衆議院

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第17号 平成13年3月27日(火曜日)

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平成十三年三月二十七日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第八号

  平成十三年三月二十七日

    午後一時開議

 第一 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 人事官任命につき同意を求めるの件

 会計検査院情報公開審査会委員任命につき同意を求めるの件

 原子力安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 情報公開審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

 森内閣総理大臣の米国訪問及びロシア訪問に関する報告及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 人事官任命につき同意を求めるの件

 会計検査院情報公開審査会委員任命につき同意を求めるの件

 原子力安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 情報公開審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央更生保護審査会委員任命につき同意を求めるの件

 日本銀行政策委員会審議委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会委員任命につき同意を求めるの件

議長(綿貫民輔君) お諮りいたします。

 内閣から、

 人事官

 会計検査院情報公開審査会委員

 原子力安全委員会委員

 情報公開審査会委員

 中央更生保護審査会委員

 日本銀行政策委員会審議委員

 中央社会保険医療協議会委員

及び

 中央労働委員会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申し出があります。

 内閣からの申し出中、

 まず、

 人事官に小澤治文君を、

 会計検査院情報公開審査会委員に碓井光明君、五代利矢子君及び隅田一豊君を、

 原子力安全委員会委員に飛岡利明君を、

 情報公開審査会委員に饗庭孝典君、秋山幹男君、小早川光郎君及び戸松秀典君を、

 中央更生保護審査会委員に山上皓君を、

 日本銀行政策委員会審議委員に須田美矢子君を、

 中央労働委員会委員に上村直子君及び林紀子君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 原子力安全委員会委員に鈴木篤之君を、

 情報公開審査会委員に櫻井龍子君及び住田裕子君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 情報公開審査会委員に清水湛君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 情報公開審査会委員に藤田宙靖君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 情報公開審査会委員に吉村徳則君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 中央社会保険医療協議会委員に星野進保君を

任命することについて、申し出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。厚生労働委員長鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔鈴木俊一君登壇〕

鈴木俊一君 ただいま議題となりました労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、厚生労働委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、最近における労働時間の状況にかんがみ、政府目標である年間総実労働時間千八百時間を、本臨時措置法の廃止期限である本年三月末までに達成することは困難と考えられることから、廃止期限を五年間延長し、今後も引き続き労働時間短縮の施策を講じていこうとするもので、その主な内容は、本年三月末とされている労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の廃止期限を延長して、平成十八年三月三十一日とすることであります。

 本案は、去る三月十五日本委員会に付託され、翌十六日坂口厚生労働大臣から提案理由の説明を聴取し、三月二十三日質疑を行った後、採決の結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

小此木八郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。

 内閣提出、在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、委員長の報告を求め、その審議を進められることを望みます。

議長(綿貫民輔君) 小此木八郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。

    ―――――――――――――

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長土肥隆一君。

    ―――――――――――――

 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔土肥隆一君登壇〕

土肥隆一君 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、

 第一に、地名変更に伴い、在コロンビア日本国大使館の位置の地名をサンタ・フェ・デ・ボゴタからボゴタに改めるとともに、在ウジュン・パンダン日本国総領事館の名称及び位置の地名をそれぞれ在マカッサル日本国総領事館及びマカッサルに改めること、

 第二に、別表のうち地域の項中、中近東を中東に改め、大洋州の項をアジアの項の次に移動すること、

 第三に、在外公館に勤務する外務公務員の在勤基本手当の基準額及び研修員手当の額を改定すること

を内容とするものであります。

 本案は、去る三月十九日外務委員会に付託され、二十一日河野外務大臣から提案理由の説明を聴取し、二十三日に質疑に入り、本二十七日質疑を終了し、引き続き採決を行いました結果、全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(綿貫民輔君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(米国訪問及びロシア訪問に関する報告)

議長(綿貫民輔君) 内閣総理大臣から、米国訪問及びロシア訪問に関する報告について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣森喜朗君。

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) まず、私の米国訪問について御報告を申し上げます。

 私は、三月十八日から二十一日まで、米国を訪問し、十九日、ワシントンでブッシュ大統領と首脳会談を行いました。今回の首脳会談は、ブッシュ大統領の就任後初のものであり、今後の日米関係のあり方の基本的方向性について忌憚のない話し合いを行い、その中で、日米同盟関係を強化し、二国間の当面の問題への対処につき緊密な対話を行い、協力していくことで意見が一致し、所期の成果を上げることができました。

 具体的には、当面の大きな課題である日米両国の経済運営を中心とし、また、えひめ丸の衝突事件を含め、日米安保、朝鮮半島情勢、さらには国連改革等のグローバルな課題といった幅広いテーマにつき率直な意見交換を行い、会談終了後、共同声明を発表いたしました。また、私は、ブッシュ大統領に対し早期の訪日招待を行い、ブッシュ大統領は訪日招待を受けられました。

 首脳会談及び会談の結果、発表されました共同声明の主要点は、次のとおりであります。

 まず、日米同盟関係のさらなる強化のため、安全保障、経済及びグローバルな課題について日米間の対話を強化していくことを確認いたしました。

 経済分野においては、ブッシュ大統領より、米国経済を再び成長させるため、財政、金融、貿易政策を活用していきたいとの発言があり、さらに、日本経済の早期回復のための金融改革の推進や不良債権問題解決への期待の表明がありました。

 これに対して、私より、米国経済の減速傾向がアジア経済に影響を与えている旨、指摘をいたしました。また、日本経済の現状と、景気回復に向けた政府の取り組みを説明するとともに、十五日に設置されました政府・与党緊急経済対策本部における不良債権問題への取り組みなども説明の上、日本経済の再生及び金融システムの強化のための構造改革及び規制改革を精力的に促進する決意を改めて述べました。

 さらに、私とブッシュ大統領は、経済、貿易分野での日米間の対話を強化するための新たな方策の探求のための協力や、WTO新ラウンドの本年立ち上げに向けた協力についても、意見の一致を見ました。今後の経済面での政策運営について日米両首脳間で確認することができたことは、時宜を得たものであったと考えます。

 さらに、えひめ丸の衝突事件については、私より、本件は遺憾な事故であったが、ブッシュ大統領による特使派遣等の米側の謝罪を真摯なものと受け入れている、引き続き原因究明、引き揚げ及び補償等につき努力いただきたい旨、申し入れました。これに対しブッシュ大統領より、えひめ丸の事故については深く遺憾に思う、できることはすべて行う、御家族のために努力したいとの発言がありました。

 日米安保については、私とブッシュ大統領は、日米同盟関係及びこれに基づく米国のプレゼンスの重要性につき意見をともにし、一九九六年の日米安全保障共同宣言等に基づく取り組みを引き続き実施することの必要性を再確認するとともに、日米安保協力の拡大、深化のため引き続き協力していくことで意見の一致を見ました。

 沖縄に関する諸問題については、私より、最近、事件、事故が頻発していること、県民の負担への配慮が重要であり、県民の気持ちを酌む必要がある旨伝え、SACOを引き続き実施すること、普天間基地の移転の問題を含め沖縄に関する問題につき日米が緊密に協議していくことで意見の一致を見ました。

 さらに、大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散の脅威が増大していることについて、私より、米国と認識を共有する、米国がミサイル防衛計画を検討していることは理解する、米国が同盟国や関係国と十分協議する旨表明していることを歓迎する旨、述べました。

 この他の国際情勢についても緊密な意見交換を行い、朝鮮半島の問題について、改めて日米韓の三国間の連携の重要性を確認いたしました。さらに、グローバルな課題については、国連安全保障理事会改革について今後とも日米両国で緊密に協力していくことで一致し、我が国の常任理事国入りにつき米国が協力していくとの表明がありました。

 首脳会談終了後、私は、ワシントン近郊にあるトマス・ジェファーソン科学技術高校を訪問する機会を得、ITの次世代を担う若者たちを養成している教育の現場を視察いたしてまいりました。

 さらに、二十日、ワシントンからの帰路にホノルルに立ち寄り、えひめ丸の衝突事件というまことに悲しむべき事故が発生した海域に、万感の気持ちを胸に御家族の方々とともに赴きました。また、日系兵士等も祭られている国立太平洋記念墓地を訪問いたしました。

 冒頭述べたとおり、今回のブッシュ政権発足後初めての日米首脳会談を通じ、日米両国が、二国間問題のみならず、国際情勢を含む幅広い分野において緊密な対話を通じた政策協調を通じて世界の平和と繁栄のために協力していくことを確認し、今後、日米同盟関係を維持強化していくという日米関係の基本的な方向性を打ち出すことができたことは、大きな成果であったと考えております。私としては、我が国外交の基軸である日米関係の一層の強化のために今後とも尽力してまいる所存であり、議員各位の御協力をお願い申し上げます。

 次に、ロシア訪問につき申し上げます。

 三月二十四日から二十五日まで、ロシア連邦のイルクーツクを訪問しました。二十五日に行われた日ロ首脳会談では、プーチン大統領との間で、友好的な雰囲気の中、率直で中身の濃い議論を行うことができました。

 平和条約締結問題については、首脳会談の冒頭、約一時間五十分の時間を割き、ごく少人数の形をとり、プーチン大統領とじっくりと話し合いました。

 首脳会談の結果、平和条約問題に関する交渉の今後の継続に関する日ロ両首脳のイルクーツク声明に署名しました。これにより、日ロ両国がクラスノヤルスク合意に基づき平和条約の締結に向けて全力で取り組んできた結果を総括し、今後の平和条約交渉の新たな基礎を形成することができたものと考えます。

 その主要点は、第一に、五六年の日ソ共同宣言が平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認し、第二に、その上で、九三年の東京宣言に基づき四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認し、第三に、平和条約締結に向けた前進の具体的方向性をあり得べき最も早い時点で決定することで一致したことであります。

 プーチン大統領には、日ロのすべての問題を双方の名誉と尊厳が満たされるような解決に早く導きたいとの熱意、誠意が感じられました。私自身も、同じ決意を持って日本の立場を説明いたしました。今後、平和条約交渉を加速化し、専門家レベルやよりハイレベルな協議を必要に応じて機動的に開催していこうということで意見が一致したところであります。

 政府としては、このイルクーツク声明において達成された共通の認識を基礎として、今後とも、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、精力的に交渉に取り組んでいく考えであります。

 また、今回の首脳会談では、平和条約締結問題以外にも、経済分野の協力や国際舞台における日ロの協調についても、率直で有益な意見交換を行うことができました。

 経済分野では、今井経団連会長ミッションの訪ロ成功に向けてともに協力していこうということで一致いたしました。私からプーチン大統領に対し、そのために日本政府としてこのミッションを政府派遣とすることを決定したことを説明いたしました。私から、このほか、ロシアにおける人材育成の拠点となる日本センターの新たな開設について説明するとともに、貿易経済分野における諸懸案や漁業問題について、ロシア側の善処を要請いたしました。

 国際舞台における日ロの協力も、G8、アジア太平洋、国連など、さまざまな場で進んでいることを確認いたしました。地域問題や軍縮問題などの幅広い問題について有益な意見交換を行い、朝鮮半島については、同半島の真の緊張緩和、ひいては北東アジアの平和と安定に向けてともに努力を傾けていくことで一致をいたしました。

 また、両国間の防衛交流が着実に進展していることをともに歓迎し、今後ともこのような流れを進めていくことを確認しました。

 このような形で、幅広い分野における日ロ関係の進展を確認できたものと考えます。

 政府としては、今回の首脳会談の成果を踏まえ、引き続き平和条約交渉を含め日ロ関係に精力的に取り組んでいく考えであり、議員各位の御協力をお願い申し上げます。

 以上、私の米国訪問及びロシア訪問につき御報告を申し上げました。(拍手)

