衆議院

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第3号 平成28年12月13日(火曜日)

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平成二十八年十二月十三日(火曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 城内  実君

   理事 助田 重義君 理事 高鳥 修一君

   理事 中川 郁子君 理事 中山 泰秀君

   理事 山田 美樹君 理事 青柳陽一郎君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    池田 佳隆君

      石崎  徹君    今津  寛君

      大西 宏幸君    佐々木 紀君

      斎藤 洋明君    笹川 博義君

      辻  清人君    長尾  敬君

      福山  守君    三ッ林裕巳君

      岡本 充功君    松原  仁君

      横山 博幸君    浜地 雅一君

      笠井  亮君    吉田 豊史君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 松本  純君

   国務大臣

   (拉致問題担当)     加藤 勝信君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  岡本  宰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 森本 浩一君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          大町  寛君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十三日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     福山  守君

  高木  毅君     三ッ林裕巳君

  原口 一博君     岡本 充功君

  松田 直久君     横山 博幸君

  松浪 健太君     吉田 豊史君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     石崎  徹君

  三ッ林裕巳君     佐々木 紀君

  岡本 充功君     原口 一博君

  横山 博幸君     松田 直久君

  吉田 豊史君     松浪 健太君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     高木  毅君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 閉会中審査に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

城内委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官岡本宰君、外務省大臣官房審議官大菅岳史君、外務省大臣官房参事官飯島俊郎君及び文部科学省国際統括官森本浩一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

城内委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自由民主党の中川郁子でございます。

 質問の機会をいただきましたこと、本当に心からお礼を申し上げます。

 北朝鮮による卑劣な人権侵害であり、また国家にとっては主権を脅かす、また私たち国民一人一人にとっては安心、安全を脅かされている、こういう重要な問題を議論するこの委員会でありますが、延長国会のぎりぎりという時間ではありますけれども、委員会を開いていただきましたことに、委員長そして両筆頭に心から感謝をするものであります。

 中学生であった横田めぐみさんが何者かに連れ去られ、そして、北朝鮮による犯罪であるということがわかったわけでありますが、ことしで三十九年、来年で四十年、これは時間にすると三十五万時間になります。誰にとってもかけがえのない人生、そして、誰にとってもかけがえのない時であります。それを不本意な人生を歩まざるを得ない拉致被害者の皆さんが、私たちの仲間である、日本人である拉致被害者の皆さんが、今も御家族の皆さんに、そして私たち日本人一人一人に、一日も早く助けてほしい、こういうメッセージを送っているということを片時も忘れてはいけない、このように思います。

 安倍政権にとっても最重要課題であり、どんなことにも先駆けて解決をしなければいけない問題である。このことは、総理も、そして先日も加藤大臣の言葉にもあったわけであります。しかしながら、国民の目には一つも進展していないように見えるのがこの北朝鮮による拉致問題ではなかろうかというふうに思います。

 そして、弾道ミサイルが二十回も、そして核実験が五回も北朝鮮によって行われているということもあり、先日の大臣のお話の中には、国連安保理で大変厳しい制裁を加えることが決まり、また、日米韓の話し合いの中で、我が国も独自として制裁を加える、そういうお話がありました。そういう中で拉致問題はどういうふうになっていくんだろう、これは誰もが心配しているところではないか、このように思います。

 御発言の中で、国際社会において北朝鮮の人権状況の改善を求める機運はこれまでになく高まっている旨の御発言があり、拉致問題を進展させるためには大変心強い状況なのかなというふうに感じました。この機運をてこに、問題解決に向け一歩でも二歩でも前進することができれば、被害家族や関係者の皆様方にとっては大変な朗報だというふうに考えます。

 そこで、加藤大臣にお尋ねをいたします。

 大臣の御発言の中に、国連の北朝鮮人権問題への取り組みと連携した具体的戦略について議論してこられたという御発言があったわけでありますが、具体的戦略の内容について、国際交渉上差し支えのない範囲でお話をいただければというふうに思います。

加藤国務大臣 中川委員御指摘のように、拉致問題は、我が国の主権また国民一人一人の生命と安全を脅かす、同時に、拉致をされた方々の将来、そして家族とのきずなを断ち切る、人道上も人権上も許しがたい、こういう問題でありまして、また同時に、この問題は政府の責任において優先的に解決に向けて努力をしていかなければならないと思っております。

 ただ一方で、やはり国際社会との連携というのは非常に大事であります。特に、拉致だけではなくて北朝鮮の人権状況の改善、こういうことに対して、国際社会が一致団結して北朝鮮の指導部に改善に向けて具体的な行動を促していく、そういったことが非常に大事である、そういった観点から、ニューヨークにおいて、私も赴きまして、議論をさせていただきました。

 まず、そのバックグラウンドとしてあるのは、国連では、北朝鮮の人権侵害の実行者に対する説明責任を追及する取り組みが、前任者から今のキンタナ北朝鮮人権状況特別報告者、そしてさらには専門家グループが設立され、今行われているわけであります。

 また、ちょうど私が行く、そのパネルディスカッションが始まる前でありましたけれども、一連の核また弾道ミサイルに対する、安保理の大変厳しい内容とする決議が採択をされた、こういう状況の中でありました。それで、非常に、そういった意味でパネルディスカッションにも多くの方々が出席をいただき、関心の高さというものを肌身で感じてきたところであります。

 そこで、私の方からは二点、一つは、もう拉致が行われてから四十年内外たっているわけでありますので被害者や被害者の御家族が高齢化をしている、本当に一刻の猶予も許されない、こういう状況にあるということであります。それからもう一つは、先ほど申し上げましたけれども、一日も早い全ての拉致被害者の帰国を実現していくためにも国際社会との連携が重要であるということを、私の方からは述べさせていただきました。

 そして、パネリストの皆さんからは、一つは、北朝鮮に対して責任追及を含めた圧力を強化していくということは、北朝鮮当局に人権侵害を思いとどまらせるという意味において効果的である、また、海外に派遣されている北朝鮮労働者に対する人権侵害の問題への取り組みが必要である、それから、北朝鮮市民の情報アクセスを向上していく、こういったことの重要性、こういったことが提起をされたところでございまして、これらに対しても、引き続き国際社会と連携をとりながら対応させていただきたいというふうに思っております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。政府のお取り組み、心から期待をいたしております。

 そこで、ちょっと視点を変えてお話をさせていただきたいというふうに思います。先ほど理事会で御了承いただきました資料をごらんいただければというふうに思います。

 これは五月九日の産経新聞によるものでありまして、先日、維新の会の儀間議員が参議院の農水委員会でも同じ質問をされました。私の方はちょっと視点を変えてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 これは実は北海道帯広市の農地の話でありますので、私の選挙区での出来事であります。帯広の経済人であれば誰もが知っている当該人物でありますけれども、二十数年前から農業を始めている。最初数ヘクタールであったものが、今や東京ドームの三十六個分に当たる百七十ヘクタールを買収し、そして有機農業をやっている。

 私も、現地にお邪魔、お邪魔というか、普通に帯広市道の右側と左側にその農地があるものでありますから、そちらに行ってみたところ、帯広から向かって右側の方には果樹園があります。有機農法ということで、なかなか成功しておられないということでありますが、やっと養鶏をやっておられる。ほんの八千羽ほど。養鶏のことをよく御存じの方であれば、八千羽の養鶏場といえば余り大きい規模ではありません。農業として成功しておられるのは卵づくりだけであろうかというふうに思います。

 一方で、この記事にありますように、巨大な研修所のようなバンガローが建っている。バンガロー三つと書いてあるんですが、私が行って確かめたところ、そのバンガローよりもっともっと大きい研修施設のような集会所、大、小がありました。そして、びっくりすることには、帯広市の道路である、本当に田舎の道路ですから、三メートルあるかないかぐらいの道路なんですけれども、突然、この農場の近くになると幅二十メートルぐらいの広さになって、整地してある。

 私、市役所や道庁、また帯広にある財務事務所に行ってお尋ねをしたところ、ここは号線用地といって、帯広市の持ち物でもなければ、国の持ち物というのも、どちらとも定義しがたいというところでありました。そこを勝手に拡幅していいのかどうかということもお尋ねしたんですけれども、答えは曖昧で、大して問題はないということでありました。

 ただし、近隣の皆さんは本当に心配をしていて、この当該人物は今にヘリポート建設をすると書いてあるんですけれども、私の見立てでは、ヘリポートではなくてプライベートジェットでも飛んでいくような滑走路になるのではないか、そんな印象がありました。

