衆議院

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第2号 平成13年2月5日(月曜日)

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平成十三年二月五日(月曜日)

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 議事日程 第二号

  平成十三年二月五日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑




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    午後一時二分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑

議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑に入ります。鳩山由紀夫君。

    〔鳩山由紀夫君登壇〕

鳩山由紀夫君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、私の所信の表明と森総理に対する質問をいたします。

 質問に先立ちまして、インド大地震で被災された方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、先月二十六日夜、JR新大久保駅でホームから転落をした男性を救助しようとして亡くなられた韓国のイ・スヒョンさんと日本の関根史郎さんに対し、心より哀悼の誠をささげます。

 みずからの危険を顧みずに人命救助に当たったお二人の行為は、決して代償を求めることのない、人間愛に基づいた崇高な行為でありました。とりわけ、日本留学中に事故に遭われたイ・スヒョンさんの悲劇は、韓国国民の皆様にも涙をもって伝わったことと思います。お二人は、私たちに改めて人間の尊厳の大切さを教えてくださいました。私は、政府並びにJRに対して防護さくの整備などを強く求めると同時に、彼らの命をかけた善意が悲劇に変わることのない社会をつくることをお誓いいたします。(拍手)

 国民を震撼させる猟奇的事件が至るところで発生しています。特に、平穏に暮らしていた四人の家族が一夜のうちに惨殺されてしまった世田谷の一家殺人事件、姫路の中学生監禁事件、また、連日のように報道されている少年犯罪。これらの事件は、テレビの向こうの遠いところで起きたものではなく、そのほとんどが私たちの身近なところで、同じ町内で起こっているのです。

 これまでの我が国の社会秩序からは想像もつかなかったような事件が続発していることは、まさに日本の安全神話そのものが完全に崩壊してしまったという事実にほかなりません。国民生活の底流で劇的な変化が起きている、まさにその兆候なのだということを、私は、政治に携わる者として重く受けとめています。

 その一方で、この十年間で多くの会社が倒産し、働き盛りの人がリストラをされ、多数の中高年の方々が自殺に追い込まれてしまいました。自殺者の数は、交通事故で亡くなった方の三倍にも及んでいます。全国で三百二十万人の方が職を得られず、完全失業率は過去最悪を記録、サラリーマン世帯の消費は落ち込む一方です。一体、政府はだれのために政治のかじ取りをやっているのか。今や、国民の不安感は絶望感へと変わりつつあります。今こそこの現状を変え、日本の再生に取り組まなければなりません。

 この間、自民党政治は何をしてきたというのでしょうか。

 今から十二年前、バブル経済の絶頂期にあった我が国の土地の資産は二千四百兆円、東京都内の土地をすべて売却すればアメリカ全土が買えると言われたものでした。国民各界各層、すべての日本人が見せかけの豊かさを享受した反面、金に歌い踊ったその夢は、まさに泡と消えたのであります。

 政治も霞が関も、硬直し切った発想から抜け出すこともなく、公共事業を頼りにした景気対策という名のばらまき政策を繰り返し、結果的には、国と地方合わせて六百六十六兆円にも及ぶ巨額の借金を残して、日本を危機的状況に追い込んでしまいました。これは、政治の失敗ということでは済みません。あえて言うならば、将来世代に対する犯罪にも等しい行為です。(拍手)

 バブルを生み、バブルをあおった金融業界に代表される経営者らは、みずからの非を認めることなく、その失敗のツケを国民に背負わせています。責任をとる勇気すら持たないこうした政財界のリーダーたちが、今日の国家的危機を生み出した大きな原因であると私は断じます。森総理はこうした事態をもたらした要因をどのように判断しているのか、お尋ねをします。

 私の左右の閣僚席をごらんください。この中に、バブルの発生とその処理に大きな責任を負っている二人の元総理がおいでになります。二十一世紀日本のスタートを切るべきこの国会で、この方々が森総理とともにこのひな壇に座り日本再生を訴える姿に、強い違和感を覚えるのは果たして私だけでしょうか。(拍手)

 本来変えることのできる立場にいるにもかかわらず、何も変えようとしなかった自民党政治の、その象徴的光景がこのひな壇に見られます。これは、悲劇を通り越して喜劇とさえ私には思えますが、いかがでありますか。(拍手)

 日本経済の屋台骨を担い続けてきたのは、言うまでもなく、中小企業に働く経営者やその従業員の皆さんであり、まさにみずからの額に汗して日本経済を力強く背負い続けてきた方々です。その中小企業経営者約百万人の人々から巨額の金をかすめ取っていたのがKSDの正体です。このKSDを舞台にした今回の事件は、自民党の一部の政治家と旧労働省の官僚たちが中小企業の経営者から預かったお金に群がり、政官業癒着のパイプを使って巨額の利益を得たという極めて悪質な行為以外の何物でもありません。

 森総理は、クリプトクラシーという言葉を御存じですか。

 小山孝雄前参議院議員、国会質問を金で売り、受託収賄容疑で逮捕、議員辞職。村上正邦参議院議員、KSDの金で参議院の議席を買ったと言われている疑惑の中心人物、自民党参議院議員会長を辞任。そして、額賀福志郎衆議院議員、千五百万円もの資金を受け取りながら、後で返却したと弁明し、経済財政政策担当大臣を辞任。このほかにも多くの自民党議員、さらには霞が関の官僚たちがKSDマネーに群がりました。国民の怒りは、私にも届けられています。

 森総理、あなたは、さきの施政方針演説で、KSD問題について、政治家一人一人の身を律していくことが重要だと言われました。何と無責任で人ごとのような話でしょうか。このKSD問題は、一人一人の政治家の倫理の問題にとどまるものではなく、まさに自民党政治の構造的体質そのものであり、問われるべきは利権と汚職にまみれたあなたの自民党そのものであります。

 我が党は、国会においてこのKSD問題について全容解明を行うため、徹底的に審議を行う方針でありますが、自民党総裁として、さきに挙げた小山、村上、そして額賀三氏らの証人喚問要求にどのように具体的にこたえるつもりなのか、明確にお答え願います。

 KSD事件は、氷山の一角にすぎません。許認可権を利用し、補助金をばらまくことで同じような仕掛けをつくり、みずから関連団体に天下りをする高級官僚、また、この仕組みを選挙に利用し、票と金を集めようとする自民党型政治、この政官業のもたれ合い体質そのものが、ザ・自民党なのです。

 自民党は、性懲りもなく、この夏の参議院選挙でも、農林水産省、国土交通省、厚生労働省といった高級官僚OBを、専ら政官業のトライアングルを守るため、いわば業界の後ろ盾として擁立をしています。これはまさに、公正な社会をつくろうとする良識的な国民に対する挑戦的行為にほかなりません。民主党は、他の野党とともに、このザ・自民党と徹底的に闘っていくことをここに改めて強く誓います。(拍手)

 アケミボタン、アケミダリア、アケミタンポポ、何の名前か御存じですか。外務省の松尾克俊元室長が所有していた競走馬の名前です。松尾氏は、現在、外務省で確認しただけでも五千万円余りの公金を流用し、競走馬のほかにもゴルフの会員権やマンションを購入していました。松尾氏が流用した税金は、いわゆる機密費であります。

 総理、あなたには機密費のあり方と使い道について国民に説明をする義務があります。領収書も要らない金を毎年六十億円近く一体何に使っているのか、果たしてこれらの金は今後も必要なのかどうか、この国会で徹底的に審議しようではないですか。

 私は、日本の外交のために海外で苦労をしているまじめな外交官を知っています。外交上必要な予算を決して否定するつもりはありません。しかし、今回の事件はそうしたまじめな外交官の積み上げてきた信頼を決定的に損ねるものであり、外務省、ひいては日本に対する不信感の増幅ははかり知れないものがあります。(拍手)

 国民が官房機密費や外交機密費に対し大きな疑惑を抱いている今、最も必要なことは、政府が責任を持って国民が納得する形で調査し、全容を明らかにすることです。

 そもそも、外交機密費とは別に毎年計上されている総理大臣官房報償費は、五五年体制のいわば政治的遺物であり、官邸が機密費として持つ必要性はなくなったのではありませんか。総理の返答を期待します。

 河野外務大臣、あなたはさきに外務省としての調査報告を発表されました。しかし、その内容は到底真相の解明には至っておらず、与党内からも疑問が出ています。もし、報告が出された以外に新たな事実が、例えば組織的なかかわりが出てきたら、みずから職を辞し、責任をとるべきだと考えますが、いかがですか。明快に御答弁願います。

 森総理、私が何でここまで申し上げるのかおわかりですか。それは、単なる党利党略のスキャンダル追及で言っているのではありません。一連の事件について国民に真実が知らされなければ、あなた方は生き延びても、民主主義は死ぬことになるからです。「信なくば立たず」と言われた三木武夫元総理に倣って、政治の信頼回復のために、事実を隠ぺいすることなく、みずから過ちを正し、民主主義の危機を救済することを期待せんがためであります。総理の毅然たる姿勢をお示し願います。

 本年一月、省庁再編が実現し、新しい霞が関の体制がスタートいたしました。しかし、残念ながら、今回の再編は、一言で言えば、官僚の官僚による官僚のための改革でしかありません。霞が関の権限を大幅に削減し、公益法人などを全廃してこそ初めて真の改革です。にもかかわらず、政府は、省庁の数は減らしたものの、思い切った許認可権の廃止や天下りの禁止など、公務員制度改革には一切手をつけていません。一体なぜですか。

 日本の国は、北海道から沖縄まで全国津々浦々、バラエティーに富んだ地域性を持った個性あふれる社会です。地方は今、中央省庁の理不尽な行政介入に辟易し、大胆な権限と財源の移譲を強く求めています。巨大官庁の出現は、そうした地方の声を抹殺し、さらに中央集権の体制を強めるものです。構造改革を実現するためにも、分権改革の断行が総理に求められていると思うのですが、いかがでしょうか。

 太平洋戦争のさなか、軍部は、戦局が極めて不利な状況にあるにもかかわらず、その現実を国民に一切知らせることなく、勝った、勝ったと宣伝し続けました。今日、政府が相変わらず景気は緩やかな回復軌道にあるという大本営発表を続けているさなかにも、月例経済報告では景気判断の下方修正を迫られているではありませんか。国民は厳しい現実に立ち向かう気概を持っています。現実を直視し、国民に真実を伝えるべきです。(拍手)

 森総理、あなたは、さきのダボス会議において、日本はバブルの負の遺産を解消し、完全に復活する体制を整えつつあると大見えを切られましたね。しかし、あなたは一体何を根拠にこのような発言をされたのでしょうか。

 私は、日本の金融システムが不良債権を完全に処理する体制を整えているとは全く思っておりません。それどころか、金融機関がいまだに巨額の不良債権を抱えており、その重みが貸し渋りなど金融仲介機能の機能不全を起こし、年間一万九千の企業を倒産させ、日本経済の足を引っ張っていると考えます。株価低迷の本質的な原因もまさにここにあります。

 民主党が主張してきたように、経営責任を明確にした上で、厳格な資産査定と引き当てを課し、不良債権の抜本的な処理を断行していれば、金融システムは今ごろ健全化され、ペイオフ延期などという世界から失笑を買う問題先送りも必要なかったはずです。

 あきれたことに、与党内からは、ペイオフを再び延期すべきだという声すら出てきました。全くもって言語道断です。金融システムの現状をどう考え、どう健全化していくのか、総理としての考えを聞かせてください。

 昨年の失業率が過去最悪を記録したことに触れ、総理は、あたかも構造改革が進んだから当然だと言わんばかりの発言を繰り返されています。こうした最悪の状態が二年間も続いていることは、不良債権処理を適切に行うことなく、困難な問題の解決をすべて先送りしてきた政府の経済失政の結果にほかなりません。

 雇用の回復なくして本当の景気回復はあり得ません。今や、雇用問題こそが最大の政策課題であります。低迷する経済と雇用の実相について、大本営発表を繰り返してきた政府としての責任をどう感じておられるのでしょうか。

 財政構造改革に必要なものはただ一つ、政治の覚悟です。民主党は、五年間でプライマリーバランスを回復し、財政健全化の一歩にすると提言しています。既得権を打ち破り、公共事業などの歳出を徹底的に削減するしかありません。森総理は、二〇〇一年度予算案において公共事業の抜本的見直しを行ったことを誇らしげに語っていますが、中止した予算額はたかだか百五十億円にすぎず、公共事業全体の予算は全く減ってはおりません。

 私は、国の資源配分を、箱物などへの投資から人に対する投資へと抜本的に見直すべきだと考えます。例えば、農業においても、農業土木ではなく、担い手育成などへの投資を重視すべきであります。また、コンクリートのダムを緑のダムへと転換するなど、資源配分の見直しとさらに規制改革こそが、民間部門の経済を活性化して新たな産業や雇用を生み出し、二十一世紀の日本の経済構造を大きく変えることができます。総理の財政構造改革及び財政健全化への具体的な構想をお尋ねします。

 また、我々野党四党は、近く機密費の見直しを含む予算組み替え要求案を提出し、その中で三千億円の公共事業等予備費の削減も盛り込む方針です。総理、組み替えに応ずる用意はおありですか。

 私たちは、今から四年前、諫早湾の干拓は国民の血税をむだに使う公共事業であるばかりか、水質汚濁、環境汚染をつくり出し、地域住民はもとより、有明海を愛する多くの人たちにとって無意味なものだと主張してきました。しかし、自民党と農林水産省は、私たちの声を無視して、農業振興、さらには防災対策という美名のもとで干拓事業を強行してきたのであります。

 今、その有明海では、黒いノリが黄色く変色するなど、さまざまな異変が起きています。強引に諫早湾の干拓を進めて、有明海を魚介類のすめない死の海にし、漁民の生活を破壊しようとしている、その罪の重さを心に銘記すべきであります。

 森総理はみずから調査をすると発言されたようでありますが、それはいかなる調査をいつまでに求めたものか、明確にしていただきたい。

 総理、今からでも遅くはありません。我々民主党が主張してきたように、干拓事業の失敗を認め、直ちに水門をあけるべきです。(拍手)

 老いてますます盛んになるべき老後が、老いてますます不安になる、これが我が国の皮肉な現実です。この間、政府は、介護保険制度をゆがめ、国民と約束したはずの医療制度の抜本改革を医師会の圧力に屈して先送りし、さらに、昨年の年金制度改正では年金額をまたもや切り下げ、国民の不安に拍車をかけました。総受給額が一千万円も減らされた若い世代の間には、急速に年金制度に対する不信感が広がり、年金に加入しない方々がふえ続けるなど、制度が根幹から揺らいでいます。

 民主党は、国民の将来不安を解消することこそ政治の急務であり、責任であると言い続けてきました。基礎年金を全額税で賄い、だれもが不安なく老後を迎えられる制度とすべきであります。総理のお考えを伺います。

 昨年の秋以降、与党の中で、衆議院の選挙制度を中選挙区制に戻そうとする議論が盛んに行われているようであります。この選挙制度の話は、相撲に例えれば、丸い土俵を四角に変えようとするものであり、世間では御都合主義と呼んでいます。自分たちに有利になるように変えようとする心根の卑しさに、私は民主主義の危機を感じるのです。(拍手)

 イギリスでは、あの腐敗防止法ができたとき、腐った卵でおいしいオムレツはつくれないということわざがはやりました。腐った政治では暮らしはよくならないということであります。日本の与党は、いわゆるあっせん利得禁止法を腐らせ、今度は選挙制度まで腐らせようとしています。何をか言わんやであります。

 選挙制度改革については、何よりもまず一票の格差を是正することが重要です。有権者一人一人の持つ国政に対する発言権の公正さを確保するよう強く望みます。このことについては、連立を組んでいる公明党の考えもたださなければなりません。総理及び坂口厚生労働大臣は、御都合主義的選挙制度の改悪に対して、またもや与野党の合意なくしてなさるつもりであるのかどうか、お尋ねをいたします。

 一九六四年、腐敗の根絶と福祉の充実、人権の擁護、そして何よりも平和を大切にする庶民の政党として結党されたのが公明党です。事もあろうに、その公明党が、自民党と手を組んで、その延命に手をかし、今度のKSD事件も、外務省の機密費流用問題も、国会の審議にすら出てこなかったのはなぜでしょうか。弱きを助け強きをくじくはずの政党が、なぜ強きを助け弱きをくじく自民党政治を支えるのですか。(拍手)

 坂口厚生労働大臣のこの問いに対する率直なお答えを聞かせてください。

 新しい世紀のスタート地点に立ち、私は、いかなる歴史の課題に対しても積極的にチャレンジし、未来に向けて能動的に思考する精神の構えが最も求められていると思います。

 顧みれば、二十世紀は戦争と経済成長万能の時代でした。中央集権体制のもとで、結局それがもたらしたものは、物質的な豊かさの陰の精神の荒廃と環境破壊ではなかったでしょうか。

 私は、この東アジア地域が、平和を愛し、さまざまな国の経済と文化が共生する地域となることを望んでいます。二十世紀最後の月、中国の江沢民主席にお会いしたとき、私が東アジアに不戦共同体をつくるべきだと提案してきたのもこのためであります。

 アメリカがブッシュ政権へとかわり、日本重視を強めれば、それだけまた日本は中国との信頼のきずなを大切にすべきですし、アメリカの信頼にこたえる努力もしなければなりません。それぞれの国家の自立性と共生とのバランスが二十一世紀の課題であり、私は、日本がその大事業に積極的な役割を果たしていくべきだと考えています。

 ITの活用は、国籍や言語、人種や宗教などの違いによって分断されてきた時代に決別をし、あらゆる境遇と地位にある人たちが地球市民として共生する新しい時代を築く可能性を持っています。その新しい技術と人権保障が結びつくなら、二十一世紀は共生の世紀、人権の世紀となることでしょう。

 その新しい流れを現実のものとする力のあらわれが、環境NGOなど、開かれた公益を実現するさまざまなNPOの誕生と、その国境を超えた活動です。この地球上に共生の文化をはぐくむためにも、NPO法人の多くが自由に活動できるための税の支援策を早急に実現したいと考えています。政府の考えるNPO税制は羊頭狗肉にすぎません。また、私たちが、夫婦別姓を選択できる民法の改正に積極的に挑み、男女共同参画の社会を率先して切り開き、永住外国人に地方参政権を与えることにも意欲的であるのも、こうした考えに基づいているからです。

 新しい世紀では、人間と自然、環境と経済を共生する社会をつくり出さなければなりません。昨年十一月に開かれたCOP6は、各国の利害が錯綜し、地球温暖化防止のための国際的な合意を達成できませんでした。とりわけ日本政府は、根拠に乏しい森林吸収源の主張を繰り返し、会議決裂の張本人となりました。この責任は重大です。日本こそ、地球温暖化の問題に先頭に立って責任を負うべきと考えます。

 経済においても、規制改革を断行して市場原理に基づく公正な競争を促進するとともに、やり直しのきく仕組みを十分に確立し、安心のためのセーフティーネットの徹底を図っていくことです。強い経済には強い福祉をということが新しい世紀において目指すべき姿です。

 経済と雇用と社会正義の三つを同時に満たすことができるのは、人間の能力を高める教育です。ところが、不登校十三万人、高校中退十一万人、これが日本の教育の現状です。その上、高校で七割、中学校で五割、小学校で三割が授業が理解できないと言われている子供たちです。これが現代の七五三と言われる深刻な現実なのです。

 この国の子供たちは悩んでいます。受験戦争や社会のシステムが、他人は敵と見る競争原理ばかりを教え、他人も味方と見る協力原理は忘れ去られてしまっています。自立と共生の教育を放棄して子供たちに知識や道徳を押しつけても、問題の解決にはなりません。まして、森総理のように、教育基本法の中に道徳観の復興を唱えればよいというほど単純なものではありません。

 政府がなすべきことは、まず、国の画一的な指導による現在の教育制度を変え、国は最低限度の基準を示すにとどめ、地域の人々が参画しながら責任を持って学校を運営することができる仕組みに転換することです。民主党は、その一つとして、コミュニティースクールの設置支援を挙げています。そして、子供たちや親たちの選択の幅を広げて自由な学校教育を実現することです。

 私は、人材育成のための投資が真の公共投資だと考えます。職業能力開発や生涯学習のチャンスを飛躍的に拡大し、人生のあらゆるステージで希望する教育を受けられる社会をつくることが重要です。民主党政権では、何よりもこうした人に対する投資を最優先いたします。私は、二十一世紀を人間復興の世紀としたいのであります。

 今から百年前、ロンドンにいた夏目漱石は、ビクトリア女王の逝去という歴史的事件に遭遇し、えも言われぬ世紀末的不安を抱きました。漱石は、近代日本の軽薄を予測して、祖国の行方に強い懸念を表明していました。自己本位、すなわち独立自尊の精神を失い、拝金主義に流れる近代日本の姿を想像しては、精神の荒廃を予測し嘆いていたのであります。新世紀を迎えた今日の日本の姿は、漱石の危惧そのままではないかと私は思っているのです。

 この国の流れを変えなくてはなりません。今こそ、歴史の峠を越え、二十一世紀にふさわしい新しい政府を実現し、構造改革という困難な道を英断をもって突き進む勇気ある行動にチャレンジしようではありませんか。その最初の仕事が、ザ・自民党政治を終えんさせることです。私は、忘れかけている日本人の誇りと崇高な志を取り戻す闘いを、きょうただいまから開始することを宣言し、所信の表明と質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) まず、鳩山議員から、冒頭に、このたびのインド西部の大地震につき言及がありました。

