衆議院

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第2号 令和6年3月13日(水曜日)

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令和六年三月十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 岡本 三成君

   理事 小林 鷹之君 理事 鈴木 隼人君

   理事 松本 洋平君 理事 山下 貴司君

   理事 荒井  優君 理事 山岡 達丸君

   理事 守島  正君 理事 中野 洋昌君

      井原  巧君    石原 正敬君

      大岡 敏孝君    加藤 竜祥君

      神田 憲次君    国光あやの君

      鈴木 英敬君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    冨樫 博之君

      中川 貴元君    福田 達夫君

      細田 健一君    堀井  学君

      宮内 秀樹君    宗清 皇一君

      山際大志郎君    吉田 真次君

      和田 義明君    若林 健太君

      大島  敦君    落合 貴之君

      小山 展弘君    重徳 和彦君

      田嶋  要君    山崎  誠君

      市村浩一郎君    小野 泰輔君

      山本 剛正君    吉田 宣弘君

      笠井  亮君    鈴木 義弘君

    …………………………………

   経済産業大臣       齋藤  健君

   デジタル副大臣      石川 昭政君

   経済産業大臣政務官    吉田 宣弘君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 古谷 一之君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            山中 伸介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  門松  貴君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   松下  整君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            徳増 伸二君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     宇野 善昌君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  長崎屋圭太君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         上村 昌博君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進政策統括調整官) 川合  現君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           井上誠一郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     猪狩 克朗君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            伊吹 英明君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局長)          野原  諭君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官)         山田  仁君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        定光 裕樹君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      久米  孝君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           長井 総和君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 堀上  勝君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          金城 慎司君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          大島 俊之君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        片山 泰介君

   経済産業委員会専門員   藤田 和光君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     鈴木 英敬君

  加藤 竜祥君     石原 正敬君

同日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     加藤 竜祥君

  鈴木 英敬君     石井  拓君

    ―――――――――――――

三月十二日

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(内閣提出第一六号)

 二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(内閣提出第一七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済産業の基本施策に関する件

 私的独占の禁止及び公正取引に関する件


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     ――――◇―――――

岡本委員長 これより会議を開きます。

 経済産業の基本施策に関する件並びに私的独占の禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官門松貴さん、内閣府政策統括官松下整さん、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官徳増伸二さん、復興庁統括官宇野善昌さん、林野庁森林整備部長長崎屋圭太さん、経済産業省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官上村昌博さん、経済産業省大臣官房福島復興推進政策統括調整官川合現さん、経済産業省大臣官房審議官井上誠一郎さん、経済産業省大臣官房審議官浦田秀行さん、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長猪狩克朗さん、経済産業省製造産業局長伊吹英明さん、経済産業省商務情報政策局長野原諭さん、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官山田仁さん、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄さん、資源エネルギー庁資源・燃料部長定光裕樹さん、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長久米孝さん、中小企業庁事業環境部長山本和徳さん、国土交通省大臣官房審議官長井総和さん、環境省大臣官房審議官堀上勝さん、原子力規制庁長官官房審議官金城慎司さん、原子力規制庁原子力規制部長大島俊之さん及び防衛装備庁プロジェクト管理部長片山泰介さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

岡本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

岡本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小林鷹之さん。

小林(鷹)委員 おはようございます。自由民主党の小林鷹之です。本日は、齋藤大臣始め、どうぞよろしくお願いをいたします。

 私は、この数年間、国力の根幹たる経済とそして安全保障の融合する経済安全保障政策に力を入れて進めてまいりました。その第一の目的は、経済成長の強化、持続化であります。

 大臣が所信で述べられました、産業競争力の強化、エネルギー政策、あるいはDXの推進、そしてサイバーセキュリティーの強化、こうした施策を強力に進めていただくことが我が国の経済成長につながると考えています。

 本日は、その中で、経済安保上も重要なエネルギーとサイバーセキュリティー、この二点に絞って質疑をさせていただきます。

 まず、電力について伺います。

 あるアメリカの経済学者が、電力は技術進歩の仲介者と表現しています。まさに、今後DXを進めて、生成AI、自動運転、こうした技術進歩を実現していくためには、膨大な電力が必要になります。

 例えば、半導体製造も相当の電力を使います。熊本のTSMCの一つの工場だけで消費電力量は約九億キロワットアワー、これは一般家庭の三十万世帯分とも言われております。また、我が国の足下の総電力消費量は九百テラワットアワーでございますが、生成AIが今後活用されることで増設することになるデータセンターあるいはネットワークの合計消費電力は、二〇五〇年には二万一千テラワットアワーになるとの試算もあります。

 今後、活発な企業活動を支えていくためには、できる限り安価で安定した電力供給を追求しなければなりません。そこで大切なのは、電力源のベストミックス、そして自給率の向上です。

 現行のエネルギー基本計画では、再エネを最優先の原則で最大限の導入を促すとされ、原子力、火力については低減と明示されておりまして、私は、再エネに対する期待がやや大き過ぎるんじゃないかというふうに感じています。

 特に太陽光発電につきましては、次世代のペロブスカイト、これを普及させていくということは重要だと思うんですけれども、シリコン製の太陽光パネルについては、既に設置面積が国土の単位面積当たり世界一となっておりますし、サプライチェーン上も特定国への依存度が高い、導入すればするほど国富は流出する、そして環境保全や地域の理解といった課題もあります。

 一方、調整電源としての火力は必要になりますので、私は、安全性を担保した上で、原発を着実に再稼働させていくこととともに、火力については、天然ガス、石炭、石油、これらをバランスよく使うべきと考えています。

 そこで、齋藤大臣に伺います。

 現行のエネルギー基本計画を策定した二〇二一年時点での将来の電力需要の予測と電源割合について確認をさせていただきたいのと、政府として、次期エネルギー基本計画の策定に向けて、二〇三〇、二〇五〇年の電力需要、電源割合、これを現時点でどのように見積もっておられるのか、感じておられるのか、基本計画の策定時期を含めてお答えいただければと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、小林議員が経済安全保障について精力的に取り組まれていることについて敬意を表したいと思います。

 それから、答弁に入る前に、実は、私は、資源エネルギー庁の勤務時代に、まさに電源構成を検討する担当課長をやっておりました。この仕事の難しいところは、電源開発は長期のリードタイムを必要とするにもかかわらず、実は、エネルギー環境というのは数年単位で大きく変わるというところが本当に難しい仕事であったことを今更のように思い出しているわけであります。

 御質問の、第六次エネルギー基本計画で示した二〇三〇年度のエネルギーミックスは、二〇三〇年度に温室効果ガスの四六%削減を目指すという前提で、徹底した省エネや非化石エネルギーの拡大を進めた場合のエネルギー需給の見通しを示したということで、そういう考え方で進めたわけであります。

 その中で、二〇三〇年度の電力需要は、徹底した省エネによる需要削減を見込んで、八千六百四十億キロワットアワーとしています。また、二〇三〇年度の電源構成としては、SプラススリーEの原則も踏まえて、再エネで三六から三八%、原子力で二〇から二二%、火力四一%、水素、アンモニア一%との見通しを示しているところで、もうこれは御案内のとおりだと思います。

 将来の電力需要につきましては、御指摘のように、DXの進展によりデータ処理量の増大が見込まれ、電力消費量が増加する可能性があるという指摘がある一方で、技術革新が進んでいる世界でありますので、光電融合のような省エネ技術の開発も進むとの指摘もあります。

 政府としては、DXを進めると同時に、徹底した省エネを推進することによりまして、エネルギー安定供給の確保に努めていくということに尽きるわけでありますが、エネルギー基本計画は、エネルギー基本法において、少なくとも三年ごとに検討することとなっておりますので、本年には検討を開始するという予定です。将来の電力需要は、その検討に際して重要な点となると考えておりまして、御指摘のDXの進展による影響も含め、今後しっかり検討していきたいと考えています。

小林(鷹)委員 ありがとうございます。

 是非、リアリティーのある形でのベストミックス、早急に検討をしていただくことを期待をしております。

 次に、現在一三%ともされている我が国のエネルギー自給率を中期的に上げていくためには、次世代エネルギーの研究開発というものも必要になってまいります。私は、その候補の一つがフュージョンエネルギーだというふうに考えております。

 日本語にすると核融合ということになるんですけれども、原発とは原理が全く異なります。膨大なエネルギーの創出、固有の安定性、環境保全性、そして豊富な燃料源といった特徴を有するフュージョンにつきましては、既に英、米、中を始め各国が国家戦略として、社会実装を意識しながら、野心的に取組を始めております。そして、技術の囲い込みも既に始まっております。

 我が国は、国際プロジェクト、ITER、これを技術面からリードしてきましたけれども、このままいくと、技術で勝ってビジネスで負けることになりかねないと危惧しております。こうした危機感もあって、先日、自民党内にプロジェクトチームを立ち上げさせていただきました。ITER方式を含めて多様な幅広い技術の開発を加速する必要があると思っておりまして、そして、そこで重要なのは社会実装を意識していくことだというふうに思っています。

 だからこそ、経産省、エネ庁には、サプライチェーンの構築や産業化までをしっかりと見据えていただいた上で、積極的にフュージョンエネルギーの政策を推進していただきたいですし、先ほど触れました次期エネルギー基本計画にもしっかりと位置づけて、予算的な支援もしていただきたいと考えますが、見解をよろしくお願いいたします。

久米政府参考人 お答え申し上げます。

 核融合は、その反応において二酸化炭素が発生しない、万一の場合は反応が止まる、高レベル放射性廃棄物が生じない等のメリットがありますことから、将来のエネルギー源として期待されております。

 一方で、反応の連続化や、投入エネルギー量を超えるエネルギー量を回収し発電する目途が立っていないなど、越えるべき大きなハードルもあり、将来に向けた研究開発を進めることが重要であるというふうに考えております。

 また、委員御指摘のとおり、世界的にも核融合の研究開発に取り組むスタートアップが次々と生まれており、また各国の関心を集めておりまして、国際開発競争が激しくなっているというふうにも認識しております。

 そのような状況を踏まえ、政府としては、昨年、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を取りまとめ、内閣府、文科省を中心にスタートアップ等への研究開発の支援強化等を実施しております。

 経済産業省としても、これも委員から今御指摘いただきましたとおり、将来の社会実装につながるということの重要性を認識した上で、内閣府や文科省と連携し、原子力発電分野の技術開発支援やサプライチェーンの維持強化、レーザー技術など核融合と共通性のある分野への技術開発等の支援を今後も検討してまいりたいというふうに考えております。

 次期エネルギー基本計画については、今後具体的な検討を行っていくことになりますが、御指摘も踏まえ、核融合についても必要な議論を行ってまいりたいと考えてございます。

小林(鷹)委員 これまでは、今おっしゃったとおり、文科省を中心に進められてきましたけれども、産業化を見据えて支援していくという国家としての意思を示していくことで、関係企業の開発意欲を高めることになりますし、人材育成にもつながってくると思います。エネルギー安全保障あるいは経済安全保障という観点からも、経産省、エネ庁の更なる取組を期待するところであります。

 次に、備蓄について伺います。

 我が国の石油備蓄は、昨年の十一月時点で民間と合わせて百九十七日分となっているんですね。ただし、国際情勢の変化ですとかあるいは災害も多発する中で、エネルギー関連物資の備蓄につきましては、私はいま一度その水準を見直す時期に来ているんじゃないかと思うんです。

 政府の石油備蓄のあり方検討会がありまして、先月の中間取りまとめを読んだんですけれども、そこに石油は緊急時の最後のとりでと明記されています。今後、有事の際には原油の調達が難しくなることですとか、あるいは災害時に、例えば、製油所が被災をして精製ができなくなって、ガソリンや軽油の供給が困難になるというリスクもあります。

 そこで伺いますが、エネルギー関連物資の備蓄の種類や量の見直しの必要性についてどのように考えておられるのか。また、今般の能登半島地震では自衛隊の活動によるところも多かったわけですけれども、自衛隊の車両、重機、これらは軽油を使うので、有事や災害時に備えて自衛隊の駐屯地などに軽油備蓄機能を強化していく、そういうことも考えていくべきだと思うんですけれども、お考えをお聞かせいただければと思います。

定光政府参考人 まず、私の方から、石油備蓄一般についてお答え申し上げます。

 石油備蓄は、石油の備蓄の確保等に関する法律に基づきまして、石油の供給が不足する事態が生じた場合においても石油の安定的な供給を確保することを目的として実施されております。

 このため、国際エネルギー機関、IEAによる各国協調の備蓄水準や石油の海外依存度の高い国々の備蓄水準なども踏まえて、現在、国備、国家備蓄と民間備蓄合わせて約二百四十日分、今先生が御質問で引用されたのはいわゆるIEA基準ということで百九十七日ですけれども、我が国の基準に則して申し上げると約二百四十日分、行っているところです。

 石油備蓄の種類でございますが、原油のみならず石油製品の備蓄も重要でございまして、東日本大震災を契機として、国家備蓄の石油製品の種類を、灯油一種のみからガソリン、軽油、A重油を含む四種類に拡大して、現時点では国備、民備合わせて約五十七日分の石油製品備蓄を行ってございます。

 本年一月の能登半島地震では、近隣、金沢、富山の油槽所が機能していたため、迅速な石油製品の供給が可能ではあったんですけれども、例えば、今後、仮に製油所の稼働が困難となる大規模な地震が発生した際には、被災を免れた製油所あるいは油槽所の製品在庫では迅速な供給が困難となる可能性があるというふうに見てございます。

 今後、石油製品の需要減少により製油所の統廃合も進んでいく中ではあるんですけれども、想定される内外の有事、災害などにおいても石油製品の安定供給が可能となるよう、業界関係者などのニーズも踏まえながら、必要な対応策を今後しっかりと検討してまいりたいというふうに考えてございます。

片山政府参考人 防衛省よりお答え申し上げます。

 軽油等の燃料につきましては、令和五年度予算において令和四年度予算に比べ倍の備蓄量を計上しておりまして、令和六年度予算案においても同様の考え方に基づき計上させていただいております。

 その上で備蓄体制の強化についての必要な検討を行っているところでございまして、災害も含めましてあらゆる事態に対応できるよう、燃料タンクの新規整備や民間燃料タンクの借り上げの在り方などにつきまして引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。

小林(鷹)委員 ありがとうございました。しっかり進めていただければと思います。

 次に、企業のサイバーセキュリティーについて伺います。

 近年、民間企業に対するサイバー攻撃が激増しておりまして、国内で例を挙げますと、ある大手電機メーカーは一週間に百万件以上の不正アクセスがあるとのことですし、一昨年には、部品メーカーの子会社を経由したサイバー攻撃によって自動車メーカーの工場が停止をしたと。

 こうしたサイバー攻撃というのは我が国の経済活動、国民生活に大きな影響を及ぼし得ること、そしてそのための対策の重要性、これを企業や国民の皆様にも御理解いただく必要があると思います。

 特に企業においては、経営者の理解の有無がこのサイバーセキュリティー対策の予算あるいは技術開発への投資に大きく影響をします。

 この点、トレンドマイクロ社が調査をしたところ、日本では経営陣のサイバーセキュリティーへの関与が他国に比べて低いという結果が出ております。また、別の調査では、被害を受けた企業の四二%が子会社や委託先からのサイバー攻撃であったと回答しておりまして、これは大企業だけじゃなくて中小企業も含めて対策が必要だと思います。

 そこで伺いますが、サプライチェーン全体における各企業経営者の意識向上のために国は何をすべきなのか、具体的に何をしているのか、お答えいただければと思います。

上村政府参考人 サイバー攻撃が産業あるいは社会に大きな影響を及ぼすようになっている中におきまして、企業規模にかかわらず、その経営者に、サイバーセキュリティーを経営上の重要課題であると認識し対策を進めていただくことが重要と考えております。

 そして、昨今、サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃が行われている状況も踏まえますと、中小企業を含めサプライチェーン全体でのセキュリティー向上に向けた取組を推進していくことが必要であります。

 他方で、委員御指摘のように、民間調査の中には、日本企業の経営層によりますサイバーセキュリティー対策への理解につきまして、他国と比べて、その関与度合いを含め、低いという状況になっているものもあると承知をしています。

 このため、経済産業省におきましては、経営者が取り組むべき対策などを分かりやすく示した、サイバーセキュリティ経営ガイドラインや産業分野別ガイドラインなどを整備するとともに、経営者に対しまして、インセンティブ付与の観点から、各種補助金の申請要件に、セキュリティー対策に取り組むことを自己宣言する、いわゆるセキュリティーアクションを位置づけるなど、各企業におけます積極的な取組を後押しをしてきたところであります。

 こうした施策の一層の普及啓発にしっかり取り組んでいくとともに、加えまして、今後、産業界、関係省庁と連携しながら、サプライチェーン全体における対策の実効性を強化するべく、企業の業種、規模ごとに実施すべき対策水準の設定、またその対策状況を可視化する仕組みの構築といった検討を進めていきたいと考えております。

