衆議院

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第3号 平成28年10月17日(月曜日)

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平成二十八年十月十七日(月曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 うえの賢一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 菅原 一秀君 理事 西村 康稔君

   理事 森山  裕君 理事 今井 雅人君

   理事 篠原  孝君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      池田 道孝君    大西 宏幸君

      加藤 寛治君    勝沼 栄明君

      黄川田仁志君    北村 誠吾君

      小泉進次郎君    坂井  学君

      坂本 哲志君    新谷 正義君

      武部  新君    武村 展英君

      寺田  稔君    中川 郁子君

      中村 裕之君    中山 展宏君

      野中  厚君    ふくだ峰之君

      福田 達夫君    福山  守君

      古川  康君    前川  恵君

      牧島かれん君    宮川 典子君

      山田 美樹君   山本ともひろ君

      渡辺 孝一君    青柳陽一郎君

      岸本 周平君    後藤 祐一君

      近藤 洋介君    佐々木隆博君

      玉木雄一郎君    初鹿 明博君

      福島 伸享君    升田世喜男君

      村岡 敏英君    稲津  久君

      岡本 三成君    中川 康洋君

      池内さおり君    大平 喜信君

      畠山 和也君    小沢 鋭仁君

      松浪 健太君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         岸田 文雄君

   文部科学大臣       松野 博一君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   環境大臣         山本 公一君

   国務大臣         松本  純君

   国務大臣         石原 伸晃君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   国土交通副大臣      末松 信介君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官)  多田健一郎君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  山下 哲夫君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   可部 哲生君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口 英彰君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十七日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     新谷 正義君

  武部  新君     小泉進次郎君

  前川  恵君     山田 美樹君

  宮川 典子君     野中  厚君

  山本ともひろ君    坂井  学君

  佐々木隆博君     後藤 祐一君

  福島 伸享君     初鹿 明博君

  村岡 敏英君     青柳陽一郎君

  笠井  亮君     池内さおり君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉進次郎君     武部  新君

  坂井  学君     山本ともひろ君

  新谷 正義君     池田 道孝君

  野中  厚君     中山 展宏君

  山田 美樹君     前川  恵君

  青柳陽一郎君     村岡 敏英君

  後藤 祐一君     佐々木隆博君

  初鹿 明博君     福島 伸享君

  池内さおり君     大平 喜信君

同日

 辞任         補欠選任

  中山 展宏君     牧島かれん君

  大平 喜信君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     宮川 典子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会条約第八号)

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第四七号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局企画・推進統括官多田健一郎君、総務省行政管理局長山下哲夫君、外務省経済局長山野内勘二君、財務省主計局次長可部哲生君、農林水産省大臣官房総括審議官山口英彰君、農林水産省大臣官房総括審議官水田正和君、農林水産省消費・安全局長今城健晴君、農林水産省食料産業局長井上宏司君、農林水産省生産局長枝元真徹君、農林水産省農村振興局長佐藤速水君、農林水産省政策統括官柄澤彰君、林野庁長官今井敏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。江藤拓君。

江藤委員 おはようございます。自由民主党の江藤拓でございます。

 私は、この特別委員会を、TPPの実像、こういったものが国民の皆様方に理解されるその機会としたいと思っておりますので、総理には総論的な質問をさせていただきます。そして、細かい点につきましては担当大臣に御質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 さて、TPPは、二〇〇六年に、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリ、この四カ国で結ばれた経済連携協定、P4から始まりました。その後、米国が交渉に参加を表明したことを契機に、二〇一〇年に八カ国によるTPP交渉が開始をされました。

 そして、二〇一一年、ホノルル宣言が発表されました。これが大変大事なのでありますが、その内容は、関税並びに物品・サービスの貿易及び投資に対するその他の障壁を廃止する、このことが合意されました。これは、簡単に言えば、原則として関税は撤廃するということであります。

 その後、民主党政権となったわけでありますが、その間のことについては、私からは特に今回は何もコメントすることは避けたいと思います。

 総理は、四年前の総裁選におきまして、TPPの聖域なき関税撤廃反対ということを総裁選の公約にきちっと盛り込んで勝利をし、そして政権交代を果たし、総理大臣に就任をされました。二〇一三年二月、訪米をされ、オバマ大統領と日米首脳会談を行い、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することは求められない、このことをオバマ大統領に約束させました。

 私は、その一報を受けたとき、本当にびっくりしました。なぜなら、後から日本がTPPに参加するということであれば、このホノルル宣言は当然受け入れなければならない、ずっとそう思っていたからであります。私ごとでありますが、それから私自身の葛藤が始まったわけであります。

 そして、今回のTPP、交渉としてはぎりぎりの線で踏みとどまったというふうに私は思っています。しかし、対策は不可欠であります。合意から一年、全力を挙げて、私も全国を歩いてまいりましたし、行政も頑張りました。しかし、生産者の不安、そして自由民主党に対する不信感、これを払拭するにはまだまだ至っていないというのが現状であります。

 私も、自民党のTPP交渉における国益を守り抜く会の会長として、責任を重く感じています。そして、私と同じそういった苦しい思いを共有している議員が自民党の中にはたくさんいるんだということを、総理にはぜひこの機会にわかっていただきたいというふうに思います。

 ですから、総理、重ねて申し上げますが、万全で息の長い対策、関税撤廃に時間がかかるわけですから、これをどうぞよろしくお願いいたします。

 そこで、総理に改めてお伺いをしたいと思います。そもそもなぜ日本にTPPは必要なんでしょうか。国民の皆様方にわかりやすく、大局的な立場に立って説明をしていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

安倍内閣総理大臣 我が党の当時の、野党時代の方針は、聖域なき関税撤廃を前提とする以上、我々はTPP交渉には参加をしないということでありました。

 江藤議員はそれを絶対に堅持すべきだという強い信念を持っておられた。ですから、総理に就任し、訪米し、オバマ大統領との首脳会談が終わった後、私は、江藤議員にワシントンから電話をいたしまして、聖域なき関税撤廃ではないということをオバマ大統領から言質をとったので、この上においては、TPP交渉参加に向けて準備を進めてもらいたいとお願いさせていただいたことを今でも覚えているわけでございます。

 そこで、なぜそもそも必要かという話であります。

 さきの大戦の前は、いわば領土の広さ、あるいは植民地をどれぐらい持っているか、これが経済の規模につながってきた、国力につながってきたのであります。しかし、戦後は、御承知のように、日本とドイツは大きく版図を縮小した、失ったのであります。しかし、であるにもかかわらず、戦前を上回る経済規模になった。それは、ひとえに自由貿易が確保されたことによるところが大きいと思うわけであります。自国の国民以外の多くの人々が日本やドイツの商品を消費する、このたくさんの消費者をかち得たところにあるんだろうと思います。

 日本は、残念ながら、人口はしばらくは減っていく、ということは消費者が減っていくわけであります。その中で、しかし、しっかりとした社会保障を維持していくためには、経済を成長させ、税収を上げ、保険料を上げ、この制度を確かなものとしていかなければなりません。そのために、経済を成長させていく自由貿易が決定的に必要であります。

 そして、新たにこのアジア太平洋地域に生まれる世界のGDPの四割を含む四割経済圏、ここは物や人や知財、さまざまなものが自由に飛び交い、しっかりとしたルールの中で貿易が行われる、ここに入ることは間違いなく日本の将来に向けて必要なことだろう、このように思います。

 これは、大企業だけに利益を与えるのではなく、中小企業やあるいはまた農家においても、手間暇かけた付加価値をつけた製品を輸出すれば、そのノウハウを奪われることなく、保護されながら、手間暇かけた付加価値が正しく評価されるという、いわば市場をかち得ることができるわけでございます。その努力を我々はしっかりと支援していきたい。もちろん、初めて輸出をする中小企業、小規模事業者は大変だと思います。ましてや、農家はそうです。しっかりと国や地域がそれを支援していくことが当然であろう、このように思う次第でございます。

 そしてまた同時に、基本的な価値を共有する国々が経済のきずなを深めていけば地域は安定します。経済を超える戦略的な意義もある、こう考えるわけでございます。当然、その中で、農業は国の基である、この考え方はきっちりと中心に据えなければならない、こう考えているわけであります。

 まだまだ不安を持っておられる方々がたくさんいらっしゃるのは事実でありまして、十分にその不安を解消し得ていないことは私も総理大臣として申しわけない、こう思っています。これからもしっかりと、私たちの対策がいかに農家にとって有効であるか、大切なものであるかということを説明しながら、不安を解消していくべく汗を流していきたい、このように考えております。

江藤委員 総理、ありがとうございました。極めて率直で心のこもった御答弁をいただきまして、感謝をいたします。

 言質をとったと総理はおっしゃいました。しかも、これを文書にされました。私は外交のことは詳しくありませんが、文書に起こすということがどれだけ大きなことであるかということは、私なりに理解をしているつもりであります。国民の皆様方にも総理の思いはきっと伝わったのではないか、そういうふうに思います。

 ここで、ちょっとの間だけお許しをいただいて、昔の話をさせていただきたいと思います。

 昭和六十三年六月、日米の間で最大の懸案事項でありました牛肉・オレンジの自由化問題が決着をいたしました。このときも、衆議院、参議院両院で、牛肉・オレンジ自由化反対、この決議が全会一致で行われております。

 ちなみに、このときの自民党の幹事長は、総理のお父上、安倍晋太郎先生でした。私の父、江藤隆美も、総合農政調査会長として、たびたび米国を訪問しまして、ブロック通商代表などと、まあ、あの性格ですから、机をたたいて、本当にけんか腰の激しい交渉をしておったのを私も記憶しております。

 そして、これが決着後は、肉用子牛生産者補給金制度を創設し、総額で一千五百億円もの国内対策を取りまとめました。しかし、その後に行われた総選挙におきましては、私の父は、現役の運輸大臣でありながら落選してしまいました。そして、私も今、いろいろな思いをこの胸に秘めながらこの場に立っております。これもめぐり合わせというものなのかなというふうに今感じております。

 最近は、私、地方を歩いておりますと、TPPばかりがどうも農家の不安の原因ではないなということを感じます。それは、最近の農政においては、どうも何かというと規模の拡大それから法人化、競争力の強化、輸出、そういったことばかりが強調される余り、方向性は間違っていないんですよ、強調される余り、家族経営や中山間地域など条件不利地域の人たちは、自分たちは切り捨てられてしまうんじゃないかという不安を感じているからであります。

 総理は、施政方針演説でよく御地元の、息をのむほど美しい棚田について言及をされます。日本の原風景として触れられます。

 ここで改めて、総理の農村それから里山に対する思い、これを聞かせていただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 農業は、これは江藤委員がたびたび指摘をされるように、さまざまな機能を持っております。

 一つは、もちろん産業としての機能を持っています。前半言われました、我々が今進めている改革の方向性は、この産業としての側面においては徹底的に強化をしていこう、今まで余りやっていなかった輸出にも十分目を向けながら、そして、その力がある、その力をさらに磨いていこうということであります。そして、中心になって頑張っていく担い手には、その意欲に合わせて、彼らが農地を獲得できる、あるいは事業を獲得できる、そういう仕組みをつくっていこうということであります。

 しかし一方、農業というのは、工業と違いまして、地域や天候に大きく左右されるわけであります。そして、長年の伝統と文化を守ってきた、地域を守ってきた、水を涵養してきた、さまざまな多面的な機能があるわけであります。そこを大切にしていく、これは当然のことなんだろうと思います。

 例として挙げられた棚田。私の地元にも美しい棚田が広がっています。この棚田に向かって規模を拡大しろ、生産性を上げろ、これはそもそも無理な話であります。だから、やめろという話ではもちろん全くありません。こういう棚田があってこその日本なんだろうと私は思います。この息をのむほどの美しさがあって、棚田が守ってきた地域があって、村があって、環境があって、文化があって初めてそれは日本なんだろう、私はこう思うわけであります。

 決して、こうした棚田が耕作放棄地となることは望んでいません。そういう地域、中山間地域が今相当高齢化していますが、何とか後継者が出てくるようにしていくことも私たちの大きな仕事なんだろう、こう思います。

 幸い、今、四十歳以下で新たに就農する人が二万人を八年ぶりに超えました。こういう方々、大規模だけではなくてこういう棚田も守っていこうという若い人たちがあらわれてくれば、これにまさる喜びはないんだろう、こう思う次第でございます。

 中山間地域の困難な状況の中でも創意工夫を発揮し、付加価値の高い農産物の生産や六次産業化等に取り組む意欲ある農業者であれば、家族、法人経営の別を問わず積極的に支援してきたところでありますが、これからさらにしっかりとそういうところに目くばせをしながら、そういう農家の声に耳を傾けながら、例えば、今、意欲という話をしましたが、多くは高齢者です。安倍さん、そんなことを言ったってなかなか大変だよ、でも俺は守っていきたいんだよと。そういう方々にもしっかりと、その地域地域の状況に合わせながら対応していきたい、こう思う次第でございます。

 ちなみに、私の地元の長門市においては、かなり六次産業化を進めておりまして、棚田の持つ美しさを生かして観光客を呼んだり、棚田を背景にさまざまなイベント、例えばファッションショーのようなものをやって、これは結構、海外にも発信をされて、海外からも観光客がちらほら来始めているという状況にもなっているわけでございます。

 いずれにいたしましても、さまざまな中山間地域の耕作困難な不利地域においても立ち行くことができるように、きめ細かな、江藤委員たち専門家の皆さんが知恵を出し合っていただいて、それを政府としてもバックアップしていきたい、このように考えているところでございます。

江藤委員 ありがとうございます。大変深い理解を里山に対してしていただいているということがよくわかりました。

 棚田があってこそ日本だという言葉は、私の胸には大変響きました。ありがとうございます。そして、目くばせをしていくことも大切だということもおっしゃっていただきました。

 そういうことであれば、この機会に、私には一つ提案をさせていただきたいことがあります。

 私の宮崎県は、五ケ瀬、高千穂、日之影、西米良、そして日南市で十一カ所が棚田百選に選ばれております、指定をされております。英国のイングランドでは、農村の伝統的な景観を保全する取り組み、石垣を直すとかそういったことですね、これについては農業環境支払いの対象になっています。そういった実例があるわけであります。

 ですから、日本でも、単に景観を守るというような視点ではなくて、インバウンド、今、観光に触れていただきましたが、そういったことも含めて、棚田を次の世代に継承していく、こういったことはとても大切だと思います。

 これは大臣問いになっておりますから、総理にも一言だけ頂戴できればありがたいんですが。

安倍内閣総理大臣 やはり、インバウンドを呼び込んでいく、そういう大きな力があるだろうと思います。

 我々も、例えばフランスに行って、パリの市内だけではなくて農村地帯に行くと、そこには美しい農村地帯が広がっているわけであります。まさに今、観光新時代を迎えまして、東京や京都だけではなくて、ゴールデンルート以外を訪問する、宮崎県の棚田地帯に行く、そういうことをしっかりと進めていくことによって、そこの農産品を売っていくということも含めて、農地を維持していきたい、そのための支援もしていくべきなんだろうと思います。

 先ほど私が棚田の例として挙げました長門市油谷町には元乃隅稲成神社というのがありまして、ここは鳥居が海に向かってずっと続いているんですね。非常にへんぴなところで、誰も行かなかったところなんですけれども、CNNがたまたまこれを映し出したところ、世界じゅうから観光客が来るということが起こりまして、去年、そこの宮司さんが、私は初めてドイツ人を見た、こう言っていました。今や、どういうわけか、コインをその鳥居の上に載せているんですかね、世界じゅうのコインがそこに行くと、とりに行ってもらっては困るんですが、そこに世界じゅうのコインが載っているという状況が起こっています。

 こうしたことも活用しながら地域のブランドを高めていく、こういうことも求められている。それを国もしっかりと支援していくべきではないのかな、こう思います。

山本(有)国務大臣 この棚田百選には、総理の御地元の長門市の油谷町、あるいは江藤委員の宮崎県高千穂町の尾戸の口、また私の地元の檮原町の千枚田、それぞれ百選に選ばれておるわけでございます。

 私は、あえて御披露させていただきたいことがございます。司馬遼太郎の「街道をゆく」というところに、まず、棚田の景観美について、こういう記述がございます。見上げる山々は、耕して天に至るという棚田である。棚は数十層もある。いわゆる千枚田である。この傾斜の風景は、声を上げたくなるほど美しかった。

 そして、司馬遼太郎さんがもう一つ指摘しているのは、この棚田における日本人の高い精神性。山の傾斜に石垣を築き、棚をつくるようにして水田を築造するやり方は、上代から行われていたに違いない。今に至るまで各地に残っている石垣に投入された祖先の努力の総計と石の量は、大阪城の石垣の比ではなく、エジプトのピラミッドをもはるかにしのぐものであっただろう。これによって、徳、和、これをたっとぶ日本人の努力の精神、これが残っているのが棚田であって、これを守るのが日本人の役目であろう、こういうことでございます。

江藤委員 総理大臣からこれだけのことを言っていただいたら私は大いに期待をさせていただきますので、具体的にぜひよろしくお願いしたいと思います。

 しかし、環境保全ということであれば、私は環境省でいいと思うんですよ。そして、観光支援、インバウンドの支援ということであれば観光庁、国土交通省でいいと思います。別に農林水産省の予算に縛られる必要はありません。内閣を挙げて取り組んでいただきたいと思います。

 さらに言わせていただきます。宮崎県は、高千穂郷・椎葉山地域が昨年、世界農業遺産に登録をされました。登録されたら、やはり地域の方は、何が何でもこれは守らにゃいかぬ、そういう熱い使命感に燃えています。しかし、何の支援策もありません。現場は大変苦労をしているわけであります。

 ひがんで言うわけではありませんが、一方、世界文化遺産に登録された富岡製糸場に対しては、文化庁から、文化遺産を活かした地域活性化事業という国庫補助があるわけであります。どうも不公平感があるかなというふうに思うわけであります。

 ですから、こういうことも考えて、世界農業遺産に対しても、CNNが来るように、ぜひ何らかの配慮を国としてすることが必要ではないかと思いますが、大臣の御答弁を求めます。

山本(有)国務大臣 世界農業遺産は、次世代に継承すべき伝統的な農林水産業システムを営んでいる地域を、国連食糧農業機関、FAOが認定する制度でございます。現在、世界十五カ国三十六地域が認定されておりまして、我が国では、御指摘の宮崎県高千穂郷・椎葉山地域など八地域が認定されております。

 世界農業遺産につきましては、地域の人々がみずからの地域資源の価値を再認識し、誇りと自信を取り戻すとともに、農業や地域の振興に向けた取り組みが活発になるといった意義を有するものと考えております。

 このため、農林水産省といたしましては、農山漁村振興交付金等によりまして、世界農業遺産を核とした観光振興等の地域活性化の取り組みを支援してまいっているところでございます。

 今後とも、地元の意向を踏まえつつ、関係省庁と連携をいたしまして支援を行ってまいりたいと存じております。

江藤委員 大臣の御答弁はわかるのですが、指定と直接リンクはしておりませんので、ぜひ指定されたら手厚くということを私は申し上げたいわけであって、よろしくお願いしております。

 今私が一番懸念していることを申し上げます。TPPについて余りにも悲観的な観測が流れる、このことによって生産者の皆さん方が将来を悲観して、今まさに育ちつつある担い手の方々が希望を失ってしまう、意欲を失ってしまう、このことが一番問題だと思っています。

 私の地元では、Uターンや、それからIターンがふえています。この間、地元の西都市で意見交換会をしました。大体一時間半の予定で、百人ぐらいでやったんですけれども、みんな担い手の若い人たちばかりでした。気がつけば三時間を過ぎている。そして、それでも時間が足りなくて、その次の週ももう一回やりました。それは、生産者の方々、担い手の皆さんがそれだけ自分たちで地域を守ろう、そして農業に夢を持っているということをあらわしている、そういう姿に私は触れたわけであります。

 二百四十五万ヘクタールの田んぼをフル活用する、そして四百五十万ヘクタールの農地の多面的機能をきちっと評価して日本型の直接支払いを導入しました。しかし、農地が守られたとしても、担い手がいなくなっては、これは何にもなりません。ですから、今、特に必要なことは、優良な、意欲を持った担い手を育てることだと私は考えております。

 そこで、大臣にお尋ねをします。今回、TPPの合意以降、関連対策を一生懸命私もやってまいりましたが、これは、生産者の実情を踏まえた上で、将来につながる、そういったものになっていると私は思っています。大臣はどのように感じていらっしゃるか、御見解を伺います。

山本(有)国務大臣 TPPの関連対策につきましては、新たな国際環境のもとにおいても生産者が安心して再生産に取り組めますように、交渉結果やその国内への影響について、地方説明会を四十六回開催するなど、可能な限り現場の声を聴取した上で、昨年十一月に総合的なTPP関連政策大綱を取りまとめているところでございます。

 具体的には、攻めの農林水産業への転換として、産地パワーアップ事業や畜産クラスター事業などの体質強化対策を集中的に講じますとともに、経営安定、安定供給のための備えとして、協定発効に合わせ、牛マルキン、豚マルキンの法制化などの経営安定対策の充実等を講じることとしております。あわせて、農林水産業の成長産業化を一層進めるため、検討の継続項目として掲げました十二項目につきまして、本年秋を目途に具体的内容を詰めていくことにしております。

 このうち、体質強化対策につきましては、平成二十七年度補正予算におきまして、攻めの農林水産業への転換に向けた緊急対策として三千百二十二億円を確保し、現在、各地域において具体的な取り組みが進められているところでございます。また、先日、十月十一日に成立いたしました二十八年度第二次補正予算におきましても、産地の国際競争力の強化などの対策として三千四百五十三億円を確保したところでございます。

 次世代を担う生産者が、新たな国際競争のもとでも、あしたの農林水産業に夢と希望を持って経営発展に積極果敢に取り組み、所得の向上を図ることができますように、今後とも万全の対策を講じてまいりたいと存じております。

江藤委員 ありがとうございました。予算のきちっとした裏づけがあるということを御紹介していただきました。

 その中で、畜産クラスター事業それから産地パワーアップ事業、これも大変増額をいたしました。しかし、それでも全然全国の御要望には応え切れない、それが現状であります。

 ここで念のために申し上げておきますが、これはばらまきなんかでは決してありません。農家の負担も相当額発生するわけであります。それでもやるということは、生産現場にはやる気のある人がそれだけ多いということの証左であります。

 そして、これらの事業の具体的な効果はどんなものなのかということを少し紹介させていただきます。

 宮崎はキュウリの生産日本一であります。田野町にキュウリのつるおろし栽培に取り組んでいる三十代の担い手の方がいらっしゃいます。宮崎県のキュウリの平均収量は十アール当たり大体十七トンであります。これでも高いんですよ。高いんですが、この農家は、国の事業で、炭酸ガス発生装置、それから施設内の環境センサー、こういったものを導入することによって、何と、県の平均を大きく上回る二十七トン、直売もありますから、多分二十九トンぐらいの収量を実現しています。効果があるんです、こういうことをやれば。

 また、先ほど私は担い手について触れさせていただきましたけれども、担い手がどうすれば育つのかということを我々は真剣に考えなければならないというふうに思っています。

 先進的な技術、ICTとかいろいろなものがそろったところで研修することも一つの方法だと私は思います。思いますけれども、独立するときには、やはり小規模からみんな始めるわけですから、ちょっとそこにはギャップが生じるんじゃないかなということを心配しています。

 それよりも、家族農家で頑張っているところ、そういうところで、そういう農家の方々と寝食をともにして、土壌の管理、育苗、定植、施肥、防除、摘果、収穫、そして出荷まで全てを経験して、それによって農業というものの喜びそしてそういった苦労を経験することによって、本当に担い手は育っていくのではないかと私は思っております。

 そういった観点からいっても、この紹介しました産地パワーアップ事業、畜産クラスター事業、これは、総理がいつもおっしゃっている未来への投資、この未来への投資にまさにふさわしい内容になっていると私は考えております。

 時間がないので、ちょっと飛ばさせていただきます。

 畜産に関して、影響をお尋ねさせていただきます、大臣。

 関税削減による影響はあります。もちろんこれはあります。今回のTPP合意では、牛肉については、関税率は、十六年先、大分先ではありますが、最終的には九%まで、三八・五%から下がります。豚肉についても、差額関税制度は維持され、セーフガードは措置されています。しかし、従価税は十年目に廃止をされます。従量税も十年目にはキロ当たり五十円まで下がります。この数字を見れば、特に現場に不安が強いのは牛肉、豚肉であることは容易に理解できるわけであります。

 しかし、今回の関税削減が日本の畜産の競争力を大幅にダウンさせてしまう、シェアをとられてしまうというふうに私は考えていません。その見方は少し一面的ではないかというふうに思っています。実際に価格がどうなるか、そういったことは、品質の差、為替、それから輸出国の生産動向、ほかの輸入国の買い付け状況、そういったものが複合的に絡まって決まると思っているからであります。

 そこで、大臣にお尋ねします。今回のTPPで関税が下がるわけでありますけれども、牛肉、豚肉の生産にどのような影響を与えると御認識されていらっしゃるのか、お尋ねいたします。

山本(有)国務大臣 牛肉、豚肉の関税引き下げについて一つの大きな示唆あるいはヒントになるものは、日豪EPAについての話ではないかと思っております。これはつとに委員御指摘のとおりでございます。

 平成二十七年一月に発効をいたしましたこの日豪EPA、直近一年間、平成二十七年九月から二十八年八月の牛肉需給動向を、発効直前の三年間、平成二十四年一月から平成二十六年十二月の動向と比較いたしました。当該期間中、為替が九十二円八十銭から八十四円九十銭へと円高・豪ドル安に変動しているにもかかわりませず、豪州からの牛肉輸入量は六%減少しております。また、豪州産牛肉の輸入価格は二七%上昇しております。国産牛肉の卸売価格は四二%から五七%上昇しております。

 この結果を捉えて考えていきますと、日豪EPA発効に伴う影響はこれまでのところ特段あらわれていないと考えております。

 また、国産牛肉につきましては、和牛、交雑種は、霜降りなど、品質、価格面で輸入牛肉と差別化を完全にされておりますし、国産豚肉につきましても、鮮度のよさや地産地消を意識した消費者の国産志向に支えられまして、輸入食肉とは異なった評価を受けているところでございます。

 このような状況に加え、我が国以外の世界の牛肉、豚肉需要が急激に伸びる中で、他の輸入国との買い付け競争が一層激しくなる可能性を踏まえてみますと、TPPにつきましては、発効後も当面は輸入の急増は見込みがたいと考えております。

 しかしながら、関税削減等によりまして、長期的には国産牛肉、豚肉の価格が低下することも懸念されるため、政策大綱におきまして、生産コスト削減、あるいは体質強化対策、こういったものを講じるとともに、セーフティーネットとしての経営安定対策の充実強化を図ることとしておるところでございます。

 セーフガードなど交渉により獲得した措置とあわせ、これらの対策を講じることによりまして、関税削減後におきましても、外国産牛肉や豚肉と競争し、確実に再生産を確保していくことが可能になっている、そう考えておるところでございます。

江藤委員 大臣から、極めて具体的で、今現在何が起こっているのかわかりやすく御説明をいただきました。ありがとうございます。

 私は、日豪EPA合意のとき、農林水産の副大臣を実はやらせていただいておりました。牛肉については、F1、交雑種は大丈夫かなと何となく感じておりました。しかし、乳雄それから廃用牛、この値段はもしかしたら下がってしまうかな、対策が必要かなと実は大変心配していたわけであります。

 しかし、今大臣の御説明でわかったように、私の予想はいい方向で見事に外れたということであります。

 日本橋に乳廃牛を熟成して提供しているお店があります。私も行ってまいりました。大変おいしかったです。総理もぜひ行っていただきたいと思いますが、混んでおりますから早目の予約をお勧めいたします。生産者は付加価値をつけるそういった努力をちゃんとやっているのであります。

 しかし、その一方で、不安材料がないわけではありません。私が懸念していることは、和牛を生産する繁殖雌牛、この頭数が少なくなっているという現場の状況であります。酪農においても、後継牛それから初妊牛、そういったものの確保が大変困難になっていることも大変懸念されます。

 現在のように八十万円を全国平均が超えるというのは、極めて、今まで経験のないことであります。その原因は、もちろん、和牛に人気がある、引き合いが多いということが一番の原因ではありますけれども、それよりも、やはり雌牛が減って、子牛の数そのものが減ってしまっているというのが、需給バランスが崩れていて、価格が高騰しているわけであります。このような状況を放置しておきますと、肥育農家の経営に大きな影響が出ることが容易に想像されます。

 ですから、大臣、お尋ねをしますが、効果的な増頭対策が急がれると思いますが、御見識を伺います。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のとおり、肉用子牛価格が高騰しております。繁殖雌牛の増頭など、肉用牛の生産基盤強化は重要な課題でございます。

 このため、政府といたしましては、優良な繁殖雌牛の増頭や導入に対する奨励金の交付、繁殖雌牛の増頭に必要な畜舎等の整備、繁殖雌牛等の預託の取り組みに対する支援、畜産クラスター事業を活用し、子牛の育成部門を外部化して増頭を可能とするためのキャトルステーション等の整備、さらに、乳用牛への和牛受精卵移植技術を活用した肉用子牛の生産拡大を図る取り組みへの支援など、さまざまな施策に取り組んでおります。

 これら施策の展開によりまして、繁殖雌牛の頭数は、最新の畜産統計、二十八年二月一日現在で六年ぶりに増加に転じました。回復の兆しが見え始めたところでございまして、今後とも、引き続き肉用牛生産基盤の強化に努めてまいりたいと存じております。

江藤委員 それでは次に、輸出について質問させていただきたいと思います。

 TPPの議論をしますと、関税削減等はあるわけでありますから、日本の農林水産業にとってマイナスの影響、こればかりが強調される傾向があります。

 しかし同時に、海外へとマーケットを拡大していくプラスの側面もあるということもわかっておく必要があると思います。

 例えば、ルール分野。急送貨物については、到着から六時間以内に許可することが取り決められました。これによって、青果物等の通関手続がスムーズになります。新鮮で高品質な我が国のこういった品物がベストな状況で顧客のところに届くことになりますから、これはビジネスチャンスが確実に広がります。

 そして、肉のことも申し上げます。

 米国への牛肉の輸出につきましては、今、二百トンしか無税枠がないんですが、これが三千トンに即時広がります、三千トン。ちなみに、直近の米国への輸出量は二百六トンしかありません。そのうち九十八トンを宮崎県が頑張っております。そして、この三千トンの無関税枠は年々年々拡大していって、十五年目には対米輸出は完全無税ということになるわけであります。念のため申し上げておきますが、そのときも、日本への牛肉の輸入関税九%は残るのであります。

 そこで、農林大臣にお尋ねをいたしますが、TPPの合意を踏まえて、これから輸出にどのように取り組んでいかれるおつもりなのか。ちょっと時間がなくなりましたので、少し短目にお願いいたします。

山本(有)国務大臣 日本は、農林水産物の生産額は世界十位でございます。けれども、輸出額は世界六十位でありまして、この意味では、実力があるのに、まだ輸出について実力を発揮していないというように思っております。

 平成三十一年の輸出額一兆円の目標に向けまして、本年五月に策定した農林水産業の輸出力強化戦略に掲げた施策を着実に実施していけば、私は必ず輸出は軌道に乗るというように思っております。

江藤委員 ありがとうございます。

 これまでの質疑の中で、やはり生産基盤の強化は不可欠だ、そして、いろいろ高齢化が言われますけれども、担い手は育ちつつあるんだということを申し上げてきました。

 私は、国内市場において現在輸入品にとられているシェアがあります、これを奪還する、そういった視点はとても大事だと思います。私は、できると思っています。日本の農林水産業にはそれだけの底力があるというふうに私は信じて疑いません。

 それでは、十分を切りましたので、ちょっと飛ばしまして、予算委員会でも、SBS、これについては大変議論となっておりますので、私の方からも触れさせていただきたいと思います。

 農林水産省の報告でも明らかになりましたが、この金銭のやりとり、この主たる目的は落札から調達までのコストの調整でありまして、商取引です。一部の報道ではあたかも国家ぐるみの価格偽装とされていますが、それは余りにも言い過ぎだと私は思っています。

 私の認識で偽装というのは、産地を偽装する、米の等級を偽装する、それから、もっとひどいのは飼料用米を主食用米として流通させる、こういうのを偽装と言うのであって、今回の件とは全く性質が違うということを言っておきたいと思います。

 それでは、近年のSBSについて、どんな状況にあるか、簡単に触れたいと思います。

 生産者が大変御努力をいただいて、国産米の需要に応じた生産が進んでおります。その結果、この三年間、SBS、十万トンの枠はあります、しかし埋まっておりません。三年間の平均では、三万四千トンということになっております。

 この内訳を見てみますと、加工用に用いられる砕精米、それからモチ米、これが一万七千トンです。そして、我が国ではほとんど生産されていない、タイ料理、インド料理に用いられるインディカ米、これが四千トン。そして、こだわりの黒米、リゾット用の米、これが百八十トンということになっています。これらのものは、そもそも、国産の主食用米とは全くリンクしません。価格に影響を与えるはずがないわけであります。

 国産の主食用米と競合し得るとすれば中粒種、短粒種ということになりますけれども、これは三万四千トンのうち約一万三千トンです。このような量、これは評価があると思いますが、国産米の価格を引き下げるようなインパクトがあるとは私には考えられません。

 しかし、農林水産省は、こういった事実を丁寧に説明をして、米生産農家の皆様方の不信感、それから不安、こういったものを取り去る努力をする責任があると思いますが、農林大臣にお尋ねします。

山本(有)国務大臣 SBS米の価格につきまして、いわゆる業者間の金銭のやりとり、調整金によって価格に影響があったのではないかという疑いが発生しました。そこで、我々は、そんなことがあるのかないのか、これを念のためにきちっと確認する必要がある、こう思いまして、調査をいたしました。

 今回の調査では、SBS米の買い受け業者、輸入業者などへのヒアリング及び関連データの分析などに取り組んできたところでございますが、この結果、民間事業者間の金銭のやりとりはある程度あったものの、SBS米が国産米の需給、価格に影響を与えている事実は確認できませんでした。

 特に、SBS米と国産米の価格の関係につきましては、買い受け業者においては、SBS米の価格が国産米価格に影響を与えるという認識はありません。関連データと照らし合わせてみましても、国産米の価格水準を見据えてSBS米の価格形成がなされていることが逆に確認できました。

 SBS米が国産米の需給及び価格に影響を与えていることを示す事実は確認できなかったものの、今回の調査を踏まえまして、SBS入札に関する不信感が生じないよう、今後、国と落札業者との間の契約内容を改善することといたしました。

 また、TPP合意のもとで、協定発効から十三年目以降、合計最大七万八千四百トンと、国内消費量の一%程度の数量のSBS方式の国別枠が設置されることになりましたが、備蓄運営の見直しによりまして国内の需給及び価格への影響を遮断いたしまして、確実に再生産が可能となるようにしていくことにつきまして、米農家など生産現場にしっかり説明させていただきたいと考えております。

江藤委員 ありがとうございました。しっかり努力をしていただきたいと思います。

 次に、再交渉について、石原大臣にお尋ねをさせていただきます。

 その前に、ちょっと一点、指摘をさせていただきます。

 最近よく聞くのは、米国のオバマ大統領在任中のレームダック期間の承認は現実的にあり得ない、米国の出方がわからないうちは待つべきだというような意見であります。

 しかし、本当にそれでよいのでしょうか。自分としては、何かにつけて米国の顔色をうかがう、そういったことは間違っているというふうに私は思います。他国がどうのこうのということではなくて、我が国が独立国として独自に判断する、これは当たり前のことであります。待っていて、米国にあたかも譲歩する用意があるというふうに見られるとすれば、これは最悪であります。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、米国から再交渉を求められても決して応じることはない、また、七年後の再協議においても、他国から見直しを求められたとしても、国益に反するような見直しには断じて応じない、このことを大臣に確認させていただきます。

石原国務大臣 まず、冒頭のお話でございますが、日本が率先してやるというのは独立国として当然であるという江藤委員の御指摘は、まさに私は意を得たものだと認識をしております。

 そして、再交渉についてでございますけれども、これはやはりTPPというのがマルチの交渉で分野が多岐にわたっている、これを一つ変えるということは全体の合意が崩れ去る。ですから、再交渉は行わないということは、さきに十二カ国の大使がケネディ駐日米大使のもとに集まりまして確認をさせていただいた中でもその話が出まして、再交渉は行わないと。

 一方の再協議でございますが、これはいろいろなEPAの中に入っております。七年目の再協議という形でこのTPPには入っておりますけれども、再交渉をしても、国益を害するようなことは合意をしませんから、心配、御懸念はないものだと私は承知をしております。

江藤委員 ありがとうございます。しっかりとした覚悟を聞かせていただいたものだと私は評価をさせていただきます。

 あと一分となりましたので、最後に締めのことを若干述べさせてもらいます。大分話を飛ばしてしまいました。

 さきの参議院選挙で全国の投票率を見ますと、宮崎県の中山間地域にある西米良村、これが全国の一位でありました、投票率九一%。諸塚村が第四位。椎葉村も、ベストテンには入りませんでしたけれども、上位でありました。

