衆議院

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第21号 平成29年5月30日(火曜日)

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平成二十九年五月三十日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西銘恒三郎君

   理事 今枝宗一郎君 理事 岩田 和親君

   理事 中根 一幸君 理事 西村 明宏君

   理事 宮内 秀樹君 理事 津村 啓介君

   理事 本村賢太郎君 理事 佐藤 英道君

      秋本 真利君    大塚 高司君

      大西 英男君    加藤 鮎子君

      加藤 寛治君    金子 恭之君

      神谷  昇君    神山 佐市君

      神田 憲次君    木内  均君

      工藤 彰三君    小島 敏文君

      佐田玄一郎君    鈴木 憲和君

      田所 嘉徳君    津島  淳君

      中谷 真一君    中村 裕之君

      根本 幸典君    橋本 英教君

      藤井比早之君    古川  康君

      堀井  学君    前田 一男君

      望月 義夫君    荒井  聰君

      黒岩 宇洋君    小宮山泰子君

      松原  仁君    水戸 将史君

      村岡 敏英君    横山 博幸君

      伊佐 進一君    北側 一雄君

      中川 康洋君    清水 忠史君

      本村 伸子君    椎木  保君

      野間  健君

    …………………………………

   国土交通副大臣      田中 良生君

   国土交通大臣政務官    藤井比早之君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        青柳 一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (国土交通省土地・建設産業局長)         谷脇  暁君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  由木 文彦君

   政府参考人

   (観光庁長官)      田村明比古君

   参考人

   (弁護士)        三浦 雅生君

   参考人

   (旅館経営者)      永山 久徳君

   参考人

   (神戸松蔭女子学院大学教授)           中林  浩君

   国土交通委員会専門員   伊藤 和子君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  大西 英男君     加藤 寛治君

  田所 嘉徳君     神山 佐市君

  古川  康君     神田 憲次君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 寛治君     大西 英男君

  神山 佐市君     田所 嘉徳君

  神田 憲次君     古川  康君

    ―――――――――――――

五月三十日

 精神障害者の交通運賃に関する請願(穴見陽一君紹介)(第一三九九号)

 同(高橋ひなこ君紹介)(第一四〇〇号)

 同(古川康君紹介)(第一四〇一号)

 同(石田祝稔君紹介)(第一四六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 住宅宿泊事業法案(内閣提出第六一号)


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     ――――◇―――――

西銘委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、住宅宿泊事業法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、弁護士三浦雅生君、旅館経営者永山久徳君及び神戸松蔭女子学院大学教授中林浩君、以上三名の方々に御出席いただいております。

 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、三浦参考人、永山参考人、中林参考人の順で、それぞれ十二分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 それでは、まず三浦参考人、お願いいたします。

三浦参考人 御紹介いただきました弁護士の三浦です。

 私は、一昨年、政府部内に設置されました「民泊サービス」のあり方に関する検討会に構成員として指名され、また、座長代理として議論に参画してまいりました。

 今回の本法案は、この検討会で報告された報告書に基づいて作成された経緯があることから、以下、その概要と、私が考える本法案への反映の中身について御説明したいと思います。

 まず、検討会の構成メンバーなんですが、御承知かと思いますが、防災、都市計画、一般刑事法、シェアリングエコノミー等を専門とする大学教授の先生方、宅建取引法、旅行業法を専門とする実務的な法律家、弁護士ですが、そういう方、管理関係ということで不動産業界の代表者の方、それから、当然のことながら、不利益を受けるかもしれない旅館業界の代表者の方々、それから、利用者の立場ということで消費者団体の代表者の方、そういった方が構成員となって、かなり積極的な議論が行われました。

 民泊について、検討会の基本的な認識としては、インターネットによるマッチングシステムを採用して、それによって個人の遊休資産をシェアするという、いわゆるシェアリングエコノミーの一態様である、そういった観点から見るべきではないかという意見が大勢を占めました。

 そうしますと、旅館業との関係でいけば、同じ宿泊サービスではないかという疑念があるわけですが、住宅の活用という観点からいうと、やはり、類似のサービスではあるけれども異なったものだということで、単に旅館業法違反ということで切って捨てるのではなくて、新しい態様の取引として、積極的に、明確なルールのもとでコントロールしていくべきではないかというのが検討会の結論であります。

 ただ、検討会の議論の過程の中で、幾つかの心配な点、負の側面が指摘されました。私なりに整理しますと、五点ほどあります。

 一点目が、本来、宿泊のサービスを提供する事業者というのは、その事業遂行に伴って何らかの不利益があった場合には、それを当然、事業者として負担すべきはずなのですが、いわゆる違法民泊においては、宿泊者が勝手にごみを捨てる、あるいは騒音を出すということについて、その不利益を甘受せず、近隣の住民がそれを負担するという、いわゆる外部不経済の問題が生じています。

 それから、二番目が、民泊の中でテロの犯罪者が何らかの共謀を働くというような事柄とか、あるいは麻薬取引を行うというようなことが行われては困るということで、そういった犯罪の防止の問題があります。

 三点目が火災の問題であります。不特定多数の方々が使うという意味では旅館業と類似していますので、防火、消防のための措置を講ずるということです。

 四番目が感染症の予防ということです。これもやはり、不特定多数の方々が集まりますので、感染症の方がいたときに、その感染ルートをはっきりとさせる必要があるということです。

 五番目が住専地域の問題です。住宅専用地域について、住宅を活用するという観点からいきますと、論理的には住専地域でも営業を認めざるを得ないということで、それが果たして地域との整合性を保てるのかという問題がありました。

 これらについて、検討会の報告書では、そういった問題を、具体的な方法をある程度示して報告書の中に盛り込まれました。

 この五つの論点というのは、基本的には、この民泊が、いわゆるアンダーテーブルのもと、つまり違法な状態で行われているために、行政庁から実態がつかめないという前提があってこの五つの問題が生じているという関係がありますので、まず一つは、テーブルの上にのっける必要があるだろうということで、できるだけ容易な形で宿泊事業を行う方たちが法制度の上に乗っかれるようにする必要があるだろうということで、まず、住宅を持っている方の届け出という一番簡易な行政手続を採用することにしました。

 その前提で、実態把握ができるということになれば、まず一番目の外部不経済の問題については、住宅提供者が宿泊客に対して、日本のごみ出しの問題、それから住宅の使用の仕方の問題、騒音の問題等を説明して、積極的に防止策をとるべき義務を課したということです。

 それから、二番目のテロ、犯罪等の防止については、旅館業と同様に宿泊名簿の作成義務を課すことによって本人確認ができるような状態にすることで、その点は防止できるのではないかというふうに考えました。

 それから、三番目の防火、消防の関係についても、本法案の中に具体的な規定が盛られたのと、省令事項でそういった措置の義務内容を具体化しています。それから、消防法の適用においては、旅館業と同じように適用するというふうに伺っております。

 それから、感染症の抑止については、感染症が生じたときに、その感染ルートを探る必要があるわけですが、これは、先ほど言った宿泊名簿の作成によって可能になるだろうということが考えられます。

 そういった意味で、今回の法案は、旅館業法とは別の法案として宿泊サービスの提供を許したわけですが、安全面については旅館業とほぼ同等のレベルの規制を維持しているというふうに私は理解しております。

 それから、検討会の議論の中で一番問題となったのは、遊休資産とはいえ、個人の住宅を用いて宿泊サービスを提供するという業態は初めてのことなので、一体どういう要件を課したらそれが許されるというふうにすべきなのかということが大きな議論になりました。これについては、当然のことながら、民泊に参入したいという不動産業界の方々、それから既存の業界の利益を守りたいという旅館業界の利益が真っ向から対立するような議論であったわけですね。

 これに対しての検討会の考え方は、原点に戻ろうということです。つまり、住宅を活用するという法案である以上は、住宅としての事業性を超えない、事業ではあるけれども、あくまでも住宅として活用しているんだというところまでの限度を設けようということになりました。これがいわゆる日数制限の問題です。上限百八十日の程度を守っていただければ、事業性はあるけれども、なお住宅としての使用として認めても構わないのではないかという考え方です。

 それから、最後に残った論点として、地域の問題です。先ほど言った、住宅専用地域で営業を許していいのかというのが、都市計画の専門の先生方からかなり厳しい御意見が出されました。ただ、住宅の活用という前提でいく限りは、論理的に、そこはだめなんだというのはちょっと難しい話なんですね。

 ここはやはり、住宅としての管理がきっちりと行われる、住宅の管理業者の登録のところでプロの業者の方たちが入っていただいて、住宅としての管理を全うしていただく。あるいは、居住型であれば、個々の所有者の方たちに責任を持っていただくという観点。それから、地方自治体が、地域の実情に応じて区域を限定して、期間を制限することができるような条例で具体的に規制ができるだろうと。そういった形で、地域住民との調整を、最も近い行政庁である地方自治体に任せることでそれが全うできるのではないかという考えに落ちつきました。

 最終的に、この法案は、かなり利害の対立の中ででき上がった法案で、法律家の私の目から見ても相当すれすれの部分でつくられているとは思いますが、かなり考え抜かれた、検討会の考え方を、観光庁が、あるいは厚労省の方たちが、大変短い時間の中で工夫された結果だろうと考えております。

 できれば、施行後に、三年後に再度見直すという条項が附則にありますので、ぜひその段階で真剣に見直していただいて、恐らく、最終的には、民泊の関係でいけば、チェックイン手続の代行業務、あるいはリネンサービス等の清潔を図る業務の代行という新しいビジネス分野ができ上がることで、既存の旅館業の方たちも新しい分野にどんどん入っていくということが私は予想できると思います。そういう意味で、いずれは、融合した一つの宿泊業界という形になるのではないかというふうに考えております。

 以上、私の意見とします。(拍手)

西銘委員長 ありがとうございました。

 次に、永山参考人、お願いいたします。

永山参考人 ありがとうございます。私は、岡山県などで旅館業を営んでおります永山と申します。

 本日は、住宅宿泊事業、いわゆる民泊新法に対しまして意見を申し上げる機会を与えていただきましたことに御礼を申し上げます。

 現在、宿泊者や地域住民の安心、安全を脅かしている、法の目の届かない、いわゆる違法民泊の解消は、宿泊業界としてもその対応を望んでいるところで、新たな規制法がこのような形で検討されていることについては感謝いたしております。しかしながら、宿泊業を営む者として、現在の法案内容につきまして、御配慮いただきたい事項について幾つか御意見を申し上げます。

 まず、私が懸念しますのは、民泊の理念と実態が乖離していくことであります。

 民泊の理念とは、訪日客の増加に伴い、オリンピックなどのイベント時や観光シーズンなど、宿泊施設の不足が見込まれる時期に、シェアリングエコノミーの制度を活用し、有効利用されていない住宅の空室を利用することで需給の弾力化を図る、そういったことだと解釈しております。これは、観光産業に携わる私にとっても歓迎すべき考え方であります。

 しかしながら、違法民泊の現状を見ても、一般の市民が余った空室を活用するという、いわゆる家主居住型民泊は全体のごく一部にすぎません。大多数は、国内外の企業や投資家が民泊用に空きマンションを購入し、それを運用する家主不在型民泊、いわゆる投資型の民泊であります。都内に数十件の物件を抱え、ホテルと同様に大規模な集客を行っているケースも既にございます。

 パリなどの先行事例では、民泊ビジネスの解禁によって、都心部において企業や投資家が投資物件として民泊向きの物件を買いあさることによって、周辺の家賃相場が高騰して、結果、もともとの住民が減少して、地域のコミュニティーが崩壊する、そういった事例も報告されています。

 さらに、これらの民泊ビジネスの利益率は、我々ホテル、旅館業と比べて圧倒的に高いものというふうに推察できます。建築基準法や消防法にかかわる設備基準は、住宅よりも商業施設である我々ホテルの方がより厳しいものです。さらに、固定資産税の減免であったり、そういうものがある住宅を民泊に転用することによって、旅館業法上必要となる設備や、夜間警備などの人的コストも不要になります。

 先ほど、議論の中では、旅館業と同程度の安全基準を目指すということが議論されたというふうには聞き及んでおりますけれども、果たしてこれが実効性があるものか、大いに疑問を持っているものでございます。

 現に、この民泊新法の成立を見越して、大手建設会社などが、民泊利用を前提とした分譲マンション、いわゆる民泊マンションと呼ばれる物件の新築を計画しております。これは、今回の民泊新法を拡大解釈した、いわゆる共同所有の低コストホテルの建設をもくろんでいるものにすぎません。余剰資産の活用をするというシェアリングエコノミーの概念からは、新築のマンションを建てて民泊を行うということは、かけ離れた考え方ではないかなというふうに考えております。

 これについては、例えば、新築マンションにおいては新築後数年間は民泊としての登録を認めないとか、事業者が大規模に所有することなく、所有可能な物件数に制限を設けるなど、いろいろな形で、自宅の空室を提供しようという本来の善意の民泊事業者が、大規模事業者であったり投資家の考えに追いやられることのないよう、健全な形のシェアリングエコノミーの制度となるように御議論をいただきたいというふうに考えております。

 次に、民泊には用途地域制限が適用されないことに対する懸念でございます。

 新法のもとでは用途地域による制限はないため、これまでホテル営業が認められなかった住居専用地域などでも民泊が認められることになります。そこで、先述の民泊マンションといったものが新規に建設された場合、閑静な住宅地にホテルが立地するのと同じ考え方になります。既に検討されている事例として、ネームバリューを持つ高級住宅地に集合住宅を建設し、一棟丸々高級ホテルのような形態で民泊を運営するといったことや、教育施設の近隣に民泊マンションを建設し、いわゆるラブホテルのような営業を行おうと、そういった企画をしている企業がございます。どちらのケースも、既存の住民の生活や近隣の地価に大きな影響を与えることは必至だと考えております。

