衆議院

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第11号 平成28年11月1日(火曜日)

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平成二十八年十一月一日(火曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 塩谷  立君

   理事 うえの賢一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 菅原 一秀君 理事 西村 康稔君

   理事 森山  裕君 理事 今井 雅人君

   理事 篠原  孝君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    赤澤 亮正君

      池田 道孝君    大西 宏幸君

      加藤 寛治君    勝沼 栄明君

      黄川田仁志君    北村 誠吾君

      坂本 哲志君    武部  新君

      武村 展英君    寺田  稔君

      冨岡  勉君    中川 郁子君

      中村 裕之君    ふくだ峰之君

      福田 達夫君    福山  守君

      古川  康君    前川  恵君

      宮川 典子君   山本ともひろ君

      渡辺 孝一君    阿部 知子君

      岸本 周平君    近藤 洋介君

      佐々木隆博君    玉木雄一郎君

      福島 伸享君    升田世喜男君

      村岡 敏英君    稲津  久君

      岡本 三成君    中川 康洋君

      笠井  亮君    畠山 和也君

      真島 省三君    小沢 鋭仁君

      松浪 健太君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   農林水産大臣       山本 有二君

   経済産業大臣       世耕 弘成君

   国務大臣         石原 伸晃君

   農林水産副大臣      齋藤  健君

   内閣府大臣政務官     武村 展英君

   総務大臣政務官      冨樫 博之君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         山口 英彰君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            井上 宏司君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  大澤  誠君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            佐藤 速水君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 柄澤  彰君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           西郷 正道君

   政府参考人

   (林野庁長官)      今井  敏君

   政府参考人

   (経済産業省通商政策局長)            嶋田  隆君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            糟谷 敏秀君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    宮本  聡君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房建設流通政策審議官)     海堀 安喜君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局長)        山田 邦博君

   政府参考人

   (観光庁次長)      蝦名 邦晴君

   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月一日

 辞任         補欠選任

  坂本 哲志君     冨岡  勉君

  近藤 洋介君     阿部 知子君

  笠井  亮君     真島 省三君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     坂本 哲志君

  阿部 知子君     近藤 洋介君

  真島 省三君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会条約第八号)

 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第四七号)


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     ――――◇―――――

塩谷委員長 これより会議を開きます。

 第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官澁谷和久君、厚生労働省大臣官房総括審議官宮川晃君、厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長北島智子君、厚生労働省保険局長鈴木康裕君、農林水産省大臣官房総括審議官山口英彰君、農林水産省大臣官房総括審議官水田正和君、農林水産省消費・安全局長今城健晴君、農林水産省食料産業局長井上宏司君、農林水産省生産局長枝元真徹君、農林水産省経営局長大澤誠君、農林水産省農村振興局長佐藤速水君、農林水産省政策統括官柄澤彰君、農林水産技術会議事務局長西郷正道君、林野庁長官今井敏君、経済産業省通商政策局長嶋田隆君、経済産業省製造産業局長糟谷敏秀君、中小企業庁長官宮本聡君、国土交通省大臣官房建設流通政策審議官海堀安喜君、国土交通省水管理・国土保全局長山田邦博君、観光庁次長蝦名邦晴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川郁子君。

中川(郁)委員 自由民主党の中川郁子でございます。おはようございます。

 きょうは、TPPの質疑の前に、北海道を連続して襲った台風、その台風の災害対策について、最初にお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 私の選挙区は北海道第十一選挙区、十勝地域が私の選挙区です。十勝管内は、日本でも有数の農業地帯でございまして、ジャガイモ、小麦、ビート、小豆などの豆類、また酪農、畜産が盛んな地域でございまして、一二〇〇%の自給率を誇る地域です。この地域が一連の台風により大変な災害を受けました。

 多数の河川の氾濫などにより、農地の表土が流出をし、農地の冠水、農業用水の広域にわたる破損、畜舎崩壊、住宅浸水など深刻な被害を受けました。

 二名のとうとい命を落とされた方がいらっしゃり、また、今なお行方不明の方もいらっしゃる、そういう甚大な被害を受けました。

 さらに、交通インフラであるJR石勝線、国道三十八号線、国道二百七十四号線、多数の道道などが寸断をされ、観光客のキャンセルが相次ぐなど、いまだ爪跡が残っている、こういう状況であります。

 管内の芽室町では、町内を流れる三つの河川が氾濫をいたしました。町全体の畑の一割に相当する二千ヘクタールが冠水をし、また、美生川沿いの二百ヘクタールほどの畑で、河川の氾濫によりまして、耕土がえぐり取られ、あちらこちらに流木や石が散乱をし、またさらに、長雨による地盤の緩みで崖の一部が崩落をしています。河原と化したような畑で再び作物をつくるのには農地改良の工事が不可欠、こういう状況であります。

 また、スイートコーンの缶詰、国内シェア七五%を占める工場も泥につかってしまい、今、再建に向けて努力をしているというような状況であります。こういった農地の被害だけで八千八百八十一ヘクタール、こういう状況であります。

 被災直後から、自民党の二階幹事長が被災地を視察していただき、さらに、安倍総理大臣、山本農林水産大臣、石井国土交通大臣、松本防災担当大臣が御視察をいただきました。そして、農地が御専門の議員の先生、また、自民党台風農業災害対策ワーキングチームの先生方、災害特別委員会調査団、さらに、各省庁のトップの方々が次々と被災地の御視察を賜りました。それらの御視察を踏まえ、迅速に激甚災害指定の上、関連対策を取りまとめていただきました。

 さらに、国の出先機関の関係者の皆様方が不眠不休で御尽力を賜り、被災地域も大変ありがたいと感じております。改めてお礼を申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 十勝では、TPPがあってもなくても、生産性向上に向けた取り組み強化を図るため、関連対策として講じられた事業に積極的に取り組んでいるさなかにこのような被害を受けました。天候が不安定ですので、同様の被害は今後どの地域でも起こり得ることであり、再生産可能な農業を推進するために、TPP関連対策に加えまして、自然災害リスク管理の強化、被災した場合のセーフティーネットの充実などが重要だと考えております。

 そこで、今般の台風災害等を踏まえた対策について具体的にお尋ねをしたい、このように思います。

 今月初旬から、災害復旧事業の本格的な査定作業が開始をされています。被害が著しい自治体などから、管内には、一つの農家で十ヘクタール以上も被災した農家がおり、農地災害復旧事業に関する一アール当たりの単価が都府県に比べて著しく低いことから、農家の負担額が多大になるというふうに見込まれています。被災農家について、今後も営農が続けられるよう対応してもらえないかとの強い意見が寄せられている状況であります。

 北海道における復旧限度額の見直しなど、農家負担への対応はどのようにしていくのか、農林水産省のお考えをお聞きしたいというふうに思います。

佐藤政府参考人 農地の復旧限度額でございますが、北海道では一アール当たり六万七千円、都府県では一アール当たり三十万七千円となっております。

 これは、復旧限度額が、被災した農地にかわる農地を新たに造成するために必要な標準的な費用として定められたものでございます。

 この復旧限度額を超えた部分につきましては、国庫の補助の対象とならないために、自治体ですとか農家の負担となります。

 したがいまして、できる限り復旧限度額を超えないような工法を採用する必要があると考えております。

 例えば、土が流出した農地を復旧する際に、近くにあります河川に堆積した土砂を農地の基盤に盛り込むことによりまして、土の運搬費ですとか購入費を軽減するなどの工夫がございます。また、農地の復旧工事と排水路などの復旧工事を組み合わせて、工事費の軽減に資する工法を採用することなども考えられます。

 また、十月二十八日付で、北海道におきます営農機械の大型化を踏まえまして、畑地の復旧限度額算定に当たりまして、考慮する面積を拡大するような、そういった特例措置を創設いたしまして、今回の災害査定から適用することといたしました。

 委員お尋ねの復旧限度額の見直しにつきましては、その根拠となりますデータの収集、整理に時間を要することなどもありまして、直ちに対応することは難しいと考えておりますが、近年の農地の災害復旧事業ですとか整備事業の実態、今回の台風災害の被害状況等につきまして、積極的に調査を進めまして、しっかりと検討してまいりたい、かように考えてございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 今回の災害に関しては、いろいろと工夫をしてくださるという回答であるというふうに思います。農家の不安を払拭し、営農意欲が継続されますように、引き続きの配慮をお願いしたいというふうに思いますが、やはり来年も再来年も、台風でありますから、また同じような被害が起きるということも考えられますので、ぜひ、復旧限度額について、今後、都府県との格差を是正していただくように、検討をお願い申し上げたいというふうに思います。

 そして、今般の台風災害でありますが、河川が大きく氾濫してしまったということが台風の災害の規模を大きくしてしまったというふうに思います。被災地をくまなく見て歩いております。また、地域で政策懇談会などを多数開催させていただいて、皆さんの御意見を伺っているところであります。そこで出てくる意見の多くは、平素の河川管理に問題があるのではないかという御指摘であります。

 平素の河川管理の重要性、本当に再確認をしている状況であります。鉄道や道路の橋梁の被害、そして、多くの流木が橋脚にひっかかっている、橋脚にかかる河水の、川の水の圧力が増し、破壊や河川の水が橋の両側を削る現象の原因になっているというふうに見受けられます。また、土砂が河床に堆積し、河床が高くなっている状況を、住民の皆さんは、適切な河川管理を行っていれば災害の幾つかは防げたのではないかと感じております。また、日ごろからそのことについて問題意識を多く持っておられる皆さんは、公的機関に何回も話をしたけれども何も対応してくれなかった、そのようにおっしゃいます。

 そこで、河川管理のあり方についても検討する必要があるのではないかというふうに考えています。国土交通省では、水循環基本法に基づいて、河川の流域単位での適正管理を推進しているというふうに伺っておりますが、これもあわせて、河川管理のあり方についての考え方、今後の推進方策について御説明をお願いしたいというふうに思います。

山田政府参考人 お答えいたします。

 洪水の氾濫を防ぐために、北海道の国管理河川におきましても、流下能力の向上が必要な箇所につきましては、河道掘削等を実施してきているところでございます。

 また、日常の河川巡視あるいは点検などによりまして河道の状況を確認して、洪水の流下阻害とならないよう、計画的な堆積土砂の掘削ですとかあるいは樹木の伐採などにも取り組んでいるところでございます。

 洪水により発生しました、先ほど委員が御指摘になりました河川内の流木対策につきましても、これまでも緊急的な河川等の災害復旧事業などにあわせて取り組んできたところでございますけれども、引き続き、次は本格的な河川等の災害復旧事業などとあわせまして、より一層強力に進めてまいりたいと思っております。

 さらに、平成二十八年度の補正予算によりまして、今後、堆積土砂の掘削ですとかあるいは樹木の伐採などを進めることとしているところでございます。

 一方、北海道が管理する河川におきましても、計画的に行う堆積土砂の掘削あるいは樹木の伐採につきまして、国としてもさまざまな技術的支援を行っていきたいと思っております。

 また、防災・安全交付金などを活用いたしまして着実に河道掘削が進むように、北海道の支援を行ってまいりたいと思っております。

 今後とも、これらの取り組みのより一層の推進を図りまして、治水安全度の向上に努めていきたいと考えております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 流木の状況、また河畔林についての管理をしっかりやってくださる、また土砂などもしっかり管理をしてくださるという前向きな御答弁をいただいたというふうに思います。

 私は、党内で水戦略特命委員会の事務局長を拝命しているところでありますが、そこでもしっかり研究を進めていきたいというふうに思います。

 ぜひ地域で協議会をつくっていただいて、協議会の中には、農家の方あるいは建設業者の方、地域住民、また砂利業者の皆さんなどに入っていただいて、国や道ができない部分に関しては自分たちもやらせてもらえないか、そういうような声も大きいですので、ぜひ協議会をつくるなどの研究を進めていきたい、このように思っております。

 そして、三番目の質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 自然災害リスク管理強化策、もう一点、本当に大切なことだというふうに思いますが、ことしの湿害といった条件の中でも良質の農作物が生産できるように、品種改良を推進していただきたい、このように思います。品種改良を推進することは、農業の所得拡大のためには重要な取り組みであるというふうに考えています。

 小麦、バレイショなど輪作体系作物に加え、所得拡大策として取り組んでいる野菜類の品種改良について、農林水産省はどのように取り組んでおられるのか、お聞きしたいというふうに思います。

西郷政府参考人 お答えいたします。

 先般の台風によりまして、北海道の畑作物あるいは野菜に大きな被害が発生したところでございます。御指摘のように、これからは気候変動も見据えまして、作物品種の湿害耐性の向上に努めていくのは重要な課題だというふうに認識しておるところでございます。

 農林水産省といたしましては、これまで長期間を要していた育種を効率的に進めるために、遺伝子配列に着目した選抜法というのを開発いたしまして、大豆の湿害に強い品種でございますとか、小麦の湿害として問題の、穂が発芽してしまう、それがしにくい品種の開発等を進めているところでございます。

 また、栽培技術の面からも、耕うんと同時に畝立てを行って湿害が起こらないようになるとか、崩れにくい排水孔を畑地に簡単につくる技術など、大豆や野菜の湿害回避技術を開発しておりまして、品種育成とあわせまして、栽培技術につきましても総合的に研究開発に取り組んでまいりたいと存じております。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 同様に、乳用牛、肉用牛、豚の改良についても、生産性向上のためには重要であり、例えば乳用牛の泌乳能力についても熾烈な国際競争にさらされています。着実に生産性を向上し、国際競争に打ちかつだけの十分な成果を上げるためには国の支援が重要と考えますが、いかがでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただきましたとおり、生産性の向上を通じまして畜産農家の所得向上また国際競争力の強化を図っていくためには、規模の拡大、省力化といった取り組みとともに、家畜の改良によります能力の向上を図っていくことが重要というふうに考えてございます。

 具体的には、お話がございましたが、乳用牛につきましては、乳量が多く、また丈夫で長い期間活躍できるような牛を、肉用牛につきましては、現在より短い肥育の期間で適度な脂肪交雑が入るような牛を、豚につきましては、産子数が多くて飼料の利用性が高いような豚を目指して改良を進めていくことが有効だというふうに考えてございます。

 農林水産省といたしましては、独立行政法人の家畜改良センター、また大学等の研究機関、都道府県、民間等が連携いたしまして、遺伝子レベルでの能力の解析といったような新たな手法も活用しながら、高能力の家畜を生み出すための家畜改良を推進いたしますとともに、優良な家畜等の導入支援による普及などにより、家畜の能力向上を進めますとともに、あわせて、このような家畜の高い能力を十分に引き出せる高度な飼養管理の普及を進めてまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 ありがとうございます。

 これは災害とは直接関係のないことでありますが、TPP対策であるというふうに思います。

 乳用牛については、指定団体制度ができた昭和四十年ごろの乳用牛は、年間の乳量が平均四千キロ台でありました。生産者や関係者の日々の努力がありまして、今や平均一万キロを超える水準まで生産性が向上したものであります。

 その中でも、十勝管内には、二万キロを超える牛を飼養し、平均一万五千キロを誇る経営もございます。改良の結果は全ての生産者が裨益するものですので、改良に貢献している生産者や関係者の不断の努力に対し支援をいただくことは、国策としても重要なものであるというふうに考えています。

 また、肉用牛の能力でありますけれども、肉量が多い牛が家畜市場などで高く取引されています。肉質については、小ザシなどのサシの入り方を研究している方が、私の地元、帯広畜産大学、口田教授という方がいらっしゃるんですけれども、画像を活用した判定技術などを開発しています。ロース芯の断面積の大きさなどがすぐれた牛として高く評価をされています。

