衆議院

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第2号 令和4年2月17日(木曜日)

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令和四年二月十七日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      秋葉 賢也君    井出 庸生君

      井野 俊郎君    伊藤信太郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      稲田 朋美君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      尾身 朝子君    越智 隆雄君

      大串 正樹君    國場幸之助君

      塩崎 彰久君    下村 博文君

      土田  慎君    中西 健治君

      船田  元君    細野 豪志君

      松本 剛明君    山下 貴司君

      山田 賢司君    山本 有二君

      新垣 邦男君    近藤 昭一君

      櫻井  周君    中川 正春君

      野田 佳彦君    藤岡 隆雄君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    渡辺  創君

      足立 康史君    小野 泰輔君

      三木 圭恵君    國重  徹君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      玉木雄一郎君    赤嶺 政賢君

      北神 圭朗君

    …………………………………

   衆議院法制局長      橘  幸信君

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十七日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     尾身 朝子君

  西村 康稔君     塩崎 彰久君

  古屋 圭司君     小倉 將信君

  太  栄志君     藤岡 隆雄君

  本庄 知史君     渡辺  創君

同日

 辞任         補欠選任

  小倉 將信君     古屋 圭司君

  尾身 朝子君     土田  慎君

  塩崎 彰久君     西村 康稔君

  藤岡 隆雄君     太  栄志君

  渡辺  創君     本庄 知史君

同日

 辞任         補欠選任

  土田  慎君     伊藤信太郎君

    ―――――――――――――

二月十五日

 憲法九条を変えず、憲法の平和、人権、民主主義を生かす政治の実現を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四号)

 同(笠井亮君紹介)(第五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六号)

 同(志位和夫君紹介)(第七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一一号)

 同(宮本徹君紹介)(第一二号)

 同(本村伸子君紹介)(第一三号)

は本憲法審査会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題(特に、憲法第五十六条第一項の「出席」に関する議論を中心として))


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件について調査を進めます。

 本日は、日本国憲法及び憲法改正国民投票法を巡る諸問題、特に、憲法第五十六条第一項の「出席」に関する議論を中心として集中討議を行います。

 本日の議事について申し上げます。

 まず、衆議院法制局当局から説明を聴取し、その後、各委員からの自由討議を行うことといたします。

 では、衆議院法制局当局から説明を聴取いたします。衆議院法制局長橘幸信君。

橘法制局長 衆議院法制局の橘でございます。

 幹事会での御協議に基づきまして、本日の集中討議のテーマである憲法五十六条一項の「出席」をめぐる諸問題について論点整理をさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

森会長 どうぞおかけください。

橘法制局長 御配慮ありがとうございます。このままで結構でございます。

 お手元に表紙を含めてA4五枚ほどの資料を配付させていただいておりますので、これに基づきまして順次御報告をさせていただきたいと思います。

 まず、表紙をおめくりいただきまして、二枚目の資料一を御覧願います。

 現行の国会関連法規における出席に関する幾つかの条文を掲げたものでございます。

 オンライン審議の関係で最初に問題となる条文は、冒頭に掲げた本会議の定足数に関する憲法五十六条一項でございます。そこでは、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」と定めて、「出席」という表現が使われております。これに続く五十七条では、両議院の本会議が公開の下で行われなければならないことが規定されております。この条文もオンライン審議との関係で問題となるのですが、この点については最後に御報告させていただきます。

 なお、憲法には、これ以外にも出席について規定する条項が幾つかございます。

 以上の憲法規定を受けて、国会法では、本会議への出席のみならず、委員会への出席など、随所に「出席」の表現を使った条文が定められております。また、証人や参考人については、「出頭」といった表現も使われております。いずれにいたしましても、国会法では、基本的に憲法と同様に「出席」といった表現が使われているところです。

 その上で、これらの規定を踏まえた衆議院規則の関連条文を見ていこうと思います。

 そこでは、議員の表決に関する重要な条項である百四十八条において、「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない。」と定めて、憲法及び国会法において「出席」と表現されていた行為態様について、議場にいることと定められていることに気づきます。議場にいることとなりますと、オンライン審議を認める余地はなくなりますから、ここに、憲法五十六条一項の「出席」は衆議院規則の議場にいることと同じ意味なのか、それとも、より広い意味を包含すると解釈できる余地はないのかが、オンライン審議との関係で問題となってくるわけでございます。

 そこで、次に、資料二を御覧ください。

 憲法五十六条一項の「出席」の意味、内容に関する憲法学説を整理したものでございます。

 大きく二つの見解に分けられます。

 まず、A説は、仮に物理的出席説と名づけてみましたが、出席とは、衆議院規則と同様に、現に議場にいること、すなわち物理的にそこに現在することと理解するもので、従来からの自然な解釈と言えるかと思います。

 その理由としては、日本語の出席とは、物理的にそこにいることであって、それ以外に解釈の余地はないとか、あるいは、全国民といった抽象的で目に見えない存在を代表する、リプレゼントするといった代表制の理論からは、代表者は目に見える形で存在、プレゼントしていなければならないとか、さらには、日本国憲法は国会議員に対して全国民代表としての厳格な出席義務を課している、このような理由などが挙げられているようです。

 他方、これに対して、近年になって、というのは、このような論点自体が極めて新しい論点だからでありますけれども、近年になって、機能的出席説とでもいうような、B説のような見解が有力に唱えられるようになってまいりました。出席にはオンライン出席も含まれるとする解釈です。

 その理由としては、出席を要求する趣旨、すなわち出席の機能的意味は、全国民から負託を受けた国会議員が自ら議論に参加し、その過程を通じて賛否の意思を形成し、最終的に表決に参加する、そのような一連のプロセスを実践するためであって、かつて、例えば憲法が制定された七十数年前などは一堂に会しないとそのようなプロセスを踏むことができなかったけれども、現在のICT技術を活用すれば、必ずしも空間的、場所的な議場に現在していなくても、そこにいるのと同じような議論の環境を整えることは十分に可能であること、そして、何をもって出席と認めるかは、日本国憲法が両議院に認めている広範な議院自律権に基づいて決めることができること、このようなことを理由とするものと拝察しております。

 ここに議院自律権というのは、衆参それぞれの議院が有しているその組織や運営などに関して、行政権や司法権からも、また他の議院からも干渉されることなく、自らが自由に決めることができる、そういう権能のことと理解されています。

 このような学説を前提として、本会議におけるオンライン審議を認めようとする場合には、A説の立場からは憲法改正が必要ということになりますし、他方、B説の立場からは、憲法上認められる出席の範囲を衆議院規則によって限定しているだけでございますので、基本的には衆議院規則の改正で対応可能ということになるように思われます。

 もちろん、B説に立つ場合であっても、解釈上の疑義をなくしたり、また、その際の条件などを明確にするという意味での憲法改正を行うことが封じられるわけではございません。

 さて、以上のように、出席の解釈さえ決めればオンライン審議に関する議論は終わりかというと、そうではございません。むしろ、議論はここから始まると言っても過言ではないのです。

 資料三を御覧願います。

 憲法改正によって対処するA説の場合であろうと、また、衆議院規則の改正などで対処するB説の場合であろうと、具体的にオンライン審議を実現しようとする場合には、その制度設計に当たって、少なくとも次の二つの基本的な考え方を整理しておかなければならないように思います。

 一つは、このオンライン審議を新しい時代の新たな議会像として一般的に捉えて、いつでも実行可能な一般的な選択肢として位置づけるのか、それとも、あくまでも原則は物理的出席であって、例外的な制度として位置づけるのかといった論点です。

 この論点の背景には、議会とはそもそもどのような存在であるべきかといった、先生方お一人お一人の議会観が問われるような論点であると拝察いたします。理論的には両者共に立論可能な見解と思料いたしますが、私どもが調査した限りでは、あくまでも例外的な制度として位置づけるのが多数の見解であるように思われます。

 その理由としては、議会の本来的な姿は、メタバースのようなものが日常的になった時代ならいざ知らず、少なくとも現時点においては、全国民代表である議員が一堂に会して対面によるコミュニケーションにより熟議をすることと考えるべきこと。また、識者の指摘の中には、尖塔に象徴される威厳のあるこの白亜の殿堂、そして、その中にある半円形の議席配置やガラス天井による採光などの本会議場、このような議会の構造の象徴性、これがそのような中で行われる国家意思の決定に権威を与え、国民の法規範遵守の意識を醸成するといった観点から、原則は議場への物理的出席が本来の姿なのだといった指摘をする論者もおられると拝察しております。

