衆議院

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第2号 平成30年3月28日(水曜日)

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平成三十年三月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 稲津  久君

   理事 城内  実君 理事 平  将明君

   理事 辻  清人君 理事 冨樫 博之君

   理事 吉川 貴盛君 理事 落合 貴之君

   理事 田嶋  要君 理事 富田 茂之君

      穴見 陽一君    石川 昭政君

      石崎  徹君    上野 宏史君

      尾身 朝子君    大見  正君

      岡下 昌平君    勝俣 孝明君

      神山 佐市君    神田  裕君

      小林 鷹之君    國場幸之助君

      佐々木 紀君    佐藤ゆかり君

      田畑  毅君    穂坂  泰君

      星野 剛士君    松本 洋平君

      三原 朝彦君    宮澤 博行君

      務台 俊介君    八木 哲也君

      中谷 一馬君    松平 浩一君

      山崎  誠君    浅野  哲君

      吉良 州司君    斉木 武志君

      山岡 達丸君    國重  徹君

      菊田真紀子君    笠井  亮君

      谷畑  孝君

    …………………………………

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      宇野 雅夫君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            中島 淳一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         飯田 祐二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           木村  聡君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           前田 泰宏君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局通商機構部長)       渡辺 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省産業技術環境局長)          末松 広行君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          寺澤 達也君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         小澤 典明君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            高科  淳君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        小野 洋太君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    安藤 久佳君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 米谷  仁君

   経済産業委員会専門員   佐野圭以子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十八日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     宮澤 博行君

  小林 鷹之君     石崎  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     小林 鷹之君

  宮澤 博行君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  務台 俊介君     神山 佐市君

    ―――――――――――――

三月二十七日

 即時原発ゼロを求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第六〇四号)

 小規模事業者に対する社会保険料負担軽減支援策等に関する請願(阿部知子君紹介)(第六〇五号)

 国と東京電力が責任を果たすことに関する請願(志位和夫君紹介)(第六四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

稲津委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長宇野雅夫君、金融庁総務企画局審議官中島淳一君、経済産業省大臣官房総括審議官飯田祐二君、経済産業省大臣官房審議官中石斉孝君、経済産業省大臣官房審議官木村聡君、経済産業省大臣官房審議官前田泰宏君、経済産業省通商政策局通商機構部長渡辺哲也君、経済産業省産業技術環境局長末松広行君、経済産業省商務情報政策局長寺澤達也君、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官小澤典明君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長高科淳君、資源エネルギー庁資源・燃料部長小野洋太君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史君、中小企業庁長官安藤久佳君及び環境省大臣官房審議官米谷仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

稲津委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

稲津委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。辻清人君。

辻委員 皆さん、おはようございます。自民党の辻清人です。

 今回、こうした形で質問の機会を与えていただきました理事、委員長の皆さん、本当にありがとうございます。

 きょうは、与党トップバッターなんですが、古くは、近江商人の言葉で、売り手よし、買い手よし、世間よしの三方よしという言葉がございますが、私は、経産委員会というのは、いい経済をつくるのに与党も野党もないということで、与党よし、野党よし、国民よしで、三方よしの委員会運営をしたいなという、そういう意味では、是々非々で、大臣も含めて胸をおかりさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 格好つけさせていただくのはこのくらいにして、早速、先日の大臣所信について、まず、それに沿った形で随時質問をさせていただきます。

 まず一問目、早速、世耕大臣にお伺いしたいんですが、大臣所信において、第四次産業革命、コネクテッド・インダストリーズということを非常に強調されていて、私も大賛成なんですが、地元に帰りますと、私の地元は東京の下町なんですけれども、コネクテッド・インダストリーズって何だよ、辻君、第四次産業革命って、俺たち中小企業のおやじには参加資格あるのかという声が結構聞こえてきて、ぜひともこの機会に、大臣からそういう方々に対して、皆さんが主役なんです、中小企業の方々がどういう形でこれからの経済のスキームに加わるのかも含めて、コネクテッド・インダストリーズ、第四次産業革命の意義、意図を御説明願えますでしょうか。

世耕国務大臣 まさに、AI、IoTなどでどんどんどんどん産業の構造変化が進んでいく中で、例えば、巨額の投資ができる会社がたくさん存在するアメリカとか、あるいは、一種、一党体制のもと、巨大なビッグデータを集約をすることができる中国ですとか、あるいは、インダストリー四・〇という、まさに製造工程の完全なIT化を進めていっているドイツとか、こういったものに対して日本がどういうふうに対抗していけばいいのか、日本の強みは何なのかという議論の中から、まさにこのコネクテッド・インダストリーズという発想が出てきました。

 日本の強みは何かというと、製造やサービスの現場にたくさん質の高いデータが存在をしている。しかも、それがドイツと決定的に違うのは、やはり中小企業でも、これは今までのIT補助金などの効果もあって、割とデジタルデータを生み出す製造機械というのが結構入っている。

 それが活用されていないということで、まさにこのコネクテッド・インダストリーズというのは、中小企業と大企業と、そして業種を超えて、いろいろなデータを持ち寄って、そして、そのデータを人工知能などに分析させていくことによって、ものづくりやサービスの質を更に高めて国際競争に勝っていくという発想ということになるわけであります。

 だから、まさに中小企業の皆さんも非常に重要なプレーヤーだということであります。

 例えば、製造機械があります。時々、故障するとラインをとめなければいけないわけですけれども、例えば、これをビッグデータで、潤滑油の温度が何度を超えてきて、かつ振動の周波数がこれぐらいのヘルツだとすると間もなく故障するなんということがわかってくる。そうすると、ラインをとめないで、的確にいいタイミングで保守点検を行うことによって故障のないラインをつくるとか、そういうこともできるわけですから、中小企業の皆さんも、コネクテッド・インダストリーズにおいて自分の会社が一体何をやるべきかということをぜひ考えていただきたいと思いますし、ものづくり補助金やIT補助金もうまく使いながら、我々はそういう中小企業の取組をしっかり応援していきたいというふうに思っております。

辻委員 ありがとうございます。

 確かに、平成二十九年度の補正も含めて、平成三十年度のこれから上がってくる予算案にもそういったさまざまな後押しを組み込んでいることも承知でございますが、蛇足として加えさせていただければ、やはり、日本の企業、例えば地元のそういう工員十人未満の会社なんかを見ていても、自分の会社の中のラインや製造工程をしっかりと整備して仕上げることに関しては非常に日本人は得意だなと思うんですが、ただ、コネクテッドになればなるほど、バリューチェーンといいますか、全体をマクロというか、かなり複眼的に見るスキルというのが必要になってくるということもあります。

 それこそ、世界的な視野を持って自分たちの立ち位置を決めなければいけないということでは、やはりこれは、もちろん経産省もそうですが、地元の商工会議所等も含めて、そういうコンサルティングもやっていかないとこれは成り立たないと思いますので、そういった部分でも、もう釈迦に説法だと思いますけれども、大臣からもそういう形で応援をいただきたいと思うと同時に、私、専門として安全保障をずっとやっていた観点からして、サイバーセキュリティー、企業がつながればつながるほど、サイバーセキュリティーに対するやはり対策というのも同時に構築していかなければいけないと思うんですね。これは実際、調査データにも出ていますし、現場で私が経営者の方と話していると、自分たちの企業の規模だとサイバーテロの対象にはならないんじゃないかと思っている企業の方々が非常に多いことを逆に危惧をしてしまいます。

 こういった観点から、第四次産業革命、それこそ、コネクテッド、つながればつながるほどサイバーテロを受けたときの被害が大きくなる可能性というのは非常に高まっていますが、そういった対策を講じるに当たって、経産省の見解をお伺いさせていただきたいと思います。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、コネクテッド・インダストリーズになりますと、つながっていくわけでございますので、悪意のある者から見たら、それだけサイバーアタックといいますか、サイバー攻撃の機会がふえる、あるいは増すという側面もございます。

 そういう観点から、コネクテッド・インダストリーズを進めるに当たりましては、御指摘のとおり、サイバーセキュリティー対策と一体で同時に進めることが必要だ。

 具体的に何をするのかということなんですけれども、私どもは、中小企業の経営者に向けて、経営者としてどういうサイバーセキュリティーの対策をしたらいいのかというガイドラインを策定して、わかりやすく示しております。その中で、例えば、五カ条というんですけれども、五つぐらいの、例えばウイルス対策ソフトが入っているかどうかとか、幾つかのポイントを明示しまして、それに自分が合致しているということになりますと自己宣言をするセキュリティーアクション制度というようなものもありまして、それを活用していただくということを考えております。

 それから、今委員御指摘の、バリューチェーンというお話がありましたが、サプライチェーン全体、つまり、車を例にとりますと、完成車というのは数万点の部品で成り立っております。その部品の企業も全部含めて、全体としてどういうふうなフレームワークでサイバーセキュリティーをやったらいいのかという俯瞰した対策も同時に進めたいというふうに考えております。

 それからまた、これから御審議いただく中小企業の経営強化法の改正案におきましては、中小企業の生産性向上に資するITツールを提供するベンダーを情報処理支援機関と認定をして、どういうふうなITベンダーがわかりやすい情報処理支援機関なのかということをわかりやすく示して、その機関に対して、いわゆるIPAなどがサイバーセキュリティーの情報提供を実施するというこの仕組みで、中小企業の方にも、どういうツールを使ってサイバーセキュリティーを高めていったらいいのかということがわかりやすい仕組みをつくりたいというふうに考えております。

 こうした取組によりまして、中小企業を含めました産業全体のサイバーセキュリティー対策を強化していきたいというふうに考えております。

辻委員 ありがとうございます。

 これは、各国ともそれぞれ、現在進行形で、それこそサイバーセキュリティーというのは、もう全世界的な共通課題として今構築しようとしている中でございますが、特にこれから細分化して日本も取り組んでいかなければいけない。これには本当に私も協力をさせていただきますが、ぜひともよろしくお願いいたします。

 中小企業つながりで次にお聞きしたいのが、ことしの四月から、大きな運用の変化として、事業承継の税制の抜本改正、四月から時限で十年間、始まりますが、これは私、非常に大事な局面に日本の経済は入っていると思いまして、それこそ、世代交代をしたい企業も含めて、今まではなかなか事業承継、運用しにくいという声があった中で、今回ラストチャンスだと私は思っていまして、今回、大臣所信に対する質問でございますので、ざくっと、そもそもこの事業承継税制に対して経産省としてどのように対応していくのか、ちょっとばくっとした質問なんですけれども、まずそれに対してお答えいただけますか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のございましたように、まさに中小企業の経営者の皆様方が大変高齢化の時代を迎えておるということで、中小企業の皆様方御自身にとっても事業承継は大変大切な課題であると同時に、日本経済全体の問題であるということで、まさに待ったなしの課題である、このような認識を持たせていただいております。

 事業承継税制、今御指摘がございましたように、これまで制度としてあったわけでございますが、なかなか使いにくいという御指摘がございました。今回、期限を十年間ということに限らせていただいて、さまざまな制約を最大限撤廃をさせていただいたところでございます。

 一例を申し上げますと、事業承継をした段階におきまして、現金で大体半分程度は納税をしなければいけないということであったわけでございますが、承継時におきましては、贈与税、相続税の支払い負担は実質ゼロにさせていただく。また、雇用要件というのがあったわけでございますけれども、雇用は維持していただくことは大変大切でございますけれども、人手不足の中でどうしても雇用要件を切ってしまう、こういう実態もございました。こういったことを課税の要件にするという、そういった制約を取り外させていただいたということでございます。

 他方、税制を改正すればこれで済むということではないと思っております。まさに早目早目の気づきの機会を経営者の皆様方に与えさせていただいて、早目に準備をしていただく。また、事業承継を契機として、生産性向上を上げて、承継をした後の企業がしっかり、うまく飛び立っていただく、こういうようなことが必要であると思っておりまして、事前から後までしっかりとフォローさせていただくということで、私ども、切れ目のない御支援を総力戦でやらせていただく、このような考えでございます。

辻委員 特に、私、大事になってくると思うのが資金調達なんですね。

 今、我が党の中でも、中小企業調査会等々でさまざまな事業承継に対するヒアリングを行っていまして、私もその中で、直接、間接、中小企業金融のあり方の小委員会の事務局長をやらせていただいている立場で、ここ数カ月間、政府系、また民間の金融機関や地元の商工会議所等々のヒアリングを行わせていただいていまして、その中でやはり出てくる課題として、経営者の個人保証、これは、経産省がガイドラインを策定して、これを地元の金融機関等々も、しっかりと説明をしているにもかかわらず、いまだにやはり経営者の個人保証を求められるケースというのがまだまだあるんですね。そうなってくると、やはり、世代交代した新しい経営者が何かをしようとしても、そこを求められると、どうしても萎縮しちゃう。

 それを、今回このタイミングで、事業承継をするに当たって非常にこれは一つ大きなハードルになる可能性がありますので、経営者保証ガイドラインの活用がまだまだ徹底されていないという部分というのがあると思うんですね。そこに対して、中企庁として今後どのような対策を講じていくのか、お聞かせ願えますでしょうか。

安藤政府参考人 お答えいたします。

 大変重要な御指摘だということでお聞きをいたしました。

 まさに、事業承継の際に個人保証が制約となって廃業せざるを得ない、このようなことになってしまいますと、せっかく税制を、あるいは予算措置を講じさせていただいても役に立たないということになりかねないと思っております。

 経営者ガイドラインは、御案内のとおり、平成二十六年に策定をさせていただきました。中身がまだまだ十分認知されていないと同時に、やはりわかりにくいという御指摘もございますので、紙でのいろんな御説明と同時に、中小企業基盤整備機構等々も活用しながら、専門家の皆様方にしっかりと中身を周知していただくような、専門家の派遣ということもあわせてやらせていただきたいというふうに思っております。

 それとやはり、金融機関の問題でございますので、金融庁そして金融機関御自身と連携をさせていただく、こういうことが大変大事だと思っておりまして、商工会議所あるいは金融機関から事業者に配付するチラシを例えば二百万枚ほど御用意をさせていただいて、金融庁と連携しながら周知をさせていただいております。

 このようなことを通じまして、個人保証が事業承継の制約にならないように万全を期させていただきたい、このように思っております。

辻委員 このタイミングで、事業承継もそうですけれども、スムーズな経営者移転ができなければ、潰れていく企業というのはこれから本当に飛躍的にふえてくる。そういう局面というのを、私、東京で、まだまだ比較的、ほかの地域に比べればまだ比較優位がある地域であるにもかかわらず、やはりかなり厳しい状況というのを現場に出れば出るほど感じていますので、この分野は本当にオール・ジャパンで取り組んでいかないと、これからの日本の雇用、経済を下支えする主役は中小企業なので、繰り返しですけれども、これはくれぐれもよろしくお願いをいたしたいと思います。

 ぐっと、ちょっと視点を変えて、通商政策の話をさせてください。

 TPP11もそうですが、日・EU・EPAを含めて、RCEP等々も議論されていますが、やはり、通商政策、日本が今、特に安倍政権の中での五年間でやっているバイ、マルチの通商政策、これは歴史的に見ても私は正しいんだと自信を持っていますが、ただ、その中で、特に今のアメリカのトランプ政権に端を発した、二十一世紀型の貿易戦争に発展する可能性があるんじゃないかと言われている鉄鋼、アルミ等々に対する関税措置、それに対する、特に中国や、またそれぞれの個々の国々の対応、それに対して私は非常に外交の観点からも経済の観点からも懸念している人間の一人でございます。

 それに対して、自由貿易の進展という、これは日本が標榜する経済的な理念の一つであると同時に、これは特にアジアの中で守っていかなければいけない。

 その中で、やはり、例えば韓国なんかは、それこそ自分たちでみずから規制をするということで、これは韓国と米国の間でのFTAの話合いにもまたつながっていて、譲歩した。これは、アメリカ側としたら、じゃ、譲歩してくれるんだったら我々の戦略は成功だ、そういう見方もありまして、ただ、私は、アメリカに対して、これは特に日米関係の観点からいって、二十世紀型のこういうことを繰り返しては絶対いけないと思うんですね。

