衆議院

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第15号 平成29年5月24日(水曜日)

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平成二十九年五月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 浮島 智子君

   理事 うえの賢一郎君 理事 大見  正君

   理事 佐藤ゆかり君 理事 白須賀貴樹君

   理事 吉川 貴盛君 理事 北神 圭朗君

   理事 近藤 洋介君 理事 高木美智代君

      穴見 陽一君    石川 昭政君

      小倉 將信君    尾身 朝子君

      大串 正樹君    岡下 昌平君

      梶山 弘志君    勝俣 孝明君

      神山 佐市君    工藤 彰三君

      佐々木 紀君    塩谷  立君

      島田 佳和君    高木 宏壽君

      星野 剛士君    三原 朝彦君

      宮崎 政久君    八木 哲也君

      簗  和生君    山際大志郎君

      大畠 章宏君    落合 貴之君

      篠原  孝君    鈴木 義弘君

      田嶋  要君    中根 康浩君

      福島 伸享君    中野 洋昌君

      畠山 和也君    真島 省三君

      木下 智彦君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   外務副大臣        薗浦健太郎君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   経済産業副大臣      高木 陽介君

   経済産業大臣政務官    大串 正樹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室次長)  矢作 友良君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 山本 哲也君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 矢野 康治君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)          横山  紳君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房長) 高橋 泰三君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務流通保安審議官)     住田 孝之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 茂明君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 日下部 聡君

   経済産業委員会専門員   木下 一吉君

    ―――――――――――――

五月二十三日

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)

同日

 国と東京電力が責任を果たすことに関する請願(池内さおり君紹介)(第一一五〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第一一九一号)

 信用保証制度の部分保証拡大とセーフティーネット保証縮小の中止に関する請願(真島省三君紹介)(第一二四四号)

 即時原発ゼロを求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一二五八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)(参議院送付)

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

浮島委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室次長矢作友良君、内閣府大臣官房審議官山本哲也君、財務省大臣官房審議官矢野康治君、農林水産省大臣官房国際部長横山紳君、経済産業省大臣官房長高橋泰三君、経済産業省大臣官房商務流通保安審議官住田孝之君、経済産業省大臣官房審議官田中茂明君、経済産業省通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、経済産業省製造産業局長糟谷敏秀君及び資源エネルギー庁長官日下部聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浮島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浮島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。島田佳和君。

島田委員 おはようございます。自由民主党、島田佳和です。

 きょうは質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 まず冒頭、きのう、マンチェスターの方でテロ事件が起きました。亡くなられた方々へお悔やみの意を申し上げるとともに、私自身、長年音楽業界で仕事をしてきた者にとりまして、やはり、コンサート会場がテロの現場に使われたということは非常に残念なことであるというふうに申し上げたいと思います。

 経産委員会で質問させていただくのは初めてでありますので、軽く自己紹介を始めさせていただきたいと思いますけれども、私のキャリアを一言で言えば、マーケティングに長年従事してきました。どんな商品を開発するのかとか、どんな顧客がどんなニーズを持っているのか、どういう商品のイメージをつくっていくのか、あとは、メディアをどうやって使って企業コミュニケーション、商品コミュニケーションをしていくかといった仕事であります。世耕大臣もNTTの方で企業広報もされていたということでありますので、相通じ合える部分もあるのではないかなというふうに思っております。

 商材としては、ワーナーミュージックというところでは、洋楽、いわゆるインターナショナルミュージックのメディアプロモーションをやっていたり、あとは、ドリームステージというところで、かつてあった格闘技コンテンツをアメリカのラスベガスで開催させていただいたりとか、議員になる前は、レッドブルというエナジードリンクでスポーツ・音楽マーケティングをしていた者でございます。

 こういう仕事をすると物の見方に変な癖がつきまして、先日、知人とちょっと神宮球場に行ったんですけれども、バックスクリーンに一球一球ごとに球速が出ます。スタジアムにいる人はみんな大体その球速を見ていると思うんですけれども、こういうマーケティングの仕事をしている人間は、その横に出る企業名、一球一球違う企業名、商品名が出るんですね。あっ、商品名が変わった、あっ、企業名が変わったといって球速そっちのけでそういう方を見たりとか、あとはテレビのコマーシャルなんかを見ていても、あれっ、タレントさんかわったな、商品が売れていなかったのかなとか、逆にずっと何十年も同じタレントさんを使われていると、よほど売り上げが安定しているんじゃないかみたいな勘ぐるような見方をしてしまうのが、いわゆるマーケッターの職業病といいますか、そんな職業でございます。

 きょうは、そういった仕事をしてきた人間から見て、今のこの日本の経済政策といいますか、社会に欠けている部分をちょっと議論していきたいと思います。

 その入り口として、今週の金曜日も四度目のプレミアムフライデーを迎えますけれども、ちょっとこのプレミアムフライデーについてお話しさせていただきたいと思います。

 三回、プレミアムフライデーを経まして、一部報道では既に、プレミアムフライデーはなぜ失敗したのかというような記事とか、先日、小泉進次郎さんが、経産省が旗振りをしてプレミアムフライデーをほかの省庁にも広めようとしたときに、ほかの省庁からは、金曜三時以降どう過ごせばいいんですかと、これは終わっていますねといった発言もあったようですけれども、私は基本的にこのプレミアムフライデーをぜひもっともっとしっかりと定着させていただきたいという立場でありますので、決して、三回終わった時点で失敗したというふうに言い切るのはまだまだ早急ではないかと思いますし、週休二日制の導入もそうだったと思うんですけれども、やはり浸透するにはある程度時間が必要ですので、これからの経産省の取り組みにもしっかりと期待して見守っていきたいと思いますが、改めて、このプレミアムフライデーを経産省が行った目的、それから今までの検証、そしてこれからの話等、聞かせていただきたいと思います。

住田政府参考人 御指摘のプレミアムフライデーでございますけれども、これは御案内のとおり、月末の金曜日というのをいつもと違う金曜日にしようということで、国民の皆様がふだんとは違う金曜日を過ごしていただきたいな、こういう思いで始めたものでございます。

 いつもと違う金曜日ということで、国民の皆様一人一人が、何をしようかな、何をしてみたいかなということを考えていただいて、実際に楽しく過ごしていただいて、それを通じて、生活の豊かさあるいは幸せというものを感じていただく機会をつくりたい、こういう思いで官民一体の取り組みとして始めたものでございます。

 この取り組みを通じては、やはり、物の消費ということだけではなくて、むしろ事消費というのをより強く意識したような形で消費を活性化するきっかけとなればいいなということでございますとか、また、今ございましたように、働き方改革というようなことにもつながる、あるいはライフスタイルの改革といったようなことにもつながるということを期待をしておるところでございます。

 これまで三回、プレミアムフライデーを実施してきたわけでございますけれども、現時点では、このプレミアムフライデーのロゴマークというのを自由に使うことができるわけですけれども、申請をすれば使うことができるわけですが、この使用の申請をした企業の数というのが既に七千社を超える企業の数になっております。また、従業員に対して早期退社を呼びかける企業の数、既に四百七十六社にまで現時点では達しているというところでございます。

 また、これまでの取り組みの中での成果といいますか、例えば売り上げという観点で見てみますと、一部の企業では、売り上げが前の年の同じ時期と比べて一、二割増加をしたといったようなことを言っていらっしゃる企業もございます。

 ということで、この取り組みへの理解、参加、次第に広がっているというふうに感じておりますし、実際、日本にいらっしゃる外国人の方なんかでも、このプレミアムフライデーの取り組みはおもしろいということで、非常に関心を持ってエンジョイをしていらっしゃる方もいらっしゃるということでございます。

 こういう企業の取り組みの中でも、やはり売る側も、先ほど申しましたような事消費というのを意識をして、消費者の視点でいろいろなイベントあるいは取り組みをするということが求められているわけでございますし、実際にそうするかどうかというのが、うまくいくかどうかということを左右しているのかなというふうにも感じております。

 政府といたしましては、引き続き、PRあるいは一体感の醸成などの面で後押しをしてまいりたいと思いますし、地域や中小企業を含めて取り組みが定着するように、粘り強く続けてまいりたいというふうに考えてございます。

島田委員 ありがとうございます。

 何か七千社とか、非常にちょっと多目な数字が出ていたんですけれども、実際、一部調査では、職場で実施された回答は二・八%みたいな調査も出ておりますので、ただ消費をふやせ、お金を使えというのでは企業も消費者もなかなか動かないということは、今回、この三回のプレミアムフライデーで、一つの課題だというふうに浮かび上がってきたんだろうと思います。

 そういった上で、ちょっと私の方から一つ提案をさせていただきたいのが、ただ消費をふやせということではなくて、このプレミアムフライデーの時間を使うことによって、それが本業にフィードバックされたり、新しい新規事業のアイデアが生まれたりといった使い方、そういうアングルを加えるべきではないかというふうに思っております。

 一言で言えば、ライフスタイルマーケティングをもっと深掘りしていく必要があるということなんですけれども、あらゆるビジネスコンセプトの中心に顧客を置くという考え方がなかなか日本の企業にまだまだ広まっていないというところがありまして、きょうは二つ、そのライフスタイルマーケティングから生まれた商品、サービスを、事例を紹介させていただきたいと思います。

 世界じゅうで今一番売れているビデオカメラって何ですかと聞くと、大体一般の人は、ソニーかなとか、パナソニックかな、ビクターかな、シャープかなというふうに考えられるんですけれども、実は、きょう資料でも配らせていただきましたが、ゴープロという小さなカメラ、これが今世界じゅうで一番売れているビデオカメラであります。もちろんアクションカメラのセグメントとしても一番なんですけれども、そして二〇一二年には、もう既にソニーのビデオカメラの販売台数をこの小さなゴープロが超えてしまったというぐらいのインパクトがあります。

 ここで何でゴープロの話をしたいかといいますと、このゴープロが開発された経緯、開発した人間というのは、電機メーカーの人間でもなくて、例えば電子工学を学んだ学生でもなくて、この資料一の右下にあります。ニック・ウッドマンというサーファーなんです。彼は、要は仲間のサーファーが腕に一生懸命固定しながらサーフィンの映像を撮っている姿を見て、何とかこれを商品化できないかということで、最初は腕バンド、アームバンドでカメラを固定するやり方でやっていたんですけれども、やはりこれでは思うような画像が撮れないということで、サーフボードに載るぐらい小さくて、防水機能があるカメラ、そして振動にも強いということでこのゴープロを開発したと。

 逆に日本のビデオカメラというのは、皆さん御存じだと思うんですけれども、例えば、夜でも撮れるナイトショットとか、三十倍ズーム、こんなのも撮れますよとか、どんどん機能をつけていって、いわゆるフィーチャークリープと言われるんですけれども、使うかどうかもわからないような機能までどんどん盛り込んでいって、なおかつ、お値段聞いてびっくりみたいな、価格とスペックで勝負をしてきたがゆえにこのゴープロに後塵を拝してしまったという状況があります。

 このゴープロは、モニターもないし、何が写っているかもわからないんです、あけてみないと。ズームもないし、もちろん値段もそこそこするんですよ。これは三万円、四万円、こんなちっちゃいんですけれども、する。でも、それが今ユーザーに爆発的に受けて、一時、時価総額一兆円、株式公開したとき一兆円と。ソニーが今は時価総額大体五兆円ぐらいですから、短時間で、しかも少ない人数で立ち上げた会社としては非常に優秀な会社ではないかなというふうに思っております。

 まさにこれが、ライフスタイルから生まれた顧客のニーズを的確に捉えて、そしてそれが世界市場を席巻するという、非常にいい例の商品じゃないかというふうに思っております。

 商品ではなくてサービスというところでいいますと、最近日本でも進出してきておりますし、二〇二〇年までにはまだ四店舗ふえるというふうに言われております、スウェーデンの家具メーカーのイケア、これも日本の家具屋さんを思い出していただくとわかるんですけれども、大体、家具屋さんに行くと、たんす売り場、ソファー売り場、机売り場というのが全部分かれて、なおかつ、仕入れ先も違いますから、ベッドメーカーのデザインと色とサイズ、それがたんすに合わない、ソファーに合わない、家のコーディネートはめちゃくちゃみたいなのが日本の家具事情であったわけですけれども、このイケアがやったことは、サイズも色もデザインも全部モジュール化して、なおかつ、例えば猫を飼っている方がいたら、キャットラバーズというくくりで一つの部屋を丸ごとコーディネートしたのを売り場につくる。

 ですから、猫を飼っている人がイケアに行けば、あっ、こういうコーディネートをすれば猫も喜ぶし、家も汚れないし、例えば、傷に強いようなたんすであったりとか、猫が上って楽しいようなポールをつくるとか、それが全て同じデザインで一つの部屋をコーディネートできる。もう一つ隣の次のところに行けば、今度はバイシクルラバーズといって、自転車を乗る人が壁に自転車がかけられるような家具があったりとか、それも全てライフスタイルに基づいたコンセプト、コーディネートを提案し、それを顧客が喜んで買っている。

 これもやはり、ライフスタイルに基づいたサービスが新しく生まれたということであります。

 こういった事例を考えますと、まさにこのプレミアムフライデー、金曜日の三時に、それまでの、仕事をしていたいわゆる生産者の立場から消費者の立場に変わるわけですけれども、消費者の立場として消費者の時間を使い、本業、自分の仕事にフィードバックできるようなアイデアとか、あとは新規事業とか、あと、もしかしたら自分で会社を立ち上げるとかといったアイデアを探す時間、それは会社のためにもなり、皆さん従業員のためでもあるんですよといったメッセージが経産省の方からも私は必要だったんじゃないかなというふうに思っております。

 このライフスタイルマーケティング、まだまだ日本の企業はこの意識が低いと思うんですけれども、経産省としてどういうふうに捉えているか。その辺をお聞かせ願いたいと思います。

住田政府参考人 御指摘のとおり、我が国における消費の変化、これは世界的な変化でもあるわけでございますけれども、まさに消費者が主導で、消費の実際の中身、はやりあるいは売れ筋というものが変わっていくという時代になっているわけでございますけれども、そうした中で消費者のライフスタイルを分析をする、あるいは消費者の視点に立って商品、サービスの開発を行うということは、消費者の満足度を高めるということはもちろんでございますけれども、企業の競争力の観点からも極めて重要であるというふうに考えてございます。

 経済産業省といたしましては、こうした認識のもとで、二〇一三年度に続きまして昨年度二〇一六年度にも、消費インテリジェンス研究会なる研究会を開催をいたしました。この研究会の中では、消費者の理解のあり方といったようなものについて検討を行いまして、ことしの三月に報告書を取りまとめたところでございます。

 その中では、最近の消費者の意識の変化というものを踏まえまして、より一層消費者の理解に資するような新しい視点、どういうふうに消費者の行動あるいはメンタリティーが変化をしてきているのかというような視点を提示をするとともに、それをベースとした企業の側の経営のあり方、あるいは消費者起点のイノベーション、イノベーション全体が消費者起点になっているということも含めて、消費者起点のイノベーションのあり方といったようなことについて議論をさせていただいたところでございます。

 また、経産省といたしましては、これは消費者庁さんとも協力をしながら、消費者関連専門家会議、ACAPという会議がございますが、あるいは日本産業協会といったような、消費者志向経営に取り組む団体あるいは企業と連携を進めておるところでございますし、また、消費者団体と定期的な意見交換を通じて、消費者起点の政策立案というものを行うよう努めておるところでございます。

 その際にも、先ほど申しました消費インテリジェンス研究会のまとめといったようなものを共通のベースにしておるところでございます。

 そのほか、SNSでございますとか、先ほど御指摘のございましたソーシャルメディアなどを使って、消費者のニーズを把握をして商品やサービスの開発を行っている先進事例、これを抽出をして、集めてちょっとした冊子にしまして、こうした例があるんですよということを幅広く普及をしていこうということもやってございますし、そうしたことに類する取り組みを行っております団体、例えば日本ヒーブ協議会さんなんかとの間での連携も進めておるところでございます。

 経産省としましても、この消費者起点ということは極めて大事だと思っておりますので、今後さらに、消費者志向経営といったようなものの広がりを後押ししていきたいというふうに考えておるところでございます。

島田委員 ありがとうございます。

 やはりこういうプレミアムフライデーのような取り組み、欧米の企業、もう既にやっているようなところもあります。その事例もちょっと紹介させていただきたいんです。

 グーグルは、投資の基本的なフレームワークとして、七〇・二〇・一〇、セブンティー・トゥエンティー・テンというフレームワークを使っている。採用しております。どういうことかというと、持っているリソース、人、金、物の七〇%は本業のコアビジネスに、二〇%は本業に近いところにある成長分野に、そして一〇%はムーンショット、これは月に人を送り込むような、実現性は非常に低いんだけれども、実現したときにはリターンも大きい。この七〇・二〇・一〇の投資方針でグーグルはやっている。

 これも簡単にできているわけではなくて、実際にCEOの方は、社員にこの二〇%の成長する関連分野を探せというような事業も非常に難しい、なおさらムーンショットの一〇%はもっと難しいんだけれども、我々がやらなければ他社に先を越されてしまうという覚悟を持ってこの七〇・二〇・一〇に取り組んでいるということで、実際、グーグル社内では、この二〇%、いわゆる五分の一ですよね、ですから、月から金まで働くのであれば、そのうちの五分の一の一日は、本業とは違うことをやっていいですよ、やりなさいというふうに取り組んでいる。その中から新しいビジネスチャンス、ビジネスアイデアを生み出そうとしています。

 あと、スリーエムという、ポスト・イットとかをつくっている会社ですけれども、このスリーエムは二つの一五%の取り組みというのをやっていまして、一つの一五%は、研究開発のうちの一五%は基礎研究に振り分けるんですが、もう一つの一五%というのは、業務時間の一五%は、会社が命じた仕事ではなくて、自分の好きな研究や開発に費やすよう奨励している。例えば、これで会社にいる必要もないし、外に行ってもいいし、自由に一五%の業務時間を過ごしていいですよと。