 私の父は、どんな山間僻地といえども政治の恩恵があっていいのではないか、このことをいつもいつも言っておりました。私もその遺志を継ぐものであります。

 農林水産業を支えるのは、あくまでも現場で頑張る生産者であります。その生産者の背中をもう一歩前に踏み出せるように押すのが政治の役割だと私は思っています。また、中山間地域を含め日本の農林水産業を維持発展させていくことは、これは日本国民全体の利益にかなう、そういうことだと私は信じています。

 アベノミクスは何が何でも成功させなければなりません。農林水産業は言うまでもなく産業の一つであります。どんなに頑張っていいものをつくっても、景気が悪ければ買ってもらえません。農林水産業にかかわる者はもちろん、国民全体でアベノミクスの成功を願っています。総理、頑張ってください。

 これで質問を終わります。

塩谷委員長 次に、小泉進次郎君。

小泉(進)委員 御紹介いただきました自民党農林部会長の小泉進次郎です。

 きょうは、総理、二十分でありますが、よろしくお願いします。

 一年前、私は自民党農林部会長になりましたが、正直言って、そのときは驚きました。私は、横須賀、三浦という神奈川県の都市農業、そしてキャベツ、大根の一大産地が地元ではありますが、農業、林業、これを専門にやってきたわけではない。そんな中で、このTPPを迎えたタイミングで農林部会長になったことは、当初、どこから勉強したらいいのか、そこから私は戸惑うほど驚きましたが、一年たった今、心から感謝をしています。

 農業ほど国民の生活に近い、そんな政策分野はないと思います。私たちは、生きるためには食べなきゃいけない。その食べるものを生産して、つくってくれているのが農家の皆さんです。その農家の皆さんのTPPに対する不安、そして、漠然とした、これからの日本の農業はどうなっていくのか、こういったことに対する不安に、きょうは短い時間でありますが、質問をしたいと思います。

 まずは、TPPに対してです。

 今、私が農林部会長として取り組んでいる骨太の方針をつくるというこの改革に対して、全国で説明会を開催しています。先週から関東ブロックが始まって、おとといが名古屋で東海ブロック、そしてきのうは富山で北陸ブロックと説明会を開催いたしましたが、きのう、説明会の後に富山の農協関係者の幹部の皆さんとお話をしたところ、話題になったのは、TPPの審議で話題になった、あの黒塗りの資料の問題であります。

 正直言って、全く現場には伝わっていません。この黒塗りが何に対しての黒塗りなのかさえも伝わっている印象はありません。

 総理から、きょう、全国の農家の皆さん、不安を持っている全国の皆さんにはっきりとお伝えいただきたいのは、あの黒塗りは、TPPの交渉の結果に対する黒塗りではなくて、交渉の過程に関する情報の開示のあり方に対する結果である、このことをはっきりともう一度、全国の皆さんにお伝えいただく必要があると思います。

 これは、野党の皆さんもわかっていると私は思います。交渉の過程の中で、どこどこの国の誰々という交渉官がどんなカードを切って何を言ったか、日本の交渉官が途中でこういうカードを切ったとか、そういったことを明かして通商交渉、外交交渉が成り立つわけがないというのは、私は野党の皆さんもわかっていると思う。

 なので、改めて、今回のTPPにおいては、TPPの交渉の結果については全て開示をしているということ、これを全国の農家の皆さんにも、その他多くの皆さんにも改めてはっきりと御説明いただく必要があると思いますので、総理から答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 大変いい御指摘をいただいたと思います。

 私も、もっとしっかりと、国民にわかりやすく結果について開示すべきではないですかという意見をいただいたことがあるんです。そこで、私は、結果についてはしっかりと開示をしていますよと。そもそも結果について開示がなければ審議ができないのは当然のことであります。これは、どんな交渉においても、条約においても、審議する内容はまさに結果であります。

 しかし一方、条約を結ぶに当たっても、さまざまな協議をします。そのさまざまな協議については、相手との関係がありますから、その協議の途中の過程を開示するということであっては、そもそもこれは交渉自体が成り立たないわけでありまして、今まで、外務委員会等で交渉過程を開示してそれを議論したということはほとんどないわけでありまして、基本的には結果について、条文について議論をするということであります。

 そこで、昨年の十月の大筋合意後、国会や約三百回実施してきた説明会等で、合意内容に関しては、情報を全て提供し、丁寧に説明をしています。この過程において、協定の内容等に関する各種資料、分野別の中小企業向けの資料など、約四千ページ以上に及ぶ資料を公表しています。四千ページ以上の資料を公表しているのに、それをここで議論せずに、問われても開示できない交渉途中の経過について黒塗りだからおかしいと言うのは、これは全く議論として間違っている。つまり、中身についてしっかり議論しないための議論としか私は言えないんだろうと。

 真面目に、国民の皆さんにどういう影響があるか、それはまさに交渉の結果が影響するわけでありますから、交渉の結果がどういうものだったかということをしっかりと、我々も交渉の結果についてはお示しをしておりますし、皆さんに御説明もしておりますし、この議会において御議論をいただきたい、こう思う次第でございます。

小泉(進)委員 今の総理の答弁で、改めて、今回のTPPの交渉の結果について全て開示されていると。このTPPの特別委員会においても、まさに全て結果に対しての情報は開示されているわけですから、その開示された結果についてしっかりとした審議がこれから続いていくこと、それを私も野党の皆さんにもお願いしたいと思います。

 一方で、大変興味深かったのは、きのう、おととい、名古屋と富山で各ブロックの農業関係者の皆さんにお集まりをいただいた場で、二時間以上にわたる意見交換をやりました。その場でTPPに対する質問は、名古屋ではゼロ、富山でもゼロ、全くありませんでした。

 そして、きのうの富山で、私と同世代の若い農家が非常に前向きな意見を述べてくれて、それがすごく印象的だったものですから、きょう、この質問の前に電話をして、これからの日本の農業の不安は何か、どんなことに不安を持っているかを聞いてみました。その彼は、不安がないと言いました。

 私は、全国を回っていて、今後の日本の農業、また自分がやっている農業に不安がないという方の共通点があると思っています。

 山形県に行ったときも、農家レストランをやっている農家の方が、何か不安がありますかと言ったら、私はないですと言いました。何で不安がないんですか、私のもとには不安だ不安だという声の方が大きい、なぜあなたは不安がないんですかと聞いたら、小泉さん、私は誰に売っているかわかっていますから、自分の顧客がありますからと。市場に出して、どこに行ったかわからない、誰に買ってもらっているか、誰に食べてもらっているかがわからないわけではなくて、私は、誰に買ってもらっているか、どんな野菜、どんな果物が求められているか、それを考えながらやっているから、これからも常に選んでもらえる、そんな農業を続けていこう、とにかくそこを考えているから私は不安はありませんという声でした。

 きょうの朝、私が話した石川県金沢市のレンコン、お米をやっている、私と同世代の農家の方も不安がないと言いました。一方、その他多くの方に不安があるのはそのとおりでしょうということをその方も言っていました。

 その多くの方の不安はTPPから来ているのでしょうか。私は違うと思っていますよ。その同世代の農家の方が言っていたのは、これから日本の農業はどうなっていくんだろうかということに対する漠然とした不安をみんな持っているんだと。そのことに対して日本の国が、政府が、行政が、そして国民が、日本の農業をどうやってこれからも位置づけていくかをしっかりと示してもらえれば前向きにやっていけるだろう、そんな声をいただきましたので、私は、そのこれからの日本の農業はどうなっていくかという漠然とした農家の皆さんが持っている不安に少しでも応えるべく、残りの時間はあと十分、そこだけ質問をさせていただきます。

 私は、日本の農業の持っている力は胸を張って世界に誇れるものだと思います。現に、和食が世界遺産になったことも、日本の農業の力が和食を世界遺産にした大きな礎だったと思っています。

 しかし一方で、それでは、今までと同じように日本の農業をやっていればそれで日本の未来は明るいのかと言われれば、私はそれは違うと思います。

 現に、このTPPの話が出るはるか前から、日本の農業の総産出額はこの二十年間で十一兆から八兆に減り、農家の皆さんの総所得も五兆円台から二兆円台に減り、そして耕地面積は五十万ヘクタール失われました。そして、平均年齢は、農家の皆さんは六十七歳、米農家の平均年齢は七十歳。

 つまり、一言で言えば、私は、今の日本の農業の状況は持続可能性を失ったと思います。その持続可能性を取り戻すことこそが今から我々がやらなければいけない、言葉をかえると、農業の構造改革をやらなければいけないと思います。

 そこで、TPP、農業の構造改革、アベノミクス、これは全てつながっていると思います。そういった中、私は今、今までの日本の農業で主役の一人としてこの日本の農業を引っ張ってきてくれたJAグループ、その皆さんと向き合いながら、これから農協の皆さんが、特に農家の皆さんが使う肥料、農薬、家畜の餌、段ボール、ハウス、農業機械、こういったものを農家の皆さんに売って、そしてまた農家の皆さんが生産したものを一円でも付加価値をつけて有利に販売するという、いわば商社のような機能を持っている全農の皆さんと対話を重ねています。

 このあり方も新しい時代に合わせて抜本的に見直していただく必要があると考えて、来月の取りまとめに向けてさまざま議論を重ねています。今までの大きなプレーヤーである全農の皆さん、さまざまな思いはあると思いますが、私は、このタイミングで抜本的に変える必要がある、その覚悟が政治にも求められていると思いますが、総理の農業の構造改革に対する決意のほどをお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 私が初めて当選したのは平成五年でありました。当時から、私の地元は農村地帯でございますから、農林部会にもしょっちゅう顔を出していた。

 農林部会の主なテーマは、農業をいかに守っていくか。随分頑張りましたよ。何とか価格を維持していきたい、できれば少しは上げたい、そして海外から一切物は入れない。と同時に、海外に輸出をするということはみんな全く考えていなかった。一生懸命頑張ってきた結果が、今、小泉さんが御紹介されたように、平均年齢は六十六歳を超えているという状況になってきてしまった。農家の収入も全体で減ってきている。

 しかし、よく考えてみれば、食品の市場の規模は世界で今がっとふえています。毎年毎年ふえている。でも、残念ながら、そこで我々はそのふえている市場を全く私たちの農家の収入に引き込むことができていない。

 この中において、改革をしなければ将来がないんだろうと思います。若い皆さんに守ってあげるから入ってこいと言っても、若い皆さんは入ってこないんですよ。若い皆さんがみずからの努力と情熱で新しい地平線を切り開いていける分野だということになって初めて、若い皆さんも入ってくる。その中で、農協も中央会もみんなに協力をしていただいて農家の収入がしっかりとふえていく、私はそういう農業をつくっていきたいと思います。

 先般災害で視察をした中川郁子さんの地元帯広でありますが、ここで長芋を生産していた。量販店は、大き過ぎてこれを扱わない。では一体どこに持っていったらいいんだろうということで、台湾が大きな長芋を高く買うということで、ここへの輸出を始めた。これによって農家の収入はすごくふえて、今やとうとうアメリカへの輸出も相当ふやし始めていたやさきに先般の台風被害があって、大変困っている。

 しかし、そういう努力するところはしっかりと応援をしていきたい。いわば、まさにぎりぎりのところまで私たちは来ていますから、だからこそ、今が一番の改革を進めていくチャンスであろう。

 確かにTPPによって海外からも入ってきますが、先ほど江藤拓先生から御紹介いただいたように、米国への肉の輸出はチャンスを迎えるわけであります。そういうチャンスをしっかりと生かしつつ、かつ、しっかりと農家に高い収入を残していく、これは大変なポイントだろう。輸出していくときに高い値段で売れても、今まだ農家の収入はそれほどふえていないというのが状況でありますから、高く売れたら農家にもちゃんとお金が入る。

 今、例えば、私のところで梨をつくっている農家が東京の有名店にすごい値段で入れているんですが、この農家に入ってくるのは、ちょっとしか入らないんですね。ここはまさに力関係なんです。

 この力関係で、商社機能を持っているところはしっかりとその力を発揮してもらうことも含めて、まさに、農家にとって一円でも高く売れるように、そしてコストは一円でも安くなるように、そういう努力ができる、そういう農業に変えていくように、小泉部会長には大いに期待をしておりますから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

小泉(進)委員 私は、農林部会長になって農協の皆さんと向き合う中で、今でもわからない根本的な疑問があります。

 それは、農協の皆さんは協同組合ですから、協同組合にしかできないことというのがあるんです。それが共同購入です。共同購入は、協同組合だからできるからこそ、独禁法が適用除外をされています。しかし、だったらなぜ、農協よりもホームセンターの方が安いものがあるという現状が生まれるんでしょうか。

 そして、北海道の陸別農協という、餌を安く提供している農協の組合長と最近お会いをしました。ほかの農協と比べて餌を安く売っている。でも、だったらなぜ、ほかの北海道の農協の組合員さんはその安いところから買えないんでしょうか。農業の世界では当たり前なのかもしれませんが、私にはその当たり前が理解できません。

 一円でも安く必要なものをどこからでも自由に買うことができて、経営感覚を持って自由な経営が展開できる、まさにそれこそやらなければいけない構造改革だと思いますが、最後に総理から御答弁をお願いします。

安倍内閣総理大臣 今まさに小泉委員が指摘をされたところが極めて重要な点なんだろうと思います。

 農家の皆さんにとっては、先ほど申し上げましたように、肥料や飼料を一円でも安く仕入れ、そして農産物を一円でも高く買ってもらう、そのための努力を協同組織である全農には行ってもらいたい、そういう気持ちが大変強いんだろうと思います。ですから、こういう思いに、そして時代の要請に応えて、全農も新たな組織に生まれ変わるつもりで頑張っていただきたい、このように思います。

小泉(進)委員 ありがとうございました。

 そろそろ時間が来ましたが、私が最後にテレビを見ている皆さんにもお伝えをしたいのは、日本の農業、また漁業もそうです、林業もそうです、この一次産業を守るのは、決して農家の皆さんの努力だけでできるものではありません。大事なのは、消費者の皆さんの意識また行動、こういったものも日本の食の未来を形づくる大きな役割を持っているということをお伝えしたいと思います。

 最近では、野菜が高い、そういったニュースが多くありますが、全国の農家さんと会うたびに今言われるのは、なぜ高いときしか言ってくれないんだと。そういった中で、私も全国の現場を見るたびに、これだけ手塩にかけて、時間をかけて生産したものがこれだけかと思う農家の皆さんの気持ちは痛いほどよくわかります。

 そんな皆さんの努力が報われるようにするには、しっかりと消費者の皆さんにもそのことをお伝えしたい、そしてその結果、国民全体で支える農業を確立するために今後とも頑張っていきたいと思いますので、このTPPの審議においても、その農家の皆さんの不安に応え、前向きな未来を見ることができるような、そんな委員会になることを期待申し上げて、私からの質問を終わりたいと思います。

 最後までどうもありがとうございました。

塩谷委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 通告に従いまして順次質問をさせていただきます。

 まず、本題に入ります前に、どうしても、大変重要なことでございますので、二点ほどお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず一点目は、台風災害についてであります。

 この夏、八月から九月にかけて、これまでも経験をしたことのないような連続した台風が北海道、東北を襲いました。河川や道路、鉄路、生活インフラ、農業、林業、水産業、大変大きな被害をもたらしました。

 改めて、お亡くなりになられた方々、被災を受けました皆様に対して、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げる次第でございます。

 発災以来、安倍総理、また山本農林水産大臣、石井国土交通大臣を初め、政府の方々には現地入りをしていただきました。我が党においても、山口代表、井上幹事長を初め、私もそうですけれども、国会議員また地方議員が被災地や被災自治体を訪れまして、現場のニーズをお聞きし、迅速に対応させていただいてまいりました。

 私も、その中で、いまだに記憶に鮮明に残っておりますことは、北海道の南富良野町を訪れたときです。町長を初め、町民の皆さんが必死の復旧作業に努めておられる、その中で、ある農家の方にお会いしました。

 その方は、道外から移住をして、十年前から農業に従事をしてきた。そして十年間かけて農業の基盤を築き、技術も身につけ、そして六次産業化まで手がけるようになった。ところが、今回のこの台風で、農地も含め、その全てを失ってしまった。大変悲嘆に暮れていました。しかも、この方は消防団員で、みずから被災を受けていながらも、実際には町民の皆さんの救援活動に奔走していたという話をお聞きしました。大変な状況でしたけれども、この方は、落胆はしていましたけれども、再チャレンジしたいんだという強い意思を表明されました。

 私も、大変な思いだなということで、心を一つにさせていただきましたが、こうした方々のためにもこれから全力の支援をしていかなければいけない、このことを我々の使命にしていくべき、改めてそう思っております。

 復旧の状況ですけれども、河川、国道復旧、橋梁の改修、それから農地、農業施設、森林関係、漁港施設関係、査定前着工制度による復旧ですとか、農業共済も迅速な調査と早期の支払い、それから、対象品目外のところもさまざまな御支援もということで、融資も含めて、私はこれまでの政府の対応を評価させていただきたい、このように思っております。

 きょう、ここでテーマにさせていただきたいのは、実はJR北海道のことなんです。

 JR北海道も大きな被害を受けました。北海道の石勝線、根室線、いまだに復旧のめどはついておりません。先般、十三日の日に、JR北海道の社長が一部復旧について年内をめどにということでお話をされました。これまでも、このJR北海道支援については、参議院の予算委員会で少し質疑がありましたけれども、まだ十分な議論になっていないと思っております。

 私はきょうここでこのことを取り上げさせていただきたいと思っていますが、民間の企業、事業所なので、原則、激甚災害対象にはならないということでございます。しかし、北海道民や、道あるいは市町村、それから関係諸団体からは、一日も早い復旧とJR北海道への支援の要請がございます。

 そういう中で、災害復旧事業費補助金というのがありますが、これは鉄道軌道整備法に基づいて、大規模な天然災害、そしてその天然災害についてももっと具体的な項目があって、さらに、営業損失を生じている鉄道事業者か、また、区間鉄路の輸送の密度についての制限もあるということです。しかしながら、ぜひこの災害復旧事業費補助金の適用を速やかに実施していただきたい、このように申し上げているところでございます。

 ただ、大前提になるのが原形復旧だということ。しかし、今回、私も現場を見てまいりましたが、とても原形復旧では対応できない状況になっている。例えば、橋がかかっていて、線路があって、その川が、当初の、被災を受ける前の川の倍以上の広さ、長さの川になってしまっている。ですから、その橋も、また橋梁も流れる、そういったことを考えていくと、やはり原形復旧では到底対処できない。

 ぜひ、一部機能強化という改良復旧を検討いただきたい、このように思っておりますが、この点についての御見解をいただきたいと思います。

末松副大臣 今回の一連の台風災害で被災したJR北海道の路線につきましては、運休しておりました根室線の富良野駅から東鹿越駅間が、本日、十月十七日より運転を再開いたしております。これにより、運休中の区間は、石勝線のトマム駅から新得駅間及び根室線の東鹿越駅から芽室駅間の二路線二区間となっております。

 このうち、石勝線のトマム駅から新得駅間及び根室線の新得駅から芽室駅間では、三カ所の橋梁が流失するなど大きな被害が発生をいたしました。現在、北海道等の協力を得ながら、年内の復旧を目指して努力、工事をいたしているところでございます。

 一方、根室線の東鹿越駅から新得駅間につきましては、被害が甚大であることから、工事着手は早くても来年春以降の予定になる、そういう話を伺っております。

 国土交通省といたしましては、今回非常に大きな被害が発生したことを十分に踏まえまして、災害に強い鉄道を構築することを念頭に置きながら、まずは被災した施設の早期復旧に向けて、今先生おっしゃいました鉄道軌道整備法に基づく災害復旧事業費補助制度を初め、必要な支援について検討いたしてまいりたいと考えております。

 稲津先生のお気持ちやお考えをしっかりと受けとめて、北海道の早期復旧に向けて努力いたしてまいる覚悟であります。

稲津委員 それで、今御答弁いただきましたけれども、これまでに経験したことのない局地的な豪雨というのが、再発を考えていったら、やはり原形復旧では当然対処できないというのが基本的考えです。ぜひそこのところをしっかりと検討していただきたい。

 今、北海道では、今回の台風によって相次ぐ宿泊施設等のキャンセルが続いています。大変厳しい状況にあります。その一つの要因としては、やはりJR北海道の線路が復旧していないということがありますから、ぜひ最重要の公共交通機関としてJR北海道にも頑張ってもらいますけれども、国からの支援を求めておきます。

 次に、北方領土問題についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 まず一つ目は、歴代総理の北方領土問題に対する日ロあるいは日ソの交渉の取り組みについてということであります。

 これは、日本とロシアの間の最大の懸案事項というのは、北方領土問題を解決して平和条約を締結することに尽きると思います。

 歴史的に振り返ってみますと、一九五六年の日ソ共同宣言、これは国交回復をすることができたという大変大きな転換点でした。そして、一九七三年の日ソ共同声明、九一年の四月、ゴルバチョフ大統領のソ連の元首としての初訪日、これは非常に大きかった。九三年、エリツィン大統領の訪日、九七年、東京宣言、二〇〇一年のイルクーツク声明、そして二〇一三年四月、安倍総理の日本の総理としての十年ぶりのロシア訪問。安倍総理の代になって、まさに日ロ交渉は加速化している、私はそのように思っております。

 戦後七十年、あるいは日ソ共同宣言から六十年を経た今、御自身も含めて、歴代総理の果たしてきた日ロ交渉の取り組みをどのように評価されているか、総理にお答えいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 我が国は一貫して、ロシアとの関係においては、領土問題を解決して平和条約を締結する、この基本方針のもとに交渉を重ねてきたわけでございます。

 五六年宣言の後、日米の安保条約の改定が行われ、当時のソ連側から、五六年宣言が事実上これで無効になったかのごとくの通達があったわけでございますが、そして、しばらくの間、領土問題は存在しないという期間が相当続いてまいりました。

 そこで、その後、田中角栄総理大臣がソ連を訪問したときに、ブレジネフが、当時の第一書記が、領土問題が存在するんだということに対して、それはそうだと認めたという日本側の記録がありますが、これは、当時もソ連側は、それは違って、ダーと言ったんだけれども、ダーではなくてせきをしたんだということ等も、そんな対応すらあったわけでございます。

 しかし、その後、先ほど御紹介いただいたように、一九九一年の海部・ゴルバチョフ、そして九三年の細川・エリツィン、九八年のエリツィン・橋本、これはいわば川奈合意と言われているものがございます。そして、森総理とプーチン大統領によるイルクーツク声明があったわけでございます。そして、その後の二〇〇三年の小泉総理とプーチン大統領による日ロ行動計画と進んできたわけでございます。時代ごとの交渉において波があったわけでありますが、そうした歴代の総理の努力の上に今日の交渉がある、こう思っております。

 しかし、既に敗戦から七十年以上の時がたったわけでございまして、元島民の皆様の年齢も相当高齢になっているわけでありまして、時間も余り残されていない中において、まさに私たちの世代で解決をしていくという決意を持って交渉を進めていきたい、このように考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、日ロ、日ソ交渉の歴史的な転換点という視点で総理にお伺いしたいと思います。

 今、総理からもお話がありましたけれども、私は、この歴史的な転換点というのは、もちろん、一九五六年の日ソ共同宣言、ここで国交回復となったわけですから大きいと思うんですけれども、何といっても、一九九一年四月のゴルバチョフ大統領のソ連の元首としての初訪日、ここで領土問題の存在を初めて文書で確認した。共同声明では、領土問題を含む平和条約締結の重要性がいわゆる首脳レベルで確認された。私は、これはまさに歴史的な転換点だと思っています。

 ここに至るまでには、当然、政府、関係者のみならず、ゴルバチョフ大統領との親交のある方々を初め、平和外交のそうした取り組みが大きいことを忘れてはいけない。そして、その上で、政府の取り組みの中で、当時の歴代総理の果たしてきた役割も大きいですが、ゴルバチョフ大統領とソ連政府との交渉に重大な任を果たされてきたのは、ほかならぬ安倍当時外務大臣、総理のお父様です。

 一九八六年一月に、八年間中断していた外相協議の再開、領土問題を含む政治対話、そして五月の安倍外務大臣のソ連訪問、ゴルバチョフ大統領との対談。その中で、領土問題を解決し、平和条約を締結すべきだ、その重要性を主張したのが、まさに当時の安倍外務大臣でした。その後、このことがきっかけで北方墓参が再開されました。元島民を初め関係者の方々にとっては、どれだけこのことが励みになったかわかりません。

 そしてついに、その安倍当時外務大臣のまさに獅子奮迅の取り組みによって、一九九一年四月には、ゴルバチョフ大統領は訪日をし、領土問題の存在を初めて文書で明確にしたわけでございます。私は、まさにここが日ソの交渉の大転換点の一つだと思っていますが、総理はこの点についてどのような御見解をお持ちか、お伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 当時は、ゴルバチョフ大統領の登場によってソビエトも新しい時代を迎えたのではないか、そこで、この領土問題も解決に向けて進んでいくのではないかという期待を私たちは持ったわけでございます。

 御指摘のとおり、私の父、安倍晋太郎は、一九九〇年一月に、自民党代表団を率いましてソ連を訪問し、ゴルバチョフ大統領と会談をいたしました。新たな日ソ関係を展開させていくとの決意のもと、父より、経済、文化、人的交流等、幅広い分野から成る八項目の協力計画を提示いたしました。ゴルバチョフ大統領からは、両国間の困難は英知を持って解決を図っていくとの言質を引き出すことに成功したわけでございまして、私も当時同行したのでございますが、まさに父の世代として、この問題を何とか解決したい、そういう執念を感じたところでございます。

 そして、その翌年四月に、ゴルバチョフ大統領は訪日をし、海部総理との間で首脳会談を行い、日ソ共同声明を発表したわけでございまして、この声明では、歯舞群島、色丹、国後島及び択捉島に言及しつつ、平和条約が領土問題の解決を含む最終的な戦後処理の文書であるべきことを明記するなど、四島が平和条約において解決されるべき領土問題の対象であることが初めて文書の形で明確にされました。

 こうした意味において、一九九一年の日ソ共同声明は、それまで領土問題の存在を否定してきたソ連が初めてその存在を認めた歴史的な転換点となった文書である、このように評価をしております。

稲津委員 ありがとうございました。

 それで、このテーマの結びとして、総理の決意をお伺いしたいというふうに思っております。

 今お話がございました。まさに、外交交渉にはどこかのタイミングで必ず歴史的転換があるんだということを今総理の答弁を聞きながら強く感じておりましたが、私は、総理の日ロ外交の精力的な動きというのを大変関心を持っていますし、私なりに高く評価と言ったら大変失礼ですけれども、そのように思っております。

 二度にわたるロシア訪問と、最初の安倍政権のときから合わせて十四回、プーチン大統領との対話を重ねてきている。総理はこれまでも、一日も早く困難な課題を解決して平和条約を締結したい、次の世代に先送りせず、可能な限り早期に解決を図らなければならない、このように述べられておりますが、私は、そこの奥底には、総理は、当然ですけれども、並々ならぬ決意を持ってこの言葉を発せられていると思っています。

 一昨年、総理に私は質疑でお聞きしました。同じことをお聞きして大変恐縮ですけれども、私は、総理とプーチン大統領との重ねてきたこの十四回の対話で、いよいよ機は熟してきた、このように強く感じています。

 そこで、総理にお聞きしますけれども、みずからが総理の在職中にこの北方領土問題を解決する、その御決意をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 先ほどもお話をいたしましたが、元島民の皆様から、自分たちが元気なうちに自由に墓参できる、自由に行き来できるようにしてもらいたいという切実な思いが伝えられたところでございます。私たちの世代で何とかこの問題を解決しなければいけない、こう思っています。

 私は、ウラジオストクにおきまして、プーチン大統領に、領土問題については、一〇〇%自分は正しいという確信のもとに述べておられるんだろうと思うし、あなたはその確信のもとに述べておられるんだろうし、私もそうだと申し上げました。しかし、お互いがそういう議論を続けていけば、あとまた何十年時を過ごしたとしても、この問題は解決をしない、お互いに責任感を持って、自分たちのときに解決をするという強い意思を持って交渉を進めていこうではないかとプーチン大統領に呼びかけたところでありまして、基本的にプーチン大統領も同意をしていただいた、このように思います。この平和条約のないという異常な状態を、一日も早くピリオドを打たなければいけないわけでございます。

 十二月に予定する山口県での日ロ首脳会談では、こうした考えに基づき、静かな雰囲気の中で率直に議論をし、そして平和条約締結交渉を前進させていく考えであります。今を生きる世代としてこの問題を解決していくという強い決意を持って臨みたい、このように考えております。

稲津委員 いよいよ十二月までもう一月、二月ぐらいになってまいりまして、関係者の期待は大変大きくなってきています、私も同様でございますけれども。この北方領土問題の解決、平和条約締結というのは、やはりどう考えても、両首脳の間でどういう対話が最終的に結実するかということに尽きると思います。ぜひ、総理のこれまで重ねてきたプーチン大統領との外交の対話を結実させていただきたい。そして、日ロ外交のまさに大歴史転換だった、そう理解のできる、思える、そのことを心から期待を申し上げる次第でございます。

 それでは次に、TPPに関して質問させていただきます。

 まず、SBS米についてお伺いをさせていただきたいと思いますけれども、これはちょっとわかりづらいところがありますので、パネルを用意しました。

 いわゆるミニマムアクセス米の輸入の仕組み、これは、一般のものについては、全体七十七万トンからSBS米の輸入量を引いたものになりまして、ここに書かれているとおりですけれども、価格の面では、国産米では十分対応しがたい、いわゆる加工用とか飼料用、非主食用に用途として使われる。

 SBS米の方は、最大十万トンですけれども、実際はそこまでいっていませんが、輸入業者から国が買い入れて、そして国が実需者に売り渡すという、この構図は変わらないんですけれども、この輸入業者から実需者の間には、例えば、いろいろなニーズがありまして、ジャスミン米が欲しいとか、そういった実需者のニーズがあるものですから、輸入業者との実質的な直接取引があるというふうに言われています。主に主食米として販売している。

 この実質的な直接取引のところにいわゆる調整金があった、今、調査の結果はこのようなことになってきているんですけれども、そこで一番の関心事は、それでは、この調整金と言われるものが国産米の価格や需給に影響するのかどうかということなんです。今回の調査報告の結果、この調整金の存在は確認されたんですけれども、それでは、国産米の価格に影響があったのかどうか。

 私は、米の価格水準というのは、これは輸入米、国産米にかかわらず、基本的に品質とかあるいは需給で決まっている、このように認識しておりますが、この点についての見解を伺います。

山本(有)国務大臣 委員おっしゃるとおり、米の価格は品質と需給で決まっていくものなり、こう思っております。

 そこで、今回、調査をいたしました。SBS入札に関して民間事業者の金銭のやりとりの報道がございまして、米農家のSBS入札に関する不信感が生ずるおそれがありました。不信感の払拭のため、関係事業者へのヒアリング、関連データの分析、これを行ったところでございます。

 結果からしまして、民間事業者の金銭のやりとりはある程度あったものの、現在もあると回答した者は、買い受け業者で約一割、輸入業者で約三割でございました。買い受け業者は国産米の価格水準を見据えながらSBS米の販売を行い、事業者の経営全体として利益を上げていこうとすること、主要な外食、中食事業者は、SBS米の価格が国産米の価格に影響を与えるとは考えておりませず、国産米が確保できない場合にSBS米を使用しているといった実態が浮き彫りとなりました。

 関連データの分析からは、八百万トン流通しております国産米の価格が低いときは、SBS米に対する需要が大きく減少し、SBS米の輸入、流通すら限定的になっております。毎月公表されております国産米の相対取引価格につきまして、SBS入札が行われた月と翌月との間で国産米価格はほとんど変動いたしておりません。現在はSBS米が小売店の店頭等で販売されることは極めて少ないものの、販売されているSBS米の価格は国産米の価格と同水準で販売されていることについても確認ができました。

 これらを踏まえますと、米の価格水準は、輸入米、国産米を問わず、基本的に品質及び需給で決まっております。金銭のやりとりがあったといたしましても、SBS米の価格が国産米の価格に影響を与えることはありません。国産米の価格は国産米自体の需給動向等によって価格水準が決まっておりますという基本的な構造は変わりません。

 加えて、TPPにより設定する国別枠につきましても、備蓄運営の見直しにより国内の需給及び価格への影響を遮断し、確実に再生産が可能となるようにしていくことによりまして、米農家の生産現場に不安を与えることはなく、また説明を徹底的にしてまいりたい、こう考えております。

稲津委員 今御答弁いただいたように、基本的には私の申し上げたことと同じことでありまして、そしてあわせて、国産米の価格が下がるとSBS米の方は減少してくるというお話がありました。したがって、変動は基本的にないんだと。

 それでは、なぜ調整金が必要だったのかという基本的な問いなんです。

 確かに、今回の調査で、調整金は、存在はあった。買い受け業者はSBS米を国が公表している価格よりも安く入手していたことがあるのかどうかということなんです。言いかえれば、調整金があるから輸入米を常に安く売ることができる、そういう構造になっているんじゃないですか。このことについてはどのようにお答えされますでしょうか。

山本(有)国務大臣 今回の調査結果によりますと、いわゆる金銭のやりとりは販売促進費あるいは販売奨励金などと呼ばれておりまして、輸入業者が顧客である買い受け業者を逆に選択して行われております。落札から実際の調達までの間に生じるコストの変化の調整、販売促進等の目的で支払われております。場合によりましては、輸入業者が落札後のコスト増を買い受け業者から徴収する逆調整金もございましたなど、多様でございます。

 こうした金銭のやりとりが生じた背景、目的につきましては、入札後の調達コストの調整、長年のつき合いの顧客対応や取扱数量をふやすための販売促進、SBS米の落札を確実にしたいという目的というようなさまざまな要因が挙げられております。

 買い受け業者といたしましては、国産米の価格の水準をSBS米の販売価格の決定の際の主な考慮事項としておりますし、仮に輸入業者から金銭を受け取ったといたしましても、その金銭をプールした上でさまざまな経費に活用されておられますなど、買い受け業者は国産米の価格水準を見据えながらSBS米の販売を行いまして、事業者の経営全体として利益を上げていこうとする実態にあることが確認できたと考えております。

 以上のように、SBS米に関連した民間事業者間の金銭のやりとりが生じた背景や目的は極めてさまざまでございますけれども、これが国産米の需給及び価格に影響を与えているということを示す事実は確認できなかったところでございます。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

稲津委員 いわゆる調整金は事業促進という目的で、しかし多種多様であるという御答弁でした。それはそれでわかるんですけれども、では、今回、調査によってこういう事実がわかったことを受けて、このSBSの制度は残すのかどうかという質問なんです。

 あわせて、例えば、これに関連してくるとよく言われるんですけれども、食糧法の改正はしないのか、こういう問いがありますけれども、このことについてはどのようなお考えでしょうか。

山本(有)国務大臣 ミニマムアクセス米の輸入に当たりましては、国産米に極力影響を与えないように、国家貿易として国が一元的に輸入して国内に販売することとしております。SBS方式も、MA米の一部につきまして国家貿易として輸入業者と買い受け業者との実質的な直接取引を認めているところでございます。この仕組みは今後も変わることはありません。

 今回の調査結果では、SBS米が国産米の需給及び価格に影響を与えていることを示す事実は確認できなかったものの、今後、SBS入札に関する不信感が生じないように、国と落札業者との間の契約内容の改善をすることとしております。

 具体的には、SBS契約書の契約項目として、個々のSBS取引に係る三者契約に関連して、輸入業者及び買い受け業者との間の金銭のやりとりを行ってはならないことを明記します。これに違反した場合、資格の停止または取り消し等の措置を講ずることとしております。

 また、食糧法でございますけれども、輸入業者、買い受け業者の連名による申し込みに応じて政府が輸入に係る米を買い入れることができるなど、SBS方式の基本的な仕組みを規定しております。個別具体的な契約項目等について制度の運用を適正に行う必要もございますが、先ほど申しましたように、契約の中身、内容を少し訂正し、改善していきたいというように思っております。

 以上から、WTOの要請でございますSBS方式につきましては存在を続けるということでございますし、食糧法違反ではないけれども、中身の運用につきまして、我々としましては契約内容を改善したいというように考えるところでございます。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

稲津委員 かなり丁寧な御答弁をいただきまして、このことについては、この場ではもう十分理解できたと思います。ただ、非常にわかりづらい構図もありますので、引き続き、やはり農水省としては、消費者の方や、特に農業関係者の方々には丁寧な説明が必要だと思っています。ぜひそのことを求めておきたいと思います。

 次に、TPPについて具体的にお伺いしますけれども、私は、聖域なきTPP交渉はあり得ないとして、農産品の重要五項目などについて、これは守るということを大前提として今日まで参りました。その上で、きょうは総括的な質問になりますので、他の議員とも一部重複する点があるかと思いますけれども、お許しいただきたいと思います。

 まず、TPPの意義についてということですけれども、昨年の十月の大筋合意から一年が経過しました。ここで、改めてTPPの意義についてお伺いをしておきたいと思います。

 我が国は、少子高齢社会から人口減少社会に突入して、少なくとも数十年間はこの状態が続く、このように言われています。パネルを今出させていただきましたけれども、働き手の主力とされている十五歳から六十四歳の生産年齢人口も急激に減少していく。二〇一七年から一八年ころには、もう間近ですけれども、生産年齢人口比率というのは六〇%を割り込んで、戦後すぐの一九四〇年代後半の水準にまで戻るのではないかと言われています。

