衆議院

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第3号 令和5年4月28日(金曜日)

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令和五年四月二十八日(金曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

  財務金融委員会

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      加藤 竜祥君    金子 俊平君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    津島  淳君

      中山 展宏君    葉梨 康弘君

      藤原  崇君    八木 哲也君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    道下 大樹君

      米山 隆一君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

  安全保障委員会

   委員長 鬼木  誠君

   理事 大塚  拓君 理事 國場幸之助君

   理事 宮澤 博行君 理事 若宮 健嗣君

   理事 伊藤 俊輔君 理事 篠原  豪君

   理事 三木 圭恵君 理事 浜地 雅一君

      大岡 敏孝君    木村 次郎君

      武田 良太君    渡海紀三朗君

      中曽根康隆君    長島 昭久君

      細野 豪志君    松島みどり君

      山本ともひろ君    玄葉光一郎君

      重徳 和彦君    渡辺  周君

      浅川 義治君    美延 映夫君

      河西 宏一君  斎藤アレックス君

      赤嶺 政賢君

    …………………………………

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   防衛大臣政務官      木村 次郎君

   参考人

   (慶應義塾大学総合政策学部教授)

   (公益財団法人国際文化会館常務理事)

   (APIプレジデント)  神保  謙君

   参考人

   (東京大学公共政策大学院客員教授)        高見澤將林君

   参考人

   (元海上自衛隊自衛艦隊司令官)          香田 洋二君

   参考人

   (嘉悦大学教授)     高橋 洋一君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

   安全保障委員会専門員   奥  克彦君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案(内閣提出第一号)


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより財務金融委員会安全保障委員会連合審査会を開会いたします。

 内閣提出、我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾大学総合政策学部教授、公益財団法人国際文化会館常務理事、APIプレジデント神保謙君、東京大学公共政策大学院客員教授高見澤將林君、元海上自衛隊自衛艦隊司令官香田洋二君、嘉悦大学教授高橋洋一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。

 本日は、御多用のところ御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず神保参考人にお願いいたします。

神保参考人 慶應義塾大学の神保でございます。

 本日は、貴重な機会にお招きいただきましたことを委員の皆様に深く御礼申し上げたいと思います。

 私自身は、安全保障、防衛問題の専門家として、また、本日は参考人として、防衛政策、軍事、財政、それぞれの専門の皆さんがいらっしゃいますので、私の方からは、今回の戦略三文書と、その防衛力の抜本的な強化の前提となっている考え方について申し上げまして、その後の議論に資する形で問題提起をさせていただければと思っております。

 本日お配りした資料に沿って進めていきたいと思います。

 まず、前提となる、日本を取り巻く安全保障環境について申し上げます。

 これまでの、安全保障政策の従来からあった前提というのは、アメリカの圧倒的な軍事的優位が西太平洋、アジア太平洋において確立していたということを前提に組み上げられてきたということだったと思います。

 今日の前提は、それが、特に中国のいわゆるA2AD、接近阻止、地域拒否環境が拡大することによって、アメリカの前方展開戦力及び戦力投射能力の優位性自体が自明とは言えない状況となってしまっているということに加えて、日本と中国との関係でいいますと、大体二〇〇五年ぐらいまでは日本の防衛力と中国の軍事費というのは大体同じぐらいの規模だったわけですけれども、それが今日であると四倍、五倍。防衛費の対GDP比一%のまま二〇三〇年代を迎えたとすると、恐らく実質の軍事費の差というのは一対九から一対十へと拡大する、そのぐらいの物すごいギャップの拡大というものが生じているという状況です。

 その中で、二〇一八年十二月の防衛計画の大綱では、初めて、もし自衛隊が航空、海上優勢が確保できない場合、こういう文言が加わったことに見られるように、様々な自衛隊・防衛省の戦力評価の中で、この優勢という概念が、海上及び航空面に関して極めて厳しい環境になっているということを前提として組み上げられた安全保障戦略であるというふうに考えております。

 その中で、今回の三文書では、必ずしも、これが何々戦略であるという戦略の名称自体は明示していないわけなんですけれども、専門家の立場からして、これは、いわゆる日本が採用した積極的な拒否戦略、アクティブディナイアルということが今回の鍵概念であるというふうに捉えております。

 これはどういう概念かというと、必ずしも、今回の防衛費の増強、実質、防衛費、GDPの二%ということを一つの目安としてこれから積み上げていくわけでございますけれども、仮にこの二%を達成したとしても、中国の軍事費にマッチするような規模が確保できるとは言えません。こちらの表にあるように、恐らく、二%を確保したとしても、二〇三〇年代前半の日本の防衛力は恐らく中国の軍事費の五分の一程度であろうというふうに考えているわけでございます。

 したがって、日本の防衛力が確保すべき能力というのは、必ずしも、中国の軍事力と日本の防衛力を規模的に、量的にマッチさせて、そこで均衡を保つことによって抑止力を発揮するというよりは、そうではなくて、中国が仮に力による現状変更を試みようとしたとしても、それがペイしないような形で、つまり、彼らのいわゆる作戦遂行能力自体を自衛隊の能力がどれだけ拒否できるかということによって組み立てられた拒否的抑止の概念、これによって積み上げられたのが今日の三文書が目指している防衛力の姿だというのが私の解釈ということでございます。

 それに従って、二番以降、どのような形で装備計画等を作り上げていったのかということを申し上げていきたいと思います。

 二ページ目以降を御覧いただきますと、陸海空それぞれの形で様々なこれから装備、能力を培っていくということなんですけれども、防衛省が示しました主たる七分野というのは大変重要であるということでございまして、基本的な考え方は、向こう五年間は、現有の装備をより充実化させていって、それがいわゆるサステーナビリティーとか強靱性といったものに資する形で強化をしていく。特に、武器弾薬、そしてその貯蔵施設、そしてそれをいわゆる機動戦力としてモービライズしていくための装備というものが向こう五年間大変重要だということが、七分野の以下の最後の二つですね、示されたところで強調されていた内容でございます。

 それと同時並行的に目玉として挙げられているのがいわゆる反撃能力を含む話ですけれども、先進的なスタンドオフ防衛という体制を様々なプラットフォームによって整えていくということと、そして統合ミサイル防空、総合的なミサイル防衛システムというものを整備していくということが大事な要素となっているということでございます。

 重要なことはタイムラインでございまして、向こう五年間と、そしてそれから二〇三二年までに、我々の自衛隊がどのような形で、安全保障環境にマッチした形で、積極的な拒否戦略を充当するために必要な装備を整えていけるかということがこれからの装備計画の中では大変重要だということを申し上げたいと思います。

 この統合ミサイル防空に関しましては、当然、今、北朝鮮、中国は様々なミサイルを強化しているわけですけれども、そのミサイルの種類、撃ち方、その運用の仕方というものが大変多様化しているわけでございます。

 そういったことから考えますと、従来の二層構え、いわゆるPAC3とSM3による低高度と中高高度の防衛に加えて、例えば、巡航ミサイル、極超音速、変則軌道のミサイル等に対応できるようなシステムとして二〇二〇年代後半を迎えていくということが今まで以上に大変重要な投資ということになると思います。

 スタンドオフ防衛能力と反撃能力に関しましては、様々な御意見がこの委員会の中でもあるということを承知しております。こちらも、細かくいくと、対北朝鮮に関しましては、当然、日本を射程に収めるミサイルの脅威をどれだけ局限するかということを、ミサイル防衛の強化を通じて強化すると同時に、その反撃能力を装備することによって、飛来するミサイルの総数を超えたり、あるいはその被害を局限したり、場合によっては北朝鮮のミサイル発射という作戦機能自体を妨害していく、こういったことに使っていくことが大変重要だということに考えているのに加えて、当然、東シナ海、非常に広域な海や、そして中国本土を含めた陸地、いわゆる固定目標に対しても我々が攻撃をできる能力を持つことによって、自衛隊自身の攻撃の縦深性、縦深性というのは広く深いという意味ですけれども、それを上げることによって我が国の防衛自体の体制というものを手厚くしていくと同時に、当然、これから考えるべきは、より高強度の、台湾海峡危機等を踏まえた様々なクライシスのシナリオに対しても、日本の装備というものが、自らの防衛と、そして同盟の協力という中で、その威力を発揮していくということのために装備計画を整えていくということが大変重要であろうというふうに考えているわけでございます。

 三番目は、先端技術の軍事分野での応用と研究開発ということでございますけれども、少子高齢化がこれからも進む日本の中で、日本の自衛隊の人員の充足率を整えていく、これからも大変難しい時代を迎えていくということになると思います。

 その中で、できるだけ、先進的なテクノロジーと、そして無人化技術、人工知能等のプロセッシングや識別機能、そしてそれをどういうふうに意思決定の中に応用していくのかという仕組みを整えることによって自衛隊の機能というものを飛躍的に伸ばしていくための研究開発、科学技術分野への投資というものを積極化していく必要があるというのが三番目でございます。

 四番目は日米同盟でございますけれども、この日米同盟が直面する最大の課題は、冒頭にも申し上げましたように、中国の軍事力の近代化による接近阻止、地域拒否の環境の拡大であるということに考えております。

 その中で、日米同盟の基本的な方針というのは、このA2AD環境の下であったとしても、アメリカ軍が前方展開を確保し、その戦域内、つまり、第一列島線と中国がみなすような地域の中で戦えるような作戦をしっかりと支援していく体制というものが重要だということになると思います。

 この中で、アメリカの海空軍の最新鋭の攻撃アセットが展開できるようになる状況というものは重要ですし、また、先ほど申し上げましたような、先進的なスタンドオフ攻撃を可能にするような追加アセットの配備というものを通してアメリカ軍が活動できる領域というものを確保するということが大変重要だということになっております。

 時間も限られておりますので、最後の六番と七番を申し上げて冒頭の発言を終わりにしたいというふうに思います。

 六番は、防衛技術基盤の拡充、国際共同研究、装備移転ということでございますけれども、この五年の期間を使いまして、日本の防衛技術基盤の強化、技術イノベーションを加速する仕組みというものを、是非構築を強化していただきたいというふうに考えております。とりわけ、無人化システム、ロボティクス、ナノテクノロジー、そして人工知能の領域、これが軍事分野で、各国で様々な形で実装化される中で、日本にとって戦略的に重要な分野で技術的な優位性を確保するということが大変重要ということでございます。

 そのために、防衛装備庁の体制強化、あるいは、国内企業や大学との連携強化や国際共同研究体制の強化を通じて、未来における戦い方の在り方ということについての革新的な改革というものを是非御支援いただきたいというふうに考えているところでございます。

 最後に、防衛力の抜本的な強化に向けた財政基盤、まさにこの委員会が対象としている議題ということでございますけれども、ポツの二番目、戦略性に基づいた防衛力の整備という観点から、実効的な防衛力の確保、七分野への重点的な配分をするとともに、日本の防衛構想に適合することを前提として、今後の技術革新のタイムラインに沿った、様々な技術というのはアベーラビリティーのタイムラインが異なるわけでございますから、これに沿った研究開発への投資と、防衛産業と技術基盤の確保ということが、予算の傾斜配分ということで大変重要だということが一点目でございます。

 最後に、財政的基盤の整備と最適化への努力ということですけれども、四十三兆円という向こう五年間の予算の確保の中でもということなんですが、戦略的な防衛力の整備のための自衛隊の組織改編、戦力組成の最適化、装備体系の最適化、特にレガシー装備体系を見直し、優先順位を明確化し、様々な事業に関する見直しということを並行的に進め、仕様の共通化、最適化、調達の効率化、長期契約の活用や開発費の高騰リスクの低減、そして安全保障上の優先度を踏まえた研究開発の重点化、研究開発のプロセスの最適化などを通じた努力を通じまして、財政の基盤整備というものを効率的に進めていくということがこれからの防衛政策にとって喫緊の課題であるということを申し上げたいと思います。

 私からの問題提起とさせていただきました。どうもありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 次に、高見澤参考人にお願いいたします。

高見澤参考人 御紹介いただきました高見澤です。

 今日は、貴重な機会をありがとうございます。

 昨年十二月に策定された戦略三文書に示されております国際情勢認識、政策課題、事業内容、いずれを取りましても、賛否はありますけれども、画期的なものであるというふうに考えております。

 私は、今回の戦略というのは、国際社会の多面的な構造変化に対応して、我が国として分野横断的で実践的対応力を緊急的に整備する、それとともに、機能的、限定的な抑止力の構築を図り、持続的で不可分一体の安全保障力の実現を目指すものだというふうに言えるかと思います。

 これまで、大綱の見直しなどにおいては、その都度、国際情勢認識と構想のアップデートが図られてきたわけです。残念ながら、それを裏づける予算配分には大きな制約がありました。

 お配りしてあります資料一を御覧いただきますと、ここに大きな谷ができているわけでございまして、仮に、一番左の年から四半世紀、二十五年間、年率一%でもいいから継続的な伸びが確保されていたという場合には、令和四年の防衛予算は六・三兆円を超えているということになるわけでして、この累積効果、いわば負の累積効果というのが非常に大きい。もしそれが順調に伸びていれば、累積のお金も含めますと、状況は大きく改善されていたのではないかという感じがしております。

 そういうこともあって、今回、大幅な資源増加と、しかも、安全保障と経済財政の関係について明確な位置づけがなされたということは、非常に意義深いものではないかと考えております。

 これによりまして維持整備費ですとか施設整備などに光が当たったということは、資料二を御覧いただきますと、非常に維持費が高騰化している、しかも人員は非常に厳しいという中で、即応態勢や装備品の可動率の低下という自衛隊の現場が抱えていた問題、それが少しでもその苦悩の解消につながるものではないかというふうに考えております。

 新たな戦略におきましては、資料三に示すとおり、我が国の安全保障を支えるために強化すべき国内基盤というものが掲げられておりまして、この中に、経済財政基盤の強化が最初に来ております。安全保障と経済成長の好循環、有事の際の持続的な対応能力の確保、有事の際の財政需要の大幅な拡大への対応などの観点から、経済、金融、財政の基盤の強化に不断に取り組む重要性が指摘されました。また、それが防衛力の抜本的強化を含む安全保障政策を継続的かつ安定的に実施していく前提でもある、こういう認識が示されております。この点は今後の対応を考える上で重要な視点であると思いますし、まさにそのために本委員会で法案審議が行われているものと認識をしております。

 岸田総理が、「スピード感を持って防衛力を抜本的に強化していきます。」と述べられたのは、実はウクライナ侵攻前の令和三年の十二月の所信表明演説だったわけです。つまり、ロシアのウクライナ侵攻の前に起きたことなのに抜本的な強化ということを言っていたわけですけれども、この一年以上にわたるウクライナ侵攻の、戦争の展開というのは、我が国としても、幅広い分野における総合的で持続的な対応能力を確保することがいかに重要かということを再認識させるものでありました。

 この背景には、やはりウクライナ戦争以前から生じていた国際社会の多面的な構造変化があると思います。その点については資料四を御覧いただきますとよく分かるわけですけれども、私は、この中でも、グローバリゼーションと相互依存のみによって国際社会の平和と安定は保障されないことが改めて明らかになったということ、さらには、インド太平洋地域、とりわけ東アジアにおいて、戦後の安定した国際秩序の根幹を揺るがしかねない深刻な事態が発生する可能性が排除されない、この二つの認識が重要だというふうに考えております。

 資料五と六は、少し細かい資料になりますけれども、これまで累次策定されてきた防衛大綱の国際情勢認識などの変遷を示したものです。青い部分は相互依存関係による国際関係の安定化ということでございますけれども、三〇大綱をやや別にすれば、この点が強調されてきたというふうに思います。

 そしてまた、防衛力についても、深刻な事態を想定した必要な対応能力を確保する、そういう視点より、その時点の現有防衛力を基準に調整を行うという手法が取られてきたということが否めないと思います。長い間我が国が前提としてきた戦略環境、こうした戦略環境にこれまで見られなかった質的変化が生じた結果、新たな対応が迫られている。それが防衛力のプランニングの面でも財政面でも迫られているということではないかと思います。

 したがいまして、今回の特別措置法案というものは、こうした国際情勢の変化を踏まえて、その悪化を防ぎ、これを反転させるという観点から評価すべきものだと考えております。

 また、新たな防衛力整備計画の検討に当たっては、資料七にあるような形で、相手の能力と新しい戦い方を踏まえ、想定される各種事態への対応について、能力評価等を通じた分析により将来の防衛力の在り方の検討が行われたわけでございます。そして、その上で、防衛力の達成目標について、編成定数とか装備規模という従来の手法にとどまらず、それに先立って主要分野ごとの能力目標が示されております。しかも、五年後と十年後という二段階の目標を具体的に設定したということであります。ですから、今回の三文書において、このように諸計画の体系が明確になったということも画期的なことではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、こうした事業の具体化には従来の戦略の実施過程とは全く異なる発想と格別の努力が求められていると考えます。検討を先送りせずに結論を出すスピード感、それから、事業の見える化など透明性のあるプロセスの確立が不可欠だと思います。また、これを実現するためには、財源やそれに加えて人材の確保が大きな課題であると思います。これらの措置の実施に当たっても、新しいアプローチに見合うような、従来にない機動的な手法を積極的に取り入れることが重要であると考えています。

 今回の戦略三文書には、こうした観点が随所に含まれております。非常にすばらしい点もあると思います。しかし、私は、計画の策定よりもその具体化というのがいかに困難かということを非常に強く感じておりますので、資料八にありますけれども、こうした戦略を実現するための方策について、繰り返しになりますけれども、この場で私が重要と考える点を述べさせていただきたいと思います。

 その項目は五つありますけれども、ここでは、官民協力の体制の確立のためのソフトウェアの強化、さらには、変化に応じて柔軟に計画、事業を見直すメカニズムの確立、そして、関係府省の各種事業の見える化、生きたデータベース化、さらには、計画の戦略的、機動的実施、検証のためのメカニズムの構築ということで書いております。

 その中では、まず何より、政府による積極的な情報発信、あるいは関係者間における機微なものを含めた情報共有を可能にする制度の導入、さらには国民の安全保障意識の形成、定期的な訓練やセミナーなどを通じたオール・ジャパンとしての能力の検証などが必要だというふうに思っております。

 また、年度予算制度の制約の克服や安全保障環境への加速化という観点からは、柔軟に計画、事業を見直し、機動的かつスピーディーに計画を実施していくということが非常に重要であると思います。そのためには、研究開発における進行段階での目標水準の引上げ、あるいはリスクが高くとも先端的な内容を目指す研究に対する支援の拡大、あるいは事業の進捗の加速化に対するインセンティブ規定の活用、集中的整備のための予算の柔軟配分、さらには機動的な資金の活用や会計手続などの簡素化であります。

 こうしたことは安保委員会でも審議された法案でかなりの実現はしておりますけれども、更に加速化させていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 最後になりますけれども、新たな国家安全保障戦略の最後に「結語」として、「我々は今、希望の世界か、困難と不信の世界のいずれかに進む分岐点にあり、そのどちらを選び取るかは、今後の我が国を含む国際社会の行動にかかっている。」、こういう「結語」がございます。

