衆議院

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第16号 平成29年5月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十九年五月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西銘恒三郎君

   理事 今枝宗一郎君 理事 岩田 和親君

   理事 中根 一幸君 理事 西村 明宏君

   理事 宮内 秀樹君 理事 津村 啓介君

   理事 本村賢太郎君 理事 佐藤 英道君

      青山 周平君    秋本 真利君

      大岡 敏孝君    大塚 高司君

      大西 英男君    大西 宏幸君

      鬼木  誠君    加藤 鮎子君

      金子 恭之君    神谷  昇君

      木内  均君    工藤 彰三君

      小島 敏文君    佐田玄一郎君

      助田 重義君    鈴木 憲和君

      田所 嘉徳君    津島  淳君

      豊田真由子君    中谷 真一君

      中村 裕之君    根本 幸典君

      橋本 英教君    藤井比早之君

      古川  康君    堀井  学君

      宮路 拓馬君    望月 義夫君

      荒井  聰君    黒岩 宇洋君

      小宮山泰子君    松原  仁君

      水戸 将史君    村岡 敏英君

      横山 博幸君    伊佐 進一君

      北側 一雄君    中川 康洋君

      清水 忠史君    本村 伸子君

      井上 英孝君    椎木  保君

      野間  健君

    …………………………………

   国土交通大臣       石井 啓一君

   国土交通副大臣      田中 良生君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   国土交通大臣政務官    大野 泰正君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 伊丹  潔君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官)            東井 芳隆君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局長)            藤田 耕三君

   政府参考人

   (国土交通省自動車局長) 藤井 直樹君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  羽尾 一郎君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  菊地身智雄君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    中島  敏君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     宮路 拓馬君

  中谷 真一君     青山 周平君

  古川  康君     大西 宏幸君

  前田 一男君     大岡 敏孝君

  椎木  保君     井上 英孝君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     中谷 真一君

  大岡 敏孝君     鬼木  誠君

  大西 宏幸君     古川  康君

  宮路 拓馬君     秋本 真利君

  井上 英孝君     椎木  保君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     助田 重義君

同日

 辞任         補欠選任

  助田 重義君     豊田真由子君

同日

 辞任         補欠選任

  豊田真由子君     前田 一男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 港湾法の一部を改正する法律案(内閣提出第六〇号)


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     ――――◇―――――

西銘委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、港湾法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官東井芳隆君、総合政策局長藤田耕三君、自動車局長藤井直樹君、海事局長羽尾一郎君、港湾局長菊地身智雄君、観光庁長官田村明比古君、海上保安庁長官中島敏君、内閣府大臣官房審議官伊丹潔君及び法務省大臣官房審議官佐々木聖子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島淳君。

津島委員 おはようございます。自由民主党の津島淳でございます。

 本日は、港湾法の一部改正案質疑にて質問をさせていただきたいと存じます。機会をいただきましてありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思います。

 まず、外航クルーズ船の受け入れ拠点の形成の推進について伺います。

 我が国のクルーズ船の寄港動向の現状については、委員の皆様御承知のことと存じます。この現状が、急増するクルーズ船の受け入れ施設の不足、岸壁の優先予約の仕組みがなく、ツアーの企画に支障が生じている、岸壁を早期優先利用できるなら、みずから旅客ターミナル等を整備する意欲を持つ船社が出現といった新たな課題を生じさせています。

 その対策として、今改正案では、国が指定した港湾において、港湾管理者とクルーズ船社との間で、管理者は、船社に岸壁の優先利用を認める、船社は、旅客施設を整備し、他者の利用を認める旨の協定を締結できる制度等を創設することとしています。

 官民連携の受け入れ拠点の形成や、クルーズ船社に岸壁の優先利用を認める制度の創設は、二〇二〇年に訪日クルーズ旅客五百万人達成に向けて大変有意義なものであると評価をいたします。すなわち、安定的なクルーズ船の受け入れ拠点の確保、岸壁の優先予約によるツアーのさらなる造成、優先予約のインセンティブにより、官民連携での受け入れ拠点整備促進といった効果が期待できるということです。

 その上で、新制度が、拠点港のクルーズ船寄港実績向上のみならず、全国のクルーズ船寄港実績の向上につながることが肝要だと思っております。

 以下、私の地元青森港を例に説明をいたしたいと存じます。

 青森港でも、まだまだ西日本、那覇や博多にはかないませんが、クルーズ船の寄港が年々増加しております。

 お手元に資料を配付しております。資料一をごらんください。

 二〇一六年の寄港回数は二十一回で、東北地方の港湾では最多であります。

 次いで、資料二をごらんください。

 青森港における、ことし、二〇一七年の寄港予定の一覧でございます。ごらんいただきたいのは、船名と前後の寄港地でございます。寄港が多い船は、カーニバル・コーポレーション&plc傘下のプリンセス・クルーズ社所有ダイヤモンド・プリンセスや、郵船クルーズ社所有飛鳥2です。

 資料三をごらんください。

 今改正案により、両クルーズ船社は、横浜港を拠点とする予定となっております。

 また、青森港の前後の寄港地には、その横浜港が含まれております。また、酒田港、秋田港などの東北の各港、函館港、小樽港、室蘭港などの北海道の各港にも寄港しております。

 今後、全国各港のクルーズ船寄港回数をふやすためには、青森港などの地方港が横浜港などの拠点港の取り組みと連携し、クルーズ船の寄港の増加につなげていくこと、また、東北観光復興のためにも、さきに述べました東北の港との連携や北海道などの各港との広域連携を、商談会、寄港地情報の一元的発信、港湾局のマッチングサービスを通じて行うことが重要であると考えます。

 この点について、国土交通省菊地港湾局長さんに見解を問いたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省では、明日の日本を支える観光ビジョンに掲げられました、訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人という目標を実現するため、本年一月三十一日に、横浜港など六港を、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾として選定したところでございます。

 しかしながら、今後も増大が見込まれるクルーズ需要に対応するためには、この観光ビジョンにも盛り込まれておりますが、全国の各地をカジュアルからラグジュアリーまで幅広く対応したクルーズデスティネーションにすべく、この六港に限らず、寄港地の全国展開を図ることが必要と考えております。

 寄港地の全国展開を図る上では、これら拠点となる港とそれ以外の港が連携して、あるいは複数の地方港が共同してプロモーションを行うなど、効果的な寄港誘致を行うことが重要と考えております。

 国土交通省といたしましては、クルーズ船の受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催、全国の港の岸壁水深や延長に係る情報、また港周辺の観光情報を一元的に発信すること、さらに、クルーズ船社と港湾管理者とのマッチングサービスを提供する、こうした取り組みを通じまして、各港の連携による寄港誘致の取り組みを積極的に支援し、寄港地の全国展開を図ってまいりたいと考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 ぜひ取り組みを積極的に進めていただきたいと思いますし、私は、地元青森港におきましても、今の連携ということを十分に念頭に置いたポートセールスを進めて、まず寄港実績を積み上げていくということが次のステップに進んでいく、そのように考えて、地元でも働きかけてまいりたいと思っております。

 また、青森港には、二〇一九年五月に、カーニバル傘下でありますキュナード・ライン社のクイーン・エリザベス号が寄港することとなりました。こうした実績をてこに、先ほど申し上げましたポートセールスと、東北、北海道の各港との連携により、東北観光復興に努めてまいりたいと思っております。

 次に、観光庁さん、きょうは田村長官においでいただいておりますが、お伺いをいたします。

 二〇二〇年、訪日クルーズ旅客五百万人を達成するためには、フライ・アンド・クルーズや、新幹線の活用など、私はレール・アンド・クルーズと勝手に名づけておりますが、こういった他の交通モードとの連携によって多様なクルーズという形をつくっていくことが不可欠であると考えておりますが、この点、いかがでしょうか。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二〇年に訪日クルーズ旅客五百万人達成に向けまして、クルーズのさらなる魅力向上のためには、委員御指摘のとおり、クルーズと航空や鉄道等の多様な交通モード間の連携が必要不可欠であると認識をいたしております。

 クルーズと他の交通手段との連携によりまして、地方周遊の手段が確保できます。それから、全国津々浦々の自然、文化、気候、食など、我が国の多様な魅力に触れてもらう機会の創出が図られると考えております。片道においてクルーズ旅行を楽しみ、もう片道を航空や新幹線などを利用して帰るといった旅行商品の造成も行われてきているところでございます。

 観光庁といたしましては、平成二十八年に九州のクルーズ船の主要寄港地におきまして新たな観光施設の抽出やモデルコース策定のための調査を実施するなど、訪日クルーズ旅客にとって満足度が高い上質かつ多様なツアー造成に取り組み始めているところでございます。

 こうした調査の結果も活用しつつ、今後とも、各交通モードとの連携を推進して、クルーズ船旅客の上陸時間や消費の拡大に資するような魅力的なツアーコースを造成し、クルーズの誘致や地方への誘客に努めてまいりたいと考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 このフライ・アンド・クルーズあるいはレール・アンド・クルーズということは、必ずしも日程が十分にとれないためにフルにクルーズ日程に参加できないお客様にとっては、日程の短縮を図ることで一部でもクルーズに乗ることができる。あるいは、例えば、青森から日本海側を経由して秋田まで列車で移動して、そこからまた船に乗るなど、日本各地を周遊するという部分ではその機会が大いに増加するということ、また、それぞれ立ち寄った箇所での消費の拡大等、経済効果も期待できるものとして、私も、ぜひ地元においても、この点、大いに効用をPRしてまいりたいと思いますし、今、観光庁長官から答弁がございました施策を積極的に進めていただきたい、そのように思っております。

 では次に、今改正案のもう一つの項目、非常災害時における国土交通大臣による円滑な港湾施設の管理についてお伺いをいたします。

 この改正は、平成二十八年熊本地震の被災県である熊本県の蒲島知事からの御提案を踏まえたものと承知をしております。これは、熊本地震を教訓とした意義ある改正であります。

 今後想定される東南海地震、いわゆる首都直下型地震などの大規模災害に際して、港湾は、災害時にその機能の維持、回復がなされれば、人命救助、復旧に当たる人員、物資の集積拠点たり得るのみならず、医療モジュールを展開することにより、SCU、広域搬送拠点にもなり得るものであります。災害対応の海からのアプローチは、海洋国日本として災害対策の肝とすべきものであると考えております。

 そこで、東日本大震災の教訓でもありますが、災害時の港湾施設の活用を実効あるものにするために、自衛隊員、警察、消防、DMATなど、人員、物資の輸送手段の確保など、いわば陸海空の相互連携が不可欠でございます。この点、災害時の司令塔機能を担う内閣府防災では今改正内容を踏まえてどのように考えておられるか、内閣府の伊丹官房審議官、よろしくお願いします。

伊丹政府参考人 お答えいたします。

 このたびの改正案にございます港湾施設の管理制度の創設によりまして、非常災害時にも港湾の利用が円滑に調整され得るようになることは、港湾施設を災害対応に活用するに当たりまして、有意義なことであると認識いたしております。

 発災時に災害応急対策を担います人員や資機材、また必要な物資等を迅速に被災地に輸送するためには、陸海空のさまざまな経路を生かすことが重要であり、それを実行していくには、関係施設等の被災状況や応急復旧の見通しなどの情報を関係機関が共有して、被災地への輸送ルート確保に向けた連携を的確に行っていくことが肝要であります。

 内閣府防災担当といたしましては、今後とも、発災時における国の関係機関や被災自治体等との情報共有や相互連携の充実を図り、必要な総合調整を適切に行ってまいりたいと考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 国土交通省は、災害時の被災の現状というものをいち早くつかんでいる、そういう役所であると私は思っております。TEC―FORCE等が展開する等によって、まず、被災地への道路アクセスがどのような状況であるか等の情報が一番集まってくるところでありますので、ぜひ、今後の防災対策、災害対応においては、国土交通省さんとの連携というものを密にしていただいて、迅速に人員、物資が被災地に展開できるように、御考慮をお願いいたします。

 また、私自身、病院船の創設を含め、災害医療の海からのアプローチというものの充実に取り組んでおりますので、この点からも、引き続き内閣府防災さんにはよろしくお願い申し上げます。

 時間の関係でこれが最後の質問になると思いますが、もう一点伺います。

 次に、再び青森港の話で大変恐縮でございますが、東日本大震災の際、青森港は、津波被害がほとんどなかったことから、発災直後から、北海道からの人員、物資の受け入れ拠点として機能いたしました。これを教訓に、青森県が主体となって、青森港の災害時の機能強化を、さきに述べましたクルーズ船振興とあわせて具体的に構想しております。

 お手元の資料四にその概要を示してございます。

 この検討調査によれば、クルーズ船振興の部分、クルーズ船の年間寄港回数が三十回として、国際観光収益、交流機会の増加による事業効果のBバイCは七・四となっております。また、さきに述べましたように、広域災害時に青森港新中央埠頭及びフェリー埠頭が果たし得る役割は大なるものがあると思っております。

 国土交通省として、交通の要衝青森港の機能強化についての御見解あるいは御決意というものを賜りたいと存じます。大臣、よろしくお願いします。

石井国務大臣 青森港は、本州と北海道を結ぶ物流の大動脈の一翼を担うとともに、東北地方で最も多くクルーズ船が寄港する観光交流拠点として大変重要な港湾であります。また、陸奥湾の湾奥部に位置しており、津波による被害を受けにくく、太平洋側と日本海側の両方にアクセスしやすいなど、地理的な優位性があると認識しております。

 こういった青森港の優位性を生かすべく、委員御指摘のとおり、青森県が主体となりまして、青森港の新中央埠頭を、クルーズを中心とした観光交流拠点と広域災害時の防災拠点とする構想が、平成二十六年度に取りまとめられたところであります。

 こうした地元の検討状況を踏まえまして、国土交通省では、平成二十七年度から、青森港の新中央埠頭におきまして、平時は十三万トン級のクルーズ船の寄港の拠点として機能し、非常災害時には緊急物資輸送等の船舶が二隻同時に着岸できるよう、既存岸壁の延伸工事に着手しておりまして、平成二十九年度中の完成を目指し、整備を進めております。

 国土交通省といたしましては、引き続き、青森県を初め地元関係者と連携しながら、青森港の機能強化に向けてしっかりと取り組みを進めてまいりたいと考えております。

津島委員 ありがとうございます。

 青森県そして青森市、それぞれ地元自治体を中心に、このビジョンというものが単なるビジョンで終わらないように、まずは、平時におけるクルーズ船の、先ほど申し上げました実績を積み上げていくこと、そのことが青森発のクルーズの創造というものにつながり、ひいては、その実績というものがターミナルの建設といった段階に進んでいくものと考えますし、そのターミナルが建設される暁には、災害対応というものを十分に考慮したものにしていく必要があると思っております。引き続き、県と国土交通省さん、連携して進めていただければと思います。

 今改正案の成立を機に、より一層のクルーズ振興、そして災害対応の充実が図られますことを強く願いまして、また、私自身、今後のクルーズの振興というものをしっかりとフォローしてまいりたいと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございます。

西銘委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道です。

 まず初めに、クルーズ船にかかわる現状と見通しについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 去る五月八日、私は、公明党の国土交通部会として横浜港を視察してまいりました。御承知のとおり、横浜港は、政府が掲げる二〇二〇年の訪日クルーズ旅客五百万人の達成に向けて、静岡県の清水港や長崎県の佐世保港などとともに、官民一体で開発を進める国際拠点港に選定されております。

 私がお伺いしたその日は、大型クルーズ船二隻が同時に停泊しておりまして、周辺はまさに、観光する欧米人の方々で異国情緒あふれる雰囲気でもございました。また、車椅子の高齢者の方から小さいお子さんまで、お年寄りから若い方、男女問わず、さまざまな方々にお会いをいたしました。

