけですが、自動車業界でもう既にいい傾向が出ていまして、まず、発注元の自動車メーカーが手形取引をやめた。そうすると、一次下請、ただ、自動車産業の場合、一次下請といっても一兆円規模の企業になるわけですけれども、今度はそういった下請企業が、それまで手形で支払っていたものをやめたという形で、だんだんやはり玉突きで改善が進んでいくんだろうというふうに思っています。

 我々は、これからも粘り強く、ちゃんと末端まで行っているかどうかというのをやっていきたいと思っていますし、発注元には、単に直接取引、契約しているところだけではなくて、やはり、サプライチェーン全体に責任を持ってもらいたいというふうに思っています。

 これから我々、五月にはフォローアップ指針というのを決めて、この自主行動計画がちゃんと行われているかどうかということをきちっと調査を行うということを各業界に求めてまいりたいというふうに思っております。

 また、経産省本体としても、ことし四月から、八十名規模の下請Gメンの配置を行いました。いわゆる三次、四次あたりの下請も含めて年間二千件以上の直接のヒアリングを丁寧に行って、こういう自主行動計画、業界のルールがちゃんと徹底をされているかどうか、あるいは、さらなる問題が起こっていないかどうかということもしっかりフォローをしていきたいというふうに思っております。

簗委員 ありがとうございます。

 ぜひ、現場に寄り添って、現場主義を徹底してこの政策を進めていただければ、そのようにお願いを申し上げる次第でございます。

 次に、経済と安全保障及び研究開発について取り上げたいというふうに思います。

 我が国には、工廠、いわゆる防衛装備品を製造する国営の工場というものがないわけでありまして、民間企業が防衛装備品の製造を担っているために、安全保障政策上、防衛産業の育成強化というものが大変重要な位置を占めています。

 防衛生産、技術基盤の維持強化ということで防衛省さんが取り組みを進めていますけれども、この防衛装備品の製造に従事する企業というものは、中小企業・小規模事業者であるほど、その売上高に占める防衛装備品への依存度が高いといった実情があります。そして、そういう事業者が極めて重要な技術を有し、ほぼ一手に製造を担っているというケースもあります。言うなれば、防衛政策上も、中小企業・小規模事業者への支援策という形でなされる経済産業省の役割や責任が極めて重要になる部分があるということだというふうに思います。

 このような観点から、まず、経済産業省としての防衛省との連携の状況、そして、サプライチェーンの実態把握や施策による支援等による取り組みの状況等についてお伺いをしたいというふうに思います。

糟谷政府参考人 経済産業省といたしましては、産業競争力という観点から、重要技術について、優先順位をつけながらサプライチェーンの具体的な把握を進めております。把握を進めているサプライチェーンの素材や部品の中には、防衛装備にも活用されているものもございます。

 ただ、こういう過程の中でわかってきましたのは、防衛装備品にこれまで依存をされてきた中小企業の中には、幅広い産業が利用できる税制とか補助金といった支援スキーム、支援制度を必ずしも御存じないという場合がございます。

 このため、防衛省と密接に連携をしながら、こうした中小企業を含めた企業に対しまして、セミナーを開催して中小企業施策を説明するといったような形で、支援ができるような制度の紹介をするという取り組みを進めてきているところでございます。

簗委員 ありがとうございます。引き続きしっかりと進めていただきたいというふうに思います。

 その研究開発という部分ですけれども、防衛技術基盤の維持強化、そして安全保障分野の研究開発というものを促進していく上では、いわゆる、今言われているデュアルユースというものを視野に入れた研究開発投資の促進が極めて重要でございます。

 我が国の研究開発投資は、政府対民間で見て、民間の割合が多いという実情がありますので、民間の研究開発において、いかに、安全保障分野でも活用し得る成果を生むものとしてこうした研究開発が実施されるかということが非常に重要になってくるというふうに思います。

 防衛省の予算で、今、安全保障技術研究推進制度、いわゆるファンディングというもので、デュアルユースを視野に入れた形で研究テーマが公募され支援が行われておりますけれども、私にとっては、防衛省さんだけが奮闘しているように思えてなりません。

 各省の科学技術関係の取り組みを束ねる内閣府さんを中心に、政府全体としてデュアルユースを前面に打ち出して、民間の研究開発において、デュアルユースを念頭に置いたものが実施されるように方向づけを行っていかなければならないというふうに考えております。

 採算ベース、投資を回収できるという判断の枠内でなされる民間の研究開発において、民間だけに任せておけばなされないであろうが国としては重要であるもの、そういうものがいかに実施されるように、制度をつくって、そして国の予算を振り向けていくかということこそが、科学技術振興の眼目ではないかというふうに考えております。

 このような観点から、防衛省さん、そして内閣府さん、そして経済産業省さんの見解をお伺いしたいと思います。まず防衛省さんからお願いできますか。

三島政府参考人 お答えいたします。

 我が国の高い技術力は防衛力の基盤であり、安全保障環境が一層厳しさを増す中、委員御指摘のとおり、将来にわたって国民の命と平和な暮らしを守るために、デュアルユース技術を積極的に活用することが重要になっていると考えております。

 防衛省としましては、このような状況を踏まえ、安全保障技術研究推進制度を創設したところでありまして、同制度の積極的な活用を図ってまいりたいと考えております。

 また、昨年、第五期科学技術基本計画を初めとする政府の科学技術政策の指針においても、初めて、国家安全保障上の諸課題に対し、関係府省、産学官連携のもと、必要な技術の研究開発を推進することは極めて重要であると考えております。

 今後、こうした政府全体としての方向性が一層明確化されるべきと考えておりまして、例えば、今後策定される科学技術イノベーション総合戦略二〇一七などにおいて、国家安全保障上の諸課題への対応に関し、総合科学技術・イノベーション会議の司令塔機能のもと、幅広い府省において、それぞれがいかなる役割を担うか、具体的に特定されていくことが適当であるというふうに考えております。

生川政府参考人 お答えいたします。

 昨年一月に閣議決定をされました第五期の科学技術基本計画におきましては、今、防衛省からも答弁がありましたけれども、国家安全保障上の諸課題に対応するため、関係府省、産学官連携のもと、必要な技術の研究開発を推進する方針が盛り込まれたところでございます。

 また、昨年五月に閣議決定をされました科学技術イノベーション総合戦略二〇一六において指摘をされておりますとおり、我が国の安全保障をめぐる環境が一層の厳しさを増す中、国及び国民の安全、安心を確保するため、テロや災害対応を含む国家安全保障に関する科学技術の動向を把握をし、俯瞰するための体制強化や、技術力強化のための研究開発の充実を図っていくことが重要であるというふうに認識をいたしております。

 また同時に、委員御指摘のとおり、科学技術の多義性、いわゆるデュアルユースでございますが、これも踏まえて、関連の研究開発を推進していくことも重要であるというふうに考えているところでございます。

 このような観点も踏まえつつ、現在、昨年からの進捗を踏まえた所要の改定を含め、科学技術イノベーション総合戦略二〇一七を策定をするべく、関係省庁間で調整を実施をさせていただいているところでございます。

 今後とも、防衛省等の関係省庁と連携をして、国家安全保障に貢献する科学技術の強化に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

糟谷政府参考人 経済産業省といたしましても、先ほど御答弁のありました政府の方針に基づきまして、基盤技術の研究開発を推進をしております。こうした研究開発の対象となる技術の中には、防衛装備品での活用も含めて、国や国民の安全、安心を確保するための基盤になるものもたくさん含まれているというふうに認識をしております。

 また、防衛省において、デュアルユース技術の防衛装備での活用に向けた実態把握や評価、検討などが行われるわけですけれども、そうした場合に、経済産業省としても、産業界の情報や民生技術に関する知見を活用して協力を行ってきておるところであります。

 引き続き、基盤技術の研究開発を推進をし、国や国民の安全、安心の確保に関する技術力強化のための研究開発をしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

簗委員 今御答弁としてはいい方向に向かっているとは思うので、あとはしっかり実行に移していただきたい。それをお願い申し上げます。

 次の点として、経済と国際司法について話を進めてまいりたいと思います。

 我が国企業の海外進出が進む中、進出先国で法律上の問題に直面するなど、我が国企業への司法面での支援ニーズ、または、日本国内でのインフラ整備の必要性というものが高まってきております。

 特に我が国では、国際仲裁、裁判所以外の民間の紛争解決インフラというものが十分ではなく、日本で行われる、日本企業を当事者とする仲裁案件というものは極めて少ないという状況にあります。日本企業にとって有利な解決を得る上で、日本国内に国際商事仲裁が実施できるインフラの整備を急ぐべきという国内経済界からの声もあります。

 さらには、外交的な見地からも、国際司法裁判所や仲裁裁判所等での国家間の紛争が争われる際の対応を強化する必要性も指摘されています。

 また、司法分野を専門として国際機関等で活躍している人材が、諸外国に比べて著しく少ないという点も従来から指摘されているところであります。

 こうした現状を踏まえて、法務省さん、そして経済産業省さん、外務省さんを初めとする省庁や、経済団体さん、日本弁護士連合会さん等の諸団体が連携をして、国として、国際司法面でのインフラ整備や人材育成等に係る取り組みを抜本的に強化していく必要があるというふうに考えております。

 まずは、これから策定される政府の骨太方針、成長戦略といったところに、今後の戦略的な取り組みを具体的に盛り込むことをぜひお願いしたいというふうに思っております。

 例えば、内閣官房さんに新たな会議体のようなものを組織して、そして、司令塔機能のもとで省庁間の連携を密にして、オールジャパンで体系的に取り組みを進める。また、人材育成においては、官民が連携をして、人材がさまざまなフィールドをローテーションして、多様なキャリアを積んで専門性を高めることができるようなキャリアパスを構築するといったことが考えられると思います。

 特に、法の支配を掲げる我が国において、国際司法面での制度づくり、ルールづくり等においてイニシアチブをしっかりと発揮していくというためには、政府としての体制を整備し、人材の確保、育成に力を入れていくということは不可欠であるというふうに考えております。

 このような問題意識を踏まえ、特に、我が国における国際仲裁の活性化のための取り組み、そして、国際社会で法律家が活躍できる環境整備について、法務省さん、そして経済産業省さんの取り組みの現状、そして、今後の意気込みをお伺いしたいというふうに思います。

 ちょっとデータ的なものを言いますと、国際仲裁については、日本における取扱件数は年間二十件程度ということにとどまっているということだそうです。世界に通用する日本人の実務家も、この分野では十人から二十人程度というふうに言われています。一方でシンガポールを見ますと、年間三百件以上取扱件数があると言われておりまして、実務家も国内外で数百人規模というふうに言われております。

 まずは、我が国として目標規模や目標年次というものを定めて、そして、必要不可欠なインフラとして日本の国際仲裁センターといったものを新たに整備すべきではないかなというふうに考えております。

 経済産業省さんと法務省さんを中心に、民間とも連携をして、本腰を入れてこの分野での取り組みを強化してほしいというふうに考えますので、先ほどの質問について御見解をお伺いしたいと思います。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 我が国企業の海外進出が進み、海外への投資が拡大する中、我が国企業が海外企業との紛争に直面した際に、国際商事仲裁を利用しやすい環境を整備することは重要であります。また、こうした環境を整えることは、海外企業の我が国への投資誘致にも資するものと認識しております。

 また、我が国企業と進出先国政府との間で紛争が生じる場合に備え、投資家と国との紛争解決手続規定を含む投資関連協定の締結を促進しているところであります。

 具体的には、昨年五月に関係省庁で策定した投資関連協定の締結促進投資環境整備に向けたアクションプランのもと、二〇二〇年までに、百の国・地域を対象とする投資関連協定の署名、発効を目指し、交渉に精力的に取り組んでいるところであります。

 今後とも、我が国企業のニーズを踏まえつつ、関係省庁との協力のもと、我が国企業の海外展開や海外企業の投資誘致の後押しとなるような取り組みを、法務の面においても進めてまいりたいというふうに考えております。

菊池政府参考人 お答えします。

 まず、国際仲裁の活性化についてでありますけれども、経済社会の国際化が進展し、日本企業の海外取引や海外投資案件が増加するのに伴い、国際的な紛争解決の手段として国際仲裁手続が国際的に広く利用され、重要な役割を果たしていると認識しております。

 一方、委員御指摘のとおり、我が国内においては、国際仲裁の利用が十分進んでいないという指摘があるところでございます。

 法務省といたしましては、司法制度を所管する立場から、必要な検討を行うため、本年三月、省内の関係部局で構成される検討チームを立ち上げたところでございます。

 今後とも、国際仲裁の活性化に向けて、経済産業省を初めとする関係省庁、関係機関と十分に連携、協力を図りながら、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

 続きまして、国際社会で法律家が活躍できる環境整備についてでありますけれども、我が国の法曹が国際仲裁等の国際紛争解決に適切に携わるのみならず、海外の国際機関や在外公館に勤務するなどして幅広く活躍することは、法曹としての専門性や見識を有効に活用し、在外邦人や在外企業の支援を図る等の観点からも、大変重要な意義があると認識しております。

 一方、そのような活躍している人材については、必ずしも我が国法曹の国際社会における活躍の場は十分広がっていないのではないかとの指摘がされていると承知しておるところでございます。

 法務省といたしましては、国際分野における我が国法曹の法的サービスのニーズや活動領域等も踏まえつつ、より多くの法曹人材が国際機関等で活躍できるよう、人材育成等の環境整備を図り、外務省を初めとする関係省庁、関係機関と連携、協力して、必要な取り組みを進めてまいりたいと考えております。

簗委員 ありがとうございます。

 特に省庁間の連携、法務省さん、非常に前向きに取り組んでいらっしゃる中で、経済成長という側面から正面のバックアップというものが必ず必要になるので、それについて十分に経済産業省さんとしても意識をいただいて、連携を強化してこの取り組みを進めていただきたいというふうに思っております。

 最後に、サイバーセキュリティーについてちょっと質問をさせていただきたいというふうに思います。

 今、経済面では、生産活動とか日常生活の中にIoT、AI、それから自動走行といった新たな技術の振興が図られている中で、反面、このサイバーセキュリティーの重要性が高まってきているというふうに言われています。

 安全保障面でも、このサイバー空間というものは、陸海空そして宇宙に並ぶ第五の戦場とも言われておりまして、我が国におけるサイバー領域での国防力の強化というものも求められております。

 そこでまず全般的にお伺いしたいんですが、我が国のサイバーセキュリティーについて、官民の連携状況、そして、政府内の体制、人員等の現状、人材育成に係る取り組み、そして、重要インフラの防護に係る取り組み等含め、今のお取り組みをお伺いしたいというふうに思います。これは内閣官房さんかな。

三角政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、平成二十七年九月に閣議決定いたしましたサイバーセキュリティ戦略、及び、平成二十八年四月に成立いたしましたサイバーセキュリティ基本法の一部改正法に基づきまして、官民を挙げてサイバーセキュリティーの強化に取り組んでいるところでございます。

 具体的な取り組みといたしましては、例えば、政府内の体制について申し上げますと、昨年度、二十八年度でございますが、各府省庁におきまして、セキュリティー対策等を担う専任の審議官等を新設いたしまして、この審議官等の主導のもと、人材育成、体制の整備等を計画的に推進しているところでございます。

 その結果、今年度におきましては、セキュリティー対策等に係る人員につきまして、本府省庁全体で、約八十の定員増による体制強化が実現したところでございます。

 また、民間、特に重要インフラ防護の点につきましては、昨今のサイバー攻撃による急速な脅威の高まり等を踏まえまして、サイバーセキュリティ戦略本部におきまして、重要インフラの行動計画を改定したところでございます。これに基づきまして、安全かつ持続的なサービスの提供に努めるという機能保証の観点から、情報共有体制の強化、対処体制整備の推進等を重点項目とした諸施策を推進しているところでございます。

 さらに、この行動計画等を着実に推進するためにも、サイバーセキュリティ戦略本部で策定いたしました人材育成プログラムに基づきまして、教育や演習の一層の充実や各施策間の連携強化等、イノベーションにも対応できるサイバーセキュリティー人材の育成を推進しているところでございます。

簗委員 ありがとうございます。

 内閣官房さんの方で総括的なサイバーセキュリティー、今担当いただいているということです。

 経済産業省さんの取り組みを最後にお伺いしたいと思いますけれども、今、独立行政法人情報処理推進機構、IPAと言われる機構を立ち上げていただいたということですけれども、今後、この機構に求められる役割、そして今後の展開等について、最後、ちょっとお伺いさせてください。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、四月一日にこのセンターはできました。主に三つの役割があると思っております。

 一つ目は、インフラや産業基盤にかかわる事業者において、サイバーセキュリティー対策を牽引する中核人材をつくる。これが一番目です。二つ目は、インフラや産業基盤の制御システムの安全性、信頼性に関するリスクの評価を行う。これが二つ目でございます。三つ目が、サイバー攻撃情報を調査、分析するというのが三つ目でございますが、特に一つ目です。

 これにつきましては、オリパラもあるものですから、特に電力、ガス、鉄道の重要インフラの事業者、これはもちろんです。加えまして、鉄鋼、自動車、化学の、各日本を代表する業界にも研修生を受け入れて、サイバーセキュリティーを担う人材を輩出していきたい。

 そのときに、先進国でありますアメリカ、あるいはイスラエル、エストニアといった知見も取り込みながら、このセンターの事業を充実させていきたいなというふうに考えております。

簗委員 時間が来ましたので終わりますが、特に、政府内だけの取り組みだけではなくて、民間ですね、重要インフラ等ありますので、民間と連携をしっかり強化していただくということ。それから、人員とか人材、こういったところで諸外国は非常に進んでいますので、こういうところにおくれをとらないようにぜひ取り組みを強化していただきたい。それを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 昨日の本会議で信用保険法改正案が議論されまして、当委員会でも審議が始まるところでございます。それに先立ちまして、少し露払いの意味も兼ねまして、中小企業・小規模事業者支援について質問をさせていただきたいと思います。

 言うまでもなく、我が国の経済を活性化させるためには、企業数の九九・七%、雇用の七割を占める中小企業・小規模事業者の成長が不可欠でございます。しかし、中小企業・小規模事業者を取り巻く環境は、少子高齢化が加速する中、生産年齢人口は減少し、経営者層の高齢化が進み、今、四つの大きな課題の解決が求められていると思っております。

 一つは事業承継の推進、二つ目に人材の確保、三つ目にICT導入による生産性の向上、経営力の強化、四つ目に下請取引の適正化と認識をしております。一つ一つについて詳しく述べることは避けますが、中小・小規模事業者の持つすぐれた技術力は日本を支える重要な経済基盤でありまして、海外流出や廃業などによって失うわけにはいかない、何としても守りたいと願う一人でございます。

 これまでも、公明党として、事業承継、人材確保支援や生産性の向上に資する取り組み、また下請取引適正化等、中小・小規模事業者支援に一貫して取り組んできたという歴史と自負を持っております。

 しかしながら、人口減少、超高齢社会にありまして、今後の厳しい見通しに対してどのように対応すべきか、その解決策を求めまして、昨年秋から、経産部会と、また、赤羽中小企業活性化対策本部長と力を合わせまして、視察、ヒアリングを重ねてまいりました。これを、ほぼ取りまとめが終わりましたので、来週にでも世耕大臣に要請に伺わせていただきたいと思っております。

 こうした点を踏まえまして、現場からいただいた御要望を含め、順次質問をさせていただきたいと思います。

 まず初めに、アベノミクスによりまして足元の景気は緩やかな回復基調が続いておりますが、地方の景況感におきましては、ばらつきが見られ、経営改善が必要な中小企業もまだまだ多く存在をしております。この点、公明党からも強い要請をかつてさせていただきまして、平成二十五年から認定支援機関による経営改善計画策定支援事業が開始をされまして、専門家を交えて経営改善計画を策定する、できるだけ、事業再生や、転廃業に至らないように支援する、こうした事業が今に続いておりますが、現在の実績など、状況がどうなっているか、説明を求めます。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の認定支援機関による経営改善計画策定支援事業につきましては、税理士や中小企業診断士などの認定支援機関を活用いたしまして、みずからは経営改善計画の策定が難しい中小企業を支援して、その経営改善を促進するというものでございます。

 平成二十五年三月の事業開始から昨年末までの実績では、既に三万八千件以上の相談に対応し、一万二千件以上が本事業を利用または現在申請中でございます。

 本事業を利用して経営改善計画を策定して経営改善に取り組んだ例としましては、例えばですが、多店舗展開に失敗しまして業績が悪化したパン屋さんにおいて、利益率に着目した販売商品の絞り込み、あるいは原価管理の徹底に取り組んでいる事例。それから、経営者の経験を頼りに勘で操業していた、このために資金繰りに窮した運送業者が、将来の事業承継を見据えて、利益率の精査、そして利益率の高い取引先に注力する、こういうことで収益向上に成功した例。こうした中小企業の方々の経営改善への取り組みを支援してきたところでございます。

 経営改善計画の策定によって本格的な経営改善が必要な中小企業の方々はまだまだたくさんいらっしゃいますので、引き続きこの事業を活用して支援してまいりたいと思っております。

高木(美)委員 ぜひとも、着実に引き続き実施をお願いしたいと思います。

 公明党としまして、先ほど申し上げたように、今回の信用保険法の改正につきまして、準備のための検討も行ってまいりました。そのときに、企業がリスケせざるを得なくなる状況になる前に、その前段階に、そもそも中小企業の側がみずからの経営状況を日常的にしっかりと把握して、十分な情報を開示して見える化をしまして、金融機関と対話しながら経営改善を行っていくことが重要だという結論に至りました。

 よろず支援拠点全国本部のアドバイザリーボード委員長も務められている板橋区企業活性化センターの中嶋さんからも話を聞きましたが、中小企業みずからが資金繰り計画を策定することこそが、そのための重要なツールであるというお話でございました。他方で、金融機関がその策定のお願いをしても、二、三割程度の中小企業者しか対応できていないという話も聞いております。

 実際、私もいろいろな方と今までもお会いしてまいりましたが、特に、小規模、御夫婦でやっていらっしゃる、そうした事業者の方たちにはどんぶり勘定が多いという実感もあります。確定申告の前に一年分まとめて帳簿をつけるとか、行き当たりばったりの経営をされていらっしゃる。そういうことに私も相談に乗りながら、中には廃業や倒産の辛いケースにも携わってまいりまして、何とかこうした初歩的な、第一歩から改善できないかという問題意識をずっと持ってまいりました。

 そこで、公明党といたしまして、今回の信用保証制度の見直しに際しまして、昨年十二月、世耕大臣のもとに申し入れをさせていただきましたが、私、紙を出させていただいて、中嶋さんが使っていらっしゃる、資金繰り計画が表、事業計画が裏、こういうのが大臣、大事だと思いますがと申し上げさせていただきまして、策定などを促す支援策を検討していただきたいとお願いをさせていただきました。

 きょう、お手元に資料としてお配りさせていただいておりますが、早期経営改善計画策定支援という事業がこのたびスタートすることとなったと聞きまして、心から感謝を申し上げたいと思います。ぜひ周知徹底を図っていただきまして、どのような形であれ、策定することを経営者の常識にしていただき、手おくれになる企業を少しでもなくしまして、意欲のある事業者が伸びていけるように後押しをさせていただきたいと思っております。

 こうした資金繰り管理支援に関しての中小企業庁の対応状況を伺います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年末、御党から御提言いただき、また、今委員から御指摘いただきましたとおり、やはり、中小企業の経営改善を促進していくためには、経営者が平常時から資金繰り管理や採算管理などについて自発的に取り組む、こういう取り組みを促すことが何よりも重要と考えております。

 このため、経済産業省では、本格的な経営改善が必要となる前の段階において経営改善への取り組みを支援するために、先ほどお答えした経営改善計画策定支援事業、これを活用して、新たに早期経営改善計画策定支援事業を実施することといたしました。

 この事業におきましては、経営者が税理士やあるいは中小企業診断士などの認定支援機関の支援を受けまして資金繰り計画の作成あるいは事業計画の見直しなどの簡易な経営改善計画を策定する場合に、その策定費用などの三分の二を支援するということで、まさに一昨日、公表したところでございます。

 今後、本制度につきまして、金融機関、あるいは士業の団体、あるいは商工会、商工会議所、こうした関係団体にしっかりと周知するとともに、中小企業が平時からこうした取り組みを当たり前のこととして行うようにし、少しでもその業況が悪化した段階、そういう初期の段階において金融機関から適切に経営支援を受けることができるように、環境を整備していきたいと思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 上限額二十万円までということでございますので、まさに小規模の方たちが大変使いやすい、いわば商店に至るまで使えると聞いておりますので、活用をさせていただきたいと思っております。

 次に、五月一日ですが、新橋にある東京都よろず支援拠点に伺いました。

 販路開拓、創業、経営革新、IT、ものづくり、MアンドA、事業計画策定支援、契約法務など、まさによろず支援を展開されておりまして、全国、都道府県に一カ所設置されておりますが、東京では、経産省の関東経済局が東京都信金協会に委託をして運営されているところでございます。

 大臣、ちなみに、よろず支援拠点、今まで行かれたとか、話を聞かれたとか、あられますでしょうか。

世耕国務大臣 いろいろ勉強はしていますけれども、現場はまだ行ったことがないので、できるだけ機会を見つけて行きたいと思います。

高木(美)委員 それでは、少し説明もさせていただきます。ぜひとも一度、近くの新橋でございますので、今、海外の方もいろいろ取引等ありまして大変かと思いますが、足を運ばれてはいかがかとお勧めをさせていただきます。

 ここでの取り組みは、中小・小規模事業者にとって大変心強い味方となっているという実感があります。

 成功事例ですが、例えば、都内にある和菓子店。おいしいけれども、ごく普通の最中がありまして、少しあんこが見えているという最中です。売り上げがなかなか伸びない。そこで、よろず支援拠点に相談したところ、パッケージを変え、名称も変えました。名前は、切腹最中というユニークな商品名に変えて販売をした。地域柄、クレーム処理に走るビジネスマンが多い。切腹ものですと言ってこの最中を差し出すと、その後の関係構築に一役買っているという話でございまして、これがよく売れているそうでございます。

 また、ピアノ教室に娘さんを通わせていたお母様が、お嬢さんのピアノのペダリングがうまくいかない。そこから、ペダルの操作を飛躍的に向上させる靴を開発したい。ピアノ演奏靴という靴を、これは数年がかりで、たしか私、五年か七年という記憶があるんですが、開発しまして、それをよろず支援拠点に持ち込んだところ、まさに創業ですが、本当に多くの方たちが寄ってたかって支援とおっしゃっていましたが、特許を取りまして、補助金も得て、二〇一五グッドデザインアワードを受賞されまして、今これが海外まで販路を開拓している。こうした創業の例もありました。

 こうした相談は無料でございまして、相談者の満足度は九四%、成果が出たと回答されたのが、全国でも約七割、東京では約九割に上るという状況でございます。

 ただ、一方で、三百八十一万者もの中小企業・小規模事業者がいることを考えますと、今後は、こうしたよろず支援拠点、都道府県一カ所ではなく、さらなる体制強化が必要と考えます。

