衆議院

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第10号 令和4年4月21日(木曜日)

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令和四年四月二十一日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   会長 森  英介君

   幹事 井上 貴博君 幹事 加藤 勝信君

   幹事 上川 陽子君 幹事 柴山 昌彦君

   幹事 新藤 義孝君 幹事 奥野総一郎君

   幹事 道下 大樹君 幹事 馬場 伸幸君

   幹事 北側 一雄君

      井出 庸生君    井野 俊郎君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      石橋林太郎君    稲田 朋美君

      岩屋  毅君    衛藤征士郎君

      越智 隆雄君    大串 正樹君

      塩崎 彰久君    下村 博文君

      中西 健治君    西村 康稔君

      船田  元君    細野 豪志君

      松本 剛明君    柳本  顕君

      山下 貴司君    山田 賢司君

      山本 左近君    山本 有二君

      神谷  裕君    近藤 昭一君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      馬場 雄基君    太  栄志君

      本庄 知史君    谷田川 元君

      吉田はるみ君    米山 隆一君

      足立 康史君    小野 泰輔君

      三木 圭恵君    國重  徹君

      中野 洋昌君    吉田 宣弘君

      鈴木  敦君    玉木雄一郎君

      赤嶺 政賢君    北神 圭朗君

    …………………………………

   参考人

   (一般社団法人日本民間放送連盟専務理事)     永原  伸君

   参考人

   (一般社団法人日本民間放送連盟常務理事)     堀木 卓也君

   衆議院憲法審査会事務局長 神崎 一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     塩崎 彰久君

  伊藤信太郎君     柳本  顕君

  國場幸之助君     石橋林太郎君

  山田 賢司君     山本 左近君

  新垣 邦男君     馬場 雄基君

  櫻井  周君     米山 隆一君

  玉木雄一郎君     鈴木  敦君

同日

 辞任         補欠選任

  石橋林太郎君     國場幸之助君

  塩崎 彰久君     秋葉 賢也君

  柳本  顕君     伊藤信太郎君

  山本 左近君     山田 賢司君

  馬場 雄基君     神谷  裕君

  米山 隆一君     櫻井  周君

  鈴木  敦君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  神谷  裕君     新垣 邦男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(憲法改正国民投票に係る有料広告について)


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     ――――◇―――――

森会長 これより会議を開きます。

 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に憲法改正国民投票に係る有料広告について調査を進めます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として一般社団法人日本民間放送連盟専務理事永原伸君及び一般社団法人日本民間放送連盟常務理事堀木卓也君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

森会長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

森会長 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、永原参考人から代表して二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。

 御発言は着席のままでお願いいたします。

 それでは、永原参考人、お願いいたします。

永原参考人 日本民間放送連盟の永原でございます。

 私どもは、四年前に憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢、三年前に国民投票運動CMなどの取り扱いに関する考査ガイドラインを策定いたしました。その中身は、三年前の二〇一九年五月に当審査会に参考人として出席して、既に説明済みでございます。今日この場で改めて繰り返すことは適切ではないと考えまして、本日は、憲法改正国民投票運動と広告規制の在り方について、私どもの基本的な考え方を資料とレジュメに沿って申し上げたいと思います。

 最初に、資料一の一ページを御覧ください。一番上の部分に、国民投票法の条文を引用してございます。

 百条で「不当に侵害しないように」と規定されております表現の自由、その主体は誰かといえば、主権者である国民です。国民が広告も含めて様々な表現形態を用いることを不当に侵害してはならない、これが大原則でありますが、資金量の多寡が投票結果に影響するのではないか、広告合戦が過熱したらどうするのかという御議論は、二〇〇六年から七年にかけての国民投票法案の審議の際にも行われております。

 資料の一の二ページに、当時の立法経緯をまとめてございます。

 広告合戦への対処については、法案の提案説明者である自民党の葉梨先生、民主党の枝野先生がおっしゃっていることは、言論の自由市場で淘汰するということでございました。そうはいっても、投票日の直前になると淘汰の時間が足りないという考えから、テレビとラジオの広告のみ、投票日前二週間は禁止することとなりました。これが百五条であります。

 なぜテレビとラジオの広告のみ規制対象としたのか。これは枝野先生が分かりやすく説明しております。活字メディアと違い、音声や映像を用いる放送メディアは、時に理性ではなく感情に訴えるという意味で扇情的な影響力を持つという理由でございました。

 以上の立法の経緯を踏まえれば、今の時点で広告規制が必要か否かを改めて論じる場合、都合三つの論点が考えられます。

 第一の論点は、規制の対象期間。投票日前二週間だけでよいのかという問題です。第二の論点は、規制の対象媒体はテレビとラジオだけでよいのかということでございます。この二つの論点はこれまでもあった切り口で、既に独自の法案をまとめておられる政党もございます。

 しかし、視点を変えてみると、実はもう一つ、第三の論点があるように思います。

 それは百五条をめぐる論点です。この十五年間でメディアや広告の環境が大きく変化している中で、今や投票日前の二週間、テレビとラジオの広告を禁止しても、国民が冷静に判断できる投票環境にはならないのではないかということであります。二年前に当審査会で、公明党の北側先生が百五条を評して、アナログ時代の広告規制という表現を用いられておりましたが、まさに言い得て妙、全く同感でございます。

 資料一の三ページを御覧ください。

 これは、博報堂DYメディアパートナーズが発行するメディアガイドで、広告媒体別の出来事が記してございます。

 これを見れば、国民投票法が議論された二〇〇六年から七年は、SNSもなければスマホもないメディア環境で広告規制を議論していたことがよく分かります。さらに、通信技術の進歩によって、今やスマホで、町中でも電車の中でもユーチューブなどの動画配信サービスを楽しむことが当たり前になっております。そして、そこには動画広告がついてきます。

 なぜ、投票日前二週間、テレビとラジオの広告を禁止対象としたのか。それは、音声や映像を用いた広告は時に感情に訴える、扇情的な影響力を持つという理由でございました。

 今、多くの国民が動画配信サービスに慣れ親しみ、大量の動画広告に接しています。そうしますと、投票日前の二週間、ユーチューブなどの動画広告は規制されず、テレビとラジオの広告は禁止されるということとなります。

 時に感情に訴える、扇情的な影響力を持つとおっしゃる動画広告が、配信サービスを通じて大量に流れ、SNSを通じて大量に拡散される。そういう状況が、果たして百五条が期待した、国民が冷静に判断できる投票環境と言えるのでしょうか。

 テレビやラジオCMを法律で禁止する、その期間を国民投票運動期間中全てに拡大すべしという御意見もあるようですが、そうしますと、時に感情に訴える、扇情的な影響力を持つ動画広告がSNSやネット上で大量に拡散され、それが国民の目に触れる、一番露出の大きい広告になると予想されます。

 こう言うと、民放連の専務理事がインターネット広告を規制せよと言っていると勘違いされる人がいますが、私が言いたいことは正反対でございます。私は、主権者たる国民がインターネットサービス上に広告を出すことをどうやって規制するのでしょうか、そのようなことが本当に可能なのでしょうかということを指摘したいのでございます。

 先週の当審査会での御議論を聞いておりましても、多くの先生方が、インターネット広告への対応策、あるいは、広告に限らず、SNS、インターネットのルール作りの必要性に言及なされていたように思います。

 アテンションエコノミー、フィルターバブル、エコーチェンバーといった、インターネット上の言論空間のゆがみにどう向き合ったらよいかという問題意識をお持ちであることはよく分かります。

 私も、皆様の問題意識、危機意識について同じ思いを持つのですが、やはり問題は、本当に規制できるのだろうかという点であろうと思います。

 こうやれば弊害はなくなるという妙案があるのならともかく、もし、それなしに規制ありきで議論して、刻々と変化するメディア状況に対してやみくもに規制すれば、過剰あるいは的外れな対応となり、言論空間のゆがみを是正するどころか、かえってゆがみを拡大してしまう、そういう危うさを秘めているように思います。

 たまたま同じような議論が総務省の有識者会議でもなされているのですが、日本新聞協会は、アテンションエコノミーに起因するネット上の言論空間のゆがみへの危機意識は共有するけれども、過度な法的規制の導入は表現の自由を毀損しかねないと指摘しておりました。

 また、別の有識者会議では、ファクトチェック・イニシアティブというインターネットの関係団体が、フェイクニュース対策について、具体的な害悪論と切り離された偽情報規制論は規制主体の恣意的運用のリスクが高まり、表現の自由を過度に制約する危険性があると指摘し、表現、言論の内部的、自律的な取組を通じた誤情報の自然淘汰、脱力化を目指すべきと主張されておられました。

