衆議院

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第3号 平成13年2月6日(火曜日)

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平成十三年二月六日(火曜日)

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 議事日程 第三号

  平成十三年二月六日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)




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    午後二時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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議長(綿貫民輔君) 御報告することがあります。

 永年在職議員として表彰された元議員小坂善太郎君は、昨年十一月二十六日逝去されました。まことに哀悼痛惜の至りにたえません。

 小坂善太郎君に対する弔詞は、議長において昨年十二月二十日既に贈呈いたしております。これを朗読いたします。

    〔総員起立〕

 衆議院は 多年憲政のために尽力し 特に院議をもってその功労を表彰され さきに予算委員長の要職につき またしばしば国務大臣の重任にあたられた正三位勲一等小坂善太郎君の長逝を哀悼し つつしんで弔詞をささげます

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(綿貫民輔君) これより国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。山岡賢次君。

    〔山岡賢次君登壇〕

山岡賢次君 自由党の山岡賢次でございます。

 私は、自由党を代表して、森総理大臣の施政方針演説を初めとする四演説に対しまして質問をいたします。

 新しい二十一世紀の日本を、自由で創造性あふれる国家社会にしていかなければなりません。政治家や役人に取り入ったKSDのような団体だけが得をするのではなくて、一生懸命頑張った人が頑張った分だけ報われる社会を構築していかなければならないのであります。同時に、病気やけがで一時休まなければならなくなった人が安心して休める社会、失敗してもやり直しのできる社会を築いていかなければなりません。このことが二十一世紀の日本の新しい発展の基盤を構築していくことにつながるのであります。これがすなわち国民が主役の社会であります。(拍手)

 戦後、日本は、外交問題においても内政問題においても、政治家が実質的な判断をすることはありませんでした。

 外交問題については、米ソ冷戦構造の中にあって、日米安全保障条約を結び、アメリカに依存して、みずから主体的な判断をすることがなかったのであります。

 内政問題、特に経済運営では、国が民間から税金や郵便貯金という形でお金を吸い上げ、それを公共投資や財政投融資に使っていく、その使い道は国民の意思とは関係なく、すべて役所が決めるというやり方であります。また、あらかじめ育成するべき産業を決めて、規制社会、管理社会の中で、護送船団行政によって保護をしていくというやり方であります。その間、政治家は、経済成長で得られるパイを、利権をどのように分配するかに一生懸命になってきたのであります。

 こういった戦後五十年以上とり続けてきた経済社会システムが新しい時代に適応できなくなってきているのが日本の停滞の本質的な原因であります。今こそ日本を一新しなければなりません。私は、この視野に立って、森内閣総理大臣に、自由党の見解を踏まえつつお尋ねをしてまいります。

 まず、KSDの政界工作事件についてであります。

 KSDのような、政治家と金にまつわる不祥事が繰り返されるという問題は、自民党を中心とする政権与党やその政治家が、表向きは、国の繁栄と国民の幸福のための政治をうたいながら、実際には、政治の利権の獲得とそれを得るための政治権力の維持を図ることが政治そのものと考えているところにあります。しかも、それは、中央のみならず、地方政治にまで及び、我が国全域に広がって、国民の政治不信を生んでいるのであります。

 額賀福志郎経済財政担当大臣が辞任をされました。千五百万円ものやみ献金を受けながら、半年間にわたって知らなかったなどということはあり得ないことです。このような人物を大臣に任命した森総理大臣の責任は重大であります。森総理は、返却したから問題ないと言っておられましたが、返したのだから罪にはならないというような論理であり、国民の間では到底通用しないものであります。(拍手)

 額賀氏が献金を受けたのは、官房副長官時代にKSDが進めていたものつくり大学について施政方針演説で触れた時期と相前後しており、KSDの悪質な工作により政権の中枢である官邸までがゆがめられていたとするならば、大問題であります。もちろん、大臣をやめて問題が片づいたわけではありません。その資金は派閥に入ったという報道もあり、真相の解明はすべてこれからであります。

 額賀氏の問題はもちろんでありますが、小山孝雄前参議院議員が逮捕され、議員を辞職し、村上正邦参議院議員が自民党参議院議員会長を初めとするすべての役職を辞任せざるを得なくなりました。KSDの政界工作事件は、別な意味でまた根の深い問題であります。

 公益法人であるKSDが中小零細企業経営者の福利厚生を目的に集めた資金のうち、二十億円以上が政界に渡っていたと言われております。パーティー券の購入や、森総理もかかわっていると言われる歌謡ショーのチケットを配布する、選挙資金を配分するなど政治家に対して便宜を図り、恩恵を受けた政治家は、補助金の増額などKSDに有利になるように行政に働きかける。そして、圧力をかけられた官僚も、疑惑の関係者らと宴席をともにして接待を受ける。まさに金と票を提供された与党政治家と官僚が癒着して政治を壟断するようなことを、我々は断じて許すわけにはまいりません。国民の常識からすれば、これはすべてわいろによる政治そのものであるからであります。

 とりわけ、参議院の中に中小企業対策特別委員会をつくり、それを使って圧力をかけて補助金を取り、大学をつくり、見返りにわいろをとったり、架空党員の党費を立てかえさせて自民党に上納し、参議院議員となる、こういったことは自民党とその国会議員による国会を使った組織犯罪であります。従来もたびたび行われてきた、政治家個人が請託を受けて職務権限を行使して収賄事件を起こしたこととは根本的に異なる、政治史上例を見ない、立法府を使った組織的行為であり、断じて許しがたいものであります。(拍手)

 二十一世紀の国会が始まるに当たり、国会そのものが再びこのような犯罪に使われないことを担保された体制を確立することが先決であります。

 そのためには、衆議院予算委員会の審議に先立って、まずこれらの不正を解明することから始めなければなりません。額賀福志郎前経済財政担当大臣、村上正邦参議院議員、小山孝雄前参議院議員を初めとする関係者の証人喚問を行い、真相を解明し、国民の納得を得てから国会審議に入らなければならないと思います。

 一方において、日ごろクリーンをうたっている公明党を含めた与党は、証人喚問にかわって政治倫理審査会をもって真相を糊塗することを画策しているようでありますが、言うまでもなく、政治倫理審査会は、そこで審査された内容は国民に公表されず、また、うそをついても罰則規定もない、今までの例では事実上疑惑隠ぺいのために使われてきた機関であります。

 平成四年十二月に改正された衆議院政治倫理審査会規程第二条の二は、当時、ロッキード事件に関与し灰色高官と言われた国会議員の灰色を消すことを目的として、わざわざ後からつけ加えられた条項であります。

 したがって、自由党といたしましては、政治倫理審査会開催による事実上の疑惑隠しを断固拒否し、予算委員会に先立って関係者の証人喚問を行うことをここに改めて強く要求するものであります。(拍手)森総理御自身のKSDに関与した責任を含めて、証人喚問についての御回答をお伺いいたします。

 次に、政府の機密費を外務省の元要人外国訪問支援室長が横領していた事件についてであります。

 機密費を個人の口座に入金し、クレジットカードで決済し、その中の経費、すなわち税金が競走馬やマンションに化けていたなどというのは、常軌を逸した問題であります。しかも、億単位の金をノーチェックで管理するなどということは、常識ではあり得ないことであります。組織としての外務省の責任は極めて重大であります。

 しかるに、一月二十五日に行われた外務省の調査報告は、松尾元室長個人の犯罪であるという責任回避に終始し、真相を解明するにはほど遠い内容であります。このような報告を行ったこと自体、この問題が外交そのものに対する国民の信頼をいかに大きく失墜させたのかを外務省自身が自覚していないことの証左であります。

 調査は九つある口座の中のわずか二口座のみであり、真相はなおやみの中であります。また、在米の領事が松尾元室長から住宅購入のため借り入れを受けていた事実が明るみに出たり、上司や部下に高級料理をごちそうしたり、ゴルフコンペを自分持ちで開いていたとの報道もなされており、外務省が組織的に関与していたとしか考えようがありません。外務大臣は、使われた機密費の明細を速やかに調査して、国民の代表である国会に報告すべきであります。

 公金が勝手に流用され、また、そのことに気づかないような予算であるなら、来年度予算から削減すべきであります。そもそも、総理外遊の経費のどこが機密に当たるのでしょうか。政府は、機密費とは何なのか国民に説明して、公開して処理できるものは対象から外すべきであります。また、内閣官房と外務省との間に経費のやりとりがあること自体、財政法に違反する行為であります。この際、機密費の内容や管理体制を含めて、機密費のあり方そのものを抜本的に見直すべきであります。

 河野外務大臣にお伺いをいたします。このようなでたらめな外務省の報告を容認したあなたの責任は極めて重大であります。あなたはこの責任をとって外務大臣を辞任すべきであると考えますが、いかがでありましょうか。さらに、河野外務大臣は、競走馬の業界では強い影響力を持った政治家として知られております。松尾元室長の競走馬購入について、あなた自身あるいは後援者がかかわったことがあるかどうか、念のためお尋ねを申し上げます。

 次に、経済、財政、行政改革についてお伺いをいたします。

 景気は一向に回復する気配を見せておりません。日銀を初めとして最近発表された各種の経済統計では、景況感の改善に足踏み状態が見られ、先行きへの警戒感が強まっております。特に、中小零細企業の倒産や失業により、多くの国民が塗炭の苦しみを味わっているのであります。

 しかしながら、十三年度予算はとても国民の期待にこたえ得るものではありません。政府は、来年度予算案を、景気、経済構造改革、財政健全化の三点に配慮したものと説明していますが、実際はそのいずれの方向にも前進をしておらず、無原則予算であると言わざるを得ません。

 まず、景気への配慮の点についてであります。

 宮澤財務大臣は、予算編成後の記者会見で、補正予算は考えていないと発表されましたが、そうであるならば、十三年度の予算案は、十二年度補正後予算と比較して一般歳出が大きく落ち込んでおります。

 内容も、例えば北陸新幹線、関西新空港等の建設に見られるように、相変わらず効率が悪く、緊急性もなく、採算性にも疑問が持たれ、しかも、一部の業界やそれにかかわる政治家のための安易な公共事業の積み増しに終始しているのであります。国や国民全体のための景気対策にはほとんど寄与していないと言えます。

 また、パソコン減税の廃止は、ITを内閣の看板政策に掲げているにもかかわらず、支離滅裂であります。今年三月までの駆け込み需要の後は反動減となり、IT投資の落ち込みが景気回復の足を引っ張ることが明らかであります。

 その上、景気回復のために何よりも大切な個人消費の刺激策がなく、逆に、介護保険料の徴収は、平成十二年の健保法改正により、四十歳から六十四歳の国民は健康保険料とは別建てで徴収されることになるほか、六十五歳以上の保険料はことしの十月から倍増し、国民の所得をますます圧迫することになります。これでは景気は回復せず、借金がふえ続けるだけであります。

 森総理、このような予算を組んでおいて、一体どのように景気に配慮した予算であると言われるのでしょうか、お答えいただきたいのであります。(拍手)

 次に、経済構造改革への配慮についてであります。

 政府は来年度予算案を経済構造改革にも配慮したものと言っておりますが、政府の言う経済構造改革とはどういうものを指すのか、予算案を見る限りさっぱり見えてまいりません。改革に向けたすべての課題が先送りされ、従来どおり、場当たり的に数字を積み上げただけのものになっているのであります。

 次に、財政健全化への配慮についてであります。

 財政健全化を示す指標の一つにプライマリーバランスがありますが、政府の十三年度予算案は、十二年度当初と比較して悪化しております。より赤字体質が進むということであり、財政健全化に配慮していると言いながら、実はこれに逆行したものになっているのであります。政府は財政健全化の道筋をどのように描き、来年度予算がどのような位置づけをもって編成されたものなのか、全く理解することができません。

 また、歳出削減についても不十分であります。ことしからの省庁再編によって、重複しているむだな事業が省かれることが期待されておりましたが、結局のところ、各省庁の縦割り予算に終始し、歳出削減効果はゼロに等しく、政策評価による公共事業の見直しを行うこともなく、経済構造改革への森内閣の意気込みは全く感じられません。

 規制撤廃や地方分権に手をつけないままの省庁再編は単なる看板のかけかえであり、新しい時代に合わせて行政機能を充実させる効果などは到底期待できません。むしろ、巨大官庁の誕生により、行政の停滞や旧省庁間の利害、利権をめぐる対立、官庁の巨大化による情報開示のおくれなどを懸念せざるを得ません。

 日本経済が民需主導の持続的経済成長に復帰するためには、民間の創意工夫と活力が十分発揮される市場経済の構築が不可欠であり、これこそが真の経済構造改革であります。そのために、官から民へ、中央から地方への理念のもと、規制を撤廃して、縮小した権限を地方へ移譲して、簡素で効率的な政府をつくることが重要です。

 これこそが行政改革の本質であります。中央政府の仕事は、外交、安全保障、司法、治安維持、マクロ経済政策、基礎的社会保障、義務教育などに限定し、地方のことは自治体が独自の判断で行えるようにすべきであります。(拍手)

 あわせて、公共事業関係の補助金を廃止して、その相当額を地方自治体に一括交付することにより、申請から交付にかかるむだな事務手続と陳情政治をなくし、地方の主体的、合理的な地域づくりができるような仕組みに改めるべきであります。

 一方で、自治体も、権限移譲の受け皿となるために、広域化、合併化を図って、全国を三百程度の市に再編しなければなりません。また、特殊法人は原則全廃するべきであります。これらの改革により、中央、地方とも多くのむだを省いて、少なくとも歳出総額の一割を削減するべきであります。

 あわせて、官が民からお金を吸い上げて使い道を決める、戦後続いてきたシステムを改めることが必要であります。税制のあり方を抜本的に改革し、租税特別措置の原則廃止とそれを財源とする法人税率のさらなる引き下げ、所得課税については控除を手当に改め、税率構造の簡素化と税率の引き下げを行うべきであります。

 これらの改革が実現することで、財政健全化の基盤もおのずとでき上がるのであります。これについて、森総理の御見解をお伺いいたします。

 次に、社会保障についてお伺いいたします。

 政府は、現行の社会保険制度の維持のみに主眼を置いております。社会保険制度は、現役世代の保険料で高齢者の給付を賄う方式であり、世界に例を見ない速さで少子高齢化が進展する我が国においては、早晩破綻することは目に見えて明らかであります。

 実際、国民年金の三割の方が保険料を納めておりません。保険制度を維持しようとすれば、見直しのたびに給付水準を引き下げ、負担を引き上げる手法しかとれないのは当然であり、まさに社会保険あって社会保障なしであります。

 現在、社会を支えている世代の方々は、保険料の負担が増加する一方、それに見合った給付が将来受けられないのではないか、現在給付を受けている方は、その水準を引き下げられるのではないか、このような年金制度を初めとする社会保障制度への不信が、人生の将来設計を直撃し、先行き不安、消費低迷、景気減退の大きな要因となっているのであります。(拍手)

 大切なことは、社会保障のビジョンを明確に示し、社会を担う現役世代の人々の保険料負担累増の懸念を払拭し、他方、お年寄りの給付水準引き下げへの心配を取り除くことにより、国民全体が安心と安定を確保して人生設計を描きやすくすることであります。

 現在の消費税五%は、社会安定の基盤である基礎年金、高齢者医療、介護に限定して使用し、国の責任においてこれを保障することを明確にすることが必要であります。森総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、政治改革についてお伺いをいたします。