 対応策としては、地方自治体におきましてきめ細かな制限を設け、民泊を推進する地域と民泊を禁止する地域を明確に分けることでございますが、現法案では、都道府県や保健所設置自治体による泊数の制限が認められているのみで、制限禁止地区の設定にまでは踏み込まれておりません。全ての市町村で条例を制定可能にすることはもちろん、民泊の営業に当たっては、各地域の自治会であったり近隣住民の同意を条件にするなど、地域の実情に応じた運用条件の整備を切望するものでございます。

 次に問題だと思いますのは、地方自治体による民泊に対する規制や取り締まりの実効性、監督体制についてでございます。

 御承知のとおり、我々旅館業法下の宿泊施設につきましては、保健所を初め、消防、警察、建築指導課など多くの担当部署が定期的に立ち入り、安全と治安の維持のための指導を行っていただいております。特にスポーツイベントや国際会議の開催に際しては、施設の事前調査であったり不審者のチェックであったり、事故や犯罪を未然に防ぐ取り組みを官民一体となって行ってまいりました。

 民泊の解禁によって、我々のこれまでの努力が無になることをおそれております。犯罪を計画する者は、ホテルでなく民泊を利用しようとすることは明らかになるからでございます。昨年のパリ、先日のロンドンでのテロも、犯人グループが他人名義で民泊を予約し、潜伏していたという報道もございます。

 例えば、現在、ホテルでは、宿泊者のパスポートの提示と対面での本人確認が義務づけられております。さらに、フロントで二十四時間の監視を行うことで、予約者以外の施設への出入りを防いでいます。

 しかし、民泊では、対面確認までは求められておらず、予約時にインターネット上で宿泊者のパスポート画像を登録するなど、そういった簡易な方法が想定されております。しかし、対面確認がなければ、実際に本人が宿泊するかどうかを確かめることはできません。しかも、利用する人が利用人数を偽って大勢で宿泊するケースであったり、そういったものまでをチェックすることは不可能であり、テロや不正の温床となる可能性が残っております。

 この点に関しましても、インターネット上の取引であったとしても、宿泊時には、地域や管理業者の責任において、対面での本人確認を行う必要はあるというふうに考えております。

 次にお話ししますのは、地方自治体の負担についての懸念でございます。

 例えば、京都市における宿泊施設数はおおよそ千件でございます。しかし、調査によれば、民泊の件数は既に二千七百件ございます。つまり、これは、民泊を解禁して、民泊事業者としてこの全てが登録した場合に、今、監督省庁が千件を監督しているところが、一気に三千七百件を監督しなければならないということにほかなりません。数年後には、民泊はさらにこの数倍に膨れ上がるという試算もございます。しかも、民泊のほとんどは家主不在型の民泊でございますので、査察にも時間がかかることが想定されます。対応するためには、地方公共団体の担当職員を数倍にふやす必要がございます。

 法の運用に当たりましては、民泊事業者に、開業時の届け出だけでなく、住民にも閲覧可能な定期報告を義務づけたり、届け出に有効期間を設けて更新制にすることなど、事業の透明性を高めていただきたいというふうにお願い申し上げます。

 最後に、最も懸念されますのが、民泊サービスの年間提供日数の上限を百八十泊と定義している件についてでございます。

 この捕捉をどのように行うのか、具体的な方法についてはまだ提示されておりません。仲介事業者サイトの責任において制限を設けるなどの案が出ておりますが、民泊事業者が複数の仲介サイトに登録してしまって、複数で運用してしまえば、その制限も意味をなしません。また、二回目以降、利用を希望するリピーターとオーナーが直接取引をして、物件所有者の知人だと偽って民泊営業をした場合にも、これをチェックする方法は現在ございません。

 近隣住民や地方自治体の監視のもとで百八十泊未満を厳守させるための仕組みと、違反した民泊事業者への登録取り消しも含めた厳格なルールの構築を強くお願いするものでございます。

 また、民泊サイトを運営する仲介業者に対しても、例えば、未届けの違法民泊物件を今後も同時に取り扱うことや百八十泊以上の販売を行うことも考えられますので、その場合も、法律の運用において、民泊仲介業者の営業停止や登録取り消しを含めた厳格な措置を要望いたします。

 最後に、旅館業法との関連性についてもお話をさせていただきたいと思います。

 現在、旅館業法の改正も国会に提出されていると聞きますが、この民泊法案が施行されても宿泊者や住民の安全が問題なく保たれるのであれば、旅館業法はそもそも不要ではないかという議論もございます。何より、この両法が、民泊法案と旅館業法の改正が同時に施行されなければ、年間百八十泊未満の宿泊事業に関しては、二つの省庁にまたがった二つの制度が混在することになってしまいます。

 宿泊業全体での平均稼働率は現在六〇%程度でございますが、地方であったり、旅館、リゾートホテルであったり、そういった業態に絞りますと、大多数が五〇%未満の稼働率になっております。ということは、我々旅館施設で稼働率五〇%未満の施設が、今後、施設を住宅として届け出し直して、旅館業法を返上することによって、安全面の基準の低い民泊に転業することが可能だというふうに考えております。こういったことによって、固定資産税の減免などを目的とした転業がふえてくることも想定されるというふうに考えております。

 不公平緩和のためには、既存の宿泊施設が民泊に転業することに関してどのように考えられるか、そういったことも考慮されて、逆に、大規模な民泊事業者が旅館業法上の許認可をとらなければならないような取り組み、そういったものも含めて御考慮いただきたいというふうに思います。

 先生方におかれましては、宿泊者の安心、安全や地域住民の治安の維持、不安の払拭を最優先にお考えいただき、シェアリングエコノミーの理念がねじ曲げられることなく、我々宿泊業と共存可能な制度となるよう、御討議をお願い申し上げます。

 以上でございます。(拍手)

西銘委員長 ありがとうございました。

 次に、中林参考人にお願いいたします。

中林参考人 中林浩と申します。

 都市計画学を専攻しておりまして、京都・まちづくり市民会議というような団体で、京都のまちづくりにかかわっていろいろなことをしております。

 民泊の急増というのが町全体のあり方に対して大きな問題を投げかけているということで、意見を言わせていただきます。

 観光という営みは、そもそも、人間にとって非常に崇高な営みで、最高の自己実現の行為の一つだというふうに思っております。

 しかし、今、残念ながら非常に大きな問題となっているのは、外国人観光客、とりわけアジア諸国からの観光客が急増したために、その人々が迷惑な存在だというふうに地域から思われていることです。観光に来ている人たちが迷惑だというような状態は、観光という営みにとって決していいわけがなく、長続きするはずはありません。

 基本的には、私は、外国人観光客に問題があるのではなく、日本のシステムに問題があるということをまず最初に述べておきたいと思います。

 空き家だったところが、宿泊施設、民泊になる、これが蔓延してきているという状況で、私は京都について述べるわけですけれども、この中では、京都市民もホスピタリティーを発揮するような余裕がない状態が生まれております。ですから、ここをどう考えていくのかということが重要で、地域がホスピタリティーを発揮できるというのは、ある程度長い時間をかけて秩序ができてくるものというふうに思われます。今の急増する民泊の状況では、なかなかそうはなっていないということを申し上げておきたいと思います。

 観光政策というのは非常に多元的な問題で、いろいろな複合的な視点から検討しておかなければならないので、民泊から少し離れたことも少し申し上げておきますと、私たち京都のまちづくりの運動は、京都の景観や文化財をよく守ってきたというふうに自負しております。これが、やはり京都の現在の観光の人気の土台にある。

 ところが、政策自体がこの魅力を損ないかねないというような状況も起こっているわけです。

 例えば、世界遺産の二条城内に大型バス駐車場が建設されようとしている。あるいは、世界遺産の下鴨神社の中に富裕層マンションができようとしている。また、京都の観光の一番中心である東山の中にある清水小学校、また、都心、繁華街にある立誠小学校、これらが廃校になりました。廃校になった跡が、一般市民の利用できる施設になるならまだしも、これがホテルにかわろうとしているというような状況も起こっております。

 まず、観光の出発点である、地域のすぐれた景観や文化財を損なわない、こういう観点が非常に重要かと思います。

 非常に俗な言い方をしますと、観光ブーム、観光バブルのうちに、業者も行政も一もうけしておこうというような観点が目立つというのが現在の京都での状況です。

 さらに、いろいろなことを指摘しておかなければいけないのですが、例えば、交通の問題というのも観光については随分大きい問題です。これらの問題も、やはり宿泊施設の問題と連動して解決すべき問題です。

 しかし、きょうは民泊のお話ですので、民泊の急増の中でさまざまな問題が起こっているということをまず指摘したいと思います。

 今、永山さんからもお話がありましたけれども、非常に静かな居住地の中に民泊が入ってきて、ごみと騒音に住民が悩まされる。これは、夜間にいろいろなことが起こる。今まで静かだったところがそういう場所に変わるというのは、住民にとって非常に不安なことです。

 また、よく言われるのは、所有者が遠隔地にいて、何かトラブルがあったりしたときに連絡がとれない、こういうことが頻繁に起こっております。

 また、道を聞かれたり、場所がわからないというような旅行者とも頻繁に出会い、住民は本当に不安な中で生活をするという地域がふえております。それに対して、行政の方も人手が足らないほど民泊がふえております。

 また、無届けが多いのですが、これも永山さんがおっしゃいましたけれども、仮に簡易宿所としての届けが出されていたとしても、例えば帳場が段ボールでつくってあるだけのようなもので、その届け出が行われる、そういうようなことも起こっております。

 日本には八百万を超える空き家がふえているのですけれども、これらの空き家の多い京都の地域というのは、同時に、文化財や自然環境が卓越しているところがあります。ですから、こういう空き家の問題、そして、地域が疲弊しているところに民泊が入ってくるということが重なっております。こういう問題をどう考えるのかということは、非常に重要な問題だと思われます。

 ですから、空き家があるからといって、最も収益性が上がることを追求するという方針で民泊がふえるならば、京都は、地域が本当に崩壊する危機に立っているということが言えると思います。

 そして、こういう問題に対してどんな仕組みがあるかということなんですけれども、防災、防犯、衛生の観点から見ても、これまでの旅館業法の充実、試され済みの方策、行政が習熟している仕組み、この土台の上に新しい政策が展開されるのがいいというのが私の意見です。こうした非合法の民泊が蔓延している中で、適切な規制なしに合法化する危険というのは大きいと言わざるを得ないと思っております。

 また、本法における施行令がどのような内容になるのか、あるいは、自治体の条例でどれだけいろいろな重要なことが決められるのかということはまだよくわからないところで、ここを十分議論する必要があるのではないかと思われます。

 とりわけ京都市域では、他地域で見られないほどの状況が起こっているわけです。

 京都の場合は、都心に人がたくさん住んでいて、そのコミュニティーがしっかりしているというところに全体としての魅力があったわけですけれども、そういうところの民泊が地域を壊しかねないという状況になっております。

 京都だけではなく、東京は東京の、大阪は大阪の独自の施策がどのように展開できるのかという議論が重要ではないかと思います。

 近年は、諸外国の観光の盛んな大都市でも、こうした民泊に近いようなものは、どちらかというと規制する方向で動いているので、そのことにもよく学ぶ必要があるのではないかと思われます。

 問題の焦点は、やはり家主不在型の民泊にあるのではないかと思います。

 ですから、地域住民が宿泊管理業者や仲介業者、また宿泊者が事業者とどのように連絡がとれるのかというようなことをしっかりとつくらない限り、民泊は非常に危険なものになっていくのではないかと思わざるを得ません。それを保証する自治体行政がどう展開されるのかということが重要なところだと思います。

 また、事業者と地元住民の話し合い、合意のもとで民泊ができていくというような状況が生まれない限り、決していい宿泊施設は生まれていかないというふうに思われます。それを逆に言うと、住民組織がしっかりしていて事業者と話し合いを重ねているところでは、それなりの幾つかの秩序が生まれてきているというような事例もあります。

 そして、もう一つ指摘しておかなければいけないのは、民泊の中で、もちろん、今言いましたように、京都の路地の中の戸建て住宅が民泊にかわっていく問題というのも非常に大きいんですけれども、集合住宅、分譲マンションの中に混入する民泊というのは、さらに複雑な問題を引き起こしかねないというふうに思われます。これは極力規制すべき問題ではないかというふうに思います。

 私は、こういう外国人観光客の急増というのは東京オリンピックまでの一過性のものであるという議論もありますが、必ずしもそうではなくて、アジア諸国の経済力の発展を見ると、まだまだ日本に来る観光客はふえるだろうし、その人たちに日本の誇るべき地域を見せていくということは当然発展していくべきことだと思います。

 そのときに、今、地域に歓迎されないような民泊の存在があるというのは、観光にとって長期的に見ても本当に不幸なことで、これは、長期的に見ると、経済的にも豊かになる道であるというふうには思われません。

 ですから、宿泊施設のあり方を、もっとみんなで知恵を出して乗り切っていくということが重要なのではないかな、やはり、観光の土台には、その地域の人々が楽しく住んでいて、ホスピタリティーを発揮できる形での宿泊施設ができていく、そういう方策を議論の中で組み立てていくべきだというふうに思っております。