 地震により多くの人命が失われましたが、この場をかりまして、インド政府並びにインド国民の皆様にお悔やみを申し上げますとともに、被害の回復のために、我が国としてできる限りのことを行いたいと考えております。この地震による多大な被害にかんがみ、日本政府といたしましては、直ちに一億三百五十万円相当の無償資金及び物資援助を行い、国際緊急援助隊医療チームを派遣いたしました。また、本日、けさ、自衛隊部隊をテント等物資の輸送及び設営技術指導のために被災地に派遣したところであります。政府といたしましては、今後も被害の状況を踏まえつつ、必要な支援を行っていく考えであります。

 JR新大久保駅での事故についての御指摘がありました。

 今回の事故は、新大久保駅のホームにおいて線路に転落した旅客を救助しようとされた韓国人留学生のイ・スヒョン氏とカメラマンの関根史郎氏がお亡くなりになるという痛ましい事故でございました。みずからの犠牲を顧みず救助に入ったお二人が、勇気ある行動をとられた結果、不幸にもお亡くなりになられたことは痛恨のきわみであり、私といたしましても、お二人の人命を真に重んずる行為を心からたたえるとともに、御霊前にて謹んで深く弔意を表したところであります。

 このお二人の行為は、人間にはこのようなすばらしい勇気があることを多くの国民に教えてくれたものであります。私としても、お二人を長く顕彰する具体的な方途をJR東日本等において検討するようお願いをいたしたところであります。

 今後、こうした勇気ある行動が痛ましい結果をもたらすことのないよう、この事故を踏まえ、既に全国の鉄道事業者に対し注意喚起を行っているところでありますが、さらに各鉄道事業者のホームにおける安全対策の状況についての実態把握に努め、ホームからの転落事故に対する対策に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

 我が国財政が現在の状況に至った要因についてのお尋ねがありました。

 我が国経済は、平成十年秋にはデフレスパイラルに陥るのではないかとの懸念がございました。しかしながら、政府がこれまで取り組んできた大胆かつ迅速な政策運営の効果もあって、我が国経済は依然として厳しい状況にあるものの、緩やかな改善を続けております。

 こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題であると考えております。

 他方、バブル経済の崩壊やその後の景気の長期的低迷等を背景に財政収支が悪化し、平成十三年度末における国と地方合わせた長期債務残高が六百六十兆円になる見込みであるなど、我が国財政は厳しい状況となっております。

 こうした状況を踏まえ、平成十三年度予算においては、将来にわたって持続可能な財政の仕組みをつくり上げる準備として、公共事業の抜本的な見直しや中央省庁再編による施策の融合化と効率化を図る等、財政の効率化と質的改善を図りつつ、国債の新規発行額を減少させたところであります。

 さらに、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、財政構造改革について、その実現に向けて議論を進めてまいります。その際には、たびたび申し上げておりますが、新世紀における我が国経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れる必要があると考えております。

 自民党政治が何も変えようとしなかったとの御指摘がありました。

 二十世紀の最後の十年は、我が国の経済運営が非常に難しい時期でありました。グローバル化、情報技術革命、少子高齢化、環境問題の高まりなどの変化の中で、これまでの物の考え方やシステムには時代に適合しなくなっているものが多く見られるようになりました。

 こうした中、自民党は、一時期を除き、責任ある政権政党として常に構造改革に取り組み、大胆な政策をとってまいりました。そして、こうした過程を経てようやく日本新生に向けての道筋が明確となり、現在、経済社会全体の構造改革に全力で取り組んでいるところであります。

 また、私が宮澤大臣、橋本大臣のお二人の元総理に入閣をお願いしたのは、景気の本格的回復に向けた経済運営や中央省庁改革をスタートとするさらなる行政改革といった内閣が直面する重要課題に全力で取り組むためであり、強い違和感を覚えるとの御指摘は当たらないものと考えます。

 KSD問題に関連して、クリプトクラシーという言葉、あるいは小山、村上、額賀三氏の証人喚問要求についてお尋ねがありました。

 鳩山議員がクリプトクラシーという言葉をどのような意味で使われているかは承知しておりませんが、いずれにせよ、今回のKSDをめぐる事件は、政治に対する国民の信頼を損なうものであり、私としても、大変遺憾であり、極めて深刻に受けとめております。党の所属議員から逮捕者を出したことについても残念のきわみであり、公党として国民に心からおわびを申し上げます。

 しかしながら、今回の事件から自民党そのものを利権と汚職にまみれていると直ちに結論づけるのは、不当な御指摘であります。(拍手)

 現在、司法当局による捜査が行われておりますが、徹底的に真相究明がなされ、国民の前に真相が明らかにされるべきであると考えております。また、真相究明を待つことなく、自民党内の仕組みについて見直すべきものは率先して見直し、自民党の、政治の信頼回復に全力で取り組んでまいる所存であります。

 他方、小山、村上、額賀三氏の証人喚問要求については、議院の運営に関することでありまして、今後の国会の審議の状況を踏まえつつ、国会において御判断をいただくべきであると考えます。

 内閣官房の報償費に関するお尋ねでありますが、歴代内閣総理大臣の外国出張経費に関する外務省職員による事件につきましては、国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめ、国民の皆様にも深くおわびを申し上げる次第であります。

 内閣官房の報償費は、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費であり、国政の遂行上不可欠なものであります。今後の捜査当局による真相解明の進展も見ながら、政府として原因の解明と再発防止に万全を期してまいりたいと考えております。

 一連の疑惑の解明についての総理大臣としての姿勢についてお尋ねがありました。

 国民の政治に対する信頼の回復は極めて重要であり、今回の事件を踏まえ、一層その思いを強くしたところであります。

 御指摘の一連の事件については、私は、事実を隠ぺいしようとする意図は毛頭なく、司法当局による捜査などにより徹底的に真相究明がなされ、国民の前に真相が明らかにされるべきだと考えております。そして、その過程で問題が明らかになれば、断固としてこれを解決する努力をするのはもちろんでありますが、真相究明を待たずに見直すべきものは積極的に見直し、このような事件の再発防止に努めてまいります。私としては、このような取り組みにより、政治の信頼回復に全力を尽くしてまいる所存であります。

 霞が関の権限削減や公益法人改革、公務員制度改革に関するお尋ねがありました。

 これらにつきましては、昨年十二月、二十一世紀の行政のあり方を示す指針である行政改革大綱を閣議決定し、平成十七年度までを集中改革期間として、我が国の行政の構造に踏み込んだ本格的な改革を進めていくことといたしております。

 このため、先般、新たな行政改革推進本部を設置するとともに、行政改革担当大臣のもと、内閣官房に事務局を発足させました。中央省庁改革という歴史的な改革のメリットを国民にとって確かなものとするよう、規制改革、公益法人改革、公務員制度改革にも全力を挙げて取り組み、新たな体制に魂を吹き込んでまいりたいと考えております。

 今回の中央省庁改革に関連して、地方主権の大改革を行う意欲があるかとのお尋ねがありました。

 今回の省庁再編は、内外の主要な行政課題に対し総合的に政策を展開できるよう行政目的別に大くくりをするものであり、また、地方分権の推進や地方支分部局の長への権限の委譲などにより、御指摘のような批判は当たらないと考えております。

 さらに、今般の地方分権改革は、中央省庁改革とともに、国民の立場に立った総合的、機動的、かつ透明な行政を目指し、二十一世紀の我が国にふさわしい行政を目指すものであります。国と地方との関係を見直し、地方公共団体の自主性、自立性を高める観点から、政府を挙げてさらなる地方分権の推進に強い決意で取り組んでまいります。

 バブルの負の遺産についてのお尋ねがありました。

 バブルの崩壊に伴って長期的に景気が低迷し、日本経済は、設備、雇用、債務のいわゆる三つの過剰という問題を抱えるに至りました。旧経済企画庁が行った試算によれば、過剰設備額は、まだ九七年初めの水準までは戻っていないものの、全産業で、九九年の約五十六兆円から、昨年半ばには約三十五兆円と低下しております。また、過剰雇用感につきましても、同様に、依然として高い水準であり、まだ九七年初めの水準までは戻っていないものの、減少いたしております。最後に、過剰債務をはかる目安として、長期債務・キャッシュフローの比率を見ると、業種によって進捗状況が異なるものの、改善いたしております。

 以上のように、政策効果などにより景気は最悪期を脱し、三つの過剰についても、総じて見れば解消の方向に向かいつつあると考えております。

 なお、金融機関においては、不良債権に対する必要な手当てを行っており、金融機関の健全性について、かつてのような問題があるわけではありませんが、不良債権問題を抜本的に解決し、健全な中小企業等に対する金融の円滑化を図るよう一層の努力をしてまいります。

 金融システムについてのお尋ねでありますが、各金融機関においてはこれまで不良債権に対する必要な手当てを行ってきており、金融機関の健全性について、かつてのような問題があるわけではありません。

 平成十四年四月以降ペイオフを解禁することとしており、これに向けて金融機関に関する検査監督等を引き続き実施するとともに、産業の構造改革等を進めるための環境整備を図ることにより、借り手である企業の財務の改善を促すことを通じて、金融システムの安定化及び金融の円滑化に万全を期してまいります。

 政府の景気認識は大本営発表ではないかというお尋ねがありました。

 政府としては、入手可能な最新の統計を分析する等々して、その時点で最も的確と考えられる景気判断を行うよう努めてきたところであります。その上で、最近では、家計部門の改善がおくれるなど依然として厳しい状況にあるものの、企業部門を中心に自律的回復に向けた動きが継続し、全体としては緩やかな改善が続いている旨判断しているところであります。

 なお、今回の中央省庁再編で内閣府に新たに設置された経済財政諮問会議において、有識者議員の現場感覚や経済に関する深い洞察力を十分活用し、常時、的確な景気判断に努めてまいる所存であります。

 資源配分の見直しと規制改革及び財政構造改革、財政健全化についてのお尋ねがありましたが、資源配分の見直し、規制改革については、既に積極的な取り組みを行ってきております。

 具体的には、まず十三年度予算においては、総額七千億円の日本新生特別枠を初めIT革命の推進など、二十一世紀の新たな発展基盤の構築に必要とされる分野に重点的、効率的に資金を配分することとし、新世紀のスタートにふさわしい予算といたしております。

 さらに、規制改革については、IT、医療・福祉、雇用・労働、教育、環境などの各分野に積極的に取り組むとともに、競争政策の積極的展開を図るため、十三年度を初年度とする新たな規制改革推進三カ年計画を三月末までに策定いたします。

 こうした施策を推進することにより、企業の創造的な経済活動を促進し、新規産業を創出することを通じ、力強い成長と活力にあふれた経済社会を現実のものとする考えであります。

 他方で、先ほど申し述べたとおり、我が国の財政状況は主要先進国の中でとりわけ厳しい状況にあります。財政構造改革につきましては、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、その実現に向けて議論を進めてまいります。

 今般の中央省庁再編において、内閣府に経済財政諮問会議を設置いたしました。景気を着実な自律的回復軌道に乗せるための経済財政運営とともに、財政を含む我が国の経済社会全体の構造改革に向けた諸課題について、具体的な政策を主導するとの決意を持って、実質的かつ包括的な検討を行って、国民が安心と希望を持てる処方せんを示していく所存であります。

 公共事業等予備費についてお尋ねがありました。

 我が国の経済は、現在緩やかな改善を続けておりますが、依然として厳しい状況にあり、また、米国経済の減速など懸念すべき点も見られます。こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題であると考えております。このため、十三年度予算における公共事業等予備費は、経済情勢の変化に機動的に対応するための備えとして計上しているものであり、公需から民需への円滑なバトンタッチに万全を期す観点から必要な措置であると考えております。

 有明海のノリ被害に関する調査についてお尋ねがありましたが、まず、原因究明のため早急に緊急調査を行い、その結果を三月末を目途に暫定的に取りまとめ、速やかに公表いたしたいと考えております。また、十三年度からは、本格的な調査として、まず有明海の海域の環境、そしてノリの不作原因の究明、この二つを目的とした総合的な調査を関係省及び各県が連携して実施することとし、この中間取りまとめを遅くとも九月末をめどに可能な限り早く公表したいと考えております。このように、徹底した原因究明を行い、漁業者の皆さんが将来に展望を持てるよう万全な対応をするよう、私から関係者に直接指示をいたしたところであります。

 また、これと関連して諫早湾干拓事業についてのお尋ねがありました。

 この事業は、長崎県を初めとする関係地方自治体や地域住民等の強い要望に沿って、環境にも十分配慮しつつ、事業の着実な推進に努めているところであります。

 ノリの不作の原因につきましては、現時点では明らかでありませんが、まずは予断を持たずに徹底的に先ほど述べたような調査を行うことが重要であると考えており、私から関係者に直接指示をいたしたところであります。その調査において設ける第三者委員会の中で、調査項目の検討結果として、排水門をあけて調査することが必要という結論になれば、排水門をあけて調査することもあり得ると考えております。

 基礎年金を税方式化すべきとのお尋ねがありました。

 年金制度については、昨年三月に、将来の世代の過重な負担を防ぐとともに確実な給付を約束するとの考えに立って、制度の長期的な安定を図るための年金法の改正を行ったところであります。

 基礎年金を初めとする社会保障制度の財政方式としては、昨年十月の社会保障構造の在り方について考える有識者会議の御提言も踏まえ、自己責任の原則に立って、社会保険方式を基本としつつ、保険料と公費を組み合わせることにより、給付に要する費用を賄っていく必要があると考えております。

 国民の老後を支える年金制度については、国民が安心して信頼できるものにしていかなければならないと考えており、今後とも、少子高齢化の進展など社会経済情勢の変化を踏まえながら、将来にわたり持続可能で安定的な制度の確立のために、さらに努力を続けてまいりたいと考えております。

 衆議院選挙制度の改革についてのお尋ねでありました。

 現在の小選挙区比例代表並立制は、個人中心の選挙から政党中心、政策中心の選挙に改めていこうという趣旨で導入されたものであります。本制度のもと既に二回の選挙が実施されましたが、これまでもさまざまな問題点や一票の格差の問題も指摘されてきたものと承知をいたしております。

 私は、完全な選挙制度というものは存在せず、これまでも選挙制度についてはさまざまな試行錯誤が重ねられてきたものと考えております。そうした意味で、現在、選挙区画定審議会では区割りの見直し作業が行われているものと承知をしておりますが、現行制度についても、頑迷にこれを守り続けなければならない理由はなく、見直すべき点は見直していく必要があると考えております。

 いずれにいたしましても、選挙制度のあり方については、国民が政治に関心を持ち、国民から信頼される政治を確立するために、各党各会派が真剣に議論していくべき問題であると考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 外務省におきます公金横領疑惑についてのお尋ねでございますが、まず、今回の事件によりまして、外交をお預かりする外務省に寄せられた国民の皆様の信頼を裏切ったことについて、改めて心からおわびを申し上げます。

 本件につきましては、先般公表いたしました調査報告書で述べましたとおり、外務省として、強制的な捜査権を持たない中で可能な限り調査を行い、松尾元室長が少なくとも平成九年十月から平成十一年三月までの間に公金を横領し、私的目的に使用した疑いが明白となりましたため、同人を警視庁に対し告発いたした次第であります。

 今後は、外務省としては、全容解明のために捜査当局に全面的に協力していくとともに、みずからも必要な内部調査を継続することといたしております。

 本件を未然に防げなかったことにつきましては、外務省としてのチェック体制に不備があったことによるものであり、この点につき深く反省をいたしております。

 私といたしましては、今回の事件に対する厳しい反省に立ち、襟を正して真相究明と抜本的な再発防止に取り組むことが私の責任であると考えておりまして、これにより外交に対する国民の信頼を回復するよう全力を尽くす所存であります。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 鳩山代表から二つの問題が私に対してございました。

 第一問題は、選挙制度についてのお尋ねでございます。

 選挙制度の問題は議会制民主主義の根幹にかかわる問題であり、民意を正しく反映しているかどうかがその命であります。

 公明党はかねてから中選挙区制を主張しているところでありますが、いつの時代にあっても、より十分に民意を反映する制度を追求することは、政党として当然であると考えております。したがって、これ以上多くを語る必要はないと思います。(拍手)

 第二問、不正、腐敗の根絶を結党の精神とする公明党の姿勢についてお尋ねがありました。

 党を代表して語る立場にはありませんが、あえてお答えをすれば、公明党は一貫して清潔な政治を目指しているところであり、いかなる政治腐敗にも毅然として立ち向かう決意でございます。この立場が変わったことは、ただの一度もございません。

 しかし、そのためには、冷静な議論と偏見を持たない姿勢が必要であります。感情的な言動はかえって真実を見失う可能性があることを一言つけ加えまして、お答えとさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 古賀誠君。

    〔古賀誠君登壇〕

古賀誠君 私は、自由民主党を代表して、さきに行われました森総理大臣の施政方針演説に対し、質問をさせていただきたいと存じます。(拍手)

 最初に、去る一月二十六日に、インド西部の大地震により、多数の人命が失われ、甚大な被害が発生しました。被災された方々に心よりお見舞いを申し上げますと同時に、速やかな復興をお祈りいたします。日本政府において、医療チームの派遣、援助物資の供与など可能な限りの支援をしておりますが、引き続き万全な救援措置を講じていただきたいと存じます。

 また、有明海のノリ養殖の深刻な被害について、自由民主党は既に被害調査対策本部を立ち上げ、去る一月二十六日、与党三党の幹事長等で現地を調査いたしました。政府としても、被害原因の徹底究明を総合的に行うとともに、漁業関係者への緊急の生活支援を初めとする支援措置について、万全かつ早急に対処していただくよう要請するものであります。(拍手)

 さらに、一月三十一日、日航機同士が異常接近するという事故が起きました。衝突回避した一機の中で負傷された方々に、心よりお見舞いを申し上げます。今回の事故は空前の大惨事になる寸前だったことを重く受けとめ、自由民主党としては、国民の不安を解消するため、ニアミス事故調査対策特命委員会を設置したところであり、政府においても原因究明と再発防止に全力を挙げることを求めるものであります。

 さて、二十一世紀の扉が開かれました。いよいよ新たな百年が始まります。ちょうど百年前、二十世紀を迎えるに当たって、福沢諭吉先生はこんな言葉を残したそうです。「独立自尊、新世紀を迎ふ」。昨年、この言葉を知り、私は深い感銘を覚えました。独立自尊とは、独立して世に処し、みずからの人格と威厳を保つことでありますが、百年たった今も少しも古さを感じさせないばかりか、むしろ、二十一世紀を迎えた日本国民全体、とりわけ我々政治家に重いメッセージを伝えていると思います。

 私は、この意味するところをかみしめながら新年を迎え、二十一世紀という新たな世紀が希望に満ちた平和な世紀になるよう、一政治家として身を賭して邁進することを決意した次第であります。(拍手)

 しかし、年明け早々、独立自尊の精神とは裏腹に、まことに残念なことが起きてしまいました。いわゆるKSD事件をめぐって、小山孝雄参議院議員が受託収賄容疑で逮捕される事態が生じました。政権与党の中枢にある我が党に国民の厳しい怒りの視線が向けられているのは当然であります。公党を預かる者として国民の皆さんに、政治の信頼を損なったことに、また、友党の公明党、保守党の皆さんに、御迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げる次第であります。

 我が党としては、小山議員に対し強く離党を勧告、同氏は離党し、最後は議員を辞職されました。当然、事件そのものについては司直の手にゆだねるほかはありません。問題は、自民党としての反省と改革であります。二度とこういう事態が起きることのないよう、組織の総点検をして問題点を洗い出し、具体策を講じることだと考えます。加えて、政治家一人一人が政治倫理について深く思いをいたし、みずからを厳しく律することが肝要であります。小山議員の議員辞職、額賀経済財政担当大臣の辞任は、その反省と自戒の第一歩と受けとめていただきたいと思います。

 我々政治家にとっては、倫理は最重要の問題であります。政治倫理の問題は、古くて新しく、新しくて古い問題であります。マックス・ウェーバーは、「職業としての政治」という著書の中で、政治家の力の中には善悪が渦巻いていると指摘し、禁欲、すなわち欲を禁ずることが政治家の大きな課題であると言っております。我々政治家は、国会の議席を国民から負託された栄光の座として誇りを持つ一方、職業としての政治家として、物欲を断って職責を果たす責任を常に感じておかなければなりません。

 衆参両院で議決された政治倫理綱領は、その冒頭にこううたっております。政治倫理の確立は、議会政治の根幹であります。まさに至言であります。この言葉をかみしめ、今回のKSD事件を教訓に、日本の政治と自由民主党の信頼回復に全身全霊を注ぐ覚悟であります。(拍手)

 総理はこの政治倫理についてどうお考えか、最初にお尋ねしたいと思います。

 外務省職員による公金横領事件についても触れなければなりません。まことにざんきにたえないことであります。外務省の調査結果と処分が発表されましたが、国民の怒りはさらに増幅された印象を受けます。これだけ巨額の公金が不正に流用されるには、組織として欠陥があったものとだれもが考えているからであります。

 福島県二本松市に、二百四十数年前に建立された戒石銘という石碑があります。そこには、藩主が藩士に対する訓戒として次のように刻まれております。

  爾の俸 爾の禄は

  民の膏 民の脂なり

  下民は虐げ易きも

  上天は欺き難し

これは、おまえがお上からいただく給料は人民の汗とあぶらの結晶である、下々の人民は虐げやすいけれども、神を欺くことはできないという意味でありましょう。政治倫理の確立が強く求められると同様、公務員も公僕として、そのような戒めを肝に銘ずべきであります。