 そのためにも、これは中小企業庁が委託をして実施するという形のみならず、地域の信金、信組などのほかの支援機関また金融機関、そうしたところと連携した取り組みが重要と考えております。御見解、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 私、ちょうどきのう切腹最中を国対で見まして、これがよろず支援拠点から生まれたものだというのは初めて聞きました。いい仕事をしているなというふうに思ったわけであります。

 やはり、中小企業の経営者というのは、どうしても日々の仕事に追われて、一生懸命いいものをつくっていたり、いいサービスをやっていたりするんですけれども、なかなかちょっと視野が広がらないときに、ぱっと、いいアドバイスをもらうと、その切腹最中のような成功事例につながる。ちょっと頭が切りかわって、もっといい商品になっていくなんということがあるのかなというふうに思っております。

 やはり体制強化が重要だというふうに思っていまして、二十八年度には、相談員を二十六年度の二百八十一名から五百五十七名に拡充をしました。また、各県一カ所ということになっていたんですが、サテライトオフィスを二十七年度から設置を始めまして、今、二十八年度には二百八十一カ所にふやすなど、体制も強化してきています。

 ただ、どうしても、なかなか予算上の制約などはありますから、今御指摘のように、民間のいろいろな支援機関と連携をしていくということが重要で、特に信金、信組など地域に密着した金融機関とよろず支援拠点が、例えば取り組み事例を共有するとか、そういったことが非常に重要だというふうに思っております。

 具体的には、例えば、新事業の立ち上げに関する相談で、信金と連携をして、よろず支援拠点が販売計画をつくって、そして信金の方は資金管理等について支援をするといった取り組みもありますし、あるいは、新商品開発に関しては、商工会議所と連携をして、商工会議所がその商品の特性などを分析して、そして、それに基づいてよろず支援拠点がターゲットとなる顧客分析を行うといった連携を実施してきているところであります。

 今後は、各拠点が定める年度計画の策定や各拠点の活動評価に当たっても、PDCAサイクルを強化する観点から、逆に、連携をしていただいている支援機関からよろず支援拠点がどう評価されているかといったことなども反映をさせていくなどの取り組みをしっかりと進めていきたいというふうに思っております。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 大臣が昨日ごらんになったとは思いませんでした。うれしいです。

 これもやはり課題がありまして、案件によっては相談に長期間を要する場合もあります。ただ、このよろず支援拠点、予算事業ですので、やはり単年度で終わってしまう。これを運営している側にとってみたら、果たしてこれだけの優秀な方たちを来年度もお願いできるんだろうか、ここの不安がやはり絶えずつきまとっているようです。翌年度から相談が打ち切られてしまうといった事態が生じるのではないかという不安も伺いました。

 こうしたよろず支援拠点がしっかりと安定的に運営されていくためには、我が党としても応援をさせていただく所存でございますが、政府としてもしっかりと対応をお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 非常に評価の高い取り組みであります。どうしても予算という話になってしまうわけでありますけれども、なるべく継続できるように取り組んでいきたいと思います。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 大田区のメッキ関係の企業にも参りました。そこは、高い技術力を持っておりまして、どんな形状の製品でもメッキ加工できるということから、高い収益を上げております。ただ、受発注システムは紙ベースで全部行っていたために、紙で書いてそれを製品に張る。その製品がどこの工程をどう動いているか、それをみんなが自分で探しながら、その工程をさかのぼっていかないとわからないという、こういう時間、手間がかかっておりました。そのために、地元の法政大学と組んで受発注システムのICT化に取り組み、iPadをそれぞれが持って活用して、業務の効率化と生産性の向上に成果を得たという話でございました。通常、システムの開発には数百万円から一千万円かかるところを、大学との連携のために低く抑えることができ、今は月額利用料三万円で済んでいるという話でした。

 こうした開発をこれから各企業がそれぞれに行っていたら、コストも膨大ですし、とてもそうした費用を捻出することはできないと思います。したがって、このベースとなるプラットホームを経産省がつくって、それを売り込むIT事業者はオプションをつけて使い勝手をよくするというような、そういうやり方も必要なのではないか。地域の商工会議所が地域でのICT化を推進している、こういう例も聞いております。

 中小企業のIT化を進めるに当たっては、個社ごとに支援するのみならず、地域ごと、また業種ごとに支援することが重要と考えますが、対応を伺います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中小企業が業務効率化あるいは販路拡大などを図って生産性を向上するためには、ITの利活用を促進することは極めて有効な手段だと思っております。

 その際、これもまさに御指摘のとおり、個社のみならず、地域ごとあるいは業種ごとにこうした導入が進められることで、IT利活用のためのコストあるいは効果、こうした面で一層、個社にとってもメリットが大きくなるものと考えています。

 このため、昨年度の補正予算に基づいて実施中のIT導入補助事業においても、実績のあるクラウドサービスを業種ごとにあらかじめ登録し、事業者が自分の業種や事業に適したツールを選択しやすくするようなことで、業種の特性に応じたIT化ができるような工夫をしております。

 そのほかにも、業種単位、地域単位で電子的な取引を進めるモデルプロジェクトを現在全国十二カ所で実施しておりまして、これをあるベストプラクティスといたしまして横展開、全国展開していきたいと思っています。

 また、昨年施行されました中小企業等経営強化法、これは、まさに業種ごとに生産性向上の方法等を示した事業分野別指針をつくっております。これに基づきまして、まさにIT導入も含めまして、各中小企業の方で経営力向上計画の策定が進められています。

 さらには、地域で、自治体、団体、企業、こうした方々が一体となった取り組みとして、地方版のIoT推進ラボというのを進めておりまして、既に全国の五十三地域でこうした選定が進んでおります。

 こうした取り組みをさらに進めることによりまして、委員御指摘のとおり、地域単位あるいは業界単位でもITの導入が促進されるように、引き続き強力に支援してまいりたいと思っております。

高木(美)委員 よろしくお願いいたします。

 中小企業の資料によりますと、IT投資を積極的に行う中小企業の方が売上高また売上高経常利益率の水準が高いということでございます。

 ただ、IT投資の現状では、中小企業の約半数で、オフィスシステムや電子メール、経理業務のような内部管理向けには導入が進んでおります。恐らく、一般的に、ワード、エクセルなど、また電子メールなどというのは活用され、また、給与、経理業務のパッケージソフト、ここまでは導入が進んでいるのですが、収益に直結する調達、販売、受発注管理などではまだ一、二割の企業にとどまっているという状況です。先ほどの企業も、この残りの一、二割に該当していたところだと思います。

 そこで、ある企業から話を聞きますと、中小企業の経理担当者の方の時間の使い方がどうなっているか。入力事務が約七割を超えている、コミュニケーションや資金繰り管理などの非ルーチン作業にかかわる時間は三割以下である、こうしたデータをとったところもあります。その意味では、多様なクラウド会計ソフトもあるわけですが、それによって省力化でき、財務分析や事業計画等に注力できる、こういうメリットも聞いております。

 また、一方で、これは石川県ですが、地域の中小企業のクラウド化を進めておりまして、金融機関とインターネット上で、融資した資金の使途などをリアルタイムで共有することができる、こうした動きを推進していると聞いています。

 これによりまして、金融機関は安心して融資することができる。何かあったときもプッシュで来る。無担保無保証で融資するかわりに財務状況を共有することを条件にして、これまでに約十三億円の創業融資を行っている銀行もあるという話でございます。したがって、金融機関にありがちな、何かあったときに、何に使ったのですかと請求書から何から多くのデータを求める、こういうことの解消にもつながっておりますし、金融機関との強い連携にもこれは資する話であると思います。

 しかし、この先のインターネットバンキング、この活用のところまではなかなか進んでいるところが、まだまだおくれているというのがIT関係の企業たちの実感なんですが、インターネットバンキングの活用がないと、銀行まで出かけていって、混んでいたら待ち時間をかけて、そして振り込みのために手数料を払ってと、まさに手間暇を省力化できるのに、中小・小規模事業者はまだ余りそこのところになじんでいないという話も聞いております。

 このようなさまざまなツールを幅広く利用することで、中小・小規模事業者の生産性を高めることにまさに資するものであると思っておりまして、ここにぜひとも中小企業庁は集中的に取り組んでいくべきではないかと申し上げたいと思います。

 IT導入補助金、これも各所で好評でございました。継続すべきということをあわせて申し上げたいと思いますし、もう一つ要望がありました、IT導入補助金の手続の簡素化もお願いしたいという強い要望もありましたので、お伝えをさせていただきます。

 こうした点について、お考えはいかがでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、中小企業の会計事務などのいわゆるバックオフィス業務につきましては、オンラインバンキングあるいはITツールの活用によって効率化を図ることで、生産性を上げて、何よりも人手不足、こうした課題に対応するために大変重要な政策だと思っております。

 ただ、一方で、やはり中小企業の方々にとっては、コスト負担あるいは人材の不足の課題、さらに、そもそもどうやって、何を使ったらいいのかわからない、こういう理由から、なかなか十分にその活用、導入が進んでいないのが現状だと考えております。

 このため、やはり中小企業の生産性向上に資するITツールの導入を支援するために、昨年度の補正予算で御指摘いただいたIT導入補助金を措置したところで、既に七千五百十一件の採択をし、現在また二次公募を実施しているところでございます。

 この申請に当たっては、できるだけ利用者の方々の負担にならないように、ITベンダーが代理の申請をするということも可能にし、あるいは、申請の記載事項自体も極力簡素化するように努めているところでございますが、御指摘を踏まえ、さらにどういうことが可能か検討してまいりたいと思います。

 また、こうしたことをまず普及することを通じて、フィンテックを含めた金融機関のサービスとの連携というのも進めていけるものと考えております。

 また、人あるいは知識という面で不足する部分につきましては、先ほど御質問いただいたよろず支援拠点を通じまして、IT導入の専門家、これを三回まで無料で派遣するということで、その部分を補っていければと思っております。

 さらに言うと、最近の取り組みとしては、そもそも、ITツールに実際に触れていただいて、みずから利便性を体験していただく、こういう体験型の展示会とか実際の導入の相談会、こうした大規模な普及事業を全国十ブロックでこの三月、四月と実施してきました。これをさらに今後、全国百カ所で、少し小規模な形でございますが、実施して、普及をさせていただきたいと思っております。

 それからまた、これだけで終わるということではなくて、今後のITの普及促進策についても、こうした事業の実際の実施状況あるいは効果、それから利用者にとっての利便性、こうしたものを検証しながら、より効果的な普及方策についてさらに検討していきたいと思っているところでございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 このICTの利活用が生産性の向上とか経営力強化に資するというところは、中小企業庁も、また大臣も強い認識をお持ちと認識しております。

 したがいまして、今るるお話がありましたように、ここはやはり中小企業庁としても、目標を設定していただきまして、KPIで推進していくという、積極的な、もう一段の取り組みが必要なのではないかと思います。特に、先ほどのインターネットバンキング、ここも、どういう企業がどこまで活用するようになっているのかという、ここの数字も含めまして、実態把握も必要と思いますし、今後の目標設定をぜひともしていただきたい。

 そのようにしながら、こうした中小企業の風土を変えていくという、これは肝ですから、ここをしっかりとやっていきたいと思っております。

 それに対して、中小企業庁、いかがでしょうか。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘いただいたように、中小企業庁としても、この施策にできるだけ資源を投入して、本当に、いわば中小企業がITを使う、あるいは普及する最後のチャンスという覚悟を持って施策を進めたいと思っております。

 それに当たりまして、先ほど少し申し上げましたが、今後のITの普及施策についても、さらにどういう施策が効果的かというのを検討を始めておりますので、この検討の中で、例えば中小企業者のITの導入やこれに伴う生産性の向上、こうした目標についても検討を行いまして、さらに強力にITの導入、普及を進めてまいりたいと思っているところでございます。

高木(美)委員 荒川区に伺いましたときに、そこの企業は高い技術力を持っている企業ですが、どうしても、中小企業ですから業種内で分業が確立していて、ここを延ばしていくにはあのお店、ここをこういうふうに曲げていくにはこっちの企業というふうに、もうそれが地域で完結しているという状況でございました。したがって、どこかが欠けてしまうと、廃業が進むことによって業種内のサプライチェーンの維持が難しくなってきている、こうした話も伺いました。

 これを解消するために、できるだけ地域で連携をとりながら守り合っているというお話もありましたが、こうしたサプライチェーンを維持し、業種全体の生産性を高めていくためには、業種内のネットワーク強化や事業承継のさらなる促進が重要と考えております。対応方針を伺います。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、サプライチェーンにおいて重要な役割を担っている中小企業、ここが後継者不足で廃業を余儀なくされますと、やはりサプライチェーンとしての維持は当然困難になりますので、まず、こうした事業者の事業承継を促進するとともに、サプライチェーン全体で生産性を高める、こうしたことが重要と考えております。

 このため、まず、事業承継の促進のためには、現在、全国に事業引継ぎ支援センターを設置して、意欲のある企業などが事業をちゃんと引き継いでもらえるように、MアンドAなどによる後継者マッチングを支援しているところでございまして、このセンター発足以来、既に一万五千件以上の相談に応じ、六百七十一件の成約を実現しているところでございます。

 また、事業承継を下請取引の関係においても促進するために、昨年十二月に下請中小企業振興法に基づく振興基準を改正し、サプライチェーン全体の機能維持のため、親事業者が下請事業者に対して必要に応じて計画的な事業承継を促す、こういう対応も盛り込んだところでございます。

 さらに申し上げますと、サプライチェーンの強化のため、業種内の生産性を上げるという意味で、昨年施行されました中小企業等経営強化法、これも活用してまいりたいと思っておりますし、さらには、業種間で電子的な取引を普及促進する、あるいは、業種全体として川上、川下で連携した形で技術開発する、こうした取り組みについても支援し、できるだけサプライチェーンの維持強化に取り組んでまいりたいと思っております。

高木(美)委員 ありがとうございました。またさらなる強い取り組みを求めまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、田嶋要君。

田嶋(要)委員 おはようございます。民進党の田嶋要でございます。

 きょうは、一般質疑で三十分いただきました。

 せんだっての経産委員会で外為法の改正が行われまして、外為法の改正は時々行われているわけですが、国際情勢の変化に応じて必要な追加的な措置を行って、いわゆる機微情報、機微技術というものに関する手当てを行ったということでございますけれども、少し積み残しがあるのではないかというような問題意識から、最初の質問をさせていただきます。

 お配りしました資料の一でございます。これは政府から頂戴した資料そのものでございますけれども、この下の二つ、ドイツの投資先に対して中国の投資元企業が買収をしかけた、出資をしようとしたわけでございますが、これは、どちらのケースでもアメリカの子会社というのがございます。

 この二つのケースは、機微情報の流通阻止という目的が二つの異なる手段によって達成をされたということで、そこを読んでいただければわかるわけですが、クカの方は、アメリカの子会社に関して、中国が親会社を買収するのと同じようなタイミングでアメリカの企業へアメリカの子会社を売却してしまったということです。それから、二つ目のアイクストロンに関しては、そもそもの親会社への買収提案を中国が取り下げた、こういうようなことだと概要に書いてあるわけでございますが、この二つの手段、仮にその二つの例にあるアメリカの子会社が日本企業の日本の子会社であったとしたら、何らかの手段で同じ目的は達成できたのであろうか、あるいは、今回の法改正を受けて、これは実現するのか。

 これは、資料を見ていただければ、最近起きている主な対外投資案件で「流出の懸念が増大している」というところに出ている五つの事例のうちの下の二つでございます。

 まず、その点をお尋ねしたいと思います。

寺澤政府参考人 お答えします。

 仮定の御質問というのはお答えしづらいんですけれども、一般論ということでお答えしたいと思います。

 一般論で申し上げますと、海外投資家が海外にある企業を買収する場合、その海外企業が機微技術を有する日本の子会社を持っていたとしても、日本にある子会社に対する投資ではないということから、日本の外為法を適用して投資を規制することは困難であると考えております。

 他方、日本にある子会社から海外にある新しい親会社への機微な貨物や技術移転は、国境を越える取引として、外為法の輸出規制または技術取引規制の対象となるわけでございます。

 先般、この経産委員会で御審議していただき、可決いただいた外為法の改正は、こうした規制に違反した場合の罰則を大幅に引き上げるということを内容とするものでございます。

 このように、御指摘のようなケースでございましても、機微技術の流出を阻止することは可能であると考えております。

田嶋(要)委員 今、前半でおっしゃったとおり、海外のケースの場合には、この下の二つですけれども、今回のこの二つの事例はアメリカの子会社でありますが、日本の子会社の場合には同じようなふうにはいかないというような御答弁かと思います。

 次の資料をごらんください。この資料、経産省におつくりをいただいたわけでございますが、せんだっての法改正では、この三角に当たるところが手当てがなされたわけでありますが、一番外枠の、四角の外にございます、外国投資家が日本の領域外における外国企業への投資、この場合には、残念ながら、せんだっての法改正の審議をもってしても、今後も日本企業はそれをとめることができないというふうに理解をしてよろしいですか、この資料で。

寺澤政府参考人 お答えします。

 委員御指摘の取引というのは、外国投資家と外国企業の間の買収でございますので、これは日本の領域の外で行われている行為でございますので、日本に対する対内直接投資規制を行っている外為法のスコープの外になると考えています。

 他方で、この資料二でございますと、日本企業から外国企業に対して、繰り返しでございますけれども、機微な貨物とか機微な技術が移転される場合、ここは国境を越える取引として、そこは規制ができる。それについて、先般の法改正で罰則を大幅に強化するということなものですから、買収の後のそういう技術移転とかあるいは貨物輸出、そこについては厳格にチェックする。これによって、機微な技術の流出を阻止するということは可能だと考えております。

田嶋(要)委員 後半おっしゃったのは、違うアプローチによってやれるんだというようなことを強調されているように聞こえますが、少なくとも、アメリカ政府がやったのと同じやり方ではとめられないのだろうというふうに考えるんです。

 そこで、大臣にお尋ねをいたします。

 この資料の二のバツがついているところです。これは経産省がつくっていただきましたので、バツはバツなわけで、できないということをおっしゃっておられるわけです。

 国際情勢はどんどん変わっていきますし、企業買収は非常に複雑だし、一見どこが所有しているのかがわからないような事案がたくさんあるのだろうというふうに思いますが、これは政府が、資料の一のように、御提示いただいた五つのケースのうち、下の二つは、日本の子会社の場合には、同じ手法を使って今後も日本はそれは阻止はできないというふうに説明をいただきました。

 物や技術の場合には、いわゆる規制の国際レジームというものが四つあるというような御説明も伺ったわけでございますけれども、新興国の企業から先進国企業への投資についても、各国の規制ルールの共通化、そうしたレジームの構築を、私は、外為法の改正は改正として、今後日本が率先して目指していくべきではないのかなというふうに思います。

 こういった問題は、俗な言葉で言えば、備えの一番緩いところから入り込むというのがどんな場合でも一番ありがちなわけでございます。これはセキュリティーの問題も同じでございます。

 そういう意味では、ぜひとも、私は、今後の一つの大きな課題として、ハードルは高いかもしれません、高いかもしれませんが、やはり国際共通のルールがなければ、アメリカはこれを阻止できても、日本は同じ事例で阻止できなければ、やはりそこに一つのセキュリティーホールがあるということは事実だろうなというふうに思うんです。

 そういう意味では、やはり、今申し上げた物や技術に倣って、こうした投資の案件に関しても国際レジームの構築のイニシアチブをとられるべきというふうに考えておりますけれども、大臣の御所見はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 今御指摘のように、物の輸出管理に関しては、これはもう、過去、戦争ですとか核実験などを契機として、こういう機微な技術の流通を制限することで国際社会の平和と安全の維持を図る必要があるという国際的なコンセンサスがあって、これは国際輸出管理レジームがそういうことで構築をされてきたという経緯があるわけであります。

 ただ、一方で、今御指摘の、投資を規制するかどうかということについては、やはり、従来、投資の自由化を進めるべきだというのがどちらかというと今国際的な論調であるわけであります。また、日本自身も、対内直投を増加させるというような取り組みもやってきているわけでありまして、これまで、投資促進の観点からさまざまな投資協定などが結ばれてきたわけであります。

 だから、こういう観点からすると、投資規制を強化するという観点から国際レジームを構築するという議論が果たして開始できるのかどうか、ここは慎重に検討していかなければいけないと思います。

 そういうことよりも、当然、機微技術ということは先進国に存在するわけですから、アメリカやヨーロッパの各国と、その各国に対する新興国からの直接投資に対する安全保障上の問題意識を共有して、そして、安全保障上の懸念がある投資案件に対して各国が適切に対処していくことが重要だと思いますし、また、情報共有とか情報交換というのも非常に重要だというふうに思っております。

 経産省でも、投資を通じた機微技術の流出の懸念について、これまで欧米各国とも議論をしてきております。あるいは、私も官房副長官時代、首脳レベルでもそういう議論とか意見交換、情報交換をしている現場も目の当たりにしておりまして、今後、あらゆる機会を捉えて、やはり、欧米各国としっかりまず連携をして情報交換をしていくということが重要だというふうに思います。

田嶋(要)委員 ますます複雑化をしてくるわけでありますから、投資の規制という観点ではなくて、アメリカがアメリカの子会社の場合に行い得たことが、今、日本ではできないという状況がございますので、ぜひとも、今大臣おっしゃっていただいたような方向で先進国の間での連携を強化していただいて、来年、再来年、新たな事例が見つかってまた改正しなきゃいけない、多分そうなるんだろうと思うんですけれども、ぜひとも国際的な協調を強化していただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。

 それでは、もう一件、次の御質問に移らせていただきますが、これも投資の話でございますけれども、これは大臣、少しお休みいただいて、恐縮でございますが、大臣に質問はいたしませんが、北海道などでの外国資本による土地の買い占めの問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 東芝の機微技術、機微情報、これは非常に重要であるし、軍事転用の問題なんかは深刻だと思います。しかし、一般の国民からするとなかなかこれはわかりにくい。何でシャープのときには話題にならなかったのに東芝のときにはなるんだとか、いろいろわかりにくいことがあろうかと思うんですが、他方、同じ投資でも、土地に対する投資というのは非常にわかりやすいですね。

 そういったことで、特に北海道を中心にいろいろな声が私のところにも届けられます。かつても何度も林野庁等にも聞いたこともございますが、きょう初めて委員会でお尋ねをさせていただきたいと思いますので、少し今の状況のおさらいをさせていただきたい。

 まず農水省にお尋ねをしますけれども、こうした巷間言われている動き、土地の買収、実際はどうなっているのかということでございますが、例えば、いつごろからこんな動きが出てきたのか、あるいは、どんな件数、どういう面積、そして、どういった国からの個人、法人の取得、そして、心配があるということは、地域でのトラブルなどの情報は入ってきているのかどうか。まずその報告をお願いしたいと思います。

細田大臣政務官 ありがとうございます。

 外国資本による森林買収への対応を含め、森林を適切に保全、管理するため、これまで当省におきまして、森林法に基づき、林地開発許可制度や保安林の伐採等に対する規制措置を講じてきたところでございますが、さらに、平成二十三年の森林法の改正において、これは前の政権のときになされたものというふうに認識をしておりますけれども、議員修正により、新たに森林の土地所有者となった者の市町村長への事後届け出制度が措置され、森林所有者の異動を把握する制度の強化を図ったところでございます。

 この外国資本による森林買収の動きについては、毎年、都道府県を通じて調査を行っており、また、その結果については公表させていただいているところでございます。

 平成二十八年の調査において把握された事例は、二十九件、二百二ヘクタールであり、その取得目的は、資産保有、別荘などとなっております。このうち、平成二十八年の事例の取得主体は、中国の香港の法人が六件、同香港の個人が二件、英領バージン諸島の法人が六件等々となっております。

 自治体から聞き取り調査を行っておりますが、これまで地元とトラブルがあったという事例については把握をしておりません。そのような話はないというふうに理解をしております。

 私どもといたしましては、この届け出制度によりまして所有者の異動をしっかりと把握しつつ、林地開発許可制度や保安林制度の確実な運用を図ることによって、森林の適切な管理、保全を図ってまいりたいというふうに考えております。

田嶋(要)委員 水資源ということがよく言われるわけですが、林野庁のみならず、同じ質問を国土交通省にお尋ねしたいと思います。

北本政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもが所管いたします土地売買に関します現行の制度におきましては、個人の財産権を尊重する一方、規制については、取引の安全あるいは土地利用の適正化ということを目的としてございまして、一般に、外国資本等であることのみをもって土地の取得に対し届け出を義務づけるということにはなってございません。

 このため、国土交通省におきましては、外国人や外国資本による宅地等の土地取引の状況を個別に把握するということはしてございません。

田嶋(要)委員 おっしゃっていただいた、さきの政権の法改正によりまして、山林と宅地では対応が分かれている、違うということがまず確認できたわけでございます。

 配付した資料三をごらんいただきたいと思います。先ほど言っていただきました数値、一年間で二百二ヘクタールということがございますが、加えて、その下の方にあります、いわゆる日本国内の外資系企業によって、一年間でその二倍以上の五百七十五ヘクタールがある。このうち北海道が三百八ヘクタールということです。これは、両方合わせておよそ五百ヘクタールぐらいが北海道で一年間でということです。

 次の資料、四ページをごらんください。これが、過去十年間での北海道等々での市町村単位での、どのぐらいの森林が外国によって買われたかということでありますが、これはやはり、機微情報ももちろん重要なテーマでありますけれども、こっちの方が、目の前の土地のことですから、一般の国民から見るとどきっとするというのもわからぬではないなと。非常に多くの声が昔からこれは寄せられておるわけでございます。

 次の資料五をごらんください。少し計算してみました。砂川市というのは、全国で最も一人当たりの都市公園の面積の大きい町らしいんですが、この砂川市ですと三・七%。つまり、自分たちの自治体の地域の面積の三・七%は既に外国人の所有になっている。倶知安、あるいはニセコ町、月形町というんですか、こういったかなりの比率ということになっておりまして、このぐらいの比率になってくると、確かに地域の方々が心配をするのも私は無理もないのではないのかなというふうに考えるわけでございます。

 つい先日、次の資料六に、発信力のある方でございますけれども、櫻井さんがこういうようないわゆる意見広告も出されておるわけでございまして、こういったものが出れば、やはりもっと国民の間の不安感も広がるのは無理からぬことだろうというふうに思います。

 そこで、次のお尋ねをさせていただきます。法務省にお尋ねをしたい。

 きょうは、法務政務官、ありがとうございます。お越しをいただきました。こういったいろいろな不安な声があるということで、そういった中で何らかの法整備はできないのかということをお尋ねしたいと思います。

 資料の九をごらんいただきたいと思います。大正十四年の外国人土地法というものをおつけいたしました。そこの第四条がそれに関係する法律条文だろうというふうに思いますが、大分古いわけでございますけれども、これは法務省が所管でございますけれども、何かこれはできないんですか。みんなが不安に思っている、外国人だけということをもってという指摘もございましたけれども、いかがでしょうか。

井野大臣政務官 この外国人土地法、先生がお示しされました土地法についてお答え申し上げます。

 まず、この外国人土地法でございますけれども、これは確かに外国人の土地の取得を規制する法律でございまして、これは、一定の場合に、政令を定めることによって外国人や外国法人による土地に関する権利の取得を制限することができるというふうに定めております。