 以上です。(拍手)

西銘委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 自民党の中谷真一でございます。

 三名の参考人の皆さん、きょうはありがとうございました。民泊とはどういうことなのかということが大体わかったということではないかなというふうに思います。ちょっと深掘りをしてお聞きをしていきたいというふうに思っております。

 まず最初に、三浦参考人と永山参考人にお聞きしたいのです。

 永山参考人が言われていました、旅館業と、それに対して民泊というのが出てくるということでありますけれども、この民泊というのは、今、違法民泊が非常にいろいろな問題を引き起こしているという意味では、私は、ある一定のルール化をして管理するということは、三浦参考人が言われていたとおり、必要なことだというふうに思っています。

 ただ、今までの既存の旅館業に対してのいわゆる補完措置ということでこの民泊ということなのかなというふうに思っているところでありまして、それについて、あり方検討会で、民泊ということが旅館業に対してどういう位置づけで議論されたのかというところを三浦参考人にお聞きしたい。

 あと、お二人にお聞きしたいのは、旅館業と今回新設する民泊というものが競争の土台にのったときに、旅館業が不利な競争をさせられることになってはいけないというふうに私は思うんですよね。そこをどう調整していくのかというところを、三浦参考人はあり方検討会でどういう議論をされたのかというところと、ここが不利なんだよ、ここのところが一番問題だというところを永山参考人には教えていただきたいというふうに思います。

三浦参考人 お答えします。

 まず一つが、旅館業の補完措置なのかどうかという点なんですが、これは、宿泊施設の需給との絡みという議論だろうと思います。

 確かに、検討会では、需給関係が逼迫しているという背景で議論されています。ただ、需給関係が逼迫しているから民泊を許すべきだというストレートな形にはなっていません。

 なぜかというと、先ほどからいろいろ民泊の弊害を言わざるを得ないので言っていますが、片方で、圧倒的多数の支持者がいるわけですね。民泊を利用したいという外国人旅行者あるいは日本の旅行者もいるわけです。そういった方たちがなぜ民泊を利用するかといえば、やはり安いだけではないんだろうと思うんですね。

 そういった意味で、先ほど言ったシェアリングエコノミーだからいいという意味ではなくて、そういった新しいニーズが出てきている、そういった意味で積極的に位置づけようというのが検討会の考え方というふうに私は理解しています。

 もう一点、自由な競争というのは当然必要なわけです。

 ちょっと誤解があるのかもしれませんが、民泊は、旅館業をやりやすくするためにつくる法律だというふうにお考えになっているとすれば、その辺はちょっと間違いで、やはり、先ほど言ったような犯罪の防止とか旅客の安全の面については、法案の中にも、旅館業と全く同じように、宿泊名簿を作成しなくちゃいけないとか、あるいは衛生設備をきっちりと備えなきゃいけないとか、あるいは消防法の適用であればイコールの適用になっているわけですね。そういった意味では競争条件としては同じだろうと思います。

 ただ、問題は、自宅を活用するという部分があるので、ある程度、コスト的には民泊の方が安くなるのかもしれません。ただ、それは、その分、旅館の方がリッチなサービスを提供するということで、競争の側面が違うということで検討会の方では理解しているというふうにお考えいただければと思います。

 以上です。

永山参考人 ありがとうございます。

 御指摘のとおり、旅館業と民泊の運営者については、本来であれば競争する立場にはないというふうに考えておりますし、お互いを補完し合える立場になるべきだというふうに考えておりますけれども、先ほども申し上げたとおり、空き家を活用して、繁忙期に民泊を活用するということであれば、旅館の補完的な立場にはなるんですが、最初から民泊目的で投資をして新築マンションを建てたりマンションの部屋を購入したり、そういった方にとっては、もちろん投資効果を追求されるわけですから、これは、余剰資産の活用ではなくて、最初から利回りであったり稼働率を追求したビジネスとしての商売になると思います。その場合には、どうしても我々旅館業とは同じ土俵で戦わざるを得ない、そういったケースが出てまいります。

 先ほど三浦弁護士の方から、消防その他の安全基準はホテルに準ずるものだ、同じものだというふうには説明がございましたけれども、実態的には、マンションの規格と旅館の規格というのはいろいろなところで異なるものがありますので、今から大規模事業者が最初からホテルのようなマンションを建てて運用するといったときには、明らかにこれはバッティングする、当然そういった事業になるというふうに考えております。

 個人の民泊事業者と、大規模な事業者がマンションを一棟建てて運用するといったものは、やはり分けて考えていくべきではないかなというふうに考えております。

 以上です。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 私は、しっかりと共存していくという意味では、位置づけをある程度分けていく必要があるのかな、この二つを競争させて、法律がいわゆるイコールではないとかいうことになっていくと非常に問題なのかなというふうに思います。そこのところはどうやって運用でやっていくかというところだと思うんです。

 それで、今、そういう運用に関して、永山参考人がさっきおっしゃいましたけれども、いわゆる民泊をやるとしたら、物すごい数になるんだろうということを言われていました。エアビーアンドビーに登録されているのは一万数千件とも言われていまして、これをどうやって管理するのかということは、行政のパワーとしても物すごい問題だと思います。

 ここのところ、この運用に関しては、あり方検討会ではどういう検討をされたのか。もちろん安全面が一番だと思いますけれども、そういうところをどういうふうに検討されたのかというところを三浦参考人に教えていただきたいと思います。

三浦参考人 お答えします。

 検討会では、そこまでの細かな議論は率直に言ってありません、方向性を示すという意味での検討会ですので。

 ただ、個人的には、シェアリングエコノミーの本質は電子データでの取引だということですね。先ほど永山参考人が、リピーターの方が直接取引をする事例もあるんだということですが、そういった取引もあるとは思うんですが、数的には非常に少ないと思います。

 そうなると、あとは電子データでのやりとりですので、例えば、今、観光庁の方あるいは厚労省の方でお考えになっているのは、届け出、登録も全てインターネットで行うというようなこともお考えになっていると思います。そうすると、電子データの照合でかなりの数の情報を把握することができるので、今までとは全く違った形での行政規制が可能ではないかというのが私の意見です。

 以上です。

中谷(真)委員 これは、さっき永山参考人が言われていましたけれども、本当にそれで確認できるのかという問題が僕もあると思います。フランスの例とかもありますのでね、テロの拠点になっていたとか。こういう例もありますので、どうやって本人確認していくかというところは、本当にそんな簡易にしていいのかなと非常に思うわけであります。そこのところは今後の議論になっていくのかなと。先生方が質問されると思いますけれども、そこのところは観光庁としてどう考えていくのかなということは重要かなというふうに思っております。

 最後に、中林参考人にお聞きしたいと思います。

 京都でさまざまな行政に対する御支援をいただいているというところでございますが、今、京都でもかなり観光客の皆さんが膨らんできていると思います、海外から来られている人たちが。それを、そうはいっても、観光地としてどう吸収していくかというところは私は非常に重要だと思います。

 では、今の旅館、ホテルだけでというふうになると、多分かなり価格が高騰しちゃうんじゃないかな、それをどう吸収していくかというところが重要だと思うんですが、今までの施策の上にあるべきだというような御発言をされたんですけれども、それを教えていただきたいと思います。

西銘委員長 時間ですので、中林参考人、簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

中林参考人 今までの施策のもとにあるべきというのは、居住者あるいは宿泊者の安全を考えると、旅館業法の延長線上にあったらいいということです。

 それから、旅行客をどう吸収していくのかという問題については、やはりゆっくりと秩序ができなければ観光地というのは発達しないわけですので、今のような、少なくとも居住地で迷惑がられるような民泊についてはきちんと規制していくという方向の中で吸収する。吸収するというのは、いろいろ、宿泊地域をもっと広げて考えるとか、滋賀県とか、京都市以外のところにも宿泊施設をつくるのかとか、そういう議論の中で考えていくべきものだろうというふうに思っています。

中谷(真)委員 大変勉強になりました。ありがとうございました。

西銘委員長 次に、佐藤英道君。

佐藤(英)委員 おはようございます。公明党の佐藤英道でございます。

 参考人の先生方、本日は、貴重な御意見、大変ありがとうございました。

 この法案を審議するに当たりまして、私自身も、公明党の国土交通部会といたしまして、いわゆる国家戦略特区の東京都大田区の現状について、民泊を視察してまいりました。関係者の方々にさまざまな御意見や御感想を伺ってきたところでございます。

 視察前には若干懸念していたこともございましたけれども、安全や衛生面の問題や近隣トラブル等が生じていないということも伺いましたし、また、適正に管理がなされれば問題は生じないということも確認をしたところでございます。

 また、大田区の特区民泊では、先ほど三浦参考人がチェックインの代行サービスのことをお話しされておりましたけれども、この地域でも、旅館にフロントでの本人確認業務を委託するなどといった旅館との連携ができていることや、また、大田区では、比較的長期の滞在をする外国人の旅行者の方々は特区民泊を利用されておりました。また、短期滞在の旅行者は旅館を利用しているという特性があり、特区民泊と旅館がすみ分けされて共存できているということを伺いまして、非常に参考になったところでございます。

 その上で、三人の参考人の方々に、まず冒頭お伺いをさせていただきたいと思います。

 私自身、大田区を視察して得られた教訓で、特区民泊を営む方々の情報を、大田区、つまり行政が把握可能とするとともに、大田区が、安全、衛生面の確保、近隣トラブルの防止等のために守るべきルールの整備を行えば、問題を起こさず適切に管理できるということでございました。

 このたびの本法案では、事業開始前の行政への届け出の義務づけと玄関などへの標識の掲示義務を課すことで、行政が把握可能となるだけではなく、民泊のいわゆる周囲の近隣の方々にも、合法なのか非合法なのか、判別が明確になり、行政への通報、監督、取り締まりが進むと思われます。また、本法案を見る限り、大田区が定めていた安全や衛生、近隣トラブル防止の規制も規定しております。

 したがって、私には、このたびの法案を整備しないことの方が、安全や衛生の確保や、近隣トラブルにつながり、不明な闇民泊をますます増加させ、既存の宿泊業への影響も拡大させてしまうのではないかと考えておりますけれども、参考人の方々の御見解をそれぞれお聞かせください。

三浦参考人 お答えします。

 私の考え方、それから検討会の考え方も、委員と全く同感です。

 先ほど申し上げましたが、違法民泊がこれだけ蔓延したのは、金もうけの動機もあることはあるとは思いますが、それに応じたニーズがあったということなんですね。そのニーズに対して、やはり行政なりが対応していく必要があるということです。

 アンダーテーブルの取引を、何しろテーブルの上にのっけていく。そのためには、委員がおっしゃったような簡易な届け出と標識の設置義務といったようなことで、規制対象として十分可能になってくるのではないかと思います。

 以上です。

永山参考人 ありがとうございます。

 私も先生と同意見でございまして、全く法整備がなされない状態でありますと、闇民泊が減ることはないでしょうし、横行することを我々としても許すことはできないというふうに考えております。

 ただ、行政がそこまで監督できるかという部分に関しましては、先ほどのごみ出しであるとか、違法民泊かそうでないかという判別、そこまでは可能かとは思うんですが、先ほど私が申し上げましたとおり、では、年間百八十泊、これが、行政で果たしてそれ以内であるということを判別できるかどうかというと、大変疑問がございます。

 先ほど、システム上で解決ができるのではないかというふうに三浦弁護士は申し上げましたけれども、私は、逆に、例えば、では複数のインターネットサイトが、このサイトは何泊提供した、このサイトは何泊提供したといった情報を行政に出すかといえば、それはまだそこまでの仕組みはできないというふうに考えております。

 そんな中で、百八十泊以内といいながら、事実上通年営業してしまうとか、そういったところまでの管理は不可能ではないかなというふうに考えております。

 以上です。

中林参考人 大田区は、百万人近い人口を持つ大きな自治体でありますけれども、そこは最初の特区だということで、モデル事業のように行政が頑張られて、問題が起こらなかったとか、いろいろなシステムをつくり上げたということがあったのではないかと思います。

 ただ、こういう民泊で懸念されるような問題というのは非常にまれにしか起こらないことでなければならないので、しかし、問題は、火災などはまれにでも起こってはいけないわけで、この大田区の例で一概に民泊はうまくいくというふうに私は思いません。

 例えば、京都市なんかは、もっと、恐らくその数倍の規模の違法民泊があるのではないかと思いますし、行政の方も所在地さえつかめないというような、外国人が泊まるのに行政がどこにあるかわからないというのは不思議な話ですけれども、そういうことさえ起こっている状況で、必ずしもこの法制化が安全な民泊をつくり出すというふうには私は考えません。

 以上です。

佐藤(英)委員 ありがとうございます。

 それでは、三浦参考人にお伺いさせていただきたいと思います。

 本法案において、民泊については既存の宿泊業に課せられている安全、衛生等の規制とコストが軽減されるために、ホテル、旅館の新設より民泊専門の投資型マンションが多く新設されるのではないか、旅館業から民泊に大量に移行していくのではないかという指摘があります。

 しかし、本法案を見る限り、安全や衛生の面の規制も課されていると思いますけれども、民泊は既存の宿泊業よりも規制とコストは軽減されている法案と言えるのか。また、参考人の御意見を伺いたいのでありますけれども、あわせて、新築マンションを一棟丸ごと民泊専門とすることは、本法案の定義は、住宅宿泊事業であると認め、営業できる内容となっているのか、それともなっていないのか。こうした法案にさまざま取り組まれてきた三浦参考人にお伺いしたいと思います。

