衆議院

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第5号 平成29年3月31日(金曜日)

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平成二十九年三月三十一日(金曜日)

    午前九時八分開議

 出席委員

   委員長 西銘恒三郎君

   理事 今枝宗一郎君 理事 岩田 和親君

   理事 中根 一幸君 理事 西村 明宏君

   理事 宮内 秀樹君 理事 津村 啓介君

   理事 本村賢太郎君 理事 佐藤 英道君

      秋本 真利君    池田 道孝君

      大塚 高司君    大西 英男君

      加藤 鮎子君    金子万寿夫君

      金子 恭之君    神谷  昇君

      木内  均君    工藤 彰三君

      小島 敏文君    佐々木 紀君

      佐田玄一郎君    鈴木 憲和君

      田所 嘉徳君    津島  淳君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      根本 幸典君    橋本 英教君

      藤井比早之君    古川  康君

      堀井  学君    前田 一男君

      務台 俊介君    望月 義夫君

      黒岩 宇洋君    小宮山泰子君

      玉木雄一郎君    松原  仁君

      水戸 将史君    村岡 敏英君

      横山 博幸君    伊佐 進一君

      北側 一雄君    中川 康洋君

      清水 忠史君    本村 伸子君

      椎木  保君    野間  健君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国土交通副大臣      田中 良生君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   国土交通大臣政務官    大野 泰正君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        奈良 俊哉君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 開出 英之君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 井上 裕之君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           瀧本  寛君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           橋本 泰宏君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            藤田 耕三君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         谷脇  暁君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  羽尾 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  菊地身智雄君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  佐藤 善信君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     佐々木 紀君

  小島 敏文君     池田 道孝君

  橋本 英教君     務台 俊介君

  荒井  聰君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     金子万寿夫君

  佐々木 紀君     大塚 高司君

  務台 俊介君     橋本 英教君

  玉木雄一郎君     荒井  聰君

同日

 辞任         補欠選任

  金子万寿夫君     小島 敏文君

    ―――――――――――――

三月三十日

 ライドシェア(白タク)の合法化に反対し、交通の安全・安心を守ることに関する請願(高木義明君紹介)(第六二三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)


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     ――――◇―――――

西銘委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省総合政策局長藤田耕三君、土地・建設産業局長谷脇暁君、海事局長羽尾一郎君、港湾局長菊地身智雄君、航空局長佐藤善信君、観光庁長官田村明比古君、内閣府地方創生推進事務局審議官奈良俊哉君、総務省大臣官房審議官開出英之君、財務省大臣官房審議官井上裕之君、文部科学省大臣官房審議官瀧本寛君及び厚生労働省大臣官房審議官橋本泰宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田一男君。

前田委員 皆様、おはようございます。自民党の前田一男でございます。

 限られた時間でございますが、私が社会人としてスタートしたのは、今から約二十五年前、商社マンがスタートでありました。当時はバブル経済の最後の段階でありまして、日本は、経済は一流、そして政治は三流、先生方、済みません、そんなふうに言われていた時代でもありました。

 しかし、実際に商社マンになって日本の経済の状況を見ていますと、一流と言われる経済の枠組み、そしてルール、そういったものをつくっているのは実は政治であるということに気がついたわけであります。したがって、雑誌のタイムなどでは、先ほど申し上げたような、日本は政治は三流だけれども経済は一流だから大丈夫だと。そんなことにうつつを抜かしていたら将来大変なことになる、そのように感じたところでございます。

 時は流れて二十五年、今、政治家としてこの場に立たせていただいていて、やはり、日本企業が世界で戦っていく上で、それを後押しして、そして鼓舞するような、そのような日本の政治家でなければならない、日本の政治でなければならないという思いを持って、きょうの質問に当たらせていただきます。

 海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案について、私からは、特にトン数標準税制の適用対象の拡充について質問をさせていただきたいと思います。

 外航海運は、世界単一市場の中で熾烈な国際競争を展開しています。その中で、税制においても国際的な競争の環境にあるということが言えます。欧州は今から二十年前からこのトン数標準税制というものを適用してきたわけでありまして、これに即応するような形で、日本でも、交通政策審議会で、平成二十年にトン数標準税制を導入したところであります。

 しかし、我が国のトン数標準税制は、経済安全保障という考え方を導入して、およそ国際標準化とは違う視点で講じられております。この理由などについて説明をいただきたいと思います。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 トン数標準税制の創設当時の検討におきましては、外航海運に係ります税制の国際標準化を目的とすべきとの議論もございました。一方で、貿易量の九九・六%を海上輸送が担う我が国にとりまして、非常時におきましても他国の管轄権が排除され我が国の管轄権だけが及ぶ、そういう日本船舶等を確保し、安定的な海上輸送を確保することが重要でございます。

 こういった視点からさまざまな検討を重ねた結果、我が国のトン数標準税制は、日本船舶及び準日本船舶を四百五十隻確保することによって、早期に経済安全保障の確立を図ることを目的とする、そういう制度となってございます。

前田委員 ただいま御説明いただきましたけれども、恐らくは、国内の税制の公平性、そういった観点もあったんだろうというふうに思います。

 しかし、国際競争で負けてしまって日本の海運業自体が衰退してしまうとなりますと、もちろん税収も上がらず、日本商船隊の力が小さくなってしまう。そうなったら、今おっしゃった経済安全保障どころではなくなってしまうという、そのような考え方も私は大切だというふうに思っています。

 この日本商船隊というのは、私の資料では全部で二千五百六十一隻あるわけでありますが、その中でどれだけこの四百五十隻を目標とするトン数標準税制を利用してくれるかというふうなところでございます。

 平成二十七年の六月末の数字でございますが、日本船舶では百九十七隻中百八十六隻、そして、今、準日本船舶と言われている日本船社の海外子会社保有船、これが九百隻以上ありますが、実際に認定を受けているのは四十一隻というふうに聞いています。合わせて、四百五十隻のうちの半分ぐらいにしかなっていないという状況でございます。

 さまざまな理由がありましょうけれども、私は、ここには、日本商船隊として十分な利益が上げられない、そのような今の構造にあるのではないかというふうに感じるのであります。一定の利益がとれるのであれば、みなし利益に対する課税で済むこのトン税の方に多くが移行するわけでありますが、そうなっていないというのは、やはり、みなし利益ほども利益が上がらない可能性がこれから先あるという、そのような考え方によるのではないかというふうに思うんです。

 そういう中で、今回の法改正で、日本の船主、国内オーナーの海外子会社の保有船、約八百隻あると聞いていますが、これを広げてどれだけ認定申請が上がってくるか。私は、未知数だというふうに思うんです。

 国交省として、経済安全保障に必要な四百五十隻を目指す上では、大きく分けるとカテゴリーが四つあると聞いています。一つには、オペレーター、日本の船会社が保有する日本籍船、二つ目には、オペレーターの海外子会社が保有する外国籍船、三つ目には、今回の拡充の対象になっている、国内オーナーの海外子会社が保有する外国籍船、そして四つ目には、その他海外の船会社が保有する外国籍船。

 どのカテゴリーをターゲットとして広げていこうというふうに考えておられるのか、説明いただきたいと思います。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 現在の海上運送法に基づきますトン数標準税制につきましては、委員御指摘のように、日本船舶及び準日本船舶、これを拡充することによって経済安全保障を確立していこう、こういうことでございます。

 そして、そのベースとして、日本船舶は、いわゆる経済安全保障の観点から、我が国の管轄権が直ちに及ぶ、他国の管轄権が及ばないということでありますし、準日本船舶の場合は、そういう事態のときに航海命令を出すときには、一旦日本船籍に戻すという手続が必要となっております。

 その意味で違いがございますが、我が国の経済安全保障の確立を厳しい経営状況にある海運会社が確実に達成していくという観点からは、現時点におきましては、日本船舶及び準日本船舶かかわりなく、両方で四百五十隻の早期達成を目指していこう、このように考えております。

前田委員 経済安全保障での四百五十隻の確保、これは私、本当に必要なことだというふうに思っています。

 この経済安全保障というのは、戦争や災害などの非常時において、一年間、日本の経済活動とか国民生活水準を確保する上で必要な輸送力を賄うために必要な日本船籍の数だということであります。平和な国際社会であればそういったことの心配もしなくていいのかもしれませんけれども、しかし、我が国を取り巻く環境、ミサイルが日本の主要都市に向けられていたり、また、近隣諸国でも核実験を何回も行うような、そのような状況でございますから、やはり、まさかのときのために、日本船舶の四百五十隻の確保は、何としてもしていかなければいけない、そのようなものだというふうに思います。

 では、この四百五十隻を目指すにはどのようにすればいいかということでございます。

 急がば回れという言葉もありますけれども、私は、まず、業界全体、日本商船隊全体を強くしていく、国際競争の中できちんと勝っていけるような、そのようなことが必要だろうというふうに思うんです。ですから、今回はトン税の対象の拡充をするわけでありますが、これまでも積み残しになっている、例えば固定資産税の減免でありますとか、また、手続のさらなる簡素化、こういったこともあわせて行っていく必要があるというふうに考えています。

 また、外国船主の保有船、今御説明がありましたけれども、航海命令を発したときに管轄権が及ばないので経済安全保障の観点からは効果は薄い、そのようなお話でありましたけれども、しかし、これも含めてしまって、そして国際標準の税制の中で競争に勝ってもらう、日本商船隊全体が強くなっていく、そのようなことでもってこの四百五十隻を確保していく、そのような道もあるのではないかというふうに考えるところであります。

 四百五十隻というふうに一つの設定を持っているわけでありますから、これが、業界全体の景気がよくなったとして、全ての船がみなし利益の方向、トン税の適用に向かってくるということにも恐らくならないというふうに思うんです。というのは、四百五十をアッパーとして国としては制限するというふうなことになりましょうから、そういった意味では、国としても税収が大きく減ってしまうという心配もありませんし、また、海運業界は、中長期的な大きな投資、リスクテークをしながらの投資ということも考えていかなければいけませんから、やはり税収についても予見性がなければいけません。こういったことが必要だというふうに考えています。

 海運業界は大変不況の状態が続いていて、今、ようやくよくなりつつある、そのような傾向も見えているというふうに聞いています。しかし、大手の邦船三社の自己資本比率がいずれも三割を下回っていて、そして、それらのコンテナ事業を、合弁会社をつくることによって何とか生き残りをかけていこうという、そのような厳しい経営環境にあるということも勘案しますと、我が国の外航海運企業の競争力向上といった観点から今回のトン数標準税制の見直しがあるわけでありますが、このあり方について、また、それ以外の税制についてもさらなる検討を行っていく必要があると考えます。

 国交省として、また大臣としてどのようにお考えになるか、お聞かせいただきたいと思います。

石井国務大臣 今委員御指摘のとおり、我が国の外航海運企業は、世界単一市場において厳しい競争下にある中、近年は、中国経済の減速や船腹過剰等による歴史的な海運市況の低迷により、厳しい経営環境にございます。また、これに対処すべく、邦船三社には、本年七月にコンテナ事業に係る合弁会社を設立し、規模の経済を追求する動きも出ております。

 このような中、トン数税制のさらなる国際標準化、対象船舶をもっと拡充してはどうかという要望があることは承知をしてございます。

 一方で、今般の海上運送法の改正は、我が国周辺海域における情勢の変化等に対応し、経済安全保障の早期確立を図るため、準日本船舶の対象を拡大するものでございます。これにつきましては、業界団体としては、その要望に沿ったものと評価をいただいてございます。

 事業者の安定的かつ計画的な船舶投資の確保の観点からトン数標準税制を拡充すべきとの御指摘につきましては、経済安全保障の確立を初めとするさまざまな視点から総合的に検討していくべきものと考えますが、まずは、今般のトン数標準税制の拡充によります日本船舶等の確保の状況等の効果を検証したいと考えておるところでございます。

前田委員 今回の改正の後の推移を見ながら、ぜひ、日本の政治は世界で戦う日本の企業を後押ししていく、そのような政治であることを心から期待し、そしてみずからもそのような役割を果たしていくことを誓いながら、きょうの質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

西銘委員長 次に、中川康洋君。

中川(康)委員 おはようございます。公明党の中川康洋でございます。

 きょうは、海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案ということで、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 法案審議ということもありまして、質問の内容が重なるところもありますが、私も私の立場で質問をさせていただきたいということで、重なるところがありましたらお許しを賜ればというふうに思っています。

 私も、主に、トン数標準税制の部分と、さらには船員の確保、これを今回の法案に関連しながらお伺いしたいというふうに思います。

 一点目に、このトン数標準税制の拡充に対する海運事業者の評価、さらには、先ほども一部答弁がございましたが、さらなる拡充に向けた国交省の決意についてお伺いをさせていただきます。

 今回の改正は、近年、我が国の外航船舶運航事業者が厳しい国際競争にさらされる中、今、前田先生からも御指摘のとおりでございました、経済安全保障の確立及び国際競争力の強化に必要な日本船舶等の確保を目的に、トン数税制の対象を、これまでの、日本船舶と、準日本船舶の対象として国内オペレーターの海外子会社の保有船のみだったものから、新たに国内オーナーの海外子会社保有船までを準日本船舶の対象として拡充するものでございます。

 このトン数標準税制の対象範囲の拡充は、今回の法改正を前提に、平成二十九年度の税制改正大綱でも認められたのとともに、日本船主協会など海運事業者からも、今後の外航海運の国際競争力の維持並びに我が国の安定的な国際海上輸送の確保を目的に強い要望が出されたところでございますが、今回の改正についてこれら海運事業者からはどのような評価が示されているのか、冒頭お答えをいただきたいというふうに思います。

 また、加えて、今回の改正は、平成二十年及び平成二十五年施行の改正内容から見ると一定程度前進したとは言えるものの、諸外国、例えばオランダやノルウェー、さらにはイギリスや韓国などのトン数標準税制の中身と比べると、やはりまだまだ劣っていると言わざるを得ないところがございます。

 考え方の観点が違う、こういったところもあるわけでございますが、私は、今回の改正については、これは当然、一定程度評価をするものでございますが、やはり私も、将来的には、我が国のこの制度についても、諸外国の制度と同様、例えば全ての運航船を対象とするなど、さらなる拡充を検討することが必要ではないかというふうに考えるわけでございますが、その部分についての大臣の御決意、私の方からも改めてお聞かせを願いたいと思います。

石井国務大臣 今般のトン数標準税制の拡充につきましては、海運事業者からは、要望がほぼ全て反映されたといった評価をいただいているところでございます。その上で、今後、トン数税制のさらなる国際標準化を図るべきとの要望があることも承知をしてございます。

 我が国外航海運企業は、世界単一市場において厳しい競争下にある中、近年は、中国経済の減速や船腹過剰等による歴史的な海運市況の低迷により、厳しい経営環境にございます。一方で、今般の海上運送法の改正は、我が国周辺海域における情勢の変化等に対応し、経済安全保障の早期確立を図るため、準日本船舶の対象を拡大するものでございます。

 事業者の安定的かつ計画的な船舶投資の確保の観点からトン数標準税制を拡充すべきとの御指摘につきましては、経済安全保障の確立を初めとするさまざまな視点から総合的に検討していくべきものと考えておりますが、まずは、今般のトン数標準税制の拡充による日本船舶等の確保の状況等の効果を検証したいと考えております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今、前田先生とも同じような質問をさせていただきまして、総合的な検討というところは私も一定程度理解をするところでございます。やはり、経済安全保障の観点から、日本はこの税制の導入、拡充に進んできた。そういった意味においては、考え方、視点が海外と一部違うところもございます。しかし、海運事業者等からの御意見等を伺うと、やはり今回の拡充については非常に評価をいただいているところでございますが、将来的には、諸外国とのイコールフッティングに向けた環境整備、ここまでやはりぜひともお願いしたいという、こういった声も聞いておる状況がございまして、時間がかかるところはあるにしても、総合的な検討を国交省として図っていただくこと、このことを改めて私の方からもお願いさせていただきたいというふうに思うわけでございます。

 次に、今回の法律改正に関連して、船員の確保さらには育成策について、関連的に三点ほどお伺いをさせていただきたいというふうに思っています。

 今回の法律の改正案は、近年の海上運送事業を取り巻く社会経済情勢の変化に対応するために、例えば今のトン数税制の拡充など、さらには柔軟なさまざまな対応、こういった所要の措置を講じていただいているものでございます。