 もっとも、この外国人土地法に基づく政令は、現憲法下においては一度も制定されたことがございません。外国人土地法には、制限の対象となる権利や制限の態様などにつき、政令に包括的、白紙的に委任しているといった問題があるためです。

 同法により外国人や外国法人による土地の取得の規制を行うということは難しいのではないかというふうに考えているところでございます。

田嶋(要)委員 一度もやっていないのは承知をしておりますけれども、それをもって、やれないという結論はどうして導かれるのか、ちょっとお願いします。

井野大臣政務官 なぜ難しいかと申しますと、やはり、政令に包括的、白紙的、要は、どういった場合にこういう外国人の土地取得を制限されるかということが何ら規定をしていないというか、政令に全部任せるということになってございます。

 そもそも最高裁の判例で、平成十四年二月十三日の判決では、財産権に関する規制は、やはり憲法二十九条二項との関係で、公共の福祉に適合するかどうかということが問題となってございます。例えば、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限されるべき財産権の種類、性質及び制限の程度など、そういったものを比較考量して判断すべきであるというふうになってございまして、果たして、政令でそういったものを全て一律にがしっと決めちゃって、国会の審議を得ずにやっていいものかどうかということも含めて、慎重に検討されなければならないと考えております。

田嶋(要)委員 そうしたら、政令がだめなら、また新たな立法ということも国会を通して考えてもいいのではないかと思います。

 外務省にお尋ねします。

 今の国際ルールのもとでこうした法整備はできないのか、どういう課題があるのかということを改めて御説明いただきたいと思います。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、自由貿易の推進、日本企業の海外展開支援、こういった観点から、国際的な投資、サービスの自由化を積極的に推進してございます。その観点から、経済連携協定交渉、二国間投資協定、さらにはWTOにおきましても、各分野で内外無差別、内国民待遇のルールが広く及ぶように、各産業を所管する全ての関係省庁と協力しつつ、積極的に交渉してきております。

 我が国は、これまで締結してきた投資協定、経済連携協定、さらにはサービスの提供に関する規律を定めるWTOのサービス貿易に関する一般協定、GATSにおきましては、原則として内国民待遇義務が定められてございます。一部の投資協定、経済連携協定、さらにはGATSにおきましては、土地取引につきましても内国民待遇の義務を負っております。

 したがいまして、土地取得に関して、これらの協定との関係において、内外差別的な立法を行うということは原則として認められない、こういうふうに理解をしております。

 一方で、外国人のみを対象とした措置でない場合、すなわち内外無差別である場合には、合理的目的及び手段で土地の取得等を規制することまでもこれらの国際約束は禁止するものではございませんので、そのような国内立法は国際約束上も制約されないということでございます。

田嶋(要)委員 これは、先ほど質問しました外為法に関する話として、いわゆる機微情報に関しては明確に特定の国を意識したものなわけでありますけれども、こちらの方は、もう一度改めてお尋ねしますけれども、何でそういう内外無差別ということはできないんですか。

宇山政府参考人 ちょっと、御質問の趣旨が必ずしも理解できてはいないかもしれませんが、機微情報の取り扱い等々、そうしたいろいろな規制がございますが、国際約束上、内外無差別の約束をしたものにつきましては、そうした規制につきましては、その適用において、内外無差別に反するような規制はできないということでございます。

田嶋(要)委員 内外無差別だ、最恵国待遇だという話を伺いましたけれども、しかし、これは確かに、保護するべき法益はいろいろあろうかと思います。しかし、本当にいつでもこういった懸念の声は届けられておるわけでございますので、これはもう既に北海道などは地域からもそういう声は上がってございます。ぜひとも、法制化ができるのかどうか、できないのかどうか、その辺の検討を政府として進めていただきたいということをお願い申し上げます。

 一点、きょうは内閣官房にも来ていただいております。大体こういう話は内閣官房が登場するのかなと思うわけでございますけれども、私もこの全体像を理解しようとすると、林野庁、それから国交省、法務省、いろいろなところに来ていただかないと全体の絵が見えてこないわけでございますが、司令塔と言われている内閣官房、今後、こうした国民の不安の声を受けて、できるのかどうかも含めて検討していただくということを改めてお尋ねしますが、いかがでしょうか。

彦谷政府参考人 お答え申し上げます。

 外国資本による土地の取得につきましては、土地の性質や所在等に応じて、関係する各省庁等において実態調査等を行うなど、必要な措置を講じてきているところでございます。

 森林につきましては、先ほど御説明がありましたように、林野庁において毎年、森林の取得事例を把握、公表しておりますし、また、自衛隊施設の周辺につきましては、平成二十五年度以降、宿舎、事務所等を除きまして、所有者等の現地状況の調査を行っているところでございます。

 したがいまして、各関係府省庁において引き続きこうした取り組みを進め、土地取引の実態や影響等をよく把握していくことが重要であると考えております。その際、内閣官房としても、状況に応じて必要な調整を行ってまいりたいと考えております。

田嶋(要)委員 国家安全保障戦略というのが、平成二十五年、内閣官房で閣議決定されておりますけれども、その中にも、領土保全に関する取り組みの強化ということで、防衛施設周辺等における土地利用等のあり方について検討すると書いてあるわけでございますので、防衛施設周辺というのはもちろん最重要かもしれませんが、例えば、原発のすぐ横の水源が買われたらどうするのかとか、先ほど、今、最高に高い比率のところで、町の三%が既に外国に所有されている。これは、五%、一〇%、二〇%、青天井ですよ。これはいいのですか。やはり、普通の国民が心配するのは、私は無理もないと思います。

 どうかこの辺をよく考えていただいて、いろいろな保護法益があろうかと思いますが、バランスをとりながら、やれる対応をしていただきたい。

 少なくとも林野に関しては、民主党政権のときにこういう登録制をすることによって少しは表に情報が出ることになって、そして、今三%と申し上げたような事実も把握できるようになってまいりました。

 ぜひ、引き続き、これからやれる対応は何なのかということを御検討いただきたいというふうに思います。

 世耕大臣、質問はしませんので、次の質問でよろしくお願いいたします。

 それで、ちょっとテーマをかえますけれども、第四次産業革命でございますけれども、これは、いろいろ名立たる有名な企業が苦しい状況にあるのは言うまでもありません。最近ですと、近藤先生らが取り上げた東芝、あるいは、その前のシャープ、それから、MRJもなかなか飛ばない。期待しているものがなかなか苦しい状況にある。そして、第四次産業革命の大きな波が到来しているわけですが、かつての失敗の本質ではありませんけれども、こういった事例、何が本質的な問題なのかということをやはりしっかりとある意味研究する必要もあるのではないのか。

 私は、これから大きな産業革命の波が来るからこそ、過去のどういったところがまずかったのか、日本の弱点はどこなのかということを改めてこのタイミングで研究をして、次の大きな波で勝利ができるように、そのような期待感を持っておるわけでございますが、大臣、どういう問題認識ですか。

世耕国務大臣 最近の事業動向を見ると、やはり非常に技術の進展が早いわけですね。そして、それがそれぞれモジュール化して、いろいろな組み合わせで事業展開がやっていけるという状況になっている。

 私は、一番日本企業が苦手なのは、やはり、事業のポートフォリオを柔軟に組みかえていく、場合によっては、今まで成功していたビジネスでもばっとやめるとか、あるいは新たな領域にチャレンジをするとか、その辺が弱い。その一番の原因は、やはり経営者が、これは田嶋さんも、私もいた会社もそうですけれども、終身雇用でサラリーマン型経営者なんですね。だから、ここをやはり何らかの形で変革をしていかなきゃいけない。

 そのために一番重要なのは、私は、やはりコーポレートガバナンスの改革というところが一番のポイントになってくるのではないか。今、日本企業、いろいろ浮き沈みはありますけれども、比較的うまくいっている会社というのは、やはりこの辺のコーポレートガバナンスの改革にしっかりチャレンジをしている企業だというふうに思っております。

田嶋(要)委員 多分、過去の議事録を見ると、今の大臣のような話は、十年前も二十年前も同じような会話があるような気がするんですよ。だから、もう我々は問題の所在は結構わかっている。日本の企業の強みと同時に弱みもわかっている。あとは、それをどういうふうに実行、手段を講じていくかということに僕は尽きるんだろうと思います。

 今、大きなビッグチャンス、第四次産業革命が到来している中で、やはりもう一度原点に立ち返って、日本の弱点を克服するような取り組みを、そして、その背中を押す国の施策というものが私は大変大事になると思います。

 一つだけ御指摘いたしますけれども、最後の資料十を見ていただいても、今大臣もおっしゃったことにも関係があろうかと思いますが、よそ者、若者、ばか者みたいなことをよく言われます。やはり、女性の活躍とかLGBTのような話が大体世界から十年、二十年おくれて今議論されていることが、私は、決断を持って買うとか、決断を持ってダイベストしていくとか、そういったいろいろな判断のスピード、イノベーションのスピードが非常に遅いことにつながっているんだろうと思う。

 その一つの要因が、女性ももちろんなんですが、見ていただくと、やはりほかの先進国に比べて、外国人を含めた多様性のある人材による経営ということが非常に日本はおくれてしまっているというふうに私は感じるわけです。この辺の改革をしていかなければいけないというふうに強く感じておりますし、これはもう待ったなしだというふうに思います。

 すぐれた人材、きのう私どもも、いわゆる第四次産業革命の関係でサイバーダインの山海さんのお話を聞きました。よく御存じだと思います。それから、山中伸弥さんのような、そういう一人一人はすぐれた、すばらしい人がいるし、そこに将来の大きな産業の芽を感じるわけでありますが、それが一たび先ほどの大企業の文化の中に入っていくと、極めてスローダウンをして、意思決定ができないままにずるずると最後までということで、やはり今の苦しい企業の状況が生まれているんだと僕は思います。

 そこを、背中を押すような施策を、経産省には今度こそ、十年前も同じ発言が多分あったでしょう、今度こそ実行していただきたいというふうに、最後の御決断をいただきたいと思いますが、お願いします。

世耕国務大臣 全く同感であります。しっかり頑張っていきたいと思います。

田嶋(要)委員 終わります。ありがとうございました。

浮島委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 おはようございます。きょうで三日目で、拍手もぱらぱらという状況になって、少しおつき合いいただきたいと思います。

 今、国全体を挙げて、AIだとかロボットだとか再生医療だとか、先端を追っていけばみんなが幸せになるようなことを、経産省を挙げて、国が国家プロジェクトでやっているんだと思うんですけれども、でも実際、新聞に「ロボットと競えますか」という題の記事があったんです。

 今ある産業が自動化される割合を国別に比較すると、日本はロボットの導入余地が主要国の中で最も大きいことがわかったということです。マッキンゼーの試算では、自動化が可能な業務の割合が、日本が五五%、米国で四六%、欧州の四七%を上回っている。農業や製造業などの人手に頼る業種の比重が大きい中国でも五一%、インドでも五二%を上回る結果、日本の方が高いということです。では、日本は何がおくれているのかといったら、金融・保険、官公庁の事務と言っているんです。製造業で、他国よりもロボットに適した資料作成など単純作業の割合が高いというものなんです。

 人手不足と言われていますから、それの代替というんですか、補うのをロボットにという話で今は一生懸命、研究所、大学、国も挙げてやっているんだと思うんですけれども、ロボットに任せる前に、生産性の向上だとか働き方改革と前にも質問申し上げたと思うんですけれども、こういう記事が出る前に、現状の業務の効率化を図っていった方がいいんじゃないかと思うんです。

 すぐ何かといえばロボット。例えば、人手が足らないから、東北の人たちから出稼ぎに来てもらって何とか工業化を進めた。今度は、都市部に企業を集めるんじゃなくて、自分たちが工場を東北の方に持っていったり地方に持っていって、そこで人を集めて製造業をやった。今度は、バブルがはじける前後から、もっと海外にどんどん出ていった方が人件費が安いから。結局、それで繰り返しやって、最後はどこと競争しているのかといったら、外国の人と競争するのが今の日本の経済だと思うんです。でも、しまいには今度はロボットと競争するんですけれども、ロボットは、眠いとか、疲れたとか、酒飲みたいとか言わないんですよ。これは勝負にならないと思いますよ、人間は、私も含めて。

 だから、今の現状をどう効率化していくかというのを、やはり役所が手本を見せた方が私はいいんじゃないかと思うんですけれども、そこのところをぜひ経産省が率先してやってもらえたらなと思うんですけれども、御所見を伺いたいと思います。

世耕国務大臣 当然、ロボット導入というのは目的ではなくて、やはり、人手不足とか、働く人の高齢化が進んでいく、あるいは女性の参画が進んでいく中で、例えば力仕事とか、あるいは単純作業といったことをロボットに任せることで仕事自体の効率化を進めていく、その文脈でのロボットだというふうに思いますから、仕事の効率化ということをやはり常に考えていくということは委員御指摘のように重要で、その中でロボットにできることはロボットにやらせるし、あるいは、もう少し別の、インターネットを使ってやれることはインターネットでやるしというようなことをしっかり進めていくべきだというふうに思っています。

 やはり、官公庁の仕事の効率化というのはおくれているというのは事実だというふうに思います。いまだに紙文化も大分はびこっていますし、作業的にもちょっと別のやり方をした方がいいんじゃないかなということもたくさんあります。

 少なくとも経産省では、今、ペーパーレスは全力で進めています。もう私のオフィスは完全にペーパーレス、私のレクはもう全部ペーパーレス。国会はしようがないので紙を持ってきていますけれども、基本的にレクは全部ペーパーレスでさせていただいていますし、あと、人工知能を使った業務の効率化なんてことも今チャレンジをさせていただいております。

 官公庁がやはり率先をして効率化を進めるということはしっかりやりたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 では、幾つか質問してまいります。

 例えば、一九六三年に設立した中小企業投資育成会社というものがあるんだそうです。私が生まれた一年後です。昭和でいえば三十八年。役割はもう終わったんじゃないかなと思うんです。

 この会社を調べていきますと、東京中小企業投資育成会社の社長さんは経産省のOBの方が着任されているんです。ここに出資している団体はどこなのかといえば、地方公共団体だとか地域の金融機関が主体になって株主を構成しています。

 先ほど大臣がおっしゃられたように、情報を入手するのに今はネットで見た方が早い時代ですから、ネットで見ても、売り上げが二億円ぐらい計上されたりはしているんですけれども、では、それがどういう形で分配しているのかというところまでは情報開示になっていないんです。これが三つぐらいあるんです。

 三つぐらいあるその投資会社なんですけれども、片や、今度、銀行系だとかいろいろなところからベンチャーキャピタルをどんどん育てていこうという話があって、当時、昭和三十八年の、今の投資会社みたいな、公共でやるようなこういった組織を立ち上げたというのは画期的だったんだと思うんですけれども、やはり、新陳代謝を図っていく上で、信用保証協会もそうだし、商工中金も政府系の金融機関も同じなんですけれども、一度つくったシステムを壊したくないがために、統廃合はしたとしても、先送り、先送り、先送りしてきているんです。では実際にそこから行政の手を離して民間でひとり立ちをさせていこうという考え方がないから、効率化が図れていかないんですよ。

 だから、六十年までいきませんけれども、六十年近いこういった歴史がある株式会社というんですか、一つの役割が終わったので、民間のベンチャーキャピタルの育成にシフトをしていくような考え方がないのかというのをお尋ねしたいと思います。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 中小企業投資育成株式会社は、中小企業投資育成株式会社法に基づき、中小企業の自己資本の充実を促進することを目的として設立されたものであります。中小企業の安定的な株主として、上場等を目指すことなく、長期にわたって持続的な成長を支援しているものであります。

 こうした点で、投資先の上場等によるキャピタルゲインを期待する民間のベンチャーキャピタルとは異なる特徴があるものとして認識しております。

 また、設立当初は国が出資を行っていたのでございますけれども、経営の自立化を図るために、昭和五十九年度までに国からの出資額の金額を引き上げ、民間法人化いたしました。

 これまでに三社合計で、五千二百二十八社に対して二千四百十一億円の投資を行っております。

 今後も引き続き、公的機関としての信頼性を有する長期安定的な株主として、中小企業の持続的成長を支援する中小企業投資育成株式会社の機能は引き続き必要であると考えております。

鈴木(義)委員 ホームページとかその周辺の記事を見ていただいた方がいいと思うんですけれども、相続税対策で事業承継するのに使えませんかと言っているんですよ。今政務官が御答弁されたことじゃなくて、事業承継をスムーズにして株価を下げるのに、うちのところに出資してというより、お金を入れてもらったら株価が下がるでしょう、そういう使い方もできますよというふうにうたっているんですよ。だから、そういう今答弁されたような当初の目的は終わっているんだということなんです。

 だったら、店じまいする方向か、もしくは完全に民営化するということであれば、役員もOBを投入するようなことはやめた方がいいじゃないかという考え方です。

 再度、もし御答弁できればお願いしたいと思います。

大串大臣政務官 御指摘のような点については、少しこれからも調べながら、また、今後の中小企業投資育成株式会社のあり方についても検討していきたいというふうに考えております。

 以上です。

鈴木(義)委員 別にいじめるために質問しているわけじゃないので。

 では次に行きます。

 「デジタルカルテルの挑戦状」ということで、「AIが価格調整 法的責任は」これもちょっと前に新聞の記事に出ていたんです。「人工知能(AI)などの活用で企業活動が効率化した結果、価格が高止まりして消費者に不利益を与えるケースが現れ始めた。」

 ちょっとアメリカのニューヨークではやった、ウエーバーというんですか、タクシーを使うのに……(世耕国務大臣「ウーバー」と呼ぶ)ウーバーでしたっけ。これもその一つですよ。価格決定アルゴリズムを使い、事業者が利益の最大化を図るということで、いろいろな物流だとかサービス産業の中にも、このアルゴリズムを使って効率化を図ろうという動きが出てきているわけです。

 デジタルカルテルが、機械が勝手に物やサービスの価格を高どまりさせた結果、効率化をするということは、それなりの利益を出すためにAIを使うということです。その一つの使用段階でアルゴリズムを使うんですけれども、法的責任は誰にあるのか。

 例えば、大臣と私が同じメーカーのアルゴリズムというよりAIを使って価格を調整したときに、意思の疎通はなくても、では、百円のものを二百円で二百円でと言ったら、別にカルテルを結んでいるわけじゃないんですけれども、片や、使っているのはAIなんです。でも、競争することによって質と価格を上げるか下げるか、価格は下げた方がいい、サービスは上げた方がいい。そこで、自由競争の中で需要と供給のバランスで価格が決まっていくのが本来の資本主義の考え方だと思うんですけれども、それを機械に任せようという考え方です。

 ではそこで、競争法分野のルールに難題を突きつけているという記事なんですけれども、責任は誰にあるのかです。アルゴリズムを開発したその設計者が悪いのか、それを使っている側が悪いのか、そういった問いかけなんです。

 OECDは、ビッグデータに関する競争上の懸念を指摘した文書を昨年十月に公表し、みずから学習して他の機械と協調するAIが介在する場合は、企業間の価格調整の意図の立証が非常に困難だというふうにしているんです。難しいということですよね。現行法に問題を提起したという記事なんです。

 ほとんどその当時話題にはならなかったんですけれども、政府としての対応また対処の仕方、それをまずお尋ねしたいと思います。

世耕国務大臣 これはデジタルカルテルというらしいんですけれども、AIのようなものを使って価格決定をやっていく。普通であれば、カルテルですから独禁法違反になるわけですけれども、AIを使ってやっている場合は、いわゆるその意を通じているかどうか、合意をしているかどうか、意図があるかどうかということの証明がなかなか難しいということで、これはOECDでも、事業者が共通の価格決定アルゴリズムを使用すれば、市場データに基づいて価格調整が可能である、また、AIを用いて利益最大化アルゴリズムを組むことで黙示の共謀が可能という旨の問題提起がなされておりまして、欧州委員会の競争当局も同様の問題意識を持っているというふうに承知をしております。

 こういう中で日本としても、AI等を活用した価格づけや取引の増加が見込まれる中で、こういった懸念について、カルテル行為の規制法令である独禁法を所管する公取委員会を初めとして、関係省庁が問題意識を持つことが重要だというふうに思っています。

 デジタルの取引というのはこれからいろいろなことが起こってきます、このカルテルだけではなくて。例えば検索エンジンで、うちの画面に広告を出さなかったら、あなたはもう検索しても出てこないようにするぞとか、あるいは、特定の分野のビッグデータを誰かが独占をして、その利用に関して物すごい高い価格をつけたらどうなるかとか、いろいろなことについてちょっとやはり研究をしていかなければいけないということで、ことし一月に、データやAIの活用が進むことによって生じる課題について研究する研究会を立ち上げました。

 そして、広くこのデータの利活用とか、AIが競争環境に与える影響や対応について、この研究会で今専門家と議論をさせていただいておりまして、ことしの夏ごろには具体的な取りまとめをして、対応を進めていきたいというふうに思っております。

鈴木(義)委員 次に質問しようといったところが全部答弁されちゃったんですけれども、サービスし過ぎているのかな、質問の仕方が。

 アルゴリズムそのものに問題提起をしている方もいらっしゃるんです。日常的に接する情報にもアルゴリズムが関与し、それが情報の隔たりを生んでいるという批判なんです。数年前に米国のジャーナリストが考えた、フィルターバブル問題だというわけです。

 今大臣が御答弁いただきましたように、グーグルみたいな検索エンジンがありますよね。あと、フェイスブックのような交流サイト、今ははやっていると思います。ユーザーの過去の行動や個々人の属性情報などを判断し、あらかじめ情報を取捨選択しちゃっているんです。ここでフィルタリングがかかっちゃっているわけです。それをアルゴリズムでやっちゃっているということなんです。便利な一方で、リスクがはらんでいるんじゃないかという考え方です。

 ユーザーはフィルターの存在を意識せずに情報に接しているんですけれども、情報を操作されている面もあるんだ。世の中、情報がいっぱいあって、それを入手する。もともと人間はいろいろなものを見ているように錯覚しているんですけれども、自分が見たいものしか見ていないし、聞きたいものしか聞いていないんです。もともと人間はそういうふうにできているんだそうです。それになおさらフィルタリングをかけてしまったものしか情報が入ってこないということは、やはり的確な判断ができるか。

 一人でどこまでというのはあるんですけれども、そこのところをやはり行政が少しチェックしていく仕組み、つくれるかどうかはわかりません。高度な利便性を設計できる技術者が求められると同時に、透明性や公共性の問題意識の高いアルゴリズム設計者が求められているんですけれども、これがなかなか難しいと思います、質問していきながら。

 例えば、新聞社の編成に政治的意図が隠されていないかが問われるのと同様に、古くて新しい問題として浮上しているというふうに指摘しているんです。

 ですから、何らかの措置をとっていかないと、大臣、御答弁いただいて、一月からいろいろ研究をやっていくんだと言うんですけれども、仮想空間の中で私たちが目で見て何かができるわけじゃないので、外為法のときも質問申し上げたかもしれないと思うんです、サーバーの中は何が入っているかと外国に見に行ったって、わかるわけないんです。

 そういったことがもう日進月歩に起こっている状況なので、早目にその対策を打った方がいいじゃないかという考え方なんですけれども、御答弁いただきたいと思います。

世耕国務大臣 本当に委員と問題意識は一緒であります。

 例えばフェイスブックなんか使っていても、あのタイムラインというの、必ずしも友達が全員出てくるわけじゃないんですね。時間順に出る。これは一体どういう順番で私のことを考えてこの画面を見せようとしているのかなというのをいつも不思議に思ったりしますけれども、例えば今はアメリカでも、選挙運動なんかではもう既にそういう技術が使われていて、相手候補のことが本当に嫌いになるような情報を一般の人の触れるSNSで見せていくなんという技術も、もう既に選挙運動で実際に活用されているというような話も聞きました。

 そういう意味で、これからやはりどうやってルールをつくっていくかというのは、非常に重要だと思います。

 ただ、一方で、例えばネット広告の世界なんかですと、これもフェイスブックですけれども、私のところへぼんといびき防止グッズの広告が出てきて、何でかなと思ったら、ちゃんと、なぜこの広告が表示されているかという、判断された理由が幾つか書いてあって、嫌だったら、嫌だというボタンを押したらもうその種の広告は出なくなりますよなんということがもう自主ルールとして始まっているわけでありますけれども、そういうことを少しこれから試行錯誤も加えながら、そして、行政も一定の関与をしながらです。

 ただ、一方で、ネットというのは自由が大原則ですから、そことのバランスというのもありますけれども、何らかの対策は考えていかなければいけない。そういったことをぜひ研究会でしっかり議論をしていきたいというふうに思います。

鈴木(義)委員 私はどっちかというと、デジタルも少しやりますけれども、アナログな人間なものですから、意外と、おっくうがることの方が人間らしいのかなと思うんです。さっささっさといくのが全ていいみたいな風潮なんですけれども、でも、意外とそれはどこかで行き詰まるような気がするんです。そのときに、古くからのやり方が捨て去られてしまっていると、もとに戻せない。また戻すのに時間がかかるという考え方です。

 だから、先端を行くところは行ってもいいんですけれども、そうじゃない人も世の中にいっぱいいるわけですから、そのいいところは残しつつも、先端を追っかけていくようなバランスの話だと思います。

 次に質問をかえさせていただきたいと思います。

 これもああなるほどなと思ったんですけれども、ファクタリングのリスクと問題点についてお尋ねしたいと思います。

 欧米では主流の資金調達方法、古いんですね、このファクタリングというやり方。十六世紀ぐらいにイギリスでスタートしたというぐらい歴史があるんですけれども、日本では余り、やっている業者さんもありますけれども、一般的にはまだまだ主流じゃないんじゃないかと思うんです。

 経産省が認めているというようなブログの記事だったので、ファクタリングだとか、債権の担保だとか譲渡、証券化のものは、経産省のホームページから引っ張ってプリントアウトしましたけれども。

 利用する人によっては、売り掛け債権を買ってくれるという、それをもとにして融資してくれるということであれば、やはり申し込みたいというふうに思う人もいると思うんです。

 特に、大手さんはそういうのは余りやらないと思うんですけれども、中小零細の場合は、どうしてもキャッシュフローをよくしたいがために、どうしても仕入れの代金をきょうじゅうに払わなくちゃいけないとか、来週の月曜日に払わなくちゃいけないということになれば、やはりこういった、売り掛け債権をもとにしてお金を出すところに申し込みをしたりするんですけれども、ここで幾つかのリスクがあるんだというのを述べているんです。売り掛け先へファクタリング利用が気づかれてしまう、それと、ファクタリング会社に関する情報が少ない、ファクタリング会社へ支払う手数料がばらばら。

 昨年の割賦販売法のときにも御質問申し上げたんですけれども、カードローンで払わなくちゃいけないものを間に入った業者さんがかわりに払ってあげるという会社が出てきたから、包括的に法改正してルールをつくりましょうという話。このファクタリングの会社は貸金業法にも該当していませんから、今、野放しの状態になっちゃっているんです。