 私ども民放連は、テレビとラジオの広告のみを対象に規制を強化することには当然反対ですが、インターネット広告も含めて、国民の広告表現を規制することに対しても極めて慎重であるべきだという立場です。日本新聞協会やファクトチェック・イニシアティブが懸念するように、規制ありきの議論は言論、表現の自由を毀損しかねない、その危うさを内包していると考えます。

 その観点から、本日は、国民投票広報協議会をめぐる当審査会での御議論についても、懸念していることがございますので、触れさせていただきます。

 今年二月十日の審査会で、「考えられる「国民投票におけるCM規制」のあり方(メモ)」と題する資料が配付されました。資料一の四ページです。

 この時点での議論、意見をひとまず整理したもので、自民党としての御主張ではないと承知しておりますが、この論点メモは、メディアに身を置く者として見過ごすことのできない表現が含まれております。

 真ん中のB、黄色い囲いの下の部分に、放送事業者のほかにもということで、「新聞・雑誌社の自主的取組」「ネット事業者の自主的取組」と書いてあり、その右横の青囲いの部分に、「自主的取組を後押しするために何らかの「法的措置」を定める場合」と書いてあります。そして、例えばということで、「各事業者の自主的取組を求める旨の「訓示規定」」「国民投票広報協議会による各事業者の自主的取組に関する「ガイドラインの作成」」と書いてあります。

 国民投票広報協議会、すなわち立法府が、新聞、放送、雑誌、ネット事業者に自主的取組を求める訓示規定を設ける、そのためのガイドラインを作成する、それを法律に書き込むと書いてあるわけです。これは立法府のメディアへの介入、メディア規制につながるものではないかと大変危惧しております。

 ちなみに、国民投票法が二〇〇六年六月に国会に上程される以前、与党案に、表現の自由を濫用して国民投票の公正を害してはならないとするメディア規制条項がありました。当時、日本新聞協会は、国会の場で、仮に訓示規定であっても、取材、報道活動を萎縮させ、活発な憲法論議を妨げるおそれがあると意見表明しております。

 もしメディアへの訓示規定を本当に御議論されるおつもりなら、日本新聞協会にも是非意見を聞いていただくようお願いいたします。

 インターネット事業者に対して広告規制の自主的取組を求めることも、期待される効果は得られないであろうと想像します。

 インターネット広告の世界は元々玉石混交、フェイク広告も交ざっていて、インターネット広告に関係する事業者団体は、フェイク広告の排除に大変苦労しています。

 ネット上のフェイク広告の排除が難しいのは、インターネットの世界には圧倒的な量のアウトサイダーが存在するためです。インターネット広告は、テレビやラジオよりも広告出稿の仕組みが複雑で、アドテクノロジーの進化と相まって、様々な業者が介在します。その全てに網をかけるような実効性のある自主的取組やガイドラインが物理的に可能であるとも思えませんし、そもそも、フェイク広告や偽情報を作り、拡散している主体は、事業者団体になど属しておりません。

 きちんとした事業者が人海戦術やビッグデータ、AIを駆使して排除しようとしても、完全には排除できない、くぐり抜けてしまうという実態を考えれば、論点メモにあるような、インターネット事業者に自主的取組を促す訓示規定やガイドラインを策定しても、効果が見込めないのは明らかだと思います。

 ただ、私は、放送事業者団体の役員であり、インターネット広告の仕組みについてどうこう言えるだけの知見を持ち合わせておりません。専門知識を有するインターネット事業者や関係団体などに是非とも意見を聞いてくださるようお願いいたします。

 加えて、インターネットに関わる諸問題については、これまでに政府が有識者会議を設けて検討を重ねており、既に相当の知見の蓄積があると思います。フェイクニュース対策などを議論した総務省のプラットフォームサービスに関する研究会の最終報告、デジタル広告市場の課題を議論した政府のデジタル市場競争会議の最終報告などは、国民投票運動におけるインターネット広告の取扱いについて議論する上での基本認識、共通認識となり得るものだと思います。まずは、それらの有識者会議の関係者にヒアリングを行うことも一案ではないかと思います。

 先ほど、国民投票をめぐる広告規制には都合三つの論点があると申し上げました。百五条が時代に合っているかという論点はただいま御説明しましたので、残る二つの論点、規制は投票日前二週間だけでよいのか、規制する媒体はテレビとラジオだけでよいのかということについて、私どもの考えを御説明します。

 これは、国民投票法百条の条文及び規制対象が国民の広告表現であることを踏まえれば、国民投票運動の全ての期間において、インターネット広告を含めて、言論に対しては言論で対処する、言論の自由市場で淘汰されることに任せればよいということに尽きます。

 インターネット広告市場は本当に玉石混交ですから、国民投票運動期間中、フェイク広告も出てくるでしょう。ロシアによるウクライナ侵略でも登場したように、ディープフェイクというAI技術を駆使した巧妙なフェイク動画が、もはや簡単に作成できてしまう時代です。残念なことですが、国民を誤導、誤って導くような悪質な動画広告も大量に出回る可能性が高いでしょう。

 だとすれば、世論調査を行えば必ず信頼されるメディアとして新聞と並んで上位に位置する放送の広告を規制するのは、かえって逆効果ではないでしょうか。放送CMの広告主は、恐らく政党の皆様も含めまして、国民から顔の見える広告主であり、放送CMに求められる節度や真実性について御理解をいただけている広告主に限られます。

 国民がインターネット上の広告で、この広告は本当なのかという疑いを抱いたとき、新聞や雑誌、テレビやラジオが扱っていないことをもって、ああ、これはフェイク広告に違いないと推測、判断できるようにしておくことが大切だと思います。

 インターネットの場合、アルゴリズムで似た情報ばかり表示されるフィルターバブルの問題が指摘されますが、その影響を少なくするためにも、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といった様々な媒体で、広告を含めて様々な情報があった方がよいのではないでしょうか。

 国民が様々なルートを通じて情報を受け取ることができ、それが量的にも質的にもより豊かであればあるほど、世代や立場を超えて議論することができ、結果として、国民一人一人が冷静に自分で考え、大切な一票を投じることにつながるはずです。そのことのありがたさ、大切さを、メディアに身を置く者は今、ロシアによるウクライナ侵略で一層かみしめています。

 他方で、広告の主体は広く言えば国民全体であるわけですが、このうち政党に限って、つまり政党の広告出稿に限って規制するという考え方があります。これは必要最小限度の規制という観点に立てば、一定の合理性があると思います。

 メディアの進化は急速です。そんなメディア環境の変化にきちんと対応するには、法律で規制するよりも政党同士が話し合って自主規制のルールを設けた方が、柔軟性、機動性が高まるのではないでしょうか。そうすれば、賛否の量のバランスの問題に関しましても、極めて限定された規制が最大の効果を生むはずと思います。

 最後になりましたが、民放連が三年前、四年前に策定した放送対応に関する基本姿勢と考査ガイドラインは、資料二としてお手元にお配りいたしました。御質問があれば、それにお答えする形で御説明したいと思います。

 御説明は以上となります。

森会長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

森会長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。

新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。

 まず、民放連におかれましては、急な呼びかけにもかかわらず、参考人質疑に御対応いただきまして、感謝申し上げたいと思います。

 永原専務理事には、これまで、幹事懇を含めると憲法審査会に四回おいでをいただいております。本日も、重要かつ意義深い御意見をありがとうございました。ただいまの意見陳述を聞きまして、私から二問、御質問をしたいと思います。

 まず、平成十八年六月に、憲法調査特別委員会におきまして、民放連の参考人は、量的な自主規制はできるかとの委員からの質問に対しまして、自主規制はできます、やらなければいけないというふうに思っておりますと述べられたわけです。その後、民放連は、平成三十年九月の会長会見において、量的自主規制はしないと発表され、また、令和元年五月の憲法審査会における参考人質疑では、CM量に特化した自主規制は行わないし、そもそも、広告の受け手として、実務上非常に難しい、このように述べられたわけであります。

 この一連の発言に対しまして、民放連がCM規制に関して従来の自主規制の取扱い方針を変更したのではないかとの心配の声が審査会で上がったわけであります。

 この問題は、まず第一に、受け手である民放連、放送事業者による自主規制、第二に、出し手である我々政党側の自主的取組、そして第三に、国会に設置される広報協議会による賛否平等を定めた法的枠組み、これに基づく広報活動という三者の取組をトータルで考えて、国民投票運動の自由と国民投票の公平公正のバランスをいかに取るか、ここの整理がポイントだ、このように考えるわけであります。

