衆議院

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第5号 平成28年11月16日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年十一月十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西銘恒三郎君

   理事 今枝宗一郎君 理事 岩田 和親君

   理事 中根 一幸君 理事 西村 明宏君

   理事 宮内 秀樹君 理事 津村 啓介君

   理事 本村賢太郎君 理事 佐藤 英道君

      秋本 真利君    大塚 高司君

      大西 英男君    加藤 鮎子君

      金子 恭之君    神谷  昇君

      木内  均君    工藤 彰三君

      小島 敏文君    佐田玄一郎君

      鈴木 憲和君    田所 嘉徳君

      津島  淳君    中谷 真一君

      中村 裕之君    根本 幸典君

      橋本 英教君    藤井比早之君

      古川  康君    堀井  学君

      前田 一男君    望月 義夫君

      荒井  聰君    黒岩 宇洋君

      小宮山泰子君    松原  仁君

      水戸 将史君    村岡 敏英君

      横山 博幸君    伊佐 進一君

      北側 一雄君    吉田 宣弘君

      清水 忠史君    畑野 君枝君

      本村 伸子君    椎木  保君

      野間  健君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国土交通副大臣      末松 信介君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  木村  大君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       若生 俊彦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 緒方 俊則君

   政府参考人

   (消費者庁審議官)    小野  稔君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房長) 吉田 光市君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            藤田 耕三君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         谷脇  暁君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        山田 邦博君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  石川 雄一君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  由木 文彦君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  奥田 哲也君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  佐藤 善信君

   政府参考人

   (国土交通省北海道局長) 田村 秀夫君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十六日

 辞任         補欠選任

  中川 康洋君     吉田 宣弘君

  清水 忠史君     畑野 君枝君

同日

 辞任         補欠選任

  吉田 宣弘君     中川 康洋君

  畑野 君枝君     清水 忠史君

    ―――――――――――――

十一月十五日

 道路運送法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 道路運送法の一部を改正する法律案(内閣提出第一九号)

 国土交通行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西銘委員長 これより会議を開きます。

 国土交通行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房長吉田光市君、総合政策局長藤田耕三君、土地・建設産業局長谷脇暁君、水管理・国土保全局長山田邦博君、道路局長石川雄一君、住宅局長由木文彦君、鉄道局長奥田哲也君、自動車局長藤井直樹君、航空局長佐藤善信君、北海道局長田村秀夫君、観光庁長官田村明比古君、内閣官房内閣参事官木村大君、内閣人事局人事政策統括官若生俊彦君、内閣府大臣官房審議官緒方俊則君及び消費者庁審議官小野稔君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今枝宗一郎君。

今枝委員 おはようございます。自民党の今枝宗一郎です。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速入らせていただきたいと思います。

 自公政権が誕生してもうすぐ四年です。この間に、株価は二倍となり、所得、賃金がふえ、有効求人倍率は上がり、失業率は低下をしました。しかし、地域に住む一人一人が成長、発展を実感でき、さらにGDP六百兆円という高みを目指すには、成長戦略こそ必要不可欠です。国土交通分野でも全力を挙げていかなくてはなりません。

 それでは、テーマごとにお話をしていきたいと思います。

 まずは道路であります。

 国土交通省として、GDP六百兆円を目指す上で、成長戦略につながる道路整備とはどのようなものだとお考えでしょうか。お願いします。

石川政府参考人 お答えいたします。

 今年六月に閣議決定されました日本再興戦略二〇一六におきまして、具体的施策として、道路ネットワークのストック効果を最大限に発揮させ、迅速かつ円滑な物流の実現、交通渋滞の緩和等を図る三大都市圏環状道路などの道路整備や、ETC二・〇等のビッグデータを活用したピンポイント渋滞対策などが位置づけられております。

 この方針を踏まえまして、例えば、中部圏におきましては、自動車や航空機などの物づくりを支える東海環状自動車道や三遠南信自動車道、また、特に自動車産業が集積する三河地域における渋滞緩和を図るための国道二十三号名豊道路、新東名と東名高速をつなぐ国道百五十一号などの道路整備を進めているところでございます。

 引き続き、安心、安全の確保を前提にしつつ、企業立地による生産性の向上や観光振興による民間投資の誘発など、国、地域の経済再生に資するストック効果の高い事業を着実に推進してまいります。

今枝委員 ありがとうございます。

 企業立地によるストック効果の重要性について御答弁をいただきました。これは非常に重要だと思います。これを考えますと、例えば、道路沿線で企業用地を新しく造成していくですとか、そういった大きな変化があるタイミングに間に合わせて道路整備を進めていくですとか計画的にやっていくという観点は非常に重要だと思います。

 例えば、今も御答弁で出ました名豊道路、国道二十三号線でありますけれども、二〇二〇年には沿線の蒲郡で新しい企業用地ができます。さらに、隣の豊川、豊橋といった地域でも新たな企業用地というものが検討されつつあります。しかし、問題は、この蒲郡と豊川の間が、国道二十三号線蒲郡バイパス九・一キロ、まさにミッシングリンク化をしているということで、周辺渋滞も本当にひどいことになっております。

 二十三号線が全線開通しないと、先ほどお話しいただいた企業用地のストック効果、まさにこの価値も上がらずに十分に効果が出ないということになってしまうわけであります。それゆえ、やはり二〇二〇年度内には完成をさせるべきだと私は考えております。

 このように、地域の企業用地の完成などを鑑みて、二十三号線蒲郡バイパスの整備をスピードアップして行う必要があると思いますが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 国道二十三号蒲郡バイパス等により構成されます名豊道路は、自動車産業の集積地でございます三河地域から三河港周辺へのアクセスを強化し、交通混雑の緩和や物流の効率化を図る重要な路線でございます。全体七十三キロメートルのうち、これまでに約九割が開通しておりまして、現在、蒲郡バイパスの未開通区間九・一キロメートルについて、用地の買収とトンネル工事等を全面展開しているところでございます。

 御指摘のとおり、名豊道路の沿線におきましては、二〇二〇年度から分譲を開始する予定の柏原地区工業団地を初めといたしまして、多くの企業が立地しつつございまして、名豊道路沿線の製造品出荷額等が四十五年で約十倍になるなど、ストック効果が発現をしているところでございます。

 引き続き、これらの企業立地に鑑みまして、また、地域の皆様の御協力、特に用地取得に対する御協力を得ながら、一日も早い開通を目指し、事業を進めてまいりたいと存じます。

今枝委員 ありがとうございます。ぜひ御尽力いただければありがたいと思っております。

 しかし、残念ながら、やはりまだ開通目標が掲げられていないというのも実情であります。用地買収も実は八九%を超えておりまして、八割を超える、こういう状況であります。開通時期を発表する素地というのはできているのかなと思うんですが、なぜ開通目標が掲げられないのか、そのあたりはいかがでしょうか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 当該区間の用地買収につきましては、委員御指摘のとおり、本年十月末におきまして進捗率は約九割に達しておりますが、一部の未買収地につきまして用地買収が難航している状況でございます。

 特に、橋脚やインターチェンジ付近など、工事工程に大きな影響を及ぼす用地を買収できていないため、開通の見通しを示すことができない状況でございます。これらの用地買収の目途が立った段階で、開通時期を公表させていただく予定でございます。

 引き続き、地元の皆様方の御協力を得ながら、一日も早い開通に向けて事業を進めてまいります。

今枝委員 ありがとうございます。

 ぜひ、地権者の皆様方初め、地域の皆様に御理解いただけるように頑張っていただき、私どもももちろん頑張りますし、地域の自治体も本当に今スタッフを出していただいて御尽力いただいておりますので、一日も早い開通を目指してみんなで頑張っていければありがたいというふうに思っております。

 それでは、次の質問に入ってまいります。

 先ほども答弁に出ました、ストック効果を最大化する上での一つの道路整備の策としての高速道路間のネットワークづくりであります。

 国道百五十一号線一宮バイパスは、東名高速と新東名高速を結ぶ道路でありますけれども、なかなか整備が進んでいません。昨年の私の質問に対して、国交省といたしましても一日も早く開通できるよう支援するというふうにお答えをいただき、また、太田昭宏前大臣も現地視察をされました。予算も今ふやしていただいているところではあるんですけれども、昨年が三億、そして、ことしは補正と合わせて八億という状況でありまして、総延長が七・九キロと長い道路であることを考えると、まだまだであります。

 この事業は交付金事業で愛知県の所管ではありますけれども、高速道路間のネットワークづくりというのは、やはり国家的な視点もまさに必要であります。国のお金も大分入りますので、国として投資が目に見える形で重点的に推進をしていく、こういうことがあるべき道ではないかな、このようなことも感じておりますけれども、いかがお考えでしょうか。

石川政府参考人 お答えいたします。

 国道百五十一号は愛知県が管理する道路でございまして、一宮バイパスは、新東名高速道路新城インターから東名高速道路の豊川インター及び重要港湾三河港へのアクセス強化を図るとともに、現道の交通渋滞の緩和を目的とした延長七・九キロメートルのバイパスでございます。

 現在、愛知県におきまして、社会資本整備総合交付金を活用して整備を推進しているところでございます。愛知県からは、整備に当たっては、投資効果の早期発現を図るため、市街地の渋滞緩和効果が大きい東名高速道路豊川インターから北側の三・六キロメートルを優先整備区間に位置づけて、重点的に整備を推進しているところと聞いております。

 国土交通省といたしましても、ストック効果を高める港湾等へのアクセス道路の整備については社会資本整備総合交付金を重点配分することとしておりまして、今後とも、愛知県からの要望を踏まえ、早期整備に向けて支援してまいります。

今枝委員 ありがとうございます。ぜひ重点的に推進をお願いしたいというふうに思います。

 それでは、少し話題をかえさせていただきまして、ちょっと大きなお話をさせていただきます。

 成長戦略ということで、この委員会でもさまざま議論があり、法律も通していただきましたが、リニア中央新幹線についてであります。

 御案内のとおり、補正予算でもリニア中央新幹線に対する一・五兆円の財投が決まりました。財投ですので、税金を将来有望とされる事業に投資し、必ず回収されるということが前提であります。

 JR東海社長の記者会見ですと、リニア単体ではなく、既存の東海道新幹線の収益と合わせて、会社として採算を合わせていく、このようなコメントが出ております。

 財政投融資を国として行う以上は、リニアだけではなく、東海道新幹線の収益性を高めることについても国として考えていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

末松副大臣 失礼いたします。

 今枝先生の御指摘のとおりでございます。

 リニア中央新幹線につきましては、平成二十二年から平成二十三年におきまして行われました交通政策審議会中央新幹線小委員会におきまして、JR東海の財務的事業遂行能力の検証が行われたところでございます。この内容は私もきのうしっかりと読ませていただきました。

 この結果、JR東海が収益力の高い東海道新幹線と一体的に経営を行うことで、経営の安定性を維持しながら事業を遂行することが可能である等の答申が取りまとめられ、これに基づき、JR東海に対し、建設主体、営業主体の指名を行ったところでございます。

 国土交通省といたしましても、リニア中央新幹線の事業遂行に際して、東海道新幹線の収益性が高められることは重要であるというように考えてございます。

今枝委員 ありがとうございます。

 今も御指摘をいただいた交通政策審議会中央新幹線小委員会の答申でまさにそのあたりが指摘をされていると思いますし、では、具体的にどうするんだという話でありますが、この答申で、リニア開通後、「ひかり」「こだま」を重視した輸送形態、そして沿線地域の活性化ということも指摘をされているわけであります。

 特に、収益性を高める観点から、ではどのようにしていけばいいのかといいますと、私が思うに、人口がかなり多い圏域の駅というのが幾つかあると思いますけれども、こういったところの利便性を高めて、地域としての活性化をしていきながら効果をどんどん増大させていくようなやり方というのが重要ではないかな、このように思っています。

 そこで、東海道新幹線の中で、東京と名古屋、まず十一年後にはここが開通するわけでありますので、この間を見てみますと、百万人近い圏域の駅となるのが静岡駅、浜松駅、そして豊橋駅の三つじゃないかな。特に豊橋駅については、東三河地域だけでなくて、在来線の接続で岡崎市などの西三河という地域とも連携がいいことから、それ以上の人口圏域をカバーできるという実態が今あるというふうに思います。

 しかし、現在、静岡駅や浜松駅は「ひかり」が一時間に一本とまります。一方で、豊橋駅は「ひかり」が二時間に一本とまるのみで、その間の間隔が広過ぎるということで、十分な力をなかなか発揮しにくい状況にあるのかな、このようにも思っています。

 いよいよ十一年後、リニアが開通いたしますと、東京―名古屋間はまさにダブルネットワークというふうになるわけであります。財政投融資によって、今おっしゃられたように、東海道新幹線の収益性向上について、政府としての責任といいますか、努力していく部分というのはかなり増しているところであって、今回財投という選択肢をとった政府のリニア政策への信頼性を高める意味でも、この部分というのは非常に重要ではないかなと思っております。

 そして、その有効策の一つとして、先ほど申し上げたように、豊橋駅などの人口の多い圏域の駅の利便性を重視する考えということに対しまして、国土交通省、政府として、いかがでしょうか。

末松副大臣 ありがとうございます。大事な御指摘をいただきました。

 リニア中央新幹線の整備後における東海道新幹線の活用の可能性の拡大につきましても、交通政策審議会中央新幹線小委員会におきまして議論がされたところでございます。

 この議論の中で、リニア中央新幹線の開業後、「ひかり」「こだま」の運転本数と停車回数の増加による利便性、速達性の向上等により、東海道新幹線の沿線地域の利用者にとってもメリットが大きい旨、JR東海からも言及されているところであります。

 これを受けまして、同委員会の答申におきましても、中央新幹線開業後、東海道新幹線は「ひかり」「こだま」型を重視した輸送形態へ変更することが可能となり、現在「のぞみ」型が停車しない駅における東海道新幹線の利用機会を増加させる等、東海道新幹線沿線の利用者の利便性向上及び沿線地域の活性化に寄与することが期待される旨、記載されているところでございます。

 例えば、今先生御指摘ありましたけれども、豊橋市の人口だけでも三十七万人おられます。愛知県の東三河地域は人口が七十万を超える圏域ですが、その中心である今お話ありました豊橋駅や、人口七十万人の静岡市の中心である静岡駅など、周辺人口の多い駅の利用者の利用機会を増加させることは利便性の向上につながるものと考えてございます。

 また、その場合、東海道新幹線の利用者増加につながり、収益性を高めることにつながれば、大変喜ばしいことであるというふうに考えてございます。

 私は、いつもJR西明石駅を使います。上京するときには西明石で「ひかり」か「こだま」に乗るんですけれども、新神戸駅か新大阪駅で「のぞみ」に乗りかえて東京へ行きます。西明石駅でも一時間に一本「ひかり」がとまるんです。

 先生のお気持ちはよくわかっておりますけれども、これにつきましては、先ほども根本政務官と話をしまして、大臣を先頭に、我々、真剣に相談をしながら、JR東海に言うべきは言う、そういう気持ちで推移を見守りながら取り組んでまいりたいと思ってございます。

 きょうは鉄道局長がおりますので、証人がおりますので、御理解をいただきたいと思います。

今枝委員 ありがとうございます。

 非常に、まさに政治主導ということが象徴されるような御答弁をいただきました。心から感謝を申し上げます。

 まさにこの話というのは、今回の財投を使ったリニア政策の信頼性を高めるという観点でやはり非常に重要だと思っています。

 まさに、ダイヤ自体はJR東海さんが当然、各社各社でお決めになるという部分はございます。ただ、以上の観点から、豊橋駅の「ひかり」の停車回数はまず一時間に一本にお願いをしたいなというふうに思います。

 また、ほかの大きな駅も非常に強化をしていただきながら、地方創生というものを絡ませて、それがかえって東海道新幹線の収益性を向上させ、そして、それがリニア政策全体の信頼性の向上ということになっていくという形をぜひともおとりいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、最後のテーマに当たらせていただきます。

 新産業を興していくことも成長戦略ということで非常に重要な観点だと思います。ドローンはその象徴ではないかなというふうに思っています。

 市場規模は、二〇二〇年で日本は現在の十倍の一千億円を超えると言われておりますし、世界規模での潜在市場規模は十兆円を超えるというふうにも言われております。しかし、私は、実は現在の政府の推進体制に危機感を持っております。

 目視外で運航するレベルスリー、レベルフォーを早く実現しなくてはなりませんけれども、そのためには、無人機の航空管制システムや衝突回避システム、ルールの形成、研究開発などをどんどん早めていかなくてはなりません。