 血統により、よしあしが決まることも多いので、生産者は交配に大変な気を使っています。和牛は日本固有の牛であります。国際的な需要の拡大に対応するために、繁殖基盤の拡大が喫緊の課題であります。十勝には、粗飼料確保も十分できること、新たな食肉処理場を整備したことから、一層、一大肉用牛生産地帯に発展する可能性があるというふうに考えておりますので、さらに、肉用牛の改良についても御支援をお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、台風災害についてですけれども、観光振興策の強化をお願いしたいというふうに思います。

 総合的なTPP関連政策大綱におきましても、「観光プロモーションの推進や、食・農業体験などの滞在コンテンツの磨き上げ等により、訪日外国人観光客の地方誘致や消費拡大を促進する。」とされており、TPPを通じた強い経済の実現の一環として、観光振興策も大きな柱となっています。

 残念ながら、冒頭申し上げましたように、十勝では交通インフラに大打撃を受けておりまして、JRはいまだ復旧していないことから、ホテルの予約のキャンセルが相次いでおります。十勝観光の書き入れどきである九月、十月、ひどいところにおきましては、昨年比二割程度と壊滅的な打撃を受けております。地域でも、風評被害を払拭すべく、自治体単位でミニふっこう割を措置するなど、誘客のための努力を開始しておりますが、一地域だけの努力では十分な効果を上げていないのが現状であります。

 激甚災害の指定を受けた地域の観光振興策の強化について、観光庁のお考えを聞かせていただきたいというふうに思います。

蝦名政府参考人 お答え申し上げます。

 北海道には、世界遺産の知床や富良野を初めといたしまして、魅力的な観光地が多数ございます。観光客に人気の旅行先の一つでございますことから、風評被害の防止が急務であるというふうに考えてございます。

 そのために、正確な情報発信を行いますとともに、今後の観光需要の回復を図るために、北海道庁、関係業界等とも連携をいたしまして、プロモーションのプログラムを実施することとしております。

 具体的には、外国人の旅行客の誘客のために、第二次補正予算を活用いたしまして、訪日プロモーションによる重点的な支援を実施いたします。また、北海道庁などと連携をいたしまして、道外からの国内の観光客を誘客するためのプロモーションの実施をいたします。また、旅行会社や航空会社によります道東、道北への送客キャンペーンの実施、こういった内容をプログラムとしておりまして、これらを関係者と一致協力いたしまして強力に推進することによりまして、北海道への内外からの観光需要の回復に努めてまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 この五日にも観光庁長官が御視察をしていただくという情報が入っております。観光の厳しい状況を御視察いただいて、地域に寄り添った形での政策を強化していただければ幸いだというふうに思っています。

 そこで、具体的に、TPP関連政策大綱の進捗の確認をさせていただきたいというふうに思います。

 自民党内でも、連日、熱心に検討を行っていますが、TPP対策本部が昨年十一月に取りまとめました総合的なTPP関連政策大綱のうち、攻めの農林水産業への転換で検討を継続している項目があります。地元でも関心の高い次の二項目について、現在の検討状況について質問したいというふうに思います。

 まず、農政新時代に必要な人材力を強化するシステムの整備です。

 十勝において強い農業づくりを永続的に進めるためには、農業をめぐる情勢を正確に判断し、的確な経営判断を行えるリーダーを育てていく必要がある、このように思います。人材力を強化するシステムについて高い関心を皆さん持っています。システムの整備がどのように進捗しているのかの御説明をお願いいたします。

 次に、戦略的輸出体制の整備についてです。

 先日の委員会で安倍総理大臣に十勝産長芋を輸出の優良事例として御紹介いただき、大変ありがたく存じました。続く、冷凍枝豆が日本農業大賞を受賞するなど、着実な成果を上げておりますが、ここに至るまで紆余曲折や大変な努力がありました。今後もさまざまな課題の解決が求められていくものというふうに思います。

 政府の農畜産物の輸出目標を達成すべく、私たちも一翼を担っておりますが、戦略的輸出体制の整備について、政府の検討の状況をお聞かせください。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、農政新時代には、経営力のある人材の育成、これが極めて重要でございます。

 このため、従来からある青年就農給付金事業による新規就農前後の所得確保の支援、あるいは農の雇用事業による農業法人等における雇用就農者の研修の支援、こういうものを行ってきたところでございますけれども、二十八年度補正予算におきまして、既に就農している農業者が営農しながら経営を体系的に学ぶ場として、農業経営塾の各地への展開を現在進めているところでございます。

 また、御指摘の検討十二項目の一つとして、教育段階から、就農し、農業経営者になるまでの各段階におきまして講じるべき施策を人材力強化の観点から総合的に見直すべく検討が行われ、この秋までに結論を得るとされております。

 理想論を申し上げれば、オランダが現在の農業の力を得るその前に、EUに加入することを農業分野でちゅうちょいたしました。そのときにワーヘニンゲン農業大学に産官学の英知を結集し、そして、現在のフードバレー計画を生み出したわけでございます。

 こういう意味で、我々の今後の強い農業、農政新時代の人材を各方面から育成していく必要があろうというように思っております。

 次に、輸出促進でございます。

 この輸出促進におきましては、本年五月に策定した農林水産業の輸出力強化戦略、ここに掲げた施策を着実に実施していく必要があります。

 まず、海外市場のニーズ把握、需要の掘り起こし、こうしたことに対するプロモーション、さらに、国内の農林漁業者、食品事業者の販路開拓のための相談、商談会出展等への支援、生産物を海外に運ぶ物流の高度化への支援、輸出先国・地域の輸入規制の緩和、撤廃を初めとする輸出環境の整備などを実行していく必要があると考えております。

 こうしたオール・ジャパンでの取り組みに加えまして、地域のハブとなる企業や団体などが中心となり、地域が一体となって輸出に取り組むことも重要であると考えております。

 議員御指摘でございます帯広市川西農協を中心とする長芋の台湾への輸出、これで実績を上げていただいておりますが、最近では米国への輸出も拡大されておりまして、長芋のみならず、ユリ根やツクネイモ等の輸出にも取り組みを拡大していただいているところでございます。

 また、福岡県とJA福岡中央会等によりまして設立されました九州農産物通商は、福岡県産の「あまおう」の輸出から始めまして、現在では、複数産地が連携した青果物の周年安定供給に取り組んでおられまして、福岡県のみならず、九州全体の農業者に裨益しているところでございます。

 このような地域における取り組みも支援するため、今回の補正予算におきまして、地域商社等による商品の取りまとめや手続、決済代行等の活動への助成を行うところとしております。

 さらに、御指摘のインバウンドを輸出に結びつけるためには、農泊の推進などによりまして日本食、食文化を体験してもらうことや、農林水産物、食品のお土産としての持ち帰りの促進等に取り組んでいるところでございます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。それぞれの項目について着実に検討が進んでいるということがよくわかりました。私の地域でも積極的に農政新時代を切り開いていきたい、このように思いますので、御支援をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、食の安全の確保についての質問をさせていただきたいというふうに思います。

 札幌で開催をされました地方公聴会、私も参加させていただきました。いまだに食の安全の確保に関して不安をお持ちの方がいらっしゃいました。本委員会においてもたびたび議論をされていますが、肥育ホルモンや成長促進剤であるラクトパミンを使用した食肉の安全性についてのことであります。

 この安全性についてどのように評価しているのか、御説明をお願いしたいというふうに思います。

 先日来の質疑において、肥育ホルモンやラクトパミンを使用した肉がどれだけ輸入をしているのか把握していないのに、何件くらいの検査を実施することが適当なのか判断できないのではないかといった指摘もされたわけでありますが、サンプル検査の実施件数はどのような考え方に基づき設定しているのか、さらに、今の検査体制により、安全性は十分確保されているのか、御説明をお願いしたいというふうに思います。

北島政府参考人 お答えいたします。

 肥育ホルモンやラクトパミンを使用した食肉につきましては、食品衛生法に基づいて、安全性を確保し、消費者の健康を守るため、残留基準を定めるとともに、基準に違反した食品が流通しないよう、リスクに応じた検査を実施しているところでございます。

 また、検査体制のお尋ねにつきましては、我が国に輸入される食品について、肥育ホルモン等を使用したかどうかは輸入時における届け出事項とはなっていないため、輸出国で肥育ホルモン等が使用された肉の輸入量を把握していないのは事実でございますが、輸入時のモニタリング検査につきましては、肥育ホルモン等が使用されている可能性があることを前提として実施しています。

 このモニタリング検査のサンプル数の設定に当たりましては、統計学的な手法に基づいて、特定の食品群に一%以上の違反食品が含まれている場合に、一定の信頼度、九五%の確率で一件以上発見できる検査件数を基本とし、食品群ごと、動物用医薬品や残留農薬などの検査項目ごとに設定しております。

 その際、危害度が高いものや、過去の危険率が高いものは件数を多く設定し、危害度が低いもの、過去に違反がないものについては少ない件数を設定しております。

 こうした検査件数の設定方法は、統計学的には輸入件数が増大してもサンプルを追加してとる必要がないとされており、国際的にも認められた手法でございます。

 なお、肥育ホルモン剤につきましては、過去十一年間において、米国産、豪州産牛肉について、合わせて約五千二百件のモニタリング検査を実施し、二例検出された事例がありましたが、いずれも残留基準の範囲内でございました。

 また、ラクトパミンについては、米国産、豪州産、牛肉、豚肉について、約千四百件モニタリング検査を実施いたしましたが、検出事例はなく、これまで食品衛生法違反は認められておりません。

 引き続き、適切な監視指導を徹底するための体制の整備を図り、輸入食品の安全性確保に万全を尽くしてまいります。

中川(郁)委員 きっちりとした科学的根拠、統計手法に基づき、体系的に検査されていることが確認できました。ありがとうございました。

 まだ少し時間がありますので、私の地域の政策懇談会での様子などをお話しさせていただきたいというふうに思います。

 私の地域では、TPP協議が始まる前には、TPP反対の嵐が吹き荒れておりました。いまだに余波が残っています。TPP参加反対の垂れ幕をおろしていない町村役場や商工会があったり、参加反対のバッジをつけて私の事務所に来られる方もまだまだたくさんいらっしゃる状況であります。

 平成二十五年二月、安倍総理のオバマ大統領との共同声明により、例外なき関税撤廃を決める協定ではないということが確認できて以降、少しずつではありますが、理解が促進されてきたものというふうに思います。

 現に、昨年十一月に打ち出されました攻めの農林水産業への転換に基づき、経営マインドを持った農林漁業者の経営発展に向けた投資意欲を後押しする施策として、産地パワーアップ事業、畜産クラスター事業等が講じられたことに直ちに呼応し、多くの予算の獲得をさせていただきました。農家の皆さんは前向きにこのチャンスをしっかりと捉えて、自分の農業を大きく拡大していこうという意欲のあらわれであろうというふうに思います。

 しかしながら、潜在的にも多くの要望があって、地域で順番を待っておられるグループ、計画策定中の地域、地域に残すべき家族経営を事業主体としているような地域など、今後支援を希望するグループや地域がたくさんございます。このため、中期的なスパンで事業を実施していただくとともに、十分な予算を確保していただきたいというふうに考えていますけれども、農林水産省のお考えを伺いたい、このように思います。

枝元政府参考人 昨年の十一月に取りまとめられました総合的なTPP関連政策大綱におきまして、攻めの農林水産業への転換といたしまして、産地パワーアップ事業、畜産クラスター事業等の体質強化対策を集中的に講じているところでございます。

 具体的には、産地パワーアップ事業におきまして、高性能な機械ですとか集出荷施設の整備、また地域の営農戦略に基づいた高収益化を図る取り組みへの支援、畜産クラスター事業におきましては、省力化機械の導入、規模拡大のための畜舎整備、TMRセンターなどの施設整備など、収益力、生産基盤を地域ぐるみで強化する取り組みへの支援などを行っているところでございます。

 いずれの事業につきましても、非常に評判のよい事業でございます。平成二十八年度の補正予算におきましては、二十七年度の補正予算から両事業とも増額をいたしますとともに、現場の声も踏まえまして、例えば重点化枠の中で、家畜導入支援について、貸し付け方式に加えて購入方式を可能とするなど、さまざまな内容の充実も図ってきているところでございます。

 今後とも、次世代を担う生産者が、新たな国際環境のもとで、あしたの農業に夢と希望を持って積極果敢に取り組めますよう、また、所得の向上を図ることができますよう万全の対策を講じてまいりたいと存じます。

中川(郁)委員 ありがとうございました。

 攻めの農林水産業を構築していくためにさまざまな準備を進めているというお話を聞き、安心をいたしました。

 最後に、石原TPP担当大臣に、発効までの間に実施する政府の対応及び参加国の批准促進、TPPを活用した経済活性化などについて、御決意を賜れればというふうに思います。よろしくお願いします。

石原国務大臣 冒頭、中川先生の地元を初め、北海道の多くの方々が、八月、九月の台風で御被災され、また今も大変御苦労いただいている、公共インフラの整備がままならない、他人事ではなく、寄り添って政府として取り組んでいくということをお約束申し上げたいと思います。

 さて、TPP協定が生み出す効果を一日も早く実現するために、我が国が率先して動くことで早期発効の機運を高めていくこと、世界に目を転じますと、保護主義やあるいは孤立主義が広がりつつある中で、我が国のこれまでの経済発展を考えますと、自由貿易、この自由貿易体制の維持、そして国際的な枠組みづくり、ルールメーキングに我々が入っていく、主導的な役割を果たすということが肝要であると考えております。

 昨日総理も述べられておりましたけれども、国会でTPP協定が承認され、整備法案が成立すれば、再交渉はしないという意思を立法府も確認したことになるわけでございます。このまま無為に時を過ごせば、むしろ再交渉を求められる事態を引き寄せることになりかねない、日本は受け身で他国の動きを待つのではないと総理が明確におっしゃっておりますので、私も、この線に沿って当委員会での審議を深めてまいりたいと考えております。

中川(郁)委員 御決意を伺い、大変心強く思いました。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 民進党の阿部知子です。

 本日は、質問のお時間をいただき、ありがとうございます。

 私は、きょうは主に医療分野で質問をさせていただきたいと思いますが、冒頭、せっかくいただきましたお時間ですので、岸田外務大臣に、このTPPと直接には関連いたしませんが、我が国のまさに国際的に占める位置、役割ということにおいて、さきの核兵器禁止条約における対応、大臣のお地元の広島もそうです、大変、被爆者の皆さんも残念に思っておられる。先ほど石原伸晃大臣がおっしゃいましたが、我が国が世界のルールメーキングのリーダーとなるとすれば、この核兵器の禁止というのは最も肝要な、日本こそ最先端でやるべきことだと思います。

 この点について、岸田外務大臣に、なぜ日本の対応がこのようなものになっているのか、お尋ねをいたします。

岸田国務大臣 まず、我が国の核軍縮・不拡散に対する考え方は、一貫して一つの考え方に基づいて取り組んでいるということを申し上げさせていただきます。

 すなわち、我が国は、核兵器の非人道性に対する正確な認識とそして厳しい安全保障環境に対する冷静な認識、この二つの認識に基づいて、核兵器国と非核兵器国の協力のもと、現実的、実践的な取り組みを進めていく、これこそが核兵器のない世界を実現するために有効な取り組みであるという基本方針のもとに取り組んでおります。

