衆議院

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第23号 平成13年4月10日(火曜日)

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平成十三年四月十日(火曜日)

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 議事日程 第十二号

  平成十三年四月十日

    午後一時開議

 第一 倉庫業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 倉庫業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑




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    午後一時三分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 倉庫業法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(綿貫民輔君) 日程第一、倉庫業法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。国土交通委員長赤松正雄君。

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 倉庫業法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔赤松正雄君登壇〕

赤松正雄君 ただいま議題となりました倉庫業法の一部を改正する法律案につきまして、国土交通委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、倉庫業につきまして、倉庫業者による多様なサービスの提供を促進するとともに、倉庫を利用する消費者の利益を保護するため、所要の措置を講じようとするものであります。

 その主な内容は、

 第一に、倉庫業に係る参入について、許可制を登録制とすること、

 第二に、料金の事前届け出制を廃止すること、

 第三に、倉庫業者は、倉庫管理主任者を選任して、倉庫における火災の防止その他の倉庫の管理に関する業務を行わせなければならないこと、

 第四に、トランクルームをその営業に使用する倉庫業者は、トランクルームごとに一定の基準に適合して優良である旨の国土交通大臣の認定を受けることができること

等であります。

 本案は、去る四月四日本委員会に付託され、同月六日扇国土交通大臣から提案理由の説明を聴取した後、質疑に入り、倉庫業の参入について、許可制を登録制に改めることによる影響及び新設されるトランクルームを認定する制度が消費者の利益保護にもたらす効果等について議論が行われました。

 同日質疑を終了し、討論を行い、採決いたしました結果、本案は賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(綿貫民輔君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(綿貫民輔君) この際、内閣提出、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国土交通大臣扇千景君。

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 JR各社につきましては、累次の閣議決定により、できる限り早期に純民間会社とすることが求められております。

 JR各社のうち、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社のJR本州三社につきましては、昭和六十二年四月の国鉄分割・民営化による発足以来、安定的に経常黒字を計上し、順調な経営を続けております。また、平成五年十月には東日本旅客鉄道株式会社、平成八年十月には西日本旅客鉄道株式会社、平成九年十月には東海旅客鉄道株式会社が、それぞれ株式の上場を果たしており、株価も堅調に推移しているところであります。

 このような状況から、JR本州三社につきましては、純民間会社とするための条件が整ったと言える状況にあります。

 他方、JR各社につきましては、一般の民営鉄道とは異なり、国鉄改革の中で誕生したという経緯があります。例えば、国鉄改革において、国鉄長期債務の大半を日本国有鉄道清算事業団に継承させた上で、国鉄の鉄道のネットワークを極力維持しつつ、JR各社とも健全な経営が行えるよう事業用資産の継承等を行ったほか、運賃、線路使用料等においてJR各社間の協力、連携体制がとられた等の経緯があります。

 こうした国鉄改革の趣旨にのっとった事業運営については、これまで旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の枠組みの中で確保してきたところでありますが、純民間会社とするJRについても、引き続き確保していく必要があります。

 このような趣旨から、このたび、この法律案を提案することとした次第であります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社及び西日本旅客鉄道株式会社のJR本州三社を特殊会社として規制している旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の適用対象から除外し、これらの会社の財務、人事、事業計画等の面において、一層、自主的かつ責任のある経営体制の確立を図ることといたしております。

 第二に、国土交通大臣は、国鉄改革の経緯を踏まえ、JR各社間の連携及び協力の確保、国鉄改革実施後の輸送需要の動向等を踏まえた路線の適切な維持等に関する事項について、適用除外されるJR本州三社が事業運営上踏まえるべき指針を策定し、必要がある場合には指導助言を行うことができることとし、さらに、正当な理由がなくて指針に反する事業運営を行う場合には勧告、命令を行うことができることといたしております。