 さらに、ドローンの特徴は、機体開発はもちろんですが、建設、防災、農林水産、医療、運送など、それぞれのサービスを提供するシステム開発が重要で、それは政府のみならず民間の研究環境が非常に重要であります。

 しかし、現在、申請に時間がかかってしまうですとか、なかなかそれがやりにくいという状況もございます。

 例えば、免許を持っている方は申請を簡素化する、こういったことで、手続には少なくとも時間をとられないようにしていく、事務コストをぐっと下げるというのは、民間の研究開発環境を整える上で非常に重要だと思います。

 例えば、海外に行きますと、ドローンが群衆の上を飛んでもそれは当たり前の光景になっております。それだけドローンが身近にあり、それだけ新たな民間の研究開発というのもどんどんやりやすいような環境にあります。

 このままでは日本がガラパゴス化してしまうのではないか、こんなことも非常に危機感を覚えますし、本来は、この市場規模というのも一千億どころではない、もっと多くの経済効果があると思います。世界ではもう十兆円を超えていますから、そこにどんどんとりに行くということであれば、世界の潮流もむしろ日本がリードしていくんだ、こういうことがやはり必要であると思いますけれども、現状のままですと、先ほどの一千億というのもひょっとしたらおぼつかないんじゃないか、こんなことも感じております。

 ほかにも論点がたくさんあるわけでありまして、例えば、携帯の電波というのが日本は非常に潤沢であって、ドローンを携帯に取りつけて飛ばしても、恐らく携帯の電波障害を起こす心配はなさそうでありますけれども、総務省さんや携帯会社さんはようやく今実証実験を始めたばかりという段階であります。電波法を改正して、民間の研究開発環境の整備のためにも、早くドローンに携帯を取りつけて飛ばせるようにしなくてはなりません。

 さらに、法律では、民法、刑法、こういったことも論点になっていくわけであります。

 こういった本当に数々の論点があるわけでありますけれども、省庁も多岐にわたりますので、横串を刺して、安全性を考えながらも、先ほど申し上げたとおり、世界の潮流に合わせて推進をしていく、こういう意味で、ドローン推進法ですとかドローン基本法、こういったものを法律としてつくりながらどんどん推進をしていくということが必要だと思いますが、いかがでしょうか。時間がなくなってまいりましたので、簡潔にお願いできればと思います。

西銘委員長 質疑時間が来ていますので、簡潔に答弁をお願いします。

木村政府参考人 お答えいたします。

 ドローン、小型無人機につきましては、御指摘のとおり、関係する省庁が多岐にわたるということでございまして、官民にわたる幅広い関係者の知見を結集して検討を進める必要がある分野であると認識しております。

 このため、内閣官房は、昨年十二月に、関係省庁のほか、ドローンのメーカー、業務やホビーで利用する方々の団体を構成員としまして、小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会を設立し、これまで十一回、分科会も含めて会議を開催し、議論を重ねてきているところでございます。

 この官民協議会におきましては、利活用と技術開発のロードマップ、小型無人機のさらなる安全確保のための制度設計の方向性を、それぞれ四月、七月に取りまとめたところでございますが、今後も本協議会を定期的に開催いたしまして、小型無人機のさらなる利活用に向けて、引き続き、官民が一体となって検討、取り組みを進めてまいりたいと思います。

今枝委員 ありがとうございました。

 終わります。

西銘委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道です。

 初めに、観光による地方創生について伺います。

 日本を訪れる外国人観光客がついに二千万人を突破いたしました。大臣は、今月一日の会見で、地方の観光資源の魅力を磨き上げ、空港や港湾のインフラ整備など、これまで以上にスピード感を持って進める必要があると決意をあらわされました。

 大臣の言われるとおり、二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年には六千万人へと訪日外国人観光客を伸ばしていくためには、現在のように東京や名古屋、京都、大阪といったゴールデンルートに集中しがちな観光客の流れを、ほかの道都や県都、さらに道都、県都から道内、県内の地方の観光地への流れを強く太くしていくことも不可欠であると考えます。

 日本は、魅力ある観光資源が全国津々浦々にまで広がっております。そうした魅力ある地方の観光地に外国人観光客がどんどん向かっていく流れが充実していけば、日本じゅうのあらゆる市、町、村が活気を取り戻していくと思います。

 観光による地方創生を実現していくために国土交通省が果たす役割は極めて大きいものがありますが、地方創生回廊の整備も含めて、まず大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 我が国には、自然、歴史、文化、食など、全国津々浦々に魅力的な観光資源が存在しております。観光による地方創生を図っていくためには、各地域における観光資源の磨き上げが重要であります。

 そのため、国土交通省では、地域の観光資源を世界に通用するレベルまで磨き上げるため、美しい自然や豊かな食文化等の観光資源を生かした滞在プログラムの充実や、多言語案内表示、無料WiFi環境等の受け入れ環境整備などの地域の取り組みを支援しております。

 加えて、観光による地方創生を実現していくためには、我が国のゲートウエーと各地方とを結ぶ高速交通網の活用や、観光地へのアクセス向上により、地方への外国人旅行客の流れを創出することが重要と考えております。

 国土交通省といたしましては、こうした取り組みを通じまして、観光による地方創生の実現に向けて取り組んでまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 次に、アンビシャスロードの実現についてでございます。

 私の地元北海道も、年間二百万人の外国人観光客が訪れております。観光客の方々の多くは、千歳空港に着いたらまずは札幌へ行こうという流れであります。将来は、新幹線で札幌に来られるようになります。札幌を訪れた方々が、札幌だけではなく、札幌を起点として北海道じゅうの観光地を隅々まで楽しんでいただきたいと思います。それを実現するための都心部と高速道路のアクセス強化が不可欠であります。

 JR札幌駅を中心とした札幌都心部から最も近い高速道路の出入り口である札幌北インターチェンジへは国道五号線が走っており、地元の人は、並走する川の名前にちなんで創成川通りと呼んでおります。

 朝夕のラッシュ時などの混雑は周辺道路にも影響し、特に冬場ともなれば、路面はつるつるに凍結し、大雪の場合には一車線が雪で閉鎖され、一層混雑が著しくなります。その距離は四キロ強でありながら、いつ目的地に着けるのか、所要時間が全く読めないことも頻繁に起こっているのであります。

 将来、北海道新幹線が札幌駅まで延伸してくると北海道全体の交流人口が四十六万人ふえるとの試算がありますが、大きく膨れ上がった札幌での人の流れを札幌の中で滞留させてしまう可能性が否定できません。北海道各地へのインバウンドにうまくつなげていく必要があります。

 また、現在の二次交通のもとで交流人口がふえれば、万が一大規模災害などが発生した際、物資等の緊急輸送に支障を来し、けが人などの救急搬送にも不安を抱かざるを得ません。

 医療については、現在でも、周辺市町村から札幌への機能依存度は非常に高いものがあり、例えば、札幌市が市外から受け入れる救急搬送は、年間七百件以上に上っています。特に都心部には高度医療機関が数多く配置されていることもあり、高速道路と都心部をつなぐ創成川通りの機能強化が待たれる理由はそこにもあります。

 私は、道議会議員時代から、創成川通り沿いに、自動車専用道路、アンビシャスロードの建設を訴えてきました。北海道の空の玄関口である新千歳空港と、新幹線によって陸の玄関口となる札幌駅を最短で結び、札幌の都心部から全道への経済の波及効果をもたらす恵みの道路、道民と医療機関をつなぐ命の道路、そして世界からの観光客が北海道全体に出発していく希望の道路として、必ず北海道の新たな創生のシンボルになると考えます。

 昨年三月八日に、太田前国土交通大臣に現地を御視察いただきました。そして、本年八月十日には、秋元札幌市長から直接、石井大臣にも御要望させていただきました。実現までにはさまざまな課題を解決せねばならないことも承知しておりますが、何よりもまずその第一歩を刻んでいただきたいと心から念願をしております。

 長く構想されてきたアンビシャスロードの実現について、石井大臣の御所見並びに今後の可能性についてお伺いをさせていただきたいと思います。

石井国務大臣 札樽自動車道と札幌駅との間では、札幌北インターチェンジの出口における渋滞の発生や、国道五号、創成川通りにおける渋滞、特に冬期の降雪による速度低下などの課題がございます。

 これらの課題に対して、札幌市では昨年度より、交通対策やまちづくりの観点から、創成川通り沿いに自動車専用道路を整備する必要性等の検討を始めていると承知をしております。

 さらに、札幌市が平成二十八年五月に取りまとめられた第二次札幌市都心まちづくり計画において、創成川通りの広域交通ネットワーク機能の強化に取り組むことを位置づけるなど、都心アクセス軸の強化に地元の強い期待が寄せられていると認識をしております。

 こういった状況を踏まえまして、国土交通省といたしましても、札幌市、北海道と連携をいたしまして、創成川通りにおける課題解決に向けた取り組みを進めるため、今年度にも関係機関との検討会を設置いたしまして、構造等の概略的な検討を行ってまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。

 終わります。

西銘委員長 次に、吉田宣弘君。

吉田(宣)委員 おはようございます。公明党の吉田宣弘です。

 本日は、国土交通委員会でこのように質問の機会を賜りましたこと、委員会関係各位の皆様に心から感謝を申し上げます。

 それでは、質問に入ります。

 先般発生した博多駅前の陥没事故については、あれだけの事故であったにもかかわらず、誰一人として命を落とすこともなく、けが人すら出なかったわけでございますが、工事関係者の初動対応、また、神がかり的なスピードで、昨日、通行も再開されておりますが、福岡市並びに関係の皆様の御努力には心から敬意を表したいと思います。

 他方、あれだけの事故でございました。命を落とされる方ももしかしたらいらっしゃったかもしれない。また、福岡市民を中心に、国民の社会生活にも悪影響が生じたことは事実でございます。そういった意味におきましては、この事故は、あってはならない事故であったというふうに思います。

 このような事故が起こる可能性は、ほかの場所でもあるかもしれない。また、今般の事故については、正確な調査に基づき徹底的な原因究明を行い、今後二度とこのような事故が発生しないように事前に備えておかなければならないと私は思うのですけれども、石井国土交通大臣の御認識を伺っておきたいと思います。

石井国務大臣 福岡市交通局七隈線の延伸工事で発生いたしました道路陥没につきましては、二十四時間体制で復旧作業が行われまして、昨日朝五時には道路も開放され、避難勧告も解除されました。

 発生から一週間での復旧に至りましたのは、何よりも、地元の建設業者を初めライフラインの管理者など、さまざまな方が復旧を最優先に対応していただいたおかげであると認識をしておりまして、まずもって敬意を表したいと存じます。

 今後は、本格的な原因究明や再発防止対策の検討等が行われることとなりますが、委員御指摘のとおり、同様の事象の再発防止のためにも、徹底的な原因究明は不可欠であります。

 本来、こういった原因究明は当事者により行われるものでありますけれども、本件につきましては、七隈線におけるこれまでの陥没事象の経緯などを踏まえ、福岡市長より、第三者による原因究明を国土交通省にお願いしたいとの要望があり、昨日、鉄道局長が市長の意向を直接確認したところであります。

 これを受けまして、国土交通省といたしましては、国土交通省所管の土木研究所において原因究明の委員会を開催するなど、福岡市に全面的に協力することといたしまして、詳細については、今後、福岡市と調整してまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、今回の事案に対する原因究明や再発防止対策の検討を通じまして、地下鉄工事における安全確保の充実に努めてまいりたいと存じます。

吉田(宣)委員 ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、下関北九州道路について質問をいたします。

 下関北九州道路は、関門海峡を横断して下関市と北九州市をつなぐ、関門トンネルや関門橋とは別の新たなルートとして計画をされている道路です。

 現在、関門海峡の幅は狭く、長さは十九キロもあるにもかかわらず、一日に約七万台もの人流、物流。関門トンネルと関門橋のわずか二つの道路で、これだけの物流を、しかも同じ位置で支えている状況にございます。

 また、この二つの道路は、事故や補修工事により通行どめが頻発しています。例えば、関門トンネルは、対面二車線の非常に貧弱な道路となっており、事故や落下物で、実に二日に一回以上の割合で通行どめが発生している。さらに、建設後五十八年が経過し、老朽化も進んでおります。直ちに使えなくなるということではないと思っておりますが、おおむね十年ごとに二、三年かけて補修工事が行われ、年間で平均七十日以上も全面通行どめが発生をしている。

 一方、熊本地震においては、自衛隊、警察、消防あるいは市民ボランティアの皆様など、多くの車両が本州からこの関門トンネルと関門橋を通って被災地に駆けつけてくださり、迅速な人命救助や緊急物資の輸送が行われました。近い将来、南海トラフ地震の発生も予想されております。大規模災害時における本州と九州の連絡強化は必要不可欠です。

 また、北部九州と山口県は、古くから一体の経済圏を形成しております。近年、両地域で盛んな自動車産業については、自動車メーカー五社、関連企業は七百社以上が立地し、海峡を横断した部品供給が行われている。今や、イギリスやフランスにも匹敵する生産規模を誇っております。今後は、アジアのゲートウエーとしての機能も含め、海峡を越えた産業連携を強化していく必要があります。

 さらに、下関北九州道路が実現すれば、北九州市中心部から下関市中心部の間の所要時間は、関門トンネルを利用した場合と比べて、現在の約五十分から約二十五分と、実に半分に短縮されます。市内の渋滞緩和も含め、大きな経済効果が期待されますし、その確実性は高いものだと思っております。

 こうした状況を踏まえて、地元では、下関北九州道路の早期実現に向けて、福岡県、山口県、北九州市、下関市の両県、両市はもとより、経済界も一体となって官民を挙げた要望活動を進めております。

 また、この件につきましては、我々公明党の秋野公造参議院議員がこれまで熱心な活動を続けてこられましたし、今も続けておられます。平成二十六年八月に下関市で開催された下関北九州道路整備促進大会でも、一日も早く下関北九州道路を整備するべきだと訴えておられますし、また、昨年二月の参議院決算委員会で質問され、関門海峡は一番狭いところで六百メートルしかない、名ばかりの海峡であり、ほとんど川のようなものではないか、例えば、荒川は川幅が最大二千五百メートル以上もあって、下流から二十キロのうちに十七本の橋がかかっていることを踏まえれば、二つしかない関門海峡は特殊ではないかというふうな指摘もなされております。

 この質問を受けて、昨年七月には太田前大臣に現地視察に来ていただくことになり、大臣に地域の実情を理解していただくとともに、その後の会合においても、前大臣と熱心に早期実現に向けた意見交換がなされました。その場所には私も同席をさせていただいております。私も北九州市に住んでおりますが、この新たな道路の必要性を常々痛感しているところでございます。

 以上、下関北九州道路にかける熱い思いを、地元を代表して述べさせていただきました。

 下関北九州道路は、平成二十年三月に、他の五つの海峡プロジェクトとあわせて、個別プロジェクトの調査は今後行わないことを当時の冬柴大臣が表明されたところではございますが、しかしながら、今ある関門トンネルや関門橋が抱える問題を解消し、安定的な物流、人流を確保していくことは、アジアのゲートウエーとしてのポテンシャルを最大限に生かし、両地域の発展を促していくために不可欠であると確信をしております。海峡幅が十キロ以上もある他の海峡横断プロジェクトとは明らかに違うということも御理解をいただきたいと思います。

 ぜひとも、この地元の切実な思いを受けとめていただき、下関北九州道路を進めていくべきであると考えておりますが、国土交通大臣の御見解を伺いたいと思います。

石井国務大臣 下関北九州道路を含めました六つの海峡横断プロジェクトにつきましては、今委員が御紹介いただいたように、平成二十年三月に、個別プロジェクトに関する調査は行わないことといたしました。それ以降、国において調査は行っていない状況でございます。

 一方、御指摘のように、下関北九州道路については、既につながっている関門トンネルや関門橋のバイパス機能の確保など、他の五つの海峡横断プロジェクトとの違いがあると認識をしております。整備手法につきましても、民間の方々がさまざまな勉強をされているとお伺いしておりますけれども、例えばPFIなどについても検討する必要があると考えております。

 また、これまでも、関門地域の経済発展のため、下関北九州道路の必要性や一日も早い実現について、地元の多方面の方々から要望いただいていることは十分に受けとめております。

 いずれにいたしましても、この下関北九州道路につきましては、さまざまな経緯があることから、他のプロジェクトとの違いを踏まえながら、地域で検討していただきまして、一度、ゼロベースで必要性を再整理することが必要と考えているところでございます。