 我が国の将来的な海事産業の維持、安定のためには、私は、今回の諸施策も必要だというふうにも思いますし、それとともに、やはり、それら船舶で従事する船員の確保、これも同時に急務の課題であるというふうに考える一人でございます。

 ここでは、船員の後継者の維持、確保、育成について、何点か具体的にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 一点目が、船員養成機関の定員拡大についてお聞かせを願います。

 この拡大については、将来の海事産業を担う後継者の確保さらには育成を図る上で、船員養成機関はその核となるものでございまして、例えば、国交省所管の海上技術学校さらには短期大学への入学希望者や求人数は、近年、増加傾向にございます。また、文科省所管の商船系大学においても入学倍率は高水準が続いておりますし、また、商船系の高専、私どもの地元にも鳥羽商船がございますが、その求人数もふえている状況がございます。

 こうした状況を踏まえて、私は、これら船員養成の教育機関の定員拡大の取り組みが非常に大事になってくるというふうにも思っておりますし、また、この教育機関の施設とか、例えば訓練船の維持さらには更新等、こういったハード整備、また、こういった機関における教員の確保、教員の高齢化等も進んでおるというふうに聞いておりますので、こういった部分において、さまざまな強化、また教員の確保等は適時適切に推進をしていくこと、こういったことがやはり必要であるというふうにも思うわけでございますが、その点につきまして国交省のお考えをお伺いしたいと思います。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の独立行政法人海技教育機構、ここの近年の応募倍率は二倍を超えております。また、船会社の採用意欲も高まってきているということでございまして、船員のニーズを満たしていくべく、入学定員を、二〇一三年、平成二十五年度は三百五十名でございましたが、これを段階的に増員させまして、二〇一六年、平成二十八年度の入学定員につきましては、これまでの最高規模でございます三百九十名というふうにいたしております。

 海技教育機構の入学定員につきましては、学生の応募状況、あるいは船会社による採用の状況、そして教室や寮などの学校施設、それに練習船の収容の人員数、さらには教員の数、こういったものを踏まえて設定いたしておるところでございます。

 この入学定員のさらなる増員につきましては、関係者からそれを求められていることは十分承知いたしておりますが、このような受け入れ側の制約要因のもとでどういった工夫ができるのか、産業界など関係者の意見も聞きながら、教育内容の高度化、そして安定的、効率的な運営の確保、御指摘のような練習船、さらには教育施設、教員といったものの充実、そういったことも含めながら今後検討してまいりたいと考えております。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 今、順次定員をふやしていただいておるという話がございました。しかし、今、募集定員の二倍を超えておるという状況がございまして、やはりそういった分野で従事したいという方の要望というのは確実にふえておるわけでございます。また、関係機関からは、今、三百九十までふやしていただいたわけですけれども、やはり最終的には五百名という定員まで伸ばしていただきたい、こういった声もあるわけでございます。

 きょうは文科省の方はあえてお伺いをしなかったわけですが、あわせて、こういった要望にどう応えていくのか、そしてこれによって日本人の船員をどう確保していくのかというところ、やはり若い方をどう育てていくのか、また確保していくのか、この視点は大事だと思いますので、その部分について引き続きの御要望を申し上げたいというふうに思います。

 続きまして、ちょっと一点、視点を変えて、今度は、小学校や中学校、初等中等教育機関における海に親しむ活動の推進についてお伺いをしたいと思います。

 海運産業における後継者不足を解消するためには、次世代の担い手となる船員志望者の裾野を広げること、これが中長期的な教育の視点から重要であるというふうに私は思っています。

 具体的には、初等中等教育の教科や体験活動の段階において、例えば、教科書の海、船、船員などに関する記載内容の充実を図ることや、さらには、海に親しむ体験活動の機会を児童や生徒に提供することなどにより、次世代を担う子供たちの海とか船に対する関心を高め、船員職業の認知度をこれまで以上に高めていくこと、この部分が必要であるというふうに思いますが、この点についての文科省の御見解を伺いたいと思います。

瀧本政府参考人 お答え申し上げます。

 学校におきます海洋教育については、海洋基本法も踏まえ、現行学習指導要領の小中学校の社会科及び中学校理科におきましてその充実を図っており、教科書においては、例えば、小中学校の社会科において、我が国の海洋国家としての特色や、水産業に携わる方々の取り組みなどの記述がなされているところであります。

 また、本日公示されました新しい学習指導要領では、例えば、小学校社会科では、海洋に囲まれ、多数の島から成る国土の構成や、貿易や運輸に関する内容の充実をしております。中学校社会科においては、交通、通信における海上輸送などの物流に関する内容の充実をしているところでございます。こうした学習指導要領におきます海洋に関する内容の充実を踏まえ、教科書の記述も充実されるものと考えております。

 あともう一点、海に親しむ体験活動についても御質問をいただきました。

 児童生徒の社会性あるいは豊かな人間性を育むために、発達段階に応じて自然体験活動等のさまざまな体験活動を行うことは重要であると考えております。

 文部科学省では、学校が行います宿泊体験活動に対し財政的な支援を行っており、平成二十九年度予算においては、学校等における宿泊体験活動の推進のために約一億円を計上しております。加えて、関係省庁と連携した支援なども通じまして、学校教育における宿泊体験活動の取り組みをさらに推進してまいりたいと考えてございます。

 以上です。

中川(康)委員 ありがとうございました。

 教育機関における中長期的な視点になるんですが、やはり、海に親しむ、さらには船とか船員、こういった部分の教科、また、そういったところで改めてのお願いをさせていただいたところでございます。

 残った時間、一点、総務省にお伺いをしたいと思います。最後に、船員の地方住民税の減免措置について、ちょっと関連してお伺いをします。

 そもそも船員というのは、特に外航船員は、離家庭性、家庭から離れたりとか、離社会性、社会から離れたりといった特殊な労働環境にございます。このことが、結果的に船員の後継者不足の一因にもなっているというふうに言われております。

 この点に関し、国交省は、平成二十二年に日本人船員に係る税制に関する検討会を設置いただきまして、外航日本人船員の維持拡大、さらには若年船員の確保を図るためのインセンティブとして、外航日本人船員の所得税、さらには住民税の軽減措置について検討を行っていただいております。

 この検討会の取りまとめ結果として、所得税減税はちょっと難しいという結果だったわけですが、住民税の減税については、乗船中、長期間住民サービスが受けられない、こういった部分に着目をすれば実現可能性が高いとの結論から、平成二十四年度には、総務省から具体的にその旨が通知をされたところでございます。

 現在、この住民税の減税については、私の地元の三重県四日市市、さらには同じく鳥羽市が実施をしておりますが、私は、この外航船員の労働環境の実態、さらには我が国の船員のさらなる確保の必要性からも、このような減免制度について、各自治体においては柔軟に対応できる旨をいま一度周知を行っていただく、こういったことが肝要であるというふうに思っておりますが、総務省の御見解を最後に確認させていただきます。

開出政府参考人 お答えいたします。

 個人住民税につきましては、地域社会の費用負担を住民が広く分かち合う、地域社会の会費的な性格を有する税であり、一月一日時点で地方団体に住所を有する者に対し、当該団体が課税するものでございます。

 長期の出張などで住所地にいる期間が短い方などにも、当該団体に住所を有し、一定の所得がある方に納税していただく仕組みとなっておりまして、船員につきましても、住所地団体から、家族も含めさまざまな行政サービスを受けていることを踏まえて判断されるべきものと考えております。

 一方で、個人住民税におきましては、地方団体の条例の定めるところによりまして、地方税法の規定に基づく減免を行うことが可能とされており、お話にありましたように、長期外航勤務に従事する船員等に対し、減免を行っている団体もございます。総務省といたしましては、減免等に関する解釈につきまして、既に地方団体にお示ししているところでございます。

 具体的にどのように減免を行うかにつきましては、個別納税者の事情等を考慮して、各地方団体において主体的に判断していただくべき事項でありますが、地方団体からの相談等に対して、今後とも適切に対処してまいりたいと考えております。

中川(康)委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。大変にありがとうございました。

西銘委員長 次に、本村賢太郎君。

本村(賢)委員 民進党の本村賢太郎です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、株式会社「てるみくらぶ」が、三月二十七日に、負債総額百五十一億円を抱え、東京地裁から破産開始決定を受けました。旅行会社の倒産としては戦後四番目の規模で、リーマン・ショック後では最大規模となるということであります。

 三月二十六日時点で、約二千五百人が三十八の国や地域に同社を利用して渡航している状態でありますし、三月二十七日時点で、予約の入っている人数は八万人から九万人、取扱額は約百億円というお話がございます。こうした被害者についてどのような対応を行っているのか、まずお伺いいたします。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の事案を受けまして、観光庁におきましては、現在海外旅行されている方が円滑に帰国できるよう、関係者と連携し、必要な対応を行っているところでございます。

 そのため、当該旅行会社を利用した旅行者が渡航している国・地域の公館に対しまして、邦人旅行者より支援要請があった場合に、日本からの送金方法を御案内する等、必要な支援を行うよう外務省に依頼し、二十五日夜までに連絡が行われたところでございます。

 加えて、宿泊施設に泊まれない場合等に、在外公館で対処方法を相談できることを旅行者各位に連絡するよう、観光庁より当該旅行会社に対しまして強く働きかけておりまして、旅行会社は渡航している旅行者にその旨連絡していると報告を受けているところでございます。

 また、当該旅行会社を利用して旅行されているお客様につきましては、全員に航空券が発券されており、運送契約が成立し、運送義務が発生しますので、改めて、国土交通省より航空会社に対しまして、お客様が円滑に帰国できるよう、二十七日にその旨を周知いたしました。

 これから旅行に行かれる方で既に入金済みの方を含めまして、破綻で実現しなかった海外渡航代金等の返還につきましては、旅行業務に関して取引をした旅行者がその取引によって生じた債権について、日本旅行業協会が国に供託した弁済業務保証金から一定の範囲で旅行者に弁済する制度、それから、破産管財人による債権確定が行われ、確定した債権額に応じて会社財産の処分代金による配当、これらによる方法で、弁済される具体的な額が確定し、旅行者に返金されることとなります。

 今後とも、関係者と連携を図り、お客様への対応に万全を尽くしてまいります。

本村(賢)委員 私の友人も、子供の成長に伴って御家族で海外旅行に行くということで、この「てるみくらぶ」を利用されていたということで、今局長からも日本旅行業協会の補償があるという話でありますが、一億二千万円を限度に補償されるということでありまして、今回、負債が百億円ですから、戻る金額は約一%と、夢を持って渡航しようとした皆さんに対して本当に残念な結果が今起こっておりますので、鋭意対応していただきたいと思います。

 次に、旅行業の観光庁長官登録が五年に一度の更新で、「てるみくらぶ」は三年前に更新をされているというふうに伺っているわけでありますが、既に三年前から粉飾決算を行っていたという報道もあります。三年前といえば、この登録更新がされたころでありまして、このことを見抜くことができなかったのか、お伺いしたいと思います。

田村政府参考人 観光庁におきましては、旅行業の更新登録のために、五年に一度、基準資産、それから取扱管理者の選任状況、営業保証金の供託額または弁済業務保証金分担金の納付額の確認を行うこととなっております。

 前回の更新登録は平成二十六年一月でございまして、その際には、平成二十四年十月から平成二十五年九月の決算状況等、旅行業法で定める事項の確認を行いましたけれども、要件的な瑕疵があったことは確認されておりません。

 しかしながら、御指摘のような報道があることも踏まえまして、更新登録申請時の書類の真正性等、事実関係を調べてまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 破産手続申し立て書によれば、「てるみくらぶ」は平成二十六年九月期には既に大幅な赤字だったと見られておりまして、航空券の仕入れや営業経費を少なく計上し、決算上は黒字を装っていたり、報道によれば、融資を受ける銀行や官公庁など、提出先にも複数の決算書を作成したという報道があります。非常に許せないような話であります。また、東京商工リサーチでは、二年前から業績を公表しなくなっており、経営的に厳しくなっていたんじゃないかなというのが推測されるわけでありまして、こうした粉飾決算を行っていたことは非常に許せない話でありますので、この点も、引き続き対応を私どもも見てまいりたいと思います。

 次に、この問題の最後になりますが、石井大臣に御質問させていただきます。

 三年前に財政状況の悪化が見抜けていれば、被害がより少なく済んだのではないかと考えられますけれども、今後、同様のことが起こらないように再発防止を講じるべきではないかと考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

石井国務大臣 旅行業法第十条に基づきまして、旅行業者に対し、営業保証金の規模が適切かどうかを確認するため、事業年度が終了した際に取引額の報告を受けることとなってございます。毎年ですが、取引額の報告を受ける。

 また、旅行業法第六条の三に基づき、五年に一度の旅行業の更新登録の際に、基準資産、取扱管理者の選任状況、弁済業務保証金分担金の納付額等の確認を行っているところでございますが、今後、今回の事案も踏まえつつ、再発防止策についてどのような対策が必要か、検討してまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 現在、更新の際には、法人税の確定申告書の写しが必要とされているわけでありますが、赤字になっていれば納税はしないわけでありまして、今後、納税情報を財務省が地方自治体と共有していくことも考えていただきたいと思います。

 次の質問は、海上運送法及び船員法の一部改正案について、船舶、そして造船、船員、三部門について質問してまいりたいと思います。

 まず、日本船舶等の確保について、石井大臣に御質問させていただきます。

 先ほどもう与党の皆さんからも御質問が出ていますが、トン数標準税制について、諸外国においては外国船主の保有船まで対象とすることが多いと聞いております。国際競争力の確保は海運にとって必要不可欠でありまして、このトン数標準税制のさらなる拡大を求める声が上がっておりますが、対象拡大についてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

石井国務大臣 欧州諸国等においてはトン数標準税制が全運航船舶に適用されていることから、トン数税制のさらなる国際標準化を図るべきとの要望があることは承知をしてございます。

 我が国外航海運企業は、世界単一市場において厳しい競争下にある中、近年は、中国経済の減速や船腹過剰等による歴史的な海運市況の低迷により、厳しい経営環境にございます。

 一方で、今般の海上運送法の改正は、我が国周辺海域における情勢の変化等に対応し、経済安全保障の早期確立を図るため、準日本船舶の対象を拡大するものでございます。これについては、業界団体からは、その要望に沿ったものと評価をいただいているところでございます。

 事業者の安定的かつ計画的な船舶投資の確保の観点からトン数標準税制を拡充すべきとの御指摘につきましては、経済安全保障の確立を初めとするさまざまな視点から総合的に検討していくべきものと考えますが、まずは、今般のトン数標準税制の拡充による日本船舶等の確保等の状況の効果を検証したいと考えております。

本村(賢)委員 海運業は世界を相手にしており、国際競争力の確保が非常に重要な点は大臣も御承知のとおりだと思います。外国船主の保有船は今回の改正でも対象外とされておりますが、ヨーロッパなどでは対象となっております。今後、やはり世界競争力に負けない日本の方向性を示すためにも、トン数標準税制に関してはもう一歩改善が必要だと考えておりますので、引き続き、この問題にも取り組みを進めてまいりたいと思っております。

 次は、造船についてお伺いいたします。

 一九五六年以降二〇〇一年まで日本の建造量は世界一位であったわけでありますが、シェアは最大で五〇%をそのとき超えていました。現在は、中国、韓国の台頭で世界三位、シェアは約二〇%と、造船の方向性も厳しい状況下にございます。

 しかしながら、過去八十五年間で造船業界は約六十倍に成長している産業でもあるということは見逃せないわけでありまして、造船日本を取り戻していくためには、二〇二五年に三〇%を目指すというKPIでは弱気のように思えるわけでありますが、どのような基準でKPIを設定したのか、また、最終的な目標はどのように考えているのか、お伺いいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 世界経済の見通しに基づきまして、二〇二五年の新造船の需要量七千五百万総トンと見込まれる中で、過去の我が国の建造量が最大でございました二〇一〇年の二千万総トンをベースとしまして、二〇二五年までに生産性を一〇%程度向上させれば、二千二百五十万総トンの供給能力を持つことができますので、建造シェア三〇%の目標を設定したものでございます。