 このパネル、これは厚労省の資料に基づいてつくってありますけれども、ごらんのとおり、二〇六〇年ぐらいには、人口が総人口九千万人を割り込んで、高齢化率も四〇%を超える、生産年齢人口の割合も五〇%足らずになる、こういう状況の中で、当然、我が国の市場というのは減少傾向になっていく。

 その上で、TPPという、アジア太平洋地域における、世界の経済の約四割、人口八億人、これは何回も繰り返しそれぞれ質問、答弁にございますけれども、この巨大な貿易市場を獲得するということが大変重要であるということ、さらに、これは同僚の中川議員も先般指摘をしておりますけれども、日本とアメリカ、日米を中心とした自由主義国の枠組みの中で経済秩序を築いていくということ、ここに大きな意義があると認識をしております。

 改めて総理にお伺いしますけれども、このTPPという経済連携協定の意義についてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今、稲津委員から、日本の人口の推移をお示しいただきました。まさに、この推移から見てわかるように、日本の人口は減少していく。つまり、それは生産年齢人口とそして消費人口が減っていくということになります。しかし、高齢者の比率は伸びていくわけでありますし、社会保障費はふえていく、その中にありまして、我々は経済を成長させていかなければ、大切なこの社会保障の財源を維持していくことができないわけでございます。

 そこで、各種の改革を行いながら、しっかりと生産性を高めていく、働き方改革を行う、一億総活躍の中でみんながその能力を発揮できるようにしながら生産力を高めていく。

 一方、消費者の数は、これは日本国内でだんだん減っていってしまいますが、しかし、アジア太平洋地域の消費者はふえていくわけでございます。特に、農業についてそうです。農業の市場は、毎年毎年、これはもう数兆円という単位でふえていく、かつ、だんだん高いものを買うようになってきた。だんだん日本の農作物にとっては有利な状況が生まれつつある中において、物や人やお金、これが自由に飛び交う、そして一定のルールの中で仕事ができるようになる。ということは、大企業だけではなくて、中小企業や零細企業、小規模事業者にとっても、今まではなかなか、海外に出ていく、突然ルールを変えられたりいろいろなことが、ハラスメントもあるのではないか、こんな不安があったんですが、このTPPの中では一定のルールで、予見可能なルールの中で仕事ができるとなれば、小さな会社も、しっかりと国も支援をしていけば、十分に出ていくことができるだけではなくて、関税がぐっと下がりますから、サプライチェーンの中で、日本にいながらにしてそのサプライチェーンの中にしっかりと入っていくこともできるようになるわけでございまして、さまざまな可能性も出てまいりますし、普遍的価値を共有する国々とこうした新しいルールをつくっていくことは、経済だけではなくて、安全保障上にも、地域の平和と安定のためにも大きく寄与する、こう考えているところであります。

 もちろん、農業は大切、国の基であります。しっかりと国会決議を受けながら交渉をした結果、農林水産品の約二割について関税等による保護を維持することができました。そしてまた、自動車部品の対米輸出額の約八割以上の即時撤廃を確保したわけでありまして、攻めるべきは攻め、守るべきはしっかりと守ってきたわけでありますし、同時に、まだ多くの農家の皆さんがお持ちの不安にも、このお気持ちに寄り添いながら、ちゃんと対応していきたい、こう考えております。

 これをまさにチャンスにしながら、日本の成長につなげていきたい、このように考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 今の総理のお話のように、TPPの本来意義について、国益を増していくということについて、改めて確認をさせていただきました。

 そこで、もう一つの課題というかテーマになっているのが、なぜ今回の臨時国会でTPPを批准する必要があるのかどうかということなんです。

 政府も私どもも、今臨時国会でのTPPの早期批准を目指しています。しかし、TPPの発効には要件があるということ、署名後、参加している全十二カ国が二年以内に批准できない場合、TPP域内の国内総生産、GDPの合計が八五%を占める六カ国以上の批准で発効できる、そういう決まりが最終的に盛り込まれています。

 このパネルにあるとおり、下の方ですが、アメリカが約六〇%、日本が約一八%のいわゆるGDPがあるということです。そうすると、日本とアメリカのどちらかでも批准できなければ、これは発効できない仕組みになっている。

 アメリカの政治状況を見たときに、十一月に行われる大統領選挙の行方によってはどうなるかわからない。どういう状況下にあって、我が国が先行して批准する意味はどこにあるのか。アメリカが批准できるのかできないのか見きわめてからやるべきではないかという意見がありますが、それに対してどう応えていくかということなんです。

 私は、我が国の早期批准は、まず、TPP反対の声が大きいアメリカの自由貿易推進派の議員や業界をしっかり後押しさせていく。それから、批准への道筋につながる可能性を高めていく。そして、アメリカ以外でも、日本とのEPAを熱望する国、例えばカナダとかですね、締結を促していく。それから、参加決定しましたベトナムとかマレーシアの後押しにもなっていく。そして最後に、これが何よりも大きいと思うんですけれども、アメリカの来るであろう新政権、この新政権に対して、再交渉は受け入れませんよという明確な態度表明になるということ。そういう理由が考えられると思います。

 TPPの早期批准は、先ほども総理から御答弁いただきましたが、自由貿易によって世界経済を浮揚させる、同時に、我が国にとっては成長戦略であるということをいま一度確認し、総理からの見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 TPPの意義については先ほども申し上げたとおりであります。その中で、今、世界を覆い始めた保護主義の動きの中で、米国の批准の先行きも不透明感を増しているのは事実であります。

 しかし、ここで大切なことは、この保護主義の動きは放っておけばどんどん拡大していきます。そういうときこそ、自由貿易の恩恵を享受してきた我々日本が、自由貿易の必要性をしっかりとリードして説いていく必要があるんだろうと思います。そのまさに大切なキーワードとなるべきものが、私はTPPなんだろうと思いました。

 今、日本の動向に世界が注目をしています。G20においても、あるいは東アジアサミットの場においても、ほかの多くの国の首脳から、安倍さん、どうするの、TPPはという話を伺いました。ですから、私は、断固としてやろうと思う、ぜひあなたの国もやってもらいたい、日本が行くんだったら、では、私も頑張りますよという話を随分伺いました。どうもアメリカは心配だねと。

 確かにアメリカの動向は心配ではありますが、アメリカにおいて、何とかTPPを批准したいと頑張っている人々から、日本がぜひ先鞭をつけて、大切さを日本から発信してもらいたい、日本がリーダーシップを発揮してもらいたいという声も随分あるわけであります。

 ですから、ここで日本がぺちゃんとなってしまったら、当然、米国での批准は非常に難しくなるわけでありますし、ほかの国々も日本の動向を見て漂流していくということになってしまうんだろう、このように思うわけでありまして、今こそ日本が主導的な立場をとって、リーダーシップをとって、このTPPについては国会でしっかりと御議論をいただき批准をする。と同時に、もう再交渉はしないということはここで明らかになるんだろう、こう思う次第でございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 実は、次にもう一点総理にお伺いしようと思っていました、TPPがもし発効しなければどうなるのかということについては、先ほどの二つの総理の御答弁でほぼもうそこはいただいたと思っていますので、通告をしておりますが、ここは飛ばさせていただいて、次に、国内対策の重要性ということでお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 TPPにおいては、多方面の産業界それから消費者の視点で考えれば、さまざまな選択肢がふえるという意味で、大きなメリットがあるということは一見できます。

 しかし、一次産業を初めとする、いわゆるTPPにより影響が懸念される農業関係者からの不安の声はずっと寄せられてきている。私の地元北海道においても、農業関係者からは不安が完全に払拭されたという声が聞かれる状況にはまだなっておりません。それは、私はある意味、気持ちがよくわかると思います。

 しかし、だからこそ、WTOのこの協定の整合的な範囲の中で、しっかり守るべきは守っていく、改革すべきものは当然改革すべきですけれども、それと同時に、これは一番大事なことは、国内対策だと思うんです。

 その国内対策をしっかりやりますよ、だから心配ございませんよということを私は明確に繰り返しお話しいただきたいし、それこそが最重要のことですから、ぜひ、農業者、農業関係者の皆さんに届くように、農水大臣から現段階における国内対策の検討状況についてお伺いしたいと思います。

山本(有)国務大臣 昨年の十一月に取りまとめられました総合的なTPP関連政策大綱では、新たな国際環境におきましても生産者が安心して再生産に取り組めるような施策を打っております。

 まず、攻めの農林水産業への転換としまして、産地パワーアップ事業や畜産クラスター事業などの体質強化対策を集中的に講じますとともに、経営安定、安定供給のための備えとしまして、協定発効に合わせまして経営安定対策の充実等を講じることとしております。

 このうち、体質強化対策につきましては、平成二十七年度補正予算におきまして、攻めの農林水産業への転換に向けた緊急対策としまして三千百二十二億円を確保いたしました。現在、各地域において具体的な取り組みが進められているところでございます。また、先日、十月十一日に成立いたしました平成二十八年度第二次補正予算におきましても、産地の国際競争力の強化などの対策として三千四百五十三億円を確保したところでございます。

 一方、経営安定対策につきましては、牛・豚マルキンの法制化、加糖調製品を調整金の対象とする糖価調整法の改正等を盛り込んだTPP整備法案を、さきの通常国会に引き続き、本委員会で御審議いただいているところでございます。

 TPP協定発効後の継続的かつ安定的な経営安定対策といたしまして、マルキン制度等を法律上位置づけることは、農業者の皆様に安心していただくために不可欠なことと考えております。ぜひとも今国会での法案成立をお願いしたいというように存じております。

 以上です。

稲津委員 ありがとうございました。

 残念ながら時間がもう参ってまいりましたので、残された質問、特にTPP担当大臣に通告をしてございましたが、また別の機会にさせていただきたいと思います。

 私は、このまとめとして、特に農林水産物のいわゆる重要五項目を守ったのかどうかということもお聞きしたいと思ったんですが、この五百九十四の重要五項目のタリフラインの中で、関税を撤廃すると決めたことは百七十ライン。しかし、これはよく精査していくと、大体三つぐらいに仕分けされる。一つは輸入実績が少ないもの、二つ目は国産農産品との代替性が低いもの、そして、関税撤廃がかえって生産者のメリットとなるもの、こういうことがありますので、これもぜひこれから注目していきたいというふうに思っています。

 そういうことで、私のきょうの質問にかえさせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民進党の近藤洋介です。

 私の地元の山形県では、農家の方々は稲刈りの作業が大体終わりまして、きょうあたりは出荷の作業を作業小屋でやりながら、また、中小企業の方々は事務所でこの放送をラジオで聞かれている方も多いと思います。

 入り口の総括的な質疑だと我々は認識しておりますので、きょうは基本的なことを、総理に誠心誠意議論を臨みたいと思いますので、簡潔な御答弁をぜひお願いしたい、このように思います。

 まず、総理にお伺いをいたします。

 昨日投開票がございました新潟の県知事選挙であります。与党自民党が推された候補が敗れられて、米山隆一氏が勝利をおさめられました。

 我が民進党の蓮舫代表も終盤戦に応援に入り、最終的には与野党対決型の総力戦の選挙となりました。エネルギー、原子力政策が大きな争点、こう言われておりましたが、米山候補は米どころ魚沼の御出身でもあり、TPP協定の反対も強く訴えてこられました。

 総理、自由民主党は、幹事長も含めて、大変力を入れてこの選挙を戦われてきたわけでありますが、与党の総責任者として、また自民党総裁として、また総理大臣として、この選挙結果をどのように受けとめられますか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 与党が支援した候補が敗れたことは大変残念なことであります。しかし、選挙戦を通じて論戦を行った結果、選挙戦を展開した結果、新潟県民の皆様が米山候補を選択された。真摯に受けとめたい、このように思います。

 結果が示された以上、米山新知事、そしてまた新しい新潟県政に対して、国として協力をしていくことは当然のことであろうと思います。協力をしながら、新潟県のますますの発展に力を入れていきたい、このように考えております。

近藤(洋)委員 私は、争点となった政策についてやはり新潟県民の民意が示されたことについて、自由民主党が掲げた政策が否定されたことをどのように受けとめているのか、こういうふうに聞いたわけでありますが、では、ちょっと立場を変えて、違う点から伺います。

 ことし七月の参議院選挙であります。

 北海道を初め、私の地元山形県でも、明確にTPPが争点となりました。森山当時農水大臣も、何度も北海道、東北地方を訪ねられ、TPPの推進に理解を訴えられたと思いますし、多くの方々がTPPの推進を訴えられました。しかし、我々の候補、民進党及び非自民の候補が北海道、東北地方の多くで勝利をおさめました。北海道、東北だけではありません。長州山口の安倍首相には大変恐縮ではございますが、信州長野、さらには新潟と、奥羽越列藩同盟に加わったと言ってもいいぐらいの、この奥羽越列藩同盟に加わった北国の農業生産地、この多くはTPPに厳しい目を向けた、この判断が下されたわけであります。

 総理、この北国の地域の声、地方の声に真摯に耳を傾けるお考えはございますか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘になられたように、山形県を初めとして、東北においては、秋田を除いて我々与党は敗北をしたわけでございます。北海道については、二人の候補を当選させることはできなかったのでございますが、二人の候補者の票を足せば今までよりも我々は得票をふやしたと言えるかもしれません。

 こうした結果は真摯に受けとめつつ、しかし、TPPあるいは農業がテーマになったのは、東北だけではなくて、私の地元山口県とか鹿児島県とか宮崎県とか高知県とか、そういうところでも議論になっているわけでございます。

 今たまたま例として挙げたところは旧官軍系だったのであれですが、例えば四国全体、中国全体、あるいは九州全体においても、多くの県で、一人区で、与党の候補が勝利を得たわけでございまして、こういう点もよく分析をしていく必要があるんだろうと思います。

 いずれにいたしましても、改選議席の過半数という高い目標をはるかに上回る議席を与党としては得たわけでございまして、それは、まさに今進めている我々の経済政策を力強く前に進めていけという民意の声であろう、このように思っておりまして、この民意の声に応えて、しっかりとその責任を果たしていく決意でございます。

近藤(洋)委員 我々北国の稲作単作地帯、そして非常にアベノミクスの痛みを受けている地域、この声をやはりきちっと受けとめていただきたいということを私は素直に申し上げているわけでありますね。そこを顧みずに、今の政策を前に進めていけばいいんだ、そういう単純な御答弁だけを繰り返せば、これは何も与野党対立すればいいと私も思っているわけではなくて、やはりきっちりとその反省に立って政策を進めていただきたいと本当に強く思うわけであります。そういう反省に立ってこの条文が出されてきたのかということを非常に疑問に思うことがございました。

 今回のTPPの協定について、外務大臣にお伺いします。

 まず、今回のTPP協定、今国会が始まったのは九月二十六日です。当日、驚きの発表がございました。政府は、本協定の協定文、そして協定の内容を要約した説明書に多くの誤りがあると急遽発表いたしました。資料を配付させていただいていますので、正誤表を委員の皆様には配付しておりますが、その数、何と合計で十八カ所。異例の多さであります。

 これは確かに膨大な内容でありますから、ケアレスミスというのは、人間の作業だからあるでしょう。これは仕方がないというのはある。しかし、内容を根本的に変えてしまうようなこういったものが、決定的な誤りが少なくとも十カ所以上ございます。政府がTPP協定を国会に提出したのはことしの三月八日です。なぜこれほど多く誤り、かつ六カ月以上も放置していたのか。六カ月以上も放置したままにして、九月に急に出し直したということですね。

 まず、この事実について、外務大臣、担当大臣として国民の皆様にきちんと謝罪をすべきだ、このように思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の点につきましては、大変遺憾なことであり、心からおわびを申し上げなければならないと考えます。

 TPP協定につきましては、御案内のとおり、十二カ国が参加し、英文で合計八千四百ページ以上の大部にわたり、我が国が締結した国際約束の中でも最大級の文書でありました。そして、ことしの二月、署名直前に、十二カ国が一斉にそれぞれの法的チェックを行い、そして修文を行う。そして、それと同時並行的に訳文、そして説明書を作成する。こういった作業が行われ、結果としまして、いずれかの国でチェックが行われ、修正が加えられるならば、そのたびに訳文、説明書を修正する。こうした複雑な作業が行われることになりました。

 だからといって、それは言いわけにはならない。これは当然のことであります。こうした状況の中で発生したミスに対しまして、改めて心からおわびを申し上げる次第でございます。

 そして、内容につきましては、それぞれ御説明をさせていただいています。そして、説明をさせていただいた上で、正誤表で訂正をお願いしているところでありますが、今後、こうした経験を踏まえて、しっかりとした対応、対策を考えていかなければなりません。こうしたチェック体制あるいはチェックの方法等も含めて、しっかりとした対応を考えていかなければならないと思っておりますし、ぜひ国会におきましても丁寧に説明を続けていきたい、このように考えます。

近藤(洋)委員 私が聞いた範囲では、過去二十五年間、こういった条文、協定の誤りは、少なくとも一カ所誤った、三カ所誤ったというのが過去三回あったと聞いていますが、十八カ所も誤ったというのは過去は例がないと聞いております。事実ですか。

岸田国務大臣 御指摘のように、過去、訂正を行った例としまして、ジュネーブ諸条約第一及び第二追加議定書、平成十六年、エネルギー憲章条約、平成十四年、政府調達に関する協定、平成七年、こうした事例がありますが、御指摘のように、数ということを考えますと、今回はこの過去の事例に比べて大変多いというのは御指摘のとおりであります。

 この中身につきましては、三つ、既に資料を出していただいておりますので、それを見ていただければと思いますが、訳文の三つの例、一つは、同じ文章が重複したものであり、一つは、アメリカの国内法についての説明が追加されたのが抜けたということであり、もう一つは、原産地の報告について、輸出国と輸入国の間で話し合って決めるという一文、これが追加されたのが抜けたということであります。

 そして、説明書の方もついでに説明させていただきますが、説明書の方は、御案内のとおり、これは各国の約束ですとか留保ですとかあるいは表の部分が載せられているわけであります。その中で、ロープをローブとするなど単純な入力ミスはあったわけですが、それ以外の部分につきましては、日本以外の国の留保や原則や表にかかわるものがほとんどであり、日本の義務にはかかわらないという部分でありますので、こういった内容も説明させていただいた上で、正誤表にて訂正をお願いさせていただいている、こういった次第であります。

近藤(洋)委員 内容は私も十分わかっておりますので、非常に協定の権利関係にかかわる、内容にかかわるものが、少なく見積もっても十カ所以上ある、これはやはり驚きなんですね。少なくとも、協定条文そのものは内閣法制局もチェックをしているわけです。これは外務省だけの問題ではないわけですね。内閣法制局もチェックをした上でこういうものが出されている。

 先ほど、総理も石原大臣も、結果が全てだ、結果を見てくれと胸を張られていましたけれども、出てきた結果が十八カ所も間違っていたわけですよ。それも、その結果を間違ったものを六カ月間もさらしておいて、そして審議をしてきたことになる。これは、政治は結果責任ですから、結果的に国民の皆様を欺いていたことになる、こういうことになるわけですね。これは非常に見逃せない大きな問題であります。

 本来ならば、政府が最重要課題としてこのTPP協定を位置づけるのであれば、きちんとした情報公開もせず、結果を見てくれと言って、できた結果がこれだけのミスがある。しかも、大臣みずからお認めになったように、あってはいけないことだとおっしゃったわけですよね。本当はあってはいけないことなんですよ、本当に。

 こういうことをしているのであれば、総理にお伺いをいたします。内閣の総責任者として、このことは、みずから反省をして、出直す、出し直すというのが本来のあるべき姿ではないですか。法案の出し直しを願い出るのが、総理、これは法制局もかかわっての総責任者としての総理の御判断を伺っております。それが筋だと思いますが、総理、いかがですか、お答えください。総理、お答えください。

塩谷委員長 先に岸田外務大臣。

岸田国務大臣 まず、内容について、重大な内容が含まれるという御指摘でありましたが、内容については先ほど御説明したとおりであります。そして、訳文、説明書に関しましては、所管官庁として、外務省が責任を持たなければならないと思っています。よって、外務大臣である私が責任を持たなければならない問題であると認識をしています。

 その上で、内容等を説明させていただいた上で正誤表等に基づいて訂正をお願いし、そして再発防止について万全を期していきたいと考えております。

 加えて、丁寧に国会での説明を行うことによって責任を全うしたいと考えております。

安倍内閣総理大臣 ただいま外務大臣から答弁をさせていただきましたように、訳文にミスがあったことについては大変申しわけない限りでございますが、中身それぞれの間違いについては岸田大臣から答弁をさせていただいたとおりでございまして、今後、ぜひとも御審議を続けていただきたい、このように思っておるところでございます。

近藤(洋)委員 やはりこれは、私はきちんと出し直すべき筋合いのものだと思うんですね。こうやってごり押しをする筋合いではない、決定的なミスだと思うんです。

 総理にお伺いします。

 政府・与党の姿勢というか、与党の姿勢も問題だと思うんですね。九月二十九日、それに前後してなんですけれども、当時のTPP特別委員会の自民党の次席理事の方が、これも資料を配付しておりますが、新聞記事の、これは四ページ目でありますけれども、マスコミのいる場で堂々と、強行採決という形で実現するよう頑張ると、審議の始まる前に、強行採決という形で実現するよう頑張ると発言しました。

 武士の情けで、この次席理事だった方の名前は申し上げません。ただ、真面目な方です。私もよく存じ上げています。この真面目な方が頑張るとおっしゃったんです。その方は、その後、こういうふうに釈明された、どうしても採決したいという安倍首相の思いを言ったにすぎない。どうしても採決したいという安倍首相の思いを言ったにすぎない、こう釈明しているんです。真面目な方ですよ。強行採決して頑張ると言ったこの趣旨はそうだと言ったんです。

 総理、これは総理の思いなんですか。お答えください。

安倍内閣総理大臣 私の思いは、私は委員ではございませんので、行政府の長として、まさにこのTPPについてはしっかりと御議論をいただきたい、熟議をし、その上においてしかるべきときに御判断をいただきたい、これがまさに私の思いでございまして、この思いを受けてしっかりと御審議を賜りたい、こう思っている次第でございます。

近藤(洋)委員 いや、総理はそう幾らおっしゃっても、例えば、きのうですか、また公明党の幹事長が、会期を区切ったような形で、このTPP審議、まだ始まったばかりなのに、月内の採決のような趣旨の記者会見での発言をされたりしているんですね。

 これは、審議が始まったばかりのときに、こういう与党の態度は一体何なのかということなんですね。きちんとした議論をしたいというのに、最初に強行採決の話は出るわ、月内だという議論が出るわ、一体これは何なのかということをまず申し上げたいと思います。

 ミスだらけの条文で国民を偽って、そして訂正もしないし、そして強行採決をほのめかすということでは困るということをまず申し上げたい、こう思います。

 さて、内容の話、加えていきたいと思います。

 なぜ急ぐのかということに加えていきたいんですが、先ほど来議論になっているように、TPP協定でありますが、各国の審議状況は、パネルにも示しましたけれども、皆さん御案内のとおり、十二カ国の協定でありますが、実際に発効するためには、少なくとも域内のGDPの八五%以上を占める六カ国以上の承認が必要であります。

 つまり、日本と米国の両国の国内手続をしないと発効しない。米国議会では、まだ実質的な議論は始まっておりません。加えて、米国の次期大統領候補、ヒラリー・クリントン氏、さらにはトランプ氏、双方とも反対の姿勢を明確にしている状況であります。十二カ国各国を見ても、国内手続全てを完了した国は一つもありません。

 そして、こういう中で、一方で、もう一枚めくっていただければと思うんですが、総理のお好きな言葉、地球儀を俯瞰して見ていただきたいんですけれども、もう一つ、非常に重要な国際条約が十一月四日に発効しようとしております。パリ協定と呼ばれるものであります。これは地球温暖化防止の枠組みを決める極めて重要な国際協定であります。こちらの方は、米国、中国、EU、インド、主要国がもう既に批准をしております。締結が必要なのは、五十五カ国以上、排出量の五五%以上の締結が必要となっておりますが、現在、既に七十六カ国及びEUが締結をし、五九%以上が締結をしておりますので、これは十一月四日発効予定、こういうことでございます。

 日本だけが取り残されているのが現状であります。温暖化の新しいルールを決める場に完全に出おくれたのは明らかであります。温暖化防止の枠組みに大きく出おくれた。

 外務大臣にお伺いします。

 なぜこのような失態、事態に陥ってしまったのか。この状態をよしとしているのか。まず、お答えいただきたい。

岸田国務大臣 まず、パリ協定の迅速な締結について、我が国は一貫して重視をして取り組んできました。

 四月に行われましたパリ協定の署名の開放につきましても、四月二十二日、開放当日に署名を行いました。また、五月に行われました伊勢志摩サミットにおきましても、年内の早期発効に向けて協力をする、これを明らかにしています。そして、年内の早期発効を目指して、我が国として、国内の担保の調整、検討を行い、十月十一日に閣議決定を行ったということであります。

 そして、これはおくれている、失態ではないか、こういった御指摘がありましたが、こうした我が国の取り組み、年内の発効に向けて努力を続けてきたわけでありますが、本年九月、米中による締結あるいは国連事務総長主催のパリ協定早期発効促進ハイレベルイベント、こういったものを受けて、当初の見通しを上回る形で早期発効に向けた機運が高まった、これは事実だと思います。

 ただ、こうした見方は我が国に限られたものではありません。事実、EU自体も、当初は、来年以降の発効を念頭に、EU及び全加盟国一括締結の方針、これを表明していましたが、今説明させていただきましたようなさまざまな動きの中で、早期妥結に向けて機運が高まる、そういったことで、EUは、結果としまして、EU及び一部の加盟国七カ国のみで先行して締結する、こういった対応をとらざるを得なかった、こういった状況にあります。

 いずれにしましても、こうした年内の動きをしっかりと踏まえて、我が国として、一日も早く締結国になり、そしてしっかりとした説得力のある発言を確保していかなければならない、このように考えます。

近藤(洋)委員 岸田外務大臣、いろいろおっしゃいましたけれども、結論的に言うと、見通しを誤った、こういうことなわけですね。要は、この状態をよしとしていないというのも明確におっしゃった、こういうことであります。見通しを誤った。

 この温暖化防止の枠組みというのは非常に重要です。古くをさかのぼれば京都議定書にさかのぼるわけでありまして、この温暖化防止の枠組みというのは我々の生活にも非常に影響を与えます。産業社会にも大きな影響を与えます。まさに日本がリーダーシップを発揮して国際的な枠組みをつくってきた分野で大きく出おくれているわけですね。これは回復しなければいけません。

 先ほど総理は、リーダーシップを発揮しなければいかぬ、国際社会においてと。まさに温暖化防止も、これは中国とのまさに覇権争いの中でいえば、大きな国際交渉の舞台ですよ、ここは。非常に大きな舞台です。インドも含めて、大きな舞台です。

 総理、パリ協定については我々民進党も早期批准すべきだという立場です、ここは。ですから、協力をいたしますので、協力をいたしますから、このTPPよりも早く審議するように、我々も協力をするという意思を持っていますから、ぜひパリ協定の議論を急ぐよう方針を転換すべきだと思うんですね。

 ぜひ、総理、この場で方針転換するよう意思を表明されたらどうでしょうか。いかがでしょうか、総理。これは総理の方針ですから、どうぞ、総理、お答えください。

塩谷委員長 先に岸田外務大臣。

岸田国務大臣 TPP協定とそしてパリ協定、この審議のあり方について御指摘をいただきましたが、まずTPP協定、パリ協定、これは我が国としまして、両方大変重要な協定であると認識をしています。

 TPP協定の重要性につきましては、先ほど来総理の方から発言がありましたように、自由貿易のもとで経済成長を遂げてきた我が国こそ、世界経済の自由で公正なルールづくり、これをしっかり牽引していかなければならない。こういった視点から、こうしたTPPの早期発効に向けて機運を高めていく、その役割をしっかり日本も果たしていかなければならない、こうした問題であると思います。

 一方、パリ協定につきましても、委員御指摘のように、これは国際社会共通の大変大きな関心事であり、日本も早期発効に向けてしっかりとこの重要性を認識しながら努力をしてきた、こういった問題であります。

 国会においてどう御審議をいただくか、これは国会に御判断をお願いしなければならない問題だと思いますが、日本政府としましては、この二つの協定、どちらも重要な協定だと認識をし、どちらも早期発効に向けてしっかり努力をしていかなければならない課題だと認識をしております。

近藤(洋)委員 こういう事態に陥った責任について、総理に改めて答弁を求めます。お答えください。

安倍内閣総理大臣 パリ協定におきましても、そもそも日本が主張しておりました、全ての排出国が参加するものにしなければならないという我々の主張が入り込んだものであろう、こう思っております。それはハイリゲンダム・サミットの際、私が日本を代表して主張してきたことでもあります。その後、民主党政権時代にもその基本的な考え方のもとで交渉を進め、今回こうした形になったわけでございます。

 いずれにいたしましても、本院におきまして、本院というのはこの衆議院、あるいは参議院におきまして、それぞれ速やかな御議論をいただきたい、このように思っておる次第でございます。

近藤(洋)委員 本件は、パリ協定は、総理がサミット等でもリーダーシップを発揮すると発言をしているから総理に答弁を求めているわけで、この大失態は安倍政権の大失態だ、我々は協力すると言っておるので、パリ協定を急ぐべきだということを申し上げ、なぜTPPに、見通しの立たないTPPに突っ込むのかよくわからないということを重ねて申し上げたいと思います。

 次の話に移りたいと思います。

 TPP、日本にとってのTPP交渉は、基本的に日米間の交渉が肝であったというのは周知の事実であります。本当に日本にとって国益を守ることができたのか、とるものはとれたのか、その過程で我が国は何を主張してきたのか、これをきちんと検証することは極めて重要なことなんですね。

 そこでお伺いしたいんです。

 第一に、まず自動車と農産物の関係なんです。基本的なことをお伺いしていきたいと思います。

 我が国の対米輸出関税で、自動車部品の分野で八割の撤廃はとれた、これは私は評価はします。しかし、ただ大問題なのは、交渉に入る最初の段階で、肝心の完成車の対米輸出の関税を最長期間維持すると、約束を入り口の段階でしてしまったことなんですね。入り口の段階で最初にカードを切ってしまった、これが大問題なんです。

 このカードを切ってしまった、わかりやすく言えば非常に高い入場料を支払ってしまったことがTPP交渉の安倍政権下における大問題であった、こう思うわけであります。

 このことをしてしまったのはなぜなのか。こちらが守るべき米や牛肉で具体的にあの時点で何かを得られたならばともかく、何も得られないまま自動車だけ具体的に譲ってしまったのは、入り口で大幅に譲ってしまったのはなぜなのか。担当石原大臣、その理由をお答えください。

石原国務大臣 これはもう既にお話をさせていただいておりますように、今の車の生産というものは地産地消になっております。六百六十万台、北米で日本の車が売られておりますけれども、このうちの四百九十五万台は北米で生産され、残りの百六十万台が輸出をしているわけでございます。

 そして、完成車の関税は二・五%、トラックは二五%でございますが、トラック、ピックアップトラックも含めまして、ほぼ実績がございません。

 こういうことで、部品が、二兆八千億輸出をさせていただいておりますけれども、これの八割が即時撤廃という方、これが我が国の国益に資する、こういう観点から、このような決定をさせていただいたものと承知をしております。

近藤(洋)委員 このパネルでも明らかなとおり、最初に米国にどんと完成車で譲って、そして結果として出てきたのがこの結果のグラフなわけです。牛肉は即時にどんと関税が引き下げられて、そして自動車は、トラックもそうですし乗用車もそうですが、何とずっと長く関税が続けられる、こういう結果になっているわけですね。なぜか自動車だけがずっと残っている、こういうことです。しかも、牛肉は、日豪のEPA交渉よりも、これがぎりぎりのラインだと言っていたものよりも深掘りをされてしまっている、こういうことなんですね。

 私はこの最初の妥協を聞いたとき、唖然といたしましたね。確かに、野田政権のときに、旧民主党時代に、TPP交渉の参加に向けた情報収集、これを行ってきました。四年前です。私は当時、経済産業副大臣でありましたが、しかし、こんな米国の要求丸のみだったらば、とても交渉には入れないというのが当時の我々のスタンスだったんです。それをいとも簡単に丸のみをしてしまったのが安倍政権だったわけであります。こんなのは、非常に高い入場料を払って、しかも瞬時に下がるようなものをのまされてしまった、こういうことであります。

 しかも、米国からの米の輸入枠、これは同僚議員がこれから議論すると思いますけれども、甘利大臣は、最初五万トンが上限という趣旨の発言をされていました、甘利当時担当大臣。それが、結果的に七万トンと特別枠、米国枠のものを譲歩されました。五万トンが七万トン。そして、牛肉、豚肉、これは日豪の協定よりもさらに厳しい結果となってしまった。

 自動車で譲り、米で譲り、豚で譲り、牛肉で譲った。これは米国から一体何を得たのか、何をかち取ったのか。改めて、石原大臣、何をかち取ったんですか、お答えください。

石原国務大臣 近藤委員の御指摘は御指摘として、自動車をつくっている日本自動車工業会あるいは貿易会、これらの皆様方は今回の交渉に満足をされております。そこにパーセプションギャップがあるということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

 そして、詳細については農林水産大臣からお尋ねをいただきたいと思いますけれども、日本を除く他の国の関税の即時撤廃率と我が国の即時撤廃率、農作物では二割を守って、全体でも九五%。他の国は九九%や一〇〇%なんですね。マルチの交渉で、自分たちの言うとおり全てする、とるということはあり得ません。多くの方々が満足をしていただく形で、また農林水産品については、午前中の同僚の江藤委員の議論の中にございましたとおり、牛肉についても、日本の有名な牛肉をアメリカに輸出する、こういう枠もとって、これも自由化される。しかし、自由化された後も、日本には関税が九%残るわけですね。こういう全体を見て御評価をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 まだよくわかりませんね、具体的に何をとってきたのか。

 それでは、さらに自動車について伺います。

 完成車輸出の関税だけじゃないんです、自動車については。

 政府・自民党は、二〇一三年末に軽自動車の増税を行っているんですね、三十一年ぶりに。軽自動車は、特に地方の生活者の、私の地元山形県では、一家に二台、三台は当たり前、これはもう地方の足です。これに一・五倍の増税をかけました。

 この軽自動車増税は、TPP交渉、日米二国間協議において要求をされたと私は認識しておりますが、世耕大臣、そのとおりだと思いますが、いかがですか。

石原国務大臣 これは、実は普通車、千cc以上の車と六百六十ccの軽自動車の間の性能の差というものは今ほとんどございません。そんな中で、軽自動車をつくっているメーカー、また普通車をつくっているメーカー、この関係を整理させていただきまして一万五千円への増税を決めたということでございまして、私は、アメリカからこれに対して要求があったということは承知しておりません。

近藤(洋)委員 いや、それは大臣、うそを言ってはいけません。TPP交渉において、二国間並行協議で米国からの声があったというのは、これは周知の事実ですよ。自民党の税調の中でも、この趣旨の発言をされている方は、証言をされている方もいらっしゃるし、これは西川さんの真実の本にあるかどうかは別にして、別の本、別の出版されている本にも、幾つか自民党の税調幹部の証言が出ていますよ。

 うそを言っちゃいけません。もう一度答えてください。あったんじゃないですか。並行協議の中で議論されたんじゃないんですか。

石原国務大臣 税制改正というものは、我が国の独自の判断、政府税制調査会、また自民党の税制調査会、これにのっとって物事を決めている、このように御理解をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 非常に不誠実な答弁だと思います。だから、我々は甘利・フロマン会談の交渉過程に、非常に重要だ、こう認識をするわけです。

 石原大臣、こういう議論が必ずあったはずなんです。また、答弁でもきっちりお答えいただけない。本当に御存じないのかもしれない。基本的なことはやはり甘利・フロマン会談、二十数回の、二十五回の甘利・フロマン会談で決まっているんです。そういうことをきっちり明らかにしてもらいたいんです。だから、黒塗りを解除してもらいたい、こういうことをお願いしているわけですよ。

 だって、周知の事実のこともお答えいただけないわけですよ。周知の事実のことも答えないで、そして虚偽答弁を重ねるのであれば、やはり甘利さんに出てきていただかなきゃ困りますし、甘利大臣にお答えいただくしかないわけですよ。

 では、石原大臣、甘利先生が退院をされてから、その後、引き継ぎは二十分と聞きましたけれども、何回かお話しされましたか、TPP交渉について。引き継ぎは行われましたか。お答えください。

石原国務大臣 断定的に、どなたが言っているというお名前も出さないで、そういうことが事前協議であったと言うのはまた乱暴な議論だと思いますし、軽自動車への自動車税の課税というもの、増税というものは、実は、もうここ五、六年、我が国が安倍政権になりましてTPP交渉に参加を決めさせていただく以前から、毎回俎上に上がってきている税制項目であるということもぜひ御理解をいただきたいと思います。

近藤(洋)委員 そこまでおっしゃるならば申し上げましょう。

 「ドキュメントTPP交渉」という本によりますと、こう書いています。額賀先生、額賀福志郎議員が、これは税調のいわゆるインナーの証言として、米国側がTPP交渉で、軽自動車という規格が非関税障壁に当たると主張していることは知っていた、普通車との税金の格差が大き過ぎるという問題意識はあったと証言していると。TPP交渉でと。これは本人のクレジット入りで、この「ドキュメントTPP交渉」という本で、しっかりした本ですよ、著者も立派なジャーナリストです。こういうふうに書かれているんですよ、例えば。