 なお、JR本州三社の株式のうち未売却分については、この法律の施行後、株式市場の動向等を踏まえて、順次売却してまいりたいと考えております。

 以上が、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案の趣旨でございます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(綿貫民輔君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。伴野豊君。

    〔伴野豊君登壇〕

伴野豊君 親愛なる衆議院の皆さん、こんにちは。私は、民主党の伴野豊でございます。

 本日は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、本日議題となりました本件につきまして、質問をさせていただきたいと思います。(拍手)

 ノーブレスオブリージュ、これは、私が国鉄最後の職員として昭和六十年に採用されたときに、先輩諸兄からたたき込まれた言葉でございます。言葉の意味は、地位に見合う精神的義務あるいは道徳的義務を負うというものでございまして、古くはヨーロッパのナイト、騎士道、日本の武士道にも通ずるものでございます。

 私は、入社した二年後、国鉄改革というものをその現場で身をもって体験させていただきました。その後、私が政治を志すときの精神的支柱になったのが、その国鉄改革から得た教訓、哲学であったことは否めません。

 そういった中で、本日、このような質問の機会を与えていただきましたことに対しまして、議長初め関係各位、衆議院の皆様方、国民の皆様方に感謝しつつ、質問をさせていただきたいと思います。(拍手)

 さまざまな観点から質問をさせていただきたいところではございますが、時間の都合上、四点に絞らせて質問させていただきたいと思います。

 まず一点目は、なぜ国鉄崩壊に至ったか、国鉄改革をしなければならなかったかということでございます。

 いつか来た道ということにならないためにも、あれからもう十四年がたったわけでございまして、風化させないために、その節目節目で、その都度、検証をしていかなければならない、そう思うわけでございます。

 国鉄は、昭和二十四年、公共企業体として産声を上げました。国鉄、公共企業体というものは、そもそも、できるだけ効率よく人や物を運ぶ、その一方で、公共性ゆえに地域の振興も果たさなければならない。言いかえれば、独立採算制を追うとともに、一方で、採算性より公共性を優先させ、鉄路をつくらなければならないという、背反する二つの面を持っていたわけでございます。

 言ってみれば、経済学的には背反するベクトルを内在して誕生し、くしくも、昭和三十九年、新幹線ができたときに初の欠損を生じました。その後、昭和四十六年に、企業体として根本的に経営破綻いたしました。その後、幾度か再建計画が実施されたわけでございますが、抜本的な改革がなされぬまま先送りをしたため、当時三兆円程度であったものが雪だるま式に膨れ上がったのは、皆様方も御案内のとおりでございます。このことは、どこかで聞いたような、最近聞いたような思いがいたします。

 いま一度、今から振り返ってみたときに、大臣として、この国鉄崩壊の原因はどこにあったのか、どう御認識されているのか、お聞かせいただくとともに、総額として負債はどこまで膨れ上がったのか、お教えいただきたいと思います。(拍手)

 続きまして、二つ目は、国鉄改革はどうであったか、その意義と評価についてでございます。

 御案内のように、全国二万キロに及ぶ国鉄の線路、これの再編及び維持を目的とし、その手法として民営・分割というのを選択したわけでございます。収入の一%程度の収益を上げるという数値目標のために、JRを自立させるための仕組みをつくりました。

 その一つが、本州三社の利益調整と申しますか、新幹線を介在とした利益調整を行いました。二つ目として、経営基盤の非常に脆弱な部分、いわゆる三島、北海道、九州、四国においては経営安定基金を設ける。三つ目として、JR貨物の線路使用料はアボイダブルコストとする。これが大きな柱であったわけでございます。

 この柱をもとに国鉄改革が行われたわけでございますが、現時点で、一体、国鉄改革をどう評価されているのか、課題は解決されたのか、何が残っているのか、新たな課題が発生したとすればそれは何なのか、お聞かせいただきたいと思います。

 三点目でございますが、これは本案の意味するところということでございます。

 先ほど大臣から御説明がございましたように、まず一義的には、国が大株主の役目をおりるということでございます。二点目は、JR会社法から本州三社が適用外になるということでございます。