 これから先の目標につきましては、まずは二〇二五年の目標達成を行うことに全力を挙げまして、その成果を検証しながら検討してまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 二〇二五年の三〇%を目標にされているということでありますが、最終的な目標はまだ定めていないということでよろしいですか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 二〇二五年の目標を三〇%、こういう形で設定いたしておりまして、その後の二〇二五年から先の目標につきましては、委員御指摘のとおり、まず二〇二五年の目標を達成することに全力を挙げまして、その成果を検証しながら検討していきたいと考えております。

本村(賢)委員 二〇二五年三〇%、ちょっと弱気のような感じもしますので、ぜひ造船日本を復活させるための大きな目標を持っていただければなと思います。

 また、予算案に関しましても、造船に対する予算が非常に少なく感じておりますので、この点も今後また追いかけてまいりたいと思います。

 次の質問に入ります。

 平成六年には六校あった高校の造船科が、平成二十八年では三校まで減少しております。今年度は愛媛県の今治、来年度は香川県の多度津町に造船科が設置をされ、岡山県の玉野でも新たな動きが出ているわけでありまして、地域経済や地域雇用に大きな貢献をしている造船業でありまして、若い人に来てほしいという現場からの声が上がっており、日本造船工業会も若者向けのパンフレットを制作するなどの取り組みを進めているわけであります。

 造船業においても若手の人材確保が課題となっております。政府としても後押しする必要があると思いますが、どのような取り組みを行っているのか、お伺いいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、造船業におきましても、若手の人材確保は重要な課題だと認識しております。

 御指摘のとおり、工業高校におきます造船コース、これも、実は、御指摘の六校のもう少し前、かつては二十校近くが造船コースを持っておりましたが、三校にまで減少し、今お話ありました愛媛県の今治工業高校が平成二十八年度、二〇一六年ですね、そして本年、二〇一七年度には香川県の多度津高校、こういったところで造船コースの創設という形になっております。

 さらに、こういう若手人材のためには、全国六カ所に、官民で協力しまして造船技能開発センターというものを設立し、造船技能者の育成を行う拠点として重要な役割を果たしております。国土交通省におきましても、このセンターの資機材の整備などに支援をしてきたところでございます。

 こういった動きを後押ししていこうということで、具体的には、産学官が連携いたしまして、新たな造船工学の教材の作成、地域で協力しましたインターンシップの推進によります造船業界と教育機関のネットワークの構築、さらに造船教員養成プログラムの作成、こういった取り組みをいたしまして、若手造船人材の確保に努めてまいりたいと思っております。

本村(賢)委員 十年ほど前に官民協力して各地に設置された造船技能開発センターは、熟練の技能伝承と新人教育に貢献をされ、現在も機能していることは承知をしているわけであります。この造船技能開発センターの対応もそうでありますが、こうした造船科の動きに関しても、国交省として、文科省とともに取り組みを今後進めて、若い皆さんが造船に関心を持っていただき、やはり、物づくり立国日本、海運業大国日本としても、若い皆さんが目標を持てるような御支援をお願いしてまいりたいと思います。

 次に、石井大臣に御質問させていただきます。

 我が国の造船業は、多くが国内、特に地方圏に生産拠点を持つ、地域経済や雇用を支えているという点で非常に大事な問題でございます。国内生産比率が八五%、地方生産比率が九三%、部品国内調達率が九一%。ちなみに、自動車の国内生産比率が三七%に対して、造船業の国内生産比率は非常に高いわけであります。

 造船業は、地方創生、物づくり産業の振興のためにも重要な役割を果たしていると考えておりますが、石井大臣のお考えをお伺いいたします。

石井国務大臣 我が国の造船業は、国内各地に生産拠点を展開しておりまして、地方圏での生産が九割以上に達しております。また、国内での部品調達率は九割以上でございまして、裾野の広い部品を製造する舶用工業と合わせますと、売り上げは約三・四兆円、雇用者数は約十二万五千人に達します。地方の経済と雇用を支えている重要な産業と認識をしております。

 さらに、我が国造船業は、他国と比べ燃費では約二割性能がよい船舶を建造するとともに、現場を支えるすぐれた技能工にも支えられまして、韓国に比べ約一・二倍、中国に比べ約六倍の高い生産性を誇るなど、世界でトップレベルの物づくりの技術を有していると考えております。

 このように、我が国造船業は、日本の物づくり産業の振興にも重要な役割を果たしていると考えております。

本村(賢)委員 一九五六年以降二〇〇一年まで日本の建造量は世界一位であったわけでありますが、今は中国、韓国にここが追い抜かれております。石井大臣からの答弁でも、日本の技術が非常にすぐれているというお話がございましたので、過去八十五年間で造船業界は約六十倍に成長しておることからも、ぜひ、私は、やはりもう一度、二〇〇一年の世界一位を目指していくべきじゃないかなというふうに思っております。

 また、造船業で得た専門技術は他産業でも生かしていけるんじゃないかなと思っておりますので、物づくりという視点から、また地方創生という視点からも、御支援を引き続きお願いしてまいりたいと思います。

 次は、日本人の船員の確保についてお伺いいたします。

 国土交通大臣が定めた基本方針や海洋基本計画には、外航日本人船員の人員数を平成二十年度から十年間で一・五倍に増加させるとの目標が明記をされておりますが、取り組みの進捗と状況に対する認識をお伺いいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 外航の日本人船員につきましては、一九八五年のプラザ合意以降の円高の進展によりまして、外国人船員とのコスト格差の拡大から、一九八五年、昭和六十年の三万十三人から、二〇〇八年には二千三百十五人まで減少いたしました。

 このため、日本船舶及び船員の確保に関する基本方針を策定いたし、日本船舶・船員確保計画の導入によりまして外航日本人船員を確保することとし、この結果、二〇一五年には二千二百三十七人と若干の増加を果たしております。

 この数値は、十年間で一・五倍とする目標にはまだ至っていないものですが、これは、日本人船員の割高なコスト、あるいは近年の海運不況下における厳しい経営状況、こういったものにも影響されていると認識いたしております。

本村(賢)委員 次に、交通政策審議会の海事分科会の国際海上輸送部会において、最低限必要な日本人船員数は五千五百人という目標が示されています。これを達成するための実効性ある具体的な施策についてどのように考えていらっしゃるのか、お伺いいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の、外航日本人船員を約五千五百人とするという点につきましては、二〇〇七年、平成十九年の交通政策審議会答申に記載されているとおりでございまして、これは重要な試算であると認識いたしております。

 国土交通省といたしましては、当該試算を努力目標としつつ、外航日本人船員数を一・五倍とするという当面の目標を目指して、関係者とともに取り組んでおります。

 具体的には、日本船舶・船員確保計画の着実な実施、トン数標準税制の活用、外航日本人船員(海技者)確保・育成スキームといったことによるキャリア形成の支援、こういった施策を講じているところでございます。

本村(賢)委員 今回の改正には、今お話があったように、日本船隻数四百五十隻を目指す取り組みが盛り込まれているわけでありますが、日本人船員をふやす取り組みが盛り込まれていません。これについてはいかがでしょうか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 海上運送法に基づきます日本船舶・船員確保計画に基づいて、経済安全保障の観点から日本船舶そして日本人船員の確保に努めております。

 そして、この計画の中身としまして、日本船舶及び準日本船舶の隻数をこの計画期間にどのようにふやすのかという点とともに、日本人の船員をどのようにふやすのかというのもあわせて提示し、それを海運事業者の方、認定事業者の方に守っていただく、こういうシステムで進めているところでございます。

本村(賢)委員 ここは指摘しておきますが、今回の改正法で、日本船隻数四百五十隻を目指すという目標がありますが、日本人船員をふやすという取り組みの目標がありません。この点が本法案にないことは非常に残念だなと思います。ぜひとも、五千五百という目標があるわけですから、ここに向けても果敢にチャレンジしていただきたいと思います。

 次に、船員を目指す人をふやすためには、海に触れる機会をふやして、海に関する理解を深めていくことが重要だと考えていますが、昨今では、学校において臨海学校が廃止されることも多く聞いております。

 政府としても海洋教育、海事思想の普及に積極的に取り組むべきと考えますが、文科省、国交省の見解を伺います。

瀧本政府参考人 お答えいたします。

 学校における海洋に関する教育については、海洋基本法等も踏まえ、現行学習指導要領に基づき、例えば、小学校の社会科で、水産業に従事している人々の工夫や努力、生産地と消費地を結ぶ運輸の働きなどについて調べ学習を行うなどの指導が行われているところであります。

 また、本日公示されました新しい学習指導要領では、例えば、中学校の社会科、交通・通信の学習における物流に関し、海上輸送などを新たに明記し、日本各地や、日本と世界との結びつきの特色を理解するなどの内容の充実を図ったところでございます。

 また、海に親しむ体験活動につきましても、児童生徒の社会性や豊かな人間性を育むために、発達段階に応じて自然体験活動等のさまざまな体験活動を行うことは重要であると考えております。

 文科省では、学校が行う宿泊体験活動に対し財政的な支援を行うとともに、関係省庁と連携した支援なども通じまして、学校における宿泊体験活動の取り組みを推進しています。

 文科省では、児童生徒が海に親しみ、海に対する理解をより深めることができるよう、関係省庁等とも連携しつつ、海洋に関する教育の充実に引き続き努めてまいります。

 以上です。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましても、海洋に関する国民の理解と関心を喚起するためには、海に触れる機会の拡充が重要であると認識いたしております。

 このため、国民の祝日でございます海の日を含む毎年七月一日から七月三十一日までの一カ月間を海の月間といたしまして、海の魅力やすばらしさを伝えることに取り組んでおります。具体的には、中心イベントとしております海フェスタを初め、全国各地で海や海事産業に親しむためのレクリエーション、あるいはフェリーや貨物船などへの体験乗船、さらには造船所等の施設見学会、こういったさまざまなイベントを実施しているところでございます。

 今後とも、海事産業界及び諸団体、さらには幅広い国民各層と連携し、海に触れる機会の拡大に努めてまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 中部学院大学の柴崎直人准教授によりますと、臨海学校は活動内容の見本市ともいうべき多様な活動内容と可能性を持っているという御指摘もございます。日本生産性本部のレジャー白書によりますと、二〇一四年の海水浴客はピーク時の四分の一まで減少という話もございまして、若者の海水浴離れというものも指摘をされているわけであります。

 臨海学校は活動内容の見本市ともいうような御指摘のとおり、今後、ぜひ、文科省と国交省が連携して海洋教育や海洋思想の普及に積極的に取り組んでいただき、特に船員を目指す若い人たちに、海に対する魅力あふれるような御支援をお願いしてまいりたいと思っております。

 次に、日本人船員を確保することの重要性について、石井大臣の御見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 四面を海に囲まれた我が国におきまして、外航海運は輸出入貨物の九九・六%、内航海運は国内貨物の約四割、産業基礎物資の約八割の輸送を担っております。

 こうした我が国の経済、国民生活に大きな役割を果たす海運の安定輸送は、高度な船舶運航技術を持つ船員に支えられております。また、我が国の経済安全保障の確立の観点からも、一定数の日本人船員を確保していくことは極めて重要と考えているところでございます。

本村(賢)委員 国土交通省所管の独立行政法人海技教育機構では船員を養成しているわけでありまして、定員をふやしているものの、倍率が非常に高いと伺っております。また、卒業生は九割が海上就職をされているという前向きなお話もあります。

 それにあわせて、八校中四校が避難所指定されておるわけでありますけれども、耐震化率は平成二十七年六月十六日時点で三二%。国交省に確認しましたら、現在は五〇%ぐらいまで耐震化が進んでいるということであります。

 文科省所管の商船系大学などはほぼ一〇〇%耐震化が進んでいる反面、国交省所管の独立行政法人海技教育機構では耐震化率が五〇%と、船員を養成する人たちの安全、安心という視点ではまだまだ不安な点もありますので、大臣、ぜひこの耐震化も国交省として進めていただきたいと思います。

 最後になりますが、石井大臣に、日の丸を掲げる船をふやしていくことが海洋国家である日本としては重要ではないかと私は考えておりますが、海運日本、造船日本を取り戻すための大臣の意気込みを最後にお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 我が国の海運は、我が国の経済活動、生活物資輸送に欠かせない基幹的な輸送インフラであります。また、造船は、国内に生産拠点を維持し、地域経済と雇用を支えている重要な産業であります。

 このように、海運、造船を初めとする海事産業の振興は極めて重要でございますので、海運業、造船業の活性化や国際競争力の強化を図ることが重要と認識をしてございます。

 このため、国土交通省といたしましては、今回の法律案を提出したことに加えまして、海運については、特別償却制度等税制面の支援、造船につきましては、輸出拡大や運航の効率化等を図る海事生産性革命の推進、そして、これらを支える船員や造船人材の確保、育成などに取り組んでおります。

 これらの政策に引き続き積極的に取り組みまして、海事大国日本の実現に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 以上で質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 日本の海事政策について質問をいたします。

 具体的には三点お尋ねしていきたいと思っておりますが、大きく一つ目は、海運、造船を含めた海事政策の成果指標、KPIの妥当性について、二つ目は、トン数標準税制の背景にある哲学、そして三つ目は、先ほど本村議員からもさまざま御指摘ありましたが、日本の船員政策、船員の確保についてでございます。順に伺ってまいります。

 まず、お配りいたしました図表の一枚目に「安倍政権の海事政策における成果指標(KPI)」、キー・パフォーマンス・インディケーターですけれども、これを挙げさせていただきました。

 この黄色い枠の中をごらんいただきますと、先ほどから議論ございましたけれども、我が国の造船業の船舶建造シェアを、二〇一五年の二〇%から、二〇二五年には三〇%に拡大していこう。また、一行飛ばして、最後のところですけれども、我が国造船業の売り上げを、二・四兆円から、十一年間で二・五倍の六兆円までふやしていこう。大変意欲的な数字でございます。

 先ほど本村さんからは、これでも足りないという大変勇ましいお話もあったわけですけれども、この数字の妥当性について伺っていきたいというふうに思います。

 下にグラフをつけました。引き算をしていただくとわかるんですけれども、二〇一五年の世界の船舶建造量は六千八百万総トン、うち二〇%が日本ですから、一千三百万総トンを差し引くと、日本以外の国は五千五百万総トンをつくっているということになります。これが、十年後の二〇二五年には、全体で七千五百万総トンのうち、日本が三〇%の二千二百五十万総トンをつくるとすれば、韓国、中国等は差し引き五千二百五十万総トンを建造するということになります。これは十年間で減っているんですね。

 日本だけが、千三百万総トンから二千二百五十万総トンまで一・七三倍、十年間で一・七倍の伸びを示している一方で、韓国と中国は減っているという想定は、非常に虫のいいといいますか、先ほど羽尾さんは、一〇%程度の効率化を進める、生産性の向上によって実現するとおっしゃいましたが、その間、中国、韓国は生産性を向上しないのか。

 かなり無理な設定のような気がするんですけれども、大臣、この根拠はいかがなものですか。

    〔委員長退席、西村(明)委員長代理着席〕

石井国務大臣 我が国の造船業は、建造船のすぐれた燃費性能や高い品質などを競争力の源泉として、近年、受注量を増加させております。現に、二〇一五年には三〇%を超える受注を行い、一時的ではあるものの、韓国を抜き世界二位となっております。

 さらに、この法律の改正を含む海事生産性革命の総合的な取り組みにより、建造コストを削減することや、あるいは燃費性能の優位性を維持することに加えまして、新たな付加価値としまして、IoT技術を活用した故障の事前予防を可能とする等の先進船舶の開発を促進することによりまして、船の一生を通じたトータルコストで中国や韓国に比べ優位性を確保していきたい、これによってシェア三〇%を二〇二五年に目指してまいりたいと考えております。

    〔西村(明)委員長代理退席、委員長着席〕

津村委員 私も日本の造船業を応援したいと思っておりますので、そうであるからこそ、将来の需要予測についてはより正確を期して、そのために必要な設備投資でありますとか、あるいは工員さんの確保ですとか、そうした適切な経営戦略を持っていただきたい。そのために大きなビジョンを描くのが国土交通省さんの役割ではないか。その観点から、余り大風呂敷を敷くとミスリーディングしてしまう、あるいは信用されなくなってしまうので、そこの注意を喚起したいという趣旨で質問をさせていただいております。