 このように、オンライン審議はあくまでも例外的な制度と理解した場合に、次に問題となりますのは、では、どのような場合にその例外に当たると考えるのかといった事柄であります。

 これについては、二つのケースが念頭に置かれているように思います。

 一つは、言うまでもありません、現下のコロナ禍のような事態において、国会全体の機能を維持するためといった趣旨による場合、(A)の場合です。この場合も、総議員の三分の一の定足数を満たすことができないほどのぎりぎりの場合に限定するのか、あるいはもう少し予防的な観点も含めて前広に認めるのかなど、様々な選択肢があり得るかと思われます。

 もう一つは(B)の場合で、妊娠、出産中の女性議員や疾病や障害などを理由として議場に赴くことが困難な議員を念頭に、その全国民代表としての表決権を始めとする権限行使を特例的に保障するためといったケースです。

 この二つのケースに関しましては、議院自律権の行使としていずれも選択可能なものと位置づけることができるようにも思われますが、他方、両者は本質的に異なるとの見解も唱えられております。

 例えば、さきに挙げた物理的出席説を取る代表的な識者においても、オンライン出席を認めない限り国会としての最低限の機能をも果たすことができないような客観的事情がある場合には、必要最小限の範囲内でオンライン出席を認めることができる旨述べられており、このように解することによって、単に出席の範囲を拡張解釈した場合には、五十六条一項の定足数規定のみならずほかの条項の出席規定、例えば六十三条の国務大臣の国会出席の権利と義務の規定なども同様に解しないと整合性が取れなくなるではないか、しかし、このような限定的解釈によって、五十六条一項の出席規定の解釈拡張だけを合理的に説明することができるのだ、このような見解が唱えられていると拝察しております。

 いずれにいたしましても、例外的な事由に該当するか否かの判断については、あらかじめ明確なルールを定めた上で、個別的、具体的には、議長及び議院運営委員会などによる公的な認定手続が介在することになるように思われます。

 さて、このような思考過程に基づいてオンライン審議に関する基本設計ができたとしても、その実現にはまだ多くのハードルがあるように存じます。

 最後に、資料四を御覧ください。

 まず、資料二で言及した出席の意味、機能から必然的に導き出される論点として、選挙で選ばれた議員本人が自由な意思表示ができる状態にあること、このことが確認されなければなりません。また、出席の機能、すなわち現に行われている議論や表決に参加することができるオンラインの環境を整備しなければなりません。更にもう一つ、憲法上避けられない論点として、冒頭で言及した憲法五十七条の公開性の論点がございます。本会議の議事は広く国民に公開されなければならないからです。

 以上のいずれの論点についても、資料の右側に実務上の論点として掲げてあるような事項について、議会とはどのようであるべきかといった大所高所からの観点も含めて実務的な議論をすることが必要になってくると思われます。

 なお、今申し述べました公開性の要請に含まれる中核的な制度は傍聴の自由とされておりますが、これは、本会議の傍聴席に赴くことによって議事が行われている議場全体や一人一人の議員の様子を直接に見ることができるといった、傍聴制度として現在運用されております。憲法五十七条に照らせば、オンラインで参加している議員の様子についても、一定程度傍聴人に見せる必要があることになります。その際、この公開の解釈についても、機能的出席のような解釈と同様に、オンライン視聴による公開、例えばインターネット中継なども含まれると解釈できないか、そのような論点に波及していく可能性もあるように思われます。

 最後に、以上の憲法上の論点のほか、立法政策的な論点として、当面、オンラインによる出席者には、表決権は認めるが発言権は認めないこととするとか、また、その現在場所も議員会館などに限定するとか、このような論点も指摘されているところでございます。

 いずれにいたしましても、具体的な制度設計は、議院の議事手続に関する事項ですから、議院運営委員会の所掌になると思います。

 憲法審査会におきましては、その前提となる憲法規定の解釈問題及びこれに密接に関連する基本法制に関する問題として、御議論されるにふさわしい重要な論点であると拝察する次第です。

 以上、拙い御報告でお耳汚しであったとは存じますが、少しでも先生方の御議論の参考になればと思います。御清聴ありがとうございました。

森会長 以上で衆議院法制局当局からの説明聴取は終わりました。

    ―――――――――――――

森会長 これより自由討議に入ります。

 この自由討議につきましては、幹事会の協議に基づき、まず、各会派一名ずつ大会派順に発言していただき、その後、各委員が自由に発言を行うことといたします。

 発言の中には、事実確認等のため、衆議院法制局当局に対する質疑を含んでも結構です。

 それでは、まず、各会派一名ずつによる発言に入ります。

 発言時間は各五分以内といたします。発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 発言の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 まず、憲法審査会が先週に引き続いて開催されることを歓迎し、与野党の幹事会メンバーの努力と理解に感謝を申し上げたいと思います。

 本日は、憲法五十六条一項、議員の出席に関する問題について集中討議を行うことになりました。日本国憲法に関し、具体的なテーマに基づく討議が行われることは、これまでの運営を顧みれば画期的なことであり、誠に喜ばしく感じております。しかし、これこそは憲法審査会本来の姿であり、今後も憲法改正と国民投票に関する具体的な項目やテーマごとの議論が進められるように、与党筆頭幹事としても精いっぱい努力してまいりたいと思います。

 本日は、コロナ感染症が蔓延し国会議員が議場に集まれなくなる、開会も議決もできないという緊急事態が発生した際、国会機能を維持するために、憲法上の出席という概念を整理し、オンライン審議が可能か、この点を議論するわけでございますが、その前提として、まず、日本国憲法にはこうした有事に対応するための緊急事態条項が規定されていないということを指摘をいたします。

 私たち自民党は、憲法改正の議論のたたき台四項目の一つとして緊急事態条項を掲げています。これは、国会議員の任期の延長や国会機能が確保できないといった場合、まさに有事の対応を議論しようとするものであります。

 本来、本日のこの憲法五十六条一項の定足数に関する出席の概念も、そのような緊急事態条項に関する憲法改正の中に位置づけることがあるべき姿だ、このように思います。しかし、感染症の蔓延により多数の国会議員に感染者が発生し、さらに、多数の国会議員が濃厚接触者に認定され議場に行くことができない、このような定足数を満たせなくなる事態は、いつでも起こり得る可能性がある、目の前にある危機です。こうした有事が発生した際にも、国会は国民生活を守るための機能を維持し続けなければならないです。

 その方策としてのオンライン審議に関しましては、ただいまの法制局の論点説明で、物理的出席説に立った上で憲法改正による対応か、機能的出席説に立った上で衆議院規則の改正で対応するか、この二つの方向性について整理されました。ただいま、橘局長、十五分ぴったりのすばらしい御説明をされたわけでございますが、この物理的出席説は、従来からある原則です。長らく支持されております。一方で、機能的出席説は、ICTの発達やリモートによる対処など、DX社会の進展により、その実行可能性が説得力を持つに至った説であることを理解をいたしました。

 その上で、これらの方向性の整理をより深めるためには、別途学識専門家の意見もお聞きしなければならない、このように考えております。

 もとより、今回の議論は、議院自律権に基づくものであり、最終的には、我々自身が考えを整理し、方向をまとめなければならないものです。

 私は、本日の幹事会において、来週も審査会を開催し、学識的見地からの意見を伺うことも含め、更に議論を進めていくことを提案いたしました。いずれにせよ、今後の審査会の持ち方については筆頭間協議で詰めてまいりますので、各党各会派の御協力、御理解をよろしくお願い申し上げます。

 なお、この審査会の自由討議につきましては、自由討議は意見の言いっ放しで、議論を整理することができないのでは、このような心配の声を聞くことがあります。改めて整理いたしますが、自由討議とは、あらかじめ質疑者や質疑順などを決めずに、委員の申出による発言する機会を自由に与える討議の形式の自由を定めたものであって、取りまとめを想定しないなど、討議の内容の自由を定めたものではありません。これまで重ねてきた自由形式による討議テーマは、日本国憲法の改正及び憲法改正国民投票法をめぐる諸問題であり、討議を重ねることで議論が集約され、結果として論点が整理されていく、この性格を持っているわけであります。