 中には悪徳なファクタリングの例示として、手数料が法外になる。通常、売り掛け債権に対して二〇%前後の手数料を取る。事務手数料はまた別途だと。あと、契約書が作成されていないために、融資とも違うんですね、立てかえてもらうわけですから。それが内容確認ができないとか。虚偽申告によって、これは利用する側の方がいけないんですけれども、そんなに簡単に契約書もなくてお金を出してくれるんだったら少し多目に出しちゃえとか、もともとの請求書に上乗せしちゃったものを出す。そういったトラブルが起きている。それと、直前に登記確認をしたら過去の契約の残りがあったとか。あとは、債権の売却後に、他の業者利用によって横領だとか法的措置をとられてしまった。債権を譲渡しちゃったということです。

 こういうさまざまなトラブルだとかリスクがこの制度には内包されているわけなんですけれども、中小企業対策として考えるのであれば、金融庁だとか財務省が規制に乗り出す前に、経産省として、中小企業対策の立場で制度を整備していった方がいいんじゃないかと思うんですけれども、御見解をお尋ねしたいと思います。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 ただいまの御指摘に対しましてですけれども、まず、ファクタリング自体、これが適切に契約もされ運用される限りにおいては、中小企業にとっても、キャッシュフローの改善ですとか、そういった面でメリットはあるかと思われますけれども、問題になる事案があることも御指摘のとおりかと思います。

 そういう意味では、まず、中小企業自身の資金の借り入れに関しまして、不動産担保ですとか個人保証に依存しないような融資環境をつくること自体の方がむしろ大事かと思っております。

 経産省におきましても、在庫それから売り掛け債権などの動産を担保としたABL融資の促進でございますとか、それから、知財に着目をして融資をいただくような知財金融、これを促すための施策でございますとか、それから、金融機関と中小企業の対話を通じたローカルベンチマークの普及でございますとか、さらに言えば、信用保証協会それから日本公庫におきましても、ABL、動産担保による融資、保証などを行ってきておりまして、そうしたさまざまな支援を通じて中小企業の資金繰りを円滑にしてまいりたいと思うわけでございますけれども、一方で中小企業の経営者の方でも、実際に、資金繰りの管理、採算管理、それから銀行との間で適時適切な情報開示を行う、合間合間で対応することによって、無理をしながらそういったファクタリングサービスに依存しなければならなくなるようなことにならないようなところをむしろしっかりとやっていかなければならないと思っておりまして、その点、企業の方々に、そうした取り組みを進めるための早期の経営改善計画の策定でございますとかといった周辺環境の整備にしっかり努めていきたいと思っているところでございます。

鈴木(義)委員 この資料は経産省のホームページからダウンロードしたんです。「売掛債権流動化」、この中に、売り掛け債権をもとにした証券化、ファクタリング、担保、この三つがここに書いてあるんです。ファクタリングの実績が、今答弁いただいたんですけれども、年々年々拡大していっているんです。これは古いデータなんだと思うんですけれども、この資料は経産省が出しているんですよ。これはファクター協議会というところが出しているんですけれども、一九九九年、今から二十年ちょっと前、二千五百二十二億円だったものが、これも古いんですけれども、二〇〇三年で八千億円になる。今はもっとこれを使っている人がいるんだと思うんです。だからルール化した方がいいじゃないかという考え方です。

 何か問題がないとそれに対処するような法律をつくらない、制度もつくらない。そうじゃなくて、ITがどんどん進んでいって、先ほども御質問申し上げましたけれども、アルゴリズムの話をしてみたりAIの話をして、みんなそれでどんどんやっていけば幸せになるんだと言うんですけれども、その裏側にこういったものが隠されているということですよ。

 だから、そこのところをわかっているんだったら、対応をもうしていけばいいじゃないか。後で結局は、お金が返せるの返せないの、では、やはり自主規制じゃだめだから、法律をつくって規制をかけましょう。そのときは、もう使っちゃっている中小企業は法外な手数料。だって、金融の過払い金の話で、法律をつくって、後から今度は十年か十五年かけて戻しましょうよという話で、途中でそれがパンクしちゃっている金融業者だったらもう取り返しようがないんですよ。だったら、今から対応した方がいいじゃないかという考え方です。

 これは政治的に御判断いただければありがたいんですけれども。

吉野政府参考人 お答えいたします。

 ただいま議員が御指摘になられましたような、法外な手数料を払ってでもそうした金融に頼らざるを得ないということにならないように、まずは中小企業金融支援の中でもしっかりと対応していきたい。

 先ほども具体的に申し上げましたけれども、動産担保をもとにした保証ですとか融資ですとか、柔軟なその支援の中身がございますので、そうしたところをしっかり使いながら、そういうふうにならないように、私ども、しっかりと中小企業の資金繰りを支援してまいりたいと思っております。

鈴木(義)委員 きのうも信用保証協会の改正のときに御質問申し上げたように、金融庁が二年前、三年前から方向を少し変えて、一生懸命、事業性評価でやっていきましょうよと言ったって、実際は、担保を出さなければ金は貸してくれないし、担保がなければ保証協会をつけろと言うんですよ。それが現実の話なんですよ。だって、私が融資担当をしていたときにそういうふうにはっきり言われた。何だ、体裁のいい高利貸しじゃないかと言ったの。最後に保証協会をつけろって、それは最初の条件と違うだろうって。まあそうは言いながらも、余りいじめちゃうと金を貸してくれないから、下手に出るんです。

 なぜこういう制度を使わざるを得ないのか。あるから使うという人もいるけれども、せっぱ詰まるから、ぱっとお金を出してくれるから借りるんですよ。

 最初から事業計画どおりに事が進んでいる商売ばかりやっている人だったらいいけれども、それは行政だけ。行政の人は何にもしなくても税金が入ってくるんだから。だから、予算と修正予算で行って来いしながら、何とか一年間これでできたよね。下手をすれば、ことしは何か税金の税収が余り芳しくないから、七月とか八月ぐらいになったら、出資するというより、予算は組んであるけれども、一〇%、一五%使うんじゃないと言って、内々的に局内で、省庁内で、私たちには知られないようなところで、ちょっとコストを下げろというふうに言って帳尻を合わせているんですよ。県だって市町村だってみんな同じです。

 だから、そこのところをやはりちゃんと世の中の動き方を見てもらいながら制度を早目につくっていってもらえたらなと思うんですけれども、最後、中小企業対策として大臣、御決意を。

世耕国務大臣 まず、法外な手数料を取るなんというのは、これはもう絶対あってはならないことですけれども、やはりこういった動産を担保にした資金調達というのは、中小企業の資金繰り、柔軟にしていくという意味では私は有用だというふうに思っています。

 経産省は実態調査をしっかりやっております、その見ていただいたホームページがそこだと思うんですけれども。こういった実態調査をやってその現状をしっかりと公表していくことによって、健全な動産担保の融資と資金調達というのができる環境を整えていきたいと思います。

鈴木(義)委員 ことしじゅうに何とか方向性を出してもらえたらありがたいなと思います。

 終わります。

浮島委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 民進党の落合貴之でございます。

 まずは本日は、商工中金の不祥事についてお伺いをしたいと思います。

 商工中金は半官半民の組織であるわけですけれども、その危機対応業務の案件確認において不正があった。つまり、危機対応に当たらないものもそれに当たるようにして融資をしたという案件がたくさん見つかったわけでございます。

 それで、第三者委員会が調べたわけですけれども、九十九名もの行員がかかわっていた。不正の疑義を払拭できない口座も入れますと、四十三支店で判明がしたということでございます。商工中金の国内店舗というのは百店舗ですから、その中の四十三支店というのはかなりな割合なわけでございまして、九十九人というのも、一人や二人がやったというような問題ではないわけでございます。

 この商工中金という組織が大丈夫なのかというような問題なんですけれども、今回、この問題、世耕大臣はどう捉えられていらっしゃいますでしょうか。

世耕国務大臣 商工中金において、危機対応業務の融資の際に、職員が試算表などを数字を改ざんしていて、本来融資の対象にならないところに融資をしていた。こういう事案が発覚したということ、これはもう本当に遺憾だし、言語道断だというふうに思っております。

 商工中金は、今、第三者委員会で調査をしているわけでありますが、まだこれは全数ではないんですね。大分疑わしいもの、何となく、やった人が異動した店舗とか扱った案件なんかをトレースした疑わしいものと、無作為抽出の一万件、これだけを調べた。それで一二・六%の調査ということで今御指摘のようなケースが出てきているんですが、先日、業務改善命令を出しまして、まず全数調査をやってくれ、全部調査をやった上で全体像をしっかりと把握をして、その全体像の中から、問題の所在がどこなのか、そして、本当に手を下した人に対する処分をどうするのか、そして、役員の監督責任のあり方をどういう形でけじめをつけるのか、そして、この組織自体のガバナンスをどういう形で改革をしていけばいいのかということを、しっかりと商工中金に対応を求めていきたいというふうに思っております。

落合委員 まずは全体像を把握することが必要であるということでございますが、いろいろな統計を見ましても、この危機対応業務というもの、リーマン・ショックですとか東日本大震災のときは金融機関の融資に対する姿勢ががくんと下がっていますので、やはり、危機対応業務というのは大変重要なものであったと思います。

 一方で、今、アベノミクスの成果をどんどん波及させていこうと内閣もやられていますけれども、金融機関の融資に対する姿勢も、マイナス金利もありますし、どんどんもっと貸したい、貸すところを探したいというような状況になってきました。

 そういう中で、今の状況でも、政府系の公庫だけではなくて、半官半民の商工中金にも危機対応業務をどんどんやらせていく政策をとっている。この中小企業金融政策自体に、実態と今かけ離れてしまっている、こういう問題があるんじゃないかというようなことが考えられると思うんですが、商工中金が危機対応業務をやる枠を減らしたりですとか、もしくは、もう新規については、また新しい危機が来るまでは一旦やめましょうですとか、こういう政策の変更も検討するべきだと思うんですが、大臣いかがですか。

世耕国務大臣 この危機対応業務ですとか、あと、日本政策金融公庫による中小企業向けの資金繰り支援、こういったものは、やはり景気動向で大きく変動をするわけであります。リーマン・ショックですとか、あるいはある地域で災害が起こったというようなことになったときに、やはり、中小企業の業況が悪化をして利用が増加をするというわけであります。一方で、そういう事態が鎮静化をして中小企業の業績がよくなってくれば、また利用が減っていくわけであります。

 例えば、商工中金による、この今問題になっている危機対応業務の新規融資の実績、フローで見ると、リーマン・ショック直後の平成二十一年度では二兆三千二百億円までいくんですが、平成二十八年度では五千四百億円ということになるわけでありまして、やはり制度としては、リーマン・ショックのような有事に備えておくということは必要だというふうに思います。

 今はある程度平時なわけでありますけれども、一方で、円安の直撃を受けている業界がある、あるいは、やはりまだデフレから完全に脱却できていないという状況の中でデフレの影響を受けている状況もあるという中で、一定程度必要ではないかという判断でこの危機管理業務というのを平時においてもワークをさせているわけでありますが、今回、商工中金の全数調査なども踏まえて、どういう業界にどういう形でこの融資が行われているのかということもよく見て、今後、商工中金のガバナンスのあり方を検討する中でも、この危機対応業務のあり方についても少し議論はしていかなければいけない。

 ただ、一方で、有事の対応というのは絶対に必要でありますから、そこを、角を矯めて牛を殺すようなことになってはいけないということは十分留意しながらも、あり方については少し議論をしてまいりたいというふうに思っております。

落合委員 毎年毎年、時期によって中小企業金融の現状というのは変わっていきますので、ぜひ、それに的確に対応できるように検討をしていただければと思います。

 国費が、半官半民ですからつぎ込まれているわけでございますし、それから、ほかの金融機関と比べても、不良債権比率ももう既に高い。危機対応業務をやってきたわけですから、自然とどんどん不良債権もふえてしまっているわけですが、そういった中で、もし不良債権が余りにもふえ過ぎた場合は何らかの形で国民負担が発生する可能性もなきにしもあらずですし、やはりそういった点で、中途半端と言ったらあれですけれども、半官半民というこういう宙ぶらりんの状況ですので、ぜひ、一つのリスクとしても目を光らせていただければと思います。

 これはまた、中小企業政策のあり方も含めて取り上げさせていただければと思います。

 それでは、玄海原発の再稼働について次に取り上げさせていただきます。

 先日、私、一般質疑でも原発の再稼働について取り上げて、その一つの例として、玄海原発周辺自治体の同意等について質問をさせていただきました。

 その後のタイミングで、四月二十二日に世耕大臣が佐賀県知事とお会いしているわけでございます。この佐賀県知事が面談の後に、原発の安全対策などに責任を持って取り組む強い決意を大臣からいただいたと国の対応を評価する発言をして、その二日後、佐賀県庁で記者会見をして、玄海原発三、四号機の再稼働の同意を表明いたしました。

 お二人で会っているわけですけれども、そのとき具体的に何をあの知事にお伝えしているんでしょうか。

世耕国務大臣 今御指摘のように、四月二十二日に、まず私が玄海原発三号機、四号機を視察した上で山口佐賀県知事とお会いをいたしまして、政府の再稼働の方針を直接御説明を申し上げました。そしてその後、二十四日に、山口知事がこの再稼働について理解を表明されたわけであります。

 この対話の中では、国も前面に立ちながらこの原発の再稼働をしっかり安全に行っていくということを、国としてもしっかり役割を果たしていくということを丁寧に説明をさせていただいたというふうに思っておりますし、特に知事が懸念を持っておられたのが、原発に関する理解というのがまだまだ不十分じゃないか、国の取り組みも不十分じゃないかという御指摘をいただいたというふうに思っておりまして、私の方から、この理解活動というものにも終わりがなくて、これからも地道に、原発というものの必要性、安全性について、国としても、国民、住民の理解を得るように努力を続けていくというお話もしたというふうに記憶をしております。

落合委員 再稼働の国の方針を伝えられて、それから、国も前面に立ってできる限りやっていきますという話ですが、今まで私が質問した中での大臣の御答弁は、安全基準は専門家である規制委員会がしっかりとやります。国が安全基準の審査をするのではなくて、第三者の規制委員会がやります。それをクリアしたものについては、電力会社の責任で再稼働を行っていきます。国の責任はどこにあるんですかという私の質問に対しては、ほとんどないというような答弁をされていたわけでございます。

 再稼働、事故が起きたらどうするんだという周辺住民の不安というのはあるわけですが、大臣が来て、あたかも国が全部責任を持ってやりますというイメージができて、それで知事が、これだったら、地元の世論が落ちついてきたので同意できるというような流れになっていると思うんですが、実際には、国の責任といってもほとんどない、責任があるのは九州電力であるということですが、実態以上に国がちゃんとやるよというふうに言ってしまっている、そういうふうに見せているという部分はありませんか。

世耕国務大臣 そういうことは全くありません。これは、落合議員に答弁しているときも山口知事とお話しをしているときも、私は、同じ内容、同じ水準のことをお話しをしているつもりであります。

落合委員 では、もし今後、今後というか今も含めて、知事が、国がちゃんとやってくれると言っていますからというふうに県民に説明をしていたとしたら、それはある意味で間違いであるということでよろしいですね。

世耕国務大臣 山口知事は記者会見で、私との対話の部分についてはこういうふうにおっしゃっています。

 原子力発電における国の責任ということについて、政府に対して以下の六項目を要請、これが、私に対して以下の六項目を要請した。原子力規制の一層の充実強化及び事業者への指導監督の徹底、そして、バックエンド対策の取り組みの加速化、再生可能エネルギーのさらなる導入促進など、原子力に依存しない経済社会構造の確立、そして、エネルギー政策に関する、国が前面に立った県民、国民に対する理解活動、そして、原子力災害対策の継続的な見直し、そして、立地地域のさらなる振興対策、このことを私にその会談の場で要望、事前に紙でいただいていましたけれども、それに対して私の方から、しっかり受けとめているという回答をさせていただいたということであります。

 このそれぞれの御要望については、これは当然国としてやるべきことであります。国として責任を果たすべきことでありますから、私も、これは重く受けとめて、しっかり取り組ませていただきたい。そういう対話であったわけであります。

落合委員 そういったことは、詳しく見れば報道にもありますけれども、全体的な方向性とかイメージの点で、大臣が大丈夫だよと言いに行ったようなことに、これから再稼働、いろいろな原発で検討がされていますけれども、そういう形で再稼働が行われることがないように、慎重に、事実が伝わっていくようにやっていただければと思います。

 再稼働の問題、また改めて取り上げさせていただきます。

 それでは、高レベル放射性廃棄物について、前回一問だけ質問しましたが、残りの時間、詳しく再度取り上げさせていただければと思います。

 今、場所についてはいろいろと専門家の人たちが話し合っていますけれども、かなり重要な問題ですので、ぜひ、通告したところは特に大臣御自身にお答えをいただければと思います。

 まず、この計画は、原発で燃料を燃やして、その燃えかすを再処理をします。固体のものはまた固めて再利用します。液体の廃液については、ガラス固化体に固めて、それからステンレスのカバーで覆ってガラス固化体というものをつくって、それを地下三百メートルに長期間埋めるという計画を今政府も説明をしているわけでございます。

 根本的な確認ですけれども、この高レベル放射性廃棄物の最終処分の計画、これからもどんどん具体的にやっていくでしょうが、これは、明確な、科学的な根拠に基づいてこういう計画を打ち立てていくという方針でよろしいですね。

世耕国務大臣 少し正確を期しておきたいと思うんですけれども、ガラス固化体をステンレス容器へ入れたと。そのまま地中で処分するわけではなくて、さらにオーバーパックと呼ばれる非常に分厚い鋼鉄製の容器にそのガラス固化体を封入して、そして、さらに粘土質の緩衝材で囲った上で、放射性物質をしっかりと閉じ込められるような対策を施した上で、そして、それを安定した岩盤の中に埋設をする。これが地層処分というやり方であります。

 この地層処分という処分方法については、一九七〇年代から世界的に研究が本格化をしておりまして、科学的な検証は重ねられてきているわけであります。

 その中で、オーバーパックや、そして緩衝材といった人工のバリアについての調査研究が進められるとともに、それを埋設する地下深部の岩盤である、これは天然のバリア、この人工のバリアと天然のバリア両方について科学的な研究が進められてきたわけであります。

 日本でも、一九七〇年代以降の長きにわたって調査研究が行われた結果、日本でも安全に地層処分ができるという科学的な評価が得られていると認識をしております。

落合委員 いろいろと私も文献等も読ませていただいたんですけれども、一つ疑問なのが、ガラス固化体自体、それから外側の金属もそうですけれども、耐用年数はどれぐらいなんだろうということでございます。

 先に結論を言いますと、最終的には、地下水にちょっとずつちょっとずつ、万年単位ですけれども、しみ込んでいくことを前提とした計画であるというふうに私はとらえました。実際にちょっとずつしみ出していくということはいろいろな文献にも書かれているわけでございます。

 その中で、ガラス固化体の耐用年数、それから、その上のオーバーパックの耐用年数、これはどれぐらいもつというふうに大臣は把握していますか。

世耕国務大臣 先ほど申し上げたように、ガラス固化体は、ステンレスの容器だけではなくて、それをオーバーパックと呼ばれる分厚い鋼鉄製の容器に封入して、さらに粘土質の緩衝材で囲って、しっかりと放射性物質を閉じ込めるようにした上で安定した地盤に埋設する。

 こういう対策をとることで、一般的な地下環境であれば、ガラス固化体の放射能レベルが相当程度低減するまでの期間は、ガラス固化体が破損しないよう十分な頑健性が確保されるという評価がなされています。

 具体的には、個別地点の地下環境を詳細に調査をして、地下水によるオーバーパックの腐食の程度や、あるいは、地下の深い部分でかかる圧力などについて評価をした上でそれぞれの仕様を決めていくことになるために、その耐用年数というか頑健性の程度については、一概には申し上げることはできませんけれども、その上で申し上げれば、例えば最初の千年間の間に放射能レベルは当初の九九・九%以下まで下がるという計算になるわけですが、その間のオーバーパックの腐食幅は、一般的な地下環境で約三センチメートルというふうに評価をされています。

 こうしたことを踏まえた上で、閉じ込めに必要な頑健性を持たせることは技術的に可能だと考えております。

落合委員 九九・何%、千年で下がりますと。ただ、それは、全部腐食をしてしまうということは前提としていないわけでございます。

 資料で配りました高レベル放射性廃棄物の放射能のレベルということで、二万年後ぐらいからは、一テラベクレル、一兆ベクレルぐらいになるわけですけれども、これはガラス固化体の線量であって、腐食していて弱くなっていたら、もっともっとレベルは高くなってしまう。なので、低減していくといっても、実際には、廃液がしみ出てきたりしたら、低減ではなくて上がっていくということもあり得ると思うんですが、いかがですか。

世耕国務大臣 そこは、ガラス固化体というのはガラスを使っています。ガラスは水に非常に溶けにくくて、化学的に安定をしているという特徴を持っているわけでありますから、ガラス固化体は、放射性物質をガラスの緻密な構造の中にしっかり取り込んで一体化をしたものでありますので、何かそこから溶け出すとか、にじみ出すとか、あるいは万が一ガラスが割れるようなことがあっても、放射性物質がそのガラス固化体の中から出ていくということはないというふうに考えております。

落合委員 参考人に伺いたいんですが、全くしみ出ることはないと言っていいんでしょうか。

村瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今大臣が御答弁になられたとおり、ガラス固化体自体は、この今お配りいただいているような形で下がっていくということになります。

 このガラス固化体を、先ほどの御答弁にあったとおり、さらに二十センチの厚さのオーバーパックでくるむ、この人工バリアによって水に触れないようにするということでございます。

 先ほど、千年たって九九%の放射レベルが下がって、つまり〇・一%以下になるということでございまして、そのような中で、千年たってもこの二十センチあるオーバーパックの腐食幅は三センチだというふうに考えられておりますので、この時点でこのオーバーパックの機能が損なわれることはないということになります。

 ただ、将来にわたって、地下に、管理をしない形で埋めたままにしておくということでございますので、この健全性が損なわれることが将来どこかであったとしても、天然バリアによって、人間の生活に影響を及ぼすことがないように地下に処分をするというのがこの地下処分の考え方でありまして、これは世界的に、今、北欧とかでも最終処分場が決まっているような地下処分場におきましても、同様の考え方で処分が行われているということでございます。

落合委員 世界的にとおっしゃいましたが、世界的なレベルでも本当にこれでいいのかなと、私は調べていて思いました。

 金属の耐用年数も大丈夫だという説明も、千年の話をしているわけで、十万年埋めるわけですから、千年の何倍埋めておくんだという話だと思います。絶対しみ出ないとはおっしゃらずに、しみ出たとしても、その先があって、またその先があってというような御答弁でしたけれども、廃液そのものというのは、例えば、二万年以降、ガラス固化体だと一兆ベクレルで安定しているわけですけれども、廃液そのものというのは何ベクレルぐらいなんでしょうか。

村瀬政府参考人 廃液そのものは、ちょっと今手元にございませんけれども、ガラス固化体に、ガラスとまぜて廃液を固めるということでございますので、お配りいただいたこの出発点に近いレベルだというふうに御理解いただければと思います。

落合委員 要は、しみ出てきたら、この出発点に近いぐらいの、まあこれから低減しているでしょうけれども、ガラス固化体で覆われていても、これぐらいの……。どうぞ。

村瀬政府参考人 誤解があってはいけませんので。

 仮に、廃液そのものであったとしても、今お配りいただいているように、これは化学的に減衰していきますので、同様なカーブで千年のうちに九九・九%以上減衰する、いわゆる放射性レベルは〇・一%以下になる、こういうことでございます。

落合委員 また改めて通告しますけれども、スタート地点が高いわけですから、九九・九%低減したとしても、廃液そのものは何ベクレルなのかと。それがしみ出てくるわけですから、ここの表よりは断然高い数値が出てくるんじゃないですか。

村瀬政府参考人 そのようなことはございません。化学的に減衰していくということでございます。

落合委員 済みません、このカーブを描くことは確かだと思います。ただ、ガラス固化体の上からで一テラベクレルである。

 では、ガラス固化体に固まっていない状態になってしまった場合は、数値は、低減していますが、この数字よりは高いわけですよね。

村瀬政府参考人 一緒でございまして、ガラス固化体をくるんでいるこのステンレス自体は、いわゆる放射線を遮蔽することを期待したものではございませんで、まず、廃液になっているものを固めなければいけませんので、その側として、ここに流し込んで固めます。したがって、これがガラス固化体になるわけでございます。

 ただし、これでは放射線への遮蔽力がないものですから、二十センチの厚みのある鋼鉄製のものでくるんで、それと、それがもつんですけれども、さらに念のために、ベントナイトという粘土質のものでさらに何十センチということで、合わせて一メーター、一メーターぐらいの大きな壁でくるみまして、それぞれの厚さでございます、それを地下の三百メーター以下の岩盤に定置する。この岩盤がそれ自体天然バリアでございまして、非常に安定しております。地上と違って自然変化が起きないということでは、酸素もありませんので、腐食もほとんど起きないという関係の中で保存していくということになっているわけでございます。

落合委員 ちょっと時間配分が難しくて、そろそろ来ちゃったんですけれども、一問伺いたいんですが、何年埋めておくかというのは、一般的にいろいろな記事に十万年と書いているんですが、政府は方針はまだ示していないと思います。

 一方、低レベル廃棄物でさえも十万年入れておくべきだ、隔離するべきだというふうに規制委員会は示しているわけですけれども、高レベル放射性廃棄物は、地下三百メートルにどれぐらいの期間埋めておくという計画を政府は立てているんでしょうか。

世耕国務大臣 地層処分というのは、先ほどから何回も説明しているように、人工バリアと岩盤という天然のバリア、この多重バリアによって放射性物質を地下深くに閉じ込めて、人間の生活環境から隔離する方法ということになるわけです。そうすることによって、廃棄物の埋設後、人間による管理によらないで将来にわたって安全を確保するものでありまして、こうした考え方は国際的に共通したものであります。

 ですので、一度埋設した廃棄物をいついつまでにもう一回掘り出すというようなことは考えておりませんで、これはまさに最終処分、最終的に処分をするということになるわけであります。

落合委員 その点において、掘り返したりしないのかですとか、管理の仕方もいろいろと問題が出てくると思います。改めて、時間がありましたら取り上げさせていただければと思います。

 本日はありがとうございました。

浮島委員長 次に、升田世喜男君。

升田委員 民進党の升田世喜男であります。

 所管の委員ではありませんが、質問の機会をいただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 東北経済のことについて、世耕大臣と三十分間にわたって議論をさせていただきたいなと思っていましたが、個別の数字とか細かいことは余り頭になくて、いわゆる、東北について、大臣がどういう思いで東北を盛り上げていこうという考え方を持っているのかなというようなところを、自然な質問の中で大臣のそのお考えを私の中で一つつかむことができればいいかなと思っていました。

 自分は、御案内のとおり、青森県の一区、比例ではありますが、生まれも育ちも青森で、六年前に震災があって、あの出来事というのは、青森は福島、宮城、岩手に比べたらはるかに被害は小さいですが、それでもとうとい命はなくなりました。被災地であることには変わりがありません。