 新たに副大臣や政務官が創設され、形式的には体制が整えられたにもかかわらず、政治主導の具体的なあり方は一向に見えてまいりません。副大臣会議に加え、政務官会議も新設されましたが、従来から事実上の政策決定機関としての権限を握っていた事務次官会議も依然存続し、他の会議との連携をどのようにするのか、全く整理されていないのであります。

 これまでの官僚主導の政治体制を改め、政治主導のもとに政策を決定し、改革を推進する体制を整備することこそが、今回の省庁再編の目的であるべきであります。政治家がみずからの見識と責任で行政を主導し、国民本位の政策決定を行っていくことが求められているのであります。そして、その政策について、大臣、副大臣、政務官が国会の場で、従来の官僚にかわって具体的な論戦をするべきであります。森総理の御所見をお伺いいたします。

 次に、農業問題についてお伺いいたします。

 農家のためと称して、土地改良事業、構造改善事業など膨大な資金や補助金がつぎ込まれておりますが、それによって今日の農家の方々の生活が豊かになり、将来展望が見出せているとは到底思えません。むしろ、自民党や与党政治家の利益誘導政治の温床になっているのではないでしょうか。

 国の予算が、農業経営を育てるためではなくて、KSDのような犯罪行為とは言いませんが、事実上、与党の土木関連の利権を守るために使われているのではないでしょうか。これでは、農業がだめになって援助を余儀なくされるようになった方が利権を求める政治家には都合がよいかのごとくであります。

 政府は、来年度も減反面積を拡大し、過去最大の百一万ヘクタール、約四〇%減反にする方針のようであり、なおかつ、米の買い入れ価格も今年度より大幅に引き下げることのようであります。このようなことは、農家にとっては、もう農業は続けるな、農家は生きていくなと言っているのに等しいことだと思います。

 世界の先進大国は、間もなく訪れる地球規模的食料不足危機に備え、カロリーベースで一〇〇%自給に必死で取り組んでおり、現に、どの国も目標にほぼ近づきつつあります。翻って、我が国だけは、圧倒的に低いわずか四〇%の自給しか確保されておらず、金さえあれば食べ物は幾らでも手に入るといった無責任な農政が続けられているのであります。このまま続けば、後継者の育たない日本の農業は間もなく壊滅し、我々の子供たちや孫たちの時代には飢えに苦しむことになると予想されます。

 この際、食料安全保障政策を明確にし、具体的な方策を確立すべきであります。そのためには、減反政策を直ちに廃止し、食料備蓄政策に転換すべきであります。農家はつくりたいだけ米をつくり、良質米では自由に利益を得る、備蓄食料については、農家が立ち行く価格で国が買い上げ、長期的備蓄設備を整えて将来に備えていくべきであります。

 与党の利権と化している農業予算を、真に農業や農家に役に立つ、また、国民の食料確保の役に立つものに変えていかなければならないと考えます。このことに対する森総理大臣のお考えをお伺いいたします。

 次に、教育問題についてお伺いをいたします。

 新しい二十一世紀がすばらしい世紀となるよう願わざるを得ませんが、我が国では、ことしになっても、一家四人を殺害したり、点滴に筋弛緩剤を投入したり、幼児を熱湯につけて大やけどを負わせたり、暗いニュースが相次いでおります。これはまさに、戦後我が国の政治がおろそかにし続けたもの、つまり、教育や地域共同体の崩壊がその原因であり、今や社会経済の根幹を揺るがすまでになっているのであります。

 政治家は、教育、教育、教育と、教育の重要性については唱え続けてまいりましたが、実態は、教育そのものよりも教育利権の追求に熱心であったと言えます。戦後政治の問題点がこの分野にも顕著にあらわれております。

 森総理は教育基本法の改正に前向きであることを承知しておりましたが、結局、中央教育審議会の審議にゆだねられるとのことであります。最高責任者、最高権力者である総理みずからがリーダーシップを発揮して、教育基本法のどこをどう改めるのか、明確に示すべきであります。

 森総理の言われる教育改革とは、結局のところ、従来のように制度を手直しすることに終始しており、何を教えるべきかといった教育の中身に対する視点は一切ないものであります。

 自由党は、今こそ日本と日本人のあり方を問い直すべきであると考えます。

 先日、都内の駅において、みずからの命を顧みずに人命救助に立ち向かわれた韓国人青年や日本人カメラマンの人間としての姿に、日本国内や韓国はもちろん、世界の多くの人々が深い感動を受けたと同時に、みずからのあるべき姿を思い起こさせられたのではないでしょうか。

 我が国の歴史や伝統、文化を踏まえて、心のある、よき日本人を育てることに教育の主眼を置かなければならないと思います。そのためには、毎週一回、土曜日などに、子供と親、教師、地域社会が一体となって、自分の周りの歴史や伝統や文化を学び、スポーツやボランティア活動を通して道徳や社会生活のルールを学び、責任感を培い、親子や地域との触れ合いの中で社会の大切なことを学んでいくことのできるようにするべきであります。

 あるいは、小学校までの間は、農業などを中心とした自然に親しむカリキュラムを主軸として、天地自然の法則を身につける体験学習を行うこと、そして、動植物の生態を学び、自分自身がどのように自然の中で生きるか、また、生かされているのかを集団生活を通して学び、同時に、社会の中での生きる力、生かす力、生かされる力をあわせて養う教育を行うことであります。

 このようなことこそが、まさに二十一世紀に必要とされる真の人間教育であります。森総理大臣の所見をお伺いいたします。

 最後に、外交問題についてお伺いをいたします。

 まず、対米関係についてでありますが、第四十三代アメリカ大統領にジョージ・ブッシュ氏が就任し、八年ぶりに共和党政権が誕生いたしました。新政権では、外交、安保、経済の主要ポストに、かつてレーガン、ブッシュ政権で対日政策を担当した知日派が占めており、日本に同盟国としての政策協調を求める動きが強まることが考えられます。既に、パウエル新国務長官は、日米同盟は米国とアジア太平洋をつなぐ土台と発言し、リチャード・アーミテージ国務副長官も、米国の同盟国として日本にアジアで指導的役割を果たしてほしいと指摘をしております。

 日本に対して、平和維持活動への積極的参加や、ミサイル防衛など軍事・情報技術の開発協力、米軍と自衛隊の作戦面の連携強化などを具体的に求めてくると思われますが、これに対してどのように対処していかれるのか、また、普天間飛行場移設問題など沖縄問題の解決についてどのような姿勢で臨もうとされておられるのか、総理にお伺いをいたします。

 次に、対ロシア関係についてお伺いいたします。

 日本政府は、沖縄サミット以来、ロシアから相手にされておりません。さきの河野外務大臣のモスクワ訪問では、首脳会談の準備が目的であったものを、日程を確定させることもできず、プーチン大統領との会談も多忙を理由に断られ、さらに、一たん外務大臣が記者団に発表した日程が変更される始末であります。

 このままでは、平和条約交渉の名のもとに経済交流のみが議論され、肝心の領土問題は棚上げされたままになるということになりかねませんが、そうまでして首脳会談を行うべきではないと考えます。首脳会談を行うのであればどのような見通しのもとに行うのか、森総理の明快な御答弁をお聞かせいただきたいのであります。(拍手)

 以上、幾つかの点について森総理大臣の御見解をただしてまいりましたが、最後に申し上げます。

 国民の血税や公共の資金を政治の利権に結びつけるという体制、すなわち、このような国家が国民のためにあるのではなくて自民党のためにあるという戦後政治の転換を図らない限り、いつまでたっても、国がよくなることも、地域がよくなることも、景気が回復することも、日本の将来展望もないということを、我々は国民の皆様に強く訴えてまいります。

 自由民主党的な政治手法、自由民主党的な政治体質と決別をすることこそが構造改革の第一歩であるということを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) KSDをめぐる事件に関し、私自身の関与も含め、関係者の証人喚問について御質問がございました。

 今回の事件は、国民の政治への信頼を損なうものであり、私としても、大変遺憾であり、極めて深刻に受けとめております。党の所属議員から逮捕者を出したことについても残念のきわみでありまして、公党として国民の皆様に心からおわびを申し上げる次第です。

 本件については、今後、司法当局の捜査により徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされていくべきものと考えますが、自民党としても、真相究明のため捜査に全面的に協力していく所存であります。

 また、関係者の証人喚問については、議院の運営に関することであり、今後の国会審議の状況を踏まえつつ、国会において御判断をいただくべきことであると考えます。

 なお、私が関与したとの御指摘にあった催しは、私の地元の事務所に確認をいたしましたところ、KSD北陸支局開設の会員総会の際に記念として付随的に行われたもので、参加費用は徴収されておらず、無料の入場整理券が発行されていたにすぎないと承知しております。したがって、歌謡ショーのチケットの配布を受けたとの御指摘は適切なものではないと考えます。

 十三年度予算における景気への配慮についてお尋ねがありました。

 我が国の経済は、緩やかな改善を続けておりますが、依然として厳しい状況にあり、また、米国経済の減速など懸念すべき点も見られます。

 こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せるよう、十三年度予算においては、公共事業等に十分な対応を行うとともに、IT革命の推進など、二十一世紀の新たな発展基盤の構築に必要とされる分野に重点的、効率的に資金を配分することといたしております。

 なお、十三年度予算が十二年度補正後予算と比較して一般歳出が落ち込んでいるとの御指摘でありますが、そもそも、十二年度補正予算のうちの相当部分は十三年度に効果が発現すると見込まれ、十三年度の景気への取り組みを考えるに当たり、十三年度予算と十二年度補正後の予算との単純な比較を用いることは不適当であります。

 特に、公共事業について安易な積み増しに終始しているとの御指摘でありますが、IT革命の推進を初めとする重要四分野に対し総額の四割を上回る三兆九千億程度を充てるなど、時代のニーズを踏まえた重点化を推進しており、そのような御指摘は当たりません。

 パソコン減税の扱いとIT投資との関係についての御質問もいただきました。

 パソコン減税につきましては、十一年度において、当時の深刻な経済情勢を踏まえ、景気対策として講じられた臨時異例の措置でありまして、期限どおり廃止することとしたところであります。

 一方、十三年度改正におきましては、恒久的な措置として、電子計算機の耐用年数について、その実態を踏まえて短縮する等の改正を行うことといたしておりまして、これらの改正は、税制以外の各般の措置と相まってIT革命の推進に資するものと考えております。

 また、個人消費の刺激策がないとの御指摘がありましたが、これにつきましては、さきに述べました十三年度予算における公共事業等への対応と重点的、効率的な資金配分に加え、政府としては、日本経済の新たな成長と発展を実現するため、経済構造改革に果敢に取り組んでいくこととしており、これらの施策は、有効需要の創出、国民の購買力の向上につながるとともに、家計のマインド等にも好ましい影響を与えるものと期待いたしております。

 なお、介護保険料の徴収等と景気との関係についてのお尋ねでありますが、これについては、社会保障制度の維持安定は、むしろ国民生活の安定、ひいては個人消費の安定の基盤となると考えられること、介護保険料は介護サービスに充てられ、政府消費として需要を押し上げる要因となることから、御指摘は当たらないと考えております。

 いずれにせよ、景気回復を確実なものとし、我が国経済を新たなる発展へと飛躍させるためには、十三年度予算の早期成立が必要不可欠でありまして、ぜひとも年度内成立をお願いいたします。

 財政健全化の基盤づくりについてのお尋ねでありますが、まず、十三年度予算が財政再建に逆行しているのではないかとの御指摘がありました。

 十三年度予算においては、公共事業の抜本的見直しや中央省庁再編による施策の融合化と効率化を図る等、財政の効率化と質的改善を図りつつ、国債の新規発行額を減少させたところでありまして、我が国経済を新たなる発展へと飛躍させる取り組みとともに、主要先進国の中でとりわけ厳しい状況にある我が国の財政について、将来にわたって持続可能な仕組みをつくり上げる準備を行っております。

 また、財政健全化の道筋については、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、財政構造改革の実現に向けて議論を進めてまいります。その際には、新世紀における我が国の経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、そして、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れる必要があると考えております。

 今般の中央省庁再編におきまして、内閣府に経済財政諮問会議を設置いたしました。景気を着実な自律的回復軌道に乗せるための経済財政運営とともに、財政を含む我が国の経済社会全体の構造改革に向けた諸課題について、具体的な政策を主導するとの決意を持って、実質的かつ包括的な検討を行い、国民が安心と希望を持てる処方せんを示していく所存であります。

 そうした中においても、御指摘のようなさまざまな工夫についてもその推進に努めているところであります。

 まず、地方への権限の移譲については、住民に身近な行政は地方公共団体が担っていくことを基本として、さらなる権限移譲を進めるなど、地方分権の一層の推進に強い決意で取り組んでまいります。同時に、市町村合併の推進など、新たな役割を担うにふさわしい行政体制のあり方の問題にも積極的に取り組んでまいります。

 また、すべての公共事業について地方公共団体に財源を一括して交付することについては、慎重な検討が必要であると考えますが、十三年度予算においても、地方公共団体の主体性を尊重する統合補助金の一層の拡充を図るなど、積極的に見直しを行っているところであります。

 次に、特殊法人は原則全廃すべきではないかとの御指摘がありました。

 特殊法人は、特別の法律により設立され、政策金融、公共投資、中小企業対策等、さまざまな政策実施機能を果たしておりますが、一方で、種々の問題点も指摘されているところであります。そのため、昨年十二月に閣議決定されました行政改革大綱にのっとり、特殊法人等の事務事業をゼロベースから見直して、組織形態についても抜本的に見直すこととしておりまして、現在、鋭意その作業を進めているところであります。

 税制の問題につきましては、これまでも全般にわたりその見直しを進めてきたところでありますが、我が国経済社会は、少子高齢化や国際化など構造変化等がさらに進展しております。税制はこれらの変化等に適切に対応していく必要があり、公的サービスの財源であるという税の基本的性格を踏まえながら、望ましい税制の構築に向けた議論が近い将来必要になってくるものと考えております。

 なお、租税特別措置については、不断の見直しが必要であるということは言うまでもありませんが、御指摘の我が国の法人課税の実効税率は近年の税率引き下げにより既に国際水準並みになっていること、個人所得課税については、国民一人一人の負担能力に応じた分担を実現できる基幹的な税であり、各種の人的控除により納税者のさまざまな事情に配慮した適正な税負担を求める基本的な仕組みが必要であること、その税率構造については所得再分配機能を担う必要があることなども留意する必要があると考えております。

 こうした種々な工夫、努力を行いつつ、先ほども申し述べましたように、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、財政構造改革についてその実現に向けて議論を進めてまいります。

 社会保障と消費税の使途についてお尋ねがありました。

 急速に少子高齢化が進行する中で、国民が生涯を安心して暮らせる社会を築いていくことは大きな課題の一つであり、給付と負担のバランスを確保しつつ、持続的、安定的で効率的な社会保障制度を構築していくことが必要になっております。

 社会保障制度の財政方式としては、昨年十月の社会保障構造の在り方について考える有識者会議の御提言も踏まえ、自己責任の原則に立って社会保険方式を基本としつつ、保険料と公費を組み合わせることにより、給付に要する費用を賄っていく必要があると考えております。

 いずれにせよ、消費税の使途を含め、将来の税制、財政のあり方については、今後の少子高齢化の進展など経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえつつ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えております。

 新体制における政治主導の政策決定等についてお尋ねがありました。

 今回の中央省庁等改革においては、行政における政治主導の確立をその柱の一つとしているところであります。このため、発議権の明確化等の内閣機能強化のための措置を実施することにより、内閣及びその首長である内閣総理大臣が、国政運営上、行政各部に対する指導性をより一層発揮できる体制を整備いたしております。