     ――――◇―――――

 内閣総理大臣の発言(米国訪問及びロシア訪問に関する報告)に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。井上喜一君。

    〔井上喜一君登壇〕

井上喜一君 私は、自由民主党、公明党及び保守党を代表して、ただいまの森総理の米国訪問及びロシア訪問に関する報告に対し質問をいたします。(拍手)

 質問に先立ち、この二十四日、中国・四国地方を襲った大地震による犠牲者と被災者の皆様方に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。政府におかれては、復興に向け可能な限りの支援措置を講じられることを強く希望いたします。

 総理、国会審議の合間を縫って米国、ロシア両国の訪問、大変お疲れさまでございました。我々は、今回の訪問を通じ、総理は一定の成果を得ることができたと評価いたします。

 日米首脳会談においては、日本経済低迷の元凶である不良債権問題の最終処理に向け、日本政府として米国に力強いメッセージを伝えたこと、ブッシュ新政権との間で、日米の同盟関係の意義と重要性について両国が改めて再確認したことなどであります。また、交渉の行方が心配された日ロ関係では、首脳会談において、一九五六年の日ソ共同宣言の有効性を文書で確認し、北方領土問題の解決と平和条約締結に向けた交渉の道筋をつけたことであります。総理の御努力に対し心から敬意を表する次第であります。

 さて、今回の日米、日ロ首脳会談は、二十一世紀最初の首脳会談であり、また日米首脳会談は、ブッシュ新政権発足後初めての会談でありました。森総理には、心中深く期するものがあったと察せられます。森総理はどのような決意を持って両国との会談に臨まれたか、まずもってお伺いいたします。

 今回の日米首脳会談の特徴は、現下の日米の経済状況を反映し、経済問題が最大の焦点となったことであります。特に、低迷を続ける日本経済が焦点となり、ブッシュ大統領は、友人としての立場からと断りつつ、日本経済の回復力を心配する、日本は不良債権問題について全力で取り組んでいないとの見方が米国にはある、この問題は解決する必要がある、可能な限り不良債権の処理に当たってほしい、苦い薬は早く飲めば早くよくなると、日本経済のかじ取りについての発言がありました。

 この十年、世界経済の成長を支えてきたのは、情報、ITを中心とする技術の飛躍的な発展により好調を維持してきた米国経済でありました。その米国経済にも陰りが見え始めております。この間、日本経済は、バブル崩壊に伴うバランスシート不況にあえぎ、いまだ自律回復するに至っておりません。世界のGDPの約一割強を占める日本経済の不振は、米国のみならず世界経済の波乱要因であり、その成長を阻害する可能性があります。ブッシュ大統領の懸念は当然のことと言えます。

 これに対し、総理は、適切な経済政策を遂行するとともに、企業債務及び不良債権の問題に効果的に対処することを含め、日本経済の再生及び金融システムの強化のための構造改革及び規制改革を精力的に促進する決意を表明されました。適切な対応であったと思います。

 言うまでもなく、日本経済の長期停滞の基本的原因は、バブルの崩壊により土地など約千二百兆円もの資産が一瞬にして露と消えたことに伴うバランスシート不況に陥ったことにあります。企業も個人も資産が減少する中でバブル時代の負債が重くのしかかり、過重な債務の返済に追われ、それが設備投資や個人消費を減少させ、経済の不振とそれに伴うさらなる資産の低下と債務負担の増大を招くという悪循環を繰り返しております。

 我々は、前小渕内閣以来、積極的財政政策路線を堅持し、需要の不足を財政の投入でこれを補い、何とか日本経済の崩壊を食いとどめ、自律回復まであと一歩のところまでこぎつけてまいりました。残るは、不良債権の最終処理と、金融、ゼネコン、流通業界などの再編合理化など、経済構造の改革を進めることであります。我々連立与党三党は、このような視点から、さきに緊急経済対策をまとめました。政府もその実行を約束されました。

 総理、ブッシュ大統領に述べられた決意を実現するためにも、不良債権の最終処理のための枠組みを早急に策定するとともに、緊急経済対策の具体化を図り、着実に実行していくことが不可欠であります。総理の決意を伺います。

 今回の共同声明においては、日米二国間関係の強さを再確認した、日米関係は友情、相互信頼及び民主主義という共通の価値観に基づくものである、日米同盟関係はアジア太平洋地域の平和と安定の礎であると、日米同盟関係の重要性を強調しております。日米同盟の維持発展は我が国安全保障の基本であり、日米両国首脳がその認識を再確認した意義を我々は高く評価をいたします。

 森総理も、日米安保協力において我が国の有事法制の検討に着手したことを含め、安保協力の拡大、深化への姿勢を説明するとともに、頻発する沖縄の在日米軍の事故に関し、沖縄県民の気持ちを酌む必要があると直言し、日米が協力して沖縄県民の負担軽減のため努力することで一致したと聞いております。

 さらに、ブッシュ新政権が見直しを進めている対北朝鮮政策では、日米、日米韓の連携を強化していくことで一致いたしました。この地域にかかわる問題について、自由と民主主義という価値観を共有する日米韓の三国が、共通の問題意識のもとに、緊密な連携によって問題の解決を図っていくことが極めて重要であります。

 今回の日米首脳会談において、アジア太平洋地域での諸問題、特に、対中国、対北朝鮮への対応についての日米間での政策協調の問題がどのように話し合われたのか、その成果はどのようなものであったのか、お伺いいたします。

 また、総理は、日米安保協力の拡大、深化について言及されましたが、今後、ブッシュ新政権との間で日米安保体制を一層強固なものにしていくため、どういった政策をお考えなのか、あわせてお伺いいたします。

 我が国のえひめ丸と米国原子力潜水艦との衝突事故は、まことに悲惨な事故でありました。我々は、この問題に関し、日米両国が言うべきことは言い、正すべきは正す、これが同盟国としてのきずなを築く基本であるとの立場から、米国政府に対し、事故の原因と真相の徹底的究明、沈没したえひめ丸の引き揚げ、衝突事故に関する関連情報の提供などを求めてまいりました。

 今回の首脳会談の冒頭、ブッシュ大統領は、今回の事故は深く遺憾に思う、できることはすべて行う、日本において強い感情があることは自分でもわかっている、御家族のために努力をしたいと、米国大統領として、日本に対し、心からの謝罪と、沈没をしたえひめ丸の引き揚げと家族に対する補償への努力を表明されました。我々は、大統領の気持ちを率直に受けとめます。

 今後は、えひめ丸の引き揚げと家族に対する補償に全力を挙げなければなりません。また、えひめ丸の引き揚げに当たっての技術面での協力、補償交渉が円滑に進むための協力など、でき得る限りの協力を行うべきであります。この点に関する総理の見解を伺います。

 一昨日行われました日ロ首脳会談においては、平和条約問題に関する交渉の今後の継続に関する両首脳によるイルクーツク声明が発表されました。この声明において、一九五六年の日ソ共同宣言が、両国間の外交関係の回復後の平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な文書であることを確認いたしております。

 日ソ共同宣言が条約であり、両国が批准しているにもかかわらず、ソ連、ロシアを通じ、ロシア側が明確な立場を表明してこなかっただけに、プーチン大統領がロシアの最高責任者として初めてその有効性を文書でもって確認したということは、大きな前進であります。

 しかし、共同声明後の記者会見において、日ソ共同宣言の解釈について両国間で隔たりがあり、結局、同宣言の根幹である領土条項について専門家による解読が必要と条件をつけたと聞いております。事実は果たしてどうであったのか、共同宣言の解釈で日ロに違いはあるのか、総理の明快な見解を伺います。

 今後、日ロ間の平和条約の締結と北方領土返還に向けた交渉は、これまでの流れを総括したイルクーツク声明を新たな出発点として始まることになりますが、日ソ共同宣言をめぐる日ロ間の解釈の違いがネックになることはないのか、今後どのような手順を経て、いつごろをめどに交渉を進めていくのか、また、平和条約交渉を今後も継続するということは、共同宣言において当時のソ連側が引き渡しを認めた歯舞、色丹の二島の返還のみではなく、国後、択捉を含めた北方四島の返還交渉を進めることをロシア側が認めたものと理解していいのか、総理の御見解を伺います。

 ロシアとの平和条約締結と北方領土返還交渉は、これまで一進一退の繰り返しであります。国民の対ロ不信は根強く、首脳会談のたびにうたわれたロシアへの経済協力のみが先行していくことには、国民の理解は得られないと思います。しかし、日ロ間の良好な関係を築くことは、我が国の安全にとってのみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとっても不可欠であります。

 我々は、日ロ関係の重要性を認識し、平和条約の締結と北方領土の返還に向け、粘り強く交渉を進めていくべきだと考えます。総理の日ロ交渉に臨む決意をお伺いし、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 今回の首脳会談に臨む際の決意についてお尋ねがございました。

 十九日の日米首脳会談には、ブッシュ大統領との間で、我が国外交の基軸であります日米同盟関係の重要性を再確認した上で、えひめ丸事件や両国の経済運営を含め、安保、経済、国際情勢の幅広い分野における戦略対話を通じた日米同盟関係の維持強化という二十一世紀の日米関係についての基本的な方向性を打ち出すべく、強い決意を持って臨みました。

 また、日ロ首脳会談に際しましては、プーチン大統領と培った個人的な信頼関係のもと、クラスノヤルスク合意に基づき平和条約の締結に向けて全力を傾けた結果を総括し、新たな交渉の基礎を築くべく、率直で中身の濃い議論を行いたいとの決意で臨みました。

 そして、御指摘のとおり、これらいずれの会談につきましても、所期の目的を達成し、成果を上げ得たと考えております。

 不良債権処理と緊急経済対策についてのお尋ねがございました。

 井上議員にも御尽力をいただき、与党三党において緊急経済対策を取りまとめていただきました。政府としては、これをしっかり受けとめて、断固とした対応をとってまいる所存であります。

 このため、政府・与党緊急経済対策本部を発足させ、まず、与党三党の緊急経済対策に盛り込まれたさまざまな項目について検討していくことといたしております。

 この中で、特に、株式市場の需給改善及び活性化策、企業の再生と債権放棄を一体的に行うとの観点に立った不良債権の的確かつ迅速な処理策については、その具体化を早急に検討するよう関係大臣に指示をいたしております。

 また、都市再生の実現や土地等の流動化対策についても、その具体化を早急に検討する必要があるものと考えております。

 こうした検討結果を、四月上旬をめどに政府としての緊急経済対策として取りまとめるよう、本日の閣議において指示をいたしたところであります。

 今回の日米首脳会談におけるアジア太平洋地域での問題に関するやりとりについてのお尋ねであります。

 会談では、ブッシュ大統領と忌憚のない意見交換を行い、日米同盟関係の重要性を再確認した上で、その一層の強化、二国間の当面の問題への対処につき緊密な対話を行い、協力していくことで意見が一致いたしました。

 その中で、アジア太平洋地域については、御指摘のとおり、共同声明において、日米同盟関係がこの地域の平和と安定の礎であることが示されました。とりわけ中国については、会談において、同国が国際社会において一層建設的なパートナーとしての役割を果たすよう促すことの重要性について意見の一致を見ました。

 また、朝鮮半島情勢についても、対北朝鮮政策に関し、日米二国間においても、また日米韓三国間においても、緊密な連携を維持することが重要であることを確認した次第であります。