吉田(宣)委員 ありがとうございます。

 大臣からは前向きな御答弁をいただいたというふうに思っております。今後に向けて少し光が見え始めてきたのではないか、そのような受けとめでございます。

 一方で、先ほどございましたPFIや、ゼロベースでの必要性の再整理という重い宿題もいただいたかと思います。地元において経済界と連携し、しっかりと検討を進めてまいりたい、そのように思っております。

 また引き続きこの下関北九州道路の早期実現に向けた声も地元からしっかり上げさせていただきたい、私はそのように思っております。

 本日はありがとうございました。以上で質問を終わります。

西銘委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 民進党の小宮山泰子でございます。

 本年三月、国交委員会において、伝統的構法による木造建築について質疑をさせていただきました。まずは、その続きということになります。

 過去五年度にわたり開かれた伝統的構法の設計法委員会では、数多くの要素技術の実験が行われました。前期二カ年の要素技術の実験データは、評価書という形でホームページ上で公開されております。既に確認申請等で実務者が利用することが可能な環境となっておりまして、これは委員会の成果であると感じております。

 以前、質問の際に、由木住宅局長は、「調査の成果を実務者を初めとして広く活用することができるようにすることは大変重要な問題であるというふうに認識しております。今後、さらに私どもの方で事業者とも調整を行った上でデータを整理して幅広く公開できるように、その手法等について検討してまいりたい」と答弁をいただきました。

 同質問から半年が過ぎました。後期三カ年も前期以上に多くの要素実験を実施され、前期と違い利用環境が整備されていないために、現段階では成果が生かされていないということであります。

 せめて前期並みに評価書などの形で整理、公開が必要と考えておりますが、その後、設計法の確立に向けた取り組みの現状、進捗など、現状についてまず御説明をお願いいたします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 伝統的構法による木造建築物の安全性の確認のためには、現在、限界耐力計算と呼ばれておりますような精緻な構造計算が必要となってまいります。

 この計算を行いますためには、伝統的構法で用いられます、例えば接合部等のさまざまな仕様がございますが、こうした仕様が地震の際にどのように変形するのかといった構造上の特性を明らかにすることが必要でございます。

 御指摘をいただきました検討委員会におきましては、実大振動台実験等を行いまして、数多くの実験データがございます。構造上の特性に関するデータを蓄積しているところでございます。

 これらのデータを一般の設計者が活用できるようにするためには、専門家がデータを整理いたしました上で、データベースの形で公開することが必要でございます。この必要性については、先ほど御指摘のとおり、委員会でも御答弁を申し上げたとおりでございます。

 これまで、このデータの公開に向けまして、御指摘いただいた二十二年度から二十四年度までに実験を行ったデータを中心に、当時の事業者の御了解もいただきまして、学識経験者から成るデータベース作成委員会を設置いたしまして整理を行ってまいっているところでございます。

 現在のところは、実験データの整理はおおむね完了したところでございまして、今年度中を目途にインターネット上で公開できますように、現在、データベースの設置、管理をしていただく団体を選定する作業に入るなど、公開の準備を進めているところでございます。

 以上でございます。

小宮山委員 大分進み始めたということで、うれしいところではありますが、現代においても、木造伝統的構法に関しては、近年も、特に関西地方では、小規模の住宅から社寺などの大規模なものまで、多くの実施例もございます。

 しかし、現実には、地域により判断の基準、方法が異なり、審査機関の対応に違いが生じているものと実務者の方から声が上がっております。各地での実施例などを生かして、合理的で実用的な設計法として整理する必要もあるかと思っております。いかに実用性の高い設計法をつくるかが重要だと思っております。

 現在では、建築基準法では、やはり伝統的構法というのは例外規定となっておりますが、日本の風土、そして職人が積み上げてきた設計の技術、建築の技術というものを独立させるぐらいの思いがなければならないと感じるところでもあります。ぜひ、国交省においても、官民、実務者などの間で連携を図って設計法の確立をしていただきたく、提言をさせていただきます。

 そして、大臣におきましては、また、先般、菅官房長官も古民家を改修した宿泊施設の開業支援の視察をされました。伝統的構法というものは、日本の文化、風土、そして日本らしさというものを大変醸し出すものにもなっているかと思います。

 しかし、伝統的構法に即して木造住宅を建てようとする際の苦労は、依頼主と施工者が相当の熱意と根気を持って臨まないと難しいという現状を改めて感じているところでもあります。百年、二百年使い続けることが可能となり得る木造建築物の実現につながるよう、日本の気候風土が育む木造住宅、木造建築物の技術やわざというものがしっかりと守られる、そして育まれる環境を整えていただきたいと考えております。

 この点に関しまして、大臣に、御見解そして今後の見通しについてお聞かせいただければと思います。

石井国務大臣 伝統的構法による木造建築物は、我が国の木造文化の伝承や地域の観光資源の観点からも大変に重要な役割を担っていると考えております。

 一方、伝統的構法による場合、地震に対する安全性の確認のため、建築基準法により、精緻な構造計算が要求されております。

 このため、国土交通省では、伝統的構法を活用した木造建築物の設計や改修等をしやすくするように、平成二十年度から二十四年度に、木造建築物の研究者や実務者から成る委員会を設置し、実大振動台実験や各種の部材実験等を行いまして、得られた成果の活用に取り組んできております。

 例えば、伝統的構法に用いられることの多い、柱と礎石を完全に固定せず、いわゆるだぼで継ぐ接合方法について、蓄積された実験データを踏まえ、構造計算を不要とするための政令改正を行ったところであります。

 また、先ほど住宅局長から答弁いたしましたように、これまでの実験で得られた多くのデータを実際の設計で活用していただくため、既にデータの整理をおおむね終えているところでありまして、データの公開に向けた準備を進めております。

 国土交通省といたしましては、木造建築物の設計や改修等に当たって伝統的構法がより活用しやすくなるよう、引き続き取り組みを進めてまいりたいと考えております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 伝統的構法の設計委員会における成果の一部として、今御指摘いただきましたが、石場建てを可能とする柱脚部の一仕様及び厚板利用の水平構面の一仕様の二本の告示がこの春行われているところでもあります。この告示だけでは目標とした設計法とはなり得ないということでもありますので、ぜひ、今後、この確立に向けてさらに御努力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 さて、仮設住宅とバリアフリーについてお伺いしたいと思います。

 四月十四日から生じた熊本地震では、本当に多くの被害がありました。改めてお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。

 多くの家屋が倒壊し、また使用できない状態となり、いまだ、避難生活、また仮設住宅の完成を待つ状態が続くなど、半年たっても大きな爪跡が残っているところでもあります。

 東日本大震災においても表面化いたしましたけれども、このような場合に、障害者や難病などを持った方、高齢者などについては、熊本地震においても、避難所への避難に関してさまざまな課題が報告されております。

 全国各地の障害当事者の議員等による、障害者の政治参加に関心を持つ関係者で構成する市民団体、障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク、さいたま市の傳田市議会議員が今代表をされておりますが、この皆様が八月に熊本地震の被災地で全国大会を開き、熊本地震における障害者に係る諸課題についてとの提案を取りまとめました。

 本年六月、実は私、地元で、東日本大震災のときに障害を持つ方々に何が起きたのか、地震や津波から身を守れず、また必要な情報も得られないなど、大震災に翻弄される障害者と、その実態調査、支援に奔走する人々の実体験をもとにしたドキュメンタリー映画「逃げ遅れる人々 東日本大震災と障害者」の上映などを行う勉強会を開催したことによって、この皆様の御連絡をいただいたところでもあります。

 当事者の皆様からの御提案については、主な所管となる内閣府及び厚生労働省に、要望活動の形で、被災当事者の声を聞いていただきました。

 提案内容には、国交省の所管に関するものもございました。仮設住宅に関して、仮設住宅のバリアフリー化では、スロープつきの仮設住宅であってもトイレやユニットバスに段差があるなど、車椅子では使えないバリアフリー対応の仮設住宅の存在が報告されておりました。居住者が使用可能な仮設住宅となるよう、基準の見直し、再度つくっておく必要があるとの提案もいただきました。

 また、仮設住宅について、入居できることとなる障害当事者の特性に応じたものでない場合もありまして、対応、配慮というものが大変重要であるということも伺いました。これは、障害によっては、周囲の音に大きく影響を受ける、あるいは逆に声を発するといった特性を持つこともあります。このため、より防音性の高いものに注力していただくことが望ましいというものであります。

 現状は、同一規格の仮設住宅をつくっているため、配慮が必要な方が仮設住宅に優先して入居できるのですが、仕様が適さないがために辞退をするという本末転倒のようなことが現実に起きています。また、障害者などが優先的に入居できるようになっていることから、入居できなかった方々からは、不満、あるいはあらぬ誤解を招くおそれがあるということで、制度上も不本意になることが懸念されております。

 仮設住宅自体は、以前は厚生労働省、今の所管は内閣府ですが、本当にバリアフリーな仮設住宅の実現のためには、国交省においてもしっかりと協力していただけるように、まずは要請をさせていただきたいと思います。

 また、全体として、バリアフリーに関しては、今、ガイドラインの見直しを行っていらっしゃるというふうに伺いますけれども、バリアフリー法では、特別特定建築物にはバリアフリーが義務化されており、二千平米以上であれば、病院など、養護学校も義務化対象になります。しかし、一般の学校施設においては、特別特定建築物に含まれないということもあり、バリアフリー化については努力義務にとどまっているのが現実であります。

 今後、インクルーシブ教育、障害を持つ子供と健常者の子供たちが一緒に学ぶ場合も多くなってくるでしょう。また、父兄参観で学校を訪れる保護者の方々に、障害をお持ちの方も考えられます。また、このような被災のときには避難所になるということは多くあります。しかし、そこに段差がある、努力義務で終わっているがために、避難所に入ることを諦めるということも起きるのが現実であります。

 ぜひ、バリアフリー化についても、学校も義務化にしておく必要があると考えておりますが、法改正も視野に、国交省にその見解をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 バリアフリー法におきましては、不特定多数の方が利用される建築物、及び、主として高齢者、障害者の方が利用される建築物について、建築物移動等円滑化基準への適合を義務づけております。このため、学校につきましては、主として障害者の方が利用するものとして、聴覚障害や視覚障害等のある生徒が通う特別支援学校を義務づけの対象にしております。

 一方、その他の学校につきましては、障害を持った生徒の特性や施設整備の状況に応じて、生徒が支障なく利用できるよう、教室の配置場所に配慮することや、必要に応じて介助を行うなど、施設管理者による実況に応じた対応が期待されるため、ハード面の一律の義務づけの対象とはなってございません。

 ただし、これらの学校につきましても一層のバリアフリー化が進むよう、努力義務の対象とした上で、バリアフリー設計のガイドラインである建築設計標準を建築士に情報提供し、設計段階でのバリアフリー化を促進しているところであります。

 また、文部科学省におきましても、学校施設バリアフリー化推進指針を策定し、学校設置者に対し、学校施設のバリアフリー化の基本的考え方や計画、設計上の留意点を示し、発注者である学校設置者のバリアフリー化に関する意識の向上等に努めていると聞いているところでございます。

 今後とも、文部科学省とも協力しながら、設計者、発注者の両者に情報提供を適切に行うなど、学校施設のバリアフリー化の促進に努めてまいりたいと存じます。

小宮山委員 バリアフリー化というのは大切ですが、根本的に法改正は必要かと思いますので、ぜひこの点に関しましても御検討いただければと思いますし、推進していただくことを要望させていただきます。

 さて、臨時国会で成立いたしました第二次補正予算にCLT工法等の実証実験棟の整備促進が盛り込まれております。これは、CLT等の新たな木質建築材料を用いた工法等について建築実証と居住性等の実験を行うもので、木造、木材利用の促進をしようとする予算と承知しております。

 戦後、林業は大変厳しい環境へと変化しておりますが、森林大国である日本において、利用できる樹齢となった多くの木材資源を活用するべきだと私も考えております。パリ協定も、おくれたとはいえ採決されました。温暖化対策としても、森林の適切な活用による炭酸ガスの吸収、固定化の継続、再生産は極めて重要だと考えております。

 このような中、新たな木質建築材料を用いた工法の開発、普及への取り組みは極めて重要と考えております。今回は二次補正でありましたけれども、このような予算はより積極的に計上されるべきだと考えております。

 そこで、新たな木質建築材料を用いた工法の開発、普及への取り組みの現状と、国交省の考え方、並びに来年度予算に向けての今後の取り組みについてお聞かせいただければと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 新たな木質建築材料を用いました工法等の開発、普及につきましては、我が国の森林資源の有効活用に寄与し、地域経済の活性化や地球温暖化防止対策にもつながる大変重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 国土交通省といたしましては、これまでも、構造や防火等の面で先導的な木造建築技術が導入されるようなモデル的な建築物の整備やさまざまな技術開発に対しまして、民間事業者等からの提案を受けて、専門家の評価を経た上で、助成を行うという支援策を講じてきているところでございます。これにつきましては、今年度も引き続き実施をいたしているところでございます。

 また、御指摘をいただきましたように、加えまして、第二次補正予算においては、CLT等の実験棟の整備への支援を行ってまいることとしたところでございます。

 こうした事業につきましては、来年度、平成二十九年度予算においても実施すべく、現在要求をしているところでございます。

 さらに、こうした先導的な技術を導入いたしました建物や技術開発につきましては、その成果を事例集として取りまとめて、ホームページ等で公開いたしますとともに、シンポジウムや成果報告会などを開催して周知に努めているところでございまして、引き続き、積極的に普及促進を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 次に、古民家を活用するというか、空き家の活用、まだ正確には空き家になり切っていないものも含めまして、空き室があるようなところの活用をしていくためにも、民家というものは手を加えることによって住み続けられる、そういった活用ができないかということで、民泊にも少し影響を与えるかもしれませんが、お伺いしたいと思います。

 古民家をモダンな宿にプロデュースする地域再生コンサルティング事業を行うアレックス・カー氏が今注目されております。

 イギリスを見ても、南洋諸島のシュロでふかれた家を見ても、そのような家は皆、ほっとさせます。その安心感は、古代にさかのぼって深く人類の心の中に秘められてきたものだと思います。その意味で、日本が完全にカヤぶき文化を捨てたのは、本当に罪なことだと思います。コストが高いとか維持が大変とか言われますが、コストも耐久性に関してもトタン屋根とほぼ変わりませんよ。日本は過去の文化や自然環境をぽいっと歴史のごみ箱に捨てた。何千キロもある海岸の三〇%以上がコンクリートブロックに変わり、電線が張りめぐらされ、山に巨大な送電のための鉄塔が建てられた。信じられないほどの無神経さということを「美しき日本の残像」という著書で述べられています。

 この点に関しては、やはり少し見直さなければならないのではないかと感じております。

 そこで、シェアリングエコノミーという形で、もうかればいいという発想ではなくて、民泊は、アンダーグラウンド化させるのではなく、安全、納税が確保されるような日本型ビジネスモデルの確立が重要だと考えております。

 まず、民泊について観光庁のお考えをお聞かせいただければと思います。

田村(明)政府参考人 お答えいたします。

 民泊につきましては、空き部屋や空き家等を活用して宿泊サービスを提供し、訪日外国人旅行者等の宿泊ニーズに対応するものであるというふうに理解しております。

 しかし、民泊は実態が先行しておりまして、さまざまな問題が発生しているため、安全性の確保や、騒音やごみ出しなど地域住民等とのトラブルに留意したルールづくりが必要と考えております。

 これに関しまして、具体的には、ことし六月の厚生労働省と観光庁との合同の有識者検討会の取りまとめにおきまして、住宅提供者に対して、民泊を実施する場合には行政庁への届け出を課して匿名性を排除すること、それから、名簿の備えつけ、所要の衛生措置、賃貸借契約や管理規約の違反の不存在の確認の義務づけ、さらには、住宅提供者が不在の民泊である場合における同様の義務がかかる登録された管理者への委託、そして行政庁による報告徴収、立入検査、違法民泊を提供した場合の罰則の整備などについて盛り込まれたところでございます。

 これらの点を踏まえまして、観光庁といたしましても、関係省庁とともに関係者間の意見調整に努めつつ、日本の実情に合った民泊新法につきまして、次期通常国会へ法案提出に向けて準備を進めてまいりたいと考えております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 民泊によって事件、事故が起こっては、日本の安全という、ある意味、世界じゅうから観光に来ている方たちが大変感動するような価値観というものも損なわれてしまいます。ぜひこのあたりを気をつけてまた進めていただければと思います。

 また、町家の宿泊等が注目されていることもございます。空き家化を未然に防ぐために、建物の利用、伝統的木造建築、古民家、町家というものの助成制度なども必要かと思います。この点に関しましてお聞かせください。