 これだけ大きなサティアンがあって、そしてバンガローがあって、この記事に書いてあるとおり、朝鮮総連の議長、議長補佐、朝鮮大学校長、教授などなど、北朝鮮にかかわる人物がこの農場祭に参加をしておられました。

 近隣の皆さんは農家さんでありますから、一番心配しているのは、これによって、大変きれいな水のある、また農業にとって重要な水が掘削されて北朝鮮に持っていかれるんじゃないか、こんなことを農家の皆さんは心配しています。

 この記事が出た後はもっと心配が広がっていて、その昔、三十年、四十年前はあの日本海をボートに乗せられて、布袋に詰められて日本人が拉致されていたわけでありますけれども、この平成の世の中になって、プライベートジェットでヘリコプターで、北朝鮮に連れていかれる新しい拉致問題が出るのではないか、そんなことを近隣の皆さんは本当に真剣に心配しているところです。そして、市役所に言っても道庁に言っても、何か余りらちのいかないような答えが返ってくるということで、大変心配をしているわけであります。

 私は、安全保障と土地法制にも大変関心を持っているところであります。維新の皆さんが議員立法として新しい、水資源にもかかわる議員立法を出そうとしている。我々北海道の道議会議員の仲間が水資源保全条例をつくって、それが各県に今広がっているところでありますが、この条例は事前に届け出をすることを決めたものであり、余り拘束力のないものであります。一方、維新の皆さんが出そうとしておられる議員立法は、その売買のあった事後に報告を義務づけるということであります。

 一方の、私たち自由民主党で今議論されているものは、防衛施設の周辺に限って防衛大臣が立ち入り、そして調査をすることができるということであり、どちらの法律がいいのか、そこは私もまだしっかりと勉強しているわけではありませんので、そういう動きが出ているところであります。

 また、この新聞記事に戻ります。

 北朝鮮の、朝鮮総連のこういう皆さんがいらっしゃったところに、もう一つ、私の地元の十勝毎日新聞社では、地方議員及び国会議員、政治家もこれに参加をしていたというお話であります。この前にあった八月の感謝祭におきましては、元国務大臣、元国会議員も出席をしていた、そのうちの元国会議員はこの当該人物と一緒に北朝鮮に行ったことがある。

 もちろん、北朝鮮に行ってはいけないということではありませんが、李下に冠を正さずといいますか、選挙で選ばれる仕事をしている人は人に疑われるような、誤解を受けるようなことは余りしないのではないかな、こんなふうに思っていたところであります。

 私、いろいろ調べて、道庁からもいただいた資料で、当該農地、それから、上空写真でありますがこのバンガローの施設の写真などもいただき、この記事と事実を道庁として確認していただいている。その中に、この新聞に書いてある日付の感謝祭にも、地方議員と、それから現在バッジをつけている現職の国会議員の公設秘書の方が出席をしていたということを道庁も確認しているところであります。

 そうなってくると、そのときの感謝祭がいかなるものであったのか、あるいは、バンガローや研修施設がどんなものなのかなと大変気になっていたところでありますが、いろいろなことがあってしばらく私もその調査をする時間もないままにいたところ、ひょんなところから、地元の人物、私がこの問題について調査をしているということを知っていたのか知らないのかわからないんですけれども、(資料を示す)これは提出資料になっておりませんので中はあけませんけれども、中を見ると地方議員あるいは公設秘書の写真がありました、そして、このDVDの中には、当該農場主と国会議員の秘書あるいは地方議員が挨拶をしているDVD、これは顔も声も全部出ているわけでありますが、こういうものが私の手元に、本当に偶然でありますが、来たところであります。

 北朝鮮による拉致問題、しっかり解決をしなければいけないというときにあって、選挙で選ばれた政治家が、大変紛らわしい、地域の皆さんが大変心配をするような行動をとっているということに、私は、地元の議員として大変憂慮しているところであります。これについては、質問ではなく、こういうことが私の地域で行われていて、皆さんが大変心配しているということで、御紹介をさせていただくことにとどめさせていただきたいというふうに思います。

 一日も早い拉致問題の解決と、それから、やはり、先週の金曜日も拉致被害者の家族の皆様方にお会いしました、本当にどんどんお年をとっていて、一日も早くお嬢さん、御兄弟にお会いになりたいだろうな、そういう思いでいっぱいでありますので、政府の力を信じて待ちたい、このように思います。

 貴重な時間をいただきまして、このような機会をいただいて質問をさせていただいたことに心から感謝を申し上げ、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

城内委員長 次に、大西宏幸君。

大西(宏)委員 自由民主党・無所属の会、大西宏幸でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。十五分ということでありまして、十分ぐらいしかございませんけれども、質問をさせていただきます。

 私の地元は大阪です。隣の中山理事とともに、北朝鮮による拉致被害者のおられる地域の当選者でございまして、一貫して拉致問題特別委員会の委員を務めさせていただいております。

 北朝鮮は、世界でも特異な政治体制を持つ国家です。その国を相手として交渉しなければならないというのは、本当に困難なことは十分承知しております。しかしながら、被害者の全員帰国まで、私たちは諦めるわけにはいきません。そうした決意を示す意味でも、本日の委員会が有意義な審議となるように期待をさせていただきます。

 まず初めに、先日、日本及びEUが共同提案をいたしました北朝鮮人権状況決議、国連第三委員会において採択されました。さらに、新たな安保理決議は、初めて主文において北朝鮮の人権、人道問題に言及しました。これは、国際社会が北朝鮮の人権状況に対して強い懸念を示したものであり、大きな大きな前進であったと思います。

 岸田大臣は、実際に国際社会の最前線でこうした議論を牽引してこられました。御苦労も大変多うございまして、本当に心中お察しするところでございます。

 実際に成果があらわれ、私たちは大変心強く思っておりますけれども、北朝鮮は、本年、二回にわたっての核実験、そして二十発以上を超える弾道ミサイルを発射しました。これは、日本のみならず、国際社会の新たな段階の脅威となっており、日本は安保理理事国として議論を主導して、北朝鮮へのさらに厳しい制裁措置も全会一致で可決されました。あわせて、日本独自の制裁措置も実施したということですけれども、安保理で制裁、日本の独自制裁について、少し詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の安保理決議第二三二一号ですが、本年三月、既に安保理決議二二七〇号が発出されておりますが、これを強化し、北朝鮮への人、物、金の流れ等をさらに厳しく規制するものです。特に、北朝鮮の外貨収入源となっている石炭輸出について、生計目的の輸出であっても、年間で約四億ドル、約七百五十万トンの上限を設定したという内容を含んでいます。また、今回、北朝鮮に関する安保理決議として、初めて主文において人道上の懸念が言及されました。これは、拉致問題を初めとする北朝鮮の人権、人道問題に対する安保理を含む国際社会の強い懸念が示されたものだと考えます。

 そして、我が国独自の対北朝鮮措置ですが、我が国は、これまでも北朝鮮に対して非常に厳しい独自措置を科してきましたが、今回、北朝鮮への人、物資、資金の流れを規制する措置を拡充強化することといたしました。

 その内容としまして、一点目は、北朝鮮を渡航先とした再入国の禁止の対象を拡大する。二点目としまして、北朝鮮に寄港した日本籍船舶の入港を禁止いたしました。これによって、北朝鮮に寄港した全ての船舶の入港が禁止されることとなります。そして第三に、資産凍結の対象の団体、個人を拡大した、こういった内容を含むものであります。

大西(宏)委員 今のお話でもそうなんですけれども、日本の船舶が北朝鮮に入って、それがもう日本に入ってこられない。今までそういう制裁措置というのはなかったということで、一歩でも二歩でも三歩でも前進したと評価をいたします。

 言うまでもなく、拉致問題の解決には国際社会として連携が極めて重要です。加藤大臣は、つい先ごろ、十二月一日に、ニューヨークの国連本部で、日、EU、豪、米、韓が共催した北朝鮮の人権状況に関するパネルディスカッションに、日本政府を代表して参加されました。国連本部においてこうしたディスカッションが行われたことは、北朝鮮の人権問題を国際社会に印象づけ、拉致問題の早期解決に向けて、重要な取り組みだと思います。

