衆議院

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第29号 平成13年5月10日(木曜日)

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平成十三年五月十日(木曜日)

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 議事日程 第十六号

  平成十三年五月十日

    午後二時開議

 一 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)

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本日の会議に付した案件

 国務大臣の演説に対する質疑(前会の続)




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    午後二時二分開議

議長(綿貫民輔君) これより会議を開きます。

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 国務大臣の演説に対する質疑 (前会の続)

議長(綿貫民輔君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。中井洽君。

    〔中井洽君登壇〕

中井洽君 私は、自由党を代表して、小泉総理大臣の所信表明演説に対して質問いたします。(拍手)

 小泉総理は、自民党総裁選挙を、自民党を変える、日本を変えるというキャッチフレーズで戦われました。国民はその改革への意欲を高く評価して、高い支持率を示し、それが自民党員を動かして、玄人の予想を裏切る大差で物の見事に当選されました。

 総理は私と同じ昭和十七年生まれであり、その意味からも、御就任をお喜び申し上げますとともに、大いに期待をするものであります。

 総理は、当選十回、二十八年間の国会議員生活で、しかも、そのうち十八年間以上を独身で国会議員を続けてこられました。現在独身三年目で、いささか苦労している私から見れば、総理の今日までの政治生活は並大抵のことではなかったろうと、重ねて敬意を表するものであります。(拍手)

 さて、総理、国民は、本当に総理が主張されてきた改革が実現できるのかどうかを半信半疑ながら見守っています。今までの自民党と違う、また今までの総理とも違う政治を行うかもしれないという淡い、せつない希望をあなたに託しているのであります。

 しかし、七日に行われた所信表明演説や昨日の本会議での議論を聞いて、国民の期待は物の見事に破られました。総理の発言や政策は、具体論はすべて先送り、トーンダウンと詭弁の連続で、まさに羊頭狗肉、看板に偽りありと断ぜざるを得ません。(拍手)

 総理は、組閣に当たっての発言やメーデー等のあいさつで、驚天動地、革命的、政権交代と同じような意味を持つと、みずからの政権を自画自賛しておられましたが、その意味するところは、結局、田中派、経世会、橋本派と続いた自民党の巨大派閥に総裁選挙で勝利したと言っているのにすぎないのではないでしょうか。

 橋本派からの入閣が少ないというだけの内閣であり、政策的に森内閣とどこがどう違うのか、皆目わかりません。個性とかでなく、政策的な違いがあるというのなら御説明ください。あなたが派閥の長として支えてきた森内閣ですから、変わらなくて当然ではないでしょうか。それを、革命的などとマスコミを通じて宣伝しているだけにすぎないのであります。

 また、任期中は閣僚をかえないと言っておられますが、留任された七人も含めてかわらずにいかれるのか、お答えをください。

 総理は、しばしば、自民党の解党的出直しの決意を語っておられます。結構なことですが、本当におやりになれるのですか。おやりになるというのであれば、まず最初に、ゼネコン汚職事件で東京高裁において実刑判決を受けた中村喜四郎代議士に関して、野党が共同で提出した辞職勧告決議案に賛成するというのはどうでしょうか。(拍手)新聞報道によれば、本会議で採決されれば公明党さんも賛成されるということだそうであります。自民党総裁としての考えをお伺いいたします。

 総理は、就任後の記者会見で、首相公選制について、これに限った憲法改正を行うべきであると発言されました。所信表明では、「早急に懇談会を立ち上げ、国民に具体案を提示します。」と述べられるにとどまりました。

 首相公選制については、私たちもいろいろな論議をしてまいりましたが、天皇制との整合性の問題、政党の役割や存在、二院制の是非等々、大変難しい関門が立ちふさがっています。そこで、首相公選制よりも、私は、参議院のあり方や役割分担等の改革を憲法を改正してでも行うべきだと考えていますが、いかがでしょうか。

 戦後五十数年を総決算し、「新世紀維新」を断行しようという総理の意気込みはわからないわけではありませんが、それならば、戦後五十数年の日本を形づくってきた基礎である憲法全体をなぜ見直そうとしないのでしょうか。現行憲法を変えずに聖域なき改革ができるとお考えでしょうか。

 また、憲法改正以前の問題として、改正しようにもその手続制度すら整備されていないのが実情であります。改正するにしろ、現行憲法でやっていくにしろ、改正手続が明確にされていることが法体系として当然の姿であります。そのための国会法の改正や憲法改正国民投票法の制定をまず急ぐべきであると考えますが、総理の御所見を承ります。

 総理は、就任後の記者会見で、自衛隊が軍隊でないというのは不自然だと述べられました。まさにそのとおりであります。従来の政府解釈を変更して、自衛隊を軍隊であると発言されていかれるのか、今までどおりのあいまいな答弁に戻られるのか、お答えをください。

 また、集団的自衛権について、総理は行使を認める発言をされていたにもかかわらず、与党の党首会談の席で、よく検討する、政府解釈を変えるのは難しいのはわかっていると述べられました。所信表明では一切触れられておりません。政府解釈を変更するか否かは、総理の決断一つでできるのであります。明確な答弁を求めます。

 さらに、総理は、有事法制の検討について意欲を示され、「治にいて乱を忘れず」と引用されました。しかし、有事立法の法制化問題は十数年前から国会でも繰り返し論議され、私も何度も法制化を提言してまいりました。しかし、そのたびに政府・自民党の手で見送られてきたのが現実であります。国会内での「治にいて乱を忘れず」ばかり考えて、安全保障の根幹の法制化を見送ってきたのは、あなたたち自民党であります。

 昨年、自由党も与党として加わっていたプロジェクトチームからの申し入れを受け、既に政府は検討に着手しているはずです。肝心な点は、国会に法案を提出する期限を明示することであります。はっきりとした指導力を発揮すべきだと思いますが、小泉総理のお考えをお示しください。

 次に、五月一日に、北朝鮮の金正日総書記の長男である金正男氏と見られる男性が偽造旅券で不法入国を図り、入国管理局に身柄を拘束されたという事件についてお尋ねをいたします。

 政府は、刑事告発することもなく、この男性を含む男女四人に退去強制令書を執行しました。一体、この処分をだれが決めたんですか。報じられたところによると、内閣官房副長官と法務省、外務省、警察庁の三省庁幹部で検討し、不法入国容疑で告発すべきだという意見を押し切って結論を出したと言われています。

 総理は、記者団に対し、法的手続には落ち度がなかった、適切な措置がとられたと言われていますが、果たしてそうでしょうか。私は、この決定はまことに不適切、恥ずべき決定だと考えています。

 この決定のとき、法務大臣、外務大臣は一体どこにおられたんですか。どう関与されたんですか。このようなときに役人にまず判断をさせるという方法は、さきの米原潜の事故に対する森内閣の対応と同じであり、また、先般の李登輝前台湾総統の訪日問題で、書類申請がなされたにもかかわらず、受理していないとして処理しようとした姿勢とも全く同じであります。なぜ大事を役人に任すのですか。なぜ政治家が決断をしなかったのですか。自民党の古い習慣と依然として変わっていないではありませんか。

 本人と確認できなかったとして退去強制にしましたが、金正男とわからなかったのなら、ビジネスシートを全席独占させ、外務省高官数人がなぜ北京までついていったんですか。全く国辱物ではありませんか。わざわざお見送りした理由をお聞かせください。

 金正男と言われる男の指紋や写真をきっちりとったと信じますが、どうですか。また、パスポートには三度日本に入った印があったと言われていますが、事実ですか。その年月日はいつですか。三度も入国しているのなら、その目的は、また会見相手はだれだったんですか。

 北朝鮮から韓国に亡命した元特殊工作員は、日本へ入国することは食事中トイレに行くぐらい易しかったと供述していると言われています。日本赤軍、重信房子容疑者も、逮捕するまでに何度も密出入国を繰り返していました。そんなに簡単なものでしょうか。

 小泉総理は、事件後、検査体制強化を命じられたと聞きますが、沖縄サミットの特別予算等でかなりの近代化を進めたはずですが、どんな対策をされるのかお答えをいただくとともに、今回の政府の対応に猛省を促します。

 扶桑社の教科書が検定に合格し、内外で各種の論議が起きています。田中外務大臣は、就任後のインタビューの中で、扶桑社の教科書について、歴史的事実をねじ曲げているし、そう言おうとしている人たちがいると批判をされましたが、五日後の記者会見では、じかに見ていないので、ぜひ手に入れて、どういう表現があるか自分の目で確認したいと修正されました。

 なぜ、読みもしないでああいう発言をされたんですか。一部マスコミに迎合する姿勢と言わざるを得ません。外務大臣は、その後、実際にごらんになってどう思われたか、お尋ねをいたします。

 次に、対米関係についてお尋ねいたします。

 総理は、就任前、日米友好関係という言葉を使われていましたが、さすがに所信表明では、「日米同盟関係を基礎にして」と直されました。

 私どもが知る限りでは、ブッシュ政権の北東アジア政策は、クリントン時代とかなり違いがあると思います。総理はアメリカのこの政策転換をどのように認識されているのか、お聞かせください。

 また、新たなミサイル防衛システム導入について日本に同調を求めていると言われておりますが、総理の御判断もお聞かせください。

 米アーミテージ国務副長官との会談を田中外相はいわゆるドタキャンされました。また、外相は、副長官が総理と会談されるのも反対されたと言われています。日米関係上も、また、副長官が常に日本に関して温かい関心を寄せている米高官であることを考えても、外務大臣として極めて不適切な対応であったと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。

 北方四島について、総理は、就任後の記者会見で、あくまで四島は日本の領土だとロシア側に認識してもらいたい、この確認ができれば、返還方法は一括、一時でなくてもよいと述べられました。しかし、田中外務大臣は、過去の外務省の二島先行返還論を批判し、外務省の人事を覆すなど、はっきり四島一括返還を主張し、総理や自民党内部と食い違いを見せています。閣内不一致を思わす外相の言動を総理はどう判断されますか。

 総理は、構造改革なくして景気回復なしと言い続けておられます。これは私ども自由党が結党以来主張してきたことであり、本当に実行されるのならば、遅きに失したとはいえ、賛意を表します。しかし、何を、どのように、どういう順番で改革するのかといった各論については、残念ながら明確にされておりません。

 自由党の日本一新のための構造改革は、大胆な規制緩和・撤廃を実施し、官と民のくびきを断ち切ること、すなわち、あらゆる業種を規制している各種の業法を廃止するとともに、特殊法人を原則民営化し、民間が国の関与なしに、みずからの才覚と自己責任で自由に経済活動ができる体制をつくることであります。自民党の長年の体質である業界の利益を国が守るという政官業の癒着構造を断ち切り、天下りをなくし、族議員をなくし、小さな政府と元気な民間を実現するものであります。

 小泉総理は自由党の改革政策をどのように考えられるか、お尋ねいたします。

 また、所信では、長年の御持論である郵政三事業民営化について、二〇〇三年に「公社化を実現し、その後のあり方については、早急に懇談会を立ち上げ、民営化問題を含めた検討を進め、国民に具体案を提示します。」と述べられました。

 小泉総理はこれだけを粘り強く主張し続けられてきたという印象が国民の中にも深くしみ込んでいます。そのたった一つの政策でも、具体論を提示せず、懇談会にゆだねるとしています。これでは、総理の他の改革も迅速に、また実際に行われるとは到底思えませんが、いかがでしょうか。

 次に、地方分権の推進について伺います。

 我々は、地方分権の推進という改革も大事な柱と考えています。現行の、小さい行政区分であればあるほど国から補助金が多くおりてくるという発想や体質や制度を変え、地方自治体がみずから財源を決め、行政サービスをみずからの手で十分行える規模、また高度情報化社会にふさわしい市町村規模、すなわち、五百から三百の市に全国を再編成することが地方分権の根幹だと考えますが、総理のお考えをお尋ねいたします。(拍手)

 次に、金融機関の不良債権の処理について伺います。

 総理は、二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指すと公約されました。現在の破綻懸念先以下の直接処理の対象金額は約二十四兆円と言われております。これに対し、金融機関の個別引当金が約八兆円あり、十六兆円が処理しなければならないネットの金額になります。担保価値の評価にもよるため具体的な金額は明確にはなりませんが、三兆円から五兆円程度の追加コストが必要と言われています。

 小泉総理は、たびたび、経済のマイナス成長を覚悟してでも改革をやると言っておられますし、また、現行各種計数から見て、十三年度の日本経済はマイナス成長に陥る危険性がかなり高いのも事実であります。その場合には、要注意先債権六十兆円が不良債権化する可能性も大いにあり、追加コストが大幅に増加し、銀行の一年間の業務純益三兆円を三年分使っても処理できず、公的資金導入をせざるを得ないと考えますが、総理はどう御判断されていますか。

 一方、国債発行三十兆円という枠を公約どおり守られるのならば、公的資金導入の余地は全くなく、不良債権の処理は不可能となりますが、総理の御所見を伺います。

 また、株式取得機構について、市場メカニズムとの調和を念頭にと述べられていますが、このことは相矛盾することであり、無理があると考えますが、どのように両立させるおつもりでしょうか。

 財政再建でプライマリーバランスを均衡させるという方針は評価するものであります。私たち自由党は、血のにじむような行財政改革を実行し、また、景気回復を図り、増税なしで五年ないし七年でバランスの均衡を回復すると公約いたしております。総理もたしか、増税なしでと言われておりますが、所信ではその言葉が消えており、また、年数については何も触れられておりませんが、どうお考えでしょうか。

 次に、社会保障について伺います。

 大切なことは、世界に例を見ない速さで人口構成が変化する中で、社会保障のビジョンを明確に示し、社会を担う現役世代の人々の保険料負担累増の懸念を払拭し、他方、お年寄りの給付水準引き下げへの心配を取り除くことにより、国民全体が安心と安定を確保し、生活設計を描きやすくすることにあります。