 それで、経産省は今、どういう交渉をしているんですか、アメリカと。それをまずお聞かせください。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、アメリカの鉄鋼、アルミの輸入制限措置につきましてでございますけれども、これは大臣が談話を出しておりますけれども、世界市場を混乱させて、それから、WTOに基づく多角的貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものだと考えております。日本も対象となる形で発動された今回の措置は、極めて遺憾ということであります。

 これまで、アメリカに対しましては、同盟関係にある日本からの鉄鋼やアルミの輸入はアメリカの安全保障に悪影響を与えることはない、したがって、関税の引上げの対象から日本を除外すべきだということを、世耕大臣みずから、ライトハイザー代表、それからロス長官に直接働きかけを行ってきたところでございます。引き続き、対象から日本を除外するよう、米国に粘り強く働きかけていきたいと考えております。

 それから、委員御指摘の、WTOルールにのっとらない一方的措置の応酬はどの国の利益にもならないということを改めて各国に訴えていきたいと考えております。

 それから、自由貿易の推進、それからアジアにおける経済連携の推進というお話がございました。

 TPP11につきましては、昨日、協定と法案の国会提出について閣議決定をしたところでございます。今国会におきまして、御審議の上、早期に承認され、法案が早期に成立されるよう全力を挙げてまいりたいと思います。

 それから、日・EUのEPAということでございますけれども、これは、昨年十二月に交渉を妥結いたしまして、早期署名に向けて努力しているところでございます。

 それから、RCEPの御指摘もございました。これは、世耕大臣がリーダーシップをとられまして、包括的でバランスのとれた質の高い協定を早期に実現するということで、全力で交渉に当たっているところでございます。

 こうしたさまざまな取組を通じまして、経済連携、自由貿易の推進を最大限日本としてリードしていきたいと考えております。

辻委員 大臣のカウンターパートのUSTRのライトハイザーさんというのは、日米の通商史に詳しい方だったなと思うんですが、レーガン政権の通商代表部の次席で、当時、日本に対して鉄鋼の自主規制をのませたという、日本にとっては非常に、またかという気持ちもあって、大変、当時の成功体験というのを確実に持っているはずなんですね。かなり御高齢で、もう七十近いというふうに記憶しているんですが、そういう方だからこそ、保護貿易、それに対する視点、そういうものを全て加味した上で、我々も、日米の関係の中で、もちろん是々非々でやっていかないといけないと私は思っていまして、二十世紀のそれこそ日米貿易摩擦のときの教訓を生かして、これからの時代、やっていかないといけないと思っています。

 これも蛇足でございますが、どうしても私、外交を専門にやっている中で、ちょっと、最近つくづく思うのが、百年前の今ごろというのは第一次世界大戦がまださなかでございまして、一九一八年というのは。よく、歴史の諸説ありますが、第二次世界大戦というのは世界大恐慌以降の世界の経済のブロック化が引き起こした、一因であると。では、第一次世界大戦はどうかというと、当時は、多くの、特にイギリスやフランスの経済学者が、世界の経済がグローバル化すれば戦争は起こらないじゃないかと第一次世界大戦のときは思っていたんですね。ただ、それでもああいう形の悲劇が起こってしまった。

 経済が自由化して世界経済が一つになればなるほど戦争は起こらないんじゃないか、そういうことは私は思っていません。ただ、一方で、世界の経済がブロック化してそれぞれが保護主義に走るというのも、それもいけない。では何が正解かというのはわかりませんが、ただ、戦争は外交の失敗からきます。ただ、外交の失敗というのは往々にして経済の失敗からくるということだけは私は確実だと思っていまして、我が国にとっても、強い経済をつくる。

 第一次世界大戦と第二次世界大戦に共通していることは、自国の利益を最大化しようとどの国も動いてしまった。第一次世界大戦においては、当時は、世界経済が非常に流通網が発達していく中で格差が生じてしまった。

 私は、日本経済をこれからよくしていく中では、やはり日本国内のみならず諸外国のことも考えながら、それこそ冒頭に申し上げた三方よしじゃないですけれども、自国も他国もいい形をつくっていかなければいけない、それだけは、最近のこの傾向を見て、特に合衆国の今の動向に対して非常に懸念を示すとともに、我が国としてはそういう歴史的な経緯も含めてしっかりと念頭に置きながら頑張っていただきたいなとつくづく思っていますので、よろしくお願い申し上げます。

 そういったちょっと地球規模的な観点の話でつなげさせていただきますと、大臣も所信でおっしゃられたESG、ESG投資、これはもう欧米諸国だと結構当たり前のようになっていまして、むしろ、そういうESG、そもそも環境や社会貢献を是とするそういった企業以外には投資をなかなかしないような環境さえ生まれています。

 私は何を申し上げたいかというと、これは、特に環境分野というのは、日本にとってはこれから、得意分野の一つなんですよ。この分野において、逆に、どのようなインセンティブ設計をすれば、そういうリスクマネー、特にこれから起業しようとする方々も含めて、そういう方々にできるだけ供給をしっかりと資金の面でしてあげて、そういう企業が活躍をできるような好循環をつくるというのは、これも、先ほど申し上げたような観点からいったら、非常にこれは日本としてはプレーヤーとして大きな意義があると思うんですが、そういった制度設計について、今、経産省としてはどのような考えをしているのか、お聞かせ願えますか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 環境や社会問題への対応など、ESGに対する企業の取組が海外も含めた投資家から評価されますためには、それが自社の長期的な成長につながっていくというストーリーを示していただくことが必要であると考えてございます。

 資本市場におきましては、ESGの取組を評価に組み込むファンドが誕生いたしますなど、資金の流れは変化しつつあるものと認識してございます。

 こうした中、経済産業省では、平成二十九年の五月でございますが、企業の持続的な成長に向けた長期投資を促す観点から、ESGも含めた長期的な価値創造に向けた非財務情報の開示など、経営者と投資家との対話を後押しするための価値協創ガイダンスを公表させていただいたところでございます。このガイダンスは、東京証券取引所の企業価値向上表彰にも活用されますなど、投資家及び企業経営の変革を促しているものと認識してございます。

 また、経済産業省では、平成二十九年の十二月には、統合報告・ESG対話フォーラムを立ち上げまして、価値協創ガイダンスの実践と活用を更に促すための議論を行っているところでございます。

 こうした取組を通じまして、ESGに取り組む企業への投資がふえていくための環境整備に努めてまいりたい、このように考えてございます。

 以上でございます。

辻委員 少なくとも、私の周りで聞こえてくるケースで多いのが、やはり、大企業の中でそういった社内ベンチャー的な形でそういう部門をつくって、そこに対して投資を呼び込むという形が多いというふうに聞いておりますが、特に、今、大企業中心に考えたときに、数字はいいんですが、数字というのは、景気の、有効求人倍率含めて、ある程度統計的に見たときに、日本経済が今非常に好転している、景気循環の中のプラスのサイクルに行っているという数字がもう明白に出ていますよ。

 ただ、実際、現場を見ていると、なかなかそうもいかない。いやいや、我々はまだまだ景気がよくないよと。

 何でこういうことになるかというと、やはり日本の経済の構造的な問題もあると思うんです。それこそ、今までは下請をやっていたような企業が、IT革命、金融ビッグバンと、月並みな言い方ですけれども、効率的な取引、BツーCやBツーBが進んで、うちの下町の地元なんかにも多いんですけれども、卸等々の業態が今、構造的な変化の中で、そのはざまで苦しんでいる。その中で起こっていることで、これはもう経産省としても非常にこれを意識しているとは思うんですけれども、その下請企業へのいじめ、下請いじめというふうに言われておりますが、それがやはりいまだに存在している。

 それで、大臣所信の中にも、これはフォローアップしますというふうにおっしゃられていますが、具体的に、こういった下請企業に対して、そういった環境に対してどのような対策を講じているのか、ちょっと話が戻ってしまいますが、それについて教えていただけますでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 下請取引の適正化でございますけれども、平成二十八年の九月に「未来志向型の取引慣行に向けて」、いわゆる世耕プランというものを策定いたしまして、これに基づき、平成二十八年十二月でございますけれども、関係法令の運用強化、また手形通達の改正、こういったことを一括して行わせていただきました。

 また、主要産業界に対しまして、自主行動計画の策定を要請させていただき、昨年三月末までに、八業種、二十一団体に計画を策定、公表していただいております。

 これは、つくっただけではだめだということで、自主行動計画の策定団体みずからしっかりとフォローアップ調査を行っていただいております。また、これを確認していくために、これまで、下請Gメンの皆さん方のヒアリング調査、約二千七百社でございますけれども、行わせていただきまして、この両方の結果を突き合わさせていただいて、昨年の十二月に公表させていただきました。

 調査結果では、自動車業界を中心に、手形払いの現金化など、自主行動計画に基づく取組によって着実に成果が上がっている、こういう評価ができる一方で、改善の動きがまだまだ遅い業界が見受けられるということになりました。

 これを受けまして、世耕大臣から、直接、この一月以降でございますけれども、さらなる取組を業界トップに要請をさせていただいているところでございます。

 また、この自主行動計画を更に拡大をしていこう、こういうことでございまして、策定業種を当初の八業種から十二業種にまさに拡大をしている途中でございます。今後、そのフォローアップを要請していくとともに、下請Gメンの体制も増強して、さらなる実態の把握を行ってまいります。

 また、これは経済産業省、中小企業庁だけでは足りませんので、公正取引委員会あるいは関係省庁全て入りまして、関係省庁が参加をする、官邸におけます官房副長官が主宰の会合で随時方針を決定し、また、フォローを行わせていただく、こういうサイクルを講じながら、しっかりと対策を講じさせていただきたい、このように思っております。

辻委員 特に最近思うんですが、やはり、この数年間の世界の変化のスピードというのは、私はまだ辛うじて三十代なんですけれども、別に年齢ということではなくて、この世の中のスピードにどうやって政治、行政がついていくのかということは、これは、特に民間の若手の経営者等と情報通信関係の方に聞くと、本当に、将来的には、企業も含めた、国も、既存のそういったシステム自体を飛び越すようなやはり技術革新というのが非常に今進んでいまして、それに対してつくづく思うのが、日本は今いろんな課題がありますけれども、人と物とお金、特に人の部分で、やはり今、少子高齢化が世界に先んじて進んでいます、人が少なくなっている。

 特に、私は東京の都心の生まれで、地元も今そこなんですが、国会にいると、それこそ全国を代表する皆さんが来ていて、私は東京のそれこそ港区も含めた都会ですよ。東京が全部持っていって、我々はないじゃないかと、結構、国会にいると、かなり立場が微妙な立場、いつも。謝るわけではないんですけれども。

 ただ、東京において何が起こっているかというと、結果として、別に、ニューヨークやロンドン、パリで起こっていることと同じことで、人と物と金が集まって、そこで競争が起こって、いいものが生まれ、価格競争が生まれる。そういったことをほかの地域で実践をしていかないといけない。それが、これは世耕大臣も大臣所信でおっしゃられた、地域経済の活性化のためには、特に人の部分と物の部分とお金の部分、特に人とお金の部分というのは、政府や地元の金融機関、これは本当にオール・ジャパンでこれを支えていかないと、自然的にそれができるような好循環をつくれるまでにそれをサポートするというのが、やはりこれはイメージとしては大事だと思うんですね。

 これはなかなか難しい部分で、それこそいろいろヒアリング等々していますと、人の部分では、REVICとか、いろいろと今、いかに地元のいいものを発見させるような、そういうコンサルティングをするかとか、そういったことを取り組んでいることはわかっているんですけれども、これはなかなか難しい。金の部分でも、ファンドの創設等々を活用しようと政策金融公庫等々でもやっていますが、せっかくの機会ですから、この部分で、地方経済を活性化させるための、今申し上げたような問題意識に対しての取組、これを教えていただけますでしょうか。

飯田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、地域において、その特色、すぐれた技術、地域にまだまだございます。そうしたものを拾い上げて、しっかり支援していくということは大変重要だというふうに思っております。

 このため、昨年の七月末に地域未来投資促進法というものが施行されておりますけれども、私ども、これを活用した、地域、地方の企業の支援に力を入れて今取り組んでございます。

 これは、地方自治体が地域の特性を生かした成長性の高い分野を基本計画で定めまして、これを国が同意をして、都道府県知事が承認をした、地域、地方の企業が取り組む地域経済を引っ張るような事業について、予算、税、金融、規制緩和など、あらゆる政策手段を動員して支援していく、そういう仕組みでございます。

 例えば、具体的な支援でございますけれども、設備投資支援では、課税の特例でございますとか、中小企業と連携して行う戦略分野での設備投資への補助でございますとか、地方創生交付金を活用した支援、資金面では、御指摘ございましたが、REVICや中小機構によるファンドの創設や活用、それから日本政策金融公庫による融資制度、それから、工場立地の際の緑地面積の緩和などの規制緩和など、さまざまな政策を総動員して支援をするということを進めております。

 まだまだ地方にはすぐれた技術や集積がございますので、そうしたものを見つけて政策を総動員してしっかり支援していくことを、この法律を含めまして、取り組んでまいりたいというふうに思っております。

辻委員 ありがとうございます。

 ちょっとまだ時間があるので、少し戻って通商政策のところ、ちょっとまた、さっき聞きそびれた部分がありますので、させてください。

 先ほど、自由貿易、それこそ、米中含めていろいろ今、個別の国々同士でやりとりが大変盛んにされておりますが、もちろん、日本も今、バイ、マルチ等々、個別に政策を行っているんですが、そもそも、戦後のガット体制からWTO体制に移行して、WTOにおいて受皿としてさまざまな訴訟を含めて受け持つ、そういう国際機関を通して、世界の中で不平等が起こらないような、パワーバランスが崩れないような、そういう形で、WTO、中国も含めて、加盟をして、そこでいろんな、訴訟も含めた、今、訴訟件数も上がっているのはわかっていますが、ただ、今のようなこの傾向というのが続くと、どんどんWTOのような国際機関の存在意義というのが形骸化されるんじゃないか、そういう懸念を私は抱いているんですね。

 それに対して、経産省として、日本一国ではなかなか難しいとは思いますが、どういう取組といいますか、特にこのWTOについての認識、今後どういう形で取り組んで、ほかの国々を巻き込んでいくかということも含めた、そういう戦略の部分をお聞かせ願えますでしょうか。

渡辺政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOは、委員御指摘のように、ガット・ウルグアイ・ラウンドを経まして、ルールに基づいて国際経済紛争を解決するという制度が強化されたところでございます。九五年にWTOが成立いたしまして、WTOの紛争解決手続が活用された件数はこれまで五百四十二件ございまして、日本も二十二件の紛争の申立てをしているところでございます。

 それから、ルールの執行だけでなくて、ルールをつくっていくという意味でも、WTOの機能の強化を図っていくということは大変重要だと考えております。

 昨年末にアルゼンチンでWTOの閣僚会議が開催されました。世耕大臣が豪州、シンガポールの貿易閣僚とともに共同議長となりまして、アメリカそれから欧州、途上国を含む七十の国・地域に、デジタル貿易のルールをつくろうということを呼びかけまして、議論を開始したところでございます。

 委員御指摘のように、世界の自由貿易体制の根幹はWTOでございますので、今後とも、日本として、WTO体制を強化する、それから活性化するということに最大限の努力をしていきたいと思います。

辻委員 ありがとうございます。

 日ごろいろんな経営者の方と話していて、それこそ、思うことが、やはり経営というのは、政治に共通するところで、バランス感覚とセンスなんだと思います。

 今、世界経済を見渡してみると、大変難しい局面にいます。アメリカの今の行動というのは、政治的に見たら、これから中間選挙を十一月に控えているということもあって、そういった意図もあるということはわかるんですが、ただ、それだけではなくて、それこそ第四次産業革命、これは日本も世耕大臣を中心にこれからしっかり取り組んでいくんですが、十年先の世界をどういう形に構築したいか、その観点からしたら、それは、一国の防衛力や二十世紀型のパワーポリティクスじゃなくて、やはりこれは経済力、そして、その経済力を下支えするのはやはり創造力。ただ、創造力だけではなくて、やはりそこの部分のセンス、総合力、それが私は我が国にはまだまだ残っていると思うんです。

 ただ、それをどう運用していいかどうか、十年先の世界のあり方、日本経済のあり方、それを示すのはやはり大きな政治の役割なんじゃないかと思います。それこそ、開かれ過ぎてもだめだし、閉ざし過ぎてもだめ。私は、常にそこは冷静と情熱の間なんだと思います。