三浦参考人 お答えします。

 検討会では、先ほど申し上げたように、宿泊客の安全面について、あるいはテロ防止等の関係については、やはり旅館業と全く同様の形で規制しないといけないという認識で、そういった方向で議論がなされて、報告書ができ上がっています。本法案でも、私が見る限りでは、その部分については全くイコールだと思います。

 それから、新築マンションを一棟で民泊に転用できるかという議論なんですが、まず一つが、百八十日の日数制限というのは、届け出住宅ごとの日数制限ではなくて、事業者ごとの日数制限なんですね。そうすると、一事業者が一棟のマンションを持つと、そのマンションが例えば五十室あるとすれば、その五十室の一戸一戸が埋まれば、一泊として数えられることになるんですね。そういう意味でいけば、かなり限定されるということ。

 それから、もう一点、旅館業の方たちが転業するのではないかというお話なんですが、住宅という前提での法案ですので、住宅というのは、当然のことながら、トイレ、お風呂、台所といったものがお部屋の中にあるという前提なんですね。そうすると、今の日本の旅館は、部屋の中には台所までは普通ありませんので、個々の部屋を民泊に転用するというのはまず不可能だということになって、そうすると、厨房を台所だということで、一棟全体が一つの届け出住宅というような届け出があるいは可能かもしれませんが、そうなるとコスト的には難しいので、最終的にそういった懸念はないというふうに私は考えております。

 以上です。

佐藤(英)委員 では、最後の質問にいたします。

 三浦参考人に引き続き。

 大田区の視察経験から、宿泊者のニーズと宿泊需給、民泊の立地と周囲の状況など、民泊をめぐる状況は、都市と地方、民泊の立地場所の土地利用状況など、地域によって異なってくると思います。

 このため、私は、自治体の役割が重要と考えており、自治体が、地域の実情を踏まえつつ、生活環境の悪化の防止の観点から、エリアを定めて民泊の実施期間を規制できるといったきめ細かい制度設計が必要と考えますけれども、本法案はこれに対応した内容となっているのかどうか、お伺いしたいと思います。

三浦参考人 お答えします。

 冒頭に申し上げたように、地域と住民との調整というのが一番重要な話であって、中林参考人もおっしゃったように、地域と共存できないような民泊というのは最終的には滅びるだろうと思います。

 そういう意味で、本法案では、先ほど言った日数制限百八十日を上限としながらも、地域を定めて、ある期間で、地方自治体がその地域地域ごとの実情に応じて規制をかけていくということは可能になっていますので、委員のおっしゃられた、いわばきめ細かな対応はなされているというふうに私は考えております。

 以上です。

佐藤(英)委員 ありがとうございました。終わります。

西銘委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 民進党、秋田県出身の村岡でございます。

 きょうは、三人の先生方、ありがとうございます。

 それぞれのお立場と、また、三浦先生は検討会の中でもやられたということで、いろいろなそのときの問題点の指摘もあってこのような法案につくり上げられたと思いますので、その点をお聞きしたいと思います。

 また、旅館業者として、永山参考人には、ホテル、旅館をやっている人たちが恐らく、ホテル業や旅館業をやるというのは、相当な規制の中でつくり上げて宿泊施設を経営して、そして、地域に安心、安全を与えて、信頼されるホテルと。そういう意味では、法案に対して非常に大きな不安があると。また、お客様、近隣住民に対してもあるということでお聞きをいたしました。

 そしてまた、中林参考人には、民泊でのいろいろな不安というのは、決して特区だけでやったときのほんの少しではなく、多くの不安が出ているということの中でお聞きしましたので、その点についてお聞きしたい、こう思っております。

 まず初めに三浦参考人にお聞きしますが、検討会の中で、旅館、ホテル、それから民泊、いろいろな区別の中で、安心、安全のために民泊の方にもしっかりと規制をかけていったということはお聞きいたしました。そして、最後のお話の中で、将来的には旅館、ホテルの方々と融合していくようなビジネスになった方がいい、こういうようなことも言われましたけれども、その点は検討会では話し合われたんでしょうか。

三浦参考人 お答えします。

 融合というところまでは私の勇み足ですが、検討会で考えられたのは、当然のことながら、民泊の方は、宿泊類似のサービスとはいっても、旅館業とかなり似通ったところですので、ニーズ的には場合によっては重なる部分があるだろうと。

 そういう意味で、イコールフッティング、仮に、永山参考人がおっしゃるように、この民泊法案が旅館業法に比べて規制が緩いというふうに旅館業界の方がお考えであるとすれば、それは、それなりにその声を国会に届けていただいて、旅館業法の中でもう少し規制緩和すべき点があれば、それはきっちりとイコールフッティングすべきだというのが検討会の立場です。

 以上です。

村岡委員 次に、永山参考人にお聞きいたしますが、今、先生も言われましたけれども、融合までは検討会では言われていないと。そういう意味では、検討を大分かかってしているときに、旅館、ホテルでも、いろいろな御意見が、政府、また法案づくりの検討会の方にも届けられたと思います。

 例えば、これを融合していくような方向の中で、逆に、旅館、ホテルの人たちも、規制の部分ではここはしっかりと規制してほしい、そういう意味でのかかわり方というのはどんなものなんでしょう。

永山参考人 ありがとうございます。

 私、旅館経営者としてのスタンスは、やはりイコールフッティングで正しい戦い方をさせていただきたいということでございます。

 その考え方でいうと、現在、御指摘のとおり、旅館業法には不条理なものであったり厳し過ぎるもの、そういった規制がまだまだたくさんあるというふうに思っておりますので、そういった中で、新しくできる民泊新法が今よりは緩い規制のもとでスタートするということには大変な懸念というものを感じております。

 とにもかくにも、同じ土俵であれば、今後、融合であったりそういったものは図れてくるというふうには考えるのですけれども、このままであれば、先ほどから申し上げているとおり、旅館業というものがやはり著しく不利に思えてしまうところもたくさんございます。

 以上です。

村岡委員 中林参考人にお聞きします。

 この民泊で、やはり問題点というのは大分浮き上がるので、声も大きくなると思います。

 現実には、宿泊する場所が不足している、そして二千万人を超える外国人が来ている。その中で対応していくときに、地方は稼働率が悪いのは確かにそうなんですが、都会は、その宿泊客に追いついて、ホテル数、また旅館数が少ないことも確かです。

 こういう面に関しては、民泊じゃなく、何か違うことを利用するということの中でのアイデアとか、そういうものがあれば教えていただければ。

中林参考人 先ほども言いましたけれども、地域の中にもいろいろな場所があるわけです。

 京都は確かに、かなり集中しているところには宿泊客というか観光客もどっと押し寄せている。しかしながら、もう少し分散するということもあるわけですし、それから、宿泊施設についても、もっと分散するような手だてというのはいろいろな方策の中で考えるべきだろうと思います。

 ただ、言えることは、今のような状況で、京都に起こっている状況というのはなかなかイメージしにくいところがあるかもしれませんけれども、まず、きちんとした安全な、地域から喜ばれる宿泊施設をつくり、それから、キャパシティーに見合った交通機関を整備する。そういうものはもう一度規制するところから始めないと、地域がいろいろな形で壊れていくわけですから、そちらの方から見れば、ふえてきた宿泊者をどうやって吸収するのかという論理からはなかなか出てこない問題ではあるかと思いますけれども、いい宿泊施設をつくるという方から考えていく方策が重要なのではないかというふうに私は考えています。

村岡委員 永山参考人にお聞きします。

 先ほど、民泊の業者の方々といいますか、民泊をする方、そして旅館とかをしている方、規制とか、安全面、また経営していく意味で、いろいろ不利な条件がある。

 例えば、これはもちろん安心、安全が大事ですけれども、北海道から沖縄までホテルや旅館があるわけですけれども、規制というのは全てが全国一律で決められていて、実は、その地域によってはそこまで必要ないんじゃないかということも私もよくお聞きします。

 そういう意味では、ホテル、旅館業の方でも、ここは規制が厳し過ぎるんじゃないかということで考えていらっしゃることはありますか。

永山参考人 ありがとうございます。

 まず一番に思いつきますのは、旅館業法上で、我々は、宿泊者を拒否してはならない、原則的には拒否してはならないということがございます。ですので、宿の実態に合わせて、宿のキャラクターに合わせて、こういったお客様に来ていただきたい、こういったお客様に喜んでいただきたいといった選択が我々の方ではできないということがまず真っ先に思いつくところでございます。

 もう一つは、先ほど申し上げましたように、用途地域の制限等が我々は重なっておりますので、ほとんどの地域で旅館、ホテル業を営むことができません。ですので、先ほど言ったように、ブランド力のある高級住宅地であるとか、学校のそばであるとか、そういったところでも、本来であれば、風致を乱さずに、安心、安全を保った上で、我々として地域と一体となった宿泊業が営める可能性のあるエリアもございますけれども、それが我々には認められずに、今回の民泊であればそれが認められるというのは著しく不公平ではないかなというふうにも考えております。

 そういったことで、我々の中でも意見を出させていただきたいと思いますが、もっと旅館、ホテル業が夢のある商売になるように御検討いただきたいというふうに思います。

村岡委員 最後に、三浦参考人にお伺いします。

 今、永山参考人からもお話がありましたけれども、ホテル、旅館業もやはり規制が厳しいという認識が多分経営者の方々にある。そういう意味では、民泊を進めていく上で、先ほどは、住宅街には民泊はだめだというと論理的に合わないと。というと、この両者の部分の融合とかというと、何か規制緩和が必要だとは考えておられますでしょうか。

三浦参考人 検討会でも、今、永山参考人が御指摘になった旅館業法第五条の契約締結義務については、やはり撤廃すべきだという議論が大勢を占めています。

 ただ、撤廃の仕方なんですが、法律から削除するか、あるいは、正当な理由がある場合には契約しなくてもいいという形にするかというのが議論が残っているところで、それは、今回の検討会では旅館業法の改正が主目的ではありませんので、意見としては載っております。私も賛成です。

 それから、用途地域に関しては、やはり旅館業者の方が提供する宿泊サービスというのは、量的には民泊のサービスよりも大きくなってしまうので、その観点からいうと、都市計画法上の規制の違いが出てくるのは、私はやむを得ないと思っています。

村岡委員 三人の参考人の先生方、ありがとうございました。

西銘委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 本日は、民泊を解禁する法律案につきまして三人の参考人の方々に貴重な意見を述べていただきまして、まことにありがとうございます。

 初めに、中林参考人に伺いたいと思います。

 京都での民泊における近隣トラブルについてもお述べになられました。騒音の問題だとかごみの問題だとかですね。

 やはり観光政策というのは、訪れてよしということとあわせて、住んでよし、やはり住民の皆さんのコミュニティーを損ねるようなことがあってはならないと思いますし、中林参考人が述べられたように、何か訪日観光客が迷惑な存在と思われるようなことは、やはり日本の観光政策にとってもゆゆしき問題だというふうに思います。民泊が拡大するということになりまして、これは京都に限らないわけですが、地域社会全体が崩壊するというようなことになってはなりません。

 宿泊者の安全確保、それから近隣トラブル問題、さらには仲介業者の規制など、民泊にまつわるさまざまな問題が今回の法律案によって解決できるというふうにお考えでしょうか。

中林参考人 今、京都では、実感として、住民が安全ではない、宿泊者の安全も、それから居住地の安全というのもないように思われている状況なわけです。ですから、今回の法案で、事業が届け出で済ませられるというようなことで、本当に、言われるように、宿泊者名簿がきちんとつくられるのかどうかとか、そういう点については非常に大きな疑問があります。

 永山参考人に言っていただきましたように、今、千の旅行業者を管理しているところが、今度、一挙に三千になる。現実に、非常に手いっぱいだということが起こっているわけですので、法が整備されたからといって、これが解決していくというようにはなかなか思われません。

 もう一つ言えるのは、やはり宿泊にふさわしい場所と空き家が発生している場所というのは必ずしも一致していないわけですね。ですから、そういう問題があって、空き家を有効に活用するということは非常に重要ですけれども、そうではない場所に空き家がある。例えば、路地で、もう二、三軒しか住んでいる人がいなくて空き家だらけのところに民泊が五軒も六軒も入ってくるというようなことになると、住んでいる人は、非常に住むのに難しい場所になってしまうというようなことが起こるわけです。

清水委員 ありがとうございます。

 先ほど永山参考人も、フランスのパリの例を出されまして、いわゆる投資用の物件がふえて、家賃がどんどん高騰して、従来いた方々が住みづらくなっているということを紹介されました。

 中林参考人にもちょっとお伺いしたいんですけれども、諸外国の観光が盛んな国々においては、大都市でも民泊を規制する方向で動いているというふうに伺っているんですが、具体的な例がパリ以外にありましたら伺いたいということと、やはり、訪日外国人旅行者の目標ありきでこれまでの規制を取り払うというやり方そのものに問題があるというふうに思うんですが、そのあたり、いかがでしょうか。

中林参考人 パリでも、一つは、従来の旅行業者を圧迫するという問題と、それから、不動産物件の値段が上がって、住む人に悪い条件を与えているというようなこともあって、パリがそういう規制に乗り出したというのは有名なことです。