 総理は、社会保障について、年金、医療、介護の三本柱について、「自助と自律」を基本に高齢世代と現役世代の負担均衡を図り、持続可能な制度を再構築するとしておられますが、これは歴代総理も皆、言ってきたことであります。

 総理は、厚生族と言われ、厚生大臣も経験され、社会保障政策に詳しいはずですが、所信では具体的な政策は何も述べられていません。もし、このまま社会保険制度を維持しようとするのであれば、給付の引き下げと保険料の引き上げを何年かごとに繰り返す、従来と同じ手直ししかできないことは明らかであります。

 私たち自由党は、消費税の使い道を基礎年金、高齢者医療、介護といった基礎的社会保障の財源に限定すれば、自律と自助の線引きの明確化が図られるばかりでなく、世代間の負担の均衡が図られ、あわせて財政基盤が安定し、持続可能な社会保障システムが構築されると今日まで主張してまいりました。これは総理の政策目標に合致すると考えますが、これに対するお考えをお聞かせください。

 次に、教育問題について伺います。

 今日の日本の社会情勢を見るとき、あらゆる改革の中でも教育改革は、最も重要であり、最も急がれる課題であると私は考えています。教育の基礎であり、戦後五十数年の日本の教育を形づくってきた教育基本法についても、具体的な見直し案を提示し、早急に国民の賛同を得るべきです。

 教育基本法については幅広く国民的議論を深めるという総理の姿勢では、従来どおりの問題先送りと何ら変わりはないではありませんか。森内閣と何らかの違いがあるのかを含めて、総理の御所見を伺います。(拍手)

 環境問題への取り組みにしましても、総理が所信でお触れになった、すべての公用車の低公害車への切りかえや循環型社会の構築といったものは、この十数年間、常に国会でも議論され続けてきた問題であり、今までほとんど手つかずにしておいて今ごろ言うかと率直に思ったのは、私一人ではないでしょう。

 例えば、おいしい水と簡単に言われますが、ガソリン代より高いペットボトルの水が飲まれているという現実は、私が少年のころでは到底考えられなかったことであります。今、おいしい水を供給するためには、自然環境保全や住環境の整備などさまざまな課題が山積していると思いますが、総理はどのような具体的方針を掲げておいしい水を確保されようとするのでしょうか。

 また、総理の言うごみゼロ作戦にしても、その思いや方向性は私も大賛成ですが、必要なことは、精神論ではなく具体論です。例えば、自治体の合併推進と同時に、広域圏を想定した廃棄物処理体制の整備のあり方の確立や、再利用可能な資源の需要と供給を効率的につなぐ物流システムをどのようにするのか、さらに、排出者となる消費者や生産者に対してどのような環境倫理を説明するのか等、ゼロという設定をした以上、国民が納得できる作戦内容を提示すべきと考えますが、いかがでしょうか。(拍手)

 総理は、都市の再生について触れられ、都市の魅力と国際競争力を高めるため、都市再生本部を設置すると述べられました。

 私は、国民に改革の必要性を理解していただき、長年続いた東京一極集中や各県の県庁所在地一極集中という、いびつな日本の都市構造を再生するためには、首都機能の移転が一番ふさわしい政策と考え、現在も国会移転の特別委員会で議論をいたしております。総理は、国会決議のもとに進められている首都機能移転について、都市再生と絡めてどのようにお考えでしょうか。

 次に、与党三党の政策合意について伺います。

 本来、連立政権は、合意した政策を実現するために連立を組むものであります。小泉総理は、総裁選挙中、かなり思い切ったことを発言され、公明、保守二党に大いなる不安感を与え、小泉総理以外の方が自民党の総裁になることがベストと、公明、保守両党の幹部がたびたび口に出されていたことは周知の事実であります。小泉総裁になれば連立さえ危うくなると言われていた中で、わずか十五分の党首会談で連立政権政策合意が決められたのですから、あきれて物も言えません。この政策合意は、極めて妥協的で、あいまいなものであると言わざるを得ません。

 例えば、政治倫理を確立するため協議会を発足させ、国会改革を進めるとしていますが、森前総理が約束されたKSD幽霊党員の実態調査はどうなったのでありましょうか。森前総理は、私の予算委員会の質問に対して、架空党員の存在が明らかになれば党費を返却すると答えておられましたが、総裁予備選挙で幽霊党員が続々発覚と報ぜられたように、総裁選を通じて既に事実が明らかになっております。

 自民党内の調査も既に十分おやりになったことと思います。今さら協議会をおつくりにならなくとも、KSD事件をはっきりと決着されることが政治倫理の確立にとって一番効果的な行動だと考えますが、自民党総裁の御決意を伺います。(拍手)

 また、三党合意では、平成十二年国勢調査を踏まえ、衆議院の現行選挙制度の見直しについて早急に結論を得るとなっていますが、これほど怪しい合意はありません。

 現在、衆議院選挙区画定審議会が、昨年の国勢調査人口に基づいて、衆議院小選挙区の区割り改定案について検討を進めています。言うまでもなく、一票の格差是正は民主主義の根幹にかかわるものであり、厳正に改正することが重要であります。しかし、三党合意では、格差是正についてではなく、衆議院の現行制度の見直しについて早急に結論を得るとしています。

 三党合意の際に、現行の衆議院小選挙区比例代表並立制を廃止し、中選挙区を基本にした選挙制度に戻すという話し合いが持たれたやに聞いています。これが事実とすればゆゆしき事態だと思います。さきの強引な参議院選挙制度改革と同様に、選挙で負けるから自分たちの都合のいい、有利な選挙制度を導入するというのであれば、民主主義も何もあったものではありません。

 改革の最初のスタートとして、苦労して小選挙区を導入したのであります。改革を唱える総理として、この場で明確に、中選挙区への後戻りは考えていないとお答えをください。

 また、三党合意には永住外国人への地方参政権導入について盛り込まれていませんが、どうなったのでしょうか。

 さらに、敗戦記念日の靖国神社公式参拝について、総理は、いかなる批判があろうとも必ず参拝すると総裁選挙中強調しておられましたが、発言どおり、八月十五日に靖国神社にいわゆる公式参拝されるのですか、明確にお答えください。昨日の本会議で、小さな声で個人的にと答えられたように聞こえましたので、念のためお答えをいただきます。

 総理は、所信表明の中で、国民、改革という二つの言葉を乱発され、最後には、米百俵の史実を引用され、痛みや我慢を説かれました。しかし、国民は、ここ数年間、年金給付の引き下げ、保険の予定利率の切り下げ、失業率の増大、各種負担金の増加等々で、すさまじい痛みを既に十分感じています。なおその上に、国民は、金利ゼロに等しい預貯金をふやし続けて、莫大な国の国債発行の増額を可能にし続けてくれているのであります。

 これ以上どうやって国民に協力を求めるのですか。むしろ、痛みや苦しみを感じなければならないのは、国民ではなく、あなた方政府・与党、とりわけ自民党の方々ではないでしょうか。(拍手)政界と官界が一番改革がおくれていると国民は感じています。

 日本を変えるとおっしゃるのであれば、所信表明のような言葉だけの改革でなく、みずからのリーダーシップのもと、自民党や官界が痛みを感じる政治行政改革をまず最初に断行すべきと申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 中井議員にお答えいたします。

 最初に、私の内閣の人事等についてのお尋ねがございました。小泉内閣と森内閣との違いについてもお尋ねがございました。

 まず、今までの人事と同じだと思っている人はいないんじゃないでしょうか。党三役にしても組閣人事にしても、大方は、今までの自民党的な組閣の手順、結果、大いに違ったなと思っている方の方が多いんじゃないでしょうか。全然かわりばえしないというのとは私は違うと思います。私なりの特色を出せたと思っております。

 そして、具体論がないと言っていますけれども、私自身としては、これほど具体論を盛り込んだ所信表明はないと思っております。私が自民党総裁選挙で発言していたほとんどすべて盛り込んだと言っても過言ではないと思っております。

 そして、私は、総理大臣としても、できるだけ個人の独断とか偏見は排除しようと思っています。私自身の能力とか知識は限られております。私よりも能力のある人はたくさんおられる。知識の豊富な人もたくさんおられる。できるだけそういう方々の意見も取り入れて、国民から理解され協力されるような具体案を提示するのが総理大臣の責任だと思っております。(拍手)

 そういう点について、まだスタートしたばかりであります、もう少し時間をかけてよりよい具体案を考えていきますので、その時点でまた新たな評価なり御判断をいただきたいと思います。(拍手)

 今回、まず、私が総理大臣になって政権交代とかいうような発言についても御批判がありましたけれども、第一、政治の玄人と言われる見方とほとんど違ったじゃないですか。ほとんどの方は、私が総裁・総理なんてなると思っていなかったんじゃないですか。

 そういうことについても、やはり変革の風が吹いているな、変革の時代の風を自民党の党員も国会議員も受けとめてくれたからこそ、今日の小泉内閣があったのではないか。この変革の時代を、どうやってよい対応をしていくか、その対応に誤りなきを期していくのが小泉内閣の責任であると思っておりますので、よろしくまた御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)

 一年ごとに内閣改造をするかどうかというお話でありますが、今の内閣の閣僚の人事につきまして、私は適材適所を貫いたつもりでございます。改革に立ち向かう志と決意を持った方ばかりを起用したつもりでございます。この閣僚につきましては、私が総理大臣にいる間は一緒に閣僚としてお仕事をしていただきたいなと思っております。(拍手)

 中村喜四郎代議士に対する辞職勧告決議案に賛成するかとのお尋ねであります。

 私は、国会議員の出処進退というのは国会議員みずからが判断すべきものだと思います。辞職勧告決議案を出すのに反対はいたしませんが、私がどういう態度をとるかどうかということについては、そういう案を出してから御判断をいただきたい。基本的には、国会議員の出処進退というのはみずからが判断すべきものと私は考えております。(拍手)

 参議院改革、憲法改正及び憲法改正手続の整備についてお尋ねがございました。

 憲法の基本理念であります民主主義、平和主義及び基本的人権の尊重は、憲法が制定されてから今日に至るまでの間、一貫して国民から広く支持されてきたものであって、将来においてもこれを堅持すべきものと考えております。

 そして、憲法全般につきましては、現在、衆参両院において憲法調査会が設置されております。その場においてもいろいろ、改正論あるいは護憲論、議論が出ていると思います。この議論を見守りながら、世論の成熟を見定めるなど、憲法改正については慎重な配慮を要する問題だと思っております。

 憲法改正国民投票法の制定をまず急ぐべきではないかということでございますが、国民投票の方法など手続について、具体的な定めを法律で置くことが必要であると考えますが、この手続の法制化については、今後、憲法に関する議論の中で取り上げられる問題ではないかと考えておりまして、これを十分見守ってまいりたいと考えております。

 首相公選制については、私は、私の持論は持っております。しかし、これは憲法改正を要する問題です。そこで、先ほども言っていますように、私個人の独断でやろうとは思っておりません。憲法学者等、学識経験者も含めて、もし首相公選制を導入するのだったらば、どういう内容がいいか、これも含めて専門家の知識、知恵を吸収したい。

 私としては、天皇制とこの首相公選制は矛盾しない、両立できる。もちろん、議会を廃止するつもりはありません。議会も首相公選制も天皇制も、それぞれ両立できるような案を考えていくべきだ。

 むしろ、国民の間には、県知事選挙を見ても市長選挙を見ても、県会議員じゃなきゃ知事になれないとか市会議員でなくては市長になれないとかいう状況にはありません。今、国会議員しか総理大臣にはなれません。そういう意味において、私は、国会議員の何人かの推薦要件をつけて、一般国民からも首相になれるような制度もいいのではないかという意味で首相公選制を提案しておりますが、この問題については、懇談会を立ち上げまして、各般の、広く有識者の意見も聞いて、具体論を提示して、国民の理解と協力を得ながら、今後の政治課題と思い、取り上げていきたいと思っております。

 今まで、こういうことを言っても政治の課題に取り上げた首相は一人もいなかった。これ自体でも大変な違いではないかと思います。

 自衛隊は軍隊であるというのかとお尋ねです。

 私はいろいろ調べていますが、確かに、侵略に対して武力をもって立ち上がる集団を軍隊というのならば、そういう定義もできる。しかし、国際社会の中で各国の軍隊という定義を見ますと、それは、国際紛争を解決する手段として、武力の行使、武力による威嚇は当然だという考え方の国が多い。ということを考えますと、日本はそういう態度をとっていない。そういうことからいうと、いわゆる国際社会の中で軍隊の定義には当てはまらない点がたくさんあります。

 そういう点も含めまして、私は、憲法のあるべき姿として、一般の国民から見て、自衛隊が憲法違反であるとか、これは違反でないとか、人によって解釈が違うよりは、中学生、高校生が見て、そのような誤解の生じないような文章の方がいい。そういう意味において、将来、私は、九条のみならず憲法全体についての見直しはタブーではない、幅広く議論を進めながら、見直すべきところは憲法九条も含めて見直しの議論、改正の議論は大いに進めていってしかるべきではないかと思っております。(拍手)

 集団的自衛権についてのお尋ねであります。

 これは、従来から、政府は、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しておりまして、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきています。

 憲法は我が国の法秩序の根幹であり、特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと思います。

 他方、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要でありまして、集団的自衛権の問題について、さまざまな角度から研究してもいいのではないかと思っております。

 有事法制についてでありますが、国家、国民に危機が迫った場合に、政府として、どのような対応や法制が必要になるかを総合的観点に立って考えるべきものであることから、準備的な検討を十分に行う必要があり、具体的な法案提出の期限等の問題については、今後の検討の状況を踏まえつつ、適切に判断していきたいと思います。

 金正日氏の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、だれが退去強制という処理方針を決めたのかというお尋ねがありました。