 また、各府省において政治主導の政策判断が迅速に行われるよう、大臣の政治的な政策判断を補佐する機能を強化するために、副大臣及び大臣政務官を新たに設置いたしております。

 政府といたしましては、まさに政治のリーダーシップを発揮しつつ、こうした体制を十分に活用して政治主導の政策決定を実現し、主権者たる国民の意思を的確に行政に反映させてまいりたいと考えております。

 食料安全保障政策及び農業予算に関してお尋ねがありましたが、まず、米の生産調整については、米の需給と価格の安定を図る上で不可欠であり、これと不測の事態に備えた備蓄を適切に実施することにより、国民に対する食料の安定的な供給に遺憾のないように努めてまいる所存であります。

 また、農業予算につきましては、食料・農業・農村基本法の制定を踏まえ、食料自給率の向上に資するよう、担い手の育成等を通じて我が国農業の体質強化を図ってきているところでありまして、今後とも、国民の食料の安定供給に向けてこれらの施策を推進してまいります。

 教育改革についてのお尋ねがございました。

 教育は、心の豊かな美しい国家を築くための礎となるものであり、国政の最重要課題であります。これからの教育を考える上で大事なことは、人間と人間のつき合いができ、自分の頭で考えたり決めたりできる力を養うことであり、教育の目標は、学力だけ、知識だけがすぐれた人間を育てることではなく、人間としてのルールを身につけた、創造性豊かな立派な人間を育てることだと考えられております。(拍手)

 こうした観点から、知識に偏重した教育でなく、体育、徳育、知育のバランスのとれた全人教育を推進することを目指して、道徳教育の充実や基礎、基本の徹底を初めとして、思い切った教育改革を積極的に行ってまいる決意であります。

 また、教育基本法については、先般の教育改革国民会議の最終報告におきまして、新しい時代を生きる日本人の育成、伝統、文化など次代に継承すべきものの尊重、教育振興基本計画の策定等を規定することの三点が、新しい時代の教育基本法を考える際の観点として示されたところであります。

 私としては、教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと考えております。

 親子や地域との触れ合いや体験学習の重要性についてのお話がございました。

 私は、施政方針演説において、心の豊かな美しい国家を築くため、その礎となる教育の新生に全力で取り組んでいくことを申し上げました。私としましては、親子や地域との触れ合いの中で社会の大切なことを学ぶことや子供たちが体験学習を行うことはまことに重要なことと認識をいたしておりまして、この国会において、奉仕活動や体験活動の促進、子どもゆめ基金の創設など、一連の教育改革関連法案を提出してまいります。

 また、政府としましては、地域で子供を育てる環境を整備し、親と子供たちの活動を振興する体制を整備する全国子どもプランを緊急かつ計画的に推進しているところでありまして、今後とも各般の施策を推進してまいります。

 ブッシュ政権との政策協調についてのお尋ねでありますが、私はブッシュ大統領とこれまで二回の電話会談を行いまして、日米同盟関係の重要性を再確認し、同盟関係の強化に向けて協力していくことで意見の一致を見ております。今後は、日米両国のみならず、世界の平和と繁栄に向け日米間の戦略対話を深めることにより、国際社会が直面する問題への対応におけるおのおのの適切な役割のあり方を含め、政策協調を緊密に行っていく考えであります。

 国連を中心とした国際社会の平和と安全を求める努力に対しましては、我が国の国際的地位と責任にふさわしい協力を行うとの観点から、平成四年の国際平和協力法施行以来約十年間にわたり、カンボジア、モザンビーク、ゴラン高原、東ティモール等での国連平和維持活動等、人的な貢献にも力を入れてきております。我が国としても、今後とも、これまでの活動の経験をも踏まえながら、国連平和維持活動等に積極的に参加していく考えであります。

 また、弾道ミサイル防衛に係る日米共同技術研究は、我が国防衛政策上の重要な課題であると同時に、日米安保体制の信頼性の向上等に資するものと考えており、そのような観点から、同研究を着実に進めてまいります。また、その他の装備、技術面における日米協力についても、着実に推進していく考えであります。

 次に、米軍と自衛隊との間の協力関係の推進については、日米防衛協力のための指針の実施を通じ、着実な進展が見られております。具体的には、昨年九月に開催されました両国の外務、防衛閣僚によるいわゆる2プラス2会合において、緊急事態における日米両国の活動につき、その内容を定めておく包括的なメカニズムのもとでの計画についての検討作業の進展や、実際の活動を調整するための調整メカニズムの構築が確認されております。今後とも、指針の実効性を確保するため、米国との間で協議を鋭意進めてまいります。

 沖縄の米軍施設・区域の問題についてお尋ねがございました。

 政府としては、我が国の平和と安全のため沖縄県民の方々が背負われている御負担の軽減につきましては、先月の日米外相会談でも一致したとおり、今後とも、SACO最終報告を踏まえ、日米間で緊密に協議をしながら、その着実な実施に最大限努力してまいります。特に普天間飛行場の移設、返還につきましては、平成十一年末の閣議決定に従い、沖縄県及び地元地方公共団体との間の代替施設協議会等においてできるだけ早く成案を得るべく努力し、早期に移設が実現するよう全力で取り組んでまいる考えでございます。

 日ロ関係についてのお尋ねがありましたが、戦略的、地政学的提携、幅広い経済的協力、平和条約の締結という三つの課題を同時に前進させることが必要であることについては、日ロ双方で共通の認識があります。領土問題の解決が難しい課題であることは事実でありますが、来るべき日ロ首脳会談では、私とプーチン大統領との間の信頼関係に立ちつつ、北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するとの一貫した目標に向けて、できる限りの進展が得られるように全力を傾けてまいる考えでございます。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 今回の事件につきまして、外交を預かる者として、国民の皆様の信頼を裏切ったことにつき、心からまずおわびを申し上げます。

 外務省として、全力で調査を行い、その結果、松尾元室長個人が少なくとも平成九年十月から平成十一年三月までの間に公金を横領し、私的目的のために使用していた疑いが明白となりましたので、警視庁に対しこれを告発したところでございます。

 でたらめな報告書とおっしゃいましたけれども、私はそう思っておりません。もとより、強制的な捜査権を持たない調査には限界があって、これまでの外務省の調査をもってすべてが明らかになったとは考えておりません。現在、本件は警察の手にゆだねられており、全容解明のため捜査当局に積極的に協力をいたしております。また、外務省の調査委員会を存続させまして、必要な内部調査も継続をいたしております。

 外務省報償費につきましては、情報収集及び諸外国との外交交渉あるいは外交関係を有利に展開するために使用されていることから、具体的使途を公表することは行政の円滑な遂行に重大な支障を生じせしめると判断しております。

 他方、本件を未然に防げなかったことは、外務省としてのチェック体制に不備があったことによるものであって、この点につき深く反省をし、外務省の経理処理体制などについては、今後、二重三重の監査体制を設置するなど、組織体制の抜本的な改善策を講じていくつもりであります。

 私といたしましては、今回の事件に対する厳しい反省に立ち、襟を正して真相究明と抜本的な再発防止に取り組むことが私の責任と考えておりまして、これにより、外交に対する国民の信頼を回復すべく、全力を尽くす考え方でございます。

 松尾元室長の競走馬購入と私との関係についてお尋ねがございましたが、私自身が松尾元室長の競走馬購入について関係しているという事実は全くございません。後援者はどうかということも御質問に入っておりますが、後援者の業務のすべてを知る立場に私はございません。(拍手)

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議長(綿貫民輔君) 石井郁子君。

    〔石井郁子君登壇〕

石井郁子君 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係閣僚に質問いたします。

 二十一世紀が始まり、本来、「希望の世紀」として夢膨らむところなのに、生活難と将来不安のもとで新しい世紀を素直に祝えないというのが国民の実感ではないでしょうか。汚職、腐敗の一掃を初めとして、二十一世紀、どのような日本にするのか、今国会の責務はまことに重いと言わなければなりません。

 まず、KSD汚職についてです。

 これまで自民党政治のもとで汚職腐敗事件は数多くありましたが、今回の事件ほど悪質なものはありません。それは、二十億円とも言われる自民党などへの政界工作資金の出どころが、中小業者の皆さんの共済掛金だったからであります。

 今、我が党には、KSD会員からの怒りの声が数々寄せられています。

 正月も休まず働きづめの毎日でした。人工透析に週三回も通うような病気にまでなりました。少しずつ後のためになると払っていたのに、自民党の国会議員のために使われた。本当に腹が立つ。

 総理、中小業者の皆さんに申しわけないと思いませんか。自民党の総裁としての責任を明らかにすべきだと思いますが、いかがですか。

 あなたは施政方針演説で、政治家一人一人が厳しく身を律していくことが重要と人ごとのように述べましたが、今回の汚職事件の最大の特徴は、自民党の個々の議員にとどまらず、巨額の資金が自民党本部に流れ込んでいたということであります。

 逮捕された小山孝雄前参議院議員、村上正邦前自民党参議院議員会長らは、参議院比例代表選挙で名簿の上位に登載してもらうため、KSD会員を勝手に自民党の架空党員に仕立て上げ、その党費は共済掛金で立てかえるという違法、脱法行為をKSD古関前理事長らと進めてきました。我が党の調査では、架空党員の数は三十万人以上、立てかえ党費は十二億円に上っています。架空党員の数はどれだけいたのか、立てかえ党費は幾らになっているのか、みずからの党の問題として調査し、国会に報告することを求めます。

 もう一つは、額賀議員の疑惑についてです。

 一千五百万円も秘書が預かっていたなどという弁明をだれが信じるでしょう。しかも、一千五百万円は、五百万円、一千万円と二度に分けて渡されています。その間のちょうど一年前、小渕首相の施政方針演説に、KSDが推進していたものつくり大学の推進という文言が挿入されました。一千五百万円は、その手付金と成功報酬という疑いが濃厚です。総理、真相を明らかにすべきではありませんか。

 日本共産党は、小山前参議院議員や村上参議院議員、額賀衆議院議員らの証人喚問を強く要求します。自民党総裁として、野党が要求する証人喚問に応ずべきであります。答弁を求めます。

 同時に、この事件でも明瞭になった企業・団体献金の禁止を、パーティー券の購入も含めて、全面的に禁止する法的規制を今こそ行うべきです。自民党はもちろん、各党に呼びかけるものであります。

 次に、機密費疑惑についてです。

 機密費について、政府は、国が国の事務を円滑で効果的に遂行するための経費と説明し、その使途は秘密のベールに包まれてきました。そのお金が、国のためどころか、外務省職員によって、競走馬の購入や遊興費など、巨額な単位で私的に流用されていました。本当にだれも気がつかずにいたというのでしょうか。外務省の組織ぐるみの流用ではなかったのですか。また、外交機密費が官邸に上納され、それが流用されていたという疑惑などが次々と浮かび上がっています。これらの疑惑について、全容を解明する気はあるのかどうか。河野外相並びに総理にお聞きします。

 さらに重大なのは、官房機密費をめぐる疑惑であります。

 村山内閣の官房長官だった野坂浩賢氏は、官房機密費について、最も多い使い道はせんべつだ、せんべつを受け取る人は与野党問わない、だが、共産党は呼んでも取りに来ない、三回ほど与野党の国会対策委員会幹部に渡したことがあった、法案通過だったか難しい政局を乗り切ろうとしてだ、一回当たり計五百万円ぐらいだったと述べています。宇野内閣の官房長官だった塩川正十郎氏も、野党対策に使っていることは事実ですと語っています。

 そこで、福田官房長官にお尋ねします。

 外遊のせんべつを渡す、また、政府提出の法案などを通すために野党対策として野党議員に配るなど、税金をこのように使っていいのですか。あなた自身はこういうことに使ったことがあるのでしょうか。お答えください。

 総理、この白昼堂々の使途不明金である機密費のあり方を含め、抜本的にメスを入れるべきだと思いますが、いかがですか。お答えください。

 次に、有明海異変の問題で伺います。

 諫早湾のみならず、有明海全体に異変が広がり、国内最大の養殖ノリ生産が記録的な大凶作になるなど、有明海の水産業も深刻な打撃を受け、死活の問題、有明の宝の海を返せと怒りの声を上げています。

 一九九七年に、多くの国民の反対の声を押し切り、諫早湾の潮どめ堤防が閉められました。そのとき、現地を調査した我が党の不破現議長が政府に根本的な見直しを申し入れました。当時の橋本首相は、生態系、自然環境などの問題について事実の検証の必要があることを認め、政府としてその努力を約束しました。今回の有明海漁業の異変は、反対の声を無視し、必要な事前の調査を尽くさずに堤防を閉め切ったことがいかに無法な暴挙であったか、と同時に、その後の四年間、約束された事実検証の努力さえ怠ってきた政府の無責任さを明るみに出したものです。

 今、政府に求められていることは、干拓優先の態度を捨て、有明海漁業や環境保護のためには干拓事業の中止もあり得るという態度をはっきりさせて対策に当たることであります。この根本姿勢なしに干拓事業に固執する態度をそのままにしたのでは、政府の現地調査なるものも形式的なものとならざるを得ません。

 有明海の問題の真剣な科学的調査を行い、異変の原因が干拓にあることが明らかになった場合には干拓事業の中止を断行する用意があるかどうか、この根本姿勢について総理の責任ある答弁を求めます。

 経済と社会保障について伺います。

 小渕路線を継承した森首相は、二兎を追う者は一兎をも得ずと言い、財政破綻には目もくれず、景気対策最優先と言い続けてきました。以来二年半、その結末はどうなったのでしょうか。

 小渕、森内閣の二年半で国、地方の借金は百二十二兆円もふえました。その一方で、国民生活は、失業率は二年半前の四・一%から四・七%になり、そして、完全失業者は三十一万人もふえました。企業倒産も昨年一年間で一万八千七百六十九件と最悪の水準です。勤労者世帯の可処分所得は二年半前より五万八千円も減りました。個人消費も二年半前より全世帯平均で四万八千円も減少です。

 二年半の間、国民の暮らしと営業の指標は最悪の事態に落ち込んでいるではありませんか。総理、これでもあなたは、みずからの経済対策の失敗を認めないのですか。明確な答弁を求めるものであります。

 失敗の原因は明瞭です。堺屋前経企庁長官は、企業収益を川上、家計を川下に例え、川上に水がたまれば、いずれ川下に及んでくると説明し、大企業の収益増最優先の政治を続けてきました。確かに、大企業はバブル期にも匹敵する収益を上げています。しかし、川下、家計には流れてきませんでした。それは、収益増の中身が、解雇、リストラによって急増するという典型的なリストラ増益だったからです。

 このことは、昨年暮れ、経済企画庁が発表したミニ経済白書でさえ、大企業はバブル経済に近い収益を上げているが、企業部門でのリストラが続いており、失業率も高く、賃金の回復にもおくれが見られると、川上から川下論の破綻を認めているのです。

 そこで、日本共産党は二つの転換を提案いたします。

 第一は、リストラ野放し、失業増や倒産増にも手をこまねくだけの今のやり方では絶対に景気はよくならないのであって、雇用対策に全力を挙げるべきだということです。雇用対策で何よりも有効な対策の一つが労働時間の短縮であることは世界の常識です。

 我が党は、これまでサービス残業根絶法などを国会に提出してきましたが、法律違反であるサービス残業をなくすことは、法治国家であることを否定しない以上、あなた方も肯定できるはずであります。

 昨年十一月、中央労働基準審議会は、労働時間短縮のための対策についての建議を労働大臣に行いました。そこでは、使用者が労働基準法の規定に違反しないように、始業、終業時刻の把握に関して、事業主が講ずべき措置を明らかにした上で適切な指導を行うなどの措置が必要だと明記されています。政府は、この建議を真摯に受けとめ、サービス残業根絶のための対策を直ちに講ずべきであります。総理の答弁を求めます。