 アメリカでも、エアビーアンドビーについては、州によって法律が違いますが、幾つかの州では、例えばニューヨークなどでは、三十日以上泊まらなければいけない。これは、シンガポールなんかは六カ月というのもあるんですけれども、要するに、いわば賃貸住宅に近い形の宿泊業というような形でなければならないとか、それから、届け出制ではなくて許可制にしているところが多いということ、また、業者に対して税金をかけるということも随分起こっております。これは、アメリカでそういうことが言われていますし、バルセロナのような本当に観光客の多いところでも、規制を強めようという動きになっているところであります。

 だから、世界の趨勢としては、確かに、こういう民泊に当たるようなものは規制する方向で動いているというふうに私は考えております。

清水委員 ありがとうございました。

 続いて、永山参考人に伺いたいと思います。

 永山参考人は、全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部の部長をかつて務められたことがあると伺っております。

 全旅連青年部は、民泊の緩和に関する新設ルールに対して要望書を出しておられますよね。その中には、民泊に旅館業法の適用を求めるとか、営業日数は年間三十日以内に限るべきだとか、あるいは宿泊者と対面確認をすることが必要だと、七項目にわたって書かれているわけです。

 これまで、ホテル、旅館を経営されている皆様方でいいますと、旅館業法だとか建築基準法、あるいは消防法、厳しい規制に則して運営されてきたわけですよね。さらに、納税の義務などもしっかりと果たされてきたわけで、宿泊者の安全、安心をそういう規制のもとでしっかりと守ってこられた皆さんにとって、この七項目の要望に即しても、今回の法案というのは、率直に言って納得できないものなのではないかなと。

 非常にソフトにずっと意見陳述をされているんですが、内心、こんなものではだめだというふうに思われているのではないかなと私は感じるところがあったんですが、そのあたり、いかがでしょうか。

永山参考人 ありがとうございます。

 意を酌んでいただいて、大変ありがとうございます。

 今回は、旅館ホテル生活衛生同業組合という立場を離れて、私人、一経営者として発言させていただきますことをまず御理解いただきたいというふうに思っております。

 先ほども御質問ありましたとおり、我々は、過去にわたって、安心、安全を何とかしてお客様に提供したい、地域とその治安を守っていきたい、その一点で、これまで、行政に対する、たくさんの規制であったりも受け入れてまいりましたし、それを守ることで地域に貢献してきたつもりでございます。

 ただ、今回の民泊法案を読むにつけて、どうしても、そのあたりがないがしろにされているな、我々が今まで行ってきた努力というものが認められていないんだなということを感じているのは事実でございます。

 特に、先ほど申し上げたように、今回は、パスポートのチェックすら必要がないとか、一方で、我々に対しては、必ず対面確認をして、パスポートのコピーをとって、本人であることを確認することはフロントの責任だということが言われているわけですね。そういった二つのルールが併存することに対しては、我々としては大変困惑しているところでございます。

 先ほど中林参考人からも御意見がありましたとおり、諸外国は、そういったデメリットに気づいて、一旦解禁したものの、やはり今までのホテル、旅館に対する規制の方が正しかったんだということで、規制強化の方に軸足が移っているのも事実でございます。

 先生方には、そういった実態もぜひ御理解いただいて、我々旅館業と真の意味でイコールフッティング、真の意味で適切な競争条件のもとで民泊と旅館、ホテル業が共存するような、そういった方向を模索していただきたいというふうに考えております。

 以上です。

清水委員 最後に、三浦参考人に一問お伺いしたいと思います。

 現在蔓延している違法民泊、これをやはり法律に基づいてしっかりと取り締まるということの方が先決だったのではないかというふうに思うんですね、合法化する前に。今回、あり方検討会ではそうした議論はなされなかったんでしょうか。

三浦参考人 お答えします。

 もちろん、委員のおっしゃる指摘は正しい指摘で、それを前提として検討会でも考えております。

 中林参考人が、果たして届け出でいいのかという疑問を提出されました。確かに、その議論は検討会でもありました。

 ただ、今一番問題となっているのは、行政庁が違法民泊の実態をつかめないということなんですね。アンダーテーブルにあるものをテーブルの上にのっけるには、やはりある程度ハードルを下げておいてあげないとなかなか難しいということで、届け出ということにしたわけです。

 そういったかなり微妙な法律のつくり方をしているので、その辺のところは意を酌んでいただければと思います。

清水委員 どうもありがとうございました。

西銘委員長 次に、椎木保君。

椎木委員 日本維新の会の椎木保です。

 本日は、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。

 日本維新の会は、本法案のモデルとなった国家戦略特区の民泊について、大阪府、大阪市がフロントランナーとなって、制度設計の段階から積極的に取り組んでまいりました。具体的には、特区民泊の運用ルールの整備に際しては、内閣府や厚生労働省、国土交通省、総務省、財務省などと、衛生、消防、防火、ごみの処理、課税等についての質問、議論を重ねてまいりました。

 そうした中、運用通知等を整備した結果、特区民泊に関しては、目立ったトラブルや事件、事故、その他安全衛生面の課題は発生しておらず、適正に管理するルールを整備し運用すれば問題やトラブルを防げることが確認されたと思っております。

 さらに、大阪府、大阪市が民泊利用者のニーズの動向への対応を求めた結果、昨年、大阪市の特区民泊の数も順調に増加し始めたと理解しております。

 このように、大阪府、大阪市が先頭を切って特区の民泊に取り組み、日本維新の会もこれを積極的に後押しし、本法案の先駆け、モデルになったとの認識で、参考人の皆様にお聞きしたいと思います。

 初めに、都市部での宿泊施設不足は解消に向かっており、民泊解禁は喫緊の問題ではないといった趣旨の指摘がありますが、大阪府の宿泊需要については、調査機関の予測で、二〇二〇年も引き続き需要が逼迫するとの結果が公表されております。

 また、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック後、宿泊需要が大きく減少し、民泊のゴーストタウンができるといった指摘もありますが、二〇二一年には関西全域でワールドマスターズゲームズの開催が予定され、二〇二五年には万国博覧会の大阪誘致にも立候補しており、将来の宿泊需要といった点で、民泊の必要性、健全な民泊を普及するためのルール整備の必要性がなくなったとは思えないところであります。

 また、私は、現在、実態として先行している民泊物件の急激な増加や、大阪市が国家戦略特区で民泊の滞在日数の下限を六泊七日から二泊三日に改正したところ、施設数が順調にふえ出したことなどから、宿泊者のニーズが多様化し、民泊の需要も伸びており、宿泊ニーズの多様化といった観点からも、民泊という新たな宿泊サービスの提供の必要性、ルール整備の必要性は引き続きあると考えておりますが、参考人の皆様の御意見を頂戴したいと思います。

三浦参考人 宿泊需給の逼迫の問題は、検討会でもかなりいろいろな数値が出て、検討しました。

 ただ、予測することは非常に難しい問題で、宿泊需給を緩和するためだけで、民泊を許すか許さないかという議論はしておりません。むしろ、先ほどから申し上げているように、委員の方がおっしゃったように、ニーズの多様化といったものが基盤にあって、やはり今、民泊がこれだけある意味普及してしまったという現状があると思います。その辺でルール化が必要だろうというのが検討会の意見です。

 以上です。

永山参考人 ありがとうございます。

 まず、ホテルの需給に関してでございますけれども、この一年ぐらいで大幅に情勢が変わっております。

 東京都内のホテルについてですけれども、新増設計画が、二〇一五年時点では三万一千室だったところが、二〇一六年では五万二千室というふうに、ほぼ倍増しております。

 この結果、みずほ総研が試算した結果、二〇二〇年における東京での需給予測というのが、二年前は四%不足するのではないかという話だったのが、昨年時点の試算では逆に〇・九%余るのではないかといった、そんな試算も出ておりますので、需給不足が民泊の解禁の理由というのは、これは今では当たらないというふうには考えております。

 ただ、宿泊者のニーズの多様化というのは認めるところではございますので、ぜひ、そこについては、トラブルがないということであれば、先ほど来申し上げているとおり、旅館業法とのバランスのとり方であったり、規制緩和という概念には大いに賛成するところではございますけれども、規制緩和をするのであれば、旅館、ホテルと同等な規制緩和、そして、大企業が民泊の新しい規制緩和のルールにのっとってイージーに旅館、ホテルと似たような商売を始める、そういったことに対しては懸念を表するものでございます。

 以上です。

中林参考人 先ほどから私もちょっと言っていますように、宿泊のキャパシティーをどうふやすのかという方向から議論すると、なかなか、堂々めぐりのようになってしまうのでありまして、まず、どういう観光を実現するのかというところから出発する必要があるというふうには思っています。

 それから、多様化の問題ですが、確かに、長期滞在の外国人観光客とか日本人観光客、こういうものがふえているというのもありますし、それから、民泊とはちょっと区別されるゲストハウスのようなものもふえていて、そこでは、地域の人たちあるいは家主の方と非常に密度の高い友好が結べて、そういう新しい形の宿泊施設が生まれているというのは、非常に歓迎すべきことだというふうに思います。

 ただ、それが、今回の法でそのことが本当に実現するのかというと、私は、それならば、従来あった、いわゆる民宿のような形の発展の上につくり上げられていってもいい宿泊施設ではないかなというふうに思えるところであります。

椎木委員 次にですけれども、民泊については、大手企業による民泊マンションが乱立する、テロや犯罪の温床になる、非対面での利用が可能なため、ラブホテル等風俗営業があらゆる場所で行われても取り締まれない、旅館業に比べて安全衛生面の規制が大幅に緩い、税も住宅並みとなり、負担が軽いといった指摘がありますが、いずれも、大阪市の特区民泊や東京都大田区の特区民泊がどのように運用されているかについては、若干理解不足や事実誤認があるように思います。

 大阪府や大阪市は、冒頭述べたように、運用の詳細なルールを整備し、適正に管理させることで、指摘されているような問題は起こっておりません。

 本案は、国家戦略特区で大阪府、大阪市が行ったルール整備や運用を参考に法案化したものであるはずだと理解しておりますが、指摘のあるような民泊マンション、治安、風紀の悪化、安全衛生規制の不備、節税、課税逃れ等、事が起こる法案の内容となっているのかどうか、この点について、時間の関係上、三浦参考人と永山参考人にお伺いしたいと思います。

三浦参考人 お答えします。

 イコールフッティングじゃないんじゃないかという御指摘は結構あるんですが、法案を読む限りでは、それほど差はなく、規制されていると思います。

 それから、永山参考人が先ほど言ったパスポートでの本人確認の義務がないというのも、やはり誤解だろうと思います。本法案の八条は、旅館業法の宿泊名簿作成規定と全く同じです。したがって、同じように解釈すべきもので、外国人に関しては、厚労省の局長通達でパスポート確認義務が課せられたんですが、恐らく今度は省令ではっきりと書かれるのではないかと思います。

 そういう意味で、本当にイコールじゃないんじゃないかという指摘については、細かく見ていっていただければ、そんなことはないということはおわかりになると思います。

 それから、ラブホテル化とか犯罪の温床になるのではないかと言われましても、それが具体化するのかどうかというところはちょっとよくわからないところがあります。なぜわからないかというと、検討会が調べた限りでは、違法民泊の弊害の大多数は、ごみ出しとか騒音とかという日常的な迷惑なんですよ。だからこそ、これは警察問題にするような問題ではないので、行政庁の規制の中に入れようという考え方なんですね。

 今回、旅館業法の改正で、無登録の旅館業を営んでいる者に対しても報告、立ち入り命令ができるようになりましたから、行政庁がこれらの武器を適切に行使すれば、皆さんが指摘されるような懸念は恐らく生じないというふうに確信しております。

 以上です。

永山参考人 ありがとうございます。

 私が申し上げたいのは、特区民泊の件数と、実際に民泊新法が運用されて登録されるであろう件数が大幅に違う点でございます。片や一万、二万といった単位、片や数十といった単位。それで、数十件で大丈夫だから数万件でも大丈夫だろうという議論に関しては、そうかもしれないし、そうでないかもしれないとしか申し上げようがございません。

 運用、実効性に関しては、明らかに不透明なことが多いところでございますし、先ほどから申し上げているパスポート等につきましても、実際にどのような運用で本人確認をするか、しなければいけないということと、どうやってするかといったものはまた違った形になると思いますので、そこについてはどうしても不安を拭えない点でございます。

 以上です。

椎木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

西銘委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の方々に一言申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 参考人の皆様は御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

西銘委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省土地・建設産業局長谷脇暁君、住宅局長由木文彦君、観光庁長官田村明比古君、内閣府地方創生推進事務局審議官青柳一郎君及び厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長北島智子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西銘委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西銘委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村裕之君。

中村(裕)委員 自由民主党の中村裕之でございます。

 質問の機会をいただいたことに心から感謝を申し上げまして、住宅宿泊事業法案について質問させていただきます。

 飛躍的な外国人観光客の増加、地方都市を中心に空き家の増加、そしてシェアリングエコノミーの進展という中で、規制にかからない形で、ネット上を中心に民泊サービスが横行しているという状況であります。

 何らかの規制をかけていく必要があるというふうに思いますけれども、まず、政府として、この違法民泊の実態をどのように把握していらっしゃるか、どのくらい我が国で違法民泊が拡大しているというふうに捉えていらっしゃるか、その点について確認させてください。

北島政府参考人 お答えいたします。

 昨年十月から十二月にかけて、いわゆる民泊仲介サイトに掲載されている物件について、厚生労働省として、各自治体の協力を得ながら、全国横断的な実態調査を行っております。

 今般の調査結果では、調査件数約一万五千件のうち、旅館業法の営業許可を受けている施設が約二千五百件、一六・五%、無許可で営業を行っていたものが約四千六百件、三〇・六%、物件の特定ができなかったものや自治体において調査中のものが約八千件、五二・九%となっております。