 そして、先般、国連総会第一委員会におきまして、各国が提出した決議について採決が行われました。その中の一つの決議についての我が国の対応について御質問いただいたわけでありますが、各国が出しました一連の決議の対応についても、今申し上げました基本的な方針を貫いているというのが我が国の対応であります。

 そもそも、我が国自身も決議を提出しているわけでありまして、今申し上げました基本的な方針に基づいて我が国の決議を提出した、結果として、米国を含む百を超える多くの国から共同提案国になってもらい、そして、結果的に百六十七、多くの国々から賛成してもらう、最も多くの国から支持を得た、これが我が国の決議でありました。我が国の基本的な考え方が、この核軍縮・不拡散の議論の中で、国際社会において最も多くの支持を集めているという結果となりました。

 そしてその上で、御指摘の決議について、要は核兵器禁止条約の交渉開始を含む決議について、我が国の対応について御質問いただいたわけでありますが、その決議に対しまして我が国は反対をいたしました。この反対の趣旨は、先ほど申し上げました二つの認識に基づく現実的、実践的な対応にそぐわないのではないか、さらには核兵器国と非核兵器国の協力を重視するという立場にも沿わないのではないか、こういった理由で反対を表明したわけであります。

 こうした我が国の考え方、評価は、他の国々の御指摘の決議に対する賛否にもあらわれていると考えています。すなわち、他の国々の賛否の結果は、御指摘の決議に北朝鮮は賛成をしました、そして、五つの核兵器国は全て賛成しませんでした、そして、我が国と同じく非核兵器国として核軍縮・不拡散に取り組んできたドイツ、あるいはオーストラリア、あるいはオランダ、こういった国も全て賛成をしておりません。こうした各国の賛否の結果を見ましても、我が国の御指摘の決議に対する判断、これは裏づけられているのではないか、このように感じています。

 そして、御指摘の決議は結果的に採択されました。来年から核兵器禁止条約の交渉が開始されるということが確認をされたわけであります。この交渉においては、我が国は、引き続き、核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場から、堂々と議論に参加するべきであると思います。唯一の戦争被爆国として、核兵器国と非核兵器国の橋渡し役としてこの議論にも堂々と参加するべきだと私は思っています。具体的には手続がこれから確認されて、政府として正式にその対応を判断するわけですが、現時点において私はそのように感じているところであります。

 このように、我が国の決議においても、御指摘の核禁条約の交渉開始に関する決議においても、そして今後の交渉においても、我が国は核兵器国と非核兵器国の協力を重視する立場を貫いております。今後も、この方針をしっかり貫きながら、唯一の戦争被爆国として、核軍縮そして不拡散の議論を堂々とリードしていきたいと考えています。

阿部委員 核兵器の不拡散あるいは廃絶に向けて、まず第一に、この非人道的兵器を使わない、禁止するということは不可欠な一歩だと私は思います。化学兵器も生物兵器もそういう意味で禁止されております。人道に対する罪だからであります。

 特に大臣にあっては、御自身の御地元での経験もおありでありましょう。我が国がこれは使ってはならないものだと明確にしない限り、おっしゃったように北朝鮮が賛成した、いいことではありませんか、使わない、この北東アジアの核をめぐる状況に一つ前向きになると私は思うべきだと思います。

 きょう、この場はTPPの問題ですので、これ以上私もこのことに時間を費やしませんが、今の大臣の御答弁は大変に残念ですし、日本がこれまで歩んできた核廃絶、あるいはそのことの本気度、実際に何をステップにしていくのか、やはり使わない、お互いに使わないということから始まるものだと私は思っております。(岸田国務大臣「一言だけ」と呼ぶ)では。

岸田国務大臣 核兵器のない世界を目指す、この目標を多くの国が共有しています。そして、私は、三年十カ月外務大臣をやる中で、核兵器国と非核兵器国の協力なくして結果を出すことはできない、こういったことを確信する場面に多々直面してきました。

 こうした経験の中で、核兵器を持っていない国だけが理想を掲げても、核兵器を持っている国がその外にいたのでは結果に結びつかない。この現実の中で具体的に結果を出すためにはどうしたらいいのか、それこそ責任ある対応ではないか、こういった信念に基づいて、一つの考え方に基づいて、具体的なそれぞれの課題について判断を下してきました。

 この判断は決して簡単なことではありませんが、説得力を持つためには、一つの信念、立場、これを貫いていかなければなりません。今申し上げましたこの考えに基づいて、先ほど申し上げました基本的な立場、これをしっかり守りながら、今後も努力をしていきたいと申し上げております。

 残念だというお言葉がありました。しかし、私は、私の経験、考え方に基づいて、一つの考え方を貫いた結果であるということも御理解いただきたいと思います。

阿部委員 基本的な我が国の立場とは、戦争による核の使用で被爆をしたということであります。そして、これは到底どんなことにおいても許される状況ではないんだということをまず、これは我が国が戦争による被爆国である、そこからくるものであります。

 本来であれば外務委員会などで、さらに岸田外務大臣には頑張っていただきたいので、私はこのことの論議は深めていきたいと思います。

 本来のTPPに戻らせていただきます。

 岸田大臣に引き続いてお伺いいたしますが、十月の二十七日の日に共産党の笠井委員がお取り上げの、いわゆるサイドレターについてでございます。

 これまでEPAとかWTOとかいろいろな他国との協定がございました中で、特に医療保険分野に特記して、このサイドレターは将来の医療保険分野でのさまざまな協議も含むということがわざわざ書かれたものでございますが、これまでの中でそのようなものはございましたでしょうか、前例が。お伺いいたします。

岸田国務大臣 今回我が国が取り交わしたサイドレターは全部で二十一本あったと承知をしていますが、その中の一つについて御質問をいただきました。

 御指摘のような医療保険に関するサイドレター、これはこれまで、TPP協定以外の交渉において我が国が同様のサイドレターを交わしたということはないと承知をしています。

阿部委員 前例のないことがわざわざ、サイドレターは法的拘束力は持たないんだ、協議するだけだということでありますが、わざわざ書かれることにはやはり意味があるんだと思います。このわざわざ書かれたことの中で、もちろん、日本側にとってもメリットがあるから書かれたものと思います。アメリカのフロマンさんから来て、日本側もお返しというか返礼をしたわけですから。

 塩崎大臣に伺いますが、このサイドレターの日本側にとってのメリットは何でありましょう。特に医療保険制度の協議に道を残しているということにおけるメリットは何でしょう。

塩崎国務大臣 医薬品、医療機器に関する附属書の適用範囲については、それぞれの国の医療保険制度を踏まえて適用範囲が定められることになっておりまして、我が国は、公的医療保険における薬価制度、そして米国は、国が公定価格を決める一部のメディケアが想定をされておるわけでございます。

 この附属書に関連して日米で交わされた今御指摘の交換文書、いわゆるサイドレターでございますが、ここにおきましては、日米は、医療機器産業が両国の社会経済における保健医療に対して有益な貢献をしていることを確認するとともに、医薬品及び医療機器に関する附属書で合意をされた内容につきまして、附属書に規定をする協議制度の枠組みのもとで協議をする用意があることを確認しているにすぎないところでございます。

 御指摘のサイドレターは法的拘束力がないということは先ほどからもお話が出ておりますが、我が国では、これまでも米国を初め各国との協議に誠実に対応してきておりまして、交換文書によって新たな義務を負うものではないわけでありますが、これにつきましては、改めて確認をするということでこのレターが成り立っているということでございます。

阿部委員 アメリカ側が手紙を出して、そのことを受けとめただけなのですか。私が伺っているのは、このサイドレターを取り交わしたことで日本側にメリットはあるんですかということです。

 アメリカはもうずっと以前から日本の薬価、特に、アメリカはいろいろな薬剤メーカーが新薬を開発して、世界の市場の中でも上位を独占しておるわけです。日本もまた、皆保険制度があるゆえに非常に大きな市場になっております、アメリカにとっても。ですから、アメリカ側は、こういうサイドレターを出すことはそれなりの利と得があるんだと思います。

 我が国は、はい、それをいただきました、同じ思いですというからには、我が国にとってはどんな目算、メリット、戦略があるんでしょう。お聞かせください。

塩崎国務大臣 それは、先ほど申し上げたとおり、附属書に伴ってサイドレターが交わされたということで、附属書に記されております手続をお互いに確認をしたということが一番の意味だと思いますし、それに加えて、先ほど申し上げたように、例えば、医療機器産業についてはお互いにやはり重要な産業であるということも確認をし、さらには、協議をするに当たっては、必ずこの附属書にあることをしっかりと踏まえた上でやらなければいけないという手続上の確認をしているということにおいて意味があるというふうに考えるべきではないかと考えております。

阿部委員 私は、塩崎大臣らしくないと思うんですね。やはり、手紙を交換するということは、本当に、そこにおいてこれから日本がどのようなものにおいて有利な交渉を進めるのかとか、言われてもやらないよというだけではない、もう一歩踏み込んで、そうでなければメリットが見えてきません。

 そして、従来の流れは、何度も指摘しますように、薬価については日米間のいろいろな場でアメリカ側が要求する場面ばかりでありましたから、ここでこういう手紙が交わされるということの意味が大変国民的にも懸念と心配になる。特に、国民医療保険制度、健康保険制度と特記してあるわけですから、その言及が気になるわけです。

 大臣もおっしゃったように、薬価は日本においては公定価格ですけれども、アメリカにおいて薬価の公定価格はメディケアとかメディケードとか限られたシェアであり、ほかはほとんど自由価格でやっているわけです。そうなると、この手紙の持つ意味は、やはりアメリカ側の一方的な、日本の薬価の調整制度に対する見解というふうになってまいりますので、これでは余りにも片務である。

 私は、先ほどの核廃絶の問題でもそうですが、日本の戦略にとって、アメリカも核兵器禁止条約反対でありましたが、逆に、それと一緒にやっていって本当に日本の戦略性が出てくるのかどうかということをこのTPPにおいても非常に懸念するものであります。

 次に、具体的に伺っていきます。

 これもこの委員会で何人かがお取り上げでしたが、今、小野薬品のオプジーボという高額な価格のお薬のことについて、普通、薬価は二年置きの改定で、大変にそのお薬が売れて価格を下げなければならないときの仕組みというのは、二年置きの決められた期であるわけです、価格の調整と申しますか。今回、その途上、二年ではない間で、この薬が大変効用があって繁用されるようになったので価格を引き下げようというのが今、中医協で論議をされているわけですが、期中改定、決められた期ではない改定というのは、大変にいろいろな意味で、その手続がどうか、内容がどうか、透明性、公開性が求められるものだと思います。このことは、実は、大臣、どのようにして担保されるんでしょう。

 期ではない期中改定、特例改定と言ってもいいと思います。そのほかの価格の再調整の仕組みは、それなりに中医協で論議され、そしてルール化されておりますが、今回のものはそうではありません。日本の製薬会社もそうですが、海外の製薬会社も同じような事態に直面すると、これは予測のことではない、どこでどうやって決めたのだとなってまいりますが、まず確認は、期の定められた改定ではない特例改定である、特例改定におけるルールはいまだないという中で、このことをどうやって透明性、公開性を担保なさいますか。

塩崎国務大臣 まず、オプジーボにつきましては、もう言うまでもなく、世界で初めて我が国で承認をされたという、我々としては望ましいし、また大変効果のあるイノベーティブな薬品ということであります。だからこそ、今回、適応拡大によって大きな市場の拡大があって、当初のメラノーマを前提とした価格でいったことについての問題が今いろいろと表面化をしている、こういうことだと思います。

 こういうことで、私どもとしては、国民負担の軽減の観点、そしてまた医療保険財政に与える影響を考慮して、二年に一度の薬価改定の年ではございませんけれども、緊急的に薬価を引き下げるとともに、より効果的な使用を徹底するということを今、中医協で検討していただいているわけでございます。

 薬価につきましては、健康保険法に基づいて厚生労働大臣が定めるということになっておりまして、薬価改定の頻度は法律上に特に定めがあるわけではございません。近年は、おおむね二年に一回行われてきたということでございます。

 今回、御指摘のオプジーボについて緊急的に薬価を引き下げるということの検討を今、申し上げたようにしているわけでありますけれども、これはさっきも申し上げたとおり、国民負担軽減の観点、あるいは医療保険財政が持続性を保てるかどうかということを考慮した上で、国民皆保険を守るという公共の福祉に係る正当な目的のための措置であって、TPPでもそれはちゃんと留保されているわけであります。

 現行の薬価算定のルールも踏まえて、必要かつ合理的な範囲での薬価の引き下げを行うべきということで検討をしているわけでありまして、さらに今、中医協において、内外の製薬業界団体からオープンな形で意見をしっかりと聞いて、その上で検討をし、公正な手続のもとで議論をしていくということでありますので、企業との間のトラブルの話を今お取り上げをいただきましたが、そういうことにはならないというふうに思っているところでございます。

阿部委員 厚生労働省あるいは大臣が必要かつ合理的と思っても、相手の製薬会社、これは国内の製薬会社もあるでしょうが、海外の製薬会社の場合も当然生じてまいります。

 今いみじくも大臣がおっしゃった、薬価改定のある意味でのルールはないというふうにおっしゃったのはちょっと違っておって、期で、二年ごとの改定というのは一応お互い合意されたものなんですね。ところが、この期中改定、間で勝手に変えたら困るよというのは、各製薬会社から、これは日米欧の製薬業界が九月十四日に中医協の薬価専門部会で意見を出しておられます、期中改定には反対だと。

 大臣がこれは透明性と公益性を担保していると言っても、相手は反対だと言っているわけです。ここに訴訟の余地が残り、そして、これが海外の製薬会社であった場合はISDSなどに関係してくるのではないか。このことを何人かの委員が指摘されて、そのことについて大臣の御答弁はいつも、これは必要かつ合理的だというふうに繰り返されるばかりで、既に製薬会社の側がこれは反対だと言っているのですから、大臣が幾らそう言っても、そごがあるに決まっているじゃないですか。

 そのことをどう受けとめて対処していかれるのですか。そういう危険性はないと言い切れないと思います。だから皆さん御指摘なんだと思いますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 仮にTPPが発効した際でも、附属書の2において社会保険、社会福祉、保健等の社会事業サービスを記載してありまして、これらの分野は協定の適用除外ということであり、また、医療などの社会保障分野は将来留保ということで、将来留保の解釈を変更するというのは全ての締約国の合意が必要だということは、TPPの世界で申し上げればそういうことになっているわけでございます。

 今、阿部先生御指摘のように、確かに製薬団体、これは日本も、それから米国も、そして欧州も、それぞれ意見陳述をしていただきましたけれども、それぞれ慎重論、反対をされておりまして、二年に一回の薬価改定頻度を前提に経営を行っているので期中改定の議論にくみすることはできないと。いずれの団体からも、二年に一度の薬価改定の年以外の薬価の引き下げに関して反対意見が出されていることは、私たちもよく承知をしているわけでございます。

 ただ、薬価についての健康保険法の定めは、先ほど申し上げたとおり、特に改定の頻度につきましては法律上に定めはないわけで、近年はおおむね二年に一回実施をしている、そういう形になっているわけでありまして、私どもが申し上げている国民負担の軽減の観点、あるいは医療保険財政への影響、国民皆保険制度を守るという公共の福祉に照らして正当な目的のためにデュープロセスを経て引き下げを検討しているという段階でございますので、私どもはそういった訴訟については想定をしておらないわけであります。