 今回のテーマにつきましては、今後、学識専門家の意見も聞き、私としては、討議の内容を集約し、審査会として何らかの報告ができるような取りまとめを行いたいとも考えております。この報告は、国会運営そのものに係るものであります。必要に応じて国会の正副議長や議運委員長にも報告することも検討しなければならないのではないか、このように考えております。

 いずれにしましても、審査会の今後の議論の持ち方については、筆頭間で協議をし、幹事会メンバーの皆さんと相談をしてまいります。

 本日も国民のための憲法論議が更に深まることを期待いたしまして、私の発言といたします。

 ありがとうございました。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎でございます。

 我が国のIT化の遅れが言われています。行政のIT化を促進すべき国会が、実は一番遅れているのではないでしょうか。まず国会が範を示すべきであり、速やかにオンライン審議を導入すべきです。本日、いわゆるオンライン審議について集中討議が行われることを歓迎しますし、このオンライン審議に限って意見を集約するということは歓迎であります。

 オンライン審議は、諸外国で既に実施されています。イギリスやカナダでは、新型コロナ対策として本会議での遠隔審議、投票を可能としました。スペインでは、遠隔投票が妊娠、出産、育児又は重病の場合に以前から認められており、新型コロナ対策が追加されています。本会議でのオンライン審議の有無の確認はできていませんが、ドイツは遠隔審議、投票、フランスは、遠隔審議のみを新型コロナ対策として今回委員会で可能としているようであります。

 我が国では、実現するためにはクリアしなければならない、先ほど御説明いただいたような憲法上の論点があります。憲法改正を行わなくともオンライン審議は可能だとする説が近年では有力であります。第六波はピークを迎えたとの説明がありますけれども、いつ第七波が襲ってくるかもしれません。憲法問題ですから丁寧に、しかし迅速に結論を出す、解釈でオンライン審議を可能とする結論を出す必要があると考えています。

 先ほど御説明があったとおり、主に二つの論点があると思いますが、憲法五十七条の定める会議の公開、これは、例えば本会議場に大型のスクリーンを入れてオンライン出席の議員を映すなど、方法論です、それほどハードルは高いとは思えません。

 そして、もう一点が出席の意義ですが、どのような要件が満たされれば憲法が求める出席と言えるかということですが、有力説を唱えておられる東京大学の宍戸先生や京都大学の大石先生、教授によれば、出席の趣旨は、議員自らが議論をして、その過程を通じて議案に対する賛否の意思を形成し、最終的に自らが表決に参加することであると理解しています。出席の要件として、すなわちオンラインでの表決、そして一定の発言を認めることが必要ではないでしょうか。

 また、憲法五十一条の免責特権もオンライン出席について効果を及ぼす必要があると思います。

 昨年、私は、予算委員会の理事として、コロナ禍で出張ができないので、予算の地方公聴会をオンラインでやってはどうかと提案しましたが、認められませんでした。こうした場合、部外の参考人など、先ほど出頭という言葉もありましたけれども、積極的にオンライン参加をしていただけるようにすべきです。海外からも参加できるようにすべきだと思います。

 一方で、議員の出席については、あくまで、私も原則は物理的出席が望ましいと考えています。どのような場合にオンライン出席を認めていくべきかということですが、全体的な事情、感染症の全国的流行、今回のような場合でありますとか、大災害による交通遮断などは認めるべきではないでしょうか。

 また、それをどこまで広げるかということは、これは有識者の意見を聞く必要があると思います。個別の事情、妊娠、出産、疾病、障害など、こういった場合も認めるべきだとは思いますが、どこまで個別の事情を考慮するかということは検討が必要だと思います。

 以上、憲法上の論点については、オンライン審議について、専門家からの御意見を伺って丁寧に検討を行った上、早急に結論を出す必要があると考えています。

 憲法五十八条二項は、各議院における組織運営など、自主性を確保するための議院自律権を定めています。出席、公開など、憲法上のルールについて、これらのルールについて、議院自律権に基づいて国会が憲法解釈権を持っていると考えられます。

 以前、小泉進次郎議員が産前産後の女性議員の表決確保のため遠隔投票を導入しようとし、検討された際の衆議院規則改正のイメージがあります。

 先ほど紹介があった衆議院規則ですが、表決の際現在しない委員は、表決に加わることができない、ただし、出産のため議場にいることができない議員であって、あらかじめ議院又は議長の許可を得た者は、議長の定めるところにより表決に加わることができるというものです。

 このように、議院自律権に基づき衆議院規則を変えれば、すぐにもオンライン審議が実現できます。

 まず、早急にこの憲法審査会でオンライン審議の憲法上の論点について結論を出して、国会全体として具体的な衆議院規則等の改正作業に移るべきだと考えています。

 最後に、緊急事態について一言触れておきたいと思います。

 岸田総理は、予算委員会で私に、自民党の四項目のたたき台素案、これに基づいて憲法を改正していくべきだと考えると答弁されました。その四項目の一つ、自民党憲法改正草案の緊急事態条項。政府が自ら緊急事態を認定すれば、法律によらず、政令、緊急政令で国民の権利を制限して義務を課すことができる。また、国会の議決なく予算が使えるようになると規定されています。緊急事態の範囲も、武力攻撃、地震、その他法律で定めるとあって、非常に、いかようにでも広げられる、広い範囲であります。

 ドイツのワイマール共和国時代に、緊急事態に財政難などあらゆることを含ませて緊急事態を乱発した結果、ナチスの台頭を招いたというふうに言われていることからも、こうした独裁的な権限を政府に付与すべきではありません。強権的な緊急事態条項、反対であります。

 緊急事態条項で政府に権限を集約するのではなく、例えば事前の立法、例としては災害対策基本法百九条で災害緊急事態の措置がありますが、事前の立法で措置をする。あるいは、緊急時に国会が機能するように一定の措置を担保しておく。これがまさにオンライン審議だと思いますが、原則は、予算にしても立法措置にしても、国会をワークさせることだと思います。オンライン審議は、こうした非常時の国会審議を担保するためにも、是非とも導入しておくべきだと考えます。

 以上です。

森会長 次に、三木圭恵君。

三木委員 日本維新の会の三木圭恵です。

 まず、今週も無事に憲法審査会が開かれましたこと、大変有意義なことと歓迎いたします。

 さて、オンライン審議についてが議題となっております。その中でも、出席の解釈が非常に大事な論点になっていると考えます。出席の解釈については、物理的出席説と機能的出席説という二種類の考え方が、先ほど橘局長の方からも御説明がありました。

 憲法は、全国民の代表として厳格な出席義務を国会議員に求めていると今まで解釈されており、物理的出席というのが原則であると考えます。それだけ全国民の代表としての責務は重いと考えられることでありますし、選挙を経て、議員として本会議場に目に見える形で物理的に現在するということは、非常に重要な憲法上の今までの解釈であったと思います。その出席の解釈をこのままずっと変更するかどうかは後の議論にまち、まずはオンライン審議を可能にすることが第一の、今やるべきことと考えます。

 つまり、コロナ禍において三分の一の定足数を欠くような事態に陥るのではないかという今の現状を鑑みて、緊急避難的に、特例的に出席の解釈を現代的に解釈して機能的出席説を取り、オンライン審議を可能にすることは、議院自律権に基づく裁量で、ぎりぎりの選択肢としてあり得ると考えます。

 しかしながら、もちろん、このような解釈は憲法上明確化しておくことが望ましいと考えます。どういったことかと申しますと、まさにコロナ禍において、緊急事態に陥るということが現実になりつつあることを踏まえ、先々にこのような事態に陥ったときのために、オンライン審議に限らず、国会議員の任期や、基本的人権の確保や、人流を抑制した場合の補償など、様々な重要なことを検討しなければならないと考えます。

 つきましては、緊急避難的、特例的にオンライン審議を認めるとしても、それに続く議論として、憲法改正原案を作成する際には、緊急事態条項をきっちりと入れることが必ず必要と考えます。オンライン審議に限ることではないことを、はっきりとこの場で申し上げたいと思います。

 また、緊急事態宣言が発動されたのは、二〇二〇年四月でした。この約二年間、どこかの政党が様々な理屈で憲法審査会を開くことを拒否し続けた結果、こういった危機的事態に陥りかけている今も、何も準備ができていないということは甚だ残念であり、国民の皆様に申し訳ないことでございます。