 まず、民放連は、CMの受け手として、放送法三条の番組編集の自由、四条の政治的公平性、これを踏まえた五条の各放送事業者それぞれの番組基準といった法的枠組みにより、自主規制を行うことが要請されています。今日の資料にもお持ちいただきました。

 この内容は、既に、平成三十年十二月の憲法改正国民投票運動の放送対応に関する基本姿勢及び三十一年三月の国民投票運動CMなどの取り扱いに関する考査ガイドラインで明らかにされているわけであります。

 私が理解しております民放連の自主規制のポイントというのは、一、法的規制の勧誘CMに加えて、意見CMを投票日十四日前よりは取り扱わない、二、取扱いは、広告主名と連絡先を明示したCMのみとする、三、特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して放送されることがないよう、特に留意するといった、量も要素とした規制が盛り込まれているのではないかというふうに考えます。

 令和元年五月九日の憲法審査会参考人質疑では、当時の参考人より、「ストップウオッチ的な量の要素にはなりませんが、当然、いろいろな意味の量の要素は私どもの自主規制の大事な要素であるというふうに理解をしてございます。」この発言が記録されています。

 改めて、永原参考人に、国民投票運動CMなどに関する自主規制について、民放連が取り組む範囲というものを説明していただきたいと思います。

永原参考人 御説明いたします。

 今、新藤先生が大変分かりやすく、整理してお話しされていたと思います。先生のおっしゃるとおりの意味でございます。

 私ども、そのために、四年前に放送対応の基本姿勢を取りまとめ、三年前に考査ガイドラインも策定したわけでございます。放送法五条に基づく番組基準、これが放送事業者の自主規制に当たりますが、それ以上の特別の自主規制を今回行うということで作ったものでございます。

 その内容を説明させていただきたいんですが、これは堀木から説明をちょっといたしたいと思っております。(新藤委員「時間がないから、手短でいいです」と呼ぶ)

堀木参考人 はい、分かりました。

 それでは、資料の二番を御覧ください。

 この資料二の一ページ、これが放送対応の基本姿勢でございます。左側の第二段落目、報道活動に関する基本姿勢で、その下からが広告に関する部分です。

 右側の二行目から御覧いただけますでしょうか。読み上げます。

 国民運動CMはその内容から、より慎重な対応が求められるものであり、取扱いに当たっては、放送基準八十九条、「広告は、真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない。」を前提に、たとえ事実であっても、他を誹謗し、又は排斥、中傷してはならない、公正な自由競争に反する独占的利用を認めない、などに特に留意すべきことは当然としております。

 ここでは、八十九、百一、九十七条を例示しておりますが、ほかにも様々な放送基準が適用されます。資料一の一ページ目、カラーの方ですけれども、このカラーの資料の下の方に、該当する放送基準を列挙してございます。

 済みません、再び資料二に戻っていただきましょうか。

 基本姿勢で最も重要なポイントは、投票日前十四日間は、国民投票運動CMじゃなく、意見CMも放送を自粛するとした部分です。これは、右側のページの一番最後のところでございます。憲法改正に関する意見表明をするCMなどについても、国民投票運動CMと同様、投票期日前十四日から投票日までの間は取り扱わないこととすると記したところでございます。

 「採りうる選択肢」と書いてありますのは、独禁法の関係から、あくまで事業者団体は商取引に関しては推奨するところまで、強制することはできませんので、このような表現となっておりますが、これは、理事会で議決し、翌年三月の会員協議会、全社が集まるんですけれども、そこで報告し、全会一致で了承したという手続を取っているものでございます。

 一枚おめくりください。

 こちらから、考査ガイドラインの御説明を簡単にさせていただきます。

 右ページの「広告主」からですね。この資料の右ページでございます。右側に「広告主」というのが下の方にございますけれども、ここから具体的な記述になります。五の、CMの出稿を受け付ける法人、団体は、これまでの活動実績を踏まえて広告主としての適否を判断するとあり、六、個人が出稿するCMは取り扱わないとしています。

 また一枚おめくりいただけますでしょうか。次のページでございます。真ん中の「CM内容」のところでございます。十五、CMは広告主名と連絡先を視聴者が確認できる形で明示したものでなければ取り扱わないとしています。

 これら五、六、十五の規定で、きちんとした広告主のものでなければ出稿の要請を受け付けない、つまり謝絶することとなります。ネット上であふれるようなフェイク広告はテレビやラジオのCMでは放送されることはない、そのことを担保するための規定でございます。

 その下、十七というのがございます。ここには、特定の広告主のCMが一部の時間帯に集中して放送されることがないよう、特に留意することも明記してございます。

 最後に、また一枚戻っていただいて、恐縮でございます。先ほどの「広告主」のところの七と八、一番下の方ですね、七、八を御覧ください。放送事業者は、国民投票運動CM及び憲法改正に関する意見を表明するCM、こうしたものを受け付ける用意があるということを、CM出稿を希望する広告主に対して明示するよう努めるとあります。つまり、全ての広告主に門戸を開いている、機会を平等に与えているということでございます。これもとても重要なポイントだろうと私どもは考えております。

 長くなりました。御説明は以上でございます。

新藤委員 ありがとうございました。

 つまるところ、民放連は、量に特化した自主規制ではなくて、量も考慮要素の一つとした自主規制をもう既に準備している、このように私は理解しておりますし、それは法律で求められることになっているんだ、その中でもう既に準備されているということではないかなと理解したわけであります。

 したがって、先ほど、国民投票CMに関する公平公正を維持するためには、まず、国会に設置される広報協議会、それから私たち出し手である政党、そして受け手である民放連の皆さん、この三者のバランスを取って、全体でもって公平公正を維持するんだと。ということになると、今後、議論をしなきゃならないのは、私たち、広告の出し手である政党の自主的取組、さらには広報協議会の広報活動の全体像、こういったことをやるべきだということが明確になったのではないかなというふうに思っております。

 それから、時間がなくなりましたので、まず、審査会で私が配付しました論点整理メモに対して、立法府のメディア介入があるのではないか、このような御心配をいただきましたが、これはあくまで例示であります。また、こうした例示規定を設けるべきであるとか設けたいというようなことで訓示規定を置いているわけじゃありませんので、そこは総括的にいろいろな手段がありますという形で整理、例示したものですから、御心配には及ばないということを申し上げたいと思います。

 そして、最後に、永原参考人の後段に、ネットやその他のメディアのコントロールできない広告というのがあふれてしまうという御心配がありました。

 だからこそ、逆に、こうしたものに民放連、要するに放送・ラジオ事業者の広告を規制することは逆ではないかというお話がありましたが、しかし、もし、例えば国民がこれはフェイク広告ではないのかという疑問を持ったときに、では、何をもってフェイクであるかどうかをチェックすると思ったときに、法的な枠組みが裏づけされている民間放送事業者による広告というのは、これは逆にチェックできるバロメーターになる役割も果たせるんじゃないかなと思うと、やはりここはしっかりと、積極的に自主取組の中で皆様方の責任を果たしていただきたいなと私は思いますし、その旨について、短くで結構ですから、御意見、御感想をいただきたいと思います。

森会長 持ち時間が終了いたしておりますので、簡潔に、永原参考人、お願いいたします。

永原参考人 お答えします。

 先生の今の整理のとおりでございます。大変短くて恐縮ですが、非常によく簡潔に私どもの言いたいことをまとめていただいたなと思っております。

新藤委員 以上です。

森会長 次に、奥野総一郎君。

奥野(総)委員 立憲民主党の奥野でございます。

 今日は、急な呼びかけにもかかわらず、永原専務、堀木常務、本当にありがとうございます。三年前にも私、質問させていただきました。今日はよろしくお願いいたします。

 先ほど新藤筆頭の方から、政党と国民広報協議会と民放連の三者でバランスを取って考えていくというお話がありましたけれども、ほかにもプレーヤーはやはりいるわけです。政党だけが自主規制で済む話じゃなくて、例えば、いろいろな政治団体もありますし、直接見えてくるかどうかは分かりませんが、外国の政府とか、いろいろな関心を持つ人たちがいろいろな形で関わってくると思うんですね。