 そういう観点から、大変難しい局面ですが、それこそ、十年後、振り返ったときに、あれでよかったんだと。今このタイミングで行う政策というのは非常に重要だと思いますので、世耕大臣を中心に、我々もしっかりと、与党の立場ですが、お支えして、ただすべきところはただし、支えるべきことは支えてやっていきたいと思いますので、それをもちまして、私の質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

稲津委員長 次に、富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之です。

 大臣所信に対する質疑ということで、再生可能エネルギーについて何点か御質問をさせていただきたいと思います。

 先週、三月の二十日に、第十五回の超党派地熱発電普及推進議員連盟の総会が開かれました。この議連の共同代表は自民党の二階俊博、民進党の増子輝彦両幹事長であります。議連の幹事長は自民党の林幹雄衆議院議員、事務局長はこちらにいらっしゃる自民党の吉川貴盛理事でございます。また、希望の党の田嶋理事と私が副幹事長を務めさせていただいております。ここまでは宣伝になってしまいましたが。

 この議連では、実は、二〇一二年二月にアイスランドに赴きまして、地熱資源利用調査を実施いたしました。翌三月に、調査結果を受けまして、国立・国定公園の第二種、第三種特別地域の中から垂直掘削と地熱発電所の設置が可能となるよう環境省に申入れをいたしまして、環境省も、風致又は景観の維持に著しい支障を及ぼさない場合という条件付ではありますが、これを受け入れてくれました。これにより、地熱発電の開発が一歩前進いたしました。

 また、この申入れの際に、国立・国定公園の特別保護地区及び第一種特別地域の外からの傾斜掘削については今後の検討課題とすることを明記することもあわせて求めまして、二〇一五年にこの規制が緩和されました。

 皆さんのお手元に資料を配付させていただいておりますが、資料の一番目をちょっとごらんいただきたいというふうに思います。

 我が国には世界第三位の地熱資源量、約二千三百四十万キロワットを有するが、その約八割は国立・国定公園内に存在ということで、なかなか開発ができませんでした。

 アイスランドで具体的にいろいろお伺いしましたら、日本では国立・国定公園の外から斜め掘りをしているんだというお話をしましたら、笑われまして、斜めに掘っていって地熱の湯源に当たるわけがないじゃないか、アイスランドでは、直接直掘りをして、最後に、当たるか当たらないかというところでは、四方八方にそこから曲げていくんだ、その中で地熱を見つけ出すんだということを聞きまして、こういう申入れをさせていただいて、規制が二〇一二年そして二〇一五年ということで緩和をされてきました。

 そういう認識で間違いないでしょうか。

米谷政府参考人 豊富な地熱発電のポテンシャルを有しております我が国において、地熱発電は安定的に発電を行うことが可能な再生可能エネルギーとして重要であるとともに、利用に当たっては、自然環境や地元への配慮が重要であると認識をしています。

 このため、環境省としては、幅広い関係者から成る検討会の意見も踏まえまして、国立・国定公園内の規制内容を見直し、先生がおっしゃられたとおり、二〇一二年には、一九九四年から普通地域においては認めていたんですが、それに加えて、第二種、第三種特別地域において、自然環境と調和した優良事例等について認めることといたしました。また、二〇一五年には、第一種特別地域の地下部への傾斜掘削を認めるなどの規制緩和を行ってきたところでございます。

富田委員 この議連の総会では、地熱発電の開発期間の短縮に向けた資源エネルギー庁の取組も紹介をされました。資料の二をごらんいただきたいと思うんですが、この二にありますように、これまで十三・六年かかっていたものを九・九年に短縮をしているんだというような説明がされました。

 実はこの委員会で、二〇一六年三月九日、この件について私の方で質問をさせていただきまして、当時の藤木部長が答弁をしてくれました。

 前年、二〇一五年の十月にイタリアのラルデレロ地熱発電所を視察してきまして、そのラルデレロの発電所を経営しているエネル・グリーン・パワー社の所長さんからお伺いしたところ、この会社では世界でいろいろなところで地熱発電の開発をやっているけれども、大体五年から六年で操業に至っているというようなお話がありましたので、その旨、藤木部長に尋ねまして、日本で何でこれができないんだということを尋ねましたら、藤木さんはこんなふうに答えてくれました。

 環境アセスメントを短縮していくということで、この手続の迅速化、例えば今まで百五十日ぐらいかかっていた審査期間を四十五日程度に短縮するとか、あるいは環境影響調査の前倒し、こういったものをやる必要がある。また、掘削の期間の短縮、あるいは調査期間の短縮ということに取り組まなければならない。そのためには、地下数千メートルの地熱の分布をより正確に把握して、調査、探査の成功率を高める、そういったことも必要だし、掘削機器の先端部分の強度を高めて、これで掘削速度を速めるといったような技術開発、こういったようなことも重要だろうというふうに答弁をされていまして、この資料の二にあるように、それぞれの段階で短縮に努めてきていただいたというふうに理解をしております。

 ただ、この説明の際に、こんなふうにも資源エネルギー庁の方は説明をしてくれました。ただ、アセス期間の半減というところの説明で、幾つかの手続を並行的に実施することで期間の短縮を図っているが、結果いかんによっては、手続を初めからやり直す必要が生ずるリスクを事業者が負う可能性もあるというふうに言われていました。

 これでは、せっかく期間の短縮にエネ庁の方で努めてくれたとしても、事業者の方としてはやはり手を挙げにくくなる。一旦並行でやってみたけれども、もう一回またもとに戻らなきゃならないということでは、なかなか、開発してくれというふうには言えないんじゃないか。この事業者が負うリスクの軽減策というのは検討していないんでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 地熱発電の環境アセス期間の短縮につきましては、経済産業省におきまして、手続に要する期間の短縮をする実証事業を実施しているところでございます。

 これは従来、配慮書、方法書、これは環境調査のやり方を決める手続でございますけれども、これを行ってから環境調査を行うということでございましたけれども、この環境調査を前倒しして、配慮書、方法書の手続と同時並行で進めるというものでございます。この場合、委員御指摘のとおり、先行して行った環境調査のデータに不備があった場合には環境調査をやり直さなきゃいけない、こういうリスクが生じるものでございます。

 そこで、手戻りのリスクを軽減するための方策でございますけれども、あらかじめ事業者にガイドをつくって、これを参照してもらえれば環境調査のやり方に不備があるということはなくなるだろうということで、今このガイドをつくることを取り組んでいるところでございます。具体的には、手戻りを防止するための計画の立て方とか、それから専門家に事前にこういう項目を意見聴取すべきとか、そういうような環境調査のやり方を記載することとしております。

 それから、海外の地熱開発期間につきましては、これも委員御指摘のとおり、米国やインドネシアでは六年、アイスランドでは六年半というふうにされておりまして、現状では日本は十四年ということで、これよりも短いということでございます。これは今、更に調査を続けているところでございますけれども、委員御指摘のとおり、掘削とか建設の期間がかかる、それから環境調査の話、加えまして、こういう問題があるというふうに聞いております。

 更に海外の制度、それから先進技術、これを収集しまして、我が国のより効率的な開発につなげていきたいというふうに考えているところでございます。

富田委員 ぜひ、急いでやっていただきたい。いつまでもこんなのは待っていられませんので、よろしくお願いします。

 また、この議連の総会においては、JOGMECから地熱発電の技術開発についての紹介もございました。皆さんのお手元に資料三として配らせていただいておりますが、この資料にありますように、「リードタイムの短縮、コスト削減、出力の安定化等の技術課題を解決するための技術開発として地熱貯留層探査技術開発、地熱貯留層掘削技術開発、地熱貯留層評価・管理技術開発を実施中。」とのことでありました。資源エネルギー庁としても最大の支援をお願いしたいというふうに思います。

 この資料の一番右にありますように、福島県の柳津西山地熱発電所において、人工涵養試験、外部から水を人工的に地下に注水する試験を開始しているとのことであります。

 この人工涵養を実用化している米国カリフォルニア州のガイザース地熱発電所を、私は昨年八月視察してまいりました。

 このガイザースでは、一九六〇年に地熱発電の商業生産を開始したそうです。そして、現在十六の発電施設が存在し、総設備容量は百二十七万キロワット。米国最大級の地熱発電地帯でした。ところが、ガイザースは、一九八〇年代から九〇年代にかけて貯留層が枯渇しかけたそうであります。一九九七年、生活排水の処理水を地熱貯留層に注入する、向こうではリチャージと呼んでいましたが、これを、人工涵養技術を実施した以降、発電能力は回復したということであります。

 JOGMECの説明によりますと、この人工涵養試験について、米国電力研究所と今共同研究をやっているんだというような説明があったんですが、ガイザースでは二十年にわたってこの人工涵養技術が実際にもう使われていますので、こういう経験、知見をもっと活用する方法はないんでしょうか。どうでしょうか。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 人工涵養技術は、貴重な地熱資源を適切に管理し、長期にわたり安定的に利用できるようにするための技術でございまして、日本におきましても積極的に技術の取得、導入を進めていきたいというふうに考えております。

 委員御指摘のありましたように、JOGMECでは、平成二十五年より、福島県の柳津西山地熱発電所におきまして我が国に適した人工涵養技術を開発中でございまして、事業実施に当たりましては、長年この技術の実施をしてきた米国の電力研究所、これは委員御指摘のガイザース、ここと技術の交流を行っているということで、この電力研究所と行うということでございますけれども、ここと共同開発事業を行って、米国の経験、知見を今取り入れようというふうにしているところでございます。今この柳津西地域の発電所のデータを米国の電力研究所で解析、評価していただいているところでございます。

富田委員 ガイザースに視察した際、ガイザースの技術研究員の方が、自分はラルデレロでも働いていたことがあると。イタリアの最古の地熱発電所です。そういう人的交流もしていかないと、せっかくの経験、知見というのは生かせないと思いますので、今部長が答えられたのに加えて、そういった点もぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 最後に、系統運用問題について大臣にお尋ねしたいというふうに思います。

 世耕大臣は、所信におきまして、「再生可能エネルギーについては、最大限の導入と国民負担の抑制を両立するため、コスト低減の取組を強化するとともに、既存系統を最大限に活用するための運用の見直しやルールの明確化を進めてまいります。」と表明されました。この発言は、私は大変重要な発言だというふうに思うんですね。

 大手電力会社による系統容量の占有が再エネの導入を阻害しているという主張を、今多くのメディアが発信しております。他方、利用率のみで空き容量があるかのような論調は誤っているという御指摘もあります。まあ、どちらも正しいんだろうなと思うんですが。

 そんな中、先日、私の友人から、今資料四で皆さんのお手元にお配りしております、安田陽京都大学大学院特任教授が書かれました「送電線は行列のできるガラガラのそば屋さん?」という書籍が送られてきました。これですけれども、なかなかデータ分析をきちんとされて、私、文系出身の人間にはなかなか理解しにくいんですが、それでも本当に一つ一つきちんと書かれておりました。

 この本に関しては、実は、三月十二日付の毎日新聞「風知草」におきまして、山田孝男特別編集委員が大変わかりやすくまとめてくれておりました。こんなふうに山田さんは言われています。

 安田さんは、膨大な公開資料を読み解き、電力会社が満杯と主張する送電線の平均利用率が実は二〇%未満だと指摘した、送電線は一つのルートに二回線ある、一方を塞がれれば電力会社は満杯だと説明する、落雷や台風などでショートした場合に備え、他方を残しておくという考え方である、だが、国際水準から見て厳格過ぎる、もう少し柔軟にできないかというのがこの安田さんの、それが最終的な結論だと。かなり詳しくそういったところを書いていただいておりました。

 この安田さんの本の中でも実は指摘があったんですが、一月二十四日に開催されました、経済産業省のもとの再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会の第二回会合におきまして、グローバルスタンダードを俯瞰しつつ、欧米では実施していない取組であっても、こうすれば実現できるという視点に立って、日本独自の日本版コネクト・アンド・マネージの実現に向けた検討を行うという議論がされた。コネクト・アンド・マネージというのは、その名のとおり、まず接続、コネクトを許可して、その後、運用面で管理、マネージするという方法だというふうに説明されています。安田さんもそういう方向に進むべきだというふうにこの本の中で指摘されているんですね。

 こういう議論が開始されたということを踏まえて、大臣は今後、この系統運用の見直しやルールの明確化にどのように取り組んでいかれるんでしょうか。

世耕国務大臣 まず、送電線の容量の問題、私もこの安田さんが書かれているものをいろいろ読ませていただいて、こうやってデータを出していただいて、冷静に議論していただくということは歓迎したいと思いますが、少しやはり我々と考え方が違うところがあるわけです。どうしても、バックアップ回線をしっかりとって、A地点とB地点を結んでいる送電線が二回線以上ないと、万が一落雷などをしたときに、そこの送電ができなくなるわけですから、二回線見ておいて、そしてそのうち一個はあけておくので、そもそも使用する率は五〇%からスタートをするわけです。

 これは、世界に比べて厳しいという御意見は、日本はやはりネットワーク構造が島国ですから違うんですね。ヨーロッパは国もまたいだメッシュ状の送電網ができているので、どこか一個が切れてもいろいろな迂回ルートをつくることができるわけですが、日本はある意味串刺し状になっていて、本当になかなか迂回することができないという問題点もある。だから、そういう意味で、安田先生から見ると少し厳し目になっているのかもしれません。

 もう一つは、電力というのは平均値で議論してもしようがなくて、やはりピークのときにちゃんと耐えられなきゃいけないということであります。安田先生の議論は、これは数字は間違ってはいないと思うんですが、平均値で御議論されているというところが我々と違うのかなというふうに思っています。

 ただ、我々もこのままでいいとは全く思っておりませんで、系統の増強工事がなくても一定の条件のもとで風力発電等の電源の接続を認めるコネクト・アンド・マネージといった仕組み、これは海外でも入れているところがありますので、今まさにスピード感を持って検討を進めているところであります。

 過去の実績をもとに将来の電流の流れをより精緻に想定をして空き容量を算出する手法が、技術的な検討を終えて、これはもう実現可能となりました。四月から導入をいたします。これをやれば、例えば東北の北部エリアでは最大一・六倍の容量の電源を新たに接続できるようになるわけであります。

 あと、電力というのは自由化が今まさに始まったばかりでありますが、私は通信出身でありまして、やはり三十年間かけて、既存の事業者と新規参入事業者の間の接続ルールというのをずっと洗練されたものをつくり上げてきた、それと見比べるとちょっとまだ電力の接続ルールというのは少し透明感が低いかなというふうにも思いますので、現行のルールが透明で公平なものなのかということをもう一度きっちり確認をして、海外でもいろんなルールの例というのが出てきていますから、そういった先進事例を取り入れながら、必要な見直しを行うとともに、ルールの明確化というのをしっかりとやってまいりたいというふうに思っています。

富田委員 今大臣が言われた公平性というのが一番大事なんだと思うんですね。

 新しく参入する業者からしてみたら、今のルールでは既存の業者だけが得するんじゃないかというように、そういう懸念があって、なかなか、ここが参入障壁になっているというのは間違いないと思いますので、ぜひ、今大臣が言われた方向でリーダーシップをとっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。終わります。

稲津委員長 次に、落合貴之君。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 本日は、大臣所信に対する質疑ということでさせていただきます。

 まず、所信では触れられてはいなかったんですが、近年、今、重要な問題である公文書の問題について御見解を伺えればと思います。

 今、森友問題等がきっかけになって、国会ですとか世間では、公文書の改ざん、それから各省の公文書の管理について注目がされているわけですが、これは、行政の機関の一つである経産省をつかさどる大臣、この経産省の取組等、世耕大臣の御見解を伺えればと思います。

世耕国務大臣 決裁文書の書換えなどというものは、絶対にあってはならないことであります。行政の仕事というのは、やはり国民からの信頼で成り立っているわけですから、今回の決裁文書の改ざんというものが大きくその信頼を傷つけたということで、これは真摯に受けとめなければいけないと思います。