 一枚おめくりいただきますと、私は、国交省さんから数字をいただいて大変びっくりした、今までの私の見識不足を痛感したんですけれども、船の価格というのは大変大きく変動するわけですね。

 約十年前に比べると、いわゆるリーマン・ショック後の海運市況の低迷、先ほど過大な設備投資のお話もありましたが、これは二〇〇四年を一〇〇とした数字ですけれども、二〇〇七年、八年あたりではそれが二〇〇を超えています。ところが、四、五年前には七〇ぐらいになっているわけですから、ざっくり三分の一まで船価が減っているということで、造船業というのは設備産業ですから、三分の一に価格が下がっても、働いている方とか工場設備だとか、そういったものを三分の一にするわけにはいかないわけで、造船業の経営体力を大変傷めたのではないか。これはしっかり考えていかなきゃいけないということです。

 一方で、足元数年間は船価は反転をしております。底打ちをして、ある意味では、七〇ぐらいから一二〇ぐらいまでいっているという意味でいえば、船価は一・五倍ぐらいまで、ボトムから比べると回復をしつつあるということなわけです。

 一枚また戻っていただいて、先ほどの建造量と売り上げの話になりますが、これは、建造量、ボリュームの面では、先ほど申し上げましたように、千三百万総トンから二千二百五十万総トンまで、十年間で一・七三倍になる。その間、売り上げについては、二・四兆円が六兆円と、二・五倍になる。つまり、それを割り戻しますと、価格は一・四倍になるということを想定しています。これは足元の先ほどの動きとマッチしていますので、そこはなるほどと思うんですが、一方で、韓国、中国等は建造量を減らしてしまっている。

 こうなると、私は船価が崩れてしまうのではないかと思うんですけれども、この船価の想定というのは、大臣、これでいいんでしょうか。

石井国務大臣 今後、世界経済の成長と老朽船の解体に伴い、現在の船価低迷の原因となっております船腹過剰が解消されることが見込まれております。船腹過剰が解消されれば、近年の低水準の船価とリーマン・ショック前のピーク時の船価との差の半分程度まで回復するという見通しを立てておりまして、この試算は交通政策審議会海事分科会海事イノベーション部会におきましても検討されたものでございます。

津村委員 続けて、今回は先進船舶という概念が盛んに言われております。先ほどの一ページ目の数字でいきますと、私が先ほど一行飛ばしてくださいと言いました先進船舶の導入隻数が、二〇一七年はゼロ隻であるにもかかわらず、二〇二五年には二百五十隻もこの先進船舶というものが導入されるという高い目標が掲げられております。

 先進船舶とは何ぞやということですけれども、国交省さんとしては二つのカテゴリーを想定されている。一つは、燃費にすぐれた環境に優しいLNG燃料船。これは、今タグボートが一隻あるだけですけれども、これを十年間で七十二隻つくろう。そして、もう一つのカテゴリーは、ブロードバンド通信を活用した船舶、先ほど羽尾局長がIoTを活用してというようなこともおっしゃっていましたが、これを二百隻ということのようです。

 私は、国会の質問で、こういう委員会の質問の意義というのは幾つかの種類があると思っていまして、昨今では、森友問題のようないわゆる疑惑追及型の質問。あるいは、先般、私は北極海航路を展望した国策の転換ということを申し上げました、そういう提案型の国会質問。きょうは、安倍政権の一つの大きなすばらしい点として、KPIというものを盛んに掲げていらっしゃるのは、これは政策を事後的に検証することができますので、私は高く評価させていただいておりまして、このKPIの議論はしっかりしたいなと。

 ただ、今回かなり大きな数字が飛び交っていますので、二〇二五年になってみないと検証は最終的にはできないわけですけれども、二〇二五年の国会での質疑のために、私としては、今、詰めた数字の議論をここで議事録に残したいと思っているわけです。

 そうした観点で、三ページ目の数字は、これは実は、この質問の前に、先週、先々週、森友問題で大分おくれましたから、大分前ですけれども、国交省の方に膝詰めで伺った数字を起こしたものです。ですので、私はここで議事録に残すためにこの数字を今から紹介するわけですけれども、その後で、大臣にこれで正しいですかということを申し上げますので、大臣にオーソライズしていただきたいということなんです。

 数字の方を少し御紹介いたしますと、先進船舶を二百五十隻、これから十年、残りは八年ですね、残り八年間でつくるためにはどういう前提を置くのか。

 一つ目に書いておりますのは、日本の商船隊というのは、約二千五百隻、二千五百六十一隻あるわけですけれども、このうち約半数が、日本の船社の意向によって更新されたりどういう船にするかということが決められる。これが業界の相場観だそうです。この想定と、さらには、これらの日本籍船の平均更新船齢、何年間使うかということですね、これは平均が十七年だそうであります。これを考えますと、毎年八十隻程度の新造船について日本船社の意向でどういうタイプか決められる、八十隻毎年更新されるというのが一つ目の、これは想定というよりは現実の状況だそうです。

 二つ目、LNG燃料船の導入目標。今現在、ゼロ隻であります。これを、早速、本年度から二〇二五年度までの九年間に更新される船舶の一〇%はLNG燃料船になるという設定であります。私は、これが妥当なのかということは後で伺います。毎年八十隻更新されるうちの一〇%掛ける九年間ですから、計算すると、これは七十二隻、二〇二五年の段階でLNG燃料船が日本に存在することになります。

 そして三つ目、先ほど御紹介された、IoT、ブロードバンド通信等を活用した先進船舶の導入目標は、これはまだ研究開発段階ということで、二〇二〇年度までは研究開発の期間とし、これはびっくりするんですけれども、そこからの五年間は、突如として新造船の五〇%がこれを活用するという設定になっているわけです。毎年八十隻建造されて、そのうちの半分、四十隻掛ける五年間ですから二百隻だと。

 そして、ブロードバンド船とLNG船は両立しますので、二百隻のうち一〇%はLNG船になるだろう。なので、重複を差し引くと、一番下に書いております、二百隻足す七十二隻引く二十隻は、ざっくり二百五十隻だ。

 これが国交省さんの先進船舶に関するKPIの算定根拠ということで御説明をいただいたと私は理解しておりますが、これで正しいでしょうか。

石井国務大臣 委員の説明のとおりでございます。

津村委員 それでは伺いますが、LNG燃料船を毎年一〇%、そしてブロードバンド通信を活用した船舶が毎年五〇%導入されるというのは、業界の常識からして常識的な数字でしょうか。

石井国務大臣 二〇一三年に、これは民間の方の調査でございますが、天然ガス燃料船の竣工隻数を予測した調査がございます。これを踏まえて分析をした結果、二〇一七年から二〇二五年の間に建造される船舶の約一〇%が天然ガス燃料船になるとの結果が出たことを踏まえ、目標を設定しているところでございます。

 さらに、IoT活用船についてですが、船舶へのIoTの活用については、産業界では以前から高い関心が寄せられておりましたが、通信環境が制約となって実現に至らなかったものと考えております。また、ITを活用した技術は、これまでの実例、例えばスマホの普及等々を踏まえれば、その普及は急速に進むと考えておりまして、IoT活用船が実用化されれば、普及は相当のスピードで進むものと考えられます。

 他方、IoT活用船は、データの収集、活用が鍵でございますが、我が国企業におけるデータの収集、活用率が約五割でございますので、それと同程度の普及を見込んだところでございます。

 これらを踏まえ、研究開発が終了する二〇二一年以降に更新される船舶の半数がIoT活用船に切りかわることを目標として設定したところでございます。

津村委員 そうであってほしいと私も願います。二〇二五年の衆議院国土交通委員会の諸先生がこの数字を改めて検証いただくことを希望いたします。

 次に、トン数標準税制について伺いたいと思います。

 理念的なことはわかるんですけれども、業界にとって一体どのぐらいのメリットのある措置なのかということを数字的に伺いたいと思います。

 今回のトン数標準税制の拡大による減税額は、前々回、前回の改正時と比べてどの程度の減税規模になるのでしょうか。

石井国務大臣 国土交通省におきましては、今般のトン数標準税制の拡充による減税額は、要望時点におきまして、平年ベースで約十三億円としております。

 他方、平成二十一年度の制度創設時及び前回、平成二十五年度の拡充分の減税額は、それぞれ、要望時点におきまして、平年ベースで約六十六億円及び約九億円と見込んでおりました。

 今般の拡充は、少なくとも前回の拡充並みの規模を有しているものと考えております。

津村委員 先ほど、前田委員からですか、トン数標準税制についてさらに拡大していくということも考えるべきではないかと、本村さんからもそういう話があったかと思います。

 日本の独特の租税文化といいますか、税制のあり方というものもこれある一方で、ほかの業界との横並びという部分もあるので、この海運業界だけを違う税制にできないという事情も一方にあったり、さはさりながら、極めて激しい国際競争の中、海運市況の変動も他の業界に比べて極めて大きいという中で、日本の商船隊を支えていかなければいけない。この二つの事情の兼ね合いの中で、経済安全保障という、わかるんですけれども、しかし、ここだけを切り出して、こういう構成でどこまでもつのかなという哲学のもと、今回、トン数標準税制が一定の拡大を見ているわけですけれども、より本質的な問題としては、この経済安全保障、いわゆる東日本大震災のときにリベリア船籍の船が、被災地から五百キロでしたか、以内には行くべきでないというようなことがあって、これが非常にリスクとして認識されたということだと思っております。

 仮に、本気で日本船舶を増加させていくということを考えるのであれば、減税規模十三億、九億という話では多分なくて、より本質的な、なぜ日本の商船隊がパナマ船籍であるとかリベリア船籍だとかそういうものを選ぶのか、なぜ日本船籍のままにしないのかということの本質的な部分に踏み込んでいかなければいけないのかなというふうに思うんです。

 皆さんにお配りした資料の五ページ目、ちょっと四ページは制度の概要ですので飛ばさせていただいて、五ページ目は、この規模感ですね、どのぐらい船の数があるのかという数字です。

 六ページ目に行きますと、「各国の外航海運における税制度比較」ということで、一番右のトン数標準税制が我が国はある時期までなかったわけですけれども、これを導入したということで国際標準に並べているわけです。

 この左側の二つ、「登録免許税又は登録料」というところが、多くの国がゼロ、〇・一のところを、日本は一〇〇。これは比率で言っているわけですけれども、つまり、約千倍の登録免許税。そして、固定資産税についても、ほかの国では非課税のところが多いにもかかわらず、日本だけは課税している。こういったことが一つの背景にあるのではないかとも言われています。

 ただ、国交省さんに伺うと、それぞれ税収規模は、登録免許税が約三・五億、固定資産税は二・七億ですので、日本の商船隊の売り上げ規模からすると、いずれも軽微な影響にとどまると言うこともできます。

 では、一体何でこの便宜置籍国というものが存在しているのかということをさらに伺っていくと、外航海運企業にとっては、一つは、財務上の事情。企業価値やその格付を維持していくためにはバランスシートを整えていく必要がある中で、外国船籍を借り受ける形にした方が資産を圧縮できるという会計上の、これは見せかけといえば見せかけだと思いますが、事情が一つ。

 そして、もう一つは、パナマやリベリアなどの便宜置籍国では、世界各地に二十四時間英語で対応できるような窓口を設置している。伺ってびっくりしたんですけれども、例えば、愛媛県の今治市にもパナマやリベリアの出張所のようなものがあって、すぐに対応ができるということも含めた、行政手続の負担軽減ということを彼らはある種のビジネスとしてやっている。そこはさすがに日本の公務員の体制ではかなわないというようなことも伺いましたが、私は、それは大変残念なことで、日本も二十四時間体制、あるいは英語も使えばいいんだと思うんですよね。

 問いとしては二つ差し上げているものを、まとめて伺おうとしているんですけれども、最終的な目標としての日本船舶の増加を図るためには、保有税のほかに、こうした外航船社の財務上の制約とか、あるいは行政手続の負担の問題等をクリアしていくということも一つの道で、国交省がある時期から唱え出した経済安全保障ということを本気で求めるのならば、こういったことにも正面から取り組むべきではないか、行政手続の負担軽減も図るべきではないかという考えについて、大臣はどうお考えになるか、お聞かせください。

石井国務大臣 今委員が御指摘いただいたとおり、我が国の外航船の会社は、企業価値の維持向上のため、総資産利益率等の水準を維持する必要があり、バランスシートに計上される資産である実質自社保有船については、その運航船舶中の割合をおおむね一定水準にとどめているということが一つございます。

 また、パナマやリベリアなどのいわゆる便宜置籍国では、登録船舶の増加を図るため、保有税の扱いのほかに、船舶に係る行政手続について世界各地に二十四時間対応可能な窓口を設置するなど、行政上の手続負担を軽減するための取り組みを積極的に実施してございます。

 日本船舶の着実な増加を図るためには、こういった行政手続の負担軽減も重要であると認識をしております。

 これまで、例えばポートステートコントロールを受けた際に、日本政府の確認を求められる場合に備え、休日、夜間の緊急対応窓口を設置すること、これは二〇一三年八月から開始してございます。また、最少安全配員証書を海外において交付ができるようにした、これは二〇一三年七月から開始しております。

 こういった措置を講じておりますが、今後とも、日本船舶の保有に係る行政手続の負担軽減を検討してまいりたいと考えております。

津村委員 時間が押してまいりましたので最後の質問にしたいというふうに思いますが、私が冒頭に三点聞きますという三点目、船員の話であります。

 皆さんにお配りした資料をもう一枚めくっていただきまして七ページ目に行きますと、日本人の船員さん、長期間の船乗りさんの数はどう推移しているかと申しますと、一九七四年、昭和四十九年においては五万六千八百三十三人いらっしゃったのが、今は二千二百人程度ということで、取り扱っている貨物の量はふえることはあっても減っているわけではありませんから、外国人の船員さんに大きく依存しているということであります。

 これを十年間で一・五倍ということの数字の妥当性については、先ほど本村さんが伺ったところであります。残念ながら、足元はなかなか伸びていないので、先ほど議論になりました船員教育の部分で工夫が必要なんだろうということであります。

 私は、北極海航路の話を最後にさせていただこうと思っているんですけれども、今回の船員法の改正において、北極海及び南極海を航行する船舶に乗り組む船員さんの資格創設というのは一つの前進だというふうに注目をしているわけであります。

 ただ、八ページ目にその内容を書いておりますが、今まで北極海航路への取り組みが率直なところおくれております日本において、こういう船員さんの資格を創設しても、実効的にこれを教育できるのかということについて、現在の準備状況をお尋ねします。

石井国務大臣 今般の改正におきましては、船員の訓練や資格等について定めました千九百七十八年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約、STCW条約の改正に対応するため、液化天然ガス燃料船、及び、極水域、これは北極水域及び南極水域でございますが、これを航行する船舶に乗り組む船員の資格を新設いたします。

 資格の取得に当たっては、この条約上、船長を初めとした一部の船員は、液化天然ガス燃料船については液化天然ガス燃料の特性に関する知識等を、極水域航行船舶については氷海における操船技術等を取得するための訓練課程を修了することが必要となります。

 これらの訓練につきましては、独立行政法人海技教育機構におきまして、この改正法の施行に合わせて、液化天然ガス燃料船は十ないし二十時間程度、極水域航行船舶は三十時間程度の座学と実習による講習を設置する方向で、所要の検討、準備を進めているところでございます。

津村委員 最後の二分間、国土交通委員の皆さんにお話をしたいというふうに思います。

 九ページ目をごらんください。これは、前回の一般質疑の際に皆さんにお配りした資料の冒頭に掲げたものと全く同じものであります。

 北極海航路というのは、簡単に申し上げれば、気候の温暖化によって、左下に書いてありますように、北極海の氷の面積が夏の期間小さくなっている、そのことによって、ロシア沿岸を中心に、夏であれば、欧州と日本、アジアをつなぐ航路というものが実用化されつつあるということであります。このことが日本にもたらす意味というのは、単純にコストが減るよという話にとどまらないわけであります。