 ここで、議論の概要や、加藤大臣がお感じになったこと、成果をお聞かせいただけますように、よろしくお願いします。

加藤国務大臣 そのパネルディスカッションにおいて、ちょうど前日に安保理の決議が採択されたということもありまして、大変関心が高いなということを感じさせていただきました。

 その中で、私の方からは、この拉致問題は、被害者や被害者の御家族の高齢化が進み、もう一刻の猶予もないんだという切迫した状況、そして、もちろん日本政府の責任において解決すべき日本人の拉致問題ではありますけれども、国際社会の連携、特に国連のプロセス、そういったものの活用が非常に大事であるということを申し上げさせていただきました。

 パネルの皆さん方からも、北朝鮮に対し責任追及を含めた圧力を強化していくということは、北朝鮮当局に人権侵害を思いとどまらせるには効果的である、また、海外に派遣されている北朝鮮の労働者の人権侵害の問題、また、北朝鮮市民の情報アクセスの向上への取り組み、こういったことに対してアプローチしていくといいましょうか、しっかりと取り組んでいくことの必要性も言われたところでございます。

 引き続き、そうした課題に対しても、我々も国際社会、国連とも連携をしながら対処させていただき、対話と圧力、行動対行動という原則の中で、先ほどお話がありました、やはり北朝鮮という体制の中では指導者がそういう判断に至らなければ答えが出ていかないわけでありますから、そうした判断につながるように、我々としても、国際社会の一連の圧力、これをてこにしながら、具体的な行動を引き出すべく、しっかりと取り組んであらゆる政策を講じてまいりたい、こう考えております。

大西(宏)委員 さて、拉致問題の解決のためには、やはり日本国民が一つにならなければなりません。

 実は、私の地元でございますけれども、来年二月十八日、政府拉致問題対策本部などが主催して、拉致問題啓発舞台劇が公演されます。皆様のお手元の方にも行っていると思うんですけれども、拉致問題啓発舞台劇「めぐみへの誓い 奪還」ということでございます。

 十二月十日から十六日は、北朝鮮人権侵害問題啓発週間として、政府主催のシンポジウムなどが開催されます。

 今の開催状況をお聞かせいただきたいということと、参加人数や内容、どのような成果が期待されるか、お聞かせください。

加藤国務大臣 来年二月にはお地元でも取り組んでいただけるということで、大変ありがたく思っております。

 ちょうど十二月十日から一週間、北朝鮮人権侵害問題啓発週間という中で、政府の主催行事としては、先般の十二月十日に、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況を改善するため、現在国連が中心となって具体的な取り組みを進めております北朝鮮による人権侵害に対する責任追及について、内外の専門家に集まっていただきまして議論を深めていただき、それをまた多くの方に来ていただいて聞いていただいたわけであります。週末の行事ではありましたけれども、四百五十名を超える方々においでをいただきました。熱心にお聞きをいただき、また、時間の都合で十分な時間はとれませんでしたけれども、聞いていただいている方からも質問をいただいたということもございます。

 こうしたシンポジウムを通じて、拉致問題に対する国民の皆さんの理解を深め、またそのことが、先ほど申し上げた、全ての拉致被害者の一日も早い帰国に向けての大きなる後押しになっていく。

 やはり、やるのはもちろん政府であります、しかし、その後ろに、国民が心を、思いを一つにしているということは非常に大事なことだと思います。

大西(宏)委員 ちょっと質問をはしょりまして、またちょっと別の話なんですけれども。

 拉致問題とは少し違いますけれども、私は生野区というところに住んでおりまして、いろいろ陳情を受けるんですけれども、いわゆる日本人妻、北朝鮮に渡ってその後音信不通になっている方の御家族、関係者から、一時帰国でもいいから何とか顔を見ることはできないのかということもよく聞きます。

 政府として、北朝鮮国内の在留邦人について、現在、人数や出身地、個人の特定など、どの程度把握しておられるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

大菅政府参考人 在日朝鮮人等の北朝鮮への帰還事業によって北朝鮮に渡りましたいわゆる日本人配偶者、その総数は約一千八百人と承知しております。

 こうした日本人配偶者につきましては、これまでも、北朝鮮側に対してさまざまな機会を捉えて安否確認を求めるなど、その消息等の把握に努めてきております。

大西(宏)委員 一千八百人ですね、こうした邦人の帰国について何か対処しておられるのであれば、その対応の仕方、今現状ですね、何もないようであれば、私の地元にも家族の方が多くおられます、ぜひ、家族の再会ができるように政府として尽力を尽くしていただきたいと思うんですけれども、これは要望といたします。

 時間がなく、何問かはしょりましたけれども、北朝鮮による拉致の方の御家族の高齢化を一番我々は懸念をしております。私自身も、子を持つ親としては胸が痛み、そして焦りも禁じ得ません。引き続き政府として最優先課題として拉致問題の早期解決に向け取り組みを強化していただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。以上で終わります。

城内委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 加藤大臣、岸田大臣、大変に御苦労さまでございます。限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきます。

 先ほども答弁にありましたけれども、十二月十日から十六日が北朝鮮人権侵害問題啓発週間、きょうはまさにその中にあるわけであります。先週、政府主催の国際シンポジウムのほか、全国各地でさまざまな行事が開催をされまして、広報啓発活動が実施をされております。

 この政府主催の国際シンポジウムでは、加藤大臣が基調講演をされ、その後、国連関係者や海外の外交官なども含めたパネルディスカッションが行われたと伺っております。

 また、家族会、救う会、拉致議連でも国際セミナーを開催いたしまして、その際にも加藤大臣からも御挨拶をいただきまして、私も各政党の代表の方々とともに出席をし、挨拶をさせていただきました。また、このときには、アメリカ人の拉致被害者でありますデービッド・スネドンさんの御兄弟も来日をされ、出席をされておりました。

 こうした国の内外に対する発信というのは、やはり、日本の国が、政府が、そして国民が拉致問題に非常に強い関心を持っていてこの問題解決に強い決意で臨んでいるということを示す上で、非常に重要なことだというふうに考えております。

 しかし、こうした、政府においても、またいろいろな団体の方々の取り組みでも、国民全体にどれだけ知っていただいているのかというと、なかなかそこは難しい面があるというのが正直な感想だというふうに思っております。

 政府においては、やはりせっかくこういったさまざまな事業を行っているわけでありますので、さらに一層、広報啓発活動にいろいろな工夫をしながら努力を払っていただきたいというふうに思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

加藤国務大臣 上田委員御指摘のように、こうした拉致問題解決のために、もちろん政府が最前線で取り組むのは当然のこととして、さらに、その後ろにいる日本の国民の皆さん方が心を一つにして、この問題に対する高い関心、また拉致に対する怒り、そして全ての拉致被害者の方々の一日も早い帰国実現に向けての強い意思というものをしっかりとお示しいただくということは、非常に大事であり、またこの解決にも資するものというふうに思っております。

 ただ、残念ながら、拉致問題がこの間進展もしていないということ、そして、拉致被害者の御家族から、だんだん関心そのものが薄れてしまうんじゃないかという御懸念も我々聞かせていただいております。

 そういうことにならないように、いや、むしろその声が、その声というのは国民の声が、高まっていけるように、さらに啓発活動に向けてしっかりと取り組ませていただきたいというふうに思っております。

 委員御指摘のように、この間の北朝鮮人権侵害問題啓発週間においても国際シンポジウム等を開かせていただいておりますし、この週間でなくても、地域地域で国民の集いをやっていただく、あるいはさまざまな啓発セミナー、それから、先ほどもお話がありましたけれども、ビデオメッセージあるいは舞台劇、そういったものの展開をしていく中で、国民の皆さん方の関心そして支援をしっかり得ていくべく、広報啓発にもしっかりと取り組ませていただきたいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、先日政府で決定をいたしました追加的な制裁措置につきましてお伺いをいたします。

 こうした追加的な制裁措置を決定いたしましたが、我が国ではこれまでも大変厳しい措置を講じておりますので、現状でも人的交流、経済関係というのは極めて限定的でありまして、新たな措置を講じたとしても果たしてどれだけの効果があるのだろうか、そういったところには疑問の声もございます。

 そこで、この新たな措置のポイントはどこにあるのかお伺いをしたいというふうに思います。また、それによって期待される効果というのはどういう点があるのか、御見解をお伺いいたします。

 さらに、十一月三十日に採択をされました国連安保理決議に基づきまして、各国とも制裁措置を強化することとなっています。その中で、先ほどの答弁にもありましたけれども、注目をされているのが、北朝鮮にとって外貨獲得の有力な手段となっている石炭に関する輸入の制限であります。