 ただ、大臣の立場として、じゃ、それぞれ各局で行われている決裁の一言一句が修正されていないか、改ざんされていないかどうかを、責任を持てるかというのは、それはとても物理的に持てないわけでありますから、ということであれば、やはり改ざんされないような仕組みをしっかりつくっていくということが必要だというふうに思っていまして、まず一つは、やはり電子決裁を徹底をしていくということだというふうに思っておりますし、仮に紙でしかつくれなかったような文書であったとしても、それが、決裁完了後、改変されることがないように、PDF等によって電子的に管理をして、万が一、後で何か手を加えたようなことがあれば、それがきちっと記録に残るような仕組みをつくっていかなければいけないということで、早速、省内で今指示を出して、どういう運用をやっていくかということについて急いで検討をさせているところであります。

 私自身が先頭に立ってこうした取組を着実に推進をして、経産省における適切な文書管理を徹底していきたいと思います。

落合委員 今回の問題がもしうやむやになってしまいましたら、これはたがが外れていって、何でもばれなければやっていいんじゃないかというようなことになったら、国のガバナンスにとっても大変大きな問題になりますので、ぜひ大臣にはしっかりと取り組んでいただきたいと思います。これは、またいろいろと確認をさせていただければと思います。

 それでは、所信に触れられた部分について、まず、これまでも私が二年以上にわたってたびたび取り上げてきました政府系金融機関の商工中金の問題でございます。

 今回、大臣所信の中で、商工中金の不祥事について猛省をするというような言葉が入っておりました。この不祥事も書類の改ざん等もあったわけでございますけれども、きのう新しい社長が就任会見を行っておりました。その前日に、新しい不祥事があったということも発表されたわけでございます。

 今まで一年以上にわたって、いろいろと中間報告も含めて発表してきたこの不祥事なんですが、昨年発表した危機対応融資に関する全件検査では、百店舗のうち九十七店舗で不正が行われていた。三千八百人の行員のうち八百十三人が処分をされるというようなことで、もう全体が腐っているんじゃないかという指摘をさせていただきました。

 そして、今回は、危機対応融資に関してまた新たに追加で不正が見つかりましたということと、それから危機対応融資以外の案件でも見つかりまして、合計、追加で五百七十七件不正が見つかったということが発表されたわけでございます。

 これを見ると、要は、危機対応融資でもこれだけ不正が行われていたのに、ほかのことでもこんな何百件も不正が行われていたということで、もう組織全体がやはり腐敗をしてしまっている、不正が蔓延してしまっている、こういう組織であるということを残念ながら認めざるを得ないと思います。この点について、大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 御指摘のように、危機対応融資以外の不祥事、これは実は、もう去年の段階で、ほかにもありますよということは、全件調査の中で、あるいは我々が行った立入検査の中で判明をしておりましたので、その詳細がはっきりしたので発表させていただいたということになるわけでありますが、いずれにしても、これはとんでもないことだというふうに思っております。解体的出直しが必要だというふうに思っております。

 ですので、関根新社長という、まさにあの金融不祥事が連発した時期に、銀行の中での改革、コンプライアンスの遵守のための改革に取り組まれた経験を持っておられ、なおかつ、それ以降、また、民間の事業会社で地方の拠点の整理だとかそういった非常に難しい業務に携わってこられた関根新社長のもとで、ぜひ徹底的な解体的出直しを商工中金においては行っていただきたいというふうに考えております。

落合委員 いろいろと時系列も含めて調べてみますと、当初、不祥事、追加の発表が金曜日だったということで、それが月曜日に延期をされているようなんですけれども、これは何か理由はあったんでしょうか。

世耕国務大臣 これは、できるだけ正確な調査結果をきちっと御説明できるための準備がぎりぎり月曜日に間に合ったということではないかというふうに思います。

落合委員 これだけほとんど全部の店舗で、しかもこれだけ多くの割合の行員が処分されるような問題、処分されていない行員ももしかしたら知っていて見逃していたかもしれないような、こういう組織を立て直すというのは大変難しいことだと思います。社長だけを入れかえても難しい。本当に、見つかった不正に対しては厳しく罰しなければならないですし、人もごっそり入れかえる、組織も業務のあり方も大幅に変えないといけないと思います。

 大臣には、それを監督する責任にある中小企業庁、経済産業省、経産大臣の責任について何度も私は質問をさせていただいてまいりました。

 この中間取りまとめを見ますと、監視体制の強化ということで、監督する部門を新設するというような、組織のことについても言及されているんですが、監督責任を十分果たせなかったということを踏まえて、新しい監視の体制、監督の体制をどうやっていくのか、その陣容ですとか機構のあり方ですとか、どのように大臣はお考えなのか、お聞かせください。

世耕国務大臣 今回の不正事案の反省点の一つとして、やはり、経産省の中で政策を企画立案するところと検査をするところ、これがある意味、決して癒着とかそういうわけではなかったんですが、一緒になっていたというところに一つ問題点があったのかなというふうに思っておりまして、今後、中小企業、小規模事業者向けの公的金融に関しては、政策を企画立案するところと、そして検査を行うところというのはしっかり分離をして、検査体制を強化したいというふうに思っています。

 具体的には、商工中金、あと日本公庫にも我々は検査を行ったりします。そして信用保証協会もあります。こういったところに対する金融検査業務について、来年度から、これまで担ってきた中小企業庁の金融課から分離をして、新たに中小企業庁総務課に設ける中小企業金融検査室、これはまだ仮称ではありますが、こういう別の部署において一元的に実施をしていきたいというふうに思います。

 いつ設置をするかとか、どういった人数になるかなどについては、今後検討をさせていただきたいというふうに思いますが、いずれにせよ、実効的に機能する体制を構築していきたいというふうに考えています。

落合委員 そこもしっかりと我々も見ていかなければならないんですが、大臣は、癒着はなかったですがというふうな前置きをされましたが、これだけ全店に及んで、しかも大人数の方々が不正をしていたことを見抜けなかった、表に出せなかった。これは、癒着やなれ合いがなければここまで大きな問題にはならなかったと思います。

 私、予算委員会でも取り上げさせていただきました。麻生金融大臣も、これだけ、民間企業でこんなことは今までは記憶にない、それぐらい大きな問題だということを麻生大臣もおっしゃっていました。やはり、これは癒着がなかったでは済まされない問題であるということを指摘をさせていただきます。

 今回の不祥事の、不正の追加の発表のプレスリリースを商工中金が出していますね、これを見ますと、ところどころ、調査を今後も実施するですとか、継続するですとかいうのが各所にありまして、これはしっかりと、これで終わりではなくて、しっかり調査を継続をするという大臣の方針でよろしいですね。

世耕国務大臣 おっしゃるとおりであります。

 この間、先日発表した件でうみが出切っていればいいんですが、万が一にも残っていてはいけませんので、これは徹底的に、もし、ほかの件がないかどうかということもチェックをしますし、万が一出てくれば迅速に対応していくという気構えで臨みたいと思います。

落合委員 もう一点、この件について確認をさせていただきたいんですが、先月の予算委員会で取り上げたときに、安達前社長にも、そのときは現社長ですね、にもお越しをいただきました。

 私は、民業圧迫というものがあったのかと、あったんですよねという確認をしました。それに対して安達社長は、ありましたとははっきりとは言わなかったですけれども、こういう言葉でお答えになっています。金融機関と競争上優位のあるツールとして認識して、組織の収益とか営業基盤の維持、拡充に利用していたというような言葉で答えました。

 きのうの関根新社長はどう思っているのかなと思いまして、いろいろと記者会見について調べてみますと、民業圧迫という言葉を関根新社長は使っておられたわけでございます。これは、結果的に民業圧迫が実態としてはあったという認識で大臣もよろしいですね。

世耕国務大臣 過去の検討会の報告の中でも、まさにこの危機対応融資を武器として使っていたという認定がされているわけで、これは、武器というのは誰に対する武器かということになると、当然競合相手に対する武器。競合相手が民間の金融機関ということであれば、それは今委員がおっしゃるような民業圧迫ととられても仕方のないことはあったんだろうというふうには考えます。

落合委員 何年か前に、民営化を延期する法案でも、これは民業圧迫ではなくて民業の補完のためにこの組織は残すんだという議論を前提に審議も行われて、採決も行われたわけですし、私は反対しましたけれども。そもそも十年以上前から行われている政府系金融機関の改革というのは、民業を圧迫するものを残すなんということは全く議論をされていない。民業圧迫は絶対にしない、それで、民業補完のために必要だからこの機関は残しましょうという議論がずっと、この経産省管轄の分野でなくとも行われてきた。それで、民業圧迫はしていないということをずっと説明してきたわけでございます。

 これは、何時間も、それを前提として、何年も、十年以上にわたって議論が行われてきたわけで、実態と国会で説明していたことが違うということは、しかも、この根本的な部分が違うということは大変重要な問題だと思います。せっかく指導力がある大臣が大臣についているんですから、これは本当に、世耕大臣の在任中に全部きれいにして道筋をつけないと、恐らく、これはどんどんどんどん、またこの線路を突き進んでいくことになると私は警告をさせていただきます。

 きょうは、この件はこれで質問を終わらせていただきますが、重要な問題ですので、私は、これからもこの件を取り上げさせていただきます。

 それでは、残りの時間、日ロの問題に入らせていただきます。

 ロシア経済分野協力担当大臣ということで、大臣はロシアとの経済協力についても力を入れております。今、ロシアとの経済の関係では、二つの流れがあります。一つは、大臣が責任者としてかかわっている、シベリア、極東での日本企業の進出も一緒に政府の政策として後押しして経済協力をしていこうと。それからもう一つは、今まで、こちらは外務省のあれも大きいですけれども、領土問題が残っている北方領土で新しいアプローチをして、主権の問題も解決しながら共同経済活動を行っていこうということで話が進んでいるわけでございます。

 それで、私、最初にこのニュースを見たのが外国の通信社のニュースで、調べてみると共同通信ですとかも配信していたんですが、これは今月の、三月の十二日の発表で、日本の通信社も短く報道しているんですが、サハリン州のコジェミャコ知事が、色丹島でディーゼル発電所建設に関して、米国企業のキャタピラーに許可を出して合意をした、発電所をつくっていいと許可を出した、九月までに工事を終えて稼働しますというようなニュースが、ロシアの通信社も流しています。日本の共同通信も流しています。

 これは、北方領土は我が国が主権を主張、領有権を主張してきたわけでございます。それなのに、このアメリカの企業は、ロシアの州知事のところに行って、ロシアの州知事に許可をもらって発電所をつくる。これは、言ってみれば、アメリカもロシアの主権を認めてしまっていると言っていいんじゃないでしょうか。これは、我が政府はしっかりと抗議をしなければならない。同盟国であるのであれば、これはしっかりと抗議をしなければならない問題だと思います。

 それから、ロシアの政府に対しても、これから新しいアプローチで一緒に経済活動をしていこうというのにもかかわらず、アメリカの企業に自分たちの権限だけで許可を出して発電所を建設させる、これは、こんな姿勢で、日本の企業がお金だけ出すようなことをしていたら、日本の主権の問題にかかわるんじゃないでしょうか。これは重要な問題だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 ロシアはロシアの立場で、これはアメリカの企業に対してだけではなく、ロシア自身も、あるいは他国、アメリカ以外の国の企業に対して、とても我が国としては容認できないような行動をとるケースというのはあるわけであります。これは、きちっと外交ルートで対応していく問題だというふうに考えております。

落合委員 大臣、先週だったか先々週だったか、ロシアの要人ともお会いになっていますが、そういう話合いをするに当たって、この件、しっかり抗議をしているのかという確認はされているのでしょうか。

世耕国務大臣 私は、ロシアのカウンターパートの大臣とは経済分野協力担当大臣として会っているということだけは申し上げておきたいと思いますが、その話の中身については、これはお互い立場がありますので、ここでオープンにさせていただくことは控えさせていただきたいと思います。

落合委員 外務大臣と経済産業大臣がそれぞれ要人と会って話をしているわけでございますが、我々は、お金を日本企業が出すわけですから、しっかりとけじめはつけながら話を進めていかなければならない問題だと思います。

 私は、一年前ぐらいに、ロシアとの経済協力の話で、一回、一般質疑で取り上げさせていただいたことがあります。そのときは合意がされたばかりのころで、しかし、それはなぜ取り上げたかというと、合意をした後に、ロシアが北方領土に軍隊を増強するということが報道されていたからでございます。

 しっかりとけじめをつけながら話を進めていかなかったら、お金だけ出して、あと、いいところは全部ロシアに持っていかれてしまう。こういう外交、経済協力をしていてはならないと私は思います。

 そもそも、この二十年、三十年のロシアの極東の状況を調べてみると、ソ連崩壊以降、ロシア人の人口が国境沿いで下がってきている。雇用をつくることというのは、ロシアの国境を守る上でも大変重要なことなんです。北方領土も人口が、どんどんどんどんロシア人の人口が下がってきている中で、北方領土のロシア人の人口をふやすことは、ロシアの重要な課題の一つなんです。その困っているところに、我々日本がお金を出して、ロシアの主権を強化をしていく、こんなことを我々はしてはならないと思います。

 そのお金の部分を握っている重要な人物が大臣なんですから、しっかりやると国民に言っていただかないと困るんですが、大臣、もう一度お願いします。

世耕国務大臣 当然、我が国の領土に関する主張、主権、それに反することがない、その大前提において、北方領土における共同経済活動は取り組まれるべきだと思っております。

落合委員 これは責任を持ってしっかり取り組んでいただければと思います。

 たしか五月あたりに、プーチンさんと安倍総理も会談をすることになっていると思います。総理も最近忙しいですから、重要なことを忘れないように、しっかりと大臣からも言っていただければと思います。

 では、まだ少し時間がありますので、あと一問させていただきます。

 今、エネルギー基本計画の見直しが話し合われています。その中で、大臣も所信の中で見直すとしっかりと明記しているわけですけれども、原発の新設、リプレースを書き込むのかどうか、これは大きな問題だと思います。

 これについて、大臣はどのように考えているか、お聞かせください。

世耕国務大臣 原発については、まずは安全最優先の再稼働に全力を傾けることが重要と考えておりまして、現時点で、現行のエネルギー基本計画においては、原発の新増設、リプレースというのは想定していないわけであります。

 今、現行のエネルギー基本計画は策定から三年しかたっていないわけでありまして、その目標に向けて、まだ道半ばでありますから、私としては、その骨格を変える段階ではなくて、ここで定めた政策目標をどうすれば着実に実現できるかという視点が重要ではないかというふうに思っているわけでありますけれども、今、有識者の皆さんに予断なく御議論をいただいているところでありますので、まずはその結果を待ちたいというふうに思います。

落合委員 これで質問は終わりますが、予断なくというふうに今大臣はおっしゃいましたけれども、この話し合っている総合エネルギー調査会基本政策分科会というところの委員の発言を見てみますと、前政権と比べてみると、前政権の委員の構成は、三分の一ぐらいの人たちは原発に後ろ向きの人たちがいたんです。でも、今、多分二、三人ですよ。最初の委員の選び方が、もう色がついているんです。それを指摘させていただいて、なので、予断なくというのはカモフラージュなんじゃないかなということを指摘させていただきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

稲津委員長 次に、松平浩一君。

松平委員 こんにちは。立憲民主党の松平浩一です。どうぞよろしくお願いします。

 本日は、スタートアップ支援についてお伺いしたいと思います。

 未来投資戦略二〇一七には、「イノベーション・ベンチャーを生み出す好循環システム」というものが、目指す社会像とされています。ベンチャー企業のイノベーションが日本企業を飛躍させるために必要である、そういう思いは私も全く同感であります。ベンチャー企業の成長を後押しして新規雇用を創出する、それが今後の日本経済の成長につながっていくものと思います。

 しかし、配付資料一をごらんいただきたいと思います。こちら、日本の開業率と起業活動指数の表になっています。

 開業率とは、その年に開業した企業数を前年の企業数で割って求められる数で、起業活動指数とは、六十カ国以上が参加する国際調査で各国の起業水準が比較された指数というふうになっています。

 これをごらんいただければわかるように、開業率は四・五%と欧米の半分以下、そして、起業活動指数は四・八%と、残念ながら大変低い水準になっておりまして、まだまだ日本は起業活動が活発になっているとは言えないのではないかと思います。

 この理由は何かと考えたとき、私としては、起業の際に資金を集める環境というものがまだまだ貧弱なのではないかというふうに思っています。政策金融公庫は比較的積極的な融資をなされているようにお見受けしますけれども、基本的に、間接金融に関しては、スタートアップ時はなかなか担保を用意することはできないので、難しい状況にあるというふうに思っています。