 イラクへの自衛隊派遣の際に、日本は中近東に死活的な利益を、国益を有するからということが大きな説明としてなされました。それは私は一つの大きな判断だったと思いますけれども、私たちは、南回り航路、いわゆるシーレーンに日本の国益の非常に大きなものを負っている。特に、脱原発ということも見据えていくと、エネルギー政策として、やはり、中東とのかかわりというのは、これから日本は改めて向き合っていかなきゃいけない問題だと思いますが、この北極海航路というものが実用化されて、また、LNGの採掘ということが進んでいけば、これは日本にとって、エネルギー政策上、安全保障上も大きな影響があると思います。

 そして、きょうの冒頭議論いたしました海事政策、海運、造船の部分ですけれども、いわゆるアイスクラスと呼ばれる耐氷船の建造においては、日本は残念ながら造船先進国の中でややおくれをとっている現実があります。

 これから先進船舶というのであれば、こうしたアイスクラスの日本でのまさに生産性を向上させていくこと、あるいは技術を向上させていくことによって、これから確実に需要を伸ばしていくであろうこの分野における日本の造船業のシェア拡大にも国交省としてお取り組みになっていただきたいということを申し上げて、終わります。

西銘委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。

 法案審議に入る前に、差し迫った問題について質問をしたいというふうに思います。

 建設業では、下請指導ガイドラインという国交省の文書によって、あす四月一日から、適正な保険に加入していない作業員は、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取り扱いとするべきという措置で、これにかかわって、不安を抱え、深刻な相談が寄せられております。

 現行制度では、一人親方の方は、国民健康保険、建設国保、国民年金に加入することになっておりますけれども、にもかかわらず、元請企業や上の企業から社会保険に入ることを求められている。五人未満の従業員の場合ですと、雇用保険には入るわけですけれども、国保、建設国保、国民年金という制度設計になっているわけですけれども、社会保険に入ることを上の企業から求められるというケースもございます。

 つまりは、元請企業や上の企業が現行法の制度設計を正しく理解していないという中で、下請の皆さんに対して違うことを言って、それをやらないのなら建設現場から排除するという実態が相次いでおります。

 元請企業や上の企業が間違った理解で下請の皆さんを現場から排除するということは、結局それは、仕事がなくなって、倒産や廃業の危機ということになるわけでございます。そういうことが絶対にあってはならないというふうに思います。

 大臣に対して、深刻な状況を国交省として把握しているかということ、そして、調査に入って実態をつかむべきだと思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

石井国務大臣 社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインは、建設業における社会保険の加入について元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にする、建設企業の取り組みの指針として策定をし、周知を図っているものであります。

 このガイドラインでは、「適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべき」としております。

 社会保険制度では、事業所の態様等によって加入すべき保険の種類が異なり、例えば、個人事業主として事業を行ういわゆる一人親方であれば、厚生年金保険などの適用対象とはなりません。

 このガイドラインにおきましては、法令上加入義務のある保険に加入することを求めておりまして、例えば、厚生年金加入義務のない一人親方を、厚生年金に未加入であることを理由に現場に入れないことは、ガイドラインの趣旨に反するものでございます。

 加入するべき保険に対する理解が徹底されていないとの声もあることから、国土交通省といたしましても、建設企業向けの説明会の全国での開催、関係団体への、ガイドラインの適切な運用を図ることを目的とした通知の発出などを行ってまいりました。

 社会保険の加入等に関しまして、来年度、実態調査を行うこととしております。こうした機会を通じてさらなる実態の把握にも努めながら、ガイドラインに関する正しい理解の徹底に努めてまいりたいと存じます。

本村(伸)委員 中小企業の皆さんの営業というのは大変なもので、今すぐ対応していただきたいというふうに思うんです。

 全国商工団体連合会の皆さんのところにもたくさんの相談が寄せられているということで、例えば、沖縄の建設業の一人親方の方ですと、四月から一人親方は現場に入れないというふうに言われたということや、あるいは、別の方からは、個人事業主にもかかわらず社会保険に入れと言われた、こういう実態がございます。埼玉県の建設業の方からは、個人事業主として、現状、私を含め四人で建設現場の三次下請の立場で現場に入っています、法人化も含め、社会保険加入を上の会社から求められています、どうあがいても今の売上単価では社会保険料を払えません、こういう切実な声です。こういう声があふれているわけです。

 四月から現場入場を認めないということになりますから、改めて三点御提案をしたいというふうに思います。

 一点目ですけれども、私たちが受ける相談というのは一部でしかございません。やはり、権限も持っている国や都道府県が、窓口を設置する、窓口を設置しているということをしっかりと広報する、広報をして、下請の皆さんの声を聞き、相談に乗るということが一点目。

 そして二点目が、元請会社の側が誤解していたり間違っている場合、国や都道府県が、現場排除とか取引停止などがないように是正をさせるという点。

 三点目が、業界団体に、改めて、間違った対応をしないように通知などを出して、徹底をしていただきたい。

 こういう三点を行って、廃業や倒産することがないようにしていただきたいんですけれども、大臣、答弁をお願いします。

石井国務大臣 先ほども申し上げましたが、下請指導ガイドラインにおきましては、事業所の態様等に応じて、法令上加入義務のある保険に加入していただくことを求めております。こうした下請指導ガイドラインの趣旨を徹底するためには、元請企業、下請企業を含めて、正しい理解をしていただくことが必要と考えております。

 このため、下請指導ガイドラインを含めた社会保険未加入対策に関する相談窓口の充実、個別の相談に応じた企業への周知を含め、下請指導ガイドラインへの理解を徹底すること、引き続き建設業団体を通じた周知を行うことを含めまして、必要な対策を検討してまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 ぜひ、この下請ガイドラインにかかわる誤った理解によって下請中小企業の皆さんが倒産するようなことがないようにしていただきたいというふうに思います。

 適正な保険に加入するためには、発注者、元請からしっかりと法定福利費が払われなければ、払いたくても払えないという状況になるというふうに思います。

 静岡の方の例ですけれども、元請から、今までの労務費、労務単価に法定福利費が含まれている、これからは労務費と法定福利費は別項目で記載して見積もりを出すよう指示をされたという話がございます。つまり、法定福利費はこれまでの下請代金に含まれていたから、法定福利費を別途積み増して支払うことはしない、見積もりだけ別項目で書いて請求しろというやり方です。三重県の方からは、元請企業から法定福利費の支払いはできないと言われ、自腹で持ち出す状況になっているという訴えも届いております。

 法定福利費として別枠で支払われるべき費用が、労務費や工事費と込み込みで支払われる、あるいは払われない。つまりは、法定福利費以外の労務費、工事費が減額されたのと同じことになるわけでございます。こういうことは、建設業法の十九条の三にあります「通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。」という条文に抵触するというふうに思います。

 こういう場合、元請や発注者までの調査も含め、重層的な下請構造のもとで実際に働いている事業者の方々や働く人たちに法定福利費と工事費、労務費がしっかりと支払われるように指導するべきだというふうに思いますけれども、大臣、答弁をお願いしたいと思います。

石井国務大臣 下請負人の見積書に法定福利費相当額が明示され、または含まれているにもかかわらず、元請負人が一方的にこれを削減するなど、実質的に法定福利費相当額を賄うことができない金額で建設工事の請負契約を締結することは、当該元請、下請間の取引依存度等によりましては、建設業法第十九条の三の不当に低い請負代金の禁止に違反するおそれがございます。このことは、社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインなどにも記載をしており、周知を図っているところであります。

 法定福利費の支払い状況につきましては、毎年実態調査を行っておりますが、こうした機会を通じて実態を把握しながら、適切な取引が行われるよう、必要な指導を含めて取り組んでまいりたいと存じます。

本村(伸)委員 法定福利費、工事費、労務費の適正な支払い、発注者、元請を先頭にしっかりと支払っていただくということがされるように、一層指導監督の強化をお願いしたいということで、次に、法案に移りたいというふうに思います。

 今回、法案の改定ですけれども、準日本船舶の認定対象に日本の船主の海外子会社保有船を追加するというものですけれども、準日本船舶に認定される船舶数がふえれば、航海命令の適用の対象となる船がふえることになるというふうに思います。

 航海命令が実際に発令される場面として具体的にどのような状況を想定しているかということですけれども、海上運送法第二十六条第一項のところに、「航海が災害の救助その他公共の安全の維持のため必要」なときとございます。

 これは具体的にはどういうことか、とりわけ、「その他公共の安全の維持のため必要」とは具体的にはどのようなことを想定しているかということなんですけれども、国交省は、有事ではないんだ、非常時に航海命令を出すんだと言っておられます。そして、テロや政変等で治安が悪化したとき、海外の邦人等の輸送なども含まれるということも答弁などで言われておりますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 海上運送法第二十六条第一項の規定におきまして、「災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、かつ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合」におきまして航海命令を発することができるとされております。

 具体的には、この「災害の救助その他公共の安全の維持のため必要」である場合とは、例えば、第一の事例といたしまして、国内において自然災害、事故等が発生した際、外国から緊急物資を運送する場合、第二の事例といたしまして、外国で災害、紛争等が発生した際に、マラッカ・シンガポール海峡等が通行不能となり、貿易物資の輸送に支障が生じる場合、第三の事例といたしまして、外国において災害、治安悪化等が発生した際に、安全な地域に邦人を避難させる場合などを想定いたしております。

本村(伸)委員 改めて確認をさせていただきたいんですけれども、航海命令が出されたとき、船員の皆さんが乗船をする際に、航海命令での航海であることを明示されるのかという点、そしてまた、船員の皆さんは、航海命令に従うことを拒否できるかという点、確認をしたいと思います。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 乗り組み船員の方が航海命令による航海であることを知らされずに航海に従事することのないよう、船員法第三十二条第二項の規定に基づきまして、船員の雇用主たる船舶所有者に対しまして、乗船前の雇い入れ契約締結に際し、当該契約に係る航海が航海命令によるものであるときは、その旨を書面を交付して説明することを義務づけいたしております。

 また、海上運送法の航海命令に係ります船舶への乗り組みを船員が拒否したとしても、船員に対して乗り組みを強制することや、乗り組みを拒否した船員に対する罰則はございません。

本村(伸)委員 そのことは確認したいと思います。

 大臣にお伺いをしたいんですけれども、例えば、南スーダンのように内戦状態で、政府軍、反政府軍、その他の組織も出てきまして、戦車や迫撃砲なども出て激しい戦闘が行われていたり、あるいは大量虐殺という危険を国連が指摘しているような事態の場合は、テロ、政変等で治安悪化という非常時に入るんでしょうか。

石井国務大臣 南スーダンの状況は、私は詳細に承知しておりません。

本村(伸)委員 南スーダンのようなケースがあった場合でございます。

石井国務大臣 南スーダンのようなケースを私はよく承知しておりません。

本村(伸)委員 南スーダンのようなケースを把握しておらず、新たな任務を付与する閣議決定を行ったのでしょうか。

石井国務大臣 南スーダンは、自衛隊のPKOのことでおっしゃっていると思いますけれども、私は所管ではございませんので、その状況について答弁は差し控えたいと思います。

本村(伸)委員 南スーダンのようなケースも非常時に入る可能性があるということだというふうに思うんですけれども、国土交通大臣が航海命令を出すという判断を下す場合、どのように情報が集められる仕組みがあるのか、徹底した情報公開がなされるのか、恣意的な解釈を排除する仕組みや濫用を防ぐ仕組みがどのようにあるのか、お示しをいただきたいと思います。

石井国務大臣 実際に航海命令の発令につながるような事態が生じた際には、政府内において情報収集体制が設けられる可能性が高く、これらを通じ、必要な情報を収集することになると考えられます。また、収集された情報の公開については、その内容に応じて適切に判断されるものと考えられます。

 いずれにいたしましても、航海命令につきましては、先ほど御説明申し上げたとおり、海上運送法第二十六条第一項の規定に従いまして、「災害の救助その他公共の安全の維持のため必要であり、かつ、自発的に当該航海を行う者がない場合又は著しく不足する場合に限り、」発令されることとなるわけでございます。

本村(伸)委員 有事か非常時かということを考えてみますと、南スーダンPKOの日報問題で明らかになりましたことは、一点目ですけれども、駆けつけ警護や宿営地共同防護など、新たな任務を付与する閣議決定や防衛大臣の命令が下されたときに、国民の皆さんや住民の皆さんには情報が隠され、その隠された状況のもとで政府が判断を下したという問題がございました。

 二点目ですけれども、南スーダンPKOの日報の問題では、戦闘と書かれているのに、政府は、戦闘ではなく衝突だと。私たちが、内戦状態であり、そういうところに自衛隊を派遣するのは憲法違反であり、PKO参加五原則にも違反しているというふうに指摘をすると、国家または国家に準ずる組織同士の武力衝突、いわゆる法的な意味での戦闘行為に当たるものではないと言うわけです。

 こういう状況があるからこそ、やはり航海命令を出すときも心配になるわけでございます。

 そもそもこれまで航海命令を出した事例があるのかということと、実際には出していないけれども、出そうとしていた事例はあったのかということ、過去には、外航まで航海命令の対象を拡大する際に、インドネシア危機のことも答弁をされておりましたけれども、具体的にお示しをいただきたいと思います。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 海上運送法第二十六条第一項の規定に基づきます航海命令は、国際輸送、国内輸送、このいずれにつきましても、これまで発令実績はございません。

 また、御指摘の、一九九八年、平成十年のインドネシア危機のお話かと思いますが、その際に、当時の運輸省から日本船主協会への要請を踏まえまして、在留邦人の緊急輸送のため、我が国船会社の貨物船をシンガポールで待機させたことはございますが、これは、自主的な協力により行われたものであります。

本村(伸)委員 そういうインドネシア危機の際のことも踏まえて外航まで航海命令を拡大したというような御答弁でしたので、そういうことも踏まえてだというふうに思います。

 千年に一度と言われるあの東日本大震災、そして福島第一原発の事故があった際も、航海命令を出さずに、業界の皆さんが自主的にガソリンや飼料あるいは生活物資を運んだわけでございます。

 航海命令というのは、国家が強制するものですから、大変重いわけでございます。航海命令というのは、発動される非常時というのに、先ほど来議論をしてきましたテロ、政変等の治安悪化を含むとしておりまして、世界じゅうの紛争地域が対象となり得るわけでございます。輸送時には船員の方々も含め危険にさらされるという可能性は、やはり否定できないわけでございます。

 国家の命令によって痛ましい事件が起こらない、起こさせないためにも、航海命令の対象とする船をふやすことを認めることはできないということを強調いたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史です。

 法案に入る前に、三月二十九日の本委員会での私の質問に対する答弁について、佐藤航空局長に確認をさせていただきたいと思います。

 森友学園の国有地問題、八億二千万円のごみ撤去費用の見積もりは空港部の補償課長が決裁をした、空港部長や大阪航空局長に報告の上、昨年四月十四日に近畿財務局に提出をしたというふうに答えられました。

 私は、三月七日に大阪の合同庁舎を訪ねまして、近畿財務局の方や大阪航空局の方から聞き取りをさせていただきまして、その際、当該の空港部長からもお話を聞かせていただきました。

 四月十四日以前にこの八億二千万円の値引きの報告を受けていましたか、こう聞きましたら、知りませんでしたというふうに私に言明されたんですね。さらに、いつ知ったんですかというふうに私が聞きますと、実はこれは新聞報道されてから知りましたというふうに私に述べていただきました。

 資料一にありますように、前回の議事録を見ますと、佐藤局長は、着任以降については、担当者から報告を受けたというふうに聞いております、やはりこのように述べられているんですけれども、ということは、佐藤航空局長の答弁の方が正しいんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 ちょっと、時系列で整理をしてお答えをさせていただきたいと存じます。

 まず、三月三日の日に、本委員会におきまして委員の御質問がございまして、私、確認をさせていただきたいというふうに答弁をさせていただきました。その後、三月七日に、今委員の御発言の中にございましたが、共産党の御視察をされたということでございます。私どもといたしましては、三月九日の日に大阪航空局の空港部長のヒアリングを行っております。その結果を、先日、三月二十九日の衆議院の国交委で答弁させていただいたということでございます。

 それで、三月二十九日に今委員御指摘のようなやりとりをさせていただきましたので、実は、再度、同日、三月の二十九日に、本省の航空局の総務課長から大阪航空局の空港部長に確認をさせていただきました。