 この手の話はもう周知の事実。そういうことすらきちんとお答えにならない。やはり甘利大臣と引き継ぎをされたのかということもお答えにならない。いいですか、甘利大臣と引き継ぎをされたのかという事実もお答えにならない。引き継ぎされたんですか。お答えください。

石原国務大臣 ですから、先ほどお話をさせていただきましたとおり、我が党の税制調査会では、去年急に話が出てきて物事がすぐに決まるということはなくて、これは、増税になる側、減税になる側、全体でレベニュー・ニュートラルを目指しておりますので、TPP交渉で話が出てきてから急にやったというのは曲解であるということをお話しさせていただいているわけでございます。

 二点目の話でございますが、甘利大臣が御退院をされた後、立ち話ではございますが、何かそのほかにお話があればいつでも承りますし、また伺わせていただきますという話をさせていただきましたところ、しっかりと石原さんは私にかわって答弁をしてくださっている、こういうお話をいただいたところでございます。

近藤(洋)委員 少なくとも我々は石原大臣がしっかりした答弁をしているとは思いません。せめてこの黒塗りを解除していただくか、甘利前大臣が、ぜひこの場に来てしっかりと答弁をしていただかないと中身の議論ができない。

 委員長、ぜひ御協議を願いたい。

 私は、甘利参考人の質疑を要求しました。前回の委員会の中でも、甘利参考人の質疑は検討するということで、引き続きの協議事項になっているはずであります。

 ぜひ、本件についても、軽自動車の課税がどういう過程で行われたのか、この点についてもしっかりと国民に情報を開示すべきです。税は政治です。いいですか。この点がどういう過程で成ってきたかということは極めて重要なことなんですよ。

 その点も含めて、甘利大臣の発言を求めたいと思いますので、委員長、いかがでしょうか。

塩谷委員長 理事会でも協議をしてまいりまして、いまだ全会一致に至りませんので、引き続き、協議してまいります。

近藤(洋)委員 引き続き、真剣に協議をしていただきたい。

 甘利大臣がフロマン通商代表といろいろな形で議論したことが、全て最終的な結果になっている。しかも、全部を明らかにしろとは言っていないんですよ。しかも、政府はその会議録すら保管していないというじゃないですか、内閣官房は。ただ、農林水産省は書類を保管していると答弁されているんですね、農林水産省は。

 経済産業大臣にちょっとお伺いしたいんですが、経済産業省は甘利・フロマン会談における経産省分野について書類をきちんと保管しているというふうに認識されていますか、お答えください。

世耕国務大臣 経済産業省が経済産業省として交渉に関与した部分については、適切に記録は保存をされていると認識をしております。

近藤(洋)委員 適切に。では、内閣官房だけ、きちんとした書類がない。

 これは困ったことですね。全て甘利大臣の頭の中。そして、今は英国に行かれている鶴岡大使、首席交渉官、これは今日本にいないわけであります。日本にいない方が首席交渉官で、そして、甘利さんの頭の中にしかないという異常事態の中でこの審議が行われているわけでありますから、きちんと、書類が出せないならば、答弁できる方が答弁の場に立つというのが真摯な政府の対応の仕方ではないかということを重ねて申し上げたいと思いますし、ぜひ、重ねて申し上げますが、この黒塗りの解除をお願いしたいということを要求したいと思います。

 総理、甘利大臣に出席を指導するのが総理の役目だと思いますが、重ねて、総理、総理の……(発言する者あり)不規則発言をやめさせていただけませんか。江藤先生の不規則発言をやめさせてください、委員長。(発言する者あり)間違えました。

塩谷委員長 間違えないように。

近藤(洋)委員 菅原先生の不規則発言をやめさせてもらえませんか。

塩谷委員長 続けてください。

近藤(洋)委員 総理、指導力を発揮して、適切な答弁をするように、総裁として指導してもらえませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 当時の甘利大臣とフロマン氏の交渉については、まさにこれは、お互いにこの交渉については公表しないということを前提に交渉しているわけでありまして、そして、その交渉においては、極めて少人数、一対一、テタテでやった交渉も多いというふうに承知をしております。その交渉については私も報告を受けているところでございますが、これは相当お互いにやりとりをしているわけでありますが、まさにこういうやりとりについては外に出さないというのは、これは当然のことであろう、こう思う次第でございます。

 これは例えば、かつて、日米安保条約の改定のときには、当時の大使と当時の岸信介首相が直接何回も会談を行い、交渉していますが、その交渉そのものは全く一切外には出していない。これは当たり前のことでありまして、国会で議論をしたのはこの条約そのものであったわけでございました。

 これはまさに、甘利・フロマンの会談の、交渉の結果出てきたものについては全てお示しをしておりますから、その結果についてしっかりと御議論をいただきたい、このように思います。

近藤(洋)委員 総理は、かつて、日朝交渉の記録が残っていないことに対して大変問題だという問題意識を持たれた方であります。

 このTPP交渉の正確な記録が内閣官房においてないというのは私は大問題だと思うんですね。各省はばらばらに持っているけれども、きちんとした会議録が、内閣官房において、甘利・フロマン会談を含めて、きちんとした記録がないのは国会答弁で明らかです。これは極めて問題であります。

 こうしたことを少なくとも公開、非公開の前にきちんと整理すべきだということを申し上げ、最後に、やはり総理、強引に審議を進め、採決を急ごうとする今の姿勢は、まさにその目線は、オバマ政権の背中を押すと言っているけれども、視線の先はオバマ政権にあるんじゃないか。ぜひ視線の先は我々国民に向いてほしい。ぜひ国民に向いてほしい。アメリカの政権だけを見て、レームダック政権に間に合わせてこのTPPを何とかしようなどというこそくなことを考えず、堂々と国会の議論を進めてもらいたいということを申し上げて、時間ですので質問を終わります。

塩谷委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 篠原でございます。

 近藤同僚議員がこの件でいろいろ指摘されましたので、リレー質問をさせていただきたいと思います。

 これ、真っ黒ですよね。私は、安倍総理と同じですかね、組み合わせでいうと、日の丸が大好きですから、赤と白の組み合わせが大好きなんです。日本人は皆そうですけれどもね。ところが、自民党、政府・与党はちょっと違って、この黒と、それから領収書は真っ白で、黒と白。常識をちょっと外れているから、国民は目を白黒させてびっくりしているんじゃないかと思います。これを直していただきたい。

 それで、これを見てください。ここにちょっと書きました、「情報公開、透明性」というのがありますね。マル・バツはまた私の判断ですけれども、右側の方の、自民党の方が白紙領収書の改善をすぐしたんですよね、二日か三日後に幹事長名で。立派だと思いますよ。ちゃんと書き込むんだ、白と黒のちゃんとしたペーパーにしろと。国民の常識に合わせているんですが、どうも黒塗りの方は全然そうなっていない。

 それで、総理は盛んにおっしゃるんですね、立法府もきちんと承認して、アメリカに、TPPの承認を早くしなくちゃいけないという意思を示す、それに協力をしてくれと。いいですよ、もしちゃんとして多数決でやるんだったら。しかし、そのときに、レベル・プレーイング・フィールドとか何かよく言いますよね、同じ土俵でと。情報が我が方に、全く偏っていて、そして承認だけさっさとしてくれというのは、それはちょっと身勝手過ぎるんだろうと思います。

 それこそ、近藤委員と同じですよ。総理が、白紙領収書をすぐ直せ、ちゃんと書くんだというのと同じように、そこそこちゃんと情報を提供せよと。甘利・フロマン会談の結果は結果ですよ。先ほど、日ロの交渉については、総理はやはり真剣に取り組んでおられるんだろうと思います、プーチンとのやりとり、ちゃんと我々にその一端を説明されていたじゃないですか。

 経済問題で、甘利さんとフロマンさんの両方の、交渉した結果がこうなっていますよというのが全然開示されないなんというのはあり得ないんですよ。そういうところを見なかったら、我々は一体どうなっているんだかわからない。それは常識ですよ。交渉経緯じゃないです。経緯の中の、一々交渉した結果の積み重ねで最後の条文ができているんです。

 秘密のやりとり、そんなことを情報開示しろなんて言っていません。本当の秘密なんというのはペーパーにしないですよ。腹の中におさめて、よく言われますよね、墓場まで持っていく。そういうのはいっぱいあるんですよ。それは、外務省、ノンペーパーというんですね。わかりますよね。ペーパーじゃないと言ってペーパーにしているんですよ。一部の関係者だけで承知しているノンペーパーというのがあるんです。

 ですけれども、閣僚ベースで、それから上層部でまとめたペーパーなどというのは、こんなことを言うと失礼かもしれませんけれども、それほどずっと秘密にしておくべき情報ではないんですよ。それをちゃんと我々に開示して、こういうふうに言っているんだから大丈夫だと言っていただかないと、国民の不信はますます広がっていくばかりですよ。

 こうだよと言っていただければ、ああそうか、そんなにうまくいっているのかということで我々も国民も納得するんじゃないかと思いますけれども、総理、鶴の一声でちゃんと情報公開していただくようにしていただけませんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 この審議にとって必要な情報を既に我々は相当公開させていただいております。四千ページにわたる資料を出させていただいておりますし、その後、要求によって、千七百ページですかにわたる資料も提出をさせていただいているというふうに承知をしております。

 そこで、甘利・フロマンの件については、まさにこれはメモを、記録を残していないということでございまして、しかし、他方、これはなぜ記録を残していなかったかといえば、事実上フロマンとブレーンストーミングのようなことをやっていたという話を聞いておりますが、つまり、この中で話していって、AかBか、AかBかということをやっていってBになった、そういう類いのものとはまた違うということは伺っているわけでございます。

 いずれにせよ、これは篠原委員はわかっていてあえて言われているんだろうと思いますが、交渉においてはお互いの信頼関係の中で相当腹を割って話をしますが、そこは記録にも残さないこともありますし、しかし、他方、もちろん記録に残っているものもあるということではないかと思うわけであります。

 甘利・フロマンの場合は、相当長い間、何回も何回も議論に議論を重ねていった中において、お互い相当信頼関係が高まっていた中において、自分はここまで言ってもいいということを、お互いがレベルが上がる中においてのやりとりはあったんだろう、こう思いますが、しかし、それは、例えばそれをお互いがそれぞれの省内で共有するだけで少し問題になる、そういうこともあったのか、ここは私の類推でございますが、ということもあったんだろう、こう思う次第でございます。

 今後とも、委員会から要請があれば、政府としては委員の御要望にはできる限りお応えをさせていただきたい。当然、この特別委員会から御要請があればお応えをしなければならない、このように考えております。

篠原(孝)委員 TPPの内容は膨大なんですよ。第二十六章に、透明性と腐敗防止という章があるんです。

 民間企業には、透明性を確保して、外国企業からいろいろ言われたらみんな公開しろと言われていて、政府が公開しないのではどうしようもないじゃないですか。透明性を確保しろという条文があるんです、一章。腐敗防止というのも、ちょっと、我が国の前の担当大臣のことを考えると意味深長だと思いますけれども。

 だから、そういうのがあるんですから、透明性を確保しろというのはTPP全体の大事な精神なんですよ。それを、議会の審議において透明性を確保していないというのはひどいと思います。

 私、ここのところをやったら、透明性、見てください。黒塗り資料、情報開示せずと言ったら、だめだと。これはひど過ぎるから、不足とやれと。ここのところに、交渉過程は情報開示せずと書くんですか。

 それから、いっぱい直されているんです。見てください、国民の皆さん。こういうことを言って、さっき、一時間、二時間膨大な作業を事務方がやっていたんです。我々の提出資料が不正確だから直せと言うんです、間違いがあると。済みませんでしたよ、謝りますよ。だから、直しました、刷り直して。私もこうやって直して。さすがにこういうのは手書きでしか直りませんでしたけれどもね。

 それだったら、先ほどのことも大事なことですよ。こんなことで、審議のところで不正確だなんて、見解の相違ですよ。

 下の方へ行って、一段行って、TPPで何でもアメリカ化。何でもといったって、顔までアメリカ人と同じようになるなんて、そんなことを言ってやしないですよ。それを、これは不正確だと。発効の見込みのないTPP。あるんだからと。だから、少ないと入れました。当面ないとか、何%ないと書くんですか。

 そんなのだったら、先ほどの、僕は、温厚篤実とまでは言いませんけれども、それなりの情け心はありますし、現実的ですよ。だから、条文が間違っているから刷り直し、出し直せなんて言っていませんよ。それを何ですか、我々の提出資料、朝、一々直せというのは。こんなちぐはぐなのがありますか。これは絶対に直していただかなくちゃならない。

 これは、どなたとも言いませんけれども、政府の方にも問題があると思います。全部直していただかないと。連携してください。こんなことが行われているんですよ。よく反省していただきたいと思います。

 次に移ります。

 同じちぐはぐなのはパリ協定ですよ。日本は、化石賞とかなんとかといって京都議定書のころはさんざんやったけれども、その後、全然存在感がない、いるんだかいないんだかわからなかったというのがCOP21のときの評価です、環境団体の。

 日本は一つだけ具体的な提案をしたと聞いているんですけれども、どういう提案をしたんでしょうか。岸田外務大臣、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 気候変動というのは国際社会全体で取り組むべき課題であり、我が国は、パリ協定の交渉において、先進国、途上国の区別にかかわらず全ての国が義務を負うことを重視し、まずそのことについて主張してきました。

 これは、途上国の排出量が世界全体の排出の大部分を占めるようになったことから、京都議定書における先進国のみの取り組みでは実効的な温暖化対策をとることができない、こういった問題意識に基づいたものであります。

 そして、こういった点を踏まえて、パリ協定においては、主要排出国の参加を通じて実効性を確保するため、一つは国数、そしてもう一つは世界全体の温室効果ガスの総排出量に占める割合、この二点が発効要件とされたわけですが、これは我が国がパリ協定の交渉において強く主張した結果であると認識をしています。

篠原(孝)委員 五五%は日本が主張したんですよね。

 多分、私の類推ですけれども、これは総理もさっき言われましたけれども、TPPで八五%のGDPというのがあったからなんです。同じで、なかなか合理的な、五十五カ国で五五%と、しゃれじゃないですけれども、両方五五なんですよね。そういうふうになっているんです。いいことだと思います。だけれども、その後の見通しが間違っていますよね。

 これはパネルにはないんですが、皆さんにお配りしている表を見てください。一番最後のページです。四枚ありますけれども、一番最後のページ。

 TPPの協定とその関連国内法とパリ協定、それぞれ通っているか通っていないか。国内法はどこの国も出していませんよ、それは。通しませんよ。もとの条約がどうなるかわからないんですから、当たり前ですよ。

 日本の役人はかわいそうだと思いますよ。本当にちゃんといけばいいですけれども、これでもう一回なんかやっていったら、全部法律を出し直さなくちゃならないですから。アメリカの様子を見よう、TPPのほかの十カ国はみんなしているんですよ。パリ協定はこんなにみんな結んでいるじゃないですか。

 総理は、もう今お忘れかもしれませんけれども、第一次安倍政権のときの、五十年先を見越してCO2を削減するというのをちゃんとサミットで言っておられるんですよ。伊勢志摩サミットでもちゃんと年内批准、発効と言っておられるわけですよ。G20でも同じことを言っておられるわけですよ。しかし、そこでさんざん言っておられるのに、全然実行されていないんですね。それで、国内向けに言っているTPPだけを急いでおられる。僕は両方急ぐべきだと思います。これもまたちぐはぐなんです。

 我々にこんな、どうでもいいなんて言っちゃ、大事かもしれません、私に直せと言って意地悪しておいて、自分で間違えたものは、はい、済みませんで済ませている。これはちぐはぐが多過ぎるんですよ。もっとおおらかに、本当に内容を議論しようじゃありませんか。

 例えば、僕は、地球温暖化は大事だと思います。中国は経済成長ばかりで、日本にもPM二・五とかそんなので迷惑をかけているし、北京では光化学スモッグですよ。日本の何十年前と同じですよ。これは恥ずかしい、経済ばかり重視してはいけないから、環境もちゃんと直していかなくちゃいけないと。

 総理は、我々日本人の生命財産を守る、これが大事だと。私はそこのところは賛成ですよ。しかし、地球生命全体の危機が訪れているというので地球温暖化防止会議をやっているんです。それで、世界じゅうが、経済成長を相当遅くしてもいいから地球生命全体を守ろう、環境をよくしよう、そう言っているときに、日本だけが、TPPだ、GDPを五百兆円から六百兆円にしようと。環境について何もやっていない。中国は、無責任な経済大国と言われたのが、今盛んに、責任ある大国と言い出しているんです。日本は、この件で国際的……(発言する者あり)言わないよりいいじゃないですか。何を言っているんですか。ちゃんと聞いてください。日本の国際信用が低下してしまいますよ。これはちゃんと考えてやっていただきたいと思います。

 総理、パリ協定、どうされるんでしょうか。本当に、十四日に、今終わっちゃっていますけれども、先週参議院でパリ協定をやって、きょう、外務大臣、ずっと集中審議でパリ協定を議論していれば、十九日に間に合って、正々堂々と正式なメンバーとしてモロッコの会合に行けるんですよ。それが私は本当の国益だと思いますよ。何でそういう判断をされないのか。

 総理、これについていかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私も外に向けて年内の批准というお約束はさせていただいておりますので、ぜひこの約束は果たしたい、こう思っております。

 それと、ルールづくりにおいては、自主的に日本は既にもうルールづくりに加わっておりまして、これがおくれたからといってルールづくりそのものに日本が手を出せないということにはならないんだろうと思いますが、いずれにいたしましても、御審議の上、早期の批准をお願いしたいということでございます。

篠原(孝)委員 では、午後再開いたしますので、よく反省してもっときちんとお答えいただくことをお願いいたしまして、中断させていただきます。

塩谷委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

塩谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。篠原孝君。

篠原(孝)委員 再開させていただきます。

 途中でせっかくいい流れが途切れちゃったので、石原担当大臣からお伺いしたいと思います。

 前、環境大臣のときに、環境委員会でいっぱい質問させていただきました。どうでもいいことですけれども、私、一番長くいるのが実は環境委員会なんです。環境族なんです。これは大事だと思っていますのでね。そのとき申し上げたことを覚えておられますか。環境大臣がエリートコースになるようにしてください、環境大臣をやって総理を目指してください、そうじゃないとおかしいんだと。

 経済産業大臣は、おられないから言うわけじゃないですけれども、あっちは民間企業がしっかりしているし、まあ、適当な人がやっていればいい。そして、環境こそ政府がリーダーシップを発揮してびしばしやっていかなくては、わがままばかり言っている経済界は聞かないです。だから、大実力者がなっていただきたい。

 これは、閣僚の中でせめぎ合いがあったんじゃないかと思います。岸田外務大臣は、両方大事ですから、どっちかの味方をするというわけにはいかないですよ。本当は環境が大事だと思っておられるはずですけれどもね。ですけれども、これは本当に大問題だと思います。

 その点について、ちょっと御見解をいただきたいと思います。

石原国務大臣 委員の御指摘は、先ほどの議論の中で、COP21の決定の議決が、承認がおくれている、このTPPよりも先にやるのがいいかというところからの御質問だと思うんですけれども、私の立場も、両方とも大切でございますというのが私の基本的な立場でございます。

篠原(孝)委員 大体そうなんですけれども、ちゃんと雅量を示して、趣味を出していただいても私はいいんじゃないかと思います。

 それで、次に外交問題ですけれども、日米同盟は大事だと。私も大事だと思います。

 では、三番目のところをちょっと見てください、三番目の日米同盟強化というところ。長期的視点も短期的視点も両方大事だと思います。しかし、よく言われているとおり、二人の大統領候補ともTPP絶対反対なんです、二人とも。それで、この方たちは一六年から二〇年までやられるわけですよね。

 では、我が日本国はどうか。知りませんよ。知りませんけれども、安倍長期政権というので、二〇二〇年、オリンピックまでやられる意欲満々で、条件が整いつつある。片っ方で我々の任期だけは、適当に解散されて、これはちょっと困るんです。これはちぐはぐです。ちゃんと、安心して政権運営をする、安心して我々が議論できるようにしていただきたいと思います。

 では、オバマ大統領といろいろやってこられて、大事かと思いますけれども、私は、次期大統領の意向というのもうんと考えなくちゃいけないと思います。そして、二言目には、日本が真っ先に意思を示してリードしていくんだとおっしゃる。なかなか心がけがいいですし、先ほども江藤委員も言っておられました、アメリカに追随するんじゃなくて我々がちゃんとやっていくんだと。

 ですけれども、いろいろ複雑だと思うんです、外交も。例えば、アメリカは、日本が先にやったら素直についてくるようなやわな国でしょうか。そういう実績があったんでしょうか。知りませんよ。知りませんけれども、アジアインフラ投資銀行については、アメリカと歩調を合わせろと言ってきた。

 そして、では、環境問題です。

 一九九七年、アメリカが言ったりして京都会議を開いて、京都議定書ができました。しかし、あれは発効までには七年かかって、二〇〇五年ですよ。アメリカがどういう態度をとったか。勝手な国なんです。二〇〇一年、勝手に離脱したんですよ。日本なんか、へのかっぱですよ。日本がどうしようと自分は自分だと。今度だって同じで、同じじゃないんです。

 総理は、素直に育たれたから、素直に考えられるんだろうと思います。私なんか、あっちへ突っかかり、こっちへ突っかかりしてきましたから、違うんじゃないかなと考えるのが多いんです。もし日本がさっさと承認したら、一番TPPをだめだと言っているトランプ候補はどう思うんでしょうか。それ見ろ、日本は急いで承認した、だから、日本に利益が相当あるからあんなに急いでやったんだと。

 この国会で、私のような者が大反対して、何かもめて、また承認できなかったと。そうすると、日本にもいろいろ問題があって痛みがあるのか、そうすると、TPPもそれほどまずい協定じゃないんじゃないか、そういう心理も働く……(発言する者あり)いやいや、だから、僕は、一辺倒でやられるというのはいかがなものかということなんです。

 一辺倒で、何か総理の一声で、一声は情報公開もやっていただきたいんですよ。総理がそう言っていたら、みんなもうそれでいくんだ、それでいくんだとやっている。しかし、外交はもっと複雑だと思いますよ。

 次の大統領がどちらの方になられるかわかりませんけれども、それに歩調を合わせてやっていくと。あちらの立場になったら、日本が何か、自分の弟分だと思っていた、それを、さっさと承認して、早くやれ、早くやれと言う。このあたりでそういうふうになったりする可能性があるので、そこはちゃんとよく見て、あうんの呼吸でやっていくというのが私は必要じゃないかと思います。

 この点について、クリントン候補とアメリカで会われた。外務省がまた情報公開をちゃんとしていません。ろくなペーパーをつくっていませんで、一枚だけで、双方互いに従来の立場を述べ合ったとか、そんなのはペーパーでも何でもないです。

 TPPについてどういうお話をされたんでしょうか。交渉経緯というほど大げさじゃないですけれども、やはりクリントン候補も、日本がどう思うかというのは気にされているんじゃないかと。私は日本が余り出過ぎるというのはよくないという気がするんですが、そういうことを話されたんじゃないでしょうか。外交機密に属することかもしれませんけれども、お話しいただけたらと思います。

安倍内閣総理大臣 クリントン候補はまだ大統領に就任をしているわけではございませんから、首脳会談ということではないわけでありますし、外交交渉でもないわけでございますが、しかし、他方、クリントン候補は、まさに今、大統領候補として選挙戦を戦っている中において、このTPPも含めまして日本側とさまざまな議論をする、その中身自体は非常に微妙な中身になってくるわけでございます。

 私の方の立場としては、先方から、会って話をしたいというお話がございましたから、私は、クリントン候補ということに限って行ったわけではないんですが、先方から申し出があったのはクリントン候補だけだったものでございますから、時間がありましたので、クリントン大統領候補とお目にかかり、お話をさせていただいた。しかし、この中身については、これは選挙戦に影響する可能性もございますので、今の段階では中身について申し上げることは控えさせていただきたい、こう思う次第でございます。

 今、篠原さんが言ったような、外交とはどう流れていくかわからないではないか、確かにそういう側面がないわけではないと私も思います。しかし、その中で、今、我々は、いろいろな可能性はあるけれども、今やれる私たちのベストは、やはりしっかりと審議をし、日本がリードをとる形で批准をし、米国も促していく。また、米国でこのTPPに対して支持をしている人たちや、あるいは議員の人たちも、日本が批准をすることによってそういう機運を持ち続けることができるという話も伺っておりますので、私は、そういうことではないか、こう考えているところでございます。

篠原(孝)委員 アメリカでも日本でも世論調査はやっていますし、どの程度信用できるかというのはありますけれども、私が知っている限りでは、アメリカ国民の七割は、TPPはどうもおかしい、一部の大企業だけの利益になってしまうんじゃないかと。だから、これを推進し、始められたクリントン元国務長官も、私の目指したTPPではない、アメリカの雇用は拡大しない、賃金も上がらない、安全保障上もそれほどメリットがない、だから反対だと。これは多分、サンダース上院議員、対立候補のサンダースさんが前からTPP反対と言っていた、トランプ候補もそうだったということで、そうなったんだろうと思います。

 現実問題として、七年後に再交渉と書いてある、その再交渉とは別ですけれども、我々がTPPのことを心配してやっていたときに、いつもアメリカがどう言ったか。ウェンディ・カトラーさん、今はもうやめましたけれども、彼女なんかが何を言ったかというと、いや、米韓FTAを見れば内容はわかる、あれよりももっと先に進んだ自由貿易の形をとりたいといつも言っていました。しかし、その見本の米韓FTA、決着してからまた再交渉をやっているんですね、自動車とかBSEでもめて。

 しかし、これは、甘利前大臣も、二言目には再交渉には絶対応じない、応じないと言っておられましたけれども、本当にそんなことをどうやって担保されるんでしょうか。外務大臣にまずお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今、委員の方から米韓のFTAの話が出ましたが、あのケースと今回のケースが基本的に異なっているのは、あれは、交渉が終結した後、米韓のトップ同士が改めて会って再交渉で合意をした、そうした合意に基づいて再交渉が行われたということであります。

 今回のTPPにつきましては、総理からも石原大臣からも再三申し上げているように、再交渉に応じることは全く考えられないと思っています。これは積み木細工のようにでき上がった交渉です。一つさわれば全体に影響が出てくる、全体が崩れてしまう、これは当然のことだと思いますので、再交渉に応じることは全く考えられないと思います。その点が米韓の場合と今回は全く違うということは申し上げておかなければならないと思います。

篠原(孝)委員 今の大臣の答弁、国民はみんな信じるでしょうかね。いやいや、信じたいですよ、外務大臣や総理大臣を。ですけれども、新しい判断だといって急遽また再交渉ということになりかねないですよね。だから、僕はそれを心配しているわけです。いえいえ、もういいです。これはやったってしようがない、先のことですから。

 だから、余りあげつらうことばかりしたくないですけれども、私は新潟の県知事選も今井さんと偶然一緒になったんですが、私は隣の選挙区ですから、妙高、上越、糸魚川とすぐ車で行けるので、私が車で行ったら、今井さんも来ておられたので、今井さんと一緒に乗って、ずっと街宣に一日じゅうつき合いました。最後の会合も、前原さんが来ておられて、前原さんだけ話して、私は前座も何もなかったんです。まあ、私の方が実質的にいろいろやってきましたが。

 それで、また東京へ戻って、次の日朝一番で行って、そして五つの農協を回りました、燕三条駅で。そして、私はPRしましたよ、今やっている、これからやるTPP特委の民進党の筆頭理事だと。そうしたら、いつもだったらつっけんどんだったかもしれませんけれども、私に話を聞きに来られていた。三人、四人、ぞろぞろ出てきて、SBS米はどうだ、TPPの批准はどうなるんだと聞かれる方がおられました。みんな国民は心配しているんですよ。

 NHKの世論調査を見ていただきたいんですが、今、これが一番最新のです。これをよく見ていただきたいんです。

 その前に、テレビをごらんになっている皆さんにはちょっと済みませんけれども、今までの二〇一一年からの表は、委員の皆さんや閣僚の皆さんにはお渡ししてあります。

 よく見ていただきたいんですが、二〇一一年から、じっと見てください、数字。賛成が徐々に徐々に徐々に減ってきているんですよ。わかりますか。それで、二〇一六年、とうとう一九%。一一年の一番最初からするとマイナス二八ポイント。一三年というのは、安倍総理が交渉参加を検討されると言ったときから一七ポイントも下がっているんです。反対はほぼ一緒です。そんなに変わらないんですけれども、ちょっとふえている。問題は、どちらとも言えない、三七、三八、四三、四五、四七、五二、だんだんどちらとも言えないというのがふえてきているんです。

 どういうことでしょうか。みんな漠然とした不安を抱き始めているんです。それが徐々にふえてきているんです。日本国民は賢明です、賢いです。だんだんわかってきた。中身がわからないからです。全然説明がちゃんとなされていないからなんです。

 私は不思議だと思うんです。農業ばかりやっていますけれども、知財、知的財産権、特許だとか商標とか、そういうのもいっぱいあるんですよ。前回、一度ちょっとやりましたけれども、医療なんかも問題があるんです。この点について各省やらなくちゃいけないんですが、農業だけは一応キャラバンとかいってやっていますけれども、ほかの分野についてきちんとした説明会というのは開いているんでしょうかね。

 ちょっとこれは通告をしていないんですが、石原大臣、紙をまとめたりとか、そういうことをされているんでしょうか、不安に応えて。

石原国務大臣 商業分野で、昨日も私、中京圏を回ってきたんですけれども、そこの中小企業の方を中心に、TPPを利用して海外に出たい方、そういう方を御支援させていただきます、ジェトロが中心でございますけれども、新輸出大国コンソーシアムという支援をさせていただいておりますが、現在、千七百六十ぐらいですかの会社の方々が関心を示され、来ております。このうち、農林水産の物をつくっていらっしゃる方、それと加工の方がおよそ二割程度でございます。

 私がお会いさせていただいて印象に残った方は、実は名古屋でランドセルをつくられている方なんですけれども、昨年アメリカに行って、大変関心が強いと。ただ、日本のランドセルは手縫いでございますので、コストの面でもう少し何か下げることができれば、ランドセルはアメリカでは関税がかかるそうで、それに大変関心を示されているという社長さんとお話をさせていただきました。

篠原(孝)委員 今、中小企業の海外進出はそういう前向きなのではないんです。不安を抱いている部分です。

 例えば、国民皆保険がおかしくなるんじゃないか。総理も指摘されていました。オプジーボというのは三千二百万円もかかる、アメリカの薬も高い、それで社会保障制度が壊れてしまう、国民皆保険制度が壊れていってしまうんじゃないかと。それで、薬価を下げたらアメリカの企業がISDSで訴えてくるんじゃないか、こういうのですよ。こういう疑問に答えるペーパーとかが全然ないんですよ。説明も開かれていない。これを僕が言っているんです。

 ですから、いいですか、これは大事な政策で、憲法改正、原発の運転再開とあるんです、TPPが一番賛成が少ないですけれども。これで、安倍総理がやろうとされていることに反対が結構多いのに、一番下に、支持率が五〇%と、急に高くなっているんですよね。お人柄のせいか何か、これは不思議なんです。これは、野党がだらしなかったり、岸田さんや石破さんや何かのせいというのもいろいろあるのかもしれない。だから、安倍総理は、もう大宰相の域に近づいておられるんじゃないかと思います。もう安倍さんに任せると。ですから、よく考えていただきたい。いいですか、世界の全体の潮流がどうなっているか。

 EUからイギリスが離脱しました。英語では、雑誌を見たり新聞を見ても、ちょっと私の発音が正しいかどうかわからないんですが、グローバルファティーグと書いてある。グローバリゼーションにもう疲れたと。アメリカ国民ももう疲れたんです。イギリスも、EUがやたらいろいろ言う、イギリスのことはイギリスで決めたい、もう嫌だと。

 日本国は、さんざんグローバリゼーションでもって富を得てきたんです、きょう午前中も総理が盛んにそう言っておられましたけれども。だから、そんなものかなと思っている。だけれども、それはちょっと違うんじゃないかと。企業の利益が国民の利益になっていたんです。しかし、今や、多国籍企業の利益が日本国民の利益にならなくなってきているんです。アメリカがまさに先んじてそういう状態になったから、グローバリゼーションなんて言ったってどこかの話だ、我々はどうするんだと。だから、一%の富裕層が勝手に豊かになるだけで、我々は置いてきぼりになっているということを言っているんじゃないでしょうか。

 これを見ていただきたいんです。それで、日本の自立という一番下のところを見ていただきたいんです。

 日本の伝統文化の維持、これは何回も申し上げていますけれども、僕もこっちの方の派なんですよ、本当は。本当はというか、ずっとそうなんですけれども。ところが、TPPで何でもアメリカと同じルールにしていくようになってきちゃうんですね。いや、そんなことまで譲る必要があるのかと。

 今閣僚になっておられる方が、かつて、TPPバスの終着駅が日本文明の墓場だとおっしゃっていた。私は、これはちょっと大げさな発言過ぎて、こういうところでやったらすぐ削除と言われることだと思います。ですけれども、ある点では当たっていると思うんですよ。それを考えなくちゃいけない。

 どうも片方にばかり行っている、自国で決めていくんだと。だから、先ほどのNHKの世論調査、本当に正直だと思います。決められなくなる人たちがふえている。

 だから、こういうときにどうされるんだと。今、議論をやっている。筆頭理事として森山理事と非常に虚心坦懐に話をしていますよ。お互いに大人ですから、そんな露骨なことは言い合いません。ここで言うよりずっと紳士的にやっています。しかし、どこかあっちの方から、早く、今月中に採決とか、私はとんでもないと思います。

 一度申し上げたと思いますが、海洋法条約の批准を私が水産庁の企画課長として担当しました。前回ここにだっと並べたですね、八千四百五十ページとか。こんなに内容があるのはないんですよ。これを、三十時間か四十時間で議論して、はい、終わりと。それはないですよ。内容が豊富過ぎるんですよ。今言いましたように、知財、保険とかみんな、政府調達なんかも問題だらけなんです。これをきちんと議論して、そして国民の前に明らかにする。

 我々国会の役割は何でしょう。さんざん秘密交渉、秘密交渉でやってきたんです。資料、交渉経過は出せないと言ったら、我々が議論して、こういうところがいいですよと。いいんです、それで。こういうところが問題ですよということを議論を通じて国民の前に明らかにして、そして最後に採決するというのが筋じゃないんでしょうか。

 ここには、さっき書きましたけれども、発効の見込みがないと言ったら、少ないと。どの程度少ないか。当分ないですから、ないはずです。だから、パリ協定のように慌てふためく必要は全くないんです。私は、じっくり議論すべきだと思います。総理、焦らないでください。

 それで、総理に質問したいことがあるんですね。もう三年半、四年近くになります。ちょうど一年たちます二〇一三年の十月二十一日、このネクタイをばっと出して歌舞伎みたいなことをやったわけですけれども、僕はずっとしつこくやり続けているんです。違うネクタイも持っているので早くやりたいんですけれども、こればかりですよ。

 それで、そのとき申し上げたんです。覚えておられるかどうか。頑張って三年はやってくださいと。同僚議員から怒られました、何であんな余計なことを言うんだ、すぐ倒そうと思っているのにと。僕の予感は当たるんですよ、今度は長期政権になるなと。そして、任期が来て、四年の任期で解散になったら考えてくださいと。絶対、安倍さんは反省されているので、今度は間違いなく政権運営されるという予感があったんです。だから三年と言っているんです。

 その後、お忘れかどうか。これをちょっと言うと、二回目言うのはやめておきます、何とか総理になるなんて言ったんですが。覚えておられると思います。次に、慢心が過ぎるんじゃないでしょうかと。

 三年半、四年近くたちました。もう落ちついて政権運営していただきたいと思います。特にこのTPPについては、私はこれからじっくり議論させていただきたいと思います。テレビ入りじゃないところで一時間でも二時間でもずっとやり続けたいと思います。これをじっくり議論するチャンスを与えてください。そして、その結果、ちゃんと採決する。途中で打ち切ってなどというのは、よもやされないでしょうね。まして、こんなもので解散とかいうのは。これは私の言うことじゃないですけれども。ぜひそういうふうにしていただきたい、この問題についてはじっくり議論の機会を与えると。

 それで、質問です。ちゃんと通告しましたからね。

 クリントンさんは、TPP、よかったけれども、だめだと言っています、反対だと。前言をひっくり返していますよ。小泉さんは、そんなことは余り言わなかったですけれども、原発を推進してきたはずですよ。それを、原発はだめだと言っている。それぞれ悔い改めたりと、大きな政策ですと政策変換というのはあるんですよ。

 総理には、大きなものでそういうものはおありになるんでしょうか。なかったら、TPPについてぜひそういうふうにしていただきたいと思っているんですが、いかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 篠原委員の御指摘は、傾聴に値することが多々あると私も思っております。日本の伝統文化の維持、自国で決める、これはまさに自民党の姿勢そのものでございます。

 英国のEU離脱については、確かにグローバル化の疲れなんだろうなと思います。というのも、英国の一割ぐらいの法律については、いわばブラッセルで決める。これは、別にTPPは我々の法律に対して何の介入もしてこないわけでありますから、そこはしっかりと我々は守っていかなければならない、こう思っておりますし、ですから、いわゆるEUに入ることとTPPは全く大きく違うんだろうと思います。