 また、視点を変えて、地方議会においては総務省の通達がございます。委員会は本会議における審議の予備的審査を行うものであること、これは総務省が地方議会に向けて通達を出しているものでございます。また、地方自治法上、委員の選任その他委員会に関し必要な事項は条例で定めることとされておること、コロナ禍においては、蔓延防止の観点を踏まえ、オンラインによる方法を活用して委員会を開催することも差し支えない旨が総務省から令和二年四月に通知されていて、地方では常任委員会のオンライン化が進んでいるところもございます。

 しかしながら、本会議においては、地方の本会議においてもですが、国会の対応や、やはり地方自治法第百十三条及び第百十六条第一項における出席の概念が現に議場にいることと解されており、現行法上困難と解釈されているところです。

 緊急事態下に置かれた地方議会でも、議会開催の定足数を欠く事態に陥るかもしれないことは容易に想像されます。地方議員からも、そういったときどうすればいいのかという不安の声が聞こえてくるところでございますし、一日も早く国会でオンライン審議が可能となるように対応し、地方議会でも同様の対応が可能となることが望ましいことと考えます。

 また、オンライン審議がどのような場合に可能になるかという論点ですが、個人の事情、例えば病気、出産の場合も可能になるかということは、まず、緊急事態の場合にオンライン審議が可能になることを実現させた後に議論することがよいかと存じます。

 つまり、今回の緊急避難的なオンライン審議、限定的なオンライン審議、もしそれが可能になった場合でも、後の議論を邪魔することがあってはならないと考えております。

 不測の事態に陥ったときに最善が尽くせるように、今必要なことは特例的に迅速に行い、今後を見通して、必要な項目を網羅して緊急事態条項を作り上げることが国会における議員の責務であることを申し上げまして、意見表明といたします。

 以上です。

森会長 次に、中野洋昌君。

中野(洋)委員 公明党の中野洋昌でございます。

 今国会から憲法審査会に所属させていただいております。どうかよろしくお願いいたします。

 私自身、実はこれまでも、政治分野の女性参画というテーマについて取り組んできております。女性が妊娠、出産したときなどに議決権を行使できるように、日本においても特別な措置を講じるべきではないか、こういう議論も行ってまいりました。その際にまさに問題となりましたのが、この憲法五十六条の規定ということでございます。

 その後、新型コロナ禍が発生をいたしまして、緊急事態における国会機能の維持、こういう観点から、まさにオンライン国会をどうしていくべきか、こういうことが議論になりました。私自身、この憲法審査会におきまして、オンライン国会の集中的な審議がこのように開かれ議論が進んでいく、大変に重要なことであるというふうに考えております。

 そして、前回までの憲法審査会の議論で、各党各会派とも、そして本日もでございますけれども、オンライン国会の実現に向けて非常に前向きな御意見が出てきているというふうに思います。

 今回は法制局の方から、主に法制的な角度から、出席の考え方についてどのような議論があるのか、これを御説明をいただきました。あとは、具体的な論点を整理して、各会派で何が合意できるのか、これをしっかり議論してまとめていく、まさにこういう段階にあるのではないかというふうに考えております。

 先ほど法制局から、出席の考え方について二つの説を出していただきました。私自身、憲法五十六条などに規定する「出席」は、必ずしも物理的な出席だけを指すものではなく、例外的にオンラインでの出席も認められるべきではないか、このように考えております。もちろん、本日法制局から説明がありましたとおり、本人確認を行うことでありますとか、あるいは憲法上要請される公開性といった要件、こういったものは当然満たす必要がございます。

 また、我々一人一人の議員は、国民の負託を受けております。そういう観点からは、一人一人の議員が国会において議論をする、意思を形成し、そして表決を行うことができる、これが民主主義にとって非常に重要であるというふうに考えます。

 法制局から、例外性の考え方について、どういうケースがあり得るか、こういう御説明がございました。私は、そうした観点からは、緊急時の国会機能の維持、これは当然重要でございます、それだけではなくて、先ほどの女性の妊娠や出産なども含めた個人の議員の権限の行使を保障する観点、これもまた重要である、このように考えております。

 他方で、政策上どこまでのオンライン出席を認めていくか、こういう政策的な論点がございます。また、実務上どこまで可能なのかという実務的な論点もございます。そして、憲法解釈上どこまでが許容されるのか、こういう憲法解釈についての論点もございます。もちろん、これらの論点は相互に関連をするところではございますけれども、憲法審査会におきまして、細部を全て、これを全部詰めないといけない、こういうわけではないのではないかとも感じております。

 例えば、先ほど来お話ありましたとおり、政策的なところでは、議院運営委員会など、各党各会派の意見を集約しながら、院の運営のまさに裁量、自律権の中で決められていくという部分もあると思いますし、また、通信技術など実務的な面というのは、かなり日進月歩で技術も変わってくるところもございますので、これはかなり技術的な議論にもなってこようかというふうに思います。

 例えば、今、スペインでは、憲法上は議院で出席をしないといけない、こういうことでありますけれども、運用においては、本人確認を行いながら携帯の端末などで遠隔投票ができて、議事に投票ができる、こういう事例もございますので、こうしたことも実務的な議論の上では参考になるのではないかというふうにも考えております。

 いずれにしても、この憲法審査会では、主に憲法解釈の観点からどこまで許容されるのか、これを意思表示をしていくということが重要であると考えておりまして、こうした意見集約を是非急ぐ必要があるのではないかというふうに思います。

 最後に、オミクロン株の影響はまだまだ続いております。新型コロナ禍の中でも国会が機能できるように、差し迫った課題でございますので、そういう意味では、各党各会派で合意が得られる範囲から始められるようにするということも考えられますけれども、大事なことは、スピード感を持って、早期にオンライン国会が実現をするということでございます。これを求めまして、私の発言とさせていただきます。

 ありがとうございました。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。

 まず、議場の同僚議員の皆さんと共有したいのは、スピード感を持って結論を得ていきたいということであります。丁寧で包括的な議論ももちろん必要なんですけれども、今なお新型コロナウイルスの感染は拡大しており、議員や秘書、そしてスタッフ、国会の職員の皆さんにおいても感染者や濃厚接触者が急増した場合に、国会機能が維持できなくなるという危機感を共有して議論を進めることが大切だと思います。ですから、一致できる点については今日にでも結論を出すことが必要だということを、まず申し上げておきたいと思います。

 具体的に言えば、憲法五十六条一項における「出席」の概念について、この場で整理をし、それを審査会の意思として森会長から衆参の議長に対して示していく、これを最終的な審査会のゴールとして求めていきたいと思います。

 その意味において、本日の議論は、各党各会派からの単なる意見表明ではなくて、是非とも、合意に至る、そうした議論に是非していきたいと思いますし、会長においても、意見の集約に是非意を用いていただきたいということをお願いしたいと思います。

 以下、オンライン国会に関する我が党の意見を論点に沿って述べていきたいと思います。

 まず、五十六条一項の「出席」の概念については、先ほど話があったように、物理的出席説と機能的出席説がありますけれども、我が党は、新しい有力説とされる機能的出席説を取ります。

 憲法制定時にはインターネットはありませんでしたが、現在においては、ICTを活用すれば、必ずしも空間的、場所的な議場に現存していなくても、まず議論に参加すること、次に賛否の意思を形成すること、そして、自らが表決に参加するという三つの機能の実現は可能であって、出席にはオンラインによる参加も含むと考えるのが自然であって、オンライン国会の実現には憲法改正は不要だと考えます。

 ただし、あくまで物理的出席が原則であって、コロナ禍においては物理的近接を避ける必要性がある中で、議会の機能を維持、保障する観点から、オンライン国会を例外的、限定的な制度として位置づけ、導入することが望ましいと考えます。

 なお、オンラインの利用は、物理的な出席が困難な緊急事態において国会全体の機能を維持するために認める場合と、妊娠、出産、疾病、障害といった個人の事情に照らして権限行使を認める場合とが考えられますが、今回、スピードを重視する観点からも、前者の緊急時における国会全体の機能の維持のためのケースについて、速やかに結論を得るべきだと考えます。