小林(鷹)委員 ありがとうございます。

 次に、官民の情報共有について伺います。

 アメリカにはCISAという組織がありますけれども、サイバーリスク情報を収集、分析、共有をして官民合同のサイバー防御計画を策定していくJCDC、ジョイント・サイバー・ディフェンス・コラボレーティブという枠組みがあります。一方、我が国の国家安保戦略には、サイバーインシデントに関する政府への情報共有と政府から企業への対処調整を進める旨の言及があります。

 私も、企業のサイバーセキュリティーを強化するには官民でサイバー攻撃に関する相互の情報共有を進めていく必要があると思っておりまして、したがって、インシデント情報の政府への報告を義務化することですとか、あるいは日本版のJCDCを設置して官民の情報共有を積極的に進めることも考えてはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

 この国会でセキュリティークリアランスの法案も審議される予定なので、必要があれば、クリアランスを付与して機密事項を含めた情報共有を図ることで、我が国のサイバーセキュリティー対策も前進すると考えております。よろしくお願いします。

門松政府参考人 お答えいたします。

 昨今、巧妙化、高度化をするサイバー攻撃に適切に対処をしていくには、関係省庁間の連携だけではなくて、官民間で情報共有、連携をする取組が重要である、先生御指摘のとおりだと思っております。

 そんな中で、我が国では、例えば、政府と企業が連携して情報共有等を行う枠組みとして、サイバーセキュリティ基本法に基づきまして、平成三十一年四月からサイバーセキュリティ協議会というのを運用をしております。協議会では、サイバー脅威情報を共有、分析するとともに、サイバー攻撃による被害の予防、拡大防止に資する情報を迅速に共有するということで我が国のサイバーセキュリティーの確保を図るというものでございます。

 そのような中、先生も御指摘ありましたが、国家安全保障戦略では、民間事業者等がサイバー攻撃を受けた場合等の政府への情報共有、また政府から民間事業者等への対処調整、支援等の取組を強化するとされておるわけでございまして、現在、更なる官民の情報共有、官民連携の深化に向けて、このサイバーセキュリティ協議会の運用状況、さらには海外事例の分析を行うなど多角的な観点から検討を行っています。

 戦略に掲げた「サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる。」という目標に向けまして、検討を加速化してまいりたいというふうに考えております。

小林(鷹)委員 最後に、予算の抜本的な強化と能動的サイバー防御の法整備を速やかに進めていただくことを期待して、質問を終わります。

 ありがとうございます。

岡本委員長 次に、吉田真次さん。

吉田(真)委員 自由民主党の吉田真次でございます。

 この度は、質問の機会をいただきまして感謝を申し上げます。

 一昨日は、東日本大震災から十三年となる日でございました。改めて、お亡くなりになった皆様方に御冥福を申し上げるとともに、被災をされた全ての皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。そして、今なお行方不明となっている二千五百二十名の方が御家族や大切な方の元へ帰ることができるよう願ってやまないというところでございます。

 齋藤大臣は、所信の中でも、原子力の活用については、高い緊張感を持って安全最優先で万全の対応を行うことを大前提に、原発再稼働や運転期間の延長、次世代革新炉の開発、建設等を進めるというふうに述べられました。しっかりとリーダーシップを発揮をされて、経済産業省としても復興に向けた着実な歩みを進めていただきたいということをお願いを申し上げます。

 本日は、まず自動車産業についてお伺いをさせていただきますが、政府は、二〇三五年までに新車販売で、いわゆる電動車、これを一〇〇%にするという目標を掲げておられますが、まず、その経緯と、それから、今、現状がどうなっているか、このことについて御答弁をお願いいたします。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二〇年十月、当時、菅総理ですけれども、カーボンニュートラル宣言をされまして、これを受けて、政府としては、重要分野における実行計画をグリーン成長戦略として策定をしたところでございます。

 この中で、自動車分野については、EV、水素、合成燃料など、いろいろな解決策がございますので、我が国の技術の強みなども踏まえて、ポイントは、ハイブリッド車を含める形で、二〇三五年までに乗用車新車販売で電動車一〇〇%という目標を掲げることとしたところでございます。

 足下の現状でございますが、二〇二三年、電動車の販売比率は約五〇%まで増加してきております。

 引き続き、カーボンニュートラル実現と産業競争力の強化、この両立をできるように取り組んでまいりたいと考えております。

吉田(真)委員 今御説明いただきましたが、日本の場合、EVだけというわけでなくて、燃料電池とかあるいはPHV、また、今御答弁にありました、我が国の強みでもあるハイブリッドですね。こうしたものがいわゆる電動車というカテゴリーに入っているところでありますが、ただ、イメージとしては、何となく、何か、EV車一推しみたいな実感が強いわけでありますけれども、こうした電動車化に向けた、我が国だけではなくて海外の状況、これはどうなっているんでしょうか。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、EU、こちらは、二〇三五年に、車両からのCO2排出量ゼロというのを掲げてございます。この場合は、EVとFCVに加えて、あと合成燃料のみで走行する車両というものが認められるということになっています。したがって、ハイブリッドは入っていないということでございます。現状で、二〇二三年の新車販売に占めるEV比率は大体一五%となってございます。

 次に、米国ですが、米国は、二〇三〇年に新車販売の五〇%を、EV、FCV、プラグインハイブリッド、この三種類で五〇%という目標を掲げてございます。足下、二〇二三年で見ますと、EV比率は約七%、プラグインハイブリッドを加えると九%ということになってございます。

 次に、中国ですが、二〇二七年に新車販売の四五%、これもEV、FCV、プラグインハイブリッドの三種類とする目標を掲げてございます。二〇二三年の足下の実績は、EV比率で二一%、プラグインハイブリッドを加えると約三〇%ということになってございます。

 このように、EU、米国、中国では、EVの導入の促進を大きな政策の方向性としております。この中にハイブリッドは入れていないということでございます。

 一方、EVは、やはり、車両の価格が非常に高いとかインフラ整備など、いろいろな課題がありますので、引き続きよく状況を注視していきたいというふうに考えてございます。

吉田(真)委員 今御答弁ございましたけれども、EVというのは、走行時にCO2がもちろん排出をされないということでありますけれども、やはり、走行距離が短いとか、あるいはコストが高い、充電の時間も長い、また、製造時に通常のガソリン車の数倍のCO2を排出をするという課題があるところでございますけれども、EV車が環境に与える影響、もちろんいいというのは分かっているんですけれども、トータルで見たときに、どのようにその影響というものを認識をされていらっしゃるでしょうか。

伊吹政府参考人 これは、いろいろ仮定を置かないといけないんですが、IEAがレポートを出しておりまして、電源の排出係数というのに世界全体の平均値というのを用いてIEAの方で計算をしているんですが、先生がおっしゃるように、EVは走行時CO2排出は確かにゼロなんですが、蓄電池などの製造をしますので、そこに多くの電気を使用するため、製造段階のCO2排出量はガソリン車よりも多いということになってございます。一方、製造から廃棄まで、ライフサイクルで全体を見ていきますと、ガソリン車よりもCO2排出量が少ないという結果になってございます。

 政府の方で掲げている目標は、二〇五〇年に自動車のライフサイクル全体でCO2のゼロを目指していますので、電動車の普及だけじゃなくて、燃費の向上とかエネルギー供給の脱炭素化など、いろいろなことを含めてCO2排出削減を全体として進めていきたいと考えております。

吉田(真)委員 今、我が国で、自動車関連産業の就業人口が約五百五十四万人と言われておりまして、そのうち、製造部門、これに関わる方々が約八十六万七千人いらっしゃるというところでございまして、現在、日本で流通しているガソリン車は約五〇%であります。

 ガソリン車の新車販売、これを廃止をした場合、ハイブリッドがある、PHVもあるといえども、やはりガソリンスタンドとか自動車整備業に携わる方々には大きな影響があるんだろうというふうに思いますけれども、この二〇三五年電動車一〇〇%という目標が、今度は環境ではなくて我が国の産業の面でどのように影響を与えるとお考えでしょうか。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問いただいたように、自動車の製造に関わる雇用の方々は約八十七万人ということになります。

 まず、製造の方で見ていきますと、電動化を進めるということは、やはりエンジン部品の生産、需要が減っていくという影響がございます。一方で、電池とかe―アクスルとかモーターとか、電動車ならでは必要となる部品というのもありますので、その両面を見ていく必要があるというふうに考えてございます。

 部品の構成がこういうふうに変わってきますので、我々から見てやはり大事なことは、その新しくなる、新たな部品のところについて、日本の企業がしっかりとシェアを取っていくということが非常に大事だというふうに考えています。

 自動車関連産業の方々に、モーターとか電子部品とか、電動化に伴って必要となる事業領域に前向きに参画していただくという方策を考える必要があると思いますし、蓄電池については、国内立地、これを確保して国際競争力を維持していくことが必要というふうに考えてございます。

 経産省としては、三つやってございまして、一つは、中小のサプライヤーの方々に、今までエンジン部品を作っていたんですが、電動化対応のための前向きな事業転換を支援をしていく必要があるということ。二点目は、これは、先端的なところをグリーンイノベーション基金を活用して、次世代の電池とかモーターとか、こういうイノベーションの促進をしっかり支援をしていくということが二つ目。三つ目は蓄電池。これは、国内生産基盤強化、量も含めて蓄電池産業の戦略をしっかりやっていくということかというふうに思っています。

 あと、我々の目標は電動車ですので、ハイブリッドも入っている中ですけれども、EVが増えればガソリンの需要は減っていくということになりますので、そこのところはマイナスの影響は出るというふうに考えてございます。

吉田(真)委員 今、三つの取組を御紹介されて、やはり新たな部品のシェアを取るという、これは非常に大事なことなんだろうというふうに思っておりますが、部品と併せて、次はちょっと燃料についてお聞きをしたいと思います。

 二酸化炭素と水素を合成して製造されて、特に再エネ由来の水素を使ったe―フュエルですけれども、これは脱炭素に向けて大いに期待をされる燃料だというふうに思います。既存の設備が活用できる燃料でもありまして、開発が進めば内燃機関への利用も広がる、既存のガソリン車にも使用ができるようになるということであります。

 今、レース業界のスーパーGTとかでも、初期はトラブルはあったものの、今は問題なく化石燃料と同じ走りをしているということも聞いておりますが、この環境に優しい合成燃料の開発、これが進んでいけば、事実上のガソリン車販売禁止という方針を取らなくても脱炭素に資するのではないかなと考えているんですけれども、その点についての認識はいかがでしょうか。

伊吹政府参考人 今御質問いただいたとおり、合成燃料は、水素とそれから二酸化炭素を活用して製造しますので、カーボンニュートラルな燃料ということでございます。

 ハイブリッド車などの既存の内燃機関にもちろん使えるということもありますし、燃料インフラも活用できるということ、それから化石燃料と同等の高いエネルギー密度を持っていますので、燃料として非常に有望なものだというふうに考えています。

 一方、問題点がありまして、一つは、やはり製造コスト。これは非常に高い。我々は、今ガソリンが百六十円とか百七十円に乗っているわけですけれども、それの数倍は当面はかかるだろうということであります。あとは、供給量に一定の制約が今の時点ではあるということでございます。

 では、その合成燃料をどうやって活用していけばいいのかということですけれども、そういう値段とかそれから供給量とかという制約があるということを考えていくと、合成燃料を活用していくときに、併せて燃費の改善というのはやはり図っていく必要があるというふうに考えていまして、そのためにハイブリッドというのは非常に有用な方策になります。

 一つのレポートでは、ガソリン車とハイブリッド車を比べると大体三割ぐらい燃費が改善するというデータもありますので、現時点では、二〇三五年電動車一〇〇%という方針は堅持して、同時に合成燃料の商用化へも取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

吉田(真)委員 日本はやはり物づくりの国でありまして、製造業というのはまさに日本のエンジンなのではないかなというふうに思っているところであります。

 今御答弁あったハイブリッドとかPHV、これを始め、日本の技術開発の力というのはやはり私たちの誇りでもあるわけでありまして、今後は、環境に優しい燃料、これは合成燃料だけではなくて、もっともっと環境に優しいエンジンというものももしかしたら開発の可能性があるかもしれないというところでありますが、ただ、二〇三五年に新車のガソリン車販売禁止と事実上の方針がなってしまうと、その開発すら実現不可能になってしまうのではないかなというところを危惧しているわけでございます。選択するのはあくまでもユーザーでありますけれども、その選択肢をやはり狭めることがあってはならないというふうに思っております。

 電動車の中には、特にEV車、今御答弁ありましたように、多くのクリアすべき課題が私はあるというふうに思っておりますけれども、EV車を広めるということも大事なんですけれども、やはりe―フュエルなど合成燃料、この開発にもっともっと力を入れて取り組んでいくことが必要なんだろうということを考えているところでございますが、そのEV車はやはり充電をしなければいけないということであります。車本体と同様、その普及というのもまだまだ進んでいない状況でありますけれども、この充電インフラ、これをいつまでにどの程度整備をするという計画を今持っていらっしゃるでしょうか。

伊吹政府参考人 今御指摘いただいたとおり、電動車を普及していくには、充電インフラの整備というのは不可欠でございます。単に充電器の数を増やしていくというだけでなくて、やはり乗られる方が安心して乗れる、それは、地方部とかそれから高速道路とかで電欠を起こさないようにきちんと配置をしていくということが大事だというふうに考えています。

 政府の方の充電インフラの整備目標は、ちょうど昨年の十月に実は見直しをしまして、二〇三〇年までに三十万口の整備を図っていこうということで新たな目標を掲げてございます。

 これの評価を考えるときに、ちょっとほかの国の事例を御紹介しますと、ヨーロッパは、EV、FCV、二〇三五年一〇〇%という目標を掲げていますが、その中で、イギリスで三十万口、フランスで四十万口ということでございますので、台数当たりで見ていくと、今、日本の掲げている目標というのはそれなりにしっかりした目標だというふうに考えていますので、まずはこれをしっかり実現をしていきたいと思います。

 予算の方も増額をして、今、三百六十億円、お願いをしているところでございますので、それを使いながら地方部でもしっかり整備をしていきたいと思いますし、地方部は特にビジネスベースでやるとなかなかインフラ整備しようという人がいないので、政策的には補助制度の中で補助率の上乗せをする形で、地方部のものも進むように配慮しながら進めていきたいというふうに考えてございます。

吉田(真)委員 今お話がありましたように、地方部でもしっかり安心をして乗れるように整備を、補助率の増加も含めてということでございましたけれども、民間がインフラの整備を行う場合というのは、やはりどうしても利潤の追求の面から都市部に集中をしていくということも懸念をされるところではあるんです。そこを何とか補填をしていくということなんだろうと思うんですけれども。

 エアコンから粉が出るぐらいならまだしも、動作不能で動かなくなるとか、あるいは発火をするとか、そういう車には私はやはり乗りたくないなというふうに思っているところでもあるんですけれども、だから、ハイブリッドとかPHVとか、日本の技術が発揮をされる車のニーズというのはまだまだ高いんだろうというふうに思っているところであります。

 今、充電のお話をさせていただきましたが、やはり一定以上の大きさの商用車とかトラックは、充電にもかなりの時間が、普通の急速充電でも三十分程度かかるというところでありますけれども、大型車はそれが特に顕著であるということに鑑みると、EVの充電設備の比率を増やしていくことで、物流そのものについてどういう影響があると思っておられるんでしょうか。

伊吹政府参考人 商用車の充電ということでございますが、一つ事例を挙げますと、小型のEVトラック、大体四十キロワットアワーぐらいですけれども、普通充電で八時間、急速充電でやっても五十分ということでございます。

 こうした中で、商用車での電動車の導入に当たっては、物流への影響が生じないように、一つは車両の使い方、技術の特性、もう一つは効率的な車両の運行管理というものを併せて取り組んでいくことが必要だというふうに考えてございます。

 例えば、普通の事業所でEVの商用車を使う場合というのは、多くは、夜間などの車両を稼働しない時間帯に営業所で大体普通充電で充電をして、一日航続距離が比較的短い小型トラックとかバンで活用していますので、これはもう民間ベースで大分そういう動きが出てきているということでございます。政府側も、車両だけではなくて、事業所における充電器の導入というものもサポートをしていくということでございます。

 もう一つ残る課題が、長距離でございまして、長距離は、先生御指摘のように、やはり、充電時間が長かったり、それから走行距離が短かったりという課題がありますので、今考えていますのは、一つは、燃料電池車を活用できるんじゃないかということでございます。燃料電池車は、充填時間は短いですし、航続距離が長いということでございますので、特に大型トラック、特に幹線道路ですね、こちらの方で重点を置いて進めていくと、物流に非常にいい効果があるんじゃないかと思います。

 それからもう一つは、車両の運行管理が非常に大事でございまして、これは、グリーンイノベーション基金の中で、実際に電動車両を運行しながら効率的に充電、水素の充填を行う上で必要なデータを今集めていますので、こうした実証を通じて、運行管理と一体的なエネルギーマネジメント、これを行うシステムを開発をしていくということに取り組んでいるところでございます。

吉田(真)委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間が来たので、最後、終わりますけれども。

 EUでは、先ほどあったように、合成燃料の利用を前提に、ガソリン車の全面販売禁止を撤回をした、こういう報道があるわけでありますし、あとは、メルセデス・ベンツ、GM、フォード、それからルノー、アップル、こういったところも、EVへのシフトを鈍化をしたりあるいは撤回をしたりしてきているわけであります。