 この措置の目指しているところ、そして効果、どのように評価をされているのか、外務大臣に御見解を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 我が国の独自の措置ですが、委員御指摘のように、これまでも北朝鮮に対して非常に厳しい独自措置を科してきましたが、今回、北朝鮮への人、物、金の流れを規制する措置をさらに拡充強化することといたしました。

 一つは、再入国禁止の対象の拡大、二つ目として、北朝鮮に寄港した全ての船舶の入港禁止、そして三点目として、資産凍結の対象となる団体、個人を拡大する、こうした内容を含んでいます。

 こうした厳しい内容、もちろん大きな効果があると思いますが、それに加えまして、この独自措置は、日米韓三カ国で緊密に連携し、タイミングを合わせて十二月二日に発表いたしました。これは、十一月三十日の新しい安保理決議二三二一号の採択後、間を置かず日米韓の緊密な連携のもとに毅然かつ断固たる姿を示す、こういった意味で、強いメッセージという意味でも大きな意味があると思っています。

 そして、この安保理決議二三二一号ですが、これは人、金、物の流れを厳しく規制するものですが、これは全会一致で採択されたこと、このことを高く評価したいと思いますし、その中で、北朝鮮の輸入額の約四割を占めると言われる石炭の輸出への上限設定をしたということ、これは非常に効果的であると考えます。

 あとは、実効性の確保が重要だということであり、ぜひ安保理に設けられました北朝鮮制裁委員会あるいは専門家パネル、こうした組織とも緊密に連携をしながら実効性の確保に努めていきたい、このように考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 効果的な制裁措置が実行されるためには、やはり中国が非常に鍵を握っているんじゃないかというふうに思います。中国が、国際社会と協調して、国連決議の趣旨を遵守し確実に実行をしていくということが極めて重要であります。何といっても、北朝鮮の対外貿易に占める中国のシェアは九割を超えるというふうに言われておりますし、しかも、ことしは中朝貿易が増加しているというふうなことも言われております。ただ、一方では、石炭の輸入を制限する措置も導入をしているというふうにも言われております。

 中国の姿勢をどのように評価されているのか、また、我が国として、中国に対して国際社会と協調してこの制裁措置を実行するように働きかけていく、そういった姿勢が必要かというふうに思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、済みません。

 先ほどの答弁で、北朝鮮の石炭の輸出への上限設定、北朝鮮の輸入額の四割と答弁したようでございます。これは、輸出額の四割でございます。訂正させていただきます。

 その上で、中国の役割ですが、これは、北朝鮮に対する実効的な圧力を強化する上で、安保理常任理事国であり、六者会合議長国であり、北朝鮮との貿易額の九割を占める中国、この役割はまことに大きいものがあると認識をいたします。

 従来から、責任ある常任理事国として建設的な対応を中国に対して我が国は求めてきているところですが、こうした働きかけの結果として、今回、決議二三二一号が全会一致で採択されたこと、このことをまず評価したいと思います。

 そして、その上で中国は、この二三二一号の決議の採択を受け、同決議を真剣に履行していく姿勢を明らかにしています。また中国は、決議二三二一号の履行のため、北朝鮮原産の石炭の輸入を年末まで一時停止する旨、公示を既に発出したと承知をしております。こうした中国の取り組みを引き続き注視していきたいと思います。

 中国に対しての働きかけ、そして安保理の北朝鮮制裁委員会あるいは専門家パネル、こうした組織との緊密な連携、こういったものに努めていきたいと考えます。

上田委員 終わります。

城内委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 民進党の青柳陽一郎でございます。

 本日は三十分の時間をいただきました。ありがとうございます。

 早速ですけれども、質問に移ります。

 まず、今の北朝鮮の政治体制、金正恩体制、これがどういう状況になっているのか、我が国はどのように情報を収集し分析しているのか、この金正恩政治体制の評価についてお伺いします。

 そしてあわせて、今の韓国の内政の混乱が韓国と北朝鮮の関係にどのように影響を与えているのかということについての分析をお聞かせいただきたいと思います。

大菅政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮の体制の分析についてのお問い合わせでございます。

 北朝鮮では、御承知のとおり、ことしの五月、三十六年ぶりとなる第七回朝鮮労働党大会、それから翌六月には最高人民会議が開催されました。その結果、金正恩党委員長それから国務委員長という肩書の、金正恩を中心とした新たな体制が確立されたと見ております。

 北朝鮮要人の粛清、こういったものもございましたが、これによって体制の基盤がより強化されたという分析もございますし、逆に体制の不安定要因となり得るといった分析、さまざまな見方が北朝鮮情勢についてはございます。

 政府としましては、こうした点を含め、北朝鮮内部の動向の分析について、平素から米国、韓国と緊密に連携するとともに、北朝鮮に公館を設置している友好国、こういった各国との情報交換を通じて、情報収集、分析を行っているところでございます。

 いずれにしましても、北朝鮮の国内体制について、我が国が把握する具体的な情報の内容、分析、こういったものにつきましては、事柄の性質上、公の場で明らかにすることは差し控える必要がある、そのように考えております。(青柳委員「南北関係」と呼ぶ)失礼いたしました。

 韓国におきましては、御承知のとおりの弾劾決議が国会を金曜日に通りまして、国務総理が大統領の職務を代行している状況にございます。そういった中でも、まさに弾劾決議が通りました直後に、北朝鮮の外務大臣、我が国を含め主要国の大使を呼びまして、外交、安全保障については、これまで同様、確固たる姿勢を維持するといったことを伝えております。

 北朝鮮につきましては、韓国にとっても我が国にとりましても主要な外交、安全保障上の課題でございますので、緊密に連携してまいりたいと考えておりますし、韓国政府の側においても同様の立場であるというふうに認識しております。

青柳委員 後段の方の質問は、はっきり言って何にも答えていないので、答えられないので、大臣にせっかくなので伺いたいと思いますが、今の韓国の内政の混乱が北朝鮮と韓国の関係にどういうふうに影響を与えるとお思いになるか、どういうふうに見立てているかについて、御所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 韓国における内政の混乱ですが、これが北朝鮮と韓国との関係にどういった影響を与えているかということについてはさまざまな見方があります。

 例えば、韓国は今内政が混乱しているため、北朝鮮はこういった状況であるので現在は挑発行動を控えているのではないか、こういった分析があることは承知をしています。ただ、そういった分析があるということでありますし、さまざまな見方があるということでありますので、そうしたさまざまな見方も念頭に置きながら、我が国独自のやはり情報収集、分析に努めているということであります。

 その我が国独自の情報収集、分析については、これは手のうちを明らかにする、情報収集能力を明らかにすることにつながりますので、公にすることは控えなければならないと思います。

 いずれにしましても、さまざまな情報をしっかりと収集、分析し、我が国の判断において間違いがないように努力を続けていかなければならないと考えます。

青柳委員 北朝鮮はああいう国ですから、情報が少ないので、当然、さまざまな見方になってしまうというのはわかりますが、今の北朝鮮の金正恩政権、暴走していると言える金正恩政権が、残念ながら、その政権基盤は安定してきてしまっているんじゃないかなと。ことし五月、三十六年ぶりの党大会を開催したという御説明もありました。これをもってしても、政権が徐々に安定してきてしまっていると言わざるを得ないんじゃないか。

 そして、きょうの議論でもありましたけれども、国際社会、または我が国独自でもいろいろな制裁を科してきていますけれども、その効果については、残念ながらそれほど上がっていない、上がっているのは懸念ばかりじゃないかと言えると思います。

 その政権の暴走がますますこれから加速してしまうのではないかという懸念、実際にことしに入ってから毎月のようにミサイル、核、こうした実験、挑発事案というのが相次いでいる、国際社会が一致して行動してもなかなかこれをとめることができないというのが今の現状ではないかというふうに、残念ですけれども、思います。

 さらに、拉致問題。拉致問題は、四年前に安倍政権が誕生したときには、拉致問題を最重要課題に位置づけるということで、認定の有無にかかわらず安倍政権で全ての被害者を解決するんだ、こう宣言されて安倍政権がスタートしたわけであります。安倍総理自身も、そして第二次政権の一人目の大臣は古屋大臣だったと思いますけれども、古屋拉致大臣も、拉致問題と北朝鮮問題に最も詳しいんだというのを自認する総理と大臣が政権をつくったわけです。拉致被害者の家族、関係団体、そして多くの国民、私自身も拉致問題が大きく進展するんだろうというふうに、四年前、期待をしたところです。