 ISDS条項についてお取り上げをいただきましたが、これもTPP協定において、投資受け入れ国が公共の福祉に係る正当な目的のために必要かつ合理的な措置を講ずることは妨げられないというのは先ほど申し上げたとおりで、投資章の複数の規定で確認をされております。

 そういう意味で、先ほど申し上げた附属書の2において社会事業サービスを留保している中に薬価制度も含まれるというふうに思いますので、国民皆保険を守るという公共の目的、正当な目的、必要かつ合理的な措置、そして中医協において外国の製薬業界を含めて関係の皆さん方の御意見をしっかり聞くというデュープロセスを踏んだ上で決定をするということであれば、ISDS条項によって海外から訴えられることは想定されないというふうに理解をしているところでございます。

阿部委員 一言申し上げれば、そういう想定が甘いのではないかと皆さんが指摘をされているわけです。

 大臣も明確に御答弁のように、日米欧の各製薬会社はみんな反対をしているわけです。二年なら二年で自分たちの商品を販売するための計画を立ててやっているのに、その途中ではしごを外されたらやれないじゃないの、簡単に言えばそういうことを言っていて、それは、大臣が幾ら日本の公益性で担保されているとおっしゃっても、もう既にここに現実に違いがあるわけですから、そこを認識されないでこの交渉に踏み込んでいくというのは私は極めて甘い予想だと思います。

 もう一つ同じような問題がありますので、次に進めさせていただきます。

 皆さんのお手元に、資料として、きょう、ヘルスケアREITに関するガイドラインというものを配らせていただいておりますが、このヘルスケアREITとは何か、ほとんど、この場で取り上げるのも初めてですし、皆様には知られていないことだと思いますので、きょうは国土交通省の方の政務官にお越しをいただいて、そもそもREITとは何か、それからヘルスケアREITとは何かということについてお願いいたします。

根本大臣政務官 REITとは、一般的には、公募等により広く民間資金を集めて不動産を取得、運用し、その賃料収益等を、出資した投資家に分配する仕組みをいいます。

 そしてまた、ヘルスケアREITのお話がありましたが、これは、高齢者向け住宅とか病院などを対象物件としたREITのことをヘルスケアREITというふうに申しております。

阿部委員 私がこのヘルスケアREITを取り上げますのは、先ほどまで取り上げておりました国民皆保険制度並びに薬価の問題もそうですが、一方で、市場の原理と申しますか、市場の利潤ということを上げようという動きは全世界的に強いわけです。

 医療分野とてその例外ではないし、今お話しのヘルスケアREITというのは、例えば投資会社が土地を取得して建物を建てて、その上物を病院の経営者に貸すというような仕組みであります。この土地代あるいは建物代、ここを大変に高価格に設定しますと、上物を運営する病院あるいは介護関係の施設は利潤を出さなければいけない構造に追い込まれます。

 他の不動産投資と違って、ヘルスケア、特に病院、医療については、大臣が繰り返し御答弁のように公益性を持っており、守るべきものは守らなきゃいけない分野で、果たしてこうやって、今アメリカが一番ヘルスケアREITの数も多いし市場規模も大きい、世界の九〇%くらいはアメリカの会社というか、そういう投資のための仕組みでありますが、今後日本にこの波が及ぶことは十分に考えられ、日本でも既にヘルスケアREITは始まっております。

 このヘルスケアREIT、かといって、全てを普通の建物を貸す、そういう市場原理で賄っては医療がゆがむ、介護がゆがむということでガイドラインというのがつくられているのが、皆さんのお手元の国交省がつくられたガイドラインであります。

 医療分野と介護分野、一応二つに分けてございますが、このおのおのについて、国交省の方から御説明いただけますか。

根本大臣政務官 病院や老人ホームなどのヘルスケア施設を運用する際には、これらの施設が医療法や老人福祉法などの関係法令に従って適切に運営され、これらの施設の利用者に不安を与えないようにすることが必要です。

 このため、これらの施設を所有することとなるヘルスケアREITについてガイドラインを設けて、REITの運営を行う資産運用会社が、一つは、ヘルスケア施設に関する知識を十分に有している者が取引に関与する体制を整備すること、二つが、REITとヘルスケア施設の運用事業者との賃貸借契約などが関係法令の規定に従っているかどうかを確認することなどを求めております。

 このガイドラインは、宅地建物取引業法に定める、REITの運営を行う資産運用会社に対して国土交通大臣の認可を受けるための運用基準を示すもので、外国の事業者が我が国においてREITの運用をする場合にも同様に適用されるものであります。

阿部委員 今御説明いただきましたが、宅建業法というのがございまして、国土交通省が所管する法律ですが、五十条の二の三というところにもともとの宅建業法における規定があって、「その行おうとする取引一任代理等を公正かつ的確に遂行することができる知識及び経験を有しないこと。」ということで、こういう人には認可をしてはならないと。すなわち、宅建業法で認可方式でREITが認められていくのですが、私が今読み上げましたように、その条件とは「公正かつ的確に遂行することができる」というファジーな言葉で決まっていて、そこをガイドラインが示しております。

 ところが、ガイドラインというのはあくまでもガイドラインで、このことが、例えば、利潤をさらに上げたいとする投資会社が参入をする場合に、いやいや、あなたのところはそういう考え方ではできませんよというような、あるいは、地域の医療が、ベッド数も過剰ですので、ここでできませんよなどという規制を本当にかけられるのかどうかであります。

 塩崎厚生労働大臣に伺います。

 今現実に医療業界ではこういうREITがふえております。このことが十分に、厚生労働省の管轄下でもないし、医療上の中身についても経営によって圧迫されるのではないかと強く懸念しておりますが、塩崎大臣の現状における認識、そして、これから海外の投資会社が入ってくることもある、そして、これは余りにひどい規制じゃないかとISDSにかかることもあるなどの可能性を私は考えますが、いかがですか、大臣。

塩崎国務大臣 医療と介護、大きく分けて二つの種類があると思いますが、特に医療につきましては、当然、非営利性というものが大事であります。

 医療機関がREITを活用する場合には非営利性が担保されなければいけないということで、先ほどもガイドラインのお話の中で、不動産投資法人の関係者が医療機関の経営に関与していないこととか、あるいは、賃貸借料について、医療機関の収入の一定割合としないこと、また、近隣の土地建物等の賃借料と比較して著しく高額ではないこと、こういったことにしっかり留意して、実質的な利益の分配が行われないような対応を求めているわけであります。

 冒頭先生からもお話がありましたとおり、こういったREIT、今、医療ではまだ実例が出ていないと聞いておりますが、介護ではぼちぼち例が出始めてきているということでありますが、大事なことは、やはり介護そのもの、医療そのものがゆがめられてはならないということが大事な論点であることは御指摘のとおりでありますので、今のようなガイドラインがあり、そのポイントは今申し上げたとおりでございます。

 REITそのものについては私どもの所管ではございませんが、医療と介護にゆがみがない形で資金調達が進み、施設の整備が進むこと自体は、むしろ進んでいただければ受け皿をふやすということで、介護離職ゼロということも申し上げている限りはそういったことだと思いますが、原則は、先生御指摘のとおり、ゆがみが医療や介護に及ばないということが一番大事だというふうに思います。

阿部委員 私は、非常に塩崎大臣の認識が甘いと思うんですね。介護離職ゼロといったって、介護職員が疲弊し果てていて、今は、いかに介護職員を担保するかが結果的に介護離職ゼロに結びつくわけです。その介護の運営というところにおいて非常にもうけを出そうとすれば、人件費を削るしかないわけです。

 こういうREITが、政策ファンドというか、そういうものであればまだしも、そうじゃなくて、市場の原理のファンドが入ってくるわけです。そして、そういうこともこのTPPに伴って目前になっております。

 私は、委員長にお願いがございます。

 このTPPの審議の中で、冒頭取り上げました薬の価格もそうですし、医療提供体制に及ぼす影響についても、残念ながら、ほとんど審議が深まっておらない。だけれども、国民にとって大変命に直結する問題であります。今、日本の医療提供体制というのは大変に深刻な状況にあって、介護もそうであります。

 ぜひ、この及ぼす影響を、TPP委員会で参考人をお呼びいただく、ないし集中審議をしていただきたくお願い申し上げますが、いかがでしょうか。

塩谷委員長 理事会で協議して、対応していきたいと思います。

阿部委員 まだまだ審議は、私は半分も行っていないと思います、一〇%でしょうか。よろしくお願いしたいと思います。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 この際、お諮りいたします。

 両案件審査のため、政府参考人として外務省経済局長山野内勘二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塩谷委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塩谷委員長 次に、升田キセオ君。

升田委員 民進党の、升田キセオではなくて世喜男です、升田世喜男です。委員長、よろしくお願いします。

塩谷委員長 失礼いたしました。

升田委員 昨日の審議の中での我が党からの宿題に関連して、まず冒頭、外務大臣の方にお伺いをさせていただきます。

 我が党の玉木委員の指摘によって、ニュージーランド政府のホームページのTPP協定文が法的なチェックを行う前の古い文のままになっていたことが明らかになったわけでありますが、玉木委員が指摘した関税の撤廃に関する部分以外に、同じような変更が加えられた部分がほかにはないのかどうか、外務大臣の御答弁を求めたいと思います。

岸田国務大臣 結論から言うと、それ以外にもたくさん存在すると思います。

 大筋合意が行われ、そして、暫定の英文和訳、これは公にされていましたが、二月、署名する段階で協定の正文は確定したということであります。そして、現実は、二月の署名ぎりぎりまで、各国ともそれぞれ法的なチェックを続けてきました。ぎりぎりまで続けていたというのが現状であります。

 よって、この中身、その修正の中身は大変技術的なものであり、大筋合意の本質には変更はないというふうに認識はしていますが、文字とか数字のフォントの大きさから始まって、イギリス英語への統一ですとか、あるいは用語の統一的な使用、あるいは単数、複数の修正ですとか、それから文法上の誤り、こういったものもみんな含まれています。こういったものが多くありますので、結論から言いますと、先ほど申し上げました、御指摘以外にも修正が加えられたところはあると認識をしています。

升田委員 私の中ではびっくりする答弁なわけであります。

 内容が変更になったものがあったかどうか、今大臣が答弁された中で内容そのものが変更されたものがあったかどうか、本質的な内容そのものが変わるものが。お伺いします。

岸田国務大臣 修文の中身は先ほど申し上げたような中身であります。よって、本質的な変更はないと考えています。

 いずれにしましても、二月の段階、署名の段階でこの正文は確定いたしました。そして、それに基づいて国会にこの条文を提出させていただいております。

升田委員 今の答弁で、本質的に変わったものはないという答弁でございましたので、まず、これはこれとして押さえておきたいと思います。このことはまた後ほど展開していくということで。

 今こういう大臣の答弁一つお伺いしても、TPPのこの審議というのは本当に途中だな、私はこう思います。野球でいえば、四回の裏か五回の表ぐらいに来た感かなと。

 いろいろ、三十章、あるいは実施に当たっての関連法案が十一法案もある中でありますから、これまで議論されたものは、農業関係や食品の安心とか、あるいはISDS等々。それ以外も、先般、我が党の篠原委員が御指摘したとおり、多数あるわけでありますよ、まだ環境問題とか。著作権法とかは先般の参考人質疑でちょっとやっただけ。公取法等々たくさん残っておりますので、ここで、よもや、よもや採決などというのは断じてあってはならない、私はこう思います。

 地元に帰っても、わからない、わからないという声が頻繁なものですから、実は先般、民進党青森県連は、北海道の徳永エリ参議院議員を講師に招いて、TPPを考える会を、勉強会を開催いたしました。もちろん、これは党員あるいは地域の人も参加していただいて、その結果、参加された方の感想は、TPPというのは農業だけの問題かな、こう思っておったら、いや、自分の仕事にもこれが関係するんだなということで、これはもっと向き合っていかなきゃいけない、今までぼうっと見ていた、こういうことなんですね。

 ですから、全体的にはまだまだ国民の理解が進んでいないし、わからない部分がたくさんある。こんなわからない部分がたくさんあるのにもかかわらず、近々採決するとしたら、私はそれがわからない。これはしっかり審議をやっていこうではありませんか。

 TPP担当大臣、石原大臣、いかがでしょうか。

石原国務大臣 国会の御審議というものは国会でお決めいただく、そして、私もずっと審議に参加をさせていただいておりますけれども、さまざまな分野で意味のある、そして意義深い審議が行われていると認識をさせていただいているところでございます。

升田委員 地方公聴会も北海道と九州、この二カ所で行われたわけでありますが、私は東北、青森です。東北は米どころです。これは大きく関連しますから、また、震災もあって今復興で頑張っている地域でありますので、地方公聴会をどうか東北、できれば地元の青森で開催してほしいなと思うんですが、委員長、いかがでしょうか。やっていただけませんか。

塩谷委員長 委員会の運営は、筆頭を初め理事会で協議して今日まで進めてまいりましたので、今後も理事会で協議して進めてまいりたいと思います。

升田委員 SBS米価格偽装問題、これがまた、日本農業新聞ですが、出てまいりました。これは喜ぶことじゃないんですね。新聞に出るということはけしからぬことでありまして、深刻なことなんです。今では、価格偽装から、調査の偽装ではないか、こう言われているんですよ。

 日本農業新聞が十月二十四日付で報じた商社への聞き取り調査では、回答のあった十一社全てがSBS米を取引する理由に割安感を掲げ、最も多い相場観は国産より二割安だった、こう書かれていますよ。

 山本大臣、これは普通に言って、これまで、価格に影響がありませんからあとは調査する必要はないと言っていますけれども、これは安く売れるから商売が成り立っている、安く売れるから企業がそれを行っているんですよ。大抵の人がそうわかっている。大臣も、答弁は答弁だけれども、本心では、ううんと悩むところが本当はあるんじゃないですか。そういうもやもや感を残しては、農家の不安や不信を払拭することはできませんから、後々のことを考えても、あるいは、大臣として、農政をこれから責任者として執行していく一人として、もう一回再調査をすることは必要じゃないですか、大臣、いかがでしょうか。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

山本(有)国務大臣 まず、報道機関の記事については農林省は関与しておりませんので、これについてはコメントする立場ではありません。

 そして、委員御指摘のとおり、輸入米が二割安くなるその原因がSBS米の輸入にあるということも、マクロ的な国内産の米価格というのは、品質と需給動向、これはもう何遍も言っておりますけれども、ここで決まるわけでございます。国内米も、銘柄、産地、そしてブランド米であるかどうかによって多様に変化をするわけでございます。そこで、単純に国内産より二割安い、こう言われましても、比べる銘柄や品質等について詳細な記述はございません。また、御指摘もございません。そういうようなことを考えますと、単純に二割安いかどうかについてのコメントも、これもできないことになるわけでございます。

 それぞれお立場はありますでしょうけれども、今回のこの調査は、調整金の有無について、あるいは調整金の影響について調べたところでございますので、今回の調査で全うできた、こう思っております。

升田委員 けさの日本農業新聞には、またこういう記事が掲載されているんですね。「農水省が米卸から、調整金分を差し引いて実需に販売した具体的な価格を聞き取ったにもかかわらず、報告書に反映させなかったことが三十一日、日本農業新聞の取材で分かった。」、調査結果をねじ曲げていると反発の声を上げているということなんですね。また、こういう記事も掲載されています。「結果に違和感がある。輸入米が安く(市場に)出回る事実は、農水省にとって都合が悪かったのだろう」、こういう御指摘も新聞から出ているわけですよ。