 私自身、新たな戦略のこの言葉には非常に共感するものでありまして、まさに、先を見通すための情報の統合力、変化に対する感度豊かな戦略的機敏さ、そして、計画を実行、検証、改善し続ける粘り強さというものが必要だというふうに思っております。

 国会及び政府におかれましては、官民を挙げて幅広い人材がこうした認識の下に、それぞれの持ち場で積極的に対応できるような環境を構築していただきたい。そのために、複数の選択肢と結論に至る思考過程、さらにはその判断に至った考慮要素を明示され、客観的なデータと関連情報を十分に発出され、検証を踏まえた政策の機動的な転換と迅速な実施に努めていただくようお願いするところでございます。

 今日は、御清聴ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 次に、香田参考人にお願いいたします。

香田参考人 元自衛隊OBの香田でございます。

 今までお二方の参考人が、我が国の新しい防衛戦略、取組、問題点、特徴等を非常に正確に話されまして、私は今日、この委員会の元々の趣旨から、財源確保ということについて元自衛官から見てどのように映るかということについて申し上げます。

 それ以外については、小異はありますけれども、ずっとある意味一緒にやってきた仲間で、ほぼ大きなところは一緒でございますので、元自衛官がお金のことを言うのかと言われそうでございますけれども、少し、今まで現場でやってきた者から、予算というものがどういうふうに見えているのか、あるいは予算確保がどういうふうに映っているのかということについて申し上げたいと思います。

 まず、令和五年度以降の我が国の防衛力の抜本的な強化、このための防衛力をGDPの約二%というところまで増額するという政策につきましては、私が自衛隊に入隊した頃なんですが、三木内閣以来のいわゆるGDP一%の目安といいますか、シーリングに強く縛られてきた、その中で防衛大学校それから自衛隊で四十年以上を勤務してきた者としては、やはり画期的なものとしてこれは支持もしますし、高く評価されるものだというふうに考えます。

 今回の特別措置法につきまして、私自身が専門家ではありませんので、財務省あるいは各政党のホームページ等で、私自身、限られた範囲でございますけれども、勉強したところですと、今回の特別措置法というのは、防衛費の増加分、これをカバーするために税外収入所要として約四兆六千億円必要である、こういう見積りの下、現行法でカバーできない事項、つまり、一兆二千億円程度の外国為替資金特別会計繰入措置、それから財政投融資関連で約二千億円、それから国立病院機構、地域医療機能推進機構等の繰入金約一千億円ということで、合計一兆五千億円を確保するための法律というふうに認識をしております。

 ただし、これでは当然、総額四兆六千億円の増額分をカバーできませんので、この特措法の差額、約三兆一千億円につきましても特別会計の繰入金などの税外収入を充当して、全体として増額をする防衛予算を確保するという大きな考えに立っているというふうに認識をしております。

 そして、今回の特措法の措置、それとそれ以外の税外収入、これによって防衛費の増額分を賄うという手法につきましては、防衛費増加分の収支バランスを取るという政府の一つの重要な政策としては評価できるものというふうに考えます。

 ただし、同時に、本来、我が国の防衛というものは社会保障あるいは教育などと並ぶ国家と我が国社会の礎でありまして、その観点からは、今回の防衛費負担の政策、政府の方針の柱であるバランスシートの確保で所要予算措置を講じるということについては、やはりいささか不十分であろうというふうに考えるところであります。

 つまり、我が国の防衛、これに国民がそれぞれの立場でひとしく参画をする。よく負担と言われますけれども、これはやはり参画が必要だというふうに考えますけれども、そういう国家の基本を重視して、それから予算措置を取っていく。つまり、究極的には、税金で国民に防衛費の増額をお願いするということが、自衛隊としては、国民にお願いすることは多くなるんですけれども、自衛隊と国民の距離、我が国の安全保障、防衛と国民の距離というのは、結果的には一番近くなるんじゃないかというふうに考えるところであります。

 特に、私が自衛隊に勤務した経験から申し上げますと、我が国の防衛は全国民の責任という基本的な事項が、今まではですよ、憲法へのある意味の遠慮、あるいは、更に昔になりますけれども、各党の大幅な安全保障政策、防衛政策の対立によって、国防が国民の重要な、一番の事項なんだ、社会の基礎なんだということについて掘り下げた論議がなされてこなかったということについては、自衛隊におりながら、非常に苦く、歯がゆい思いをしてきたところも事実でございます。

 そして、今回、自衛隊の能力強化あるいは防衛費の増額につきまして大多数の国民の理解と支持が間違いなく高まっている現状でありますけれども、この時点で、国民に改めて、我が国の防衛は、自衛隊の占有物にあらず、全ての国民がひとしく対応すべき国家の基本であるという大原則を、国会として理解をしていただく、あるいは、政府の政策として理解をしていくという観点からの論議が非常に重要ではないかというふうに考えております。

 時間の制約で、今まで申し上げてきたことをまとめますと、今回の予算確保政策論議、この中で、元自衛官として、そして実際に海上自衛隊の予算を直接十年間担当した立場として見ますと、やはり欠けているところというのは、我が国の防衛の最も重要な要素である、国民一人一人がそれぞれの立場で直接間接に国防に関与していく自覚、これを養成するという政府と国会の覚悟と決意、ここが問われるところだというふうに考えます。

 国民のこの自覚なくしては、幾らGDPの二%というふうな大きな予算を投入して整備をした最新装備あるいは最強の防衛体制を完全に機能させることは不可能である、あるいは非常に難しいということは、まさに今のウクライナの国民の方々の頑張り、これが示すところだというふうに考えます。

 その裏づけとして、国民の防衛への参画意識の高揚という基礎事項を防衛予算を通じて実行する。そのためには、財源というものをどうするかということについて慎重かつ精緻な論議が必要だというふうに考えます。

 最後に、国民の参画意識なき自衛隊の我が国防衛任務の完遂、これは極めて困難であると考えます。厳しく申し上げれば、不可能に近いというふうに言えると思います。

 ということを申し上げまして、また、この機会を与えていただいたことに感謝を申し上げまして、私の陳述を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 次に、高橋参考人にお願いいたします。

高橋参考人 高橋洋一でございます。

 本日、このような機会を与えていただきまして、誠にありがとうございます。

 私の方は、資料を用意しましたのでそれに沿ってお話ししますけれども、元々財務官僚だったので、もしおまえが担当だったらどのように予算を組むか、そういう観点をちょっと入れながら話をさせていただきたいと思います。

 最初に二ページ目ですけれども、新たな防衛力整備に関する財源確保というので、これは事務局からいただいた資料ですけれども、防衛力整備の水準が四十三兆円ですけれども、予算総額としては四十・五兆円。それで、これは今の予算を伸ばして二十五・九兆円ですから、追加的には十四・六兆円という形であります。

 それで、その中で内訳がありまして、十四・六兆円の中で、上から、税制措置、これは増税ですね。次に防衛力強化資金、これは今回の法律の話だと思います。それとあと決算剰余金の活用、これがあって、その後に歳出改革というのがあって、それぞれ数字が出ているんですね。防衛力強化資金は四・六兆円、決算剰余金の活用というのは三・五兆円、あと歳出改革というのが三と書いてあるんですね。なぜか一番上の赤い数字だけ余り数字が書いてないんですけれども、引き算すれば出てきます。引き算すれば三・五です。五年間で三・五を確保すればいい、そういうふうなことであります。

 多分これは、色を変えているのはちょっと意味がありまして、青いやつとそうじゃないやつと分かれていますね。

 青いやつというのは、私の経験では、歳出改革というのは、言うはやすしで、いろいろな省庁から非常に文句が来るので、結構これは実行するのは難しいです。あと決算剰余金の話、これは財務省の方がかなり、いろいろな会計操作の関係で数字が動き得るやつですね。

 それで、その後の数字をこの法律でということで、先ほどから言われましたけれども、外為特会の話というのと財投、それとあとその他というので四・六兆円ということであります。

 その次の三ページ目。

 私は財務官僚だったんですけれども、アメリカに留学したときに、何を勉強してもいいと言われたので、元々データ分析が趣味だったので、戦争の確率というのを、過去の戦争データをデータ分析して、どのようにしたら減るかという話をやりました。もちろん今までの御発言になった参考人ほど専門家ではなくて、非常に漠とした話なんですけれども。

 そのときに、過去の、三百年間ぐらいですかね、戦争データを見ていますと、大体三つぐらいの要素で戦争の確率は決まる。それで、それをどういうふうにやるかというと、戦争の確率は減らせるというのが実は統計的には言えます。

 一つは、相手国が民主主義国かどうかというのは非常に大きな違いがあります。

 これは、日本をそのまま当てはめますと、周辺三か国は非民主主義国で核兵器保有国ですから、これは極めて危険地帯という形に出てきます。これはもういかんともし難いですね。要するに、相手国の話ですから。

 そうすると、二番目、三番目でやるんですけれども、防衛費のアンバランスというのを防ぐというのが一番、ファーストステップですね。今回は、この防衛力強化というのはその第一歩というふうに評価できると思います。

 三番目は、同盟関係を強化するということです。

 これは、ちょっと前に安保法制をやっていただいたのでそれなりに戦争確率は減っているんですけれども、それでも不完全であります。

 でも、一番目がある以上、二番目と三番目でやるしかない。

 これがいわゆる抑止力という話でして、実際に相手を思いとどまらせるという意味で、簡単に言っちゃうと、何かあったときには二倍返しする、三倍返しする、そういうふうな言い方になります。そういうことで相手に思いとどまらせるというのが一番ポイントであって、そこが結構データ分析で出るんですね。実際、こういう防衛力の話とか、同盟関係を強化しますと、戦争確率は有意に減ります。

 ということで、今回、その意味では、総論的には結構評価はできるんですけれども、あと、財源の話にちょっと関わっていきたいと思います。それは、次の四ページ目を御覧になっていただきたいと思います。これで四つほど。

 私が若しくはあれでしたら、先ほど申し上げた外為。外為といっても、これは利差益というやつでして、昔からやっているやつです。その意味では新しい手法ではなくて、私は以前、小泉政権のときに埋蔵金男と言われましたけれども、そのときもやりました。

 それで、それ以外でちょっと考えられるのを四つほど挙げました。

 一つは建設国債、もうちょっと増額できるでしょうと。それとあと、国債整理基金特会で債務償還費が使えますねと。それとあと、外為特会、ここは評価益ですね、評価益のところは使えますよと。それからもう一個は、ふるさと納税というのがありますね。それぞれについてお話ししたいと思います。

 最初の建設国債ですけれども、ここは、安倍元総理が防衛国債を言って、次の五ページ目の資料です。

 今度の新しい予算では、それなりに広がっています。建設国債対象経費というのは予算総則に全部載っているんですけれども、以前は、防衛省のところは欄がなかったですね。欄がなくて、海上保安庁のところしかなくて、海上保安庁のところで船舶建造費しかなかったんですね。それに今回は防衛省の欄ができておるので、これはこれで一歩前進だと思いますけれども、ちょっと見ると、海の話ばかりですね。何でほかの話がないのかよく分からないです。多分、海上保安庁に合わせたんでしょう。海上保安庁を建設国債対象経費でやって、私はいろいろなところで言いましたけれども、海上保安庁は当然のことながら海のものしかないんですけれども、自衛隊は陸も空もあるわけですから、どうしてここは海なのか私にはよく分からないところであります。

 ちなみに、ここにずっと防衛省の欄がなかったのは、私は物すごく不思議に思っていまして、ちょっと変な仮説を持っております。私は元々財務官僚でしたし、GDP比一%というのがずっと続いたというのもちょっと不思議な話なのでここにも変な仮説を私は持っておりまして、ずばり言うと、防衛省の会計課長、これが財務省からの出向者であるからというのが私の仮説であります。まだ検証されておりません。大体、出向して変な予算要求をすると帰ってこれなくなるといううわさがあったということだけ言っておきます。本当にそうだったかどうかは分かりません。

 あと、国債を出すと大変だということに対しては、実は、財政を見るときに、これはバランスシートで見るのが当たり前です。まず、連結された政府、それが次の六ページにあります。

 ここで、政府の子会社を全部含めた、連結したもので見るというのが普通です。これは統合政府という見方です。そういう観点から出すと、当分の間大丈夫なんですね。

 実は、このほかにも隠れた資産として徴税権というのが数百兆ありますので、日本の財政がちょっとやそっとではへこたれるような話ではないということだけ言っておきたいと思います。

 実は、債務が、国債が大きいから大変だと言う人がいますけれども、普通はこのバランスシートで見ていて、これが実は財政の破綻確率に極めて関係があるというのは過去のデータから見ても実証もされているところでもあります。

 これは、もうちょっと言うと、建設国債を出していて、抑止力の観点から考えると、実際に資産はまだ残るんですよね。だから、その意味で、財政を余り悪化させる話じゃないので、こういうふうに国債を活用するという手はあるとは思います。

 次の七ページ、これは国債に関連する話ですけれども、債務償還費というのがありまして、これは日本独特であります。ちなみに、これは財務省の資料から、私も役人のときにこれも書いた記憶があるんですけれども、それから取ってきました。

 先進各国、これは減債基金という言い方をするんですけれども、実は、国債整理基金みたいなもので、基金を積んでおくというのはないです。ですから、その意味では、債務償還費を計上する国もない。だから、あれを使ってもどうってことない。あれを使ったらどうなるかというと、その分、国債が出ていますので、ある意味で防衛国債と同じような形になります。これが普通であります。

 ですから、国債を使うのは全然不思議じゃなくて、例えばドイツなんかも今回のウクライナ危機の関係で基金をつくりましたけれども、これも国債でやっております。

 その次のページ、これが外為で、利差益というのは今回も入っています。そこは分かります。でも、評価益の話。これは、評価益を入れると残高が減るんですけれども、日本は評価益を使っていないという資料であります。

 G20の中で外貨準備が、これは大体外為特会の資産なんですけれども、これの対GDP比を見ると、変動相場制の国、自由変動相場制と書いてありますけれども、日本だけが突出して大きいというので、非常に変な形になっております。ですから、これを活用するという手はあるんだと思います。

 その次は、ふるさと納税、次のページ、九ページ目に入ります。

 この制度、実は私が結構関わってつくって、菅さんが総務大臣のときにつくったんですけれども、言ってみると、寄附するけれどもその分だけ税額控除するという仕組みで、非常に珍しい制度であることは間違いないんです。

 ですから、これをもって、寄附するけれども税金がその分安くなるという意味で、その当時、中川秀直さんが、これは家計が主計官になるのか、そういうふうな面白い表現をされましたけれども、全くそのとおりです。

 この点について、財務省の方は、これは予算から外れるから問題だという言い方をするんですけれども、税額控除するというのは法律で決めるわけなので、実は議会統制は整っています。要するに、議会統制するときに、法律と予算という二つのやり方があるというだけでして、財務省はいつも、これは予算じゃないからいかぬと言うんですけれども、それは自分で集めて配るのが仕事の人が言うというだけで、これはある意味で非常に民主的なやり方であります。

 ですから、こういうのを活用するという手もあると思いますし、これでやると納得感が非常に高いですね。ですから、それで活用するという手もあるということも申し上げておきたいと思います。

 以上、また繰り返しになりますけれども、四つほど、財源、簡単に確保できるのがあるので、何で増税なのか私にはちょっとさっぱり分からないというところで話を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

塚田委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。高村正大君。

高村委員 自由民主党の高村正大です。

 神保先生、高見澤先生、香田先生、高橋先生、ありがとうございました。

 いろいろ質問も作ってきたんですけれども、今日ちょっと伺った中で、僕はすごくやはり正しいなと思うのが、香田先生の、我が国の防衛は、自衛隊の占有物にあらず、全ての国民がひとしく負担するべき国家の基本、これはまさにそのとおりだと思うんですね。

 そして、高橋先生がおっしゃった、新たな財源の中で、水色の部分、削減する部分というのはなかなか各省庁も受け入れられない、これも多分事実なんだと思います。

 今のこの厳しい安全保障環境が長引けば長引くほど、この部分で今考えている財源じゃなかなか足りなくなってくることが想定されると思います。

 そして、やはり安定財源というのを考えた場合、高橋先生は、まだ国債とかいろいろな余地がある、あるいはほかの財源もあるというお話だったんですけれども、やはり、我々は、国民がしっかり自分事として防衛を考える際に、正面から、消費税も含めた、消費税をタブー視しない、こういった増税の議論もしていかなければならないんだと思います。

 この点について、四名の参考人の先生方から、どういう御意見かということを伺えればと思います。

神保参考人 まず、香田参考人がおっしゃられた、国防、日本の防衛は、自衛隊の占有物にあらず、国民がひとしくこれは責任を負うべき課題、そのとおりだと思います。また、防衛費、そしてこの自衛隊が強化された状態の受益者は誰かというと、これは国民一人一人ということになります。

 もちろん、そこに、どこに基地があるのか、どのような自治体が負担をしているのかというのはそれぞれ検討しなければならない内容だと思いますけれども、安全の受益者は国民だというのはそのとおりだというふうに思います。

 したがいまして、その受益者である国民が防衛にどのような形で関わるのかということにおいて、ある特定の人が出すというよりは、それぞれの国民が出していく方式というものが適当ではないか、ということを考えるというのが一点でございます。

 今回の法案の中で審議されているのは向こう五年間の話なんですけれども、実は、この防衛体制というものを持続的にしていくためには、更に五年、二〇三二年までの財政支出の規模、水準というものが一体どういう推移を描くのかということも踏まえた形での制度設計というものが大変重要なのではないかというふうに思います。

 五年間の予算の確保、いろいろ岸田総理以下、御準備されたということは大変高く評価したいというふうに思うんですけれども、それでは次の五年をどうしていくのかということも踏まえて制度設計をするということがもう一つの大きな課題ではないかと考えているところでございます。

高見澤参考人 今の御質問でございますけれども、安全保障の、国民が全体として考えていくべきというのは、私が先ほど配った資料の中にありますけれども、社会的基盤あるいは知的基盤ということで、まさに国民一人一人が安全保障意識をしっかり持つような形で、いろいろな知識も得て、判断材料を持った上でクリティカルシンキングをするということが非常に大事ではないかというふうに思っております。

 それから、財源の問題につきましては、今回の防衛力整備計画におけるいわゆる流れ出し、二〇二七年度予算以降に支出が必要な経費というのは非常に大きなものがございますので、そういったものを安定的に確保するためには、やはり長期的な視点が必要ではないかというふうに思っております。