 第二は、ゼネコン、大銀行応援から国民の暮らしを応援する方向に予算の使い道を切りかえることです。

 来年度予算案を見ますと、ゼネコン優先の公共事業費は、相も変わらず、過去最大の九兆四千三百五十二億円となり、関西空港二期工事や諫早湾の干拓など、採算性無視、環境破壊の浪費的事業がずらりと並んでいます。大銀行支援の七十兆円の枠組みもそのままです。軍事衛星予算も加えれば、軍事費はついに五兆円を超えるという軍拡予算となっています。

 一方で、暮らしの予算はどうでしょうか。昨年十月から、わずかばかりの年金からも介護保険料が天引きされるようになり、ことし十月からはそれが全額徴収となります。この負担は五千億円。この一月から老人医療費の一割の定率負担によって三千億円の負担増。年金の賃金スライド停止などで約一兆円の給付カット。合わせて約二兆円もの負担増と給付カットがお年寄りを直撃するのです。どこまで年寄りをいじめるのかと、日本列島を怨嗟の声が覆っています。

 日本共産党は、ゼネコン型の公共事業費や大銀行支援、軍事費を削減し、不公平な税制を是正すれば新たに十兆円の財源が確保できることを明らかにし、これらの改悪のストップと改善を求めてきましたが、政府としてまじめに検討すべきではありませんか。

 あわせて、介護保険の改善を求めます。

 六十五歳以上の高齢者の七六%は住民税非課税者です。生計費非課税という原則は、憲法第二十五条に定める生活保障への国の義務を税制の上で具体化したものです。そこから介護保険料を取るというのは、生存権を否定するものに等しいと言わなければなりません。特に、介護の対象となる人は低所得者ほど多いということが明らかになっています。現に、保険料、利用料負担が障害になって十分な介護サービスを受けられないという事例が全国で噴出しています。

 これが全額徴収になればさらに深刻な事態を招くことは必至であり、住民税非課税のお年寄りからは原則として保険料、利用料は取らないという制度に改めるべきではありませんか。総理の答弁を求めます。

 次に、男女平等の課題について質問します。

 二十世紀は、女性の地位向上、人権確立の面で、女子差別撤廃条約が国際合意となるなど目覚ましい前進がありました。しかし、我が国では、男女平等が憲法でうたわれてから半世紀がたちましたが、真の男女平等の実現は二十一世紀の課題となりました。そこで、今焦点となっている男女賃金格差の是正についてただしたいと思います。

 日本の女性の平均賃金は男性の六割という、世界でも異常な格差となっています。これを是正するようILOから再三の勧告を受けながら、十二月に政府が策定した男女共同参画基本計画では、賃金格差是正の問題は取り上げられていません。昨年末には、芝信用金庫の昇格差別是正を求めた裁判で、女性の昇格と差額賃金の支払いを命じた判決が出されています。

 真の男女共同参画というのなら、男女の賃金格差の是正は避けて通れない課題だと思いますが、その認識があるのかどうか。あるなら、女性パート労働者の極端に低い賃金を是正するなど、具体的な取り組みを明確にすべきではありませんか。

 日本の女性にとって、働くことと子育ての両立はなお困難な課題です。男女共通に労働時間を短縮し、少なくとも育児、介護を行う男女労働者については、早急に時間外労働を年間百五十時間以内という上限を定めるべきです。

 また、保育所がなければ働き続けることはできません。ところが、五万人とも言われる保育所待機児がいます。安心して子供が過ごせる保育所の整備を国と地方自治体の責任で緊急に実施すべきです。

 以上四点について、総理の見解を求めます。

 続いて、子供と教育について、今問題になっている学力の危機に絞ってお尋ねします。

 学校は、子供たちが友達と楽しく学び、成長するところです。それが、今日、授業がわからない、学校がおもしろくないという場になっています。文部省の調査でさえ、授業がよくわかると答えたのは、小学生で四人に一人、中学生で二十一人に一人、高校生では三十人に一人という状態です。さらに重視しなければならないのは、好きか嫌いかを聞いた昨年の国際的な調査で、算数、理科とも最下位のレベルだったように、日本の子供は勉強すればするほど勉強が嫌いになるという結果が出ていることです。

 わからない子供を多数つくり出す、また、学ぶことが嫌いという子供を生み出している現状は、まさに学力の危機と言わなければなりません。このような事態でも、文部科学省は、日本の子供の学力について、おおむね良好などと言っています。総理も同様の認識なのでしょうか。学力の危機という認識はお持ちでないのでしょうか。伺います。

 こうした学力の危機というべき状況は、自民党政府、文部省が長年続けてきた競争主義、管理主義の強化という教育政策のもとでつくり出されてきました。今、その真剣な検討が求められています。

 第一に、授業がわからないの大もとにあるのが、学習指導要領による子供の発達を無視した超過密、超スピードの教育内容の押しつけです。一例を挙げると、小学校六年間で覚える漢字が、一九六八年以前は八百八十一字でした。今は千六字を覚えなければなりません。子供も父母も教師も悲鳴を上げています。各方面から批判の出ている画一的な学習指導要領の押しつけはやめるべきであります。総理の見解を求めます。(拍手)

 第二に、競争教育によって、子供たちは、ふるい分けられ、細かく序列化されることで、学ぶ喜びを奪われています。欧米諸国では高校受験などありません。思春期の真っただ中に過酷なまでの受験競争に子供たちを巻き込むことを避けているのです。また、高校合否の判断材料になる内申書で、関心、意欲、態度までも評価をする、生徒会活動、清掃活動など日常まで評価するというやり方を導入したことが、一層子供にストレスを与えています。一点を争う教育が焦りといら立ち、敗北感を生み、多くの子供たちは自信と希望を見失っているのです。

 こうした世界でも異常な競争教育のシステムを全面的に見直すことが求められています。国連子どもの権利委員会からも、極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子供が発達のゆがみにさらされていると指摘され、その是正の勧告が出されているではありませんか。総理、どのような措置をとるのか、具体的にお答えください。

 政府が行おうとする教育改革は、子供と親、教師の願いに背くものです。高校の学区を全県一区にすることや中高一貫校の一部での実施は、早い段階からの競争教育を一層激しくするでしょう。いわんや、奉仕活動の義務化などは余りにも時代錯誤であり、強行すべきではありません。

 日本共産党は、すべての子供たちに基礎的な学力を保障することは、国民の根本的な教育要求であり、憲法と教育基本法が要請している学校教育の基本と考えています。何をもって基礎、基本の学力の内容とするかは、学習指導要領の押しつけではなく、国民的討論と合意によって決められるべきです。すべての子供がわかるまで教える教育への改革が必要です。すべての子供が人間として大切にされていると実感できる学校をつくってこそ、子供の中に互いに人格を尊重する態度が生まれ、本当の道徳心も生まれるのではないでしょうか。

 子供たちは、知りたい、学びたいと思っているのです。教師もまた、子供と心を通わせる教育実践に取り組みたいと願っています。この仕事を励ますことが教育行政ではありませんか。諸外国でとっくに実施されている三十人以下学級をすべてのクラスで実施すべきです。

 そして、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成、人格の完成をうたった教育基本法を二十一世紀にこそ花開かせるべきではないでしょうか。(拍手)

 最後に、二十一世紀の日本外交のあり方と進路でお聞きします。

 総理は、施政方針演説で、有事法制の検討を開始してまいりたいと述べましたが、極めて重大です。この背景にはアメリカの圧力があるのではありませんか。

 昨年の十月に、アメリカの超党派の安全保障専門家がまとめた米国防大学国家戦略研究所の特別報告で、日本に対して、集団的自衛権の行使の採用とともに、危機管理法の立法措置を含むガイドラインのしっかりとした実施を求めていました。戦争法をしっかりと実施するための具体化が今度の有事法制の検討と言わなければなりません。森首相のねらう有事法制は、米軍有事の際に、自衛隊だけではなく、日本国民を総動員するために行うのではありませんか。何のための有事法制か、答弁を求めます。

 既に我が党の志位委員長が九九年に暴露した自衛隊の内部文書では、在日米軍が軍事行動を起こす際に、日本の民間の港湾、空港、道路などを米軍の管轄下に置くという青写真も描かれています。これは日本国憲法の平和原則、基本的人権を根本から脅かすものであり、断じて許されないものです。

 総理、有事法制の検討の撤回を求めるものでありますが、どうですか。

 昨年十二月、政府は五年間で総額二十五兆円を超える新中期防衛計画を決定しましたが、ここに盛り込まれた空中給油機や大型ヘリ空母護衛艦などは、日本の防衛ではなく、アメリカがアジアで起こす介入、干渉の支援、協力のためのものではないでしょうか。これも、まさに戦争法の具体化にほかなりません。

 今、アジアでは、ASEANが非同盟、非核、紛争の平和的解決を掲げ、東アジアのすべての国が参加しているASEAN地域フォーラムでは、どの国も敵視しない、軍事力による共同制裁を実施しないなど、平和と安全の対話機構へと発展しています。

 日本共産党は、この間、中国、東南アジア、朝鮮半島などと、自主、平和の立場から、野党としての対話、外交を進めてきました。この経験からも、四つの原則が日本外交にとって不可欠だと考えます。第一は、紛争問題の解決に当たっては話し合いの平和解決を最優先させる、第二に、アジア外交を日本外交の中心に据える、第三に、日本国民の立場に立ち、自主独立の外交を築く、第四に、侵略戦争と植民地支配の反省をアジア外交に取り組む大前提とするということです。

 この四点について総理はどう思われますか。異論があれば、どこにあるのですか。もし異論がなければ、有事法制も中期防衛計画も不要というのが帰結となりますが、総理の答弁を求めます。

 ことしは、サンフランシスコ条約、日米安保条約締結から五十年の節目の年です。日米安保条約のもとで、五十年間も首都東京を初め日本全土に米軍基地が置かれてきました。今こそ、この基地国家から脱却することが求められているのではないでしょうか。米軍機の夜間離着陸訓練、NLPに苦しむ五つの市の市長が集まり、訓練にノーの声を上げています。沖縄では、ことし一月十九日、県議会で、自民党を含む党派を超えて、海兵隊の兵力削減の決議を行いました。

 ところが、本日明らかになったことですが、在沖米軍トップのヘイルストン四軍調整官が、我々に損害を与える決議を通した知事、町長、県議らは頭の悪い弱虫などと発言したことは重大であります。総理、米軍司令官の発言は、沖縄県民の意思への挑戦であり、政府として厳重に抗議すべきものであります。(拍手)

 総理、今こそ米軍基地の縮小、兵力削減、NLP中止を真正面から要求すべきではありませんか。答弁を求めるものであります。

 私は、一九九五年、沖縄での少女暴行事件のときの県民大会での普天間高校三年生仲村清子さんの発言を今も忘れることはできません。いつまでも米兵におびえ、事故におびえ、危険にさらされながら生活を続けていくことは嫌です、基地があるがゆえの苦悩から早く私たちを解放してください、軍隊のない、悲劇のない、平和の島を返してくださいと述べたのです。

 いつまでも日米軍事同盟にしがみついてアメリカの言いなりになっている時代ではありません。二十一世紀に憲法を生かし、アジアの平和の流れを強める外交に転換することです。総理の答弁を求めます。

 最後に、私は、子供たちに平和の憲法を手渡したい、そのことを信条に政治の道へ進みました。日本の青年は、戦後、一度も武器を持って海外に出ていくことはありませんでした。憲法九条があるからこそ、日本とアジア、世界の平和に貢献できるのです。子供たちに平和の二十一世紀を。私は、憲法九条の完全実施に全力を尽くす決意を述べて、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) KSD問題に関連し、中小企業者に対する責任を明らかにすべきとの御指摘がございました。

 今回の事件は、御指摘のように、KSDという中小企業向けの共済事業等を行う公益法人をめぐって生じたものであり、その意味において、私としては事態を重く受けとめております。この関連で党の所属議員から逮捕者を出したことについても、残念のきわみであり、公党として、関係の中小企業者を含め国民の皆様に心からおわびを申し上げます。

 いずれにしましても、今回の事件については、現在、司法当局において捜査中であり、徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされるべきものと考えます。また、その過程で問題が明らかになれば、断固たる対応をすることはもちろんのこと、真相究明を待つことなく、自民党内の仕組みについて、見直すべきところは率先して見直してまいりたいと考えております。

 架空党員等について、自民党として調査、報告すべきとの御指摘がありました。

 党からの報告によれば、党員の申込書及び党費は、党則に従い、支部で申し込みを受け付けた後、所定の手続を経て都道府県支部連合会から党本部に届けられるシステムになっておりまして、今回のケースもこうした入党の手続においては問題がなかったと聞いております。

 ただいまも申し上げましたとおり、今回の事件については、今後、司法当局による捜査により徹底的な真相究明が行われるべきものと考えますが、自民党としても、真相究明のため全面的に捜査に協力していく所存であり、その進展も見ながら見直すべきは見直していく決意であります。

 額賀議員に提供された資金と小渕前総理の施政方針演説との関連などについてお尋ねがありました。

 昨年末の段階で額賀氏に確認したところによれば、額賀氏の秘書が古関前理事長から千五百万円のお金を預かり、額賀氏本人は秘書から平成十二年五月に報告を受けて初めて知ったので即座に返却するように命じた、また、古関前理事長から法案や行政など特定のことで依頼を受けたことはないとのことであり、私もそのように受けとめたところであります。

 いずれにいたしましても、額賀氏は、秘書に対するみずからの監督責任の問題として厳しく受けとめ、けじめをつけたいとのお考えから辞任されたところであり、私としてもそうした御判断を重く受けとめております。

 また、小渕前総理の施政方針演説にものつくり大学が盛り込まれたことについてでありますが、物づくり、すなわち製造業は、我が国の経済や国際競争力の基盤であり、物づくりを担う人材の育成が重要であることや、大学の構想が具体化され、十二年度予算に所要の経費が計上されていたことを勘案すれば、不自然なことではないと考えます。

 小山前議員、村上、額賀両議員の証人喚問に関するお尋ねがありましたが、証人喚問については、議院の運営に関することであり、今後の国会審議の状況を踏まえつつ、国会において御判断をいただくべきことであると考えます。

 公金横領疑惑に関するお尋ねでありますが、歴代内閣総理大臣の外国出張経費に関し、外務省職員による国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめ、国民の皆様にも深くおわびを申し上げます。

 今回の事件に対する厳しい反省に立ち、外務省に対して引き続き十分な調査を指示したところであり、政府として、捜査当局による真相解明の進展も見ながら、原因の解明と再発防止に万全を期してまいりたいと考えております。

 報償費に関するお尋ねでありますが、報償費は内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用する経費であり、国政の遂行上不可欠なものであります。報償費の運用に当たっては、この際、点検を行った上で、より厳正かつ効果的な運用に十分意を用いてまいります。

 なお、外務省報償費が官邸に上納されていることはありません。

 有明海のノリの不作に関連して、諫早湾干拓事業についてお尋ねがありました。

 この干拓事業については、長崎県を初めとする関係地方自治体や地域住民等の強い要望に沿って、環境にも十分配慮しつつ、着実な推進に努めているものであります。

 今般の有明海のノリの不作の原因につきましては、現時点では明らかでありませんが、まずは予断を持たずに徹底的に調査を行うことが重要であると考えており、私から関係者に直接指示をいたしたところであります。