 今回の事件を踏まえ、外務省の組織、体制のあり方について総理は外務省をどのように指導されるおつもりなのか、さらに、横領事件のきっかけとなった報償費のあり方についてどうお考えになるのか、お伺いしたいと思います。

 さて、日本にとっての二十世紀を振り返ってみますと、前半は戦争の半世紀でした。とりわけ第二次世界大戦が、日本を焼け野原にし、多くの国民の皆様方に戦争の傷跡を残しました。そして、今なお戦争による心の傷を多くの国民の方々が引きずっているのもまた事実であります。

 戦争で父を亡くした遺児である私の大きな政治目標は、日本の平和と世界の平和の実現であります。再び日本の国が戦火にまみれ、戦争の渦に巻き込まれることのないようにしたい、国家主義や全体主義の国にしてはならない、こうした考えが私自身、政治を志した原点であります。私は、この原点を終生忘れることなく政治活動を続けていく覚悟であります。(拍手)

 戦争の半世紀に対し、二十世紀の後半は、ある意味で成長と繁栄の半世紀だったと言えるでしょう。第二次世界大戦後、我が国は、荒廃の中から立ち上がり、欧米先進国に追いつけ追い越せを目標に、経済復興を最優先する政治方針のもと、科学技術の発達や工業化の進展、さらに勤勉な国民の努力によって、驚異的な経済成長をなし遂げ、あらゆる面で国民生活は向上し、平和で豊かになりました。

 しかし同時に、負の遺産もたくさん背負うことになりました。経済至上主義は、大量生産や大量消費を生み、公害や化学物質による汚染、首都圏を中心とする人口の一極集中、物の一極集中、金の一極集中、その反面、多くの過疎地を生み出しました。

 こうしたもろもろの負の遺産は、国民の皆さんの英知をおかりし、御協力もいただきながら、我々政治家が責任を持って二十一世紀の早い段階に解消していかねばならない課題であります。そして、国民の皆さんが、この国に生まれてよかった、そう誇りに思っていただける国にしなければいけないと考えております。(拍手)

 そこでまず、二十一世紀の日本はどうあるべきなのか、総理の考えておられる国家像をお示しいただき、それを実現するために政治はどうあらねばならないのか、総理の政治理念を含めて、率直にお考えをお聞かせください。

 ところで、二十世紀の後半は成長と繁栄の半世紀と総括しましたが、世紀末の最後の十年は混乱が続き、残念ながら、お世辞にもよい十年とは言えないと思います。言い古された言葉ではありますが、失われた十年と言っても過言ではありません。では、なぜこのような十年をつくり出してしまったのか。幾つかの要因があると思います。その一つに、政治の混迷と混乱があったと思います。我々政治家は、このことに対してひとしく反省しなくてはなりません。

 平成五年、自由民主党の分裂以来、政治の安定は大きく揺らぎました。中でも、細川、羽田内閣の無責任な政権運営、すなわち予算の提出、成立の異常なおくれが原因となった経済の低迷はここから始まり、取り返しのつかない失政であったのであります。(拍手)

 その後、政党、政治家の離合集散の繰り返し、平成十年の金融国会の混迷などを教訓として、小渕総理が、政治が安定してこそ最良、最大の責務を果たせるとの思いの中で、熟慮の末に決断されたのが、今日の自民党、公明党、保守党三党による連立政権の樹立であります。その結果として、予算の年度内成立や数々の重要法案の迅速な処理など、着実に成果を上げ続けてまいりました。

 政治の安定なくして政権の安定はあり得ません。平成元年の竹下内閣総理大臣から現在の森総理大臣まで、十二年間で十人の総理大臣が誕生しています。このような状況で、政治が安定していると言えるでしょうか。これでは、どんなすばらしい政治家が政権を担当しても、政権に信用、信頼が生まれるはずがありません。政治の安定があってこそ、初めて政府と国家に信用、信頼が生まれるのです。政治の安定なくして国民の政治への信用、信頼は決して生まれず、真に国民に必要な政策を円滑にかつ迅速に遂行することはできないと思うのであります。

 その観点に立って、私は、二十一世紀最初の一年は政治の安定を取り戻すことに全力を挙げたいと思っております。それが失われた十年を取り戻すことであり、失われた二十年にしないための最大、最良の道だと考えるからであります。(拍手)

 政治の安定の第一歩は、国民の政治に対する信頼を得ることであります。そのためには、まず何よりも、自由民主党が、国民の信頼を取り戻し、安定していなければなりません。

 現在、我が国には政治不信、政党不信が蔓延し、現政権に対する批判があることも十分承知しています。しかし、現在のような基本政策が一致しない、無責任きわまる野党に政権をゆだねるわけには到底まいりません。だからこそ、連立政権の中心である自由民主党は、国民のための政治、スピーディーでダイナミックな政治に全精力を注ぎ込み、同時に、反省しなければならないことは謙虚に反省し、正さなければならないことは思い切って正す、そうした党改革を断行しなければなりません。(拍手)

 また、公明党、保守党との連立の継続は、政治の安定、政権の安定にとって絶対不可欠であります。我が党は、反省と改革を進めながら、連立政権の基本である信頼と互譲の精神で、一層強力な与党関係の構築に最大限の努力を重ねていきたいと考えております。

 そこで、総理にお尋ねいたします。政治の安定のためには何をなさなければならないかとお考えでしょうか。また、現在の与党三党の連立政権をどう評価し、今後どのような展望を持って連立政権を運営されるのか、御答弁願います。

 私は政治の安定を強調しましたが、そのことは、従来の仕組み、構造を頑迷に墨守するということではありません。

 例えば、選挙制度であります。連立三党は、昨年、衆参両院の議員定数を削減いたしました。また、平成二年の選挙制度審議会答申以来、その懸案であった参議院比例代表制を人物本位に改革いたしました。そして今、衆議院の小選挙区比例代表並立制のゆがみが指摘され、昨年の国勢調査の結果、いわゆる一票の格差の拡大による定数是正が必要になってきており、さらに一歩踏み込んで、制度全体のありようについて議論を始めることが重要だと考えております。

 選挙制度の見直しについては、総理はどう考えておられるのか、お考えをお示しいただきたいと思います。

 さて、失われた十年の一つの要因が政治の混迷と混乱であったとすれば、もう一つの要因は、経済の低迷であります。

 そこで、連立与党は、数次にわたって経済対策を実施し、経済の下支えを行ってきました。その結果、日本経済は、決定的な崩壊には至らず、何とか明るい兆しが見えるところまで回復してまいりましたが、いまだ安心できる状況ではありません。

 小渕前総理は、経済の再生に全力を傾注され、残念ながら、道半ばにして命を落とされました。私たちは、小渕前総理の無念とその思いをみずからの使命に置きかえ、日本経済の再生、我が国経済を自律的回復軌道に確実に乗せるために全力を挙げて立ち向かう覚悟であります。(拍手)

 今後は、日本経済の安定のためにも、さきの臨時国会で成立した平成十二年度補正予算を迅速的確に執行するとともに、平成十三年度予算、税制改正及び予算関連法案を一日も早く成立させ、目標とする経済成長率一・七%を達成することが重要であると考えます。総理の今後の経済運営に関する基本的な考え方をお聞かせください。

 もう一つの大事なことは、経済を上昇軌道に乗せる一方で、一日も早く財政構造改革に取り組む必要があるということであります。責任与党として、財政構造改革という道しるべを国民の皆様方の前に明らかにする時期が私はもう来ているのではないかと思うのです。

 確かに、あの金融危機で日本経済がどん底にあるとき、小渕前総理、森総理は、思い切った財政の出動をし、政策を総動員して経済の再生に取り組んでこられました。だからこそ、我が国は経済が沈没せずにきょうここまで持ちこたえることができた、日本発の世界恐慌を食いとめることができたと私は思っております。(拍手)

 しかし同時に、平成十三年度末には、国と地方の長期債務残高が六百六十六兆円に上ることもまた厳然たる事実であります。これを政治の責任で何とかしなければなりません。

 財政構造改革、言葉の響きはいいけれども、財政構造改革の推進は、国民の皆様方にさまざまな分野で痛みを分かち合っていただかなければならないことであります。どのような社会保障の負担と給付のあり方が適当なのか、国の財政が負うべき役割は何か、こういった議論を尽くしていくことが不可欠であります。今般、連立与党が政府・与党社会保障改革協議会を立ち上げたのも、その一つであります。

 責任与党である我々が、勇気を持って、歯を食いしばってでも財政構造改革をやっていくのだという決意とビジョンを明らかにし、明確なグランドデザインさえしっかり提示できれば、たとえ痛みを伴う改革であっても、国民の皆様は理解してくれるに違いありません。総理の決意をお聞かせください。

 さて、ことしの一月六日、二十一世紀の幕あけとともに、明治維新や戦後改革にも匹敵する中央省庁の再編に伴う新省庁体制がスタートしました。この大改革は橋本元総理の情熱と決断で実現したものであり、新しい世紀を新しい政府で出発することの意味の重さを痛感するものであります。

 今回の改革の最大の特徴は、国政の場における政と官の責任体制を明確にすることであります。首相を中心とする内閣主導で、国民本位の政策をスピーディーに決定する政治主導の仕組みを整備したものであります。

 大事なことは、仏つくって魂入れずということだけは断じて避けなければなりません。国民の立場に立ち、国民の視点から見て、新しい行政組織が期待されるとおり運営されていくことが重要であります。このことを注意深く見守るとともに、新省庁体制が円滑にスタートし、その実が上がるよう、与党三党が一致協力してバックアップしていきたいと考えております。(拍手)

 総理は、先般、いわば二〇〇五年行革ともいうべき作業を指示されました。この国の形を実現するため、明治維新以来の改革を完結されることを考えておられることと思います。そこで、これまでの行革とこれからの行革の位置づけについて、そして、二〇〇五年行革に取り組む総理の決意をお伺いいたします。

 次は、総理に憲法問題についてお伺いいたします。

 あの焦土と化した我が国が今日あるのは、今の憲法が日本国の根底に強く存在していたからだと私は信じます。日本国憲法の前文にうたう主権在民、平和主義、基本的人権の尊重は、今後とも守っていかなければならない大原則であります。

 私が二歳のとき、父は、一銭五厘の赤紙の召集で、フィリピンのレイテで戦死いたしました。このため、悲しいことではありますが、私には父の思い出がありません。しかし、それは決して私だけのことではないのです。あの戦争で、とうとい命をたくさん失いました。戦争未亡人や子供を亡くした親、戦争孤児など戦争の残した多くの傷痕は、今なおいやすことができないものとして残っています。悲惨な歴史を二度と繰り返さないためにも、憲法に流れる精神、すなわち、平和主義、主権在民、基本的人権の尊重という崇高な精神は常に忘れてはならないと考えます。(拍手)

 しかし、時代の変遷とともに、現行憲法では律し切れないさまざまな問題が生じているのも事実です。そのため、昨年の通常国会において、衆参両院に憲法調査会が設置されました。憲法問題についての本格的な論議が行われることとなりました。かつては、憲法の論議さえもタブー視された時代がありましたが、今では、各種の世論調査でも、憲法改正に賛成する人が六割を超えるところまで来ています。憲法について改めるところは改めるとの意見が国民の中でも既に過半数を占めているという事実を、我々政治家は重く受けとめなくてはなりません。(拍手)

 私は、二十一世紀にふさわしい、国民のための新しい憲法が必要であると考えます。そのためにも、まず、広く深く憲法論議を行うことであります。さらに、国会に限らず、さまざまな場での積極的な憲法論議が必要だと考えます。その議論は、伝統と文化、政治、経済、社会、外交、安全保障など各般にわたる、二十一世紀の新たな日本の国家像についての国民的議論になるに違いないと考えます。総理の憲法問題への取り組み姿勢と基本的なお考えをお聞かせください。

 次に、外交問題をお尋ねします。

 私は、外交の根幹は、確固たる定見を持ち、揺るぎない国際感覚で行うべきものと考えていますが、総理の考えておられる外交の根幹とはいかなるものなのでしょうか、まずお尋ねしたいと思います。

 限られた時間ですので、個別には、日米、日朝、日ロ関係についてのみお尋ねします。

 まず、日米関係ですが、総理は、共和党のブッシュ新政権と早急に対話の機会を持つべきではないでしょうか。日米関係は、言うまでもなく我が国外交の基軸であります。国際政治を左右し、アジア太平洋のみならず、世界の安定に大きく寄与している日米関係は、微動だにさせないことが肝要であります。今後の日米関係のあり方について、基本的な考え方と日米首脳会談の見通しについての総理のお考えを伺いたいと思います。

 次は、日朝関係ですが、朝鮮半島をめぐっては、昨年一年間に和平への大きな変化がありました。このような中で、我が国としても、日朝国交正常化を本年中に実現することを目標に外交努力を尽くすべきであります。総理は、昨年、七年半ぶりに再開された日朝国交正常化交渉の新たなページをめくりたいと述べられましたが、今後の日朝関係をどのように進展させるのか、お考えをお聞かせください。

 ただ、日朝関係を推進するに当たって忘れてはならないのは、友邦韓国の理解であります。

 先日、JR山手線の新大久保駅で線路に転落した日本人を救おうとして死亡した韓国人留学生イ・スヒョンさん及び関根史郎さんの勇気は、我々に多くの教訓を残してくれました。心からイさんと関根さんの御冥福をお祈りいたします。とりわけイさんの勇気ある行動は、日本と韓国は一衣帯水の隣人であることを改めて教えてくれました。韓国の理解なくして日朝関係の推進はないとの立場を再確認したいと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)

 最後に、日ロ関係ですが、昨年、総理は積極的な対ロ外交を展開されましたが、クラスノヤルスク合意が実現できなかったことはまことに残念なことでありました。本年中に領土問題を解決し、平和条約を締結することを目標に努力すべきであります。日ロ首脳会談の見通しと、この会談に臨む決意を含め、今後の日ロ関係の構築にどのように取り組んでいかれるおつもりか、お聞かせください。

 以上、私の所見を交えつつ、総理に幾つかの質問をさせていただきました。二十一世紀の我が国の指針を決める大事な今国会の代表質問の最後に私が申し上げたいことは、二十一世紀は心の世紀、心を取り戻す世紀にしなければならないということであります。(拍手)

 二十世紀の後半は、物の世紀と総括しても間違いではないでしょう。幸せの価値観が余りにも物質的な、経済的な豊かさに置かれ過ぎたのではないでしょうか。私たちは、物が豊かであれば、裕福であれば幸せなんだ、物がなければ不幸せなんだとの思いを持ち過ぎたのではないでしょうか。そして、二十世紀後半は、経済が繁栄し、物が豊かになった反面、日本人としての大切な魂や心、具体的には、家庭のきずな、親子のきずな、兄弟愛、そして、友達を思う心、国や郷土を愛する心、そうした大切なものが失われてしまったのではないかと思います。

 私には、多感な青春のころ、一時期、不良少年だった時代があります。母に悲しい思い、心配をかける、つらい思いをさせる、そんな過去を今思い出しております。しかし、今こうして曲がりなりにも私があるのは、父のいない貧乏な母子家庭の中ではありましたけれども、子供を必死に育てる親の背中を見ることができたからだと思っております。(拍手)そして、母と子の揺るぎない信頼を築くことができたからだと思っております。また、優しく厳しく、励まし、希望を与え続けてくれた教師との温かいぬくもりの師弟関係を築くことができたからだと思っております。

 貧しくとも、私たちの少年時代は夢があり、眼は輝いていました。青少年による凶悪な事件が頻発している現状を見るにつけ、何としても二十一世紀は心を取り戻す世紀にしなければならないと考えますし、我々政治家の責任の重さを痛感いたします。

 いじめや青少年犯罪、学級崩壊や問題教員、大学教育の現状や成人式の混乱など、本当にこの国はこのままで大丈夫なのか、率直にそのような危機感を覚えます。しかし、我が国の二十一世紀を担うのは、青少年、子供たちであります。子供は国の宝なのです。彼らが、人類の知的遺産を受け継ぎ、豊かな心と創造力、たくましさを備えた日本人として成長していけるよう、そして、我が国の将来がすべての人々にとってより明るく幸せなものとなるように、我々も全力で教育改革に取り組まなければならないと考えます。(拍手)

 そのため、今国会で我が国の将来像や教育のあり方について大いに議論し、英知を出し合い、日本新生のための改革国会の名にふさわしい、実りあるものにしたいと心から願うものであります。今国会の最大のテーマである教育改革にかける総理の意気込みをお聞かせください。

 私は、どちらかといえば寡黙な人間だと思っています。それゆえに、総理の雄弁に常々大変感心しております。しかし、ともすれば総理の舌も時々非常に滑らか過ぎて、国民の皆さんは戸惑うことも多いのではないでしょうか。しかし、総理の持ってあるすばらしい判断力、決断力、洞察力を駆使されて、自信と情熱を持って我々の先頭に立ち、政治のリーダーシップを発揮していただきたいと心から願うものであります。(拍手)

 さて、最後になりますが、私の政治の師である田中六助先生は、今から十七年前、第九十八回通常国会において、この本会議場の同じこの壇上から代表質問を行われました。当時、田中先生の体は病魔にむしばまれ、字を読むことのできないほど視力が落ちてありました。しかし、田中先生は、不屈の精神をもって、この代表質問を三十分にわたり原稿を全く見ずに堂々となし遂げられたのであります。その先生の鬼気迫る迫力に議場は圧倒され、先生の質問が終わるや否や、万雷の拍手が鳴りやまなかったのであります。私は、その感動と感銘を生涯忘れることはないと思っております。

 田中先生が病躯を押してでも代表質問の大役を立派に果たされたのは、まさに政治家としての使命感にほかならないと思います。今こうして私が同じ壇上に立つことに限りない感慨を覚えますと同時に、私も政治を天命として願う一人として、自戒とそして倫理を高める中で、常に気迫と気概を持って政治家としての使命と責務を果たさせていただきたいと思うのであります。(拍手)

 国民の皆さん、森総理は今国会を改革国会と位置づけられました。改革に取り組もうとする今、これからが一番厳しい、つらいことが続くわけでありますが、もし挫折があるとするならば、日本の将来はありません。私たちは、二十一世紀を切り開くために、政権政党として責任ある政治家の姿勢は、国民に夢を売るばかりでなく、迎合するものでもなく、常に厳しく現実を直視して、ともに痛みを分かち合って、二十一世紀の足固めをすることを勇気を持って説くことであります。(拍手)

 国民の皆様には、政治を自分たちの問題としてとらえ、自分たちに何ができるか、自分たちは何を引き受けるべきかを考え、そして、ともに行動して、日本の政治を、二十一世紀、未来のある政治に構築していきたいと思います。

 結びになりますけれども、森内閣の新時代へ向かっての再出発の門出に当たり、森総理並びに閣僚の皆様方の御活躍と御研さんを心からお祈り申し上げまして、私の質問を結びます。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 御質問に先立って、インド大地震のお尋ねもございました。

 先ほど鳩山議員の御質問の際にも申し上げましたが、この地震による多大な被害は大変痛ましいものでありまして、日本政府といたしましては、直ちに一億三百五十万円相当の無償資金及び物資援助を行い、国際緊急援助隊医療チームを派遣いたしました。また、本日、自衛隊部隊をテント等物資の輸送及び設営技術指導のために被災地に派遣をいたしたところであります。政府としては、今後も、被害の状況を踏まえつつ、当面の緊急援助とともに将来のあり得べき復興支援を視野に入れつつ、さらに必要な支援を積極的に行ってまいりたいと思います。

 有明海のノリ養殖の被害に関するお尋ねがありました。

 有明海のノリ養殖に関し、自由民主党では早々に被害調査対策本部を立ち上げられ、一月二十六日には、与党三党幹事長等が現地の視察に出向かれたということでありました。

 政府といたしましても、原因究明のための調査として、まず、緊急調査を行い、その結果を三月末をめどに暫定的に取りまとめるとともに、十三年度からは、有明海の海域環境やノリの不作原因の究明を目的とした総合的な調査を実施し、遅くとも九月末をめどに可能な限り早く中間取りまとめを行い、それらの結果を公表したいと考えております。

 また、被害者に対する支援につきましては、貸付金の償還猶予等を関係機関に指導するとともに、農林漁業金融公庫の漁業災害向け資金につきまして、地元自治体との協力による貸付利率の無利子化、貸付限度額の引き上げ等の措置を講ずることを決定したところでありまして、これらにより漁業者が将来に展望を持てるよう万全を期することといたしております。

 日本航空の事故についてのお尋ねがありました。

 まずもって、衝突回避をした航空機内で負傷された方々に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。

 この事故は一つ間違えれば大惨事となるところであり、重大な事故であると認識しており、事故原因の速やかな究明のため、国土交通省航空事故調査委員会は、事故発生後直ちに調査官を現地へ派遣し、関係者から口述聴取をとり行うなど調査に着手いたしております。あわせて、関係都県警察において所要の捜査が行われているものと承知をいたしております。

 また、これと並行して、再発防止のため、国土交通省において、管理業務の実施状況を緊急に総点検し報告するよう二月三日に全国の管制機関に指示したほか、管制空域、航空路再編等必要な安全対策を検討し、六月をめどに結論を得、速やかに実施に移してまいることといたしております。

 いずれにせよ、本件事故の重大性にかんがみ、全力で原因究明と安全対策に取り組んでまいる所存であります。

 まず、政治倫理についての考え方に関するお尋ねがありました。

 残念ながら、今回のKSDに関連した事件も含め、これまでも政治家と金をめぐる事件は絶無とならず、政治不信を招くような不祥事が起こってきたことは、私としても、大変遺憾であり、極めて深刻に受けとめております。