 EVのみではないということは十分に理解をしているんですけれども、やはり選択肢を確保する、それから、EV化に何となく前のめりになるのではなくて、やはり、合成燃料の開発、それから我が国の産業の強みを生かす、そうした技術を守って、そして発展をさせていく、そうした方策を取っていただきたいということをお願いを申し上げて、質問を終わります。

岡本委員長 次に、中野洋昌さん。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 早速、通告に従いまして、質問させていただきます。

 いよいよ経済産業委員会での議論もスタートということで、齋藤大臣始め経済産業省の皆様、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 私、冒頭、能登半島地震に関連して、一問質問させていただきます。

 本当に、一月一日の地震ということで、お亡くなりになられた方々に改めてお悔やみを申し上げたいと思います。今なお多くの方が被災をされているということで、本当に全力で復旧復興にまずは取り組んでいただきたいと政府にはお願いをしたいんですけれども。

 経済産業省のやはり災害における取組というのは、一つ、なりわいの再建というのが非常に大きなテーマかと思っております。もちろん、住まいの再建、インフラの再建、本当に大事であるんですけれども、やはり、生活をしていく、なりわいということであろうかと思います。

 私も、いろいろな地震の、あるいは災害の復旧復興ということで取り組んできたんですけれども、かつては、いろいろな地震や災害で企業が被災をしたときに、なかなか直接支援をするような手だてがないというふうなことがありまして、やはり東日本大震災のときに、一つ、地域の再生のためには、なりわいの再建というのもしっかりと国がやっていかないと復旧復興につながらないという大きな転機があったかというふうに思います。

 ですので、このときにグループ補助金というのを当時やらせていただいて、その後、いろいろな災害が、熊本地震などもあったんですけれども、やはり、それぞれの災害で少しずつ、じゃ、どういう取組をやっていけばいいのかというのを充実をさせてきたというふうな、そういう積み重ねというか取組をしてきたんだろうというふうに私自身は思っております。

 今回、能登半島地震ということで、能登半島という、元々交通の点でもかなり時間がかかるような地域でありまして、そして、いろいろな伝統産業や観光業もある中で非常に大きな被災をしたというところであります。

 今回、なりわい再建支援事業ということで、新たにいよいよ支援がスタートということで、いよいよ申込みも開始、こういうところまで来たというふうに思っております。

 やはり、いろいろな、現地から様々な御要望というのは伺っておるわけでありますけれども、非常に零細な事業者も多いということでありますし、どうやっていけば再建していけるのかということも含めて、これはいろいろな震災での対応の教訓でもあるかと思いますけれども、やはり相当、より伴走型の支援というか、きめ細やかく、こういう申請をしていけばいいというふうなことも含めて、しっかり相談をしてあげる、伴走をしてあげる、こういう対応というのが今までの災害以上に必要なのではないかというふうに思っております。

 ですから、このなりわい再建支援事業、支援するメニュー自体は、様々、過去に比べて更に充実をさせるということはあろうかと思うんですけれども、それが現場に届くための丁寧な相談あるいは伴走、こういうものが非常に重要だというふうに思っております。これが一点目の問題意識であります。

 二点目の問題意識としては、やはり、温泉地等も含めて、再建計画そのものがこれからだというふうな、そういう地域もあろうかと思います。そういうところは、やはり、どういう支援が必要かというところも、これからどんどん、更にこういう支援が必要なんだというところも出てくるところもあろうかと思います。ですから、今、一旦、なりわい再建支援事業ということでいろいろな支援をしているんですけれども、現場のニーズが、新たにこういう復興に向けてこの計画が要るということで出てきたときに、やはり、それに応じて適宜適切に支援を拡充をしていくというふうなことも非常に大事かというふうに思っております。

 以上、二点、問題意識を申し上げましたけれども、こうした対応をまずはしっかりとしていただきたいということで、政府からまず御答弁いただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘いただいた、いわゆるなりわい補助金でありますけれども、被災地域の復旧復興の促進に向けまして、被災中小・小規模事業者の事業に不可欠な施設設備の復旧を支援するものでございます。事業主体である各県とも連携いたしまして、石川県、富山県、福井県では、先月、二月二十八日から、新潟県では三月五日から公募を開始してございます。

 この制度についての理解を事業者の皆様にしっかりいただくことが重要であると認識しておりまして、事業者や支援機関向けの説明会を被災各地で三十回程度開催をさせていただいております。また、全国の商工会、商工会議所の経営指導員や専門家、これは過去に災害からの復旧を経験された方もおられるわけなんですけれども、これらの方々を能登半島事業者支援センターや被災各地の商工会に派遣をいたしまして、補助金申請のサポートも行っているところでございます。

 引き続き、被災された事業者からしっかりとお話を伺いまして、事業者の実態をきめ細やかに把握させていただいた上で、適切な支援を行ってまいる所存であります。

中野(洋)委員 いよいよ申請スタートというところでありますので、是非きめ細やかな支援ということで、改めてお願いをしたいと思います。

 今日は、ちょっと大臣にもお伺いをしたいのが、まさに持続的賃上げという、政府の非常に最重要なテーマだというふうに思っておりますけれども、これについて何問か質問させていただきたいと思います。

 今日はまさに春闘における集中回答日ということでありまして、ニュースでも、いろいろな企業が、非常に賃上げをしていく、こういう、集中回答日を前にいろいろな発表もしているところであります。やはり、物価高が続いているという状況の中で、昨年を上回るような、昨年は三%以上という、大企業、中小企業を含めて様々賃上げをやったわけでありますけれども、これが持続できるかどうかというのが非常に大事なテーマだと思っております。

 いろいろな賃上げ関連の報道を見ても、大企業を中心に今いろいろな賃上げの状況というのはあるわけでありますけれども、やはり、中小企業、賃上げの裾野がどこまで広がっていくかということが非常に重要なのではないかというふうに思っておりますし、私もいろいろな、地元の尼崎も、製造業とか中小企業とか下請とか、ああいうところも多いんですけれども、やはり現場を回っていても非常にそういう実感がいたします。

 商工会議所が先月、賃上げに関して様々調査、アンケートを行いまして、これの結果を私も拝見したんですけれども、やはり中小企業の場合は、業績の改善は見られないけれども、しかし人材確保のためには賃上げをせざるを得ないといういわゆる防衛的な賃上げ、この割合が高い。具体的に言うと、中小企業でいうと、賃上げをしようと思っている中の六割ぐらいは、しかし防衛的にどうしても上げざるを得ないという状況だ、こんな実態もアンケートでも数字として出てまいりました。

 やはり、賃上げをするためには、いろいろな中小企業の皆さんも、経営者の方に聞くと、いや、賃上げはしたい、労働者、働いている方にしっかりそういう還元はしていきたいけれども、しかし、原資がなければこれは非常に経営がつらくなってくる、こういうことでありますので、労務費の転嫁ができるかどうかというのがやはり大きな課題になってくるんだと思います。

 昨年来、公正取引委員会に指針を作るというところもやっていただきましたので、これをどう活用できるかということもあろうかと思いますし、やはり、賃上げ税制も含めて、賃上げの後押しというところも非常に大事だというふうに思います。

 この持続的賃上げ、まさにこれに向けての経済産業省の取組やあるいは決意、これを是非大臣にお伺いをしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まさしく本日、春闘の集中回答日であります。自動車や小売などの大企業の中には、既に昨年の水準を上回る賃上げ率を回答した企業もいるというふうに承知しています。こうした賃上げの動きが続くことを強く期待しておりますが、こうした力強い賃上げの機運が雇用の七割を占める中小企業に波及していくことが、物価上昇を上回る賃上げの実現への鍵だと考えています。

 このため、まずは価格転嫁対策、この徹底を引き続き強く求めていきたいと思っています。今月はまさに価格交渉促進月間でありますが、発注者、受注者の双方に、労務費を含む積極的な交渉、転嫁を呼びかけていきたいと思います。

 また、中小企業向けの賃上げ促進税制につきましては、前例のない長期となる五年間の繰越措置の創設によりまして、委員も御懸念でありますが、赤字でも人材確保のために賃上げに挑戦する、そういった中小企業の後押しとなるように抜本強化していきたいと思っています。

 加えて、中小企業が構造的な人手不足を乗り越えて、生産性を向上し、収益、売上げを拡大をしていくということが大変重要だと思っていまして、このため、カタログから選ぶような簡易で即効性のある省力化投資や、新商品、サービスの開発に向けた設備投資等の支援を令和五年度補正予算にて既に措置をしております。

 本日開催の政労使の意見交換会には私も出席をして、経済界に対して、中小企業の賃上げに向けた協力を引き続き強く呼びかけていきたいと思っています。官も民も一歩前に出て、中小企業の賃上げをしっかりと後押しをしていきたいと考えています。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 今日も政労使会議を開催をしていただくということで、大臣からも経済界に後押しということでありましたので、是非これはお願いをしたいというふうに思います。

 先ほど大臣からもお話がありました価格交渉促進月間について、これから少し各論で御質問させていただきたいと思うんです。

 価格交渉促進月間も、中小企業庁が、やはり下請取引を適正化をしていくということで、これも累次行ってきているという、私は非常に重要な取組だと思っております。三月、九月ということで、年二回これを設定をしていただいて価格交渉をしっかり促進をする、こういう、まさに下請取引を具体的に改善をしていく、定期的に国がしっかり状況をチェックができるという仕組みでもあろうかと思います。

 まさに、今回の持続的な賃上げということでテーマとなっていますのが、労務費の価格転嫁ということであります。

 一番最新のデータは、昨年の九月のデータであります。価格交渉促進月間、データを拝見をいたしますと、毎年状況は改善をしている部分というのはあるんだろうというふうには思っておりまして、例えば、昨年の九月のデータ、これが今年に入って一月に数値ということで出たのも私は拝見をいたしましたけれども、交渉を希望するけれども、しかし交渉してくれない、こういう状況はかなり減ってきているんだろうというふうには思っております。やはり、価格交渉をしましょうということで、これに応じていただけるところというのは非常に増えているんだろうというふうに思います。

 他方で、じゃ、どこまで転嫁できているのかというのは、やはりそれぞれ課題があるというふうにも思っております。特に昨年は、九月のデータということで、恐らく三月も交渉しているので余り変化がないというふうな企業も結構あったかと思いますけれども、特に、原材料費の高騰がかなりずっと続いておりましたので、そちらの転嫁をどちらかというとかなり中心的にやっていて、労務費のところまで価格転嫁をするというところはまだまだこれからなんだろうというふうに思っております。

 公正取引委員会が労務費の価格転嫁について昨年指針をまさにまとめていただいた、こういう状況でありまして、これを下請だけではなくて元請にもしっかりと徹底をしていくという中での今回の三月の価格交渉というのが、この指針が出た後の初めての交渉だというふうに思っておりますので、ここで労務費の価格転嫁が、じゃ、どのくらいできるのかというところが、これからの中小企業の賃上げをしっかりやっていくに当たっての非常に私は大きな鍵だというふうに思っております。

 三月の価格交渉の促進月間、これにつきまして、労務費の価格転嫁、そういう問題意識も含めて、どういうふうにこれを取り組んでいくのかということを是非御答弁をいただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 三月の価格交渉促進月間でありますけれども、これは、発注側、受注側、双方におきまして、労務費を含めた交渉、転嫁に積極的に取り組む契機として、しっかり御活用いただきたいと考えております。

 そのため、齋藤大臣によるメッセージ動画の配信や、政府広報や経産省のSNSを通じた発信、新聞、ウェブ媒体への広告等による周知に、今月、集中的に取り組んできているところでございます。また、今後とも積極的な発信を続けてまいりたいと考えております。

 中小企業の皆様には、まさに一般的に転嫁が原材料価格などと比べても苦しいということが調査の結果明らかになっております労務費、これにつきましても、労務費の指針を御活用いただく、そのために、労務費の指針で引用されております公表データ、これにつきましては、春闘妥結額やその上昇率など、中小企業庁のホームページにも掲示をしております。これらを御活用いただきながら御対応いただくということ、また、下請かけこみ寺や全国のよろず支援拠点に設けた価格転嫁サポート窓口、交渉のポイントを分かりやすくまとめたリーフレットなども御用意をしておりますので、これらを活用いただき、しっかり御準備いただいた上で、思い切って交渉に臨んでいただきたいと考えております。

 月間終了後には、全国三十万社の中小企業を対象とした、価格交渉、転嫁の状況に関する実態調査を行うことも、今回につきましても予定をしております。その結果の公表や発注側事業者への指導助言も実施予定であります。これらの効果を高めるには一社でも多くの事業者からの回答が極めて重要でございまして、この積極的な回答の呼びかけや設問の改善などにも取り組んでまいる所存であります。

 価格交渉促進月間を含め、価格転嫁対策に粘り強く取り組み、中小企業の賃上げを後押ししてまいる所存であります。

中野(洋)委員 ありがとうございます。

 残りあと何分かでございますので、これが最後になろうかと思いますが、省力化の支援ということもお伺いをしたいと思います。

 中小企業のいろいろな賃上げ、一つは価格転嫁をするというのが当然ありますし、もう一つは、大臣にもお話しいただいた賃上げ税制のような、国が直接後押しをするというところもあります。今、各業界、人手不足ですので、ある意味、もう一つは、省力化、省人化というものを今進めれば、これは生産性も向上もするし、賃上げにも資するという、まさに一石二鳥だというふうに思っております。

 この支援を是非強力にやってほしいということをお願いをるるしてまいりまして、昨年の補正予算で省力化支援というのが、予算がついているわけでありますけれども、なるべくこれを取り組みやすいような形でやっていくということで、カタログから選ぶような形式にしていくということを説明を受けているところであります。

 私は、カタログ形式というのは非常に一つのいいアイデアだと思うんですけれども、カタログを今まさに作り込んでいるという段階ではありますので、しかし、なるべく早くこれは是非スタートをしていただきたいというのが一つお願いであります。

 もう一つは、カタログにすれば非常に分かりやすいというメリットがある一方で、せっかく省力化に資する取組がいろいろ出てきたとしても、これはカタログに載らないと支援できない、逆に、これに載っていないと支援できないんじゃないか、こういうお話も他方でありますので、内容については、これは段階的にどんどん充実をさせていくような方向で、一回これで公募したからこれしかありませんよというわけではなくて、やはりそういう形でやっていく必要があるんじゃないか、私は、こういう問題意識もございます。

 これについて答弁を是非いただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 中小企業省力化投資補助事業につきましては、カタログに掲載する製品の登録プロセスは既に開始されておりまして、近日中に中小企業向けの公募要領を公表する予定でございます。

 その際、どこから手をつけてよいか分からないといった小規模事業者のお声に応えるものとして、特定の業務を省力化する要件を満たす製品のうち、小規模事業者のニーズに応えられるもの、例えば飲食店向けの券売機や旅館向けの自動チェックイン機といった製品を含むラインナップの充実等に取り組んでまいります。

 また、製品登録でございますけれども、これは随時受け付けておりまして、今後、各メーカーからの申請、審査に応じてカタログを拡充してまいる所存でございます。

 引き続き、中小企業が人手不足を乗り越え、売上げ、収益を拡大できる環境をつくってまいる所存でございます。

中野(洋)委員 以上で終わります。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、田嶋要さん。

田嶋委員 おはようございます。齋藤大臣、おはようございます。よろしくお願いします。

 今日は、ちょっと順番を入れ替えさせていただきます。

 お手元の資料の冒頭、何だか大臣がにやにや笑っていらっしゃいますが、私が配付した資料は齋藤さんの御著書からちょっと引用させていただいております。以前頂戴した御本でございます。ありがとうございます。

 ちょっと順序を入れ替えまして、ほかの役所から何名か来ていただいています、ありがとうございます。鴨川のメガソーラーの問題に関してまず扱いたいと思いますが、齋藤大臣は、この問題、御存じでございましたでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 今朝、レクを受けて初めて知りました。

田嶋委員 これは齋藤大臣の選挙区ではございません、私の選挙区でもございません。同じ千葉県でありますので、私も、人ごとではないと思って、かれこれ五、六年取り組んでございます。

 最初に私がこれを知ったのは、野口健さんという登山家、御存じですよね、有名な。富士山の清掃活動を頑張っておられる方で、今は石川県の能登半島で、テントを用意されて、ボランティアの方々が入りやすいような御尽力をされている。すばらしい取組でございますが。

 野口健さんの御講演、彼は二拠点生活で、千葉市と山梨にお住まいのようでございますが、千葉市で私が野口さんのお話を聞きに行って、富士山のお話を聞かせていただけるかと思ったら鴨川のお話だったということがございました。そのとき私は初めて、自然エネルギーを広げていくプロセスの中で非常に問題のある事例があるんだということを野口さんから教えていただき、以来、今日に至っておるところでございます。

 齋藤大臣には、署名をお届けしたいということで先月から打診をしておったわけでございますが、予算委員会始め、なかなかお忙しい状況の中で今日に至って、今日は改めて取り上げさせていただこうと思いました。