 そして、二〇一四年の五月に、北の重い扉をこじあけるということで、日朝ストックホルム合意。これは反対意見もありましたし、この合意の内容で本当に拉致被害者が帰ってくるのかという御批判もあったかと思いますけれども、いずれにしても、安倍政権がやる合意なんだから、これで拉致問題が解決に向けて大きく一歩前進するだろうという期待で、このストックホルム合意が合意されたこと、これを大変歓迎したわけでございます。

 そして、行動対行動の原則だということで、一部、我が国独自の制裁を解除した。これも事実だと思います。さらに官房長官も、この日朝ストックホルム合意の記者会見で、一年をめどに結果を出すんだ、こういうコメントも出されていました。本当に多くの国民が期待したんだろうと思います。

 しかし、残念ながら、第二次安倍政権がスタートして四年たった今でも、そしてストックホルム合意から二年半過ぎた今でも、本当に残念なんですけれども、全く拉致問題は進展していない。むしろ期待が大きかっただけに失望に変わっているというのが私は残念でなりません。

 そこで、外務大臣に伺います。

 この拉致問題、毎回、所信表明で同じような所信を述べられています。対話と圧力、行動対行動の原則、オール・ジャパンで取り組むんだということを最重要課題と位置づけてやるんだということを毎回所信で述べられていますけれども、四年たって、残念ながら全く成果が出ていないこの方針、これからも同じ方針で臨むんですか。そして、それで解決できると本当にお考えなんでしょうか。厳しい質問になりますけれども、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、北朝鮮との交渉に当たっては、対話と圧力、そして行動対行動の原則に基づいて臨んでまいりました。その中にあって、御指摘のストックホルム合意、拉致問題は解決済みとしていた北朝鮮の重い扉をこじあけて、日本人に関する調査を行わせるという意味では、これは大きな意味があったと思います。

 ただ、調査開始から二年以上たった今も拉致被害者の方々の帰国が実現していないということは、まさに痛恨のきわみであると考えます。また、ことしに入って北朝鮮が核・ミサイル開発をエスカレートしているこの新たな段階の脅威に入った、こうした現状についても、これは深刻に受けとめなければならないと思います。

 そういった中にあって、こうした問題を包括的に解決するために、国際社会と連携しながら強い圧力をかけなければならないということで、累次の安保理決議、そして関係国とともに独自の措置を実施する、こういった取り組みを続けているわけです。

 ただ、この諸懸案、特に拉致問題の解決のためには、対話という要素、これは欠くことができません。そういったことから、ストックホルム合意については、我が国からこれを破棄するということは考えず、ぜひこの合意に基づいて北朝鮮との対話の要素もしっかり考えていかなければならないと思っています。

 いずれにしましても、こうした対話と圧力、それぞれの組み合わせによって、北朝鮮から具体的な対応を引き出すためにはどうあるべきなのか、不断の検討を続けていかなければならない課題であると考えます。

青柳委員 加藤大臣にも同じ質問をしたいと思います。

 毎回、大臣所信で述べられているコアな部分というのはほとんど変わっていません。そして、四年間結果は出ていません。同じ方針で臨まれるおつもりですか。

加藤国務大臣 委員の御指摘、また、特にストックホルム合意のときには御家族の方も期待をと思っていただけに、この二年間、もう超えておりますけれども、一人の拉致被害者の帰国どころか、それに向けての道筋も見えていない。本当に我々、常に申し上げますけれども、痛恨のきわみであり、また担当大臣として大変申しわけなく思っているところでございます。

 そういった意味で、一つは、今、国際社会との連携等さまざまな形での圧力をかけながら、しかし、最終的にはこれは日本国政府の責任において解決をしていく。そのためには、やはり対話を通じて、全ての拉致被害者の一日も早い帰国に向けての動き、これをしっかりと引き出していかなければならないというふうに思っております。

 そういう意味で、同じ方針というか、大きな意味では、やはり対話を通じて最終的には解決していくということには変わりませんし、さらにこの解決に向けて我々しっかり取り組んでいくということ、その姿勢もしっかりと堅持をしていきたいと思っております。

青柳委員 対話を続けるという答弁がございました。対話のチャンネルは残っているんでしょうか。日朝ストックホルム合意、これは現在でも有効なんでしょうか。

 北朝鮮はもう既に、二月十二日以降包括調査は全面中止する、特別調査委員会は解体すると発表しました。この北朝鮮の発表に対しても、こういう発表があった後でも、日本はまだ日朝ストックホルム合意は有効だとお考えなんでしょうか。そして、では、どういう対話のチャンネルを生かそうとしているんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 ストックホルム合意については、北朝鮮が、我が国がストックホルム合意の破棄を公言したことになると一方的に主張している、こういった主張が北朝鮮からなされています。こうした主張は全く受け入れることはできません。我が国としてストックホルム合意を破棄する考えはありません。

 この合意に基づいて、一日も早く全ての拉致被害者を帰国させるよう、北朝鮮側にこれまで繰り返し申し入れているわけですが、今現在、まずは北朝鮮から前向きな行動を引き出すために、国際社会とともに強い圧力をかけています。この強い圧力に対する北朝鮮の反応も見ながら、次の我が国の対応をしっかり考えていかなければならないと思います。

 いずれにせよ、対話と圧力、この組み合わせによって北朝鮮からいかに前向きな行動を引き出すのか、不断の検討を続けていきたい、このように考えます。

青柳委員 しかし、実際に北朝鮮側は特別調査委員会は解体すると発表しているんですよ。

 対話をしていくんだと。では、今、この調査委員会に対する日本側のメンバーはどういうメンバーで、ことしの二月以降、どういう交渉、どういう対話をしてきたんですか。お答えください。

岸田国務大臣 先ほども申し上げたように、日本政府として、このストックホルム合意は破棄していないわけですし、特別調査委員会が解体されたという認識は持っておりません。

 ただ、この現状、こうした北朝鮮の状況に対して、まずは強い圧力をかけなければならないということで、拉致問題以外の核・ミサイル問題の解決のためにも、国際社会とともに今圧力をしっかりかけているわけであります。この圧力に対する反応をしっかり見きわめて、我が国の対応を考えていきたいと考えます。

青柳委員 ストックホルム合意にこだわっていれば、私は解決はしないと思いますよ。この対話のチャンネルがまだ生きていると考えるのは、とても私には有効な手だてとは思えませんし、家族の皆さんも同じ思いなんじゃないでしょうか。残念ながら、何といいますか、ストックホルム合意の失敗を認めたくないような、そういうふうな答弁にも聞こえてしまいます。残念です。

 八月二十九日、中日新聞、東工大中島教授、この中日新聞の「論壇時評」というのがありました。これが掲載されました。

 どういう内容か。その中で、北大教授で政治学者の吉田徹教授の論文を取り上げた記事が掲載されていました。吉田徹教授の論文は「時間かせぎの政治」というものでした。時間稼ぎの政治、その政治手法は期待値の操作であり、これは、みずから実現を掲げるものが失敗する限りにおいてみずからは必要とされる、その事例がアベノミクス、アベノミクスが成功しないのはアベノミクスが不足しているからだと言い続けると、恩恵を受けていないほど、いつか自分にも恩恵が及ぶと思ってしまう、この逆の期待値が安倍政権の支持だと論じております。つまり、政策が実現しないことによって維持される政権、これは時間稼ぎの政権だというふうに断じております。

 私は、アベノミクスだけじゃなくて、この拉致問題、言いたくありませんけれども、このストックホルム合意にこだわっているようでは、時間稼ぎの政治、期待値の操作になってしまうんじゃないかという懸念があることを指摘しておきたいと思います。

 我々、この拉致問題に与野党はないと思っております。一日も早い解決を本当に心からお願いしたいと思います。

 加藤大臣に伺います。

 今回の加藤大臣の所信表明において、オール・ジャパンでの取り組みという言葉がなくなっていました。これは何か意味があるんでしょうか。引き続きオール・ジャパンで取り組んでいくという方針に変わりないんでしょうか。

加藤国務大臣 安倍総理のもと、あらゆる我々の方策を駆使してと申し上げております。そのためにも、オール・ジャパンで取り組んでいくのは当然のことだと思っております。

青柳委員 では、そのオール・ジャパンの意味を教えてください。

加藤国務大臣 まず、政府において、それぞれの役所がそれぞれのつかさつかさの中でやれることを十分にやっていくということが我々の言っている意味でのオール・ジャパンの一つだというふうに思っております。