由木政府参考人 お答えいたします。

 古民家を再生して活用することは、空き家対策や、あるいは地域の活性化を図る上で重要なことであると認識しております。

 このため、これまで、社会資本整備総合交付金などによりまして、地域活性化のために行う空き家の利活用に関して助成を行っております。例えば長野県では、空き家となっておりました築百五十年以上の古民家を農業や田舎暮らしの体験交流施設として再生したケース、こうしたものに助成をいたした例もございます。

 また、古民家の再生に当たりましては、木造建築に関する技術者を育成することも重要でございます。古民家を含めた既存住宅の改修に係る施工技術の研修に対する支援も行っているところでございます。

 このほか、古民家の再生、活用の場面では、空き家になる前に、居住者みずからが古民家の一部を民泊施設や交流施設等に転用するといったようなさまざまなケースが考えられると思います。

 政府といたしましては、古民家等を活用した観光まちづくりを推進いたしますために、歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォースというものを九月に設置いたしております。これまで三回にわたりまして、各地で先駆的な取り組みを進めております有識者の方々からのヒアリングを行ってきているところでございまして、今後、そこで得た知見も生かしながら、関係省庁とも連携して検討を深めてまいりたいと考えております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 そこで、国交省は、住宅リフォーム事業の健全な発展、及び消費者が安心してリフォームを行うことができる環境整備を図るために、住宅リフォーム事業者団体登録制度を創設しております。しかし、残念ながら、これはまだなかなか周知ができていないのではないかという御指摘もありました。

 この制度の活用促進、周知徹底に向けて、国交省の御所見、見解をお伺いしたいと思います。

由木政府参考人 お答えいたします。

 住宅リフォーム事業者団体登録制度につきましては、事業者の資質向上を目指した研修の実施や消費者への情報提供あるいは相談対応を行うなど、住宅リフォーム事業者の業務の適正な運営が確保される団体を登録いたしますことにより、住宅リフォーム事業の健全な発展と、消費者が安心してリフォームのできる環境整備を目的としております。

 委員御指摘のとおり、こうした制度を消費者の方々に対し周知するということは大変重要でございまして、これまでも、ホームページや、リフォームに関する消費者向けのガイドブック等により周知をしてまいっているところでございます。

 また、これまでリフォーム等に対する支援制度を実施してきておりますが、第二次補正予算におきまして、エコリフォーム等に対する支援制度を新たに創設いたしました。この事業の中では、この事業に取り組もうとする事業者について、事業者情報として、住宅リフォーム事業者団体登録制度に登録されました団体の会員であるか否かを明示しまして消費者に情報提供することにより、こうした制度の認知度の向上を図りたいというふうに考えております。

 このようなさまざまな取り組みを通じまして、本制度の周知、普及に努めてまいります。

小宮山委員 時間となりましたので終了させていただきますが、最後に、無電柱化、さまざま規制緩和などもしていただきました。しかし、これからまたコストがかかる、また、改修やさまざまなときに維持コスト、メンテナンス等、この点に関しましてもぜひさらなる研究を深めていただくことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民進党の荒井でございます。

 きょうは、災害の話を少し関係者と議論をしたいと思います。

 その前に、鉄道局長はいなくなりましたけれども、先ほど、リニアの話が冒頭に出ました。リニアの技術というのはバラ色の技術としてもてはやされている趣があるんですけれども、私は決してそうは思いません。大電力を使うこと、大深度のトンネルを掘らざるを得ないということ、それから経営的にも明らかに採算割れをする、そういう技術であって、何となく原発の技術に似ているんですね。

 原発の技術というのは、当時、やはりバラ色の技術だということで、世界じゅう、中でも日本が積極的に取り入れ、しかしながら、その技術は必ずしも完成をしていなかった。今でも世界じゅう、特に日本はその災害に苦しんでいるわけであります。

 そんなことにならないようにリニアを進めていくということは、私は、なるべく国の責任は軽くというか、あるいは、民間が主導した技術ですから、あるいはプロジェクトですから、民間に大きな責任を負ってもらうという基本的な考え方というものは踏襲をしていくべきだというふうに考えています。

 さて、災害の話なんですけれども、災害は忘れたころにやってくるという有名な言葉があります。これは寺田寅彦という昭和初期の物理学者で、大変著名な方で、その当時、日本で最初のノーベル物理学賞をとるのではないかと言われていた方であります。

 一方、寺田寅彦は、彼の著書の中でこういうことを言っています。日本は災害の多い国だ。しかし、その災害によって、日本人という人種の特色、美徳も、あるいは欠点も含めて、そういうものがつくられたのではないか。たびたび災害に遭うことによって、粘り強さでありますとか、忍耐力でありますとか、あるいはお互いに助け合う気持ちですとか、そういうものを養っていくことができたのではないか。しかし一方、災害は百年とかあるいは五十年とかそういう時間がたってから来るわけですから、忘れっぽい性格、そういうものをも日本人の大きな特色として、あるいは水に流すというような言葉として出てきているのではないかということを言っております。まさしくそうだと思います。

 忘れやすい性格というのは、それは、厳しいことはなるべく早くに忘れたいという気持ちが一方にあるからそうなるんだと思いますけれども、それでは国土はもちません。それでは日本国家というのは成立をしていかないわけです。それを支えていくのが、私は、公権力、政府の大きな仕事だというふうに思います。

 そこで、ちょっと具体的な話をさせてもらいます。

 北海道で、八月から九月、連続台風の被害が出ました。これは未曽有のことであります。この被害の特徴でありますとか復旧の見通し、あるいは、北海道における台風被害で今回の規模に匹敵するような被害というのは過去にあったのかどうか、なかったとすれば、今回の被害というのはどういう特色があったのかということをお聞かせ願えますか。

緒方政府参考人 お答えいたします。

 北海道におきましては、八月の後半以降の台風の影響によりまして、河川の氾濫、浸水、土砂災害が発生いたしまして、道路、鉄道、電気、水道等のライフライン、農地や農林水産業施設、収穫間近であった農作物等にも大きな被害が生じました。

 こういった被害を受けまして、政府としましても、九月十六日に、台風第七号から第十号までの災害を一連の災害といたしまして激甚災害に指定をいたしたところでございます。

 指定に当たりまして、判定のために把握いたしました災害復旧事業に係ります北海道の査定見込み額につきましては、公共土木施設が約一千六百六十九億円、農地等が約七十一億円に上っております。

 災害復旧に当たりましては、災害査定を待たずに必要な工事を実施いたします査定前着工の推進に加えまして、かつて大きな被害が出たことを受けまして、災害査定手続を簡素化することによりまして被災自治体の事務負担を軽減いたしまして、早期の復旧に努めていきたいと考えております。

 また、今回の台風でございますけれども、三つの台風が相次いで北海道に上陸いたしておりまして、これは気象庁が観測を開始いたしました一九五一年以降で初めてのことでございます。

 御質問の被害状況でございますけれども、北海道では、三十五年前の昭和五十六年八月に前線及び台風により甚大な被害が発生いたしましたが、今回の台風はそれ以来の甚大な被害をもたらしたものとなっております。

 以上でございます。

荒井委員 昭和五十六年というのは、たしか石狩川が氾濫した年かな。

 ところで、今度の災害がこれほど大きくなったのは、台風が一遍に三つも来たということなんですけれども、地球温暖化によって日本全体の気象状況が大きく変わって、今まで北海道には台風はほとんど来なかったんですね。しかし、今回こういうような状況で、これからもこういうことが予想されるだろうというふうに思います。

 そこで、災害に対するインフラ整備といいますか、そういうものの状況はどうなっているんだろうか。

 昭和五十六年の石狩川の氾濫では、石狩川の改修工事というか、そういうものを大々的にやったんですけれども、それ以外のところが抜け落ちているのではないだろうかという感じがします。

 私はかつて、前の太田大臣のときにこういう議論をいたしました。日本全体で今一千兆円の借金がある、そのうちの、社会インフラとして、建設国債相当の積立金は約四百兆円ぐらいあると想定される、四百兆円の建設インフラの残存価格が残っているということは、大体コンクリートでつくりますから、コンクリートというのは五十年で償却します、つまり、四百兆円の償却というのは、毎年八兆円ぐらいずつ新たにその分をメンテナンス投資をしていかないと所期のインフラの効果は発揮しない、むしろ災害の対象になって倒壊していくのではないか、そういう話をしたことがあります。

 これはどういうことを言っているかというと、新規事業よりも更新事業を中心にした、あるいは災害に備えたような、そういう公共事業に体質を変えるべきだという議論をしたわけでございまして、国交省もだんだんそういうふうになりつつあるのではないかなというふうに思います。

 この点、今回の北海道での災害というのは、そういう点での災害対策に手抜かりはなかったのか、つまり、旧施設の更新事業というものをしっかりやっていたんですかということをお聞きしたいんです。

藤田政府参考人 お答えいたします。

 今回の台風の被害に関しまして、維持管理あるいは更新がどうなっていたのか、こういう御質問かと存じます。

 まず、現在の制度でございますけれども、道路施設、河川管理施設、鉄道施設、それぞれ一定の基準に基づいて定期的な点検等を行いまして、その結果に応じて必要な対策を講じるということとされております。

 今回被災した箇所につきましては、点検等の状況を今確認しておるところでございますけれども、現在のところ、点検等の不備があったという事例は確認をされておりません。点検等がきちんとなされていたということでございます。

 例えば、落橋した国道二百七十四号千呂露橋につきましては、平成二十七年十二月に点検を実施しておりまして、構造物の機能に支障はなく、緊急に措置を講ずべき状態にないということを確認しております。また、橋桁が流失したJR根室線第一佐幌川橋梁につきましても、平成二十八年六月に定期検査を実施した結果、現状では安全に対する影響なしと判定をされております。

 いずれにしましても、維持管理あるいは更新は災害への備えとしても大変重要な課題でございます。今回の災害に対しましても、その状況についてしっかり確認をしながら災害復旧に取り組んでまいりたいと思っております。

荒井委員 一昨年だったでしょうか、広島で大きな土砂災害がございまして、たしか七十人以上亡くなったはずですよね。これを契機にして、土砂災害の指定、土砂災害防止法の法改正を行いました。各都道府県で土砂災害のおそれのあるところを指定していく、あるいは点検していくというのがこの法律の趣旨であったわけです。

 今回、国道が随分やられたわけですけれども、その国道の周辺の土砂災害の指定状況というのは一体どういう状況にあったでしょうか。それから、私は、全国的に土砂災害の指定の状況は決して進捗しているというふうには理解をしていません。特に北海道ではこの指定が非常におくれているのではないかという認識を持っていますが、そこはどうでしょうか。

山田政府参考人 お答えをいたします。

 今回の本年八月から九月の台風によります北海道の土砂災害件数、これは十一月十五日現在で四十八件という報告を受けておりますけれども、このうち、十カ所で土砂災害警戒区域が指定をされておりまして、さらに、十二カ所におきましては区域指定のため基礎調査が完了しております。そして、結果が公表されているところでございます。さらに、九カ所につきましては、今後速やかに基礎調査を実施する予定と聞いております。残る十七カ所につきましては、現在のところ、人家ですとかあるいは事業所などが立地しておりませんので、警戒区域の指定は行われない見通しとなっているところでございます。

 全体といたしまして、北海道で土砂災害警戒区域の総区域数の推定値としては約一万二千件あるところでございますけれども、現在、そのうち土砂災害警戒区域は二千四百八十二区域でございます。区域指定率は約二一%という状況でございます。

荒井委員 皆さんのお手元に土砂災害警戒区域の指定状況というペーパー、これは国交省がつくっていただいたペーパーですけれども、このペーパーを見てみると、北海道が一万カ所しかないというのがまず第一に本当かなという感じがいたします。

 大臣、北海道の大きさというのは東北六県の何%ぐらいだと思いますか。答えなくていいです。東北六県の大きさよりも大きいんです、北海道は。東北六県プラス新潟県の広さを北海道は持っています。そういう面積のあるところで、一万カ所、岩手県ですとかそのぐらいしかないというのは本当かなという疑問を持ちます。

 さらに、北海道での土砂災害のレッドとイエローがありますけれども、このレッドとイエローの率が極めて低いんですね。これは、人が少ないから、人のいないところは指定をしないということなのかもしれませんけれども、これはどうしてなんでしょうか。

 そして、今後の対策として、北海道における土砂災害の指定というものをもっと真剣に指導するということが国交省として必要だと私は思うんですけれども、ここのところを大臣はいかがお考えですか。

石井国務大臣 平成二十八年十月末現在におきまして、北海道におきましては、二千四百八十二区域で土砂災害警戒区域が指定をされまして、これに加えて二千二百二十六区域で基礎調査が完了をしております。合わせますと四千七百八区域が既に公表されているところでございます。

 全体の総区域数の推計値では一万二千弱と推計されておりますが、現在の北海道の状況は、全体的におくれがあるということは、広島での土砂災害を契機に土砂災害防止法が改正された平成二十六年十一月の時点で基礎調査のおくれがあったことに起因をしている、そういうふうに考えております。

 しかしながら、現在は、他の多くの都府県と同様に、北海道におきましても、平成三十一年度末までに基礎調査を完了させるという目標が設定をされ、この目標達成に向けた取り組みがなされているところでございます。

 国土交通省といたしましても、北海道の基礎調査の完了目標が達成できますように、防災・安全交付金の優先配分枠を活用し、積極的に支援をしてまいりたいと考えております。

荒井委員 北海道における災害指定、今まで北海道は災害の少ないところだということで、私も土砂災害でこんなにたくさんの土砂災害箇所が発生したという記憶は余りないんですけれども、そういうことから、少しこれに関しては熱心じゃなかったんじゃないかな、そんな心配もしています。気象状況が変わり、こういう災害が多発する可能性が出てきたわけですので、ぜひ指定についてもっと積極的な対応を道庁に指導するようにお願いをいたします。

 さて、そういう災害が発生をしている、その災害復旧の重要な役割を担っているのが北海道開発局であります。

 次のページに、北海道開発局の定員と事業費のグラフ、これも国交省からいただいた資料ですけれども、この十年間で北海道開発局の定員は二六%減少しています。事業費は、二〇〇五年とか二〇〇六年度の規模にはないですけれども、それなりの規模を確保しているわけで、しかも、その中で災害復旧の、恐らくこの二〇一六年度の数字には今回の災害復旧費の金額は入っていないと思うんですけれども、それらが積み上がるわけですから、開発局職員の過重労働というのはかなりのものがあると思うんですね。

 一方で、二〇一五年度から、定員の一〇%減、これをやりますということで、毎年二%ずつ減員しているわけですけれども、この間の人員削減の内容と業務に与える影響というものをどういうふうに考えているのか。機械的に二%ずつ削減する、そういうことでこういう多量の業務を遂行できるのかどうかということについて検討を加えたことがあるのかどうかということをお聞かせ願いたいんです。

若生政府参考人 お答えいたします。

 政府におきましては、これまで累次にわたり計画的な定員合理化の取り組みを進めておりまして、御指摘のとおり、平成二十七年度以降については、行政機関全体で毎年二%、五年で一〇%以上合理化をする、こういう目標で取り組みを進めてございます。

 こうした計画的な定員合理化の取り組みは、業務の見直し等によりまして定員の合理化を計画的に進める一方で、それを原資として、新たな行政課題に対して必要な増員を毎年度の査定を通じて行う、こういう仕組みでございます。

 これによりまして、政府全体としてスリム化を図りつつ、行政需要に応じた部門間での定員の再配分を行う、こういうことで内閣の重要政策課題に的確に対応できる体制を構築するというものでございまして、一方的に、機械的に二%削減するというものではございません。

荒井委員 その答弁は不満なんですよね。必要なところにはちゃんと定員を与えないと、特に災害とか防災とか、そういう緊急の、人の命にかかわる部分でそごを来すと、それは大きいですよ。その批判は政府全体に来てしまいますから、そこのところは、もう一度ちゃんと、定員削減の考え方、あるいは新しく定員を補充するときの考え方というのは、こういう災害や防災という点をもっと重視した考え方で改めるべきではないかというふうに思います。

 その結果、ずっと削減をしていますから、定員削減の影響が結果的には超過勤務になっていくんですね。一方では、災害復旧事業が過度になっていますから、超過勤務がふえている。

 人事院は、超過勤務が月六十時間を超えないようにという基準をつくっているんですね。しかしながら、実際は、現場では、超過勤務を月六十時間以上行っているという人たちは結構いるんです。