 本件については、法務大臣の指示のもと、法務省は、関係当局と協議の上、関係法令等に従い、退去強制という処理方針を定めたものと承知しております。

 この法務省の処理方針の報告を受け、私としても、今回の事案については、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一だと考えるとともに、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれもあり、そうした事態を避けるためにも、総合的判断を加えた上、退去強制という処理方針を了承したものであります。

 また、なぜ政治家が決断をして告発しなかったのかというお尋ねがありました。

 ただいま申し上げましたとおり、私も法務大臣も、総合的判断を加えて適時適切に判断したものと考えており、今回の措置は適切なものであったと思っております。

 退去強制をされた人物に外務省及び法務省職員が北京まで同行した理由についてですが、本件については、移送中の混乱を防止し、当該人物を送還先国である中国に確実に引き渡すとともに、引き渡しに際して混乱が生じた場合等にも中国側との調整をスムーズに行い得るようにという観点から同行させることとしたものであります。

 問題の人物を退去強制した際の措置についてでありますが、この点につきましては、関係法令に従い、所要の措置をとったものと承知しております。

 次に、当該人物が所持していた偽造旅券等についてのお尋ねがありました。

 昨年中の日付で、本件旅券を使用して三回、本邦に上陸した者がいることが判明しているとの報告を受けておりますが、それらが本件男性本人による入国であるかどうか、また、その目的等も不明であります。

 出入国管理体制の強化についてでありますが、今回は偽造旅券を発見して本邦への上陸を阻止しましたが、この事件を踏まえ、五月六日の閣僚懇談会において、職員の増強や機器の整備など入管体制の強化を検討するよう関係大臣に指示し、そのうち一部は既に実行に移っているものと承知しております。

 なお、九州・沖縄サミットに係る法務省入国管理局関係経費は、円滑、厳格な上陸審査を行うための応援職員旅費等でありまして、機器の購入のための経費はありません。

 ブッシュ政権の北東アジア政策についてでありますが、ブッシュ政権がいかなる北東アジア政策をとっていくかについてはさまざまな見方がありますが、政府としては、今後とも、ブッシュ政権と緊密に協議しつつ、米国の動向を注視していく考えであります。

 いずれにせよ、朝鮮半島情勢については、アメリカ、韓国両国との連携を維持するとともに、アジア太平洋地域の平和と安定のために、日米同盟関係をより強固なものにしていきたいと思います。

 米国の新たなミサイル防衛システム導入に関する御質問であります。

 我が国は、弾道ミサイルの拡散が安全保障上の深刻な脅威となっていることにつき、米国と認識を共有しております。また、米国がこれに対処するため、各般の外交努力を行うとともに、ミサイル防衛計画を検討していることを我が国として理解しております。

 我が国が米国との間で実施している弾道ミサイル防衛に関する共同技術研究は、我が国の安全保障にとって重要であり、引き続き推進していきたいと考えます。

 我が国は、ミサイル防衛問題が軍備管理・軍縮努力を含む国際安全保障環境の向上に資する形で扱われていくことを望んでおり、米国が同盟国やロシア、中国等と十分協議していくと表明していることを歓迎しています。我が国としても、本件につき、米国と緊密に協議していく考えであります。

 昨日まで来日していたアーミテージ国務副長官の日程についてですが、同副長官による田中外務大臣への表敬については、調整をしておりましたが、日程上の都合がつかず実現しなかったと承知しております。

 しかし、アーミテージ副長官は、来日中、ミサイル防衛に関する日米協議に出席されたほか、福田官房長官、中谷防衛庁長官並びに植竹及び杉浦外務副大臣とも会い、有意義な意見交換を行いました。

 なお、私も、短時間ではございましたがお会いし、非常に親近感を持ち、友好的な雰囲気で、ブッシュ大統領よりの親書をアーミテージ副長官からいただきました。

 北方領土問題についてですが、政府としては、北方四島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結するとの一貫した方針を堅持する考えでありまして、閣内不一致との御指摘は全く当たりません。

 なお、御指摘の二島先行返還という提案については、森内閣を含め、我が国としてロシア側に提示したことはありません。

 自由党の規制改革、特殊法人改革政策についてでありますが、私は、そういう自由党の改革に対する前向きの姿勢を歓迎したいと思います。今後、特殊法人等についての改革、協力できることは大いに協力していきたい。これからもどしどし、前向きの改革を御提案いただければありがたいと思っております。

 郵政三事業民営化についてのお尋ねでありますが、私は一歩も後退したとは思っておりません。

 まず第一に、首相公選論にしても、郵政民営化の問題についても、総理大臣が話題にしたこと、一つもなかったじゃないですか、今まで。こういうことを見ても、私は、改革に向けてこれからタブーなく、「聖域なき構造改革」をしなきゃならぬという一環として申し上げておるのでありまして、郵政三事業については、公社化が既に十五年に実現することが決まっております。

 かねがね言っているように、民営化すべきかどうかの問題は、公社化した後の問題なんです。そして、公社化後には、もう民営化はだめだとか国営化じゃなきゃだめなんだというような議論を持たない、よりよい方向、私としてはこれは民営化がいいと思っておりますけれども、いろいろな方々の知恵、御意見を聞きながら、国民の理解と協力を得るような、いい具体案を考えるのが私の責任ではないか。私だけの判断、考えじゃない、私より知恵のある人の意見もお伺いしながら、国民の理解を得られるような案を提示して、国民的議論を大いに行っていきたいと思います。できれば、この国会の中の政党におきましても一つぐらい、郵政民営化論の主張を展開していただければありがたいなと思っております。

 地方分権の推進に関連して、全国を五百から三百の市に再編すべきとの趣旨のお尋ねです。

 地方分権の推進のためには、住民に身近な、総合的な行政主体である市町村の行財政基盤を強化することが不可欠であり、市町村合併によってその規模、能力を強化していくことは、地方行政の構造改革を進める上でも極めて重要な課題であると認識しております。

 市町村合併特例法の期限である平成十七年三月までに十分な成果が上げられるよう、市町村合併後の自治体数を千を目標とするとの与党の方針を踏まえて、自主的な市町村の合併をより一層強力に推進していきたいと思います。

 要注意先債権の不良債権化による公的資金等についてのお尋ねです。

 今回の緊急経済対策は、構造改革の断行による我が国経済の再生と本格的な景気回復を目指すものであり、要注意先債権については健全債権化を図ることとしております。したがって、お尋ねのような公的資金の導入の必要性はないと考えております。

 公的資金導入と不良債権処理に関するお尋ねです。

 不良債権については担保、引き当てにより適切に保全されていること、各金融機関においては自己資本比率の充実が図られていることなどから、公的資金を導入しなければ不良債権が処理できないとは考えておりません。

 株式買い取りスキームについては、株式保有制限の導入に伴う銀行からの株式放出が、株価水準によっては金融システムの安定性や経済全般に好ましくない影響を与える可能性もあることから、こうした一時的な需給面への影響を緩和するものとして検討しているものであり、市場の適切な機能発揮のための環境整備を図ることを目的としているものであります。こうした考え方のもと、市場メカニズムとの調和を念頭に具体策を講じることとし、しっかりとした検討を進めてまいります。

 財政再建と増税についてのお尋ねです。

 平成十四年度予算では国債発行を三十兆円以下に抑えることを目標としておりまして、また、歳出の徹底した見直しに努めてまいります。その後、持続可能な財政バランスを実現するため、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないことを次の目標とするなど、本格的財政再建に取り組みます。また、御指摘の年数を含め、その具体的道筋については、今後、経済財政諮問会議等の場で検討してまいります。

 このような取り組みの際、歳出面にむだはないか等についての徹底的な見直しを行わないまま安易に増税に頼ることは、私は考えておりません。

 したがって、まずは、歳出の徹底した見直しを行います。その上で、公的サービスの水準と、それを賄うに足る国民負担の水準はどうあるべきかについての国民的な議論が必要であると考えております。

 社会保障についてでございますが、これは、お互いが支え合う、将来にわたり持続可能な制度を再構築していかなければならないと考えております。

 社会保障制度の財政方式につきましては、「自助と自律」の精神のもとに、社会保険方式を基本としつつ、保険料と公費を適正に組み合わせることにより給付に要する費用をどうやって賄っていくかという必要がありますので、この点は、国民的な議論を考えながら、できるだけ多くの理解と協力が得られるような対応が必要だと思っております。

 いずれにせよ、消費税の使途を含め、将来の税制、財政のあり方については、今後の少子高齢化の進展など、経済社会の構造変化や財政状況等を踏まえつつ、国民的な議論によって検討されるべき課題であると考えております。

 教育基本法についてでありますが、御指摘の教育基本法の見直しについては、森内閣同様、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと考えております。

 おいしい水についてのお尋ねです。

 全国どの地域においてもおいしい水を供給するためには、水道水源となっている河川、湖沼、地下水等の水質を保全するとともに、水道の浄水施設においてカビ臭さなどを取り除くことが必要であります。

 このため、水道原水の保全に関する関係法令を適正に運用していくとともに、活性炭処理などの高度な浄水処理方法の導入を促進することにより、安全でおいしい水を提供できるように努めてまいります。

 ごみゼロ作戦についてですが、各種リサイクル法の着実な実施、国等公共団体による再生品の率先購入による需要の拡大、排出事業者責任の徹底等による不法投棄の撲滅のほか、廃棄物の広域的処理への取り組み、循環型社会に対応した物流システムの検討、環境学習の推進等の施策を強力に進めてまいります。

 首都機能移転についてのお尋ねです。

 平成十一年十二月の国会等移転審議会の答申を受けて、現在、国会において大局的な観点から御審議いただいているところであります。政府としては、国会における審議が円滑に進められるよう積極的に協力していくとともに、国民に幅広く議論を喚起してまいりたいと存じます。

 なお、都市再生については、都市の魅力と国際競争力を高める等の観点から、一昨日、私を本部長とする都市再生本部を設置したところであり、必要な施策を強力に推進していきたいと思います。

 KSD事件に取り組む決意や幽霊党員の調査などについてのお尋ねです。

 御指摘の調査については、幹事長の指揮のもと、自由民主党において、これまで、関係者からの事情の聴取、党員のサンプル調査などを行っているところであると報告を受けております。

 自由民主党としても、KSDに加入する中小企業経営者の方々に対し不安と疑惑を与えた道義的責任があると認識しておりまして、調査の結果も踏まえて信頼回復のための具体的措置をとってまいりたいと思います。

 また、今回の事件の背景に自民党内の仕組みに根差したものがあるとすれば問題であります。今回の事件を教訓として、見直すべきものは思い切って見直し、政治倫理の確立のために全力を挙げてまいります。

 三党合意における衆議院選挙制度についてのお尋ねであります。

 そもそも、完全な選挙制度というのはあり得ないのではないかと思います。これまで選挙制度については、もうさまざまな試行錯誤が重ねられてきたものと思います。

 そうした意味で、現在、選挙区画定審議会で区割りの見直し作業が行われているところでありますが、現行制度においても見直すべき点は見直していく必要があると考えております。

 今回の三党合意におきましても、そのような趣旨で見直しについての言及がされたものと理解しておりまして、特定の制度を導入するとかしないとか決めたものではございません。

 永住外国人に対する地方選挙権付与についてでありますが、この問題は、現在、公明党・保守党案と民主党案の二法案などが国会に提出されているところであります。我が国の制度の根幹にかかわる重要な問題でもあり、賛成論から反対論まで真剣に議論が行われているところであることから、各党各会派における議論を進めていただきたいと考えております。

 靖国神社への公式参拝について御質問をいただきました。

 私は、今日の日本の平和と繁栄というのは、戦没者の方々のとうとい犠牲の上に成り立っているものと思いまして、その戦没者に対する心からの敬意と感謝の気持ちを込めて参拝したいと思っています。私は、八月十五日に、靖国神社にそういう気持ち、真心を込めて参拝するつもりでおります。(拍手)

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) 中井議員にお答え申し上げます。

 先ほどおっしゃいました歴史教科書の問題ですけれども、あれは過去に大変大きな問題になっておりまして、私も小さな心を痛めておりました。そして、私が外務大臣を拝命直後に申し上げました発言ですけれども、これは、これまでの報道を見ていて私としての見解を述べたものでございます。そして、その後、就任後に、検定前及び検定後の主要な記述を自分自身でしっかりと読みました。そのことをお伝え申し上げます。

 そして、現在、韓国は再修正の要求をしておりますし、そして中国も強い懸念を表明しております。しかし、現在、中国や韓国、それから近隣諸国と日本との関係をよく見回してみますと、大変、若い世代を中心としてですけれども、よい雰囲気が醸成されてきております。その中で、どのようにして衆知を集めて、そして現段階においてでき得る限りのよい努力をするかということを考えているということをお伝え申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(綿貫民輔君) 志位和夫君。

    〔志位和夫君登壇〕

志位和夫君 日本共産党を代表して、小泉首相に質問いたします。(拍手)

 小泉首相は、今の自民党ではだめ、自民党を変えると叫んで自民党総裁になり、首相になりました。しかし、自民党政治のどこをどう変えるのか。改革とは看板だけで、中身は古い危険な自民党政治そのままではないのか。私は、それを幾つかの角度からただすとともに、本当の改革というのならこうあるべきという日本共産党の立場を明らかにしたいと思います。(拍手)

 初めに、首相交代でうやむやにされてはならない二つの重大問題について伺いたい。

 一つは、KSD汚職の問題です。

 我が党の追及で、五十四万人の幽霊党員と二十一億円の党費肩がわりが明らかになりました。しかし、森前首相は、調査すると言いながら、最後までその結果は明らかにしませんでした。

 小泉首相は、総裁選での発言で、KSD問題を反省しなければいけない、立てかえ党費が現実にあった、積極的な真相解明を行うと述べました。

 それでは伺いますが、あなたは自民党新総裁に就任して、党費肩がわりについてどういう調査をやりましたか。真相を全面的に国民に明らかにする意思はありますか。

 そして、KSD汚職とは金の力で政治をゆがめた事件でしたが、これを反省するというのなら、あらゆる政治腐敗の根本にある企業・団体献金の禁止に踏み切るべきだと考えますが、いかがですか。