 また、すごく感じたのは、クルーズはお金持ちのレジャーではなく、手ごろな料金で幅広い年代に適した旅行形態であるという話もお伺いをさせていただきました。

 地方創生のためにも、クルーズの受け入れ拡大が極めて重要と考えます。我が国へのクルーズ船の寄港の現状と今後の見通しについて、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 近年、我が国の港湾へのクルーズ需要は急増しておりまして、平成二十八年は、訪日クルーズ旅客数は前年比七九%増の百九十九万人、クルーズ船の寄港回数は前年比三九%増の二千十八回となり、いずれも過去最高を記録したところでございます。今後も、外国クルーズ船社が大型の新造船を逐次投入していく計画を持っておりますので、我が国の港湾へのクルーズ船の寄港は、引き続き着実に増加していくものと見込まれております。

 このような旺盛な需要を見せるクルーズ旅行の形態につきましては、一泊一万円程度の手ごろな価格のカジュアルな商品から、一泊十万円を超えるような高級なサービスを提供するラグジュアリーな商品まで、多様なものとなってございます。最近では、主として日本人を対象に、日本を発着し、日本海などを周遊するクルーズ商品も出てきており、我が国のクルーズ市場も拡大することが見込まれております。

 このように、国外、国内を問わず旺盛なクルーズ市場を背景に、昨年三月三十日に取りまとめられました明日の日本を支える観光ビジョンにおきまして、訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人という政府目標を掲げているところでございまして、クルーズ船の受け入れのさらなる拡充に取り組んでまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 今、旺盛なクルーズ需要というお話がありましたけれども、確かにそのとおりでございまして、その需要を我が国に取り込むために、受け入れ環境の整備についてしっかりと取り組みを進めていく必要があると考えます。

 今回の港湾法の改正案におきましては、官民連携による国際クルーズ拠点の形成を推進する制度を創設するとしているわけでありますけれども、先日、法改正後の指定を念頭に、拠点となる港湾六港の選定を行ったとお聞きいたしましたが、今回の法案の内容と、この六港以降に追加指定があり得るのかどうか、お伺いしたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の法改正は、官民連携による国際クルーズ拠点の形成を推進するため、国が指定する国際旅客船拠点形成港湾におきまして、旅客ターミナルビル等に投資するクルーズ船社等に対して岸壁の優先的な使用を認める新しい制度を創設するものでございます。

 本年一月三十一日に、国土交通省におきまして、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾として、ただいま委員が御指摘になりました、横浜港、清水港、佐世保港、八代港、本部港、平良港、この六港を選定したところでございます。国際旅客船拠点形成港湾につきましては、まずは今回選定したこの六港を念頭に指定することを考えております。

 今後につきましては、国際クルーズの動向、港湾管理者とクルーズ船社の具体的な意向を踏まえまして判断することとしておりますが、官民の連携が整った港湾につきましては、追加指定することもあり得ると考えております。

佐藤(英)委員 次に、北海道におけるクルーズについてもお伺いをさせていただきたいと思います。

 横浜港を視察した際に、横浜港は、北海道や東北方面へと展開していくための拠点となることを目指しているとお聞きいたしました。

 実際、横浜港に停泊していた大型クルーズ船は、横浜港を出港後に函館港と室蘭港へ寄港し、北海道観光を楽しんだ後に、アラスカへ向けて航海を続けるということでありました。

 北海道につきましては、観光資源も豊かで、クルーズにおいても大きなポテンシャルを有していると考えております。北海道へのクルーズ船の寄港の状況と、クルーズ船の受け入れ環境の整備に向けた国の取り組み状況をお伺いさせていただきたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 北海道は、世界自然遺産の知床に代表される豊かな自然や、小樽、函館等の情緒ある町並みが、外国人、日本人を問わず人気であり、日本を代表する観光地となっております。

 このような観光地を抱える北海道へのクルーズ船の寄港は、平成二十八年は十二の港湾に計九十八回となっておりまして、前の年に比べまして一・五倍の伸びとなっております。

 国土交通省では、このように増加するクルーズ需要に対応するため、ハード、ソフト両面で受け入れ環境の整備を進めており、ハード面では、平成二十八年度から、稚内港、小樽港、函館港におきまして、既存岸壁の防舷材や係船柱の改良、岸壁延伸等に着手し、受け入れ能力の向上を図るとともに、ソフト面では、クルーズ船の受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催等に取り組んでおります。

 国土交通省といたしましては、これらの施策により、より多くのクルーズ船が北海道を含む地方の港へ寄港するよう取り組んでまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 冒頭、クルーズ船の受け入れ拡大というのは地方創生にもつながるというお話をさせていただきましたけれども、ぜひ、こうした視点で、北海道においてのクルーズ船の受け入れ環境の整備についてもしっかりとお願いをさせていただきたいと思います。

 さて、政府の掲げる目標であるクルーズ旅客二〇二〇年に五百万人の実現に向けて、拠点となる港での取り組みとともに、全国の港での取り組みが極めて重要となると考えます。

 クルーズ関係の質問の最後に、改めて、二〇二〇年に五百万人の実現に向けて、大臣の御決意をお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 昨年三月三十日に、政府といたしまして、明日の日本を支える観光ビジョンを策定し、訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人とする目標を掲げました。

 訪日クルーズ旅客は、平成二十八年は前年比七九%増の百九十九万人となり過去最高を記録するなど、順調に増加しており、二〇二〇年に五百万人を受け入れるためには、クルーズ船の受け入れ環境を着実に整備していくことが必要であります。

 このため、今回の法案によりまして、官民連携による国際クルーズ拠点の形成を図るとともに、ほかの港湾におきましても、既存岸壁の改良や岸壁の延伸、クルーズ船受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催等、ハード、ソフト一体となった施策を展開し、クルーズ船受け入れのさらなる拡充を図ってまいりたいと考えております。

 国土交通省といたしましては、訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人の目標実現に向けまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと存じます。

佐藤(英)委員 大臣から、二〇二〇年五百万人の実現に向けてしっかりと取り組むという力強い御答弁をいただいたところでございます。

 さて、昨年十二月の日ロ首脳会談時の北方四島における共同経済活動に関する声明において、観光についても言及があったところでございます。

 世界自然遺産の知床と北方四島をめぐるクルーズツアーなども今後あり得るのではないかなと私は考えているところでございまして、ぜひ、クルーズ振興に向けた国土交通省の大いなる取り組みに期待をさせていただきたいと思います。

 次に、この法案のもう一つの柱であります、非常災害対応の新たな制度に関して質問させていただきたいと思います。

 昨年四月に発生した熊本地震の際には、政府一丸となって被災地支援に取り組んだところでございますが、引き続き全力で復旧復興に取り組む必要があると考えます。

 特に、港湾につきましては、発生直後に、熊本港や八代港等が、自衛隊や海上保安庁等の船舶による支援物資や支援部隊の輸送拠点として大きな役割を果たしたとのことで、災害時における港湾の重要性について改めて認識したところでございます。

 また、国土交通省の船舶等が入浴支援や食事の提供、洗濯場所の提供などを行い、被災者の方に非常に喜んでいただけたともお伺いをしているところであります。

 一方で、港湾が担う役割が余りにも大きいがゆえに課題が浮き彫りとなり、今回新たな制度を創設することになったわけでありますけれども、熊本地震の際の港湾の状況と制度の内容について、ぜひ具体的にお話をお聞かせいただければと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年熊本地震では、被災した港湾施設の迅速な応急復旧の結果、熊本港、八代港等が、発災当日の四月十六日から、被災地支援の拠点として機能することができました。

 具体的には、自衛隊の輸送船や海上保安庁の巡視船、国土交通省の船舶によりまして、緊急物資や救援部隊の輸送が行われました。加えまして、海上保安庁の巡視船、あるいは国土交通省の船舶によりまして、被災された方々への給水支援また入浴支援、温かいお食事の提供や洗濯場所の提供、さらに、防衛省のホテルシップによりまして、被災された方々への宿泊場所の提供、このような支援が行われたところであります。

 一方、発災直後から、これら多くの支援船舶が八代港等に集中し、一般の貨物船の利用も行われておりましたので、これらの港湾が過度に混雑する状況が発生しました。このような状況に鑑み、国土交通省では、熊本県からの要請を受け、直接、自衛隊等と岸壁の利用調整を実施し、海上からの被災地支援に迅速に対応することができたところでございます。

 今回の法案は、熊本地震の教訓及び熊本県知事からの要請を踏まえまして、非常災害時において、港湾管理者からの要請に基づき、国が港湾施設の管理を行う新しい制度を創設しようとするものでございます。

佐藤(英)委員 私自身も、熊本地震の際に現地にお伺いさせていただいて、本当に、さまざまな課題の中で港湾の果たされた役割というのは非常に大きいものだと認識したところでございます。

 特に、我が国は、南海トラフ地震や首都直下地震を初め、大規模災害がいつどこで発生してもおかしくない、そういう状況であります。我が国は四面を海に囲まれた災害大国であり、港湾を拠点とした被災地支援は極めて重要であり、非常災害時に国が港湾管理を行う今般の制度について、大いに期待を申し上げたいと思います。

 最後に、我が国の成長戦略を描く上で、クルーズなどの観光とともに重要な柱である農林水産物の輸出力の強化に関しても質問させていただきたいと思います。

 我が国の農林水産物の輸出は四年連続で増加しているわけでありますけれども、二〇一九年、輸出額一兆円の政府目標を確実に達成するためには、農林水産省だけでなく、政府一丸となってしっかりと取り組みを進めていただく必要があると考えております。

 そうした中で、国土交通省では、平成二十九年度より、水産物などの輸出を後押しするための港湾整備に対する新たな支援制度を創設されたと承知をしております。これは極めて重要なものであり、ぜひこの制度を活用して取り組みを加速していただきたいと思いますけれども、この新しい制度の内容と現在の進捗状況について、具体的にお話をお聞かせいただければと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 農林水産物の輸出につきましては、二〇一九年に輸出額を一兆円とする目標のもと、政府一丸となって輸出促進に向けた取り組みを進めております。港湾につきましては、輸出拠点として、また水産業の生産拠点として重要な役割を果たしており、農林水産物の輸出促進に必要となる環境整備が重要であると考えております。

 こうした状況を踏まえまして、国土交通省では、平成二十九年度の予算におきまして、港湾管理者が策定した農水産物の輸出を促進するための行動計画を国土交通省が認定した場合に、屋根つき岸壁や冷蔵冷凍コンテナ、いわゆるリーファーコンテナの電源供給設備の整備に対して支援を行う制度を創設したところでございます。

 現在、本制度の活用を目指し、北海道の紋別市など、北海道の六つの港湾の港湾管理者が連携いたしまして、全国で第一号となる行動計画を策定し、国土交通省に対し認定申請がなされているところでございます。

 国土交通省といたしましては、申請のあった計画の審査手続を迅速に行い、港湾管理者など地域の関係者や農林水産省などともしっかり連携をとりながら、農林水産物の輸出促進に必要となる港湾整備にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

佐藤(英)委員 本当に、港湾にかかわる水産関係者も大変に喜ばれることと思います。

 数年前に紋別にお伺いしたときに、この話をお伺いいたしました。北海道も、漁港と、港湾のいわゆる漁港区と、入りまじっている地域でもありまして、屋根つき岸壁というのは、HACCPも含めて、これからの海外展開においても極めて重要である。

 しかし、漁港では、農林水産省、水産庁の予算で屋根つき岸壁などの整備を行うことができるけれども、国土交通省管轄の港湾ではそれができないというような状況が続いておりました。水産関係者は、そうであれば、港湾の漁港というよりも、もとのままの漁港でもよかったんじゃないかというような、悲痛なお話も聞いたところでありまして、本当に、国土交通省挙げてこうした農林水産物の輸出拡大に向けてもしっかりと取り組む姿勢を見せられたことは極めて重要で、ありがたい話であると思うところでございます。

 北海道の農林水産業だけではなく、日本の農林水産業が我が国の農林水産物の輸出拡大に大きく貢献しているわけでありまして、今回、全国で第一号が進められているということは極めて重要であると思います。北海道初め、日本全国の農林水産業の輸出力強化に向けた国土交通省の今後の取り組みについても大いに期待をさせていただきまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、本村賢太郎君。

本村(賢)委員 民進党の本村です。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず冒頭に、森友学園をめぐる問題に関しまして、昨日、籠池前理事長が民進党の聞き取り調査に出席をいただきまして、これまでの政府答弁が覆るような、三メートル以上深いところにはごみがなかったような証言もございました。今後の進展によりましては、集中審議も含めまして私どもも考えてまいりたいと思いますので、冒頭にそのことを申し上げてまいりたいと思います。

 それでは、法案の質疑に入らせていただきます。

 大型クルーズ船の寄港による経済効果は、一人当たり三万円から四万円と言われておりますし、一寄港当たり一億円を超えるという試算もございます。世界で最も有名な豪華客船であるクイーン・エリザベスが昨年三月に大阪に寄港した際には、中に入ることができないにもかかわからず、約十万人の観光客が集まったという報道もございます。

 まず、国交省に確認してまいりたいと思いますが、このクルーズ船寄港の経済効果について政府はどのようにお考えなのか、お伺いしてまいりたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 クルーズ船の寄港は、寄港地の特性等により違いがございますが、例えば、福岡市が平成二十七年に行った調査によりますと、一回の寄港で一人当たり平均十・七万円の消費があったというふうな調査報告がなされております。クルーズ旅客による消費等を通じて地域経済に大きく貢献するということが期待されているところでございます。

 今後、クルーズ船旅客の上陸時間や消費の増大に資するような魅力的な地域づくりに取り組むとともに、商談会の開催による富裕層向けのクルーズ船の誘致、あるいは地方への誘客をしっかり図りながら、経済効果のさらなる増大に努めてまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 今、参考人の方からも、一人当たり十万円を超えるような経済効果もあるというお話であります。福岡の方はアジア発着のカジュアルクルーズが多いんじゃないかなと思いますが、そういった皆さんも多くの買い物をされるということで、経済効果が見込まれるということでありますので、今回の法改正は非常に期待をしてまいりたいと思っております。

 それでは、平成二十五年に十七万四千人だったクルーズ旅客は、平成二十八年の速報値では百九十九万二千人と十倍以上に膨らんだということでありまして、昨今のクルーズ旅客の急増を示しているものというふうに思っております。

 中国や台湾を発着とした料金が安価なカジュアルタイプのクルーズ船は、船舶を大型化し、大量の旅客を乗船させ、安価な料金となっていることから、カジュアルクルーズがメーンとなっているわけであります。今後の増加も、東アジア、特に中国からのクルーズ客をメーンに捉えていると思うわけでありますけれども、中国との関係においては、平成二十四年の尖閣国有化の際にも、クルーズ船の寄港が減少しているという過去の結果もございます。また、THAAD配備をめぐって、韓国への団体旅行を禁止、クルーズ船でも韓国を抜港するなどの措置を現在行っているなど、不確定要素が多いということで、問題点も指摘をしていきたいと思うんです。

 二〇二〇年に五百万人の訪日クルーズ旅客を目指すに当たって、欧米からのクルーズ客の誘致も重要だと思いますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 平成二十八年の訪日クルーズ旅客数は前年比七九%増の百九十九万人、クルーズ船の寄港回数は前年比三九%増の二千十八回となり、いずれも過去最高を記録いたしました。このうち、中国を発着するクルーズの訪日クルーズ旅客数のシェアは、全体の約八割となっております。

 一方で、外国船社が日本を発着するクルーズ商品には多くの欧米からのお客様が乗船されております。例えば、プリンセス・クルーズ社が運航する日本発着のダイヤモンド・プリンセスにつきましては、平成二十八年に、二十二本のクルーズで、乗客数は合計六万一千人いらっしゃいましたが、そのうち、欧米からのお客様を中心とする外国人が四六%の二万八千人となっております。

 国土交通省といたしましては、二〇二〇年に五百万人の政府目標を達成するためには、中国発着のクルーズ客だけでなく、欧米からのクルーズ客を対象としたクルーズなど、多様なクルーズ船を受け入れる環境を整備することが重要と考えております。