 実際にこれも、この活動から、日本人の技術者の方が医療用テーピング素材の通気性を向上させるような商品を開発しまして、この一五%取り組みの、世界的にやっていると思うんですけれども、世界の中でナンバーワンの賞をとったということですし、実際、このスリーエムは、営業利益率二四%と非常に高い会社になっております。日本の製造業が大体平均一〇%ですから、決して、このような取り組みをしたからといって生産性が落ちるわけではないということがわかると思いますし、むしろ、こういう取り組みをするからこそ生産性が上がるのではないかなというふうに思っております。

 今回、プレミアムフライデー、働かなくて本当にいいのなんという記事が「正論」に出ていまして、早帰りできるのは経営状態が良好で余裕のある大企業の正規社員だけだ、日本の中小企業はデフレ不況下で四苦八苦しているところがほとんど、そんなことが許されるわけがありませんというような評論家さんの意見もあるんですけれども、これは鶏か卵かで、こういうことができるから生産性も上がって、利益率も上がって、企業も大きくなっていくのか、もしくは、会社が小さいからこういう取り組みができないのか、どっちが正しいのかをしっかり判断しながら、やはり企業側も、このプレミアムフライデーの持っている価値、ポテンシャルをもう一回考える必要があるんじゃないかなというふうに思っております。

 ということで、ライフスタイルマーケティング、そしてこのプレミアムフライデーのことをいろいろ話させていただきました。大臣、感想をひとつお伺いしたいと思います。

世耕国務大臣 これからいろいろな変化が起こってくる、しかも、消費が物から事へと変わってきている中で、やはり、会社の中へ閉じこもって、研究室の中へ閉じこもっているだけでは商品は本当に開発できないというふうに思います。それをどういう形で会社へのみ込んでいくかということを考えていくのが、経営者にとって重要な戦略ではないかと思います。

 これはいい例になるかどうか。経産省でもこの間、四月に、アジアから経済担当大臣が十名ほど、AEMロードショーという形でお見えになった。三泊あるわけですよね。昼間の視察先はみんな仕事だからどんどんいい視察先が出てくるんですけれども、やはり夜も重要でして、夜、やはり懇親をどういう場でやるか、ちょうど桜の季節ですから。ところが、上がってくる案はもう全然つまらないんです。もちろん、予算はそんなにありませんからそんな豪華なことはできないわけですけれども、ひねりがきいてないというか、普通のホテルか会館で食事会を三日続けてやるようなアイデア。やはり、経産省の人も余り外へ出て遊んでいないから全然アイデアが出てこない。私は宴会に関してはいろいろなノウハウがあるので。

 やはりちょっと一ひねりしたのをやったら非常に喜んでくれて、それが結局、本当に仲いい関係になって、この間のAPECでもRCEPでも非常にそのことがまたプラスになっていい感じになったということもありますから、やはりそういう、何というんですか、見聞を日ごろから広めておいて、そしてそれを仕事上で生かしていくということも非常に重要なんだろうというふうに思います。

 今、スリーエムのお話をされました。やはりさすがだなと。スリーエムというのはもともとミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリングですから、ミネソタ鉱工業株式会社だったわけですが、それが今やポスト・イットとか、いろいろな分野に広げて生き残ってきているわけですよ。長い歴史のある会社、それがまた今度の変化にも対応していくようにそういう社員の働き方を導入しているというのは、これはやはり、さすが長い間変化に耐えてきたというか、変化に対応してきた会社だなというふうに思った次第であります。

 こういう中で日本の企業はどうしたらいいか。やはりダイバーシティーを取り入れるしかないと思いますね。

 例えば、女性用のグッズを売っていた会社で、女性が働きやすい環境を整えて女性の社員比率が高まったら、やはり、女性目線の商品が開発されて売り上げ増につながったというような話があります。高齢者に関しても同じような話があるわけでありまして、やはり、経営とか、あるいは社員の構成にダイバーシティーをしっかりと取り入れていくということが一つだろうというふうに思いますし、あるいは、兼業、副業を認めるということで社員が別の体験をしてきて、そのことを本業に生かす。兼業、副業を入れている会社にヒアリングをかけますと、意外とそれが本業に役に立っているというような反応も返り始めているわけであります。

 まだそこまでいかないかもわからないですけれども、プレミアムフライデーも、ただ単に早く帰ってというだけではなく、ただ単に何か物を買えというだけではなくて、やはり、事の体験ということも含めて、私も一回目はカーリングをやらせてもらいましたけれども、ともかくいろいろな見聞を、ぜひ夕方に会社を出て会社の外で広めてもらって、そんな中で、あっ、これってもしかしたらうちの会社でやるとこういうふうにやれるんじゃないかなみたいなアイデアを得てきて帰ってきてもらうという、そういうふうにつながっていけばなというふうに思っています。

 いずれにしても、私ももともとばりばりの大企業で十三年間仕事をしていましたが、やはり日本人はそろそろ、何時間会社にいたかとか何年間勤続しているかで評価されるのではなくて、いろいろな人脈とか、いろいろな外での体験とか、そういったことが評価をされるようなそういう企業文化をつくっていかなければいけないということを、今のゴープロのお話なんかも伺って、つくづく思っている次第でございます。

島田委員 ありがとうございます。

 ダイバーシティーということでありましたけれども、それは、リクルーティングのあり方とかも考えながらこれはぜひ進めていっていただきたいと思います。

 あと、今は経産省が新産業構造ビジョン、この骨子を策定して、今月中に詳細が発表されるということでありますけれども、やはり机の上で頭を突き合わせていても出ないアイデアはたくさんありますので、たまには、こんな骨子をつくるときも、どこか外へ行って、川のほとりでやるとか、ちなみに私のいたレッドブルの本社は湖のほとりにあって、従業員がアイデアに詰まるとみんな湖に遊びに行ったり、そこで研修をやるときは、一週間ぐらい行くんですけれども、世界じゅうから集まる全員がアイスホッケーをさせられるんです。それをやりますと、カナダとかの社員はもうばんばんやるんですけれども、アフリカとか、氷も見たことないようなのもやるので、非常にどたばたがおもしろかったり、逆にそれがその後のお酒の場で話題になったり、非常にチームビルディングもよくて、そこからいろいろなやわらかいアイデアが生まれてくるようなということも私自身経験していますので、ぜひ、こういった企業風土を日本の企業もつくっていっていただきたいというふうに思っております。

 あと三、四分ありますので、最後、またおもしろい事例を紹介させていただきたいと思います。

 今、日本で変な名前の漢字ドリルがはやっているのを皆さん御存じですかね。もし知らなかったら、また本屋さんの方に行っていただきたいと思いますけれども、あと、アメリカの方ではこれが今ベストセラーになっていまして、単純に言うと、民主党、アメリカの民主党ですよ、民主党に投票する理由集みたいな本で、これがアマゾンのトップセラーになりました。

 ページを開いていくと、目次で、例えば経済とか外交とか人権とかといった、章分けされています。どんな本なんだろうなと思って開いていくと、全部白紙なんです。アメリカの民主党が政策がない、つまり投票する理由がないですよということを共和党側がやゆしてつくった本で、これがしかも九ドル九十九ですから、大体千円強で売られて、なおかつこれがトップセラーになっちゃうんですよ。これもやはり、企画会議で、机の上で会議していたらこんなヒット商品は多分生まれなかっただろうというふうに思っておりますし……(発言する者あり)真っ黒々の。ありがとうございます、真っ黒々でいきますか。

 インダストリー四・〇というと、非常にロケットサイエンティストの世界のような話になってしまうかもしれませんけれども、逆にビジネスのアイデアというのは、世の中のいろいろなところに転がっているんだということを改めて申し上げさせていただいて、そのためにプレミアムフライデーをまた有効活用していただくような流れを経産省の方でつくっていきたいというふうに思っております。

 以上で終わらせていただきます。

浮島委員長 次に、中根康浩君。

中根(康)委員 おはようございます。民進党、中根康浩でございます。

 きょうは、一般質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 それでは早速質問に入ってまいりますけれども、まず、報道によればということでありますけれども、安倍総理は、先日、官邸でWTOのアゼベド事務局長と会談をされたということで、経済成長や雇用の創出に向けて、保護主義は解決にならないとして、日本とWTOが協力して自由貿易を推進していく方向で一致したとされております。

 一方、世耕大臣が出席したベトナム・ハノイでのAPECの貿易担当相会合、あらゆる形態の保護主義に対抗するとの決意を再確認すると議長声明に明記をされたということですよね。

 しかし、この議長声明というものは、これまでの全会一致による閣僚声明から事実上格下げをされたもので、なぜそうなったかといえば、これは、米国第一主義を掲げ、貿易赤字削減を目指し、反保護主義に抵抗する米国への配慮をした結果、本来閣僚声明というものをつくりたかったんだけれども、議長声明にとどめざるを得なかった、こういうことのようであります。

 二十六日からは、今週末には、イタリアでのG7サミットが開催をされるということでありますが、昨年の伊勢志摩サミットでは明記をされた保護主義に対する内容が共同声明に入らない見込みだとされております。これにはやはり、自国の貿易赤字削減のためには保護主義も辞さないというトランプ米大統領の意向が強く反映しているとも言われております。

 我が国は、WTOでは自由貿易を推進すると総理みずからおっしゃりながら、APECとかサミットではトランプ大統領の保護主義にある意味屈服してしまうという形にもなってしまうのではないかというようにも感じるわけであります。

 米国内に工場をつくらないなら高い関税を払えと言ったトランプ大統領、今もこの考え方に変わりはないように思います。今までもたびたび質問をしてまいりましたが、世耕大臣が丁寧に説得をされて理解が深まっているという御答弁もいただいてきたわけでありますけれども、トランプ大統領は相変わらず日本に対する貿易赤字を大変問題視しているような感じがいたします。特に、対日貿易の八割は自動車関連だとして、日本の自動車産業をターゲットにしているように見えます。

 例えば、NAFTAの見直しにも言及しているわけでありますが、日本の自動車関連企業はメキシコにおける追加投資をこういう状況の中でためらっているということも聞こえてまいります。工場を自前で建てずに、レンタル工場を利用してしばらく様子見をしているとも聞きます。

 NAFTA、北米自由貿易協定により、部品の六二・五%を域内で生産されたものにすれば関税なしで輸出できる、あるいは、アメリカへのアクセスのよさ、メキシコは四十三カ国とFTAを締結してヨーロッパや中南米へも輸出できる、労働力がアメリカの六分の一とコストが安い、こういうメキシコ進出のメリットがあるわけでありますが、トランプ大統領が、NAFTAをアメリカ製造業の雇用を奪った悪者だと位置づけて、NAFTAの見直しをしようとしているわけでありまして、見直しの内容によっては、日本企業のメキシコ立地、進出のメリットが大幅に低下してしまうことになりかねません。

 さらには、いわゆる国境調整税制というものがアメリカの議会で検討されているようでありまして、輸出に係る売り上げは課税ベースから外す、輸入原材料は課税ベースに入れる、このことにより、部品を含めて米国内で生産しなければ価格面で不利になる、米国からの輸出は有利になる、このいわゆる国境調整税制でありますけれども、こういう国際会議をめぐる動き、あるいは米国内での税制をめぐる議論というものがあります。

 米国の、NAFTAの再交渉、交渉決裂ならば脱退も辞さないという構え、国境調整税制の導入などの動き、こういうことに関して、日本企業に対する影響はどのようなものか、あるいは、週末のG7サミットにおける自由貿易推進、皆が表明されるのか、あるいは保護貿易抑止というものがきちんと表明されるのかというようなことについての大臣の今のお気持ち、決意をお聞かせいただければと思います。

世耕国務大臣 一回の質問で大分いろいろなことをてんこ盛りで言われたので、答えるのがなかなか大変なんですが。

 まず、自由で公正な共通ルールに基づく自由貿易体制というのは、これは世界経済の成長の源泉でありますし、通商国家として成長してきた日本にとっては、これはもう本当に生命線ともいうべきものでありますので、当然、今週の月曜日、アゼベドWTO事務局長による表敬訪問の際に安倍総理が表明されたとおりだというふうに思っておりまして、しっかりと推進をしていかなければならないと思っています。まさに、この間のAPEC貿易大臣会合においても、私の方から強調をさせていただきました。

 また、いよいよ今度、G7サミットが間もなく開会をいたします。トランプ大統領が初めて参加ということになるわけでありますけれども、まだこれから議論ですから。やはり、G7というのは、本当に首脳間ですごく議論をして、最後、まとまったものが出てくる。何もこれは、ほかのマルチとは大分違って、余り予定調和的なところはないわけでありますし、今回はトランプ大統領が初参加ということですから、ある意味、やってみないとわからないというところがあります。

 その中で、もう今やメルケル首相に次ぐベテランになっている安倍総理に、結構、各国、トランプ大統領も、期待しているところがあると思いますし、なかなかまだトランプ大統領と十分なコミュニケーションの時間がとれていないヨーロッパの首脳から見ても、安倍総理が頼りだというところがありますから、まさに安倍総理がリーダーシップを発揮しながら、この自由貿易に関して、トランプ大統領も自由貿易を否定しているわけではありませんから、いい議論が行われていくのではないかなというふうに思います。

 この間のAPEC貿易大臣会合、これは、いわゆる共同声明というのが、二〇一一年以降、毎年出てきたわけでありますが、今回は、二〇一一年以来、久しぶりに議長声明という形になりました。

 これは逆に、トランプ政権ができて、そしてブレグジットが行われて初めてのAPEC貿易大臣会合なんですね。私は、下手したら紙は出ないと思っていました。あるいは、出るとしても、保護主義とかそういうのが完全に消えた、ほかのマルチの会合は既にそういうのが幾つか出てきていますけれども、そういうことになるかと思っていましたが、これは、みんなで膝詰めでしっかり話をした結果、一応、各国の立場に配慮したという形になっていますから、少し両論併記的なところはありますけれども、多角的貿易体制の重要性、そして保護主義への対抗、あるいはレベル・プレーイング・フィールドの確保などといった点が、これが多数の意見だったという形で盛り込まれて、少なくとも議長声明という紙が出たということは、私は、意義があったのではないか、議長国ベトナムは本当によく頑張ったんじゃないかなというふうに思っているわけであります。

 また、私は、一方で、共同記者会見でライトハイザー米国通商代表がおっしゃったことも傾聴に値する部分はあったと思いますよ。彼は、自分たちはいわゆる貿易をねじ曲げているような措置とかそういったものから国を守ろうとしているだけなのに、なぜ保護主義と呼ばれなきゃいけないんだということを記者会見でおっしゃったし、なるほど、そういう気持ちなんだなということは、私は、耳を傾けてもいいのではないかなというふうに思った次第であります。

 あと、NAFTAであります。NAFTAについては、USTRがこれを開始する意図を五月十八日に米国議会に通知したことによって、夏以降、メキシコとカナダとの再交渉が開始されるだろうというふうに思っております。

 国境調整税については、下院共和党が導入を検討している国境調整税に関しては、トランプ大統領が四月に発表した税制改革案には今のところ盛り込まれていないという状況であります。

 今回、APECの場でも、メキシコのグアハルド経済大臣、そしてカナダのシャンパーニュ国際貿易大臣とそれぞれ会談を行って、情報交換を行いました。私も、NAFTAの交渉を彼らがどう考えているか、どういう戦略で臨もうとしているのか、非常によく理解できた。余り詳しいことは言えなくて申しわけないですけれども、非常に踏み込んだ話し合いをさせていただきました。

 その中で、私の方から、やはりNAFTAの問題というのは日本の自動車産業に非常に影響があるので私は非常に注視をしているし、できれば適宜情報提供をお願いしたいということも申し入れて、両方とも、そこはよくわかっている、日本が気にしているということはよくわかっているという反応が返ってきているというところであります。

中根(康)委員 最後のところ、日本が気にしているということはよくわかっているということであるならば、悪い方向に行かないように、ぜひ、世耕大臣も安倍総理も、日本の自動車産業はまさに日本の産業の中核でありますので、それが不利になるようなことになると雇用や経済全体に大きな影響がもたらされますので、よろしくお願いいたします。

 大臣はG7サミットに行かれる……(世耕国務大臣「いや、行かないです」と呼ぶ)行かないですか。行かないとすると、ちょっと心配ですよね。

 安倍総理は恐らくアメリカとそのほかの国との橋渡し役を期待されているんだろうと思いますけれども、余りトランプ大統領の気持ちをそんたくしてばかりで、ほかの自由貿易推進国のことを考えてもらえないというようなことになってしまうと、これはまさにみずから首を絞めるということになりますので、強い気持ちで臨んでもらわないといけないということを、僕がこんなことを言ったって伝えてもらえないと思いますけれども、どこか何か機会があったら総理に伝えておいてください。よろしくお願いいたします。

 次に、電気自動車について伺ってまいりたいと思います。

 電気自動車の歴史は意外に古いということのようでありますが、これは、アメリカで百年以上前に鉛蓄電池を使ったEVが販売されたらしいです。しかし、その後、ガソリン車の性能と価格に対抗できずに淘汰されてしまったようでありますが、今日、環境意識というものを軸に、本格的な普及の時代を迎えようといたしております。特にアメリカのカリフォルニア州では、もう皆さん御案内のとおり、二〇二五年までに百五十万台の電気自動車導入を目標にしているということであります。

 自動車メーカーには、いわゆるゼロエミッション車制度、ZEV制度を設けております。この制度は、ゼロエミッション車を多く生産、販売した自動車会社がもうかる、こういう仕組みになっているようでありますが、その米国のカリフォルニア州では、二〇一八年から排ガスゼロ規制によりハイブリッドはエコカーの対象外になる、二〇五〇年までに段階的に新車は全てEV、FCV、PHVということになっていくようであります。

 中国でも、大気汚染問題で電気自動車が主流になっていくようであります。二〇二五年には、約三千五百万台と見込まれる販売台数のうち、電気自動車を含めた新エネ車を七百万台にするという数値目標を立てていると聞きます。