 この事柄の意味するところは、JR本州三社は、市場の競争原理に基づいて、株主の了解が得られれば、例えば、採算性の悪いローカル線の廃止やあるいはJR貨物の線路使用料を増額させる、そのようなことができてしまうわけでございます。

 そのような歯どめとして指針というものを設けられるわけでございますが、しかし、これがもしも恣意的に取り扱われるようでございますと、これも、いつか来た道となるわけでございます。恣意的に指針というものが策定されない、そのことをどのように担保されるのか、お教え願いたいと思います。

 また、本州三社が適用外になった後、いわゆるJR三島の完全民営化、JR貨物の完全民営化は今後どのようなスケジュール、見込みで行われるのか、お教えいただきたいと思います。

 最後に、分割のもたらしたものということでございます。

 今、分割・民営化の民営化の部分が脚光を浴びているようでございますが、私は、少し長いタームで見た場合、歴史的に評価した場合には、分割の方が、将来、評価を受けるのではないか。

 二万キロに及んだ鉄路を一元的に管理するのではなく、その交流圏や定住圏に基づき、六つの旅客会社と一つの貨物会社にいたしました。そのことによって、当初、各会社では、自分たちで決めていけるんだ、自己責任は伴うものの自分たちで判断していけるんだという喜びとともに、他社に負けてはならない、おくれをとってはならないという健全な競争心が芽生えたわけでございます。これは、とりもなおさず、二十一世紀の流れと申しますか、地方分権、地域主権の先駆けであったような気がいたします。

 二十一世紀は、やはりできるだけ権限を地方、地域に移譲させ、そして地域をできるだけ自立させていく、これが二十一世紀の日本の流れではないでしょうか。イメージするシステムといたしましては、道州制や、あるいは全国数百程度の行政単位に編成し直すということが考えられようかと思います。

 大臣はよく、グランドデザインとかあるいは総合交通体系とかおっしゃいますが、私は、この事柄は、今までの全国総合開発計画の延長にあるのではなく、できるだけ地方に権限を移譲した上で、例えば国と国の輸送について国土交通大臣が筆を入れられるとか、その程度にいたすべきではないかと思います。そして、いま一度、地方整備局を編成し直し、将来のいわゆる道州制に対応し、その中核をなすべく編成すべきではないかと思います。このあたりのところをどのようにお考えか、お教え願いたいと思います。

 終わりに当たりまして、私は、個人的に国鉄改革を総括いたしましたところ、国鉄改革はまさしく意識改革であったと思います。今、この政治不信の中、政治家が考えるべき事柄はみずからの意識改革ではないかと、みずからの反省とともに考えます。

 くしくも、森総理が退陣される前提で、自民党の皆さん方は総裁選に入られるやに伺っております。皆様方が戦後五十年を機関車のごとく引っ張ってきたという自負がおありになるならば、ノーブレスオブリージュの意味を御理解いただくならば、ぜひとも国民に開かれた形でおやりいただき、いろいろな御事情がおありになるともお聞きしておりますが、ぜひとも、政治家を志された原点に立ち返っていただき、国民の声に真摯に耳を傾けていただき、そして御判断、御選択いただいた上で、そして二度と、皆様方が御選択された、そして信任された方を、そのはなから引きずりおろされることのないよう、ぜひとも皆様方にお願いしたいと思います。(拍手)

 また、一人の政治家として、森総理におかれましては一年間本当にお疲れさまでしたと申し上げたいと思います。森総理の忍耐強さには、私も、学ぶところが多うございました。また一方で、遅くお帰りになると公邸には夕食がないということも教えていただきました。心してかかっていきたいと思っております。

 そうであるならば、私ども民主党は、鳩山由紀夫を先頭に、未来への責任を果たすべく、あるいは子供たちへの責任を果たすべく、真摯に政策論争を繰り広げさせていただき、そして国民に真摯に信を問わせていただきたい、そんな覚悟でやらせていただきたいと思っている次第でございます。