 我が国といたしましては、アジア太平洋情勢に関し、同盟国である米国との戦略対話を強化し、この地域の平和と繁栄を支える努力を米国とともに継続していく方針であります。

 ブッシュ新政権との間で日米安保体制を一層強固なものにするための政策についてのお尋ねがございました。

 私は、十九日の日米首脳会談で、日米安保協力の拡大、深化のため、当面、新たな日米防衛協力のための指針の実効性の確保、SACOの推進等を確認いたしました。

 政府としては、日米安保体制はアジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能しているとの認識に基づき、今後とも日米安保体制の信頼性を一層向上させていくため、できる限りの努力を払っていく考えであります。

 えひめ丸の引き揚げと関係者への補償についてのお尋ねであります。

 船体の引き揚げに関し、十三日、米国政府は、詳細な計画及び環境及びその他技術的諸問題の解決は依然残されているが、引き揚げに取り組むとの決定を行っておりまして、政府としては、御家族の御要望も踏まえ、引き続き米側に対し、引き揚げについてあらゆる手だてを尽くすように求めてまいります。

 補償問題に関しましては、二月二十二日、ブレア太平洋軍司令官が、加戸愛媛県知事との会談において、今後、審問委員会の結果を受けて、責任者の処分、再発防止策と並んで補償問題に取り組む旨、述べています。また、同二十七日、ファロン特使より、補償問題に関し、米側は、今後詳細を詰め、適切な時期に取り決めたい旨、述べています。

 このように、補償問題については、米側においても問題意識を持って取り組んでおりますが、政府としましても、引き続き、米国政府に誠意のある対応を働きかけていきたいと考えております。

 今回の日米首脳会談におきましても、私より、これらの課題につき米側の努力を要請し、ブッシュ大統領は、できることはすべて行うと述べました。引き続き、本件事故について、主張すべきは主張して、きちっとした対応をする必要がありますが、同時に、日米関係の維持強化という観点も踏まえて適切に対処していく方針であります。

 日ソ共同宣言に関するお尋ねであります。

 イルクーツクにおいて、プーチン大統領より、五六年宣言の第九項の解釈をめぐり、両国の専門家の作業が必要であるとの発言があったことは事実であります。いずれにせよ、今後、イルクーツクの声明を踏まえ、日ロ間で専門家のレベルを含めさらに議論を深めていく考えであります。

 今後の交渉の手順、時期、対象についてのお尋ねであります。

 政府としては、イルクーツク声明において達成された共通の認識を基礎として、四島すべての帰属の問題について、双方に受け入れ可能な解決策をできるだけ早期に見出すべく、今後さらに日ロ間で精力的な交渉を継続する考えであります。このような考えはロシア側も共有しているものと理解をいたしております。

 今後の日ロ交渉への決意についてのお尋ねであります。

 今回の訪ロにおいて、イルクーツク声明を基礎にして平和条約交渉を加速化し、専門家のレベルやよりハイレベルの協議を必要に応じて機動的に開催していくということで意見が一致いたしました。政府としては、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、粘り強く、かつ精力的に交渉に取り組んでいく考えであります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 羽田孜君。

    〔羽田孜君登壇〕

羽田孜君 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいまの総理の御報告に関し、総理及び関係大臣に質問させていただきます。(拍手)

 質問に先立って、このたびの中国・四国地方における地震で、不幸にも亡くなられた方、被害に遭われた方々に、また地域の皆様に、心からのお悔やみとお見舞いを申し上げます。政府においては被災者支援並びに復旧に全力を挙げるよう、強く要請するものであります。

 私は、今回の日米、日ロの首脳会談について、森総理並びに関係者に対してあえて苦言を呈しなければなりません。世界も注視する日米、日ロ首脳会談が、総理大臣が一カ月後には退陣することが内外に公にされている中で開かれたことは、前代未聞であります。新世紀の両国関係を築くための会談になり得ないことは、だれもが承知しているのであります。みずからの進退を知りながら、なおかつ首脳会談に臨んだ森総理の外交感覚、国際感覚を国民の多くは疑っております。このこと自体、失政であります。最も大切にしなければならない首脳外交に対して大きな汚点を残すものであります。

 与党の中から、今回の首脳会談を総理退陣の花道だという声があります。厳しい国際政治の現実をわきまえない暴論であります。既に与党が統治能力を失っているあかしであります。

 ところで、総理が本当に日米、日ロ関係を考え、国益に思いをいたすならば、事前に野党との党首会談を開き、意見を聞くべきではないですか。共同声明を見ても、文言はありますが、魂はなく、空虚で、形式的になっています。私は、こうした首脳会談は決して国益に沿うものではなく、今後、厳に戒めるべきことと思うのであります。何ゆえ野党との党首会談を持たれなかったのか、進退問題も含めてお伺いしたいと思います。

 具体的な問題について、若干お伺いいたします。

 米原子力潜水艦によるえひめ丸の悲惨な衝突事故については、日米両国政府の誠意ある公正な対応が求められています。まさに日本政府の国民に対する責任と意思が問われていると言っても過言ではありません。原因究明、責任追及、船体の引き揚げ、被害者への支援、補償、再発防止など米側に申し入れたとのことでありますが、その結果を御報告いただきたいと思います。

 米側の約束が履行されるように政府が責任を持つことを要請いたします。この点についての見解もお聞かせください。

 ブッシュ大統領との会談では、今後の日米関係のあり方の基本的方向について忌憚のない話し合いをしたと報告されました。不良債権問題など経済問題、日米安保、朝鮮半島情勢、国連改革等のグローバルな課題など、どれも両国関係を規定する、極めて重要な課題です。これらについてどのように話し合い、どのような結論に至ったのか、御説明をいただきたいと思います。

 日米同時株安を受けて、ブッシュ大統領から経済問題で切り込まれ、不良債権問題は半年で結論との約束をされたと言われております。否、半年は財政再建の話だと、あいまいにされているのもおかしな話であります。(発言する者あり)ただいま、やじで、麻生太郎に聞けという話でありますけれども、さらにおかしなことであります。事実はどこにあるのか、何を約束されたのか、はっきりすべきであります。

 構造改革と不良債権処理は、民主党が金融国会以来指摘してきたことであり、政府・自民党が先送りしてきた問題であります。首脳会談で大統領に指摘され、決意を表明されたとの印象がぬぐえないことは、余りにも情けないことではありませんか。総理の見解を承りたいのであります。

 今後の日米関係について、改めて総理並びに関係大臣にお伺いいたします。

 まず、最近の朝鮮半島情勢をどのように認識し、今後、日米韓で具体的にどのように取り組むつもりか、さらに、米側と合意された日米安保体制の拡大強化の具体的内容、及びその枠組みにおける在日駐留米軍基地のあり方についてどのような考え方を米側に伝えられたのか、昨今の米兵をめぐる不祥事も踏まえ、沖縄米軍基地問題の協議は進展があったのかについて、それぞれ御説明いただきたいのであります。

 次に、プーチン大統領との首脳会談についてお伺いいたします。

 総理は、就任以来、実に五回もプーチン大統領と会っておられる。その割に、日ロ交渉は遅々として進まぬどころか、総理がお会いになるたびに後ずさりしてきたという印象を否めません。(拍手)今回の首脳会談で、私には、五六年の日ソ共同宣言時点に後戻りしただけではないかとの印象が強いのであります。今まで四島一括返還を要求し、政府、民間の多くの全国の皆さんが努力を傾けられ、環境づくりをされてきました。この十年の領土問題をめぐる交渉は何だったのかと国民が思うのは当然であります。

 昨年来、自民党内から、領土問題と平和条約締結を切り離すような発言や、歯舞、色丹島の二島先行返還論が言われたり、基本路線の四島一括返還論の動きを否定するなど、政府・与党におかしな言動が見られました。これでは、我が国の国益に基づいた力強い交渉ができるはずもなく、難問の北方領土問題の解決はできません。二元外交ではないかとさえ疑われます。その真意に国民が首をかしげるのも当然であります。

 今回のイルクーツク宣言で、一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約締結の基本的な法的文書と位置づけられました。しかし、肝心の領土問題については、プーチン大統領は専門家による解読作業が必要だとして、日ロ間で解釈が異なることなどが露呈されました。これほど重要な宣言で解釈が異なるようでは、領土交渉の先行きが思いやられます。なぜ、これが成果と言えるのでしょうか。また、今回、新たな交渉期限の設定についての合意はできませんでした。

 今後の検証の方針、日程、展望はあるのかどうか、北方領土返還と平和条約締結に取り組む基本方針とあわせて、外務大臣の見解を伺いたいのであります。

 民主党は、一日も早く北方領土の帰属問題を決着し、戦後の不自然な両国関係を終結させることを心の底から望むものであります。そして、安全保障、経済、文化などさまざまな分野で日ロ関係を発展させていくことが、地域の平和と繁栄に貢献し、日ロ双方にとって共通の利益となっていくものと認識しています。

 私は、昨年八月に国後、色丹島を訪問し、現地の方々と親しくお話しする機会がありました。九四年の地震の傷跡がいまだ残り、住民が困難な生活を強いられている現実を目の当たりにしてきました。昨年、プーチン大統領が来日された際に、私からこの現状をお話ししたところです。北方四島が返還された将来には、両国の友好のかけ橋となることを確信するものであります。真摯な対話を通じて、一日も早い解決を願わずにはおられません。

 最後に、私は、森総理に申し上げたい。

 総理の退陣が既に動かしがたい既定の事実で、首脳会談を行っている間も、いつ退陣か、だれをどう選ぶのかということばかりが自民党内で語られることが聞こえてまいります。連立与党の責任者でさえ、新しい体制をとの発言が続けられているのであります。まさにこのことが政治空白そのものであるということを皆さんは気づくべきであります。(拍手)

 国民の支持を失ってしまった総理は、即刻退陣はもちろん、総辞職すべきであります。与党による政権のたらい回しは許されないのであります。与党は下野し、野党に政権をゆだね、早急に解散・総選挙によって国民の手で新たな政権をつくることがあなたの最後の果たすべき責任であることを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 初めに、私の進退の問題と絡めて、今般の日米及び日ロの首脳会談の成果につき否定的な見解の表明がございました。

 もとより首脳会談は、個人としての資格において行うものではなくて、それぞれ国を代表する大統領あるいは首相として会談に臨んでいるものでありますので、総理、外務大臣を御経験された羽田さんらしくない御意見だなということを、今伺っておりました。(拍手)

 また、そもそも私の訪米、訪ロ自体に否定的な立場をとっておられた野党の皆さんと党首会談を行ったとしても、果たして参考になるような御意見をいただけたのでしょうか。

 また、一連の首脳会談については、私は大きな成果を上げたと考えております。

 日米首脳会談については、ブッシュ大統領就任後、初めて日米首脳同士が直接会う貴重な機会でありまして、私は、二十一世紀の日米関係の基本的方向性を打ち出すべく、強い決意を持って会談に臨みました。

 その結果、共同声明に盛られた事項を含め、日米が、両国の経済運営を中心とする二国間問題のみならず、幅広い分野における対話を通じた政策協調を通じ、世界の平和と繁栄のために協力していくことを確認するとともに、今後とも日米同盟関係を維持強化していくとの基本的な方向について確認できました。

 また、日ロ首脳会談に際しましては、プーチン大統領と培った信頼関係のもとに、クラスノヤルスク合意に基づき平和条約の締結に向けて全力を傾けた結果を総括し、新たな交渉の基礎を築くべく、率直で中身の濃い議論を行いたいとの決意で臨みました。

 その結果、イルクーツク声明で明らかにされているとおり、五六年の日ソ共同宣言を交渉の出発点とし、その上で、九三年の東京宣言に基づき四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認し、これまでの交渉の姿を明確な形で総括することができました。そして、あり得べき最も早い時点で平和条約締結へ向けた前進の具体的な方向性を決定することで一致した次第であります。