 この新エネ車、電気自動車の流れはとまらないということであろうと思います。

 ここで、それは環境にいいということはいいんですけれども、他方、これは数え方にもよるんでしょうけれども、ガソリン車だと十万点の部品がある。電気自動車だと、少ない場合だと百点ぐらいの部品でつくれてしまう。千分の一に部品点数が削減をされるということになります。例えば、エンジンがモーターになるとか、マフラーとか燃料タンクとか点火プラグとかチューブの類とか、そういったものが不要になる。つまりは、ガソリン車から電気自動車化によって自動車産業に大きな変革が生じてこざるを得ないということになります。

 これまでガソリン車部品をつくっている企業に対する経産省の考え方がどういうものかということ、また、その一方で、私の地元にもフタバ産業さんというマフラーをつくっている会社があって、その役員さんと、この間、岡崎鉄工会という業界団体で隣り合わせになったときに、そういう話をしたときに、確かにマフラーがなくなってしまうのは痛いんだけれども、でも私たちはという話で、まだまだガソリン車の規制がなくてニーズが大きいインドなどの新興国にどんどん売り込みをかけていこう、こういう思いなんですよなんということをおっしゃっておられたわけでありますけれども、新興国が頼みとなるということでありますが、こうした地域への進出に対する支援はどのようになっているかということであります。

 自動車のEV化、FCV化が進むことによる自動車関連産業への影響と対策について、そして、国内の自動車部品メーカーが新興国に進出、海外で販路を開拓するために経産省としてどのような支援を行っていくか、あわせてお伺いをしたいと思います。

糟谷政府参考人 CO2排出量の削減などの観点から、電気自動車を含みます次世代自動車の普及が世界的に進んでいくというのは、もう待ったなしの動きだというふうに認識をしております。

 こうした中で、電動化が進んでいけばエンジン関係の部品の需要が減少するのではないか、こういう懸念の声、非常に我々も共有をしているところでございます。

 他方で、エンジンといいましても、次世代自動車の中でも例えばプラグインハイブリッド自動車、これはエンジンが必要なわけであります。そういう意味では、次世代自動車の中でも、プラグインハイブリッド自動車、それからハイブリッド自動車もそうですけれども、エンジンを搭載することが必要になります。

 それから、新興国の需要、これは、もともとのエンジン車を含めて、やはりまだまだ伸びていくところがあります。

 二〇一二年に、IEA、国際エネルギー機関が行った将来予測によりますと、エンジンを搭載した車の新車に占める比率は徐々に減っていくものの、新興国の需要がふえることから、台数的には、二〇四〇年ごろまで、エンジンを搭載した車の台数、新車の台数はふえるというような予測もございます。

 もちろん、電動化だけではなくて、カーシェアリングという動きも進んでまいりますので、余りこれで楽観を決め込むのはいけないと思いますけれども、一つだけ確実に言えますことは、エンジン関連の部品の需要が減少するということであっても、既存のエンジン関連部品産業の重要性が直ちに変わるわけではない、大きく損なわれるわけではないということであります。

 いずれにしましても、そういう意味で、時間的な猶予はあると考えておりますけれども、電動化が進む中で必要となっていくバッテリーやモーター、こうしたことの技術開発、電気自動車はまだまだガソリン車と比べますと航続距離も少ないということで性能の強化が必要でありますし、それが国際競争の鍵を握ってまいりますので、そうした技術開発等も進めて、電動化におくれをとらないように対応していきたいと思います。

 それから、国内の自動車部品メーカー、特にエンジン周りの部品をつくっておられる部品メーカーの方々が、海外、特に新興国での販路を開拓していく上で、経産省としてどういう支援をするのかということでありますけれども、三つの段階に分けてちょっとお答えをさせていただきたいと思います。

 第一に、中小企業が海外展開に必要な情報を収集する段階でありますけれども、これにつきましては、ジェトロや中小企業基盤整備機構のセミナーやホームページなどでの情報提供、また、ミラサポなどを使った施策情報の提供、こうしたことを行ってまいりますし、また、全国の相談窓口やジェトロの海外事務所での相談対応も行ってまいります。

 二番目に、海外進出の計画や準備段階の支援でありますけれども、海外展開の戦略策定の支援ですとか、新商品、新サービスの開発やブランドづくりの支援、こうしたことを行う制度を活用して進めてまいります。

 三番目に、海外進出の段階でありますけれども、現地企業とのビジネスマッチングや展示会などへの出展の支援、ジェトロの海外事務所を通じた現地での法務、労務、知財問題の解決などへの支援など、海外進出の段階に応じたきめ細やかな支援を既に行っておりますし、これからも続けていきたいと思います。

 例えばジェトロでは、毎年、東南アジアで最大級の金型部品関連展示会への出展の支援を行っております。昨年は自動車関連企業を含めて四十社が参加をいたしました。また、中国においては、昨年、自動車部品商談会を開催いたしまして、累計で五十社以上が参加をしていただいたところであります。

 それから、海外に進出できないよという会社も中小企業の中にはおられます。そういう方々に対しましては、製品開発から販路開拓まで総合的な支援を提供するために、新輸出大国コンソーシアムを設立して対応しております。ジェトロやNEDO、中小企業などの支援機関を結集した組織でありまして、自動車関連企業を含めて、中小企業などのさまざまな課題やニーズに応じたきめ細かな支援を行っております。

 例えば、これを受けて、ASEAN向けの自動車部品の輸出に取り組んでいる自動車部品メーカー、中小部品メーカーの事例などが既にあるところであります。

 こうした施策をフルに活用いたしまして、引き続き、中小の自動車部品メーカーの海外市場獲得に全力で支援を進めてまいりたいというふうに考えております。

中根(康)委員 今、糟谷局長さんから丁寧な御答弁をいただいたわけなんですが、新興国だとか東南アジアだとか、こういう言い方をしているわけなんですが、アメリカも電気自動車、中国みたいな大市場もこれから電気自動車、こういうことになると、新興国、東南アジア、こういう範疇の中で、具体的にはどの国がまだまだガソリン車はいけるというようなターゲットになる、これは通告しておりませんけれども、御示唆いただければというふうにも思いますが。通告していないから難しいですか。どうですか。

糟谷政府参考人 国で申し上げるのは余り適当じゃないと思いますが、やはり、初めて車を買われる方、とにかく手ごろな価格で車を入手して乗りたい、そういう需要は必ずあろうかと思います。

 そういったところでありますし、また、先ほど申し上げましたように、次世代自動車については、プラグインハイブリッド自動車は、やはりエンジン関連の部品は引き続き必要になります。これについては、先ほどのアメリカのカリフォルニアの制度でもプラグインハイブリッド自動車は対象になっておりますし、中国でも同様だというふうに承知をしております。

 そういう意味でいうと、東南アジアのような新興国だけではなくて、プラグインハイブリッド用の需要ということでは、世界じゅうあらゆるところでまだまだ需要はあり得るというふうに考えておりまして、そういったところを着実に支援できるように取り組んでいきたいというふうに考えております。

中根(康)委員 では、電気自動車についてはこのあたりにとどめさせていただいて、次は、自動運転車ということになります。

 交通事故の減少、あるいは渋滞の緩和、運転者、ドライバーの疲労軽減、こういうことに大きく寄与するのが自動運転ということで、この自動運転の技術開発が急ピッチで進んでいるということでございます。

 今ある法律というのは、車は人が運転するものとしてつくられておりますので、自動運転車を普及させていく、こういうことになると、この自動運転をめぐる法律の整備を急がなくてはいけないということになるんだろうと思います。

 実は、けさの民進党のエネルギー環境調査会の勉強会でも、日揮の講師の方が、これからは、自動運転が普及していくと、高齢者とか障害者の方の移動支援に大きく役に立つ、病院に行きたい高齢者が自動運転を遠隔で呼ぶとすぐ、すぐというか、来てもらって、それで行きたいように行くとか、障害をお持ちの方が作業所とかに通うときもそういったものを使えるようになるんじゃないかというような話があったわけで、自動運転に対する期待はますます高まるばかりだということであります。

 この自動運転を普及させていくためにも、法律の整備ということが必要だということだと思います。道路標識や道路構造にかかわる道路法であるとか、交通規制とか運転免許だとか、安全運転義務にかかわる道路交通法だとか、自動車の構造、登録、整備、保安基準にかかわる道路運送車両法だとか、いろいろ例を挙げれば切りがないほど、車とか車の運転にかかわる法律はあるわけでありまして、交通事故を起こした場合の刑事責任、民事責任、行政上の責任に関するものなども変えていかなくてはいけないということになるのだと思います。

 自動運転が完全なシステムというレベル4とかいうところまでいくと、目的地を設定するだけで全ての操縦をシステムに代替してもらえるということになりますので、ハンドルから両手を放すことが普通ということになって、したがって、現行法の安全運転義務の内容は通用しなくなるのかもしれないということも考えられるわけであります。事故をしたときには、ドライバーに責任があるのか、システムに責任があるのか、所有者に責任があるのかというようなことも議論になっていくのかもしれません。

 繰り返しになりますが、インターネットでもそうなんですが、法律の宿命として、技術の進歩に法整備が追いつかないというのが現状、現実であろうかと思いますが、今の政府の方針を伺うと、二〇一七年度中に、要するに今年度中に、政府のIT総合戦略本部というところで自動運転車の普及に向けた法整備の方針をまとめる、関連法の改正案を二〇一八年度にまとめ、二〇一九年の通常国会への提出を目指すというふうに聞いております。そして、二〇二〇年に無人運転車による過疎地の移動支援などの実用化を目指すということのようであります。

 中国でも、自動運転技術を載せた車の割合を二〇二五年までに八〇%に引き上げる方針を打ち出しているというようにも聞いております。

 この自動運転の実用化について、海外との比較を含めて、我が国の制度環境をどのように認識し、また、今後どのような項目について検討を進めていくお考えか、お聞かせをいただければと思います。

矢作政府参考人 お答え申し上げます。

 自動運転に関する制度環境についてお尋ねがございました。

 自動運転の実用化に当たりましては、技術開発のほか、制度整備に取り組んでいくということが大変重要だ、このように認識してございます。

 このため、政府では、IT総合戦略本部におきまして、自動運転に関する総合的戦略として、官民ITS構想・ロードマップというものを毎年策定いたしまして、この中で制度整備の方向についてもまとめているところでございます。

 こうした中、公道実証のための制度整備というのが着実に進んでおると考えてございまして、例えば、ハンドルあるいはアクセルペダル等がない、こうした車両の公道実走、公道走行が認められますよう、車両の保安基準を改正するなどということをしてございまして、我が国においては、世界各国の取り組みと比較いたしましても、公道実証に取り組みやすい制度環境というのが整ってきているのではないか、このように認識してございます。

 他方、高度な自動運転の実用化ということに関した今の制度整備につきましては、まず、道路交通に関する国際条約、ジュネーブ条約というのがございまして、これがそもそもドライバーの存在を前提としている、こうした条約になってございます。こうしたものとの整合性をどのように図っていくかということを各国が今議論しているといった現状にございます。

 そうした意味におきまして、今、海外において、一部、高度な自動運転の実現に向けました検討というのは進められておりますけれども、現時点では、高度な自動運転を本格的に可能とする制度というのは世界的にも存在していない、このように認識してございます。

 こうした中で、我が国といたしましては、実用化に向けた制度検討に向けて、まず、これも、世界をリードする、こういったスタンスで国際条約に関する議論に積極的に取り組むとともに、国内の制度整備の検討を進め、二〇二〇年までの高度自動運転の実現を目指すべく、今年度中を目途に、IT総合戦略本部におきまして、政府全体の制度整備の方針を取りまとめるということにしてございます。

 具体的には、ドライバーによる運転を前提としたこれまでの交通関連法規というものを、システムによる運転も想定した体系に向けて大幅に見直すことといたしておりまして、例えば、車両の安全基準のあり方でございますとか、あるいは、自動運転を運用する者が守るべき要件などを定める交通ルールのあり方でございますとか、あるいは保険等の責任関係でございますとか、こういった多岐にわたる項目を政府一体で検討してまいりたい、このように考えてございます。

中根(康)委員 計画しているスケジュールに沿って、順次、環境整備、制度整備を進めていくということでありますけれども、日本の自動運転の普及のというか、そういう研究とか検討とかということも含めて、スピード感というのはほかの国に比べてどうなんですか。これは前へ行っている方なんですか、それとも中くらいなのか、まだちょっと後ろの方にいるのか。どのあたりに位置づけられるんでしょうか。

矢作政府参考人 お答え申し上げます。

 現状、先ほど申し上げましたように、まず、国際条約からして運転者を前提とした体系になっている、それをもとに各国の法制度も成り立っているわけでございまして、ある意味、今、横一線の中でいろいろな議論をしている。

 こうした中で、我が国としては、今積極的にアクションをすれば世界をリードできるのではないか、こうした意気込みでIT総合戦略本部におきましてスケジュールを組み立てて議論している、こういうことでございます。

中根(康)委員 法律などの分野で国際標準というようなことがあるのかどうかわかりませんけれども、ぜひ、国際社会をリードするようなスピード感で進めていっていただきたい。日本はオリンピック、パラリンピックという一つの大きな節目がありますので、そこを目標にということはあるので、ぜひ、このことについては、そこを目標に頑張っていただければというふうに思います。

 また中国の話を申し上げますが、中国の二〇一六年の新車販売台数は、二〇一五年比で約一四%増で、約二千八百三万台で世界一だということのようであります。販売台数がふえた理由の一つは、二〇一五年に小型車の取得税率を一〇%から五%に引き下げたことが大きな要因だということも言われております。

 振り返って、我が国はどうかということでいうと、自動車取得税は消費税を引き上げるときに廃止するということになっておりますけれども、しかし、自動車税に環境性能割を導入して、いわゆる税制中立的なものになってしまいかねない、こういうことであります。

 ユーザー負担の軽減にはほど遠い状況である、こういうことでありますけれども、改めて、平成二十九年度の税制改正大綱を読んでみました。平成二十八年十二月八日に、与党、自民党、公明党が取りまとめたものでありますけれども、今からお尋ねしても、経産省として解釈する立場にないということであるということはわかっておりますけれども、しかし、政府・与党一体ということの中で、経産省としても、何らかの解釈をしないと政策の立案もできないということでしょうから、何らかの解釈をしているはずだという前提に立ってお尋ねをする次第でございます。

 この税制改正大綱の中の「車体課税の見直し」という項目の中にある文言について幾つかお尋ねをいたしますけれども、例えば、エコカー減税について言及されたところなんですが、「道路等の維持管理・更新や防災・減災等の推進に、国・地方において多額の財源が必要となることが見込まれる。今後、適用期限の到来にあわせ、見直しを行うに当たっては、政策インセンティブ機能の強化、実質的な税収中立の確保、原因者負担・受益者負担としての性格、応益課税の原則、市場への配慮等の観点を踏まえることとする。」この部分なんですけれども、かねてから車体課税については、ユーザー目線での負担の軽減、ひいては、内需の拡大、雇用の創出、地方創生、こういう観点から見直しを図るべきだし、そもそも課税根拠が失われているはずだと申し上げております。

 車の税金の中だけでつじつまを合わせようとするから、税制がゆがみ、ユーザーの負担が重いままになっているということも申し上げているわけでありますが、にもかかわらず、この税制改正大綱の今紹介をいたしましたところには、道路の維持管理等を名目に、自治体の財源確保優先という考え方や、ユーザーに道路整備費を押しつける、こういう意味合いのものが入っているように思われます。

 また、消費税率一〇%への引き上げというところに書いてあるところは、「自動車をめぐるグローバルな環境、自動車に係る行政サービス等を踏まえ、簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減、グリーン化、登録車と軽自動車との課税のバランスを図る観点から、平成三十一年度税制改正までに、安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。」

 ここは関係者が一番注目しているところでありますけれども、ここにも、自動車に関しての環境問題とか行政サービスに係る財源については車のユーザーが負担をするというようなことに読み取れるような、自動車ユーザーが環境コスト、行政サービスコストを負担する、こういうようなことが書かれているようにも見えるわけでありまして、こういうことが書かれていては、国民は、いつまでたっても、払わなくてもいい税金を払うことになってしまうということであります。

 このあたりのところは、毎年、経産省や財務省、総務省との調整がなかなか困難になる、激論が交わされる、ことしも恐らく年末に向けて同じような光景が繰り返されていくということになるんだろうと思いますけれども、こういった文章、税制改正大綱の書きぶりに対して、どのように経産省として解釈し理解しているか、車体課税の見直しについて、どういう考え方で次の税制改正に臨んでいくかということであります。

 このあたりのところを、ぜひ今のお考えをお聞かせいただければというふうに思います。

糟谷政府参考人 与党の税制改正大綱をまとめられるに当たりまして、いろいろな御意見があり、その御意見を踏まえた大綱に取りまとめられたというふうに理解をしております。

 例えば、エコカー減税について引用されたところにつきまして、「政策インセンティブ機能の強化」なんという言葉があるわけですけれども、昨年末、エコカー減税について議論がありましたときに、現在のエコカー減税の対象車、新車の九割以上になっている、ほとんどの車が対象になっている中で、本当にエコカーを促進するようなインセンティブがあるのだろうか、そんな議論もあったところであります。端的に言うと、もっと絞り込むべきではないか、そういう御意見でありました。

 それからまた、エコカー減税による減税の額が大きくなり過ぎていて、これでは税収に穴があいて非常に大変だというような御意見もありました。

 それから、目的税ではないにせよ、道路を整備したりするための費用というのはますます必要になる、そういったことの、道路の整備とか更新をするための費用がますます必要になる、そんな御意見もありました。

 そんな議論を総合的に踏まえてそういう文言を取りまとめられたというふうに承知をしております。

 他方で、エコカー減税、急激な対象絞り込みを行うことになれば、これは新車の販売に大きな影響を与えることになる、今まさに消費を喚起しなければいけないときに過激な対象の絞り込みということはいかがなものか、そんな話も自動車業界を中心としていろいろとありましたし、我々もそういうことを申し上げました。そういうことを受けて、「市場への配慮等の観点を踏まえる」というような言葉も盛り込まれたというふうに考えております。