 そこで、ベンチャー企業の資金調達先として、ベンチャーキャピタル、VCによる投資活動を活性化させる必要があると考えています。

 政府は、このVCによるベンチャー企業への投資額を、数値目標として、対名目GDP比を二〇二二年までに倍増することを目標とされておりますけれども、現在の状況、目標への到達可能性について、大臣、いかがでございましょうか。

世耕国務大臣 日本のベンチャー企業へのベンチャーキャピタル投資額を対名目GDP比で二〇二二年までに倍増させるということを、日本再興戦略二〇一六において閣議決定をしているところであります。

 日本のベンチャー企業への投資額自体は、近年、増加はしているんですけれども、今資料で示していただいたように、高い水準にあるとは言えませんし、また、今我々が掲げている目標も、あくまでも名目GDPに対する比率ということでありまして、今、アベノミクスの効果もあって名目GDPがどんどんどんどん膨らんでいっている中で、いわゆる対名目GDP比の倍増という、そこまではちょっとまだまだ距離がある、これは正直言ってそれが実情だというふうに思っています。

 こうした現状認識のもと、経産省としては、予算ですとか税制といったあらゆる政策ツールを総動員してベンチャー投資の拡大を目指していきたいというふうに思っています。

 具体的には、例えば、NEDOから認定を受けたベンチャーキャピタルとの研究開発型ベンチャーへの協調融資ですとか、あるいは認定ベンチャーファンドへの出資に対する税制優遇制度ですとか、あるいは、官民ファンドによるベンチャーファンドへの出資事業ですとか民間ファンドとの協調投資などの取組を進めているところであります。

 いずれにしても、グローバル市場で勝っていけるベンチャー企業の創出支援をしっかりと加速化していきたいというふうに考えています。

松平委員 どうもありがとうございます。目標が結構高いものであるという率直な御意見、ありがとうございます。私も、金額ベースでいうと近年増加しているというふうに、確かに、ふえていることはそのとおりだと思います。

 ただ、国際的に比較すると、ベンチャー投資の金額は大変に低いものとなっています。

 図二の表を見ていただけますでしょうか。こちらの一番右の部分、これは直近の数字、二〇一六年の数字なんですけれども、青い部分、これは米国ですね、七兆五千百九十二億円。そして灰色の部分、これは中国なんですが、二兆一千五百二十六億円。比べて、日本は一千五百二十九億円しかない。アメリカの五十分の一、中国の十四分の一ということになっています。表ではお示ししてはいないんですけれども、これはGDP比で換算してもアメリカの十分の一ぐらいでしかありません。

 また、金額ではなく件数ベースの方で見てみますと、次の図表三を見ていただけると、やはりVCの投資件数は、リーマン・ショック以降、若干はふえているんですけれども、低迷したままというふうになっています。

 先ほど大臣おっしゃいましたように、官民ファンドであるINCJやREVICもスタートアップ投資されていますし、あと中小企業もファンド・オブ・ファンズを通じて頑張っていらっしゃると思います。ただ、それはあくまでも民の補完というものがその役割でして、まずは民間の資金供給元であるVCの投資環境を整えていく必要があると思っています。

 この点、投資家目線でいくと、出口戦略、いわゆるエグジットが描きやすいとその会社に投資しやすくなる。御案内のとおり、出口戦略としては、大きく分けて二つありまして、一つはIPO、もう一つはMアンドAです。

 これまでの日本の出口戦略の中心というのはIPOでした。しかし、現状、そのIPOも、数はやはりふえていない。

 次のページをめくっていただいて、図表四を見ていただきたいんですけれども、これもやはり、IPO件数、二〇〇〇年代半ばの半数ぐらいにとどまっております。このIPOが少ない原因としてはどういったものが考えられますでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるベンチャー企業向けの市場になっておりますマザーズへのIPOの件数につきましては、二〇〇四年に五十五件となりました後、リーマン・ショック後の二〇〇九年には四件まで減少いたしました。その後、件数は増加に転じておりまして、二〇一五年には六十一件となり、近年は年間五十件程度で推移しているものと承知をしてございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 今のIPOに絞って話をさせていただきますと、アメリカでは、新興企業の上場を容易にするために、二〇一二年にJOBS法というものができました。これはどういった内容かというと、年間総売上げが十億ドルに満たない企業、これはエマージング・グロース・カンパニーズというんですけれども、これが株式公開する場合は、SECの規制が緩和されて、IPOに係るいろいろなコストが引き下げられたり、IPO後の開示規制も適用除外になったりというもので、実際、この法律施行後の二〇一三年、二〇一四年と、フェイスブックが上場したり、IPOの数は増加しています。

 日本でも、二〇一四年に金商法の一部が改正されて緩和はされましたけれども、その年の終わりにgumiショックがあり、二〇一五年の四月に日本取引所グループがIPO審査の厳格化を要請するということがありました。

 私としては、審査の時点の厳格化というよりも、ルール逸脱の場合の厳罰化、そしてディスクロージャーの厳格化、こういった事後規制で対応すべきであって、入り口で扉を閉ざしてしまうのはいかがなものかなというふうに思っております。ただ、現状のIPO数の少なさを考えると、IPOを活性化させるために、その見直しを含めた施策を検討してもいいのかなというふうに思っております。

 次に、もう一つのエグジット方法であるMアンドAを増加させる策ですけれども、現状として、エグジットとしてのMアンドAの数、こちらの件数は非常に少ないものとなっています。

 次のページの図五の表を見ていただきたいと思います。これの、二〇一六年、一番右なんですが、オレンジの部分、これはMアンドAの数なんですが、二〇一六年で七十三件となっています。これは、全体の割合にすると、計算すると一三・八%しかないんです。これに対してアメリカではどうかというと、何と全体の九割五分がMアンドAが占めているんです。

 このエグジットとしてのMアンドAが日本でまだ盛んとは言えない理由について、どうお考えでしょうか。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターの投資動向調査によりますと、我が国におけるベンチャー企業のエグジット方法につきまして、MアンドAとIPOの比率を見ますと、二〇一四年度には一対三・二であったものが、二〇一六年度には一対一・四となり、最近ではMアンドAの比率が増加しているところと承知してございます。

 他方、米国につきましては、議員からも御指摘がございましたように、同国のベンチャーキャピタルの業界団体の調査によりますと、二〇〇〇年代前半からエグジット方法としてMアンドAの比率が高まっておりまして、直近では八割から九割で推移しているものと承知してございます。

 このように、我が国においてベンチャー企業のエグジット方法としてMアンドAの比率が低いことにつきましては、経済産業省が平成二十八年度に調査を実施いたしましたところ、ベンチャーキャピタル等からは、大企業によるベンチャー企業のMアンドA件数が少ないということが指摘されまして、また、その理由といたしましては、買収する側がベンチャー企業の将来性を必ずしも十分に評価できていないということや、ベンチャー企業側の問題といたしまして、大企業が買収に至るような説得力を持つ事業の説明能力が不足している、こういった点が挙げられたところでございます。

 以上でございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 MアンドAが盛んになれば、初期のステージでも投資しやすくなりますし、起業家にとっての目標設定も定めやすくなります。

 ところで、政府も音頭をとっていらっしゃるROE経営の推進、これによって、会社の自社株買い、こちらが非常にふえています。

 ニッセイ基礎研究所の資料によると、自社株買いの実施額は、二〇一四年に三兆円前半だったのが、二〇一五年度には五兆円になっています。これを超えています。つまり、自社株を持っている会社が今非常に多いので、その自社株を利用して会社のMアンドAを容易に行える状況にあるものと思います。

 今回の産業競争力強化法の改正案におきましても、自社株を対価とするMアンドA、現物出資規制と有利発行規制がTOBだけの場合ではなくそうとしております。こちら、スタートアップの買収にも使えるようになる、MアンドAが盛んになるということで、私としては大賛成なんです。

 ただ、そうはいいましても、やはりこれは特別事業再編計画の認定を受けた場合だけということになっています。自社株対価MアンドAを促進していくという観点からは、ぜひこの認定は広く行っていただきたいというふうに思っております。

 また、大事なのは、自社株を譲り受けた株主への課税繰延べ措置だというふうに思っています。こちらについても、私は、適格株式交換との均衡からも非常に大事であり、かつ、自然なことだと思っています。

 ただ、やはり、今述べたのと同じように、こちらも特別事業再編計画の認定の場合だけですので、今後、広くMアンドAが盛んになるためには、この課税繰延べという部分、これについても一般的にできるようにすることが必要だというふうに思っています。

 先ほど申し上げました、認定を広く行っていくべきという点、それから課税繰延べ制度の一般化について、こちら、大臣の所感はいかがでございましょうか。

世耕国務大臣 MアンドAによるエグジットが日本で少ない一つの原因は、やはり、なかなかキャッシュを出したがらない、現預金はやはり積んでおきたいという大企業の経営者が多い、それが今、内部留保とかいろいろ議論になっているわけでありますけれども、そういったところがあるんじゃないかと思っています。

 今御指摘の自社株式を対価とするMアンドAについては、まさにキャッシュの流出を伴わないで買収ができるという意味で、特に日本の企業文化の中では有効な手法になるのではないかというふうに思っていまして、こういった手法を積極的に活用することを促すために、平成三十年度税制改正において、産業競争力強化法に基づいて計画の認定を受けた場合に、買収に際して譲渡した買収対象会社の株式譲渡損益に対する課税を繰り延べることができるようにいたしました。

 法律上は、今後成長が見込まれる事業分野で革新的な技術を取得するための買収などによって生産性の著しい向上が認められ、買収対価の額が買収会社の余剰資金の額を超える場合に計画の認定が受けられるということになっているわけであります。

 この認定の幅をどうするかという議論もあるわけですけれども、まずは今回の制度改正の実現と幅広い事業者による活用促進に全力を挙げることにしたいというふうに思っています。

 認定を受けなくても課税繰延べを受けるようにすればというお話でありますが、その実績なども見ながら、今後検討してまいりたいというふうに思います。

松平委員 どうもありがとうございます。

 アメリカでは、まさに新興企業が自社株を使った買収で急ピッチで成長してきて、経済の活力を生んでまいりました。この課税繰延べについては、アメリカだけではなくて、イギリス、ドイツ、フランス、オランダなど、既に一般的な制度となっています。ぜひとも前向きにお進めいただければというふうに思っております。

 次なんですけれども、もう一つ、シード段階での調達先として、エンジェル投資家の存在というものが挙げられると思います。多くのエンジェル投資家は、自分で起業された方も多いですし、自分でエグジットした方も多いので、自分の経験もアドバイスできたり、知見も共有できたり、また、投資家目線での短期的なキャピタルゲインを必ずしも目指していないということで、スタートアップの成長を温かく見守ってくれるというメリットもあると思います。

 日本においてもエンジェル投資家税制があるというふうに理解しているんですけれども、その最近の利用状況についてはいかがでございましょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のございましたエンジェル税制の最近の利用状況でございますけれども、エンジェル税制が適用された投資額、また、エンジェル税制を利用したベンチャー企業、受け入れられた方のベンチャー企業の数、いずれについても増加傾向にあるという認識でございます。

 具体的に申し上げますと、平成二十八年度におきまして、エンジェル税制が適用された投資金額でございますけれども、約三十五億円ということでございました。平成二十六年度が二十四億、二十七年度が二十八億ということで、平成九年度の制度創設以来、金額としては最高額になっております。

 また、エンジェル税制を利用したベンチャー企業の数も、九十五社ということでございまして、二十七年度に百三社という数がございますけれども、制度創設以来二番目ということで、利用企業数としても増加傾向にある、このように認識をしております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 ふえてはいるとお伺いするんですけれども、まだ総体的に、残念ながら、まだ一部の層ではないのかなという印象があります。

 もう一つの観点としては、そのエンジェルとなる人とスタートアップ企業をつなげるインフラというものも必要になってくるものと思います。そういう意味で、企業の側も投資家にアプローチしやすくして、また、投資家の側もベンチャー企業の情報に容易にリーチできる、そして有益な情報交換が容易にできる、こういったエンジェルネットワークの環境整備をするのがいいのではないかと思っております。

 そういった環境の整備について、何かされている施策というものはございますでしょうか。

安藤政府参考人 御指摘のように、先ほど増加傾向にあるということで申し上げましたが、数としてはまだまだ、レベルとしては低いもの、そういう認識をしておりまして、税制も、より使いやすい形で、御利用いただきやすいような形で、不断に見直しを行わせていただきたいと考えております。

 また、今御指摘のいわゆるマッチング機能、これも大変重要だと思っております。独立行政法人の中小企業基盤整備機構におきまして、ベンチャー投資に取り組む優良な個人の投資家の方を御支援させていただくために、スタートアップエンジェル連携推進協議会、SANA、サナと略称させていただいておりますけれども、まさにスタートアップの企業とエンジェル投資家との間をいわば連結させていただく、こういった協議会を、昨年の十一月でございますが、設立させていただきました。

 まだまだ立ち上がって日が浅いわけでございますけれども、こうした活動を更に加速させていくことによりまして、スタートアップ企業に対する投資家と投資をされるベンチャー企業との間での橋渡しをしっかりとつくってまいりたい、このように思っております。

松平委員 どうもありがとうございます。

 SANAという制度、去年の十一月にできたばかりということで、ぜひとも期待したいと思います。

 エンジェル投資の世界は情報の非対称性が大きいと思うんです。スタートアップ企業の社長の多くは、投資に関して、会計や法務の知識が投資家より劣っていたり、また、その会社の資産というものはアイデアそのものであったりします。ですので、投資条件項目などの情報が共有できたり、あと、資産であるアイデアの秘密保持というものをしっかりさせていく必要もあると思います。逆に、エンジェルの側からも、変な話、経営陣にだまされたりしたりとならないように、信用できる、信用の置けるネットワーク構築づくりというものをお願いできればというふうに思っております。

 次に、ネットワーク外、つまり一般公募的な形による資金調達についてお聞きしたいと思います。

 成長企業へのリスクマネーの供給をふやすということで、二〇一四年の金商法改正で、株式投資型のクラウドファンディング、エクイティークラウドというものが認められたと理解しております。現状のスタンスについて教えてもらってもいいでしょうか。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 株式投資型のクラウドファンディングにつきましては、新規成長企業へのリスクマネー供給促進策の一つとして、金融商品取引法の改正により制度を整備し、平成二十七年五月より施行されております。

 その利用実績を見ますと、昨年四月に最初の募集が行われて以来、本年二月までの間に、取扱件数で二十五件、取扱総額は七・二億円となっており、足元では利用が進んでいるものと考えております。

 金融庁といたしましては、株式投資型クラウドファンディング制度の周知、普及に努めてきたところでございますが、引き続き、こうした取組を進めてまいりたいと考えております。

松平委員 利用が進んでいるとのデータ、こちら、本当に喜ばしいことと思います。

 こういうエクイティー投資のカルチャーが広まれば、やはり資金調達するチャンスというものが大きく広がって、ベンチャー企業の活動が活性化されます。NISAであるとかふるさと納税といったもののように、知名度であるとか利用度がともに上がっていけば望ましいことと思いますので、こちらも活用度が上がるような積極的な施策をお願いできればというふうに思っております。

 それから次に、起業する側、創業する側の観点から御質問申し上げます。

 質問の冒頭で見ていただいた資料の図一に関係してまいりますけれども、起業指数というものが他の国に比べて低い理由として、起業コストの高さというものも挙げられると思います。

 世界銀行が行った起業環境の国際比較を見ても、日本は、開業に要する手続や時間、コストといったものの総合評価が非常に低いものとなっています。日本は会社登記に平均して十一・二日を要する一方、シンガポールは二・五日、香港は一・五日、アメリカは五・六日で済み、また、開業コストについても、一人当たり所得に対する開業費用の割合を見ると、我が国では七・五%に対して、シンガポール及び香港では〇・六%、アメリカでは一・一%となっています。このデータから考えると、もうスタートの時点から大きく違うのではないかなというふうに思います。

 しかも、その違いは、残念ながら国の制度というもの自体によるものです。我が国では、株式会社で、一番安くても、定款認証で五万円、登録免許税で十五万円かかってしまって、非常に高いものとなっています。