 えひめ丸衝突事件に関し、原因究明、引き揚げ、補償等、今後の課題への取り組みについてのお尋ねがありました。

 米側は、この事故に関するあらゆる責任を有する旨表明しており、政府としては、引き揚げ及び補償といった今後の課題につき、必要に応じ専門家の派遣等の協力を行いつつ、米側に対し適切な対応を求めてきております。

 今回の首脳会談におきましても、私より、引き続き原因究明、引き揚げ及び補償等についての努力を申し入れました。ブッシュ大統領からは、深い遺憾の意を示すとともに、できる限りのことを行う、御家族のために努力したいとの発言がありました。

 また、日米会談後、私は、ホノルルにおいて、御家族の皆さんとともに事故現場に赴き、御家族のお気持ちを踏まえて、政府として引き続き全面的な支援をしていく決意を新たにいたした次第であります。

 日米首脳会談での会談内容と結論についてのお尋ねであります。

 私は、ブッシュ大統領との間で、御指摘のとおりの幅広いテーマにつき率直な意見交換を行いました。

 まず、経済分野では、ブッシュ大統領より、米国経済を再び成長させるため、財政、金融、貿易政策を活用していきたいとの発言があり、さらに、日本経済の早期回復のための金融改革の推進や不良債権問題解決への期待の表明がありました。

 これに対し、私より、米国経済の減速傾向がアジア経済に影響を与えている旨指摘し、さらに、日本経済の現状と景気回復に向けた政府の取り組みを説明し、構造改革及び規制改革を精力的に促進する決意を再度述べました。

 さらに、私とブッシュ大統領は、経済、貿易分野での日米間の対話を強化するための新たな方策の探求のための協力や、WTO新ラウンドの本年立ち上げに向けた協力についても意見の一致を見ました。

 日米安保については、日米同盟関係及びこれに基づく米国のプレゼンスの重要性につき意見をともにし、日米安保協力の拡大、深化のため引き続き協力していくことといたしました。

 また、沖縄に関する諸問題につき、SACOプロセスを引き続き実施することを確認し、緊密に協力することでも意見の一致を見ました。

 さらに、対北朝鮮政策について、日米韓の三国間の協調を進めることを確認し、また安保理改革についても、今後とも緊密に協力していくことで一致を見ました。

 ブッシュ大統領と経済問題で何を約束したのかとのお尋ねであります。

 不良債権処理問題については、私からブッシュ大統領に対し、政府・与党緊急経済対策本部において不良債権の処理問題に焦点を当てて取り組んでいることなどを説明いたしましたが、半年で結論を出すと約束したことはございません。私が半年程度と述べたのは、経済財政諮問会議での議論において、我が国の財政を含む構造問題の方向性について、今後半年程度で議論の成果が得られるのではないかとの点でございます。

 なお、日米共同声明に明記されたとおり、政府としては、我が国みずからの問題として構造改革を精力的に促進する決意であり、この点につき、大統領に言われて決意表明させられたとの御指摘は当たりません。

 朝鮮半島情勢についてのお尋ねであります。

 朝鮮半島をめぐっては、昨年来、前向きな流れが見られますが、政府としては、このような機会を逃さず、先般のブッシュ大統領と私の間の首脳会談でも再確認されたとおり、日米韓の緊密な連携を維持しつつ、北朝鮮が国際社会に対して前向きの対応をとるように働きかけていく考えであります。

 日米首脳会談における日米安保に係るやりとりについてお尋ねがありました。

 まず、私とブッシュ大統領の間で、日米同盟関係及びこれに基づく米国のプレゼンスの重要性につき意見が一致し、一九九六年の日米安全保障共同宣言等に基づく取り組みを引き続き実施することの必要性を再確認いたしました。具体的には、日米安保協力の拡大、深化のため、当面、新たな日米防衛協力のための指針の実効性確保、SACOの推進等を確認いたしました。

 また、在沖縄米軍施設・区域の問題に関しては、私より、在日米軍の前方展開は地域の平和と安定にとり重要である旨述べるとともに、事件、事故の頻発については、沖縄県民の負担への配慮が重要であり、県民の気持ちを酌む必要がある、安全保障については、国際情勢を踏まえて対応する必要がある、一九九六年の安保共同宣言のフォローアップ、SACO最終報告の実施、日米地位協定の運用改善等を通じ、双方で協力して沖縄の負担軽減に努めたい旨、述べたところであります。ブッシュ大統領とは、沖縄に関する諸問題について引き続き緊密な協力を行うこととし、この旨、共同声明にも盛り込んだところであります。

 日ロ首脳会談についてお尋ねがありました。

 今回のイルクーツク声明においては、五六年の日ソ共同宣言は、平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書として位置づけられました。これまでの歴史の中で、ソ連、ロシア側がこの宣言の有効性を否定していた時期があることを踏まえれば、このこと自体、極めて意味があることと考えます。また、イルクーツク声明は、その上で、九三年の東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことも再確認をいたしました。

 したがって、五六年の時点に後戻りしたとの御指摘は当たらず、イルクーツク声明により、今後の平和条約交渉に新たな基礎を形成することができたと考えております。

 平和条約交渉の基本方針についてお尋ねがありました。

 北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのが、日本政府の一貫した方針であります。この点においても政府・与党は一体であり、二元外交との御指摘は当たりません。

 日ソ共同宣言の解釈について、御指摘のプーチン大統領の発言は、今回のイルクーツク声明を踏まえ、歯舞、色丹の問題についてさらに議論を深めていく必要があるとの趣旨を述べたものと理解しております。

 イルクーツク声明では、五六年の日ソ共同宣言が平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認し、その上で、九三年の東京宣言に基づき四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認いたしております。また、あり得べき最も早い時点で平和条約締結に向けた前進の具体的方向性を決定することで一致いたしております。

 政府としては、同声明で達成された共通の認識を基礎とし、四島すべての帰属の問題について双方に受け入れ可能な解決策を見出すべく、今後さらに日ロ間で精力的な交渉を行ってまいります。

 最後に、私の出処進退について御指摘がありました。

 昨日、平成十三年度予算が成立をいたしました。私としては、引き続き予算関連法案その他重要法案の一日も早い成立に全力を尽くすとともに、最近の厳しい経済情勢を踏まえ、政府・与党一体となって四月上旬をめどに緊急経済対策を取りまとめることが現内閣の責務であると考えます。私としては、目下、こうした諸問題に全力を挙げて取り組むことしか念頭にないことを申し上げておきたいと思います。

 なお、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)

    〔国務大臣河野洋平君登壇〕

国務大臣(河野洋平君) 朝鮮半島情勢についてのお尋ねがございました。

 ブッシュ新政権は、現在、北朝鮮政策を見直しているところでありまして、現時点においてその政策がどのようなものになるかは明らかではありませんが、さきの日米首脳会談後に発出された共同声明におきまして再確認されましたとおり、今後とも、対北朝鮮政策の遂行に当たっては、日米韓三カ国間において緊密な連携を維持することが特に重要であり、昨日もソウルで、北朝鮮問題に関する日米韓三カ国調整グループ会合などが行われております。こうした場を通じまして、かかる連携を維持しつつ、今後とも対北朝鮮政策に取り組んでいきたいと考えております。

 日米首脳会談における日米安保に係るやりとりについてお尋ねがございました。

 先般の日米首脳会談におけるやりとりは、既に総理からお述べになったとおりでありますが、私も、二十三日、来日中のブレア太平洋軍司令官に対しまして、日米首脳会談を受けまして、日米両国の協力の重要性を確認するとともに、沖縄における最近の事件、事故を取り上げつつ、沖縄の負担を軽減することにつき意見を述べたところでございます。

 平和条約交渉についてお尋ねでございました。

 先般の首脳会談では、五六年の日ソ共同宣言を交渉の出発点とし、その上で、九三年の東京宣言に基づき四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認し、これまでの交渉の姿を明確な形で総括することができたと考えます。

 御指摘の交渉期限につきましては、平和条約締結に向けた具体的方向性をあり得べき最も早い時点で決定することに合意したところであります。

 私は、このような形で、今後の平和条約交渉の新たな基礎を築くことができたものと考えております。

 また、会談におきまして、プーチン大統領は、日ロのすべての問題を、双方の名誉と尊厳が満たされるような解決に早く導きたいとの熱意、誠意を示されたと承知をいたしております。

 政府としては、今回の首脳会談の結果を踏まえまして、この問題について、双方に受け入れ可能な解決策を見出すべく、今後さらに日ロ間で精力的な交渉を行っていく考えであります。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 西村眞悟君。

    〔西村眞悟君登壇〕

西村眞悟君 私は、自由党を代表して、森総理大臣の米国及びロシア訪問に関する報告に対して質問をいたします。(拍手)

 首脳外交は、お互いに国益を背負った礼服を着た戦闘とも言われるものでございます。しかるに、その直前に、国家主権の象徴たる政府専用機の機内で、やめる時期を聞かれて目的地に向かう国家の代表は、日本以外のどこにもおりません。ボクサーがリングに上がるときに引退時期を聞かれてそれに答えていれば、試合に負けるのは当たり前でございます。それと同じでございます。事実、森総理は、父上の眠るイルクーツクで負けたのでございます。

 私は、総理に、国家を背負って立つ者の気力の衰えを感じます。気力が衰えた者が国家を代表すれば、甚だしく国益を害するのは当然であります。与党内で何を言われておろうが、国民と相手国の首脳は、森総理の総理大臣の地位にふさわしい気力と誠意を注視しているのであります。

 よって、今回の首脳会談に際し、総理に、気力にもとることなかりしか、また、外交をみずからの延命手段に用いるという誠意にもとることなかりしか、国民に弁明していただきたいと存じます。(拍手)

 さて、日ロ外交は、国内の認識不足と意思分裂のために戦後最大の危機にあると思われます。対ロ交渉に重点を当てて御質問をいたします。

 なぜなら、我が国は、一九九〇年代に入り、いつの間にか四島一括返還という主張をトーンダウンさせており、七十億ドルを超す経済支援をしたあげく、今までいかに不利な状況においても堅持してきた領土に関する法と正義の立場を、クラスノヤルスクから川奈に至る一連の会談で放棄したと思われるからでございます。

 そこで、原点に戻って、以下の点を総理に確認したいと存じます。

 一、ソ連を含む連合国の発した大西洋憲章は、領土不拡大を明記しており、これこそソ連を継承した現在のロシアを拘束するものである。いわゆるヤルタの密約は、米英ソ首脳、すなわち、ルーズベルト、チャーチル、スターリンの意図の表明にすぎず、国際法上、領土移転の効力を持つものではない。

 二、日ロ間での千島の定義は、既に一八七五年に千島樺太交換条約において確定しており、それは得撫以北十八島である。

 三、したがって、日ロの国境線は、既に得撫と択捉の間に存在する。

 さらに、一、国境線とは、領土が画定して初めて、それを前提として技術的に定むるものである。したがって、領土画定なき国境線とはそもそも論理矛盾であり、仮に領土画定なき国境線があると思い込んでも、その線は法的に無効であり、幻である。

 二、ところで、ロシアは領土の画定よりはまず国境線の画定をとたびたび主張してきたところ、これを川奈で日本側が受け入れたということは、論理的に無効なるものの画定を受け入れたこととなると同時に、北方領土に関する我が国の法的地位の不確定をも受け入れたことになる。したがって、川奈における日本の提案は領土の原点から大幅に後退したものであり、この提案が維持される限り、我が国は、ロシアに対し北方領土に関する法と正義の立場を失い、以後、ロシアに対しては不法占拠という言葉を使えなくなる。

 三、よって、クラスノヤルスクから川奈に至る日ロ会談は、国家における領土の重要性にかんがみると、戦後日本外交最大の失策である。

 この認識について総理にお伺いしたいと存じます。(拍手)