本村(賢)委員 私の地元神奈川県だと、横浜港では、欧米のクルーズ客が多く、羽田空港から入国して横浜港から出港して日本をめぐるフライ・アンド・クルーズといった形態も多いというふうに伺っておりますし、川崎港もこの形態を今後目指すというふうに伺っております。

 二〇一五年のクルーズ・ライン・インターナショナル・アソシエーションの発表によれば、世界のクルーズ人口は二〇一四年に二千二百四万人となり、十年間で六八%増、内訳では、北米人が五五%、ヨーロッパは二九%と、欧米が圧倒的に多数を占めているというデータもございますので、こういったデータを捉えて、ぜひ欧米からのクルーズ客の誘致も積極的にお願いしてまいりたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 二〇一三年から二〇一六年の伸び率を考えれば、数字的には、今回の訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人にするという目標は不可能ではないということは数字からはわかるんですが、実際に五百万人にするという目標は達成可能なのかどうか、お伺いいたします。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 近年、我が国の港湾へのクルーズ需要は急増しておりまして、昨年は、訪日クルーズ旅客数が前年比七九%増の百九十九万人、また寄港回数は三九%増の二千十八回ということで、いずれも過去最高を記録しました。今後も、外国クルーズ船社が大型の新造船を逐次投入していく計画を持っておりますので、我が国の港湾へのクルーズ船の寄港は、引き続き着実に増加していくものと見込まれております。

 今回の法案によりまして国際旅客船拠点形成港湾に指定されることにより、クルーズ船社が岸壁を優先的に使用できることとなり、寄港計画を立てやすくなりますので、長期的にクルーズ船の寄港が増加するものと考えております。

 また、他の港におきましても、寄港ニーズに応じまして、既存岸壁の改良、あるいは岸壁の延伸、クルーズ船の受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催など、ハード、ソフト一体となった施策を展開し、クルーズ船の受け入れ環境のさらなる拡充を図ってまいりたいと考えております。

 国土交通省といたしましては、訪日クルーズ旅客二〇二〇年に五百万人という目標達成に向けまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 次に、クルーズ客の急増に伴う海上保安庁の、密輸や密入国、銃器の持ち込み、薬物の持ち込みを初めとする水際対策、クルーズ船を狙うテロへの対応、シージャックが発生した場合への対応などはどうなっているのか、お伺いいたします。

中島政府参考人 お答え申し上げます。

 海上保安庁では、我が国の港へ入港するクルーズ船等の外国船舶に対しまして、国内外の関係機関と緊密な連携を図りながら、立入検査等を実施するとともに、民間関係者からの協力も得て、密輸等の海上犯罪の摘発に努めているところでございます。

 今後、クルーズ船の寄港回数が多い港を管轄する海上保安部の監視、取り締まり体制を強化するなど、クルーズ船を利用した海上犯罪の水際措置に全力を挙げて取り組むこととしております。

 また、シージャックを含むテロへの対応につきましては、海上保安庁では、平素から、旅客ターミナルの警戒や我が国に入港する外国船舶への立入検査などを通じまして、関係機関や地域と緊密に連携しながら、万全の体制により、テロ対策に取り組んでいるところであります。

 さらに、平素から、海上保安官がクルーズ船を訪問して自主警備策に係る指導を行っておるほか、さまざまな事態を想定して訓練も実施しているところであります。

 海上保安庁としましては、引き続き、緊張感を持って、関係機関等とより緊密に連携を図り、海上の安全に万全を期してまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 日本では、一九七〇年に瀬戸内シージャック事件が発生したことがございます。まれとはいっても、今後、こうした観光客がふえてきて、さまざまな事案が想定されますので、万全の体制をお願いしてまいりたいと思います。

 次に、クルーズ客の増加に合わせて、CIQや港湾管理者の人員体制確保をあわせて行っていくことが必要不可欠だと考えますが、政府の見解をお伺いいたします。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 訪日クルーズ旅客は、平成二十八年は対前年比七九%増の百九十九万人となり過去最高を記録するなど、順調に増加しておりまして、二〇二〇年に五百万人を受け入れるためには、クルーズ船の受け入れ環境を着実に整備していくことが必要であると考えております。

 このため、平成二十七年には、クルーズ客の円滑な上陸審査等のため、簡易な手続で一時的な上陸を認める船舶観光上陸許可制度を導入したほか、平成二十六年から二十八年度の緊急増員も含めまして、CIQの人的、物的体制の強化が図られてきたところでございます。

 今後も、政府といたしまして、本年三月に閣議決定されました観光立国推進基本計画に基づき、訪日外国人旅行者が我が国への出入国を円滑かつ快適に行えるよう、審査ブースの増設、施設の拡張等を図り、訪日外国人旅行者のさらなる増加への対応に必要な物的、人的体制の計画的な整備を進められるよう、関係省庁と連携してまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 先ほどの海上保安庁の水際対策の御答弁もありましたけれども、薬物、銃器の持ち込み、密輸や、テロリストの入国などを防いでいくためには、人員を確保していくことが今後求められていくわけでありまして、国交省を先頭に、法務省や厚労省など関係省庁とも連携して、人員体制の確保をお願いしてまいりたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 クルーズ船の乗客が船に戻らず失踪しているケースがあると聞きますが、実態はどのようになっているのか、また、今後さらにふえていく可能性がございますけれども、どのように防止していくのか、お伺いしてまいりたいと思います。

佐々木政府参考人 法務省からお答え申し上げます。

 クルーズ船で入国した乗客が、当該クルーズ船の出航までに帰船せず、失踪して不法残留となったケースは、平成二十七年では、クルーズ船による外国人入国者数約百十一万六千人のうち二十一人、平成二十八年では、百九十九万二千四百人のうち三十六人となっております。

 一般の手続で入国した観光客の皆様と比較して、その不法残留者発生率は低いのでありますけれども、クルーズ船による訪日観光客の急増とともに、ただいま申し上げましたとおり、実数はふえており、入国管理局としても注意を払っているところでございます。

 私ども、問題のない外国人の方に対しては可能な限り円滑な入国審査を行い、観光立国の実現に資する一方、厳格な水際対策の実施によりまして治安の維持に努めることも極めて重要と認識しており、この点につきましては、クルーズ船を利用する外国人旅行客についても同様でありまして、今後とも、クルーズ船による外国人入国者数がますます増加する中にあって、事前に入手した乗客名簿を一層厳格にチェックしたり、船舶会社への指導を強化するなどして対応してまいります。

本村(賢)委員 クルーズ船の乗客は人数も多く、船の時間が来れば出航せざるを得ないことなどから、外国クルーズ船の寄港が全国最多の福岡港では、昨年二十四人が失踪、一部は県外の工場などで見つかった。不法残留は、就業してお金を稼ぐ目的が多いと言われております。

 また、ことしの四月十六日には、宮崎県日南市の油津港に寄港した上海発のクルーズ船から五名のエジプト人が失踪しまして、五時間後に兵庫県で発見され、入管法違反の疑いで逮捕されているという事案もございます。難民を偽装して就労しようとする外国人の仲介組織が国内にある可能性が指摘されておりますので、そういったことも法務省としてぜひ捉えていくことをお願いしてまいりたいと思います。

 また、平成二十七年一月からクルーズ船の乗客の入国審査を簡略化する船舶観光上陸許可制度が導入されたということを伺っております。法務大臣が一定要件を満たした船を指定し、指定された船では、クルーズ船側が乗客の経済力の審査や乗下船の管理を行うということでありますけれども、ビザが必要だった中国人乗客が、指定クルーズ船ではビザなしで入国できるようになったという点がございます。これによって、訪日クルーズ客がふえた一方、今御答弁があったように、平成二十七年、八年で、五十人以上が、指定クルーズ船で上陸した後、失踪したという事案もありますので、そういったことも捉まえて、しっかりと対応をお願いしてまいりたいと思います。

 次の質問に入らせていただきます。

 拠点港以外でも、例えば東日本大震災の被災地などにも積極的な寄港をしていただきたいというふうに考えておりますが、拠点港以外では既存岸壁を有効活用していく必要があり、その整備において国も積極的な役割を果たしていくべきだと考えておりますが、大臣の見解をお伺いいたします。

    〔委員長退席、西村(明)委員長代理着席〕

石井国務大臣 国土交通省では、本年一月三十一日に、横浜港など六港を、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾として選定いたしました。

 しかしながら、今後も増大が見込まれるクルーズ需要に対応するためには、これら六港に限らず、寄港地の全国展開を図ることが必要と考えております。

 このため、他の港湾におきましても、既存岸壁の改良や岸壁の延伸、クルーズ船受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催等、ハード、ソフト一体となった施策を展開しております。

 こうした結果、例えば東北地域におきましては、来年、仙台塩釜港石巻港区や山形の酒田港におきまして、外国船社の運航するクルーズ船の初寄港が決定しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、引き続き、より多くのクルーズ船が地方の港に寄港するように、寄港地の全国展開に取り組んでまいりたいと存じます。

本村(賢)委員 クルーズ船の特徴は、全国各地の港に寄港しながら旅行していくことにあるわけでありまして、拠点港だけでなく、被災地を初めとした日本全国に寄港してもらうことが地域活性化のためには重要だと考えております。拠点港以外では既存の岸壁を有効活用していくことが必要となると思いますが、ぜひとも国として強いリーダーシップを持って進めていただきたいと思います。

 また、今、大臣からも御答弁があった、例えば大船渡や釜石、相馬、宮古など、東日本大震災の被災地に寄港しているクルーズ船もございますけれども、例えば、私どもの地元の相模原市と大船渡は姉妹都市であって、私も、三・一一以降、四十回以上被災地を訪れておりますが、陸路では、アクセスがなかなか、一関からおりてから結構遠いわけでありますが、例えばクルーズ船ならばアクセスがよいというメリットもありますので、こういったメリットをぜひ生かして、被災地の方でも御支援をお願いしてまいりたいと思います。

 次に、クルーズ船の優先的な岸壁使用によって物流に影響が出るのではないかという懸念がございます。政策的には、物流と人の流れの港を分けるべきとの指摘もあるわけでありますが、政府の見解をお伺いいたします。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案により新たに指定されます国際旅客船拠点形成港湾では、クルーズ船の優先的な使用を可能とする岸壁につきましては、クルーズ船専用岸壁を想定しております。このため、物流と人流をしっかり分離することができるものと考えております。

 また、このほかの港湾におきましては、クルーズ船が貨物を取り扱う岸壁に係留される場合にあっては、貨物取り扱いの支障とならないよう、物流と人流の動線を分離するなど、物流の効率性と利用者の安全性を確保した運用をしていくことが必要であると考えており、港湾管理者に対して指導助言を行ってまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 大型化したクルーズ船の寄港では、博多港など大型クルーズ船に対応できる限られた港以外では、貨物用の岸壁に接岸せざるを得ない方法をとっているというふうに伺っております。物流と人の流れの港を分けると今御答弁もありましたけれども、官民連携によるクルーズ拠点形成検討委員会においても、貨物船とクルーズ船の利用調整の問題は指摘をされているわけであります。特にクルーズ船の寄港需要が大きい港湾においては、貨物用岸壁を利用する方法は限界がありまして、専用的あるいは優先的にクルーズ船を受け入れる必要性が指摘をされていますので、そういった指摘も十分捉まえて対応をお願いしてまいりたいと思います。

 次に、昨年六月に国交省が発表した「二〇一五年の我が国のクルーズ等の動向について」によりますと、我が国のクルーズ人口は、四年連続で二十万人台の二十二・一万人、前年より一万人減となっておりまして、外航クルーズ、国内クルーズともに減少しているという報道がございます。総人口に対するクルーズ人口比は〇・一七%、米国の四・三%や英国の二・七九%に比べると少ないという数字があります。

 今回の法改正の目的はインバウンドをふやすことが主であるというふうに考えていますけれども、国内におけるクルーズ旅行需要の喚起も必要ではないかと考えますが、大臣の見解をお伺いいたします。

石井国務大臣 国内におけるクルーズ旅行需要につきましては、これまで主として日本船社が運航するクルーズ船が担ってきましたが、インバウンドに限らず、日本人のクルーズ旅客の増加も重要と考えております。

 近年、外国船社が、日本を発着するクルーズ商品の運航をふやしております。例えば、プリンセス・クルーズ社が運航いたします日本発着のダイヤモンド・プリンセスの運航回数は、平成二十八年の二十二本から平成二十九年は二十八本に増加し、日本人乗客数は約三・三万人から約四・五万人に増加する見込みと聞いております。

 また、これまで、外国船社による日本発着のクルーズは、春、夏、秋と三シーズンにかけて行われてきましたが、今シーズンからは通年運航を行う予定の外国船社もありまして、さらなる増加が見込まれるところでございます。

 さらに、日本船社も、ワンナイトクルーズなど、旅程を短くして総額を抑えるような商品を販売しておりまして、各社が日本人もクルーズ旅行を気軽に楽しめる商品を提供していると承知しております。

 国土交通省といたしましては、日本船社及び外国船社の寄港ニーズに応じまして、受け入れ環境の改善を図るとともに、港周辺の観光情報の一元的な発信などを通じまして、クルーズ需要の拡大を図ってまいりたいと考えております。

本村(賢)委員 我が国は海に囲まれた海洋国家であるにもかかわらず、日本生産性本部のレジャー白書によりますと、二〇一四年の海水浴客はピーク時の四分の一まで減少しているという話もありますし、また、臨海学校の廃止が相次ぐなど、若者の海離れが進んでいるという報道もございます。

 さらに、先般、この委員会でも法案審査しました日本人の船員は、ピークの昭和四十九年、五万六千八百三十三人から、平成二十四年には二千二百八人まで減少しているという結果もございます。他方、安定的な国際海上輸送の確保のための最低限必要な日本人船員数は五千五百人という国交省からの報道もございます。

 相模原にJAXA相模原という施設があるんですが、例えば、このJAXA相模原と触れて、将来、宇宙飛行士になりたいとか、そういう思いを持つ子供たちが多いわけであります。国内におけるクルーズ旅行の需要の喚起があれば、例えば、子供たちが、将来、船員になりたいとか、そういう夢が描ける可能性も広がってまいりますので、今後、ショートな形であっても、クルーズ旅行の需要の喚起をぜひとも応援していただきたいと思います。

 最後の質問にいたします。

 本法案で、非常災害時に、港湾管理者からの要請があれば、国が港湾施設の管理を行えることになるわけでありますが、いざ災害時にスムーズに運用するためには、日ごろからの連携や防災訓練が欠かせないと考えておりますが、その重要性に関する大臣の見解を最後にお伺いいたします。

石井国務大臣 非常災害時に本制度を円滑に運用するためには、日ごろから港湾管理者等との連携や防災訓練の実施が非常に重要と認識しております。

 国土交通省におきましては、これまでも、港湾管理者等と合同で、港湾施設の点検や航路啓開、道路啓開、緊急物資輸送等の防災訓練を実施してきております。

 また、災害が発生いたしましても、当該港湾の重要機能が最低限維持できるよう、地方整備局や港湾管理者等から構成されます港湾BCP協議会におきまして、港湾の事業継続計画の策定を進めております。平成二十八年度末までに重要港湾以上の港湾において策定済みとなっております。

 さらに、災害発生後の応急対策を迅速かつ円滑に行うことができるよう、各地方整備局では、港湾管理者や港湾関係団体との間で、災害発生時における緊急的な応急対策業務に関する包括的協定を締結しているところでございます。

 今後とも、こういった対応を通じまして、港湾管理者等との連携強化に努めてまいりたいと考えております。

    〔西村(明)委員長代理退席、委員長着席〕

本村(賢)委員 日ごろから、国、港湾管理者、海上保安庁など、関係機関が連携を進めていくことが重要だと考えておりますので、大臣の強いリーダーシップをお願いして、質問を終わりにします。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、黒岩宇洋君。