 今日は、鴨川から当事者の代表の方々が四名お越しをいただいております。

 お手元の資料の六を御覧ください。「メガソーラー通信」ということで、これは鴨川ですけれども、これは全国に、与野党共通の悩ましい問題、今は太陽光から陸上風力にも広がっていると思いますので、決して鴨川だけのことではないし、また手遅れということでもない、全国のいろいろな課題に関しての共通課題でございます。

 「メガソーラー通信」、署名が、ネット署名も合わせると一万五千人を超えている。鴨川の市の人口が三万人ちょっと。つまり、人口の半数程度の署名が集まっておるという状況でございます。

 齋藤大臣、今日この質問を終えて、是非、私からのお願い、懇願でございますが、現地を一度見ていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 まず、この件について、私自身、詳細に把握する必要があると思っていますので、その必要性も含めまして検討したいと思います。

田嶋委員 どうもありがとうございます。

 今日の質問にもつながりますが、今のルールがどうなっているか、あるいは、立法、政省令のルールがどうなっているかということを前提に考えるのではなくて、現場で何が起きているか、これをこのまま続けるとどういうことが起きるか、これを私は先に考えるべきだと思いますね。

 そういう意味では、霞が関で仕事をすれば、どうしても文書を中心とした仕事になろうかと思いますが、今日、私は二点取り上げたいと思うんですが、やはり少し問題ではないかなというふうに感じております。

 まず、第一点目でございます。

 原発に関して、バックフィットという考え方がございます。これは既存の原発に関して追加的な安全対策を講じるということだと思いますが、ということは、既存ですから、もう既に動いているような原発も含めて、原発バックフィット。これは、俗に言う不利益不遡及という言葉がございますね、不利益は遡及させないという話だと思いますが、このルールの例外だという理解でよろしいですか。御答弁お願いします。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問ありましたバックフィット制度でございますけれども、これは、東京電力福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえまして、平成二十四年に原子炉等規制法の改正が国会で議論されまして導入されたものでございます。

 具体的な法律の規定といたしましては、技術基準への適合を継続的に維持する義務、基準不適合の際の施設の停止や改造の命令が新たに規定されたというところでございます。

 この改正の趣旨につきましては、新たな知見を反映させて規制基準を改める際に、既存施設に対しても新たな基準への適合を求めることによりまして、原子力災害を防止し、国民の安全の確保を図ることを目的としたものでございます。

 このように、原子炉等規制法上のバックフィットは、原子力災害の防止、国民の安全の確保という法目的の実現のために、原子力事業者の財産権などを総合的に勘案した上で、必要な手続であるとして設けられたものでございます。

 なお、いわゆる法の遡及適用に当たるかにつきましては、法律を過去に遡って適用するものではなく、改正後の基準を既存施設において将来に向けて適合するよう求めているものであり、遡及適用には当たらないというふうに考えてございます。

田嶋委員 遡及適用には当たらないということですが、要は、新しい安全に関わる知見が得られて、新しい法律を作って、その場から既存のものにも適用する、だから遡及はしていないんだという、へ理屈とは言いませんけれども、一つの理屈立てだという理解でよろしいですか。

大島政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員御発言のとおり、既存の施設に対して新しい基準を適用するということでございます。

田嶋委員 私、これを取り上げたのは、齋藤大臣、聞いていただきたいと思いますが、今回、原発ではないんですけれども、原発以外のこうしたメガソーラー、資料六の丸裸の山、これは鴨川じゃないですよ、よそで起きている事案ですけれども、山を、すごく木を切って、土砂を谷に埋めて、何か山の中に広大な、平らな、これは日本で最大規模らしいんですよ、百五十ヘクタール。この写真が百五ヘクタールですから、気の遠くなるような自然破壊を伴うのではないのかなということでございますが、こういう原発以外に関してバックフィットという概念は適用できないのかなというのが私の素朴な疑問であります。

 今の役所の方の御答弁を聞いておっても、安全に関わる新しい知見が得られたということですね。そうすると、東京電力にとっては何百億もかかる追加的な経済負担ですよ。やりたいかやりたくないかといったら、やりたくない。だけれども、命に関わることだから、これは有無を言わせずやらせるわけですね。そのときの法律がちゃんと作られているということであります。

 齋藤大臣、次の資料、資料の七を御覧ください。

 山を切り開くということは、後日取り上げますソーラーシェアリング、齋藤さんが御尽力いただいて非常に進めるようになっておりますが、営農型発電、あるいは家庭用の屋根上ソーラーとかそういうのと違って、インフラ部分、シビルワークが大変な量あるわけですね、その土木工事といいますか。

 そうした部分の、この七番に関して、千葉県が、やはり昨今の地震の多さ、熱海のようなことが二度と起きてはいけない、あれは原因はソーラーではないというふうに理解していますが、二度と人命を失うようなことがあってはいけないと。それで、千葉県が、林地開発許可、これは森林法に基づく許可でございますが、この許可基準を改正しているんですね。見ていただくと、いろいろな変更や新設がございます。

 私は、同じことではないかなというふうに思うわけであります。原発であれば、そうしたバックフィットを行う。しかし、原発以外に関して、同じように命に関わるような問題が起きれば、やはりバックフィットということで、この鴨川の場合には、二〇一四年、今から十年も前に、経産大臣、当時は齋藤さんではございませんが、経産大臣の再エネ発電の許可を出しているわけでございますが、このことをもってして安全対策を講じなくていいということではなくて、こうした新たな知見が出たタイミングで、やはり法改正も含めて、既存の、既に動いている、あるいは許可などをクリアしているものに関しても適用すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。齋藤大臣、答弁いただけますか。

齋藤(健)国務大臣 まず、バックフィットについての一般論になりますけれども、当時は適法だといって行われていた事業が、ある日突然、違法だとかいうふうになるということに関しては、やはり、法的安定性の観点から、私は慎重であるべきだろうというふうに思っています。

 それで、御指摘の、森林法等の安全面に関する規制が強化された場合に云々という御質問でありますけれども、私自身は、再エネの導入については、地域との共生を図っていくということが大前提だと思っています。かつて農林水産大臣もやっておりましたので。

 FIT制度は、これはちょっと正確に聞いていただきたいんですけれども、事業実施を規制する規制法ではありません。再エネ電気の固定価格での買取りによって再エネ導入拡大を促進する促進法であります。地域との共生を図るために、FIT認定の要件として森林法等の関係法令の遵守を求めているということでありますので、規制法そのものではないということであります。

 その上で、関係法令への違反につきましては、違反が客観的に明らかになった場合には、早期の違反解消を促すためにFIT交付金の支援を一時停止するなんという措置を本年四月に施行させておりますし、違反がそれでも解消されない場合にはFIT認定の取消しの対象とするということで、関係省庁や自治体と連携しながら厳格に制度を運用しているということであります。

 つまり、ある種、支援をするために認可を与えたんだけれども、違法性があれば、それは認可の方も考えさせていただくというような、そういうたてつけになっているということであります。

田嶋委員 規制法ではないということはよく理解いたしました。

 今日は、農水省ですか、お越しでございますので。

 農水省の方の森林法は規制ですよね、だからこそ千葉県知事が許可を出しているわけなので。私は、許可を出してあるものに関しても、新たな知見が後ほど出てきた、これは、ほっておいたら、ひょっとしたら土砂崩れが起きて、人命に関わることが鴨川で起きたらどうするのかという議論は、原発と同じじゃないかなというふうに思います。

 そこで、FIT法では無理だとしても、農林省の方の森林法の関係、許可に関してはバックフィットのような概念を検討すべきではないかと思いますが、いかがですか。

長崎屋政府参考人 お答えいたします。

 一般に、審査当時の基準に照らして瑕疵なく成立した許可に対しまして、その後に見直した新しい基準を適用することにつきましては、事業者にとっては予見できない不利益を与えることになりますし、法的安定性を害するおそれがあることから、原則として行うべきものではなくて、林地開発許可制度におきましても慎重な配慮が必要だと考えております。

 なお、本件につきましては、林地開発許可の審査を行っている千葉県から事業者に対しまして、見直し後の新しい許可基準に従うよう行政指導を行っていると聞いておりまして、林野庁といたしましても、引き続き状況を注視してまいります。

田嶋委員 三・一一、十三年過ぎましたけれども、そうしたことがあったから原発だけはそういう法律ができた。裏を返せば、同じような法律を、このメガソーラーとか、そして陸上風力とか、やはり、甚大な被害が起き得る、命に関わる問題であれば、同じように、法的安定性の課題はもちろんあります、しかしそれでも、事業者にとってはお金のかかる追加的な対策を講じさせるような中身の法律は、私は検討に値するのではないかと思いますけれども、齋藤大臣、これは越権になっちゃいますかね、どうですか、コメントをいただけますか。

齋藤(健)国務大臣 繰り返しになりますけれども、FIT法はあくまでも規制法ではないわけでありますので、規制の世界で規制がなされれば、FIT法でどうするかという検討は当然していかなくちゃいけないと思っています。

田嶋委員 引き続き、それは実現を考えていきたいと思っております。

 もう一点申し上げたいんですが、これは経産省ですが、本件、FITの認定がいつ行われたか、また、そのときの認定価格、そして今のFIT価格は幾らか、これは事務方から御答弁ください。

井上(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の鴨川メガソーラーにつきましては、二〇一四年三月にFIT認定を受けております。一般的に、二〇一三年度に認定を受けた事業用の太陽光の調達価格は三十六円キロワットアワーでございます。また、最新の事業用太陽光の調達価格は、これは設置形態により異なりますけれども、おおむね十円キロワットアワー程度という状況でございます。

田嶋委員 委員各位も聞いていただいたと思いますが、十年前に認定されて三十六円、現在十円ということでございます。今日まで工事は一切行われていないという状況でございます。そして、休止が八回行われた、事業主が交代をした、施工者はまだ決まっていない、こんな状況が十年間続いているという状況が私は異常な感じがします。

 もう一つ質問しますが、本件はいわゆる、いろいろな対策をその後講じていただいた、長期未稼働案件に該当しますか。それから、本件は、その適用された調達価格、三十六円ですね、それが適時性、経産省が使っている言葉です、適時性は確保されていると言えますか。二点、お答えください。

井上(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御指摘の鴨川メガソーラーでございますけれども、二〇一四年三月に認定を受けた後、定められております運転開始期限を超えて、現在まで運転開始に至っておりません。その意味においては、長期に未稼働な状況にある案件であるというふうに承知いたしております。

 それから、もう一つの御質問でございますけれども、適時性の問題でございます。FIT制度では、認定後、御指摘のとおり、早期の運転開始が促進されることが重要という観点から、運転開始時期が遅れて各事業に設定した運転開始期限を超過した場合には、その遅れた期間分については、再エネ電気の買取り期間、ここから控除するなどの措置を講じる制度となっております。

 鴨川メガソーラーは、二〇一四年三月に認定を受けた後、現在まで運転開始に至っておらず、既にこの買取り期間が短縮を始めているという状況にございます。

 こうした措置を通じて、運転開始が遅れた事業については、得られる支援の総額が減額となるという制度となっております。

田嶋委員 これは経産省マターだと思いますけれども、今お聞きいただいたとおり、長期未稼働案件である、それから、三十六円というとてつもない高額な値段がいまだに、何も始まっていないのに維持されているということで、適時性は私は確保されていないというふうに理解をいたしました。

 齋藤大臣、まさに、今御説明の二十年の買取り期間が短くなる制度は、これは一つ、アナログ的というふうに私は思っているんですけれども、もう一つは、そもそもの認定が失効する制度もつくっていただいたんですね。これはデジタル的、つまりゼロ、一ですね、失効だから。だから、私は、この失効制度を適用すべきだというふうに考えているという問題意識からの質問でございます。

 まさに、この鴨川のような、恐らく私が知らないだけで全国にたくさんあろうかと思いますが、このような未稼働案件をなくすような法改正、法整備がこの間行われてきたと思っております。資料の八を御覧ください。この認定失効期限の設定は、この説明は分かりにくい。もうこれは一時間ぐらい説明を聞かないと何が書いてあるか全然分からない、本当に。

 ですが、齋藤大臣、これは細かくは御存じないかもしれませんが、ちゃんとレクを受けたかもしれません。なぜ、この全国最大規模のメガソーラー、しかも、更地、人手の入った土地じゃなくて、山を切り刻んで、木を全部切って、土砂を全部埋めて、こういうものが十年間放置されている状況で、何だか事業主も替わったり休止届が八回も出されて、これが未稼働案件として認定失効にならないんだったら、一体何のための制度かなと私は思うんですよ。詳しく聞かれたんですよね。

 これは三番に当たるそうなんでございますが、大規模案件に関しては、波の線を引かせていただきました、「実質的に失効リスクを取り除く。」という制度ですよね。しかも、これは法律改正は伴っていますが、こういう詳細設計は、いつものように省令でやられているということでいいですよね、省令なんですよ。だから、我々立法府は知らない話なんですけれども、今回詳しく聞かせていただきまして、結局、一、二は、失効を一年後にする、三年後にするというふうにお尻を切って、これは、だから、もうやれなくなるんです。しかし、三、言ってみれば、でかい案件だけは失効リスクがゼロになる選択肢があるんですよ、道が。これはどう考えても立法の趣旨からして逆じゃないのかなと。自然破壊が激しいのは、やはりでかい開発ですよね。

 なぜこういう制度にしてしまっているのか。私はここは見直すべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 これはちょっと丁寧にお話ししたいなと思います。

 FIT制度の失効制度は、まず、認定後に長期間運転が開始されない未稼働案件の滞留、これを防いで、再エネ発電事業の早期の運転開始というものを促進するためのもので、具体的には、電源種ごとに認定から運転開始までの猶予期間、これを設定した上で、その期間を経過しても運転が開始しない場合に認定が失効する、そういう仕組みになっています。その間、運転開始に向けた一定の進捗が見られる事業は一定期間失効を猶予する取扱い、こういうたてつけになっています。

 それで、具体的にどうなのかという話ですけれども、私は、申し訳ないんですが、個別の事案に関して具体的な取扱いについてお答えすることはこの場では差し控えたいと思っているんですが、例えば、一定の期限までに認定事業者が電力会社に系統連系工事の着工の申込みも行っている、そしてさらに、経済産業省に工事計画届出の提出も確認され、案件になっている、そういう状況にあるものについて、買取り期間に相当する期間について失効を猶予をする扱いというのがこの紙なわけですね。

 それはなぜかというと、ここまで物事が進んでいるものについては、ファイナンスの組成ですとか、設備の発注ですとか、そういうものが行われていて、本格的に開発工事が開始すること、これが見込まれるのではないか、そういう配慮なわけです。

 ただし、その上でも、事務方から説明がありましたけれども、早期に運転開始を促す観点から、運転開始が遅れて各事業に設定した運転開始期限を超過した場合には、その運転開始が遅れた期間分についてはFITの期間から控除しようということで促進をさせたいという仕組みになっているわけでありまして、言ってみれば、事業の進捗に伴う事業者の期待利益と失効制度に伴う事業規律、このバランスをどう取るかという中でこういう判断をしているということであります。

 さらに、一言だけ追加すると、この失効制度の導入に当たりましては、賛成、反対の双方の御意見がありました。あった中で、国民負担の抑制や再エネ導入拡大などのバランスを考慮しつつ、関係審議会での議論やパブリックコメントを経て現在の内容を決定をしたということは申し上げておきたいなというふうに思っています。

田嶋委員 バランスが大事なのは私も同意見ではございますけれども、今、齋藤大臣の御説明は、まさに霞が関だけで考えていると、そのとおりだと思うんですよ。

 ただ、配付資料八の三の工事計画届出、これは、危ないと思ったらぎりぎりで出しますというような感じで、当然弁護士もついているでしょうから、やるべきことは最小限はやっている。しかし、実態は何も変わっていなくて、十年間放置されて、国民負担を強いる高い値段だけは確保しているという状況で、これは、工事計画届が出ていたって、工事が進んでいるかどうかとはまた違いますよ。書類上の話ですからね。だから、私は現地を見てほしいというふうに申し上げているんですね。

 これは、実際問題として、書類を届けましたということで、それを大臣が確認しましたということで、そうすると失効リスクがゼロになるという仕組みになっているわけですね。言ってみれば、第三コーナーを回ったことは確認した、だから、それをもってもうゴールしているというふうにみなしているようなルールだと思うんですが、全然そうじゃないということなんですよ。だから、この辺は立法府では議論がなかったわけですけれども、まさにこういう個別事案に直面して、いかにこういう制度設計が抜け穴になってしまっているのかというふうに私は危惧をします。

 冒頭申し上げましたけれども、でかい案件ほど環境破壊のリスクは大きいわけですね。土砂災害などがこれから熱海のように起きたら、起きた後で誰が責任を取るんですかというふうに思うんです。だから、絶対にそういうことを起こしたくない。だからこそ、是非、この三のところのルールを。