 大臣、ここは明らかに、さっぱりすることが大事です。データを出せば、調査のデータを出すと、これまた信頼が広がるんですよ。調査のデータを出せませんか、大臣、いかがですか。

山本(有)国務大臣 調査は、十月七日にお示ししたとおりでございます。また、安値販売の記事については、何度も言いますが、農林省が関与したものではありません。

 その上で申し上げれば、米の価格は、基本的に、品質、需給で決まるわけでございます。国産米価格の下落局面などに政府売り渡し価格を下回る価格での販売が発生することは十分ございます。これは、卸売業者が、状況によっては、国産米を仕入れ価格を下回る価格で販売することがあるのと何ら変わりはありません。

 ヒアリングにおきましても、調査結果にあるとおり、SBS米の販売価格を決定する際の主な考慮事項として、国産米価格の水準と回答した者が四十二者中三十一者、国産米の価格水準いかんにかかわらずSBS米を調整金分だけ安く販売していると回答した者は存在しなかったわけでございます。

 その意味におきましても、この調査結果は正確性があるというように考えるところでございます。

 以上でございます。

升田委員 長い答弁をしないといけないということ自体が、これがもうすっきりしていないんですね。

 大臣、農家の心に安心を与えようではありませんか。よろしくお願いしたいと思います。

 農業と地方とTPPに関して何点か、与えられた時間の中で質疑をさせていただきたいと思います。

 農業には多面的な機能がある、こう言われておりまして、私は、その意味においては、農業は、損得だけではなくて、産業の視点だけではなくて、地域を守る、生活を守るということでの視点が大事だろうと。とりわけ、水を守っているし、また環境も守っていれば、農業というのはひとりぼっちでできるわけじゃありませんので、地域の人とのつながり、コミュニティーも守るということでありますけれども、私がさらに思うことは、社会保障機能が農業には備わっていると思っているんですね。

 これはどういうことかといいますと、働いている方が、農家の方で六十歳以上でありますけれども、私の調べでは健康長寿なんです。ですから、その意味において、今、毎年、医療費が一兆円あるいは一兆五千億、どんどんふえているわけであります。この医療費を抑制しているという面があるわけですよ。

 ですから、この面も考えていきますと、ずっと、安倍総理もそうですが、人口減少で高齢化だから、外需外需、輸出輸出と。この視点では、大事な農業の持つ社会保障の機能さえ衰退させてしまう、私はこういう懸念があるわけでありますが、どうですか、大臣。

 健康で長生き、大体そうでしょう。私のおばあちゃんは九十九歳十一カ月と十日生きたんですよ。あと二十日生きると百歳で、めでたい、よいことだったんですが、いずれにしても、おばあちゃんも最初からもう畑大好き人間で、自然と触れ合う人はやはりそういう健康で長生きなんですね。

 それは、医療費を抑制している、社会保障の機能がある、だから農業は大事だ。いかがですか、大臣。

山本(有)国務大臣 農業のさまざまな機能の中に社会保障的機能があることは、つとにうたわれたところでございます。

 例えば、「NHKスペシャル」、最近放映の「資本主義の未来」というテーマの番組の中で、スペインのアンダルシア地方のマリナレーダという三千人の村の話でございましたが、食料品は地域で生産されたものを格安で村民に与える、そして住居については村が正確にきちんと格安の住居を提供する、このことにおいて貨幣経済におけるマイナス面をクリアできたと。

 あるいは、群馬県の川場村、ここの道の駅では、できるだけ高齢者の農家の方々の品物を高齢者の皆さんが価格をつけて出すように、これをいざなっております。そうしますと、村の診療所にいらっしゃる、朝から待っておられた大勢の高齢者の存在がなくなって、診療所は逆に高齢者が来なくなってしまったというような実例を川場村の外山村長さんからお聞きいたしました。

 というように、生きがい対策にもなりますし、産業政策、地域政策、そして福祉政策、さまざまな機能を有している大切な産業だというように私は位置づけております。(発言する者あり)

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

升田委員 私が感想を言う前に、いい答弁だ、こういうふうに声が出ておりますが、大臣は、ある一方では、本当に現場、農家の心がよくわかる大臣だと思っています。ですから、不安が不信になって、不満になって、どうしようもないような状態だけは、大臣、つくらないでください。お願いしたいと思います。

 関連して、私は先般のこの委員会での質疑でも触れさせていただきましたが、兼業農家の重要性なんですね。

 一年に三十万から五十万ぐらいの所得しか得ないことかもしれません。産業視点でいきますと、それはもう小さな所得だからというふうに切り捨てされるような議論があるように感じますけれども、これは地方で暮らしている人にとっては、その三十万の所得があるから、その五十万の所得があるから、一年の暮らしに安心が出てくる。いわゆる小さな所得でも、地方の人にとってはこれは大きな安心なんです。まずこのことは押さえておいてください。

 東京で生まれ育った方にとっては、三十万、五十万といったら、銀座で一晩いたらすぐなくなるねということかもしれませんが、地方では一年なんですよ。一年の生活感があるということなんですね。

 これは、こういう感覚をTPP担当大臣である石原大臣もお持ちかどうか、大臣、いかがですか。

石原国務大臣 私は飲みに行かないもので、一晩で幾ら使うかということはわからないんですが。

 私は、御存じのとおり、都市農業の会の会長を十年以上やっておりまして、昨年、これは全会一致で都市農業基本法というものを取りまとめさせていただきました。また、ことしは、閣内にありまして、光栄なことでございますが、基本計画もつくらせていただきました。

 私は、実は、選挙区は家内の生まれたところでございまして、地方生まれでございまして、農業の方には親戚でも従事している者がいる、そういうところでございます。

升田委員 石原大臣とは、四月の質疑の中で、けさ何をお食べになりましたかというところで、青森県のリンゴとニンジンのジュースということで、大変、青森県人としてはありがたい答弁であったな、こう思います。

 この機会に、石原大臣は津軽平野には来られたことはございますか、どうですか。

石原国務大臣 最近は、選挙のときに、津軽・南部の戦いに行ってまいりました。

升田委員 私にとってはよかったのかどうか、ちょっと疑問に残るところではありますが。

 私、このお話を出させていただいたのは、あの津軽平野を、これを大規模大規模、輸出と、その延長上でいくと、今五千戸ぐらいあるんですよね、専業農家あるいは第一、第二兼業農家を合わせて、大なり小なり、それはアメリカ的にいきますと、百分の一ですから、五十戸で済んでしまう。こうしますと、TPPというのは雇用を守るのかというところに大きな疑問が湧くんですね。

 しかも、輸出、海外の企業と競争となると、国内においては、どうしても賃金を安くして製造コストを下げないと外に売れないわけでありますから、こういうことを考えると、非常にこれは矛盾になっていくんですね。ですから、私は、かつてから、たとえ人口減少であろうとも、内需を拡大、創造すべきだと。

 人口が減るから表面上の内需は減るけれども、ここはよく考えますと、消費者も減っていくわけでありますけれども、供給者も減るわけでありますから、バランスのとれた内需を創造していくと、人口減少でも経済の活力は低下しないと私は思うんですよ、この視点から考えると。こういう捉え方……(発言する者あり)いや、これは詭弁ではありません。私は、これは詭弁ではないと。これは私なりの研究の仕方で。

 これは消費者と供給者が同じように減っていくわけでありますから、ただ単に人口が減るからといって経済が小さくなるわけじゃなくて、お互いのバランスで経済は成り立つわけでありますから、ですから、もう一回、この内需の必要性、そして、地元は地元、日本人は国産をなるたけ使うんだ、こういう空気を盛り上げるといいますか、こういうことが私はこれからの日本にとっては必要だと思うんです。

 TPPへの対処法、目には見えないかもしれないけれども、じわじわとこれに対処していくこととしては大変重要な機運の盛り上げの分野だと思いますが、ここは石原大臣と山本大臣、双方にお伺いをさせていただきたい、こう思います。

山本(有)国務大臣 内需の重要性は、私がちょうちょう申し上げるまでもありません。

 先日、熊本県のフグの養殖業者の方が、モスクワから注文が来た、こういうことをおっしゃっておられました。つまり、世界の皆さんは、日本における農林水産物について大変な興味もあるわけでございます。また、他方、岡山のシャインマスカットの生産農家の青年から、自分たちは国内市場に売れる値段以上で海外市場に売ることができた、二つの選択肢、国内市場が飽和した以後、輸出というものにチャンスを与えていただいて大変ありがたい、さらには、自分たちはもう一工夫して、マスカットが出ないときに海外で生産してまた海外で販売したいというような夢を語っておられました。

 そうしたことからすると、内需だけにとらわれずに、輸出輸入、さまざまな農家にチャンスを与える、あとまた、チャンスを得た人たちがさらに農林水産業にかける思いを実現できるというような、そういう日本農業に多様に発展できるようにすることが大事だろうというように思っております。

石原国務大臣 私は、一点だけ、委員が後段に申された、国産品を奨励していくと。

 津軽平野の水田に水が満々と満ち、そこに田植えが終わった後の景色というものはきっと大変すばらしいものがあるので、ぜひ今度、一度拝見に行きたいなと思っております。そこでとられるようなすばらしいものを、やはり内外価格差がある以上は、一体どの程度の水準までであるならば国民の皆様方が国産品を御愛用いただけるか、こういうこともしっかりと考えて、委員のお立場と同じく、国産品の多くの消費というものに尽力をしていきたいと考えております。

升田委員 日本人は国産を買う、食べる、こういう機運というのをぜひ盛り上げてほしいな、こう思います。

 山本大臣には、内需の創造をするのに工夫の余地があるんじゃないですかということを再三言っていますから、ぜひこれは工夫してほしいと思います。

 もう時間が来ました。

 先般、農業関係者の人との会合がございまして、それは組合の方なんですが、升田さん、農業は農協のためにあるのではありません、農家のためにあるわけでもありません、国のためにあるんですというのが、これは農協の組合の長の立場からのお言葉でありました。このことを重く受けとめれば、今回のこのTPPの審議に当たって、不安とか不信とかいうのは払拭していかないといけないんですよ。

 慎重審議を求めて、終わります。

塩谷委員長 次に、佐々木隆博君。

佐々木(隆)委員 津軽を渡りまして、北海道でございます。

 今回で三回目か四回目の質問をさせていただいておりますが、先ほどの話だと四回裏ぐらいだというので、あと四、五回質問をさせていただける機会があるかと思います。一つ一つ大切に、丁寧に質問をさせていただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 TPPの質問の前に一つだけ、きのうと、そして先ほども議論がありましたが、台風や地震対策における共済金のことについて、農水大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 きのうのやりとりで、あるいはきょうのやりとりでもそうですが、少し勘違いがあるような気がします。それは、共済金ですが、農家が求めているのは早期支払いじゃないです。早期確定なんです。お金を今すぐよこせと言っていないんですよ。早く被害の場所を確定してくれということを言っているんですが、その認識はおありでしょうか。

山本(有)国務大臣 私の認識では、早期支払いに重要な意識がありましたので、その被害確定ということについても検討を勉強していきたいと思っております。

佐々木(隆)委員 農水省の職員、あるいは副大臣もお見えでございますので、ぜひそこをしっかり押さえていただきたいと思うんです。

 なぜそのことを申し上げるかというと、私も民進党で対策本部の副本部長をやらせていただいていて、半相殺方式の適用ができないかということを求めたんですが、それは制度的に無理だと。要するに、保険ですから、全相殺で契約していて、支払うときだけ半相殺、半相殺というのは一筆ごとという意味ですが、全相殺というのは全部、農家の最後の出荷高で共済金を支払うという方式ですが、被害が限られているところについては、半相殺でぜひ支払ってほしいという話があったんですが、それは農水省といろいろやりとりをしまして、保険契約にたがうことになるので、制度的に無理だというお話をいただきました。

 そこはある程度理解をするんですが、ただし、確定作業は一筆ごとにやっていただかないと、なぜそのことにこだわるかというと、来年の農地復旧を急いでいるんです、今みんな、特に北海道は雪が降りますから。そのためには、被害を確定してもらわないと農地造成に入れないんですよ。

 だから、早期支払いを求めているわけではなくて、それはもう年内には支払われるんですから、いずれにしたって。その確定をしていただければ、その時点から農地復旧に入りたい、そういう思いがあるので、ここはぜひ指示を出していただきたいと思うんですね、農水省にも。

 早期支払いよりも確定だということを、ぜひもう一度御答弁いただきたいと思います。

山本(有)国務大臣 復旧事業への速度が速くなる、時期が早くなるということであるならば、委員おっしゃるように、一筆ごとの確定ということについて、早期に考えをまとめたいというように思っております。

佐々木(隆)委員 ありがとうございます。大変前向きな答弁をいただいております。ぜひお願いを申し上げると同時に、農水省に指示を出していただきたいと思います。

 それでは、トレーサビリティーについてお伺いをさせていただきたいと思います。

 この特別委員会で、二つのトレサが必要だということが改めて実は論議になっていると思うんですが、一つは、食の安全に関して、牛トレサです。

 これは、BSEが発生したときに大変効果を発したんです。そして、アメリカにも求めてきた。そういう経過の中で、全頭検査を日本はやって、アメリカにもそのことを求めて、そして輸入規制をするという大変大きな効果を得ました。

 もっと言えば、これは主に肉の方ですけれども、肉にどうも被曝したわらが使われていたということが、これもトレサで判明したんです。そういった意味では、この牛トレサというのも大変大きな効果を発揮しているわけです。

 ですから、今回の安全性の問題で、立証責任とかなんとかという話よりも、この牛トレサをしっかりやってもらう。輸入牛肉についてもやってもらうということをまずこれは考えるべきだと思うんですね、そうすればトレースがわかるわけですから。そういうことを、まず牛トレサについてしっかり求めるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

山本(有)国務大臣 御指摘のとおり、牛トレサ、これはかなりの効果を上げております。その意味におきまして、今後もその普及あるいは推進をしっかりやってまいりたいと思っています。

佐々木(隆)委員 やはりペーパーを見ないで答えていただくといい答弁が出るんですが、私が求めたのは、要するに、輸入の牛肉についてもトレサを求めるべきだということを申し上げたんですが、いかがでしょうか。

塩谷委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 起こしてください。

 山本農林水産大臣。

山本(有)国務大臣 国産の牛肉につきましては、耳標をつけているのでトレサが可能でございますが、輸入につきましては、かかる耳標がございません。したがいまして、現在、トレサの対象となっておりません。

佐々木(隆)委員 個体識別標というのは、それも承知をしておりますが、これを外国にも、輸入をするところにも求めていくべきではありませんかということを申し上げているので、それは、何か求められない理由でもあるんですか。

塩谷委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

塩谷委員長 速記を起こしてください。

 山本農林水産大臣。

山本(有)国務大臣 委員御指摘のとおり、牛のトレサにつきましては、これはBSEの発生防止ということが最大の目的になっております。したがいまして、日本で屠畜される牛にこれが適用されるわけでありまして、輸入されるところのものの考え方の中に牛トレサの適用というものは、今後、幅広に検討する可能性はありますものの、現在はそれは適用になっていません。そういうことでございます。

佐々木(隆)委員 大臣、職員の皆さん方もちゃんとあれしていただかないと困るんですが、アメリカからの牛肉は個体輸入じゃありませんから。今、日本で屠殺されるものだけと大臣はお答えになったんですが、アメリカは部位輸入です、オーストラリアは個体輸入ですけれども。