 まず、こうした出席の概念の拡張についての考え方を整理し、審査会長から衆参の議長にお伝えいただきたいということは先ほど申し上げました。これを踏まえて、速やかに両院の議院運営委員会において必要な規則改正の手続に入るべきだと考えます。

 国民民主党としては、具体的な条文も取りまとめておりますので、是非積極的に議論に参加をしていきたいと思います。例えば、本会議での表決を定めた衆議院規則百四十八条については、例えば、表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない、ただし、感染症の蔓延等により、議員が議場にいることが著しく困難であると議長が認めたときは、議員は、議長が定めるところにより、表決に加わることができるものとする。こうした条文に、規則に改正することが考えられます。

 そもそも、現下のコロナ禍の状況を踏まえ、衆議院規則の改正ではなく、議院の自律権に基づく裁量の範囲内として、こうした特例を本会議での議決によって設けることもできると考えますし、先ほどもそうした説明があったやに理解をしております。その場合は規則改正すら要らないとも言えますけれども、この点については改めて法制局の見解を伺いたいと思います。

 最後に、スピード感が重要であることを改めて申し上げたいと思います。なぜなら、オンライン審議を実現するためには、先ほど説明があったように、実務上クリアしなければならない論点が多数存在します。だからこそ、その前提として、本日ここで憲法の出席についての概念の拡張についての考え方を取りまとめ、憲法審査会としての考えを速やかに確定させる必要があると考えます。感染拡大は、私たちの議論を待ってくれません。

 そもそも、憲法第四章「国会」は、国会自身が解釈権を持つ珍しい部分であって、解釈は国会で決めるべきだと思います。コロナ禍で明らかになった憲法上の課題に、憲法審査会のメンバーとして、立法府の一員として、責任ある解決策を示していこうではありませんか。改めて森会長の取り計らいをお願いしたいと思います。

 最後に、来週木曜日の定例日には必ず憲法審査会を開催し、粛々と速やかに議論を進めることを求めて、発言を終わります。

森会長 ただいま橘局長に御質問がありましたけれども、何か答弁できることがあれば、短時間でお願いいたします。

橘法制局長 玉木先生、御質問ありがとうございます。

 突然の御質問ですから正確にお答えできるか分かりませんが、先生御下問の点は、本日の配付資料の資料二、B説に立つ場合、衆議院規則の改正の末尾に書いてございますが、恒久的な制度としてではなく、一時的、特例的な措置として位置づける場合には、必ずしも規則改正を要せず、本会議の議決といった形式も考えられると。

 恐らく、このような説を唱えられている論者の背景には、議院自律権の発動といった法形式は、一般ルールとしての衆議院規則で必ずしもある必要がなく、本会議議決も議院自律権の立派な発動形式である、議院自律権の背景となっている憲法五十八条に定める「規則」は、衆議院規則というあの題名の下の規則に限られない、そのような認識があるのだと存じます。

 以上です。

玉木委員 ありがとうございます。

森会長 それでは、次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 日本国憲法第四章は、国会の本会議について、全国民を代表する国会議員が、目に見える形で議場に参集し、会議公開の原則の下、何物にも干渉されず、自由に発言し、議論を尽くして表決することを要請しています。これは、近代議会制の根本原則であり、国民主権と民主主義を基本原理に持つ日本国憲法における極めて重要な原則です。

 この原則を堅持した上で、国会の審議にオンラインをどのように活用できるのかは慎重な検討が必要な問題だと思います。この問題を現下のコロナ対策として取り上げ、性急に結論を出し、詳細な制度設計まですることは、憲法審査会の問題ではありません。

 国会のコロナ感染症対策について言えば、この二年間、議院運営委員会で議論を重ね、議場でのマスク着用を徹底し、質疑時の出席者を自主的に減らすなどの対策を取ってきました。この対策で不十分だというのであれば、議運で協議すべき問題であります。コロナ対策で必要なのは、オミクロン株の特殊性などを踏まえた科学的知見に基づく対策です。

 今、喫緊の課題は、ワクチン接種が遅れていること、検査すらできないまま自宅待機を余儀なくされていること、医療体制が崩壊していることです。これらの問題は、予算委員会や関係委員会で徹底的な議論が求められていると思います。

 コロナ禍における憲法と国会の問題で重大なのは、国会の行政監視機能の発揮が最も求められていたときに国会が開かれなかったことです。二〇二〇年七月と二〇二一年七月、野党は、コロナから国民の命と生活を守るため、憲法五十三条に基づき、四分の一以上の議員の連名で、臨時国会開会要求を内閣に提出しました。ところが、政府・与党はこの要求を無視しました。その下で第三波や第五波の感染拡大が起きたのであり、その責任は重大です。

 憲法五十三条は、臨時会について、「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」と明記しています。この規定は、少数者が国会において問題を提起し、政府をただし、議論し、国民の多様な意見を国政に反映させる機会を保障したものです。

 二〇二〇年の那覇地裁判決は、憲法五十三条後段に基づく内閣の臨時会の召集は、憲法上明文をもって規定された法的責務であり、内閣に認められる裁量の余地は極めて乏しいと明確に述べています。政府が五十三条に基づく要求を無視することは許されません。

 そもそも、この規定は明治憲法にはありませんでした。明治憲法は、議会を天皇が立法権を行使する協賛機関と位置づけ、天皇と政府が必要とする場合のみに召集し、その活動を制限していました。そのことがさきの悲惨な戦争に突き進む一因となったことへの反省から、日本国憲法は国会に召集の自律権を与え、国会の行政監視機能を強めたのです。

 これを無視することは、国会の果たすべき役割を放棄していると言わなければなりません。この憲法に反する現実を正すことこそ必要だと指摘して、発言を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 本日論点となっていますオンライン審議について、有志の会の考え方を申し述べたいと思います。

 まず、本来は、国会の審議や議決たるもの、やはり議員や内閣総理大臣を始め国務大臣の物理的出席の下で行われるべきだと思います。憲法、国会法、衆議院規則もこの前提に立っています。実質的にも、国会での議論や質疑は、発言者の表情、手ぶり、身ぶり、あるいは合いの手や品のあるやじなど、他の議員の反応が相まって、より精彩に富む意思疎通、熟議が図られます。

 また、憲法第五十七条に規定される国民への公開性の原則が物理的な出席によって担保されるところも、決して軽んじてはならないというふうに思います。

 しかしながら、一方で、オンライン技術の進歩により、物理的出席に極めて近い映像、音声や意思表示機能を確保することが可能となっています。また、工夫すれば国民への公開性も担保することができるようになっています。

 こうした中で、危機管理上又は緊急避難的に物理的な出席が困難あるいは望ましくない場合に、例外的にオンライン審議を可能にすることは認めるべきだというふうに考えます。それだけではなく、緊急事態において国会の立法機能並びに行政監視機能を守るためには、むしろ必ず実現すべきだと思います。

 今回の新型コロナ感染状況でも、三密を避けろという行政の要請に応えるために、一般の民間企業等では努めてオンライン会議が開かれています。国会だけがこうした要請に従わないのは、国民に理解されないだけではなく、危機管理上も許されないと思います。

 また、直下型地震などの大規模災害やテロ、内乱の事態が発生した場合、逆に議員や国務大臣の物理的な出席が不可能になることも想定しなければなりません。

 こうしたことから、有志の会の提案としては、憲法第五十六条、第五十七条等における「出席」という文言については、一定の厳格な要件の下でオンライン上の出席をも読めるように解釈を拡大すべきだというふうに思います。

 あわせて、衆議院規則第百四十八条にある「表決の際議場にいない議員は、表決に加わることができない。」という文言を改正する必要があります。

 問題は、どういう条件の下で、また、どのような手続にのっとりオンライン審議を認めるかということです。

 これについては、条件としては、現下の新型コロナのような感染症の全国的流行や、テロ、大規模災害による交通網遮断等といった、国会全体の機能を守るためにやむを得ない場合など、限定列挙により例外の例外をつくらないことが適当ではないかと提案申し上げます。

 また、国務大臣についても、条件を厳格化することが恣意的な運用に対する歯止めになると思います。

 手続としては、例えば、全議員の四分の一の発議により、三分の二の賛成を求めるのが適当ではないかと考えます。これが物理的に不可能な場合には議長の権限で認めることもあり得ますが、これも相応の条件を定めるべきでしょう。