 いま一つは、機密費の問題。内閣官房と外務省で七十二億円もの税金が国会対策やせんべつ、飲み食いに使われていたという問題です。

 我が党は、国会に、一九八九年の消費税導入の際に十億円の機密費が使われたと明記されている内閣官房文書と、その作成者が古川内閣官房副長官であることを明らかにした筆跡鑑定書を提出しました。これらが偽りだというのなら、それを証明する責任は政府の側にあります。新内閣として、これらの文書を真剣に吟味し、機密費の党略的流用の全貌を国民に報告すべきではありませんか。

 古川副長官は留任し、当時内閣官房文書の引き継ぎを受けた塩川氏は財務大臣として入閣しました。その気になればすぐできることであります。

 首相が解党的出直しと言うなら、まず、この二つの疑惑について国民に納得のいく説明をすべきであります。答弁を求めます。(拍手)

 首相は、所信表明演説で、構造改革なくして景気回復はないと述べました。しかし、問題は、構造改革と言われている政治の中身であります。

 第一に、これまで構造改革の名でやられてきたことは何か。

 今日の不況の深刻化、長期化の最大の原因は、日本経済の六割を占める個人消費、家計消費の冷え込みにあります。特に、一九九七年以降の冷え込みは大変なものがあります。

 この間、勤労者世帯の可処分所得は月額で二万四千円減り、一世帯当たりの消費支出は月額で一万六千円減り、完全失業者は百二十四万人ふえました。そのきっかけになったのが、構造改革を看板にして行われた九七年の九兆円負担増、消費税の値上げ、医療費値上げを初めとする負担増政策でした。それがわずかな景気回復の芽を摘んで日本経済を大不況に陥れたことは、今では明らかではありませんか。

 首相は、この負担増政策を強行した橋本内閣で厚生大臣を務め、共同責任を負っているわけですが、この経済失政への自覚と責任はお感じにならないのでしょうか。

 結局、これまで構造改革の名で行われてきた政策は、国民生活を痛めつけ、日本経済を大不況に突き落とした、既に破綻が証明された政策ではありませんか。しかも、首相が当時厚生大臣として進めたことが、今日、国民の健康と生命を脅かす深刻な事態をつくり出していることを私は指摘したいのです。

 九七年九月から強行された健康保険本人負担の一割から二割への引き上げによって、外来の患者さんの数が一二・四%減ったことが、厚生労働省の最近の調査でも明らかになっています。首相が道筋をつけ、ことし一月から強行されたお年寄りの医療費の一割定率負担によって、深刻な受診抑制と治療中断が起こったことが、全国保険医団体連合会の調査でも明らかになっております。

 負担増は死活問題だ、わしはもう死んでもいいから病院に来ない、こうした悲痛な声を残して、負担増の心配から多くの人々の足が病院から遠のいています。首相は、所信表明演説で、国民に痛みに耐えることを訴えましたが、このような必要な医療の抑制も国民が甘受すべき痛みと考えておられるのか、御答弁願いたい。

 第二に、今、首相が構造改革として進めようとしていることが何であるかという問題です。

 首相は、その最優先の課題として、不良債権の早期最終処理を挙げています。問題は、これが日本経済にどのような影響を及ぼすかということです。

 今日、不良債権と言われているものの大多数は、バブル時代の乱脈融資が原因ではなく、まじめに働いてはいるが、景気の後退によって売り上げが減り、計画的な返済が困難になっている中小企業であります。不良債権が景気を悪くしているのではなく、景気が悪いから不良債権がふえているのであります。このことは、九二年度から今日まで、総額で六十八兆円もの不良債権を処理しながら、不良債権額が十三兆円から三十二兆円へと逆に膨らんでいることからも明らかであります。

 したがって、実体経済を回復させること、特にその主力である家計消費を温めることを最優先してこそ、今経営困難に陥っている中小企業の売り上げも回復し、不良だった債権が正常に戻る道が開かれるのではないでしょうか。

 それ抜きに、二年ないし三年という期限を決めて、一気に不良債権の最終処理をやったらどうなるか。最終処理とは、融資を打ち切り、資金を回収するということであり、生きて働いている会社をつぶすということであります。これが大倒産と大失業の激化につながることは明らかであります。ニッセイ基礎研究所の試算では、新たに百三十万人の失業者が生まれ、六兆八千億円の雇用者所得の減少が生まれるとされています。

 総理に伺いますが、一体、首相は、この政策を強行した際にどれだけの新たな失業者が生まれると見込んでいるのですか。職を失った人に仕事を確保するためのいかなる具体的な方策を持っているのですか。このやり方では景気をますます悪化させ、そのことによって、肝心の不良債権も減るどころか、ますますふえることになるのではありませんか。

 総理は、今痛みに耐えればあすはよくなると言いますけれども、私は、構造改革の名で国民に痛みを強いる政治こそが経済危機を一層深刻にし、あすの希望をも国民から奪うものであることを強く警告したいのであります。(拍手)

 これまでの政府の経済政策の基本的立場は、企業の収益が上がればいずれは家計の消費も回復するというものでした。しかし、政府の緊急経済対策でも、「企業部門の復調にもかかわらず、所得・雇用環境の改善は遅れ、個人消費の回復は見られていない。」と述べるなど、その破綻は今や明らかです。

 そうであるならば、大銀行、大企業応援の従来型の経済対策から、国民の家計を直接温める経済対策への転換が今こそ必要であります。日本共産党は、そのために緊急経済提言を発表し、三つの転換を呼びかけております。

 第一は、国民の購買力を直接応援する減税政策であります。

 我が党は、今日の深刻な家計消費の冷え込みを打開する最も効果的な方策として、消費税を三%に引き下げる五兆円減税を緊急に実施することを強く求めるものであります。(拍手)

 第二は、ことし実施、計画されている社会保障の負担増、給付カットの計画、介護、年金、医療、雇用保険の四つの分野で合計三兆円規模に及ぶ負担増計画を凍結し、凍結期間中に、国民が安心が持てる社会保障の体系を国民の合意でつくることであります。

 また、介護保険については、高過ぎる保険料と利用料のために、所得の少ない人々は泣く泣くサービス低下を余儀なくされる事態が広がっております。国の責任で減免制度をつくることを強く求めるものであります。

 第三は、リストラを抑え、中小企業を支援する政治で雇用危機を打開することであります。

 政府は雇用の過剰を強調しますが、私は、過剰なのは雇用ではなく、労働時間こそ過剰だと思います。労働時間の短縮による雇用拡大に本腰を入れて取り組むことこそ、政府の責務であります。

 とりわけ、サービス残業と呼ばれるただ働きの根絶は急務であります。労働者の運動と我が党の国会での追及によって、四月に厚生労働省は、サービス残業への対策として、使用者に労働時間を適正に把握することを義務づける通達を出しました。この通達を全企業と労働者に周知徹底するとともに、厳正な監督、点検を行うなど、サービス残業を一掃するための実効ある措置を強く求めるものであります。

 以上、我が党の緊急提言についての首相の見解を伺いたい。

 もしも、この提言に同意できないというのならば、冷え込んだ家計を温め、個人消費を拡大するために首相はどのような対案をお持ちなのか、具体的にお示し願いたいと思うのであります。(拍手)

 我が党の緊急提言では、経済危機の打開のために、以上の三つの転換を実行しつつ、財政再建についても、必要な転換に直ちに取り組むことを提案しております。特に、国と自治体、公団等で年間約五十兆円にまで膨張した公共事業について、浪費と環境破壊の巨大開発にメスを入れ、生活・福祉型に内容を転換することで段階的に半分に減らす、それがその中心点であります。

 総理は、「聖域なき構造改革」と述べました。それならば、公共事業について本格的な削減のメスを入れる意思はありますか。

 首相は、国債発行を三十兆円以内に抑えることを目標にすることを財政健全化の第一歩としておりますが、財務省の「財政の中期展望」によりますと、公共事業費の現状を維持することを前提にすると、二〇〇二年度には三十三・三兆円の国債発行が必要であり、二〇〇三年度には三十五・四兆円が必要になります。

 国債発行を三十兆円以内に抑えるという方針を本気で実行に移そうとすれば、財源のほとんどを建設国債に頼っている公共事業予算を段階的に半分に減らすことは不可欠ではありませんか。それ抜きには、大増税と国民生活予算の大幅削減が避けられなくなるのではありませんか。経済財政諮問会議の検討に任すなどという官僚答弁の棒読みではなくて、明確な答弁を求めたいと思うのであります。

 次に、首相の歴史認識の根本について、端的に三点伺います。

 第一は、一九三一年の中国侵略開始から四五年の日本敗戦に終わる十五年戦争の性格を首相がどう認識しているかという問題であります。

 首相は、第二次世界大戦を反省する、日本がなぜあのような戦争に突入してしまったかといえば、国際社会から孤立したからだと述べました。しかし、反省と言うが、何をどう反省しているのですか。なぜ、当時、国際社会からの孤立が起こったと考えているのですか。

 二十一世紀を迎えた今日に至るまで、戦後日本の歴代内閣が侵略戦争への反省を明瞭にしてこなかったことは、ドイツが侵略戦争への徹底的な反省を内外に明らかにして近隣諸国の信頼をかち取ったことと恥ずべき対照をなしていると私は思います。総理の見解を問うものであります。

 第二は、靖国神社への公式参拝の問題です。

 首相は、この問題について、戦没者への敬意をささげるため、いかなる批判があろうと必ず参拝すると述べました。しかし、この問題は、戦争犠牲者を追悼するという一般的問題とは全く次元を異にする問題であります。

 靖国神社は、戦前戦中、天皇のための名誉の戦死をした人を神として祭り、侵略戦争遂行の精神的支柱とされた軍事的宗教施設であります。しかも、A級戦犯の東条英機らが合祀されている。これへの公式参拝が憲法の平和原則、そして政教分離の原則に真っ向から背反するものであることは明らかではありませんか。

 第三は、歴史をゆがめた教科書の問題です。

 新しい歴史教科書をつくる会の教科書は、検定によって修正されたとはいえ、侵略戦争と植民地支配を美化、合理化する基調は変わっていません。例えば、この教科書では、太平洋戦争を大東亜戦争と呼んでいますが、この呼称は、太平洋戦争開始の四日後の一九四一年十二月十二日の政府閣議で、大東亜新秩序建設を目的とする戦争、すなわち、日本を盟主にしてアジア諸国を支配下に置く大東亜共栄圏が戦争目的であることを表現する呼称だということを明瞭にして決められた呼称なのであります。

 政府は、一九八二年の内閣官房長官談話、それを受けた教科書検定基準の近隣諸国条項などで、侵略と植民地支配の自覚と反省を教科書作成の公式の基準とすることを内外に公約しています。

 我が党は、検定制度について、言論、表現の自由を侵すものと批判してきましたが、つくる会の歴史教科書を検定合格としたことは、政府みずからの検定基準に照らしても合理化できないことであり、その誤りはみずからの責任において正すべき、すなわち、今からでも検定合格を取り消す措置をとるべきだと考えますが、いかがですか。(拍手)

 首相が就任早々、改憲に言及していることも多くの国民に不安を広げています。

 首相は、自衛隊が軍隊でないというのは不自然だ、いざという場合は命を捨てるというものに対して敬意を持つような、憲法違反と言われないような憲法をと述べ、憲法九条改憲を公然と述べました。

 我が党は、憲法九条は、恒久平和主義、戦争の違法化という世界史の流れに沿った条項であり、世界に誇る我が国の宝であると確信を持っております。自衛隊が憲法違反と言われるのが嫌ならば、九条の完全実施に向けて憲法違反の現実を一歩一歩変えていくことこそ、政治の責務ではありませんか。

 重大なことは、首相が、憲法九条改憲と一体に、集団的自衛権の行使について検討すると語っていることです。

 集団的自衛権の行使とは、日本が外国から攻撃を受けた際の自衛の話ではありません。それは、集団で海外の軍事行動に乗り出すこと、すなわち、米軍と自衛隊が共同で海外での武力行使に踏み出すことにほかなりません。これは憲法九条第一項の戦争放棄条項を正面から踏み破るものであることは明らかだと考えますが、総理の見解を問うものであります。

 首相は、所信表明演説で、有事法制について検討するとも述べました。何のための有事法制か。

 我が党は、九九年のガイドライン法審議の過程で、米軍が海外で武力行使を行った際に、日本国内の民間空港、港湾、道路などを軍事専用に切りかえる青写真を記した自衛隊の統合幕僚会議の内部文書を明らかにしました。

 首相の言う有事法制とは、米軍が海外で武力行使を行った際に、自衛隊だけではなく日本国民を総動員することを目的とするものではありませんか。

 これらの動きの背景にはアメリカの要求があります。ブッシュ政権のもとで国務副長官となったアーミテージ氏が中心となって作成した対日報告書では、日米ガイドラインを一層実効あるものとする措置として、集団的自衛権の採用、有事立法の制定を公然と求めています。集団的自衛権の行使への踏み込みは、アメリカのこうした軍事的要求にこたえたものではありませんか。

 首相は、首相公選制を当面の課題とはっきり位置づけました。首相公選制は、首相自身が憲法はこうすれば改正できると国民に理解されやすいと述べているように、九条改憲の突破口として位置づけられているのではありませんか。

 そして、首相公選制は、首相と政府を国会から事実上独立させて、執行権力を独走させ、国権の最高機関としての国会の地位を制度的に脅かす危険を持つものであります。そうした危険について首相はどう認識しているのですか。

 政治に国民の声を反映させる上で今大切なことは、小選挙区制の撤廃など選挙制度の民主的改革、国会による行政監督権の充実など、国会が名実ともに国権の最高機関としての役割を果たすことができるようにすることではありませんか。

 日本共産党は、九条改憲、集団的自衛権の行使、有事立法の制定など、憲法の平和原則を踏みにじるあらゆる動きに反対して闘い抜く決意を表明するものであります。(拍手)