 そういう意味では、さまざまな、いろいろな異なる立場からの声を総合的に組み入れて大綱を取りまとめられたというふうに理解をしております。

 いずれにしましても、この大綱で、平成三十一年度税制改正までに、自動車の保有に係る税負担、つまり車体課税の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずるというふうに明記をされたわけであります。

 車体課税については、これが複雑であって、負担水準が高いというユーザーの本当に切実な声があるというふうに我々は考えております。また、自動車関連産業が生み出す消費や雇用、生産基盤などの実体経済をしっかりと支えていく、維持していく、そういうことも必要であるというふうに我々は考えておりまして、先ほど読み上げさせていただきました大綱の文言に従って、車体課税のユーザー負担の軽減に向けて、しっかりと税制改正が実現できるように検討をさらに進めて、また、新たな要求をつなげていきたいというふうに考えているところであります。

中根(康)委員 大体、税制改正大綱というものは、玉虫色で、どうとも読めるような、総務省、財務省、経産省、それぞれが解釈できるような文言になっているということでありますが、ここは思い切って、今局長が最後の方に言われた、自動車を売りやすく買いやすくするということによる雇用の創出効果や内需拡大、内需刺激策、刺激効果、ここに目を向けないと、中国やアメリカにどんどんおくれをとってしまうということになります。

 今から少し申し上げますが、人口減少ということでそもそも消費が、内需が減るということに対して、自動車に対する国民のニーズというのはまだまだあって、さっきから申し上げておりますように、電気自動車、水素自動車、自動運転車、生活には、あるいは産業には必要不可欠なものでありますし、生活や産業を豊かにしていくためには、さらに期待が高まっているところであります。

 自動車に関する税制のあり方というのは今後の日本経済の鍵を握るところだと思いますので、税収は一旦減っても、回り回って結局ふえるということは恐らく見込めるんだろうと思いますので、そのあたりの研究も十分やっていただきながら税制改正に臨んでいただきたいというふうにお願いを申し上げておきます。

 それで、最後に、きょうは財務省さんにも来ていただいておりますが、デフレの原因は何かということなんですが、やはり人口減少ということが最大の理由だというふうに思うわけであります。

 人口が減れば消費は減少する。特に若者、生産年齢人口が減れば内需は減退をする。高齢者は次第にいわゆる断捨離の様相を呈してくるわけでありまして、家は建てない、車は買いかえない。例えば、我々が今着ているスーツなんかも、まあ死ぬまでにそう何着も必要ないだろうということで買い控える。こういうことになっていくわけであります。

 また一方、長生きのリスクということで、八十歳の方が九十歳、百歳、百十歳まで生きるということは、幸せなことではありますけれども、その間に病気になったり、障害を負ったり、認知症になったり、こういうリスクもあるわけで、そのために、それに備えてお金をためておかなければならない、使い切るわけにはいかないということになります。

 その一方、若者は、子育てにお金がかかる、親の介護にお金がかかる、自分の暮らしの充実、自己実現にお金がかかる、こういうことにもなるわけでありますので、内需拡大のためには、いわゆる老老相続、九十歳の方が七十歳の方に相続をするということではなくて、なるべく早く、若者世代がお金が必要なときに若者世代にお金が移転するように、相続よりも贈与だ、こういう形に税制を変えていく必要があるというふうに思うわけであります。

 時間が来ておりますので、相続よりも贈与だ、こういう考え方に対して財務省はどのようにお考えになるか、お聞かせいただければと思います。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 贈与税につきましては、若年世代への早期の資産移転を図る観点から、相続時精算課税制度の導入を平成十五年から、それから、直系尊属から二十歳以上の者への贈与の税率の軽減、これを平成二十七年から、などの措置を講じているところではございます。また、同様の観点から、住宅や教育、結婚、子育てといった、使途を限定した贈与税の非課税措置につきましても、特例として時限的に設けているところではございます。

 ただ、これらの非課税措置につきましては、もう御案内のとおりですけれども、政府税調の論点整理などにおきまして、資産が家族内にのみ非課税で継承されて格差の固定化につながりかねない面もあることから、今後、期限の到来を見据えて見直しを行っていく必要があるといった指摘もございます。

 いずれにいたしましても、今後の資産課税のあり方につきましては、今の論点整理におきまして、資産再分配機能の適切な確保、あるいは、資産移転の時期の選択によって中立的な制度の構築といった観点から検討する必要があるとされておりまして、こうした観点から、近年の改正の影響も踏まえながら、しっかりと検討してまいりたいと考えております。

中根(康)委員 終わります。

浮島委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 民進党の篠原でございます。初めて一般質疑で質問させていただきます。

 中根さんは、一般質疑というと、そうじゃないときも自動車、自動車ということを出しています。私も実は、日本のちょっとゆがんだ産業構造それから貿易構造、それが社会構造をゆがめているということで、世耕大臣にそのことを問いただすべく準備を進めていたんです。経産省の事務方の皆さんには御迷惑をおかけしておると思いますが、その数字をつくったりしていたんですが、先週の中ごろ、急遽、私もハノイに行けと党の方から命じられまして、参りました。

 TPP11、変な名前がついています。そこに行きまして、我々は野党ですし、政府高官と会ったりとか意見交換はできないんですけれども、NPOと僕はずっとやってきたんです。NPOも余り存在がしないんです。ですけれども、慌ててアポイントをとりまして、いろいろ会ってまいりました。

 ですから、そのことについて集中的に質問させていただきたいと思います。

 ですから、きょうは内閣府それから農林水産省、外務省等に来ていただきまして、御迷惑をおかけしておりますけれども、ぜひきちんと答えていただきたいと思います。

 まず、ハノイ会合の閣僚声明をちょっと見ていただきたいんです。資料、表裏になっております。一枚目のこの表はなかなか時間がかかったんですけれども、これは後でどっぷり説明いたします。簡単な閣僚声明、簡単なと言いましたけれども、本当に簡単でして、これだけなんです。さんざん言ってこれだけ。APECの方は、閣僚の共同声明に至らず、議長の声明というふうになっていますけれども、これをちょっと見ていただきたいんですが、違うなと思いました。短いということなんですが、なかなかこれは苦労されたんだろうと思います。石原大臣もそうですし、片上首席交渉官も苦労されたんだと思います。僕は日本と違うなと思うのが一点ありまして、第二パラグラフのところに「労働者、家族、農業従事者、」と書いてあるんです。気を使っているんです。日本政府と比べてずっと気を使っているんです、十一カ国が。

 それから次が、第三パラグラフ、これは二行目です。「原署名国の参加を促進する方策も含めた、」これはアメリカなんですけれども、アメリカと名指しするとまずい。非常に気を使って、そんたくしまくった文書になっているんです。

 それで、「この包括的で質の高い協定の早期発効のための選択肢を評価するプロセスを開始することに合意した。」何か回りくどい言い方ですけれども、単純に言うと、早く十一カ国で発効するようにしていくということをちゃんと書きたかったんでしょうけれども、当然、気にした国があったんだろうと思います。

 これは皆内部の人しかわからないんでしょうけれども、すぐわかりますよ。国内手続法をきちんと進めるなんと言うと、またアメリカがいらいらする。それはよくないということで、刺激してはいけないということをそんたくしてこうなったんだろうと思います。

 それはちょっと新しいのは、その下のパラグラフでして、「各大臣は、TPPの高い水準を受け入れる他のエコノミーを包含してTPPを拡大していく」、これはよくわかりませんけれども、新聞等にあるのを見ますと、ペルーやチリがもともと太平洋同盟と言ったように、コロンビア等中南米諸国を入れてほしいと。それだけじゃなくて、中国を入れるべきだというのもあると。それから日本の方には、入っていないASEANの国々、インドネシアとかフィリピンだとかタイとか、そっちも拡大してもいいんだと。

 それはやるとややこしくなるから本当は嫌なんでしょうけれども、とりあえずTPP11でというのがあるんでしょうけれども、拡大していっていいんだということも書かれている。なかなか、ここの部分は意味があるんじゃないかと私は思います。

 しかし、全体としてどうだったのかというのを、TPP11の会合、石原大臣は十九日からハノイ入りしまして、二国間会談を精力的にやられたということで、根回しですね、日本が先頭に立ってやるということでやられたようですけれども、どうも、TPP11を今年度中に何とかするといったようなことも書き込んでいないんです。ですから、多分、アメリカをどう扱うか、合意の内容をどうするかというのはもめたんだろうと思います。この目標はこれで一体達成されたのかどうかなと疑問に思うんですけれども。成果というのもどの程度あったのかと。マスコミは正直にいろいろ書いています。

 政府の立場からして、内閣府副大臣においでいただいていますけれども、成果がちゃんと得られたのかどうか。どのように評価されておられますでしょうか。

越智副大臣 今回のTPP閣僚会議の成果ということでございますが、各国の立場が違う中で、石原大臣が、バイ会談や少数国会合におきましてさまざまな議論をしています。意思統一に尽力した結果、TPP閣僚会合においては、十一カ国の結束が重要であるとともに、モメンタムを維持する必要があることで一致したわけでございまして、そして、その上で閣僚声明を発出に至ったということでございます。

 閣僚声明の中では、今委員からも御指摘ございましたが、出席した各国がTPPの戦略的、経済的意義を再確認しまして、TPPの早期発効を追求すること、そして、そのために、米国の参加を促進する方策も含めた今後の選択肢の検討を政府高官に指示すること、そして、選択肢の検討は十一月のAPEC首脳会合までに完了させることなどが盛り込まれたわけでございます。

 また、我が国のイニシアチブを期待する国も多いということで、七月に日本で高級事務レベルの会合を開催することが決定されたということでございます。

 委員御指摘ございました、年内にどうするかという目標等々については、政府としては定めているわけじゃないですけれども、今回の成果としましては、いずれにしましても、十一カ国が結束を維持してTPPの早期発効を追求するために、我が国の持つ求心力を生かしながら、各国と緊密に連携して、十一月のAPEC首脳会談に向けた準備を進めていきたいというふうに考えているところでございます。

篠原(孝)委員 大漂流をしないでいるということで、結束を固めたというか、まだ首の皮一枚つながっているという点ではつながれたんだろうと思いますが、私は、私の感じですけれども、トランプ大統領がだめだと言って、四月十八日にペンス副大統領が日本に来て、TPP イズ ア シング オブ ザ パスト、過去のものだと言っている。そして、これは後で世耕大臣にお伺いいたしますけれども、ライトハイザーUSTR代表も、TPPではその決定というのは変わらないんだということをAPECの閣僚会議の後の記者会見で言っておられるということで、もう本当はこれはけりがついているんじゃないかと私は思うんです。

 だから、このところは余り力を入れてやるべき分野ではないような気がするんですけれども、しかし、やっておられるんだったらそれは仕方がないと思う。

 それで、これから大事な手続的な問題をお伺いしたいと思います。

 せっかく臨時国会ですったもんだして、大統領がトランプ大統領に決まって、やらないと言って一月二十日に決定的になったというのに、いろいろやっているわけです。

 しかし、大事な大事な発効要件、日本も賛同してやったはずです。それで僕はわかりませんけれども、あの、GDPの八五%以上とかいうのは珍しいですよ。普通、何カ国が加盟する。三分の二とか半分とかいうのにかかわらず、GDPの八五%、これはいろいろな反省から来ているんだろうと思います。小さな国が幾ら集まったって実効がない、だから大きな国が責任を持ってやっていただく。だから、経済が大事ですから、GDPでこの場合は仕切りを引いたんです。

 その前にパリ協定も、CO2の排出量が半分に達する、国だけじゃなくて、そのCO2の排出量が半分以上に達する。これはみんな日本の発想でやったのではないかなという気がします。いいことだと思います。

 しかし、その大事な部分をネグるというか、もうアメリカが参加しないということで発効要件を満たさないということになった。それを今もってぐじゅぐじゅしている。このところを変えるとなると協定の性格が大きく変わるので、私は確実に再び国会承認しなければならないと思う、嫌ですけれども。嫌ですけれども、TPP対策特別委員会をやって、また僕がストップTPPネクタイをして質問しなくちゃならない。二度三度同じことをするのは嫌ですからやりたくないんですけれども、そうならざるを得ない。

 それから次に、もう一つ情報を、続けてお答えいただきたいんですけれども、国内法がいっぱいあったわけです。一緒に関連法というので質疑しました。これもまた荒っぽくて、次から次に議論をしたんですけれども、議論できなかった、入り口論争が中心で。せいぜい、農業、食の安全とかやりました。私は森山筆頭理事と相談いたしまして、ほかの分野も参考人質疑をしながらきちんと進めようとしたんですけれども、いろいろな事情があってできなかった。

 特許法とか著作権法とかの改正は内容が変わらなかったらいいと思うんですけれども、関税とか、後で農林水産省にもお伺いしますけれども、セーフガードの発効要件とか、あるいは輸入枠をいっぱい拡大したのとか、こういったところは、実際にはアメリカの入っていることを前提としてやっていますし、直さないわけにはいかないという気がするんですが、この点を二つ、承認は絶対必要だし、国内法も法律によっては修正、改正が必要だと思いますけれども、この点について整理がされているんでしょうか。内閣府副大臣にお答えいただきたいと思います。

越智副大臣 まず協定の方でございますが、今回のハノイでの閣僚声明は、あくまで十一カ国がTPPの早期発効を追求するということを表明したものでありまして、それ以上でもそれ以下でもないということでございます。

 その上であえて申し上げれば、TPP協定の今後について予断することは差し控えたいんですけれども、仮に、昨年末に国会で承認されましたTPP協定とは別個の国際約束を締結する場合には、国会の承認を求めることになるものと考えています。

 関連法についてでありますけれども、こちらの方は、TPPの関連法としてのTPP整備法は国内法でありまして、新たなTPPの動きへの対応については、各分野のそれぞれの所管省庁の判断であるというのが基本的な認識でございます。

 その上であえて申し上げれば、TPP協定の今後について予断することは差し控えたいですが、仮にTPPについて昨年末に国会で承認された協定とは別個の国際約束となる場合には、その関連法についても改めて検討する必要があるというふうに考えているところでございます。

篠原(孝)委員 条件が二重、三重についた答弁ですけれども、そこそこ誠意ある答弁だと思います。

 違う協定になったら協定も承認しなくちゃいけないですし、国内法も変えなくちゃいけないんです。

 では一つ、端的に答えてください。発効要件を変えるのは重要な変更ですし、違う協定になるんじゃないかと思いますけれども、イエスかノーかでお答えください。

越智副大臣 このTPP協定がどうなるかによって国内法についての対応はまず変わってくるというふうに考えておりまして、大きく変わる場合には出し直すということになるというふうに考えますけれども、国内法については、国内法でございますので、そのときの判断でありまして、現時点では、予断を持ってコメントすることは控えたいというふうに考えています。

篠原(孝)委員 国内法はいいです。国内法は内閣府の所管じゃないですけれども、だからいいんですけれども、条約、これもまたややこしいんですけれども、では外務副大臣、せっかく来ておいでですので。

 発効要件という大事な部分が変わるのは違う協定だと思いますけれども、そうじゃないんですか。常識的にお答えください。

薗浦副大臣 このTPP協定、また、我々がこれからやろうとしているものについて、予断を持ってお答えするというのは控えたいと思いますけれども、一般的に、マルチの協定においてこうした重要な変更が行われる場合には、また国会の承認をいただくというのが通常の流れであるというふうに認識をしております。

篠原(孝)委員 そのとおりだと私も思います。その点、よく認識していただきたいと思います。

 この前、農林水産委員会で事務方が答えているのが何答えているのかよくわからなかった。さすが、副大臣の皆さんはきちっと答えていただいてありがとうございます。そのとおりだと思います。そのつもりでやっていただきたいと思います。

 そして問題は、農林水産関係です。

 まずどういうところが問題かというと、セーフガード、牛肉を輸入し過ぎた、国内農家に影響を与えるからストップするというのがあります。それから、二国間協議で牛乳関係です。いっぱいいろいろな国が関心があるということで、全部十二カ国分の特別枠でということで、七万トンですか、枠を設けた。それから米については、アメリカとオーストラリアに特別の枠を。小麦についてもありました。

 十二カ国全体がかかわっているのと、二カ国か一カ国かというのもありますけれども、どっちにしろ、大国アメリカ、農産物の大輸出国のアメリカが入っているということを前提にしてみんな協定ができたんです。

 これが、アメリカが入らないとなると、相当変わってくるし、困るんじゃないかと思いますけれども。国内法も修正しなくちゃならないと思いますけれども、皆どうなるかわからないで、予断を持って今のところ答えられないということだそうですけれども、やはり農業のところは、いやいや、今やっているところで先のことはわからないとさんざん農家は不安を感じながらTPP交渉を見守っていたんです。こんなことまで譲っていたのかとがっくりした農家もいっぱいいるわけです、野菜と果物のところで。関税をどれぐらい下げるかというのは全く明らかにされないで、どんと出てきたんですよ。牛肉だとか豚肉ばかり関心がいってましたから。それでまた今度も不安な気持ちでずうっとTPP11の交渉結果を見守るというのは、これはかわいそうだと思いますよ。さもなくたって将来不安が多いものですから。

 この点についてぴしっと言っていただかないといけないと思うんですけれども、農林水産副大臣、この点は検討が進んでいるんでしょうか。今、内閣府の答弁としてはあれで仕方がないと思いますけれども、物資を所管して農家の不安に常に対峙されている、そこの不安を解消しなくちゃいけないと思うんです。

 その観点から農林水産副大臣はどのようにお考えでしょうか。この点についてお答えいただきたいと思います。

齋藤副大臣 まず、TPP協定そのものにおきましては、今篠原委員おっしゃいましたように、全てのTPP締約国が共通に利用できる関税割り当てのほかに、全てのTPP締約国を対象とするセーフガードのように、原署名国である米国からの輸入も含んだ数量を前提として構築をした制度もあるのは御指摘のとおりでございます。