 さらには、憲法第五十七条の公開原則の観点から、個々の議員の姿が一人ずつオンライン画面に表示され、議場においても大画面に表示されることが求められると思います。オンラインで審議する場所については、原則は議員会館、例外としてあらかじめ届け出た場所、どうしてもやむを得ない場合は、手続にのっとって、これをも問わないとすることも検討しておかなければなりません。

 また、議員が自由意思で発言や採決に参加していることを担保するために、IDやパスワードによる認証を徹底しつつ、議員会館から出席する場合は、国会の職員を派遣して確認することが求められます。議員会館以外の場所ではどうするのかということについては、今後の検討課題とすべきだというふうに思います。

 以上です。

    ―――――――――――――

森会長 次に、委員各位による発言に入ります。

 発言を希望される委員は、お手元にある名札をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言ください。

 発言は自席から着席のままで結構でございます。

 なお、発言の際には、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 発言が終わりましたら、名札は戻していただくようにお願いいたします。

 また、幹事会の協議に基づき、一回当たりの発言時間は五分以内といたします。質疑を行う場合は、一回当たりの発言時間は答弁時間を含めて五分程度といたします。委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 発言時間の経過につきましては、おおむね五分経過時にブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、発言を希望される委員は、名札をお立てください。

稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。

 発言の機会を与えていただいたことに感謝いたします。

 国権の最高機関である国会で、国民の代表として国家の基本法である憲法改正の議論をすることは、国会議員としての最大の責務と言っても過言ではありません。この審査会においては、言論の府にふさわしく、前回の審査会で新藤幹事が述べられたように、本体議論を活発に行うべきです。

 さて、憲法五十六条一項の「出席」について、機能的に拡張解釈し、コロナ禍においても対応できるよう衆議院規則の改正等で措置すべきとの意見が述べられました。

 私も、国会がいついかなる状況下においても機能できるような備えをしておくことは重要であると考えます。しかし、緊急事態対応は、オンライン審議に限らず、基本的人権の制限や損失補償、さらには議員任期の延長など、幅広い問題を含みます。現下のコロナ対応のために例外的にオンライン審議について解釈で対応するとしても、本来的には、やはり解釈ではなく、憲法上、明文をもって規定するのが本筋です。

 コロナ禍においては、どの程度国民の権利を制限できるのか、また、営業活動を制限した場合の補償の程度について議論になりました。特措法改正では、感染症は国民がひとしく受ける制約であり、営業時間短縮要請や休業要請は特別の犠牲には当たらず、憲法二十九条三項の損失補償の対象とはならないと整理されました。

 一方、国と自治体がコロナの影響を受けた事業者を支援するために必要な措置を講ずる義務を明記し、時短要請に応じた飲食店に対しては協力金を支払うこととなりました。また、事業者が要請、指示に反した場合の過料は設けられましたが、個人の外出等に対する自粛は、要請できても命令はできず、罰則もありません。

 言うまでもなく、感染症蔓延のような国家的危機の際には、基本的人権である個人の自由も、国民の命を守るため一定の制約を行うことは必要ですし、医療機関への指示、命令なども検討する必要があります。

 憲法上、営業の自由を含む職業選択の自由の制約としては、公共の福祉が規定されているのみです。一般に、一定の害悪発生の危険の存在を前提に営業の自由を制約する場合、規制の程度、手段、方法は、その害悪発生を防止するための必要最小限のものにとどまることが要請されます。

 憲法に緊急事態条項がなく、法律による人権の制限を公共の福祉という抽象的な文言に頼ることは、立憲主義の観点からも望ましくありません。どのような場合に緊急事態として人権の制約が許されるかなど、その基準も含め、明確に憲法に規定すべきです。そもそも、緊急事態条項が憲法に盛り込まれていないことは、国民を守り抜く意思の欠如を示しているとも言えます。

 戦後、占領下での憲法改正に当たり、日本政府は緊急事態条項の創設を主張しました。衆議院の解散等の国会召集ができない場合で、特に緊急の必要があるときに、国会の事後承認を条件として、国会による法律、予算に代わる、政府による閣令の制定を可能とする規定を憲法に設けることを主張したのです。しかし、GHQに拒否されたため、妥協して、国会による対処を前提として、参議院の緊急集会のみを規定することとなりました。本来であれば、昭和二十七年の主権回復のときに憲法改正をして、緊急事態条項を定めるべきでありました。

 南海トラフ地震や首都直下型地震、さらには外国からのミサイル攻撃や大規模なテロにより、国家中枢が機能不全に陥ったり、選挙を実施することができないような甚大な被害を被ったりする事態もあります。さらに、コロナの今後の蔓延の程度、あるいは、将来、未知のウイルスの蔓延によっても同様の事態は起こり得ます。超法規的な措置によらず、憲法に基づいて緊急事態に対応するための体制を構築しておくことは喫緊の課題です。憲法に、オンライン審議を含め、緊急事態条項を明文で規定する必要があり、そのための議論を開始すべきだと考えます。

 以上です。

新垣委員 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。

 冒頭、本日の審査会開催について一言申し上げたいと思います。

 現在、本院予算委員会で新年度予算案を審議中であります。社民党は、予算委員会審議中の憲法審査会開催という実績づくりと既成事実化には明確に反対をいたします。

 予算委員会では、オミクロン株感染拡大による新型コロナ第六波への対応、コロナ禍で傷んだ日本経済、国民生活をどう立て直すかなど、喫緊の課題が様々な角度から論じられております。これら予算委員会での多岐にわたる議論は、いずれも憲法が保障している国民の権利実現と直結をいたします。国民の関心が目先の暮らし向きや景気の動向にある中、改憲論議に伴う論点整理や手続論は不要不急です。少なくとも新年度予算が成立するまでは、憲法審査会よりも予算案や関連法案の審議を優先すべきだと思います。

 なお、本日の中心テーマとなっている憲法第五十六条第一項の「出席」に関する議題設定は、本審査会の毎週開催の実績づくりを目的とした後づけ的な意味合いが強く、コロナ禍に乗じた改憲論議の促進と軌を一にするものであると指摘せざるを得ません。

 社民党は、国会におけるオンライン審議導入の検討それ自体、否定をしておりません。議会の機能の維持と一層の保障という観点を大事にする立場にあるからこそ、本審査会で結論ありきの解釈確定を急ぐことなく、諸外国の事例も取り上げながら、研究を重ね、先ほど法制局長から説明があったように、衆参両院の議院運営委員会等で議論を尽くすべきだと考えます。

 さて、岸田総理は、去る二月二日の衆議院予算委員会で、自民党改憲四項目は国民にとって極めて現代的な課題だとして、この四項目に基づき憲法を改正していくべきとの考えを示しました。

 しかしながら、自民党改憲四項目は、いずれも改憲せずとも対応可能だと考えます。

 例えば、自然災害や感染症などの非常事態は、東日本大震災や現下の新型コロナ禍への対応で明らかなように、現行憲法下での法整備によって対処できており、緊急事態条項の創設は不要だと思います。

 教育無償化の充実も、授業料の減免や奨学金制度を充実し、憲法第二十六条に定める教育を受ける権利を充実させていく手だてを講じていくことで解決をできます。

 参議院の合区解消も、技術的な問題にすぎず、比例代表制やブロックの区割りなど、制度見直しによって対応可能です。

 結局、政府の本音は、憲法九条への自衛隊明記、すなわち九条改憲にあるとしか思えません。

 私は、戦後七十七年間にわたって、日本が戦争せず、また戦争に巻き込まれることなく今日まで来られたのは、平和憲法の存在が国際社会の信頼を獲得してきたからこそだと強く信じております。同時に、この場に日本国憲法の平和主義を否定する政党会派、国会議員の先生方はお一人としていないとも信じております。それは国民の総意であり、本審査会における総意であると確信をしております。この点について異論があれば、本審査会において大いに議論をし、国民に説明すべきだと思います。

 今から五十年前、私たち沖縄県民は、アメリカの直接軍事支配下からの脱却と日本国憲法の適用を求めて、本土復帰を果たしました。しかし同時に、日米安保条約や日米地位協定も適用され、憲法法体系よりも安保法体系が優先し、憲法に守られているとの実感が得られない日常を今日まで強いられております。