 そのことを目の当たりにした一人として、そして、今、国会議員をさせていただいて、こうなりますと、ただ単に東北が震災を乗り越えて復興成ればいいなという思いには僕の中ではどうしても至らないんです。それを乗り越えて、将来は、日本はおろか、世界と渡り合えるような東北であってほしい、そういう希望を持ちながら、これから国会活動を一日も長く続けられることができればいいな、こう思っていました。

 振り返って、昭和二十年に我が国は終戦を迎えました。そこから、先進国に追いつけ追い越せということで、自分は昭和三十二年生まれでありまして、ちょうど小学校に入るかなというときに東京オリンピックがあって、物すごいスピードで成長されたわけであります。

 そこで、世耕大臣にまず一つお伺いしたいのは、戦後の復興に際し、東北はどんな役割を果たしてきたかなとお考えでしょうか。

世耕国務大臣 なかなか難しい御質問ですけれども。

 やはり、一つ大きいのは、若い労働力。東北から東京とか、そういう工業地帯に上京をされて、若年の労働力の供給という意味の役割が一つあったんだろうというふうに思います。それともう一つは、やはり米を中心とした食料の安定供給という役割もあったと思います。そしてまた、福島第一原発がそうだったように、電力の供給という意味でも大きな役割を果たしていただいたというふうに考えております。

升田委員 日本という国は、僕はよい国だと思うんです、正直言って。これは地元の街頭でも今よく言うようにしています。他国に比べたら、もっとひどい国というのはたくさんありますから。夜夜中すぐ殺されるという不安もないし、あるいは、町に出て、都会であろうが地方であろうが、食べるものがなくて死人がいっぱいいるという状況でもない。

 ただ、一方で、もっと税金の使い方や、もっと制度設計を変えていけば、もっと幸せになれる国だと。それが我慢できなくて、私は、自民党政治と対峙して、野党に身を置きながら、政権交代を果たしながら、世のため人のための政治人生を送れれば望外の喜びだな、こう思っていました。

 そういう中で、先般、東北人の一人として、あるいは国会議員として、とんでもない発言を聞いてしまったんです。それは、前今村復興大臣の、あっちでよかった、東北でよかったと。これはもう看過できない言動であります。辞任されましたが、この言葉というのは、本当に傷つけました。

 そこで、安倍内閣の閣僚の一員として、世耕大臣に、この前今村復興大臣の、あっちでよかった、東北でよかったというこの言葉に対するコメントをいただきたいなと思います。

世耕国務大臣 前大臣の発言は、本当に、言ってはいけない、思ってもいけない、そういう言葉だったと思いますし、その言葉が東北の皆さんの心を相当傷つけたというふうに思います。

 私も、同僚の閣僚であった一人として、東北の皆さんに心からおわびを申し上げたいと思いますし、経済産業大臣として、なお一層、東北の復興のために頑張っていきたいというふうに思っております。

升田委員 今村前大臣が個人的な発言であっても許されないんですが、こうであってほしくないなと思うのは、万が一にも安倍内閣にあのような発言が出る空気感があるようであっては断じてならない。これが、思えてならないんです。

 僕は、生まれが本州、日本海の最北端なんです。人口が今三千人。信号は二つしかありませんが、二つ目ができたのが今から二十年ぐらい前で、村じゅう大騒ぎでした。我が村に信号が二つ目ができるというのは考えられないことだ。そのぐらいいわゆる過疎の地なんです。十年ぐらい前にコンビニができて、これも大事件でしたから。我が村にコンビニなどというのはできるはずもないと。

 そこで生まれ育った自分として、やはり端っこというか、あっちという言葉には本当に過敏に反応するんです。どこの会議に出ても、一番端っこから来た者ですから。

 ですから、あの発言が猛省されて、万々が一にも安倍内閣にそんなところがあったら、これは許されるものじゃない。僕の中では、あの言葉に対する風化を自分はさせてはいけない。今村大臣に対するどうのこうのではなくて、これまでの日本の、先ほど大臣が述べたように、東北は、労働力、金の卵と言われました。六畳一間に八人とかそれ以上とか、口は言わない、仕事は黙々やる。食料も貢献してきて、そしてエネルギーも貢献してきて、そして子供まで、大学まで入れて帰ってこない。こういう状況。

 こういうことを考えると、くどいようですけれども、二度とあのような言葉がほかの閣僚からも出ないように注意していただきたいな、こう思います。

 次の質問で、東日本大震災から六年が過ぎ、集中復興期間も過ぎました。そこで、改めて、大臣として、東北経済の現状をどう認識されているか、そして、東北の経済を活性するためにはこうあるべきだなという思いというのがあると思うんですが、その辺をお知らせいただければ、こう思います。

世耕国務大臣 数字は余り言うなというお話でしたが、ここはちょっと数字を申し上げたいと思いますけれども、東北地域の経済は、生産活動とか雇用状況を見ていきますと、震災によって一旦大きく落ち込んだ後、最近では震災前とほぼ同じ水準まで回復をしてきている。

 例えば鉱工業生産指数は、震災前の平成二十二年を一〇〇としますと、二十三年三月には六五・二まで落ちましたけれども、今は一〇一・九まで回復をしています。これは、震災前後に立地した宮城県の自動車メーカーや半導体製造装置メーカーなどの迅速な復旧に加えて、新事業展開が進むなど、製造業が着実に回復してきたものと考えられます。

 また、雇用の面でも、有効求人倍率が平成二十三年三月には〇・四八でありましたけれども、ことし三月には一・四〇。今、全国平均が一・四五ですから、ほぼ全国と同じ水準まで戻ってきているわけであります。

 一方で、津波浸水地域ですとか福島県の原子力災害被災地域といった、今なお困難な課題に直面している地域が存在する、これを我々は十分認識しておかなければいけないと思っています。

 こういった状況も踏まえて、経産省としては、被災した施設設備の復旧を支援する中小企業等グループ補助金や、新規立地を促進する企業立地補助金を初め、原子力災害被災地域における官民合同チームを通じた事業、なりわいの再建支援といった取り組みによって、東北地域の産業復興を強力に後押ししていきたいというふうに思います。

 特に、これから未来へ向けて伸びていく産業をぜひ東北に立地をさせていきたい。

 例えば、第四次産業革命関連の分野ですとか、あるいは農林水産業も、これから我々は攻めの農林水産業というのを考えていますし、観光ですとか航空機部品とか、こういった分野をぜひ東北に立地をするように我々も努力をしていきたいというふうに思いますし、先日衆議院を通していただきました地域未来投資促進法案、こういったものも活用しながらやっていきたい。

 予算、税制、金融など、あらゆる政策を集中させて、東北の取り組みをしっかりと支援していきたいと思いますし、私の思いは、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックは、やはり東北の皆さんに我が事として喜んでもらえるかどうか、これがはっきり言って、二〇二〇年オリンピック・パラリンピックの成否がかかっているというふうに私は考えております。

 だから、二〇二〇年までに、何とか東北の皆さんに、ああ、復興したなという気持ちを持ってもらえるように頑張ってまいりたいというふうに思っております。

升田委員 二〇二〇年、東京オリンピックがあるわけでありまして、まさに、東京だけがよくて、東北は東京の光の影となって置き去りというのは、これは全然、オリンピックが真の意味で成功とは言えないわけでありますから、そのところに言及されたということは、大変敬意を持って拝聴させていただきました。

 それに加えて述べさせていただければ、福島の方では、まだまだ風評被害があるわけです。食べ物一つとっても、あるいは教育関係の、修学旅行ですか、全然戻ってきていないということがありますから。

 私は、いつだったか、予算委員会のときに、安倍総理に、東京オリンピックのときにぜひ福島の食材を出せるようにしてください、これが一番、世界に対して安全、安心ですよというあかしは、ここの場面を除いてないですよという御指摘をさせていただきました。それとは別に、東北の経済も、よし、これから大丈夫なんだというのは、大臣おっしゃるように、二〇二〇年には、東京オリンピックと同時に、本格的な東北のスタートの年だというような時間スパンで今後取り組んでほしいなと思います。

 今の答弁の中で、非常に求人倍率とか高くなったと言いますけれども、これは、背景としては、人口減少も相まってのことだと思うんです。現実に地方や地域を回ってきますと、今度はむしろ、例えば地方の中小企業において、人手不足という問題が非常にどこに行っても聞かれる話なんです。

 この人手不足対策に対しては、大臣はどんなお考えを持っていますか。

大串大臣政務官 お答えいたします。

 東北地域においては、とりわけ東日本大震災被災地域において人材不足が深刻化しておりまして、中小企業・小規模事業者にとって大きな経営課題となっていると認識しております。

 こうした現状を踏まえまして、これまで、東北経済産業局を通じて、地元自治体等と連携をして、合同企業説明会等により、若者や女性、高齢者等の多様な人材とのマッチングを支援したところでありますけれども、今年度より、新たな事業として、都市部の人材に対しても被災地域の中小企業の魅力を発信しつつ、多様な人材を引きつけ、そうした人材が活躍できる企業になれるよう、専門家が寄り添って労務環境の見直し等を支援してまいります。

 また、昨年度、人手不足対応の好事例を収集、分析し、ポイントとなる考え方を抽出した中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン、これを本年三月に取りまとめたところでありまして、さまざまなセミナー等を通じてガイドラインを周知し、経営者に人材不足対応のヒントを提供してまいります。

 こうしたさまざまな施策を組み合わせて、中小企業・小規模事業者の人材不足への対応を支援してまいりたいというふうに考えております。

升田委員 加えて、この人手不足が、今度は、事業の継承ができない、またこういう社会問題、地域問題があるわけでありまして、この点に対する対策についてはどう考えていますか。

大串大臣政務官 委員御指摘のとおり、中小企業経営者の高齢化が進んでおりまして、これから数年のうちに多くの中小企業が世代交代の時期を迎えることから、事業承継は待ったなしの課題であり、後継者不在の中小企業が相当数存在すると認識しております。

 こうした後継者不足の中小企業に対しては、全国に事業引継ぎ支援センターを設置し、MアンドA等による後継者マッチング支援を行っております。発足以来、一万五千件を超える相談に応じ、六百七十二件の成約を実現しております。東北六県においても、千八百二十二件の相談に対応し、五十六件の成約を実現した状況でございます。

 またさらに、誰に相談すればよいかわからない中小企業・小規模事業者に対しては、商工会、商工会議所、金融機関等の身近な支援機関が、事業承継に向けた準備状況を診断シートを用いて診断を行い、課題を個社毎に掘り起こし、事業引継ぎ支援センター等の適切な支援機関につないでいくようにしております。そのため、事業承継ネットワーク構築事業を開始したところであります。

 これらの施策を総動員して、東北地方でも事業承継が円滑に進むよう、全力を尽くしてまいりたいと思います。

升田委員 人口減少は、当面、あと三十年ぐらいは残念ながら続いてしまうんだろうと思います。事業の継承に当たっての、これが人材不足などでそこも問題等出てくるわけですが、この問題はもう、その意味においては、一過性で終わる問題ではありませんので、しかも重要な問題でありますから、ありとあらゆる知恵と、これまでの規制というか、それにとらわれず、いろいろ柔軟な形で知恵を出してほしいなと思います。

 そこで、次に人口と経済についてちょっと御議論をさせていただきたいと思うんです。

 お答えいただけないかもしれませんけれども、単純に、人口一人減ると経済損失はどのぐらいと我々理解したらいいんでしょうか。どなたかお答えできませんですか。

世耕国務大臣 なかなかこれは単純には難しいんですが、いわゆる一人当たりのGDP分が減っていくということだろうというふうに思います。やはり、人口が減少するということは、基本的にはGDPが減少するということにつながるというふうに思います。

升田委員 再度、重ねての質問になりますが、今の答弁で理解はできたんですけれども、大臣は、人口が減るとやはり経済力は落ちるんだと。これは、こういう理解をせざるを得ないということでありますよね。

 昨年だと思いますが、自分の記憶の中では復興の視察だと思うんですが、どの県であったか、福島県だったか、ちょっと今記憶にないんですが、商工会議所の代表の方が来て、うちの地域では一人の人口減少では百万円の経済損失だというふうに数字を出していますというのが僕の中では鮮明に残っておりまして、そうしますと、今、青森県は一万五千人ですから、百五十億円の経済損失で、十年たったら一千五百億。県の予算が大体今六千億でありますから、そう考えていくと、人口減少というのは恐ろしいほど経済に悪影響がされるものだな、こう思っていました。

 ところで、数字は聞くつもりはなかったんですが、流れ的にこれは聞いてみたいなと急に思いましたけれども、東北のピークの人口と、そして今現在と、どのぐらい人口が減っていると思っておりますか。

鍜治政府参考人 東北ブロックで一九九五年の人口が九百八十三万人でございましたが、二〇一三年の人口が九百九万人でございますので、約七十四万人ぐらい減少していると承知してございます。

升田委員 そのぐらいの数字なんだろうと思います。僕の中では八十万人から九十万人ぐらいかなと。全然許容の範囲でありますから。

 そこで、ちょっと質問の順番を変えますけれども、人口が減りながら経済をより底がたくしていくためには、分配政策というのは実は相当重要じゃないかなと僕は思うんです。子育ての支援とか、あるいは教育の無償化とか。

 今の日本の制度設計でありますと、まず、結婚された夫婦が一生懸命頑張って所得を得て、旦那さんと奥さんで合わせて、では、それで子供を何人産めるよねと。ちょっと待てよ、大学まで入れるといったら一人で我慢するしかないかなとか、困ったなとか、こういうことはあると思うんです。

 よく安倍総理は、成長なくして分配なしと言います。それもそのとおりだと思います。ただ、僕から言わせれば、分配なくして成長なしという捉え方もできるのではないかと。甲乙つけがたい、どっちが先でどっちが重要だと言えない状態の目線も僕は大事だと思うんです。

 そこで大臣に、分配政策と経済との関係をどういう捉え方をしているのか、大臣のお考えをお聞かせ願えればと思います。

世耕国務大臣 安倍内閣は、成長なくして分配なしというよりは、成長と分配の好循環であります。だから、分配も成長につながるということは我々も認識をしているんです。

 ただ、先ほどから御議論のあるように、人口が減る中で成長するというのはなかなか大変なことです。はっきり言って、世界に過去、例がありません。ただ、日本の場合は、まだ女性の労働への参画の率が諸外国に比べて低いですとか、あるいは、割と高齢者であっても働きたいという意思を持っておられる方が多いとか、まだ労働力人口が減っていく部分をカバーできる余地というのはあるんだろう。

 そして、そこにさらに、今度はロボットとかAIといった、まさに人を生めるような最先端の技術をこれから我々は活用していくということで、この人口減をそういったことでカバーして成長を続けていく。そして、その成長を続けていくことによって、今度は分配を可能にする、そして、その分配によってさらに消費が進んでいって成長するという、まさに成長と分配の好循環を実現するというのが、これがアベノミクスの究極の目的であります。

升田委員 安倍総理は途中からこれを変えたんですな、きっと。というのは、本会議では、壇上で、成長なくして分配なし、これは簡単じゃありませんかと、相当本会議で言っていましたよ。あるいは予算委員会でも。ここを間違えたらだめですよぐらいを言っていましたから。

 ただ、成長と分配の好循環、これはまさしく僕も賛同でございます。

 そこで、私は、この分配政策が日本が弱いというか、ちょっと企業の内部留保を調べてみました。そうしましたら、今、三百七十七兆円あるんですね。どこかでは、三百三十兆円を超えた、史上最高だと言った。調べたら、三百七十七兆円。これは大変な数字です。

 では、個人の貯金、現金、平成十八年、二〇〇六年ですけれども、これは一千二百十九兆円ですかね、この数字は。では、今、今といってもこれは平成二十七年の数字しかないんですが、どのくらいかなと思ったら、これはびっくりしましたね。一千七百三十一兆円なんですね。実に十年間ぐらいで五百兆円、貯金、現金がたまっている。

 ここで、僕は、これはおかしいと思うんです。大臣、何がおかしいかというと、なぜここまで貯金しないといけないのということなんですよ。それは、私は、分配政策であり、社会保障政策が弱いから、不安があるから、自分でためないといけないと。国がいろいろな事業展開できるのも、このお金があるから何兆円だ何兆円だと事業をやるわけじゃないですか、政策を。

 こうなってきますと、その国がつくった政策に合致する地域はいいや、あるいは合致する企業はいいけれども、そうでないところにはこの経済大国の日本の恩恵が受けていない、それが、都会と地方の格差の問題につながる根底の条件がそこにあるんだなと僕は思っているんです。

 このことを考えると、大臣、五百兆円もふえるということは、これは異常だと思いませんか。そして、五百兆円もふやさないといけないという政治を行っていることにいささかの反省の念は芽生えてきませんか。これを御感想をお聞かせください。

世耕国務大臣 五百兆円もふえた要因というのは何かというのをよく考えないといけないと思いますね。

 私は、いろいろなファクターがあると思いますけれども、将来不安ということもあるかもしれませんが、一番大きいのはやはりデフレだということだと思いますよ。今百万円で売っているものが数年後九十万円で買えるということがわかっていれば、そこまでみんなお金はためて待つわけですから。貯金をしておけば結果としてその価値がふえていくというのがデフレでありますから、そういう経済になっていたということが私は根本原因だというふうに思います。

 ただ、一方で、私も企業の内部留保というのはちょっとたまり過ぎかなという気もしています。もっと積極的に投資をしてほしいと思います。

 一方で、でも、分配が進んでいないかというと、実は、この数年間で、アベノミクスの間で給料は十兆円ふえているんです。勤労者の懐には十兆円余分に流れているんです。

 ただ、一方で、ここがまさに分配との議論ということになってきますけれども、五兆円分社会保障費がふえている、社会保険料とかそういった負担が五兆円分ふえて、せっかく十兆円人々の懐に入れたのに五兆円また取っているという状況ですから、そういう意味でも、分配をしっかり進めながら、分配は、やはり給料がふえるということが一番の分配だと思いますから、その政策はしっかり進めながら、やはり社会保障、特に老後の不安といったことを、社会保障改革をしっかり進めることによってそういった不安を取り除いて消費を刺激するということが、最終的に成長と分配の好循環につながっていくのではないかなというふうに思っております。

升田委員 今、所得のお話がございました。東北の平均所得と東京の平均所得がどのぐらいかわかる人はおりますか。

鍜治政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一三年度でございますが、東北ブロックの一人当たり県民所得というデータが今手元にございまして、これで申し上げますと、青森県の一人当たり県民所得が二百四十三万円、これに対しまして、東京の一人当たり県民所得は四百五十一万円でございます。

升田委員 青森と東京を比べると、大体ダブルスコアなんです。数字には誤差がありますから、東京が五百万、青森県は二百三十五万から二百三十六万。だけれども、これも現場の感覚から言うと高い。私の生まれた地域は二百万ありませんよ、今現在。百五十万か百六十万です、何々郡とつくところは。都市部の中で、上に行くと二百五十万ぐらいあるかもしれないということなんです。

 もう時間ですか。そう、残念ですな。まあ、またの機会があるでありましょう。

 いずれにしても、五百兆円もためないといけないというところは、ここはやはり深くこの現実を見てほしいなと思います。

 デンマークを初め北欧の国では、貯金がなくても安心して暮らせる国。今の日本の現状は、貯金がなければ安心できない国。私は、このことが地方や東北の地域経済を底がたくしていない要因の一つだなというふうな捉え方をしているんですよ。

 ぜひ、経済産業大臣でありますから、これからは経済だけじゃなくて、本当は幸福も競い合う時代に入るんだろうと思います。物だけじゃなくて、幸せとは何かということを考えながら、ぜひ東北を、東京オリンピックと同時に、両方に光を当ててほしいと思います。東京の影やオリンピックの影に東北が泣かないような、そういうかじ取りを大臣にお願いし、きょう残したことはまたの機会にできればいいなと思います。

 ありがとうございました。

浮島委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

浮島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。北神圭朗君。

北神委員 こんにちは。民進党の北神圭朗でございます。

 きょうは五十分時間があります。私は大体、附帯決議の朗読とか不規則発言でしか余り知られていないみたいなので、ちょっときょうは真面目な質問をしたいというふうに思っております。吉川筆頭理事に附帯決議担当大臣だというふうに言われましたけれども、もう少しいい地位を欲しいなというふうに思っております。

 それで、きょうはまずリニアコライダー、大臣御存じだと思います。私も余り詳しくないんですけれども、一応、素粒子物理学にとっては物すごい大事な技術で、電子と陽電子をほとんど光の速度に近い速度でぶつけ合って、宇宙の起源を解明したり、いろいろな素粒子、新しい素粒子を解明したりするような技術なんですけれども、これを日本に誘致するという話がありまして、これは非常に重要だ、いわゆる物理学のためだけじゃなくて、経済成長論としても物すごい大事な話で、こういうことにやはり力を入れないといけないというのがきょうの質問の趣旨なんですが、これが今はどういう検討状況になっているのか、お聞きしたいというふうに思います。

板倉政府参考人 お答え申し上げます。

 国際リニアコライダー計画、略しましてILC計画と称しておりますが、このILC計画につきましては、日本学術会議からの提言を受けまして、平成二十六年五月に文部科学省におきまして有識者会議を設置をいたしまして、諸課題の検討を進めております。

 これまでに、科学的意義や技術的実現性、人材の確保、育成方策などにつきまして検証を重ね、報告書をまとめております。本年三月からは、体制及びマネジメントに関する検証を開始をしたところでございます。

 また、ILC計画は、一兆円を超える巨額の投資が必要でございまして、国際協力が必要不可欠との観点から、昨年五月に、米国エネルギー省と文部科学省におきまして日米ディスカッショングループを設置いたしまして、本年四月より、コスト削減に向けた日米共同研究を行うこととしたところでございます。

 文部科学省といたしましては、こうした取り組みを含め、引き続き、ILC計画につきまして慎重に検討を進めてまいりたいと考えております。

北神委員 今、中国もかなり関心を持っているというふうに聞いているんですけれども、これは、やはりそう簡単に日本に来る機会というのは、また、到来するのは来ないかもしれない、そのぐらい今回の機会を捉えないと、もしやるのであればやらないといけないと思うんですが、これはいつまでに決めないといけないんですか、そういう国際的な関係において。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 この計画につきましては、国際的にいつまでということは決まってございません。

北神委員 いつまでに決めるかということは、文科省として考えているんですか。

板倉政府参考人 お答えいたします。

 この国際リニアコライダー計画につきましては、技術的な検討とともに、科学コミュニティーのコンセンサスを得ていくということが大事だろうというふうに考えております。

 技術的には、今、ヨーロッパにありますCERNという研究所の研究結果、こちらを踏まえて、日本としても、今後、国際科学コミュニティーの検討を進めていきたいというふうに考えております。

北神委員 なかなか具体的な期限は言われないんですけれども、やはり私は、機を逃したら、もう二度と戻ってこないというふうに思っております。

 それで、いいことをするにせよ悪いことをするにせよ、財務省が必ず立ちはだかるんですが、財務省については今どういうふうにお考えでしょうか。

三木大臣政務官 委員からただいま御質問いただきました国際リニアコライダー、ILC計画は、全長三十キロの直線上の加速器をつくりまして、宇宙創成の謎の解明を目指す計画だというふうに承知しております。

 一方、一兆円を超える巨額の建設費用が必要との試算を踏まえれば、一国のみで行うことというのはちょっと非現実的でありまして、欧米との国際的経費分担が不可欠というふうに考えております。

 さらに、投資に見合う成果が得られるかも含めまして有識者会議等の場で検討し、国民及び科学的コミュニティーの理解を得ることが前提でありまして、現時点では、文部科学省においても慎重に検討が進められているというふうに承知いたしております。

北神委員 慎重にというのがちょっと私は後ろ向きな感じがするというふうに思っておりますが、そもそも、リニアコライダーがもたらす利益についてはどういうふうにお考えかというのを文科省にちょっとお聞きしたいと思います。

板倉政府参考人 お答え申し上げます。

 この国際リニアコライダー計画の科学的意義につきましては、先生御指摘いただきましたとおり、質量の起源とされますヒッグス粒子という素粒子がございますが、その性質の詳細な解明によりまして素粒子物理学が新たな段階に進展することで、宇宙の創成の謎の解明につながることが期待をされてございます。

 一方、技術的な波及効果につきましては、平成二十七年六月に文部科学省の有識者会議でまとめられた報告書におきましては、「過去の実績から一定程度の波及効果を生む」と期待されておりますが、「ILC固有の技術による一般民生用の技術への応用や、製品開発への見通しが得られている訳ではない。」とされているところでございます。

 いずれにいたしましても、ILC計画は、宇宙創成の謎の解明を目指した壮大な基礎研究の計画でございまして、巨額の投資を必要とすることからも、この実現に向けましては、科学コミュニティーの、国民の理解を得つつ、慎重に検討を進めてまいりたいと考えてございます。

北神委員 いや、何で慎重なのかいまいちわからないんですけれども、財務省が言うのは多分お金がかかるという話なんですが、お金ももちろん、私も財政再建は大事だというふうに思っていますけれども、やはり、それに対してその効果がどのぐらいかということを考えていかないといけないということで、それをちょっと大臣に、これは所管外であれなんですけれども、経済産業大臣として、これは前に大畠先生が、経済産業省の仕事は何だという話がありましたけれども、これはたしか設置法には、国富の増大だと。これは国富の増大の話なので、経産省が得意な、ほかの役所の縄張りにどんどん侵入されるそのすばらしい意欲も踏まえて、ぜひ、これについてどういうふうにお考えかというのをお聞きしたいと思います。

世耕国務大臣 ほかのところへ踏み込むのがどうかというのはありますけれども、さすがに宇宙創成の謎の解明までは経産省としてはなかなか踏み込む予定はないわけですけれども、基本的にこれは、今の段階は基礎物理学の話だと思います。ですから文科省がやっておられる。

 なかなか、産業でどう活用できるかというのは、今のところまだまだめどが全くわかっていないようでありますから、まずは基礎物理学の研究としてどういうことがやれるのかということを研究してもらう中で、産業用の可能性が出てくれば我々としても積極的に関与していきたいと思いますが、現時点では、文科省の検討状況をよく注視をしていきたいというふうに思っています。

北神委員 大臣、ちょっと私は認識が違うと思うんですよ。

 確かにこれは物理学の話であります。しかし、私もこれをちょっと研究したら、この前、CERNだっけ、ヨーロッパの、スイスですね、このCERNなんかでも、大体世界の最高の科学者が一万人集まるわけですよ。八十何カ国からみんな集まって、そしてずっとそこで研究する。この中から、いわゆる素粒子物理学だけじゃなくて、いろいろな派生的な技術が発生している。(発言する者あり)まさにイノベーションの問題で、これは例えばCERNで出てきたのは、ワールドワイドウエブです。こういうのがそこで発明される。

 私も知らなかったんですけれども、何でそういうものが派生するかというと、科学者たちが研究のためにいろいろな各地にいる。場合によっては本国にもいろいろ連絡をとらないといけない。そういったときに、では、インターネットをより効果的に活用するためにワールドワイドウエブというものを発明して、これはアメリカが一般公開をして、今みんな使っているという状況です。