 また、米国のルールでじゅうりんされてはならない、これは私もそのとおりだと思います。ただ、例えば今回は、お薬の期間について、新薬が出て十五年だったものを、アメリカはこれを確保したいわけですね。TPPメンバーで新薬をつくれるのは日本とアメリカだけでありますが、しかし、なるべく安く薬を提供してもらいたいという、ベトナムやマレーシアや、あるいは豪州もそうでした。しかし、そういうところに、最後は要望に応える形でこれが約半分になっていったわけでございますから、そういう意味においては、そういう調整もなされているんだということでございます。

 しかし、我々も、そうした御指摘が当たらないように、まずTPPについては、多くの方々がTPPを批准し、そして実施されてよかったと思っていただけるようにしっかりと進めていきたいと思いますし、また、この委員会の運営も、塩谷委員長、森山筆頭と、我が党の中で最も穏健なお二人が務めておりますから、穏健に運営をされて、熟議の上においては御採決をいただきたい、このように思っている次第でございます。

篠原(孝)委員 では、最後に一つ。

 総理、ちょっと認識が違うのがあって、EUよりもずっと有利というのはとんでもないですよ。ISDSは、日本の法律なんかにぎゃんぎゃん文句を言って、国に賠償金を払えと、変えようとする。真面目な役人はアメリカに気兼ねして、萎縮効果が相当出てきている。こういうのがあるんですよ。ですから私は絶対反対なんです。

 この点もじっくりこの次議論させていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 民進党の今井雅人でございます。

 私も、この国会からこの特別委員会の理事をやらせていただいております。我が党の筆頭理事の篠原さんは穏健でありますが、私は穏健ではありませんので、まず、先ほどの午前中の話を少しさせていただきたいと思うんです。

 近藤委員の方から、もとの理事が外の場で強行採決という発言をしたということを言っておりましたけれども、このときに、各委員の皆さんが、それは外の発言だからここで言う話じゃないとおっしゃっていました。確かに、これは派閥の会合で発言されたことだというふうに私も承知しております。ですから、私も理事になりましたので、理事会の場で、その方に、これはどういう意味なんだ、この強行採決というのはどういう意味で使ったんだということをお伺いしようと思ったんです。

 ところが、その発言をされてからわずか数時間で雲隠れされてしまいました。辞任をされたということです。それで、今、江藤さんがまた新しい理事になっておられます。ですから、本人に聞く場がありません。

 ですので、改めて、自民党の議員でございますから、安倍総理にもお伺いしたいんですけれども、この特別委員会の理事という役目を担っている方が、派閥の会合の席とはいえども、カメラの前で、この秋の国会では西川先生の思いを強行採決という形で実現するように頑張らせていただきます、こういう発言をするということは、これは議員としてどういう資質を持っているのか、私は疑問に感じるんですが、この点について安倍総理の御見解をいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 当該委員がその発言をしたことに対しましては、我が党の国対委員長から注意をし、そして理事を辞職した、このように承知をしております。

 いずれにいたしましても、円滑な委員会運営が可能となるよう、我が党においても努力をしていかなければならない、このように思っております。

今井委員 ということは、総理もこれは問題発言であったというふうにお考えだということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、我が党において、今まで結党以来、強行採決をしようと考えたことはないわけであります。党として考えたことはないわけでありまして、円滑に議論をし、そして、議論が熟した際には採決をする、民主主義のルールにしっかりとのっとっていくのは当然のことであろうと思うわけでありまして、この考え方とは相入れない発言だった、だからこそ国対委員長から注意がなされ、本人は辞職をした、こういうことではないかと思います。

今井委員 それではお伺いしますが、強行採決をしたことはないとおっしゃいますけれども、日程ありきで物事を進めるというのは、これはまさに、審議が熟しているかどうかにかかわらずここで採決をするという意味ですね。

 先ほど、公明党の幹事長が十四日の定例会見で、この十月いっぱいで衆議院を通過させたいとおっしゃっているわけです。日程をここだというふうに……(発言する者あり)いや、どういう表現をされたかとはいえ、ちゃんと期限を切っておっしゃっているわけです。いやいや、公党の幹事長ですよ、公党の幹事長がここでやりたいというのを……(発言する者あり)いやいや、ちょっと聞いてくださいよ。

 私たちは、本来……

塩谷委員長 御静粛に願います。

今井委員 静粛にお願いします。

 本来、我々は、国会は、それぞれの常任委員会の大臣所信をしっかりしていただいて、その所信に対する質疑をしてから、店開きをしてから、それぞれの委員会の質疑が始まるというのがルールだと思うんですね。

 しかし、このTPPの議論はとても大事ですし、国民もまだよくわからないと言っているから、できるだけ協力をして、長い時間をとって、皆さんにちゃんと理解をしていただくようにということで、先週の十四日の質疑入りを我々も認めたわけですよ。

 その日に公党の、与党の幹事長が、何日ぐらいに上げたいとおっしゃるのは、それは我々にとっては本当にやるせないというか、とにかく、総理はいつもおっしゃっていますよね、国民の理解を得てから、努力をしてから採決に応じたいということでありますから、それは目安はあってはいけないと思うんです。国民の理解が得られるところまでやるということが目安だと思いますけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 限られた会期の中で議論を深め、議論が熟された段階において採決をするというのは当然のことであろうと思います。

 そして、その発言については、全体の文脈を私は承知しておりませんので何ともコメントのしようがないということでございますが、いずれにいたしましても、しっかりと御議論をいただき、議論が定まってくる、あるいは熟してきた段階においては御採決をいただきたいというのが政府の立場でございます。

今井委員 国会が限られているので議論をそこでしなきゃいけないというのは、順番が間違っていますね。議論が熟す……(発言する者あり)いや、別に何国会やったっていいじゃないですか、議論が熟していないのであれば。会期を最初に決めて、そこでやらなきゃだめだというふうに決めること自体が間違いだと思いますよ。会期は合意していますが、この法案をこの国会で通すなんて合意していません。議論を熟してやりましょうということを申し上げているわけです。

 ですから、ぜひ、委員長、委員会の運営は委員長の差配ですから、くれぐれもどこかで時間を切って強行採決をするなんということはしないでいただきたいと思いますが、どうでしょうか。

塩谷委員長 全くそういうことはやっていませんので。理事で、理事会でも協議して進めています。よろしくお願いします。

今井委員 ぜひよろしくお願いします。

 それで、去年……(発言する者あり)いやいや、きょうは、まず中身に入る前の総括質疑ですから、審議の進め方についてもやはりここで一回確認をしておかなきゃいけないので、こういう質問をさせていただいています。中身は今後しっかりやってまいりたいというふうに思います。

 それで、皆さん覚えていらっしゃると思いますけれども、昨年、安全法制、紛糾のもとに強行採決がされました。そのときも実はどれぐらいこの衆議院で議論したかというと、百八時間やっています。百八時間、この衆議院で議論をしています。

 ちなみに、先ほど外務大臣がおっしゃっておられましたけれども、今回のTPP協定は、全体で八千四百ページぐらいあって、過去最大級の国際協定だというふうにおっしゃっています。過去最大級です。

 それで、項目にしても三十項目ありまして、先ほど篠原さんもおっしゃっていましたけれども、中身は本当に多岐にわたっています。法案も全部で十一本、これが束ねて出てきています。中には、マルキンとか、本来は別々に審議しなきゃいけないものも一緒に入っているんですね。その分だけでも質疑時間はもっとふやさなきゃいけないと思うんです。

 それで、さらに言うと、日本語でも四千ページ出てきましたけれども、先ほどもありましたが、十八カ所も訂正があり、抜けているのもあり、もう一度そこの部分もチェックしなきゃいけないわけです。

 ですから、ゆめゆめ、何か四十とか五十とか声がどこかから聞こえてくるようでありますけれども、少なくとも、前回も百時間以上議論しているわけです。それでも中身がみんなよくわからないという世論調査の中で強行採決されたわけでありますけれども、とにかく、国民が理解したと、先ほどTPPがよくわからないという人がふえたというふうに世論調査が出ていましたけれども、あれがどんどんなくなっていって、大体わかったという環境が整うまでは最後の判断をしないでいただきたい、そのことを総理にお願いしたいと思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 委員会の運営はまさにこの委員会でお決めになることでございますので、我々政府としては、委員会の運営に全てを委ねているところでございます。

今井委員 ですから、先ほど委員長にお願いしたんですけれども、私も理事の一人ですから、十分な審議をしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 それでは、次に、午前中からも話題になっておりますけれども、SBS米のことについてお伺いをしたいと思います。

 内容もそうなんですけれども、今回のことは、一番大事なことは、情報開示をしっかりするかどうかということだと思うんですね。国民が、この問題はよくわからないとみんな言っているわけです。正直、少し難しい、わかりにくい内容でもあるんですけれども、だからこそ、丁寧に、いろいろな資料をきちっと出して、その中身を吟味していくということをやはりやっていかなきゃいけないわけなんです。

 ちょっと時系列でもう一度確認したいと思うんですけれども、実は、九月の十四日、毎日新聞にこのSBSの価格偽装の疑惑という記事が出てまいりました。国会閉会中でありましたので、我が党としても、国会開会の直前、九月二十三日から国会内にそういうチームをつくりまして、この問題について議論を始めたんです。

 農水省の方にも来ていただきました。最初、九月二十三日に始めて、開会の九月二十六日にも二度、二十七日にも、二十九日にも、ずうっとやりました。

 まず最初は、早く調査をしてくれというふうに申し上げたんですけれども、できるだけ早くやる、できるだけ早くやるという回答でありましたので、そこはいつまでにやるというお答えをいただけませんでしたから、では、せめて、どういう内容を今質問しているのか、それだけでも教えてほしい、当然質問票があるでしょうということを申し上げて、それだけでも出していただきたいということを申し上げたんですけれども、ゼロ回答です。全く出していただけない。質問している内容すら出していただけないんでしょうかということを何度も何度もお願い申し上げましたら、九月二十九日にやっと出てきました。

 これは資料でお渡ししています、このパネルにもあるものなんですが、総理、ちょっとまずこのペーパーを見ていただきたいんです、出ているペーパー。

 驚きました。SBS方式の輸入米に係る調査というふうになっていますが、これは一体誰の調査ですかね。誰が調査したかという作成者名がありません。それから、いつこの報告書をつくったんでしょうかね。日付も入っていないんです。

 私は、民間にいたときにこんなペーパーをつくったら、上司に怒られましたよ。今、役所でもこんなペーパーはあるんですか。誰がつくったかもわからない、いつつくったかもわからない。こんなペーパーが、さんざん出せ、出せ、出せ、出せとお願いをして、やっと出てきたペーパーがこれです。

 もし、安倍総理が何か資料をどこかの役所にお願いして、いただきたいといって、こういうものが出てきたら、どうお感じになりますか。総理に聞いているんですよ、総理に。

塩谷委員長 先に、それでは山本農林水産大臣。

山本(有)国務大臣 この九月三十日付の農林水産省の資料は、予算委員会の理事会に提出した資料でございます。

 我々としましては、SBS取引において国内米生産者に不信感を抱かせるのではないかという問題意識から、このSBS取引における全五年間の公文書保存期間の全ての取引について調査を行う、その調査の内容はかくかく、すなわち対象であり、項目であり、そして、この調査を終えた後、関連データを分析するというように、詳細に御報告をしたものでございます。

 また、この作成名義人は農林水産省でございますし、また、この調査を行っているのは農林水産省の幹部の皆さんでございました。

 以上です。

安倍内閣総理大臣 今大臣がお答えしたように、この文書の文責は農林水産省であり、そして調査を行ったのも農林水産省だということでございます。

今井委員 いや、そんなことを聞いているのではなくて、こういう、ある意味ばかにしたようなペーパーが出てくることをどう思われますかと。日付もない、クレジットもない、そういうペーパーを出してくるということ自体が不誠実だし、情報をきちっと出す姿勢がなっていないというように私は思うんですけれども、総理、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 これは、それ一枚だけをお渡ししたんですか、そのとき。(今井委員「そうです」と呼ぶ)

 今後は、文責、日付等、しっかりと書くように指導したいと思います。

山本(有)国務大臣 実は、このペーパーすら出すことにちゅうちょがありました。

 と申しますのは、調査中の事項でございまして、かつまた任意の調査でございます。食糧法等に違反した事案ではございません。そして、国、輸入業者及び買い受け業者の三当事者間の契約が合法的になされた上で、その内容について調査をしているわけでございまして、しかも、これは公表を前提としたものではありません。

 そして、この調査途中で、何らかの調査についての中途での公表があるならば、以後の調査に影響を与えるというようなナーバスな観点から、神経質になっていらっしゃる調査相手もいらっしゃるようでございますので、このように極めて限定的な報告をさせていただいたということを十分御理解いただきたいと思います。

今井委員 今の答弁はちょっと不誠実だと思いますよ。公表を前提にしていない調査ですけれども、今報告書をつくっているじゃないですか。だから、ある意味公表していらっしゃるわけでしょう。(発言する者あり)いやいや、そうなんですよ。

 それで、中身は全部精査してから報告をつくるというのはそれはまだわかりますけれども、何を調査しているかぐらいは教えていただきたいということを申し上げたんです。

 それはなぜ申し上げたかというと、このSBSの価格偽装疑惑の問題は、要するに、売り渡し価格、買い取り価格と別の価格で、市場でもっと安い価格で売られているんではないだろうかということがポイントなわけですね。そういうところがたくさんある。ですから、そういう質問は当然していらっしゃるんでしょうねという確認をしたかったので、質問の内容を見せていただきたいというふうに申し上げたんですけれども、いやいやそれすらも出せないというのは、それは幾ら何でも、情報を出せない出せないというのは、全くゼロ回答というのは、まるで何も出す気がない、農水省はそういう姿勢だというふうに思わざるを得ないですよ。どうですか。

山本(有)国務大臣 まず、調査の途中におきまして、民間の取引実態の詳細がわからない中でヒアリングを行っておりました。このヒアリングをしながら、その回答を踏まえて、質問の仕方等を工夫しつつ進めたという事情がございます。そんな意味で、この調査について詳細に開示できなかったという事情をお酌み取りいただきたいと思っております。

今井委員 ちょっとよくわからないんですが。

 実は、まずこの形式はちょっとさすがにまずいと農水省も思ったんだと思いますので、その後、九月の三十日に二枚目のペーパーが出てきました。安倍総理も先ほどはこのペーパーはちょっとけしからぬというような御認識は示されましたので、そこはそれで多としますけれども、その次に出てきたペーパーがこのお手元のペーパーです。このフリップではわかりにくいと思いますが。これでもどういう内容かよくわからないということで、さらにお願いをしましたら、先週の十四日に三枚目のが出てきたわけです。

 我々がこういうものが出てこなきゃ出てこなきゃということをずっとお願いすると、だんだん小出しに出してこられて、ここまで出してこられているわけですけれども、この間どれだけかかっているかということです。二週間か三週間ぐらいかかっていますよ。

 中身を見せていただきましたけれども、三回目に出てきたもの、これは秘密にするほどのものですかね。極めて当たり前のことしか書いてないんです。それを出し渋って出し渋って、今も御自分もおっしゃっておられましたけれども、なかなか出すのにちゅうちょしたとおっしゃっていますが、この程度のものを出すのをちゅうちょするというのは、よほど何か出したくない理由があるんじゃないかと普通は思うと思いますよ。(発言する者あり)

 いやいや、邪推だと今おっしゃいますけれども、では申し上げますが、実は、今週末、私の地元でJAの農業祭がありまして、生産者の方もずっと出られていて、私も出て、ずっと全部回ってきました、三時間。名前を申し上げるとその方に迷惑がかかりますから名前は申し上げませんが、JAの幹部の方と何人もお話ししましたし、米の生産者の方ともお話ししたんです。皆さん同じことをおっしゃっていました。これは私から振ったわけじゃありませんよ。国会でやっているSBS米の問題、よくわからないんですよね、農水省さんが何かを隠しているような気がして何かしようがないんですよねと。(発言する者あり)いやいや、そういう感想を聞いてきたというだけ、これは印象を申し上げているだけです。

 少なくとも、私の方から別に意図的に振ったわけじゃないのにそういうふうにお感じになっているのは、こうやって小出しに小出しにしか出してこないから、そういう姿を見ているので、本当に何かほかにあるんじゃないかなというふうに思われているんだと私は思います。

 実は、これはまだオリジナルが出てきていないんです。これは後で作成されたものですよね、こういうものを調査しましたと。私たちがもともとお願い申し上げていたのは、当然、電話でヒアリングをするに当たっては、最初にどういうものを質問するかという質問票をつくるでしょう、だからそれを見せていただきたいということなんですけれども、これは後づけでいろいろなことをこうやって書いてありますが、そのときのものかどうかがわからないというか、多分違うんですね。

 ですから、違う内容を質問していたかどうかということすらわからないので、当初質問したときの質問票というのを出していただきたいということをお願いしているんですけれども、改めてここでもう一度要求します、それを出していただけないでしょうか。

山本(有)国務大臣 まず、質問票はつくっておりません。

 それで、各個別に、ヒアリングをする皆さんが、千七百数十の取引について、過去、まずは金銭の授受があるかどうかを確認いたしました。ないというところについては調査をそこで打ち切りました。その残りの、あるという業者に対して、今度、専門家チームを集めまして、それで任意の、かつまた微細にわたるさまざまなアプローチの仕方でもってメモをとったわけでございます。

 このメモを転記して、そしてこの調査結果に結びついて、十月七日に御提出させていただいたという経過でございますので、質問票なるものは存在しておりません。(発言する者あり)

今井委員 ないものはないのか、提出するものがないのか、何かいろいろ飛んでいますが。

 常識的に考えて、今回、五人の方で調査をしたというふうに伺っています。五人の方にそれぞれ、調査をするときにこういうことを聞いてくださいということを口頭で言ったということになると思うんですけれども、口頭で言って調査をとりましたと。それがどういう項目だというので、これは三回目に出てきたものに書いてありますが、こんなことを口頭で言ってそれぞれヒアリングをとるんでしょうかね。だとしたら、ちょっとやり方が農水省は余りにずさんなんじゃないですか、逆に言うと。

 本来であれば、まず書面で各業者さんにアンケートをとって、こういうことがあるかという、ちゃんと後で残るもので調査をするのが筋だと思いますけれども、ほとんどそういうケースで役所はやっていらっしゃるんじゃないかと思いますが、なぜそういうことをなさらなかったんですか。

山本(有)国務大臣 まず、SBSの取引における当事者、輸入業者というのは二十六業者に限られております。また、買い受け業者も百数十業者に限られております。しかも、これは一九九五年からずっと永続的に取引されまして、将来もまた永続的に取引しております。その中での価格というものにつきましては、企業の極めて重要な秘密でございます。その意思決定もかつまた重要な秘密であることは御承知おきのとおりでございます。

 その意味において、それを開示するということに対しましては、こちらも契約の当事者でございまして、そして、信義誠実の中で契約が全うされた以上、その信義誠実の中からあえて公表をいただいているという立場でございまして、そのように、ペーパーでこれを書け、あれをせいというような立場ではないということを御理解いただきたいと思います。

今井委員 強制力がないというふうにおっしゃいましたけれども、しかしながら、これだけ社会的に問題になっているものでありますから、しかも、大臣もここの答弁で何度も、価格に影響があるかもしれない、なので調べなきゃいけないとおっしゃっているわけですから、それはやはり、ある程度何度もお願いして、きちっと調査をしないといけないと思うんですね。

 私は、この内容についても非常に疑問を持っているんです。この報告書の中身を見ますと、二例だけ、こういうケースで買い取り、売り渡し、そして市場に出たというのが書いてありますけれども、今まで、取引、大体千八百件ぐらい多分あったと思うんですけれども、たった二例しかないわけです。この二例しかないものをもって、ここではそういうものが行われていないことをもって、そういう取引は行われていない、そういう事実は確認できなかったとおっしゃっていますけれども、それは、全体的にまだ答えていない人たちがたくさんいる可能性だってあるわけですね。そういうことを考えながらもっと調査をするということはされなかったんですか。

山本(有)国務大臣 まず、金銭のやりとりが過去または現在あると回答した全ての買い受け業者四十二者に対して、受け取った金銭の活用方法を質問するのにあわせて販売価格についても質問したところ、販売価格について何らかの回答が得られた業者もあったものの、まさに個別企業の商取引に関することであるから、抽象的なものであり、詳細かつ具体的な公表を前提とした回答を得ることはできませんでした。

 そこで、米穀業界取扱量上位五者のうちSBS米の取扱実績がある四者を対象にいたしまして、公表を前提としてヒアリングを実施したところ、販売価格まで聞き取ることができましたのがわずか二者、この事例のみでありまして、これを報告書に記載したものでございます。

今井委員 では、改めて確認をいたしますけれども、調査の中で、いわゆる調整金と言われているものを販売価格に反映させたということを回答した業者さんは一人もいなかったということですか。

山本(有)国務大臣 この調査結果をごらんいただきますと、影響はなかった、こういうことでございまして、影響したという業者は一例もありませんでした。

今井委員 もう一度確認しますけれども、調整金を販売価格に反映させた企業はなかったということでよろしいですか。

山本(有)国務大臣 まず、金銭のやりとりにつきましては、現在もあると回答したのは、買い受け業者で一割、輸入業者で三割にとどまっておりまして、この金銭のやりとりの目的、背景は、販売促進費、販売奨励金などと呼んでおって、輸入業者が長年のつき合いの顧客など買い受け業者を選択して行われていること、落札から実際の調達までの間に生じるコストの変化の調整や販売促進等の目的で支払われていること、場合によっては、買い受け業者が落札後のコスト増を理由に輸入業者に支払うこと、すなわち逆調整金もあったことなど、多様でございます。

 さらに、買い受け業者は、国産米の価格の水準をSBS米の販売価格の決定の際の主な考慮事項として、仮に輸入業者から金銭を受け取ったとしましても、その金銭をプールした上でさまざまな経費に活用した、こう回答しておりまして、国産米の価格水準を見据えながらSBS米の販売を行い、事業者の経営全体として利益を上げていこうとする実態にあるということでございまして、いわば実質的に米の価格を下げるために使ったというところは一例もありませんでした。

今井委員 今、一例もないというふうにおっしゃっておられましたけれども、我が党の方にこの調査を受けた会社の方から、我々は調整金を販売価格に反映させていたんだけれども、それは報告しているが、この調査報告結果に載っていない、だから、場合によってはそういう公表をしても構わないという連絡も入っております。ここで会社名は言うわけにいきませんし、我々もきちっと精査しなきゃいけないと思いますけれども、そういう連絡が入っているのは事実です。

 ですから、我々は何を申し上げたいかというと、普通に考えて、この調査の中で、例えば、過去そういうことをやっていたかどうかというところまで聞くと、いわゆる卸売業者さんで四割、輸入業者さんで七割に全体が膨れ上がるわけですね。

 では、過去というのは一体どこなのかということなんですよ。それは一年前までやっていたのか、つい直近までやっていたけれども、いろいろ騒がしいのでこれからはやめようといって、過去はやっていたというふうに言っている場合だって考えられるわけでありまして、ですから、どれぐらいの本当の実態がつかめているかというのは実はわからないんですね。

 この調整金を価格に反映させたというふうに、本当のことを言うかどうかということ自体もなかなか難しいんじゃないかなと思うんです。ですから、わずか二例だけを、正確に報告してくれたところは、それはそういうことがないから報告できるのであって、そうじゃないところはなかなか報告できないと思うんです。だから、その例をもって、二つしかなかったのでもうこの問題は問題ありませんでした、決着ですというのは、私は余りにちょっと雑だと思いますので、もう一度そういうところもしっかり調べていただきたいと思いますが、いかがですか。

山本(有)国務大臣 問題は、国内価格への影響あるやなしやでございます。

 そして、SBS契約当事者は、輸入業者、国、そして買い受け業者、卸、この三者でございます。この利害関係者に対しては質問は当然できるし、契約上の信頼関係もございます。

 しかし、卸からさらに転売されました中食、外食、牛丼屋さんだとか弁当屋さんだとかコンビニだとか、そのほか多種多様でございまして、ここまで悉皆調査ということをできる権限も我々にはありませんし、また、そういう調査をすることの能力もございません。

今井委員 時間が来てしまいましたので、この質問の次は次の委員にお任せしようと思います。

 私は、米の問題は本当にいろいろ深いと思って、きょうは実は、ITCの中で行われている、口約束、アメリカと日本の中で米の輸入、MA米の中での口約束があったんじゃないかという問題、これは委員会でも取り上げられたと思いますけれども、ここの問題もやろうと思っていましたし、高鳥さんとフロマンさんがサイドレターで、新しいSBS米の入札方法について物すごくアメリカを優遇するようなやり方を合意しているんですね。そういうところもまたこれから委員会でやらせていただきたいと思います。

 いずれにしても、今回の合意も含めて、やはり相当外国を優遇しているのも見られますし、国内の問題も十分解明されていない。だから、農家の方たち、米農家の方たちの不安がとれないんだというふうに思いますので、これからもこの問題はしっかりやっていきたいと思いますから、どうぞよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、福島伸享君。

福島委員 民進党の福島伸享でございます。

 通常国会に引き続き、TPPに関する議論をさせていただく時間を頂戴したことをまず感謝申し上げたいと思います。

 この間、地元を回っておりますと、TPPに関することはわからないことばかりだという声を多くお聞きします。先ほど同僚の今井議員がやっていた米の問題もしかり、黒塗りの資料の件もしかり、何でこれまで謎ばかり多いものをしゃかりきになって進めているのかという声が非常に多く、そうした声が、昨日の新潟県の知事選挙やあるいは七月の参議院選挙の北日本での結果、また稲作地域である私の地元でも大きな声になっているのだと思います。

 そうした意味で、まず冒頭、これまでも議論になりました、なぜ今この臨時国会で無理に無理を重ねて我が国がTPP協定の批准を行わなければならないのか、そうした点について議論したいと思います。

 総理は何度も、米国の政府も努力をしているんだから、その努力を続けてもらうためにも日本がまず批准するんだとか、あるいは、機運を醸成していくモメンタムをつくっていくという役割を日本は果たしていくべきなんだというふうにおっしゃいますけれども……(発言する者あり)そのとおりという声がありましたけれども、私はそんなのは全く甘いと思いますよ。

 問題は、大統領やUSTRの代表がどうするかではありません。アメリカ合衆国憲法上、通商交渉の権限の大きな部分は議会にあって、問題は、上院も下院も、民主党も共和党も、このTPP協定の早期批准には賛成していないというところにあり、その議会の意向を受けているからこそ大統領やUSTRは苦労しているというのが私は実情なんじゃないかなというふうに思っております。そういう意味では、政府に言ってもしようがないんです。ヒラリーとしゃべってもしようがないんです。

 外務大臣、議会対策を具体的に何かやっていらっしゃいますか。

岸田国務大臣 TPP早期発効に向けて、政府としましても、さまざまなレベルで米国側と意思疎通を図り、機運の醸成に努めていますが、議会対策について御質問をいただきました。

 一般論として申し上げるならば、在外公館において、その所在国と、経済関係強化あるいは日本企業への支援、こういった観点からさまざまな活動を行っています。そして、米国においても、日本企業の支援、そしてTPPを含めて日米経済関係、こうした課題について、米国側の関係者、そして米国世論の理解を深めるために種々の活動は行っています。ただ、どのような働きかけを行っているか、誰に行っているか、こういったことについては、今後の活動に影響も及ぼすことがありますので、これは明らかにしないということでございます。

 いずれにしましても、さまざまな働きかけ、活動は行っております。

福島委員 本当にそうであればいいと思いますけれども、個々の議員は、それぞれ地元の選挙区があって、地元の産業があって、それを抱えてのことでありますから、そんな反対している議員に行くことも恐らくやぶ蛇だと思うんです。私も何人かの議員の事務所にいろいろ聞いたりもしましたけれども、日本の政府の関係者が来ているということは余りおっしゃらない事務所の方が多かったように思います。

 その上で、これはなぜ反対するかといえば、アメリカと日本の二国のみに、TPPにある意味拒否権があるわけですね。GDPの八五%を占める国が批准をしない限り発効しないという意味では、日本かアメリカのいずれかが欠けてもTPPが発効しない。もし日本がTPPの発効を望むのであれば、アメリカが批准しない限りこれは発効しないんです。だからアメリカは、再協議だ何だということをごたごた言ってきて、アメリカが批准しなきゃ発効しないわけですから、俺たちの要求をのまなければTPPは発効しないけれども、それでいいんですねということを言ってくるわけです。

 総理はこれまで国会の答弁で、国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立すれば、再交渉はしないという立法府を含めた我が国の意思が明確に示されるとか、院において、国会においても再交渉しないという決意にも、法案を通せばつながっていくと言いますけれども、私はそんな甘いものじゃないと思いますよ。

 仮に再交渉がなかったとしても、さまざまな手段を通じて、今の交渉の現状を変更しようとする努力を続けてくる可能性があります。私は、その技術にたけた方が政府にもいらっしゃると思いますけれども、安倍総理、その方のことを御存じですか。そういう方がいらっしゃることを御存じですか。再交渉をしなかったとしても、この条約を勝手に変えてしまうようなことができる、すばらしい外交テクニックがある方がいらっしゃることを安倍総理は御存じでしょうか。

安倍内閣総理大臣 ちょっとよく意味がわからないんですが、再交渉をしなくても……(福島委員「しなくても、TPP協定の中身を変えることができる」と呼ぶ)再交渉をしなくても、TPPの中身をですか。中身を我が方に有利にですか。(福島委員「どちらに有利かわからない」と呼ぶ)

 基本的には、今、各国がまさに批准に当たろうという微妙な時期でありますが、まさに交渉によって得た結果が全てであり、我々の基本的な立場は、もう再交渉はしない。これは、十二カ国が加盟した、十二カ国によってつくり上げられているガラス細工のようなものでありますから、それを、例えば日米で再交渉したとしても、日豪にもかかわってきますし、他の国々ともそれぞれかかわってきて、これをまた一からやり直しということになるわけでございまして、これは、日本のみならず、豪州も、例えばニュージーランドも、再交渉はしないということは私に明確に述べていたところでございます。

 今、福島委員が言われたようなそういう人物がいるということについては、私は寡聞にして存じ上げないところでございます。

福島委員 おっしゃるように、これから条文のテキストを変えるような再交渉を十二カ国でやるということは、これは非常に困難が伴うし、時間もかかることだと思います。しかし、条文の変更を伴わないで、日本が譲歩するようなやり方をするという交渉もあるということなんですね。

 これは、二〇一五年の十一月二十四日のインサイドUSトレードという非常に権威ある通商交渉の新聞の中で、当時の山野内駐米公使がこういうことを言っております。TPPを発効させるために、交渉官はとてもうまいやり方で、柔軟性と創造力を持って、テキストを一切変えることなく、再交渉することなく、課題を乗り越えていくだろうと思っておりますというふうに答えていた。

 つまり、再交渉という十二カ国でのテーブルに着かなくても、条文のテキストを変えなくても、相手の国が要求していったことを解決するためのさまざまなテクニックを使うことができるということをおっしゃっているんですよ。

 たまたまその方が、今、外務省経済局長におりますので、どういう方法でこれをやるかということをぜひ教えていただきたいと思います。

山野内政府参考人 お答えさせていただきます。

 今御指摘の件は、ワシントンのシンクタンクでのパネルディスカッションにおける私の発言でございますけれども、あくまで一般論として、あの段階で、十月五日にTPPが大筋合意をした後、さまざまな議論が行われる中で、それぞれの政府は、大筋合意した、実質決着をしたということを最大限実現していく、そのために強い決意を持って知恵を出していくということを述べたものでございます。

福島委員 全く何を言っているのかわかりません、テレビを見ている方も同僚議員も。

 要するに、局長、これは、テキストの条文を変えなくても相手の国に譲歩したりすることができる技術があるということでよろしいですよね。どうぞ。

山野内政府参考人 先生がおっしゃっている意味は私にはわかりませんけれども、そういうことはございません。私が申し上げましたのは、各国とも強い決意を持って、実質合意をしたTPPについてそれを実現していくということを申し上げただけで、誰かが誰かに譲歩するというようなことを申したことは一切ございません。

福島委員 いや、あるんですよ、そういうのは。今までもそういうことをやっております。先ほど、前払いの議論を近藤洋介議員が午前中に行いました。TPPに入るときにそういうことをやっているじゃないですか。

 二〇一三年二月二十二日の日米共同声明では、自動車や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、なされるべきさらなる作業が残されている。つまり、交渉参加する前に、日米間で保険や自動車部門をやりましょうというのに基づいて軽自動車の増税というのをやっているんですよ。

 石原大臣はそうじゃないとおっしゃっていますけれども、平成二十五年十一月の総務省の自動車関係税制のあり方に関する検討会で、かねてより全米自動車政策評議会、欧州自動車工業会から、軽自動車への優遇措置の廃止や見直しが求められていると政府の文書に書いているんですよ。だからこの検討をしているんだと政府の資料に書いてあるんですよ。

 午前中の発言を取り消していただけませんでしょうか。

石原国務大臣 すごい誤解がありますね。アメリカ側は、絶えず日本の軽自動車に対して、午前中も御答弁させていただきましたように、性能が上がって普通車との間に障壁があるんじゃないか、それに対してはずっと言ってきています。

 それとは別に、我々が税制調査会でどういうふうにするのかということは、福島委員は御存じないと思いますが、長年にわたって議論をしてきていることでございます。

福島委員 知っていますよ。我々だって与党のときに議論しているからわかりますよ。

 問題は、それをTPP交渉に参加した後に実現していることが問題なんです。しかも、政府の資料は平成二十五年ですよ。まさにTPPの議論をしているときに、軽自動車の増税をしなければならない理由の一つとして挙げられているんですよ。我々の政権のときも当然それは議論しましたけれども、そんなのそもそも一蹴して、政府の資料に、アメリカから要求されているからこのことを議論しますなんて入れたことは一度もありません。

 安倍政権になってから、アメリカの自動車の業界から要求されているからこの検討をした、この事実は認めるべきでしょう。どうですか。

石原国務大臣 二つのことを一つにしていらっしゃいますね。例えば、車の業界の中でも、軽自動車をつくっていない業界は、軽自動車の税率を上げろとずっと要求をしております。そして、税制においては、税制改正大綱を読んでいただければ、毎年毎年、検討項目というのがあるんですね。その検討項目の中に、何をやるかということが全部入っておりますので、ぜひ我が党の税制調査会の検討項目を見ていただきたいと思います。

福島委員 そんなことは聞いていないですよ。だって、安倍政権になってから初めて、アメリカの自動車業界の要望に基づいて検討しているというのが、自民党じゃないですよ、政府の文書に入っているんですよ。政府の文書として入っているんですよ。

 それ以外にも、例えば日本郵政とアフラックの業務提携。アフラックの保険商品を多くの郵便局でやりましょうということは、日本がコタキナバルでTPP交渉に初参加した二日後に実現しているんですよ。あるいは、かんぽ保険ががん保険とかの新商品の販売をする認可を凍結すると麻生財務大臣が二〇一三年四月十一日に表明をされておりますが、これも日米の首脳会談の後のことですよ。

 これは、確かにこういうのは条文上は載っていないけれども、まさに譲歩に譲歩を重ねるということなんですよ。

 TPPの協定は変えずしてアメリカの要求に従うことというのはできるし、今までもやってきたんですよ。そうしたことは一切やらないと、安倍総理、断言できますか。

安倍内閣総理大臣 このTPPが批准された後、我々がさらに譲歩を重ねるということはないわけでありまして、いわば再交渉しなければ我々に譲歩するという義務は生じないわけでありますから、そこで、再交渉しないということは明確にもう既に外に対して私も申し上げているわけでありますし、米側にも通告をしているところでございまして、再交渉はしない、よって新たな譲歩が生まれるということはないということでございます。

福島委員 議論がずれております。私は、TPP協定の条文の再交渉と言っているのではありません。確かに、それは今まで何度も、しないと言っております。

 条文の再交渉以外に、ほかの分野でアメリカに譲ったり、条文をいじらない形で譲歩したり、このTPP協定をアメリカに批准してもらうために何か交渉することはありませんねということをお聞きしております。

安倍内閣総理大臣 このTPP交渉が終わって、彼らが再交渉してくれ、だめだよ、だったら、おまえ、これをやれということはないということは明確に申し上げておきたいと思います。

 しかし、交渉は、日米でございますから、それは当然、さまざまな交渉をするわけでありまして、そこでそれぞれ適切な判断はしていきたい、こう考えております。

福島委員 いや、我々はそれを恐れているんですよ。TPPはアメリカが批准しないでおいて、日本が批准したいんだったら、発効してその利益を得たいんだったら、あれを出せ、これを出せと言ってずっと批准しないでつるしておいた方が、今総理がおっしゃったように、それ以外のものについては適宜判断していくというわけですから、そこで譲って譲って譲って、でも、それはこれまで繰り返してきたことなんですよ。私はそこを恐れます。