 古賀議員も指摘されましたとおり、政治倫理の確立はまさに議会政治の根幹であります。主権者たる国民の代表である国会議員が、国家国民のことを第一に考え、政治家の良心と責任感を持って政治活動を行うことにより、初めて国民の信頼を得られるものと考えられます。

 私としては、今回のような事件が再び起きないよう、二十一世紀の始まりという節目に当たり、政治の信頼回復に全力を尽くす決意を新たにしたところであります。

 今回の事件について、司法当局の捜査により、徹底的に真相究明がなされなければならないと考えておりますが、一方、私としては、そうした真相究明を待つことなく、自民党内の仕組みについて見直すべきものは見直し、自民党の、そして、政治の信頼回復に全力で取り組んでまいる所存であります。

 外務省職員による公金横領疑惑に関するお尋ねでありますが、今回、このように国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめ、国民の皆様に深くおわびを申し上げます。

 今回の事件に対する厳しい反省に立ち、外務省に対して引き続き十分な調査を指示したところであり、政府として、捜査当局による真相解明の進展も見ながら、原因の解明と再発防止に万全を期してまいります。外務省からは、二重三重の管理体制を設置するなど組織体制の抜本的な改善策を講じていきたいとの報告を受けており、今後の調査結果も踏まえ、適切な対応を求めてまいります。

 報償費のあり方に関するお尋ねがありました。

 戒石銘に記された訓戒を引用され、政治倫理の確立が強く求められると同様、公務員も公僕として戒めを肝に銘ずるべきとの御指摘は、全く同感であります。

 報償費は、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費であり、国政の運営に当たって今後とも必要なものと考えております。報償費の性格上、使途について明らかにすべきではないと考えておりますが、その運用について、この際、点検を行い、より厳正かつ効果的な運用に十分意を用いてまいります。

 二十一世紀の日本の国家像及びそれを実現するための政治のあり方についてお尋ねがありました。

 国民の皆様への年頭のごあいさつの中で、私は、二十世紀は世界にとって栄光と悔恨の百年であったと申し上げました。科学技術の発展と経済繁栄の陰で、戦争によって払われた大きな犠牲や、物質文明、経済優先が美しい自然や環境の破壊という高い代償を忘れてはならず、こうした反省の上に立って二十一世紀の日本を切り開いていかなければならないと考えております。

 二十一世紀の日本の活力を創出していく原動力は人であります。個性と創造性にあふれ、かつ、心の豊かさを持つ人を育成するとともに、こうした人が力を発揮できるような環境を整備しなければなりません。また、経済のグローバル化、IT革命、少子高齢化などへの激しい変化の中、我が国の経済社会システムは従来のような役割を果たせなくなっており、その改革が求められております。

 そのような思いから、私は、かねてから、日本経済社会全体の抜本的改革を通じた日本新生を提唱してまいりました。そして、施政方針演説でも申し上げましたとおり、こうした改革の断行により、二十一世紀を「希望の世紀」、「人間の世紀」、「信頼の世紀」、そして「地球の世紀」とするべく、力強い第一歩を踏み出してまいる所存であります。

 また、新しい時代の幕あけに当たり、こうした目指すべき国家像を大きく示し、その実現を図るために、強力なリーダーシップを図ることこそ政治の役割であると考えております。私は、今こそ政治の強力なリーダーシップのもと、日本の経済社会全体の構造改革に全力で取り組むとともに、物質的な豊かさのみを追求するのではなく、日本の文化や伝統を大切にし、創造性と人間性にあふれた人々が互いに協力し合うような社会や国家を目指すべきであると考えております。

 政治の安定や連立政権についての評価と今後の運営のあり方についてお尋ねがありました。

 国民が求めている政策を実行し、さまざまな改革を断行していくためには、政治の安定が不可欠であります。とりわけ、二十一世紀に求められているのは経済社会システム全体の抜本的な構造改革であり、こうした困難な改革を円滑かつ迅速に実行していくためには、これまでにも増して政治の安定を図り、国民の政治への信頼をいただく必要があると考えております。

 このような認識のもと、私としては、政策の基本的な考え方や改革への決意において一致している公明党、保守党と連立を組み、三党で責任を持って政権を担ってこそ、国民が今まさに求めている政策や改革を実行していくことができると考えております。(拍手)

 私は、現在の三党連立政権は、互いにそれぞれの独自性を尊重しつつ、お互い切磋琢磨することにより、よりよい政策を実施してきたと考えております。具体的に申し上げれば、九州・沖縄サミットの成功、日本新生のための新発展政策を初め、景気をあと一押しのところまで押し上げた経済運営、IT革命の推進を柱とする経済構造改革などは、連立政権の大きな成果であるものと評価をいたしております。

 今後とも、三党で一致協力して政治の安定を図りつつ、責任ある立場で政権を担い、現下の喫緊の課題である景気の本格的な回復、経済構造改革、IT革命の推進、教育改革、社会保障改革などについて、緊密な連携のもとに全力で取り組んでいく所存であります。

 現在の小選挙区比例代表並立制は、個人中心の選挙から政党中心、政策中心の選挙に改めていこうという趣旨で導入されたものであります。本制度のもと、既に二回の選挙が実施されましたが、これまでもさまざまな問題点や一票の格差の問題も指摘されてきたものと承知をいたしております。

 そうした意味で、昨年十二月に公表された国勢調査の結果を踏まえ、選挙区画定審議会で区割りの見直し作業が行われているものと承知をいたしておりますが、御指摘のように、現行制度自体についても、頑迷にこれを守り続けなければならない理由はなく、見直すべき点は見直していく必要があると考えております。

 いずれにしても、選挙制度のあり方については、国民が政治に関心を持ち、国民から信頼される政治を確立するために、各党各会派が真剣に議論していくべき問題であると考えております。

 今後の経済運営に関する基本的な考え方についてお尋ねがありました。

 我が国経済は、現在、緩やかな改善を続けておりますが、依然として厳しい状況にあり、また、米国経済の減速など懸念すべき点も見られております。こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題と考えております。

 このため、昨年十月に決定いたしました日本新生のための新発展政策を着実に実行に移し、今年度の補正予算の迅速的確な執行に努めてまいります。

 また、十三年度予算におきましては、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行うとの観点から、公共事業等に十分な対応を行うとともに、二十一世紀の新たな発展基盤の構築に必要とされる分野に重点的、効率的に資金を配分しております。景気を自律的回復軌道に確実に乗せ、我が国経済を新たなる発展へと飛躍させるためには、この十三年度予算の早期成立が必要不可欠であります。

 さらに、政府としては、時代を先取りした経済構造改革を推進し、IT革命の実現等による中長期的な経済成長力の向上を目指すことや、世界経済の持続的発展に貢献するといった点を重点として、適切かつ機動的な経済運営を行うことといたしております。

 このように経済運営に万全を期することにより、平成十三年度における我が国の国内総生産の実質成長率が一・七%程度となると見通しているところでありまして、改めて、平成十三年度予算、税制改正法案その他の予算関連法案の一日も早い成立をお願いする次第であります。

 財政構造改革についてのお尋ねがありました。

 財政構造改革については、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、その実現に向けて議論を進めてまいります。その際には、新世紀における我が国の経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れる必要があると考えております。

 今般の中央省庁再編において、内閣府に経済財政諮問会議を設置いたしました。景気を着実な自律的回復軌道に乗せるための経済財政運営とともに、財政を含む我が国の経済社会全体の構造改革に向けた諸課題について、具体的な政策を主導するとの決意を持って、実質的かつ包括的な検討を行って、国民が安心と希望を持てる処方せんを示していく所存であります。

 行政改革についてのお尋ねがありました。

 政府の新生を実現し国民本位の行政を確立していく上で、行政改革は何としても果たさなければならない重要課題であります。これまで、二十一世紀の我が国にふさわしい行政を構築する改革として中央省庁等改革に取り組んでまいり、本年一月六日、一府十二省庁体制を発足させたところでありますが、今後は、この新たな体制に魂を吹き込み、改革のメリットを国民にとって確かなものとしてまいりたいと考えております。

 このため、昨年十二月に与党三党でおまとめをいただきましたものを踏まえた上で決定した行政改革大綱に沿って、平成十七年までを集中改革期間として、我が国の行政の構造に踏み込んだ本格的な改革を進め、国民から信頼される行政を実現し、二十一世紀を「信頼の世紀」とできるよう全力を挙げてまいる次第であります。

 憲法問題への取り組み姿勢と基本的な考えについてお尋ねいただきました。

 憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものでありまして、将来においても、これを堅持すべきものと考えております。古賀議員とまさに意見を一にするところでもあります。

 一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しておりまして、憲法が永久不変のものとは考えておりません。また、憲法をめぐる議論が行われること自体は何ら制約されるべきものでないということは言うまでもありません。しかしながら、国の基本法である憲法の改正については、世論の成熟を見定めるなど慎重な配慮を要するものであると考えております。

 憲法に関する問題については、広範かつ総合的に調査を行うため、第百四十七国会から衆参両院議院に憲法調査会が設置され、将来の我が国の基本的あり方を見据えて、参考人の意見聴取や欧州各国の憲法事情調査など、幅広く熱心な議論が行われているところであり、これを十分見守ってまいりたいと考えております。

 我が国外交の根幹についてお尋ねがありました。

 申し上げるまでもなく、我が国外交の根幹は、国益の伸長、すなわち、日本の安全と繁栄を確保し、国民の豊かでかつ平和な生活を実現することであります。

 そのためには、みずからの安全と繁栄に密接不可分の関係にある世界の安定と繁栄を実現するための努力に、責任感とリーダーシップを持って積極的に参加していかなければなりません。特に、我が国の位置するアジア太平洋地域の平和と繁栄のために積極的な外交努力を行うことが優先的な課題であると考えております。同時に、人間一人一人を大切にするという人間の安全保障の考え方に立って、先般私が訪問したアフリカを初め、広く世界各地に目配りをするグローバルな外交を展開していくことが極めて重要であると考えております。

 今後の日米関係のあり方及び日米首脳会談の見通しについてでありますが、私はブッシュ大統領と二回の電話会談を行いました。日米同盟関係の重要性を再確認し、同盟関係の強化に向けて協力していくことで意見の一致を見ております。今後は、日米両国のみならず世界の平和と繁栄に向けて、日米間の緊密な対話を深めることにより日米関係を強化するとともに、国際社会が直面する問題への共同の取り組みを強化していく考えであります。

 また、ブッシュ大統領との首脳会談については、双方の都合のよいなるべく早い機会に行うことで意見が一致しており、日程の調整を現在行っているところであります。

 日朝関係についてのお尋ねでありますが、議員御指摘のとおり、昨年、朝鮮半島をめぐっては緊張緩和に向けて一連の動きが見られたわけでありますが、そのような中で、日朝関係についても、韓米両国と緊密に連携しつつ、国交正常化交渉に真剣に取り組んでいく考えであります。大変難しい交渉であり、今後の帰趨は予断を許しませんが、政府といたしましては、日朝双方の立場の隔たりを埋めるべく、粘り強く交渉に取り組んでいく考えであります。

 日朝関係推進に際しての韓国との連携について御指摘がありました。

 韓国との間で友好関係を強化していくことは、日本外交の重要な柱であり、御指摘のとおり、日朝関係を進める上でも韓国の理解を得ることは極めて重要であると考えております。

 議員が申されましたとおり、先日、JR新大久保駅で韓国人留学生のイ・スヒョン君が亡くなられるという、大変悲しい、しかも、すべての者の胸を打つ出来事がありました。彼の崇高で勇気ある行動を忘れることなく、日韓関係の一層の発展に努めるとともに、今後とも、韓国との緊密な関係を堅持しながら、日朝関係の前進を図っていく考えであります。

 日ロ関係については、戦略的、地政学的提携、幅広い経済的協力、平和条約の締結という三つの課題を同時に前進させることが重要と考えております。

 日ロ首脳会談の日程については、ロシア側と引き続き調整を行っているところでありますが、プーチン大統領との信頼関係にも立ちつつ、できるだけ早期に北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、交渉に取り組んでいく考えであります。

 教育改革についてお尋ねがありました。

 教育は、心の豊かな美しい国家を築くための礎となるもので、国政の最重要課題であります。これからの教育を考える上で大事なことは、人間と人間のつき合いができ、自分の頭で考えたり決めたりできる力を養うことであり、教育の目標は、学力だけ、知識だけがすぐれた人間を育てることではなく、人間としてのルールを身につけた、創造性豊かな立派な人間を育てることだと考えております。社会のIT革命が進み、科学技術が発達する中で、ますます人間性が重要になっており、知識だけが求められる時代ではありません。

 こうした観点から、知識に偏重した教育でなく、体育、徳育、知育のバランスのとれた全人教育を推進することを目指して、思い切った教育改革を積極的に行ってまいる決意であります。

 この国会において、子供一人一人、国民一人一人が、学校がよくなる、教育が変わるという実感が持てるように、学校教育法の改正など一連の教育改革関連法案を提出し、本格的な教育改革に取り組んでまいります。(拍手)

 また、教育基本法の見直しにつきましては、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいります。

 最後に、古賀議員の御激励に感謝をいたしまして、古賀幹事長の勇気と気概に満ちたお気持ちの披瀝に対しまして、心から敬意を表したいと思います。ありがとうございました。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 上田清司君。

    〔上田清司君登壇〕

上田清司君 民主党の上田清司でございます。(拍手)

 鳩山代表に続きまして、民主党・無所属クラブを代表して、代表質問をさせていただきます。

 まず、KSDの疑惑問題であります。

 民主党の調査では、表に出ているだけで二十億のお金が、中小企業経営者や個人事業主の上前をはねた形で政治家や自民党に支出されています。新聞報道では、KSD豊政連が資金提供した議員は百十二人と言われています。

 森総理も、関係のないような顔をしておられますが、少なくとも九五年九月、地元で開かれたKSD豊明会主催の有名女性演歌歌手の歌謡ショーのチケットを四百枚、事務所がただでもらっているはずであります。多分二百万円分に相当するはずです。また、翌年の九六年の衆議院選で十万円の陣中見舞いを受け取っておられるはずであります。事実関係についてお答えをしてください。

 ものつくり大学を推進する国際技能工芸大学設立議連には中曽根元首相や故竹下登元首相が顧問で、会長が村上正邦参議院議員、幹事長に藤井孝男元運輸大臣、世話人には森首相を初め、故小渕前総理、片山総務大臣、中曽根弘文前文部大臣なども名前を連ねておられます。

 橋本行政改革担当大臣も、首相時代、九六年一月二十五日の参議院本会議で、村上参議院議員の質問に対して、職人大学といった構想について、興味を持って勉強させていただきますと答弁しておられます。さらに、橋本大臣は、九八年二月にKSDが東京ドームで開いたイベントにも出席され、ヨイショの発言もしておられます。

 国民から見れば、元首相から現職閣僚、自民党最高幹部まで、まさにKSDに総汚染されているように見えます。

 森総理、ものつくり大学の趣旨そのものはともかく、施政方針演説にまで一民間の私立大学構想が挿入されていたことは、まことに不自然に思いませんか。率直な御所見をお伺いいたします。

 また、文教問題に詳しい森総理に伺います。私立大学に国の支出は憲法上許されていないのではないでしょうか。自前の資金が三億八千万で、労働省が八十五億円負担するなどという大学は、私立大学の名前に値しません。どのような事情と背景でものつくり大学開設資金を国が支出することになったのか、御答弁をいただきたいと思います。

 まじめな坂口労働大臣にお願いをしたいと思います。菅厚生大臣当時と同じようなことをすれば、必ずこの事実の解明ができると思います。よろしくお願いします。

 額賀前経済財政大臣は、KSDより一千五百万円の預かりという不明朗な行為に責任をとってやめたと言われています。青木参議院自民党幹事長は、国民に説明ができないと辞任を勧めたと聞いておりますが、国民だけでなく、KSDから供与された一千五百万を半年も秘書が机の引き出しに預かっていたなどということは、ここにいる議員諸兄にもわからない不思議な出来事です。第一、政治資金規正法には、一時預かり金という項目などありません。

 任命権者としての森総理は、額賀前大臣からどのような説明を受け、どのように理解をされたのか、また、不祥事による三人目の閣僚辞任について任命権者としての責任をどのように考えておられるか、御答弁ください。

 KSDに関連して、金融界の問題についても申し上げます。

 KSD増殖の陰には金融機関ありです。KSDの会員の大半は金融機関に勧誘をされています。私の選挙区でも、ヒアリングをすると、九割ぐらいが金融機関による勧誘です。

 金融機関の勧誘が始まってから、KSDの会員数は一気に十倍になっています。金融機関によっては、KSD会員の勧誘の強化月間をつくっているところもあります。よほどうまみのあるような条件があったのでしょうか。

 今回、金融庁のアンケートに回答しただけでも、KSD会員勧誘の見返りに、金融界に六億円還流されています。回答を保留したり、無視したりしている金融機関もあるので、実際はもっと還流されているものと思われます。

 この際、提案をしておきたいと思います。

 本来、この種の勧誘は業法違反でありますから、金融庁は検査のときに厳しくチェックをすべきだと思います。今後、金融機関による本業以外の勧誘やあっせん販売は一切禁止すべきです。また、金融機関に還流されたKSDの手数料等は会員に返却すべきものと考えます。総理の御所見を伺いたいと思います。

 以上申し上げましたように、このKSD事件の背後には、自民党の有力な政治家と旧労働省の官僚たちが中小企業の経営者から預かったお金に群がり、政官業癒着のパイプを使って巨額の利益を得た極めて悪質な行為以外何物でもありません。

 まさに、KSDが、その事業目的を達成するため、金をばらまき、政界、官界を工作した構図が見えます。KSDのKは金、Sは政治家、Dは抱き込む、KSDの別称は、金で政治家を抱き込むということになります。

 単に、額賀前大臣や小山参議院議員がやめたりして済む問題ではありません。KSD問題は、官僚のさじかげんによる補助金、官僚OBの支配する公益法人、選挙制度をめぐる政官業癒着の大見本市とも言えます。金額といい、かかわった人数といい、これはリクルート事件以上の疑獄事件ではありませんか。真相を究明するやる気があるのか、総理に御答弁をお願いしたいと思います。

 次に、外務省機密費問題について伺います。

 松尾氏の公金横領についての外務省調査は、個人の犯罪と矮小化しています。本気で調査をしているとは思えません。松尾氏が着服した金が五千四百万という報告ですが、十四頭の馬を持ち、高級マンションを買い、ゴルフ会員権を購入して、到底五千四百万で済むわけがありません。ある新聞によれば、約三億円近い個人的な支出が明らかにされています。この三億円と五千四百万の差額はどう理解するのか、外務大臣に説明をしていただきたいと思います。また、松尾氏が持っていた九つの口座のうち、なぜ一つだけしか調査しないのか、このことについても明らかにしてください。

 いずれにしても、個人の犯罪とは到底思いがたい外務省ぐるみの犯罪だというふうに理解をしております。着服した公金は外務省の機密費なのか内閣官房機密費なのか、この点についても総理と外務大臣に公式見解を求めます。

 一方、外務省の予算を内閣官房機密費に上納したとすれば、財政法上あるいは会計法上の法令違反にもなります。事実を明らかにすべきだと思います。外務大臣に御答弁をいただきたいと思います。

 内閣官房機密費と外務省機密費を、この十年間、ほとんど使い切っています。政府は、機密費については、当面の任務と状況に応じて機動的に使用される経費と説明していますが、年によってばらつきがあるのが普通であって、計画的に支出されているわけでもないのに、なぜほとんど使い切るということになるのでしょうか。当面の任務と状況は十年も変えないということになるのか、機動的とはとても言えません。本当におかしい話であります。総理と外務大臣に御所見を伺います。

 松尾氏に使い込みされても、あるいは勝手に保管されてもわからなかったという金額だけは本年度予算から削除できると思いますが、総理、削除してもいいですか。どうぞお答えください。

 失われた十年について、所見を少し述べさせていただきます。

 総理がダボスで言われましたように、二十世紀最後の十年は、日本にとって失われた十年であるという見方も生まれています。そのとおりだと思います。金融問題を中心とする経済政策の失敗の十年を正しく総括しない限り、失われた十年は失われた二十年になるというのも、古賀幹事長と同じ認識であります。

 鳩山代表にも指摘されましたように、ダボス会議で森総理は、日本経済は間もなく本格的な再生を終え、再び世界経済の最先端に立って貢献できる状況になる、日本はバブルの負の遺産を解消し、完全に復活する体制を整えつつあるなどと述べておられますが、私は、地下に潜む巨大な不良債権について、総理の認識にずれがあるのではないかと思っております。

 御承知のように、金融庁の調査によれば、全国の銀行の問題債権は二〇〇〇年九月末時点で約六十四兆円あり、三月末より〇・八%ふえています。再生法ベースの不良債権の合計額も、三月末と比べると一兆一千億円ふえ、三十二兆九千億円になっています。少しも不良債権は減っていないではありませんか。これぞバブルの負の遺産ではないでしょうか。総理が解消したバブルの負の遺産とは何のことを示しているのか、明確に答えていただきたいと思います。

 先ほど鳩山代表に、三つの過剰、設備過剰、雇用過剰、債務過剰についてお答えをされておられましたが、過剰設備と過剰雇用については減少したかもしれませんが、過剰債務については、先ほど申し上げましたように、一つも減っておりません。森総理の明確な答弁を求めます。