 我が国は、エリツィン大統領にさらに十五億ドルを提供し、川奈会談をセットしたのでありますが、その後、ロシア側は小渕総理に、川奈提案は受け入れることができないと通告し、さらにプーチン大統領は、クラスノヤルスク合意は努力目標であると表明したのであります。よって、このロシアの態度の変更に応じて、我が国も、川奈提案を白紙に戻し、幻の国境線画定などの迷路への誘導にごまかされず、領土問題解決の原点、つまり、法と正義の立場に立ち返るべきであります。

 総理は、クラスノヤルスク会談と川奈提案を今後維持すべしと考えておられるのか、御所見をお伺いしたいと存じます。

 日本国内には、現在に至るも、時々、ロシアに迎合するように、二島返還論や平和条約と領土の分離論などが浮上しておりますが、一九五六年以来のロシアのたび重なる態度変更を眺めれば、利を得れば態度を豹変さすはロシア外交の常套であり、二島返還論や条約と領土の分離論を打ち出せば、ロシアの術策にはまり、我が国からの経済支援だけが実行され、四島はおろか二島も返らないと心得るべきであると存じますが、総理の見通しを述べていただきたいと存じます。

 一九五六年の日ソ共同宣言は、十年以上、シベリアに抑留された多数の日本兵捕虜を人質にされ、サケ・マス漁業禁止区域を一方的に設定され、国連加盟には拒否権を行使され、さらには、スターリンの呼びかけによって国内の分裂という、想像を絶するソ連側の一方的な圧力のもとで、日本側松本全権がよく耐え続けた末、締結されたものでございます。

 この共同宣言が有効であると今さらプーチン大統領が当たり前のことを言ったことがニュースになること自体、ロシア外交の本質を雄弁に物語っているのでございます。

 そして、四十五年前のあやふやな確認しかニュースにならない今回の日ロ交渉は、田中内閣が粘りに粘ってたどり着いた、平和条約の障害は北方領土ただ一点、しかも四島一括返還という線を捨て去り、あの四十五年前の極めて不利益な状況下に逆戻りさせることを確認したにすぎない完全な敗北でございます。

 イルクーツクでの会談は、ロシア側は弱体化した森総理との会談に応じたこと自体で日本側に貸しをつくることとし、日本はマイナスのみ与えられた状態であります。国益の毀損、甚だしいものがございます。総理をロシアに行かすべきではなかったと私は判断しておりますが、総理の弁明をお聞かせいただきたいと存じます。

 プーチン大統領は、我が国に冷水を浴びせるかのように、当の森総理大臣の主催する沖縄サミット直前に、北朝鮮を訪れて、北朝鮮のミサイルは平和的性質のものであると発言して友好善隣条約を締結し、中国とは戦略的パートナーシップを確認し、韓国とは京義線をシベリア鉄道まで連結させる協議を行うなど、極東において帝政ロシアの日清、日露前夜のような外交を展開し、さらに、ロシアは聖なる我らの大国、南方の海から北極の地域まで我らの森と平原がつながるという歌詞で、スターリンの制定したメロディーを持つロシア連邦国歌を復活させ、現代のロシアにおいても、その権力の大国意識と伝統的支配圏への執着はソ連並びに帝政ロシア時代と変わらないことを露骨に示してきた指導者でございます。

 このようなロシアが不法占拠する北方領土の返還交渉は、一九五六年に比べて格段に増大した我が国の国力と国際的存在感を背景にして、冒頭に述べた法と正義の原則を堅持し、功名心にとらわれてロシアの態度変更に惑わされて飛びつくことなく、方針を一貫させることによってのみ必ず解決できると私は考えますが、総理の今回の交渉を経た教訓を前提にした御見解をお伺いしたいと存じます。

 さて、アメリカとの関係でございますが、我が国が細心の注意を払うべきは、アメリカ大衆の心理の動向でございます。

 憂慮すべきは、総理訪米前に、アメリカの株安は我が国経済の停滞が原因とする論調が世界的に流れ始めたことでございます。

 しかし、アメリカの株安は、我が国の責任ではありません。アメリカは、この十年、我が国の不況をしり目に右肩上がりの株式市場の好況を謳歌してまいりました。仮に我が国の不況がアメリカ株安の原因とするならば、アメリカのこの十年の好景気の説明がつかないのでございます。

 総理はこのことをブッシュ大統領及びアメリカ大衆に明確に説明されたのかどうか、お尋ねいたします。

 しかしながら、アメリカ国民の貯蓄傾向はゼロ以下のマイナス、つまり借金で、大衆の五割以上が株投資をしております。この極めてもろい状況下で、アメリカは、昨年四月から株が下落傾向を続けているのでございます。このことは、アメリカ大衆の所得が大幅に減少していることを意味し、ここにおいて、アメリカ大衆が、みずからの所得減少の原因を、責任を、理屈を抜きにして感情的に日本に転嫁する土壌ができ上がりつつあると言わざるを得ません。

 この状況は、戦前の日米敵対の始まりというべき、不況にあえぐアメリカ大衆の日本移民排斥・日本人排斥心理の高まりという歴史を見るまでもなく、極めて重大で、危惧されるものでございます。

 この意味で、森総理が大統領に言われるままに我が国不良債権の償却を約束してきたことは、それ自体がよい悪いはともかく、下手をすれば、アメリカ大衆の中に潜在する心理的な株安・生活苦日本原因論に火をつけかねないと憂慮されるのでございます。まさにこのアメリカ大衆の心理の動向こそ、日本が細心の注意を払うべき外交的課題であると存じます。この点に関して総理の御所見をお伺いしたいと存じます。

 総理が訪米する前に、北朝鮮に拉致された日本人の家族がブッシュ新政権に側面支援の要請に訪れておりましたが、総理は、ブッシュ大統領との会談で、北朝鮮による日本人拉致問題を話題にされたのかどうか、されたとしたら、その応答の内容を明らかにしていただきたいと存じます。

 最後に、日米同盟を重視し、日米の成熟したパートナーシップを掲げるブッシュ新政権との関係において、真に日米共同して我が国が東アジアの安定要因としての役割を果たすためには、我が国において、集団的自衛権は保有するが行使できないというがごとき、まことに奇妙な法解釈を変える決断が不可欠と存じますが、総理はその決断なくしてアメリカに行かれたのか、それとも、その決断をされているのか、これからされるのか、安全保障の問題でございますから明確に御答弁されますようにお願いいたします。

 以上、総理大臣の地位にふさわしい御答弁を期待申し上げ、私の質問を終えます。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 今回の首脳会談に臨んだ際の心構えについてのお尋ねがございました。

 十九日の日米首脳会談は、ブッシュ大統領就任後初めて日米の首脳同士が直接会った貴重な機会でありまして、私は、日本国民を代表する総理として、ブッシュ大統領との間で、日米同盟関係の重要性を再確認した上で、えひめ丸事故や両国の経済運営を含め、安保、経済、国際情勢の幅広い分野における戦略対話を通じた日米同盟関係の維持強化という二十一世紀の日米関係についての基本的な方向性を打ち出すべく、強い決意を持って会談に臨みました。

 また、日ロ首脳会談に際しては、プーチン大統領と培った個人的な信頼関係のもと、クラスノヤルスク合意に基づき平和条約の締結に向けて全力を傾けた結果を総括し、新たな交渉の基礎を築くべく、率直で中身の濃い議論を行うとの決意で臨みました。

 以上述べたように、私は、日米、日ロ首脳会談に際し、気力と誠意を持って臨みましたが、このような心構えはブッシュ及びプーチン両大統領にも通じたと考えられ、首脳同士、率直かつ忌憚のない会談を行うことができ、その結果、おのおのの会談において、その所期の成果を十分達成することができたと考えております。

 なお、御質問の中で、気力にもとることなかりしかとのお言葉がございました。旧海軍兵学校の五省からの引用ではないかと拝察をいたしておりますが、これは、気力はなくなるとか欠けるというものであって、もとるというものではないのではないかということを感じました。念のため申し上げておきます。

 大西洋憲章及びヤルタ協定についてお尋ねがありました。

 一九四一年に発出された大西洋憲章は、第二次大戦後の敗戦国処理方針として、米英両国が領土等の拡大を求めない方針を規定しましたが、これは他の連合国の賛同を得、第二次大戦における連合国の重要な指導原則となったものであります。

 米英ソ三国により署名されたヤルタ協定には、千島列島のソ連への引き渡しが規定されておりますが、これは当事国による領土問題の最終的処理につき決定したものとは考えられず、領土移転のいかなる法律的効果を持つものではありません。また、そもそも我が国は同協定に参加していないので、いかなる意味でもこれに拘束されることはないとの考えであります。

 千島の定義についてお尋ねがありました。

 一八五五年の日露通好条約により択捉島と得撫島との間に日露間の国境が定められ、一八七五年の樺太千島交換条約において、我が国がロシアから譲り受ける千島列島として得撫島以北の十八の島々の名が列挙されております。

 これらの事実は、我が国固有の領土である北方四島が、一八七五年の樺太千島交換条約によってロシアから譲り受けた千島列島とは明確に区別されていたことをはっきりと示しているものと考えます。

 日ロの国境線についてお尋ねがありました。

 北方四島は我が国固有の領土でありますが、得撫島以北の諸島である千島列島については、サンフランシスコ平和条約により、我が国はすべての権利、権原及び請求権を放棄しました。しかし、平和条約は、これが最終的にどこに帰属するかについては何も決めておりません。したがって、この地域における日ロ間の国境は未画定の状態にあると認識をいたしております。

 国境線と領土との関係についてのお尋ねでありますが、日ロ間の国境が択捉島と得撫島との間で画定されれば、北方四島の帰属の問題も当然に解決することになります。逆に、四島の帰属の問題の解決を伴わない日ロ間の国境の画定はあり得ません。

 川奈提案についてお尋ねがありました。

 昨年九月のプーチン大統領訪日の際、私は、九八年四月の川奈首脳会談でのやりとりをも踏まえ、得撫島と択捉島の間に日ロ間の国境を画定することを核として、双方にとってぎりぎりの受け入れ可能な方法を見出したいとの考えを述べました。これは、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという我が国の一貫した方針に沿ったものであり、四島に関する我が国の法的地位の不確定を認めたということでは全くありません。

 クラスノヤルスクから川奈に至る日ロ関係についてのお尋ねでありました。

 この間、日ロ両国は、平和条約の締結に向けて全力を尽くしました。残念ながら、二〇〇〇年末までに平和条約の締結には至りませんでしたが、両国が全力を尽くした結果は今回のイルクーツク声明にあらわれており、この交渉の流れは決して失策ではありません。今後とも、政府としては、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、精力的な交渉を行っていく考えであります。

 また、その一方で、北方四島をめぐる協力を含め、両国関係は幅広い分野において大きく進展してきています。日ロ両国が真に安定的な関係を構築することは、北東アジアの平和と安定にとっても有意義であり、クラスノヤルスク首脳会談以降の幅広い分野での日ロ関係の進展は、日ロ双方の戦略的、地政学的利益に合致するものと確信をいたしております。

 クラスノヤルスク合意と川奈合意の今後の扱いについてのお尋ねでありますが、クラスノヤルスク首脳会談以降の交渉においても、四島の帰属の問題を解決し平和条約を締結するとの我が国の一貫した方針に何ら変更はありません。

 クラスノヤルスク合意については、先般の私の訪ロの際、この合意に基づいて二〇〇〇年までに平和条約を締結すべく両国が全力を尽くした結果をイルクーツク声明において総括いたしました。

 川奈合意は、平和条約が東京宣言第二項に基づき四島の帰属の問題を解決することを内容とすべきことで一致したというものであり、法と正義はこの東京宣言第二項において交渉指針の一つとされております。