 それを申し述べさせていただき、私の質問を終わらせていただきます。本当にありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) 伴野議員にお答えいたしたいと思います。

 御質問もございましたけれども、御自身の意見表明のようなものもございましたので、御質問に関してのみお答えさせていただきたいと存じます。

 国鉄の破綻原因としては、公社制度のもとで全国一元的な運営を行ってきたことが大きな原因であると考えております。

 具体的には、公社であったことから、運賃、予算等、経営上の重要な事項について、経営の自主性を喪失しましたし、また、経営責任が不明確となっていたと思います。さらに、全国一元的な運営であったことから、経営管理の限界を超えた組織となり、地域の実態から離れた画一的な運営が行われる等の問題が生じておりました。

 この結果、モータリゼーションの進展等、鉄道事業を取り巻く環境の変化にもかかわらず、これに即応した経営や生産性の向上が立ちおくれる等、時代の変化に的確に対応できなくなって、国鉄の破綻につながったものと考えております。

 なお、お尋ねにあった、昭和六十二年四月の国鉄改革の時点において処理の対象になった国鉄長期債務というものは、額は三十七兆円でございました。御存じのとおりでございます。

 ですから、続きましては、今、国鉄改革の評価あるいは今後の課題、国鉄の長期債務についてどういう考えを持っているかとのお尋ねがございましたけれども、JR各社におきましては、昭和六十二年のあの国鉄の分割・民営化以来、サービス水準の向上あるいは事業運営の改革等、あらゆる面で改善に努めてきたというのは、皆さん、国民もお認めいただいたところでございます。それを国土交通省としても高く評価しております。

 今般、JR各社のうちJR本州三社を完全に民営化するために法案を提出したところでございますけれども、今後は、JR三社の未売却株の適切な売却及び指針に基づく国鉄改革の経緯を踏まえた事業経営の確保、また、JR北海道、四国、九州及び貨物の完全民営化に向けた経営基盤の強化等が課題になるものと考えております。

 また、国鉄長期債務のうちJR等に引き継がれました部分は、これまでも順調に返済が行われてきております。他方、国鉄清算事業団に引き継がれました約二十六兆円の債務は、平成十年に約二十八兆円となりましたけれども、国鉄長期債務処理法により、そのうち二十四兆円を一般会計に引き継ぎ、残りの四兆円は鉄建公団において負担することとしたところでございます。同法の枠組みにおきまして順調に返済が行われているということは、御存じのとおりでございます。

 また、今般のJRの法案に盛り込まれております、JR会社法の改正案に定めます指針の運用についてのお尋ねがございました。

 JR会社法の改正案に定めます指針につきましては、これに盛り込む項目を、国鉄改革の趣旨を担保するために、必要かつ最小限の事項に絞りまして、法律上明示したところでございます。

 また、指針を踏まえました経営を確保するために行う勧告、命令につきましては、発動の要件を法律上明示するとともに、さらに、命令の発動に際しましては、勧告に従わなかった旨を公表した上で、第三者機関でございます運輸審議会への諮問を義務づけております。

 このようにJR会社法の改正案におきましては、指針がいたずらに会社への経営介入にならないように措置しておりますし、その運用に当たっても適切に対応してまいることといたしておりますので、御理解いただけるところであろうと存じております。

 最後に、地方分権あるいは地域主権の観点からの政策展開についてのお尋ねがございました。

 国土交通省の推進に当たりまして、私どもは、国と地方が適切な役割分担のもとに協調、協力して、地域のことは地域が考えて決めていくという考え方に立つ、今おっしゃいました分権そのものを当然必要であると考えております。

 これまでも、地方分権の計画に基づきまして、地方への権限の移譲あるいは補助金の整理合理化などに取り組んでまいりましたけれども、直轄事業の範囲の見直し、また、国が箇所づけをしないことを基本とする統合補助の創設、拡充を進めているところでございます。