 加えて、もっと幅広く言えば、先ほどから御議論いただいておりましたけれども、もちろん、拉致被害者御家族を初めさまざまな活動をされている方々、そしてさらには、国民お一人お一人ともしっかりと連携といいますか、そうした皆さんの声をしっかりといただきながら、この問題の解決に当たっていく、そういった意味で、国を挙げて取り組んでいくということにもつながっていくと思っております。

青柳委員 私、この拉致委員会で何度か取り上げているんですけれども、このオール・ジャパンという意味は、今、加藤大臣は、それぞれの役所、そしてそれぞれの関係団体、そして国民を挙げてという御答弁でしたけれども、私は、そのオール・ジャパンの中には、地方、自治体、これも入るというふうに思います。

 自治体にもしっかりと一緒に活動するということを徹底していくべきではないかという議論をこれまでさせていただきました。どう思いますか。

加藤国務大臣 そういう意味で関係団体ということでございますし、また、今、国民の集いというのをそれぞれの地域で、特にそれぞれの県が主催して取り組んでもいただいております。あるいは、さらに市町村でも取り組んでいただいているところもあろうかと思います。

 そういった意味では、まさに地方公共団体、あるいは、この東京だけではなくて、日本全体で取り組んでいくべきだという御指摘はそのとおりだと思います。

青柳委員 文科省に伺います。

 現在、朝鮮学校に補助金を出している自治体の金額と数、基礎自治体、市町村も含めてお答えください。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま質問いただきました朝鮮学校でございますが、各種学校という位置づけでございまして、都道府県知事の認可を受けて設立されております。認可に当たりましては、国が示す規定を踏まえまして、各都道府県が具体的に設定した認可基準に基づいて認可が行われている、こういうものでございます。

 それで、ただいま全国で六十六校の朝鮮学校がございます。補助金につきましては、十八の都道府県、それから百十四の市区町村が朝鮮学校に対して補助金を出しております。(青柳委員「金額」と呼ぶ)はい。金額でございますが、都道府県からの補助金の金額の合計は一億九千三百万、これが平成二十七年度の補助金の額でございます。それから、市区町村の補助金につきましては一億八千万、これも二十七年度の実績額でございます。

青柳委員 文科省として、この補助金の使途、そして、それぞれ補助金を支出している先の朝鮮学校の教育内容、指導内容をチェックされていますか。

森本政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、朝鮮学校は各種学校という位置づけでございますので、都道府県知事の認可でございます。したがいまして、都道府県知事の責任と判断においてその運営が確保されているというものでございます。

 文部科学省といたしましては、朝鮮学校を直接に指揮監督する立場にはございません。したがいまして、教育内容について直接調査するということはできませんが、しかしながら、自治体の朝鮮学校に対する補助金交付につきましては、平成二十八年の三月二十九日に通知を発出いたしまして、朝鮮学校に補助金を交付する自治体に対して、教育振興上の効果、適正かつ透明性のある執行の確保、住民への情報提供の適切な実施を依頼したところでございます。

青柳委員 そこまでやるんだったらチェックすべきじゃないですか。なぜチェックしないんですか。

森本政府参考人 先ほどお答え申し上げましたとおり、これは都道府県知事が所轄庁として認可をし、その運営を監督している、こういうものでございます。したがいまして、文科省としては直接に指揮監督する立場にはないということでございます。

青柳委員 加藤大臣、今の答弁を聞いてどう思いますか。オール・ジャパンと言えるんですか。オール・ジャパンというのであれば、しっかりこういうこともチェックしていくべきだろうと私は思いますよ。都道府県が認可だから文科省は口出ししない。だけれども、これは公費が、十八都道府県一億九千三百万、百十四市町村一億八千万、配られているわけです。公費です。これが本当に適正に使われているのか、どんな教育内容をやっているのか、チェックすらしないんです。これはオール・ジャパンと言えるんでしょうか。私は、本当にオール・ジャパンと言うのであればこういうところから、むしろしっかりと加藤大臣がリーダーシップをとって適正化していくべきだと思いますが、どうでしょうか。

加藤国務大臣 朝鮮学校に対する地方自治体からの補助金についても、こういったことに対してどうにかならないのか、こういう声は拉致被害者の御家族や関係される方々から我々もよく聞く話でありますし、そういった意味で、拉致被害者が帰ってこない、そういう中で、何らかでもいいからしっかり対応してこい、その気持ちは我々は共有しなければならない、こう思っております。

 ただ、今お話ありましたように、我が国は法治国家ということでありますから、法律の中での対応、ちょっと詳しい話は文科省にお譲りをいたしますけれども、その中で、そうした気持ちを持ちながら、その厳正な執行というものをしっかり我々は進めていかなければいけないと思います。

青柳委員 ちょっと答弁としては物足りないと思いますけれども、私は、そういうところから、本当にオール・ジャパンと言うのであれば、そういう取り組みも必要だろうと思います。

 最後に、ちょっと残された時間で、この委員会で岸田大臣に質問する機会は最後だと思いますので伺わせてください。

 昨年の十二月、華々しく日韓政府間合意が行われました。共同記者会見を岸田大臣がされました。そして、その日韓の政府間合意に基づいて、ことしの八月に日本政府は十億円、資金を韓国の団体に拠出したわけでございます。それ以降、韓国側は合意を履行されているんでしょうか。お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、昨年末の日韓合意に基づいて、日本政府は、韓国に設立された和解・癒やし財団に対し、八月、十億円を支出いたしました。

 それに対する韓国の対応ですが、これをもとに、財団は、十月、元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心の傷の癒やしのための事業を開始し、財団はこれまで二十三名の元慰安婦の方々に対して事業実施のための支出を行った旨発表していると承知をしています。

 引き続き、日韓両政府とも、この合意をしっかり履行し、やるべきことを実施していく、これが重要であると認識をしております。

青柳委員 象徴的なものは慰安婦像の撤去ですよ。これも合意に入っている。象徴的なものは慰安婦像の撤去です。これはどうなっていますか。

岸田国務大臣 合意の内容はしっかり履行しなければなりません。それに基づいて、韓国政府としまして、御指摘の点につきましても努力を続けていると認識をしております。

青柳委員 韓国は、今の政権はもうもたないでしょう。日本政府は十億円払いました。履行がされなければ誰が責任をとるんですか。最後にそれを聞いて質問を終えたいと思います。

岸田国務大臣 韓国国内においては、大統領に対する弾劾訴追案が可決されるなどさまざまな動きがありますが、韓国政府は、大統領権限代行を中心に、揺るぎない外交・安保政策を履行していく、こうした確固たる意思を表明しています。ぜひ、この韓国政府の取り組み、日韓合意に対する対応も、しっかりと履行していく方向であることを注視していきたいと思っております。

 そして、履行されなかった場合の責任はどうかという質問でありますが、これは仮定に基づいてお答えするべきものではありません。まずは、この合意の履行に向けて両国政府が努力をしていく、これが重要だと認識をしております。

青柳委員 いや、どんな組織でも、合意したものがうまくいかなかったらトップが責任をとるからみんなやるんじゃないんですかということを申し上げて、質問を終わります。

城内委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 北朝鮮がことし九月に強行した五度目の核実験と、繰り返される弾道ミサイル発射に対して、国連安保理は去る十一月三十日、新たな制裁措置を盛り込んだ決議二三二一号を全会一致で採択したわけであります。

 今回の決議について、安倍総理は、「国際社会が、これまでと全く異なる新たな次元の厳しい対応を取ることを国際社会の意志として明確に示したものである。」、このようにコメントいたしました。

 岸田外務大臣に伺いますが、この決議のどこがこれまでと全く異なる新たな次元のそういう厳しい対応となっているのか、お答えください。

岸田国務大臣 今回の安保理決議ですが、まず、本年三月に採択されました安保理決議二二七〇号を強化して、北朝鮮への人、金、物の流れ等をさらに厳しく規制するものです。

 そして、その中で特筆すべき点としまして、北朝鮮の外貨収入の源となっている石炭輸出について、生計目的の輸出であっても、年間で約四億ドル、七百五十万トンの上限を設定しているという点であります。この上限の設定によって、北朝鮮の核、弾道ミサイル開発のための収入源を制限する効果、これが期待されると思います。