 だから、その三者で、例えば政党だけが自主規制をすればいいという話では私はないと思います。国民広報協議会をしっかり使うというのは、そこはそのとおりだと思いますけれども、もう少しこの問題は深く考えなきゃいけないと思います。

 そこで、いろいろな御努力も伺いましたし、できる範囲のことはやっておられると思いますが、やはり量的な規制について、一分一秒まで同じというふうにはいかないと思いますが、考えなきゃいけないと思っているんです。

 平成十八年の六月一日の憲法調査特別委員会、ここに資料もありますが、そこに出ていない発言もいろいろありまして、山田良明参考人が当時、お金のある方がどんどんとCMを流していくみたいなことは、放送がどうこうというより、まず国民がそれを許さないというふうに思っております、そういうことを念頭に置いて、我々はきちっとした話をしてルール作りをすべきだというふうに思っていますという発言をされています。

 また、別の議員に対する答えですけれども、お金がある人とない人があったら、例えば料金を下げればお金がない人の機会が増える、それで機会が増えたところに合わせれば一対一になるような考え方もありますね、ですから、そういう機会均等、バランスを取るということの中で、どういうことができるかということは、これから真剣に考えていかなければならないというふうに思っています、ここまで言っているんですね。

 基本的に一対一をやるべきだと取れるような発言も民放連の代表がされているわけですが、今でもこの発言は生きているんでしょうか。

永原参考人 質問にお答えいたします。

 十五年前の山田参考人の発言の趣旨につきましては、お手元の資料二の四ページを御覧いただければと思います。民放連としての見解を整理して対外公表しております。

 二〇〇六年の六月と十一月と二度、山田参考人は出ておりますが、六月のときに、自主規制という単語を使ったときというのは、これは文脈を見ましても、放送法五条の番組基準のことを指しているという理解でございます。また、十一月は、今度はルール作りという単語を使っていまして、これは番組基準そのものではなく、ガイドラインのことを念頭に置いて発言されたものと承知しております。

 ですので、今回、私どもは、放送法の五条の番組基準、さらに放送対応の基本姿勢、さらに考査ガイドライン、この三つを熟読玩味しながら放送対応に当たってまいりますので、そういう意味では、十五年前の参考人の発言と同じ考え方でございます。

 ただし、今、奥野先生が紹介された表現のような、当時、民放連として、国民投票運動CMに関する、このことに関する議論というのは全く未着手でございました、そのためにどうしても、私見ではございますがとか、まだ内部で議論しておりませんがというエクスキューズを相当つけて御説明しております。

 ですので、特に自主規制という単語を使うと、私どもは番組基準、ガイドラインとすぐ思うんですが、受けた方はなかなか、もっと違うものを想像されてしまったんだろうなというふうに、その錯誤というのが、先生が御指摘するような、違う意味で取られるということの底流にあると思いますので、そこは三年前、私が答弁させていただいたとおり、整理して御説明したつもりでございます。

奥野(総)委員 この発言のポイントは、資金の多寡により結果が左右されてもいいのかという、今もそういう話は、今だからこそもっともっとその部分が大事なんだと思うんですが、十四日間はできない、CMは打てないということですが、それ以外のところは、皆さんの言い方をすると言論の自由市場の淘汰に任せるということなんですが、そうすると、資金の多寡によって結果が左右されるということも起こってくると思うんです。

 それから、ケンブリッジ・アナリティカ事件なんかを見ても、皆さん、表現の自由、報道の自由とおっしゃるけれども、一方で、意思決定の自由というのがあるわけですよね。思想信条の自由、それから意思決定の自由。そこに働きかける、メディアが働きかけて意思決定の自由を侵害してしまう、こういう話もあると思うんですよ。だから、きちんとその利益衡量をしながらやらなきゃいけないんですが、あくまで、資金量の差があっても、言論の自由市場の淘汰に任せるべきだとお考えですか。

永原参考人 どうしても媒体ではコントロールできない部分というのがございまして、当時、三年前、四年前のときに、私たちがCM量に特化した自主規制を行わないという方針を決めた背景として、市民団体の皆さんが、賛否二分間ずつ、同じ放送時間枠を与えるという案を提案されていまして、それが恐らく唯一の具体的な案だったと思うんですね。ところが、それを実際の我々の放送対応に当てはめてみますと、相当問題なことが起きるというふうに考えたんです。

 例えば、広告主が実際の宣伝予算を使ってCMを打つときに、全部の放送局に同じように投下するということはほぼほぼなくて、五局あれば、A局とC局と、あとはユーチューブにみたいな組合せでやったりするんですね。そうすると、自民党はAとC局は流してと言われると、ほかのところが、B、D、Eは自民党を流さないといったとき、立憲民主党さんからCM出稿の要請があったって受けられないみたいなことになりかねない。それを、こういう言い方をすると自民党さんに失礼かもしれませんけれども、あそこのテレビ局はちょっとコメンテーターが気に入らないみたいなことで悪用されたりしたら、大変問題なことが起きかねないわけですね。

 そういうことも考えて、ですから、量を全く考慮しないとは言っていなくて、量も含めて門戸を開いておけば、その上で判断もできますし、いろいろなことの総合判断をするということでこういう整理をしたということでございます。

奥野(総)委員 今私が申し上げた、憲法のもう一つの価値観、意思決定の自由をどう守っていくかということを考えたときには、そこでやはり法律で介入するという手段もあると思うんですね。

 皆さんに自主規制だとなかなか難しいということになったときに、我々も提案していますが、例えば、国民投票運動に対する賛否の勧誘のための放送広告はもう全期間にわたって禁止をしてしまう、国民投票広報委員会に任せていく。それから、ネットも含めて、政党による広告については、賛否の勧誘だけでなく賛否の意見表明、そしてインターネット有料広告についても禁止する。これでもなかなか十分だとは思いませんが、我々はそういう案を作っています。

 そういう枠組み、ネットも含めた形での制度の枠組みをつくるということについては、いかがお考えですか。

永原参考人 インターネット広告も含めて案を練るというのは全く正しいとは思うんですけれども、政党広告を全面禁止してしまうと、恐らく、ネット上でいろいろなCMが、例えば、自民党を支援する国民会議とか、立憲民主党を勝手に応援する市民連合だとか、いろいろなところのネット上の動画が出て、それが本当に支援者だったら何の問題もない、何の問題もないというか、いいと思うんですけれども、ちょっと加工して、あるところを誇張してみたりとか、あるところを捏造してみたりみたいなフェイクなものが紛れ込んだときに、どれが真正なCMかというのが分からなくなってしまう、ここが恐らく悩ましい問題だと思うんですね。

 このときに、私たちの考査ガイドラインを見ていただければ分かると思うんですが、かなり厳格ですので、放送CMがあった方が、これが本物なんだなと分かっていただける、そういうふうにした方がよりよいのではないか。ただ、資金量の多寡のことを気にされておるので、それであれば、貸金業協会さんのように月間百本みたいなやり方もございますということを提起させていただいているんです。

奥野(総)委員 時間になってきましたけれども、ネットの規制というのはなかなか難しい。ただ、EUも、フェイクニュースなんかについては、これから、今はプラットフォーマーに任せていますけれども、規制についても検討を始めていますから、日本もそういう議論をしていかなきゃいけないと私は思います。

 その上で、資金全体の規制、今、CMの出稿の話でしたけれども、この新藤ペーパーにあります間接的規制の、「運動資金規制」と書いてあります。これは我々も出していまして、運動資金の上限を定めたり、運動資金の支出額が一千万を超える団体については収支報告を義務づけたり、それから五億円の支出限度額を設けたり、外国人寄附の受領禁止、これは外国の関与を防ぐというような案も考えているんです。

 これで十分とは思いませんけれども、やはり何もしないよりは、こうした資金規制を設けていく、あるいはCMの規制、ネットについても考えていくということが大事だと思うんですが、最後、そこを御意見を伺いたいと思います。

永原参考人 私ども、自分たちが恐らくガイドラインとかで何をやるんだということが明確でないと、法律で縛った方がいいのか、あるいは政党の自主規制でやった方がいいのかという、議論の前提となるものが分からなくなってしまう、曖昧になってしまうということで、我々がまず、自分たちの媒体としてできることはここまでですということを明確にするということだったと思うんですね。責任分界点ということだと思います。

 ですので、今先生が言われたような御議論というのは、まさにここの場で各党で御議論いただければいいことで、私どもが、立憲民主党さんが実際に案を出されているのは承知しておりますが、それについていいとか悪いとかというふうに言うのは、やはりちょっとこれは越権なんだろうというふうに思います。