黒岩委員 民進党の黒岩宇洋でございます。

 本日は、議題となりました港湾法一部改正案について質問をさせていただきたいと思います。

 まずは、クルーズ船受け入れ拠点形成についてお伺いしたいと思っております。

 これは大臣にお伺いしたいんですけれども、港湾法では、施設の利用に関する不平等な取り扱いを第十三条において禁止しております。本法律案による岸壁の優先利用というのはどのような理由で許容されるのか、この点についてお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

石井国務大臣 国際クルーズ拠点を早期に形成し、長期的かつ安定的なクルーズ船の寄港を促進する政策的な必要があることから、今般の法改正では、特定のクルーズ船社に対して、岸壁等の優先的な使用を認めることとしております。

 特定のクルーズ船社に対して岸壁等の優先的な使用を認めるに当たりましては、不平等取り扱い禁止の原則との整合性を図ることができるよう、所要の措置を規定しております。

 具体的には、港湾管理者による利害関係人への協定の縦覧を義務化するとともに、利害関係人は意見を提出することができることとしておりまして、恣意的な運用を排除できるものとなっております。さらに、クルーズ船社に旅客ターミナルビル等を整備させるとともに、それを一般公衆へ供用する義務を負わせることとしております。

 このため、今般の制度に基づくクルーズ船社による岸壁等の優先的な使用は、港湾法に規定いたします不平等取り扱い禁止の原則には違反しない、このように考えております。

黒岩委員 今の質問と表裏一体となるんですけれども、私設の旅客施設に対して、岸壁の優先利用とセットとはいえ、一般公衆への供用を義務づけることには問題はないのでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の仕組みにつきましては、クルーズ船社に対し、旅客ターミナルビル等を整備させ、それを一般公衆へ供用する義務を負わせる一方で、同船社に岸壁等を優先的に使用させるものでありますが、制度上、クルーズ船社に対して一方的に義務を課すものではなく、港湾管理者とクルーズ船社が両者の合意のもとに協定を締結することで生じる義務であることから、問題はないものと考えております。

黒岩委員 わかりました。

 そうしましたら、港湾法によらずとも、官民連携国際旅客船受入促進協定と同内容の協定を当事者で締結すれば法律の目的が達成できるものと考えますけれども、なぜそうしないのか、この点についてお答えください。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の港湾法改正に当たりましては、協定の効果を十全に発揮させることができるよう、当事者間の協定では実現できない内容を法律において措置することとしております。

 具体的には、クルーズ船社により徴収される旅客ターミナルビルの使用料等が著しく不適切な場合には、他者の利用を不当に制限することとなるため、港湾管理者が料金変更を命令できることとし、命令に従わない場合等の刑事罰を規定しております。

 また、長期的にクルーズ拠点としての目的を達成することができるよう、クルーズ船社の地位を引き継いだ者にも協定の効力が及ぶこととする承継効を規定しております。

 このように、当事者間の協定では措置できない法律事項がありますので、今回、法律において措置することとしたものでございます。

黒岩委員 例えば、ある国際旅客船拠点形成港湾に指定されていない港湾において、本改正案と同様な内容の契約、ある船社が港湾施設を整備し、その見返りとして施設を優先的に利用できるというような内容の契約を締結することはできるのでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、港湾管理者とクルーズ船社が契約を締結することについては排除されておらないと考えております。

 しかしながら、港湾管理者とクルーズ船社が締結する契約には、今般の法律において措置している法律事項を適用することができないことから、例えば、港湾管理者による料金変更命令等の規定を適用できず、当該クルーズ船社が他社の利用を妨害するため高額な料金設定を行い、結果として、当該港湾におけるクルーズ船の寄港増が阻害されるなどの問題が生じるおそれがあるというふうに考えております。

黒岩委員 国交大臣にお伺いしたいんですけれども、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾としては、日本海側の港湾や東北、北海道の港湾が選定されていません。逆に言うと、六港は、横浜より西の、特にまた沖縄に二港とか、かなり極端に選定が偏在しているわけですけれども、これらの地方におけるクルーズ船の受け入れ拠点の整備の必要性についてはどのように考えているのか、お答えいただけますでしょうか。

石井国務大臣 現在、アジアにおけるクルーズ需要の急成長を背景に、中国などを発着するカジュアルクラスのクルーズ船が我が国の港湾に数多く寄港しております。これらのクルーズ船の多くは、旅程が五泊前後のショートクルーズが中心となっているため、九州や沖縄の港湾に寄港が集中する傾向となっております。

 他方、今後は、クルーズマーケットの成熟に伴いまして、クルーズ商品の多様化が進み、旅程が長いロングクルーズがふえていくことも想定されることや、外国船社による日本発着クルーズの運航の増加などもありまして、今御指摘がございました、日本海側、東北、北海道への寄港需要も高まっていくと考えております。

 このような全国各地への寄港需要に対応するため、既存岸壁の改良や岸壁の延伸、クルーズ船受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催等、ハード、ソフト一体となった施策を展開し、クルーズ船の受け入れ環境を整備していきたいと考えております。

黒岩委員 端的にお伺いしますけれども、国際旅客船拠点形成港湾の最初の指定というのはいつごろ行われる予定になっているのでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人の政府目標達成に向けまして、早急に国際クルーズ拠点の形成を図る必要がございます。このため、本法案におきましては、公布の日から一カ月以内に施行することと規定しております。

 具体の国際旅客船拠点形成港湾の指定につきましては、法律の施行後、速やかに行うことを考えております。

黒岩委員 速やかに指定を行うということですが、今後、指定の追加を徐々に行う場合、再公募を行うということになるのでしょうか。それとも、準備が整った港湾管理者の申請に基づき、順次大臣が指定を行うこととなるのでしょうか。この点についてもお答えいただけますでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 本年一月三十一日に選定しました六港につきましては、有識者により構成される官民連携によるクルーズ拠点形成検討委員会におきまして、各港から提出された計画書が、いずれも、港湾管理者とクルーズ船社が緊密に連携し、連名で作成された計画であること、あるいはクルーズ船社の寄港計画や投資内容が明確であること等の観点から、これらの港湾が、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾として選定することが適当、こうした評価を受けまして、国土交通省として選定したものでございます。

 今後、追加の指定を行うという場合には、今回と同様に、港湾管理者やクルーズ船社に対して広く公募を行い、委員会による評価を踏まえた上で指定していくことが適当であるというふうに考えております。

黒岩委員 法文上では、国際旅客船拠点形成港湾は国土交通大臣の指定によるものとされておりますけれども、実際には、有望な寄港地を欲する提携クルーズ船社の意向に沿い港湾が指定されることになるのではないかと考えますけれども、いかがでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国際旅客船拠点形成港湾は、官民の連携による国際旅客船の寄港の拠点を形成することが我が国の観光の国際競争力の強化や地域の活力の向上のために特に重要な港湾を、国土交通大臣が指定するものでございます。

 国際旅客船拠点形成港湾の指定に当たりましては、クルーズ船社の意向だけではなく、港湾管理者とクルーズ船社との連携が整っていること、さらには一定の規模の埠頭を有していることなどの施設要件、さらにはクルーズ旅客の将来見通し、地域経済の発展への寄与などのさまざまな要素を総合的に勘案し、指定していくこととしてございます。

黒岩委員 関係者との調整ということです。

 でも、確認ですけれども、やはりあくまでもクルーズ船社の意向というものは尊重されると考えてよろしいんですね。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の国際旅客船拠点形成港湾の指定に当たりましては、クルーズ船社と港湾管理者の連携が確保されているということが前提となりますので、委員御指摘のとおり、クルーズ船社の意向というものも十分尊重されるものと考えております。

黒岩委員 十分尊重されるということは、やはりクルーズ船社とすれば、なるべく利益の高いところに限ってということになるわけです。

 これも先ほどの質問と内容を同じくするものなんですけれども、そうなりますと、やはり、全国展開という点におきますと、偏在が生まれるのではないかという懸念が生じます。この点について国交省としてどうお考えなのか、お答えいただけますでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国際旅客船拠点形成港湾の指定に当たりましては、クルーズ船社と港湾管理者の連携が確保されていることを前提としつつ、さまざまな要素を総合的に勘案して指定することとしております。

 現状では、日本へ寄港するクルーズ船の多くは、やはり中国などを発着するショートクルーズが中心となっておりますので、どうしても九州、沖縄に寄港が集中する傾向となっておりますが、先ほど大臣の御答弁にもございましたが、今後のクルーズマーケットの成熟に伴いまして、ロングクルーズの商品の造成、あるいは我が国を発着地とするクルーズの増加が想定されておりますので、北海道、東北といったこれまでクルーズ寄港がそれほど多くない地域への寄港需要も高まっていくものと考えてございます。

黒岩委員 旅客施設の整備には、旅客通路の整備といった簡単なものから、ターミナルの整備といった大がかりで非常に費用が大きくなるものまで入っております。ということは、要する費用が大きく異なるさまざまなものがあるわけですけれども、協定を締結すれば岸壁の優先予約という同じ結果が享受できるということは、これはバランスが欠けていると考えるんですけれども、いかがでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 港湾管理者がクルーズ船社と締結する協定の内容につきましては、それぞれの港湾の状況や拠点形成の狙いなどに応じまして、港湾管理者において適切に判断されるものと考えております。

 例えば、横浜港におきましては、既存ターミナルが既に整備されていることを踏まえまして、母港としての一層の機能強化を図るための待合ラウンジや屋根つき通路の整備をクルーズ船社が行い、これに対応して一定の優先使用の日数を与えることとしております。

 また、八代港におきましては、将来の寄港需要に応え、旅客の利便性や快適性を確保するための旅客ターミナルビルの整備をクルーズ船社が行い、これに対応して一定の優先使用日数を与えることとしております。

 このように、それぞれの港湾の特性や、拠点として求める機能に応じまして、旅客施設の整備と、それに応じた優先使用の日数を定めることとしており、港湾管理者とクルーズ船社との間で合理的に協定が締結されるものと考えております。

黒岩委員 バランスを欠かずに合理的な対応だということでありますので、その点、強く要請をしておきたいと思います。

 そうしますと、協定で認められる優先的な予約に関して、独占的な利用とはならない協定で認められるべきだと、これは国交省の見解もそうなっておりますけれども、そういう独占的な利用とならない岩壁の優先予約の日数の上限はどの程度と考えておられるか、お答えください。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省におきましては、法律の専門家も参加する委員会を設置いたしまして、具体的にどのレベルまでであれば、一定の公共性を担保した上で、特定のクルーズ船社に岸壁等を優先的に使用させることができるかという検討を行っております。

 この検討の結果、特定のクルーズ船社に対しまして岸壁等を優先的に使用させることができる上限の日数につきましては、単一の岸壁について年間三百日程度とすることが適当であるとされたところでございます。

黒岩委員 三百日というのはいかにも多いんじゃないかというのが直観的なところでございます。

 官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾の計画書には、寄港回数目標で、確かに、佐世保港で年間三百回、平良港では年間三百十回となっておりますけれども、これでは独占的な利用に該当するのではないかという懸念があるんですけれども、いかがでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 佐世保港につきましては、二つの地区で考えてございまして、浦頭地区の岸壁において年間二百五十日、三浦地区の岸壁において年間五十日を上限として、クルーズ船社に優先的に使用させる計画となっております。

 また、平良港につきましては、漲水地区の岸壁におきまして年間三百日を上限としてクルーズ船社に優先的に使用させる計画となっておりまして、漲水地区のその他の岸壁におきましても、クルーズ船を係留できることとなってございます。

 したがいまして、それぞれの港湾におきまして、港湾全体としては、他のクルーズ船社の利用は確保されているものと考えております。

黒岩委員 今の説明だけではなかなか納得のいかないところでございますけれども、あくまでも、独占的な利用にならないという、この点については強く留意をしていただきたいと思っております。

 それでは、優先予約の上限となる日数を予約しておいて、この予約というのは一年半ぐらい前から企画するものですから、それを直前になっていきなりキャンセルした場合、他社への営業妨害になると思うんですが、こういうことは想定しているのでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 天候の急変等に伴う寄港地の変更など、こうした事態も想定されることもございまして、直前のキャンセルが一定数発生することはやむを得ないものと考えております。

 これについては、岸壁等を優先的に使用するクルーズ船社のみならず、通常の港湾施設の使用においても起こり得るものでございますので、直前にキャンセルを行うことが必ずしも営業妨害に当たるということにはならないと考えております。

黒岩委員 突然のキャンセルというものは当然あると思います。ただ、こういったことが頻繁に行われるようですと、これは大変悪質なことでありますので、こういった場合、協定を解除するというような措置をとることはできるのでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、直前のキャンセルを繰り返すことなどで優先的な使用の上限日数を大きく余らせるような事態が発生する場合には、港湾管理者とクルーズ船社との間で、優先的な使用の上限日数の見直しについて協議すべき旨を、あらかじめ協定において定めておくことが必要であると考えております。

 国土交通省といたしましては、港湾管理者やクルーズ船社に対しまして、このような点を踏まえまして、必要な指導助言を行ってまいりたいと考えております。

黒岩委員 わかりました。

 そうしましたら、これは大臣にお聞きしたいんですけれども、今、クルーズ船の大量の旅客のために、現在でもツアーバスや運転手の不足する地域が出ている。今後、寄港増加が見込まれる中で、国交省においては、これらの点についてどのような対策をとろうとしているのか、この点についてお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 我が国を訪れる外国人旅行者の観光の足を確保する観点から、平成二十六年度より、原則都道府県単位とされております貸し切りバスの営業区域を、外国人旅行者向けのツアーに使用する場合には、地域ブロック単位等に拡大する特例措置を講じてきているところでございます。平成二十六年度と二十八年度を比較いたしますと、この特例制度を利用した事業者数は六十四者から五百三者に、車両台数は九百五台から八千三百三台に、それぞれ拡大しているところでございます。

 クルーズ船による外国人入国者数の急増や船の大型化を背景に、寄港地周辺の観光に貸し切りバスを利用するニーズは高まっているところでありまして、この特例措置の適切な運用により、クルーズ船による訪日旅行の拡大の動きにしっかりと対応してまいりたいと考えております。

 また、平成二十八年のアンケート調査によりますと、貸し切りバス事業者の七五%がドライバー不足と感じているところでありまして、ドライバー不足への対応も急務であると考えております。これにつきましては、まず、貸し切りバス事業者の生産性を向上させることを通じまして、ドライバーの処遇改善を図ることが重要であると考えております。

 貸し切りバスにつきましては、平成二十六年四月から、安全コストを反映いたしました新運賃・料金制度を導入した結果、一定の収益性の改善が見られるところであります。安全確保の観点も含め、引き続きこの新運賃・料金制度の遵守を徹底してまいりたいと考えております。

 また、本年三月末に決定いたしました働き方改革実行計画におきまして、関係省庁横断的な検討の場を設け、自動車運送業の長時間労働を是正するための環境整備に向けて、関連制度の見直しや支援措置を行うこととされているところであります。今後、これらの取り組みを通じまして、若年層や女性等も含めまして、貸し切りバスドライバーの確保、育成を図ってまいりたいと考えております。

黒岩委員 御答弁の内容は理解できるところなんですが、自動車局長にお伺いしたいんですけれども、やはり今、慢性的にツアーバス、バスの運転手不足ということがあります。これは、大変労働時間が長く、なおかつ安価な賃金ということで、これらの改善抜きには今後の旅客船の寄港増に対応し切れないと思うんですが、この点についていかがでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣から御説明申し上げました、平成二十六年度より行っております営業区域の拡大によりまして、いわゆる繁忙期、そうでないとき、あるいはエリアにあるお客様の集中、こういったことに対して、より広いエリアから車を集める、そういった体制は整ったと理解しているところでございます。

 その上で、貸し切りバス全体につきまして、この制度の運用によって、今、貸し切りバスが足りなくてお客様を運べない、そういった事態が非常に問題になっている、そういったことは生じていないと認識しております。