 あるいは、その前にも同じような、アメリカでこういういわゆるリニアコライダー的な、フェルミ研究所かな、というところで、日本でもこれからやろうとしているリニアモーターカーの技術もここから派生をしていまして、こういうことは非常に重要だ。

 もう一つ言うならば、これは非常に今微妙な段階なので、私も別にどっちを応援しているというわけじゃないんですが、二カ所ぐらい日本では候補地があるというふうに言われております。一つは岩手県なんですね。

 私はこれはそんな軽々に言っちゃいけないと思っていますが、先ほどの升田先生の話じゃないけれども、やはり東日本大震災の復興のために、今回予想されるのは五千人ぐらいですよ、科学者だけで。そして家族も来られる、そこに日本の民間の研究者も行く、いろいろな企業も多分参加したいということで、単なる補助金を出すとか、いわゆる古典的なインフラ整備をするんじゃなくて、極めて日本全体にも、技術革新という意味でのよい波及効果を及ぼすすばらしい話だと。

 先ほど文科省から言われたとおり、まだCERNの方で、どこまで日本における国際リニアコライダーでやろうとしている研究が必要なのかどうかとか、こういうことはもちろんちゃんとやらないといけないというふうに思っています。もう必要がないんだったら、それは無駄な投資になりますから。でも、もしそれが必要ということだったら、ほかの国にとられるより、絶対これはしがみついてでも、一兆円なんか大したことないですよ。

 私、さっきちょっと自分で暗算しておったんですけれども、日本の経済対策、公共事業とか、私が財務省に入ったのは平成四年なんですよ。そのときから景気対策をやっているんですが、今、平成四年から平成二十八年で景気対策で三十一、事業規模で三百九十兆円以上出している。一兆円ですよ。これはアメリカとの分担とかいろいろありますけれども、一兆円ですよ。

 これで私は大変経済成長にもつながるような投資になるというふうに思っておりますが、その辺の御認識はどうでしょうか。

世耕国務大臣 一兆円なんて大したことないともっと北神さんの出身官庁の人が言ってくれればいろいろなことがやれるのになと思うわけでありますけれども、おっしゃるように、そういう科学技術者が集まって共同研究する舞台を日本に誘致するというのは、これは非常にいいことだと思います。大切なことだと思いますし、そういう意味も込めて、今文科省が中心に、このフィージビリティーというか、どういう形でやっていくかというのを検討されているということだと思います。

 これは単に基礎物理学で終わるわけではなくて、例えばSPring8から粒子線治療みたいなことが出てきているわけでありますから、このリニアコライダーからも、最終的にはやはり民生用、産業用の何か要素技術というものが出てくるだろうというふうに思いますから、我々としてはしっかり検討を注視していきたいと思いますし、もし文科省の検討に、例えば我々も独立行政法人の研究機関もありますから、そういうのも早いうちから関与することができるのであればさせていって、産業化の糸口を早くつかむようにしていきたいと思います。

北神委員 あともう一つ思い出したんですけれども、岩手県でいえば、この技術で、いわゆる原発のバックエンドの処理に非常に有効な技術が生まれる可能性もある。もちろんこれは全部可能性ですから、過大なる期待は持たなくていいと思うんですが、いわゆる有毒性を五千年から三千年ぐらいに落とす、そういう技術にもつながるという話がありますので、そういう意味では、東日本の復興にも非常に象徴的なものになり得るというふうに思っております。

 一兆円で財務省がまた厳しいことという話がありましたけれども、私も、財務省は今政権の中で干されていて本当にかわいそうだと思うんです、経産省に完全にやられちゃって。しかしそれは、ちょっと同情する面もあるんですが、やはり財務省も、私も反省を込めて、ただ財政規律ばかり言っていたら、やはり相手にされなくなってくる。やはり経済成長というものが、まず、政治というのは経世ですから、経世済民です。だから、国を運営して、もう言わぬでもいいですけれども、国民を救うというのが経済で、これがなくて、ただ財政再建ばかり言っていてもこれはしようがない。

 公共事業とか、もちろん必要なところもあります、必要なところがありますけれども、景気対策としての効果というのはかなり厳しい状況になっている中で、一兆円ですよ。これはやはり財務省も、もっと大きな心で、そして、遠い将来を見据える視野でぜひ前向きに検討していただきたいと思いますけれども、政務官どうでしょうか。これは政治主導で、重たいかな。政務官、ちょっと意気込みだけ聞かせてもらって。(発言する者あり)

三木大臣政務官 ありがとうございます。

 通告をいただいていないので、どうお答えしたらよいのかあれですけれども、私個人的な見解としては、まず、科学的な研究にお金をかけるということ、例えばアメリカのアポロ計画でも、一時、人類の夢を乗せて月まで行きましたけれども、アメリカが大変な経済の状況に陥ったときに、宇宙開発をしてアメリカに何の得があるんだということで、一旦中止になりました。そして、経済性を重視するということでスペースシャトル計画にかわりまして、今はそのスペースシャトルも、非常にお金がかかるということで、もっともっと効率的な宇宙開発というものが進められておりますので、人類が夢を乗せて科学技術を追求するということは、一見お金にならないようなことでも、実際人類の発展にとって非常にプラスになることもありますし、また、宇宙開発においては、さまざまな商品であるとか、あるいは技術であるとか、副次的に開発されているものも多くございますので、そういった面でも人類に貢献する、また、現在見通せないような未来の利益を得るためにも非常に重要なことだというふうには考えております。

 ただ、経済再生とともに財政再建も非常に大切でございますので、こちらの方もしっかりとやってまいりたいと思います。

 以上でございます。

北神委員 ありがとうございます。そういうことだと思います。

 これからちょっと大臣と議論したいのは、経済が一番大事だと私も思っているんですよ。経済をよくするためには、多少財政が赤字になってもしようがないというふうに思っています。

 ただ、今の経済対策が本当に、先ほども何回も議論になっていますけれども、いわゆるアベノミクスというものが、金融緩和と財政出動と構造改革と、もう今や介護もそうだし地方創生もそうだし、全て取り込まれちゃっているぐらい、戦略というものが資源の選択と集中であるならば、アベノミクスというのは、全て風呂敷を広げちゃって、どこが、何が優先順位なのかわからぬような状態になっていますが、一番突出して象徴的なのが、やはり金融緩和だというふうに思っております。

 アベノミクスの目標というのは、私の理解では、物価を二%上げるということだというふうに思います。いわゆるデフレの状況から脱却をしてインフレにする。これについて、大臣、短期的に当然これは財政出動を毎年し、金融緩和で、ETFで株を買い、これは当然景気は多少はよくなるんですよ。ただ、これを今後、日本の十年後、二十年後、そういったことを考えていくと、どのようにこのアベノミクスというものを考えるのかというのをちょっとお聞きしたいと思います。

世耕国務大臣 なかなか大きな御質問であれなんですが、アベノミクスは、やはり三本の矢をきっちりバランスよくやっていく、そしてそのことによって、先ほど申し上げました、成長と分配の好循環を生み出していく、これがもうアベノミクスの目指しているところだというふうに思っております。

 金融政策は大分効果が出ているわけでありますが、最後の成長戦略については、まさに私も経産大臣に任命されたときは、成長戦略の切り込み隊長たれと総理から言われておりますので、これは経産省が少し汗をかいて、この成長戦略をもっと具体化をしていくということが非常に重要だというふうに思っております。

北神委員 先ほど申し上げたように、いわゆる短期的な景気循環というのは、山谷は、こんなものはほっておいても上がったり下がったりする部分はある。さらに、毎年のように補正予算を組んで財政出動をし金融緩和をすれば、それも当然プラスには働く。その分、谷も急にはなると思いますけれども。

 こういう中で、資料をお配りしていますけれども、二ページ目、「我が国経済」というところを見ると、力強さは見られないものの、それなりに、そんな悪い状況ではないし、皆さんいつも得意げにおっしゃる有効求人倍率とか、それもそのとおりだと思います。だから、それは別にそんな否定はするつもりはないんです。

 ただ、三ページ目の方をごらんいただきますと、「需給ギャップと潜在成長率」という、これは日本銀行の資料で、私は、日本銀行というのは、今回も久しぶりにこの資料を読ませてもらったけれども、いわゆるシンクタンクとして本当にすばらしい分析もされているというふうに思います。

 需給ギャップと潜在成長率ということで、単純化して言えば、需給ギャップというのは、短期的な景気の部分です。潜在成長率というのは、いわゆる供給側で、潜在的に日本の供給能力、生産能力というのはどのぐらいあるのかというグラフであります。

 私は、需給ギャップについては、これをごらんのとおり、八七年代のバブル経済はちょっと異常でしたけれども、それ以降、確かに需要がちょっと足りないなと。どちらかというと需給ギャップが弱まっちゃっているところが多々見られるというふうに思いますが、二〇〇八年のリーマン・ショックでがたっと落ちて、いつも民主党政権がだめだとかおっしゃいますけれども、さすがに皆さん、リーマン・ショックは民主党政権のせいだと言わないと思いますので、こういう外生的な要因で非常に、多分、戦後の経済でもこんなに落ちたことはないというふうに思います。

 そういう中で少しずつ上がってきて、東日本大震災に打ちのめされ、タイのあの洪水で自動車産業も打ちのめされ、少しずつ上がってきて、確かに、アベノミクスは多少加速化したとか、そういう面はあると思いますけれども、基本的な循環の中で、ほっておいてもある程度回復していたと私は思います。それがいいのか悪いかは別ですよ。加速するのがいいのかもしれません。それを申し上げるつもりはないんですが。

 まず内閣府にお聞きしたいのは、需給ギャップは、アベノミクスというのはそれなりの効果があると思います。しかし、いわゆる潜在成長率というのは、私はやはり長期的な経済成長につながるというふうに思っていまして、升田さんの話じゃないですけれども、内閣府の試算でいえば、四十年後になるともう労働力人口が半分ぐらいに減っていくという状況の中で、どんどん市場が縮小していく。いわゆる潜在成長率もどんどん下がって、今、既にゼロ%後半ですわ。ゼロ%近傍ですよね。最近、日銀が見直してちょっと上がりましたけれども、そんなに上がっていない。

 これをほっておいたら、多分ゼロになり、マイナスになっていくというふうに思っています、自然の流れでいけば。これはもうずっと下がりっ放しですから。

 そういう中で内閣府としては、アベノミクスというのは、物価を二%上げる。仮に二%に到達した、それも継続的に二%をずっといくというふうになれば、これで潜在成長率あるいは経済成長率というのは上がるんでしょうか。

嶋田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からもお答えがありましたように、政府といたしまして、金融政策、それから財政政策、それから成長戦略、三本の矢ということで取り組みを進めてきているところでございまして、委員御指摘のように、潜在成長率を上げていく、あるいは経済生産性を上げていくということでございますけれども、その全要素生産性とかそういったものの上昇のためには、特にイノベーションが重要だと考えておりまして、そのために、イノベーションの創出について、第四次産業革命の実現とか、それに向けた企業から大学への投資三倍増とか、いろいろな具体的な案がございますけれども、そうしたオープンイノベーション推進などを成長戦略などに引き続きまして促進をしていくことでございまして、こうした取り組みを進めまして、そういう政策を総動員することによって、先生御指摘のような潜在成長率を高めていくことが重要ではないかというふうに当方としては考えているところでございます。

北神委員 ちょっと答えになっていないんですけれども、二%物価を到達するという意味で、それが到達した場合に、これで潜在成長率というのは上がるんですかね。

籠宮政府参考人 アベノミクスは、今お答えいたしましたように、三本の矢を一体として進めていくということにしております。

 ただ、デフレというものは、例えば、消費者や企業の購買意欲を冷やしてしまう、あるいは、名目金利は変わらなくても実質金利を高めてしまうということで、設備投資意欲を冷やしてしまうということで、やはり、デフレ自体が成長を損ねてしまうという面もあるかと思います。

 ですので、やはり安倍内閣といたしましては、デフレからの早期脱却と、それから持続的な経済成長の実現に向けて三本の矢を、政府、日銀一体となって推進していきたいというふうに考えているところでございます。

北神委員 デフレマインドであれば、設備投資をしなくなる、控え目になる、そうしたら資本投入量が減って成長率に影響する、そういう意味ですね。だから、確かにそういう面もあると思います。

 しかし大臣、みんな当たり前のように言うんですけれども、例えば、資料でいえば六ページをちょっとごらんいただくと、CPI、消費者物価指数、物価の総合指数と実質GDPの数字なんですが、ごらんのとおり、デフレのとき、二〇〇〇年からずっとデフレなんですけれども、たしか小泉政権のころだと思いますけれども、このときもGDPはプラスになっているんですよ。

 つまり何が言いたいかというと、これもまたいろいろな議論はあるんですけれども、健全なインフレ、いいインフレと悪いインフレがありますから、石油ショックなんかは最高のある意味ではインフレですから、これは決して経済にいい話ではないので、いわゆる需要喚起、需要型の、物価が上がるということは、マイナスよりはいいというふうに思います。しかし、別にデフレでも、成長というのは、いわゆる短期的な意味で、することはするというふうに思っています。

 そういう意味で、私は何もけちをつけるつもりじゃなくて、やはり大事なのは、経済成長というのは、一般的に言えば、資本投入量と労働投入量と、それといわゆる技術進歩だと。アベノミクスというのは、確かに私は資本投入量には多少意味があるというふうに思っていますが、大体、資本投入量とか労働投入量というのは、余りこれは効果がないんですよ、その三つの要因の中でも。やはり一番大事なのは、技術進歩です。

 昔、ソ連の経済分析をしたときでも、もうめちゃくちゃ一時期景気がよかった。これはみんな分析したけれども、それは単に強引に共産主義のもとで資本投入量と労働投入量をふやしているだけで、それで経済成長は上がったけれども、そういうのは長続きしない。

 アメリカの、いわゆる経済成長論の大家であるソローという経済学者なんかは、アメリカの経済成長をずっと分析すると、八割が技術進歩だ、あとの二割が資本投入量、労働投入量という意味では、やはり、いわゆる技術進歩というのが一番私は重要だというふうに思っております。なかなかそれは言うはやすしで、では、技術進歩というのは何なのかというのは、非常にまた神学論争的なところがありますけれども。

 ちょっとまず日銀さん、せっかく呼んでいますので。先ほど大臣は、日銀の金融緩和も非常に功を奏しているという認識を示されましたけれども、その目標である二%、どこまで近づいてきて、皆さんは、これはうまいこといっているのかと、そういうふうに自信があるのか、お聞きしたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 私どもが量的・質的金融緩和を導入したのは二〇一三年四月でございました。この間、我が国の経済、物価は大きく好転しておりまして、既に、物価が持続的に下落を続けるという意味でのデフレではなくなっているというふうに認識してございます。

 ただし、一方で二%の達成にはまだまだ距離があることも事実でございまして、現在、例えば生鮮食品を除く消費者物価の前年比はほんのちょっとのプラスということでありますし、人々の予想物価上昇率も弱含みという状況でございます。

 ただ、先行きを展望いたしますと、この先、経済全体の需給バランス、需給ギャップはプラスの方向で拡大していくと見られますし、中長期的な予想物価上昇率も高まると見ておりますので、二%に向けて上昇率を高めていくと考えております。

 現段階では、消費者物価が二%程度に達する時期につきましては、二〇一八年度ごろになる可能性が高いというふうに見てございます。

北神委員 当初よりおくれたといっても、大分おくれている。五回ぐらい、皆さん、後ろにどんどん倒していっているわけですよ。

 継続的に物価が下がるのをとめられたというふうに胸を張りますけれども、六ページをごらんいただくように、物価もそれなりに上がったり下がったりしていて、何かあたかも昔はずっと物価は下がっていて、それを食いとめられたように言いますけれども、私は別にそんなことはないというふうに思っています。

 これは上下するもので、そして、皆さんの資料でいえば四ページをごらんいただくと、消費者物価と需給ギャップとの関係というのは下の方のグラフにあります。基本的にこれは需給ギャップで決まっているんですよ。

 黒田総裁は先輩ですから私も余り悪口は言うつもりないんだけれども、彼はちょっと勘違いしているのは、いわゆる期待物価上昇率、これがアベノミクスの金融緩和の一番の眼目ですわね。今までは、いわゆる伝統的手法というのは、金利を下げるとか、それによって信用創造を図るというのが目的だったんですけれども、これから直接経済主体への心理に働きかけるんだと。バズーカを二回放つ、そしたらみんなが、ここまで黒田様がやるんだったらきっとこれは物価が上がるに違いないということで期待物価上昇率を上げて、それが実質金利の引き下げにつながり、そして物価が上がるという話なんですが、その期待物価上昇率というのは極めて曖昧な概念で、大臣も常識的に考えて、経済学とかをちょっとかじっている人だったら、うん、金融緩和をここまでやったらこれは物価が上がるに違いないと思われるかもしれないけれども、一般の方なんか多分全く関係ないと思うんですよ、物価なんかは。

 だから、そういう意味で私は非常に不思議で、常識的に経済理論であるのは知っていますよ。知っていますけれども、ちょっと感覚的にそんなことは、期待物価上昇率が上がって実際の物価が上がるということは本当にあり得るのかというふうに思いますけれども、雨宮さんはどう思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 私ども、二〇一三年に量的・質的金融緩和をスタートして以来、物価の二%の目標を達成するための基本的な原動力は、短期的な相場変動とか為替の変動によるものというよりは、やはり、基本的な物価を形成するメカニズムは、一つは、今委員御指摘のとおり、需給ギャップ、経済全体の需給のバランスで物価は決まるわけですから、需給ギャップ、それに期待物価上昇率、この二つが大事だということを申し上げているわけでございます。

 その上で、期待物価上昇率と申し上げる場合には、例えば、先行き一%上がる、二%上がるというような数字だけではなくて、むしろ、物価をめぐる社会的モードと申しますか、物価観ですね、例えば企業の価格設定戦略ですとか、あるいは消費者の価格に対する態度、あるいは毎年毎年の賃金交渉のスタイルとか、物価や賃金をめぐる全体としての社会的モードをデフレから物価安定の世界に変える、こういうことを申し上げております。

 我々も決して、物価さえ上がれば全部うまくいくというふうには全く思ってございませんで、私どもが目指しておりますのは、収益や賃金の上昇を伴いながら物価が高まっていく一種の好循環を目指しているわけでございますし、人々の、先ほど申し上げたような社会的なモードとしての物価観が改善するためには、そうした好循環が実現するということが重要であるというふうに認識してございます。

北神委員 難しいね。多分、しゃべり方の強調するところでいえば、需給ギャップがやはり一番重要だというふうなニュアンスに聞こえたんですけれども、例えば五ページをごらんいただくと、「予想物価上昇率」というのがあって、「エコノミストの予想物価上昇率」とか、この右端の方をごらんいただければわかりやすいと思いますけれども、一応何かこういうアンケートをとると、みんな確かに上がったりしているんですよ、これはもう物価が一・五%上がるぞとか。

 しかし、これに比べると実際の物価はほとんどプラスにもなっていない状態ですよ、このときを見ますと。つまり、ほとんどこの予想物価上昇率というのは効いていないんじゃないかと。

 日銀の皆さんですから、理論家ですから、多分、シカゴ学派のいわゆる合理的期待形成学派とか、昔教科書なんかで読みましたね。例えば減税をしても、財政は赤字になってまた増税になるに決まっているから、心理的に消費者はそう簡単に消費をふやさないとか。ほとんどあれはミクロの分析なんですよ。ミクロでは正しいかもしれない。

 しかし、自然科学でもそうですけれども、ミクロで正しいからといって、日銀が金融緩和をして、マクロの消費者や企業がそのように同じように心理状態が変わってそういうふうに行動を改めるかというと、私はまた違う話だというふうに思うんですよ。

 そういった意味で、需給ギャップだったら財政出動でもいいんですよ。そうでしょう。財政出動でも需給ギャップは解消しますよ。そうしたら、財政出動でやったら物価も上がる可能性は高いですよね。

 次、ちょっと財務省と内閣府にお聞きしたいのは、シムズ理論とか、私はかなり怪しいと思っているんだけれども、多分、皆さん、次はそういうことをお考えだというふうに思いますけれども、それは皆さん、今度は一九年半ばに二%に到達する、これは五回目かな、変えたのは。金融緩和でもさらにまたバズーカをやるわけにもいかないし、皆さん、日銀の分析それ自体を見ても、二〇一九年はかなり景気がやはり内需を中心に悪くなっていくというふうに読んでいるわけですよ。だから私から見ると、そう簡単に二%到達するはずがないというふうに見ています。

 ただ、そういう中で、シムズ理論とかに基づいて、やはりこれは財政出動も必要だということでさらに景気対策とかを考えておられるのかどうか、お聞きしたいと思います。

三木大臣政務官 ただいま委員から御指摘のありましたいわゆるシムズ理論、物価水準の財政理論は、政府が財政規律を放棄することで将来の物価上昇を実現し、その物価上昇によって政府債務も持続可能になるという学説の一つでございますけれども、これは必ずしも十分に実証された学説ではないというふうに承知いたしております。

 また、この理論には、現実にはどの程度の財政収支の悪化でどの程度の物価上昇が生じ、それがコントロールできるのかどうかということが明らかでないということ、また、先進国で最悪の財政状況である日本が仮に財政規律を放棄した場合、果たして国債は市場で安定的に消化されるのかということが不明であるということなど、現実的な問題点があるというふうに認識しております。

 安倍政権における経済政策は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の三本の矢を一体的に推進することを基本としており、今後とも、こうした取り組みを継続することで景気の好循環を生み出していく。

 政府としては引き続き、経済再生と財政健全化の両立を基本線として取り組んでまいりたいと考えております。

北神委員 財政出動はもう既に結構しているんだけれども、毎年補正予算をやって。大臣は首をかしげているけれども、大臣はやりたがっているのかもしれませんが、内閣府はどうなんですか。同じですか。同じだね。だからまだ考えておられなくて、基本的に、金融緩和で物価を二%に上げるという話だというふうに思っております。

 それで、百歩譲って、では、効果があるとしますわね。そのときに、何でも光と影があるように、影が光を上回っちゃうと余り意味がないわけですよ。そんなことを言ったらさっきのシムズ理論と同じで、もう財政当局も、そして既に私は中央銀行もそうだと思うんですけれども、責任を放棄して、バランスシートが狂っても関係ねえ、徹底的にいわゆる需要を喚起するためにやるんだ。そんなことを言ったら幾らでもできますよ。財政だって幾らでもできます。

 ただ、副作用がどこまであるのかということをやはり踏まえないといけないというふうに思いますので、日本銀行の皆さんは、どういう副作用を、このいわゆる異常な金融緩和によって発生するというふうに思われますか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 金融緩和の副作用として、一般的には、例えば市場機能、金融市場、債券市場等の金融市場の機能の低下、あるいは金融仲介機能の悪化、あるいは資産価格の過度の上昇、バブルと言われるような現象も含めてでございますが、そうしたものが挙げられております。

 現段階では私どもはこうした副作用が大きくなっているとは見ておりませんが、今後とも、金融緩和の効果と副作用につきましては、丹念に点検していきたいというふうに思っております。

北神委員 私は、今お話しあった話だけじゃなくて、これは自民党さんの行政改革推進本部というところがあり、四月十九日に「日銀の金融政策についての論考」という文書を発表されているんですよ。御存じですね。あの河野太郎先生、彼が、河野太郎先生が必ずしも自民党の大多数の意見を代弁しているとは思いません。思いませんけれども、ただ、時には、空気を読まない人は正確に物を言う場合もあるんですよ、世の中。だからそういう人を大事にしたい。私も若干自分の党内ではそうなってきておりますけれども。

 そういう意味で、彼らもやはり相当な問題意識を持っております。彼なんか、この文書を読むと、特に出口戦略のときに名目金利というものが本当に二%ぐらい上がってしまって、非常に経済にゆがみをもたらすおそれもあるし、バランスシートの問題も指摘しております。

 ですから、こういったところもありますし、ここにもはっきり書き過ぎているほど書いていますけれども、「市場関係者のアンケートでは、日銀の目標達成時期を信じている人は約七%となっている。また、日銀の政策が分かり辛いと感じている人も約六割に上る。」つまり、もはやアナウンス効果というものもかなりやはり弱ってきているというのは私は事実だというふうに思っております。

 ですから、これは出口戦略の話も、先日、おとついぐらいかな、財金で黒田総裁が触れられたというふうに報道では伺っておりますけれども、その点について出口戦略というのをお考えかどうか、日銀にお聞きしたいと思います。

雨宮参考人 これはいつも総裁からも申し上げておりますとおり、出口におきましては、出口における経済や物価の情勢次第ということで、現段階で非常に事細かく出口戦略について議論するのは時期尚早というふうには考えておりますが、出口における私どもの課題というのは大きく二つありまして、一つは、この膨張したバランスシートをどうやって正常化していくか、もう一つは、金利をどうやって引き上げていくか、この二つなわけでございます。

 私どもは、この二つの政策を実施するための手段としては、例えばバランスシートにつきましては、保有国債の消却を使うとかオペレーションを使うとか、あるいは金利につきましては、普通のオペレーションで行う金利誘導のほか、私どもは今、当座預金という、市中銀行は日銀に預けている預金に金利をつけているわけでございますけれども、これを操作するといったような方法、手段は十分持っておりますので、私どもとしては、出口におきましても、そうした手段を使いながら、市場の安定を確保しつつ正常化に持っていくということは十分可能であるというふうに考えてございます。

北神委員 模範答弁みたいなお話だったと思いますが、副作用でもう一つちょっと重要な問題で、これは別に批判をするつもりじゃなくて、今の日本の国民や企業家、さっき大企業のサラリーマン社長の話もありましたけれども、本当に、官僚、日銀主導の経済になってきちゃっているという危機感があるわけですよ。

 例えば株式市場でも、株が今は調子いいですからいいんですけれども、去年なんかちょっと悪いときなんか、日本経済新聞を読むと、株が今下がっている、今後期待されるのは日本銀行の動向と、クジラ、年金基金の動向だと。でも、そのぐらいやはりあの株式市場なんかは、相当この日本銀行と年金基金によって支えられている部分が根っこのところであると思うんですよ、今の部分は。

 それと大企業についても、この数年の景気回復というのもかなり輸出が引っ張っている部分があると思いますけれども、これもやはり日本銀行が、結果としてであれ、円安というものが非常にずっと続いている。これも非常に大きい。しかし、これもいつひっくり返されるか、今後、日米のいろいろな協議の中でひっくり返されるかわからないし、非常に微妙な問題で、あと財政出動。

 つまり何が言いたいかというと、自立的にいわゆる企業精神で何かつくり上げようという意欲がほとんどなくなって、政治や政府の役割というのは、為替政策をやるとか、株式市場に直接お金を投入するとか、こういういわゆる大きな意味でのモラルハザードというか、こういう状況の中で幾らこれで需給ギャップが回復をしても、幾らこれで多少GDPがちょっとでもふえても、これはさっきの話、労働力人口はどんどん下がっていく中で本当にこれでいいのかどうかと真面目にそう思っているわけですよ。