 済みません、お答えになっていないかもしれませんが。

奥野(総)委員 ありがとうございました。

 まさに十数年前とは状況が変わっているという中で、皆さんができる範囲も変わってきているという中で、これはまさに政治の責任で、きちんとした国民投票が行われるような仕組みを我々は考える、これは憲法審査会の責務だと思います。

 以上で質問を終わらせていただきます。

森会長 次に、小野泰輔君。

小野委員 ありがとうございます。日本維新の会の小野泰輔でございます。

 今日は、永原参考人、堀木参考人、本当に、急なスケジュールの中でお越しいただきまして、ありがとうございました。

 私も憲法審査会は初めて、初当選ですので当然初めて参加させていただきまして、その中で、このCM規制の話が出るたびに、早くまた参考人のお立場としてこの場に来ていただいて、そしてしっかりと議論を積み重ねるべきだなというふうに感じておりましたので、本当に今日こうしておいでいただいたことはありがたいというふうに思っています。

 まず、私ども日本維新の会の基本的なCM規制の在り方に関する考え方、これは馬場代表に公式に全然確認しているわけではないんですが、ただ、我々、自由に議論できる政党でございますので、それを申し述べさせていただきたいというふうに思います。

 このCM規制、これは民放連の皆様がおっしゃっているように、やはり国民が自由に議論をできる環境を用意するというのが、これが自由主義国家、民主主義国家の在り方であろうというふうに思います。

 その中で、量的規制ということが長らく議論をされてきたわけですが、しかし、それも、御主張の中にもありますとおり、ストップウォッチ的な制限ができるわけでもありませんし、そして、もし量的なことをかなり厳格に意識して差配をしようと思っても、これは、例えば賛成と反対で、団体が一と三で分かれた場合にはどうするのかという問題もあります。

 そして、憲法改正の項目というのは、必ずしも一つのトピックに限られるわけではありません。例えば、九条の問題があったりとか、緊急事態法制の問題があったりとか、あるいは同性婚の話があったりとか、いろいろな問題を同時に取り扱うことだってあるわけです。そのときに、何が量的に平等なのかということをオペレーションでやろうとすれば、もうこれは破綻することは目に見えているというふうに思います。

 そして、私どもは大阪都構想を経験しております。私自身はそれを外から眺めていただけでありましたけれども、量的規制を行うとか行わないとかということ以上に、私は報道の内容そのものがやはり住民の皆様方の意思決定にも大きく関わると思いますが、しかし、その内容に関しては、もちろんこれはアンタッチャブルでございます。我々が仮に大阪都構想をやろうとしても、その報道の内容はちょっと何か公正じゃないんじゃないかというふうに思っても、政治家はそれをちゃんとのみ込んで、そして自分の口でしっかりと説得をしていく、そういう努力をしなければいけない、それが民主主義の在り方なんじゃないのかというふうにそもそも思うわけなんですね。

 ですから、それを量的な規制で何か平等にしようということが本当にできるのかという問題と、そして、政治家自ら、あるいは、ある問題に関して国の行く末を考えようと思って言論をする人たちが、自分がその意見を表明する場をちゃんと与えられて、そして、一人一人に対して意見を述べていくということが大事なのではないかというふうに思っています。

 私が奥野幹事の御意見をお伺いしていてすごく違和感があるのは、意思決定の自由を保障するということ、これを国家がどのように保障するのかということをもっと論じなければいけないんじゃないのかというふうに思います。

 あなたのやっている意思決定は、それはだまされていますよということを国家が判断するということ自体が、民主主義自体を否定することにつながるのではないのかというふうに思うんですね。もし、あなたが、例えばこういう広告CMを見て、そして、例えばこの憲法改正について賛成ですと言っている、いや、それはおかしいですよというのであれば、それは言論でしっかりと議論する、伝えるということがやはり必要だというふうに思っています。

 そして、ネット規制に関しては、やはりこれはCM規制の話だけではとどまらないところがすごく大きいと思います。

 それは、テレビCMと違って、出稿者がどのようにCMを出すかということが非常に間口が狭くなっているのではなくして、例えば、私であってもどんな個人でも、今、ユーチューブに、広告という形を使わなくても自分の意見を表明する、あるいは広告に近い形でしっかりと主張をすることができるというようなことになっております。ですから、資金的な差を言うのであれば、例えば、ユーチューバーにお金を払って、そして優れた憲法改正の番組を作ってもらって、それを無料で、CMという形ではなくてアップするということも規制しなければいけなくなるということになります。

 そういう意味では、私も、この発言をする前に、ネット広告を手がけられている事業者の方々にヒアリングをしました。そういう中で、まさに永原参考人がおっしゃっているように、ネットの世界ではもっともっと規制は難しくなるというようなことをおっしゃっていました。

 そういう中で、永原参考人にちょっとお聞きしたいんですけれども、ネットの世界で、今、民放連がずっと作っている考査ガイドラインのようなものをやはり民間主導で作る必要があるのか、あるいは、それを作ったとして機能するのかどうかということについて、ウェブのことについては専門外ということでございましたけれども、このことについて御所見を伺えればと思います。

永原参考人 我々が作ったようなものを作っても、恐らく答えにはならないというふうに思います。というのは、先ほど事業者と言っていらっしゃいましたけれども、インターネットの場合は、とにかく誰でも広告が打ててしまいます。仮に、国民一億人の一%としても、百万人なわけですね。事業者に加盟しているのは二百八十社とかそのぐらいなものですから、とてもそこに作っても届かない。

 さらに、これはそれぞれ、我々と違って、法律で免許事業者で、放送の場合は事業者が閉じているんですが、そうではありませんので、そうすると、事業者団体にガイドラインを作れといっても、まずもって届かない。そして、実際にフェイク広告であるとか偽情報を流しているのは団体に属していないアウトサイダーの方々なので、これは恐らく何の効果もないのではないかというふうに思います。

 むしろ、変に国家が、立法府でも行政府でもそうだと思うんですが、事業者団体にガイドラインということをすること自体が、やはりインターネット空間に対する規律の何か最初の一歩みたいになってしまうのは非常に怖いなというふうに思います。

小野委員 ありがとうございます。

 もう一つお伺いしたいんですけれども、放送事業者の皆様、例えば、新聞もそうなんですけれども、ウェブサイトも設けていらっしゃいます。そういう中で、広告を当然取ったりとかいうこともあると思いますけれども、その際に、今、放送の分野で自主規制をかけているいろいろなガイドラインがあります。そういったものをウェブサイトで、そのグループのところで広告を載せるときに同じようなガイドラインを適用しているかどうかということについてお伺いしたいと思います。

永原参考人 放送の場合は、放送は法律で規律されているので、ちょっと別だと思ってください。ただ、自分たちの信頼性みたいなものを損ねるわけにはいきませんので、自分たちとして、当然、放送のウェブメディアであるとか新聞のウェブメディアというのは非常に厳しく、厳しいというか、気をつけてやっているのは間違いないと思うんですね。

 ただ、恐らく、今先生が言われたのはバナー広告のような予約型の広告だと思うんですけれども、ネット広告は今や運用型が主流ですので、そうすると、変な話、その画面のところで、見ている人の広告、実際に掲出される広告は全然別のものだというのが当たり前になっている。しかも、それがプログラムでなされていますので、それはさすがに規律がなかなか難しいというのが実情だと思います。

小野委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃっていただいたように、ウェブ広告の仕組みというのは、例えば、テレビ局に申し込んで、広告会社とか限られたプレーヤーが決めるのではなくして、自動で、入札市場、オークション市場があって、それでプログラムで自動的にマッチングしたものが表示されるというようなことにもなっておりますので、そういう意味では、今後、このネットのCM規制ということを考える際に、そういった技術的なこともしっかり頭に入れながらやっていく必要があるというふうに私は思っています。

 最後に付言しておきますけれども、適切なCMが何か。例えば、フェイクニュースからいかに国民を守っていくのかとか、意思決定をしっかり適切なものに守っていくにはどうするのかというような議論がありますけれども、これは国民投票法の問題ではありません。これは民主主義、我々一般に関わる問題であって、そのことが、この憲法審査会で新しい人権が、これを侵害から守るということで論議するのは私は非常に的を射ているとは思うんですけれども、国民投票法の問題ではないということを最後に申し上げておきたいというふうに思います。