 ただ、今回議題になっております港湾法の改正も含め、クルーズの拡大ということは今後の日本の観光政策の中でも急務でございまして、その中で、お客様がふえている中でしっかりとバスを確保していく、これにつきましては、それぞれの港の状況を見ながら、その状況を踏まえて適正な対策を打ってまいりたいと考えております。

黒岩委員 今、インバウンドの増加という事象によって、さまざまな法改正が速やかに容易に行われるということですけれども、やはり、きょう私が指摘したようにさまざまな問題点もございますので、インバウンド、インバウンドということだけで容易な法改正で済まさずに、問題点を是正しながらきちんとした改正をしていくことを強く要請して、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、水戸将史君。

水戸委員 民進党の水戸将史でございます。

 三人目となりましたので、重複はなるべく避けながら、論点を進めていきたいと思います。

 まずは、港湾に対するテロ対策ですね。

 昨今、これだけクルーズ船が外からやってくる、多くの観光客を乗せてやってくるということで、やはり、港湾の設備もそうでありますけれども、人が多く集まる割には、港湾等々、旅客ターミナル、旅客船に関しましては、その警備は手薄じゃないかということが懸念されます。ですから、今後、このようなクルーズ船による入国者数の増加に伴うテロ対策は喫緊の課題だと思うんです。

 まず、簡潔にお答えいただきたいんですが、現状において、クルーズ船が寄港する港においてのテロ対策、具体的にどのようなことをやっていらっしゃいますか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 港湾におけるテロ対策につきましては、米国同時多発テロを契機に改正されましたSOLAS条約の国内法に基づきまして、国際航海船舶が着岸する国際埠頭施設におきまして保安対策が実施されているところでございます。

 具体的には、施設の管理者により、制限区域の設定、制限区域における人または車両の出入り管理、貨物の点検、埠頭施設内の巡視、監視等が実施されております。

 国土交通省といたしましては、施設の管理者が策定する保安規程の評価、承認を行うとともに、立入検査によって規程に基づく取り組み状況を確認し、適切な対応ができていない施設の管理者に対しましては改善を求めるなど、指導してきているところでございます。

 また、制限区域における人や車両の出入りに関しましては、車両運転手等が本人かどうか、また、その人の所属、立ち入り目的の三点を確認する港湾の出入り管理情報システムを運用することにより、円滑な物流を確保しながら、出入りを確実に管理する措置を講じております。

 国土交通省といたしましては、これらの取り組みを通じ、港湾における保安対策の着実な実施に努めているところでございます。

水戸委員 確かに、今の御説明でもありましたとおり、それなりの対応をしているということでございますが、やはり石井大臣も、いろいろな形で、これから、テロ対策の強化について、もちろん、二〇二〇年、オリンピックが一つの大きなターゲットになるわけでありますけれども、大勢の外国人観光客がやってこられるということでありますから、さらなる強化を推進していく必要があると思うんです。これについて、大臣はどのような御見識でしょうか。

石井国務大臣 クルーズ船の寄港増など、海外からの来訪者の増加に伴い、テロ対策を強化することは極めて重要であります。

 港湾におきましては、国際船舶港湾保安法に基づきまして保安対策を着実に実施することに加えまして、港湾の保安対策に係る関係機関との連携強化が不可欠と考えております。

 このため、国土交通省におきましては、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催等を見据えまして、海上保安庁、警察、入国管理局、税関、港湾管理者等の関係機関と連携いたしました保安設備の合同点検を本年三月より開始いたしまして、港湾における保安対策の一層の強化を図っているところでございます。

 これらの取り組みを通じまして、関係者との連携を一層深め、港湾の保安対策のさらなる強化に努めてまいりたいと考えております。

水戸委員 今、両者の御答弁もありましたこれからの取り組み強化につきましては、私も期待をさせていただきますが、もちろん、先ほど御説明があったとおり、今までのSOLAS法に基づいた危機管理対策というのは、どちらかといえば旅客よりも貨物を中心とした、そうした中における体制の強化という形なんですね。

 ですから、これからは、もちろん貨物も必要でありますけれども、やはり旅客がこれだけふえるということを含めて考えれば、従来は、フェンスや監視カメラを設置するとか、ハードの面でもいろいろとやってきた。今、大臣も若干捜査の面の話もされましたけれども、やはり旅客の位置づけを強化するということが必要になるわけでありますから、今の御答弁も含めてなんですけれども、旅客にある程度焦点を絞った中においてのテロ対策をどういうふうにやっていくのか、もう一度簡潔に御答弁いただきたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 クルーズ船の寄港の増加に伴いまして、人流を主としてテロ対策の強化を図るべきではないかという御指摘であるというふうに理解しております。

 これまでのテロ対策につきましては、ただいま大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、関係省庁との連携を強化しながら保安対策の一層の強化を図っているところでございますが、今回のクルーズ船の寄港増を踏まえまして、主としてその人流あるいはクルーズ船で来られるお客様に対するテロ対策という観点も含めて、より関係省庁との連携を強化してまいりたいと考えております。

水戸委員 ぜひ、ハード、ソフト両面から、このテロ、釈迦に説法であるかもしれませんけれども、しっかりとした取り組みの強化を図っていただくことを強く強く要望していきたいと思っております。

 ちょっと論点は変わりますけれども、去る四月二十九日、北朝鮮のミサイル発射がございました。このときもさまざまな形で、今、日本の政府を先頭にいろいろな形で取り組みをしていることは私も聞き及んでいるわけでありますし、実際に、Jアラートを含めて、この間も、東京メトロですか、地下鉄が、発車時に一応運転を見合わせた。これに対しての意見はいろいろな形であるようでありますけれども、やはり今後、Jアラートを基準とした運行停止の判断を決めたようでありますね。

 これを、では、海上に目を向けた場合、四月二十九日のこのときにおいて、相次ぐミサイル発射を受けて、日本海を周遊するクルーズ船や旅客船の運航にどのような影響があったのでしょうか。

東井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ミサイルが発射された場合、国土交通省は、防衛省からの連絡によりミサイルに関する情報を把握した内閣官房からの情報を受けて、海運事業者等に対して情報を伝達し、被害確認あるいは注意喚起を行っております。また、海上保安庁から船舶に対して航行警報を発出しております。また、これらにつきまして、大臣から指示を出しまして、その徹底をしているところでございます。

 御指摘の四月二十九日の事案でございますけれども、ミサイルの発射直後に北朝鮮内陸部に落下した事案でございます。この事案では、内閣官房からの情報を受けて、海運事業者団体等に被害確認を行っております。

 一方、運航の状況ですけれども、海事局が海運関係団体に確認しましたところ、これまで、四月二十九日の事案において、航行中の船舶の運航停止の措置を行った事業者はいないと承知してございます。

水戸委員 もうちょっとゆっくりお答えいただきたいんです、私もちょっと早口で済みませんけれども。

 四月二十九日の、今のお話は若干承りましたが、この資料一で、これは五月十一日の読売新聞朝刊でございます。いろいろとぐだぐだ書いておりますけれども、この下線の部分が一応それを物語っていると思いますけれども、領海内も、領海外についても、かなりいろいろな取り組みをしているんだということの記事なんですね。

 これはこれとして一歩前進かなという気はしますが、実際に、領海内、領海外等々含めてなんですが、例えば、先ほど言ったように、鉄道においては、Jアラートに連動する形で運転を停止することで即応することを決めているということをお話しいたしました。

 では、この記事もそうなんですが、迅速に船会社に伝えるということは、これはこれでいいんですけれども、伝えた後、どういうふうにするのかという話なんです。

 国交省において、例えば運航停止をさせるとか、何らかのそういう基準とかを設けながらこれから取り組むのか、ただ伝えっ放しでその後どうするかという話になりますから、それに対してどういう形の的確な指示をこれから出すつもりか、出す予定があるのか、具体的に答えてください。

西銘委員長 東井運輸安全政策審議官、ゆっくりはっきり答弁してください。

東井政府参考人 ゆっくり答弁させていただきます。

 御指摘のとおりでございまして、我が国のEEZ内にミサイルが飛来する場合には、内閣官房から発出される情報を自動転送するということで、これを三月二十二日以降行っておりまして、情報伝達の迅速化を図ったものでございます。また、海上保安庁においても、航行警報発出に係るシステムの改修によりまして、これまでより迅速に航行警報を発出する運用、こういったものを実施しておるところでございます。

 委員御指摘の、そのような情報を得たときにどのような対応をとるかということでございます。

 例えば、船舶におきましては、航行警報を初めとして、関係情報の続報の収集に努めていただきまして、不審な漂流物等を発見した場合には近づかないように、注意をお願いしたいと考えております。

 また、危険情報というものを得た場合の基本的な対応としまして、情報を得た船長は、安全確認を行った後、目的地までの運航の継続の適否を判断し、また、出航予定の船舶がミサイルの着弾予定海域を航行する場合、事業者において運航の適否を判断するものと承知しております。

 各事業者においては、それぞれの運航状況を踏まえた船舶の安全確保を最優先とした措置をとっていただきたいと考えておりまして、国土交通省としては、主要な事業者に対応状況をしっかり聴取いたしまして、その取り組みを共有すること等によりまして、事業者の自主的な取り組みを支援してまいりたいというふうに考えているところでございます。

水戸委員 確かに、日本海全体からすれば、日本海問わず、船なんて本当にごくちっぽけなものでありますから、よもや自分の運航中の船に着弾するとは誰も思ってはいませんが、しかし、そうはいうものの、万が一の場合もありますから、そういうことを踏まえて、危機管理意識というのは、運航中でも、船会社も含めて、国交省もいろいろな意味で相手にそういうメッセージを送るということで、やはりミサイルの発射を軽んずることなく、しっかりとした対応をこれからもとっていただくことを強く強く私は要望したいと思っていますので、よろしくお願いしたいと思っています。

 また話はかわりますけれども、資料二をごらんいただければ、やはり、船舶が、もちろん、客船もそうでありますし、貨物船もそうなんですけれども、今、船というものの利用が、世界的な経済の発展もありますけれども、随分とふえております。そして、そういう中において、やはり燃料を使うわけでありますから、この燃料に対して一定の規制が今かかろうとしております。

 ここに書いてありますとおり、二〇二〇年から、IMOという国際海事機関の硫黄酸化物の規制で、硫黄酸化物の排出を現在の七分の一に削減するということなんですが、それを背景にしまして、船舶においても、排気ガスがクリーンであるという、こういうLNGに燃料をかえていこうという動きがございます。

 もちろん、これはクルーズ船においても例外ではございませんで、欧州は、やはり環境に対してはかなり関心が高い国々がありますから、LNGを燃料とするクルーズ船の建造が行われていると聞いております。

 これからこのような船が海外から日本にやってくることが十二分に考えられますから、そういうようなLNG燃料を使ったクルーズ船に対する対応とか誘致も積極的に行っていくことを考えれば、やはり我が国日本の受け皿もある程度整備を進めていく必要があると思っておりますけれども、現在において、我が国を訪れるクルーズ船がLNG燃料のものになる可能性については、どれだけ国交省は把握をされていますか。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、LNG燃料というのは、従来の船舶燃料でございます重油と比べまして、二酸化炭素、CO2だけでなく、窒素酸化物、NOxや、硫黄酸化物、SOxも大幅に削減可能な環境に優しい燃料でございまして、今後、世界的に強化されます環境規制への有力な選択肢の一つでございます。

 我が国におきましても、この国会で成立いただきました海上運送法におきまして、LNG燃料船を先進船舶として位置づけまして、その導入を促進する枠組みを設け、LNG燃料船の普及に取り組んでいるところでございます。

 このような流れの中で、クルーズ船につきましても、観光地や人口密集地などの大都市への寄港が多いこと、そして運航会社が環境対策への取り組みをアピールする意欲が高いことから、今後、燃料のLNG化の可能性は高いと期待されるものでございます。

 具体的にも、実例として挙げますと、アメリカなどのクルーズ船の大手会社におきまして建造中のクルーズ船約十隻以上がLNG燃料化を計画してございまして、二〇一九年以降に順次就航予定となっております。

 このように、今後、LNG燃料価格の低廉化や供給体制の整備に伴いまして、クルーズ船のLNG燃料化の可能性はさらに高まるものと考えております。

水戸委員 今、その可能性につきまして言及していただきました。

 実際、そういうことを国交省みずからも御認識いただいて、では、どういう整備を進めていくかということになりますが、申すまでもなく、昨年来から官民一体となって検討会が立ち上がって、とりあえず、やはりLNGの拠点があるところを中心とした港湾、ここは、我が横浜港が、川崎もありますけれども、横浜、川崎には結構そういうものがありますから、まずはここをLNGの燃料供給拠点として、これはバンカリング拠点というんでしょうか、船を使って、船から船へLNGを提供していこうというようなことを開始しようという結論を得たというふうに承っております。

 今後、これから二〇二〇年に向けていろいろな形で整備をしなきゃいけないでありましょうが、進捗状況とこれからの展望はどうでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 船舶の排出ガス規制の強化が二〇二〇年から開始されることが決定し、排出ガスのクリーンなLNGを燃料とする船舶の増加が見込まれております。

 そこで、我が国初のLNG燃料船が就航し、また、国際コンテナ戦略港湾でもある横浜港をモデルケースとして、官民の関係者による検討会を設置いたしまして、LNGの燃料供給拠点、いわゆるバンカリング拠点の整備方策について昨年来検討し、昨年十二月にその整備方策について取りまとめを行ったところでございます。

 現在は、この整備方策に基づきまして、港湾管理者である横浜市や、京浜港の港湾運営会社である横浜川崎国際港湾株式会社を中心といたしまして、LNGバンカリング事業の事業主体の設立、あるいはLNGバンカリング船の技術的仕様など、精力的な検討が進められております。

 国土交通省といたしましても、引き続き、我が国におけるLNGバンカリング拠点の早期構築に向けまして、こうした関係者とともに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

水戸委員 二〇二〇年までの一つのモデルケースとして横浜からやっていくんだという形で、いわゆる港へ寄らないで、要するに海上で、船から船へ、LNGの燃料をそうしたLNGを使う船に移していこう、燃料を提供していこうという形での、そういう意味でのバンカリング拠点というお話がありました。

 今までのいろいろな議論もありましたけれども、どちらかといえば、中国だけがお客さんじゃありませんが、どうしても八割ぐらいは中国からやってくるということで、そういう意味でも、九州や沖縄の方にどうしても寄港回数が多いということになります。今後、それだけをターゲットにするわけではありませんが、今、この横浜をモデルケースにする、その後は千葉という話も聞いておりますけれども、LNGの、そもそもその燃料供給拠点がないとできませんけれども、やはり今後も九州地域についてこうしたクルーズ船の離発着が多いであろうということは十二分に予測されますから、博多港を初めとして、こういうところにクルーズ船が海外からやってくるならば、やはりこういうところも含めてバンカリング拠点というのは設ける必要があると思うんです。

 ここに対しての今後の整備的な考え方、そうした発展性があるのかどうかにつきましても、どうでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 LNGの燃料拠点の整備に当たりましては、世界的にこれから取り組んでいくべき課題となっております。このため、我が国におきましては、まずは、横浜港をモデルケースとして、その整備方策についての検討を行ってきたところでございます。

 ただいま委員御指摘のように、クルーズ船の寄港が非常に多い博多港等についての今後のバンカリング拠点としての可能性につきましては、横浜港での検討結果等も踏まえまして、また、バンカリング事業の事業主体の設立等、今後のこうした動向も十分踏まえながら検討してまいりたいと考えております。

水戸委員 立地的な条件というのは非常に必要になってきますから、やはり、寄港回数の多い九州地域に対してのこういうバンカリング拠点の整備を、これから、これを見据えて立地をしていただく必要があると私は思っております。