 そういう意味で、時間が思ったより早く過ぎていますのでちょっと大臣に一つお聞きしたいのは、まあいいです、アベノミクスは皆さん当然これはいいことだと言うに決まっていますから。でも、これだけで本当にいいのかと。やはり我々の子供や孫のことを考えると、こんなアベノミクスだけで、労働力人口が半分に減り、私は技術革新の方もどんどん弱ってきているというふうに認識しているんですよ、日本は。そういう中で本当にちゃんとした成長を、私は成長論者ですから、でも、その手段でちょっと違いがあるのかもしれませんが、そこをやはり政府として、もう今は一強多弱で皆さん盤石なんですから、景気対策ばかりやって、選挙にはいいですよ、選挙には最高ですよ。アベノミクスの一番の革新的な、革命的なところは、これは最高の選挙戦略ですよ。

 つまり今までは、景気が悪くなって、GDPがマイナスになって初めて景気対策の議論が出たんですよ。それで財務省がいろいろ抵抗したりして。ところが物価だと、景気がよくても、プラスでも、いやいや、まだ物価が二%に到達していないからさらに財政出動をする、さらに金融緩和をする、そういう意味では非常に、安倍総理はなかなかイノベーションを図られたというふうに思います。

 しかし、真面目に考えたら、十年後、二十年後、三十年後の成長を考えると、こんなことばかりやっていても、私は非常に危機感を覚えます。

 そういった意味で、大臣のちょっとその辺のお考えをお聞きしたいと思います。

世耕国務大臣 いや、やはり最後は民間がしっかりイノベーションで潜在成長率も上げてもらって、成長軌道に乗っていくということが一番重要。

 ただ、当然、金融政策も財政政策も重要だし、今御指摘のような副作用には目を配りながら、第一の矢はこれはもう日銀がやってくださるわけですが、第二の矢、財政出動だって、我々は財政健全化目標はしっかり堅持をしながら、しかも、GDP比では債務残高比率を減らしているわけでありますから、そういう意味では、ある意味、財政健全化も行いながら、税収増の部分をうまく使いながら財政出動をやっている。

 あとは、やはり第三の矢の成長戦略であります。ここは、これから今、第四次産業革命という大きな変化の波が来ます。これがチャンスだと思います。しかも、日本はその変化にちゃんと乗っていかないと、労働力人口が減ってく中で、もう経済はシュリンクしていくわけでありますから、まさにIoTとかAI、ロボットということをうまく使いこなす、使いこなさざるを得ない課題を抱えているわけでありますから、そういったところをうまくてこにして成長戦略を成功させていくということが、最終的に一番重要なところだと思っています。

北神委員 これはもう時間なんですね、私も。えらい思ったより時間が早く、いろいろ皆さんに来ていただいたんだけれども、もう一回やりますから。

 最後に日銀さん、頑張ってくださいね。余り上司の言うことばかり聞いておったらだめですよ。皆さんの本音は本当は違うはずだというふうに思っていますので、ぜひ頑張っていただきたい。大体、私が大蔵省にいたときに、主計官が一生懸命ポール・クルーグマンの本を読んでいましたよ。財務省は大体悪いやつらですから、日銀のせいにしたがるんですよ。今、完全に日銀のせいになっているんですよ。景気が悪いのもいいのも日銀、そんなことはおかしいですよ。だからぜひ頑張っていただきたいと思います。

 以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。

浮島委員長 次に、大平喜信君。

大平委員 日本共産党の大平喜信です。

 経済産業委員会では初めての質問をさせていただきます。委員長を初め、世耕大臣、皆さん、どうぞよろしくお願いをいたします。

 きょうは、私の地元、中国地方の原子力発電所、原発をめぐる問題について質問をしたいというふうに思います。

 まずは、島根県松江市に設置をされております島根原発についてお伺いをいたします。

 島根原発は、全国の原発で唯一、県庁所在地に立地されている原発であります。委員の皆さんに配付資料を配らせていただきました。順番が少し逆転してしまいまして大変恐縮ですが、三枚目に島根県のホームページから抜粋をした地図を載せております。

 島根原発から島根県庁までは、わずか九キロしか離れていないという状況です。

 まず確認ですが、避難計画の策定が求められている島根原発の三十キロ圏内の自治体、それから避難対象となっているその人数は何人になるか、お答えください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 中国電力の島根原発、今御指摘のとおりでございますけれども、そこの発電所からおおむね三十キロ圏内にあります自治体は、まず、島根県と鳥取県、この二県にまたがるということでございます。それで、島根県では、松江市、出雲市、安来市、雲南市が該当いたします。そして鳥取県では、米子市、境港市が該当いたしまして、合わせて二県六市が三十キロ圏内にあるということでございます。

 それで、もう一つお尋ねの、三十キロ圏内の人口でございますけれども、これらの地域、合わせまして、合計で四十七万人の方が住んでおられるということでございます。

大平委員 四十七万人ということで、大変な数の方が住んでおられます。

 さらに、この三十キロ圏内の中には、六十七の病院、診療所があり、入院患者は七千七百人、在宅要援護者が一万八千人に上ります。合わせて、要支援者として三万五千人近くにも上るという状況であります。

 原発三十キロ圏内の自治体には避難計画の作成が義務づけられておりますが、島根県内だけでは避難できる場所が賄えないということで、この計画の中では、近隣の広島県に約十七万人、お隣、岡山県に約十万人の方が避難するということになっております。しかし、中国山地を越えて避難をするということになるわけですから、当然、困難が伴う、時間もかかる。

 島根県、鳥取県両県のシミュレーションを私、調べましたら、避難完了時間を出しておりました。最も早い、最短でも二十一時間四十五分、最長でありますと二十七時間五十分かかるというふうにされております。

 島根県内の医療・福祉関係者からは、重病患者などが本当に安全に避難できるのか、特養ホーム待機者がふえる中で他県で本当に入居できるのか、こうした不安の声が上がっております。原発の稼働に理解を示す地元島根県の自民党の県議の方からさえも、避難など無理だ、こういうコメントが地元の地方紙、中国新聞で紹介をされておりました。

 大臣にお伺いしたいと思います。

 こうした中で、立地自治体である松江市以外、先ほど御紹介いただいた五市ですね、中国電力に対して、松江市と同等の安全協定、つまり、原発の新増設や変更に対する事前了解、あるいは原子炉の停止も含む適切措置要求、あるいは立入調査権などを認める、こうした協定を締結するよう求めておられます。

 中国電力が再稼働を求めている中で、こうした自治体の姿勢は、住民の命を守るために、被害を少しでも小さくするための当然の思いだというふうに私は思いますが、大臣の御見解、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 今御指摘の安全協定というものは、電力会社と自治体が任意に締結をしているものであります。という意味では、国は、残念ながら関与する立場にはないわけであります。

 なお、一般論として、各電力会社においては、自治体との信頼関係を大切にしながら、必要な対応を誠実に行うことが重要だというふうに考えております。

 また、これも一般論ですが、原発の再稼働に当たっては、国としても、地元の理解を得るよう、前面に立って取り組みたいというふうに考えております。

大平委員 信頼関係というお話もありました。任意であるがために、中国電力は、こうした松江市と同等の協定を、島根でいえばこの三市の皆さんが求めているにもかかわらず、この間、かたくなに拒否をし続けてきた。出雲、安来、雲南の各市長からは、立地自治体以外の声を聞かない考えを改めるべきだ、事故のリスクは同じ、要請を真剣に受けとめるべきだ、こうした抗議の声が上がり続ける中で、ことしの二月、ともかくの安全協定を締結したわけですが、しかし、その内容は極めて不十分だということで、引き続き、三市長の皆さんは、立地自治体と同様の安全協定を求めていくと訴え続けられております。

 いざ事故が起きれば甚大な被害をこうむる、そのために避難計画をつくらなければなりませんが、先ほども述べたとおり、避難の実効性に極めて疑問視がされている。そういう中で、各自治体の首長の皆さんは、市民の安全を守るためにということで、こうした最低限の要望といいますか、こういうことを求めているわけです。

 国として、政府として、住民、国民の安全を守る立場に立つのであれば、少なくとも、三十キロ圏内の自治体には、事業者は立地自治体と同様の安全協定を結ぶように、私は、経産省としてもかじをとるべきだというふうに思いますが、もう一度お答えいただけますか、大臣。

世耕国務大臣 これはあくまでも電力会社と自治体が話し合って締結するものだというふうに思っておりますので、電力会社においては、自治体との信頼関係を大切にしながら、必要な対応を誠実に行っていただきたいと思っております。

大平委員 島根県知事さんも、こうした状況の中で、我が党議員の質問に答えた形の答弁で、国の責任できちんとやるべきだ、こういう答弁もされておられます。事業者任せの姿勢ではなくて、国民の命と安全を守る国の責任を果たすためにも、何より中電が再稼働を求めているわけですから、私は、最低限の責任として、これぐらいやるべきだと、大臣の政治決断も重ねて求めておきたいというふうに思います。

 島根原発の周辺には多数の活断層がありまして、地震の起こる可能性は極めて大きいとされている地域でもあります。特に、島根原発のすぐ南を走る宍道断層、ことしの二月に、地震調査研究推進本部でも、主要活断層として指定をされております。

 二〇一六年一月二十八日、中国電力は、この宍道断層の評価を、二十二キロメートルから二十五キロメートルへと変更すると公表をいたしました。この二十五キロメートルという中国電力の評価に対して、規制委員会はどのように考えており、中国電力との間で今どのような議論になっているか、審査の経過を簡潔に、委員長、御説明いただけますか。

田中政府特別補佐人 島根原子力発電所二号機については、現在審査中でありますので、ここで予断を持ってお答えはできないのですが、宍道断層の東端の評価について、西側についてはほぼ終端を確定して、その結果、二十二キロが二十五キロになったということですが、東側については、昨年七月、政府の地震調査研究推進本部から、東側にも可能性があるという評価がなされたことがありまして、現在、企業者がその点について追加調査を実施しております。その調査結果を踏まえて厳格に審査していくということにしております。

大平委員 西側は確定したが東側はまだ延びる可能性があると推進本部の提言もあった、こういう話でした。二十五キロメートルというこの長さの評価もまだ確定していないというのが今の現状だというふうに思います。

 この宍道断層の今問題になっている東端、その東側には鳥取沖西部断層、そして東部断層という二つの断層が存在をしております。この二つの断層の間隔はわずか八キロメートル。そして、これらは連動することが想定されるため、この二つの断層で合計九十八キロメートルという評価が、これは中国電力も含めてされております。

 一方、この鳥取沖の断層と今問題になっている宍道断層、宍道断層の東側というこの問題ですが、この間もわずか十九キロメートルというふうになっております。しかし、これは連動はしないというふうに中国電力は評価をしていますが、宍道断層の東側には十キロメートル以上の活断層がある、このようにおっしゃる専門家の方もいらっしゃいます。

 規制委員会としても、この宍道断層の東端が推進本部が言うようにさらに延びるということがもしあるならば、鳥取県沖の断層と連動するという可能性も否定できないと私は思いますが、どのような御見解でしょうか。

田中政府特別補佐人 私どもは、新規制基準に基づく震源断層の評価に当たっては、そういった今先生御指摘のような複数の活断層の連動の可能性ということも十分にしんしゃくして評価することとしております。今御指摘の宍道断層東端の東側の評価ということもきちっと評価した上で、周辺の活断層との連動の可能性についても厳格に審査していくこととしております。

 連続しているということと、それが活断層としてつながっているということは必ずしも同じではありませんので、そういった点も含めて今後十分に、慎重に審査をさせていただきたいと思っております。

大平委員 連動も含めて厳格に審査する、そういう御答弁でした。

 これがもし連動するとなりますと、これらの活断層の長さは百四十二キロメートルにもなる。もちろん、一体のものではない、それはイコールではないというお話もありましたが、数字上そうなります。地震の規模やその被害は現在の想定よりも相当甚大なものになることは言うまでもありません。この島根原発も含めて、壊滅的な被害を受ける可能性が格段に大きくなるというふうに思います。

 島根の県知事さんも、我が党県議の質問に対して、この連動性を含む活断層の長さの評価は原発の耐震安全性を確保する上で大変重要だ、規制委員会には常に最新の知見を踏まえ厳格に審査していただきたいというふうに述べておられます。

 そんな中で、中国電力はといえば、この間、二〇一五年六月には、島根原発の低レベル放射性廃棄物を処理する機器の検査報告書を偽造していたことが発覚をしました。また、ことしに入っても、島根原発二号機の中央制御室で空調換気系ダクトに腐食による穴が計十九個も見つかるということもありました。こうした相次ぐ不正に県民の信頼が大きく失われております。

 そもそも、この宍道断層についても、中国電力は、その存在をこの間、当初、否定をしてきました。多くの市民や専門家の厳しい指摘を受けて、一九九八年に八キロメートルの断層を認めた。その後、二〇〇四年にこれが十キロになる。二〇〇八年に二十二キロへと変更、訂正。そして今回、二十五キロと、変更、訂正を繰り返してきました。あるメディアは、島根原発の活断層は成長する、背が伸びる、こんなふうにやゆしたほどでした。

 私は、こうした中国電力の姿勢を鑑みれば、周辺住民の安全を考えるのであれば、何といっても、規制委員会はこの宍道断層の東側の調査、東端の調査を求めている、こういうお話でしたが、中国電力にそういう調査を求めることはもちろんですけれども、規制委員会自身も現地に赴いてしっかりと調査をしなければならないというふうに考えますが、委員長、いかがでしょうか。

田中政府特別補佐人 まず、こういった活断層の評価の根拠になる調査については、まず事業者が第一義的に行うということが基本であります。

 その上で、私どもとしては、事業者が行った活断層の調査や評価の妥当性について、現地調査も含めて厳格に確認して、その是非を判断していくということで行っておりますので、先生御指摘のような方向に基づいているというふうに私は判断しております。

大平委員 中国電力のこうした怠慢な体質は、これだけに限ったことではありません。

 この間、大臣もよく御存じだと思いますが、土用ダムのデータの改ざんですとか、地元自治体と交わした公害防止協定の違反、ばい煙規制値超過による大気汚染防止法違反、原発内での相次ぐ火災の発生など、まさに、その怠慢やあるいは隠蔽体質、これは枚挙にいとまがないという状況になっている。さらに、二〇一〇年には、島根原発一号機で五百十一カ所もの点検漏れを起こした。しかし、それが一年間公表されず、点検漏れのまま原発を運転していたという、とんでもない、危険な原発を扱う事業者としてはあるまじき事態を起こしました。

 確認ですが、こうした中国電力の怠慢な姿勢に対して、当時の保安院はどのような保守管理評価を行ったのでしょうか。

山田(知)政府参考人 平成二十一年度に当時の原子力保安院が試行した保安活動総合評価というものにおきまして、島根原子力発電所一号機及び二号機について、先生今御指摘のございました平成二十二年三月に発生した保守管理不備等を踏まえ、保安規定への違反や検査の実施体制が不十分であることから、最も厳しい評価レベルである「許容できない課題が見いだされた」、区分1というものと評価をしたというふうに承知してございます。

大平委員 原発の保守管理で全国唯一の、最も厳しいレベル1、許容できない課題ありとしたのであります。

 この点検漏れの後、中国電力は、不正をしない、ルールを守ると、コンプライアンス最優先の業務運営を掲げました。さらに、不正防止の誓いの鐘をつくって、そこへ社長が行って、二度と不正はしませんと誓って鐘をつく、こういうことまでやっているとのことでした。

 しかしながら、再発防止対策を継続、実施中にもかかわらず、先ほど御紹介しました、昨年、低レベル放射性廃棄物の検査報告書の偽造や、ことし、空調換気系ダクトに腐食による穴が十九カ所発覚するなど、こうした中国電力の体質は全く改善していないと言わざるを得ません。

 この問題を最後に大臣に私はお伺いしたいと思います。

 原発に対する考えの違いはあれど、福島原発の事故によって、一たび原発に事故が起これば取り返しのつかない大惨事になることは共通の認識だと思います。にもかかわらず、このように管理に全く改善の兆しが見えない中国電力には危険な原発を扱う資格はない、多くの県民がそう思っている、私はそのように感じますが、大臣の御見解はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 原子力発電所については、いかなる事情よりも安全性を最優先し、そして、高い独立性を有する原子力規制委員会が科学的、技術的に審査をして、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認めた原発のみ、その判断を尊重し、地元の御理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。

 中国電力においても、プラントの安全管理や原子力規制委員会の審査にしっかりと誠実に対応して、安全を最優先に取り組んでいただきたいと考えております。

大平委員 あの福島原発があったにもかかわらず、私は、中国電力はいまだに原発は事故を起こさないという安全神話につかっていると。何の反省もなく、たび重なる不正を起こす、こうした中国電力に対して、多くの県民から、全国最多の不正を続ける中電に原発を運転する資格はない、もう中電は信用できない、こういう厳しい声が上がっております。

 そうした声に真摯に向き合わない中国電力は、一方では着々と再稼働に向けて作業を進めている。私は、決してこうした姿勢を認めることはできないと言わなければなりません。

 多くの県民の願いは、原発再稼働など論外であり、安全、安心の再生可能エネルギーの普及こそ県民の願いであるということを強く訴えて、次の質問に移りたいというふうに思います。

 そんな中で、さらに重大なのは、こうした不正を何度も起こし、その事実を隠蔽までするような中国電力が、新たな原発の建設を進めようとしていることであります。

 昨年八月三日に、中国電力が山口県上関町で進めようとしている上関原発建設に向けて出していた公有水面埋立免許の期間延長申請を、山口県知事は許可しました。上関原発については、二〇〇八年に当時の山口県知事が埋立申請を認可し、二〇〇九年に埋立工事が着工されたものの、二〇一一年の福島原発の事故を受けて工事が中断をした。二〇一二年に埋め立ての期限が来たため、中国電力は延長申請を累次にわたってしていたが、これまで認められてきませんでした。

 中国電力は、山口県に提出した申請書の補足説明資料の中で、温室効果ガス削減を理由に、安全性に一層すぐれた新規原子力発電所の開発を計画的に進めることが必要だ、上関原子力発電所の開発はこれまで以上に重要だと述べております。

 大臣に伺いたい。

 経産省も、中国電力と同じように、上関原子力発電所の開発が必要、重要だと考えておられるんでしょうか。

世耕国務大臣 これは全体論として、我々はエネルギー基本計画という大きな方針を閣議決定しているわけでありますが、それに基づけば、今、政府と原子力事業者が注力すべきことは、安全最優先の姿勢で真摯に再稼働に対応していくことであるというふうに考えておりまして、現時点において、このエネルギー基本計画の中で、原発の新増設ですとかリプレースといったものは想定しておりません。

大平委員 新増設は想定していないという御答弁でした。そうした政府の姿勢であるにもかかわらず、中国電力は上関原発建設を進めようとしています。そして、山口県はそれを追認している。

 中国電力が上関原発の建設を諦めずに進める最大の根拠としているのが、上関原発が政府の重要電源開発地点に指定されていることであります。

 中国電力は、資源エネルギー庁による、上関原発の重要電源開発地点の指定は引き続き有効であり、事情の変化がない限り解除することは考えていないという、この回答をもって、上関原発は国のエネルギー政策に位置づけられていると主張をしております。そして、山口県は、それを受けて、電源の開発が確実であると、埋め立て延長の申請を許可したのであります。

 指定時と事情の変化がないというふうにおっしゃるわけですが、私は、原発をめぐる状況は、変化がないどころか、福島原発以降、誰がどう見ても大きく変わっていると思います。

 一つ一つ伺っていきたい。

 事故前の二〇一〇年に出された第三次エネルギー計画、そして二〇一四年の第四次エネルギー計画では、それぞれ原発の新増設に関してどのように述べられているでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一〇年六月、今委員から御指摘のありました東日本大震災の前年に閣議決定をいたしました第三次エネルギー基本計画では、ゼロエミッション電源比率を高めるためにも、二〇二〇年までに九基、二〇三〇年までに十四基以上の新増設を進めていく、こういったことが書かれておりました。

 一方で、第四次エネルギー基本計画におきましては、新増設に関する記載はないところでございます。

大平委員 二〇二〇年までに九基、二〇三〇年までに少なくとも十四基の新増設が必要だというのが、福島原発事故前のエネルギー計画の内容でした。その後は、言及なしということになっています。

 続いてお伺いしたい。

 二〇〇九年の長期エネルギー需給見通しと、二〇一五年長期エネルギー需給見通しでは、それぞれ、二〇三〇年度の電源構成比、これは原発の割合をどのようにしていましたか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御質問の点でございますけれども、長期需給見通し、二〇〇九年の際には、原子力の発電比率四八・七%という数字を掲げているところでございます。他方で、一五年の方では二〇%から二二%、こういう記載をしているところでございます。

大平委員 二〇三〇年までに四八、四九%、全国全ての電力の約半分を原発で賄おうと考えておりました。そのために、少なくとも十四基新増設することが必要だと。そして、その新設の中に上関原発も入っておりました。それが、今の計画では新増設には言及しなくなった、できなくなったと。

 私たちは、今の二〇から二二という数字も、そしてそれに向けた原発再稼働にも当然反対ですが、政府の原発に対する方針自身が私は大きく変わっているというふうに言うべきだと思います。だから、先ほど大臣が述べられた、現在新設は想定していないという御答弁だったんじゃないかというふうに思います。

 では、事業者の中国電力自身はどう言っているか。上関原発が重要電源開発地点に指定された当時の二〇〇五年、中国電力は、この上関原発の着工時期、そして発電開始時期を何年としていて、そしてまた、現在ではどういう計画になっているでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問のございました、中国電力自身がどのように考えているかという点でございますが、中国電力は、二〇〇五年二月に重要電源開発地点の指定を受けたわけでございます。二〇〇五年、平成十七年でございますが、その前年、平成十六年の三月に公表いたしました平成十六年度電力需給計画の概要、こちらによりますと、上関の原発一号機は、二〇〇八年度、つまり平成二十年度に着工し、二〇一三年度、すなわち平成二十五年度に運転を開始する、このような計画でございました。

 最新時点で、今ホームページで公表しております二十九年度の電源開発計画によりますと、着工年度、運転開始年度ともに未定、このように記載があるところでございます。

大平委員 二〇〇五年時点では、二〇一三年から上関原発を運転開始すると。それが、事故もあり、工事が中断して、今では未定ということに中電自身もしております。

 そもそも、政府が新増設を想定していないと。だから、当然、着工なんてできないと思うわけですけれども、そして中国電力自身も、着工も運転開始も未定だと。どうしてこれで電源開発が確実だというふうに言えるんでしょうか。大臣、どのようにお感じになるでしょうか。

世耕国務大臣 上関原発については、事業者が有する計画や地元の状況には、今、変化がないわけであります。また、事業者からの重要電源開発地点解除の申し出がない中で、その指定を国みずからが解除する事情はないというふうに考えています。

 ただ、エネルギー基本計画については、二〇一四年四月に閣議決定されたとおりであります。

大平委員 事情に変化がないという御答弁を繰り返し、大臣、されておられます。

 電源需給の見通しと、では、実際の電力の使用状況についてどうだったか、これも事実を確認したいというふうに思います。

 上関原発が地点指定をされた二〇〇五年二月、その直前の二〇〇四年度の中国電力の電力需給見通し、ここでは、上関原発の一号機の運転開始予定であった先ほどの二〇一三年、この時点での最大電力量と供給力を幾らとして見積もっていたか。上関原発の一号機の最大出力とあわせて御説明いただけますか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の見通しといたしまして、中国電力自身の見通しでございますが、二〇一三年度におけます最大需要電力の見通しにつきましては、千二百七十六万キロワット、それから、お尋ねのありました供給力につきましては、一千四百一万キロワット、このような見通しを持っておりました。なお、上関原発一号機の最大出力、こちらにつきましては、百三十七・三万キロワットでございます。

大平委員 では、実際の二〇一三年の最大電力量と供給量、実績ですね、どういうことになっているでしょうか。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇一三年度の実績でございます。先ほどお答え申し上げました最大需要電力、こちら、見通しが千二百七十六万キロワットでございましたが、実績は一千百十二万キロワットになります。それから、先ほど見通しとしてお示しをいたしました供給力、こちらは一千四百一万キロワットでございましたが、実績は一千百六十八万キロワットでございます。

大平委員 予備力は五十六万キロワット、予備率が五・〇%というふうになっていると。

 二〇〇四年時点の見積もりでは、中国電力の計算上、上関原発をつくり、稼働させなければ電力の需要にたえられない、だからこの建設が必要なんだ、こういう理屈でありました。

 しかし、実際どうだったかという実績を先ほど答弁いただきましたが、見れば、上関原発がなくても電力供給は賄うことができたというのが厳然たる事実であります。

 資料の一枚目につけさせていただきました。これは経産省の資源エネルギー庁が出していただいた資料を私のところでまとめたものですけれども、二〇一三年、先ほど御答弁いただいた年の数字は、この表を見てもおわかりのとおり、その前後の年と比べても電力需要が高かった年でありまして、そのほかの年は予備力が約倍、一〇%前後で推移をしております。

 さらに、配付資料の二枚目をごらんいただきたいと思います。これは中国電力自身が出している資料を添付いたしました。中国電力自身も、今後十年間、平成三十八年までと書いてありますが、上関原発をつくらなくても電力供給はできると中国電力自身が計算して出しております。

 つまり、上関原発は電力需給対策、この上でも必要ないということに、中電自身も認めているということになると私ははっきりこの資料からも言えるというふうに思います。

 大臣に重ねてお伺いしたいと思います。

 このように、原発をめぐる状況も、また、この上関原発をめぐる状況も、指定時とは一変している。政府の方針も、そして中国電力の見通しも一変している。そのもとで、この重要電源開発地点指定が地元の混乱と住民の不安のもとになっているということですから、大臣、これはもう私は指定の解除をするべきだと思いますが、御見解はいかがでしょうか。

世耕国務大臣 繰り返しになりますけれども、上関原発については、中国電力がこれまで用地の取得、発電所設計等の準備作業、漁業補償を初めとする地元との調整を進めてきておりまして、事業者が有する計画や地元の状況には変化がありませんので、その重要電源開発地点の指定を政府の方から解除する事情はないと考えております。

大平委員 ですから、指定当時と現在は現地の状況も含めて状況は大きく変わっていると、私、一つ一つ確認をしてきたわけです。

 この重要電源開発地点指定に関する規程の中では、その第七条に、経済産業大臣はという主語で、指定を行った重要電源開発地点が第四条第五項に掲げる要件のいずれかに適合しなくなったとき、その指定を解除することができると定めております。いずれかというふうにあって、総合的というわけではありません。

 そして、この第四条第五項には、指定されるための要件が十二項目、先ほど少し大臣も述べられましたが、その中には、電源開発の計画の具体化が確実な電源であること、あるいは、電力需給対策上重要な電源であること。いずれも、私は、これは要件を満たさないようにもう既になっているというふうに、このきょうの論議で明らかになったというふうに言いたいと思います。

 さらには、都道府県知事の意向について考慮がなされること、こういう項目もあるわけですが、例えば、大臣、山口県の光市、上関町の近隣の自治体ですけれども、この光市では、地点指定における山口県知事への意見聴取の際に、知事が意見聴取し、知事意見にもそれが反映された市の一つであります。この市長が現在では上関原発には明確に反対と述べている。この一点を見ても状況は変わっていると言えるというふうに私は思います。