 政府としては、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するため、今後さらにロシア側との間で精力的な交渉を継続していく考えであります。

 二島返還論等についてお尋ねがありました。

 政府としては、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結するという一貫した方針を堅持しており、今後とも、このような方針に基づいて交渉を進めていく考えであります。御指摘のような二島返還論や条約と領土の分離論を政府として打ち出したことはなく、また、そのような考えもございません。

 今回の首脳会談の評価についてであります。

 イルクーツク声明においては、五六年の日ソ共同宣言が平和条約交渉の出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認し、その上で、九三年の東京宣言に基づき四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結すべきことを再確認いたしました。

 したがって、昔の状況下に逆戻りしたとの御指摘は当たらず、イルクーツクの声明により、今後の平和条約交渉の新たな基礎を形成することができたと考えております。

 法と正義について指摘がありました。

 四島の帰属の問題を法と正義の原則を基礎として解決しなければならないという点については、御指摘のとおりでありまして、今回、ロシアとの間で合意したイルクーツク声明においても、法と正義を交渉指針の一つとして明記している東京宣言に基づいて今後の交渉を促進するということで合意をいたしております。

 政府としては、この原則を堅持しつつ、今後とも、ロシアとの間で粘り強い交渉を継続していく考えでございます。

 我が国の不況が米国の株安の原因でないことをブッシュ大統領や米国民に説明したのかとのお尋ねでありますが、私は、そのような説明はいたしませんでした。

 私は、我が国の景気の改善に足踏みが見られ、米国においても景気の減速が鮮明になってきているこの時期に、日米両国間でそれぞれの経済政策及び経済運営について首脳レベルで政治意思を確認することが最も重要と考えており、首脳会談ではこのような所期の目的を達成できたと考えております。

 日米首脳会談における不良債権の問題との関連で、米国民の心理動向に細心の注意を払うべきとの御指摘であります。

 そもそも、今回の首脳会談では、不良債権問題への効果的な対処等、我が国の取り組みにつき説明はいたしました。私がブッシュ大統領に不良債権の償却を約束してきたとの事実はございません。

 また、我が国の外交政策上、相手国の国民感情や心理動向に十分配慮することは当然なことでありまして、今回の首脳会談においても、両国及び世界経済の安定のために日米間で協力することにつき首脳間で政治意思を確認できたことは、日米両国民との関係でも大きな成果の一つであったと考えております。

 北朝鮮による日本人拉致容疑問題についてのお尋ねでした。

 日米首脳会談において、北朝鮮に関し、日米二国間においても、また日米韓三国間においても、緊密な協議と調整を維持することが特に重要であることを再確認した上で、私は、ブッシュ大統領に対し、日朝国交正常化交渉と関連をして日本人拉致容疑問題も避けて通れない重要な問題である旨は説明いたしております。

 集団的自衛権の行使についてお尋ねがありました。

 集団的自衛権については、政府としては、我が国が国際法上、集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上、当然でありますが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 山口富男君。

    〔山口富男君登壇〕

山口富男君 日本共産党を代表して、日米、日ロ両首脳会談について、森総理に質問いたします。(拍手)

 質問に先立って、二十四日、中国・四国地方などを襲った芸予地震によって亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、被災された皆様に対し心からお見舞いを申し上げます。

 また、災害救助法を速やかに適用し、個人宅地の擁壁、私道、住宅の補修への特別の支援措置など、被災者支援と災害の早期復旧に全力を挙げることを関係機関に求めるものです。

 総理、私たちは、与党向けには事実上の退陣表明を行い、国の内外で政権担当能力を失っているあなたが首脳会談に臨むことを、無責任のきわみであり、国民の利益を損なうと批判してきました。会談の結果は、言うべきことは言わず、国民に多くの重い負担を残しただけであります。

 まず、日米首脳会談です。

 米原潜によるえひめ丸沈没事件で、あなたがいきなり米側の対応に感謝したことに、国民は唖然としました。米海軍の無謀な訓練が引き起こした事故で、えひめ丸にはいささかの過失もない。それでも感謝を表明したからです。

 こうした態度は、自民党中心の政権に一貫したものです。事故を引き起こした米軍の無謀な訓練は、海軍だけではありません。国内での米軍による夜間離着陸訓練、超低空飛行訓練、そのすべてが日本国民に耐えがたい被害をもたらしているのであります。しかも、あなた方は、これに抗議したり、やめさせたり、また、日米地位協定の改定を提起したこともありません。

 総理、あなたが日米同盟に影響を与えないと言うたびに、その背後で、米軍の訓練による国民の痛みが続いているのではありませんか。総理は、今回の会談でも、これらの問題を一切取り上げませんでした。米軍の無謀な訓練を我慢するのは当然、これがあなた方の立場だからなのですか。

 米兵による凶悪犯罪が相次ぐ沖縄県では、県議会が、海兵隊の兵力削減を求める意見書を採択し、県も、訪米前の総理に、兵力削減を協議するよう求めました。ところが、総理は、県民の具体的要望に触れないばかりか、共同声明に、米軍のプレゼンスが地域の安全にとって不可欠と書き込みました。あなたには、県民の声に耳を傾け、海兵隊の削減を米側に要求する意思はないのですか。

 また、普天間基地にかわる新基地の使用期限十五年間問題について、米大統領が正式に困難と述べ、否定したことは重大です。そもそも使用期限十五年は、沖縄県と地元名護市が辺野古沖への基地移設受け入れの前提条件としたものです。その前提が崩れた以上、普天間基地の無条件返還を求めて米側と改めて交渉するというのが筋ではありませんか。にもかかわらず、引き続き取り上げるというのは、県民を欺くだけではありませんか。(拍手)

 経済問題での対米公約も重大であります。

 我が国経済の回復を図ることは、国政上の緊急課題です。ところが、あなたは、米側から不良債権問題の処理を求められると、即座に、不良債権が最大のネックと答え、共同声明では、企業債務及び不良債権問題に効果的に対処、日本経済の再生及び金融システム強化のための構造改革、規制改革の促進を約束してしまったのです。これは、国政上の重大問題である日本の経済政策を国会に諮ることなく対米公約という形で示した点でも、政策の中身の点でも、無責任きわまりないものです。

 米側からの注文は、これまでも、日本経済と国民の暮らしに重大な打撃を与えてきました。政府は、この十年、内需拡大をめぐる二回の対米公約を行い、その圧力に屈して、総額先にありきの公共投資基本計画を膨らませ、むだと浪費を生む大型公共事業への膨大な財政出動を繰り返してきました。その結果が、国、地方合わせ六百六十六兆円にまで膨れ上がった財政赤字です。総理、これが対米公約の結果ではありませんか。

 対米公約の一つ、不良債権の早期処理、最終処理とは、直接償却による処理を期限を切って進めることではありませんか。そのやり方は、突き詰めれば、債権の放棄か、融資の打ち切り、回収による企業倒産かということになるのではありませんか。

 既に、ゼネコンを中心に大企業は、銀行から巨額の債権放棄を受け、その際、不採算部門の切り捨てや従業員の削減など、激しいリストラを行っています。中小企業への融資打ち切りなどによる倒産も増大しています。あなたは、これらを一気に進めようというのですか。

 さらに、総理は、金融問題について、株式市場の需給改善及び活性化策の具体化を早急に検討すると述べました。しかし、その中心は、株式買い上げ機構をつくり、銀行が保有している大量の株を買い上げ、損失が出たら税金で穴埋めするものではないのですか。株投機の損失を国民の税金で穴埋めするような政府が世界のどこにあるのですか。

 バブル崩壊後の不良債権の処理が進まず、株価が下落している一番の原因は、実体経済の十年にわたる冷え込みにあります。不況が新たな不良債権と株価下落を呼び込んでいるのです。実体経済の立て直しを図る本格的な政策抜きに、不良債権が最大のネックと見立てる総理の対応では、経済の苦境の原因と結果を取り違え、経済と国民生活を打ち壊します。まして、事実上のインフレ政策への転換を図り、結果として個人消費への打撃をもたらす日銀の量的緩和策を歓迎するあなたの態度は、新たな国民犠牲に道を開くものと言わなければなりません。

 日本経済再生のために、我が党は、二十三日、経済危機打開への緊急提言を発表いたしました。今、必要なことは、我が党の提唱する消費税三%への減税など、国民の消費、購買力を直接高める対策を緊急、大胆に推進することです。

 ところが、森自公保政権がやろうとしているのは、不良債権処理、株価対策の名目で国民の税金投入を図るなど、相変わらずの大銀行とゼネコン応援の従来型対策ではありませんか。これでどうして個人消費が伸びるのですか。これでは、国民生活も日本経済の再建も望めないのではありませんか。(拍手)

 次に、日ロ首脳会談です。

 日ロ間の領土問題の出発点は、日本の歴史的領土への、第二次世界大戦の戦後処理におけるスターリンらの大国主義的な侵犯を是正することにあります。私たちは、この国際的な大義を明確にした対ソ・対ロ交渉を一貫して主張して、千島列島全体の返還を求め、みずからその交渉にも当たってまいりました。

 そこで尋ねます。あなたは一体どういう根拠と大義を示してロシアとの領土交渉に当たったのですか。

 さらに、歯舞、色丹は、北海道の一部であり、本来、平和条約の締結以前にも日本に返還されるべきものです。あなたは、今回のイルクーツク声明で、平和条約締結後に歯舞、色丹を返還するとした一九五六年の日ソ共同宣言を基本的な法的文書と位置づけましたが、平和条約締結以前の歯舞、色丹の返還の道をふさぐおつもりなのですか。総理の答弁を求めます。

 最後に、私は、森内閣が即時退陣することこそ、経済を立て直し、我が国が国際的な信頼を回復する活路であることを指摘し、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 米空母艦載機の夜間着陸訓練等の米軍による訓練及び日米地位協定に関してのお尋ねがございました。

 NLP等の米軍による飛行訓練については、パイロットの練度維持及び向上のために重要なものであり、政府としては、その中止を求める考えはありません。

 他方、米軍は訓練に際し、我が国の公共の安全に妥当な考慮を払って活動すべきものであることは言うまでもなく、政府としても、従来より累次の機会に、米側に対し、地元に与える影響を最小限にとどめるよう申し入れをいたしております。

 また、日米地位協定の問題については、先般の日米首脳会談でも、私から、日米地位協定の運用改善等を通じて日米で協力して沖縄の負担軽減に努めたい旨、ブッシュ大統領にも述べているところでもあります。

 いずれにせよ、政府としては、今後とも、国民の皆様の御理解を得つつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用の確保のため一層努力していく考えであります。

 普天間飛行場の移設に関するお尋ねがありました。

 今回の日米首脳会談において、私から、普天間飛行場移設に向け引き続き協力をお願いしたい、地元首長からの使用期限の要請があったことについては、引き続き取り上げる考えであり、今後、国際情勢の変化に対応して、普天間飛行場代替施設を含め、在沖縄米軍の兵力構成などの軍事態勢につき貴国政府と協議したい旨、述べてきたところです。

 普天間飛行場の移設、返還につきましては、平成十一年末の閣議決定に基づき、代替施設協議会の場等において、沖縄県及び地元地方公共団体の皆様の御意見をよく伺いながら、基本計画の策定に向け鋭意取り組んでいるところであり、今後とも、米側と緊密に協議しつつ、地元の方々の御理解と御協力を得ながら最大限努力してまいります。

 使用期限の問題につきましては、平成十一年末の閣議決定にあるとおり、政府としては、国際情勢もあり、厳しい問題があるとの認識を有しておりますが、沖縄県知事及び名護市長からの要請がなされたことを重く受けとめて、今回の日米首脳会談において、私から、先ほど申し上げたとおり、取り上げたところであります。