 職場で私も当たってみましたけれども、約四分の一ぐらいの技術系職員は超過勤務六十時間以上でありました。この六十時間というのは平均ですから、若い人もそれからベテランの人も含めて六十時間以上という超過勤務。この超過勤務の過重さというのは、今、社会的な問題になっていますよね。電通の若い人が自殺をしたというのも超過勤務が過重になったからであります。そういうことで、この超過勤務問題をもっと大きな課題として国交省も捉えるべきだ。

 いろいろな制度をつくられていて、努力をしているということもわかるんですけれども、もう一つ内閣府に指摘をしておきたいのは、六十以上でベテランの人を活用せざるを得ません、その人たちを再任用で活用するんですけれども、そのときに定員の中に入れてしまうので、若い人たちがなかなか入ってこれないし、若い人たちへの技術の移転ができないというのが今の技術の現場だと思います。これだと問題がありますから、定員の部分から外してしまう、あるいは若い人たちがもっと入りやすいような、そういう人事制度をつくるべきだというふうに思います。

 そんなことも含めて、最後に、大臣、働く環境、あるいは超過勤務を踏まえて、そういうものの最高責任者でありますから、大臣の御見解をいただきたいと思います。

石井国務大臣 北海道開発局を初め、多くの現場での業務を有しております国土交通省におきましては、頻発する自然災害への対応や社会資本の老朽化対策など、地域の安全、安心の確保のため大きな役割、責任を担う一方で、政府全体の総人件費抑制の方針を踏まえ、定員の合理化を行っているところでございます。

 こういった状況の中、国土交通省では、職員の勤務状況につきまして、超過勤務時間など、適時適切に実態を把握しているところではございますが、あわせて、業務プロセスの見直しなどの職場の働き方の改革あるいは職員の健康管理を行うことによりまして、業務の適正な執行の確保と職員の勤務環境の改善の両立に努めていきたいと考えております。

 また、災害が発生した場合、その対応で一時的に業務がふえるわけでありますけれども、機動的に組織や人員の配置を行うなど、実情を踏まえた必要な定員の確保に努めまして、国土交通省への国民の期待に応えてまいりたいと考えております。

荒井委員 最近の若い人たちのパーソナリティーというのはだんだん変化してきて、僕らが現場で働いていたとき、あるいは役所で働いていたときは、先輩とマージャンをしたり赤ちょうちんに飲みに行ったりしながら我々の悩みとか苦しみとかを上司に伝えるというようなことを通じて、職場環境の何が問題だったのかとか健康管理はどうだとかということを先輩あるいは管理職の人たちは把握していたように思うんですね。

 そういうものがだんだんなくなってきている、それは社会の変化ですからやむを得ないと思うんですけれども、ならば、それにかわるものを労務管理、人事管理として整備をしていくということが大事だと思います。その基本は定員管理だと思います。ぜひ、定員管理について国交省も抜本的な検討を開始していただきたいというふうに申しまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、松原仁君。

松原委員 まず、十月二十六日、本委員会において、私から、成田空港周辺における航空機からの落下物についてお伺いしました。航空局長は、過去十年間、氷の塊が七件、航空機部品十四件の落下物が報告され、航空機部品については重さは最大で約一・八キロのものが報告されているという答弁でありました。

 しかし、翌日の東京新聞には、平成二十年五月に成田空港発シドニー行きJALウェイズ便が千葉県香取市の畑に重さ十キログラムのエアコンパネルを落としたはずであり、航空局長は誤って答弁したと報道がありました。

 この事実関係はどうなっているか、お伺いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 十月二十六日の本委員会においては、松原委員の成田空港周辺における落下物に関する質問に対し、国として事実の裏づけが確認できた範囲内で、過去十年間においては航空機部品十四件の落下物が報告され、部品の重さは最大で約一・八キログラムのものが報告されていると答弁をいたしました。

 その後、国土交通大臣からの指示を受け、過去十年間の十四件の航空機部品の落下物事案について、改めて関連資料を収集し、事実関係を確認したところ、御指摘の報道で取り上げられた平成二十年五月に発生した落下物の重さは約十二キログラムで、これが過去十年間で最大であることが確認されました。

 改めまして、十月二十六日の本委員会の答弁時において調査が十分でなかった点を深くおわびいたします。

松原委員 これは極めて重要なことなので、国土交通省、特に航空局では、こういったことに関してきちっと答弁をしてもらいたいと思っております。

 十二キロというのは大変な重さでありまして、これは大変なことであります。もともと、上空から落ちてくるので、大臣、これは氷の塊だって当たったら大変ですよ。そういう状況であります。今国が提案している新しい航空経路は人口密集地の上を飛んでいるわけでありまして、住民が不安を感ずるのは当たり前であります。大丈夫なのか、こういうふうな不安の声が上がるのも当然であります。

 私は、羽田空港における新飛行経路の導入に当たって、航空会社をしっかりと指揮、指導するなど、国としての責任を持って落下物対策に取り組むべきだと思いますが、大臣の御所見をお伺いします。

石井国務大臣 委員御指摘のとおり、羽田空港における新飛行経路の導入に当たりましては、これまで以上に落下物対策を強化し、安全対策の徹底を図りたいと考えております。

 落下物を防止するためには、本邦航空会社はもちろんのこと、外国の乗り入れ航空会社も含め、機体の適切な整備点検を徹底させることが重要であります。

 具体的には、羽田空港に乗り入れる外国の航空会社に対して、機体の整備点検の徹底を厳しく指導してまいります。また、航空会社による整備点検に加えまして、駐機中の航空機に対し、国の職員が、落下物の発生防止の観点から注意すべき機体の箇所を重点的に確認する仕組みを新たに構築いたします。さらに、国、航空機メーカー、本邦航空会社との間で落下物に関する情報共有のために定期的に開催している会議に、羽田空港に乗り入れる外国の航空会社の参画も求めまして、未然防止策に関する情報共有の徹底を図ってまいります。

 これらの方策によりまして、落下物対策の強化を図ってまいりたいと存じます。

松原委員 本当にこれは一番重要なことなので、十キロを超えるものが降ってきたら大変な衝撃であります。こういうものが仮に降ってきたら、これは全体のグランドデザインを変えざるを得ないことになろうということは、この場で率直に、強く御指摘を申し上げておきたい。

 あわせて、航空会社の航空機が整備点検をした場合に、部品が脱落していることが確認される場合があると聞いています。それがそのまま落下物になるとは承知をしておりませんが、可能性は十分ある。こういったものに対して航空会社に報告を求める制度があると聞いております。どのようなものか、お伺いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 航空の安全を確保するためには、事故や重大インシデントの原因調査、再発防止のみならず、それに至らない安全上のトラブルについての情報も幅広く収集し、未然防止策を講じることが重要であります。

 このため、点検や整備の際に航空機の一部部品がなくなっていることが確認された場合について、航空運送事業者等に報告を求める制度を平成二十一年度に設けたところでございます。

松原委員 こういったことで、航空の安全は全てに優先する、落下物対策は極めて重要であるということを御指摘を申し上げておきたいと思っております。

 そして、こういった落下物が発生している事実を踏まえると、今後も落下物が生じないとは言い切れない。ということは、私は、このままではきっと落ちるんじゃないかと思わざるを得ないわけであります。

 未然防止のことは全力で取り組んでもらいたいわけでありますが、十月二十六日のこの委員会でも質問させていただきました、成田空港周辺で人的被害が生じているのかどうか、どんな被害があったのか、そして、こうしたものに関する御答弁とあわせて、新航空経路の下において実際に被害が発生した場合、その補償はどうなるのか、お伺いしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、成田空港周辺での落下物でございますけれども、成田空港周辺におきましては、人的被害は生じていないものの、ビニールハウスの破損等の物損の事例があったということでございます。

 それから、もし万が一落下物が生じた場合に、被害に遭われた方々への補償をどのようにするのかということにつきましては、航空機からの落下物と疑われる事案が発生した場合には、まず、国が原因究明のための調査を実施いたします。その結果、航空機からの落下物であると判断され、原因者たる航空会社が特定された場合には、当該航空会社が被害を補償することになります。

 また、航空機からの落下物であると判断されたものの、原因者たる航空会社が特定されない場合には、落下物による被害について、原因者である可能性がある航空会社が共同して補償する制度が設けられております。

 このように、万一の場合でも被害に対して補償する仕組みを構築しているところでございます。

松原委員 ちょっと質問が後先になりましたが、いわゆる航空会社に報告を求める制度が設けられているということで、二〇〇九年から先月末までに我が国の航空運送事業者からどのぐらいの件数の報告があるのか、お伺いします。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 部品の脱落について航空会社に報告を求める制度を設けました平成二十一年度以降、先月末までに、我が国の航空運送事業者から、空港内の滑走路上で脱落が発生した事例を含めまして、合計四百三十七件の報告を受けており、その都度、航空運送事業者に対し再発防止を指導しているところでございます。

松原委員 これは質問の中に入っていませんが、この四百三十七件は、その場で発見して、その扱い、運びはどうなっていますか。

佐藤政府参考人 その場で発見して……(松原委員「手直しをするわけですよね」と呼ぶ)手直しというのは、見つかったものということでしょうか。

松原委員 四百三十七件に関してが、航空運送事業者からこういったさまざまな問題があるという報告があったわけですよね。それに対してその場ではどういう扱いをしているか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 航空会社から報告があるのは、その場であるだけではなくて、例えば、その後、点検や整備をした際に見つかるといったようなケースもございますので、その報告があり次第、先ほども申し上げましたが、事業者に対しまして再発防止を指導しているというところでございます。

松原委員 やはり抑止効果というのが大事なんですね。

 これは次の質問にもなるわけでありますが、被害者が発生しないようにするのが第一義的であります。ですから、繰り返しになりますが、落下物が生じないようにする、そして、こういった指導、点検をする。この指導、点検において、きちっと、件数が多いところや実際に落下物を発生させた会社に対しては、補償がどうのこうのという議論は、これはもうでき上がってしまったことで、大問題なんですね。その前の段階でペナルティーを科するなど、抑止効果というのが必要だと思っておりまして、このことはどのようにお考えか、お伺いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの大臣の答弁のとおり、これまで以上に落下物対策を強化し、安全の徹底を図ることとしておりますが、松原委員の御指摘も踏まえ、落下物対策の強化の一環として、落下物の原因者である航空会社が特定された場合において、当該航空会社にどのような措置を行うことが必要か、検討を行ってまいりたいと考えております。

松原委員 これは極めて重要なことですから、きちっと対応していただきたいと思います。

 なお、騒音であります。やはり航空機は騒音を発生するわけでありますが、この騒音問題は新飛行経路の導入においてどのような対応をするか、大臣の御所見をお伺いします。

石井国務大臣 新飛行経路の導入に当たりましては、昨年の七月より、延べ九十五日間にわたりまして、延べ三十四会場において説明会を開催し、約一万一千人の方に御参加いただくなど、丁寧な情報提供に努めてまいりました。こうした説明会等を通じまして、騒音について懸念する声があることについては承知をしてございます。

 こういった住民の皆様からの御意見も踏まえまして、本年七月に、国と関係自治体等で構成される協議会におきまして、環境影響等に配慮した方策をお示ししたところでございます。

 この中では、発生源対策といたしまして、航空機の低騒音化を図るため、飛行機の重量だけでなく、音の大きさも加味した着陸料体系への変更を行うこととしております。あわせて、空港周辺の騒音対策といたしまして、防音工事に係る基準を見直すことによりまして、経路周辺の学校、病院等に対して助成を行うことができるようにすることとしております。

 こういった方策を講じることによりまして、騒音に係る影響をできる限り少なくするよう努めてまいりたいと存じます。

松原委員 当然でありますが、騒音問題は極めて重要でありますが、むしろ、冒頭申し上げた落下物、これがやはり一番心配でありまして、地域の方々と私が議論するときにも、これはとんでもない、何とかしてくれという声がたくさん寄せられているわけであります。

 こういったことを払拭するには、結局、言葉で相談して納得させるという議論ではなくて、物理的にこれを実行し得る状況をどうつくるかだと思うんですよね。人的被害が発生したら、これはもう本当に航空経路そのものの大問題になってしまいますが、今言ったような、航空会社に対してそのことをきちっと未然に抑止するようなペナルティーをつくる等々を含め、本当に可及的速やかに取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 大臣の御所見を、この懸念に関してもう一回お伺いしたい。

石井国務大臣 先ほども航空局長が御答弁させていただいたところでありますが、落下物対策の強化の一環として、落下物の原因者である航空会社が特定された場合におきまして、その航空会社によってどういった措置を行うことが必要か、委員の御指摘も踏まえて検討を行ってまいりたいと存じます。

松原委員 四百三十七件の報告があったというのもありますが、そういった調査報告で、駐機中の飛行機でさまざまな問題があるというのがたくさん生じている航空会社に対しては、その段階で教育的な指導をするということも必要だと私は思っておりますが、航空局長、いかがですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたが、報告を受けた場合には、その都度、航空運送事業者に対し再発防止を指導しているところでございますが、先ほども申し上げましたように、その航空会社に対して具体的にどういった措置をとるかということにつきまして、今後さらに検討してまいりたいと考えてございます。

松原委員 つまり、個別の案件に対しての措置はそうですが、例えば、方程式はわかりませんが、トータルで全駐機数の一定数以上においてそういう案件が発見された航空会社については申し入れをするとか、そういったことをするぐらいの背景がなければ、それは、安全ですよ、安全ですよと言ったって、安全ですよで安全ですになるわけではないので、そこはきちっとやっていただきたいと思います。

 さっき言ったように、これで何か起こった場合には、本当に、空港が、日本の我々のマインドからすると、これについてはどうなんだ、もう一回見直せという話になってしまいます。そのこともきちっと考えてもらいたいと思います。

 次に、小笠原空港問題をお伺いします。

 小笠原諸島は、本土から約一千キロメートル以上離れ、本土への交通手段は六日に一便、一週間に一回ですね。大臣はいらっしゃったことがあるかどうかわかりませんが、船で二十四時間。ブラジルよりも大変に遠いという話があるぐらいでありまして、その上、やはり命にかかわる問題ですから、さまざまな課題がある。

 例えば、産科の場合、産科医の確保もできていない。また、出産するためには出産前後に長い期間離島を余儀なくされるとか、さまざまな緊急の病気に対しても十分に対応できない場合もあるということも含め、この小笠原に対して空港をつくりたいという意欲は多くの島民の方から寄せられているわけであります。

 この小笠原新空港の可能性、十月八日に小池東京都知事が小笠原村を視察した際、急患が出たときの搬送など、命を守る観点から考えることは重要と発言をしたという報道がされております。

 小笠原空港の問題について国土交通省としてどう取り組むか、悲願である空港建設についてどう取り組むのか、国土交通大臣にお伺いしたい。

石井国務大臣 小笠原諸島におけます交通アクセスの改善は、国土交通省といたしましても、島民生活の安定や離島振興の観点から重要な課題であると認識をしております。

 小笠原空港につきましては、現在、東京都が設置、管理する空港といたしまして、東京都において検討中でございます。

 三案検討が行われておりまして、一つは、父島の洲崎地区に飛行場を整備する案、二つ目には、水上航空機で父島の二見湾に離発着する案、三つ目には、父島から硫黄島へはヘリコプターで、硫黄島からは航空機の案、この三案について検討が行われているものと承知をしております。

 国土交通省といたしましては、東京都が進める検討につきまして、滑走路の配置、航空機の運航の安全に必要な空間の範囲、海域の埋め立ての範囲など、技術面に関する助言を行ってまいりました。委員からの御指摘も踏まえまして、東京都と連携をいたしまして、早期に一定の方向性が出せるよう真摯に取り組んでまいりたいと存じます。

松原委員 これは、小笠原もある意味で人権問題と言っても差し支えないような課題だと思っております。したがって、国土交通大臣においては、今機運が高まっているというふうに承知をしておりますので、小笠原に空港をつくるということは半世紀の夢でありますから、もっと長い間の夢ですね、ぜひとも力をかしてもらいたい、航空局長も強い決意でもって頑張ってもらいたいというふうにあえて申し上げておきたいと思います。

 終わります。

西銘委員長 次に、本村賢太郎君。

本村(賢)委員 民進党の本村賢太郎でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず冒頭に、十四日午前零時過ぎにニュージーランドで発生した地震がございまして、お亡くなりになった皆さんにはお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆さんにはお見舞いを申し上げたいと思います。

 それでは、一問目の質問に入ります。IRについてお伺いいたします。

 この特定複合観光施設区域、IRの整備に関する審議が始まるのではないかという報道も一部ございますし、また、これはちょっとうわさなんですけれども、このIRの整備に関する事務を石井大臣が担当するのではないかという話もございまして、内閣官房が主に担当するとの話も聞いておりますけれども、石井大臣がこのIRについてどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。