 それで、私は、消費税の問題につきましては、ヨーロッパにいた経験からしますと、やはり、スウェーデンのようなタイプであるとか、いろいろな形ができるのではないか。ですから、教育、医療に対する非常に手厚い負担、それから、セーフティーネットを構築しながら、それぞれの人が積極的にいわゆるスキリングができるような環境をつくりながら、消費税というような形でやるというのは、私は一つの大きな方策ではないかなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、所得税率の問題もございますので、あくまで税は総合的な対応ということが専門家の考えだというふうに思いますけれども、私はやはり、とにかく積極的に、前向き志向でいく、縮み志向ではなくて、前向きな投資をする、そのためにはお金が必要だ、そのためにも税収を確保しなければならないという、縮み志向ではなくて、そういう前向き志向でいくべきものだというふうに考えております。

香田参考人 そもそも論としてはやはり税金ということを考えているんですけれども、私があえてここで今回申し上げさせていただいたのは、バランスシート論、財源論を余り、そこに集中してやりますと、国民は、我が国の防衛というのはやはり他人のことで、頭の上で空中戦をやっているというイメージを持たせるんじゃないか。

 そこで、私が政府と国会の覚悟と決意であると申し上げたのは、この論議の中で、私は、完全に税金でできると思う、恐らく非常に難しい、私自身も海上自衛隊の予算をやっていましたので。あるいは、今、高橋参考人が言われましたように、財源というのはいっぱいあるのでもっと利口にできるはずだという、これも知恵ですよね。恐らく、そのどこかの中間点であるんですが、その論議の過程の中で、国民の皆様に、あなたたちなんですよということをどう理解していただくか、そこが皆様に対しての真価が問われるところだと思います。

 ということを私は申し上げましたし、今の御質問に対するお答えとさせていただきたいと思います。

高橋参考人 防衛支出というのは非常に外部性がある支出ですね。あと、将来に対する投資。これは、参考人の方からも意見がありましたね。

 外部性があって、非常に将来に対する支出というものですと、ファイナンス論からいうと、これは実は国債が筋になります。国債だといっても、別に返さないというわけじゃないですからね。要するに、返す期間の問題の話だけなんですね。ですから、その意味では国債を出してやるのが筋で、ですから、ドイツなんかもそういう形でやったんだと思います。

 その意味で、税金だ税金だというと財源論としてもっともらしいんですけれども、それは経済をちょっと縮めてしまいます。大体、将来投資をするときに全部経常利益でやりますかと企業経営者に聞いたら、それはやらないというのが普通ですね。ですから、その意味で、私は、ファイナンス論から、税金だというのは直ちにいかないと思います。

高村委員 ありがとうございました。

 本当に、我々国会議員もしっかりと覚悟を持って国民に説明していく、こういうことをしなければならないというのはまさにそのとおりだと思います。

 そして、ちょっと、元々考えてきた質問を少しさせていただきたいと思います。

 今、我が国を取り巻く安全保障環境は、本当に厳しさを増している。そして、その中で、防衛力の強化、整備が喫緊の課題だということは、多少程度の違い、あるいは方向性の違いがあっても、ほとんど全ての方々の共通認識だと思っております。そして、何も、防衛力の強化というのは、戦争をするためじゃなくて、戦争を起こさないため、あるいは、それによって外交力を強化して、相手が、日本に手を出したら自分たちも大変な目に遭うから、やはり戦争はできないな、こういうことを思ってもらうことが最も大切だと思っております。

 今回、防衛費を大幅に増加させる以上、真に実効的な防衛力整備を進めてほしい、このように思っております。

 この防衛力整備に当たって、もちろん、我が国の特性を踏まえていかなければならない。我が国は海洋国家である、こういった地理的な特性もあります。こういったことを含めながら、今回の防衛力整備計画において、この地理的な特性がしっかりと考慮されているとお考えかどうか。この五年間で四十三兆円という非常に大きな防衛力整備計画の内容について、各参考人がどのように評価をされているかについて、教えていただければと思います。

神保参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、防衛力の内容を判断するに当たって幾つかの指標があると思っていまして、一つは規模、そしてもう一つは質、最後は運用、特に即応能力というところだと考えています。委員おっしゃいましたとおり、どのように戦争を起こさせないようにするのか、抑止力をどのように高めていくのかということを図るときに、この三つの指標というのはそれぞれ大変重要な役割を果たすということでございます。

 ロシアのウクライナ侵攻、なぜウクライナそして西側諸国はロシアのウクライナ侵攻を抑止できなかったのかということを考えたときに、これは検証が当然必要ですけれども、恐らく、ロシア側、そしてその意思決定者である最高指導者であるプーチン大統領が、このウクライナ戦争を、侵攻することによって得る利益は、それによって抵抗されるコストよりも高いと判断した。その判断というのは、恐らく相当程度過小評価だった。つまり、自分に対する過大評価、抵抗する側に対する過小評価であったということがあるんだと思います。

 この評価をしっかりと一致させて、やはり、どこかに侵攻したら、自分たちにとってより高いコストがかかるようになるんだなということは、それに応じた規模と質と即応能力が備えていられるか、それに一致していれば我々は正しい投資をして、それが足りなければ、それは正しい投資をしていないということになるんだと思います。

 その点でいいますと、特に、向こう五年間、現有装備をより実効的に高めていく努力というのは大変重要でありまして、例えば、今、ウクライナ戦争においてロシア軍が一日に使う弾薬量は数万発というふうに言われています、一番多いときは六、七万発というふうに。自衛隊は弾薬量は当然公開していないわけですけれども、同じような形で戦闘を行った場合にどの程度自衛隊の継戦能力が保てるのかというのは、恐らく大変これは厳しい数字になるだろうと私は想像しております。

 したがって、その継戦能力を通じて、日本がしっかりと、負けないための持続的な戦闘能力を維持するというのはまず大変重要な投資であるということは申し上げたいと思いまして、そのための予算が確保してあるということについては、大変心強いことであるというふうに思っております。

 また、日本の地理的な特性、特に中国、北朝鮮、ロシアと、我々は三正面を今相手にしているわけですね。前大綱のときまでというのは、これはウクライナ戦争が起こる前でしたから、我々が正面に見定めるべき北朝鮮と中国の軍事力に対して、ロシアは、どちらかというと、より、プラスとは言えないけれども、マイナスをできるだけ下げていく役割として、日ロの二国間の協力を深めていく、こういう戦略性があったんだと私自身は理解しているんですけれども、これも、昨年の二月二十四日の侵攻以降、日本政府は対ロ政策を完全に転換したということにおいていいますと、戦略論としては極めてコストのかかる方式ですけれども、我々は三正面の相手を対象とせざるを得ず、また、その三正面の相手には異なるパッケージングで防衛力を整備しなければいけないということを考えると、できるだけ、この三つの相手に対して共通基盤で整えられる装備は何かということをしっかりと考える。

 例えば、統合ミサイル防空というのは、これは広域防空ですから、北朝鮮であろうと中国であろうと、ロシアが仮に極東配備したミサイルがあったとしても共通で対応できるとか、あるいは、機動展開能力というのは、例えば、どこに装備が置かれていたとしても、比較的短時間で機動展開をして、そこで対処能力を示すことができる、こういった能力をそろえていくということが、いかに日本の安全保障の特性にとって重要かということを物語っているということであると思いますので、必ずしもこれがその脅威だけに特化した装備というよりも、より汎用性の高い装備として整えられているかどうかというのが一つの質の判断基準として大変重要なポイントではないかと考えております。

高見澤参考人 簡潔に申し上げたいと思います。

 まず、地理的な特性といった場合に、私は、やはり非常に大きいのは、中国、台湾、それからロシア、北朝鮮もありますけれども、やはり、海洋国家であるし、それから災害に非常に弱い国である。ここの部分を考えたときに、日本の対応というのは三重、四重に厳しいということでありますので、ある意味、そういった複雑な脅威に対してどういうふうに対応するかという優先度づけですね。

 それから、予算計上には皆さん熱心なんですけれども、実際にどう使われて成果が上がっているかという、そこの部分の検証と柔軟な対応というものをもっともっとやっていかなければいけないのではないかというのが、非常に、印象です。

 それで、あえて、宇宙、サイバー、いろいろなドメインがありますけれども、私は、やはり今後の日本の防衛力の設計に当たっては、情報、これは警戒監視能力もありますし、認知戦領域も含めた情報力の部分と、あとは、やはり水中ではないかと。水中優勢というか、我が国の周辺の海域における戦力というものをどういうふうに展開して、それで抑止力を高めていくのかということではないかなと。

 最後に申し上げれば、やはり意思決定のスピードだというふうに思います。これは、やはりいろいろな経済の問題でも、どの時点で対策を打つかによって大きく結果が変わってくると思いますけれども、国会も含めまして、日本全体としての意思決定のスピードを高めるということが非常に重要ではないかと思っております。

 以上です。

香田参考人 まず、実際に、冷戦時代にソ連、冷戦の後、テロとの対立の環境、それから中国と現場で向き合った身からしますと、恐らく皆さんに一番欠けているのは、中国も北朝鮮も日本を怖がっているということですよ。我々は間違いなく、同じ、高村先生が言われたような脅威意識を持っています。相手も同じです。我々はただの何もしない人じゃないんですよね。

 ということは、彼らが我々に対して脅威意識をどう持つか、その中で、より健全な脅威、機能する脅威としてどうするかというのがこれからの防衛力整備であり、国民の皆様からいただく四十三兆円であり、いかに機能する自衛隊をつくり上げていくか、あるいは我が国の防衛体制をつくり上げていくかということに尽きますので。

 理解できます。もう本当に大変だ大変だというのはあるんですけれども、実は、兼ね合いで相手も同じように考えている。

 北朝鮮は強がっていますけれども、実は、この国、我々日本というものを下手に軽んじると、また別の意味のしっぺ返しが当然あるということを考えないとしたら、北朝鮮の指導部、北朝鮮の軍、ロシア、中国も、同じように大したことはない。ちょっとこれは言い過ぎですけれども。逆に言うと、それぐらい考えているという、その中で我が国をどうやっていくかということなので、二%、一%が無力だということでは決してないということなんですよね。

 ということと、あと、もう一つだけ申し上げますと、実は、よく、今、南西列島線防衛と言われていますけれども、これは、ちょっと今回の安全保障戦略で一部触れられているんですが、中国が南シナ海で、東シナ海でいかに悪さをしようと、中国が絶対変えられないのは地形です。

 この地形は、日本とかフィリピンとかインドネシアとか、中国が支配できていないんですよね。この地形というのは、評価のしようはありましょうけれども、多く見れば人民解放軍全軍に匹敵するぐらい、うまく使えば我が国に使えるわけです。そして、今我が国が持っているんです。これをどう使うかというふうな論議が、大変だ大変だという論議の中で忘れられている。

 これは、私は、真剣にやっていただければ四十三兆円というのがもっと上手に使える、その知恵はないものかということについて是非お願いをいたしたいというふうに考えます。

 以上です。

高橋参考人 私は、量と質、質の点について余り答弁する資格がないので、先ほどの数量分析という形で、量だけをお話をします。

 ちょっと前まででしたら、仮想敵国は一つ、一つでGDP比一%ということで満足していたというんでしたが、今度は三つあるわけですよね。そうしたら、普通に考えればGDP三%。これはそのぐらいの方が多分政治的メッセージも大きいと思いますし、ここは多々ますます弁ずということになっちゃいますけれども、少なくとも、三つぐらいで非常に危険地帯、三つの国があって危険地帯であることは間違いないですね。ですから、その意味では、対外的なアピールをするためのGDP比三%ぐらいあっても私は全く不思議はないと思います。

 ただし、これを直ちに用意するのは大変だというのはそのとおりだと思いますので、ですから、財源の話についても長期的に、これは将来投資ですから、ゆっくり議論していただいて、やっていただければいいのかなというふうに思います。

 以上です。

高村委員 ありがとうございます。

 もちろん、これから長い視点で、今の環境が変わらないとしたら、しっかりと防衛力整備を更にしていかなきゃいけないと思うんですが、今回、防衛力を抜本的に強化しようというのは東アジアの環境が悪いという前提だったと思います。

 ただ、今後の外交交渉とか、あるいは専制的な国の制度が倒れて、我々と比較的共通の価値観を持てるような国に周りの国々がなった場合というのは、これは元の水準まで防衛費を下げてもいいと思われるか。そうすると、いろいろな、これから子供、子育てとか、更にお金を使わなきゃいけない分野はたくさんあると思うんですね。そういった柔軟な運用ができるようなことを、これからこの五年間は今回のパッケージでいくにしても、その後を考えた場合、果たして、周りの国が少し我々と価値観を共通できるようになってきた場合、防衛費を減らしても、柔軟にやってもいいとお考えか。それとも、それでもまだまだほかに脅威は出てくるはずだから、ある程度、二%程度の防衛費は維持していかなきゃいけないとお考えか。ちょっとその辺についても教えてください。

神保参考人 歴史的な経緯からすると、冷戦期にアメリカとソ連は莫大な国防力、国防費を使って、冷戦が終結した後に、当然、ソ連は崩壊してロシアになってしまうわけなんですけれども、アメリカもまた財政の中における対GDP比の支出というものを大幅に減らしたんですね。たしか、クリントン政権期には二・九%まで下がった。今はまた三・幾つに戻る。ブッシュ政権のときには、対テロ戦争をやっていましたから、五%ということで、あの大国アメリカでさえ、いろいろ独自の会計制度、予算制度がありますけれども、アメリカを取り巻く環境によってその国防費の支出の規模というものを結構柔軟に変化させてきたということは大きいと思います。

 各国の防衛費、国防費を分析しますと、意外と対GDP比というのは変動があるんですね。極めてこれが定量的に続いている国が二か国あって、一つは日本、もう一つは中国です。非常に興味深いことであるというふうに思います。

 ただ、今の御質問に従って言いますと、やはり向こう十年間は、これから中国の、仮に習近平体制が三期、四期と増えていき、そして台湾に関する問題が最大の焦点となるとすると、この緊張感と防衛力の規模というのは依然として強化するフェーズにあるだろうというふうに思います。この緊張感を仮に抜本的に超えることができたとすると、それはやはり日本を取り巻く安全保障環境を適正に評価した中で防衛費の水準を定めていくということができると思います。

 二つ目。

 ただし、そこまで増えた軍事力、日本を取り巻く軍事力を例えば軍備管理や軍縮によって減らしていくということになった場合、軍事管理、軍縮論のもう一つの前提は、相手とのある程度の均衡を達成した中で一緒に減らすということなので、そこでも、一方的に減らすのがいいのか、一緒に減らすという外交を取るのかというところでもう一つの考え方が問われるのではないかと思います。

高見澤参考人 私は、基本的には、検証制度なりプロセスを透明化することによって、そういう柔軟な対応ができるようにすべきであるというふうに考えております。

 仮に、二〇二七年度なりの防衛関係費の水準が八兆円とか九兆円、さらにはという状況になった場合には、維持的な経費の部分と緊急的に整備した部分の経費というものがかなりかかっていくと思いますけれども、そこの部分で余裕が出てくる部分というのは当然あるのではないかなというふうに思いますので、それが恒久的に維持されるものではなかろう。

 むしろ、政策的な選択としては、防衛関係費の構造を、いろいろなパターンをつくって、その中でどういう選択肢が可能なのかというようなことを議論するということが、優先度を考える場合にはできるのではないか。

 ただ、この十年ということで考えると、私は、それは非常に難しいのは事実だと思います。

香田参考人 直截的な返事は、情勢に応じて防衛費の増減があり得べしということだと思います。

 今は非常に評判の悪い、その昔の基盤的防衛力というのは、これは基盤的なので、外的影響に関係なく一定の防衛力を維持する、それが、先ほど高見澤参考人が言われました、我が国の自衛隊の規模が一定だったというわけですけれども、ただし、これも情勢判断を間違うと、今のヨーロッパになるわけですね。

 実は、オバマ大統領が二〇一六年に、何でNATOは約束どおり二%にしないんだと怒った一番の根っこというのは、冷戦が終わった後、NATOは寝てしまったわけです。本来やるべき、ロシアも、ヨーロッパの脅威がなくなる、ボスニア・ヘルツェゴビナの民族紛争はあるけれども、これは何とか対応できるだろうということで、大幅に下げた。ところが、ああいう独裁者が出た。今から増減しようとすると、これからやはり十年かかりますよ、NATOが本当に対応するためには。

 ですから、重要なことは、減らすのはいいんですが、同時に、政府は、自分の大福帳の中にプランA、B、C、Dは常に持っていて、こういう事態のときは、ここを手当てをして、こういう防衛力の回復をするんだというプランなき単なる減少というのについては、ほとんど意味がない。ヨーロッパ、ドイツ、フランスが今失敗していて、今何とかしようとしていますけれども、間に合っていません。ということが起きるんじゃないか。

 まさに、そこの政府の読み方、あるいは国会の皆さんの読み方一つだというふうに思います。

高橋参考人 私の話はいつも単純過ぎて申し訳ないんですけれども、先ほどの戦争確率というのでいいますと、非民主主義国というのは実は数量的に表せるんですね。北朝鮮は、民主主義指数、デモクラシーインデックスというんですけれども、これは一ですね。中国は二、ロシアは三です。これが六より大きいのを民主主義国といいます。

 民主主義国になれば、これは当然のことながら、先ほどのフォーミュラ、式からいくと、戦争確率は低くなるので、その意味では、そこを補う意味で、防衛力というのは減らすことは可能は可能です。これは、でも、あくまで理論的な話であります。

 実際にそれをどのようにオペレーションするかというのは、これは極めて難しい話ですから、中期計画なんかを練りながら具体的に考えなきゃいけないんですけれども、頭の体操としては、その外的要因がなくなれば、防衛力を減らしても構わない。

 現に、今まで、仮想敵国を一個として、非民主主義国は三つもあったんですけれども、一個しか考えないからGDP比一%だったんでしょう。これは全然根拠はないんですけれども。それであれば、多分、今は理論的には三になるし、それがもう一個、非民主主義国が、三つが二つになれば、これは二%になってもいい、理論的にはそういうことが言えるかと思います。

 ただし、繰り返しますけれども、実際問題は、中期計画を行いながら、現状、情勢を踏まえながらやらなきゃいけないので、慎重には対処すべきだと思います。

高村委員 ありがとうございました。

 時間ですので終わります。

塚田委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久でございます。

 今日は、四人の参考人の皆様には、大変お忙しい中お越しいただき、そして、先ほどの意見陳述、また、今日御答弁いただけるということで、心から感謝、御礼申し上げる次第でございます。ありがとうございます。

 最初に質問させていただくのは、それぞれ四人の参考人に順次お話を伺いたいと思っておりますが、先ほどは、高村先生のところは全て神保先生から始まっていきましたので、じゃ、私の方は高橋先生から、御質問に順に御回答いただければと思います。よろしくお願いします。

 その中身につきましては、防衛力の強化の今回の議論は、財源のスキームの評価についてお伺いしたいと思います。

 御案内のとおりですけれども、今回のこの法案の中に、防衛力強化のための資金を創設をして、そしてそれを対象経費の財源に充てていくということ。それともう一つは、この計画の中には、防衛力強化資金のみならず、歳出改革、決算剰余金の活用、そして税制措置を行う、こういうたてつけになっているんですけれども、ここは本委員会でも様々な議論がありました。