 ことしは、日米安保条約が締結されて五十年目になります。この条約に基づいて置かれている日本の米軍基地は、海兵隊、空母機動部隊、航空宇宙遠征軍という海外への殴り込み専門の部隊がその中心であるという、他に比類のない異常さを持っています。超低空飛行訓練、夜間離着陸訓練、実弾砲撃演習など、基地被害によって多くの国民が苦しんでいます。

 総理に最後に伺いますが、あなたは、こうした日米安保の実態、米軍基地の実態を、異常な実態であり、二十一世紀にはいずれなくすべき現実と考えているのか、それとも、二十一世紀も永久に続けて当然の現実とお考えなのか。もしも、この現実を永久に続けて当然という考えならば、およそ国の独立というものに対する思いを放棄したものと言わねばなりません。

 二十一世紀の日本が目指すべき未来は、日米安保条約を廃棄した、基地のない、平和な、本当の独立した日本であること、ここにこそ本当の日本改革の道があることを強調して、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 志位議員にお答えする前に、中井議員に対する答弁について訂正したいと思います。

 辞職勧告決議案が提出されればと申し上げましたが、同決議案は既に提出されておりますので、訂正いたします。いずれにせよ、私は、国会議員の出処進退は国会議員みずからが判断すべきものと考えております。

 志位議員の質問にお答えいたします。

 初めに、KSD事件に関連して、党費肩がわりの調査についてのお尋ねがございました。

 KSD事件は国民の政治への信頼を損なうものでありまして、私としても極めて深刻に受けとめております。

 本件については、今後、司法の場で厳正に真相が究明され、国民の前に明らかにされていくべきものと考えます。自由民主党としては、司法の場での真相究明を待つのではなく、今回の事件を教訓として、現在、自由民主党内の仕組みについても思い切って見直しているところでございます。

 御指摘の党費肩がわりの調査については、現在、私の方針に基づき、幹事長の指揮のもと、自由民主党において、これまで、関係者からの事情の聴取、党員のサンプル調査などを行っているところであると報告を受けております。調査の結果については、最終的に取りまとめた後、これを明らかにしてまいります。

 企業・団体献金の禁止に関してお尋ねがありました。

 企業・団体献金については、政党本位、政策本位の政治を目指す政治改革の理念を踏まえ、既に昨年から政治家個人に対する企業・団体献金が禁止されたところであります。

 一方、政党に対する企業・団体献金等については、最高裁判例でも、企業は、憲法上の政治活動の自由の一環として、政治資金の寄附の自由を持つことは認められておりまして、これを悪と決めつけることはできないのではないかと考えます。

 政治資金のあり方については、透明性を高めることを基本としつつ、民主主義のコストをどのように国民に負担していただくかという観点から、各党各会派において御議論いただくべきものと思います。

 報償費についてのお尋ねです。

 内閣官房の報償費については、国政の円滑な遂行という目的に沿って、歴代官房長官においても厳正な運用に当たってこられたものと考えており、志位議員の御指摘の文書について、政府として確認を行うことは考えておりません。

 なお、報償費については、国政の円滑な遂行という目的にかなうものでなければならない、真に目的にかなうものであるかどうか、すべてについて再点検を行った上で執行する、執行及び管理の一層の適正化のための体制を整備するという考え方のもとで、厳正かつ効果的に使用すべきものと考えています。

 いわゆる九兆円の負担増により不況をもたらした自覚と反省があるのかというお尋ねであります。

 平成九年度後半以降における経済の停滞については、さまざまな要因が指摘されております。同年秋以降の金融機関の相次ぐ経営破綻やアジア地域の通貨・経済危機などが実体経済に大きく影響を及ぼしたことに留意する必要があると考えております。

 また、消費税率の引き上げを含む平成六年秋の税制改革は、少子高齢化の進展という構造変化に税制面から対応したものでありまして、医療保険制度改革は、医療保険制度の破綻を防ぎ、安定した運営を確保していくために給付と負担の見直しを行ったものでありまして、これらの改革は、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。

 医療制度改革についてのお尋ねです。

 この医療制度改革は、制度の破綻を防ぎ、国民皆保険を維持するために行われたものでありまして、必要な医療を抑制するために行われたものではありません。

 高齢化の進展に伴い医療費が増大し、経済の低迷により保険料収入が伸び悩む中では、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいかず、給付と負担の均衡を図り、持続可能な皆保険制度に再構築するため、平成十四年度には医療制度改革をぜひとも実現したいと考えております。

 景気と不良債権の関係についてのお尋ねです。

 金融機関の不良債権残高は、近年、その処理が進む一方、景気の低迷を背景とする融資先の財務内容の悪化等を背景に横ばいで推移しております。他方、金融機関が引き当て処理のまま多額の不良債権をバランスシート上に抱えることは、金融機関の収益性を低下させたり、あるいは、追加処理が生じる場合には、金融機関の企業一般に対する貸し出し態度を硬化させ、貸し出しを過度に抑制させることにより景気低迷を招くといった弊害も考えられます。

 こうした観点等から、緊急経済対策においては、不良債権の抜本的なオフバランス化と企業再建の円滑化を進めることとしています。このように、金融と産業の一体的な再生を図ることにより我が国経済の構造改革を進めてまいります。

 不良債権の最終処理がどれだけの失業者を生むのか、また、その雇用確保のための具体策を持っているかというお尋ねであります。

 不良債権の最終処理の手法や対象となる企業の状況によって雇用面への影響度合いが異なるため、定量的に申し上げることは困難でありますが、こうした構造改革に伴い厳しさの増す雇用情勢に的確に対応していくことは、内閣の重要な課題であると考えております。

 このため、緊急経済対策においては、中高年の離職者を雇い入れた事業主に対する支援の拡充措置の延長など、雇用面のセーフティーネットを整備するための施策を盛り込み、その効果的実施に取り組んでいるところであります。

 さらに、与党三党の連立政権合意にあるように、産業構造転換・雇用対策本部を速やかに改組、強化し、経済財政諮問会議に置かれた雇用拡大に関する専門調査会と連携を図るなど、民間有識者の御意見も伺いながら、早急に産業の構造改革と新規雇用の創出、能力開発支援等の対応策を検討してまいります。

 不良債権の最終処理についてでありますが、我が国の景気動向が示す脆弱性の背景には構造改革のおくれがあり、特に不良債権の最終処理は、取り組むべき最も重要な課題の一つであります。このため、二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指すと決意いたしました。不良債権の最終処理を初めとする各般の構造改革を断行することにより、我が国経済の再生が図られ、本格的な景気回復が実現されるものと考えております。

 消費税の減税についてのお尋ねがありましたけれども、消費税の減税については考えておりません。

 社会保障についてのお尋ねですが、世代間の給付と負担の均衡を図り、お互いが支え合う、将来にわたり持続可能な、安心できる制度を再構築していかなければならないと考えております。

 介護保険の利用料、保険料について減免制度をつくるべきとのお尋ねがございました。

 介護保険制度におきましては、利用料や保険料について、低所得の方に大きな負担とならないよう、既にきめ細かな配慮を行っているところであり、現行の制度とは別に、新たな国による減免制度を設ける考えはありません。今後とも、介護を国民みんなで支え合うという制度の趣旨について国民の理解を深めてまいりたいと考えております。

 労働時間の短縮による雇用拡大についてのお尋ねです。

 労働時間の短縮は、労働者にゆとりをもたらすほか、高齢者や女性等が働きやすい環境づくりに資するものと考えております。

 このため、政府目標である年間総実労働時間千八百時間の達成、定着に向けて、年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減に重点を置き、引き続き労働時間の短縮に努力してまいります。

 サービス残業を一掃するための実効ある措置についてのお尋ねであります。

 御指摘の通達の内容について、労働基準監督署の窓口や各種説明会等のあらゆる機会を通じて集中的な周知活動を行うとともに、その遵守を図るための監督指導等に努めてまいります。

 共産党の緊急提言についてでありますが、この提言については、次のように考えております。

 一つ、消費税の引き下げについては、今、考えておりません。

 社会保障については、負担と給付の必要な見直しを今後も行っていかなきゃならないと思っております。いずれにしても、年金、医療、介護というこの社会保障の三本柱、持続可能な、お互いが支え合うことができるような改革を行っていく必要があると考えております。

 雇用対策については、雇用機会の創出を図るとともに、職業能力開発を通じ需給のミスマッチ解消に取り組んでいるところであります。

 政府としては、緊急経済対策を第一の仕事として、本格的な景気回復を確実なものとしたいと思います。

 公共事業の削減と国債発行の抑制についてのお尋ねです。

 平成十四年度予算では財政健全化の第一歩として国債発行を三十兆円以下に抑えることを目標とし、歳出の見直しを行ってまいります。

 このような取り組みの際、歳出面にむだはないか等について徹底的な見直しを行わないまま、安易に増税に頼ることは考えておりません。したがって、公共事業を含むあらゆる歳出について、聖域を設けることなく、徹底した見直しを行っていきたいと思います。

 私の歴史認識についてのお尋ねです。

 まず、私が反省と申し上げたのは、平成七年の内閣総理大臣談話にもあるとおり、我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことについてであります。また、国際社会からの孤立が起こった要因については、当時のさまざまな状況が影響していたものと考えています。

 我が国は、近隣諸国との相互理解の促進と友好協力関係の発展に努め、アジア、ひいては世界の安定に寄与していくべきものと考えております。

 靖国神社への公式参拝についてですが、靖国神社への公式参拝が憲法の原則をじゅうりんするものであるとの御指摘ですが、昭和六十年に実施した方式による靖国神社への公式参拝は憲法に違反しないとの従来の政府見解は変わっておりません。

 歴史教科書についてのお尋ねです。

 御指摘の歴史教科書の検定は、民間の教科書発行者が著作、編集したものについて、いわゆる近隣諸国条項を含む検定基準に基づき、教科用図書検定調査審議会の厳正な審査を経て、適切に行われたものであり、検定合格を取り消すことは考えておりません。

 自衛隊が憲法九条に照らし違憲であり、その現実を変えていくべきだとの御指摘ですが、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことは政治の枢要な使命であると思います。自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は憲法の認めるものであって、御指摘は当たらないものであると考えております。

 集団的自衛権の行使と憲法九条との関係についてのお尋ねです。

 憲法は我が国の法秩序の根幹でありまして、特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考えます。

 他方、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題について、さまざまな角度から研究してもいいのではないかと考えております。

 有事法制の検討は、我が国の国家、国民に危機が迫った場合に、国の独立と国民の生命財産の安全を確保していくため、政府として、どのような対応や法制が必要になるかを総合的観点に立って行うものであります。本検討は、言うまでもなく憲法の範囲内で行うものであり、旧憲法下の国家総動員法のような法制について検討することはありません。

 首相公選制は憲法第九条改憲の突破口として位置づけられているのではないかという御指摘をいただきました。この首相公選制における首相と国会の関係についてのお尋ねもございました。

 首相公選制というのは、いわば政治の分野における一つの規制緩和ではないか。国会議員だけが握っていた総理大臣を選ぶ権利を国民一般に開放しよう、その中で首相公選制と議会の共存を図る、さらには天皇制と矛盾するものではないという方法を識者を集めて検討するのもいいのではないか。

 ほかの問題も、憲法問題いろいろありますけれども、憲法改正という問題について、これは決して改正してはいけないという立場ではなくて、いろいろな問題について議論がございます。そういう際には、全文改正という方の議論もあります。あるいは私のように、首相公選制に限って憲法改正問題を国民に問うてもいいのではないかという意見もございます。

 いずれにしても、早急に懇談会を立ち上げまして、国民の理解が得られるような、そして天皇制と議会制と矛盾しないような首相公選制を考えていければな、政治課題として私の内閣で取り上げるのもいいことではないかと思っております。

 政治に国民の声を反映させるための選挙制度改革や国会の役割の見直しについての御質問であります。

 どのようにしたら政治に国民の声が反映されるか、国民に政治への参画意識を持ってもらうかについては、我々政治家が考えるべき重要なことであります。

 選挙制度や国会のあり方について、問題があればこれを見直す努力をしていくことが大切でありますが、私は、この選挙制度や国会のあり方についてだけでなく、首相公選制の検討やあるいは国民との対話などにより、できるだけ多くの国民の意見が反映されるように努力をしていきたいと思っております。

 日米安保体制及び米軍の役割についての御質問であります。

 冷戦終結後も不安定性と不確実性が存在するアジア太平洋地域において、日米安保条約に基づく日米安保体制は、我が国を含むこの地域の安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能していると考えます。我が国の米軍施設・区域は、日米安保条約の目的を達成する上で重要な役割を果たしていると考えます。

 我が国としては、二十一世紀に入り、今後とも日米安保体制がより有効に機能するよう努めていく考えであります。同時に、施設・区域の周辺住民の方々の抱える負担については、その軽減のため政府としても今後とも最大限努力してまいります。

 以上でございます。(拍手)

議長(綿貫民輔君) 外務大臣から答弁を補足したいとのことであります。これを許します。外務大臣田中眞紀子君。

    〔国務大臣田中眞紀子君登壇〕

国務大臣(田中眞紀子君) 先ほどの中井議員の教科書問題に対する御質問に対して答弁漏れがございましたので、お答え申し上げます。

 まず、検定を経たことは重く受けとめなければならないと思います。そして、個々の教科書についてのコメントは、国務大臣として差し控えさせていただきます。(拍手)

    ―――――――――――――

    〔議長退席、副議長着席〕

副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。

    〔土井たか子君登壇〕

土井たか子君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、小泉純一郎内閣総理大臣の所信表明演説に対して質問をいたします。(拍手)

 「聖域なき構造改革」の看板を掲げて登場した小泉内閣は、各種世論調査で記録的な支持率を獲得しております。順風満帆の出航であるかのようであり、マスコミには、変革とか小泉革命とかいった見出しが躍っております。私も、久々に本格的な論戦を交えることのできる政権があらわれたかと正直期待して、所信表明演説をお聞きしました。