 政府の電子化を進めていくというこの時代、起業、創業の工数やコストについて規制緩和をもっと検討すべき段階に入っていると思いますけれども、この点いかがでございましょうか。

宇野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、我が国におけます法人設立手続は、必要な手続の数が多く、諸外国と比べまして日数もかかっているという状況にございます。

 また、御指摘のとおり、定款認証や会社代表者印の提出など、手続の一部に面前や書面というものが残っておりまして、オンライン化もできておりません。

 さらには、登記申請や税、社会保障に関する届出など、手続ごとに窓口が異なっておりまして、それぞれ個別に手続することが求められることも申請者にとっては大きな負担となっていると聞いております。

 これを受けまして、法人設立に係る全手続をオンライン、ワンストップで処理できるようにするために、昨年十二月に閣議決定されました新しい政策パッケージにおきまして、「具体策と実現に向けた工程について今年度末までに成案を得る。」とされたところでございます。

 具体的には、一として、「オンラインによる法人設立登記の二十四時間以内の処理の実現及び世界最高水準の適正迅速処理を目指した業務の徹底的な電子化」、二として、「法人設立における印鑑届出の義務の廃止」、三として、「電子定款に関する株式会社の原始定款の認証の在り方を含めた合理化」、四として、「法人設立手続のオンライン化とマイナポータルを活用したワンストップサービスの提供」等の四点に取り組むということにしております。

 今年度末の取りまとめのために、今まさに関係省庁と調整をしているところでございます。

 いずれにしましても、世界最高水準の起業環境を実現すべく、関係省庁と提携しながら進めてまいりたいと思います。

 以上でございます。

松平委員 どうもありがとうございます。

 方向性が見えてきているという点、非常に喜ばしいことだと思います。極端な話、スマホさえあれば簡単に起業できるというような、そういった未来的なあり方も含めて検討していただければというふうに思っています。

 きょうは、IPO、MアンドAの活性化、エンジェル投資、エクイティークラウド、そして起業、創業の手続とコストの問題について御質問させていただきましたけれども、やはり日本の起業活動率が低いことの理由というのは、ほかにも、起業に失敗したときの過大なリスク負担、そして労働市場の流動性の低さ、低調な起業家精神など、まだまだあるものと思います。

 また今後も日を改めて質疑させていただきたいと思いますが、まずはきょうの点も御検討いただきながら、日本のスタートアップ業界を活性化し、日本の成長をぜひとも後押ししていただければと思っております。

 これにて私の質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

稲津委員長 次に、山崎誠君。

山崎委員 こんにちは。立憲民主党の山崎誠でございます。

 世耕大臣には、エネルギーの問題をまたお聞きをしたいと思います。予算委員会もこの間ございましたので、三回目になりますが、おつき合いのほど、よろしくお願いします。

 まず冒頭、御報告があります。

 去る三月の九日に、私たち立憲民主党が「国民との約束」で掲げていました一日も早い原発ゼロを実現するため、原発ゼロ基本法、正式名称、原発廃止・エネルギー転換を実現するための改革基本法案を衆議院に提出させていただきました。

 多くの国民の皆様との議論、タウンミーティングを二十回以上開きましたが、二千人以上の方にお越しいただきました。各種団体、専門家との意見交換を経まして、私ども立憲民主党のほか、共産党、自由党、社民党、野党四党の皆様と共同提案、そして、プラス無所属の議員の一部の方にも賛成をいただいて提出することができました。

 柱は三つございます。原発ゼロについては、全ての原発の速やかな停止、この基本法施行後五年以内の全ての原発の廃炉の決定、それからエネルギー転換については、省エネを、二〇三〇年までに二〇一〇年比三〇%以上の削減目標、それから再生可能エネルギーに関しては、二〇三〇年までに電源構成比で四〇%以上を目標としています。

 私たちは、これは決してイデオロギーとかではなくて、現実的な、かつ、真に持続可能な、次世代に責任を持てるエネルギーシステムをつくること、これを目標としましてこの提案をしています。そして、世界の潮流になっています再生可能エネルギーへのシフトを確実なものとするためにこの基本法をつくりました。

 原発廃止、エネルギー転換というのは、未来への希望であります。大きな社会変革であると考えています。エネルギーの問題だけではございません。

 ぜひとも、本経済産業委員会での御審議をいただきたく、委員長、委員の皆様に強くお願いをする次第です。何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 発電コスト、電気料金について、経済性について、また御質問を続けていきたいと思います。

 予算委員会でも御質問はしたんですが、資料の一にございます原子力発電コストの内訳について、いま一度整理をさせていただきたいと思います。

 電源別の発電コストについて、原子力については十・一円という数字をいつも出されまして、原発は安い電源でありコスト競争力があると、皆さん、経産省は説明をしています。この十・一円というコストはOECDのモデル計算に基づいていますと予算委員会でもお聞きをいたしました。ただ、私は、東京電力福島第一原発事故を経験した今、このモデル計算では正しいコストが表現できていないのではないかと考えています。

 幾つかの問題点を指摘させていただきます。

 まず第一に、これは大きな私の疑問なんですが、東京電力福島第一原発事故の対応経費をどのように見ているかをお尋ねをしたいと思います。

 経産省では、現時点で二十一・五兆円ですか、当初は十一兆円でありましたが、倍以上になりました、対応コストがかかると見積もっておられます。一方、民間ではありますが、日経新聞系のシンクタンク、日本経済研究センターの試算では、その総額が五十兆あるいは七十兆にもなるという計算結果も公表されていたところでございます。

 こうした費用は実際に今後発生していくものであり、誰かが負担しなければなりません。もうどこかにお金があってそれを切り崩していけばいいようなものではない。電力会社が負担するのであれば、それは電気料金に乗ってくるのではないか。国民が負担するというのであれば、それは税金でございます。税金で賄われて、結局、国民負担になる。

 世耕大臣のお話で、モデルにはこのコストは乗せられないというお話でございました。二重計上になってしまうのでこのコストは乗せられないというお話ではございました。ですが、では、モデル計算で計算された十・一円とは別途、プラスアルファが必要だということを明記すべきではないかと思います。

 原発事故の対応コストに今後どのような形で対応するのか、原子力発電のコストとこの事故対応コストの関係をどう見るのかをお聞きいたします。

世耕国務大臣 直近、二〇一五年に行われたコスト検証において、事故リスク対応費用の試算については、これは、二〇一一年の民主党政権下で行われたコスト等検証委員会で示された共済方式の考え方を踏襲しているわけであります。この共済方式は、仮に事故が起きたとしても、一定の期間でその損害額を賄うことができることを想定してコストに計上するものであります。

 その上で、直近のコスト検証では、炉心損傷頻度を一万炉年から十万炉年に一回とする。これは普通、国際的な安全目標の相場観であるわけであります。

 こういったことも横目で見ながら、一方で、三十以上実施した新規制基準に基づいた新たな安全対策のうち、一つの効果だけでも事故リスク評価が二倍以上ほど改善しているということを総合的に勘案して保守的に見積もって、二〇一一年の計算の際には二千炉年としていたわけですが、それを、少なくとも一つの効果だけでも倍以上事故リスク評価が改善するということを踏まえて四千炉年とかなり保守的に見積もって、その期間で損害額を賄うことができることを想定してコストに計上をしているわけであります。

 このように、四千炉年という値は、炉心損傷頻度や事故リスクの評価などを勘案して保守的に算出をされて、有識者会議において妥当なものとして取りまとめられたものであります。

山崎委員 質問をすりかえないでください。

 私は、福島第一原発事故のコストをどう今後負担をしていくのか、それを、モデルはもういいんですよ。今の御説明は、後で御質問したかったんですけれども、モデルのリスク対応の費用についてはお考えはわかります。それとは別に計上しなくてもいいんですかと。もうこれからお金がかかっていくわけで、見えているわけですね。だから、政策経費的なものとしてかかっていくべきもの、過去にはそれをちゃんと積み立ててきていないもの、これについてどういう扱いをされるんですか。

世耕国務大臣 なかなかモデル計算方式を御理解いただけないようなんですが、この中に四千炉年という形で入っているんです。入っているんです、これは。事故対応費用というのは計算上入っているということを申し上げているわけであります。

 その上で、例えば福島事故関連費用がこの十・一円との関係でどうなるか、これは我々もいろいろ計算をしていますけれども、例えば十兆円増加した場合でも、事故リスク対応のための発電コストはキロワットアワー当たり〇・一円から〇・三円という計算になるわけです。

 いずれにしても、モデル計算には事故対応費用は入っているということ、モデル計算というのはそういうものだということを御理解いただきたい。

山崎委員 私は、よく聞いてください、モデル計算は理解しています。世耕さんのおっしゃっているのはよくわかっている。でも、モデルに入れていない事故の対応コストがあるのではないかと。実際にかかるお金ですよ。五十兆かもしれないと言われている。これを原発の費用に入れないで今後の原発の評価に、それで正しいのかというのをお聞きしているんですよ。

 じゃ、今御説明がありました事故リスク対応費用についてもお聞きしたいんですよ。

 この四千炉年というのは、非常に高目に見ているんだということでありますが、これは、五十基の原発を四十年稼働するというのを前提にして二千炉年を出して、それに確率を掛けて四千炉年にしているということですよね。これは、言うなれば、五十基、四十年運転をし続ければ、事故が一回起きたとき、福島系統の事故が起きたとき、これだけのコストを見積もっておけば共済方式で何とかなるということですよ。

 逆に言えば、これは、逆というか、例えば自動車の事故であれば、自動車の保険であれば、例えば、一つ大きな事故が起きても、それは全体の車の運行がとまるわけではないので保険は成り立っているんですが、福島の教訓は何ですか。原発事故が起きたら、全原発は停止をしてしまって、再稼働がこれだけ大変で、ほとんど動かせないということですよ。

 だから、モデルはそういう事態を想定しているんですか。ここで積み立てられているお金は、結局、五十基、四十年の運転を前提として初めて成立する共済方式なんですよ。だから、これは原発のリスクには対応していないと思いますけれども、いかがですか。

世耕国務大臣 このモデル計算では、このコスト検証では、基本的には、福島の事故を踏まえた賠償や除染、中間貯蔵といった事故リスク対応費用に加えて、追加安全対策費用ですとか核燃サイクル費用、政策経費、全て含んだ試算になっているんです。モデルというのはそういうものなんです。これが起こって原発がとまったらどうしようかとか、そういうことを考えているわけではないんです。四千炉年という一定の係数のもとにおいて、発電キロワットアワー当たりのコストが幾らになるかというのを計算するというのがモデル計算方式なんです。

 それじゃ十年後に起こったらどうするんだとか言い出すと、じゃ、これは全然起こらない場合はどうするんだとか、あらゆる場合を計算しなきゃいけないということになるわけです。

 これは、あくまでも四千炉年という数字を置いてコスト計算をモデルプラントでやった、だからこそモデルということがついているわけであります。

山崎委員 おっしゃっている意味は、百歩譲ってですよ、私は理解しているつもりですが、要するに、原発には共済方式が成り立たないという前提でモデルをつくらなきゃ間違っていますよということを私はお訴えしたいんですよ。

 民主党時代がどうのこうのといつもおっしゃるから、枕言葉につけるけれども、私は民主党時代のこのモデルケースも間違っていると思います。民主党を離党していますから堂々と言わせていただきますが、間違っていると思いますよ。原発のリスクの見方が間違っているモデルをベースに計算して原発が安いと言うのはおかしいということです。

 その他にも、例えば、現時点の建設費というのは、これは追加的な安全対策費を入れても一基五千億程度ですよね。実際に、海外ではもう一兆円にもなると言われている。あるいは、バックエンド費用についてお聞きしても、実際に稼働もしていない六ケ所村の再処理費用を大ぐくりで入れて、これで見ていますと。

 だから、モデルというのはそういうものかもしれませんが、私は、原発についてはコスト上昇の要因を多く含んでいると思っています。コストが上昇する、まだまだ膨れ上がる。これは経産省の資料でも矢印が上に向いていたりするんですけれども、そういう数字が十・一円という数字だと思います。

 一方、再生可能エネルギーのモデルについては、例えばIRRですかね、これは固定価格買取り制度の負担金を入れていると思います。ほかにも、例えば建設費も積んでいる、あるいは稼働年数を二十年として計算している。

 これは、それぞれ、固定価格買取り制度、この後も議論しますけれども、どんどん減っていくもので、経費的なコストは減ります。それから建設費も、海外と比較したときに、日本の建設費は再エネは高いと言われている。だから、どんどんどんどんこれは落ちていきます。あるいは、二十年というこの運転期間も、実際は二十五年、あるいはうまく運転すれば三十年、そういう運転ができるということであれば、このモデル計算のコストは下振れをする、そういう数字であるということです。

 それで、直近、直近とおっしゃいますけれども、二〇一四年ですからね。(世耕国務大臣「一五年」と呼ぶ)一五年。我々、今、二〇一八年にいて、価格の減少は非常に激しく起こっています、再エネ。なので、最新のそういう情報に基づいて計算しなきゃいけないだろうと。

 エネルギー基本計画の議論を今されていますから、ぜひ、原発は上昇傾向があるんだよ、再エネについてはコストの低減傾向があるんだよ、そういう傾向をしっかりと捉えて、これは短期的にも、中長期的にはもっとその姿は顕著だと思います。

 そういう議論をしていただきたいと思いますが、世耕大臣、私は、モデルは理解した上で、この傾向、こういう計算の中身、それを踏まえて議論していただきたいと思いますが、いかがですか。

世耕国務大臣 済みません、太陽光、風力は二〇一四年が計算した年でありました。

 当然、大きな変化があれば、それはそれで適切に見ていく必要はあるだろうというふうに思っていますが、今、我々は、そんな大きな変化は現時点では起こっていないというのが我々の認識であります。

山崎委員 私は、それは驚くべき、少なくとも再エネについては劇的なことがどんどん起こっていますよ。中国であれだけ入っているんですよ。そういった事実を、私は「日本と再生」を見てくださいと言っているんだけれども、なかなか見てくださらないようなので、ぜひお勧めをします。

 次に行きます。固定価格買取り制度についてお話をさせていただきます。

 今、この固定価格買取り制度に伴うコスト負担が非常に問題になっている、私もその認識は共有いたします。来年度の買取り価格の発表で、一般の標準家庭で年間の賦課金の負担額が九千五百円ぐらいになるという報道もありました。

 確かに、こうした電気料金の上昇というのは極力抑えなければいけないという認識でおります。そのために、固定価格買取り制度の運用の見直し等は必須でありまして、支持するところではございます。

 ただ、私は、この固定価格買取り制度の経産省の捉え方というか、見せ方にやはり問題があると思っています。

 この固定価格買取り制度というのは、再生可能エネルギーのスタートアップを支援するための過渡的な制度でありまして、再エネに対する一種の国家的な投資であります。制度上、この負担というのは収束をしていく、そういう類いの数字であるはずでございまして、もともと再生可能エネルギーが高い発電方式だという認識をこの制度をもって広める、広がってしまうのは間違っていると思います。

 資料の四を見ていただくと、これは経産省の資料ですが、二〇三〇年までの負担を、右側のグラフですけれども、出して、二〇三〇年でばしっと切っています。二〇三〇年というのは、実を言うと、この固定価格買取り制度の見通しからいくと、最も賦課金が高くなっているタイミングなんですよ。そこでグラフを切ってしまう。これは一般的に見ると、一般の人がこの資料を見るかどうかは別にして、一般的に見ると、わあ、賦課がどんどんどんどん上がっている、このまま再生可能エネルギーの導入が進めば賦課がまた大きくなるのではないかと大変不安になります。

 次のページ、五ページを見ていただきたいんですが、これは自然エネルギー財団というシンクタンクが出している、ちょっと古いデータではございますが、見通しでございます。

 再生可能エネルギーの賦課金、負担というのは、こういうグラフ、山を描いているということです。このグラフであれば、二〇三一年にピークを迎えて、急激に落ちていきます。固定価格買取り制度というのは、二十年の固定の買取りで、その価格はどんどん落ちていきます。最終的には買取り価格に乗せる賦課金はゼロになるので、グラフとしては、こうやって大きなトレンドでは落ちていきます。