 ただ、これからの議論は、TPPの今後の選択肢の検討に関して、多分篠原委員も想定されていると思いますが、今後のアメリカの出方や影響、こういうものも注視しながら、農林水産省としては、我が国の農林水産業をしっかり守っていく、そして農家の皆さんが余計な不安を抱かないで済むように、この過程においても我々としては努力をしていきたいと思っております。

 農林水産物のセンシティブについては、私もずっとTPPの交渉の過程から直接、間接に関与してまいりましたので十分踏まえているつもりでありますので、政府としてしっかりと対応していく必要があると考えておりますので、内閣官房とも緊密に連携をして対応してまいりたいと思っていますし、繰り返しますが、農家の皆さんが不安を抱かれないように努力をしていきたいと思っています。

篠原(孝)委員 政府部内の連携をちゃんとやっていただきたいと思います。もう常識では皆さんだっておわかりになると思いますから。アメリカ抜きになったらいろいろな制度が崩れてくるんですよ。例えば米なんかもそうです。牛肉の関係だってそうですけれども、セーフガードが一番いいんですよ。アメリカから牛肉が四割ぐらい来ているんです、今でも。オーストラリア、ニュージーランドは大喜びです、アメリカ抜きで関税が下がるんですから。ウの目タカの目で日本市場を狙っています。それでだあっとふえる。

 だけれども、アメリカの四割を全部リプレースする、かわりになるということにならないですし、農家にとっては相当な打撃ですよ。そこはもってしてわかりませんけれども、アメリカもかんかんになって怒っている、何だと。オーストラリアとニュージーランドや、カナダやメキシコもあります。豚肉なんかそうですよ。

 そうなると、俺たちをほっておいて何だということで、それにさらに上乗せして、輸入は甲乙つけられるというようなことがあり得るわけです。それは絶対避けるようにしていただきたいと思います。

 だから、わかるんですよ。発効要件をいじったりするだけで、あとはいじらないでやりたいと。しかし、そこから漏れる部分があるんです。また農林水産業にしわ寄せがいくんです。このことはよく考えていただきたいと思います。

 しかし、これは一にも二にも日本国政府の対応方針がきちんとしていなくちゃいけないと思っているんです。その点について、石原大臣に聞かなくちゃいけないことだと思いますけれども、基本方針をきちんとして交渉に臨んでもらわないと僕はいけないと思います。今度はアメリカ抜きですから、日本がリードするということになっていますから、日本が相当性根を入れてやって、ここはだめだ、ここはいいと言っていったらいいんだろうと思います。ぜひそのようにしていただきたいと思います。これは答弁要りません。

 それで、このTPP、変遷、いっぱい遂げてきています。いろいろ変わってきているので、政府・自民党の蛇行は物すごいものだと思います。僕は自慢じゃないですけれども、私なんかは誰が何と言おうとだめなものはだめというのでやってきていますし、終始一貫してだめだと言ってきておりますけれども、政府・自民党はどうかというと、最初は大反対だった。政権をとったらふにゃふにゃっとなって、オバマ大統領と安倍総理の会談があって、握手もしないでぱあっと、一時間ちょっとの、昼飯を食べながらのものだったようですけれども、一三年の二月に方針が変わって、聖域なき関税化というのはなくて、聖域があるんだったらいいんだということになって参加することになった。そして、最後は先頭に立ってまとめようとした。オアフ島、アトランタですね。そして去年の秋ごろは、アメリカ抜きのTPPは無意味だ、総理もそうやって断言されていました。

 それがいつの間にか、よく知りませんけれども、これは世耕大臣御存じだと思いますけれども、四月の十三日だか知りませんけれども、関係閣僚が官邸に行かれて協議した。やはりTPP、アメリカ抜きでもやっていこうということで、突然、TPPを推進していく。二転三転しているわけですよ。余りにもくるくる変わり過ぎるんじゃないかと思います。

 私は、変なことにこだわっているとか間違っていたら、さっさと改めるのがいいと思います。僕はずっと言い出したら聞かないみたいに思われている節があるんですけれども、違うんです。深く反省して、だめなものはすぐ変えているんですよ、これでも。余り信用していない人がいるんですけれども。

 だけれども、余りにも政府の方針がくるくる変わり過ぎると、国民、あるいは農民は、これじゃ困る、信用できないというふうに不安に思っていると思うんですよ。これは世耕大臣の責任ではないと思います。全体の中で決めていることですけれども、重要な閣僚の一人として、この変遷についてどのように感じておられますでしょう。これは私は尋常ではないと思います。

 あちらは、あれだけ推進しておきながら、あちらというのはアメリカですよ、政権がかわってくるっと変わっているんです。これも許しがたいですけれども、日本だったら、政権がかわっても、それは同じ自民党の政権だったら特にそうですよ。変わらないですよ。仮に、民進党から自民党になっても、自民党から民進党になっても、外交関係はそんなに今までのをめちゃくちゃにして変えることはないですよ。

 しかし、アメリカは軍事力、経済力が強大な国です。勝手に振る舞っています。仕方ないと思います。日本はそういう意味ではわびしい立場にありますけれども、それでも、毅然とした態度をとり続けるべきだと思います、国内向けにも国際的にも。

 この点はどのように思われるでしょうか。世耕大臣の見解をお伺いしたいと思います。

世耕国務大臣 余りTPPについては、これは石原大臣が担当でありまして、私が権限を持ってお答えする立場にはありませんが、我々は、やはりきちっとした戦略は持っていて、その戦略の幅の中で時々微修正というのはあるんだろうというふうに思います。

 過去の変遷を述べろということでありますから、まず我々は、聖域なき関税撤廃を前提とする限り交渉参加には反対ということを明確にして、二〇一二年の衆議院選挙に臨みました。そして、政権発足後間もない二〇一三年二月、総理が訪米してオバマ大統領と会談をして、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められないことなどを確認をした。ですから、当然、聖域なき関税撤廃ではないということを確認をした上で交渉参加を決断をしたわけであります。

 その後は非常に厳しい交渉でありましたけれども、全体として、国益にかなう最善の結果を得られたのではないかというふうに思っております。

 総理は、アメリカなきTPPには意味がないという趣旨のことは確かにおっしゃいましたが、それは、まだアメリカが離脱すると決まっていない段階で、何とかアメリカに残ってもらえるよう交渉していきたい、説得を続けたいという考えのあらわれだったんだろうというふうに思います。

 ただ、正式な離脱表明が行われた後、どういう戦略で臨んでいくかということを考える中で、やはりTPPは、二十一世紀型の、特に新たな共通ルールがあって、それをアジア太平洋地域につくり上げていく、そして、そこで自由で公正で巨大な一つの経済圏を構築する、この戦略的意義はまだ生きているという判断の中で、残りのTPP11で結束をして、そして、あらゆる選択肢を排除しないということが前提になりますが、場合によってはアメリカが帰ってくることも少し考えながらTPP11を前へ進めていくというのが、今我々が立てた戦略であるわけであります。

 先日ハノイで開催されたTPP閣僚会合、これは私は参加しておりませんけれども、こうしたTPPの戦略的意義を再確認するとともに、早期発効を追求するということを確認したというのは、これは非常に意義があったというふうに思います。

 私も、現場にいた人間として、やはりTPP11、この結束が確認できたことで逆にRCEPにもいい影響があったというふうに思っておりますし、一本やりで猪突猛進でいくというよりは、少し微修正はしながらも、大きな戦略の幅をずらさない範囲の中で今後も進めていきたいというふうに思っております。

篠原(孝)委員 微調整と言われましたけれども、微調整じゃなくて、大幅蛇行じゃないかと僕は思います。

 ちょっと解説しますと、一番最初、自民党は野党でしたから、野党ですから反対と言っていていいと思いますよ。これで政権が見えてきたというころになるとちらっと変わって、聖域なき関税化とかという非常に立派な文学でやって、一二年、年末の総選挙を勝ち抜いてころっと変わっていった。そこまでは多少しようがないかなと思いますけれども、その後、TPPを推進していてアメリカがと言っていて、トランプ大統領になることがわかったけれども、一月二十日のイノギュレーションというか就任式が終わっていない、だからいいんじゃないかというのがありましたけれども、それはないので、もう十月二十三日に公約をきちんと発表し、そしてAPECの会合や何かがあったりしたときでも、その前にアメリカに安倍総理が立ち寄られた後、その二日後にもうTPPはやらないと言ったりしている。もうほとんどやらないというのは目に見えていた。それはアメリカに対する淡い期待があってというふうに言われましたけれども、アメリカはそんな国ではないんです。だから、言ったってしようがないんだろうと私は思います。

 そしてTPP、どう変わってきたか。変わってきたら変わってきたでいいんです。対応を変えるべきだと思います。安倍総理はそうやって変えたんだと世耕さんは肩を持ちました。変わったんだから、アメリカが本当に正式に離脱をしたんだから、それでは帰ってきてほしいというために、TPP、十一カ国でやるんだ。それはそれで方針変更でしょう。では、我が日本国はどうするか。

 私はそんなのは信用しませんでしたけれども、アジアの成長に乗りおくれるなというのは、最近盛んに言われました、一番最初。アジアの成長といったって、中国も韓国も台湾もタイもフィリピンもインドネシアも参加していない。私、それで何でアジアの成長かと言った。いや、経済的なメリットもそんなにないと言ったら、次が、いやいやそれは違うんだ、中国包囲網だというふうに言ってきたんです。

 だけれども、中国包囲網だと言っているやさきに北朝鮮問題が俄然クローズアップされてきて、ミサイルと核開発を両方やっている、これは危ういということで、これを何とかとめなくちゃと。日本だけだったらいいけれども、グアムにも行くかもしれないし、そのうちにアメリカ本土、ロサンゼルス、サンフランシスコにたどり着くかもしれない、これはやばいということでアメリカも本気になり出した。

 だからアメリカは、そこは現金だと思います。国際政治は残酷です。むごいです。平気で中国とアメリカと交渉し出し、そして中国に、経済制裁をもっとちゃんとしてほしい、石炭の輸入をとめてほしいというようなことを言っている。米中が頭越しに外交交渉、通商交渉をしている。中国包囲網どころじゃなくなってきているんです。

 ですから、軍事的な冷戦が終わった後、しばらくそういうのがなかったですけれども、中国とアメリカと、経済的冷戦構造というのがあったと思います。今もあると思います。日本もそれにちょっと参加していると思いますけれども。しかし、もうそれもなくなってきて、政治的な意味、中国包囲網という意味は余りなくなってきたような気がするんです。

 それと、経済的な意味もどうかというのも、それは経済的なメリットは大きいと思いますけれども、GDPでよく言われていたのが、世界の三七・五%だ、貿易総額の二五・七%だと言われていましたけれども、GDPは、三分の一近く、一二・九%に、アメリカの六割が抜けるわけですから。そして貿易も、一四・九%と半減します。経済的重要性もなくなってきているような気がするんです。

 政治的な意味が大きく変わったTPP、だから我々日本国も、対応を変えるべきだと思います。経済的な意味も変わってきた。もともと貿易のことを考えたら、お金だけのことを考えたら、中国の方が上なんです、貿易の相手国としては。これについても変わってきた。

 政治的な意味については外務副大臣から、経済的な意味については経産大臣からお答えいただきたいと思います。

薗浦副大臣 お答え申し上げます。

 米中が今さまざまな話をし始めているのは事実でありますけれども、一般的に申し上げて、アメリカと中国の間でさまざまな話が行われて、これが世界の経済の安定とか発展に資するものというものであれば、我々は、我が国にとっても重要でありますし、我が国の経済にとってもそれは非常にいいことであるというふうにまず考えています。

 その上で、TPP協定というのは、今申し上げたような、基本的な価値観を共有する国々が経済のきずなを深めてさらに輪を広げていくという意味で、経済的利益を超えた戦略的意義というのがなお存在するというふうに考えております。

世耕国務大臣 もともと、TPP、アメリカが入っての成立ということは、ある意味、アジア太平洋圏の経済圏に関して、そこに自由で公正な貿易圏をつくっていくというアメリカのコミットメントだったわけであります。ここからアメリカが離脱をした。

 では、そのコミットメントは完全になくなるかというと、これはトランプ政権になっても、日米首脳会談でこの間合意したように、日米で高いレベルの貿易・投資ルールをつくってアジア太平洋圏に広げていく、ここで明確にコミットメントは残ってきておりますし、また、この間のAPECも私が一番意義があったと思うのは、あれだけ二国間交渉だと言っていたアメリカが、APECというまさに多国間の経済枠組みに通商代表を派遣してきた、通商代表がちゃんと出席をして意見を述べた、ここに一番大きな意義があった。

 だからそういう意味では、アジア太平洋の自由で公正な貿易ルールに関するアメリカのコミットメントは依然残っている。だから、その延長上にTPP11もあるんだろうというふうに思っております。

 あと、経済的意義ということになりますと、やはりアメリカ経済はでかいわけです、マーケットとして。それがTPPから離脱表明したということは、これは数字の上ではやはり大きな価値の減損というのはあったというふうに思っていますが、日本からのTPP参加国への輸出額で見ますと、アメリカがいる状態では二十五兆円でありましたけれども、アメリカがいない状況になりますと九・六兆円ということになります。大幅には減りますが、引き続き、九・六兆円のマーケットを対象にした多国間の貿易枠組みでありますから、一定の経済的な意義はあるというふうに考えております。

篠原(孝)委員 全くないとは言いません。だから、薗浦外務副大臣も正直にお答えになりましたけれども、政治的な意味というのは、私は本当に減っているんじゃないかと思います。それはもともとそうでして、TPPやAPECに余り政治を絡めるのはよくないと思います。それを、議論の最中で答弁に困ると、いやいや、中国包囲網だといつもいろいろなところの人たちが答える。僕はこれは邪道だと思っています。

 正直にお答えになりました。経済的な意義、これでいっていいんだろう。背景にあることはあるんですよ。それを前面に出して、だからこれが必要なんだ。だからどういうことかというと、北朝鮮問題もあって、アメリカの言うことを聞かなくちゃならないんだからTPPでも妥協しなくちゃならない、これは正論じゃないということを僕は申し上げているんです。このようにしていただきたいと思います。

 このそもそも論で言いますと、私は、今、日本は、皆さんお気づきになっていないですけれども、危険な道を多少行っているような気がします。どういうことかというと、戦前、日本も後から植民地経営に出ていったわけです。軍事大国主義です。海外進出していった、満州にも。石油がないからというのでインドシナまで出ていった。非常にどでかいことを考えて出ていったわけです。

 しかし、それに対して、そんなことはするなとずっと在野の立場から言っておられた方がいました。石橋湛山さんです。戦後、総理になられました。小日本主義というのを唱えました。大国主義はいけないと。僕は彼の本を数冊読みまして感動いたしました、大分前ですけれども。軍事大国主義に対して小日本主義を唱えたんです。

 ですけれども、今、日本は経済大国主義に陥っているんだろうと思います。グローバリゼーションということでどんどん出ていく、貿易も投資も。

 しかし、それを一番進めたアメリカとイギリスが、ブレグジットとトランプ政権のアメリカ・ファーストということで、戻っているわけです。

 それにおくれてスタートした日本がそれをまた追っかけている。後からスタートした日本がまた割を食うんじゃないか。日本だけが、新自由主義だか知りませんけれども、それの旗手みたいな感じになっておだてられていると思います。アメリカなき後は日本が中心になってTPPをまとめてもらわなくちゃいけないということでやっているというのは、これは余りよくないことだという気がいたします。

 では、相当時間をかけてつくりました「TPP参加経緯」の表を見ていただきたいと思います。A3にした方がよかったかもしれませんけれども、よく見ていただきたいと思います。ここにTPPの問題が全て要約されているんじゃないかと思います。

 まず、一番左の表は「日本とのEPA」、ないのは、アメリカはないんですが、ほかにニュージーランドとカナダだけです。ただ、カナダは、後で触れますけれども、やる予定になっていたのに、TPPに入ったので中断しているだけです。NAFTAは御存じの参加国。RCEPの交渉中はこういう国で、チリとペルーが中国を加盟させてとかコロンビアと言っているのは、RCEPみたいなもっとでかいのでやっていきましょうと。TPPの参加、P4の方は二重丸で、二〇一〇年の一回目から参加しているのは白丸にしてありまして、あと、いろいろな事情で後から入っていった。

 この「参加理由」のところと「TPP11への立場」が私の解説です。

 アメリカはバシェフスキーがこうやって入りました。カナダとメキシコは入らなかったんです。だから、両方ともちょっと違うように書いていますが、同じでして、NAFTAで十分だ、それから、アメリカに余りぎゃあぎゃあ言われるのは嫌だということで様子見で入らなかったんですが、日本が参加するということ、ホノルルで野田総理がそれらしいことを言ったというので慌てて入って、第十五回目の閣僚会合から入っています。

 日本はさっき言いました。二〇一三年の二月。そして、クアラルンプールの途中から、そして、ブルネイから。このブルネイ以降、私は、よく閣僚会合に行ってはNPOの皆さんと意見交換してまいりました。

 マレーシアは、ほかのアジアの国と同じようで、一九九七年、アジア通貨危機のときに相当痛い目に遭ったし、アメリカと二国間FTAをやろうと思ってやり始めたら、アメリカが余りにも強烈なことを言うので、嫌になってやめた。やめたけれども、多国間ならいいということで参加した。こういう事情があります。

 それで、私、ベトナムに行きました。世耕大臣も御存じないかな、御紹介いたしますと、このネクタイはベトナムの前農林大臣とエールの交換をしたときにいただいたものです。ずっとやり続けないんですから安心してください。

 ベトナムは、よく新聞紙上では、マレーシアとともに国営企業の改革や何かを相当した。痛みを伴う改革をして、そしてアメリカ市場に打って出られるからと思ったけれども、アメリカは抜きなのでだめだというふうなことを盛んに書かれていますけれども、意外でしたね、違ったです。どういうふうにお感じになったか。