 我が国経済は、平成十年秋にはデフレスパイラルに陥るのではないかとの懸念がありました。しかしながら、政府がこれまで取り組んでまいりました大胆かつ迅速な政策運営の効果もあって、我が国経済は、家計部門の改善がおくれるなど依然として厳しい状況にあるものの、全体としては緩やかな改善を続けております。こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題であると考えております。このため、昨年十月に決定いたしました日本新生のための新発展政策を着実に実行に移し、今年度の補正予算の迅速的確な執行に努めてまいります。

 また、十三年度予算においては、公需から民需へのバトンタッチを円滑に行うとの観点から、公共事業等に十分な対応を行うとともに、二十一世紀の新たな発展基盤の構築に必要とされる分野に重点的、効率的に資金を配分いたしております。

 このように政府としては経済運営に万全を期することとしており、改めて、平成十三年度予算、税制改正法案その他の予算関連法案の一日も早い成立をお願いする次第でございます。

 サービス残業根絶のための対策についてお尋ねがありました。

 これにつきましては、御指摘の審議会の建議を受けて、今後、始業、終業時刻の把握に関して、事業主が講ずべき措置を示し、それに基づき指導を行うこととなっております。

 国民の暮らしを応援する方向に予算の使い道を切りかえるべきだとの御指摘がありました。

 政府としては、平成十三年度予算の内容は真に国民の生活を応援するものとなっていると考えております。

 真に国民の生活を応援するためには、第一に、経済を健全で活気あふれるものとすることが必要不可欠であります。平成十三年度予算においては、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せるべく、高水準の公共事業関係費を確保するなど、十分な対応を行うことといたしております。

 第二に、公共事業の中身についても抜本的見直しを行っております。IT革命の推進など、二十一世紀の新たな発展基盤の構築に必要とされる分野に重点的、効率的な資金配分を行う一方で、過去最大となる二百七十二件の事業を中止するなど、効率化、質的改善に努めているところであります。

 また、第三に、社会保障への配慮も怠っておりません。社会保障関係費については、少子高齢化の進展に伴い、経済の伸びを大きく上回って社会保障の給付と負担が増大することが見込まれる中で、将来にわたり持続可能で安定的、効率的な社会保障制度の構築に向けた取り組みを行いつつ、メディカル・フロンティア戦略の推進、介護保険制度の着実な実施等を図ることといたしております。

 なお、防衛関係費については、効率的で節度ある防衛力の整備に努めているものであり、また、金融システムに関しましては、その一層の安定を図るため、十分な公的資金枠を措置しているものであります。

 さらに、国民が安心と希望を持てる処方せんを示すため、財政構造改革の実現に向けた議論を進めていくことといたしております。その際には、新世紀における我が国の経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革等を幅広く視野に入れて取り組んでまいります。

 介護保険についてのお尋ねでありますが、介護保険制度は国民皆で介護を支え合うものであり、住民税非課税の方々についても、負担能力に配慮しつつ、保険料や利用料を御負担いただいているところであります。

 これまで自治体から報告を受けたところでは、保険料の収納状況は順調であり、利用者の負担が重いためサービスの利用を抑えている例は少ない状況にあります。むしろ、介護保険の導入により、サービス利用者の増加や提供量の拡大といった効果があらわれているところでもあり、今後とも、市町村を初めとする現場からの御意見に十分耳を傾けて、介護保険をよりよい制度へと育ててまいりたいと考えております。

 男女の賃金格差は年々縮小しているものの、平成十一年の調査によれば、女性の平均所定内給与額はなおも男性の約六五%となっており、男女間で賃金格差が存在することも否定できないと考えております。これには、職種や職務上の地位が男女で異なること、女性の勤続年数が男性に比べ短いことなどによるところも大きいと考えられております。

 今後とも、男女雇用機会均等法に基づく基本方針等を踏まえつつ、雇用の場における男女の実質的な均等の確保対策を積極的に進めていくとともに、パートタイム労働法に基づき、パートタイム労働者の適正な労働条件の確保等を図るため、必要に応じて事業主に対し指導、勧告等を行うことといたしております。

 育児、介護を行う男女労働者の時間外労働の制限についてのお尋ねでありますが、昨年十二月に女性少年問題審議会から、これらの労働者については、一年間に百五十時間を超える時間外労働の免除を請求できる法的枠組みを創設することが適当との建議がなされており、これを踏まえた育児・介護休業法の改正法案を今国会に提出することといたしております。

 保育所の整備についてお尋ねでありますが、現在、新エンゼルプランを積極的に推進するとともに、保育所に関する規制緩和を行うなど、保育所入所待機児童の解消などに向けて、国と地方公共団体が一体となった取り組みを進めているところであり、今後とも、利用者の多様なニーズに対応した保育サービスの整備に取り組んでまいります。

 子供の学力についてのお尋ねがありました。

 我が国の子供の学力は、数学、理科の国際比較調査によれば国際的にトップクラスでありますが、その一方で、勉強が好きである者や、将来、学んだことを使う仕事がしたいと思う者の割合が最低レベルであるなどの状況にあると承知いたしております。こうした点を踏まえた場合、我が国の子供の学力は全体としておおむね良好ではありますが、学ぶ意欲や知的好奇心、探求心などの育成が重要であると考えられております。

 このため、平成十四年度から実施される新しい学習指導要領においても、基礎、基本の確実な定着はもとより、みずから学び、みずから考える力などの生きる力の育成を図ることといたしております。各学校において、こうした新しい学習指導要領の趣旨が実現されるよう努めてまいります。

 教育内容についてのお尋ねがありました。

 新しい学習指導要領においては、知識の詰め込みになりがちであった教育を改める観点から、教育内容を厳選し、各学校において創意工夫を生かしたきめ細かな教育が展開されることにより、子供たちに基礎、基本を確実に身につけさせることはもとより、みずから学び、みずから考える力や、豊かな人間性などの生きる力がはぐくまれるようにいたしております。今後とも、こうした新しい学習指導要領の趣旨の実現に取り組み、体徳知のバランスのとれた全人教育を推進してまいります。

 競争的な教育制度についてお尋ねがございました。

 過度の受験競争の問題は、改革に取り組むべき教育課題の一つと考えており、このため、学力試験に偏重した入学者選抜から、生徒の多面的な能力、適性等を多様に評価できるような入学者選抜に改善を図ってまいります。また、あわせて、ゆとりの中で学ぶ楽しさを実感できるよう、教育内容を厳選し、体験的学習を重視するなど、教育内容や方法の改善に努めてまいります。

 高等学校の通学区域及び中高一貫教育校についてのお尋ねがありました。

 高等学校の通学区域については、今国会に提出予定の関係法案において、規制緩和の観点から、その設定について各教育委員会の判断にゆだねようとするものであります。

 また、中高一貫教育は、ゆとりある安定的な学校生活の中で、個性や創造性を伸ばすため、特色ある教育を行うことを趣旨とするものであり、受験競争の低年齢化を招かないよう十分に留意しているところであります。

 さらに、奉仕活動の義務化についてお尋ねがありました。

 さまざまな奉仕体験活動等を通じて社会性や豊かな人間性をはぐくむことは極めて有意義なことと考えますが、奉仕活動を推進するに当たっては、児童生徒の発達段階や自発性に配慮したり、地域の実情に応じた多様な形で行われることが大切であります。今国会に提出予定の関係法案は、児童生徒の奉仕体験活動等を促進するためのものであって、児童生徒に対し、奉仕体験活動等を法律上義務づけることは考えておりません。

 三十人学級についてのお尋ねがありました。

 今後の教職員定数の改善については、学級編制の標準を一律に引き下げるのではなく、子供たちの基礎学力の向上ときめ細かな指導のため、教科等に応じて少人数指導を行うなど、学校の主体的な取り組みを支援する観点に立って進めてまいりたいと考えております。

 有事法制は何のためのものか、また、有事法制の検討を撤回すべきとのお尋ねがございました。

 国民の生命財産を守ることは政治の崇高な使命であり、政府としては、我が国の危機管理体制を一層強固なものとして遺漏なきを期すため、これまで種々の対応を行ってまいりました。かかる観点から、有事法制は、自衛隊が文民統制のもとで国家国民の安全を確保するために必要であり、平時においてこそ備えておくべきものであります。

 このため、政府としては、昨年の与党の考え方を十分に受けとめ、検討を開始していくことといたしました。本検討は、言うまでもなく憲法の範囲の中で行うものであり、旧憲法下の国家総動員法のような法制について検討することはありません。したがって、本検討を撤回する考えはございません。

 我が国外交の原則並びに有事法制及び中期防衛力整備計画についての御意見がありました。

 我が国の外交は、我が国と国民の安全と繁栄を確保することを目的といたしており、このためには、我が国の位置するアジア太平洋地域の平和と繁栄を確保しなければなりません。また、我が国は、日米同盟関係を基軸としつつ、地域における対話を推進して、近隣諸国との関係強化を進めてまいります。その際、我が国が過去の歴史を忘れてはならないことは当然のことであります。

 しかしながら、現実の世界において、対話を初めとする外交努力と同時に、万が一に向けた備えも欠かせません。有事法制は、自衛隊が文民統制のもとで国家国民の安全を確保するために必要であり、平時においてこそ備えておくべきものであります。また、中期防衛力整備計画は、防衛計画の大綱のもと、継続的かつ計画的に防衛力を整備するために作成したものであります。政府としては、これらの施策等により、今後とも我が国の安全保障に遺漏なきを期してまいりたいと考えております。

 米軍基地の縮小、兵力削減、NLPに関してのお尋ねがありました。

 政府としては、特に在日米軍施設・区域の約七五%が集中することなどによる沖縄県の方々の御負担を軽減するため、今後とも、SACO最終報告を踏まえ、日米間で緊密に協議しながら、その着実な実施に最大限努力してまいります。

 また、米空母艦載機夜間着陸訓練につきましては、パイロットの練度維持及び向上のため重要なものであり、政府としてその中止を求める考えはありませんが、飛行場周辺の住民に対する騒音の影響をできるだけ軽減するため、可能な限り多くのNLPが硫黄島で実施されるよう米側に申し入れております。

 なお、御指摘のヘイルストン調整官の発言については、一連の事件を踏まえ、在沖海兵隊におけるさらなる綱紀粛正の強化を配下の司令官に求めるために発せられた私的な電子メールにあると承知しております。私的な電子メールの中のものとしてもかかる表現は適切でないと考えておりますが、同調整官は既に、本日発表した声明の中で、本件に関しおわびを表明していると承知をいたしております。

 政府としては、今後とも、地元関係者の方々の御理解と御協力をいただきながら、沖縄における米軍関係者とも密接に協力して、事件、事故の防止に取り組み、よき隣人関係が発展していくように努力していく考えであります。

 日米同盟と我が国の外交についてのお尋ねがありました。

 日米同盟関係は我が国外交の基軸であり、その中核をなす日米安保体制は、これまで我が国の安全及びアジア太平洋地域の安定と発展のため有効に機能してきたと評価しております。この日米安保体制の意義は、今日もいささかも変わることはございません。政府としては、今後とも、日米同盟関係を基軸として、近隣諸国との関係強化、グローバルな取り組みへの積極的な参画などを行い、アジア太平洋を初めとする国際社会の安定と発展のため努力してまいる所存であります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 公金横領疑惑についてのお尋ねでありますが、先般公表いたしました調査報告書で述べましたとおり、松尾元室長個人が少なくとも平成九年十月から平成十一年三月までの間に公金を横領し、私的目的に使用した疑いが明白となったため、同人を警視庁に対して告発いたしました。

 今後は、外務省として、全容解明のため捜査当局に積極的に協力をしてまいる所存でございます。(拍手)

    〔国務大臣福田康夫君登壇〕

国務大臣(福田康夫君) 先ほど総理からも御答弁ございましたけれども、報償費については、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、その都度の判断で機動的に使用するという報償費の性格から、その具体的な使途についてのお答えは差し控えさせていただきます。

 なお、報償費の運用については、私の就任以来、その目的に従って厳正かつ効果的な運用に十分意を用いてきたところであります。今後も効果的な運用、厳正な執行に努めてまいる所存でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。

    〔土井たか子君登壇〕

土井たか子君 社会民主党・市民連合を代表いたしまして、森内閣総理大臣の施政方針演説に対して私は質問いたします。(拍手)

 どうも本会議で総理大臣の御答弁を聞いておりますと、メモの棒読みなんですね。長い答弁でなくて結構ですから、どうかお心のこもった御自身のお言葉での答弁をお願いします。(拍手)

 国民が森総理大臣から聞きたかったのは……(発言する者あり)静かにしてください。まず次の二つであります。

 第一は、ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団、KSDによる自民党を中心とする政界への大規模な資金工作について、真相をどのように解明し、その責任をどうとるおつもりか。そして第二は、外務省官僚による外務省、総理官邸の機密費流用疑惑について、真相をどのように解明し、その責任をどうとるおつもりか。この二つです。

 今国会最大の課題であるとだれもが考えているこの二つの疑惑について、総理の施政方針はわずかに四、五行ずつ、しかも、その内容たるや、残念のきわみなどとまるで人ごとのようであります。そして、昨日のこの本会議での御答弁でも、捜査当局による真相解明の進展を見るなどと相変わらずで、みずからの責任を徹頭徹尾放棄しておられる。それでだれが納得しますか。だれが政府を信頼しますか。

 KSDは、民法の規定によって、特定の団体や職域や個人と結びついてはならないとされている公益法人です。その公益法人が、自分でつくった任意団体をトンネルにして、全国の中小企業の経営者たちから集めたお金の一部を特定の政党、特定の政治家に提供した。そして、そのことによって、国政に対する影響力を強め、利益を図り、国の政策をねじ曲げた疑いが極めて濃いというのが今回の事件であることは御承知のとおりです。

 一説では、九一年から八年間で二十億円以上のお金がKSDから政界に流れ込んだと言われております。受け取ったのはほとんど自民党の方でしょう。一体、何のためにこれほど巨額のお金が自民党に提供されたのでしょうか。

 KSDがつくった中小企業国際人材育成事業団、アイム・ジャパンのスピード認可や、外国からの研修生の在留資格基準の改正、埼玉県行田市のものつくり大学の設置などがその成果ではないかと強く疑われております。

 中でも、小渕前総理の第百四十七回通常国会における施政方針演説には、ものつくり大学という固有名詞が突然登場し、この大学が国家的事業であるかのような錯覚さえ人々に与えました。さらに、この大学には八十五億円もの公費が投入されることになっており、KSDからしてみれば、自民党への巨額の資金提供はまさに絶大なる効果があったと言えるでしょう。

 これまで社民党は、二回にわたってKSD事件にかかわるホットラインを開設いたしまして、電話とファクスで四百五十件以上の国民の皆さんの声を聞きました。

 その中には、多くのKSD会員の中小企業の経営者がおられます。自分たちは労働省が監督する公益法人の共済組合に加入し会費を払ってきたつもりなのに、その会費が自民党や特定の議員への献金に化けてしまうなんて、まるで詐欺ではないかという声がありました。また、もし自分が知らないうちに自民党の党員にされているなら告訴したいという方もいらっしゃいました。ニュースを聞いて、一番の問題は、村上参議院議員や小山前参議院議員の選挙の際に無断で党員にされ、党費の立てかえにKSDの費用が使われたということくらいひどい話はないとはっきり言われる意見もあります。