 昨年十月に、協栄生命の破綻時に旧経営陣が発表した債務超過額は四十五億円でした。最近、更生管財人が発表した額は百五十三倍の六千八百九十五億円に上っています。同じ十月に千代田生命が破綻したとき、債務超過額は三百四十三億と金融庁が発表いたしました。専門家の間では、一けた数字が違うのではないかと言われていました。最近の新聞発表では、十五倍の五千百十一億債務超過だとも言われています。

 生保も銀行も潜在的な危機がまだ終わっていない、このように考えるのが私たちの考えであります。正しい認識がなくして本当の解決はできません。日本経済はバブルの後遺症にまだのたうち回っていると言えるのではないでしょうか。

 故梶山静六先生も、官房長官のとき不良債権の正確な報告を受けていればと後悔され、その後、精力的に金融問題解決のための政策発表を続けておられたことは議員諸兄の知るところであります。

 失われた十年の中で、長く総理や大蔵大臣として日本経済のかじ取りの主役でありましたお二人がくしくもこの席におられます。

 端的にお伺いします。橋本行政改革担当大臣、宮澤財務大臣、お二人に答弁を願います。日本のバブルの後遺症は解消されたのでしょうか。答弁によっては株価が下がりますから御注意ください。

 続いて、宮澤大臣に伺います。

 九二年八月の自民軽井沢セミナーで、当時総理として、金融機関の潜在的な危機について、必要なら公的援助をすることもやぶさかでないと発言をしておられました。危機を認識しておられたのでしょうか。さすがだなと思いますが、一方、危機を認識しておられながら、なぜ見過ごされたのか、お尋ねしたいと思います。

 橋本行政改革担当大臣に伺います。

 九七年三月、日債銀の検査結果を意図的にごまかし、生命保険会社等に増資を求める奉加帳を回し、大蔵省ぐるみの詐欺的行為を行ったことを御記憶にあるかと思います。その後、六百億円資本注入したにもかかわらず、九八年十二月に結局破綻いたしました。当時の最高責任者として、現在どのように総括をされているでしょうか。

 九七年十月に、福徳、なにわ銀行を、特定合併という奇妙なスキームをつくり、なみはや銀行をつくりました。当時、不良銀行同士は合併できなかったのですが、大蔵委員会で強行採決をしてまで特定合併の法案を通しました。当時、総理だった橋本行革担当大臣は、わざわざ大蔵委員会に出席し、まさに特定合併を認めるようにお願いされました。その後、御承知のように、なみはや銀行は二次破綻しました。特定合併のときに三千億円、そして大和銀行を受け皿として四千億円、合計七千億の破綻処理費用がかかっております。

 福徳銀行となにわ銀行のとき破綻処理をしておけば、少なくとも七千億は要らなかったはずです。あのとき、だれがこのスキームをつくり、当時の橋本総理に御説明をされ、そして、橋本大臣は今どのように総括をされているのか。国民に損をさせた政治責任を感じておられるでしょうか。

 九八年の公的資金の注入を決定する金融危機管理審査委員会委員長が金融安定化特別委員会の審議で、うっかり、私は何もわからない金融危機管理審査委員会の司会をしているようなものだと発言し、失笑を買ったようなことを記憶しておりますが、こういう方を委員長にして大手銀行に一兆八千億円注入したことも御記憶にあると思います。

 我々が日債銀と長銀は債務超過だから問題があると指摘しましたが、大蔵省も日銀も甘い査定で、結局、長銀、日債銀の破綻によって、このときの注入分二千三百六十六億円が返らぬお金になってしまいました。金融危機管理審査委員会の決定を閣議で承認されておられますから、当時の総理だった橋本行革担当大臣はどのような責任を感じておられますか。参議院選惨敗による総理退陣でうやむやになった責任を改めて問いたいと思います。

 さらに、九七年の橋本内閣による九兆円の負担増によって、上向いてきた景気が急速に悪化し、その後の日本経済に悪影響を与えた責任をどのように感じておられるか、御所見を伺います。

 また、宮澤財務大臣に伺います。

 先ごろ発表された日本経済社の編集による「犯意なき過ち 検証バブル」で答えておられる内容には驚きました。読んでみますので、よく聞いていただきたいと思います。

 これはちょっと脱線しますけれども、野党の若い諸君が法律をつくって日本の長期信用銀行をつぶした。このコストが何兆円とは何だとこっちに向かって言うんだよ。世が世なら何か言いたいけれどもね。ほっときゃ保護されているはずのものを裸にしたわけですからね。金融債だって何だって。そして、このコストが三兆円だ何兆円だって。おまえたちは何をやっているんだと言われても、法律をつくったのはだれなのか。いや、法律をつくったのが悪いんじゃない。毎日毎日株価下落をあおるようなトークダウンをして、株価をゼロにするようなことをしたんですから。それはどこだってつぶれますわなあ。こんなことは言えないんで言わないんです。

 言っているじゃないか。

 やはりつぶして処理するというのは、それは生きているもの、ゴーイングコンサーンを死なせてしまう。スクラップにするわけですから、利口な話じゃない。しかし、あの若い人たちにとっては、大銀行をつぶすのはエキサイティングなことだったのでしょうな、きっと。そうすりゃあ悪いやつもいるとかなんとかという話になるから、えらいこう、白馬に乗ったヒーローみたいな気持ちになったかもしれないが。

 このようにインタビューに答えておられます。本当に脱線、大脱線であります。

 大変失礼な話であります。何度も言ったように、既につぶれている状態の長銀を宮澤当時の大蔵大臣が健全だ健全だと言うので、我々が債務超過であることを明らかにしていただけであります。当時、有力経済誌などでも、債務超過であることはとっくの昔から明らかにしておりました。

 みずからの無能無策ぶりを省みず、日本の金融危機を救う仕組みをつくってきた我々を愚弄し、責任転嫁するとは絶対に許せない。もし、公的資金の七十兆という枠組みがなければ、日本の金融機関並びに日本経済は壊滅的なダメージを受けたはずであります。

 しかも、金融再生法は与野党で一緒になってつくった法律です。大臣は、憲法九十九条で法律を遵守することを義務づけられております。その法律をこけにしております。石原さん、塩崎さん、帰ったみたいですけれども、本当、怒った方がいいんですよ。(発言する者あり)いましたか。戻った。

 宮澤さんは大臣失格です。事実に反したことを言っております。宮澤大臣、今すぐ辞表を出してください、一分間待ちますから。出す意思ありませんか。それでは、財務大臣、野党がつぶしたと言うのだったら、その根拠を示してください。

 森総理、宮澤財務大臣は閣僚として問題があります。先ほど述べたとおりであります。御見解を伺います。

 いずれにしても、この間、公的資金を二十六兆使い、いまだ不良債権のマグマが地下にたまっていることだけは御理解いただけると思います。バブルの後遺症はまだ十分解決していません。

 改めて提案したいと思います。

 日本版ペコラ委員会を設置し、失われた十年を総括し、関係者の責任を明らかにすると同時に処罰し、速やかに不良債権の処理を行うことが必要です。もしこの提案を受けないようであれば、森政権は不良政権として国民に処理されるでしょう。森総理に御答弁を願います。

 次に、農林水産業についてお伺いします。

 森総理は、施政方針演説の中で、農林水産業についてたった二行しか触れられておりません。何ら農林水産業の展望を示していません。明らかに農林水産業軽視であります。

 ウルグアイ・ラウンド特別対策費として農業振興のため六兆百億使ったにもかかわらず、食料自給率が年々下がっていくのは一体なぜですか。また、米の生産性を初め日本農業の生産性は六兆百億の支出によって著しく向上するはずだったのですが、本当に向上しましたか。統計上の計数でお答えいただければ幸いです。

 最後に、国民総背番号制について伺います。

 与党は、国民の大反対を押し切って、史上最大の悪法である改正住民基本台帳法を成立させました。日本人は、日本史上初めて、みずからの氏名のほかに、十一けたの番号を強制的に持たされることになりました。IT革命はネットワーク社会、つまり横の社会、人間の自立を保障するものであります。政府が番号、ICカードで国民を管理する縦社会、つまり、管理社会の道を進むことになります。政府が国民を管理するという改正住民基本台帳法による国民総背番号、国民総ICカード所持制は、自由社会にとっても危機であります。韓国でもICカードは廃止されました。

 総理、改正住民基本台帳法の廃止を検討すべきです。御所見をお伺いします。

 人間の歴史は、ある一面、国家からの自由あるいは権力者からの自由を確立する闘いでもありました。議会も、王の自由な徴税権を阻止するためにつくられたものと聞いております。

 私は、議員諸兄の皆さんに申し上げたいと思います。

 あなた方は国民の代表として国民の自由や権利を守るために闘うのか、それとも、国民を管理する社会システムに奉仕するのか。まさに、国民総背番号制は国民を管理する社会システムの道具になり得ます。自由社会の限りない発展のため、改正住民基本台帳法を廃止する闘いに参加していただきますよう心からお願い申し上げ、代表質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) KSDからの歌謡ショーチケット及び陣中見舞いの提供についてお尋ねがありました。

 私の地元の事務所に確認をいたしましたところ、御指摘の催しは、KSD北陸支局開設の会員総会の際に記念として付随的に行われたもので、参加費用は徴収されておらず、無料の入場整理券が発行されていたにすぎないと聞いております。また、当時、地元の事務所は、人集めの協力を依頼されてこれを手伝ったことは事実のようでありますが、枚数については記録がないので明らかでないとの報告を受けております。したがって、歌謡ショーチケットの提供を受けたとの御指摘は適切ではないものと考えます。

 また、御指摘の陣中見舞いにつきましては、私の事務所に確認をいたしましたところ、平成八年に豊明会中小企業政治連盟から十万円の寄附を受けていたとのことでありますが、これについては、政治資金規正法上の収支報告を行っておりまして、適正に処理しているものと承知いたしております。

 小渕前総理の施政方針演説にものつくり大学が盛り込まれたことについてでありますが、物づくり、すなわち製造業は我が国の経済や国際競争力の基盤であり、物づくりを担う人材の育成が重要であることや、大学の構想が具体化され、十二年度予算に所要の経費が計上されていたことを勘案すれば、不自然なことではないと考えます。

 学校法人の設立等を目的とする法人に対する補助金の支出については、補助の対象である法人や設立される学校法人等に対して、各種法令に基づき適正な活動が行われるよう所轄庁等の指導監督が行われていることから、憲法第八十九条の趣旨に反するものではないと考えております。

 ものつくり大学の開設に関する国の補助金支出についてお尋ねでありますが、近年、若年者の技能離れや熟練技能者の高齢化等が進む中で、我が国産業の基盤である物づくりを担う人材の確保、育成等が重要な課題となってきておりました。

 ものつくり大学の設立は、技能者の社会的地位の向上に加えて、建設及び製造業に従事する労働者の職業能力の開発、向上を通じて、我が国の物づくり基盤の強化に資するものであることから、その施設設備の整備について補助を行ってきたものであります。

 額賀前大臣から私が受けた説明や、森内閣閣僚辞任に関する私の任命責任などについての御指摘がありました。

 私自身は額賀大臣任命時には事実関係を承知しておりませんでしたが、昨年末の段階で額賀氏に確認いたしたところによれば、額賀氏の秘書が古関前理事長から千五百万円のお金を預かり、額賀氏本人は秘書から平成十二年五月に報告を受けて初めて知ったので即座に返却するよう命じたとのことであり、私もそのように受けとめたところであります。

 いずれにいたしましても、額賀氏は、秘書に対するみずからの監督責任の問題として厳しく受けとめ、けじめをつけたいとのお考えから辞任されたところであり、私としてもそうした御判断を重く受けとめております。

 閣僚の任命責任は、すべからく内閣総理大臣である私にあると考えております。額賀前大臣も含めこれまでの閣僚の辞任は、いずれも国政の遂行に迷惑をかけたくないとの理由でみずから辞任されたものでありますが、結果としてこのようなことになったことについては、私としても大変遺憾であり、国民の皆様に対して申しわけなく思っております。

 私ども、今後とも、内閣が一丸となって、景気の本格的な回復を初め、IT革命の推進、教育改革、社会保障改革といった、今まさに国民が求めている政策に全力で取り組むことにより、内閣としての責任を果たしてまいる所存であります。

 金融機関に還流したKSDマネーを返還させることはできないかとのお尋ねでありますが、金融機関とKSDとの個別取引については、私法上の契約にかかわる問題でありまして、当事者間の経営判断にゆだねられるべきであるものと考えられます。

 なお、政府としては、金融機関によるKSDの会員勧誘に関する実態解明に取り組んでいるところであり、不適切な業務運営が認められた場合には、その内容に応じ、法令に基づき適切に対処してまいりたいと考えております。

 金融機関の勧誘行為等に対する検査等についてのお尋ねでありますが、金融監督当局において、金融機関の業務の健全かつ適正な運営を確保する観点から、必要に応じて事実関係等について検査や調査を行い、仮に、金融機関の勧誘行為等が法令上の他業禁止に抵触するような問題点があれば、業務改善命令を行う等厳正に対処することといたしております。

 今回のKSDをめぐる事件は、国民の政治への信頼を損なうものでありまして、私としても、大変遺憾であり、極めて深刻に受けとめております。党の所属議員から逮捕者を出したことについても残念のきわみであり、公党として国民に心からおわびを申し上げる次第であります。

 本件については、今後、司法当局の捜査により徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされていくものと考えられます。また、そうした真相究明を待つことなく、今回の事件を教訓として、自民党内の仕組みについても、見直すべきものは見直していく決意であります。

 公金横領疑惑に関するお尋ねでありますが、このたび、外務省職員により国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめ、国民の皆様に深くおわびを申し上げます。

 今回の事件で横領された明白な疑いがあるのは、内閣官房所管の報償費であります。

 次に、報償費が機動的に使用されていないのではないかとの御指摘でありますが、内閣官房、外務省の諸活動の重要性にかんがみれば一定規模の金額が必要でありますが、近年、外交活動等が拡大する等の状況の中で、財政事情にかんがみ、現在の水準に据え置いてきております。

 報償費の具体的使用に当たっては、そうした予算額の範囲内で優先度を勘案しつつ、最も適当と認められる方法で機動的に使用されるものでありまして、そのほとんどを執行しているからといって機動的でないという御指摘は当たらないものと考えられます。

 また、今回の事件にかかわる金額を削減すべきではないかとの御指摘でありますが、報償費は、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費であり、国政の遂行上不可欠なものであります。

 いずれにせよ、今後の捜査当局による真相解明の進展も見ながら、政府として原因の解明と再発防止に万全を期してまいりたいと考えております。

 バブルの負の遺産についてのお尋ねがありました。

 先ほど鳩山議員にもお答えをいたしましたが、バブルの崩壊に伴って長期的に景気が低迷し、日本経済は、設備、雇用、債務のいわゆる三つの過剰という問題を抱えるに至りました。旧経済企画庁が行った試算によりますと、過剰設備額は、まだ九七年初めの水準までは戻っていないものの、全産業で、九九年の約五十六兆円から、昨年の半ばには約三十五兆円と低下いたしております。また、過剰雇用感についても、同様に、依然として高い水準でありまして、まだ九七年初めの水準までには戻っていないものの、減少しております。最後に、過剰債務をはかる目安としては、長期債務・キャッシュフロー比率を見ると、業種によって進捗状況が異なるものの、改善をいたしております。

 以上のように、政策効果などにより景気は最悪期を脱し、三つの過剰についても、総じて見れば解消の方向に向かいつつあると考えております。

 なお、金融機関におきましては、不良債権に対する必要な手当てを行っておりまして、金融機関の健全性について、かつてのような問題があるわけではありませんが、不良債権問題を抜本的に解決し、健全な中小企業等に対する金融の円滑化を図るよう一層の努力をしてまいります。

 宮澤財務大臣が閣僚として問題ではないかとの御指摘がありました。

 書籍に掲載されました宮澤財務大臣の御発言の真意については、宮澤財務大臣から説明していただくことといたしますが、宮澤財務大臣については、もう一押しという状況にある我が国経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題とされる中で、その経験に裏打ちされた豊富な識見でもって御活躍いただきたいと考え、引き続き財務大臣への御就任をお願いしたものであります。

 私としては、宮澤財務大臣が閣僚として問題があるとは考えておらず、内閣一丸となって、景気の本格的回復に向けた経済運営という、内閣が直面する重要課題に全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 日本版ペコラ委員会の設置についてのお尋ねでありますが、委員会の設置にかかわる問題は国会において御議論いただくべき事柄であると考えておりますが、いずれにいたしましても、破綻金融機関については、金融再生法の規定等に基づいて、経営破綻に至った原因の調査が行われているほか、その旧経営陣に対しては、民事、刑事上の厳格な責任追及が行われているものと承知をいたしております。

 ウルグアイ・ラウンド対策と食料自給率の低下との関係についてのお尋ねでありますが、本対策は、ウルグアイ・ラウンド農業合意の影響を極力緩和するとともに、農業、農村を持続的に発展させることを期して決定されたものであります。他方、我が国の食料自給率が低下してきておりますのは、米の消費が減少する一方で畜産物等の消費が増加するなど、我が国の食生活の変化が続いていることや、国内の農業生産がこのような変化に十分に対応できていないことが主な原因であると考えております。今後、食料自給率の向上に向け、生産から消費にわたる各般の施策を推進していくことといたしております。

 ウルグアイ・ラウンド対策費と米の生産性、農業全体の生産性についてのお尋ねでありましたが、この対策の効果につきましては、それぞれの事業実施地区について見ると、対策の実施前に比べ、担い手の経営規模は二・五倍に拡大をし、稲作の労働時間は約六割に短縮するなど、一定の効果を上げていると評価をいたしております。

 また、対策開始後の農業全体の動向を見た場合、農業施策全体や社会経済情勢の変化などとも相まって、米につきましては、販売農家の直接労働時間の減少、平年単収の増加が見られ、また農業全体につきましても、農家一戸当たりの平均経営規模の増加、単位面積当たりの労働時間の減少などにより、生産性の向上が見られるところであります。

 改正住民基本台帳法の廃止についてのお尋ねでありますが、改正住民基本台帳法は、国の機関等への本人確認情報の提供等、その基本的部分を平成十四年八月までに施行させなければならないこととされております。

 改正法による住民基本台帳ネットワークシステムは、地方公共団体共同のシステムであり、国が管理するシステムではありません。また、本人確認情報の提供先を法律に規定し、その情報の目的外利用を禁止するなど、制度面での措置を講じておりまして、国民に付した番号のもとに国があらゆる個人情報を一元的に収集、管理するといういわゆる国民総背番号制とは、発想においても、仕組みにおいても全く異なるものと考えております。

 残余の質問については、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 最初に、我が国経済のバブルの後遺症についてお尋ねがございまして、既に総理大臣から詳しく御答弁がありましたが、私からもということでございますので、申し上げます。

 まず、金融機関につきましては、担保不動産の価値が大きく下がったことなどから、不良債権が増大し、バブルの事後処理を要したところであることはおっしゃるとおりでございますが、これまでかなり大きな公的資金も活用され、また不良債権に対する必要な引き当ても行われておりまして、金融機関の健全性については、かつてのような問題がもう現在あるわけではございません。ただ、かつてのような非常な、世界に融資するような、健全性を欠いておりますことは事実でございますけれども、かつてのようないわゆるジャパン・プレミアムのような問題を生ずることは既に解消いたしました。

 また、一般企業につきましては、バブルの崩壊に伴って長期的に景気が低迷する中で過剰設備や過剰債務を抱えるに至りましたが、現在は、景気の緩やかな改善とともに解消への努力が続けられております。もちろん、その後に発生するものもございまして、完全にというわけにはまいっておりませんが、解消の方向に進みつつあると考えておりますことを申し上げたいと存じます。

 次に、一九九二年、私が総理大臣をいたしましたときに、いわゆる不良債権について、必要なら公的援助をすることもやぶさかでないと言ったではないかということについてのお尋ねでございました。

 その際に、私からは、今の我が国の状況はアメリカのように多額な財政資金が必要な状況にはないが、というのはSアンドLのことを申したわけでございますが、しかし、国民経済、世界経済が脅かされるなら、政府は納税者の了解を得て公的な金を使って防ぐ務めがある。平成四年八月のことでございますが、銀行が持っている担保になっている不動産をどのように流動するか、その仕組みをことし暮れまでにつくることになっている。これは、金融機関が知恵を出し合って、金を出し合ってつくるのが好ましいが、必要なら、私は、公的援助をすることはやぶさかでない。その場合、銀行を救済する意味ではない。金融が動かないで迷惑するのは国民だ。そういう意味で、国民経済全体のためならあえて辞するものではない。ただし、そのためには銀行自身が、どれだけの不良債権を抱えているか、ディスクロージャーをしないといけない。一種の不安がもし起こりそうであれば、政府も中央銀行も黙って見過ごすことは決してない。

 こういう趣旨のことを申したわけではございますが、それがしかし、そのとおり世の中に受け入れられなかったのはなぜかというお尋ねでございました。

 今から考えますと、基本的には、問題の深さというか問題の本質というものが十分世間に理解されていなかったということになるかと思います。

 具体的には、一般の産業人は、銀行を援助するということは本能的に実は好まないところでございますし、また、銀行にいたしますと、自分のところは大丈夫だ、ほかはだめかもしれないが、しかし、そういうことを言い出すと格差が生じてうるさいし、また、一遍政府が銀行に対してそういうことをすると、将来独立が脅かされる、あるいは責任問題が起こるかもしれないというような雰囲気がありました。それから、一般に各省庁では、そのうちに不動産の価格も変わってくるであろうから、今そういうことをしてほしくないというような雰囲気であったと思います。