 その結果でございますけれども、大阪航空局の空港部長のヒアリングの結果ですが、近畿財務局から見積もりの依頼を受けたこと、及び、見積もりの方法や額について空港部の補償課長から報告を受けたということでございました。

清水委員 先日の答弁でも佐藤さんは、四月一日に着任をしたというふうに言われました、この空港部長が。退職されているか異動されているかわかりませんけれども、前任者にそのことも私は確認しているんですよ。

 四月一日からあなたは着任したんですか、こう聞きますと、土日を挟みましたのでそうじゃございません、こうおっしゃいましたので、では、三日ですか、二日ですかと聞きましたら、いや、もうちょっと後ろです、六日か七日ぐらいやったのと違いますかねと、こんな詳細なやりとりをしているんですよ、私。この土地の値引きの問題を御存じでしたかと言うと、知りませんでしたと私に言明していただいたんです。航空局長も知っていたんでしょうかねと私が聞きましたら、いや、それも知らなかったと思いますよ、本省も知らなかったわけですからと。

 これはやはり、隠密に八億二千万円の値引きが行われていたとしたら、私は問題だと思うんですね。それで、空港部長が知らなかったというのであれば、それはそれでいいんですが、報告を受けていて知っていたというふうに、私の聞き取りと違うことを再度おっしゃるので、これはどちらが正しいのかということを確認するためには、御本人にここに来て話をしてもらうしかないというふうに思うんですね。

 委員長に取り計らいをお願いしたいんですが、この大阪航空局空港部長の委員会招致の取り計らいをお願いしたいと思います。

西銘委員長 理事会にて協議いたします。

清水委員 次に、ごみ撤去費用の積算について伺うんですが、これも、三月二十七日の参議院の予算委員会で、我が党の辰巳孝太郎議員の質問に対し、九・九メートルの根拠について答えられましたので、それを資料の二枚目に、傍線を引いてお持ちさせていただきました。

 これは、国民皆さんの、本当に九・九メートルのところにごみが埋まっていたのかどうかという疑問に対して、その根拠を述べられたところなんですけれども、ここに、「第二に、」というところに、「そもそも九・九メートルという深い箇所から実際にごみ等が出てくる様子を職員が直接確認することは困難でありますけれども、」こう書いているんですね。

 何が困難の理由ですか。直接確認する手だてはなかったんでしょうか。何が困難の理由ですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本件土地で行われておりました工事なんですけれども、穴をあけまして、その後、コンクリートというか、固めるものをそこに流し込んで地盤を改良するという工事でございますので……(石井国務大臣「いや、違う」と呼ぶ)済みません。(清水委員「ちょっと、とめて、答弁を整理してもらえますか」と呼ぶ)

西銘委員長 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

西銘委員長 速記を起こしてください。

 石井国土交通大臣。

石井国務大臣 ちょっと私の方から補足して説明しますけれども、くい工事というと、いろいろな種類があります。一般的には、いわゆる鋼製ぐいですとかコンクリートぐいを打ち込むくい工事がありますし、あるいは、穴を掘ってそこにコンクリートを入れたりするいわゆる現場打ちのくいというのがありますが、今回の場合は、そういうものと違う特殊な工法でございまして、プロペラのついた、羽根のついたものを土の中に貫入していって土をやわらかくしていく、と同時に、そこにセメントモルタルを注入するという工法なものですから、掘っている最中、地表面から見られないんですね、掘っているところが。穴をあけたり何とかしたりしているということではないものですから。

 ですから、掘っている最中、その途中がなかなか確認しにくいということで、九・九メーターの、その掘っているところの底では、工事写真でも、現場で工事中のときを見たとしても、そこはなかなか確認をしにくいということを申し上げているところです。

清水委員 石井大臣でも佐藤航空局長でもどちらでもいいんですけれども、答えていただきたいのは、その工法は、確かに現認しにくい工法だったのかもしれませんが、値引きの根拠を積算するわけですから、どれぐらい地中深く埋設物が埋まっているのかどうかということは、これは航空局がしっかりと、工事の工法とは別途やるべきだったというふうに思うんですが、なぜそれをやらなかったんですか。

藤井大臣政務官 お答えいたします。

 くい掘削箇所の深さにつきましてのお問い合わせだと思いますけれども、平成二十八年三月十一日に、学校法人森友学園からの、地下埋設物が発見されたとの連絡を受け、まず、平成二十八年三月十四日に、大阪航空局の職員二名が近畿財務局職員とともに現地に赴いております。

 この場におきまして、工事関係者からヒアリングを行い、九・九メートルのくい掘削工事の過程において廃材等が発見されたとの報告を受けまして、職員は、廃材等を多量に含む土が広範な範囲に積み上がっていることを確認しております。

 また、そもそも、九・九メートルという深い箇所から実際にごみ等が出てくる様子、これは、先ほど大臣が答弁したとおり、工法で、別に井戸を掘るように穴を掘って下が見えるわけじゃないので、そういう形でございますけれども、掘削機の先端部に絡みつくほどの廃材等が発生しているということなどにつきまして、写真で確認するなど、でき得る限りのチェックを行っておるという形でございます。

 そもそも本件土地の北側や西側につきましては、昭和四十年代初頭まで池や沼でございまして、その後、昭和四十二年から四十三年にかけて埋め立てがなされ、急速に宅地化が進んだことが確認されているほか、当時は、大幅に規制が強化された昭和四十五年の廃棄物処理法の施行前で、廃材等の不法投棄などにより、宅地化の過程あるいはそれ以前から、地下の深い層から浅い層にかけて、廃材等を含む相当量のごみが蓄積することとなったというふうに考えられております。

 以上のことから、地下埋設物の撤去、処分費用の見積もりに当たり、くい掘削箇所につきましては、地下九・九メートルの深さまで廃材等が存在すると設定して見積もりを行うことが合理的であると判断したものでございます。

 ちなみに、くい掘削箇所は三百三平米でございまして、本件土地全体八千七百七十平米のうち約三%強にすぎないということを申し上げたいと思います。

清水委員 それをわざわざ説明していただかなくていいように、資料でその答弁のところをわざわざ持ってきて線を引っ張っていますので、与えられた時間は短いので、以後、簡潔にお答えいただきたいんです。

 では、藤井政務官がせっかく答えられましたので、私、一つ質問させていただきたいんですね。

 要するに、掘削機の先端部に絡みつくほどの廃材が発生したというふうにおっしゃっておられるんですが、それが、地中三メートル以内にあった廃材なのか、それとも、三メートルより深く、実際に九・九メートルで絡みついたものなのか、それはどうやって判断したんですか。

藤井大臣政務官 お答えいたします。

 工事関係者からのヒアリング、くい掘削工事実施中の工事写真、職員による現場確認、本件土地の地歴など、検証可能なあらゆる材料により、できる限りのチェックを行った結果、九・九メートルにごみが存在すると判断したところでございます。

清水委員 いや、それは結局答えになっていないんですね。全部伝聞なんですよ、これは。伝聞。つまり、ヒアリングしたとか、埋まっているところではなく積み上がっているところを見たとか、写真で確認したとか、自分で撮った写真と違いますよ。全部これは客観的な状況を羅列しているだけで、積算した、知見を持っている、技術を持っていると言いながら、自分で主体的に調査していないんですよ。これが最大の問題だと私は思うんですよ。

 できる限りのチェックをしたと言うんですけれども、これは、できる限りのチェックじゃなくて、できるだけのチェックでしょう。チェックというのは、八億二千万円も国民の共有財産を値引きするわけですから、あらゆる手段を使って完璧にチェックするべきだったんじゃありませんか。航空局長、どうぞ。

西銘委員長 その前に、石井大臣が手を挙げていますので。

 石井国土交通大臣。

石井国務大臣 藤井政務官の答弁をちょっと補足して申し上げますと、平成二十二年にごみの埋設の調査をやっているんですね。試掘の調査を、六十何カ所だったかな、やっております。それをもとに今回の補償範囲を決めておるのですが、そのときに出てこなかった。その調査というのは、二メーター掛ける三メーターの面積で、大体三メーターぐらいまで掘っているんですね。その穴があるわけですけれども、その三メーター掘ったときに出てこなかった試掘の場所のすぐ近くのくいから、やはりごみが出ているんですね。それは工事写真で確認をしている。それはやはり三メーターから下から出たものと考えざるを得ないということでございます。

清水委員 石井大臣、補足していただいたんですが、では、そのときに出た、三メートルより深く出たごみは、九・九メートルあたりから出たんですか。

石井国務大臣 これは、今回は瑕疵担保責任を問わないということが大前提になっております。すなわち、買い主は、将来、売り主に対して一切責任を問えないということですから、将来的なリスクも含めて試算をするということから、九・九メーターのくいを打った場所については、九・九メーターまで存在し得るということで判断をしたところであります。

清水委員 それが、業者が十五メートルとか二十メートルとか言えば、それをもとに瑕疵担保責任を逃れるためにごみの積算を設定したということになるので、やはりその説明は苦しいと思うんですね。やはり、航空局がみずから目視して、あるいは独自の調査で九・九メートル掘って、そこから出てくるということを調べなかったというのは、これは致命的な失態です。

 それで、我が党が調べまして、国立研究開発法人産業技術総合研究所にボーリング調査を依頼したところ、深さ十メートルあたりからごみが出てくる可能性はないと回答されているわけですよね。やはりこれは、国有地の値引きがいかにでたらめであったのか、また、先ほどのやりとりをしまして、空港部長の証言一つにしても、国会議員に対しての聞き取りとここでの答弁がこれだけ違うということですから、余計にやましいことがあるのではないかという疑念を抱かざるを得ません。

 引き続き聞いていきたいということを指摘しまして、法案に入ります。

 済みません、ちょっと時間がなくなりましたので、石井大臣に一問だけお伺いします。

 資料の五を見てください。今回の船員の生活を守る施策について、船員の方々の軽減税制措置が必要だということで、国交省は、二〇一二年に総務省に要望を出しました、外航船員に係る住民税を減免できないかと。これに応えて、総務省からは自治体に周知がされた。

 しかし、現在、総務省さんにも確認したんですけれども、船員に対する住民税の減税を実施しているのは、三重県の四日市市と鳥羽市の二自治体のみということでありました。地元の議員の方の熱意が伝わっているのかもわかりませんけれども。個人住民税が均等割されているんですね。これは、本来は、もっともっと多くの自治体で住民税の減税がされるべきだと思うんです。

 二〇〇八年のこの法案の改正当時、本委員会で我が党の穀田恵二議員が、ドイツなどで導入されている船員税制や社会保険制度への助成策など、政府の責任で直接支援することが重要ではありませんかと指摘したときに、当時の冬柴国交大臣が、そのとおりだと思いますと述べていただいたんですね。その後、総務省に対してこのような要望が出されたんですが、今述べさせていただいたように、まだわずかな自治体にとどまっている。

 全日本海員組合からも要望があるとおり、自治体の判断に委ねるだけではなくて、やはり国が、国交省としてもっと主体性を持って船員税制の拡大に取り組むべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

石井国務大臣 お答えする前に、先ほど委員から、ボーリングのデータをもって、三メーター以下にごみが入らないということをおっしゃいましたが、その件については参議院の予算委員会で御党の辰巳議員から指摘がございましたけれども、それに私は反論しておりますので、参考に申し上げておきたいと思います。

 それで、今のお問いでありますけれども、国土交通省では、日本人船員の確保を図るためのインセンティブとしての所得税や住民税の軽減措置を検討すべく、二〇一一年度に、日本人船員に係る税制に関する検討会を設置し、検討を行いました。その結果、国税である所得税については、船員が乗船中に受けられない国家行政サービスを特定することが難しい、一方、地方税である住民税は、乗船中、長期間住民サービスが受けられないことに着目すれば、実現可能性が高いとの内容が取りまとめられました。

 このため、二〇一二年度要望におきまして、外航船員に係る住民税減税を要望した結果、住民税の減税については各自治体の判断で可能であることが確認をされ、総務省から自治体にその旨周知がなされました。これを受けて、二〇一四年度に三重県四日市市において、二〇一六年度に三重県鳥羽市において、住民税の減税がなされたものと承知をしております。

 国土交通省といたしましては、こうした経緯を踏まえまして、地方運輸局と連携をし、自治体に対し、先行導入事例や船員の重要性を周知してまいりたいと考えております。

清水委員 今の御答弁に対する私の所見を答える前に、くいの工事について反論されたということですが、直接調べていない以上、その反論はやはり説得力を持たないということは指摘した上で、ぜひ船員の方々への住民税減税等の拡大に努めていただきたいと思いますし、法案の中にある国際条約の完全な履行につきましては、船員の安全確保のためにもちろん必要ではあろうということを表明いたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保です。

 海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案に関して質問いたします。

 我が国は、有史以来、四面を海に囲まれた中で、今日まで、多様な文化、芸術を育み、さまざまな産業を育成、発展させてまいりました。とりわけ海外との交易、貿易に関しては、海洋国家という地政学的立場から、海上運送が大きなウエートを占めてきたことは論をまちません。

 平成二十八年度の交通政策白書には、「我が国においては、貿易の九九%を海上輸送が占め、国内貨物輸送の約四割を海上輸送に依存しており、海運は我が国の国民経済を支える基盤となっている。」とあります。

 海上運送の重要性はこれまでにも国会で何度も議論されており、必要に応じてその都度法整備がなされてきたと承知しております。

 平成二十五年四月二十六日に閣議決定された海洋基本計画において、「日本商船隊の国際競争力の確保及び安定的な国際海上輸送の確保を図るため、日本籍船及び日本人船員の計画的増加に取り組む我が国の外航海運事業者に対し、トン数標準税制の適用等を実施し、日本船舶と日本船舶を補完する準日本船舶合わせて四百五十隻体制の早期確立を図るとともに、日本人外航船員の数を平成二十年度から十年間で一・五倍に増加させるための取組を引き続き促す。」とあり、安定的な海上輸送体制の確保という観点から、具体的な数値も示されております。

 さらに、平成二十七年二月十三日、交通政策基本法に基づいて交通政策基本計画が閣議決定されましたが、そこには「我が国の安定的な国際海上輸送を確保するため、日本商船隊の競争基盤強化のための方策を検討する。」とあり、海事政策に関する喫緊の課題として、日本商船隊の競争力の強化が提起されております。

 そこで、これまでに政府が取り組んできた海事政策についてお聞きいたします。

 初めに、トン数標準税制の導入に関連して質問いたします。

 我が国の海運大手である日本郵船、商船三井、川崎汽船の三社が、コンテナ船事業を統合して、世界的に厳しい市場環境を乗り越えていこうと努力しておりますが、海運業界の現状についてどのような認識をお持ちなのでしょうか、お尋ねいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 我が国外航海運企業は、中国経済の減速や船腹過剰等から運賃水準が歴史的に低迷していることなどから、近年、運航船規模の縮小による用船契約の解約金により大幅な特別損失を計上するなど、大変厳しい経営環境下にあります。

 このような中、お話しのとおり、我が国外航船会社三社は、コンテナ事業を統合した新会社を本年七月に設立し、来年四月からはサービスを開始する予定でございます。現下の市況に対応すべく、規模の経済を追求していると思われます。

 これらにより、コンテナ事業の一層の効率化とともに、我が国海運会社三社の経営基盤の強化が図られ、利用者ニーズに応じた安定的なサービスの提供につながると期待しております。

椎木委員 次に、経済安全保障の観点から、日本船舶、準日本船舶を計画的にふやしていこうということで、平成二十年にトン数標準税制が導入されました。海洋基本計画においても、経済安全保障上から、日本船舶、準日本船舶は四百五十隻を確保する必要があると指摘されておりますが、現状はどのようになっているのでしょうか。また、トン数標準税制の導入によって、これまでにどのような成果、効果があったのでしょうか、お尋ねいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 トン数標準税制の導入によりまして、認定事業者にとって、税負担が平準化され、安定的かつ計画的な船舶投資を行うことが可能となり、経済安全保障の確立に資する日本船舶及び準日本船舶の確保が図られます。

 これによりまして、日本船舶は、平成二十年六月末に九十八隻であったものが、平成二十七年六月末には百九十七隻に増加し、準日本船舶四十一隻と合わせると合計で二百三十八隻となっており、日本船舶及び準日本船舶の確保はこれまで着実に図られております。