 この財源のスキームについて、分かりやすく言うと、法律事項になっているものと、そうでない予算措置でやっていくものと、税制でやっていくもの、このスキームについての、まず、それぞれの参考人の皆様の御意見をいただきたいと思います。

高橋参考人 基金をつくるかつくらないかという話ですと、かつても防衛力整備計画、こういう計画はあったんですけれども、基金はつくらないでやるということも可能は可能だと思います。

 ただ、基金をつくるというのは、私はどうも、増税のにおいがはっきり言ってするんですね。基金をつくると増税をしやすいというのは、私の官僚のときの経験であります。

 ですから、基金をつくらないで毎年毎年の予算でやるという手もあるし、だから、整備計画で全体を示す、ただし毎年毎年の予算でやる。特に、決算剰余金の話とか歳出カットなんて、あんなのは無理ですよね。無理ですから、それは、だから、毎年毎年の予算でやるしかないのかな。ただし、全体を示すことは必要だから、整備計画では示す。

 でも、それでも基金をつくるというので法律を作るというのは、こう言ってはなんですけれども、増税をしたいというか、そういうのが裏に見え隠れしているのかなと、私はちょっと邪推をしております。

 以上です。

香田参考人 予算制度とか財政とかは全く素人でございまして、現場で予算をいただいて、防衛力整備を受けて運用していくという立場からしますと、予算の総額がどうあれ、基本的な関係はないんですけれども、先ほど来申し上げましたように、私ですと、四十年間で一番感じていたことは、それなりに自衛隊も世界の相当高いレベルにまで装備とか制度はできたんですが、やはり最後、埋められないのが、国民との、ある意味、意識のギャップなんですよね。

 これをしっかりとやるということについて言いますと、やはり何らかの格好で国会がしっかりと関与をする。すなわち、民主主義の、シビリアンコントロールの一番の原点というのは、国民の代表は国会議員ですから、国会議員の皆様が、細かい、鉛筆一本まで言う必要はないんでしょうけれども、大枠についてはしっかりと論議をしていく。その中で、きちっとした財源の確保と予算の使途を審議をしていく。

 それは、単に通常国会の予算審議だけではなくて、個々のケースでやはり継続的にやっていく。アメリカの上下院の軍事委員会のような継続的な、日本も委員会はありますけれども、そういう格好で、できるだけ私は国会議員の皆さんが関与していただくというのがいいんじゃないか。

 ただし、究極的には、やはり国民との距離を詰めるというのは、評判は悪かろうが、高橋さんとはちょっと立場が違うんですが、税金という格好の方が私はいいのではないか。それは、自衛隊と国民との距離を詰めるという立場でですね。

 ただし、そこには財政テクニックもあるだろうと思いますので、そこはしっかり論議をして、皆さんが納得して決めていただければ、それはそれでやるべきだろうというふうに考えます。

高見澤参考人 お答えいたします。

 私は、今回の関係は、緊急性があるということで必要な防衛力というのを整備するということでしたので、それが、財源がないからやめろと言われる場合と、財源については、いろいろな工夫をして、いろいろな議論があるけれども、できるものを、あらゆるものを動員して、何とか確保しながら、それを使いながら、更なるその先の方策を考えるというアプローチであれば、それは非常に理解ができると思います。

 これまでは、財源がないものですから、何とか我慢しろ、相互依存関係がしっかりしているではないか、そんなにすぐに戦争はないだろう、部隊も工夫しなさいということでいわば回ってきたものが、それが至らなくなった。そういう状況の中で、じゃ、財源があるからやはり駄目だというのか、財源についていろいろ工夫して考えていこうという形で今回のような特別措置法を出していただくのか、どちらがいいかと言われれば、今のような状況がいいと。

 ただ、本来、防衛予算というのは、私は、当初予算の中できっちりと確保して、しかも、その使い方をしっかりと検証していただいて、おかしいところはちゃんと変えていく、そういうプロセスがやはり一番望ましいというふうに考えております。

神保参考人 今回の、向こう五年間、総額四十三兆円の計算式、本当に多くの方々の努力によって組み上げられたものだというふうに理解しております。

 一般会計で掲げられているものに加えて、特別会計の繰入金とか積立金の国庫返納、国有資産の売却、あらゆるものを尽くしてこの数字を埋め合わせるというのが今回のたてつけになっているということだと思うんです。

 私も、冒頭の質疑で申し上げたとおり、やはりこれは五年間で終わる話ではないというところが非常に大きくて、国際情勢の環境が更に厳しくなれば、四十三兆円を更に超える規模での、二〇二八から三二年の向こう五年間を迎える可能性がある。そのときに、同じような計算式で我々は本当に財政を成り立たせることができるだろうかということが、もう一つのここで言う私の個人的な疑問ということであります。

 こういったことを考えると、現在積み上げられた方程式自体を更に長期的に担保して同じ計算式を組み入れるというのは難しいのであれば、恒常的な税収というものをどういうふうに考えていくのかということがこの五年以降の課題になるのではないかということを踏まえて、今回の五年間をどうするかというところの話につなげていただけるといいのではないかと考えた次第です。

稲津委員 ありがとうございました。

 ただいまそれぞれ御意見を伺わせていただきましたけれども、私は、やはり、財源の在り方については様々な意見はあるものの、しかし、現下の情勢を踏まえると、やはりいち早くこの財源措置をしていかなければいけないんだろう、こういうふうに強く思っていまして、それぞれ御意見の中にもそうしたことも踏まえていただいたというふうに思っておりますが、その上で、やはり、何といっても、税であるにしても何にしても、国民の理解をしっかり求め、また御理解いただかなければいけないだろうというのが大前提にあると思っております。

 そのことをそれぞれ各委員の皆さんからお伺いしようかなと思ったんですが、時間の関係もありますので、高見澤参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどの意見陳述の説明の中でも、資料八のところで、関係府省の各事業の見える化、生きたデータベース化を図っていくべきだ、これがこの効果的な実施に有効だというお話がありまして、私もなるほどなと思って聞いておりました。

 そこには、やはり、これは関係者だけではなくて、国民の皆さんの理解も醸成されていくんだろう、そのように強く思ったところでございまして、先ほど意見陳述の中では少し触れていただきましたけれども、この点は非常に私は関心を持っているところでございまして、是非、参考人からもう少し詳しめのお話をいただきたいと思います。

高見澤参考人 お答えいたします。

 まず、関係府省の各種事業の見える化、生きたデータベース化ということは、私自身、非常に、内閣官房におりましたときに、個別の事業がなかなか見えない、しかも、実際に危機管理の事態が生じたときに、こんなところにこういうシステムがあったんだとか、各省の事業ですとかスタッフが実はすごく光っているわけですけれども、それが見えていないというようなことがよくありました。

 それから、事業が同じようなものが重複していて、ほとんど同じような事業が違った省庁でやられていて、政策目的は同じなのにというようなのがございました。

 それから、安全保障の関係でいえば、ここでちょっとスペックを一つ上げておくことによって非常に危機管理であるとか防衛上のニーズにも耐えられるのに、そんなことは知らなかったと。もしそれを教えてくれれば各省の方でそういったことができたのにということがあるかと思いますので、今チャットGPTの議論もありますけれども、まさに生成系のAIなどを活用して、全省庁が持っている事業のデータとかそういったものを見えるような形にしていくということが、非常に私は重要ではないかなと思うんですね。

 ですから、サイバー攻撃を受けたときにどうするんだといったときに、それぞれの省庁のデータガバナンスができているのか、自分の事業なりプランニングができているかということがあるので、それが国民にも分かるような視点があれば非常にいいのではないかというふうに思っていまして、検証をやるためには国民の理解が非常に必要でありまして、コロナでも言われたところであります。

 私が非常に思っていますのは、まず、政府、国会で、計画でいろいろ示されているアクションアイテムというのを全部網羅的に出してほしい、それについて政府としてはいつ頃政策を出すということをタイムラインを出していただいて、それでいろいろな情報を出していただく。

 そうすると、神保先生もおりますし、高橋先生もおりますけれども、それぞれの学会とか研究機関とかが、それを評価して、その情報を得て、いろいろな御意見を申し上げる。それで、政府からいろいろ話を聞き、国会の議論を聞くと、なるほど、これはこの考慮要素が非常に重視されたからこういう落ちになっているな、もしも状況が変われば、重視する要素が変わることによって政策は更に展開していくんだなというような、胸にすとんと落ちるような議論、そういう情報共有というのが非常に重要ではないかなというふうに思います。

 それで、かつて大雪が降ったときに、長野県の佐久市長がツイッターかなんかで、写真を撮って自分のところに送れと言って、どこの家が雪が非常にひどいかというのをいわば住民がみんな理解する。そうすると、その人のところを優先するのはしようがないねというような形で、その時点でどんどん政策が展開していったというようなことがあったと思いますけれども、そういう計画なり、事業の共有化、見える化というのは、そういう効果もあるのではないかなというふうに思っているところでございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 次は、防衛力の強化の少し具体的なお話をお伺いしたいと思うんですけれども、これは神保参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほど参考人の方からは、中国そして北朝鮮に触れながら、例えば、中国と自衛隊の装備量の均衡というのは、目標にしても余りどうかと。むしろ、侵略を思いとどまらせる、そういう戦略がやはり重要なんだということで、委員の書籍等にも、相手の作戦遂行能力に対する拒否戦略ということの重要性についてうたわれておりまして、大変興味深く拝見させていただきました。

 これは、自衛隊のスタンドオフ防衛能力を通じた拒否能力ということがまず一つあると思うんですけれども、そのほかに、委員の方から、宇宙、サイバー、電磁波の領域などを融合した、そのような、領域横断作戦ですか、こうしたものを優位に使っていくんだということも述べられておりまして、いずれにしても、相手の侵攻意図を断念させる、これは極めて重要なことだと思っております。

 こうしたことを戦略的に強化していくときに、今回のこのスキームの財源で果たして大丈夫なんだろうかと。それは、先ほど委員の方からも、まず五年間はいいけれども、その先は少しまた検討しなきゃいけないんじゃないだろうかというお話がありました。

 具体的に、例えば、スタンドオフもそうですけれども、宇宙、サイバーもそうですけれども、こういうところはかなり強化しなきゃいけないだろうという御意見があったらお伺いさせていただきたいのと、北朝鮮と中国についてはかなり触れていただいて、もう一つはやはりロシアのこと。

 ただ、特定のそれぞれの国々に対して、特異性があるところに例えば防衛力を強化するという我が国の戦略というのは、なかなか、財源問題もあり、そしてそれが果たして本当に機能的かどうかということもありますので、先ほど委員の方からは、もう少し汎用性の高いものにした方がいいんじゃないだろうかという話があって、なるほどと思っていました。

 ただ、ロシアの場合は、北方領土が我が国固有の領土ということで抱えているということと、それと、先ほど香田参考人も触れておられましたけれども、中国と日本との地理的な、日本側の優位性とかいろいろあると思うんですけれども、ロシアとの場合は非常に近接しているので、なかなか厄介なのかなと思っています。

 この対ロシアというところについても、もう少し触れていただければと思います。

神保参考人 御質問ありがとうございます。

 今回採択された国家防衛戦略の基本的な考え方はどういうものかというと、まず、スタンドオフ防衛能力の強化による広域防衛を確立し、様々な形で抑止力を強化していく。仮に抑止が成立しない場合、つまり侵攻を許してしまった場合、日本の自衛隊は、領域横断能力を発揮して、非対称的な優位という難しい概念を使うんですけれども、つまり、陸海空軍の伝統的な戦力で対峙するだけではなくて、新領域を組み合わせたことによる優越性ということによってこれに対処し、持続性、強靱性によってその戦力を維持していくことによって、最終的に我々が拒否戦略というものを確立する、こういう考え方になっているんです。

 一番目に関しては、お答えしたとおり、対北朝鮮、対中国において、それぞれのパッケージングによってスタンドオフ防衛の役割というものを規定していくということなんですが、必ずしも今回の防衛戦略の中で十分に書かれていない場所は、本当にこの領域横断作戦による非対称的な優位なんて確立できるんですかというところが、個人的には疑問に思っているところでございます。

 というのも、中国もまた宇宙、サイバー、電磁波領域において莫大な投資をして、必ずしも日米の側に常に優位があるという状況ではない状況において、我々がいわゆるこの新領域の統合によって優位性を獲得できるということ自体が、既に自明ではないということなんだと思います。

 ということを考えますと、この新領域に対する投資は十分かという目線は常に持っておきながら、そして、同じような投資をしている中でも、より優位が確保できる領域というのはどこかということを考えることは重要だと思います。

 一つは、現在、バイデン政権が進めている様々な経済安全保障措置の中で、先端半導体ですね、特に二ナノとかその手の半導体の優位性というのは、間違いなく日米、台湾も含めた同志国の側にあって、中国側のその開発スピードをまさに遅らせていく、これは非常に重要だと思います。

 先ほど高見澤参考人がおっしゃったような、いわゆる水中、特に潜水艦、対潜能力、これにおいてはまだ中国側と比べましても日米の側に相当の優位性があるということを考えるのであれば、これを向こう十年間において優位であり続けるための投資というのは重要であろうというふうに思います。

 よくスコアカードの分析と言うんですけれども、様々な領域で、信号機のように、赤、黄色、緑という形で、徐々に黄色の、赤の領域が増えてくるというのが中国軍の情勢なんですけれども、依然として、新領域の一部の領域そして水中領域においては、青色、つまり、我々の優位性が、より中期的に保たれる領域がある。ここを失ってはならないというのが我々の投資するべき領域として大事な考え方ではないかと思います。

 済みません。ロシアですね。一言だけ。

 ロシアの、短い、三十秒で申し上げますけれども、やはり一番懸念すべきなのは、中国と連動した動きをするということだと思います。

 今、ロシア軍、中国軍は、様々な共同演習によって、日本を取り囲むような動きをする演習をしたり、あるいは年次演習を拡大させたりして、それは、いわば我々が本来であれば南西諸島及び中国に振り向けたい戦力を分散させるような効果があるということなんだと思います。

 できれば、ロシア軍の動きというものをできるだけホールドしておく。それは、海上戦力、ミサイル防衛、様々な、ISRという、警戒監視能力というものをしっかりと北方で確保して、我々が常にその他の正面に対して振り向ける戦略が阻害されない防衛力のパッケージングというのは何かということによって組み立てるのが最もいい考え方ではないかと考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次は、これは高見澤参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 今、神保参考人にロシアのことについてお伺いしまして、高見澤参考人には中国のことについてお伺いしたいと思っているんですけれども、防衛力の強化を図り、我が国の安全保障を強化していくという、その一番最初の大前提にあるのは、これは言うまでもありませんけれども、やはり外交努力によって、どこまでそうした体制を強化できるかということが一つあるんだろう。もちろん、そのための防衛力の強化ということも背景にはあると思います。

 高見澤参考人のこれまでの御発言なされたものの紙の中に、中国について、これまでにない最大の戦略的な挑戦、こうしたことをかなり強く表現をなさっておられますけれども、一方で、建設的で安定的な関係ということも書かれておりまして、協力できるところは協力しよう、そういうメッセージを送ることの必要性について触れられたのかなと思っております。

 外交が防衛力の大前提であるということを踏まえると、大変ここも関心を持って見ましたけれども、具体的にどのようなことを背景に想定されておられるのか、お伺いしたいと思います。

高見澤参考人 二〇一三年の国家安全保障戦略の中では、日中関係については、戦略的互恵関係ということで、あらゆる側面での関係を強化するというのが、当時、非常に中国の動きは活発化しておりましたけれども、そういったものを掲げていたというのが実態であったわけです。その後起きたことを見てみると、やはり必ずしもそういう方向ではなくて、約束を守らなかったりとか、いろいろな日本側の期待どおりにはなっていなかったということは事実だと思います。

 ですから、今回の国家安全保障戦略では、岸田総理が以前からおっしゃっていたような、建設的で安定的な関係ということを言われているわけでありますけれども、私は、米ロの関係を見ても、米中の関係を見ても、常に力を蓄えながらも外交的なことをやっていく。その外交の場も、バイラテラルなものもあれば、マルチの場での話もありますし、それから、案件が違えば、協力できるところは協力をしていく。つまり、非常に厳しい関係があることをもって、ほかの共通の利益のところに影響が出ないようにするというのは、これは基本的な外交的なアプローチとしては当然のことだろうというふうに思います。

 ただ、何より私が今意識しておりますのは、先ほど香田参考人からもありましたけれども、中国は、なぜ日本の個別の行動についてそのような理解をしてしまうのか、あるいは、台湾が取っているいろいろな措置についてなぜそのような理解をするのかという、やはり日中間の非常に戦略的な議論といいますか、それから、この地域の懸念事項というのは本当に中国にとっては何なんだというようなことについてある程度話をするというような場をもっと我々は増やしていくべきではないかというふうな感じは持っております。

 ですから、気候変動の問題にしろ、あるいは災害対応の問題にしろ、メガ台風とか水害なんかの話もあるかもしれませんし、国内のインフラで非常に洪水の話があるかもしれませんし、そういう、とにかくこの件については日中で話をしてみようという感じをお互いがやはり持つ必要はあるのではないか。

 ただ、その前提は、まさに今我々が防衛力の抜本的強化をして、政府なり国会が一体としてそういうしっかりした体制を取っているということを前提にして、大いにそういった関与の部分というのを考えていく必要があるのではないかなと。これは決して融和でもないですし、そしてまた封じ込めでもないということをはっきりさせていくことが大事ではないかというふうに思っております。

稲津委員 時間が参りました。

 大変どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 本日は、神保参考人、高見澤参考人、香田参考人、高橋参考人、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。短い時間ですので、有意義な時間にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 我々維新の会は、現在の日本を取り巻く環境を鑑みて、防衛費の増額自体に反対するものではございません。しかし、その財源の生み出し方、徹底的な歳出改革や、中長期的な成長戦略を描き増収する、こういうことで財源を生み出していく。議員の身を切る改革もせず、安易に増税で国民に負担を求めるという考え方には異を唱えております。

 実際に、世論調査の方でも、防衛費増額自体には賛成する声が多い中、この法案に対しては反対するという声が非常に大きくなっております。いろいろな専門家からのコメントも出ておりますが、例えば、財源確保に向けた動きに関しては、内容を吟味することなく負担について論じるという手順が踏まれたとして疑問視する見方や、また、この委員会でもるる議論がございました、政府は国民負担をめぐる議論に真正面から取り組むべきであるとの見解が示されている、こういった指摘がございます。

 そこで、参考人の皆さんにお聞きしたいのですが、このように、世論調査では国民の理解を得ていないという状況となっておりますが、その原因はどこにあるとお考えでしょうか、お伺いいたします。