 ですから、そうではなくて、部位輸入のアメリカでもそのときには機能したんですよ。だから、そのことをお伺いしています。

山本(有)国務大臣 これにつきまして、耳標を求めるということは国としましてはできます。しかれども、相手国がこれに対応していただけるか、これはわかりません。したがいまして、合意があれば可能性が出てくるというように思っております。

佐々木(隆)委員 耳標を持ってこいと言っているわけじゃないんです。トレース、トレーサビリティーを見せてくださいということは要求できない話ではないと思うんですが、これを求めていく、今のお話からすると求めていくことを模索するということでいいんですか。

山本(有)国務大臣 輸入肉につきましても、トレーサビリティー、そしてBSEの排除という意味での可能性を求めていきたいというようには思っております。

佐々木(隆)委員 今、求めるということだったんですが、この間からずっと牛肉の食の安全のことが問題になっているわけですね。そして、しかも、それは立証責任をこちら側に求める、輸入国に求めるというような、科学性を求めるというような、そんなことをずっと繰り返しているので、それよりも、今あるトレースという方式を使ったら、そのことはもっと可能になるんじゃないですかと。

 今、可能性を模索するという、ちょっとよくわからない答弁だったんですが、もっとわかりやすく言っていただけますか。

山本(有)国務大臣 牛肉トレーサビリティーについては、牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法という国内法でございます。これを輸入相手国に適用するということになりますと、相当の交渉等が必要だろうというように思っております。

 しかし、これにつきましては、国内の安心感のために努力をしてみたいというように思っております。

佐々木(隆)委員 今、求めるということですから、ぜひ求めていただきたいと思うんです。

 同じようなことで、SBS米、これは日本に米トレサというのがあります。この前も少しやりとりさせていただいたんですが、これは安全性のためにあるんだというお答えなんですが、米トレサについては、別に安全性だけに限定した仕組みにはなっていないんですね。何でもトレースできるようになっているんですよ、本当は。だから、本来はあるはずなんです。

 そこで、どうしてもおかしいのが、先ほども話題になりましたが、きょうの日農新聞にあるように、本来、米トレサである程度情報はつかんでいるはずだし、それから、加えて言えば、輸入米の価格とか、あるいは流通価格というのは調査しているはずですよね、公表しているんですから。それは毎月か四半期かよくわかりませんが、公表して、そして、その価格差というものを農水省で把握しているからマークアップが設定されるわけですよ、そこに。そうでなければ、価格差がわからなければマークアップを設定できないわけですから。

 そういう調査があるにもかかわらず、先ほど来、今回新たにわざわざぼやっとした調査をして、そして日農新聞や毎日新聞から指摘されるような結果になっている。これはどう考えてもおかしいと思うんです。

 これは、調査の方法をちゃんとした方法に変えて、もう一回やり直すべきだ、そういう制度を使ってやり直すべきだと思うんですが、いかがですか。

山本(有)国務大臣 米トレーサビリティー法は、食品事故、偽装表示、横流し等の事案が発生した際に、記録をたどることで流通経路を的確に特定できるようにするため、米穀事業者に対し、米の名称、産地、数量等に関する取引記録の作成、保存等を義務づけているものでございます。

 食品としての安全性を欠くものの流通を防止する、産地などの表示の適正化をする、適正かつ円滑な流通の確保をする、これらのための措置の実施の基礎を築くことを目的として制定されているものでございます。

 米の卸売業者が実需者に幾らで販売したかという価格情報につきましては、食品事故等に対応するための流通経路の特定において必要でないことから、米穀事業者に対して、価格に関する記録の作成、保存の義務づけはされておりません。

 また、米トレーサビリティー法十条におきまして、報告徴求、これにつきまして、法の施行に必要な限度に限るという条項が定められておりまして、この条項によりまして、米の価格調査を行うことは困難と解釈されております。

 以上です。

佐々木(隆)委員 今大臣がお答えになった、これらのことについてというのは、全部当てはまるじゃないですか、SBSは。

 トレースは保存の義務がないというのは、では、何のためにトレースをやるんですか。トレースするのは、保存するためにトレースするんですよ。即座に焼き捨てるんだったら、トレースする意味がない。

 どう考えても今の答弁はおかしいと私は思うんですが、ぜひこの再調査を、もう一度やはり、農水省の皆さんは、この委員会のための答弁はやめてほしいと思うんですよ。国民に向かって、どういうことを今やらなければいけないのかという視点に立って答えていただきたいと思うんですが、もう一度お願いします。

山本(有)国務大臣 委員御指摘の調査の目的が調整金が国内米価格に影響するかどうかであれば、十月七日の調査で完結しているというように解釈しております。

 また、米トレーサビリティー法で義務づけられておりますのは、米価格に関する記録の作成、保存ではございません。

 したがいまして、この法にない条項について作成、保存の義務づけをするには、法改正が必要だろうというように思っております。

佐々木(隆)委員 違います。限定していません。安全性だけをトレースするなんということは限定していません、トレサ法では。

 だから、今回使おうと思えば使えたんですよ。それをあえて別な、ぼやっとした調査の方にわざわざ持っていったというのは、どう考えても不自然なんです。

 先ほどの質問にもありましたけれども、牛トレサの検討も、大臣、検討すると言われた。ぜひこれは検討してほしいし、今の米トレサ、ぜひこれは再調査をしていただかないと、どう考えても国民の皆さんは納得できません。

 これは農水省に再調査を求めると同時に、委員長、ぜひこのことを委員会で取り上げていただきたいと思います。

塩谷委員長 理事会で協議して対応したいと思います。(発言する者あり)

佐々木(隆)委員 今のやりとりがわからないということで、トレサの情報も出してくれということでありますので、委員長、その辺もよろしくお願いしたい。

塩谷委員長 それについても理事会で協議して対応いたします。

佐々木(隆)委員 今、農産物もそれから海産物もそうなんですが、農産物は、生産段階でGAPがあって、トレサがあって、加工段階でHACCPがあるんです。そして、今、魚の方も、MSC認証といって、いわゆる魚のGAPみたいなのがあるんですね。漁師さんがとったところから水揚げするところまでの認証です。これにトレサとHACCPと、全部履歴がわかるようになっているし、これは世界標準なんですよ、今。オリンピックまでにこれをそろえなければ、恐らく外国から来る人たちは日本の食堂に行かなくなるのではないかというふうに言われているぐらい、今世界的には重要なテーマなんです。

 そのトレサがないとか調べられないとかいうんだったら、トレサの意味がないわけですよ。これは、ぜひ整備するように求めたいと思います。

 次は、ちょっと予算関連と思ったんですが、時間が少し、ここで予想以上にかかってしまったものですから、アメリカの独自条項、資料の三でございますが、皆さんの手元に行っていると思います。

 そこにありますように、これはアメリカの独自条項と言われるもので、ISDSから始まって、ずっとこれだけの条項があります。世界標準になったものもあります、もちろん、WTOの段階でなったものもありますし。

 それで、お伺いしたいんですが、今回のTPPで新たに加わった、あるいは論議された経過について、これは石原大臣ですか、外務大臣ですか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 先生がお出しになったこの資料、恐らく、米韓FTAのときに、毒素条項というふうによく批判する方がおっしゃるリスト、先生の方で独自条項というエレガントな言い方をしていただいて、大変感銘を受けているところでございます。

 お挙げいただいたものでございますが、ISDS条項、これは、TPPに限らず、さまざまな投資保護協定、経済連携協定に盛り込まれているものでございます。

 ラチェットも、これは、現在留保をするものについて後退させてはいけないという、これは当然、規制緩和を協定で約束する以上、必要な条項ということで、これも最近のFTAにはかなり盛り込まれておりますし、ネガティブリスト方式も同様でございます。

 規制必要性の立証責任というのは、ちょっといま一つわかりかねるのでございますが、例えば、TPPにおいて、相手国にチャレンジをする、あるいはISDSについても、チャレンジする側が立証するというのが基本になっているところでございます。

 ノンバイオレーションというのもWTO等にある規定でございまして、TPPにも一部盛り込まれております。これは非常にハードルの高いもので、このノンバイオレーション・コンプレイントで勝った例はいまだにないと承知しております。

 スナップバックは、日米の自動車の交渉結果の中でよく使われる言葉でございますが、一定の条件のもと、下げた税率をまた戻すという、スナップバックという言葉自体は経済連携協定で割と普通に使われている言葉でございます。

 エクソン・フロリオ条項は、アメリカの条項でございますけれども、一般的に、TPPに限らず、WTO等において安全保障例外という規定がございまして、我が国もその安全保障例外があるがゆえにTPPに入っても安心だというふうに理解しているところでございます。

 未来の最恵国待遇というのは、ここも若干よくわからないんですが、最恵国待遇というのはWTOの一般的な規定でございまして、それは当然、今後に最恵国待遇が及ぶという意味では未来のという、そういう意味なのかもしれません。一般的な規定でございます。

佐々木(隆)委員 今のはちょっと不十分だったんですが、今回TPPで新たに入ったのはどの条項ですかということを質問させていただいたんですが、一つ一つの説明をいただいたことは、それはそれで皆さん方に説明しようとしたのかもしれませんが、今までWTOや何かも含めてずっとやってきたものと、今回、TPPで新たに加わったもの、あるいはそのときの議論、これについて今お伺いしました。

石原国務大臣 政府参考人からお話をさせていただきましたのは、エレガントな言い方で独自と言われたもので、私、違うものを実は念頭に、アメリカの内航海運の独占性みたいなところのものが念頭にあるのかなと思っていろいろ調べてみたんですが、きょう朝いただいた資料でこういうふうになっておりますものを見させていただいた限り、新たに入ったものはないということを政府委員が答弁をさせていただいたというふうに御理解をいただきたいと思います。

佐々木(隆)委員 スナップバックをセーフガードと置きかえれば、これはないということ、入っていると言えば言えるんですが、エクソン・フロリオ、これは、今回のTPPでもWTOでもなくて、アメリカ独自の条項であります。これは日本にも随分かかわりが深いものでありまして、今までいろいろな場面で、この条項で訴えられたり、NTTコムだとかあるいはフィルム会社とか、幾つもこのことで訴えられている事例があって、これは、日本ではなくて、アメリカ独自の条項だと思うんですが、もう一度お願いします。

岸田国務大臣 御指摘のエクソン・フロリオ条項ですが、要は、安全保障に脅威を与えると判断される外国資本による企業合併、買収、取得案件を延期、禁止させる権限を大統領に付与する、こうした規定でありますが、この規定は、従来もWTO協定、あるいはNAFTA、米韓FTA、こうした経済連携においても安全保障例外として位置づけられています。TPPのみならず、従来から米国は当該措置を導入していると承知をしています。

佐々木(隆)委員 そのときからあったという話ではなくて、これは大統領が停止させる権利を持っているわけですから、ほかの国の首相も大統領もその権限は持っていないわけですから、これはアメリカ独自のものなんですね。ですから、ある意味での不平等な条項と言わなければならないというふうに思うんです。

 それから、スナップバックについては、一旦決めた関税が自国に大変な深刻さがあるという場合にはほごにする、まあ、ほごにするという表現だったんですが、もとに戻すという意味らしいんです。そんな条項だとか、今回のこれらの条項については非常に不平等なことが起き得る。要するに、大国に極めて有利になるような条項が多いわけであります。

 これらの条項というものが交渉経過の中でどういう議論をなされたのかということについて、ぜひこの機会に答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘いただいたさまざまな条項、案件について、交渉の過程で具体的にどのようなやりとりをしたか、これについて申し上げるということについては、従来から申し上げておりますように、同様の経済連携交渉の際に手のうちを明らかにすることにつながりますし、これはお互いさまでありますので、交渉の中で明らかにしないというのが常識であるということを申し上げさせていただいております。

 よって、御指摘の点につきましても、具体的にどんなやりとりがあったか、これを申し上げることは控えなければなりませんが、従来の問題意識、業界団体からの意見、こうしたものを踏まえて適切な交渉を行い、その結果として、結果についてはしっかり申し上げさせていただいているわけであります。

 結果について、例えばISD条項については従来も再三議論が行われました。TPPにおきましては、米国がほかに結んでいる経済連携協定あるいはNAFTAと比べましても、濫訴を防ぐためにハードルを高くするとか、透明性を高めるとか、こうした内容にTPP協定の中ではなっているという話であります。

 そして、ラチェット条項につきましては、包括的な留保を行った分野についてはラチェット条項は適用されない、こうしたことになっています。我が国においても包括的な留保を必要な部分においては行っているため、必要な規制を行う、あるいは強化する、こういったことは可能になっていると認識をしております。ネガティブリスト方式については、これはまさに留保表を用いるというようなことで、そういった除外を行うということであります。等々、それぞれ適切に対応させていただいているということでございます。

佐々木(隆)委員 せっかく塩崎大臣にも来ていただいておりますので、次のところへ進みたいんですが、例のラチェット条項は、日本が入場料として支払われたときに出てきたんですよ。一度、今まで、日本が入るまでに決めたことについてはもう戻せませんよ、それの上で日本は入ってきてくださいと言われたのがラチェット条項というのが脚光を浴びた最初でありますので、今でも戻せるかのような、ラチェットというのは戻せないという意味ですから、少し答弁が違うというふうに思います。

 それで、労働の章について、塩崎大臣にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 そもそも労働という章を設ける必要がなぜあったのかということについて、まずお伺いをさせていただきたいと思います。

塩崎国務大臣 今、佐々木委員御指摘の労働章ですが、第十九章、ここにおきまして、ILO宣言に述べられている働く方の権利を自国の法律等において採用、維持すること、それから、貿易や投資に影響を及ぼす態様により、こうした労働条件に関する法律等について免除等を行ってはならないことなどを規定しているわけであります。

 TPP協定は、貿易や投資の促進を図るというのが最大の目的でございますけれども、その際に労働条件が切り下げられるということなどが行われた場合には、やはり働く方の保護の観点が必要であり、それがないならば問題だ、こういうことで、この労働章の規定は、そういうふうにならないようにということで設けられたものだと理解をしております。

佐々木(隆)委員 今大臣がお答えになったように、労働条件の悪化に歯どめをかけるんだと片一方で言っておいて、TPPの原則は、貿易障壁をなくし、限りなく自由化、規制緩和をしていくという、これと、今の条件の悪化に歯どめをかけるということと限りなく自由にしていくという話とは、どこか矛盾する話だと思うんですね。

 それで、この話は、一九九〇年代に、WTOのときにも問題になっているんですね。そのときにはどういう結論になったかというと、労働という分野はWTOになじまない、よってILOに委ねるというふうにそのときになったんです。にもかかわらず、TPPではまた出てきたということなんです。だから、非常に違和感があるというのは、そういう意味で非常に違和感があるわけであります。

 特に、日本は、資料の4にありますように、強制労働とか、特別待遇禁止とか、二つのILOについては批准していないんですね。そういう中で、この労働の分野というものが、一回WTOでは必要ないと言ったものが何でTPPで出てきたのか、その経過についてもう一度お願いします。

塩崎国務大臣 今、百五号、それから百十一号について、ILOの条約についてお話をいただきましたが、繰り返すようで恐縮でございますけれども、このTPP協定の労働章では、一九九八年のILO宣言に述べられている働く方の権利を、各締約国が自国の法律等において採用し維持することを定めているわけであります。

 これは、いわゆるILO基本条約を批准することが求められているものではないわけでありまして、また、ILO基本条約に規定をされている具体的な義務を締約国に課すものでもない。いかなる国内法令等を採用、維持するかについては、当然のことながら、一義的には各締約国が独自に判断をするということでございます。