椎木委員 それでは、今回の法律改正では、トン数標準税制の拡充について、準日本船舶の認定対象として日本の船主の海外子会社保有船を追加するとのことですが、歴史的な海運不況にある中で、なぜ準日本船舶の対象を拡大する必要があるのでしょうか、答弁を求めます。

石井国務大臣 昨今の我が国周辺海域における情勢変化を踏まえますと、経済安全保障の早期確立が急務となっております。しかしながら、委員御指摘のとおり、現下の歴史的な海運市況の低迷によりまして、認定事業者、トン数標準税制の認定を受けた事業者は、総運航隻数を縮小せざるを得ない状況にあります。日本船舶及び現行の準日本船舶のみで経済安全保障の確立に必要な四百五十隻を早期に確保していくことは困難な状況にございます。

 このため、日本の船主が海外子会社を通じて実質的に保有する船舶であって、航海命令発令時の日本籍化が確保されるものを新たに準日本船舶の対象に加えることによりまして、経済安全保障の確立に必要な四百五十隻の早期確保を図る必要があるところでございます。

椎木委員 詳細な御答弁、ありがとうございました。

 次に、今回の法律改正によって、経済安全保障の確立に必要とされる四百五十隻を確保できると考えていらっしゃるのか、そもそも経済安全保障上必要とされる四百五十隻の積算根拠について教えてください。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 経済安全保障上必要とされます四百五十隻の算出根拠につきましては、平成十九年十二月の交通政策審議会答申におきまして、非常時に国民生活、経済活動水準を維持するために必要な約千二百八十隻に、健康で文化的な最低限度の生活水準は通常の生活水準の約三分の一と計算されますことから、これを乗じることにより、四百五十隻と試算されたものでございます。

椎木委員 大変わかりやすい答弁でした。ありがとうございます。

 次の質問に移ります。

 外航日本人船員に関して質問いたします。

 日本の海運会社が運航する船において、船長と機関長等の幹部船員を除けば乗組員は全て外国人であったというような話を聞きますが、国土交通大臣が定めた基本方針や海洋基本計画に明記されている、外航日本人船員の人数を平成二十年度から十年間で一・五倍に増加させるとの目標について、これまでの取り組み状況並びに現状認識についてお尋ねいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 外航日本人船員につきましては、一九八五年のプラザ合意後の円高の進展による外国人船員とのコスト格差の拡大から、一九八五年の三万十三人から、二〇〇八年には二千三百十五人、二〇〇九年には二千百八十七人まで減少いたしました。

 このため、日本船舶及び船員の確保に関する基本方針を策定し、日本船舶・船員確保計画の導入によりまして、外航日本人船員を確保することとし、この結果、二〇〇八年の二千三百十五人から二〇〇九年の二千百八十七人と一旦減少しましたが、その後、二〇一五年の二千二百三十七人と、若干の増加を見ております。特に、トン数税制の適用事業者については、二〇〇八年の千七十二人から二〇一五年の千百四十六人と増加したところでございます。

 一方、日本人船員のコストが割高であることなどに加えまして、近年の歴史的な海運不況下におきまして厳しい国際競争にさらされております外航海運事業者の経営状況も相まちまして、十年間で一・五倍とする目標にはいまだ至っていないところでございます。

 この目標につきましては、外航海運業界も、当面目指すべき目標として表明し、その実現に向け努力しておりますことから、日本船舶・船員確保計画やトン数標準税制の活用などによりまして、引き続き、この目標を実現することを目指して取り組んでまいりたいと思っております。

椎木委員 今の答弁にありましたように、しっかりこの目標に向かって努力していただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 交通政策審議会海事分科会国際海上輸送部会において試算された、最低限必要な日本人船員数五千五百人という目標を達成するために、今後どのような施策をとろうと考えているのでしょうか、答弁を求めます。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 外航日本人船員を約五千五百人とするということにつきましては、二〇〇七年の交通政策審議会答申に記載されておりますことから、重要な試算であると認識いたしております。

 国土交通省といたしましては、この試算を努力目標としつつ、外航日本人船員数を一・五倍とする当面の目標を目指して、関係者とともに取り組んでいるところでございます。

 具体的には、日本船舶・船員確保計画の着実な実施、トン数標準税制の活用、外航日本人船員(海技者)確保・育成スキームによりますキャリア形成の支援といった施策を講じているところでございます。

椎木委員 次に、先進船舶導入等の促進に関連してお尋ねいたします。

 国際海事機関は、二〇二〇年より、一般海域における硫黄酸化物の排出規制を強化するとしております。我が国としても、これに対応するため、先進船舶の導入が急がれますが、当面は、燃料にLNGを使用することが考えられます。

 それに伴う燃料供給インフラの整備についてどのように考えているのでしょうか、お聞きいたします。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国際海事機関による二〇二〇年からの船舶の排出ガス規制の強化を背景にLNG燃料船の増加が見込まれている中、LNG燃料の供給拠点を形成することが重要であると考えております。

 我が国は、世界最大のLNG輸入国であり、各地にLNG基地が立地していることに加えまして、地理的にも、太平洋を横断する船舶の最初もしくは最後の燃料供給拠点となる場所に位置しているなど、LNG燃料供給拠点として大きなポテンシャルを有しております。

 そこで、我が国がアジアで先駆けてLNGのバンカリング拠点を形成するため、昨年、横浜港をモデルケースとした整備方策を取りまとめたところでございます。

 また、拠点形成に当たりましては、世界最大の重油バンカリング港であるシンガポール港と連携してイニシアチブをとることが重要であることから、昨年七月に、石井国土交通大臣が参加のもと、シンガポールにおきましてLNGバンカリングセミナーを開催したほか、同年十月には、我が国を含む七カ国八者の港湾当局によりまして、LNGバンカリング推進に関する覚書を署名し、国際的な連携を加速しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、シンガポール港と連携しつつ、LNG燃料供給拠点の形成を進めてまいりたいと考えております。

椎木委員 今の答弁にありましたように、しっかり進めていただきたいと思います。

 次に、先ほど外航日本人船員についてお聞きしましたが、内航船員等も含めた日本人船員の確保についてお尋ねいたします。

 海洋立国である我が国にあって、安定的な海上運送を確保するためには、日本人船員の果たすべき役割は大変重要であると考えますが、日本人船員の現状はどのようになっているのでしょうか、お尋ねいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 我が国の船員数は、ピーク時の一九七四年には約二十七万八千人となって以降、減少傾向にあり、二〇一五年の船員数は約六万四千人となっております。

 先ほど、外航日本人船員の状況についてはお話しさせていただきましたが、内航の日本人船員につきましては、ピーク時の一九七四年では七万一千人だったものが、二〇一五年には約二万七千人にまで減少いたしております。

椎木委員 これは、今後、対策等々は何か検討されていることはあるんでしょうか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 内航海運につきましては、先ほどの船員数の減少とともに、特に、いわゆる船員の高齢化ということが大きな課題となっております。これまで、外航海運など他分野から船員が供給されてきたことなどを背景として船員の高齢化が進展し、例えば、平成二十七年十月時点で五十歳以上について見ますと、四八・九%が相当する、こういう形になっております。

 このため、私どもとしては、政策としまして、若年の船員の確保を図るということで、さまざまな施策を講じているところでございます。

椎木委員 ありがとうございます。

 次に、独立行政法人海技教育機構は、我が国の船員養成にどのような役割を果たしているのでしょうか。また、独立行政法人海技教育機構は、平成二十八年四月に独立行政法人航海訓練所と統合して国内最大の船員養成機関となりましたが、統合したことによる効果はどうだったのでしょうか、お聞きいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 まず、独立行政法人海技教育機構は、全国に配置いたしました学校八校で座学を実施し、あわせて、帆船二隻を含む大型練習船五隻により、文部科学省所管の商船系大学、高等専門学校の学生も含めまして航海訓練を実施することにより、外航、内航海運業界に優秀な新人船員を安定的に供給する役割を果たしてまいりました。

 さらに、船員に対しますスキルアップのための再教育や、電子海図情報表示装置などの新たな技術に対応した実務教育を行うとともに、水先人の養成を実施することにより、我が国の安定的な海上輸送の確保に寄与してまいりました。

 二点目の統合に関してでございますが、統合を昨年四月に行いました。この統合によりまして、船員の養成を行うために必要な学科教育と実習訓練を一体的に行う我が国最大の船員養成機関が誕生し、船員養成機関として一層ふさわしい業務の質と効率性の向上を図ることが可能となりました。

 具体的な統合効果といたしましては、三つ挙げさせていただきます。

 まず第一に、教育内容の高度化でございます。

 学科と実習を通じまして一貫したカリキュラムを策定し、教員や設備等のリソースを相互に補完させて、教育内容の充実、高度化を図っております。

 二番目に、広報など発信力の強化でございます。

 先ほど申した帆船二隻を含む五隻の大型練習船を擁する、こういう魅力を増した学校であることを最大限に活用しまして、学校等において開きますオープンキャンパスに合わせまして練習船を公開するなど、学生募集を強化いたしております。

 第三には、柔軟な組織運営でございます。

 組織の統合に合わせまして重点的、弾力的な予算配分を行い、例えば、学校施設、練習船の保守整備を一元管理し、教育環境をより計画的、効率的に推進しているところでございます。

椎木委員 きょうはもう一点質問を用意していたんですけれども、海事局長の方から、先ほどの答弁で、船員不足と高齢化が最大の問題であるというような、原因といいますか、答弁をいただきましたので、最後の質問は割愛させていただきたいと思います。

 きょう、大臣の方からは一問御答弁いただきました。その他、海事局長、港湾局長、政府参考人より御答弁いただきましたけれども、我が党はこの法案に賛成です。きょうは、その賛成に当たって、詳細について何点かお聞きしたいと思っていたところなんですが、大変丁寧な、明確な御答弁をいただけたと思います。しっかりとこの法案について取り組んでいきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。

 以上で終わります。

西銘委員長 次に、松原仁君。

松原委員 トン数標準税制が、今、世界の、特に海洋国家においても大きな中心になっているわけでありまして、プラザ合意後において、日本籍船は千五百隻余から九十隻余に減ったということであります。これに伴って、船員数も三万人余から二千人余に減少した。このことがどういうふうな国家的なデメリットになっているのか、まず、大所高所から石井大臣の御認識をお伺いいたします。

石井国務大臣 四面を海に囲まれた我が国にとりまして、貿易量の九九・六%を担う外航海運は、我が国経済、国民生活を支える基盤として極めて重要であり、我が国における安定的な国際海上輸送の確保を図る上で、日本船舶、日本人船員はその中核となるべき存在であります。

 さらに、日本船舶、日本人船員は、我が国の管轄権が排他的に及ぶため、経済安全保障の観点から通常時より一定規模を確保することが必要であるほか、海上輸送の安全性の確保や、操船技術等の海技の世代間の安定的伝承等の観点からも重要な意義がございます。

 このため、プラザ合意後の日本船舶、日本人船員の減少により、経済安全保障の確保等に懸念を抱かせる面もあったと考えておりまして、日本船舶、日本人船員を再び増加させることは極めて重要な国家的課題であると考えております。

松原委員 それは当然そうなんですが、今私がお伺いしたかったことは、このことが、日本の経済安全保障とかそういう議論は当然ながら、海運産業、海運の世界におけるソフトパワー、ハードパワー、こういったことに結果として大きなマイナスになっているのではないかというふうに私は思っております。

 この辺については海事局長に逆に今質問させてもらいますが、このことによって、プラザ合意以降、日本だけではない、ドイツやイギリス、またノルウェー等においても非常に船舶数が減ったというふうに言われております。

 きのうレクで話をしたんですが、なかなか数字的なものはまだ取りそろっていないというのは承知をしておりますが、いわゆるプラザ合意以降の日本籍船の激減の産業構造的なもの、造船関係における仕事量とか、そういった観点から大きな国家的なマイナスがあったか否かについて、海事局長、御答弁をお願いします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のプラザ合意以降の円高等の進展により、我が国の海運企業は大変厳しい経営状況に置かれておりました。その中で、先ほど大臣からお話ございましたように、我が国の貿易量の九九%を支える、こういうことでございますので、世界の各国との厳しい競争をしながら事業を進めていかないといけない、こういうことでありまして、その中で、経済安全保障にも重要な日本船舶あるいは日本人船員の確保に懸念が生じるような事態になっていたのは事実であります。

 このこと自体も一つの課題でございますが、さらに、日本の海運企業が厳しい状況に置かれたままであったことが、例えば、日本の海運企業は、造船を発注するのは基本的に我が国国内の造船会社に発注いたしております。我が国国内の造船会社は、各地各地に基盤を持っております。その意味で、我が国海運企業が非常に厳しい状況にあり、船舶の新造などを抑えたということは、各地の造船企業にとっても影響を与え、そのことは、ひいては我が国全体の地域経済あるいは雇用にも影響を与えてきたものだというふうに考えております。

松原委員 このトン税、トン数標準税制は、今やもうグローバルスタンダードになった。一九九六年にこれを採用した国家が幾つかあるわけでありますが、これは、今、どのような経緯で世界標準になったのか、それに関してどのような認識をお持ちか、お伺いします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 トン数標準税制は、最初、一九九六年にオランダ及びノルウェーで導入され、翌一九九七年にEUにおきまして登録船舶の便宜置籍国への流出の防止を目的といたしました海運への国家支援に関するガイドラインが定められたことを皮切りに、欧州の主要海運国において相次いで導入されました。

 その後、我が国や米国、韓国、台湾などの欧州以外の海運国等におきましても同制度の導入が進んでおり、トン数標準税制は国際海運において世界標準の制度となっていると認識いたしております。

松原委員 これは、トン数標準税制という税制も含めて、一度その国から他に流出したいわゆる便宜置籍船を何で戻そうとするのか、これをやはり分析しなきゃいかぬと思うんですね。そこの問題意識をどのように捉えるかというのが日本の海運の大きな、重要な要素になっていると思います。

 プラザ合意以降、日本籍船の便宜置籍船がパナマ等にたくさん移ったことによって、税制的なものではない部分でどんなデメリットが日本の海運業にあったか、御認識をお伺いしたい。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 まず、御指摘のとおり、自国籍船が便宜置籍船として海外に流出いたしますと、このことは、まさに今回の法律の背景にございます経済安全保障の確保という点にも支障がございます。

 さらに、ヨーロッパ、EUなどが、いわゆるトン数標準税制を入れて海外への流出を防止しようとしたという背景は、まさに、海運及びそれを支える造船、舶用工業、そういったもの一体が、海運を中心とするサービスをする基盤となる船舶が外に流出する、このことが欧州各国においての経済を弱めることになる、こういったことも勘案して導入されたというふうに承知しております。

松原委員 石井大臣、これは重要なことだと思うんですよ。冒頭の質問で、ちょっとそこも御答弁で触れていただければと思ったんですが。

 要するに、経済安全保障という観点は当然であります。しかし、海外の、ヨーロッパの国々が、日本の十年前からこういった便宜置籍船を減らす、戻すというのは、それだけではなくて、税的なメリット云々だけではなく、海外にその船の本籍が行くことによって、海外にそれが行くことによって、さまざまな関連するものが失われてしまう、そのことのデメリットを感じているがゆえに、それぞれの国がこのトン数税制を採用し、国際標準になったということが極めて重要なわけであります。

 ちょっと海事局長にお伺いしますが、なぜ日本は、先ほど大臣がおっしゃった、海洋国家であるにもかかわらず、今や世界標準、グローバルスタンダードになったこのトン税を入れるのがヨーロッパの最先端の国より十年もおくれたのか、この理由をどう分析していますか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 我が国のトン数標準税制の導入が、最初に導入されましたオランダ及びノルウェー、九六年からおくれること約十年であったのは事実でございます。

 これにつきましては、我が国の海運企業は、その導入までの間に、実は、平成のバブルだとかそういったこともあり、経営が順調であった。そういうことも影響し、そして、諸外国の導入状況を見ながら進めている、こういうこと。その後、経営状況も勘案しつつ、船会社の方から、海外との国際競争状況がさらに厳しくなっているので、競争条件を同等、均等になるように、こういう要望が出てきて、それらを勘案し、議論して導入された、こういうふうに認識しております。