神保参考人 委員の御質問にあるとおり、私自身も、過去一年間の世論調査、大変興味深く拝見しておりました。特に、ロシアのウクライナ侵攻以降の国民の意識の変化は大変明確に表れたと思っておりまして、昨年の参院選の前だったでしょうか、四月ぐらいの世論調査では、あらゆる新聞で、国民の七割程度の方が、防衛力の強化に賛成である、防衛費の増額にもそれはするべきであるという意見を示したと記憶しておりますが、年末になって具体的な方針の骨格が定まるにつれ、それによってどの程度の負担をするべきなのかということにおいては国民の間での理解が分かれているということだと思います。

 したがって、防衛費の拡大をするという重要性は分かりながらも、どのような形でその防衛費を負担するかということに関する理解のコンセンサスがまだ十分に浸透していないというのが今の状況ではないかというふうに理解をしております。

 そのときに、高橋参考人もおっしゃられましたように、いろいろな財源、手段というものがある。これを網羅的に国民の中で提示して、何が一番いいかということを、理解を醸成していくというのは、当然、プロセスとしては重要な話だというふうに思いますし、それが直ちに増税だという話になって国民一人一人の負担に跳ね返ってくる前にやることがあるんじゃないかというふうなことも恐らく思っているんじゃないかというふうに思うんです。

 それらの議論を通じて、でも、最終的に確保すべきは、やはり、安全の受益者である国民の一人一人が防衛に対してコミットをするんだということ自体は必要になるというところまでの理解を丁寧に育てていく努力というものが必要であるということが、これらの世論調査から導き出されることではないかと考えております。

高見澤参考人 御質問ありがとうございます。

 私自身は、やはり、率直に国民に説明するという姿勢について、国民が、ああ、なるほどというふうに思っているかどうかということではないかと。

 恐らく、それに必要なのは、プロセスとして三つあって、一つは、当面の問題と長期的な問題についてある程度区分しながらはっきりと説明するということが必要ではないか。それから二つ目は、何度も申し上げておりますけれども、様々な選択肢を示して、それの利害得失、メリット、さらには考慮要素というものをはっきり示すということが必要ではないか。三点目になるわけですけれども、その結果、今はこれを重視しているからこの対応が最も適切なんだ、そういうふうな手順を、何とか、マスコミも含めて議論をする必要があるのではないか。

 いずれにいたしましても、今回の法案そのものについてもなかなか報道だけを読んでいては分からないということでありますので、やはりファクトをできるだけ客観的に多くの国民に知っていただくような努力というのは必要ではないかというふうに思っております。その辺がやはり、何となくもやもやした感が残っている原因ではないかと思っております。

香田参考人 国民の理解が得られない、これは、官邸なのか防衛省なのか財務省なのかという問題はありましょうけれども、やはりきちっと整理をして説明をしていない。何ゆえに四十三兆円なのかということが、例えばですけれども、今どなたが、国民がきちっと理解をされているでしょうか。この理解なくして財源論というのは、実際は国会であり得ないわけですよね。しかし、それは既定路線として走っている。これは、ある意味、変な意味で言うつもりはありませんが、民主主義の危機と言ってもいいんだろうと思います。

 そこを、それはきちっと説明をしてもらう、そして、国民側からすると、求める、これができていないということ。要するに、何ゆえに四十三兆円、それで、その中でどうするんだということについて、やはり、ほとんど整理をされていない、今この時点でも理解がされていないというふうに思います。

 それと、もう一つは、財源があれば支出があるわけで、防衛省には非常に厳しい言い方になりますけれども、例えば、スタンドオフだ、こういうものをやる、これだけだということについて、その合理性とか必要性とかリスクというものについても、こういうことを考えてやりますということで中央突破の一つしかされていない。これで、国民は、分かりました、じゃ、負担しましょうということになるでしょうか。

 財源論は、増税にしても、国債にしても、その他の財源にしても、最終的にどこかで折り合いをつけてやるんでしょうけれども、国民の税金を使わせていただくというところで、国民に対する真摯な説明、整理をした分かりやすい説明。何事も、防衛上のことで言えない、あるいは対米関係で言えないということでは私はないと思います。私は自衛官ですからそこのぎりぎりのところは分かりますけれども、相当、そこについては、まだまだ説明のできる余地、ひょっとしたら、防衛省自体が整理がされていないのではないか、官邸自体が整理がされていなくて、腰だめで走っているのではないかという印象さえ、二%を支持する私でも思わざるを得ないというのが現状だというふうに私は考えます。

 以上です。

高橋参考人 私は、最初、全体図を出したときに、四十三兆円で予算措置は四十・五兆円、それで、従来のを伸ばすと十四・六兆円という数字を言いました。その内訳が、なぜか増税措置だけ書いていないですよね。それがいつからというのも書いていないわけですよね。それは説明しなきゃ分からないということだと思いますよ。

 ですから、そういうふうに全部説明する。そうすると、ほかにいろいろと財源なんというのは出てきます。

 ちなみに、私は、小泉政権のときに、四十兆円ぐらいかな、埋蔵金で出したこともあります。だから、それで増税しないで済んだ。

 大体、一般的に言うと、埋蔵金というのは特別会計の余裕を持ってくるんですけれども、そういうのが普通ですよね、最初は。それをもってできない、歳出カットもしなきゃいけない。それとあと、国債を出さなくて埋蔵金でやるというのがまず二番目。それで三番目は、国債で。国債は全然出しても大丈夫ですから、その意味では出してもいい。増税なんて、多分、四番打者ぐらいなんですよね。

 だから、本当にできなくなって、いろいろ説明できなくなって、どうしようもないんだというなら私も理解しますけれども、私がざっくり考えたところで、先ほど四つぐらいの財源がすぐ出ちゃうわけですよね。それを説明しないから、それは納得しないのは当たり前なんじゃないですか。

 私はいろいろなところで話をしまして、例えば外為特会の評価益、今、円安で日本政府はうはうはですよと。うはうはと言っちゃいけませんけれども。たまたま持っていまして、評価益だけで三十兆円弱あると思いますよ。それを取り崩せばいいだけでしょうというふうに言ったら、だって、それを持っていて、それを使わないで、増税しますと言ったら、普通の人はええっとみんな言いますよ。

 ですから、多分、そういうものの説明が非常に欠けているんじゃないかなと、正直言って思います。

住吉委員 本当にそれぞれの参考人から貴重な御意見をいただきました。

 また、四十三兆円の中身というのが本当に重要になってくると思います。香田参考人も、防衛上の理由でなかなか開示しないというのは、今非難されたところでございます。

 ちょっと高見澤参考人に関連してお聞きしたいと思うんですが、事前資料の中に、高見澤先生のセミナーの講演録の質疑応答の中で、こういうことをおっしゃっておりました。

 重要なことは、整備しようとしているものがどのようなシナリオやシチュエーションで機能するのかを多角的に検証することである、政府が実施したシミュレーションを可能な限り国民に分かる形で開示し、調達しようとしている装備が適切で十分であるかについて説明を行い、広く議論がされることが必要だというふうに述べられておりました。

 この連合審査会でも、各委員がいろいろ中身について説明しても、なかなか防衛上の理由で答えてくれないというのはかなりあったわけですが、高見澤参考人は、このような政府の説明というのは十分だと考えるのか、その点、教えていただきたいと思います。

高見澤参考人 今は状況も変わってきていますし、インターネットの時代でもあり、また海外の情報もたくさんあふれている、そして例えばCSISのシミュレーションなどが出てくるというような状況でありますので、私は、政府においては、従前以上に情報を分かりやすく整理をして説明するという必要があると思いますし、それがまた国民の支持にもつながるというふうに思っております。

 ですから、今回、岸田総理が、国家安全保障戦略ができた後に、シミュレーションを行ったとか、非常に厳しいものであったというようなことをはっきりと述べられた点はよかったというふうに思いますけれども、それをできるだけ、やはりセンシティブなところもあるでしょうし、そのまま説明することはできないにしても、やはり一般的な形でもいいから、どういう思考過程で出てきたかというようなことはもうちょっと工夫していただいてもいいのではないか。

 それから、かつて、国会でも、ソ連の日本に対する侵攻能力がどのようなものがあるのかというようなことに対して、当時の防衛局長が具体的な師団の規模でありますとか侵攻兵力について述べて、それに対応できるような防衛力を整備していますというような趣旨の答弁をされていますので、私はやはり、いろいろな今シミュレーションもやっておりますけれども、工夫した形でそれを説明するということが必要ではないか。

 仮にそれができないのであれば、やはり、国会議員も含めた、センシティブな情報についてきっちりと管理をして審議できるような形、つまり、アメリカの情報委員会でやっているような形なり、そういったものは是非検討していく必要があるのではないか。

 だから、国民が分かるような材料の提供と、さらに、本当にセンシティブなところについては、国会も含めて、しっかりとした情報共有を図りながら、情報の管理ができるというような体制をやはりつくっていく必要があるのではないかというふうに考えております。

住吉委員 ありがとうございます。

 本当に重要なことだと思います。予算審議においても、これを整備します、これを購入しますと言っても、どのように使うのかというところまで示さないと、結果として、冒頭に戻りますが、国民の理解が得られないのではないかなというふうに感じたところでございます。また、政府の方にも我々の方から質問していきたいと思います。

 次に、この財源のところについて、高橋先生にお伺いしたいと思います。

 かねてより、埋蔵金で賄うべきだというような主張をされておりました。そんな記事であったり、ユーチューブチャンネルも拝見させていただきました。

 この財源、四つ示されたわけですが、ちょっと一つ一つ簡単にお聞きしたいと思います。

 国債についてなんですが、安倍元総理も、未来にこの国を守っていくという趣旨で、いわゆる防衛国債、これを発行できるじゃないかと。実際に、施設とか装備品、これは次の世代で賄うということで実施されております。一方で、過去に、公債費を戦争に、軍事費を公債費で依存してしまったがために戦争へ走ったというある意味苦い経験があって、それに対するアレルギーみたいなものが、一種のアレルギーを感じている人もいるというのも事実でございます。

 そういった反対意見があることも踏まえて、国債で財源を賄うということについての考え方を教えていただけたらと思います。

高橋参考人 国債というのは、どんなときもそうなんですけれども、将来への投資というので考えると、普通の自主財源ではなくて国債でやるというのが、ファイナンス論からはごく一般的であります。ですから、それで、ドイツでもそういうふうにやりました。

 日本の過去の話をしますけれども、実は、ああいう形でやっているのは、世界どこでも一緒ですね。こんな有事のときの対応方法としてはみんな国債ですね。ですから、その意味では非常に標準的で、日本だけが変なことをしているということでやりますと、実は、日本の抑止力において、世界から後れを取ると非常に大変なことになる。この手の話は、標準的なファイナンス論とか世界の常識とか、そういうので対応すべきだと思います。

 じゃ、逆に何もしなくていいんですかと。抑止力がなかったら本当に大変なことになると思いますよ。要するに、抑止力を持って対応する、持つために国債でやる、若しくは、それで抑止力を持ったら、よかったでしょうということしか言いようがないですよね。だから、そういうことを市場に分からせる。

 何か、装備をすると戦争になると言う人がいるんですが、これは全く逆ですね、はっきり言えば。そうじゃなくて、要するに、たくさん装備を持っていた方が、軍事力のアンバランスがない方が戦争確率をはるかに減らしますよ。ですから、それは、戦争確率を減らすためにどういう形で財源調達するかと考えると国債になる、そういうことだと思います。

 あと、ついでに言うと、海上保安庁の建造費というのは、海上保安庁は国交省にあるから、結構気楽に国債でやっていました。それをちょっといろいろなところで言いましたが、海だけはやりますね。だから、これを今度、陸も空もやっていただいて何も論理的にはおかしくないんですけれども、そうすれば、結構、財源としては、五年間では、十数兆は確保できると思いますよ。

 以上です。

住吉委員 ありがとうございます。様々な知見から、ありがとうございます。

 次に、二番目なんですけれども、国債整理基金特別会計、これは釈迦に説法ですが、これは建設国債や特例国債といった国債発行によって投資家から調達した資金に対し、六十年償還ルールの下、資金を投資家へ償還していく、減債していくために設けられた基金です。

 諸外国では、このような制度というのは廃止であったり、形骸化している、実質無効になっているというところですが、財務省の方は、これがこの日本国債のある意味信用につながっているんだという答弁もございました。

 仮に、これをなくすといいますか、一時的にこれを活用した場合、信用という面で、マーケットはどんな反応されるのか、先生のお考えを教えてください。

高橋参考人 私は、大蔵官僚のとき、国債課の課長補佐をしていまして、国際会議に出たことがありまして、今おっしゃったような答弁をしたら、結構、会場から笑われました。どこの国もそんなことはやっていないよと。ですから、それは、まだそんなことを言っているのかなと正直言って思います。

 かつて、これをやめるのは結構法的には簡単でして、一般会計からの繰入れ停止という、今は六十分の一ずつ、だから、残高の一・六%を繰り入れているので大体十六兆円ぐらいなんですね。繰り入れたことも、たしか十回ぐらいありますね。そのたびごとにいつも言われました。回数はちょっと正確に覚えていないですが、十回前後だったと思います。

 そのときも、必ず同じ話で、大変なことになると言われましたけれども、全く大変なことになっていません。それはなぜかというと、国債のあれを見るときに、こういう基金があるからというんじゃなくて、全体をバランスシートで見ているだけなんですよ。ですから、全体のバランスシートで見たときに、日本の場合は債務超過というのにはほとんどなっていませんので、何の問題も起こりません。

 ちなみに、これをなくすと、メリットもちょっと言います。地方も同じように、全く右へ倣えで、地方債についても全く同じような制度をつくっているんですよ。これにより地方財政はすごく、非常に苦しくなっています。だから、こんな制度はやめちゃうと。やめちゃうと大変になるということであると、世界の標準というのは、実は債務庁、債務管理庁というようなプロフェッショナルな集団をつくってやるということなんですけれども、実は、そっちにした方がコスパははるかにいいと思います。

 以上です。

住吉委員 私も地方議員を経験させていただいていまして、兵庫県ですけれども、県債管理基金、これをどうしていくのかというので、よく見ると美術品とかも入っていて、それはいいのかということを議論したのを今思い出しました。

 次に、外為特会なんですが、先生からいただいた資料なんかを見ますと、先生は利差益、評価益でということですが、そもそも、この適正な水準というのがどんなところなのか。

 これを見ても、諸外国に比べるとかなり多いということで、これも委員会の中では度々議論にあって、財務省の答弁は、多過ぎることはないというような話だったんですけれども、先生が考える適正規模といいますか、それについて考えを教えてください。

高橋参考人 お答えしますけれども、その資料を見ていただくと分かると思うんですけれども、G7の国でいうと圧倒的に大きいですよね。

 それで、本来であると、完全自由相場制の下であると、理論的にはゼロです。もし万々が一、いろいろと必要だというんだったら、メキシコはちょっと大きいんですけれども、それ以外の国ですと数%ですよね。ですから、数%まで減らしても、何が問題ですかと。逆に言うと、数%まで減らしても、ほとんどの国は問題は起こらないです。

 為替の話について言うと、実は、非常に動くという言い方をするんですけれども、インフレ目標がきちんとしていると余り動かないんです。要するに、だから、二国間の金融政策の差で結構為替は決まりますので、日本の場合、結構インフレ目標の信認はきちんとしているので、こんなに持つ必要は全くないと思います。

 ですから、もし、あえて数字を挙げろといったら、G7の中で一番高いところに合わせてもいいよというぐらいの話です。そうすると、答えは数パーセントになります。GDP比で測れば数パーセントになります。

 以上です。

住吉委員 ありがとうございます。

 続いて、防衛版ふるさと納税、これもいいアイデアだと思っております。あえて香田参考人にお聞きしたいと思います。

 参画意識が重要だということをおっしゃっておりました。それは本当にそうだと思います。私も、阪神大震災を経験したときに、自衛隊の方には本当に助けていただいて、感謝している。でも、そういう経験がなければ、ちょっと、自衛隊というと、余りなじみがなかったかもしれないという中で、この防衛版ふるさと納税というのは、まさに参画していくような一つの手法だと思います。

 ただ、この制度をつくっても、今、例えばふるさと納税でいうと、ほとんどの人が、返礼品目的でしているのがほとんどだと思うんですけれども、我がふるさとを応援しようという人は本当に少ないのかなと思っています。

 この防衛版ふるさと納税、これは財務省の方は、記事で見ただけですが、何かほかのところに財源が行くから少しネガティブな考え方なんですけれども、これはこれで一ついいと思うんですが、これをつくっても、なかなか、参画意識がないと、結局、制度だけあって、集まっていかないと思うんですけれども、国民の参画意識を上げるために、もし何か香田参考人のお考えがありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

香田参考人 これも遠大な話で、非常に難しい。私自身、自衛隊で四十年やって、余り改善はなされなかったのかなと。大震災とか自然災害があると上がるんですけれども、やはり時がたつにつれて忘れられていく。

 あるいは、適切かどうか分かりませんけれども、ウクライナ戦争の現状を見て、自衛隊を志願する人たちが、実際に募集としては成果が上がっていない、その一つの原因がそうではないかというふうに推測されていますけれども、これは粘り強くやる。

 ただ、一つ重要なことは、先ほど神保参考人が言われたと思うんですけれども、やはり防衛版ふるさと納税ですか、私もマスコミの記事で見ただけですので、まさに、財務省の評価として、広く国民全体が負担すべきものかどうかというような論議もあるでしょう。

 ただ、一番重要なことは、よく言われるんですが、安全というのは空気とか水と同じものではないということなんですね。やはり一定の努力、それはまさに、国民が、今、工場で物を作っているたくみの方も、その努力をされることが間接的に国の防衛につながっている、あるいは、公務員の方が事務をやられる、業務をやられる、企業の方がやられるということが。ただ、その中で少しだけ、これは我々の社会の安寧の基盤である、我が国の防衛につながっているということを、どこで誰が言うかということなんですね。

 それで、やはりポイントは、それは自衛官が言っても駄目で、やはり国のリーダー、これは政治のリーダー、社会のリーダー、経済界のリーダー、もう一つは国会なんです。国会の論議の中で、国の基本ですということで、国民が何らかの格好でひとしく、これは負担じゃないんですよね、担うかということについて、啓蒙を少しずつやっていくということしか、特効薬は私はないと思います。

 ですから、ここでお願いしているのは、こういう特措法の予算論議の中でも、この法律というのはまさにそこに懸かっているんですよということについて是非論議を深めていただいて、国民の皆様のそういう、積極的に毎日鉢巻きを締めて走るという話ではないわけですから、社会の安寧、我が国の安定につながっているという意識を持っていただくということ、私はもうそれしかないと思います。

 是非そこについてお願いをいたしたいというふうに考えています。

住吉委員 皆様、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 時間ですので、終わりたいと思います。本当にありがとうございました。

塚田委員長 次に、斎藤アレックス君。

斎藤(ア)委員 国民民主党の斎藤アレックスでございます。

 本日は、参考人の皆様、誠にありがとうございます。

 では、早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、本当は外為特会のところを聞きたいと思っていたんですけれども、全く住吉先生とかぶってしまいましたので、改めてちょっと簡単にお伺いをさせていただきたいと思っていまして、我々国民民主党もこの外為特会の今の水準は課題だと考えておりますし、これは与党の先生からも同じような意見が出ているところでございまして、その過剰な部分については財源として活用していくことができるというふうに考えているんです。