 TPP協定の労働章の規定で求められている働く方の権利確保につきましては、我が国では既に国内法令等により担保をされておりまして、我が国の労働関係法制度の変更を求められているということではないと思います。

 百五号、それから百十一号、この八つのILO基本条約のうちの二つが未批准であることについて御指摘がございましたけれども、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があることから、この批准については慎重な検討が必要だというふうに考えて今日に至っているところでございます。

佐々木(隆)委員 時間がなくなってまいりましたから、機会があればまた質問させていただきたいんですが、今申し上げた二つのほかに、実は百号、同一労働同一賃金、正確には同一価値労働同一報酬というふうにILOの方で記述されている。

 そもそも、日本が今国際的にどういう位置づけが必要か、地球儀を俯瞰すると言うのであれば、こうした国際条約には、我が国としてやっているからいいんだというのではなくて、やはり積極的に参加をしていくことが必要なのではないか、それが日本の今とるべき道ではないかというふうに思うことを申し上げながら、今、成長戦略で、派遣法拡大、解雇規制の緩和、残業代撤廃、外国人労働者受け入れ緩和というような、成長戦略で農業と医療とともに大きな目玉は労働なんですよね。

 その労働があるがゆえに、TPPと成長戦略は私は同根だと思っているんですが、全く同じ意味でこの労働をあえてTPPに入れてきたんだとするならば、片方でどんどんと雇用形態を契約型というか、非正規をたくさんつくり出すような方向に行っていて、その状況の中で、危ないから同一労働同一賃金を確保しておかなきゃいけないというので、今回、同一労働同一賃金が検討されるのだとしたら、全く本末転倒な話だと思うんです。

 ここのところをやはり、片方でどんどん非正規をつくっておいて、非正規がいっぱい出てきたから同一労働同一賃金だというのでは、余りにもひどいやり方なのではないかと思うんですが、時間がなくなってまいりましたので、そのことのお答えをいただいて、終わりにしたいと思います。

塩崎国務大臣 TPPは、先ほど先生も御指摘のとおり、投資そして貿易の促進ということでありますが、それと、働く方々の労働条件の引き下げがどう起こらないようにするかということのバランスをとったのが、この労働章を設けたゆえんだろうというふうに思うわけであります。

 一方で、私ども、成長戦略をもちろん推し進めているわけでありますけれども、労働者派遣法の改正は決して改悪ではなく、むしろ、全てを許可制とするという、規制も強化しておりますし、正社員を希望する方にはその道を開き、また、派遣をむしろ選ぶという方々については待遇の改善を図るということで、同一労働同一賃金のことも、申し上げたとおり、私どもは働き方改革の中で、当然これは、長時間労働の抑制あるいはその他の働く方の立場の強化、そういうことを同時に進めながらやっていくわけでございます。

 TPPを進めることと、働き方を柔軟にし多様化する、そして働く方の希望に応じた働き方ができるようにするということについては、私どもは、決して矛盾することをやっているわけではなくて、むしろ、この労働基準法の改正についても、長時間労働を是正する、働く方の健康を守っていくという中でどれだけ力を出せるようにしていくかということが大事でありますので、全てこれらは同時に進めていくことではないかというふうに考えているところでございます。

佐々木(隆)委員 時間が参りましたので終わりますが、先日来話題になっておりますように、共同通信の世論調査でも、六六・五%の人がまだまだ審議が足りないと言っておりますし、日経新聞でも、今国会での成立と反対が拮抗しているという状況であります。

 今、私も労働問題を取り上げさせていただきましたが、まだまだ論議が十分だとは言えません。これからまだまだテーマがありますので、審議時間を確保していただくことを委員長にお願い申し上げて、ぜひそのことの検討をいただきますことを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塩谷委員長 次に、真島省三君。

真島委員 日本共産党の真島省三です。

 政府の総合的なTPP関連政策大綱は、「TPPがもたらす効果は、これまで海外展開に踏み切れなかった地方の中堅・中小企業にこそ幅広く及ぶ。」「産業空洞化を抑え、技術力等を持った我が国の中堅・中小企業が「居ながらにしての海外展開」すること、地域の特色を活かした地場産業、農産品等が八億人の市場へ打って出る」と言っております。

 本日は、そのリアリティーについてお尋ねします。

 中小企業庁の平成二十七年中小企業実態基本調査によると、海外に子会社、関連会社または事業所がある法人中小企業は何社で、法人企業全体に占める構成比は幾らですか。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 二〇一五年に中小企業庁が実施をいたしました平成二十七年中小企業実態基本調査によりますと、法人形態をとる中小企業のうち、二〇一五年三月時点で海外に子会社、関連会社または事業所がある中小企業は一万四千百三十社でありまして、法人形態をとる中小企業全体、これは百五十万三千五百一社になりますが、それに占める割合は〇・九%となっております。

真島委員 海外展開している中小企業はたったの〇・九%です。しかも、中小企業基盤整備機構の平成二十七年度中小企業海外事業活動実態調査を見ますと、海外展開している中小企業のうち、五社に一社が撤退経験がある、検討していると回答し、海外展開していない中小企業では、約九割が海外展開する必要性を感じていないと答えています。

 中小企業基盤整備機構の平成二十三年度中小企業海外事業活動実態調査では、製造業やその関連産業等の中小企業の多くが海外展開を加速させている理由について、どのようなことがうかがえると言っていますか。

世耕国務大臣 今御指摘の中小企業基盤整備機構の平成二十三年度中小企業海外事業活動実態調査、この報告書によりますと、中小企業が海外展開を加速させる理由は、業種によって傾向は異なりますけれども、多くの製造業等では、取引先企業の生産拠点や販売拠点の海外展開に伴うサプライチェーンの変化に対応して、自社のポジションを確保するためという分析になっております。

 また、海外展開の背景には、生産だけでなく現地国市場での販売拠点設立を行うなど、新規需要開拓を目的に行っておりまして、それ以外にも、超高齢化や人口減少等による国内市場の変化や縮小などの理由も含まれておりまして、中小企業にあっても、戦略的な意図から海外展開への取り組みが見られたというふうに分析をしているところでございます。

真島委員 私の次の質問の答えまで言ってもらいましたけれども。

 平成二十七年度の中小企業海外事業活動実態調査で、中小企業の海外の最重要拠点の販売先が、現地向けが六割以上を占めて、半数が、今後、事業規模の拡大を図りたいと回答しております。その理由を調査しているんですが、今大臣がおっしゃったように、海外需要の増加というのが圧倒的に多くて、日本国内の需要の減少、日本国内市場の収益性の低さというのが続いています。

 つまり、今お答えいただいたように、製造業の中小企業の多くが取引先の大企業の生産拠点の海外移転につき合わされている、海外進出している中小企業の多くが日本では物が売れないから海外に出稼ぎに行っているというのが実態ですよ。TPPに参加すれば、地域にある中堅企業の海外移転をさらに加速して、産業空洞化を抑えるどころか、さらにひどくしてしまうんじゃないかと私は思います。

 次に、産地の現状についてです。

 中小企業庁の平成二十七年度産地概況調査を見ますと、産地の企業数はずっと減りっ放しで、二〇一〇年から二〇一四年の間だけでも企業数が一二%減り、生産額では五%も減っております。産地概況調査では、産地が縮小していく原因を、競合輸入品の増加や工場の海外移転等が生産額に影響を及ぼしているものと考えられると述べております。

 輸出が生産額の二割を超える産地を輸出型産地と呼んでいるんですけれども、平成二十七年度産地概況調査に回答した二百六十三の産地のうち、輸出型の産地は幾つあり、海外に生産拠点を持っている企業が全くないという産地は何%だったでしょうか。

世耕国務大臣 お答えいたします。

 平成二十七年度に中小企業庁の委託調査事業により実施をいたしました産地概況調査、これは全国の産地で回答されているところが二百六十三ございます。その二百六十三産地の回答のうち、有効回答が二百五十二産地でありました。これをベースに集計をしております。

 御指摘の、輸出が生産額の二割を超える輸出型産地は八産地であります。また、海外に生産拠点を持つ企業がないとする産地は百七十九産地、七〇・九%ということになります。

真島委員 輸出型産地は、二百六十三のうちたった八、有効数二百五十二でいってもたった八。全く海外展開していない産地は、業種別にいいますと、窯業・土石九〇・三%、食料品八六・四%、木工・家具八六・四%です。地場産業が八億人市場に打って出るとか、現場では全くリアリティーがありません。

 次に、関税がゼロになる問題です。

 我が国の工業品の平均関税率は限りなくゼロに近く、世界最低水準です。それでも、中小企業製品が多い産地などの軽工業品にはなお一定の関税がかけられているため、逆輸入を含めた輸入品の流入の歯どめになっております。TPPに参加して関税がゼロになれば、衣料・繊維、家具・木工などの産地の中小企業にとって一層深刻な事態が懸念されませんか、どうですか。

世耕国務大臣 今現状で、繊維につきましては、世界全体から日本は約四兆円の輸入をしているということになります。そのうち最大の輸入先は中国なんです。中国が全体の七割を占めております。そして、TPPに今回参加をする国からの輸入は、その四兆円のうち約一割ということになります。

 ただし、このうち、主要繊維輸出国との間では、もう既に二国間EPAに基づいて関税が撤廃されているわけです。今、TPPに参加している中で二国間EPAがなくて関税が残っている国というのは、アメリカ、ニュージーランド、カナダということになりますが、こういった国からの繊維製品輸入額は我が国の輸入額全体の約一%にすぎないわけでありまして、基本的には、産地の中小企業にとっては影響は生じないのではないかというふうに思っているわけでございます。

真島委員 私、福岡県の大川市に調査に行ってきました。室町時代以来四百六十年を超える伝統産業、伝統技術を持っている日本一の家具産地です。

 大川市の家具・装備品等の出荷額、事業所数、従業者数は、二〇〇二年と二〇一三年、どうなっているでしょうか。

世耕国務大臣 工業統計調査によりましたら、福岡県大川市の家具・装備品等は、国内家具産業の最盛期であった一九九一年については、出荷額が一千百四十七億円、事業所数が四百七十二事業所、従業員数が六千九百四十三人となっております。二〇〇二年で見ますと、大川市の家具・装備品等については、出荷額が四百九十九億円、事業所数が二百五十八事業所、従業者数が三千三百十七人となっております。二〇一三年は、出荷額が約三百億円、事業所数が百三十一事業所、従業者数が千八百九十九人。いずれも減少している流れでございます。

真島委員 大川市の資料だと、出荷額じゃなくて生産額の方で見ているんですね。今、大臣がおっしゃったように、一九九一年がピークで、これは一九九一年と二〇一三年を比べますと、生産額が五分の一、事業所数は六分の一、従業者数は四分の一に激減をしております。

 大川市のインテリア課の方にその主な原因についてお聞きしました。長期にわたる景気悪化や消費税増税による売り上げの落ち込みを取り戻せなかった、生活様式の変化による売り上げ不振、アジア諸国等からの安価な家具の輸入などを挙げておられました。こういうことで経営が急激に悪化していって、失業や倒産が相次いできたと。

 しかし、ここ数年、大川市の家具生産額は、わずかずつながら増加に転じております。

 お聞きをしました。そうしたら、以前は安い輸入材を使って量産型の生産をしていた、今はそれを転換している、国産材を使って付加価値の高い商品で勝負しよう、それで産地の再生を図ろうという努力をしているんだというふうにおっしゃいました。

 現場では、職人の地位向上のための大川の匠認定制度、職人育成のための職人塾、新商品、新技術開発、需要開拓、産地PR、人材育成のためのデザイン甲子園、地元での年四回の展示会、大学生との商品開発など、まさに現場で産学官一体の産地再生の試行錯誤が続いております。

 特に、私が皆さんが力を入れているなと思ったのは、公共施設や学校などに地元の山の木材を使って大川の職人の皆さんが備品や内装をつくっていくという取り組みを、もちろん、この大川市では、限られた予算の中でも頑張っておられました。これを、大川市だけじゃなくて、ほかの市町村まで出かけていって、おたくの山の木材でこういうことをやりましょうという提案をして、働きかけているとおっしゃるんですね。すごいなというふうに思いました。

 国は、国産材の活用についてもっともっと支援をしてほしいという強い要望もそのときにいただきました。

 ところが、この資料一をごらんください。

 TPPが批准されますと、十一年後から十六年後には木材の関税が全て撤廃されます。これでは、合板などの輸入がふえまして、国産材に打撃を与える。大川のような産地の皆さんの国産材活用の努力、これの足を引っ張ることにならないでしょうか、農水大臣。

山本(有)国務大臣 TPPが発効しますと、最終的に全ての木材の関税が撤廃されることとなるわけであります。

 今般のTPP交渉におきましては、まず、輸入額が大きいカナダからの製材やマレーシアからの合板については、最長十六年の長期の関税撤廃期間を確保いたしました。また、非農産品である林産物では、世界で初めての品目別セーフガード措置を確保したところでございます。TPP合意による国内への影響は限定的と見込まれているわけでございます。

 他方、長期的には国産材価格の下落も懸念されております。そこで、大規模、高効率の加工施設の整備、あるいは原料供給のための間伐、路網整備など、川上から川下に至る体質強化対策を講じていくこととしております。

 このように、交渉で獲得した措置に加えまして、体質強化対策による生産コストの低減等によりまして採算性が確保され、国内の木材生産や国産材の活用は維持されると見込んでいるところでございます。

真島委員 今の大臣の答弁は、全く現場ではリアリティーがないと思いますね。

 日本の丸太への関税が一九五一年にゼロとなって以降、関税の撤廃が進められ、現在、林産物への関税は、最高でも一〇%になっています。

 その結果、輸入材に押され、二〇〇〇年には、用材の自給率は一八・二%にまで下がりましたが、その後、全国各地の自治体で国産材利用を広げる振興策が取り組まれる中で、用材の自給率は二〇一五年にはようやく三〇・八%にまで回復をしております。

 こうした用材の関税撤廃の影響を、先ほど大臣がおっしゃったセーフガードで本当に防げるんでしょうか。

山本(有)国務大臣 TPP加盟国のうち、我が国への輸入量が多いカナダ、マレーシア、ベトナム、ニュージーランド、チリとの間では、製材、合板等の輸入につきまして、セーフガード措置を交渉により獲得しているところでございます。

 このセーフガード措置は新設のものでございまして、例えば、輸入量の多いマレーシア産合板につきまして、初年度の発動水準を過去三年間の輸入量と同等の水準とするとともに、その翌年度以降につきましても、初年度発動水準からの増加率を年二%と緩やかに設定することによりまして、前年度から急激に輸入が増加した場合に発動が可能なものとなっております。

 一旦発動されました場合には、関税率がTPP発効前の水準に自動的に戻るため、輸入の急増などの関税削減、撤廃の影響を抑えることができるというように考えております。

真島委員 マレーシアのことしか言われないんですけれども、輸入相手国第三位の米国に対して、そもそもセーフガードがないじゃないですか。しかも、セーフガードの発動基準が毎年引き上げられて、発動そのものが難しくなっていくんです、これから。カナダとは、四年後にセーフガードの存続自体を再検討するということになっているじゃありませんか。都合が悪いところは全然触れない。