 トータルで再生可能エネルギーを応援するというのがこの制度でございまして、こういう図を見せて御説明しないと、私は、国民の世論だとか、ミスリードしてしまうのではないかと。もちろん、この負担がいいと言っているわけじゃないですよ。これを小さくしなきゃいけない、このピークをできるだけ小さなものにしなきゃいけないというのは賛成した上で、制度としてはこういう制度だと。

 こうして投資をしたときに、例えば二十年後、今度はそれ以上の発電をすれば、それは本当に安い、燃料費のかからない発電ということにもなります。そういったメリットもこの負担の中から相殺していかなければいけないのではないか。長い目で見たら、再生可能エネルギーというのは圧倒的に私は経済合理性があると考えています。

 今のお話、世耕大臣のお受けとめをお聞きしたいと思います。

世耕国務大臣 我々も、別にミスリードするためにデータを出しているわけではないわけでありまして、御指摘のとおり、FIT対象電源の大半については二十年間で買取り期間が順次終了していくわけですけれども、その中で、発電コストが低減をしていけば、FIT制度が開始をした二〇一二年度に買取りを開始した案件が二十年間の買取り期間終了を迎える二〇三二年以降、再エネ賦課金は低減していくことが十分あり得るんだろうと思います。

 しかし、各電源の発電コストがどの程度、どのようなスピードで低減をしていくのか、また、制度としてこの再エネ賦課金をどの程度、どのタイミングから低減させていくのかによって結果が変わってくるわけですから、我々は、そこから先はなかなか今、姿としては見せられないというわけであります。

山崎委員 それも私は、制度を運用する経産大臣、経産省としては、これは見通しとして、どういう見通しでこれを運用していくのか、二〇三〇年以降わかりませんというわけにはいかないと思います。固定価格買取り制度をずっと続けるんですか。それを続けないようにするために、再エネのいろいろなコストを削減する努力をするわけですよね。世界とこれだけ今差がある中で、どうやってそれを縮めていくのかという施策を総動員してやるわけですよね。なので、私はそういう前提でお話をしています。

 そういう前提で考えたときに、この経産省の説明の資料は不十分だし、例えばこういったことを目標として示していかないと、私は、間違っていると思いますし、再生可能エネルギーあるいは固定価格買取り制度の理解を誤る、そういうきっかけになるのではないかと思います。ぜひエネルギー基本計画の議論の中で注意をしていただきたいと思います。

 それから、エネルギー基本計画の中で気になるベースロードの考え方について触れさせていただきます。

 今、改定の議論の中で、このベースロード電源という考え方はいまだに残っているのではないかな、電気の安定供給のために原子力発電、石炭火力発電など安定電源が必要だという発想は今でも残っているのではないかなと思って、危惧をしています。

 世界では、変動電源と言われる再生可能エネルギー、太陽光発電、風力発電、あるいは、これは安定電源ですが、バイオマス発電、中小水力発電など、多様な電源を組み合わせて、再生可能エネルギーがもう基幹電源になっています。そういうものをコントロールする技術もある。供給側のみならず、需要側をコントロールするいわゆるディマンドレスポンスといった各手法も定着してきています。

 こういった技術を積極的に取り込んだ、ベースロード電源によらない、ベースロード電源というもの、特に原発だとか化石燃料、石炭火力などに頼るエネルギー構成ではないエネルギー構成を積極的に議論していただきたいと思いますが、エネルギー基本計画の議論の中で、そのあたりの位置づけはどうなっていますでしょうか。

世耕国務大臣 現行のエネルギー基本計画の中では、再生可能エネルギーは最大限導入する方針となっています。また、今、エネルギー基本計画の検討を行っておりますけれども、有識者の間でも、再生可能エネルギーは主力電源だという形で議論が進んでいるわけであります。

 しかし、一方で、現行の基本計画では原子力や石炭火力をベースロード電源と位置づけているわけですが、これは、原子力や石炭火力などのベースロード電源、そしてLNG火力などのミドル・ピーク電源、そして再生可能エネルギーをうまく組み合わせてスリーEプラスSを同時達成することが電力供給上は重要であるということを示しているわけであります。

 再生可能エネルギー、これは主力電源なんですが、大量導入されるとベースロード電源が不要になるという見解もあることは承知していますが、現実として、例えば再エネ導入が進んでいるドイツやデンマークですら、石炭を始めとしたベースロード電源に依然として依存している状況であります。

 また、現在の技術を前提とすれば、再エネが大量導入されると出力変動を調整するために火力を多く活用することが見込まれるわけですが、そうすると温室効果ガスの削減が進まないという課題にも直面をします。

 また、ヨーロッパの国々と違って、他国から融通を受けるというのは、現実問題、今、日本ではできないわけであります。

 一方で、仮に水素、蓄電池といった技術革新が起きれば、再エネの大量導入によって、ベースロード電源の機能を果たしながら、同時に脱炭素化も追求できる可能性を再生可能エネルギーは秘めていると考えております。

 いずれにしても、これは今、二〇五〇年を目指した議論で、エネルギー情勢懇談会でいろいろと議論をいただいているところであります。

山崎委員 ちょうど今、ドイツというお話があったんですけれども、きのうお話を聞きましたら、新しい連立政権の目標、二〇三〇年に再生可能エネルギー六五%ですよ。二〇五〇年には再生可能エネルギー一〇〇%ですよ。まあそれは、今、石炭をたいているのはわかりますよ。でも、それも減らして、最終的にそういう目標を掲げて、今、国をリードしているのがドイツであります。

 それから、デンマーク、小さい国ですけれども、再生可能エネルギーの輸出が進んでいます。例えば、これは人口でいくと兵庫県でありまして、面積でいくと九州です。例えば四国をデンマークと思えば、デンマーク一国、再生可能エネルギー、できるじゃないですか。

 そんな発想、柔軟な発想で、ぜひエネルギー基本計画を見直して、きちっとつくり直していただきたいと思っています。

 以上で終わります。

稲津委員長 次に、中谷一馬君。

中谷(一)委員 立憲民主党の中谷一馬でございます。

 関係各位の皆様におかれましては、本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

 冒頭、ほかの委員からも同様のお話がありましたが、私は、政府・与党、そして野党は、政策的に競い合うライバル同士であったとしても、嫌悪感を持つような対象ではないと思っています。その中で、やはり、山の登り方は違えど、日本をよくしたい、国民生活を豊かにしたい、こうした思いは同様であると私は信じております。

 そうした観点から、私は、否定論理ではなく、未来への展望を交えながら、建設的な議論を行っていきたいと思っておりますので、世耕大臣、そして政府参考人の皆様におかれましては、明快な御答弁をよろしくお願い申し上げます。(発言する者あり)ありがとうございます。

 では、まず初めに、私からは、第四次産業革命について伺っていきたいと思いますが、政府は、昨年六月に未来投資戦略二〇一七において、中長期的な成長を実現をしていく鍵は、近年起きている第四次産業革命、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット、シェアリングエコノミーなどのイノベーションをあらゆる産業や社会生活に取り入れることにより、さまざまな社会課題を解決するソサエティー五・〇を実現することにあるとされております。

 また、安倍総理は、ことしの施政方針演説において、今、世界じゅうでソサエティー五・〇に向かって新たなイノベーションが次々と生まれており、この生産性革命への流れを先取りすることなくして、日本経済の未来はない、二〇二〇年を大きな目標に、あらゆる政策手段を総動員していくということを述べられております。

 このように、第四次産業革命によるイノベーションを中長期的な成長の鍵としておられますが、そもそも、こうした第四次産業革命に対応した政策を進めるに当たって、他の諸外国がどんなことに力を入れて、どの程度の予算を投じ、どういった成果を見込んでいるかなど、研究、検討を行い、ベンチマークなどを設定した上で予算措置や事業展開をされているのか、教えてください。

中石政府参考人 お答えします。

 委員御指摘のとおり、世界では今、産業構造全体の大きな変革が起きておりまして、この中で、第四次産業革命は、各国も成長戦略の鍵と位置づけております。米国やドイツも自国の強みを踏まえた戦略を構築しているというふうに承知しております。

 まず、米国につきましては、世界トップレベルのIT人材が集積しておりまして、また、これに加えて、民間で潤沢なリスクマネーがあります。これらを背景に、プラットフォーマーと呼ばれる巨大な民間企業が誕生しておりまして、この巨大な民間企業が政府や大学、海外企業を巻き込んで、そうしたバーチャルな経済とリアルな産業を融合化するということで、世界市場におけるデファクトでの主導権を握ろうとしているということでございまして、政府よりか民間が進んでいるということでございます。

 これに対しまして、ドイツにつきましては、高い技術力を持つ製造業や実践的な専門性を持つ研究者といった強みがございまして、政府が旗振り役となりまして、ITと製造技術の組み合わせによる生産の高度化、あるいは輸出促進のための国際的な規格、ルールづくりに力を入れているというふうに認識しております。

 これに対しまして、日本です。日本としましては、第四次産業革命はまさにおっしゃったとおりに絶好の機会と思っていまして、ものづくりといった現場力、これは日本は強いわけでありますけれども、その現場で得られたデータをAIで分析し、これに基づいて更に物をつくり上げていき、そしてまた、この物を動かしてデータを得まして、このデータを更にフィードバックして分析するということでよりよいものづくりをしていって、そして、その過程で、先進国の中で先行してさまざまな社会的課題を解決していくということが極めて重要というふうに思っています。これが我々のターゲットだと思っています。

 経済産業省としましては、コネクテッド・インダストリーズの実現を目指しまして、自動走行・モビリティーサービスや、ものづくり・ロボティクスなど、特に重要な五分野において、官民で連携して集中的な取組を進めているところでございまして、そしてさらに、横断的な取組としまして、複数の民間事業者が協力して協調領域のデータ活用を行う取組、こういった取組につきまして、減税措置といったもの、さまざまな支援措置を整備しようというふうに今進めているところでございます。

中谷(一)委員 今、米国やドイツの事例、もろもろ紹介をいただきました。ただ、予算額の比較というものは、私はされていらっしゃらないんじゃないかなということを思っていて、やはり第四次産業革命、しっかり牽引していくということであれば、他のそういった引っ張っている国々がどの程度の予算規模でそういった事業を進めていて、どういった成果を見据えているのか、それを研究、検討するということは非常に重要なことだと思いますので、ぜひそちらもあわせて調査をいただきますように、よろしくお願いを申し上げます。

 その中でなんですが、未来投資戦略二〇一七の記載の中に、一ページ目に、第四次産業革命について代表して挙げられている技術として、IoT、ビッグデータ、人工知能、ロボット、シェアリングエコノミー等ということが挙げられておりまして、その他の技術は等ということでまとめられており、余り重視をされていないのかということを心配をしております。

 そうした中で、例えば、ブロックチェーンは第四次産業革命を牽引していくに当たって私は欠かせない技術であるということを思っておりますが、この技術を現時点で代表的な技術として前面に出していない理由があれば、教えてください。

寺澤政府参考人 お答えします。

 御指摘あったブロックチェーン技術ですけれども、これは、データ改ざんが難しいわけですし、第三者を介さずに安いコストでデータ共有できる等、非常にすぐれた特徴を持つ革新的な技術であると思います。

 御指摘の第四次産業革命、これからビッグデータとかIoTとかAIが進んでいく中で、重要になってくるのはデータの共有になるわけですけれども、このデータ共有を支える技術として、このブロックチェーン技術というのは今後大きなポテンシャルがあると考えています。

 こうした観点から、経産省は既に、ブロックチェーンの利用拡大に向けて調査を行ったところでございます。

 他方、その調査を通じて出てきた課題としては、処理件数が制約があるとか運用手法が未確立だ、こうした課題が指摘されています。また、御案内のように、今、ブロックチェーン技術の活用ということを言いますと、現時点では、仮想通貨が中心的な利用分野に挙がっているというのが現状かと思います。

 こうしたことを鑑みますと、まず重要なのは、実証試験というのを積み重ねながら、今申し上げたようなブロックチェーン技術の特徴を生かした利用、導入を進めていくということが重要だろうというふうに考えている次第でございます。

中谷(一)委員 今、経産省のつくった、ブロックチェーンを利用したサービスに関する国内外動向調査、これのお話をいただいたかと思うんですが、私もこの資料を拝見させていただいて、これ自体は本当にすばらしい資料だなと思いました。よく調査がされていて、国内の市場規模、こういったものに対しても非常に論点整理をされているものだと思いましたので、これについてはまた後で触れさせていただきたいと思います。

 その中で、今、実証実験を積み重ねていくということが重要だということをおっしゃったんですけれども、今、日本政府においてのブロックチェーンの取組に関しては、それを活用した政府調達、こういったものが構想はされているんですけれども、予算だけを見ると、残念ながら、政府の事業、私が確認できたところでは、官民にブロックチェーン技術の社会実装の推進ということを目的としたブロックチェーン利活用推進事業費、一億二千万円のみが計上されておりまして、予算的な観点を見ると、本腰を入れてやっているという観点からはほど遠いかなということを思っております。

 そこで、経済産業大臣に伺いますが、ブロックチェーン技術という技術が第四次産業革命の中でどのような役割を果たし、コネクテッド・インダストリーズという産業政策、ソサエティー五・〇という社会変化においてどのような影響を与えると考えておられるのか、所見を伺います。

世耕国務大臣 今御指摘のように、ブロックチェーン技術というのは、今は仮想通貨など金融分野を中心に活用されているわけですが、今後は、例えば、登記簿のような所有権の証明ですとか、あるいはサプライチェーンの効率性向上ですとか、取引プロセスの全自動化といった、多様な産業分野において広く実用化、活用される可能性が高いものだと思っていまして、インターネットの登場にも匹敵するようなインパクトを経済に与えてくる可能性があるというふうに思っています。

 一方で、今我々は、コネクテッド・インダストリーズという概念を産業界とともに進めているわけですけれども、これはまさにデータを介した新たな付加価値創造ということが本質になるわけですが、その中で、現場のリアルデータをどういう形で移動させ、共有させ、利活用していくかということになる。

 そのデータの共有とか利活用を進めていくに当たって、データをどういう形で管理をしていくかというときに、普通考えるのは、中央の管理者が管理をしていくというパターンなんですけれども、一方で、ブロックチェーン技術などを活用して、分散管理型でデータ連携を実現をしていくというパターンもあり得るのではないかというふうに思っています。

 中央型とブロックチェーン型、いろいろ先ほど寺澤局長も説明しましたように、メリット、デメリット、まだやはりクレジットカードの決済システムの方が速い、速くて正確だという面もあるやに聞いております。ビットコインでもやはり十分単位での取引しか処理できないというような点もあるわけですから、そういったメリット、デメリットもよく見きわめながら、しかし、日本がこのブロックチェーンの潮流からおくれることがないように、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

中谷(一)委員 今、世耕大臣よりるる答弁をいただきました。ブロックチェーンの技術的な部分であったりとか、その課題点のお話、又は経済に与える影響、こうしたものに対してのお話をいただいたかと思うんですが、少し詳細を掘り下げて伺っていきたいと思うんですけれども、先ほど議論になりましたこの経産省の資料によると、ブロックチェーンの潜在的市場成長、国内における予測値というものが書いております。

 これによりますと、価値流通、ポイント化、プラットホームのインフラ化などのサービスが一兆円、そして、土地登記、電子カルテ、出産、婚姻、転居など、各種登録といった公的書類管理の非中央集権化が一兆円、そして、デジタルコンテンツやオークションなどの高効率なシェアリングサービスが十三兆円、小売、貴金属管理、美術品などの真贋認証など、オープンかつ高効率で高信頼なサプライチェーンの実現が三十二兆円、そして、IoT、電力サービス、遺言など、プロセス、取引、契約などの全自動化、高効率化の実現が二十兆円で、合計六十七兆円の潜在市場があるということが予測をされております。

 その中で、価値の流通が進んでいけば、やはり当然、日銀の金融政策による景気対策以外にも民間主導で仕掛けができる可能性があったり、サプライチェーンが進化をすれば流通がアンバンドル化する、こういったことも想定をされ、また、高効率なシェアリングが進めば生産者と消費者の境界線がなくなってプロシューマー化していくなど、大きな変化を、このブロックチェーン技術は、市場だけではなくて社会経済や産業構造に大きなインパクトを与える可能性があると思っています。