 きょう、この間、一つ一つの当事者自身の言明やあるいは事実でもって、こうした要件が満たされなくなっている、変わったということを、私は明らかだというふうに思います。そして、冒頭から大臣も繰り返されておられますように、政府自身も新増設は想定していないと言っているんですから、当然、私は、この地点指定は解除するべきではないかと重ねて伺いたいと思います。

 大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 この規程の第四条五項の中身を満たしているかどうかについて、我々は満たしているというふうに考えております。状況にも変化はないというふうに考えておりますので、この指定を政府みずからが解除する事情はないというふうに考えております。

大平委員 大臣、変わっていない、要件を満たしている、こういうお話でしたね。

 では、大臣は、ちょっともう一回、先ほど聞いたことに戻りますけれども、上関原発の開発の具体化が確実だ、あるいは電源需給対策上この上関原発が重要な電源である、そういうお考えでしょうか。

世耕国務大臣 国全体のエネルギー政策は二〇一四年四月に閣議決定されたエネルギー基本計画のとおりでありまして、新設、リプレースは想定をしていないということになるわけであります。

 一方で、上関原子力発電所については、事業者が計画を遂行する意向でありまして、法令上必要な手続や一定の地元理解が進んでいることから、計画の具体化が確実な電源であるというふうに考えております。

大平委員 電源需給の対策上も必要だというふうにお考えですか、要件の一つですが。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、電力の需給という点から御指摘でございます。

 確かに、この電源指定の項目の中に需給対策上重要なということの御指摘があることは事実でございますけれども、一般論でございますけれども、原子力発電所に限らず、発電所の新増設あるいはリプレースといったものにつきましては、各事業者は、電力の需給状況のみならず、電源構成でございますとか事業者全体の発電コスト、さらには地域社会への貢献など、それぞれを総合的に勘案して判断しているというのが一般的なものだと考えております。

 したがいまして、今先生御指摘の、そのことからだけ御指摘というのは当たらないのではないかなというふうに考えてございます。

大平委員 いやいや、一般論じゃないです、私がお伺いしているのは。電源需給対策上必要か、これが上関原発の要件の一つになっている。政府はこの要件を全て満たしている、こうおっしゃっているわけですから、私は今の答弁は答えていないというふうに思います。

 もう時間が来ましたのできょうは終わりますけれども、この重要電源開発地点の指定が原発の交付金を出す根拠にもなっている。国民の税金が使われているわけですから、こんな曖昧な態度では、私は絶対許されないと思います。

 上関原発の建設は断念し、そして、原発に頼らず、再生可能エネルギーへの抜本的転換を図っていく、こういう政治決断を今こそ重ねて求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。

 本日も、お時間をいただきましてありがとうございます。

 紆余曲折あって、三週間ぐらい質問を用意していたところ、きょうようやく質問させていただけるテーマがあります。

 それは、今ちょうど委員の皆さんに、手元、資料を配らせていただいているんですけれども、新聞記事。これは四月の十九日の新聞記事なんですけれども、朝日新聞ですね。「コンビニ全商品電子タグ装着へ」と。おととい、ちょっとこのさわりの部分だけ説明をさせていただいて、きょうようやく、ちょっと長目に話をさせていただきたいなと思うんです。

 これは何かというと、これはまだ「電子タグ装着へ」と書いてあるのであれなんですけれども、横のところに「セルフレジ導入向け」と。もう既にセルフレジがスーパーとかは入っているところもあるので、何が違うんだろう、どう違うんだろうという話があると思うんです。

 これを経産省さんがこれから先、推進していかれるというふうな話なので、たまたま私、前職で情報産業系の仕事をしておりまして、一時期この技術について追いかけていたことがあります。

 どんなものかというと、前回もちらっとお見せしたんですけれども、これです。借りてきたんですけれども、前もお見せしましたが。こういうコンビニの商品です。商品にタグというのか、シールが張ってあるんです。ぺらぺらのシールです。ここにバーコードが書いてあるんですけれども、バーコードは一応書いてある。本当はこのぺらぺらの中にアンテナみたいなものが、コイル状のものが入っていて、今はICチップみたいなものになっているんですけれども、レジの方にこれを読み取りをする機械があって、そこから出た電波で、はね返ってきたもので、この商品はどんなものかというふうなものを読み取って、瞬時にレジで決済まで持っていける。今までだと、バーコードをこうやって、ぴっと一個ずつ読んでしていたのを、かごをぼんと置くと、中にある商品を全部ばんと読めるというような、そういう話なんです。

 ちょっと悲しいのは、私が皆さんに配っているこの記事では「電子タグ装着へ」と書いているんですけれども、ほとんどのところが、コンビニが無人化するとか、そういうふうなことばかり書いていて、本当に言うべきなのは、このタグが導入されるとどういうことが起こるのか。タグといいながら、よく言われるのはRFIDというふうな名称で呼ばれているものなんです。きょうはちょっとそういう話について話をしたいと思います。

 これは非常に可能性があるもので、世界でも、これを使って何とか、流通であるとか、いろいろなところで活用できないか、画期的なアイデアだというふうに言われながら、もうかれこれ十年ぐらいたったと思うんです。なかなか実際にコンビニとかそういうところでは普及しなかった。

 皆さん御存じかもしれませんけれども、前もちょっと言ったかもしれませんけれども、回転ずしのお皿の裏とかに磁石みたいなものが張ってあって、あれも同じような技術で、お皿が食べた後にざあっと並んで、ぱっと読むだけで、何食べて、どれぐらいの量だったか、決済が全部できるというような、そんなところで使われたり、海外では、昔ですけれども、空港のラゲッジにちょっと張りつけて、ぐるぐるぐるぐる回っているときに、どこ向けのものなのかを仕分けしたり、あとは、海上輸送コンテナにこういう技術を使って、どこ向けの商品で、中に何が入っているかとか、そういう感じのことでは使われたことがあるんですね。使われています、今でも。

 そういうところでは可能だったんです。というのは、なぜかというと、使い回しがずっとできる。ただ、これは一回こっきりのものなので、値段も安くしていかなきゃいけないとか、いろいろなことがあると思うんです。

 そういったことも含めて、きょうちょっと、前回も来ていただいたんですけれども、住田さん、来ていただきまして、これで、今までと実際にどう変わるのか、それから何が期待できるのか、これをちょっと教えていただきたいので、お願いします。

住田政府参考人 委員御指摘のとおり、RFID、ICタグというのは非常にいろいろな効果がございます。

 今、商品管理のために張りつけられているバーコードというのは、これは、商品情報を、今御指摘のとおり、一つずつ読み取る必要があるということ。それ以外にも、ちょっと書き込める情報が少ないということがございます。バーコードをごらんいただくと十三桁の数字が書いてあるかと思いますけれども、この十三桁分の数字しか入らないということがございます。

 したがいまして、今、このバーコードには、基本的には、そこの例でいいますと、どこどこの麦茶ということが入っているということ、それが数字化されて入っているということになりますが、ICタグの方が入れられる情報が多いということになりますので、例えば賞味期限の情報とか、そういうものも含めてここに書き込んでおくことができる。逆に言うと、商品の一つ一つの品名の情報だけじゃなくて、これがどういう商品なのか、いつつくられたのかということも含めて、個別、品物ごとに違う情報を入れることができるという、ここが大きな特徴でございます。

 それと、もう一つの大きな特徴は、今御指摘がございましたように、離れた場所からでも、電波をこちらから発することによって、そこのICタグからの反射も含めまして、データを読み取ることができるということで、離れた場所から複数の商品情報を一括で読み取ることができるということ、それから、先ほど申しましたように、個品管理ができるということが非常に大きな特徴でございます。

 そのほか、さらに、これを活用していきますと、サプライチェーン全体のさまざまな課題解決にもつながるのではないかというふうに考えております。

 具体的には、今、先ほども御指摘がございましたような、例えばレジの業務が高速化をするといったようなこともございます。それだけではなく、実は、商品がお店に届いたときの検品、検量というのがありますけれども、この検品も瞬時に個品ベースでできるようになる。

 さらに言うと、消費期限の管理が効率化をするということもございます。これは、今ですと、スーパーなどでは、賞味期限が近くなってくると、前の方に出してきて、一生懸命二〇%引きとか二百円引きとか張ったりするわけですけれども、こういう作業もせずに、レジのところで一括でそれができるようになるといったようなこともございます。

 そうした意味で、人手不足の解決にもつながりますし、また、そういった値引きというのがやりやすくなるということから、食品ロスなどにも効果があるのではないか。さらには、防犯といったようなことの課題の解決にもつながるのではないかというふうに考えております。

 今の生産性の部分について言いますと、実際に実験をしてみたわけですけれども、コンビニの全ての商品に電子タグを取りつけて、高速でレジ、袋詰めをして、セルフレジを導入する、この部分については実験をしたわけでございますが、この部分についてのみでも生産性が二倍に上昇したといったような実証実験結果もあるところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 今聞いていると、さまざまな効果が期待できるのかなというふうに思うんです。非常にいいと思うんです。要は、情報がたくさんここへ、まあ、ここへ詰め込めるわけではないんですけれども、実際に情報をいっぱい、うまく利用することができるので、非常にいいんだろう。

 委員の皆さんは多分御存じだと思うんですけれども、これはもう三週間持っていたので、賞味期限が切れるんじゃないかとかいって皆さん心配されていたんですけれども、そういうのもこの中でぱっと瞬時に読み取れるというような話もあります。

 今の話、もうさまざま考えられるんです。さまざまなことが考えられるんだけれども、ここは多分そこまで計算されていないと思うんですけれども、今のことを積み上げて、こういう各効果を積み上げるとどれぐらいの経済効果になるのか。これは、聞かないでほしいようなことを言われていたので。というのは、数字を出せないらしいんです、今。

 ただ、どれぐらいと思ったらいいんですかね。これは数字で言うのは難しいかもしれないですけれども、どれぐらいのインパクトがあると考えていいのか。これはどういう例えにすればいいですかね。例えば、これを取り巻くような一つの業界ができ上がるとか、それがどんな感じのイメージなのかとか、そういうちょっとイメージ感、言っていただけることはありますか。

住田政府参考人 御指摘のとおり、ちょっと数字で何かというのはかなり難しいところではございますが、今、先ほど申し上げましたように、このコンビニの関係で、レジの回りというところの生産性だけでも二倍によくなるというふうなことがございますので、今非常に人手不足に悩んでいる流通業界にしてみると、その部分の効果は極めて大きいものが一つはあると思います。

 それからもう一つは、先ほど少し、まだ申し上げておりませんけれども、さらに、この情報がサプライチェーン全体で使えるようになる、共有ができるような仕組みができるということになりますと、実は、そこの麦茶をつくっている方においても、一体自分のつくったものがどのような形で今どこにあるのかというようなことも全て、うまく情報の交換さえできれば、わかるようになる可能性がある。ということになりますと、今非常に問題として意識をされている在庫の管理というものが非常に効率的にできるようになる。したがって、物を、あっちからこっちへ行って、また戻してまた行ってというようなことも、無駄が省かれるということもあると思います。

 さらには、そういったサプライチェーンの情報管理をすることによって、いつどれぐらい売れるのかということがわかるようになりますと、マーケティングにおいても非常に活用ができるのではないかというようなことを考えてございます。

 さらに、先ほど申しましたような、防犯上もよいということを申し上げましたけれども、防犯という観点からも、例えば万引きの防止につながるとか、万引きも年間数千億とか、全部ではそれぐらいの数字があるわけですけれども、そういったものにも、削減につながる可能性があるといったような問題もございますし、先ほども消費期限の喚起ということを申し上げましたけれども、これが食品ロスが減ることにつながる。すなわち、賞味期限が短いものはレジのところで少し安くなるのであれば、お客様も後ろから物をとろうとするんじゃなくて前から物をとろうとするということになると、食品ロスもかなり削減をされる。

 さらに、ひいては、実は御家庭の中でも、冷蔵庫に入っているいろいろな品物にICタグがついていれば、そこをICタグを読む機械で読めば、あっ、そろそろこの品物が期限が切れそうだということで、そこの部分でもロスがなくなっていくということで、これも非常に大きな効果があるというふうに考えてございますので、ある意味、まさに周辺の産業だけではなく、消費者、生活者御自身においても非常に大きな効率化が図れるのではないかというふうに考えてございます。

木下委員 ありがとうございます。

 非常に丁寧に説明していただいたと思うんです。

 やはりこれは、コンビニで今、五万店舗ほどを対象にやっていこうと。ただ、一番大きな問題は、もっとほかにも波及効果があるんだと。流通業界だけじゃなくて、こういう製品をつくっているところの製品管理であるとか、そういうものにも結びつくし、家庭での消費行動にもつながっていくと。

 これは、うまく運用すれば、非常に世の中の生活も私は変わっていく可能性は秘めているのかなという気がしているんです。だから、きょうちょっと取り上げさせていただいた。

 ただ、ちょっと大きな問題があるなと思っているのが、これなんです、要は。というのは、これは今、聞いたら、十円から二十円ぐらいコストがかかっている。今、試験段階だから特にそうなんですけれども、これを二〇二五年でしたか、までに普及させて、一円から二円程度にこの一枚をしようと。そのために、コンビニの電子タグ一千億枚宣言というのを経産省さんが出されています。まるでちょっと経産省さんの宣伝を私がかわりにやっているみたいなんですけれども。まあ、それぐらいやらないと効果がないんだなというふうな話だと思っているんです。だから、これをどういうふうにしてやっていくか。

 それは、これだけの話ではないと実は私は思っていて、結局、ここを読み取るための機械、レジですね。レジ自体も、大体、コンビニのあの複合レジと言われている、実は私、おサイフケータイのレジ普及をやっていたことがあって、コンビニさんとずっとつき合いをしていたんですけれども、百万円とか二百万円ぐらいする。今、五万店舗にそういうふうにして置いていくだけで、これは五百億円とか七百億円とか、一店舗当たりで一個というふうな形で考えても、それぐらいの投資効果も出てくるということなので、これは非常に期待できるなというふうに思っています。

 これぐらい効果の部分はあれなんですけれども、もう一つ、一つだけと言いながら、もう一つ心配していることがあるんです。

 これは何かというと、日本はこれをうまいぐあいにやれば先進的になるかもしれない。ただ、この技術を海外に展開できるのかどうかということなんです。これをちゃんとできてこそ初めて実際の産業化ができるんだろうというふうに思っているんです。

 そのときに一番懸念していることは何かというと、これを読み取るときに、ある一定の周波数帯を利用して読み取ってやるということなんですけれども、これを経産省さんに聞くのは酷なんですけれども、周波数帯がやはり限定されている。特に日本の場合は総務省さんがいろいろな形で制限をしていて、使える周波数帯が限られている。これの一番大きな問題は何かというと、海外に展開するときに周波数帯の規格をしっかり世界標準に統一できる状態に持っていかなければ、世界の中で優位性を保つことができないんじゃないかなというふうに思っているんです。

 この辺の施策については、経産省さんとしてどう考えていらっしゃるか、どういうことで対応できるかということを教えてください。

住田政府参考人 まず、RFIDの単価の件でございますが、実は、現在、国内では、本だとか医療品を中心にして、あるいは化粧品といったようなものにつけられておりますが、利用量が年間約二、三億枚でございます。したがいまして、今回のこの一千億枚宣言ということで、二〇二五年には一千億枚になるぞということが明確になることによって、現在十円以上する単価を、先ほど御指摘のございました一円とか一円以下までに下げていきたいということがまず一つございます。

 そのためには、コンビニだけじゃなくて、スーパーだとかあるいはドラッグストアといったようなところでも利用されていくことが大事でございますし、御指摘ございましたとおり、小売事業者だけでなく、関連機器メーカーなどにも協力をいただかなければいけない。

 さらには、上流で張りつけていただくということ、これが非常に大事になりますので、商品をおつくりになる方のところで電子タグを張りつけることによるインセンティブが明確になった方がいいということで、サプライチェーン全体でICタグに関する情報を共有することで、先ほど申しましたような在庫管理あるいはマーケティングへの利用ということができるということを大いに、幅広く共有していきたいというふうに思ってございます。

 それから、後段の海外展開の話でございますけれども、例えばコンビニが今後海外展開をしていくといった場合に、この方式というのが、このソリューションで丸ごと輸出するといったようなことも十分考えられることだと思います。

 その際には、御指摘のとおり、各国で利用できる周波数帯、あるいは規制が異なっているという問題がございます。

 電子タグについては、実は国際標準化されている周波数帯というのが幾つか決まっているわけでございまして、この周波数帯の範囲内であれば、内包されておりますアンテナあるいはプロトコルの技術によりまして、国内で商品に張りつけられた電子タグを海外で読み取ることは可能であるというふうに承知をしております。

 それから、リーダーとかライターの方でございますけれども、こちらは、各国の電波関係の規制が求める基準を満たす必要があるわけでございますけれども、既に、これらを踏まえて、リーダー、ライターの輸出というのが一部実施をされているものというふうに承知をしております。

 しかしながら、いずれにいたしましても、そういった海外展開を見据えたことをやっていかなければいけないし、その際の障害になるようなものを積極的に除去していくということは必要だというふうに考えてございます。

木下委員 ありがとうございます。うまくやればどんどん広げられるのかなという感じがしますね、今の話を聞いていると。

 これは、一番大きなところは、私が言いますけれども、各業界が独自にやっていってもこれは広がらないんですよ。だから、経産省さんが後ろから後押しする。だからきょうちょっとやりたかったわけです。

 というのは、誰かがこれをやらないと前に進まない。ただ、誰かがといって、利害関係が、こんなもの、一枚十円だってなかなかできない。こういうことこそ、経済産業省の役割として御認識されて、後押しされてと。これは私、非常に評価できることなんじゃないかなというふうに思ったので、きょう、ちょっとそういう質問をさせていただきました。ありがとうございます。

 続きまして、もう一つ、きょう、これは一番最初、与党の議員さんもお話しされていたんですけれども、経済産業省でサイバーセキュリティーのことを取り組みをされているということで、少しその辺についてお話を聞きたいんですけれども、きょうも話を聞いていると、経済産業省さんの所管される部分でいうと、やはり、企業、それ意外にもいろいろありますけれども、特に経済産業省さんは、企業のサイバーセキュリティー、ここについてある程度特化していろいろと推進をなされているということを聞いています。

 その中で、これも私、実は前の会社でネットワークの仕事もしていたことがあって、こういうセキュリティー関連の話をずっと専門でやっていたこともありますので、サイバーセキュリティーの中で企業にどんなことを求めているのか、これが結構重要だと私は思っているんですけれども、どういうことを求めていらっしゃるか、お願いします。

前田政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおり、企業がサイバーセキュリティーに取り組むことは非常に重要でございまして、経営者の意識が決め手になると思います。

 その際に、平成二十七年の十二月ですけれども、これはガイドラインを示した方がいいだろうということで、経済産業省は、情報処理推進機構、IPAとともに、サイバーセキュリティ経営ガイドラインというものを策定しました。この中には、主に三つの原則というのを書いております。その三つの原則というのは何かというと、経営者が認識すべきことは最低三つあるんだ、それを踏まえて経営者がセキュリティーの担当する幹部に十項の項目を指示せよという中身でございます。

 その認識すべき三つの原則というのは、経営者は、IT活用を推進する中で、まず、サイバーセキュリティーのリスクを認識して、リーダーシップによって対策を進める、きちんと経営資源を配分しろという話が一つ。

 それから、自社はもちろんのこと、系列企業やサプライチェーンのビジネスパートナー、あるいは、ITシステムの管理をアウトソースするケースもございますけれども、そういう委託先まで含めた形のサイバーセキュリティー対策が必要なんだということについて俯瞰しろ、これが二点目でございます。

 三番目が、平時及び緊急時、両方でございますけれども、サイバーセキュリティーリスクの対策やあるいは関連する情報、これについての開示など、関係者と適切なコミュニケーションが必要だという、三点を示しております。

 加えまして、十項目のうち若干の例示だけ申し上げれば、サイバーセキュリティーリスク管理体制を構築しろと。これはサイバーセキュリティー対策の幹部に指示する内容ですけれども、サイバーセキュリティー対策のための具体的な予算あるいは人員、その人材に関する権限、こういったことをきっちりと明記しろと。

 このサイバーセキュリティ経営ガイドラインをつくったときに、やはり大企業から中小企業までいろいろな声がありました。中小企業向けにもやはりつくった方がいいだろうということで、平成二十八年の十一月に、余りサイバーセキュリティーが進んでいないかもしれない中小企業向けの対策として、企業レベルに合わせてステップアップができるということで、サイバーセキュリティ経営ガイドラインの中小企業向けのものも策定しております。

 これらのガイドラインについて、二月にIPAの開催した中小企業セキュリティ推進シンポジウム二〇一七というところで大々的に対外発信をいたしまして、経営者のリーダーシップ、サイバーセキュリティーリスクに対する深い認識というものを引き出すように推進しておるところでございます。

木下委員 ありがとうございます。

 こういうサイバーセキュリティーに関して一番印象的だったのは、経営資源をしっかり投入しろということを言われていたと思うんです。

 事前に聞いている話では、もう時間がなくなってきたのであれなんですけれども、そういうために人材育成なんかも取り組まれていると。きょう、朝にもお話しされていたので、そこの部分はあえてもう聞かないようにしますけれども、ということをされている。

 ただ、一番大きなところは、私、会社に前いたときに思ったのが、どうしても会社はこういう情報システム部門に対して経営資源というのを投入しにくい。どうしても情報システム屋というと、スリッパを履いていて、シャツが背中から出ていてというイメージで、オタクの集まりみたいな感じなんです。あれは、スリッパを履いているというのは、静電スリッパといって、要は、普通のスリッパじゃなくて、ぱちぱちっと来ないようにするために履いているんですよ。(発言する者あり)そう、静電気が来ないというようなために履いていたりするんですけれども、どうしてもそういうイメージがあって、そういうところに企業の精鋭を投入することがなかなかないんだと。

 私も実は、最初にそこの部署に行かされたときにすごくちょっと悲しかったんです、とうとう外されたかなと。ただ、私の行っていた会社は大したもので、それを要は経営企画部直下にしまして、情報システム部という名前を変えて情報戦略システム室みたいな感じの名前にして、最終的にはIT推進部という名前に変えていった。それでも私はちょっと気分が悪かったんです。というのは、部長が、執行役員がならない。せいぜい理事どまりの人しかならない。

 こういう感覚を変えていくということが重要で、そういう後押しを今されているんだなというふうに聞いていまして、これは非常にいいやり方なんじゃないかな。それでもしないと、やはりなかなかうまくいかない。

 それから、きょうもちょっと聞きたかったんですけれどもやめますけれども、特に産業インフラに関して、特化してそういうサイバーセキュリティーの強化をしていこうというふうな取り組みも経産省さんはやられているということだったんです。これも非常に評価できる。

 ただ、今度は、きょう内閣府さんにちょっと来ていただいているので、全体的なサイバーセキュリティーの、特に人材育成の部分でどういう取り組みをされているか、これをちょっと聞かせていただきたいんです。

三角政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、企業におけるサイバーセキュリティーの人材をしっかり育てていくことは非常に重要でございます。

 そこで、今、経済産業省の話がありましたけれども、そのほか、本年四月に、総務省所管の国立研究開発法人情報通信研究機構、そこに組織されましたナショナルサイバートレーニングセンター、ここでは、やはり重要インフラ事業者等を対象といたしました実践的な演習、それから、若手人材を対象とした高度なセキュリティー技術開発、指導に取り組むこととしております。

 また、文部科学省の成長分野を支える情報技術人材の育成拠点の形成、enPiTと呼ぶんですけれども、ここの事業におきましては、産学が連携いたしまして、大学が有する教育資源、その最新の研究、知見を生かしたセキュリティー人材教育を行っているところでございます。

 さらに、本年四月でございますが、サイバーセキュリティ戦略本部、ここにおきましてサイバーセキュリティ人材育成プログラムを策定いたしました。

 御指摘のとおり、経営層、それから現場の技術者、それだけでは足りないので、その間を、いかに企業戦略、ビジネス戦略の中に生かすかということをちゃんと考えられる、その橋渡しの人材、そこの重要性も強調した形で行っておりまして、このプログラムに続きまして、産学と連携いたしまして、私どもNISCが中心となりまして、まず、各省庁の施策、これを横断的に連携を強化する、そして、政府一体となってサイバーセキュリティー人材育成の強化を図っていくということでございます。

木下委員 最後なんですけれども、今の人材の話でいうと、もう本当に危機は結構来ていると思っているんです。特に、そういうインフラ系のところに対して、いろいろな形でハッカーが侵入してきている。それに対応するために、人材で特に私が必要だと思っているのが、言葉はあれですけれども、ホワイトハッカー、こういった人たちを育てていかなければならないと私は思っているんです。ただ、そのための法整備がまだ充実していない。

 というのは、ホワイトハッカーというふうになると、自社の中に入っていって、セキュリティーホールを見つけていってパッチを当てていく。これだけにとどまらず、そういったインフラの中のあらゆるセキュリティーホールをしっかり見つけて、それをしっかり修復していく、こういうことができるような高度な人材を育てていかなければならないと私は思っているんです。

 個別の企業のそういったネットワークの中に入っていくというのは、これは実質的に犯罪行為に近い。そうやりながらも、ちゃんと対策をとっていくということができなければ、そういう高度な犯罪を犯すようなハッカーに対応することができないと思っておりまして、これは政府全体にお願いをしたいところなんですけれども、そういった法整備をこれから早急に詰めていっていただきたいというふうなことをお話しいたしまして、結びとさせていただきます。

 ありがとうございます。

     ――――◇―――――

浮島委員長 次に、内閣提出、中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。世耕経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

世耕国務大臣 中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 信用保証は中小企業の資金繰りを支える制度であり、中小企業がライフステージの中で必要とする多様な資金需要に対応できるものとしていくことが重要です。他方、金融機関が過度に信用保証に依存することとなると、事業性評価融資や、その後の期中管理、経営支援への動機が失われるおそれがあるといったことも指摘されております。

 このため、創業・事業承継時や危機時等における中小企業の資金需要に一層きめ細かく対応するとともに、信用保証協会と金融機関が連携して中小企業への経営支援を強化していくことで、中小企業の経営の改善発達を進める仕組みを構築する必要があります。

 以上が、本法律案を提案した理由であります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、大規模な経済危機、災害等により著しい信用の収縮が全国的に生じる場合に備えて、あらかじめ適用期限を区切って発動する危機関連保証を創設いたします。

 第二に、特別小口保険の付保限度額を一千二百五十万円から二千万円に引き上げるとともに、創業関連保証の付保限度額を一千万円から二千万円に引き上げます。

 第三に、中小企業の代表者が経営の承継時に必要とする株式取得資金等を信用保険の対象とします。

 第四に、信用保証協会の業務に中小企業への経営支援を追加するとともに、業務を行うに当たっては信用保証協会と金融機関が連携する旨を規定いたします。

 以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

浮島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本案審査のため、来る十七日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会


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