 正直に申しまして、構造改革の派手な大きな看板を掲げた新規開店のお店は、評判が高くて人が行列して並んでいるけれども、どれどれとのぞいてみたら、すべて準備中と書かれていて何にも置いていない。まことにがっかりと言うしかありません。(拍手)

 しかし、五人の女性の閣僚がおられ、男女共同参画を真に実のあるものにしたいと述べられた総理にお聞きしたいのです。

 法制審議会で、五年前、夫婦別姓選択制の導入を含めた民法改正について議論をして、一九九六年、既に法務大臣に民法改正案の答申が出されていることは御存じでいらっしゃると思います。

 仕事や社会生活を営む上で、持って生まれた姓を変えたくない女性たちがふえています。夫婦別姓は選択制であって、強制では決してありません。社民、民主、共産の三党は、民法改正案を議員立法として提出いたしております。そこで、総理はこの国会で民法改正の実現に協力していただけるものと思いますが、いかがでございますか。

 総理は、社会保障制度について、自助と自立、共助を強調しつつ、国の役割については全く示しておられません。国民は、「お互いが支え合う、将来にわたり持続可能な、安心できる制度を再構築する」という言葉が、自助努力の名のもとに弱者切り捨てにならなければよいがと心配をいたしております。

 総理は、厚生大臣当時、医療制度の抜本改革を先送りして、単なる医療費の引き上げになってしまいました。昨日、首相は、この場所で、増税はしないと言われて、ほっとしたやさきに、増税なき財政再建の方法が、徹底した歳出の見直しの実現に全力をかけていきたいと言われますと、どうも、年金、医療、介護に対して、負担はふやされ、給付は削られるという国民の不安が募ります。この生活不安が消費を冷やしていることは、紛れもない実態でございます。

 当時は、厚生省不況とさえ言われていたのです。不況時に福祉の水準を切り下げることは、政治の道理に反します。それでも、国民に今の痛みを強いるのでしょうか。福祉切り捨てでは、到底、国民は納得しないでありましょう。総理、いかがでございますか。

 あした、五月十一日、熊本地裁で、ハンセン病国家賠償請求訴訟の判決がございます。九十年に及ぶ国の隔離政策は、元患者の方々の人生を療養所の壁の中に閉じ込めて、あまたの人権侵害を行ってきました。旧厚生省の統計では、一九四九年から九六年までに、全国の療養所で行われた断種一千四百件、堕胎は三千件を超えます。死してなお故郷に帰れない遺骨三万柱は、療養所内の納骨堂に眠っています。隔離政策が生み出した偏見、差別は、匿名での訴訟を余儀なくし、骨になっても故郷に帰れない状況をつくりました。

 総理、元患者の方々の平均年齢は七十四歳です。人として死にたい、この叫びをしっかり受けとめて、判決が出ましたら潔く全面解決に向けて努力をすべきだと考えますが、いかがでございますか。(拍手)

 また、財政再建のために国債を三十兆円に抑えるとありますが、二〇〇〇年度の国債発行は二十八兆円、余りにも甘い改革ではないでしょうか。森政権末期の緊急経済対策は速やかに実行とありますが、昨今問題になっている公共事業の見直しなど、どこにも触れられておりません。ましてや、諫早の干拓事業についてなど、国民が知りたいことはどこに書かれているのでしょうか。これが改革でしょうか。

 しかし、考えてみれば、これは当たり前のことです。自民党は同じ自民党、連立を組む相手も同じ。一夜にして、自民党政権の体質が変わるはずもなく、その政策を根本から転換できるはずもないのです。いわば、表紙が変わっただけで中身は変わっていないのです。しかし、表紙のイメージが変わっただけでこれほどの幻想を国民が抱いてしまうことに、むしろ私は危うさを感じております。(拍手)

 総理、今回、改革の出発点と考えなければならないKSDのKの字も所信の中に出てこないのは、なぜですか。自民党の総裁選挙を通じても、政治の信頼回復と政治倫理の確立のために総理が何をされようというのか、全く見えませんでした。総理の脳裏からは、KSDという疑獄は消えてしまったのでしょうか。森総理退陣ですべて御破算なんですか。総理、いかがでしょう。

 自民党総裁として、例の架空党員の党費の立てかえ分、政治献金や広告掲載料の名目でKSDから自民党に流れた資金は返還すべきだと考えますが、いかがですか。(拍手)

 KSD問題は、参議院選挙の自民党比例順位の問題とも絡んでおります。与党は、久世問題の反省を理由にして強引に参議院の選挙方式を改悪しましたが、今まさに役所ぐるみの事前活動が行われており、中小企業者の悲鳴が聞こえています。業界ルートと役所ルートの双方からの締めつけが一段と強まっています。特に、不況にあえぐ中小企業を取り込んだ自民党の錬金術は許せません。政官業の癒着丸抱え選挙はもうやめるべきです。第二、第三のKSDを繰り返さないため、どのような方策をお持ちなのか、お聞かせください。(拍手)

 何より、小泉総理は、総理になられる前のことし二月、和歌山での講演で、疑惑を持たれた議員は公の場に出て、そして答えればいい、それに答えられない議員ならば議員をやめるべきだと言われているではありませんか。至極真っ当な御意見であり、こうした直言をされる総理だからこそ、国民から期待されるのだと私は思います。

 今、野党四会派が提出している中村喜四郎議員に対する議員辞職勧告決議案がございます。先ほど総理からの御答弁もございました。政治腐敗の一掃と政治倫理の確立のために、一刻も早く国会の自浄作用を示すべきだと思います。あなたの自民党は、これに反対をいたしております。自民党総裁として、改革の中身をしっかり見せるべきではないでしょうか。総理は前向きに対応してくださると考えますが、いかがですか。

 小泉総理は、内閣総理大臣就任前にも、あるいは就任直後においても、集団的自衛権の行使にかかわる政府の憲法解釈の見直しを言われ、あるいは、自衛隊を軍隊と位置づけるべきだとも述べられております。また、靖国神社への公式参拝や、首相公選に限っての改憲に言及されるなど、就任時、憲法にかかわる問題についてこれほど多く発言をされた総理を私は知りません。

 小泉総理、総理の憲法認識について伺います。

 天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、憲法を尊重し擁護する義務を負っていることは御存じだと思います。かつては、国務大臣が現行憲法には欠陥が多いと発言しただけでも問題となって、この発言を取り消さざるを得ませんでした。内閣を代表し、行政各部を指揮監督する内閣総理大臣には、当然、憲法尊重擁護義務が課されております。それどころか、内閣が憲法に従って政治を行い、行政をつかさどることは、立憲主義の基本中の基本ではありませんか。(拍手)なぜ、小泉総理は憲法をないがしろにするような発言を繰り返されたのか、その見識を疑います。

 内閣総理大臣は、憲法にのっとり、憲法の原則に縛られながら政治を行うことを、初めから国民に約束しているのではないのですか。内閣総理大臣が改憲の発議権を持っているなど、憲法のどこにもありません。「治にいて乱を忘れず」どころではないでしょう。治にいて憲法を忘れて、一体どうなるのでしょうか。(拍手)

 小泉総理は、憲法が禁じている集団的自衛権の行使に軽々しく言及しておられますけれども、みずからの発言の意味することの重大さに気づいておられないのではありませんか。

 総理就任直後の四月二十七日の記者会見では、このように言われています。今後、憲法、本来、集団的自衛権も行使できるんだというのであったらば、憲法を改正してしまった方が望ましいという考えを持っているんです、私は。そしてその後で、集団的自衛権はあるが行使できないというのが今までの解釈だ、すぐに憲法解釈を変えろということではないが、あらゆる事態を研究する必要があると発言されております。

 私が提出した質問主意書に対する五月八日の小泉内閣の答弁書は、「特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならない」と述べた上ではありますが、これまでになかった、「集団的自衛権の問題について、様々な角度から研究してもいいのではないか」という一文をわざわざつけ加えました。小泉内閣によるこうした言い回しの変化は、極めて危険な拡大解釈の兆候と言わざるを得ません。

 そこで、小泉総理、まず聞きたいと思います。集団的自衛権を認める立場をとるようになれば、どんなことができるようになるんですか。

 周辺事態法に基づく自衛隊の後方地域支援活動が、米軍の軍事行動と最も密接な一体化の形でできるようになるということも大変危険なことですが、一たん集団的自衛権の行使に踏み切れば、もっともっと広範な海外での武力行使に広がっていくことになります。軍事力を外交の手段、つまり国際紛争解決のための手段として使ってもいいということになりますから、専守防衛政策に風穴があくどころか、日本が起こした侵略戦争や植民地支配への深い反省に立った戦後日本の自制的な外交・安全保障政策が音を立てて崩れることになるでしょう。集団的自衛権とは、それほどまでに解釈の拡大が可能な広範な概念を持っております。

 そこで、第二にお聞きいたします。小泉総理は、事改めて、今なぜこのような憲法解釈変更の問題を繰り返し繰り返しおっしゃられるんですか。大事なことですから、はっきりお答えをいただきます。

 そして、第三に率直にお聞きします。アメリカからの対日要求に応じようというのじゃありませんか。もしそうなら、いつ、どのようなチャネルを通じてそのような圧力がかかったのですか。

 昨年十月、アメリカの超党派の対日政策専門家たちによる次期米政権に向けての対日政策勧告の形で出されている報告書があります。「ザ ユナイテッド ステーツ アンド ジャパン アドバンシング トワード ア マチュアー パートナーシップ」、この報告書が公表されました。取りまとめに当たった中心人物のリチャード・アーミテージ氏は、その後発足したブッシュ政権の国務副長官という要職につきました。この報告書は、安全保障の項目の中でこう述べています。

 日本が集団的自衛権の行使を禁止していることは、日米同盟の協力を制約している。これを取り除くことにより、一層緊密かつ効果的な安全保障協力が可能となる。この決定は日本国民だけができることだ。しかし、ワシントンは、日本がさらに進んで貢献し、もっと対等なパートナーに育つなら、それを歓迎すると明確に表明しておくべきだ。

 アーミテージ報告書の記述は、必ずしも日本に集団的自衛権の行使を迫ったとばかりは読めませんが、これを日本に対する集団的自衛権の奨励宣言と受けとめている人たちがあるようです。

 日本政府が専守防衛政策を変質させることになるとすれば、大変なことです。また、冷戦の名残が残っていた朝鮮半島でも南北和解の動きが本格化しようという時期に、日本の内閣が海外での武力行使の禁を解くような言動を繰り返すことは、時代逆行としか言いようがありません。憲法九条の解釈変更を研究しようという小泉総理の発言撤回を求めるとともに、総理の明確な見解を求めます。(拍手)

 続いて、首相公選制について伺います。

 所信表明の中には、わずかに、「早急に懇談会を立ち上げ」とあるだけですが、小泉総理は、四月二十七日、就任初の記者会見で、首相公選制のためだけの憲法改正ならば国民から理解を得やすいと、積極的な姿勢を示されています。なぜ、日本の政治に首相公選制が必要なんですか。その理由をはっきりとお示しください。

 所信表明では、「国民の政治参加の道を広げること」、これがその理由に挙げられております。国民が現在の政治のあり方に強い不満と閉塞感を持って、政治参加の意欲を強く抱いていることは事実でありましょう。しかし、それを直ちに首相公選制導入に結びつけようとすることに、私は疑問を抱きます。政治参加というならば、地域に密着した問題について、あっちこっちで既に行われております住民投票の経過と結果を政治は尊重すると表明することこそ、今直ちになすべきことではありませんか。そして、今すぐにでもできることではありませんか。

 自民党の方々は、これまで、住民投票について、議会制を軽視するものとして、一貫して否定的な見解を示してこられました。国民みずからが地域の問題について調査し、議論し、運動を起こし、決定し、責任を負おうという政治への直接参加のあり方には消極的であって、なぜ、複雑で非常に長い検討期間を必要とする首相公選制の提起なんでしょうか。ただ改憲の手続を進めたいのだと疑われても仕方ないのではありませんか。

 何より、私は、今の行き詰まった政治は制度に原因があるとする小泉総理の考え方に同意できません。原因は、制度にあるのではなく、政治を行う政治家、政党の姿勢にあるんです。もっとはっきり言いましょう。自民党の利権に基づいた政治、派閥の政治、談合の政治にあるんです。制度を変えれば政治がよくなるというのは、全くの幻想にすぎません。みずからの政治姿勢を改めずして国民にただ幻想を振りまくことは、さらに日本の政治を混迷に陥れるものであり、許されないと思いますが、いかがでしょうか。(拍手)

 小泉総理は、一九九三年、郵政大臣であったとき、予算委員会の答弁で、自民党が過半数を割って連立政権になった場合、政治が不安定になる、だから首相公選制だと述べられています。しかし、議院内閣制に首相公選制を加えた、世界に類例のない制度を取り入れた国があります。イスラエルです。結局、期待されたような政治の安定を得ることができないで、三回公選を実施しただけで、ことし、首相公選制を廃止いたしましたことは既に御存じだと思います。それでもなお、公選された首相には安定性があるとお考えですか。その根拠は何ですか。お聞かせいただきたいと思います。

 さて、私は、先日、「二十一世紀の平和構想」というタイトルで、新しい外交・安全保障政策に関する提案を行いました。私は、この「二十一世紀の平和構想」の中でも、アメリカも中国もロシアも、そして私ども日本、南北朝鮮、カナダ、モンゴルが席を同じくする多国間協調システムを確立することが、遠回りのようであっても、実は平和と安定のための近道だと訴えたのでございます。