 そうした観点から伺いますが、世耕大臣は、このブロックチェーンが今後の経済政策や成長戦略にどのような影響を与えていくと思っているのか、所見を伺いたいのと、また、このブロックチェーン技術をどのように評価して、応用分野、将来性、社会的意義などをどのように認識をし、具体的に活用していこうと考えておられるのか、所見を伺います。

世耕国務大臣 御指摘のように、経産省の委託調査で、ブロックチェーン技術が影響を及ぼす可能性のある市場規模が六十七兆円ということになっているわけですが、特に、やはり経産省としては、サプライチェーン間のデータ連携、これが約三十二兆円と見ております。また、プロセスですとか取引の自動化、これが二十兆円、こういったところが非常に期待の持てる分野ではないかというふうに思います。

 民間事業者における取組が既に進み始めている金融分野以外の分野におけるブロックチェーンのユースケースの拡大というのが、非常に重要だというふうに思っております。

 これからコネクテッド・インダストリーズの、どう進めていくかという議論、中小企業も含めて、サプライチェーン全体でどう進めていくかという議論をやっていく中で、やはりこのブロックチェーンの技術をしっかり活用することも推奨をしていきたいというふうに思いますし、例えば、にせものが見分けられるようになるとか、自分のいろいろな、登記というのは今大変ですけれども、あと、公証役場に行ってきちっとした契約をつくるなんてなったら、これはまた足を運んだりして大変なんですが、このブロックチェーン技術を使えばそういった手間をかけずに、ネット上でいろんな、自分の行ったこととか、それこそ決裁文書の改ざんも防げると思っていますけれども、そういったところにも使えるようになってくるということで、まさに社会インフラとしてこれからブロックチェーン技術が育ってくるのではないかなというふうに思っております。

中谷(一)委員 今、世耕大臣のおっしゃったとおり、そういった公的文書であったりとかさまざまな分野で、クリーンで透明な、そういった行政事業というものも行われていくと思います。

 実際にエストニアでは、各省庁や民間のデータベースをインターネットを経由することで相互参照を可能にするプラットホーム、X―RoadとIDカードを組み合わせることで、最先端の世界政府というものが実現をされております。

 このように、あと、イギリスでも、社会保障の給付に関して、ブロックチェーンのカラードコイン、仮想通貨の特徴なんですけれども、を活用することの取組を実証実験をしておりまして、さまざまな国でこのブロックチェーンと既存システムの連携、これを行っていくことで、コストを削減しよう、セキュリティーの向上をしよう、高効率化を図ろうという動きが見受けられるんですけれども、このような諸外国の取組をどのように受けとめて、日本と諸外国を比較したときに、我が国の現状はどのようなものであると捉え、今後の方針をどうしていこうと踏まえているのか、所見を教えてください。

寺澤政府参考人 お答えします。

 御指摘があったように、まさにエストニアというのは電子政府で世界をリードする国でございます。御指摘ございましたように、エストニアでは、各省庁のデータベースをつなげるX―Roadというプラットホームを用意しまして、そのためのID認証でブロックチェーン技術を既に使っている、実際に使っているという事例でございます。

 イギリスについても、御指摘があったように、生活保護費が目的外使用されないように、仮想通貨を使う、ブロックチェーン技術を使う、そうした実証実験が行われているところでございます。

 また、これら以外でも、海外においては、例えば、銀行決済のためのブロックチェーン技術の活用のための実証実験であるとか、土地登記のための実証実験とか、さまざまな分野で諸外国で実証実験が行われているところでございます。

 日本においても、例えば、証券業務といった金融分野であるとか、あるいは消費者同士の電力融通取引について、ブロックチェーン技術を使った実証実験というのが行われているところでございます。

 まさにこういう内外の実証実験を通じて、ブロックチェーンを使ったときのスピードとかコストとか使い勝手ということの評価を、まさに今、各国、日本も含めてやっているところでございます。

 日本政府としましては、エストニアみたいな実際の先進的事例の成功要因をしっかりと分析し、また、内外の実証実験を通じた成果、評価をしっかりと勉強して、その結果を関係省庁それから産業界と共有して、ブロックチェーン技術の社会実装を鋭意進めてまいる所存でございます。

中谷(一)委員 ありがとうございます。前向きな答弁をいただいたと思いますので、ぜひ実証実験を進めていただいて、この活用を進めていただければと思います。

 私たち立憲民主党は、中間層の活力を取り戻すために、再分配機能の強化というものを政策に掲げているんですけれども、そのためにもやはり経済成長というものは当然必要なものだと思っています。その中で、やはりこのブロックチェーン技術は、フィンテックを始めとする金融分野だけではなく、幅広い分野で今後活用されていくと思うんですけれども、その中で、さまざまなイノベーションを進めていく中で、ベンチャー企業の活性化が進んでいけば、より産業が活性化して、経済も成長していくのではないかと考えます。

 こうしたブロックチェーンを活用したプロダクトに対する研究開発、応用技術への支援、先ほど大臣もビットコインの話を触れていただいたんですけれども、一つの技術をどんどんどんどん開発をして、より使い勝手のいいものに各産業分野に合わせてやっていくということも今後進んでいくんだと思うんですけれども、こうしたものに対する支援も更に推進をしていただくべきなんじゃないかということを考えるんですが、経済産業大臣の所見を伺います。

世耕国務大臣 先ほどから、我々の委託調査の内容を取り上げていただきました。これからブロックチェーン技術が重要だという情報発信もこれまで行ってきました。今後は、まさに今御指摘のように、ブロックチェーン技術を活用した具体的な実証ですとか、あるいは事業に対して支援を行っていく段階に入ってきたというふうに考えております。

 我々は、コネクテッド・インダストリーズの重点五分野というのを決めているわけでありますけれども、そのために、平成二十九年度補正予算で、重点五分野の協調領域における産業データの共有のための調査、実証の支援という予算を十八億円ほどとっております。こういった予算も使いながら、いろいろなデータ連携の事例創出を後押ししていく中で、ブロックチェーン技術など先進的な技術を活用するプロジェクトに対しても支援の対象としていきたいというふうに思っております。

 加えて、今国会に提出をしております生産性向上特別措置法案において、企業間のデータ連携、利活用のための投資に対する税制措置も講ずることになっております。集中投資期間三年において重点的な支援を行っていきたいと思います。これも活用しながら、ブロックチェーンの活用に向けた新たな投資についても、こういった税制なども通じて支援をしていきたいと思っております。

中谷(一)委員 IT投資の話も触れていただいたので、それはまた今度、法案審議のときにお話を伺いたいと思いますが、一点、支援を進めていただける方向性だということで今認識をしているんですけれども、ちょっと話が脱線しているようで、実は戻ってくる話なんですが、ものづくり・商業・サービス経営向上支援補助金というものがあると思います。略してもの補助と言っているものなんですけれども、結論から言うと、この使い勝手が私は非常に悪いんじゃないかなということを感じております。

 実は、私は、世界経済フォーラムの三十三歳以下の日本代表メンバーでありますグローバルシェーパーズというコミュニティーに選出をしていただいているんですけれども、その仲間で、ブロックチェーン関係の会社をつくって、起業している仲間がいます。

 その企業は、現在は、今となってはなんですけれども、上場企業と資本提携をして、石川県加賀市と連携をして、このブロックチェーン技術の活用による地方創生、こうしたものに力を入れて、さまざまなメディアで有望企業として紹介をしていただき、表彰されるなどの活躍をしているんですけれども、去年までの段階でいえば、この企業も五百万円とか一千万円クラスの資金繰りに非常に困っていて、彼らが、そのときに、国が第四次産業革命とかベンチャー支援をやっているということを力強く発信していることから、補助金や助成金がもしかしたら受けられる制度があるんじゃないかということを探したそうであります。

 そのところ、見つけられたというか、それに適応しそうだなというものがあったのがこのもの補助でありまして、ただ残念ながら、彼らは六月とか七月にこれを見つけて、募集期間が終わってしまった直後で、もう申請がないよという状態になってしまったということなんです。

 私は、この話を聞いたときに、すごいもったいない機会損失だなということを思いました。ベンチャー企業のスピード感はやはりすさまじくて、数カ月早く資金繰りをできることがあれば、技術開発ももっと早く進んだ可能性もありますし、より早くスケールした可能性もある。

 こういう企業を育てていくことは、日本の生産性の向上には私はやはりつながるものだということを思いますので、このもの補助ですね、これを、今年度は二次募集も一応行うということなんですけれども、半年に一回になったというのはもちろん一定の進歩ではあるんですが、私は、やはり随時これを申し込める形にしていただくことが一番いいんじゃないかなということを思っているのと、あとは、第四次産業革命やコネクテッド・インダストリーズに関係するような成長産業を担うベンチャー企業に関しては、シード、アーリー、エクスパンション、レーター、いろんなステージがあると思うんですけれども、このどのステージにも対応している支援体制をしっかりとつくっていくことが必要じゃないかということを思うんですが、いかがでしょうか。経産大臣の所見を伺います。

世耕国務大臣 まさに、もの補助は、御指摘のブロックチェーン技術を活用した事業においても十分御利用をいただけるものになっているわけでありますが、残念ながら、これは行革の観点から、平成二十六年度補正までは基金方式で対応してきたので、適宜というか年度内で、いろんな形で使えた、あるいは年度をまたがっても使えたわけですが、二十七年度補正以降は、行革の観点から、基金方式とはしていないわけであります。ということで、翌年度末までに事業を完了させる必要があるということで、通年で募集をするとか、四半期ごとの公募は難しい。

 ただ、これでも何とかできないかということで、平成二十九年度は、何とか年二回の公募は行わせていただくようにさせていただきました。

 引き続き、事業者側の要望、あるいはまさにこの成長のステージに応じた使い勝手のよい補助金の実現に努めてまいりたいというふうに思います。

中谷(一)委員 今、世耕大臣から、行革的な観点からというお話をいただいたんですが、私、事務作業をちゃんとうまくならすことで、四半期も通年もできる可能性がやはりあると思うんです。なので、そこはよく検討していただいて、方向性を、もちろん中小企業の皆さんのお声も聞いていただいて反映をしていただければと思うんです。

 その中で、今るるいろんなお話をさせていただいたんですけれども、やはりベンチャーのあらゆるステージの方々に後押しをしていく、これは非常に私は重要なことだと思っておりまして、例えば韓国では若者創業一〇〇〇プロジェクトというものがありまして、これはインキュベーションのオフィスを貸し出したりとか、月五十万円の創業活動支援金を出したりとか、そういったフォローを、非常に使い勝手をよくやっているようなものでありまして、私は、こういったものも、やはり自由度の高い助成事業を創設することは、結果として経済成長をしっかりと促していくことにつながるんじゃないかということを思いますので、こちらも創設の検討をぜひしていただけたらと思います。

 最後に、私、このブロックチェーンの関係ではトークンエコノミーについて伺いたいと思います。

 トークンエコノミーという実は新しい概念なんですけれども、民間では、このブロックチェーンとトークンエコノミーでデータ流通革命ということをコンセプトに、データチェーン構想というものが始動をしています。

 このデータチェーンプロジェクトというのは、ブロックチェーンとデータマネジメントプラットホームを組み合わせたプロダクトでありまして、世界じゅうのデータをブロックチェーンによって安全に共有できるようにするというビジョンを掲げられ、ブロックチェーン技術を活用することでデータ格差をなくして、世界をもっとフラットにしていくという取組であります。

 これは、世耕大臣のおっしゃっているコネクテッド・インダストリーズにも私は共通するものがあるんじゃないかなということを思っているんですけれども、これの肝となる部分が、既存のデータをトークン化して取引を行うトークンエコノミー、この事業でいえば、データチェーントークンを発行してデータ取引の基軸通貨をつくることで、本当は価値があるのに法定通貨には反映されなかったものをトークン化して、貨幣や証券の特性を持たせることができるというものであります。

 このように、ブロックチェーンの技術が発展をすることであらゆるものがトークンエコノミー化し、さまざまな経済圏がつくられる可能性というのは今後高くなると思います。その中で、経済産業大臣は、このトークンエコノミーをどのように捉えて、日本経済にどのような影響を与えると考えておられるのか、所見を伺います。

世耕国務大臣 なかなかトークンエコノミーの定義も難しいというふうに思いますが、一方で、我々が進めていっているコネクテッド・インダストリーズの中でブロックチェーン技術が使われてくると、今まさにおっしゃっているようなデータチェーントークンというようなものも出てくる可能性があるというふうに思っています。

 これは、なかなか予測は難しいわけですけれども、しっかりアンテナを高くしながら、コネクテッド・インダストリーズの中でブロックチェーン技術がどういうふうに使われていって、そして、データの取引ですとか、あるいはデータの、ビッグデータが集約されていく過程でどういうことが起こってくるかということを我々としてもよく見きわめていきたいというふうに考えております。

中谷(一)委員 ありがとうございます。

 次に、スパコンの話について伺わせていただきたいと思うんですが、時間がありませんので、端的に一問だけ伺わせていただきます。

 私は、ペジーコンピューティングなどのさまざまな問題があるNEDOの助成金の不正受給について、やはり一番しっかりしていかなければならないことは再発防止だと思っています。

 その中で、私、実は去年、韓国に視察に行ってきたんです。その際、日本の経済産業省に類似するような中小ベンチャー企業部の方々と意見交換をさせていただきました。その際、日本ではベンチャー企業がスパコン開発をするに当たって不正受給が大きな問題になっているんですけれども、韓国ではどうですかということを聞いたんです。そうしたら、韓国ではフィンテックの決済が進んでいて、余りそういうことはないよということを言われました。

 えっ、じゃ、それはどういう意味なんですかということを聞いたら、助成金、補助金を交付する際に決済専用のマネーカードを渡して、例えば高級飲食店で使えないようにしたりとか、決められている用途の範囲内のみで使用ができる制限をしたりとか、あとは、助成金利用で利用者が支払おうとしても、取引先がその助成金にかかわる取引だと証明しない限りは決済できない、そんな仕組みになっているそうであります。

 なので、仮にそういった共謀をしたとしても、後でデータは必ずつながるので、非常に検証しやすいような制度になっているということで、私は、この話を聞いたときに目からうろこが落ちるような気持ちになりまして、そもそも日本の助成金、補助金交付のあり方自体が既に古いシステムになっているんだなということを痛感をいたしました。

 そうした観点から伺いたいんですが、国民からいただいている税金で支払う予算で措置をしている事業でありますから、運用効率の最大化を目指した効果的かつクリーンでフェアでオープンな補助金、助成金のあり方を目指すべきであると考えますので、新しいことを常に率先して始められている経済産業省が、フィンテックを活用した新たな補助金、助成金交付のあり方を検討、実証実験を進めることで全省庁の牽引役となっていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。経産大臣の所見を伺います。

世耕国務大臣 ペジー社の件については、まさに国民からお預かりしている税金をだまし取られたということで、これはもう今、加算金も含めて返金はされていますけれども、改めておわびを申し上げたいと思います。

 今、御提案は、本当に傾聴に値するというふうに思います。

 ただ一方で、今回の事案は、一応正式な取引を装っていて、完成品のウエハーを偽ってお金が振り込まれていたとか、あるいは、ソフトウエアのライセンス契約を一旦やってお金を払った後、裏で解約をして、そのお金をまた別途引き取っていたということでありますから、その防止につながるのかどうかという点はよく考えていかなければいけないというふうに思いますが、まさにブロックチェーンですとかフィンテックを使って補助金の適正利用に努めていくというのは一案だというふうに思っています。

 今、こういう考え方で国のいわゆる補助金のシステム全部やり直すとなるとこれまた時間がかかっちゃいますので、まず隗より始めよで、経産省から始めようということで、経産省は中小企業からの補助金申請手続が年間三万件以上あります。これを抜本的に変えて、簡単に電子申請できるシステムを構築を今しているところであります。

 最終的には、中小企業の御意見も聞きながら、ユーザーフレンドリーで、かつネット上で完結するシステムをつくって、二〇一九年から運用を開始をしたいと思っていますが、将来的に、このシステムにブロックチェーンのようなフィンテックで利用される技術も組み合わせて、資金フローもデジタル管理できるようになれば、補助金の執行管理も効果的に行えるんではないかというふうに思っておりまして、今後もしっかりと検討していきたいと思います。

中谷(一)委員 時間が参りましたので、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

稲津委員長 次回は、来る三十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十一分散会


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