 一議席成って民主政治枯る。一将功成りて万骨枯るという言葉がありますが、私は、一議席成って民主政治枯る、こう言わなければならないと思うんですよ。

 これらの声を総理はどう聞かれますか。これはあなたが総裁をされている自民党の問題なんです。政治家一般の自覚の問題などでは断じてありません。

 自民党は一体何のために政治をしていると言えるんでしょうか。古関KSD前理事長は、自分は百人の自民党議員を動かせると豪語していたそうではありませんか。自民党は、KSDという一法人のために質問し、法律を改正し、そして、施政方針演説まで書きかえるんですか。「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」これは憲法十五条ですが、この原則は自民党には通用しないのでしょうか。

 疑惑がかかっているのですから、まずは自民党みずから党内を調査する、そうして真相を国民に明らかにする、謝罪して責任者を処罰するのが当たり前ではありませんか。党員名簿をチェックして、どれだけが本人の了承を得ていない架空の党員なのかを調べた上で、それぞれの方に対して謝罪する、そして返金することは考えないんですか。総理、自民党総裁としての責任が総理にはおありになると思いますよ。いかがですか。

 また、KSDは、労働省、厚生労働省の監督下にありますけれども、わかっているだけでも十七名の労働省の天下り職員が在職しています。その他、警察庁、通産省、大蔵省、法務省、文部省OBが天下りしています。KSD関連のアイム・ジャパンには、これも十三名の労働省OBがいると言われており、外務省、法務省、警察庁のOBが理事などとして働いています。事務次官を含む労働省幹部にKSDから広くお歳暮が配られ、接待も行われていたことがわかっています。これでは、監督官庁が監督する官庁として機能していなかったということになるではありませんか。それどころか、KSDと癒着し、丸抱えされていたと考えざるを得ないではありませんか。乱脈を見逃したどころか、共犯だったのではありませんか。

 もう一つ、社民党のホットラインでわかったのは、中小企業経営者のKSDへの入会が、銀行や信用金庫、信用組合など金融機関からの半ば強制的な強力な勧誘によるものが多いということです。退会しようとしたら金融機関からストップをかけられたという方もありました。金融機関とKSDには何か特別な関係があるのではないか、このような不審の声が非常に多いんです。

 金融機関がかかわったことによってKSDの会員が急増して、現在のような百七万人もの規模になったことはよく知られています。KSDの肥大化と現在の問題を発生させた根源は金融機関にあったと言っても過言ではありません。この両者の関係はいかなるものなのか、金融庁など監督官庁はこの問題にかかわっていないのか、疑惑は尽きないのです。

 特に村上参議院議員は、現在の自民党の実力者であって、森内閣の生みの親の一人でございます。そして、自他ともに認める改憲派のリーダーであって、KSD事件が発覚して辞任されるまで参議院の憲法調査会の会長でもありました。その村上議員の名は、党費立てかえにも、豊明議連にも、アイム・ジャパンにも、ものつくり大学にも、KSD事件のあらゆる局面に登場いたします。議員になること自体が古関前理事長と一体だったとさえ言われる村上議員が、改憲を大上段に語る背後で何をされていたんでしょうか。既に御本人が証人喚問に応じると言われていますが、常々私は村上議員を政治家としてはっきり物を言う人だと思っておりますから、じっくりと聞かせていただきます。(拍手)

 それにしても思うのは、リクルート事件が明らかになってから既に十年以上がたちます。それこそリクルート事件は、政界、官界、財界を巻き込んだ一大汚職事件と言われ、それが九〇年代の政治改革議論の契機となったことは、国民の多くの皆さんが覚えていらっしゃるところです。そして、選挙制度を変えて、政治資金規正法を変えてきたのですけれども、結局は何の役にも立たなかったことが今回の事件で満天下に明らかになりました。政治は、国会は、この十年の長い間にわたって一体何をしてきたのでしょうか。国民に対して申し開きができるでしょうか。

 これまで、繰り返し繰り返し社会民主党は、政治とお金の黒い関係を切り離すには企業・団体献金の全面禁止しかないと訴え続けてきました。自民党と連立にあったときも、連立が崩れればなおさらのこと、一たんは企業・団体献金の禁止を約束した自民党は、実施を次々と引き延ばして、言を左右にしてごまかして、ついにはほごにしてしまったわけです。そうした姿勢こそが今回の問題の温床だったとはっきり申し上げたいと思うのです。(拍手)

 政治とお金のくされ縁を断ち切るためには、政治家個人とともに、政党に対する企業・団体献金も禁止しなければなりません。この問題は、日本の政治の根幹にかかわることです。森総理には、この問題に真剣に取り組む決意と準備がおありになるのでしょうか。そもそもどういう認識を持っておられるのか、お聞きしたいと思います。

 第二は、外務省の松尾前要人外国訪問支援室長による機密費流用疑惑と言われている問題であります。

 この事件にも、国民は仰天し、怒り、あきれ果てています。この政府は一体どうなっているんでしょうか。

 外務省は、前支援室長を懲戒免職として横領罪で告発するとともに、同室を廃止、これから要人の訪問に際しても、支出理由と請求書、領収書の提出を義務づけることにしたと言われておりますが、余りにも当たり前のことです。というよりも、こんな当たり前のことがこれまでどうして行われてこなかったのでしょうか。

 一般の事業所は、税法によって、どんなささいな支払いに対しても領収書が発行され、受け取った側には保管の義務があります。領収書のない支出は経費として認められません。今回の問題は、外務省のずさんさや、個人犯罪で終わらせるには余りにも大きななぞをはらんでいます。

 前室長が見積もりを出し、現金を受け取ったのは総理官邸です。外務省からではありません。そして、精算書類と残った現金を提出したのも総理官邸に対してです。つまり、これは外務省だけの問題ではなくて、総理官邸の問題なんです。流用されたお金は官房機密費と言われるものであって、外交機密費ではありません。

 河野外務大臣は、首相から厳重注意された、こうしたことが二度とないよう再発防止に取り組むように言われたと記者会見で述べられて、外務省幹部の処分を発表されましたけれども、話が逆ではありませんか。厳重に公金の流れを把握し、チェックしなければならない責任者は、むしろ総理御自身ではないんですか。なぜ、いつの間に外務省だけの責任にすりかえられたのでしょう。この問題は、あるいは前室長個人の横領事件であるかもしれません。しかし、その横領を生み出したのは、機密費という巨額で不透明なお金とそのずさんな運用であることは間違いないのです。

 二〇〇〇年度予算では、外交機密費約五十六億円、官房機密費約十六億円が計上されています。そして、外交機密費のうち、本省分約二十億円のかなりの部分が官房機密費に上納とも言われています。また、そういう上納がなければ、外務省が今回の事件で処分されなければならないいわれはないということでしょう。

 しかし、まず、いわゆる上納したのならば、財政法上の問題が生ずるんじゃありませんか。財務省の査定はどうなっているんですか。

 森総理は、この疑惑について、はっきり言えば細川内閣から小渕内閣までの話でしょと言われたと報じられております。何を考え違いされているんでしょうか。八百億円以上の経費をかけて、史上最大のむだ遣いサミットと言われた昨年の九州・沖縄サミット準備事務局の次長は、ほかならぬ元要人外国訪問支援室長その人が横滑りしていたのではありませんか。この疑惑はあなたに向けられたものであることを肝に銘じていただきたいんですよ。九州・沖縄サミットにおけるロジスティックについて、総理は調査され、問題はないとお考えなんでしょうか。

 また、外務省と官邸をまたがっている機密費がこれまで何に使われていたのかも問題です。こうした不祥事が表に出てきた以上、機密費の使途について徹底して調査する必要があると考えますが、総理、いかがでしょうか。

 ところが、一部で、これは政界と官界との裏金であって国会対策や外遊のためのせんべつにも使われてきており、与野党の国会議員も同罪だから追及はできないなどと、まことしやかに語られているとは聞いてあきれます。恥ずべきことだと思います。

 機密費をめぐる疑惑を徹底的に解明するためには、政治家もまた襟を正さなくてはなりません。国会対策やら、せんべつやら、もしそのような慣行があるならば、きっぱりとやめればいいんです。国会の運営がお金で動かされるなどとあっては、国会が廃れます。その決断は総理にありますか、どうですか。どういう認識を持っておられますか。

 機密費は公金であって、公金は国民の税金です。巨額の使途不明金の存在は許されないと考えますが、どのように調査し、どのように国民に公表されますか。総理、そしてまた外務大臣にもこれをお尋ねいたします。

 平和外交に国の存立をかけている我が国としては、この公金流用ぐらい危ぶまれる問題はありません。

 アジア各国との友好ということを森総理は強調されました。河野外務大臣は外交演説で、近隣諸国との強い信頼、友好関係を一層強固なものとすることが我が国外交の第一の柱と述べられました。そして、歴史を踏まえ、歴史を忘れず、日中、日韓両国間の相互理解と相互信頼を一層発展させていきたいとも述べられました。

 その上で、気になることがありますので、お尋ねしたいと思うのです。

 このところ、中国や韓国に参りますと、日本で侵略戦争や植民地支配を肯定したり賛美する中学の歴史教科書があらわれそうだということで、大変心配されております。

 私は、日本政府はアジア各国との友好を基調として、村山首相談話や日韓共同宣言、あるいは日中パートナーシップを尊重しているんだから、まさかそんな教科書があらわれるはずはない、また、歴史の真実に反するような教科書を日本政府も日本の国民も許すはずはないと答えているのですが、総理、どうお考えですか。今の検定制度が存在する限り、教科書の内容は政府の責任となるわけです。総理と河野外務大臣から御見解をお聞きしたいと思います。

 私は、昨年の秋には韓国の金大中大統領と、そして、この年明け早々には中国の江沢民主席と会って、我が党の提唱している北東アジアの平和と安定のための非軍事多国間信頼醸成構想について話し合いをいたしました。外務大臣の言われた我が国外交の第一の柱、近隣諸国との強い信頼、友好関係は野党外交においても同じです。

 ところが、総理の演説では、アジア太平洋諸国との友好の後、唐突に有事法制の検討が出てまいります。言うまでもなく、有事とは戦争を意味します。国民の生命財産を守るのは、政治の崇高な使命などと言われていますが、現代において一たん戦争になれば、生命や財産を守ることなどできないのはいわば常識に属します。戦争をしない、してはならないという憲法を持つ私たちがなぜ戦時法制を持たなければならないのか、国民は納得しないでしょう。

 この問題は、もともと一九六〇年代の防衛庁の秘密研究、いわゆる三矢作戦計画の中で示された、戦時の国民の権利、人権の制限あるいは動員の計画に端を発します。国民の反発で長く中断されていたのですが、一九七〇年代の末の福田内閣のとき、防衛庁の中で正式に研究が開始されました。以来二十年間、研究はされながら政治日程に上ってこなかったのは、事柄がそれだけ重大で難しいからです。いわば憲法の停止を意味するような事柄です。

 こんな重大な問題をなぜ今の時期に、しかも、わずか一行で施政方針の中に出されたのですか。このことは総理とそして外務大臣にもお尋ねいたします。

 私は何回も申し上げました。政府が国民から本当の信頼を受けない限り、消費は伸びず、経済は回復せず、財政は破綻すると。そのため、政府は責任を自覚して、常に国民に語りかけてほしい、また、公正であることに目を配り、損なわれた信頼を回復することに努めなければならないと。

 さて、新世紀のスタートにふさわしい予算と森総理の言われた二〇〇一年度予算案を見ましても、公共事業偏重、ばらまき予算が相変わらずです。あれほど問題になった公共事業予備費が三千億円計上されています。総選挙が行われた昨年度の、ばらまきが取りざたされた予備費は五千億円でした。総理は、いわくつきのこの予備費をどう使われるおつもりでしょうか。

 この中で、国と地方の借金は来年度末には六百六十六兆円に膨れ上がるというではないですか。こんな政治的思惑による予算を政府・与党が続けていく限り、財政の健全化など図れるはずがないと申し上げましょう。

 有明海のノリやタイラギ、アサリが絶滅の危機に瀕しているありさまは、景気策として政府がどんどんどんどん財政の赤字をふやしながら奔走した公共事業のツケとも言えましょう。

 国民の消費がなかなか回復しない理由の一つには、間違いなく、途方もない巨額の財政赤字がいつ増税となってはね返ってくるかわからないという将来不安があるからです。

 財政構造改革の実現へ議論を進めると言われた総理、隗より始めよです。この場で、公共事業予備費は返上しますと、予算案から削除するくらいの決断を示されたらいかがですか。

 経済財政諮問会議について伺います。

 総理は、施政方針演説で「男女共同参画社会の実現は、我が国社会のあり方を決定する重要課題の一つであり、」とおっしゃったはずなんですが、この諮問会議には女性が一人も入っておりません。このことをどうお考えでいらっしゃいますか。この認識で、選択制夫婦別姓の民法改正に積極的になれない総理の姿勢が透けて見えます。これでは総理のおはこ、新生日本とは言えないでしょう。

 私は、正直なところ、今回、森総理への代表質問はやめようと考えておりました。自民党の中からでさえ、三月だ、いや、あるいは参議院選挙前だと辞任がささやかれている総理に質問して何の意味があるのだろうか、また、各お役所の文章を寄せ集めただけの施政方針演説に質問してもむなしいだけじゃないかと思ったのです。

 しかし、施政方針演説を聞くうちに、その余りの緊張感のなさに改めて危機感を深めないわけにはいきませんでした。総理は、KSDや機密費疑惑の意味や、今の危機的な状況を全く深刻に認識しておられない。ならば、言わなければならないと思ったのです。(拍手)

 私は、これまで多くの代表質問に立ってきました。どんなに意見が違いましても、敬意を持って歴代の総理大臣にただしてきたつもりです。だからこそ、次のようなことを言うのはまことに残念であると言わざるを得ません。

 森内閣総理大臣、あなたは一刻も早く辞任されるべきです。国民は、必ずや賢明な選択をするでありましょう。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 土井党首から大変お元気な、そして力強い御発言がございましたし、御叱正もいただきました。できるだけ御質問、お尋ねというところをメモをしながらお答えするんですが、御意見の御開陳も大変多かったものですから、どこまでお答えをしていいのかちょっと悩むところも随分ございました。ぜひその点は御理解をいただきたいと思います。

 KSDから政界に流れた資金とものつくり大学設置などとの関係についてお尋ねがありました。

 今回のKSDをめぐる事件は、繰り返し申し上げているとおり、政治に対する国民の信頼を損なうものであり、私としても、大変遺憾でありまして、極めて深刻に受けとめております。他方、議員御指摘のアイム・ジャパンやものつくり大学の設立については、いずれもその趣旨、事業内容等の審査を経て適切に許認可がなされたものと承知をいたしております。

 現在、KSDをめぐる資金の流れについては司法当局による捜査が行われておりますが、徹底的に真相究明がなされ、国民の前に真相が明らかにされるべきであると考えております。自民党としても、真相究明のために全面的に捜査に協力してまいる所存であります。

 KSD事件に関連し、架空党員の問題や党としての調査への取り組みなどについての御質問がありました。

 先ほどもお答えを申し上げましたとおり、党からの報告によれば、党員の申込書及び党費は、党則に従い、支部で申し込みを受け付けた後、所定の手続を経て都道府県支部連合会から党本部に届けられるシステムになっており、今回のケースもこうした入党の手続においては問題がなかったと聞いております。いずれにいたしましても、架空党員という指摘を受けているのは残念でありまして、このようなことはあってはならないと考えます。

 今回の一連の事件については、御指摘の点も含め現在司法当局において捜査中であり、徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされるべきものと考えております。その過程で問題が明らかになれば、断固としてこれに対処することはもちろんのこと、真相究明を待つことなく、自民党内の仕組みについて見直すべきところは見直してまいる決意でございます。