中村(裕)委員 仲介サイト上で抽出して、三割が違法、五割は把握できない、物件が特定できないという状況であります。

 そういった中で本法案を今審議しているところですけれども、法案の成立がなされたときにどのような効果を期待しているのか、田中副大臣にお尋ねしたいと思います。

田中副大臣 お答えいたします。

 本法案は、急速に拡大する民泊サービスについて、安全面、衛生面のほかに、騒音ですとかごみ出しなどによる近隣トラブルが発生して、今、社会問題となっております。また、観光客の宿泊ニーズが多様化している。これに対応するために、一定のルールをつくって、健全な民泊の普及を図っていこうというものであります。

 今後は、適切な規制のもとで、地域の実情にも配慮しつつ、ニーズに対応した民泊サービスの提供が可能となります。また、プロの宿泊サービスであるホテル、旅館に加えて、民泊という選択肢が加わることで、旅行者の多様化する宿泊ニーズにも幅広く対応できるようになることが期待されるものであります。

 また、自宅や別荘等を宿泊事業に利用することによりまして、住宅を有効活用して、ゲストとの交流を図るといったような、宿泊サービスを提供する側のニーズにも対応することができます。

 こうしたことから、本法案は、二〇二〇年に、訪日外国人旅行者数四千万人、訪日外国人旅行消費額八兆円等の目標達成を後押しして、真に世界に開かれた観光先進国日本の実現に寄与するものだと考えております。

中村(裕)委員 法の規制がされないまま行われているものを、法の規制をすることによって、安全、安心の確保、衛生面の確保、トラブルの防止など、多様な心配事に対応して、なおかつ、お客様の多様なニーズに応えていくということであります。非常に複合的な多くの効果がもたらされるというふうに思っておりますが、先ほどの参考人の方の中には、アンダーテーブルにあるものをテーブルの上にのせることによって規制を明確にしていくんだというふうなお話もございました。その意味で、非常に重要な法案だと私も思っているところであります。

 実は、私の地元の小樽市でありますが、ピーク時、人口が二十万を超えていましたが、ついに十二万人を割ってしまいまして、十一万人台になりました。約四割の人口減少で、高齢化も進んでいて空き家もふえていますが、一方で、円安、またビザ発給緩和の効果で、外国人を中心に観光客の人がたくさん来てくれまして、年間八百万人の観光客が小樽を訪れてくれているんですね。

 そういう状況で、インターネット上の仲介サイトを通じて、自然と、小樽市内の空き家にえたいの知れない外国人が複数人出入りをするようになってきたと。しかも、ごみ出しルールを守らないものですから、町内会で問題になって、町内会長さんのところに苦情が来て、何とかしてくれというお願いが来たわけであります。それで、町内会長さんが、もう遠くにいるんだけれども、昔住んでいた家主さんに連絡をとって、何とかしてくださいというふうに言ったら、私は仲介業者さんに任せてありますので関係ありませんというふうに応対があって、ほとほと困ったと。とにかく早く法律で規制できるようにしてほしいというのが私のところに寄せられている切実なお話であります。

 こうした家主不在型において、そういったごみ出し、騒音などの近所の方々に対するさまざまなトラブルが考えられますし、もちろん、さまざまな防犯上の心配事もあるわけでありますけれども、こうした近隣トラブルを防止するためには、やはり法律によって標示をきちんとするということが非常に大切なことでありまして、その標示内容も問われるわけでありますけれども、標示をする責任者、また標示内容については本法案ではどのように考えていらっしゃるか、お伺いします。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきましては、家主不在型の場合は、住宅宿泊事業者、いわゆる家主の管理の目が行き届かないことから、住宅宿泊管理業者に管理業務を委託することを義務づけております。

 委託を受けた住宅宿泊管理業者に対しては、住宅宿泊事業者にかわって、周辺地域における生活環境の悪影響の防止についての宿泊者への説明でございますとか、周辺住民からの苦情への対応等の義務を課すこととしております。

 また、観光庁におきましても、そこに、都道府県と連携してワンストップの苦情対応窓口を設置することを検討しておりまして、この窓口で受け付けた苦情等につきましては、関係行政機関や都道府県等に通知して、必要な対応を求めることとしております。

 今お尋ねでありました標示の件でありますけれども、届け出住宅への標示は住宅宿泊事業者の責任で行うこととしておりまして、その内容としては、省令において、住宅宿泊事業を実施している旨、そして届け出番号、それから住宅宿泊管理業者の連絡先等を記載させることを検討しております。

中村(裕)委員 管理業者の連絡先というのは非常に重要ですね。町内会長さんがそうしたことで御苦労がないように進められることを望みます。

 周辺住民には、利用者の身元がわからず、民泊の中でテロや犯罪が行われるのではないかという不安があるわけであります。利用者の身元確認には十分留意する必要があるわけでありまして、先ほどの参考人の意見の中にも、旅館業と民泊の身元確認の違いなども不安に感じているというような御意見もあったわけでありますけれども、身元確認についてどのようにしていくお考えか、お伺いします。

田村政府参考人 本法案におきましては、住宅宿泊事業者または住宅宿泊管理業者に宿泊者名簿の備えつけの義務を課すことといたしております。

 宿泊者名簿の記載に当たりましては、宿泊者の氏名、住所、職業等が実際に宿泊する者の情報と同一かつ虚偽ではないことを担保するため、旅券の提示を求める等によりまして本人確認を行うとともに、それが対面またはそれと同等の手段で行われる必要がございます。

 本人確認が適正に行われていない場合については、業務改善命令の対象となる可能性がございまして、また、この業務改善命令に従わない場合には、業務停止命令または業務廃止命令の対象となる場合もございます。

 こうした措置を講ずることによりまして、住宅宿泊事業の適正な実施を確保してまいりたいと考えております。

中村(裕)委員 相当厳しく本人確認をしていただく必要があるんだろうと思います。

 先ほど、三浦参考人のお話では、やはり旅館業と同等の、旅券のコピーをとるなどの措置を省令等で定めていくことになると思うというお話もありました。厳格な身元確認が必要であることを申し上げたいと思います。

 民泊が社会に適正に普及するためには、管理がしっかりと行われる必要があります。現実の、管理業者から宿泊者への鍵の受け渡しなどは、委託をされることになるんだと思います。例えば、ホテルやコンビニでの受け渡し、また、ITを活用したチェックインなどは可能となるのか、その点について確認をさせていただきたいと思います。

谷脇政府参考人 お答えいたします。

 家主不在型の住宅宿泊事業につきましては、宿泊者名簿の備えつけあるいは宿泊者の本人確認につきましては、登録を受けた住宅宿泊管理業者が家主からの委託に基づいて行うことになるわけでございます。したがいまして、鍵の受け渡しにつきましても、本人確認とあわせて住宅宿泊管理業者が行うものと考えております。

 住宅の解錠に鍵を要する場合には、住宅宿泊管理業者の営業所での鍵の受け渡しのほかに、業務の一部を再委託いたしまして、近隣のホテルのフロント、あるいは適正な業務を行うことができる二十四時間営業の店舗などで鍵の受け渡しを行うということも可能と考えております。

 また、特区民泊におきまして、カメラを用いた映像を通じ遠隔で本人確認を行うとともに、ランダムに変更されるナンバーキーを電子メールなどで付与することにより電子錠の解錠を行う、こういったような事例も出てきております。このような方法も想定されているところでございます。

中村(裕)委員 さまざま、再委託やネット上の鍵の受け渡し、また本人確認も必要ということでありますけれども、再度、本人確認の重要性をしっかり担保していただくことをお願い申し上げます。

 今、違法民泊が蔓延する、横行する中で、一つ大きな課題となっているのが、分譲マンションの一室を民泊に利用する例であります。

 もちろん、お住まいの住民の方は、見ず知らずの外国人がどやどやとしょっちゅうマンションに入ってきているという状況を嫌がりますし、不安に感ずるわけでありますけれども、こうした分譲マンションの一室等を民泊に利用する者に対してどのような対策を講じようとしているのか、お伺いいたします。

由木政府参考人 お答えいたします。

 分譲マンションにおきまして、民泊をめぐるトラブルを防止いたしますためには、民泊を許容するかどうかについて、あらかじめ区分所有者間でよく御議論いただきまして、その結果を踏まえて、民泊を許容する、あるいは許容しない、どちらかの旨をマンション管理規約上に明確化しておいていただくことが望ましいというふうに考えております。

 これまで私どもは、この管理規約のひな形として標準管理規約というのをお示ししてまいっておりますが、今後、管理組合が民泊を許容するか否かについて検討を行って、管理規約を改正する際の参考となりますように、この標準管理規約を改正いたしまして、民泊を許容する場合の規定、禁止する場合の規定、双方の規定例をお示しして公表してまいりたいというふうに考えております。

 実際の運用に当たりましては、マンションで住宅宿泊事業を実施する場合につきましては、住宅宿泊事業者の届け出の際に、民泊を禁止する旨の管理規約などがないという旨を確認していただくことといたしまして、具体的には、届け出様式においてそういった管理規約がない旨を記載していただく、あるいは管理規約の写しを書類として添付していただく、こうしたことで確認してまいりたいというふうに考えているところでございます。

中村(裕)委員 住宅宿泊事業法に対応してマンション標準管理規約を改定する、そして、民泊を許容する場合と許容しない場合の双方の標準的な管理規約を公表していくという答弁でございました。

 しかし、今現在もこうしたトラブルが発生していて、できるだけ早くそういったトラブルを減少させる必要がありますから、この標準規約の改正と公表は、法の施行を待たずに、できるだけ早く行うべきだと考えますけれども、どうでしょうか。

藤井大臣政務官 中村委員御指摘のとおり、トラブルの防止に向けましては、管理組合が方針を検討する際の参考となるよう、標準管理規約を早急に改正し、モデルとなる規約例をお示しする必要があると考えております。そのため、法案成立後速やかに標準管理規約を改正、公表できるよう、準備を進めてまいりたいと考えております。

 なお、管理規約の改正には一定の期間を要することから、管理規約上に民泊を禁止するか否かが明確に規定されていなくとも、管理組合の総会、理事会決議を含め、管理組合として民泊を禁止する方針が決定されているかどうかについて届け出により確認することとし、禁止する方針が決定されたマンションにおける事業の実施を防止する予定としております。

中村(裕)委員 規約の改正と公表は法施行後直ちにということでしょうか、再度確認をさせてください。

藤井大臣政務官 法案成立後速やかに、法の施行を待つことなく公表できるよう、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

中村(裕)委員 成立後速やかにということで確認をさせていただきました。ありがとうございます。そのことによって、例えば管理組合の総会のタイミングが合わないとか、そうしたことがないように、マンション住民の皆さんも対応できることと思います。

 ここでちょっと視点を変えまして、きょうの質疑、参考人の皆さんも、これまでも、どちらかというと都市型の民泊を中心に議論してきたと思いますが、北海道では、実は、農村部における農家民泊の期待が高まっています。田舎に外国人観光客を誘導して、体験型の観光を楽しんでいただいて、そして、その農家のおじいちゃんやお母さんが非常にユニークな人であれば、人間が観光資源になることも可能になります。あの人に会いたいとか、あの人のところに行ったらいいよ、そういう期待もあるわけであります。

 実は、私も、北海道議会議員の時代に、議員研修費を利用して、数人の議員とフランスのリヨンにグリーンツーリズムの研修に伺わせていただきました。農家の納屋を改造したベッドルーム、個室じゃなくてベッドルームと、本当に奥行きが多分五十センチぐらいのシャワースペースというかシャワーブースというところに泊まったんですが、食事だけは、母屋にお邪魔して、大きなテーブルで、そこの御家族と、お母さんがつくったお料理をいただいて、ワインを飲んで、片言の言葉でもってコミュニケーションをとってくるという、非常に楽しい思い出で、議長経験者の先輩なんかは、何万円もするホテルに泊まっているような人が非常に喜んでくれたという、いい思い出になっています。

 農家民泊の場合、家主居住型で行うというようなときに、食事の提供を農家でやる民泊、住宅宿泊事業として行う場合、何の許可もなく食事の提供をするというわけにはいかないんだろうと思うんですけれども、その点の確認をさせていただきたいと思います。

北島政府参考人 お答えいたします。

 食品を調理し、客に飲食させる営業を行う場合には、食中毒発生防止等の観点から、食品衛生法に基づく営業許可が必要となっております。この営業許可は、都道府県知事等が行う自治事務でございます。

 個別のケースにおける営業許可の要否につきましては都道府県知事等が判断することとなりますが、住宅宿泊事業におきましても、飲食店と同様に、食品を調理し、客に飲食させるサービスを提供する場合には、食品衛生法に基づく営業許可が必要と考えられます。

 いわゆる農家民宿に関しましては、原則として飲食店営業の許可が必要としつつ、許可要件につきましては、実態を考慮し、必要に応じて弾力的な運用を行うなど、都道府県等に対して技術的な助言を行っております。

 家主居住型の住宅宿泊事業に関する取り扱いにつきましても、こうした農家民宿での取り扱いなども踏まえ、都道府県等に対し、営業許可の取り扱いに関する考え方について技術的な助言を行うことを検討してまいります。

中村(裕)委員 現在行われている農家民宿と同等の規制を自治体の方に求めていくということだと思いますが、これは難しいんですよね。現在行われている農家民宿というのもあるんですけれども、今度は農家民泊を行う人も出てくるわけです。要するに、現在行われている農家民宿というのは、簡易宿所という旅館業の許可で行っているわけですよね。この違いがよくわからないんですね。