 そうしたら、日本はTPPに関連して全く何もやらない。では、何にもやらないんだったら、アメリカはTPP協定は批准をしませんよと言っても、それでもいいということでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 適切に判断するというのは、TPPにかかわるさまざまな事柄についての交渉において、我々が適切に判断して決めていくということではなくて、先ほどの文脈では、日米間にはさまざまな交渉がございますから、さまざまな交渉に影響を与えるということは、TPPの決めたこと、あるいはそれを変更しろという要求に対応するために、TPPによって他の交渉に影響を与えることはないということは明確に申し上げておきたいと思います。

 その上において、これは日本だけが利益を得るものではなくて、米国もTPPに入る、全ての国々がこの自由貿易圏をつくることによって利益を上げるわけでありますから、大局的な観点から判断してもらいたいということであって、日本が米国に、まさに自分たちが批准しなければこれは発効しないんだからということでおどかされるような立場には全くなってはいないということは当然のことであろう、我々は我々の責務としてこの批准を行い、米国はしっかりとその責務を果たしていただきたい、こう思っているところでございますし、彼らがその責務を果たす上においても、日本がリーダーシップをとって、しっかりと国会で議論し、批准していくことがベストであろう、こう考えているわけでございます。

福島委員 そうはいっても、私は、日米間で、TPP交渉ではないと言いながら、それと並行して何かが行われることが、まさに山野内経済局長がおっしゃるような、条文を交渉しないで巧みなやり方でやることを懸念するものでありますから、この問題については引き続き追ってまいりたいと思っております。

 さて、続きまして、先ほど来議論になっているパリ協定との関係です。

 ずっと総理はルールメーキングに参加するんだということもおっしゃっておりましたし、あの伊勢志摩サミットでも、年内の発効に向けて努力していくというお話をされました。私は、これは、読み間違いじゃなくて、不作為なんじゃないかなというふうに思っております。

 パリ協定は、ここにありますように、五十五カ国以上の締約国と批准国の温室効果ガス総排出量が世界全体の五五%以上に達したときに発効するということになっていて、先ほどありましたように、この基準については日本が提案したということでございます。

 大きく動いたのは、アメリカと中国が手を携えて、TPPでは中国封じ込めとかいう議論もありますけれども、これは米中同盟ですよ。同時に手を携えて批准したことで大きく動き始めます。

 一方、日本での臨時国会が始まったのは九月二十六日。そして、十月二日には排出量四位のインドが批准をいたします。この段階で日本が、あと一カ国批准すればもう発効するんですよ。だから、インドが批准したときに、よし、日本が批准しようとアクションを起こせば、もうこの瞬間に発効するんですね。しかし、このとき、まだ何もやりません。

 十月四日に、インドの批准を見てEU議会も批准を承認し、国連に提出をした段階で発効要件をクリアしたことになります。この段階でもまだやらないんですね。ようやく国会でさまざまな議論になり、マスコミでも大きな報道になって、十月十一日の段階になってパリ協定批准案を閣議決定した。

 COP22というのがモロッコのマラケシュで十一月七日から十八日まで開かれます。その間に第一回締約国会議というものが開かれて、そこでさまざまな議論が行われることになります。

 もう実質ルールメーキングに参加していると言われますが、ただ、私の経験からすると、一回目に議論のルールとかいろいろな枠組みを決めるんですよ。それが一番大事なんです。そこの決定にかかわれないというのは、私は、大きく国益を損なうものと思います。

 批准書を提出して加入するまでに三十日かかるというふうに規定されていますから、十月十九日が、このCOP22で開かれる締約国会議に批准国として参加できる期限になります。十月十九日です。これは、もうちょっと、あと数日、閣議決定が早くて、今まさに、きょうあるいはあした衆議院で議論されていれば、十月十九日には間に合ったんですよ。この十月二日のインドの段階、あるいはEUの段階ですぐ閣議決定を行っていれば間に合ったんですよ。なぜ閣議決定を十月十一日までおくらせたんですか、外務大臣。

岸田国務大臣 我が国としましては、四月二十二日、パリ協定に署名してから後、国内の担保の調整、そして検討を行ってきました。そして、その作業を終えた後、閣議決定ということで、手続を進めるべく努力を続けてきました。その結果として閣議決定が十月十一日に至ったということであります。

 基本的に、パリ協定の早期発効を我が国は当初から重視してきました。その四月二十二日の署名以降、我が国として国内の手続をできるだけ早期に進めなければならない、そういった問題意識のもとに進めた結果、御指摘のような日程になったと認識をしております。

福島委員 これも、政府の中の事情を聞くと、例えば条文を翻訳したりとか、もう署名は大分前にやっているわけですから、いつでも閣議決定できる準備は整っていたんですよ。私が見るに、これを早く閣議決定しちゃうと、我々がパリ協定を先にやれと言ってTPP審議がおくれるから、だからあえて十月十一日まで閣議決定しなかったとしか思えないですよ。

 私は、山本環境大臣、山本農水大臣も当初は御立派だったと思うんです。残念ながら今は役所の答弁しかお読みになりませんけれども、山本環境大臣は非常に立派でありまして、就任後、記者会見で、日本がリーダーシップをとるためにできるだけ早く批准しなければならないとおっしゃって、九月以降も、焦燥感を覚えているとか、私一人で騒いでもなかなか思うようにならないと、非常に焦っておられるんですよ。九月の段階でですよ。もう準備万端整っていたと思うんですよ。

 COP22にも山本大臣は行かれると思いますけれども、ここで批准国じゃないとしたら恥ずかしいじゃないですか。大臣は、そうならないためにも、私一人でも何でもやると言っているんですよ。国会審議の場において荒わざがあってもいいんじゃないかともおっしゃっているんですよ。

 本当にCOP22までにパリ協定の批准が日本は間に合わなくていいんですか。発効のときに日本が、サミットの議長国たる日本が批准国として加わらなくて本当にいいんですか。どうですか、山本大臣。

山本(公)国務大臣 ありがとうございます。

 十一月の四日にパリ協定が発効いたします。そういうこと等も含めまして申し上げたいと思いますけれども、パリ協定の規定によりますと、協定の指針等がCMA1で採択されることとなっております。また、COP21の決定によれば、パリ協定特別作業部会、APAを設置し、CMA1で採択するための指針等の決定案を準備することになっております。

 そのAPAの世界では我が国は今も議論の中心にいると思っておりまして、したがいまして、マラケシュの世界では、日本は、立場は若干あれでございますけれども、十二分にこの議論の場に入っていけると思っております。

福島委員 本当に私は、大臣の思いが何となく想像がつくだけに、今のような役所の答弁をそのまま読まされる山本大臣がかわいそうでなりません。

 記者会見で山本大臣はこう言っているんですよ。記者が、遅かったんじゃないのと言ったら、いろいろハレーションが起きておりまして、物を言ったら怖いなと。きょうはこの場に非常に足が震える思いで立っておりますので、この辺のことは察してくださいと。環境省のホームページにある記者会見録ですよ。

 農水大臣の、ダブル山本の一人の山本大臣も、最初は米の調査で非常に前向きな答弁をされていたのに、やがて、役所から渡された、今、神妙な顔でうなずいていらっしゃいますけれども、読まされるだけになっちゃった。安倍政権は中で何が起きているんでしょうか。いやしくも、末は博士か大臣かの大臣になった方が、最初は政治家として立派なことをおっしゃっていたのに、だんだん事が進むにつれて官僚の紙を読み上げるだけになってしまう。

 両山本大臣、ぜひ思う存分安倍政権の中で暴れてください。我々は足を引っ張っているつもりは毛頭ないんですよ。大臣の正しい正義感、それを応援するつもりで質問させていただいているんです。

 そうした意味で、次に、山本農水大臣、お待ちいただき、どうぞ環境大臣、ここで退出されて結構です。輸入米の価格偽装問題について。

 この問題、何が問題の根幹かというと、政府が公表している政府から卸売業者への米の売り渡し価格、これがいわゆる輸入米の価格として設定されている公定的な価格です。それが、調整金の存在によって、実際は政府が言っている輸入米価格と取引価格が違うのではないかというのが論点の根幹です。仮に輸入米の価格が政府が公表している価格と違うのであれば、当然TPPの影響への試算も変わってくるであろうし、農業に対する対策も変えなければならないというのがこの輸入米価格偽装の問題の一番の根幹です。

 今回の調査、千七百も調査しておりますけれども、その中で、実際に調整金があった取引の中で、市場で幾らで売られていたというのを調査できた件数は何件ですか。

山本(有)国務大臣 先ほども申し上げましたように、主要卸売業者のSBS米の取引事例、正確にこれを開示いただいて、公表を許容いただいたケースは二件でございます。

福島委員 たった二件なんですよ。たった二件というか、あえて二件にしているのかもしれません。しかもそれは、調整金があったとしても、政府売り渡し価格より高い値段で市場に卸している二件しか出しておりません。先ほど今井議員からもありましたように、実際には、安く売っていると公表して、出してもいいよと言っているにもかかわらず出してくれなかったと、残念なことを言っている業者の方もいますよ。

 この政府の調査結果を見ると、調査の結果、民間事業の金銭のやりとり、つまり、調整金はある程度あったものの、それによってSBSの国内市場における価格水準が、国産米の需給及び価格に影響を与えることを示す事実は確認できなかった。

 何で、実際の市場に流通している輸入米の値段がわかっているのがたった二件だけで、そんなことを言えるんですか。実際に幾らで輸入米が出回っているかというのを調べられなかったんだったら、わかるわけがないじゃないですか。何でわかるんですか。どうぞ。

山本(有)国務大臣 現実の米の取引は多種多様でございます。品質や需給を反映してさまざまな価格が形成されております。このような中で、やりとりされた金額分だけ安く売るということは、取引実態にはない以上、個々の販売価格がわからなければ調査不十分との指摘は当たらない、そう考えております。

福島委員 全く理解できません。だって、そのために調査したんじゃないですか。何度もこの問題は国会でやっていますけれども、主食の市場に安値誘導したという事実があるか、それを今、大切に調査しているとか、果たして調整金と言われているものを価格を下げるために使ったのか、あるいはそうではないか、そこを確かめてみなければならない、国会で答弁しております。

 それが確認できる方法は、調整金が入った取引で、その取引が幾らで実需者に渡されていたのか、それを調べなければわかるわけがないじゃないですか。何でそれを調べていないんですか。

山本(有)国務大臣 まず、ヒアリングにおきまして、SBS米の販売価格を決定する際、国産米価格の水準を主な考慮事項に挙げていると回答された方々が四十二者中三十一者ございます。また、国産米の価格は需給状況によって決まるものでありまして、SBS米価格が国産米価格に影響は与えていないというように回答されたところが、大手米卸売業者四者でございます。

 入手した実際の販売価格データにおきましても、金銭のやりとり分を買い受け価格から引き下げて販売している例はなかったわけでございます。

 このような実態調査から、私どもは、米の価格に影響はない、そう考えております。

    〔委員長退席、江藤委員長代理着席〕

福島委員 何で、卸売業者が実需者に幾らで売ったという値段を調べずして、調整金によって値段が下げられたという事実がなかったと言えるんですか。実際に幾らで売られているのかわからなきゃ、業者が言っていることが事実かどうかなんてわからないじゃないですか。全くそれは客観性のない調査です。

 もう一度答えてください。なぜ、卸売業者から実需者に幾らで売ったかということの調査が二者しかできていなくて、そのままほったらかしにしているんですか。なぜそれをさらに調査しないんですか。

山本(有)国務大臣 まず、委員御承知おきのとおり、SBS米の契約当事者は三者でございます。買い受け業者たる卸売業者から、さらにその向こうにある実需者、すなわち中食、外食の方々は、これは無数にあるわけでありまして、国との取引関係にはありません。この無数の業者を調べるというようなことは、そもそもこれは、我々行政の把握する外でございます。

 その意味におきまして、我々は、把握できる範囲、大手の実需者に公表を前提として正確な数字をいただいたところ、先ほどの二者であるわけでございまして、その意味においては、正確性を担保しつつ、かつまた、公表できる実績を得て、こうして調査の結果、価格に影響がないというように判断したわけでございます。

福島委員 今の答弁でわかりましたか。国会答弁をみんな見ているんですよ。大臣の答弁を見て、みんな、わからない、わからない、福島の突っ込みは甘いと。この週末、すごく怒られたんですよ。もっとやってくれと言われているんですよ。

 二者の答えだけを得てわかったというのはあり得ないと思いますよ。だから我々は、どういう調査をまず行ったのか、調査の仕方を全部示せと言っているんです。そして、どういう回答を得たのか、データを出せと言っているんです。今の答弁では、この輸入米の調整金が実際に実需者に幾らで渡すことに使われていたかということについて二件しか調査したことにならないから、調査したことになりません。

 私は、このTPPの審議中にもう一度調査をやり直して、幾らで実需者に輸入米が売り渡されているのか、それをしっかりと全部調べた上で影響を見る、正しい調査を行うことを求めたいと思いますが、委員長のお取り計らいをよろしくお願いします。

江藤委員長代理 理事会にて協議させていただきます。

福島委員 とにかく、この手のやりとりを聞いていると、余りにも不誠実で、みんな、そこで怒りが沸いているわけですよ。このノリ弁と言われる資料もしかりであります。

 ぜひ、この審議を充実したものとするために、交渉の当事者にしっかりと出てきていただきたいと思っております。特に、日米間の交渉、並行協議と言われる、TPPと並行して行われている協議は、鶴岡首席交渉官が行っております。そして、その資料は、これまでの我々の要求に対して一切出されることはありませんでした。

 そう思ったら、先日、九月二十四日の土曜日に、フィナンシャル・タイムズという世界のエリートたちがみんな読んでいるオレンジ色の新聞、これに鶴岡さんが特集されていました。ケンジントン・パレスという、ダイアナ妃が住んでいた宮殿のようでありますけれども、そこで庭先で立っている鶴岡大使、そして公邸の中でゴルフクラブを持つ大使、二本のお気に入りのゴルフクラブまでお持ちでございます。

 こう書いてあるんですよ。通常の環境ならロンドン勤務は、私の訳なのでちょっと正確じゃないかもしれません、比較的気楽なポストだろうと言って、この取材をした記者は、今の大使の情熱はゴルフの方に傾けられているというふうに書いてあって、最後にようやくTPPの話をするんですけれども、記者も、イギリス官僚には有能な交渉官がいないから今回のこのヒアリングは気が抜けたと皮肉を言った上で、ケンジントン・パレスの光に満ちた温室は通商交渉の暗い部屋より快適だろうというふうに結んでおります。

 つまり、せっかく日本をアピールするために、フィナンシャル・タイムズ、そこで載った記事だと思いますけれども、イギリス人らしい皮肉によって、過去のタフネゴシエーターが今イギリスで悠々自適の暮らしを送っていますよ、そういう記事になっちゃっているんですよ。

 そうであるとするならば、鶴岡首席交渉官の参考人での招致を甘利前大臣とともに求めたいと思いますが、委員長のお取り計らいをお願い申し上げます。

    〔江藤委員長代理退席、委員長着席〕

塩谷委員長 その前に、石原TPP担当大臣。

石原国務大臣 ちょっと誤解があるので、そこだけ訂正させていただきたいと思うんですが、アメリカとの並行協議に鶴岡さんは出ておりませんので、その点だけは御理解いただきたいと思います。

塩谷委員長 今の件については、理事会で協議してまいりたいと思います。

福島委員 どうもありがとうございます。

 きょうは、中身の議論をあえていたしませんでした。それは、審議に入るためには、きちんと情報を出していただき、審議をする環境を整えていただかなければ審議ができません。参考人招致の件しかり、輸入米価格偽装の問題しかり、しっかりと国民に御理解をいただけるような充実した情報を出していただきますことを最後に望みまして、質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 玉木雄一郎です。

 同僚議員に引き続きまして、議論を進めたいと思います。

 まず、総理にお伺いします。

 新潟県知事選挙の結果が出ましたけれども、原発再稼働とあわせて、このTPPの議論、特に、何度も指摘がありましたけれども、情報が十分出てきていないこと、一体どのようなことになるのかという不安感が選挙結果に一定の影響を与えたと思いますけれども、総理はいかがお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 選挙の分析については、今それを行う立場ではございませんが、いずれにせよ、新潟県において我が党が支援した候補者が敗れた、このことは真摯に受けとめなければならない、このように思っておりますし、いずれにせよ、新たな県政がスタートしていく上において、新潟県に我々は協力をしていきたい、このように思っております。

玉木委員 通常国会の少しおさらいをしたいと思います。

 何度も出てきていますけれども、この真っ黒に塗られた文書でありますが、我々も、外交交渉過程を全部出せと要求したことは実はありません。我々が問題にしたのは、もちろん結果はしっかり分析をしています、あわせて、その結果の分析、解釈を正確にするに当たっては交渉過程の情報も極めて重要だということで、まずお願いしたのが一つであります。

 もう一つは、国会あるいは国民に対して情報を出していただけない一方で、委員長はかわられましたけれども、前委員長の西川議員が「TPPの真実」という名前の本を出版するということで、その原稿案というものを手に入れて読んでみると、例えば、どのような合意に至ったかを、後世のため本書に集成することにしました、どう着地点を探っていったのかなどなど、内実を明らかにして後日の参考に供したいということで、まさに交渉過程について記して出版をするということをしていたので、国会、国民に対して黒塗り情報、一方で、交渉過程も一部含んだ情報をまとめた本を出版して、それを販売しようとしている。ダブルスタンダードではないですか。その中で、では、せめて西川委員長が出版しようとする本の中に書かれてあるような交渉内容についてはできる限り出していただけませんか、このことをお願いしたわけであります。

 特に、農水大臣にお伺いします。

 この西川前委員長の本の出版に当たっては、農林水産省、内閣官房の役人の皆さんが、そのゲラのチェック、原稿案のチェックなどにかかわっていたのではないのかということが本の中の記述にも出てくるので、そのことをお伺いしましたけれども、そういうことは確認できなかったということが、森山前農水大臣からもそうした答弁をいただいておりますが、確認できなかったということはいなかったということと同じなのかどうなのかということを改めて聞きたいと思います。なぜなら、委員長を退かれた今、再びこの本が出版されるのではないかという話も聞いております。

 山本大臣に伺います。

 PDF化した原稿案を省のメールシステムを使って流し、目次から巻末の用語集までチェックするよう組織として依頼したことは本当にないかどうか、お答えください。

山本(有)国務大臣 本年三月に、農林水産省内で、TPP交渉等にかかわる担当職員に対して、当時報道されていた、ゲラのチェックという形で具体的に執筆に協力したかどうかを確認したというように聞いております。

玉木委員 では、その確認の結果を教えてください。

山本(有)国務大臣 ゲラのチェックという形で具体的に執筆に協力をした職員は確認されなかったわけでございます。職員はいませんでした。

塩谷委員長 いなかったということですね。(発言する者あり)

 もう一度聞いてください、もう一度。

玉木委員 PDF化した原稿案を省のメールシステムに添付して流し、目次から巻末の用語集までチェックするようなことをした事実はないと言い切れますか。

山本(有)国務大臣 本件につきましては、私が農林水産大臣に就任する以前の話であります。当該ゲラなるものも承知しておりません。

 したがって、一般論で申し上げれば、国会議員から資料要求や事実関係の確認があれば、守秘義務の範囲内で適切に対応していると承知しております。

 なお、ゲラのチェックという形で具体的に執筆に協力した職員は確認されておりません。(発言する者あり)

塩谷委員長 大臣、今の質問は大臣として確認されておりませんか。PDF、流したかどうか。

山本(有)国務大臣 ゲラあるいはPDF、私は確認しておりません。

玉木委員 私は確認していないと。

 これは通告しています、明確に。PDFの話も含めて通告をしておりますが、大臣、それは確認した上で全くなかったということでよろしいですね。いなかったということでよろしいですね。全くなかったということでよろしいですね。

山本(有)国務大臣 今委員が御指摘の資料、その真偽のほどがわからない以上、コメントは差し控えさせていただきたいと思っております。

 いずれにいたしましても、一般論として、国会議員から資料要求や事実関係の確認があれば、守秘義務の範囲内で適切に対応しておると承知しております。

 特定の議員に対して具体的にどのような資料提供等をしているかについて、お答えする立場にはありません。(発言する者あり)

塩谷委員長 今の答えに対して、もう一度。続けてください、質疑を。

玉木委員 確認できないという曖昧な回答ではとても納得できません。

 大臣、これは国際部からいろいろな説明を受けているかもしれませんが、大臣、きちんと調べてください。省のメールシステムを使っていれば、痕跡は必ず残っています。ログ情報も残っています。

 ですから、これはきちんと調べていただいて、調査報告を当委員会に出していただくことを、委員長、よろしくお取り計らいをお願いいたします。

塩谷委員長 理事会で協議して、それを決定したいと思います。

玉木委員 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、このTPPに関して言うと、とにかく秘密が多いなということが一言で言うと印象であります。その中で、第一次産業の話がいろいろ出てきましたけれども、きょう私、食の安全についての質問をしたいと思っています。

 ちょっとパネルをごらんください。パネルの三です。

 牛肉にしても豚肉にしても、多分、これから関税は下がることはあっても上がることはありませんから、輸入牛肉、輸入豚肉はふえていくんだと思いますね。その際に、それが価格がどうかということも大事なんですけれども、その牛肉や豚肉がどのように肥育されたのかということは、食の安全の観点からも非常に重要だと思っています。

 ここに少し書きましたけれども、実は日本では、成長を速くしたり、あるいは少ない餌で肥育ができたり、あるいは赤身をふやしたりとか、豚や牛の体重をふやしたりするような薬剤があります、成長を促進するような肥育ホルモンあるいは飼料に添加するラクトパミンというような剤がありますけれども、こうしたものは、今、日本では使用が認められていません。同じように使用が認められていないのがEU、中国、ロシアであります。

 一方、TPPの十二カ国の大きなパーツを占めるアメリカ、カナダ、豪州では、こうした肥育ホルモンやあるいは飼料添加物の使用が認められています。

 問題はここからです。日本の場合は、国内でEUのように使用が認められていませんけれども、その認められない肥育ホルモンや飼料添加物を使って育てた牛肉や豚肉の輸入は禁止をしておりません。

 まずお伺いします。

 こうしたEUなどでは禁止をされているのは、例えば肥育ホルモンが投与された肉を食べると、ある研究によれば、それがホルモン性のがん、例えば乳がんとか卵巣がん、あるいは前立腺がん、そういったものに関係しているのじゃないかという一部調査があります。逆に、一九八九年に、EUでこうしたものを使わないということを決めた後、EU各国で例えば乳がんの率が下がっているというような調査もございます。

 まず、食品安全の観点から伺いたいと思いますが、こうした肥育ホルモン、飼料添加物の人体への影響について、日本政府としてはどのようにお考えですか。

松本国務大臣 この肥育ホルモンにつきまして、これをどういうふうに国民が理解をしていただけるかということについては、例えば食品の表示というような形で、食品を選択する際の重要な判断材料になるわけでございますので、消費者が求める情報が適切に表示されること、そして、安心して食品を購入できるというような環境が大変重要だと思っております。

 その中で、一方、その表示の義務といったようなことを考えてみますと、過剰規制になってはならないというようなWTO協定など国際基準との整合性の問題、もう一つは、肥育ホルモンが最終製品に残らない場合に表示を求めることの実効性などに留意をする必要があるという受けとめをしております。

 いずれにいたしましても、食品表示制度が消費者の自主的、合理的な食品の選択の機会の確保に資する制度となっていくことによって国民の安全を守っていきたい、このように考えているところでございます。

玉木委員 表示の話は後でまた詳しくやりたいと思います。

 これをもう一回見ていただきたいんですが、私が問題にしているのは、各国それぞれの国の立場があっていろいろな規制をやっていますが、日本の場合はダブルスタンダードなんです。国内での使用は認められていませんけれども、それを使った牛肉、豚肉の輸入を認めているのは日本だけです。こういうことが果たして規制のあり方としていいのかどうかということについて問題提起をしているわけですね。

 今、表示は現在の食品表示法では義務づけられていないということだと思いますが、過剰規制になってはいかぬというお言葉をいただきましたけれども、ただ、国民の健康を守ることは、過剰規制でも何でもなくて、私は、我が国として必要なら、これはしかるべき規制としてやるべきだと思うんですね。EUはそれを選択しているわけであります、WTOの関係で問題はいろいろ生じておりますけれども。国民の健康と命を守っていくということは、経済的な利益、GDPをふやしましょうということも一方で大事ですが、やはりもっと健康や命に対しての配慮は常に忘れてはならないと思っています。

 そこでお伺いしたいのは、このダブルスタンダード、日本だけこういう状況になっていることについて、これを改めるべきではないかと思うんですが、これはどうでしょうか。農水大臣、いかがですか。

山本(有)国務大臣 委員おっしゃるように、科学的知見をもって、もし禁止されている肥育ホルモンを投与された牛を輸入することによって人体への影響があるとするならば、それは当然、規制の対象に含む検討を早急に行わなければならぬというように思います。

玉木委員 人体に影響があるとしたら、それは規制を早急に検討しなければならないと。私はこれは非常に前向きな答弁だと思いますが、松本大臣、現在の日本が課している、輸入で入ってきていますね、これは全部安全ですか。安全を確認されていますか。あるいは、日本の安全基準というのは、世界的に見てもきちんとした基準でチェックがなされていますか。端的にお答えください。

松本国務大臣 成長促進を目的とした肥育ホルモンにつきましては、コーデックス委員会が科学的なリスク評価の結果に基づき設定した国際食品規格等を踏まえ、厚生労働省が食品中の残留基準を設定しているところでございます。この残留基準の範囲内であれば、牛に使用されたとしても、食品の安全性は確保されていると承知をしているところでございます。

玉木委員 国際的な基準、コーデックス基準と一般に言われますけれども、その範囲内であれば大丈夫だ、日本もその基準を満たしているという話だと思いますが、先ほど紹介したある調査によりますと、これは日本の調査ですが、国内の販売されている牛肉や豚肉を調べた学者の論文がございまして、国内産の牛と米国産の牛肉のエストラジオール、エストロゲンとも言われますが、その濃度を調べたら、脂身で百四十倍、赤身で六百倍、ホルモン剤の残留の可能性があるという調査もございます。

 そこで、松本大臣に伺います。

 国際的な基準に基づいて日本の基準が決められているということでありますけれども、酢酸メレンゲステロールという、これも合成した肥育ホルモンがありますが、この基準は国際基準であるコーデックス基準より甘くありませんか。

松本国務大臣 酢酸メレンゲステロールの日本とコーデックスの数字の件でございますが、この数字については、今御指摘のとおりでございます。

玉木委員 ということは、最初の答弁では、国際基準を満たしたものでしっかり水際措置をやっている、そういう輸入牛肉、豚肉は入らないという説明だったんですが、今言った酢酸メレンゲステロールに関して言うと、日本の基準が国際基準より甘いということをお認めになったということですね。大丈夫ですか、本当に。

松本国務大臣 コーデックスの数字の方で、これは筋肉から脂肪から肝臓から腎臓からいろいろあるわけでございますが、例えば腎臓でいえば〇・〇〇二という数字が、この日本の対応ということでございますと、数字としては〇・〇三というような、そういった数字で表示をされてこの残留基準というのが決められているところでございまして、そのコーデックスの数字と単に数字を比較するということの中におきましては、今御指摘のとおりでございます。

玉木委員 いや、びっくりしましたよ、これは。国際的な基準を満たして、それに準拠して日本の基準をつくって、そもそも、さっきあったように、国内で使用が禁止されているものを、禁止していますね、使えません、ただ、それを使った輸入牛肉、輸入豚肉は入ってくることができる、ただ、国際的な基準に従ってきちんと水際措置しているから、基準以下のものというか危ないものは入らないということで説明をいただいていたんですが、この酢酸メレンゲステロールに関して言うと、国際基準より日本の基準の方が甘いということを今大臣はお認めになったんですよ。これは大問題だと思いますよ。そんなことで日本の食の安全は守れるんですか、本当に。

 私、今ちょっとびっくりしたのは、これからちょっと問題が生じると思って聞いたんですが、現時点においても、日本の食の安全においては穴があいているんですね。これは、しっかりと基準を国際的なものに合わせて、速やかにやるべきですよ。そうでなくては、TPPでやれ貿易をふやそうだ何だかんだ言う前に、我々日本人の健康を守れないじゃないですか。

 次の話に行きます。

 TPPを批准して発効してしまうと、さらにこうした我が国の国民の健康を守るような規制をより入れにくくなるのではないのかというのがきょうの私の質問の一番の趣旨です。

 お伺いしますが、松本大臣、もう一回確認しますね。今現在においては、例えば安いから外国の牛肉、豚肉を買おうということで選択される、スーパーで買う方もおられると思うんですが、表示の義務がないので、そもそもホルモンを打った輸入牛肉なのか打っていない輸入牛肉なのかを、今現在では日本の消費者は判断するすべがありません。せめて、輸入を禁止しないまでも、そうした表示義務をしっかりかけて、これから輸入がふえてくるのであれば、消費者の皆さんに選択の余地を与えるような国内法の改正をすべきだと思うんですが、いかがですか。

松本国務大臣 この肥育ホルモンの問題につきましては、これはコーデックスと今現在の基準の数字をそこだけで比較したもので申し上げておるところでございまして……(玉木委員「表示義務をやるべきじゃないか」と呼ぶ)表示義務。

 これは、先ほどもお話し申し上げましたように、過剰規制とならないように、WTOの協定など国際基準との整合性と、肥育ホルモンが最終製品に残らない場合に表示を求めることの実効性というこの二つがポイントになってまいりますので、それを基本に考えているところで、しかも、これは今厚生労働省もその基準について検討をしているところでございまして、合成肥育ホルモンについては、厚生労働省から最新の科学的知見に基づく食品健康影響評価についての要請を今受けておりまして、現在審議を行っているところでございます。

 そして、特にこれは問題があるということでのチェック、再評価ではありませんで、一定の期間が経過をしたので、そこで、もう一度内容について確認をしようということで現在審議を行っておりまして、これらについても適切、速やかに評価を行ってまいりたいと考えております。

玉木委員 ちょっとよくわからなかったんですが、総理、表示義務は、これから輸出入を拡大していくのであれば、全部が全部私も悪いとは言いません、消費者の健康に被害があるのか、これは科学的にさまざまな見地、立場もあるでしょう。ただ、消費者が選べる権利をきちんと与えてあげることが私は大事だと思うんですけれども、このTPPにあわせてそうした食品表示法の改正をやるべきだと思いますけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 肥育ホルモンについては、先ほど松本大臣の方から一部お答えはしているんですが、国際基準などを踏まえ、科学的評価に基づき食品中の残留基準を定めておりまして、基準以内でなければ食品の流通は認められません。これはTPP協定によって変更されることはないわけでありまして、食品の安全性は確保されていると考えます。

 食品の表示は、食品を選択する際の重要な判断材料となるわけでありまして、消費者が求める情報が適切に表示されることで、その表示を見ながら消費者の皆さんが選んでいくということになるわけでありますから、安心して食品が購入できるわけであります。

 一方、表示の義務づけに当たっては、先ほど答弁させていただきましたように、過剰規制とならないよう、WTO協定など国際基準との整合性、あるいは肥育ホルモンが最終製品に残らない場合に表示を求めることの実効性でございますが、この成長ホルモンやラクトパミンは、食品添加物とは違って、牛が生きているときに与えられるものでありまして、これは、例えば八日間与えても、十日間与えなければ代謝で全部排出されてしまって、検出限界を下回ることになっていきます。

 いずれにせよ、これはさまざまな議論があるわけでございまして、そうしたことにも留意していく必要があるんだろうと思います。

 食品表示制度が消費者にとって食品を自主的かつ合理的に選択する機会の確保に資する制度となるよう、引き続き適正に運用してまいりたいと思います。

玉木委員 残留しないという話なんですが、先ほど紹介した、これは日本癌治療学会に提出された論文によると、米国産牛肉と和牛のエストロゲン濃度、脂身で百四十倍、赤身で六百倍ものホルモン剤の残留の疑いがある、そういった調査もあるわけでありますから、検出されないからいいという問題ではなくて、日本独自できちんと調べて、国民の健康を守るような規制をきちんとやるべきだと思いますね。

 それで、伺います。

 TPPへ入ると、私が心配しているのは、食の安全の規定の第七の十七条、「協力的な技術的協議」というのがあるんですね。これは何かというと、科学的な根拠については常に論争がありますから、争いになりますね。そうしたときに、締約国は、当該行政上の手続、二国間の仕組みその他の仕組みを引き続き利用しても当該事項を解決することとはならないと認めた場合には技術的な協議を求めることができるということになっていて、いろいろもめたら、例えば、そういう規制を設けることによって、アメリカやオーストラリアが輸出がしにくくなるといってある意味クレームをつけてきたときに、技術的協議ということが開催されることが決まっています。

 私の質問は、技術的協議をするこの協議なんですが、この協議における全ての連絡、当該協議のために作成される全ての文書は秘密のものとして取り扱う、協定上、第七・十七条の六項に、安全に関してもめたときに、特に科学的な根拠がどうだこうだとなったときに、技術的な協議ということが開かれることになっているんですが、なぜかその内容は秘密にするということを決めているんです。

 石原大臣、なぜですか。

石原国務大臣 お答えする前に、TPPのいわゆる第七章の二条において、人、動物または植物の生命または健康を保護することが規定されているということの中で、今委員の御指摘された議論は、専門家同士の中で、先ほど判断で紛争になることがあると御指摘されたようになっているとおり、専門家同士の議論の中で決まる、そういうふうに解させていただいております。

玉木委員 この条文を決める際にどのような交渉をしたのか知りたいと思います。

 なぜなら、科学的な根拠に基づいて、これを規制するのか、あるいはこの薬剤を使っていいのかどうか、これは秘密にする話ではないと思うんですね。ある程度、これはこういう根拠だから規制をしましょう、あるいはしなくていいですと、まさにこれはオープンでやるべきでありますし、コーデックスやWTOにおいても、これは全て情報を隠すということにはなっていません。

 しかし、TPPの協定上、例えば日本が、いや、やはり国内で使用が認められていないような肥育ホルモンを使うのは、輸入についても禁止、あるいは少なくとも表示義務をかけようという、場合によっては、外国から見れば、輸出国から見れば、新たな非関税障壁のようにも見えるかもしれない。だから、論争が起こり得る。そのときに、技術的協議の場を設けたときに、このやりとりを全て秘密にしなければならない。こういう条文をなぜ日本はのんできたんですか。交渉過程について御説明ください。

石原国務大臣 釈迦に説法でございますけれども、TPP協定では、従来からの国際的な共通ルールでありますいわゆるWTOのSPS協定に基づいて、締約国が、自国の食品の安全を確保するために、科学的根拠に基づいて必要な措置をとる権利を認めている、これが基本でございます。その後、先ほど御答弁をさせていただきましたとおり、専門家で議論をする。そういう中においてこの安全を確保していく。

 また、どういうものが食の安全にとって必要かというふうな細かい点につきましては、ぜひ厚労大臣をお呼びいただきまして、厚労大臣からお聞きいただきたいと思います。

玉木委員 これは食の安全に極めて大切なところで、もめたときのさまざまな利害調整の仕組みがTPPの協定には各所で入っています。特に、このSPSと言われる分野の技術的協議において、せっかくそういうことがあったときに、もう一回言いますね、作成される全ての文書は秘密のものとして取り扱う。何で秘密にすることを合意してきたんですか。秘密にする理由がわかりません。

 これまで、最初に示しましたけれども、過去の交渉過程については秘密にしますということを答弁いただきました。でも、これから起こることも秘密なんですよ。しかも、健康や命にかかわるようなことがこれからも秘密になるということを、このTPPが通ってしまうと我々日本国としてはのまなければいけない。

 総理、お伺いします。

 こういうことで本当に我が国の食の安全は守られますか。TPPが通ることによって、経済的利益を優先して、我が国の食の安全、国民の皆さんが安全にさまざまなものを手に入れ、食べる、こういったことが害されることになるんではないかと思いますが、総理、いかがでしょうか。

石原国務大臣 TPP協定に今言ったようなものが入っているということは事実でございますが、その前に、こうした我が国の制度の変更を求めるものではないということが明記をされておりますので、委員の御懸念は、専門家同士の話の中で出てきたとき、そして、仮にそれで変更するようなことがあれば、それは法律改正になりますから、公になるというふうに解しております。

安倍内閣総理大臣 まさに我々は、このTPPによってこれから新たに食品の安全における制度を変えることはないということ、変更させられることはないということは先ほど申し上げたとおりでございまして、そして、もしそれがそうではなくなったときには法改正をしっかりとするということになるわけでございます。

 と同時に、先ほど私が答えたことをちょっと間違って受け取られてしまったんですが、肥育ホルモンについては、検出下限値を下回る場合がある、下回る場合があるから大丈夫だということを言っているのではなくて、下回る場合があるので、肥育ホルモンを使っていてもそれは肥育ホルモンを使っていませんという表示をされても、それを、うそをついているじゃないかということで、検出できない、そういう可能性もあるということで、例として挙げたところでございます。そういういろいろな議論もあるということを申し上げたところでございます。

玉木委員 きょうはここで終わりますけれども、ちょっと私、不安になりました。

 まず、石原大臣からも安倍総理からもありましたけれども、今の規制を変える必要はない、これはもう従来ずっと答弁をいただいていますが、それは聞いていません。こういうダブルスタンダードがあるから、これから新たに国民の健康を守るための規制を新設しようとするときに、我が国独自の判断だけではなくて、例えば輸出国から何か文句を言われたときに、日本独自ではその規制を入れることができなくなる可能性が高いんではないのかということを実は私は懸念しております。