 沖縄県民は、日本国憲法の三原則である国民主権、基本的人権の尊重、平和主義が保障され、憲法の理念が息づく生活を強く望んでおります。平和のうちに生存したいと心の底から願っております。県民が求めているのは、憲法を書き換えるお試し改憲の実現ではなく、今手にしている平和憲法の理念実現であります。

 私は、安全保障環境の変化や、自然災害や感染症等の非常事態を口実に、政権与党が国民の不安をあおり、国政の場で改憲論議を重ねていくこと、また、憲法九十九条の憲法尊重擁護義務に反する形で、岸田総理が自らの任期中に改憲実現を目指すといった言動を繰り返すことが、戦争放棄をうたった九条改憲を国際社会に想起させ、近隣諸国の不信感を増幅させることにつながるのではないかと大変危惧をしております。

 最後に、国境離島を抱える沖縄で暮らす生活実態に基づく意見として申し上げ、発言を終わります。

北側委員 先週の十日、そして本日、オンライン国会の許容性について討議がなされました。

 私は、皆様の意見をお聞きしながら、少なくとも、当憲法審査会で合意できる範囲として、相当その範囲が明瞭になってきたのではないかというふうに思っております。

 それは、すなわち、憲法審査会として、緊急事態における国会機能の維持という観点から、少なくとも、憲法五十六条一項の定足数を確保することが困難若しくはそのおそれがある場合には、例外的にオンライン国会、オンラインを通じて議事に参加し議決ができるとすることは憲法五十六条一項の下でも許容される、反しないということについては、ほぼ私はこの審査会として合意できるのではないかというふうに感じました。

 ただし、五十七条一項の会議の公開の規定がございます。この公開に反しないようにしていくためにどうすればいいのかということは議論が必要かと思っております。

 また、個々の議員の表決権行使の確保が重要と、私も非常に重要な課題であると思いますが、このテーマについては、別途、議運等の別の場で更に詳細に検討されてしかるべきではないか、当審査会としては、憲法上の許容性ということに限って一定の合意ができればいいのではないかというふうに思っております。

 ついては、先ほど玉木さんの方からも御発言ございましたが、私は、せっかく先週、今週と議論をしてきましたので、また来週も議論がなされると思いますが、是非、この憲法審査会の幹事会で、オンライン国会の憲法上の許容性について、一定の合意文書のたたき台を作成すべきであるというふうに思います。それを是非この審査会でもコンセンサスを取っていただいて、院の議長、また議運の方に提案をしていくということも審査会の大きな役割だったと思います。

 我が党の中野委員の方から、冒頭、政策論の問題と、それから技術的な実務論の問題と、憲法上の許容性の問題、この三つの課題があるねと申し上げましたが、当審査会としては、憲法上の許容性の問題について、明確に意思表示をしていく。そして、あとの政策論、実務論の話も課題が多いかと思いますが、これは是非、議運を中心に、具体的に詳細に検討してもらいたいというふうに思っております。

 以上です。

森会長 ただいま北側幹事からの御提案につきましては、幹事会で協議をさせていただきたいと思います。

足立委員 会長、ありがとうございます。

 日本維新の会の足立康史でございます。

 まず冒頭、橘局長の方から、オンライン審議についての大変完成度の高い御説明をいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。

 お耳汚し等といつもへりくだっておっしゃいますが、本当に日頃からいろいろ御意見交換をさせていただきながら、我が党のみならず御意見交換をさせていただきながら、今日のこうした有意義な討議の場となっていることに感謝を申し上げたいと思います。

 さて、我が党の立場は、先週の馬場伸幸幹事、そして先ほどの三木圭恵委員から申し上げたとおりでありまして、オンライン審議については、例外的に、いわゆる機能的出席説を取って、議院自律権に基づいて進めていくということでございます。

 今、北側幹事からも御提案があったような形で、速やかに幹事会等の場を使ってコンセンサスを形成して意思を表示していくことに大賛成でありますので、会長には引き続きお願いをいたしたいと思います。

 さて、今日のやり取りで一点だけ気になったことがあります。

 これは先ほど三木委員からも申し上げたことでありますが、今回のオンライン審議の議論を奇貨として、何か緊急事態条項に関する議論を封じるようなトーンの意見が散見を、散見じゃないな、奥野幹事だけですね、されます。

 これは大変ゆゆしきことでありまして、先ほど三木委員からも、オンライン審議に限らず、国会議員の任期や基本的人権の確保、人流を抑制した場合の補償など、様々な重要な論点があるので、オンライン審議に限らず議論をしていくべきと申し上げました。

 ところが、奥野総一郎幹事は、先ほどの発言だけではありません。昨日、毎日新聞に、「国会のオンライン審議 改憲せずに実現できる」、こういう記事を出されていまして、憲法改正などしていては何年かかるか分からない、コロナ禍への対応を差し置いてやる話ではない。要は、憲法改正の議論を、あるいは緊急事態条項の話をやるべきじゃないと言っているわけですね。

 さらには、国家百年の計ということで、要は、国家百年の計だから今はやらなくていいんだ、目の前にある重要な課題ではないんだ、国家百年の計は将来議論したらいいんだ、こうおっしゃっているわけです。

 逆ですね。国家百年の計というのは、将来課題だから、今議論しなくていいから国家百年の計じゃないんです。国家百年の計だから、今やらないといけないんです。

 全く履き違えた議論を新聞紙上でなされていて、今回のオンライン審議について、奥野幹事はこの新聞紙上で、これはネットだけかもしれませんが、今回のオンライン審議はできるという憲法解釈を憲法審査会としてまとめれば、我々立憲民主党の論憲の一つの形を示せる。まあ、私なりに解釈すれば、仕事をしたふりができるということです。この憲法審査会に列席して……(発言する者あり)いやいや、そういうふうに取られかねないですよと、国民から。私の意見じゃありません。国民はこんな記事を読まされたら、やはり立憲民主党はやる気がないんだと言われても仕方ないですよということです。

 ちなみに、私がこうやって申し上げるのは、これだけじゃないんです。CM規制と本体論議もそうです。常に、CM規制をするから本体論議はしなくていいんだ、オンライン審議について成果を出したらほかは成果を出さなくていいんだ、そういう本末転倒した話ではなくて、CM規制と本体論議は両立する、並行して進める。今回のオンライン審議も緊急事態条項も両立する、並行して進める。これは当然のことであると指摘をして、私の意見表明とさせていただきます。

 ありがとうございます。

船田委員 会長、ありがとうございます。

 自由民主党の船田元でございます。

 西暦二〇〇〇年以来、私は、憲法調査会からずっと参加をしてまいりました。二十数年たちましたけれども、その間、紆余曲折、様々な議論があったことは事実であります。そういう中で、いよいよ憲法の中身について議論をする、また、改正について議論ができるということが、だんだんと可能になってまいりました。大変感無量に感じております。

 しかし、拙速な議論というのはやはり避けるべきだと思っております。幅広い政党間の合意、それから、各党が平等に取り扱われること、そして、賛否平等な扱いを行うこと、これは、中山元調査会長のいわゆる中山方式というものがありまして、それはやはりこの審査会でこれからも守るべき原則じゃないかというふうに思っています。

 今後の具体的な憲法の中身の進め方でございますが、今回、今日のように、いわゆるオンライン国会、議題として行われておりますけれども、こういう憲法改正になり得る、あるいは憲法改正と密接に関連をするテーマをやはり幹事懇、幹事会でしっかりと決めていただいて、また、その議論の順番も決めていただいて、それに基づいて、この審査会において自由討議も含めた議論をする。

 一部、分科会でやるべきだ、テーマごとに分科会をつくるべきだという意見もありましたけれども、やはりこれは全体会の中で進めていくというのが私は順当な方法であるというふうに思っております。

 自由討議を行った後、論点の整理を次の幹事会で行い、幹事会で行った論点整理をもう一回またこの全体会にかける、交互にやっていくということが非常に私は重要だと思っておりますので、提案をさせていただきたいというふうに思っています。