 先ほど、適正な水準についてのやり取りがあったんですけれども、ちょっと念のため確認なんですが、このいただいた資料の四ページの評価益三十兆円というところ、書いていただいたこの三十という数字はどういった数字なのか、教えていただければと思います。高橋参考人、お願いします。

高橋参考人 これは、取得原価というのが一応予算に載っていて、それから今の為替で割り算すると大体そのくらいだということで、私は玉木さんとよく一緒にやるので、彼が実際あるときに計算したら四十兆弱だったという言い方をしたので、それから大体同じかなと。

 彼自身は、実は、財務省で主計局にいたときに、私が小泉政権でこれをやっているときに主計局をやっていたんですよね。だから、よく知っている人なのでちょっと言ったわけです。

 それで、その数字を基に、ちょっと目の子で三十兆程度という話をしたところであります。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 そういった数字とかも一つのめどというか参考にしながら是非議論を進めていければと思っておりますので、是非、先生にも、引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、今回の安保三文書、防衛財源確保法、あるいは安保委員会で行った防衛装備基盤強化法の法律の審議の中で行った議論に関連した質問を参考人の皆様にさせていただいて御知見をいただきたいと思っております。

 まず、反撃能力に関連した質問を香田先生と高見澤先生にさせていただきたいと思います。

 今回、スタンドオフミサイルを調達するということで実効的な反撃能力を自衛隊が持つことになる。これまで、反撃といっても、揚陸して自衛隊の部隊を送り込むなんということは現実的ではありませんけれども、ミサイルを使って反撃するということができるようになる。それは、日本が攻撃を受けたときに反撃するというところに多くの国民は違和感を持たないと思うんですけれども、集団的安全保障の範疇で存立危機事態に反撃能力を行使する可能性があるということは、私は、国民の間に余り理解が広がっていないのではないかなと考えております。

 そういった問題意識もありまして、存立危機事態に自衛隊がどういった形で行動に出る可能性があるのか、どういった方法で、方法というか、中身の詳細はもちろん答えなくてもいいんですけれども、反撃をする可能性があるのかどうなのか、あるということなんでしょうけれども、その具体的な事例、サンプルみたいなものを示してほしいということを政府には求めていました。

 そういったものを使って国民に理解をしていただいて、いざ有事になった際、存立危機事態になった際に、自衛隊が反撃して国民がびっくりしてしまって、自衛隊は何をやっているんだみたいな、自衛隊がまるで悪いかのような、あるいは文民統制が崩れてしまったかのような誤解を与えるようなことになってしまってもいけない。

 また、これは逆のパターンですけれども、米軍からは、日本は存立危機事態に米軍を守ってくれるんじゃなかったのかと、逆にこれは反撃しなかった場合ですけれども、こういった誤解といった、行き違いが発生して、様々な面で信頼を失う、あるいは自衛隊が行動に出られない、ばたばたしてしまって、意思決定ができない、そういった事態も考えられると思いますので、しっかりとシミュレーションを行って、そして、できる範囲で国民であったり周辺国にも、米国にも説明をしていく、こういった行動に出る可能性があるということを周辺国に理解してもらうということは、これは私は抑止力にはマイナスではなくてプラスになるのではないかなとも考えております。

 こういった観点で、まず、高見澤先生には、この反撃能力、存立危機事態との兼ね合いで国民への理解が今広がっていると考えていいのかどうなのか、もしそうではないのなら、どういった説明の仕方をしていく必要があるとお考えなのかをお願いしたいと思いますし、また、香田先生には、存立危機事態のシミュレーションが、反撃能力の兼ね合いで、果たして自衛隊でしっかりと行われているのだろうか、それで、そのことについての国民への理解、説明が足りないということに関しては、その指摘に関してはどういうお考えを持っているのか、そういう点について、それぞれお伺いできればというふうに思います。

 よろしくお願いいたします。

高見澤参考人 質問ありがとうございます。

 お答えいたします。

 まず、私は、存立危機事態の話という議論で、どうしても、台湾の話とかいろいろな個別ケースのときに、有事というところから議論がスタートしているというのがかなり実態と違うのではないか、だから、その辺を考えていくべきではないか。

 つまり、今でも自衛隊は、米軍も含めて、非常に警戒監視活動というのは日頃やっているわけでございますから、例えば台湾周辺で何か演習が行われたり、あるいは北朝鮮がミサイルを撃つというようなことでやる場合に、常に対応をしている。その中では、現在の自衛隊法なり平和安全法制の下でできる権限なりというのは付与された形で、そういった緊張状態を持ちながら、できるだけ紛争が起きないように、あるいはその演習をきっちりと監視できるような体制になっているというわけでありますので、何か、何もないところから突然有事になって、さあどうするんだということではないということをやはり国民の皆様には分かっていただく。つまり、平素から、自衛隊も米軍も、あるいはそれぞれの国の部隊がいろいろなことをやっているという実態があるというところからスタートすべきではないか。

 そうしますと、私どもが自衛隊にいろいろお願いしているときに、じゃ、何か不測事態があったときにどうするかということについては、当然、それに対する備えといいますか行動基準みたいなものを付与しながら行動しているわけでありますから、その場合にいろいろな権限がちゃんとあるかどうかということで、今回、平和安全法制の権限ができたことによって、より活動がやりやすくなっているという実態であります。

 それから、もし仮に緊張状態が高まっていった場合に、存立危機事態かどうかという前に、ふだんの自衛隊の体制をどうするのか、日本としてそういった問題に自衛隊以外の組織も含めてどういうふうに対応するのか、要するに、物価への影響はないのかとか国民保護の観点とかいろいろなことを考えなきゃいけなくなりますので、そういったことが同時並行的に恐らく走っていく。

 その中で、法的にいえば重要影響事態になるんじゃないかとか、あるいは、今の情勢をどう見るかということを国家安全保障会議なりで議論しながらいろいろな体制を構築していくということでありますし、その間に外交的な努力も当然行われる。いわゆる戦略的コミュニケーションということで、部隊も動かしながら、緊張を更に激化させるなというメッセージを送らなきゃいけないかもしれない。そういういろいろな行動がある中でこの問題は考えられていくというものだというふうに思います。

 まさに、そういった一連のプロセスが、法的権限もあった形で、しかも自衛隊の行動あるいは外交的な活動がシームレスに行われることによって、より紛争が起きなくなる、起こしにくくする、そういうことでございますので、まさにそこに本質的な意味合いがあるということだろうと思います。

 それで、じゃ、存立危機事態というような状況になったときにどういうふうに対応するかということでありますけれども、存立危機事態は、基本的に、いわゆる集団的自衛権の議論はありましたけれども、防衛出動によって対応する、まさに日本の防衛のために対応するものでありますので、その日本の防衛のために必要な措置というのが具体的に何であるのかということに関わってくるわけでございます。ですから、決してほかの国のために何か直接的に実力を行使するということではなくて、まさに日本の存立に関わるような事態が生じているから、そこにおいて取り得るあらゆる措置を講ずるというのが存立危機事態であります。

 ですから、私は、○○有事は日本有事ということよりも、既にそういった地理的関係あるいはふだんからの関係がある中で、より事態の悪化を防ぐために法律なり自衛隊の体制ができている、そういう前提で考えていくべきではないかと。そのときに、手段を自ら非常に狭めるのか、あらゆる手段を使ってやるという体制を取っておきながら、その意思決定というものを国会なり総理なり防衛大臣に委ねるか、その選択手段がどれだけあるのかないのかという話になると思います。

 その意味で、平和安全法制というのは、限定はありますけれども、今の情勢を悪化させないためにもふだんからきちっとした運用をしておくべきものだというふうに考えております。

 済みません、長くなりました。

香田参考人 自衛隊はシミュレーションをやっているのかどうかということですけれども、私は、高見澤参考人も、二人ともまだまだ若かった頃に相当やりました。ただ、もうお互いに、辞めた、もう十年近く、高見澤さんも、何年かな。大分たっているので、現状がどうかということについては、これはもう推測でしか言えません。

 ただし、これは、皆様がイメージされている、あるいは、今、ちまた、マスコミで言っているような話ではないんですよ。

 例えば、仮に、防衛出動、事態認定がされて、我が国の近くで米軍とかオーストラリアが作戦をするとすると、彼らは基本的には自分を守る能力を持っているんです。ということは、ほとんどそういう事態というのはまず想定できないんですよね。しかし、万が一、機器が壊れたり、あるいは自分たちの防御兵力がやられたりという、非常にまれなケースのときにやる。そのときに、実は軍事作戦というのは、友軍である自衛隊でも不用意に彼らのそばで作戦をすると撃たれます。なぜかといったら、そこまで調整ができていないんですよ、日本は日米安保しかないわけですから。

 何が重要かというと、これからやらなければならないのは、そのときに、そんな短絡的に、日本が撃ち返すとかいう話ではなくて、大小の刀を差して、もう抜いている人たちが割拠しているところでお互いに味方撃ちをしない、しかも必要なことだけしっかりと法律に基づいて実施をするということで、各国の調整機構がどうなのか。時々日米調整とかいうことが出てきますけれども、実はここは非常に複雑なんですね。

 それは、しかも、我が国の事態認定を受けて、防衛出動を受けて、アメリカと調整をする、あるいは援軍であるオーストラリアと調整をする。今からやることは、自衛隊が活動しますけれども、あなたたちの害にはなりませんよというようなことを理解の上で発動するんです。そうしないと危なくて、それ以外だと、私は、仮に今、司令官だったら、作戦はやりません。なぜかというと、味方を殺すからです。あるいは日本の国益を害するからです。

 そこを政治のシビリアンコントロールの下で総理大臣以下が決心をして、外国と調整をして、しっかりと体制をつくってやるということなので、いきなりやって自衛隊が悪者になるという理論は、私から言うと、余りにも短絡的過ぎる。要するに、軍事作戦の本質というのはそんな簡単なものではない。特に自衛隊同士でも、陸海空でも難しいんだから、他国、言葉が違う、軍事作戦のやり方が違う部隊が本当に武力を行使をする、あるいは武器を使うということについていうと、非常に精緻な調整が要るわけです。

 今、高見澤参考人も言われましたけれども、突然こういうことになるのでは恐らくないんですよね。その中で重要なことは、政府が国会に対してどう説明するのか、その中で言えることを国民に対してどう説明をして誤解を解いていくのかということが一番重要なことで、そういうことも盛り込んだシミュレーションをこの先やらなければなりません。重要なことはここですよ。

 ただ、おまえたちは先取りをしてやっては駄目だぞということについては、絶対言わないでほしいんですよ。かつてありました。例えば台湾とか北朝鮮というのを、やらなければ検証もできませんから。しかし、このとき、これは国の政策として自衛隊に命じて、外務省、関係省庁も取り込んで、今言ったような事態を考慮をして、いい場合、悪い場合という幾つかのケースをやっていく。しかし、そのときは、あなたたちは先走りじゃないよということについてはしっかりと、この環境をつくるのもシビリアンコントロールなんですね。ということを是非お願いいたしたいと思います。

 以上です。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 今のような、どういった行動に自衛隊が出られるのか、どういった作戦をする可能性があるのかという国民の理解と同時に、予算の使い方の部分についての理解というものがされなければ当然ならないということで、次に、その部分をちょっとお伺いしたいと思っています。

 我々国民民主党でまとめた安全保障政策の中で一つ問題意識を持っているのが、これは繰り返しになりますけれども、イージスシステム搭載艦と呼ばれるイージス・アショアの代替として整備をされる艦船の政策決定プロセスであったり、そのコストパフォーマンス、イージス・アショアと比べたときはどうなのかといったところは、我々国民民主党としては大変問題意識を持っていまして、様々な面で質疑をさせていただいております。

 この部分を香田先生と神保先生にちょっとお伺いをさせていただきたいと思います。

 陸から海になって、海になった結果、最初はすごい大きな船が予定されていて、それが大分小型化されてきたけれども、普通のイージス艦の倍ぐらい垂直発射装置があるという極めて大きな艦であるということで、それがいいのか悪いのかという議論もあると思いますけれども、そもそも、水上艦のBMD任務の負担を軽減をして陸上に置こうという趣旨から外れてしまっている中で、この部分を防衛省にお聞きすると、いや、水上艦になったことでできることもあるんですという答えが返ってきて、それはそうだろうと思うんですけれども、本来の趣旨から外れてしまっているのではないかというふうなことをすごく思います。

 あと一つは、予算の費用対効果がイージス・アショアに比べて大変コストパフォーマンスが悪くなるというような懸念もあって、イージス・アショアがイージスシステム搭載艦に、水上艦になったことに関してどういったふうに考えていらっしゃるのか、香田先生に。

 できれば、神保先生には、先ほど拝見した資料の中で、護衛艦に関しても小型化をしてというような表現もありましたので、その戦略との兼ね合いでこのイージスシステム搭載艦がどうなのかという観点でちょっとお答えをいただければと思います。

 香田先生、よろしくお願いいたします。

香田参考人 正直申しまして、非常に意見を申し上げるのが苦しいんですけれども、特に、大きな事業を国でやる、特に議員の皆さんはまさにそうなんですが、そのときに、最初の目的は何だったかということを見失ってはいけないということなんですね。

 私は、辞めて、イージスシステムは最初から関係している、最新のものは分かりませんけれども、相当のところは分かっている者からしますと、まさに今言われましたように、二つの地上システムで日本の全土を効率的に守れるということが大きな目的だったはずなんですね。

 ところが、途中で状況が変化していったにもかかわらず、その目的を見失って、その変化に合わせて、そのときに一番、一見都合のいい選択だけをしていって今の結果になって、それで、振り返ってみると、二隻で我が国全体の弾道弾防衛ができるわけでもないし、たくさんランチャーを積んだところで、そもそもの目的からいうと少し違うようになってきている。

 それは多目的性ということはあるんでしょうけれども、それはほかの自衛隊の部隊がやればいいことであって、本来の一番の目的は、やはり、対象国からの弾道弾攻撃に対して、ほかの部隊に負荷を与えずに専用部隊二つによって我が国を守るということですので、これは、例えるのが適切かどうか分かりませんけれども、各国の軍隊の参謀学校の卒業試験だったら不可です。卒業できません。これを今、政治は目的を忘れてやろうとしているんですね。

 もう走り出してやっていますので、今はこれをいかに効率的なものをつくるというオプションしか私はないと思いますけれども、そもそも論で言いますと、やはり目的を見失った、国民を最も効果的に、最小効果で、ほかのインパクトが少なく守るということについて、この観点から申し上げますと、事情は分かります。後輩たちが必死でやっていることも分かります。しかし、そこについての反省というのがどこにあるのか、あるいは国民に対してどういう説明をされているのか。私は、余りされていないと思います。

 ということで、あえて厳しく意見を申し上げました。

 以上です。

神保参考人 元々のイージス・アショアは、地上発射型のミサイル防衛システム、高高度で迎撃できるシステムを導入して、しかも、陸上自衛官が運用することによって、自宅、いわゆるその勤務地を柔軟に設定しながら二十四時間対応できる、まさに北朝鮮のような様々な形態で発射を試みる国に対しても二十四時間の警戒監視体制ができる、しかも日本全土を広域にカバーできるということで、極めて優れた構想であったというふうに思っております。

 いろいろな事情があってこのイージス・アショアのシステムが配備撤回をされて、今日のようなイージス搭載艦という海上配備に移行したということなんですけれども、実際に、香田参考人がおっしゃられたように、幾つか、なぜイージス・アショアが必要だったかという要素がやはり抜け落ちてしまっているということは否めないというふうに思います。

 当然、海上自衛隊、海上艦ですから、これは年間全て運用するというわけにもいかないわけですね。メンテナンスも必要である。更に言うと、交代要員も含めて様々な人員の配置においても恐らくきしむことになる。

 まだ搭載艦自体が初めての設計なので、どういう設計で安定した形でのミサイルの追尾、探知、そしてレーダーも、インターセプター、シューターも両方載せるということですから、海が荒れているときとか、全天候のときに本当に同じような形で迎撃ができるのかというところも含めて様々な試験を経なければいけないということも含めて、本当にこれでよかったのかとか、更に言うと、イージス・アショアのときに想定されていた予算、後年度負担、運用も含めてですけれども、それと比べて新しいシステムが本当に投資効率のいい形で我々は決定をしただろうかということがそれぞれの要素として検証されなければいけないという問題意識を私自身も持っております。

 そして、何よりも、我々が失った最大のものは時間だと思います。

 本来、イージス・アショアは二〇二六年にイニシャル・オペレーション・ケーパビリティーを迎えているはずです。その間、北朝鮮は様々な形でミサイルの飛ばし方、ミサイルの種類を増やしているわけですね。それで、実際にイージス搭載艦が完成した頃のミサイルの技術というのは更に様々な形で進展しているということは、時間を追いかける形で我々は装備を搭載していくということになってしまっていることということが、実は今回の政策決定で一番問題視するべきではないかと私自身は思っているわけです。

 ただし、もう既に走り始めていることなので、これをよりよくするためには、冒頭に私が申し上げたとおり、今、様々なミサイルがあります。変則軌道のミサイルや極超音速巡航ミサイル、そして飛ばし方もロフテッドとかディプレストとかある中で、従来想定されていたミサイル防衛システムの中で十分に対応し切れなかったことを付加的に要素として足していくということを、この遅れた時間を取り戻すためにも、そこに投資をしていくという形でこの新しいシステムを位置づけるというのが、今から我々がすべきではないかというふうに思っているところでございます。

斎藤(ア)委員 ありがとうございます。

 我々も委員会の場で、元々のイージス・アショアとイージスシステム搭載艦の費用面の比較をしたのかということを伺うと、そもそも別物なので比較できないとおっしゃられて、それは、まごう方なき、もう趣旨が違ってしまっているということの証明だとも思います。

 その上で、これは今年の装備調達の中で最も金額が大きいものである一方で、全体はどれぐらいかかるかまだ分かりませんという状態で、それでいてもう走り出してしまうから、何で今更質問するんですかみたいな雰囲気を防衛省からも醸し出されてしまって大変歯がゆい思いを持っているんですけれども、これは政治の責任でこうなってしまった面も大変大きいと考えておりますので、しっかりと検証して次に生かしていきたいというふうに考えております。

 最後に、時間もなくなってきたので、本当はほかの装備の妥当性についてもいろいろ香田先生にお伺いしたかったんですけれども、またの機会にさせていただきたいと思いまして、最後、神保先生にお伺いしたいのが、防衛産業の基盤強化という法案、昨日委員会で通過をしたんですけれども、防衛産業の競争力の強化が極めて重要だと考えておりまして、そういった意味で、防衛装備の移転とかを進めていくことが重要だと思っているんですけれども、その点、改めて、ちょっと時間は限られるんですけれども、御意見を頂戴できればというふうに考えております。