 社民党代表団として、昨年は韓国の金大中大統領、モンゴルのエンフバヤル首相、そして、この二十一世紀に入って、中国の江沢民主席と会談を続けました。この北東アジア地域八カ国の総合安全保障機構実現へ向けての話し合いをしながら、つくづく、相互信頼こそアジア平和外交の基本と痛感いたしました。そして、憲法の尊重こそが、国民に対してだけではなく、アジア諸国民に対して行った戦後日本の平和の誓約であり、未来への責任であると考えます。

 アジア諸国に対する誓約と責任という意味では、今、非常に大きな外交問題になっている中学の歴史教科書問題もまた、同様に重要であると思います。小泉総理は、この問題には具体的に触れることなく、中国、韓国との関係は重要だと抽象的に述べられているだけにすぎません。

 田中眞紀子外務大臣は、新聞報道によりますと、この歴史教科書の問題について、まだあんなのをつくって歴史の事実をねじ曲げようとする人々がいると不快感を表明されましたが、まさに私は同感でございます。小泉内閣はこれからこの教科書問題をどうするおつもりなのかです。

 この問題は、私たち自身の歴史認識の問題、あるいは正義の問題であって、みずから正す以外にありません。改めて言うまでもなく、隣国から文句を言われるから問題になっているのではないのであります。しかし、一方で、かつて日本の侵略を受け、植民地とされて、塗炭の苦しみを受けた国々の人々が、日本の歴史認識について常に注意を払い、日本が信頼に足る国であるかどうか、ともにアジア地域の未来をつくっていく隣人であり得るかどうか、この判断になる基準としているということもまた理解しなければなりません。

 総理御自身の歴史認識が問われております。小泉総理の侵略戦争、植民地支配に対する認識はどのようなものでございましょうか。そして、それは今回の教科書問題への対処としてどのようになさるか、お聞きします。

 小泉フィーバーは、森前政権に対する国民の不満、閉塞感がいかに大きかったかを示しているのでしょう。改革とは、まことにこの十年、毎日のように聞かされた言葉です。問題は、改革という言葉ではなく、その方向と中身であります。幻想というものは、大きければ大きいほど、それが破れ、失望したときの反動は大きいものであります。その意味で、小泉政権に対する期待は、国民が自民党に対して与えた最後のチャンスになるであろうことを私は警告して、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 土井議員にお答えいたします。

 選択的夫婦別姓についてのお尋ねです。

 この問題は、婚姻制度や家族のあり方と関連する重要な問題であり、今、国民の意見が分かれております。私としては、国民各層の御意見というものを幅広く聞き、各方面における議論の推移を踏まえながら対処していきたいと思っております。

 歳出の見直しは福祉切り捨てにつながるのではないかとの御指摘がありました。

 社会保障制度は、「自助と自律」の精神を基本としつつ、個人の責任や自助努力では対応しがたいリスクに対して、お互いが支え合い、国民の安心と生活の安定を支える制度であります。今世紀に少子高齢社会を迎える我が国においては、これからは、給付は厚く、負担は軽くというわけにはいきません。したがって、その給付の範囲や水準は、こうした社会保障の役割にふさわしい制度であるとともに、将来にわたり持続可能な、安心できる制度を構築していかなければならないと考えております。

 ハンセン病についてのお尋ねでありますが、本件については、現在、訴訟係争中であると承知しております。その判決を見守りたいと思います。

 国債発行額三十兆円の目標が甘いのではないかという御指摘がありました。

 なるほど、改革にはいろいろな意見があるなと。一方ではきつ過ぎるという御意見がある。一方では甘いという意見がある。改革の難しさを痛感しております。いずれにしても、三十兆円以内に抑えて、歳出の徹底した見直しをして、これを構造改革、景気回復につなげたいと思っております。

 公共事業の見直しについてのお尋ねでございます。

 公共事業については、これまでも、政策課題に対応した予算の重点化、事業評価の厳格な実施、入札・契約制度の適正化、コスト縮減等の見直しに取り組んできたところでありますが、さらに見直しを行う必要があると思います。公共事業も例外ではございません。根本にさかのぼった見直しを行いまして、新しい時代の変化に対応し、より効率的で重点的な公共事業の実施に努めていく考えでございます。

 KSD事件についてのお尋ねでございます。

 本件については、今後、司法の場で厳正に真相が究明されていくものと考えますが、自由民主党としては、こうした真相究明を待つことなく、今回の事件を教訓として、党内の仕組みを思い切って見直してまいります。既に、参議院比例代表名簿への登載基準のあり方の見直しや入党審査のチェックの強化などを実施したところであり、今後とも、こうした党改革に全力を挙げていく決意です。

 また、KSDに対する国の指導が結果として十分徹底していなかったのではないかと考えており、今後、KSDが公益法人として適切な運営が図られるよう、厚生労働省に厳しく指導を行わせていく考えであります。

 こうした取り組みにより、今回のような事件が再び起こらないよう万全の措置をとり、政治の信頼回復に全力を尽くす決意であります。

 KSD事件についての認識や、自民党からKSDに対する金銭の返還などについてのお尋ねがありました。

 所信表明演説においても、この問題を含めた相次ぐ不祥事に対する国民の批判を厳粛に受けとめ、国民との信頼関係の再構築を図っていかなければならない旨を申し上げたところであります。

 KSDによる党費立てかえの疑惑が指摘されていることなどから、自由民主党として、KSDに加入する中小企業経営者の方々に不安と疑惑を与えた道義的責任があると考えております。現在、金銭の返還も含めて、信頼回復のためにどのような措置を講じていくかについて自由民主党において検討を進めているところであり、私からも、幹事長に対し、早急に作業を進めるよう指示しているところであります。

 中村喜四郎議員に対する辞職勧告決議案についてのお尋ねでありますが、私は、国会議員の出処進退、これは国会議員自身が適切な判断をするのが基本ではないかと考えております。

 憲法の尊重擁護義務と改正の議論でありますが、私は、憲法を遵守、尊重しなければならないと思っております。しかし、だからといって、改正議論をしてはならないという議論には結びつかないのではないか。

 憲法を遵守、尊重するのは当然だと思います。しかし、どう改正すべきか。私は、タブーを設けることなく、いろいろな方々からの意見を聞くのは、むしろ政治家として当然ではないかなと思っております。(拍手)総理大臣としては、日本国憲法の規定を遵守することは当然でありますし、この完全な実施に努力していきたいと思います。

 集団的自衛権についてのお尋ねであります。

 集団的自衛権は、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を指すと解されています。

 政府は、従来から、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然であるが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するために必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えてきております。

 憲法は我が国の法秩序の根幹であり、特に憲法第九条については過去五十年余にわたる国会での議論の積み重ねがあるので、その解釈の変更については十分に慎重でなければならないと考えます。

 他方、憲法に関する問題について、世の中の変化も踏まえつつ、幅広い議論が行われることは重要であり、集団的自衛権の問題について、さまざまな角度から研究してもいいのではないかと考えています。

 集団的自衛権に関する我が国の考えについては米国政府も十分理解していると思いますし、私は、アーミテージ氏が言うからとか、あるいは米国側が言うからということでなく、日本が主体的に考えるべきものだと思っております。(拍手)

 首相公選制を提起する理由についての御質問であります。

 私は、土井議員の反対する理由もわかります。この問題については、国民の間に賛否両論、広くあります。

 しかしながら、現在、この首相公選制も多くの国民が関心を持っておりますし、私も、この首相公選制の問題について、現実的な政治課題として取り上げてもいい問題ではないかなと思いまして、私独自の判断のみならず、憲法学者も含めていろいろな識者の意見も聞いて、まだ具体案が一つも提示されておりません、私の独断であってもいけない、偏見によるものであってもいけない。私以上にいろいろな知恵者がたくさんおられますから、そういう知恵者の意見も参考にしながら、首相公選制というのは議会を軽視するものでもありません、天皇制と矛盾するものでもありません、国民が幅広く政治に参加と責任を持つような制度の一つとしていいのではないかという案を具体的に考えて、国民に提示して、国民の理解と協力が得られればいいなと思いまして、今後、懇談会を設けて、いろいろ識者の意見をおかりしながら、一つの案を提示していければなと思っております。

 行き詰まった政治の原因は、制度でなく、政治家、政党の姿勢であるとの御指摘がありました。

 もちろんであります。私もそう思います。制度だけではない。個人個人の政治家、政党も、みずからを厳しく律しつつ政治活動を行うべきであるということは、私は同感であります。

 これから、制度、そしてみずからの姿勢、活動、それぞれお互い反省しながらあるべき姿を求めていくのが、政治家として、政党として大事ではないか。そして、何よりも、国民の声がより政治に反映するためにはどういう方法があるかということを考えるのも、政治家や政党として重要な役割ではないかとも思っております。

 イスラエルでは、首相公選制が政治の安定を得ず、三回公選をしただけで廃止したが、この首相公選制の安定性についてどういう問題があるか、御意見はあるかという御指摘をいただきました。

 もとより、制度を変えればすべてよくなるとは思っておりません。議院内閣制で選ばれた首相が首相公選制で選ばれた首相より劣っているとか、すぐれているとも私は思いません。ただ、国民の、政治にみずからの意見を反映させたいという希望をかなえる制度の一つとして、首相公選制もいい方法の一つではないかと考えております。

 これは、今後、具体案が提示されれば、より一層身近に国民も首相公選制について考えていただけますので、その際、より多くの国民の議論を含めた幅広い理解と協力を求めることが必要であると思います。

 歴史教科書についての問題であります。

 韓国からの修正要求については、これを真摯に受けとめ、文部科学省において、教科書検定制度にのっとり、専門的、学問的見地から十分精査を行っているところであります。

 韓国を初め近隣諸国との友好協力関係の発展に努めることは我が国にとって重要であり、この問題について、これら諸国との友好関係を損なうことなく円満に解決できるように、知恵を絞ってまいりたいと思います。

 政府の歴史認識についてのお尋ねです。

 政府の考え方は、我が国が過去の一時期に植民地支配と侵略により、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことに対する深い反省とおわびの気持ちを表明した平成七年の総理大臣談話のとおりであります。

 教科書検定は特定の歴史観を確定するものではなく、検定に合格した教科書の歴史観が政府の考え方と一致するものと解されるべきものではありません。近隣諸国との友好関係を損なうことなく、この問題を円滑に解決するよう知恵を絞ってまいりたいと思います。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(渡部恒三君) 二階俊博君。

    〔二階俊博君登壇〕

二階俊博君 私は、保守党を代表して、小泉内閣総理大臣の所信表明に対し、質問をいたします。(拍手)

 小泉新総理は、このたびの首班指名においても堂々の支持を得られて、内閣総理大臣に就任されました。まず、心からお祝いを申し上げます。(拍手)

 保守党は、連立政権の一翼を担う立場から、全力で小泉内閣を支え、三党政策合意の実現に取り組む決意であります。

 総理は、構造改革なくして日本の再生と発展はないとの信念のもとに、「新世紀維新」を実現する決意を改めて表明されました。私たち保守党も、日本再生のために社会のあらゆる分野での構造改革を強く主張してきただけに、このたびの総理の決断をまことに心強く思うものであります。

 問題は、その実行と実現性にあります。改革を実現するには、その具体的な処方せんと政策の優先順位を明確にする必要があります。総理が提案された数々の改革案の中で、改革断行への優先順位について、まずお伺いをしたいと思います。

 次に、当面の最重要課題であります経済問題についてお伺いします。

 我々は、これまで、経済再建なくして財政再建なしの方針のもとに、減税や公共投資などの積極的な財政運営を行うとともに、金融機関の早期健全化法の成立や、倒産から多くの中小企業を守る特別信用保証制度の創設など、金融サイド、財政サイドの両面から景気のてこ入れを図ってまいりました。

 その結果、九八年の秋、金融・証券会社が相次いで倒産し、まさに金融恐慌に突入の寸前にあった我が国経済を辛うじて救うと同時に、マイナス成長からプラス成長に転換させるなど、連立政権は我が国経済を懸命に支えてきたのであります。

 一方、残念ながら、金融機関の不良債権問題のために、いまだに我が国経済はこの泥沼から脱出することができないのであります。

 まさに、不良債権の処理なくして経済再建なしであります。我が国経済の再生のためには、一日も早い不良債権問題の解決が不可欠であります。その意味で、総理が緊急経済対策の速やかな実行を約束されましたことを力強く思うものであります。

 この際、特に留意すべきことは、不良債権の処理を具体的に実施に移した場合、企業の倒産、失業等のデフレ効果を伴うことであります。日本経済は今でもデフレ状態にありますが、不良債権の処理は一層これを加速させることになりかねないのであります。

 総理は、自由民主党総裁就任の際の会見において、構造改革で経済成長がマイナスになるかもしれないがやむを得ないと発言されております。総理の意気込みを多とするものであります。

 しかし、小泉総理、デフレ経済のもとで不良債権をなくすことはほとんど不可能に近いことであります。円滑に不良債権を処理するためには、法制上、制度上の環境を整えるとともに、処理に伴うデフレ効果を軽減するために、必要な公共投資を行うとともに、失業中の生活保障と新たな職業訓練の機会の確保など、特に雇用対策等に万全を期するために積極的な経済政策を講ずべきであります。総理の見解をお伺いいたします。

 また、これに関連しまして、三党の連立政権合意にあります、いわゆる祝日三連休倍増法案について伺います。

 これは、祝日であります海の日と敬老の日を月曜日指定することにより、三連休を実現し、ゆとりのある、一層質の高い国民生活の確保を目指すものであります。また、これらの三連休により、経済に与える効果も大きく、国の予算を一円も使うことなく、これだけで一年間に七千億ないし一兆円の経済効果が試算されておるわけであります。

 私たち保守党は、今国会に、公明党、21世紀クラブとともに既に関係法案を提出しており、その後、民主党からも同じような趣旨の法案が提出されております。

 祝日三連休倍増法案の成立のためには、今日まで伝統と歴史のある祝日については、例えば敬老の日を、九月十五日の一日だけではなく、敬老週間、敬老旬間あるいは敬老月間として、国民が長寿を祝うとともに、今後はさらに敬老の精神を涵養するなどについて、既に我が党では検討を開始しております。