 そういう状況であったのが背景でございますが、実はこうだと、こういうことを申しますのには、それだけで不安を呼ぶこともございまして、やはり十分に一般に問題が認識されていなかったというふうに申し上げるべきであろうかと今反省をいたしております。

 それから、最後の問題でございますが、いわゆる「犯意なき過ち」と言われて御引用になりましたそのインタビューの記事の私の発言でございますが、これは、私も読みまして、私の真意を十分伝えておりませんし、また、礼を失する部分もございます。したがいまして、この点をおわびして、撤回させていただきたいと存じます。

 当時、私は、小渕首相とともに、日本長期信用銀行と住友信託銀行との合併交渉を進めることが望ましい、それが成功すれば預金、金融債の全額保証に伴う巨額な納税者の負担を回避することができるのではないかと考えて行動いたしたわけでございます。

 実際には、日本長期信用銀行が、また、その後に日本債券信用銀行が破綻したことになりまして、数兆円に及ぶ納税者の負担が生ずることとなったわけでございますので、この間の経緯について説明しておきたいというのが私の発言の真意でございました。

 しかし、先ほどのようなことでございますので、ここで改めておわびをして撤回させていただきます。御了解をお願いいたします。(拍手)

    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕

国務大臣(橋本龍太郎君) 上田議員にお答えを申し上げます。

 まず、日本のバブルの後遺症は解消されたのかという御質問をいただきました。

 先ほど総理からも、また、宮澤財務大臣からも御説明がありましたように、よく言われます三つの過剰につきましても、総じて見るなら解消の方向に向かいつつあると考えておりますし、金融機関におきましても、不良債権に対する必要な手当てを行っており、金融機関の健全性につきましても、かつてのような問題があるわけではありません。

 しかし、不良債権問題を抜本的に解決しなければならない、そして、その中において健全な中小企業などに対する金融の円滑化を図れるように一層の努力を必要とするという点では、議員の問題意識に対して異論はございません。

 次に、日債銀の破綻の責任についてというお尋ねがございました。

 結果として、同行の再建ができず特別公的管理下に置かれたことは、本当に遺憾なことでありました。この間の対応につきましては、その当時において把握できた日債銀の財務状況を前提にして、その時々における制度の枠組みのもとで、金融システムの安定性確保のための必要性を勘案し、最善を尽くしてきたつもりであります。

 しかし、いずれにいたしましても、これまでの金融行政に対する御批判を踏まえまして、平成十年に金融監督庁を設置するなど、自己責任原則を徹底すること、市場規律を基軸とした透明かつ公正な金融行政への転換を図ってまいりました。同時に、日債銀の旧経営陣の責任につきましては、金融再生法に基づいてしかるべき追及がなされたものと承知をいたしております。

 次に、なみはや銀行の問題についての御質問がありました。

 なみはや銀行は、特定合併制度によりまして、平成十年十月一日に福徳銀行となにわ銀行が合併した銀行であります。平成十一年八月七日、同行からの金融再生法第六十八条第二項に基づく申し出などを踏まえ、当時の金融再生委員会より、同法第八条に基づく金融整理管財人による管理が命ぜられたものと承知をいたしております。

 特定合併制度は、現在のようなセーフティーネットが存在していない平成九年秋の時点において、金融システム危機ともいうべき状況の中で整備をされたものでありました。この制度がなみはや銀行に適用された過程で、当時の行政当局において行われた一連の行政行為は、各段階におきまして、それぞれ法令にのっとって最善を尽くして行われたものと考えておりますけれども、結果としてその再建が実現できなかったことは、本当に遺憾であります。

 この案をだれが私に説明したのかというお問い合わせもございました。

 当時の大蔵省銀行局において検討をされ、平成九年十二月の預金保険法の改正により整備されたものでございます。また、旧金融安定化法に基づく金融危機管理審査委員会による長銀あるいは日債銀などの資本注入の決定が、我が国における金融機能に対する内外の信頼が大きく低下するというその危機的な状況に対応するための緊急措置として、金融システムの安定化を図るために行われました。

 長銀と日債銀が破綻をし、優先株が毀損するという事態に至ったことは本当に残念でありますが、当該資本注入については、その時点で把握できておりました財務内容を前提に、当時のセーフティーネットの整備状況、あるいは金融システムの安定性確保のための必要性などを勘案して、法令に則し最善と考えられる対応がとられたものと理解をいたしております。

 最後に、九七年度の九兆円の負担増後の日本経済失速の責任についても御質問をいただきました。

 この税制改革が、あるいは医療保険制度改革がどういう意味を持っていたかを改めてここで長々と述べようとは思いません。平成九年度における四半期別の実質GDP成長率の動きを新体系移行後の前期比季節調整済みで申し上げますと、四―六月期は、消費税引き上げが予定されておりましたその駆け込み増の反動でマイナス三・一%減と、前期に比べ大幅な駆け込み需要の反動が出てまいりました。しかし、七―九月期には〇・四%増、そして、後にしばしば御批判を浴びましたけれども、十―十二月期には〇・七%増と、増加を続けておりましたというのが数字の上での事実であります。

 しかし、平成九年七月に始まりましたアジア地域の通貨・金融市場の混乱、あるいはこの年の秋に起こりました金融機関の経営破綻などを背景にして、景気が極めて厳しい状況に陥り、平成十年秋には、デフレスパイラルに陥るのではないかという懸念も生じました。こうした状況に対し、平成十年四月の総合経済対策など、累次の経済対策を含む大胆な、そして迅速な政策運営を行うべく努力をしてまいったところであります。

 今日、こうした政策の効果もあって、我が国の経済は、依然として厳しい状況にはありますが、緩やかな改善を続けております。こうした状況の中において、政府としては、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最も重要な課題であると考えております。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 外交を預かります者として、国民の皆様におわびを申し上げた上で御答弁をさせていただきます。

 外務省の調査についてのお尋ねでございますけれども、松尾元室長が公金としてA銀行に入金したとしているものの累計は約五億六千万円であり、同人が総理外国訪問の諸経費の支払いに使用していたとしているクレジットカードの同期間における引き落としの金額の累計は二億五千万円でございます。その差し引き約三億一千万円の使途の多くは不明でございますが、そのうち、今回の調査の結果、競走馬購入などの目的のために使用された約五千四百万円については、横領の疑義が明白となっております。

 横領を明らかにするためには公金を私的目的に使ったことを特定する必要がありますが、松尾元室長は、現金携行分を除く公金の入金をしていたのはA銀行の二口座であると述べたのを踏まえまして、詳細な出入金の記録の提示があったA銀行の二口座について集中的に調査を行ったものでございます。

 残りの口座につきましては、詳細な記録の提示がなく、強制的な捜査権のない外務省の調査委員会としては、本件疑惑の全貌を明らかにするだけの調査を行うことには限界があったということを御理解いただきたいと存じます。

 外務大臣としての責任についてのお尋ねがございましたが、先般公表いたしました調査報告書で述べましたとおり、松尾元室長個人が、少なくとも平成九年十月から平成十一年三月までの間に公金を横領し、私的目的に使用した疑いが明白となったために、同人を警視庁に対して告発いたしました。

 外務省としては、さらなる事実関係の解明のために、捜査当局に全面的に協力をしてまいりますとともに、みずからも必要な内部調査を継続することといたしております。

 本件を未然に防げなかったことは、外務省としてのチェック体制に不備があったことによるものでございまして、この点につき深く反省をいたしております。

 私としては、今回の事件に対する厳しい反省に立ち、襟を正して真相究明と抜本的な再発防止に取り組むことが私の責任と考えており、これにより、外交に対する国民の信頼を回復するよう全力を尽くす所存であります。

 元室長が着服した公金は、外務省機密費かそれとも内閣官房機密費なのかというお尋ねがございました。今回の事件で横領された公金についてのお尋ねにつきましては、横領された明白な疑いのあるのは、内閣官房所管の報償費でございます。

 外務省の報償費が官邸に上納されていることがあるかという意味のお尋ねがございました。外務省の報償費が官邸に上納されているとの事実はございません。

 政府は、機密費について、ばらつきもなく、ほとんど使い切るのはなぜかというお尋ねでございます。

 報償費の執行について、外務省の報償費は、平成四年度に、当時の国際情勢の流動化などを受けて増額が認められて以降、毎年度ほぼ同額が計上されております。アジア太平洋地域における流動的な情勢、世界各地で依然として多発している民族紛争、グローバル化の進展などの国際情勢の変化を踏まえまして、情報収集活動の強化を初め、外交活動のより一層の質的、量的増大が必要不可欠と考えております。

 そうした中で、お認めいただいている予算をその時々の優先的な外交課題に沿って最大限有効に活用させていただいているということを御理解いただきたいと存じます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) 上田清司君から再質疑の申し出がありますから、これを許します。上田清司君。

    〔上田清司君登壇〕

上田清司君 まず、外務大臣にお尋ねいたします。

 再質問の機会を与えていただきましたことを心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

 残りの口座について調べることができないという理由を述べておられましたが、私が仄聞するところ、自民党の外交関係の合同部会でもそのようなことについて問われて、結果的には、自民党においてすら、外務省の調査において承服できないということも仄聞しておりますが、なぜ残りの口座を調べることができないのか。御本人の所在を確認されておられることもこちらは知っております。したがって、なぜ松尾氏から他の口座について調べることができないのか、到底承服できません。

 もう一点ございます。

 先ほど、外務機密費のばらつきがあってしかるべきではないかという質問をした結果、使い切っている、このような御答弁でありますが、機動的に、しかも当面の任務と状況に応じて使うというこの機密費が残ったりするときもあれば足りないときがあったりする、これが当たり前でありまして、なぜ使い切ってしまうのか。まさに恒常的な支出になっているのであれば、それは機密費ではなくてきちんとした予算にすべきではないかと私は思いますので、この点についてもお答えしていただきたいと思います。

 次に、財務大臣にお伺いいたします。

 先ほど、長銀は私たちがつくった法律によってつぶれたんだというようなことを雑誌のインタビューに答えておられました。そういうことであれば、少なくとも金融再生法は与野党一緒につくった法律でありますし、財務大臣も賛成をされた法律であります。にもかかわらず、この法律によって長銀がつぶれたというのであれば、論理的に矛盾があります。しかも、野党がつぶしたということであれば、その根拠というものを明らかにしていただきたいと先ほど申し上げましたが、十分その根拠について言っておられませんので、この点についてもお答えをしていただきたいと思います。

 総理にもまた申し上げます。

 先ほど、ダボスでの会議、総理は極めて、日本経済は間もなく本格的な再生を終え、再び世界経済の最先端に立って貢献できる状況になる、日本はバブルの負の遺産を解消し、完全に復活する体制を整えつつある。どうも外国で言われることと日本で言われることと、ニュアンスの差が余りにも違い過ぎます。

 仄聞するところでは、経済企画庁では、二月の月例経済報告では下方修正せざるを得ないという、こうした認識も聞いております。まさに、まだまだバブルの後遺症は終わっていない、むしろずっとその氷塊は残っているとしか思えませんが、先ほどの、三つの過剰は徐々に解消しているという、このことについて認めないわけではありませんが、少なくとも不良債権についてはまだ十分残っている、むしろ、減っていないということを強調せざるを得ません。そういう点において、しっかりとした回答をお伺いしたいと思います。

 以上三点、三大臣にお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 上田議員からの再質問でございますが、先ほど申し上げましたように、バブルの負の遺産については、各方面のいろいろな努力で少しずつ解消の方向に向かっているわけでありまして、少なくとも、世界の経済人あるいはまた政治家、あるいは学者などが集まっておられますダボスで、日本の経済のいわゆる動向はどういうふうになっておるのだろうか、大変皆さんがまた興味を持っておられたし、また、大変多くの関心も持っておられました。その状況を私は率直に申し上げたわけでございまして、経済は刻々変化をいたしておるものでもありますし、また、すべてが一律に、すべてがよい方向に進んでいくということは、必ずしも同じ方向に行くわけではございません。先ほど橋本大臣もお答えになっておりますが、総じていい方向に動いているということを私はダボスで申し上げた次第であります。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 残りの口座についてなぜ調査をしないのか、こういう追加の質問だとお聞きをいたしました。

 先ほど申し上げましたように、外務省には強制捜査権はございません。捜査権がない外務省がすべての口座を捜査するためには、本人の任意の協力というものがなければできないわけでございます。

 したがいまして、外務省としては、でき得る限りの努力をいたしまして、本人と話をした上で、二つの口座について、A銀行の口座についてその口座の内容を詳細チェックをすることができたわけでございまして、他の口座を捜査するのは、捜査権を持つ人たちによって捜査をしていただかなければ全容を解明するということは難しいということを先ほど申し上げたわけでございます。

 もう一点、なぜ報償費の残額がでこぼこがないのか、こういうお尋ねだと思いますが、これも先ほど申し上げましたように、私は、とりわけ近年、我が国外交は、国際的な情報収集というものは極めて重要でございまして、でき得る限りの外交関係、あるいは国際会議その他における我が国の立場をはっきりさせるために、あるいは我が国の考え方をきちんと整理するために情報収集には全力を挙げているところでございます。

 我々としては、与えられている予算の中で優先的に重要なものを使っているわけでございまして、こう言ってはなんでございますけれども、でき得べくんばもう少し予算があればもっと情報収集ができる、こう考えることしばしばであることを御理解いただきたいと思います。

    〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕

国務大臣(宮澤喜一君) 国会の御議論によって銀行がつぶれたというようなことは、これは国会の民主主義の原則であります言論の自由に対して大変な挑戦でございます。私は、そういうことを申すことは真意でございません。(拍手)

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副議長(渡部恒三君) 神崎武法君。

    〔神崎武法君登壇〕

神崎武法君 私は、さきに行われました森総理の施政方針演説及び政府演説に対し、公明党を代表して質問をいたします。

 冒頭、先月二十六日にインド西部を襲った大地震におきまして、犠牲者を初め多くの被害が出ております。被災者に対し心よりお見舞いを申し上げるとともに、日本政府は被災者支援や復興対策に全面的に協力することを強く要請いたします。

 私たちは今、高度経済成長とその後のバブル崩壊という長く苦しい状況を経て、ようやく明るい日差しが差し込んでくる中、新しい世紀の入り口に立つことができました。二十一世紀を輝かしい世紀とするため、国政に携わる者の一人として、力の限りを尽くして国民の皆様の負託にこたえてまいりたい、そう決意するものであります。(拍手)

 しかし、残念なことに、昨今の事件を振り返りますと、みずからの私腹を肥やす政治家に対し、国民から厳しい批判の目が突きつけられているのであります。

 論語に、政は正なりという言葉があります。政治とは正義をなすことであるという意味でありますが、政治家は私利私欲を捨てて国民への奉仕に徹すべきであり、それが政治家の原点であると確信いたします。いま一度、私たち政治家一人一人は、襟を正し、原点に立ち返って国政の任に当たろうではありませんか。(拍手)

 さて、具体的な政策課題に入る前に、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団をめぐる疑惑事件について伺います。

 財団法人KSDは、労災保険の恩恵を受けられない中小企業経営者のための共済事業などを目的に設立された公益法人であります。今回のKSD事件は、公共の利益を第一にする公益法人が、みずからを利する政策決定に絡んで、巨額の政界工作資金を政治家に流してきた事件で、元自民党の小山孝雄参議院議員は受託収賄罪容疑で逮捕され、議員を辞職いたしました。

 また、既に起訴されているKSDの古関前理事長が理事長を兼任していた財団法人アイム・ジャパン、さらには、ものつくり大学の設立などに絡み、事件は広く奥深い様相を呈してきております。まさに政官業癒着の二十世紀型の構造的汚職がそのまま露呈した事件であり、国民の怒りはおさまらず、政治不信を一層深めているのであります。

 公明党は、結党以来、政治腐敗の一掃を目指して全力で闘ってまいりました。KSD疑惑事件に対しても、その真相の解明のために全力で取り組むものであります。

 まず第一に、所属議員から逮捕者が出た自由民主党は、自浄作用を発揮し、厳重に調査の上、その結果を国民に公表すべきと考えますが、自由民主党総裁である森総理のお考えをお尋ねいたします。

 第二に、KSDから政界への巨額の金の流れについては、司法任せではなく、政治の力、国会の努力で明らかにすることは当然のことであります。この際、徹底して究明すべきであります。

 政治倫理綱領には、政治家が疑惑を受けた場合は「みずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」と定められています。疑惑を受けた政治家は、みずから進んで釈明すべきであります。

 さらに、事件の全容解明のため、証人喚問も視野に入れて、あらゆる手段を講ずるのが国会の責務であると考えます。これなくしては、ただ政治不信を大きく膨らませるだけであります。

 総理はこの事態をどうとらえ、どのように対処されようとしているのか、伺います。

 第三に、今回の疑惑事件を通じ、KSDを所管してきた旧労働省が監督責任を果たしてきたとは到底思えないのであります。すなわち、KSDの古関前理事長が財団を私物化している状況を知りながら、しかるべき指導監督を怠ってきたのではないかと言わざるを得ません。

 厚生労働大臣は、このような事実関係をさらに明らかにするとともに、旧労働省の監督責任についてどうお考えか、あわせて、今後、公益法人としてのケーエスデー中小企業経営者福祉事業団に対しどう対処されるのか、お伺いいたします。

 第四に、再発防止についてであります。

 再発防止に当たって重要な点は、公益法人のあり方であります。橋本行革担当大臣は、一月三十日の閣議後の記者会見で、国所管の公益法人全体のチェックの必要性を明らかにされております。この際、徹底して公益法人の総点検を実施し、その実態を明らかにし、公益法人のあり方を見直すべきであると考えますが、橋本行革担当大臣の御決意を伺います。

 次に、外務省幹部の機密費横領事件について伺います。

 この事件は外務省の松尾元室長による公金横領で、公金は言うまでもなく国民の税金であります。国民は、倒産による失業、リストラ、給与カットの厳しい経済状況の中で、必死に生活を守るために闘っているのであります。このような状況の中で発覚した外務省幹部による機密費横領事件に対し、国民は激しい憤りを抱いております。

 また、このような不正が長期間にわたって繰り返し行われてきたことを外務省が知らなかったとは考えにくいところであります。国民の大多数も、外務省が組織ぐるみで関与をしていたのではないかとの疑いを持っています。通り一遍の調査だけでは、決して国民の理解は得られるものではありません。まず、外務省は、徹底した再調査を実施し、直ちにその結果を国民に公表すべきであります。

 その調査の際、特に重要なのは、松尾元室長が公金の管理を個人口座で行うことについて、上司の決裁をもらって行っていたのかどうか、元室長一人の個人的な判断なのかどうかであります。要するに、個人的な犯罪なのか、それとも組織ぐるみなのかを明らかにする必要があります。

 そういう意味で、外務省以外の第三者が入った調査検討委員会を設置し、厳正な調査と再発防止策の検討を早急に行うべきであります。外務大臣の見解を求めます。

 国民は、今回の事件により、機密費自体について疑惑を抱いています。この際、機密費全体のあり方について見直しを行うべきであります。例えば、機密費のチェック体制の確立、情報公開などについて、政府は改めて検討を行い、国民の理解が得られるような厳正な措置を講ずべきであります。この点につきまして、総理のお考えをお伺いいたします。

 次に、経済問題についてお伺いいたします。

 我が国経済は、小渕、森連立内閣の果敢な経済対策の実行により、平成十一年度の一・四%成長に続き、平成十二年度もプラス成長が確実になるなど、緩やかではありますが、着実に回復に向かいつつあります。新世紀初頭の二〇〇一年は、回復に向かいつつある我が国経済を民需主導の自律的回復軌道に乗せ得るのかどうか、まさに正念場の年であります。

 平成十三年度予算案は、現下の経済情勢を十分に踏まえ、IT、環境、都市基盤、高齢化対応など、二十一世紀における新たな発展基盤の構築に全力を挙げるとともに、景気にも最大限の配慮をしたものとなっております。さらには、公共事業費については、景気への配慮から前年度同額を確保しておりますが、二百七十二事業を中止するなど、公共事業改革への第一歩を踏み出しております。

 ちまたでは三月危機ということもささやかれ、また、米国経済の低迷による影響など我が国の景気の先行きに対する不透明感が出ております。こうした不安を払拭するとともに、実体経済においても力強い景気回復を確実なものとしていくためにも、平成十三年度予算の早期成立が不可欠であります。森総理の御決意を伺います。(拍手)

 関連して、証券市場活性化対策についてお伺いいたします。

 経済の鏡である我が国の株価が低迷している中で、与党において、証券市場等活性化に関するプロジェクトチームを立ち上げて、鋭意検討が進められております。私は、基本的な認識として、短期的な株価対策ということではなく、間接金融中心から直接金融中心へという金融の流れを踏まえつつ、中長期的に、個人投資家にとって魅力ある市場の形成に力点を置き、企業経営のあり方、市場環境の整備など、幅広い観点で対策を講じていくべきであると考えます。

 自社株の取得、保有の自由化、いわゆる金庫株については、企業経営の選択肢を広げるなどの重要な役割を持つものであると認識しておりますが、他方、インサイダー取引、株価操縦などについての厳格な予防措置を講じるべきであります。

 証券市場活性化についての総理の御見解を賜りたいと存じます。

 次に、米国経済についてお伺いいたします。

 米国経済は、ニューエコノミーと言われた高成長の時期は終わりを告げ、まさにソフトランディングができるかどうか、重大な局面を迎えつつあります。五%近かった米国の成長率は、昨年後半からブレーキがかかり、全体として二、三ポイント程度も下落するとの予測もあるなど、世界経済の懸念要因となりつつあります。その影響は、アジア、日本にも輸出の減少などの形でじわじわと浸透してきており、注視が必要であります。