 そして、何よりも、やはりこれから国際競争性というような話もあるんですね。こんな話は日本だけが思いついているわけじゃない、もちろん中国、韓国も含めてなんですけれども、やはりそういうところも、率先してこういう燃料供給拠点を設けていくのではないかとは十二分に予測されますよね。残念ながら、コンテナ港湾なんというのは、今、中国、韓国の後塵を拝しておりますけれども、やはりこういうLNGの燃料供給拠点を日本としてもしっかりとした形で整備をして、国際競争性ですよね、こちらに寄っていらっしゃいという話ですよ、そういうことをもっともっとやっていく、国際戦略上の必要性も十二分に認識をしていく必要があると思うんですが、大臣、どうでしょう、この件について。

石井国務大臣 国際海事機関によります二〇二〇年からの船舶の排出ガス規制の強化を背景に、LNG燃料船の増加が見込まれている中、世界に先駆けてLNGバンカリング拠点を形成することは、我が国港湾の国際競争力の強化につながるものと認識をしております。

 一方、拠点の形成に当たりましては、世界最大の重油バンカリング港であるシンガポール港と連携してイニシアチブをとることが重要であることから、昨年九月の日・シンガポール首脳会談におきまして、LNGバンカリングに関する両国間の連携強化を確認いたしました。

 また、昨年の十月、LNGバンカリング推進に関する覚書を七カ国の港湾当局と署名いたしまして、本年四月には、LNGバンカリング国際シンポジウム・イン横浜を開催するなど、LNGバンカリング港湾の国際的なネットワーク構築を我が国が主導して加速しているところでございます。

 国土交通省といたしましては、シンガポール港と連携しつつ、我が国がアジアで先駆けてLNGバンカリング拠点を形成いたしまして、国際競争力の強化を図ってまいりたいと考えております。

水戸委員 今、力強い御答弁をいただきまして、実際、本当に、残念ながらコンテナ港湾に関しましては随分と水をあけられている部分もありますから、やはりこういうものに着眼していただいて、速やかなる形で実行に移す、そういう形で、やはり先手必勝でありますから、LNGのことにつきましては、特に、将来的な展望を見据え、また、諸外国がそのような形で足並みをそろえていこうというような形の規制がかかっておりますから、そういうことをしっかりと視野に入れていただいてその整備を進めていくことを強く要望して、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党、本村伸子です。

 港湾法改定案について質問をさせていただきます。

 クルーズ船誘致そのものを否定するものではありませんけれども、大前提である安全の問題や、クルーズ船が入港することで、自然環境、生活、まちづくりへの影響などが発生いたします。これを無視するわけにはいかないというふうに思います。

 そこで、お伺いをいたします。

 二〇一四年四月十六日、韓国の大型旅客船セウォル号転覆事故が起き、甚大な被害となりました。亡くなられた方々には、心からの哀悼の意を申し上げたいというふうに思います。

 クルーズ船寄港をどんどんふやそうというふうにされておりますけれども、六千人以上の乗客乗員が乗っている船もあるわけで、事故が起こった場合に本当に大丈夫なのかということが心配になるわけです。クルーズ船で事故がないということは言い切れないわけですから、日本船ももちろんですけれども、訪日外航クルーズ船について未然に事故を防ぐ方策はどうなっているのか、お示しをいただきたいと思います。

羽尾政府参考人 お答えいたします。

 外航クルーズ船を含めまして、国際航海に従事する船舶やその乗組員につきましては、国際海事機関、IMOが定めました海上人命安全条約による国際的に統一された安全基準や、船員の資格や訓練について定めた基準が適用されます。これらにつきまして、基本的には、船舶が籍を置く国、いわゆる旗国の政府が、各船舶を検査し、基準に適合させる義務を負っております。

 さらに、今申し上げました旗国による検査を補完するため、船舶が寄港いたしました国の政府も、ポートステートコントロールと呼ばれる立入検査を実施する権利が国際条約により認められています。これによりまして、外国籍の外航クルーズ船が我が国に寄港した際には、全国の地方運輸局に配置されております外国船舶監督官が、国際基準に適合しているか否かを確認し、基準への不適合が確認された場合には、是正を求めることができることとなっております。

 このように、国際基準及びその実施の担保方策によりまして、我が国に寄港します外国籍の外航クルーズ船に対しましても、その安全の確保が図られることとなっております。

本村(伸)委員 次に、海上保安庁の方にお伺いしますけれども、六千人以上の規模のクルーズ船で事故があった場合、人命を助ける体制はあるのか、お答えをいただきたいと思います。

中島政府参考人 お答えいたします。

 海上保安庁において重大な海難事故情報を入手した場合には、直ちに巡視船艇、航空機等を発動させまして、また、特殊救難隊や潜水士等も派遣し、人命や船体の救助に当たります。

 御指摘のように、大型クルーズ船において事故が発生した場合、数千人規模の乗員あるいは乗客を救助することが想定されます。そのような大規模な事案におきましては、海上保安庁のみで救助活動等を完遂することは困難となりますので、地方自治体、警察・消防等の関係機関、医療機関、海事関係者等と連携した対応が必要不可欠となると考えております。

 このため、海上保安庁といたしましては、大型クルーズ船の本邦への寄港増加を見据えまして、広く関係者との合同訓練の実施等を通じまして連携強化を図ることにより、迅速な救助活動を行ってまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 誘致している自治体の皆さんにリスクについてもお知らせして、国と地方とよく連携して、安全対策は万全にしていただきたいというふうに思います。

 今回の法改正によって指定される予定の港湾には、四つのクルーズ船社が想定されております。その一つ、カーニバル・コーポレーション傘下のプリンセス・クルーズ社に対し、昨年十二月、米国司法省が、四千万ドル、約四十六億円の高額な罰金を科しました。違法に廃油を海洋に投棄したことに対する処罰です。

 クルーズ船は、日本に来るだけではなく、世界じゅうを回り、各国に寄港しております。クルーズ産業の急成長そして船の巨大化につれて、クルーズ船が排出する大気汚染が年々ひどくなるなど、環境問題を理由に、各地で、地元の住民の皆さんや環境団体の皆さんが、クルーズ船の寄港に対する反対や懸念の声を上げておられます。クルーズ船によって、青潮の原因である港湾の貧酸素水塊の容積を広げるという懸念もありまして、港の許容量を超えない船舶の航行にとどめるようにという漁業関係者の方の声もいただいております。

 クルーズ船が持つ大気汚染や海洋汚染などマイナス面の対策について、本法案では盛り込まれていないと思いますけれども、政府としてどのように対応していくのか、お示しをいただきたいと思います。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 クルーズ船を含めた船舶からの大気汚染あるいは海洋汚染対策につきましては、グローバルな枠組みで取り組むことが重要でありまして、そのための国際的な枠組みといたしまして、国際海事機関、IMOにおいて策定されました海洋汚染防止条約、いわゆるMARPOL条約がございます。我が国におきましては、その国内担保法である海洋汚染防止法によりまして、窒素酸化物、硫黄酸化物などの排出ガスや、油、有害液体物質、廃棄物などの船舶からの排出に関する規制を実施しております。

 外国籍船につきましても、いわゆるポートステートコントロールといたしまして、外国船舶監督官が港内での船舶設備の基準適合性の確認を行い、不適合があった場合には是正を求めるなどの措置を講じているほか、法令の励行の観点から、海上保安官が立入検査を行っております。

 御指摘のありました外国籍クルーズ船につきましても、引き続きこれらの対策を講じていくこととしております。

本村(伸)委員 日本も汚染とは無縁ではないわけです。

 クルーズ船の寄港では高い実績がございます横浜港では、たびたび市民の皆さんから苦情があるということで、港湾関係者の方がこうおっしゃっているんです。

 停泊中のクルーズ船が黒い煙を出していることに対して、市民からクレームを受けたこともある。こうしたこともあって、横浜市では、岸壁に発電所を設け、これから電気を供給することで重油の燃焼を減らす計画を検討したが、結果として、費用負担の大きさから、現在ペンディングになっている。

 こういうような報道もございます。

 クルーズ船の受け入れに関しては、やはり総合的に考えなければいけないというふうに思います。政府は、クルーズ船での訪日外国人の目標を五百万人としておりまして、受け入れ施設整備を推進し、地方自治体に受け入れを促す姿勢が目立ちますけれども、しかし、住民の皆さんからは、環境破壊などを懸念する声も聞かれます。やはり、地元の実態をつかんで、住民の合意を重視するということが大切だというふうに思います。

 そこで、ちょっとお伺いをしますけれども、本改定案における国際旅客船拠点形成計画の策定の際に、港湾で働く方々や住民の皆さん、地元商店街の皆さん、商店の皆さんなどの意見を聞くなどの民主的な住民合意の仕組みがあるのかどうか、そして、港湾管理者の計画策定に当たって、港湾労働者や住民の皆さんの参加、合意の仕組みを盛り込むべきではないかという点、お答えをいただきたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 港湾管理者の国際旅客船拠点形成計画の策定に当たりましては、港湾管理者として、外航クルーズ船を運航する船会社との間で、今後の需要動向等を見きわめながら、その計画を策定していくことになるものと考えてございます。

 また、住民との意見交換をするような場の設定というような委員の御指摘だと思いますけれども、これにつきましては、この計画に基づきまして、法律におきまして、港湾管理者とクルーズ船社との間での協定を締結することとしてございます。この協定の中で利害関係者からの意見徴収等の手続を設けておりますので、こうした手続の中で適切に対応されるものと考えてございます。

本村(伸)委員 形成計画をつくるに当たっても、港湾労働者の方々や、あるいは住民の皆さん、商店の皆さんの参加の仕組みがないというのは、港湾の民主的な運営という観点からしてもおかしいというふうに私は思っております。

 クルーズ船の関係で地域の状況を少し御紹介いたしますけれども、奄美大島では、巨大クルーズ船のロイヤル・カリビアンという船が寄港する開発計画が浮上したわけですけれども、奄美大島の龍郷町の浜に三百五十メートルの桟橋を建造するという内容に、住民の皆さんから反対の運動が起こりました。乗客五千四百人、乗員二千百人、そして二十二万六千トン級の巨大クルーズ船が寄港するということになれば、龍郷町の手つかずの自然が失われるということで、危機感を募らせていたそうです。

 龍郷町の人口は約六千人で、その数に匹敵する乗客乗員の皆さんへの対応など不可能という危惧があり、反対運動もあって、龍郷町は、七月にクルーズ船の受け入れ断念を表明いたしました。

 こういうこともあるわけですから、いつでも住民の皆さんの声は大事にするべきだというふうに思うわけです。

 先ほどもお答えがありましたけれども、クルーズ船の岸壁の優先使用や受け入れ促進施設の一般供用などを決める協定である官民連携国際旅客船受入促進協定についてですけれども、港湾を利用する事業者や港湾で働く皆さん、住民の皆さんや港湾周辺の商店の皆さんなどが協定の対象となっていないのはなぜでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の協定につきましては、旅客施設の整備者となるクルーズ船社と岸壁の管理者である港湾管理者との間で優先使用の合意を図るという観点から、旅客施設の整備者と港湾管理者とを協定の当事者としているというところでございます。

本村(伸)委員 少し確認をします。

 協定を結ぼうとしたときに、利害関係者に縦覧し、港湾管理者に意見を提出できるという規定がございますけれども、港湾を利用する事業者や港湾で働く皆さん、住民の皆さん、そして港湾周辺の商店の皆さんなどは利害関係人ということですね。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 利害関係人とは、一般に、主として第三者の行為または公の機関がする処分によって自己の利益を害されるおそれのある地位にある者を指すとされております。

 今般の制度における官民連携国際旅客船受入促進協定に関する利害関係人としては、例えば、当該港湾を現に利用している船社や荷主、あるいは港湾運送事業者等が該当するものと考えております。

本村(伸)委員 もう一回、私が指摘をした、港湾で働く人たちや港湾を利用する事業者、住民の皆さん、商店の皆さんも入るということでよろしいでしょうか。端的にお願いします。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 利害関係人につきましては、先ほど申し上げましたとおり、公の機関がする処分によりまして自己の利益を害されるおそれのある地位にある者というふうにされておりますので、こうした観点から、利害関係人としてどのような皆さんの範囲になるのかということが決まってくると考えております。

 今委員のおっしゃられた商店の皆さんというのが、港湾との位置関係であるとか、そういったものも含めて、一概にお答えすることはちょっと難しいと思いますけれども、先ほど申し上げましたとおり、公の機関がする処分によって自己の利益を害されるおそれのある地位にある者という範囲で、適切に港湾管理者において判断されるものと考えてございます。

本村(伸)委員 こうした方々は利害関係者だというふうに思いますので、ぜひ入れていただきたいというふうに思います。

 先日、この法案に基づく国際旅客船拠点形成港湾の指定を受ける予定とされております静岡県の清水港に行ってまいりました。清水港近くの清水駅前銀座商店街の方にもお話をお伺いいたしました。

 クルーズ船の入港の回数はふえておりますけれども、無料の着つけですとか、みそ屋さんでのだしのテースティングとかは人気があるそうですけれども、商店街全体として売り上げが伸びているとはまだ言えない状況のようです。

 クルーズ船のお客様に商店街に来てもらう努力、試行錯誤をされておりました。最初は、商店街でバスをチャーターして、商店街に来てもらえるようにしていたそうです。その後は静岡市もバスを出してくれるようになったそうですけれども、全部のクルーズ船ではないそうです。商店街の方へ向かうバスのチャーターの予算もかかるという問題もありますし、清水港に入港する中で最大規模のクルーズ船は、バスチャーターがだめだというふうに言っていると聞いております。そのクルーズ船は、そのクルーズ船の会社がバスを用意するからだめだというふうに言われているそうですけれども、そういう状況もある。

 商店街は駅前でインフォメーションのサービスもやっているわけですけれども、お勧めスポットとかを紹介して、それは商店街に来ない場合でもやっておみえになります。

 商店街は水曜日が定休日ということで、水曜日でない日にクルーズ船が入港する、そういう配慮も必要ではないかというふうに思うわけです。

 もう一つお伺いをしたのが、地元の人を大切にしたいという思いで頑張っている、清水の魚市場であります河岸の市の方からもお話をお伺いいたしました。とりわけ、土日の駐車場が足りないというお話をお伺いいたしました。

 いずれにしても、平日のクルーズ船入港がスムーズではないかというふうに思うわけです。

 商店街の方や魚市場の方からお話を伺っても、清水港の計画、全体像ですとか今後についてや、あるいはクルーズ船に関する情報がなかなか届いていないということを痛感いたしました。皆さん、クルーズ船がふえるのは歓迎しているというお話でしたけれども、もう少し情報があればさまざまスムーズにいくと思うという御意見もございました。通訳の問題ですとか、その国々の嗜好の問題などもあり、どういう国々の方がいらっしゃるのかという情報も大切な情報だというふうに思います。

 クルーズ船の問題については、発着で何千人もの外国の観光客の皆さんが来られるということになりますから、地域の状況を大きく変える可能性があり、やはり、さまざまな方々から御意見をお伺いしながらというのが大切だというふうに思います。

 港湾計画ですとか、国際旅客船拠点形成計画ですとか、官民連携国際旅客船受入促進協定をつくるに当たっては、今指摘したようなことも含め、港湾で働く皆さんや、あるいは商店街の皆さんや商店の皆さん、住民の皆さんの声を反映できる、きめ細かなことまで協議できる場をつくるべきだというふうに思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国際旅客船拠点形成計画、あるいはこれに基づく協定の締結に当たりましては、当該港湾の港湾管理者におきまして、将来の港湾の発展、あるいはクルーズインバウンドの旅客増に伴います地域経済への波及効果等を総合的に勘案して、しっかりとした議論のもとに協定の締結等がなされていくものと考えております。

 国土交通省といたしましても、今回のクルーズ拠点の形成で、地域の発展、また地域経済への効果がしっかりと具現できるように、港湾管理者ともしっかりと連携を図ってまいりたいと考えております。

本村(伸)委員 最後に一問質問をさせていただきたいんですけれども、非常災害時における国土交通大臣による港湾施設の管理制度の創設ということがありますけれども、港湾法が、港湾管理について港務局と地方公共団体に限定して、国を除いてきたのはなぜか、お示しをいただきたいと思います。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十五年の港湾法の制定以来、港湾の管理につきましては、地方の熱意と工夫によって港湾の開発、発展を図ろうとの狙いから、港湾管理者を、地方公共団体または港務局のいずれかによるものとしているところでございます。