 また、もう一点特筆すべき点としまして、今回の決議においては、北朝鮮に関する安保理決議として初めて主文において人道上の懸念が言及されているという点であります。これは、拉致問題を初めとする北朝鮮の人権、人道問題に対する安保理を含む国際社会の強い懸念が示されたものであると認識をしております。

笠井委員 今大臣が今回の決議で触れられた点で、北朝鮮最大の外貨獲得源である石炭輸出についての総額約四億ドルまたは総量七百五十万トンの年間上限、あわせて銅やニッケルなども禁輸品目に加えられたと思うんですけれども、さらに、輸入国が輸入した石炭量を毎月国連安保理に報告することが義務づけられて、上限に近づくと加盟国は購入を禁止される、そこまでいったわけであります。

 そうした一連の制裁措置が実施されるならば、今大臣もちょっと触れられましたが、北朝鮮の年間の輸出額のかなりが減収ということになると思うんですが、その点についてもう一言、どういうふうにお考えか、その点についての効果といいますか、どういうものだというふうにお考えか、お答えください。

岸田国務大臣 御指摘のように、石炭輸出についても上限を設ける。石炭の輸出は北朝鮮にとって大変重要な収入源でありますので、これは大きな効果があると考えられますし、そして委員も今御指摘になられましたが、銅、ニッケル、銀、亜鉛、こうしたものについては、今回の決議によって北朝鮮からの輸出が全面的に禁止をされています。こうしたものは、北朝鮮の現在の経済状況を考えますときに、大きな効果が期待できると認識をしております。

笠井委員 石炭の国際取引をめぐっては、前回の決議、ことし三月の二二七〇号でも原則禁止されていたわけでありますけれども、民生目的の場合は取引できるとの例外規定が抜け穴となって、有名無実化したとされております。今回の決議は民生用も含む石炭の総量規制に踏み込んだのが特徴でありますが、報告書に出ない闇取引や他国を迂回する取引を黙認しては意味がない。その点では、不正を一切許さない厳格な履行を求めたいと思います。

 同時に、岸田大臣、今回の決議では、石炭輸出と並ぶ北朝鮮の外貨獲得源とされる国外への労働者派遣について、初めて懸念が表明された。そこで、この問題に対する大臣の認識と、今回の決議で、この問題での規制が、規制という点では見送られて懸念表明にとどまった理由についてどのようにお考えか、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘のように、安保理決議二三二一号の主文34は、北朝鮮が核及び弾道ミサイル計画のために使用する外貨を得る目的で、いわゆる北朝鮮籍の労働者が他国で働くために派遣されていることに懸念を表明するとともに、各国に警戒することを要請しています。

 そもそも、北朝鮮の海外労働者の問題、これが安保理決議で取り上げられたのは今回が初めてのことであります。我が国としても、北朝鮮の海外労働者が得る外貨が核及び弾道ミサイル計画のために使用されていることに対する懸念、これを共有しております。

 我が国においては、既に北朝鮮籍者の入国を原則禁止しておりますが、今回の決議で表明された懸念を踏まえつつ、各国に対して適切な措置を講ずるよう働きかけていきたいと考えます。

 このように、各国がそれぞれ措置を行うに当たっても、今回の決議は一つの根拠になるというふうに思っております。

 要請等にとどまった理由という御質問がありましたが、これは安保理の議論の結果であるというふうに認識をしております。具体的にどんなやりとりがあったということは明らかにするのは控えなければならないと思いますが、少なくとも、安保理の理事国の間でこういった問題に対する懸念が共有され、国際社会として取り組むべき問題であるということが示されたこと、これは大きな一歩ではないか、このように認識をいたします。

笠井委員 加藤大臣、北朝鮮から国外への労働者派遣については、大臣も出席された今月一日の国連本部での北朝鮮の人権問題に関するシンポジウムでも取り上げられたと承知しております。

 加藤大臣とともにパネリストを務めた韓国の李政勲北朝鮮人権国際協力大使がこう言われている。北朝鮮から国外への派遣労働者は約十万人、北朝鮮は年間四億ドルから五億ドルの収入を得ており、労働者は給料の九〇%を北朝鮮に搾り取られる、搾取されるということで、まさに奴隷のようだというふうに発言したということでありますが、この指摘が事実ならば、まさに人権問題だと思います。

 加藤大臣、このような労働者派遣の問題、どのように捉えておられるでしょうか。

加藤国務大臣 御指摘のように、十二月一日のパネルディスカッションで、李政勲大使から御指摘のようなお話もございました。

 それから、もう委員御承知のように、先月十六日の国連総会第三委員会で採択された北朝鮮人権状況決議において、北朝鮮の海外派遣労働者の搾取という人権侵害についての新たな言及、さらには、先般の弾道ミサイル、核に関する先月三十日の国連安保理決議でも、こうした、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画のための外貨獲得の目的で北朝鮮の労働者が海外へ派遣されていることへの懸念の表明と各国に監視を要請する内容が含まれておりまして、まさに国際社会もそうした認識をしているわけでありますし、私も、それが事実だとすれば人権侵害に当たる、こういうふうに考えております。

笠井委員 最後に伺いたいと思います。岸田大臣。

 今回の決議二三二一号は、二〇〇五年九月の六者会合の共同声明を支持して、六者会合、六カ国協議の再開を改めて要請しております。今、関係国をめぐっては、米国ではトランプ次期大統領が誕生するということで、それから韓国では朴槿恵大統領が弾劾されるなど、情勢が大きく動いている。こうしたときだからこそ、各国、とりわけ日本には、従来の延長線上にとどまらない外交的対応が求められていると思います。

 そこで、岸田大臣、国際社会のさまざまな努力にもかかわらず、これまで北朝鮮の核・ミサイル開発をとめることができていない、この事実を踏まえて、中国を含む国際社会による制裁措置の厳格な実施強化によって、北朝鮮の核・ミサイル開発の手を縛り、放棄に向かわせるような外交的努力が何よりも一層求められていると思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の外交的な取り組みの重要性の御指摘、そのとおりだと思います。

 日米韓の連携につきましても、引き続き重要であると認識をし、今回、日米韓で独自措置を行ったわけですが、その独自措置についても、タイミングを合わせる、あるいは安保理決議の発出後、間を置かず発出するなど、こうした連携をとることによって、より強いメッセージを印象づけるということにもなりました。

 また、ちょうど本日、ソウルにおいて日米韓六者会合首席代表者会合が開催されています。こうした取り組みも続けていかなければならないと思いますし、中国に対しても、ぜひ、責任ある常任理事国として建設的な対応を、これまでも求めてきましたが、これからもしっかり求めていかなければなりません。

 今回、安保理決議二三二一号が全会一致で採択されたこと、これは高く評価していますが、それに合わせて、中国による北朝鮮原産の石炭の輸入、これを年末まで一時停止する旨の公示が中国から発出されている、こういった点もしっかり注目しながら、北朝鮮に対して中国がしっかりとした役割を、責任ある対応をとることを求めていきたい、このように考えます。

笠井委員 日本政府が、軍事対軍事の悪循環を深刻にする道ではなくて、対話による解決に徹して、核兵器のない世界に向けた具体的な行動に取り組む、これが本当に大事になっていると思いますので、このことも強く求めて、質問を終わります。

城内委員長 次に、吉田豊史君。

吉田(豊)委員 日本維新の会の吉田豊史です。よろしくお願いいたします。

 私、いろいろな委員会にお邪魔しますけれども、その委員会で、攻めの何とか問題というふうな形で、いつもテーマを自分に与えて質問させていただいておりますが、きょうも、この北朝鮮の拉致問題について、攻めの解決はどこにあるのかというところでお聞きしたいと思っています。

 午前中に、安全保障委員会の方では、北朝鮮のミサイルにかかわるところでの、参考人をお呼びしての質問がありました。これは明らかに、政府がこれからどのような政策を打っていくのかということをお聞きする場だったと思うんですが、北朝鮮の問題について、二つ大きく、ミサイルの問題と拉致の問題とありますけれども、拉致の問題については、日本という国家、家ですね、家の中で、政府の皆さんが家長だとすれば、私たち国民は、その家の中のみんなだということなんですけれども、拉致の問題について果たすべき役割、表に出なくちゃいけないのは、私は、政府ではなくて国民の方じゃないかな、こう思っているわけです。