 資料二をごらんください。

 中小企業基盤整備機構の平成二十七年度中小企業海外事業活動実態調査の一つのページです。TPPに対する期待と不安について中小企業に尋ねています。

 海外に展開している中小企業でも、TPPが影響を及ぼす可能性はない、わからないが八割、TPP参加をチャンスと思うのは約四割で、チャンスと思わないが五割です。海外展開をしていない企業、そのほとんどが小規模事業者や地場産業の皆さんですけれども、TPPが影響を及ぼす可能性がない、わからないが約九割、チャンスと思うはたったの一六%、チャンスと思わないが約七割です。

 海外展開していない企業ほどTPPで競争が激化するという不安の声が多いということをこの中でも分析されて、そして、この調査ではそのことについてどういうふうに見解を述べているか、ちょっと御紹介ください。

世耕国務大臣 確かに、海外展開していない企業の回答で、競争が激化するとの回答が最も多い理由は、関税が引き下げられ海外から多くの商品等が流入することから、国内市場での競争がこれまで以上に加速することを多くの企業が懸念していることが見てとれると、中小企業基盤整備機構の報告書では分析しています。

 なお、同調査では、競争が激化するという回答が確かに一番でありますが、その次の回答は、市場が活性化され全体的に受注がふえるという調査結果であるということも申し添えておきたいと思います。

真島委員 今大臣が言われた声は少数派なんですね、この調査の結果でも。この中小企業海外事業活動実態調査を見ましても、TPPは中小企業の皆さんに理解も支持も得られていないし、圧倒的多数の小規模事業者や地場産業の皆さんは、期待どころか大きな不安を持っている。

 皆さん自身がやった調査ですから、この結果をそのまま受けとめられますか。

世耕国務大臣 期待をしている声は少数派だとおっしゃいましたが、不安と言っているのが二百五十幾つに対して、期待が約二百程度でありますから、そんなに少数派ではないと思います。不安の声があるのは確かです。しかし一方で、市場が活性化され全体的に受注がふえる、輸出が増加するとTPPを期待する中小企業も多いと思っています。

 中小企業庁の調査によりますと、海外展開を行っている企業の方が生産性が高くて国内雇用を逆に増加させている、増加させる可能性があるということも明らかになっております。TPPによって成長市場のアジア太平洋に共通のルールが構築されることによって、中小企業が海外に活躍の場を広げ、生産性向上や雇用拡大につながることが期待されると思っています。

 ことし三月に、新輸出大国コンソーシアムというのを立ち上げて受け付けを開始しています。十月二十八日時点で、全国津々浦々の中小企業二千四社に対して三百九名の海外展開の専門家が張りついて、ハンズオンの支援を展開しているところであります。こういう活動を通じて、中小企業の不安を取り除き、逆にチャンスだと考えてもらうようにしたいと思っています。

 昨日、私は、中小零細事業者が多いと言われている繊維業界の皆さんとお話をしましたが、繊維業界からも、自分たちは独自のサプライチェーンを組み立てているし、このTPPを活用していきたいという声がありました。TPPを早期成立させてほしいという声も、きのう私が直接、繊維業界、中小企業が多いと言われているところからも伺っているところでございます。

真島委員 その伺ったという事実は否定しませんが、皆さん方がやった調査で、きょう述べてきたような中小企業の皆さんの実態や声が出ているわけですよ。これをなぜ受けとめないのか。

 海外展開している生産性の高い企業が国内に恩恵をもたらしていると言っていますけれども、今、日本経済は、多国籍化した、利益を上げている企業の利益が国内に還元されていないというのが最大の問題になっているんですよ。そして、中小企業では、冒頭にお答えいただいたように、たった〇・九%ですよ、今展開しているのは。全くリアリティーがないんです、皆さんの答弁には。

 政府は、TPPで輸出がふえる、海外展開できると、出る話ばかりをバラ色に描いておりますけれども、日本は買い手として期待されているという面、関税や非関税障壁の撤廃で入ってくる影響がどれだけ大きく深刻かという面については、皆さん、目を閉ざしている、全く触れない。

 今、中小企業というのは、本当に多彩な個性を持って、固有の歴史的文化的特徴を備えておりますから、地方自治体がその地域の実情に応じていろいろな独自の支援策をやっています。全国各地の自治体では、官公需の地元優先発注、公契約条例、住宅リフォーム助成、低利の融資制度、地産地消への支援、公共事業での地元産材の優先利用、地元木材の利用に補助金を出すなど、支援をやっています。

 ところが、TPPでこうした自治体独自の中小企業支援策が、これは質問通告をしておりませんがちょっとお聞きします、外資の参入規制とみなされてISDSで対象になることはありませんか。

 答えられない。答えられないんだったらいいです。こんな基本的なことを答えられないというのはあきれました。

 では、時間が来ましたので終わりますけれども、TPPと中小企業の問題だけでも、まだまだ山ほど聞きたいことがあります。強行採決など、もうとんでもない。徹底審議を求めます。中小企業の皆さんにうそに近い過大広告を振りまいたまま強行採決するなど絶対に許されないということを申し上げて、私の質問を終わります。

塩谷委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 日本維新の会の小沢鋭仁でございます。

 質疑の時間が十二時を回りそうなんですが、私の責任ではございませんので、御理解をいただいて、おつき合いのほど、お願い申し上げたいと思います。

 まず、もう何度も申し上げてきているんですが、私ども日本維新の会は、このTPPに関しては積極推進、こういう立場でございます。だけれども、審議の日程等に関しては急げと言っているつもりもありません。そういう意味では、我々はニュートラルというか、我が党の国対ともしっかり相談をしながら国会運営は決めていきたい、こういうスタンスであることを申し上げておきたいと思います。

 それでは、中身に入らせていただくんですが、きょうは、今までの議論も踏まえた上で、新しい論点として、まず一番目に、TPP協定の批准と発効、そしてその手順はどうかというようなところをお聞かせいただきたいと思っています。

 つまり、今の状況で、アメリカのまさに批准がなければ八五%の条件をクリアできない、こういう話になって、決まらない、こういうことになるわけで、その可能性も極めて、極めてかどうかはわかりませんが、かなり高い、こういう話です。

 その場合、これはいつまで待つんですか。いつの時点でゼロベースになるんですか。アメリカが決まらない、こういう話の中で一年たち、二年たち、三年たち、それでも、どこかで批准するだろう、こういう話になるんでしょうか。その見通しというか、どうなるんだろうなというのをお聞かせください。

岸田国務大臣 御指摘のように、TPP協定は、アメリカが批准しませんと発効することはない、こういった仕組みになっています。

 そして、委員おっしゃるように、さまざまな状況について想定していくことは重要なのかもしれませんが、ただ、現状、アメリカにおいても、オバマ大統領が再三、ことしじゅう、そして自分の任期中にこれを批准させるべく、国会の承認を得るべく努力すると訴えておられます。この段階で我が国が仮定に基づいて何か申し上げることは、これは不適切だと思います。

 あくまでも、今、アメリカがことしじゅうの国会での承認に向けて努力をしているわけですので、我が国としましても、国際的な機運を盛り上げるためにも、またアメリカとともにこうした動きを牽引してきた立場からも、我が国自身がしっかりとこの問題に取り組んで国内の手続を前進させていく、これが今の段階では重要だと認識をしています。そのために全力を尽くしたいと考えます。

小沢(鋭)委員 我が党は、このTPPに関してのいろいろな検討を進めていく中で、我が国の批准は当然必要、こういう話ですが、同時に、今の状況だと、アメリカに働きかけて成立をさせていくことが重要だ、どうやってこれを成立させていくんだろう、こういう話が課題の一つだというふうにまとめました。

 それは、例えば日本政府としてアメリカとどういう交渉をし、あるいはまたアメリカ以外の各国でもいいですが、何かそういったことを行っているんでしょうか。

岸田国務大臣 アメリカへの働きかけ、首脳レベル、外相レベル、そして総領事館、大使館レベル、さまざまなレベルで働きかけを行っているわけですが、働きかけの対象、もちろん幅広い関係者に働きかけていますが、その中で議会関係者に対してもしっかり働きかけを行っております。

 ただ、具体的に誰にどのような働きかけを行ったかは、今後の影響もありますので控えさせていだきます。

 しかし、そのようにさまざまなレベル、さまざまな分野を通じてTPPの重要性についてしっかり訴え、ともにこれは協力するべきである、日本とアメリカ、ともに国際的な責任を果たすために努力をしていくことの重要性、こういったものについて働きかけを行っているところであります。(発言する者あり)

小沢(鋭)委員 後ろから、TPP反対派のところに行っていないじゃないかという声も聞こえておりますが、ぜひそういったところも行っていただいて、お進めをいただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 それで、あと、もしアメリカがだめだ、こういう話になった場合に、私どもは、我が国にとってこのTPPは極めて大事だ、こういうふうに思っていますから、アメリカ抜きで、ほかの各国と協力して進めるということはお考えになるんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、先ほども申し上げましたが、アメリカが批准しなければTPP自体発効しないという制度になっております。

 ただ、他の締約国も含めて、全体としてこの機運を盛り上げる、これは大変重要なことだと思います。

 TPPは、経済的な意味合いのみならず、戦略的な意味合いもあります。ぜひこうした、自由とか民主主義、法の支配といった基本的な価値観を共有する国々同士で、この問題の重要性をしっかりと確認し、このことが戦略的にもどんな意味があるのか、こんな重要性も鑑みながら、全体の機運を盛り上げていく努力はしっかり行っていきたいと考えます。

小沢(鋭)委員 これは党として決めているわけではありませんが、私は個人的には、とにかくこのメガFTAは極めて重要だと思っておりますので、今後、いろいろな方策を検討していただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 次に、きのうの参考人質疑の中で出た話で、一点御質問させていただきたいと思います。著作権の保護期間の問題であります。

 昨日の参考人の方からは、今回、著作権の保護期間を五十年から七十年にしましたけれども、まさにネット時代、本当にこの七十年という期間が必要なんだろうか、こういう議論が沸き起こっている。特に、それをある意味ではリーダーシップを持って推進したアメリカの中でもそういう議論があって、米国司法委員会の意見陳述で、マリア・パランテさんとおっしゃるんでしょうか、著作権局長が、どうすれば著作権の保護期間をもっと実用的なものとできるか検討が必要と述べたということが御紹介され、さらにはまた、遺族や相続人が著作権局に登録した場合は七十年でいいけれども、そうでない場合は五十年にしたらどうかとか、そういう提案がありました。私も極めて妥当な話だなと思って聞いておりました。

 そこで、例えばこういう話をアメリカとする、始めるということがアメリカを巻き込んでいく、取り込んでいくきっかけになるのではないかなとも思いながら聞いておりました。いかがでしょうか。

石原国務大臣 ただいま委員が御指摘されましたマリア・パランテ米国著作権局長のお話でございますが、私が調べ切れたのは、平成二十五年、三年前のちょっと古いものなのでございますが、それを読みますと、今委員が御説明いただいた、軽減することについて検討してはいかがでしょうか、それに対して、方法として、著作者の死後五十年間の経過により著作物をパブリックドメインとする方法がありますと。要するに、長くなって、誰が著作権を持っているかわからなくなって、それが使えないのはよくないから、こういう方法がある、その程度の言い方をされているということしか確認ができておりません。

 それと、もう一点お話をさせていただきたいのは、日本とニュージーランドが映画等々について五十年から七十年に合わせるということで今回七十年という形になったわけですけれども、他のOECD諸国を見ましても七十年という形になっておりまして、これをまた五十年に短縮していこうというのは、外交交渉としてはなかなか難しいのではないか。やってみなければわからないことでありますが、率直な印象として、こんな感じを持っているところでございます。

小沢(鋭)委員 おっしゃるとおり、外交交渉としては極めて難しい、こういうふうに思います。

 ただ、きのうの参考人の方の意見でも、要は、発効する前だったらチャンスがある、こういう言い方だったんですね。でありますので、発効する前ということは、さっきからの話でいえば、アメリカが批准をきちっとする前ということであれば、まだ時間の余裕があるのかなと思っておりまして、私自身は個人的に、スピード感を持ってやっていくこの時代で七十年はちょっと長いかな、こういう印象があるものですから、こんな問題提起をさせていただいたところでございます。

 それでは、次に、農業の話を改めてさせていただきたいと思います。

 この間、集中審議で我が党の基本的な考え方を総理に申し上げましたらば、総理の方からも、基本的なスタンスは同じだと思っています、こういうお話があって、であるならば、強い農業、攻めの農業をつくるためには、我が党は、減反の廃止、農地法改正、それから農協の独占禁止法適用除外、こういった具体的な提案をしていますが、そういう具体的な提案を進めないと農業は変わりませんよ、こういう話を申し上げました。それで言いっ放しになっちゃっているものですから、きょうは農水大臣にそのあたりを少しまず聞かせていただきたいと思っています。

 この間も聞いていただいておわかりのように、強い農業をつくるということは、輸出できる、例えば米をつくるということで考えれば、減反政策をやめることが重要だ、なぜならば、減反、生産調整があれば、米の価格は高どまりして、いわゆる輸出はなかなか進まない、価格が安くなれば輸出が進むんですから、減反政策を廃止することが重要だ、こういう話をしましたが、まず、この点に関してはどうでしょうか。

山本(有)国務大臣 まず、米政策の見直しの現状でございますが、これまでは行政が生産数量目標の配分を行ってきました。平成三十年産を目途に、今回、行政による生産数量目標の配分に頼らないで、農業者がマーケットを見ながら、みずからの経営判断によりまして、需要に応じた生産ができる環境整備を進めることとしております。

 あわせまして、需要のある飼料用米や麦、大豆等の本作化を進めることで水田のフル活用を図りまして、自給率、自給力の向上を図ることとしております。

 このように、政府としましては需要に応じた米生産を推進しているところでございまして、御指摘のように、生産調整の廃止により米の需給を緩和させて価格を引き下げるといった考えはとっておりません。

 他方、このような取り組みを進めつつも、国内における主食用米の需要が年間八万トンずつ減少しているわけでございます。米の需給及び価格の安定を図っていくためには、主食用米以外の作物への転換とあわせまして、御指摘の、海外における日本産米の需要を拡大していくことが重要であると考えております。

 具体的には、機能性成分を売りにしたPR、売り方の多様化、日本産米の品質の高さを海外に積極的にPRしていく取り組み、生産、流通コストの削減を図ることで価格競争力を高めていくことが重要というように考えておりまして、輸出を本格化しなければならないというように思っております。

小沢(鋭)委員 御丁寧な御答弁をありがとうございます。

 お話は今の政府の方針として十分わかるんですが、前回も申し上げましたけれども、一九九三年にガット・ウルグアイ・ラウンドで米の一部輸入が始まりました。そのときの政権は細川政権、日本新党です。自民党じゃないんです。

 今回、このTPPは極めて重要なタイミングだ、こう思っていて、本当に農政を強い農政、攻めの農政に変えるのであれば、基本的なスタンスを変えなきゃだめなんじゃないか、こういう話をずっと申し上げているんです。弱い立場の人には直接支払制度できちっと対応すればいい、こういうふうに申し上げていて、一九九三年から二十三年間たちましたけれども、日本の農業は基本的にほとんど変わっていないというのが私の認識です。

 今の認識を申し上げて、農地法の話あるいは農協の話はありますけれども、時間が来ましたので、これで終わらせていただきますが、引き続き議論をさせていただいて、本当に強い農業をつくる、そのためには自民党の今の政策を変えなきゃだめだ。我々は自民党を超える政策を出していきますから、どうぞ御勘案いただきたいとお願い申し上げます。

 以上です。ありがとうございました。

塩谷委員長 この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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