神保参考人 安倍政権の時代に防衛装備品移転の新しい原則が導入されまして、いよいよこれで日本の防衛産業が世界のグローバルな市場を見据えた形で研究開発や、そして、まさに売っていくということができるようになるのかなと思ったら、我々は、オーストラリア、インド、タイ、様々なところで試みて、それを事実上失敗してきたわけですね。唯一の完成品の成功例は、フィリピンに対するFPS3という防空レーダーということになります。

 なかなか、まだ日が浅いということもあるんですけれども、このうまくいかないという状態を官民一体で戦略的に改変していくということは大変重要であろうと思います。これは各国との競争にもなりますから、我々が世界の情勢をよく分析して、売っていく国に対して最適のシステムは何かということを柔軟に組み上げるカスタマイゼーションの能力というものを持たないといけないし、我々の装備はいいんです、買ってくださいではなくて、彼らの財政事情やあるいは防衛上のプライオリティーに合わせた形でスペックをいろいろな形で変更して、しっかりと防衛産業として魅力ある形にしていくというような、こういう体制を取っていくことは非常に重要であろうというふうに思います。

 さらに、防衛産業、今、利益率の問題も含めまして、防衛産業自体を継続していくということ自体が大変厳しい状況であるということを伺っています。やはり、防衛産業の規模もそうなんですけれども、どのような形で調達をしていって、それが産業界にとっても利益を生み出すようになるためにはどうすればいいかというところ、多分これから、防衛装備庁、財務省を含めて、ある程度の利益率の補助、補填みたいなところからスタートするんだと思うんですけれども、ただ、それが保護主義的に、イノベーションを起こさないような形での補助金になってはいけないというふうに思っておりまして、やはり、グローバルな市場の中で通用するような技術とは何かということに目を光らせながら開発形態を進めていくべきだというふうに思っております。

斎藤(ア)委員 参考人の皆様、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いいたします。失礼いたします。

塚田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 今日は、四人の参考人の先生方、大変御苦労さまです。いろいろな御意見を聞かせていただきました。

 そこで、今日は、私たちが問題意識として持っているところで質問をしていきたいんですが、初めに、神保参考人に、今回の安保三文書の策定経緯について伺いたいんです。

 昨年十月の財政制度等審議会での御発言を拝見いたしました。今回の軍事費の増額に関しての発言の中で、昨年五月の日米共同声明で防衛力の抜本的な強化とその裏づけとなる防衛費の相当な増額が盛り込まれた経緯に触れて、先生は、「言わば国際公約になっている」と述べておられました。私も、今回の三文書の決定に至る経緯というのは、まず昨年五月の国際公約があり、それが年末に閣議決定されたというものだったのではないか、このように感じております。

 その間、国会では多くの議員がこの問題を取り上げましたが、政府は、何も決まっていないと言うだけで、具体的な説明はありませんでした。こうした進め方というのは、三文書に対する賛否以前の問題として、国民主権や財政民主主義との関係で考えるべき点があるのではないかと思いますが、その点について、参考人の御意見をお伺いしたいと思います。

神保参考人 御質問ありがとうございます。

 防衛力の抜本的強化というのは、ここ数年、様々なところで政府首脳が述べてきたところであります。当然、それがどの程度の強化なのか、どの程度の財政的な措置を伴うのかということについては様々な議論があったということを承知しております。

 当然、それは日米関係の中で、菅総理とバイデン大統領との日米首脳共同声明、そしてその後、岸田総理の首脳声明の中でも、防衛力の抜本的な強化ということについては触れられている。どの程度強化するのかということについては、当然、日本国の中で議論していくということなので、このプロセスに関して、私は特段問題だということについて意識は持っていないということでございます。

 ただ、この一年間、十二月に閣議決定されるまでの議論の過程において、我々が何を目指して、どのような防衛力の姿と、そのためにどの程度の財政規模が必要なのかということについての議論が十分だったかということについていえば、それはいろいろな御意見があってよろしいかというふうに思います。

 今回の政府の議論に関しましては、国家安全保障局が有識者会議というものを組織するのではなく、個別の聞き取りということで、四十数名の、私もその中に入っていたわけですけれども、よりインテンシブな、よりしっかりとした形での議論が行われて、それを政府が吸い上げて、そして、特にこの財源問題に関しましては、別途の有識者会議を含めて、そこで議論をしたということになっております。これまでの策定経緯から見ると、かなり特殊な形態を取ったというふうに思っております。

 私の理解では、このような形態を取った最大の理由は、日本を取り巻く安全保障環境が大変複雑になり、また、防衛装備や防衛力に関する考え方も、先ほど言ったサイバー、宇宙、電磁波も含めまして様々な技術領域によっているということから、特定の人が代表して何か諮問をするという形になる時代がもはや終わったのではないかという問題意識であったと思うんですね。なので、幅広い専門家を呼んで、そこで政府が議論を聞いて、そして出していくというプロセス自体はよかったのではないかと思っておりますが、その有識者を超えて、マスメディアそして国民に対してこの議論を浸透する努力が十分だったかと問われれば、まだまだそれをやる余地はあったのではないかというふうにも思っているところでございます。

赤嶺委員 ありがとうございました。

 説明不足と言われる面はあったのではないかと、今の先生のお話を聞いても、感じたところであります。

 次に、香田参考人に何点かお伺いしたいと思います。

 今回の軍事費増額の規模と根拠についてであります。

 政府は、三文書で、今後五年間の防衛関係費の総額を四十三兆円とすることを決めました。前回の一・五倍以上という非常に大きな変化だと思います。政府は必要な防衛力を積み上げたとしておりますが、防衛省が四十八兆円、財務省が三十兆円台半ばを主張する下で、何を根拠に四十三兆円としたのか、具体的な説明は行われておりません。

 二〇二七年度には他省庁の予算と合わせてGDP比二%にすると説明しておりますが、他省庁予算については、五年間で何をどこまでやるのか、これから検討する段階です。にもかかわらず、なぜ二%と決めることができるのか、私たちには全く理解できません。

 香田参考人は、かつてメディアのインタビューで、自衛隊の積み上げではない、身の丈を超えていると発言しておられましたが、今回の軍事費の規模と根拠について、参考人の御意見をお伺いできればと思います。

香田参考人 ありがとうございます。

 私の、三文書が出てからの発言、少し誤解をされているところも、赤嶺先生ではないんですけれども、あるんですが、防衛省の主張の四十八、それから財務省主張の三十兆円半ばということについては、私もマスコミ報道で承知をしています。

 これは、一般感覚でいきますと、私たちが海上自衛隊の予算の総括課長であった頃あるいは部長だった頃が二十八兆円とかいうことですから、三十五兆円ということは大体一・二%ぐらいなんですね。これは、中身によってはいけるかなということは十分に言えます。それは、ただ、財務省側の相当厳しい箱に入れる場合ですね。

 それから、防衛省の場合は、一%で四十年もやってきたんだから、取りこぼしが相当ある、それを全部積み込むとしたらやはり四十八兆円、いわゆる一・七%ぐらいになるんだろうということについて、十分想像はできますが、それについての正確な説明があったかどうかということについては、これはありません。

 ただし、ヨーロッパのNATO諸国が二%、あるいは、そういう環境の中で、中国もある、北朝鮮もあるという中で、自由と民主主義を重んずる国の仲間としておおむね同じところを狙う、その一つの目安が二%だろうということ自体は容易に想像ができるところです。

 しかも、その四十三兆円の中身というのは、一部報道にありますけれども、例えば、弾薬庫を百三十棟造るとか、戦闘機の掩体ごうを造るとかいう、いろいろな事業の積み合わせということで、部分的に、ジグソーパズルの半分ぐらいが開示されているというのがいいところかなと思うんですけれども、これはあながち荒唐無稽な話ではないと思います。

 ただ、先ほども申し上げましたけれども、やはり大枠のところで、防衛省が、これだからここだということについての説明というのが非常に不足をしている。

 例えば、最新の長射程型のミサイルとかトマホークとかなんとか、極超音速とかいうものにつきましては、何ゆえに、ですからこれぐらい、それで、反撃能力についてこういう運用をするということについて、言える範囲の中でやはり国民に説明をして、それで、ですから最新装備も追求をします、今まで取りこぼした後方についてもこういうふうに盛り返していきますということについては、例えば一対四対五というふうな言い方はできたはずなんですけれども、それさえもなされていないということについて言うと、これはやはり防衛省は相当真剣に国民に対する説明の姿勢というものが問われるべきだろうなと思います。

 それから、身の丈についてというのは、これもやや誤解を受けやすいんですが、今現在の自衛隊というのは、自衛隊が本来持たなければならない専守防衛の枠の中で、相当、達成されていないんですよね、特に後方の部分について。

 だから、そこについて、事の優先度として、きっちりと手当てをせずに、今はやりの、これは決して神保参考人のことを言うわけじゃないんですが、多くのドメインの、横並びの、これはやらないかぬのです。しかし、これを声高に叫んで、まさにこれを最優先に上げてやるのか。それはあるんでしょうけれども、資源投下としてはこれぐらいですよと。しかし、こっちについて、今、足らざるところはたくさんあり、現場の部隊が困っていて、防衛体制さえかちっとできていないところについてしっかりとやらないかぬのに、それをやらずに、別のところを声高に言っているという意味で、身の丈を超えたということです。

 物事には時と順番があるということと、優先度についてしっかりと判断をして、自衛隊が我が国の防衛任務につける最適環境をまずつくっていくというのが防衛省の役割じゃなかろうか、そういう意味でいうと、背伸びをしているんじゃないかという意味で申し上げた次第でございます。

 以上でございます。

    〔塚田委員長退席、鬼木委員長着席〕

赤嶺委員 ありがとうございます。

 今の香田参考人の御発言、大変よく理解できる面がありました。

 また香田参考人にお伺いいたしますが、政府のGDP二%目標に関わって、この間の経緯を振り返りますと、トランプ政権は、バイ・アメリカンを合い言葉に、日本を含む同盟国に対して、軍事費を二%に引き上げて、米国製兵器を購入するよう求めてきました。バイデン政権になってからも、求め方に違いはあったとしても、基本的な路線は変わっていないと思います。エマニュエル駐日大使は三文書を大歓迎しておりますが、その理由を、裏づけとなる予算をつけたからだとあからさまに述べているわけです。

 安倍政権以降、アメリカの対外有償軍事援助、いわゆるFMSによる米国製兵器の爆買いが問題になってきました。こうした経緯に照らしても、やはり、二%の背景として、アメリカの存在を否定できないのではないかと思いますが、この点についてはどのように考えていらっしゃいますでしょうか。

    〔鬼木委員長退席、塚田委員長着席〕

香田参考人 ありがとうございます。

 核心に迫る御質問ですし、ただ、現場からすると、少し、現実とはやや異なる違和感もあるかなという気がいたします。

 まず、少なくとも、自衛隊員の立場からしますと、アメリカに言われたからこういう兵器が欲しいということについては、これは、お誓いを申し上げます、断じてありません。

 我が国の防衛を最終的に軍事力で行う場合に、最小限の兵力の下で侵攻を撃破するために何が最も効果的かという中で、やはり性能が一番高いもの、これは多くの場合アメリカ製なんですね。政治の段階でどういう約束があったかどうかというのについては別ですけれども、それと自衛隊の積み上げとが簡単に私は連動できるような話ではないと。まあ、アメリカからいったら、俺のがいいんだから買ってくれよというふうな話はあったかもしれません。

 しかし、例えば、F35をAとBで百四十機買うというのについて言うと、これは航空自衛隊の、自分たちの戦闘機の所要から積み上げた話であって、これは別に、バイデンさんであろうと国防長官であろうとエマニュエル大使であろうと、の話とは一切関係ない話なんですね。これは、真摯に、本当に我が国の防衛所要を積み上げた結果というものが全てと言っていいと思います。あるいは、ほとんどと言っていいと思います。

 では、なぜ米国製の装備の導入が多くなったかといいますと、先ほどの高見澤参考人の資料一の、ここのへっこんだ部分なんですね。ここは自民党政権の小泉さんのときなんですけれども、水平飛行からへっこんだ時期というのが、安倍政権で復活するまで、まさに十四年間続いたわけです。

 そこで実は防衛予算がずっと平和の代償で減らされましたから、どっちを買うかというと、ぎりぎり、性能のいいものを少しでも買おうという方向に、大きく言いますと、行かざるを得なかった。それが結果的に、アメリカから買ったようになっているということなんですね。それが逆に国内の防衛産業に相当大きな打撃を与え、防衛産業の基盤自体を傷めてしまったという別の効果もあったんですけれども、そのときは、もう毎年必死でやっていますから、結果的に先は読めなかった。

 そういういろいろな事情で米国製品というものの購入、導入が多くなっているというのは事実なんですけれども、実態を自衛隊の立場から申し上げますと、アメリカから言われたとかアメリカへのサービスということについて言うと、これは、我々の任務達成上、断じてないということですね。そこだけは御理解いただきたい。

 マスコミも、ある意味、面白いところもありまして、結構突いてくるわけですけれども、そんな簡単なことで我々は日本の、我が国の防衛を考えておりません。これはもう本当に、自衛隊、二十二万人、総員、非常に心外なところなんですね。そこについて御理解をいただければというふうに考えます。

 以上です。

赤嶺委員 大変ありがとうございました。

 私たちにとって、現場の感覚を織り交ぜて発言なさる香田参考人のお立場、大変貴重なものでありまして、もちろん意見の違いはあると思いますが、あと一問、ちょっとお願いできないかと思います。

 今回の三文書の大きな特徴は、敵基地攻撃能力の保有に踏み込んだことであります。この点について、アメリカの統合防空ミサイル防衛、IAMDに参加するものではないのか、日本の敵基地攻撃能力は米軍の指揮統制の下で運用されることになるのではないか、このように私たちが質問をいたしますと、政府は、IAMDに参加するものではない、全く別物だ、日米は独立した指揮系統に従って行動するという説明を繰り返しております。

 参考人は、マスコミのインタビューで、「「矛」の役割を日米で担うわけですから、有効に機能させるためには、NATOや韓国軍・在韓米軍のように統一した指揮系統も必要です。」と述べておられました。

 現実の日米の軍事的連携の実情に照らして、今の政府の説明、どのようにお感じになっておられるでしょうか。また、日本が敵基地攻撃能力を保有した場合に、どのような日米の連携が想定されるのか、この点についても御意見をお伺いさせていただきたいと思います。

香田参考人 これまた立ち往生しそうな御質問なんですが、これも、大原則は、今までの憲法の考え方で、日米別々の指揮系統で我が国の防衛、あるいは周辺地域の安定を成し遂げるというのが大原則です。ですから、これは何があろうとびた一文譲れません、アメリカが何と言おうと。それは自衛官のプライドです。なぜかというと、民主主義の中で育てられた自衛隊だからです。国民とともにある自衛隊だから、そこについては、勇み足といえども、ありませんし、やらせませんし、今の人たちもやらないと思います。

 ただ、同時に、例えば敵基地を攻撃する反撃能力とか、大量のミサイル攻撃に際して日米が最も有効に対処するというふうな、IAMD的な構想というのはあってしかるべきなんですよね。なぜかというと、日本国民を究極的に守るのが政府の責任であり、自衛隊の役割ですから。ただ、その中で、私が申し上げているのは、NATOと韓国、米韓同盟と一番違うのは、別々の指揮系統で自衛隊と米軍が同じ目標に対して行動するということなんです。

 しかし、その中で、今までのような、例えば二十四時間三百六十五日、自衛隊と米軍がじかに話せるような環境にないと、例えば、反撃能力というのは、北朝鮮が今撃つときに、撃った瞬間に反撃をするわけですから、これは危なくなってから設立しちゃ駄目なんですね。二十四時間三百六十五日、日米の高いレベルの調整機能がないと駄目なんです。

 それを、同一の指揮系統かどうかといいますと、同じところで意思決定はします。しかし、その中で、アメリカ、日本が国益をしょって対立をすることもあれば、同じようにいくこともあります。合意する場面についてのみ自衛隊と米軍が別々の指揮系統で調整をしながら行うというのが筋ですし、そういうふうにつくっていくと思います。

 国会の議員の皆さんに申し上げるのは、それを監視するのは皆さんですよ。シビリアンコントロールというのは自衛隊を縛るだけじゃないんです。ここは、政府もそうなんですけれども、国会の機能としてそこがきちっとできているかということについて、私は、国会の議員の皆さんの役割というのは物すごく大きい、国会の役割は大きいということをあえて申し上げて、終わります。

 以上でございます。

赤嶺委員 ありがとうございます。

 大変貴重なお話を聞いているうちに、高見澤参考人への質問もちょっと短くなってしまいましたが、ただ、高見澤参考人とは、防衛庁の局長を務められていた頃に何度も国会でやり取りをさせていただきました。また、防衛研究所の所長を務められていたときにも政党講義でお目にかかることもありました。大変懐かしい方でありますけれども、現場にいらした頃から私たちの間で取り上げてきました、軍事費増額の議論とも関わって、辺野古の問題、これは、民主主義や地方自治の面でも、予算の使い方の面でも、非常に問題が多い計画ではないかと思います。

 その辺野古の問題について、いまだにできていないんですが、どう考えていらっしゃるか、参考人のお気持ちを是非今聞かせていただきたいと思います。

高見澤参考人 御質問ありがとうございます。

 時間もありませんので。

 やはり透明性を持って、政府全体あるいは地元の理解を得ながら進めていくべきものだ、この原点に尽きるかと思います。

赤嶺委員 時間もなくなりましたけれども、参考人とはもうちょっとお話ししたいところもありましたけれども、今日はちょっと香田参考人のところで長い時間を取らせていただきました。高橋参考人も含めて、大変ありがとうございました。

塚田委員長 次に、重徳和彦君。

重徳委員 立憲民主党の安全保障委員の重徳和彦です。

 今日は、参考人の先生方、ありがとうございます。神保先生や香田先生には、我々の部会にもお越しいただきまして、大変勉強させていただきました。

 そういうことも踏まえまして、私ども立憲民主党としましては、昨年の十二月には外交・安全保障戦略の方向性という文書をまとめまして、ミサイル防空能力の強化とか自衛隊の継戦能力の強化などを打ち出し、そして、自衛のためのミサイル能力の向上が必要である、こういったことも打ち出しております。もちろん、他国領域に入っていくということに関しては極めて慎重でなければならない、これは当然のことだと思います。こうした文書もまとめさせていただいております。

 また、若干御紹介しますと、去年の六月には我が党の中で自衛隊員応援議員連盟という議連を立ち上げまして、うちの党は衆参百四十人ぐらいの党なんですが、うち百二十人以上の議員が参加するという、恐らく党内最大の議員連盟として、自衛隊員の皆さん方をしっかり応援していこうという姿勢でございます。