 今齋藤大臣がおっしゃったことは正しいですよ。私も同じ話を聞きましたので、それをとうとうと御答弁されるのは結構なんです。だけれども、そのルール自体が現実と合っていないということを私は申し上げているんです。どれだけ霞が関の人が現場を見てこういう制度設計をされているのかよく分かりませんが、私は、これは欠陥だというふうに思います。一番地域社会に影響を与えそうなものだけが認定失効がないルールにしているのは、私は本末転倒だということを改めて申し上げたいと思います。

 最後にもう一度、今日この話をさせていただいて、大臣に改めて、一度、鴨川を見ていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 先ほど申し上げたとおりなんですが、一言ちょっと補足させていただきますと、やはりこれは、開発許可が下りているという前提でどうするか、助成法の世界でという話だと思いますので、そこはよく御理解をいただきたいなというふうに思っています。

田嶋委員 これは、県と話すと国なんですよ。国と話すと県なので、見合っちゃう。よくある話ですよね。だから、県は、上を見て仕事しているような場合、国に何も言われなければ許可するしかない、こういう感じなんですよね。やはり、これはありがちなんですよ。大臣、役所が長い人ですから分かると思いますが、これは本当に見合っちゃっているんですよ。

 だから、何とか、我々、これだけ多くの方が署名を、一万五千人、三万人の人口の町で集めて、苦しんでいるんですよ、長年。苦しんでいるの。これがやはり一番大事な現実だと思います。今のルールがどうなっているかなんということは二の次ですよ。変えなきゃいけないんだから、それは。変えることが齋藤さんの、まあ、信条ですよね、政治改革ということで。お願いをいたしたいと思います。

 それでは、もう残り僅かでございますが、齋藤大臣の御著書をいただいて、随分昔から拝読をさせていただきました。大臣が国会議員になる前の御著書でございまして、私は一年生議員だった当時でございますけれども、配付資料の中で、御覧をいただきたいと思いますが、最初の方に、少し気恥ずかしいかもしれませんけれども、齋藤さんの御著書の端書きのところに、ちょっと一番で資料をつけさせていただいたけれども、「転落の歴史に何を見るか」。実は先週、野田佳彦さんと話したら、あれはいい本だとおっしゃっていましたよ、やはり。野田さんも千葉でございますが。

 そこで、今日は、ちょっと時間がないので、世襲の話をさせていただきたいと思います。

 このページの後ろのところに、最後の二行のところ、齋藤さんも補欠選挙で落選をなさいました。そのときに、地盤もなし、看板もなし、かばんもない、しかも落下傘候補だというふうに書いてございますね。私と同じでございます。そうしたことを述懐されていて、そして、一番厳しい二〇〇九年の、私たちが政権を取った選挙で初当選をされた。そういう意味では、何とか四天王と呼ばれていたそうでございますが。

 野田さんが予算委員会で二度ほど世襲の問題を取り上げました。お互い世襲ではない者として、どうなんですか。私は齋藤大臣のお考えを聞きたいと思います。

 世襲が多過ぎるのではないか。具体的に言うと、自民党の国会議員の三〇%が世襲ですね。閣僚の五割以上が世襲ですね。これは、第二次安倍政権以来、調べました。そして、野田元総理がおっしゃったとおり、総理大臣にこの三十年間でなれた人、菅さんを除いて全員が世襲ですね。齋藤さんも総理大臣を目指しておられると思いますが、どうですか。

 私は、正直言って、これは本当にみんなで取り組まなきゃいけない問題だと思いますよ。取り上げにくいと思いますよ。たくさんいらっしゃるかもしれません。でも、小林さんも千葉にいらっしゃいますね。我々、みんな世襲じゃないわけですよ。みんなで議論しましょうよ。

 私は、世襲の人も含めて、これは日本を弱くしている、そして、裏金の問題だって、やはりどうしてもいろいろなところでつながる可能性があると。そういう心配を多くの有識者が指摘をしている中で、齋藤さんのような正義感あふれる方でありますから、この問題を自民党にいながら、私は、埼玉の副知事時代にお邪魔をして、私たちの方から出ませんかと説得に行きましたよね。お断りになりました。自民党から出る選択をして、これだけの裏金問題の中にまみれて、じくじたる思いがあるでしょう。この世襲の問題、真正面から一緒に取り組んでいきませんか。そのことをお尋ねします。

齋藤(健)国務大臣 ここまで言いたいことはあるんですけれども、この場は経済産業大臣として答弁をさせていただいています。

 世襲の問題については、いろいろお考えは、私も触発されるところがあるんですけれども、一方で、世襲の議員を選んでいる有権者の方々がいるという現実がありまして、その有権者の方々の選択肢を奪うという面もあるわけでありまして、これは大変難しい議論になるんじゃないかなというふうには思っておりますが、ここまでにしておきます。

田嶋委員 常に難しいバランスの中の議論だということは先ほどの鴨川の話も本件も同じだと思いますが、配付資料の七を配らせていただくことができましたので、最後に共有させていただきます。

 法制局と話を進めておりまして、ここまでは用意ができました。私も、憲法の話もあります、最小限の制約にしたいと思います。一親等にとどめます。国会議員にとどめます。しかし、我々が既に出している法案である、選挙のお金を非課税で相続できる、これだけでは車の両輪の半分なんですよ。

 選挙地盤を親から、じいさんから世襲できるようなことをずっと続けていたら、この日本だけどんどん弱くなる。まさに、齋藤健さんがこの御著書の中でおっしゃっておられるじゃないですか。なぜ日本はあんな無謀な戦争をしたのか、四つの反省点があると。失敗の本質と同じですよ。私は、齋藤さんのような方が、自民党側から、この先頭に立ってこの改革に取り組んでいただかなければ、日本は変われないと思います。

 裏金の問題も大事、しかし、世襲の問題も是非齋藤さんと一緒に取り組んでいきたい。そのことを申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、小山展弘さん。

小山委員 立憲民主党の小山展弘です。

 経済産業委員会での質問は、二〇一七年の外為法改正のときに質問して以来ということですけれども、今日はよろしくお願いいたします。

 まず、技能実習制度の制度変更についてお尋ねしたいと思います。

 これまで当該制度に基づいて非熟練外国人労働者を受け入れてきた企業さんはたくさんありますけれども、実習生がいなくなってしまうことで、結果としてではありますけれども、人手不足に陥ってしまう可能性があります。

 法改正によって、特定技能制度の対象となっている特定産業分野に含まれていない、かつ、技能実習制度の対象になってきた産業分野、例えば、自動車の組立てであるとかゴム製造などの分野です。とりわけ、自動車メーカーに部品を納入している中小企業さんから人手不足が起きる可能性を大変心配する声が聞かれるんですけれども、これらの分野についても、今後、特定技能実習制度と育成就労制度の対象分野に加えていくべきではないかと思いますけれども、政府の認識を伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 農林水産委員会に引き続いて、また経産委員会でもよろしくお願いします。

 足下の労働市場の喫緊の課題は人手不足であって、国際的な人材獲得競争、これも激化をしています。このため、特定技能人材のように一定の専門性や技能を持った方に我が国で働いていただくための仕組み、そして環境の整備、これが非常に重要で、その上で、育成就労制度は、一定の育成期間を経て特定技能一号への移行を目指すという制度でありますので、受入れの対象分野につきましては、特定技能制度に基づき外国人を受け入れることができる産業分野に限られるということになります。

 御指摘の自動車関連製造業の一部やゴム製品製造業は、現状、特定技能制度による外国人受入れの対象となっておりませんので、育成就労制度を活用するためには特定技能の受入れ対象分野への追加が必要になります。

 特定技能制度への分野追加に当たっては、生産性の向上ですとか国内人材確保のための取組等を行ってもなお人手不足が解消されない状況等を業界の方から示していただくという必要があります。

 こうした人手不足の状況が示された場合には、特定技能制度への分野追加を含めまして、時機を逸することなく必要な対応を進め、製造業における人手不足に対応してまいりたいというのが基本的な考え方であります。

小山委員 こういった分野でも、育成就労をして技能を高めていくというようなこともあろうかと思いますので、是非対象分野に加えていただけるように審議を進めていただきたいと強くお願いしたいと思います。

 もう一つ、先ほど中野洋昌先生の質問でもございましたですけれども、価格転嫁について伺わせていただきたいと思います。

 政府も今賃上げということで、官民一体となって今賃上げに取り組んでいこうということであるかと思いますけれども、中小企業の経営の安定、増収といったものがないと、まして特にマーケットが縮小していくような分野ですと、なかなかこれは、賃上げというのは難しくなってくるようなところもあろうかと思っています。

 ですから、特にいわゆる下請と言われているような企業さんにとって親事業者さんへの価格転嫁というのが非常に大事だと思っているんですけれども、特に原材料とか燃料のコスト高といったことも今経営を圧迫して苦しんでいるところですが、中小企業さんのこういったコスト高に見合った分、あるいはそれ以上の価格転嫁を進めていくために、政府はどのような方針で臨んでいらっしゃって、またその進捗状況について伺いたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、我が国の雇用の七割を支える中小企業の構造的な賃上げを実現するためには、その原資確保に必要な価格転嫁の推進が重要でございます。

 このため、具体的には、今月も含めてであります価格交渉促進月間、三月、九月でありますけれども、この月間における発注企業ごとの交渉、転嫁状況の公表や、取組が芳しくない発注企業への指導助言、三百三十名へ増員する下請Gメンによる取引実態の把握の強化、パートナーシップ構築宣言の更なる拡大と実効性の向上等に取り組んでおるところでございます。

 また、厳しいマーケットに直面しております中小企業に対しましては、よろず支援拠点や中小企業活性化協議会等におきまして、経営改善や収益力改善を支援する措置を講じますとともに、新商品、サービスの開発に向けた設備投資等の支援や構造的な人手不足を乗り越えるための省力化投資といった生産性の向上に向けた支援策を行ってまいるところでございます。

 これらの取組によりまして、中小企業の賃上げをしっかりと後押ししてまいりたいと考えております。

小山委員 今の答弁の中にもあったかと思いますけれども、価格転嫁率は四五・七%と、中小企業さんにしてみると、もうできればコストが上がった分一〇〇%価格転嫁していきたいという中で、交渉のテーブルに着いてもらった、協議に応じてもらったというところでは大きな進歩だと思いますし、そういう企業さんが、親事業者さん、発注元の方でも増えているということはよく存じ上げていて、効果は出ていると思うんですけれども、しかし、転嫁率が四五・七%と、半分よりも若干下回る。

 こういうことですと、やはり不十分で減益になっていく可能性も、利益が減っていく可能性もあるんじゃないかとも思われるんですけれども、こういった価格転嫁率をもっと向上させていくために、政府としてはどのような取組を考えていますでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 中小企業の価格転嫁率の向上、これは大変重要な課題だと思っております。つきましては、中小企業側のみならず、親事業者、発注事業者側の理解を進めていく必要がございます。中でも、労務費につきましては、原材料費などと比べて一般的に価格転嫁が難しいところになってございます。

 このため、経済産業省におきましては、労務費の指針につきまして、発表の直後に約九百の所管業界団体に周知した上で、各地域、業界団体向けの説明会を実施いたしますとともに、この指針が遵守されるよう、自主行動計画策定団体に対し、各計画への指針の反映を要請してきたところでございます。

 また、先ほど答弁申し上げましたとおり、価格交渉促進月間における価格交渉及び価格転嫁の実態につきましては、これを調査させていただいて、公表をさせていただいております。そのフォローアップもしっかり対応させていただく形になります。

 また、中小企業の皆様に向けましては、下請かけこみ寺、全国のよろず支援拠点に設置した価格転嫁サポート窓口もございます。こういったところを御活用いただきまして、受注者に対する価格交渉力の強化、支援を行いまして、価格転嫁を更に後押ししてまいる所存でございます。

小山委員 本来であれば、需要が旺盛になって、引き合いが強くなって、価格が上がっていくというのが本来の経済の考え方というか、経済の論理だと思っております。

 だから、ここが多分、岸田総理も、緩やかに物価は上がっているといいながら、一方で、デフレ脱却とか、デフレという言葉を使っているということは、需要が伸びていっていないという現状があって、その中での賃上げということになりますと、一番悪いパターンは、中小企業さんにいろいろなしわが寄ってしまって、中小企業さんが経営が危うくなっていったり、あるいは廃業とか倒産に追い詰められてしまう。あるいは、中小企業さんの雇用されている方々、労働者の方々の賃上げがなかなか実現していかないということになってはいけないと思いますので、円安で大分利益も潤沢な企業さんもあろうかと思いますので、そういうことも含めて、価格転嫁ということを是非進めていただきたいと思います。

 物流についても伺いたいと思いますが、中小の物流企業さん、運輸企業さんからは、大手の物流企業さんが運賃アップを認めてくれないというようなこともよく声が聞かれまして、標準的な運賃や、燃料サーチャージ制度の導入、荷主に対する罰則規定を設ける国主導の法整備が必要ではないかとの意見も聞かれます。

 残業時間の上限を九百六十時間とする、いわゆる二〇二四年問題が顕在化しつつある中で、中小の物流業者さんの経営の安定、雇用の確保のために国はどのような対策を講じていく方針でしょうか。

長井政府参考人 お答え申し上げます。

 トラック事業者でございますけれども、これは、中小企業が多いということで、荷主ですとかそれから元請事業者さんに対する交渉力が弱いということがございます。

 これによりまして、コストに見合った適正運賃の収受が容易でないということでございまして、その取引環境の適正化、これが喫緊の課題というふうに認識をしてございます。

 このため、国土交通省といたしましては、昨年の通常国会におけます貨物自動車運送事業法の改正を踏まえまして、トラックGメンの設置によりまして荷主等への是正指導を強化するとともに、標準的運賃につきましても、年度内の引上げや荷待ち、荷役の対価、下請手数料など、新たな運賃項目の設定等に取り組んでいるところでございます。

 加えまして、今国会に提出をさせていただきました法律案におきましても、実運送体制管理簿による運送体制の可視化、運賃や燃料サーチャージを含む契約条件を明確化するための契約の書面化など、適正運賃の導入を進める環境を整備する措置を盛り込ませていただいているところでございます。

 これらの取組を通じまして、関係省庁、産業界とも連携をいたしまして、トラック運送業における適正な取引環境の実現、これに全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

 以上でございます。

小山委員 是非、中小の運輸業者さんにいろいろなコストのしわが寄らないように、中小企業というところでは、先ほどの製造業や他の中小企業さんとも同じような立場の環境というものがあろうかと思いますので、国の方でも目を配っていただきたいと思います。

 では、ここから、経済安全保障、経済・技術安全保障に関連することを伺っていきたいと思います。

 経済安全保障といえば、先ほど質問に立たれた小林鷹之議員が経済安保大臣のときに私も質問させていただいたことがございました。

 実は、二〇一七年に、自民党の衛藤征士郎先生を議連の会長にお迎えして、大島敦先生を幹事長にお迎えをして、経済・技術安全保障を考える議員連盟というものを立ち上げました。これは、当時の東芝のNANDメモリーの売却について、何のチェックもなく、いいんだろうか、そういうところが関心の発端だったわけですけれども、今日はちょっと半導体のことを伺いたいと思います。

 かつて日本は、半導体製造において世界のシェアの約半分、五〇%を占めておりました。現在の日本の半導体産業も、洗浄を中心とした製造設備とか部材については大変競争力を保持しておりますけれども、一方で、半導体トータルというところになりますと、かつてほどの勢いがあるとは言えないかと思っております。

 こういった半導体産業がかつての勢いを失ったことについて、経産省として、あるいは大臣はどのように御認識を、原因を分析されていらっしゃいますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 我が国の半導体産業は、一九八〇年代には世界一の売上高を誇っていたものの、その後シェアを大きく落としてしまいました。経済産業省に勤務していた私としては、内心じくじたるものがあります。

 このような状況となった原因といたしましては、幾つか指摘できると思うんですが、一つは、日米が正面から挑み合った結果としての日米半導体協定に代表される貿易摩擦、私はあれの担当者でありましたので、相当の譲歩を迫られたというのは現実としてありました。二つ目は、日の丸自前主義ともいうべき国内企業再編に注力し、有力な海外企業との国際連携というものを推進できなかったということ。それから三つ目は、台湾や韓国政府等が大規模な設備投資支援を行う中で、バブル経済崩壊後の日本の半導体メーカーが思い切った投資ができず、更に言えば、政府としても大胆な投資支援に踏み切れなかったということなど、様々な要因があったのではないかと認識しています。こうした点については、正直、真摯に反省をしなければならないと私は考えています。

 こうした反省も踏まえて、経済産業省では、二〇二一年以降、スピード感を持って法律改正や大規模な財政支援を講じまして、熊本のTSMC、JASMの新工場建設を始めとした複数の大規模国内投資を実現をしてきました。

 また、米国を始めとする有志国、地域との半導体分野における国際協力、これを進めて、次世代半導体の量産化に取り組むラピダスプロジェクトは、米国のIBMや欧州のimecなど海外のトップ企業、研究開発機関等と密に連携をしながら進めてきているところであります。

 我が国は、半導体産業の再興に向けて既に大きな一歩を踏み出しました。今後も、我が国が強みを有する製造装置、部素材等も含めて、半導体産業において日本が世界で大きな存在感を示せるように、引き続き全力で取り組んでいきたいと考えています。