 どうも今日はありがとうございました。終わります。

森会長 次に、北側一雄君。

北側委員 公明党の北側一雄です。

 永原さん、今日はありがとうございます。冒頭ありましたとおり、今日で四回目の御出演になるわけでございまして、本当に様々な御意見を毎回頂戴して、心から御礼を申し上げたいと思います。

 まず、これは我が党だけではなくて、今日いらっしゃっている皆様の共通の認識であるというふうに思いますけれども、表現の自由というのは最大限に尊重しなければならないということ、それが国民の知る権利を通して民主主義のまさしく基盤になっていくものだ、この共通認識は私はあるというふうに思っております。

 したがって、表現の自由というものを制約するとしても、これは当然、合理的で必要最小限度のものでなければならない。また、ほかに手段がないとか、そうした要素もよく考えていかないといけないと思います。この理念というのは、メディアの状況がどう変化しようと、時代がどう変化しようと、民主主義国家にとって普遍の原理であるというふうに思うわけでございまして、表現の自由に対する過度な規制というのはやはり許されないというふうに私は考えます。

 それで、まず、三年前に民放連の皆さんが、先ほど来御紹介あるとおり、考査のガイドラインを民放連が決めていただきました。私は、この内容について高く評価したいというふうに思っております。かなり踏み込んだ形で、具体的なルールというものを示されたというふうに理解をしております。そういう意味では、報道側の、メディア側の自主規制、特に放送メディアの自主規制という意味では、一つの結果を示していただいたと私は認識をいたしております。

 そこで、法律上は国民投票法の百五条があるわけでございますが、今後の我々の考え方としては、表現の自由に対する法的な規制というのはできるだけ最小限でなければいけないというふうに考えますと、やはり自主規制をしっかり進めていくということが大事だと思います。

 広告という意味では、三者、まず広告を発注する広告主がいらっしゃって、そして、それを受けて広告を発信する事業者、放送であったり様々な事業者がいらっしゃいます、そして受け手の我々というふうに、三者いらっしゃるわけですね。ここで、やはり広告主側の自主規制、さらには今申し上げたとおり事業者側の自主規制、こういうのをうまく適切に併せてやっていくというのが一番いいのではないかと私は考えております。

 まず、政党側、出し手側の政党等の自主規制の問題でございますけれども、御承知のとおり、デジタル化というのは急速に進展しております。インターネットの広告費が放送広告を凌駕しているわけでございます。また、扇情的な影響力という意味では、はるかにネット広告の方が強い影響力も持っていると思われます。そういう意味で、やはり政党側が自主規制していく。

 ネット広告の規制というのは、先ほど来出ていますように、容易ではありません。さらにまた、デジタル技術の進展というのは、日々その形態も多様化し、複雑化し、進展しているというふうな中で、柔軟に、かつ実効的な規制をしていこうと思ったら、法的規制よりも、むしろ政党側の方で自主規制のルールを作っていく方が非常に柔軟な対応ができるのではないかというふうに考えておりまして、是非、そういう前提に立って今後議論をさせていただきたいというふうに思っておりますが、この出し手側の広告主である政党が自主規制をしていくという考え方について、参考人の御意見を頂戴したいと思います。

永原参考人 北側先生のおっしゃられるとおりだと思います。

 広告規制を最初から法律でと言われると、私ども、やはり、そのことによって表現の自由が規制されてしまうのではないか。これは、皆様、政党の広告を自ら法律で縛るという議論というのは居心地が悪いんじゃないかと私は思うんですけれども。

 やはり、全部なくすよりは、貸金業協会さんのように月間百本みたいな柔軟な決め方もできます。また、例えば政党の、恐らく資金量の多寡と皆さん言っていらっしゃるので自民党さんを意識されているのかなというふうに思いながら聞いているんですが、それであれば、自民党さんが月間百本にしますというふうに言って、それを例えば公明党さんも、あるいはほかの党もみんな同調されたり、全党と言わずとも、そういうふうになされれば。

 我々、実際、お配りしたテレビ営業の基礎知識という資料の、一の五でしたっけ、アルコールメーカーがアルコール問題への配慮から露出時間を午後六時以降というふうにしているんですが、当然、いろいろな業者さん、多いですので、全てカバーできておりません。アウトサイダーな、業界に所属していないアルコールメーカーもありますけれども、我々受け手の側は、業界のルールが取りあえずあれば、アウトサイダーについても同じような扱いをするという対応をしております。そうしないと、アウトサイダーが得をして真面目な事業者が損をするみたいなことになってしまいますので。

 ですので、政党の自主規制についても、変な話、自民党さんが月間百本というふうに言われてやるというふうなやり方、ほかの党も同調するかどうかというのはあると思うんですが、全党そろうかどうかということではない。法律で全党縛ってというよりはよほど柔軟ではないかなということも、通常のクライアントとの自主規制、対応しておりますので、そういうことも参考にしていただければなと思います。

北側委員 ありがとうございます。

 事業者団体側の自主規制、民放連の皆様は三年前に示していただいたわけでございますけれども、その中に、こういう自主規制の中身がございます、ガイドラインがございます。それは、CMには広告主名と連絡先、そのCMに対する意見の受付窓口を視聴者が確認できる形で明示したものでなければ取り扱わない、こういうふうなガイドラインがあるんですね。また、そもそも、国民投票運動CM、意見表明CMについても、広告であること、CMであることをきちんとその広告の中に明示しなさいよ、そうでないと取り扱わない、このようなガイドライン、ルールを決めていらっしゃるわけです。

 私は、確かにネット事業者に対する規制というのは容易ではないんですが、少なくともネット広告については、ネットを通じて広告しようというならば、一つは、広告ですよということの明示、それから、広告主は誰ですかという明示、さらには、何か疑問があったらちゃんと問い合わせることができる発信者のアドレス等をきちんと特定していただくというふうなことが、ネットの世界でもやはり大事なんじゃないのかなというふうに思うんですね。

 そういうことを仮に事業者団体で民放連と同じように決めていただいたとすると、例えば受け手側の有権者の側からすると、何かネットで広告が出ているけれども、それについては広告主が誰か分からないとか、広告かどうかも書いていないだとか、それからアドレス等も何ら記載されていない、そういうルールが守られていないということになると、我々受信者、有権者の側からすると、必要最小限のルールに従って、このネットの情報はルールを守っていないねというふうに分かるわけなんですね。

 そうすると、有権者から見ますと、情報の信頼性に関わることにもなってくるわけでございまして、そういうルール作りというのはやはりネット事業者でもした方がいいんじゃないのかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

永原参考人 例えば、政党のネットCMをそのようにしようみたいなルールを政党の皆さんが作る、これは自分は北側先生の言われるとおりあるんだと思うんですが、そうすれば、政党のネット広告をまねたようなものとの差異というのが分かるようになると思うので、それは適切な対応だと思うんですが、業界全体にそれをかければインターネット広告がそういうふうになるかというと、これはなかなかならないというのが実情です。

 NHKさんが昔、「クローズアップ現代」というところで「“フェイク”ネット広告の闇」という番組を取り上げていたんですけれども、フェイク広告が結局インスタグラムであるとか新聞社のウェブサイトとかに載ってしまう、どんなに人海戦術でAIを駆使して排除しようとしても出てしまうという実情をやっておられました。

 そうすると、悪意のある人たちというのはどんな世界でもいるわけですね。悪意があって、フェイクなものを作って、それで広告稼ぎをしようというものが、真面目にやっている事業者のところに、ガイドラインを作っても載ってしまっているというのが。もう現状、ガイドラインはありますので、あっても載ってしまうということが悩ましい。

 あるいは、非常にちゃんとしたクライアントさんのネット広告がアダルトサイトであるとか違法サイトだとかに載ってしまう、ブランドセーフティーというんですけれども。そういう現状が、今、ネット広告、非常に事業者が頭を悩ませている現状からすると、全体にそれをかけるというのは恐らく難しいんだと思うんです。

 ただ、私は放送事業者団体の役員ですので、是非、そこはインターネット事業者の方に聞いていただきたいなと思います。済みません。

北側委員 ありがとうございます。

 私が申し上げているのは、排除をしようとしているんじゃないんです。排除できないからこそ、そういうネットからの情報が出てきたときに、一体誰がその情報を出しているのかということが分かるように、何か異論があったならばそこに問合せができるというふうにしていくことはできるんじゃないか、そのことによってその情報の信頼性の多寡というのも有権者側で判断できるという意味で私は申し上げているところでございます。また議論をさせていただきたいと思います。