 法律の施行の時期等についても、各党間で当然十分に話し合うことも大切であります。

 いずれにしましても、法案の成否は自由民主党の決断にかかっております。小泉総理のリーダーシップに期待しております。総理の見解をお伺いするものであります。

 次に、財政構造改革についてお尋ねをいたします。

 総理は、国債の新規発行額を三十兆円以下に抑えることを目標に、中期的にはプライマリーバランスを実現するとの二段階論を述べておられます。しかし、総理の主張は財政支出の抑制論であります。

 財政構造改革と財政支出の抑制とは、根本的に異なるものであります。財政構造改革は、まさに歳出歳入の構造を抜本的に改革することによって、財政赤字の拡大を防ぐ仕組みをビルトインすることであります。すなわち、国の歳出の約半分を占める社会保障、公共事業、地方交付税の三分野について根本的に再構築することが重要であります。

 今日の経済状況から見て、単なる財政支出の抑制は、日本経済に深刻な影響を与えかねません。不良債権の処理や企業のリストラというデフレ要因が加速する中で、必要な財政支出を抑制すれば、我が国経済はデフレスパイラルに陥る可能性さえ懸念されるのであります。財政支出の抑制は、デフレに伴う税収減と生活保護や失業対策などで、当初の目的とは逆に、猛烈な赤字を生ずるおそれさえあります。

 総理の言われる財政構造改革の真意と、我々の見解についての所見をお伺いいたします。

 次に、教育についてであります。

 総理は、所信において、教育基本法の見直しについては、幅広く国民的な議論を呼びかけておられますが、全く私どもも同感であります。

 言うまでもなく、国づくりの基本は人づくりにあり、人づくりの基本は教育にあります。米百俵の教えもそのとおりであります。

 総理の言われる新たな国づくりを担う人材を育てるためには、この際、教育基本法の積極的な見直しが必要であると考えますが、総理の見解を伺います。

 なお、歴史教科書の問題についてであります。

 我が国の見解は既に明らかとなっております。中国、韓国からも、これに対し再三意見が述べられております。教科書問題の以前は、中国とも韓国とも、円満な、波静かな外交関係にありました。

 そこで、このところ、海を挟んでそれぞれの国の考えを述べ合うだけではなく、せっかく総理も、誠実に受けとめて、どういう対応ができるか前向きに考えたいと述べておられるわけですから、この際、中国及び韓国に対し、環境が整えば、総理の特使を派遣するなど、相手の政府や国民にも誠実に説明する必要があるのではないでしょうか。そこから解決の道を求めるべきであります。総理には当然、総理のお考えがあるでしょうが、せっかく今日まで築き上げてきた近隣諸国との信頼関係を損なうことのないよう、特に誠実で丁寧な対応を求めるものであります。

 次に、国家の安全と危機管理についてお伺いいたします。

 一つは、防衛庁の省への昇格の問題であります。

 国の平和と独立を確保し、国民の生命と財産を守ることは、国家の最も重要な責務であります。このため、諸外国では、これを担う組織を、いずれの国も省として位置づけをしておるのであります。しかし、我が国においては、中央省庁の再編がスタートし、環境庁が省に昇格したにもかかわらず、いまだに防衛庁は庁のままであります。

 我々は、形式的なことで防衛庁の省昇格を求めているのではありません。庁のままでは、何をやるにしても、内閣府を通じた手続が必要であります。不審船の侵入、阪神・淡路大震災などの国家の重大な危機に際しての自衛隊の活動の必要性が増大し、国民の期待が高まっているにもかかわらず、庁であるがゆえに、内閣総理大臣が主任の大臣として、内閣府が所管するその他の事務と同様に処理されてしまい、迅速な対応を期待することはできません。

 防衛庁の省昇格を実現し、大臣としてみずから閣議を求め、予算を要求し、省令の制定を可能にするなど、この際、国民生活のあらゆる危機から国民を守るため万全を期することは当然のことであります。総理の見解をお伺いします。

 次に、危機管理について申し上げます。

 阪神・淡路大震災以来、官邸を含めて、危機管理のあり方について再三議論されてまいりました。危機管理の最高責任者は総理であります。有事に備えて、危機管理のあり方について総点検が必要であります。総理の方針と御決意を伺いたいと思います。

 さらに、平成十一年の北朝鮮の不審船とも思われる船が白昼堂々と我が国の領海を侵犯した事実を、国民は今も忘れてはおりません。

 先般は、これまた北の重要人物とも思われる男性が、偽造パスポートを持って入国しようとしたことがありました。しかも、三度も入国の事実があると言われています。国外退去をもって、一応、事なきを得たような格好でありますが、これまた、国の危機管理の脆弱なところに不意打ちを受けたようなものであります。何らかの政治的配慮があるにしても、入国管理のあり方及び国家の危機管理の観点から、総理に対し、改めて今回の事件に対し明確な御説明を求めるものであります。

 次は、憲法の問題であります。

 我々保守党は、総理の言われる首相公選制の是非を含め、現行憲法を全面的に見直し、戦後、今日までの日本の歩みを振り返りながら、二十一世紀日本の国づくりの根幹をなす、すべての国民が誇りを持つことのできる新たな自主憲法の制定を目指すべきであると考えます。総理の御決意を伺います。

 最後に、私は、都市と地方、過密と過疎の問題についてお尋ねをいたします。

 総理は、みずからを本部長とする都市再生本部を早くも立ち上げ、公約の実行に踏み出されました。まことに結構なことであります。しかし、日本の国土の四八・五%を占め、全国三千二百余の市町村の約三分の一を占める千百七十一の市町村が過疎地域となっている事実を忘れてはなりません。

 総理、国土の均衡ある発展は国政の基本であるはずであります。残念ながら、総理の所信を伺う限りにおいては、このもう一つの日本の存在については政策的に全く空白となっております。総理の言われる、おいしい水、きれいな空気、美しい自然の姿を持つこれらの地方のためにも、農林水産業や過疎地域等の再生本部がもう一つ必要なのではないかと考えます。(拍手)

 農林水産業にいそしむ地域の人々は、後継者不足、人口の老齢化、深刻な少子高齢化の中で、あすへの希望をいかにしてつないでいくかを憂慮されている毎日であります。古くから日本人の心をはぐくんできた農山漁村は、いずれも過疎となりつつあり、荒廃の一途をたどっております。しかも、伝統や人間味あふれる地方の町並みや古くからの商店街も、くしの歯の欠けるように荒れるに任せているような姿も珍しいことではありません。

 我々保守党は、変えるべきは敢然として変え、守るべきものは断固として守り抜くことを党の政策の基本といたしております。(拍手)都市政策の積極的な推進とあわせて、この際、重要な我が国の過疎対策について、同時に、農林水産業の振興策について、総理の基本的なお考えを伺いたいのであります。

 総理のすばらしいリーダーシップは、国会審議もさま変わりの様相を呈しております。いよいよ小泉改革を本当に実りのあるものに仕上げていくためには、かつて協同組合の元祖とも言われたロバート・オーエンが、一人の百歩より一万人の一歩を標榜されましたように、国民の改革への一歩を求めて総理が奮闘されることを祈って、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣小泉純一郎君登壇〕

内閣総理大臣(小泉純一郎君) 二階議員にお答えする前に、志位議員に対する答弁漏れがございました。補足させていただきます。

 集団的自衛権の行使への踏み込みはアメリカの軍事的要求にこたえたものではないかという御質問でございますが、これは、日本独自に主体的に考えるべきものでありまして、よその国から言われたからといって対処する問題ではないということを御理解いただきたいと思います。

 二階議員にお答えいたします。

 激励を込めた御質問、ありがとうございます。これからもよろしく御理解、御協力をお願い申し上げます。

 改革断行の優先順位についてのお尋ねがございました。

 日本経済の再生のためのいろいろな改革を掲げておりますが、当面、最も重要で急を要する課題は、経済の再生だと思います。

 従来の需要追加型の政策から大きくかじを切り、さきに取りまとめられました緊急経済対策を速やかに実行するとともに、二年から三年以内に不良債権の最終処理を目指す、新規産業創出、規制改革、証券市場の活性化、都市再生などを通じた競争的な経済システムを構築する、国債発行の抑制などにより財政の健全化を目指すといった経済、財政の構造改革について、六月を目途に経済財政諮問会議で作成される基本方針に沿って、早急に取り組んでいく覚悟でございます。

 不良債権の処理についてのお尋ねであります。

 不良債権の最終処理を初めとする各般の構造改革を断行いたしますが、こうした構造改革を実施する過程で、社会の中に痛みを伴う事態が生じるなどの問題が発生することもあります。このため、御指摘のように、雇用面での不安を解消する施策の拡充や中小企業に対する金融面での対応策を講じ、万全を期してまいります。

 私は、構造改革に伴う痛みを恐れず、同時に、構造改革のための万全な対策を講じつつ、不良債権の処理を初めとする各般の改革を断行していきたいと思います。

 祝日三連休倍増法案についてお尋ねをいただきました。

 御指摘のとおり、本件については、三党連立政権合意に盛り込まれておりまして、私もその当事者として重く受け取ります。これの実現方を期して、私も努力をしていきたいと思います。

 財政構造改革の真意についてであります。

 私が提唱している財政構造改革は、社会保障、公共事業、国と地方の関係といった分野を含めて聖域なく見直しを行い、根本的な再構築を図るという意味で、議員の言われる財政構造改革と考えを異にするものではありません。

 長期にわたり需要追加策を講じてきた結果、巨額の財政赤字を抱えている我が国の現状を見れば、財政構造改革によってその状況を改善する必要があると考えております。

 このような中、構造改革なくして景気回復なしの信念のもとに構造改革を含む各般の対策を講じるわけでありまして、景気回復とこの構造改革と矛盾するものではない、一体と考え、取り組んでまいりたいと思います。

 教育基本法についてであります。

 私としては、教育基本法の見直しについて、教育改革国民会議の最終報告を踏まえ、中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深め、しっかりと取り組んで成果を得てまいりたいと考えております。

 歴史教科書についてです。

 中韓両国の懸念に対しては、これまでも、我が国の検定制度等につき丁寧に説明を行ってきました。今後とも、必要に応じ、適切な形でこのような説明を行ってまいりたいと思います。

 いずれにせよ、我が国にとって、中国、韓国両国との友好協力関係の発展に努めることは極めて重要でありまして、この問題の円満な解決に向けて引き続き知恵を絞っていきたいと思います。

 防衛庁の省移行についてのお尋ねであります。

 自分の国は自分で守るという気概を持ち、国として適切な防衛の体制をとることは、国民にとって、また国家存立の基本であり、万が一の場合にはみずからの命をかける覚悟で厳しい訓練を行っている自衛隊の隊員に対して、国民が敬意を持って接することができるような環境を整備するのが私は政治の役割であると認識しております。(拍手)

 国家の危機に際して自衛隊の活動の必要性が増大し、国民の期待が高まっている中、国民の生命と財産を守る体制に万全を期すべきであることは、私は、議員の御指摘のとおりだと思います。

 防衛庁の省移行については、このような点を踏まえ、国民の十分な理解が得られる形で議論が尽くされることが重要であると考えます。

 官邸を含めた危機管理のあり方についてです。

 内閣の危機管理が極めて重要であることは申すまでもございません。阪神・淡路大震災などで得られた貴重な教訓に基づき、これまで、二十四時間体制の内閣情報集約センターの設置、内閣危機管理監の設置を行うとともに、省庁再編により国土庁の防災部門を内閣府に移行するなど、内閣の危機管理機能の充実強化に努めてきたところでございます。

 しかしながら、国民の生命財産を守ることは政府の最も重要な責務であり、今後とも、内閣の危機管理機能については不断の点検を行い、国民に安心感を抱いていただけるような措置を期してまいりたいと思います。

 五月一日発生した不法入国事件についてでございます。

 今回の事案につきましては、私は、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一であると考え、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれもあると考えました。そうした事態を避けるために、総合的判断を加えた上、退去強制という法務省の処理方針を了承したものでありまして、今回の措置は適切なものだったと思っております。

 なお、今回は偽造旅券を発見して本邦への上陸を阻止しましたが、御指摘の男性が所持していた偽造旅券については、これを使用した本邦への入国事実が昨年中三回あったことから、五月六日の閣僚懇談会において、職員の増強や機器の整備など入管体制の強化を検討するよう関係大臣に指示し、そのうち一部は既に実行に移っているものと承知しております。

 新たな自主憲法の制定を目指すべきではないかとのお尋ねであります。

 憲法に関する問題につきましては、現在、衆参両院に憲法調査会が設けられておりまして、活発な議論が展開されております。このような憲法問題につきましては、幅広く多くの国民から熱心な議論が行われておりますので、今後、私も大いに関心を持って、この議論が集約していくことを期待しております。

 いずれ、憲法調査会等でも報告がなされると思いますが、私としては、憲法改正についての多くの議論が今後も多くの方々によって展開されていくことを期待しております。

 過疎対策についてお尋ねがありました。

 平成十二年三月、過疎地域自立促進特別措置法が制定されたところであり、同法に基づき、過疎地域について総合的かつ計画的な対策を実施するために必要な特別措置を講ずることにより、地域における創意工夫を尊重しつつ過疎地域の自立促進を図り、美しい国土の形成に努めていきたいと思います。

 農林水産業の振興策についてです。

 我が国の農林水産業は、国民に対する食料の安定供給はもとより、国土の保全や都市住民に対する憩いの場の提供など、多面的な機能を有しております。

 このような農林水産業を将来にわたり発展させていくため、意欲と能力のある農業者が創意工夫を生かした農業経営を展開できるよう、農業経営の規模拡大や法人化を推進するなど農林水産業の構造改革を進め、農山漁村の新たなる可能性を切り開いていきたいと思います。

 以上でございます。(拍手)

副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十八分散会




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