 簡易宿所の許可と今回の民泊の許可の主な違いというのはどういうところになりますか、確認させてください。

北島政府参考人 住宅宿泊事業は、住宅等を一時的に宿泊事業で活用するものであることなどから、簡易宿所営業と住宅宿泊事業の主な違いといたしましては、一つ目は、事業の実施に当たって、簡易宿所営業は許可制となっているのに対し、住宅宿泊事業は届け出制となっていること、二つ目として、簡易宿所営業は年間を通じて実施可能であるのに対し、住宅宿泊事業は百八十日以下という年間提供日数制限が設けられていること、三つ目といたしまして、簡易宿所営業は、原則、住居専用地域で営業を実施できないのに対して、住宅宿泊事業は住居専用地域での事業の実施が可能であること等の点が挙げられております。

中村(裕)委員 現実に事業を行おうとする方にとっては、簡易宿所は通年できるけれども、住宅宿泊事業だと百八十日の制限がかかるというところが一番大きいことなんだろうというふうに思います。

 今、法規制が行われないままの現状の民泊というのが我が国では横行しているわけですけれども、現実には旅館業法違反になるわけであります。本法律案、住宅宿泊事業法案が成立すると、きちんと届け出をすることによって、また、法律を守ることによって、旅館業法の適用除外という形をとれることになるわけですけれども、本法施行後、やはり違法民泊や不適切な管理を行う民泊については厳しく取り締まりをする必要があると考えます。

 その取り締まりの方法、方針について、これは国交省、厚生労働省、それぞれ担当もあるでしょうから、それぞれにお伺いしたいと思います。

田村政府参考人 本法案におきまして、住宅宿泊事業について届け出制を導入いたしまして、住宅宿泊事業者や住宅の所在地について把握可能とするとともに、住宅の届け出がなされた当該住宅につきましては、玄関等への標識の掲示を義務づけることといたしております。そういうことで違法民泊との峻別を図ることとしております。

 また、国土交通省におきまして、都道府県と連携してワンストップの苦情窓口を設置することを検討しております。標識を掲示せずに民泊サービスを提供するなど、違法民泊のおそれがある情報等が寄せられた場合には、国交省、厚労省、都道府県等地方公共団体、警察等の関係行政機関と連携の上、適切に対処していくことといたしております。

 さらに、こうした関係行政機関との連携を強化するため、住宅宿泊事業者に係る情報を共有するためのシステムを構築することといたしておりまして、これらの取り組みによりまして、違法民泊に厳正に対処していくこととしております。

北島政府参考人 厚生労働省といたしましては、違法な民泊の広がりに対応するため、現行の旅館業法のもとにおいて、民泊サービスが旅館業法の許可のもとに適切に提供されるよう、昨年十一月に、営業許可取得の手引を作成し、広く公表するとともに、各自治体における無許可営業施設への対応状況の把握に努め、現行法の遵守や悪質な民泊を対象とした取り締まりの強化等について、昨年九月に、警察や自治体に協力を要請するなどの対応を行っております。

 その上で、違法民泊等へのさらなる対応のため、無許可営業者に対する都道府県知事等による立入検査権限の創設や、無許可営業者に対する罰金の上限額の引き上げ等を内容とする旅館業法の改正法案を今国会に提出したところであります。

 こうした措置を通じて、旅館業法の適切な運用に努めてまいります。

中村(裕)委員 では、それぞれ連携して適切な運用に努めていただきたいと思います。

 先ほど来課題となっている民泊事業の百八十日制限の確認の問題であります。

 先ほども、旅館業を営む参考人から、本当に百八十日制限をしっかりと守らせることができるのか、捕捉することができるのかという不安の声がありました。この捕捉をどのように考えていらっしゃるのか、お伺いします。

 あわせて、この百八十日の考え方はいろいろあると思うんですが、一月一日から十二月三十一日とかという、起算日から一年間ということもあるでしょうし、きょう泊まるから、きょうからさかのぼって一年間というのも、一年間のうち百八十日の考え方、どちらでもとれると思うんですね。さまざまな捉え方があると思うんですが、この百八十日の起算の考え方を教えてください。

田村政府参考人 まず、年間提供日数の確認でございますけれども、住宅宿泊事業者へ宿泊実績の報告義務を課しておりまして、定期的に、住宅宿泊事業者の監督を所管する都道府県等において確認を行うことといたしております。

 また、住宅宿泊事業者からの報告に対するチェックにつきましては、住宅宿泊仲介業者の保有する宿泊履歴と、住宅宿泊事業者から報告を受けた年間提供日数の情報を照合する方向で検討しておりまして、両方とも、物件ごとの届け出番号で整理し、チェックしていくことを考えているところでございます。

 なお、起算日の御質問がございました。百八十日の起算日につきましては、例えば一月一日でありますとか四月一日等、一年間の起算点となる特定の月日を定める方向で検討いたしております。

中村(裕)委員 ちょっと時間になってしまいまして、残りの質問ができなくなりましたけれども、起算日を例えば四月一日とかとすると、全国一斉に百八十日の枠を持ったままスタートして、二月か三月になるとみんな枠がなくなるというような、何かアンバランスというか、ちょっと工夫が必要だと思いますので、その辺、よく検討して行っていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

西銘委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速、今回の民泊法案について質問させていただきたいと思います。

 今回の民泊法案は、私、シェアリングエコノミーという観点で最初の制度設計だというふうに思っています。シェアリングエコノミーの制度設計がきちんとできればみんなが得をする社会がつくれるんだ、こういうことを示すことができるかどうかという点で、今回のこの民泊法案というのは非常に大事な最初の法案だというふうに思っております。

 そういう意味では、これを推進する人、支持する人たち、また同時に、さまざまな懸念を有している心配する方々、両者が納得できる形にできて、そこで初めて一歩進めるのかなというふうに思っております。

 そこで、まず冒頭は、懸念に対する政府の対応という点で幾つか質問させていただきたいと思います。

 まず、この法案の目的ですが、法案の目的にどう書かれているか。一部申し上げると、「国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応して」と。つまり、今、インバウンドでどんどん旅行者がふえています。宿が足らない。違法な民泊を取り締まりつつ、適正化をして、ふえていく需要に対応しようということが目的に書かれているわけです。

 では、本当に宿泊施設が今足らないのかという観点です。

 今、客室数は全部で百四十二万室。二〇二〇年に四千万人の目標を政府は立てておりますが、この場合は宿泊施設が五万室不足する。これはずっと田村長官も答弁されてきたところでございます。五万室足らないという一方で、客室稼働率は六〇%です。旅館は三七・九%しかない。簡易宿所は二五・八%しか稼働率がない。本当に需給が逼迫しているというふうに言えるのかどうかという点です。

 私、大田区の特区で既に民泊をやっているところに行って、実際に話も聞いてまいりました。旅館業の方、地元の旅館を経営されている方に話を聞きました。宿が足りていないというふうに言われていますが、実際、現場はどうですかというふうに伺ったら、一刀両断されました。全くの幻想だというふうに言われました。

 そういう点で、まず、五万室不足するという推計がある一方で、稼働率がずっと低いままだ、これをどう理解すればいいでしょうか。

田村政府参考人 最近では、訪日外国人旅行客の急増に伴いまして、東京、大阪を中心とした都市部のホテルの客室稼働率が非常に高い水準で推移している一方で、御指摘のとおり、全国の旅館の客室稼働率というのは四割程度となっています。東京あたりは大分高くなって六割ぐらいになっておりますけれども、全国の平均は、旅館の場合には四割程度になっています。

 一方、昨年八月の民間会社の調査によりますと、旅館を含む既存の宿泊施設の稼働率をかなり高いレベルまで上げた上で二〇二〇年の客室数の需給というものを試算した結果として、約五万室程度不足するという調査結果が出ているわけでございます。

 こうしたことから、旅館等の既存の宿泊施設の稼働率を上げる取り組みというのは非常に重要でありますけれども、あわせて、新たな宿泊施設の供給をふやす努力も必要であるというふうに考えているところでございます。

伊佐委員 長官がおっしゃったように、地域地域によって状況は違うという点です。そういう意味では、押しなべて、いやいや、客室数が足らないんですというふうに余り短絡的に言うべきじゃないかなというふうに思っています。

 五万室足らないというのも、よくよく聞いてみますと、全国で足りていないところと余っているところ、全部プラスマイナスをやって五万室足らないというわけじゃない。足らないところだけを足し合わせたら五万室だというふうに伺っています。そういう意味で、客室が余っているところは加味されていない、稼働率が低いところはカウントされていないという状況です。

 さっき長官もおっしゃったように、今、稼働率が低いところも、一生懸命、極限までどうやって上げていくのかというところも車の両輪の一つだ。客室数をふやすのと同時に、既存の、私の地元大阪では稼働率は今四七・七%ということですので、今ある客室をより活用してもらうためにはどうするかという観点も大事だというふうに思っております。

 そういう意味では、例えば、施設の改修。いまだに和式のトイレのホテルもあって、外国人の方はなかなかそういう旅館は使いにくいという声もありますので、こうしたところを洋式化していくであるとか、あるいはお風呂の改修であったりとか、そういった既存の施設の活用、稼働率の向上という点で国交省はさまざまな後押しをしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中副大臣 今お答えしたように、現状、全国の旅館の稼働率は四割程度にとどまっております。そして同時に、旅館の宿泊者のうち、外国人は数%という状況にあります。

 一方で、二〇二〇年のオリパラを見据えまして、旅館は、日本の伝統文化ですとか食を体験できるという点で、外国人旅行者の多様な宿泊ニーズに対応するために大変重要な役割を果たすものであると考えております。

 そして、今委員御指摘ありましたように、観光庁においても、これまで、旅館の空き室情報の外国人への提供ですとか、インバウンドの受け入れ環境整備としてのWiFi設置、またトイレの洋式化等の支援をしてきたところであります。

 今後、これらに加えまして、旅館のネーミングも含めて、旅館そのものをブランド化いたしまして、海外に情報発信する取り組みを強化して、旅館における外国人旅行者の受け入れ促進を図ってまいりたい、そのように考えております。

伊佐委員 民泊として新たな資源を拡大していくのと同時に、既存の旅館やホテルがしっかりと活用される、これは両輪で頑張っていただきたいというふうに思っております。

 先ほど、参考人の話を伺いました。そのときにおっしゃっていただいたのは、今まではアンダーテーブルだったんだ、今の民泊というのは法律上の網がなかった、網がかかっていなかったという状況の中で、騒音の問題であったりとか、あるいはごみの問題であったりとか、悪質なものもあったのも事実だということです。

 そういう意味では、今回、一定の規制をかけようということですが、端的に伺います。今回の法律で、こうした違法な、また悪質な民泊事業者を実効的に取り締まることができるということでよろしいでしょうか。

藤井大臣政務官 伊佐委員にお答えいたします。

 本法案では、住宅宿泊事業を実施する場合の届け出等の手続を定めておりますが、この手続に係る情報を関係行政機関において共有するためのシステムを構築し、国土交通省、厚生労働省、都道府県等地方公共団体、警察等とが連携して、違法民泊に厳正に対処していくこととしております。

 また、住宅宿泊事業の適正な取り締まりを行うため、玄関等への標識の掲示を義務づけ、違法なものを峻別するとともに、今後、ワンストップの苦情対応窓口を設置し、適切に対応することとしております。

 さらに、無届けで住宅宿泊事業を行っているものにつきましては旅館業法の無許可営業となりますが、別途、今国会で旅館業法を改正し、無許可営業者に対する立入検査に関する規定の追加や罰金の引き上げを行っていくことにより、これまで以上に厳格な対応を図っていくこととしております。

伊佐委員 民泊でまず網をかけると同時に、届け出ないところについては旅館業法をより強化していくというふうに理解いたしました。

 今回、私は、同僚議員の皆さんとともに、実際に今、旅館業をこれからどうするかと心配に思っている方々とともに、民泊を現にやっている方々からも話を聞きました。

 双方から私が言われたのは、民泊の中で、家主不在型と家主居住型、これは違うものだという意見が多かったです。きょうの参考人の御意見でもありましたが、不在型と居住型は分けてほしい、規制も差をつけてほしい、こういう声がございました。

 旅館、ホテル業の皆さんからすれば、家主不在型の民泊というのはビジネスじゃないか、居住型ならともかく、不在型の場合は、旅館業の我々だけ厳しい規制がかかっている、これじゃ競争できないじゃないかと。つまり、現行の旅館、ホテル業への規制とのバランスという観点で、不在型というのはそれなりに厳しくしてほしい、こういう声がありました。

 一方で、今、民泊をされている皆さん、特に、御自宅にいろいろなゲストが来る居住型の民泊の皆さんの声、その方々は、今、実際に我々は安全に住んでいるわけだから、あるいは、常にゲストとコミュニケーションがとれる、こういう状況にあるわけだから、全くそれとは異なる家主不在型とは一緒にしないでほしいと。

 そこは、双方が、不在型と居住型を分けてくれというような意見がございました。

 これに対して、国交省はどう考えますでしょうか。

田中副大臣 住宅宿泊事業に関して、家主居住型での住宅宿泊事業者であっても、家主不在型での住宅宿泊事業者であっても、宿泊事業を行っているという点においては同様の事業形態であるため、基本的には、いずれの宿泊事業を行う者についても同じ規制に係らしめる必要がある、そのように考えております。