 私は、NPOじゃないですが、政府の高官にも会いましたし、大学の教授にも会いました。どう言っていたかというと、ここがしたたかでした。余り外交の手のうちをばらしちゃ悪いかと思いますけれども、政府の高官の話じゃないからいいと思いますけれども。ベトナムはこう言っていました。国営企業改革はどっちにしろしなけりゃならないんだ。だから、あれはあれでいいんだ。だから文句はあるんです、TPP、自由化を進めるのは。だけれども、APECの議長国だ。これを何とかしてまとめなくちゃいけない。ダナンですか、十一月に聞かれる。そこでまとめなくちゃいけないから、それを抑えているというのがよくわかりました。

 だから、国営企業改革は別にそんなにハードじゃないんだ。やるべきことをやらなくちゃいけないんだ。では、日本がよく改革に使った外圧と同じかと言ったら、いや、そういう言葉は使っていない。もともとやる予定だったのをやっていくんだ。だけれども、交渉のタクティクスとして、戦術として大きく譲ったということにしているという感じでした。

 だけれども、それで何にも問題ないのかと言ったら、いや、大問題なんだと。農業就業人口が五〇%を超えているんです、まだベトナムは。人口一億人弱です。半分以上が農村にかかわっている。このところにオーストラリアやニュージーランドからばんばん農産物が入ってくる。特に、畜産なんというのは小さい。日本の大昔と同じです。とてもじゃないが太刀打ちできない。これをそのままにするわけにいかない。そういう点では日本と立場が同じだと言っていました。

 というのがあります。そこは大きく今新聞のというか、政府の受けとめ方と違うことじゃないかと思います。しかし、何か大人の振る舞いを相当していました。

 それから「TPPの国内手続き」を見てください。アメリカは撤退して、日本は去年の臨時国会ですったもんだしながらみんな通してしまって、そして、ニュージーランド、寄託国に寄託して、一番真っ先です。それを二番目にしたのがニュージーランド。ほかの国は賢いですね。ちゃんと様子を見ていて、国内手続を完了させていないんです。

 私はこれが国際社会では常識だと思います。日本だけがなぜか先走ってこういうことをしている。だから、こういった意地から、急いでTPP、自由化をイレブンでやっているというのかもしれません。

 そして、問題は「TPP11への立場」です。これは私が見て書いているので、字だけじゃわからないので、「推進度合」、アメリカはもう撤退しているのでバツ。もっとバツは多くたっていいのかもしれませんけれども、五つバツにしてあります。この二重丸の三カ国が推進しています。

 一番右が川崎研一さん、前の旧経企庁の官庁エコノミストです。彼がGTAPモデルで計算しています。今は政策研究大学院に行っておられるそうですけれども、TPP十二カ国と十一カ国で計算したのが出ています。

 ニュージーランドは数字がないので出ていませんけれども、オーストラリアがなぜしゃかりきになるか。明らかなんです。見てください。太字で書いてあります。一・〇八%のGDPの押し上げから一・一八%で、唯一、この数字がある国ではふえているわけです。日本はマイナス〇・二六ポイントです。それほど大きなマイナスじゃないんです。もともと、もとがでかいですから。

 その下のマレーシアとベトナムは、ベトナムもかわいそうなんです。マイナス七・三〇ポイントです。マレーシアはマイナス二・八三ポイントです。大きく減っている。だからこの二カ国は、アメリカ抜きのTPPなんて何だ、どれだけメリットがあるのかと言うのは当然なんです。日本は、余り得しているわけじゃないのにしゃかりきになる。どうもちょっとおかしいんです。

 カナダとメキシコは当然ですよ。NAFTAの再交渉を議会に通告しました。九十日後にもう交渉を開始していく。八月中旬からNAFTAの再交渉をする。ロス商務長官はそれに全力を挙げる。日本にかかわっておれませんし、TPP11なんてかかわっておれないと思うんです。日米の二国間交渉も当分始まらないと思います。当然です。そんな理由はないです。USTR、ライトハイザーは決まりましたけれども、その下は決まっていませんから、やっていけないんだろうと思います。NAFTAの再交渉までには陣容を整えるだろうと思いますけれども。

 カナダとメキシコは、ですから、二カ国ともアメリカを余り刺激したくない。だから、アメリカに嫌われるようなことをしたくないからという意味で、丸でしてありますけれども、三角か四角か、ですけれども、一応アメリカ抜きで得することが多いというのは同じですから。工業製品やなんかでは損しますけれども、農産物については絶対得します。割を食うのはいつも日本の農家です。

 それから、ニュージーランドやオーストラリアはおわかりだと思います。

 マレーシアは、数字では一番なんです。世銀の計算でも一番なんです。三〇年までに相当GDPが上がると見ている。ムスタパ貿易担当大臣は、もうアメリカ抜きでは魅力が減少して意義が薄れたと言っています。それは、国内向けにマレーシアが一番苦しい立場にあると思います。さんざんメリットがあるから入るんだと、反対があったのに入ったので、マレーシアが多分この十二カ国の中では一番苦しい立場にあると思います。

 ベトナムも同じなんですが、先ほど申し上げましたように、いいんだと。ファム・ビン・ミン副首相はいつか言っていました。EUとかほかの国の二国間FTAに力を注いでいけばいい。アメリカ抜きでもいいんだと。アイン商工相とは会って、二国間会談もされて意見交換されたと思いますけれども、非常に前向きで、むしろAPECの方が大事で、APECまでには合意が成立している、したいという希望的願望を述べておられます。

 こういった表があるんです。これをよく見ていただけたらわかると思います。それぞれの国の立場がここに全部出ているんです。これでよくわかるんです。よくこれを見ながら次の質問にお答えいただきたいと思います。

 質問に移らせていただきます。

 一番左の、日本からすればEPA未締結なのは、アメリカはこれからですけれども、カナダとニュージーランドだけです。ライトハイザーUSTR代表は、二国間が有力なんだと。それは日本にも言えることなんです。有力というのは、いろいろな痛みを感じて、ギブ・アンド・テークが率直にできるということです。アメリカは手ごわいかもしれませんけれども、オーストラリアとはやりました。だから、ニュージーランド、カナダとやってもいいんじゃないか。逆手にとって、日本も二国間をやっていった方がいいんじゃないかという気がします。

 ですから、アメリカはさんざん二国間でやったのにチャラにしているわけですから、そこは少しは控えろと言って、日本はもしやるんだとしたら、現実路線を歩むとしたら、カナダとニュージーランドの二国間協定を先にした方がいいという気がするんですが、外務副大臣、いかがでしょうか。

薗浦副大臣 先生御指摘のとおり、カナダ、ニュージー以外とは既に経済連携協定を締結をしております。

 その上で申し上げれば、TPPというのは、貿易、投資、サービス等の各分野で今既に締結しておりますバイ、二国間協定を超える高い水準の自由化を達成しております。また、電子商取引、中小企業、環境、労働といった分野、新しい分野のルールも取り入れていますし、何よりもこのマルチの一番いいところは、それぞれの地域全体で協定をつくるということを通じて、サプライチェーン、これのメリット、このコストを引き下げて企業の負担を減らし、また、消費者に恩恵をもたらす等々のメリットがあると考えております。

 いずれにしても我々としては、このTPPの恩恵を生かす、TPPの早期発効に向けて話をしながら、また、カナダ、ニュージーを含む各国と具体的な検討はこれからその後進めてまいりたいというふうに考えています。

篠原(孝)委員 アメリカにうらやましがらせるといい、農産物をオーストラリア、ニュージーランドからどんどん輸入して。それがあるんだったら、今のサプライチェーン、バリューチェーンの云々のだって、二国間でやれば解決できるんじゃないですか。

 僕はそういうやり方は余り好きじゃないですが、それは余りワークしないと思いますけれども、カナダとニュージーランドと二国間協定をきちんとやって、それでそこそこ現実的なEPAを結んで、うまくやっているよということを示す。アメリカが日本に強烈なFTAを要求してきても、アメリカに対して、カナダを見ろ、ニュージーランドを見ろ、オーストラリアを見ろ、こういう形でやっているんだ、それぞれ痛み分けをしているんだということを示す。こちらの方で示した方が穏当のような気がします。これはいいです。

 次に内閣府大臣にお伺いします、政府の全体の方針ですから。

 何でTPPだけをそうやって急ぐのか。これはまたややこしくなっているわけですけれども、APECの貿易担当大臣は貿易担当大臣にいっています。TPPの担当大臣も日本以外はみんな同じなんです。石原大臣が行くとそれだけ大事だというのはわかるんですが、それだったらきちんと押していただきたいということなんですが、何か知りませんけれども、五カ国ででも発効したっていいとか言って、粗っぽい議論も進んでいる。これは絶対よくないと思います、そういう粗っぽいのは。それはやめていただきたいと思うんです。

 だから、もともと純粋にいったら、アメリカが参加しないということで発効要件を満たしていないからしようがないなというのが普通なんです。潔くここは退いているべきだと僕は思いますけれども、そうはいかないからとやっているのはわかるんですが、余りに先を急いで、二国間のFTA、EPAを積み重ねていくという努力もせずに、TPPだTPPだとしつこくこだわるのはいかがなものかと思いますが、この点についてはどのような方針を議論されておるんでしょうか。

越智副大臣 まず、五カ国での合意ということでございますが、五カ国で発効させるという議論は出ておりません。

 もう一つ、発効を急いでいるんじゃないかという御指摘でございますが、我が国が発効を急いでいるという指摘も当たらないというふうに思っております。

 今回のハノイのTPP閣僚会合では、十一カ国が、戦略的、経済的なTPPの意義を確認して、結束し、モメンタムにすることが重要であるということを確認したということだというふうに思います。

 これまで再三申し上げてきましたとおり、我が国が持つ求心力を生かしながら、各国と緊密に連携して対応していきたいというふうに考えております。

篠原(孝)委員 次に農水副大臣にお伺いしたいと思います。

 先ほどちょっと触れました。やはり農産物にしわ寄せがいくんです。よくないなと思います。

 アメリカを言ってみればうらやましがらせる、つる。オーストラリアが得している。一・一八ふえるわけですから当然です。それでアメリカを入ってこさせる。だけれども、そんなやわな国じゃないですよアメリカは、日本がそんなことをしたからといって。どう言ってくるかというと、もっとひどくて、さっき言いましたが、アメリカ抜きにこんなに牛肉や豚肉の輸入をほかの国からふやして何をやっているんだ、俺たちにもちゃんとメリットをよこせということで、二国間の要求でそういったことを言ってくると思います。

 そういう点、私は山本農林水産大臣の記者会見に感心しましたけれども。TPPの審議中は数々の失言を繰り返されておられましたけれども。ちゃんとそれは、困る、おかしいと。農産物を犠牲にして、それで輸入がふえたからといってアメリカが入ってくるなんて、そういったことはおかしい。米国が後でうらやましがって入ってくれればいいというものではないということを言っておられます。農林水産大臣らしい発言だと思いますよ。農家はどうするんだ。そうだと思いますよ。そんな危険なことをしているわけです。

 では、アメリカが黙って入ってくるんだったらそれはいいですけれども、そうじゃなくて、今までさんざんオーストラリア、ニュージーランドに甘い汁が行った分を俺たちのところへも返せというふうに言ってくるに決まっていますよ。だから、この点は本当にきちんとしていただかなくちゃいけないと思いますけれども。

 僕は、ですから農林水産省は、これは体を張って、さんざんこうやって妥協して成案を得たわけですから、これ以上は絶対無理だというこの姿勢を堅持していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

齋藤副大臣 篠原委員と問題意識は共有する部分があるわけでありますが、ただ、TPPにつきましては、今後の選択肢の検討について、これからということであります。

 私ども農林水産省としては、おっしゃるように、今後の米国の出方、影響、これをしっかり注視をしていくということをしながら、我が国の農林水産業を守っていく上で何が望ましいかという観点をしっかり踏まえて、農林水産物のセンシティビティーを十分に踏まえつつ、政府全体としてしっかり対応していく必要があると考えておりまして、内閣官房と緊密に連携して対応していきたいというふうに思っております。

篠原(孝)委員 本当に、体を張って頑張っていただきたいと思います。

 経産大臣、自動車だって問題だと思います。確かに自動車が問題なのはわかるんですよ。問題なのはわかるんです。どうしてかというと、数字がはっきり物語っているんですよ。二〇一六年のアメリカの対日貿易赤字は六百八十九億ドル、中国が半分以上を占めているんですけれども、七兆四千億円。そのうち七六%が自動車で、五百二十六億ドルが自動車なんです。だから、これを標的にされるのは当然だと思いますよ。余りにもアンバランスなんだ。

 農業の味方をして言っておきますけれども、農業を標的にしてこないというのは、皆様、よくこれを聞いてください。何でトランプ大統領は言ってこないのか。五月の連休中に僕は二回も外国に行っているんですけれども、疲れて時差調整がうまく行われていないので困るんですけれども、五月の連休、一週間行って、いろいろな人と意見交換もしてきましたよ、日米議員交流プログラムで行きまして。そうしたら、へえと思ったのは、一部は予想できたんですけれども、全然農産物についてトランプ大統領は触れないんです。

 理由は簡単なんだそうです。トレード・ディフィシットを問題にしている、この六百八十九億ドルの。自動車関連で五百二十六億ドルの。ところが、農産物ではアメリカが巨大なトレード・サープラスを持っているわけです。だから、それでもって日本にもっと買えというのは、そんなことを言えた義理じゃないと。なかなかそこはぴしっとして義理がたいです。論理として一貫しているんです。

 それからもう一つ、日本の農産物、今、農業総生産額はどのぐらいか、皆さん御存じだと思います。かつて、一・五%のために残りの九八・五%が犠牲になるのは何とかと言った人もいます。それだけ少ないんです。だから、日本の農業生産の金額全部を仮にアメリカから買ったって貿易赤字は解消しないんです。トランプ大統領はビジネスライクなんです。ビジネスオリエンテッドなんです。そんな小さな金額のところをどうこうしたって何の意味もないから、農産物には触れないんです。

 だからここは根源的には考えなくちゃならないんですけれども、日米の並行協議である程度決着がついたんです。ですから、この点についても経産大臣、ぴしっと、もう決着はついているんだとはねつけていいんだろうと思います。名前はライトハイザーでどんな人かと思ったら、かなり背が高くてヘビーハイザーみたいな感じでしたけれども、重い人のようですけれども、この重い要求を突っぱねていただきたいんです。突っぱねていいことだと思いますけれども、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 この間、あのライトハイザー通商代表と初めてお会いをしました。本当に大きい人で、私がもうちょっと背が高ければなとつくづく思ったわけでありますけれども。

 この会談の中では、農業はもちろん、自動車も含めて個別の分野について、何か向こう側から要求があるというようなことはありませんでした。非常に温かい雰囲気の中で、二国間の貿易と経済関係を強化をしていくこと、そして、お互いに利益をもたらす貿易を促進をして、貿易障壁と貿易歪曲的措置に対抗して経済成長を促進して、高い基準の構築をお互いに助け合っていこう、また特に、第三国において行われている不公正な貿易慣行に対する共通の懸念への対応について協力を強化するということで合意をしたわけであります。

 自動車については、日米経済対話がまさにこれから進んでいくわけであります。これは麻生副総理とペンス副大統領のもとで行われるわけでありますので、それはその成り行きを見守りたいと思いますし、今のところ、アメリカは何の要求もしてきておりません、自動車に関してはですね。

 そういう意味で、仮定の質問についてはお答えは控えておきたいというふうに思います。

篠原(孝)委員 さっき言いましたが、何とかイレブンなんて、セブンイレブンは余り好きじゃありませんけれども、私が好きなのはさわやかイレブンだけですよ。これがわかる人はそんなにいないんじゃないですか。さわやかイレブン、徳島県の人はすぐわかると思う。池田高校のさわやかイレブンと言われていたんです。おわかりになりますか。

 だから、こんなものは僕は余りやっちゃいけないと思うんです。この表を見直しながら聞いていただきたいんですが、これをよく見たら、やはり、本当に日本が橋渡しをするんだったら、アメリカとのだけじゃなくて、中国との橋渡しもすべきだと思いますよ。これだけ自由貿易にこだわっているのは日本だけなんです。もしそれだったら中国も入れてというふうに、もっと大局的に考えていただきたいと思います。だから、やめていただきたいのはこれなんです。

 何か牽制球を投げているんだと。アメリカにTPP11の牽制球を投げていたって、大体、牽制球を投げてアウトにできるのは一人ですよ。ちゃんとバッターを三振にとったりするか、打たせてダブルプレーにするというような、つまり、ほかの二国間協議、カナダ、ニュージーランドとの二国間協議、あるいはRCEPをやる。RCEPの方はもう開かれている。大臣は出られたと思いますけれども、ASEAN諸国は、ASEAN五十周年で、ぜひRCEPを物にしようと非常に盛り上がっているんです。これは日本では新聞で余り報じられないんです。

 だからこれはいい機会ですから、RCEPが何かだめな協定で、なまくらな協定だからあれはいいと。ステップ・バイ・ステップでいいんです。二国間の積み重ねというのもありますし、アメリカがだめだったらRCEPでやって、それでアメリカをうらやましがらせたらいいじゃないですか。

 そういうふうにやっていくべきだと僕は思いますけれども、時間が来ていますので、端的に内閣府副大臣と経産大臣にこの件についてお答えいただきたいと思います。

浮島委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

越智副大臣 TPP担当の立場で申し上げますと、先日のハノイの閣僚会合では、中国を含めるべきだといったような議論は出なかったと承知しております。

 また一方で、現在、我が国としては、中国を含む経済連携の枠組みでありますRCEPや日中韓FTAの交渉に精力的に取り組んでおります。また、日中両国の間で、経済連携を含む肯定的な側面を拡大していくことは極めて重要だと考えているところでございます。