 地方整備局におきましても、国土の整備及び管理に関する事務を主体的かつ一体的に処理するため、大幅な事務権限の委任もしくは公共事業予算の一括配分を行ったところでございます。

 さらに、現在、国土交通省と地域の行政や経済の最高責任者同士が、総合的な観点から地域の将来像について実質的な議論を展開すべく、国土交通地方懇談会を、二月から四月の二十一日までかけて、私は全国を回っている現状でございます。

 今後とも、今おっしゃいましたような、地域の自治体や経済界などと綿密なあるいは密接な連携を図りながら、総合的な政策を、行政を進めていくということに努めてまいりたいと思いますので、今の三つのお答えにさせていただきたいと思います。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 瀬古由起子君。

    〔瀬古由起子君登壇〕

瀬古由起子君 私は、日本共産党を代表して、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律案に対し、質問いたします。(拍手)

 最初に、今回のJR東日本、西日本、東海、本州三社を完全民営化する本法案を審議するに当たって、お聞きしたいのは、国鉄の分割・民営化でJRが発足してから、この十四年間をどう見るかという問題でございます。

 まず指摘したいのは、この十四年で、国民の足、公共輸送機関としての役割が大幅に後退していることです。北海道の深名線百二十一キロメートルの全線廃止を初め、JR北海道函館線とJR西日本の美祢線で一区間が廃線とされ、今、広島県の可部線の一部廃止が計画されようとしています。当時の橋本運輸大臣が、ローカル線の廃止は打ちどめにすると言ったにもかかわらず、ローカル線廃止が次々と俎上に上っているのです。

 次に重要なことは、大量輸送機関の命とも言うべき安全の問題がおろそかにされていることです。JR西日本のトンネル崩壊事故、JR新大久保駅でのホーム転落事故、車両故障など、重大事故が相次いでおります。

 その一方で、政府が国鉄の分割・民営化を進める最大の理由とした旧国鉄の債務は、解消するどころか、赤字は膨らむ一方で、結局、巨額の負担を国民にツケ回ししただけだったのです。

 まさに、国鉄分割・民営化は公共性と安全性を大きく後退させただけではありませんか。この責任をどうお考えでしょうか。明確な答弁を求めます。(拍手)

 今回の法案は、こうした公共輸送機関の役割の後退を一層進めるものです。そこで、法案について具体的に質問いたします。

 第一に、国民の足をどう守るかの問題です。

 そもそも、政府が国鉄分割・民営化の方針を決めたとき、国民は、国鉄が営利企業ともなれば、採算性がとれないローカル線やバス路線がどんどん切り捨てられるのではないかと心配いたしました。ところが、こうした国民不安に対して、政府は、分割・民営化という抜本的な改革を行えば、地域と一体となった活力ある経営が行える結果、鉄道を地域住民の足として再生し、残っていくことが可能となると述べていたのです。現状は全く逆となりました。

 本法案によって、営利主義がますます強化され、ローカル線、バス路線の切り捨てが加速されるのではありませんか。

 現に、JR東海の子会社、ジェイアール東海バスでは、愛知、岐阜、福井、静岡県内を走る九路線七十六系統のうち、七路線三十九系統の廃止を公表しています。廃止される営業区間は七〇%近くに及び、関係市町村は十七市町村にも及びます。この地域は、山間部が多く、他に交通の手段もなく、バス路線が廃止されれば、たちまち陸の孤島となってしまうのです。

 現行法のもとでもこのありさまなのに、この法規制から除外され、完全民営化による営利中心主義で、国民の足の切り捨てが加速されないという保証はどこにあるのでしょうか。答弁を求めます。(拍手)