 総理は我が国経済への影響をどう認識しているのか、お伺いいたします。

 次に、財政健全化に向けた取り組みについてお伺いいたします。

 森総理は、施政方針演説において、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、財政構造改革についてその実現に向けて議論を進める旨を表明しておりますが、基本認識においては全く同感であります。

 公明党は、二〇〇二年度まで景気の自律的回復に全力を上げ、二〇〇三年度から財政健全化に向けた取り組みを開始することを提案しております。その間、ただ傍観しているのではなく、経済構造改革を断行しつつ、行政改革、公共事業改革、社会保障改革、地方分権の推進などの具体的な方策について議論を進めるとともに、その対策を盛り込んだ仮称財政健全化法を制定するなど、同時並行での対応が必要であると考えております。

 この我が党の基本的な考え方について、総理はどう認識されているのか、明確な答弁を賜りたいと存じます。(拍手)

 次に、国、地方を通じた行財政改革の推進について伺います。

 中央省庁の再編によって、ほぼ半世紀ぶりに中央省庁はその姿を大きく変えました。省庁再編は、近代日本から現在まで一貫して実質的な政策決定権を握っていた官僚機構を改革し、官僚主導から政治主導へと大きく転換するために行われたことは言うまでもありません。画期的なことと高く評価するものであります。

 しかし、政治主導の確立を初め、縦割り行政の弊害を排除、透明化、自己責任化、スリム化目標の設定など、今回の省庁改革にはこの四本の柱を立てて臨んでおられますが、これに魂を入れるのは、まさしくこれからの取り組みいかんにかかっております。

 政治主導の確立とは、内閣機能の充実を図ることとイコールであります。その意味で、新たな政府機構の中で仕事を行う森総理を初め、大臣、副大臣、大臣政務官などの政治家が、今回の省庁再編の意義をよく理解し、的確に政策を実現していくことが何より重要であり、総理のリーダーシップが重要であります。

 総理は、新しい体制となった大臣、副大臣、大臣政務官のそれぞれの役割と権能をどのようにとらえているのか、また、どのようにかじ取りをされるお考えなのか、御説明願います。

 また、我が党はかねてから行政評価法の制定を主張してまいりましたが、ようやく、昨年十二月に閣議決定された行政改革大綱に、所要の法案を次期通常国会に提出すると明記されました。この法律の制定とともに、各府省の第三者評価の徹底、全府省へ米国並みの外部監査の実施、会計検査院の機能充実などが必要です。これらについて総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、特殊法人改革については、既に特殊法人等改革基本法案が議員立法で提出されており、それに関連して、公務員制度の改革にも具体的に着手する段階に入りました。

 特殊法人等の抜本的見直しについては、本年度中に、各特殊法人等の事業及び組織形態について講ずべき措置を定める整理合理化計画を策定し、遅くとも平成十七年度末までに、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるとしています。

 しかし、政治主導の具体的姿を国民の皆様に御理解いただくには、今国会で一定の姿を示すべきであると考えます。また、公務員制度改革についてもどのような視点から取り組まれるのか、橋本行革担当大臣の御見解をお伺いいたします。

 次に、地方行財政改革についてお伺いいたします。

 市町村合併の推進は、地方行財政改革へのアクセルになります。行政改革大綱にも、自治体数一千を目標と明記されましたが、ある試算によれば、合併したときの基準財政需要額は約一割減るとの研究もあります。また、現在の国に依存した地方交付税制度の抜本的見直しを図り、地方税財源の充実を図るべきであります。

 地方分権が叫ばれて久しくなりますが、総理のリーダーシップのもと、今こそ、地方自治体の行政能力の強化と合理化のためにも、市町村合併と地方交付税制度の見直しを強力に推進すべきであると考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。(拍手)

 次に、教育改革についてお伺いいたします。

 昨年十二月に、教育改革国民会議の最終報告が総理に提出されました。教員評価の積極的導入、教育委員会の刷新、大学入試の多様化など、公明党の政策と同趣旨の内容が数多く取り入れられており、基本的に評価するものであります。

 公明党は、教育改革に当たって何よりも重要なことは現場の声に耳を傾けることであると考え、新年冒頭より精力的に、東京、大阪、神奈川、岩手、広島など、各地の現役の高校生、大学生、若手教員の方々と教育対話集会を行ってまいりました。今後は、国民的議論をさらに広げながら、国民合意の教育改革を実行することが重要であると考えます。

 昨今、教育基本法の見直し論が焦点になっていますが、教育基本法そのものは日本国憲法制定を契機に制定され、その精神において現憲法と軌を一にしたものと考えます。特に、教育の目的を人格の完成と規定した点や、教育が政治から中立でなければならないとしたいわゆる教育の独立権は、永遠に目指すべき指針として堅持されるべきであります。

 その意味でも、教育基本法の改正問題については、十分に時間をかけて検討し、議論の深まりが必要であると考えます。総理も教育基本法の改正にたびたび言及されておりますが、ここで改めて基本的考えを御説明いただきたいと思います。

 私は、教育改革への基本的視点として、家庭、地域が支える開かれた学校の構築や、教育における地方分権をより積極的に推し進めることが重要だと考えております。

 現在、現行の教育法制にとらわれない研究開発校事業の積極的活用が、楽しい学校やわかりやすい授業などの教育効果を上げており、大変に注目されております。学校の活性化の観点から、この事業のさらなる普及が不可欠であります。地方教育委員会でも、研究開発校を独自に認定したり、期限つきで学校開設が特別許可されるチャータースクール、いわゆる公設民営学校やフリースクールなどを研究開発校として認定できるよう、制度の改善が必要です。こうした提案につきまして総理はどのようにお考えか、お伺いいたします。

 次に、社会保障制度の改革について伺います。

 社会保障の各制度は、戦後の萌芽期から昭和三十六年の国民皆保険を経て、先進国の中でも充実した制度として発展してまいりました。その間、社会保障は、国民の皆様からのさまざまな要望を、主として給付を充実させる形でこたえてきました。

 しかし、少子高齢化の進展で、そうしたやり方を続けていたのでは、保険料や税を負担する現役の若い世代に非常に重い負担を負わせることになってしまいます。これは何としてでも回避しなければなりません。

 また、少子化の進展は、高齢化上昇率の主たる要因であると同時に、二十一世紀の我が国の根幹を揺るがしかねない問題です。この事態を克服するには、長期的な展望に立った不断の取り組みが必要であります。こうした少子化社会における総合的な施策の重要な柱の一つとして、児童手当制度全体の抜本的な見直しが必要であります。

 今日、政治不信の高まりがたびたび指摘されていますが、社会保障の将来像が明らかでないことがその大きな要因であります。政府に社会保障改革協議会が発足し、改革大綱を三月末までにまとめることになっています。

 そこで、次の二点について伺います。

 第一点は、基礎年金の国庫負担の引き上げを一日も早く決定することです。第二は、明年度からの実施が約束となっている医療保険制度改革、とりわけ高齢者医療保険制度の改革の筋道を明らかにすべきであります。これらの点につきまして、総理並びに厚生労働大臣の御見解を伺います。

 国境を超えたボーダーレス社会の実現も目前と言われています。このような必然的な流れの中で、人間と自然、男性と女性、健常者と障害者、日本人と外国人などによる差別化は、真の人間主義とは相入れない、時代逆行の考え方であります。すなわち、二十一世紀は差別化の時代ではなく、共生の時代なのであります。

 二十一世紀は、そうした観点から見て、私は、我が国において直ちに取り組むべき課題として、第一に、永住外国人への地方選挙権付与、第二に、選択的夫婦別姓の実現、第三に、障害者に対し包括的な権利を保障する法制度の整備を挙げておきたいと思います。

 永住外国人への地方選挙権付与法案は、現在、継続審議となっております。二十一世紀はあらゆる国の外国人と共生していく時代であります。また、定住外国人の地域貢献によって地域社会の発展が促進されております。歴史的に見ても、日本が外国人との共生によって豊かな文化国家を形成し、社会発展の道を歩んできたことを忘れてはならないと考えます。三党連立合意にもあるこの永住外国人への地方選挙権付与法案は、今国会中に成立を図るべきであります。(拍手)

 二十一世紀は女性の世紀であります。すなわち、これからの時代は、女性が能力を発揮できる環境を整備し、女性の社会参加を積極的に推進していく男女共同参画社会の実現が強く求められています。女性の社会進出が増大するにつれ、結婚後も独身時代と同じ姓でありたいとする女性の意思は尊重されるべきであり、婚姻によって必ず夫婦同姓となるこれまでの制度のあり方を見直す時期に来ていると考えます。希望により別の姓のまま婚姻できる選択的夫婦別姓制度を実現すべきであります。

 以上二点につきまして、総理はどのようにお考えか、お尋ねいたします。

 さらに、二十一世紀を迎えた今日においてもなお、障害者の社会参加はほとんど進んでいないのが実感であります。もう一度原点に戻り、障害者について差別することを、明確にまた包括的に禁止する法制度の整備へと発展させていくべきではないかと強く感じるのであります。

 アメリカでは、ADA、障害を持つアメリカ国民法が一九九〇年に誕生しております。我が国においても、障害者権利法を制定すべきであります。早急に検討に入るよう求めるものでありますが、総理並びに厚生労働大臣の御見解をいただきたいのであります。(拍手)

 次に、年齢雇用差別禁止法の制定及び新卒者の就職支援についてお伺いします。

 近年、旧来の終身雇用制度や年功序列制度などの日本独特の雇用制度が徐々に崩壊しつつあり、それにかわる新たな雇用形態への対応が模索されております。ところが、現状は、企業の倒産に伴う失業、リストラが恒常的となり、住宅ローンや教育費など家計負担が増大する中高年齢層の失業者問題は深刻の度を増しております。

 幸い、我が国の中高年齢者は就労意欲が高く、豊かな経験と能力に裏打ちされた労働力を生かしていくことは、今後の企業発展にとっても大きなプラスになります。また、年金支給年齢が段階的に引き上げられ、定年後の収入を保障するための雇用確保がより重要となってきております。失業しハローワークに行っても、四十歳代以上の求人はほとんど見当たらない状況にあります。どんなにすぐれた能力や経験を持っていたとしても、年齢による理由だけで雇用差別が行われているのが実態であります。

 このようなことから、年齢による雇用差別を禁止し、中高年の雇用機会を確保するための法整備が必要であります。また、大学などの新卒者の就職は相変わらず厳しく、特に女子学生の就職は極めて困難な状況になっております。年齢雇用差別禁止法の制定及び新卒者の就職支援につきましての具体策について、厚生労働大臣にお伺いいたします。

 次に、農業問題についてお伺いいたします。

 農業は、地方経済の中核であり、また、人が生存するために不可欠な食料を生産するという役割のほかに、大切な国土や環境の保全、水源の涵養、景観の保全等の公益的、多面的機能を有する極めて重要なものであります。

 しかし、近年の米価格や野菜価格の大幅な下落は、農家の収入を直撃し、農業経営を著しく困難にしております。このままでは、耕作放棄や担い手不足に拍車をかけ、農業の持続的発展という新農業基本法の理念は絵にかいたもちになりかねません。

 新農業基本法には、農産物の価格の著しい変動が農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な措置を講ずることが国の責任として明記されております。現在も品目別の価格支持制度や農業共済制度はありますが、これらの制度では、市場の価格低下圧力から農家所得を守るには全く不十分であります。

 米国では、農産物価格の下落に対し、過去二年間で実に約二兆四千億円の直接所得支援を農家に行っております。我が国においても、農家が安心して農業に取り組み、食料自給率向上につながるよう、農家に対する直接支援を思い切って拡大すべきであります。

 そのためには、三兆四千億円の農水省予算の半分を占める農業基盤整備等重視の農政を抜本的に転換すべきではないかと考えます。総理の御見解を伺います。

 次に、有明海のノリ不作問題についてお伺いいたします。

 有明海のノリは、黒く色づかない色落ち状態で、多くが売り物にならず、前年比約四〇%の減収という深刻な被害を受けております。我が党は、事態を重視し、党本部に有明海ノリ凶作調査対策本部を設置し、全力で対策に当たっております。また、先日は与党三党の幹事長が現地を視察し、関係者から幅広く要望や意見を聞いてまいりました。

 そこで、総理にお伺いいたします。

 第一は、現在行われている緊急調査結果はいつ発表されるのか。さらに、本格的な原因究明調査はいつから始めるのか。いずれにせよ、調査報告に応じた万全な対策を早急に示すべきであります。

 第二は、政府は与党三党で合意した被害ノリ業者に対する金融・生活支援対策を早期に実施すべきであります。あわせて、今後のためにも、総合的な有明海の水産再生対策のため、有明海再生プロジェクトを設置すべきではないかと思います。

 以上の二点につきまして、具体的な答弁を求めるものであります。

 次に、静岡県焼津市上空で起きた日航機ニアミス事故についてお伺いいたします。

 この事故は、単なるニアミスではなく、四十二人の重軽傷の被害者を出した航空機事故だったわけでありますが、あと一歩で類を見ない死者を出す空中衝突となりかねなかった、前代未聞の航空史上最悪のニアミス事故と見るべきであります。現在、事故の詳細や原因は国土交通省などで究明中ではありますが、管制官による便名の読み間違え、緊急対応での心理的動揺、パイロット側の独断など、さまざまな問題点が浮き彫りになっております。

 大惨事が起きてからでは反省は何の意味もないというのが、さきの阪神・淡路大震災やジェー・シー・オー核燃料流出事故などでの教訓であります。政府、航空会社などの関係者は、どんなささいな人為的、政策的なミスも放置しない覚悟で、徹底した原因究明と万全な安全対策を打ち立てるべきであります。総理の決意をお伺いいたします。

 次に、我が国外交の基本方針について伺います。

 二十一世紀の幕あけとともに、ブッシュ新大統領が誕生しました。日米関係は、我が国外交の基軸であると同時に、アジア太平洋地域を含む世界全体の平和にとって極めて重要であります。早急に日米首脳会談を行い、新時代の日米安保体制のあり方や新たな経済関係の枠組みを初め、朝鮮半島の緊張緩和に伴う東アジアにおける米軍十万人体制の見直しなど、幅広い協議が行われることを期待します。新時代における日米外交の基本方針についてお伺いいたします。

 次に、日ロ外交についてお伺いします。

 日本とロシアは、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすとした一九九七年のクラスノヤルスク合意達成を目指してまいりましたが、残念ながら締結できませんでした。現在、新たな条約締結の期限も設定されず、交渉は振り出しに戻った形になっています。

 しかし、今は交渉を失速させないことが条約の早期締結への道を開く正念場であります。あらゆる協議を通じて、両国は少しでも歩み寄り、交渉前進に全力を尽くすべきであります。今後のプーチン大統領との平和条約交渉の見通しについてお伺いしたいと思います。

 一九八七年にノーベル平和賞を受賞したコスタリカのアリアス元大統領の言葉の中に、国家より人間の安全保障が大事であるとの注目すべき発言があります。

 我が党は、結党以来、人間主義を掲げ、人間一人一人の生命と生活を守ることを最優先する社会の構築、すなわち人間の安全保障という考え方を一貫して主張してまいりました。二十一世紀の我が国が目指す国際貢献を考えますとき、環境や医療、技術、文化、教育など多彩な分野において、日本人がこれら地球的規模の問題解決のために世界の至るところで誇りを持って働いている、これこそが二十一世紀、世界の中の日本のあるべき姿であると確信するものであります。

 平成十三年度の人間の安全保障予算案は、我が党の主張を反映し、昨年より三割増しの六百七十億円が計上されましたが、今後は、技術支援を初めとする人的貢献を重視すべきだと考えます。

 人間の安全保障の今後の取り組みにつきまして総理の方針を承りまして、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) インドの大地震について、冒頭にお話がございました。

 この地震による多大な被害は大変痛ましいものでありまして、日本政府といたしましては、直ちに一億三百五十万円相当の無償資金及び物資援助を行い、国際緊急援助隊医療チームを派遣いたしました。また、本日、自衛隊部隊をテント等物資の輸送及び設営技術指導のために被災地に派遣いたしましたところであります。政府といたしましては、今後も、被害の状況を踏まえつつ、当面の緊急援助とともに、将来のあり得べき復興支援を視野に入れつつ、さらに必要な支援を積極的に行っていく考えでございます。

 KSD問題に関連して、自民党としての調査及び結果の公表についてのお尋ねがありました。

 今回のKSDをめぐる事件は、国民の政治への信頼を損なうものであり、私としても、大変遺憾であり、極めて深刻に受けとめております。党の所属議員から逮捕者を出したことにつきましても残念のきわみでありまして、公党として国民に心からおわびを申し上げる次第であります。また、連立与党であります公明党また保守党に対しましても御迷惑をかけ、大変申しわけなく存じております。

 私といたしましては、今回のような事件が再び起こらないよう、政治の信頼回復に全力を尽くす決意を新たにしたところであります。

 今後、司法当局の捜査により、徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされていくべきものと考えておりますが、自民党としても、調査すべき点は調査し、真相究明に全面的に協力してまいる所存であります。また、真相究明を待つことなく、今回の事件を教訓として、自民党の仕組みについても見直すべきものは率先して見直してまいります。

 例えば、参議院比例代表名簿への登載基準のあり方について、党員、党友二万人以上という要件が党員獲得をいたずらにあおるものではないかとの誤解を持たれたこともあり、今回、思い切って撤廃したところであります。また、入党手続は適正に行われてきておりますが、指摘されたことを踏まえ、党員集めが適正に行われているか、党内でしっかりチェックするシステムをつくるべく、具体的検討に着手したところであります。

 さらに、今回の事件はKSDという財団法人をめぐる事件であり、今後、公益法人の運営のあり方やその指導監督のあり方など、解決すべき多くの課題があると考えます。昨年十二月に閣議決定した行政改革大綱に基づいて公益法人改革を行うことといたしておりますが、これについても連立与党で連携しつつ、改革のスピードを速め、一段と厳正な指導監督に努めてまいりたいと考えております。

 KSD問題に関し、今国会における疑惑解明の取り組みについてお尋ねがありました。

 ただいまお答えを申し上げましたとおり、本件については、今後、司法当局の捜査により、徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされていくべきものと考えておりますが、自民党としても、真相究明に全面的に協力してまいる所存であります。

 また、御指摘のとおり、疑惑を受けた政治家は、みずからその疑惑について釈明していく努力を払うべきものと考えております。国会における疑惑解明のあり方については、議院の運営に関することであり、証人喚問の問題も含めて、国会での審議の状況を踏まえ、国会において真剣に議論していくべき問題であると考えております。

 報償費に関するお尋ねでありますが、歴代内閣総理大臣の外国出張経費に関する外務省職員による事件につきましては、国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめ、国民の皆様に深くおわびを申し上げます。また、連立与党としてともに政権を担っていただいている公明党に御迷惑をおかけしたことも、おわびを申し上げるとともに、ただいまの神崎代表の御叱正を大変重く受けとめております。

 政府としては、今後の捜査当局による真相解明の進展を見ながら、原因の解明と再発防止に万全を期してまいります。

 報償費の適正なあり方についても御指摘をいただきました。

 内閣官房の報償費の運用について、この際、点検を行った上で、より厳正かつ効果的な運用に十分意を用いてまいる所存でありますが、使途等の情報公開は、報償費の機動的な運用や内政、外交の円滑な遂行に重大な支障を来すので困難と考えており、この点についてはぜひ御理解をいただきたいと思います。外務省に対しましては、引き続き十分な調査を指示しているところであります。

 予算の年度内成立についてのお尋ねがありました。

 我が国の経済は、緩やかな改善を続けておりますが、依然として厳しい状況にあり、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題であると考えております。

 平成十三年度予算は、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行うとの観点から、公共事業等に十分な対応を行うとともに、IT革命の推進など、二十一世紀の新たな発展基盤の構築に必要とされる分野に重点的、効率的に資金を配分することとし、新世紀のスタートにふさわしい内容といたしました。景気回復を確実なものとし、我が国経済を新たなる発展へと飛躍させるためには、この予算の早期成立が必要不可欠でありまして、ぜひとも年度内の成立をお願い申し上げたいと思います。

 証券市場活性化対策についてお尋ねがありましたが、今最も必要なことは、予算の早期成立を図ること等により、我が国経済を自律的回復軌道に確実に乗せるとともに、経済社会の構造改革を進めていくことであります。また、証券市場をより一層活性化していくとの観点から、市場インフラ等のあり方を不断に検討することも重要であると考えております。

 政府といたしましては、特定の株価を維持するような株価対策をとることは考えておりませんが、与党において証券市場等の活性化のための検討が行われているところであり、これらを踏まえて、政府としても市場インフラの整備等について適切に対応してまいりたいと考えます。

 米国経済の状況が日本経済に及ぼす影響についてのお尋ねがありました。

 米国では景気の拡大テンポが低下してきておりますが、米国の経済動向は、一般的には、対米輸出の減少や米国経済への依存度が高いアジア経済の成長鈍化を通じ我が国経済に影響を与えるものでありますが、具体的にどのような影響が生ずるかについては、金融市場における反応等さまざまな不確定要因があることから、これを的確に見通すことは困難であります。いずれにせよ、ブッシュ政権のもとでのソフトランディングに向けた経済政策などを十分注視していくことが重要と考えております。

 財政健全化に向けた取り組み及びそのための財政健全化法の制定についてお尋ねがありました。

 財政構造改革については、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、その実現に向けて議論を進めてまいります。その際には、新世紀における我が国の経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れる必要があると考えております。また、財政構造改革に関する法制面の対応については、このような議論が進んだ段階において検討されていくものと考えております。