 以上です。

森会長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。

 今日は、永原参考人、また堀木参考人、ありがとうございます。

 国民民主党の考え方をまず申し上げたいと思うんですが、先ほど永原参考人から年表を見せていただいたんですが、二〇〇六年、二〇〇七年と、やはり情報とかインフォメーションの在り方が大きく変わってきているのは事実だと思います。昔は希少な情報をいかに国民に伝えるかということが主眼だったと思うんですが、今、あふれ過ぎている情報をどううまくバランスの取れた形で国民にお伝えし、また判断材料を提供するのかということが非常に重要な視点になってきているのかなというふうに思っています。

 その意味で、我々、情報的健康、インフォメーションヘルスというのが結構大事だと思っていて、つまり、人間の食べ物と一緒で、飽食も駄目だし偏食も駄目だというふうに思うんですね。非常に情報があふれている中で、適度な情報を適切にどうやって国民にお伝えするのか、そこに過度に国家が関与せずに、どうやって表現の自由や知る権利を守りながらやっていくのかというのが今日的な課題だというふうに思っています。

 その意味で、やり方としてどうするかということにおいて、これは新藤先生が提出された資料にもありますけれども、大きく言って、出し手側の規制と、事業者、受け手側の規制があるというふうに思います。

 その中で、受け手側の規制というのは、SNSとかインターネットの発達によってかなり多様な情報提供者が出ている中で、テレビとラジオだけを取り出して何か規制をするとなると、それ以外のインターネット、しかもほとんど規制がかからないような様々な主体もあるので、そことの横並びでどうかという指摘は、私もそのとおりだと思います。ですから、受け手側の規制というのは、かつてに比べても相当難しくなってきているなと。そういう意味では、基本的には出し手の規制をやるべきではないかなというのが、表現の自由や知る権利を考えたときに現実的な対応ではないかなというふうに思っています。

 そこで、改めて確認したいんですけれども、CMの量的な規制なんですけれども、放送法四条では政治的な公平性が求められているので、それを担保するためには一定程度やはり量的な規制ということは考慮されているのかどうかということと、あと、量的な規制ということが難しいとおっしゃられますけれども、具体的にどう難しいのかということを改めて教えていただければと思います。

永原参考人 例えば、国民民主党さんが非常に強い選挙区があります、自民党さんがいつも負けているような選挙区。今度の参議院選挙でもちょっとイメージすると分かるかと思うんですが。そこは国民民主党さんの支持者の多いところということになりますから、そこで憲法改正発議の、賛成の立場か反対の立場か分かりませんが、何か集会をやろうと設定して、そのときに、当然そこでスポットCMを打ちたいといったときに、自民党さんが出さない、いつまでたっても出さないというふうなことをされれば、これは現実問題として相当困ってしまうんですね。そういうときに、門戸は開いている、機会はちゃんと与えているということによってお受けするという方が、恐らく健全な対応になってくるのかなと。そこが、実は、市民団体さんの二分ずつ同じ放送時間枠をというのは一見確かに公平公正だなと思える案なんですが、これはなかなか現実に当てはめるとうまくいかないなということで、我々は採用しないという判断をしたんですね。

 ですけれども、では量を全く考慮せずやるかといったら、そんなことはなくて、ありとあらゆることを総合判断する。それは今回作った考査ガイドラインを見てもかなり読み取っていただけるのではないかなというふうに思っております。

 済みません、答えになっていないかもしれませんが、よろしいでしょうか。

玉木委員 量的な規制ということを厳格に入れてしまうと、例えば、ある政党なりが全く出さないという戦略を取ったときに、ほかが出したくても出せなくなるという意味での厳密な量的規制は、かえってそういった表現の自由、知る権利を害してしまう、そういう趣旨でしょうか。

永原参考人 先生の言われているとおりの理解でございます。

玉木委員 私もそこは一定理解をするところではあるんですけれども、一方で、情報の差がつきやすいなということも、資金量の多寡等によってはなるということもあり得るので、であればどうするかといったときに、出し手の側をどう規制するかということを考えていく方が、インターネットが出てきている時代には必要なのかなというふうに思っています。

 その中で、二つに分けて、まず、政党に関しては、今、百五条もありますけれども、これをもう少し広げて、かつ、永原参考人も御指摘いただいた、当時の、旧国民民主党時代の法案に対してコメントをいただいたので、インターネットなどもテレビCMに併せて、政党の出す広告については規制するということが一つの考え。かつ、政党以外の国民運動主体が行う活動については、ある種の間接的な規制として、資金の、支出限度額の規制であるとか、収支を透明化していくという形での規制を入れる。

 いずれにしても、政党及びその他の主体に対して、情報の出し手の側の規制によって、冒頭申し上げたようなバランスの取れた食事、バランスの取れた情報が国民に行き渡るようにすることが現実的な対応ではないかと思いますけれども、そういった出し手側の規制を主に考えていくということについてのお考えを伺いたいと思います。

永原参考人 出し手というのは政党のということであれば、それは全くそのとおりだと思います。それを法律で規律するのがよいのか、自主規制でするのがよいのかというのは、まさに御議論いただければ。特に、本当にメディアの進化というのは激しいですので、デジタルサイネージ広告はどうするんだとか、いろいろなことになってきます。その度に法律をいじくるよりは、自主規制の方がやりやすいのではないかというふうに思います。

 ただ、今度は、政党以外の話と言われると、これはかなりいろいろ、国民の表現の自由の話になるものですので、どういうふうにするのかなというのは、なかなかちょっと私の浅い知識ではお答えしにくいので、ここはやはりインターネット事業者の、専門の方に聞いていただければと思います。

玉木委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

森会長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 参考人の皆様、今日は大変ありがとうございます。

 私たちは、国民が改憲を求めていない中、国民投票法を整備する必要はないという立場であります。

 その上で、幾つか御意見をお伺いいたしますが、まず、大前提の問題として伺いたいのは、国民投票では、国民が幅広い意見に接し、自由闊達に意見を表明し、意思を形成することが何よりも重要だと思います。その上でも放送が担っている社会的な役割というのは大きいと思いますが、放送事業者には何が求められているのか、お考えを伺いたいと思います。

堀木参考人 先生、ありがとうございます。

 放送法の四条で定めていること、この中には政治的公平もございますけれども、大きなことは多角的論点の提示ということだと思います。

 これは国民投票運動のときはなおさらそうなんですけれども、ふだんから放送事業者は、多角的論点の提示ということが、先ほど来出ています民主主義の基盤を維持するということで一番大事なことだというふうに考えておりますので、この国民投票運動の放送対応に関しても同じことが言えるんだというふうに承知しております。

赤嶺委員 お示しいただいたガイドラインでは、報道、広告を含めた放送全ての側面で、正確かつ多角的な情報を積極的に提供することは、放送事業者の当然の責務だとも述べておられます。特に、報道は、放送事業者が主体的に多様な意見や論点を集め、深く掘り下げ、国民に提供することができるもので、その役割と影響は非常に私も重要だと思います。

 この点について、今の政治報道ではどのようなことを意識して取組をされているのか、また、今後の取組として検討していることがあれば、政治報道に関して教えていただきたいと思います。

堀木参考人 繰り返しになって恐縮ですけれども、先生おっしゃるとおり、まず、信頼されるメディアであり続けたいということは、私ども放送事業者がいつも考えていることでございます。先ほど出ました今回のロシアのウクライナ侵略に関しても、やはり、私たちが真実を追求して誠実な報道でありたいということは、何よりも大事なことだと考えております。その上で、日頃からそうなので、この国民投票運動に関する放送対応も同じことだというふうに先ほど申し上げました。

 ただ、それを実現することは、個々の放送事業者がそれぞれ考えることでございます。業界全体としてこういう方向ということを考えていることではございませんので、そこはちょっと、事業者団体としてのコメントは控えさせていただきます。

赤嶺委員 ありがとうございます。

 法制定時の特別委員会での議論の中で、民放連の渡辺参考人は、放送事業者の役割は、正確な報道をすること、そしてもう一つは、国民の間で議論を触発するための場を提供することだということで、その方法として、積極的に討論番組などを企画していくと述べておられました。

 一方で、政治報道については、例えば、国政選挙の報道時間は選挙のたびに減少傾向にあるという指摘もされています。二〇一九年の参議院選挙の報道は、二〇一六年のときと比べて三割から四割減ったとされています。昨年の衆議院選挙でも、二〇一七年のときと比べて半分に減ったテレビ局や、ほとんど報道しなかった局もあったという調査もあります。特に顕著なのが、選挙期間中の政党間の討論番組や政策報道が減っていることだと言われています。