 そして、攻めの私の質問は、今回は、私も含めた国民に向けるべきだ、こういう考えのもとに、きょうは短い時間ですけれども、お聞きしたいと思っています。

 改めて拉致の問題、加藤大臣も、最初から三十年間この問題をずっとやっていらっしゃったのであれば、きょうは非常に厳しい、だけれども本質を突いた質問が幾つもありました、それについては責任があるということでしょうけれども、やはり今、やるべきことをさまざま尽くして、本当に、政府として打つ手はなかなか厳しいところに来ている。では、ここで打開をするためには何ができるのか。私たち国民がきちっとこの問題について北朝鮮に向けてメッセージを送り続ける、やはりそこが本質だろうと思うわけですね。

 ここにおいて、今の段階で、それでは、国民に対して、国民が何をするべきかということについて、どのような活動が行われているか、これをまず確認したいと思うわけです。

加藤国務大臣 日本人の拉致問題の解決に向けては、先ほどから申し上げておりますが、まずは日本政府がその責任において解決に当たるべきものでありますけれども、それに当たっては、国際社会の連携とともに、やはり日本の国民の皆さん方がこの問題に対してどういう対応をとっているか、大変これは大きなファクター、要素でもありますし、また、その辺も含めて北朝鮮は見ているというふうに私は考えるわけであります。

 そういった意味でも、今我々においては、ちょうど十二月十日から北朝鮮人権侵害問題啓発週間でありますから、先般、シンポジウムを含めたそうした展開を集中的に行うのみならず、平素からも、地方自治体とも御協力をいただいて国民の集いを行う。あるいは、職員を学校等に派遣して啓発セミナーや授業を行う。また、さらには、今さまざまな、舞台劇「めぐみへの誓い 奪還」、あるいは、新たに映像作品「メッセージ 家族たちの思い」、こういったものも作成をいたしました。

 そういった上映を行うなどなどを通じて、拉致問題に対する国民の理解、これを深めるとともに、この関心、そして一日も早い帰国に向けていかなければならない、こういった強い意思を示していくべく、さまざまな広報啓発活動を展開していきたいと思っております。

吉田(豊)委員 さまざまに広報啓発の活動をなさっている、それは私も、地方議員だったときから、議会においてもさまざまなことがありました。やっています、やっていますけれども、今ここに来て、非常にそういうムーブメント自身が厳しいところにいるというのも現状なわけです。

 私はかねがね、日本国民というのは、世界の国民を見渡しましても、本当に忘れることが得意な国民だなというのは、特性じゃないかなと思っているくらいなんです。歴史のことについても、いろいろな問題が発生する、そしてそれを、ほかの国と比べて、自分たちの国家、家に起こった出来事だということをきちっと覚えている度合いからすると、非常に私たち日本国民は大方忘れやすいというのが現実だろうと思います。

 ですから、余計に私は、こういう問題については何度も何度も繰り返して、そして、いろいろな手段を講じて、これをきちっと覚えておく、その努力が一層我が国の国民には求められるだろう、私はこう思っているわけです。何をおいてもそれは教育だろうと思うんですけれども、拉致の問題について、小学校、中学校、あるいは、それ以降の高校でもいいんですけれども、どのように捉えて、そしてどのような意識づけがされているか、現状の確認をさせていただきたいと思います。

加藤国務大臣 特に若い世代にこの問題をしっかり理解していただくというのは非常に大事だというふうに思っております。

 そういった観点から、私ども、今、アニメ「めぐみ」というのがありますけれども、これは各小中高等学校に配付をいたしております。したがって、都度都度これを活用してほしいということを周知させていただいております。また、「めぐみ―引き裂かれた家族の三十年」という映画がありますので、これは貸与の格好でありますけれども、これに対してもこうした活用をしていただきたいということ、それを各学校の方にお願いをし、また、必要があれば職員を派遣して拉致問題についての概要等を含めて説明する、こういったことに取り組ませていただいております。

吉田(豊)委員 この問題の解決に当たって、政府は、もちろんさまざまな手段を講じている。そしてまた、今おっしゃったような啓発活動も当然やっているんですけれども、予算という面で見ると、これは、当初というか、大きくクローズアップされて以来、どのような形で啓発の部分について予算が割かれているのか、この現状を確認させていただきたいと思います。

加藤国務大臣 まず、拉致問題対策本部事務局としてでありますけれども、広報啓発につきましては、平成二十八年度予算に一億八千百万ということで、前年度に比べて五千二百万円増で計上させていただいております。

 それ以外にも、地方公共団体と一緒にやっております国民の集い等を行うため、地域における拉致問題等対策経費、これを別途一千三百万計上しておりまして、トータルでいえば二十八年度では一億九千四百万、加えて、必要に応じて、政府広報というのが別建てでありますから、それも活用し、拉致問題の広報啓発に取り組んでおります。

吉田(豊)委員 先ほど大臣が紹介なさいました小学校での教育の資材ですとか、それから、いろいろな拉致についてのパンフレット、資料とか、そういうものもあると思うんですけれども、やはりこれを毎回毎回国民の皆様にというときには本当に大きな予算が必要になってくるだろうと思うわけです。

 これは、当然、政府としてできることはやっている。その予算の規模が大きい、小さいということはまた別の問題だとしますけれども。この活動については、私は、やはり国民に改めて知っていただく。そして、例えば今は啓発週間なわけです。それも、学校では子供たちがビデオを見てくる。そうすると、家でこの問題について話をしようとする、本当は絶好のタイミング。

 これが、例えばチラシ一枚でも、何かリーフレットだけでも全御家庭に配ることができれば、これをもとに、では、うちでこの話を子供から逆に僕たちが教えてもらう、あるいは僕たちが子供たちにもそれを教えていく、こういう非常に重要な北朝鮮の拉致問題という大きな問題が我が国、我が国家、家にはあるんだよということをやはりきちっと意識させなくちゃいけないし、私たち自身も意識していかなくちゃいけない。

 そういう機会にするためには、やはりツールも必要だし、本当はそれなりのお金というか物質的な支援も必要なわけです。これをどう解決するかというときに、私、きょうは最後の質問に、活動強化のために新たな手法は何が考えられるかということをお聞きしようと思っているんですが、でも、お聞きすると結局は、政府とすれば、やはり今一生懸命努力していますという話だと思うんです。

 それで、本当に委員の皆様には大変恐縮ですけれども、私なりに考えてきたことを申し上げさせていただくと、赤い羽根募金とかがありますでしょう。赤、緑、黄色、そして青もあるんです、羽根の募金とかというのがありますね。ああいうことについても、この北朝鮮の拉致問題についてはブルーリボンでやっておりますから、青い羽根というのはいいなと私は思ったんですが、青い羽根は青い羽根で、もう既にきちっと位置づけがされて、羽根があります。

 ですから、募金という手法、あるいは青いリボン募金でも何でもいいんです。そういうようなことを、やはりこの啓発期間に合わせて全国的に、それをやるのは政府ではないんです、やはりそういう別の力というところが応援する基礎をつくって、そして、それをもとに政府の活動についても底支えをする、こういう発想というのをぜひまた考えていただきたいし、私どもも考えなくちゃいけないと思います。

 また、例えばきょうのこの大事な委員会、それから国会の場でも、啓発期間に重なっているのであれば、例えば一分間の時間でもいいんです。私たちは自分たちの子供や親もいる、そして友達もいる、そういう人がもし同じような状況だったらどうだろうかということを考える、その一分間を設けるということ一つをとったって、やはり大きな啓発活動だろうと思うわけです。

 お金をかけること、かけないこと、ありますけれども、ぜひ改めて、こういうところについての国民の意識を高めるための考えをしていきたい、私自身はそう思いますし、政府にも取り組んでいただきたい、このことをお伝えさせていただいて、質問を終わらせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

城内委員長 各大臣は御退席いただいて結構です。

     ――――◇―――――

城内委員長 この際、御報告いたします。

 お手元に配付いたしておりますとおり、今会期中、本委員会に参考送付されました陳情書は、北朝鮮による日本人拉致問題の完全解決を求めることに関する陳情書一件であります。

 また、本委員会に参考送付されました地方自治法第九十九条の規定に基づく意見書は、北朝鮮による日本人拉致問題の早急な解決を求める意見書外十五件であります。

     ――――◇―――――

城内委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合の諸件についてお諮りいたします。

 まず、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、派遣委員、派遣期間、派遣地等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中審査におきまして、参考人より意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

城内委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十五分散会


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