 今般の中央省庁再編において、内閣府に経済財政諮問会議を設置いたしました。景気を着実な自律的回復軌道に乗せるための経済財政運営とともに、財政を含む我が国の経済社会全体の構造改革に向けた諸課題について、具体的な政策を主導するとの決意を持って、実質的かつ包括的な検討を行い、国民が安心と希望を持てる処方せんを示していく所存であります。

 中央省庁再編についての御見解は、神崎代表と考えを同じくするものであります。その際、新体制における大臣等の役割等についての御指摘でありました。

 大臣は、府省の政策決定の責任者であり、政治的リーダーシップを発揮して政策決定を行う役割と権能を有しております。副大臣は、大臣の命を受け、政策及び企画をつかさどり、いわゆるラインとして大臣に次ぐ立場から政策判断を行うことにより、また、大臣政務官は、大臣を助け、特定の政策及び企画に参画し、いわゆるスタッフとして大臣に対して助言等を行うことにより、それぞれ適切に大臣の政治的政策判断を補佐する役割を担っております。

 政府といたしましては、こうした体制を十分活用して、政治主導の政策決定を実現し、主権者たる国民の意思を的確に行政に反映させてまいりたいと考えております。

 行政評価法の制定と各府省の第三者評価の徹底についてお尋ねがありました。

 御指摘の点は極めて重要な課題であると認識いたしておりまして、昨年十二月の行政改革大綱にのっとり、各府省の評価における第三者の積極的活用を含め、現在、行政機関政策評価法案の立案作業を鋭意進めているところでありまして、今次国会に法案を提出いたしたいと考えております。

 全府省への米国並みの外部監査の実施、会計検査院の機能充実などの必要性についてのお尋ねがありました。

 全府省の予算執行については、内閣から独立した憲法上の機関である会計検査院において、その収入支出などの適否について厳正に検査を実施し、不適切な事態を指摘することにより、その適正化が図られてきているところであります。また、会計検査院におきましては、会計経理に関連する幅広い分野において不正不当な事態に対する検査を行うことはもとより、さらに、事務事業の業績評価を目指した有効性の観点から検査を充実していくことを会計検査の基本方針とされております。

 政府としては、会計検査院の検査機能の重要性については十分認識しているところでありまして、今後とも、会計検査院の検査活動が円滑かつ厳正に行われ、その機能が十分発揮できるよう、検査要員の確保など検査機能の充実強化に十分配慮してまいりたいと考えております。

 地方分権に関連して、まず、市町村合併についてのお尋ねがありました。

 市町村合併については、平成十三年度予算において新たに都道府県体制整備費補助金を盛り込むなど、幅広い支援措置を講ずることといたしておりますほか、各都道府県におきましても市町村の合併の推進についての要綱の作成が進んでおりまして、市町村合併の機運は、徐々にでありますが、全国的に盛り上がりつつあると認識をいたしております。

 今後、昨年十二月に閣議決定した行政改革大綱にのっとり、市町村合併特例法の期限である平成十七年三月までに十分な成果が上げられるよう、国、都道府県、市町村が一体となって、自主的な市町村の合併をより一層強力に推進してまいります。

 次に、地方交付税制度についてお尋ねがありました。

 地方分権の進展に応じ、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体の財政基盤を充実強化していくことが極めて重要であります。そのため、今後とも、地方分権一括法や地方分権推進計画に沿って、国と地方の役割分担を踏まえつつ、国と地方の税源配分のあり方、地方交付税のあり方等、地方財政の諸課題について幅広くしっかりとした検討を行ってまいります。

 教育基本法についてのお尋ねでありますが、教育全般についてさまざまな問題が生じております今日、人間としてのルールを身につけた、創造性豊かな立派な人間を育てるためには、制定以来半世紀を経た教育基本法の抜本的見直しなど、教育の根本にさかのぼった改革を進めていく必要があると考えております。

 先般の教育改革国民会議の最終報告においては、新しい時代の教育基本法を考える際の観点として、一、新しい時代を生きる日本人の育成、二番目に、伝統、文化など次代に継承すべきものの尊重、三、教育振興基本計画の策定等を規定すること、この三点が示されているところであります。

 私といたしましては、教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと考えております。

 教育の地方分権についての御指摘もございました。

 教育改革の実現のために教育の地方分権が重要であることは、神崎議員御指摘のとおりであります。このため、これまでも、地方分権一括法にのっとり、地域に根差した教育行政を展開するとともに、学校評議員制度の活用等による開かれた学校づくりを推進してきたところでもあります。

 また、研究開発学校制度の活用を初め、各学校や地域の創意工夫を生かした特色ある学校教育の推進を図ってきております。なお、教育改革国民会議で提言されたコミュニティースクール等の新しいタイプの学校については、現行制度との関係も考慮しつつ、その課題や可能性などについて検討を進めることといたしております。

 今後とも、教育における地方分権を積極的に推進してまいります。

 基礎年金の国庫負担割合の引き上げについてのお尋ねでありました。

 基礎年金につきましては、「当面平成十六年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担の割合の二分の一への引上げを図るものとする。」との規定が年金改正法の附則に設けられているところであり、この問題につきましては、安定した財源確保のための具体的方策と一体として検討する必要があると考えております。

 医療保険制度改革についてのお尋ねでありますが、急速な高齢化の進展などに伴い老人医療費が増大する中で、医療保険財政は極めて厳しい状況となっておりまして、平成十四年度には、高齢者医療制度を初めとする医療制度の改革をぜひとも実現しなければならないと考えております。

 先般、政府・与党社会保障改革協議会を発足させ、政府・与党連携のもとで社会保障改革について検討を進めることといたしておりますが、医療制度につきましても、こうした検討などを踏まえつつ、具体的な見直しを進め、国民が安心できる持続可能な安定的な制度へと改革をしてまいりたいと考えております。

 永住外国人地方参政権付与法案についてのお尋ねがありました。

 本法案につきましては、公明党・保守党案と民主党案の二法案などが国会に提出されていると承知をいたしておりますが、この問題は我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題でもあり、賛成論から反対論までさまざまな意見があり、真剣な論議が行われておりますことから、各党各会派における国会等での御議論を進めていただきたいと考えております。

 選択的夫婦別姓制度についてお尋ねがありました。

 この制度の導入については、婚姻制度や家族のあり方とも関連する重要な問題として、国民や関係各方面の意見が分かれている状況にありますので、国民各層の御意見を幅広く聞き、また、各方面における議論の推移を踏まえながら、適切に対処していく必要があると考えております。

 包括的な障害者権利法を制定すべきとのお尋ねがありました。

 我が国においては、平成五年に障害者基本法を制定しており、障害のある方々が障害のない方とともに地域でともに生活するというノーマライゼーションの理念のもと、障害者施策を総合的に推進しているところであります。

 なお、米国のように、一般の企業、事業者に障害者の雇用やさまざまなサービス提供における差別禁止を義務づける仕組みを我が国に導入することについては、検討すべき課題が多いものと考えておりますが、障害者の権利を尊重し、障害者の社会経済活動への参加機会を確保するため、障害者に関するさまざまな制度の見直しは絶えず進めていく必要があると考えております。

 農政の転換についてのお尋ねでありますが、農業の生産基盤の整備につきましては、農業の担い手の規模拡大による生産性の向上や、水田における麦、大豆生産の定着による食料自給率の向上に資するよう、重点的、効率的に事業を推進するとともに、米を初め主要品目の価格政策につきましても、その見直しを行い、農業者に対する経営安定対策を導入するなど、食料・農業・農村基本法の制定を契機に、従来の農政の転換を図っているところであります。

 今後とも、意欲ある農業者が効率的で安定した農業経営を確立できますよう、引き続き、必要な施策の見直し、改善に努めてまいります。

 今回の有明海のノリの不作に関するお尋ねがありました。

 有明海のノリ養殖に関し、公明党では早々に有明海ノリ等凶作調査対策本部を立ち上げられ、一月二十六日には与党三党幹事長等が現地の視察に出向かれたということでありました。

 政府としても、まず、原因究明のため、早急に関係県と共同で緊急調査を行い、その結果を三月末をめどに暫定的に取りまとめ、速やかに公表したいと考えております。また、十三年度からは、本格的な調査として、有明海の海域環境、ノリの不作原因の究明、これを目的とした二つの総合的な調査を関係省及び各県が連携して実施することとしており、この中間取りまとめを遅くとも九月末をめどに可能な限り早く公表したいと考えております。これら調査の結果を踏まえて、有明海の漁場環境の改善に努めてまいります。

 被害者に対する支援策につきましては、被害を受けたノリ養殖業者に対して、その経営の安定を図るため、ノリ養殖共済金の早期支払い、被害状況に応じた貸付金の償還猶予等を関係機関に指導しているところであります。また、これに加えて、今回のノリの不作が過去に例のない甚大なものであることから、農林漁業金融公庫の漁業災害向け資金について、地元自治体との協力による貸付利率の無利子化、貸付限度額の引き上げ等の措置を講ずることにより、支援に万全を期してまいりたいと考えております。

 総合的な有明海の水産再生対策につきましては、原因究明調査や経営対策と並行して、海の生産力を高め、安定した漁業ができるよう、水産生物にとって良好な漁場環境づくりを進めることといたしております。このような取り組みを通じ、漁業者の皆さんが将来に展望が持てるように、海域環境の改善など、豊かな有明海をよみがえらせるための総合的な対策を検討してまいります。

 日本航空の事故についてのお尋ねでありました。

 まずもって、衝突回避をした航空機内で負傷された方に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。

 この事故は、一つ間違えれば大惨事となるところであり、重大な事故であると認識しており、事故原因の速やかな究明のため、国土交通省航空事故調査委員会は、事故発生後直ちに調査官を現地へ派遣し、関係者から口述聴取を行う等、調査に着手をいたしております。あわせて、関係都県警察において所要の捜査が行われているものと承知をいたしております。

 また、これと並行して、再発防止のため、国土交通省において、管制業務の実施状況を緊急に総点検し報告するよう、二月三日に全国の管制機関に指示したほか、管制空域、航空路再編等必要な安全対策を検討し、六月をめどに結論を得、速やかに実施に移してまいることといたしております。

 いずれにせよ、本件事故の重大性にかんがみ、全力で原因究明と安全対策に取り組んでまいる所存であります。

 新時代における日米外交の基本方針についてお尋ねでありますが、政府としては、日米両国のみならず、二十一世紀の国際社会における世界の平和と繁栄に向けて、日米関係の緊密な対話を深めることにより日米関係を強化するとともに、国際社会が直面する問題への共同の取り組みを強化していくため、同盟国たる米国のブッシュ政権との間に早期に確固たる信頼関係を構築してまいります。

 先般行われました日米外相会談におきましても、河野外務大臣から、安全保障問題を初めとする国際問題についての我が国の認識を説明するとともに、日米間で戦略対話を強化し、安保共同宣言やSACO最終報告を踏まえ日米間で緊密に協議していくこと、また、摩擦ではなくて協調の精神に基づく日米経済関係を探求していくことを確認したところであります。

 ブッシュ大統領との首脳会談につきましては、双方の都合のよいなるべく早い機会に行うことで意見が一致いたしておりまして、日程の調整を行っているところでありますが、以上のような基本的な考えに基づいて、幅広い協議を行ってまいりたいと考えております。

 平和条約交渉についてのお尋ねでありますが、交渉が困難なことは申し上げるまでもありませんが、プーチン大統領との信頼関係に立ちつつ、北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、交渉に取り組んでいく考えであります。

 人間の安全保障についてのお尋ねでありますが、施政方針演説でも述べましたように、我が国外交政策の基本理念と考えております。具体的には、紛争、難民の防止、開発の促進、環境の保護など、グローバルな課題に対応していくに当たり人間一人一人を大切にするという視点を重視していくということであります。

 この観点から、例えば、緒方前国連難民高等弁務官が共同議長を務められる人間の安全保障委員会の活動を支援していく考えであります。また、国連に設置されました人間の安全保障基金等を通じ、国際社会の取り組みを支援してまいりたいと考えております。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣坂口力君登壇〕

国務大臣(坂口力君) 神崎代表からは、まず最初に、KSDへの管理監督についての御質問がございました。

 KSDに対しましては、KSDから豊明会への補助金の使途についての明確化、豊明会における補助金と他の経費との区分経理の実施、KSDにおける評議員会の設置などについて指導を行ってきたところでございます。しかし、これらの指導が十分徹底しなかったことを深く反省し、旧労働省内の、そして、新しくは厚生労働省の公益法人に対する指導監督体制を強化したところでございます。

 私の就任する以前の問題ではありますが、もし仮に旧労働省に問題があったとすれば、すべての責任はこの私にあります。過去の責任を明確にし、これからの責任を自覚して、公益法人KSDが新規に設立するぐらいの出直しを行うよう指導監督していく決意でございます。(拍手)

 二番目には、基礎年金についてでございますが、基礎年金につきましては、昨年三月に成立をいたしました年金改正法において、その附則において、国庫負担率を二分の一に引き上げることが明記されているわけでございます。少子高齢化が急速に進行する中で、年金制度の安定的な運営を図っていくためにも、この問題の早急な解決が必要であると考えております。

 この国庫負担割合の引き上げにつきましては、厳しい財政状況の中で、安定的な財源確保のための具体的な方法と一体として速やかに検討する必要がありますし、また、社会保障制度や財政制度の全体像にもかかわる問題でありますので、国民的な合意を得ることにも努めたいと考えております。

 さらに、年金安定のプラス面も考慮に入れることが大切であると思っているところでございます。この国庫負担の二分の一への引き上げを目指すとともに、年金というのは統計的に将来を見通せるものでありますから、何度も内容を変更しなくてもよいようにしなければならないとも考えているところでございます。

 次に、医療保険制度についてでございますが、医療費が増大いたします一方、医療保険財政は極めて厳しい状況となっておりまして、医療保険改革は待ったなしの状況にあると考えております。

 こうした状況にありますことから、平成十四年度に向けて、高齢者医療制度を初めとする医療制度改革の姿を明らかにしまして、来年の通常国会には所要の法案を提出したいと考えているところでございます。このため、先般設立されました政府・与党社会保障改革協議会の場において、社会保障改革の理念や基本的な考え方等について御議論をお願いいたしますとともに、厚生労働省内に設置いたしました高齢者医療制度等改革推進本部において精力的に検討を進めてまいりたいと思いますし、関係機関の御意見も十分伺いたいと考えております。

 障害者基本法の制定についてのお尋ねがございました。

 アメリカのADA制定の動きを踏まえ、平成五年の十二月に障害者基本法を制定しており、厚生労働省におきましても、障害のある方々が障害のない方とともに地域でともに生活できるノーマライゼーションの理念のもと、雇用、保健福祉の各分野における障害者施策を推進しているところでございます。

 アメリカのADAのように、事業主等に障害者雇用に関する差別禁止を義務づける仕組みを我が国に導入することにつきましては、今後検討すべき課題がまだ多いというふうに思いますが、障害者の権利を尊重し、障害者の社会経済活動への参加機会を確保するため、障害者に関するさまざまな制度の見直しは真剣に進めていく必要があると考えております。

 年齢につきましての雇用差別の禁止に関するお尋ねがございました。

 厳しい雇用環境に置かれている中高年齢者の再雇用を促進しますために、求人年齢制限の緩和を促進することが必要です。このため、労働者の募集、採用について、事業主は雇用慣行との調和に留意しつつ、年齢にかかわりなく均等な機会を与えられるよう努めることとする旨を盛り込みました法案を今国会に提出することといたしております。

 最後に、新卒者の就職の確保についてお尋ねがありました。

 新卒者の厳しい就職状況を踏まえまして、私も先日来、主要経済団体の首脳に対しまして、求人枠拡大の要請を行っているところでございます。また、ハローワークにおきましても、学校等と連携をいたしまして、求人開拓あるいは就職の面接会の開催でありますとか就職準備のための講習の実施など、就職促進のための対策を講じているところでございます。

 特に女子学生につきましては、採用選考等におきまして男子学生に比べて不利に取り扱われる事例も見られますことから、企業に対しまして、均等法の内容に沿った取り扱いが行われますよう指導を徹底しているところでございます。

 厳しい状況ではございますけれども、昨年よりは若干明るいところもございまして、一層努力をしていく決意でおります。

 以上、お答えを申し上げたところでございます。(拍手)

    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕

国務大臣(橋本龍太郎君) 神崎議員から三点の御指摘をいただきました。

 まず第一点、公益法人の総点検、また、あり方の見直しなどについてどうするんだというお尋ねであります。

 御指摘のとおり、今大変大切な問題になっておりますだけに、去る一月三十日の閣僚懇談会におきまして、私の方から、四項目の観点にわたって各所管閣僚の皆さんに、それぞれの所管のものを今年度内を目標に総点検を実施していただきたいとお願い申し上げました。

 国所管のすべての公益法人、約七千あるわけでありますが、例えば、公益法人が本来民間で行えるような事業を行って、その結果、民業を圧迫するのみならず、民間企業がやるより料金が高くてユーザーの利益を害しているものはないか、あるいは、活動が許可された目的どおり本当に公益を増進しているのか、実際の活動が目的を達成するものとなっているか、これを担保するように法人の活動に関する十分な情報の開示、主務官庁による厳格な監督が行われているか、あるいは、役員への報酬や退職金が高額なものが野放しになっていないか、もしそんな高額な支払いが可能だとするならむしろ法人事業の利用料を下げるべきじゃないか、あるいは、公益法人からの委託先や発注先が公正に選定されていない、委託先や発注先が長期間固定したり、公益法人とつながりのある企業が選ばれているケースがあるのではないか、このような四点を申し上げ、場合によっては立入検査の充実などの方策につきましても、総務大臣のもとで御検討をいただくという体制に今あります。

 また、特に国の行政事務事業にかかわりのある公益法人につきましては、行政改革大綱に沿いまして、官民の役割の分担、規制改革、財政負担の縮減合理化の観点から、内閣官房に設置をいたしました行政改革推進事務局におきまして、厳しい見直しを行うことにいたしております。できるだけ見直しのスピードを速めて早期に改革の方向を明らかにするとともに、一段と厳正な指導監督に努めてまいりたいと考えております。

 また、特殊法人につきましてもお尋ねがございました。

 今、すべての特殊法人などの事務事業につきまして、従来からの反省も込めて、子会社などをも視野に入れゼロベースから見直す、あわせて、特殊法人などの組織形態についても抜本的に見直すことにしております。そして、十三年度中に各特殊法人の事業、組織形態について講ずべき措置を策定する特殊法人等整理合理化計画をつくれという行革大綱の方針でありますから、これに負けないようなスピードで何とか作業を進めていきたいと努力をしているところです。

 その上で、議員から御指摘のありました特殊法人等改革基本法案、これは、昨年、臨時国会に議員提案をされ、現在、継続審議の取り扱いになっておるものと承知をいたしております。私どもの立場から申し上げますならば、特殊法人等改革を確実に進めていきますためにも、今国会におけるこの法案の早期成立が本当に待たれるものである、院の御審議に係るものではありますが、そのように申し上げさせていただきたいと存じます。

 最後に、公務員制度改革についても御指摘がありました。

 公務員制度、当然ながら、公務員の行動原則に直接影響を与えるものでありますし、その改革は行政制度改革の中核に位置するものです。今、国内にはさまざまな角度から公務員に対しての御批判がございます。その国民の厳しい批判にこたえて正すべきものは正しますが、同時に、若い公務員がその誇りを失うことなく伸び伸びと仕事に取り組んでいけるように、時代の要請に積極的に対応して働いていけるような公務員制度をつくりたい。そのためにも、行政改革大綱の完全実施は当然のことでありますが、国家公務員法、地方公務員法等の見直しを含めて、白地からの制度の再設計を行いたいと考えております。

 現在、三月末までにその大枠をお示しいたしたい。当然のことながら、非常に粗い作業になりますので、細かく見ていけばバッティングをするところもあるでありましょう。こうした点については、六月中に基本設計まで成案を得て漸次この作業に入っていく、そのような方向で今努力をいたしておりまして、この制度の設計に当たりましては、あす以降の行政を担う若い諸君、また、既に信賞必罰を実施しておられる民間の方々からもよくお話を聞き、これを生かしてまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 神崎代表御指摘になりましたように、今回の事件によりまして、国民の皆様の貴重な税金が疑念を持たれるような不適切な使い方によりまして信頼を裏切ったということに、心からおわびを申し上げなければならないと思います。

 外務省としては、今般の横領疑惑につき全力で調査を行い、その結果、横領の疑いが明白となりましたので、警視庁に対して告発をしたところであります。

 もとより、強制的な捜査権を持たない調査には限界があり、これまでの外務省の調査をもってすべてが明らかになったとは考えておりません。現在、本件は警察の手にゆだねられており、さらなる事実関係解明のため、外務省としても、捜査当局に全面的に協力をしていかなければならないと考えています。また、外務省の調査委員会を存続させまして、外務省として、御指摘の点を含め、必要な内部調査を継続することといたしております。

 外務省以外の第三者が入った調査検討委員会をという御提案をいただきました。

 事件の再発防止を念頭に置きまして、二人の副大臣の参加を得るとともに外部の有識者の参加も得た委員会を今週中に立ち上げ、外務省の経理処理体制、人事運営、組織体制、監査体制などについての検討を行い、抜本的な改善策を講じていきたいと考えておるところでございます。(拍手)

     ――――◇―――――

小此木八郎君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明六日午後二時から本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会されることを望みます。

副議長(渡部恒三君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

副議長(渡部恒三君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十三分散会




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