石井国務大臣 統合型リゾート、IRにつきましては、日本再興戦略二〇一六に示されているとおり、観光振興、地域振興、産業振興等に資することが期待をされております。一方で、その前提となる犯罪防止、治安維持、青少年の健全育成、ギャンブル依存症防止等の観点から、問題を生じさせないための制度上の措置の検討も必要と考えております。

 いずれにいたしましても、議員立法でございますIR推進法案につきましては、衆議院において継続審議となっているものでございまして、今後の国会の動きやIRに関します国民的な議論を見守ってまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 会期も大分終盤となってまいりまして、会期日程も大変詰まった中でございますので、本来であれば、余裕のある時間で、このIR、しっかりと審議をしていく必要があるのではないかということを御指摘してまいりたいと思います。

 次に、私の地元、相模原市を走りますJR相模線についてお伺いいたします。

 神奈川県としても、この相模線は、県央・湘南都市圏における環境共生モデル都市圏の形成に当たり、東海道新幹線新駅も建設予定でございますが、この相模線の倉見駅を南のゲート口、そしてリニア中央新幹線の橋本駅を北のゲート口として、全国との交流連携の窓口となる南北のゲートを結ぶ相模連携軸に位置づけているということであります。

 また、平成十年二月には、県や沿線市、商工会議所、商工会などでつくる相模線複線化等促進期成同盟会が設置をされておりますし、ことし三月には、県、相模線沿線市町、経済団体と東日本旅客鉄道株式会社横浜支社において、相模線と沿線地域の活性化を目的とした取り組みを実施していくために、相模線沿線活性化協議会を設立しているというふうに伺っております。また、地元の相模原商工会議所の今年度の相模線複線化の要望に関しまして、国交省からは、案件の成熟度を高めていくことが重要であるという話も指摘をいただいております。

 神奈川県にとって、リニア中央新幹線の駅が予定される橋本を含め、南北をつなぐ重要な路線でありまして、今後の輸送力、利便性向上が期待され、複線化に対しても強い要望が地元自治体、経済団体等々からもあることは十分承知をしているんですが、国交省として、相模線の役割、複線化に対してどのように捉えているのか、お伺いいたします。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 JR相模線につきましては、沿線の通勤通学の足としての役割を果たしておりまして、また、リニア中央新幹線の駅が橋本に設置される予定であるなど、地域の重要な鉄道路線であると認識いたしております。

 JR相模線の利用者数につきましては、一日当たりの輸送密度が、平成二十三年度の約二万四千六百人に対しまして、平成二十八年度は約二万八千二百人となり、増加傾向にあると承知をいたしております。

 また、御地元では、相模線と沿線地域の活性化を目的として、先生からお話ありました関係自治体、経済団体及びJR東日本から成る相模線沿線活性化協議会が設置されておりまして、相模線の利用促進、利便性向上、サービス改善等について検討がなされていると伺っております。

 相模線の複線化につきましては、混雑の状況、沿線開発等に伴う今後の輸送需要の動向、収支採算性等を総合的に勘案した上で、基本的には鉄道事業者の経営判断により行われるものでございます。

 また、複線化事業では沿線自治体が費用の一部を負担する事例が多いことから、駅周辺開発と一体的に行われることもありますので、活性化協議会も活用しながら、地元自治体と鉄道事業者との間で合意形成を図りながら進めていかれることが重要ではないかというふうに思っております。

本村(賢)委員 ぜひ、沿線自治体とJR東日本との間の検討状況を踏まえつつ、国交省として必要な助言を今後もお願いしてまいりたいと思います。

 それでは、次の質問に入ります。次は地籍調査についてであります。

 現在の記録の多くは明治初期の調査記録を基礎としたものが多く、面積等、正確でないところも多く、地籍調査に今注目が集まっておりますし、特に、三・一一の岩手、宮城、福島の沿岸部の地籍調査が進んでいた点で復興が大変速やかに進んでいるという利点もございますので、そういった観点から質問をさせていただきます。

 地籍調査は、御存じのとおり、市町村が調査を行う場合、費用の二分の一を国が負担し、都道府県と市町村で残り四分の一を均等負担していくというものでありますが、特別交付税が八〇%交付されますので、実質的には都道府県と市町村は各五%ずつの負担となるということでありますけれども、国においても、特に進捗がおくれている都市部及び山村部の地籍整備を進める事業を行っていると承知をしておりますし、私の地元相模原市も、政令市でワースト二位という、まだ進捗率一%で、なかなか前へ進んでいない、課題も多くあるんです。

 地籍調査の推進に対し国交省はどのような支援を行っているのか、また、支援メニューが実施主体である自治体にしっかりと周知されていることが重要だと思いますが、どのような広報を実施しているのか、お伺いいたします。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 今御指摘がございましたように、地籍調査の推進に当たりましては、地方公共団体等が負担する経費につきまして補助金を交付しているところでございます。

 また、進捗がおくれております都市部、山村部での調査につきましては、地方公共団体が行う地籍調査に先行して、国が必要と考える地域において、地籍調査に必要な基礎的な情報を整備、保全する事業、こういうものも行っているところでございます。

 そのほかに、特に進捗がおくれております都市部におきましては、民間事業者でございますとか地方公共団体の公共事業部局が作成する地籍調査以外の測量成果を地籍整備に活用する、これを促進するための補助制度も設けております。

 これらの支援策につきましては、地方公共団体の職員の皆さんを対象とした私どもの省主催の研修会、あるいは都道府県の地籍調査担当者を対象とした定期的な会議等の開催といったものを行ってございます。また、地籍調査実施を検討している地方公共団体への専門家の派遣といったようなことも行っているところでございます。

 このような取り組みによりまして、制度概要あるいは活用方法などについて御理解いただけるよう、丁寧に周知を行っているところでございます。

本村(賢)委員 地域間の進捗差が大きく、北海道、東北、中国、四国、九州は進んでいる一方、関東、中部、北陸、近畿では大変おくれているという実態もございますし、着手がおくれれば土地境界の調査に必要な人証、物証が失われ、調査が困難になっていくということで、早期に行っていく必要があると考えておりますが、地籍調査の推進の重要性について石井大臣の御見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 地籍調査の実施によりまして土地の境界等を明確にしておくことは、被災後の復旧復興、社会資本整備、まちづくりの推進等に際しまして、その円滑化に資するものでありまして、地籍調査は大変重要であると認識をしております。

 東日本大震災の被災地におきましては、全体としては地籍調査が他地域より大幅に進捗しておりましたが、津波等で現地の境界を示すくい等が喪失した地域においても、地籍調査の成果が活用できたことで、用地取得等が円滑に進み、復旧復興事業が迅速に実施されたところであります。

 国土交通省といたしましては、地震や豪雨災害等による被災想定地域や、積極的にまちづくりの推進を図っている都市部などを中心に、地方公共団体と連携し、今後ともさらなる地籍調査の推進に努めてまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 地籍調査を行うことで、災害復旧の迅速化、課税の公平適正化、土地境界をめぐるトラブルの未然防止、土地の有効活用やまちづくりなど、効果がございますので、ぜひ石井大臣の強いリーダーシップで地籍調査を進めてください。

 以上で終わります。

西銘委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 駅のホームからの転落死亡事故をなくすために質問をさせていただきたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。

 八月十五日、東京メトロ銀座線青山一丁目駅で転落死亡事故がありました。これに続いて、十月十六日、近鉄大阪線河内国分駅で転落死亡事故がございました。視覚障害者の方が駅ホームから転落し、死亡する事故が相次いでおります。亡くなられた方に心からの哀悼の意を表したいというふうに思います。

 駅のホームでの転落件数は、国土交通省の資料によれば、二〇〇九年度二千四百四十二件だったものが、二〇一四年度に三千六百七十三件と、一・五倍にふえております。このうち、視覚障害者の方々の転落件数は、三十八件から八十件へと倍増しております。

 視覚障害者の皆さん方は、東京メトロの事故が起こる前から、長い間、駅のホームにホームドアを設置してほしいということを、ずっと声を上げておられます。

 私の地元愛知県の視覚障害者の皆さんもそうです。ことし五月二十七日にも、愛知県内で集められた、点字の署名も含んで五千人の方々の署名、可動式ホーム柵の設置を求める要請書を持ってこの国会に来ていただいて、そして、愛知県の視覚障害者協議会の皆さんを中心に国交省の鉄道局に要請をし、私も島津幸広衆議院議員と一緒に同席をさせていただきました。

 視覚障害者の皆さんはこうおっしゃっておられました。これ以上仲間の命を落とさせたくないんだ、救うことができる命なんだ、救う方法があるのだからやるべきだというふうに訴えておられます。また、別の視覚障害者の方はこうおっしゃっておりました。盲導犬と一緒にホームに転落したことがあります、ほかの人には言いたくないほど屈辱でした、こういう思いで家から出なくなってしまう視覚障害者も出ていますというふうにおっしゃられておりました。

 視覚障害者の皆さんにとって、駅のホームは、欄干のない橋と言われ、とりわけ危険な場所になっております。ホームからの転落事故の防止のために、ホームドアの設置が極めて有効な対策だということは言うまでもありません。国交省も、二〇一一年、ホームドアの整備促進等に関する検討会を開いて、設置する方向は出しております。

 先ほど指摘をいたしました二つの転落死亡事故のケースでいいますと、東京メトロも、そして近鉄も共通して、その駅にはホームドアがありませんでした。

 ホームドアさえあればこの二つの事故は起きなくて済んだのではないかというふうに思いますけれども、大臣はどのように認識をされているか。また、駅のホームでの転落事故が相次ぎ、そしてふえている。鉄道を所管する国土交通省として、責任、認識、どのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

石井国務大臣 駅ホームにおけます転落事故の防止は、視覚障害者の方を初め、全ての旅客にとって大変重要な課題であると認識をしております。

 このような中、八月十五日に東京メトロ銀座線青山一丁目駅において、また、十月十六日には近畿日本鉄道大阪線河内国分駅において、視覚障害者の方が転落して亡くなる事故が発生したことに関しては、重く受けとめているところでございます。

 また、ホームドアは、今回の事故のようなホームからの転落防止のための設備として非常に効果が高く、その整備を推進していくことが重要であると認識をしております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、鉄道事業者に対して、整備費用に対する助成措置など必要な支援を行うことにより、ホームドアの整備の促進に取り組んでまいります。

 なお、国土交通省におきましては、八月二十六日に駅ホームにおける安全性向上のための検討会を設置いたしまして、ハード、ソフト両面からの対策の強化を検討しているところでございます。

 ハード面におきましては、ホームドアの整備の加速化や、技術面、コスト面の課題に対応可能な新たなタイプのホームドアの技術開発などによるホームドア整備の促進、ソフト面におきましては、希望者への駅係員のアテンドや、一般旅客に対する誘導案内の積極的な実施依頼、また、盲導犬を同伴する視覚障害者への接遇などの対策の強化等について検討を深めまして、駅ホームの安全性向上に向け、最大限の取り組みを進めてまいりたいと存じます。

本村(伸)委員 全国に駅は九千駅以上あるというふうに思いますけれども、そのうち、ホームドアの設置は、最新の数字で六百六十五駅だというふうに思います。その中で、一日平均利用者数が一万人以上、そして十万人以上の駅はそれぞれ何駅あるか、それぞれ幾つの駅にホームドアがついているか、お示しをいただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十七年度末におきまして、一日当たりの利用者数が一万人以上の駅は二千百三十一駅ございまして、そのうちホームドアが設置されている駅は四百四十五駅となっております。

 同様に、平成二十七年度末におきまして、一日当たりの利用者数が十万人以上の駅は二百六十駅ございまして、そのうちホームドアが設置されている駅は八十二駅となっております。

本村(伸)委員 駅の数と比べて、ホームドアの設置は随分おくれている現状があるというふうに思います。

 国交省としてどういう目標でホームドア設置に取り組んでいるのか、また、優先的に設置すべき駅、具体的な計画、その設置目標の根拠についてお示しをいただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど先生からもお話あったかと思いますが、ホームドアの整備促進等に関する検討会中間とりまとめ、平成二十三年八月によりますと、ホームドア等の転落防止対策の優先整備駅の考え方といたしまして、一つは、視覚障害者の方々からの要望が高い駅、もう一つは、駅の利用者数が多い駅ということで、特に利用者数十万人の駅が一駅当たりの事故発生件数が多いということから、こういった基準によりましてホームドアを優先的に進めていくべきであるという取りまとめがなされておりまして、私どもといたしましては、そういった基本方針をもって整備を進めているということでございます。

本村(伸)委員 二〇二〇年までに八百駅が目標ということですけれども、あと三、四年で百ちょっとやれば達成する数字でございます。十万人以上の駅でもまだ百七十ぐらいの駅が未達成だ、設置をしていないという現状があるわけです。

 全国の駅は九千駅以上あるわけですけれども、一日平均利用者数一万人以上の大規模な駅でも二千百三十一駅もあるということで、ホームドアがあるのが日本の駅の標準だという点からすると、八百という目標は、まだまだ本当に少ないというふうに思っております。こういう低い目標ではなく、目標の前倒しや目標の引き上げというものをぜひやっていただきたいというふうに思います。

 ここでちょっと確認をしたいんですけれども、先ほど御答弁がありましたが、視覚障害者の団体の皆さんからの要望が高い鉄道駅に転落防止設備の優先的な整備を行うというふうにしておりますけれども、視覚障害者団体の皆さんの要望を受けて具体的にどの駅に優先的にホームドアをつくることになったのか、お示しをいただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 ホームドアの整備促進等に関する検討会の中間とりまとめがなされました平成二十三年度から平成二十七年度までの過去五年間にホームドアが設置されました百八十一駅のうち、視覚障害者団体の皆様や視覚障害者の方からの意見を踏まえた地元自治体からの要望があった駅として国土交通省において把握している駅数は八十二駅というふうになってございます。

本村(伸)委員 八十二駅ということですけれども、まだまだ十分反映されていないところがあるというふうに思います。具体的に視覚障害者の方が名前を挙げている駅は幾つもありますから、よくよく障害者の方の意見を、声を聞いていただきたいというふうに思います。

 また具体的にお伺いをいたします。

 昨年も指摘をいたしましたけれども、先日も清水忠史衆議院議員も指摘をいたしました、JR東海の在来線はホームドアの設置がゼロになっております。今回の駅ホームにおける安全性向上のための検討会におきましても、JR東海は委員になっております。

 先ほど、二〇二〇年までに八百駅だ、一日当たり平均利用者数が十万人以上のところで優先的に整備をしていくんだという答弁がありました。JR東海の在来線では、一日平均利用者数が十万人を超える大規模な駅というのは名古屋駅、金山駅、静岡駅の三つになるわけですけれども、いずれも現在ホームドアはございません。優先的に設置するべきところのはずですけれども、では、この三つの駅はいつホームドアが設置されるのか、お示しいただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のJR東海の三つの駅のホームにつきましては、現時点では、ホームドアをいつ整備するかに関する具体的な計画はないものと承知をいたしております。

本村(伸)委員 計画もないというのは本当に無責任だというふうに思います。技術面で難しいんだとか、ドアの位置が違うんだとか、いろいろ言っておりますけれども、この検討会でも、新しいタイプのホームドアについてさまざま指摘があるわけです。

 JR西日本でいえば、会社として、ホームドアの設置のために技術開発にも踏み出しているわけですけれども、JR東海はそれすらやっていないということでございます。大もうけを上げているのに、在来線にホームドアを設置する気が全く見えてこないという現状がございます。

 視覚障害者の方は、この名古屋駅とか金山駅、要望をされております。リニアの開発はできるのに、なぜホームドアはできないのかということを視覚障害者の方は訴えているわけでございます。

 昨年もこの委員会で申し上げましたけれども、JR東海というのは、売上経常利益率が二六%、分割・民営化のときに想定されていた適正利益一%を大幅に上回る巨額のもうけを上げているわけです。

 国交省は、こういう経営基盤もしっかりとあるJR東海が在来線のホームドアの設置の計画すら立てていない、こういう態度を放置していいんでしょうか。

石井国務大臣 JR東海の一日当たりの利用者数が十万人以上の駅の在来線ホームにつきましては、さまざまな車種が混在していることや編成数が異なることによりまして、車両の扉の位置をそろえることができないことなどから、現時点においてはホームドアの設置は困難と聞いております。

 ただ、JR東海におきましては、現在、こうした課題を解消すべく、扉の位置のふぞろいに対応可能なホームドアについて、技術面やコスト面などの観点からの検討を行っていると聞いております。