 それから、中身とは別の、国民投票法の積み残しというんでしょうか、いわゆるCM規制のことにつきまして、前回ちょっと話がございましたけれども、CM規制につきましては、これはやはり、国民投票運動というのはできるだけ自由にやるべきであるという大本の考え方、しかしながら、賛否のバランスが崩れるということはよろしくない、こう考えておりますので、受け手である放送局側のCM考査というところで一定の自主規制を行うこと、あるいは、我々出し手としての政党側としては紳士協定を組むということ、さらに、憲法改正の原案が発議されたときに広報協議会というのが国会の中にできますので、広報協議会においてその賛否のバランスをきちんとチェックをしていく、こういう合わせ技でこのCM規制の問題はやっていく必要がある、こう思っております。

 なお、前回の会合におきまして、国政選挙と同時に憲法改正の発議をすべきである、議論をすべきである、こういう議論がございましたが、私はやはり、政権を選ぶ、あるいは政党を選ぶ、人間を選ぶ、そういうときと同じときに憲法議論をするというのは余りなじまないと思っております。

 また、選挙運動と国民投票運動が重なるということになりますと、これはやはり一定の混乱を起こすと思っております。国民運動に見せかけて実は選挙運動をやっている、こういった事態が起こらないとも限りません。

 国民投票法によるいわゆる国民投票運動と選挙運動というのを同時に行うということは、これはたてつけとしてよろしくないと考えておりますので、別々に行うべきであると思っています。

 参議院選、今年の七月に行われますけれども、それが終わった後は、衆議院の解散がなければ、三年近く国政選挙のない状況が生まれるわけであります。この三年の時期の間に憲法改正について私は歩みを一歩進めるべきである、こう思っておりますので、是非御理解いただければと思っております。

 以上でございます。

櫻井委員 会長、ありがとうございます。

 憲法審査会で初めて発言させていただきます。立憲民主党の櫻井周です。

 本日の議題、審議機会を確保するということについて議論が進んでいるという状況です。特に、憲法五十六条等にあります「出席」の意味するところ、オンライン出席が認められるかどうか、こういうことが議論になっているわけでして、この点について、まず私からは必要性と許容性の観点から申し上げたいと思います。

 まず、必要性についてでございますが、感染症対策という観点からは、感染症が大規模に蔓延した場合、濃厚接触者となった議員が出席したい、また、無症状であるけれども感染している議員が審議に参加したい、こういったことを可能にするためのオンラインでの出席、これは認める必要性があるのではなかろうか、このように考えます。

 また、地方議員の超党派の議員連盟である子育て議員連盟、ローカル・マニフェスト議員連盟からも、地方議会の本会議におけるオンラインでの出席を認めるよう要請を受けているところです。これは各党に回られているというふうにお聞き及びしております。

 総務省が示した見解によれば、地方自治体の議会において、委員会においてはオンライン出席が認められるけれども、終局的な議決である本会議についてはオンラインでの出席は認められない、そのように示されているということで、この点を改めていただきたい、こういう要請でございました。

 今日的な課題を踏まえて、各所でオンライン出席の必要性は高まっているというふうに認識をしております。

 一方で、許容性の方でございますが、日本国憲法制定時には、テレビも普及していない時代でありまして、オンライン出席という概念はなかっただろうというふうに考えます。憲法上、ある種、解釈の空白があるというふうにも考えられるところでございまして、だからこそ、本日も、物理的出席、それから機能的出席、こうしたことが論点になっているというふうに承知をしております。

 先ほど法制局長のお話があったとおり、憲法上の出席の概念に機能的出席を含めてよいと私も考えております。ただし、どういった場合に許容されるのかということについてはしっかりとこの憲法審査会で議論していかなければいけないと考えております。

 既にほかの委員の皆様から数々の論点が示されておりますので、私の方から一点、オンラインでの出席者が不利益を被らないような丁寧な議事運営、これも必要だろうということを申し上げたいと思います。

 突然審議を打ち切って強行採決するというような荒っぽい議事運営がされてしまいますと、オンラインでの出席者は、もはや蚊帳の外という状況になってしまいます。したがって、オンライン出席がなされているときには、より丁寧な議事運営が担保されるということも必要だと考えます。もちろん、丁寧な議事運営というのは、オフラインといいますか、物理的出席の場合であっても必要なことではありますが、これまで強行採決が行われるというような事例もあったところで、あえて申し上げるところです。

 衆議院の規則の改正については、憲法審査会で憲法で認められるオンライン出席の範囲というのを示した上で、議院運営委員会でしっかりと議論されるべきものというふうに承知をしております。

 あと、もう一点、審議機会の確保という観点について、これまで重大な問題がございました。憲法五十三条でございます。臨時国会の召集ということで、我々、昨年の七月に臨時国会の召集を要求いたしました。また、さらに、五年前、二〇一七年の六月にも、憲法五十三条に基づく臨時国会の召集、あったにもかかわらず、臨時国会は召集されず、国会での審議が行われなかった、審議機会が確保できなかったということで、これは重大な憲法違反だというふうに考えます。

 このことについて、本日は橘局長にも来ていただいているので、ちょっと一つ質問させていただきたいと思います。

 憲法審査会というのは、憲法違反を始めとする問題が生じていないかどうかを調査審議するための会議でもあるというふうに理解しておりますが、そのような理解でよろしいでしょうか。つまり、我々国会議員は、憲法九十九条で規定されている憲法尊重擁護義務があるわけでございますが、憲法違反問題があると認識する場合には憲法審査会での調査審議を求めるべき、憲法五十三条違反問題についても憲法審査会で調査審議すべき、国会法百二条の六の規定はそのように解すべきというふうに考えるところでございますが、橘局長の御見解をお示しいただければ幸いです。

 以上で私の発言を終わらせていただきます。

橘法制局長 失礼いたします。

 会長の御高配で椅子が用意されましたので、座らせていただきます。

 櫻井先生、御質問ありがとうございます。

 先生御指摘のように、憲法審査会の所掌事務は、国会法百二条の六において、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査すること、そして、憲法改正原案を審査すること、また、国民投票法案を審査すること、このように規定されています。

 その最初の広範かつ総合的な調査は、現行憲法がその趣旨どおりに履行されているか、また、足りないところはないかということですから、先生御指摘の点は、憲法審査会の所掌事務の中にまさしく入ると存じます。

 その中で、どのようなテーマを議論されるかについては、まさしく先生方がお決めになっていかれることというふうに存じます。

 以上です。

吉田(宣)委員 発言の機会を賜りまして、ありがとうございます。憲法審査会で私も初めて発言をさせていただきます。

 先ほど北側幹事からございましたように、この五十六条一項の下で、オンライン国会、許容されるというふうな範囲が明確になってきているというお話でございます。私も、その方向でしっかり取りまとめに当たっていただきたいということを、冒頭お願い申し上げたいところでございます。

 一方で、やはり、この憲法審査会が様々活発な議論が行われていることについて、国民の皆様にしっかりこの議論を見詰めていただいて、そして、どうしてこのような議論が起きているのかということも、国民の皆様のお心に合わせるような歩調で歩んでほしいなというふうに思っております。

 例えば、国民の皆様が、私であれば素朴に感じる疑問、それは、オンライン国会というものについて、先ほど櫻井委員からもありましたけれども、憲法制定当時はそういった概念がなかったということでございますから、そうしますれば、当時の概念としてなかったものを今憲法改正によらずしてやれるということについては、国民の皆様は素朴に疑問に感じられると思いますので、そういったものについては、やはり、憲法解釈というものをしっかり国民の皆様にも示していく中で、議論の取りまとめが行われなければならないのではないかというふうに思っております。

 もう一点申し上げます。

 これも繰り返しでございますけれども、定足数を確保できないような緊急事態におけるオンライン国会と、個々の議員の議決権の保障、権利行使を保障するためのオンライン国会というものは、これは分けて考えられるべき問題だと思っております。

 前者は国民生活に直接、直結をするような大きな影響がある課題であるという一方で、後者はそういった効果については非常に限定的であるというところも、別に取り扱う話になってくるかというふうに思っております。

 先ほど橘さんの方からございました例外性の議論の中でこれが出てくると思いますけれども、議論は分けてやるけれども、最終的には個々の議員の権利行使というものの保障も合わさって結実していく方向で是非議論が進んでいただきたいというふうに、このことを要望して、発言を終わります。

 ありがとうございました。

森会長 予定した時間が経過をいたしました。

 この自由討議の取扱いについては、ただいま与野党の筆頭間で協議をしておりますので、今後については、これを踏まえまして、対応いたしたいと存じます。

 これをもちまして自由討議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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