 昨日は防衛装備の基盤強化法案につきましても賛成をいたしまして、これは私自身の持論でもあるんですけれども、先ほど来のFMS爆買いみたいな状況は、私は特に、愛知県出身なものですから、物づくり大国であります日本の矜持として、やはり国内防衛産業をしっかりと育成していくという姿勢なしに防衛力というものは、到底基盤整備というものはできないという立場でございます。

 さて、そういうことをいいながらも、今回一番悩ましいのが財源論だと思っております。政府の方でも、増税を避けるというか、現世代への負担を軽減させるという、これはまず、もちろんいろいろな形で、すぐ増税とはいかないのは当然かもしれませんが、いろいろな工夫をしたというふうに政府は言っておりますが、その中身を子細に見ていきますと、実際には、例えばコロナで拠出した補助金、これは全部赤字国債ですからね、その赤字国債からコロナ対策として余ったものを数千億円規模で防衛力整備の財布に入れちゃうとか、それから、一年たってみないと分からない外為特会の剰余金、これも一兆二千億円先取りしちゃう。先食いすると来年の政策に向ける財源がその分減るわけでありまして、やはり将来の財政を硬直化させるということにつながるんだと思っております。また、復興特別所得税も、これは、令和二十年以降、十三年ぐらいかけてということでありますが、事実上、将来世代への増税である、防衛課税であるというふうに見ることができると思います。

 このように、まず増税前にやるべきことがある、経費節減、財源捻出、これは当然のことなんですが、その捻出のありようというのは、かなりの部分は将来世代へのツケ回しという形になっております。

 そこで、まず、大事な問題だと思いますので四人の先生方皆さんに御見解をいただきたいと思いますが、こうした、やるならば今の世代の負担で今の防衛力を強化するべきだろうというのが本来だと思うんですね。その前に経費節減はもちろんですが。それを先送りにしてこのように防衛力を整備していこうという姿勢について、この在り方について、私は大きな問題があると思いますが、どのように、それぞれ先生方、御見解をいただければと思います。

神保参考人 今回、五年間四十三兆円という規模の予算を確保するに当たって、様々な形で財源を確保し、そこにたどり着こうとしている。まさに、本委員会も含めて、いろいろな努力をしている皆さんにまず敬意を表したいと思っております。

 ただ、委員おっしゃられるとおりですけれども、安全保障は国民全てが受益者であるという観点から、国民がすべからくこれをコミットするということが明示されるような形での財政的な措置が取られることが望ましいというのが原則であるというふうに思います。

 また、そこには世代間の公平性、もちろん、若い世代はこれから長い期間日本にいるということを含めまして、受益期間が増えるという見方はあるかもしれませんけれども、それでも、将来の世代が現在いる世代に加えて余りに不公平な負担であるというのは、当然これは世代間の対立につながる問題であるというふうに思っています。

 最後は、これは五年間だけの話ではない、繰り返しになりますけれども、五年後に一体どのような財政措置をするのかという将来の予算措置の在り方というものが、しっかりと持続可能、サステーナブルであるということも踏まえて今回の基盤というものが設計されることが望ましいと考えております。

高見澤参考人 質問ありがとうございます。

 大変難しい問題だと思いますけれども、私が先ほども申し上げましたけれども、縮み思考ではなくて、前向きに、積極的に、国民一人一人が、スキリングにしてもリスキリングにしても、あるいは新しい職に対する流動性にしても、やっていけるような体制をつくるというのが、我が国の安全保障の確保にとっても、あるいは確保と並んで非常に重要だというふうに思っております。

 ですから、世代間の負担の格差ということを言う場合には、やはり若い人たちが積極的にそういった活動ができるような、つまり、教育とか医療とか、そういった部分に対する支出というものをやはり重視をする。それと全体のバランスが進んでいくような形の税制の構造といいますか、あるいは予算の構造というのをつくっていく必要があるのではないかな。

 それから、あとは、やはり経済を活性化することによって全体が税収も増えていくような、そういう流れではないかなというふうに考えております。

香田参考人 今のウクライナとか一九三〇年代からの日本のような国家の緊急時といいますか非常事態の中ではない、平時の国家基盤を構築するという中で、国民が均等に負担をして長続きをするという立場ですね。しかも、私が少し以前から思っているのは、実は、所要が増えるのは防衛予算だけではないわけで、例えば、私ももう既に、まだ前期ですが、高齢者で、もうすぐ後期高齢者になるんですが、これも老齢化に従って飛躍的に増やしていくという中で、単にその財源論も、いろいろあるんでしょうけれども、最も効果的に、国の財政を維持をして、バランスシートを取って、経済をどう回すかという観点から、できるだけ前広にということだと思います。

 ただ、社会保障とか教育とか防衛というのは、できるだけ国民がひとしく負担をして長続きをするという観点は必要かなと。

 それと、特に自衛隊から申しますと、先ほど来申し上げていますけれども、やはり、余り財政、技術に偏った論議をいたしますと国民の当事者意識が非常に薄れてくるということはありますので、その御配慮というのは是非国会にいただきたいということであります。

 以上です。

高橋参考人 当面五年間だけ考えるんでしたら、非常に財源を捻出するのは簡単だと思いました。まず、外為特会の評価益、それとあと債務償還費で簡単にできますね。

 それから先を考えたらどういったことになるかというと、防衛ですから、外部効果が上がって、かつ、全ての世代に外部効果がある話ですから、それを長期的な投資ということで考えると、ファイナンス論から思うと国債ですね。ですから、国債になったら全然負担がないといったら全く間違いでして、それは、ただ負担の仕方が平準化されるというだけですね。ですから、そういう意味では、国債でやって、平準化してやるというのがファイナンス論からは普通の考え方だと思います。

 要するに、この話は、ある一世代だけちょっと増税かなんかで狙い撃つと、実際問題、経済を壊してしまうんですね。経済を壊さないでそのような防衛力という将来世代にわたる投資、それで、かつ、便益が非常に広く、将来にも及び、かつ、広範囲に及ぶものということに対しては、ファイナンス論から国債というのが原則になるかと思います。

 以上です。

重徳委員 実は今回、先ほど、財源をかき集めたけれども、よく見るとそれは元々赤字国債だったりするみたいな話は、こういうことは、国会で私を含め委員みんなで議論するから明らかになってくるということ自体ももちろん目的ではあるんですけれども、やはり国民の納得感ですよね。

 すなわち、今回の防衛費は、高橋先生が言われるみたいに、いろいろな意味で、平準化とかいろいろな理由で国債で賄えますというふうに宣言して国債で賄うものであれば、それはそれで一つかなとも思うんですが、私は、あえて隠れ赤字国債なんと言ってちょっとやゆしているわけなんですけれども。

 このような、どうあれ国民負担になり、そして国民が負担する形で防衛力を高めようということのコンセンサスを得るということであれば、やはり逃げ隠れせずにやる必要はあるんだろうというふうに思うんです。

 その意味で、もう一点は、先ほど言いました、歳出削減の前提としてGDP比二%ありきなのかそうじゃないのかということはよく言われることなんですが、私は、どちらの説明でもいいから、はっきりと筋を通さないといけないというふうに思っております。

 したがって、実は、基本的には今の政府は二%ありきなのか、額ありきなのかというと、そうではない、積み上げた結果、いろいろ含めて二%になったんだという説明をしつつも、やはり、この間も、外務大臣の安保三文書の報告の中では、GDP比二%に達するようにという発言、言葉が出てくるわけでありまして、いや、もうそれが目標ならば最初からそう言っていればいいじゃないか、そのために四十三兆円必要なら四十三兆円、そして、そこも含めて最初から財源を確保するんだというふうに言えばいいのではないかというふうに私は思います。

 これはつまり、理屈はともかく、国民負担につながることへの納得感、説明責任なのではないかというふうに思っております。

 もう一つ前置きをしますと、積み上げといっても、金額が四十三兆円になるように積み上げていく、四十三兆円は最初から目標なんだということであれば別として、今の政府の説明でいうと、やはり積み上げていくというのは、何か必要なものがあると。

 私はこの委員会の中で、具体的にちょっと分かりやすい例として、自衛隊員向けの空調設備を整備するための予算が今年度は二百数十億円あるんですけれども、しかし、その目的は二百数十億円を使い切るということではなくて、あくまで、千九百台必要だと言われているエアコン、それから百二十施設に整備すると言われている空調設備、この千九百台と百二十設備を整備することが目的であって、そのためにお金がかかる、その金額が二百数十億から一円でも一億円でも削ることができるんだったら、それが国民に対する誠意ある態度ではないかと。

 すなわち、一旦積んだ予算額を全て使い切るという発想ではなくて、やはりそこは、一旦予算額としては積んだけれども、それは積み上げなんだ、そうであれば、執行段階でも少しでも努力をして、特に規模が大きいですから、一つの防衛装備品で何十億、何百億というものもあるわけですから、そういう削減努力をしていくという方向性もこの委員会の中で少しは議論として出てこないと、私は、確かに今までの防衛費は足りなかったと思います。随分へこんでいた時期があるというのも分かります。だけれども、今回、一気呵成に、予算がついたら全部使い切るんだ、このような姿勢はいかがなものかというふうに思いますが、このような姿勢も必要だということを、これは全員にお聞きするのも何なので、高見澤参考人と香田参考人、お二人に、行政当局も御経験されたお二方にお聞きしてみたいと思います。

高見澤参考人 御質問ありがとうございます。

 基本的には、所要量というものを見積もった場合に、全体の、どれだけの量が必要かということはある程度出てきます。それから、隊員の給与でありますとか装備品の維持経費とか、ある程度堅く見積もれるものは見積もれるわけですから、では、新たに整備する目標の部分をどう考えて、その整備のテンポをどうするかということになるわけですね。だから、五年でやるのか、十年でやるのか、本来こういった形が必要だけれども、どうするかと。

 今までは、非常にそれを、二十年、三十年かけてやるというテンポが、まさに今、そういった緊急的な整備が必要な部分があるということで、それをある程度高くする、前倒しにするということでやっているわけですので、少なくとも、それが安くできたらそれを減らすというよりは、安くできた分、同じお金でもっと前倒しをして買おうというのが、今のまさに緊急的な整備が必要なものであれば、そういうことではないかなと。

 一方で、これはすごい大事だということで調達を予定していたものが物すごく高くなったり、あるいは、そもそも機能が余り発揮できないということであれば、そのプロジェクトを大胆に見直すということが必要ではないか。

 ですから、私は、今の計画の議論で欠けているのは、積み上げが正しいかどうか、ちゃんとした積み上げがあるかどうかということばかりでなくて、実際に今、令和五年度予算で積んでいるものがどういうふうに使われていくのかという、生きた予算をまさに現場の声なんかも含めながら機動的にやっていく、そのために国会の方でいろいろな議論をしていただくということが非常に重要ではないかな。

 何回も申し上げていますけれども、状況の変化に応じて機動的に対応していく、前倒しも大いにありということ、あるいはキャンセルもありというような形でやっていただくということが本来のお金の使い方ではないか。それが硬直化していますと、四年前の予算でやっているような感覚、つまり、状況を調べて、見積りを作って、審査してというようなことで、それで執行計画も時間がかかるということですから、私はまさにスピードを高めることによってより効率化を図るというような形の議論になっていく必要があるのではないかなと。

 いずれにしても、どれだけ必要かという議論についてはある程度はっきり出ますけれども、そのテンポをどうするかということでお金が変わってくる。ある意味、経費の使い方を示すめどとして、例えば二〇二七年度にこういう高さにするということであれば、それに緩やかに上っていくためにはそれだけの経費が要る。最初の年に一遍に二%にすれば更に面積が増えますけれども、それも一つの考え方ということでありますので、あくまでも所要経費というのは、目標との関係でテンポが変われば変わってくるということではないかというふうに思います。

香田参考人 今、高見澤参考人が核心的なところ、コアなところは全部言われました。

 二十年前のじゃぶじゃぶしていたときは、年度末に余ったから予算を使い切ろうということはあったんでしょうけれども、今はほとんど全てのところをぎりぎりまで切り詰めています。しかも、財政規律、それとコンプライアンスというのが非常に厳しく問われる世の中なので、まだ多少甘いところはあるんでしょうけれども、特に、使い切るから相当無駄になっているということについていうと、例外的な話として、それはやめさせないかぬのですけれども、それは大きな問題ではないと思います。

 大きな問題というのは、例えばですけれども、よく防衛省が説明しています、F2の戦闘機の部品がないから一機部品取りにして全部と。これは何かというと、部品を買う予算を最初から計上できていないんですよ。問題はそっちなんですよね。本来なら我が国の防衛に現場で起用しなければならない戦闘機の部品の予算が、例えばですけれども、百億円としたときに、総額の絞り込みの中で六十億円しか買えないとなると、どうしても飛行機を飛ばして対領空侵犯とか訓練とかやらなきゃいけませんので、やむにやまれずそういうことを今、現場の努力でやっている、やらせている。

 今回の防衛論議で一つだけ負の流れの中でよかったことは、そういうことが明るみに出たということなんです。弾はもうないよというのは、昔は言うこともはばかられたんですよね。お前は何を言っているんだと言われたんですけれども、今はもう弾がないとか後方が弱いと。

 実は、そういうところに焦点を当てて、じゃぶじゃぶ使うんじゃないけれども、先ほども少し申し上げましたけれども、どの項目をどの順番でやっていくか。お金の使い方について言うと、まさに優先度というのはしっかりとつけていって、本来の自衛隊としてまず機能するところまでつくり上げていく、そういうふうな予算執行なり予算のつけ方ということについて是非配慮いただきたい。

 極端に言いますと、現場は一枚の紙、一本のボールペンで本当に苦労しているというのが、今ぎりぎりのところの自衛隊の現状であります。

 以上です。

重徳委員 今、香田参考人から現場のお話もございました。

 先ほど申し上げました自衛隊員応援議連としても、そういったところにまで行き届くような予算あるいは予算執行というものが必要だという形で応援をしていきたいというふうに思っている次第なんですが、先ほどからこだわっております、私は、我々国会議員は納税者の代表ということでありますので、やはり税金の使い方は、まさに今、財政が厳しいと言われて久しい中で、本当に厳しい目を向けていかなきゃいけないというふうに思っております。

 先ほど斎藤アレックス委員からも話題に出されましたイージス・アショアとイージスシステム搭載艦の話、香田参考人から非常に、特に海自に関わる話でもありますのでお話もいただきましたが、私は、イージス・アショアからイージスシステム搭載艦への方針変更について、やはり防衛省からの率直な説明というものが不十分だというふうに思っております。明らかに、年に三分の一しか稼働しないとか、それから海上自衛官への負担が非常に重くなるとか、そして、じゃ、コストはどうなのかということもまだ分かりませんなんというようなことなんです。まして、戦略性としてどうなのかということがございます。

 元々、これは河野防衛大臣のときに、ブースターが落下する、そのブースターを回収するためには十年ぐらいかけて二千億円ぐらいかかる、だからコスト面で考えてもイージス代替の船にした方がいいんだという流れだったと思いますが、どうもそういう説明で一貫するようにも聞こえないわけでございます。

 そして、今回は財政の話でありますので、先ほど来、積み上げだ、見積りだということが大事だということの話が続いているわけですが、やはり、イージスシステム搭載艦、これは二年ほど前の朝日新聞の記事によりますと、ランニングコストが三十年間で数千億円に上る、こういう内部文書があった、こういう話もございます。

 そこで、こういったランニングコストも含めた経費の話についてもきちんと示していく必要があるというふうに思いますが、これは神保先生と香田先生に御見解をお述べいただけたらと思います。

神保参考人 まず、イージス・アショアの元来の計画を撤回した経緯については、防衛省は既にその報告書を出していて、事実関係については分かったということだと思うんですけれども、イージスシステム搭載艦がなぜ最適と決めたのかは、私自身も実はよく理解できていません。

 例えば、日本には様々な自衛隊の、陸上自衛隊の基地もありますし、国有地もあるわけですね。韓国のTHAADというミサイルは、実は使わなくなったゴルフ場とか、ああいったところを買い取ってそれを使っているというような経緯もあって、いろいろなケースで実は陸上配備にする、あるいは今アメリカでもいろいろ検討されている、レーダーとシューターを別々の場所に造って、ローンチ・オン・リモートという考え方ですけれども、それによって、より安定したレーダーの軌道と安全な場所でのシューティングみたいなことを探す余地はなかったろうかというふうには個人的に思っています。これは検証の問題だというふうに思います。

 イージスシステム搭載艦がいいものになるということを今では願う立場ではあるんですけれども、ただし、先ほどおっしゃいましたとおり、その運用の仕方、どのような形でその稼働がなされるか、正確な、いわゆる迎撃体制も含めて、所要の能力が得られるのか、そして、最終的に、運用コストも含めたコストの総額というのは我々が納得できる意思決定になるのかということについては、引き続き、厳しい目線で見て議論をしていくことは必要であろうというふうに思っているところでございます。

香田参考人 これも神保参考人の言われたとおりなんですが、あと二つだけ申し上げますと、先ほど、本来の目的は何だったのかと言いましたけれども、実は、ブースターで変えていった、あるいは、海上配備型がどうもよさそうだということは分かるんですけれども、そのときに防衛省が取った態度というのは、自分たちの選択したシステムを中心に、目的を維持しようとしたんじゃないんです、自分たちのシステムを生かすためにどうするかということで、そこでもう日本の防衛を離れちゃったんです。ということは、我が国を防衛すべき防衛省・自衛隊が、実は自分たちの選択を守る政策に走ってしまった。

 私は自衛隊のOBとしてこんなことを言うのは本当につらいんですけれども、先ほども言いましたように事情は分かるんですが、国民の先ほどの四十何兆円という税金の幾ばくかをいただいてやる中で、本当にそこに真摯な検討とかそういうものがなされたのか、真面目に決心をしたのかということについて厳しく問われるべきで、ありきたりの国会答弁で私は済むような話ではないと思います。

 それと二つ目は、防衛に関わることだというんですが、私たちが若いときにやっていたのは相対比率なんです。例えば、陸上配備のときが一とすると、新しい構想の、海上型にするとコストは一・二になりパフォーマンスは〇・八になるから、それを総合的に評価すると〇・九でこれは駄目よとかいう評価ができるんです。一切、防衛の秘密とか関係ないです。性能とか関係なく、相対比率で、相対表示でできるんですよ。そんな中学生でもできるようなことをなぜ防衛省がやらないか。国民に対する責任の放棄ですよ。

 私は自衛官として、本当にこれで最後に現場で戦う自衛隊は、あんたらは国民には何も説明せずにいきなりやってきて弾ばっかり撃ってるねと言われることが一番つらい。これは結果的に日本の防衛にならないんです。これは市ケ谷とか霞が関とか国会の話が現場に落ちてくる話なんですよ。

 しかし、ここで詰めることがいかに重要かということなんです。そこの論議がなされていない。そして、こういう知恵もあるんですよ。しかし、やろうとしない。私は、少しどこか歯車が狂っているというふうにしか思えません。

 以上です。

重徳委員 短い時間でありましたけれども、本当に充実した意見交換になったと思います。

 ありがとうございました。

塚田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。両委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十七分散会


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