小山委員 いろいろと、質問取りのときなども、特に日本の場合、総合電機メーカーが電機メーカーの部門の一つとして半導体をやっていたと。そうすると、なかなか、半導体の投資というのは、投資額が多くてリターンがないときもあったりして、そうしますと、電機メーカーさんの経営からすると、大変リスクの大きいところにいつも多額の投資をできない、あるいは、ほかの分野のところがなかなか、減収になってきてしまっているところに競争力を強化しなきゃいけない、そういった、総合電機メーカーさんがやっていらっしゃったと。TSMCさんなんかは単体で、受託生産で主にやっていたというところも大変大きなところだなと思いましたが。

 でも、私、ちょっと驚きましたのは、齋藤大臣がちょうどその日米半導体協議の交渉の担当もされていたということと、今イの一番に日米半導体協議の結果ということを原因として挙げられたということも、正直大変驚いたというか、そのとおりだと思っております。

 このことが逆に、私、是非申し上げたいと思いますのは、軍事的な同盟国であっても、経済的には競争相手であるということはやはり忘れてはならないのではないかなと思います。全ての利害が同盟国だからといって一致するわけではないと。

 早稲田大学の山本武彦名誉教授が、「経済制裁」という著書の中で、米国の国家安全保障上の利益という中には、米国が脅威と認識する国々への軍事的な安全保障、軍事技術の優位確保という側面と、もう一つの側面として、同盟国間での経済的な競争、産業競争における産業技術の比較優位確保という技術安全保障、まあ、これだけを技術安全保障という言葉でくくっていいかどうかというのはありますけれども、その両面があるということを指摘しております。こういったことから、ほかの面でも、例えば食料安全保障の議論の中で、同盟国からの輸入については心配しなくていいんだ、だから自給率なんか関係ないというような意見もいろいろな委員会の中で聞かれましたけれども、経済関係では競争相手だということもやはり認識するべきではないかと。

 先ほどの山本教授の著書の中では、対ソ穀物制裁の際には一方的にアメリカが制裁を解除して同盟国の不信を増幅したというようなこともありますので、是非、対米従属とのそしりを受けることのないような経済安全保障あるいは経済外交というものが必要ではないかなと思います。

 もう一つ、この半導体のことで、日本の半導体供給、特に高度な半導体については、かなり台湾島での生産に依存しているところがあろうかと思います、先ほどのTSMCとか。仮に中台関係が今変化をして、台湾が中国の方に接近していくとか、あるいは、いわゆる台湾有事などの諸事情によって半導体の輸入が途絶というような場合には、日本の産業全体にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

 今後、再び半導体製造の、今大臣からも、もう一度力強い半導体製造業の復活というお話がありましたが、国産化というものをやはり進めていく必要があると思いますけれども、この点についての政府の方針を伺いたいと思います。

吉田大臣政務官 お答え申し上げます。

 半導体は、デジタル化や脱炭素化の実現に不可欠なキーテクノロジーでございます。その上、経済安全保障の観点からも重要であり、日本の産業競争力全体を左右する戦略物資でございますことから、半導体の他国依存リスクをいかに軽減できるかが重要となります。

 委員御指摘のとおり、特に我が国のミッシングピースとなっている先端半導体の国内製造基盤の整備を図ることが必要でございます。

 こうした観点から、経済産業省におきましては、5G促進法に基づき、我が国に製造基盤のなかった先端ロジック半導体などの国内製造基盤の整備を行うための先端半導体基金を措置しておりまして、TSMC、JASMを始めとした大規模投資プロジェクト等を支援をしておるところでございます。

 引き続き、スピード感を持って、半導体産業における積極的な国内投資を呼び込み、更なるサプライチェーンの強靱化を図るために必要な取組というものを実施してまいりたく存じます。

小山委員 是非、半導体産業の強化のためにもこれからも取り組んでいただきたいと思いますが、今の質問ともちょっと関連するんですけれども、少し繰り返しになりますが、台湾島で製造される半導体というのは、今申し上げたとおり、日本の製造業、産業にとっても非常に大きな影響を与えるということで、台湾島の安定と平和というのは日本の産業安全保障にとって必要不可欠と言えようかと思います。

 また一方で、日本の今の最大の貿易相手国は中国でございます。こちらの方も、NSCでも、ウクライナ侵略のような事態がインド太平洋でも発生し得ると。事実上の、これは台湾有事のことを想定したようなことではないかというふうにこの文書からは読み取れるわけですけれども、もしも有事となれば、日本の最大の貿易相手国である中国との貿易が途絶する可能性もある、あるいは、その前に経済制裁が行われて、そこに日本も組み込まれたり巻き込まれたりする可能性もあろうかと思います。

 まさにこれは日本にとってジレンマでありまして、いわゆる地経学的ジレンマともいうべきものではないかと思いますけれども、こういった板挟みというかジレンマに対して、日本政府としてはどのような対策を今後立てていく方針でしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、我が国は、国内のみならず、世界に広がる市場やサプライチェーンとともに発展してきたという我が国にとって、不安定化する昨今の国際情勢下においてもなお、ルールに基づく貿易秩序の維持というものは、やはり我々が踏みとどまらなくちゃいけない基軸なのではないかと思っています。これは、我が国最大の貿易相手国である中国との関係においても、この基軸は踏み外してはいけないと思っています。

 その一方で、経済安全保障の観点からは、我が国の技術力等における優位性を確保していくということも、国家として私は重要だろうと思っています。

 委員御指摘のジレンマを解消しつつ経済安全保障を実現していくためには、経済安全保障上の措置の対象となる技術等は真に重要なものに限定をして、守るべきものは守り、あわせて、ルールに基づく貿易秩序をあくまでも追求をしていくという姿勢が大事なんだろうと思っています。

 経済産業省としては、こうした考え方の下に、経済安全保障に係る政府全体の動きも踏まえつつ、産業支援策、産業防衛策、国際連携という三つの柱から成ります、経済安全保障に関する取組をまとめたアクションプランを作成をしたところであります。

 現在、産業界や各国政府と密にコミュニケーションを取りながら、アクションプランに基づいた取組を推進しているところでありまして、引き続き我が国の産業、技術基盤の強化に全力を尽くしていきたいと思っています。

 先ほど小山議員がお話しになりました、アメリカといえども競争相手ではないか、そういう面もあるんじゃないかというお話ですけれども、まさにそのとおりでありまして、私は、まさに日米摩擦の真っただ中にいたときに比べますと、今アメリカと半導体の分野で協力しながらやっていくというのはまさに夢のような世界でありまして、ここまで来たかなという思いもあるのと同時に、やはりアメリカという国は自分たちが常にナンバーワンでなければいけないというものがありますので、おっしゃるように、競争上の懸念というものも同時にしっかり踏まえて対応しなくちゃいけないというふうには思っています。

小山委員 大臣の言葉で語っていただいて恐縮ですけれども、もちろん日本が経済的にも防衛的にもアメリカを乗り越えていけるというようなことでもないというところもありますし、また一方で、今大臣がおっしゃっていただいたような、競争相手でもあるというところもあろうかと思います。

 また一方で、中国も、ただ、ある意味、今のアンケートなんかでは対中感情というのは非常に悪いですけれども、だけれども、その感情に乗っかって一方的に敵視するというか、そういう見方で議論を進めていくのもやはり問題ではないかなと。冷静な議論というものをやはり進めながら、日本の、この国の産業を守っていく、そういう観点からの、あるいは軍事的な脅威となり得る国に技術移転が行かないような、そういう経済安全保障、経済・技術安全保障というものを目指していく必要があると思っております。

 最後に、ちょっと一問、大変恐縮ですが飛ばさせていただいて、大臣の所信表明にもあったデフレのことについて、デフレ構造についてお尋ねしたいと思います。

 齋藤大臣は、デフレの原因についてどのように分析、認識されていらっしゃいますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 これは、私というよりも、政府でこれまでもずっと表明してきていることだと思いますけれども、一九九〇年代のバブル崩壊以降の長引くデフレの背景には、不良債権と金融システム問題などに加えまして、アジア通貨危機も起こりました、リーマン・ショックもありましたということで、見舞われてきたことが背景にはある。

 こうしたことを背景に、企業が足下の利益の確保のために、コストカットに注力し、成長の源泉である投資を抑制したことが、賃金や消費の停滞につながり、結果として長引く物価の低迷というデフレ構造につながったというふうに認識をしているところであります。

小山委員 実は、先日の予算委員会のときも少し申し上げたんですが、私がこの話をするのはちょっと恐縮というか申し訳ないんですけれども、柳沢伯夫先生が平成金融史というので著書を、回顧録を書かれていらっしゃって、この中に、福井総裁との、二〇〇〇年代の日銀総裁の福井さんとの会話が出てきて、福井総裁は、早く不良債権処理をしてくれ、そうしないとこれだけ金融緩和しているのに企業への貸出しが伸びない、投資が伸びないじゃないかということを柳沢さんにお話をされる場面があるんですね。それで、柳沢先生は何と言ったかといいますと、いや、不良債権処理はある程度進んできているし、もし仮にこれを完全に完遂しても、需要が伸びなければなかなか貸出しは伸びませんよと。

 この需要のところが本当にあるのかどうかというところが、実は、今でも非常にデフレ、デフレというかデフレ構造というか、ここの大事な問題ではないかなというふうに私は考えておりまして、このところに人口の減少がどう絡んでくるのか、あるいは、人口の減少があってもそれを上回る生産性の向上や新産業の誕生といったようなものが求められているのではないかと思います。

 アベノミクスは貨幣現象、貨幣が少ないことがデフレの原因だということで認識されていらっしゃいましたですけれども、今の大臣のお話ですと、企業の投資のところが原因だったのではないか、あとはデフレマインドということですが、これは、貨幣現象ということよりも、生産性が低いこと、あるいは投資が少なかったことがデフレの原因だということの認識でよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、物価の変動に貨幣が影響を与えるということはあるわけでありまして、そういう意味では、デフレは貨幣的現象であるというふうに考えられるわけですが、ただし、デフレを始めとする物価変動にはほかの様々な要因も当然影響を与えるということでありますので、そこは留意をしておく必要があるんだろうと思います。

 その上で申し上げれば、一九九〇年代以降、様々な危機に見舞われてきた中で、企業は足下の利益の確保のために、コストカットに注力して、賃金や成長の源泉である投資を抑制して、低い生産性も含めて経済成長の抑制につながっていった、そういったこともデフレの要因になっていると認識をしています。

 今、DXやGXで社会課題解決型の分野において需要が相当今後見込まれる状況になってきたということで、前向きの潮目の変化が出てきているということでありますので、この機を捉えるということが非常に重要だなというふうに思っています。

小山委員 アベノミクスということで、貨幣を、異次元の金融緩和でやったわけですけれども、なかなか、二年で達成するというものが八年たって、結果的には、海外からの輸入物価の上昇という形で物価上昇になっていった側面があろうかと思いますが、そのことはともかく、菅総理のときにGX、DXにある意味取り組み始めたということだと思うんですけれども、もう少し早く、今大臣まさにおっしゃったとおり、GXとDXへの、こういった新しい分野あるいは生産性の向上に資することにもう少し早くかじを切る、あるいは政府が旗を振る必要があったと思いますが、最後に、この点について大臣の御認識、お考えをお尋ねしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 今からでも間に合うと思います。

小山委員 以上で終わります。

岡本委員長 次に、落合貴之さん。

落合委員 立憲民主党の落合貴之でございます。

 先日の大臣所信の聴取を踏まえまして、今日、重要であると思われる項目について質問させていただきます。

 本日の答弁を拝聴していますと、前大臣よりも御自身の言葉で率直に語ってくださっているなという感じがいたしますので、是非率直に私とのやり取りもいただければと思います。

 まず、新しい大臣ですので、基本認識からスタートをしたいと思います。

 まず、経済がいい状況というのはいろいろあるわけですけれども、根本的に大切なのは、やはり国民の所得が上がって、生活水準が上がって、消費が増えて、幅広く日本中にお金が循環をしていくということが基本的には大切だというふうに思います。

 今、バブル以降最高の株価にもなっていますけれども、お配りした資料の一を参考のため御覧いただければと思います。

 これは、アベノミクスが始まって以降、この十年ちょっとの間の物価、名目賃金、実質賃金、消費支出の推移を折れ線グラフにしています。これは、トレンドとして、賃金の上昇よりも物価の上昇率の方が高いということで、実質的には賃金がずっと下がってきてしまっている。プラス、コロナもありましたので、世帯消費は実質賃金の下落よりももっと下がってしまっているという状況です。アベノミクスが始まる前よりか今の方が実質賃金も低い、それから世帯消費もかなり大幅に低いという状況になってしまっています。

 経済政策、何が問題だったのかなというふうに考えますと、次のページの資料二を御覧いただければというふうに思います。

 株価は上がっているというのは、資本金十億円以上の企業のお金の使い方を見てみますと、株価が上がるような政策をしてきたな、企業行動もしてきたなということがよく分かります。これは、一九九七年から二〇二二年度、最新のものですね、まだ二〇二三年度が終わっていませんので、までの企業のお金の使い方を法人企業統計でまとめています。

 この二十五年間で、配当金は八倍になりました。特にアベノミクス以降は、この部分がかなり上がっています。それからもう一つ、内部留保も上がっているのと、プラスして、経常利益も三・八倍上がっています。ただ、売上げが一・〇九倍なのに何で利益が三・八倍なんだろうというふうなのをよく見てみますと、設備投資が二十五年前よりか低い、一割以上低い。それから、従業員給与も、最近は人手不足で上がってきているにもかかわらず、二十五年前と同水準ということになってしまっています。

 要は、これまでの、特に日産のカルロス・ゴーンさんがやった会社の改革等もありますけれども、二〇〇〇年前後というのは、短期利益、今年の利益とか四半期の利益を上げることを重視してきた、そういったことで、利益は上がるようになりました。それから、株主からも評価される経済の体質にはなりました。しかし、利益を上げたり配当金を上げるために、会社の将来のための設備投資を減らしたり、あと人件費ができるだけ上がらないように工夫をしてきた。実際に非正規雇用の割合も増えてしまいましたし、平均すると所得も下がってしまっています。

 こういった二十五年間の経済政策を行ってきたことが今日本の成長力の低下につながり、それから人材不足、産業競争力、新しい経済に対応できていない。これは、二十五年間を見てみると、この原因というのがある程度分かるわけでございます。

 萩生田大臣のときだったと思いますが、経済産業政策の新機軸というものを経済産業省が打ち出しました。私が指摘する短期的な経営から転換して、大規模、長期、計画的に経済政策を打っていく、産業政策を打っていくということがうたわれたわけでございます。

 大臣、経産省のトップとして、これまでの産業政策は短期利益に偏りがちだった、これをしっかり見直して、経済産業政策の新機軸で打ち出したように、大規模、長期、計画的な政策を打っていこうと思っている、そして、重要なのは、言うだけではなくて、やはり財政支出をある程度大規模、長期、計画的にしていく必要があると思います。財政も含めて、国が関与をある程度していく、そういう経済産業政策に変えていくという姿勢でよろしいでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 私、久しぶりに経済産業政策を担当することになりまして、御指摘の経済産業政策の新機軸の議論、これは産構審の議論にも参加をさせていただきましたけれども、まさに私が今まで考えていたことと本当に軌を一にした議論が行われているという印象を持ったということをまず申し上げたいと思います。

 その上で、私は、日本経済の持続的な成長のためには、御指摘のように、国内投資を喚起をして、イノベーションを加速をして、所得の向上、こういったものにつなげていく好循環、これを実現することがもう何よりも必要だと思っています。

 このため、国内外の経済社会環境の変化を捉え、GX、DXを始め社会課題解決を成長のエンジンとすべく、官も一歩前に出まして、大規模、長期、計画的に投資を進める取組、これを経済産業政策の新機軸として今まで推進してきたし、私も同じ思いで推進していきたいと思っています。

 足下、国内外のマクロ環境の変化とこうした積極的な産業政策によって、百兆円規模に達しつつある国内投資あるいは三・五%を超える賃上げ、この二つで三十年ぶりの高水準ということになってきておりまして、まさに潮目の変化が見られるということであります。したがって、今まさに日本経済を成長軌道に乗せるための正念場であるというふうに考えています。

 私は、こうした一歩踏み込んだ産業政策を継続することで、こうした潮目の変化を確実なものとして、コストカット型経済から投資も賃金も物価も伸びる成長型経済への転換を実現していかなくてはならないと思っています。

 政府としてあらゆる政策を総動員しということでありますので、必要な財政措置ももちろん講じるという前提で、民間企業の予見性を高め投資の呼び水となるような役割を果たすという強い決意の下で、日本経済の持続的成長に向けて、引き続き経済産業政策に取り組んでいきたいというふうに考えています。

落合委員 先ほどの株高の御答弁の中で、賃上げ等も評価されているというような感じの答弁も入っていましたが、これは岸田内閣のアピールポイントとして、いろいろな大臣も、総理も含めておっしゃっているんですけれども、実質賃金というのはずっと下がっていますよね。なので、先ほど指摘したように、賃金が上がっている上がっているといっても、物価の方が上がっていますので、実質的には賃金はずっと下がっています。それは、今の最新のデータでも実質賃金はずっと連続して下がっています。