 例えば、入党手続は適正であったといたしましても、架空党員や立てかえ党費という指摘を受けていること自体極めて残念であり、こうした指摘があることを踏まえて、党員集めが適正に行われているか党内でしっかりとチェックするシステムをつくるべく、具体的作業にただいま着手したところであります。

 厚生労働省に対する調査に関するお尋ねがありました。

 KSDの役員の中には労働省出身者を初めとする公務員歴を有する者がおりましたが、このことによって労働省のKSDに対する指導監督に影響を及ぼしたことはないものと考えております。

 労働省の職員に対しKSDが行ったとされる接待等については、現在、厚生労働省において内部調査を行っていると承知しており、調査の結果、不適切な事案があれば、しかるべく措置をするよう指示をしたいと考えております。

 KSDと金融機関との関係についてのお尋ねですが、金融庁においては、金融機関によるKSDの会員勧誘に関する実態を把握するためにその全貌を取り急ぎ調査し、さらに現在、この実態調査等を踏まえ、法令に基づく報告徴求を含むさらに踏み込んだ実態解明に取り組んでいるところであると承知しております。その結果、不適切な業務運営が認められた場合には、その内容に応じ、法令に基づき適切に対処してまいりたいと考えております。

 なお、御指摘の問題に金融当局が関与しているというようなことは承知をいたしておりません。

 村上議員にかかわる党費の立てかえなどについてのお尋ねがありましたが、村上議員は、御自分の支持団体であるKSDをめぐる状況について、極めて遺憾なことであり、申しわけないと思うとの理由で自民党参議院議員会長を辞任されました。今後とも、村上議員御自身が、みずからの疑惑を晴らすための努力をされるものと考えております。

 リクルート事件以降の政治改革に関する国会の取り組みについての御指摘がありました。

 残念ながら、今回の事件も含め、これまで政治家と金をめぐる事件が絶無とならず、政治不信を招くような不祥事が起こってきたことは、私としても極めて深刻に受けとめております。

 現行の選挙制度や政治資金制度は、御指摘のリクルート事件以来、長期間の政治改革論議を積み重ねた結果、平成六年に、選挙や政治活動を従来の個人中心の仕組みから政策本位、政党中心の仕組みに改める趣旨で導入されたものであります。

 その後も、資金管理団体に対する企業・団体献金の禁止、あっせん利得罪の創設など、政治倫理の確立等について制度面の改正が行われてきたところであります。

 政治改革が目指すものは国民の政治に対する信頼を確立することであり、そのためには、まず何よりも政治家個々人の政治倫理の確立が重要であると考えております。また、あわせて諸制度についても不断に見直しを行い、見直すべきところは見直していくことが重要であると考えております。

 政党に対する企業・団体献金の禁止に関してのお尋ねがありました。

 企業・団体献金については、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念を踏まえ、既に昨年から、政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されたところであります。

 一方で、政党に対する企業・団体献金につきましては、最高裁判例でも、企業は憲法上の政治活動の自由の一環として政治資金の寄附の自由を持つことは認められており、これをおよそ悪と決めつける論拠は乏しいと考えております。

 いずれにせよ、政治資金のあり方につきましては、透明性を高めつつ、民主主義のコストをどのように国民に負担していただくかという観点から、各党各会派において御議論をいただくべきものと考えます。

 報償費に関するお尋ねでありましたが、歴代内閣総理大臣の外国出張経費に関する外務省職員による事件につきましては、国民の信頼を裏切る不祥事が起きたことは極めて遺憾であり、この事態を厳粛に受けとめて、国民の皆様に深くおわびを申し上げます。

 政府としては、今後の捜査当局による真相解明の進展も見ながら、原因の解明と再発防止に万全を期してまいります。

 外務省報償費の内閣官房報償費への流用については、そのようなことはございません。

 報償費の使途について、これを公開することは、報償費の機動的な運用や内政、外交の円滑な遂行に重大な支障を来すので困難と考えられます。

 内閣官房の報償費の運用については、この際、点検を行った上で、より厳正かつ効果的な運用に十分意を用いてまいる所存であります。

 九州・沖縄サミットにおける予算処理についてのお尋ねがありました。

 本件については、外務省において十分な調査を行っているものと考えております。

 なお、新聞の報道を土井議員引用されて、細川内閣から小渕内閣までの話と私が言った旨、言及がありました。これは、記者のいわゆるぶら下がり質問に答えて、歴代内閣にまたがる本件に関し、河野外務大臣だけが政治家として責任を負われたことでよいのかという私の考えを述べたにすぎず、私自身のことを云々したものでないことを念のために申し添えておきたいと思います。

 歴史教科書についてのお尋ねでありますが、歴史教育は、児童生徒が我が国の歴史に対する理解と愛情を深め、国際協調の精神など、国際社会に生きる民主的、平和的な国家社会の形成者として必要な資質を身につけることを目指して行っているところであります。

 教科書発行者が編集し作成する歴史教科書の検定については、このような観点から、文部科学省において学習指導要領や検定基準等に基づき適切に実施されるものと承知をいたしております。

 有事法制について、なぜこの時期に検討することとしたのかというお尋ねがありました。

 国民の生命財産を守ることは政治の崇高な使命であり、政府としては、我が国の危機管理体制を一層強固なものとして遺漏なきを期すため、これまで種々の対応を行ってまいりました。かかる観点から、有事法制は、自衛隊が文民統制のもとで国家国民の安全を確保するために必要であり、平時においてこそ備えておくべきものであると考えます。

 有事法制については、これまで、国会審議などにおいて、その取り扱い、必要性等種々の御論議をいただくとともに、安全保障にかかわる種々の事案の発生等を経て、昨年、与党から、法制化を目指し検討を開始するよう政府に対して要請がなされ、政府としての対応を考えてまいりました。かかる経緯を踏まえ、政府としては、与党の考え方を十分に受けとめ、検討を開始していくことといたしました。もとより、本検討は憲法の範囲内で行うものであることは言うまでもございません。

 公共事業等予備費についてのお尋ねがありました。

 我が国の経済は、現在、緩やかな改善を続けておりますが、依然として厳しい状況にあり、また、米国経済の減速など懸念すべき点も見られております。こうした経済情勢においては、その変化に機動的に対応するための備えが必要であり、十三年度予算における公共事業等予備費の計上は、公需から民需への円滑なバトンタッチに万全を期す観点から必要な措置であると考えております。

 他方で、我が国の財政状況は、主要先進国の中でとりわけ厳しい状況にあります。財政構造改革については、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、その実現に向けて議論を進めてまいります。

 その際には、常に申し上げておりますように、新世紀における我が国の経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れる必要があると考えております。

 経済財政諮問会議の議員の構成についてお尋ねがありました。

 経済財政諮問会議の議員については、法定されている官房長官、経済財政政策担当大臣のほか、各省大臣及び関係行政機関の長として、経済全般または財政全般に影響を与え得るような事務を所管する財務、総務、経済産業の各大臣及び日本銀行総裁を指定いたしました。

 また、民間の有識者については、会議の機能を最大限に発揮し、その目的を達成するためには、経済財政政策に関して高い識見を有する方に参加していただくことが重要であると考え、実際に経済活動に従事されている方と理論研究や実証研究に従事されている方を選ぶという観点から人選を進めた結果、経済界と学者の方からそれぞれ二人ずつお願いをした次第であります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) まことに申しわけないことでありますが、このような事態が起こった原因といたしましては、総理大臣一行の外国訪問に際しまして、宿泊費についての見積もりの作成あるいは精算関連の書類の整理など、すべて松尾元室長一人が行っており、これに対するチェックがなされていなかったということであります。

 このような体制の不備につきまして、外務省として猛省しており、今後は、外務省の経理処理体制等につきまして二重三重の監査体制を設置するなど、組織体制の抜本的な改善策を講じていくつもりであります。

 今回の問題の調査についてお尋ねでございますが、外務省としては、強制的な捜査権を持たない中で今般の横領疑惑につき全力を挙げて調査を行い、その結果、横領の疑いが明白となりましたので、警視庁に対して告発をしたところであります。

 現在、本件は警察の手にゆだねられており、全容解明のために、外務省としても、捜査当局に積極的に協力をしていく所存であります。また、外務省の調査委員会を存続させ、外務省として必要な内部調査を継続することといたしております。

 沖縄サミットにおきます予算処理についてもお尋ねがございましたが、外務省としては、松尾元室長が九州・沖縄サミット準備事務局次長であったことを踏まえまして、公金横領疑惑に関する今次調査に際して、九州・沖縄サミットに係る外務省の予算処理につきましても関係書類を精査いたしましたが、その結果、問題は発見されませんでした。

 我が国歴史教科書に対する近隣諸国の懸念についてのお尋ねでございますが、現在、文部科学省において検定作業中の歴史教科書につきましては、教科書検定基準等に基づき、教科用図書検定調査審議会の審査を経て、適切に検定が実施されるものと考えております。我が国としては、近隣諸国との相互理解の促進と友好協力関係の発展に努め、アジア、ひいては世界の平和と安定に寄与していく考えであり、また、そうした貢献ができる若い世代が育っていくことを期待いたしております。

 有事法制の検討を開始していくことになった経緯についてお尋ねでございますが、ただいま総理がお答え申し上げたとおりでございます。外務省としては、有事法制は重要な問題と認識しておりまして、今般の総理の施政方針演説において検討を開始していくこととされたことを受けまして、関係省庁と協力しつつ検討を開始していきたいと考えております。御理解をいただきたいと思いますことは、本検討は当然のことながら憲法の範囲内で行うものであるということでございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 野田毅君。

    〔野田毅君登壇〕

野田毅君 私は、保守党を代表して、森総理の施政方針演説に対し、質問をいたします。

 質問に先立ち、先般のインド西部の大地震によって被災されました方々に対して、心よりお見舞い申し上げますとともに、速やかな復興をお祈りします。保守党としても、昨日、私たちの微意をインド大使館にお届けしましたが、政府におかれても、可能な限りの支援措置を講じていただきたいと思います。

 また、有明海のノリの被害については、漁業関係者への金融支援を決定しましたが、政府におかれては、原因の徹底究明と必要な対策を早期に講じていただきたい。そして、宝の海を取り戻すため、総合的、抜本的な有明海再生計画の策定を要請いたします。

 さて、二十一世紀の巻頭に当たり、国家百年の国の礎を築く責任に思いをいたすとき、改めて緊張を覚えるものであります。総理は、施政方針において、最初の十年は今後の百年の大計を律する十年と指摘されました。まさにそのとおり、将来を決する重い意味を持つ十年であります。この十年の間に、前世紀から積み残した課題を集中的に処理すると同時に、二十一世紀の新しい時代に対応した改革を徹底的に進めなければなりません。

 保守党のモットーは、変えるべきは敢然として変える、守るべきは断固として守るであります。私は、この十年の間になすべき課題として、特に次のことを強調したいと思います。

 第一は、二十一世紀日本の国づくりの根幹として、新しい憲法と教育基本法をつくることであります。(拍手)

 戦後日本の歩みを方向づけてきた現行憲法も、半世紀を経て、現実との乖離が目立ってきております。国家主義や全体主義に陥るのではなく、二十一世紀の新たな国づくりの理想に向かってつくり直すべきであります。国会に憲法調査会が設置されたことは一歩前進ですが、さらに五年後の制定を目指して作業を進めるべきであります。

 また、教育基本法は、権利、自由、個の尊重などを重視する余り、日本の歴史、文化、伝統、そして、ともに形成している家族や社会、国という共同体に対する責任を軽視しています。このため、人倫の基本がないがしろになり、自己中心主義がはびこる一方、日本人としての自覚に欠ける人がふえていることは憂慮にたえません。

 敗戦から五十五年、来年は主権回復五十年、新しい世紀の幕あけに当たり、新しい憲法と教育基本法の制定を進めることこそ、今の時代の政治家の責任と考えます。総理の見解を求めます。(拍手)

 第二は、構造改革のスピードを加速させることであります。

 少子高齢化、国際化、情報化、こういった内外情勢の急激な変化に対応するため、経済、行政を初め、あらゆる分野の構造改革の必要性が叫ばれて既に久しく、産業の分野を初め、金融システムや規制緩和などの改革は現在進行中であります。しかし、社会保障制度や財政構造、司法制度などの改革はほとんど手つかずであり、行政改革や地方分権などもこれからがまさに本番であります。

 今までのテンポでは、改革する前に国が衰退してしまうでしょう。したがって、この十年の間に、三年あるいは五年といった目標年次を定め、それぞれの分野の進行管理をしながら、強力な推進体制をつくるべきであります。総理の決意のほどをお伺いします。

 この点に関連し、一言申し上げます。

 中央省庁の再編がこの一月からスタートしました。環境庁が省に昇格した一方、防衛庁は内閣府の下部組織として庁のまま据え置かれております。国の内外において自衛隊の果たす役割は大きくなっており、また、世界の国々はすべて省であります。日本だけが何ゆえに省であってはいけないのか、合点がいきません。(拍手)

 保守党は、一日も早く防衛庁を省に昇格させ、隊員諸君が使命感と誇りを持って任務を遂行できるよう、これからも総力を挙げる決意であります。

 今急いでなすべきことの第三は、危機管理に強い政府をつくることであります。

 中でも急がれるのは、いわゆる有事法制の整備であります。国の形としての欠陥の是正でもあります。総理は、施政方針で、検討を開始すると述べられました。この問題は、着手した以上は断固としてやり遂げなければなりません。中途挫折は許されません。改めて総理の決意を伺います。

 また、緊急事態への即応体制の整備も急がれます。現在、自然災害などについては一応の体制ができておりますが、重要な施設等に対するテロやゲリラなど、さまざまなケースに十分対応できるかといえば、いまだ不十分であります。また、北朝鮮の不審船事件で明らかになった領海・沿岸警備体制も十分とは言えません。

 自衛隊、警察、海上保安庁という縦割りの壁をどう超えるのか、情報の収集と管理の問題もあります。法律の整備と並んで、平素からさまざまなマニュアルに基づいて、省庁の壁を超えた訓練をしておくことが必要であることを強調しておきます。総理の所見を伺います。

 さらに、最近の多発する事件や犯罪の発生も、国民の日常生活の危機管理という面から切実な問題であります。

 特に、凶悪、異常な犯罪の被害者や遺族の無念を思うとき、現行の刑罰が余りにも犯罪者に甘く、被害者や家族の立場が軽く扱われ過ぎているのではないかという思いがいたします。

 また、我が国の場合、異常性格者の犯罪は、精神鑑定の結果、責任能力を理由として罪が軽くなるのが通例であります。しかも、これらの者が釈放後再び犯罪を起こす例が多々見られます。このままでよいのでしょうか。

 また、飲酒運転により相手を死亡させた場合も問題です。飲酒運転が重大事故に結びつく可能性のあることは常識であります。相手を死亡させるのは殺人と同じであるにもかかわらず、重過失致死罪で最高七年の刑しか科せられないのでは、国民は納得できません。道路交通法の改正を機に厳罰化を検討すべきです。

 ストーカーやピッキングなども国民の生活を脅かしています。未然に事件の発生を防ぎ、犯罪の被害者をつくらないためにも、警察は、民事不介入や人手不足を理由として逃げてはいけません。犯罪が起きてからしか警察が動かないのでは、国民はだれを頼りにすればいいのでしょうか。

 以上の諸点について、総理の御見解を伺います。

 次に、社会保障構造改革について伺います。

 社会保障の構造改革は、経済成長との関係のほか、財政改革、税制、地方財政などが密接に関連しており、総合的視点からの取り組みが不可欠であります。本日は、時間の制約上、社会保険方式が実質的に破綻していることを指摘するにとどめたいと思います。