 第二に、安全問題についてです。

 JR東日本は、一九八七年度から二〇〇〇年度までに、鉄道部門で一万八千二百二十人を削減しています。それに加えて、二〇〇五年度までに、鉄道部門を含めた社員約一万人をさらに削減しようとしています。このため、車両、保線などの部門で下請化や分社化が一層促進されてきたのです。こうした人減らし合理化が、山手貨物線や最近の鶴見などの重大事故を発生させる大きな要因となったのではありませんか。

 ことし一月、東京・新大久保駅で、転落者を救助しようとした二人も電車にはねられるというホーム転落事故が発生しました。とうとい犠牲者を出したのです。私は、この事故直後に現地調査を行いましたが、防護さくはもちろんのこと、ホーム要員が配置されていれば、こんな痛ましい事故は防げたのではないかと強く思いました。東京視力障害者の生活と権利を守る会のアンケート調査では、全盲者の三人中二人、弱視者を含めても二人に一人が、ホームからの転落を経験していると答えています。転落死亡事故が後を絶たないのです。

 この事故多発の背景には、大幅な人減らしがあります。駅の無人化がどんどん進められて、JR東日本では千七百二十七駅のうち六百二駅、三五%が、JR西日本では千二百四十一駅中六百五駅、実に四九%にも上っているのです。

 今回の完全民営化によって営業利益の追求が最優先されれば、こうした安全性の確保がますますおろそかになることは明らかではないでしょうか。これでどうして安全を確保できるのですか。責任ある答弁を求めます。(拍手)

 第三に、JR商法について質問いたします。

 JRの駅周辺は、都市の中心となっている一等地です。JR各社は、成長が期待できる生活サービス事業を積極的に展開していくことを経営戦略としております。そのもとで駅前開発が進められ、駅周辺の商店街や旅館などの中小業者の経営に重大な影響を与えています。京都では、巨大な駅ビルの建設によって、周辺商店街はもちろん、中心部の四条河原町まで、売り上げが軒並み減少しているのです。このような事態は全国各地に見られます。

 完全民営化によって、現行法第十条に規定される中小企業者への配慮義務が本州三社にはなくなってしまいます。JR商法によって地元商店街や旅館の経営がますます破壊されることは、火を見るより明らかではありませんか。まさに、今回提案されている法案は中小企業圧迫法案ではありませんか。政府の責任ある答弁を求めます。(拍手)

 第四に、現行法は、JR各社の経営について、関連事業、社債募集、長期債務借入金、代表取締役、監査役の選任等、毎年度の事業計画、重要な財産の譲渡等は国土交通大臣の認可事項としております。こうしたJRの経営に対する法的規制は、公共交通機関としての役割を最小限守ろうとしたものです。

 ところが、本法案は、これらの法規制を取り除いて、指針にゆだねようとしております。法的規制でも大きく後退してしまった公共性、安全性が、どうして単なる大臣告示である指針で守れるのでしょうか。

 しかも、この指針は、「当分の間」とされております。公共輸送機関としての役割にかかわる問題を「当分の間」とは、一体どういうことでしょうか。「当分の間」が終われば、公共交通機関の公共性や安全性という役割は投げ捨ててしまっていいのでしょうか。答弁を求めます。(拍手)

 こうした営利主義を推し進める本法案は、公共輸送機関の存続や安全の確保に死活的影響を与えるばかりでなく、世界的な流れにも反するものです。環境を大切にし、しかも、省エネルギーで輸送効率が高い公共輸送機関を維持、拡充することが世界の大勢となっています。鉄道こそ公共輸送機関の中心であり、鉄道の再生は今や急務です。こうした方向を追求することこそ、今、政府に求められていることを強く指摘しておきたいと思います。(拍手)

 最後に、旧国鉄労働者千四十七名の雇用問題です。

 この問題は、既に十四年を経過して、いまだに解決していません。そもそも、国鉄分割民営化法案の審議のときに、当時の中曽根総理大臣、橋本運輸大臣は、一人も路頭に迷わせることのないよう万全を期す、所属組合等による差別があってはならないと思いますと国会で答弁をされました。この政府の国民に対する約束は非常に重いものです。