本村(伸)委員 災害時に国が連携したり手伝うというのは当然だというふうに思いますけれども、国への権限移譲というのは、港湾法そのものの成り立ちからずれているというふうに思います。

 熊本地震の際にも、国に権限を集中しなくても現行法でできたということで、港湾労働者の方々からもそういう実態を伺っております。日ごろから、災害時、地方と国の連携を強化する訓練を一層進めるということが重要だというふうに思います。

 港湾法は、一九五〇年、戦後の民主化政策の一環として制定されました。戦前の、国の営造物として国有国営で運営されてきた港湾をいかに民主的運営方式に転換させるかということで、地方自治体、管理組合、港務局が管理することになったわけです。港湾法制定の当初の精神に基づけば、港湾管理における国の権限移行は抑制的であるべきです。

 そのことを申し述べ、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西銘委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 港湾法の一部を改正する法律案について質問いたします。

 本法案は、クルーズ船による訪日外国人旅行者に対応するため、受け入れ拠点となる港湾を指定し、ターミナルビルなどの旅客施設を建設、整備することを条件に、特定のクルーズ船社に、岸壁、いわゆる係留施設ですけれども、これの優先的な利用を認めるというものであります。

 政府の策定した明日の日本を支える観光ビジョンの中では、訪日クルーズ旅客を二〇二〇年に五百万人、今の二・五倍を目標とし、受け入れ環境の整備を促進していくわけであります。官民連携によるクルーズ拠点形成検討委員会も、クルーズ船についてはお断りゼロを目標にする、この実現を掲げているわけですが、初めに立法事実についてお伺いいたします。

 これまで我が国において、クルーズ船の寄港を断ったケースは何件ありますか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 具体の数字についてただいま承知しておりませんが、港湾管理者等からのお話を伺いますと、特に寄港が集中している博多港あるいは長崎港等におきましては、クルーズ船社の希望する日にちでの予約がとりにくい状況になっているということをお伺いしてございます。

清水委員 具体的には把握されていないということであります。

 二〇一三年には十七万四千人だった訪日クルーズ客が、現行の港湾法のもとでも、二〇一五年に百十一万人を超え、昨年はおよそ二百万人となりました。今お話ありましたように、具体的なケースは国としてもつかんでおらない、また、クルーズ船社からの苦情などについても、今のところ把握していないというふうに伺っております。

 これからどんどんふえていくんだということであれば、例えば埠頭の整備だとか岸壁を延長するとか、その受け入れ体制を整備すればいいわけであって、どうしてわざわざ法改正が必要なのか、このことについて教えてください。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 先ほどの私の答弁に少し追加をさせていただきたいと思います。具体的に私どもの方で把握しておるものが少しございますので、御紹介したいと思います。

 平成二十八年に、博多港では七百回を超える寄港要請がございましたが、実際の受け入れはその半分程度となっております。また、長崎港では、平成二十七年に百二十五回受け入れましたけれども、七十五回の寄港をお断りしたというふうに伺っております。また、那覇港におきましては、平成二十七年から二十九年の間に八十五回のお断りがあったというふうに伺っております。

 また、今委員の御指摘は、クルーズ船の受け入れ拠点の形成の必要性ということだと理解してございますが、訪日クルーズ客を二〇二〇年に五百万人と、現在の二・五倍の受け入れ容量を確保しなければなりません。このためには、既に受け入れ容量がかなりいっぱいの状態になっている博多港等で、今後増加していくクルーズ旅客に対する受け入れを引き続きふやしていくということがなかなか困難な状況となっております。

 他方で、クルーズ船社の中には、みずからの投資を行うことでクルーズ拠点をしっかりと形成していきたいという意向を持つクルーズ船社もあらわれてきているという状況がございます。

 こうした点を踏まえまして、今後の二〇二〇年に五百万人という受け入れ環境を整備していく観点から、今回の官民連携によるクルーズ拠点形成の法案を提出させていただいたところでございます。

清水委員 それだけ具体的なケースがあるのであれば、最初の答弁でそう答えていただければよかったんですが。

 ただ、局長、これだけの受け入れ需要があるということであれば、私が今申し上げましたように、埠頭を整備するとか岸壁を延伸するとか、そうして受け入れればいいわけで、なぜ法改正の必要性があるのかという質問をさせていただきました。

 それで、今の局長の答弁では、その肝となるのは、みずからの投資によって旅客施設などを整備し、そして、そのことに対するインセンティブとして岸壁の優先使用権を認める、このための法改正が必要だということだと思うんですね。

 それで、そのことを前提に、私、お話ししますと、港湾法第十三条第二項には、「港務局は、何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取扱をしてはならない。」こうあるわけですね。特定のクルーズ船社に岸壁使用権を優先的に与えるということは、これは法の趣旨に反するのではないでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 国際クルーズ拠点を早期に形成し、長期的かつ安定的なクルーズ船の寄港を促進する政策的必要性から、今回の制度では、特定のクルーズ船社に対して岸壁等の優先的な使用を認めることとしてございます。

 特定のクルーズ船社に対しまして岸壁等の優先的な使用を認めるに当たりましては、港湾法第十三条第二項に規定いたします不平等取り扱い禁止の原則との整合性を図る、これが重要であるため、所要の措置を規定してございます。

 具体的に申し上げますと、港湾管理者による利害関係人への協定の縦覧を義務づけするとともに、利害関係人は意見を提出することができることとしており、恣意的な運用を排除できるものとなっております。さらに、クルーズ船社に、旅客ターミナルビルを整備させるとともに、それを一般公衆へ供用する義務を負わせることとしております。

 このため、今般の制度に基づくクルーズ船社による岸壁等の優先的な使用につきましては、港湾法第十三条第二項に規定する不平等取り扱い禁止の原則には違反しないものと考えております。

清水委員 今、二つ言われたと思うんですね。一つは、協定を締結するということ、もう一つは、旅客施設などの整備、そしてそれを一般公衆に供用させる義務を負わせるということだと思うんですね。

 それで、私は、旅客施設の考え方なんですけれども、例えばターミナルビルを新設するということであれば、いわゆるクルーズ船社もそれなりに、ある程度の金額の投資になると思うんですけれども、例えば、横浜港における目論見書を見ますと、カーニバル社というところは、ターミナルビルを新設するのではなくて、屋根つき通路をつくるというふうに書かれておりまして、今のは新港埠頭の方ですね。それから、同じ横浜港の大さん橋埠頭、これは既に郵船クルーズが優先的に使用予定というふうにされているわけですが、ここも、新たにターミナルビルをつくるのではなくて、既にあるんですよ。既設のものがありまして、では、どういう義務を負うのかというと、待合ラウンジをつくるということになっているんですね。

 何か、旅客施設をつくることのインセンティブだ、こう言うんですが、屋根つき通路なんというのは、一般公衆に供用しなかったらえらいことになりますよ、ここを通ったらだめなんということがあったら。当たり前のことだと思うんですよね。

 仮にターミナルビルをつくることを条件にしたとして、岸壁の優先使用権を与えるということになれば、既存のその他中小のクルーズ船社であるとか貨物も含めて、やはり利用日数、利用状況等に影響が出るのではないかというふうに思うんです。

 先ほど、佐世保などでは三百回の寄港だとかいう話もありました。二百五十回と五十回に分けるんだと言いますが、それでも、一年三百六十五日のうちの大半を特定の船社が優先的に予約をする、あいているところについては利用してくださいということでは、既存の船会社あるいは荷主等に影響が出ないと言い切れるのか。そうした特定のクルーズ船社以外の利用状況についてもちゃんと確保していかれるものだというふうなお話もありましたけれども、その根拠についてもう少しわかりやすく説明していただけないでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今般の協定による優先使用につきましては、港湾管理者が当該港湾の状況であるとか特性、こうしたものを踏まえた上で、一定の公共性が確保できると判断する範囲内において認められるものでございまして、他の船社の岸壁の使用あるいは将来の使用見込みについても十分配慮した上で、こうした計画の策定及び協定の締結がなされていくものと考えてございます。

清水委員 そう思われますということなんですけれども、では、もう一回確認しますけれども、それは本当に他の船会社の岸壁使用に影響は出ないんですね。

菊地政府参考人 港湾管理者から、昨年、委員会におきまして提出された目論見書の中では、港湾管理者として、今後、当該港湾のクルーズ拠点をどのように形成していくかという基本的な方針の中で、特定の船会社の寄港等を前提に、そして他の船会社の寄港も十分確保できるような、そうした考え方に基づいて今回の目論見書の提出がなされておりまして、その限りにおきまして、他の船会社の使用あるいは将来の見込みも十分配慮した内容となっているものと考えてございます。

清水委員 国として法律を出しているわけですから、そこの検証というのが私は求められると思うんです。そのことを指摘しておきたいというふうに思います。

 それで、いわゆる優先的使用を認めるもう一つの理由として、協定のお話がございました。港湾管理者とクルーズ船社が交わす協定の内容、これは、協定は公告をする、公に告知をして利害関係者に対して二週間縦覧させる。利害関係者は、港湾管理者に対して意見を提出することができる。これは、法案の五十条の十九と、その第二項で記されているわけなんです。

 局長にお伺いしたいんですけれども、意見を提出することができるとしか記されていないんですね。この意見について、例えば、港湾管理者は返答する義務はございますか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法五十条の十九第二項の規定によりまして受入促進協定を締結しようとする場合には、当該協定の内容が第三者の利益に反する場合なども想定されることから、利害関係人に対して意見提出の機会を与えるものでございます。

 利害関係人からの意見の提出がなされた場合には、法律上、港湾管理者に回答の義務を課してはおりませんけれども、港湾管理者におきまして、当該意見の内容等を踏まえて適切に判断をされるものと考えております。

清水委員 されるものと考えておりますということでは、もう一つ説得力が乏しいのではないかと思うんですね。

 ですから、その協定の取り決めについては、利害関係者、他の船社の入港が制限されるというような事態が出るおそれがある、そして、意見を提出しても、そうした港湾管理者から返答する義務さえないということでは、結局これは、ガス抜きというか、証拠づくりというようなことになりかねないというふうに私は思いますし、そこはやはり、こういう仕組みそのものが、私は港湾の公共性というものを損なうのではないかということを指摘しておきたいと思います。

 最後に、石井大臣に一問お伺いします。

 今議論させていただきましたように、何かターミナル施設をつくるというんじゃなくて、雨よけ通路をつくるだけで、あるいは待合ラウンジをつくるだけで、岸壁の優先使用を特定クルーズ船社に認めるなんということになると、私は、やはり港の公共性あるいは公平性に違反するのではないかというふうに思うんですね。

 戦前に港湾が戦争のために国の管理下に置かれたことの反省も踏まえて、戦後は、国の関与を退け、港湾の民主化というものが進められてきました。

 本村伸子議員も述べましたが、一九五〇年四月、港湾法制定時の衆議院運輸委員会での大屋大臣の趣旨説明にこういう文言がございます。「港湾管理者として行うことは、港湾の有機的発展をはかり、公共利用を増進する。」「民間企業が大いに進出して、」というのがあるんですが、その次に、「公正な自由活動により能率を上げることが望ましい」と。あわせて、「私企業に干渉したりすることは、これを避けるよう規定」した、これが港湾法制定時の趣旨説明なんです。

 ですから、今回、いわゆる旅客受け入れ施設の整備を条件に、特定のクルーズ船社、これを見ましたら、カーニバル・コーポレーション、ロイヤル・カリビアン・クルーズ、ゲンティン香港、郵船クルーズ、超巨大企業ばかりですよ。こういうところに年間最大で三百日もの優先寄港の特権を与えるということは、私は、港湾法の理念そのものにも反するのではないのか、まさしく公正な自由活動への干渉となるのではないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

石井国務大臣 今般の制度に基づくクルーズ船社による岸壁等の優先的な使用が、現行港湾法第十三条第二項に規定いたします不平等取り扱い禁止の原則には違反しないことにつきましては、先ほど局長から答弁したとおりでございます。

清水委員 局長の答弁に説得力がなかったので、私、確認させていただいたんですね。

 先ほどの大屋大臣の趣旨説明、一九五〇年の制定時、国は港湾管理の第一線から退くとも宣言していたわけで、政府が、観光客の目標数ありき、二〇二〇年に二・五倍という数値目標をどんと掲げて、そのことにより、結局、港湾の公平性、公共性が損なわれようとしているのではないかというふうに私は言わざるを得ません。

 ターミナル施設、ターミナルビルなどの整備という金銭的な負担と引きかえに、岸壁使用の優先権を与え、企業間の公正な自由活動を阻害するという法律だと思います。港湾の自治を巨大企業本位にゆがめるものでありまして、到底認めることはできません。

 このことを申し述べて、質問を終わります。

西銘委員長 次に、井上英孝君。

井上(英)委員 日本維新の会の井上英孝です。

 きょうは、西銘委員長、そしてまた筆頭の皆様方を初め、関係者の皆様方の御容赦をいただきまして質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。そしてまた、海事局、港湾局、自動車局、質問に当たって御協力をいただきましたことに心から感謝を申し上げて、質問に入りたいと思います。

 きょうは港湾法の一部を改正する法律案ということで、背景、必要性というのに、訪日クルーズ旅客数の拡大に向けた課題と熊本地震を踏まえた課題ということを受けて、法案の改正ということであります。

 まずは、訪日クルーズ旅客数について。

 本年一月三十一日に、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾として、内外四つのクルーズ船社と連携した横浜港、清水港などを初めとする六港湾が選定されたということであります。今後は、これら六港湾を中心に、国際クルーズ拠点の形成に向けて、必要なハード、ソフト両面の取り組みを進めるというふうになると思うんです。

 一方で、政府は、昨年の三月に、二〇二〇年、オリンピックイヤーには訪日クルーズ旅客を五百万人という目標を掲げておられます。二〇二〇年には訪日外国人の旅行者数、トータル四千万人という目標があって、クルーズに限っては五百万人という目標を掲げておられます。

 もちろん、外航クルーズ船はこれら六港湾だけに寄港するというものではないと思うんですけれども、これら六港湾とその他の港湾で五百万人の達成というのが本当に可能になるというふうにお考えなのか。また、さらなる国際旅客船拠点形成港湾というのが必要ではないかというふうに思うんですけれども、大臣、どう思われますか。

石井国務大臣 近年、我が国の港湾へのクルーズ需要は急増しておりまして、昨年、平成二十八年は、訪日クルーズ旅客数は百九十九万人、クルーズ船の寄港回数は二千十八回となり、いずれも過去最高を記録いたしました。今後も、外国クルーズ船社が大型の新造船を逐次投入していく計画を持っていることから、我が国の港湾へのクルーズ船の寄港は、引き続き着実にふえていくものと見込まれております。

 今回の法案で国際旅客船拠点形成港湾に指定されることによりまして、クルーズ船社が岸壁を優先的に使用できることとなり、寄港計画を立てやすくなるため、長期的にクルーズ船の寄港が増加すると考えております。

 また、指定されない他の港におきましても、寄港ニーズに応じて、既存岸壁の改良や岸壁の延伸、クルーズ船受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との商談会の開催等、ハード、ソフト一体となった施策を展開いたしまして、日本全体としてクルーズ船受け入れのさらなる拡充を図っていきたいと考えております。

 国土交通省といたしましては、訪日クルーズ旅客二〇二〇年五百万人の目標達成に向けて、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

井上(英)委員 五百万人をぜひ達成していただけるように、あらゆる手をお願いしたいというふうに思いますけれども、この指定に当たって、経済効果を全国に波及させる観点といいますか、やはり地域により偏りがないようにすべきなんじゃないかなというふうに思います。そういう意味での地域間でのバランスについて、具体的にどのように考えておられるのかというのが一点。