 自己責任の原則に立った社会保険方式と言われますが、これは負担と給付を対応させるということであり、保険料を払った者だけが年金や医療給付を受けられるということであります。

 しかし、現実は、国民年金の三分の一は保険料未納であるにもかかわらず、国民皆年金という形を維持しております。また、医療保険の世界では、現役の収支だけなら十分ペイするのに、老人医療費の拠出のために赤字となって、健康保険組合は次々と破綻しております。さらに、基礎年金、高齢者医療、介護の三分野においては、保険料収入だけでは給付を賄えないがために、三分の一や二分の一の国庫負担によって初めて成り立っております。

 このような状況で、果たして自己責任、すなわち給付と負担が対応していると言えるのでしょうか。少子高齢化が進む中で、政府が自己責任を強調すればするほど、保険料の引き上げか給付の大幅引き下げを意味するものとして、国民が将来に不安を覚えるのは当たり前であります。

 私は、社会保険方式へのこだわりを超えるところから社会保障改革の議論がスタートすべきだと考えます。以下、現行の社会保険方式の問題点を指摘しておきます。

 第一に、職業間の不公平の問題であります。

 現行制度のもとでは、サラリーマンとその他の職業の人との間で大きな不公平があります。例えば、サラリーマンの場合、保険料の半分は雇用主が負担しますが、自営業や農業では、本人以外だれも負担してくれません。一方で、厚生年金などの被保険者の払った保険料が、厚生年金とは関係のない国民年金の財政支援に使われているという問題もあります。また、同じ女性の間でも、専業主婦は保険料を負担しないけれども、働いている女性は保険料を負担しているという不公平があります。このような不公平をそのまま放置してよいのでありましょうか。

 第二は、社会保険料が雇用不安を増大させているということであります。

 第一の裏腹ですが、雇用主は従業員の保険料と同額を負担しております。しかも、老人医療や介護など、従業員の福利と直接関係のない部分まで負担をしています。このことが経営を圧迫して、結果として、常用雇用を減らし、パートや派遣労働にシフトさせております。今後、保険料がさらにアップすれば、雇用への影響が大きくなることは目に見えております。

 第三に、国民年金の保険料や国保税については徴収上の不公平があります。

 所得の把握が困難なほかに、徴収上の困難もあります。結果として、正直者が損をするということも言われております。さらに、国民年金の保険料は、収入の大小にかかわらず一人当たり月一万三千三百円で、これは人頭税と同じく逆進的であります。六十五歳以上の方の介護保険料も同様の問題があります。

 第四は、社会保険料の引き上げは経済の活力維持に大きな影響をもたらすということであります。

 社会保険料といっても、給料から天引きされる点において、所得税、住民税と何ら変わりません。保険料引き上げの経済効果は所得課税の引き上げと同じであり、手取り、すなわち国民の可処分所得を減らします。この可処分所得こそが消費と投資を生み出す源泉であります。だからこそ、小渕内閣は直接税の大減税をしたのでしょう。国民負担率は同じでも、社会保険料か間接税かによって、経済の活力に与える影響は大きく異なります。私は、所得課税と社会保険料を加えた直接負担率を低くすることの方が経済の活力にとって大事であることを特に指摘しておきたいと思います。

 第五は、社会保険制度が赤字国債の原因の一つとなっているということであります。

 現在、保険料の引き上げが困難なため、給付費の半分を国庫負担に求めています。つまり、社会保険制度といえども、半分は税か赤字国債に依存しているということです。少子高齢化に伴う財政負担の財源を何に求めるのでしょうか。財政再建のテーマの一つは、まさにここにあります。また、この問題にメスを入れない限り、社会保障制度の永続性もあり得ないのであります。

 保守党は、これからの少子高齢化社会において、老後生活の安全保障という視点から、基礎年金、高齢者医療、介護、この基礎的三分野については、基本的に消費税をもって財源を賄うことを提唱しております。今直ちに全額を税に切りかえるということではなく、そういう展望のもとに段階的に移行すべきということであります。

 今後、高齢化に伴う必要財源は、保険料の引き上げで対応するのではなく、消費税で賄うようにすべきであります。消費税を名実ともに社会保障税に切りかえ、使途をこの三分野に限定すると同時に、内税とし、その際、飲食料品については軽減税率を設けること、このため、インボイス方式の導入を主張しております。

 以上、社会保障の問題について、総理に御意見があれば伺います。(拍手)

 最後に申し上げます。

 二十一世紀の最初の国会、国家百年、国の礎を築く政策を議論すべきこのとき、KSD事件や外交機密費流用疑惑が発生したことはまことに遺憾であります。司法当局の厳正な捜査を期待するとともに、疑惑の対象とされる政治家はみずから進んで真相を説明すべきであります。

 総理は、みずから任命した閣僚の辞任と党所属議員の逮捕、議員辞職に至ったことについて、総理・総裁としての責任を痛感され、疑惑解明に対するリーダーシップを発揮されんことを強く求め、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) インドの大地震につきまして、冒頭、御発言がございました。

 この地震による多大な被害は大変痛ましいものでありまして、日本政府といたしましても、一億円強の無償資金及び物資援助、国際緊急援助隊医療チーム及び自衛隊部隊の派遣といった、これまでに行いました支援に加えまして、本日、新たに二億四千百五十万円の追加的な無償資金援助を行うことを決定いたしました。政府としては、今後も、被害の状況を踏まえつつ、当面の緊急援助とともに、将来のあり得べき復興支援を視野に入れ、さらに必要な支援を積極的に行っていきたいと考えております。(拍手)

 有明海のノリの被害に関するお尋ねがありました。

 有明海のノリの被害に関し、保守党では早々に有明海ノリ等漁業被害調査対策本部を立ち上げられ、一月二十六日には与党三党幹事長等が現地の視察に出向かれ、その際、特にこの地域に詳しい野田幹事長のリードで調査を進められたと伺い、感謝を申し上げております。

 政府といたしましても、原因究明のため、まず、緊急調査を行い、その結果を三月末をめどに暫定的に取りまとめますとともに、十三年度からは、有明海の海域環境やノリの不作原因の究明を目的とした総合的な調査を実施し、遅くとも九月末をめどに可能な限り早く中間取りまとめを行い、それらの結果を公表いたしたいと考えております。

 被害者に対する支援につきましては、貸付金の償還猶予等を関係機関に指導するとともに、農林漁業金融公庫の漁業災害向け資金について、地元自治体との協力による貸付利率の無利子化、貸付限度額の引き上げ等の措置を講ずることを決定いたしたところであります。

 また、有明海の再生につきましては、原因究明調査や経営対策と並行して、漁業者の皆さんが将来に展望が持てるよう、良好な漁場環境づくりを進めるなど、豊かな有明海をよみがえらせるための総合的な対策を計画的に進めることについて検討をいたしてまいります。

 新しい憲法の制定についてお尋ねいただきました。

 憲法の基本理念である民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであり、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。

 一方、憲法第九十六条は憲法の改正手続を規定しており、憲法が永久不変のものとは考えておりません。また、憲法をめぐる議論が行われること自体は何ら制約されるべきものでないことは言うまでもありません。しかしながら、国の基本法である憲法の改正については、世論の成熟を見定めるなど、慎重な配慮を要するものであると考えております。

 憲法に関する問題につきましては、これまでも各方面からさまざまな意見が出されております。特に、第百四十七国会から衆参両議院に憲法調査会が設置され、将来の我が国の基本的あり方を見据えて、参考人の意見聴取や欧州各国の事情調査等が行われ、幅広く熱心な議論がなされているところであり、これを十分見守ってまいりたいと考えております。

 教育基本法についてお尋ねがありました。

 教育全般についてさまざまな問題が生じている今日、人間としてのルールを身につけた、創造性豊かな立派な人間を育てるためには、制定以来半世紀を経た教育基本法の抜本的見直しなど、教育の根本にさかのぼった改革を進めていく必要があると考えております。

 先般の教育改革国民会議の最終報告においては、新しい時代の教育基本法を考える際の観点として、新しい時代を生きる日本人の育成、伝統、文化など次代に継承すべきものの尊重、教育振興基本計画の策定等を規定することの三点が示されているところであります。

 私としては、教育基本法の見直しについては、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を上げたいと考えております。

 目標年次を定めて構造改革のスピードを加速すべきとの御指摘がありました。

 経済のグローバル化、IT革命の推進、少子高齢化など環境が激変する中で、二十一世紀の新しい日本を切り開いていくためには、我が国の経済社会全体の抜本的な構造改革の推進が急務であり、私としても、日本新生に向け、改革への取り組みをスピード感を持って進めているところであります。

 議員御指摘のとおり、こうした困難な改革を進めていくためには、目標年次を定めるなど適切な進行管理をしつつ、強力に進めていくことが重要であると考えております。

 私としても、施政方針演説において、できるだけ取り組みのスケジュールを明示するように努めたところであり、例えば、行政改革については、平成十七年までを集中改革期間としているほか、規制改革についても、三カ年計画を策定してこれに取り組むこととしております。また、IT革命の推進についても、五年以内に世界最先端のIT国家を目指すべく、具体的なアクションプランを三月末をめどに策定いたします。

 さらに、御指摘いただきましたその他の重要な改革についても、分野ごとに具体的な進め方に違いは生ずるものの、基本的には同様の考え方で取り組んでいきたいと考えます。

 いずれにせよ、改革の推進には政治の安定が不可欠であります。今後とも、連立与党の連携を強化し、新しい世紀を希望に満ちあふれたものにすべく大胆な構造改革に取り組んでまいる決意であります。

 有事法制の検討を断固としてやり遂げるべきとのお尋ねでありました。

 国民の生命財産を守ることは政治の崇高な使命であり、政府としては、我が国の危機管理体制を一層強固なものとして遺漏なきを期すため、これまで種々の対応を行ってまいりました。かかる観点から、有事法制は、自衛隊が文民統制のもとで国家国民の安全を確保するために必要であり、平時においてこそ備えておくべきものであります。

 このため、政府としては、昨年の与党の考え方を十分に受けとめ、検討を開始していくことといたしました。今後、国家国民の安全を確保していくため、どのような法制が必要か、また、どのような枠組みで取り組むべきか等について、所要の検討を進めてまいる所存であります。

 緊急事態への即応体制の整備についてお尋ねがございました。

 関係省庁間で緊密な連携を確保することの重要性は御指摘のとおりであります。沿岸・重要施設の警備等に関しましては、能登半島沖不審船事案の教訓も踏まえて、内閣官房を中心に関係省庁による検討会を継続的に開催し、さまざまな事態を想定してマニュアルの整備等に取り組んでいるところであります。また、海上保安庁と海上自衛隊の間では、不審船に係る共同対処マニュアルを策定するとともに、共同訓練を行ってきております。さらに、自衛隊と警察の間では、昨年十二月、武装工作員等による不法行為等の事案にも対処し得るよう、治安出動に関する協定を見直したところでもあります。

 今後とも、関係省庁間で緊密な連携をとりつつ、緊急事態への対応体制の充実に努めてまいる所存であります。

 刑罰のあり方について御質問をいただきました。

 罪に対する刑罰は、その罪の罪質や他の罪の刑との均衡等、種々の観点から総合考慮した上で決められるべきものであり、事案の内容に応じて適切な刑罰を科し得るものでなければならないと考えており、法務省において、現行の刑罰制度及びその運用状況について調査分析を行うなどいたしておるところであります。

 他方、犯罪被害者やその家族の方々への配慮については、政府に犯罪被害者対策関係省庁連絡会議を設置し、既に一定の施策を講じ、さらに行うべき施策を検討しているところであります。

 また、精神障害等を原因とする犯罪への対策について御質問をいただきましたが、責任の程度に応じて刑事上の処分が行われるべきであるのは当然なことでありますが、このような犯罪の発生は、その被害者にとっても、また、精神障害によって加害者となった者にとっても極めて不幸な事態であります。この問題につきましては、現在、法務省及び厚生労働省の合同検討会などにおいて、幅広い観点から検討を進めているところであります。

 飲酒運転により相手方を死亡させた場合について厳罰化を検討すべきではないかとのお尋ねがありました。

 近時、飲酒等を伴う悪質、重大な業務上過失致死傷事件が後を絶たず、被害者の皆様やその御遺族を中心に、その量刑や法定刑についてさまざまな指摘がなされていることを承知いたしております。悪質な運転により人を死亡させた事犯の刑のあり方については、このような御指摘も踏まえ、関係当局において早期に結論を得るよう鋭意検討中であります。

 ストーカーやピッキングなどの未然防止のための警察の取り組み姿勢についてのお尋ねがありました。

 ストーカーやピッキング等の国民の身近に発生する犯罪の検挙はもとより、その発生を未然に防止し、国民生活の安全を守っていくことは政府の責務であり、議員御指摘のとおり、積極的に取り組んでいかなければならないものと認識しております。

 警察におきましても、民事不介入についての誤った認識の払拭や、現下の厳しい治安情勢に的確に対処するための人的基盤の強化に努めるとともに、被害者の立場に立ったストーカー対策の推進、犯罪被害に遭いにくい町づくり等の犯罪の未然防止のための諸対策に取り組んでいるものと承知をいたしております。我が国の良好な治安を維持し、国民生活の安全を確保していくため、犯罪の未然防止対策を一層強力に推進していく所存であります。

 社会保障についてのお尋ねがありました。

 社会保障については、急速に少子高齢化が進行する中で、生涯を安心して暮らせる社会を築くため、持続的、安定的で効率的な制度を構築していくことが必要となっており、先般発足いたしました政府・与党社会保障改革協議会において、関連する諸制度の検討を含め、総合的、包括的な改革に取り組んでまいります。

 今後さらに増大が見込まれる社会保障の費用をいかに賄うかについては、御指摘の消費税を初め、全額税で賄うとの御意見がありますが、先般の有識者会議の報告書においては、国民年金について未納、未加入の問題が生じないこと、専業主婦が保険料負担をしないことが不公平とされる問題が解消する等の長所がある一方、社会的リスクに事前に備えるという考え方に逆行する、給付の水準や対象者が限定される可能性がある、巨額化していく税負担について国民の合意を得られないおそれがある等の問題があると指摘をされているところであります。

 こうしたことから、社会保障制度の財政方式としては、私としては、自己責任の原則に立った社会保険方式を基本に、保険料と公費を組み合わせることにより、安定的な財源の確保に努めなければならないと考えております。

 最後に、KSD問題に関連し、総理・総裁としての責任や疑惑解明についての言及がありました。

 これまでも申し上げておりますとおり、今回のKSDをめぐる事件は、国民の政治への信頼を損なうものであり、公党として国民に心からおわびを申し上げますとともに、連立与党である保守党に対しましても御迷惑をおかけし、大変申しわけなく存じております。

 本件については、今後、司法当局の捜査により、徹底的に真相究明が行われ、国民の前に真相が明らかにされていくものと考えておりますが、自民党としても、調査すべき点は調査し、真相究明に全面的に協力してまいる所存であります。

 また、御指摘のとおり、疑惑を受けた政治家はみずからその疑惑について釈明していく努力を払うべきものと考えております。

 さらに、真相究明を待つことなく、今回の事件を教訓として、自民党内の仕組みについても見直すべきものは率先して見直すとともに、公益法人についても、改革のスピードを速め、一段と厳正な指導監督に努めてまいりたいと考えております。

 私としては、こうした一連の取り組みにより、今回の事件が再び起こらないよう、政治の信頼回復に全力を尽くしてまいる所存であります。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十三分散会




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