世耕国務大臣 ASEAN、特に議長国であるフィリピンが、五十周年のことしにRCEPを成立をさせたいという思いを持っているということはよく理解しています。

 別に、RCEPの中身はまだこれから詰めていくわけでありますからまだ中身は決まっていないわけでありますけれども、我々は、できるだけ早く成立をさせることと、やはり質の高い合意内容にしなければいけない、特にルール分野も含んでいなければいけないという立場であります。

 この間の最終的な取りまとめ、プレス声明は、その両論が併記された形になっているわけでございます。

篠原(孝)委員 TPPだけに固執することなく、もっと柔軟な姿勢で、くれぐれもこれ以上我が国農業にプレッシャーをかけることのないような交渉をすることをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

浮島委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 九州電力玄海原発三、四号機の再稼働問題について質問します。

 配付資料一は、玄海原発周辺の地図です。市長や議会が再稼働反対を表明している三十キロ圏の自治体はどこでしょうか。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がお配りになったこの資料を見ていただきますと、ここに書かれておりますように、九州電力玄海原発から三十キロ圏内の市町村につきましては、この七市一町ということになっております。

 その中で反対しているところは、佐賀県の伊万里市の市長、長崎県の松浦市、平戸市、それから壱岐市の各市長と議会が再稼働の反対を表明していると認識しております。

真島委員 今おっしゃったように、三十キロ圏八市町の市長や議会の半数が反対をしている。四月二十日の毎日新聞は、背景には地元同意の蚊帳の外に置かれる一方で、リスクだけ背負わされる周辺自治体の不満があると述べています。

 また、全組合員約七百名のうち九〇%が再稼働反対を表明している松浦市鷹島の新松浦漁協は、七月に漁船二百隻規模の海上デモを予定しております。鷹島は、玄海原発から最短八・三キロ、配付資料二の上の写真です。このように、目の前に原発が見えるんです、島から。周辺はアジなどの好漁場で、トラフグやマグロの養殖も盛んです。志水正司組合長は、住民説明会で国や九電から信憑性のある説明はなかった、玄海原発で大きな事故が起きたら県北の漁業は壊滅する、将来に漁業を残すため、再稼働は容認できない、海上デモを実行し、漁民の意思を伝えなければならないと訴えています。

 福島事故の徹底的な検証、実効ある避難計画、地元自治体の同意なしに再稼働は許されないのではないかと思います。

 確認ですが、多くのメディアが、佐賀県の山口知事の同意で再稼働に向けた地元同意の手続は完了と言っておりますが、再稼働のプロセスで地元同意が必要という根拠規定はどこにあるんでしょうか。

世耕国務大臣 原発については、高い独立性を有する原子力規制委員会によって、科学的、技術的に審査をして、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合、その判断を尊重し、地元の理解を得ながら再稼働を進めるというのが政府の一貫した方針であります。

 地元自治体の同意は、法令上、再稼働の要件とはなっておりませんが、原発立地自治体のみならず、周辺自治体も含めて、理解活動を丁寧に進めることが重要だというふうに考えております。

真島委員 今、エネルギー基本計画の政府の基本的な立場を御紹介されました。法的な規定はないと。

 長崎県の松浦市は、市内全域が三十キロ圏内に入っております。友広郁洋市長は、再稼働反対の理由を、リスクは何でもつきまとうが、原子力災害は許容範囲を超えている、被害は広範囲であり、短期間で終わらない、市民が一〇〇%の安全を求める根拠はそこにある、安全性を国が一〇〇%と言わない以上、反対する、市民の生命や財産を守るために必要なのが同意権だと述べています。

 規制基準に合格した原発は再稼働する、国は地元の理解と協力を得るように取り組むというのが基本姿勢だとおっしゃいました。つまり、規制基準に合格したら、立地自治体や周辺自治体がどんなに反対しても必ず動かすという立場でしょうか。大臣。

世耕国務大臣 先ほども申し上げたように、まず、安全第一で、新規制基準をクリアしているかどうか、これが判断基準でありますが、地元の同意をいただくということも大切なことだというふうに思っておりますので、丁寧に同意活動は進めていきたいというふうに思っております。

真島委員 地元の同意が得られなかったら動かさないということですか。

世耕国務大臣 地元の御理解をいただくことは大切だと考えておりますが、判断基準は、新規制基準をクリアしているかどうかということであります。

 ただし、御理解は重要でありますので、理解活動は丁寧に進めていくということであります。

真島委員 つまり、地方自治体に再稼働の同意権、拒否権というのはないということなんです。法的根拠もない。一片の閣議決定だけで、主権者や自治体がどんなに反対しても、規制基準に合格したら動かすと。

 なぜ、地元自治体の同意を再稼働の前提とすることを政府は拒否しているんでしょうか。

日下部政府参考人 原子力の再稼働につきましては、まず、原子炉等規制法に基づいて、法令の基準にのっとって、それをクリアするということが大前提であります。地元の同意につきましては、最大限の努力をすることによって理解を求める。

 この地元の同意につきましては、原子力発電所の再稼働の有無にかかわらず、これについては、きちっとした避難計画をつくりながら地元の体制あるいはその安全を守っていくというのが政府の立場でございますので、法令上の要件としては、原子炉等規制法の規制基準、地元の同意につきましては、その同意が得られるように最大限の努力をするという形で整理をさせていただいているところでございます。

真島委員 つまり、だから同意がなくても動かすということになっているわけですよ。

 世耕大臣は、現時点で、周辺自治体や住民の理解がどの程度得られていると認識されていますか。

世耕国務大臣 今、とりあえず一定の御理解はいただけているというふうに思いますが、今御指摘のように、反対を表明されている自治体もあるわけでありますから、理解活動は丁寧に進めてまいりたいというふうに思います。

真島委員 反対している自治体もあると。

 佐賀新聞社が昨年九月三十日から十月二日に実施した県民世論調査、これが直近のものなんですが、玄海原発再稼働反対が五〇・八%、賛成が三九・三%で、一〇ポイント以上反対が多かったんです。

 佐賀県の山口知事が、三月十八日、県内二十市町の首長から再稼働への意見を聞いた際、塚部芳和伊万里市長は次のように述べて反対を表明しました。

 原発事故一年後、南相馬市、双葉町、飯舘村に行き、立地自治体だけの問題ではない、原発の恐ろしさ、表現できない空気感を肌で感じた、住民説明会で、ある女性の、原発はもしものことがあったら大変、電気代がちょっと高くても我慢できる、経済の問題と人の命、健康の問題を同じレベルで考えること自体がおかしいのではないかとの発言に背中を押された、そういう声を聞く中で、自治体の首長は、国のエネルギー政策に追随するよりも、住民の安全、安心に対する不安に寄り添うことが責務だと思ったとおっしゃっています。

 そこで、次に避難計画についてお聞きします。

 原子力防災会議の議長の安倍首相は、原発事故が起きた場合、国民の生命や財産を守るのは政府の重大な責務だと発言しておりますが、実効性ある避難計画の策定は再稼働の条件なのでしょうか。また、原子力防災会議で玄海原発の避難計画を了承したということは、市町村の現場で実効性のある準備が整っていると判断したということなんでしょうか。

山本政府参考人 避難計画でございますけれども、この避難計画の策定自体は原発の再稼働の要件ではございませんけれども、住民の皆様の安全、安心を高めるためには極めて重要なものであるというふうに認識しているところでございます。

 御指摘のありました玄海地域の緊急時対応、いわゆる地域防災計画、避難計画でございますけれども、これらにつきましては、玄海地域の原子力防災会議、これは三県の副知事、あるいは関係の市町の首長さん、それから関係省庁の職員などで構成しておりますが、まず、ここで事務的にその内容を検討した上で、原子力災害対策指針等に照らして具体的かつ合理的なものであるということを確認いたしました。そして、先ほど御指摘にありましたように、昨年の十二月に、総理が議長をされております原子力防災会議にこの内容を報告し、了承されているところでございます。

 したがいまして、私どもとしては、現時点ではこの計画は最善の計画であるというふうに考えておりますが、他方、この避難計画の整備には終わりや完璧は当然ございません。今後も、関係自治体と一層緊密に連携をいたしまして、訓練などを通じて、避難計画のさらなる充実強化に継続的に取り組んでいきたいというふうに考えておるところでございます。

真島委員 国側の指針どおりに、いわゆるマニュアルどおりに一応つくったということを確認して、現時点で最善だと。

 私が二つ目に聞いた、市町村の現場で実効性のある準備が整っているという判断はされたんですか。

山本政府参考人 この避難計画におきましては、緊急事態において住民の皆さんをどういうルートでどこに避難をさせるかとか、あるいは放射線防護の対策のためにどういったことが必要かということを具体的に立案し、策定しているものでございます。

 この立案の過程におきましては、今御指摘がありました、現場をつかさどっておられます市町村それから関係の県、そういった職員の皆さんと議論した上で、実行可能な形という形で計画を取りまとめさせていただいたものでございます。

真島委員 一応、計画はできたということで、現場の実情はどうかということを見ていきます。

 玄海原発周辺の七市一町の三十キロ圏内の合計人口、有人離島の数とその総人口、うち、本土と橋でつながっていない離島の数とその総人口を御紹介ください。

山本政府参考人 玄海地域にあります七市一町におけます三十キロ圏内の人口でございますが、これは合計で約二十六万三千人というふうになってございます。

 それから、玄海地域におけます有人離島の数は二十一の島となっております。その人口は約二万六千人というふうになっているところでございます。

 なお、有人離島のうち、本土と橋でつながっていない、いわゆる完全な離島という形になりますけれども、その数は十七となっておりまして、その人口は約一万九千人というふうになっているところでございます。

真島委員 今言われた、有人離島と、つながっていない離島の人口というのは、三十キロ圏にかかっているところの人口ですよね。(山本政府参考人「はい」と呼ぶ)それじゃいいです。

 私がお聞きしたのは総人口で、実際は、そういう島はもう全島避難になるんですよ、現場の計画とか動きでは。それでいくと、二十一の有人離島で総人口五万九千人、橋でつながっていない十七の離島で総人口三万一千人なんです。

 それで、私、長崎県の松浦市、壱岐市、平戸市、そして佐賀県の唐津市、伊万里市、福岡県の糸島市を直接お訪ねして、防災担当者に話を聞いてまいりました。

 特に、三十キロ圏内に二十一の有人離島というのは全国の原発でも最多なんです。そして、本土と橋でつながっていない離島では、しけや津波で船や港が使えなくなる。

 唐津市の七つの離島は、県が旅客船協会と協定を結び、唐津港を初め、最寄りの港にピストンをする。

 松浦市では、本土と橋でつながっている福島や鷹島も、一旦原発に近づかないと橋を渡って島外に避難できない。昼間、島外に働きに出ている人には、一旦戻って家族を迎えに行ってもらうんだと。橋が渡れない場合は船で避難を想定している。

 壱岐市は、玄海原発から南端まで約二十四キロ。四十キロ圏内に全島がすっぽり入るため、二万七千人の全島避難を検討中だと。配付資料二の下の写真、ぼんやり向こう側に見えていますが、この向こう岸に、写真じゃなかなか写らないんですけれども、玄海原発が見えるんです。

 壱岐では、一旦島の北部に逃げる。勝本港というところから島外に出る。全島避難には、渡船七隻で百三十三時間、五日半、ピストンしてかかるというんです。勝本港は大型船が着岸できずに整備を要請中。その小さな港にマイカーが全島から集中したら、駐車場もなくて大混乱するだろう。

 玄海原発周辺の離島の避難計画は、これで実効性があるものになっていると思われますか。

世耕国務大臣 玄海原発の避難計画では、今御指摘のUPZの中にある離島の住民について、悪天候などの事情によって島外避難ができない場合には、島ごとに設置されている放射線防護対策施設等で屋内退避を継続してもらうということになっています。その上で、天候が回復するなど、避難体制が整い次第、海路避難を実施することとなっています。

 こういった点も含めて、現行の避難計画が具体的かつ合理的な内容となっていることを、昨年十二月の関係閣僚等による原子力防災会議において確認の上、了承をしているわけであります。

 ただし、原子力災害対策にこれで完璧ということはありませんので、政府としては、防災訓練を通じた検証も含めて、避難計画の改善充実に向けて、自治体と協力して継続的に取り組んでまいりたいというふうに思います。

真島委員 今大臣が言われた防護施設というのは、全島民がそこに入るというんじゃなくて、要支援者が入るというふうになっていると思うんですけれども。それをちょっと確認だけ。

山本政府参考人 今大臣がお答えになりました放射線防護施設ですが、まず、橋がなくて海路による避難しかできない島でございます。これは全部で十六になりますけれども、これらの島につきましては、当該島に住んでおられる住民の方全員を収容できる放射線防護施設を用意しているところでございます。

真島委員 済みません、私が勘違いしていました。橋がある島は要支援者だけになっているんですね。

 それで、防護施設も今年度いっぱいかかるというところが幾つかありました。先ほど私が言ったように、計画はあるけれども、実効性を持たせる準備が全くない、備えがないというのが各島の、例えば港の状態にしてもあるわけです。だから、現場では不安や危機感が物すごく大きいわけです。

 平戸市は、離島の度島や的山大島のほか、平戸の北部や田平町が玄海原発から三十キロのUPZに含まれて、唯一の島外へのルートである平戸大橋がちょうど三十キロ地点なんですね。一旦、全島民が避難しようと思ったら、三十キロ圏に一回入らないと出られないという状態になっています。

 海路の避難は漁港しかない。千二百人が暮らしている的山大島は、畜産農家が非常に頑張っておりまして、最高の方で牛を百頭飼っている。合計七百頭の牛を島で飼育して、後継者もちゃんとできている。そういう農家の方は、原発の事故が起きても牛を置いて絶対に逃げないんだというふうにみんな言っているらしくて、防災担当の職員の方が、痛いほどその気持ちが私たちはわかるとおっしゃっていました。

 また、例えば在宅の要支援者の避難。

 糸島市では、バスは千七百人分、六十台が必要で、その車両は県がバス協会に要請して確保しているけれども、民間のバス会社は、原発から三十キロのところまでバスを運ぶけれども、そこで置いて帰ります、三十キロ圏内に運転手に運転させられませんと言っているそうです。だから、糸島市は困って、今、市の職員に大型免許を取らせていると。まだ数人しか取っていませんと言っていました。

 一方で、松浦市では、人口二万三千人の二割を集団避難と想定して、県からバス協会に百三十台のバスを依頼中ですが、いまだに確定していない。

 平戸市の方は、必要なバスが何台かさえ確定していないとおっしゃっていました。

 在宅の要支援者の移動手段、バスと運転手の確保さえできていないという、こんな状態で、大臣、原発再稼働していいと思われますか。

世耕国務大臣 避難計画は、法令上、原発の再稼働の要件とはなっていませんけれども、地域住民の安心、安全の観点から、その策定を着実に進めていくことが重要だというふうに思っています。

 その上で、政府としても、自治体と一体となって、積極的に避難計画の具体化、充実化に取り組んで、各地域の計画内容が原子力災害対策指針などに照らして具体的かつ合理的となっていることを原子力防災会議において確認して、了承していくこととなっています。

 玄海地域の避難計画については、避難行動要支援者については、例えば、在宅の要支援者数の把握や、その方々に対する支援者の把握、バスのほか福祉車両などの要支援者に適した避難手段の確保、避難所の確保などを盛り込んでいるところであります。

 また、玄海地域のバス協会などは、災害対策基本法に基づく指定地方公共機関として各県の地域防災計画に位置づけられているわけでありまして、災害対応のための業務について協力する旨、各県との間で確認がなされているというふうに認識をしています。

 こういった枠組みの中で、移動手段であるバスやその運転手の確保などについても適切な対応がなされていくものと認識をしています。

 こういう点も含めて、この避難計画が具体的かつ合理的な内容となっていることを、昨年十二月、原子力防災会議において確認をしているところであります。

真島委員 きれいな絵は描いているんだけれども現場はそうなっていないということを、私が現場に行って聞いてきたことを御紹介しているわけです。ちゃんとなっているはずですと。調べていただきたいと思うんですよ。内閣府は何度も現場に行かれていると思うんですけれども。

 沃素剤の配付も、現場は非常に悩ましいんです。唐津市では、PAZ区域でも事前配付が六割ぐらいしかできていない。三年ごとに更新で、以前配付したものを回収して新たに配り直さなきゃいけない、幼児や転入転出等の対応があるため分量も毎回変わるんだ、UPZ区域の住民からも事前配付の要望があるけれども、保健医療課が通常業務をこなしながら対応しているためとても無理だというふうにおっしゃっていました。

 こういう声はほかの自治体でも共通しているんですが、沃素剤の配付のこの課題、いつまでにどう解決されるんでしょうか。

山本政府参考人 まず、安定沃素剤の配付についてでございますけれども、これは、原子力規制委員会が策定いたしました原子力災害対策指針の中で、まずは、緊急時に予防的避難を行うPAZ内、いわゆる五キロ圏でございますが、ここに住まわれている住民の方々に安定沃素剤を事前に配付する、こういう仕組みにしているところでございます。

 それで、玄海地域のPAZ内につきましては、佐賀県、玄海町、それから唐津市の関係自治体が安定沃素剤の事前配付に係ります説明会をこれまで合計七十五回開催いたしまして、委員御指摘のように、現在、六割の住民の方々に事前配付が行われているという状況でございます。

 ただ、もちろんまだ全員の方に配付ができておりませんので、今後もPAZ内の住民に対する事前配付を一層高めていきますために、関係自治体等、継続して説明会等を実施していくというふうに考えているところでございます。

 私ども内閣府としましても、この安定沃素剤の配付に対する予算措置を講じておりまして、先ほど申しました事前配付に係ります説明会に係ります経費であるとか、それから、もちろん安定沃素剤そのものの購入費用などに対しての予算措置を講じておりまして、あるいは、技術的な面でのさまざまな指導助言も関係自治体に行っているところでございます。

 こういう形で、関係自治体とともに、住民へのさらなる事前配付の促進に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