松原委員 これは極めて重要なことであります。何が重要かというと、日本は海洋国家であり、日本が最先端を行ってグローバルスタンダードをつくるべき国家であるにもかかわらず、このトン税に関しては、日本は先端を行くことなく十年おくれたということであります。

 その中身はまた後で財務省にも聞くわけでありますが、さらに、経済安全保障ということに限りなく的を絞っているわけであります。グローバルスタンダードを日本がつくり上げ、日本が海洋国家であるというこの原点を強く認識するならば、やはり、こういったものに関して、もっと早くそういうアイデアを日本が出すぐらい、もしくは最先端の方でやるべきであって、十年間おくれたことによる日本の海運におけるダメージといいますか、そういったものは実はあるんだろうと私は認識をしております。

 大臣にお伺いしますが、自国籍船が便宜置籍船として海外に流出することを防止することは重要であると考えますが、御見解をお伺いいたします。石井大臣。

石井国務大臣 今委員が御披瀝いただいたような経済安全保障上の観点等々から、御指摘のとおり、我が国の外航海運企業の運航する船舶が過度に外国籍船となることはやはり問題であるというふうに考えております。

松原委員 当然のことでありますが、今申し上げているのは、海運に関係するさまざまな部分がやはりこのことによって弱体化してきたということを我々は認識する必要があるのではないかということを重ねて申し上げたいわけであります。

 ちょっと視点をより金銭的な部分に変えますが、諸外国では固定資産税や登録免許税がかからないということもあります。こうした保有コストについても国際標準まで下げるべきだと考えますが、御見解をお伺いします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 パナマ、リベリア等、諸外国の外航船舶の登録免許税、固定資産税等は、非課税あるいは手数料並みというのが主流となってございます。

 これを踏まえまして、我が国におきましても、国際船舶につきましては、登録免許税を千分の四から千分の三・五に、固定資産税の課税標準を六分の一から十八分の一に、それぞれ軽減する措置を講じているところでございます。

松原委員 今海事局長が言ったその数値で、他の国に比べてイコールフッティングしていますか。

羽尾政府参考人 比較する国がそれぞれでございますが、先ほど申しましたパナマ、リベリア等の国で、登録免許税あるいは固定資産税を非課税、そもそも課していない、こういう国もあります。私どもも軽減措置を講じていただいておりますが、それと比べれば若干高目になっているという事実はございます。

松原委員 きょうは財務省の方にも来ていただいているわけでありますが、最後は財務省がどういう判断をするかというのが極めて重要なわけであります。

 ちょっと財務省に幾つかお伺いしたいわけでありますが、財務省としては二つの尺度があると思っております。国内的な他の企業との関係におけるイコールフッティング、これは当然重要であります。しかし、国際社会においてその部分の他の企業とのイコールフッティング、これも重要だと思います。これについての認識をまずお伺いしたい。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、国内におけるイコールフッティング、これも非常に大事でございます。同時に、国際的な観点も含めて、さまざまな観点から税制を構築することも大事であります。

 さはさりながら、一方で、各国の税制と申しますのは、各国それぞれの置かれた経済情勢でありますとか、ないしは各国の税制全体の中でもそれぞれ判断される面もございますので、そうした点も踏まえて勘案していくことが必要だろうと考えております。

松原委員 井上さん、日本の場合は、一国で経済を運営することができる他の大国と違って、貿易立国なんですね。国際社会の中において我々は生存を確保しているわけです。これが、日本の規模の二十倍の面積があって、経済的規模もでかいようなところ、資源がたくさんあるところ、こういうところだったら、国内税制のイコールフッティングを優先することもあるいは一つの考え方かもしれません。

 しかし、私は、海外とのさまざまなやりとりで国を繁栄させる日本は、国内的な税制のイコールフッティングよりも、国際的な税制のイコールフッティングが大事だというふうに思っております。

 その点からいくと、先ほど海事局長が言った点の、いわゆる登録免許税等々の部分においてパナマ等に比べて高い、このことについては、井上さん、どういうふうに考えていますか。

井上政府参考人 お答えさせていただきます。

 繰り返しになりますけれども、各国の税制は、それぞれ各国の事情それから税制全体の中で判断する面もあると思います。

 そういった中で、御指摘になった税制でありますとか、ないしは、きょう御議論になっておりますトン数税制もそうでございますけれども、いわゆる租税特別措置として、特定の政策目的を実現するために、いわば期限を原則として区切って例外的に措置するという世界の中で、今は、まさに海上運送法に規定します、我が国の安定的な海上輸送を確保するという観点で、日本船籍ないしは準日本船籍をふやしていくということに対して、我々としては税制でしっかりと措置をさせていただいているということでございます。

松原委員 海事局長、ちょっとお伺いしたいんですが、航海命令という項目がなければ、このトン税を選択するために戻ってくる船は、準日本国籍も含めて、これはより緩やかになるというのは当然だと思いますが、御認識をお伺いしたい。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 日本船舶の重要性につきましては、冒頭、大臣の方からも答弁させていただきましたように、安定的な国際海上輸送を確保するという観点、及び、海上輸送の安全性の確保、あるいは海技の世代間の安定的伝承等、日本船舶及び日本船員をあわせて見て重要な意義がある、こういうことでございます。

松原委員 経済安全保障は理解しています。四百五十隻というのも理解しています。経済安全保障だけがメーンなのか、日本の海事の繁栄というものを同時に考えているのか、どっちですか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 私どもは、海事産業、海運業、造船業、この重要性に鑑み、海事産業の振興に努めております。

 今御指摘の本件の税制につきましては、御説明申し上げておりますとおり、日本船舶及び準日本船舶を増加させていき、経済安全保障を確保する、こういう目的で設定されたものでございます。

松原委員 海事局長もなかなか熱い思いが言葉の裏にあると私は思っておりますが、お立場もあるので、そこが一つのきょうの御答弁かなと認識をしております。

 問題はこの分野だけではないと思うんですが、財務省にお伺いします。

 データはぜひ見てほしいんですが、他の諸国がこういったトン税をやっている、そういった国が、トン税とその他の法人の法人税の平仄の中で、やはり国内的には十分フェアかどうかという議論はあると思うんですが、その辺は研究したことはありますか。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 各国それぞれの税制の中の話でございますけれども、詳細については検討したことはございません。

松原委員 ぜひ検討してもらいたい。要するに、これは、損して得とれではないですが、繁栄することによって税金が非常に上がるだろうし、国家も繁栄する。これは一つの鉄則ですから、やはりこういう部分を財務省にはぜひ御検討いただきたいと思っているわけであります。

 先ほど言ったように、日本は大きな大国のように一国で経済を回せない。それは、原材料がやたらとあるわけでもない。つまり、国際社会とどういうふうにイコールフッティングでやっていくかが問われる。だから、国際社会との競争において、それは財務省だけの問題じゃないんですよ、海外から日本に人が来る場合の受け入れを含めて、さまざまな議論がある。こういったことで、そういうものに関して世界で最も競争力がある国家にする努力をしなきゃいかぬ。

 こういう登録免許税等に関して、パナマとかそういったところは非課税である。我々も非課税であるというぐらいの、まあ、それほど大胆でもないんですよ。財務省的には、いや、それは清水の舞台から落ちるぐらい大胆だと言うかもしれないけれども、それぐらいのことを、少なくともイコールフッティングは、国内産業のイコールフッティングは大事だけれども、国際間のイコールフッティングを重要視しないと私はこの国はもたないというふうに思っていますので、ぜひそこは御検討いただきたいというふうに思っております。

 次に、IMOの議論に進みます。

 海洋国家日本として、海事分野でグローバルスタンダードをつくっていくのは重要だ。これは極めて重要で、いわゆるグローバルスタンダードを、自国に有利にして、世界的にもウイン・ウインの形でつくる。エゴイストじゃないので、自国に有利だけではない。それが、トン税みたいなものを、先ほど言ったように、日本が、財務省の御理解や、むしろ財務省からの御提言が先にあってトン税が進むぐらいであった方が、私はグローバルスタンダードとしての日本の立ち位置になったと思うんです。

 海事局長、ちょっとこれは通告していませんが、日本発の海事関係のグローバルスタンダードというのは何かありますか。海事関係のトン税みたいなグローバルスタンダード。何か思いつくものがあったら言ってください。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 全てを網羅して調べたわけではございませんが、我が国の海運業あるいは造船業は、世界の中での技術力も極めてすぐれている、こういうことでございます。

 例えば、先進的な船舶、例えば省エネの技術を持っている船舶、あるいは壊れにくい船舶、こういった意味では、我が国の造船業の持っている技術というのが世界の中でリードしている、グローバルスタンダードとなって各国が模倣している、こういうものだと思っております。

松原委員 時間配分がちょっとまずくなってきたので。

 これは、日本発のグローバルスタンダードというのはそういう意味じゃないんですよ。技術が優秀だなんて、それはわかっているんですよ。一つのグローバルスタンダード的なもので、日本の海運がつくって世界の海運のグローバルスタンダードになったものは幾つあるか。それをやはり幾つかつくらないといかぬと思っております。

 ちょっと時間がなくなってきたので、あとは簡単に質問して、御答弁いただきたい。

 離島における交流を活性化させる観点から、三宅島―新島―調布間の航空航路の開設により、離島間交流の促進を図ることが必要と考えるが、国土交通省の見解いかん。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省といたしましては、地方航空ネットワークの維持、充実により、離島間の交流促進を図ることは重要であると考えており、離島航空路線に係る運航費補助や航空機購入費の支援を行っているところでございます。

 一方で、航空路線の開設は航空会社の判断により行われるものでありますので、航空路線の開設には、航空会社と地元自治体との連携が重要になってまいります。

 国土交通省といたしましても、今後とも、地域の御意見を踏まえながら、先ほど申し上げました支援措置を活用するなどして、地方航空ネットワークの維持、充実に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えてございます。

松原委員 伊豆諸島の航路の現状についてお伺いいたします。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 東京と伊豆諸島の間を結ぶ定期航路につきましては、現在、三つの事業者が四航路の運航を行っております。具体的には、東京―八丈島航路、八丈島―青ケ島航路、東京―大島―神津島航路、式根島―新島航路となっております。

 これらの航路では、貨客船、ジェットフォイルなどにより、週四便から一日三便程度の運航が行われており、移動手段、生活物資の輸送手段として住民生活を支えるとともに、観光客の輸送手段としても地域経済を支えているところでございます。

松原委員 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催に向け、伊豆諸島の活性化を図る必要がありますが、同時に、これは二つのルートが別なんですよね、局長は御案内のように。したがって、ここをくっつけた方がいいんじゃないかという議論は現地においてもあります。

 このことについての検討といいますか、御認識というか、あればお伺いしたい。

羽尾政府参考人 お答えをさせていただきます。

 御指摘のように、東京と伊豆諸島を結ぶ航路は、大きく南北の二本、一つは、東京から三宅島、八丈島、御蔵島、青ケ島を結ぶ南側の航路と、東京から大島、利島、新島、式根島、神津島を結ぶ北側の航路、この二つに分かれております。

 これらの航路の間を結ぶ航路は現在存在しておらず、一般的には、伊豆諸島の南北を結ぶような航路が運航されれば、離島間の人的交流の活発化に資するものと考えます。

 航路の開設に当たりましては、臨時的な航路での運航につきましては、海上運送法上、事前に届け出を行えば実施することが可能となっております。

 ただし、実際に新たな航路での運航を行うに当たりましては、事業者の方々におきまして、具体的にどのような需要があるか、あるいは船舶を使用する上で既存航路のダイヤとの調整が可能かどうか等の点について、実情に即した検討を行うことが必要だと思っております。

 このため、臨時航路の開設につきましては、第一義的には、地元のニーズ等も踏まえた上でどのような対応を行うか、事業者において経営判断をしていただくべき事柄であると考えております。

松原委員 海事局としても、このことに関して、前向きに進めるためのさまざまな検討はぜひしていただきたいと思います。局長、答弁。

羽尾政府参考人 一部繰り返しでございますが、現在、南北二つの航路ができておりまして、その南北をそれぞれ結ぶ航路というのが存在しない。かつて一度臨時的にやってみて、なかなか経営が大変だった、こういうことがございます。

 したがって、これらについては、地元のニーズあるいは観光需要の喚起等々によって人的交流の活発化に資するような形で、まず、地元の方々あるいは事業者の方々の主体的な活動そして経営判断がされていき、そういう状況の中で、私どもも、路線ごとにおきまして、離島航路の補助など、使えるところがあれば支援していきたい、こんなふうに考えております。

松原委員 内閣官房のまち・ひと・しごと創生本部事務局にお伺いしますが、地方創生の立場から、人口減少の対策が必要であり、離島において安心して出産できる環境を整備することは、地方創生の肝であると考えております。

 このようなことに関してどのように地方創生担当部局として考えているか、お伺いいたします。

奈良政府参考人 お答えいたします。

 地方創生は、少子高齢化に歯どめをかけ、地域の人口減少と地域経済の縮小を克服し、将来にわたって成長力を確保することを目的としており、地域の実情に即し、結婚、妊娠、出産、子育てをしやすい地域づくりに向けた取り組みを推進することは、地方創生にとって重要な課題である、このように考えてございます。

 このため、地方創生の一環として、安心して産み、育て、暮らすことができる地域を維持、創造するために必要な環境づくりに取り組む地方公共団体に対し、国として、情報、人材、財政、三つの側面から総合的に支援してまいりたい、このように考えてございます。

松原委員 離島において安心して出産できる環境を整備する観点からいえば、診療所、助産婦の経費を支援することが重要であると考えるが、国としての見解いかん。

奈良政府参考人 地方創生におきましては、国で一律の政策を全国展開するということではなくて、地域の創意工夫を後押しするという観点から政策を推し進めてございます。そういったことから、特定の施策、個別の施策についてこの場で言及することは控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、委員御指摘のとおり、地方創生の観点からも、安心して出産できる環境、体制を整えることは重要であると考えてございますので、そうした観点から、熱意と意欲を持って持続的な取り組みを進めようとする地方公共団体に対して、情報、人材、財政面から支援してまいりたい、このように考えてございます。

松原委員 あと、小笠原の渇水についてちょっと御所見をお伺いして、時間ですので質問をやめたいと思います。小笠原についてお伺いします。

西銘委員長 厚生労働省橋本大臣官房審議官、時間ですので、簡潔にお願いします。

橋本政府参考人 お答え申し上げます。

 小笠原村におきましては、昨年夏からの少雨によりまして、水源となる父島、母島のダム貯水率が減少しております。昨年十月十一日に渇水対策本部を設置しているというふうに承知いたしております。

 父島でございますが、本年一月二十三日から水道の水圧を二〇%下げて給水を行っております。また、二月十日からは農業用のダムからも取水して給水することに加えまして、二月十三日から海水淡水化装置を稼働して水道用水を確保しているという状況でございまして、三月三十日時点でのダム貯水率が二四・七%という状況でございます。

 母島におきましても、こちらの方では村民への給水は通常どおり行ってございますが、二月六日からは農業用のダムから取水して給水、それから三月九日からは海水淡水化装置により水道用水の確保を図っているという状況でございまして、三月三十日時点でのダムの貯水率が四一・三%でございます。

 私ども厚生労働省といたしましては、東京都の方と緊密に連携をいたしまして、引き続き情報の把握に努め、必要に応じて協力、支援を行っていく所存でございます。

松原委員 終わります。

西銘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。清水忠史君。

清水委員 私は、日本共産党を代表して、海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案について、反対の立場で討論いたします。

 国際条約の完全な履行については、船員の安全確保のために必要なことです。

 しかし、今回の改正案によって、航海命令の対象となる船舶の数が増加します。

 航海命令は、非常時に国家が船と船員を強制力を持って役務に提供させる命令であります。非常時の定義には、テロ、政変等の治安悪化が含まれます。世界じゅうの紛争地域がこの命令の対象となり得るものであり、輸送時に船と船員が危険にさらされる可能性は否定できません。

 航海命令の対象は船舶運航事業者とされているものの、実際に海外の危険地域へ派遣されるのは、海上運送に従事する船員と労働者です。

 以上の観点から、法案には賛成できないということを申し上げて、討論といたします。

西銘委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、海上運送法及び船員法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西銘委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西銘委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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