 それから既に十四年の歳月が経過いたしました。お父さんの運転する列車に乗りたいと言っていた子供たちも、寂しさやつらさを乗り越えてきました。家族が一緒に暮らすという当たり前のことが長い間できずにいたので、せめて父と母が夫婦で一緒に暮らせるようになってほしいと思います、そのためにも一日も早い全面解決を願っていますとの娘さんの訴えは、橋本大臣のもとに届いているでしょうか。

 旧職員とその家族が味わった辛酸は、筆舌に尽くしがたいものがあります。そのことについて、橋本大臣はみずからの責任をどう感じておられるのか、答弁を求めます。(拍手)

 当時、本院の国鉄特別委員会の附帯決議では、「再就職を必要とする職員の雇用の確保に万全を期する」と明記しております。また、九九年五月に、我が党を含む参議院七会派は、政府に対して、人道上の問題として雇用問題の早期解決を申し入れました。これに対して、当時の野中広務内閣官房長官は、解決に努力したいと答えました。こうした経緯に照らしても、政府は責任を持って解決すべきではありませんか。扇千景国土交通大臣の答弁を求めます。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣扇千景君登壇〕

国務大臣(扇千景君) 瀬古議員にお答え申し上げます。

 国鉄分割・民営化の評価についてのお尋ねがございました。

 JR各社につきましては、昭和六十二年の国鉄の分割・民営化以降、鉄道ネットワークの維持また確保を図るとともに、サービス水準の向上や事業運営の改革等に努めてきたところでございますし、また、国土交通省としても、それを高く評価しているところでございます。

 なお、事故件数につきましても、昭和六十年九百四十五件であったものが平成十一年には五百三十一件と約四割減少するなど、一定の成果が上がったところでございます。

 また、二十八兆円の国鉄清算事業団の長期債務につきましては、平成十年に成立した国鉄長期債務処理法によって、約二十四兆円を一般会計に引き継ぎ、残りの四兆円を鉄建公団において負担することとしたところでございます。また、現在、この枠組みのもとに順調に償還が行われているのは、先ほどからお聞きになっているとおりでございます。

 また、現行のJR会社法とJR会社法の改正案に定める指針についてのお尋ねがございました。

 JR各社は、現在、JR会社法により、人事、財務等について各種の規制を受けておりますが、今般、このうち、完全民営化の条件の整ったJR本州三社につきましては、JR会社法の規制を適用除外することといたしております。

 これらの会社は、他の民鉄会社と異なり、国鉄改革の中で誕生したという経緯があることから、完全民営化後におきましても、国鉄改革の趣旨にのっとった事業経営を引き続き確保する必要があると考えております。したがって、今回のJR会社法の改正案におきましては、JR各社間の協力、連携の確保等、国鉄改革の趣旨にのっとった事業経営を確保する上で必要最小限の事項について国土交通大臣が指針を定め、これに基づいて指導助言を行う仕組みを法律上設けることとしたところでございます。

 JR本州三社の完全民営化後におきましても、この指針制度に基づいて国鉄改革の趣旨に沿った事業運営の確保を図るよう万全を期してまいる所存でございます。

 続きまして、完全民営化後におけるJRのローカル線の切り捨てなどのお尋ねがございました。

 ローカル線の廃止につきましては、その廃止に当たりまして、鉄道事業法により一年前に届け出を行うことになっておりますけれども、JRについては、国鉄改革時に、当時の不採算路線を含めて事業全体で採算が確保できるように事業用固定資産の継承等を行ってきたという経緯を踏まえる必要がございます。

 したがいまして、完全民営化後におきましても、今回の法律に基づく指針により路線の適切な維持を図ることとし、路線の廃止を行う場合にあっては、国鉄改革後の輸送需要の動向等について、十分、地元への説明責任を果たすように求めてまいりたいと考えております。