 国土交通省といたしましては、こうしたJR東海の検討を踏まえて、必要な対応をしてまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 今までのJR東海の態度は、本当に人命軽視そして安全軽視だというふうに言わざるを得ないというふうに思います。

 もう一つ聞きたいんですけれども、鉄道事業者は、ホームドアの設置など、駅ホームの安全対策の計画を立てて国交省に報告する義務があるんでしょうか。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 ホームドアや点状ブロック、内方線つき点状ブロックなどの転落防止のための設備の設置の有無につきましては、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づきまして、移動等円滑化実績等報告書として、鉄道事業者から国土交通省への報告が義務づけられております。

 なお、ホームドア整備などのホームの安全対策を初め、踏切の安全対策、駅の耐震補強工事等の輸送の安全を確保するために講じた措置及び講じようとする措置につきましては、鉄道事業法により、毎事業年度、鉄道事業者が安全報告書として公表するということにされておるところでございます。

本村(伸)委員 鉄道事業者が公表するということになっているんですけれども、やはり事業者任せになっている、国交省としてもそれを義務づけていなくて、無責任になっているという状況だというふうに思います。

 ホームドアは、単なるサービスの一環ではなく、利用者の人命にかかわる駅の安全対策そのものだというふうに思います。線路の保全などと同じレベルだと考えるべきだというふうに思います。

 十一月五日の東京新聞で「東京メトロ ホームドア設置前倒し」というニュースがあったわけですけれども、そのことに関して、ある視覚障害者団体の方がこうおっしゃっておりました。ホームドアがあるのが日本の駅の標準という抜本的な価値観の見直しに向けたきっかけとして歓迎したいとおっしゃっております。ホームドアがあるのが当たり前になるような抜本的な価値観の見直しが今必要だというふうに思います。

 事業者任せでは、JR東海など、大もうけを上げている鉄道事業者でさえ、在来線のホームドア設置が進まない現状がございます。

 十月十四日、根本政務官にも要望書を出させていただきましたけれども、ホームドアの設置は、駅の必要な安全対策として鉄道事業者が計画的に設置するべきことを法的に義務づけるべきだというふうに、安全対策としてこのくらい抜本的なことをやってほしいということを大臣にお願いしたいんですけれども、答弁をお願いいたします。

石井国務大臣 ホームドアは、列車との接触やホームからの転落防止のための設備として非常に効果が高く、その整備を推進していくことは重要であると認識をしております。

 ホームドアの整備につきましては、旅客用乗降口の位置が一定しており、鉄道車両を自動的に一定の位置に停止させることができるホームにつきましては、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づき、新設または大規模な改良を行う際に整備を義務づけております。

 一方、ホームドアの整備に当たりましては、必要に応じホームの補強なども行う必要があり、一ホーム当たり数億から十数億と高額な費用がかかることや、車両により扉の位置が異なっているなどの技術的な課題がございます。

 国土交通省といたしましては、利用者が一日当たり十万人以上などの駅について優先的に整備を促進することといたしまして、整備費用に対する助成措置を講じるとともに、新たなタイプのホームドアの技術開発の支援も行うことによりまして、ホームドアの整備促進に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、ホームドアの整備の加速化に向けまして、最大限の取り組みを進めてまいります。

本村(伸)委員 ホームドアの設置もそうなんですけれども、人的側面からも対策が必要だというふうに思います。

 同じJR東海では、静岡支社内ではホームドアの安全対策要員はゼロだというふうに聞いております。こういう人員配置、ホームの安全対策要員の配置、これもしっかりと対策をとらせるべきだと思いますけれども、大臣、最後にお願いしたいと思います。

石井国務大臣 ホームドアが設置されていない駅におきましては、視覚障害者が駅を利用する際に駅員等によるアテンドを実施するなど、駅員等がホームの安全性を確保する上で果たす役割は重要であると認識をしております。

 危険とされる駅を含めまして、個々の駅における駅員等の配置の見直しにつきましては、視覚障害者を初めとした利用者の個々の駅における利用状況や設備の状況に鑑み、鉄道事業者みずからが判断するものでありますけれども、鉄道事業者において、ふだんより、視覚障害者団体の意見をお聞きしたり、個々の利用実態等を見ながら必要に応じて駅員等の配置を見直すといった責任を持った対応が重要であると考えております。

本村(伸)委員 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、畑野君枝君。

畑野委員 日本共産党の畑野君枝です。

 リニア中央新幹線の建設について伺います。

 私の地元の神奈川県、山梨県では、駅や車両基地、変電所建設のために、市民への立ち退きや部分買い取りなどの問題が起こっています。神奈川県、山梨県では、対象となる地権者は何人になりますか。また、そのうち、補償契約を締結した地権者は何人になりますか。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 リニア中央新幹線の用地取得における地権者数につきましては、現在行われております、また今後行われます予定の用地測量によって定まるものでございます。このため、現時点においては、都道府県別の地権者数は確定していないものと承知をいたしております。

 また、補償契約を締結した地権者数につきましては、JR東海によりますと、用地取得が始まって間がないことから、現段階で公表する予定はないものの、今後、一定程度用地測量や用地取得が進んだ段階で、用地取得の進捗率として公表することを検討しているというふうに聞いております。

畑野委員 神奈川県と山梨県の概数についてでいいですから、お答えください。

奥田政府参考人 お答え申し上げます。

 JR東海が記者会見等で提示をいたしました大まかな数字といたしまして、これは登記簿から推計したというふうに伺っておりますが、移転をお願いする、もしくは区分地上権を設定させていただく地権者数は、品川―名古屋間全線で約五千人程度、うち神奈川県が約千五百人、山梨県が約千三百人と想定されているというふうに伺っております。

畑野委員 わかりました。まだまだ詳細をつかむような状況には進んでいないということがわかりました。

 にもかかわらず、相模原市では、測量に応じないのはお宅だけと言って、強引に測量しようと地権者のお宅に何度も日参している事案があると伺っております。地域の人間関係を分断し、地権者に過度な精神的圧迫をするようなやり方は行われるべきではありません。

 消費者庁に伺います。

 用地買収は消費者契約法の対象になり、地権者が用地買収の交渉者に対して退去してくれと意思を示したにもかかわらず、退去しないで、困惑して締結した契約は、取り消すことができるということですね。

小野政府参考人 お答え申し上げます。

 消費者契約法につきましては、消費者と事業者の間で締結される契約が適用の対象となります。よって、リニア新幹線の工事に係る用地買収におきまして、事業者が消費者から土地を購入する契約を締結した場合には、当該契約につきましては、消費者契約法が適用されると考えられます。

 消費者契約法が適用される場合、これは最終的には裁判所の判断になりますけれども、用地買収のために消費者の住居に来訪した事業者に対しまして、その消費者が退去を求めたにもかかわらず事業者が退去しなかったことによりまして、困惑し、土地売買契約を締結したときには、消費者は、当該契約を取り消すことができるということでございます。

畑野委員 確認をいたしました。

 そこで、石井国土交通大臣に伺います。

 リニア建設のために強引な用地買収はあってはならない、そういう立場でJR東海を指導すべきだと思いますが、いかがですか。

石井国務大臣 用地交渉につきましては、事業実施主体でありますJR東海及び用地取得に関する事務を受託しております地方自治体の責任で行われるべきものでございます。

 したがいまして、国土交通省としては、個別の用地交渉の詳細なやりとりについては承知をしておりませんが、いずれにいたしましても、用地取得につきましては、関係法令に適合して行われるべきことはもちろんでありますし、地域の理解と協力を得て進めることが重要でございます。国土交通省といたしましては、JR東海に対しまして、適切な交渉が行われるよう、指導監督してまいりたいと存じます。

畑野委員 しっかり指導していただきたいと思います。

 山梨県南アルプス市では、戸田地区、宮沢地区の住民の方々が、自治会を挙げてJR東海の説明会を拒否し、測量にも入らせていません。地区の真ん中を斜めに貫かれたルート地図を見た住民の方々は、勝手に線引きし、コミュニティーを分断し、住民のルート変更の要求にも聞く耳を持たないJR東海に怒っておられるからです。当然のことだと思います。

 その上、自宅の敷地がJR東海の取得用地と買収されない土地、つまり残地に分断されて、使い道のない残地、例えば角にある三角形の土地などについては補償されないということで、さらに不安を募らせています。

 南アルプス市の九月定例市議会でもこの問題が議論されました。国の損失補償基準では、土地等の取得や土地等の使用によって土地等の権利者が通常生ずる損失はこれを補償するものとするとなっており、JR東海の説明はこの損失補償基準に照らしても不十分だとして、市は、住民の要望がかなえられるようJR東海に強く要望を出していくと答弁いたしました。

 国土交通省として、JR東海に対して、住民の要望に応えるように指導すべきではないかと思いますが、石井大臣、いかがでしょうか。

石井国務大臣 リニア中央新幹線の用地取得に伴う損失補償につきましては、JR東海は、国の指針であります公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱及び公共用地の取得に伴う損失補償基準に基づき対応することとしております。

 いずれにいたしましても、リニア中央新幹線事業の推進に当たりましては、地域の理解と協力を得ることが重要でありまして、用地取得につきましても、まずは関係者に対して丁寧な説明を行うよう、JR東海を指導監督してまいります。

畑野委員 さらにその点で伺いたいんです。本当に住民の理解が得られているのかということです。大臣が指導されるとおっしゃいました。

 リニアの車両基地建設は、相模原市緑区鳥屋地域が予定地とされております。伺ってまいりました。緑深い山合いに、幅四百メートル、長さ二キロメートル、約五十ヘクタール、本当に広大な地域に及んで、車両基地を三百六十万立米の盛り土で埋めて築こうとしております。鳥屋地域振興協議会からは、車両基地の建設は地域コミュニティー全体への影響が懸念される、基本的には反対だと、一昨年九月に市長に要望書を出されています。

 谷戸地区は、集落の約五十戸弱を集団移転させる計画で、住民の方からこういう声が寄せられております。リニア中央新幹線のために今まで築いた生活を変えられたくはない、移転するのかしないのか、いまだにわからず落ちつかない、自然豊かな地域を壊されたくない、鳥屋の中に全戸移転と要望しているが、どのくらいの世帯が鳥屋に残るだろうか、コミュニティーが壊されることは目に見えている、家だけ移転になっても、畑や山、墓などが残され、今後の管理が大変、退職後の楽しみであった農作業ができなくなるのではないか、そして、鳥屋の地価は安いが、どの程度で買い取ってくれるのか不安。もう不安だらけという声を寄せてくださっております。

 その他の地域の方も、蛍の飛び交うすばらしい先祖代々の土地、小学生も本当に楽しみに体験学習で来る、この地域を守ってほしいと訴えておられました。

 石井大臣、自然を破壊し、住みなれた地域が壊され、多数の住民を移転させることについて、住民の反対の声をどのように受けとめられますか。

石井国務大臣 相模原市緑区鳥屋地区の車両基地の建設につきましては、平成二十六年三月、神奈川県知事から、環境影響評価準備書に対する意見といたしまして、車両基地の建設に当たって、動植物への影響を回避した施設配置や造成計画を第一に検討すること、車両基地については、交通分断の検討のみではなく、地域の一体性や社会地域への影響を予測、評価すること、車両基地の計画段階から事業の進捗に応じて具体的な事業内容を積極的に公表すること等がJR東海に送付されました。

 これらに対しまして、JR東海は、環境影響評価書におきまして、環境保全措置の実施により生物への影響をできるだけ回避、低減していく、やむを得ず生息、生育環境が縮小、消失してしまう種に対して、個体の移植や代替巣の設置等の代償措置を実施する、車両基地の詳細な計画の確定に当たっては、生活圏や地域文化への影響を最小限にしていくよう努める、車両基地の施設計画等について、事業説明会や用地説明等の場において地域住民等へできるだけ早い時期にお示しすることとしております。

 これらを踏まえまして、JR東海におきましては、車両基地計画地に生息する一部の種の生息環境が縮小、消失する場合について、湿地、草地等の類似した環境を創出することを環境保全措置として位置づけ、現在、その具体的な内容について検討するとともに、地域の分断等への対応について、引き続き地元との意見交換等を行っていると聞いております。

 これら環境影響評価書に記載された事項について、JR東海が引き続き誠意を持って対応していくことが必要であると考えておりまして、国土交通省といたしましては、JR東海に対して、地域の理解と協力を得て、また環境の保全を図りながら事業を進めるよう、指導監督してまいりたいと存じます。

畑野委員 失った環境はもとには戻らないわけです。大臣もぜひ現地に行って見てきていただきたいと思います。

 リニアの道志川橋梁がかけられる相模原市緑区道志地区の計画予定地にも行きました。住民、自治体の方からお話を伺いました。静かな山合いの百四十世帯ほどの集落で、橋の建設のために曲がりくねった狭い市道を工事用のダンプが行き交うことは不可能です。もしダンプが入ってくれば、静かな住民生活は破壊されてしまうという声です。この声にどのようにお答えになりますか。

石井国務大臣 御指摘の道志川橋梁及びその両側の山岳トンネル工事に伴う工事用車両による騒音、振動への影響につきまして、JR東海は、地元である相模原市道志地区において開催された事業説明会におきまして、車両の運行計画の配慮、工事の平準化、工事従事者への講習、指導など、環境影響評価書に記載した環境保全措置の内容等について説明を行っており、現在、引き続き地元との意見交換等を行っているとのことでございます。

 御指摘の箇所の工事については、まだ契約手続には入っておりませんで、具体的な工事用車両の運行ルートにつきましては、今後、工事が契約され、現地工事に着手されるまでの間に、工事説明会等の場を通じて地元の方々に説明されることとなります。

 国土交通省といたしましては、引き続き、JR東海に対しまして、地域住民に十分な説明を行うとともに、地元の理解と協力を得ながら、環境保全についての配慮が適切になされるよう、指導監督してまいりたいと存じます。

畑野委員 推進するのは難しい地域だと思います。

 さらに、隣接する相模原市緑区の津久井地区ですが、宮ケ瀬ダム関連工事の導水路掘削によると考えられる水がれ等が発生した経過がございます。水がれの痛恨の碑が建てられています。近くには横浜市の水源地としての施設もあります。

 ですから、リニアのトンネル工事によって水がれや水質汚染についての懸念がありますが、これらの問題に対してJR東海はどのように対応するのでしょうか。

石井国務大臣 御指摘の相模原市津久井地区を含む山岳トンネル工事に伴う水資源への影響に対する環境保全措置といたしまして、JR東海は、環境影響評価書の中で、工事の施工に先立ち、事前に先進ボーリング等を用いて地質や地下水の状況を把握した上で、必要に応じて薬液注入を実施することや、覆工コンクリート、防水シートを設置することにより地下水への影響を低減する、工事により排出する濁水は、必要に応じて、沈殿、ろ過、中和等の対策により、水質の改善を図るための処理をした上で排出する、回避、低減のための措置を講じても水源の機能をやむを得ず確保できなくなった場合は、代償措置としてその他の水源を確保するとしております。また、これらの水資源に対する環境保全措置について、事業説明会等を通じて地元の方々に説明していると聞いております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、JR東海に対しまして、地域住民に十分な説明を行うとともに、地元の理解と協力を得ながら、環境保全についての配慮が適切になされるよう、指導監督してまいりたいと存じます。

畑野委員 大事な水源地を壊してはならないと思います。

 最後に私、川崎市でのリニアの建設計画について伺います。二つまとめて伺いますので、お願いします。

 一つは、川崎市宮前区にあるリニア梶ケ谷非常口です。

 中原区等々力から宮前区犬蔵、麻生区東百合丘までの掘削による残土が排出される。周辺道路は今でも、東名インターや国道二百四十六号線につながる道路で、交通量は著しく多いところです。

 ダンプ車両による排出残土の輸送についてJR東海は調査をしているというふうに聞きますが、ダンプなどの工事車両の通行がふえれば環境がさらに悪くなる。この点で、市街地の運搬ルートを明らかにすべきだ、ダンプ車両による輸送はとめるべきだと思うのが一点。

 それからもう一つは、その先の、きょう資料をお届けしておりますが、市の臨海部の埠頭へ輸送する三つの候補地なんです。

 これは、幸区から中原区にかけて貨物線で輸送するということなんですが、一体どこを通るのかというのは黒塗りでわからないわけなんですね。駅名や交差点、踏切は黒塗りになっております。一日八百四十台ものコンテナダンプが走ることになるルートも検討されている。