 ですから、それは、今の岸田内閣の経済政策で、残念ながら、名目賃金は上昇しているんですが、経済全体の効果として、賃金上昇は達成されていないということは指摘をさせていただきたいと思います。この状況が続けば自律的な経済回復はできない、したがって、物価よりも賃金を上げる経済政策を行っていかなければならないというふうに思います。

 財政支出については、もちろんやっていくというふうに大臣から御答弁がありました。私も、これは、もう二十五年前から、イノベーションが重要だですとか、何というんですか、スタートアップですとかベンチャーが重要だ、新しい産業には必要だと言われてきましたが、最近、いろいろな専門家もやはり論調が少し変わってきたと思うのは、二十五年前の経済成長戦略としては、何となく国がなるべく関与しない方が新しい産業が出てくるんだというようなニュアンスがその頃はあったと思います。

 最近出ているそういう専門家の本を見ますと、例えば、インターネットに代表されるように、再エネもそうらしいですけれども、アメリカで、軍が長期的に予算を獲得して、かなり長期的に研究開発がされてきた上で、民生分野に移ってきた。軍の予算をつけていたということは、財政支出で新しい産業をつくったということです。

 したがって、何だかんだ言って最近分かってきたのは、国がしっかり関与をして、しかも財政支出を長期的に行っていかなければその産業は育っていかないというような論がだんだん主流に変わってきていると思います。やはり、その視点を我が国の政策にも取り入れていくことが重要であるというふうに思います。

 それでは、今日はデジタルに少し焦点を当てていきたいというふうに思います。

 これは、わざわざデジタル庁も最近つくりましたし、デジタルというのが一つの、内閣の力を入れる分野になっているのと、それから、経済成長戦略としても、DX、デジタルトランスフォーメーションというのが柱に掲げられています。デジタルを使って、ビジネスも社会も変えていくんだ、新しいものに変えていくんだということを掲げているわけですが、実際に見てみますと、一般企業がデジタルを取り入れるときに、じゃ、デジタル企業、どこと取引するんだというと、ほとんど海外企業になってきちゃっている。

 要は、これから取り上げるクラウドにしても、ネット広告にしても、それから動画配信とか音楽配信にしても、全部、強い企業は外国企業であるということでございます。しかも、後ほど聞きますけれども、政府の共通基盤の、デジタル基盤のクラウドさえ外国企業にお願いする。これは、デジタル化を進めれば進めるほど、海外収支が赤字が広がっていくという状況に今なっているわけです。

 次の次の質問で国内のデジタル企業を強化しなきゃいけないんじゃないかというのは伺いますので、まず、デジタル赤字が拡大している、それは、先ほど申し上げたように、日本の企業がデジタルサービスを提供できないので、政府がDXしてくださいと言えば言うほど、旗を振れば振るほどデジタル赤字が拡大していく。

 今まで我が国は、生活に必ず必要な、食料自給率も低かった、それからエネルギー自給率も、ほとんど外国に頼ってきた。今度は、生活にデジタルが不可欠だという社会を築いていく中で、デジタルサービスの提供も自前でできない。こういった状況をどんどん加速させているわけですけれども、これは、デジタル赤字自体を解消しなきゃいけないというような問題意識は根本的に持っていらっしゃいますでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 赤字そのものが悪いと言われてしまいますと、活用するなということになりますので、どんどん、何というんですか、下方への悪循環が起こっていくような気がしてならないわけでありますが、ただ、クラウドを始めとしたデジタルサービスは、私は、国民生活や経済活動の多くの場面で活用もされておりまして、重要な社会インフラとしての役割を担っていると認識しています。

 社会のデジタル化や企業のDXを進めていく観点からは、サービス提供者が国内か国外かにかかわらず、利便性の高いデジタルサービスを活用していかねばならないということにあるんだろうと思っています。

 他方、社会インフラとしてのデジタルサービスを海外に依存し続けるということは、経済安全保障の観点に加えて、いわゆるデジタル赤字によって国際収支の悪化要因となる観点からも好ましくないと思っています。

 このため、経済産業省としては、デジタルサービスの研究開発投資やデータセンター等のインフラ整備支援を行うとともに、AIを始めとするデジタル技術の利活用、これもしっかり進めるために人材育成などに取り組んでいかねばならないと思っています。

 その際には、内向きではなくて、組織や国境の垣根を越えて、外からの新しいアイデアや異なる視点を積極的に取り入れていくことが重要であると考えていますので、関係者間の連携を図りながら、自らの強みを生かした事業者の競争力強化に向けてスピード感を持って取り組んでいくということかなというふうに思っています。

落合委員 そこは、根本的な哲学として、私は、経産省は少しずつ改めていった方がいいんじゃないかというふうに思います。

 先ほどの財政支出も、政府がお金を出したり関わらない方がいいというふうに言われていた二十五年前から、だんだんと、各国政府、変わってきました。今の答弁でおっしゃっているのは、まず、自由貿易は絶対だ、比較優位の原則にのっとってやることが世界全体の経済のパイを膨らませていくことになると。これは戦後の経済の考え方としては主流であったわけですが、しかし、貿易戦争ですとか、あと地域紛争がいろいろ起こってきた中で、世界中が自由に貿易をしていくこともだんだん難しくなってきた、そういった中で、経済安全保障が重要だという考え方が出てきたんだというふうに思います。

 国民生活に不可欠なもの、経済活動に不可欠なものはできるだけ自前でもやっていけるような状況をつくっていくということが基本的な考え方として今までよりも重要になってきているというふうに思います。

 一つ、ここ二、三年、私も取り上げてきて、経済安全保障の中では、当時の小林大臣にも取り上げましたけれども、国産クラウド、これは、この五年ぐらいデジタル化といえばクラウド化であって、ちょっと前の数字を見てみると、クラウド、大企業でも使っていた比率というのはそんなに高くなかったのが、どんどん、ほぼ一〇〇%にクラウド利用率が高まっています。なので、基本的なインフラとして、デジタルインフラとして、クラウドというのは必要不可欠なものになっております。

 こういった観点からも、国産クラウドを育成していく、これは、エネルギー自給率を高めることとか食料自給率を高めるのと同じように重要なポイントであると思うんですが、産業政策をつかさどる齋藤大臣、どのようにお考えでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 基本的には同感であります。

 これまで日本においてデジタル投資が大きく増加しなかった背景としましては、ユーザー企業においては、デジタル投資を業務効率化のためのコストとみなして、新たな付加価値を生み出すようなデジタル投資を積極的に行ってこなかったとか、また、ベンダー企業においては、利幅は大きくないものの、他社参入が困難な個別システムの構築を中長期にわたって受託するビジネスモデル、こういったものが定着していたということから、クラウドを含む新たなソフトウェア開発に思い切った投資をしてこなかった、そういった構造があったというふうに認識をしています。

 一方で、世界的には、社会のデジタル化、DXの進展に伴って、御指摘のように、クラウドを始めとした新たなソフトウェアの開発や利活用が進んできています。こうしたクラウド化の波は日本にも到来したわけでありますが、対応できる日本のベンダー企業が限られていたために、外国企業のクラウドへの依存が高まってきたものというふうに承知をしています。

 政府としては、これまでもソフトウェアの技術開発等に対する支援を行ってきたものの、結果的に、こうした世界的な潮流の中で、我が国のユーザーとベンダーの投資行動を根本的に変えるには至らず、政策として不十分な点があったというふうに考えています。

 こうした過去の反省に立って同じ轍を踏まないようにすることが重要で、このため、経済産業省では、人材育成やDX投資促進税制を通じて、ユーザー企業による新たな付加価値を生み出すデジタル投資、こういったものを促進するとともに、経済安全保障推進法の重要物資として指定するなどして、幅広い利用者のニーズを踏まえて高い目標に挑戦するクラウド事業者を支援をしてきているところであります。

 さらに、現在、社会実装が進む生成AI、これは大きなゲームチェンジャーになります。こうした革新的技術の登場を大きなチャンスと捉えて、関係省庁とも連携しながら、AIの利活用を適切に進めつつ、ベンダー企業の競争力強化にも取り組んでいきたいというふうに考えています。

落合委員 後半、AIへの言及もありましたけれども、まず足下はクラウド、その後、何年後か、もうすぐかもしれないんですが、AIも必ず仕事をする上で使う必要不可欠なデジタルのツールになると思います。この二つは、日本企業が全く太刀打ちできなくて、外国企業に頼らざるを得ない状況になれば、先ほどのデジタル収支はもっともっと大きく桁違いに広がっていくこととなります。このクラウドとAI、これは重要なデジタル産業として育てていく必要が国益のためにもあるということを強調をさせていただきたいと思います。

 今日は、石川デジタル副大臣にもお越しいただきました。

 これは、政府のクラウドが、今、マイナンバーカードとかで、政府の仕事を、地方自治体も含めて全部デジタル化しようと、それを受託するクラウドの企業が外国の企業を指定したということで、それでいいのかという議論もありました。今回、さくらネットがやっと事業者に指定されるということで出てきたわけですが。

 これは、よく私も前に調べましたら、アメリカにはCLOUD法というのがあって、米国のクラウド企業が所有したり管理している情報は、米国政府が命令すれば、その情報を取ることができるという法律があります。

 それから、私は質問主意書を出しました。日米デジタル協定というのが先日結ばれましたけれども、ここでも、米国企業が保有する情報を電子的手段によって本国に移転させることは、禁止も制限もデジタル協定でされていません。なので、そういう、だだ漏れになっちゃうかもしれない状況の中で、政府の基盤を全部外国企業に委ねようという政策が行われてきたわけです。

 これは、国産クラウドに基本的には発注するべきじゃないですか。

石川副大臣 落合委員にお答えいたします。

 問題認識は、私も共有しているところでございます。

 それで、ガバクラについて御質問でございますが、ガバクラについては、セキュアでコスト効率が高いシステムであるということを導入条件としております。国内企業であれ外国企業であれ、最新かつ最高レベルの情報セキュリティーを確保できること、それからデータ保存の安全性を確保できること、こういったことを基準に今選定をしているところでございます。

 御指摘いただいたさくらクラウドでございますが、ガバクラのサービス業者、今、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、オラクル、これに加えて、日本のさくらインターネット株式会社を条件付で採用することを決定したところであります。さくらインターネットは、デジタル庁がガバメントクラウドに求める基準を現時点では満たしていないものの、二〇二五年度末までに求める基準に到達できる事業者として期待をしているところです。

 また、国内事業者は多くのアプリケーションソフトを構築、提供しております。クラウド基盤の利用が進めば、地理的な制約を受けずにアプリケーションを提供することが容易になることから、例えばデジタルマーケットプレースでは、行政機関や自治体がソフトウェアをカタログから検索して、その結果を活用して自治体のシステムに組み入れるとか、様々な事業者の参入を促すことを目指しております。具体的には、窓口DX、こういったところに活用が期待されているところでございます。

 デジタル庁では、我が国のデジタル化における司令塔であるため、落合委員の御指摘のデジタル赤字、それから国内産業の動向にもしっかり目を配りながら、引き続き社会全体のデジタル化に取り組んでまいります。

落合委員 ヨーロッパでは、政府のそういう基盤情報システムを外国企業に頼むことはデジタル主権という点から問題があるということで、議論が起こっています。幾らデジタル化しますといっても、政府の重要なものを全部外国企業に預ける、これは政府の選択として私は正しいものであるとは思いません。是非再考いただければと思います。

 最後に一問、公取委員長にお越しいただきました。

 私は、デジタルプラットフォーマーはある程度正しい方向に行くように最低限の規制はつくるべきだということを申し上げてきました。そういった中で、そういった規制をようやく検討している、新法を検討しているというようなニュースも流れています。これはどういった形でお考えなんでしょうか。

古谷政府特別補佐人 お答え申し上げます。

 デジタル分野は、我が国経済の成長に不可欠でございまして、そのためにも、公正な競争環境確保が重要な政策課題であるというふうに認識しております。

 特に、スマートフォンが国民生活や経済活動の基盤となっております中で、スマートフォンの利用に必要なOSと呼ばれます基本ソフトですとかアプリストアなど特定のソフトウェアは、現在、ビッグテックと呼ばれる特定少数の有力な事業者による寡占状態にございまして、様々な競争上の弊害が生じているというふうに思っております。

 こうした課題に対処しまして、デジタル市場におけるイノベーションを促進することですとか消費者の選択肢を広げていくということが大変重要だと思っておりまして、スマートフォンのアプリストアなどの市場に関する競争環境の確保を行うための法制度について、現在、公正取引委員会の方で、内閣官房とも連携をしながら、新しい法案の準備を行っております。

 具体的には、一定規模以上の特定のソフトウェアを提供する事業者を指定をいたしまして、競争を制限するおそれのある行為を禁止するなどの規定を定めるとともに、違反行為に対する公正取引委員会による命令等の規定を整備するという方向で検討をさせていただいております。

 御指摘といいますか、欧州の方でデジタル市場法といった先行する具体的な法律が進められているといった状況にもありますので、そうした諸外国における状況も見極めながら、鋭意検討を進めていきたいというふうに思っております。

落合委員 はい。では、重要な問題ですので、続きはまた次回改めさせていただきます。

 ありがとうございました。

岡本委員長 次に、山崎誠さん。

山崎(誠)委員 立憲民主党、山崎誠でございます。

 午前中最後のバッターとして質問させていただきます。

 齋藤大臣には、就任おめでとうございます。西村大臣ともいろいろ議論してまいりました。GX、大事な法案など、本当に詰めてきたときだったので、突然の辞任は非常に残念でございました。引き継がれた齋藤大臣も、もう経産省の専門でもございますし、是非前向きな議論をさせていただきたいと思います。

 とはいえ、今日、ちょっと私、取り上げるのは原子力発電の事業に関してでありまして、ここは政府と大きく方針が異なるところでございますので、恐らくかみ合わない議論にもなるかとは思うんですが、せっかく大臣が替わられたところなので、今までの議論も踏まえて、全体、一回俯瞰をしたいと思いますので、おつき合いをいただければと思います。

 東日本大震災、そして東京電力福島第一原発の事故から十三年がたちました。本当に、亡くなられた多くの皆様に哀悼の誠をささげるとともに、被災されてまだ避難生活の方も大勢いらっしゃいます、心からお見舞いを申し上げるとともに、一刻も早い生活再建をということで、まずは冒頭、お伝えをしたいと思います。

 最近の私の動きですが、三月四日には福島に行ってまいりました。双葉町長にもお会いして、伊沢町長にお話を聞きました。特定復興再生拠点というのが立ち上がって、避難指示が解除されて、新しい駅前の開発なども進んでいるという、すごくすばらしい開発が進んでいる様子も見せていただきました。ただ、町長のお話は、とにかくここまで来るのに十一年五か月かかったんだよ、そして、この双葉町はまだ復興のステージ、スタートについたところなんだというお話でございました。

 そして、もう一つ強く要望があったのは、この特定復興再生拠点外のこれからの在り方、これから、特定帰還居住区域ということになって、手挙げ方式で戻りたい方をフォローする、そういう事業がスタートするわけでありますけれども、その事業について、やはり、これからどんなふうに取り組んでいったらいいのか、国の支援というのはどういうふうになるのかということを非常に心配されていました。

 特にそこで聞いた住民の声で私はすごく象徴的だったのは、自宅ですから、除染してきれいにしてもらいたい、場合によっては解体だとか次のステージに行きたいとは思う、手を挙げたいんだ、手を挙げます、ただ、手を挙げて、じゃ、すぐ住み始めることができるかといえば、整えてもらっても周りのインフラは何もない、自分の家一軒だけ残されている、そういう状態で手を挙げるのをはばかってしまう、逆に言うと、手を挙げたんだから早く戻れよ、そう言われてつらい思いをすると。そんなことが起きているというのが現場の実態であります。

 それから、もう一つは、三月十日に横浜で東日本大震災神奈川の追悼の集いというのがありまして、参加しました。そこで、今避難されている方からのお声を聞きました。写真などを見せていただきましたけれども、大事に住んでいるお宅が本当に汚れてしまって朽ち果てていく、そういう姿、もう本当にいたたまれない思いだ、そして、大事なお父様が亡くなられた、ふるさとに帰りたい、最後までそれをお訴えをされていたけれども、かなえることができなかったんだ、それが今のあの原発災害の現状だということであります。

 私は、まさに原発災害はまだ続いている、十三年たったからこの災害、被災というものが既定事実化されて薄らいでいくのではなくて、被災者の一人一人の思いはあの災害からまだまだ癒やされずずっと続いているんだというのが、我々、改めて認識をしなければいけないお話だというふうに思っております。

 大臣、この原発事故の十三年目の受け止めをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 まず、東日本大震災と原発事故から十三年が経過をする中で、いまだに多くの方々が避難生活を余儀なくされているということであります。私からも、被災された全ての皆様に改めて心からお見舞いをまず申し上げたいというふうに思います。