 鉄道の安全輸送の確保についての御質問もございました。

 従来より、JR及び民鉄の双方に対して、鉄道事業法、鉄道営業法及びこれに基づく安全にかかわる技術基準などにより、その安全が担保されてきたところでございます。JRの完全民営化後におきましても、これらの法令は当然適用されるものでございますし、また、今後とも、これらの法令に基づいて、鉄道の安全輸送を確保するため、適切に対処してまいりたいと考えております。

 駅周辺の商店街への対応については、従来より、JR各社に対しまして、JR会社法第十条の中小企業者への配慮規定の趣旨を遵守し、また、地元中小企業者と十分調節を図り、円満な解決を図るように指導しているところでございます。JRの完全民営化後におきましても、改正案に定める指針において同様の趣旨の規定を盛り込むこととしておりますし、これに基づいて、地元との調和に配慮した事業展開が図られるよう適切に対処してまいりたいと考えております。

 続きましては、指針制度の意味及び「当分の間」を過ぎてしまえば公共輸送機関としてのJRの使命、役割が終わってしまうのかとのお尋ねがございました。

 御指摘の指針制度は、JR会社法に基づく規制から適用除外された後においても、国鉄改革の趣旨を踏まえた事業運営を担保するために設定しようとしたものでございます。したがいまして、JR各社の具体的な運営状況や長期債務の償還状況等に照らしまして、国鉄改革が最終的に完了したと判断されるまでの当分の間、この指針制度を運用することとしているところでございます。

 ただ、当該JRが鉄道輸送を行う公共輸送機関としての使命、役割につきましては、引き続き存続するものと考えておりますし、また、鉄道事業法等の法令によってその適切な運営を確保していくものと私も理解いたしておるところでございます。

 最後に、いわゆる千四十七人の問題についてのお尋ねがございました。

 政府といたしましては、いわゆる再就職促進法等に基づきまして、さまざまな職業訓練、一人一人に対する何十回にも及びます職業相談また職業あっせんを行いまして、地方の自治体や民間企業への再就職対策を促進するとともに、JR各社に対しましても追加採用の実施を要請するなど、国鉄改革の前後を通じて万全の雇用対策を講じてきたところでございます。

 平成二年四月、結果として国鉄清算事業団を解雇された者にかかわるいわゆる千四十七人問題につきましては、政治の場における人道的な観点からの解決に向けた努力が積み重ねられた結果、昨年の五月三十日、いわゆる四党合意が取りまとめられ、その基本方針に基づいて、現在、国労を含めました関係者間において調整がなされているところでございます。政府としては、四党合意を踏まえつつ、与党とも十分に連絡をとりながら今後も適切に対処してまいりたいと考えております。

 以上、御答弁申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇〕

国務大臣(橋本龍太郎君) 瀬古議員にお答え申し上げます。

 当時の国会答弁そのものにつきましての状況は、今、扇大臣からも答弁の中でお触れになりましたけれども、国鉄改革の中で大きな問題でありました雇用対策について、政府としても万全の措置を講ずる、その立場から御答弁を申し上げました。

 そして、その立場から、実際に雇用対策として、いわゆる再就職促進法などに基づきまして、さまざまな職業訓練や、一人平均で延べ七十四回に及ぶ職業相談、延べ三十四回の職業あっせんを行い、地方自治体でありますとか民間企業への再就職対策を実施すると同時に、JR各社に対しても追加採用の実施を要請するなど、国鉄改革の前後を通じて万全の雇用対策を講じてまいったと思っております。

 今御指摘になりました、いわゆる千四十七人問題、これは、人道的立場に立ち、現在、四党合意の枠組みに沿って、政治の場において解決に向けた取り組みが進められていると聞いております。政府におきましても、与党と十分連絡をとりながら適切に対処していくべきものと考えておる次第であります。(拍手)

議長(綿貫民輔君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(綿貫民輔君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十五分散会




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