 そして、安倍総理からも話がありましたけれども、ひっかからないから、検出限界を下回る下回らないという話がありましたけれども、ただ、例えばオーストラリアは、EU向けの輸出牛肉は肥育ホルモンを使わないように育てて、その証明をしてEUに輸出しているんです。日本にはそれを使ったものを輸出してきているんですよ。さっき言ったように、例えば豚一頭で十二キロも飼料を少なくして実はつくることができるから、コストがすごく下がるんです。日本の畜産農家は一生懸命工夫をして安全な豚や牛を育てていますね。

 私は、平等な競争環境でやるというのであれば、やはり、こういうことを認めることは、食の安全を害してしまうと同時に、日本の農業者にとって非常に不平等な競争環境を強いることになると思うので、しっかりとした安全を重視した規制を日本独自で行っていくこと、このことを強く求めて質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 民進党、秋田県出身の村岡敏英でございます。

 予算委員会に続いて、TPP特別委員会の中で、SBSも含めてTPP全体の質問をしたい、こう思っております。

 まず、この週末、秋田県で農家の方々に会いました。稲刈りも終わって、カントリーエレベーターに持っていっている人、また、自分の小屋で玄米にしている人、いろいろな方に話を聞きました。

 その中で、不安に思っている点が大きく言って三つあります。

 一つは、TPPの交渉の中身が真っ黒になって、ノリ弁と言われる。そして、その真っ黒になっている、秘密にしているだけじゃなく、それ以外にも文書があるんじゃないかという不安です。

 そして、もう一つ目には、国会決議との整合性であります。自民党の公約は、聖域なき関税撤廃を前提にする限り参加しないということは、これは、品目も決めていない、そしてどんな交渉内容かも決めていないから、ぎりぎりセーフかもしれません。しかし、国会決議になると、大変この整合性には疑問がある。

 そしてさらには、SBS米。このSBS米が、調整金という不透明なもので価格がゆがめられているんじゃないか。

 大きく言ってこの三つが農家の方々に大変不安を与えています。

 そしてさらには、先ほど玉木委員が言ったように、TPPで入ってくる食物が本当に日本人の健康に安全なのかどうか、これは消費者の人も大変不安に思っている。だからこそ、しっかりとした慎重審議をしなければならない、こう思っております。

 まずは、石原大臣にお聞きいたします。

 石原大臣、再交渉はないということは盛んに言われております。しかしながら、再協議はあるわけですね、三年後、五年後、七年後というのは。

石原国務大臣 先ほどもお話をさせていただきましたとおり、再交渉はしないということは、TPPの性格上、一つのパーツをかえてしまうと多くのところに影響するという話は、もう既に総理から御答弁をさせていただいております。

 そして、後段の再協議についてでございますが、これも同僚の委員の討議の中に出てまいりましたけれども、そのほかのEPAやFTAの中でも、再協議という項目が大体のものについております。再協議をやれと相手国から言われた場合は、再協議は行わなければなりません。

 しかし、我が国の国益を損なう、特に農産品の部分で貿易の範囲を拡大しろとか関税率の撤廃を早めろみたいな議論を想定されて村岡委員は御質問をされていると思いますけれども、そういうものに対しては、国益を損なうということで私どもは断りますし、また、変えるようなことがあれば国会に諮らなければなりませんから、そこは与野党を問わず思いは一緒でございますので、再協議には応じない、国益を損なうようなことは行わない、こういうふうに法律的には理解をさせていただいているところでございます。

村岡委員 石原大臣はそう言われますけれども、まず国会決議ですけれども、除外項目というのがこのTPPにはないんですね。国会決議は除外をしっかりとうたっているわけです。国会のこの決議とはもともと反するTPPなわけです。将来的には関税ゼロにしようという目標を持っているTPP交渉です。

 その中で一つあるのが、日本が農産物の輸出国と結ばれた七年後の再協議、この中に書いてあることは、市場アクセスをふやすと書いてあるわけです。それは、断るといっても、再協議する以上、ふやすという交渉なんです。それでも必ず断るということですか。

石原国務大臣 ただいまの点は非常に重要な点なので、少し詳しくお話をさせていただきたいと思います。

 これは附属書の方に書かれている規定でございまして、関係します国は、オーストラリア、カナダ、チリ、ニュージーランド、アメリカでございます。ですから、委員の御懸念は、先ほど私が想像してお話をさせていただいたように、農作物の関税等々について再協議の要請が来る。これを、再協議を断ることはできません。再協議をさせていただいて、国益を害するものについては合意をするつもりはない。

 すなわち、ぎりぎりのところで、国会決議のお話をされましたけれども、私どもは国会決議に沿ったものであると御理解をいただけると期待しておりますけれども、そんなものはまだまだ甘い、何でもっと守れなかったんだ、こういう御意見があるということも、午前中から午後の審議の中で多くの同僚の議員からお話が出ております。

 しかし、先ほど申しましたとおり、例えば、関税を見直す、そういう約束を仮にしてしまったと。しかしながら、そういう事態になったとしても、それは協定に関する新しい法律を出さなければなりませんから、私どもは、与党、野党一致して、その問題については拒否をする、協定に賛成をしないという形で再協議をはね返していく、そういうふうに理解をさせていただいているところでございます。

村岡委員 石原大臣、信用したいんですが、この条項は日本しか結んでいません。これは、アメリカを初め五カ国と、市場アクセスをふやすための見直しを行うということを日本だけが結んでいるわけです。

 この中で、五カ国が強硬に来た場合に、日本は一カ国です。それで、この条項に日本はもう約束しちゃっているわけです、七年後。それで、先ほど言った自信がありますか。やはりなかなか厳しい状況になるんじゃないか、こう思っているんですけれども。もう一度答弁を求めます。

石原国務大臣 多分、委員の御念頭にあるのは、いわゆるお米でありますとアメリカ、オーストラリアの連合軍が考えられる、乳製品でありますとニュージーランド。しかし、これは、五カ国はバイでこの附属書で話を握らせていただいておりますので、協定の変更、相互主義でございますので、片側が断れば、この条約の相互主義の観点から、思ったとおりにはならない、そういう仕立てになっているというふうに御理解をいただきたいと思います。

村岡委員 ちょっと理解しにくくて、何で日本だけがこういう条項を結ばれたのかというのは非常に不安です。これは、これからのTPP委員会でも、そしてまた農水委員会でも話していきますけれども。

 次に移ります。SBS米です。

 なかなかSBS米のことが国民の皆さんによくわかりません。

 パネル一を見ていただければ、一九九五年にWTOの中で日本が義務づけられて、今現在ですけれども、七十七万トン輸入をしています。その中で十万トンだけ主食用、ほぼ主食用で十万トン入ってきています。

 そして、この前の予算委員会の説明で農水大臣がお話ししていたのが、ここ二、三年は二万トンとか三万トンとか大変少ない、市場に流通しているのも少ない。しかし、これは一方、少ないということは、この十万トンは、SBSで売れなければ一般輸入米に上がって、これは将来的に、飼料米または加工品、こうなってきます。これは国家財政に相当大きな負担を与えるわけです。その中で、SBSのこの十万トンというのは、相矛盾しますが、十万トン、財政的には、同時売買制度の中で売れた方が国の財政は被害が少なくなる。しかしながら、入ってくると外食産業に外国産米が流通する。こういう相矛盾するような制度であることはもともとそうです。

 そして、一九九五年から始まったこのSBS制度、今度はTPPで七万八千トン入ってきます。その七万八千トン入ってくる中で、これはもちろん契約がなければ成立しないわけですけれども、一般輸入米に行かないこともわかっています。

 そして、例えば五万トン入ってきたとします。この五万トン入ってきたときには、国内産米の同等のものを備蓄すると言いますけれども、備蓄したのは将来何に使いますか。

山本(有)国務大臣 備蓄米につきましては、主食用米の市場から遮断して、飼料、援助等に使わせていただいています。

村岡委員 ここ数年を見ると、ほとんどこれは餌米、飼料用米に使っています。この感情が、農家の感情がわかりますか。

 日本では、瑞穂の国と総理もよく言われるように、美しい、息をのむような棚田、こういう中で、稲作を中心にして農業が発展してきました。そして、SBS米を入れて、外国産米が、これは日本の自由貿易を守るためにいたし方ない部分もあるわけですけれども、そこは外食用で日本の国民に食べてもらうような形になる。しかし、自分たちがつくった米が餌用になるんですよ、入ってきたら。この気持ちをわからずに、SBSの調査の内容は、怒りに満ちちゃうわけですよ。

 やはり、SBS米という中で調整金というのが結果どうなったかということが今のところまだわからないわけですけれども、しかしながら、このSBS米が入って、日本の国民の方々に食べてもらっている。しかしながら、我々がつくった米は、隔離されて、将来、餌米になるんですよ。悲しいじゃないですか。悔しいじゃないですか。それが農家の気持ちですよ。私は地元に行ってさんざん言われましたよ。

 これは、総理、どう思いますか。

山本(有)国務大臣 ミニマムアクセスは、WTO上、自由貿易の根幹にかかわります話でございます。また、そのミニマムアクセスと同時に設定されましたSBSという入札契約の内容でございます。

 そのことにおいて、政府備蓄米という制度を同時に我々は運用しております。その運用において隔離をする、遮断をするということにおいて、飼料米になるということに対する農家の残念さ、それはよくわかるところでございます。

 けれども、さらにもう一つ言わせてもらえれば、米生産の農家が、現実に価格が下落するという痛みについてはもっと厳しいものというように私どもは理解しておりまして、価格は品質と需給で決まります。したがいまして、需給において、需要を促し、供給を取り除くという意味において、政府備蓄米で買い上げるということは、私は、制度としてやむを得ない、適切なものというように理解しております。

村岡委員 ちょっと待ってください。

 私も、まず農家の気持ちをわかってほしいという中で、大臣が、初めてこのSBS米の問題が出たときに、重大な問題だと認識をしているということを記者会見でもおっしゃっていました。

 しかしながら、SBS米の調査を始めると、先ほど、最終的な外食や、また、実際に実需者でやる人たちのところは、農林省には調べる権限も能力もないと言いました。そういう気持ちがあったら、やはり、最終的にどのぐらいの値段で売られたのか、これはしっかり調べるという気持ちにならなきゃいけないんじゃないですか。全くそれはいたし方ないということだけで、何も真剣にこの調査をしているとは思っていないですよ、農家の方々は。それに対してはどう答えられますか。

山本(有)国務大臣 まず、最初のかなり大々的なる報道において、こうした調整金が恒常的に、かつ全てのSBSの入札契約で行われており、そのことにおいて卸の価格を偽装的に変更している、影響しているということがあれば、これは私ども、大変重大な問題であるという認識でございました。

 しかし、調べていくうちに、調整金なるものは、あるときもあればないときもある、逆調整金という形で卸から輸入業者に支払われた場合もある、しかし今はやっていないと言う方もある。そうすると、何なんだろうなということに逢着するわけでありまして、取引慣行上、販売促進のお金というようなことも言われるわけでございます。

 そうした中において、影響があるやなしやの判断の中で、調査すれば、影響がないというところに自然に逢着するものというように思っております。

村岡委員 ちょっと話がよくわからないというか、真剣になって調べていない。

 よく今、東京都知事が、誰がファーストかということで、都民ファーストということを言っています。このSBS米に限っていけば、農家の人たちがいろいろな改革や何かに協力するときに、米に関しては国境措置をしっかりととっている、この信頼がなければ協力関係はできない。その中で考えると、農家ファーストではないんですよ。

 この調査チームの中でいろいろ農林省に聞いて、なかなか出し渋っているというのを見ると、何をファーストにしているかというと、国会運営ファーストなんですよ。委員会でその日までに何とか採決する、委員会ファーストで、例えばこの調査が、もし本当に価格が下がっていれば補正予算を見直さなきゃいけない、TPPが通らない、そういうことのために、そういうプレッシャーが農林省の方々にあったんじゃないか。だから、価格が下がっていない証明をすることに一生懸命になっている。

 別にこれは、政治家は知らなかったと私は思いますよ。農林省は、三、四年前にごく一部の人たちが知っていたと思います。それが放置されてきたんです。放置されてきて、初めて大臣がこのSBSの問題で重大だと認識したように、政治家がわからなかったんですから、農林大臣を責めているわけではないんです。どこにファーストを置くかなんですよ。農林省は、国会運営上、これは相当なお叱りを与えられる。最後まで調べられないのが事実だったら、途中過程の中でちゃんともう一回調べるということを言わなきゃいけない。

 総理が先ほど、自民党は結党以来、強行採決を考えたことはない、こう言っておりましたけれども、表向き、それはそうでしょう。でも、表向きが大切なんです。しかし、この場合のSBSは、これまで政府が九五年以来ずっと言ってきた国境措置の問題なんです。誰か政治家を責めるんじゃなくて、このSBSという制度が農家にしっかりと信頼されなきゃいけない。そのとき考えたときに、考えていることが国会運営ファーストなんですよ。農家ファーストだとは誰も思っていない。

 このことを総理はどう思いますか。

安倍内閣総理大臣 我々は、まさにこのSBS米の調査については、できる限りの調査をし、ポイントは、先ほど来質問の中でもありましたように、果たして、いわゆる調整金が価格を下げて、国内価格に影響を与えているか否かということでありまして、その結果については既に大臣から説明しているとおりでありまして、それが結果を与えているとすればTPPの議論にもこれは当然影響があるわけでありますが、結果は与えていないということでありましたから、我々はそのように考えているところでございます。

 同時に、この批准について、国会日程ありきではないということは申し上げておきたいと思いまして、しっかりと審議をしていただきたい。私も初当選のころ、国対で、村岡兼造国対委員長のもとで、丁寧な国会運営が大切だという教えを受けてまいりましたので、そのとおりやっていきたい、こう思っているところでございます。

村岡委員 それは、ちゃんとした議論をしましょうというのは表向きだ。でも、これは、役人、官僚の人たちは物すごいプレッシャーを感じたと思うんですよ、この国会前、SBSが出てきて。ですから、これが価格に影響があるという結果を出したら、それは幾ら温厚なTPPの筆頭理事でも怒りますよ、もう運営できなくなりますから。運営ファーストでやっているとしか思えないんです、この問題は。

 大臣は、私が予算委員会で質問したとき、きちんと調べ直す可能性があるようなことを言いました。これは調べないと、後で農業改革だとか農業の成長だとか言っても誰も信じないですよ。根本ですよ、これは。国境措置だと何回も森山前大臣のときも西川大臣のときも聞いていますけれども、これは、必ず守ると言っていたものが、もう一回調べ直したらやはり価格に影響があったということになれば、大変な問題ですよ。

 そして、さらには、総理にもお聞きしたいんですけれども、総理、山本大臣から価格に影響はなかったという報告は受けました、こういうふうに話をされました。総理、あの座り込みまでした農家に対する思いはどこに行っちゃったんでしょうか。

 これは、農家の人たちに私が聞いたときに、七十八歳の人がぽつっと言ったんですけれども、やはり流通過程というのはなかなか農家はわからなくて、なかなか価格を上げられない、その中で苦しんでいる。そして、米とかそういう農産物は、江戸の時代からいろいろな意味で食料流通というのは卸問屋だった。その中に、やはり悪く制度を使おうという人がいるんですと。そのことを政府が調べてくれなければ、いろいろな改革をやったって、我々、農業でしっかりとした所得を上げることができない。

 きょう午前中、小泉議員が質問されていた。資材とか飼料だとか、そういうのを下げたって、その下げた分だけ最終的に買うところに安くされたら何の意味もないわけです。

 そういうことをしっかりと調べるためにも、まずは国がやっている貿易から信じられないんだったら、それはおかしいじゃないですか。もう一度調査してください。

山本(有)国務大臣 SBS米が国産米の需給及び価格に影響を与えているかどうかを再度調査する、そういう先生の御要請は、SBSの価格決定に公平さや適切さを求めるものだろうというように解釈いたします。

 今後、SBS入札にかかる不信感が生じることのないよう、国と落札業者との間の契約内容を改善することによりまして、調整金が全くない世界が出てくるわけでございます。TPP合意のもとで、備蓄運営の見直しにより国内の需給、価格への影響を遮断し、確実に再生産が可能となるようにしていくことについて、米農家などの生産現場にしっかり説明してまいりたいと思っておりますので、SBSに関する不安はこの契約改善で払拭したい、こう考えておるところでございます。

村岡委員 国民の皆さんも、何回も論議して少しずつわかってきたとは思うんですが、米の流通を初め、農業の、食料品の流通というのはなかなかわかりません。

 そして、よく言われるのが、消費者対農業者みたいにして、補助金がたくさん行って、農業の人たちが補助金で何か非常にもうかっているようなイメージを言う学者もいます。そんなことはないです。本当に努力して、ぎりぎりのところで農作物をつくって、それを持っていって売っているわけです。

 聞いた話の中でも、よく、政治家は収穫のときだけ来て、このお米はおいしい、そして大根はおいしい、何はと言ってくれる、それもありがたい。しかし、その途中過程でどんな作業をして、そして最終的にどんな値段で売れているのかをしっかり調べてほしい、それが足りなさ過ぎる。

 そして、先ほど大臣が、調べる能力もないと言いましたけれども、価格に影響があるかどうかは、それは全部、最後の外食産業が幾らで買ったか、これがなきゃわかるはずがないんです。だから、調査としてはこれは半ばであり、まだまだしっかりとこれを調べなければだめだということなので、ぜひこれは調べていただきたい。総理も、農家の方々、農業者の方々のこの思いを受けて、調査をしっかり農林大臣に指示していただけますか。

山本(有)国務大臣 SBS入札契約は、輸入業者と国と卸の三者契約であります。この契約三者間に信頼関係があり、また、契約上の確認ということは、これは可能でございます。しかし、卸から、多種多様な、お弁当屋さん、牛丼屋さん、そのほかコンビニ、ありとあらゆるところにこのお米は売られております。これは、不特定多数、大量に売られているわけでございまして、これを全部調査しろと言われましても、恐らくどの機関も調査をすることは不可能だろうというように思います。

 我々にとりまして、SBSの契約が公正であり、適切であり、そして不安がないようにすることが専らの任務だ、そう考えております。

村岡委員 全て、一社残らずとは言っていません。農林省はこのSBSでマークアップをとるときに、国内の米の流通価格を調べて、その上で価格を決めていると言っています。その部分のところだけでも全く違うわけです。

 そして、千七百件以上の契約を見て、先ほど話がありましたが、典型例で二件出しています。その調整金は十九円とか二十円ですけれども、裁判で出てきたのは四十円ですよ。そういう意味でいくと、答えてくれたことだけしか調べていないといったら、これは、先ほど言った農家ファーストには非常に不誠実じゃないですか。四十円のところもあるわけですよ。

 その上でお聞きしますけれども、二番のパネルを見てください。もう不明だらけなんです。

 この中で、まずは六十一社が調整金のやりとりがある、またはあった。二十一社は現在も調整金がある。結論として、輸入米は全体の一%程度、SBS米の米市場における価格水準が国内産に影響がないということ、事実がなかった、確認できなかったと言っています。これがまず調べていない。

 それから、金銭のやりとり禁止、この前指摘しました。それは、契約上の二者ではやらないようにしていますけれども、ダミーもあれば、そしてまた別の項目でいけばわかりません。

 それから、調整金の幾らかというものが、販売促進といっても、当然、食料ですから、これは最終的に余れば、その調整金で安売りするというのが商売じゃないですか。そのときには日本の米も余っている可能性がある。そうしたら、結局は安くなるんですよ。価格に影響するんです。

 そして、外食とか中食とかというのは、大体において、この部分である程度の市場をとられていくと、価格帯はなかなか、牛丼屋さんも何も、米の値段を含めて高くはできないんです。一度安くなったら簡単に高くはできないんです。そして、そこの需要は必ず外国産米からとられて、安い価格で売らなければだめだというのが現実の商売だと思いますよ。

 そういう意味では、この調整金というのを禁止というのが、しっかり調べてやっていただきたい、こういうふうに思っております。

 そして、この前指摘したパネル三を見てください。パネル三の中で、入札制度がおかしいじゃないかという根本からいきます。

 普通の入札という制度であれば、商社Aと卸売業者一と書いておりますけれども、これが一つ参加するのは可能。それは二番でも三番でも不可能。しかし、このお米においてだけは、商社Aが、一も二も三も四も五も、電子入札ですけれども、売り渡し価格と買い取り価格のものを全部出せる、二十でも三十でも。これはもう入札とは言わないですよ。これはもう見積もり合わせですよ。

 業界では探りと言われているそうですけれども、この部分というのは、まずこれから直しませんか。これはもう今すぐ直せますよ。入札制度ですから、これは農林省が決めればいいわけで。どうですか、大臣。

山本(有)国務大臣 入札参加の機会をできるだけ確保するため、各回の入札におきまして、輸入業者が、さまざまな種類の米につきまして、さまざまな買い受け業者とペアになって申し込みを行うことを認めております。特に、買い受け業者数、有資格者五百六十二者は、輸入業者数、有資格者二十四者に比べ数が多く、買い受け業者の参加の機会を制限しない観点からも、輸入業者が複数の買い受け業者とペアを組むことは禁止をしておりません。

 他方、同一の輸入業者及び買い受け業者のペアが同じ種類、銘柄の米について複数の札を入れることを禁止すること等により、入札の公正性を保っているところでございます。

村岡委員 いや、もうその見直しから始めないと、この部分の、一般では考えられない入札から始まって、最後には調整金という方に行く、最初の入り口を直さなきゃいけないということだけは提案しておきます。

 そして、次に移ります。パネル六をちょっと見ていただければ。

 今、飼料米政策をやっています。本会議場でも、総理に対して、飼料米政策は岩盤政策なのかとお聞きしましたけれども、まだ岩盤政策とはお答えがありませんでした。

 今、水田の直接支払交付金などを見ると、飼料米で、四十二万トンやっているのが国庫で六百七十二億かかっております。三十七年ですから、遠い先ですから、長期政権の安倍総理も三十七年までやられているかどうかわかりませんが、そのときに、これが仮に、値段は変わっていきますよ、今で六百七十二億かかっておりますけれども、この飼料米政策は岩盤政策と考えていいんですか。

 農業は、米に関して言えば、一年に一遍しかとれません。それとまた、土地も、直していくとすれば、これは一年、二年で直るようなものじゃありません。技術も何も、生産者だって、その技術を蓄えるためには年数がかかります。これは岩盤政策ですか。

山本(有)国務大臣 我が国におきまして、主食用米の需要が毎年八万トンずつ減少しております。食料自給率や食料自給力の向上を図るため、主食用米から飼料用米などへの転換による水田のフル活用が必要でございます。

 昨年三月に閣議決定されました食料・農業・農村基本計画におきまして、二十五年度で十一万トンの飼料用米の生産量を三十七年に百十万トンとする生産努力目標を掲げたところでございます。

 ということでございまして、これは我が国にとりまして重要な米政策でございます。

村岡委員 努力目標、重要な政策と言うだけで、岩盤政策とは言っていただけないとすれば、これはもう農家の人も大変不安のままでこの新しい改革に取り組んでいかなきゃいけない。

 そして、この飼料米、四十二万トンと今なっていて、ふやしていこうとしていますけれども、これはパネルの五番を見ていただければわかるんですが、備蓄米とMA米で大変な赤字を生んでいます。

 飼料用米は、国産米で二十七年度で四十二万トンつくっているんですが、実は政府所有米の備蓄米で二十五万トン、MA米で七十三万トンも飼料用米になっているんです。百十万トンが目標と言っていますけれども、これはどんどんふやしていけば、すぐ百十万トンぐらいのところには行ってしまう。それが岩盤じゃないとすれば、それを信じてつくった人たちはどうするんですか。

 その中でいけば、大臣は内閣改造があればかわるので、総理は岩盤政策と考えていますか。

安倍内閣総理大臣 飼料用米については、昨年三月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画において、平成二十五年度で十一万トンの飼料用米の生産量を平成三十七年度に百十万トンとする、これは努力目標でありますが、努力目標を掲げたわけであります。これを閣議決定したところでありまして、これは重い決定というふうに捉えていただいていいと思います。

 現在、政府としては、水田活用の直接支払交付金による支援など多様な取り組みを行っていますが、飼料用米の生産を拡大するためには、生産性の向上が不可欠であります。この目標の確実な達成に向けて、不断に施策の点検を行いながら、引き続き生産拡大を図ってまいりたいと考えております。

村岡委員 最後まで岩盤政策かどうか……。

 これは財政的に大変なんですよね。ここ八年で備蓄米とMA米でもう六千億ぐらいかかっています。その上、国内での飼料米で、毎年六百億、八百億、一千億とふえていきます。そのときに、農業を大切だと考えるときに、財政をきちんとするというのと、消費者の理解と、この二つがなきゃいけないということで、政治がちゃんと取り組んでいかなきゃいけないと思っています。

 最後になりますけれども、先ほど言ったように、このSBS米はしっかり調査していただきたい。農家の方々が、先ほど言ったように、外国産の米は国内の人に食べていただくのに我々の米は餌用になるのか、この思いがしっかりと受けとめられたら調査はできるはずです。ぜひそのことをお願いして、きょうの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、升田世喜男君。

升田委員 民進党の升田世喜男です。

 質問の機会を得たことにまずもって心から感謝申し上げたい、こう思います。

 このTPP委員会というのは、一度、四月に開催されました。当時の西川委員長がお書きになったと思われる本の、出版されると思われるそのゲラ、こういうものが出たり、あるいは、我々は、TPPは農業を初め日本の通商を根本から変えていくので、交渉結果、交渉内容の詳細を示してくれというわけではなくて、できる限りの情報開示をしてくれと再三お願いしたところ、出てきたところがあのノリ弁当、まっくろくろすけ、こういうことで、こういう流れだとぐあいが悪いなと政府・与党は思ったんでしょう、継続審議になって、今こうして二回目の委員会が開かれているということでございます。

 私は、今回のTPPの委員会で、前回同様に、農業で働いている方々に寄り添う、そういう気持ちの中で、私は青森でありますけれども、先ほど秋田の村岡委員もるる農家の心情を訴えておりました。私もまた私なりに、農家の思い、不安等々を訴えさせていただきたいと思います。

 きょうは、限られた時間の中でありますけれども、安倍総理初め関係大臣にひとつ誠意ある答弁をよろしくお願い申し上げたい、こう思います。

 まず最初に、前回もお伺いさせていただきましたが、安倍総理に対して、このTPP、大筋合意がなされて、そして今日に至っているわけであります、今農家がどんな心情でおられるかというのを改めてまたお伺いさせていただきます。

安倍内閣総理大臣 これは、私だけではなくて、例えば、自民党自体の考えでもありますが、農は国の基という考え方が基本でございまして、第一次産業をしっかりと守っている、我々の食を支えているのは農業であります。食を支えていることのみならず、地域や環境を支えているのも農業と言ってもいいんだろう、このように思うわけであります。

 農業には多面的な機能があるわけでありますが、もちろん、生産という側面もあるわけであります、産業としての側面があるわけであります。この産業の側面をしっかりと強くしながら、まさに若い皆さんが就農するような、そういう分野にしていきたいと思います。

 一方、中山間地域においては、生産性を上げるといってもなかなか難しい地域もあります。しかし同時に、先ほど申し上げましたように、水を涵養し、環境を守り、そして地域を守っている、文化を守ってきたという多面的な機能がございますから、その中で、我々もしっかりと守っていきたい、こう思うわけであります。

 守りながらも、しかし、伸ばせるところはしっかりと伸ばしていきたい。伸ばすことによって、若い皆さんがこの分野で将来頑張っていこうということになっていくのではないか。何といっても、平均年齢がもう六十六歳を超えているわけでありますから、今までのままでは、守るだけでは、残念ながら守ることができないわけであります。

 そこで、我々は、守るためにも、攻めるべきところは攻めなければいけない、この考え方のもとで、例えば、直近では、四十歳以下で就農者が二万人ふえました。これはもう八年ぶりのことであります。全体の人口が減っている中で二万人ふえてきた。もっと多くの方々が農業に魅力を感じていただけるような農業にしていきたいと思います。

 同時に、このTPPに対して不安をお持ちの皆さんに寄り添いながら、しっかりと支援策を我々は丁寧に御説明していきたい、このように思っております。

升田委員 私も週末、いろいろ農家の方々とお会いさせていただいて、一番多くこのことを聞いてくれと言われたのは、もう既にこの質問が出ておりますけれども、私からも改めてまたお伺いをさせていただきますが、今、アメリカでは大統領選挙のさなかであります。十一月の八日にその結果が出る。そのアメリカは、候補者であるクリントンさんも、そしてトランプさんもこれは反対だと表明しているのに、自民党はかつて、反対だ、こう言ったじゃないか、なのに、アメリカのぐあいを見ず、なぜ日本は批准するんだということを農家からよく聞かれるんですよ。

 先ほどもこの質問が出てお答えになっていますけれども、私の口から改めて、どうして安倍総理はこれほど急ぐんですか。

安倍内閣総理大臣 よく私は、アメリカ追従を何でするんだということで御批判を受けるわけでございますが、この分野については、アメリカの方向に従えという御議論が出るわけでございます。

 確かに、今、大統領候補はそういう議論をしております。また、議会においても、選挙を控えて厳しいいろいろな議論があるのは事実でございます。

 しかし、今まさに、アジア太平洋地域に四割の経済圏が誕生しようとしているわけでございます。ここで日本も米国もリーダーシップをとってルールづくりを行いました。主導的な役割を担ったと言ってもいいと思います。日本が主導的な役割を担って、いわばマルチの貿易のルールをつくったというのは初めての出来事なんだろうと私は思います。

 そこで、しっかりと、このTPPについては、大筋合意した以上、日本が、このTPPの批准について議論を進めていく、そしてリーダーシップをとっていくことによって、米国のいわば承認に対してもいい影響力を与えていく。まさに日本が影響力を与えていく。アメリカが何をやるかということをじっとしながら見ているという日本から、日本がリーダーシップを持ってアメリカにむしろ影響力を与えていくという立場に今回は立つべきではないか。このように考えたところでございます。

升田委員 私は、アメリカに追従してくださいなどとは言っておりません。なぜ農家からこの意見が出るかといいますと、自民党さんが野党のときに「TPP断固反対。ブレない。 自民党」、こういうパネルを、ポスターを張っていて、そして今、急にそれと違う態度で臨んでいるから、農家が素直に、これはどうなんだという気持ちになるんですね。追従してくださいとは一言も言っておりませんよ。

 それと、次に行きますけれども、これまでのTPPの議論の中で、安倍総理初め農水大臣も、人口減少だから世界に出ていかなきゃいけない、そして、農業を貿易産業化していくんだと。このことは、私は全部否定はしません。しかし、私は、農家に携わっている人のお話を聞くと、貿易産業化といったって、それはみんなができることじゃない、ほんの一部しかできないということなんですね。

 ここで一つ欺瞞があるのは、みんなができない、ほんの一部しかできないことを、あたかも、やがてみんながやれるような言い回しをするというのは、私はさらなる不安を与えると思いますよ。ここはもうちょっと現状を見て、私は冷静になってもらいたいなと思います。

 そこで、貿易、それもいいでしょう。しかし、人口減少の我が国の流れであっても、まだ一億二千万人以上の人口があるわけです。あと二十年で一千四百万人も人口が減るという流れは残念ではありますけれども、それでも、世界を見たら、日本は世界で十番目です。一億以上持っている国というのはそんなにありませんので、そういうことを考えると、内需創造あるいは内需拡大、こういうことも私はある意味では輸出以上に大事ではないかなと思うんですが、農水大臣、いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 農業の成長産業化のためには、農産物の輸出促進とともに、御指摘の国内需要の開拓も重要と認識しております。

 このため、農林水産省としましては、消費者に対して国産農産物への理解や信頼を高めるための食育、あるいは学校給食等における地産地消の推進、あるいはライフスタイルの変化に対応した加工・業務用野菜の生産や、介護食品の開発や機能性農産物の活用等を通じた医福食農連携の推進等のさまざまな取り組みを行うことによって、国内外において新たな需要の創出、拡大を図っていく必要があるというように思っております。

升田委員 もっと何かよい答弁が出るかなと期待したんですけれども、事務的な月並みの答弁であったなと思います。

 先般、ある農業の大会に出させていただいて、この内需拡大論を述べたら、関係者は一様に、もっとその声を上げてくれと。今、政府は輸出、輸出ばかりだ、だけれども、現実に輸出をしてもうかるのは商社ですよ、農家はもうかりませんよと。海外と貿易をするに当たって、英語が読めたり書けたりしないとこれはできないですから、当然そこに商社が入るわけでありますから、やはり多くの農家に恩恵が直に感じられるのは、もう一度、この内需拡大なんです。ですから、大臣、そこはよく頭に入れておいてください。

 こういうお話をこれまでの議論の中で安倍総理から一度も私は聞いたことがありませんので、人口減少の中においての内需拡大というのは、これは無謀な話でしょうか、安倍総理の見解をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 この内需の拡大をしていく上においても、日本の消費者がどんどん手にとっていく、そういうものをつくっていく必要があります。ニーズを調べながら、どういうふうにつくっていけば高く売れるかということも大切でしょうし、これはやはり生産者の皆さんにも、また流通の皆さんにも努力をしていただく必要もあります。

 我々政府としても機会をつくっていきますが、それがやはり大切であって、なぜ我々は輸出をするかといえば、輸出をするためには、ニーズをつかんで販路を開拓して出していく。この努力は内需においても、国内においても生きていくわけであります。

 つまり、そういうことをしなくて、例えば、ただおいしいものをつくる、安全なものをつくる、これは、本当に皆さん真面目に日本の農家はやってきましたよ。でも、農家を豊かにするためには、できるだけ高く売っていく。やはりしっかりとマーケットを調べていく。そして、この時期だったらどこに売れば一番高く売れるかという、マーケットを見ながら、そして需給を見ながら、時期を見ながら出していくということも大切であって、今何をつくれば高く売れるかということも大切なんだろう、こう思います。

 ですから、ただ農家だけではなくて、農家プラスいろいろな人たちが一緒になってそういう努力をしていくことによって、農家にもちゃんと収入が入るようにしていかなければいけないわけであります。

 では、輸出をすれば商社だけが利益がある、これは一面の真実であります。でも、これは国内でも言えることであって、国内でも、私の地元で、東京の有名な果物屋さんに入れている農家があります、とても高く売れているんですが、しかし、実は農家の手取りは少ないんですよ。なぜか。これは交渉力の問題なんですね。ですから、この交渉力において、農家だけではなくて、しっかりと交渉する、農家の側に立って交渉する人も必要なんだろう、私はこう思うわけであります。

 基本的に、考え方は同じだと思いますが、農家の手取りをふやしていくために何をすべきかということをみんなで知恵を出していかなければいけない、このように思います。

 ですから、我々も今、輸出に力を入れていますし、輸出は伸びています、殊さら輸出と内需を分ける必要もないわけでありまして、輸出に強くなっていけば、当然、内需、国内でも売れるものができていくということにもつながっていくのではないか、私はこう思う次第でございます。

升田委員 内需の関連で、この機会にちょっと確認しておきたいことがございます。

 学校給食なんですが、平成二十一年に文科省が、全国の都道府県やあるいは教育委員会の方に、米飯、いわゆる週三回以上になったらいいねということで、これは省令だと思うんですけれども、そういう通知を出されたと思うんですが、あれから六年でしょうか、七年たっていますね。現状はどうなっていますか。

松野国務大臣 米飯給食実施回数の全国平均は、昭和五十一年度には週〇・六回でしたが、平成十九年度に週三回、平成二十六年度には週三・四回となり、着実に増加をしております。都道府県別の平均を見ますと、全ての都道府県で週三回以上実施をしておりますが、学校別に見ると、完全給食を実施している学校のうち、実施回数が週三回に満たない学校の割合は、平成二十六年度で四・二%ということでございます。

 この米飯給食については、現在、五五%の学校では、外部の業者が炊飯し学校に納入する委託炊飯により行われていますが、平成二十年度に行った調査研究によると、委託炊飯の場合はパンよりも納入価格が高いことが米飯給食充実に当たっての課題として挙げられているところであります。

 いずれにしろ、文部科学省としては、委員のお話にありましたとおり、平成二十一年三月に、米飯給食については週三回以上を目標として推進するとともに、週三回以上の地域と学校においては、週四回などの新たな目標を設定し、実施回数の増加を図るよう通知を出しており、引き続き米飯給食の推進を図ってまいります。

升田委員 週三回をクリアしているところも相当あると私も伺っていました。ただ、それがクリアできないところもあるんですね。そこで、その原因はどこにあるのか、そして、それをクリアするための解決策というのはどんなことを考えているのか、それをちょっとお聞かせください。

松野国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、五五%を占める外部の業者が炊飯し学校に納入している形態では、パン食よりも米飯の方が高くつくということが一つの原因であろうかと思います。

 あわせて、米飯給食の推進とともに、学校給食におきましては地産地消も推奨しておりますので、その地域における農業構造、産業構造の違いというのも一定程度の影響を与えているのであろうかと考えております。

升田委員 全て米御飯を食べなさいと言いますと、うどんとかパンとか、その地域の事情もありますから、それは全てというふうにいかないことはよくわかっていますけれども、ただ、日本人が日本の米を食べなくなるような日本国というのはあり得ませんので、そういうことを考えていくと、やはり給食では主に米御飯を食べさせるんだということはとても重要だと思います。先ほど私が、内需ということにもこれは関連することでありますから、しっかり取り組んでほしい。