 昨年の総選挙に関して、明るい選挙推進協会が行った意識調査では、情報源がテレビだと答えたのは、全ての年代で過半数を超えています。こうした中で、政治報道、選挙報道が減っているという指摘は大変重大だと思いますが、参考人はどのように受け止めておられますでしょうか。

堀木参考人 先生が今おっしゃったこの調査データについて、にわかにコメントするのが難しいんですけれども、党の討論番組や政策報道ということですね。

 もちろん、放送事業者ですから、その時々の国民・視聴者の関心に沿って、最大限それを反映して報道しようということは、今までもやっておりますし、これからも変わらないところなんですが、そうした、討論番組が少ないとか政策報道が少ないということ、こういう御指摘については、真摯に受け止めて考えていかなきゃいけないことというふうに思っております。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 今日の参考人の意見では、インターネットの広告のことを強調されておりました。

 重要なのは、放送事業者がその責任と役割を果たすことだと思います。そのことを何よりも重く受け止めてもらいたいと申し上げまして、私からの質問を終わります。

森会長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗といいます。

 今日は、永原参考人、そして堀木参考人には、大変明快な御説明をいただきまして、現場に基づくお話を聞かせていただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 また、画期的というか、国民投票法の百五条に置いてある、投票日の二週間前までは広告は出すけれどもその後は禁止するということを、私の聞いているのが確かであれば、それをひっくり返すような主張をされたというふうに思いますので、これについて伺いたいと思います。

 要は、インターネットがだんだん影響力を増してきて、様々な偽情報というものが氾濫をしていく、そういう中で、むしろ、自主規制とか、そしてある程度の良識を持って、あるいは公平性、公正性の感覚を持って規制ができる主流の皆さんのような報道機関というものが、禁止するんじゃなくて、より情報をたくさん出した方が、言論の市場がより有効に機能する、こういう理解でよろしいんでしょうか。

永原参考人 基本的に、先生の言われるとおり、なるべく多くの情報に国民が接するようにしていた方が、やはり国民が判断できるようにするというのが大事じゃないか。

 私たち、百五条を今どうこうしてくれと言っているわけではないので、そこは誤解していただきたくないんですが、百五条を考えることが、百八十日間全部禁止することにすれば恐らくもっと混乱するんじゃないかと思うものですのでこういう提起をさせていただいたわけで、基本的に国民が受け取る情報の総量は多ければ多い方がいいという考えに立っております。

北神委員 あと、それに関連して、量をたくさん出すというのは、実は私も前回、国民投票広報協議会にもっと予算をつけて、一応、国民の代表である政党の関係者が構成しているこの機関でどんどん情報を発信すべきだという話もしたんですが、それが一つと、もう一つは、事後的に、そういう偽情報、余りにも事実に、事実というのは例えば数字がおかしいとか、こういう客観的なものですね、表現の自由があるので微妙なんですけれども、そういったことに対して事後的に事実確認をするような、そういう役割も果たすべきじゃないかなと私は思っているんです。

 例えば、フランスの大統領選で、クロスチェックという、これはたしかインターネットのサイトでもあったんですが、インターネットでの偽情報について、事実はこうですよということを示した、そういった取組があったというふうに聞いていますが、こういったことについてはお考えはどうでしょうか。

永原参考人 インターネットの世界で、先ほど御紹介させていただいたファクトチェック・イニシアティブのような、そういう取組はなされているので、先生の言われたのはそういうイメージなのかなというふうに思って伺いました。

 放送事業者は、やはり、なるべくフェイクなものを載せないように、例えば熊本の地震のときに、ライオンがおりから逃げ出したみたいなフェイクなものがばっとSNSで拡散したんですけれども、そういうものは、我々が放送してしまったら大変な混乱を起こしてしまいます。だから、自分たちの、事業者の中でのチェックというところを、報道も、それから広告の場合はCM考査というんですが、かなり、相当厳密にやっているんですね。

 ですので、インターネットの方のファクトチェックのような、クロスチェックみたいなこととは恐らくちょっと違うのかなと思いながら伺いましたが、インターネットの場合はそういう取組もなさっているので、ある部分、先生の言われることもあるのかなと思いました。

北神委員 放送事業者の話もおっしゃったんですが、私が申し上げているのは、国民投票広報協議会で、ある意味で権威のあるというか、一応信用されているはずの政党の代表が構成しているところで、そういう事実確認というものを、できるだけ大量に宣伝をするというか、こういう考えなんですけれどもね。放送事業者じゃなくて。

永原参考人 国民投票広報協議会というのは立法府なものですので、立法府がそこまでするということが、メディアに身を置く者としては、やはりちょっとそれは怖いなというのが一番思うことです。

 あと、具体的にどうやってやるんだろうと。実際やるのは恐らく衆議院事務局だと思うんですが、事務局にそんな機能を、持つこともまず難しいと思いますが、持たせることも芳しくないなというふうに個人的には思います。

北神委員 一応、先ほど申し上げたように、フランスの大統領選では、ちょっとどの機関がやっていたか分かりませんが、政府のお墨つきなのか立法府のお墨つきなのか分かりませんが、クロスチェックというサイトを作ってやっていたという例があったので、ちょっとそれをお聞きしたいということでした。

 あともう一点、これは、今の百五条の関係でいえば、二週間前はいわゆる政党の広告は禁止する。その後は、選挙の投票日までは意見表明、私は賛成ですとか反対ですとか、著名人のそういったものは自由に載せる。自主規制されているというのはよく分かっているんですが、一応法律上はそういう構成になっているんですが、もし、先ほどのお話、扇情的なものとかを、あるいは理性よりも感覚に訴えるようなものをある程度抑えるのがこの法律の趣旨であるならば、むしろ、スポーツ選手とか芸能人とか、国民に人気のある人たちが意見表明する方が、扇情的というか、感覚的なものに訴える可能性が高いと思うんですけれども、それについて、お考えはどうでしょうか。

堀木参考人 ガイドラインの中で、三ページですね、「CM内容」というところがございます。この十二番で、「視聴者の心情に過度に訴えかけることにより、冷静な判断を損なわせたり、事実と異なる印象を与えると放送事業者が判断するCMは取り扱わない。」とあります。

 明示的に書いていないんですけれども、例えばタレントさんを使ったりとかいうことも、実はタレントを使ってはいけないというわけではないんですが、視聴者の心情に過度に訴えかけることになるのかどうかということも放送事業者の方で慎重に判断をするということにしておりますので、今の先生の御指摘も、この中にも包含されているものというふうに考えております。

北神委員 ありがとうございます。

 あと、私も最後の質問者なので、質問を全部取られちゃったので余り言うことがなくなったんですけれども、あえてもう一点だけ申し上げますと、いわゆるホスト事業者、フェイスブックとかツイッターとか、ユーチューブとか、こういったところは、おっしゃるように、例えばコロナでもそれなりに、余りにもおかしなものは多分消したりしていますよね。そういった取組がありますけれども、そういうことを国から要請するというのは難しいと思いますけれども、ある意味、皆さんと一緒に連携しているように、そういった事業者に対して、ホスト事業者に対して、自主規制というか、そういったことを、協力をお願いするということは現実的に可能でしょうか。

永原参考人 済みません、これはプラットフォーマーの話なので、私が答えるのはやはりちょっと適切ではないなと思いながら、ただ、恐らく、それぞれみんな悩みながら、相当かなり厳格にやっていると思うんですね。

 そこに国が、立法府が言われるというのは、逆にそのことがきっかけとなって、立法府がインターネットの自由空間に対して、SNSとかも、デメリットの話ばかりされますけれども、これによって、メリットだって明らかにあるわけですね。例えば、コロナで給食が中止になって、そのことによってタマネギを全部腐らせてしまう、それをSNSで発信したら二日でなくなったというふうに、小野先生が、ちょうど熊本での話だったので、そういう記事も読みましたけれども。

 余り規制ありきで議論をすると、相当事業者を萎縮させてしまうんじゃないかということの方がやや怖いので、ここはやはり事業者の取組に委ねられた方がよろしいのではないかなというのは、個人的に。

 ただ、これは自分が言うことではないので、是非、事業者に聞いていただければと思います。

北神委員 以上で終わります。ありがとうございました。

森会長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、ありがとうございました。憲法審査会を代表して、心から御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


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