 東京電力福島第一原子力発電所事故への真摯な反省、まずこれを決して忘れてはならないというふうに思います。原子力政策の原点、安全神話に二度と陥らない、そういった決意の下で、高い独立性を有する原子力規制委員会を設置し、世界で最も厳しい水準となるような規制基準を策定してきたものというふうに承知をしております。

 原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めない限り原子力発電所の再稼働が認められることはない、こういった政府の方針、この方針は変わらないことも私からも表明をさせていただきたいと思います。

 そして、やはり、避難をされている方々、これは一人一人事情が大きく異なっていると思いますし、町、村によっても状況は違っておりますが、私としては、帰還困難区域の様子を自らも見てまいりましたが、住民の方々の早期帰還に向けた思い、これを強く実感もしてきました。一刻の停滞も許されない重要な課題というふうに認識をしていますので、住民の方々の思いに応えるべく、政府として、帰還意向のある方の一日も早い帰還に向けて、除染やインフラ整備などの帰還特定居住区域の避難指示解除のための取組を進めていきたいと思っていますし、将来的には帰還困難区域の全てを避難指示解除して、復興再生に責任を持って取り組んでいくという決意でもあります。

 更に言えば、避難指示の解除後も、生活環境の整備や地域産業の復興も課題であります。引き続き、地元の皆さんと連携しつつ、買物環境ですとか飲食店の整備、事業、なりわいの再建なども後押ししていく必要があると思っています。

 私は、福島の復興が実現するその日まで、被災者の方に寄り添いながら、一日も早い東日本大震災からの復興に全力で取り組んでいきたいと、地元を伺いながら改めて強く思ったところであります。

山崎(誠)委員 大臣、ありがとうございます。御丁寧な答弁ありがとうございます。

 一点だけ。被災された方は、福島に戻りたいだけではないんですよね。もう十三年たって別な地で生活を始めている、その中で困難を抱えている方もたくさんいます。絶対その人たちも忘れないでいただきたい。

 その典型が、いわゆる自主避難者、区域外避難者という方なんですよ。ずっと私、この方々に注目をしてきたのでありますけれども、いまだに厳しい状況にあります。

 復興庁に来ていただいています。この区域外避難者について、端的に、短めで現状を教えてください。

宇野政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力災害からの福島県からの避難者は、全国に避難しているというふうに認識しております。このような避難者に対し、復興庁では、被災者支援総合支援金により全ての避難者を対象に支援を実施しているところでございます。(山崎(誠)委員「自主避難者は」と呼ぶ)その支援に当たりまして、指示避難者であるか、それからいわゆる自主避難者であるかを問わず、我々、全ての避難者を対象に支援を実施しているところでございます。

山崎(誠)委員 これは時間があればいろいろとお聞きしたいんですけれども、区域外避難者、自主避難者、例えば東雲の国家公務員の住宅にいる方は、今、追い出しを食らって裁判なんですよ。裁判の被告として、追い出されている。家賃を二倍請求されて、早く出ていけと言われているんですよ。出ていない方が、そういう形で今苦しんでいるんですよ。そのお話を聞きたかったんだけれども、ちょっと時間もないので、省略されたんだと思います。

 それで、昨年、国連の方で、国内避難民の人権特別報告というお話がありました。これはちょっと大臣には通告をしていなかったので初めてかもしれませんけれども、セシリア・ヒメネス・ダマリーさんという方が二二年の九月から十月に訪日されまして調査をしました。昨年、人権理事会で最終報告がありました。

 その中で、幾つかポイントはあるんですけれども、日本政府が原発避難者に対しての支援策を打ち切るということは駄目だ、問題だということが大きなメッセージであります。もう一つは、今お話があった、避難元が避難指示の区域か区域外なのかという区別はしてはいけない、避難者を国内避難民として差別なく支援をする必要があるんだということです。それから、避難者の皆さんが、自らの意思で、安全に、尊厳を維持しつつ帰還できる、又はその他の場所で自らの意思で再定住できるように、その条件を、国は一義的な義務と責任を負っているんだ、そういうメッセージを出されています。私は、非常にバランスの取れた、調査をした上での大事な結論だろうというふうに思っております。

 私は、こうした避難者を置き去りにしたまま、片や原発の再稼働を急ぐとかあるいは新増設の話を進めるとかというのは、やはり余りにも無責任なんじゃないかなというふうに思うんです。これは個人的な感想も入ります。

 是非、私は、今のお話でいくと、区域内外とかを問わず、避難者の皆さん、全ての原発被災者の皆さんの生活再建を実現をして、国の責任として実現した上で次の議論をしていただきたいと思うんです。

 生活再建に国として責任を持つということを、改めて、大臣、お約束いただけませんか。

齋藤(健)国務大臣 いずれにいたしましても、被災された方への支援につきましては、復興庁と連携を取りながらしっかりやっていきたいという気持ちに変わりはありませんし、また、先ほどの国連の方のレポートについては、済みません、今お聞きしたばかりなので反応できないんですけれども、しっかり読んでおきたいなと思います。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。是非お目通しをいただければというふうにも思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問なのでありますけれども、東京電力福島第一原発の廃炉作業の進捗、今後の見通しについてということでお聞きをしたいと思います。

 世界最悪級の原発事故を起こしてしまいました。政府と東電は、二〇五一年までに廃炉を完了するという目標を持っております。この目標自体には、当時、私も民主党におりました、民主党の判断も入っていると思いますので、これは本当に政治家全員が責任を持たなければいけない目標だと思うのでありますけれども、そのときの具体的な姿、二〇五一年、どういう姿を想定するのかという、そういった絵は見えておりません。

 また、デブリの取り出しは御存じのとおり大変難しい困難な作業ということでございますし、例えば、様々な放射性汚染物質、これを県外で処分をするという、その議論もまだ進んでいないという認識であります。

 専門家の試算によりますと、この放射性廃棄物、福島の第一原発から出るものというのは、事故を起こしていない原発の六百基分だという、そんな試算も出ています。膨大な量の放射性廃棄物が残念ながらこれから出てくる。

 大臣、事故から十三年たちました。現時点で、福島の皆さんは、廃炉というのがどこまでどういう形で進められるのかというのをやはり見せてもらいたい、ゴールのイメージというものをやはり示してもらいたい、それを強く望んでおられます。恐らく、まだ、どういう姿というのはなかなか言いにくいんだと思います。全部更地にして元どおりの土地に戻すのか、あるいは何かしら残ってしまうのか、そういったものもこれから決めなければいけないんだと思います。

 もし想定しているものがあれば教えていただきたい。もしまだ定まっていないとするならば、いつまでにどのようにそのゴールを決めていくのか、国はどこまで責任を持つのか、その辺り、大臣、御所見をお聞きしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、福島第一原発における廃炉の最終的な絵姿というものを描くには、その前に、取り出される燃料デブリの性状などの調査、分析等も踏まえる必要があります。同時に、地元の皆様の思いもしっかりと受け止めて、その絵姿というものを具体化していく必要があるというふうに考えています。

 その上で、福島第一原発の廃炉は中長期にわたる取組であります。したがって、大事なことは、地元の方々を始め、姿を示してほしいという気持ちは十二分に分かりますが、透明性高く、積極的かつ能動的な情報発信や丁寧な双方向のコミュニケーションを行うこと、こういったことをしっかりやっていくということが重要であるというふうに考えています。

 また、地元の方々が参加される廃炉、汚染水、処理水対策福島協議会や座談会など、これまでも様々な機会を捉えて、廃炉の取組について、地元の方々へ説明や意見交換を実施しておりまして、こうした場も踏まえながら、地元の方々の思いをしっかり受け止めていきたいと思っております。

 以上です。

山崎(誠)委員 ありがとうございます。

 ALPS処理水の海洋放出のときに起きた事象というか、その過程というのはやはり問題があったと思うんですよ。というのは、やはり、漁業関係者の皆さん、地元の合意なしには放出しないと言っていた、ただ、それを半ば強引に放出してしまったというのが地元の皆さんの印象だと思いますよ。もうこれは苦渋の選択ですよ。タンクをやはり早く減らしていかなきゃいけない、あの状態も嫌だ、でも海洋放出も心配だ、そういう中で苦渋の選択をしているわけですよ。同じようなことがまた廃炉の作業のプロセスの中でも、議論の中でも起こるんじゃないかという、私はそこを危惧するんですよ。やはりそこは誠実に、改めて心を込めて対応いただきたいというふうに思います。

 難航しているデブリの取り出しなんですけれども、このデブリについては、このまま計画どおり進めることができるのか。私は、ここは一旦立ち止まってでも、取り出しだけではない方法を検討しなきゃいけない、チェルノブイリのような石棺のような方法というのもどこかで検討すべきじゃないかというふうにすごく思います。

 そうなりますと、廃炉の姿が変わってしまうわけですね。十三年で、様々これからなんだという、それも分かりますけれども、それでも、十三年たっているんですから、是非この辺りの検討を前に進めていただきたいと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

齋藤(健)国務大臣 委員御案内だと思いますけれども、燃料デブリの取り出し作業、これは世界的にも前例がない、技術的難易度の極めて高い取組でありまして、取り出しを進めながら徐々に得られる情報、経験、こういったものに基づいて柔軟に方向性を調整する、そういうステップ・バイ・ステップのアプローチというものがやはりどうしても必要になる作業ではないかなというふうに思っています。

 そのような中で、燃料デブリの大規模取り出しのための工法の設計検討等も踏まえつつ、燃料デブリ取り出し完了の時期も含めて、全て今後の進め方ということになっていかざるを得ないと思っています。

 ただ、いずれにいたしましても、中長期ロードマップに基づき、二〇四一年から二〇五一年の廃止措置完了、これを目指して、国も前面に立って取組を進めていくという方針には変わりはございません。

山崎(誠)委員 五一年というのは、遠いようで近いですからね。

 大臣の答弁は誠実で、私はそれは仕方ないと思います。そのぐらい原発事故の対応というのは困難だということは、やはり我々は認識しなきゃいけない。だから、二度と事故を起こしちゃいけないんだというのが、私は、当然だと思いますけれども、福島のあの悲劇の教訓だということだと思っております。

 次に行きます。

 能登半島地震において、いろいろな教訓が出てきました。まず、避難計画の策定という観点から能登半島地震の被害をどのように見るかです。特に、複合災害という、その言葉が今避難計画について問われているわけでありますけれども、内閣府の参考人、この能登半島の教訓が避難計画の策定にどういう影響を与えるのか教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 原子力災害に備えた避難計画につきましては、内閣府で、原子力発電所の立地地域ごとに設置しております地域原子力防災協議会の枠組みの下、関係自治体や関係省庁とともに、地域の実情を踏まえて検討を行っております。

 その際、ただいま委員から御指摘ありましたとおり、大規模な自然災害との複合災害を想定して、道路が寸断した場合の避難経路や対応などを含め、地域の避難計画を含む緊急時対応を取りまとめ、あるいは取りまとめに向けた検討を進めているところでございます。

 このように、既に複合災害の想定を行っておりますけれども、今回の能登半島地震での教訓を踏まえながら、各地域ごとに不断の見直しを図っていくということとしたいと考えております。

山崎(誠)委員 私、この間、東海第二の東海村、水戸市、そして茨城県と行ってきました。この複合災害についてのお話をしましたが、非常にやはり悩んでいらっしゃいます。東海村の村長さんは、自分たちの村のレベルでは複合災害への対応を議論することはできない、県やあるいは国の議論を待つしかないというお話をされていました。僕は、それは致し方ないと思うんですよ。

 これは相当国なり県なりが前に出て見直さないと、実効性ある避難計画、複合災害における避難計画というのはまだまだ私は十分ではないというふうに思います。

 志賀原発がございます能登半島の様子、この間見てきましたけれども、道が寸断されて通ることができない、どこの道がどういうふうに通れるのか通れないのかも分からないというのが初期の状況ですよね。そんな中で、じゃ、このルート、あのルートと選んで逃げられるのか。あるいは、海を使って逃げようと思ったら、海岸が四メーターも隆起しちゃって港も使えない。こういう状況では、私は避難計画は実効性あるものにはなかなかならないと思いますよ。是非これは見直しを進めてもらいたい。不断の見直しとおっしゃっていますけれども、続けていただきたいと思います。

 そして、次、規制委員長にお越しいただいていますので、これは繰り返しになるのでありますけれども、原発の設計における基準地震動の設定のレベルの話であります。

 これは前もお聞きをしていますけれども、地震に対して、今の基準地震動は七百ガルとか千ガルだとか。例えば、川内原発の基準地震動は今六百八十七ガルです。二〇一六年の熊本地震のガル数というのは千七百四十ガルです。二〇一八年の北海道胆振東部地震のガル数というのは千七百九十六ガルです。もう一度言います。川内原発の基準地震動は六百八十七ガルなんです。

 こういう、地震が頻発する日本でこの基準地震動を超える地震が起きたときに、そもそも、緊急停止、止める、冷やす、閉じ込めると三段階あるわけですけれども、止めることに失敗する確率というのは、私は、そのリスク、この数字だけを見ても高いんじゃないかと。特定の原発の立地地域で地震が起きにくいかもしれません。でも、自然現象ですから、これを超える地震が起きるかもしれない。

 例えば、今言ったような基準地震動の倍の地震が襲ったような場合に、いわゆる緊急停止、スクラム、これがうまくいかなかったことも想定できると思います。想定しなければいけない。同時に、配管や様々な安全設備が壊れることもある。

 核が暴走する、原発が暴走した状況でどんな事故が起きますか。規制委員長、お聞かせください。

山中政府特別補佐人 お答えいたします。

 原子力規制委員会は、各原子力施設における基準地震動が、当該施設の敷地及び敷地周辺の活断層の分布状況等、地域的な特性を踏まえて、断層の長さ等の不確かさを十分考慮した上で、地震学及び地震工学的知見に基づく総合的な観点から策定されていることを厳正に確認をしております。

 しかしながら、仮に基準地震動を大幅に上回る地震動が発生した場合、原子炉停止の失敗や配管の破断などが生じて、結果として、原子炉の冷却に失敗し、燃料の溶融を伴うような重大な事故となるおそれはあるものと考えております。

 ただし、新規制基準では、そのような重大な事故の場合でも影響を緩和するための対策を求めております。具体的には格納容器の閉じ込め機能の維持など、事故の影響を緩和するための対策を求めているところでございます。

山崎(誠)委員 端的にお答えいただきたいんですけれども、運転が停止しませんでした、各原発が今暴走しています、冷やすこともできなくなりました、機能が低下しましたと。過酷事故が起きますよね。今の新規制基準だと福島のような過酷事故は起きないと言い切れますか。

山中政府特別補佐人 繰り返しになりますけれども、基準地震動を大幅に超えるような地震が生じた場合には、結果として、原子炉の冷却に失敗をして、燃料の溶融を伴うような重大な事故となるおそれはあるものと考えております。

山崎(誠)委員 時間がないので駆け足なんですけれども、基準地震動は低いんですよ。千ガルを超えるような大きな地震というのは頻発しているんです。それが日本なんですよ。

 大臣、避難計画の策定も難しいです。そして、今のような地震には、残念ながら、原発は弱いんです。こういう原発をこれからも使い続けることについて、その妥当性についてどうお感じですか。

 現行のエネルギー基本計画に何と書いてあるか。第六次の、現行のですよ、私はまだ有効だというふうに認識しておりますけれども、そこには、東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発の依存度を低減させると書いてあります。

 今言ったような地震のリスクだとか避難計画の策定の難しさだとか、ほかにもいろいろな課題があります。使用済核燃料の問題はどうするのか。そういうことを考えたときには、私はこの方針というのが正しいんじゃないかと思うのでありますけれども、大臣、どうお考えですか。

齋藤(健)国務大臣 基準地震動の是非について私の方から答弁するのは差し控えたいと思いますけれども、先般の原子力規制委員会において、志賀原発については原子力施設の安全機能に異常はなく、その他の原発についても安全確保に影響のある問題は生じていないという見解が示されたというふうに承知をしています。

 原子力規制委員会が新基準に適合すると認めない限り原子力発電所の再稼働が認められることはないという政府の方針、この方針は変わらないということであります。

 その上で、将来にわたってエネルギー安定供給の責任を果たしつつ脱炭素社会の実現をしていくために、安全性の確保を大前提に原子力の活用を進めていく、それから、第六次のエネルギー基本計画、これはそのとおりに進めていくということになっております。

山崎(誠)委員 時間になりましたので終わりますけれども、ここは大事なところなんですよね。

 今まで経産大臣は、歴代、新増設は想定していませんとずっと言っておりました。だけれども、GXの中には革新炉の建設という話が出てきます。これは方針を大きく転換しているんじゃないか。

 私は今ずっと、るる議論してきました。福島の現場の様子、そして事故のリスク、そのときの被害の大きさ。まだ議論したい点がたくさんあったんですけれども、こういうのを考えたら、私は、六次のエネルギー基本計画が正しくて、原発依存からの脱却をどうやって実現するかをちゃんと議論して、次の七次につなげていただきたいと思っております。

 引き続き議論させていただきます。今日はありがとうございました。

岡本委員長 次回は、来る十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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