 これに対して、ブッシュ大統領からは、使用期限の問題は困難な問題である、この問題は国際情勢に照らして考えていかなければならない、この地域での米のプレゼンスは重要である、普天間の移設については引き続き日米間で協議していきたい旨の応答があったところであります。

 政府としては、今後とも、さきに述べた閣議決定に基づき適切に対処してまいるとともに、あわせて、国際情勢が肯定的に変化していくよう努力してまいる考えであります。

 沖縄の海兵隊削減についてお尋ねがありました。

 在日米軍施設が集中することにより沖縄県民の方々には多大な御負担をおかけしており、こうした県民の方々のお気持ちのあらわれとして、さまざまな御意見が出されていることは承知いたしております。

 このような御意見を踏まえ、今回の日米首脳会談においては、私から、沖縄県民の負担への配慮が重要であり、県民の気持ちを酌む必要がある、安全保障については、国際情勢を踏まえて対応することが必要である、一九九六年の安保共同宣言のフォローアップ、SACO最終報告の実施、日米地位協定の運用改善等を通じ、双方で協力して沖縄の負担軽減に努めたい旨、述べました。

 これに対し、ブッシュ大統領から、同感であるとの応答があり、これを受けて共同声明では、沖縄に関する諸問題について日米間で緊密に協力することとしたところであります。

 こうした日米首脳会談の結果も踏まえ、沖縄の負担軽減につき今後も最大限努力する考えであります。

 日米共同声明における我が国経済政策への言及についてお尋ねであります。

 御指摘の箇所は、政府として、不良債権の的確かつ迅速な処理策を検討することを含め、日米経済の新たな成長と発展の実現及び金融システムの強化のために必要とされる各分野の一層の構造改革と規制改革を進めていくことを表明したものであります。

 これらの点は、累次国会に対して表明してきている政府の方針であり、無責任な対米公約との御指摘は当たらないと考えます。

 公共投資基本計画についてお尋ねがありました。

 公共投資基本計画は、国民が真に豊かさを実感できる社会を実現するため、着実に社会資本整備を実施していくための指針として、我が国の自主的な判断に基づき策定されたものでありまして、議員御主張のように、米国の圧力に屈したというものではありません。この計画に沿って、国民のニーズを見きわめ、必要な見直しを行いつつ、人々の日常生活に密接に関連した施設の充実を含めた社会資本の整備を着実に進めてきたところであります。

 したがって、公共投資がむだや浪費であったという御指摘は当たらないものと考えております。

 不良債権処理と労働者や企業への影響についてのお尋ねがありました。

 金融機関が多額の不良債権を抱えていることは、金融機関の収益性という点で問題があるほか、貸出先企業にとっても、多額の過剰債務を抱えることは収益分野への投資を困難にさせ、ひいては日本経済再生の障害になることも懸念されているところでありまして、不良債権のオフバランス化が必要と考えております。

 不良債権処理への積極的な取り組みは、創造的な企業活動を促進することを通じて新規雇用を創出し、雇用の安定につながるものと考えます。

 こうした中で、離職を余儀なくされた方々への対応としては、円滑な労働移動を実現することが重要と考えておりまして、今国会で御審議をいただいている雇用対策法等改正法案において、円滑な再就職促進対策を提案しているところであります。

 今後とも、新規産業の育成により雇用機会の創出を図るとともに、職業能力開発を通じ需給のミスマッチ解消に積極的に取り組むことによって雇用の安定を図り、雇用不安の払拭に万全を期してまいる所存であります。

 また、中小企業についても、連鎖倒産防止のための金融面での対策の適切な運用を図るほか、こうした経済構造の大きな変化に対応していくため、経営力、技術力の向上等、中小企業の経営基盤の強化を図るとともに、魅力ある商品の開発、新たな取引先の開拓等を通じて自立化の動きを支援してまいる所存であります。

 リストラや中小企業への融資についてお尋ねがありました。

 バブル崩壊に伴い企業部門が抱えるに至った設備、雇用、債務のいわゆる三つの過剰という問題に対処するため、いわゆる企業によるリストラが進められております。

 リストラは、その過程においては痛みを伴うものでありますが、我が国経済の構造改革を進めていく上では、セーフティーネットに万全を期することなどによって乗り越えなければならない課題であります。これにより創造的な企業活動が促進されることを通じて、新規雇用が創出されるものと考えております。

 また、金融機関が不良債権問題の解決に積極的に取り組むことは、金融機関の収益力を増し、我が国金融システムに対する内外の信頼を高めるとともに、金融仲介機能の強化により、健全な中小企業や次代を担う新規産業等に対する資金供給を円滑化するものと考えております。

 なお、健全な中小企業への資金供給が円滑に行われるように、これまで、連鎖倒産防止といった観点も含め、信用保証協会等の信用補完制度の拡充や金融機関への円滑な資金供給の要請なども行っており、今後とも、金融機関の融資動向については注視してまいりたいと考えております。

 株式市場の需給改善及び活性化策についてお尋ねがありました。

 政府としましても、不良債権のオフバランス化や株式市場の活性化策について積極的に取り組んでまいる所存であり、株式市場の需給改善及び活性化策、企業の再生と債権放棄を一体的に行うとの観点に立った不良債権の的確かつ迅速な処理策について、その具体化を早急に検討するよう関係大臣に指示したところであります。現在は、公的支援の必要性の有無を含め、具体的な方策について関係大臣のところで検討を進めていただいている段階であります。

 個人消費を温める必要性と、日銀の金融政策についてお尋ねがありました。

 最近の我が国の経済の現状を見ると、景気の改善には足踏みが見られ、先行きについては、アメリカ経済の減速や設備投資に鈍化の兆しなど、懸念すべき点が見られます。こうした中で、引き続き、景気に軸足を置いて、経済を一日も早く本格的な回復軌道に乗せることが最重要課題と考えております。

 中でも、個人消費は、GDPの約六割と、我が国経済の中で大きなウエートを占める重要なものと認識しており、所得環境の改善やデフレ懸念の払拭などを通じて個人消費の増加につながるような環境を整えていくことが我が国経済を自律的回復軌道に乗せるために必要と考えております。

 このためには、まず、十二年度補正予算とあわせ、昨日成立させていただきました十三年度予算の円滑かつ着実な執行に努めてまいります。また、日本新生という本格的なプログラムのもとで、時代を先取りした経済構造改革を実行してまいります。

 一方、金融政策は日本銀行の所管事項でありますが、去る三月十九日の日本銀行の決定は、実質的にゼロ金利政策の効果を実現することを通じ、継続的な物価下落を防止し、持続的な経済成長のための基盤を整備するとの日本銀行の決意を明確にいたしたものであります。政府としては、今回の日本銀行の決定が個人消費を初め我が国経済に好ましい影響を与えることを期待いたしております。

 与党三党の緊急経済対策をしっかり受けとめて、断固とした対応をとってまいる所存であり、政府・与党緊急経済対策本部を発足させ、与党三党の緊急経済対策に盛り込まれたさまざまな項目について検討いたしておるところでございます。

 先ほど申し上げました株式市場あるいは企業の再生と債権放棄の問題にあわせまして、都市再生の実現や土地等の流動化対策についても、その具体化を早急に検討する必要があるものと考えております。

 不良債権処理への積極的な取り組みは、創造的な企業活動を促進することを通じて新規雇用を創出し、雇用の安定につながるものと考えます。こうしたことも含め、個人消費の増加につながるような環境を整えていくことが必要であると考えております。

 こうした検討結果を四月上旬をめどに政府としての緊急経済対策として取りまとめるよう、本日の閣議において指示をいたしたところであります。

 領土交渉の大義等に関するお尋ねであります。

 九三年の東京宣言は、北方四島の帰属の問題を、歴史的、法的事実に立脚し、両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決するという明確な交渉指針を示すとともに、全体主義の遺産、過去の遺産の克服という考え方をうたっております。政府としては、このような交渉指針及び考え方に沿ってロシアとの交渉に取り組んでまいります。

 歯舞、色丹の返還についてお尋ねがありました。

 北方四島すべての帰属問題を解決することにより平和条約を締結するというのが政府の一貫した方針です。イルクーツク声明では、五六年の日ソ共同宣言を基本的な法的文書としておりますが、これは、日ロ間で現在継続されている平和条約交渉プロセスの出発点となった重要な条約であるとの趣旨を示したものであります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 横光克彦君。

    〔横光克彦君登壇〕

横光克彦君 社民党の横光克彦でございます。

 まず冒頭、去る二十四日に中国・四国地方で発生いたしました芸予地震で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。このような大きな災害に際して、被災された多くの市民や関係機関の皆さんが冷静に行動され、被害を最小限に食いとめることができたことを非常に心強く感じております。お亡くなりになられましたお二人の方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災された方々に対して万全の対策をとられるよう政府に対して強く要望いたしたいと思います。

 さて、私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、森内閣総理大臣の、アメリカ大統領そしてロシア大統領、両首脳会談の報告について、若干の質問をさせていただきます。

 まず、日米首脳会談についてお尋ねをいたします。

 今回の会談は、冷戦後の二十世紀末の米国の政権を担ったクリントン大統領が退陣をし、新たに就任されたブッシュ大統領との初めての首脳会談であり、日米関係重視を掲げる新政権とどのような関係を築いていくのかを決定づける非常に重要な会談でございました。

 えひめ丸事故、沖縄問題、世界同時株安など多くの懸案を抱え、日本の総理大臣の振る舞いに世界の注目が集まってしかるべきであったと私は思うのでありますが、実際は、当事者でありますアメリカのメディアでさえも非常に冷ややかな反応であったと言われております。

 私どもは、そもそも、間もなく辞任することが決まっております総理では足元を見られて何の成果も上げられないだろう、森総理は行くべきではないと申し上げてまいりました。まさに危惧したとおりとなったと思います。ブッシュ大統領からのメッセージが次の首相に伝えられるであろうと、皮肉たっぷりに報じられているという始末では、一体何のために訪米したのかと言わざるを得ません。まずもって、私どもは、内容が乏しいこの会談に対し、全く納得していないということを最初に申し上げなければなりません。

 私は、森総理は、国内の政治的駆け引きの延長線上で、全く準備不足のまま訪米をされ、えひめ丸の事故や沖縄で連続している米兵の事件、普天間飛行場の代替施設の問題など、日米関係の将来像に関する本質的議論はほとんど行われないまま、ブッシュ大統領のペースで押し切られ、不良債権の処理や景気回復等に関する宿題を安易に引き受けさせられたと言わざるを得ないと思っております。

 その不良債権問題についてお伺いをいたします。

 ブッシュ大統領の、可能な限り不良債権処理に当たってもらいたいとの発言に対しまして、森総理は、半年ぐらいで結論を出すと答えられたそうでございますが、これは国際公約と受け取ってよろしいのでしょうか。御見解を伺いたいと思います。

 森総理は、三月二十三日の参議院本会議において、半年後に結論を出すというのは、不良債権処理ではなく、財政再建への取り組みだと答弁されましたが、この発言はアメリカから国際公約違反だと受け取られるおそれが出てきますが、一体どちらが正しいのか、森総理の明確な答弁をお聞かせください。

 さらに、半年ぐらいで結論を出すというその中身の問題でございますが、この半年間に森総理はどのような具体的施策を講じようとされているのでしょうか。お伺いをいたします。

 また、沖縄問題では何の進展もなく、駐留経費の四分の三にも及ぶ約六千六百億円を日本が負担するといういびつな関係をそのままにして、同盟関係の一層の拡大、深化を気安く請け負うというのは、平和憲法を持つ我が国が本来進むべき方向とは全く逆であり、さらにアメリカの一方的な都合を押しつけられていくだけではないでしょうか。