 そして、給食は、お父さん、お母さんが負担金を払っております。私の調べでは、四千四百億ぐらい日本全体でかかっているというんですね。ただ、その中で二割以上が外国産のものを食べているということなんです、約九百億円。こういうところももったいないんじゃないですか。こういう思いもあって、私はこれを取り上げさせていただいたんです。

 やはり、きょう、小泉委員に私は共鳴するところもありました。それは、手塩にかけてつくった自分の商品、いわゆる農産物がこの値段かと。これはやはり残念でしょう。ですから、同じ日本人なら、あるいは同じ地域に住む人なら地元産を食べようねというような空気感を盛り上げていくこともまた内需につながっていくと思いますので、重ねてこれは御指摘、お願いをしておきたい、こう思います。

 TPPが進んで、一つ懸念する、あるいは大方の人も持っていると思いますが、私は、都会と地方の格差がまた拡大していかないかな、こんな懸念を持っております。

 青森県は賃金ベースでいきますと日本で最低なんですね。そして、一番高いのは東京であります。食料自給率は、青森県は一〇〇%を超えています。東京は二%あるかないかだ、こう思います。このことを考えても、TPPでもってなおさら地方が置き去りになるようなことがあっては私はいけない。総理が、あるいは政府の方が輸出、輸出と言うものですから、やはりイコール大企業というイメージになってしまうんですね。

 これが懸念されますので、このTPPと格差、都会と地方の格差の問題について、私は、安倍総理にお伺いしたいと思います。総理は、この辺、どう捉えていますか。

    〔委員長退席、西村(康)委員長代理着席〕

安倍内閣総理大臣 TPPと格差、あるいは大企業だけではないかというお話でございますが、そもそも大企業というのは簡単に生産する場所を変えていくわけでありまして、かつて、行き過ぎた円高の時代は空洞化が進んでいったわけでございます。しかし、そのときに、下請企業はついていけないんですね。下請企業はついていけませんから、工場を閉めざるを得ないわけでありまして、私の地元、これは若い人たちを五百人ぐらい雇っていた会社なんですが、残念ながら工場を閉めることになってしまったわけでございます。

 つまり、そうすると、大企業では、おまえたち、だめだから要らないというわけにはもちろんいかないわけでありまして、しっかりと雇用を確保しているのはそうした企業。しかし、同時に、この日本を支えているのは、中小企業や、あるいは小規模事業者であります。そこがしっかりとしていないと日本の企業は立ち行かなくなるわけでありまして、我々はずっと中小企業等に力を入れてきた結果、この四年間で中小企業の倒産件数は三割減少しているわけでございます。

 こうしたTPPによって、これは一つのしっかりとしたルールの中で、TPPに加盟している十二カ国の中ではルールの中で知財が守られ、自分たちの輸出が可能になっていくわけであります。インターネット等を駆使しながら、現地に拠点を持たずにも、守られ、輸出していく、販路を拡大していくことも可能になっていくわけであります。

 農産品においてもそうでございまして、そういうものをしっかりと使っていけば、我々も、ただ、中小企業、おまえ頑張っていけよということではなくて、ジェトロ等も初め、国がしっかりと支援をしながら、彼らが輸出をしていく後押しをしていきたい、こう思っておる次第でございます。

 そこで、都市と農村という意味におきましては、地方におけるさまざまな物づくりにすぐれているところは新たな活路を見出していくことができるわけでございまして、また、地方にあっても、TPPに入っている国々の中において関税率が下がりますから、地方にいながらにして、海外に工場をつくったり支店をつくらずにも、いながらにしてサプライチェーンの中に入っていくことも可能ということになりますから、いわば、地域にいる不利益のないという状況をつくりたい。

 ただ、黙っていてもそういうものができるわけではありませんから、これをチャンスにしながら、しっかりと地方創生も進める中において、地方にとってこのTPPをチャンスにしていきたい、このように考えております。

升田委員 地方において農業をないがしろにしたら、地方はもちませんよ、総理。このことだけはしっかり頭に入れておいてください。

 次の質問で、国益と農業について私は議論させていただきたいと思うんです。

 農業は、産業だけじゃなくて、これまでも議論に出ていますけれども、地方の生活の安定に寄与していると私は思うんです。先ほど冒頭、農家の心情は今どのように思っていますかという私の問いに対する安倍総理の答弁で、産業、産業という言葉が何度も出てまいりました。ある意味、それは当然の言葉かもしれません。

 しかし一方で、いわゆる兼業農家でありますけれども、小さな所得が地方においては大きな生活の安心になっているという実態を私は訴えたい、このように思います。

 例えば、一年で三十万あるいは五十万しか所得の得られない兼業農家はたくさんいると私は思っています。そういう空気感も感じております。これをもって、三十万、五十万では、これは産業にならないね、雇用にならないね、では、ばっさりやりましょうかといったら、六十五歳以上、今、農業に携わっている年齢が六十六歳ですか、きょうは七歳という数字も出てまいりましたが、それは、ある意味では高齢であっても働けるということなんですね。物すごくいいことです。では、その六十六歳、六十七歳が地方において年間三十万、五十万稼げる場所がどこにありますかということです。

 加えて、誰しもが人生の中でいろいろな苦しみがあると思います。お金がなくて、お金を借りにあさくのも、お願いするのも、これは相当苦しいことだと思います。選挙をやっている人は大なり小なりうなずいていただけるんだろうな、こう思います。特に、一度お金を借りて戻すんですけれども、戻した後、時を経て二度目に、また貸してくれるだろうなと思って行きますと、大概二度目は断られてしまうんですね。これがどういうわけか現実です。体験談から申し上げさせていただきますけれども。

 今笑いが出ていますが、実は、みずから命を絶つ人は、もちろん何億の負債が不安になって絶つ人もいるでありましょう。しかし、よく社会の現場を見ますと、ほかの人から見たら、その金額か、その金額でそういうことをしてしまったのかということも、実は現実にたくさんいるんですよ。

 ですから、私は、このTPPを議論するときに、輸出、貿易、大規模化、それ一辺倒ではなくて、地方においては、貴重な三十万、五十万、あるいはそれ以上の方もいるかもしれませんが、所得を得て、これでもって安心して暮らせるという実態があるということを、農林水産大臣はおわかりになっているでしょうか。

    〔西村(康)委員長代理退席、委員長着席〕

山本(有)国務大臣 実は、昨日、群馬県川場村、人口三千五百人の村の視察に行ってまいりました。

 なぜ視察に行ったかといいますと、村の診療所にいた七十五歳以上の高齢者、大体、朝、順番待ちが二十五人だったようでございます。それが、田園プラザという道の駅で、産地直送、農家が自分で値決めをして、自分で出荷をして、自分で夕方その出荷残をとりに行くというシステムが機能して、なおかつ全ての出荷者にメールで午前中の売り上げ、午後の売り上げを通知することになったところ、七十五歳以上が診療所に二十五人集っていた、あるいは順番待ちしていたという人たちが全て、その方々が今ゼロになったと。ゼロです。

 それは、七十五歳以上の方々の農家が、自分でトマトをつくり、自分でナスをつくり、自分でシシトウをつくることで、値決めして出荷することが生きがいになっているということと収入になっているということを実感して、毎日が楽しくなっているというこの実態を見て、私は、久保村長さんにすばらしいこの川場村の道の駅の成果を御披露いただいて、感激をいたしました。

 全国津々浦々、こういうことが今展開されている日本の農業というのは決して捨てたものではない、兼業農家だって夢や希望が現実にあって、七十五歳以上の方々が将来があるというような実感が農業にはあるというように私は確信をいたしております。

升田委員 今の答弁はよかったです。三十万、五十万、そういう小さなところにもしっかり目配りしていかないとだめなんです。

 今のやりとりで、一言だけ、安倍総理の感想を聞かせてください。

安倍内閣総理大臣 つまり、今、山本大臣が言わんとしたことは、農業を生きがいだと思う人が随分、どんどんふえてきたわけですよ。

 これは、まずは自分が値決めするということです。ただ農協に出荷するのではなくて、自分で値決めしていく。そして、道の駅に入れていくときに、まさに消費者の息遣いを感じながら、自分がつくったものがおいしいなと感謝されている、ここに生きがいを感じているんだろうな、私はこう思うわけであります。そう思っている農家というのは随分たくさんいて、農業は確かに大変なんですが、私の地元にも、若い人で、本当に農業をやってよかったという人が結構いっぱいいますよ、物すごくたくさん。そういう皆さんにもっとふえていただきたいと思います。

 これは産業面だけで私は捉えているわけではありませんよ。しかし、産業面でも捉えなければいけないということを申し上げているのであって、ですから、しっかりと産業面でも捉えつつ、そうではない面も大切にしなければいけないわけであります。

 私の地元というのは、山口県の山陰側なんですよ。ですから、これは農業地帯であります。生産性も高いわけではないんですが、しかし、そこの中においても、今さまざまな工夫ができてきて、お米もブランド米にもうなっているんですよ。魚沼産コシヒカリと匹敵するお米をつくっていますし、そして、地鶏に近い鳥の肉をつくりながら、東京においてかなり高く売ることに成功もしているわけでございます。本当の地鶏もありますけれども、地鶏に近いものの方がたくさんできるものですから。名前、ブランド名を言わせていただきますと、長州赤どり、これは東京でも大変好評を得ているわけでございます。

 そういう努力がやはりしっかりと評価されて、それが農家の手取りになっていく、そういう農業をしっかりとつくっていきたい。そして、今委員がおっしゃったように、兼業農家、あるいはお年寄りで一生懸命生きがいを持ってやっている皆さんにとって農業を続けられる環境を我々も整備していきたい、再生産を可能にしていきたい、このように考えております。

升田委員 きのう地元の馬力大会に行きました。挨拶回りをしていましたら、有権者から、升田さん、安倍総理に一つだけ言っておいてよ、答弁は簡潔にしてください、こう言われてもおりましたので、ひとつ簡潔にお願いしたい、こう思います。

 あと、農水大臣に、先ほどの答弁、三十万、五十万の切実な実態がわかるならば、SBS米についての調査とか報告とかいうのはもっと誠実にやってくださいよ。合わないんですよ、現実が。ですから、あのような気持ちがあるならば、我々野党も国民の代表でありますから、これはもっとしっかりやってください。お願いします。

 残された時間、東北復興関係で一、二点質問をさせていただきたいと思います。

 二〇二〇年に東京オリンピックがあるわけでありますけれども、私は、これを東北の復興にリンクさせてほしい。もちろん政府はやっています。だけれども、もう時間がないので、本当に聞きたいこと、言いたいことに切りかえますけれども、東北の中でも、福島は風評被害で今でも苦しんでおります。この風評被害を脱していかないと、私は本当の復興というのは来ないと思うんですね。特に、福島の未来が開かれていかないと思う。

 二〇二〇年にオリンピックがせっかく日本であるわけですから、世界のアスリート選手やあるいはスタッフの方々に福島の食材を食していただければ、これが世界に向けて、もう安全だという発信に私はなると思うんです。大臣、いかがですか。

山本(有)国務大臣 残念ながら、福島は、香港、あるいはアメリカ、台湾、中国等で、相手国からすれば輸入停止措置にまだあります。それから考えますと、私は、一日も早くこれを打開しなきゃならぬ、こう思っております。

 今、輸出相手先として最も大きな香港、しかも大陸を控えた玄関口、ここに、ぜひとも輸入解禁ということを交渉に行ってまいりました。現在、局長級レベルで定期協議をしてくれるという一歩進んだ形となっております。

 その意味において、鋭意、先生のおっしゃる風評被害等を除去して、福島のおいしいものが全世界に展開できるということになるよう努力していきたいと思っております。

升田委員 私は、二〇二〇年のオリンピック、これを逃したらその機会が来ない、政治的な判断で、普通に言ってタイムリミットが二〇二〇年だと思います。その実現が成るか成らないかは、これは安倍総理に相当なる覚悟がないと私はだめだと思うんですね。

 総理、その覚悟のほどを見せてください。二〇二〇年に福島の食材を世界のアスリートに食べさせて、安心になったよという、その現実をつくってほしいと思います。

安倍内閣総理大臣 官邸では毎日福島のお米を食べているところでございますが、当然、世界からやってくるアスリートの皆さんには日本の食材を味わっていただきたい、その中にはもちろん福島産のお米も入れたい、こう思っております。

 同時に、今、輸出において、科学的根拠なしに福島産のものが輸出できていない地域があります。でも、この地域は相当今減ってきました。ほとんどの国、全てであったわけでありますが、先般はシンガポールがとうとう解除してくれたわけでございます。

 私は、必ず首脳会談にはその解除を要求しておりまして、首脳会談のときにいつも水を飲んでもらっているんですが、そこに置く水は、福島産の水を飲んでいただいて、それは最初わからなくて相手は飲んでいるんですが、これは福島産ですよ、私は毎日飲んでいるし、あなたも飲んでも大丈夫ですよと言いながら、いつもこれを開くように努力をしているところでございます。

 まだ残念ながら残っている国が数カ国あるわけでありますが、全力を尽くしていきたい、このように思っております。

升田委員 復興五輪を望んで、終わります。

塩谷委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民進党の岸本周平でございます。

 質問の機会をお与えいただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。

 きょうは、同僚議員から、TPPの協定に入る前に、いろいろな問題点の指摘をさせていただきました。私は、それに加えて、TPP協定そのものではないのですけれども、TPP協定を補完するという形で、それぞれの国が二国間の書簡を交換しております。サイドレターともいいますけれども、その書簡も実は大変重要なものであろうと思っておりますが、きょうは、保険等の非関税措置について日本とアメリカの間で結ばれた書簡について御質問させていただきたいと思っております。

 テレビを見ていらっしゃる方は、そうはいっても、書簡とかサイドレター、初めて聞くことであろうかと思いますし、条約とはどう違うんだということもあろうかと思いますので、まず外務大臣に、今回、非関税措置については、佐々江駐米大使とフロマン代表の間の書簡という形になっています、往復書簡ですが。この書簡の外交上の位置づけと申しますか、どういう意味合いがあるのかについて簡潔に御説明を願いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の保険等の非関税措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の書簡、これは、まず、本年の二月四日に交わされた書簡でありますが、そもそも、二〇一三年の四月に日米の間で、日米間の協議結果の確認に関する書簡という書簡を交わしていますが、その書簡に従って、保険、透明性、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便、そして衛生植物検疫措置、こういった分野における非関税措置について交渉を行いました。

 そして、その交渉においては、我が国の制度に問題がないことを説明しつつ、粘り強く交渉を続けたわけですが、その結果、この各分野において、我が国として既存の国内法令を適切に実施していくことを確認したり、もともと自発的にとることとしていた措置等の内容を文書に盛り込む、こういったことによって、日米双方に受け入れ可能な形でまとめた、これがこの文書であります。

 そして位置づけですが、これは、国際約束ではなくして、法的な義務を我が国が負うというものではない、こういった内容の書簡であります。

岸本委員 今御説明があったとおりでありますけれども、この書簡に基づいて、日本政府はアメリカに対して、そうはいっても約束をしているわけであります。

 この書簡というのは、お手紙自体は、英語でそれぞれA4一枚のレターであります。非常に形式的なレターでありますが、日本側から出している書簡には、日本語に翻訳しますとページ数がふえるんですけれども、A4二十九枚分、約三十枚分の約束がたくさん書いてあります、これは後でるる説明しますけれども。アメリカ側からは一つもありません。アメリカ側からは一つもなくて、一方的に、日本政府はこうします、ああしますという約束をさせられているわけであります。

 ここは同僚議員の皆さんと私は気持ちは全く同じでありますけれども、アメリカは、経済的にも、あるいは防衛的にも大変重要なパートナーでありますから、これまで私も、霞が関におりましたときは、国際金融の分野で一緒に仕事をしてまいりました。重要なパートナーでありますが、今回の協定に関する書簡は、余りにも一方的に、我が国があたかもアメリカの植民地であるかのような、そういう内容になっていはしないか。大変残念であります。これは同僚の議員諸君にもぜひ聞いていただきたいわけであります。

 そこで、まず最初に塩崎厚生労働大臣にお伺いをしたいと思います。

 今、岸田外務大臣がおっしゃいましたように、衛生植物検疫の部分のレターであります。これが、ぱっと読んでも、なかなか何を意味するのかというのがよくわかりませんので、塩崎大臣に解説をしていただきたいと思うのであります。

 こう書いてあります。「厚生労働省は、収穫前及び収穫後の両方に使用される防かび剤」、カビを防ぐ薬ですね、「防かび剤について、農薬及び食品添加物の承認のための統一された要請及び審議の過程を活用することにより、合理化された承認過程を実施する。」わかりますか、皆さん、どういう意味か。私にはわかりません。

 大臣、これはどういう意味ですか。具体的にお答えいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 サイドレターで、今御指摘の点については、三つほど、収穫後の防カビ剤、食品添加物、それからゼラチン・コラーゲン、こういったものが触れられているわけであります。

 御案内のように、今御指摘いただいた、並行交渉で作成をしたサイドレターでは、我が国は、今御指摘をいただいた防カビ剤の使用については、収穫前の農薬の承認手続と、収穫後の、これは日本は食品添加物として扱うものですから、その承認の手続をあわせて行うこととしたということでございまして、同じ防カビ剤であっても使用のタイミングによって手続が異なるというものを一体的に実施することで手続を迅速化するということ。

 それから、これは審査そのものの簡略化ではなく、食品安全に関する基準の変更は行われないというものでございまして、当然のことながら、我々にとって大事なのは食品の安全確保でありまして、今申し上げたとおり、これは手続上、収穫前の農薬としての扱いと収穫後の食品添加物としての扱いをしている日本と米国との扱いの違いを簡略化して一緒に扱うということでございます。

岸本委員 ちょっと違いまして、実は、日本では、農薬というのは収穫前しか使っちゃいけないんですよ。収穫した後の農薬の使用は禁止されています、日本では。ですから、例えば日本でレモンをつくった農家は、収穫前は農薬を使ってレモンをつくることができます。しかし、収穫した後、そのレモンに農薬をかけることは許されないんです。

 ところが、アメリカからレモンを輸入しようとしますと時間がかかります。カビが生えますので、アメリカで収穫した後のレモンは、農薬をかけないとカビが生える。禁止されていますからね、日本では。イマザリルという典型的な農薬がありますけれども。なので、アメリカに言われて仕方なく、食品添加物という名目で添加していいよ、こういうことになっているのであります。一方的にアメリカからそういう措置をとらされているというのがまず現実にあるわけです。これはなかなか私たち国民には知らされないことであります。

 さあそこで、そうなりますと、次に大きな問題が出てまいります。食品添加物になりますと、スーパーマーケットで売るときに、当然、食品添加物ですから表示しなければなりません。皆さん、スーパーで見てください。輸入しているレモンの袋にはいっぱい書いてあります。イマザリル、フルジオキソニル、アゾキシストロビンなどと書いてあるんですね。怪しいですよね。いっぱい書いてある。うわっ、このレモン、いろいろ振ってあるんだ、イマザリルって何だろう、聞いたことがないよなと。

 だけれども、これはまさに先ほど玉木委員がるる説明したように、演繹的に、そういう農薬なり成長ホルモンが本当に医学的に問題なのかどうか、これは徹底的に検証する必要があるでしょう。いろいろな意見があるでしょう。それは科学的にやればいい。しかし、消費者は、少なくとも、添加物がどういうものなのか、成長ホルモンが入っているのか入っていないのか、農薬が収穫後振られているのか振られていないのか、知った上で買えればいいわけですね、まずは。

 そうなると、アメリカは困るわけですよ、イマザリルと書いてあるとお客さんが買わないから。そこでアメリカが何と言ってきたかというと、表示はするなと言ってきたわけですね。表示しないでちょうだいよ、こういう要求をしていて、食品添加物としての審査はやめてくれ、こういうことを言ってきておりますけれども、今回合理化された承認過程で、食品添加物としての審査はやめるというわけではないということを確認したいと思います。

塩崎国務大臣 やめるわけではございませんで、添加物としてしっかり見ていくということでございます。

岸本委員 今、私の敬愛する厚生労働大臣の御発言ですので、しっかりと議事録にも残りますので、国民の安心、安全のために、ぜひしっかりと審査をしていただいて、表示の方もしっかりとしていただきたいと思います。

 ただ、これまた、三項目めにというか同じところなんですけれども、こういうことも書いてあるんですね。これはアメリカに対する約束ですよ。どこでこの問題を審議するかというところまで書かされているんですよ。「薬事・食品衛生審議会における審議の過程においては、農薬・動物用医薬品部会及び添加物部会が合同で審議を行う。」そこまで約束させられているんですよ。

 これは国内の、厚生労働省の審議会の話じゃないですか。厚生労働省の審議会の審議の仕方までレターで約束させられる。私たちは植民地なんですか、皆さん。どうしてもその辺が私には残念でなりません。

 そこで、輸入農作物には、今言ったほかにも、さっき玉木委員が指摘した成長ホルモン、成長促進剤ラクトパミン、あと遺伝子組み換えの問題もあります。これは、ちょっときょうは時間がありませんので、日を改めてまた塩崎大臣と議論をしたいと思いますが、この問題はここでおきますので、塩崎大臣は、どうぞ御退席いただいて結構でございます。

 それで、たくさんあるんですが、時間が限られていますので、きょうは財務大臣にも来ていただいていますので、金融担当大臣としての麻生大臣にお聞きをしたいと思います。

 保険のところであります。

 これもいろいろ書いてありますが、サイドレターの中では、かんぽ生命保険の問題が非常に大きく取り上げられております。

 ちょっと長いので細かく読みませんが、保険の分野でのサイドレターの肝、ポイントは、日本郵政の販売網へのアクセスですね。日本郵政の販売網へのアクセスを非常に重視しています、アメリカ側は。微に入り細をうがって、日本郵便とかんぽ生命保険が内外の民間保険サービス提供者とビジネスアライアンスを組むように、コラボするように推進しているわけですね。

 それを日本政府が何で約束しなきゃいけないのか、よくわかりませんけれども、これを読むと、ああ、なるほどと。かんぽと内外のビジネスとのコラボにここまでアメリカが関心を持つのはなぜか。アフラックの商品が今郵便局の窓口で販売されています。ああ、そういうことだったのかということがこれで一つわかるわけであります。

 これは、皆さん、ホームページでとれますので、現物をぜひ見てください。ああ、アフラックのがん保険はこういうことだったのか。

 皆さん、それで、余談ですが、郵便局の窓口はすごく困っているんですよ。というのは、がん保険はかなり普及していますので、大体もう皆さん入っていらっしゃるんです。それが、新たに窓口で販売しなきゃいけないので、ノルマがふえちゃって困る。ノルマと言っちゃいけないんです、目標なんです。ということで、現場は困っていらっしゃるんです。

 いずれにしても、アフラックの保険が郵便局の窓口で販売されたのは、まさにこういう二国間の書簡を読んでいると背景が見えてくる、こういうことであります。

 金融担当大臣にお聞きしたいんですけれども、金融庁には監督局というのがあります。監督局の下には郵便貯金・保険監督参事官室というのがあります。保険課というのがあります。監督局長は、監督局の中にある参事官室と保険課に対して指揮命令権はあるんでしょうか、ないんでしょうか、お答えください。

麻生国務大臣 あります。

岸本委員 当たり前です。それは、行政組織ですから、金融庁監督局の下にある部課は、そこの監督局長の指揮命令系統に入るわけであります。

 しかし、この書簡には、何と、そのことを書かされているんですよ。金融庁監督局の下にある参事官室と保険課は金融庁監督局の監督に服するものであると書いてあるんですね。

 何でそんなことを書かないといけないんですか。当たり前のことが、何でそこまで約束させられるんですか。おかしくないですか。山本農林水産大臣、おかしいと思うでしょう。そんな顔をされていますよ。いやいや、農林省でそんなことがあったらおかしいでしょう。本当に、何でこんなことを佐々江大使がフロマンさんにお手紙を書かなきゃいけないんですか。

 外務大臣、これをお読みになったと思うんですけれども、違和感はございませんでしたか。

岸田国務大臣 この書簡の性質、成り立ちについては、先ほど説明したとおりであります。

 その中で御説明したように、この内容は、我が国として、既存の国内法令を適切に実施していることを確認する、あるいは、もともと自発的にとるとしていた措置を文書に盛り込む、こういった形でまとめております。

 ですから、当然、我が国としてやっていること、やるべきこと、これが内容に盛り込まれておりますので、今御指摘の点についても、従来、我が国として当然やっていること、これを改めて確認したものにすぎないと認識をしています。

岸本委員 それをアメリカが信じていたら、こういうことは書けと言わないんですよ。アメリカがこの書簡を求めるということは、いや、本当かな、本当に参事官室と保険課は金融庁監督局長の言うことを聞くのかなと心配だから聞くので、そうでなかったらこんなことを書かない。もしそうだったら、ありとあらゆることを書かなきゃいけないじゃないですか、保険関係の。保険関係の中でここだけ書くというのは、そこに疑問があるからです。

 なぜか。もう一つ言います。これは本当に、私は、初めて読んだときに腰を抜かしました。何と書いてあるか。

 これは、ちょっと文章で言うとあれですけれども、簡単にダイジェストしますと、総務省から金融庁の参事官室に出向者がいるだろうと。総務省というのは旧郵政の監督をしていましたから、今でもひっかかりがあるんですよ。総務省の役人が金融庁の保険関係の、郵便貯金の保険のところの参事官室に出向しているだろうと。この人が総務省のスパイとして、これはちょっと言い過ぎです、そこは書いていませんけれども、総務省の方にレポートしたり、総務省とつるんで、なぜか、かんぽや郵便貯金に得な取り扱いをしないように、あくまでもこの出向者あるいは派遣された人は金融庁の上司にだけレポートしなさいと。

 これを読みますと、日本語訳ですが、「総務省から異動し、又は派遣され、(株)かんぽ生命保険に対する監督責任を有する金融庁職員が金融庁の関連部署の長に対してのみ報告することを確認する。」と書かされているんですね。ここまで書く。

 日本政府として当たり前にやっていることですよ。全ての省庁の中でこのことは守られているにもかかわらず、金融庁の中でもですよ、かんぽについてのみこういうことを書かされているというのは、岸田外務大臣の今の御説明では説明はつきません。アメリカ政府がここにピンポイントで疑問を持っているから、ここまで書かされているわけであります。

 そういう意味で、ここまで日本政府がやっていることを確認するというのは……(発言する者あり)そうですよ。だけれども、それは、わざわざ、なぜこんな、出向者が総務省から監督庁に行っているとよく調べましたねという話ですよ。そこまで敵は、敵と言っては失礼だ、アメリカ合衆国政府は、調べに調べて、かんぽと郵便貯金については私たちの影響を何としてでも及ぼしたいという考え方があるからこそ書かせるわけで。だって、ここだけ選んでいるわけですから、非常に不自然ですよね。

 そういう意味では、こういうことまで約束をさせられているのか。いや、一事が万事なんですよ。一事が万事なんですが、岸田外務大臣、おっしゃりたいことがあれば、どうぞ。

岸田国務大臣 御指摘の文書は、先ほども申し上げましたが、二〇一三年四月に日米間で交わした書簡に基づいて、幾つかの分野における非関税措置について協議を行ってきました。そして、交渉をずっと行った結果として内容をまとめたわけです。

 そして、その内容において米国側からさまざまな指摘があったわけですが、我が国としては、この指摘は、我が国の国内法によって既にやっていること、当然国内で行われていることばかりですので、何の異存もありません。この文章を盛り込むことによってこうした書簡をまとめることができるということでありますので、それを改めて書いたまでであります。

 加えて、先ほども申し上げました、これは国際約束ではありませんので、法的拘束力はありません。当然のことを書いたのみですので、それ自体問題はありませんし、なおかつ、この文書自体、法的拘束力はないということもぜひつけ加えたいと思います。

岸本委員 法的拘束力がないのはわかっていますよ。だけれども、レターとして文書に残り、日本政府としては、やはり公になっていますから、それは政府としての約束ですよ。

 そこで、もうこれを言い出すと朝までやっちゃうんですけれども、五時に終わりますから、十五分で終わりますが、ほかにもこんなのもあるんですよ。かんぽ生命保険と独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構間の再保険契約のコピーを米国政府に提出する。ここまでやっているんですよ、皆さん。これが紙になって、文書になって……(発言する者あり)提出しているんですよ。しかも、それがこの紙に書かされちゃっているんですね。

 あるいは、かんぽ生命保険には、毎年一回、貸借対照表や損益計算書を公表させろと書いてあるんですね。やっていますよ、かんぽ生命も。四半期に一回やっているんですよ、四半期に一回。それは、やっていることを確認するというのはそうなんですが、ここの部分についてアメリカがどれだけ関心を持っているのか、どれだけ日本政府を信じていなくて、どれだけ日本政府を追い込んでいるのかというすばらしいドキュメントになるわけですよ。それが私は悔しいんですよ、日本人として本当に。これは、やっている、当たり前のことを確認している。

 では、それだったら、次に行きますと、入札のところもそうなんですよ、政府調達、入札談合。「入札談合」という項目があるんですね、しっかりと。これも、入札談合をわざわざ取り上げて、米国政府は日本政府に対して、もし日本政府が入札談合とかをちゃんとしていると、していないから興味があって、わざわざ書簡を結ぶわけですよ。

 入札談合はいろいろな問題があって、日本政府も襟を正して随分と改善をしてきているわけでありますから、何も合衆国政府に言われてやらなきゃいけないものじゃない。ちゃんとした法整備もしているわけですけれども、例えば、中央政府の調達機関によるカルテル、入札談合及びなれ合いの防止に関する研修プログラムを定期的に実施せよと書いてあるんですね。いや、放っておいてくださいよと。放っておいてください、そんなものはやっていますよ。やっているから書いてもいいというんじゃなくて、これだけアメリカ政府に信用されていないということじゃないですか。

 「職員による自らが監督し、又は規制する企業への求職、政府による職員及び退職した職員の再就職のあっせん並びに退職した職員による退職前の政府内での在職部署に対する便宜の要求を禁止することにより利益相反の排除を要求する」、これは、ここまで書くんですか。これは国家公務員法に書いてあるんですよ。この国家公務員法をちゃんと執行しますと書かされているんですね。

 それは当たり前のことだとおっしゃるが、何でそこまでアメリカ合衆国は興味を持つんだ。日本国政府を信頼していないからですよ、この分野において。だからわざわざこういう書簡を書かせるわけでしょう。だって、ほかに行政の分野はたくさんあるわけですから、そこからわざわざ選んで、非関税措置に関して、保険、透明性、投資・企業等の合併及び買収、政府調達、衛生植物検疫、あと大臣がおっしゃられたものがありますけれども、これが今の私たちがTPP協定を結ぶ際に置かれている状況なわけでありますよ。

 TPP本体の、本当にいろいろな、とるものもとれていない、守るべきものも守れていないということの一つの空気感が、証左がこういう書簡にあらわれてきていると私は考えますが、総理、どうですか。おかしくありませんか。

安倍内閣総理大臣 これは、岸本委員もよく御承知のとおり、交渉し合うわけですから、交渉者同士が相当の交渉をし合うわけですよ。こちらには書けないものもいっぱい言ってきますよ。しかし、彼らも、向こう側の交渉者としても何か得なきゃいけないわけですね。

 そこで、岸田大臣が答弁をさせていただいたように、これは既にやっていることばかりですから、そんなものを書いたって我々には何の痛みもないわけですよ。ですから、ああ、それでいいのかという感じですね、正直に申し上げて。しかし、向こうとしては、それを書かせていますから、日本にこれを書かせてきたよということで持っていかれるということであります。

 これは、全体の、日米でさまざまなことを議論しますから、その中においてもう既にやっていること。であれば、これを書いたって、岸本委員のお気持ちとしては、では何で政府がそんなものを書くんだ、そういう気持ちになる場合もそれはあるかもしれませんが、しかし、これはまさに厳しい交渉で、我々が書けないこともいっぱい言ってきた。それは我々は拒否をしているわけですから。書けることは書いて、向こうが何か獲得したというような気持ちを持てるか、あるいはまた、本国に帰って、これをとってきましたよと言って見せられるのであれば、我々は別に、それを書かせたって、既にやっていることですから。

 これは、日本が疑われているかどうか。いわばそれは、全ての国々がしっかりと、果たしてちゃんと公平な取り扱いをしているかどうかというのは、お互いに、国と国、国益と国益がぶつかっているんですから、そういう疑いを相手に持つということは間々あるわけでありますが、基本的には、日米は同盟関係でありますから深い信頼関係にはあるわけでありますが、いわば経済をめぐる交渉というのは非常にシビアにお互いにやっているということでありますから、私は、何ら問題はない、このように考えております。

岸本委員 例えば、それは、アメリカの向こう側に、まず関心事項だけしかレターで出さないわけですよ、その向こう側に圧力団体があって、それだけ日本に攻めてきているということなんですよ。

 そのことと、そして今、アフラックの問題も申し上げましたけれども、二国間で、これは本当に、アフラックの問題、もちろん、私も大蔵省におりましたので、日米の保険協議、長い間の歴史があります。本当に長い間の歴史があるので、いろいろな背景については申し上げませんけれども、結局、この書簡の背景を見ると、アフラックの窓販というのを日本としてのんだということに読み取れるわけでありまして、そんなに、皆さんがおっしゃるように、書いていいんだったら書かせてやったよという話ではないということであります。

 二国間で、これからもいろいろな日米の問題があるでしょうけれども、それに対して一方的に押されている感じがここにもにじみ出ているということを申し上げたいのと、あともう一つ岸田さんに申し上げたいんですけれども、では、入札談合するなというような書簡を日本は他の十一カ国と結んでいますか。そういう書簡を他の諸国に書かせていますか。

岸田国務大臣 御指摘のような文書は、先ほど申し上げました二〇一三年四月からの交渉の結果として日米の間で交わした書簡であります。こうしたやりとりは国によって違いますので、こうした形での書簡をやりとりしているのは日米の間だけだと認識をしています。

 ただ、いずれにせよ、政府調達にせよ、公務員にせよ、かんぽ生命にせよ、検疫にせよ、何か新たな義務が我が国に生じたというのであるならば、交渉において向こうの要求に応じたということなんでしょうが、新たな義務は何も我が国には生じておりません。あくまでも、現状において、我が国がやっていることを改めて書き込むことで書簡がまとまるのであるならば、これでまとめましょうということでまとめた書簡であります。

岸本委員 まさに、こういう書簡を書かないとまとまらないことが問題だと言っているんですよ。

 例えば、では、マレーシアに対して、ブルネイに対して、入札談合するな、そんな書簡を要求したら失礼千万じゃありませんか。岸田外務大臣のような立派な方はそんな書簡を要求しようなんてされないと思いますよ。そういうことを申し上げているんですよ。

岸田国務大臣 交渉です、これは相手がある話です。そして、二〇一三年からずっと交渉を行って、相手との交渉の結果、こうまとめようではないかということで書簡をまとめることになりました。そこに何を盛り込むのか、向こうとの話し合いの中で結果が出てくると思います。他の国においては、経緯も違いますし立場も違いますので、こういった文書は結んでいませんが、日米の間においては、今申し上げた経緯のもとに、こういった書簡をまとめようということで、まとめるために、今我が国が既に行っていることであるならば、書簡に書き込むことを我が国としては了承したということです。

 いずれにしましても、新しい義務は生じておりませんし、そもそもこの文書自体、法的拘束力がないということを重ねて申し上げたいと思います。

岸本委員 これ以上やると水かけ論にはなりますけれども、いや、それはわかっていますよ、法的拘束力がないことも、義務がないことも。ただ、それぞれピンポイントで、日米の、パートナーの国でこういうことが問題になり、そしてそれを書かされている、その中身が余りにもひどいじゃないのということであります。

 最後に、もう時間もありませんので一つだけ御指摘をさせていただきますと、例えば、「投資・企業等の合併及び買収」についての項目のところで、結局、いろいろなコーポレートガバナンス等の問題についてを含め、規制改革会議というのが出てくるんですね。規制改革会議の提言に従って日本政府は必要な措置をとれ、こう書いてあるわけです。いや、それは当たり前のことだとおっしゃるかもしれない。それはそういうことでしょう。しかし、何でアメリカ政府に対して、規制改革会議の提言に従え、日本政府は規制改革会議の提言に従いなさい、規制改革会議はきちんと審議をしなさい、そういうところまで書いているわけですよ。

 それは、おっしゃるとおり、今やっていることだし、法的義務はないとおっしゃるけれども、こういうレターを書かなければまとまらないという日米関係について、これは与党、野党関係ないと思うんですよ。我々立法府として、行政府と一緒になって、もう一度、私も政府におりましたから、宗像秘書官とも一緒にやりましたよ。これまで長年続いてきた日米のいろいろな交渉の形をそろそろ変えようじゃありませんか、本当に。

 このTPP協定、私たちも、ハイレベルの経済連携協定はもちろん賛成の立場です。今回は、中身が余りにも私たちの理想と違い過ぎるということで反対していますけれども、日米の間、特に米国との関係について、これまでずっとやられてきたようなことをこの書簡でやるよりは、一度、ひとつ、本当に立法府として、行政府と一緒になって、もう少し対等のパートナーシップが持てるように頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

塩谷委員長 次回は、明十八日火曜日午前八時三十五分理事会、午前八時五十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


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