 一方において、家主居住型と家主不在型とで規制に差を設けることについては、家主不在型の場合には、住宅のオーナーが住宅の管理を行うことが困難であることから、住宅宿泊管理業者に住宅の管理を委託することとしておるところであります。

 例えば、標識についても、家主不在型においては、住宅宿泊管理業者の連絡先を表示する一方、家主居住型においては、これを表示することまでは求めないという方向となります。

 また、宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置については、基本的に、いずれの場合におきましても、非常用の照明器具ですとか連動型の警報装置の設置を求めることとしておりますが、家主居住型のうち、宿泊部分の面積が小規模なもの、五十平米以下のものについては求めない方向で検討しているということであります。

伊佐委員 副大臣、今、私は二点申し上げたんですが、今のお答えは、恐らく一方だけかなというふうに思っております。

 今おっしゃったのは、家主居住型であれ、あるいは不在型であれ、基本的には同じ枠組みでやるものの、ただ、現実的じゃないところは差を設けますよと。

 その例としておっしゃったのが、例えば標識。標識だって、例えば、居住型で、実際に小さいお子さんがいらっしゃる家にゲストを泊める場合もあるので、そういうときに、自分の家の前の看板に常に自分の電話番号を書いてある、これはそこまで求めませんよということだと思います。あるいは、安全という観点でも、非常用照明器具であったり連動型の警報器、こうしたものは、五十平米以下の居住型だから、四部屋ぐらいですかね、以下であれば別に設置しなくていいよと。

 だから、ここは居住型と不在型の差を、一定程度、現実に合わせて設けるという点の答弁を今いただきました。

 私、もう一点申し上げたのは、今の旅館業をされている方々とのイコールフッティングはどうなのかという点なんです。長官、もしそこを補足できるのであれば、お願いします。

田村政府参考人 今後、旅館、ホテル、あるいは簡易宿所につきましても、厚生労働省におきまして、今国会に提出している旅館業法の改正法案とあわせて、便所の具体的要件とか、そういう施設要件等について撤廃等を行うなど、旅館業についても一定の規制緩和を行う方向で検討しているというふうに聞いております。

伊佐委員 長官、ありがとうございます。そこが非常に大事だと思うんです。

 つまり、今、旅館業法だけ厳しいと。今回の民泊は、かなり規制緩和されているというんじゃないんです。今回、政府が考えているのは、旅館業法の規制についても緩和する、さっき撤廃するという言い方をおっしゃいましたが、全体的にハードルを下げるんですと。全体的にハードルを下げて、民泊というのは簡易宿所扱いですので、その旅館業法上の簡易宿所と民泊とが大体同じように並ぶ形にする、定性的にイコールフッティングにするという観点だということです。そういう意味で、私は、これはこの民泊法案の肝だと思っています。

 この観点をしっかりと胸に置いて、これから省令やガイドラインで恐らくより具体的な規制を書き込んでいかれると思いますので、しっかりとこの考え方に沿ってつくっていただきたいというふうに思っております。

 居住型の皆さんのさまざまな声、こういう声がありました。

 例えば、私の事務所に来られた方で、還暦を迎えた女性で、今、民泊をされていらっしゃる。御主人に先立たれて、一人で住むにはちょっと部屋が余っている。新たな人生として、人とつながることをしていきたいんだ、わくわくしたいんだというのもあって、民泊をやっています。英語はできないんですが、身ぶり手ぶりでコミュニケーションをとるということで、生きがいを感じているという方の声であったり、あるいは、キャリアウーマンでずっとこれまで働かれていて、子育てをされている。これまで保育所に預けてきたんですが、やはり自分の手で子育てしたいという思いがあって、でも、やはり働きたいというのもあって、民泊を始めた。来られるゲスト、外国人の方が子供にいろいろな英語を教えてくれる。英語教育だけじゃなくて、こうした世界のいろいろな人たちと子供が触れ合うことで、本当の意味でのグローバル教育ができていますよという声であったり、あるいは、ある民泊をされている方と八十二歳のおばあちゃんが一緒に住んでいらっしゃって、認知症を患っていらっしゃるわけですが、そのおばあちゃんも次のゲストはいつ来るのというふうに楽しみにしている、生き生きしている、こういう声も伺いました。

 そういう意味では、家主居住型というのは、どちらかといえば、ビジネスに重きを置いているというよりも、交流であったりとか支え合いであったりとか、互助の精神というのが非常にあるんじゃないかなと思います。ビジネスでないから、実際にもらえる料金以上に、例えば日本を知ってもらいたいというのでおもてなしをする、おもてなしを楽しんでいるという状況だと思います。また、ゲストも、単なるゲストだと思って来ているわけじゃなくて、例えば、一緒になって家の子供のお世話、面倒を見てくれたりというのもあるわけです。

 そういう意味で、居住型の特性というのをしっかりと踏まえた上で、同じ枠組みなんだけれども現実的にはどういうものがあるかというところを、ちょっと具体的に、一問一答になるかもしれませんが、質問をしていきたいと思います。

 さっき、トイレとおっしゃいました。民泊を今回やることで、二つも三つもトイレをつくっていかなきゃいけないんじゃないかと心配されている声もありますが、それはいかがでしょうか。

田村政府参考人 本法におきまして、住宅宿泊事業を営むことができる住宅というのは、台所、浴室、便所、洗面設備が設けられていることを要件といたしております。

 ここで言う便所というのは、通常住宅に設置されている便所を想定しているため、改修を要するものとは考えておりません。

伊佐委員 改修を要するものじゃないということです。

 次は、今、特区で行われています特区民泊の場合、当初、連泊、六泊七日以上じゃないとだめですよという規制がございました。今は緩和されて二泊三日以上というふうになっていますが、民泊新法では連泊要件が設けられることになるのかどうかについて伺います。

田村政府参考人 本法案において、住宅宿泊事業については、特区民泊と異なりまして、二泊三日以上というような連泊要件は設けられておりません。

伊佐委員 ちなみに、私、民泊特区、いろいろ教えていただいて、国交省にも情報提供をいただいて、今、特区では大田区と大阪府と大阪市でやっております。大田区でやっているのが三十三施設、大阪府でやっているのが四施設、大阪市が四十八施設ですが、確認したら、一つも残らず全てが、全部、家主不在型でした。居住型、一緒に大家さんがいて、家の一室に泊めてあげるというのは、実は一件もなかったんです。

 そういう意味では、今の特区でやっているような規制内容をそのまま延長してやっていくことには多分ならないんじゃないかというふうに私は理解をしております。

 ちなみに、ちょっと参考までに伺いたいんですが、今、特区でやっている民泊は、今回の民泊新法が施行された後、扱いはどうなるんでしょうか。

青柳政府参考人 お答えいたします。

 民泊新法による全国民泊では、年間提供日数の上限は百八十日とされる一方で、先生今御指摘がありましたように、最低利用日数の要件はございません。

 一方で、特区民泊では、年間宿泊日数の上限はございませんけれども、最低利用日数の要件があるということで、両制度、それぞれ異なる特性を有しております。

 民泊新法施行後は、全国民泊と特区民泊とが併存することになりまして、それぞれの特性に応じてインバウンド需要に対応していくことになると考えております。

伊佐委員 あと、次は手続について伺いたいと思うんです。

 既に居住型という形でやっていらっしゃる方もいらっしゃるわけですが、新法が施行されると、当然、新たに手続が必要になってきます。その届け出について、できるだけ簡素なものにしていただきたいというふうに思います。

 例えば、法律の中身を見ますと、図面の提出というのがございます。これは、部屋の図面を提出しなきゃいけないんです。

 ただ、普通の御家庭で、専門家がつくるような正確なしっかりとした図面なんというのはない場合がほとんどだというふうに思っております。

 この図面の許容範囲がどの程度になるのかという点、あるいは、この届け出についても、例えばインターネット上でオンラインでできるというふうな形にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田村政府参考人 住宅宿泊事業の届け出に当たりましては、住宅の図面等の書類の添付を求めることとしておりますけれども、住宅の図面については、本法における住宅の要件を満たすということを確認できれば、旅館業法と同様、手描きの図面でも認める等、利用者の利便性にも配慮することを検討してまいりたいと考えております。

 また、昨年六月に閣議決定されました規制改革実施計画におきましては、届け出及び登録の手続はインターネットの活用を基本とすることが盛り込まれたところでございます。これを踏まえまして、住宅宿泊事業法において、住宅宿泊事業を営もうとする者は、都道府県知事への届け出につきまして、インターネットを通じてオンラインでの手続が可能となるように検討しているところでございます。

伊佐委員 図面は手描きでもオーケーだ、そしてまた、インターネットでしっかりと届け出ができるような仕組みをこれからつくっていくという答弁をいただきました。

 次に、地域制限についてです。

 旅館業法上、地域制限というのが課されていまして、例えば、学校とか福祉施設からおおむね百メートル以内の場合は、その環境が害されるおそれがある場合は制限する、旅館業ができないというようになっておりました。

 民泊では、こういうところではやっちゃだめですよというような地域制限が課されることになるんでしょうか。

田村政府参考人 本法案は、健全な民泊サービスを振興するという側面を持つものでありますことから、住宅宿泊事業の立地を制限する、すなわち、住宅宿泊事業の実施そのものを制限するといった規制というのは、基本的に、特段設けられておりません。

 ただし、住宅宿泊事業が、例えば静ひつな環境が求められる場合においても実施され得るものでありますことから、住宅宿泊事業に起因する騒音が多く発生するなどの場合にありましては、生活環境の悪化を防止する必要がございます。

 このため、本法案におきまして、生活環境の悪化を防止するため必要があるときに、合理的に必要と認められる限度において、条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができることとされているところでございます。

伊佐委員 次に、仲介業の位置づけについて伺いたいと思います。

 インターネット上で民泊を予約する、今も、民泊じゃなくても、いろいろ予約するサイトというのがあるわけですが、こうしてマッチングをするサイト、インターネットのページというのは、旅行業法上の定義では、そこから何らかの報酬を得ているのであれば旅行業に当たるんだというのが国交省の解釈だというふうに伺いました。

 ところが、この旅行業法の規制というのは、海外の事業者にはかからない、海外のサイトにはかからない、日本の事業者だけがこの規制の対象になっています。これは不公平じゃないかというような議論がこれまでもありました。

 では、この民泊、今回の民泊新法でどうなるかということですが、この仲介するプラットホームがどういう位置づけになるか。

 今、このプラットホームだけでも、米国で有名な会社もあります。それだけじゃなくて、中国やその他の国もこの分野にどんどん参入して拡大しているというふうに伺っておりますが、日本の民泊の活用なのに、それを仲介する海外の事業者は規制がかからない、でも、日本だけは規制がかかる、これだと公正さに欠けるんじゃないかなというふうに思います。

 この民泊新法においても、こうした海外の事業者に対しても規制の網をかけていくべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

田村政府参考人 今御指摘いただきましたように、そういう仲介サイトを運営している会社というのは海外にかなり多いという状況もございます。そうしたことも勘案いたしまして、本法案におきましては、外国において民泊サービスの仲介を行う者についても、住宅宿泊仲介業の登録を受けることを必要とするなど、規制の対象とすることといたしております。

 また、この法案の規定に違反した住宅宿泊仲介業者につきましては、業務改善請求や業務停止請求を行うとともに、登録の取り消しができることとしているところでございます。

伊佐委員 これから海外のこうした事業者も規制をしっかりかけていくということなんですが、ただ、条文を読むと、十二条、住宅宿泊事業者は、民泊のオーナーですね、民泊のオーナーは、媒介を他人に委託するときには、住宅宿泊仲介業者、仲介業の方か、あるいは旅行業者に委託しなければならないと。つまり、登録している仲介業者に委託しなきゃいけないというふうに義務がかけられているのは、民泊のオーナーなわけです。つまり、きちんとした登録をされていない海外のそうしたプラットホームに依頼してしまえば、民泊オーナーが違反に問われる、五十万円以下の罰金ということになっております。

 そういう意味では、この網のかけ方の性質上、民泊オーナーが、この仲介業者、プラットホームが登録されていないものだということを知らずに仲介を依頼してしまう場合というのもあるわけで、この場合は、知らなかったのに、頼んでしまったら自分たちに罰則がかけられたということになるわけです。

 これについて、国交省はしっかり対応すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

田村政府参考人 本法案におきましては、住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約の締結の代理または媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者等に委託しなければならないと、今先生が指摘された規定が書かれているところであります。

 このため、住宅宿泊事業者は、当該委託をする前に、登録された住宅宿泊仲介業者を把握しておく必要がございますので、その方法としては、この法案におきまして、「観光庁長官は、住宅宿泊仲介業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない。」と規定しておりますとともに、電磁的方法を含め、登録年月日、登録番号その他の事項を公示する義務づけというのを仲介業者に対して行っているところでございます。

 これらによりまして、住宅宿泊事業者は、登録された住宅宿泊仲介業者を把握した上で、当該事業者に委託することを求めているわけでございます。

伊佐委員 ありがとうございました。

 さまざま、一問一答形式で質問させていただきました。いつも一番最後に質問される椎木委員は、最後、多少短くされているわけですが、私もきょうはちょっと短くしようかなと思ったら、質問時間ぴったりになってしまいました。

 いずれにしても、きょうの参考人の質疑でもありましたとおり、これまでの旅館業と民泊の人たちが共存共栄できるような制度づくりというものにしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 以上、終わります。

西銘委員長 次回は、明三十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十八分散会


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