 二点目は、要するに、今回指定を受けた六港湾を見ると、日本海側の港湾は入っていないですし、東北、北海道という北側のエリアの港湾も指定されていない。私の住んでいる地元の大阪も含めた関西方面の港湾も選定されていないという現状にあります。これらの港からは応募がなかった、現状で手が挙がらなかったと言ってしまえばそれまでなんですけれども、国際クルーズ拠点の全国的な展開に向けて、ここはやはり国土交通省が先導してやっていかなければいけないんじゃないかな。

 クルーズの観光客が日本国内全体に来られるように、当然、アジアの、近隣の西側の国からたくさん来られるということで、旅行日数も含めて西日本側に偏る傾向にあるのはわかるんですけれども、もう一日、二日延ばしていただいて、北の北海道から日本全体にクルーズ客が来て、また、そういうビジネスチャンスも含め、景気を刺激するような施策というのを考えていただきたいと思うんですけれども、今後についてどのようにお考えか、お答えいただけますでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 現在、アジアにおけるクルーズ需要の急成長を背景といたしまして、中国などを発着するカジュアルクラスのクルーズ船が我が国の港湾に数多く寄港しております。これらのクルーズ船の多くは、旅行日程が五泊前後のショートクルーズが中心となっているということから、九州あるいは沖縄の港湾に寄港が集中する傾向となっております。

 一方、今後のクルーズマーケットの成熟に伴いまして、クルーズ商品の多様化が進んでいくことが想定され、この中で、旅行日程の長いロングクルーズがふえていくことが十分想定されます。さらに、外国船社による日本発着クルーズの運航の増加などもあり、今委員御指摘のような北海道や東北への寄港需要も高まっていくものと考えております。

 このような全国各地への寄港需要に対応するためには、既存岸壁の改良や岸壁の延伸であるとか、あるいはクルーズ船受け入れを希望する自治体とクルーズ船社との間の商談会の開催など、ハード、ソフト一体となった施策の展開によるクルーズ船の受け入れ環境の整備が必要であると考えております。

 また、ただいま御指摘のありました大阪港につきまして申し上げれば、大阪港のクルーズ船の寄港回数は、平成二十八年は二十八回となっておったわけでありますが、ことしは、スタークルーズ社のスーパースター・ヴァーゴが周遊クルーズを二十本運航する予定であると聞いておりまして、昨年を大きく上回る五十五回の寄港が見込まれているというふうに伺っております。

 このように、東北地方、あるいは北海道、さらには大阪港の国際旅客船拠点形成港湾といったものの指定等につきましては、今後のクルーズ動向であるとか、あるいは港湾管理者と具体のクルーズ船社との間の意向なども踏まえて判断していくことになりますが、港湾管理者とクルーズ会社との間でしっかりと連携が整っていく場合には、追加で指定していくということも十分あり得ると考えております。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 日本国内どこででも多くの外国人の観光客を受け入れるように、ぜひしていただけたらいいと思いますし、クルーズ自体、日本の国民性といいますか、余りなじみがない、どちらかというと欧米、特にヨーロッパの代表的なバケーションの過ごし方のように言われるんですけれども、これから、クルーズというか、港というか、海を身近に国民の皆さんに感じていただけるいい機会じゃないかなと思いますので、ぜひ、日本国内でクルーズ船が走り回るといいますか、そういう環境をつくっていただけたらというふうに思います。

 次に移ります。

 クルーズ船の寄港回数が増加することによっての課題というのもあるかと思います。先ほども言われました、クルーズが来て観光客がおりてくるんだけれども、その観光客の経済活動、消費活動がその地域で本当に行われるのかとか、それからまた、クルーズ船で多くの団体のお客さんが来られて、移動するのにバス等を使うんですけれども、今は、たしか二〇一六年度で百九十九万人ですから、二〇二〇年には約二・五倍のクルーズの観光客が来られる、二・五倍の数の人間が来られるということを目標にしているわけですから、その五百万人が来たときに各地域で対応できるような、そういうキャパシティーが整っているのかどうかをちょっと確認したいと思うんです。

 当然、そういう観光客がふえると、大量の観光バスの需要の増加というのも必然的に出てきますし、大都市でバスの台数の多いエリアでしたらいいんですけれども、それ以外の地域になってくると、県内の大型バスをやはり総動員していく。当然、バスが動くということは、ドライバーも必要になっていきます。今、宅配のドライバーの件なんかも含めて、ドライバー不足が深刻だというふうにも言われていますので、その辺、二〇二〇年までの今後三年間で、バスの台数及びドライバーさんの確保、そしてまた宅配も含めて、現状はどのようになっているのか、お聞かせいただけますでしょうか。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 クルーズ船による外国人の入国者数は、平成二十六年の約四十二万人から、平成二十八年には約百九十九万人と急増しているところでございます。このような新しい観光スタイルの定着、拡大を図るためには、寄港地周辺を観光するための貸し切りバス、あるいは土産品を配送する宅配トラック等のサービスの充実が重要であると考えております。

 特にバスにつきましては、貸し切りバスの営業区域が原則として都道府県単位とされておりますけれども、これにつきましては、今申し上げましたような外国人旅行者の急増を受けまして、外国人旅行者向けのツアーに使用する貸し切りバスの場合には、その営業区域をブロック単位等に拡大する、そういった特例措置を平成二十六年度から講じているところでございます。

 クルーズ船につきましては、寄港地あるいは時期においてかなり急にお客様がいっときに集まるという状況がございますので、それに対しては、今申し上げました特例措置によりまして、より広いエリアからバスを迅速に集めることで対処していくということで、これについては一定の成果を上げているものと認識しているということでございます。

 さらに、車の台数に加えまして、車を運転するドライバーにつきましては、その不足がバスに限らずトラックも含めて非常に問題になっているところでございます。二十八年度の調査によりますと、貸し切りバス事業者の七五%、トラック事業者の六三%がドライバーが不足していると感じているといった調査結果もあるところでございまして、今後の人口減少あるいは高齢化、その一方での外国人観光客の急増、こういったことを踏まえますと、ドライバーの確保というのがますます重要な課題になってくると考えているところでございます。

 これにつきましては、まず、長時間労働の是正によって仕事の魅力を高める、さらには、事業の生産性を向上させてドライバーの処遇の改善につなげる、こういった取り組みが重要であると考えているところでございます。

 長時間労働の是正につきましては、その環境整備に向けて、本年三月末に決定いたしました働き方改革実行計画に基づきまして、今後、関係省庁横断的な検討の場を設けて、関係制度の見直しあるいは支援措置を行ってまいりたいと考えております。

 さらに、貸し切りバスにつきましては、平成二十六年四月から、安全コストを的確に反映しました新運賃・料金制度を導入しているところであります。引き続き、この遵守を徹底することによりまして、生産性の向上を図ってまいりたいと考えております。

 国土交通省としましては、これらの取り組みをしっかりと進めることによりまして、若年層、女性も含めて、ドライバーの確保に取り組んでまいる所存でございます。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 本当に厳しい問題じゃないかなというふうに思います。やはり、先ほども申し上げましたように、現状から見れば二・五倍の観光客の方が来ていただくことを目標にしているわけで、その二・五倍の方が、一過性とはいえ、がっと来ると、やはりそれだけのニーズを整えていく準備ができなければ、バースも含めて整備した意味もちょっと薄れてきます。費用対効果という言葉がありますので、来ていただいた方にぜひ楽しんで帰っていただくということからも非常に大事かなと思いますし、宅配も含めてドライバーさんの労働環境というのも非常に厳しいものもあるというふうに聞いています。

 そういった意味で、働き方改革でも議論をされていますけれども、人材の確保とそういう車両の確保をしっかりとしていただいて、ぜひ取り組んでいただけたらというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 では、次に、先ほどもちらっと申し上げたんですけれども、クルーズ船が寄港したものの、観光客の皆さんはバスで別の地域に行かれて、その寄港地で消費が行われないというような場合も想定されますし、港湾地域の店舗のみで、港湾エリアだけで消費が行われ、地域全体で消費が行われないというようなこともあります。また、中国人の観光客でしたら、今、中国系の資本のお店というのもたくさんできてきています。そういうところだけで消費を行って、地元の経済に余りプラスにならないような場合も出てくるんじゃないかなというふうに懸念しております。

 寄港による経済的効果というのが、非常に厳しい想像で、そうならないことを祈っているんですけれども、その期待どおりにならないということも十分考えられる。現在、クルーズ船の寄港というのが少ない港湾では、やはりまだまだクルーズ船の誘致というのが盛んでありますけれども、誘致が成功すれば、インフラも整えて準備万端できたとしても、正直、大きな経済効果が保証されるというわけではないというふうに考えるんですね。

 このようなことも含めて各自治体はしっかりと認識をしてもらった上で、経済波及効果をしっかりと分析してやっていただきたいと思うんですけれども、自治体に対して、そういうふうな指導といいますか考えで今までやってきているのか。それからまた、本当にそういう経済効果が薄いときには、これは大きいお金をかけて整備しますので、戻るということができるのかどうかわかりませんけれども、もしそういうときにはどういうふうな対応を考えておられるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 外航クルーズ船が我が国の港湾に寄港する際の寄港地観光については、朝、港に到着した後、午前中に下船いたしまして、周辺の観光あるいはショッピングを楽しんだ後に、午後、船に戻ってきて、夕方、港を出発して次の寄港地に向かうというような流れが一般的となっております。

 例えば、今回、官民連携による国際クルーズ拠点を形成する港湾として選定されました八代港での寄港の事例を御紹介申し上げますと、下船した乗客の皆さんは、バスに分乗いたしまして、八代市内の八代神社、あるいは、旧八代城主の邸宅、庭園で、国の名勝にも指定されております松浜軒、あるいは熊本市内の熊本城や水前寺成趣園、こうしたところを訪れるツアーに参加するなど、熊本県内での観光やショッピングというものを楽しんでおられます。

 このように、クルーズ拠点となる港湾におきましては、クルーズ乗客の買い物による消費効果だけでなく、にぎわいの創出、あるいは地域との触れ合いによる文化的な交流などさまざまな効果が、特に港湾が所在する自治体を中心として生まれているものと考えております。

 ただいま委員御指摘のありました、いかに地元での消費をふやしていくかということについては、こうしたことも踏まえまして、非常に重要な観点、課題だと考えております。

 全国クルーズ活性化会議という会議で、全国のクルーズ観光を誘致しようという自治体が百二十ほど集まっている協議会がございまして、こういった場を通じまして、私どもも必要な情報提供であるとか全国のすぐれた事例なども紹介させていただいております。

 引き続き、地元の経済効果につながるような取り組みについて、しっかりと連携して対応してまいりたいと考えております。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 本当に厳しいあれなんですけれども、もしそういうことがあって、こうやって指定をしてやるんですから、そこの地域に極力経済効果が及ぶようにぜひお願いしたいな、そういう視点も頭の中に入れて、そうやって頑張って指定を受けてやっているところをバックアップするような国交省であっていただけたらなというふうに思います。

 ちょっと時間もありませんので飛ばしていきますけれども、昨年の港湾法の改正において、旅客施設の整備、運営に純粋な民間企業者の参入を促すことが真の民間活力の活用だというふうに指摘をさせていただきましたけれども、その改正により創設された無利子貸付制度の実績、また、その中でどの程度民間企業の利用があるかというのを確認させていただいてよろしいでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 昨年の港湾法改正におきまして、民間活力を活用しつつ旅客施設の整備を推進するため、民間事業者による旅客施設の建設または改良に係る費用に対する無利子貸付制度を創設したところでございます。

 現在、横浜港の新港地区におきまして、平成二十八年度から、この無利子貸付制度を活用して新たな旅客施設の整備が進められているところでございます。

井上(英)委員 たしか横浜でやられているということなんですけれども、これからまたどういうふうになるのか注視したいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 もう一点、港湾法を改正するに当たって、熊本地震を踏まえた課題というのがあります。

 六年前には東日本大震災ということで、港が本当に大々的なダメージを受けた大きい震災もあり、そしてこの熊本地震というのもありました。正直、東日本大震災からいえば六年もかかっているわけで、準備にこれだけかかったのは何でなのかというのを聞きたいのと、それから、本文で、こういう災害時に関して、港湾管理者からの要請に加え、物資の輸送の状況その他の事情を勘案して必要があると認めるときに調整を行うことができるというふうになっていますけれども、この必要があるときというのは非常に抽象的な表現で、具体的にどのような事案を想定しているのか、お教えいただけますでしょうか。

菊地政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災の際には、委員御指摘のとおり、非常に大きな地震動と、また巨大津波の来襲によりまして、東北地方の主要な港湾が壊滅的な被害を受けました。このため、港湾におきましては、航路に流れ込んできた瓦れきの撤去を行う啓開作業であるとか、あるいは岸壁の応急復旧を行うなど、こうした大きな課題がありました。これに対して、港湾管理者、国が協力して全力で取り組んだという経緯がございます。

 一方、昨年の熊本地震では、八代港あるいは熊本港の港湾の施設の被害が軽微であったということから、これらの港を中心に緊急物資や救援部隊の利用する船舶が集中し、港湾管理者による港湾の円滑な利用調整に大きな課題が浮き彫りとなったということがございました。

 今回の法改正におきましては、こうした課題を踏まえまして、非常災害時において、港湾管理者の要請に基づき、国が港湾施設の管理を行うことができる新しい制度を創設しようとするものでございます。

 なお、これにつきましては、昨年十一月に、中央防災会議のワーキンググループにおきます蒲島熊本県知事からの、国がこうした港湾の管理を行う法的な制度を整備すべきであるという御提案も踏まえたものとなっております。

 また、加えまして、先ほど御指摘のような、物資の輸送の状況その他の事情を勘案して必要があると認めるときというときの、具体的にはどのような場合かということについては、当該港湾の背後地において緊急物資が不足している中、限られた港湾に利用が集中し、海上からの緊急物資輸送が滞ることが懸念される場合であるとか、あるいは、港湾管理者が被災するなどによりまして、港湾の円滑な利用調整等の管理業務に当たることができないといったような場合が想定されております。

井上(英)委員 ありがとうございます。

 時間が来ましたので、これからまた南海トラフ等も予想されるというような現状の中で、災害に対して強い港湾というのをしっかりとつくっていただきたいと思います。

 また、クルーズ船に関して言うと、日本船社のクルーズ船、海事局も含めて、もっと日本の船社に頑張っていただきたいというふうに思いますので、そのサポートもしっかりやっていただきますようによろしくお願い申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。

西銘委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。本村伸子君。

本村(伸)委員 私は、日本共産党を代表して、港湾法の一部を改定する法律案について、反対の討論を行います。

 クルーズ船誘致そのものを否定するものではありませんが、港湾管理の公共性や、クルーズ船が寄港することによる環境や生活、まちづくりへの影響を無視するわけにはいきません。

 本法案は、クルーズ船社等の大手資本に旅客ターミナルビル等の整備費用を負担させるかわりに、クルーズ船社等に公共施設である岸壁を優先利用させる優遇策です。港湾施設を特定企業に優先利用させることは、港湾管理の公共性、公平性を損ね、港湾管理者の公的な責任を後退させるものです。これが反対する第一の理由です。

 第二の理由は、国際旅客船拠点形成計画の策定時に住民参加の仕組みがなく、官民連携国際旅客船受入促進協定についても、港湾管理者とクルーズ船社など施設所有者等のみで締結し、施設所有者等以外の意見を反映する保証がないからです。これでは、関係者や地域住民の皆さんなどの意向が無視されかねません。

 なお、災害非常時といえども、港湾施設の管理については、国に権限を移行することは抑制するべきです。

 そもそも、一九五〇年制定の港湾法は、港湾が戦時に国家や政府に利用された反省を背景とし、民主化のために、港湾管理者を港務局と地方公共団体に限定し、国が権限を持つことを排除してきました。そのことを踏まえるべきです。

 以上、反対の討論といたします。

西銘委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、港湾法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西銘委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

西銘委員長 次回は、来る十九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    正午散会


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