 総理にお尋ねいたしますが、日米同盟強化の具体的な中身をどのように御理解されているのでしょうか。私ももちろん、良好な日米関係が必要だと考えてはおります。しかし、例えば安易にNMD計画を容認するなど、日米二国間関係のみにとらわれ続け、米国追従を続けるならば、日ロ、日中など他国との関係への障害となり、北東アジア全体の安全保障環境を不安定化させることにつながりかねないと私は危惧をいたしております。

 今こそ、平和憲法の理念を高らかに掲げ、日米関係を相対化して多国間の信頼醸成を進め、軍事力によらない安全保障体制を築くためのリーダーシップを発揮していくときだとお訴えをしながら、今回の首脳会談を踏まえて、米国とどのようなパートナーシップを築いていくおつもりなのか、政府としてのお考えをお尋ねいたします。

 次に、日ロ首脳会談についてお尋ねをいたします。

 会談の結果まとめられたイルクーツク声明は、一九五六年の日ソ共同宣言の有効性を確認したものの、二〇〇〇年末までの平和条約締結を目指した九七年のクラスノヤルスク合意にかわる目標設定はできませんでした。森総理はプーチン大統領との個人的な強固な信頼関係をお持ちとのことだっただけに、私どもは何らかの前進があることを期待しておりました。少なくとも、実現できなかったクラスノヤルスク合意の合意にかわる新たな期限の設定ができなかったことは、まことに残念でなりません。

 私の理解では、イルクーツク声明が意味するところは、五六年の日ソ共同宣言の出発点に立ち戻ったということになろうかと思います。単に振り出しに戻ったというだけならば、この半世紀は一体何だったのかと言わざるを得ません。領土問題をめぐる日ロ両国の認識が、日ソ共同宣言当時と現在とで一体どう違うのか、あるいは同じなのか、日本側の認識について御説明をいただければと思います。

 さらに、今回、合意には至らず盛り込むことができなかった平和条約の交渉期限について、日本政府としては、どのような見通しを持って会談に臨んだのか、今後どのように平和条約交渉を進めるおつもりなのか、日本政府側が目標とするタイムスケジュールについてお尋ねをいたします。

 今回の訪ロが、単に、辞任される森総理の花道やお父様のお墓参りだけではなかったということを願いながら、今回の首脳会談を踏まえて今後の日ロ関係にどのように取り組まれるお考えか、お聞かせください。

 最後に、一言、自公保三党の政治姿勢について触れさせていただきます。

 さきの衆議院での森内閣不信任決議案、そして参議院での問責決議案に対する否決という行動、そしてその後の与党の対応は、国民の多くにとって全く理解しがたいものでございます。

 森内閣の退陣を求める、国民の声を代弁した我々野党の要求は、与党の多数の力によって否決されました。残念ながら、国会においては、森首相が率いる森内閣は信任されたのであります。しかし、その後の与党内の森おろしの画策は、全く信じられないと言うほかはありません。自分たちが信任した人をやめさせる。これほど国会を侮辱し、国民を愚弄したことがかつてあったでありましょうか。(拍手)

 国民の政治家、政党に対する不信感は、さらに大きく、さらに深くなっております。政治家みずからがみずからの力で墓穴を掘っていく、その姿がはっきりと見え、その先には暗たんたる将来しか見えないのであります。

 与党の皆さんの責任がいかに重いか、痛切に認識をしていただきたい。そして、このような政治姿勢、政治行動を続ける限り、近い将来、国民からレッドカードという厳しい審判を突きつけられるときが必ずやってくるということを私は信じております。そして、その動きは、今、確実に始まっております。

 国会で圧倒的な信任を受けながらも、陰険とも言える駆け引きによって辞任を余儀なくされようとしております森総理の今の率直な心情をお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣森喜朗君登壇〕

内閣総理大臣(森喜朗君) 日米首脳会談における不良債権処理問題に関するやりとりについてのお尋ねであります。

 不良債権処理問題については、私からブッシュ大統領に対し、政府・与党緊急経済対策本部において不良債権の処理問題に焦点を当てて取り組んでいることなどを説明しましたが、半年で結論を出すと約束したことはありません。

 私が半年程度と述べたのは、たびたび申し上げておりますが、我が国の新しい内閣府がスタートをし、そして経済財政諮問会議という仕組みができました、このところで我々が今議論をして、我が国の財政を含む構造問題の方向性について今後半年ぐらいで議論の成果が得られるのではないか、そういうことを申し上げたわけでありまして、一緒に同行いたしておりました麻生経財担当大臣がそのまとめ役をいたしておりますので、おおよそどれぐらいでいわゆるプランがまとまるだろうかということに対して、麻生さんから、大体半年ぐらいでしょうね、こういうお話があったことが、どうも発表ぶりあるいはマスコミの取り上げ方によって誤解を受けたのではないかということ、この点だけは、しばしば、参議院での予算委員会でも申し上げておりますので、横光さん、どうぞそのことを承知しておいていただきたいと思います。

 したがって、この点に関して、国際公約違反になるはずもありません。

 財政再建の取り組みについて、半年でどのような具体的な施策を講じるのかとお尋ねがありました。

 財政構造改革については、我が国経済を自律的回復軌道に乗せつつ、その実現に向けて議論を進めてまいりたいと考えております。その際には、新世紀における我が国の経済社会のあり方を展望し、望ましい税制の構築や社会保障制度改革、中央と地方との関係まで幅広く視野に入れる必要があると考えております。

 今般の中央省庁再編において、先ほど申し上げましたように、内閣府に経済財政諮問会議を設置いたしました。景気を着実な自律的回復軌道に乗せるために、経済財政運営とともに、財政を含む我が国の経済社会全体の構造改革に向けた諸課題について具体的な政策を主導するとの決意を持って、実質的かつ包括的な検討を今行っているところであります。

 具体的には、社会保障そして社会資本整備、国と地方の関係といった主要分野について検討を進め、五、六月をめどに骨太の方針を取りまとめることといたしております。

 また、会議では、マクロ経済モデル等も活用して議論を行うことといたしておりまして、こうしたことを踏まえれば、経済社会全体のマクロ的な観点からの財政を含む構造問題の方向性については、今後半年程度で議論の成果が得られるものと考えておりまして、このことを日米首脳会談の席上でお話を申し上げたのであります。

 安全保障体制に関連して、日米同盟強化の内容と今後の米国との関係についてのお尋ねであります。

 政府としては、日米安保条約が米軍のプレゼンスを確保し、その抑止力をもって我が国及びアジア太平洋地域の平和と安全を維持していく上で重要な役割を果たしており、この地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能しているとの認識に基づき、今後とも、日米安保体制の信頼性を一層向上させていくため、できる限りの努力を払っていく考えであります。

 また、引き続き、日米両国が、アジア太平洋地域における平和と安定の促進とともに、同地域において生じる諸問題に対応していくため、日米間で強固なパートナーシップを築き、率直かつ緊密な対話を行っていくことが日米同盟関係の強化、安定を図るものと考えております。

 日ソ共同宣言についてお尋ねがありました。

 この宣言は、両国議会の承認を受けて批准された国際約束であり、政府としては、一貫して、これが有効であることは当然と考えております。

 しかし、これまでの歴史の中で、ソ連、ロシア側がこの宣言の有効性を否定していた時期がありました。また、御承知だと思いますが、六〇年には、当時のソ連から覚書も発せられております。この点を踏まえれば、今回、イルクーツク声明において、この宣言が平和条約交渉の出発点を設定した法的文書であることが明記されたこと自体、意味があるものと考えております。

 事実、昨年九月にプーチン大統領がお見えになりましたときにもこの項目は出ておりますが、両国の共同声明の中にこのことを書くことについては、当時、プーチン大統領は積極的ではございませんでした。ですから、後の記者会見で、私から口頭で述べたことを追認していただいた。それから半年後の今日を見ましても、こうしたことを文書できちっと書いたということは大きな前進であるということをぜひ理解していただきたいと思います。

 政府としては、今後、イルクーツク声明を踏まえて、日ロ間でさらに議論を深めていく考えであります。

 平和条約交渉のスケジュールについてのお尋ねであります。

 今回採択されたイルクーツク声明においては、交渉を活発化させ、平和条約の締結に向けた前進の具体的方向性をあり得べき最も早い時点で決定することが合意されており、交渉のモメンタムは維持することができたと考えます。

 政府としては、この具体的な方向性を早期に決定するため、全力を尽くしていく考えであります。

 今後の日ロ関係についてのお尋ねであります。

 平和条約交渉については、今回署名されたイルクーツク声明が今後の交渉の新たな基礎となります。この声明を踏まえ、今後とも、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの一貫した方針のもと、精力的に交渉に取り組んでまいります。同時に、経済分野や国際舞台における協力等の幅広い分野で両国関係を着実に進めていく考えであります。

 大変長時間、時間をいただいて、皆様に御迷惑をかけて恐縮に思いますが、横光さんが、先ほど質問の中で、花道だとか父への墓参りだということを言われました。極めて失礼な発言だと私は思います。この際、時間をいただいて……(発言する者あり)あなたに言っているんではない。横光さんに言っているんです。

 いいですか、横光さん。今から四十年ほど前、まだ冷戦時代、日本とソ連との関係は必ずしも好ましい状況でないときに、石川県や富山県の皆さんが、日本海沿岸の貿易の促進を図ったり、人々の交流を図ろうということで、地道な日ソの交流を民間の皆さんが始められたのです。その中の一人に、たまたま一地方の、私の郷里である根上町の町長という人がいたのです。その町長さんが中心になって四十年間、まだ飛行機も全く就航もしていないときに、黙々としてその交流を始めたのです。

 そして、今日、イルクーツクと金沢市は姉妹都市を結んでいます。地図を見てごらんなさい。イルクーツクの公式な世界地図の中に、メーンストリートにカナザワストリートと印刷してあるのです。こんな国はどこにありますか。イルクーツクの隣にシェレホフという町がある。その町と根上町という町が姉妹都市を結んでいる。毎年二十名、三十名の人々が交流をして、お互いに家族で行き来しているのです。

 そのことを評価し、シェレホフの皆さんの浄財で、その町長が亡くなったときに、その骨を持ってきて埋めてほしい、そして、これからも交流を続けてほしい、そういうことでそういう墓ができたのです。そのことがたまたま私の父であったというだけのことです。

 プーチン大統領はそのことに大変感じ入られて、自分の足でイルクーツクへ行ってみたい、シェレホフの町に行ってみたい、そういうお申し出を私がいただいたものでありまして、私は、そういう意味で、今の御質問の中にそうしたことを言われることは、極めて私にとっては不快感を持ちます。横光さんらしき私は発言ではない、この際申し上げておきたいと思います。(拍手)

 最後に、与党の政治姿勢に絡めて、私の心情についてお尋ねがありました。

 御指摘のように、先般の内閣不信任案、問責決議案の否決を受けて、私としては、内閣を預かる責任者として、与党三党の協力のもと、これまで平成十三年度予算の年度内成立に最大限の努力をしてきたところであります。

 また、今後は、予算関連法案や各般の改革を実施するための重要法案の一日も早い成立に全力を尽くすとともに、最近の厳しい経済情勢を踏まえ、政府・与党一体となって、四月上旬をめどに緊急経済対策を取りまとめるなど、山積する諸課題に取り組むことが現内閣の国民に対する責任であると考えております。

 私としては、目下、こうした諸課題に全精力を傾けて取り組んでいることでありまして、まさに一意専心の心境でありますことを申し上げて、お答えといたしておきます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十六分散会




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