 川崎公害の地です。大気汚染がひどくなるということは許されないと思いますが、この二点、大臣の認識を伺って、質問を終わります。

石井国務大臣 中央新幹線の環境影響評価書では、川崎市の梶ケ谷非常口からの建設発生土の量は、約百五十一万立米を見込んでおります。

 環境影響評価書での建設発生土の輸送に伴う影響評価については、ダンプトラックでの輸送を想定して行っておりますが、神奈川県においては、梶ケ谷非常口から排出する発生土をできる限り鉄道貨物を活用し臨海部等へ運搬する計画とし、大気質、安全交通等の環境影響の低減に努めていくとされております。

 このことを踏まえまして、JR東海は、鉄道貨物を活用した場合の川崎市臨海部からの積み出し候補地の検討等を行うため、川崎市臨海部における調査を川崎市港湾局に委託して実施したと聞いております。

 この調査におきましては、貨物列車にて積み出し地まで運搬するケースでは、ダンプトラックによる交通への影響は生じないとされておりますが、一方で、一部の踏切において遮断時間の増加が指摘されていると聞いております。これを受け、現在、JR東海におきまして、利用予定ルートの踏切の遮断時間について調査をしているところであります。

 国土交通省といたしましては、川崎市への委託調査結果や、今後のJR東海における調査結果を踏まえ、建設発生土の運搬については、環境影響に配慮して、可能な範囲で鉄道輸送が活用されるよう、JR東海を指導監督してまいります。

畑野委員 終わります。

西銘委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保です。

 本日は、タクシーの規制緩和に関して質問いたします。

 平成十四年二月、改正道路運送法の施行により、事業参入については免許制から許可制となり、増減車に係る事業計画の変更については許可制が事前届け出制となって、需給調整規制が廃止されました。また、著しい供給過剰により輸送の安全及び旅客の利便を確保することが困難なおそれがある場合の措置として、区域を指定して新規参入や増車を禁止する緊急調整措置が新設されております。

 需給調整規制廃止以降、タクシー事業においては、待ち時間の短縮や、多様な運賃、サービスの導入等の効果があらわれる一方で、厳しい経営環境を背景に、タクシー運転者の労働条件の悪化や、違法、不適切な事業運営の横行等により、タクシーの安全性や利便性が低下するという事態を招いております。

 その後、行き過ぎた規制緩和を是正するための法律改正が何度か行われてきましたが、有効に作用したとは考えられません。

 平成二十五年、議員立法によって成立したタクシーサービス向上安心利用推進法において、特定地域では参入と増車が一定期間禁止されるとともに、協議会が特定地域計画を策定すれば、それに基づく減車が義務づけられるようになりました。

 また、特定地域及び準特定地域においては、自動認可運賃制度にかえて公定幅運賃制度という、値下げ競争を一旦中断するために運賃幅を公定する仕組みが導入されております。

 そこで、お尋ねいたします。

 平成二十七年に、十九地域がタクシー特措法に基づく特定地域に指定され、減車の検討が行われました。その過程において、減車によって売り上げが減少するという中小事業者からの反対で、協議会で合意を得ることができない営業地域も見受けられました。このようなケースについて、国交省としての見解をお伺いいたします。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年の特定地域の指定につきましては、指定候補としておりました二十九地域のうち十地域において、地方公共団体、事業者、労働組合、利用者などにより構成される協議会が指定に同意をしなかったところでございます。

 協議会が同意しなかったことにつきましては、一つは、これまで一定程度の減車に取り組んでおり、これ以上の減車を望まないといったこと、さらには、減車でなく、観光資源などを活用した新たな需要の掘り起こしといった活性化に注力をしたい、そういった理由があったというふうに承知をしているところでございます。

 この同意をされなかった地域につきましては、タクシー特措法に基づきます準特定地域という地域には引き続き指定されておるところでございます。この地域のもとで、引き続き、自主的な減車の取り組みとともに活性化のための取り組みを推進することによって、利用者利便の向上、さらにはタクシーの運転者の方々の労働環境の改善等を図っていただきたいと考えているところでございます。

椎木委員 次に、改正タクシー特措法の運用について、特定地域及び準特定地域の指定基準が立法趣旨であるタクシー運転者の労働条件の改善に結びついていないとの意見があります。

 現在、運転者の賃金水準の指標として日車営収と日車実車キロが使われておりますが、その数値は運転者の賃金水準を適正に示しているとは言えません。日車営収は、事業所の総営業収入を実際に稼働している車両数で除したものが一車当たりの営収ですが、分母となる稼働車両数の基準が曖昧で、稼働率を高めるため、一人の乗務員を三台の車両に乗せることや、許可台数で除する事業者もあると聞いております。

 指定基準に用いる指標としてはずさんなデータ収集であり、見直しが必要であると考えますが、いかがでしょうか。

 また、指定基準の基本となるタクシー規制緩和導入の前年に当たる二〇〇一年の数字と比較することに合理性があるのでしょうか。当時と比較して、社会保険料や燃料費単価、車両購入費、法定地域別最低賃金も上がっている現状において、数値を比較するのであれば、増加したケースを考慮すべきと思うのですが、いかがでしょうか。見解を求めます。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 運転者の労働環境の改善は、改正タクシー特措法の重要な目的の一つであると考えております。そのため、運転者の賃金水準に関する指標として、歩合制賃金が多く採用されているタクシー事業の現状を踏まえ、運転者の賃金との連動性が高いと考えられる日車営収というものを指標の一つとして定めているところでございます。

 国土交通省としましては、現在、ずさんなデータ収集が行われているという情報を得ているわけではございませんけれども、今回の委員の御指摘も踏まえまして、しかるべきチェックを行った上で、もし不適切な事例が発見された場合には修正を求めるなど、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

 また、指定に当たりましては、今申し上げました日車営収などの指標につきましては、二〇〇一年度、平成十三年度との比較を行うこととされているところでございます。これは、タクシー特措法が、平成十四年に行われました需給調整廃止以後の諸問題を解決するために制定されたという経緯を踏まえまして、比較の対象として、規制緩和前の平成十三年度を基準としてその比較を行うということにしているものでございます。

 なお、御指摘のありました各種の費用につきましては、赤字事業者の車両数のシェアなど、そういった過去との比較を行わない指標の算定に用いているというふうに承知をしております。

椎木委員 大事なことはドライバーの皆さんが気持ちよく働ける環境をしっかりつくるということだと思いますので、今の局長の答弁のとおり、しっかりチェック等、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に入ります。

 特定地域の指定基準は、事故か法令違反の件数が全国平均を上回るなど、六条件を全て満たすものとなっておりますが、法令違反や事故発生件数に関しては、他の交通モードと比較した際、はるかに高い事故率であることに鑑みると、安全性の指標として用いることは適切ではありません。

 その他の、事業者の収支状況の指標は設定数値に根拠はなく、特定地域、準特定地域の指定基準を抜本的に見直す必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 また、指定基準の中に運転者が本当に生活できるのかというところを加味する必要があると思うのですが、この点について答弁を求めます。

藤井政府参考人 お答えをいたします。

 改正タクシー特措法第三条第一項の規定を見ますと、特定地域の指定に当たり、法令違反、事故の発生状況等に照らして供給輸送力の削減の必要性を判断する旨を定めているところでございます。この規定を踏まえまして、タクシー事業に係る法令違反や事故発生の件数が全国平均と比較して上回っているということを特定地域の指定条件としているところでございます。

 また、同じく先ほど申し上げました改正タクシー特措法第三条第一項においては、供給輸送力の削減をしなければタクシー事業の健全な経営を維持することができないということを特定地域指定の前提としているところでございます。このことを踏まえまして、地域の赤字事業者の車両ベースでの割合が二分の一を超えているということをあわせて指定基準にしているということでございます。

 また、特定地域の指定基準として、運転者の賃金水準そのものを用いるといったことにつきましては、その正確な把握が困難であるということから、適当ではないのではないかと考えているところでございます。歩合制のもとでタクシー運転者の賃金と連動するとされている日車営収を指標としていることについて御理解をいただければというふうに思っております。

 なお、平成二十六年に施行されました改正特措法の附帯決議におきましては、法律の施行の状況や効果について三年ごとに総合的に検証を行うとされているところでございます。国土交通省としましては、この附帯決議を踏まえまして、関係者の意見も踏まえた上で、来年以降検証を行い、その結果を踏まえて適切な対応をとってまいりたいと考えているところでございます。

椎木委員 今の局長の答弁で私も大変よく理解はしております。

 ただ、再度、ちょっと一点だけ確認させていただきたいんですけれども、指定基準の中に運転者が本当に生活できるかどうかというところを加味する必要があるかという私の問いですけれども、やはりこれについては難しいという答弁ということでよろしいんでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 委員の御指摘の、運転者の方が生活できるしっかりした収入が得られているか、その点は非常に重要なことだと考えております。

 それを具体的にどのように把握するかということにつきまして、運転者の賃金をそのまま使うということは実態把握の上でも難しい、その上で、今、日車営収というものを歩合制のもとで使わせていただいている、そういうふうに御理解いただければというふうに思います。

椎木委員 自動車行政のトップの局長の御認識はしっかりしたものだということで、私も信頼しておりますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。

 次の質問に入ります。

 特定地域指定基準に、人口三十万人以上の都市を含む営業区域であることとありますが、実態に即していないとの意見もあります。例えば、加古川市を含む東播磨交通圏などは人口三十万人を超える都市を含んでおりませんが、深刻な供給過剰状態にあり、タクシー運転者の賃金や労働条件の改善は見られないと言われております。

 住民の生活圏が複数の市町村を包括して構成されている地域を特定地域に指定する際、基準を見直す必要があると思うのですが、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 改正タクシー特措法第三条一項の規定の中には、供給輸送力の削減等によるタクシー事業の適正化及び活性化の推進が特に必要であると認めるときに特定地域の指定を行うとされているところでございます。

 タクシー事業のうち、流し営業につきましては、運転者の賃金が歩合制であることなどから、供給過剰が起こりやすいというふうに認識をしております。このことを踏まえて、流し営業が成立し得る一定規模以上の人口を有する地域として、人口三十万人以上の都市を含む営業区域というものを特定地域の指定要件としているところでございます。

 今委員御指摘の加古川の関係について見ますと、加古川市を含む東播磨交通圏というものがございますが、この交通圏全体の人口は三十万人を超えてございます。ただ、加古川市の人口が二十六万人ということでございますので、先ほど申し述べました特定地域の指定基準に合致していないということで、現在は準特定地域ということの上で、自主的な減車の取り組みと活性化の取り組みを推進していく状況にございます。

 こういった御指摘のケースの扱いにつきましては、先ほど申し上げたような改正タクシー特措法の施行の状況あるいは効果についての総合的な検証の結果を踏まえて、今後適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

椎木委員 ありがとうございます。

 私が申し上げたいのは、確認ですけれども、この深刻な供給過剰の状態によってタクシードライバーの皆さんの賃金や労働条件の改善に影響を及ぼさないように、この点についてだけしっかりお願いしたいと思います。

 次の質問へ入ります。

 タクシー事業者は、安全確保のために、運行管理や車両整備、運転者の教育等についてコストをかけて取り組んでおります。一方、いわゆるライドシェアについてはそのような安全確保が図られておらず、供給過剰の都市部においてライドシェアが実施されることは、タクシー運転者の労働環境の悪化にもつながります。改正タクシー特措法の趣旨とも矛盾すると考えますが、この点について答弁を求めます。

石井国務大臣 一部民間から提案がなされておりますいわゆるライドシェアにつきましては、運行管理や車両整備等について責任を負う主体を置かないままに、自家用車のドライバーのみが運送責任を負う形態を前提としております。このような形態の旅客運送を有償で行うことは、安全の確保、利用者の保護等の観点から問題があり、極めて慎重な検討が必要と考えております。

 また、都市部を中心にタクシーは供給過剰の状態にありまして、そのようなエリアでいわゆるライドシェアを実施した場合には、タクシー運転者の労働環境の悪化を招くおそれがあるものと考えております。

 平成二十五年に行われましたタクシー特措法の改正は、タクシーを安全で安心して利用できる公共交通機関として進化させるとともに、運転者の労働条件の改善を目的としていたものと承知をしております。いわゆるライドシェアの導入は、この改正の趣旨を損なうおそれがあるものと考えております。

椎木委員 これまで私も何度か質問させていただきましたけれども、石井大臣の一貫した答弁といいますか、事業者の実態、そして課題、そしてドライバーの不安な気持ち、こういったものを全て理解された上で、御認識された上で、一貫したこれまでの答弁のとおりということで、本当に今の答弁には感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、最後の質問に入らせていただきます。

 タクシーの輸送人員がここ十年で大幅に落ち込んでいるという厳しい状況の中で、タクシー業界の活性化のために、今後どのように取り組みを行っていこうと考えているのでしょうか。最後にお尋ねいたします。

石井国務大臣 低迷するタクシー需要を喚起するためには、事業者だけでなく、運転者、行政が協力して、多様化する利用者ニーズに的確に対応することが必要であります。

 このため、国土交通省におきましては、事業者、労働組合の参画も得まして、生産性、サービス、安全、安心の向上という側面から、利用者に選ばれるタクシーを実現するための取り組みについて検討いたしまして、本年四月にタクシー革新プラン二〇一六を取りまとめました。

 取り組みの第一弾である東京のタクシーの初乗り運賃の引き下げにつきましては、本年八月から四百十円タクシーの実証実験を行い、利用者の好評を得たところでございます。来年のなるべく早い時期に運賃改定を実現すべく、現在、審査を進めているところであります。これによりまして、訪日外国人や高齢者の新たな短距離需要が喚起されることを期待しております。

 その他、配車アプリの普及により、運賃を乗車時に確定する等の多様なサービスの導入についても検討を進めているところであります。

 引き続き、利便性をさまざまな角度から向上させることによりまして、タクシーの利用者をふやしていくための取り組みについて、官民連携して取り組んでまいります。

椎木委員 ありがとうございます。

 この問題については、私も国交省の事務方の皆さんともいろいろとお話をさせていただきましたけれども、やはり経営努力、当然、自助努力をしていかなきゃいけないというのは絶対必要不可欠な話です。ただ、やはり、これまでの過去のお客さんを取り戻すのには国の対策なり支援は当然必要となってまいります。

 そういう意味では、私がこれをきょうなぜ取り上げたかというと、タクシードライバーの皆さんはそれぞれ、個別のドライバーさん、そして労働組合の単組の皆さん、やはり何らかの打開策をということで御苦労されている。それを私は一人一人お話も伺ってまいりました。そういう中で一番実感したのが、ドライバーの皆さんは、当然ですけれども、人の命を運ぶ、そして人の命を預かるという責任感、これがやはり、日々緊張しながらの大切な職業なんですね。そういう意味では、もう一分一秒、手に汗握る思いで、本当に人の命を大事にお預かりして運んでいるわけです。

 まず、それに対して、当然、冒頭申し上げましたけれども、企業努力、これは絶対不可欠ですけれども、ただ、やはり国の支援、そして対策というものも求められますので、きょうの局長、石井大臣の答弁のとおり、今後も国としてできる限り御支援いただければと思いますので、最後にそのことを改めてお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

西銘委員長 次に、内閣提出、道路運送法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。国土交通大臣石井啓一君。

    ―――――――――――――

 道路運送法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

石井国務大臣 ただいま議題となりました道路運送法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。

 本年一月に発生した軽井沢スキーバス事故により、十三人の将来ある若者の命が突然に奪われました。このような悲惨な事故を二度と起こさないという決意のもと、法令違反の早期是正、不適格者の排除、監査の実効性の向上等により、安全、安心な貸し切りバスの運行を実現する必要があります。

 このような趣旨から、このたびこの法律案を提案することとした次第です。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、安全に事業を遂行する能力の有無を定期的に確認するため、一般貸切旅客自動車運送事業に係る許可について、五年ごとの更新制を導入することとしております。

 第二に、不適格者の安易な再参入を防止するため、旅客自動車運送事業の許可及び運行管理者の資格について、欠格期間を二年から五年へ延長するとともに、許可取り消しを受けた者と密接な関係を有する者、処分逃れを目的として監査後に廃業した者等の参入を制限し、事業の休廃止の届け出を事後届け出制から三十日前の事前届け出制に改めることとしております。

 第三に、民間指定機関が一般貸切旅客自動車運送事業者への巡回指導等を行うことにより、国の監査機能を補完し、自主的改善を促進するため、民間指定機関による負担金徴収制度を創設することとしております。

 第四に、輸送の安全確保命令に違反した一般貸切旅客自動車運送事業者及び一般乗合旅客自動車運送事業者に対する罰則を強化することとしております。

 その他、これらに関連いたしまして、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案を提案する理由であります。

 この法律案が速やかに成立いたしますよう、御審議をよろしくお願い申し上げます。

西銘委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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