真島委員 避難訓練について、伊万里市や唐津市では、全域一斉訓練は難しいため、毎年、区域を分けて二〇一一年から六年かけてようやく一巡した。毎回、避難が基本だけれども、訓練で一般の方に事故があってはいけないので、職員がルートを体験することにとどめているだけと。唐津市の離島は、全島民参加の避難訓練が一番いいというのはわかっているけれども、実際は消防団と自治会の役員が中心でやっている。壱岐市では、予算も少人数分しかなく実証的なものはできていない。こういうふうな声を聞きました。

 周辺自治体の防災担当者の方からは、いろいろな声をほかにも聞いています。

 福島での被曝の実態もつかめない中で、避難計画をつくれ、訓練しろと言われても不安でしかない。国からは福島での避難の総括が示されていない。原発対応で仕事や負担がふえるので財政支援を国に再三お願いしても、一般災害対策との重複を理由にガードがかたい。有事の苦情は国や県ではなく市に来るが、防災対策のマンパワーは確保できていない。原発はこちらからお願いした事業ではない、廃炉にしてほしい。避難計画作成は余計な仕事だ、産業振興や観光への前向きな仕事がしたいという声を聞きました。

 現場の市町村は、防災計画で、どこどこの誰々まで責任を持たなきゃいけないんです。

 平戸市議会は、三月二十三日の再稼働反対の意見書を長崎県内で初めて全会一致で可決していますが、その意見書では、住民の避難計画を審査する基準がないということを挙げて、国は避難計画策定等を一義的に地方自治体に任せているけれども、一地方ではもうできない、実効ある避難計画や原発の安全検証の手段が確立され、市民の理解が得られない限り、再稼働に反対するとその意見書には書いてあるんです。

 もう時間が来たと思うので終わりますけれども、理解促進や安全対策に終わりがないんだということを繰り返しおっしゃるんですけれども、これは、つまり、きょう、今議論したように、住民の理解や実効ある避難計画がなくても再稼働するということなんですよ。

 九電は、安全対策を強めたから万一の事故でも放射性物質は福島の二千分の一しか漏れないと説明しているんです。だからまともな避難の備えがなくてもいいんだということにならないと思うんです。それこそ安全神話だと思いますし、また、冒頭に申しましたように、多数の民意を尊重するというのが民主主義の政治道徳です。

 再稼働中止の政治決断を強く求めて、私の質問を終わります。

浮島委員長 次に、木下智彦君。

木下委員 日本維新の会、木下智彦でございます。

 本日もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、二十分ということなんですけれども、ちょっと趣向を変えて、いつもと違うような感じで質問させていただきたいと思うんです。

 先週、五月の十八日に第二十回産業構造審議会総会というのがあった。そこの中で配られた資料を今皆さんに配っていただいていますけれども、これは非常におもしろかったので、きょうはこれを取り上げたいなというふうに思うんです。

 どんなものか。簡単に言いますと、これは、事務次官と経産省内の二十代、三十代の若手の方々が、次官・若手プロジェクトということで提言をまとめられています。六十五ページという結構大きな量なんです。ちょっと配った資料は小さくなって非常に申しわけないんですけれども、全部載せてあります。

 こういった資料、なかなか表に、こういう審議会の総会では出ているけれども、こういう国会の中で議論されたり目を通されるということは非常に少ないというふうに思ったので、ぜひともこれを全部、この委員の皆様、大変申しわけないんですけれども見ていただきたい。きょうはそれにほぼ全部の時間を使いたいというふうに思っているんです。

 本来であれば、この内容、経産省の若手の方々、本当につくった方々にここへ出てきていただいて説明していただきたかったんです。ただ、それはままならないということで、しようがなくと言ったら本当に申しわけないんですけれども、わざわざ官房長に来ていただきました。

 これは、官房長、多分責任重大だと思うんです。というのは、若手の方々の意見をここでしっかり代弁していただきたいんです。二十分ありますけれども、ほとんど、十五分ぐらい、もう頭から全部説明していただいて結構です。

 まず最初に、この次官・若手プロジェクトというのがどうしてでき上がったかという経緯から、それから内容を、大体時間を使っていただいて結構ですので、私は座って皆さんと一緒に聞きたいと思いますので、ぜひよろしくお願いします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のこの資料でございますけれども、五月十八日の産業構造審議会の総会におきまして、経済産業政策の中長期課題を御議論いただくための材料として報告をさせていただいたものでございます。

 このプロジェクトの経緯でございますけれども、昨年八月に、次官の呼びかけで省内の二十代、三十代の若手職員を公募いたしまして、公募に応じた三十名ほどが中心となって検討を進め、取りまとめたものでございます。

 今回、このような取り組みを行うこととしたのは、足元で現在さまざまな変化が起こっていますけれども、その変化が顕在化する将来において、経済産業省を担う若手の人材に、今後自分たちがどういう課題に立ち向かうべきかということを検討させることが人材育成の点も含めて大変重要であると考えて、こういう取り組みを始めたものでございます。

 このような趣旨から、このプロジェクトにつきましては、経済産業省の通常の政策立案や意思決定のプロセスとは完全に切り離しまして、若手職員の問題意識のもとで自由な、闊達な議論、検討を進めてきたものでございまして、有識者へのヒアリングとかさまざまな調査などを経て整理をしたものでございます。

 このプロジェクトの目的といたしましては、世の中広くにこの問題意識を投げかけて議論を呼び起こすということが最も重要だというふうに考えて進めてきたものでございます。

 以下、内容について御説明をさせていただきます。せっかく先生からのお話でございますので、多少お時間をいただきながら御説明をさせていただきたいと思います。

 資料全体は、「不安な個人、立ちすくむ国家」ということで提示をしておりますけれども、社会の変化は、さまざま大きな変化がございますけれども、この資料では、特に個人と社会の問題に着目をして、そこに焦点を当てて議論を整理しております。時代とともに変化する社会状況に応じまして、さまざまな個人の不安が増大をしているということを指摘しながら、世の中で変わりつつある価値観、新しい価値観に基づいた政策の方向性について幾つか提示をさせていただいております。

 資料を参照しながら御説明したいと思います。

 まず、五ページになります。小さい字になりますけれども、一枚目のスライドの真ん中の下の方でございますけれども、蔓延する不安ということで、世の中の急速な変化に比べて制度が変わっていないじゃないかとか、あるいは、情報があふれて何を信じてよいかわからない、あるいは、将来が見えないとか、社会に蔓延するさまざまな不安も提示をしております。

 こうした不安の背景としてということで、七ページになります。二枚目の資料の左の上の図でございますけれども、これは、個人の選択の自由度が増すにつれまして、権威あるいは型に頼ることができなくなって、それが不安につながっているのではないかという問題意識でございます。

 この際、ではこれを、再び型を探すのではなくて、方向感としては、自由の中にも秩序があり、個人が安心して挑戦できる新たな社会システムを目指すことが重要だということを訴えております。

 では、これまでの社会システムがうまく機能していないということの例示として、これは資料でいうと十一ページ、二枚目の紙の真ん中の下です。昭和の人生すごろくの変化ということを提示しております。

 これは、男性は正社員になって定年まで勤め上げるもの、女性は結婚して出産して添い遂げるものという昭和の人生すごろくのモデルですけれども、これは、戦後、高度成長期の日本の社会を前提としてつくられたものであり、現在、家庭を持つ、家族を持つ、仕事をするという概念は相当多様化しておりまして、このすごろくをゴールまで上がる人は減っているということを示しております。

 一方、今の日本の社会システムは、もはや典型でもない、標準でもない、こうした昭和の人生すごろくを前提としたままになっているのではないか。戦後最適だった仕組みも、いつしか価値観をも規定して、変革が進まなくなっているのではないかということを問題意識として提示しております。

 以下、こういう問題意識を踏まえて、何点かの論点を提示しています。

 一点目は、高齢者の問題です。資料は十五ページです。先生お配りの資料、三枚目の右上のスライドになります。

 日本人の平均寿命は世界一で、定年後も働く意欲のある人が六割以上いらっしゃいます。ところが、実際に仕事をしている人は一割ということで、ほとんど地域活動にも参加をできていないということです。

 では、意欲も能力もある高齢者は何をされているのかということですけれども、その下の絵ですけれども、十八ページ、定年退職を機に、青い色の部分、テレビを見ているという時間が相当ふえているということでございます。

 それから、もう一つの論点として、人生の終末期ということで、資料としては二十一ページ、先生お配りの資料の四枚目の右上の図でございますけれども、六割の方が自宅で人生の終末、最期を迎えたいとお望みの一方で、実際には、人生の最期は、入院をして、延命治療を含めてさまざまな治療を受けられて、そのまま病院で亡くなるというケースが多いということを示しております。

 このように、今の手厚い年金あるいは医療なども必ずしも高齢者を幸せにしていないのではないか。やはり個人のさまざまな自由というものをより選択できるような仕組みというのが必要ではないかということを訴えております。

 二点目の大きな論点として、現役世代、ここでは特に母子家庭の問題を取り上げております。資料でいいますと二十七ページでございまして、先生お配りの資料だと五枚目の右上の絵になります。

 日本の母子家庭の過半数が貧困でありまして、世界でも突出して高いことを示しております。これは、非正規労働、あるいはジェンダー、世代間などのさまざまな格差やひずみの縮図でありまして、構造的に起きている問題であるということでございます。そして、この貧困というのは、その五枚目の下の真ん中の絵にあるように、教育投資を通じまして次の世代に連鎖をするということで、単に自己責任と断じられる問題ではないということを主張してございます。

 それから、二点目の大きな話で、若者、現役世代の問題でございます。これについては、資料は三十二ページです。先生お配りの資料の六枚目の上の真ん中をごらんいただければと思います。

 日本の若者は、社会貢献の意識が先進国の中でも最も高いわけですけれども、一方で、世の中を変えられると思っている割合は最も低いということでございます。その結果かどうかは正確にはわかりませんけれども、その右の図ですけれども、就職の動機として、社会の役に立つという割合が近年急速に低下をしてきており、社会貢献を諦めて個人利益を追求するようになっている可能性があるということを指摘しております。

 これについては、若者に活躍の場がないからではないかということを懸念しておりまして、そのページの左下の絵でございますけれども、これは東京大学のデータですけれども、若手研究者のポストがどんどん減って、非正規化をしているという状況が見てとれるということでございます。

 それから、もう一つの論点、多様な人生に対応した大きな政策の目標というものでございますが、資料でいいますと、先生お配りの資料の七枚目の右の上でございます。三十九ページをごらんください。

 これは、経済成長が国民の幸福に与える影響ですけれども、これは三十五カ国サンプルをとっていますけれども、経済成長が国民の幸福に与える影響は世界的に低下をしておりまして、下の図にあるように、つながり、あるいは健康寿命など、社会参画によって得られるものが幸福の重要な要素になっているということが示されております。したがって、意欲、能力のある個人が活躍の場を得るということが重要だということを指摘しております。

 では、こういった問題意識の中でどうすればよいのかというのが五十ページ以降になります。先生お配りの資料の九枚目の真ん中の上をごらんください。

 これは、これまでの戦後につくられた制度が、その制度を前提とした価値観をつくり上げ、絡み合ってなかなか改革が進まないということでございます。

 高齢者はある年代で引退して国に支えられるものとか、子育て、義務教育は自己責任でやるんだ、こういった固定観念というのは、戦後の制度がよくできたからそういう観念が生まれたんですけれども、今後、百年寿命になるというときに、働ける限り社会貢献するとか、子供あるいは教育への投資を最優先するという新しい価値観をもとに社会をつくりかえる必要があるということを訴えております。

 その右の五十一ページですけれども、これはこのプロジェクトの主張を端的にまとめたものでございまして、具体的に三点でございますけれども、人生百年、スキルを磨き続けて健康な限り社会参画をすること、それから、子供や教育、これは要するに高齢になっても含むということでございますけれども、最優先で投資をしていく、それから、意欲や能力のある人が公を担うという価値観で制度を抜本的に組みかえることを提言しております。

 それで、高齢者の参画については、五十五ページでございますけれども、先生お配りの資料の十枚目の左上でございます。

 高齢者を一律に弱者扱いするのではなく、働ける限り社会貢献をし続けることが実現できれば、収入、健康、生きがい、つながり、居場所など個人の幸福にとって重要なものを手にすることができるだろう。その結果、財政も助かり、子供や教育への投資に回すことができるということであります。そのためには、個人が現役時代から社会的な役割を多重化、複線化していくということが重要であるというふうに主張をしております。

 それから、子供や教育への投資については、五十八ページ、その資料の下です、見ていただければと思いますけれども、高齢者を何人で支えるかというこの図は、相当見なれてきている図なんですけれども、逆に、子供を何人で支えるかというふうに考えれば、むしろどんどん支えやすくなっていくということで、こうしたことで発想の転換をしていくことが重要ではないかというふうに述べております。

 それから、こうした教育というのは、その右の図にありますけれども、今の学校教育そのものではなくて、人生百年を前向きに生き抜くため、要するに自由を行使する能力というのが必要で、これは社会が個人に授けるべき能力ではないかということの考え方を提示しているものでございます。

 最後になりますけれども、六十四ページですけれども、高齢者や社会が子供を支える側に回る、こういう発想の転換については、ここ数年が勝負であるということを述べております。

 六十五ページ、最後のスライドになりますけれども、アジア諸国は二十年おくれで日本と同じような高齢化に悩むということでございますので、日本が思い切った決断をして解決してみせるということが社会への最大の貢献になるのではないかということでございます。

 以上が提言の内容でございますけれども、この提言については、経産省のホームページに掲載しておりまして、相当インターネット上で意見のやりとりが行われております。もちろん、共感できる、言いたいことが言われているというような肯定的な意見から、新しいことじゃないじゃないかとか、具体的な政策の落とし込みが足りないとか、いろいろな意見が出てきておりますけれども、このプロジェクトが意図しておりました、世の中に広く問いかけるという意味では一定の成果があったのではないかと思っております。

 経産省は、若手が自由に意見を言うという文化を大切にしておりますので、こういったことを大事にやっていきたいと思っております。

 ありがとうございます。

木下委員 ありがとうございます。

 本当はやはり、若手の方がここへ出ていただいて話せるような、そういう感じに変わっていけばいいんじゃないかなと思ったんです。

 官房長が言われていましたけれども、インターネットでは実は物すごい意見のやりとりがされております。よく言われるのが、ここに書いてあるようなことをつくったのはそもそも国じゃないかとか、おまえらがつくったものを自分らが否定して何しているんだとかということを言っている人もいるんですけれども、やはり若い人たちがこういうことをちゃんと話ができる、そうしないと、これから先変わっていくことはできないと思うんです。

 だから私、思うんですけれども、こんなことを言っていいのかどうかあれですが、事務次官はすごいなと思いました、若い人からそうやって話を聞いて。それで、聞いていると、若い人がいろいろこうやってまとめてきても、ばしんと、だめなところはだめというふうにやり返したりとか、そういうことが省内では行われていた。非常にこれはすばらしいことだと思うんです。

 大臣、最後に聞きたいんです。

 特に、五十ページとかで、実際に価値観が変わっていっているとか、五十四ページ以降、高齢者がどうだとか教育がどうだとかというふうに書いてあります。こういうことをまだ今の時点では政策に落とし込んでいくことは難しいと思いますし、経産省内だけでやることではないとは思っているんですけれども、これから先、こういったことをうまく取り入れて、どういった具体策に落とし込んでいくか、これが一番重要だと思うんです。

 大臣、こういうことにしっかり耳を傾けて、政策に取り入れていっていただきたいんですけれども、具体的に何かそういうふうな動きというのはあるんでしょうか。

世耕国務大臣 本当に事務次官のもとで若手がよくまとめてくれたと思いますし、賛否、ネット上で盛り上がっているのは私も見ていまして、それはいい意味で世の中にも問題提起ができたんだろうというふうに思っています。

 今後は、これは一応、産構審の議論の一つにしていただくためのペーパーでありますから、まず産構審でしっかりともんでいただきたいというふうに思いますし、そして、そこから出てきた結果については、やはり、これは批判じゃなくて提案でいいんですが、さらに実行と政策という形に落とし込んでいかなければいけませんから、それは私もしっかりフォローをして、特に経済財政諮問会議の議論なんかにもここで出てきたようなテーマをぶつけていって、単にデータを見てどうこう言っているんじゃなくて、政策レベルの議論に何とか持っていきたいというふうに思っています。

木下委員 若い人たちの思いをしっかり実現してこの日本を変えていきたいというふうに思いますので、皆さんも含めて、ぜひとも御協力をよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございます。

     ――――◇―――――

浮島委員長 次に、内閣提出、参議院送付、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。世耕経済産業大臣。

    ―――――――――――――

 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

世耕国務大臣 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。

 化学物質は、イノベーションの促進に資するものである一方、それによる環境影響を考慮し、適切な管理を行うことが重要であります。

 そのため、我が国では、化学物質の研究開発の奨励とあわせて、化学物質の環境の汚染を通じて人や動植物に悪影響を及ぼすことを未然に防止するため、新しい化学物質について、事前審査を行うとともに、必要な規制措置を講じてまいりました。

 近年、新しい化学物質を開発し少量利用するニーズが高まる中、現行制度のもとでは、国内における事業活動が海外に比べて制約される例が増加しております。一方で、比較的リスクが小さいとされる分類の化学物質の中には、毒性が強いものが出現しております。

 こうした状況を踏まえ、最新の知見を取り入れた、より合理的な化学物質の審査制度への転換を図るとともに、実態に即したきめ細やかな化学物質管理を行うことにより、化学物質による環境汚染をより適切に防止するため、本法律案を提出いたしました。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、新規化学物質の審査特例制度における国内の総量規制について、製造及び輸入に係る総量による規制を、環境に対する影響を勘案して算出する総量によるものに改めます。

 第二に、一般化学物質に分類される化学物質のうち、毒性が強いものに係る管理の強化を図る等の措置を講じます。

 以上が本法律案の提案理由及びその要旨であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。

浮島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二分散会


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